運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-03-28 第101回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二十八日(水曜日)    午前九時十九分開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月二十七日     辞任         補欠選任      黒柳  明君     高桑 栄松君      上田耕一郎君     安武 洋子君      田  英夫君     野末 陳平君  三月二十八日     辞任         補欠選任      出口 廣光君     竹内  潔君      吉村 真事君     土屋 義彦君      小西 博行君     関  嘉彦君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 金丸 三郎君                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 志村 哲良君                 杉山 令肇君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 竹内  潔君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 増岡 康治君                 松岡満寿男君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 鈴木 一弘君                 高桑 栄松君                 中野 鉄造君                 和田 教美君                 安武 洋子君                 関  嘉彦君                 喜屋武眞榮君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  住  栄作君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  森  喜朗君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        農林水産大臣   山村新治郎君        通商産業大臣  小此木彦三郎君        運 愉 大 臣  細田 吉藏君        郵 政 大 臣  奥田 敬和君        労 働 大 臣  坂本三十次君        建 設 大 臣  水野  清君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    田川 誠一君        国 務 大 臣       (内閣官房長官)  藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       中西 一郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       後藤田正晴君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官) 稻村佐近四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       岩動 道行君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  上田  稔君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        国防会議事務局        長        伊藤 圭一君        総理府人事局長  藤井 良二君        総理府人事局次        長        吉田 忠明君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        行政管理庁長官        官房総務審議官  古橋源六郎君        行政管理庁長官        官房審議官    佐々木晴雄君        行政管理庁行政        管理局長     門田 英郎君        行政管理庁行政        監察局長     竹村  晟君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房  佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁人事教育  上野 隆史君        防衛庁衛生局長  島田  晋君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        防衛施設庁労務        部長       大内 雄二君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        科学技術庁計画        局長       赤羽 信久君        科学技術庁研究        調整局長     福島 公夫君        沖縄開発庁総務        局長       関  通彰君        沖縄開発庁振興        局長       藤仲 貞一君        国土庁長官官房        長        石川  周君        国土庁長官官房        会計課長     安達 五郎君        国土庁大都市圏        整備局長     杉岡  浩君        法務省刑事局長  筧  榮一君        外務大臣官房審        議官       都甲 岳洋君        外務大臣官房領        事移住部長    谷田 正躬君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        大蔵大臣官房審        議官       大山 綱明君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主計局次        長              兼内閣審議官   保田  博君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局次        長        吉居 時哉君        大蔵省理財局次        長        志賀 正典君        文部大臣官房審        議官       齊藤 尚夫君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省学術国際        局長       大崎  仁君        文部省管理局長  阿部 充夫君        厚生大臣官房審        議官             兼内閣審議官   古賀 章介君        厚生大臣官房審        議官       新田 進治君        厚生省公衆衛生        局長       大池 眞澄君        厚生省公衆衛生        局老人保険部長  水田  努君        厚生省医務局長  吉崎 正義君        厚生省薬務局長  正木  馨君        厚生省保険局長  吉村  仁君        社会保険庁年金        保険部長           兼内閣審議官   朝本 信明君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        運輸省港湾局長  小野寺駿一君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        運輸省航空局長  山本  長君        郵政大臣官房経        理部長      高橋 幸男君        郵政省貯金局長  澤田 茂生君        郵政省電気通信        政策局長     小山 森也君        郵政省電波監理        局長       鴨 光一郎君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        建設大臣官房長  豊蔵  一君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省計画局長  台   健君        建設省都市局長  松原 青美君        建設省道路局長  沓掛 哲男君        自治大臣官房長  矢野浩一郎君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局公        務員部長     中島 忠能君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君        自治省税務局長  関根 則之君        消防庁長官    砂子田 隆君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        外務大臣官房調        査企画部長    岡崎 久彦君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  それでは、これより矢田部理君の残余の総括質疑を行います。矢田部君。
  3. 矢田部理

    矢田部理君 政府見解を出してください。
  4. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 三月二十一日の参議院予算委員会における矢田部委員質問につきましての政府立場は、次のとおりでございます。  政府が、昭和三十五年の安保国会以来、一貫して申し上げておるとおり、日米安保条約第六条の実施に関する交換公文に言う「装備における重要な変更」は、核弾頭及び中長距離ミサイル持ち込み並びにそれらの基地の建設を言うものであるところ、これを事前協議対象としたのは、安保条約締結に当たり、日米両国間において、米国による核兵器我が国への持ち込み我が国の意向にかからしめるとの合意が成立したことに基づくものであります。いわゆる藤山マッカーサー口頭了解は、当該交換公文についてのこの日米両国間の合意了解事項として確認しているものであり、同口頭了解において、その持ち込み事前協議対象とされている中長距離ミサイルとは、核弾頭持ち込みを当然の前提とする核専用のものを指しております。核、非核両用ミサイルは、核弾頭装備した場合には核兵器でありますが、核弾頭を装着しない場合には非核兵器であり、したがって、核弾頭を装着していない核、非核両用ミサイル事前協議対象ではない。  これが実は政府の統一した見解でございます。
  5. 矢田部理

    矢田部理君 ただいまの安倍外務大臣の答弁は、従来の政府見解をそのまままとめて述べたものであって、私の質問に答えておりません。したがって、全く納得できないのでありますが、質問はこの点留保して、今後の扱いは後刻申し上げます。  今、問題に供されておるトマホーク中距離ミサイルという認識でしょうか。
  6. 北村汎

    政府委員北村汎君) 中長距離ミサイルというものが、その射程距離において大体二千五百キロあるいはその前後ということでございますれば、トマホークミサイルは中長距離ミサイルと観念されます。
  7. 矢田部理

    矢田部理君 INF交渉などでは、ミサイル距離射程等についての扱いはどうなっているでしょう。
  8. 古川清

    政府委員古川清君) お答え申し上げます。  SALTの交渉のときでございますけれども、ICBMというものの定義ということが問題になりまして、その際はアメリカとソ連との間で、ミサイルを飛ばした場合に相手国に到着できる距離ということで、一応五千五百キロメートルというのがICBMに入る一つ定義のように扱われたということを承知しております。したがいまして、五千五百キロに、達しないものは一応ICBM大陸間弾道弾ではないという意味では中距離ということではなかろうか。もっとも中距離ともう少し短い短距離との間の定義というものは、私詳しくは存じておりません。
  9. 矢田部理

    矢田部理君 どなたかわかる人はいませんか。
  10. 古川清

    政府委員古川清君) お答え申し上げます。  明白な定義というものはございませんけれども、一般論としましては千百というのが一つのメルクマールになっているようでございまして、千百から五千五百までは一応中距離と言ってよろしいかと存じます。
  11. 矢田部理

    矢田部理君 今問題に供されているトマホークは、核、通常と両方ありますが、この射程はどのぐらいでしょうか。
  12. 古川清

    政府委員古川清君) 核のトマホークの場合には、私どもが承知しておるところでは、おおむね二千五百キロメートルということでございます。
  13. 矢田部理

    矢田部理君 通常は。二つ言っているんです、核と非核とあるが、それぞれどれだけかと聞いている。
  14. 古川清

    政府委員古川清君) 全部詳細にお答え申し上げます。  核と非核といろいろございますけれども、非核の場合におきましては、対シップ、船に対するものが四百五十キロメートル以上ということを言われております。それから対地攻撃用トマホーク、これが核と非核とございますけれども、これが非核の場合においては千百キロメートル以上、それから核の場合には二千五行キロメートル以上、こういうふうに私ども承知しております。
  15. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと、対地攻撃のものは核、非核とも中距離ミサイルというふうに理解をしてよろしゅうございますね。
  16. 古川清

    政府委員古川清君) そのように御理解いただいてよろしかろうと存じます。
  17. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、本文に戻りますが、口頭了解というのは解釈論であって、交換公文法的意味を持つが、口頭了解法的意味を持たないというふうに受けとめてよろしゅうございますね。
  18. 小和田恒

    政府委員小和田恒君) お答えいたします。  先般のこの委員会でお答えいたしましたように、藤山マッカーサー口頭了解は、第六条の実施に関する交換公文内容を具体化して、それを日米両国間の了解として口頭了解の形で取りまとめた、その意味交換公文運用ないしは解釈に関する了解であるということを申し上げました。片方文書に書かれた交換公文であり、片方口頭による了解ではございますけれども、双方とも両国政府間において見られた意思の合致を述べたものであるという意味において、一方は法的な効果を持ち、片方は法的な効果を持たないというふうに申し上げるのは必ずしも適切ではないかと思います。つまり、一方は文書で書かれたものであり、一方は口頭でございますけれども、口頭の形における両国政府間の合意を述べたものであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  19. 矢田部理

    矢田部理君 国際間の約束は全部文書にすべきものであって、文書にしないものが法的効果を持つなどという解釈立場は理解できません。
  20. 小和田恒

    政府委員小和田恒君) 委員が御指摘になりましたように、国際間の約束事というのは、多くの場合に文書の形で記録されることは事実でございます。しかしながら、口頭による約束というものも国際約束として成立するということは学説上も認められておりますし、実際の慣行としてもあると思います。
  21. 矢田部理

    矢田部理君 その条約と言われるものは、広い意味でありますが、全部文書にして署名、捺印をし、明確にすべきであって、口頭の話し合いの内容などというものが法的効果を持ったら大変なことになりますよ。少なくとも日本法制にはそういうものはない。
  22. 小和田恒

    政府委員小和田恒君) 国内的な法制国際的な法制というものは非常に共通の面がいろいろございますけれども、必ずしも同じではございません。国際法の枠の中におきましては、先ほども申し上げましたように、文書によって合意を記録するということが通例ではございますけれども、口頭了解というものが国際法的な効力を認められるということは学説でも一致しておりますし、それから国際司法裁判所の判例でございますとか、そういうものでも一応確認されているところでございます。
  23. 矢田部理

    矢田部理君 これは解釈論なんですか、それとも法的効果口頭了解それ書体が持つという考え方なんですか。
  24. 小和田恒

    政府委員小和田恒君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、内容的に見れば、先ほど申し上げましたように、交換公文内容を具体化してその運用解釈についての両国間の合意を取り決めたものであるという意味において、その内容解釈を示したものであるというふうに申し上げていいと思います。ただ、その合意自体は、そういう意味日米両国間、この取り決めの両当事者の間の了解を記録したものであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  25. 矢田部理

    矢田部理君 今の答えならば、解釈論という立場で言われておるから、それはそれとして受けとめます。  そこで、この解釈論というのは問題の中心を述べたものではあっても、つまり核が問題の焦点になってきた経過からそう言われておったとしても、それは例示と見るべきであって、すべてだと見るのは正しくないというふうに思いますが、いかがですか。
  26. 小和田恒

    政府委員小和田恒君) これも前回お答え申し上げましたことを敷衍して申し上げることになるわけでございますけれども、この問題につきましては、日米安保条約締結に当たりまして、日米両国間で最大の問題の一つであったのが核兵器日本への持ち込みをどうするかという問題であったことは委員御承知のとおりでございます。先ほど大臣からお答え申し上げましたように、この核兵器の取り扱い持ち込みの問題をどうするかということに関しまして第六条の実施に関する交換公文の中に「装備における重要な変更」ということが規定され、それはこの核兵器持ち込みを規制するものであるということが了解されたわけです。それが藤山マッカーサー口頭了解となっておる、こういうことでございますので、この交渉、この条約締結過程における当事者の意図として、ここで言うところの問題は、これが単に中心的な課題であるだけではなくてこれがそのものである、核兵器持ち込み問題自体がこの対象であるということがこの合意の基礎を構成しているわけでございます。
  27. 矢田部理

    矢田部理君 交換公文では装備の重要な変更と言っているわけでありまして、核に限定をしていない。その立場から問題を考えるべきだということを一つ。それから藤山マッカーサー口頭了解においても「核弾頭及び中・長距離ミサイル」と言っているのでありまして、核はもちろんでありますが、核がなくとも中長距離ミサイルそのもの事前協議対象になると考えるのが素直な読み方なんであります。解釈論を一方的に押しつけるのは了解できません。
  28. 小和田恒

    政府委員小和田恒君) この規定文字文字だけで裸で取り出して見た場合に、委員がおっしゃるような点があり得るということはこの前も申し上げたわけでございますけれども、この場合に、先ほど来申し上げておりますように、日米安保条約締結交渉における両当事者であります米国日本とその両交渉代表の間におきまして、この問題について、この対象は何であるかということについて極めて明確な合意があるわけでございます。その経緯に基づきまして先ほど来申し上げておりますようなこと、つまりここで言っております「装備における重要な変更」というのは核兵器持ち込みのことを指すのであるということを申し上げているわけでございます。
  29. 矢田部理

    矢田部理君 私がいろいろ申し上げてきましたのは、トマホークの第七艦隊配備日本周辺に配備することについて、これは大変重要な問題であるということを基本的に受けとめているからであります。先ほどからお話がありますように、核、非核を問わずトマホークは全く新しい世代兵器体系、従来の戦略、戦域、戦術兵器を、その障壁を取り除いた第四世代兵器体系とも言われているのであります。その点からいえば、その日本持ち込み、第七艦隊配備等については少なくとも事前協議対象にしてしかるべきだという考え方に立っているからでありますが、いかがでしょうか。
  30. 北村汎

    政府委員北村汎君) 先ほど来御説明をいたしておりますように、トマホークは核、非核両用ミサイルでございまして、事前協議対象になるのは核を搭載したミサイルということでございますので、トマホーク全体としてこれが事前協議対象になるということはないと思います。
  31. 矢田部理

    矢田部理君 これは、総理外務大臣装備の重要な変更と見るべきだ。少なくとも口頭了解にある「中・長距離ミサイル」という規定にも当てはまる。こういう立場からいえば、とりわけ日本国民の不安や問題の受けとめ方からいえば、こういうものこそ装備の重要な変更として受けとめてしかるべきなのであります。その点で見解を求めますと同時に、どうも事前協議制度が大変問題になっている。一つは、アメリカ側からは事前協議の提起ができるけれども、日本側からは全くできない。後で時間があれば議論したかったのでありますが、持ち込み解釈についても、通過、寄港が含まれるというのと、含まれないという見解がある。こういうあいまいな形でどうも戦後をずっと、あるいはアメリカ占領政策をずっと引きずった形で極めて問題が多過ぎるというふうに思うわけであります。その点で、総理及び外務大臣見解を求めますと同時に、この問題の衝に当たった岸さん、そして藤山さんをぜひ当委員会に証人として呼んでいただきまして、問題の所在、当時のいきさつ等々について明らかにしていきたいと思いますので、委員長よろしくお願いをしたいと思います。
  32. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先般来から議論になっておりますトマホークの問題、さらに事前協議の問題、あるいはまた藤山マッカーサー口頭了解についてのいろいろの論議につきまして私も十分承ったわけでございますが、政府としましては、安保条約が成立をして以来、一貫をいたしまして、先ほどから申し上げておりますような見解をとっておるわけでございまして、したがってトマホークの場合におきましても核、非核の両川があると。そして非核中距離ミサイルが持ち込まれるに当たりましては、これは藤山マッカーサー口頭了解によりまして両国間の合意ができておるわけでございますので、事前協議対象にはならない。もちろん核つきの中距離ミサイルが持ち込まれる、あるいは核そのものが持ち込まれるということにおきましては、これは藤山マッカーサー口頭了解のいわゆる「装備における重要な変更」に当たるということで事前協議対象になるというのが政府の統一した考えでございまして、これはこれまでもそうでありましたし、トマホークにつきましても、今お話しのように、これからの世界のアメリカの戦略における一つの新しい兵器であると思いますが、しかし我々はそれについても今申し上げましたような見解解釈をとっておるわけでございまして、この点についてはいろいろと御疑念があると思いますけれど、政府としてはそうした一貫した解釈、そしてそれはあくまでもやっぱり日米安保体制、そして日米間の信頼関係に基づいてこの解釈をとり、そしてその解釈どおり日米間でその信頼関係に基づいて実施されてきたと、こういうふうに我々としては判断をいたし、確信をいたしておるわけであります。
  33. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外務大臣が御答弁を申し上げたとおりであります。
  34. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 岸、藤山両参考人招致の件は、後で……
  35. 矢田部理

    矢田部理君 証人。
  36. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 証人として招致の件は、後で理事会で相談したいと思います。  以上で矢田部理君の質疑は終了しました。(拍手)
  37. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、志苫裕君の残余の質疑を行います。志苫君。
  38. 志苫裕

    志苫裕君 当局の方から、この間の答弁をお願いいたします。
  39. 古川清

    政府委員古川清君) お答え申し上げます。  北朝鮮の国防費のGNPに対する比率の問題でございますけれども、韓国を一〇〇といたしますと、北朝鮮は一三〇の兵力を持っておるわけでございますが、防衛庁としましては、この昭和五十八年度の防衛白書の作成に当たりましては、結局問題は分子と分母の問題でございますが、この分母である北朝鮮のGNPというものを百八十八億ドルと見積もったわけでございます。これはミリタリー・バランスの八二-八三年版に載っている数字でございまして、一応私どもは、これはまあ正しい数字であろうということで、これをとったわけでございます。  ところで、このミリタリー・バランスの記述の中では、北朝鮮の国防費を十六億八千百万ドルと記述してございますけれども、総兵力七十八万四千人もございますところの北朝鮮の国防費が十六億八千百万ドルというのでは随分少な過ぎるというふうに私どもは考えまして、防衛庁としての計算をいろいろやったわけでございます。事実、今申し上げましたこのミリタリー・バランスという本がございますが、その記述の中でも、今申し上げた十六億八千百万ドルという数字は、すべての国防支出をカバーしているかどうか不明であるというふうな注釈が実はついておることも先生御承知のとおりであろうかと存じます。それで、防衛庁としましては、北朝鮮の軍事力の建設状況であるとか、迫川状況であるとか、あるいは訓練、演習状況であるとか、まあ予算にはね返ってくるような点を、いろいろ情報を収集いたしまして見積もりを行いました。結論といたしまして、大体、北朝鮮の国防費というものを三十八ないし四十七億ドルというふうに算定と申しますか、判断をしたわけでございまして、これを先ほど申し上げました百八十八億ドルで割りますと、おおむね二〇ないし二五という数字が出てくるわけでございます。私どもとしましても、これが非常に一〇〇%正しいとは必ずしも思っておりません。というのは、結論自身が二〇ないし二五という蓋然的なものでございまして、すべては北朝鮮のデータがいろいろアベーラブルでない、私どもに詳細なデータが発表されていないということに起因するわけでございますけれども、今後とも情報の収集に努めて、また分析能力の向上に努めまして、きめ細かい見積もりを出してまいりたいと考えております。
  40. 志苫裕

    志苫裕君 今の答弁では説得力がないし、納得はできません。ただ、今若干数字の訂正ありましたが、この間のときには南一〇〇に対して北二三○、きょうは一三〇というふうに一〇〇も違っておりますが、いずれにしても、あるときにはミリバラを使い、あるときには防衛庁独自の推定を使い、しかも同じ日本政府の中でも、外務省は国際的に権威のある数字としてミリバラを使ったと。まさに答弁がまちまちであります。  いずれにしても納得できないんですが、これをやっておってもしようがないんで長官にお伺いしますが、私は防衛白書の記述の年々の変化であるとか、あるいは見出しのとり方とか、グラフや図表の使い方、図表一つ見ても、ごらんになってわかりますように、例えばソ連の核はちゃんと絵に載っていますが、アメリカの核はどこにあるかわからない。あるいはやたらと日本海を通航するソビエトの船の絵は載っていますが、アメリカの船はありはしません。あるいは軍事力の比校の仕方など幾つか挙げてきましたが、こういう問題を取り上げて、私はどうも白書は真実を伝えて国民の防衛論議をお願いをしてコンセンサスを形成するというものじゃなくて、特定の陣営あるいは国の脅威をあおり立てて、その脅威に対抗する我が国の防衛費の増強にひたすら役立てようという、まあ防衛庁のプロパガンダだという気がしてならない。そういう意味では防衛庁は危機製造庁だと、こういう感がいたします。こういうことではやっぱり正しい意味での防衛論議にも寄与しないし、また国際社会を平和を基調として役割をしていこうという日本の国是にも反する、こう思いますので、ひとつ長官総理の御答弁をお願いしたい。
  41. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 防衛白書は、我が国の防衛を取り巻く諸問題を客観的に記述をいたしまして、我が国の防衛の現状と課題を広く国民に提示をし、その実態を正しく認識していただく資といたしまして毎年刊行しておるものでございます。今いろいろと御指摘もございましたが、国際軍事情勢の記述に当たりましても、各種情報を総合的に分析評価し、客観的記述に努めているところでございますが、今後の記述に当たりましては、御指摘のありましたとおり、無用な誤解を生じないように十分に配慮してまいりたいと、こう思っております。
  42. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛庁長官の御答弁申し上げたとおりでございます。
  43. 志苫裕

    志苫裕君 それでは次に入りますが、ちょっと外務大臣、外交青書の中で国連の平和維持機能活動への要員の派遣を検討するという記述がありますが、これはどういう意味ですか。
  44. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 国連への要員派遣につきましては、本年度の外交青書でもって二カ所に記述してございます。一つは、「幅広く多面的な外交」ということで、「国際環境の安定化に貢献する」ためということでございまして、例えば「南部アフリカ情勢に関連してナミビア独立支援グループが活動を開始すれば要員派遣を含めた民政部門における応分の協力を行うこと」の努力ということを申しております。それからもう一つは、国連の役割というものは専ら、専らと申しますよりもすぐれて開発途上国に関連するものが多いわけでございまして、その部分につきましては、「開発途上国地域の政治的安定に資するという意味でも、国連の平和維持機能の強化に積極的に貢献していくことは重要であり、財政面における協力に加えて我が国にとり可能な範囲内で平和維持活動への要員派遣、資機材の供与等による協力を引き続き検討していくべきであろう。」というふうに記述してございます。
  45. 志苫裕

    志苫裕君 そう書いてあるので、要員派遣の中身は何ですかと聞いている。
  46. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 要員派遣は、我が国にとり可能な範囲内での協力でございます。
  47. 志苫裕

    志苫裕君 安倍大臣、例の要員派遣を私聞いておりますのは、研究機関の報告で、自衛隊をもってする協力ということがありまして、一時、外務省、出すの出さぬのということでもめましたね、そのことにかかわって聞いている。
  48. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) よくわかりました。外務省が検討を委嘱しておりました、というよりは国連のデクエヤル事務総長から国連の平和維持機能の強化について各国の意見を求めたいと、最近の国連の平和維持機能についてのいろいろと批判が世界的にあることを背景にして、国連の事務総長から日本に対しても意見を求めてまいりまして、外務省としても民間の学識経験者に委嘱をいたしまして、そして意見の集約を求めました。その意見の集約が出ましたので、これが国連に報告をされたわけでございまして、初めは実は私がこれを取り次ぐというふうなことになっておったわけでございますが、政府の意思がこの中にあるということになりますと、いろいろと自衛隊その他の平和維持機能への協力といったようなことで誤解を招く、今の日本法制上いろいろと誤解を招くような意見もその中にはあるかもしれない、ある、こういうことで、実は意見としては民間の答申として国連事務総長に報告されたわけでございますが、外務省としては今局長が申し上げましたように、現在できる範囲は、現在の日本法制の中での可能な範囲内での協力、要員の派遣ということで統一をしてこれを外交青書に盛り込んだわけであります。
  49. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、外交青書に盛り込んだ要員派遣の検討の中には、この研究機関の報告もあったですね。その自衛隊の派遣も含みますかと、こう聞いている。政府が検討するんですかと聞いている。
  50. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは外務省としましては、現行法制の中のこの要員の派遣でありまして、それ以上のものを何も考えておるわけではございません。
  51. 志苫裕

    志苫裕君 だから、この派遣の検討の中には自衛隊の派遣は入っていないということですね。
  52. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 現行法の法制の中での外務省の方針で、考え方でございますから、もちろん法律改正を含むような問題は入っておりません。
  53. 志苫裕

    志苫裕君 総理アメリカの八五会計年度の国防白書が出まして、二カ所にわたって中曽根首相の名前も出ておりまして高い評価を受けておるようであります。特に米国との任務分担をする上で日本の役割は何であるかを率直に表明をしたというくだりがありますが、どのようなことでございますか。
  54. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 恐らく、中曽根新内閣は歴代内閣の方針を受け継ぐ、そうして鈴木・レーガン会談の共同コミュニケもこれを守っていくと、そういうことを私言っておりますから、その主として鈴木・レーガン会談の共同コミュニケを指して言っているのではないかと思います。
  55. 志苫裕

    志苫裕君 いや、鈴木さんもそう言うたが、中曽根さんはもっと率直に表明したと。そのことを聞いているわけです。
  56. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 別に私が率直に言ったのではなくして、私流にわかりやすいように申し上げたのだと思っております。
  57. 志苫裕

    志苫裕君 同じ項目で、これは外務大臣日本に対し一千マイルまでのシーレーン防衛を含め自衛任務を送付する必要な能力を一九八〇年代に達成するように要求する、慫慂していると。どのような要求を言うんですか、これは。
  58. 北村汎

    政府委員北村汎君) 我が国のシーレーン防衛力の整備につきましては、米側が強い関心を有しておることは御承知のとおりでございまして、またこれは米側が一般的に我が国の一層の防衛努力について持っております期待の一つのあらわれであろうと考えております。我が国の防衛努力につきましては、もう従来政府が何度も申し上げておりますように、憲法及び基本的な防衛政策に従ってあくまでも自主的に判断をして決めるわけでございますが、アメリカ側もこういう我が国立場というものは十分理解しておりまして、特に具体的に何をしてくれと、こういうようなことを言っておるわけではございません。
  59. 志苫裕

    志苫裕君 必要な能力を要求しておる、慫慂しておるというんですが、それは何か必要な能力の提示があるのじゃないですか。
  60. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) アメリカ側といたしましては、従来から日本が自主的な防衛力の増強をしていくことにつきまして、安保条約の締約国の当事国といたしまして非常に関心を持っていることは事実でございますが、具体的にこういう数字でやれというふうなことを米側が日本側に対して要請をしているというようなことはございません。一般的な防衛努力の増強の期待ということを表明しているということでございます。
  61. 志苫裕

    志苫裕君 世上、一九八一年六月のハワイの安保事務レベル協議でアメリカ側から要求されたという資料と言うんだが、内容が出回っていますが、あれは全く根拠のないものですか。
  62. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘ございました、これは第十三回のハワイにおきます事務レベル協議のことであると思いますが、事務レベル協議と申しますものは、日米の防衛事務当局が集まりまして自由な意見の交換をする、フリートーキングをするという場でございます。その際に、第十三回のSSCのときにいろいろ議論になった中で一部数字を交えた話題が出たということは事実でございますけれども、具体的な内容については米側との会議の性格についての約束上公表しないということになっておるわけでございます。いずれにいたしましても、これは単なるフリートーキングにおきます話題の一つという性格でございまして、アメリカ日本側に対して要請をしたというふうな性格のものではないわけでございまして、この点は従来からしばしば国会でも御説明を申し上げているところでございます。
  63. 志苫裕

    志苫裕君 例えば一九八二年の一月、米議会調査局が議会に配付した報告書によりますと、日本の八二年度防衛予算というそれによって見ますと、日本が米側の要求するような防衛力水準を達成するには今後少なくとも五年間毎年一五%の伸びが必要だと。ちなみに八二年のときの予算は二兆六千六百億でしたね。こういうデータも報告書に載っていますが、ここで言う年率一五%が必要だというものは、ハワイの事務レベル協議で示されたというか、ものとかかわりがありますか。
  64. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 私どもは、今御指摘のございました数字がどういう根拠を持って出されているのかということは承知をいたしていないわけでございまして、したがって今の御指摘のハワイ協議との関係も私どもは承知をいたしていないところでございます。
  65. 志苫裕

    志苫裕君 これは防衛庁長官になるんでしょうか外務大臣になるんですか、日本が防衛所要を満たすように今後とも慫慂していくというくだりがありますが、さしずめこれから開かれるであろう例えば防衛首脳の会談であるとか安保事務レベル協議であるとか、そういう場にその慫慂していくという中身が出てくるんだろうと推定されます。どのような対応をされますか。
  66. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 日米の防衛首脳がこれからどういう話をするかということはまだ全然決まっておりませんので、そのことについてお答えをすることはできないわけでございますけれども、ただ基本的には、アメリカのいろいろシーレーンに対する要求、俗に言う要求と言われるもの、これに対する我が方の基本的な考え方は、日米防衛協力の指針に基づきまして共同研究をやっておるわけです。そのときの前提条件は、憲法上の制約、非核三原則、そういうものを一つしっかり踏まえる、そしてもう一つは、協議の結果は両国の法律とか予算とかあるいは行政上の措置というものを拘束しない、どこまでもオペレーションプランとしてやっていく、これが基本でございますので、私どもはそういう意味合いにおきまして我が国独自の考え方で、もちろんアメリカの強い要請というものは頭の中に置きますけれども、どこまでもこれは我が国の独自の判断で進めていきたい、こう考えております。
  67. 志苫裕

    志苫裕君 八一年の事務レベル協議の際に、それらしい話があって、また米議会でも年々一五%ぐらいの伸びが必要だなんというような議論が出たりしていますから、当然のことながら、ここで言うシーレーン防衛、アメリカが言っておるシーレーン防衛というのは五六中業の中身をなしているんですか。
  68. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) お答え申し上げます。  我が国といたしましてシーレーン防衛を考えていく場合に、そのために必要な防衛力整備というものは、御承知のとおり防衛計画の大綱というものを基本的な枠組みとして防衛力の整備に努めているわけでございます。それを踏まえまして五六中業もできているわけでございまして、五六中業は大綱水準を達成することを基本とするという枠組みでできておって、その中にシーレーン防衛を達成するための海上自衛隊の兵力というものも織り込んでいるわけでございますから、基本的に申しまして、私どもの防衛力整備の基本線というのは防衛計画大綱の線に沿っているということでございますし、そのことはしばしば米側にも私どもは説明をしておりまして、それは彼らも理解をしていると承知をしているわけでございます。
  69. 志苫裕

    志苫裕君 今問題になっているシーレーン防衛が大綱の内側か外側かという議論はしばしば繰り返しておって、ちょっと余り乾いていないわけだけれども、海上交通という意味でのそういう言葉は昔からあった。しかし、米ソが少し危なくなってからの、中東が危なくなってからの声高に論じられるというシーレーン防衛という中身は、しかしそういうものじゃないということが議論になっているわけですね。  前後の事情から見ますと、今お話がありましたように、大綱の内側であるか外側であるかは別として、五六中業にはそれが含まれておるということがはっきりしました。そうしますと、五六中業は初めから、その予算の伸び率等から見て、いわゆるGNPの一%枠というものは突破をするという見込みの上につくられておるのじゃありませんか。
  70. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 五六中業とGNP一%との関係についての御質問でございますが、先ほども申し上げましたように、五六中業と申しますのは防衛計画の大綱の達成を基本とするというような目標で作成をされているわけでございます。ところで大綱の中には、防衛力整備に当たっては経済財政事情を考慮しながら、かつ他の諸施策とのバランスにも配慮しつつやっていくのだということが書いてございます。今御指摘のGNPの問題といいますのは、それとは別に、政府としての総合的な判断に立ちまして五十一年十一月に決定をされた方針であるわけでございます。したがいまして、五六中業自体は大綱の達成ということを目指してのものというのが基本性格だというふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。それとは別途に、毎年度の防衛力整備の実施に当たっての一つの方針といたしまして五十一年の三木内閣におきます閣議決定の方針があるわけでございまして、この方針は守ってまいりたいということを累次総理からも御答弁を申し上げている次第でございます。
  71. 志苫裕

    志苫裕君 総理総理はその当時どこにいらしたか、この五六中業は、国防会議は主要な閣僚を含みますね、国防会議で承知をしたものですね。そうなりますと、私が言いますのは、防衛大綱の内という議論をしていますが、今言っておるアメリカ側からも強い要請のあるシーレーン防衛、一千海里先の海域までを含むものはやっぱり後から出てきたのであって、そういうものを五六中業はのみ込んだ。のみ込んだから年率一五%も要りますよというのをアメリカは言ったのかもしれない。ということを考えますと、三木内閣の決定はあるが、同時に五六中業を決めた国防会議というのは、これはもう当然に一%を突破するということを承知で五六中業を承認したことになるんじゃないですか。
  72. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 五六中業の国防会議におきます取り扱いは、御承知のとおり、こういった方針で防衛庁が中期業務見積もりというものをつくることについて報告、了承をしたということでございます。ところで、五六中業の性格と申しますのは、正確に申しますと、これは防衛庁が概算要求を提出する場合作成し、あるいは業務計画を作成する場合の一つの基準として使うという内部資料としての性格のものでございます。したがって、そういうものを基準として防衛庁が毎年度の概算要求なり業務計画をつくっていくということが了承をされたということが国防会議におきます扱いでございまして、したがって年々の防衛力整備というのはさらに防衛庁の概算要求を踏まえまして、政府部内におきます予算編成過程におきまして最終的な判断がなされまして、そして毎年の予算の一部としてこれが決定をされるというプロセスに移るわけでございますから、その点は御了承をいただきたいと思います。
  73. 志苫裕

    志苫裕君 いわゆる五九中業なるものが話に出ておりますが、防衛庁長官、どういうことになっておりますか。
  74. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) これも当委員会でも申し上げたと思いますけれども、五九中業の長官指示をいつ出すかまだ決めてないところでございます。したがいまして、その内容についてもここで申し上げられないわけでございますが、傾向といたしましては、国際情勢が非常に厳しい、その中で各国の技術、こういうものも非常に進んできておるから、そういうものを勘案しながら質の高い防衛力を整備をしなければならぬじゃないか。それからよく言われますように、正面と後方とのバランスをとっていかなければならぬ、また掲上すべき事業につきましてはその必要性あるいは緊急度、優先度というようなものを考えながらやっていかなきゃならぬなと、こういうふうに考えているところでございます。
  75. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 矢田部理君の関連質疑を許します。矢田部君。
  76. 矢田部理

    矢田部理君 五六中業で大綱の水準達成を目指すというふうに言ってきたのでありますが、五六中業はそうしますと大綱の水準達成ができない、どういうすき間が出ようとしているのか、そこを御説明いただきたい。
  77. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 基本的な考え方を申し上げますと、五六中業で五十八、五十九年度予算で大体契約総額の二七%が到達できるということでございます。ところが、これでは速度としては二七%です。五十八、五十九で二七劣。しかし、今度の五十八、五十九年度の予算では、言うなれば俗に言う目玉的な事業につきましてはそれなりに達成できた、達成ができつつある、したがいまして装備の更新とか近代化もかなり進んできておる、こういうふうに考えております。非常に五六中業全体の達成ということは難しいことではございますが、我々といたしましては今後全力を尽くしてこれが達成に努力をいたしたいと、これが基本的なスタンスでございます。政府委員の方から補足説明をさせます。
  78. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 五六中業の五十八年度、五十九年度の達成状況はただいま大臣から達成率につきましてはその御説明がございましたが、先ほど御指摘の五六中業自体で大綱がどうなるかと、こういう点でございます。  これは先ほど申し上げましたように、五六中業は大綱の達成を基本としてというふうに申し上げましたが、これはもう作成当時から申し上げておりますように、一部未達成部分が残るというのが実態でございます。その点を少し申し上げますと、例えば海上自衛隊の作戦用航空機でございますが、これは大綱の水準が約二百二十機というふうになっておりますが、五六中業の完成時の数字で見ますと、これが約百九十機である。それから潜水艦が大綱は十六隻ということになっておりますが、中業完成時ではまだ十五隻で一隻足りない。それから航空自衛隊につきましても作戦用航空機が大綱水準は約四百三十機というふうになっておりますが、中業完成時では約四百機ということでやはり三十機ほどまだ不足があるというようなことでございます。したがって、部隊の方につきまして見ても、海上自衛隊の基幹部隊の中で陸上対潜機部隊の数でございますが、大綱の水準が十六個隊ということになっておりますのに対しまして、中業完成時では十四個隊までしかいかないという見積もりになっているわけでございます。したがいまして、五六中業自体が大綱達成を基本ということを目標にして作成はされましたが、一部未達成のものが残っているというのが実態でございます。
  79. 矢田部理

    矢田部理君 私どもはもう既に五六中業が大綱の水準を超えている、大綱の実質上の修正がなされているという立場を指摘しているわけでありますが、その五六中業でもなおかつ大綱の水準に達しない、相当程度のすき間ができるということになりますと、五九中業はそのすき間を完全に埋める、完全にその五九中業では大綱の水準に達成する、そういう理解でしょうか。
  80. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 先ほどお答えしたとおり、五九中業についてまだ長官指示を出しておりませんので、このことについてお答えをするわけにはまいらぬわけでございます。
  81. 矢田部理

    矢田部理君 今、防衛政策の基本の柱として大綱の水準達成ということがシーレーン防衛の体制づくりも含めて言われているわけです。当然のことながらすき間ができる、達成率が必ずしも一〇〇%にならないということになりますと、五九中業の位置づけは当然のことながらそのすき間を埋める、達成を一〇〇%行うという位置づけになるのではありませんか。
  82. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) そういうお考えもあることはよく承知をしておりますが、ただいま申し上げましたとおり五九中業につきましては私の長官指示をしておりませんので、お答えは遠慮さしていただきたいと思います。
  83. 矢田部理

    矢田部理君 そういう考えというのは、私の考えを言っているんじゃなくて、そういうことではないのかと聞いているのであります。  シーレーン防衛はどの段階で一応の完成を見るんですか。
  84. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) シーレーン防衛と申しますのは、これはしばしば申し上げておりますように、目的は海上交通の安全の確保ということにあるわけでございまして、そのためにいろんな作戦を考えまして、累積効果によってそれを達成するということでございます。したがいまして、これは一〇〇%できるとかあるいはできないというふうに一概に申し上げるのは難しい問題でございまして、そういう意味におきまして、私どもは現在の大綱水準の防衛力が達成できればこのシーレーン防衛能力というものも相当程度向上する、こういうふうな考え方でやってきているものでございます。
  85. 矢田部理

    矢田部理君 どうも到達点が不明確でありまして、このままでいきますと、とめどもなくやっぱり軍拡が続く、軍事費は突出せざるを得ないというところに我々は大変問題を感じているわけであります。その辺の軍備の歯どめですね。財政面からの一%論議もありますが、軍備の歯どめ、目標、あるいはこの程度までならばというあたりの考え方、全くないんでしょうか。
  86. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) それはそういうことじゃないと思います。というのは、防衛大綱の別表というのは五十一年にできまして、それにいろいろどういうものを備えるかというふうになっているわけです。シーレーン防衛というものが、何か知らぬけれども、非常に大きな、アメリカの圧力で大きなものというようなそういう考え方あるいはそういうことを言われる方などがございますが、これは衆議院の場合、参議院の場合を通じまして、私どもはシーレーン防衛というものは海上交通の安全を確保する、そのためにいろいろの手段があるんだと。そして基本的には防衛大綱の水準を達成する、その防衛大綱の水準の中には別表があってその別表でいろいろやっている、しかもシーレーンというのは御案内のとおり一〇〇%できると、そういうものではない、こういうふうに理解をしております。
  87. 矢田部理

    矢田部理君 矢崎さんの話を聞いていますと、大綱の水準を達成すればシーレーン防衛は相当程度の能力がつくということは言うけれども、それで満足すべき状況である、その程度で我々は我慢するんだということは決して言わないわけであります。まだ広がる可能性を言葉に秘めているように聞こえるので、もう一度だけ答弁を求めます。
  88. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) それは私どもも必要最小限度の防衛力の整備、これは基本でございます。ただ、どの程度までやったら満足かというようなことはいろいろ条件がございますが、一つには大きく、何といいますか、我が国の海上交通の安全を脅かすそういう勢力の態様ですね。そういうことによって決まりますので、これは相対的な意味があり得るということを言っているのであって、我々が必要最小限度を超えてどこまでもやっていくと、そういう気持ちは毛頭ございません。
  89. 矢田部理

    矢田部理君 相対性とか相手の状況とかということがしばしば言われるわけでありますが、そういうことを通して危機感をあおりながら非常に拡大について歯どめがないというところで国民は非常に不満に思っているわけでありますが、最後に一問だけお聞きしたいのは、それにしましても五九中業がいずれ始まらなきゃならない、始まる予定であるということになりますと、長官指示はいつごろ出され、ほぼいつごろまでに五九中業をまとめ上げられるのか、時期的めどをお聞きをして、私の関連を終わります。
  90. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 実は私も今度の国会のいろいろの御論議、そういうものも頭の中に置かなければならぬなと、そういうものも十分に整理しなければならぬなと。いままでの五十八年度、五十九年度の俗に言う五六中業、こういうものも検討しなければならぬなと。それから、これからの国際環境といいますか、そういったものがどうなるか、あるいは我が国の財政経済全般、そういったものも頭の中に置きながら、これは慎重にやっていかなければならないというのが今の気持ちでございます。したがいまして、何月何日というようなことを、ここでいつごろということを申し上げられませんが、しかし今までの検討がありますから、検討といったって二回しかございませんが、五六中業の場合が四月の末ということのようでしたね。ですから、そこら辺から大きく大幅におくれるというようなことにはならぬと、こう考えております。
  91. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと、今の関連だけれども、五六中業はまだ当初の目的の二割七分しかいってないということなんでしょう。五九中業をつくらぬでそれを一生懸命やったらいいじゃないですか。
  92. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 防衛庁におきます中期業務見積もりの仕組みについてでございますけれども、これは先ほども申し上げましたように、基本的な性格といたしましては、防衛庁が毎年度の概算要求なりあるいは業務計画を作成する際の一つの参考にするというのが基本性格でございます。防衛計画の大綱自体がそれ以前の四次防とか三次防と違いまして、具体的な一定期間内の防衛力整備計画というものではございませんで、達成すべき目標を掲げているというだけの仕組みになったものですから、そういう土俵の中で防衛庁が仕事をしていくためにはやはりそういうある程度の期間を見通した一つの参考資料が欲しいということでこれをつくった経緯がございます。  そこで、しからばそれをどういう期間でつくるかということを考えた場合に、一応五年間というものをタイムスパンにいたしまして五三中業ということから始めたわけでございますが、こういった事柄の性格上、やはり情勢の変化というものにもある程度弾力的に対応する必要もございます。したがいまして、五年間でずっと固定をしておくということは必ずしも妥当ではないのではないか、こういう判断に立ちまして、この中期業務見積もりを三年たったところでローリングをしていくと、こういう仕組みをとっているわけでございます。したがって、五三中業の次は五六中業になり、その次は五九中業というふうに見直しをしながらやっていくというのが基本的な仕組みに今なっておりますので、その点は、従来のそういう考え方に沿ってやっていくのがいいのではないかというふうに思っている次第でございます。
  93. 志苫裕

    志苫裕君 五六にはないんだけれども、対空誘導ミサイルはどういう扱いになっていますか。
  94. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 御指摘の点は、多分陸上自衛隊でいいますとホーク部隊、航空自衛隊で申しますとナイキの部隊、この問題であろうかと思います。これはいずれも機種が古くなってきておるということで更新の必要性に迫られております。これにつきましては、五六中業でそれぞれ一応の考え方を示しております。それは、五六中業をつくった当初におきましては、両者につきまして機種選定を行うということを決めておったわけでございます。その後作業が若干進みまして、五十九年度予算の概算要求の段階で一歩進めたわけでございます。  それは陸上自衛隊につきまして、現在の古いべーシックホーク、基本ホークというものがまだ一部残っていたやつを、これはいわゆる改良ホークという従来のホークのパターンの何といいますか、インプルーフしたもの、こういうもので残り二つのものも全部統一してしまおうということにしまして、つまり陸の場合は改良ホークで統一をされていくということにしました。航空自衛隊の場合は、ナイキの後継について現在まだ検討中でございますが、候補機種といたしましては、一つアメリカが開発をいたしておりますパトリオットというのがございます。それからもう一つは、国産の開発プランとしてナイキフェニックスという機種があるわけでございます。これは数年がかりでいろいろ検討をしてきたわけでございまして、昨年の夏ごろの段階である程度の詰めが進んだわけでございまして、そこで私どもとしては、後継機種としてはパトリオットの方がかなり有力だなという判断には至ったわけでございますけれども、まだなお検討すべき問題が残っておりますので、これは機種決定にまだ至っておりません。したがって、五十九年度の概算要求には盛り込んでいなかったわけでございます。これは今後さらに詰めを進めまして、六十年度予算要求の際にはできれば何とか機種選定を最終的に決めた上で何らかのものを盛り込みたい、こういう段階に今来ているわけでございます。
  95. 志苫裕

    志苫裕君 アメリカ側からはこのパトリオットを使うべしという話が来ているんですか。
  96. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) この問題につきましては、アメリカから具体的にああしろこうしろという指図を受けていることは全くございませんで、これはむしろ私どもが自主的な判断に立ちまして、我が国防衛のためにどちらの機種が最もより有効であるかということを数年がかりでいろいろ研究をし、外国調査もいたしたりいたしまして、今詰めを急いでおるというところでございます。
  97. 志苫裕

    志苫裕君 外務大臣、国防白書の記述なんですが、「日本の領土と周辺海・空域及び一千マイル迄のシーレーンを防衛するという日本の意思を再確認した。」というアメリカの国防白書。この「日本の領土と周辺海・空域及び一千マイル」、別のところでは一千マイルまでの防衛を含めて日本の自衛任務、こうなるんですが、この場合の「及び」を聞きましょう。この「及び」というのはどういう意味でしょう。
  98. 北村汎

    政府委員北村汎君) ただいま御指摘の米国の国防報告の文章について、私どもは有権的な解釈をするということはいたしかねるわけでございます。これはしかし、この国防報告で三カ所ぐらいにおいてシーレーンの問題が取り上げられておりますが、これはやはり日本政府が今まで説明をいたしてきておるところ、すなわち周辺海空域、それに航路帯を設ける場合には一千海里までの航路帯、こういうことをやはりアメリカは念頭に置いておるのだと思いますが、その表現自体については、私どもはアメリカがどういう解釈でどういうふうに書いておるかということを有権的にここで申し上げることはできないと思います。
  99. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 志苫君、時間が来ました。
  100. 志苫裕

    志苫裕君 やめますが、これは防衛庁長官日本の領土及び周辺海空域というのが大綱の表現の仕方なんです。「及び一千マイル」というのは後から足したものなんだ。「及び」、これなんです。「及び」の分はやっぱり後から加わっておるのであって、だから日本の側の約束もあくまでも後からつけ足したもの、後から国際情勢の変化に応じてその分の範囲を広げたものがやっぱりはっきり区分けをされて記述をされておるということを指摘しますが、どうですか。
  101. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) これは私がお答えすることが適当かどうかわかりませんが、総理がよく言われているように、アメリカアメリカ我が国我が国我が国の防衛については我が国が責任を持ってやる、そういう意味合いにおきまして私どもはアメリカの問題について有権的な解釈はここで差し控えるべきだと、こう考えております。
  102. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で志苫君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  103. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、高桑栄松君の総括質疑を行います。高桑君。
  104. 高桑栄松

    高桑栄松君 私は、公明党・国民会議立場から発言をさせていただきます。  最初に、ただいまフォーカスになっております教育改革について、私は長年教育に携わった者の一人といたしまして質問をさせていただきます。総理大臣は大変教育改革に御熱心でおられるわけですので、最初の私の予定しております臨時教育審議会につきましては、総理大臣質問させていただきたいと思っております。  学識高い総理大臣ですから、ドイツ語の教育という言葉を私が説明するまでもございませんが、これはエルツィーウンクといっておりますが、エルというのは外へということで、ツィーエンというのは引っ張るということで、これは能力を引き出すという意味でございますが、日本の教育というのはやっぱり教えるとか授けるとかということに非常にウエートが置かれておって、ややもすれば能力を引き出すという教育、今日までそういう教育には欠けていたのではないかと私は思いますが、総理大臣いかがでしょう。
  105. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 教育の原語はそういうことであると思います。しかし、能力を引き出すためには教えなければいけない、そう思います。
  106. 高桑栄松

    高桑栄松君 結構でございます。  そこで、臨教審のことでございますが、総理はかねがね国民の合意を得ることが大切だと、こうおっしゃっておられますけれども、そのアプローチ、手段というものをどんなふうにお考えでしょうか。
  107. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 教育は一億一千万の国民がみんな受けてきて、出てきて、みんな経験していることでございまして、みんな一億一千万の人々はおのおのの考えをお持ちで、長所なり欠点なりを指摘しておる力を持っておると思います。また、親御さんにしてみれば自分のかけがえのない子供の問題ですから一番緊切に感じていることでもあります。そういう意味におきまして、全国民的広場で皆さんのお考えをよく聞いて、またその代表の声も取り入れて、そして国民総がかりで教育というものに取り組んでいこう、そういう考えに立ちまして今度の新機関も設置する次第でございます。
  108. 高桑栄松

    高桑栄松君 総理大臣ですから大まかにまとめてのお話だと思いますが、具体的にちょっと伺いたいのは、公開ということについてはどんなふうにお考えでしょうか。
  109. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は文部大臣が累次にわたって御答弁しておりますように、その都度その現場の中へ人が入ってそれがジャーナリズムにそのまま報道されるということはやはり発言の自由を害するし、むしろ今までの経験から見て弊害が多い。ですから、会議が終わった後でスポークスマンなり適当な人がこういう模様であったとその都度公表するなり、あるいは一つ区切りがついたときに総括的に、このセクションにおいてはこういうことでありましたと、そういうふうにその都度報告するという形が適当であると思います。
  110. 高桑栄松

    高桑栄松君 私は、政治家といいますか、政治の果たす役割は国民合意を形成する、そういったルールをつくるということが役割として大事なのではないかと思うんです。つまり、国民との間でフィードバックをして、何度も行ったり来たりするということが大切だと思います。総理大臣いかがでしょうか。
  111. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まさに一方通行ではいけないのでありまして、賛成であります。
  112. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは、組織について、昨日閣議で決定されたようでございますが、若干質問させていただきますが、委員は国会指名承認大事にすべきであると私は思いますが、総理大臣いかがでしょうか。
  113. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お答え申し上げます。  委員の人選につきましては、設置法案がこれから国会で御論議いただきまして成立をさせていただきましてから検討していかなきゃならぬことでございますが、やはり委員一人一人の方々を各党の皆さんに適格か不適格かということをそれぞれお尋ねをするということは、お選びいただく先生方のお立場もいろいろございましょうし、かえってそのことが、政治的に中立性というものを非常に大事にする機関でございますだけに、むしろ私は国会で同意をしない形で進めることの方がより権威が高くなっていく、こういうふうに考えております。
  114. 高桑栄松

    高桑栄松君 今の御答弁、私は必ずしも賛成ではございませんが、次に入らしていただきます。  顧問につきましては、報道ではいろいろなことが言われておりますが、どうもよくわからない。そこで、果たして顧問というのはやはり置く予定でおられるか、置くとすればその役割、権限につきまして、総理大臣いかがでしょうか。
  115. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 顧問は、通常、会長の求めに応じましてその運営に関しまして適切な助言をする機関、こういうふうに考えられると思いますが、顧問につきましても臨教審自身が今後御検討をいただくことだと、そういうふうに考えております。ただ、審議会を運営していく上におきまして、人生経験あるいはまた教育の面でも極めて適切な御助言をいただくということは、審議会を運営していく面、あるいは審議会の権威の面からいっても私は適切なことではないかと考えております。繰り返すようでございますが、審議会の皆様方でお考えいただくことではないかと、こういうふうに考えております。
  116. 高桑栄松

    高桑栄松君 そこで、期間が三年というふうに書いてあったと思いますけれども、その間、中教審は休業ということでしょうか。
  117. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 中教審は、先生御承知のように、文部省固有の事務の教育、学術、文化に関しての調査審議を進める機関でございます。今度の臨教審との間には、審議の視点あるいは検討の角度を変えて教育全体を見ていきたい、政府全体の責任において見ていきたい、こういうことでございますが、審議の事柄等もこれから審議機関でお考えをいただくことになりますので、どういう審議を課題としていくのか、そういうこともこれから御検討いただくということもございますので、現在のところでは中教審は当面発足を見合わしていきたい、このように考えております。
  118. 高桑栄松

    高桑栄松君 総理大臣にこんなことを改めて聞くというのは大変恐縮ですけれども、これはやっぱり本気でおやりになるんでしょうね。御決意を承りたいと思います。
  119. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今どういう意味がよく聞き取れなかったのでございますけれども。恐れ入ります。
  120. 高桑栄松

    高桑栄松君 つまり、本気でというのは、簡単に言いますと、やる気なら金がかかるということだと思うので、そのことをお覚悟しておられるかということなんです。
  121. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題につきましては、ともかく内閣を挙げてやろうと、そういう意味総理の諮問機関というふうにしたわけでございますが、精力的に、また丁寧に、懇切に実行したいと思っております。
  122. 高桑栄松

    高桑栄松君 私、申し上げ方が少し足りなかったかと思いますが、教育改革のことでございまして、私が金がかかると言っているのはいろいろ理由がございますけれども、その背景に財政再建に反する方向にお金の面でなるのじゃないかなということでお覚悟を伺ったわけですけれども、いかがでしょうか。
  123. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく真心を尽くして一生懸命やろうというのでございますから、もちろん財政当局とも相談をいたしますが、原則的には今のような、我々としては真剣に努力していくと、そういうつもりでやっていきたいと思います。
  124. 高桑栄松

    高桑栄松君 もう一つ、基本法の精神にのっとるということでございますが、これは義務教育九年はノータッチということになるんでしょうか。いかがでしょう。
  125. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 教育改革に当たりましては、憲法、教育基本法を基本として取り組むことが肝要でございまして、昨日閣議決定をさしていただきました法案につきましてもこのことを明記いたしております。義務教育年限は教育基本法に定められた九年でございますので、私といたしましては、この義務教育年限は日本の国の教育の中で定着したものであると考えておりますので、このこと自身、私はこれを変更するというような考えは持っておりません。
  126. 高桑栄松

    高桑栄松君 そうすると、学制改革ということで六・三・三の見直しということは、文部大臣どうなりましょうか。
  127. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) ただいま申し上げましたとおり、この九年間の中でのいろんな、これは私が申し上げることは越権になるかと思いますけれども、審議会の皆様方で御議論をいただくことでございますが、その中の例えば区切りを少し弾力的にするとか、もう少し多様にするとかというようなことの考え方一つのヶースとしてはあるかというふうにも思います。ただ私どもは、でき得れば、御論議をいただく先生方にはできるだけ自由闊達にいろんな意味で御検討いただきたいなという、そういう私はやっぱり期待感を持っております。したがいまして、政府といたしましては、教育基本法にのっとっていくということでございますけれども、それぞれお考えをいただく先生方にはもう少し御自由な御論議をしていただきたいなと、こういうふうに考えておりますので、政府としてそのことを余り拘束することはいかがなものかなという感じは先生にも御理解をいただけるのじゃないかと思います。
  128. 高桑栄松

    高桑栄松君 そこで、一つ気にかかることがございまして、私は教育者の立場で、しつけ教育の重視ということは賛成でございますが、かねがね気にかかっておったのは、先般物議を醸した問題で、徳目教育の中から正直、清潔というのは除外することになるんでしょうか。総理大臣いかがでしょう。
  129. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 済みません。ちょっと聞き取れなかったので。
  130. 高桑栄松

    高桑栄松君 しつけ重視の中で正直、清潔という項目は、先般物議を醸しました問題がありましたので、徳目教育の中からこの二項目は今後外すのでしょうかというふうに伺ったわけです。
  131. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) まだそういう細かな教育の課程や中身については議論をいたしておりませんが、教育基本法の中では、総理も私も常々申し上げておりますように、人間としての一番大事な基本的なしつけ、あるいは国を愛すること、あるいは親孝行をすること、人間として一番大事な基本的なこの事柄は今の教育基本法の中で十分読み取れるわけでございまして、当然、現在行われておりますいわゆるすべての教育の中にはこのことを十分踏まえながら進めておるところでございます。
  132. 高桑栄松

    高桑栄松君 次は、入試の問題に入りたいと思います。  文部大臣、高校入試が偏差値輪切りを生み出したということでございますけれども、中学時代伸び伸びと過ごさせるという意味で中高一貫にすれば、高校入試がなくなればこの問題は解消するのではないか。中高に関してですが、お伺いいたします。
  133. 齊藤尚夫

    政府委員(齊藤尚夫君) 教育改革に関しますさまざまな御論議の中で、中学校と高等学校の関係につきまして先生ただいまお話しのような御意見もございます。それらの問題につきましても今後の重要な検討課題ということで新機関で御論議いただく課題だと考えております。
  134. 高桑栄松

    高桑栄松君 次は、目下の重大問題であります大学入試のことですが、共通一次入試で最も問題となっている点を二、三挙げていただきたいと思うんです。文部大臣、お願いいたします。
  135. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 端的に申し上げて、先生の方が御専門でいらっしゃいますので申し上げにくいのでありますが、やはり五教科七科目ということがとても過重の負担ではないか、この声がやはり一番受ける高校生側の皆さんからよく耳にいたす議論でございます。したがいまして、重要なことというとそれが一番だろうと思いますが、あとは二次試験も負担になる。したがって、一次試験をクリアしてなおかつ二次試験についてその対応をしていかなければならぬ、この辺がやはり今の共通一次の中でも一番問題点ではないか、このように承知をいたしております。
  136. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは総理大臣に伺いたいのですが、表現は違ったかもしれませんが、この偏差値を六十年度から追放したいというようなことをおっしゃっておられたと思いますが、そのお考えは今もお持ちでしょうか。
  137. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 偏差値のやり方というものはかなりの大きな弊害をもたらしてきていると思います。人間の能力や人間全体の把握という面において今のようなやり方で果たしていいかどうか、非常に大きな疑問を持っております。これらもいずれ新しい審議会におきまして議論していただきたいと思いますが、これは業者がやっているようなもの、文部省がしばしば警告しているやり方でございますが、これらにつきましても、現状を改革する思い切ったやり方を編み出していただいたらいいと思っております。
  138. 高桑栄松

    高桑栄松君 これも総理大臣に伺いたいんですが、先ほど文部大臣が言われた、入試の五教科七科目が負担が多いといいますが、もう一つは画一的な採用をしたことが偏差値をもたらしたということだと思います。この是正のためにはアラカルト方式といったようなことを取り入れるパイロットスクールをどんどんふやした方がいいのではないかという考えがありますが、総理大臣いかがでしょう。
  139. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公明党の先生方の案を読んでみますと、そういうパイロットスクールを非常に強調されておりまして、文部省のたしか四十六年の中教審の答申の中にもそれに似た構想があったと私思います。これも非常に大事な、重要な、御参考にすべき意見であると思って、いずれ審議会において議論していただくことになるだろうと思います。
  140. 高桑栄松

    高桑栄松君 これも総理大臣に伺いたいと思いますけれども、大学入試に多様な方法をと言っておられて、私も基本的に賛成でございますが、具体的にはどんなことが考えられるでしょうか。
  141. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 象徴的な例え話の表現で申し上げますれば、例えば芸術関係の大学というようなものは、芸術性というようなものは知性の世界ではなくして感性の世界であると私は思うんです。むしろ直観力というものが非常に大きな力を持つと思います。例えばアフリカの土人のジャズというものは野蛮的なものでありましょうが、ニューヨークでなぜあんなにもてはやされて世界的に普及したかといえば、やはりアフリカの土人であっても直観力というものは持っておるので、そういう人間的感性においては平等である、同じである。いいものはやっぱり受け継いで持っておる。絵だって、子供の絵というものは非常にすばらしい。幼稚園や小学生の絵の方が我々の絵より立派な絵をかいております。それもやはりそういう直観性、感性の世界というものだろうと思うんです。  そういう面で、芸術大学へ入る場合に、数学の試験あるいは英語の試験、国語の試験、理科の試験がこれ以上なければ入れないというのでは、せっかくのその感性という面に主としてさわらないで、多少はさわるかもしれませんが、人間が決められてしまうので、いい芸術家が生まれるはずはない。むしろ芸術的要素の中には、表現は悪いですけれども、弟子とか徒弟とかという、そういう要素も大事です。日本画にせよ、あるいは先般問題になったバイオリンの教育にせよ、やはりこの人間の能力というものを先生がよく見詰めて、個人教授的に個性的に自分のものを移し入れていく、それからその本人の力が出てくると。そういう要素がやっぱり芸術の世界には非常に大事で、画一的な教室の教育だけでいい芸術家が生まれるとは絶対思わないんです。そういう意味において、芸術大学、今それは多少考慮はしておるようですけれども、もっと徹底的にやったらどうかと、そういう気がします。  それは、ほかのものでも同じだと思うんです。エジソンを共通一次テストに入れたら、あれは三点か十点しかとれないでしょう。とても八百点とか九百点とかとれないでしょう。だから、人間の能力というのはどこにあるかわからないですね。しかし、その本人には自分はこれが好きだというものはあるはずです。ですから、できるだけ自分の好きな科目で自分の好きな大学へ行き、そして自分の進路の方向へ行きたいと、それが正しい教育のやり方であると思うので、できるだけそういう方向へ持っていってもらいたいと思うんです。
  142. 高桑栄松

    高桑栄松君 総理大臣の言われたのを、さっき最初に申し上げたエルツィーウンクを今随分引っ張り出していただいたようでございますが、私も賛成の部分もあり、また意見もありますけれども、時間の都合で次に移らしていただきます。  文部大臣に伺います。  共通一次がこれで六回目を迎えたわけです。そして、このような批判にさらされてきた。これは予測されたことなんでしょうか。
  143. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 教育制度全般にわたって言えることかもしれませんが、やはりこれは人間が編み出すことでございますので、試行錯誤を繰り返していくということは何か責任回避になりますが、当時としてはやはり大変な日本の経済の伸展に伴って量的な拡大を求められていたときであったし、もう一つは試験そのものがそれぞれの大学が自主的に進めていくものでございましたので、大変な難問奇問というふうに、だんだん追求して学問を深めていけば非常に難しくなってまいります。現に今共通一次に参加していない私立大学の一部有名校と言われているような大学は、偏差値の面だけで見ると東大以上になっている面もある。これなんかやはり端的な例でございます。ですから、そういう意味で、ある程度高等学校が適切な学問をしていく、その進達状況に合わせてというのがこの制度でございまして、でき得れば二次試験は余り筆記試験をやらずに、あとは面接で人物を見ていただくとか、あるいは小論文を書いていただくとか、あるいは日本人でございますから、言葉とか国語だとかというものにもうちょっとウエートを持っていただくとか、あるいは今総理もおっしゃったように、専門的な高等教育機関においてはそれぞれのその専門的な事柄をただしていくとか、こういうような仕組みにしていただければ、私はこの問題はこれでそんなに高等学校の生徒の皆さんには苦痛な問題では当時はなかったと思います。  ただ、これは文部省が決して責任回避をするわけじゃありませんが、実質的に試験をするのはやはり大学の先生方でございまして、文部省からああせい、こうせいというようなことは、これは直接にはやはり大学の自治、学問の自由という観点から見ても適当ではない。したがって、大学の先生方自身にいろいろとこのことをお考えいただくことがいいかと思いますが、やはり私ども政治家の考えること、あるいは行政を担当いたしております文部省の皆さんが考えること、伏見先生もあそこにいらっしゃいますけれども、高等教育機関に携わっておられるような先生方のお考え、使命感といいますか、そういうものがおのずと違っておる、スタンスが違っておる、そこにやはりいろんな実質的に最初に考えたことと若干違った面は出てきております。しかし、これをつくらなければならなかった当時のことをいろいろ考え合わせてみますと、これは私はある程度成功もしておると思うんです。ただ、先ほどの議論にも出ましたように、今後さらにこれを改善していくということがより的確な私は対処の仕方ではないか、こんなふうに文部省としては考えております。
  144. 高桑栄松

    高桑栄松君 私も長い間文部省で飯を食ってまいりましたし、入試でも現場を担当したこともございます。文部大臣のおっしゃること、私もやっぱりかなりもっともだと思って、どうも質問にだんだんならなくなってくるのが困るなと思っているぐらいでございますが、面接と今おっしゃったですけれども、言葉じりをとらえるのじゃないんですが、面接というのは大変格好のいい表現です。しかし、現場としてこれで選別しろということになると客観性に乏しいんですよね。だからとてもこれは困ってしまうんだな。ちょっとだけ御答弁をお願いします。
  145. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 先生のおっしゃるとおりなんです。日本人というのは非常にきちょうめんでございまして、じゃんけんで負けたり、ジャイアンツとタイガースが一対ゼロで負ける、これはあきらめるんですね。ところが、同じ時間に同じ条件で同じ人が面接しても、やっぱりそれはどうしても主観が入ってきます。同じような点数でどっちをとるか、こっちは野球部の選手だった、こっちは生徒会の会長だった、どっちを選ぶんだということになりますが、たまたま選んだ方が、その先生が非常にスポーツが好きだったということになると、じゃ野球をやってりゃよかったのかと、こういう考え方に子供たちがなってしまう。この辺がやはり選ぶ立場から見ると大変難しいところだと思いますが、私は、子供たちの将来にとってとても大事なことなんですから、できればこの選考の期間といいますか、準備期間といいますか、もう少し一考を要することがないだろうか。余りにも短い時間で、中学だって高等学校だって三学期はもう全然ないんですね。先生とクラス仲間、先輩、後輩と人間的な触れ合いを最後に一番やっていかなければならぬ時期に専ら学校を捨てて受験のために奔走しなければならぬ。最後をきちっとするということがやはり教育の中では最も大事なことだと思いますので、三学期まではきちっと高等学校あるいは中学校の中でやって、受験についてはもう少し何か一考を要する方法がないだろうか。これは今共通一次の改善等々は文部省が国大協やあるいは私大連盟、私大協会等を通じて御検討いただいておりますけれども、やはりこの試験制度全体の長期的なノーハウみたいなものはもう少しそういう意味では新しい機関などで十分これは御論議をいただく課題ではないかなというふうに私は考えております。
  146. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは、総理大臣にひとつ伺いたいんですが、文教懇だったかで言っておられたかと思うんですが、入学は緩くして卒業を厳しくというのがございました。私はこういったアメリカ方式は賛成なんですけれども、総理大臣どんなふうにお考えでしょうか。
  147. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私も賛成であります。その方が能力を引き出すチャンスが大きくなると思います。
  148. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは、次の健康保険問題に入りたいと存じます。  私は、亡くなられた武見先生に生前御指導、御推薦をいただいてまいりましたので、その武見太郎先生のいわゆる武見理論を踏まえて質問をさせていただきます。  最初に、健康保険法改正の問題でございますが、厚生大臣に伺います。健保法改正に当たってのビジョンについてお伺いいたします。
  149. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今回の健康保険法の改正は、人生八十年型社会、これがやってくるわけでありますから、そういう方向の中で医療費をまず適正なものとする、また負担と給付の両面にわたる公平化を図っていく、また制度間の格差、これが問題になっておりますから、これらの見直しを進めていく、こういった長期的なビジョンに立っての方向でありますけれども、これまで委員会等でいろいろ先生方から御指摘を受けておりますので、この保険医療の問題だけでなく、これからは疾病の予防、さらに健康の増進、こういった面、また医療供給体制のしっかりしたものをつくっていくということもこれは大事でありますから、こういう総合的な面、さらにこれと福祉政策との連携、こういうものを考えた国民の健康を守っていくための二十一世紀を目指す総合的なビジョンを今検討しておるところでございます。
  150. 高桑栄松

    高桑栄松君 そこで、問題の本人一割負担でございますけれども、例えば黒字健保ではこれに付加給付を行うということがあるとかないとかと報道されております。厚生大臣、これに対してのお考えを。
  151. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 付加給付の問題でございますが、今回の一割負担をお願いすることとの関連におきまして、仮に健保組合等で財政的に余裕があるところは保険料を取って付加給付をするというのまで廃止をする必要はないのではないか。理論的に言いますと、やはり全国民が給付は公平である、そして付加給付等は認めるべきでないという議論もございますが、現実問題といたしまして、従来やってきた付加給付というようなものを財政的な余裕があるならばあえて禁止する必要はないのではないか、こういう考え方を持っております。
  152. 高桑栄松

    高桑栄松君 ただいまのお話は、私は現状を踏まえてのことのつもりで御質問をしたいんですけれども、付加給付のできる健保とできない健保との間に新しい格差が生じてくるのではないかと思いますが、厚生大臣いかがでしょう。
  153. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) おっしゃるとおりでございます。
  154. 高桑栄松

    高桑栄松君 それはビジョンにある格差解消に反するのではないかということでございますが、いかがでしょうか。
  155. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) そういうもろもろの問題等がありますので、将来この保険制度の一元化とかいろんな御意見が出てくるわけであります。ただ、現状において、これらは先生御承知のようにそれぞれの沿革や歴史がありますので、今すぐ一挙にこれらの問題を解決するというわけにはなかなかまいらないのでありますけれども、やはり先ほど私が申し上げたように、社会福祉制度というものは本来園氏すべてが等しい給付を受けられ、また等しい負担をしていくものであるという観点に立って将来検討してまいりたいと思います。
  156. 高桑栄松

    高桑栄松君 ところで、私は、現時点における衆参両院議員の年齢構成を調べてみましたが、五十歳から六十四歳が五六・七%でございます。昭和五十七年度における年齢別死亡を見ますと、死因のトップはがんでございます。しかも死因の四割を占めております。つまり、ここにおられる、私を含めまして、総理大臣も含めて皆さんで、死ぬとすればトップはがんで、死因の十人のうちの四人ががんであるということでございます。これについて総理大臣はがん対策十カ年計画を出された。私ももろ手を上げて賛成でございます。ところで、総理大臣は十年に何を期待されるか、ちょっとお伺いいたします。
  157. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) がんによる死亡者は年間十七万人近くもなりまして、死亡率でも最大である。しかし、最近遺伝子の組みかえそのほかでがんの原因に接近しつつあります。各国とも猛烈なスパートを上げて研究をやっております。そういうところから、日本も一番悩みの種であるがんを直す方法をできるだけ早く発見もし、国際的にも協力しよう、そういう考えに立ちまして日本学術会議政府の科学技術会議の先生方にいろいろ御検討を願い、また日本のがん学者のいろんな御協力も得まして十カ年計画をつくっていただきました。前期五年と後期五年に分けて、とりあえず前期五年におきましては研究の深度及び領域をふやしていく、またそれに対するロジスチックと申しますか、実験動物やらあるいは費用そのほかの面倒を見る、あるいは国際交流、国内交流によって学者間の研究の成果の交換を激しくもっと行うとか、それから、がんに関する、ヒトがんと言っておりましたが、研究の重点項目を決めていただきまして、この辺からまず攻撃を開始する、そしてこういう連携を保っていくと、そういうような方向をつくっていただきまして、鋭意それに今かかっておるところでございます。
  158. 高桑栄松

    高桑栄松君 去年のちょうどきょうでございますが、去年の三月二十八日に閣僚会議が開かれてこれに取り組んでおられます。ちょうど満一年たちましたが、このがん対策はどのように進められてきているのか、この内容を伺いたいと思うんです。まず厚生大臣にお願いします。
  159. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 医務局長から申し上げます。
  160. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 対がん十カ年総合戦略につきましては、ただいま総理大臣からお話のあったとおりでございますけれども、やや敷衍をいたしますると、基本方策を五項目定めております。重点課題を設定すること、集中的多角的に研究を推進すること、若手研究者の育成活用を図ること、日米を中心とした国際協力を推進すること、及び実験材料の供給等支援体制を整備することでございます。  なお、この中で重点研究課題につきまして申し上げますと、ヒトがんの発がん遺伝子に関する研究、ウイルスによるヒト発がんの研究、発がん促進とその抑制に関する研究、新しい早期診断技術の開発に関する研究、新しい理論による治療法の開発に関する研究、免疫の制御機構及び制御物質に関する研究でございます。
  161. 高桑栄松

    高桑栄松君 同じものでございますが、文部大臣いかがでしょうか。
  162. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 従来の幅広いがん研究を踏まえて、最近の組みかえDNA技術等の新しい手法を用いていわゆる重点的に研究を推進しております文部省の立場は、むしろがんの本態解明を目指すというそういう対がん十カ年戦略でございまして、極めて時宜を得たものでございます。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕  文部省としましては、学術審議会にがん研究部会を設けておりまして検討をいただいておりますが、その成果を対がん十カ年総合戦略に生かすように、大学等におきましてがん研究推進の指針といたしておるところでございます。今後、関係各省と連携をとりつつ、同戦略を踏まえまして大学等のがん研究の推進にできる限り精力的に力を注いでまいりたい、このように考えております。
  163. 高桑栄松

    高桑栄松君 もう一度文部大臣にお願いしたいんですが、科研費にはがんの特定研究があって重点的に今までやっておりますが、この十カ年計画によってやっぱり大型に変わったということはございますか、予算というか研究内容というか。
  164. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) お答え申し上げます。  従来、科学研究費補助金の中に幅広いがん研究のための特別枠として二十億円が計上されておったわけでございますが、その特別研究による幅広い研究は従来どおり推進することにいたしておりまして、それと別に、先ほど厚生省からお答えがございました重点研究課題について取り組んでいただくための特定研究の枠を五億円新たに計上さしていただいているというのが状況でございます。
  165. 高桑栄松

    高桑栄松君 このテーマは科学技術庁でも扱っておられるわけですが、科学技術庁長官お願いいたします。
  166. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) まず、がんの制圧は我が国の総力を挙げて取り組んでいかなければならない重要な課題であると考えております。また、このがんの制圧は、何と申しましても大変難しい病気でございます。したがって、その本態を解明するという研究がその基礎にならなければならないと考えております。こういうようなことで、まず私ども科学技術庁におきましては、従来から放射線医学総合研究所におきまして放射線を用いたがんの治療研究、それから理化学研究所におきましては制がん剤の開発等、また科学技術振興調整費などを活用しまして遺伝子の関連の技術の開発など、がん研究に必要な基盤的な技術の開発を行っておるところでございます。また、昭和五十九年度におきましては、がん対策関係閣僚会議、科学技術会議の示しました基本的な方向に沿って、理化学研究所等におきまして遺伝子の組みかえ技術を用いたがん本態の究明、そのためのプロジェクトの研究を行ってまいることにいたしております。あるいはまた、理研等におきまして研究棟を建てるなど、そういう施設の拡充強化も図ってまいります。このようにして、私どもは、前年に比べまして一・五倍の予算、三十五億円を計上してただいま御審議をいただいておるところでございます。
  167. 高桑栄松

    高桑栄松君 がん研究は、ついこの間まではまるでやみ夜に鉄砲を撃つようなことであったかと思うんですが、最近ようやくその兆しが見えてきたように思います。総理大臣、どうぞひとつ力を入れて推進をしていただきたいと思います。  次に、厚生大臣にお伺いしたいんですが、研究は将来のことでございますが、現在がん対策として何が一番大事であるのか、伺いたいと思います。
  168. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今、将来のことについては総理からもお話があり、これは何といったってその本態を突き詰めることであると思いますが、当面はやはりできるだけ検査を行き届いて行わせて早期に発見する、早期に発見することによってこれは死なないで済むのがいっぱいあるわけでありますから、これらについては厚生省としては今全国的に国民に検査を普及し、またこれは国民の皆さん方の御協力も得なければなりませんが、早期発見ということに全力を注いでおります。
  169. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 峯山田範君の関連質疑を許します。峯山君。
  170. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 今や、がん制圧というのは国民の願望となってきたようであります。そこで、厚生省にお伺いいたしますが、がんによる経済損失ですね、これについてどのくらいになると考えていらっしゃるのか、今までに試算したことがあるのかどうか、そういう点もあわせて御答弁いただきたいと思います。
  171. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) がんの死亡につきましては、国民死因の第一位を占めるというような非常に重要な位置を占めておるということを強く認識しております。また、年齢階層として見ますと、社会的にも重要な地位を担う、また家庭的にも大黒柱を担うというような壮年期から逐次ふえてまいりまして、中高年胴へ向かって死亡率が急増していく、こういうような意味におきまして、社会的にも経済的にも非常に大きな損失になっている、また関係者にとっても極めて痛手になっている、かように認識しているところでございます。
  172. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 局長、公衆衛生院の室長が試算した例がありますね。
  173. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいまの御指摘の点につきましては、公衆衛生院の一研究者が昭和五十七年に一つの試算を行いまして、国際学会に報告をしたということを聞いておるところでございます。
  174. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 金額を言ってくださいよ。前もって通告しているわけですから、詳細お願いします。
  175. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) これは厚生省としての試算というよりは、研究機関におきます一個人の研究という中での試算でございますので、厚生省として掌握している金額ではございませんが、同報告によりますと、がんの経済損失を一兆四千七百三十一億円ということで発表しておるところでございます。
  176. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、各省にまたがるがん対策予算について、昭和五十七、五十八、五十九年度、どういうふうになっているか、厚生、文部、科技庁の予算をお願いします。
  177. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 厚生省関係でございますけれども、昭和五十七年度約百八十三億、五十八年度約百九十三億、五十九年度計上しておりますのが約二百三十七億でございます。
  178. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 文部省のがん対策経費でございますが、五十七年度は六十五億四千万、五十八年度は六十七億一千百万、五十九年度は八十八億四千八百万でございます。
  179. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 科学技術庁におきますがん研究関連予算について申し上げますと、五十七年度が二十六億六千万円でございます。五十八年度二十二億二千万円、これは減っておりますけれども、大型施設が完了したことで減っておりまして、内容的には充実してまいります。今年度につきましては三十四億六千万円をお願いしております。
  180. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 厚生省、アメリカのがん対策予算、どの程度になっておりますか。
  181. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 積算の内容が必ずしも同じではございませんので直接比較はできませんけれども、一九八四年で総額約十二・五億ドルでございます。
  182. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 十二・五億ドルということは三千億近くになりますね。これは総理日本のがん対策予算が非常に少ないように思うんですが、十カ年計画から考えましても、この点もやっぱり力を入れていただきたいと思うんですが、どうですか。
  183. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回の予算編成で一般経費、行政経費は約三百数十億減らしておりますが、がんにつきましてはたしか七十七億ふやしまして、特に閣僚協で決めた十カ年計画の総合対策ではネットで四十五億円ふやしていると記憶しております。これは私が自分でふやせふやせと言ってチェックした数字ですからよく覚えているわけであります。御趣旨を体しまして、十カ年計画、目的に向かって予算的にも万全の措置をとりたいと思っております。
  184. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 厚生省、現実的な対策の面といたしまして、これはもうがん病棟、地方の特にがん病院の整備強化というのは非常に大事なんですが、それと同時に、いわゆる国立がんセンターのような強烈な対策病院を地方にもう一つつくったらどうかという話もあるわけです。そういう点を踏まえまして厚生省としてはどうお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたい。
  185. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) がんセンターについては、従来から国立がんセンターを中心に、地方ブロックごとに九カ所の地方がんセンターを設置し、我が国におけるがん治療体制の中核的機関としてその整備を図っております。今おっしゃられたように、国立がんセンターは非常に評判いいものですから、がんセンターを増設拡充すべきだ、またこういう権威あるものをもっとつくれというような声を聞いております。これらは非常に大事なものですから、今後財政等なかなか困難でありましょうけれども、今総理もがん対策には非常に力を入れてくださるという意欲を示されておりますので、今後強化してまいりたいと思います。
  186. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 厚生省は、がん予防などを目指した日本人の食事指針というのを今作成する方針であると聞いておりますが、具外的にはどういうふうになっておりますか。
  187. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) これは厚生省では五年に一遍ずつ、国民が健康に暮らしていくための栄養所要量というものを調査しておるわけでありますが、今第三次改定期に入りまして、これは今年の八月ごろ出てまいりますので、そこで国民の健康な、今の食事をどうしていくかということをわかりやすく国民の皆さん方に知っていただくようなものをつくりたいと検討しておりますが、これはがんだけですと、今度がんだけの食事療法をやると、これまた別な方の病気には悪いと、こういうことありますので、その辺のところは今検討中ですが、一つの全体的な、健康で生きるためにはこういう食事がよいというもの、またその中に個個に、がんを予防するためにはこういうもの、またその他の病気はこういうものといったような幾つかのケースとか、そういうものを幅広く今検討中でございまして、八月以後には示したいと思っております。
  188. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 がんは人類の宿敵でありますから、国際がん研究あるいは日米研究協力事業、こういうようなものを通じまして国際協力を積極的に推進をし、その成果を全世界の人類が共有し、享受できるよう一層努力すべきだと思いますが、厚生大臣並びに総理の決意のほどをお伺いしたい。
  189. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 先ほどもお話がありましたように、日本の医療技術は大変進んでおりますけれども、まだがんについてはやっぱりアメリカの方がはるかに進んでおるようです。また予算面等でも今お話がありましたように。そこで、やはり国際的な交流というものが非常に大事になってくる。先進国のやはりすぐれたる技術を勉強していかなければなりません。そのためにはやはり、我が国では若手の学者を養成していく、そして国際協力をしていくと、こういう方向で進めてまいりたいと思います。
  190. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本のがん学者等は、初めのうちはやはりアメリカの研究施設へ行ってそこで勉強して、それをさらに発展さしてきたというので、アメリカには非常に世話になっておるようです。私の調べたところでは、例えばロックフェラーがつくったスローン・ケタリング・キャンサー・センターとか、日本の著名な学者はほとんどそういうところへ行って、若いころやってきて帰ってきておる。しかし、吉田肉腫のような面では日本も独特の分野もあるわけで、その面では向こうにも貢献しているという点ですが、ようやくだんだん追いつき始めたという状態で、これからさらに今度はどっちかといえば対等の交流をやっていきたいと、そういうふうに念願してます。それから、ドイツとの交流も非常に大事でありまして、これも始めております。そういうふうにして、やはり国際的な交流がこの問題を解く一つの大事なかぎでもあるとも考えておりまして、そちらの費用等も大いに面倒を見てあげたいと思っております。
  191. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうもありがとうございました。
  192. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは、私の質問に戻らしていただきますが、厚生大臣にお願いいたします。  札幌で、この二月に新聞で見たのでありますけれども、札幌市の老人健康診査、成人病対策が無料であったときは年間五万作あったそうです。ところが、老人保健法施行で有料化にして、健康自覚を高めるというので一件百円を取った。そうしたら今年度は二万四千件になるだろうと、つまり半分になったわけです。私がこれを申し上げたのは、一割本人負担がいかに受診率を低下させるかということでございますが、いかがでしょうか。
  193. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 札幌のお話は今、先生から初めてお聞きするのでありますけれども、一割負担によって受診率が下がるのではないかという御心配でございますが、これは私もいろいろ調べさせてみたのでありますけれども、現在御承知のように国保の皆さん方は一割どころか三割負担しているわけであります。それから健康保険の皆さん方でも家族の方は入院時二割、それから外来は三割の負担をしているわけです。ところが、こういう人と十割の被用者保険本人の皆さんとの間で受診率はほとんど変わりがありません。そういうことから、一割下がったことによって必要な受診率が妨げられるという御心配は、これは先生ございません。ただ、だれだってお金を自分が払うのを喜ぶ人はおりませんから、やはり一割負担ということになれば、なるべくお医者さんにかからないで済むようにしようということで、自分の健康管理に非常に注意を払うというようなことで、だんだんだんだんお医者さんにかからないようになることはこれは結構なことなのであります。お医者さんにとっては結構でありませんけれども、そのほかの国民にとっては結構なんでありますから、そういう方向で費用が節減されるということはあると思います。したがって、この一割負担によって必要な受診は妨げない、しかしむだな診療はなくなっていく、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  194. 高桑栄松

    高桑栄松君 札幌は有料を今年度また無料に戻すそうです。そういうことを言っております。  それで、いまの件に私は異論がございますが、むだなというところが非常に私はひっかかるんです。早期発見、早期治療というのは、むだということが入っているんですよね。むだというのは結果的に健康であるというのが入っているから早期発見になるんです。全部が発見されるんならもう早期じゃないんです。それから医療費の抑制というのは受診率の低下とイコールなんですよ。それはもう明らかなことでございますから、それを踏まえて私は申し上げたつもりでございます。つまり、一割負担は早期発見、早期治療への明らかに妨げになるということです。いかがでしょう。
  195. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) もう健康を守るために早期発見、早期治療、これが何よりも大事であることは、これは先生御指摘のとおりでございます。そういうことから今度も老人保健事業というのを、これは五十九年度の予算は大変厳しかったのでありますが、財政当局の御理解を得て思い切った予算を増額をさせて、そして今度国民的な早期発見といいますか、健康診断を普及していくとか、その面は健康を守るという面では、幅広く一割負担が実現することによって、先生御心配のようなことのないような幅広い政策を進めてまいりたいと思います。
  196. 高桑栄松

    高桑栄松君 早期発見、早期治療について一つデータを挙げたいと思いますが、これは米国の発表でございまして、この三月に新聞で発表されておりますから御存じだと思いますけれども、ヘクラー厚生長官が、喫煙量を半分にするだけで二〇〇〇年までには年間七万五千人の生命をがんから救うことができる、こういうことを言っております。また、米国のがん協会は、一九八四年じゅうにがん患者が八十七万人、うち死亡四十五万人、その中で早期発見段階で治療によって十四万八千人が死から免れる、つまり三分の一です。いかに大きいかということでございます。これを私が申し上げているのは、一割負担が受診率を下げる、一番大事な早期発見、早期治療を妨げることは明らかである、したがって死から免れられるはずの人がそこで死に向かっていくということを恐れて申し上げたわけであります。つまり、一割負担は、憲法第二十五条の人権にうたわれているようなあの健康保障の後退であるという結論であるということでございますが、厚生大臣いかがでしょう。
  197. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 先生、大変御勉強でございます。先生の今のようなお話は、これからの厚生行政、特に医療行政の中で参考にさせていただきたいと思いますが、ただ、一割負担が死亡率を高めるというようなところまでは若干、申しわけありませんが、飛躍しているんじゃないかと思うんです。これは現在国民全体が十割給付ということで二十年とか三十年きて、そして日本人の平均寿命が上がってきて、そして今度新しく一割負担になると、こういうことならそのような御心配が出てまいると思いますが、現在既に七〇%近くの人が一割以上の負担を長くしてきたわけでありますから、最近サラリーマンの方がふえることによってパーセンテージはこれは若干違ってまいりますけれども、また今の全額負担の方でも定額のいろんな負担等はあるわけですから、患者が一割程度の負担をすることによってこれからの社会で死亡率が変わっていくというようなことは、いかに先生の高速なる御意見でも、私は、はいという感じはいたしません。
  198. 高桑栄松

    高桑栄松君 これを議論していると時間を食ってしまいますけれども、私は現状がいいと言っているのじゃないんです。現状から低下させる分がいけないと言っているのであって、現状をもっとよくするのはいいことなんです。低下なんですよね。それはもう議論になりますから、次に入ります。  健康保険の統合問題でございますが、一割負担で浮く国庫負担分というのはどれぐらいになっておりますか、金額です。
  199. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 一割の定率患者負担を課することによりまして、国庫負担の減は二百九十三億でございます。
  200. 高桑栄松

    高桑栄松君 これを満年度に直すと四百二十億ぐらいだという話でございますが、組合健保の昭和五十七年度の収支を見ますと二千九百七十億の黒字でございます。非常に簡単にいうと、ここだけ合わせると四百三十億の国庫負担分を埋めるのは極めて容易であると、こういうふうに言えるわけです。そこで、年金で既に実施されていますように、健保の統合が必要であると思いますが、厚生大臣いかがでしょう。
  201. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 御指摘のような統合問題、これは私もいつも申し上げているように、本来、社会保障というものは国民がひとしく受けるべきものであるという点から申しますと、先生の御意見のとおりなのでございます。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕  私も、最初厚生省で勉強させていただいて、そのことを念頭に置いていろいろ検討をさせてみたのでありますけれども、ところが現実には、先生御承知のように、健康保険というものは長い歴史を持っております。また、長い沿革があり、今日それぞれの部門でいろんな影響をこれは持っておりまして、なかなか今すぐこれを統合するんだということになると、むしろ混乱の方が多くて益することが少ないという面もありますので、そこでまず負担と給付面の公平化とかあるいは財政調整とか、こういうものを図って、実質的にはそういう方向に進めていこう。今回の医療保険の改革案の退職者医療にしましても、これは今まで被用者保険に入っておられる方が退職をしますと、収入が減って、病気にかかる率がどんどん多くなるのに、今まで十割の給付を受けておった方が国保に入ってこれは七割の給付しか受けられないというような大変な矛盾が起こるわけですから、まずそういう矛盾点を一つ一つ直していこうという現実的な点から始まったので、今回の保険制度の退職者医療の創設というようなもの、また昨年の老人医療の創設といったようなものも先生の理想に向かっていくワンステップであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  202. 高桑栄松

    高桑栄松君 私も、退職者医療制度、大変賛成でございます。  ところで、黒字健保で赤字を埋めるという考え方は、これは実は武見理論でございます。健保の制度すべてを統合することを前提とした保険制度の抜本改正が優先すべきである、この論議を抜きにして今回提出されようとしている改正案は目先のエコノミーに目を奪われた論議ではないだろうか。つまり本末転倒と言わざるを得ない。これは日本医師会も日本歯科医師会も強く主張しておられるところであります。いかがでしょう、厚生大臣
  203. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) よくこの改革案で、総合的なビジョンがなくて財政だけにとらわれておるのではないかという御指摘をちょうだいしてまいりました。私は、この保険改革案そのものが二十一世紀の医療保険制度の一つのビジョンを示しておるものと思っておりますけれども、しかし、やはり国民の健康を守る、また医療体制を立派にしていくという面での総合的なビジョンというものを示さなければ国民の皆さん方に御理解をいただけないだろうということで、私はそういうビジョンを厚生省につくらせておるところでございます。  それから財政でよく、それなら国費をどれだけ入れるんだと、もっと国費を入れればいいのじゃないかという議論が出てくるのでありますけれども、国費といってもこれは国民の皆さん方の税金でありますから、そうすると保険料でこれをちょうだいしているわけですから、そうしてまた税金で国民の皆さんからちょうだいすると、こういうことになるわけで、今日の財政状態、また現在の経済成長ということ等を考えると、国から出せばいいじゃないかと言うことは簡単ですけれども、ここに大蔵大臣もおりますけれども、とてもこれ以上なかなかこの制度に国費を余計投入するというようなことは現実的に困難である。そうすると、医療制度というものを二十一世紀に揺るぎないものにするためには、やはり一割程度の御負担は大変恐縮でございますが、これは被保険者全部で平均しますと一人六百二十円。それから病気にかかる方でも八五%の方は一カ月二千円程度、またそれ以上かかる方には高額療養費制度、また低所得者の皆さん方にはお困りにならないようにする配慮とかいろいろ今きめ細かく、この制度によって本当に病気になって金がないためにお医者さんにかかれないということがないようにするという配慮をできる限りいたしますので、先生ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  204. 高桑栄松

    高桑栄松君 我が国には経済政策があって医療政策がないという批判がかなり強く出されております。つまり、医療というものが経済の中で論じられる、経済政策の中に埋没するということは、予防医学あるいは健康管理の立場からは全く反対でございまして、これは次元が違う問題ではないか。つまり、経済の中へ埋没すれば、昔のように貧乏が病気をつくる、病気が貧乏をつくる、この輪廻があると、ここをどうしても断たなければならないというのが予防医学の立場でございます。これについて、厚生大臣もう一度お願いします。
  205. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 先生のお話を聞いていると、私も先生と同じ意見なんです。これは、人間の体を守ることは何よりも優先すべきことで、それは経済や財政によって人間の健康が守られなくてもいいなんということには全然ならないのでありまして、この点は全く同意見なんですけれども、ただ、一割負担によって健康が守られると私は思って、先生は守られないとおっしゃるのでありますが、その点はしかしこれからも御質問いただいてお答えしていけば、最後は御理解いただけるものと私は思っておるのでありますけれども、人間の健康を何よりも優先して考えなければならない、まして国民の健康を守る厚生大臣としてはその責めを大きく感じておることはおっしゃるとおりでございます。
  206. 高桑栄松

    高桑栄松君 厚生大臣、大変まじめに答えてくださって、私はある意味では安心いたしました。いずれ機会を別にしてレクチャーをさしていただきますけれども、これはまあ冗談でございます。  それで、労働大臣に伺いたいんですけれども、健康診断の際の疾病発見率が大企業と小企業でどれぐらい違いがあるかというデータをひとつお示し願いたい。
  207. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 労働省で一般健康診断結果につきまして昭和五十五年に調査をいたしましたが、その調査結果によりますと、事業場の規模千人以上で疾病発見率が五・〇%、五百人から九百九十九人で五・九%、三百人から四百九十九人で五・五%、百人から二百九十九人で七・七%、五十人から九十九人で九・四%、三十人から四十九人で八・六%となっておりまして、規模が小さくなれば発見率が高いという傾向にございます。
  208. 高桑栄松

    高桑栄松君 手厚い健康管理をやっている大企業と、それからそうはいかない小企業との間で今の数字は一・八倍の差がある。私の持っているデータでは、第五十回日本産業衛生学会の発表では、同じようなレベルで見ますと、これは二・四倍ということになっております。つまり、予防医学の重要性、健康管理がどんなに大切かということを示しているデータかと思います。  労働基準法では午前中と午後に一回ずつ休みをとるとかやっておるわけですね、労働大臣。私はかねがね見ておったんですけれども、大臣各位は朝から晩まで十時間ぐらいここに座っておられる。私は職業病になるのではないかと、腰痛症を起こされるのではないかと思うんですね。コーヒーブレークというのは午前中、午後一回ぐらいずつおとりなさいよと僕は言っているんです。叱られるといけませんけれども、我々はフリーなものですからやっております。提案をひとつさしていただきます。  そこで防衛庁にお伺いしたいのですが、行革臨調の線で衛生局長のポストが削減されるやに伺っております。真偽のほどをお伺いいたします。防衛庁長官
  209. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  第五次答申の結果、私どもは合理化再編成を中央部局において行うべき八省庁の一つに指定をされました。いろいろ検討をいたしました結果、衛生局を廃止をしまして教育訓練局を新設する、こういう結論に達しております。
  210. 高桑栄松

    高桑栄松君 私は、予防医学者の立場で大変これには異論がございます。これは自衛隊員は二十五、六万人でしたね、家族を入れると約五十万。これは健康管理というのは非常に大事なのに保健衛生を軽視しているのではないかと、こういうふうに思うんです。防衛庁長官、御返事をお願いします。
  211. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  先生御指摘のとおり、防衛庁にとりましては、二十七万の自衛官、この健康管理はただ単に通常の官庁における健康管理とは違いまして、有事の際の精強性を維持する、こういうこともあり、この衛生局の業務は極めて重要であると考えております。第五次答申におきまして、先ほど申し上げましたように中央部局の合理化再編成を命ぜられました際も、この答申の中で防衛庁の衛生業務につきましては、「職員の保健衛生に関する事務は、自衛隊の任務を的確に遂行するため重要なものであり、部隊訓練、防衛医科大学校の所管等、医官等の養成充足等の事務と密接な関連を有しているため、これらの事務との一体的な処理が必要である」という御指摘を受けておりまして、私どもこのとおりだと思っております。しかしながら同時に、第三次答申というのがございます。五十七年の七月三十日でございまして、これがいわゆる基本答申でございますけれども、この中におきまして、「定員の規模、内部の分課状況等からみて独立の部局として存置するには小規模と考えられる部局については、他の部局との統合を行う」という統一基準が示されました。防衛庁の場合には、内局の定員は六局五百五名、課の数で法制調査官等事実上の課長を入れますと二十六課ございます。この分布状況を見ますと、衛生局は一局一課十三名、こういうことで、一番小さい装備局におきましても六十七名の定員がある。課の数におきましても最低三課ある。こういう五十七年度の基本答申の統一基準から申しますと、独立の局として存置することは非常に困難である、こういう二律背反の状態に陥りまして、関係省庁とも十分協議をいたし、内部において鋭意慎重に検討をいたしましたが、結論といたしましては衛生局を廃止し、教育訓練馬にこれを所属せしめて、三課によるところの新しい局をつくる、こういう結論になったわけでございます。  御指摘のように、衛生業務の重要性の認識に欠けているのではないかというおしかりを受けるだろうと、私ども覚悟をいたしておりました。この機会に御説明をさせていただきますが、私どもは、衛生業務の重要性にかんがみまして、局としては廃止をいたしますが、重要な衛生業務、すなわち単なる保健衛生だけではなくて精強性の維持のため、あるいは充足率の問題、これは臨調の答申で御指摘をされておるのでございますが、約千名の医官定員に対しまして現在充足率は四〇%でございます。まだ六〇%が欠員、こういう状態でございまして、この欠員を何とか埋めなければいけない、また防衛医科大学校だけでなくて、看護学院であるとか衛生学校等の教育機関をたくさん持っておりまして、これはただ単に健康管理をやっているだけではなくて、この中では、有事に際しての負傷者の治療、手当てであるとか、後送だとか、この訓練も行わなければいけません。  そういう観点から、この重要なる衛生業務につきましては、参事官の一人をもってこれを充てる、こういうことといたしました。参事官と申しますとどうも局長の下ではないか、何か大変軽いんではないかというお考えかと思いますが、防衛庁の場合におきまする参事官職というのは特別でございまして、十名をもって構成する参事官会議、これが最高の意思決定機関でございますが、この構成メンバーでございます。そのうちの六名が局を持っておる。官房長、例えば私の場合も参事官を命ず、官房長を命ずでございまして、総括整理職の一つでございます。対外的な折衝力であるとかその他の問題を考えまして、総括整理職の一人である衛生参事官をもってこの重要な任務を担当せしめる。また、この衛生参事官には経験と専門的な知識を有するところの医師の資格を持った者を充てる。こういうことで、この臨調の二つの要請、中央部局を合理化再編成せい、一局一課十三名では困るということと、先ほど来御説明申し上げております衛生業務の重要性、この二つの要請を何とかこういうことで満たしてまいりたい、かように考えておりますので、何とぞ御理解を賜りたいと存じます。
  212. 高桑栄松

    高桑栄松君 今、医官の養成ということもございましたが、衛生局長のポストがなくなるということは、遺憾ながら医官の士気にも関係してくるのではないか、こう思います。私は、再考していただくよう強く要望いたします。  次に、厚生大臣にお伺いしますが、予防給付が必要であるという例を挙げたいと思いますが、それはもう御承知のように、岩手県の沢内村とかそれから長野県の佐久市とかいろいろございますが、北海道にもございまして、中川町、鷹栖町がございます。鷹栖町では昭和四十二年から町民健康づくりを始めております。昭和四十九年、一人当たりの入院に関する医療費ですが、全道平均と鷹栖町では、鷹栖町が一・二倍高い。それが五十六年には〇・八になっています。つまり、健康づくり、予防給付が与えられると医療費が低下するということがあるんです。健康の保障と医療費の低下、これが予防給付をすることによってむしろ達成されるのではないか。厚生大臣にお願いします。
  213. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 全く同感でございます。
  214. 高桑栄松

    高桑栄松君 大変よかったと思います。ところで総理大臣、これはどうも予告を申し上げないで今気がついたんですが、私は予防医学の観点から、かねがねアセスメント法案が早く成立することを実は強く願っておりました。ところが、先般の衆議院の予算委員会で公明党の二見議員が質問をされて、これに総理大臣は、党内で調整をしてできるだけ提出の方向に努力をする、こういうふうにおっしゃっていますが、法案提出の期限が過ぎたようでございますが、その間総理大臣はどれくらい努力をなさったのか、ちょっと伺いたいと思います。
  215. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 党内の政調会の各部会でいろいろ調整に努力していただいたのでございますけれども、不幸にしてまだその結論を得るに至っておらないのは甚だ残念でございます。湖沼法の方をそれでは早く先行させられないか、そういうことで湖沼法の方を今進めておる状態であります。
  216. 高桑栄松

    高桑栄松君 総理大臣のお考え、お変わりないことで安心いたしました。ぜひひとつ、一日も早く提出していただいて成立していただくように、私からも要望いたします。  ところで、次に医学教育の問題、医師養成の問題に入りたいと思いますが、医師過剰時代が言われております。医師養成の目標、見通し等について文部大臣にお願いいたします。
  217. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 医師過剰問題についていろいろと御指摘をいただきますが、現在厚生省で医師、歯科医師数の適正数を検討中だというふうに承知をいたしております。文部省としましては、医師養成の将来計画につきましては厚生省の結論を得てから対処したいと考えておりますが、その際も、医学、医療の高度化、多様化に対応し得るように、特に基礎医学の充実、あるいはプライマリーケア等の要請にこたえて、いわゆる臨床研修等に十分配慮しながら医学教育の実質的充実を図るというそういう考え方で対処していきたい、このように考えております。
  218. 高桑栄松

    高桑栄松君 その数字的な面も御説明願いたいと思うんです。
  219. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) ただいま文部大臣からお答えしたとおりでございまして、厚生省で検討をされるということでございますので、その結論を得まして私どもとして対応したいと考えておるわけでございます。  ただ、現実に医学部の入学定員で申し上げますと、例えば百名の入学定員あるいは百二十名の入学定員、いろいろそれぞれの事情に応じまして設定をされておるわけでございますが、医学教育の観点からいたしますと、例えば新設の医科大学を四十八年以降つくってまいったわけでございますが、百二十名の入学定員でございますと、臨床実習でございますとかそういう点から申しまして、医学教育の面から申しますと、必ずしも徹底しないというような面も言われておるわけでございます。そういうような点を受けまして、医学教育の充実という観点から見れば、百二十名の入学定員については見直すということも必要ではないかということで、それぞれ個別の大学の事情でございますとか、あるいはそれぞれ大学の置かれております地域の医療の実態でございますとか、そういうこと等も十分勘案いたしながら百二十名の入学定員については削減というようなことについて今後検討いたしたいと、かように考えております。
  220. 高桑栄松

    高桑栄松君 この一県一医科大学の時点で、私たち医学、歯学、薬学教育関係者は質の低下をおそれて我々は随分反対をいたしました。しかしできてしまったわけで、予想よりも早く医師、歯科医師数が充足をされて目標を突破したということはもう周知の事実でございます。このことでございますけれども、一県一医科大学の時点で量の論議はされたけれども、今お話しのような質の論議があったんでしょうか。文部大臣、お願いいたします。
  221. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 医科大学の創設に当たりまして、議論といたしましてはいろいろと議論があったわけでございます。基礎医学の分野で、例えば解剖学などについては必ずしも十分確保できないのではないかというような議論もございましたけれども、結論といたしましては、無医大県解消ということで医科大学をつくってまいるということで結論をいただきまして、現実設置をされております医科大学の教官組織につきましても、私どもといたしましては、十分必要な医学教育を遂行するだけの教官の陣容も整えてまいってきておると、かように私ども理解をいたしておるわけでございます。なお、医学教育の質の向上のためには今後とも十分努力をいたしたいと、かように考えております。
  222. 高桑栄松

    高桑栄松君 この今度の対策について文部省と厚生省は協議されたでしょうか。厚生大臣いかがでしょう。
  223. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 現在も継続して協議をいたしております。ただ、かいつまんで申し上げますと、厚生省が文部省に最初にお願いしたのは、昭和四十五年時点で十万人に対して百五十人の医師が望ましい、そのためには文部省当局にお願いして六千人程度の医科大学の定数にしてほしいとお願いしたわけでありますが、現在既に医科大学の定数が八千三百人を超しておる、こういうふうに聞いております。しかも、我々が当初に目標にした百五十名はもう突破する状態でございます。ですから、ここですぐに文部省に定員の削減をお願いできるかと思いましたらまた新しい問題が出ておりまして、今度は非常に高齢化してまいりますものですから、七十歳以上の老人がふえるということですので、この方々は若い人の約四倍ぐらい病気にかかるということになりますから、したがって昭和四十五年に決めた十万人に百五十人というものが将来にわたって適当な数値がどうかということにもまた疑問が出てまいりました。また、現在でもお医者さんがかなり余計になったとは言いながら、僻地、離島に行きますとまだまだお医者さんがいなくて困っているというところもあります。これは地域的なばらつきもあります。そういうものを検討して、今度は文部省にどのぐらいお願いできるかということの検討をしないとまだはっきりしたお願いはできないものですから、その検討を厚生省としては急いで、できればこれは大事なことですから六十年までに中間報告でも得て文部省にちゃんとお願いしたいと、こういうふうに考えております。
  224. 高桑栄松

    高桑栄松君 渡部さんには大変私に都合のいい答弁をしていただいたので、続いてお伺いいたします。  医療の過疎地帯を埋めると。私は北大の教授をしておりましたので、北海道は人口五百七十万に医科大学が三つ、つまり人口百九十万で一校なんですよね。広域なんです、非常に広いんです。一つの村が香川県ぐらいというようなところがあるんですから、そういうところで医者が本当に足りない。しかし医科大学の存在理由は、教育というだけじゃなくて、そこを中心とした百キロぐらいの半径は医療圏として確保できるんです。いつでも行ってこれるんですよ。つまり、今一県一医科大学と言ってないで、北海道はそういう意味のことで医科大学が私は必要だと思って論文も書いて残してきました。今度は北海道の道東ですね。どうでしょう、建てられませんか。文部大臣にお願いします。
  225. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 無医大県解消論というのも、当時は北海道のみならず、全国の各地域から医師数の不足、特に山村、僻地あるいは離島、そうしたところにお医者さんをいわゆる派遣、そしてぜひ解消してもらいたい、こういう声でございまして、私どもは当時自民党の文教政策の仕事をいたしておりましたから、これはもう単に与党だけではなくて、野党の皆さん方、あるいは各県も知事を中心にしてとにかく地域的な大きな盛り上がりの中でこの無医大県解消論というのは進められていたわけでございます。そういうような空気の中では、確かに今道東、苫小牧などでも国立医科大、ぜひやってくださいというような声は私どもの文部省にも随分やってまいります。しかし、御承知のような現実の問題として今、医師供給過剰と言われていますし、先ほど厚生大臣からおっしゃいました六千数百でよかったのに文部省は八千つくったと、こういかにも文部省が悪いようにおっしゃるわけでございますが、しかし現実は、これはもう先生十分御承知ですが、今でもやはり自治体病院では医者は足りないんです。また、山村や離島へ行くと医者はいないんですね。これ、どうしたら解決するんでしょうか。私は、むしろ先生なんかはこの方の御専門で勉強していらっしゃいますので、お教えをいただきたい。  少なくとも国立医科大で学ばれた方々にもう少し医者の中でのやはり義務的なことというものは何か考えられないものだろうか。せめてもしばらくは、若き学徒のうちには、あるいは研修生の間は少しそうした僻地へ行くなりあるいは山村へ入るなりして、もう少し勉強しながらそうしたところの要請にこたえていただく、そうしたことをもう少し考えられないだろうか。あるいは医学の部門によっては、基礎医学は先生御承知のようにこれ全然足りない。解剖などは何か獣医学をやった人がやっているというのが現実の問題でございます。こうした問題をも十分配慮しながら文部省としては検討していきたい。北海道にはという声も非常に私は当時のことを考えても大事なところだと考えますけれども、文部省全体のやはり医科大学の配置という問題も踏まえながらもう少し長期的な展望も踏まえて考えていかなければならぬと、こう思って事務当局にも十分そのことを検討するように努めているところでございます。
  226. 高桑栄松

    高桑栄松君 文部大臣の御答弁、なかなか私もまあ部分的に賛成でございますが、知恵をかしてくれとおっしゃれば、私は本当に小さい人間でございますから、後でお話をする医学教育会議にそれはゆだねた方がいいというのが結論でございますが、これは後に回します。  ところで、医学の発展、専門化、細分化に対応するために医学教育はさらに講座増の必要がないか。文部大臣いかがでしょうか。
  227. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 医学の高度化、多様化に伴いまして、必要な知識なり技術の習得ということもますますふえてくるのは御指摘のとおりだと思います。各医科大学におきましても、それぞれ学問の発展に対応しまして新しい分野に関する講座あるいは重要科目を設けるとか、関係の講座、重要科目の内容にこれらに関する教育を含めるなど医学教育の充実には努めているわけでございます。先生御存じのとおり、医学部の教育課程にかかわる基準につきましては既に弾力化を図っているわけでございまして、国立大学について申し上げれば予算上の制約もあるわけでございますけれども、各大学が教育研究方針に創意工夫を生かし得るような道は講じているわけでございます。今後とも医学教育をめぐるそういう質的な向上のために必要な措置は積極的な努力を講じてまいりたいと、かように考えております。
  228. 高桑栄松

    高桑栄松君 今の問題の関連ですが、専門化、細分化に対応して質的教育の向上を図るためには、近接医科大学連合構想というのが有力者から出されてきております。文部大臣いかがでしょうか。
  229. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 御指摘の、近接の医科大学を連合させてというお話でございますけれども、具体的な方策としては、例えば現在単位の互換制度ということもとられているわけでございまして、それぞれ相互に特色ある教育研究の成果を交換し合うという仕組みとしては単位の互換制度などを活用するということが考えられるわけでございます。お話しの直接連合というような形の事柄については、それぞれ各大学に直接かかわる問題でもございますし、その点についてはなお慎重に対応してまいりたいと、かように考えます。
  230. 高桑栄松

    高桑栄松君 薬学関係者から私はしばしば聞かされておりますのは、医療薬剤師制度が必要ではないかといったようなことを言っておられます。これは教育に関しては薬学六年制というふうなことをうたっておられるようでありますが、これに対して厚生大臣、どんなふうにお考えでしょう。
  231. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 先生御指摘のように、医薬品は疾病治療のための臨床の場においてこれは用いられるものでありますから、化学的知識のみでなくて、薬物治療の知識、いわゆる医療薬学の知識が必要でございます。ただ、それが制度として医療薬剤師という資格になるか、今の薬剤師に当然医療薬剤師というにふさわしい内容を充実していくかという問題でありますが、私どもは今後の方向としては、現在の資格とは別に医療薬剤師の資格を設けるのでなくて、現在の薬剤師の養成教育のあり方の中で、先生御指摘のような医療薬剤師といわれる内容にふさわしい者を養成してまいりたいと思います。
  232. 高桑栄松

    高桑栄松君 私は、学術会議の医学の生涯教育小委員長として長年やってきておりますけれども、したがいまして医学、歯学、薬学各界の方々の御意見を拝見しておるわけですけれども、最後の質用でありますが、医学教育会議の設置という勧告を学術会議昭和五十五年十一月一日に出しております。その前に、「医学教育制度の総合的運営及び体側の整備について」の申し入れを昭和五十二年に行っております。これは生涯教育の理念に立脚して、長期的展望のもとに健康にかかわる医学、歯学、薬学教育を総合的に推進するための体制を椎立しなければならない。世界各地で、特に先進国では日進月歩の医学の発展に対応して教育も日進月歩の形で変えられつつあります。したがって、きょう変わったことが三年後にはまた変えなければならない、つまり常設的にこれを見直していく必要がある。疾病構造の変化、社会のニーズ等々に常に対応しなければならないということでございますが、昭和五十五年十一月一日に、この「医学教育会議(仮称)の設置について」、学術会議は勧告をいたしました。その処理状況につきまして、窓口は科学技術庁でございますが、長官、どうなっているか、お願いいたします。
  233. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) まず、日本学術会議から内閣総理大臣に対して勧告等がございますれば、設置法上、窓口として科学技術庁がこれを承っております。そこで、科学技術庁といたしましては、関係の省庁と調整を図りまして、その処理を責任を持って行います省庁を決定いたします。そしてこれを総理大臣に通告もいたし、関係省庁にも連絡する。その後、これを受けた処理の省庁がいろいろと勧告等について検討し、措置を講じて、その旨を私どもが報告を受け、また総理大臣にも御報告申し上げている。そしてまた学術会議に御報告を申し上げるということで、ただいま御指摘の医学教育会議、これは仮称でございますが、この設置についての勧告を確かにお受け取りいたしました。  これにつきましては、先ほど申したような手続に従いまして、医学教育と医療制度の重要性ということにかんがみまして、処理省庁を決めました。文部省、厚生省でございます。そして、それぞれ検討していただき、それぞれ重要な問題でございますので、よく御検討いただいて対応していただいております。その旨は科学技術会議の方にも御報告を申し上げているところでございます。手続上はそういうことになっておりますので、御了解いただきたいと思います。
  234. 高桑栄松

    高桑栄松君 ただいま科学技術庁長官からお話がございましたが、文部、厚生両省はこれにどのように対処してこられたか、まず文部大臣お願いいたします。
  235. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 先生から御指摘をいただきました、いわゆる医学教育は医の倫理に立脚をいたします。生涯教育を前提といたすということも御指摘どおりでございます。このようないわゆる学術審議会の指摘もございましたので、こうした見地から文部省、厚生省両省とも、関係の審議会には相互に参加をいたしまして、より一貫性確保に今日まで努力してきたところでございます。  文部省といたしましても、学術会議の勧告は可能な限り尊重いたしておるところでございますが、今御提案のこの新組織の設置は極めてこれは重要な問題でございますので慎重に対処してまいりたいと思いますが、しかしながら、今後とも厚生省とは一層密接な連携を保って医学教育の改善に当たってまいりたいと考えております。
  236. 高桑栄松

    高桑栄松君 総理大臣にお伺いをして御返事をいただきたいんですが、学術会議の勧告は尊重するということは先ほどの学術会議の一部改正法のときにも言明しておられます。この問題はまさしく文部、厚生両省にまたがっている。つまり総理の臨教審構想にぴったりである。だから、総理は喜んでこの設置には賛成してくださるというふうに信じておりますが、いかがでございましょうか。
  237. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 学術会議の御提案については敬意を表します。ただ、非常に専門的、技術的な問題と、それから将来的展望の問題等もございますので、両省でよく検討していただきたい。その上で判断を下したいと思っております。
  238. 高桑栄松

    高桑栄松君 先ほどのことで、両省でどうやっておられたかというのを厚生大臣からひとつお願いいたします。
  239. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 厚生省としては、勧告の趣旨を尊重いたしまして、医学教育、医師国家試験の改善等については、まず臨床研修病院の拡大等を図る、また昭和六十年より試験を年一回とすること等の改善を図るなどの施策を実施中でございます。なお、商科医師国家試験についても同様の処置をとることとしており、また薬剤師についても制度の改善等について今検討を開始する予定でございます。教育会議の設置そのものについては、今、総理からも、また関係の方からもお話がありましたが、これから密接な連絡をとって勉強してまいりたいと思いますが、おかげさまで医学の臨床研修はこれは四十三年に発足当時二〇%だったものが今八〇%ぐらいに進んでくる、よりより拡充をいたしております。
  240. 高桑栄松

    高桑栄松君 この問題、医学教育会議で取り扱うことは、年前、卒後、国家試験、すべてを扱っております。今、文部大臣、厚生大臣のお話、私にとって大変都合のいい御返事だったと思っているんです。しかもお二人とも、さっき申し上げた年齢層から若い方に外れているお方のようでありますから大変話が早いんじゃないか。今後よく協議をしていただいて、医学教育会議の設置に向けて、総理大臣も言っておられますように、ぜひひとつ早急に対策を講じていただきたい、対応していただきたいと思います。  時間になりましたので、これで質問を終わらせていただきます。大変ありがとうございました。(拍手)
  241. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で高桑君の質疑は終了いたしました。  午前の質疑はこれまでとし、午後一昨二十分まで休憩いたします。    午後零時二十分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十一分閉会
  242. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十九年度総予算三案を一括して議題とし、安武洋子君の総括質疑を行います。安武君。
  243. 安武洋子

    安武洋子君 民間活力の活用という問題についてお伺いをいたします。  まず、総理にお伺いいたしますが、民間活力の活用は総理が強い提唱をなさいまして進められていると思います。その趣旨はどのようなものかお伺いをいたします。
  244. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 新しい型の成長の道を模索しようと、こういうことで始めたわけで、行政改革、臨時行政調査会の答申のあれもありまして財政が出動する点ではある程度限界が来つつありますので、この際思い切って民間の活力を活用して新しい成長の道を開き始めよう、そういうことでやっておるわけです。
  245. 安武洋子

    安武洋子君 総理を本部長にいたしました国有地等有効活用推進本部、これを内閣に設置をされておられます。そして五十九年二月三日には申し合わせをなさっていらっしゃいます。その内容をお伺いいたします。
  246. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) ただいまお話がございました国有地等有効活用推進本部の第二回の会合におきまして、本部の申し合わせというのをいたしたわけでございますが、その内容を簡潔に申し上げますと、一つは、国有地等の有効活用の基本的な方向の立案についての申し合わせ、もう一つは、国有地等の処分についての考え方、その二点になっておるわけでございます。  まず、第一の国有地等の有効活用の基本的方針の立案ということにつきましては、まず大蔵省それから運輸省が民間活力の導入による効率的利用の可能性があると判断いたしました国有地等につきましてそれを選定していく。次に、これらの土地のうち都市再開発等に資するため適当ではないかと思われるものにつきまして、関係省庁が共同で有効活用の基本的な方向の立案を行おうということ。さらに、その活用の具体化に当たりまして必要があると認められますときは、地方公共団体等を含めます関係機関とか学識経験者等から成ります各土地の実態に即したプロジェクト推進体制を設置していこうではないかと、こういう申し合わせをいたしたわけでございます。それから第二の民間に対します土地の処分につきましては、これは一般競争入札を原則といたしますけれども、随意契約の条件が整っておるような場合にはこの随契を活用する、こういう措置で進んでいこうと、こういう申し合わせをいたしたわけでございます。
  247. 安武洋子

    安武洋子君 国有地それから国鉄用地、対象に挙げられているそうでございますが、これはどれくらい挙げられているのでしょうか。
  248. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 先ほど申し上げましたいわゆる検討対象財産というもの、これはやはり土地を有効活用して都市再開発にも資する、こういう観点から選ぶ必要があるということから、例えば人口が十万人以上の都市に所在する国有地であって、その位置とか規模とか利用現況等に照らしまして民間活力の導入による効率的利用の可能性があるのではないかと、こういうふうに判断されました土地は、国有地につきましては百六十三件くらいあるということでございました。その中から、さらに大都市、東京都の二十三区、それから京阪神三市に所在するものでおおむね三千平米以上のもの、その他の都市に所在するものにつきましてはおおむね一万平米以上のものというふうなもので抜き出しますと、いわゆる民間活力の導入の可能性があるのではないかと思われる財産は、去る二月三日に出ましたものは、国有地につきましては九件十一ヘクタール、それ以外にまだ一件ほど、これまた要検討というのが一件ございますが、そういうふうなことになっております。それから国鉄用地につきまして、これは国鉄の方で今後使うことはまずないであろうと、いわゆる不用地と判定いたしました三千平米以上の土地で人口十万人以上の都市に所在するものの中から、具体的な処分計画がなくて国有地と同じようにその位置とか規模等々から見まして民間活力の導入の検討対象になり得ると思われたものは全国で十件あると、こういうことでございました。
  249. 安武洋子

    安武洋子君 この資料を拝見いたしますと、国有地それから国鉄用地、これを合わせまして市ヘクタールの用地、こういうことを対象にいたしております。ということになりますと、これは何兆円もの大変大規模な計画だろうというふうに思います。  そこでお伺いいたしますけれども、新宿・西戸山の公務員宿舎用地、この有効活用計画、これは第一号なんでございましょうか。この今までの経過と、それから概要をお知らせください。
  250. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) お答え申し上げます。  ただいま先生がおっしゃいました新宿・西戸山住宅、この計画はただいまお話のありました推進本部が発足する前から計画をしているものでございます。私どもかねてから公務員宿舎の集約立体化というのを進めてまいっておりましたし、また新宿・西戸山のあの住宅地区は約三万平米ございますが、そこにございます公務員宿舎の建て方はもっと土地を有効に使うことができる、こういうふうに考えまして、学識経験者あるいは民間デベロッパー、建設業界、そういうような専門にそういうことをやっておられる方々の御意見をも伺うために公務員宿舎問題研究会、こういうものを設けました。そこで私ども勉強をさせていただきまして、九月十九日に中間報告をちょうだいいたしましたので、その趣旨を踏まえながら現在地元でございます新宿区といろいろ御相談をしている、こういうところでございます。
  251. 安武洋子

    安武洋子君 これは公務員宿舎問題研究会、この答申を受けて始まったと、こういうことで承っておきます。  総理にお伺いいたしますけれども、昨年の末に新宿西戸山開発株式会社、こういう新しい会社が設立されておりますけれども、総理はそのことを御存じでございましょうか。
  252. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 知っております。それは民間活力の方法として、例えば関西新空港についても、運輸省は公団方式ということを希望しましたが、それはいかぬ、むしろ民間の金を使いなさい、国にはお金がないんだから、むしろ生命保険とか銀行には随分金が今ある、それが外国へ流れていっておる、それを国内で使いなさいと、そういうことであれも株式会社、関西新空港も株式会社にしました。もっとも国も相当な金を出してやることにはしてありますが、しかし、これによって民間の経営の活力あるいは能率性を活用しようと、成田の公団の問題をよく見まして、関西では別の方式をとった。それと同じように、西戸山の問題もこれは会社がやるのがよろしいと私は考えました。しかし、適格であるかどうかというそういう問題があります。そこで、大蔵省理財局等でいろいろ検討をいたしまして、そういう方向で可能性ありやなしやということで指導もし、また今それを見ていると。それをやるについては、あの土地をどう活用するかという問題で、私も、これは第一号ですから、ぜひ民間の力を活用したやり方で成功さしたい、そう思いまして大蔵省の諸君にできるだけ民間の活力でいくという当初の方針に沿ってやるようにと、そういうことを言って督励してきたところであります。民間がたしか二十八億でございましたか、資本金をつくって、会社をつくって、そしてそれを行えるような体制づくりを今やっているということを知っております。
  253. 安武洋子

    安武洋子君 では、総理は、この新宿・西戸山の開発、これは今おっしゃった新会社に行わせると、こういう意図をお持ちなわけでございますか。
  254. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) お答えいたします。  新宿・西戸山の国有地の有効活用、民間の活力を活用してと、ただいま総理からおっしゃられたとおりの方向で進めているわけでございますが、これにつきましては、先ほど申し上げました公務員宿舎問題研究会、その中間報告におきまして、進め方といたしまして、まず一つは民間の多くの適格な企業の連合体、特定の企業がやるということではなくて、そういう連合体でやるのが適当であろうと、こういうことか言われております。それからもう一つは、この場所からいいまして、また敷地の規模からいいまして、あるいは環境からいいまして、やはり公益性の高い事業としてこれをやっていただくのがよかろう、それには都市計画事業として、そういうことで進めていくというのが望ましいと、こういうふうにされております。  そこで、今おっしゃいました新宿西戸山開発株式会社は、この中間報告に、ございます民間連合体、こういうものとして、それに即したものとして設立をされたものでございます。したがいまして、現在いろいろその事業の進め方につきまして勉強をしておられるところでございますが、ここがこの事業主体としてなるかどうかということに関しましては、私どもは、先ほど申し上げました都市計画事業として進められ、この会社が都市計画事業の施工者として東京都知事の認可を受けられれば、それをやっていくことは可能になると、こういうふうに理解をしているところでございます。
  255. 安武洋子

    安武洋子君 総理にお伺いいたしておりますが、総理はどうなんでしょうか。
  256. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あそこは新宿の西で非常に便利ないいところで、たしか戸山ヶ原の練兵場と言われたところです。それが三万平米も広いところに公務員宿舎が能率的に建っていないんです。たしか四階ぐらいの、耐用年数がもう二十年ぐらいたっている。それで、あそこへ新しい計画をつくって、住宅地域とか、あるいはこれからの計画によるのでしょうが、公園を一部つくるとか、あるいは文化ホールをつくるとか、そういうことであの辺を一つの新しい都市計画地域として開発して、しかも公務員宿舎もその一部に建て、また東京都民の住宅区域もそこへつくって高層化すれば土地の利用が非常に高度化される。それも国の金を使わないで民間の金を使ってやれるようにすれば、それだけ景気もよくなる、そういうような考えを基本にして大蔵省がいろいろ計画を進め、またいろんな諮問機関の意見も聞いて進めておるというところです。まあその会社がやれるかやれないかということは適格なりや否やと、そういうことでありまして、私は国の金を使ってやるよりもこういうことは民間の金を使ってやった方がはるかに景気の拡大やあるいは能率的でいいのではないか、そう思っております。
  257. 安武洋子

    安武洋子君 大蔵省に聞きます。この会社に新宿・西戸山の土地の払い下げ、これをもう決められたのでしょうか。
  258. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、この会社が中間報告で言われております民間連合体、それに即するものとして設立をされております。この事業体が先ほど申し上げましたように都市計画事業の施工者として認可を受けるならばここに土地を売り払うことが可能になる、こういうふうに私どもは考えております。
  259. 安武洋子

    安武洋子君 要するに決定をしていないということなんですね。ところが、はっきり払い下げも決定していないというのに、大変おかしいと思うんですけれども、ここに私は新宿西戸山開発株式会社の会社設立のあいさつ状を持ってきております。これによりますと、「新会社は新宿・西戸山地区における公務員宿舎用地の有効活用を図り高層住宅の建設分譲を行うことを目的としており」、こうはっきり書いてあるわけです。払い下げも決定していないのに私は大変おかしいことだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  260. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) この会社は、ただいまお話のございましたようなことを目的として、民間各社が集まりまして自発的に設立をされたものでございますが、この会社が、先ほど申し上げました都市計画事業の施工者たらんとしてそういうことで設立をされ、そういうことで会社として進められている、こういうふうに私は理解をしております。
  261. 安武洋子

    安武洋子君 いずれにしても土地の払い下げが決定もしていない、だけれども、こういうあいさつ状を出しているというのはやはり私はおかしいと思います。  総理にお伺いいたします。ことしの一月九日、これは中田乙一、新宿西戸山開発株式会社の社長さんですけれども、官邸で会われたのではないでしょうか。そしてそのときに総理は、ここのところをやらせるよというふうなことで内諾とかお墨つき、これを与えられたのではないんでしょうか。
  262. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうものは別に言ってはおりません。区長さんがお見えになりましたのはそういう……
  263. 安武洋子

    安武洋子君 区長じゃないですよ、社長ですよ。
  264. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 社長が来たということは余り記憶ありません。
  265. 安武洋子

    安武洋子君 西戸山開発株式会社の社長さん、来られたんでしょう。
  266. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはよく記憶にありませんが、あるいはあいさつに来たかもしれません、会社ができたということで。
  267. 安武洋子

    安武洋子君 じゃ、そのときに内諾をしたんじゃないですか。
  268. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そんなことはありません。要するに、その会社は西戸山の地域を開発することを目的としてつくられたとは思います。しかし、それがやれるかやれないかということは、これからの業績によって周囲の住民やあるいは区長さんや区議会の了解とか、あるいは都市計画上の諸般の手続が済むか済まないか、適格であるかどうか、そういうことによるのであって、そういう努力を開始する基本の会社が生まれた、そういうことであると思います。そういう意味であいさつに来たのだと思います。
  269. 安武洋子

    安武洋子君 まだどちらにしても決まっていない、そして決まるかどうかもわからない、その資格が得られるかどうかもわからない、こういうことははっきりしているわけです。  ところが、五十九年三月五日の日刊工業新聞で、この新宿西戸山開発株式会社の中田乙一社長、これは総理は覚えていらっしゃらないらしいですが、一月九日に総理官邸に総理を訪ねておられます。この方は、「焦点に立つ人」という欄がこの日刊工業新聞にありますけれども、ここで新宿・西戸山の公務員宿舎用地の開発構想をちゃんと述べておられるわけなんです。私は、こういうことは総理のお墨つきあるいは内諾、こういうものがなければできないことだと、こういうふうに思いますが、いかがお考えでしょうか。
  270. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) お墨つきとか内諾を与えたことは絶対ございません。ただ、あそこを開発するについては民間の資本、民間の経営力、民間の知恵、そういうものを使って効率的にやろうということは考えて、その方針のもとに大蔵省理財局を中心に関係各省相談して進めなさいと、建設省あるいはそのほか一緒になって進めているという状態であります。それで、今のお話のように、大蔵省理財局等が中心になって諮問委員会をつくって、そしてその答申に基づいて仕事が進められておる。問題は、その会社ができたにしても今のような都市計画の認可を得るか得ないか、周りの住民の了解とか区議会とかいろんな問題があるわけです。そういういろんな障害といいますか、それをいろいろ乗り越えて、そしてやれるかどうかというところにかかってきていると、そのように思います。
  271. 安武洋子

    安武洋子君 じゃ、総理は、要件が整えばこの新宿西戸山にやらせること、これを考えてなさるわけですか。
  272. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が許可するとかしないとかという権限はないのであって、それぞれ建設省とか東京都とかあるいは区とか、いろいろな分散したそれぞれの権限あるいは認可、それぞれの仕事があるんでしょう。それらが適格であると認定するか否か、そういうことにかかっているだろうと思います。
  273. 安武洋子

    安武洋子君 だから私は先ほどから何度も言っているわけなんです。総理が後ろ盾になっておられない限り、こういう会社ができた、しかし何も払い下げも決まっていない、あいさつ状が出ております。それだけではないんです。この新宿西戸山開発株式会社、新会社の田村専務ですね。これは宿舎用地の建設プランの図面を持って新宿区役所に相談にも行っているわけなんです。一体何の権限、資格があってこんなことをやってよいものなんでしょうか。普通こういうことができないはずなんですね。
  274. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) この会社は、先ほど来申し上げておりますように、中間報告に述べられております適格な民間連合体と、こういうものに即して立てられ、ここの地域の事業を民間活力を発揮しておやりになろうと、こういうことでやっておられるわけでございますので、そういう会社の活動として自分のところはこういうプランがあると、そういうことで関係の地元の地方公共団体等とお話し合いをしていくということはこれは不自然なことではございませんで、一般に土地の売り払いの決定を受ける前の段階から地元との調整ということをおやりになるということは間々あることでございます。
  275. 安武洋子

    安武洋子君 都市計画さえとれればもうここにやらせるということを最初から既定の事実にして物事を進めていらっしゃると、こういうことははっきりいたします。現に中田社長は、「焦点に立つ人」、こういう欄で、開発の中身とか譲り受け方、ここまでしゃべっていなさるわけなんです。  そこでお伺いいたしますけれども、新宿・西戸山の用地の払い下げの契約方式、これは随意契約で行われるおつもりなんでしょうか。
  276. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) 国有地の売り払いは、一般原則としましては競争入札でございますが、一定の要件のある場合には随意契約で売り払いをしております。幾つかの特定の場合にそういう随意契約ができることとされておりますが、その一つとしまして、公用、公共用、公益事業の用に供する場合と、こういうものがございまして、その公用、公共川、公益事業の用に供する場合、その一つとしまして、都市計画事業の認可を受けた事業者が直接その用に供する物件を回から売り払いを受けるという場合には随意契約によることが可能である、こういうことでございます。
  277. 安武洋子

    安武洋子君 可能かどうかということを聞いているんじゃありません。ここは随意契約で行うつもりかどうかということを聞いております。
  278. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) 都市計画事業の認可を得、地域にとりまして大変公益性の高い事業を行うということでございますれば、これにつきましては随意契約で売ると、こういう方法が一つの有力な方法であろうと、こういうふうに考えております。
  279. 安武洋子

    安武洋子君 都市計画なんてないんですよね。  それで聞きますけれども、国有地の民間払い下げの場合、これは一般競争入札が原則です、いまおっしゃったように。どうして随契でもやれる、こういうことになるんでしょうか。都市計画、ありませんよ。
  280. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) お答え申し上げます。  一般競争入札による場合と随意契約による場合とがございますが、随意契約による場合といいますのは、先ほど申し上げましたように、用途を公用、公共用、公益事業、あるいは特別にその土地と深い縁を持っておられる方、そういう方々に売り払う場合その他の場合がございますが、いずれにしましても、その者に使わせることが最も効率的であり、あるいは最も公益に資すると、こういうことで随意契約の制度があるわけでございます。
  281. 安武洋子

    安武洋子君 これは会計法上も国有財産中央審議会の答申でも、原則は一般競争入札のはずなんです。この原則をねじ曲げる、そして新会社に何とか随契で用地を払い下げる、こういう可能な道をもうへ理屈を並べて一生懸命考え出していらっしゃる、こういうふうにしか思えません。最初にもう随契をするんだと、随契ありきというやり方ではないでしょうか。  私は総理にお伺いいたしますけれども、総理は常々自由競争の尊重、これを主張なさっておられます。国有財産というのは国民の共有財産です。この国民の共有財産である国有財産、これは競争原理が働かない形で特定の民間企業に払い下げるというようなことは、これは好ましくないんじゃございませんか。
  282. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今の新宿・西戸山のような場合は公益性が高い、言いかえれば都市再開発事業でもあり、かつ住宅とかあるいは今後の計画によって緑を入れるとかあるいは文化センターが一部入ってくるとか、そういうことで住民の利益あるいは都市の最親等からも好ましいものが出てくると思うのです。それを国がやらないで、国がやれば非能率でまた役人をつくらなければいかぬ、そういうことですから、できるだけ民間にやらして、民間のお金を使って、銀行やあるいは保険会社の金を使ってやらせればこれはいいやり方で、私が前から言っておる民間活力のやり方なんであります。  そういうことをやるためには、その主体になるものがしっかりとした母体でなければこれはできっこない。いまのように、いわゆる都市開発者、デベロッパーの皆様方が大勢集まって、そしてこれは疑問を持たれないように公正なやり方でみんなでやろうと、恐らくそういう形でみんなで相談をして、そしてそういう会社ができたのだろうと思います。一社とか二社でやるんじゃなくて、みんなでやってみて、開発して、それが成功すれば全国的にも同じようなやり方でどんどん伸びていくという芽もできる。私は、そういうことを全国的にこれを民間活力でやりたい、国の土地も鉄道の持っておる土地も、できるだけそういうやり方で民間の知恵と金を使ってやるとぎにきている、そういうことを申し上げておるので、そういう形で今動き出していると思うのです。しかし問題は、いかに公共性があるか、また都市計画として適当であるかどうか、そういう認定を受けるかどうかということなのであろうと思っております。
  283. 安武洋子

    安武洋子君 総理、おかしいじゃありませんか。民間にやらせる、民間活力だ、こうおっしゃる。そして疑問を招かないように、そして公正にやるんだ、そうおっしゃるなら、なぜ原則を曲げないで、原則どおりこれは一般競争入札になさらないんですか。競争原理も働きますし、一番公正ではありませんか。
  284. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) お答え申し上げます。  今考えられております新宿・西戸山地区の事業、これを再開発し有効に使っていこうという事業は、やはり地域にふさわしい都市計画事業として行われることが望ましいわけでございますので、そういう場合にこれを競争入札ということはちょっと考えられないわけでございまして、しっかりとした、そして多くの会社が集まって連合体として行っていく事業者がそういう認可を得られるならば、これは競争入札によるよりはそういうふうにやっていただくということが当然考えられる、こういうふうに私どもは考えております。
  285. 安武洋子

    安武洋子君 国民の共有財産を預かる者がその処分の大原則を平気でねじ曲げる。今のは私はへ理屈にすぎないと思いますよ。  お伺いいたしますけれども、公務員宿舎というのはこれは国が新しく建てかえるんでしょうか、それとも民間が建てるんでしょうか。
  286. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) お答え申し上げます。  新しくあそこの場所の、新宿・西月山の地域の一部に高層化して建てかえようと考えております公務員宿舎は、まずは国が建てる、こういうことが考えられます。あるいはまた買い取るという方法もあるかもしれません。どういうことを考えていったら最も経済的に有益であるか、こういうことを考えておりますが、十分今後ともそのやり方を考えていきたい、こういうふうに考えております。
  287. 安武洋子

    安武洋子君 総理にお伺いいたします。  総理先ほどから、国の金を使わずにということを盛んにおっしゃっておられます。我が党の不破委員長への答弁でも、国の金を使わずに公務員宿舎や住宅もつくる、こういうふうに言っておられますけれども、これはどういうことでございましょうか。
  288. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) つまり、最初申し上げましたように、臨調答申も尊重し、行財政改革もやっておって、国の金はできるだけ節約して、そして民間の活力、民間の金を活用しよう、それが新しい成長への道であると私は施政方針演説の中でも言ってあります。それを実行するために今こういう西戸山の公務員宿舎というものの建てかえという問題が行われておるわけです。
  289. 安武洋子

    安武洋子君 西戸山のこの公務員宿舎は国の金を使わないで建てよう、こういう意味にとってよろしゅうございますか。
  290. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) 新宿・西戸山の地域の約三万平米、この土地の一部において公務員宿舎を高層建てかえをし、それにより生み出されます土地を民間に売り払いたい、その売り払い代金を財源として高層化した新公務員宿舎をつくっていきたいと、こういうことでございます。
  291. 安武洋子

    安武洋子君 じゃ、大蔵省にお伺いいたします。  この本件に関する来年度予算ですが、この関連予算の金額と内容、これを説明してください。
  292. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) 本件にかかわります事業費につきましては、現在御審議をちょうだいしております五十九年度予算案の特定固有財産整備特別会計におきまして、歳出予算としまして三十四億八千五百万円を計上いたしております。また、本件につきましては、事業が数カ年にわたる予定でもございますので、五十九年度におきまして、五十九年度及び六十年度の事業費の一部につきまして国庫債務負担行為十二億二千六百万円を要求しております。
  293. 安武洋子

    安武洋子君 もう少し中身をきっちり言っていただけませんか。
  294. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) 中身につきましては、どういう事業かと言いますと、新宿住宅の建てかえ高層化によりましてこの地域に新しい高回化した住宅が建てられるわけでございますが、それと関連をし、宿舎に現在入っている方々の移転用、こういうこともございますので、その近くの場所に百人町住宅というのがございますが、これを建てようとしております。そういう百人町住宅の宿舎の建設費、あるいはこの両宿舎に隣接をします土地を一部買いたい、そして有効に利用したい、こういうこともございますので、建物建設費、土地建物購入費等々を計上しているものでございます。なお、新しく建てようとしております西戸山住宅の建物建設費は、五十九年度中にはまだ契約する段階には工程からいきまして至らないだろう、こういうことでございますので、その分は計上いたしておりません。
  295. 安武洋子

    安武洋子君 何か、つるつるつるつるとおっしゃいますけれども、これはちゃんと見てみますと、来年度の予算の三十五億、この内訳ですけれども、これは一つは立ち退かせた公務員の代替宿舎の建設費なんですよね、新住宅建設費。それから西戸山地区に公務員宿舎を集約する、そのためにわざわざ金融公庫住宅に住む人を追い出してしまう、その土地三千平米を買収する費用だと、これが一つあります。それから西戸山集約化に伴う独身寮の建設費用、これも含まれております。それから公務員宿舎を建てるB地区の調査費、この設計費も含んでこの調査費が計上されているということなんですね。  私は、総理にもよく固いていただきたいんです。民間に有利にこの土地を払い下げるために公務員宿舎をB地区に集約する、そのためにわざわざ隣接の金融公庫住宅、ここに住む人を迫い立てる、その土地三千平米をちゃんと買い取る、そういう費用をわざわざ組んでいるわけなんです。私は、これは新しい会社に仕事をさせるその条件整備を国のお金でやってやっている。普通なら立ち退き料も要りますよ。それもちゃんと国のお金でやるわけでしょう。総理先ほどから、国のお金は使わないで公務員宿舎も建てられるんだ、こういうふうにおっしゃいますけれども、すでに三十五億も組んでいるではありませんか。それも隣のわざわざ金融公庫住宅に住む人を迫い立ててまで三千平米の土地もちゃんと買収する、そういう費用も組んであるじゃないですか。これはどう思われるんでしょうか。
  296. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは共産党が商売というものを知らないからそういうことを言うんだと私は思います。つまり、あの土地をとこか適格者に売ればそれは相当なお金が入るでしょう。大井の操車場だけでもこの間一千億円の入札があって、高過ぎるというので問題がちょっとありましたね。新宿の場合は幾らになるか知りませんが、相当なお金が国に入るでしょう。その一部で先にその引っ越しの場所をつくっておいてやらなければ、あかないじゃないですか。それからあの辺全体を、西戸山に緑を入れたり、あるいは状況によっては文化センターを入れたり、あるいは民間の住宅地域、あるいは公務員の住宅地域というふうにつくっていくためには、それは国がやっぱり公務員を住まわせなきゃならぬのですから、公務員の引っ越し場所も要るし、全体としての美観やら都市計画のためにこの場所はふやした方がいいという場所が今のその場所ではないかと私は思うんです。それで、それが可能であるならば、全体としてようよきものにするために買い増しするということだって十分あり得ることなのである。そういう点は共産党のお方にはよくわからないのだろうと思います。
  297. 安武洋子

    安武洋子君 総理、それほどよくおわかりなら、なぜ競争原理の働かない方法で、随契などというふうな形でこの新会社にこの土地を払い下げなさろうというふうなことをされているんでしょう。総理は自由競争尊重と常々そうおっしゃっているではありませんか。自由競争でやれば、先ほど例に挙げられたあの大井の操車場のように高くも売れるというふうなことにもなるんじゃありませんか。いかがですか、総理
  298. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) 先ほど来申し上げておりますところでございますけれども、こういう公益性の高い事業を行うのには、それなりのそういうしっかりとした事業者、こういうところにやっていただく、こういうことでございますので、随意契約ということに法制的にも許されており、そしてまたそういうことが考えられるわけでございます。先ほど安くというお話がございましたが、随意契約により売り払いをいたします場合でも、これは適正な価格、時価でこれは売り払いをするわけでございます。
  299. 安武洋子

    安武洋子君 公益上が大変優先される。じゃ、公益上考えるなら、なぜ一般競争入札がだめなんですか。どこに一般競争入札が公益性を損なうというところがあるんですか。
  300. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) お答え申し上げます。  一般競争入札でございますれば、だれでもこれは入札に参加することができるわけでございまして、適格な方がなられるかどうか、こういうことはよくわからないわけでございまして、しっかりとした連合体でやってもらいたいという中間報告、こういうものを尊重をし、かつまた民間の事業者が都市計画事業をやろうという場合に、これは都知事の認可も要るわけでございますから、なかなか一般競争入札というのにはなじまない、こういうものでございます。
  301. 安武洋子

    安武洋子君 大体、国有財産の払い下げの原則というのは何なんですか。そして国有財産中央審議会、これは随契でやれという答申を出したことがございますか。
  302. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) 国有財産の売り払いの、あるいは管理、処分の原則は、やはり国有地を有効に活用する、できるだけ公益性の高いものに使っていくと同時に財政収入を確保していこう、こういうことでございます。それから、国有財産審議会がということがございますが、私ども国有財産の随意契約をどういう場合に考えていったらいいかということについては、かねがね国有財産審議会にも諮問をし、答申もちょうだいし、それに沿ってやっているところでございます。
  303. 安武洋子

    安武洋子君 いつの間に固有財産の払い下げの原則はそんなおかしいことになるんですか。これは会計法でもちゃんと決まっているんじゃありませんか。会計法でも、これは一般競争入札ということになっているんじゃありませんか。
  304. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) 会計法のお話がございましたが、会計法ではその第二十九条の三におきまして、まず第一項におきまして、「第三項及び第四項に規定する場合を除き、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない。」、こういうふうに規定をしておりまして、第三項、第四項というのがございます。第三項におきましては、「契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数」、そういうことで「政令の定めるところにより、指名競争に付するものとする。」、また同様な場合につきまして、「政令の定めるところにより、随意契約によるものとする。」、こういうふうにされております。さらに第五項におきまして、「契約に係る予定価格が少額である場合その他政令で定める場合においては、」「指名競争に付し又は随意契約によることができる。」と。この第五項に基づきます政令といたしまして、予算決算及び会計令、これの九十九条で「随意契約によることができる場合」が掲げられておりまして、その第二十一号に「公共用、公用又は公益事業の用に供するため必要な物件を直接に公共団体又は事業者に売り払い又は貸し付けるとき。」、こういうことがございます。さらに、百二条の四におきまして、このような場合については、あらかじめ国庫大臣である大蔵大臣と協議をしなければならない、こういうことになっておりますが、先ほど来申し上げております都市計画事業者がその物件を直接事業の用に供するという場合につきましては国有財産審議会にも御審議をいただき、あらかじめこういう場合は協議が調っておる、こういうことで随意契約ができる、あるいは随意契約による、こういうことに相なるわけでございます。
  305. 安武洋子

    安武洋子君 これはあくまでも原則は一般競争入札なんですよ。この随意契約というのは、「よることができる。」というふうな、義務規定でない。だから私は先ほどから何度も申し上げておりますけれども、随意契約で落としたいばかりに、この原則をねじ曲げてまでも随意契約だ随意契約だと、そこを探してなさるということで、私はこういうやり方というのは本当に大原則を国有財産を預かる者がねじ曲げている、そういうことであるということを申し上げておきます。  ここで、関連をお願いいたします。
  306. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 内藤功君の関連質疑を許します。内藤君。
  307. 内藤功

    内藤功君 共産党は商売のこともよく調べ、また法律制度もよく調べて質問をしておりますので、一言申し上げておきます。  先ほど、入居者の立ち退きに関する御質疑また御答弁がありました。そこで、今問題の新宿・西戸山の公務員住宅に現在入居しておられる方にとりましては全く突然の話だったわけですね、大臣。私自身も二度にわたりましてこの現場を足で歩いて調査をしまして、関係者の方のお話も聞いてまいりました。その中で特に深刻なのは、中学二年生、三年生などというお子さんを抱えておられる家庭であります、おわかりになると思うんですが。  私は、まず大蔵大臣に基本的なことをお聞きしたいと思うんですが、このような居住者の意思それから要望をどのように聞いて、またこれを取り入れてこたえていこうとするのか。人間でありますからね、ここに住んでおられるのは。この基本姿勢を伺いたい。  なお、理財局の事務当局の方には、その具体例としてお伺いしたいのは、一つは、同一の区内、同じ区内での居住をあくまで強く希望する人にはどのように対応されるか。もう一つは、建てかえ後戻って入居したいと希望する人があればどう対応されるか。例としてこれについての基本的態度をお伺いしたい。これは事務当局だけではなくて、基本姿勢は竹下大臣にもお願いをしたいと思います。
  308. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) この西戸山住宅の現入居者の問題は、最初だれしも考えることです。特に我々が平素顔を合わす公務員の諸君、大体年齢を見ますと、子供さんが中学校ぐらいかなというような人もたくさんいらっしゃる。したがって、我我、懇談会等でもそういう方々ともいろいろ話してみました。そうすると、一時宿舎をこちらへお移りになると学校をかわらなきゃならぬ問題があるとか、いろいろな問題が個々によってはもちろん、今おっしゃったように、住んでいるのは人間だとおっしゃいましたが、まさに人様でございますから、それは個々によっていろんな問題があるわけであります。そういうことを十分我々この計画については議論をいたしてきたところであります。したがって、建てかえ中におきます入居者の移転を円滑にすることに十分意を用いてまいりました。関係省庁に対しても移転先の宿舎の配分をしますとともに、入居者の事情をも配慮して、これに適切に対処することにするということを原則的に行おうというわけであります。
  309. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) お答え申し上げます。  現在、新宿住宅なり西戸山住宅に住んでいる職員の方々、建てかえ中ほかに移っていただくわけでありますが、その建てかえ中はほかの宿舎を用意する、こういうことで進めております。同一区内というお話がございましたが、必ずしもそういう事情にはまいらないかと思いますが、都内、極力二十三区内、そういうようなところで移っていただけるように関係省庁とも十分相談をいたしまして、配意をしてまいりたい。そのことによりまして、公務遂行に支障を生ずることのないように十分気をつけてまいりたいと、こういうふうに思っております。  それから、新たな立体高層化して建てかえられました住宅に再び再入居、こういう御希望のある場合と、こういうことでございますが、これにつきましては、十分関係省庁ともお打ち合わせをいたしまして考慮してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  310. 内藤功

    内藤功君 もう一点お伺いしたいのであります。これは大蔵大臣及び総理にもお伺いをいたしたいと思います。  実はこの新宿・西戸山地区は、地元の区の計画によりますると、四万八千人の人を対象とする避難広場を構想しておるのでございます。昨年の九月十九日、突如出された研究会なる私的諮問機関の中間報告に接しまして、十月一日に新宿区議会は全会派一致して反対決議をしたということであります。この区は三十二万七千二百人余の住民を擁しておる大きな区でありますから、この議会の決議は大きな重みがあると私は思うんであります。竹下大蔵大臣あての議長名の決議文書には、この構想、つまり国有地を払い下げて、でかいやつを建てるというこの構想は、新宿区の二十一世紀に向けての総合的に調和のとれた町づくりに重大な影響を及ぼすおそれがあると、かように明確に述べております。この構想は都市計画事業としてやるのが望ましいと、こう言われておりますけれども、それならば当然地元の議会のはっきりした、明示された全会派一致の意思というもの、それから住民の意思、この近所にはさっきお話しのように木造の六百戸ぐらいの住宅がありますよ。こういったところの意思に反して強行することはできないはずです。  総理と大蔵大臣に伺いたいが、今総理は、新宿西戸山開発KKが立てておるこういう構想は、地元の意思というものに反して強行できない、独行すべきでない、強行してはならないということを、再度私は御確認をしていただきたいというふうに思います。大蔵大臣から。
  311. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今、御指摘になりましたように、去年の十月一日に東京都新宿区議会議長さんから、大蔵大臣竹下登として、あの要望書をちょうだいしております。この事業の実施に当たりましては、地元公共団体であります新宿区と十分調整を図っていかなきゃならぬということはこれはもう当然のことであります。この構想では、住宅用地としてより効率的な利用を図りながら、今後の地域における町づくりにふさわしい都市計画事業として実施されることが望ましいという基本的考え方を持っております。その実現方を今日地元公共団体等にお願いしております。したがって、その過程において、地元公共団体の調整が十分私は図られていくものであろうというふうな期待を持っておるところであります。  それで、要するに十月一日でございますが、九月十九日に都心における公務員宿舎の高層化による用地の有効活用についての構想を見たと。十月一日に要望書を持っていらしたと、こういうことになっているわけでありますが、このようなことは間々あることでございます。しかし、大事な議会の要望書でございます。それは十分踏まえておりますが、私はこの都市計画という基本的な考え方でアプローチしていけば合意に達するであろうということが十分期待でき得るプロジェクトであるというふうに期待をしております。
  312. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり地元の自治体の御協力を得てやることが必要でありますから、御協力を得るように、御了承を得るように、努力して行うべきものであると考えます。
  313. 安武洋子

    安武洋子君 この払い下げを予定しております新宿地区二万一千平米ですけれども、これは売却をするんでしょうか。等価交換という方式でやるんでしょうか。
  314. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) 私どもはこれを売り払う、こういう方法で処分をしていきたいと、こういうふうに考えております。
  315. 安武洋子

    安武洋子君 おかしいですね。中田乙一新宿西戸山開発社長、この方は五十九年三月五日付の先ほども申した日刊工業所閥、ここで国との等価交換という形になる、こう言っておられますが。
  316. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) これまで会社とお話し合いしている過程でそういうお話を出されたこともございますが、私どもは、これは売り払いで生み出された用地は、民間に売り払いで処分する、こういうことで考えております。
  317. 安武洋子

    安武洋子君 資料を配付さしていただきます。
  318. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 急いで配付してください。    〔資料配付〕
  319. 安武洋子

    安武洋子君 今、何ですか、もう会社とそんなところまで話をされているということで、けしからぬと思います。  ここで一部報道もされておりますけれども、業界では等価交換だというのがもっぱらのうわさでございます。公務員宿舎を建設するかわりに、集約してあげた土地、これを払い下げるというふうな等価交換が行われますと、資料を見ていただきますとわかりますように、四百戸の公務員宿舎、これは約四十億から五十億、これぐらいで建つと思いますけれども、二万一千平米の土地というのは、近隣の取引事例を当てはめてみますと、幾ら安く見積もりましても百五十億から百六十億になる。これは例2のところで挙げております。例3も挙げておりますけれども、こういうふうになりますと百四億円から百四十二億円と、こういう不等価交換になってしまうわけです。まさかこんなことは考えていないと思いますが、いかがなんでしょうか。
  320. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) ただいまの資料は初めて拝見したのでございますけれども、私どもは等価交換というようなことではまず価額的にもならぬだろうと、こういうふうに考えております。
  321. 安武洋子

    安武洋子君 まあ都心のまとまった土地で容積率も三六八%というふうになりますと大変価値のあるところで、この取引率例よりもうんと高くなるというふうに思います。中田社長は土地価格の評価がもうけの採算点を決める、利潤を上げるのは当然だと、こう言っておられるわけなんです。会社のもうけを保証するために私は不当に安く払い下げなどをすべきでない、こう思いますけど、いかがでしょうか。
  322. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) 先ほども申し上げましたとおり、私どもはこの土地を適正な対価、時価で売り払う、こういう方針に変わりはございません。
  323. 安武洋子

    安武洋子君 総理に確認いたしますけれども、この計画は総理が指示されて始まったと思いますが、いかがでしょう。
  324. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、国有財産を売却して税外収入を多くせよ、そういうことを大蔵省にも指示して、予算編成の際にも極力やったわけです。増税なき財政再建を実現していくというためには、歳出歳入構造の見直しをやる、さらに税外収入をふやす、そういうことを言って、大蔵省に対しましても、できるだけ税外収入を多くして税金を取るのを少なくするようにと、そういうような指示をして、そういうかげんでこの西戸山の国有財産も、あの膨大な土地に公務員宿舎が、我々東京都民から考えればぜいたくに建てられております。あの広い膨大なところにわずか四階ぐらいの、新宿のあのど真ん中の近くに四階でつくられておるという程度で、庭も広いし、もったいない、あれは市民に開放すべきである、それで公務員住宅はあの隅っこの方へ持っていけばよろしい、あそこを高くして、そしてあいたところは今度は都民に開放して都民の住宅をつくれ、それがいいだろう、そういう構想を私は実は確かに持ったんです。それで大蔵省に相談をいたしまして、国有財産の活用の一環としてあれはどうだろうかということで、大蔵省がいろいろ検討を始めて今のようないろんな動きをやった。着想の中に私が一つの原因であったということは事実であります。
  325. 安武洋子

    安武洋子君 総理が指示されて始まったということはよくわかりました。  総理、国有地とか国鉄の有効活用を決めました推進本部、これが発足したのは五十八年十月二十一日です。ところが、理財局長の私的諮問機関、公務員宿舎問題研究会、これはその二カ月前の五十八年八月の九日です。そして九月十九日には早早と中間答申、これが出ております。その後は開かれておりません。そして、新宿・西戸山公務員宿舎の問題をここの九月十九日の中間答申で打ち出したわけです。お伺いしますが、なぜ国有地等有効活用推進本部、この推進本部で扱わないで新宿・西戸山問題だけ切り離して突出、先行、こういうことをなさるんですか。
  326. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、その国有地を活用しよう、そしてできるだけこれを売って国の収入を多くして、そして減税の資にしようと、そういうような考えもありまして、今言ったように大蔵省に検討を命じたと。そして、西戸山がありますと、大蔵省及び通産省の方からもそんな話がありまして、じゃそれを検討してみなさいというので始まりましたが、私はこういう性格だから、どんどん早くやれと。今まで役所の仕事というものは、ああいうものをどういうふうにやったらいいかというような場合に少なくとも一年とか二年ぐらいかかります。それではいかぬ、時は金である、利子がつくんだと。そういうことでどんどんやりなさいと大蔵省にハッパをかけた。大蔵省もそういう私にハッパをかけられて、今のような民間研究団体をつくってやったんでしょう。今のあなたが配った資料を見ると、一カ月に五回会議をやっていると。
  327. 安武洋子

    安武洋子君 六回。
  328. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 六回。あの暑い夏の間に六回もやっているというのは、一年分やったことになりますよ。普通の審議会や何かでしたらほとんど二か月に一遍くらいしかやってないんですから。それをともかくスピードアップして、そしてその人たちが自分の社のコンピューターとかあるいはアイデアマンを使って、いろいろ日貨で恐らくやったんじゃないですかね。それで、そういう大体の方向と計画と見通しができたということを私は理財局から聞きました。それで私は感じたのは、ああ、こういうやり方があるんだなと、これを全国的に広げたらいい、札幌でも仙台でも福岡でも名古屋でもやらしたらいい、そうすれば民間の資金が動員されるし、外国へ民間の資金が流れることもなくなる。そういうことで、しからばこれは正式にちゃんと体制をつくってやらなければいかぬと。それで内閣に推進本部もつくり、また内閣の審議会やそのほかでシステムをつくって、そして正規のシステムとして取り上げていったと、そういういきさつでございます。
  329. 安武洋子

    安武洋子君 もっともらしく聞こえますけれども、夏の暑い間にどんどんやったのは、私は先ほどの予算、これとの関係があるんじゃなかろうかと思いますが、資料をごらんいただきたいんです。経過を見ても非常に異常なことが多い。まずそのスピードの速さ、これは八月に宿舎問題研究会が発足すると、一カ月半後に答申が出る。そして新宿・西戸山の公務員宿舎用地の民間開発、これが打ち出される。そのまた一カ月半後に新宿西戸山開発株式会社という新会社が設立されております。この間わずか四カ月、超スピード、猛スピード。それもそのはずなんですね。宿舎問題研究会専門部会のメンバー、これに入って計画をつくった開発不動産会社七社中七社全部が新会社の設立発起人になっております。そしていずれも新会社の役員になっております。自分で決めて答申を出して、そして自分でその受け皿の会社をつくるというんですから速いのも当たり前ですし、全くの自作自演、お手盛り以外の何物でもないんです。公然たる公の舞台での談合だと、こう言われても仕方がないのではないかと思います。大蔵省、この経過、メンバー、間違いございませんか。
  330. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) 公務員宿舎問題研究会は、この新宿・西戸山住宅、この地域を何とか民間のお知恵もおかりをしながら、また有効な活用の方策を知恵を出していただきたいということで私どもが研究会として組織をしたものでございますが、そのメンバーにつきましては、このいただきました資料では会社名で書いてございますが、私どもはむしろ学識経験者と、あと事業をやっておられる方、その方々の個人的なといいましょうか、その人のノーハウあるいはお考え、そういうものをちょうだいしたい、こういうことで人選をしたものでございます。ここには全部が概括的に書いてございますが、正確に申し上げますと、研究会はまず、大塩洋一郎氏、小幡琢也氏、川上秀光氏、安藤太郎氏、石川六郎氏、江戸英雄氏、中田乙一民、野地紀一氏、森泰吉郎氏。また、このワーキンググループとして専門部会、これを十二人の方にお願いをしておるわけでございますが、大塩洋一郎氏、小幡琢也氏、川上秀光氏、この御三方は両方に入っていただきました。そのほかに、稲本昂氏、小林幸雄氏、田中順一郎氏、成瀬宗氏、野崎清敏氏、野島吉朗氏、長谷部平吉氏、森稔氏、横山修二氏、こういう方々に御就任をお願いいたしました。
  331. 安武洋子

    安武洋子君 あなたの私的諮問機関だから苦しいですね。それで私は聞きますけれども、この公務員宿舎の建設というのは、この専門部会のノンバーの鹿島建設と清水建設、ここがやることになっているんですか。
  332. 志賀正典

    政府委員(志賀正典君) 全くそのようなことは聞いておりません。
  333. 安武洋子

    安武洋子君 総理は、研究会のメンバー構成についても指示をなさったんですか。
  334. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いや、指示はいたしません。
  335. 安武洋子

    安武洋子君 じゃ、総理に重ねてお伺いいたします。  この新会社の社長で中田乙一氏、三菱地所の会長さんでございますけれども、総理は中田氏を御存じでしょうか。
  336. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 有名な人ですからよく知っています。
  337. 安武洋子

    安武洋子君 それだけでなく、ことしの一月九日の二時三十六分、中田氏は新宿西戸山開発株式会社社長名で官邸を訪問なさっていらっしゃるというのが「首相日々」に出ております。新会社はこの開発不動産大手会社がずらりと並んでおりますけれども、東京興産という資本金一億二千万、この会社が専務と取締役という二つの要職を占めております。代表権は社長と専務だけでございますが、社長は非常勤でございます。ですから、文字どおり専務が新会社の中心であって、新会社のこの中心というのは東京興産と、こういうことになるわけでございますが、総理はこの東京興産の野島吉朗社長とどのような御関係でございましょうか。
  338. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) だれが社長になり、だれが専務になり、だれが常務になったということは私は聞いておりません。恐らく株主が集まって皆さん方がお決めになったのでございましょう。  それから、野島さんという人は私は知っております。この人は東大を出てデベロッパーをやっておって、非常に見識のある、特に都市開発については外国やらあるいは日本の国内やらの問題について非常に権威のある若手の中堅であると承知しております。
  339. 安武洋子

    安武洋子君 この野島吉朗社長というのは、中曽根首相を支援する中堅財界人でつくっております山王経済研究会の幹事だと思います。総理は東京興産とその子会社の東興管理株式会社、ここから政治献金を受け取っていなさいますか。
  340. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今ここで表をいただきまして初めて見たのですが、これが事実であるかどうかは私調査してみないとわかりませんが、恐らく政治資金は受け取っておるであろうと思いますし、届け出を正規にしていると思います。
  341. 安武洋子

    安武洋子君 自治省にお伺いいたしますが、近代政治研究会、山王経済研究会、昭和文化協会、創造文化研究会、それから朋友会、これらの政治団体への東京興産とその子会社東興管理株式会社からの政治献金、各年度ごとの合計金額で七七年度から八二年度までの金額を言ってください。
  342. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) お答えをいたします。  ただいま御指摘のありました五つの政治団体から自治大臣に提出されております収支報告書によりますれば、御指摘の二つの会社につきまして、東京興産株式会社は昭和五十四年に百二十万円、五十五年に百二十万円、五十七年に五百九十万円となっております。また東興管理株式会社につきましては昭和五十七年に三百万円の報告があります。
  343. 安武洋子

    安武洋子君 野島吉朗社長とは、総理はことしの一月の二十一日、やはりお会いになっていらっしゃるんですよね。これも「首相日々」に出ておりますので申し添えておきます。  それで総理、近代政治研究会など先ほど挙がりました団体というのは、これは総理と関係のある政治団体だと、こういうことでよろしゅうございますね。
  344. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そこに書いてあるのが全部がどうかは私は知りませんが、私はいろんな面でいろんな人と接触もし、芸術関係、あるいは政治関係、あるいは経済関係、あるいは科学技術関係、あるいは対外関係、そういうような私の友人が入っていて、それらのまた目的のためにいろいろな団体もあると思っております。
  345. 安武洋子

    安武洋子君 今挙げられました八二年度の八百九十万ですが、このうち七百五十万までは十一月十八日に献金をされております。そのころ自民党の総裁予備選挙の真っ最中だと思います。私は、総理の指示を出発点としたこういう事業の受け皿になる新会社の中枢、この会社が総理の政治団体に献金をしている、こういうことがはっきりするわけです。総理はこの会社に国の金を使って条件整備をしてやって、そうして大変うまみのある仕事を回そうと、こういうことじゃありませんか。これはまさに民間活力に名をかりて、私は中曽根活力にほかならない、こう思いますけれども、いかがでしょう。
  346. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはとんでもない誤解でありまして……(発言する者あり)
  347. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 委員外の諸君はお静かに願います。
  348. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そんな私のことと公のこととを混同するような私ではありません。
  349. 安武洋子

    安武洋子君 混同をなさっていらっしゃるという状況証拠を私はずっと挙げてきたわけです。経過から見ても手続的に見ても、そして新会社の中枢を、しかも新会社というのは、私的諮問機関で答申を出したそれがそっくり新会社の受け皿になって、その中枢を総理に政治献金をしているところがしめている。だれが見たってこれは不忠議です。こういうことで私は、総理は混同してもらっては困るとおっしゃいますけれども、総理が混同なさっていらっしゃるんじゃないですか。
  350. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全くそういう事実はありません。
  351. 安武洋子

    安武洋子君 資本金二十八億円、この新会社が新宿・西戸山だけでおしまいというふうにも思えないわけです。中田社長は、「この事業が良いモデルとなり次に生かせることに意義がある。将来はこの会社が細胞分裂するとか、子会社を作っていけばよい。今後は官との仕事をこうした形で実施するケースがふえてくる」、こう言っておられるんです。そして総理はそれに呼応するように二月十五日、衆議院の予算委員会で、ともかくこれはモデルになるからこれを成功させて、そして全国同時多発にこういう方式があり得るということで推進しようと考えていると、呼吸ぴったりの答弁をされております。このように、新会社が細胞分裂する、子会社をつくる、こういうことで国有財産を舞台にして次々と新宿・西戸山方式で事業を掌中におさめていく、こういう事態になれば私はまことにゆゆしい事態であるというふうに思います。  私は、総理大臣たる者は、いかにそういうことはないと先ほど断言されましたけれども、状況証拠がそうなんです。だから何よりも身辺を清潔にする、国民からそういう疑いを招かない、そういうふうに身を処されるべきではなかろうか、直ちに私はこういう計画は見直すべきだ、このように思います。いかがでしょうか。
  352. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは官庁並びに公共団体の適正な監督のもとに、法律にのっとってその順序を経て正しくやっておることでもあり、またそのために献金を受けたとかなんとかというような不正な事実は全くありません。私は、施政方針演説でも申し述べましたように、民間の活力を大いに活用して、そして新しい型の成長をつくろう、国家の財政にはもう限度がある、余り国の金を使うことは難しくなってきている。したがって、今見れば保険会社でも銀行でもお金が随分あって、行き場がないものだから外国へみんな逃避したりあるいは出資したりして、それで円が安くなっておる、円を強くするためにも日本の国内で内需を盛んにして仕事を興さなければだめだ、そういう大方針に基づいてやっておる計画の一環でありまして、この方針は我々自由主義経済を信奉している者の一つのやり方で、間違っていないやり方である、現在としては最も適切なやり方であると私は考えておるので、これをやめる考えはない。しかし、この会社がどうこうという問題とは別の問題であって、細胞分裂するとかなんとかなんということは全く私は今初めて聞いたことであり、すべてが適正に行われなければならぬと、そう考えております。
  353. 安武洋子

    安武洋子君 国有財産払い下げの大原則である一般競争入札、それをねじ曲げてまで随契でこの会社に仕事を与えようというふうなことで、私は、総理が何とおっしゃろうとこの疑惑は尽きない、さらに今後も追及する、そのことを申し上げさしていただきます。  問題を変えますのでちょっとお待ちください。  男女雇用平等法の問題ですが、二十六日に婦人少年問題審議会の建議が出されております。総理はこの評価、それから今後の対応、これをどういうふうになさるでしょうか。
  354. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 坂木労働大臣
  355. 安武洋子

    安武洋子君 総理の評価、総理にお伺いしている。
  356. 西村尚治

    委員長西村尚治君) まず主管の大臣から。
  357. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) この建議は昭和五十三年以来の研究の成果を積み重ねたものでありまして、学識経験者の持さん、また労使関係の皆さん、その御意見の集約をされたものだと思って敬意を表しております。労働省としては、その建議を踏まえまして、国民の皆さんの前に責任を持って提出できるような案をこれから早急に成案をいたしたいと思っております。
  358. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) よく検討しまして、労働大臣が言われますように、成案を得るように努力いたしたいと思います。
  359. 安武洋子

    安武洋子君 労働省は、雇用平等法の法制化に当たってどのような基本方針で臨んでこられましたか。
  360. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) ただいま労働大臣から申し上げましたように、昭和五十三年以来の懸案事項でございますが、その間に専門家の皆様方にも別途委員会から御委託を申し上げて検討をお願いし、またその間に婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約が採択されましたので、この条約の批准のために必要な法制の整備をしたいということも考え、基本的にはそういう方向で臨んでまいりました。
  361. 安武洋子

    安武洋子君 労働省、労働基準法の女子の残業規制、それから休日労側の規制、深夜業の禁止、こういうものの撤廃、これを基本路線としてきたのではないんですか。
  362. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 赤松さん、もう少し近いところへ座ってください。どうぞ簡潔に。
  363. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 基準法の中にございます女子労働者に対する保護規定は、女子の保護という面ばかりではなくて、女子の労働の機会をあるいは制限する、あるいは少なくするとかというような側面も持っていることは否めないわけでございます。また、条約の中にも男女同一の基盤に立ってということが基本になっているわけでございますので、労働基準法の母性保護を除く女子保護につきましては見直しを行うことが適当と存じております。
  364. 安武洋子

    安武洋子君 五十六年十一月当時の労働基準局監督課長はだれですか。
  365. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 五十六年の夏の監督課長……
  366. 安武洋子

    安武洋子君 十一月。
  367. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 五十六年十一月の監督課長は岡部晃三氏だというふうに存じます。
  368. 安武洋子

    安武洋子君 この岡部氏は女子保護についてどういう考え方の持ち主ですか。
  369. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 岡部氏は現在労働者の政策担当の審議官をしておりますが、女子保護についてどういう意見の持ち主かは、私もそれほど詳しいわけではございませんので、必要がございましたらば本人に尋ねてみるというようなことをいたしたいと思います。
  370. 安武洋子

    安武洋子君 岡部氏は、この五十六年十一月当時、今言った部署にいられるわけですけれども、日経連の中小企業問題特別委員会の講演で、労働省の考え方は、女子の保護規定は合理性のないものは一切廃止する。その上で男女平等法を何らかの形でつくっていく、こういう基本路線でやっている、したがって現在の女子の残業規制、深夜業の規制、休日労働規制を撤廃して男女平等法をつくる、こう述べております。労働省はこのことを御存じですか。
  371. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 当時の岡部監督課長がいろいろなところで発言をあるいはされているのかもしれませんが、その一々については私はよく明らかに存じておりません。
  372. 安武洋子

    安武洋子君 これは労働省の基本方針だ、こう言っているんです。基本方針ですか。
  373. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 労働基準法の女子保護の規定に関しましては、法律の制定、改廃その他につきまして婦人少年局長が所管をしているわけでございまして、そういう問題につきましては婦人少年制長の責任だと思っております。
  374. 安武洋子

    安武洋子君 この岡部氏は今、政策担当審議官、労働省の政策部門のトップにいるわけです。ですから、回部氏の発言というのは過去のものじゃないんです。私はこの岡部氏のこういう発言に対して厳然たる処置を要求いたします。総理、いかがでしょうか。労働省の方針でないことを公言されているわけです。
  375. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) その当時、岡部君がどういうことを言ったか、その真意はどうかということは、私も今聞いたばかりでありまするからつまびらかにはできませんけれども、男女の機会均等法とか言われるようなこういう仕事は、やはり世界の中の日本としてもこれは批准すべきである、そのときにはやはりその母性保護以外の点については見直すべきであるというのは世界的な大勢にあるように思っておりますので、我が国としましても、やっぱり母性保護はこれはしっかり残すけれども、そのほかの女子保護規定については見直す方向がこれが大勢であると。ただし、長い間の保護が続いておったわけでありまするから、一挙にやっぱり取っ払ってしまうということでは、いろいろな現場その他の点において大きな抵抗があったり混乱が起きるということも、これまた困るわけでありまして、そういう点は、この点はどう、この点はどう、一々きめ細かく考えまして、そしてやっぱりこの点はしばらく経過的にでも残そうかとか、いろいろ部分的には経過的に女子保護規定も残すというところもあろうかと思いますが、大勢とすればやはり世界的にも母性保護以外は見直していく、個々にはきめの細かく留保するところがあっても大勢としては見直していく。それによって女性がやっぱり男性と同じ、均等そして平等を得られる大きなそれがきっかけになるのではないかという私は感じを持っておりますので、岡部君の言ったことはその原則論を言ったのではないかと、こう思っております。
  376. 安武洋子

    安武洋子君 女子保護規定は一切廃止する、これが労働省の基本方針だ、こういうことを公言していることについてどう思われるんですか、端的に。
  377. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) ただいま申し上げたとおりでありまして、その原則論のところを強調したんだと、こう思っております。
  378. 安武洋子

    安武洋子君 だから、労働省は、表向きは審議会待ち、こう言いながら、結局はこういう裏方針を持っていた、女子保護は撤廃するという裏方針を持ってきたと、そういうことでしょう。
  379. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 審議会の建議は一昨日いただきまして、それを踏まえて今後法案作業をいたしたいと思っておりますが、労働側からの御意見はその中に明らかに示されているわけでございます。また、それ以外の多くの御意見が私どもに寄せられているわけでございまして、そういうものを十分に考えて今後の法案作業に臨みたいと思っております。
  380. 安武洋子

    安武洋子君 公益委員のお一人、和田勝美氏は、どういう経歴の持ち主で、女子保護規定についてどのような考えの持ち主ですか。
  381. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 和田先生は、ただいま公益委員のお一人でございますので、先般二月二十日に発表されました公益委員のたたき台というのがございましたが、その中に考えが明らかにされ、かなり多く反映されていると思っております。
  382. 安武洋子

    安武洋子君 労働省も相談に乗っている「婦人と年少者」、ここで和田氏は、平等に書けというのであったら女子に対する一切のこの保護は外せ、産前産後も一切外せと、こういうことまで言っておられます。この方は労働省のOB。ですから、こういう立場の人、こういう主張の人、これを入れて労働省は最初から、あのたたき台が出ましたけれども、ああいうものが出るような構造、こういうことをたくらまれてきたのではありませんか。
  383. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 和田生が公益委員におなりになったのは随分背のことでございまして、勤労婦人福祉法という法律が昭和四十七年にできておりますが、そのときの審議会にも携わっていただいていたわけでございまして、婦人労働者の福祉のために大変貢献された方だと信じております。
  384. 安武洋子

    安武洋子君 最後に……
  385. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 安武君、もう時間がなくなりました。
  386. 安武洋子

    安武洋子君 最後です。
  387. 西村尚治

    委員長西村尚治君) じゃ簡潔に願います。一問だけ簡潔に。
  388. 安武洋子

    安武洋子君 私は、こういう公益委員の構成の段階から和田氏のような女子保護一切切り捨て論者、こういう人を据える、必然的、構造的に女子保護切り捨て、こういう私は結論が出るように労働省は裏方針を持って進めてきたということにしか思えないわけです。そこで私は、やはり母性保護、これを前提にしたそういう雇用平等法をつくる、それが真の男女平等であろうと、このことを強く申し上げまして、残念ながら時間がありませんので、私の質問を終わります。(拍手)
  389. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で安武君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  390. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、関嘉彦君の総括質疑を行います。関君。
  391. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私は、民社党・国民連合の立場に立って質問申し上げます。  総理並びに外務大臣、友好親善のために中国に行ってこられまして御苦労さまでございました。帰国早々連日の予算委員会で、コーヒーブレークをとる暇もなく私の質問に答えていただくということで大変御同情申し上げておりますけれども、これは私の責任じゃございませんから御了承願います。  私は、質問の重点を教育と国際政策に限りたいと思いますけれども、これは我が党の同僚委員がほかの問題については既に質問しておりますので、この重複を避ける意味でありまして、決してほかの問題を軽視しているという意味ではございません。教育及び国際政策の問題について重点的にお尋ねしたいと思っております。  その問題に入ります質問のイントロダクションとしまして中曽根内閣の政治姿勢、以下の問題についてお答えいただく伏線としまして、政治姿勢の問題をお尋ねしたいと思います。  私、学生時代、日本がおかしなコースをとってあの無謀な戦争に突っ込んでいつた経過を目撃してきた一人でございますけれども、日本があのような無謀な戦争に突入しました原因はいろいろあると思いますけれども、一つはその当時の議会が腐敗しておりました。また、空洞化して、それを批判するような論調が国民の支持を受けていた。第二に、いわゆる議会制のもとになっている自由主義の考え方はイギリス、アメリカ考え方であるというので、自由主義に反対する立場から反英、反米の風潮がだんだん強くなっていたということ。第三は、経済的な不況の影響もあったんですけれども、いわゆるブロック経済と申しますか、経済的な保護主義、この風潮が強くなっていた。その三つが一緒になってああいう悲惨なコースをたどっていったというふうに私は思っております。  ところで、最近の雑誌論文なんかを読んでおりますと、決して多くの論文ではございませんけれども、その一部に戦前の日本を肯定するような論文があらわれ始めている。特にこれは一昨年「東京裁判」という映画があって、その反動だと思うんですけれども、東京裁判の国際法的な違法性を批判する余り、満州事変以後の日本がたどった道というのはこれは正しかったんだというふうな、それを肯定するような論文なんかもあらわれております。つまり、外開に通用しないような国家主義といいますか、エターティズムといいますか、そういったふうな考え方を、正面からではありませんけれども間接的に肯定するような論文も時々あらわれてきております。また、日本には戦後潜在的な反米主義の考え方が依然として強い。さらに最近の経済摩擦なんかに関連しまして、総論では門戸開放、自由貿易主義を主張しながら、各論になりますと既得権益を擁護するために保護貿易主義を正当化するような議論があらわれてきておると思います。こういった三つの傾向が一緒になりますと、私はその危険が非常に大きいとは思いませんけれども、非常に危険なコースを走らないとも限らないと思うのであります。総理は、最近のそういったふうな傾向をどういうふうにごらんになっておられますか、まず総理にお伺いしたいと思います。
  392. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 戦後の日本におきましては、やはり時代というものは一つのサイクルをつくって流れているという影響でしょうか、戦争が終わった直後はいわゆる皇国史観というものは完全に否定されて、そしていわゆる太平洋戦争史観というか、あるいはマルキシズムの史観というものが入ってきて、それでごちゃごちゃになって、日本人は方向舵を喪失したようなときがマッカーサー占領下あったと思います。しかしその後、次第次第に冷静さを回復して、自由主義、民主主義の価値というものをもう一回かみしめ始めまして、そして着実に堅実に日本は動き出してきまして、右と左の全体主義を排撃して、市民社会の自由主義、民主主義を岩盤とする健全な国家、世界の潮流に乗った国家をつくろうという動きで私は進んできていると思っておりますし、その成果はまた日本歴史上特筆すべき成果を生みつつあると思っております。しかし、今でもその流れは主流をなしていて、この間中国へ行きましても、日本に軍国主義復活のおそれは全くないと自分は確信する、一部分のものが顕著に報道されたりするけれども、国民の大多数は自由主義、民主主義、現在の体制を肯定している、我々はそれを堅持していくということも言ってまいりました。したがって、これが大きな流れであり、主流であり、岩盤であると確信しておりまして、それをますます強く強固にしていけば心配はないと思っております。
  393. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私もその考え方に賛成ですが、私がこの問題を取り上げましたのは、昨年首相が、戦後政治の総決算という、これは誤解を招きやすい表現ですけれども、そういうことを言われました。私はある意味では同感するところがあるんですけれども、戦後政治の大きな流れとして自由、デモクラシー、そして平和を大事にしていく、この方向は私は決して間違っていなかったと思うんです。ただ、その手段が、その方法が適切でなかわたものがあり、またある時期においては適切でありましたけれども、その後適切でなくなった手段というのもあるので、その手段をラジカルに見直していく、その考え方であれば私は間違いないと思うんですけれども、総理のお考えを御説明いただきたいと思います。
  394. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 総決算という意味は、簡単に言えばオーバーホールやろうと。大分くたびれたのもあるし、あるいは沈殿物も出てきておるし、摩滅したのもあるし、曲がったのもある、それでオーバーホールをやろうと。そして、活力を回復して二十一世紀への坂道を上っていく強靱な車体に改造していこう、それが私の言いたいところで、目的はやはり未来に向かってたくましい、そして文化的な香りの高い日本をつくっていこうと、そういう二十一世紀を目標にした発想であるということを御理解願いたいと思うのです。ですからこそ行革、財政改革あるいは教育改革あるいは国際国家日本という発想はみんな未来向きの発想であると、そのために今ここで整理すべきものを整理し、そして強くすべきものを強くしようとしているんだというふうに御理解願いたいと思います。
  395. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 次に、教育の問題に入りますけれども、教育と政治の関係についてお伺いしたいと思います。  つまり、政治はどの程度まで教育に責任があるのか、その限界はどうかという問題でございます。と申しますのは、最近教育に対する自由放任主義とでも申しますか、親が子供にどういうふうに教育させようと親に任しておけばいいんだと。公立の学校に行かせようと私立の学校に行かせようと、あるいは塾に行かせようと、あるいは「窓ぎわのトットちゃん」みたいなああいった学校に行かせようと、それは自由なんであって、教科書を使おうが使うまいがそれも自由に征しておけばいいんだ、あるいは教科書の検定なんか全く必要ないんだと、そういう教育に対する自由放任主義といいますか、そういう考え方もあり得ると思うんであります。これはある意味において政治の責任を免除する、ある意味では政治にとっては非常にイージーゴーイングな方法であると思うのですけれども、私はやはりそういう極端な考え方は賛成できないし、政治はやはりある程度教育に対して責任を負わなくちゃいけない。  しかし、どういう関与の仕方をするかにつきましてはいろいろな意見があるわけでありまして、例えば今度の臨時教育審議会を首相直属のもとにつくるということ肉体が、教育基本法第十条でしたか、教育は不当な支配に服することなく国民全体に対して直接に責任を負って行われるべきである、その考え方に反するんだと、そういう意見を述べている人もあります。しかしまた、総理は、教育基本法の精神に従って臨時教育審議会をつくったんだというふうにお答えになっておりまして、教育基本法の考え方も極めてあいまいなんでありますけれども、一体総理は、政治と教育の関係をどういうふうに認識しておられるのか、政治の教育に対する中立性ということをどういうふうに考えておられるのか、それをお伺いしたいと思います。
  396. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 歴史的に見ましても、政治にとっての鬼門は大学と教会であったと思いますが、そういうように政治はやはり大学や教会に対しては非常に注意深くなければならないと思っております。しかし、おっしゃるように、政治というものは教育に対して大きな責任を持っていると私は思います。日本の憲法あるいは教育基本法の基礎というものは、自由主義的民主主義あるいは人格主義、人道主義あるいは国際主義、平和主義というような古今東西に通ずる公理から私はできておって立派なものであると、こういう思想的背景のもとに教育のバックボーンはできているのだろうと思います。  先生は河合栄治郎先生のたしかお弟子で、「トーマス・ヒル・グリーンの思想体系」の権威者であらせられると思いますが、私もあの本を読んで、河合先生の本も読んで非常に共鳴して私の血肉になっていると思っております。そういう意味において、そういう人格主義あるいは人道主義というような、いま申し上げたような原理を基本にして教育というものは行われるべきであり、国家はそのためのファシリティーを提供する、教員の養成にしても、あるいは学校施設にしても、あるいはシステムにしても、あるいは国際交流にしても、そういう基本理念に基づいてファシリティーを提供する。教育をやるものは教師である、しかしその前に両親である、そう私は思っております。
  397. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私の先生の河合教授の名前をメンションしていただいたのはありがたいんですけれども、もし河合教授の思想があなたの血肉になっておられるんでしたならば、あなたは政党の選択を誤ったと思います。自民党をやめて民社党に入党すべきであったと思います、今からでも遅くありませんから。  私の考え方を申しますと、つまり教育について政治的中立ということは、教育が組合であるとか一部の政党であるとか、そういったふうな支配に服してはならない、そういう意味であって、政治は決して無干渉であってはならないということではないかと思います。教育基本法にもありますように、物的な施設を提供するのはもちろん政府の任務である。しかし、単に物的な制度を整備するだけではなしに、やはりその内容についての基準と申しますか、例えば教育課程の基準でありますとか、教科書が一定の水準を保つように、そういったふうな条件の提供も含まれるというふうに私は考えております。何よりも日本の憲法の精神であるところの自由、デモクラシー、それから平和を愛好する心、これをやはり教えていく必要があるのであって、これはやはり国家の、政治の責任であって、何でもかんでも教えてよろしい、国家主義であるとか、あるいはマルクス・レーニン主義であるとか、そういうふうなものを高等学校以下の学校において教えていいというごとではないと思うのでありますけれども、総理の所見はいかがでございますか。
  398. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国家あるいは政府との教育の関係というのは非常に微妙な点がありまして、政府の側からはやはり相当注意深くアプローチしなければならぬ点があると思っております。しかし、憲法並びに教育基本法及びその他の法律の諸制度の命ずるところに従って政府は責任も持ち、やるべきことはやっていかなければならない、そのように思っております。  具体的な点につきましては文部大臣からお答え申し上げます。
  399. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 御答弁申し上げます前に、私は、先生が教鞭をとっていらっしゃいます母校で残念ながらお教えをいただきませんでしたので、総理のような見識あるお答えを申し上げることはできませんし、たとえ一緒に教室の中でお話を聞く機会がございませんでしたとしても、私はやっぱり教え子の一人になるわけでございますので、立場はこういうことになっておりまして、先生にここで私が何かお話を申し上げるというのは大変僣越だと考えております。ただ私は、教育はこれは国家の命運を左右する非常に大事なものである、したがいまして、議院内閣制におきまして、それぞれの公党が教育に大いに関心を持って、そして教育の議論を高めるということは極めて私は大事なことだと考えております。  そういう意味で、これまで先生からいろいろ御指摘をいただきましたステータスあるいはスタンスというものを私も十分理解をいたしておるところでございますが、同時にまた、日本の教育はいわゆる明治以来人の和、人間の活力を生かすということに大変大きな成果を得ましたし、戦後それをまた、今、先生も御指摘ありましたように、自由と民主主義と平和、その中に義務教育を年限を延ばしてまさに日本の国力をつくり上げた、そういう意味で私は大きな効果もあったと思っております。同時に、先生の最も志向されます国際間におきます日本のこれからの将来の地位というものを考え、あるいは日本人のこれからの世界に対する役割を考えますと、教育もまた将来の変化に対応して新しいものを求めていくということも私は極めて重要なことだと考えておりまして、そういう立場で、私どもも憲法と教育基本法という精神の中で新しい日本の教育についてさらに一層の努力を傾けて、日本の将来、特に二十一世紀を担う青少年のために政治家として最善の努力をしていかなければならぬと、このように考えておるところであります。
  400. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 森文部大臣、私の講義を聞かずに幸いであったと思います。もし講義を聞いておられれば大臣なんかに絶対なれなかったと思います。  次に、教育の理念の問題について御質問申し上げます。  これは総理にまずお伺いしたいと思うのですけれども、臨時教育審議会で制度の問題をいろいろ討議されると思います。制度の問題につきましては、例えば入学試験なんかの制度につきましては私も意見を持っておりますけれども、これはやはり専門家の意見を聞いて決めるべきことであって、臨時教育審議会で十分検討していただきたいと思いますので、ここでは制度の問題については質問するのを差し控えますけれども、どのような制度ができましても、問題はその制度を運用する人であり、その理念が大事ではないかと思うのであります。したがって、その教育理念の問題についてお話し申し上げますけれども、私は戦後の日本の教育の理念というのは方向としては正しかったと思います、先ほど申し上げましたように。ただ、その手段、方法の中に適切でないものがあったというふうに考えております。と申しますのは、日本の戦後の教育に非常に大きな影響を与えましたのは、昭和二十一年のアメリカの教育使節団、教育ミッションの報告書であると思うのでありますけれども、あの報告書は、もちろんいい面も含まれておりますけれども、私に言わせますと非常に一面的で、というのは、あのミッションのレポートを流れている思想というのは、ジャン・ジャック・ルソーでありますとか、ジョン・デューイでありますとか、いわば人間の性質を非常に楽天的に見ている教育思想の上に書かれていもと思う。つまり、子供の成長を抑圧するものをすべてを取り払っちゃって自由にしておけば、子供はおのずからして人格円満な人間に成長するんだ、そういう楽天的な見方があの中に入っているように思うのであります。  しかし、子供を自由にして、例えばオオカミの中で成長すれば、体は人でありましても決して人間にはならないのでありまして、やはり人間になるためにはその国の伝統であるところの一定の国民文化の中で一定の型にはめられて教育されるのでなければ本当の人間に私はなり得ないと思うんです。その型を教え込まれた子供が大きくなって初めて型破りの人間になることができるのでありまして、デューイなんかのような考え方で教育されますと、初めから形なしの人間になってしまう。最近の少年非行なんかの問題も私はそれに関係があるように思うのでありますけれども、教育はその国の文化的な伝統の上に立たなきゃならないと思いますけれども、総理考え方はいかがでございますか。
  401. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、テレビ、あるいは国会でも、あるいは党大会でも申したと思いますが、どの国でも教育というものは、そのときのシステムだけではない、その民族、国家が持ってきている長い間の精神的、文化的土壌の上に教育というものは初めて成長し得るものだと。その文化的、精神的土壌を忘れて教育はない。しかし、戦後の日本の教育を見ると、その精神的、文化的土壌というものは余りにも忘れ過ぎているのではないだろうかと。その上にアメリカ的なプラグマチズム、イギリス的な功利主義、便宜主義的なそういうようなものがかなり強く出てきておると。我々が戦前教わったのは、今、先生に申し上げた河合先生の思想みたいな理想主義であり、人格主義の理念です。カントの断言命令というものをやはり我々は正しいと思ってきている人間であります。そういうような要素がなくなって、理想主義的な人格主義的な理念が薄れてきて、そして便宜主義的なプラグマチズムや功利主義的な思想が強くなり過ぎてくると、今のような要素が出過ぎてきているのではないのだろうか。といって、また精神主義を余り強調し過ぎても、これは戦前のような大きな過ちに一歩誤ればいく。その辺のバランスが非常に難しいところであるが、しかし欠陥としては指摘されると。  特に子供の場合については、幼児は、今おっしゃったように、オオカミ少年というものは人間には返らなかったのであって、結局人間として生きる基本の型を小さいときに教えなければだめだと私は年じゅう言っているわけです。国会でも何遍も人間として生きる基本の型を繰り返し繰り返し教えることが大事だと、子供のころ九九を教えるように礼儀を教えることが大事だということを繰り返し申しているのは、やはり教育というものの基本にはそういう節制とか自己抑制とか、そういうものが人間として出ていく上に教えられて初めてわかる大事なことで、それ以外の自己を拡充していくということは本然的に持っているわけですから、別に教えなくても欲望はあり、動き出すわけです。ただし、ブレーキというものは持ってない。ブレーキを赤ん坊から子供に教えていくということが、やはり人間社会に生きる間に非常に大事な要素で、それが余りにも閑却されていないだろうかと、それを私申し上げたいと思っております。
  402. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 誤解のないように言っておきますけれども、私は子供に生活の型を教えることは大事だと思いますけれども、それは決して物理的な強制力によって型を守らせるという意味ではないのでありまして、精神的な強制力、これが私は大事ではないかと思います。  戦後ベストセラーになった本に「菊と刀」という本があるんですけれども、あの中で、ヨーロッパの道徳の基準になっているのは罪の道徳であるけれども、日本の道徳というものは恥の道徳であって、これは封建的な道徳であるかのような解釈が生まれまして、何か恥の道徳というのは悪いんだというような考え方が広がってきた。これが私は恥も外聞もないような政治家が出てくる原因じゃないかと、私はそう考えております。その恥の道徳を私はやはり強調する必要があると思う。この恥の道徳というのは決して自由民主主義の考え方に矛盾するものではない。イギリスの自由主義の思想家であるジョン・ロックの教育論なんか見ますと、やはり子供のときからうそをつくことは恥ずかしい、その考え方を教え込まなくちゃだめだということを言っております。政治家がまず恥ずかしい、こういうことをすることは議会政治家として恥ずかしいんだという考え方を持つことが子供の教育においても一番大事なことじゃないかと思うのですけれども、総理のお考えいかがですか。
  403. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まさに日本の教育の中の美徳はそういう点にあったと思います。
  404. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 先ほど実用主義のことを言われましたので、それとの関連で、片仮名教育の問題を取り上げたいと思います。  実は、この問題を取り上げますのは、私は大学で試験の答案を見ておりまして、片仮名を正確に書けない学生が非常にふえている。ンを書いているのかソを書いているのかわからない。イを書いているのかハを書いているのかわからない。片仮名を正確に書けない学生は漢字も正確に書けていない。これは片仮名というのは漢字の一部を使ったわけですから当然です。この片仮名を戦後の教育は軽視してきたように思うんですけれども、一体どういう経路で平仮名を先に習わせるようになったのか。私、いろいろ調べてみたのですけれども、私にはよくわからない。文部省の方でおわかりであればその経緯を報告していただきたいと思います。
  405. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) お答えいたします。  昭和二十二年に片仮名、平仮名どちらを先に教えるかということで、小学校の学習指導要領でいろいろ論議をされた結果、日常生活に使われている平仮名を先に教えるという方針がまず決められたわけでございます。その後昭和二十九年に、依然として片仮名、平仮名の論議が教育界に残っていたわけでございます。そこで、中央教育審議会に「かなの教え方について」という諮問をしたわけでございます。中央教育審議会はその論議の中で、これは非常に極めて専門的であるということで、「国語審議会ならびに教育課程審議会に付議して、その取扱を慎重に研究せられたい。」、こういう答申を出しまして、いわば国語審議会、教育課程審議会に具体的内容の決定を再検討という形にしたわけでございます。  これを受けまして、国語審議会は、昭和三十年に、「少なくとも小学校第二学年あるいは第三学年の終りまでに、かたかなをひらがなとともにじゅうぶんに習得させることが必要である」ということで、どちらを先にすべきだという結論を出さないで、要するに小学校の三年生までに片仮名、平仮名が十分習得されるようにと、こういう答申をしたわけでございます。その後、昭和三十一年に教育課程審議会を開きまして、「ひらがなをかたかなより先に教えるという現行の方針は、改訂する必要は認められない。ただし、かたかなの学習については、さらに徹底を期することが望ましい。」ということの審議経過を経まして、今日、平仮名を先に教えているという状況になっているわけでございます。
  406. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 実は、この問題は昭和二十八年にも作家の山木有三さんが、この参議院の文部委員会で取り上げられている問題ですけれども、やはり山本有三さんのおっしゃるには、学習は系統的にやらなくてはいけないんだ、大人がかたい御飯を食べているから赤ん坊にそれじゃかたい御飯を食べさせるというのは間違いだ、実用主義的に教育を考えてはいけない、そういう趣旨の質問をしておられるのですけれども、その質問、その後の教育に生かされていないように思う。目の前に役に立つことだけを教えるというふうな考え方は私は教育にとっては邪道だと思います。文部大臣、いかがでございますか。
  407. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 平仮名と片仮名をどちらを先にするか、その経過につきましては今、高石局長から御説明申し上げたとおりでございます。  私は、やはり私自身がちょうど小学校二年で終戦でございまして、最初に片仮名から一生懸命に覚えました。これは学校に入る前に一生懸命に覚えました。そして何とか平仮名を覚えたいなと思いまして、平仮名をどうして覚えたらいいかなと考えて、「のらくろ」という本がたしか平仮名で書いてございました。それで、順繰りに片仮名から平仮名に変革をしていくような形で覚えたことを記憶をいたしております。二十二年の指導要領国語科編で規定した中には、第一-第三学年における目標として、「主として、ひらがなをまちがいなく書けるようにし、進んでは、かたかなも書け、漢字もまじえて書けるようにしていく。」ということを規定しているわけでございますから、私はどうもその当時のことは先生が一番よく御存じだろうと思うんですが、私は今でも疑問に思っておりますのは、やっぱり敗戦のショックによって、当時の文部省にいろいろと御検討いただくいわゆる学者の方々がかなり右往左往、言葉はよくないかもしれませんが、私がなり右往左往しておられたのじゃないかと思うのですね。例えば僕たちの子どものころに非常に困ったのは、右側通行が左側になったり右側になったり、何でもかんでもアメリカ流にしていって、我々はそれこそ右往左往、うろちょろしたことを今でも思い出しているわけですし、あるいはサマータイムなんていうようなものもたしかアメリカからそのまま取り入れて、日本に合わないということで急にやめられて、学校教育では随分現場では苦労したということを記憶をいたしておるわけでございます。  私はやっぱりそのように先ほど先生の御質問の中にございました米国教育使節団報告書などもよく読んでみますと、もうちょっと拡大解釈して考えられるようなところが随分あったのじゃないか。例えば、「神話は神話として認め、」「一層客観的な見解が」というふうに書いてあるのに、そのころはやっぱり神話というのは悪なんだということにどうも学者の先生方が、すべてではなかったと思いますが、考え過ぎられたのじゃないかなと、そんなことがやっぱり私は今、教育の反省の中に勉強してみておく必要があるのではないか。ただ、こんなこと申し上げるとまた昔の回顧趣味あるいは戦前回帰と言っておしかりをいただくのかもしれませんけれども、私はこの委員会でも申し上げたことございますが、戦前の失ったよき物、戦後得たよき物、それが両々相まって新しい二十一世紀にふさわしい日本の教育が私は体系されていくのではないか、このように考えているところでございます。
  408. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その問題、まだいろいろあるのですけれども、時間がございませんので次に移って、小学校の低学年の授業が非常に多過ぎるのではないか、過剰ではないかという問題を取り上げます。  これは先般の教育と文化の懇談会でも提案されたそうですけれども、私の孫が一年生に行っているのですけれども、その教科書を持ってまいりました。これだけございます。このほかにまだ学習ノートというふうなものがあります。例えば、社会なんかの教科書を調べてみましても、こんなことを教科書を使って教えなければならないのかと思うような内容でございます。例えば、これは先生であるとか、これは用務員さんであるとか。二年の社会科になりますと、働いている人の例として、これは魚屋であるとか、これは八百屋であるとか、まあ八百屋で魚を売っているということは書いてございませんが、そんなことは何も教科書を使ってまで教える必要はないのじゃないか。いたずらに教科書会社をもうけさせているだけじゃないかと思うんですけれども、私の考え方は、小学校の低学年においては、読み、書き、そろばん、算数、それとしつけ、これに集中すべきではないかと思うんですけれども、文部大臣考え方はいかがですか。
  409. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 私は、幼児教育と小学校のところの教育との関連がやっぱりあるのではないかというように考えておりますが、確かに私はその教科書、大変勉強不足で、まだ孫がおりませんので小学校の低学年の本は読んだことがないんですが、そんなことはもう十分に学校に入る前に知っておる。よくここで議論になります幼稚園にしても保育所にしても、かなり進んだ教育をしている。現実は幼稚園では人間としての基礎を学ぶということでございまして、教育はしないということになっておるわけでありますが、ほとんどそのことはマスターしておるという意味では私は若干むだがあるなという感じがいたします。  ただ先生、私は、教科書を薄くしてできるだけゆとりのあるものにしようというのは、これは多くの識者のやはり指摘をされておるところでございますけれども、ちょうど海部文政のときでございましたが、教科書を少し薄くしてゆとりのあるというそういう授業内容にしたわけでありますが、逆に今大変おしかりをいただいておりまして、もっとなぜ大事なことを教えないのかという、これは中学なんかそうでございますが、そんなこと教えていると上の学校へ行けなくなるじゃないかというような、そんな御批判も逆に来ておるというような状態でございまして、やはり全体的な問題として何をどのように教えていくのか、こういうようなことについてももう一遍すべて新しく見直していく、そういう私は時期が来ておるのではないかと、そんなふうに考えております。
  410. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 まだ教育についていろいろ言いたいことがあるんですけれども、時間がありません。後半の方に大事な問題を控えておりますのでこれで打ち切りまして、あと国際政策の方に入ります。  総理大臣はしばしば西側の陣営の一員としてというふうなことを公式の席上でも言われます。また、政府の公文書なんかにも書かれているんですけれども、西側の一員というのは一体何を意味するのか。地理的に言えば日本はむしろ東側ではないかと思うんですけれども、この西側の一員という言葉は非常に混乱をもたらしているように思うんですけれども、どういう意味で西側の一員というふうに使われましたか。
  411. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、西側の一員という言葉が余り好きじゃなくて、ここでも余り使ったことはありません。ただ、政府、外務省や防衛庁の言葉の中に時々そういうのが出てきて、余りいい気持ちはしませんでした。西とか東とかいうのはヨーロッパを中心にして考えた発想であって、我々日本人がとるべき言葉ではないと。そういうふうに思っておるわけです。むしろ自由主義陣営の一員と、そういう表現で私は言っておるのであります。
  412. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私もそれに同感であります。西側というのは同自由主義陣営の、あるいは自由民主主義陣営の一員であります。東側の方は、それではどういうふうに形容されますか。
  413. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非自由主義陣営、あるいは南の方は非同盟とか発展途上国とか、そういう表現です。
  414. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これは政府の刊行物を見ておりますと、東側を形容するのに社会主義陣営でありますとか共産主義陣営でありますとか非常にばらばらであります。同じ白書でも年度によって書き方がばらばらであります。私は、資本主義対社会主義というのはこれは経済学上の問題であって、現在の国際政治において非常に重要なのは政治体制の違いで、つまり複数政党、複数意見を認めるところの自由民主主義であるのか、共産党の一党独裁である共産主義陣営であるのか、この対立が私は一番基本的な対立じゃないかと思うんですけれども、どうも政府の刊行物を見てみますと、その認識が少し足りない。何か自由陣営というのは自由貿易を維持する陣営であるなんていうようなことを書いてある本なんかあります。決して自由貿易だけを維持するためにイギリスの労働党でありますとか西ドイツの社会民主党がNATOを支持しているわけではないのであります。その点をはっきり政府の方々に認識していただきたい。白書なんかについても十分注意していただきたいと思うのですけれども、いかがですか。
  415. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は全く同感でありまして、今後、用語の使い方についても注意するようにいたします。
  416. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 次に、外交と防衛の関係について質問いたします。  日本では何か外交と防衛というのは相反するものであるかのように思っている人があるのですけれども、私は外交も防衛も自衛隊法に書いてありますように、ともに平和を守る、国際紛争の原因になるものを取り除いて平和を守るためにあるのが外交であり、防衛である。もちろん軍事力が余りに過大になりますと、それがまた紛争の原因になりますから、軍備管理、軍備縮小というのは必要ですけれども、軍備があることが直ちに戦争になるんだというふうな考え方を持っている人がありますけれども、私はそれは間違いじゃないかと思います。総理のお考え方、いかがですか。
  417. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点も私は、現在の世界情勢というものは平和を維持することが至上命令だが、その平和を維持するということは戦争を起こさない状態をつくり出しているということなのであって、そのためには均衡と抑止という考え方に立って平和が維持されていると、そういう認識を持ち、日本もそういう認識のもとに防衛をやっておるということを言っておるのでございまして、先生のおっしゃることには同感です。
  418. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 外交の問題いろいろ取り上げたいと思っていたんですけれども、時間があと五分しかございません。外務大臣には外務委員会であるいはお目にかかる機会があると思いますので、外交の問題ははしょりまして、次に防衛の方に移らしていだたきたいと思います。  この議会においても、防衛費がGNPの一%を超すか超さないか、守るべきか。守らないでいいということはなかったように思いますけれども、守るべきかというふうな何かスコラ哲学的な議論が行われておりましたけれども、GNPの一%というのは一体どういう合理的な根拠があるのでございますか。なぜ〇・九%であってはいけないし、なぜ一・一%であってはいけないのか、どういう合理的な根拠があるか、まず総理にお伺いしたいと思います。
  419. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 三木内閣の当時に、当時の経済成長やらあるいは福祉教育等々の経費等のバランスを考えて一応つくったメルクマールであると思います。一応という意味は、さしあたりめどとすると閣議決定に書いてあります。それはそういう意味の表現ではないかと思います。
  420. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私はシビリアンコントロールがはっきりしておれば何も一%というふうな枠によって抑えつける必要はないのじゃないかと思うんですけれども、どうも戦後の政府の政策を見ておりますと、シビリアンコントロールが空洞化しているのではないか、そういう印象を受けます。本来のシビリアンコントロールというのは、政治と軍事の関係について、政治が一定の法的な枠組みを与え、一定の資源を割り当てて、これこれのものによって国の安全を守れと、それ以上のことは政治が責任を持つ、そういう態度をもって自衛隊に臨むのが私は本当のシビリアンコントロールではないかと思うんですけれども、総理のお考えいかがですか。
  421. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのとおりであると思います。しかし、この一%というものを守ってきたというのもシビリアンコントロールの一つの有力な証拠であると思っております。恐らく防衛庁の制服組や防衛庁はもっとふやしたい、ふやしたいといろいろ言ってきておったんでしょう。しかし内閣及び国会というものが厳として一応守ってきた。それはやっぱりシビリアンコントロールが有力にきいている一つの証拠であると考えます。もちろんその一%というものは三木内閣のときに決めたものでありますから永久不変なものではありません。政治の意思によって、それは状況の変化によって変わり得るものでありますが、しかし当内閣はこれ守っていくと皆さんに申し上げているとおりであります。
  422. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私は、シビリアンコントロールがうまくいっていないのではないかということを質問しましたのは、防衛庁ができて以来の歴代の防衛庁長官の任期を見ますと、私の計算では九カ月半ぐらいじゃないかと思います。今の防衛庁長官はなかなか有能な方だと承っておりますけれども、いかに有能な人でも九カ月ぐらいでかわったのでは、本当に防衛の要点を理解することはできないのではないかと思うし、外国との折衝なんかにおきましても日本が軽べつされる原因になるんじゃないかと思うんですが、そういうふうにはお考えになりませんですか。
  423. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのように考えます。したがいまして、第二次内閣組閣に際しましては対外関係の閣僚、有力閣僚はできるだけ留任してもらうようにして継続性を示したわけですが、残念ながら防衛庁長官落選してしまいましたので、そういうわけにまいらなくなりました。
  424. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 国防会議というのがあるんですけれども、この国防会議が私は本当に機能していないんじゃないかという印象を受けております。昭和五十一年度を除きましてそれ以後国防会議が開かれた回数は一年に二回ないし三回であります。どうも私の得た印象では、防衛庁の出した計画をオーソライズする機関にとどまっているんじゃないかと思う。国防会議の中で、たとえばソ連の脅威があるんだったら、こうこういう対応の方策があり、A案、B案、C案があると、そのうちどれにすべきかということが本当に議論されたことはないんじゃないか。私はそれを議論するのが本当の国防会議の任務であり、そしてそのオプションに従って一定の任務を与えるのがシビリアンコントロールだと思うんですけれども、どうも私の印象では、国防会議事務局長というのはお茶くみぐらいにしかすぎないというふうに考えておられるのじゃないか、どうも国防会議は軽視されておられるのじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。
  425. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国防会議はもう少し広範な分野にわたって、また深度を深めて活用すべきであると考えます。
  426. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 一分間になりましたから、一番最後の問題、人工衛星の自衛隊利用の問題についてお伺いします。  まず、事実関係を明らかにするために防衛庁の方に質問いたしますけれども、昨年打ち上げましたところの通信衛星を電電公社が通信業務に利用する。これを硫黄島の自衛隊に利用することについて政府は今度予算を計上されたと思うんですけれども、その内容及び規模はどういうふうになっておりますか。
  427. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 今年度の予算におきまして通信衛星による硫黄島との連絡体制を強化するということで予算を要求して予算案の中に盛り込んでおるわけでございますが、これは電電公社に地上局を設置してもらうということでございまして、その地上局を設置していただきましたものを防衛庁として使う予算を要求しておりまして、総額としては二億一千八百万円でございます。それで、加入電話四回線、それから専用回線十四回線をそれて賄うということを考えておりまして、それ以外に電電公社に対しましては、隊員の家族その連絡等をやるために公衆電話を三台置いてもらうということをお願いしておるわけでございます。
  428. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ちょっと三十秒ほどお願いします。  一般論として総理にお尋ねしますけれども、今や宇宙時代と言われて日本でも大型衛星を打ち上げる時代になっておるんですけれども、宇宙開発事業団法でありますとか国会決議で言うところの平和の目的に限る、その言葉の意味がどうもはっきりしないように思います。私は自衛隊の存在そのものが平和確保、平和のためにあるというふうに考えておりますので、自衛隊が人工衛星を使うことが直ちに平和目的に反するという考え方はおかしいのじゃないかと思います。用途によって考えるべきであって、自衛隊が使うことはすべて平和目的に反するというふうな考え方はおかしいと思うんですけれども、総理並びに防衛庁長官、いかがでございますか。
  429. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) これは今までのいろいろの国会の答弁の経過がございますが、今、先生の御指摘の点につきましては、私どもも十分に頭の中に置きながら今後対処していかなきゃならぬと、そう考えております。
  430. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛庁長官と同じでありますが、非軍事的利用というように今まで国会では答えてきておるのです。この非軍事的利用という言葉をどういうふうに解釈すべきかという意味で、検討するという意味で栗原長官は言ったのだろうと思いますが、実は原子力基本法をつくったときに、私は提案者で、議会で質問に答えて、平和の目的というのはどういう意味だと、そういう話がありましたときに、もし原子力推進による船、商船が一般的に使われるようになった場合には防衛庁の使う潜水艦も原子力推進にしてもこれは平和の目的に反しない、つまり汎用性を持ってきた場合にはそれは反しないんだと、そういう原子力基本法の説明をして、それで通っておるのです。今のしかし人工衛星の問題はそういう説明をそのときしていないんです、提案理由の説明やら政府の答弁が。でありまするから、その点を今の原子力基本法と同じように言うわけにはいかないんです。ですが、今そういう点はどういうものかなという点は一つの研究課題でありますけれども、政府の答弁は今までの答弁として一応お考え願わなければいかぬと、そう思っております。
  431. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 どうもありがとうございました。(拍手)
  432. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で関君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  433. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、喜屋武眞榮君の総括質疑を行います。喜屋武君。
  434. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の日本は余りにもショッキングな事件が多過ぎると思っております。私は、氷山の一角かと思いますが、ただいまは二つの事件を拾い上げてみたいと思います。  まず第一は、一つの事件は、去る日、死刑囚谷口繁義氏が三十四年ぶりに死刑から生き返りまして、そうして出獄をした。そのときに谷口氏は生まれて初めて三つぞろいの洋服をつける、そしてネクタイを締めるときに、そのネクタイの締め方も知らないので看守さんが教えてあげたと、この一こまがございました。私は大変心を打たれました。奪われた三十四年の人生は金や物では償えるものではありません。総理、そして法務大臣、そして国家公安委員長、率直なお気持ちを述べていただきたいと思います。
  435. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) 死刑という重大な事件につきまして再審によって無罪ということになったと。私どもこのことを非常に深刻に受けとめておるわけでございます。いろんな角度から、今後二度とこういうことが起こってはいかぬわけでございまして、この事件、さらには免田事件等もございましたけれども、そういうことを本当に貴重な事件といたしまして、今後とも事件処理に当たってあらゆる角度から検討を加えまして、十分そういう点慎重にやって、二度とこういうことのないようにしていくのがこの事件を受けとめる私どもの態度でなかろうかと、こういうように考えております。
  436. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 警察は、当時としては全力を挙げて捜査を行ったものと思われますけれども、判決で指摘された点につきましては真摯に受けとめまして、今後の捜査に生かすよう指導してまいりたいと思っております。
  437. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 裁判によって死刑の判決が下され、また裁判によってそれが無罪になったと。こういう事実は厳粛にかつ我々は慎重に受けとめなければなりませんけれども、裁判について論評することは行政権の首長として慎しみたいと思います。
  438. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、消防庁にちょっと尋ねたいんですが、五十八年度における火災による死傷者そして損害額、これを一応お聞かせください。
  439. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 五十八年度におきます火災の作数は五万九千七百十四件でございます。死傷者の数は、死者が千八百二十五人、負傷者が七千三百四十三人でございます。損害額は千四百億を超えております。
  440. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今挙げられた数字の裏づけとして、その火災の中で第一位を占めるのはどういう原因でしょうか。
  441. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) ここ四、五年の間はたばこが第一位でありました。五十八年になりまして、放火あるいは放火の疑いがあるもの、これが首位を占めるようになりました。
  442. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 恐ろしいことですね。放火が火炎の原因の第一位を五十八年度から占めておるということに重大な問題があると思っております。そこで聞きますが、なぜ放火が第一位になったと理解しておられますか。
  443. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 放火並びに放火の疑いが多くなった原因につきまして統計的にどういうことであるかということを知るのは大変難しいことでありますが、一般的には最近の都市構造あるいは都市における病理現象だというふうに言われております。この中で、ある掌者が特に強調いたしておりますのは、一つには不満の発散である、第二位には怨恨、ふんまんである、第三番目は火事の騒ぎを見たい、要するに非常にいらいらしておって何かそういうものを見てみたい、そういう感じである、第四番目には自己顕示欲によるものである、第五番目には痴情関係によるものである、第六番目には犯行の掩ぺいに使われる、第七番目には保険金の許取、そういうことに使うということが多いというふうに言われております。
  444. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私がこのお答えの中で問題といたしたいのは、放火によって家族関係、糊子の関係あるいは夫婦の関係、これを焼殺した、あるいは自殺した、このケースに注目しなければいけないと思います。自治大臣、そのことをどう理解しておられますか。
  445. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 放火によって自殺をするというケースも随分見受けられるようでございまして、なかなか難しい問題でございますけれども、一つは、厭世的になり、そして個人中心で他人に迷惑を及ぼしても平気であるというような考え方というものが今の社会世相の中にかなり出てきているという面も一つの原因ではないかと私は思っております。
  446. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私が注目したいのは、放火によって人間の生命を奪うという、いわゆる恨みでもって晴らすという、弱者が力の強い者、権力者に対する手段としてやったというのは、これは昔の話なんですね。ところが、このごろの放火は、妻や子供を含めて、放火をして焼殺したり、この裏には何があるか、もう一遍自治大臣、お気づきなら答えてください。
  447. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) なかなかこれは難しい、認識の問題でございますから、私は先ほど申し上げたようなふうに見ているのでございます。
  448. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私がずばり言いたいことは、保険金欲しさとか、サラ金につながりがあるというケースが多いということなんです。そのように金につながる犯罪が非常に多くなっておることをお気づきになるでありましょう。私は、そのことと、いわゆる世相と放火の問題ですね、これは見逃すべきことではない。そしてさらに、このごろそのような世相が、政治家が金を持っておると思っておるのか、あるいは企業人の金をねらっておるのであるか、暴力やそして脅迫をもって接しつつあるというこのケースが最近あるんじゃありませんか。そのことに対してどうお思いなさいますか。
  449. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 今御指摘の問題については、先ごろ起こりました衆議院議員の宮澤曹一さんの問題を御指摘されていらっしゃると思いますけれども、特にそういう問題が非常に多くなったというふうには私は受け取っていないのでございまして、ただ、御指摘のように、著名な方、有名な方が、経済界でも政治家の中でもそういうような被害者になって出てきているということが非常にクローズアップされております。特別そういうような事件が多くなったというふうには私は認識していないのでございます。しかし、決していい情勢、状況ではございませんで、こういうような問題をなくしていくということは、もうそういうことをやっても採算が合わないんだということを、犯罪を起こそう、起こそうとする人によく承知させなければならない。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕 ですから、私ども警察関係の者にとりましては、とにかくこういうような事件が起こったら徹底的に捜査して検挙をする、つまり検挙にまさる防犯なしという気持ちで取り組んでいるつもりでございます。もちろん人命が第一でございますから、人命最優先にして臨んでまいるつもりでございます。
  450. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 多くを申し上げませんが、私は、政治家として、今日の日本の世相に対し、政治のひずみがあるということを私自身は厳しく自分に問いますということを申し上げまして、次へ移ります。  総理、私、一昨年六月、国連の第二回特別軍縮総会に出席いたしました。そこで各国から集まりました代表と数多く触れ合う機会を持つことに努力しました。その対話の中から二つの結論を見出しました。まず第一は、核兵器を持つことは絶対悪である、そして二つは、核兵器を持つことは必要悪である、この二つが私がこの対話の中から得た結論であります。さて、総理はその二つのどちらの立場なんでしょうか。
  451. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 理念としては絶対悪であり、現実としては必要悪である、そういう関係にあると思います。
  452. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それじゃ、その理由を聞きたいんです。
  453. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前に申し上げていますように、核兵器は業の兵器でありまして、これは地球上から廃絶しなければならない。全人類が打って一丸となってそういう方向に協力、提携すべきものであると、これが人道主義というものだと、そう思っております。しかし、現実には核兵器というものが不気味に存在して、そしてソ連にせよアメリカにせよ、これを持っているということは事実であって、捨てると言ったって捨てないというのが今の現実でありますから、そういう現実の中で戦争を起こさせないように、核兵器の戦争あるいは核兵器を終局的には廃絶まで持っていくと、そのためには何が必要かということになれば、片方が持っている間は片方はやっぱり持たざるを得ぬと、それが均衡と抑止の理論で、その均衡と抑止によって戦争が起きていない、過去三十八年間核戦争は起きていない。そういう現実を見れば、これはやむを得ざる悪である、そういうふうに感ぜざるを得ないと、そういう意味であります。
  454. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そういう認識のもとに、いかように日本の平和を、アジアの平和を、世界の平和を守っていこうと思っておられますか、そこのところを。
  455. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 絶対悪という理念の声をさらに大にして世界的世論もつくり、持っている人たちに精神的影響を与えるようにしていくということ。それから現実問題としては、持っている人たちができるだけこれを削減し、ついにはなくしていくと、そういう方向へ持っていけるような、両方が安心感を持って削減し廃絶するという、そういう道をつくっていく。それをどういうふうにしてつくるかということを国際協力及び当事者を入れて進めていくということだと思います。
  456. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それじゃ進めてまいります。  総理は、所信表明の中にも創造的努力を、地方自治に対する主体性、自主性を尊重して、その創造的発展ということを非常に大事にすると言っておられます。それから三月十七日の予算委員会で、地方自治を大事にすると、尊重すると、こういった姿勢で、神戸市議会の決議を取り上げて論議があったわけでありますが、あの神戸市議会の方式は全国の地方自治体にいわゆる逆用するものであると、このように私は理解いたしておりますが、いかがですか。
  457. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 恐縮ですが、何市議会でございますか。何の問題の決議ですか。(「神戸市」と呼ぶ者あり)神戸市議会の決議というは、核兵器の艦船の出入を許さないとかいう、そういうあれでございますね。これは、自治体がいわゆる地方自治の本旨に基づいて自分たちの所見で行っていることでありまして、我々中央政府としてとやかく言うべき出題ではないと、自主権に基づいておやりになっておることだと、そのように思います。
  458. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一遍確認いたしますが、地方自治体が主体的にそのような神戸市議会方式を尊重して、それに右へ倣えすることはお認めになるわけですね。
  459. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自治体がみずからの意思に基づいて自由におやりになることについて、私は中央政府としてとやかく言うべきことは差し控えた方が賢明だと、そう思っております。
  460. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 じゃ、その姿勢を大事にいたしまして、総理は教育改革に非常に熱を上げておられます。それは憲法、教育基本法の精神を大事にされるという前提であると私は信じます。ならば、その地方の自治性、主体性をもって教育を進めていくということは、これはもう当然である。そういった立場から、東京都の中野区が教育委員の準公選制度を実現しておるわけでありますが、そのことについてはどのように理解しておられますか。
  461. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 遺憾ながら、あれは地方の教育に関する法令に違反してる行為であると思って、ああいう行為はやめていただいた方がよろしいと、そう思います。
  462. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 文部大臣、文部大臣が中野区に勧告をしておられるが、それはどういう趣旨からですか。
  463. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お答えいたします。  文部大臣は地教行法を所管する大臣でございまして、同法を解釈し得る立場に立っております。したがいまして、その立場に立つと、中野区の教育委員の準公選の制度は同法に違反すると解釈をいたしました。したがいまして、地方教育行政はやはり法令に従って行わるべきものでございまして、地方公共団体は教育行政を進めるに当たりましては、やはり学校教育法あるいは地教行法、その仕組み、範囲の中において法令に反しない限りにおいて条例を制定することは可能でございますが、先ほど申し上げましたように法令に反してそのことが行われておりますので、いわゆる地方自治法二百四十五条第四項の規定において勧告をいたしたものでございます。
  464. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 御承知かと思いますが、教育の本質からして四権分立を叫ばれる、このことも御存じだと思います。これは教育の政治的中立性を守るというこの線に沿うならば、当然私は教育基本法の精神に沿って教育の民に責任を負うその代表は公選によって選ぶべきであると思いますが、いかがですか。
  465. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) かつて公選によって教育委員を選んだ、そのことが教育の中立性を損なうということから今の制度に変えられたものでございます。先ほどの答弁の繰り返しになって恐縮でありますが、地方公共団体はやはり法治国家の中にあっては、当然法のやはり枠の中でルールに従って行われるということが当然のことであるというふうに考えております。
  466. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そこは見解の相違かもしれませんが、私は教育の本旨から民に責任を負う教育を育てていくという、当然その委員も公選制でなければいけない。ところが一歩近い、準公選制ということは任命制より一歩前進した立場であると私は理解いたします。時間がありませんので、この程度にこの問題をとどめまして、私は中野区の準公選制は教育の本旨から正しいことであると、こう思っておるから、それを固いたんです。  さて次に、総理外務大臣にお尋ねしますが、沖縄返還の公約の一つとして、沖縄の基地の整理縮小ということを公約でありましたが、その公約は今日も変わっておらないでしょうか、あるいは変化したでしょうか。総理、いかがですか。
  467. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日米安全保障協議委員会の第十四回、第十五回及び第十六回において了承されました整理統合計画に基づく施設区域の返還割合は、沖縄については昭和五十九年三月二十八日現在で三四・二%であると承知をいたしております。したがって、今もお話のございましたような、日本政府としても日米協力のもとに基地についての整理統合等を進めておるということであります。
  468. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 外務大臣は所信表明の中にも、大いに努力してこられたと、あるいはまたこれからも前向きで努力するということを述べておられますけれども、その事実は何よりも真実ですから、私もここに持っておりますがね、日米安全保障協議委員会における了承事項の中で了承されたものの中から処理されたのはいまだに三四・八%でしょう。さらにこのことからして言い得ることは、基地の整理統合が努力されておるということにはならないのじゃないかということと同時に、今度は逆に自衛隊の基地がふえておるということは御存じだと思いますが、どのようにふえてきておりますか。防衛施設庁。
  469. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) お答えいたします。  那覇の空港のすぐ東側の部分に旧米軍の海空の補助施設がございまして、そこの部分が返還になりましたものが自衛隊としてはふえておるというふうに承知いたしております。
  470. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これも自信のないことを述べておられるんですけれども、四十五年の五月十五日、いわゆる復帰の時点を一〇〇として、五十七年の九月三十日現在で面積において三・五倍ふえていますよ。施設において約八倍にふえておりますよ。こういう状況をどうして基地の整理縮小ということが言えますか。総理、いかがですか。
  471. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、米軍の基地の方は先ほど申しましたように三四・二%ですか、さらにそのキャンプ・コートニー南側部分の返還はこれには含まれていないので、五十八年九月八日の合同委員会合意された同区域の返還を含めると返還割合は三四・八%と、さっき委員もお話しになりました三四・八%でありますから、それなりに返還部分はお互いの努力で進んできていると、そういうことでございますが、自衛隊は自衛隊として、国内の安全保障、防衛のために努力を続けておるわけで、自衛隊はそれなりの目的でもって沖縄に基地を持っておるということであろうと思うわけであります。
  472. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 外務大臣、もう一遍お聞きします。  今三四・八%とおっしゃった、これは了承された事項の中ですよ。それではまずそれから手をつけてもらわなければいかぬ。それをいつまでに、どのように返還されるという計画を持っておられますか。
  473. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 今、外務大臣がお答えしましたように、十四回、十五回、十六回分合わせまして、全体で三四・八%の進捗率ということでございます。  これを今後どのような見込みで返還をしていくのかということでございますが、今の時点で私どもいろいろ努力をしておりますけれども、返還のためのリロケーションの問題等いろいろございまして、必ずしも所期のように進んでいないということはまことに残念でございますが、今後ともその決められました目標に向かって努力してまいりたいと思います。ただ、いつごろまでにできるであろうかということについては、ここで具外的にお答えできる状況にはございません。
  474. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私があえて外務大臣外務大臣と申し上げるのは、結局、日米安保脇議委員会とか合同委員会、これが形骸化しておるということなんですよ。そこで本当に沖縄問題を真剣に取り上げてくださるならば、そこへ持ち込んで討議されるべきでありますが、日米安保委員会も協議委員会ももう空洞化している、こういうことを私は強く指摘したいのです。そのことから沖縄にしわ寄せが次々と降りかかってきておるということなんです。  それでは、米陸軍特殊部隊、いわゆるグリーンベレーの再配備についてまた外務大臣に。聞きます。この再配備の通告はあったんですか、なかったんですか。
  475. 北村汎

    政府委員北村汎君) これは本年の三月一日に米側から特殊部隊を、今般公表されましたところに従い、すなわち沖縄に再配備をするという通報がございました。そしてその再配備の公表は三月十七日に行うという内報を受けました。
  476. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その再配備の時期、それから部隊の規模、性格、それを尋ねます。
  477. 北村汎

    政府委員北村汎君) 私どもが今アメリカ側から聞いて承知しておりますことは、最終的には一個大隊約二百五十名から三百名の陸軍特殊部隊及び関連支援部隊、隊長はジェームス・エステップ中佐ということでございますが、その配備を計画しております。これは段階的に胴術が行われる予定でございまして、第一段階としては、まず三月に約三十名程度の配備を皮切りにいたしまして、ことしの前半に約百五十名程度の記術があり、その後九月ごろに残りの配備がある、こういうふうに聞いております。  それから任務について御質問がございました。この米陸軍特殊部隊と申しますのは、これは空挺あるいは偵察、通信あるいはいろんな種類の兵器の操作などにつきまして十分な点間的な訓練を受けた優秀な人員から組織されておる部隊でございまして、少数精鋭を旨とした編成であるというふうに承知しております。この部隊は、任務といたしましては、紛争が起きましたときに、その紛争がエスカレートしていくのを回避しながら有効な戦闘作戦行動をとるとか、あるいは紛争が大規模になった場合でも投入できるような、あらゆる段階で使用できる非常に有用な陸軍の部隊であるというふうに説明を受けております。
  478. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 再配備ということなんで、再配備の理由は何ですか。
  479. 北村汎

    政府委員北村汎君) 最近、アメリカにおきまして、先ほど申し上げましたような少数精鋭の訓練を受けた部隊の有用性というものが非常に認識されるようになってまいりました。そうしてここ一、二年の間にその増強が図られておる現状でございます。今回、沖縄の方にその一個大隊が配置されることになったわけでございますが、これはアメリカ政府として極東における平和と安全、それを守るために効果的な配備を行う、こういうことがその目的であるというふうに承知しております。
  480. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この部隊はベトナム戦争のころも沖縄におったんです。復帰と同時に出ていったんですがね。ところが、再配備ということなんですが、これは汚い部隊というニックネームがあるぐらいに、非常に沖縄県民から煙たがられた、不安感を与えた存在なんです。  それでは聞きますが、このことで沖縄県に対してどのような措置をとりましたか。
  481. 北村汎

    政府委員北村汎君) 先ほど委員に申し上げましたが、外務省は本年三月一日に米側からこの特殊部隊の沖縄に対する再配備の内報を受けたわけでございます。そこで、直ちに沖純県に対しても、米側の内報の概要を通知いたしました。なお、沖縄県に対しましては、三月一日の内報について、米国政府から三月十七日の公表前にはこれを明らかにすることを差し控えてほしい、こういう要望があったこともあわせて通報いたしました。十七日以前には本件についてこれを公表しないよう要望した経緯がございます。
  482. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これは、再削備に当たっては、安保条約上何らの手続を要しませんかどうか。外務大臣
  483. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは今局長説明をいたしましたように、またかつて沖縄にも配備されておりました部隊と同種の部隊であります。少数精鋭の特殊部隊でございますが、それなりに極東の安全あるいは日本の安全の抑止力となり得ると、こういうことでございまして、今お話しのような安保条約上においては、例えば事前協議対象になるとかそういう筋合いのものではないと、こういうふうに思っております。
  484. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 読谷村では、村長を先頭にもう村ぐるみこれに対する拒否反応をとっております。今、沖縄全体がこの問題を取り上げて騒然となっております。このような部隊はいかなることがあってもこれはノーである、拒否すべきである、こういうことなんですが、大臣、その決意を受けて、取り上げてもらう意思がありますかどうか。
  485. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私が中国へ行く前でございますが、社会党の代表者の方から要請がございまして、私もそれなりに、これは意見としてアメリカ政府につないでおく必要があると、こういうふうに考えまして、実はアメリカ政府にその懸念とされておる点について伝えたわけでございますが、これに対しましてアメリカ政府から回答が参りました。その回答は、先ほどから局長が申しておりますように、グリーンベレー、いわゆるこれは少数精鋭の部隊である、同時にまたこれはアメリカの国内においても非常に有用性が高いということで最近再編された部隊である、この部隊を送ることによりましていわゆる抑止力というものについて大きく貢献ができる、なお、地元との調整等につきましてはいろいろな画で努力をしていきたい。そういうことで、アメリカ政府として正式にこの部隊の駐留につきましてはこれを行うという回答も参った次第でございまして、日本政府としては、それ以上にアメリカ政府に対して物を申すということは安保条約の性格からできない、そういうふうに考えておるわけでございます。今後とも、アメリカ軍としても地元の皆さんとのいろいろの問題については調整に努力すると思いますし、また日本政府としましても、地元のいろいろの御心配があれば、それなりに外務省初めいろいろと調整等を行ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  486. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 さっき総理にお尋ねしようと思ったら、席を立たれましたので控えておりました。  総理は、中国を訪問されまして、朝鮮半島の緊張緩和に対して大変関心を持って努力をしてこられた。ところが、このグリーンベレーの沖縄配置で緊張を緩和する方向へいくとは沖縄県民は思っておりません。逆の、緊張を誘発するんだと、こう思っております。総理、いかが御理解ですか。
  487. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり抑止力、安保条約に基づく抑止力の一環をなしているものであると思っております。
  488. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それじゃ、任務の面からもう一、二聞きます。  自衛隊との共同訓練もありますか。
  489. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) この部隊は、まだ最近配備が始まったばかりということでございますので、当然のことでございますが、現在計画があるとか、あるいは検討をしているということではございませんが、共同訓練の可能性ということになりますと、先生御案内のように、陸上自衛隊は年に数回米陸軍との日本防衛のための共同訓練をいたしております。その際、米陸軍の実動部隊は従来おりませんので、米本土なりあるいはハワイから参っておったわけでございますが、この特殊部隊も米陸軍の一部でございますので、訓練内容の次第によっては参加することもあろうかと思います。
  490. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 外国へ出撃もありますか。
  491. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま申し上げたように、日米共同訓練は我が国の防衛のための共同訓練でございますので、外国へ出撃するというようなことは全くございません。
  492. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 逆に、外国から日本に、あるいは沖縄に外国の兵隊を呼んでの訓練もありますか。
  493. 北村汎

    政府委員北村汎君) この点は政府が過去にも何度も御答弁しておるところでございますが、安保条約第六条によって施設区域を提供しておりますが、その施設区域を使用するのは米軍でございます。したがいまして、第三国人が日本の施設区域で訓練をやるということは、これはできないわけでございます。
  494. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 当然、安保条約に反しますね。出撃することもこれはできないことですね。  次に、この問題は、さらに輪をかけて、読谷村に十六万五千平米のグリーンベレーの部隊の保養施設を施設するために、今まで村民の耕作しておった、生産の土地にしておったサトウキビ畑、それからレジャーのために海浜を囲って締め出しておることがまた大きな問題になっておるわけなんです。このことに対しても、どうしてもこれをとめてもらわなければいけないんですが、外務大臣、いかがですか。
  495. 塩田章

    政府委員(塩田章君) まず、先生にぜひ御理解いただきたいのですけれども、その読谷村の海浜における保炎施設の問題は、たまたまこの部隊の配置と時期を同じくして問題になりましたけれども、元来これは別個の問題でございまして、在沖米陸軍がかねて計画しておった保養施設がたまたまこの時期に問題になったということでございまして、今度の部隊の配備とは関係はございません。ただ、いずれにしましても保養施設の問題に関連しまして、今御指摘のように、地元の農民の方の黙認耕作主の問題が今回題になっております。そういうことは私どもよく承知しておりますので、現在、現地におります沖縄施設局におきまして調整をさしておりますので、しばらくその経過をお待ちいただきたいと思います。
  496. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 このことも重大な関心を持っておりますので、ぜひひとつ村民の要望、また県民の立場から解決してもらいたい。  次に、沖縄の開発、第二次振興開発計画の目標、目的、そのことを確認しておきたいと思います。  第二次振興計画の問題は日本にとっても沖縄にとりましてもこれは重大な開発プロジェクトでありますので、まずそれに対する総理のひとつ御所見を承りたいと思います。
  497. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 沖縄が復帰して以来、振興開発計画をつくりまして大いに努力をし、また海洋博等も実行したわけでございますが、必ずしも初期に考えたとおりの成績を上げておるわけではございません。開発計画を続けまして計画を達成できるように努力してまいりたいと思っております。
  498. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 開発庁長官
  499. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) 今、総理からお答えがございましたが、第二次振興計画は緒についたばかりでございますが、沖縄の特性といいますか、私自身考えるところでは、日本の地図でいえば南の方でございますが、アジア全体あるいは太平洋圏というような視野に立ちますといろんな可能性が出てくると思われます。そういったようなことも展望しながら、本土との格差是正、自立的な経済発展をやっていただきたいというようなことを考えまして、その某礎条件を整備するということを重点にして、逐次予算等につきましても大蔵省当局も格別の配慮もいたしてくれておるというのが現状でございますが、なお沖縄県ともよく相談しながら前進さしてまいりたい。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕  海洋博のお話も出ましたが、国体も予想されております。そういったような関連も含めましていろんな事業をやりたいと考えております。
  500. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖縄の問題は、政府の計画とは、余りにも現実は裏腹が多過ぎるということなんであります。  では、沖細開発の目標はどう定義づけておられますか。開発庁長官、済みませんが、もう一遍。
  501. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) お尋ねでございます。あと七、八年残っておりますが、この間におきまして、今約七〇%の県民所得格差、全国に比較しまして沖縄県の県民所得はたしか七〇%ぐらいだと思います。これを引き上げてまいりたいということを何よりも大きな目標として進めていくわけでございます。
  502. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 どうも言葉で述べてもらうだけではどうしても合点が、納得がいかないことが余りにも多過ぎまして、それでは今、開発庁長官がおっしゃったその心をこのような表現と結びつけてみてください。沖縄開発の目標は、平和で明るい活力ある沖縄県の実現ということを明確に打ち出されておりますよ。ところが現実はまことに裏腹。中城湾港の開発は第二次振計の目玉であることを御存じですね。ところがこの開発が、これまたその目的はどこにあるんですか。ひとつ中城湾港の開発の目的は。
  503. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) お話の中城湾港でございますが、振興開発につきまして、昭和五十六年三月に沖縄県において昭和六十五年を目標年次といたします埋め立て三百三十九ヘクタールの港湾計画が定められております。工業基地の形成、物流の効率化を図りたいといったようなことを目標にしまして港湾施設の整備、用地造成を進めまして、産業立地について一体としての整備を図りたいということでございます。
  504. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この開発の目的、もう一遍言ってください。
  505. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) 工業基地の形成、物流の効率化を図る、そういったことをもちまして産業の振興に資することを目的といたしております。
  506. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その目的を達成するのにこのようなことは矛盾をお感じになりませんか。軍、民の共用の形で開発することになっておりますね、そのことに対してどのように理解しておられますか。認識しておられますか。
  507. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) 軍、民共用とは考えておりません、産業一本で考えております。
  508. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 考えておらないとおっしゃるけれども、軍、民共用ということに実際はなっておるんですよ。それは御存じありませんか。
  509. 藤仲貞一

    政府委員藤仲貞一君) お答えをいたします。  先生の御指摘は、中城湾の湾口部に、米軍提供水域としましてホワイト・ビーチ及び津堅島の訓練場という水域がございまして、これが共同使用区域になっておると、こういうことを言っていらっしゃるのだと思いますが、この点も私から申し上げるまでもなかろうかと思いますが、この中城湾港の振興地区が完成いたしまして、ここへ大型の船舶が入出港する場合には、この水域の一部を水路として航行することになるわけでございます。その点についての御指摘かと思いますが、この点につきましては、昭和四十七年六月十五日付であったと記憶しておりますが、防衛施設庁の告示におきまして一般船舶の航行が認められております。したがいまして、この点が中城湾港の開発に支障になるものとは私どもは考えておりません。
  510. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 民を主体とする開発ということならば、あのホワイト・ビーチの海域の制限がございますな、提供基地ですから。そこをどうしても一部返還してもらわなければ民の船舶が自由に入れないということになっておりますね。そのことを予想して一部返還の意図がありますか。させる意図がありますかどうか。
  511. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 今の沖縄開発庁の方の御答弁にありましたように、水域は確かに提供してございますけれども、船舶の航行を認められておりますので、私どもは支障はないというふうに判断をいたしておりまして、したがいましてその水域の変換を求めるというふうには考えておりません。
  512. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 じゃ、今おっしゃったことは、いつ、どこで、どのように明文化されておりますか。
  513. 塩田章

    政府委員(塩田章君) これも先ほど開発庁の方のお答えの中にありましたが、四十七年の六月十五日の官報で、ホワイト・ビーチ地区と津堅島地区の水域の告示をしました際に、その告示の中に、いまの一般船舶の航行について記述してございます。
  514. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ところが、このことについては、沖縄県側からも一部返還をさすべきであるという要望が出ておるでしょう。どうですか。
  515. 塩田章

    政府委員(塩田章君) ただいまの件につきましては、県から私どもに照会がありましたときに、私どもが先ほどお答えしましたようなことを県に回答しまして、それ以後返還についての要望は参っておりません。
  516. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その要望を受けて日米合同委員会の俎上にのせて取り上げましたか。外務大臣
  517. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 先ほど来お答えいたしておるような状況でございますから、合同委員会に提案しておりません。
  518. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 提案していない理由は何ですか。
  519. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 船舶の航行の自由が認められておりますから、先ほど来御論議の開発計画にも支障はないというふうに判断しておるからでございます。
  520. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 じゃ、重ねて申し上げますが、この問題こそ沖縄開発の姿勢につながる非常に大事な問題であります。日米合同委員会で取り上げてもらって、県民に納得さしてもらいたいのだけれども、大臣いかがですか。
  521. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 重ねてお答えするようでございますけれども、先ほど来申し上げております告示の中に船舶の自由航行を認めておりますから、それ以上の必要はないのではないかと私どもは考えておるわけでございます。
  522. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 じゃ、いかなる問題に直面しても海上の安全は確保されておると、こういう前提で理解していいですね。
  523. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 先ほど来申し上げておりますように、一般の船舶の航行が自由に認められておりますので、よろしいのではないかというふうに思っております。
  524. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私がこうして叫んでおりますのも、沖縄の陸も空も海も軍事優先の様相をますます増しつつある、こういうことを私は前提に言いたいんです。  それで、那覇空港の問題一つとりましても、那覇空港の空の管制権はどこにあるのですか。
  525. 山本長

    政府委員(山本長君) 沖縄の付近の、あるいは沖縄上空を通過をする航空機についての航空路の管制権は、運輸省の所管をいたしております管制部において所管事務を行っております。その航空路から沖縄の空港に、それぞれの空港におりますときに、進入管制業務という業務がございますが、この進入管制業務につきまして、那覇空港、嘉手納空港、それから普天間空港という三空港が非常に近接をして位置しておる関係上、また返還以前から米国がそれを実施をしてきているという状況から、現在その進入管制業務につきましてはアメリカ側実施をいたしております。さらに、その進入管制業務を終えて飛行場に離着陸する航空機の管制につきましてはそれぞれの空港の管制機関が担当しておる。那覇空港につきましては日本の管制機関が担当しておる、こういう実情になっております。
  526. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そうしますと、那覇空港の場合、米軍のいわゆる上下の管制圏をまず申し上げますと、米軍機は二千フィート、民間機は千フィートですね。このことをどう思っておるのか。これで安全に空が守られておると言えますかどうか。
  527. 山本長

    政府委員(山本長君) 先生の御質問は、那覇空港に離発着する航空機と、それから嘉手納空港に離発着する航空機との間の管制、この間隔の問題であるというふうに考えますが、御存じのように、那覇空港を中心として申し上げますと、その北東の方向約十一・五マイルのところに嘉手納空港があり、普天間空港が同じくやはり北東の方向八マイルのところにございます。またさらに、この三つの空港の滑走路の方向が、那覇空港はほぼ南北の滑走路の方向をとっておりますのに対しまして、嘉手納空港、普天間空港は北東から南西に向かっての方向をとっておるのでございます。  そこで、航空機は風に向かって離発着するという方式をとっておりますので、例えば風が北寄りの風でございますときには歯あるいは南西から三空港に入るわけでございますが、この場合に、嘉手納空港に南西側から入ってまいりますときに、那覇空港から離陸をする航空機とその経路が交差をするわけでございます。そこで、これは嘉手納空港と那覇空港の位置の関係上、嘉手納空港に入ります航空機は比較的高いところを通っておる。また、その飛行機と上下の安全間隔を確保いたしますために、那覇空港から飛び立つ飛行機につきましては、高度をある一定限度で抑えている、こういう方式をとっておるのでございます。この説明は風が逆になりますとまた同じような問題があるわけでございますけれども、これは三空港の位置の関係と、それから滑走路の方位の関係で、管制をやりますときにこういう方式をとらざるを得ないのでございます。安全かという御質問でございますが、安全のためにこういう方式をとっておるのでございます。
  528. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 安全空域とはどういうものですか。
  529. 山本長

    政府委員(山本長君) あるいは私の言い間違いかもしれませんが、安全確保のためにそういう方式をとっておると申し上げたのでございます。
  530. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いやいや、安全空域という用語があるでしょう、空の安全空域。――ごめんなさい、保護空域です。
  531. 山本長

    政府委員(山本長君) 保護空域という言葉はございます。例えば、航空路というものは空の中にまあ帯状に設定しておるわけでございますけれども、その航空路というものは、航空路の中心から何マイルの幅をもって設定するというふうになっておりまして、その何マイルかの幅を保護空域と、こういうふうに呼んでおります。
  532. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 保護空域にはどういう条件が付されていますか。
  533. 山本長

    政府委員(山本長君) 航空路について申し上げますと、航空路は航行のための援助の電波を出す施設を結んで航空路がつくられておりますが、その中心線から両側に五ノーチカルマイル――五海里、五海里の幅をもって、つまり十海里の幅をもって設定をする、こういうふうにそういう基準でもって設定をいたしております。
  534. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そうしますと、沖縄の空は今おっしゃった保護空域のそれがきちんと守られておりますかどうか。
  535. 山本長

    政府委員(山本長君) 沖縄の周辺において設定されております航空路につきましては、その中心線から両側に五海里の幅をもって設定されております。
  536. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 保護空域の条件が整っていない部分があることをおわかりじゃないですか。
  537. 山本長

    政府委員(山本長君) 若干概念に私と先生の相違があるような気がいたします。保護空域と申しますのは、私申し上げましたように、航空路についての場合には五海里ずつとる。それから、先生が御懸念になっておるのではないかという私、推察のもとに申し上げますが、私たちが航空路を設定いたしますときに、日本政府が設定いたしますときに、その十海里の幅のさらに両側に五海里ずつ、これは緩衝空域、バッファーゾーンと言っておりますが……
  538. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 五海里ですか、五マイルですか。
  539. 山本長

    政府委員(山本長君) 海里でございます。五海里ずつのバッファーゾーン、緩衝空域と言っておりますが、この空域が確保されることが望ましい、こういう考え方でございます。その緩衝空域、つまり航空路の端から五海里、緩衝空域について、沖縄の航空路におきまして幾つかの空域におきまして、いわゆる訓練空域との間で五海里のバッファーゾーンがとられていないという空域が四つか五つであったと思いますが、ございます。
  540. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖縄の海も安全が守られる条件にはないという、空においてはさらに保護空域がきちんと整っておらぬ、危険千万であるというこういう状況を、私はいつも沖縄の空も海も陸も単車優先の様相を呈しておると、こう申し上げておるわけでありますが、このことを総理御理解になっておられると思いますが、この沖縄の様相に対してどのようにお感じですか。
  541. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点につきましてはしばしば御質問をいただきましたが、今まで各大臣及び私が御答弁申し上げましたように、誠心誠意努力してまいるつもりであります。
  542. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 喜屋武が軍事優先、軍事優先と申し上げるのは、単なるだてに言っておるのではないということをぜひひとつ御理解願っていただきたいんです。  それで、時間が参りましたので私は多くを申し上げませんが、日本の平和と安全、こういうことを主張されるわけなんですが、外に向かって日本の経済繁栄とかあるいは文化国家だとか、あるいはリーダーシップとか、こういう主体性を、今こそ平和の問題をひっ提げて国連の場で、あるいは東南アジア、ヨーロッパ、至るところで主張してもらわなければいけないわけでありますが、その裏には常に日本の国土の一環として百十万県民がおる沖縄が陰に陽にそのように生命の不安と危機感があるということをお忘れになるというと、これは大変なことになりますよ、総理。  そこで、私は率直に申し上げたい。かつて総理は不沈空母ということをおっしゃって国民に大きな驚きを、あるいは怒りを買っておられることを御存じでしょう。沖縄県民はこの不沈空母というのを、中曽根総理がおっしゃる不沈空母は……
  543. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 喜屋武君、時間が来ましたので簡単に願います。
  544. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 まさに沖縄を考えておるんじゃないかと、こういうことまでも思い詰めておりますよ。中曽根総理が称しておられた不沈空母ということは、沖縄を不沈空母にと、こういうことまで県民は思っております。そこで最後にそれに対するひとつコメントをお願い申し上げて、私の質問を終わります。
  545. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 不沈空母というような言葉は、私は正確に言えば使ってはいないのであります。しかし、それはともかくとして、日本を平和な国に、沖縄を平和な島に、そして繁栄する島にぜひとも我々は協力していかなければならぬと思っております。今後とも努力してまいるつもりでおります。
  546. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で喜屋武君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  547. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、野末陳平君の総括質疑を行います。野末君。
  548. 野末陳平

    野末陳平君 総括質疑も私で最後になりましたが、私は初めに年金の問題から始めたいと思います。  先日の閣議決定で、昭和七十年を目途に公的年金制度全体の一元化を完成させると、こういうふうに決まったようですが、そこで、その過程でいわゆる年金の官民格差ですね、これがどう解消されていくか、ここを質問したいと、こう思います。  まず、厚生年金の老齢年金の支給開始年齢ですが、今これは六十歳です。そこで、公務員の共済年金ですが、これは何歳から支給されるか。現在そして今後変わっていくスケジュール、これをまず政府側から。
  549. 保田博

    政府委員(保田博君) お答えをいたします。  共済年金の支給開始年齢についてのお尋ねでございますけれども、昭和五十四年に共済法の改正が行われまして、五十五年七月からそれまでの五十五歳から六十歳に引き上げたわけでございます。その際に職員の生活設計に激変を与えるということはいかがかということから、主として職員の年齢に応じまして若干の経過期間を設けておるわけでございます。  具体的に申しますと、昭和五十五年の七月一日現在におきまして既に五十二歳に達しておる者は、当時までの制度そのままに五十五歳から支給を開始する。その後年齢が下がるに従いまして経過措置の期間を短くいたしまして、五十五年七月一日現在で四十歳から四十三歳に既になっている人たちにつきましては五十九歳から支給を開始する、そういうふうに経過措置を設けておるわけでございます。したがいまして、この経過措置期間が完了いたしますのは最も長い人で昭和七十五年ということになっております。
  550. 野末陳平

    野末陳平君 わかりにくい説明ですが、要するに六十歳から共済年金の支給開始になるというのは昭和七十五年である、こういうことですね。
  551. 保田博

    政府委員(保田博君) 経過措置を受けます人たちのうち最も経過措置期間の長い者はそういうことでございます。七十五年でございます。
  552. 野末陳平

    野末陳平君 そこで、閣議決定は七十年に一元化を完了させるというわけですから、少なくもこの七十年には共済の方も厚生の方もどちらも老齢年金の支給開始が六十歳でそろうというのが一番納得ができるわけですから、その辺でこの経過措置というのは少し悠長過ぎる、もう一度短縮する必要があるんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  553. 保田博

    政府委員(保田博君) 現在の経過措置は昭和五十四年の共済法の改正によって行われておるわけでございますが、その後公的年金制度統合の問題が起きまして、政府挙げて検討いたしておるわけでございます。今度の国会に厚生年金あるいは国民年金の一元化を目指した大改正が行われるわけでございまして、それらとの関係整理を国共済等につきましても行わなければならない。来月早々から共済年金制度を厚生年金制度等の改正との調和を図りながらどう検討するかということになるわけでございますが、先生の御指摘の点も当然大きな検討の課題というふうに認識をいたしております。
  554. 野末陳平

    野末陳平君 どうも回りくどくてわかりにくいですが、大蔵大臣から率直にまとめてもらいますが、要するに経過措置はいいんですが、あの時点、五十四年だったですが、今度七十年の一元化というからにはその短縮がさらに必要である、この格差をこの際なくすべきだ、こういうふうに考えているので、それで当然いいと思うんですが、どうですか。
  555. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 歴史的に大変な違いがございますが、今、野末委員おっしゃることをまさに検討しようということであります。
  556. 野末陳平

    野末陳平君 要するに、検討して短縮すべきだと思いますよ。というのは、国家公務員の定年はもう六十歳になりますし、支給開始年齢をこの際今すぐ六十歳にしてもさほど実害はないだろうと思うんですが、それにしても検討していただいてしかるべき措置を欲しいと思うんですね。やはり支給開始年齢の差というのは目に見える不公平ですから、これはもう民間のサラリーマン諸君にとっては非常に不愉快なことだろうと、そういうふうに思っているんです。  そこで、年金一元化に当たって、いわゆる今まで官民格差ということがいろいろ言われてまいりました。中には非常に感情的な官民格差論もありましたし、それから誤解に基づくものもあります。  そこで、改めてこの公的年金制度企体の一元化を完了させるに当たって、ほかに官民格差という面で今後是正すべき課題が何であるか、その認識について、厚生年金側とそれから共済年金側からそれぞれの立場説明をいただきたい。
  557. 古賀章介

    政府委員古賀章介君) いわゆる官民格差と言われておりますものは幾つかあるかと思うのでございます。今、先生のお挙げになりました支給開始年齢もそうでございますが、そのほかに民間企業に再就職した場合の年金給付の問題、それから国庫負担の問題、こういうようなものが一応検討課題になろうかと思います。
  558. 保田博

    政府委員(保田博君) 何をもって年金の官民格差であるかということにつきましては、先生先ほど御指摘のように、人により立場によりまして非常に差があるわけでございます。一義的にこれを決定することはなかなか難しいと思いますが、先ほどの御質問にもございました支給開始年齢の問題、あるいは給付の額の問題、あるいは再就職後の年金支給をどうするかといったような問題、それぞれが取り上げられたということは私たちもよく理解をいたしておるわけでございます。  ただ、こういうもののどの点が官民格差として官側が特に有利であるのかといった点につきましては、なかなかこれ難しいわけでございますが、特に国家公務員の共済年金というものはいわば一般的な社会保障制度としての側面がございますけれども、同時にまた国家公務員制度としての特殊性に基づく面もございまして、一義的にこれをどの部分が官側が有利であるかということを申し上げるのはなかなか難しいと思います。いずれにしましても、今後の共済年金制度の大改正の過程におきまして、これらの問題についても総ざらい勉強させていただくというつもりでございます。
  559. 野末陳平

    野末陳平君 近く予定される年金法の改正案の中で、老齢年金は六十五歳からは満額支給になるというような案が入っておりましたね。あれについてちょっと説明してください。
  560. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今回の改正案は、厚生年金、国民年金、船員保険年金、これをまず統一して、さらに今まで先生の御心配しておる来年は、これはすでに閣議決定を経ておりますので、この共済年金と一元化して官民格差解消という方向に進んでいくものでありますが、今回はこの三つを一つにするものでありますから、そこで先ほども議論になっておりましたように、民間の方は再就職すると年金がもらえない、それからお役人の方は両方もらえるというようなことがございましたが、今回の年金改革案では、六十五歳からは厚生年金も、就職をして在職者でも老齢年金をもらえるということにしておりますので、これは一歩大きな前進だろうと存じております。
  561. 野末陳平

    野末陳平君 それも含めて今度の年金法の改正案はなかなか実のあるいいものだと私は評価しておりますが、さて、今答弁の中に何回か出ました再就職における年金のカットの問題ですね。総理、ここまでが前置きなんでして、これからが官民格差の一番問題点なんですが、民間サラリーマンの不安の一つは、六十五歳からは今度の年金法の改正で満額年金が入る、しかし定年後その六十五歳に至るまでのここが一番不安になるわけで、当然働きますからある程度の給与収入がある、そうなりますと年金がカットされると、ここなんですね。  そこで厚生大臣、参考までに、改正案ではこのカット率というのはどうなるか。今はかなり厳しいカット率なんですが、改正案でかなりそれが緩和されるかどうか、その辺を先に。
  562. 古賀章介

    政府委員古賀章介君) 今回の改正案におきましては、六十歳から六十五歳までの間におきましては、在職中でありましても老齢年金の支給を受けることのできる場合の月収の限度額を十五万五千円から二十一万円へ引き上げまして改善を図ることといたしております。また、六十五歳以上の方につきましては、従来の支給制限を撤廃し、在職しておりましても年金額を満額支給するということにしておるわけでございます。
  563. 野末陳平

    野末陳平君 年金法について詳しくわからない方は、今の説明じゃ十分じゃないと思うので、実例でもう少しはっきりさせたいんです。官民格差がまさしくあるということをはっきりさせたいんです。  今、厚生の老齢年金の平均受給額は月に幾らか、年額もまとめてお答えください。
  564. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 厚生年金の現行の平均受給額でございますが、昭和五十八年三月末現在の統計によりますと、十一万三千円でございます。また、同時点で、標準的な加入期間三十年ぐらい、五十五年の改正時でございますが、を有する男子で妻のある新規裁定者の平均的な年金額といたしましては、十五万八百十七円ということを想定いたしております。
  565. 野末陳平

    野末陳平君 そこで、先ほど説明で、厚生年金も二十一万以上になるとカットされるという話がありました。今、もらっている人は、それでまずまずいいように思えますけれども、これは給与収入がないという場合にもらえるわけですから、そこで、カット率によってどういうふうなマイナスが出てくるかということを確かめたいと思いますね。六十歳から六十五歳未満、この年代のサラリーマンというのはどのくらいの人数で、彼らの平均給与はどのくらいになっておりますか、推計で結構ですけど。
  566. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 昭和五十八年三月末におきまする六十歳から六十五歳未満の厚生年金保険の被保険者数は約七十六万五千人でございます。また、お尋ねの平均標準報酬月額でございますが、男子は二十二万五千八百円、女子は十三万九千五百円ということになっております。
  567. 野末陳平

    野末陳平君 平均が二十万を超えている、しかしながら、これはカットがなければの話で、問題は、総理、大蔵大臣に聞いてほしいところは、今のは六十から六十四歳まで働く、そうすると平均では男子で二十万を超えるという数字でした。しかし、ここに年金収入が入ってくればかなり楽になるわけですね。ところが、先ほどの答弁にもありましたように、カットですね、カット率がいろいろありますが、二十一万を超えたらもうカットされてしまう、こうなりますね。  そこで、現状ですが、今おっしゃった六十から六十五歳未満でサラリーマンをやっていると十六万人ですか、その中で、給与収入があるがゆえに年金をカットされている人はどのくらいいますかね、満額カット、それから一部カットに分けて、ちょっと内訳を。
  568. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 被保険者数、先ほどお答え申し上げましたとおり七十六万五千人でございます。それで、カットされている者の数は何人かというお尋ねでございますが、七十六万五千人のうち、在職老齢年金、それから通算老齢年金等を受給いたしております方々の数は約二十三万人でございます。
  569. 野末陳平

    野末陳平君 満柳カットされている方。
  570. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) したがいまして、年金を受け取っておられない被保険者の方は五十四万人ということに相なります。
  571. 野末陳平

    野末陳平君 そこで、要するに六十歳を過ぎて受給の年齢に入ったものの、当然働かなければなりませんから働いている、そうすると給与収入がある。となると、年金がもらえればさっき申しましたようにかなり楽になると思うものの、実は五十四万人、もう八割近くはもらっていないわけですね、年金はもらえないわけです。今度の改正で六十五歳からはもらえますけれども、少なくも六十五歳まではもらえない。こうなりますと、年金なしで結局二十数万円、それから一部カットされている人が二十三万人ですか、その一部カットも、例えば五割カットをされていれば、そのときの収入と合わせたって二十万円そこそこ。要するに、六十から六十五未満までの間のサラリーマンは年金が全然来ないと同じで、あるいは来ても二十万そこそこしか月収にならない、これは税込みですからね。  そうなると、そこで厚生大臣、ちょっとカット率がきついと思うんですよ。今度の年金法改正で一つ気に入らないのはここなんで、もうちょっとカット率を緩くしてあげないとまずいことが起きる。つまり働かない方が得になる場合もあるんですね。働かない方が年金カット率が緩いから、それと月収合わせれば合計は大きいということになるんですよね、そういう矛盾がある。となると、こんな働いている人がかえって少なくて、働かない方が得だなんということを年金法が勧めるような結果になるのはまずいので、この点を手直しする気はないかどうか、それを厚生大臣にちょっと前向きに答えてほしいですね。
  572. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 先生のおっしゃる御意見はよくわかります。私もこの説明を聞いているとき、今のような方式をとっておりますと、六十歳から六十五歳までの間、どうしても階段式にこれはなっておりますから、一人一人調整すればそういう不公平はないわけですが、働いて収入を得ている方がマイナスになる面がこれはあります。この辺のところは工夫していかなければならないと私は思っておるのでありますが、なかなか、それならどうしても、基準を一つ一つ設定しますと、そこのところで矛盾が生じできますから、一人一人取り上げて調整すればこれは問題ないわけですが、これは今度は実際の事務量とかそういうもので大変困難になってくるわけであります。先生が答えるということは、それなら今度の年金改革案で六十五歳を六十歳にすればこれは解決してしまうわけでありますが、これは財政上の問題がありますし、今すぐここでそこまで飛躍することは今日の状態で容易でないと存じます。
  573. 野末陳平

    野末陳平君 まあ考え方によれば、健康で働けてそれだけ収入があるんですから、年金をカットされてもそれはそれなりに別の考え方で、健康であることがありがたいとも言えるわけでしょう。しかしながら問題は、これから質問したい官民格差がここで出てくるからなんですね。要するに、民間サラリーマンは今言ったように在職カットが厳然としてある、かなりきつい。しかし一方、公務員の共済年金には、そういうカットがあるのか。その辺の事情を説明してください。
  574. 保田博

    政府委員(保田博君) 共済年金におきます年金のカットの制度でございますが、共済年金の受給者のうち、年金の受給額が百二十万円を超える者につきましては、前年の給与所得控除後の給与所得が六何万円を超える場合、その場合に限りまして、年齢七十歳に達するまではその百二十万円を超える年金額の二分の一をカットする、こういう制度になっております。
  575. 野末陳平

    野末陳平君 総理、大蔵大臣もおわかりと思いますけれども、公務員の共済年金にも確かにカットはある。しかしながら、今言いましたように、百二十万円を超える年金の超えた部分の二分の一がカットになる、同時にそれは前年度所得六百万以上であると、こういうことになっているでしょう。そうすると、聞きますけれども、年間所得六百万といえば年収八百万円近くになるでしょう。そういうサラリーマンが定年後の第二の人生でそれだけ取れる人、そして同時に年金が百二十万円以上あるという、そういう条件がそろう人はもうほんの一握りのエリートの公務員だと僕は思うんですけれどもね。そうすると、その所得制限に引っかかるのはどういう人で、現実にどれぐらいいるのか。先ほどの厚生年金の場合と比べてちょっと参考にしたいんですけれどもね。
  576. 保田博

    政府委員(保田博君) 国共済の所得制限の制度は昭和五十四年につくられたわけでございまして、非常に新しい制度でございます。現在、経過措置が進行中でございますために、現実に所得側限を受けております者の割合は受給者の〇・四%でございます。昭和五十九年の三月現在で六百十四人でございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、制度ができまして非常に新しいからでございまして、最近の五十五年度あるいは五十六年度の退職者を例にいたしますと、一・三%とか一・八%、そんな数字になっております。
  577. 野末陳平

    野末陳平君 先ほどの民間の場合と比べれば、これは余りにも小さい数字であることは明らかなんですね。  そこで大蔵大臣、要するに共済年金にも在職カットはあることはあるけれども、民間と比べると余りにも甘いというか優雅なわけですから、そうするとこれはやはり官民格差と言わずして何と言えるか。やはりここが当然直すべき点であると、これをほっといて一元化と言うのはおこがましいと、こう思いますね、大蔵大臣、どうですか。
  578. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) やっぱり在職とそれから退職老齢年金という問題はあると思いますが、もちろんこれは検討の課題だと思います。
  579. 野末陳平

    野末陳平君 じゃ、そこでこの問題について総理にまとめていただきたいと思うんですが、要するに公務員を退職して民間に天下りして再就職するという場合には、ちゃんと給料も保障されているし、その上に年金カットもほとんどないと同じである。しかし、隣の机に座っていて民間一筋できた人は、要するに二十一万を超えたらばもう年金がもらえなくなっちゃう。そうすると、六十歳支給開始年齢といっても実は六十五蔵支給開始年齢とほとんど同じなわけですね。そうすると、これはどう考えてもその場に目に見える大きな不公平ですから、この点が第二の人生で民間と公務員の間で差があるということは余りにもおかしいと私は思うわけですね。そこで、七十年の一元化というのはこの問題を手をつけずしてこれはあり得ませんね。総理にお聞きしたいのは、厚生年金の在職カットをなくしちまうか、じゃなかったら共済年金にも同じようなカットを実施するか、もうどっちかしかない、平等にしなければだめだと。どういうふうにしたらいいと思いますか。
  580. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 私が総理から年金担当大臣ということで任命されておりますので申し上げたいと思うんですが、先生が心配されておる官民格差をなくしていくというのは、まさに今回の年金改革のあるべき将来の方向だと思うんです。しかし、これは年金というのは約束事でありますから、こういう改革をやる場合でも、やっぱり既得権は保護する、またそれぞれの期待していることがあるわけですから、その期待権は尊重する、そういう中でやはり本来の社会保障としては先生の御指摘のように官民格差などあるべきではないのでありますからそういう方向に行くのは当然でありますけれども、これはやはり時間がかかる。そこで今度改革案を出したものは、民間の厚生年金と国民年金と船員保険とこれを一つにして閣議決定をいただいておりますので、今度は七十年、共済年金どこれは一緒になる。そのときに今のような議論は当然に出てくると思いますが、そこでこれを一つにするには厚生年金の方に一元化をしていくのか、あるいは共済年金の方に寄せて一元化をしていくのか、あるいはその真ん中をとっていくのかというような議論は当然に出てくると思いますけれども、そこでこれは十二分に検討し、また皆さん方の御意見も聞いて官民格差を将来是正していくという方向は打ち出していかなければならないと、こう思っておりますけれども、さきに申し上げたように、やはり一つ約束事でありますから、既得権というものをきれいにもうあしたからなくするのだというわけにはまいりません。  やはり、今度の改革案で婦人の支給開始年齢を五年引き上げるということでも、これは一遍に過激にならないように三年に一歳、十五年かけると、こういうことでありますから、七十年、七十五年、そういう方向を目指して一つにそろえていく。やはり官民格差をなくするということは今回の改革案の理想でございますが、これがきれいになくなっていくまでは時間がかかるということは御理解いただきたいと存じます。
  581. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 厚生大臣がお答えしたとおりでございます。
  582. 野末陳平

    野末陳平君 要するに、既得権とか期待権とか、これも大事なんですけれども、そういう場合に官に甘いんですよね。だから、それにこだわるというか、甘過ぎて官民格差がいつまでもなくならない。それはいずれなくすと言うけれども、やることが悠長過ぎるんですね。しかも今の厚生大臣のだって、厚生年金の中で婦人の支給開始年齢を引き上げる場合に三年で一歳、公務員の共済年金は四年で一歳だと、そこだってもう違うんですよね。  ですから、ひとつ総理、お願いしておきますから、この官民格差、いろんなことが言われておりますが、やっぱり支給開始年齢の問題と在職のカットというのは、これは一番大きいんですね。これにとどめを刺すと言ってもいいぐらいにこれが官民格差で残されたというか、是正すべき官民格差だと思いますので、ひとつこれに全力を挙げて、この問題は解消するということでお願いしておきます。  次が同じく年金関係で、高齢化社会に向かいます各個人の内助努力に対する問題なんですがね。公的年金だけじゃ不安だというので、最近は個人年金への関心が高まってきましたね。この個人年金の保険料について、これまでの生命保険料の控除とは別に優遇することになりました。しかし、これはどういう理由でこうなったか、まずそれを大蔵省の方から説明してもらいます。
  583. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 御説明申し上げます。  ただいま国会に御提案申し上げております所得税法の改正によりまして、これは五十九年分からでございますが、ただいま御指摘になりましたように個人年金保険、それから個人の共済年金、それから郵便年金でございますが、これらの年金につきまして、現在ございます生命保険料控除とは別枠で年額五千円という最高限度を引いておりますけれども、別枠の所得控除を認めるということでございます。これの基本的な考え方は、老後の生活に対する自助努力というものに税制上奨励の措置を講ずる。その場合におきましても保険型の年金に限定しておりますように、民間レベルであっても相互扶助的な形でこれが行われる、そういう制度を助長していこうと、こういう考え方で五十九年度からこれを実施したいということでございます。
  584. 野末陳平

    野末陳平君 要するに、老後に対する自助努力をする人に税法がヘルプするということでこの別枠が認められていると思うんですね。それは結構なんですよ。だけど、その場合に、じゃ個人年金だけ優遇するのはなぜかという疑問が出てくるわけですね。つまり、老後を個人年金を掛けていって計画を立てようという人と、それから老後を貯蓄をして利息で何とかしようという人と、これがどこがどう違うか。どちらも老後に向けての自助努力ですね。となると、個人年金の保険料を別枠で控除の対象にするという優遇を考えるならば、一方において年寄り向きの貯蓄行為に対して別枠のマル優を考えなければおかしくなる。ですから、個人年金だけではバランスとれないから。そこで大蔵大臣、やはりかねてから委員会でも時々話題になりましたけども、シルバーマル優のようなものをこの際やらないと、バランスがとれないので、おかしいんじゃないんですか。
  585. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かに個人年金、ことし別枠でやりましたものについても、本来そうしたものは掛金の支払いの段階での優遇措置を講じてはどうか。すなわちその思想は、今おっしゃったように、ある年齢以上の者の金利に対して同じ思想につながると、そういう議論もございました。しかし、大体現行の非課税貯蓄制度そのものを考えますと、マル優の三百、特別マル優三百、郵便貯金三百で、国民の貯蓄の現状から見ますと、まあ実際問題としては高水準にあると言うべきでありましょう。この点についての今度は昨年の税制調査会では、やっぱり「一人当たりの利用可能非課税貯蓄枠の総額は、一世帯当たりの平均貯蓄額を遥かに上回る高い水準にあり、現行制度は、高額所得者をより優遇する結果をもたらしている面がある」、そこに留意すべきであると、そういう答申をいただいたわけであります。したがって老人対策という意味におけるシルバーマル優の創設という点については、非課税貯蓄の現状からいって適当ではない。問題は年金に対する課税のあり方や、また申し上げました非課税貯蓄制度のあり方、さらにより広くは老人等の所得税負担のあり方そのものに関連する問題だから、やっぱり今後ともこれは慎重に総合的に検討していかなければならぬじゃないか。それだけ取り上げて、いわゆる特別マル優という考え方は現在なじまないではないか、こういう今の段階での考えを持っておるわけであります。
  586. 野末陳平

    野末陳平君 大蔵省から考えればそういう説明になると思いますね。しかし今度は、将来の経済計画を立てる個人から見ますと、年金を掛けた方には優遇がある、しかし利息でもって将来を設計しようという人には優遇がないと、こういうことになる。これは政策的にこういう差があるのは筋が通らない、そういうふうに私は考えるので、これを一緒にやらなければバランスがとれない。なぜ片方だけやるのかと、こういうところをお聞きしているんです。  今の大蔵大臣のお答えで大体様子はわかりましたが、大蔵省としては一時シルバーマル優などもどうかなんという案があったと思いますけども、それは今のところあきらめちゃってないわけですか。
  587. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま大蔵大臣から答弁があったとおりでございますが、いわゆる現在の非課税貯蓄体系の中で、特別に委員がおっしゃるようなシルバーマル優と申しますか、老後の貯蓄について優遇措置を講ずるかどうかということは、一つの検討の課題としてこれまで論じられてきたことは事実でございますが、現段階におきます私どもの考え方先ほど大臣の答弁にもございましたように、現在のマル優なり特別マル優なり郵貯の非課税枠と、一般の世帯の貯蓄動向から見ます貯蓄額、非常に開差がございまして、特別にそういう老齢者用の非課税制度を今設定するのがいいのかどうかという問題でございまして、基本的にはやはり現在の利子配当課税の中で貯蓄優遇措置というのをどういうふうに税制上仕組んでいくかということで、将来一つの大きな検討課題であるとは存じますけれども、現時点でこれだけ切り離して議論をするというのはやはり時期的にもまだ早いという考え方を持っております。
  588. 野末陳平

    野末陳平君 じゃ、郵政省に聞いてみたいんですが、郵政省にも当然こういうシルバー貯金のような、いわゆる非課税枠拡大のような案はあると思うんで、検討なさっていると思うんで、その辺の事情を説明してください。
  589. 奥田敬和

    国務大臣(奥田敬和君) 御指摘のように、大変大切な課題だと思っております。五十歳の坂を越え、大体高齢化社会への対応ということを考えると、自分だちの老後生活は果たして公的年金だけで不安がないだろうかというと、私たちも含めてこの世代の人は共通な不安感を持っていると思うんです。したがって、個人的には何とかして生活防衛をしなければいかぬということで、私はこれは自助努力を促す施策はやっぱり必要だと思っております。ですから、郵政省といたしましては、先般来シルバー貯金の創設をお願いしておる。五十五歳以上の世帯主を対象にして貯金一千万に対しては利子非課税をとっていただきたいということをお願いしておるわけでございます。これは税制にもかかわりありますから、今御指摘のように、関係当局ともよく検討を加えて、これはもうあきらめないで何としても公的年金の補助策としても、自助努力を促す意味においても実現に向けて努力してまいりたいと思っております。
  590. 野末陳平

    野末陳平君 そこで総理に御登場願いたいと思うんですけれども、要するにこれからの高齢化社会を考える場合に、個人がみんな一生懸命自助努力する、これを政府がヘルプするんだという方針をはっきり打ち出せば事は簡単だと思うんですね。ですから、非課税貯蓄のいわゆるマル優のあり方がどうということとは別に、やはりこの自助努力をどうするんだと、これを考えていただいたらば個人年金の控除もよかろうし、そして同時に、シルバーマル優あるいはシルバー貯金というようなものの創設も当然ではないかと、こういうふうに考えて、あとは個人の選択だと、こういうふうにするのが一番いいと思うんですね。  そこで、今までの議論を聞きまして、総理がいわゆるシルバーマル優というような老人向けの貯蓄に利子の優遇を加えるこの政策について意欲と関心があるかどうか、それをお聞きしたいですね。
  591. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) なるたけ自助努力を奨励するという方針は私も賛成であります。政府も政策的配慮を持ってできるだけそういう考慮を行う政策を考えたらいいだろうと思っております。しかし、特定の名前のシルバーマル優とか貯金に対する措置であるとかというようなことを私が今申し上げるには、準備不足でもあり、今恐らく大蔵省でもそういうことはコミットできないだろうと思いますが、一般方針としては自助努力を奨励するというやり方については賛成であります。
  592. 野末陳平

    野末陳平君 総理から確たるお答えがいただけるとは思っておりませんが、この問題の締めくくりに、どうも消極的なんで、ひとつ大蔵省の方から一つだけ、なぜ個人年金の今回保険料控除別枠で実現するに至ったのか、その辺のいきさつをお聞きしておきたいですね。というのは、さっき年金のことも質問しましたけれども、やはりこの年金の一元化というのはまだはっきりしていないわけですね。ですから、この年金の改正がきちっとした形をとってから、さて個人年金をどう扱うかということを考えるのが順序だと思うんですよ。それをいたずらに個人年金の方だけ優遇するということが先行しますと、公的年金が不安ではないかというようなことを一方で裏づけることにもなる。だから私は、要するに今回の個人年金はまだ早いと。しかし、優遇すること自体はいいんだけども、なぜ年金の改正より先行してこれを今回大蔵省はやっちゃったのかと、そこがちょっと疑問なんで、それだけお答えいただきたいと思います。
  593. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) この問題は、政府税調の中では年金課税のあり方をどうするかという過程で取り上げられた問題でございます。先ほど来議論になっておりますように、公的年金のほかに、私的年金、民間の年金といたしましては、企業年金そのほか全くプライベートな個人年金といろいろなさまざまな年金体系があるわけでございますが、これに対する課税をどうするかというのが税制上今後の高齢化社会に向かいまして大変大きな課題になっておるわけでございます。  そういったさまざまな議論をされる過程の中で、将来そういった公的年金なり私的年金の税制上の位置づけがはっきりする中で、私的年金の助成をするとすれば、あるいは今回御提案申し上げているような年金保険料の掛金の控除というものも議論の対象になるだろうと。ただし、全般的なそういう見きわめのつかない段階においてはなるべく慎重にこの問題については対処すべきであるということで、今回御提案申し上げておりますように、最高限度五千円という限度額を設けまして、こういう所得税法の改正を御提案申し上げておるわけでございまして、この問題は中期答申にも書かれておりますように、将来の年金課税をどうするかという過程でもう少し抜本的に掛金の段階と給付の段階の税制のあり方の関連でいろいろ議論されなければならない課題であるというふうに考えておるわけでございます。  それから、少し時間が長くなりますが、先ほど委員がおっしゃっております、例えば老後の貯蓄に対する優遇措置をそのままにしておいて年金だけ取り上げるのは片手落ちではないかという御指摘だろうと思うのでございますが、これは先ほど来申し上げておりますように、現行の非課税貯蓄の優遇措置というのはかなりの範囲で私どもは税制上認められておるという考え方に立っておりますので、もちろん保険型の年金に対する税制上の助成の措置と一般のいわゆる定期預金なり積み立て型の預金に対する税制上の措置、それぞれバランスをとって議論をしなければならないということは御指摘のとおりでございますけれども、それは先ほど来申し上げておりますように、利子配当課税並びにその中における非課税貯蓄の位置づけとの関連でやはり将来議論をしていくべきだろうと。したがいまして、私どもは年金だけの優遇措置をとられたということで、必ずしも現状片手落ちというふうな認識は持っていないわけでございます。
  594. 野末陳平

    野末陳平君 この問題はこれからいよいよ難しい重要なテーマになりますから、年金の一元化を研究するプロセスの中でいろいろとまた議論していきたいですね。  ちょっとテーマを変えてみましょうか。  総理の今回の訪中は、かなりの成果が上がったように私は個人的に思いまして、非常に評価するところなんですが、特にこれは中国側から出た話なんでしょうが、北朝鮮との対話を中国が橋渡しをするような、これに外務大臣もますます前向きのお考えのようですね。これはなかなかいいことだと思うんですよ。そこで総理、中国を橋渡しにして北朝鮮と対話をする場合に、人道問題に限るようなお考えのようで、経済や政治は全部除外するようなことを新聞などで拝見したんですが、その辺の真意をちょっと簡単に説明願えますか。
  595. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 北朝鮮との関係は、日本は御承知のように外交関係がないわけで、今民間の経済あるいは、漁業は中断しておりますが、漁業だとか、あるいは人的の交流とか、文化交流も行われておりますが、正式な政府間の関係はないわけですから、この関係というのは余り大きいものにはなっていかないわけでございますが、そういう中にあって今北朝鮮といいますか、朝鮮半島の緊張を緩和する、こういうことで、今当事者間の二者会談であるとか、あるいは三者会談、四者会談、六者会談、いろいろな案が打ち上げられておるわけで、ラングーン事件以来いろいろと緊張が高まっておりますけれども、我々も、そういう中でこうした緊張緩和の動きが朝鮮半島をずっと覆っていくということは大変歓迎をいたしておるわけでございます。日本はそういう中で、やはり北と南の両当事国の会談がまず基本的に行われるべきじゃないかということを言っておるわけです。  今度、総理と一緒に中国に参りました。北朝鮮が打ち上げております三者会談を中国は強く支持をいたしておるわけでございます。こうした方法論については、必ずしも日本と中国との間では一致しませんが、しかし少なくとも朝鮮半島の緊張を緩和していこうということについては、両国の認識は完全に一致をしております。  そういう中で、胡耀邦総書記から中曽根総理に対して、北朝鮮に対して日本が言いたいこと、あるいは注文があればそれは取り次いでもよろしいと、こういうようなお話があって、これは胡耀邦総書記は非常に好意を持って、北朝鮮と中国との関係からいって大変な好意を持っての御発言であろうと思うわけでございます。そして、恐らく近いうちに北朝鮮を訪問されるということではないかと私は判断をしておるわけでございますが、しかし日本としましては、今の日本と北朝鮮との関係から、胴と回との関係ではないわけでございます。そして、経済問題等につきましては、これは民間同士で話し合うわけでございますし、それはそれなりに進んでもおるわけでございます。  しかし、どうしても日本として北朝鮮にまた配慮を求めたいということもないわけではない、しかし政府間ではやれない。それはどういう問題かというと、やはり人道問題だろうと思うわけでございまして、これまで人道問題につきましては、国際赤十字等を通じて日本と北朝鮮との間のいろいろな交渉が行われて問題が解決した場合もあるわけでございますし、またあるいは第三国を通じて北朝鮮に日本の意思を伝える、こういうこともあったわけでございますが、中国がせっかくそういうふうなことで、最も北朝鮮と親しい中国からそういうお申し出があったわけですから、これからひとつ人道問題等で、政治とか経済とかあらゆる問題を超えた大事な人道の問題、国境、イデオロギーを超えた、あるいは外交関係というものを超えた問題については、これはやはりもし中国に対してお願いをすることがあったらしようということで、実は今、事務当局で検討いたしておるわけでございますが、今すぐ具体的に何をというところまでは詰まっておらないわけでございます。しかし、いずれにしてもこれは今検討を進めて、そして中国政府とも接触をしたいと考えております。
  596. 野末陳平

    野末陳平君 総理もお疲れのようですから、ちょっとかたい話題は避けますけれども、北朝鮮との交流は、私はどんなテーマであれ、検討する意味が田できたと、かなり背とは事情が変わってきたと、そういう認識を持っているんですね。  そこで、この席には山村さんがいらっしゃいますけれども、あれはどうなりましたか、「よど号」のハイジャックの犯人は。あれ、いまだに北朝鮮に厄介になっているわけですけれどもね。これは、どうですかね、あの事件解決の立て役者の、もう男山新一代記じゃないですけれども、農林大臣「あれはほっぽったままでいいんでしょうかね。ちょっと気になるんですがね。
  597. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まあ山村大臣が当時の立て役者でございますが、今そういう問題については外務省でいろいろと対策を進めておりますので、そういう立場から御答弁申し上げますけれども、確かに今、北朝鮮に連中がおるのじゃないか、こういうふうに思うわけでございますが、この辺については捜査当局がどういうふうな判断でおるか、そういうところにも非常に大きな問題があろうと思います。そうした意向等も踏まえまして、今後どういうふうにするか。外交関係がないわけで、直接政府政府の話し合いというのはできないわけですが、どういうふうにするか、これはまたひとつ捜査当局の意向等も聞いてみなければならぬと、こういうふうに思います。
  598. 野末陳平

    野末陳平君 それだったら、今回、胡耀邦さんの北朝鮮訪問に先駆けて、その対話の一つに、この例のハイジャックの犯人たちを引き渡してもらうことをお願いするのもいいんじゃないですか。どういう対策を外務省がおやりになっているかしれないけれども、やはり外交関係が正式にないんですから、このままにしておいたらこのままで終わっちゃうわけですから、何らかのけじめをつけなければならぬと思います。いいチャンスじゃないかと思います。一見ばかばかしいような問題かもしれませんけれども、逆に言えばこういうところから対話も始まりますし、道が開かれると、こう思うので、どうでしょうか、安倍大臣
  599. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国の捜査当局も関心を持っておると思いますので、外務省としましても捜査当局とも相談をしてみます。
  600. 野末陳平

    野末陳平君 いやしかし、何でもう少しはっきりした御答弁がないのか不思議なんですが、総理、確かに外交関係がありませんから簡単にどうしろこうしろと言われても難しいと思いますが、日本の事情もあれから十五年たって変わっておりますし、北朝鮮の事情もかなり変わっていると思いますね。そして、あの犯人たちのためにも、本人たちのためにも、やはりこちらに引き取って早く刑に服させる方が当然だと思うんですよ。だって、あの事件に関連して刑を受けた連中はもうそろそろ出てくるわけですね。そうするとこれは、国として、北朝鮮にそのまま厄介をかけたままにしておくというのは非常に無責任ともとれるし、法治国としてのけじめもつけずにそのままにほうっておくというのも怠慢だと、そういうふうに思います。ですから、今まではルートがなかった。いろいろやってみたがむだだった。しかしながら、今回もし中国が対話の橋渡しをするなら、そういうわかりやすいところから始めるというのも決して悪いことじゃないと、そんな気がするんですが、これはまあ素人考えかもしれませんが、総理、いかがですか。
  601. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 胡耀邦総書記の配慮については私も感謝をするところであります。ただ、野末さんも考えていただきたいのですが、ラングーンのあのビルマにおける爆発事件というのは、外国の大統領、外務大臣以下が行くというところを、ビルマ政府の公表によれば、やはり北朝鮮の工作員が仕掛けてやったというあの事件は、大変衝撃的な事件なので、韓国の空気もあれで非常に一変したのは事実です。実際、外国まで出かけて行って、たとえ憎いかどうかしらぬけれども、元首をねらって、外国のしかも神聖な霊場でああいう爆発、爆弾で殺してしまうというようなことをやるということは、我々日本人には考えられない、戦慄すべき事件ですね、外国ですからね。ですから、そういうことに対して日本人は忘れっぽくて割合甘いんですよ。しかしほかの国は忘れてはいませんよ。そういうことを考えてみると、やはり政府を預かっている人間としては慎重にならざるを得ない。北朝鮮がどういうふうに変わってくるのか、あの問題についてどういうふうに、まあ否定はしていますけれども、行動でどういうふうに出てくるのか、安心できるのかできないのか、そういうような点をやはり責任者としては考えざるを得ない。これは一般論であります。
  602. 野末陳平

    野末陳平君 確かに総理のおっしゃるとおりですね。あの非常識なラングーン事件のことを考えますと、北朝鮮との交流なんという簡単なことでは済まないと思うんですが、ただ私は、かといっていつまでも対話も何もしないわけにいかないから、例えば今の「よど号」の犯人のような連中は、要求すればかえって向こうは返してくれるかもしれないと思ったりしますので、そこで、そういうのをきっかけにしたらどうかと、こういう考えを聞いていただいたわけなんです。  私は、別に北朝鮮との問題だけじゃないんです。要するに、日本をめぐる近隣のアジア諸国との関係は、常に相手がどんな属であろうが、やはり我が国の国益のためにいろいろな点で常に配慮を持っていなければいけないと、そう思っていますので、たまたま中岡の福州港沖で日本の船が砲撃されましたね。あの事件、政府としては結果的にどういう事実が判明してどうなったのか、それっきり報告がないんですけれども、あれも気になるところですが、どうなんでしょうか。
  603. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 御指摘の船は「とよふじ五号」でございますが、この「とよふじ五号」という自動車運搬貨物船がちょうど被弾をして甲板に穴があいたときに停泊しておりました位置は、御指摘のとおり、中国の福州沖で、台湾の軍隊が駐留しております馬祖半島との大体中間地点、どちらかといいますと馬祖半島に近い地点でございます。  そこで、あの事件を海上保安庁からの連絡で知りました直後に、中国側に対しまして、外交チャネルで調査してほしい、これは日本側として重大関心を持っているからということを申しました。それから一方、先ほど申しましたとおりに、台湾の方も関係がございますので、ただ台湾と我が国との間には外交関係がございませんので、信頼すべきチャネルを通じまして台湾側に対して責任ある回答を求めたわけでございます。  中国側からはすぐ返事がその翌日に参りまして、自分だちとしては随分調査をしてみたけれども、日本の貨物船、特に「とよふじ五号」に対して砲撃を加えた事実は全くない。ただ、情報としてお伝えをしますが、これは中国外務省の答えでございますが、台湾の国民党の軍隊が三月十一日の午前二時七分から十五分までの間に馬祖本島から軽りゅう弾砲を五発発射した模様であると、こういう連絡といいますか、報告が入りました。一方、台湾の方でございますが、台湾の方は、やはり三月十一日の午前一時五十八分という時間を特定した時間でございますが、馬祖南方三海里の海面に向けて軽りゅう弾砲による警告射撃をしましたと。しかしながら、警告射撃を実施した時間、それから距離、それから弾種、つまり軽りゅう弾砲でございます。いずれもこれ日本の貨物船が被弾したと言っている日本の貨物船の船長の言うところの事実とは相違しますと。いずれにしましても、台湾側の回答は、金門、馬祖の守備軍にはいかなることがあっても商船を砲撃してはならぬということで厳禁しておりますと。過去三十年間いかなる商船に対しても射撃を行ったという事実はございませんと、こういう報告が参っております。  そこで、現在「とよふじ五号」は名古屋に入港しておりますので、海上保安庁が被弾の状況その他詳細に関係者からの証言、それから実際に被害を受けました「とよふじ五号」の被害の状況その他、物的資料その他につきまして詳細に調査中と承っております。そこで外務省といたしましては、この海上保安庁の報告を待ちましてこれを検討すると同時に、船長初め関係者、特に船主など直接の関係者の御意向も十分に承った上で外交上の措置を考えたいというのが現状でございます。
  604. 野末陳平

    野末陳平君 真相がやぶの中にならないことを願いますけれども、こういう事件が起きるたびにやはり台湾との関係というのは非常に気になるんですね。要するに、公的脚係がないとはいえ、やはり我が国の国益を考えれば、今後どんなことが起きるかわかりませんが、そのときの対応は非常に不安なわけでして、安倍外務大臣にお聞きしますが、台湾関係というのはもうこれは国交断絶後十年たちましたが、今後はどういうふうになさるおつもりですか。やはり民間ベースではますます充実していく方向だろうと思いますがね。
  605. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはこれまでの状況が今後とも続いていく、いわゆる台湾は政府としては外交関係を持っておりませんし、国家として認めていない、日中平和友好条約あるいはまた日中共同宣言、その趣旨に基づいて対応していくわけでございますが、しかし御承知のような民間の貿易あるいはまた人的交流、そういうものは相当盛んに今行われておるというのが実情でありますし、今後とも恐らくそうした関係は続いていくと、こういうふうに思うわけであります。
  606. 野末陳平

    野末陳平君 政府としては公的関係のないままでも、民間ベースでは国交が断絶してから十年ちょっとで、ますます親密といいますか、濃密といいますか、なっていますね。特に最近では、台湾からも観光客が非常にたくさん来るようになりましたね。年間約三十万人だという話を聞きましたけれども、これ、今後もっとふえてもらうために一つのとっぴな提案をしたいと思うんです。来年の筑波の科学万博、あそこへ台湾に参加要請するというのも一つ考え方じゃないかと思うんですがね。つまり、万博を成功させるためにも、せっかく今ふえている台湾からの観光客、これも当然必要である。ですから、もっと重要な外交の問題はありますけれども、あの万博成功のために考えてもいいプランではないかなと思いますが、これは外務大臣、どうなんですか。
  607. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今の野末さんのような御意見があることは承知をいたしておるわけでございます。しかし、政府は、昭和五十六年九月二十五日の閣議決定で、「外国政府等の国際科学技術博覧会への出展参加に関し、政府は、国際博覧会に関する条約第十一条の規定に基づき、我が国と国交のある外国政府我が国が加盟している国際機関等に対して招請を行うものとする」ということを決定をいたしておるわけでございます。したがって、国際博覧会に関する条約に基づいてこの科学万博を行う、こういうことになっております。そうなりますと、どうしても国交のある外国政府であるとか、あるいはまた我が国が加盟している国際機関にその招待というものは限るわけでございます。したがって、科学万博招請状の発送先は、右閣議決定に基づきまして、我が国と国交のあるところの外国政府及び我が国が加盟している国際機関に限られておるわけで、台湾にはこの招請状は送っていない、こういうことでございます。御了承いただきたいと思います。
  608. 野末陳平

    野末陳平君 ルールでいえばそのとおりなんですね。ですから、残念なんですけれども、しかし総理、スポーツとか文化とか学術のような交流はやはり大胆に積極的にやるべきときに来たので、もう時代も非常に変わっておりますから、そしてまた台湾はやはり隣人であることは間違いないわけで、近くて遠い存在にしてしまってはいけないので、私は個人的に、今度の筑波科学博に参加要請をするということは、やはりいろんな便法を講じてでもそういうことをされる方がいわゆる隣人の情として、外交として特例で許されてもいいのじゃないか、そういうふうに考えますが、総理、いかがですか。
  609. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 総理のお答えになる前に、科学万博担当大臣として一言お答えをさせていただきます。  科学万博、来年のは日本にとっても大変大事な万博であると認識しております。したがって、できるだけ多くの国あるいは国際機関が参加することは私どもの科学万博の意義を大きくしてまいるものと考えております。そして、参加の意思を表明されている向きについては、できるだけその御意向をくみ入れてやっていきたいと考えておりますが、先ほど外務大臣がお答えになりましたように、国際博覧会の条約に基づきまして、外交のある政府にしか招請ができないということでございます。この点は御理解をいただかなければなりませんが、先般、亜東関係協会の馬代表から交流協会の魚本理事長に参加の意思表示がなされたと承っております。そして、今その点については交流協会と外務省とでいろいろとまた慎重に検討していただいているという段階でございますので、私どももこれを注目しているわけでございます。
  610. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり独立国家として、日本条約については信義を重んじなければならぬので、中国との間に結んだ共同宣言並びに条約を誠実に遵守していくべきものであります。そういう考えに立ちまして、政府あるいは政府関係機関として正式に外交関係のない相手については、それは条約上その他からも無理である、そういうふうに考えざるを得ないと思います。
  611. 野末陳平

    野末陳平君 政治的には総理のお答えのとおりだと思いますね。しかし、日本人全体としては、北朝鮮であろうが、台湾であろうが、やはり近隣のアジア諸国とはいろんな点で交流していくのがいいんじゃないかと、常識的にそう思っているだろうと思いましたので、あえて私の考えを聞いていただいたわけです。  さて、先日この席で、私は参議院の比例代表区の定員を二割やそこらは減らしたらどうかというような提案を個人的にいたしましたところ、いやこれは評判が悪くて、国民の間には、減らすどころか、要するに参議院は要らないと、参議院無用論というような、いやいや私にとってはもう非常に侮辱的といいますか、困ったことなんですが、そういう声は強いですね、実際に。これは率直にそういう声が強い。それから、まことに残念ながら財界にもそういう声があると聞いたりしたんですね。そこで総理、たまたま参議院の予算委員会の総括の最後になりましたけれども、総理の周辺でもやはり参議院は要らないじゃないかなんという声をお聞きになりますか。
  612. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昔、憲法調査会に委員として出席しましていたころ、参議院無用論を唱える委員がかなりおりました。議員であられる方でも、そういう主張をなさる方がありました。最近、財界人やジャーナリズムの方々の中にもそういうことを言っていらっしゃる方がおりますが、私は、中曽根内閣は憲法を改正しないと言っているのですから、そういう考えております。
  613. 野末陳平

    野末陳平君 総理個人は、憲法に認められたこの参議院の存在について十分評価なさっているというお答えなんでしょうが、しかし、現在における参議院の存在意義というものは、やはり大分受け取られ方が国民の間に変わってきているような気がして、そこが非常に残念なわけですね。  そこで、総理ばかりにお聞きしてもあれなんですが、次の総理をねらうとされておられる竹下さんとか安倍さんや河本さんにもひとつ聞いておきたいと思うんですね。やはりこれは重要な問題なんですね。参議院が要らないなんて言われちゃって、そういう声が国民の間に高まってきたなんという事態になりましたら、我々は何のためにこうやって審議するのかわからなくなってきまして、ひとつ閣僚の中でもこのお三方に、参議院の無用論を周辺で聞くのかどうか。そして、そのときにあなたはどういうふうにお考えをお持ちか、ちょっとお聞きしたいと思うんです。
  614. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それじゃ野末さんの言った順序でお願いします。
  615. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 参議院、憲法にちゃんと書いてありますから、私も憲法を改正する考えはございませんし、その参議院が現在厳然として存在しておるということは、そのまま認めておるわけであります。ただ、参議院無用論というものが出た場合、どういう答えをしておるか、我々衆議院はとかく良識を欠くので、良識でもってチェック・アンド・バランスをしてもらっておりますと、こう答えております。
  616. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、そんな無用論というのは、余り私聞きません。昔、新聞記者をやっていたころにそういう意見も聞いたこともありますけれども、今は聞いておりませんし、それなりにやはり日本の議会政治というのが、二院制度というのがだんだんと国民の間に定着をしつつあるのじゃないか、こういうふうに思いますし、それぞれのやっぱり両院の特色を生かして進めば、日本の議会制民主主義というものは万全の体側になっていくのじゃないかというふうに考えるわけであります。
  617. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 総理の御答弁に賛成です。
  618. 野末陳平

    野末陳平君 恐らく国民の一部に参議院無用論なんという声があるのは、今各大臣のお答えになったような機能を参議院が果たしていないと思われているんだと思いますね。実際には、私どもは果たしていると思ってはいるけれども、そうとられているというのが非常に残念なわけですね。  さてそこで、この行革ムードの中で国民の声もかなり厳しくなっておりますから、特に国会は何しているんだと、こういう声はもうあちこちで聞きますね。もう行くたびにそういうことを聞きますよ。おまえら何をやっている、こう言われるんで、実に答えようがないわけですね。その場合、意地の悪い人なんぞは、大体国会議員は働いているのか、一体国会というのはどのぐらいやっているんだと露骨に聞かれますね。これは当然だと思いますよ。そこで、悔しいですから、私もそう言われっ放しじゃ。肩身が狭いというのは実に悔しいですから、私もどのぐらい参議院というのは審議しているかという時間を調べてみたわけですよ。そうしますと、会期日数は確かに長いし、それから予算委員会のみならず、先生方も物すごく忙しいのも十分わかっているんですね。わかっておりますが、正味の審議時間といいますか、会議録に基づきまして所要時間を調べてみますと、これは意外と少ないんですよね。そこでびっくりしちゃったんですね。合計してみますと、去年は選挙もありましたけれども、本会議は四十時間二十六分ありまして、この数字は国民には非常に少ないような印象を与えるんでしょうが、しかしこれはやはりいろいろと仕組みがありますからね。  そこで本会議、そして委員会も含めて、これからちょっとデータを見ていただいて、参議院が必要であるということを私は言ってみたいんですが、ちょっとこれ、総理に見ていただきたいんですが、(資料を示す)お手元に配付させていただきましたデータは、これは私が計算しまして、事務当局にも確認してもらっている数字ですからほぼ正しいんですが、委員会というのは特別委員会も含めて二十四あるんですね。これらの審議時間を一年分合計しますと、五十八年は七百九十八時間になる。一つ委員会で平均しますと、これは三十三時間ちょっとなんですが、まあ大体我々は一人で普通二つの委員会には所属します。多い先生は三つだと思いますが、二つだとしますと、これが六十六時間三十分ばかりになるんですね。そうしますと、六十六時間三十分プラス本会議の時間、これが我々議員一人当たり去年の実働時間といいますか、目に見える実働時間は約百七時間になっているんですね。そうしますと、一日七時間勤務としますと、これは約半月というか、十五、六日ですからね。つまり、国民に見える表舞台では我々はこの程度しか働いていない、こういうふうに決めつけられてしまうんですね。総理の御感想は。
  619. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やっぱり議会の大事なことは量よりも質だと思うんです。星もまた大事ではあると思いますけれども、やはり論議の質、それがいかにいい政策をつくり、あるいは国民のうっぷんを晴らし、あるいは国民が願望する政策を展開し、そして議会政治の本旨を全うして論戦をやっていてくれるかどうかという、いわゆる代表機関としての職能を本当に質的にも果たしてくれている、そういう質が大事だと。本当にそういう意味で、よくやってくれているなということは時間の長さとは関係ないと思うんです。かえって、だらだらだらだらやったり、あるいは審議拒否で出てこなかったりしたらこれは怒っちまうんです。それよりも、あなたのようにこういういい議論をして、こういう実証的な資料をもってやってくだされば、ああまじめによくやっているな、やっぱり参議院が必要だということを本当にまじめになって訴えているなという、国民は胸に響くでしょう。私はそういう賞の方を特に重要視してお願い申し上げたいのです。
  620. 野末陳平

    野末陳平君 もう当然それは質の出題ですけれども、しかし質というのは主観によって評価が全然違ってきますしね。それから民間では幾ら質だといったって、やはり勤務時間というのはきちっとあるし、そういうことになりますと、常識的には質ではあるけれども、やはり量も当然加味されなければならないわけですね。  それで、私は同僚の先生方が非常に忙しいこともわかっておりますし、それから理事さん、それから党の役員をなさっている方などはいろいろ非常に政治活動が忙しいことは十分承知しております。しかしながら、こういう平均数字で見る限りでは、国会はよくやっているという感じを国民に与えないだろうと、こう思うんですよ。  そこで、お手元の資料には、五十八年は選挙のあった年ですから特別として、五十七年のデータも入れております。五十七年は、これはほとんど同じですけれども、本会議四十五時間四十二分、委員会の合計は一千九十七時間四十一分で、我々一人の平均実働時間は、さっきと同じように計算しますと百三十七時間四十二分、七時間勤務でざっと二十日、こういうような数字が出ておりますし、念のため予算委員会とか決算委員会をかけ持ちすれば、かけ持ちというか、両方の委員会に所属しておればもっと縛られることは事実なんです。しかしながら、私はこういう数字が出ますといつも気にするのは、要するに質とおっしゃいますけれども、人数が今のままで多いんじゃないかと、すぐそういうふうになっちゃうんです。私がこれを見せましたら、ほとんどがみんなそう言いましたね。国民といいますか、私の周辺の人間ですが。そうしますと、人数が多過ぎると言われたときに、それに反論するだけの実績というか根拠というか、非常にむずかしいんです。  それで、残り時間で私の個人的考えを開いていただくわけですが、やはりこれは今衆議院もそうかもしれませんが、参議院にこれだけの定数が必要であるのかどうかという、今の定数が本当に必要かどうかということを冷静に検討してみる時期に来たのではないか。これは国会行革の第一歩じゃないかと、そういうふうな考えに至るんですが、そうはお思いになりませんか、総理
  621. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう御議論は、実はこちらの方へ向かって言っていただかないで、そちらの方へ向かって皆さんでお話し願う問題であろうと思うんです。私は内閣総理大臣としてここへ来て出ておるので、行政権の首長の方が国会のそういう問題について発言することは、それは差し控えるべきものであると思うんです。ですから、そちらの席にいらっしゃる皆さんがどうぞ話をまとめていただけば、我々行政府としてはそれに従って御協力申し上げる、そういうことであると思うんです。  しかし、一議員として今のお話を聞いてみますと、国民の神様はよくまじめに行革ということを考えてくれているなというふうに感想を持つのではないだろうかと、私はそういう実感を持って聞いておりました。
  622. 野末陳平

    野末陳平君 まあ他人事みたいなお話が最初の方にありましたけれども、やはりこれは行革を遂行するためにも、国会は何をしているんだと聞かれた場合に答えが出ないという、その姿勢を見せられないというのは非常にまずいと、行革に水を差すことになりますから。それで心配しているわけなんですね。  参議院としては、当然こういう批判があることを謙虚に受けとめて、参議院改革の実行で、委員会のあり方とかいろいろなもろもろのことを合理化していけば一、二割減は可能だと、そういうふうに私は考えておりますので、そしてその減ずる対象は、比例代表区を二割ぐらい減じて、それを国民が山桜に選挙できる、国民の意思を直接に反映できる選挙区の方のアンバランス、定数是正の方に回すべきだと、そういう考えなんです。これはこの間も私見として聞いていただきました。  そこで最後に、問題は、衆議院でも議員定数の是正が今軌道に乗りかけたかに見えます。参議院でもしなければなりません。その場合に、今のやり方だと、政党がいろいろ案を出し合いますけれども、かなりの開きがある。結果的には政党同士の妥協による手直しのような形でけりがついて根本的解決にならないのじゃないかということを恐れるんです。  そこで、これは定数是正のまず前提として、党利党略というものが入らないような第三者の機関によって、権威ある機関によってやはり定数是正をこうやるべきだという原則を打ち立ててもらうことをしないと、今のようなやり方だと本当の解決にならぬ。ですから、総理に最後に、やはりこれは定数是正の原則が何だということを第三者機関が権威を持って決めて国会に示してくれる、そこから是正が始まると、こう考えますが、そういう構想についてはいかがでしょうか。これを最後にします。
  623. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それも有力な一案であると思います。しかし、やっぱり本質的には議会政治というものは、これを行う政党あるいは諸会派がいわゆるそのグラウンドルールをつくるという話であります、今の定数問題は。でありますから、グラウンドルールをつくるという問題は、参加チームが相談をして決めるべきなのであって、自分たちで決められないから第三者に頼むというのは、参加チームの力がないか、誠意が足りないかということを問われる問題だろうと。私はやはり参加チームがまず努力して決めるべき問題であると考えております。
  624. 野末陳平

    野末陳平君 終わります。
  625. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で野末君の質疑は終了いたしました。  以上をもって総括質疑はすべて終了いたしました。  明日は午前十時に公聴会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十一分散会