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1984-03-26 第101回国会 参議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二十六日(月曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      工藤万砂美君     真鍋 賢二君      土屋 義彦君     沢田 一精君      粕谷 照美君     久保  亘君      和田 教美君     中西 珠子君      神谷信之助君     山中 郁子君      柳澤 錬造君     三治 重信君      宇都宮徳馬君     野末 陳平君  三月二十六日     辞任         補欠選任      浦田  勝君     宮島  滉君      下条進一郎君     増岡 康治君      山本 富雄君     内藤  健君      吉村 真事君     長田 裕二君      志村 哲良君     松岡満寿男君      太田 淳夫君     鈴木 一弘君      青木  茂君     前島英三郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 金丸 三郎君                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  幼君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 山東 昭子君                 杉山 令肇君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 竹内  潔君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 増岡 康治君                 松岡満寿男君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 中野 鉄造君                 中西 珠子君                 山中 郁子君                 三治 重信君                 前島英三郎君                 野末 陳平君    国務大臣        法 務 大 臣  住  栄作君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        農林水産大臣   山村新治郎君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        労 働 大 臣  坂本三十次君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    田川 誠一君        国 務 大 臣        内閣官房長官)  藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)             (沖縄開発庁長        官)       中西 一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  上田  稔君    政府委        総理府統計局長  時田 政之君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        環境庁水質保全        局長       佐竹 五六君        法務省民事局長  枇杷田泰助君        法務省人権擁護        局長       鈴木  弘君        大蔵大臣官房審        議官       大山 綱明君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  西垣  昭君        大蔵省理財局次        長        志賀 正典君        大蔵省証券局長  佐藤  徹君        国税庁次長    岸田 俊輔君        国税庁調査査察        部長       冨尾 一郎君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省大学局長  宮地 貫一君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生大臣官房審        議官       古賀 章介君        兼内閣審議官        厚生省公衆衛生        局長       大池 眞澄君        厚生省公衆衛生        局老人保健部長  水田  努君        厚生省環境衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省医務局長  吉崎 正義君        厚生省薬務局長  正木  馨君        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省児童家庭        局長       吉原 健二君        厚生省保険局長  吉村  仁君        社会保険庁医療        保険部長     坂本 龍彦君        社会保険庁年金        保険部長     朝本 信明君        兼内閣審議官        林野庁長官    秋山 智英君        運輸省航空局長  山本  長君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        労働省職業安定        局長       加藤  孝君        自治省財政局長  石原 信雄君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件昭和五十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、お手元の質疑通告表のとおり、婦人社会保障に関する集中審議を行います。  それでは、これより田代由紀男君の質疑を行います。田代君。
  3. 田代由紀男

    田代由紀男君 まず、医療問題の重点事項であります医師の過剰問題について、厚生大臣並びに文部大臣がおいでになりますので、文部当局見解をお伺いします。  この問題は、私は昨年四月十二日、社会労働委員会質問して、林厚生大臣並びに文部省前畑課長よりそれぞれ答弁があったわけでありますが、その後一年になりますが、これという進展も見ていないわけであります。  概略を申し上げますと、厚生省では欧米の水準基礎として、昭和六十年度までに人口十万対で百五十人の医師を確保すると言ってきております。目標はしかし五十八年度で既に達成しておりまして、現に都会の開業は大変困難な状態にありますし、五十七年にはさらに八千人の新しい医師が生まれている、五十八年にも同様であります。そして二〇〇〇年には十万対の二百人を超える状態になってきます。このことは西ドイツ、スウェーデンもそうでありますが、すなわち過剰な医療等によりましてますます医療費が高騰し、病院の倒産、医師失業等も出かねない状態になってきます。それに医師養成には六年を要しますし、さらに卒後教育臨床実習等もありますから、そういうものを考えますと、今から計画的に将来の医師過剰問題に対応する必要がありはせぬかと思うわけでありますが、その点、厚生大臣文部当局見解をお尋ねします。
  4. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 田代先生医師過剰についての御心配、これは大変重要な問題でありまして、昭和四十五年、厚生省医務局長名で十万人当たり百五十人の医師を確保したいということで、そのために文部省医学養成定数六千人ぐらいが適当ではないかとお願いしたわけであります。ところが、今や医科大学定数は八千三百人を突破することになりました。したがって、今、先生指摘のように、もう十万人当たり百五十人は確保し、将来大変な増加が見込まれておるわけでございます。ただ、十万人について百五十人というふうに考え昭和四十五年の考え、これがこのまま継続するものかといいますと、今後急激に老齢化人口が多くなってまいりますと、これは病人の数は、手術は多くなってまいりますから、この点もう一遍老齢化していくこれからどの程度医師数が適正であろうかということを検討する必要がございます。  それからもう一点は、医師過剰医師過剰ということになっておりますけれども、まだまだ地方過疎地帯あるいは離島、僻地、そういうところではお医者さんがいない、困ったと、こう言っているところもありますので、やはり医師地域への適正配分、こういったことを勘案しながら、もう一遍、今後高齢化社会に備えて、我が国の十万人当たり医師数はどのくらいが適正か、そのためには医科大学定数がどの程度がよいかということを、検討委員会をつくりまして検討しまして、しかし先生おっしゃるように大変重要な問題であって、やはり私は国民皆さんが、患者皆さんがすぐれた安心した医療を受けられる条件というものは、開業医、病院とも医療機関安定経営ということが前提になると思いますので、できれば六十年度からこれは新政策として発足できるようにこれから文部省当局と密接に連絡しながら検討を進めてまいりたいと思います。
  5. 宮地貫一

    政府委員宮地貫一君) ただいま厚生大臣から御答弁いただいたとおりでございますが、医師養成計画につきましては、医学医療の動向なりあるいは医師地域的偏在等いろいろ問題があるわけでございますが、将来を見通した適正な医師数水準について、まず厚生省で御検討いただくことになろうかと思うわけでございます。その結論を待ちまして医学教育の質的な改善に十分配慮しながら対応してまいりたいと、かように考えております。  なお、先般来この問題は衆議院でも取り上げられておるわけでございますが、いわばこの医師数の適正な水準結論が出てから医師養成の問題に全般的に取り組むわけでございますが、既に厚生省とも協議をいたしまして、いわば教育条件改善という観点から、入学定員が百二十名の国立大学医学部のうち、地元との調整なり各大学対応状況を十分見ながら、六十年度から定員削減のことについて私ども検討に入りたいと、かように考えているところでございます。
  6. 田代由紀男

    田代由紀男君 今、検討会をつくって六十年までに検討したいという御意見でありますが、この検討会には第三者を含んだ権威ある検討会をつくっていただきたいと思います。  次に、歯科医師会もまた同様でありまして、これも昭和六十年までに十万対五十人の計画でありましたが、それも目的を達成して二〇〇〇年には八十二名になる計算になりますが、この問題も同様に御検討をいただきたいと思います。さらに、歯科医師の方は卒後教育のうちの臨床実習制度がありませんので、定着していませんので、こういう問題も検討課題として対象にしてもらって質の向上を図っていただきたいと思います。  さらに、時間がありませんので次に進みますが、先ほど大臣からも答弁がありましたが、一方では僻地医療基礎医学研究職は依然として不足な状態にあります。私の郷里の町立病院でもなかなか医者が来てくれませんで、大学病院から交代で、それも短期間で交代でやっと補充しておるような状態でありまして、こういう問題を解決するために医師誘導といいますか、誘導政策を早急に確立していただきまして、僻地にも医療が浸透するような対策を早急にお立ていただきたいと思いますが、その辺はどうでございますか。
  7. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 地域医療計画、これは非常に大事なことでありまして、やはり北は北海道から南は沖縄まで、これは日本全体の人たちが安心していつでもどんな病気になっても、また一次医療、第二次医療、第三医療と接続していく医療機関を有効に活用できるということが大事でありますから、今の先生の御趣旨のような問題を踏まえまして、今度この国会に私ども医療法改正法案を出しまして、それぞれの地域にしっかりした医療計画を立ててもらって御安心願えるようなことにしたいと考えております。熊本県に特にそういうことをしたいと考えておるわけでございます。
  8. 田代由紀男

    田代由紀男君 ただいま地方医療計画の問題がありましたが、この問題は私は昨年もお願いしておきましたが、医師会等意見も十分に入れられまして、地方医療計画が地についた計画になるようにお進めをいただきたいと思います。  また、薬剤師臨床検査技師、栄養士などについても医師同様過剰を来すおそれがあるわけでありまして、そのためにはこれらの職種についても長期的に見て計画的な養成を行い、需要多様化等に備えまして今から計画を立てるべきであろうと思うのですが、この点についても御所見をいただきたいと思います。
  9. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 御指摘の、我が国医療が二十一世紀に向かってどうあるべきかという基本的な青写真をつくっていくことは、これは大変重要な問題だと思います。これは今お願いしている健康保険法改正案、これと表裏一体をなすものでありますので、私も厚生省のそれぞれの担当者に、一日も早く国民皆さん方に御納得のいくような将来の青写真をつくるようにという作業を言いつけておるところでありますが、具体的に御指摘の問題、これは医師の問題は先ほど申し上げました。歯科医師の問題もこれ全く同様であります。  ただ、薬剤師の場合は女性がかなり多いとか、それからこれはお医者さんとか歯医者さんとかはちょっと他の職業考えられないのでありますが、薬剤師さんの場合はいろいろ会社にお勤めになるとかいうことで若干ニュアンスは違うようでございます。また、臨床検査技師についてもそういうことでありますが、こういうもの全体を含めまして、やはり患者の立場になって考えても、先ほど私が申し上げましたように安心して医療機関に通えるということは、その医療機関で働く人たち、これの健全経営、あるいは健全運営といってもいいでありましょうが、これが前提になりますので、先生の御趣旨を踏まえてこれから検討してまいります。
  10. 田代由紀男

    田代由紀男君 次に移りますが、今回、医療保険制度改革することにしていますが、経済の低成長が今後とも見込まれ、また本格的な高齢化社会が急速に訪れるなど、医療保険制度をめぐる諸情勢はまことに厳しいものがあります。このような情勢の中で、現在の国民保険体制を今後とも維持していくために将来の制度あり方についてどのような考えを持っていらっしゃいますか、厚生大臣所見をお伺いします。
  11. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 御指摘のように、この医療制度、将来をより確実なものにしていくためには、急速にやってくる高齢化社会の到来というものを念頭に置いて考えていかなければなりません。そのためには、今御承知のように年々一兆円ずつも医療費がふえておる状態でありますから、昨年老人保健法を通していただいたり、先生方の御指摘によって監査体制を強化したりしたことによって若干低減ぎみではありますけれども、これは増大していくことは間違いないわけでありますから、そういう中にあって国民皆さん方医療保険に対する負担率をこれ以上多くしないということをまず私ども前提考えまして、二十一世紀まで国民皆さん医療負担するところの保険料率現行程度国民負担をとどめる、そのためにはやはり医療費適正化、あるいは今度は改正案患者の一部定率負担というものを取り入れることによって、患者皆さん医療費に対する関心を深めていただく、また自分のかかった医療費をわかっていただく、またやはり健康というものを自分で一生懸命守っていくことが自分たちの生活の幸せのために一番大事だということで、健康管理を、国民皆さん方により大きい関心を持ってもらうとか、こういう総合的な内容の今回改正案を出しておるわけでございまして、今回の改正案は世上一部の人に言われるように、国民負担を重くするというようなものでありません。全体としては国民皆さん方医療に対する負担を軽くするために、私ども患者被用者保険本人皆さん方にこれは大変恐縮でございますが、一部定率の御負担というものをお願いしているわけで、ぜひ御理解をちょうだいしたいと存じます。
  12. 田代由紀男

    田代由紀男君 老人保健退職者保険財源調整等も一部行われてきておりまして改正されつつあるわけでありますが、今、大臣負担の公平を言っておられますが、一方では給付率についても統一を図っていくということは大事でありますから、その点もあわせて御検討をいただきたいと思っております。  また、今後の医療保険制度の安定的な運営について重要なこうした点を十分念頭に置いてやっていかれるわけでありますが、こういうことを大臣はお考えになっていらっしゃるわけですが、そういう趣旨がどうも国民に浸透していないわけですね。極めて影響が大きいし、各方面からもいろいろな意見が出ておりますが、厚生省としてはこういう改革についてせっかくの大臣のおっしゃるような趣旨でありますから、そういうものが国民的なコンセンサスを得るようにさらに努力をするべきではないかと思うわけであります。特に、直接の医療担当者とはなかなか話が煮詰まっておりませんで、また十分な理解がいっていないようでありまして、私どものところにも交互にいろいろな意見が出てきます。私もまた月末はそういう方とお話をするわけですが、なかなか了解をいただくのが大変でありますので、そういう話し合い理解を得ることにさらに大臣初め幹部諸公努力をいただきたいと思いますが、その点いかがでございましょうか。
  13. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 第一点は給付公平化と、こういうことでありますが、これは全く御指摘のとおりでございまして、本来、社会保障制度というものは、これは貧しい人も豊かな人もみんな同じ条件給付を受けられるということが望ましいわけであります。ところが、医療保険制度に関しましては、これは旧来の健康保険制度の長い歴史や沿革があるために、今被用者保険本人は十割給付あるいは家族は八割給付、今までのように被用者保険本人でもお勤めになっている間はいいけれども、お勤めをおやめになって収入が少なくなって病気にかえって余計かかるように、病院通いを余計しなくちゃならないようになるときに、今度は八割の給付しか受けられなくなるというようないろんな矛盾があります。また農業の方、零細商工業の方は国保で三割を負担しなければならない。これは将来はやはり一つの方向に進んでいくのが社会保障の本来のあり方であるということから、今回は退職者医療制度というものをつくって、被用者保険本人でも退職された方、これも八割の給付を受けられるようにするとか、また今までの零細な商工業者五人未満の方も今度は被用者保険に入れるようにするとか、順次順を追うてその是正をしておるところでございます。  もう一点の、医療担当者とまた国民皆さんから制度改革の意義を理解されるようによく話ししろということ、これはまことに大事なことでありまして、私どもも今後努力をしてまいりますが、まずこれは先生方に御理解をいただいて、先生方からこれは国民に広く御指導をちょうだいするのが一番大事なことだと思いますので、これはぜひお願いをしたいと思います。また厚生省も、私はいつも言っておるんですが、戦後三十八年国民の健康をこれほど守り、まさに五十一歳の平均寿命が八十歳になんなんとする、世界の中で日本ほどお医者さんにかかりやすいところ、安心して立派なお医者さんにいつでもかかれるところはないということ、こういうすばらしい日本をつくっておるのでありますから、国民の健康を守る医療行政を進める厚生省でやはり一番大事なことは、直接患者皆さん方とその健康を守るためにお仕事をしていらっしゃるところの医療従事者皆さん医師会皆さん歯科医師会皆さんを含め薬剤師会皆さん、そういう医療担当者皆さん方と密接なお互いの信頼と理解を得ることが、厚生行政を進める上で欠かすことのできない重要な案件でありますので、これから先生のお言葉に従ってできるだけそういう方々の御理解を求めるように話し合いを進めてまいりたいと思います。
  14. 田代由紀男

    田代由紀男君 大変骨の折れる仕事でありますが、根気よくお願いします。  次に、幼保一元化の問題でございますが、臨時教育審議会設置法案の要綱の中にも「教育及びこれに関連する分野に係る諸施策に関し、広く、かつこという文句がありますし、また衆議院予算委員会三塚議員質問に対して中曽根総理も、幼保一元化の問題が臨教審の設置のための一つの例として引かれておりまして、「最近の事例を見ますと、一文部省の手に負えないような教育の広がりが出てきております。たとえば幼保一元化というような問題、いい悪いは別として。保育園幼稚園関係は、どうつながりが出てくるのだ。保育園厚生省である、幼稚園文部省である、そうすると、文部省の届かない分野の問題が出てきております。」というようなことがありますし、また池田議員質問に対してそれぞれ厚生大臣文部大臣答弁がありますし、参議院でも田中議員質問に対して答弁をいただいたわけでありますが、ここでもう一回教育改革に関連して幼保一元化の問題が取り上げられてくるのは必至でありますから、国会審議新聞情報大変関係者が心配しておりまして、あしたも私のところでも三団体の総会があるわけでありますが、この問題が問題の頂点になると思います。私はこの際この問題について厚生大臣のお考えを確かめておきたいと思います。  申すまでもなく、幼稚園保育所は明らかに設置目的、果たしておる役割が異なっておりまして、幼稚園幼児教育目的とした学校教育法に基づく学校であり、保育所保育に欠ける児童家庭にかわって保育する児童福祉施設でありまして、幼児教育的な役割も果たしておるが、家庭保育を補おうという、いわば福祉的役割を担っております。一方では、最近では婦人職場進出が増加して、総理府労働力調査によりますと、女子の労働人口昭和五十七年度で二千二百五十二万人に達しております。また一方、有配偶者職場進出でありますが、八百二十八万もありまして五八・八%、それから死別、離別の婦人が百三十六万、これも九・七%、そういうぐあいに保育需要がどんどんふえてきております。  厚生省の御意見によりますと、保育所の施設の数は大体需要に応じておるということでありますが、その内容を見てみますとまだ不十分な面が多々あります。すなわち、現実の保育に対する需要保育所の受け入れ態勢の間にはまだ質的なギャップがあるわけでありまして、そこで吹き出てきたのが、この前の例のベビーホテルの問題であります。そこで乳児保育とか保育時間の延長等に各保育所も懸命に努力をしてきております。これからの保育需要の動向に即応して受け入れ態勢を整えていくことが保育所に課せられた使命であると考えておりますが、そこで厚生大臣にお伺いしたいのは、どうも最近の幼保をめぐる問題は役所の縄張り争いのように一般に受けとられておる嫌いがありましてまことに残念でありまして、実態はそうではなくて、そういうことであっては断じていけないのであって、子供の立場に立ってどうあるべきかという視点で考えなければならない問題であろうと思います。  この際、厚生大臣は一体幼保一元化の問題についてどのような見解をお持ちであるか、明確にお答えを願いたいと思います。
  15. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 世上取りざたされておる幼保一元化という問題で、大変御心配をおかけしておりまして恐縮でございます。先生指摘のとおり、これは幼稚園保育所ではおのおの目的も機能も異なっておるのであります。ただ、外から見ると何か同じようなことをしておるのではないかという印象を持っておる人が非常に多いことも間違いないのでありますが、しかしこれをよく専門的に調べてみますと、幼稚園は年間二百二十日しか開所しておりませんけれども保育所は三百日開所いたしております。幼稚園はほほ四時間で子供さんを帰してしまいますが、保育所は八時間お預かりをしております。しかも八時間でも短過ぎるから今十時間にしろ、あるいはもっと保育時間を長くしろという要望が、先生指摘職業婦人が増加するとともに強い要望となって高まっておるのであります。また、対象とする児童にしましても、幼稚園は三歳児から五歳児までを対象としておるのに対して、保育所はゼロ歳児から五歳児までを対象としておるのであります。  現在のように、若いお母さんが職場進出するのがもう常識だというような時代にあっては、保育事業の重要性というものはますます増大していくのであって、その保育所がやっておる保育事業の機能というものを現在の幼稚園は持っておりません。しかしまた一方、幼稚園には幼稚園としての長い歴史があって、幼児教育の面で非常に大きな役割を果たしておることも間違いありません。そういう意味ではやっぱり幼稚園幼稚園としての、幼児教育としての立派な長い歴史の中にはぐくまれてきた目的をさらに将来にわたって大きく発展させていかなければなりませんし、また保育所も、かつては若いお母さんが外で働くというようなものは一部であって、大部分の若いお母さんは、これは子供を自分の家で育てておったのでありますが、今やその逆にこれはなっておるわけでありますから、保育事業というものは幼稚園とはまた別個な立場で重要性を増していく、この認識が非情に大事なのでありまして、私は総理にも近いうちにお話ししようと思っておりますが、これは臨時教育審議会ですか、どういう名前になりますか、そこでこれからの幼児教育のあるべき姿について真剣に討議していただくことは当然でありましょうと思いますが、これは最初からそれが幼保一元化というようなタイトルでこの調査会の審議に入るというようなことは非常に大きな誤解とまた不安を招くことになりますので、そういうことがないように私はお願いしようと今思っておるところでございます。
  16. 田代由紀男

    田代由紀男君 今、大臣から御答弁をいただきまして、特に幼保一元化というようなタイトルでは入らないようにというお言葉がありましたが、そのとおりだと思っておりまして、ぜひその方向で御検討いただきたいと思っております。文化と教育懇談会の提言の中にも、零歳からの幼児教育として、「就学前の幼児の施設教育について幼稚園保育所の機能の整合性を図る必要がある」というような指摘もありますし、今後がさらに問題でございますから、大臣しっかりそめ点を踏まえていただいて、ひとつみんなが心配しないような態勢をとっていただきたいと思っております。  次に、これは文部省からも答弁をいただきたいと思います。
  17. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 先ほど厚生大臣からお答えがありましたとおりの基本的な問題があるわけでございます。したがいまして、新しい機関でどういう内容が審議されるかはこれからの討議にまつわけでございますが、基本的には、幼児教育という観点からいろいろな問題が存在するという意味での論議が展開されるであろうと思われるわけでございます。その際に、幼児教育あり方としてどういうふうにあったらいいかということが、また具体的に論議が深められていくであろうと思います。そういう意味でございまして、基本的に厚生大臣からお答えのあったとおりの考え方を事務的には我々も持っているわけでございます。
  18. 田代由紀男

    田代由紀男君 次に、障害者の生活保障問題でお尋ねします。  私は、身障者の県の連合会長をやっておりまして、きのうも役員会で帰ってきたわけでありますが、私に対して障害者団体連合会からこういう文書が来ております。障害者の生活保障の具体策とは何か、昨年七月厚生大臣が委嘱した専門家会議の報告書による障害者の生活保障はどのような方針、具体策を立てようとしておるのか、またその報告書、拠出制による障害年金と補完としておる障害福祉年金の給付格差の解消が言われておるがどのような方策が立てられておるかということでありますが、今日の厳しい社会経済情勢のもと、障害者がその障害ゆえにこうむっておる負担や損失の過重から見て、実態に即した生活保障の具体化促進が望まれております。障害者にとって一番大きいのは、この生活保障と雇用の問題であります。次が教育、これと同じように結婚の問題がありますが、その一番大きい問題である生活保障について厚生大臣の御意見、それから雇用の問題について、後でまた質問しますが、労働大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  19. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 障害者の生活保障の問題、これは御指摘のように専門家会議の報告を受け、目下その具体化に努力をしておるところであります。現在までの検討状況を御報告いたしますと、障害者の生活保障の中核をなす年金の問題について、基礎年金の導入に伴い障害福祉年金を廃止し、幼いときからの障害者についても障害基礎年金を支給し、これまでの給付水準の差を解消するなど、障害年金の充実を図ることを内容とする改正案を今回の年金改正法案に盛り込んだところであります。  例えば障害福祉年金は、現行では一級が三万七千七百円でございますが、これが改正案が通りまして障害基礎年金になりますと六万二千五百円になります。二級が現行で二万五千百円でありますが、これが五万円になります。また、福祉手当についても、特別障害者は一万五百五十円が二万円になります。したがって、特別障害者で例えれば、六万二千五百円プラス二万円、八万二千五百円が支給されるということになって、これは私ども今度の年金改革案の中でも胸を張って国民皆さん方に申し上げることのできる、これは障害者に手厚い生活保障を充実させる改正案でございますので、ぜひこの改正案が今国会で通って、全国の障害者の皆さんに喜んで安心していただけるように御協力を賜りたいと思います。
  20. 田代由紀男

    田代由紀男君 今の案によりますと大変ありがたい案でありますので、一日も早く具体化されるようにお願いしておきます。  また、これは基礎年金と特別障害者手当が一つの大きい目的でありますが、これと同時に、先ほど申し上げましたように、雇用の問題があります。身体障害者の方々が社会的に経済的に自立するためには、まず何よりも身体障等者自身が雇用機会に恵まれて生き生きと働くことが重要であります。そのためには、国民理解はもとよりでありますが、企業も社会連帯の精神に立ちまして障害者に広く門戸を開くことが必要であり、このような観点から労働省としても障害者の雇用を積極的に進めるべきでありまして、その努力をいただいておるわけでありますが、障害者の雇用については、行政、企業の努力もありますが、なかなかまだ雇用率について達成を見ない企業等も多くありまして、そういうものに対しては、社労の委員会等でも制裁措置を講ずるようにという強い意見もありますが、私はもっとその前に、きめ細かな指導によりまして着実に改善されるように強力な指導をすることが必要と思います。この点、大臣見解をお伺いします。
  21. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 身体障害者の雇用率の達成率が最近鈍化しておるということはまことに残念なことでございます。五十三年から五十六年ごろまでは一・一%台でやってまいりまして、そして五十七年になって一・二%台に乗った、これからはもっと努力をしたいと思っておりましたが、五十八年度は一・二三%、五十七年度は一・二二%、まことに微増でありまして、私どももっと努力をしなければならぬと思っております。国の公共職業安定所に専門の障害者担当の就職促進の指導官も置いておるわけでございまして、そのほかの雇用指導官なども督励をいたしまして、さらに積極的に推進をしていきたいと思っております。  特に最近は、重度の障害者の方々、この方々に対して、民間企業が地方公共団体の出資を受けて設立する第三セクター方式というものに今月を入れておりまして、重度障害者を雇用する企業の設立を促進していきたいと思って、今、東京、京都、兵庫などで計画を立案し進めておる。今年度も新たに三県をつけ加えたいと思っておるような次第でございまして、一層努力をいたしていきたいと思っております。  それから、雇用率の達成のためには、特に昨年、特別指導期間というのを五月から九月までやりまして、そして企業の幹部に対しまして集中的な個別指導というものをやりました。これは割合効果が上がりまして、そして計画の開始時期の〇・三%というものから五十八年九月には〇・八六%へと非常に雇用率が伸びまして、中には法定の雇用率一・五を達成した企業も出るというような状態でございます。こういうようなことを考えますと、本当に一生懸命に努力をいたしますればそれなりの効果は上がるのだということがよくわかっておるわけでございまして、委員のおっしゃったように、その雇用率がまだ達成していないからすぐさま社会的制裁に訴えて、そしてにらみをきかすというよりも、こういう雇い入れ計画審の作成命令を出して、そしてまた至らぬところには個々に実施勧告を発して、そして先ほど申しましたように督励をいたしますれば相当な効果が上がるということもわかっておるわけでございまして、頭から伝家の宝刀を抜いて公表をするということはこれは最後の手段だと、私も実際の経験に照らしてそう思っておりますので、とにもかくにもその作成命令を発したり、その後の勧告、特別指導というような点で重点を置いてやっていきたい、こう思っております。
  22. 田代由紀男

    田代由紀男君 次には、児童扶養手当の問題でありますが、児童扶養手当制度が手本としてきた母子福祉年金の受給者が非常に少なくなっている。一方で、離婚の急増等によりまして、さっきの統計にもありますように、死別、生別とも、婦人の職場の進出が百万を超えておるというような状態でありますから、母子家庭の大半が離別母子家庭で占められるようになってきております。今後は、母子福祉年金の補完的な制度としてありました扶養手当制度がおのずから性格が変わってくると思います。そういう点についての大臣見解と、また今度の改正が財政的な理由から、金が足りぬからこういうことをやったんだという印象が深いわけでありまして、そういうところが正確に伝わるような、その点がどういうことであるか、改正の理由を大臣から明確に御答弁を願いたいと思います。
  23. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 児童扶養手当、御指摘のように制度発足の当時と周囲の条件が非常に変わってまいりました。最初は、母子家庭というものの大半は死別母子家庭でありまして、この方々は母子福祉年金をいただいておる。ところが、離別した母子家庭はもらっていないということで、この方々にも差し上げようということで発足したわけでありますが、その後社会的条件が非常に急速に変化いたしまして、今では離別母子家庭の方がはるかに多くなっておりまして、年々この手当もふえてまいりまして、今では恐らく二千五百億程度になっておるのではないかと思いますが、これの見直しが、臨時行政調査会はもとよりのこと、国民各層の中から出てまいりました。  そこで、今回は、やはり政策というものは公平でなければならない、また汗を流してまじめに一生懸命働いて税金を納める人たち自分の税金の使い道に疑問を差し挟むようなものであってはならないとか、いろんなことを勘案いたしまして、この児童扶養手当に今度は所得制限を付しまして、本人に、三百万以上の所得のある方には御遠慮願おう。これはいろいろ議論がありますが、このことによって御遠慮願う方はわずかに二%程度でありまして、あとの八五%程度の方々はむしろこれは、今度は上を薄く下を厚くしておりますから、給付額がよくなってくるわけでございます。今、汗を流して働いておる人でもたしか百五十万、正確な数字はまたあれですが、以上の方で税金を納めるんですから、本人三百万という所得制限を付することは私は妥当なものだと考えております。  またもう一つは、やっぱり子供をつくるからには親がその子供の幸せに対して責任を持つというのはこれ人間として当然のことなのでありますから、やはり離婚時に父親に相当の収入のある方には、これは子供に対する扶養義務を果たしていただくのが今日の人間の道として当然のことではないか。そういうことから、離婚時の際の御主人が六百万以上の収入のある方、この方には御遠慮をいただこう。これは国民全体の所得水準の中からいえば十分の一つまり十人のうち一番目の高い所得の方、百人のうち十番目までの高い所得の方、この方には、やっぱり子供をつくった父親なんですから、やはり扶養の責めを負うていただこう。しかし、それもいろいろの事情がありまして親を扶養しておったり、他の子供を扶養しておったり、そういういろいろの条件によってはこの所得制限は七百万以上にしようとか、また離別後、そのお父さんの行方がわからなくなったり、あるいは失業して所得がなくなってしまったり、そういう人たちには弾力的にこれは考えていこうとか、また既得権というものがありますから、現在もらっている方はそのままにして、これから新しいものについてそういう新規の政策をやろうという、まことに国民の税金を納めていただいておる皆さん方にも御納得がいき、また実際はそのことによって困るようなことのないようにという配慮を考えた花も実もある改正案でございますので、御協力をお願いしたいと思います。
  24. 田代由紀男

    田代由紀男君 もっと質問したいんですが、時間がありませんので。さっき大臣から答弁がありました、離婚した父に対する扶養義務の問題でありますが、スウェーデンでは国が父に対して養育費を求償する制度があるようであります。我が国でも、離婚してからはなかなかもとの親にはそう養育費を請求はしにくいわけでありまして、そういう面ではスウェーデンのような方法を考えた方がよくはないかと思います。  また、今回の改正では、父の所得が六百万円を超える場合には手当を支給しない、そういう人には七百万までのいろいろの措置を講じていただいておりますが、その旧父に対する国の求償権の問題、国がかわって父から養育費を取ってやるという問題です、スウェーデンの方式。その点はどうですか。
  25. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、スウェーデンの方式、先生大変御勉強なさっていらっしゃるのでございますが、私もそうかなと、こう考えたのであります。ところが、スウェーデンと日本ではかなり離婚の条件が違っておりまして、スウェーデンの場合は、必ずしも定かでないが、大半が裁判によって離婚をするそうです。そこできちっと養育義務というのが離婚の際に明確化するのでありますが、日本の場合は、これは女の方が素直なのか男の方が素直なのか、意外と裁判によるケースが少なくて、話し合いの離婚、そういうことから父親の扶養義務というものが明確にならないままに離婚されるケースが多いとか、そういういろいろの条件があるので、そのスウェーデンの方式をそのまま日本でというわけにもまいらないようでございます。  なお、詳細必要でありましたら政府委員から答弁させます。
  26. 田代由紀男

    田代由紀男君 終わります。(拍手)
  27. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で田代君の質疑は終了いたしました。
  28. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、山東昭子君の質疑を行います。山東君。
  29. 山東昭子

    ○山東昭子君 本日は、婦人問題について各大臣、各省庁にお伺いしたいと思います。  まず、労働問題から入りますが、最近働く女性は顕著に増加し、昭和五十八年現在、一千四百八十六万人、全雇用者の三分の一を超え、我が国の経済社会発展に大きな役割を果たしております。かつて女子労働者は若年、未婚者が中心でございましたが、近年は中高年や既婚者の割合が高まり、三十五歳以上が五五%、既婚者が六九%となっており、同一企業で十年以上働く者も二割を超えております。このような状況のもとで女子が男子と同じように雇用の場でチャンスを与えられ、その意欲と能力に応じて平等に処遇されているとは言いがたい面があると思います。  さて、男女の雇用機会の均等について審議会が大変苦労していることには敬意を表しますが、まず答申の出る見通しを大臣にお伺いしたいと思います。
  30. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) この婦人少年問題審議会は随分前から勉強をしておりまして、五十三年から勉強しておるのですから、審議会としてはちょっと異例なくらいの勉強だと私は評価をいたしておりますが、五十七年ごろから積極的に進められまして、ただいま委員が御質問になりましたその審議会報告、ちょうどきょうの午後あたりに出るようでございます。その建議をいただければ、いろいろな案がございましょうから、今度は労働省としても責任のある案を立てて、できるだけ早く今国会にも提出をいたしたいと思っております。
  31. 山東昭子

    ○山東昭子君 公益委員のたたき台によりますと、雇用の場で男女の機会均等を叫ぶなら、三十数年前から変わらぬ女子保護規定をこの際母性保護以外は原則として廃止すると言っておりますが、私自身もこの考え方はもろ手を上げて賛成でございます。ただし、産前産後の拡充など母性保護措置の充実を図るべきであると思いますが、いかがでございましょうか。
  32. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 母性保護は、これはもう女性にとりましてはもちろんですけれども、母性あっての我が国の子供たちでありますから、子供を育てるというのは、これはもう一番大切な仕事でございますので、母性保護はしっかり守っていかなければならぬということは当然でございます。しかし、そのほかにいろいろ労働基準法上の女性保護はございます。そういうふうなところはできるだけ見直して、そして母性保護はしっかり残すけれども、ほかのところは、いろいろこう見直す努力審議会でやっておられるそうでありまするし、私どもも法案作成の点においては十分気をつけていかなければならぬと、こう思っております。その母性保護以外をずっとそのまま残しておきますと、結局、女性が働こうとしてもそれだけのハンディキャップをみずからまた背負うことにもなりまして、女性に不利になりますので、できるだけ母性保護以外は見直していく方が適当だろうと、こう思っております。
  33. 山東昭子

    ○山東昭子君 ただ、気になる点として、募集、採用は努力義務規定とされておりますけれども、むしろ入り口では何にでも女性をチャレンジさせて、その後の昇進、そういったものはむしろ能力別にしたらどうかと思うのでございますけれども、なぜ努力義務規定とされるのか、その理由、また背景、そういったものをちょっと伺いたいと思います。
  34. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) お答えいたします。  ただいま先生指摘のように、男女の雇用における機会の均等ということを進めますには、募集、採用のところがまず最初の出発点でございます。したがいまして、そこが非常に重要ということは審議会でも十分に意識をされ、討議を重ねられたというふうに私は承知いたしております。しかし、その討議の中で、あるいはその討議に先立ちまして、男女平等問題専門家会議という会議も二年半もかけて行われたわけでございますが、その中でも同様に言われましたことは、日本の女性の働き方というものは決して男性と同じではないと。勤続年数も先ほど先生おっしゃいましたように長くなってきてはおりますけれども、男子と比べるとかなりの違いがございます。そしてまた、日本の企業が終身雇用制度を採用しているところが非常に多いわけでございまして、これは勤続年数が長い、つまり一生かけてその企業で働くということを前提にした企業の雇用管理が行われているということもまた相当普遍的な事実でございます。そういたしますと、入るときに前提となるそういう違いがあるということを考えますと、採用のところは大変重要ではございますが、今直ちに全く同じにしなければならないというふうにするということにかなりの無理があるのではないかという議論が行われたわけでございます。そこで、時間をかけながら、目標を決めて、差別をなくしていくというのが現在の日本では適当な方法ではないかと、このような考えから公益委員のたたき台としては、採用のところを努力義務というふうにされたわけでざいます。  また、募集につきましては、募集と採用とは一連の行為であって、採用のところを仮に努力義務が適当だといたしますと、募集を採用とは別にして強行規定にいたしますと、採用する意思もないのに募集だけが強行されるので、そこだけは本来の意図とは異なった募集のされ方がされて、それではかえって混乱を起こすのみで、募集だけがされても意味はないのではないかと、このような議論が重ねられた経緯がございますので、たたき台の中で、募集と採用は努力義務が適当だというふうに示されたものと私は理解いたしております。
  35. 山東昭子

    ○山東昭子君 しの法案ができるのは賛成でございますけれども、反面女性には、子供を心身ともにたくましく育てるという一大事業があると思います。特に乳児期における母子の接触と幼児期の家庭内でのしつけなど、こうした重要な問題を踏まえた議論はされているのか、その辺のところをお伺いしたいと思います。
  36. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 今まではずっと男性中心社会だったことはまず間違いはないですね。それを変えようというわけなんですけれども、そして女性は家庭が主であるというのが今までの流れであったわけであります。そこで今、男女雇用平等法をつくろうというわけでありますけれども、しかし家庭で乳幼児の世話をしたり子供のしつけもやったりというようなことはずっと女性が主にやってきておりますから、やっぱり今までの重要な女性の役割というものは、これは十分にしんしゃくをいたさなければならぬということで、今度建議が出まして私ども法案作成にいよいよ入るわけでありますが、そういう場合にもいろいろな点でひとつ労働省としても知恵を絞って、そういう女性の赤ん坊を育てる、子供のしつけなど、そういう点も配慮しながらいろいろな条件などを考えて、できるだけきめを細かくして考えて法案をつくっていきたいなと、こう思っております。
  37. 山東昭子

    ○山東昭子君 ちなみに、ちょっと労働大臣にお伺いしますけれども、よく、子育て子育てと申しますけれども、子育てが終わった時期に働きたいという女性が非常にふえていると言われておりますけれども、労働大臣のお考えになる子育てが終わった年齢と申しましょうか、どのくらいの年なのか、厚生大臣がお考えになった子育てというのが大体終わったというのはどの辺のところか、ちょっとお伺いいたします。
  38. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) まあ三十過ぎ、三十代ぐらいがそうじゃないでしょうかね。昔と違いまして、子供の数が少なくなってまいりましたので、まあそのころかなと、こう思っております。さっきの厚生大臣の話を聞いておると、人生五十から八十になったというんですから、それから後五十年あるわけですから、これは女性もいろいろ考えて、社会的に意欲を燃やす、社会的にも仕事を持って働きたい、もっともだなと、私はそんな気がしておりますが、三十過ぎからじゃないでしょうかなと、こう思っております。
  39. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは簡単なようで大変難しい質問で、子供を産む年齢も、四十歳になってから産む人も、何かアメリカの新聞にありましたが、六十歳になってから子供を産んだなんというのもありますから一概に断定できませんが、一般的に言いますと、今、労働大臣がおっしゃったように、三十代の半ばごろにはもう子育てを終わったというのは、これは四十になってもまだ一人前にならない子供で苦労しておる親もおるわけですから、終わったとは言えませんが、一般的に、奥さん方がもう退屈し出して仕事をしなければという気持ちに三十半ばごろからなっていくのでないかと、今考えたところです。
  40. 山東昭子

    ○山東昭子君 労働大臣にお伺いしますけれども婦人差別撤廃条約の批准時期を考慮いたしますと、国内法の整備は急がなければならないと考えるわけでございますけれども、法案の提出は今国会に間に合うのでございましょうか。
  41. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 今国会に提出をしたいと、間に合わせたいと。審議会の方もひとつとにかく長い間勉強してここまで来られたのでありまするから相当議論は煮詰まってきておるだろうと思っておりますので、ひとつきょう建議をちょうだいをして、そうしたらもう労働省の方に今度移るわけでありますが、いろいろな御意見がたくさんございます。そう簡単に、足して二で割ってはいと、こういうわけにはいかない非常に複雑な問題もございます。これは大まく文明論にも関することでもありまするし、近代経済社会の仕組みを変えるようなところにまでいろいろ考えなければならぬのでございますから、いろいろな点はございますけれども、まあ機は熟した。来年が六十年でしょう、来年は批准をしなければならぬということになりますと、もう今国会にも提出をいたしたいと思って全力を挙げるつもりでございますので、その節はどうぞよろしく。
  42. 山東昭子

    ○山東昭子君 とにかく、女性にとってよりよいものになることを期待をいたしまして、大臣にも頑張っていただきたいと思います。  次に、在宅の病弱寝たきり老人と婦人対策について厚生大臣にお伺いしたいと思います。  高齢化社会が本格化し、全人口の一割近くが六十五歳以上のお年寄りとなっており、これらの対応は国民的課題でございます。本日は、お年寄りのうち病弱な方や寝たきりの方についての現状と対策について総合的にお尋ねしたいと思います。  全国社会福祉協議会の調査によりますと、寝たきり老人の介護者は八六・九%が女性であり、介護者の年齢を見ましても、男性が介護する場合は六十歳以上が七七%であり、夫が妻を介護しております。これに対して、女性が介護している場合には、既に四十歳台が二五%、五十歳台が二六%に達しており、つまり女性は配偶者ばかりでなく自分の親や夫の親をも介護しているわけでございます。まず、全国におけるお年寄り一千百万人のうち、病弱や寝たきりの方がどの程度おられるのかお伺いしたい。
  43. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 数字の問題でございますので、私からお答え申し上げます。  全国の寝たきり老人の方の数でございますが、厚生行政基礎調査その他によりまして推計いたしますと、総数四十二万人でございます。この四十二万人の方のうち在宅の方が二十五万人、それから特別養護老人ホーム、こういったところに入所されている方が十万人、入院の方が七万人というような内訳になっておるものでございます。
  44. 山東昭子

    ○山東昭子君 今おっしゃられた特別養護老人ホームにおいてはお年寄りがどのようなサービスを受けているのか、お聞きしたい。その場合、特養と一般病院についても、それぞれどの程度の費用がかかっているのかもお伺いしたいと思います。
  45. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 特別養護老人ホームにおきましては、先生御承知のことと思いますが、寝たきりの老人の方々に対しまして、食事でございますとか、入浴でございますとか、あるいは機能回復訓練、そういった生活の全般にわたって介護サービスと申しますか、介護の面倒を中心としたサービスを行っておるのが実情でございます。  また、こういった方々の施設にどのくらいお金が一人当たりかかっているかという御質問でございますが、施設によりまして入所の定員がいろいろ違いますので、多少規模によっては違いますが、典型的な例として五十人の施設の例を見てみますと、一人月額にいたしまして五十八年度で大体十九万円の運営費と申しますか、措置費を出しております。また一方、病院に入院している老人の方々の医療費でございますが、これも五十八年度の三月から十月までの平均実績を見てみまして、一カ月当たりの老人医療費の入院費が二十八万一千円ということで、約二十八万円かかっております。
  46. 山東昭子

    ○山東昭子君 お年寄りがどんどんふえていく中で、すべての人が施設に入ったり入院できるわけではございません。ところが、在宅老人に対しての配慮はまだ不十分でアンバランスな面がございます。それを補っているのは家族であり女性でございます。介護に当たっている女性には、精神的あるいは身体的に口では言いあらわせないほどの苦しみがあるわけでございます。そうした女性に対し、何とか希望や励ましになる具体的な施策はないものでしょうか。その辺のところを厚生大臣にお伺いしたいと思います。
  47. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 山東先生指摘のように、在宅老人の看護に当たるお嫁さんであるとかあるいは奥様であるとか、ほぼ女性の方でありますが、この御苦労は大変なものだと思います。私も、たしか十年ぐらい前だったか、「恍惚の人」という映画で、森繁久彌と高峰秀子でやったと思いますが、大変だったなと、こう思った記憶がありますけれども、そういう非常な御苦労を願い、しかも今、社会局長先生との間の質疑で交わされたように、これは施設に入れば財政的にも大変な負担をしておるわけでありますから、在宅老人のためにいろいろなことをやらなければならないと考えて、今度の五十九年度の予算でも、ここに大蔵大臣おりますけれども、大蔵大臣は大変渋ちんの大蔵大臣で、何もかも切ってきた大蔵大臣ですが、この在宅老人のヘルス活動には非常に理解を示してくれまして、家庭奉仕員の派遣事業、あるいは老人を短期間預かる短期保護事業、入浴、給食、リハビリテーション訓練などを行うデーサービス事業、保健サービスとしての保健婦の指導事業等、特にこの家庭奉仕員派遣事業については家庭奉仕員の大幅な増員を図ったわけでございます。これからももっともっとこれは強化していかなければならないと、こう思っておるのでありますが、それにも増して大事なことは、やっぱり私はこの福祉というものは、物やお金、これは大変大事なことでありますが、ここに心が通って調和して本当のものになるのでありまして、老人を苦労をして介護してくれるお嫁さんや娘や奥さんたちに対するいたわりや感謝の気持ち、また社会全体が自分より不自由な暮らしを強いられておる人たちに対する温かい思いやり、またそれが隣近所、また周囲のボランティア、そういうものに積極的につながっていって、先生の御心配いただいておるように、将来に希望と励ましになっていくのではないかなと今思っておるところでございます。
  48. 山東昭子

    ○山東昭子君 ホームヘルパーは最近相当数増加しているようですけれども、在宅福祉のかなめともなっているようなので、もっと思い切って充実させたらいかがでございましょうか。
  49. 持永和見

    政府委員(持永和見君) ホームヘルパーの増員の数、それから現状をまず申し上げますが、家庭奉仕員の数でございますけれども、五十六年度を見てみますと一万三千三百二十人でございましたけれども、五十七年度一万六千六百十八人ということで約三千三百人、五十八年度一万八千二百七十八人ということで千六百人、五十九年度は一万九千九百八人ということで約二万人になりまして、千六百三十人の増員を図ったところでございます。  ちなみに、この三年間で約六千六百人の増員を図ったところでございますが、御案内のとおり、ホームヘルパーは在宅福祉サービスの中核的な役割を担っていただく方々でございますので、今後とも私どもとしては積極的に大いに増員をしていかなければいかぬというような考えを持っております。
  50. 山東昭子

    ○山東昭子君 昨年二月に施行された老人保健法のねらいの一つに、老人の在宅医療、在宅ケアの促進ということがあったと思いますけれども、保健婦による訪問看護の実施状況について余り伸びていないとすれば、その中身と申しましょうか、お話をいただきたいと思います。
  51. 水田努

    政府委員(水田努君) お答え申し上げます。  ヘルス事業は、実質的には五十八年度からスタートして、まだ五十八年度は完了しておりませんので実績そのものは出ておりませんが、私ども五十八年度訪問指導の対象人員を一応十七万人と予定いたしているわけでございますが、市町村の実施計画を見てみますとその二・四倍の四十万人を対象に考えておりますので、この訪問指導については私ども考えた以上にやはり切実な問題があるだけに、市町村は熱心に取り組んで計画を立ててくれていると、こういう実情にございます。
  52. 山東昭子

    ○山東昭子君 現在、完全看護以外の病院に入院している者に対し、付き添いの費用については一部保険から支払われていますね。ところが、家庭で治療を受けている人には寝たきりの老人でもそうした費用は支払われておりません。この点はちょっと何となく不公平じゃないかなというような気もするのでございますけれども、自宅で付添人をつけた場合でも同じ扱いというものはできないものなんでございましょうか。
  53. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは先ほどの御質問にも関連があるわけですが、私も最初は、先生が今御指摘なさったように、これは施設の場合がなり国費がかかっておるわけです。本来の老人の福祉からいえば施設に行くより在宅が望ましいということは共通の意見になっておるわけですから、在宅福祉を奨励する意味でもそういうことができればと考えたのでありますけれども、実際上は在宅の寝たきり老人については療養上の看護よりは日常生活上の介助、援助が中心で、いろんなお手伝いするわけですね。入院の場合は療養上特に付添看護の必要があるときは看護料の支払いを認めておる、こういうことになっておるわけですから、これと比較しますと、日常生活上の介助、援助が中心となっておるこういう人たちを、直ちに付添看護の対象にすることが行政上これになじむかどうかということはいろいろ議論があるところで、今慎重に討議をしておるところでございます。
  54. 山東昭子

    ○山東昭子君 もちろんすべてお金で解決するという問題ではございませんけれども、そうした看護に当たっている女性の精神的な苦労というものを考えた場合、できる限りのいわゆるデーケアサービスとか、あるいはヘルパーの問題とか、そうした問題を特にまた充実させていただくようにお願いをする次第でございます。  こうした寝たきり老人を少しでも少なくするためには、やはり病気の予防とか積極的な健康づくりというものが最も大切だと思います。私も、かねてから党の婦人の健康づくり問題研究会のメンバーとして、あるいは社会部会の食生活改善委員会の長として研究をしてまいりましたが、今日家庭の主婦や婦人は貧血の割合が高く、国民栄養調査によりますと、中高年の三割は肥満傾向にあると聞いております。その上、今後ますます増加する成人病は食生活と極めて密接な関連があると指摘され、将来の問題として私も大変危惧しております。諸外国を歩いておりますと、今や世界じゅうで食生活をめぐる問題には関心が高まっているようでございます。既にアメリカでは食事目標を発表して食生活の改善を推進しているようですけれども、この点について諸外国の取り組み方はどのようになっているのか、お聞きしたいと思います。
  55. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) お答え申し上げます。  食生活が、昨今の高齢化社会の中におきます疾病等との関係、予防の観点から見まして非常に重要であるというのは先生の御指摘のとおりでございます。既に今お話にございましたように、アメリカにおきまして上院の特別委員会で、一九七七年でございますが、食事目標というものが委員会の方から出されたわけでございます。マクガバン報告とも言われておりますけれども、これはかなり関係者の間には有名になっております。その後一九八〇年になりますと、同じくアメリカの政府レベルでも食生活指針が公表されております。それからカナダにおきましては一九七七年に国民の栄養に関する勧告、それから同じ名称のガイド、これが示されておるところでございます。また、オーストラリアでは一九八一年に国民の食生活指針、それから年号は不明でございますが、ニュージーランドでも同様なものが指針として示されております。また、最近イギリスにおきましても、まだ委員会段階でございますけれども、昨年、健康教育のための栄養指針の試案というようなものが発表されておる、こういう状況でございます。
  56. 山東昭子

    ○山東昭子君 我が国でも、国レベルで栄養摂取に関した一種の指針が示されておりますけれども、どうも読みましても素人にはわかりにくい点が多いんです。そこで、健康づくりから見た日常の食生活の目標としてもっとわかりやすい指針を何らかの形で国民に示していただきたいと思うのでございますけれども大臣、その点はいかがでございましょうか。
  57. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 大変に大事なことだと思います。御案内のように、我が国でも国民が健康で頑張っていくための必要な栄養所要量というものを五年に一遍ずつ調査しておるわけでありますけれども、今度の第三次改定がことしの八月ごろ大体まとまるのじゃないかと思うんですが、そのとき、今、先生指摘のように、これはわからないのじゃ意味がないわけですから、それを絵で解説するとか、あるいはもっと新しい情報機関をいろいろ活用するとか、そういうことで国民皆さん方それぞれに理解されるような方式はないかといって今担当の者に勉強させておるところです。  ただ、実際問題になりますと、これは政府がやるということになりますと、例えば塩を余りとらないようにということでも、余りみそ汁を余計吸っちゃいけないとかなんとかになると、今度はそれが特定の営業を邪魔するみたいになったり、いろんな当たりさわりがあるんですね。だから、抽象論はだれでもできるんですが、具体論になるとなかなか、あっちにはいよ、こっちにはいよというような問題が出てくるのでありますが、そういうものを克服して、やはり国民皆さん方が御理解できる、納得していただける、そしていいことをやったなという方法を今一生懸命勉強させておるところでございますから、御期待を願いたいと思います。
  58. 山東昭子

    ○山東昭子君 それじゃ、きっといいものを出していただけることを期待しております。  続きまして、環境問題でございますけれども、よりよい環境をつくるためには、やはり女性が果たす役割というものは大変重要なものがあるのではないかなという気がいたします。我が国は山紫水明の国と言われ、美しい自然というものほかけがえのない財産であると思います。イザヤ・ベンダサンも、「日本人とユダヤ人」の中で、日本人は水と安全はただだと考えているという趣旨のことをたしか書いていたと思いますけれども、最近は水を守ることがおろそかになって、日本の湖沼や河川や海が汚れているのではないかと思います。  そこで、水質保全局長にお伺いするのでございますけれども、現在の全国の公共用水域の水質の状況はどのようになっているのか。お伺いしたいと思います。
  59. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) 数字の問題でございますので、私からお答えいたします。  環境庁は、毎年継続的に全国の公共水域の水質を測定いたしております。それによりますと、有機汚濁の代表的な指標でございますBOD、これは海域と湖沼ではCODを使っておりますが、環境基準の達成率は現在六七・五%ということでございまして、依然として全体で三割強の水域で環境基準を達成していないというような状況にあるわけでございます。特に、典型的な閉鎖性水域、水が滞留して流れの悪いところでございますが、こういうところの代表でございます湖沼の達成率は四二%でございます。さらにこれが海域は八一%、それから河川は六五%程度達成しておりますので、湖沼の四二%というのは著しく低いと言うことができるわけでございます。また、全体としては達成率はよろしいわけでございますが、海域の中で特に東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等いずれも水が停滞しやすいような閉鎖性水域、それからまた河川の中では都市の中小河川^こういったところではどうも達成状況が悪い、このような状況にある次第でございます。
  60. 山東昭子

    ○山東昭子君 かつては工場や事業場からの排水が水質汚濁の原因だったと言われておりますが、環境庁もでき、そして法律に基づいて工場や事業場の排水規制も行われまして、また企業も非常に努力をしてきたと思います。にもかかわらず、今の水質保全局長の御説明ですと、湖沼や閉鎖性の海域というものは環境基準の達成率が相変わらずよくないと言われます。  そこで、長官にお聞きいたしますけれども、公共用水域の水質汚濁の原因としては何が考えられるんでしょうか。
  61. 上田稔

    国務大臣(上田稔君) お答え申し上げます。  先生の御指摘のとおり、ただいまでは工場または事業場排水と申しますものは大分水質がよくなってきておるのでございますけれども、最近は生活雑排水と申しますか、御家庭の方から出てくるものが非常に被害を与えておるというようなことが起こっております。
  62. 山東昭子

    ○山東昭子君 今、長官おっしゃられたように、個々の家庭から出てくる生活雑排水が水質汚濁の原因として無視できなくなってきているということでございますが、これは工場や事業場と違いまして規制をかけるわけにはなかなかいかないと思うのでございます。有効な対策としては、やはり下水道の整備など生活排水の処理施設を整備していくことが絶対条件だと思うんですけれども、最近の統計なんかを見ますと、下水道の一人当たりの費用というものは約百万円、普及率を一%上げるためにはしたがって一兆三千億円もかかるというような話を聞きますと、こういう財政難の折、多額の費用と多くの年月を必要とするということを考えると、なかなか難しい問題ではないかなという気がするわけでございます。しかし、家庭の中でもやはり生ごみをそのまま流さないとかいろいろ工夫ができるのではないかと思いますけれども家庭における主婦の役割について私は注目したいと思います。  そこで、長官にお聞きしますけれども、生活雑排水対策については下水道の整備など、今申し上げたように、各省庁で施設の整備の面からのハードな取り組みが行われているところでございますけれども家庭内でのソフトな対策としては家庭の主婦が果たす役割が大きいと思うんですが、この点について環境庁はどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
  63. 上田稔

    国務大臣(上田稔君) お答え申し上げます。  今、先生の御指摘のとおりでございまして、家庭の雑排水対策といたしましては下水道の普及ということ、整備ということが一番の薬と申しますか対策でございますが、そのほか浄化槽、合併浄化槽というようなもの、つまり雑排水を集めまして、そしてそこで下水処理というまではいきませんけれども、そこでいろいろ沈殿をさせたりあるいは家庭から来ましたものを雑物を取り除いたりいたしまして、そして下水をよくしていこうというものでございますが、そういうものの普及をやっておるのでございますけれども、何分先生の御指摘のとおり、これは雑排水のもとになる御家庭のところで賢明なる御主婦の方々によって取り除いていただくということが一番いい対策であると思うのでございます。  したがいまして、御家庭におきまして十分よくお考えをいただきまして、お洗いになりますときに食べ物の残渣の流出、こういうことを防止していただきますこと、またお使いになられました後の油、これを下水にお流しをいただきますと、これがやっぱり血の中のコレステロールみたいになりまして下水の方を悪くいたしますので、こういうものをお流しいただかないようにしていただくということが大事ではなかろうかと存じます。また、富栄養化に非常に影響のあります有機燐質の洗剤、これはなるべくお使いをいただかないようにしていただきたいと思うのでございます。それから洗剤もやはり下水といいますか排水を悪くいたしますので、その使用量を適当にしていただいて、余りむやみにお使いになるということがないようにしていただくということが必要であろうかと思うのでございます。また、家庭雑排水が流れまして今度は溝に入りますが、その溝を清掃していただく。これもやっぱり主婦の方の仕事になっておるのでございますが、男もやりますけれども、そういう清掃をひとつやっていただくことをお願いを申し上げたいと存ずる次第でございます。
  64. 山東昭子

    ○山東昭子君 やはり、家庭の主婦を含めまして国民全体が日本の湖や海を汚さないという決意を持って水質保全のためにそれぞれができることをやらなければならないと思います。水は生命の源であり、生物にとって欠くことのできないものでございます。また、生命活動のみならず、農業、水産業あるいは工業などの産業活動を支える資源となっております。このような水を守るためには、今後は生活雑排水対策というものをもっと大いに推進する必要があると思うのでございます。  そこで、長官にお伺いいたしますけれども、主婦の果たすべき役割を含め、環境庁としては生活雑排水対策についてどのように取り組んできておられるのか、また今後の方向はどうか、これを伺いたいと思います。
  65. 上田稔

    国務大臣(上田稔君) お答えを申し上げます。  御家庭の主婦の方を含めまして生活雑排水対策、これをやっていただかなければならないと思うのでございますが、住民の皆様方に啓蒙宣伝をいたしまして、そして家庭内で生活雑排水の対策をひとつ十分に御実践をお願い申し上げたいと思うのでございます。  また、全体の方向といたしましては、やはり生活雑排水対策というのは下水道の普及というのが一番もとでございますので、これは建設省の大臣の方にもお願いをいたしまして、そして大蔵省の方にもお願いをいたしまして下水道の予算をふやしていただきますとともに、その工事の万全を期していただくということを進めていただきたいと思うのでございますが、何分水質の悪いところがございますので、そういうところに対しては特に総合的に計画的な生活雑排水対策を進めていただきたいと考えております。先日も私、行かしていただいたのですが、手賀沼あたりが湖の中ではワーストワンになっておりますが、あの水源はやはり生活雑排水がほとんどでございますので、これに対しては総合的な計画を立てていただいて、下水道ももちろんそうでございますが、そのほかの施策を考えていただいてこれをよくしていかなければならないと、こういうふうに考えておるのでございます。  生活雑排水の処理システムあるいは処理技術については調査をずっと五十六年度ぐらいから進めてきたのでございますけれども、また五十九年度から新たに生活雑排水処理モデルという計画を策定いたしたい、それから生活雑排水対策の実践活動の推進、こういうことをやらしていただきたいと考えておるものでございます。生活雑排水は大変に住民の皆様方と密着をした問題点でございますので、特に御婦人の主婦の方々にお願いをいたしましてその対策の万全を期していきたいと思っておるところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  66. 山東昭子

    ○山東昭子君 水の問題は本当に大切なことでございますけれども、それと同時に、やはり環境問題全般に関して見ましても、全国を歩いておりましても空き缶の問題、ごみ処理の問題。それからこれは外国に行ったときによく言われることなんでございますけれども日本の富士山はすばらしい、写真を見てぜひ行きたいと思って実は一度訪れてみたら、写真はすばらしかったけれども山に登ってみたらごみが山のようにあってがっかりした、やっぱり写真で見るのが一番だったというようなことを言われたことがあるのでございますけれども、こうした問題も小さいときからの家庭内でのしつけ、そして特に女性が先頭に立ってそういった問題に取り組んでいかなければならないのじゃないかなというようなことを肌で感じたわけでございます。  これからも環境庁が家庭婦人地域住民に対して水の大切さの啓蒙を行うということは大変重要なことであると同時に、日常生活の中で国民の一人一人の小さな心遣いというものが日本の海や湖、そしてまた山、そして自分たちの住む環境というものをきれいにしていくわけですから、こうした対策というものは総合的に大いに進めていただくことを上田長官にお願いいたしまして、まだちょっと時間は残っておりますけれども、この辺で質問を終わらせていただきたいと存じます。ありがとうございました。(拍手)
  67. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  68. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。  以上で山東君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午前の質疑はこれまでとし、午後零時四十分に委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午前十一時四十分休憩      ―――――・―――――    午後零時四十二分開会
  69. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  それでは、和田静夫君の質疑を行います。和田君。
  70. 和田静夫

    和田静夫君 まずちょっとお聞きをいたしますが、昭和五十七年六月十五日、内閣総理大臣臨時代理中曽根康弘さんから徳永正利さんに出た政府答弁書、その九ページ。労働大臣、過去に失業給付金の支払いは予算の空白期間にどういうふうに処理されましたか。
  71. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 積立金の取り崩しの形でやっております。
  72. 和田静夫

    和田静夫君 労働省、財政法第十二条ですね、「各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない」、すなわち、あなたの方でやってきたことは、四月一日以降におやりになったことは会計年度独立の原則が示されているこの十二条に違反をしている、こういうことでいいですね。
  73. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 今までそういうふうにやっておりまして、特にそういう認識を持っておりません。
  74. 和田静夫

    和田静夫君 官房長官、今の支払われた失業給付金は前年度の支出のためか、当該年度のためですか。
  75. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 前年度の失業についての給付でございます。
  76. 和田静夫

    和田静夫君 そこで繰り越してやられたわけですね。
  77. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 実態はそういうことかと思います。
  78. 和田静夫

    和田静夫君 これは大臣、当該年度予算が成立していないのに繰り越しなんていうものが出てくるわけはないのであります。予算が未成立ということは繰り越しが成り立っていないということ、こういうことであります。繰り越し使用を認めたのは一体だれですか。
  79. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) その点については今までそういうようなやり方をしてまいっております。
  80. 和田静夫

    和田静夫君 委員長、これちょっと質問を続けられません。とめてください。
  81. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  82. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  83. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 前年度歳出予算の残を使用して支払い、予算成立後に年度更正、科目更正を行って対処していると、こういうことでございます。
  84. 和田静夫

    和田静夫君 それが財政法違反だと、私は四月一日から予算が空白になるということについて言っているわけですからね。空白なんていうものは、本来認められなくなっているんだ、あなた方の執行は。ほかにいっぱい材料がありますがね、法務省も。いっぱいあるんですけれどもね、今、きょうは雇用の問題だから労働省がたまたまやり玉に上がっただけです。ここのところは官房長官、はっきりしてもらいたいんです、いや、暫定予算出しますからことしは心配ないと言われるのならそれでもいいです。
  85. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 今、御引用になりました政府の答弁害におきましても、「いわゆる予算の空白は、現行財政会計制度上は予定されておらず、好ましい事態ではないが、各般の事情から予算の空白が生ずる場合がないわけではなく、これまでにも遺憾ながら予算の空白が生じた事例があることも事実である」。それで、「予算の空白を生じた期間中は、新年度の予算の執行は行い得ないが、この間の国政の円滑な運営に支障を生ずることのないよう、新年度の予算の執行とならない形でやむを得ず必要最小限度の財務処理を打って」きた、こういうことであろうと思います。
  86. 和田静夫

    和田静夫君 したがって、違法行為が過去において行われてきたということです。私が問題にしているのは、四月五日にこの予算が成立すればそれでいいんだというようなことを言っているのではありません。三月三十一日で単年度主義ですからもう暫定予算は用意をされて可決されていなければならない。私は理事会でも何遍も申し上げたのでありますが、本来ならばことしのような予算の送り方をしてくるのならば、そのときには衆議院では暫定予算を組んで可決をされて一緒に送ってくるのが筋だ。それぐらいのことまでやってよろしいんだということを寄ってきたわけでありまして、労働大臣、今私が論議をしたとおりであります。したがって、財政法違反を回避するためには、労働省、こういうことが起こるのでありますから、何が必要になってくるかと言えば暫定予算を組む以外にはないわけであります。ぜひ御答弁をお願いいたします。
  87. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 御指摘のように、予算の成立が四日、五日、四月にずれ込むという事態になっております場合、私ども安定所の窓口におきましては受給者の保険金を払うということを前年度の金でやってきておるわけでございますが、少なくともそういう失業者のことを考えれば何らかのそういう面で特別な配慮、特別な措置をとらざるを得ないということでやってきておるということでございます。
  88. 和田静夫

    和田静夫君 委員長皆さん方は法律の解釈を大変厳しくやられて、私は何遍も論議をしましたが、言ってみれば、解釈法学的ドグマに基づくところの、そういうような解釈というものをずっとやっている。この予算に関する、基本に関することだけは何とか面倒を見てやらなければならぬから、法律はどうあろうとも勝手にやっているんですと、そんな答弁になりますか。政府の統一見解を求めます。その間ちょっととめてください。
  89. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  90. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  91. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわば政府統一見解とおっしゃれば、やっぱり閣議決定いたしました五十七年五月の「予算の空白」に関する質問主意書及びそれに対する答弁書、これが政府統一見解と言えるべきものではないかと、このように考えます。
  92. 和田静夫

    和田静夫君 それで大蔵大臣、もうこれ以上追及しませんが、どっちみちきょうかあしたか暫定予算を決意されるのでありましょう。これまでやってこられた四月一日から五日までの間は空白であってもよろしいんだという論理は、これはもう成り立ちません。この辺のところをはっきりして、きょう中曽根総理がお帰りになったらもう暫定は決意をしてもらう。そうでないと、二十八日に総括が残っていますから、予告をしておきますが、今と同じような各省のデータを全部出させていただきますということになります。私はまじめに予算単年度主義、言ってみれば財政法の趣旨に基づいた論議をしているつもりでありますので、そこのところはしっかり受けとめておいていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  93. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まさにまじめな財政法、なかんずく第三十条ですか、を踏まえた議論であると思います。我々もこの点随分議論いたしまして、要するに他の義務的に支出しなければならない法律、その趣旨を生かした場合に、今説明したような暫定的支出で後からこれを認めるといったことを行ってきたわけであります。  ただ、もう一つだけ。これはいつも議論になるところですが、いわゆる送り方によって、暫定予算と仮に一緒に送った場合は、ある意味においては我々には参議院における審議を期待する権利があるから一緒に送るのはやはりいかがかと。そうなると、その判断する適当な時期というものがおのずからそこに生じてくる。その判断の時期がきょうかあすかというところは若干の認識の相違もあるかもしれません。そうして、提出権は我々の固有の権限とはいえ、現実審議を行っておられるこの院の予算委員会等の状況等をまたもちろんお聞かせいただいて判断の資料にしなければならぬでしょう。ただ、いつも思いますのは、期待権をどこまで持つか。時によっては一秒前まででも持てるじゃないか、そういう法理論をする人もおりますので、その辺は、今おっしゃった、財政法を踏まえたまじめな議論として受けとめて、これからもまだ議論をしていかなければならぬ問題かもしらぬ。そして、言われました、資料を提出しろとおっしゃいました分については、あの答弁書の中でいろいろ例示して挙げておりますが、あれ以外にどのようなものがあるかについては精査をいたして可能な限りの御報告をしたい、このように考えます。
  94. 和田静夫

    和田静夫君 雇用保険について。  今回の改正でこの雇用保険給付の大幅なカットが行われるわけでありますが、一九七四年の失業保険の大改革の際に掲げられました目標がどうも大幅に後退しているような感が否めません。それで、雇用保険の根幹というのは求職活動の促進にあるのではなくて、失業者の生活の安定にある。七四年に失業保険が雇用保険として再編成されたときに強調されたことは、これからは高齢化社会に入るという認識のもとに、高齢者に手厚い措置を講ずるというものであったわけであります。労働大臣、この雇用保険法の基本精神は変わっていませんでしょうね。
  95. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 雇用保険法の基本的な精神といえば、やはり失業中の生活の安定に資するということと同時に、やはりこれは雇用を促進させよう、この二つにある、こう私は思っております。
  96. 和田静夫

    和田静夫君 今次改正を貫く基本的な発想が、どうも失業者は怠け者であるというところに置かれているような気がしてならないわけであります。例えば、この中央職安審議会雇用保険部会報告に添えられた資料などを見ますと、そういう発想が根底にあるような気がしてなりません。大臣、失業者は怠け者であるという認識でしょうか。
  97. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 失業者はお気の毒な方であって、怠け者ではありませんよ。だから、雇用の機会を早く与えるように努力を傾けていかなければならぬ。保険制度についてはいろいろな議論がございましょうけれども、基本的には、そんな怠け者だなどというような気持ちはございません。
  98. 和田静夫

    和田静夫君 部会報告は、受給者にとっては再就職の機会があってもすぐに就職し得ない、そういう給付状況にあるということ、こういうのは、失業者は雇用保険をもらって、悠々とではないけれども、切り詰めながら暮らしているという認識があるというふうに思えるんですが、労働大臣、この失業者が何で、つまり何を収入源として暮らしているか、これはまあ事務局ですかね、調査結果ありますか。
  99. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 昭和五十五年の労働力調査特別調査によりますれば、失業中の主たる収入源として、雇用保険金が主であるという者が二十八万人、全体の失業者の四五・九%となっております。また、失業中に、その失業中の主たる財源が恩給あるいは年金が主であるというのが十五万人の二四・六%、あるいは失業中は仕送り金が主たる財源である、こういう者が七万人の一一・五%、こういうようなデータがございまして、雇用保険をもらっておるという方の約九〇%が雇用保険金を主たる財源として生活をしておられると、こういうようなデータはございます。
  100. 和田静夫

    和田静夫君 一九八〇年三月の総理府統計局の労調の特別調査によりますと、世帯主男子で見ても、雇用保険が主たる収入源だと答えたのは三六・八%にすぎないんですよ、今のお言葉ではありますが。そうすると、このデータをもとに日本経済研究センターの篠塚さんは、失業者を貧困ラインから守っているのは雇用保険制度ではなく、家族としての複数の稼得者、専ら配偶者である、こういうふうに研究発表に述べておる。そうすると、雇用保険法の目的である失業者の生活安定は実現できないという状態ですね。現在の給付水準でも不十分だということを総理府統計局のデータは示しているわけであります。そうすると、労働省としてはこの同様の調査というのはやっぱりやられるべきじゃないだろうかと思うんですがね、おやりになりますか。
  101. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 今回の改正につきましては、特別にそういうような調査はいたしておりませんし、特にそういう調査を今後新しくやるというところまで考えておるわけではございませんが、要するに雇用保険部会での考え方は、現在の雇用保険金の給付額が、離職前の毎月の給料と比べまして相当割高になっておる。標準世帯を例にとりますと、毎月の手取り賃金に比べまして保険給付額が約九割ぐらいになっておるというようなことであるとか、あるいはまた、再就職をされる場合の賃金額に対しまして相当割高になっておる。こういうような実情にかんがみまして、こういう給付の現状が、これが雇用保険受給者の再就職への意欲というものを阻害している一つの理由になっておるということが指摘をされておるわけでございまして、そういった観点から、例えばボーナスを算定基礎からの除外というような改正案を提案を申し上げておると、こういうことでございます。
  102. 和田静夫

    和田静夫君 質問通告してあるやつを先に答弁されたら困るんですが、保険給付が多少失業期間を延長させるかもしれない、しかしそれはリタイア覚悟の失業者を除けば、よりよい仕事を得たいという人間としての当然の態度である、しかもマクロ的に見ればほとんど影響のないものです。篠塚さんも、日本のケースでは失業給付を手厚くしたから受給者がふえたという事実はない、そういう事実は確認できない、そういうふうに述べているわけですね。そうすると労働大臣、この雇用保険給付が失業期間を延長させているとするなら、給付水準の切り下げは失業期間を短縮させ、あるいは失業者数を減らすということができる、こういう具体的な数字をお挙げになることができますか。
  103. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) この問題は給付水準の問題だけではなくて、さらにまた再就職を促進するための諸手段、それからまた給付の期間の問題等々、いろいろやはり関連して考えるべき問題だと考えるわけでございます。例えば、現在の雇用保険受給者につきまして見ますと、非常に一般の受給者に比べれば就職率が悪い、あるいはまた保険金を満額もらい終わってから就職を考えるというような方も相当おられるというような状況、そしてまた保険をもらい終わるまでにもらう金額と、それから途中で就職した場合のことを考えますと、途中で早く就職した方が得だというようなことを本人たちにも意識を持っていただくようなそういう制度等の新設、そういったものの絡みの中で、今後の失業者の再就職促進というものを考えていくということでございまして、給付水準だけの問題ではないと思っております。
  104. 和田静夫

    和田静夫君 便するに、そういうだけではないということは、労働市場の需要不足が失業者をふやしている、私はそこに構造的な要因があるんだと。そうした雇用情勢の悪化が雇用保険会計の赤字をふやしているのであって、雇用保険給付が高過ぎるから失業者がふえているのではないということであります。労働大臣、この点は基本認識にかかわる問題でありますから、ぜひ一言、大臣答弁を承っておきたいんです。
  105. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) ただいま局長から答弁をいたしました、給付が高過ぎるから再就職の意欲を阻害している面というのは、それは私は一部にあるとは思います。しかし、失業が出てくるというのは、もっと大きな観点から考えて、これは我が国の経済の動き、世界の中の経済ですから振れが大きゅうございますし、それからまた、その経済の中の雇用のあり方、労使関係、いろいろな面がこれはやっぱりあるだろうと思っております。
  106. 和田静夫

    和田静夫君 以下、雇用保険の具体的な改正点について質問に入りますが、その前に、土曜日の委員会の引き継ぎということで、福島交通問題をフォローしておきたいと思いますが、まず林野庁、那須高原のこの国有林交換問題ですがね。四十一年五月の国会答弁で、国は損をしていないと強弁しているわけですね。ところが、やはり違っていたようであります。政治家が介在して国の財産を交換をする、一私企業に利益を得させる、これはもう大問題であります。しかも、こういう事態が積み重なって林野の赤字が累積する、そのしわ寄せが職員の給与や年度末手当に振りかかってくる、こういうような、私は到底これは許せない。まあ実際問題としてそういう事実関係がずうっと報告されてきていますが、これは明確にしてもらいたいですね。
  107. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 突然の御質問でございまして、報道された事実につきまして現在直ちに確認できる条件にございませんが、事実経緯につきまして若干申し上げますと、新潟県の民有林と那須の国有林との交換でございますが、この受け財産、これは新潟県の国有林でございますが、現在、奥地に今存在しておりますが、造林地として適地であると、既存の国有林野とあわせて管理経営することが適切であると判断し、また那須の国有林につきましては、これは馬産限定地だったようでございますが、林地としての生産性が低いこともございまして、国有林の管理経営する必要性が乏しいということで本件の交換を行ったという経緯があるようであります。  この交換は昭和三十九年から昭和四十年にかけまして行われまして、受け財産は四百二十五町歩、それから評価額は八千六百十八万円余、受け渡し財産は三百七町歩余、評価額八千七首九十九万円余で、交換差し引き百八十一万三千六百円となっているわけでございまして、二十年前でございますので、現在、取り急ぎ記録を基礎として調査したところでは以上のとおりであります。
  108. 和田静夫

    和田静夫君 その過程で、私の所属するところの組合員に高値に見積もれとか言ったというような形のことがたくさんありましたね。それはもうきょうは時間がありませんから、おいおい明らかに私の方もいたしますが、国税庁、一般論としてまず聞きますが、昨日のあれですが、使途不明金のこの政治家への流れが解明されたときは、これは厳正にといいますか、厳格に追徴されると、そういうことでしょうか。
  109. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 内容が解明されまして、課税すべきものである場合には、当然課税をいたします。
  110. 和田静夫

    和田静夫君 運輸大臣、福島交通、これは国から補助金をもらっているのですが、そういうような会社が、みずからの赤字をそのままにして関連会社に金を流す、これはどういうことでしょう。少なくとも地方的な公共性を持っている交通会社ですが、補助金交付は再検討されるとかいろいろなことが出てくると思うんですが、いかがでしょう。
  111. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 福島交通は、交通事業においては赤字を出しておりまして、補助金を出しておる会社でございます。その関係の不動産会社が、今日いろいろ伝えられておるところでございますが、その会社と本来の福島交通の交通会社との関係がどのような財務の関係になっておるかということにつきましては調査をしなければならぬと思っております。このように新聞でいろいろ問題になってまいっておりますので、私どもの方としてはその関係は調査して、交通は交通、不動産は不動産、別にやっておるのではないかと思っておりますけれども、いずれにしましても補助金を出しております以上厳重に調査する必要があると、かように思っておる次第でございます。
  112. 和田静夫

    和田静夫君 証券局長、一昨日、法制局長官の答弁をもらったのですが、はっきりしなかったんですが、この福交不動産の経理が非常に疑惑に満ちたものであることが明るみになってきています。これはどうも私はやっぱり証取法との関係というのは出てくると思うんですが、どう理解しますか。
  113. 佐藤徹

    政府委員佐藤徹君) お答えいたします。  福島交通不動産につきましては、これは報告書の出ている会社ではございません。福島交通はかつて一度増資をしたことがあるものですから、その後報告書が提出されております。先生御案内のように、現在のそういった報告書を提出していも会社の企業経理の適切さは、一義的には公認会計士の監査で担保されておるわけでございまして、私どもそれを受け取って、法律にのっとった処理をしていくという建前になっております。
  114. 和田静夫

    和田静夫君 赤字の福交不動産が超高値で関連会社の株を取得している。これもちょっとなかなかわからぬですが、国税庁、この事実関係は御存じですか。
  115. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 大変申しわけございませんが、個別の問題についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  116. 和田静夫

    和田静夫君 別の機会に、少し詰めてから話をこれはしましょう。  さらに国税庁、有力政治家への長期無利子貸し付けですが、借りた金を返さないで、貸した方が不良債権として償却をしたと、こういうことになると、これはどうもそういう筋書きで貸し付けが行われているとすると、これは贈与ですね。
  117. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 償却いたしました段階で贈与となると思います。
  118. 和田静夫

    和田静夫君 贈与になるということになりますと、その場合の所得税はどうなりますか。
  119. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) それは、一般的な政治資金ということになりますと、雑所得ということになるかと思います。
  120. 和田静夫

    和田静夫君 今の答弁ちょっと不満ですが、大蔵委員会その他でもう少し詰めましょう、ここのところは通告してなかったものですから。  それで国税庁、まあどうも今でもそうですがね、守秘義務だ守秘義務だと。私も長い間随分あなた方との論争で経験してきましたが、ここでは勘弁してくれという話なんでありましょうけれども、どうも具体的事実関係をここでは報告をされない。ところが、ここで問題になった重要問題は、議会の場では明らかにならないのに、どうも報道陣にはリークされる、これは重大な国政調査権に対する私は妨害だと思っているんですよ。これはじっくり詰めますが、そういうことはいかぬですよ。やっぱり、守秘義務はわかっているんですから、しかしある程度発表できることは発表される、そういう態度はおとりになりませんか。これは大蔵大臣、いかがです。
  121. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 報道に国税庁当局がリークしたとは私は信じません。やはり守秘義務の範囲内の問題であろうと思いますので、それにはおのずからその守秘義務が存在しておりますから、リークしたとは思いません。そしてやはりこうした国会における答弁というものは、もとよりその守秘義務というものは大きくかぶさってくる問題ではないかというふうに考えます。
  122. 和田静夫

    和田静夫君 亡くなられた大平大蔵大臣などと守秘義務の問題でたくさんの論戦をしてきましたから、それらのときの約束事をこれから思い浮かべながら逐次大蔵委員会や決算委員会で引き続いてこの問題やりますが、警察庁、警察庁としても私は独自の立場で調査されるべきところにもう来ているんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
  123. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 私どもといたしましては、現在のところは前回もお答えしましたとおり、まだ具体的な事実の把握に至っていないわけでございますが、今後は幅広く情報収集に努めてまいりたいと思います。
  124. 和田静夫

    和田静夫君 国家公安委員長、よろしいですか、いまの答弁
  125. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 警察は従来もどんな条件がありましても不正や疑惑があれば厳正に調査をしてきております。こういう問題に限らず、犯罪の容疑がありますれば、これからも厳正に警察としては対処していく、そういうつもりでおりますし、私も国家公安委員長として警察をそのような監督をしていくつもりでございます。
  126. 和田静夫

    和田静夫君 運輸大臣、二十四日の土曜日ですね、航空大学校の卒業者三十三人のうち就職が内定したのが十人だけだという朝日新聞の報道があったわけです。私は、実は決算委員長を務めているときに宮崎の航空大学校を決算委員会として視察をしまして、その当時から先行きが不安だという話がずっと出ていましてあれだったんですが、いよいよそういうのが現実化した。養成したパイロットの卵がその技能を生かすことができない。大変難しい、厳選された状態で彼らわずかな人数が入学しているわけですね。そして卒業するときには生かされないということになってくる。これはもう雇用問題としても非常に大きな問題だと私は実は思いながら、あのわずかな欄を読んだのでありますが、どういう見解をお持ちなんですか。
  127. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 航空大学校の卒業生のうち、五十七年度のこれは七十九名卒業生が出ておるうち二十六名が未就職でございます。五十八年度が八十五名のうち三十四名が未就職でございます。五十六年度までは、五十六年度末就職二ですからこれは未就職ゼロと言ってもいいと思うんですが、ここ五十七年度、五十八年度と二年続けてこういう状況が出ておりますが、これは非常にはっきりしておるので、定期便の航空会社の採用の人数が減った分だけが残っておるということなんでございます。  これは実は難しい問題でございまして、人が足りないために航空便の増便ができないということも困るわけでございますし、この辺の見通しが実に難しいところだと思うのでございますが、私どもは、今の対策としては、これらの残っておる方々をできるだけ定期航空以外の航空会社とか、あるいは関連会社あるいは官庁、こういうところへ就職をあっせんするような努力をしておりますが、今のような不況の状態が続くということになると、養成の人数そのものを考え直していかなくちゃならない。そこのところの見通しとタイムラグがなかなか難しいところだと思っておりますが、できるだけの善処をしてやらないと、これはほかへ使うのはもったいない話でもありますので、さように存じておる次第でございます。なお、このような状態が続けば、これは養成の人間の数についてもう一遍考えなくちゃいかぬ、そこらを総合判断をして善処したいと考えておる次第でございます。
  128. 和田静夫

    和田静夫君 農水大臣にせっかく来ていただきながら、さっき一問落としたのでありますが、もう通過したことですからくどく言いません。  林野庁長官から答弁がありましたが、四十一年六月八日の参議院におけるところの議事録をちょっと読んでみました。政府委員の側は、国有林野の交換について不正不当な事実がもしありとすれば、これは厳正に処分をする。こういうふうになっていますので、どっちみち引き継ぎますから、ここのところは御記憶にとめておいていただきたいのであります。  さて、運輸大臣、二十一世紀の航空というようなものを展望しながら、厚生大臣答弁にすぐ二十一世紀と言われますからちょっとまねしてみたのでありますが、やっぱり今の問題というのは、十七年もかからなければ機長が養成できないというようなこともあるわけでありまして、将来を展望して、やはりもっと深刻に受けとめられてしかるべきだろうと御意見を申し上げておきたいと思うのであります。  本年三月に、アメリカの軽飛行機ライセンスを不正取得していた事件が衆議院予算委員会で明らかになっていますが、不正取得の疑いのある者が何人であって、何人が日本のライセンスに書きかえて、実際には何人日本の空を飛んだのかというようなところまでこれはおわかりになっているんでしょうか。
  129. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 細かい数字は航空局長からお答えさしていただきますが、百人余りがアメリカで教育を受けて、向こうでライセンスを取って、国際条約上決まっておりますので、こちらでライセンスを取ったということなんでございます。向こうで日本人の経営しておる学校ということで、まことにけしからぬことだと思うのでございますが、それに不正があったということをアメリカ側から言ってきておるわけです。  そこで、アメリカ側でこの点を厳重に調べてもらわないと、こっちから手が届きませんので、向こうの航空担当官庁にお願いをしておるのですが、向こうも調査しておるとは思うんですが、まだ返事が来ないという実情でございます。ただ危ないですね、もし間違えば。この中で、実は航空身体検査証明がないと飛べないということで、この航空身体検査証明というのを持っておる者がこの百十名ばかりのうちの十九名ということでございます。問題は、これを持っていない者は飛べないわけですから、危険云々の問題は十九名に限定されるわけでございます。この十九名はわかっておりますから、これを今連絡をとりながら、私どもの方で危ないことがないように、今とりあえず応急の手当てをいたしておるところでございます。最終的なところは向こうから報告をもらってこちらでやらなければいけませんが、できるなら十九名の人たち日本の試験をもう一遍受けてくれぬかというような指導も実はいたしておる。危険のないようにせぬといかぬと、こう思っております。なお御質問があれば、航空局長から詳細をお答え申し上げても結構ですが。
  130. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ、さっきの数の問題は時間の関係もありますから、後でちょっと資料で出してください。  そこで、今日まで運輸行政として何をやってこられたかということは今まで大臣から答弁されたことでほぼわかりましたが、事実関係が明確になるまではライセンスの執行停止ぐらいのことを考えることがやっぱり私は必要だろう。少なくともFAAの再試験を受けさせるべきだと思っていたんですが、今、大臣、もう一歩突っ込んで、国内でもう一遍試験をやると、そのぐらいのことを考えていると言われましたので、そこのところはそれでいいわけですね。
  131. 山本長

    政府委員山本長君) 大臣答弁いたしました百十名について、全員について調査を行いつつある段階でございますが、安全確保という面から見れば、十九名という者でございますが、これにつきましてはライセンスと身体検査証明も持っておる、飛ぶ可能性があるというところでございますので、本人に対しましても、このうち飛行機を持っている人が一人おりますが、それから持っていない人は飛行クラブ等に入りまして、そしてその飛行機をリースして運転すると、こういうことになりますが、今飛行クラブなんかに入っておる者は九名ございます。したがいまして、何といいますか、実際一番飛ぶ可能性があるのは九名ということに限定されるわけでございますけれども、この人たちに対しましては、最終的には我々の調査とFAAの調査と一緒にいたしまして、アメリカの免許と日本の免許を法律的にしかるべく処理するということになりますが、とりあえずの処置といたしましては、その人たちに対しまして、あるいはその所属しているクラブに対しまして、正規の免許を持った安全な人を同乗させて飛ぶようにと、こういうとりあえずの処置でございますけれども、安全確保というものについて指導をしておる、こういう段階でございます。
  132. 和田静夫

    和田静夫君 警察、一言でいいんですが、この事件に対して何か対応されていますか。
  133. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 昨年の春に、外交ルートを通じましてアメリカの方から捜査共助の依頼がございました。私どもの方といたしましては、その依頼に基づきまして関係者からの事情聴取をやりまして、その結果をアメリカの方に伝えてある、こういうことでございます。これ以上のことは特に現在考えておりません。
  134. 和田静夫

    和田静夫君 運輸省、やっぱり短期に安上がりでライセンスを取るために、大臣は今けしからぬことだと言われましたが、アメリカに受験ツアーする者が後を絶たないと言われているんですよ。現在、航空留学校というのが十数校ある。これはやっぱり再点検する必要があるんじゃないですか、こんなことになってきますとね。私は、こういうような安易なライセンス取得というものは極めて問題だと思うんですが、もう一度、一言答弁いただきます。
  135. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) お説のとおりでございまして、非常に危ないことでございます。人命に関する問題でございますから大切に扱わなければいかぬと思っておりますが、これはアメリカ当局もすでに申し越してきておるような状態でございまするので、現在あるものについてはこれはもう厳重に対応する。私どもの方からも厳重に対応してくれなければ困るということははっきり申し上げてありますし、向こうも気がついて、今、後追いの方をやっておるぐらいでございますから、これからのものについても厳重にやってくれるものと存じております。そうでなければ、私ども根本的に問題を考え直さなければいかぬということになろうかと思うのでございますが、とりあえず向こう側で厳重にやっていただくということにお願いをしておるわけでございます。
  136. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ運輸大臣、ありがとうございました。  ちょっと時間がなくなりましたから、児童扶養手当で一問だけ、せっかく厚生大臣お見えですから。あとのところは社労その他に譲りますが、父親の所得による支給制限のやつですね。父親の方が養育費を支払わない場合どうなるかというやつですね。あるいは、父親の所得が離婚時六百万円であっても、その後ダウンした場合にはどうなるのか。その保障は一体どうなるのか。ここのところ、いかがですか。
  137. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今回、提出した法案、これは、これから本当にお困りの人が起こるようなことは我々望ましいことと思っていないわけでありますから、臨調の一つの精神に沿って、やっぱり正すべきことは正さなければならないということで提出したものでありますから、これから弾力的な運用ということはよほど心がけていかなければならないと思っておるわけでありますけれども、今御指摘の、離婚時に父親が六百万の収入がある場合は、これはやはり扶養義務を背負っていただくということでありますけれども、その後その父親が失踪をしてしまったり、あるいは失業して収入がなくなったり、そういう場合はこれは弾力的に取り扱おうと、こういうふうに考えております。
  138. 和田静夫

    和田静夫君 委員長、ちょっと待ってください。
  139. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  140. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  141. 和田静夫

    和田静夫君 そこで労働大臣給付水準の問題ですが、保険料の方は一時金を含めているわけですけれども、今度の改正では給付の方は一時金をカットするという、これは制度上の合理性を欠くことになるのではないだろうか。先ほど局長、先走った答弁が若干ありましたが。一時金を基本手当の基礎となる賃金の範囲から除くということは、これは一時金の生活給的性格を無視するものだと言わなければならぬ。家計調査を見ても消費支出が世帯主の定期収入をオーバーしています。つまり、今臨時収入が生活費を支える必要なものになっているわけです。そういう点からしても問題があると言わなければなりません。これは大臣いかがでしょう。
  142. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 臨時の給与がそういう生活費にある程度充てられておることはこれはもうもちろん承知しておりますが、これはまた業種とか企業規模によりましても大きな幅がございまして、賃金について言いますれば、例えば企業規模百人未満のところと、それから五千人以上のところでは、ボーナスの場合にはもう倍以上の開きがある。業種で見ましても、たとえば建設業と金融関係あるいは電力関係を比べれば倍以上の格差があるというようなことで、ボーナスにつきましては非常に大きな幅もございまして、そういう意味でボーナスそのものがやはりある程度そういう毎月の賃金とはやや違った性格があると、こういうことで考えておるわけでございます。
  143. 和田静夫

    和田静夫君 高齢者に対する一時金給付についても極めて遺憾な措置であります。確かに六十五歳以上になればフルタイム雇用を必ずしも望まないかもしれません。しかしながら一方で、生活をしていく上で、経済上の理由でフルタイム雇用を望む者はかなりの数に上っているわけです。現に六十五歳以上の男子のうち四割が働いていますね。これは八二年の労働力調査ですが、就業希望者のうちの七一・二%は経済上の理由で仕事につくか仕事を希望しています。そして、さらに仕事についていない人々に対するアンケートで、就業を希望しない理由として、働かなくとも生活できることをはっきり理由に挙げた人は一四・三%にすぎないわけですよ。そのほかは病気、けが、体力がもたない、適当な就職口がない等々の理由を挙げている。これはみんな労働省の調査ですね。これらの数字は働きたくても働けない高齢者の状況を示していると私は思うんです。労働省はこのフルタイム雇用を望む高齢者に、どうせ仕事もないことだからとして、手切れ金をぽんと渡して、あとは生活保護でももらいなさいという指導をなさるおつもりなのかなあと思いながら今度の法律案を見ているんですが、この点はぜひ労働大臣、再検討をされてしかるべきだと思うんですが、いかがでしょう。
  144. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 六十五歳の方々に対しても決してそんなに冷たく切り捨てをするというつもりはないのですけれども、しかし雇用政策上の重点といたしましては、やはり労働省といたしますれば最重点をこの定年六十歳延長をやったり、その後の六十歳から六十五歳というのが、六十五歳以上よりももっとウエートが高いものですから、そちらに重点を志向しておるような、政策重点はそういうところにあると思います。  私の聞いたところによりますと、一般の求人倍率は〇・六幾らでありますけれども、六十五歳以上となると〇・〇余になってしまって、やっぱり一般の労働市場から引退過程にあるということも聞いておりますし、それから何かこの資料を見ましても、雇用労働をしたいという人は六十五歳以上六十九歳まで四六%ありますけれども、普通勤務で雇われたいという人は一六%余りでありまして、短時間の勤務で会社に雇われたいという人が三〇%近くあると。そして雇用労働をしたいという人は四六だけれども、非雇用労働したいという人が五三%以上もあるというようなことで、通常勤務の雇用というような点については数が少なくなってきておる。ただ、少なくなってきておるから切り捨てをするというような気持ちはございませんが、何さま雇用保険の対象外であるところのこの任意就業とか短時間就業とかというものの方がはるかに多くはなってきておるものですから、雇用保険外でありますから、そういう方々が毎月毎月来て、十カ月も通って、そして職業相談をしたり保険手当をもらったりするよりは、一時金でひとつ差し上げた方がいいのではないかなという事情もあるようでございまして、しかし希望したい人には公共職業安定所だとか市役所の窓口で、二百七十カ所全国で高年齢者職業相談室を置いておくとか、あるいはまた高齢者無料職業紹介所が全国百五十三カ所もありますが、これと連携して就職を進めていきたいとか、そういう面でひとつできるだけのお世話を申し上げたいと思うわけであります。  何さまこの六十歳以上、六十五歳以上というのは、顧みますれば日本の戦前、戦中の厳しい波をくぐってきた人でありまして、私どもとすれば同じ年齢に近いところでありまするから決して人ごとだとは思いません。思いませんけれども、以上申し上げたような理由でひとつ六十五歳以上の面倒、まあ面倒と言ったら悪いですが、お世話をぜひとも一生懸命今後もやっていきたいと、こう思っております。
  145. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で和田君の質疑は終了いたしました。(拍子)     ―――――――――――――
  146. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、高杉廸忠君の質疑を行います。高杉君。
  147. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 私は、社会保障、福祉の一環として、宇都宮病院問題に絞って質問をいたしたいと思います。  去る十五日の総括質問の際、医療法人社団報徳会宇都宮病院での事件について、徹底的究明、厳正な措置、そして諸要請を行いましたが、まずその御報告をそれぞれよりいただきたいと存じます。なお、限られた時間であります。貴重な時間でありますので、お答えは簡潔に、詳細につきましては中間報告書として至急御提出をいただきたいことをあわせましてお願いをいたします。
  148. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 警察といたしましては、栃木県警察におきまして三月十四日、傷害致死容疑で報徳会宇都宮病院に対する捜査、差し押さえを実施するなど所要の捜査を行っているほかに、同病院における各種事案の解明に努めている、このように承知をしております。
  149. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 栃木県において、衛生環境部と民生部の合同調査班による立入調査を三月二十二日、二十三日、二十四日の三日間実施をいたしまして、なお調査結果については現在取りまとめ中であります。  なお、先生からも強い御要望ございました、本日二十六日現地に厚生省の職員を派遣しておりまして、今後とも事案の早期究明に努力していきたいと思っております。公衆衛生局の精神衛生課長、医務局の指導助成課長、社会局の保護課長等を中心にしまして、いま派遣しておるところでございます。
  150. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) 報徳会宇都宮病院の人権侵犯の観点からでございますけれども、宇都宮法務局に各種の情報その他十分注意をして対処するようにという指示をいたしております。
  151. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) 宇都宮病院の調査の結果につきましては、個別事案の内容にわたることでございますので、御答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
  152. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 特に田川自治大臣・公安委員長に伺いたいと思うんですが、先日私は、宇都宮の南署の元次長がこの病院の要職にあることについて申し上げました。今日までの進捗状況から見まして、なお懸念を抱いているんです。これはその後の各種報道を見ても明らかであります。  特に週刊文春三月二十九日号の三十一ページに「政・警・医のトライアングル」と題した記事に詳細に掲載されているわけであります。今後とも厳正な措置をお願いいたしたいと存じますが、大臣どうでございましょう。
  153. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 私も今御指摘の雑誌の記事を読みました。これだけ読みますと、余り信頼できる記事ではない、私はこれは無責任な談話だと思うんですね。言っていることがですよ、言っていることが無責任な談話だと思います。  御指摘のように、警察にいた者がこの病院にいて重要な役目についているということは前回もお聞きをいたしました。警察の出身者がこういうような地位についていなくてもいても、これは警察としては厳正に対処してまいってきているつもりでございますし、これからもやってまいります。御承知のように、たくさんの警察官の中には若くして退職する者がありまして、いろんな職業についております。かつて警察にいたから警察が手心を加えるというような事実があるとすれば、これはもう犯罪の捜査ができなくなってしまいます。そういう意味で、こういうかつて在職した者が病院におりましても、これは厳正に今後もやっていくことを重ねてここで申し上げます。
  154. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ちょっと厚生大臣から再答弁あるそうですから。
  155. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 大変失礼しました。先ほどの派遣職員、ちょっと間違っておりましたので、訂正させていただきます。  公衆衛生局精神衛生課長、医務局企画官、医務局指導助成課医療監視専門官、社会局保護課課長補佐、社会局監査指導課生活保護監査官、以上でございます。
  156. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 先日の質問の際、この病院でのリンチ殺人事件については、二件疑いがあると申し上げましたが、その後の私どもの調査では、次の二件もまたその疑いがあることが浮上してまいりました。  その一つは、昭和五十三年十二月、東二病棟で、午後二時ごろ、患者さんが看護人数名から殴る、けるの暴行を受けてその夜死亡したとのことであります。しかも最後まで医師はあらわれなかった。次に、昭和五十四年一月、やはり同じ病棟で患者さんが同じ看護人らに、これまた殴る、けるの暴行を受けて死亡したとのことであります。この際も医師はいなかったようであります。また、この二件のほか、脱院した患者さんを自動車で追いかけて、その車ではね飛ばしたとのことであります。  この際、関係省庁においては早急に、厳正に、徹底的な究明調査をしていただきたい。お願いするわけでありますが、大臣、いかがでしょう。
  157. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 昨年発生をいたしました二件につきまして現在捜査をやっております。その過程でいろいろと話はございますけれども、ただいま現在のところは、前回もお答えしました二つの件について鋭意捜査を進めておる、こういう状況でございますが、今後いろいろありましたら、その段階でこれは見過ごすことなく捜査をやっていきたいというふうに思います。
  158. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) いま刑事局長が言いましたとおり、今後も厳正に捜査をやり、犯罪の事実があれば摘発をしてまいります。
  159. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 石川文之進病院長の直接的暴力行為については先日申し上げましたけれども、その後新たな事実が次々と判明しているわけであります。どうも院長は暴力行為の常習者であると断ぜざるを得ない状況にあります。  例えば、昭和五十三年十一月中ごろ、回診の際、院長に反抗的であるとの理由から、数十人近い患者の面前で、長さ一メートル、直径数センチの角材で、逃げ回る患者をめった打ちにして、となりながら看護人が患者を押さえつけたところを、さらに殴る、ける。頭から血だらけにしたり、また、閉鎖病棟から開放病棟に移してほしいと訴えた患者に対して、院長としてはあるまじき言動でとなり、ゴルフのクラブで頭部を殴りつけたとされていますが、これは昭和五十三年十二月のことのようであります。さらに、昭和五十五年十一月十五日ごろ、西病棟一階の独房内において、正座をさせた患者の右頭部にゴルフクラブを振りおろして殴打する暴行を加え、全治十日間を要する頭部外傷を負わせたとのことであります。しかも、病院側はこれを一切治療をしないで放置していたようであります。  そこで厚生大臣に伺うんですが、一体こうした暴力常習者とも言われる人に医師免許を与え、一千人近い患者の生殺与奪の権を与えている国がどこにあるかと聞きたいんです。即刻院長の医師免許の停止、剥奪をちゅうちょなく図るべきであると考えますけれども、いかがでしょうか。  また、このような院長の姿勢が全職員に影響を与え、残酷な暴力病院をつくり上げているところに問題があると考えます。したがって、この病院患者さんたちを直ちに厚生大臣など信頼のおける人たちの手にゆだねて、早急にしかも厳正な措置をとるべきだと考えますけれども厚生大臣、どのようにお考えになりますか。
  160. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) それぞれ専門的な問題でありますので、政府委員から答弁させます。
  161. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 医師免許の取り消しについてでございますけれども、罰金以上の刑に処せられた者などにつきまして、医道審議会に諮りました上で処分を行うこととされておるところでございます。  本件につきましても、事実関係が明確になりました段階におきまして所要の手続を踏みまして厳正に対処してまいりたい所存でございます。
  162. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 厚生大臣に厳正にやっていただきたいということを要請しておきます。  今申し上げましたような暴力、残酷とも言うべきこの病院に現在収容されている患者さんの人身保護請求、これを去る三月十九日東京高等裁判所になさいました。これに関して、東京高裁第二特別部では、三月二十一日、請求者であります戸塚悦朗弁護士他二名に対して補正命令を出して、命令書到達の日から三日以内に人身保護規則第七条三号及び五号の事由を明らかにして、以上各号についての疎明方法を提供することを求めています。  そこで、これも大臣からお答えをいただきたいと思うんですが、厚生大臣、このために戸塚弁護士ら三名が宇都宮病院に出向いて院長に面会を求めましたが、これが拒否されました。県衛生部は所管外のことと病院に対して何らの指導もしなかったとのことであります。これは厚生省がその必要を認めずに適切な措置を講じなかったことにも原因があると考えますけれども大臣、これは憲法三十四条、あるいは人身保護法第二十六条、こういう救済を妨げる行為になると考えますが、厚生大臣、どうでしょう。
  163. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいま御指摘のございました人身保護法に基づく請求の件につきましては、私どもの方は新聞報道を通じて承っておるという状況でございます。すなわち、例えば閉鎖病棟入院中の五百三十九名全員を退院させよというような内容を含んだ請求であるというふうに報道を通じて承知しているところでございます。そのようなことでございまして、これはあくまで一般的なお答えになるわけでございますけれども、直接私どもが必要と考えるとか考えないとか、そういうことが原因になっているというふうには考えられない案件かと思います。
  164. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 厚生大臣、特にお願いしておきますけれども、今申し上げました弁護士さんらはこの二十八日に再度また宇都宮病院に赴いて、それで患者さん方とのいろいろな個々の面接や調査、こういうことを行う、こういう予定をしています。ですから、前回行ったようにシャットアウトされるんじゃなくて、円滑にその人たちが行かれるように、しかも患者さん方の一人一人の意思確認を含めて会うわけですから、円滑にいくようなことでしかるべき措置を講じていただきたい。せっかく今調査に何人か行っておられるんですから、現地への連絡も十分とっていただきたい。こうお願いするわけですが、大臣いかがでしょう。
  165. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 先ほど触れましたように、閉鎖病棟の患者さん全員を退院させよというような内容の請求でございまして、弁護士の方が直接患者さんに会って退院の希望の有無を問うといったことは、患者さん方の間でいたずらな不安と混乱を招くおそれもあるやに思う次第でございます。したがいまして、ただいまの御提案につきまして、厚生省病院の管理者に対して指導するというような立場にないと、かように考えておるところでございます。
  166. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大臣ね、私は指導をしてくれとか言っているんじゃないんですよ。弁護士が行くんだから患者さんたちに円滑に会えるようなことぐらいの指導といいますか、連絡は大臣にしていただきたいと思うんですよ。その後患者さん方がお一人お一人依頼するかどうか、これは自由ですし、患者さん方の意思ですから、そこまで私どもは指導しろとは言っていないんです。とにかく面会ができるように、窓口にはそういうことで円滑にいくように大臣の方から連絡ぐらいはしてほしいと、こう言っているんですよ、混乱がないようにするために。どうですか。
  167. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは私の聞いておるところでは、患者をお預けした家族の方が面会を要請する場合、これは拒む理由は全くございませんし、また患者の家族の皆さんが心配して弁護士等を差し向ける場合、これも患者との面会を特殊の例外を除いて拒む理由は全くないものと承知しております。
  168. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それでは、その辺はお願いを申し上げまして次に移ります。  この病院における暴力行為、リンチの実態については、去る十五日以降各種の報道がなされていますけれども、その大部分は私どもの調査と符合しているんです。そこで、緊急措置として、第一に医療法人社団報徳会宇都宮病院の理事及び役員、管理者などの即刻退陣の措置をとること、第二に石川文之進の医師免許の停止と取り消し、第三に同病院患者を直ちに厚生大臣など信頼の置ける者の手にゆだねて、例えば先日提案をいたしました緊急調査監督委員会とか、あるいは厚生大臣自身の手で監督、そういう指導ができるようなことを自身でおやりになっていただいて結構でありますから、この三つの点を私は緊急措置としてぜひやっていただきたい。そのところで、入院の患者さん方の必要の有無の判定だとか、あるいは安心できる病院などへの転送とか、あるいは今申し上げました所要の措置をぜひ緊急にとっていただきたい。この三つをお願いしておきますが、いかがでしょう。
  169. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今何よりも大事なことは真相を正確に把握することでありまして、そのために、先ほど先生に御報告申し上げたように、厚生省からもしかるべき責任ある者を実地の調査に差し向けたわけでありますが、当然これらの者が調査結果を持って帰ってくると思います。そこで真相がわかってくると思いますので、そこで今、先生の御心配のような問題等がありますれば、これは患者の保護のために善処をしていくことは当然のことだろうと考えております。
  170. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 今申し上げました三つの事項についてはぜひ緊急措置としておとりをいただきたい。これを再度御要請申し上げておきます。  最後になりますが、去る十五日の質問以降、実にたくさんの方々からお手紙やお電話をいただきまして、この機会にこの方々にお礼を申し上げますけれども、さてその方々のお話を要約いたしますと、何と宇都宮病院よりももっとひどいところがある。こういう御指摘もありまして、本当に私も驚いているわけなんです。そこで私は、宇都宮病院の事件というのは、まあ言うならば氷山の一角にすぎない、こう考えざるを得ません。これは法令により拘禁をされている人々の現状を一日も早く改善しなければならない警鐘であるとも思います。  そこで厚生大臣、私ども内容についてこれから具体的に提案をいたしますから、これを受けていただいて早急に協議をしていただいて、全国の精神病院における患者さん方の人権状況初め治療の状況など総点検を実施していただきたい。これを考えているわけですけれども、これをひとつ実施していただきたい。そしてまた、今までにも私どもは総括質問以来何回にわたってか幾つかの提案もいたしました。このものを含めまして、今後とも厳正な措置と徹底的な究明、これらについての厚生大臣の御決意とそして所見を伺い、さらに公安委員長の御決意も伺い、私の質問を終わりたいと思います。
  171. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) まず、今回の事案について早期にその問題点を究明して、先生御心配のようなことはあってはならないことでありますから、そのためには何をなせばよいかということを討議してまいります。  こういう問題を踏まえまして、精神病院において適正な医療保護が確保されるとともに、患者の人権が保護、保障されるように、患者の適正な取り扱いに関する指導の徹底、第二番目には、精神衛生鑑定医による実地診査の励行、第三番目には、医療法に基づく医療監視の強化等の処置を講じてまいりたいと思います。
  172. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 犯罪の事実がありますれば、厳しい姿勢でこれに厳正に対処してまいるつもりでございます。
  173. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で高杉君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  174. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、糸久八重子君の質疑を行います。糸久君。
  175. 糸久八重子

    糸久八重子君 男女雇用平等法関係についてお伺いいたします。  午前中の質疑の中でございましたけれども、きょう二十六日に、婦人少年問題審議会の労働部会が開かれると聞いております。そして、きょうその最終報告がなされるということでありますけれども、先般の総括質問の中でも質問を申し上げましたが、三月二日の日に出されました日経連からの質問書に対し、何と御回答なさったのでしょうか、労働大臣
  176. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) まだ答弁しておりません。きょう審議会の最終の建議が得られますし、それを受けて私どもも責任のある法案の要綱をつくらなければいけませんし、建議を受けてからお答えしてもそう遅くはなかろうと思っておりますので、まだ答えてありません。近いうちに何らかお答えをしたいと思っております。
  177. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、改めて私から労働大臣質問を申し上げます。  差別撤廃条約の署名について、政府としては企業経営に大した影響をもたらさないというお考えがあったのでしょうか。
  178. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) ただいまの御質問は、日経連の質問書の中に、婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約は、五十五年七月十七日署名されたが、「このような企業経営に重大な影響をもたらす条約の署名について事前に我が方になんの御連絡もなかったように記憶するのであります。政府としては、たいした影響をもたらさないという御考えであったのでしょうか」と、これでございましょうと思いますので、それについてはただいま検討いたしておりますが、この条約は非常に広範多岐にわたる内容を持っておりますので、企業経営について影響がないというふうには考えられないと存じます。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕  そこで、これを一挙に実現しようとすれば確かに重大な影響があるいはあるのではないかとも考えられますが、いずれにいたしましても、条約は漸進的にこれを実現するという点も含んでいるわけでございまして、急激な変化ということは避ける方法もあろうかというふうに考えております。しかし、どのような文言でお答えするかということは、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、近いうちに出すつもりでございますが、なお若干の調整が必要かと存じます。
  179. 糸久八重子

    糸久八重子君 続けて、どのように現行法を改正すれば、あるいはどのような内容の新しい法律をつくれば、差別撤廃条約批准のための最低条件を満たすとお考えでしょうか。
  180. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) これは条約批准のための最低条件を日経連として知りたいという質問趣旨のように私ども理解いたしておりまして、それについては条約の解釈でございますので、外務省と十分な調整が必要であろうかと存じております。
  181. 糸久八重子

    糸久八重子君 男女雇用平等法は、だれのために、何のためにつくられる法律でしょうか、労働大臣
  182. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) だれのためにと言われれば、まず意欲と能力のある御婦人皆さん方にこれはその能力を有効に発揮してもらいたいというのが第一でありましょうけれども、しかしこれは、いかに御婦人の方々が働きたいと言っても、社会全体がやっぱりこれをちゃんと温かく受け入れてくれるというようなことも、これ準備が大切でございましょう。何のためにとおっしゃれば、これは私の感じでありまするけれども日本の国が明治以来追いつき追い越せでやってまいりまして、戦後あれほどの中から立ち直って、また今日まで来て、経済に関しては世界第二の大国を築いたと、こう言われておりますが、しかしこれも努力なくしてはいつまで続くかはそれはわかりませんよ。  そこで、私考えまするに、男性の能力開発については、我が国は長い間、教育だとか訓練だとか、それから経済の環境づくりだとか労使関係だとか、いろいろな面で非常に世界的にすぐれておると思いますね。だけれども、ひょっと考えてみたら、今までは男性中心的であったものですから、つまり裏を返せば女性は家庭の主役であったものですから、その社会的な能力開発については女性に対して決して十分であったとは言えませんね。これは世界の先進国に比べて、どちらかというと社会的な雇用の面での、特に能力開発というような点では少しおくれをとっておったのではないかと、こう思います。そういう意味で、その間の男女の雇用機会均等、均等が先でありまして、待遇の平等はその結果でありますけれども、そういう法制を整備をしていくということは、我が国の将来にとって私は一つの大きな転換期というものになって、そして女性の能力が有効に導入できれば、我が国の社会の潤いも活力も増していくのではないか、大変大きな歴史的な今度は転換期になるのではないか、そういうふうに期待をいたしております。
  183. 糸久八重子

    糸久八重子君 リクルートセンターの調査によりますと、ことしの春の大卒女子学生の五一・三%が、会社訪問の際に男子と異なった対応をされたと言っております。そしてさらに八六・二%の学生は、家庭を持っても働き続ける意思を持っていると回答しているわけです。現実に入り口から大きな差別を受けて、運よく採用されても、職種の上での差別があったり、また能力を十分発揮できずに、そしてまた家庭責任を全面的に背負わされている、そして職場の中からそういう関係で締め出しを食っているというのが現在の婦人の現状でございます。したがいまして、この前にも申し上げましたけれども、職場における実質的な平等を保障するには、今、大臣もおっしゃられましたが、募集、採用、昇進、昇格、そして職業訓練、職業教育仕事上の配分、福利厚生、退職などあらゆる差別が禁止をされなければならないと思うわけです。刑罰まで明記されている労基法でさえ公然と踏みにじられている現状でありますから、例えば日本の労働慣行になじまないとか、それから日本伝来の社会慣行とかというようなことを繰り返しおっしゃるようですけれども、そういうことをおっしゃらずに、よく大臣の皆様方が、二十一世紀に向かって大きく躍進するということをおっしゃるわけですけれども、その一つのチャンスが、このあらゆる差別を禁止した雇用平等法の制定であると思うわけです。  厚生省が二十四日に発表いたしました五十八年の国民生活実態調査によりますと、働く婦人は、婦人の三二・七%である。そしてそのうちパートが一二・四%、ますますそれが増大の傾向にある、そう言われているわけです。そこで大蔵大臣、お伺いしたいわけですが、パート労働の大多数は家庭の主婦であります。衆議院の予算通過に当たって与野党合意のいわゆるパート減税について、大蔵省の検討状況はいかがでしょうか。
  184. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) パート減税につきましては、与野党合意があるわけでございますので、したがって私どもの立場としては、必要に応じ事務的協力をいたしますことについては、政府は十分な協力をいたします。恐らく専門家で各党のお話し合いがあるわけですが、この資料を出してこいとかということになりますと、それはお手伝いしなければなかなかやれませんですから、そういうことに対しては十分お手伝いしようと。ただその中で今お願いしておりますのは、そもそもパート減税というのは非常に難しい話でございまして、先生御経験がございますからですが、本当に専業で働いていらっしゃる主婦の方との問題、あるいはまた婦人外交員、それから内職さん、これは全部実態が違いまして、とはいえ、パート労働法というのもつくるということになると、これもまた長い検討を要する問題でございますので、今度例えば間に合わなくても、そういう問題も将来の課題としては我々も勉強しますから、各党間でも勉強してください、こういうお願いをしているわけです。事実上、税制の問題で、私が働けるのもあなたが家庭におってくれたからという場合、二分二乗にしたらどうだ、こういう議論もありますし、いやそうじゃなく、二人働いているが子供が留守しているんだからやっぱり家庭単位にやるべきだ、そういういろんな問題を長い間勉強してきましたけれども、今度は政党間の場でも勉強してやろうか、こうおっしゃっているわけですから、一緒になって勉強しましょう。
  185. 糸久八重子

    糸久八重子君 次に、年金についてお伺いいたします。  先日の質問の中で、大臣は、妻個人の年金手帳をつくることを約束してくだすったわけでございます。そこで、働く婦人が今、育児や老人介護のために退職を余儀なくされるという状況があるわけですけれども、厚生年金の被保険者の資格をそうなりますと失ってしまうわけですね。そして中断期間中は基礎年金のみの加入になってしまうわけですけれども、これは社会福祉対策の不備を婦人が私的に肩がわりしたものですから、育児及び老人介護を行ったその婦人につきましては、被保険者期間に一定年数の加算をすることを考えていらっしゃいますか。
  186. 古賀章介

    政府委員古賀章介君) 先生御承知のとおり、被用者年金につきましては、労務の提供でありますとか賃金の支払いといった実質上の使用関係に着目して適用するのが原則でございます。育児期間等の場合におきましては、現状では雇用関係が切れまして賃金支払いが行われないのが通常でございますので、これについて被用者年金を適用することは制度の基本にかかわる問題でもございますし、また育児休業制度あり方などとの関連もございますので、慎重な検討が必要であろうというふうに考えております。
  187. 糸久八重子

    糸久八重子君 諸外国にそのような制度があると聞いていますけれども、その辺はいかがでしょうか。
  188. 古賀章介

    政府委員古賀章介君) 諸外国におきましては、それぞれ育児休業制度でありますとか、雇用環境、雇用慣行、社会状況等が異なりますことから、年金制度だけを取り出して比較することは必ずしも適当ではないと思われるわけでございますが、サラリーマンである婦人に関する年金制度上の各国の取り扱いにつきまして、私どもが把握しておりますところを述べますと、まず西ドイツでございますが、西ドイツは、妊娠、出産期間は拠出しなくても年金額に反映されることになっております。育児、介護についてはございません。フランスでございますが、子十六歳までの間に、制度に加入しながら九年間以上養育した場合に、子一人につき加入期間が二年加算されるという取り扱いになっております。イギリスでございますけれども、イギリスは基礎年金についてだけの取り扱いでございまして、育児期間、介護期間におきまして特別の配慮がなされております。この結果、年数が少なくともフルペンション、満額年金を受ける可能性が高くなっておる、こういうことになっております。
  189. 糸久八重子

    糸久八重子君 妻が離婚した場合ですけれども、長年連れ添ったわけですけれども、二階建ての報酬比例部分について、夫婦対等の権利を持たせるという、そういう制度を取り入れるお考えは、厚生大臣、おありですか。
  190. 古賀章介

    政府委員古賀章介君) 今度の改正案におきましては、すべての御婦人が必ず基礎年金に加入をする、基礎年金を支給する国民年金に必ず加入をするということになっておりますので、離婚したような場合には、これは基礎年金の適用被保険者、こういうことになるわけでございます。
  191. 糸久八重子

    糸久八重子君 二階建ての二分の一は妻のものとなるという西独方式もありますので、ぜひともその辺のところは御検討いただきたいと思うわけでございます。  女性の厚生年金支給開始年齢六十歳で男性と同じにするということは、平等の精神からいえば異論はございません。しかし、男女差別定年制が現在存在する現状のままで、年金のみが同一化を図るということは形式だけの平等を進めることになるのではないか。したがって、年金支給を男女とも六十歳にするならば、雇用における男女平等も当然実現しなければならないと思うわけですが、いかがでしょうか、大臣
  192. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは先生の御心配もありますが、今、先生からもおっしゃったように、男女平等でこれからは雇用法なり何なり、すべて男女の職場における区別がなくならなければこれはならないわけでありますから、将来はやっぱり六十歳に一緒になっていくのが望ましい。しかし、現実にはまだまだ先生指摘のように、必ずしも男女が職場においてすべて平等になったということにはなっておりませんから、これからそういう施策もどんどんこれは進めていかなければならないわけでありますが、そういうこともねらって六十歳にしようということで、何かこの話が出ますと来年にでもすぐなるような話でありますが、これは激変緩和ということで随分と検討をいたしまして、三年に一歳ずつ、つまり十五年かけてこれを行う、昭和七十五年にそういうことになるということでありますから、当然それまでには大いに社会全体で頑張って、これは男女の差別をなくしていくことが望ましいことであると私ども考えておるわけであります。
  193. 糸久八重子

    糸久八重子君 次に、児童扶養手当についてお伺いしたいと思います。  児童扶養手当法は一九六二年から施行されていたものですけれども、そもそもこの法律のできた趣旨は何でしょうか、お伺いいたします。
  194. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは社会的な条件が大きく変わってまいりました。この児童扶養手当ができた当時は、母子家庭といえば死別した母子家庭ということでありました。ところが、最近では非常に離婚が進んでまいりまして、生別した母子の方が多くなってまいっております。そういうことから、臨調等の答申もあり、この辺で本当に困っておる方々にはできるだけのことをしなければならないけれども、これに便乗するというようなこともなきにしもあらずでありまして、その辺のことをこの辺できちっとしたらよかろうということで、今回所得の多い人たちには御遠慮してもらうとか、あるいは父親としての責任をとっていただくという制度改正を考えておるわけでございます。
  195. 糸久八重子

    糸久八重子君 今厚生大臣がおっしゃいましたことは制度改正についてなんですが、そもそもこの児童扶養手当制度をつくった趣旨というのは何ですかという質問を申し上げたんです。
  196. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 当時は御承知のように死別者の方、これは母子年金があったわけですけれども、ごく一部分生別した方がそれをもらえないということで、それはお気の毒でないかというようなことでこの制度が発足したというふうに聞いております。
  197. 糸久八重子

    糸久八重子君 母子福祉年金制度の補完的制度として設けられ、母子福祉年金に準じて支給されてきた児童扶養手当であったわけですね。懇談会報告によりますと、母子福祉年金の補完的機能から切り離し、児童福祉施策として位置づけようとするものだというふうに書かれているわけですから、児童扶養手当を権利としての公的年金制度から恩恵的それから救貧的福祉施策の制度に押し込めようとする、つまり法律の目的そのものを変えようとする重大な社会保障制度の改変であると思うのですが、この点についてはいかがですか。
  198. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは前段の先生のお言葉を、はいと言うわけではございませんけれども、しかし内容については、今まで母子福祉年金の補完的制度としてあったものを、今度は福祉政策として位置づけようという制度の変革であることは間違いないと思います。
  199. 糸久八重子

    糸久八重子君 厚生省は昨年の夏、母子世帯調査を行ったはずですけれども、その結果の発表はいつごろになりますか。
  200. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 今、最終的な結果を取りまとめ中でございまして、来月の中旬にでも発表さしていただきたいというふうに思っております。
  201. 糸久八重子

    糸久八重子君 これら国の行う調査は、死別、離別を含めた母子世帯調査であるわけですね。特に離別母子家庭のみの実態調査を行ったことはありますか。
  202. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 今申し上げました全国の母子世帯等実態調査、これは大体五年ごとに今までやってきておりますけれども、いずれも御指摘のございましたように死別、離別含めた全体的な調査でございまして、内容的には死別の世帯と離別の世帯とを分けて集計することは可能でございます。それから離婚等の調査につきましては、やや古くなりますけれども、別に離婚等についての調査を厚生省人口関係の調査でいたしております。
  203. 糸久八重子

    糸久八重子君 大蔵大臣、生別母子世帯の生活実態は大変厳しいものがあるわけです。調査によりますと、母子世帯とそれから一般世帯の収入は、大体一般世帯の半分弱と言われているわけですけれども、そういうような厳しい状況のある中で大きく支給基準を変えようとしていますけれども、これについては大蔵大臣の御見解はいかがでしょうか。
  204. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは先ほど来御議論なすっておりますが、要するに私どもの方から見ればまさに抜本的な見直しの一つだと、実は制度的にはそういうふうに理解しております。したがって、いわゆる社会保障政策からの位置づけが、これが言ってみればまさに年金の補完という役割から福祉政策という方へ移行していくと、こういうことになりますと、この制度は二十年も前から議論されて、二十年前は非常に大ざっぱな話ですが、死別八割、離別二割と、今はまさに逆転しておりますよね。そういうこと等から考えると、やっぱり保障制度の補完的役割の福祉制度に位置づけられた場合、そういうものは制度上必要なものではないかというふうに私は理解しております。
  205. 糸久八重子

    糸久八重子君 とにかく母子家庭の生活実態は非常に厳しいわけですし、そして中途採用の女性の労働条件の厳しさはまたかなりなものがあるわけです。大体一月の平均収入が十万から十二万というふうに聞いておるわけですけれども、そしてさらに離婚女性は、離婚というだけで企業に採用されないという状況も非常に多いわけです。この意味からいっても、先ほど私は年金の部分でも申し上げましたけれども、実質的な実効性のある男女雇用平等法の制定ということは、ここの意味でも非常に大事であると思います。これは意見として申し上げたいと思います。  最後になりますけれども、細かい質問につきましては一般のときに譲らせていただきますが、改正案ではいわゆる未婚の母について、支給の適正化という名目で支給対象外とする方向のようでありますけれども児童の福祉増進という本法の目的規定からするならば、児童本人には何ら責任のない出生について差別をするということは、個人の尊厳や法のもとの平等をうたった憲法十二条そして十四条に反すると思いますけれども、この点については大臣どうお思いになりますか。
  206. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、子供を差別するなどという考えは毛頭考えておりません。未婚の母というと大変文学的には響きのいい言葉でありまして、私も最初この案を聞いたときに、未婚の母から手当を取り上げるというようなことは評判を悪くするぞというような話をしたんですが、冷静に考えますと、未婚の母ということは正常な婚姻関係によらずしてお母さんになったという方でございます。これはまた経済的な側面からいえば、その中にはかなり経済的に余裕のある男性の方が、自分の奥さん以外の女性に子供をおつくりになったという例も多いのでございます。そういう方に、国民の、しかも零細な収入の、汗を流して働いている勤労者の方も税金を納めておるのでありますから、そういう税金を使うのはどうかなという意見、また臨調等の幾たびかの指摘、そういうものを踏まえて今回は御遠慮願おうかという案になっておるのでございます。
  207. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 時間が参りました。
  208. 糸久八重子

    糸久八重子君 ちょっと一言。大臣、未婚の母というのは二号さんばかりではないんですね。ですから、この問題についてはまだ後へ譲りますけれども、そういう認識だけではないということを私申し上げまして、質問を終わらせていただきます。(拍手)
  209. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 以上で糸久君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  210. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 次に、中西珠子君の質疑を行います。中西君。
  211. 中西珠子

    中西珠子君 これまでたくさんの委員児童扶養手当の改正につきまして御質問になりましたから、重複を避けまして厚生大臣に御質問したいのでございますが、母子福祉年金の補完的機能であった児童扶養手当を、児童福祉の施策として位置づけるということで今回の改正案の御提案があったというふうに理解いたしますが、児童福祉をお考えになるときに最も基本になる法律は何でございましょうか。
  212. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 児童福祉法でございます。
  213. 中西珠子

    中西珠子君 児童福祉法の第一条は何と申しておりますでしょうか。時間がかかりますから、私が申しましょう。「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」と言っておりますね。そしてその原理を受けまして、第三条は、すべての法令の実施に当たっては、この原理を尊重しなければならないと言っているわけでございます。また、日本昭和五十四年に批准いたしました国際人権規約、これの社会権規約ですね、社会経済文化的権利の規約でございますが、その第十条3におきましても、「保護及び援助のための特別な措置が、出生その他の事情を理由とするいかなる差別もなく、すべての児童及び年少者のためにをられるべきである」と言っているわけです。そして我が国の憲法九十八条は、批准した条約や国際法の遵守義務というものをはっきりと規定しておりますね。  それで、今回の児童扶養手当改正案を拝見いたしますと、どうも生別母子家庭、離別母子家庭、そして未婚の母の母子家庭の子供というものは、子供自身は何の責任もないにもかかわらず、違った取り扱いがされている。先ほど糸久委員も言われましたように、未婚の母の児童扶養手当の支給は打ち切りであるということになっていますし、また支給制限は現行の三百六十一万から三百万に下げるということですし、またその所得制限と手当の二段階制というものも導入しておりますね、こういったやり方。私ここにいっぱい持ってきたのは全国から母子家庭の方々の陳情というか、請願というか、お手紙や電話やはがきや、それからまた印刷物にして会を結成して、何とかしてくださいと、母子心中だとか、子捨て、子殺しというものがふえないようにするためにも何とかしてくださいという、熱烈なまた悲壮な訴えがあるわけでございます。それでたくさんの委員が既にお聞きになったにもかかわらず、私はこの児童扶養手当改正問題を申し上げるのでございますけれども、もう離別母子家庭の子供は高等学校にやらないのか、やってはいけないのかというふうな訴えもございます。これは支給期間を七年間に制限し、また義務教育を終えてない前であったら、義務教育終了まで延ばすということの規定が盛り込まれるということについて、現在高校進学率は九五%ぐらいでございますね。それなのに、離別母子家庭の子供は高校に行ってもいけないのかというふうなそういう訴えがあるわけでございます。ですから、これは本当に児童福祉のためをお考えでございますならば御再考願いたいと思うわけでございます。  もう一つ大変問題なのは離別した父親ですね、この年間所得に応じまして支給制限をする。言いかえれば年間六百万円ぐらいの収入のある父親と別れた場合、夫と別れた場合ですね、それはそちらから取り立てまして扶養義務の履行をさせるというふうに厚生大臣おっしゃいましたけども、この父親の扶養義務履行状況というものを調査なさいましたですか。厚生大臣いかがですか。
  214. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 厚生省において、それぞれの機関でそれぞれの制度で、今のような調査を行っております。なお詳細必要とあれば、政府委員から答弁させます。
  215. 中西珠子

    中西珠子君 先ほど糸久委員質問に対して答えられまして、そして昨年母子家庭の調査をなすったということでございますけれども、私がお聞きしているのは、別れた夫、父親が子供に対して扶養義務の履行をきちっとやっているかどうかの調査ですね、これは厚生省ではなすっていませんでしょう。五十三年の調査がおありになるということは知っています。でも最近はなすっていますか。
  216. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 協議離婚の場合に、その未成年の子供の養育料を出しているかどうか、だれが出しているかという点につきましての調査は、先ほど言いましたように、昭和五十三年の厚生省人口動態社会経済面調査によりまして結果が出ているわけでございまして、生別した場合に、夫が全部、あるいは夫と妻双方で養育料を出しているのが合わせまして約三〇%近いという数字が出ております。それから、協議離婚ではございませんで、家庭裁判所を通ずる調停離婚でありますとか、審判離婚の場合にどうなっているかと。これは最高裁の調査でございますけれども、母親を監護者と定めた場合、夫からの養育料の友払いを取り決めている割合が、子供の数によって若干違いはございますけれども、大体七〇%前後という率になっております。
  217. 中西珠子

    中西珠子君 協議離婚の場合の数字をお出しになりましたけれども、調停離婚の場合の子供の養育費支払い取り決めのケースは年々ふえているようでございますけれども、協議離婚の場合のそれは、全離婚数の九割を占めるわけですけれども、養育費を支払っている父親というのは三割に満たないということでございますし、調停離婚、審判離婚の場合の養育費支払い取り決めはふえておりまして、六割強でございますけれども、これは全離婚の数から言いますと〇・六%でございますね。そして、そのような取り決めがあるにもかかわらず全然履行しないという人もまたふえておりまして、家庭裁判所が履行勧告というものをいたしましてやっと払う人、また全部払わないけれども一部だけ渋々払う人というのが多いわけでございますが、全然履行しない、履行勧告を受けても全然履行しないというのが三割はあるわけです。その三割の内訳は、全然連絡がつかないとか、履行意思は全然ないとか、それから履行の能力がないというのがその内訳でございますけれども、この児童扶養手当改正案の中に父親の扶養義務履行の確保の根拠はございますか。所得制限をするのはよろしいけれども、その扶養義務を履行させ、養育費を払わせるということが強制できますか、この改正案で。
  218. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 今回の改正案におきまして、夫の所得によって支給を御遠慮いただくと、こういう対象というのは、先ほどから大臣がお答え申し上げておりますように、離婚時の前年の所得がおよそ六百万円以上の人に限ってそうさしていただきたいということでございまして、その六百万円というのは、家計調査によりますと、大体一番所得の高い一割の階層の方々でございまして、残りの九割の方については従来どおり夫の所得いかんにかかわらず今までどおり支給をさしていただくと、こういうことにしているわけでございます。先ほど協議離婚の場合に三割、裁判離婚の場合に約七割夫の養育料の取り決めがあると、こういうことを申し上げましたけれども、恐らくやはりそれは大部分の方が所得の高い、つまり六百万円以上の方は大体そういった取り決め、また実際にも履行していただく方だろうと、こういう前提のもとにそういうことにさしていただくわけでございます。仮に今、先生のおっしゃいましたように、離婚後に例えば所得が失業でなくなったとか、あるいは夫の所在がどうしても行方不明になったと、客観的に夫に履行を求めるということが非常に難しいような場合には救済をする、手当の支給をすると、こういうことにいたしているわけでございます。実際問題としてお困りならないように十分今回の改正案におきましても配慮しているつもりでございます。
  219. 中西珠子

    中西珠子君 社会保障制度審議会の答申におきましても、やはり民法上の扶養義務が履行が確保されるような手だてが特別講じられなければ児童の福祉が乱される、侵されるという心配があるから、別途検討してもらいたいということでございましたけど、別途検討ということはなすっているのですか、何か対策をお考えでいらっしゃいますか、厚生大臣
  220. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 制度審議会からも、この考え方については十分理解できるけれども、この考え方といいますのは、夫の所得によって、それが高額な場合には支給制限をすると、この考え方には十分理解できる、ただし、今おっしゃいましたように、よその国でとっているような、もっと扶養義務の履行を何とか確保するような方策を検討するようにといういわば宿題をいただいておりますので、その点につきましては今後十分検討さしていただきたいと、こういうふうに思っております。
  221. 中西珠子

    中西珠子君 扶養義務の履行を確保するのを別途御検討くださるそうで、それは大変結構でございますけれども、しかしこの法律が改正されてしまいまして、その後やっと履行の手だてというものができてきても間に合わないわけでございますから、先にその履行義務の確保ということですね、強制力をもって何とか確保するというふうな手だてをお考えいただいて、それまではこの改正案は延期というか、棚上げにしていただきたいと思うんでございます。と申しますのは、本当に離別母子家庭は困っておりまして、そして、先ほども糸久委員が御指摘されましたけども、もう一般家庭の四三%ぐらいの収入しかない、九万七千円ぐらいの収入しか平均月額がないわけでございますから、そしてまた中高年の子供を抱えた婦人というのはもうほとんど雇用の機会がない、パートで働くぐらいしかないわけですね。そのパートの賃金は御承知のとおり安いし、また雇用調整、不況の安全弁的に使われて、雇用は不安定ですし、労働条件は劣悪なわけです。こういったところで本当にもう一日二つパートをしなければ何とも生活費が稼げないという女性、離別母子家庭の母親もいるわけでございますし、そういった点は、私は、児童福祉問題懇談会、これがまた男性ばかりで構成なすって、この懇談会の提言に基づいてこの児童扶養手当の改正もお考えになった。もちろん臨調もその児童福祉の一環として考え直せというふうなことを言われたらしいですけども、とにかく臨調も女性が分科会にはいらっしゃいましたけれども女性がいないということでございますね。社会保障制度審議会も女性がいないんですね。女性の声、母性の声をもっとそういった審議会や何かに反映できるように女性の代表も選んでいただきたいと思うんでございますが、まあさすがに社会保障制度審議会はとにかく民法上のその扶養義務の履行を確保する別段の手だてを考えると、こう言っているわけですから、これをお考えいただけるまでこの改正法案は棚上げにしていただきたいとお願いいたしたいと思いますが、いかがですか。
  222. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これはお話を聞いておりまして、先生の御心配、また私ども考え、これ共通しております。それは、児童福祉法の精神にのっとって子供を大事に考えるということ、また子供を抱えたお母さんの生活を大事に考える、これは共通しておるのでございます。そこで問題は、やはり子供というのは女だけでできないんですから、今試験管ベビーとか例外的なものはありますけれども、大部分はこれは男性もつくる、二人でできるものですから、やはりその子供を全部母親だけが担わなくちゃならないということではなくて、やっぱり平等に父親にも扶養義務があるので、それが何か最近この児童扶養手当が進んだ結果、何か父親の扶養義務というのが、もう離婚するときおまえは児童扶養手当もらえばいいんだというようなことで非常に父親の扶養義務というもの、責任というものが軽くなっておるという風潮等が心配されてこの問題が起こったわけです。ですから、このことで本当に困るお母さんなどがあってはならないことでありますから、私どもは今度この法案を通しても、今までの手当を受けている人はそのままと、こういうことですから、今度の法案が通っても、今度の五十九年度の予算では大蔵大臣が喜ぶところはないわけです。ほとんど予算に変わりないくらい、そのくらい配慮して、またこの制度をこれから進める場合もやっぱり父親の扶養義務というものをとっていただくということが私どもの精神なんですから、その父親が失踪していなかったとか、それからその父親が失業して払えないとか、そういう場合は弾力的にお母さん、子供さんがお困りにならないように配慮していこうと。  また、先ほど先生御心配になった、高等学校に行けなくなっちゃうのじゃないか。これは私もこの説明を聞いたとき一番心配したことでありまして、これは七年間ということでも、これは義務教育が終わってもし高等学校の途中で切れるというような場合は、これは同額の児童福祉資金を貸し付けることによって高等学校を出ていただくということでありますから、これは私どもは女性と子供は大事にして、父親の方の責任をできるだけ追及しようということですから、先生にも御賛成をいただきたいと思います。
  223. 中西珠子

    中西珠子君 父親も母親もひとしく養育の義務はあるわけでございますから、余りにも父親が扶養の義務を放棄しているという現状、そしてこれを履行させようというお気持ちは大いにわかるわけでございますが、家裁の現在の扶養義務履行を迫る、確保するやはり手だてには強制力がございませんね。それからまた、調停離婚で、調停調書だとか公正証書なんかをつくっておいて、払わない場合は強制執行できるようにしておこうと思っていろいろ書類を整えましても、強制執行の手続というものは大変難しくて素人ではできませんし、時間もお金もかかるわけでございますので、何とか本当に手だてをお考えいただきたいと同時に、啓発活動をして男性の頭の切りかえをやっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  それからもう一つちょっと大蔵大臣に伺いたいと思います、この関連で。  児童扶養手当に地方負担が二割新規認定分から導入されるそうでございますが、私のところには地方公共団体からいろいろ陳情が来ていて、地方負担は困るということ、それから児童福祉政策として発足させるなどと言っているけれども、その位置づけがはっきりしないというふうなことを言ってきたんですけれども、最近お話し合いはついて、税源の配分の見直しとかそういうことはもうすっかり大丈夫になったのですか、大蔵大臣いかがでございましょうか。
  224. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは一応、年金を補完した保障政策から福祉政策へいきますと、他の施策と同じように地方負担していただこうと、むしろ地方の方がいろいろ言っていらっしゃったのは、これをいわば地方負担をふやしていく突破口に考えているのじゃないか、話の筋はわかるにはわかるがと。こういう趣旨でございまして、逐次話し合いを行った結果、これは合意に一応達しておると、こういうことでございます。
  225. 中西珠子

    中西珠子君 老人介護問題でございますが、これはけさほど山東委員からの御要請もございましたが、私も老人介護の問題は本当に婦人問題であると。寝たきり老人の八割は婦人であるとも言われていますし、また寝たきり老人その他の老人を介護している大部分は婦人であるということで、この老人介護の問題は大いに拡充していただきたいと思います。  確かに大蔵大臣の御理解でショートステイホームとか訪問看護とか家庭奉仕員派遣事業とか、それからデーケア、そういったものの予算はふやしてはいただいておりますけれども、まだまだ十分ではないし、行財政改革とは申しましても、高齢化社会に向かってやはり国民のための行財政改革であってほしいと思いますので、福祉の切り捨てなどはなさらないようにお願いしたいと思います。  それから痴呆性老人対策というのが大変また重要になってきておりまして、この痴呆性老人は精神病院でも扱わないし、一般病院でも扱わないということで本当に困った、対策を考えなければならない問題なんでございますけれども、どのような対策をお考えになっておりますですか、厚生大臣
  226. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今、先生から御指摘の在宅福祉の老人介護、これまことに重要な問題でございますから、今度も四・九%の予算の伸びをちょうだいしたわけでありますが、これは大蔵大臣もここにおりますが、先生と一緒に六十年度予算でも大いに奮発していただくようにこれはお願いをしておきたいと思います。  今の痴呆性老人。これもなかなか呼び名が私もすぐこんなあれを使っていいのかと、こういうぐらいこれは難しいあれですけれども、痴呆性老人対策は今度五十九年度でもいろいろな施策を講じております。詳細必要でありましたら政府委員から答弁します。
  227. 中西珠子

    中西珠子君 ぜひよろしくお願いいたします。  それでは、労働大臣にお願いしたいのでございますけれども、最近公明党では、働く婦人を対象にいたしまして、いろいろな職種の人、いろいろな業種で働いている人を対象に面接調査を行っているわけでございます。まだ緒についたばかりなんですけれども、既に別々の職種の人四十名ぐらいに面接したわけでございますが、そこにおきまして出てきました問題は、労働基準法が余り守られていない。特に労働時間の問題、婦人に対する時間外労働の規制の問題とか、健康診断の問題とか、それから就業規則の問題とか、危険有害業務は一応禁止されていますけれども、大変有害な物質を扱ったり、危険なところで作業をしているので、基準監督署に申告に行ってもなかなかいらしていただけないとか、また申告に行くと使用者側からにらまれまして首になるというふうなこともございまして、基準監督官の数が足りないのではないかと私は考えているのでございますけれども、基準監督官の数とか、基準監督の状況につきましてお聞きしたいのでございます。
  228. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 先生指摘の、女子の労働条件が基準法違反が多いのではないかという御指摘でございますが、私ども昭和五十七年におきます監督実施結果を見てみますと、これは十七万の事業所を臨検監督を実施した結果でございますが、満十八歳以上の女子の労働時間については基準法違反が五・五%の違反となっておりまして、同じく深夜業について〇・二%の違反がございます。それからほかの事項についても若干の違反がありますが、そういった状況でございまして、監督機関といたしましては、これらの違反につきましてそれぞれ適切な是正措置をとっておりますが、非常に悪質なものについては送検するという形もございますし、できるだけの女子の違反のないような体制をとっていきたいと、こう思っております。  それから今、基準監督官の増員の問題の御質問がさいましたが、この増員の問題につきましては、私ども従来から監督体制の強化ということで努力をしてきたわけでざいますが、昭和五十九年度におきましても三十人、これは特別大蔵省に認めていただきまして三十人をいただいたわけでございますので、それらも含めた形で鋭意効率的な機動的な監督体制をとっていきたいというように考えております。
  229. 中西珠子

    中西珠子君 三十名増員を大蔵大臣が認めてくださったそうで、大変結構でございました。しかし、まだまだ足りないと思うんでございますよ。日本は、ILOの八十一号条約を批准しておりますね。これは工業や商業における労働監督に関する条約でございますが、この条約第一条には、十分な労働基準監督官を確保するようにということを言っておりますし、また同条約の第十六条は、「法規の実効的な適用の確保に必要である限りひんぱん且つ完全に監督を実施しなければならない」と言っておりますし、また七条三項では、「任務の遂行のため適当な訓練を受けなければならない」ということを言っておるわけでございます。これはもう労働大臣先刻御承知のことでございますけれども、行財政改革の折からではございますが、国民の、殊に働く人たちの生命と健康を守り、労働条件をよくしていくのは労働行政の最大重要課題の一つかとも考えますので、ぜひ労働基準監督を徹底していただきたいし、また最近、技術革新で生産工程も変わってきているし、また新しい原材料も入ってきて、そして危険、有害な要因というものも変わってきておりますので、ぜひ研修も大いにやっていただきまして、専門性も高めていただきたい、数もふやしていただきたい。  うわさによりますと、臨検の検査ができるのは、適用事業場が余りにふえたから七十年に一回だといううわさもあるぐらいでございます。そういったうわさが飛びませんように、どうぞ御配慮くださいまして、労働基準の問題は、最低の基準でございますから、大いに守らせるようにしていただきたい。また、違反として出てこなくても非常にたくさん違反があるということを御承知いただきたいと思うわけでございます。  それからまた、この一月にILOが発行いたしました世界労働報告によりますと、日本の労働時間は非常に長い。そして時間外労働は、これは三六協定さえ結べばもう無制限にやって構わないということになっているということが出ておりまして、これはもちろん女性には現在は時間外労働の規制はございますけれども、男性はとにかく危険、有害業務を除けば、三六協定によってそれを届ければ無制限にやっていいということになっている。そしてまた、割り増し賃金が非常に安い、二割五分しかないということと、それからまた、年次有給休暇は短いし、そして継続的にとれない、細切れにとるということが指摘されているわけでございます。  労働省は、労働時間の問題につきましては、昭和六十年までに欧米、少なくともヨーロッパ並みにはするという努力目標をお掲げになったわけでございますが、現在どのようになっておりますか、労働大臣にお聞きいたします。
  230. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 委員のおっしゃるように、どうもまだ我が国の労働時間は二千時間をオーバーいたしまして、欧米の千七百時間、八百時間などというようなところから見れば多うございます。それは今、委員みずからおっしゃったようないろいろな理由があります。しかし、我が国の労働力の質は非常に高くて、労使関係も私は世界的な水準から見れば立派な方だと思っておりますけれども、しかし急速に発展をしてきたものですから、生産性向上の分の配分を、どうも賃金を上げるという方にうんと力を入れて、賃金を上げる方に比べれば労働時間短縮の方にやはりどうも産業界全体が力が入らなかったのではないかというようなこともございますので、私どもといたしましても、もちろんいろいろ指導はいたしますが、また中央労働基準審議会などにも、これは政労使三者構成でありますから、その辺よくよく御検討をしていただいて、私どもが指導するのは当然でありますけれども、これは納得しないとやっぱり指導の効果が十分あらわれませんから、そういう政労使の話し合いの場なども活用して、納得ずくでひとつ労使ともに協調をして、できるだけ労働時間を有効に短縮していくように努めたいと思います。
  231. 中西珠子

    中西珠子君 ありがとうございます。  世界的に日本の長時間労働、殊に男性の長時間労働は有名なのでございます。その世界的に有名な労働時間の短縮のできない状況におきまして、ただいま婦人少年問題審議会が御審議中で、もうそろそろ答申の出るころではないかと思いますが、もし公益委員のたたき台に沿った答申が出るといたしますと、婦人の時間外労働の規制は、工業的職種、工業的業種に働く人は、専門職とか管理職を除いて規制を緩和して存続するけれども、あとの者は全部廃止するということが出ていますし、深夜業も同じく工業的職種、工業的な業種で働く人は、管理職それから専門職を除いて、深夜業の禁止は廃止するというふうになっていますし、休日労働も同じくでございます。  もしこのようなことになりますと、男性の無制限で働いている時間外労働と同じように女性も働かされることになるし、今でも深夜業で女性が働いている状況、これは除外規定ではない、また基準法の違反をこっそりやっているという職場で既に働いている人もいるわけで、やはり女性の健康問題、家庭の平和、安定の問題というふうなものも脅かされるというふうなことにもなりますでしょうし、こういった点はぜひ、これから答申が出まして労働省の方の責任で法案をおつくりになり、女子保護法規の規制につきましていろいろ検討、見直しをなさって改正案をお出しになるのだと思いますけれども、男女雇用平等法が既にある諸外国、殊に先進工業国におきましては、女子保護法規はちゃんと残しておきながら男女雇用平等法をつくっている国もあるということを念頭にぜひ置いていただきたいと思います。どこの国ということを一々申し上げませんでも、労働大臣婦人少年局長も先刻御承知のことだと思いますので、その点をよろしくお願い申し上げます。  また、審議会におきまして非常に労使の意見が対立しておりまして、婦人少年局長も労働大臣も大変御苦労になっていると思って、敬意を表しているわけでございますけれども、こういう点はやはり働く婦人の立場、働く婦人の健康というものもお考えいただいた女子保護法規の見直しをしていただきたいということをお願い申し上げます。  また、もう一つ、公益委員の試案の中に、募集と採用は努力義務規定にするということが書いてございまして、けさほど婦人少年局長から、その努力義務規定というものもやむを得ないであろうということを御答弁になったわけでございますけれども、私はこの前の予算委員会の補正予算審議のときに、少し時間をもらいまして関連質問をさせていただいたときに、努力義務規定では司法救済も難しくなるということを申し上げましたので、これを何度も繰り返してくどくど申し上げませんけれども、司法救済も難しくなるという点と、それからまた迅速適正な行政的な救済措置が必要なのですが、これにつきまして諸外国ではちゃんとした第三者の委員会をつくっているところも多いのですけれども、公益委員の試案におきましては調停機関をつくるというふうなことが書いてございまして、これもやはり私は予算委員会におきまして法制局長官に、調停機関では是正命令が出せないということを確認いたしました。  このような是正命令の出せないような調停の機関では、そしてまた司法救済もできない、難しくなるということでは、本当に実効性のある男女雇用平等法とは思えませんので、やはり雇用の入り口から出口まできちっと差別を禁止していただいて、そして司法救済もできるし、また迅速な適正な行政的な措置、救済措置というものを確保していただくように、そして実効性のある男女雇用平等法をつくっていただきたい。  そしてまた、基準法の第三条に性別というものが均等待遇の中に入っていないという事情は、やはり平等を与えれば保護は返上してもらうという考え方の根源となっているらしいので、どうぞそのようことではなく、婦人の基本的人権を守る、そして男女ともによい労働条件そして労働時間の短縮という、そして質のよい生活をやはり国民全体がやっていって、そして勤労の喜びも感じられるというふうなことでやっていただきたいと思いますが、労働大臣いかがでございますか。
  232. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) なかなか個別の問題までずっと一通りお並べになって、これを答えておると三十分ぐらいかかってしまいますが、私の感じでありますけれども、今度の男女雇用の機会均等、そして平等を目指すという制度というものは、西欧並みから見ればやはり随分男女差別の取り扱いが残っておった日本にとっては、これはやっぱり相当な大転換であると思います。歴史的な転換だという点もかなりだと思っております。そうすれば、長い間の日本の経済、雇用関係というものは、これは男性中心の年功序列、終身雇用というようなものがここまで日本がのしあがってきた大きな一つの原因だろうと思っておりますので、急に何といいましょうか、百八十度転換をいたしますると、雇用の方もびっくりしまして、ちょっとまごついて、初めから恐怖心を起こしたのではこれは結果としてうまくまいらぬのではなかろうかな、やっぱりスロー・バット・ステディーという点もあるのではないだろうか。自動車の初めの走りはローで少し遅いですけれども、だんだんセカンドになりサードになりトップになっていく、そういうふうにスロー・バット・ステディーの面もスタートにはこれはやむを得ないのではなかろうかなと、そういう気もいたしております。とにかく、いろいろな面を心して、そしてあるべき理想の姿ははっきりと確かめながら、その方向はしっかりとこれは決めながら、しかし動きは、初めは処女のごとくではないけれども、初めはやっぱり多少理想から見れば狭き門かもしれませんが、だんだんひとつ立派な改革が進んでいくようにと、大道無門になればこれ理想でございます。
  233. 中西珠子

    中西珠子君 まあスロー・バット・ステディーでもよろしゅうございますけれども、やはり世界に恥じないものをつくっていただきたい、これをお願いしておきます。  それで、この前の予算委員会で総理大臣にお願いいたしましたときも、世界に恥じないものをつくるということをお約束くださいました。婦人差別撤廃条約の批准は、もうこれは日本の公約でございます。国際的な公約でございますから、やはり国連婦人の十年の終わるまでに国内法の整備をして条約の批准をしていただかなければならないわけでございますから、これに抵触しないようなものをつくっていただきたいということをお願い申し上げます。しかし、婦人差別撤廃条約の批准のためだけに男女雇用平等法をつくるのではなくて、やはりこれは働く婦人の長い長い間の差別をなくしたいという悲願でございますから、この婦人の声にもこたえてやっていただきたい。  三月二十二日にILOが発表しました男女間の賃金格差、これは日本だけが賃金格差の拡大している唯一の国であるわけでございます。殊に製造業におきましては、男性の賃金を一〇〇にすると四三・一が平均という本当にひどい状況でございますから、こういった賃金格差の問題は即差別ではないのですけれども、いろんな差別からこれが結果として出てきたということも言えますし、こういうことが余り世界に言われるのは恥ずかしいことでございますし、とにかく差別をなくすための御努力をしていただきたいと思います。  総理府総務長官、世界に恥ずかしくない男女雇用平等法をおつくりいただけますでしょうか。婦人問題企画推進本部の副本部長のお立場からどうぞ。
  234. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) お話いろいろ勉強させていただきましてありがとうございます。お話しのとおり労働省もそれぞれ各部局、また文部省の方も勉強しておりますので、御期待に沿いたいと思います。
  235. 中西珠子

    中西珠子君 どうもありがとうございました。終わります。(拍手)
  236. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 以上で中西君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  237. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 次に、中野鉄造君の質疑を行います。中野君。
  238. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私は、これから提案される予定になっております医療保険制度の改正と年金制度の改正について質問いたします。  まず、年金問題についてお尋ねいたしますが、厚生年金の保険料負担の限界についてお伺いいたしますが、今回の改正案によりますと、昭和九十六年以降の保険料は二八・九%にもなると、こういうように見込まれておりますが、負担の限界についての政府の認識をお尋ねいたします。
  239. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 年金の負担がいろいろの工夫をしても今後増加していくことは避けられないと思います。今六・三人の現役が一人の老人を支えておるわけでありますが、急速に老齢化が進んでまいりまして四二一人に一人、昭和百年には、さらに三人に一人という時代がやがてやってくるわけであります。しかしその中でどの程度にとどめるか、これは我が国の経済成長とも関連することでありますから、数字的に明確に申し上げることは困難かと思いますけれども、今、現行の保険料率がたしか医療制度で五%前後、年金も五%前後、合わせて一〇%から一一%ぐらいかと思いますが、これが、医療制度は現行保険の料率にとどめていくという考え改革案を出しておるわけでありますが、年金はかなり大幅に伸びていく。しかし、臨調の精神で、将来にわたっても西欧の水準より低目に抑えるという基本的な目標がありますので、その目標を達成するために、今改革案に対して検討をしておるところでございます。
  240. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 過去の国会答弁でも、あるいは社会保障長期懇の提言、つまりこれは五十七年の七月のものなんですが、これらの場で明示されましたように、大体ここでも二三%、いわゆる西ドイツ並みの水準ということが明示されておりますけれども、再度お尋ねいたしますが、これらを基準にしておられますか。
  241. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今も再三申し上げましたが、医療保険は現行水準にとどめて西欧の水準を下回るということでありますから、御指摘のような数字になってくるものと思います。
  242. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 今回の年金改革案の中で私が非常に不安を抱きますのは、国民年金の定額保険料方式が、支払い能力というものの点についてほとんど考慮されていないのじゃないかと、そういう気がしてならないんです。つまり、低所得者にとっては毎月六千八百円、夫婦でこれは一万三千六百円になりますか、これをコンスタントに払い込んでいくということはかなり困難な状況になるのではないかと、こう思いますが、この点についてどのようにお考えになりますか。
  243. 古賀章介

    政府委員古賀章介君) 今後の高齢化社会を展望いたしますと、国民年金の保険料につきましても段階的な引き上げをお願いせざるを得ないということは、これは間違いなく予測される事態でございます。  今回の改正案におきましては、厚生年金と同じように、将来の保険水準について見直しを行いまして、毎年度の保険料水準の引き上げ幅をこれまでより緩和して三百円幅といたしまして、急激な引き上げとならないようにいたしております。他方、三カ月ごとの保険料納付を原則とする現行制度を毎月の保険料納付というように改めることなどいたしまして、できる限りの配慮をいたしておるところでございます。また、保険料負担が困難である低所得者につきましては、先生御承知のように保険料免除の制度がございますので、それを活用していただくということにいたしたいというふうに考えております。
  244. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 その免除の基準は幾らになりますか。
  245. 古賀章介

    政府委員古賀章介君) 免除は法定免除と申請免除がございます。法定免除は生活保護を受けているときなどでございます。申請免除は低所得のため都道府県知事が免除を承認したときでございますけれども、現行運用上は所得税非課税ということを一応の目安にいたしております。
  246. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この改正案の収支試算によりますと、支給開始年齢を昭和七十三年から八十五年度の間に六十五歳まで段階的に引き上げていくということになっていますけれども、このピーク時の保険料負担を仮に二三・九%程度に抑え込むことが可能であると、こう言われておりますが、これは単なる参考的な試算でしょうか、それとも六十五歳への引き上げが不可避ということの方向づけを示唆するものなのでしょうか、どうでしょうか。
  247. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 将来、これは平均寿命が五十歳から八十歳を超すようになっていくわけでありますし、今、労働問題でもいろいろ議論されているように、いずれは定年というものも五十五歳から六十あるいは六十五というふうにいくことが考えられておりますから、いずれはそういうことも考えられるかもしれませんが、今度の年金改革案では、これは六十歳の支給年齢を引き上げるというような考えはありません。  ちょっと政府委員に補足させます。
  248. 古賀章介

    政府委員古賀章介君) 大臣答弁されたとおりでございます。  補足さしていただきますと、仮に支給開始年齢を六十五歳に将来引き上げることとした場合の試算をいたしたわけであります。そういたしますと保険料負担は二三・九%、ピーク時におきまして二割強ということになりまして、現在の西ドイツ並みになる、こういうことでございます。
  249. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 六十五歳に引き上げるというようなことは将来断じてあり得ないということは断言できないことですね。
  250. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 十年後、二十年後あるいは三十年後というものの社会的変化というものが確実に予測できるかということは極めて困難な問題でありますし、また先ほども私が申し上げたように、平均寿命にいたしましても、我々の想像以上にもっと延びていくとか、あるいは労働条件にしても変わっていくというようなことを考えますから、今断言することは極めて困難だと思いますが、現行の改革案で六十五歳までというようなことは考えておりませんし、今、私は全国の皆さん方先生指摘の点を非常に心配しておられると思います。私自身の周囲の皆さん方も心配されておるのであります。ですから、婦人の支給開始も五年間に十五年の経過措置をとるというような慎重な姿勢を保っているわけでありまして、現在の改革案では六十歳の支給年齢を引き上げるということは考えておらないということで御理解いただきたいと思います。
  251. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 今回のこの改正案では、女子の支給開始年齢については十五年の経過措置を経た後に男子並みの六十歳に統一する、こういうふうになっているわけですが、その前提としては、やはりこれは先ほどから問題になっております男女雇用平等の確立が当然必要じゃないかと思いますが、いかがですか。
  252. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 全く同感でございます。
  253. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 続いて、もう時間もございませんから次に参りますが、年金の国庫負担について、新しい制度ではこれは基礎年金給付費の三分の一となりまして、制度の成熟段階では、五十九年度でこれは五兆円近い国庫負担が見込まれる状況にありますが、これは政府としてどういうように対処されますか。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕
  254. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 御指摘のとおりに五兆円になるわけであります。したがって、そういうふうに将来の高齢化社会では非常に負担がふえてまいりますので、避けられない負担を避けられる負担とありますから、これは避けられない負担の方に入っていくと思います。そういう点で、これはどうしても確保しなければならない。したがって、避けられる負担の方は何とかこれがふえないように努力しようということで医療保険改革等を考えておるので、この点も御協力をお願いしたいと思います。
  255. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 聞くところによりますと、財政当局から、我が国の年金への国庫負担というものは国際的に比べて比較的高いと、こういうようなところから、過般の行革関連特別法の立案の際も、厚生年金国庫負担率の四分の一カットというようなことが論議されたということを聞いておりますが、大蔵大臣、いかがでしょう、この国庫負担の将来的維持ということについてお伺いいたします。
  256. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今、五兆円問題というのが議論されましたが、厳密に言いますと、中野先生が勉強なすって推定なすった数字でございまして、いまだその五兆円というものを、先生の勉強なすった推定と同じベースで推定計算したことはないわけじゃございませんけれども、外へこうなると自信を持って発表した数字では必ずしもございませんが、それはそれといたしまして、今後の高齢化社会に対応するために、年金給付を受ける者とそのための費用を負担する者との間の公平を図りながら、保険料と国庫負担を合わせた年金負担の増大について、要するに国庫負担とはいえ、いわゆる受ける人と負担する人の、その負担する人のお金を国庫に集めて、それを集約したものが国庫負担、こうなるわけでございますから、その間の合意を得ていくことが実際問題としては重要である。そういう合意が得られるような社会、そうしたものを念頭に置きながら、基本的にはその合意を得て決めていく問題であろうというふうに考えております。
  257. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そこで、この件にちょっと関連いたしますが、きのう、きょうの話ではございませんで、厚生省としては以前から財投離れということを主張されております。この件について厚生大臣どうお考えですか。
  258. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、年金積立金の有利運用等を考えろ、こういうことでございますね。
  259. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そうです。
  260. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今回の改革案では、給付負担適正化を図ることが主要なねらいとなっておりますが、長期的には、先生が今まで御心配いただいたように、保険料負担の増加は避けられない見通してありますから、それをできるだけ緩和していくためには年金積立金の運用というものが大変大事な問題で、このような今後の負担増をできるだけ緩和するための有利運用、あるいは保険料拠出者の意向反映の強化等の方策を講ずる必要、これはいろいろ議論されておりますので私どもだけの考えでまいりません、大蔵省と相談をしていかなければならないことで、大蔵省は余り喜ばない話でありますが、これから一生懸命協議してまいりたいと思います。
  261. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 これは、例えば公務員系統の共済年金が自主運用をしておりますね。そこへもってきて、今度は民間の厚生年金などは低利の統合運用を強いられている。こういうことで、ここにも官民格差があるんじゃないか、こういう論議もなされているわけですが、先ほどからも申しますように、将来の年金制度考える際に、この労使の保険料の集積である積立金の運用収入というものは重要な財源であるわけなんですが、そういう意味から、財政投融資運用をやめて自主運用にすべきだと私も思いますが、大蔵大臣いかがですか。
  262. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはある意味においてエンドレスな議論とも言えると思います、一面には。そもそも国の制度、施策というものに基づいて集めた金でございますので、いわば専門的見地からこれを安全にして、しかも有利な運用ということを念頭に置いて対応してまいりますと。やはり臨調でもいろいろ議論していただきましたが、その原則はやっぱり原則として貫いて、しかもその有利運用ということを十分念頭に置いて配意していけと、これが現実の姿であろうなと。別に財投というものが存在しておるからという角度からだけでなくしかし現実問題として、また財投というのは、第二の予算と言われるような国の全体の財政金融諸般の政策を一元的に配分する機能としての役割も持っておることも事実でございます。
  263. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 確かにこれはエンドレスな議論かもしれませんが、積立金の活用法としては、いわゆる高利運用によるところの蓄積を主としていくのか、それとも低利資金あるいは福祉施設に運用する乙とによって後代に社会資本を残していくというようなやり方ですね、そのかわりに保険料の後代負担を求めるのか。財政投融資のあり方をも含めて、政治全体としての考え方が今後これは問われていく問題であろうと思いますが、厚生大臣はやはり自主運用を何としても望む、こういうお気持ちですか。
  264. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 第九十六回国会衆議院における附帯決議でも「積立金の管理運用については、極力、有利運用を図るとともに、民主的な運用に努めること。また、被保険者に対する福祉還元についても、なお一層努力すること」という御決議もちょうだいいたしております。私もそれぞれの方からいろいろの御議論もちょうだいいたしておりますので、まず意向反映、これはやはり積立金をしておる人たちの意向を反映するように、これから審議会の人選等とりあえずできることから考えていかなければならないと思います。また、有利運用の面についても、これから大蔵省に負けないようにひとつ一生懸命勉強して努力してまいりたいと思います。
  265. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 もう時間がありませんので、最後に医療保険制度の改正についてお尋ねいたしますが、今回の医療保険制度改革案の中で特に私が関心を持っておるのは、健保と国保との立場の相違で意見が大きく分かれているというのが一つありますが、退職者医療制度の創設をめぐってのこうした問題が起こってくるわけなんですが、ここのところをどのようにお考えですか。退職者医療制度を創設するということが、いわゆる今申しました健保と国保との立場の相違から意見が対立する、こういう問題がなぜ出るわけですか。
  266. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは今、被用者保険皆さん方が退職されて、経過措置はありますけれども、国保に入っていかれる。そうすると、そのころがちょうど病気にかかることが多いわけですから、国保の負担を非常に大きくしておった。今回は被保険者の負担によって保険の退職者医療を創設してやることでありますから、ただ、これは全国的なものですから、窓口は当然国保の窓口を借りて給付なりあるいは保険料なりやらなければならないわけでありますから、窓口は国保を借りますけれども、あくまでもこれは被用者保険に位置づけて進んでおりますので、今これが対立して混乱を起こすというような心配はいたしておりません。
  267. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私が特に申し上げたいのは、この退職者医療制度の創設の趣旨については、結論からいえばこれは私もよく理解できるところでありますけれども、今回のこの改革案の中では、国保についての将来展望がほとんど明かされていないんじゃないか、そういう気がしてならないんです。  例えば、被用者保険のOBの人たちをこの退職者医療制度の創設によって拾い上げても、このOBの人たちはやがて七十歳になる。そうすると、今度は老人保険制度医療受給者に移行しますので、この場合再び国保の医療費負担に戻るということになってきますね。こういうようなことから、国保制度から高齢化問題は依然として離れないわけでして、したがってこの改革後においても国保財政は全く余裕の見通しは立てられないのではないか、こういう懸念がいたしますが、いかがですか。
  268. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 確かに先生のおっしゃるような御疑念というのもあると思います。ただ、私どもは、人生八十年型の社会に対応するために、七十歳以上については老人保健法を昨年につくっていただいた。そして今や定年退職から七十歳のところまでの医療保障というのをどうするかというのが現実的な問題ではないか。そこで私どもは、将来、先生がおっしゃられるように例えば年齢を下げていけば老人保健法で解決するではないかと、こういうようなお考えもあると思いますが、私どもは中期的に、少なくとも国保とそれから被用者保険における負担の公平というような観点から、定年退職から七十歳までの間については、ひとつ退職者医療制度を創設して負担の公平と給付の公平を図りたい、こういう趣旨でつくったものでございます。
  269. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で中野君の質疑は終了いたしました。(拍手)
  270. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、山中郁子君の質疑を行います。山中君。
  271. 山中郁子

    山中郁子君 本日、男女雇用平等法に関して、婦人少年問題審議会の建議が出るということになっておりますけれども、私は中心的にこの問題についてお伺いをいたします。  雇用における男女平等の実現、そしてそのための実効ある雇用平等法の制定はすべての働く婦人が願ってきたことであります。それは、まず第一に、日本の現状に照らしていかに大きな男女差別があるかということを考えればわかることなのですが、象徴的なことを幾つか申し上げますと、例えば労働省の「女子労働者の雇用管理に関する調査」、これによっても明らかになっているんですが、初任給は、高卒で女は男の六三・六%、大率では六五・六%。賃金問題に関して申し上げるならば、先ほどからも議論になっておりますように、先日のILOの調査に基づいて、日本の各紙も、例えば「賃金格差 日本だけが拡大」あるいは「男女の賃金差 日本は世界一」、このような見出しをもって報道しているところでもあります。また、役職への昇進の問題について言えば、先ほど申し上げました労働省の調査によりますと、女子には役職への昇進の機会がないとするものが四五・一%、そしてまた、あるとするものは五四・九%ではありますが、この中でも係長までしか認めていないというのが三五・六%、課長までというのが二四・八%、そういう昇進においても大きな差別があるのが現状です。また、退職定年制の問題について申し上げるならば、労働省の五十八年版の「婦人労働の実情」の資料によりましても、ごく最近の十三件、すべて裁判闘争で差別を提訴した婦人労働者の側が勝利をしております。  こういう事態について考えるならば、平等ということに関して、婦人をめぐる労働環境、労働条件改善しなければならないことは当然のことであり、婦人労働者が実効ある雇用平等法の制定を願っているのも、これまた当然のことであると私はもちろん思っておりますけれども、この点についての労働大臣の御所見をまず初めにお伺いいたします。端的にお答えいただいて結構です。
  272. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) それはあなたのおっしゃるように、日本の産業、雇用形態が男性中心主義であったというようなこともございまして、確かに男女異なる取り扱いを受けてきたということも事実だろうと思っております。それをこれから私どもが時代に応じて、ひとつ女性の能力がここまで伸びてきた、進出の意欲もあるということでありまするから、これを有効に社会にやっぱり導き入れて、女性のためにも、またひいては社会のためにもなることでありまするから、男女の雇用をできるだけ機会均等にし、そして待遇を平等にしたい、こう思っております。
  273. 山中郁子

    山中郁子君 ところで、本日出される建議ですけれども、今までの経過を見ますと、労使の意見の対立があっていろいろと長引いてきている。先ほど労働大臣も、大変長い間勉強していただきましたと、こういうお話でございました。つまり、平等の対象をどうするのか、罰則をつけることの可否、あるいは禁止の規定、そのあり方、また特に労基法関係では、時間外、休日労働、深夜労働の規制緩和や撤廃、生理休暇問題など、大事なことが対立のまま労使両論併記あるいは三論併記も含めて出されるというように伝えられています。今の段階では、この建議を受けて労働省がどういう内容の法制化を進めるかという段取りになってきているわけであると思いますけれども、政府・労働省がこの時点でどういう立場に立つのか、これがまさに問われていることで、大変大事なところだと思います。私は、国連の婦人差別撤廃条約や国際婦人年の理念や精神に照らしても、また初めに挙げまして労働大臣もお認めになりました日本における差別の実態に照らしてみましても、いろいろな困難はありましょうけれども、基本的には婦人労働者自身の要求と期待にこたえるという、そういう基本的姿勢に労働省、政府がしっかりと立っていただくこと、これが何といっても大事なことだと思います。  大臣の御所見と、あわせて、所管の局長でありまして、また日本の政治の上では数少ない政府高宮の一人であります婦人少年局長の御見解をお伺いいたしたいと存じます。
  274. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 審議会でもいろいろな意見が出ております。それから、いろいろな御意見も私は審議会以外からも聞いております。しかし、先ほどから私が申し上げておりまするように、その男女の異なる取り扱いが続いてきたというのは一応の歴史的伝統はあったにしろ、ここで来年の批准というものを一つの契機にしまして、全くそのためだけというわけじゃない、それを契機にいたしまして、そして日本の女子の勤労意欲といいましょうか、それからその能力の向上、意欲の充実というようなものを、やっぱりこの際今までの差別を外して、そして社会に有効にひとつ働いてもらうようにすることが非常に大切なことであり、歴史的な私はこれは大きな仕事である、こう思っておるような次第でございます。  細かいことは、局長がいろいろと段取りを御説明いたします。
  275. 山中郁子

    山中郁子君 局長の御答弁の前に、私はここに絞って局長のお考えというか決意のほどを伺いたいということなんです。それは、細かい段取りやなんかは限られた時間ですから結構です。要するに、先ほども申し上げましたけれども、婦少審の建議の中身は肝心な大事なところでさまざまな対立があって両論併記あるいは三論併記になる。その場合に、法律をつくる労働省の姿勢として、本当に働く婦人婦人労働者の立場に基本的に立ってくれ、そのために努力をしてくれ、そういうことは当然のことであるし、そのように多くの人が期待している。このことをお伺いしておりますので、どうぞその点だけで結構ですので、御決意のほどを伺わせていただきたいと存じます。
  276. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 今この時間に、既に審議会が多分もう終わっているのではないかというふうに存じます。最後まで聞いておれませんので大変遺憾でございましたが、多分まとまっている時間ではないかというふうに思うわけでございまして、その場合の内容は、先生の御指摘のように、今までの状態から推しますと、多分コンセンサスで審議会の建議がいただけるということではなくて、労働側の御意見も使用者側の御意見も両方が並べて書かれた部分が多分出てくるのではないかというふうに私も予想しております。  そこで、その場合に、労働省といたしましては一本にまとまった御見解がいただければ大変やりやすかったわけでございますが、そうまいらないということであれば、きょうの建議の内容をよく読ませていただくのは当然でございますが、これまでの審議会、長くやっていただいたわけでございますから、その中でそれぞれがるるお述べになった見解があるわけでございます。それは記録にもとどめ、私も実際に伺って十分承知しているつもりでございます。また、全国から寄せられておりますさまざまな御意見、御要望あるいは陳情その他も何回か伺ってよく理解をいたしているつもりでございます。これまでの審議経過、それらの御要望等をよくかみしめて今後の法案の作業に臨みたいと、このように考えております。
  277. 山中郁子

    山中郁子君 大事なところだと思います。私は、具体的にひとつ労働時間の問題から、今審議会の中で対立しているままに建議が出される内容について質問したいと思います。  先ほどの質問の中にもあったことなんですが、日本は六十五年前の一九一九年のILOの一号条約、つまり八時間労働制の問題ですね。これについてまだ批准していないわけですね。これは労働大臣も御承知のように、時間外労働が三六協定、労使協議にゆだねられているということであるということは先ほどもお話がありました。それで、一方では、政府は六十年度を目標に、六十年度までに先進欧米諸国並みの労働時間水準、つまり年間総労働時間を二千時間を切る、こういうことで、その基本は閣議でも決定されるという計画をお持ちになっていらっしゃる。しかし、現状から見てその達成は大変悲観的だというのが先ほどの御答弁のニュアンスからもうかがえますし、事実としても私はそうだと思います。つまり、労働省の事務当局の資料をいただいたものによりましても、労働時間の推計は、一九八二年で日本が二千百三十六時間、これに対してアメリカ千八百五十一時間、西ドイツ千六百八十二時間、イギリス千八百八十八時間、フランス一千七百七時間、こういう状況です。この背景になっております週休二日制、日本が二五%しか実現されていないのに対して、これらの欧米先進諸国はもうほとんど一〇〇%実現している、こういう実態です。  こういう事態のもとで、労働大臣、もしこの建議の中で出されている女子の時間外規制あるいは休日労働の規制、これらが緩和される、そういう方向に進むならば、今の日本の労働時間というものは、現行の労働基準法下、つまり女子の残業や休日労働に対する規制があったもとで出ている労働時間です。ですから、これがもしこういう事態のもとでこのような中身を含めて労基法の改悪が行われるということになれば、必然的に総労働時間は長くならざるを得ない、これは事実だと思うんです。これはまさに政府も国会そして国民に約束をされている六十年度までに二千時間を切ろうという、そういう目標をみすみす一層困難にしていくというそういう新たな要素をつくっていくことになる。その点についてはいかがお考えでしょうか。
  278. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) おっしゃるとおり、来年までに二千時間を切ろうという努力目標でありまするが、今、委員おっしゃるように、今の現状を見ると非常に厳しい状況にあるということはこれは事実であろうと思います。ですから、私どもも週休二日制だとか、それから年次有給休暇をとるように勧めるとかというような努力は従前にも増して一生懸命やっていかなければならぬ、こう思っております。これは男も女もないわけでありまして、全体的な姿勢ということになってまいるわけであります。男女雇用平等法が実現いたしましても、男女ともに労働時間を有効に使って、そして生産性を上げてもらって、そしてなるべくやはり労働時間を欧米並みに短縮していこうというこの努力は、男女ともあるいは男女平等法ができてからもこれは同じ基本姿勢だと思っております。  そこで、平等法の女子の保護基準というものを緩和すれば困るのではないかとおっしゃられますけれども、先ほど申したように、その点はもう男女を問わず、雇用平等法が通ってからでも短縮努力をするということでございまして、しかしそうかといって男女雇用平等法の法といたしましては、やはり女子に今までどおりいろいろな基準を保護的に残しておきますると、かえってそれは女性の社会的な進出というものを妨げる要因になるのではないか、女性の進出の門を狭めるのではないかという有力な意見もございます。要は、女性の皆さんの意欲を生かして活力を社会に入れて、女性のためはもちろんのこと、社会のためにもと願ってはおりまするけれども、やはり女性が余り男子と違った、男子から見れば特別の保護を受けておるということは、女性自身にとって門戸を狭めるという有力ないわゆるキャリアウーマンの方々の御意見もあるということも承知をいたしております。
  279. 山中郁子

    山中郁子君 ちょっと私の質問に的確なお答えではないのですが、母性保護が平等の前提であるというのは私どもの一貫する主張でありまして、日本共産党だけではなくて、有力な学者あるいは婦人労働者の多くの人々が主張しているところであるということを申し上げておきます。  そのことに深入りする時間的余裕がございませんので、次の問題に移りますが、今、大臣自身も、日本の労働者の長時間労働、男子も含めて、その問題をなかなか解決できないでいる、そういう状況で六十年度の二千時間を切るという目標もなかなか達成しがたい、自信が持てないと、こういう状況のもとで女子の規制を取っ払うことは逆に長時間労働に拍車をかけることになる、これが私が申し上げたことであります。  それで、単に長時間労働だけじゃなくて、私がもう一つ言いたいのは、まさに労働省が今まで長い間の研究とおっしゃったけれども、その中の一つ、これは労働大臣の私的諮問機関であります労働基準法研究会第二小委員会の専門委員報告でございますけれども、この中で、医学的に見て長時間労働が女子の健康その他について大きな障害を与えるということをたくさん述べています。たくさん引用できませんけれども、例えば、「長時間勤務による生体負担等における女子の特徴」として、「過長労働時間に伴う生体負担の過重は特に女子において労働力の損耗をはなはだしくし、疾病に対する抵抗力を減弱せしめるとみられる。」、あるいはこれはバスの車掌さんの例を挙げているんですが、バス乗務における男女車掌の勤務に伴う生理心理機能の推移を比較してみた結果では、「女子車掌において、運転手や男子車掌に比べて勤務後半、特に十七時以降の機能低下傾向が急速であった。」、こういうことも明確に述べられています。それからまた生活時間との関係でも、「残業が生活時間に与える影響は男子より女子、とりわけ既婚女子に著しく、その影響が無視できないことが確認された。」という記述もございます。あるいは「長時間労働のもとで女子、特に既婚女子の生理的再生産が最も阻害されやすいことがあらためて指摘されなければならない。」、このような記述もございます。もっとたくさんいろいろありますけれども、例えばこういうことが労働省が研究をしてもらった専門家の有力な意見として既にもう出されているんです。ですから、生体的に見ても、また生活上あるいは生理的再生産の上でも、特に女子の場合には長時間労働が好ましくないことは明らかになっていると私は思います。  研究報告にも逆行する規制緩和、これは婦人労働者の健康を守る上で当然の保護として継続しなければならないはずのものであると考えておりますけれども、この点については、審議会の内容を伝えられるところによって把握いたしますと、使用者側は規制撤廃、公益委員は原則として撤廃、一部緩和して継続、労働者側は基本的には規制継続と、このような意見に分かれているということでありますが、この点については、婦人労働者の健康を守る上でどうしても保護を継続すべきであると思うことについて局長の御意見をお伺いいたします。簡潔で結構でございます。
  280. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先生の御指摘の研究会の報告は十分承知いたしております。その中で、長時間労働あるいは深夜業はその弊害が女子に多くあらわれるということも指摘されておりますが、その原因は、男性と女性の性の差に起因するのか、もっと別の原因であるのかというのは必ずしも明らかでございませんが、女子が現実に背負っている家事労働あるいは育児というようないわゆる家庭責任を負っているということから、長時間労働をし、あるいは深夜労働をしたことの負担が回復しないままに次の労働時間に入らなければならないというようなことも原因になっているのではないか、このような指摘があったように存じております。そこで、現在出されております公益委員のたたき台の中で、公益委員考えは、やはりこのような女性が現実に背負っている家庭責任等の負担というものも考慮をして、工業的業種等については、現在ある規制を存続すべきであるというふうに言われているというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  281. 山中郁子

    山中郁子君 私は、局長のお考えをお伺いしたわけでありますけれども、やむを得ません、重ねて、婦人労働者の健康を守るという観点からも専門家の意見として出されていることについて、これに照らしてきっぱりしたその姿勢に立っていただきたいということを申し上げておきます。  もう一つ、深夜業の問題があるんですね。これも現在の基準法上の原則的禁止から撤廃の方向に変えられようとするというそういう危険があります。公益委員のたたき台として出されたものでも、原則廃止の方向が示されています。  そこでお伺いするんですが、これも専門家会議の報告では、男女ともにもともと深夜労働は好ましいものではないと言われておりますし、生体リズムが逆になっているから、常識的に考えてもいいはずがないわけです。私どもは、長時間労働も含めてですけれども、残業規制も男も含めて強化すべきであり、それからまた、深夜労働は公益性の強い職種に厳しく限定するべきだという考え方を持っております。いずれにいたしましても、今回のこの建議の中で、今後労働省が法案作成をする上で重要な問題がまだほかにもたくさんございますけれども、今までの女性に対する保護規定、つまり残業規制、休日労働、深夜業の規制、禁止、こうしたものについて緩和ないしは撤廃という特に強い財界の意向でありますから、そうしたことにくみすることなく、本当に婦人労働者の立場に立って慎重に対処していくというお約束を、ぜひともこれは労働大臣からいただきたいと存じますが、いかがでございましょうか。
  282. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 婦人の基準法的な保護というのは、もちろん母性保護はこれはちゃんと残すということはもう皆さんコンセンサスができておりますが、ほかの深夜業とか時間外とかというようなことにつきましては意見の相違があることも承知をいたしております。それは経済界は撤廃をしるというのが原則だということも聞いておりますが、女性の中でも、いわゆる先ほど申しましたキャリアウーマンというような方々は、できるだけ撤廃をした方が幅広く活躍しやすい……
  283. 山中郁子

    山中郁子君 同じことはいいですから、時間がないから、私の聞いていることに答えてください。
  284. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) それから、あなたのおっしゃるように、工業的職種にあるような、今まで保護を受けてきたような方々は残してくれという意見もまたございます。ですから、ここは私どももこれから審議会の意見をよく聞いて判断をいたしまするが、先ほど局長も申し上げましたように、女性はやっぱり肉体的に男性よりはそれは劣る面もありましょう。しかし、またうまい方向に向かえば、男性よりは持久力のある点もありましょう。いろいろきめ細かくその辺は配慮をいたしまして、女性の特性と能力を生かしたような法案づくりをやっていきたいと思っております。
  285. 山中郁子

    山中郁子君 ちょっと間違えないでいただきたいのですが、私は深夜業については、ごく公益的なそういうことでやむを得ないものに厳しく絞るべきであるということを申し上げています。  それから休日労働あるいは時間外労働の規制の緩和、そうしたものには反対であると。なぜならば、長時間労働に拍車をかけるということもさることながら、労働省が委嘱をして専門家が研究したこの研究の中でも、赤松局長もお認めになったように、それが女性の体にあるいは生活に対して非常に大きな害を与えるものだということが明らかになっているんですから、そういう方向で女子保護を見直すというようなことは絶対にするべきではないというのが私の意見でありますので、お間違えのないようにしていただきたいと思います。  そこで厚生大臣、お聞きになっていらしたと思いますが、医療費の増大を理由にして、健保の本人二割負担が出ています。これに対しても国民のいろいろな声が出てますけれども、問題は健康を守るということでしょう、病気にならないということでしょう。だけれども、この建議に基づいて、いわゆる雇用平等法に名をかりて女性の健康を損なうような、そうした法律が出されるということが考えられているという今の状態に照らして、厚生大臣としての御所見を伺います。時間が追っておりますので、簡単で結構ですけれども
  286. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 厚生大臣としては、国民の健康を守る、もとよりこれ女性の健康を守ること、大変大事に思っておりますから、今回の法改正で女性の健康が悪くなるようなことは困りますけれども、これは労働大臣が十分にそのような心配のないように配慮してくださっておるものと考えております。
  287. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 山中君、時間が参りました。
  288. 山中郁子

    山中郁子君 心配があるので私が何回も申し上げてきたところであります。重ねて強く、真に婦人の要求に基づいて、差別撤廃条約の理念に照らして、その姿勢を堅持して法制定に当たられるよう要求をいたしまして質問を終わります。
  289. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で山中君の質疑は終了いたしました。(拍手)
  290. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、三治重信君の質疑を行います。三治君。
  291. 三治重信

    三治重信君 まず、厚生大臣にお伺いしますが、報徳会宇都宮病院の事件でございますが、これにはいろいろの問題が含まれているようなんですが、何といってもこの問題で一番出てきた中心点は、患者と外部との交渉が全然途絶えている、そのために事件が起きてからしかわからぬ、この事件を未然に防ぐためには、患者と外部の第三者なり親戚なり保護者なりというものと連絡が若干でもついておれば、そういうことが起こらなかったのじゃないかということが考えられるわけなんですが、そういう問題について、精神病院についての法の義務づけというようなものが考えられないのかどうか。
  292. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今、今回の事案について御指摘のような問題点、これから究明していかなければならないと思うのですが、精神病院において適正な医療が確保されるとともに、患者の人権が保障されるよう、患者の適正な取り扱いに関する指導の徹底等の処置をまず講じてまいりたい。第二番目に、精神衛生鑑定医による実地審査の励行をしたい、第三番目に、医療法に基づく医療監視の強化をこれからも進めていきたい、こういうことを今のところ考えております。
  293. 三治重信

    三治重信君 また、これは何といいますか、三月二十二日の毎日新聞の報道でAさんということになっているんですが、警視庁の目黒署に逮捕監禁罪で告訴しているということが入っているんですけれども、そうしてその理由は、兄弟が医師と共謀して強制入院させられたということが載っているわけなんですが、こういうことは厚生省として事前に警察当局からも連絡があったことなんですか、どうですか。
  294. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) お答え申し上げます。  事前にはそのようなことを伺っておりません。
  295. 三治重信

    三治重信君 事件が大きくなってくると、こうやって問題になるわけなんですが、これはどうも患者からこういうような刑事事件を起こすようなこと等もこれあり、この問題は一方弁護士さんの方からは人権擁護の問題でこれを契機に大きな問題にされる可能性もあるようなんですが、実情はやはり精神病院という特殊な社会といいますか、また家庭と特殊な関係があって、なかなか難しい問題だと思うんですけれども、そういう問題についての政府の機関同士の緊密な連絡というものが何かとれるような方策をやってもらいたいと思うんですが、これは要望だけですから、それ一つ。これは事前に、余り大きな問題にならぬで処理をできるような工夫があってしかるべきではないか。これは何といいますか、社会が進歩して家庭のトラブルからくるのがひとつ大きな子供の親に対する暴力事件、それから精神病患者というような問題だろうと思うんですが、そういうことについて、関係機関とも連絡がつけられるような方策をひとつ考えてやっていただきたいと思います。  それから次に、母子保健法の改正について渡部厚生大臣は三月九日の衆議院予算委員会で、六十年度をめどに改正をしたいと、こういうようなことが言われておるわけなんですが、これは非常に奇妙な法律で、健康診断なんかでも、乳児と一・五歳の子と三歳と検査をやる機関が違っているような規定になっておったり、何か時代おくれのような格好になっているわけなんですが、そして今度の改正の場合には乳幼児の健診の実施主体を市町村にする、こういうふうなことで実現をしたいということなんですが、それが本当にそうなのか。  それからもう一つは、やはりこういう健康診断や何かというものが、健保の対象にならぬかという問題が一つあるわけなんですが、その点の二つについて御答弁願いたいと思います。
  296. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 出産に関する給付については、現在、健康保険法等による分娩費等の支給、低所得者対策として生活保護法による出産扶助、児童福祉法による助産施設への入所の処置が行われております。出産を現物給付することについては、出産を病気と同じように取り扱うことについて国民の間になおコンセンサスが得られてないこと、また料金には地域や施設によってかなりの格差があり、これを画一化することは難しいことなどから種々の問題があり、現在のところ出産を現物給付する考えは持っておりません。したがって出産給付の問題を母子保健法の中で取り入れることは残念ながら今は考えておらないのでございます。
  297. 三治重信

    三治重信君 次に年金の問題なんですが、政府の改正案では、老齢年金の改正で定額単価や及び乗率に関する経過措置について五十九歳未満となっているんですけれども、実際は定年は五十五歳と五十九歳の間で、まだ非常に五十五歳の人も多いわけなので、五十九歳からというのじゃなくて、五十五歳未満というふうなことにできぬか、こういうことなんですが、いかがでございますか。
  298. 古賀章介

    政府委員古賀章介君) 今回の改正の主要な眼目といいますのは、将来に向かって給付水準の抑制を図りまして給付負担のバランスのとれた安定した制度とすることでございます。具体的には先生御承知のように、標準的な受給者の給付水準が既に現役サラリーマンの報酬の六八%に達しておりますので、これを将来にわたって横ばいに維持していくということにいたしておるわけでございます。このため既に年金を受給している方々の給付水準は維持することといたしておりますが、施行日において五十九歳未満の方から年齢別に単価、乗率を変更することによりましてこれを達成しようとするものでございます。仮に今、先と言われましたように、この経過措置を五歳ずらすということになりますれば、その間に平均的な加入期間も延びるわけでありますので、年金額も着実に高くなりまして、現役サラリーマンの報酬の七二%になるということでございます。そうなりますと、私どもが意図しております横ばいで維持するということが困難になりまして将来に向けて給付水準を下げざるを得なくなるということになりますので、適正化対策は極めて困難になるというふうに言わざるを得ないのでございます。私ども給付水準適正化等の改革に今直ちに着手しなければいけないというふうに言っております意味は、こういう点にあることをぜひ御理解をいただきたいというふうに考えます。
  299. 三治重信

    三治重信君 それから年金の積立金の管理運用のことなんですが、拠出者である労働者側の方も年金積立金の運用管理に参加すべきだと、こういうふうな主張を我が党はやっておるんです。それからさらに年金の積立金、将来やっていく運用についてもっと有利運用を図るようにしたいというのが労働側の意向なんですが、これに対して政府の御意向はどういうことですか。
  300. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 結局、御存じのように、国の制度、施策を通じて集められる各種の資金は資金運用部資金として統合して一元的に管理運用されておるわけでございます。臨調答申でも統合運用の現状は維持さるべきであると。しかしながら、これを政府としては最大限尊重するということを明らかにしておりますが、やはり一方、預託者の利益を考慮してできるだけ有利運用にも配慮をしなければならぬ、そうしてそのように今日まで対応してきたわけであります。この問題は確かにいろいろな角度から長い間議論されておる問題でありますが、私どもの方の立場からいえば、やはり財投そのものがもともと預託金利と今度は貸し出しとが一緒で、言ってみれば利ざやのない仕組みでございますから、公共性の面で国民金融公庫とかそういうところへ出せば今度は利子補給が伴ってくるという問題もありますし、財投そのものが持つ第二の予算というような性格からすれば、財政金融各般の問題との整合性が必要ではないか、こういう考え方で毎度議論しながら、そういう方向で今日落ちついておるわけであります。  そこで、この資金運用審議会に社会保険審議会とそれから国民年金審議会の公益委員の学識経験者の方に一名ずつ入っていただく、さらに、これを念を入れるために、そのような議論があったからのことでございますが、年金資金懇談会、これは理財局長の諮問機関でございますけれども、ここへまさに労働団体そのものの代表の方にもお入りいただいて、そういう考え方等を調和しながら、現実的な方向で今日運営してきておるというのが現状でございます。
  301. 三治重信

    三治重信君 次に、医療費の問題なんですが、これは今度の厚生省の健保改正の主な重点の一つ医療費の増高を抑える、これを医師会の方では給付制限につながると言う。厚生省の方の説明を聞くと、一割負担本人でさせるのは専ら保険料の負担が急激に多くならぬようにするための財源措置の問題だ、給付制限の問題とは別問題だと、こう言うのだけれども医師会の方は給付制限、給付制限と、こういうぐあいにわいわい騒ぐわけで、まあ騒ぐと言っちゃ語弊があるけれども、そういう主帳が全然違うわけだ。医師会長などは厚生省の、もう本当にアーと言えばツーと通じなけりゃならぬ団体だと思うんだけれども、これが全然通じないのはどういうわけか。厚生省の方は今度の改正で、いや、医療費の節約というんじゃなくて、医療費負担の急激な増加を避けるために医者にかかる本人負担を若干ふやすだけだと、こういうことなんだが、そこがどうも理解ができないということ、それひとつやってもらいたい。
  302. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、今回の改革案は総合的にこれをお考えいただければ、この患者一部負担というものを取り入れることによって全体的な医療費適正化、さらに節減ということにつながっていきますし、また国民皆さん方の健康の自己管理というものを進めてまいりますから、そのことによって国民全体の医療保険料率を現行制度にとどめるということを大きなねらいにしておるわけでございますけれども、今御心配をいただいた医師会先生方等、これは一割負担ということよりも、このことによって受診率が下がることを御心配されておるのかと、これは想像でございますが。ところが、今まで調べてみますと、これは被用者保険本人の十割の方と、また家族の七割、八割の方と、あるいは国保の七割の方と、それなら国保の人は三割負担だからといって病院に入院しないか、お医者さんに行かないかということにはこれなりませんので、その御心配はない。ただ、むだな医療、そういうものはこれはどんどんなくなっていくと思うのでありますが、この辺のところ、私も厚生省に入って、これは先生おっしゃるように、厚生省国民の健康を守る役所でありますし、そしてその国民の健康を守る第一線で活躍しておるのがお医者さんであり、歯科医師の方なんですから、本当はこれは国民のためにはツーと言えばカーというくらいに通じていかなければならないでしょうが、これは長い歴史があって、なかなか通じておらないところもあるようでありますので、これから一生懸命努力して、通じ合えるように努めてまいりたいと思っています。
  303. 三治重信

    三治重信君 そこなんですよね。今度の改正の主眼は、医療費負担患者個人が個々に持って一般的な保険料の負担をできるだけ急上昇させまいというのが厚生省の説明なんだけれども、我々が医師会に呼ばれて、医師会の各県の大会で説明しているのは、医師会長がこれはもう重大な給付制限のことなんだと、こう言ってばんすこばんすこやっているわけなんですよね。全然もう厚生省の説田と医師会の説明と違うというのは、これはもう医療の初歩ですね、初歩が違うというのは厚生省ちょっとおかしいじゃないかと思うわけなんで、医師会にどういうふうな説明をしているのか。我々にはそういうふうな、患者本人が若干負担することによって保険料一般を上げるのを抑えるんだ、そうすれば診療には、余り医師会には、被保険者内部の費用の負担の分配の問題であって、医師会側の問題にならぬはずだと思うんだが、一番反対しているのはむしろ負担をする労働組合側よりか医師会の方が反対が強い。これをどう考えられておられるのか。
  304. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これはもう私も大変残念なことだと思っておるのでありますけれども、反対する医師会皆さん方の方が間違っているのか、また厚生省の今日までの長い間の医師会に対する説明が足りなかったのか、これはいろいろの議論はあると思いますけれども、私どもこの法案を今提出して御審議をお願いし、これをぜひ通していただきたいということで一生懸命頑張っておるのでありますが、その間、病院の院長さんとか開業医の皆さん方と個々にお話しする場合がございますが、非常に私どもの今度の改革案を評価してくださるお医者さんもございます。また、そうでない方もございます。ですから、私はこれから委員会でこの審議皆さん方から厳しく受けるものと思いますが、その過程の中でやっぱりこの改革案とあわせて、今後の二十一世紀医療制度に対して厚生省はどう考え、どういう努力をするのかというビジョンをこれは明確に打ち出していかなければならないし、またやっぱり戦後三十八年の日本国民の健康を守る上で、とにかく世界じゅうどこに行っておられる方から聞いても、日本ほど安心してお医者さんにかかれるところはない、日本ほど安心して病院にかかれるところはない、また、すぐれた医療技術の発展と、やはり医師会歯科医師会薬剤師会やそういう皆さん方の非常な努力が今日の八十歳の平均寿命を迎えようとするということになっておるのでありますから、この健康を守るために努力をして今日まで国民に貢献をしていただいた医療機関あるいは開業医、病院等を含めて、そういう方の経営の基盤安定ということがやはり患者の幸せ、国民の幸せにつながっていくのでありまして、そういうこともこれから厚生省は一生懸命努力してまいりまして、もっとやはり厚生省医師会歯科医師会というものが温かいおつき合いができるように私はしていきたいなと、今これは努力をしてまいりたいと思います。
  305. 三治重信

    三治重信君 医療費の問題は少し検討しようかと思ったんですが、時間がないからやめて、老人病健康診断のことについてお伺いしますが、今度は特に老人病検査について補助金までつけて奨励をされるのですが、健康診断をやる機関を公立病院だけに限ってやるとかいうようなことや、それからこれが全都市町村が責任者だということになってくると、市町村は健康診断やなんかについて実際本当の担当者というものは特別な市以上しか余りないじゃないかというようなことで、今第一線は混乱しているのじゃないかと思うんです。殊に私は、成人病検査といっても、大きなところの大企業や会社なんかは成人病の検査というものは会社がやれというか、ほうっておくということが一番大きな問題だと思うんですよね。そうすると、基準法によって会社にはずっと入ったときから毎年健康診断をやるように規定されておって、労働省は健康診断機関をほったらかしておるんだけれども、自然発生的に健康診断機関が今できているわけなんだ。それが全然今度はオミットされちゃうことに、市町村が単位になってやるということは、そういうのは全然ないですよね。だから、こういう問題について労働省とよく検討してもらって、これは健康診断だから、エックス線検査とかそういう健診車とか、現地へ行ってやる検査器械なんかも労働省の健康診断の機関は持っているわけですよね。そうすると、市町村がやるというと、今度は公立病院が何といおうと新しくみんな健康診断のためのレントゲン車を買ったり、それからそういうようなために特別に医者もつくらなければならぬというふうな、非常にダブっちゃうというのか、無用な機関をつくらなければならぬと思うのですが、こういうのについて厚生省と労働省の方でひとつ相談したことがあるのか。第一線では本当に、健康診断そのものはずっと長年労働省の各工場や事業場では毎年きちんと定期検査を基準法でやれといって決められているものだから、健康診断車をつくったり健康診断をやる専門の医者も抱えたりしてやっているわけなんだが、今度は市町村でずっと成人病をやれ、補助金はこうやると、割り当ててやるというのは、どうも余り両者一つも連絡がないようなんだが、その点ひとつどういうふうにやってもらうか。
  306. 水田努

    政府委員(水田努君) 老人保健法に基づきますところの健康診査は、職域で健康診断を受けられる方以外の四十歳以上の方を対象としておりまして、先生指摘のとおり市町村が実施主体でやっているわけでございますが、私ども施行に当たりましては局長通達を出しまして、市町村が要員、施設等の面から見てみずからやることが困難な場合、あるいは他に委託した方が効率よくやれるような場合には委託してよろしいということを通知で示しておりまして、委託先としては保健所であるとかあるいは対ガン協会であるというような公益法人であればよろしい、個々の市町村が的確に判断してやりなさいと、こういうことを言っておるわけでございますが、先生の御提言についてはよく今後労働省と詰めまして、そういう既存の権威ある、実績もある団体であれば、積極的にまた市町村が活用できるようにしてまいりたいと思います。
  307. 三治重信

    三治重信君 それで、これは労働省、自然の任意団体だと思うのですが、全国労働衛生団体というのがあるんですから、それをひとつよろしくお願いをいたします。  それで、あと時間がないものだからちょっと男女雇用の平等法のことについて御質問しますが、きょうの質疑だというと、きょうは最終答申で両論併記は大体間違いない、こういうことなんですが、そういうふうになった場合に、労働省は本当に男女雇用平等法を本国会に提出できる、うまいこと料理ができる自信がおありですか。
  308. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 本当に三治さんおっしゃるように、経営者側でも両論もある、あるいは妥協案を入れればまたもっとほかもある。女性の側からいっても、いろいろキャリアウーマンとか、そのほかの工場労働者などの関係も、いろいろ両論もあれば、また妥協案を入れますと三論もある。そういうことで労使関係、大抵の場合、何か右と左という両論あって、そうして役所は足して二で割れば何とかというような簡単なわけにはまいらぬ点も多々ございます。しかし、いろいろ御質問の中にもあらわれておりますように、今がやっぱり男女の機会均等でもって、そうして女性の社会的な進出も、この際は日本の歴史的なチャンスとして女性の活力を社会に導入した方がいいだろう、またいかに今まで男性中心であって、そうして終身雇用体制でやってきた経営者側にとっても、しかしその点に思いをいたせば、ここは日本のよき労使関係の点もありますので、ここらでひとつ大きなトライをやっていいのではなかろうかというような気持ちが私もいたしますので、やっぱり大きな国民的な観点に立ては、日本の文明史的な観点といってもあるいは言い過ぎではないぐらいの大きなことでありまするので、必ずやひとつ、皆様の大方の意見の大体のあるべきところを、これから私ども建議を受けたところで精力的に勉強いたしまして、法案として今国会にも提出をいたしたい、こういう熱意は持っておるわけでございます。よろしくお願いします。
  309. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で三治君の質疑は終了いたしました。(拍手)
  310. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、前島英三郎君の質疑を行います。前島君。
  311. 前島英三郎

    前島英三郎君 大変限られた時間ですから、幾つか質問させていただきますが、時間までおつき合いください。  まず、身体障害者福祉法の改正について伺いたいと思うんですけれども、先月本会議で私も質問さしていただきましたが、今国会改正案を提出すべく今検討中であるということでございますが、その後の検討状況並びに今後の予定などにつきまして、まず厚生大臣にお伺いしたいと思います。
  312. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 身体障害者福祉法の改正については、昭和五十七年三月の身体障害者福祉審議会答申の理念を踏まえ、答申の内容を具体的施策に反映すべく検討してまいりました。  主な改正点は、身体障害者福祉の理念、完全参加と平等に関する規定の整備、あるいは身体障害者の範囲の拡大、それから人工肛門、人工膀胱の造設等々であって、日常生活に著しい制限を受ける者、身体障害者福祉ホームの創設等心身障害者更生援護施設の整備、身体障害者更生相談所の機能の充実、施設事業に関する費用徴収規定の整備等でございます。  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案については、先般本会議で先生に御答弁申し上げましたように、明日三月二十七日閣議決定の上国会に提出する予定でございますので、ぜひこれが通過するようにお願いしたいと存じます。
  313. 前島英三郎

    前島英三郎君 改正につきましてはいろいろな声もございますので、そうした声を踏まえてひとつ改正案をやっていただきたいと思います。  次に、身体障害者雇用促進法についてお尋ねいたしたいと思うのですが、これもさきに本会議で私も質問さしていただきまして、総理並びに労働大臣は、精神薄弱者につきましての雇用率制度の適用を検討すると、大変前向きの御答弁をいただきました。特に、労働大臣は、「潮どきは近づいておる」と、こういうふうにお述べいただいたわけでありまして、私はその姿勢を高く評価するものでございます。また、この問題に関しましては、政府が前向きの姿勢を示されたことで関係者の皆さんにかなり大きな反響を呼んでおりまして、そこで、前向きに検討するといいましても、一体いつごろまでに検討するのであろうかというような声も大変多いわけです。  私が考えますところでは、身体障害者雇用促進法というのは、雇用率、雇用納付金の額について五年ごとに見直すことになっておりますし、次の見直しというものは昭和六十一年と、こういうことになろうかと思うんですが、法の大改正からちょうど十年たちますし、今から大体二年後ということになりますが、この昭和六十一年というのが一つのめどであり、大臣のおっしゃった非常にいい潮どきであるというふうにも私は思うのですけれども、労働大臣としてはこの点いかがお考えになりますか、承っておきたいと思うんです。
  314. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) この精薄者の雇用率制度の創設の問題でございますけれども、これは今年度から、雇用率制度を適用するための前提にいろいろな条件がございますので、その諸条件を研究をし、あるいはまた方法論についてもひとつ検討に着手する、五十九年度から検討に着手をすることにいたしたいと思っております。  なかなか難しい問題がいろいろ方法論なり何なりにあるようでございまして、身障者と全く同様に取り扱うのかとか、また特例措置を講ずることにするのかとか、あるいはまた雇用率制度を全部の身障者に適用するということは果たしてできるのかどうか、できないとすればその適用できる範囲の問題だとか、あるいはまた手帳を持っている人だけでいいのかとか、いやしかし、プライバシーの問題をどうするんだとかいろいろございまして、精薄者の雇用、失業の実態を把握するときに求職希望者の本当の姿はどうあるべきかだとか、何か大変いろいろございまして、事業主の雇用率適用に対する今反応だとか、これは随分勉強することもたくさんあろうと思いますが、しかしとにかく今年度からいろいろな問題について前向きに積極的にトライをしていきたいと、こういうことであります。
  315. 前島英三郎

    前島英三郎君 まあ心に障害がある、体に障害がある。障害があるという接点では、これは別にためらうことも、もどかしさも私はないと思うんです。そういう意味ではやり方次第でありまして、やるかやらぬかという気概次第ではこうした問題は簡単に解決するのではないかというふうにも私思いますので、若干今の答弁では、本会議の答弁とやや潮どきの言葉が後退ぎみでございますから非常に心配でございますが、前向きという言葉もおっしゃっておりますから、ぜひひとつ六十一年、十年後の大改正をめどとしまして御努力をいただきたいと思うんです。  そういう意味では、労働省にこれからお願いしたいことは、いわゆる精神障害者の雇用についての問題でもございます。当委員会におきまして、先ほどから宇都宮市の精神病院における大変ショッキングな、あってはならない事態が明らかにされておりまして、私も大変強い衝撃を受けたんですけれども、しかしここで考えておかなければならないことは、我が国の精神障害者対策が病院に収容することに力点が置かれておりまして、社会復帰のための対策というのが非常に立ちおくれているというのが問題であろうと思うんです。これは障害者問題にも相通ずるものがあるのですけれども、非常に収容主義であるという観点から見ますと、どうしても収容する側、される側という間の大きな溝というものがいろんなトラブルを生ずるように思うんです。こうした問題点が、私はこの宇都宮病院の中にも遠因としてあるのではないかという気さえするんですけれども、そこでお尋ねしたいんですが、精神病の回復者の皆さんの社会復帰対策について、労働省もやはり雇用の面から一歩足を踏み出すべき時期がもう来ているのじゃないかということでございます。  ちなみに、本年一月、民間団体の要望に対しまして、労働省は、この点に関してまだ手をつけてないけれども、大切な問題なんで勉強したいというふうなお答えをしたというようなことを伝え聞いているんですが、勉強するのは大変結構でございますけれども、欧米諸国ではかなり以前から実践的に精神障害者の雇用対策というものにもう手を差し伸べております。そういう意味でも、日本ももうそういうときが、これまた潮どきというような感じの中で到来しているのじゃないかと思うんですが、労働大臣の御答弁をいただきたいと思うんですが、いかがお考えでしょうか。
  316. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 精神分裂病であるとか、あるいは躁うつ病であるとか、そういったようないわゆる精神障害があった方たちで、その病状が回復しましたいわゆる精神病寛解者、こういう方につきまして、現在公共職業安定所に求職申し込みがあれば、我々の方としては身体障害者と同様に求職登録制度を活用いたしまして、それぞれの事情に応じました職業相談とか指導もやっております。あるいはまた、心身障害者職業センターというところでそういう能力判定の問題、適職判定の問題等もやっておるわけでございますが、この方たちに対する雇用対策につきましては、身体障害者雇用審議会で五十七年にございました意見書におきましても、現段階ではまだどの程度医学的管理が必要であるかについて必ずしも明確でない、あるいはまた社会生活指導面におきまして特別の配慮が必要とされる、あるいはまたプライバシーの問題があると、こういうようないろんな問題点が指摘をされておるわけでございまして、そういう意味で、この精神障害者の雇用の問題につきましては、こういったような今申し上げましたいろいろな問題につきましての状況の推移を見きわめながら相当慎重にやはり対応について検討をしていくべきものであるというふうな考え方でおるわけでございます。
  317. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう意味では、慎重という言葉になってしまいますと、どうしてもその出口がない。まあ現実、出口がないものですから、何かもう行き当たりの大きな壁の中でのいろんな問題点が浮き彫りになってくるような気がするんです。やっぱり病院も、これ、施設もそうですけれども、やはりそこは一過性のものであって、そこから出てきた人たちを温かく迎える社会体制というものが出てきませんと、いつまでたってもお互いの関係省庁の逃げ合いの中では、現実的に精神障害者を含めても、あるいは精薄者在含めましても、社会の中における完全参加というのは実現できないようなそんな気がしてなりません。  そこで、さてそれでは身体障害者の雇用という状況についてはどうかといいますと、私は、法律はひとり歩きをしておりますが、なかなか実態はそぐわないというふうな感想を持つわけでありますけれども、非常に先ごろ経済のひとつの状況が背景にあるといたしましても障害者の雇用率の伸びが鈍化しているということを私は感じます。労働省としましても、一層努力をしていただきたいと思うのですけれども、また努力をするというふうな気持ちは持っておられるようでありますけれども、かなりその取り組みには甘いところがあるのじゃなかろうかという気がいたします。身体障害者の雇用状況について毎年六月一日現在のデータが発表されておりますけれども、昨年六月一日付のデータによりますと、常用労働者として雇用されている身体障害者の人数は、全体で二千五百人余り増加していることになっておりますけれども、この数字でよろしいわけですね。いかがですか。
  318. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 昨年の五十八年の調査結果では、全体といたしまして前年に対しまして千四百五十九人の増、こういうことでございます。
  319. 前島英三郎

    前島英三郎君 それは重度障害者のダブルカウントも含められているわけですか。
  320. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 重度障害者についてはダブルカウントが認められておりますが、今申し上げました数字はダブルカウントしない実数でございます。
  321. 前島英三郎

    前島英三郎君 そうしますと、つまり人数で言いますと、増加したのは七百七十六人ということになるわけですね、前年比。
  322. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) ダブルカウントいたしておりませんので千四百五十九名と、こういうことでございます。
  323. 前島英三郎

    前島英三郎君 千七百七十五人ですか。
  324. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 千四百五十九でございます。
  325. 前島英三郎

    前島英三郎君 重度でない障害者の数は九百九十九、内訳ですね。約千人減少しているということを私ども調査しているんですけれども、ちょっとこの表、この調査で、これで間違いありませんか。(資料を示す)  つまり、発表される数字はこういう形になって、重度障害者は千四百五十三人、そして中軽度者はそうすると増加は六人ということですね。重度障害者の雇用促進に特に力を入れることと言っているんですけれども、非常に中軽度の障害者の雇用が年間たった六人しか増加していないということは、何かとても納得ができないのですけれども、いかがでございますか。
  326. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) この六名増と申しますのは、雇用率のかかっております企業での増加でございます。法律の適用の関係で出てきております数字でございます。そういう意味では、それでも五十七年には三千百名増加しておるのに対しまして、五十八年、六というのは私どもも大変問題があるという認識をいたしております。こういう雇用率のかかっていない規模六十七人以下のところまで含めました安定所の紹介就職数というものは五十七年で二万八千人という数字でございますが、しかしだんだん身障者が重度化してきておる、あるいはまた高齢化してきておるというような中で、大変その辺の就職が伸び悩んでおるということは事実でございます。
  327. 前島英三郎

    前島英三郎君 今、障害者雇用に対して労働省の関係している方々は何人ぐらい全国でおられますか。
  328. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 特に身体障害者の雇用促進を専門でやっております就職促進指導官というのが約三百五十名ございます。
  329. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう意味では、大変伸びが鈍化をしておるということにおきましては、やはりその三百五十人からの方々がやられるにしては余りにも実績がないと私は指摘せざるを得ないと思うのです。中軽度の障害者について言えば特殊法人、官公庁ともに減少しているんですね。特に著しいのは現業部門の宮公庁でございまして、現業部門の官公庁は法定雇用率一・八%に対して一・九%の雇用率を維持していることにはなっているんですが、雇用率の母数となる常用労働者数が減少しておりますから、それに伴って雇用されている障害者の数も実際は減少しているんだと思うんです。その辺はいかがですか。
  330. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) その辺の比較を直ちに、数字を持っておりませんが、現実問題といたしまして、例えばいわゆる傷痍軍人というような方々が、今ちょうど官公庁でリタイヤをされるような年齢になってきておるというような問題等もございまして、その辺のところの、さらに新規採用でそこを埋め合わせるといいますか、そういう面が必ずしもまだ十分進んでいないという面がございまして、おっしゃるようにそういう障害者の雇用総数というものを官公庁で見た場合には、やや停滞ぎみにあるのではないかと、こんな感じはいたしております。
  331. 前島英三郎

    前島英三郎君 中軽度の障害者の減少率が、つまり常用労働者数の減少率を現実には上回っているという事実もございます。それでも雇用率が維持されているというのはダブルカウントされている重度障害者の数が小さな減少率にとどまっているためだと私は思うのです。こうした実態をやっぱり見過ごしてはならないような気がいたします。雇用率の伸びは鈍化しているという全体の傾向の裏に、やっぱり中軽度の障害者の雇用の危機と言ってもいいような実態が隠されているんじゃないかと思うのですけれども、しかも中軽度の障害者とは身体障害者福祉法で言う中軽度でございまして、これは必ずしも労働における中軽度ではないと思うのです。かなり労働という立場の中においては重度な人たちも相当数含まれているんじゃないかという気がするのです。  そういう意味でも、重度障害者に重点を置いてきめ細かにやるということを労働省おっしゃっているわけでありますけれども、やはり中軽度の障害者の雇用対策というものもこれからやっぱりしっかり取り組みをしていただきませんと、年間のベースにいたしましても、この発表された一つの数字のデータも、これもやっぱりダブルカウントの数字もかなり加味されている部分というものもありますから、現実には数字の上では伸びていますけれども、実数の障害者の雇用の数というものは非常に減少傾向にあるといっても過言ではないと思うんです。そういう意味でもこれからの取り組み、労働大臣のひとつのリーダーシップによって、こういう経済情勢であればあるほど障害を持つ人々が真っ先に解雇されているというようなケースもありますし、そういう意味ではぜひとも取り組みに真剣さを増してもらいたい、このように思うんですが、大臣いかがでございますか。
  332. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) おっしゃるお気持ちはよくわかります。それでひとつ労働省としましては、ことしから雇い入れ計画作成命令を従来雇用率〇・五%未満ということにいたしておりましたが、ことしからひとつそれを読めまして〇・七五%未満のところについても命令制度を適用すると言って事業主に対してひとつ雇い入れ指導を強化するということにいたしたい。そこで、雇い入れの入り口の方をこれで督励強化をいたしましても、就職をした人が職場に定着をしなければこれまた困るわけでありまするので、今度は、今まで雇い入れのところに重点を置いておったかもしれませんけれども、定着指導の方にも事業主に対して積極的にひとつ指導を強化したい。これをことしから特に頑張っていきたいと思っております。
  333. 前島英三郎

    前島英三郎君 まさしく、やはり長期的に雇用の場で働いてもらうような環境づくり、また行政指導が必要だと思うのです。単に就職をした、雇用されただけの数字で、雇用された一年後には解雇されているというようなケースも間々ございますから、やはり長期的な調査、それから特例が必要だというふうにも思います。  そこで、ILO百五十九号条約で、昨年六月第六十九回総会において百五十九号条約、すなわち職業リハビリテーション及び障害者の雇用に関する条約を採択いたしたのを御存じだと思うのですけれども、この条約は大変画期的な内容を含むものでありますので、我が国としても早期に批准すべきものだと考えるのですが、この条約に対する労働大臣の早期批准についての見解もひとつこの際ですから伺っておきたいと思うんです。
  334. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 昨年の六月のILO総会で、おっしゃいますような職業リハビリテーション及び雇用に関する条約が採択をされたわけでございますが、この条約につきましては、すべての種類の障害者の雇用機会及び待遇の均等を確保する、そして障害者の地域社会への参加を促進することを目的とするという内容のものでございまして、わが国におきましても今後の障害者対策推進の上で貴重な指針になるものと考えておるわけでございます。この条約の内容につきましては、おおむね我が国におきましても実施をされていると考えられますが、ただ、その批准という点に関しますと、細部にわたりさらに慎重に検討を行わなければならぬ問題もございますので、今後その辺あたりの検討を進めてまいりたいと、こう考えておるわけでございます。
  335. 前島英三郎

    前島英三郎君 ぜひいい方向へ検討してください、お願いをいたします。  最後になりますが、重症心身障害児対策についてちょっと厚生大臣にお伺いしておきますけれども、昨年この委員会で島田療育園の問題を指摘したのですが、実は本年、不二愛育園という小さな重障児施設が廃園という形になりまして大変いろいろな問題が起きております。重症心身障害児を人として私たちの社会が真剣に考える時代はまだなのかというふうな気持ちを持ちまして非常に残念なんです。そこで、昨年来のこの重症心身障害児の対策、それからひとつの施設のあり方について厚生省はどのように検討をされ、改善策を実施したのか、あわせて伺いたいと思います。
  336. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 不二愛育園の問題につきましては、前島先生にもいろいろ御心配をいただいたわけでございますけれども、廃園のやむなきに至った。そこに入っておられた子供さんにつきましては、ちゃんとした正規の施設にお移しすることができたわけでございます。  今お尋ねの島田療育園の運営の問題につきまして、昨年この委員会でいろいろ御指摘、御心配をいただいたわけでございますが、その後の改善の状況について申し上げますと、まず、児童が入園したときの保護者から、解剖承諾書でありますとかあるいは誓約書といったようなものをいただいてとっていたわけでございますけれども、そういったものにつきましては既に五十四年三月から廃止をしておりますし、それ以前に提出されておりましたそういった書類につきましては、五十八年五月に、父母、保護者の代表立ち会いの上で焼却処分にいたしております。それから保証書につきましても、五十八年五月から廃止をしておりますし、それ以後は園の療育方針に従って御協力いただくという趣旨の文書を出していただくことにしております。それから入所見の処遇の改善でございますけれども、島田療育園について申し上げますと、五十八年度におきまして理学療法士等のリハビリ関係部門の職員を大幅に増員をいたしまして、入所者の方の個々のニーズに適応した訓練なり療育指導が行えるようにいたしたわけでございます。それから、建物が非常に古くなって、もう二十年以上経過して古くなっておりますので、建物の建てかえを行いまして、居室でありますとか、あるいはプレールーム等の面積等の改善を図ったわけでございます。  島田療育園に限らず、重症心身障害児の運営の問題、児童の処遇の問題につきましては、例えば年長児の療育のあり方に関する研究、そういった研究もやっておりまして、今後とも十分改善を図っていきたいというふうに思っているわけでございます。
  337. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 時間になりましたので、簡潔に。
  338. 前島英三郎

    前島英三郎君 最後に申し上げたいのは、不二愛育園というのは東京都の委託事業でやっていたんですが、国は都の問題だから関知しないと言ってしまえばそれまでですけれども、こうした本当に家庭からスープの冷めない距離のところにあった小さな施設が、やっぱり二十人という規模がゆえに国の補助も受けられない。そして篤志家が一生懸命育てたけれども、やはり働く人たちとまた経営者とのいろいろなトラブルの中で、最終的にはそれぞれ島田とか秋津とか大きな施設へみんな送られていくわけですね。これからやっぱり地域の中で障害を持った人たちが生きていこうという、非常に逆行な形なんですよ。  私は、しみじみ言いたいことは、施設は決して理事者のものでもない、そして働いている人たちのものでもない、そこにいる当時者のためのものであるという原則がやはりいろんな施設の中に崩れている現実があるんです。厚生大臣、ぜひその当事者の人たちの幸せのためには国も思い切った施策をこれからやっていくんだとひとつ強い考えで、やはりこういう小さな重度施設をみんなで守っていくような方策を、国も知らぬではなくて、関与していくひとつ強い御意見を最後に伺って、私、質問を終わりたいと思うのですが、まことに時間が超過して申しわけありませんでした。
  339. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 小さな重度障害者の施設、実は私の県にもありまして、私、厚生大臣になって国に帰ったとき一番先に御相談を受けたのでありますけれども、行政というのはやっぱり一つの法律の中であるいは政令の中で生きていきますから、すぐ今国が財政的な支出というのは困難なようでありますが、その他のいろいろ福祉施設のための費用の調達等もありますので、そういう小さな施設というものも、やはりそこに入っておる施設の皆さん方の気持ちを尊重してこれは大事に大事にしていかなければならないと思います。こういう福祉施設が立派に生きるためには、やはりお互いの人間の思いやりと感謝の気持ちと、これが一体になって福祉の花が開くのでありまして、私は先生の意を体して、そういうきめの細かい面にも努力してみたいと思っております。
  340. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で前島君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  341. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、野末陳平君の質疑を行います。野末君。
  342. 野末陳平

    野末陳平君 大蔵大臣、最後になりましたけれども、総理大臣がしばしばこの席で中曽根内閣が続く限りは大型の間接税はやらない、こういう明言をされておるわけでして、国民の中にはこれでほっとした人もまた多かったと思いますし、それはそれでいいことだとは思うんですが、反面、ああいう発言は財政再煙をやりにくくするわけですね。ですから、財政再建のためにはあれはマイナスではなかろうかと、将来のことを考えてやや不安も感じるのですが、大蔵大臣個人としてはどういうふうな受けとめ方をされていますか。
  343. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる税体系の見直しは絶えず勉強していなければならぬと。しかし、中曽根総理がおっしゃったのは、いわゆる各段階に課税していく、言ってみれば、しかもその規模のかなり大きい大型間接税というのはやはり国民理解を得ることが難しいだろう、また国民のコンセンサスがそこにあるということは現在自分としてはそれを洞察できないと、こういう判断であったと思うのであります。したがって、その一つ考え方は念頭に踏まえながら、私どもとしては、一方、税調には検討課題というのはいろいろあるわけでございますから、間接税のみに限らず、そうしたものの中から国民のコンセンサスが得られるものを模索していかなければいかぬだろう、こういう考え方に立っております。
  344. 野末陳平

    野末陳平君 しかし、あれは嫌なことを先送りしていくような発言ともとれるわけでして、次の内閣でやられれば何にもならないとも思いますけれども、それにしてもああいう発言が続くと、この先増税の必要に迫られたときに非常に国民を説得するのは難しくなるわけですね。そういう面も考えなきゃいけないので、まあ行革第一とおっしゃるけれども社会保障費の伸びはこれからどんどん上がっていくわけですから、やはり何らかの手を考えなきゃならない。そのときにやはり増税だなんて言われると国民を裏切ったことになりますからね。増税はできるだけない方がいいものの、そこまで言って今後に禍根を残すのも困ると思ったりしているんですが、私は、もう増税を避ける手段としてあらゆる手を考えるべきだなと、こう考えておりまして、増税ではとても国民理解を得られない。  そこで、提案なんですけれども、これが具体的にできるかどうかむずかしいところもあるでしょうが、やはりこれから社会保障費の伸びというのが一掃問題なわけですね。そこで、これを増税で賄おうとしても、税金は下さい、使い道は大蔵省の方に一任してもらわないとというようなやり方では、もうこれは使われ方が目に見えませんから、国民というのは自分に見える形で還元がはっきりしてこなきゃ今後だめだと思いますね。それにしても、増税はいやだとなれば、増税を避ける手段として、名前は適当じゃないかもしれませんが、福祉国債のようなものも考えられるのじゃないか。これは年金とか医療財源というふうに限るわけですが、この福祉国債が無理がどうかという、それを自分なりに考えているんですが、なかなか結局が出ないんです。当然のことながら利率は二分の一よりも低い利率で、しかもこれは当然非課税にせざるを得ないですが、無記名で申告不要と、こういうような形で、そういう性格を持たして福祉目的の財源をつくるための国債が発行されると仮にしますね、そうしますと、お金持ちとか善意の人がこれを買うということによってある程度のつなぎの財源はできるのではないか。ですから、増税を避けるためにはこんな手も考えておかなきゃだめじゃないかなと、償還の問題ありますけれども。そこで、この福祉国債というような構想については実現性というのは考えられますか。その辺の御意見を。
  345. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) かつて国債政策の中で、例えば防災国債、防災事業だけを対象にする、それで今、野末さんおっしゃったと同じような発想で、無税国債で金利は安くしてという提案が議論されたことがございます。ただ、いかにも今おっしゃいましたとおり、国債というものはやっぱり償還しなければなりません。と同時に、基本的に国債の問題で、いわゆる財政が対応力を持ってそれを発動するための限定的手段としては考えられますが、ある種の恒久的なものになった場合はやはり所得のあるところに、すなわち国債を買う人のみでなく、企業も含めていわば能力のあるところに予算で国債費という金利を払っていくということが厳密の意味における富の再配分という形からするとやっぱり避けて通る課題ではないかなと、私なりにこれは今、福祉国債と名称をおっしゃいましたが、防災国債とかいろんな議論が出たときに考えたことはございますが、私なりに自分の気持ちの中で消化したのは、やはり富の再配分というものに、言ってみれば金持ちに対して、能力のある人に対して国会で議決していただく予算の中に金利というものがあるということに対する富の再配分との矛盾というものをぬぐい去ることができなかったわけであります。
  346. 野末陳平

    野末陳平君 その問題は、福祉国債でなく一般の国債で当然それが一番今後大きな課題になってくるわけですけれども、しかし今の大蔵大臣の御意見で、例えばこういうことも考えられないとすると、やはり行き着くところ増税じゃないかという気もして非常に困るわけですね。せんだってもこの委員会の席上で年金財源を税方式でするかというような議論がありましたけれども、やはりあれなどもいろんな今後の社会保障の伸びを考える場合にはもはや避けて通れない検討課題だと思うんです。  厚生大臣にお伺いしますけれども、やはり社会保障を担当なさる大臣としては、この財源というのが一番問題になってくるわけですが、その場合に、今後行政改革一本で到底財政再建はできると思いませんから、そうなるとやはり増税をしてもらわないとやっていけないんだろうと思いますが、その辺はどうですか。
  347. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私は厚生大臣でありますから、福祉のための安定した財源ができることは望ましいと思っておりますが、税方式をどうするかというようなことは厚生大臣として御遠慮申し上げたいと思います。
  348. 野末陳平

    野末陳平君 それなら、年金財源に限りませんで、要するに福祉を目的とする増税ならば歓迎する、あるいはそれでもやはり増税は困る、どちらなんですか。
  349. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) いや、今私が申し上げたのは、税方式をどうするとか公債をどうするとかいうことは大蔵大臣の所管事項でございますから、厚生大臣の私が増税するとかしないとかいうことをこの委員会で申し上げるのは適当ではないと、こういうことでございます。
  350. 野末陳平

    野末陳平君 増税するしないを聞いたというよりも、歓迎なのではなかろうかと。つまり、財源を考えずにこれからの社会保障政策をいろいろと考えても中途半端になるだろうと思っていたんですがね。  そこで大蔵大臣、いろいろな税金について大蔵省としては勉強するのは当然だとよくおっしゃいますし、僕も当然だと思いますから、これを勉強しない方がおかしいわけですね。そこで、どんな新税あるいは増税を検討なさっているかは別として、この社会保障の特に年金と医療という財源を今後頭に置いた場合に、やはりそういう社会保障の財源としての増税ですね、例えばいわゆる福祉目的税のような言葉を使ったりいろいろあるでしょうが、要するに一般的な増税じゃないという、財源を限定するこの福祉を目的とした増税というものも広い意味で検討課題の中に入らなければうそだと思うんですよ。それは検討していますか。
  351. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはかねてから議論のあるところでございまして、原則的な話をすれば、それこそいわゆる今度の答申いただきましたのにも、特定される公共サービスの受益と負担との間にかなり密接な対応関係が確認される場合には一定の合理性を持ち得るが、一方それが資源の適正な配分をゆがめて財政の硬直化を招く傾向を持つことも確かだ、だから慎重に対処する必要があると指摘されておるわけです。これは目的税あるいは特定財源、こういうことに対してでございますが、しかし私ども、厳しい財政事情のもとで福祉水準を確保するという観点、これは大変なことでございますから、税負担あり方について幅広く検討していくということはこれは十分意義のあることと思っております。そして従来とも、一番強烈なのは、これは野末さんもお聞きになっておりましたいわゆる社会保障制度審議会の五十二年の答申でございますが、まさに、けだしこういう付加価値税の導入なくして基本年金の創設はあり得ないと考えると。この付加価値税はヨーロッパ型付加価値税じゃございませんけれども、そういうことが強烈に指摘されたこともあります。そして一般消費税が議論される際にも、今度は別の角度からいわゆる福祉税と言ったら国民のコンセンサスは得やすいじゃないか、そういう議論もいたしました。しかし、だからといって今すぐ踏み切るだけの準備はいたしておりませんが、この幅広く検討するということは私は極めて意義のあることだというふうに認識をしております。
  352. 野末陳平

    野末陳平君 最後に一問ですが、グリーンカード問題が随分議論になりましたときにアングラマネーなどが出ましたけれども、やはりアングラマネーというのは相当規模あるらしい。しかし、それも一種の必要悪として生きているとなると、これをどうするかということを考えるのも非常に大事な政治課題だと思うんですね。大蔵当局として、このアングラマネーというのはどのくらいあるかは別として、今後もほうっておいていいものか。それともこれを何らかの形で吸い上げて有効に生かせるものなら、そちらを考えるか。アングラマネーに対する対応を最後にお聞きして終わりにします。
  353. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはいろいろなアングラマネーというのは性格はそれぞれ違っておると思うのでございますが、例えばの例でございますが、まあ仮にもしマル優の中に野末登がおったり、竹下陳平がおるかもしれぬ、そういうものがある意味において把握されるということは、それを既に是認するという意味の矛盾と、一方は今おっしゃいました活用するという意味においては一つあり得ることかなと。それに議論を展開していけば、当然いわゆる無税国債論なんというものもいま一つあり方として、活用という面からだけ見れば考え得る一つのことではないかというふうな考え方で、念頭には勉強課題としては存在しております。
  354. 野末陳平

    野末陳平君 終わります。
  355. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で野末君の質疑は終了いたしました。  これをもちまして婦人社会保障に関する集中審議質疑は終了いたしました。  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十一分散会