運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-03-15 第101回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月十五日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月十四日     辞任         補欠選任      野末 陳平君     宇都宮徳馬君  三月十五日     辞任         補欠選任      宇都宮徳馬君     野末 陳平君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 金丸 三郎君                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 志村 哲良君                 杉山 令肇君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 竹内  潔君                 土屋 義彦君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 増岡 康治君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 中野 鉄造君                 和田 教美君                 立木  洋君                 柄谷 道一君                 喜屋武眞榮君                 秦   豊君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  住  栄作君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  森  喜朗君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        農林水産大臣   山村新治郎君        通商産業大臣  小此木彦三郎君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        郵 政 大 臣  奥田 敬和君        労 働 大 臣  坂本三十次君        建 設 大 臣  水野  清君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    田川 誠一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       中西 一郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       後藤田正晴君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官) 稻村佐近四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       岩動 道行君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  上田  稔君         ―――――        会計検査院長   鎌田 英夫君         ―――――    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        内閣総理大臣官        房管理室長    菊池 貞二君        総理府人事局長  藤井 良二君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        行政管理庁長官        官房総務審議官  古橋源六郎君        行政管理庁行政        管理局長     門田 英郎君        行政管理庁行政        監察局長     竹村  晟君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁衛生局長  島田  晋君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁次長  小谷  久君        防衛施設庁労務        部長       大内 雄二君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        経済企画庁総合        計画局長     大竹 宏繁君        科学技術庁計画        局長       赤羽 信久君        国土庁長官官房        会計課長     安達 五郎君        国土庁土地局長  永田 良雄君        国土庁大都市圏        整備局長     杉岡  浩君        法務省刑事局長  筧  榮一君        法務省人権擁護        局長       鈴木  弘君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中南米局        長        堂ノ脇光朗君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        大蔵大臣官房総        務審議官     吉田 正輝君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        国税庁直税部長  渡辺 幸則君        文部大臣官房審        議官       齊藤 尚夫君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省大学局長  宮地 貫一君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生大臣官房審        議官       古賀 章介君        兼内閣審議官        厚生大臣官房審        議官       新田 進治君        厚生省公衆衛生        局長       大池 眞澄君        厚生省医務局長  吉崎 正義君        厚生省薬務局長  正木  馨君        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省保険局長  吉村  仁君        社会保険庁年金        保険部長        兼内閣審議官   朝本 信明君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        運輸省港湾局長  小野寺駿一君        運輸省航空局長  山本  長君        郵政大臣官房長  奥山 雄材君        郵政省電気通信        政策局長     小山 森也君        郵政省電波監理        局長       鴨 光一郎君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        建設大臣官房長  豊蔵  一君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省計画局長  台   健君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君        自治省税務局長  関根 則之君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより峯山昭範君の総括質疑を行います。峯山君。
  3. 峯山昭範

    峯山昭範君 私は、公明党・国民会議代表いたしまして、総理並びに関係大臣に御質問を行います。  さきの総選挙の結果につきましては既に総理も御承知のとおりであります。国民自民党に対しまして大変厳しい審判を下されたわけであります。総理は、この結果を謙虚に受けとめていらっしゃる、そういうふうに何回かお述べになっていらっしゃいますが、私は総理の最近の予算委員会におきますいろんな答弁をお聞きいたしておりまして、総理言葉と具体的な予算案等にあらわれてまいりました行動とは何となく違うような感じがするわけであります。国民審判の厳しかった割には、今年度の予算案国民にとって大変厳しい、庶民にしわ寄せされたような予算になっております。それは総理も御存じのとおり、文教あるいは医療費の切り捨て、あるいは防衛予算の突出、そういうところに歴然とした事実としてあらわれております。  総理は、選挙が終わりまして、選挙反省といたしまして、国民から大変熱いおきゅうを据えられた、大変熱かった、こういうふうにおっしゃっておられますが、どうしてこの熱いおきゅうを据えられたのか、そういう点について今後どういうふうに注意して行政をつかさどっていかれるのか、そういう点について総理の決意のほどを初めにお伺いしたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 去年の選挙では国民皆様方から非常に厳しい御批判をいただきました。まさに非常に熱いおきゅうを据えられたと思います。なぜ据えられたかという点、いろいろ考えてみまして、やはり政治倫理に関する問題が一番大きな問題ではなかったかと反省した次第でございます。それで、政治倫理に関しても、我々は自粛自戒した行動個人としてもあるいは政党としても考えなければならぬというので、諸般のことを行ってきたわけでございます。しかし、内政上のその他の問題等につきましては、教育問題にしても行革にいたしましても、あるいは国際外交にいたしましても、私は自民党の主張を国民皆さんにかなり力強く支持していただいたと思っております。  しかし、一番当面問題は、いかに財政改革を実行して、そして赤字をなくしていくかという努力でございます。百二十兆に近づくような膨大な公債を抱えておることは、結局子孫に大きな借金を残して、子孫のときに非常に大きな苦しみを与えることになります。したがいまして、このような苦境から一日も早く脱却するためには、今我々が汗を流さなければそれができない。ツケを子孫にだんだん流していくというやり方は、今は安易なやり方ですけれども、それは子孫のために今日の者が責任を果たしているゆえんでない。赤字公債をいかに減らしていくかというその努力一つの象徴といたしましても、諸般のいろいろな政策をやって、それが国民皆様方に汗を流していただくという結果にもなってきたのでございます。ただ、その間に公平を心がけてきたつもりでございまして、そういう意味におきまして、長い目で国家財政国家の将来を国民皆さんにお考えいただいて、子供たちのために今汗を流してくださいとお願いを申し上げておるわけなのでございます。
  5. 峯山昭範

    峯山昭範君 結局、熱いおきゅう原因は、今の総理のお言葉をおかりいたしますと、政治倫理だけでありますね。そうしますと、総理、今一番大事なことといたしまして、この政治に対する信頼という問題が非常に私は大事だと思います。議会制民主主義根本の原理にもかかわっていく問題ではないかと思っております。したがいまして、国民から信頼された国会、そして国民国会信頼関係、これが民主政治一つの大きなポイントになるのじゃないか、そういうふうに考えております。そういうふうな意味からいたしまして、総理、これは残念ながら、最近のNHKを初め各マスコミ機関世論調査によりましても、政治に対する不信というのが大変高いわけです。これは私は重大な問題であると思いますし、総理が先ほど後段に申されたいろいろな問題を解決するためにも、私はこの政治不信というのをなくしていかなきゃいけないと思います。その原因がどういう点にあると総理はお考えでございましょうか。
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政治不信という根本は、やはり政治家政党信頼できないという国民の乖離にあると、そう考え反省もしなければならぬと思います。
  7. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理、先ほどの政治倫理の問題につきましても、選挙が終わった後の世論調査によりましても、結局、中曽根さんの政治倫理確立に対するいわゆる熱意、これに対しまして国民総理熱意が感じられないという世論調査が、このNHK調査によりましても具体的に出ております。この世論調査によりますと、政治倫理確立熱意が感じられないというのが全体の四三・三%でありまして、非常に高いパーセントを占めているわけであります。こういう点に対しまして、総理は今後どう努力をしていかれるつもりか、この点もお伺いしておきたいと思います。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) でありますから、いま冒頭に申し上げましたように、政治倫理の点で非常に熱いおきゅうを据えられたと自分は考えていると申し上げたのでございます。それ以来、諸般声明を行い、あるいは政策を展開いたしまして、あるいは資産を公開するとか、あるいは政治倫理協議会議会に設置をお願いするとか、また党におきましてもそのような委員会をつくって、議員個人としていかに立派に行動するか、あるいは政党として政治資金やそのほかをいかに公明、明澄にするか等について今研究もし、また御審議も願っておるところなんでございます。
  9. 峯山昭範

    峯山昭範君 もう一点お伺いしておきたいと思います。  これは、中曽根内閣政治姿勢に対しまして、この世論調査の中にもあらわれておりますが、中曽根内閣憲法防衛問題などに関する右寄りの姿勢というのが大変目立つという、この世論調査の結果が五四・五%もあるわけですね。そういうふうな意味では、やはり私は政治倫理だけではなくて、いわゆる内政外交面につきましても国民は批判的に見ている、そういう結果が選挙が終わってから出ているわけでございまして、この点につきまして、総理、これは反省の必要がどこかあるんじゃないでしょうか。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 去年はそういう数字もかなり高かったように思いますが、だんだんそれが消えてきて、選挙後におきまして多少はまだありますけれども、けさの新聞にある世論調査を見ると、内閣に対する支持率も、自民党に対する支持率も相当高水準にあると。その中身を見ましても、やはり国民皆さんの一番の関心は、物価とか減税とか生活問題が中心である。それから教育行政改革、こういう順になってきているように伺っております。
  11. 峯山昭範

    峯山昭範君 やはり総理憲法防衛に対するそちらの世論調査もありまして、私が今申し上げましたのも、選挙が終わりまして最近の世論調査でございますから、そういうような意味で、そういう点に対する反省はどうかと申し上げているんです。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 憲法につきましては、前から申し上げておりますように、私は、戦後三十八年のこの日本の大きな発展、基本的人権の尊重とか市民社会の岩盤が厳然とできているとか、そういういろんな面については今の憲法の功績が絶大であるということも、はっきり申し上げて、ちゃんと評価もしておるわけでございます。そしてまた、中曽根内閣におきましては憲法問題を政治日程にのせないとも申し上げて、この面に対するアレルギーは最近解消してきたのではないか、真意を御理解いただいてきているのではないかと思います。  防衛につきましては、防衛費をふやしたと言われて批判されておりますけれども、確かに防衛費経済協力費に次いでふやしておりますけれども、これは国際関係も調整し、また日本防衛を全うするために必要最小限努力を積み重ねていかなければならない。防衛というものは結局相対的なものでありますから、周囲の環境にある程度順応して物を考えていかなければならないのでありまして、そういう意味におきましては、最近における極東情勢等々も見まして、日本は分相応の防衛力も固めていかなければならない、こういう認識に基づいて行っておるのであります。
  13. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、きょうはこれから、今総理からもお述べになりました政治倫理の問題、それから行革外交教育等の問題につきまして順次お伺いをしてまいりたいと思います。  まず初めに、先ほど総理がおっしゃっておりました田中問題のけじめの問題であります。このけじめが明確でなかったということにつきまして、これはもう総理声明を発表しておられますように、このけじめを明確にするとともに田中氏の政治的影響を一切排除する、こういう声明をしておられるわけでございますが、この二点につきまして、これは今まで何回か議論をしてまいっておりますけれども、ここでこれはこういうことなんだということを具体的に、国民皆さんにもわかりますように総理の方から御説明願いたいと思います。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは田中氏に対する辞職勧告決議案というものが提出されまして、それに対する対応において国民の御理解をいただくことがなかなか困難であった、そういう努力もこちらでまだ足りなかった、そういう点を非常に反省をしているところでございます。しかし、自由民主党は公党でございますから、物を決めていく――大事にせよ、政策にせよ、すべてこれは機関中心で行われておるので、党外の一個人がその政策や大事について容喙がましいことを行う、それに影響されるということはないのであります。私自体がそういう影響を受けたことはございません。そういう点につきまして、受けているのではないかという印象やら誤解を与えておったという点は大いにこれは考えなければならぬ、そう思っておった次第で、それを払拭したいと思っておるわけであります。
  15. 峯山昭範

    峯山昭範君 そこで、総理は、政治倫理というのはまず政治家個人自覚の問題であるということを何回かおっしゃっております。そこで、一審有罪判決を受けた議員が、もし謹慎をしないで、全くなかったと同じような政治活動をしているのは国民代表としてふさわしくないとおっしゃっている方がいるわけでございますが、この点総理、いかが思いますか。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、政治倫理という問題の第一義は政治家個々人の良心と責任自覚の問題であるだろうと思っております。そういう意味におきまして、我々一人一人が選挙に立候補して選挙民に訴えているときのような心境に立って謙虚に国民に奉仕し、みずからをむなしゅうして行動していかなければならない、そう思っておるわけで、すべてそれらは個人自覚にまつべきものである、議員というものはそういうプライドもまた持っていかなければならない、そう思っておるものであります。
  17. 峯山昭範

    峯山昭範君 ただいまの質問竹下安倍河本大臣に、それぞれ御所見をお伺いしておきたいと思います。
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的には総理からお答えがあったとおり自覚をいたしております。
  19. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私も総理の御意見のとおりだと思います。
  20. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、総理以下が答弁いたしたように、やはりまず政治家個人自覚根本義だと、こういうふうに考えております。
  21. 峯山昭範

    峯山昭範君 ただいまの質問田川さんにします。
  22. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 総理がおっしゃられたことと大体同じでございますが、政治家は、もう党派を超えて、まず政治家として国民代表として国民よりももっともっと厳しく政治責任を持ち、身を律していかなければならないというふうに思っております。
  23. 峯山昭範

    峯山昭範君 今、私が申し上げましたのは田川大臣の発言でございまして、田川大臣衆議院予算委員会で申されたお言葉をそのまま私は申し上げたわけであります。やはり自粛、謹慎をしないで、なかったと同じような活動をするというのは、私はまことに遺憾と思うのですが、総理もう一遍お願いします。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まさに公的地位にある我々は、国民一般よりもさらに厳しい倫理性を要求され、また自覚を持っていかなければならぬと思っています。
  25. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理もう一遍お伺いしますが、一審有罪判決を受けた国会議員登院停止あるいは立候補を規制することによって政治活動を制限する必要があるというお話があるわけでございますが、この点につきましては総理いかがですか。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これも一つのお考えであると思い、検討すべき課題であると思っております。ただ、私の私見は、前からここで申し上げておりますように、もしその人が二審において無罪になった場合にそれらの処理というものはどうなるべきであろうか、そういう問題が絡まってくるわけであります。我々の先輩である野党の有数の政治家がおられました。私も、連立内閣を組んだころ、昭和二十三、四年ころお世話になった、尊敬すべき方でありますが、一審有罪であった、しかし二審は無罪であった、そういう場合があり得るわけであります。そういう場合に一体どういうふうにその名誉を回復し、あるいはそのときの空白部分というものをどういうふうに扱うべきであるか、救済さるべきであるか、この問題がやっぱり頭にかかってくるわけであります。
  27. 峯山昭範

    峯山昭範君 これも田川大臣いかがですか。
  28. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 一審で有罪の判決を受けるようになれば、国民よりも私たちは厳しい責任をとらなければならない立場におりますから、本来なら自発的に責任をとるのが当然でありまして、そういう意味から議員が一審の有罪判決を受ければこうしなきゃならぬ、ああしなきゃならぬなんという規定がないんです。ですから、本来ならそういうような制度をつくることは私ども議員にとって大変恥ずかしいことである、こういうふうに思っております。
  29. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは総理、先ほど私申し上げましたのも田川さんが二月一日の日本記者クラブで講演された内容の話であります。総理の話と田川さんの話は随分がけ離れた内容になっておりますが、総理、どうですか、これ。
  30. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 個人が自分で、一審有罪を受けた場合に自粛自戒して登院を自粛するとか、諸般の処置を講ずる、これはもう自由でありまして、それが良心と責任感に基づくという意味であります。しかし、国会が制度としてそういうことを強制的にやるということが果たして日本の三審制度となじむかどうか、これはやはり法制的によく検討する必要がある。これは除名とかそのほかの場合まで含めまして、きのうも法制局長官から答弁がありましたように、憲法上の疑義の問題も出てくるわけであります。
  31. 峯山昭範

    峯山昭範君 そうしますと、総理、これは憲法上の疑義とかそういう問題さえ解決すれば、総理田川さんの御意見に賛成ということでございますか。
  32. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、その憲法上の疑義というものを解明した上で判定したい、そう思います。
  33. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは総理自民党の中にも、このまま一審有罪判決を受けた者が自由に何はばかることなく政治活動をやるのは好ましくない、そういう意見が非常に多いという話があるわけです。そういう点から考えまして、このまま何もなかったと同じように過ごすというのは、やはり何かのきちっとしたけじめをつけないと、国民は先ほどの政治倫理の熱いおきゅうの話に返っていくのじゃないか、そういうような意味で、ここら辺のところはやっぱり憲法的な問題からもきちっとしたけじめが必要であると思いますが、再度総理の答弁を求めます。
  34. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは立憲主義、議会主義との関係で基本的問題を含んでおる問題なのであります。つまり、議員の地位をなぜあのように保護しているかという背景は、やはり言論の自由あるいは国民代表としての自由な発言と行動を保障しなければ民主主義は発展しない、そういう意味から保障されておると思うのであります。その言論の自由というものを犠牲にされる危険性はないか。藩閥政権のころは、あるいは外国におきましてもそういう例がありますが、政府の権力によって議員が逮捕されたりあるいは牢屋に入れられたりするケースはかなり多いんです。今でもわれわれが、各国においてそういう例なきにしもあらず、見ておるとおりであります。そういう場合に一審有罪だ、政府が専権を行使してそういうようなことをやった場合、あるいは選挙干渉というようなことが行われた場合には、そういうことはやろうと思えば幾らでも可能性は出てきます。その場合に、野党の議員が与党のそういう政府権力によって選挙違反とかなんとかという形ですぐ有罪だ何だかんだというところへ持っていかれるという、もしそういうことが起こった場合に、果たして議会主義というものが守れるか、そのためにいろいろな保障を議員に与えているのであります。そういう観点から、言論の自由や議会主義を守るという意味から、この問題は基本的問題を含むということを申し上げておるのであります。
  35. 峯山昭範

    峯山昭範君 結局、総理がおっしゃる選挙至高主義というふうな問題と田川さんがおっしゃっておる問題とは、これは根本的に食い違う問題でありますし、総理がおっしゃるようなそういう国になってもらっても困るわけであります。したがいまして、この問題は政治倫理という問題と絡めまして大変大事な問題でもございますし、これはきちっとそういう点についての結論を出していただきたいと思います。  そこで、総理、この政治倫理の問題に絡みまして、田中問題がその焦点になったわけでございますけれども、田中問題が焦点になった根底は御存じのとおりあのロッキード事件であります。ロッキード事件というのは、御存じのとおりトライスター導入に当たっての大きなわいろ事件であります。そういうふうな意味で私はこのロッキード事件のような大きな疑獄事件を二度と起こしてはいけない、そういうふうな意味で私たちはこの数年の間随分取り組んでまいりました。そこで、こういう事件を二度と起こさないようにする、そういうふうな意味でこの再発防止のための積極的な方策というのが必要になってくるわけであります。この点について総理のお考えをお伺いしたいと思います。
  36. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いわゆる疑獄事件一般につきまして、再発あるいはそれが頻発するようなことを防止することは非常に必要であると考えております。
  37. 峯山昭範

    峯山昭範君 そこで、今一番問題になって、私がきょうここで問題にしたいのは、いわゆる会計検査院の院法改正の問題であります。  これにつきましては、総理に対しまして私も今まで何回か質問をしてまいりました。やっぱり特に私が問題にしたいのは開銀とか輸銀とかいうところの融資先、これはもう大変な国民のお金を使って融資をしているわけであります。そういうところに対する検査が十分行き届いてなかった。だから、院法改正をやりたいということで昭和五十三年以来、衆議院、参議院の本会議におきまして、衆議院で全部で七回、参議院で五回にわたりましていわゆるこの検査権限の拡大ということで決議をしているわけでございますが、なかなかいまだにこの問題が決着がついていないわけであります。この点に対する総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  38. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点につきましては、峯山議員から何回もこの議場におきましても御質問いただいておりますし、ポイントは自由民主党でもいろいろ検討しておりますが、そういう開発銀行その他が融資した先、その先までまたいろいろ国家権力が監査や何かしたという場合に民間の企業活動の自由というものが阻害されやしないかどうか、そういう問題なのでございます。その融資した先の先ぐらいまでそういうことをやるということが経済政策や別の面から見て果たして適当であるかどうかという面なのであります。院法の改正というやり方によらずしてそういうふうなやり方が事実上できないかどうかという問題もございます。そういう点で、自由民主党の中におきまして、まだ固まった議論が定着しておりません。そこで残念ながら延び延びになっておりまして、これはさらに検討を進めていくべきであると思っております。
  39. 峯山昭範

    峯山昭範君 この問題は、総理、民間活動を阻害するとかいろいろおっしゃっておりますけれども、これは国民のお金を使ってこの事業をやり、国のお金を融資を受けてやっているわけですね。しかも、ロッキード事件の場合は輸銀法を直前になって改正して、そうして航空機にもいわゆる融資をできるようにしての今回の事件であります。そういうふうな意味で、これはどうしても各党一致で院法の改正をやるべきである、そういういわゆる決着がついて、この決議になったいきさつもあります。これは総理総理がおっしゃるような問題とは多少違うんじゃないかと思いますが、どうですか。
  40. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は、いま申し上げましたように、党内におきましてもう少し議論が定着するのを待ちたいと思っております。
  41. 峯山昭範

    峯山昭範君 検査院にお伺いしますが、いわゆるこの院法改正という問題につきまして検査院はどういうふうなお考えをお持ちでございますか。
  42. 鎌田英夫

    会計検査院長(鎌田英夫君) お答え申し上げます。  会計検査院といたしましては、この問題が五十二年に国会で議論になりまして、会計検査院の権限を拡充すべきである、これはその当時、会計検査院に対してそういうふうな整備をすべきである、そういう御指示があったわけでございます。その後五十三年、衆参両院において明らかに権限を拡充せよという与野党一致した御議論がございまして、各決算委員会においてその旨の決議がありまして、本会議でもそのとおり議決されたわけでございます。その後、検査院といたしましてはいろいろ各省庁とも折衝してきたわけでございますが、なかなか結論を得ない。しかし、各省庁の述べられるいろいろの利点を頭に入れましてある程度の成案を得まして、また五十三年、当時の福田総理大臣からも、検査院の問題であるから検査院から成案を得てその上で考えよう、こういうお話がございまして、五十四年に検査院としては、一応法律案なるものを作成して内閣へお出ししたわけでございます。  自来、数年を経ているわけでございますが、検査院といたしましては、やはり貴重な財投の資金、この原資はやはり国民の貯蓄であり年金の資金、そういったものでございます。そういったものが投融資される段階におきまして、やはりもともとこういった融資というものは、昔は特別会計、国の融資、そういったものから出ていた、そういういきさつもあるものでございますから、それが形が変わったということで輸銀、開銀についても検査できるように、あるいはその他の政府系の金融機関についても検査ができるようにということで進んできているわけでございます。したがいまして、検査院の態度は、現在もなおこれは必要である、こういう考えでおることを申し上げます。
  43. 峯山昭範

    峯山昭範君 今、明確に話がございましたように、総理、これはここで議論する問題ではなくて、いわゆる立法府で衆議院七回、参議院五回にわたって権限強化を求める決議をしておるわけです。それに対して、立法府の決議に対して総理がこれをどう受け取るか。いわゆる政治倫理という問題とも絡めまして、ロッキード事件の反省があれば、私はこの問題については直ちにそれなりの措置をすべきだと考えます。それ以外の何物でもないわけです。いろんなことをおっしゃっているのは、そういういろんな弊害という問題も十分配慮をして検査院から提出されているわけであります。したがいまして、もう一遍総理の御見解をお伺いしたい。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点につきましては、自民党は割合に企業活動の自由、活発さというものを尊重する基本的立場に立っておりまして、そういう意味から、なるほど公的資金につきましてはいろいろ監査、監督の必要性は認めており、また我々は妥当であると思っておりますが、ある限度を超してまでさらに進めるということはどうであろうか、そういう問題なのでございます。そういう意味において、我々は自由主義政党としてその点について慎重論もあるわけでございまして、もうしばらく我々の方の党内の議論の収れんを待ちたいと、そう思っておるわけでございます。
  45. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは、企業活動の活発化、我々は賛成なんです、総理。今私が申し上げておりますのは自民党も賛成しての決議なんです。これはやっぱり委員長、立法府と行政府との問題でありますし、立法府できちっと決めた問題につきまして、いろんなへ理屈をこねて、いわゆるちゃんとしないということは私はいかぬと思います。
  46. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 院で御決議いただきましたことにつきましては我々も尊重しなければならぬと思います。ただ、それを具体化するという場合について若干の意見の相違があるわけでありまして、今後とも精力的に詰めてまいりたいと思います。
  47. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは、精力的に詰めるとかなんとか言いまして、昭和五十三年以来続いているわけです。その間、福田総理に私、前この予算委員会質問いたしましたときには、会計検査院に検討させるからそれまで待ってくれと、こういうことでした。ところが、検査院はその検討の結果、各省のいろんな状態も詰めて、この席に出してまいったわけです。それからもう既に三、四年たっているわけであります。私は、この問題、いまの総理の答弁では納得できません。
  48. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) おっしゃる趣旨はよくわかるのでございますけれども、今のような具体的な施行細則的な具体的実践の過程になりました場合に、各省庁の意見及び党内の意見を統一する必要があるのでございます。具体的な法律案の内容自体につきまして若干まだ反対意見もあり疑義もある、そういうところでありますので、今後とも精力的に検討さしていただきたいと思います。
  49. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは委員長、もう一回検討してください、はっきり。
  50. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔午前十時三十五分速記中止〕    〔午前十時四十七分速記開始〕
  51. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。  それでは、先ほどの峯山委員質問に対しましては官房長官から答弁いたします。
  52. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 会計検査院のいわゆる会計検査の機能を強化せよという強い院の御意思がございまして、たびたび御決議をいただいておりますことは私ども承っておるところでございます。その御決議を受けていろいろと検討を進めてまいったところでございます。また、検討を進めてじんぜん日を経ておるだけではいかぬわけでございますので、昭和五十六年七月に内閣官房副長官名におきまして関係各省事務次官に通達を出しまして、この意味合いが十分生かされていくように会計検査院の検査機能の充実につきまして、例えば肩越し検査への協力、あるいは調査依頼への協力、資料面での協力などにつきましては十分この趣旨に沿うようにという通達を出しまして御協力を申し上げてきておるところでございます。  しかし、従来御論議をいただいてきておりますこの院法の改正の問題につきまして、さらに強化せよという院の御決議を十分尊重していくという立場を私どもとっておるわけでございますし、ただ、今総理からお答えを申し上げましたように、いろいろと各方面の御論議がございまして、例えば自由主義経済体制のもとにおきまして私企業へのいわゆる公権力が介入していくというその仕方を、どの程度にどのような方法で行うことが考えられるかといったような点につきましていろいろ御論議、可否がございまして、この論議がやっぱり煮詰まっていくのでなければならぬ。こんなふうに思いまして、一方では院の御決議を十分尊重したいと考えつつも、その御論議が煮詰まってくるのをさらに時間を経てきて今日に至っておるところでございます。しかし、きょうも先生から御質問もいただきまして、またたびたび御質問もちょうだいをしてきておるところでございますので、事柄の重要性を十分認識をいたしまして、さらにその論議が煮詰まっていくように一層努力をいたしまして、その論議の結果につきまして本委員会予算案審議の最後の段階までの間に御報告を申し上げるようにいたしたい、こう思いますので、どうか御了承をいただきたいと存じます。
  53. 峯山昭範

    峯山昭範君 私、今の官房長官の答弁では納得できないんです。というのは、今までそういうふうに言ってごまかしてきたわけです。いわゆる肩越し検査の通達で、これでお茶を濁せと、こういうことできたわけです。要するにこれはロッキード事件の反省として、我々で、立法府としてはもうこれだけはやりたいということで自民党さんともみんな相談をして決めたことなんです。それが実行されないなんてとんでもない。私は、政治倫理に対する国民の批判の目が非常に厳しい。そういうところを、決めたことをきちっとやらないことにもやっぱり厳しいところがあると思うんです。これはもう一遍、検査院、要するに次官通達なんかでいいのかどうか、それで国会の決議の検査権限の拡大ということはどういうことなのか、それで今権力の介入ということを検査院は意図しているのかどうか、そういう点について検査院の所見をお伺いしたいと思います。
  54. 鎌田英夫

    会計検査院長(鎌田英夫君) 今、二点お尋ねでございました。  会計検査院といたしまして、いわゆる肩越し検査、これは従来やってきております。それにつきまして政府から、つまり内閣官房副長官からその充実を慫慂するような通達が各省庁に出されました。この効果は確かに以前よりはあると思います。しかしその文章の中に、会計検査院が検査する必要があると認めたときと、こういう文句がございます。これは検査を受ける側が検査をする者に対してその必要があるかないかを判断する、こういう立場になるかと思いますが、そういうことがある以上はやはり肩越し検査も徹底して行われない。また、従来やっております肩越し検査はかなり協力を得てやっております。その結果、いろいろ貸し付けについての問題はたくさん出ておりまして、検査報告にこれは掲記してございます。  そういったわけでございますけれども、なお肝心なところといいますか、一、二の政府関係機関においてそういうことがありますので、私どもといたしましては徹底しない、こういうふうに考えて、やはりこれは伝家の宝刀といいますか、なかなか伝家の宝刀というのは抜くものではございません。実は従来の今規定されております中にも、会計検査院法二十三条の第一項第七号に、国または公社が工事を請け負わした場合の請負業者の会計あるいは物品を調達した場合のその調達を受注した会社の経理も検査をできるようになっております。そういうこととの絡み合いにおいて決して我々が検査をするということはおかしいことではないと、こういうふうに考えるわけでございます。  それからもう一点、権力の過剰介入。こういう点につきましては、私どもは各省庁との話し合いにおきましてそういう御議論はたくさんいただいております。したがいまして、そういうことが出ないように、検査をするときには検査官会議でその必要性をじっくり検討いたしまして、どうしてもやむを得ない、つまり肩越し検査をやるということが前提でございますけれども、それに協力していただけないというときは、もし改正いただければその改正された規定に基づいて検査をしようと、こういうわけでございまして、私どもは権力の過剰介入にならないように十分歯どめをしているつもりでございます。また従来、先ほど申し上げました二十三条の一項七号のこの規定はありますけれども、私どもといたしましてはこれを今までほとんど発動したことがないわけでございます。ただ、あるということにおいて御協力は得られる、こういう過程によりまして発動していないわけでございます。  以上でございます。
  55. 峯山昭範

    峯山昭範君 権限の拡大の話、検査院の権限の拡大というのはどういうことか。
  56. 鎌田英夫

    会計検査院長(鎌田英夫君) 検査院の権限の拡大と申し上げましたのは、検査院が今出しております法律案と申しますか要綱は、やはり融資先について、つまり国及び公社、あるいは国または公社だけではなくて政府が出資した団体が融資している先についても調査権が及ぶ、こういうこと、それから先ほど申し上げました二十三条の一項七号につきましては請負と物品の調達、こういうものがありますけれども役務も入れる、こういうようなことを法案の内容としているわけでございます。
  57. 峯山昭範

    峯山昭範君 委員長、今の院長の説明によりましても明確でありますように、先ほどの官房長官の答弁は、要するに今問題点をピックアップして当委員会に報告するというだけではこれは私納得できませんのでね、もう一遍御検討いただきたい。
  58. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  59. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それじゃ、速記を起こして。  それでは藤波内閣官房長官、もう一度ちょっとその点を重ねて御答弁願います。
  60. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 院の御決議をいただいておりますことは私どもも重々しく受けとめておるところでございまして、これを尊重してまいらなければならぬと、このように考えておる次第でございます。  ただいま御指摘をいただきました、さらにこれを煮詰めたらどうかというお話につきましては、誠心誠意今まで問題点として浮かび上がってまいっておりますものを煮詰める努力をいたしまして、その煮詰めてまいるいろいろな論点、そしてその成果等を本委員会に御報告を申し上げるようにいたしたい、このように考えますので、どうぞ御了承をお願いいたしたいと存じます。
  61. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、この問題につきましては当委員会中にということでございますから、この問題は留保いたしまして、次に移りたいと思います。  総理、私はきょうこれから核の問題について議論をしたいと思っております。  総理も御存じのとおり、我が国は世界で唯一の被爆国であります。そういうような意味では世界に類例を見ない被害を受けた国でございますし、その反省からでしょう、現在の平和憲法があるわけであります。この問題につきまして、総理自身はどういうふうな御認識と決意をお持ちか、初めにお伺いしたいと思います。
  62. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 戦争後生まれた現在の憲法の中には人類普遍の原理というものが盛られてもおり、また今後世界各国が協調していく道を示している立派な原則が盛られていると考えております。
  63. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理、この核兵器という問題につきましては、私は、非常に私たち日本国民はそういうふうな意味で大変な関心を持っていると思います。御存じのとおり、昨年は核兵器に対する反対の署名運動、世界じゅうからなくしようという大きな運動が起きましたし、また国連におきましてもそういう会議も開かれました。  総理総理の御認識を私はお伺いしたいのですが、総理はやっぱり将来核兵器を持てる時代がくれば持ちたいと思っておられますか。持てるようになれば持ちたいと思っていらっしゃいますか。あるいは、たとえそういう時代、持てるような時代が来ても持ちたくないと思っていらっしゃいますか。どちらですか。
  64. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 核兵器というのは業の兵器であって、そういう業の中に日本は入らない方がいい、持ちたくないと、そう思っております。
  65. 峯山昭範

    峯山昭範君 その持ちたくないということを内外に宣言してもいいのじゃないかと思いますが、総理、どうですか。
  66. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、ですから核兵器は廃絶すべきであると、このように申し上げておるのであります。
  67. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理、私はいつも問題だなと思いますのは、総理がそういうふうに核は廃絶したい、持ちたくない、どういう時代になっても持ちたくないということとは全く別の方向に進んでいるというところが大きな問題ではないかと思うんです。これは私は前の国会のときにも何回か議論したことがありますけれども、現在、それじゃ、総理、我が国はどうして核兵器を持たないんですか。
  68. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは、核兵器が業の兵器であって、そういうような業の兵器を持つ仲間に入ったくないと、そういう国民の意思が基本にあるからだろうと思います。
  69. 峯山昭範

    峯山昭範君 今、総理は、国民の意思ということもおっしゃいました。したがって、これはいずれの場合も私は核兵器というものに対する基本の認識をそこに置いてこれから御質問したいと思います。  これは憲法九条の問題と絡んでまいります、憲法九条からいきまして、先般の衆議院における予算委員会におきましても共通一次の問題に出てまいりました核兵器、いわゆる自衛のための必要最小限度という枠つきではございますけれども、核兵器の問題が出てまいりました。総理、これはよく覚えていらっしゃると思いますが、この点と絡めて核兵器をどういうふうに処理していけばいいか、もう一回お伺いしておきたいと思います。
  70. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我が国は非核三原則を堅持してまいります。しかし、周辺の諸国の動向等を見ますというと、核兵器を持って、そしてそれを展開しているという国もございます。そういうようないろんな面から、遺憾ながら世界はそのような防衛力と申しますか、軍事力の均衡によってそれを使わせないという仕組みになっております。したがって、それが抑止力として作用して今まで平和が維持されてきているというこの実績等にかんがみまして、日本も残念ではあるけれども、そういう国際情勢の認識のもとにアメリカの核抑止力に一般的意味において依存しているということは否定できない。これは日米安保条約を通じましてそういうようなアメリカの核抑止力に依存はして平和を維持しておる、しかし自分は持たないと、そういう非核三原則を持っておるわけであります。
  71. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理憲法につきましても大変な権威者であると私はお伺いをいたしております。総理、この憲法の解釈というのはいろんな解釈があると私思うんですが、それはそうですね。
  72. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは第九条の解釈にいたしましても学説はいろいろあると思います。また、裁判所の判例というものもあると思います。
  73. 峯山昭範

    峯山昭範君 そうすると、総理、例えば憲法九条二項の解釈につきまして、いわゆる核兵器を持てるという解釈と持てないという解釈があってもいいわけですね。
  74. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろんな議論はあり得ると思いますが、その詳細についてはもし御必要あらば法制局長官から答弁させます。
  75. 峯山昭範

    峯山昭範君 いや、その中身じゃなくて、おっしゃるように、九条二項で核兵器を持てるという解釈もあるだろうし、また持てないととる人もあるだろう、そういう解釈はいろいろあっていいと思うんですが、どうですか。
  76. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろあっていいと思いますし、現にあると思います。
  77. 峯山昭範

    峯山昭範君 それじゃ総理、現実に憲法九条二項で核兵器を持てるという解釈をする人と持てないという解釈をする人と両方あるわけです。どうして日本の政府は憲法九条二項で、もちろん上の方に自衛のための必要最小限度というそれはあるんですけれども、それは一たん省いて考えていきましょう、一々言うの面倒くさいですからね。そういう場合に、憲法解釈の上からいって、日本の政府は要するに核兵器を持てるというふうに解釈をとっているわけですね。それはなぜそういうふうに持てるというふうな解釈をとるのか、総理、どう思いますか。
  78. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、法解釈ですから法制局長官にお願いしたいと思いますが、憲法の解釈におきまして必要最小限の自衛力は持てる。それは防衛に徹する意味においてそういうような意味のものは持ち得る。火薬であろうが原子力であろうが、それが防衛意味に徹する、攻撃的性格を持たない、そういう場合には持ち得る。しかし、我々は原子力基本法その他におきまして持たない、そういう方向に決めておるわけですから、持たないということであります。
  79. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理、結局憲法九条二項でいわゆる核兵器を持つことができるという解釈と持てないという解釈があるわけです。総理日本の政府が、今総理がおっしゃった前段のいろんな問題があるわけですが、持てるという方をとる本当の意味というのはそちらの方をとる方が価値的にいいと。憲法判断の中には、結局最終的にはどの解釈をとるかというのはその当時の政府のあるいはその人たちの価値判断によるという学説がありまして、私も随分いろんな角度から読んでみましたが、最終的にはそうなってくるようでございますが、総理、そうじゃありませんか。
  80. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その辺は非常に難しい解釈論になりますから、法制局長官から答弁させます。
  81. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます、  ただいまの峯山委員の御質問の問題でございますが、これにつきましては昭和五十三年の三月から四月にかけまして当参議院の予算委員会でいろいろと論議が交わされたわけでございまして、当時、政府統一見解なるものをこの委員会にもお出ししているところでございます。  当時、峯山委員からもいろいろ関心を持たれてこの点につきまして御質問があったわけでございまして、当時もるる御説明を申し上げたところでございますが、ただいま総理からもお話がございましたように、我が国には固有の自衛権があって、自衛のための必要最小限度の実力を保有することは憲法九条二項によっても禁止されるわけではない。したがいまして、核兵器であってもそのような限度にとどまるものであればこれを保有することは憲法の禁止するところではない。他方、右の限度を超える核兵器の保有が憲法上許されないことは当然であるというような見解を示しておるわけでございまして、ただいま委員のおっしゃいました両説あるのであれば、もし持ちたくないのであれば持てないという解釈をいわば選択すべきではないかという点につきましても実は当時いろいろと御説明申し上げたところでございますが、このような憲法の解釈というものは、先ほど申し上げたような九条二項に絡む解釈でございますが、それにつきましては憲法の法解釈論としてのいわば当然の論理的帰結としてそのようなことが言えるということでございまして、いわば政策的に解釈をこちらがいい、あちらがいいということで選択すべきものではなくて、あくまでも憲法の解釈でございますから、その法論理的な帰結としていま申し上げたような結論が得られておると、こういうことで政府の一貫した解釈として繰り返し申し述べておるところでございます。このように御了承をお願いいたします。
  82. 峯山昭範

    峯山昭範君 長官、先日の統一見解、私もちゃんと覚えておりますが、あなたは憲法九条の解釈、これは要するに、先ほど総理がおっしゃったように、ああいうふうないろんな解釈はないとおっしゃっているんですか。
  83. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  いろいろな解釈があり得るということは、これは人によっていろいろな解釈があるわけで、学者の方あるいは国会の方もいらっしゃいますし、いろいろお立場お立場で一つの法律についての解釈があり得るということをおっしゃったのだと思います。ただ、私どもが従来から主張し、また見解として抱き、また御説明申し上げているところは先ほど申し上げたところでございまして、これが憲法九条の解釈としてはいわば論理的な帰結として唯一の解釈であるというふうに考えておるところでございます。
  84. 峯山昭範

    峯山昭範君 私が聞いていることにちゃんと答えていただきたいと思います。  憲法九条二項の解釈にはいろんな説があることについてはどうなんですかと聞いているんです。
  85. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) いろんな説があるというのは、ある一人の人が幾つもの説をこれがいい、あれがいいということとして持っているのではないのであって、いろいろの立場でそういういろいろな説をなす者があると、こういう意味でございまして、私どもを含めまして政府としましては憲法九条二項の解釈というのは先ほどるる申し上げたところで、これがいわば憲法の法論理的な帰結としての唯一の解釈であると、こういうふうに考えております。
  86. 峯山昭範

    峯山昭範君 だから、政府はそういうふうに考え先のことを聞いているのじゃないんです、長官。解釈にはいろいろあると総理もおっしゃっているじゃないですか。
  87. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは峯山さんがおっしゃるとおりで、例えば非武装中立論ということをお唱えになっている方は、日本は自衛力を持てない、憲法解釈上そうだと。自衛力を持てないということになればもちろん防御的な意味の核兵器も持てない、そういう帰結になるのではないか、そういう方もいらっしゃいます。
  88. 峯山昭範

    峯山昭範君 だから、解釈にはいろいろあると。
  89. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろある。
  90. 峯山昭範

    峯山昭範君 そう、それだけでいいんです。それを認めてくれたらいいんですよ。  長官、どうですか。
  91. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 五十三年に統一見解をお示し申し上げましたが、たしか二回お示ししたと思いますが、第一回目の統一見解にも……
  92. 峯山昭範

    峯山昭範君 いや、統一見解じゃなくて、説が幾つかある。
  93. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) そこにも書いてございますから今御説明申し上げるわけでございますが、その第二に、「憲法のみならずおよそ法令については、これを解釈する者によっていろいろの説が存することがあり得るものであるが、政府としては、憲法第九条第二項に関する解釈については、」……
  94. 峯山昭範

    峯山昭範君 「政府としては」と、そんなこと聞いていない。
  95. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 二に述べた解釈が法解釈論として正しいものであると信じており、これ以外の見解はとり得ないところである」と、このように述べているわけでございます。
  96. 峯山昭範

    峯山昭範君 だから、私の聞いたことにきちっと答えてください。もう一回。
  97. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) いろいろ説があることはお示しのとおりでございます。ただ、これはそれぞれの学者なりあるいは議員になり、またいろいろそういう方の立場によってそういう説があるということでございます。
  98. 峯山昭範

    峯山昭範君 前の法制局長官は真田さんだったんですけれども、そういういろんな説があることは認めるというのが答弁の中で明確に出ておるのじゃないですか。それを簡単にぽっと言えばいいんです。それだけです。  それで総理、今長官もおっしゃったように、核兵器を持てるという解釈と持てないという解釈いろいろあるわけです。政府は今持てるという解釈をとっているわけです。しかしながら、私たちは非核三原則とかそういう政策面のことは別にしまして、私たちの日本の国は被爆国ですし、核兵器は総理もどういう事態になっても持ちたくないと一番初めにおっしゃいましたように、やっぱり核兵器は持たないというふうに解釈した方がいいのじゃないか。解釈そのものにつきましても、要するに憲法そのものをあるがままの意味を認識すること、あるいはあるべき意味を認識すること、それで結局いろんな解釈がある場合にはそのうちどれをとるかは価値判断の問題だと、これはもう私が言っているのじゃなくて、憲法のいろいろな学者がおっしゃっているわけです。したがって、要するにその中でなぜ日本の政府は持てるというふうな解釈をとるのか。その意味を、その理由をここで明確に国民皆さんにわかるように説明してもらいたいわけです。要するに、もう一回言いますと、憲法の解釈の上でいきますと、いわゆる核兵器を持てるというふうに解釈する最終これしかないという今の政府の皆さんと、それから核兵器は持てないという解釈をとる人もいるわけだ、現実に。なぜ政府は持てるという解釈をとるのか、そこのところの理由をわかるように説明をいただきたいわけです。
  99. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 憲法の解釈におきまして政府がとってきた態度は、第九条の第二項等に基づきまして自衛権はある、自衛権を行使するに必要な最小限度の防衛力、いわゆる自衛力は持ち得ると、そういう解釈を政府はとってきております。その反面、攻撃的武器、武力というものは持てない。じゃ、何が攻撃的武力であるかという場合に、それは例えば航空母艦であるとかあるいは長距離ミサイルであるとか、そういうものを例証で挙げてあります。そこで、純粋に防御的な必要最小限防衛力は持てるという解釈を我々はとっております。その必要最小限防衛力の中にどういうものがあり得るかという場合に、火薬でやったものもあるだろうし、あるいは小規模の原子力で使うという場合もあり得る。そういうような兵器の機能、性能というものによって、それが必要最小限防衛力に該当するかどうかという判定の問題で、それは火薬であろうが原子力であろうが差別すべきものではない、問題は、機能とそれからそれを使う場合の意思等にもかかわる。主として今申し上げた攻撃性、侵略性を持たないという性格を重視しておるわけなんであります。
  100. 峯山昭範

    峯山昭範君 それは私の質問の答弁になっていないわけですよね。要するに、自衛のための必要最小限度の力を持てる、そこはわかるわけです。総理、やっぱり総理の一番初めの答弁、核兵器はいかなる事態になっても持たない方がいいのじゃないかという、いわゆる私たち日本国民考え方と総理もおっしゃいましたが、そういうような考え方からいけば、やっぱり持てないと解釈した方が解釈論もいわゆる政策の面もすぱっとするのじゃないか。なぜそれじゃ持てるという解釈をとるのか。それは論理的帰結というそれだけではなくて、いわゆる憲法解釈の価値判断によるんじゃないか。要するに持つという方に価値を見出している、これはどうですか。
  101. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点がちょっと違うと思うんです。我々は憲法を願望によって解釈すべきものではない、法論理学の帰結によって解釈すべきである、そういう考えを持っておりますから、願望は、我々としても核を廃絶したいという願望は持っておるが、しかし条文というものを論理的に解釈すればこういう帰結になる、そういう法論理学というものを基本にして我々はやっておるわけであります。
  102. 峯山昭範

    峯山昭範君 いや、納得できませんね、そういう答弁では。これはそれじゃ法制局長官にもう一回お伺いしましょう。  憲法はどういうふうな意味で解釈しているんですか、あるがままの意味で解釈しているんですか、あるべき意味を解釈しているんですか。
  103. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 法論理的な帰結ということを申し上げておるわけでございますから、当然あるべきものとして解釈しておるわけでございます。その点につきましては、今問題になっている核兵器の問題につきましては先ほども申し上げましたが、五十三年の四月三日の当委員会で、当時の真田法制局長官が読み上げました統一見解に尽きておると思います。
  104. 峯山昭範

    峯山昭範君 これ以上議論はしませんが、総理、今の法制局長官の答弁でも、あるべき意味を解釈しているわけです。あるがままじゃないんですよ。だから、憲法も本当は法論理的に言えばあるがままに解釈するのが普通なんですね。ところが、政策と絡み合わせであるべき意味を解釈しているわけですよ。ですから、そういう点からいくと、法制局長官にもう一回お伺いしておきますが、いろんな解釈がある場合、結局その価値判断じゃありませんか。そうでしょう。
  105. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) あるべきと申し上げましたのは、法論理的な意味であるべきであると、こういう意味で申し上げたわけでございます。そういう意味で御了解をお願いいたします。
  106. 峯山昭範

    峯山昭範君 いずれにしましても、現在の憲法の解釈の面からいきますと、私は、いずれにしても日本の国は核兵器は持たない、そういうふうに判断した方がいいんじゃないか。また、憲法九条二項で持てるというふうに解釈しているということは、将来やっぱり持つ可能性があるんじゃないか。そういうようなことで、いわゆる東南アジア」の皆さんにいたしましても、外交上のいろんな問題にいたしましてもいい結果は生まれてこない。やっぱりいろんな面から見て持たないと解釈した方が論理的にも筋が通っていると私は思うんですけれども、この点もう一回総理、お願いします。
  107. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり、憲法の解釈論は政策諭や願望でやるべきでないと思います。もし政策諭や願望でやれば、総理大臣がかわることに憲法の解釈が変わるという危険性も出てまいります。やはり法論理学的にこれは一貫した解釈をすべきである、そしてそれが時代の変遷によって解釈が変わっていくという場合もあります。これは最高裁判所の判例等が時代の推移を見て徐々に変えていくという場合もあり得ると、そう思います。
  108. 峯山昭範

    峯山昭範君 この問題につきましては、もう時間の関係もございますのでこの程度で置いておきたいと思います。  次に防衛の問題に移ります。  総理、国防という国の防衛という問題を考える場合にこれはいろんな問題があります。外交とかあるいは文化交流、経済、民生、いろいろあるわけでございますが、大切なことはやっぱり防衛に対する国民の理解、支持、協力、そういうものがなかったならば、どんなにすぐれた装備を持った強力な自衛隊であってもその防衛力というのは真の力にはなり得ないと思いますが、総理どうですか。
  109. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は同感でございます。
  110. 峯山昭範

    峯山昭範君 国民の望む方向あるいは意思というものを十分に踏まえてかじ取りをしていかなければいけないと思うんですが、この点どうですか。
  111. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もちろん、防衛国民の意思あるいは国民の願望によって支持されているものであります。私は、世論調査等を見。ましても、現在の自衛隊は七〇%程度の国民の支持を常にいただいておると考えております。
  112. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理、先ほどの核の問題と絡み合わせて、軍縮という問題につきまして、やはり私たちはこの世界的ないろんな問題から考えてみましても我が国が模範となるような、その範を他に示す役割があると、そういう立場にあると私は思うんですけれども、総理のお考えをお伺いしておきたい。
  113. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点も、軍縮については我々は熱心に努力していかなければならない国であると考えております。
  114. 峯山昭範

    峯山昭範君 以上の点を踏まえましてこれから防衛問題についてお伺いをしておきたいと思います。  初めに外務大臣にも一言、今の軍縮の問題に対する外務大臣のお考えも一言お伺いしておきたいと思います。
  115. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、総理が答弁をされたように、日本としては世界の軍縮、特に核軍縮、核廃絶ということに向かって、究極的には核廃絶という方向に向かって努力していかなければならないというのが日本の基本的な考えてあります。
  116. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理、この防衛予算の突出というのがここ数年続いているわけでございますが、これに対する総理のお考えをお伺いしたい。
  117. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その年その年の予算の分配から見ますと突出のように言われておりますけれども、しかし世界の水準から見ますれば、それは必ずしも突出と言われるべきものではない。それはある年次間の水準の推移を見ればそうでありますし、また社会保障費と防衛費とのバランスの状態を見ましても、日本の社会保障費は防衛費の三倍ぐらいになっておるのでありまして、フランスあたりでも一・何倍、大体西欧の国のバランスを見ますと一・何倍、多い国で二倍ぐらいです。日本は社会保障費は防衛費の三倍にもなっておるので、国政のバランスから見て突出ということは当たらないと、そう思っております。
  118. 峯山昭範

    峯山昭範君 ことしの予算につきましては、総理みずからが防衛予算の突出のために相当力を入れられたような感じがいたしますが、御存じのとおり、復活折衝の折に公開財源六百億円のうち三百八十六億円が防衛予算として加算をされましたし、また新聞報道によりますと、六・五五%という伸び率まで総理の指示に基づいてこの防衛予算を突出さしたと、こういうふうに聞いているわけでございますが、この点に対する総理のお考えをお伺いしたい。
  119. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛力日本が自主的に整備していく必要性、それから防衛計画大綱の水準に近づけたいと国会で常に言明をしている事実、それから鈴木・レーガン共同コミュニケにおける日本の約束等々、内外の情勢を全部勘案いたしまして、その上に社会保障費、文教費等とのバランスも考え、それから対外経済協力の経費等との見合い等も考えまして私が決断をいたしました。
  120. 峯山昭範

    峯山昭範君 国民防衛費の突出を望んでおられると思いますか。
  121. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人によって違うと思いますが、新聞が突出、突出と書くものですから、いかにも軍事費だけが社会保障費や教育費に比べて膨大な額になっているような幻想を与えておりますけれども、国際的比較等から見ますれば突出とは言い得ない、そういうものであり、そういう点を国民皆様方によく御理解願えればわかっていただけることであると思います。
  122. 峯山昭範

    峯山昭範君 マスコミが悪いんですか。
  123. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は突出と書かれることについては満足していないのであります。やはり日本の内外の情勢を見て、日本防衛というものを全うしていくためには必要最小限、必要不可欠の経費を計上しているものである、そういうふうにお考え願いたいと思うのであります。
  124. 峯山昭範

    峯山昭範君 ここ四、五年のあの伸び率を見ていますと、これは確かにことしだけ見ましても福祉関係の伸び率、文教関係の伸び率、あるいは予算全体の伸び率からしまして防衛予算が突出しているのは事実ですね、違いますか。
  125. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 単年度で見ますとそのように思われます。しかし、ここ十年の蓄積あるいは昭和三十年以来の蓄積等で見ますと、やはり社会保障費あるいは教育費というものが突出してぐうっと出てきておるので、そういうある全体の蓄積をお考えいただければこの程度の防衛費はやむを得ない経費ではないかと思うのであります。
  126. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは総理、それならそれでその経済成長の時代に防衛費もちゃんとすればよかったんだという議論があるわけでございまして、現在財政再建中に、非常に厳しい財源の中でこういうことをやること自体に問題があると自民党の同僚議員皆さんもおっしゃっていましたし、またそれと同じように国民も、最近の世論調査によりましても、防衛費の突出、特別扱いに反対と、やっぱり五〇%近くの人たちが反対しているわけでございますが、この点に対して総理はどう思いますか。
  127. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最近における日本の周囲の外国の防衛力の増強状態等々も考えてみ、そして日米安保条約を効果的にも運用するというようないろんな面も考えてみ、また財政力の内部における防衛費のバランス等も考えてみまして、この程度のことはやむを得ない、そういう判定を下したものなので、国民皆様方にそういう実情の説明が非常に不足で、それはわれわれの責任でございますけれども、もっと説明をしてやるならば御理解いただけるものであると思います。
  128. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理、やはり私は、予算というのは日本国民皆さんの御意向を聞いて組むべきでありまして、要するに対外的な、外国の皆さんの顔色ばかり見て予算を組んでいるみたいな感じがするんですけれども、違いますか、総理
  129. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは全く違います。外国の顔色なんか見てやっておるものではありません。やはり日本防衛というものを真剣に考えて、そして自衛隊でやるべき限度はこの程度、いざというときにこれぐらいで持ちこたえられる。それから安保条約を効果的に運用して、いざというときにどの程度の来援勢力が期待できるか。そういうすべての計算をしつつ、いろんな想定のもとにこの程度は必要であるというので防衛計画の大綱はできておりまして、それを満たしていく努力を毎年しておるわけなのであります。
  130. 峯山昭範

    峯山昭範君 GNP一%に対する総理のお考えをもう一遍お伺いします。
  131. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昭和五十一年につくりました三木内閣のその方針、これは守っていく考え方でおります。
  132. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理、三木内閣のいわゆる閣議決定を守るというお考えと、一%枠を守るということとは違うという議論があるというふうに新聞に報道されておるわけでございますが、これは違うと思うんですが、どうですか。
  133. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 三木内閣のあの閣議決定は、一%をめどとしてこれを守っていく、そういうことを言っているので、変わっていないと思います。
  134. 峯山昭範

    峯山昭範君 ここでちょっと皮肉な質問になるかもしれませんが、総理は何でこの一%をそんなに守ろうと一生懸命頑張っておられるわけですか。
  135. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり一%というのは一つのめどになっておりまして、国民皆さんも大きな関心を持っており、私もそれは妥当であると従来考えてまいりました。また、それを言明してまいりました。その約束を実行しておるのでございます。
  136. 峯山昭範

    峯山昭範君 そのとおりだろうと思いますね。  総理防衛費を一%以内に抑えるという歯どめがあるから国民皆さん方も安心してその範囲内でというお考えがあるのじゃないか、私はその一%というのが国民的コンセンサスになりつつある、そういうふうに考えるんですが、総理、どうですか。
  137. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国民的コンセンサスという意味に果たしてとれるかどうかわかりませんが、大部分の国民がそれを期待していると、そういう水準であったと思います。
  138. 峯山昭範

    峯山昭範君 いや、総理、確かにこれはコンセンサスになりつつあるんですよ。これもNHKの最近の一番新しい世論調査によりますと、防衛費はやっぱり一%以内に抑えるべきだという人が四三・二%、一%以内の方針は崩れてもやむを得ないという人が一六%、一%以上にふやすべきだという人が二・七%、防衛予算は大幅に削減すべきだという人が二二・八%。したがいまして、防衛費は削減すべきだというのが、これはトータルでは六五%以上になっているわけですね。こういう点から見ましても、このGNP一%を守るということは大変大事なことだと思いますが、再度お願いします。
  139. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから私は、五十一年の三木内閣の閣議決定の方針を守っていきますと、累次申し上げておるわけであります。
  140. 峯山昭範

    峯山昭範君 人事院総裁にお伺いします。  人勧の今調査等が進められていると思いますが、ことしの人勧に対する見通し等をあわせて御答弁願いたいと思います。
  141. 内海倫

    政府委員(内海倫君) お答えを申し上げます。  ことしどういうふうになるかということを数字その他を挙げて申し上げるまだ段階でもございませんし、これから克明な調査をしてそれから内容が出てくるものと、こう思っておりますから、今数字をもってどうこうというものではございません。  ただ、恐らくお聞きになっておる問題は、今までのあらわれておる民間との較差というものがどういうふうになるかということだろうと思いますが、私どもは在来積み重ねられてきておる調査の方式によりましてこの調査をやる所存でございますから、その結果によりましてそういうふうな面の較差がやはり出てくる可能性は十分あると、こういうふうに考えております。
  142. 峯山昭範

    峯山昭範君 ことしの人勧との絡みで、これは総理、GNP一%を突破する可能性は十分あるわけでございますが、この点は総理、どうお考えなんですか。
  143. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) GNP自体が非常にまだ変動的要素がございます。円がどういうふうにこれから変動していくかという問題もありますし、景気の上昇度合いという問題もございます。石油の値段もどうなるか、ホルムズ海峡はどうなるか、そういういろんな面がまだわからない条件としてございます。それから人勧がどういうふうな情勢で出てくるものであるかどうか。そういう意味におきまして、まだ確定すべき要件が全く整っていない状況だろうと思います。
  144. 峯山昭範

    峯山昭範君 人事院総裁、もう一遍。  積み残しの分がありますから、少なくともその分は上積みされるわけですね。
  145. 内海倫

    政府委員(内海倫君) お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、人事院としましては厳密な在来の方式による調査によって民間給与との較差を出すわけでございますから、その較差としてあらわれてくる場合、今おっしゃったような過去のそういう差がその中にあらわれてくるのではなかろうか、これは調査結果を見ないとわかりませんが、私どもはそういうふうな想像を、あるいは推定をいたしております。
  146. 峯山昭範

    峯山昭範君 GNPの動きですね、これは大蔵大臣、どういうふうにお考えですか。
  147. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一応今予測しておる数値はございますけれども、まさに今総理からもお答えがありましたように、これはあくまでも見込みでございますので変動する要素はございます。
  148. 峯山昭範

    峯山昭範君 経企庁長官、どうですか。
  149. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 一応GNPの数字は発表しておりますが、私は今の世界経済の動向等から推しましてこれは動く可能性は十分あると、このように思います。
  150. 峯山昭範

    峯山昭範君 大蔵大臣、このGNP一%の問題と絡んで人勧の積み残し四・四四%あるわけでございますが、GNP一%を突破しないようにするためにはGNPは幾らにならぬといけませんか、最低限。
  151. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それは人事院勧告が出た段階でその数値をもとにしてさまざまな検討を行うべき問題でございますので、今からそれを予見して計算するというのはこれは難しいことだと思います。こういう前提で竹下君、おまえ計算してみる、こうおっしゃれば別でございますが、私の方から予見して申し上げる性質のものではなかろうと、このように思います。
  152. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは人事院総裁、人勧ですね、積み残し四・四四%ですから、最低見積もっても五%ぐらいにはなるんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  153. 内海倫

    政府委員(内海倫君) たびたびお答え申し上げておりますように、較差が出てくるものと、こう考えております。ただし、数字をもってお答えするということは、今まだ調査をこれからとらなければいけないところでございますから、何とも申し上げかねます。
  154. 峯山昭範

    峯山昭範君 竹下大蔵大臣、数字をもって申し上げるわけにはいかぬとおっしゃっていますが、人勧四%を実施するというためにはどうなりますか。
  155. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 防衛費の中の人件費は一%が約百二十億でございますので、四%ということになりますと四百八十億程度ということになろうかと思います。
  156. 峯山昭範

    峯山昭範君 いや、そのときGNPはどのくらい。
  157. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 私が申し上げましたのは、四%の所要額が四百八十億と申し上げたわけでございますが、予算の中に一%を計上してございます。それからいわゆる一%とのすき間が二百五十億余りございます。そういう要素も勘案しなければならぬと思います。
  158. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理、いずれにしましてもこれは絶対絶命に立たされているわけですけれども、こういうことはやっぱりもう少しわかりやすく、前に衆議院でも議論になりましたように、GNPの一%枠を突破することもやむを得ないか、あるいは給与改善のこれを一%の枠内に抑えるか、あるいはこの防衛費のいわゆる正面装備の費用を抑えるか、そのどっちかということになってくるわけだと私は思うんですが、そういう点をあわせまして、総理、もう一遍この問題についての御答弁をお願いしたい。
  159. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく三木内閣の決定を守っていく方針であると申し上げておるとおりでございます。
  160. 峯山昭範

    峯山昭範君 これ、もうちょっと歯どめとしてお伺いしておきたいと思いますが、これは防衛庁にお伺いします。  防衛関係費の定義及び具体的な項目について御説明願いたい。
  161. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 政府委員から答弁させます。
  162. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) お答えいたします。  防衛関係費は、御承知のように主要経費としての防衛関係費をとっておりまして、内容といたしましては防衛本庁の経費、防衛施設庁の経費、それから国防会議の経費、それからことしはございませんけれども、時に過去にございましたが、大蔵省の経費でございますけれども、特特会計に繰り入れる経費というものが中身でございます。
  163. 峯山昭範

    峯山昭範君 防衛関係費の枠の移動なんということは考えていませんね。
  164. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) お答えいたします。  考えておりません。
  165. 峯山昭範

    峯山昭範君 ぜひそういうふうな意味総理、この一%という問題は国民のコンセンサスにもなりつつありますので、守っていただきたいと思います。  次に、シーレーン防衛についてお伺いをいたします。  最近、アメリカの国防報告並びにいろんな報告の中でシーレーン防衛が大きな問題になりつつあります。そこで、総理のシーレーン防衛に対する基本的なお考えを初めにお伺いしたいと思います。
  166. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国防の基本方針及び防衛計画大綱の水準に近づく努力ということで今防衛力の整備をやっております。その中におきましてシーレーンという概念がまず問題でございますけれども、これはいろんなものの組み合わせである。海上防備活動、こう言っておりまして、その中には周辺数百海里における警備活動、あるいは港湾あるいは港湾周辺の防衛、あるいは海峡の防備活動、そういうようないろんなものの総合的組み合わせでそれをシーレーンと、要するに海上交通路と申します。それは必ずしも航路帯を意味しません。日本の周辺近海に必要物資を積んで日本の船舶がうようよ動いているわけです。そういうものを全体を守っていくという意味にもなりますし、それから必要な海岸あるいは港湾を守っていくというものもあります。全部これシーレーンという概念の中に入ってくるわけであります。
  167. 峯山昭範

    峯山昭範君 先般の国防報告等の問題が今議論になっているわけでございますが、総理、先般の記事の中身は、それぞれマスコミのいろんな記事によりまして内容は多少ずつ違いますが、総理日本が一千海里までのシーレーン防衛をする意思があることを再度表明したとか、鈴木総理の八一年五月の日本の領土、領空及び一千海里のシーレーン防衛憲法で許されているものであり、事実上日本国家政策になっていると言明した、中曽根首相はさらに率直に米国との役割分担のもとでの日本責任ある姿を表明した、こういうふうないろんな記事があるわけでありますが、特にこのシーレーン防衛国家政策であるという問題ですね、この点について総理のお考えをお伺いしたい。
  168. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは鈴木総理がアメリカへ参りましたときにナショナル・プレスクラブで講演をし、質問に応じて答えた、それが端緒になって公にされ、国際的に流通されていることになったと思いますが、これはいわゆる国家間の約束という意味における公約ではありません。日本側の政策意図の表明である、このようにお考え願いたいと思うのであります。もとよりこれは公式の国際的なプレスセンターで日本総理大臣が発言したことでありますから、それなりの重みを持っておる言葉である、そのように解釈しております。
  169. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは防衛当局にお伺いをしておきます。  シーレーン防衛についての基本的なお考えについて防衛庁としてはどうお考えか。
  170. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 今、総理からお答えになりましたが、私どもは、いわゆるシーレーン防衛というのは、我が国が有事の場合に国民の生存を維持をする、また継戦能力を確保する、そのために護衛をする、哨戒をする、あるいは港湾とか海峡の防備をする、そういうもろもろの諸作戦の累積効果によって海上交通の安全を確保する、そういうことをシーレーン防衛の目的としております。したがいまして、これは線であるとか面であるとか、そういったことに重点を置くんじゃなくて、海上交通の安全を確保する、そこに重点を置いておると、こういうように御理解を賜りたいと思います。
  171. 峯山昭範

    峯山昭範君 海上交通の安全という点を強調されましたが、それはどの程度まで考えておられますか。
  172. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 先ほど来お話が出ておりますように、我が国といたしましては、この海上防衛力の整備に当たりまして周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の海域におきまして海上交通の安全を確保していくことができるような防衛力を整備したいと、こういうふうに考えておるわけでございます。  それで、しからば一体どの程度できるかというふうなお尋ねでございますが、この海上交通の保護と安全の確保ということは、一〇〇%できるとかできないというふうに単純に割り切ることは難しい問題でございまして、作戦期間中の累積効果でございますとか、あるいは相手方がどの程度の被害に耐えられるかといったような観点から論ぜられるべきものではないかと思っております。したがって、これは脅威の様相でありますとか、あるいは米軍の支援のあり方といったような多くの要因に左右されますから、これを一概に申し上げることはできないと思います。要するに重要なことは、米軍の支援ということと相まちまして、全体として抑止効果を発揮していくということが極めて重要なポイントであろうというふうに考えております。
  173. 峯山昭範

    峯山昭範君 防衛当局としましては、国防報告につきましては、もう既にすべて要約し、解釈しておられると思いますが、どのようにお考えですか。
  174. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) アメリカの今回の八五年度国防報告におきまして、日本の海上防衛考え方につきましていろいろなコメントがあることは承知をいたしております。この点は、アメリカとしては、有事におきまして安全保障条約に基づいて日本防衛のために出動してくるという義務を負っているわけでございますから、そういう立場からいいまして、日本防衛努力の問題につきまして関心を持ち、期待を寄せるということは、これは自然なことではないかと思っております。しかしながら、我が国の防衛力整備というのは、あくまでも日本の自主的な判断に立って日本の自衛のために必要最小限の範囲で実施していくべきものでございまして、従来からそういった考え方に立ちまして大綱水準の早期達成ということを基本にして努力を続けているわけでございます。
  175. 峯山昭範

    峯山昭範君 ラロック将軍の報告も最近出ているわけでございますが、これに対しては防衛庁当局はどういうふうに判断をしておられますか。
  176. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいまのお話は、ラロック元提督が主宰をしておられます民間の一研究所が報告書を公表されたというふうに承知をいたしております。したがいまして、これは一民間の機関の報告でございまして、アメリカの政府の見解を代表するものではないというふうに理解をいたしております。いずれにいたしましても、我が国としての基本的な考え方は、先ほど申し上げたとおりでございます。
  177. 峯山昭範

    峯山昭範君 委員長、あと午後で。
  178. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時に、委員会を再開し、峯山君の質疑を続けます。  これにて休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ―――――・―――――    午後一時二分開会
  179. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十九年度総予算三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、峯山昭範君の質疑を続けます。峯山君。
  180. 峯山昭範

    峯山昭範君 シーレーン防衛につきまして防衛大綱の中ではどういうふうにうたわれておりますか、御説明願います。
  181. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) シーレーン防衛につきましては、防衛計画の大綱の中に「陸上、海上及び航空自衛隊の体制」という項がございまして、その中の二番目に海上自衛隊についての記述がございます。その中に「海上における侵略等の事態に対応し得るよう」云々というふうなこととか、あるいは二番目に「沿岸海域の警戒及び防備を目的とする」というふうなこととか、あるいは三番目の「重要港湾、主要海峡等の警戒、防備及び掃海」といったようなこととか、四番目に「周辺海域の監視哨戒及び海上護衛等」というふうな表現で各種の部隊の能力を備えるということを書いておるわけでございまして、こういったようなものが、先ほど大臣からお答え申し上げましたような各種の作戦能力を持つことになるわけでございます。
  182. 峯山昭範

    峯山昭範君 具体的な能力としてはどの程度を見込んでおられますか。
  183. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) これは防衛計画の大綱の別表に目標とすべき水準が書かれておるわけでございまして、海上自衛隊の場合は、基幹部隊として申し上げますと、機動運用いたします対潜水上艦艇部隊が四個護衛隊群、それから五つの地方隊に所属する対潜水上艦艇部隊が十個隊、それから潜水艦部隊が六個隊、それから掃海部隊は二個掃海隊群、陸上対潜機部隊、飛行機でございますが、これが十六個隊、こういう基幹部隊を備えるということにいたしておりまして、それを構成すべき主要装備といたしましては、対潜水上艦艇が約六十隻、潜水艦が十六隻、作戦用航空機としては約二百二十機といったものを整備したいという考え方を持っておるわけでございます。
  184. 峯山昭範

    峯山昭範君 それによりましてどの程度の海域が守れるわけですか。
  185. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) この点は先ほども申し上げたところでございますけれども、海上防衛力といたしましては我が国周辺数百海里、それから航路帯を設ける場合にはおおむね一千海里程度の海域、これを防衛する能力を持つということを目標といたしまして海上防衛力の整備をしているという考え方でございます。
  186. 峯山昭範

    峯山昭範君 能力を持つということと、実際に守るということは違いますね。
  187. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 先ほども申し上げましたように、実際の海上交通安全保護の作戦というものは事態の様相に応じまして千差万別であろうかと思います。したがいまして、この点は先ほども申し上げましたように、一〇〇%守れるとかあるいは守れないとかいうふうに一概に割り切ることは困難な問題でございまして、要はこの諸作戦の累積効果がどの程度あらわれるか、あるいは相手方がどのくらいの被害に耐え得るかというふうなことで決まってくる問題でございます。私どもといたしましては、こういった大綱水準へ達成の努力を続けることによりまして、我が国の海上交通安全保護のための海上防衛力というものが増大をしていくというふうに考えておるわけでございます。
  188. 峯山昭範

    峯山昭範君 要するに、能力としては千海里先まで守れるけれども、大綱の中ではやはり周辺海域に限られる、こういうことでしょう。
  189. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 海上防衛力整備の考え方といたしましては、繰り返し御説明申し上げておりますように、周辺数百海里、あるいは航路帯を設ける場合はおおむね千海里程度の海域まで守れるということを目標にして防衛力整備をしているということでございます。
  190. 峯山昭範

    峯山昭範君 いや、ですから、能力を持っているということと、実際に守るということとは違うでしょう。
  191. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) そういった能力を目標といたしまして海上防衛力の整備を図っているわけでございますから、実際のオペレーションをする場合にもおのずからそういった制約、限界が生じてくるというふうに私どもは考えております。
  192. 峯山昭範

    峯山昭範君 限界はあくまでも周辺海域でしょう。
  193. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 繰り返し申し上げておりますように、周辺数百海里だけではございませんで、周辺数百海里及び航路帯を設ける場合には約千海里程度の海域を防衛することができるように防衛力整備を図っておるということでございます。
  194. 峯山昭範

    峯山昭範君 防衛庁長官、今の問題、防衛大綱の中には千海里なんてありませんよ。
  195. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) それは政府委員が申し上げたとおり、逐次、防衛計画の大綱後、あるいはその前の思想から、航路帯を設ける場合にはと、これは先ほど来からのいろいろ御質問を聞いておりますけれども、特定の航路帯を守るというのがシーレーン防衛ではございません。その航路帯というのは、海上交通の安全を確保するために必要な場合には一つの手段としてやる、そういうことでございますので、そういうふうに御理解を賜りたいと思います。
  196. 峯山昭範

    峯山昭範君 答弁になっていませんよ、委員長
  197. 西村尚治

    委員長西村尚治君) もう一回その趣旨をおっしゃってください。
  198. 峯山昭範

    峯山昭範君 要するに、防衛大綱の中には千海里先まで守るなんということはうたわれてないということです。あくまでも今まで周辺海域という言葉でうたわれているだけで、千海里先まで日本の自衛隊が行って守るなんということはうたわれていない。能力はありますよ。今私が何でこんなことを言うかといいますと、シーレーン防衛ということで、あたかも防衛庁の防衛白書の中やいろんなところでそういう問題がひとり歩きしているからです。
  199. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 千海里というのがどういう経過で出てきたか、これは政府委員から答弁をさせます。
  200. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) シーレーン防衛考え方といたしまして、我が国周辺数百海里、それから航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の海域ということを目標として防衛力整備をやっていこうという考え方は、大綱のときということだけではございませんで、三次防、四次防のころからそういったような考え方で防衛力整備を続けてきておるわけでございます。このことは当時からもいろいろ御説明したこともございますし、また大綱の作成の後においてもそういった説明はしばしば申し上げているところでございます。
  201. 峯山昭範

    峯山昭範君 それじゃ、三次防、四次防の中にその問題がどううたわれているか、一遍出してください。
  202. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 三次防、三次防衛力整備計画におきましては、 「第三次防衛力整備計画の大綱」というのが昭和四十一年十一月二十九日に決定されておりますが、そこで「海上自衛隊関係」といたしまして、「周辺海域の防衛能力および海上交通の安全確保能力を向上するため、護衛艦」、その他いろいろございますが、そういったものを「整備する。」というふうに書かれておりますし、またその同じ「第三次防衛力整備計画の主要項目」というのが昭和四十二年三月十三日に決定されておりますが、その中で「海上防衛力の強化」という項がございまして、「沿岸、海峡など周辺海域の防衛力の強化につとめるとともに、海上交通の安全確保能力を向上する。」というふうに書かれております。  それからまた、四次防におきましても、「第四次防衛力整備五か年計画の大綱」、これは昭和四十七年二月七日に決定をされておりますが、その「海上自衛隊」の項の中で、「周辺海域の防衛能力および海上交通の安全確保能力を向上するため、護衛艦」、その他いろいろ書いてございますが、「等の整備を行う。」というふうに述べておりますし、その「第四次防衛力整備五か年計画の主要項目」、これは四十七年十月九日に決定をされておりますが、その「海上自衛隊」の項の中で、「周辺海域の防衛能力および海上交通の安全確保能力を向上するため」、各種の装備が出ておりますが、そういうものを「整備する。」と、こういう表現で記載をされているところでございます。
  203. 峯山昭範

    峯山昭範君 今の答弁では不満です。いずれにしても、その頭は周辺海域以外の何物でもありません。千海里なんてどこにもありませんよ。
  204. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) この点は当時からしばしば国会でも御説明をしているわけでございまして……
  205. 峯山昭範

    峯山昭範君 国会の説明じゃなくて、大綱の中、大綱。四次防の中にあると言ったじゃないか、今。
  206. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 周辺海域数百海里あるいは航路帯を設ける場合には千海里程度の海域ということを……
  207. 峯山昭範

    峯山昭範君 ちょっと待て。大綱の中、三次防、四次防の中にあるとあなたはおっしゃったじゃないですか。その点答えてくださいよ。
  208. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) それは海上交通安全の確保を図っていくという考え方が出ておるということを申し上げているわけでございます。そして三次防、四次防の当時からそういうことを御説明申し上げておりますというふうに申し上げたわけでございます。
  209. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは委員長、私、時間もったいないんですけれどもね、ここのところはすべてごまかしなんです。「周辺海域の防衛能力および海上交通の安全確保能力」ということで、三次防、四次防は同じ言葉なんです。これは「周辺海域の防衛能力および海上交通の安全」ですから、すべて周辺海域にかかるわけです。それ以外のものの千海里なんというのはどこにもありません。資料があると言うのですから出してください、すぐ。
  210. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 先ほど申し上げましたのは、三次防、四次防の当時からそういった考え方を申し上げておりますというふうに申し上げたわけでございまして、それは例えば四次防のときでありますと、四十八年六月十九日の衆議院内閣委員会とかその他でも、そういった航路帯については千マイル程度を考えているというふうなことを御説明申し上げておるわけでございます。
  211. 峯山昭範

    峯山昭範君 国会での議論は議論です。国の方針は大綱、四次防、そのきちっとした方針で動いているわけですね。だから、国防会議なり閣議なり、そういうことできちっと決まっていないところでシーレーン防衛というのがひとり歩きしているわけです。私はそういうことは納得できません。きちっとした判断を示していただきたい。だめですよ、全然説明になっていない。
  212. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 矢崎防衛局長、そこをもう少し納得できるようによく説明してください。
  213. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) シーレーン防衛考え方につきましては、防衛計画の大綱の中に先ほど申し上げましたような書き方をしておるということでございまして、またその考え方がどういうことであるかという点につきましては、当時大綱を御決定いただきました国防会議におきましても御説明を申し上げておるところでございます。その際にも海上交通安全の確保のためには周辺数百海里あるいは航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の海域を防衛力整備の目標として考えているということを御説明申し上げまして、それを前提として当時国防会議での御決定もいただいていると、こういう経過があるわけでございます。
  214. 峯山昭範

    峯山昭範君 そんなことは全然防衛力大綱とかに全くないんだもの。冗談じゃないですよ。
  215. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  216. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それじゃ速記を起こして。  それでは、先ほどの峯山君の質疑に対して防衛庁長官から正式に御答弁願います。
  217. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 今までの経過につきましては後ほど政府委員から答弁をさせますが、私が午前中の質問でお答えをいたしましたとおり、シーレーン防衛というのは特定の線とか面とかを守るのではない、いわゆる海上交通の安全を確保する、そういうところに重点があるのだということを申し上げた。そして航路帯を設けるというのは、航路帯を設けるというのじゃなくて、設ける場合には一千海里、こういうことでございまして、具体的にまだ航路帯ができているわけじゃございません。そういうことを踏まえまして、今までの経過を政府委員から御答弁をさせます。
  218. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 我が国の海上防衛力の整備に当たりまして、我が国周辺数百海里、それから航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の海域を防衛し得るということを目標として整備をしていくという考え方で従来からやってきたものでございますという御説明を申し上げたわけでございますが、そのことは、先ほども申し上げましたように、大綱の時点で申し上げますと、大綱を決定いたしました五十一年の風防会議の席上におきまして、そういった従来からの考え方を踏まえてこの大綱の防衛力の整備水準を考えておりますということを御説明申し上げて御決定をいただいたという経緯が一つございます。  それから、政府が文書として出しましたものを申し上げますと、昭和五十七年七月十三日、これは参議院の秦議員質問に対する答弁書でございますが、その中におきましても、 「我が国は、我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合は、おおむね千海里程度の海域において、自衛の範囲内において海上交通保護を行い得ることを目標に、逐次海上防衛力の整備を打っているところであるがこというふうに述べております。それからまた、やや古くなりますけれども、例えば四十八年六月十九日の衆議院内閣委員会におきまして、当時の久保政府委員が、「航路帯については」ということで説明をいたしておりまして、まあ長くても千マイルぐらいであるというような趣旨の御答弁もした経緯もございます。この辺の御答弁の例は何回かその後もしばしばあるわけでございます。  従来の経過を御説明申し上げますと、以上のとおりでございます。
  219. 峯山昭範

    峯山昭範君 答弁なってませんね。全く答弁なってません。冗談じゃない。
  220. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔午後一時二十六分速記中止〕    〔午後一時三十八分速記開始〕
  221. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは速記を起こして。  峯山君に申し上げますが、今の問題につましてはいろいろ従来の経緯があるようでして、今ここですぐまとまった統一見解というわけにはどうもいかないようですから、とりあえず次の質問に移ってもらいまして、政府の方で改めてこの問題についての統一見解を出してもらうと、そういうことでひとつ続けてください。
  222. 峯山昭範

    峯山昭範君 それは政府の方からおっしゃっていただけますか。
  223. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それじゃ、だれか。
  224. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 委員長のお指図に従います。(「いつまでに」と呼ぶ者あり)
  225. 西村尚治

    委員長西村尚治君) できるだけ早い機会に出してもらいます。そういうことで御了承願います。(「予算委員会中に」「委員長、もう一遍正確に今のところ」と呼ぶ者あり)  それじゃ、改めて正確に申し上げます。  先ほどの御質問につきましては、いろいろ従来の経緯があるようでございますので、正式にまとめまして、できるだけ早い機会、もちろんこの予算委員会開会中に政府から統一見解を出してもらうということにいたしまして、次の問題に移っていただきたいと思います。
  226. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、ただいまの問題は留保いたしまして、次に移りたいと思います。  総理、お伺いいたしますが、特に最近、総理の諮問機関でございます平和問題研究会あるいは文化と教育に関する懇談会等の答申等が最近の新聞に随分出ておりますが、この二つについて概要を、総理はどういうふうにお考えなのか御説明をお願いしたいと思います。
  227. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) きのう平和問題研究会の中間答申をいただきました。その内容は主として日本の総合安全保障に関する所見をお寄せになりまして、主として経済的側面から日本の平和をどういうふうに保持していくかという所見が書かれておりました。私は内容を妥当なものであるだろうと思って、よく検討してみたいと思っております。教育に関するものは今いろいろ策定しておる段階でございまして、まだ私のところには来ておらぬと思っておりますが、近くお寄せいただけるのではないかと期待しております。
  228. 峯山昭範

    峯山昭範君 この後、教育の問題もやりたいと思っておりますし、総理が今お考えになっていらっしゃいます平和の問題も非常に大事な問題であると思います。  そこで、これはまず法制局長官にお伺いをします。  長官国家行政組織法の観点から申し上げまして、私的諮問機関というのがありますが、いわゆる私的諮問機関のあり方、どうあるべきなのか御見解をお伺いいたします。
  229. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  いわゆる私的諮問機関と、それから国家行政組織法の八条で言う審議会等との関係でございますが、私的諮問機関の場合には、これはいわゆる行政機関としての体をなしておるわけではございませんで、いわば一人一人のいわゆる学識経験者等の意見を聴取する場合に便宜的にそれを一堂に集まっていただきまして、そうして個々の意見を聴取する。したがいまして、いわば八条機関と違いますところは、その合議体的な性格を持っておりませんから、合議体としての意思決定なるものは形成されるわけではございません。それに比べましていわゆる八条機関は、これは行政機関としての合議体でございますから、したがいましてその各構成員の意思、見解、こういうものを超越した合議体としての行政機関としての意思決定がなされまして、それが公に表示されるというところが本質的な両者の違いであると思います。
  230. 峯山昭範

    峯山昭範君 行政管理庁にお伺いいたします。  行政管理庁としましては、私的諮問機関につきまして今まで数回にわたりまして通達を出しておりますが、その経緯並びに、特に「懇談会等行政運営上の会合の開催について」という問題と、「審議会と懇談会との差異について」という通達、この二つについて御説明願いたいと思います。
  231. 門田英郎

    政府委員(門田英郎君) お答え申し上げます。  先ほど法制局長官から御説明がございましたように、いわゆる私的諮問機関、懇談会のたぐいというのは、個々人の有識者の御意見を行政運営上の参考に供するために便宜上一堂に会していただいて会議という形で御意見を伺うという性格のものでございますし、片や国家行政組織法、現行八条における審議会等、これは合議制機関としての機関意思を決定するという性格のものである、法制局長官がお答えになったとおりでございます。  当庁といたしましては、昭和三十六年国会におきましていろいろと御論議がございました。当時の法制局長官、たしか林修三長官であったというふうに理解しておりますが、から詳しくそのあたりにつきましてのお答えがございました。これに基づきまして昭和三十六年四月十二日付で行政管理局長通達ということで各省に対しまして、いやしくもこの二つについての区分というものがあいまいになってはいけないという趣旨から、国会審議の際の政府答弁の要旨というものを申し上げると同時に、この懇談会等こういったものを府令、省令あるいは訓令というふうなもので規定するということは八条機関と紛らわしいということで、これは適当ではないということが一点。  それから第二に、そういった行政運営上の単なる会合というものにつきまして、その都度参会者に参集依頼状を発して開催するというのは、これは結構でございます、大臣決裁あるいは局長決裁などで関係書類に、例えば名称に懇談会でございますとか、あるいは協議会でございますとか、調査会でございますとか、こういった紛らわしいような名称を冠することは不適当ではないか。また、かたがた「設置する」というふうな言い方をしているケースも間々そのころ見られたわけであります。これも好ましくない、いろいろと疑いを招くおそれがあるので適当でないという趣旨の通達を発出している次第でございます。  その後、昭和五十一年でございますが、ただいま峯山委員御指摘のように……
  232. 峯山昭範

    峯山昭範君 三十八年三月の。
  233. 門田英郎

    政府委員(門田英郎君) 失礼いたしました。  昭和三十八年三月、これはいわゆる先ほど申し上げました私的懇談会、これと国家行政組織法八条における合議制機関、これとの差異、これにつきまして詳しく申し上げますと、国家行政組織を預かるという見地からその区分について通達したということではないのですが、いわばガイドラインと申しますか、基準というものを明定したわけでございます。  続きまして昭和五十一年、やはり国会におきましていろいろと紛らわしいという事例が起きたわけでございます。私どもの方としましては、その際に私的懇談会全体についての見直し、例えば今もう休眠的になっているような私的懇談会もそのころ若干認められたわけでございます。それの廃止あるいは時限のサンセット的な条項をつけるというふうな見直しを行うと同時に、やはり紛らわしさということを防がなければならないということから、局内における通達と申しますか、局内ガイドラインというものを設けまして、これに基づきまして各省に対し国家行政組織を預かるという見地からの指導をしてまいったという、こういういろいろないきさつがあるわけでございます。  以上でございます。
  234. 峯山昭範

    峯山昭範君 私は、特に総理、平和問題研究会あるいは今の教育の問題もそうでありますが、いずれにしても大事な問題であると思います。しかしながら、これはもう大変な問題を含んでいるということであります。いわゆる防衛大綱の見直しとか、シーレーンの防衛といいますのは国の防衛の根幹にかかわる問題であります。そういうふうな問題がなぜ私的諮問機関で議論されなければならないのか。しかも、先ほど法制局長官並びに行管庁当局から説明がありましたように、これは明らかに国家行政組織法に違反をいたしております。国家行政組織法を破ってやるということ自体は大変な問題が私はあると思います。少なくともこういう問題は、戦時中のいわゆる軍事国家が、旧憲法に基づく国家が世論操作をいたしました。そのときに陸軍や海軍の皆さん方が自分の好きな人たちを集めて、そして結局自分の意のままにいわゆる答申を出さして、そして国民をそういうふうな方向に導いていったという過去の苦い例があるわけであります。  総理の今回は私はそうであるとは思いません。総理総理なりに日本の将来のことを考えて特に重要な問題でありますから、それだけにこの問題をそうしたのであろうと思いますが、少なくとも、やるからにはやっぱり法律に照らしてきちっとした方向でやらなければいけないと思います。特に、現在の内閣につきましては総理のこの諮問機関だけではございませんで、厚生省の生倫懇にいたしましても、たくさんの四十三にわたる私的諮問機関があります。しかもそれは法律に違反した方向で歩んでいるということであります。この点について総理、どうお考えですか。
  235. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 平和問題研究会は、名前が研究会とありますように、私の知恵の及ばないことにつきまして個々の有識者の御意見を承る、こういう考えのもとにつくられたものでございます。その際に一人一人私からお尋ねするのも非常に煩瑣でもありますから、まとまっていただいて、私も出ますし、また御意見も文書でいただこうと、そういうことで、まとまった御意見があればまとまった御意見としていただくし、少数意見がある場合にはもちろん少数意見を添付していただく、そういう形で、合議体として初めからこういう合意をつくろうという目的でやっているのではなくして、諮問した総理大臣中曽根に対していろいろ自分の意見を伝達する、そういう趣旨でお願いしておるわけであります。  それから文化と教育に関する懇談会も同じで、これは何回か私出ておりますが、非常にさまざまな意見を皆さん持っております。必ずしも一致しておるものでもございません。今、ある段階的な過程における最終的なことをやっておりますが、一致している意見というものもあれば、一致できない意見もあれば、少数意見として書きたいという意見もあります。そういう状況でございますので、いわゆる国家行政組織法における八条の合議制機関というものとは非常に性格の異なった委員一人一人の個人的意見を私に進達する、あるいは伝達する、そういう仕組みで今行われておるものなのでございます。
  236. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは法制局長官、今の総理の答弁でいいですか。
  237. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 総理のただいまの御自分が主宰されておる、また御意見を伺っておるいろいろの私的諮問機関、あるいは八条の審議会等につきましての御発言は、そのとおりであると思います。
  238. 峯山昭範

    峯山昭範君 法制局長官、あなたの答弁は前の国会、当時問題になりました林元法制局長官の答弁とは全く違いますね。訂正ですか。
  239. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ただいま御引用になりました林元長官の御答弁というのはどういうものかわかりませんが、今までのいろいろ昔の国会における林さんの御答弁あたりを拝聴いたしますれば、ただいま私が申し上げたことと大体同じじゃないか、同じ方向あるいは同じ内容のものではないかと思います。
  240. 峯山昭範

    峯山昭範君 先ほどあなたが初めに答弁した内容と、今の総理のおっしゃったこととは全く違いますよ。
  241. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 私の拝聴した限りにおきましては、特に問題はないのではないかというふうに思います。
  242. 峯山昭範

    峯山昭範君 もう時間がないから余りやれませんけれども、要するに林法制局長官の答弁を読んでみますと、「何人かの人をある問題についてずっと呼んで委員各自の意見を聞く、もちろんその委員、人、個人々々の意見を聞くわけです。これは今の八条に抵触しない」、これは総理がおっしゃったとおりです。「一方には、しかし、一つの組織体を作って、その組織体としての意見をそこで出させるということは、この八条の方でございます。」と、明確じゃありませんか。
  243. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 私が先ほど一般論として申し上げたところは、まさにそのような趣旨のことを申し上げたつもりでございます。
  244. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理の答弁と違うじゃないですか。総理がやっていること違うじゃないですか。
  245. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 総理も、先ほどおっしゃったのはやはり……
  246. 峯山昭範

    峯山昭範君 組織体。
  247. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 組織体というお話はされておりませんで、あくまでも個々の有識者の意見を聞きたいということで便宜一堂に集まっていただいたということを御答弁でございます。
  248. 峯山昭範

    峯山昭範君 冗談じゃない。平和問題研究会という組織体じゃないですか。納得できません。組織体をつくっているじゃないですか、ちゃんと。答申を山さしているじゃないですか。冗談じゃないです。
  249. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 平和問題研究会というようなまあ名前をつけておるわけですが、これ、会長とかそういうようなものは……
  250. 峯山昭範

    峯山昭範君 いやいや、名前のいかんにかかわらずとなっているんです。
  251. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうようなものは、会長とかなんとかいうものがいるのではないのです。議論の進行役だとか……
  252. 峯山昭範

    峯山昭範君 座長があるじゃないですか。同じことですよ。
  253. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから、まとめ役とか、あるいは司会者とか、そういう意味の者はおります。これはやはり私が意見を聞いたり、私が不在の場合にその意見をまとめたり、あるいは合わないところは合わないというふうに整理する、そういう意味で座長という者はおります。懇談会におきましても、懇談会ですから会長という者はおりません。全体としての一致した意見を合議して、じゃ、これで進達しようという性格のものではございまん。個々の意見をまとめ、合わないところは合わない、合っているところは合っていると。    〔峯山昭範君「ごまかしですよ、それはごまかしです」と述ぶ〕
  254. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうようなわけで私に御報告願っているわけです。きのういただいたものも大体そういう性格のものであると考えております。    〔峯山昭範君「そんなのは答弁にならない」と述ぶ〕
  255. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 峯山君、納得できないなら、納得できないところをもう一度立って質問してください。座ったままじゃ寸私語になりますから。
  256. 峯山昭範

    峯山昭範君 行管庁、どうなんですか。
  257. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) この各種の懇談会、これが八条機関と紛らわしい運営があるではないかということで、従来からしばしば峯山さんからもいろんな御意見があったことは承知をいたしております。ただ、やはり八条機関といいますと、先ほど総理からも御答弁がございましたし、結局一つのまとまった合議体としての結論を出して、それを行政の上に反映さしていく、まあこういうことでしょうが……
  258. 峯山昭範

    峯山昭範君 行政の上に反映させるというのがまずいんですよ。
  259. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) いや、いわゆる懇談会の方は、これは各省庁がやはり行政推進のために各方面の専門家あるいは学識経験者等からの意見をよく承って、それを参考にしてやっていく、しかしそのときの懇談会は、懇談会という合議体としてのまとまった意見ではない、それぞれの各人各人の御意見を拝聴さしていただく、こういうことで明確に区別をしております。ただ、外から見ますと、峯山さんおっしゃるように、これは政府が隠れみののように使っておるではないかという御疑念を持つような場面が私は従来なかったとは申しません。そこで、行管庁としては累次にわたってこの区別をはっきりしなさいということを各省にお願いをし、一番最近では五十七年でございましたか、やはりこれは峯山さんの御質問の結果じゃないかと思うのですが、当時の中曽根行政管理庁長官が閣議の席において、明確に各省はこれを区別をして間違いのないようにしてもらいたいという閣議発言があり、今日各省は私は十分そこらの点は理解をしていただいて、間違いのない運営をしていただいておると、かように考えるわけでございます。  そこで、審議会の数等も大体四十二、三で、特別に最近それがふえて、隠れみのにどんどん使っておるといったような事実は、私は全く行管庁としては認めておりません。ただ、先ほど言いますように、外部からいろんな隠れみのではないかといったような疑念を抱かれることのないように、政府としては今後とも十分戒心をしてまいりたい、かように考えるわけでございます。
  260. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは総理、明確な通達がありましてね、これは委員長も聞いておいてもらいたいんですけれども、「いわゆる懇談会にあっては、合議機関としての意思が表明されることなく、出席者の意見が表明されるにとどまるところにあります。したがいまして、懇談会は、出席者の意見の表明又は意見の交換の場であるにすぎないのであります。」と、これが私的諮問機関ですよ。ところが、私的諮問機関をはみ出していますよ、明らかに。
  261. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 平和問題研究会あるいは文化と教育に関する懇談会をつくるにつきまして、今、後藤田さんからお話し申し上げましたように、私も行管長官のときにそういう発言を閣議でした責任者でありますから、その点はよく注意してやってきたつもりでございます。  平和問題研究会にいたしましても、この平和問題というものをどういうふうに国民皆さん考えているか、考うべきであるか、そういうふうに自分は知りたいと、そう思いまして、さまざまな人に御参加を願って、学者もあればジャーナリストもある、外交官もある、そういういろんな人のさまざまな意見を実はお聞きして非常にいい勉強をしておるわけであります。私は、時間があればできるだけ出て直接お聞きもしておるわけであります。それから文化と教育に関する懇談会も、田中美知太郎さんのような哲学者もおれば、曽野さんみたいな小説家もおれば、そういうようなさまざまな方々が教育問題というものをどういうふうにとらえているかという面で、これもまたいろいろ御発言を願ってお聞きしておるのであります。これも非常にいい勉強をさしていただいております。  そういうような形で、いろいろ出た議論で、まとまったものがあればまとまったものを、まとまらないものがあればまとまらないものをそのまま私のところへ御伝達願う。みんなでこういうふうに決議しようとか、こういうふうな意思をまとめようとか、そういうような考えでやっているのではないのであります。ですから、メンバーを見ましても、全く違うジャンルの方々がお集まりになっていろいろ自分の好きな議論をしていただく、そういう形でやっておりますもので、御了承を願いたいと思います。
  262. 峯山昭範

    峯山昭範君 私は、内容については当然いい面もあるでしょう、しかし大事な問題が含まれております。しかしながら、国家行政組織法に違反しているということは間違いない事実であります。これは何とかしてもらわないと困ります。
  263. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、最初に申し上げましたように私も非常によく注意をいたしまして、そして設立の当初からそういう趣旨で開き、委員皆さんもそういうお考えでやっていただいておるのでございます。したがいまして、そういう自覚の上に立ってやっているという御認識をいただきまして御了承いただきたいと思うのであります。
  264. 峯山昭範

    峯山昭範君 了承できませんな、本当に。
  265. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  266. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  267. 峯山昭範

    峯山昭範君 もう一言だけ言います。  総理ね、総理が言う認識と違いますのは、総理が自分だけ勉強してこうしたいということとは違うんです。総理国会の答弁の中で、例えば中教審というのは八条機関、きちっと法律に基づいた機関です。教育臨調をつくるに当たっては、いままでの長い間の議論を踏まえたその問題を一つの柱とし、もう一つは、教育と文化を考える懇談会のこの答申をいただいて、これを二つの柱とすると答弁なさっていますね。ということ自体、私的諮問機関を完全に行政の中に取り込んでいるじゃありませんか、あなた自身が。だから明らかにこれは国家行政組織法に違反をしているし、法制局長官の答弁もまさに三百代言以外の何物でもありませんよ。
  268. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 片方の中教審の答申は、歴代の答申の蓄積がありますから、それも柱にしなけりゃならぬと思います。しかし、新しい機関をつくる、どういう機関をつくったらいいだろうか、どういう方向でそれは運営したらいいだろうか、そういう問題については文化と教育に関する懇談会の皆様方がどういうふうな意見を持っているか、国民が今何を感じているか、そういうことを自分の身に吸収して、そしてその両方を考えつつ、じゃ、どういう新しい機関の構成、運営をやったらいいか、そういう材料にしようという意味で申し上げておるのであります。
  269. 峯山昭範

    峯山昭範君 それがまずいんです。ですから、これは委員長、もう一回検討してくださいよ。中身の問題じゃないんですから、国家行政組織法に違反しておるんですから。
  270. 西村尚治

    委員長西村尚治君) いや、総理は違反しないつもりでやっておるという……
  271. 峯山昭範

    峯山昭範君 いやいや、違反していますよ、明らかに。冗談じゃないです。
  272. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは私が個人的に、そういう機関をどういうふうにつくったらいいか、そういう構想を練るに際して、個人的にいろいろ勉強をしてそういう蓄積と教養を高めた上でどういう機関にするかという発想を考えたい、その一つの資料として、今申し上げた文化と教育に関する懇談会、何を考えてどういうことを人々が言っているかということを自分が個人で吸収した上でまたその機関を考えようと。片方では既にできている中教審の答申というのがございますから、これもひとつ片方の足場に考えてみよう、私個人がそういうような発想を持つについてその資料を得たいと、そういう意味でやっておるので、片方は公的機関のしっかりした決議であります。片方は私的な研究会であります。しかし、ともに私個人から見れば貴重なものになるだろうと思うし、新しい機関をつくるについて必要な資料を十分そこから提供を受けるであろう、私はそう期待しておるんです。そういう意味において、片方は公的であり片方は私的であるということは別に矛盾するものではない。それが私というものに吸収されていくものであると、そういうふうにお考え願いたいと思います。
  273. 峯山昭範

    峯山昭範君 いやいや、それはあきません。今の総理の答弁がまずいんです。
  274. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  275. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。  藤波官房長官
  276. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 御指摘をいただいておりますように、私的懇談会と国家行政組織法の第八条に基づきます審議会と、その意味合いを混同させないように十分注意をしていかなきゃいかぬ、かつて行政管理庁からの注意も出ておるところでございます。各方面の御意見を聞いて行政を運営していきたい、こういう気持ちに立って一人一人有識者から総理が御意見を聞きたい、あるいは政府部内の各方面でいろんな御意見を聞いて行政を運営していきたい。そういう気持ちからこの懇談会を設けて、それぞれ御意見を寄せていただいておるところでございますが、その御意見の集約されたものが新聞などに出ますものですから、いろいろと先生から御指摘をいただいておるように、第八条と混同していくではないかというような御指摘もまたあるかと思うのでございます。今後、ただいま予算委員長からの御注意もございまして、国家行政組織法第八条に基づく審議会とこういった私的懇談会とその運営について十分注意をして進んでいくようにという今御指導もいただいたところでございますので、今後の運営について十分注意をしてまいりたい、このように考える次第でございます。
  277. 峯山昭範

    峯山昭範君 この問題はいずれにしましても私は大事な問題であると思いますし、大事なことを進めるに当たってやっぱり法律に基づいてきちっとやっていただきたい、こういうふうに考えているわけであります。総理の御答弁を。
  278. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいま官房長官が申し上げましたようにこれからも運営してまいりたいと思います。
  279. 峯山昭範

    峯山昭範君 教育の改革、非常に大事な問題であります。教育政治が介入しないということはもう当然の原則であります。また、教育国家百年の大計でもありますし、そういうふうな意味で非常に大事な問題であるということは我々も今認識をしているところであります。  総理総理は今教育問題に取り組んでおられるわけでございますが、総理が現在の教育の中で特にこういう点が問題である、こういう点を解決しなければならないという点についてお聞かせいただきたいと思います。
  280. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いいところはそれでは省略いたしますが、欠陥と思われる点を指摘せよということでございますから、一つは非常に硬直的な体系になり過ぎてはいないか、もう少し選択性とか多様性というものを考えていいんではないだろうか。あるいは試験制度あるいは人間の評価制度において、偏差値であるとかあるいは共通一次テストであるとか、そういうような試験制度等においてこれは大いに改革すべき点があるのではないだろうか。あるいは生涯教育という面から見てこれは非常に欠陥がある制度ではないであろうか。結局それは社会制度にもよりますけれども、学歴偏重というようなものからあるべき教育の体系というものがゆがめられてきているという点があるのではないか等々の点は問題であるだろうと思います。
  281. 峯山昭範

    峯山昭範君 非常に時間が短くなってまいりましたので、端的にお伺いをしたいと思います。  我が党の矢野書記長が衆議院における質問におきまして特に教育問題を取り上げたわけでございますが、その中の特に教育基本法を変える考えがないという点につきましては、総理の御答弁の中にもあるわけでございます。それからもう一つ、その中の特に四条の義務教育年限九年という問題ですね。これも当然変える必要はないんじゃないかという答弁があったわけでございますが、これはこのとおりでございますか。
  282. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は矢野書記長にお答えしたとおり自分は考えております。
  283. 峯山昭範

    峯山昭範君 文部大臣にお伺いいたしますが、この問題につきまして、これは文部大臣はどういうふうにお考えなんですか。三月十日の予算委員会におきまして文部大臣は、義務教育九年制は必ずしも変えなければならないとは思わないがという前提はありますが、九年が適切かどうか新しい審議機関で検討してもらう課題だと、こういうふうに御答弁しておられますが、総理のお考えとはちょっと内容的に違うように思いますが。
  284. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 我が国の義務教育は九年間、これも戦後の教育の中で定着をいたしております。したがいまして、義務教育の九年という年限を変えるような考え方は必要ではないのではないかというふうに総理はお答えになっております。私が申し上げました趣旨は、これから新しく設けられるであろう審議機関において、義務教育はどのような形で行われるかということについて、私どもからとやかく今どれだけで行うべきであるかとか、九年であるべきであるとか、このようなことを申し上げることはむしろ越権で、新しい機関の皆さんでお考えをいただくことが妥当ではないだろうか。ただ総理大臣としては、九年のこの義務教育日本にとって今非常に定着しておることでもあるし、そしてまた教育基本法の第四条で定められておることでもございますし、その点については今改めて検討を加える必要がないのではないかと、このように総理考えておられる。新しい教育機関でお考えをいただくこととは別個の問題である、私はこのような意味で申し上げたつもりでございます。
  285. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理大臣と食い違いはないということですね。
  286. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) ございません。
  287. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは次に、婦人問題について一言お伺いしたいと思います。  婦人問題、非常に重要な問題になっております。特に私たちは婦人の地位の向上を目指して現在までさまざまな活動をやってきたわけでございますが、今国会におきましても男女雇用平等法案、あるいは私たちが今研究をいたしておりますパート労働法等いろいろと研究をし、また全国各地で活発な請願署名運動等も行われているわけでございますが、もう既に、総理、機も熟してきたと私は思っているわけでございますが、この二つの問題について総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  288. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 差別撤廃条約につきましては、六十年度批准を目指して諸般の準備態勢を整えていくべく努力しておるところでございます。特に問題は雇用平等法の問題でございますが、この点も今各省が精力的に詰めをしておる状態でございまして、ぜひ間に合うようにやりたいと思って努力しておるところでございます。
  289. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 中野鉄造君の関連質疑を許します。中野君。
  290. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この問題につきましては、労基法制定以来の我が国の労働問題の基本にかかわるものでありまして、他面、我が国における男女平等へのプロセスからいえば、婦人参政権制定に次ぐ歴史的な大改革であると、このように私は認識しております。したがいまして、これが立法への基本的観点について総理はどのようにお考えになっておりますか、お尋ねをいたします。
  291. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは国際婦人年等もありまして、国際連合を中心にした世界的運動の一環として行われておるものでございますから、日本もこの大きな世界の波におくれてはならない。日本は少なくとも先進工業国家、自由民主主義国家と言われておる国でございますから、そういう意味においてもおくれてはならないと、そのように考えております。それからそういう点において、いまの条約の問題あるいは諸般の法律の整備の問題、あるいはそのほかの一般的、社会的取り扱いの問題等もあると思います。そういう諸般の問題について改革を加えていきたいと思っております。
  292. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 労働大臣にお尋ねいたしますが、今国会にこの男女雇用平等法を提出することを過般の衆議院において明らかにされておりますが、その後の婦人少年問題審議会での進捗状況、そしてこれが答申の時期と法案を提出される時期の見通しはどのように思っていらっしゃいますか。
  293. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) ただいま婦人少年問題審議会でいよいよ大詰めという感じでございまして、最後の仕上げを目指して今一生懸命審議を促進しておられます。特に最近は公益委員の方からたたき台を出しまして、それを中心にして今精力的に煮詰められておるわけでございまして、私どもも、ひとつせっかく実効性のある案を出していただいて、そしてできるだけ速やかに今国会に提出をいたしたい、審議会の審議をどうぞ早くしっかりやってくださいとお願いをしておるところであります。
  294. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 関連する問題でございますが、今日女性のパートや臨時雇いが激増しております。そういう現状から見ましても、これを無視した雇用平等法ではやはりこれは画餅に等しいのじゃないかと、このように思うわけですが、このパート労働の今後の取り扱い、すなわちパート労働法も並行してお考えになっているのかどうか、この点についてお尋ねいたします。
  295. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) お答えいたします。  パート労働者が大変ふえているということはよく認識しておりまして、その対策が急がれているということも承知しておりますが、パート労働者につきましては、総合的な対策、基本対策というようなものをまとめるという形でただいま労働省としては進めているところでございます。
  296. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 これは法案として提出される予定はありますか。
  297. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 現在の段階では、まだ法案として提出する予定になっておりません。
  298. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 では、先ほど申しましたように、このパート労働法が別だとすればこれは画餅に等しいということを私申しましたけれども、私の危惧はこれは余計な心配でしょうか。いかがでしょうか。
  299. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 法案を同時に提出するという予定ではございませんが、パートタイム対策については総合的に取り組むということにいたしたいと存じております。
  300. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 先ほど労働大臣が申されましたこのたたき台ともいうべき試案では、募集・採用を努力義務としておる、いわゆる何々に努めること、その他については罰則なしの訓示規定と、このようになっております。強行規定とは、いわゆる何々ねばならないと、こういうように私は解釈しておりまして、ここには罰則つきの強行規定はないと、このように思えるんですが、いかがですか。
  301. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 公益委員のたたき台には罰則つきということに触れた場所はございません。
  302. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 これではやはり実効あるもの、また実効を持続的に確保するということは困難ではないかと思いますが、いかがですか。
  303. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 審議会が長い間時間をかけて審議をしていただいているわけでございますが、その中で罰則をつけるべきだという御意見が出たことは確かでございます。しかし同時に、罰則をつけることは適当でないという御意見もございまして、そういう状況を熟慮された結果、公益委員のたたき台の中では罰則つきということになっていないものと理解しております。
  304. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この問題に対しまして、御承知のように目下労使の対立が続いております。なかんずく日経連あたりは強くこれに反対しているわけですが、こういう気配りから、法案提出をぎりぎりまでおくらせて、時間切れを理由に不完全なままの成立を図ろうとされるのではないかという危惧を私は持つわけでございます。と同時に、何かしら審議会で今検討中だからといったような審議会任せの感を強くいたします。したがって、審議会の答申は答申といたしましても、政府は政府として具体的素案ぐらいは時期的にもうお示しになってもいいのではないかと思うんですが、いかがですか。
  305. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 確かにこの問題は労使双方で意見の違う点もございます。しかしその一面、使用者側と言われる、財界と言われる方々の中でも意見が違う点もあります。それはいままでの日本経済の主流は第二次産業であったのですけれども、最近はもう第三次産業のウエートが大きくなったわけでありますから、構造変化が起こっておりますね。その三次の方に女性が必要であり、また進出をしておるんです。ですから使用者側の中でも意見は違うんです。また、御婦人の中でも、私は男と一緒の条件で働きますという、そういうキャリアウーマンの方もたくさん出てこられるわけでありますし、また一面、いや、いままでの基準法の保護を残しておいてほしいという方もあるわけでございます。ですから、そう労使だけで割り切れる問題ではないわけでございますけれども、いま委員がおっしゃったように、男女の雇用平等法、平等法というよりも、男女の雇用における機会均等がまず大事で、その結果平等法でありますけれども、その機会均等をどうしてもやっぱりこの際実現をするということが、国際的にも条約を批准する点も大事でありましょうけれども、日本の社会の活力というか、経済社会の進歩といいましょうか、そこに女性の力がうまく入ってくるということになりますと、私はあなたのおっしゃるように大変な大改革の転換期だ、これは非常に大事なときだと、こう思っておるわけでございます。  そこで、しかしどうしてもこれは大事なことでありまするし、タイムリミットもかかっておるようなことでございますので、審議会はこれは五十三年からお願いしておるわけでありまして、五十七年からは本格的であります、相当かけてやっておるんです。ですから、ここは潮どきだと思いまして、なるべく早く何らかの結論をいただいて、私どもがそこで責任のある案をまとめて、国会に上程をいたしまして御審議を願いたい、こう思っておりますのでよろしくお願いします。
  306. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 最後に総理にお尋ねいたしますが、先ほども申し述べましたように、これは歴史的な大改革でもあるわけでございます。したがって、ILOの精神にのっとった実効あるものでなければならないし、また実効あらしめるべく司法的、行政的措置がなければ、これはやがてざる法になってしまうのじゃないか、こういうように思います。したがって、事は婦人の人権に関する問題でございますが、再度総理の御決意をお尋ねいたします。
  307. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国連の婦人年が設けられました趣旨にものっとりまして、男女の機会均等等を確保していくという精神に基づいて立法措置もやっていきたいと思いますが、しかしやはり日本の社会の実情に即した面もある程度持たせませんと、余り理想主義にのみ走ったことでやりますと、かえって雇用のチャンスを減らすという危険性もなきにしもあらずです。そういう意味におきましては、やはり日本の社会、雇用の実態、そういうものも踏まえつつ前進していくという形で妥当な案をつくっていくべきであると思っております。
  308. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 終わります。
  309. 峯山昭範

    峯山昭範君 外交問題について二、三お伺いしたいと思います。  伝えられるところによりますと、イーグルバーガー米国務次官の演説で、レーガン政権が米国の今後の外交方針を大西洋から太平洋、すなわち欧州からアジアヘ重点を移すという政策転換を目指している、このことが明らかにされたと、こういうふうに報道をされております。これが事実といたしますと、これはまさに日本への米国の傾斜を意味するものでありますし、特に貿易、経済、政治、軍事などの各分野での日本への要求あるいは関心がいままで以上に強まるのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、総理はこのレーガン政権のこうした外交政策の重心の移行、これをどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、あるいは日本への影響をどういうふうに見ていらっしゃるか、これをお伺いしてみたいと思います。
  310. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、レーガン政権は割合に物事をグローバルベースで考える政権だと思います。ややもすれば、今まで数年前までは大西洋方面が偏重されていた嫌いがなきにしもあらずであると我々は考えておりましたが、レーガン政権になってからは太平洋問題あるいは北東太平洋方面というものをかなり重視してきている。カーター政権のときには、例えば韓国から撤兵するというようなことが初め言われましたけれども、レーガン政権のときにはむしろ重視する、そういう形になってまいりまして、グローバルベースで物を考える政権の性格が強い、そう考えております。
  311. 峯山昭範

    峯山昭範君 それから総理、この総括質問が終わりましたら総理は中国へ行かれるわけでございますが、中国訪問の目的、課題、こういうようなものについて総理はどういうふうにお考えになりますか。
  312. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先般、胡耀邦総書記の御来日をいただきまして、日中友好がさらに一段と促進されたと思います。その答礼の意味も含めまして、最近における国際関係あるいはアジア情勢、あるいは日中関係の政治、経済、文化の促進、こういうような全般的な問題について、中国の趙紫陽首相あるいは鄧小平顧問委員会主任、胡耀邦総書記、そのほか皆様方といろいろ隔意なき懇談をしてきたいと思っております。
  313. 峯山昭範

    峯山昭範君 米中ソあるいはアジア情勢の中で、総理として特に中国側とこの問題について話し合ってまいりたいというようなことは何かあるのでございますか。
  314. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日中二国間の問題を除きましては、やはり平和とそれから経済の問題が大きな関心事であると思います。そういう意味におきまして、世界的平和の確保の問題、これは東西関係の問題も含みます。それから朝鮮半島の平和確保の問題、あるいは東アジア地帯全般、あるいは南西アジア地帯、あるいは中近東に対する物の考え方等々、平和確保の問題をやはり取り上ぐべきであると思います。それと同時に、経済の問題等につきましても、世界経済あるいは発展途上国や非同盟中立国家群との経済関係の問題、こういうような諸般の問題についても話し合ってみたいと思っております。
  315. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは特に経済の問題にも多少かかわり合いがありますし、平和の問題ともかかわり合いがありますが、日本から中国へ、御存じのとおり原子炉圧力容器の輸出が合意されたというふうに聞いておりますが、中国の近代化という問題に協力するということは非常に結構なことだと思いますが、この原子力の平和利用という日本の方針、これはこの輸出に関連をいたしまして確認ができるかどうか、ここら辺の問題はどうでございましょう。
  316. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本は、原子力については平和利用に限ってこれを行うという国策を持っておる国でございます。中国は核拡散防止条約に加入しておりません。そういうかげんで、中国は国家主権意識が非常に強い国でございましょう。そういう意味で、IAEAに参加はいたしましたが、我々がやられているような査察については拒否反応を持っておる。そういう中にあって、日本と中国との原子力交流、提携をどうするか、これは大変難しい問題がございましたが、これらの問題も大体事務当局間におきまして、いまの査察等の問題も友好的な話し合いがなされて、大体この程度ならよろしいという方向に落ちついたという報告を聞いて、喜んでおります。
  317. 峯山昭範

    峯山昭範君 そうしますと、査察の問題が解決したということでございますが、もう一つの、先ほど前段にありましたいわゆる核防条約への加入という問題がありますね。これはその加入を求めるというようなことが考えられるわけですけれども、総理の口からこの問題についてのお話は出ませんか。
  318. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 核拡散防止というのは非常に望ましいことでございまして、我々はその国策を、外国に対してもそれを勧めておる立場にあります。中国に対しても、核防条約に参加する、あるいは国連の軍縮会議そのほかにも参加する、そういうような希望を我々は持っておりますが、そういう話を出すか出さぬかということはその情勢によりましてやることで、今から出しますとか出さないとか約束すべき問題ではないと思います。
  319. 峯山昭範

    峯山昭範君 もう一点、朝鮮半島の問題が大きな問題になっているわけでございますが、総理は中国の首脳と話をされる場合に、特に朝鮮半島の問題でどういうふうな立場で話し合いをされるのか、その基本的な方針をお伺いしておきたいと思います。
  320. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 各国はみんなそれぞれの歴史的因縁を持って固有の外交政策を持っておりますから、その点はお互いよく理解し合わなければならぬと思いますが、朝鮮半島の長期的、平和的安定は双方の重大関心事であり、かつ世界の重大関心事であると思います。その重大関心事につきまして双方が納得のいく平和的、長期的安定を図れるように、お互いがいかに協力すべきか等々について話し合ってみたいと思っております。
  321. 峯山昭範

    峯山昭範君 朝鮮半島の緊張緩和、あるいは対話の問題で、もう総理も御存じのとおり、三者会談、あるいは四者会談、あるいは六者会談というような提案もいろいろ行われているわけでありますが、内容につきましては極めて流動的であります。総理が中国へ行かれましてこの問題で協議されるのかどうか、あるいはこの問題についての話し合いをされるのかどうか、この点どうですか。
  322. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 朝鮮半島の緊張緩和と長期的平和安定の問題についてはお話し合いをしたいと思っておりますが、具体的にどういう方法が適当であるかということは相手方との話し合いの情勢にもよって出てくることで、今からどうこうということは、発言は差し控えたいと思います。
  323. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは外務大臣にお伺いしますが、特に対ソ外交の中で、チェルネンコ新政権のソ連との間で、一昨日ですか、日ソ事務レベル協議が行われたように聞いておりますが、その結果あるいはその内容等についてお伺いしておきたいと思います。
  324. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 十二、十三日の両日に行われました日ソ高級事務レベル会談は、非常に広範多岐にわたりまして、二国間並びに国際情勢について忌憚のない意見の交換がありました。私は、日ソ両国間の対話を深め、広げることができたと評価をいたしておるわけでございます。その中で特に合意に達した事項としては、いわゆる日ソ間の対話を強化していこうと。すなわち、ソ連はいわゆる世界の超大国の一つとして、そしてまた日本は自由世界の第二の経済大国として隣り合っておる、そういう中でのやっぱり対話の強化は必要であるということで、今後国際情勢について具体的な問題、例えば国連について、あるいはまた中東問題等についても具体的にひとつ協議の場を持っていこうということに合意をいたしましたし、あるいはまた貿易協議、これがこれまで日ソ間でやはり大韓航空機撃墜事件あるいはアフガニスタンに対するソ連の侵入等でずっと協議の場が持たれておりませんが、今後貿易協議の場を持とう、開催をしようということも合意をしたわけであります。さらに、文化的な面では、いわゆる日ソ映画祭の開催を行おうということも文化的な行事として合意をいたしました。さらにまた、租税条約を交渉するということにつきましてのいわゆる交渉の再開につきましても合意をしたわけでございます。  その他いろいろの問題につきまして話し合いをいたしまして、領土問題等につきましては、基本的にこれはもう対立の状況はそのまま続いておるわけであります。あるいはまた、ソ連の極東における軍事力の増強についての日本の懸念を表明いたしまして、それに対するソ連からの反論もあったわけでございます。基本的な対立はありましたけれども、今申し上げましたような点も含めて、両国のいわゆる対話の促進といった意味での今回の会談は、非常に実りあるものであったと、こういうふうに考えております。この成果を踏まえて、これから今申し上げましたような点について今後ともひとつ交渉あるいはまた協議を進めてまいる、こういう考えてあります。
  325. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理、今外務大臣の報告にもありましたように、新しいチェルネンコ政権になりまして、やはりこの対日対話路線というのを相当強化していきたいというふうな意向であるようでありますが、最近また山村農林大臣が訪ソされるということも聞いているわけでありますが、総理はこの対ソ政策、これはどういうふうに見ておられますか。
  326. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最近のソ連側から来ておりまするいろいろの対話の再開、拡充等の動きは非常に歓迎すべきであると思っております。私は、前から申し上げておりますように、一番手ごわい相手とは一番対話をし、話し合いを持続して打開していくのが外交の要請である、そう申し上げておるのでありまして、そういう精神にのっとりまして、ソ連とはたゆみなく粘り強く話し合いをし、糸口を見つけ、あるいはそれを広げ、そして打開していく、そういう精神で今後もまいりたいと思っております。
  327. 峯山昭範

    峯山昭範君 バイオエシックスの問題について、ちょっと二、三質問しておきたいと思います。  科学界におきましても、またライフサイエンスやバイオテクノロジーと関連をいたしまして生命倫理という問題が今大きな問題になってきております。体外受精あるいは遺伝子操作などライフサイエンスやバイオテクノロジーの発展に伴いまして、我々の生命そのものの操作や改変を可能とする時代になってまいりました。これは科学者のみの問題ではありませんで、我々自身の生命と社会にかかわる重大事となりつつあります。  そこで総理にお伺いをいたしますが、このライフサイエンスにかかわる生命倫理、バイオエシックスにつきまして総理としましてはどうお考えになっていらっしゃるか、総理の所見をお伺いしたいと思います。
  328. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題には非常に重大な関心を前から持っておりまして、特にバイオエシックス、バイオテクノロジーあるいは遺伝子の操作等々からくる人間の生命の尊厳の問題について重大関心を持ってきたわけでございます。十九日から、ウィリアムズバーグ・サミットで私が提議しまして、各国首脳部に対して、科学あるいは哲学、神学等の世界における最高権威者を各国から招聘することになりまして、いよいよ第一回の会議を東京でやり、次いで箱根へ居を移しまして静かな環境でいろいろ御討議願うことになって、今準備をしておるところでございます。これに対して各国側の反響は非常に熾烈な反響がございまして、第二回目は自分の国でやりたいという御意見がもう既に出てまいりました。今試験管ベビーであるとかあるいは受胎の問題であるとか、あるいは安楽死の問題であるとか、ともかく新しい問題がもう続々と出てまいりまして、科学技術というものと人間の尊厳の問題をまじめに厳粛にとらえなければならない。これは一大学や一国の問題でもうなくなってきている、そういう状況でございますので、今回の会議で自由なるお話を願いまして、そしてそのペーパーを各国にお配りして、そして各国でも御参考にしてもらいその議論をさらに高めるようにして、そして人類全体として共通の課題としてこれをとらえていくように努力していきたいと思っております。
  329. 峯山昭範

    峯山昭範君 厚生大臣にお伺いしますが、欧米におきましてはさまざまな政府機関で検討を始めているようでございますが、我が国の体制につきましてはどういうふうになっておられますか。
  330. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) ただいま総理から御答弁がありましたように、体外受精の問題はこれ人間の倫理と尊厳また生命の科学という大変難しい問題を抱えておりますので、単に医学的な問題にとどまらず、大きな今後の人間の哲学のあり方というものから考えていかなければならない大変な問題だと受けとめております。  御案内かと思いますが、産科婦人科学会においても体外受精と胚移植に関する見解ということでみずから規制しなければならない見解等も示しておりますが、これは学問の研究の自由とまた人間のあり方という大変難しい問題を含んでおりますので、今、私的諮問機関としての生命の倫理に関する懇談会等で見識ある皆様方にお集まりをいただいて、今後検討を続けてまいりたいと思います。
  331. 峯山昭範

    峯山昭範君 これも総理、本当は問題なのでありまして、これは私の手元にもう本になって出てきておりますが、これは後の機会に譲るとしまして、総理、この一番大事な問題は、やっぱり社会的コンセンサスの形成という問題が大変大事な問題であると思います。それともう一つは公開という問題であろうと思います。そういうふうな意味でこういうふうな議論はやはり公開にしなければいけないと私は思っておりますが、総理どうですか。
  332. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原則的にそうであると思います。ですから、今回箱根会議で行われましたペーパーは各国の所要のところに御送付を申し上げ、あるいは御要望があればそれを御送付する、そういう手続をとりたいと思っております。
  333. 峯山昭範

    峯山昭範君 厚生大臣、実際問題これ、こういうふうな本を出されましたけれども、中身がすべて仮名になっているわけですね。そういうような意味ではこれは公開という原則からいえば相当外れるわけですね。そういう点についてやっぱりきちっとしていただきたいと思います。どうですか。
  334. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今お話のありましたように、これは幅広く国民的な見地から多くの人たちに御理解をいただきながら方向を定めていかなければならないものでありますから、できるだけ研究者においてもこれを、考え方あるいは研究内容等を国民皆さん方に知っていただくことが望ましいというふうに考えております。
  335. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 峯山君、時間がなくなりましたが、簡単に一問だけ。
  336. 峯山昭範

    峯山昭範君 私が通告いたしました財政経済の問題、それから福祉の問題につきましては、時間がございませんので、次の同僚議員の質疑に譲りたいと思います。また、関西空港の問題につきましては、次の機会に質問をさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  337. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で峯山君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  338. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、高杉廸忠君の総括質疑を行います。高杉君。
  339. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 私は、社会保障の理念、目的など中曽根総理の社会保障、福祉に関する基本認識について、さらに昨日来各紙新聞報道によります医療法人報徳会宇都宮病院の事件などについてただしたいと存じます。  まず、最近の政府の福祉に対する姿勢に一般国民は大変不安を抱いていると思います。新聞論調も福祉切り捨てと批判を強めておりますが、総理のお考えをまず伺います。
  340. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本憲法はやはり福祉国家の理念を明確にうたっていると心得ております。したがいまして、この精神を遵守いたしまして、福祉国家の理想に向かって質的に高めていくし、また日本の国情に合うようにこれを促進していく努力をしていきたいと思っております。ただ、これも財政状況によるのでございまして、最近の情勢から見ますと非常に厳しい財政下にあり、その中におきましても最善の努力を尽くしてまいりたいと、そう思っておる次第であります。
  341. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 福祉重視の姿勢は変わらない、こういう御答弁でありますから、一応承っておきます。  それでは総理総理考えを裏づける政策の枠組みで伺いたいと思うのですが、まず、国民所得に対する社会保障移転費の比率、これは中曽根内閣ではどの程度を目途にしていますか。できたらこの際、六十年度、六十三年度、六十五年度、こういう単位で伺いたいと思います。
  342. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのような定量的明示の方法は私よく勉強しておりませんし、特にとっていないのではないかと思います。社会経済七カ年計画が終わりまして、新しい八〇年代の経済運営の「展望と指針」をつくりまして、大体定性的な性格に変えたわけでございます。そういう面から見まして、数量的に規定するという方法はたしか避けていると思いますので、政府としてそういう固まったものはないのではないかと思っております。
  343. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 先ほど総理は福祉を重視すると言われたのです。ですから、今申し上げましたわずか五年先ぐらいの保障移転の見通しということが示されないでは、国民の不安というのは何ら解消しないと思うんですね。  それでは総理に伺いますけれども、社会保障負担の国民所得に対する比率、これはどの程度に上がっていくと考えますか。
  344. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それらの点は専門的なことになりますので、厚生省から御答弁願うようにいたします。
  345. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) お答えいたします。  今、五十九年度は医療部門で四・九%、年金部門で、これは率でありますけれども、五・八%の率でお願いをしておるわけでありますけれども、しかしこれから先のことを考えますと、今六・二人の人が社会保障の御負担を願って一人の老人を支えておるのでありますが、二十一世紀に向かいますと、これはどうしても四・二人で一人を支える、さらにその後は三人で一人を支えるというぐらいの方向にどんどんこれは進んでまいります。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕  しかし、国民所得の中でおのずから社会保障で負担できる限度があるわけでありますけれども、第二臨調の方から、西欧の現在の高い水準を下回る程度という一つの目標を定められておるのでありますが、しかし年金の場合はこれはいろいろ今工夫をしておりましても、六・二人で支えておるのが四人で支えなければならない、三人で支えなければならないということになりますと、これは年金の保険料率は上がらざるを得ません。あるいは一一%とか一二%とか、上がらざるを得ないわけでありまして、しかし余りにもこれは国民の社会保障の負担が現役の人たちに大きくなるようになってはまたいろんな新しい問題等も出ておりますので、医療費については将来にわたっても現行の水準にとどめたいということで今思い切った改革案等を先生方にお願いし、できるだけ国民の保険料率等の負担をふやさないで、しかも充実した社会保障の給付を将来にわたって進めていけるように今いろいろと工夫を凝らしておるところでございます。
  346. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 さらに、それじゃ厚生大臣と企画庁にも伺いますが、七カ年計画、これが終わって八〇年代の展望に入るんですが、国民負担をなぜ八〇年代の展望では削ってあるんですか。
  347. 大竹宏繁

    政府委員(大竹宏繁君) お答えを申し上げます。  新しい「展望と指針」におきましては、基本的な考え方といたしまして、非常に激動する環境の中で日本の経済社会をどういう方向に持っていくのが望ましいかと、そういう観点から望ましい方向を明らかにするということに重点を置いておるわけでございます。細かい数字等につきましては、大まかな方向を示すという観点から、余り数字に執着をいたしましてかえって結果的におかしなことになるというようなことを避ける意味もございまして、望ましい姿といたしまして、ただいま御答弁がございましたように、西欧諸国の水準をかなり下回る水準にとどめるべきであるというふうな、望ましい方向という形で表現をしてあるわけでございます。
  348. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 その負担と給付の長期計画を示さないというのは私は怠慢じゃないかと思うんですが、総理どうでしょうか。
  349. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは私の考えで、定量的な性格から定性的な性格に変えてもらったわけでございます。と申しますのは、余りにも変動の要因が多過ぎる、為替相場一つにつきましてもこういうふうに変化して動いておりますし、物価やあるいは財政経済の状況等々も考えてみますと、そういう定量的な形で持っていくと、それ自体がひとり歩きしてしまって、社会経済政策全般の整合性が失われていく危険がある。したがって、大体の目標を定性的につくっておいて毎年度毎年度数字を入れていって持っていく、そうしていわゆるローリングシステムと申しますか、見直し、見直ししながら進んでいく、そういうシステムに変えたのでございます。これは前のやり方とそういう質的変化を今回は遂げたのだというふうに申し上げたいのであります。
  350. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それでは、具体的にお尋ねをしますけれども、この八〇年代の「展望と指針」の中の社会保障の基盤固め、こううたっているんですが、具体策をひとつここで示していただきたいと思います。
  351. 大竹宏繁

    政府委員(大竹宏繁君) 我が国の社会保障は既に西欧の水準に達しておるわけでございまして、これから急速に老齢化する社会の中におきまして、国民のニーズあるいは社会的な風土から、我が国にふさわしい公的な社会保障制度を充実していくという観点からさまざまな制度的な充実を図っていくということでございます。具体的には、年金制度の統合であるとか医療保険制度の改善であるとか、そういうことをこの中に述べておるわけでございます。
  352. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 さらに伺いますが、それじゃ、この中にうたっておりますもう一つの、国民の不安感払拭、こうなっていますが、何をされようとするのですか。
  353. 大竹宏繁

    政府委員(大竹宏繁君) 国民が一番関心を持っておりますのは、何といいましても年金について言いますれば、今後老齢化していく中で年金額が確保できるかと、こういうようなことであり、医療費につきましても、どこまで医療費が保険で見てもらえるかというような不安であろうかと思います。ただいま申しましたような制度改正によりましてその辺の不安をなくす、国民がこれなら大丈夫であるというような明らかな制度をつくっていくということが国民の不安を除去するというゆえんであろうと考えておるわけであります。
  354. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 厚生大臣に伺いますが、医療費の二割負担の方向や年金水準の引き下げ、こういう方向の統一化について、これでは国民の不安感というのは一掃できますか。できないと思うんですが、どうでしょうか。
  355. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) これは、国民皆さん方の今社会保障制度に対する大きな不安感は、一つは年々医療費が増大していってどうなるのか、また、これは間違いなく急速にやってくる高齢化社会の中で、今、掛金をちゃんと納めておって将来その年金がもらえなくなったら大変だと、こういう不安を皆さんが持っていらっしゃるわけであります。  そこで、私どもが今回思い切った医療保険制度に対する改革案を出しまして、この改革案によって、現行保険料率を上げないで低成長の経済の中でも国民皆さんが安心して医療を二十一世紀にわたって受けられるような改革案、また年金についても、先ほど私が申し上げましたように、これは現在六・二人で一人の老人を支えておるものがいずれ四人に、さらには三人になっていくのでありますから、そういう時代にも年金が安心して受けられるように今から思い切った制度の改革を行おうとしておるのでありまして、私どもが今度出しております改革案あるいは年金の改革等について十分に御審議をいただき、これを通していただければ、国民皆さんは安心して将来の医療、年金についてのお気持ちを持っていただけるものと、今一生懸命頑張っておりますので、何とぞ御協力のほどをお願いしたいと存じます。
  356. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 八〇年代の展望と新経済社会七カ年計画のかつての大平内閣が作成されたのをよく対比してみますと、どうも中曽根総理の社会保障、福祉に対する基本姿勢というのは実は変わっているのかなというふうに違いを見出すのです。本音は、私はやはり福祉を重視すると言われる総理であっても、六〇年代の「展望と指針」の中で書いてあることが本音だろうと、こう思うんですね。都合の悪いことは全部削ってしまって、都合のいいことだけ八〇年代の「展望と指針」の中に入れかえるというような、どうもそういう感じがしてならないんです。ですから、さっき指摘しましたように、国民の不安感の払拭あるいは将来展望、確実にやってきますハイスピードの高齢化社会に対する対応について、給付も負担も国民には将来こうなりますよ、こういう点ではっきり明示をして国民の不安感を一掃しながら協力をし理解を求めるという態度が必要だろうと思うんですが、総理いかがですか。
  357. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) バラ色のイメージをかくことは、かくだけでは簡単でございますけれども、現在の内外の情勢、特に財政の状況を見ますと、非常に厳しい状況にあるわけでございます。特に六十年から公債償還、借りかえまでしなければならぬという状況が現実でございます。そういう面から見ると、社会保障制度を後退させないという努力だけでも相当な努力を要する面がございます。そういうようなことから堅実、着実に物事を運んでいって、そしてできるだけ社会保障を充実させていくという努力を地道にやっていきたい、それが私の本音にあるところでございます。  そういう意味において、まず年金の問題については最終的には昭和七十年度に大統合をやろう、そういうことで公的年金から始めまして、今着々と御審議を願い、最終的には厚生年金や国民年金までも統合する格差のない年金システムを官民の間につくり上げていきたい。それに今乗り出してきて、そのスケジュールは今お示しして、もうすでに済んでおるところでございます。今国会におきましても御審議を願っておるところであります。医療の問題につきましては、なかなかそういうような将来性にわたる展望がつきにくい点がございます。それは変動要因がまだ非常に多いからであります。  そういうわけで、今も厚生大臣がお話しになりましたように、世代間の公平を維持することはいかに可能であるかということが大問題であります。今六・二人で一人を支えておる。これが四人になり、三人になるということは大問題であります。そういう面からも、これをひとつ具体的に着々と世代間の公平を維持する方向に持っていくという点で、今厚生省は血のにじむような努力をしておる最中でございますので、今とりあえずその努力を一生懸命勇気づけてやっておるというところでございます。
  358. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 社会保障の諸施策というのは、先ほども申し上げましたとおりに、給付や負担、これを国民の前に明らかにする、これが必要だと思うんですね。それからさらに社会保障の全体像、その枠組み、こういうものを明らかにして、緊急度の高い施策、これを重点的に整備効率化を図る、こういうことではないかと思うんですが、総理、いかがですか。
  359. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はいずれ定性的な性格を持ったそういう総合的なものをつくったらいいと思っておるのです。私自体はそういうような希望を持ち、そういうことをいつかやっていきたいと思っております。しかし現実の問題としまして、当面、今片づけなければならぬ大問題がありまして、これが片づくか片づかぬかということがその将来の展望に対して非常に大きな影響を与えるわけです。医療費の負担が二割負担願えるのか願えないのかという問題一つ考えてみても大問題ですね。そういう意味で、一つ一つ片づけながら次の展望をまたつくっていくという状況にあるということをぜひ御了知願いたいと思います。
  360. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 厚生大臣、どのように考えますか、今のこと。
  361. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今、総理が申し上げたとおりでございます。
  362. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 政府は社会保障制度の目標とするところを国民に明示する必要があるということは、今も再三申し上げたとおりであります。今回の医療保険の改革にしろ年金の改革にしろ、今後国民の負担が増大することは明らかであります。  そこで伺うのですが、人口が静止化をし、高齢世代の数が安定した段階で、年金それから医療、租税の国民にかかる比率というのはどの程度になると予測をしていますか。
  363. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) これは今後の経済の成長とか人口の高齢化がどの辺までいくのかとか、いろいろ難しい問題がありますので、なかなかはっきりした数値というのは困難でありますが、御指摘でございますので、粗っぽく推計をさせていただきますと、現在、社会保障負担率は五十九年度で一〇・八%、うち年金が五・八%、医療その他が四・九%、こういうことになっております。  百年にはどの辺にいくだろうということでありますが、そのために今私ども大変厳しい財政の中で、また今まで十割給付という長い歴史を持っておる被用者保険本人の皆さん方に定率の一部負担をお願いするというのは心苦しいのでありますが、あえて二十一世紀の未来をより確実なものにするために改革案をお願いしておるのでありますが、この改革案を通していただきますと、百年になっても医療その他の負担は五%程度でこれはとどめることができる。年金はどうしても、先ほどの人口高齢化の中でどんな工夫をしても、これはある程度の負担はやむを得ませんので、百年になると一一%から一二%程度の御負担をお願いしなければならなくなるのではないか。これはしかし、経済の変動なりそういうものは絶対的なものではありませんが、今私どもが改革案をお願いしているところの背景としては、こういうふうな考え方でお願いをしているわけでございます。
  364. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大蔵省、租税。
  365. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 租税負担率でございますけれども、五十九年度予算ベースでの租税負担率は国税、地方税合わせまして二四・二%という数字をお示ししておるわけでございますが、先般提出いたしました財政の中期展望の仮定計算例で機械的にはじきますと、六十五年度でこの二四・二が二四・七になるという予測もお示しをしておるわけでございます。ただ、これはあくまで機械的な計算でございますので、委員がお求めの政策的な目標値といった性格のものでもございません。それからこの二四・七というのは、仮定計算例で示しました要調整額はそのままにした数字でございますので、これを例えば全額租税で補てんするというふうな仮定に立ちますと、この負担率はさらに上昇するというふうなことにもなるわけでございます。ただ、確定的な目標値は、現段階では政府としてお示しできる段階にはないということでございます。
  366. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 厚生大臣にさらに伺いますが、公的年金制度というのは、最低の所得保障として重点を置かなきゃならないと思うんですね。  そこで伺うのですが、全国民共通の制度としたときの費用徴収で特に考慮しなきゃならない点は何だとお考えになりますか。
  367. 古賀章介

    政府委員古賀章介君) 年金は、長期の拠出と、それに基づいて行われます給付によって成り立つものでございます。その拠出のやり方でありますけれども、所得に比例するやり方と、それから定額で徴収するというやり方がございますけれども、いずれにいたしましても低所得者の方々に対して配慮するということはやはり必要であろう、こういうふうに考えます。
  368. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 そこで、厚生大臣と大蔵大臣にお尋ねしますけれども、基礎年金は財源を租税に求めるになじみやすい、こう私は思うんですが、これについてどうでありますか。厚生大臣それから大蔵大臣からも伺います。
  369. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今回の改革案についても、基礎年金部分については三分の一程度の国の租税負担をお願いしているわけでございます。
  370. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今おっしゃいました問題は、社会保障制度審議会が五十二年の基本年金創設を提言した際、年金目的税を財源として選んだ、そういうことを踏まえての御意見を交えての御質問であろうと思います。  これは公的年金、いわゆる税方式の提言につきましては、公的年金制度は加入者が給付と負担の両面にかかわり合いを持って拠出と給付の関係が明確である社会保険方式によって運営することが望ましいと考えられること、二番目には、年金財源として新たな多額の税負担を行うことについては国民のコンセンサスが得られるかどうかと、こういうような問題がございまして、今回の基礎年金の創設等を内容とする年金制度改正におきましては、いわゆる社会保険方式を維持する、いろいろ議論した結果、そのようになった。やっぱりなかなか特定財源、目的税ということになりますと、国民の理解を得るというのはかなり慎重であり、かつ難しい問題であるというふうな認識に立ったわけでございます。
  371. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 厚生大臣、さらに伺いますが、国民年金は今までも、また将来も定額保険料方式ですね。そういう点では、さっき租税の方のお答えもいただいたのだが、支払い能力を全く考慮していない、こういうふうに私は思うんですけれども、支払い能力についてはどうお考えになっていますか。
  372. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 将来にわたってそういう心配のないように改革案をお願いしているわけでございます。
  373. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大臣、丁寧に私の方では事前に質問事項をお願いしてやっているわけですが、それじゃさらに大臣に伺いますが、国民年金の保険料の免除率、これは年々相当高くなってきているんですね。それはどういうふうに見ますかO
  374. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) これは政府委員から答弁をさせたいと存じます。
  375. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) お尋ねの保険料の免除率でございますが、法定免除、申請免除を合わせまして、五十七年度末におきまして一五・〇%でございます。
  376. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 ちょっと、さらに伺いますが、昭和四十九年度からずっと年々上がってきているんでしょう。その当時はわずかに八%ぐらいだったと思うんですが、どうですか。
  377. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 昭和四十九年度の免除率についてお尋ねでございましたが、五十三年度からちょっと申し上げさせていただきたいと思います。  御指摘のとおり上がっておりまして、五十二年度は合わせて九・七%、五十四年度は一〇・五%、五十五年度は一一・八%、五十六年度は一三・一%、それから五十七年度末で一五・〇%ということでございます。
  378. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大臣、年々上がってきておるんですね。試算によると、今の改革案で大臣言われましたが、十年たつと掛金が夫婦で二万円になるんですよ。年々免除率が高くなる。ということは、負担が重くなるから掛金が掛けられないという現実が毎年相当上がってきているわけでしょう。どういうふうに見ますか。
  379. 古賀章介

    政府委員古賀章介君) 今度の年金改革案は、このまま放置をいたしますと給付水準が非常に高くなる、それとともに保険料負担がふえるということでございます。したがいまして、その保険料負担をできるだけ抑えるということが今度の改革の一つの目的でもあるわけでございますけれども、今度の改正案におきましては、保険料の引き上げが急激なものとならないように、毎年度の保険料の引き上げ幅を従来より緩和をいたしまして三百円とすることにいたしております。それとともに、三カ月ごとの保険料納付を原則とする現行制度を毎月の保険料納付とするように改めるということなどを考えておりまして、できる限りの配慮をいたしております。したがいまして、先生おっしゃいました免除率がこのまま上がるのではないかということにつきましては、この制度改正が行われますれば必ずしもそうとはならないのではないかというふうに思うわけでございます。
  380. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 いや、それは違うよ。大変な掛金になるでしょう、これからも。六十一年には六千八百円、すぐなっちゃうんですよ。それを言っているんですよ。ですから、そうなると、さっきも申し上げましたとおりに、夫婦で月に二万円の基礎年金を得るために掛金を掛けなきゃならないでしょう。ということは、保険料の免除率の比率がますます増大する危険がある。それをどういうふうにしますかという、それをどういうふうに、逆に言えば徴収をしますか、その方法はありますか。
  381. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 仰せのように、保険料率はこれから急激に上がらないように改革をしてまいりたいということでございますけれども、被保険者の自主的納付にまつわけでございますので、一つには審議官から申し上げました毎月納付、それから口座振替というようなものの活用について一層努力をしてまいりたい。さらにまたPRにつきましても、これを積極的に展開をいたしまして、決して保険料免除を受けるということが被保険者の利益になるというわけではございませんので、その点も含めて十分広報活動を展開してまいりたい、かように考えております。
  382. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それじゃ、大蔵大臣にさらに伺いますが、今までのように、結局年金改革をして統一をするけれども、基礎年金は一人五万円の年金、四十年間掛けるというのですね。そうすると、それに掛ける保険料が年々重くなるために保険料が納められなくなります。したがって免除になります。免除になれば五万円の基礎年金すらもらえない。こうなってくるから、先ほど来申し上げているように、保険料にかわる年金の財源として、保険料に最も近い、例えば所得税の付加価値税、こういうものを年金財源として考えていかないと、せっかく改革をしようとする国民年金の基礎年金すら十分全国民が負担できないという結果が生まれるだろうという私は危惧を持つから、ですから財源についてはどうですかと、こういうふうにお尋ねをしているわけですよ。将来のためにどうですか。
  383. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今おっしゃいました議論は、五十二年十二月の「皆年金下の新年全体系」の財源問題というところに、そこで、「新たに「基本年金」の長期安定を目標とした年金税ともいうべき特別な目的税によるものとする。それは国民全部の所得にかかる純粋な意味における付加価値税であることが好ましい。これは形式は税であるが、実質的には全国民が負担する保険料の性格を持っており、かつ、他の税と異なり、重複負担の関係がなく、物価を刺激する程度が最も低く、また、景気変動の影響を受けることが比較的少なく、「基本年金」にとっての長期の安定した財源となる」と。こういうことからして最後には、「けだし、ここにいう付加価値税の導入なくしては基本年金の創設はありえないと考える」と。まあこういう割に、割にといいますか、がちっとしたものでございますね。  それで、その後のやっぱり答申を見ますと、これの上に立っていろいろ議論された。それで、これを見てみますと、確かにいろんな議論をしながら、やはりこの点について、特定財源としての目的税ということでございますと、今度は税の専門的な立場からのいろんな議論もあったようです。したがって、やっぱり最終的に、いわゆる公的年金制度は、加入者が給付と負担の両面にかかわり合いをもって、拠出と給付の関係が明確である社会保険方式によって運営することが望ましいという結論に到達したわけであります。今の御提案のあった問題は、また新しい御答申にも少数意見という形で付されておりますが、現実問題として国民の理解を求める、国民のコンセンサスが得られるかどうかということについては、やはり私は問題のある制度ではないかというふうに考えます。
  384. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 そこで、総理と厚生大臣に伺うのですけれども、今まで論議をしてきましたのを踏まえまして、やはり後の世代が十分な理解、合意が得られてこそ制度というのは確立すると思うんです。今まで数字を示されましたものは、私はこれからの若い世代の人たちから本当に合意を得、協力が得られるものかどうか、非常に心配すみんですけれども、総理はいかにお考えですか。あわせまして厚生大臣からもお答えをいただきたいと思います。
  385. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) これは先ほども私申し上げたのでありますけれども、高齢化社会というものは周違いなく極めて急ピッチにやってくるのであります。ということはつまり、今まで六・二人の人が一人の老人を支えておったものが、四人になり三人になっていくわけでありますから、年金の場合は今の保険方式をとっていく限り、これは保険料を、つまり負担を低くして給付水準を高くするというような制度は、どんなに知恵を絞っても今日の厳しい財政の中で出てまいりません。しかし、そういう中でやはり年金制度というものをより安定したものにするために今回の改革案はお願いしておるものでございまして、かなり国民皆さん方にも御負担をちょうだいすることになると思いますけれども、今の基礎年金五万円、五万円、合わせて夫婦で十万円、またさらにこれから考えていく二階建て年金で、将来にわたっても平均賃金の七〇%を下回る程度の給付ができるようにしようという今回の改革案が精いっぱいのものではないかと考えておるわけでございます。
  386. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 厚生大臣が申し上げたとおりでございます。
  387. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大蔵大臣にこの際お願いがあるんですがね、障害者の人たちの一物品税の免除について。例えば目の見えない人の自動洗濯機、これは免税にしてもいいんじゃないかと思うのですが、こういうことをひとつ御検討いただけますかどうか。
  388. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 物品税につきましては、委員御案内のとおり、これは文字どおり物税でございますので、今の物品税でも例えば盲人の方の専用の時計とか、ライトバンなんかでリフトのついたようなもの、これは物品税法施行令の別表で規格非課税にしているわけで、課税の範囲の外に出してあるわけでございますが、そういう物によって区別がつかない場合の制度といたしまして、そのほかに用途免税というのがございます。特別の用途に使われる場合にはこれは免税にするという制度がございまして、これは使われる方とそれから使われる物品について、これも政令、省令で細かく規定してあるわけでございますが、現在、身体障害者の方で歩行の不自由な方の自動車、これは用途免税にしてございます。
  389. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 どうして。
  390. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) これは非常に税の議論としてやや冷ややかにお受け取りになるかもしれませんけれども、考え方は、要するに自動車になぜ物品税をかけているかといいますと、快適性とか迅速性といった効用に着目して、そこに担税力があるというのがこの物品税の理屈になっているわけでございますが、歩行の困難な身体障害者の場合には、自動車の持つ便益性というのは通常の方のような快適性とかあるいは迅速性といった効用以前の、いわばそういう例えがいいかどうかわかりませんけれども、足がわりといったような、普通の人が歩くかわりの用具である、そういう基礎的なものでございますので、それに課税するのは物品税が消費に担税力を求めるという考え方から適当でないということで免税にしてあるわけでございます。  ただそういう観点に立ちますと、用途免税というのは非常に手続が複雑でございまして、というのは物で区別がつかないものでございますから、今の自動車の場合でも福祉事務所長さんの証明か何かをいただきまして、一定の要件が決めてあるわけでございます。したがって、お買いになる場合も、それから売る人も非常に手続が煩雑であるという問題もございます。それから今申しました自動車のような便益性の問題等、今、委員が例示としてお挙げになりました盲人の方の全自動の洗濯機でございますか、これは理屈といたしましては全自動の洗濯機の効用ということになりますと、なかなか効用の区別がつかないという理屈もあるのだろうと思うわけでございます。それから単体としての価格でございますね。自動車の場合非常に高うございますから、税負担額も高い。今申しました。途免税の場合の手続上のいろんなコストの問題もございます。そういった総合判断で、現在御指摘のとおり、全自動の洗濯機のようなものは用途免税の対象にしないということでございますけれども、今後物品税の課税範囲をいろいろ広げていかなければならぬという状況にもございますし、この辺非常に難しい問題でもございますので、今直ちにはかばかしい結論を申し上げられる段階にはないということはぜひ御理解を賜りたいと思います。
  391. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大蔵大臣、ぜひひとつ実現の方向で検討いただきたいと思うのです。
  392. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、主税局長からお話ししておりましたように、いわゆる物品税、すなわち消費に担税力を求める税制の本来のある姿の中からこれを理論づけするということは、確かにいろいろ議論のある問題でございます。したがって今日まで限られてきております。今、主税局長から申しましたように、これから物品税の問題について、これをいよいよ検討しなければならぬ段階でございますので、今の御意見があったことは私どもとしても踏まえていなければならぬし、そして国会の議論でございますから、税制調査会等にもお伝えしなければいけない、その責任は負うべきだ、こういうふうに理解しております。
  393. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 厚生省に伺いますが、去る二月十日に全国保険・国民年金課長事務打ち合わせ、これを開きましたね。そのときに医療保険改革案を提案した理由として二つ挙げていますね。第一は、乱診乱療の前提として、いわゆる十割給付を見直して医療費の規模を適正水準にする、第二は、退職者医療を創設して給付と負担の公平を図る、こういうふうなことのようでありますが、間違いないですか。
  394. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 全国の保険課長会議で、今回の改正の趣旨、目的をいろいろ述べました中でそういうことを言った記憶はございます。
  395. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 そこで、適正水準の医療費、こういうのはどういうことを言うんですか。また、どの程度のことを言うんですか、大臣から。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕
  396. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) これからの経済成長によって若干の変更はあると思いますが、現在のところ、現行の保険料率で何とか医療費の支払いをとどめたい、こういう考えでございます。
  397. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 さらに伺いますが、十割給付が乱診乱療の前提、こう言っているんですけれども、何を根拠としているんですか。
  398. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 十割給付のために、患者側から申しますならば、いろいろはしご受診というような実態も起こっておりますし、また診療側から申しますと不必要と思われるような投薬、検査、あるいは医学常識に照らしまして妥当性を欠くような診療というものが行われる事実を指しておるわけでございます。私ども、十割給付の本人と、それから七割給付の家族あるいは国民健康保険というものの受診率を比較してみますと、それほどの差はございません。しかし、一日当たりの診療費を見ますと、家族や国保の加入者よりも十割給付の本人の場合、薬剤費等を中心にいたしまして二割ないし三割高い、こういうことになっております。したがって、私どもは十割給付をやることによりまして、プライスメカニズムの機能が働かなくなっておるのではないか、こういうように感じまして、それ以外に本人の医療費というものが家族等に比べまして高い合理的な理由がないわけであります。したがって、十割給付というものを九割ないし八割にすることにふってプライスメカニズムが働く仕掛けになるのではないか、こういうことでございます。
  399. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それじゃ、十割給付以外の国保や健保については乱診乱療がないと言えるんですか。
  400. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私は、家族や国保の場合も乱診乱療がないとは申しません。申しませんが、やはり乱診乱療の中身が違っておるのではないかと、こういうように想像をしております。
  401. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それでは、乱診乱療のない医療というのはどうなんですか。
  402. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 一つは、現在の医学、医術の水準に従って、医学常識に基づいた医療が行われるということが一つの要件であろうと思います。それから第二の要件としては、患者の状態に適合するような医療というものが乱診乱療のない医療であろうと、こういうように解釈しております。
  403. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 そこで大臣大臣から今度は答えてくださいよ。  今度の改革の中に、二十人の顧問医師団を置いて指導監査するという、ところがその内容を見ると、医療内容への介入はしない、こういうふうに言明しているんですね。そうすると、どういう判断でこれはやるんですか。乱診乱療というのはここでは防ぐことができないんじゃないかと思うんですが、どうなんですか。
  404. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 現在の出来高払い制度という中で乱診乱療を全くなくするというためには、やはり医療を担当する医師の皆さん方の良識に期待するということが第一だろうと思います。  それからその中で、私どもは、今御指摘のありましたように、これは今までも随分御指摘がありますので、監査体制を強化したり、また顧問医師団をつくったり、あるいは高額なレセプト審査というものを強化したり、いろんなことをやっていくわけでありますけれども、同時に、やはりかかった医療費を患者の皆さん方に知っていただく。つまり、患者の皆さん方に大変恐縮でございますけれども定率の御負担をお願いすることによって、自分のかかった医療費を患者の皆さんに知っていただくというのも一つの方法でございまして、これは乱診乱療をなくするための決め手、これだというものよりは、いろんな施策を講じながらこれをなくすように努力してまいりたい、こういうことでございます。
  405. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 そこで総理にお尋ねしますが、今までお聞きしたように、どうも聞いてみても適正水準の医療費についてもわからない。乱診乱療のない医療という問いについてもちょっと明快なお答えがない。つまり、これは行政目標が私は不明確だということになると思うのです。そう考えるのです。総理はどういうふうにお考えになりますか。
  406. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり当面は、この現在一〇%ぐらいずつ膨張してきている医療費をできるだけ不合理を是正して、それを八%、六%、五%、そういうふうに逐次逓減して増加率を抑える、そういうことで大体基礎的部分を安定させて、しかる後に全医療体系等をずうっと見渡してみてこれを調整していくという過程にあるのではないかと思うのです。現在のこの不安定な状態で将来的展望を数量的に出すということはまだ非常に危険ではないかと思います。
  407. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それでは、昨日の私どもの和田理事からの質問に対しても、厚生省がこの制度改革がない場合の五十九年度の国民医療費ですね、十五兆五千六百億円、これは五十八年度の七・二%増、改革をした場合に十四兆八千八百億円、二・五%増、こう見込んでいると言われましたね。  そこで伺いますが、五十八年度見込み四・六%、五十九年度に何で七・二%の伸びを見たのか、こんなに高いはずがないと思うんですけれども、どうですか。
  408. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 五十六年度の医療費の伸び率は七・四%でございます。それから五十七年度は七・八%でございます。それで、五十八年度は今御指摘のように四・六%でございますが、五十八年度におきましては老人保健法を実施いたしましたし、また薬価基準の引き下げもいたしたわけでございます。もしそういうことがなくて自然に伸びたとすれば、五十八年度も七・三%伸びたはずでございます。私どもの推計ではそういう推計をしております。したがって、七・三%伸びるべき医療費が老人保健法を実施するとか、あるいは薬価基準の適正化を図ると、こういうことによりまして四・六%の伸び率にとどまったと、こういうことでございます。さらに五十九年度におきましても、私ども何もしなかったとすれば七・二%伸びるはずだと、こういうように推計をしておりますが、ただいま御提案を申し上げております健康保険法の改正等も含めまして、いろいろな施策を実施することによりましてその伸び率を二・五%にとどめたいと、こういうことでございます。
  409. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 さらに伺いますが、それじゃ本人の給付率変更に伴う医療費の減千四百億円、これはどういう内容なんですか。
  410. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 御指摘のように、本人給付率の変更に伴います医療費の減は千四百億円でございます。これは私ども、長瀬計数という計数がございまして、これは給付率と医療費の大きさの相対関係をあらわす計数でありますが、それを用いまして計算をしたわけでございます。
  411. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それじゃ伺いますが、先ほども制度改革をすれば低くおさまる、制度改正をしないと七・二%に医療費が膨大に増大をする見込みと。実績で見ますと、成長率から見ても五十八年度に四・六%と見ているんでしょう、それがそうなったわけですね。何で七・二%なんてなるんですか。  あわせまして経済企画庁長官、医療費が七・二%もぐんと上がるというんですよ。これは国民経済にとっても大変なことだと思うんです。同時に、経済の成長その他の成長と比較して、医療費だけが突出して七・二%になる根拠というのを教えていただきたいと思うんです。
  412. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私どもは、医療費というものは、やはり人口の高齢化あるいは疾病構造の変化、あるいは医学、医術の進歩等によりまして必ず増加をしていくものだと、こういうように考えております。しかし、今回は給付率の引き下げだけにとどまりませんで、薬価基準の引き下げもいたしておりますし、指導監査の充実あるいはレセプト審査の厳正化等のいろいろな措置を講じておるわけでございまして、その結果七・二%伸びるであろう医療費が二・五%におさまると、こういうことでございます。  五十八年度におきましても、我々がいろいろな手を打ったために四・六%におさまっておるわけでございまして、五十九年度に何もしないとすればやはりもとのとおりの医療費の伸び率に返ってくるであろうと、こういうように想定をしておるわけでございます。
  413. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 厚生大臣、私は、新しく計算し直して、制度改革の効果もあわせて見積もりをし直すべきだと考えるんですけれども、いかがですか。
  414. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) これは今保険局長からもお答えいたしましたように、先生方から厳しい御指導を厚生省でちょうだいいたしまして、老人保健法で低額ではありますけれども一部の御負担をお願いしたり、また監査体制の強化に努めてまいったり、また世論も医療費に非常に大きな関心をお持ちいただくことになったり、そういうことで今成果を上げることができたわけでありますけれども、これまた安心して放してしまってもとに戻ってしまったのではこれは何もなりませんので、せっかく先生方の御指導によって進んできた医療費の節減、適正化、適正な医療水準というものをより確固としてこれを定着させるために今回の案をお願いしておるのでありまして、そういう考えの基礎的な数字は今保険局長から説明をしたとおりでありまして、これを変える必要はないと思っております。
  415. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それじゃ次に、退職者医療制度について伺いますけれども、国庫負担ゼロなんですね、それで負担の公平、こう言えるのかどうか。  それから、この際ですから厚生大臣にもひとつ要望しておきますが、現実にある退職後の二年間の任意継続給付ですね、これは存続をしてもらいたい、こう思っているんです。  それから、制度運用に拠出した労使がやっぱり関与していく道というのは開くべきだと、こう考えるんですね。もう一つ、労使の拠出率が増加するのに何とか歯どめが必要だと思うんです。この辺の諸点についてどういうふうにお考えですか。
  416. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 二年間存続をいたすと、こういうことでございます。  退職者医療の国費負担の問題でございますが、現在の被用者保険制度のこれは枠組みになっておるわけでございまして、現在のところこれに国費を投入するまでの財政状態になっていないということでございます。ただ、先生御指摘のように、今後歯どめがなくなってという御心配でありますが、そういう御心配がないように私どもは医療費の適正化に今後も努めでまいりたいと存じます。
  417. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 退職後の二年間の任意継続については存続させる予定でございます。  それから制度運営に関しまして拠出者の意向を反映させる道につきましては、これは講じております。一つは、社会保険審議会に拠出者の代表を加えるということが一つと、それから国民健康保険運営協議会にやはり被用者保険サイドの方々を加える、こういう形で拠出者の意見が反映するような道を開くことにしております。
  418. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、国民医療費について確認をするんですけれども、五十八年度およそ十四兆五千三百億円、そのうち用庫負担分が約三〇%、四兆三千六百億円、この近くだと思いますが、間違いないですか。
  419. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 五十八年度の国民医療費は十四兆五千百億でございます。
  420. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 国庫負担は。
  421. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 国庫負担は四兆三千六百億円でございます。
  422. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それでは、国が負担する今の四兆三千六百億円の使途、どう使われているのか、これを明らかにしていただきたいと思います。
  423. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 使途という意味が少しわかりかねますが、配分のことと考えてよろしゅうございましょうか。
  424. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 配分でいいです。
  425. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 国庫負担につきましては、先生御承知のように、組合健保については全然入っていない。それから国保については四五%入っておるというようなことで、制度ごとに変わっておるわけでございますが、仮にその今申し上げました四兆三千六百億円というものが医療費の構成部分にいかに配分をされるか、全体として、そういうように考えて計算をいたしますと、私ども医療経済実態調査、五十六年十月にやったわけでございますが、この調査によります案分率で仮に計算をするとすれば、医師、歯科医師に対しまして九千八百億円、それからその他の医療従事者に対しまして一兆一千二百億円、それから製薬メーカー、医薬品販売業者に対しまして九千四百億円、それから医療機器等の医療材料の関連企業に対しまして二千五百億円、それから支払い利子等の関係から金融機関、あるいは光熱水費というようなことで電力会社へ支払われる、こういうようなものが一兆二百億円というような、まあ仮の計算をすればそういう配分に相なるわけでございます。
  426. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 最終取得者というか、配分の最終のところまでの資料というのはいただけますか。
  427. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 国庫負担でなしに、全体の国民医療費がどういう配分になるかと、こういうようなことだといたしますと、結局十四兆五千百億円がどういうように配分をされるかと、こういうことに相なるわけでございますが、今申し上げました医療経済実態調査の案分比例で計算をいたしますとすれば、医師、歯科医師が三兆三千百億円、その他の医療従事者、看護婦さん等でございますが三兆七千七百億円、それから製薬メーカー、医薬品販売業者、これに三兆一千五百億円、それから医療機器等の医療材料関連企業に対しまして八千三百億円、それからその他金融機関とか電力会社とかサービス関連業等に三兆四千五百億円ということに相なります。
  428. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それじゃ、薬価基準のことについてちょっと尋ねますが、きのうも和田委員の方からの御指摘もありましたが、一八・六%引き下げましたね。それによって製薬業界で大変打撃になっているようなことを、厚生省が言っていると思わないんですが、言っているということを聞くものですから、これについてはどういうことを言っておられるのかですね。それで資料をとって調べました。調べてみますと、製薬業については生産高、総売上高は確かに伸び悩んでいる。しかし一方、売上経常利益率というのはもう大変なものですよ。他産業との差は物すごく開いているんですね。これは野村総研の資料を見ても、例えば製造業の平均の二・七%が、製薬業については一〇・六%。これは五十八年の九月期には、製造業と比較すると、製造業が平均が二・四%、化学産業が一・四%に対して、製薬業が何と一二・五%。大変な売上経常利益ですね。打撃を受けていると、こう何で言えるんですか。
  429. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 薬価基準につきましては、本年の三月一日で一六・六%の引き下げが行われたわけでございますが、先生御案内のように五十八年の一月に四・九%、それから五十六年の六月に一八・六%という改定が行われたわけでございます。薬価基準の改定ということによりまして、医薬品メーカーにとって売上高の減少要因になるということは、これは事実でございます。  ところで、その五十六年の薬価改定に際しましても、製薬メーカーは経営の合理化あるいは新薬の開発等々によりましてカバーをしてきたわけでございますが、今日、医薬品市場というもののパイと申しますか、規模というものが、今後伸びがそういうことを期待できないという中で薬価改定というものを受けまして、製薬メーカーにとりましては経営環境が非常に厳しくなっておるということは事実だと思います。ただ、先生おっしゃいますように、売上高の経常利益率というものを他産業と比較してみますと、ここ数年の間、二けた台というものを維持してきたということ、これもまた事実でございます。ただ、これも御理解いただきたいのは、製薬メーカーというのは、やはり新薬の開発というものの研究開発というものに相当な努力をいたします。そこにはリスク等も伴うわけで、そういった面で経常利益の中での内部留保といったようなものも、他産業に比較してかなり考えていかなければならぬといったような面がございます。  いずれにいたしましても、これまでは他産業に比較しまして、かなり経営面での何と申しますか、余裕というものは平均的に見ますとあったことは事実だと思いますが、ここ三回の薬価改定あるいは市場環境の厳しさの中で、製薬メーカーが非常に経営環境が厳しくなっておるということは、これまた事実であろうというふうに私ども理解をしております。
  430. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 時間の関係で、次に進ましていただきますが、次に医師の関係について。お医者さんの関係です。  六十年に人口十万人当たり百五十人、こういう目標を立てたんですが、既に五十七年度末現在では百四十九人になっておるわけですね。そこで、医師過剰時代などと言われていますけれども、これは将来の展望、それからそれに対する教育、養成、これは文部省もあわせましてお伺いをしたいと思います。
  431. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 御指摘の医師数の問題、昭和四十五年、厚生省でいろいろ検討いたしまして適正な医療を務めるためには人口十万人当たり百五十人の医師を必要とするということで、文部省に六千人程度の定数で医師を養成してもらいたいということをお願いしたわけであります。ところが、現在は医科大学の定数はたしか八千三百人を超えておるという状態で、この点は医師の養成は急速に進んでまいりまして、今、先生御指摘のように、既に昭和四十五年に立てた厚生省の目標は達成できておるわけであります。  しかし、現実には僻地等でまだ医師がいないというようなことで困っておるところもあり、いろいろ地域的なアンバランス、また将来高齢化社会がやってくれば、これはどうしても医師数は余計必要になってくるということでありますので、いままでのとおりに十万人に百五十人ということにはまた今後の問題を残しますので、これから文部省当局にもお願いをいたしまして、検討委員会をつくりまして、これからの高齢化してくる時代、また現在の僻地医療の充実、そういうものを勘案しながら将来どの程度の医師が国民の医療政策を充実していくために必要であるかということを検討し、できれば六十年をめどにしてその中間報告等をいただいて文部省当局にお願いをしたいと、こう考えでございます。
  432. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) ただいま先生御指摘でございますように、当面の目標は厚生大臣も今申し上げましたように、六十年を待たずに達成をいたすことは確実でございます。しかしながら、人口の高齢化、そしてこれに伴います医療需要の多様化、複雑化、さらに医学、医療の高度化等の事情もございます。それにただいま厚生大臣のお話もございましたように、地域的には自治体病院等がなり医師の確保が難しい状況でもございますし、領域的には基礎医学等はなかなか医師数が現実においては研究を進める上におきましても不足ぎみでございます。したがいまして、こういう偏在的な問題もございますので、これらを踏まえまして適正な医師数をまず検討していただくことが先決だと考えております。厚生省の方でもそうした対策の検討委員会を設けて御協議をいただくようでございますので、文部省といたしましては厚生省におきます検討の結果を待って対処していきたいと考えております。
  433. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それでは、量的な確保から疾病構造の変化、技術革新等々に伴ってやっぱり専門分野の医師の確保、こういうこともしなければならないと思うんですね。地域偏在もある。そういう実態と対策、それから将来の需要予測、こういうようなものも資料として出していただきたいと思うんです。
  434. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 御指摘のございましたように、いろんな角度から多角的に検討する必要があると存じますけれども、これから検討委員会を設置いたしまして検討を始めるところでございまして、今のところ将来どれぐらいが適当であるかという資料は持ち合わせておらないところでございます。
  435. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 文部省といたしましても、ただいま厚生省が答弁いたしましたように検討委員会を設置いたしまして、どのような部門にどのような医師数が必要なのか、その結果をちょうだいをいたしませんと、医療需要の多様化等いろいろございますし、社会的要請にこたえていくことも医師を養成する文部省としての仕事でもございますので、できるだけ早く厚生省の検討の結果を待って判断をしていきたい、そのように考えております。
  436. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 総理、今までお聞きした点の所見をいただきたいと思うんですが、健康は第一の富である、これはアメリカの詩人、哲学者のエマーソンの言葉なんですが、国民の健康は我が国最大の富であると私は思うんです。国民の健康にして文化的生活、福祉の充実こそ政治の基本であると考えます。総理、いかがですか。
  437. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 冒頭申し上げましたように、我が国の憲法は福祉国家の理念を明らかにうたっておるのでございまして、政治の大きな、重要な基本の一つであると思います。
  438. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、障害者関係のことについて伺いたいと思います。  国際障害者対策長期計画推進本部長であります総理に伺いたいと思うのです。国連の障害者権利宣言に照らしまして、我が国の精神障害者の皆さんの人権、これは保障されているとお考えでしょうかどうか。
  439. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 保障すべく努力をしておりますが、必ずしもまだ十分な状態ではないと思います。
  440. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それではさらに伺いますが、一九八二年八月二十三日付のミセス・エリカの報告にかかわる国連小委員会報告書について、日本政府は国連にどのような見解を表明し、またどのような資料を提出されたのか、伺います。
  441. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 今、先生御指摘ございました報告書、国連の人権委員会の差別防止・少数者保護小委員会委員でございますダエス委員がまとめられた報告と存じますが、その報告は昨年の九月、小委員会に提出されました。当時、我が国は小委員会のメンバーでございませんでしたので、その審議には参加いたしておりませんが、この報告書は、ことしの夏に開かれます小委員会で実質審議が行われる運びになっております。幸い我が国は同小委員会に先ほど選出されましたので、その審議に備えましてこれから我が方の見解をまとめる予定でございます。  なお、提出いたしました資料は、この報告を作成するに先立ちまして、昭和五十六年に国連から精神病者、精神障害者に関する我が国の法制、統計等についての照会がございまして、関係省庁で御提出いただきましたものをまとめて提出いたしております。
  442. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 さて、きのうきょう、各紙新聞報道によりますと、栃木県宇都宮市の医療法人社団報徳会宇都宮病院で、二人の患者さんがリンチによって死亡したことを取り上げています。これは私どもの調査でも事実のようであります。この事件に関しまして、現在どのように対処していますか、それぞれの関係省庁に伺います。国税庁、警察関係、大蔵省あるいは厚生省、お願いをします。
  443. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) お答えいたします。  お尋ねの事件でございますが、現在、栃木県警察におきましてごく最近事件を認知したわけでございますので、捜査は緒についたばかりでございます。したがいまして、現段階ではその全容を十分に把握をいたしておりません。ただ、昨晩、令状をとりまして捜索を行いました。その結果得られました資料を今後検討いたしますとともに、関係者からの事情聴取など含めまして事案の真相を十分に究明していきたいと、かように考えておるわけでございます。
  444. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 新聞等で報道されているような事実があるとしますと、まことに重大であると認識しまして、早速県の担当する幹部に来省してもらいまして、それまでに判明しておる事実に関して報告を求めたところでございます。県でもまだ事実関係を十分把握できている段階ではございませんでしたので、さらに徹底的に事実の関係の確認を指示したところでございます。県におきましては、医療監視等を通じまして事案の究明を急いでいる最中でございます。
  445. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 税の関係でございますが、私どもは従来から、医療保健業につきましてはこれを昭和五十年から引き続きまして国税庁の重点業種ということで、問題のある個人、法人を調査いたしておるわけでございます。今回の事件につきましても新聞報道で申告漏れ二億三千万円というふうな報道がなされておりますが、この種の所得の規模の大きな法人につきましては、従来からあらゆる資料を総合いたしまして、また相当の事務職員を投入いたしまして、適正に課税をいたしておるわけでございます。
  446. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 厚生省、どういうことが今までにわかりましたか。新聞にずっと書いてある、一々言うと大変だから。どういうことがわかっていますか、ちょっと詳しく教えてよ。
  447. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 県からの報告を受けた範囲について現在判明していることの主要な点を申し述べますと、この病院の医療の体制につきまして、病床を上回る超過入院の事実が現段階で判明しております。また、これに配置すべき医療法に定める標準を下回って医師、看護婦等が配置されているというような点も判明しておるわけでございます。  それから新聞報道で述べられておりますような暴行に関しましては、報道されております死亡事例にほぼ相当するであろうという死亡者がおることは確認しておるわけでございますが、その方に関する記録につきましては暴行の記録を認めていない、また検査部門に従事している職員は臨床検査技師によって行われておるというようなことが主要な所見であったわけでございます。なお継続して現在、調査を引き続き実施しているところでございます。
  448. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 この宇都宮のほかにも、大阪府の病院で患者さんのリンチ殺人事件があったと聞きますけれども、それはいつ、どんな病院なんですか。
  449. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 大阪府における医療法人北錦会大和川病院におきまして、昭和四十四年と五十四年の二度にわたり、看護人が集団で患者に暴行を加え死に至らしめたという事件がございました。同法人につきましては、大阪府は理事長及び管理者を変更するように指導いたしまして、法人もこれに従っているところでございます。
  450. 西村尚治

    委員長西村尚治君) もうちょっと大きい声で。
  451. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) また、大阪府にある医療法人和光合栗岡病院におきまして、院長及び看護人二名が患者十数人に暴行を加え、うち一名を死に至らしめた、こういう事件がございました。大阪府は管理者の変更を指示し、法人もこれに従っているところでございます。
  452. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 そこで厚生大臣に伺いますが、なぜこのような殺人事件が後を絶たないんでしょうね。なぜこのようなことの発生を未然に防止できないんですか。
  453. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 精神病院については、適正な医療が確保されるとともに、患者の人権が侵害されることのないよう、医療監視等を通じ指導を行ってきたのでありますが、このようなことが起こって大変残念であります。今、政府委員から答弁いたしましたように、一日も早く真相を突き詰めて、そして今後こういうことが起こらないように、できる限りのことを検討してまいりたいと存じます。
  454. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 国家公安委員長、どうお考えですか。
  455. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) なぜこういう事件がたくさん起こったかというのは、調査を見てみなければわかりませんが、これまでのこの種の病院における発生した事件につきましては、犯罪の事実があったと認められる場合には厳正に対処をしてまいりました。  この宇都宮の事件は、先ほど刑事局長から話がありましたように、昨日から調査をしておりますが、今後もこの種の事案につきましては、犯罪に原因があるとすれば、厳正に対処をしてまいります。
  456. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それじゃさらに、公安委員長にお願いも含めてでありますけれども、この宇都宮病院の院長補佐という人は宇都宮の南署次長を退職した人が院長補佐をやってますね。これでは真相究明に支障がないだろうかという心配があるんですが、どうですか、厳正にやってくれますか。
  457. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 警察にいた者がたとえ疑いのかかった病院に勤務しておりましても、そういうものには関係なく、警察は厳正な態度で臨んでいくつもりでございます。
  458. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 これは厚生大臣に、特に関連で確認をする意味も含めて申し上げますけれども、医療法人宇都宮病院の敷地が報徳産業グループにかかわる負債によって差し押さえられているんですね。これは医療法などに抵触すると思うんです。これが第一。  それから第二は、石川病院長の使用人と見られる四人が――これは正確には三人かもしれませんが、精神病の患者さんだと思うんですね。それからまた、関連の報徳冷凍冷蔵庫株式会社の労働力の大半というのがこれは患者さんだ、こういうふうになっているんですね。こういう一日に労働可能な者に対して国庫から医療費を支出しているのも事実、その点に対しての厳正な処分。  三つ目。生保の患者の日用品、その費用が石川病院長の指示によって設備費に流用されている疑いがある。こういうような点についても厳正にきちっとしていただきたい。どうでしょう。
  459. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 御指摘の土地の件でありますけれども、その具体的な事情の詳細は承知しておりませんが、医療法上は、医療法人の病院の施設、土地等については、診療治療等病院の機能が確保されておる限り、それが差し押さえの対象となっても問題はない、こういうことでございます。  その他御指摘のございました点、政府委員から詳細お答えさせますが、これから一日も早く真相を究明して、今先生御指摘のような点があれば、二度とこのようなことが起こらないためにも、非常に大事なことでありますから、厳正な態度でこれに臨んでまいりたいと今決意をいたしております。
  460. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 先生御指摘の生活保護の日用品費の問題につきましては、患者さんにお渡しした残りの未支出額の管理状況、これが問題であろうかと思いますので、そういった点について早急に調査を指示をいたしておるところでございます。それによりまして厳正な措置で臨みたいと思っております。  また、生活保護関係の入院患者が多いわけでございますが、御指摘のございました報徳冷凍冷蔵庫の労働力の問題でございますけれども、これにつきましても、生活保護は、医療扶助につきましては要否判定をいたしまして、それで入院の国庫補助を出しておるわけでございまして、こういった問題についてもし不正があるとするならば、それはそれなりの厳正な措置をとりたいというふうに考えております。
  461. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 事実関係につきましては調査をすることといたしたいと思いますが、仮にこのようなケースにおきまして、医療の目的の範囲を逸脱しておるとか、あるいは特に精神衛生法に基づく措置入院の患者さんでありまして、その措置を継続させる要件が消滅しておるにもかかわらず、ただいま御指摘のような状況にあるということでございますと問題であろうかと思うわけでございます。そのような節は早速措置の解除等の所要の措置をとることになると思いますが、これから調査をすることといたします。
  462. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 厚生大臣にさらにこれはお願いがあるんですがね。死亡だとか受傷をした患者さんのチェックを十五年ぐらいさかのぼって厳正にやってもらいたいと思ってるんですが、どうでしょうか。
  463. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 専門的なことでございますので、政府委員から答弁させます。
  464. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 今後の調査において、ただいま御指摘の点も含めて我々としては努力をいたします。
  465. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 私どもの調査によっても明らかなんですけれども、新聞の報道のように、病院長みずからが回診の際にも常にゴルフのアイアンを持って歩いて、大声でどなって、患者さんたちをゴルフのアイアンで殴りつける。まだ細かいことたくさんありますが、聞くにたえないような言動があって、こういう院内におけるリンチというのは日常茶飯事である、新聞に書かれているようなことが事実のようであります。こういうような無法とも言うべき現状でありますから、こういうものを徹底的に今後再び起きないように厳正に関係省庁でやっていただきたいと思います。特に厚生省、それから関係省庁にお願いをしたいと思います。
  466. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今、先生からお話を聞いたり、また新聞等の報道を見ますと、これまことに私ども想像できないようないろんなことが行われているということでありますから、このようなことが真実であればこれは許されるはずのないことでありますので、できるだけ早く真相を究明して、こういうことに対しては厳重な態度で臨んでまいりたいと存じます。
  467. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 先ほど申し上げましたように、犯罪の要因がありますれば、厳正に対処をして取り締まってまいります。
  468. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 国税庁といたしましても、税務に関する限りは、今後とも厳正な調査を続けたいと思っております。  新聞記事の内容でございますが、先ほどちょっと申し上げましたように、この法人につきまして二億三千万円の申告漏れということが報道されておるわけでございます。私ども、これ個別の納税者に関することでございますので、詳細にわたって申し上げることを差し控えさしていただきたいと思うわけでございますが、公示されました所得額がございますので、まずそれを申し上げますと、医療法人報徳会の五十六年度の公示所得金額は二億九千五百万円でございます。五十五年度二億五千九百万円、五十四年度三億九千九百万円でございます。  なお、この調査状況でございますが、この公示の額の中に当初の申告以外のものとして追加申告をされたものがございます。この追加申告というのは、大体ほとんどの場合が修正錐垂ニいうことで公示されるわけでございますが、これの最近五年間の総計は三億八千八百万円でございます。このような数字から、調査等の内容について御賢察をいただきたいと存ずるわけでございます。
  469. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、厚生大臣に確認なんですが、精神障害者の人たちの人権を擁護するための救援センター、これが必要だと考えますが、どうですか。
  470. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 先生御指摘のように、精神障害者の人権を擁護していくことは非常に大事なことであります。現行の精神衛生法でも、措置入院患者等からの入院継続の必要性等の調査請求の制度があるので、これらの適正な運用を指導してまいります。  今、御提案のありました救援センターについては、これは非常に貴重な御意見として今後検討をしてまいりたいと思います。
  471. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 今回の事件は、患者さんの人権、それから身体生命の安全というきわめて基本的な問題であると思うんですね。そこで、この病院においても、例えば常駐監視体制というものをつくっていただいて、宇都宮病院をその管理下に置いてもらいたい。できれば早急に、三カ月以内ぐらいにはその体制をつくっていただきたい、こう思うんですが、どうでしょうか。
  472. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 当該病院につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、事実の究明ということがまず先決であろうかと存ずるわけでございまして、目下それに全力を注いでおるところでございます。したがいまして、せっかくの御提案でございますが、まず事実の解明ということを私どもとしては先決問題ということで御了解をお願い申し上げたいと思います。
  473. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 今、行っているんでしょう。柳沢さんかなんか行っているんでしょう。
  474. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいま県の方に指示をいたしまして、県の医療監視精神衛生指導というようなチームで調査を実施しているところでございます。
  475. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大臣、お願いですから、大臣からひとつ。
  476. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今、政府委員から答弁がありましたように、何よりも今大事なことは真相を突き詰めるということでありますので、その真相を一日も早く突き詰めることによって、それから対策を講じてまいりたいと存じます。
  477. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 さらに、厚生大臣にこの際ですから申し上げておきますけれども、今回の事件を顧みまして、むしろ現行法上の欠陥のあらわれではないかなというふうに考えるんです。例えば、医療法にしても精神衛生法にしてもね。それはどういうふうにお考えになりますか。
  478. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 現在の精神衛生法におきまして、措置入院等で入院しておるものにつきまして、入院者本人あるいは保護義務者におきまして、それぞれ入院の継続の必要性につきまして調査を求めるというようなことが制度的にも確保されておるわけでございますし、そのために精神鑑定医等で対応するという仕組みでございます。また、入院措置に関しまして行政不服審査等の制度もあることは御承知のとおりでございます。現行制度の枠組みの中で、先生の御指摘のような御趣旨、人権が十分に守られるようにという、その運用の面で一層強力に取り組んでいくということが非常に重要なことではなかろうか、かように考えておるところでございます。
  479. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) ただいま政府委員から答弁したとおりでございます。
  480. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 御承知のように、我が国の精神病床というのは民間が八五%で、開放率は二割程度でありますから、実に二十二万人もの人が、精神病障害者の方々がかぎのかけられた状況下で自由を奪われているような状態の中なんですね。そういう状況の中でありますから、リンチが発生し得る可能性というのは大きいと思うんです。明るみに出ました今回の事件、これはほんの氷山の一角だと思うんですね。こういう点を考慮して、これが表ざたになるこれまでにはかなりの時間がかかると思うんです。  そこで、例えば暴行、傷害、殺人なんかに関して訴訟の時効の進行停止の措置、そういうこともあわせ考えて関係法規の改正をする必要があるんじゃないかなというふうに思いますけれども、これはどういうふうにお考えになっていますか。生厚省と、それから関係省庁に。
  481. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) お答えいたします。  ただいまの御質問、犯罪が精神病院等、ある程度社会から隔離された場所で行われた場合に発覚が極めて困難である、したがって公訴時効について停止等の措置を講ずる必要はないかというお尋ねかと思います。確かに、そういう場所で行われました犯罪の発覚が極めて難しいことは一般的に言えるかと思います。また、そういう場所で行われた犯罪でありますだけに、なおさら何といいますか、早期に的確に検挙し、適正な処罰を加えるということが強く要請されるかと思います。  ただ、これを公訴時効の停止に絡めて考えてみますと、例えば犯罪の発覚が難しいというような条件はほかにもいろいろあるわけでございますし、それから公訴時効の停止という制度の趣旨が、やはり一定期間の経過によりまして公訴権を消滅させるという制度でございますので、ただそういうような場所の条件ということをその中に取り入れるということは、制度の趣旨からもちょっと難しいのではないかと思います。ただ、今申し上げましたように、そのような犯罪に対しましては、的確に早期に検挙され適正な処罰が加えられるということは強く要請されるところでございますので、私どもといたしましても、その目的実現のためになお努力を続けてまいりたいと思います。
  482. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、法令により拘禁をしようとする場合には必ず国選弁護人などを選任するなどの法規の改正については、どういうふうにお考えになりますか。
  483. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 精神衛生法においては、本人の意思に基づかない入院制度として措置入院と同意入院がありますが、いずれも同法に本人の人権を保護するための所要の手続規定が置かれております。したがって、これらの規定が適正に運営されるように“なお指導徹底を図ってまいりたいと存じます。
  484. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 弁護人の関係だから法務省じゃないか、法務省。
  485. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) お答えいたします。  措置入院の際の国選弁護人という御趣旨かと思いますが、現在の国選弁護人の制度の趣旨から考えまして、措置入院という、いわば裁判、司法制度とは関係がございませんので、そこまで広げおということはちょっと難しいのではないかと考えております。
  486. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 じゃ、厚生省と検討してくれますね、精神衛生法やなんかの関係で。
  487. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) なお厚生省とも検討いたしたいと思います。
  488. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 最後でありますが、三番目に、病院における患者の死亡に当たっては、その事由を問わず都道府県知事に対して届け出をするような義務、これを厳正にしていただきたいと思うんですが、厚生大臣
  489. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 御提案の件でございますが、現行制度の適正な運用ということで対処さしていただきたいと考えております。現在も、死亡しました場合に、措置入院患者の場合には措置解除のための届け出をすることになっておりますので、そういった形で事実上把握できております。
  490. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 まだまだたくさんの問題が残されていて、明らかにできませんでしたが、次回に譲るとして、ここで最後に総理から、特に障害者対策推進本部の本部長であります総理ですから、拘禁されている精神病の患者さん方の人権が守られる、そして障害者の人たちの福祉が増進する、こういうことに私は尽きると思います。したがって、これからは法令により拘禁下の人々の人権も総理としてはこれを守っていくという強い姿勢で私は臨んでいただきたいし、そうであってほしいと思うんです。  最後に総理から、今までの論議を通じて、幾つかの提案をいたしました。早急にやっていただきたいし、事件の徹底究明もいただきたい、こういうようなことも申し上げました。それらを含めて総理の所見をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  491. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、基本といたしまして、福祉国家の建設というものは我々共通の理念でございまして、厳しい財政の中にありましてもみんなで工夫をして、うまずたゆまずこの理念に向かって前進しなければならないと思います。  それから第二に御指摘になりました将来的展望等につきましても、でき得る限り具体的資料に基づきましてその展望をつくり得るように積極的に努力していく必要があるように思います。  それから身体障害者の問題やあるいは婦人の平等の問題等につきましても、これは人権、自由という基本的観念に基づきまして、国際的にも肩を並べ得るような機会均等、差別撤廃の処置を可及的速やかに推進する必要がございますし、障害者につきましては、その人格が基本的には厳然と存在するのでありまして、たとえ身体的あるいは精神的な欠陥がある者につきましても、やはり人格としての取り扱いを入念に行わなければならない。そういう点についてもし取り扱い上不備な点や考えの上において間違っている点があれば当局として厳重にそれらを取り締まらせ、また是正する措置をやらなければならないと思っております。
  492. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で高杉君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  493. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、立木洋君の総括質疑を行います。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  494. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。  立木君。
  495. 立木洋

    ○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、民主主義の問題、平和の問題、国民の生活の問題について質問をいたします。  まず最初に、総理の総裁声明についてお尋ねしたいんですが、御承知のようにロッキード事件を徹底的に究明するということは国会の意思であります。いわゆる田中問題というのは、内閣総理大臣の地位のときに収賄罪を犯したという、まさにロッキード事件の一角であります。この問題は、国会けじめをつけるということは、ただ単に田中氏一個人の問題では決してありません。ですから、先回の総選挙においても御承知のように国民的な争点になったわけでありますし、あなた御自身も総選挙の後、その結果を反省されて総裁声明の中で、「いわゆる田中氏の政治的影響を一切排除する」、こういう声明を出されたわけです。二カ月余りたった今日、総理はこの声明をどのように考え、どのように実行されていくのか、お答えいただきたい。
  496. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 選挙の結果を厳粛に受けとめまして、そして声明も出し、実行もしてきたと思います、選挙の後の党や内閣の再編、改造、あるいはその後の自民党内部における政治倫理委員会の結成、あるいは国会におきまして各党間の政治倫理協議会の設置、あるいは資産の公開、そのほか諸般のことをやってきたつもりであり、今後もやるつもりでおります。
  497. 立木洋

    ○立木洋君 総理は、前回、選挙は最終、最高のものであるというふうに述べられました。しかし、この問題というのは一選挙区の問題ではないはずであります。国民全体がどう審判したか、このことが極めて重要だと私は考えるわけです。そういう見地に立つならば、総理も午前中の御発言の中で国民に熱いおきゅうを据えられたと御自身がはっきり述べられました。今、今日田中問題はけじめがついたというふうにお考えになっていますか。
  498. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) けじめというものが何を意味するかはわかりませんけれども、政治的課題として臨時国会で取り上げられてきた問題は最終的には選挙という国民審判によりまして国民の判定を、これはすなわち終局的な最高の主権者の判定として受けたと、そのように考えます。
  499. 立木洋

    ○立木洋君 私は、先ほども一選挙区の問題ではないと述べたはずです。昨年総理田中氏と会談をされた。そして田中元首相は自重自戒ということになったはずです。ところが、最近の報道を見ていますと、あの田中総理、御承知のように五日会の総会に御出席されて、そしてどのようなお話をされているか。総裁予備選をやったりやらなくなったりするのはおかしい、衆議院の定数是正は面積も加味した方がいい、年利三分程度の無税国債で財政は救える、まあ派手な動きをされたということが報道されています。また、田中六助幹事長が二十一日、田中元首相と会って、総裁予備選や副総裁の問題で話し合ったと言われていますが、こういうことはあなたが御指示なさったのかどうか。あるいは「田中氏の政治的影響を一切排除する」という声明をしたあなたの立場としてこのような動きをどのように考え、今後この声明の立場でどのように対処されていかれるのか。
  500. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どのようなことがあったか私は知りません。新聞の報道は必ずしも事態を正確に伝えているとも限りません。要するに、私は自由民主党総裁として、自分の独自の見解に基づいて政策も行い、党の運営も行っているつもりであり、将来もそういうつもりでおります。
  501. 立木洋

    ○立木洋君 田中六助さんは幹事長ですよ。全然知らないというのはまさに筋が通らないと思う。最近の報道で見ますと、総理は二階堂氏を副総裁にする構想だというふうに言われていますが、事実でしょうか。
  502. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 党内の人事は私及びそれぞれの機関に専属しており、あるいは合議されるべきものでありますが、党内の人事をどうするかということをここであなたに申し上げる必要はない、そういう責任はないと思っております。
  503. 立木洋

    ○立木洋君 総理、与党の副総裁というのは政治の中軸なんですよ。しかもこの二階堂さんと言われる方は、御承知のように田中派の木曜会の会長さんでしょう。あなた自身が田中氏の政治的な影響を一切排除すると言われたじゃないですか。国民が注目をしているから私は聞いているんですよ、国民代表して。あなたはしかもロッキード事件の田中判決で明白に金の受領が認定されていると、二階堂氏を初め、このことは御存じでしょう。
  504. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 裁判の内容にわたることについては論評をいたさないことにしております。
  505. 立木洋

    ○立木洋君 法務大臣、あの田中判決で二階堂氏が金を受領したということが認定されているということはどうですか。
  506. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) 先般の判決書の中には、金の流れとしてそういう事実が認定されております。
  507. 立木洋

    ○立木洋君 総理、どうですか、知らぬのですか、このことを。
  508. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 判決は新聞で読みましたけれども、それを論評することはしないと申しております。
  509. 立木洋

    ○立木洋君 つまりあなたは新聞を見たんだから知っているということですね。これを知っていて二階堂氏を副総裁にする、これは党内のことだからあなたは言う必要がないと言われましたけれども、あなたは総裁声明の中で、「田中氏の政治的影響を一切排除する」、しかも政治倫理を高揚し、清潔な党にする、そして公正な人事をする、こういうふうに言われたんですが、この問題については、いろいろとあなたのそういう構想に批判があるということは知っておるでしょう。
  510. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 総裁声明は自分は守ってやっていくつもりでおります。しかし、わが党の大事に関して他党から干渉される必要はないと思っております。
  511. 立木洋

    ○立木洋君 つまりあなたは、田中問題にけじめをつける意思が全くないということ、そしてしかも総裁声明に対し責任を負う立場を持っていないということが私はこの事実で明白になったということだけ、この点では述べておきたいと思うんです。  問題は、国民は今、田中問題ではっきりけじめをつけるべきだということが求められているにもかかわらず、あなたは政治倫理協議会自民党はロッキード事件を一切棚上げして、民主主義を踏みにじる政党法の制定という検討を提起しています。問題は田中問題こそ今決着をつけなければならない最大の政治的な倫理問題ではないんでしょうか。
  512. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 各党によっていろいろ御意見があると思います。私はやはり政治倫理の問題というものは、第一義的には国会議員みずからが自分の良心とそれから責任に基づいて出処進退をすることである。それから今度は政治団体あるいは政党等牛が政治の仕組みやその他につきましていろいろ共同行為として議会を清潔にし、あるいは政治自体を清潔にしていくというために協力し合うということが大事ではないかと思って、今その作業をやっておる最中です。
  513. 立木洋

    ○立木洋君 総理、ある本にこういうふうに書いてあるんですよ。   民主主義でやれば、かならず政党というものができるのです。また、政党がいるのです。政党はいくつあってもよいのです。政、党の数だけ、国民の意見が、大きく分かれていると思えばよいのです。ドイツやイタリアでは政党をむりに一つにまとめてしまい、また日本でも、政党をやめてしまったことがありました。その結果はどうなりましたか。国民の意見が自由にきかれなくなって、個人の権利がふみにじられ、とう々おそろしい戦争をはじめるようになったではありませんか。 と書かれていますが、これはどうお考えですか。
  514. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうこともありますが、小党分立がワイマールの悲劇を生んで、ヒットラーの台頭を許したという点もあります。
  515. 立木洋

    ○立木洋君 この本は、憲法日本で制定された――これは文部省が発行している社会科の教科書なんですよ。「あたらしい憲法のはなし」という中の「政党」という項に書いてあります。  私は、あなたが政党法を出してその規制をするという問題に関連して尋ねているわけですけれども、問題は、政党というのは、その政党が存続していくかどうかということは国民自身が決めるべきものだと。その政党を必要として国民が認めるならば、その政党は存続するでしょうし、国民が必要と認めないならばその政党は存続しない。つまり主権在民の原理に基づいて政党というのは淘汰されていくものです。それを法的に規制するというふうなことはこれは許されない。これは日本憲法の二十一条に明白に「結社の自由」が書かれてあるわけですから、こういうふうな態度はとるべきではないということで、私はまず最初に事実関係だけ確かめておきたいと思うんですが、この御承知の「自由民主」の昨年の八月号に、二階堂元幹事長が幹事長のお名前で、政党法の吉村案を党機関で検討したい、こういうふうに述べられていますが、この政党法については、自民党のどの機関で検討されたのでしょうか。
  516. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ、したことはないと思います。今度できた政治倫理委員会において検討をすべきアイテムとして挙げられているか挙げられていないか、そういう程度の段階であると思います。
  517. 立木洋

    ○立木洋君 この「自由新報」に「吉村私案をタタキ台に党も検討へ」ということが書かれてありまして、党の基本問題運営等調査会・党改革推進本部の合同世話人会でこの吉村私案がまとまったものだというふうにして発表されてありますが、これは事実と違うんでしょうか。
  518. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政調会で正式の手続を経てまとまったものではないと思います。
  519. 立木洋

    ○立木洋君 しかし、問題は今私が述べましたように、党の機関で吉村私案をまとめ上げたということになっておりますから、その点で関連して聞きたいのですが、この原案によりますと、「政党の定義と寄与」の項に、「革命の防止に寄与する」ということが「政党の定義と寄与」の中で明記されています。このことは社会体制の変革を防ぐことに協力するという問題であります。今、資本主義体制ですから、これを変えて社会主義を目指すということを一切防止することに寄与するのが政党だということになれば現体制を革新する政党、社会主義を目指す政党というものは一切排除するということになるんじゃないですか。
  520. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その読み上げられました政党法の私案というのは、まだ党で決めたことでもないし、政調会において正式に論議したものでもない。まだ無責任な一介の文書にすぎない、そう私は思っておるので、それをお取り上げになること自体が私らは迷惑であると思っております。また、今の文章を読んでみますと、それはまだ欠陥だらけの文章のように思います。それは革命といってもいろいろあるわけでありまして、暴力革命を我々は認めるわけにはいきません。そういう趣旨ならばいいと思いますが、精神革命もあれば文化革命もあるわけでありますから、革命という定義についてもはなはだ疎漏な文章で、こんなものを政調会が正式にまだ認めるはずはないと思うんです。
  521. 立木洋

    ○立木洋君 今、総理は、暴力革命ならいいけれども、そうでないからこれは不十分なものだというふうなことを言われましたけれども、それは大変なことですよ。テロ行為、暴力主義、これを私たちは一切否定しておりますし、そういうふうな態度をとらないということを明確にしています。ただ、一言だけこのことで申し述べておきたいのは、昭和四十四年にあなたが「議会政治国民の間」ということで「憲法記念日に考える」と、朝日新聞の座談会に出られた。この中に、その当時大変な問題になったあのいわゆる暴力学生、いわゆる過激派と言われた暴力学生、これに対してあなたはこのように言っているんですね。「彼らの暴走が、反射的に市民層を反対にまわし、自民党の支持につながる作用を果している」、そして、飛鳥田さんに対して、「飛鳥田さんがだまって手をこまねいていることはないでしょう。猛獣を家畜にして、有用に使ったらいいじゃありませんか」。暴力学生にあなたはこういうことを言ってるんですからね。あなたの今の御発言は、私はそっくりそのままお返ししておきたい。  問題は、このようなことが明記されているということは大変なことですから、総理、あなたは治安維持法というのはどういうふうに今考えていますか。
  522. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 悪い法律であると思います。
  523. 立木洋

    ○立木洋君 どこがどのように悪いんですか。
  524. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非民主的で、人権を無視した、また法手続が極めて疎漏な法律であると思います。
  525. 立木洋

    ○立木洋君 法制局長官、この治安維持法は戦後どうして廃棄になったんですか。その経過を説明してください。
  526. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 治安維持法につきましては、戦後たしか新憲法が公布される前に、公布というか施行される前に廃止されたと思いますが、その廃止された趣旨は、新しい民主主義下における、いわば新しく生まれ出るべき新憲法の精神あるいは理念に即していないということであったかと思います字
  527. 立木洋

    ○立木洋君 長官、どこが民主主義に合ってないんですか、法制局長官らしい答弁をしてくださいよ。治安維持法というのはどういう法律で、どこが合ってないのか。先ほど中曽根さんが言われたと同じことじゃわからない。
  528. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 突然の御質問で、私手元に持っておりませんが、先ほど総理も言われましたふうに、いわゆる現在で言いますところの基本的人権を無視して、そしていわば思想の自由、表現の自由、そういったものを抑圧するといったようなことがその内容であったかと思います。
  529. 立木洋

    ○立木洋君 言うまでもありませんけれども、お二人とも触れたくないらしい。戦前での治安維持法というのは、国体を変革すること、また主権在民を主張すること、社会主義を目指すということ、これが明確に否定されたんです。そしてそういうことをすればそれが国賊だというふうにされた。そして侵略戦争に反対することも一切許されないで、戦争で日本民族は大変な犠牲を強いられるということがこの治安維持法のもとでやられたんです。だから日本憲法の前文で、「われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」ということが明確にされたわけですよ。この反省から、社会主義を目指す活動も宣伝も、戦争に反対する行動も今日憲法で保障されているわけです。ところが総理、今、日本で社会主義を綱領に掲げている政党はどの政党か、御存じでしょうか。
  530. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろなニュアンスのある社会主義があると思いますが、日本社会党あるいは民社党、公明党も昔は仏法社会主義、人間社会主義ということを言っておられましたが、最近はそれは余り言わなくなってきた。社民連もそうじゃないでしょうか。その中にいろいろなニュアンスのある社会主義があり得ると思っています。(「共産党を忘れている」と呼ぶ者あり)肝心の共産党を忘れましたが、そのニュアンスのあるという中に共産党もあると思っておるわけです。
  531. 立木洋

    ○立木洋君 日本共産党は一番最後に回されてしまいましたけれども、私たちは、人民民主主義革命を通じて社会主義社会を日本で実現するということを明確にしております。社会党も、今述べられましたように、基本綱領では社会主義革命を遂行すると規定していますし、公明党も人間性社会主義、あるいは民社党も綱領で社会主義社会の実現に努力する、社民連も新しい自由な社会主義を目指す、こういうふうに書かれています。もちろんそれぞれの党で社会主義の内容についての違いはあります。しかし、資本主義という体制ではなく、社会主義という別の体制を目指している点が問題なんです。もちろん自民党や新自由クラブの方はこの社会主義を掲げておりません。これははっきりしております。  そうすると、先ほどの革命の防止、つまり社会の変革の防止に協力するということになっていきますと、社会主義を目指す政党はすべて問題になるというとんでもない結論になっていくのではないか。これはつまり治安維持法的な発想になるんではないか。いかがですか。
  532. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) とんでもない話でありまして、新しい憲法のもとに言論、結社、信教の自由、すべて認められて、人権は保障されておる、これが我々は最も大事な価値であると思って実行しているわけです。 、
  533. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、こういう私案をたたき台にしないで、廃棄すると明確にしていただいたらどうですか。
  534. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) またそれは受胎されないものを持ってきて、そうして子供が生まれたようにおっしゃることは、それは誤解であります。
  535. 立木洋

    ○立木洋君 総理、結局は政党の正否というのはだれが判断するんですか。
  536. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国民の世論、民意に基づいて、その代表者が行うのが議会政治であります。
  537. 立木洋

    ○立木洋君 今の社会体制がいいか、あるいはこの社会体制を変えた方がいいか、これは主権者である国民が選択すべきものです。ですから、中曽根総理が社会党が嫌いだというふうにお考えになるのは全くこれは自由であります。いや、社会主義が嫌いだと中曽根さんがお考えになるのは結構です。しかし問題は、政党を法律で規制するというふうなことは今述べられた憲法の趣旨から絶対にこれは相入れないじゃないですか。
  538. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) しかし、自由民主主義の社会にあっても政党法を持っている国があるわけであります。でありまするから、自主規制、あるいは国会というもの自体がその必要を認めて憲法の範囲内において自主規制をやるということは、これは合憲的なことであると思います。
  539. 立木洋

    ○立木洋君 やっぱり自主規制をやるということをあなたは言われた。そうしてこれには、あなたは問題になっていないと言いながら、自民党は公式にたたき台にすると幹事長が述べられている。それに「革命の防止に寄与する」というふうに書かれている。何かそういうことは今の憲法のもとであり得ないことで、何か大げさなことを持ち出しているようにあなたは言われるようですが、しかし問題はそうじゃないんです。御承知だと思いますけれども、大正十四年、この治安維持法が帝国議会で問題になったときに、若槻礼次郎さん、内相が、あの国会でどういうふうに話していますか。この治安維持法が出たって無産階級の人の運動を妨げることはない、拘束すことはない、言論も文章も自由は決して妨げません、こう述べたじゃないですか。述べた後、治安維持法が出た。治安維持法が施行される中で、国体の変革に反対するということで、もちろん共産党は主権在民を唱え、侵略戦争に反対をし、そして抑圧を受けました。しかし問題は共産党だけではなかった。自由主義者が侵され、さらには宗教者までそういう迫害に遭うという事態になったわけです。あなたはそうした事態を御承知だろうと思うんです、だから私は、どうした事態が問題にされるような、今言われたような政党の規制などというふうな発言が出るんですから、そういうときにこそ明確にしておかなければならない。  あなたはドイツがお好きのようですから、ドイツにおられました牧師で、マルチン・ニーメラーという牧師さんが有名な詩をうたっていますが、御存じでしょうか。
  540. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 不敏にして知りませんが、何か今お話を聞きますというと、自民党政党法を決めて、ほかの政党を弾圧するようなことを考えているような幻想をお持ちのようでありますが、全くそういうことはございません。第一、政党法というものの草案ですら私はまだ見たことない。それは党で、政調会で審議され、あるいはこれが決められたなどということは絶対ございません。いわんや今の憲法に反するような言論の創出や結社の自由を侵そうなんということは絶対ございません。どうぞその点は御心配なきようにお願いいたします。
  541. 立木洋

    ○立木洋君 この「自由民主」というのはあなた御存じですよね。これに、御承知のように二階堂さんというのは党幹事長と銘打って、そしてはっきりと、「私の手もとにも、わが党の中央政治大学院長である吉村正東海大各誉教授らの手に成る「政党法要綱」が寄せられているので、これは党の機関で検討していきたい」、幹事長が明確に述べているんです。幹事長、全く責任ないんですか。  先ほどのマルチン・ニーメラーという人の詩を念のために御紹介しておきましょう。この方はナチの時代にドイツの教会の牧師で、戦争に反対された方です。  共産党が弾圧された  私は党員でないから黙っていた  社会党が迫害された私は党員でないからじっとしていた  学校が図書館が労働組合が弾圧された やはり  私はじっとしていた  教会が迫害された 私は牧師だから行動に立ち  上った  だがその時はもう遅すぎた このような詩であります。国際的な経験が知らしているということは、問題が起こったとき、当時の支配者というのはどういうやり方をしていくのか。いわゆるそんなことはない、そんなことはないと言いながら、現実には危険な事態というのが進行していく。だから警鐘を乱打する必要があるんです。  総理、西ドイツを参考にしたらということがしばしばあなた自身言われていますが、西ドイツと日本憲法政党に対する扱いでどのように根本的に違いますか。
  542. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 西ドイツにおきましては、ある程度政党間の話し合いによりまして立法がなされて、そして例えば選挙におきましても何%以上票をとらなければそれはオーソライズされないと、したがって国家選挙資金も受けられないと、そういうような規制が自主的に行われている。日本の場合にはそういうことはなく、政党を規制するというのは政治資金規正法において政治団体が規制を受けているという程度であって、まるっきり違っている存在だと思います。    〔立木洋君 「はっきり答弁になってないんですね」と述ぶ〕
  543. 西村尚治

    委員長西村尚治君) じゃ、そのことを立ってもう一度言ってください。
  544. 立木洋

    ○立木洋君 私は、西ドイツと日本憲法政党に対しての扱いの上でどこが根本的に違った扱い方をしているかということを聞いているんです。
  545. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本憲法においては政党の規定はないんです。これはもう全く自由な、民主的な総意による自由な結社としてこれは行われておるのであって、憲法的制約とか規制というのはありません。  それから、西ドイツの場合に私はどの程度憲法上の明記した規制があるかどうか、最近余り勉強しておりませんので、知っている人にひとつ聞いていただきたいと思います。法制局長官、いかがですか。
  546. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) これもやや突然の質問でございますが、たまたま資料を所持しておりましたので御答弁申し上げます。  ただ、日本憲法の場合には、ただいま総理が御答弁されましたように、政党についての明文の規定はございませんが、西ドイツの場合には政党についての直接的な明文の規定がございまして、読み上げてみますと、ドイツ連邦共和国基本法第二十一条でございますが、一項、二項、三項と分かれておりまして、第一項は「政党は、国民政治的意思の形成に協力する。その設立は、自由である。その内部秩序は、民主的原則に適合しなければならない。政党はその資金の出所について公開の報告をしなければならない。」、これが一項でございます。それから第二項は「政党で、その目的または党員の行為が自由な民主的基本秩序を侵害もしくは除去し、または、ドイツ連邦共和国の存立を危うくすることを目指すものは、違憲である。違憲の問題については、連邦憲法裁判所がこれを決定する。」、これが二項でございます。それから第三項では「詳細は、連邦法律で、これを定める」ということで、一項、二項の趣旨を受けて三項で、詳細は法律で決めるという建前になっているようでございます。
  547. 立木洋

    ○立木洋君 長官、そこまでお調べになっているんなら、第九条はどうなっていますか。
  548. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  ドイツ連邦共和国基本法第九条でございますが、第一項で「すべてのドイツ人は、社団および組合および会社を結成する権利を有する」。第二項で「目的もしくは活動が刑法律に違反する団体、または憲法的秩序もしくは諸国民間の協調の思想に反する団体は、禁止される」。三項に、また、労働条件、経済条件等の関係がございますが、もし必要があれば読み上げますが、ちょっと長うございますので省略いたします。
  549. 立木洋

    ○立木洋君 今お聞きのように、憲法政党に対する条項では西ドイツは政党に関して規制があるんです、憲法の中にある。そして第九条では結社の自由というのが条件つきなんです。結社の自由、完全な自由は認められていないんです。そういう憲法のもとでつくられたのが政党法なんです、西ドイツは。我が国の憲法というのは、二十一条で結社というのが完全に保障されているんです。そして政党に関する規制が一切ないんです。こういうふうな憲法体系のもとで政党に対する規制の法律なんてつくるのは、これはまさに憲法違反じゃないですか。
  550. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ政党法をやろうということも決めてもいない。政党法というものの可否について検討してみなさいと、私は党の幹部にそういうふうに申しておるのであります。政党法というものをつくることはいいことか悪いことか、そのことを検討してくださいと、そう言っておるのでありまして、まだそれをつくると決めたわけでもありません。
  551. 立木洋

    ○立木洋君 あなた方の新聞のこの「自由新報」に、中曽根総理政党法をつくるのに強い意欲を燃やしていると明確に書かれています。そして同時に、先ほどあなたが言われましたように、政党に対する規制も考えてはどうだろうかとはっきり述べたじゃないですか。
  552. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは、昔、比例代表制ができますときに、これは今までと違って個人に投票するんじゃなくて政党に投票するという形になったと、これは今までと非常に様相が変わってきたと。そういう意味において政党というものを何らかの形でちゃんと規定する必要があるんではないか。規制というよりも規定する必要があるんじゃないかと。それはいままでと違った、政党に投票するということが出てきたから、そういう必要ありやなしやという面が一つあると。もう一つは、政治浄化の問題で、政治資金の場合、ドイツの場合は、総選挙の際に得票の数によって国家から選挙資金を出してくれております。そういうことをやりながら片方では政治資金の規制をやっておるわけです。そういうドイツのやり方も勉強には値すると。そういう二つの点から、政党法という問題もひとつ検討してみる余地はあるが、いいか悪いかみんなで考えてくれ、そういう状況に今あるのであります。
  553. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど西ドイツを挙げられましたけれども、外国で政党を規制する政党法があるのはどこどこの国ですか。
  554. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大学の法学部の試験みたいなことを言われますが、私はまだ不敏にして記憶しておりません。
  555. 立木洋

    ○立木洋君 答えられる方いますか、それじゃ。
  556. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もし法制局で知っている方がいたらお答え願いたいと思います。
  557. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 国によってさまざまでもございますし、かつ特定の法律を片方でというように……
  558. 立木洋

    ○立木洋君 政党を規制する政党法ね。
  559. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) どっちかへ分けてどっちかだと言うのも難しいかと思いますが、お話にありましたような政党に関する法律のうちで、政党の届け出とか組織とか、そういったことに対して規定を置いている法律というのは、例えば西ドイツの法律であるとか、それから韓国であるとか、それから少し古い話になりますがトルコとかアルゼンチンとかいうところにそういう法律があるということを聞いたことがございます。
  560. 立木洋

    ○立木洋君 自民党がたたき台にするというのはいまの民主制国家の趨勢であると、政党法をつくるのは。とんでもないですよ、五カ国なんです。これがどういう経過でこの政党を規制する政党法がそれぞれの国でできたか、西ドイツを除いて、総理、お答えできませんか。
  561. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) よく勉強しておりませんので、ぜひお教え願いたいと思います。
  562. 立木洋

    ○立木洋君 世界の趨勢が、政党法がどうなっているかということも御存じなくて政党法の可否の検討を命ずるなんというようなことはいささかおかしいんじゃないですか。  申し上げますが、西ドイツ以外の国々は、これは全部軍事的な独裁国家あるいはクーデターが繰り返されている国。そして全部その経緯は、軍事的なクーデターがやられた後、民政に移管するときに自分の支配体制を維持するために憲法を変えて政党法をつくったというのが西ドイツ以外の経過です。  話はちょっと変わりますが、現在の国債の累積残高、これの償還計画、それの見通し、いかがでしょうか。
  563. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはまあどういうふうにお答えしていいものか、前との関連性はわかりませんが、簡単に申し上げます。  将来の国債残高、公債発行額等が今後の我が国財政事情や金融市場の動向等のいかんによって大きく変動いたしますので、理時点ではお答えを正確にすることはできない、こういうことであります。
  564. 立木洋

    ○立木洋君 残高もわからない、大蔵大臣。累積残高。
  565. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今日ですか。
  566. 立木洋

    ○立木洋君 大蔵大臣に対する質問じゃないと思ったかもしれませんけれども、聞いておいてください。
  567. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 仮定計算ではなく、今日はおおむね百二十兆であります。
  568. 立木洋

    ○立木洋君 先ほどあなたが言われましたが、国庫による政党の補助、今この吉村私案によりますと、政党に対する国庫補助というのはどれだけの金額になりますか、西ドイツ方式で計算されますと。
  569. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) そのお挙げになりました吉村案なるもの、その内容が細部に詰まっているわけではありませんからわかりません。ただ、西ドイツの場合は、レートにもよりますが、一回の総選挙について大体百五十億ぐらいだったと思います。ただ、年末に少し単価が上がっておりますので、もう少し大きな額になるだろうと思います。
  570. 立木洋

    ○立木洋君 新自由クラブも提言なさっておられますけれども、あの方式で計算されますと幾らぐらいになりますか。
  571. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 私どもの方で計算しますと、大体二百億から三百億、たしか三百億近くだと思います。ただ、先ほどおっしゃったように、政党法を随分思い過ごして見ていらっしゃいますけれども、外国のは政党そのものを規制する、運営を規制するところに重点を置いているんです。私どもが考えている政党法というのは、選挙の公営とか、政治資金の流れとか、そういう面の財政面から見た考え方なんですよ。ですからそういう面をもう少し見ていただきたい。御心配なら私の方の草案を差し上げます。
  572. 立木洋

    ○立木洋君 それは政党法で規制するということは中曽根さんがはっきり言っているんですからね、政党の規制ということは。それは新自由クラブも今は合同していますけれども、少数政党ですから規制されたら大変なことになるでしょう。私は新自由クラブのあれで計算してみますと、三百八十一億円余りですよ。そしてそのお金のうち、現在の状態で自民党にどれぐらい払われる計算になるか御存じないですか。
  573. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 係の政策の者がおりませんから、ちょっと正確な数字はわかりません。
  574. 立木洋

    ○立木洋君 計算さしていただきますと、二百一億ぐらいの金額が流れるということですね。  総理、今、現在政府としては小さな政府、そして浪費をなくさなければならない、行政改革努力しなければならないということで盛んにされている。私たちはそれ自体にいろいろ問題があるということをこれまでも指摘をしてきた。一方では百二十兆円にも上る大変な赤字です。これどう償還するか、今のところ見通しが立たないと言うんですよ、財政の責任者の方が。こんな大変な状態の中で、今、福祉の切り捨てだ、あるいは教育予算の切り捨てたと大変な状態になっている。こういう重大な状態の中で政党に補助金を出す、これ、国民は納得するでしょうか。まさにあなたが言われている考え方からしても、これは逆行じゃないでしょうか。どうです。
  575. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その可否について勉強してみてくれと言うんで、やるという意味ではありません。  ちなみに、二百一億と言われましたが、そのときは円は何マルクになっておりますか、その計算の基礎は。
  576. 立木洋

    ○立木洋君 新自由クラブの計算ですよ。今、るる私は質問してまいりました。この政党を規制するということは、今日の近代社会にあってはならないことなんです。問題は、政党というのは主権在民であるそういう世の中では国民自身が選ぶという、その選択の自由を侵すことになるからです。御承知のように、社会の変革という観点で言えば、アメリカの独立宣言にしましても、フランスの革命のあの後の人権の宣言についても、社会の変革をする、自分たちに寄与する新しい政府をつくる、あるいは政府を変える、これは人民固有の権利であるということすら明確にされているわけですから、このような政党を規制するなどというふうな誤ったことは一切やめるということを厳しく要求しておきます。そして、今後ともそういう問題について、あなたは先ほど政党を規制するということを言われているんですから、この問題に関してはもしかそういうふうなことがあればあくまで反対していくということを私は強調して、次の質問に移りたいと思います。  総理総理は農業は生命産業だと、国のもとであるということを何回か本会議でも発言されております。しかし、今の日本の農業の現状というのは大変な状態に私はあると思うんです。主な穀物の自給率は三割そこそこという大変な状態で、もしか総理が本当に生命産業、国のもとであるというふうにお考えになるならば、食糧の海外依存はこれ以上やめて、やはり日本の食糧自給率を高めて国民の食糧に対する不安を一掃する、こういう努力こそなされるべきではないでしょうか。いかがですか。
  577. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 農家の経営の安定あるいは総合的安全保障、食糧の自給、そういうようないろんな面から見ましても、農業及び農家の安定的な経営が行われるように我々は配慮すべきであると思っております。
  578. 立木洋

    ○立木洋君 主な穀物の自給率が下がったのは、原因どこにありますか。
  579. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 主食用の自給率は、米の完全自給、これを行っております関係上、近年七割程度、この水準が横ばいでございます。ただ、飼料穀物を含めた穀物総合自給率、これは昭和四十五年には四五%でございましたが、畜産物消費の増大、これらによりまして低下傾向をたどっておりまして、昭和五十四年には三三%、しかしその後横ばい、五十七年度も三三%を維持しておるというような状況です。
  580. 立木洋

    ○立木洋君 原因は。
  581. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) これはやはり何といいましても、今申しましたように畜産物、これが多くとられるようになりましたので、いわゆる飼料穀物、これが多く輸入されるということで自給率が下がったと、そういうぐあいに見ていただいていいと思います。
  582. 立木洋

    ○立木洋君 二十三年前の農業基本法とは関係ないですか。
  583. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) お答えを申し上げます。  自給率の低下は、今大臣から御説明申し上げましたように、主として畜産物消費が拡大をした、そのために豚、鶏等、あるいは年もそうでございますけれども、飼料穀物の輸入がふえた、そのために穀物全体としての自給率が減ってきたというのが原因でございまして、特に基本法によりまして国民の食生活の安定供給という観点から見ました場合、その自給率の低下そのものはむしろ畜産物消費の拡大によるものでございまして、特に基本法に違反をしているというようなことはございません。
  584. 立木洋

    ○立木洋君 関係ないかということを聞いているんです。違反じゃないんですよ。
  585. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 特に関係はないと考えます。
  586. 立木洋

    ○立木洋君 選択的な拡大政策をとったということとは関係ないですか。
  587. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 農産物の選択的拡大と申しますのは、需要の増大する方向に向かいまして生産を展開していったと。そういう意味におきましては、畜産物消費が増大をしている、片方では米の消費が減退をしていると、そういう状況がございまして、私ども四十年の後半から、米から主として今後の需要の増大の望まれる畜産物の生産に重点を置いていったというようなことでございます。
  588. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、農基法で、外国産と競合する農作物、これに対して小麦だとか大豆については生産を合理化する、こういうやり方をして、いわゆる選択的な拡大政策の結果じゃないですか。パンだとかうどん、こういう問題、それから納豆、みそあるいは豆腐原料、こんなものは全部海外に依存する。そういう結果が影響していないですか。
  589. 西村尚治

  590. 立木洋

    ○立木洋君 いや、あなたは大臣ですか。私は大臣に聞いたんですよ。あなた、いつから大臣になりました。
  591. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 事実関係をちょっと御説明いたします。  ただいまの御質問につきましては、やはり食生活というのはなかなか国民それぞれの個人の自由によるものが多うございますので、私どもとしましては、食生活の内容までを規制するということは非常に困難でございます。ただ、先ほど御指摘がございましたように、日本におきまして、やはり米の生産が一番風土に適している、また健康上もいいという観点もございますので、私どもとしては、日本型食生活という形で米を主体にしまして、畜産物あるいは野菜、果実と、そういうような多様な国民の嗜好を取り入れた食生活を展開していくという方向で考えておるわけでございます。
  592. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 自給率が低いと言われますが、農林水産省といたしましては、自給率の低いものについては自給率を高めるべく努力しておるところでございます。昭和四十八年、これを見ていただきましてもおわかりのように、小麦で四%のものでございましたが、これが五十七年には一二%。大豆で四%。これが五%、ただし、これは食用大豆につきましては二〇%のものが三四%。また、飼料穀物だけは三四%が三二%、これはいわゆる畜産物の嗜好というものが高まったということでございます。
  593. 立木洋

    ○立木洋君 総理ね、御承知のように、こういう食物を外国に依存するということは大変なことなんですね。昭和四十八年にアメリカが大豆輸出を規制した、それで日本は大変な大豆パニックになった。こういうことについて、あなたは教訓をどのようにお考えになっていますか。
  594. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり、農業生産というものにつきましては、国民の需要との間にバランスを保つことが必要であると思います。
  595. 立木洋

    ○立木洋君 当時はまだ総理じゃございませんでしたけれども、昭和四十九年、自民党の第二十九回の党大会ですね。そこの文書の中で、運動方針で次のように書かれています。「食糧については、海外に大半を依存している小麦、大豆、濃厚飼料も、国内での増産の余地はけっして少なくはない。わが党は、比較的安い外国農産物に安易に依存してきた従来の農政を率直に反省し」云々と、この反省を現在どのようにお考えです。
  596. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それらが食糧の自給率を高める努力になって、そして今、農林大臣が申し上げましたように、大豆やそのほかにおきまして改善がされてきた。また、畜産につきましても非常に著しい生産量の増加をもたらした。その点がまた飼料穀物の輸入につながりましたけれども、しかし酪農やそのほかが非常に伸展して、子供の牛乳なんかも豊富になってきたということは否定できません。
  597. 立木洋

    ○立木洋君 農林大臣、オレンジだとか牛肉、いよいよ決着つけなければならないなんというような話になっていますが、この問題についてはアメリカから強要されていますけれども、いかがお考えですか、どのように対処していきますか。
  598. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 私、農林水産大臣といたしましては、我が国の農業を守るという立場を堅持してまいるつもりでございます。特に一昨年の五月、参議院の農林水産委員会での決議、本年一月の申し入れ、これを踏まえまして、農業者が犠牲にならないように、我が国農業が着実に発展していくということを念頭に置いて交渉に当たってまいります。
  599. 立木洋

    ○立木洋君 総理、この自由化問題、枠の拡大問題で、前回の総選挙のときに公約をなさっていますが、どういう公約でしたでしょうか。
  600. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の国益を守って、日本の農家及び農業生産につきまして、総合的安全保障の観点からもこれを守っていく、ただ、国際関係におきまして、貿易摩擦等においてこれを調整を要するという場合につきましては適切に処理していく、そういうことであります。
  601. 立木洋

    ○立木洋君 総理にちょっとこの資料を見てもらえますか。
  602. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、各党の農政公約として、農政に関する各党の公約をみんな記述したものであります。自民党は、日本の農業を守り、農家を守るために一生懸命頑張ると、そういうことが書いてあります。これは当然のことであります。
  603. 立木洋

    ○立木洋君 自由化のところ。
  604. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自由化のところでも、ここに書いてありますように、「全国的合意を得つつ頑張って行く」と、こう書いてあるわけであります。
  605. 立木洋

    ○立木洋君 一番最初に言われましたように、農業というのは大変な産業ですし、重視して、本当に食糧の不安をなくしていくために私は力を注いでいただきたいと思うんですよ。だからこそ強く申し上げているわけですけれども、ここにあなたがお書きになっている公約、この自民党の公約、自由化問題について、「国民食料の安定供給と地域経済において基幹的役割を担っている農業を守るのは当然。わが国のみならずいずれの国も自国の農業を保護している。従ってわが国農業を壊滅させるような農産物の輸入自由化、枠拡大には応じられない。ゆえにねばり強く交渉を続けて行くべきと考える。ガットに提訴されようと守るべきことは守らなければならない。今日、消費者団体も、その点については同調しているが、今後とも全国的合意を得つつ頑張って行く」、これが全文ですよ。あなたがお読みにならなかったから、私は仕方がない読んだけれども、いかがです。
  606. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう意気込みでやっておるということであります。
  607. 立木洋

    ○立木洋君 意気込みじゃ困るんですよ。  山村さん、あなたも新聞では一時期勇気のある何とかと書かれたことがありますが、この問題に対してどのように勇気を払い、尽くしますか。総理がやらなくてもやってほしい。
  608. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 一時期ではなくて、今でも勇気があると思っております。  先ほど来申し上げましたように、この三月末が期限でございますが、三月末期限といって、この期限にとらわれて無理な要求をのむことのないということで交渉に当たってまいります。
  609. 立木洋

    ○立木洋君 この公約を完全に実行されるかどうか、総理
  610. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 懸命の努力をいたします。
  611. 立木洋

    ○立木洋君 農業問題で当初重視されると言われましたけれども、結局はこの選挙の前の公約も努力目標にされてしまうということでは私は極めて遺憾だし、今日の農産物のいわゆる自由化問題、枠の拡大問題では、農民が、本当にひどいと、我々は農業をどうやっていけばいいんだと多くの農家の方々が言われている。先日もこのことで集会が開かれて、申し入れがなされたはずです。このことを私は重ねて厳しく総理にも要求し、それについての総理の答弁を求めて、残余の質問は次回の委員会で引き続いて行うということにいたします。
  612. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前から申し上げておりますように、農業は生命産業であって、また総合安全保障の面からも穀物の農業の自給は大切な政策であります。一生懸命その点では今後も努力していきます。  ただ、また外交という面から見ますと、貿易摩擦というのが今あります。それはまた別の面で公約しておるんです。このような関係も適切に調整して、そうして全力を奮って先ほど申し上げましたような考えに立って農業を守っていくということを申し上げる次第です。
  613. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 立木君の残余の質疑は明日に行うことといたします。  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十七分散会