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1984-03-14 第101回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月十四日(水曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  二月二十四日     辞任         補欠選任      高杉 廸忠君     梶原 敬義君  二月二十五日     辞任         補欠選任      矢野俊比古君     増岡 康治君      杉山 令肇君     出口 廣光君      長田 裕二君     後藤 正夫君      内藤  健君     佐々木 満君  三月三日     辞任         補欠選任      後藤 正夫君     長田 裕二君      佐々木 満君     内藤  健君      出口 廣光君     杉山 令肇君      梶原 敬義君     高杉 廸忠君      近藤 忠孝君     上田耕一郎君      小西 博行君     柄谷 道一君  三月十三日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     立木  洋君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 金丸 三郎君                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 志村 哲良君                 杉山 令肇君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 竹内  潔君                 土屋 義彦君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 増岡 康治君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 中野 鉄造君                 和田 教美君                 立木  洋君                 柄谷 道一君                 喜屋武眞榮君                 秦   豊君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  住  栄作君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  森  喜朗君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        農林水産大臣   山村新治郎君        通商産業大臣  小此木彦三郎君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        郵 政 大 臣  奥田 敬和君        労 働 大 臣  坂本三十次君        建 設 大 臣  水野  清君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    田川 誠一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       中西 一郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       後藤田正晴君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)            (国土庁長官) 稻村佐近四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       岩動 道行君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  上田  稔君         —————        会計検査院長   鎌田 英夫君         —————    政府委員        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        総理府人事局長  藤井 良二君        警察庁長官    三井  脩君        警察庁長官官房        長        太田 壽郎君        皇室経済主管   勝山  亮君        行政管理庁長官        官房総務審議官  古橋源六郎君        行政管理庁長官        官房審議官    佐々木晴夫君        行政管理庁行政        管理局長     門田 英郎君        行政管理庁行政          監察局長     竹村  晟君        北海道開発庁総        務管理官     楢崎 泰昌君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁長官官房          長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁衛生局長  島田  晋君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        防衛施設庁労務        部長       大内 雄二君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        経済企画庁物価        局長       赤羽 隆夫君        経済企画庁調査        局長       廣江 運弘君        沖縄開発庁総務        局長       関  通彰君        国土庁長官官房        会計課長     安達 五郎君        国土庁計画・調        整局長      小谷善四郎君        国土庁地方振興        局長       川俣 芳郎君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中近東ア        フリカ局長    波多野敬雄君        外務省経済局長  村田 良平君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  小和田 恒君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        小野 博義君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵大臣官房審        議官       大山 綱明君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       酒井 健三君        国税庁次長    岸田 俊輔君        文部大臣官房長  西崎 清久君        文部大臣官房審        議官       齊藤 尚夫君        文部大臣官房会        計課長      國分 正明君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省大学局長  宮地 貫一君        厚生大臣官房審        議官内閣審議        官        古賀 章介君        厚生大臣官房審        議官       新田 進治君        厚生省公衆衛生        局長       大地 眞澄君        厚生省医務局長  吉崎 正義君        厚生省薬務局長  正木  馨君        厚生省児童家庭        局長       吉原 健二君        厚生省保険局長  吉村  仁君        社会保険庁医療        保険部長     坂本 龍彦君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        林野庁長官    秋山 智英君        通商産業大臣官        房審議官     山田 勝久君        郵政省貯金局長  澤田 茂生君        郵政省人事局長  三浦 一郎君        労働大臣官房長  小粥 義朗君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        労働省職業安定        局長       加藤  孝君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局公        務員部長     中島 忠能君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    参考人        日本銀行総裁   前川 春雄君        社会保障制度審        議会会長     大河内一男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○派遣委員報告     —————————————
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 西村尚治

    委員長西村尚治君) まず、総括質疑に関する理事会協議決定事項について御報告をいたします。  総括質疑は七日間分とすること、質疑割り当て時間は九百八十分とし、各会派への割り当て時間は、自由民主党・自由国民会議及び日本社会党それぞれ二百八十分、公明党・国民会議百七十五。分、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会それぞれ七十分、新政クラブ三十五分とすること、質疑順位及び質疑者等につきましてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右、理事会決定のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  5. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十九年度総予算審査のため、本日の委員会日本銀行総裁前川春雄君及び社会保障制度審議会会長大河内一男君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは、これより総括質疑を行います。和田静夫君。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 これから一九八四年度の予算について順次質問をいたしてまいりたいと思います。  まず総理に、この八四年度の施策、あるいは八〇年代の後半に向かうターニングポイントに当たっての心構えとでも申しましょうか、そういう基本方針というべきものを承りますが、戦後政治の総決算という言葉を好んでお使いになってきたわけであります。戦後政治の総決算というとすぐに憲法問題が浮上をするわけでありますが、憲法というと防衛安全保障議論になる、また、なりがちでありましたけれども、憲法のいま一つ基本理念としての二十五条にうたわれている部分、この部分についてどういうふうにお考えなのか、あるいは二十六条の教育権、あるいは完全雇用保障などなどの福祉国家理念についてどういうふうにお考えなのか、まずその辺を承ります。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、戦後政治の総決算ということを申し上げておりますが、それは一つには、過去三十八年間の日本の来し方を反省してみてオーバーホールを行う必要があるものは行おう、しかし、よい結果を残しておるものについてはこれをますます伸ばしていこう、そういうような主体的立場に立った選別を行いつつよりよき日本へ伸ばしていこう、それがオーバーホールという意味でございます。それと同時に、未来に向かって日本を準備していこう、それには今国際的に非常に大きな変動的要因が出てきております。何といっても戦争を廃絶して地上から戦争をなくしていく。その前提として軍縮、特に核軍縮を推進して、そして国際緊張を緩和させ、その軍事費発展途上国国内民生安定等のために使う方向へ誘導していくということは大きな大政策で、非常に重要なわが国の国策でもあると思っております。  そういうように核戦争の危機を回避する、日本戦争に再び巻き込まないようにするという面が大きな一つの目標でございますと同時に、今、高度情報時代というものを迎えまして、新しいメディア、新しい社会が目前に来ているように予想されております。これに対して日本社会日本教育日本の青少年、日本家庭の主婦がどういうふうに対応していったらいいものであろうか、まず政府考えなければならぬところでございます。そういう意味におきまして、私は平和問題懇談会というものをつくりまして、まずそのような面で勉強していただいておりました。また、最近は高度情報時代研究会も発足いたしまして、このような新しいメディアによる情報時代というものが日本社会にいかなる影響を及ぼすかという勉強もしていただいております。そういうような観点からも平和を維持し、新しい時代日本を準備する、そういう体系を順次整えていきたいと、こういう面から新しい時代に向かう体制を今進めつつある次第でございます。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 総理改革方向、戦後政治の総決算方向というのは、衆議院予算委員会の論議をずっと拝聴いたしていまして、どうも福祉は怠惰を生むというスローガンのもとにやられているのではなかろうかという危惧を抱きました。福祉は怠惰を生むというような発想はございませんか。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本憲法にはやはり福祉国家理念厳然とうたわれております。また、男女の平等あるいは基本的人権という近代政治の崇高な理念厳然とうたわれております。これらのものは先ほど申し上げました中であくまで堅持し、また伸ばしていくべき部面であると考えておりまして、福祉が怠惰を生むというような考えは持っておりません。ただしかし、ヨーロッパにおける情勢等を見まして、北欧やあるいはドイツやイギリスにおいてすらも一部のばらまき福祉というようなものが非常に財政的窮乏を来している一つの原因にもなっておる。そういうような面についてはこれは考えなければならぬ点もあると思いまして、そういう点も注意しつつ福祉政策を着実に進める。日本的福祉を推進するという意味はそういう意味も入っておると思います。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 財政事情が許さない、金がない、ないそでは振れない、そういう場合でも適正な福祉の水準というのは判断をされなきゃならぬと思うのでありますが、それを維持するためにも最大限の努力をされる、こういうふうに考えておいてよろしいですか。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 結構でございます。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、その適正な福祉というのはだれが判断をするとお考えでしょう。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最終的には主権者である国民が御判断なさるものであると思います。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 私もそう思います。したがって、その国民的合意、コンセンサスを得るためには少数者意見をよく聞かれる、そういうことが必要でしょう、若干時間がかかっても。そう考えてよろしいでしょうか。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もちろん民主政治におきましては、少数者意見を尊重していかなければならぬという面も非常に存在すると思います。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 戦後政治総決算論についてもう一問伺いますが、戦後、財政法体系の諸原則財政議決主義負担の水平的公平、応能負担公債発行の諸制限、国債引き受けの禁止、予算の単年度主義などなどは堅持されていくと承っておいてよろしいでしょうか。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 財政民主主義にのっとった諸改革が戦後行われまして、以上のような諸原則健全財政を維持していくためにも必要な原則である、そのように考えております。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、中曽根内閣財政運営方針についての質問に入りますが、まずお尋ねしたいことは増税なき財政再建についてであります。  過ぐる二月二十三日、補正予算審議の際の私の質問中曽根総理は、中曽根内閣大型間接税導入しないと明確に御答弁をいただきました。そこで、この増税なき財政再建増税なきとは、主として大型間接税導入しないという意味ですから、総理増税なし路線を堅持する方向をお示しになった、こう理解しておいてよろしいですね。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 増税なき財政再建という定義は臨時行政調査会最終答申に書かれており、その御議論を踏まえた考え方に立脚しております。たしか臨時行政調査会瀬島委員が本院におきましてその趣旨を御説明したと心得ておりますが、それらによりますれば、租税負担率というものをGNP比におきまして変えない、そして、ただ基本的にそれを維持しつつ、新しい税目を起こしたり新しい措置を行わない範囲内においていろいろ措置することは認められると、そういうような概念であったと考えております。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 総理のそういう明快な答弁があったにもかかわらず、どうも大蔵省大型間接税について未練があるように思われます。そこで大蔵大臣大蔵省としてはどうなんですか。
  24. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 増税なき財政再建、これはまさに財政改革を進めていくためのてこでありまして、今総理のおっしゃった筋そのものが私どもが絶えず念頭に置くべきことであるというふうに考えております。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 将来竹下内閣が仮にできた場合は別なんでしょうけれども、中曽根内閣大蔵大臣としては、大型間接税大蔵省の定義するところの五つの類型プラス仮称一般消費税導入をしない、これは明快に約束されますか。
  26. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 総理から、衆議院予算委員会におきましても総理のお考えになっておる大型間接税というようなもののある種の概念が示されております。ただ、今、和田さんの御指摘なすったのを一つ一つ点検してみますと、厳密に言うと、多段階でなかったり、単段階であったりしますので、それは学説として全部をインクルードして否定するという性格のものではないかもしらぬ、しかし総理の頭にあります概念としては私もよく理解しておるつもりであります。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 大型間接税はやらない、しかし中、小型間接税導入ないしは増税するかもしれない、どうも大蔵大臣の頭の中にそういうことがあるから今学説的なことを言われたのだろうと思うのですが、そういう可能性巷間指摘をされているわけですが、中、小型間接税というものは、大蔵大臣、どんなものでしょうか。
  28. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これも、大型中型小型ということになりますと、なかなか確たる基準もございませんし、難しい問題でございますが、私が総理との問答を聞きながら一応私なりに理解しておりますのは、まずいわゆる消費一般にかかるもの全体を投網をかけるように一応網を打って、その中から個別で除いていくというような姿のものはまさにいわゆるすそ野の広い間接税だというふうに思います。したがって、税調等でいろいろ指摘されておりますように、物品税等々の間接税分野において新たに担税力をそこに求める、その対象として適切なものが時に拡大され、時に廃止されていくというようなものは、個別消費税あるいは物品税のいわば対象品目の増加、あるいは減の場合もあるでしょう、そういうものが、いわゆる私どもいうところの、まあ中、小という基準は難しいのでございますが、一般的に国民全体の中に大型間接税というもの以外のものではなかろうかなと、こういう感じがしております。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 端的に言って、現行物品税酒税などはどうなんですか。どういう分類でしょう。
  30. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これも著しく額が大規模になった場合はあるいは大型と言えるかもしらぬ。しかしながら、今現行物品税、今度も御審議いただいておりますが、これらはまさに大型とか中型とか小型とかという範囲で律する以上に今日まで現実是認されておる物品税そのものである、言うならば、大型かと言われれば大型ではないということが言えるのではないかと思います。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣が今答弁されました、総理の頭の中にある大型間接税はどういうものですか。
  32. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は財政学者でありませんので、学問的にどういうふうに当たるか私わかりませんが、政治家としての直観力に基づいて考えておりまするのは、流通の各段階において普遍性を持ってちょうど投網をかけるようにばさっと税金をかけていく、そういうようなもので大型のものを大型間接税。したがって、個々の単品について個別的に行われている物品税あるいは酒税とかあるいはビールめ税金等も、これらは普遍的にかけたという中ではありません。単品について行われている。今やっておるのはそういうことでございます。そういうものは入らない、そういうふうに心得ております。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 臨調答申は、一方で増税なき財政再建を掲げる、他方では直間比率の是正、つまり所得税など直接税を減額していく、その分を物品税、消費税などの間接税増税、こういう主張になっていますね。そうしますと、大型間接税導入をやらないとしても、いずれにせよ、この消費税の増税というものは避けて通れないというような論理帰結になるのではなかろうかというふうに考えるのです。竹下さん、ことしのように既存の消費税目を増税するだけでなくて、直間比率の手直しをするということになってきますと、新規の消費税の税目を立てる必要が出てくるのじゃないだろうか。
  34. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一番難しい議論はいわゆる直間比率という問題ではないかと思います。御案内のように、弾性値で見ますと、直接税は経済成長に応じましてどんどん弾性値はそれなりに高いが、間接税はその半分強ぐらいなところでございますね。そういたしますと、仮に直間比率をある程度の年限を意識してこれを大きく変えるということになると、相当な変え方をしませんと、年々の成長率でまたその比率は直の方がずっと高まってまいりますね。そういうことになると、そういういろいろな議論の中で直間比率という言葉がだんだん専門家の間で使われなくなって、いわば税体系そのものの見直し、こういう言葉に税調などではこれが整理されてきたということじゃないかなと、こういうふうに私は考えております。  ただ、税調答申等にもございますように、やはりいわばかつては避けて通れない問題として幅広い間接税を検討すべきだと指摘した。が、今日の段階においても担税力をそこに求めるという考え方で、あるべき姿としての間接税の問題は勉強していなさいよと、こういう指摘をされておるわけでございますから、私どもは担税力をどこに求めるかということにおいてやはり検討、勉強というものは続けていかなきゃならぬというふうに思っております。  ただ、明確にしておかなきゃならぬのは、中曽根内閣の閣僚として、総理がおっしゃっておりますいわゆる大型間接税導入しない、そういうことは絶えず私どもの念頭に置いて、そして税調の指摘に基づく勉強というものは別の意味においてやはり継続してやっておかなければならぬ。国民のニーズもいろいろ変わりまして、専門家の議論以外のところでむしろ直間比率を本当に勉強して、間接税移行型をしてもいいじゃないかというようなこれは学者の意見もあるわけでございますから、そのような勉強だけは絶えずしておかなきゃならぬという考え方でございます。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 その勉強されていることでありますが、私はどうしても新規の消費税目を立てなきやならぬということになってくるだろうと思うのですが、そこのところはそうなんですね、結局は。
  36. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それは勉強した結果そういうことも、和田さんの念頭にどのような事態を置いて理解しておられるかということは定かにするわけにもまいりませんが、検討の過程においていろいろな議論から新規のそういう考え方も出てくる可能性は私もあると思います。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 主税局長、この新規の消費税の税目を立てるという場合、どういうことが考えられますかね。
  38. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) お答えいたします。  新規の税目を立てる場合にはということでございますが、現在は税制上税負担全体を上げるような新たな措置をとらないということでございますので、私ども勉強はいろいろいたしておりますが、念頭にあるものはないのでございます。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 その勉強しているところをちょっと教えてもらいたい、私も一緒に勉強したいと思いますから。
  40. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 従来、大蔵大臣も御答弁申し上げておりますように、間接税ということで欧州型の付加価値税等々について勉強をいたしているのは事実でございますが、それについての態度につきましては、大蔵大臣も御答弁申し上げているとおり、現内閣のもとでは念頭には置かないということで、私どもそれを拳々服膺しているところでございます。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと待ってください。委員長、主税局長はどこへ行ったんでしょうか。
  42. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 主税局長は何か支障がありますか。——和田君、もうすぐ見えるそうですから、ひとつ質問を続けてください。——和田君、どうですか、質疑を続行してくれますか、大臣もおるのだし。
  43. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと待ってください、今協議しておりますから。
  44. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  45. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。  それじゃ和田君。——その前に一言政府側に申し上げますが、この総括質疑の最中に必要とされる大事な政府委員が断りなく欠席をされるということのないように、今後十分御注意をお願いいたしたいと思います。
  46. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大蔵省の要求された、本委員会審議のために必要と認め要求された政府委員が所定の時間に、いかに私どもの連絡不十分とはいえ、出席していなかったことは遺憾であります。慎んでおわびを申し上げます。
  47. 和田静夫

    和田静夫君 そこで大臣、主税局長でもよろしいんですが、この新規の消費税の税目について勉強されているのなら、これは総理と先ほどやりとりしましたように、民意に聞くというところも大変大切なところですが、われわれも一緒に勉強したいですから、どういう税目かちょっと発表してください。
  48. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 昨年十一月に出ました政府税調の答申におきましては、間接税と申しますか消費税につきましては、課税ベースの広い間接消費税について検討すべきであるという方向が示されておりますけれども、具体的な新規の税目について現在その導入を前提に検討しておるという事実はないわけでございますが、もう一つ政府の税調の答申で示されております方向は、現在の物品税の課税範囲につきまして、昨今の消費の態様等を勘案しながら従来よりは少し考え方を広げて拡大すべきではないかという、これは具体的な方向が示されておるわけであります。現実に五十九年度の物品税の改正に当たりましては、そういう点についても検討を私どもいたしました。けれども、まだ結論が得られませんで、今回提案申し上げております物品税の課税範囲の拡大は、従来課税対象としております物品とのバランスという観点から範囲を広げるということを御提案申し上げておりますけれども、新規に新しい観点からの物品税範囲の拡大というのは実は今後の具体的な検討課題ではないかと、これは具体的に検討いたしております。
  49. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、そこでやっぱり検討された税目をちょっと発表してください。
  50. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、主税局長がお答えしましたように、私ども物品税範囲の拡大という形の勉強をいたしましたが、それは我々としていろんな勉強をした結果、このたび御審議対象になったものとそうでないもの、まあ言ってみれば機熟さずといったようなものもございます。が、新たなる税目として勉強したというものは現実的にはございません。いろいろ世上、目的税として考えたらいいじゃないかとかというような意見はございますけれども、それらのものを統合して今新たな税目というものを念頭に置いて勉強したというような段階には至っておりません。
  51. 和田静夫

    和田静夫君 世上、目的税として考えたらいいじゃないかと言われたような税目はどんなものでしょう。
  52. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これも一遍、衆議院でございましたか、議論に出たことのございますのは福祉税構想というのがございました。しかし、それの意図が私も余りはっきりしないで、何だか雇用税みたいな感覚でもありますし、これもまた問題のあるところでございますし、あるいは消費税をある段階福祉税という銘を打って目的税にしたらというような議論があったことは私も記憶しておりますが、そのほかの議論は、かつて議論した一般消費税等以外にはございません。
  53. 和田静夫

    和田静夫君 福祉税、雇用税については、私も大蔵大臣、この場所で質問いたしまして否定されましたからよく記憶をいたしておりますが、例えば下水道の拡充だとか充実なんというのは今一般の世論では一番求められているものですね。そういうものを目的税としては考えるとかというようなことはあったわけですか。
  54. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一番目的税として考えられたものと言えばやっぱり道路特会へ入れる道路特定財源、それから最近で言えば、今度もまたお願いしております石油税というようなことになると思うのであります。したがって、今下水のお話を例示としてお出しになりましたが、中には防災事業でございますね。それを一つの目的財源として何か考えるべきじゃないかと、そういうような議論はこれは絶えずあることでございまして、ただ、それらは絶えず議論があれば整理をしておりますが、私どもの方の勉強の対象には今まだなっていないということではないかというふうに理解しております。
  55. 和田静夫

    和田静夫君 今の例示は田川自治大臣の管轄になるわけですが、そういうことはどうですか。
  56. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今おっしゃった、私は防災というようなことをちょっと申しましたが、田川大臣に対する御質疑は、下水道整備なんかの特定財源として地方税の中で目的税を考えた、勉強したことがあるか、こういう意味だと思います。それは田川大臣に今の質問をより正しく認識していただくためにあえてここでもう一遍しゃべらしていただいておるのですが、いま一つ例示としてやっぱり挙げた方がいいかなと。一番最近では中曽根内閣の対がん十カ年戦略に対してがん征伐税を取れと、その目的税は何だと言ったらたばこだ、こういう議論もあったこともございますが、つけ加えて申し上げておきます。
  57. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 税務局長から説明さしていただきます。
  58. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 地方税におきましても目的税はいろいろ現在あるわけでございますけれども、特に道路関係の目的財源が国に比べまして非常に少ない、国の方はややもすればオーバーフローのような現象が起こっておりますけれども、地方税は極めて足りない。現在四一、二%というような状況でございますので、そういった観点からの、現在ある自動車取得税でありますとか、あるいは軽油引取税でありますとか、こういったものの拡充については検討をいたしておりますが、全く新たな目的税を今すぐに導入するという前提での検討はございません。
  59. 和田静夫

    和田静夫君 自治大臣、触れたついでで恐縮でありますが、新聞事業について事業税免除の見直しに触れられている向きが非常に多いわけですね。どういうふうにお考えになっていますか。
  60. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 租税の、新聞事業それからテレビ、出版、その事業税については税の不公平感をなくしていく意味から、これは事業税を課していかなければならないという強い気持ちを私自身は持っております。新聞、テレビ、その他出版の事業税につきまして、特に新聞やテレビ、これは今の不公平税制と言われる中で一番早くやらなければ、手をつけなければならない問題ではなかったかと思います。私はそういう意味で国会の御協力を得、各政党各会派の御支援を得てこの問題は実現に移していかなければならないと思うのです。新聞が公益性と言われますけれども、公益性のある事業が事業税を随分払っているわけですね。ガス供給事業であるとか電気供給事業であるとか、そういう中にただ新聞やテレビが聖域のように事業税を払わないでいいなんというようなことは許されないことじゃないかと私は思うんです。国民の皆さんが知らないのですね。一般に新聞やテレビは事業税を払ってないんですか知らないのですよ。新聞の第一線に働いている記者でさえも知らないのです。それはこういうことが報道されないのですよ。報道されないから知らないのです。私はこれほど不公平な税制はない。こういうことに手をつけないからほかの特別措置で免れているそういう税金に手をつけられない。ですから私は、今新聞やテレビは事業の傾向を調べてみると大変収入がよくなってきているんです。ですから、自発的に新聞やテレビが事業税を払っていただくようにこの席から特にお願いを申し上げる次第でございます。
  61. 和田静夫

    和田静夫君 河本長官、消費税についてどういうふうにお考えになりますか。
  62. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 消費税につきましては、今大蔵大臣からお述べになりましたとおりでございまして、私からコメントする立場にはございません。
  63. 和田静夫

    和田静夫君 総理、概括的に消費税について伺います。
  64. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、和田委員補正予算の際に申し上げましたのが皮切りでございまして、自来衆議院段階におきましても一貫して申し上げたようなことをずっと言っておるわけでございまして、中曽根内閣の続く限りそういう考えはないということをここでまた重ねて申し上げたいと思います。
  65. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、これは委員会の席で何度も私確認を願ったことですが、消費税など間接税というものは一般的に所得に対して逆進的、つまり所得の低い者ほど所得に対する負担率が高い、この点は御確認願えますね。
  66. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 原則的にはその逆進性が高いと見ております。
  67. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、この一九八四年度の税制改正は所得税減税と間接税増税を抱き合わせているわけでありますから、ある階層については所得税の減税を間接税増税が相殺をする効果を持っているわけであります。つまり、所得の低い階層についてはせっかくの減税が間接税増税によって相殺をされる、あるいは逆に減税なしで増税だけ、こういう結果にしかならないことが十分想定されるわけであります。間接税に加えて歳出カットのあおりを受けて公共料金の値上げがメジロ押しに並んでいるわけであります。この公共料金値上げをプラスしてみますと確実に負担増になる、こういう所得階層が生まれてくるわけであります。それは低所得層になるわけであります。そこがそういう状態になるわけであります。大蔵大臣並びに企画庁長官いかがでしょう。
  68. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは個々人の生活態様はそれぞれ個々人によって違うわけでございますから、一人一人をとった場合において和田さんのおっしゃっている、描いていらっしゃるようなモデルの方は生じてくると思います。いわば所得税は、課税最低限以下に位置づけられた方であって、お酒は少しも減らさないで今どおり仮にお召しになっておるとすれば、それだけのものはそれは負担増になる、これは個々の生活態様の中においてはそれはあり得ることであるというふうに思っております。ただ私どもは、全体としての考え方でこれをとらえて御議論をいただいておるというところでございます。
  69. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 公共料金は広い意味で四つございまして、一つ予算関係の公共料金、それから第二は大衆課税に伴う負担増、これも公共料金といいますか公共負担の部類に入ると思うのですが、それと政府の認可関係の料金、それから地方の公共料金と四つございまして、大体ごとしは相当たくさんございますので、できるだけ抑えるつもりでございますけれども、大体消費者物価にほぼ一%ぐらいはね返ってくるのではないかと、こう思っております。  それでは、どの階層が一番相対的に負担増になるかといいますと、やはり今御指摘のように所得の低い層に対する負担が比較的重くなってくる、このように思います。
  70. 和田静夫

    和田静夫君 私の試算では、総理府家計調査の十分位階級の第一分位、月収二十一万円層で負担割合が一・八三から一・九二にアップするわけです。それから第十分位、月収七十五万円層で〇・九六から一・〇〇にアップする。低所得層のアップ率が約〇・一ポイントに比べまして高所得層のアップ率は〇・〇四ポイントです。この控え目な推計でも逆進が進んだということでありますが、大蔵大臣どうですか。
  71. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) お答え申し上げます。  五十九年度の税制改正の結果、家計の負担が計量的にどういうふうな影響になってくるかというのは、いろんな試算の方法がございまして、今委員が御指摘になりました具体的な試算の方法は私どもつまびらかにいたしませんけれども、一つの試算であろうかと思います。  私どもも、十分位ではございませんが、五分位で一応の分析をいたしておりますけれども、傾向といたしまして減税の効果は各階層にあらわれておる。ただ御指摘のように、酒税物品税等の税負担の引き上げをお願いしておりますので、その要素を加味いたしますと、私どもの分析に関する限りは第三分位、第四分位、つまり年収ベースで申し上げますと四百万から五百万ぐらいの階層のところの負担軽減効果が一番大きく出ておるということでございまして、これは五十九年の所得減税の考え方が中堅所得階層の負担軽減ということに重点を置きましたので、そういう結果になっております。ただ、特に酒税につきましては、御指摘のとおり若干逆進的な結果が出ておるということは否定できないと思います。
  72. 和田静夫

    和田静夫君 企画庁長官、五十九年度に予想される公共料金の今御説明がありました所得階級別の負担割合というのはどういうふうになりましょう。
  73. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) お答え申し上げます。  予算関連の公共料金につきまして一応の試算でございまして、これが絶対という意味ではございませんが、第一、第二、第三、第四、第五分位で計算いたしますと、第一分位が八千九百円ぐらい。それから第二分位が一万少し、一万百四十円でございます。それから第三分位が一万二千二百円、それから第四分位が一万一千八百七十円、第五分位が一万五千五百円、こういうことになっております。
  74. 和田静夫

    和田静夫君 これ、第十分位ぐらいまでに分けた負担割合というのは出してもらえましょうかね。
  75. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) 今の計算は五分位しか、非常にできにくくて、十分位ではなかなか難しいと思うのでございます。五分位で計算するのが一番我々としては妥当ではないかと考えておるわけでございます。
  76. 和田静夫

    和田静夫君 政府は物価見通しを出しているわけですから、したがって公共料金アップ率の見通しというのは、長官、出るでしょう。
  77. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) どうも申しわけありません、ちょっと質問の趣旨がよくとれなかったのでございますが。
  78. 和田静夫

    和田静夫君 公共料金のいわゆるアップ率の見通しはずっと出るんじゃないですか。
  79. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) 傾向的な数年間のと、こういう意味でございますか。  これは私どもの「展望と指針」で、八年間の平均の消費者物価の上昇率及び卸売物価の上昇率を出してございます。それによりますと、消費者物価が三%程度、卸売物価が一%程度というような感じでなっておるわけでございます。
  80. 和田静夫

    和田静夫君 それから所得階層別の。
  81. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) それは公式なものはございません。
  82. 和田静夫

    和田静夫君 公式なものがないから私は出るのではないか、したがってお出しになりませんかと、こう言っているんですよ。
  83. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) 長期にわたってのそういう試算をすることは非常に困難でございまして、われわれとしてはなかなか難しい作業だと思っております。
  84. 和田静夫

    和田静夫君 難しい作業はわかっているんです。大蔵大臣はおわかりだと思うのですが、約半年かかって、さっき主税局長答弁された、私は、大蔵省といろいろと突き合わせながら出してきた数字がこの大蔵から提出された資料なんです。したがって企画庁だって出せないことはないでしょう。
  85. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) 過去の分については、ちょっと勉強さしていただきまして提出さしていただきたいと思います。
  86. 和田静夫

    和田静夫君 企画庁長官、いつごろまでに出せましょう。
  87. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) 今のお話でございまして、少し勉強さしていただきまして、またこれ、私いつまでと申し上げてかえってあれしても申しわけございませんので、できるだけ早く直接御返事をさしていただきたいと思います。今のところ、突然のお話でございますので、どの程度の期間を要するか、ちょっと確かなことは申し上げられません。
  88. 和田静夫

    和田静夫君 一般質問に引き継ぎたいと思いますので、総括がまあ二十七日になるが二十八日になるかわかりませんけれども、その辺までに出ますか。
  89. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) できるだけ努力をさしていただきたいと思います。
  90. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ、総括終了までということで。  大蔵大臣、昨日大蔵省からいただきました資料によりますと、税の逆進性が一層進んで、そして減税効果が低所得層で相殺される傾向が出ているわけです。そこで、減税が低所得層には薄くて高所得層には厚くなっている、ここをちょっと御説明願えますか。
  91. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) これは先ほども申し上げたところでございますけれども、五十九年の所得税の改正の眼目は、これは政府の税調答申にもございますように、中堅所得階層、特に多人数世帯の負担軽減というところに重点を置くということで、人的控除とそれから税率構造をややなだらかにするという効果が働きまして、各階層について軽減の効果は出ておるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、具体的には、例えば第三分位、第四分位あたりの世帯が一番軽減効果が出ておるということでございます。  それから、酒税なり物品税負担増の部分はもちろんその部分だけ相殺されるわけでございますが、その相殺後の結果といたしましても、各分位について軽減効果はあらわれておりますけれども、なかんずくその第三分位、第四分位あたりの世帯の軽減効果が大きく出ておるということを申し上げておるわけでございます。
  92. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵省、この十分位所得階級別の税負担の割合の五十六年度分は出されましょうか。
  93. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 今国会に提出申し上げておりますのは五十五年分まででございます。
  94. 和田静夫

    和田静夫君 いや、それの五十六年度分を求めているんです。
  95. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) これは総理府の家計調査をもう一度再集計させていただきまして、それから私ども主税局が引き取りましてかなり細かく積み上げ作業をいたしますので、五十六年分はまだでき上がっておりませんけれども、なるべく早く作業を急がせまして提出申し上げたいと思います。現在作業中でございます。
  96. 和田静夫

    和田静夫君 予算委員会に間に合いますよね。
  97. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) そういう方向で努力いたします。
  98. 和田静夫

    和田静夫君 三菱銀行の調査部の試算でも、増税及び公共料金の値上げは低所得層を直撃をする、年収三百万円クラスの標準世帯では減税を完全に相殺して家計は六千二十五円のマイナスになると言っている。生協連の試算では、六%の賃上げがあったとしても、月収二十万円、夫婦のみの世帯で三千四面円程度の赤字が出てくる。五十代の標準世帯で月収四十万円でも黒字はわずかに四百十六円にすぎない。大蔵大臣、あらゆる試算が低所得層にしわ寄せするという結論を出しているわけです。つまり、八四年度予算は貧乏人からふんだくる予算で、金持ちを優遇する予算だということをこれは裏づけておるわけでありますが、企画庁長官大蔵省も実は重い腰をようやく上げて資料を出してきたわけでありますから、先ほどの公共料金について所得階級別の負担割合は出してもらうといたしまして、総理負担の水平的な公平、応能負担原則は既にこうして崩れているわけですよ。大蔵省試算でこれは明らかであります。企画庁が後から出してくれば、公共料金を含めばもっと明らかになってくると思うのですね。  そこで、低所得層の家計を圧迫する予算であるということが明確になっている以上、総理としては政治姿勢上やっぱり問題があると思うんですがね、どういうふうにお考えになりますか。
  99. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 和田委員御指摘の低所得層に対する影響については、我々も大きな関心を持たなければならぬと思っております。また一方におきまして、低所得層の側においてもある意味におけるベースアップはある程度行われておるわけであります。そういう面も一面においては低所得層としてはプラスの面でございますけれども、しかし減税の恩典という面にその層は浴しておらないという点で、減税の恩典に浴している層から見ればやはりある程度マイナスであります。しかし、減税の恩典に浴している層も実はベースアップで給料がふえればやっぱり説もふえておる、そういう面が一面においてはあったわけでございます。そういういろんな面等も配慮しつつ、今後社会保障制度等の配慮におきましていろいろ考えていくべき問題ではないかと思っております。
  100. 和田静夫

    和田静夫君 百歩譲っても最低税率引き上げというのは到底これは容認しがたいと思うんですよ。大蔵省資料は家計調査に基づいていますが、家計調査に出ないもっと低い階層、これについては大蔵省の試算方法によっても増税になる可能性を秘めているわけであります。家計調査の第一分位でも、公共料金アップを入れれば家計は逆に赤字になるという、これが三菱銀行調査で明らかであります。そうすると、この最低税率のアップは撤回されるべきだと思うんですが、これは総理の決断にかかっていますね。
  101. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは最低税率、最高税率の問題でございますが、税調の答申においてもやっぱりこの最低税率というものは他の先進諸国、近代国家の中で大変低い、だからこれは若干引き上げるべきだ、こういう答申をいただいて、そうして私どもが苦心をいたしましたのは、課税最低限そのものが上がるわけでございますから、個々の税額はもちろんこの一〇が一〇・五になりましても、あるいは一一になりましても、一一になりましても、給与所得者の場合でありましたならば課税最低限が上がりますからいわゆる増税になる人は一人もいないということでいろいろ議論をしてみましたら、いわば事業所得者の中で例示を申し上げると申しわけないのですが、夜鳴きそばのお兄さんが扶養控除が一つもない、最低控除だけだということになると、その人をたまたま計算してみますと、なるほどささやかでも増税になる。そこで、増税にならないぎりぎりはどこかといって出した数字が一〇・五でございますので、この国民一人一人の中でどなたも増税にはならないで、しかも最低税率は幾らかでも税調答申の趣旨によってこれを上げていったと。そしてそれが基礎となって累進構造がいわばなだらかになって、中堅所得者が、世に言われるようにちょうど子育ての盛りの方々に恩典がより多く影響するような形のものとしたと、こういうことでございます。  それから和田さんの御議論にあります各種資料、これは家計支出というのは、御案内のように個々によって皆異なりますので大変難しい資料でございますが、ああして御要求に基づいて一緒になって勉強しながら、不完全なものではございますけれども大蔵省も出すようにいたしましたので、これはこれからもお互い議論を重ねながらより精度の高いものが出てくるようにしたいものだと私も願っております。
  102. 和田静夫

    和田静夫君 田川自治大臣、いまのこの最低税率引き上げについてですが、これは新自由クラブの党首の立場でどうお考えになるんですか。
  103. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 党の方でも最低税率は引き上げていきたいという希望をずっと持っておおります。
  104. 和田静夫

    和田静夫君 どうもその辺ちょっと違うんじゃないかと思いますが、時間がありませんから。  大蔵大臣、公共事業の前倒し執行はこれはやられるわけですね。
  105. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 公共事業の執行に関する閣僚会議というものを、ちょうど去年はここで議論をしておるのと並行して勉強さしていただいて、通過さしていただいた翌日に決定さしていただいたわけですが、予算現額がいわゆる豪雪等によって繰り越しがどれほどあるか等々がございますので、それが定まるのがやっぱり下旬になると思います。その予算現額をまず踏まえた上で、それでどのような形で執行するか、抑制型にするか、中立型にするか、促進型にするか。それは今日抑制型にするなどという議論をするつもりはございませんけれども、正確に言えばその予算現額を正確にとらえた段階議論をしていきたい。ただ、最近私どもが所々方々でいろんな意見として聞いておりますのは、非常に景気あるいは雇用状態の中で地域のばらつきもあるのじゃないか、そのようなことも配慮に入れたらどうだ、こういうようなことも言われておりますので、いっそういう配慮でやったことがあるかと思ってみますと、五十四年度の執行に関してそういうような言葉が使われておるのがございますので、かれこれを勘案しながら、正確にはやはり今予算審議していただいているさなかでございますから、現額が定まって、そしておよそ予算を成立さしていただいた直後ぐらい、正確に言えばその時点で決めるべきことではないかなと思っております。
  106. 和田静夫

    和田静夫君 後、参考人の時間の関係がありますので若干ジグザグいたしますが、わからないんですが、提出された法律案、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案、この附則第二条以降第九条までは昭和五十九年度の財政運営に必要な条文ではないのに、なぜここに入っているんですか。これは詐欺じゃないでしょうか。
  107. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 特例債の借りかえ、特例債の償還財源に借換債を発行するかどうかという問題につきまして、昭和五十九年度の今の法律の本則におきまして従来の方針を改めまして、借換債を発行しないという規定を、なるべく発行しないようにしますという努力規定に改めたわけでございます。それに伴って従来同じような規定を設けておりました過去の特例債について規定の整理をしたわけでございます。
  108. 和田静夫

    和田静夫君 法制局長官、これは別々に一件立てで出すべき法律案じゃないですかね。
  109. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  法案の取りまとめ方といたしましてはいろいろの考え方があろうかと思うのでございます。確かに別々に出すということもそれは一つ考え方であろうかと思います。ただ、ただいま山口主計局長答弁いたしましたとおり、本則でいわゆる借換債につきましての取り扱いを努力的なものに変えたわけでございまして、それに伴いまして附則でそれにかかわる従来の規定を整理するということも一つ考え方であり、またそれが合理的な説明もできるのではないかということでそのような取りまとめ方をしたわけでございます。
  110. 和田静夫

    和田静夫君 私はこれは詐欺行為だと思うですね。行為だと言っちゃいかぬが、等しいと思うですね。一件一件お出しになるのが当たり前だと思いますね。これはちょっと許せませんね。後ほど、これは順序が逆になりましたが、借りかえの問題と一緒にもう一遍ここを論議をいたしますがね。どうも財政法体系が崩されている、そういうことをまず指摘をしておきますが、総理どうですか。
  111. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 後ほど御議論があるでございましょうから、その際またお答えをすることにいたしましょう。
  112. 和田静夫

    和田静夫君 私は、財政民主主義違反だと、ここは思うんです。その財政民主主義違反との関連で、総理、五十七年度予算が四月五日、それまでになかった五日間の予算空白を生じた事態を踏まえて、参議院での予算審議権の確保の観点から、与野党一致の結論を当時の植木予算委員長政府委員長見解の形で発表して会議録に載っています。五十九年度予算審議権を尊重するために暫定予算は当然今日提出をされるべき状態になっていると思うんですが、いかがでしょうか。
  113. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 植木委員長時代委員長見解、私どもも十分承知しておりますし、これは尊重しなければならぬ。そこで、この五十九年度予算につきましては、昨年も当時の矢田部理事と私と一問一答をいたしたわけでございますけれども、原則的に申しますならば、今こうして鋭意審議していただいておるところでございますので、政府としては審議が円滑に進むことに対して猛烈な期待をしておるわけですから、その期待の真心を込めて審議に協力するというのが現状におけるやはり正確なお答えではないかなと、このように考えます。
  114. 和田静夫

    和田静夫君 そういう答えでしょう。しかし、きょうは十四日です。切れるのは三十一日です、四月五日じゃないんです。三月三十一日ですね。それで、政府答弁というのは予算の空白が生じるたびに繰り返されてきた。その結果、参議院の審議が大きく制約されてきた。しかも、悪いことに予算の空白期間は後になるほど長くなってきているわけです。だんだん長くなってきている。総理の戦後総決算の中に本院の予算審議権尊重の具体策を含める、これは私は当然あってしかるべきだと思うんです。何も恥ずかしいことじゃなくて、財政民主主義の基本ですからね、財政法三十条によるところのいわゆる暫定予算というのは。したがって、五十七年度予算審議の際に総理は行管庁長官として連帯責任もこれはあるわけですよ、いかがですか。
  115. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 五十七年度におきまする予算審議で、植木委員長の御見解は私もよく承知しておるところでございます。衆議院のいろいろの審議段階におきまして参議院に及ぼす影響等も非常に心配しつつ実はきたわけでございますが、このような事態になりましてまことに申しわけないと思っております。この上はできるだけ審議を、我々の方といたしましても誠心誠意御答弁申し上げ、見解も申し上げまして、予定どおりぜひ年度内に予算が執行できるようにお願い申し上げたいと思っておるところでございます。もとより、議会制度あるいは議会主義というものを尊重するということは我々国会議員あるいは政府の至上命令でございまして、その点につきましては今後とも慎重に配慮してまいりたいと思っております。
  116. 和田静夫

    和田静夫君 やはり私は、慎重に参議院予算委員会は論議が保障されなきゃなりません。それは日本憲法が私たちに与えている課題であります。したがって、私は具体的な財政改革問題について先ほど来論議を詰めてきているつもりであります。私は、暫定予算が出されないというような背景のもとで審議日数がだんだんだんだん狭められるということを前提にしながら論議をするというのは間違いだと思っているんですよ。ここのところは守らなきゃなりません。したがって、総括質問終了予定日の三月二十三日までに暫定予算を提出する、これは総理、お約束になりますか。
  117. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは私も、今、和田委員おっしゃった考え方で、財政民主主義から考えるとある程度一致するところがございます。実際問題として。お互いの体験からしても、大体予算は確実に三月三十一日に成立しておって初めてノルマルな姿だと。それで、一番最初の議論は  少し長くなって申しわけありませんが、一日に上がっていないと、いわば受刑者の人なんかの飯代がなくなるのじゃないか、こういう議論から始まりまして、いや、米、みそはこれは買いだめもきくんじゃないかとか、しかしその同にたまたま出所される人の支払いはどうするか、あるいは失業手当をどうするかと、こういろんな議論がありまして、それは互助会の立てかえでやるのだというようなことから、したがって今までだんだんだんだん惰性一いろんな議論の上で、五日には国会職員の方の給与の支払いがあると。これは十六億ぐらいでございます。だから、これが四日までに上がっていなければならぬ。それが今度は、議長さんがその日は指定されることができるというようなことから、それではというので六日、ことしの予算で申しますならば四千百億ぐらいになりますか、恩給、年金の支払いがございますから、まあそれが限界だというので五日間の空白というのがお互いの成り行きの中で現実あるわけですね。だから本来は、そのこと自体がおかしいから、やはりいつの日か折り目、けじめをつけて一日というところに返すべきだという議論も私的には和田さんともしてみた。そういういろんな議論の集約がここにありますので、私はこれは、ある意味においてはエンドレスな議論かもしらぬなと。  そもそも、これは長くなって申しわけないと申しましたが、旧憲法時代だったら、予算が通過しなかったら「前年度ノ予算ヲ施行スヘシ」とちゃんと書いてある。しかし、ことしなんかは、場合によっては去年の方が予算が大きかったから前年度予算を執行した方がいいなんていう考え方になってもこれはまた大変困る問題でございますので、新憲法になってその条項が取られて、いわゆる暫定予算というものの制度になったということになりますと、今、和田さんは総括質疑が終わるまでと、こうおっしゃいましたが、やはりぎりぎり考えてみますと、参議院の審議を見守りながらではございます、我々は期待感があるわけですから、よしわかったと言って一週間で成立さしてやろうかと、期待感としてはあり得る範囲内にあるかもしらぬ。そういうことを考えてみますと、大体来週早々ぐらいになりますと本当は準備作業に入るか入らぬかの決断は下さなければいかぬのかなと。去年もこういう状態であったかもしらぬ、ことしほどは厳しくございませんが。しかし、そのときも双方で議論をしながら深奥にまで触れることなく、結局我々は最後まで期待感を持ち続け、要するに四日で成立さしていただいた。本来はそれがいいのか、少なくとも明瞭に準備にはかかりましたと言うべきかというと、そういうことは来週早々は、私は言ってみれば予算書を作成するという責任者においては決断する時期ではなかろうかと。そういうようなことも最高責任者たる総理とも相談してみたいと思っておるところでございます。
  118. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは非常に技術的な要素もございまして、最終的には大蔵大臣と私が相談してやることであると思いますが、ただいま大蔵大臣が申し上げたとおりでございます。
  119. 和田静夫

    和田静夫君 私は、総理が二十三日から中国にお行きになるというような日程があるように聞いているものですから、そうすると、その前に結論を出されなければならぬわけで、そこでいいですか、けじめは。
  120. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我々といたしましては、ぜひ年度内に成立さしていただきまして、予算執行に万全を期したいと思っておるのでございまして、この予算委員会におきましても誠心誠意御答弁申し上げまして、誠意の限りを尽くして努力いたしたいと思っております。
  121. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっとこれはけじめをつけてもらいましょう。委員長見解……。
  122. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  123. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こしてください。  それでは、ただいまの和田君の問題につきまして私から申し上げます。  委員長といたしましては、まずこの際、参議院の予算委員会におきまして参議院らしい充実した審査を進めてもらう、その様子を見ながら、本問題につきまして理事会とも協議の上、ただいまの大蔵大臣答弁も踏まえながら適当な時期に善処したい、措置したい、かように思いますので、御了承願います。  それでは、今、参議院らしいと言いましたが、私、別に、悪くないと思ったんですけれども、参議院として鋭意十分な審議を尽くしたいということでひとつ御了承願いたいと思います。
  124. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣総理答弁がありまして、大体おおよその答弁というのは来週ということのようでありますから、訪中の前には暫定予算で結論をお出しになると、こういうふうに理解をしておきます。  参考人、大変恐縮でございました。お待たせしました。医療問題を若干ここで挟んで入れさしてもらいます、参考人の時間的な関係がございますので。  私は、既に昨秋の臨時国会のこの席で、厚生省の概算要求に含まれていた健康保険制度の大改革は、驚くべき社会保障の切り捨てであり、社会保障制度への挑戦とまで私は述べたのでありますが、健保改革がそういう改悪案であるということについて私は確信を持っています。今回の厚生省の提案というのは第一に提案の仕方自体に問題がある、内容の是非を問う前に政府としてやらねばならぬ手続を踏んでいないところに第一の問題がある。それから、内容自体、改革案の内容そのものの問題点を考えれば、政府・厚生省は二重の誤りを重ねていると言わざるを得ません。総理並びに厚生大臣、健保の本人負担を一割から二割にする、患者負担をふやすというのは健保制度始まって以来の大改革である。そのことの重要さについてのまず認識を伺います。
  125. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 現在の保険制度でも、先生御承知のように、例えば農家の皆さん方とか零細な商工業者の皆さんとかには三割御負担をちょうだいしておる。被用者保険についても家族の皆さん方にはそれぞれの御負担をちょうだいいたしまして、また被用者保険本人についても過去に定額の御負担等をお願いし、またお願いする議論が幾たびか行われておるのでありまして、今回私どもが医療費の適正化を図り、より国民の全体としての御負担を余りおかけしないように、これ以上医療費が増大しないように、また低成長の経済の時代でこれ以上保険者の皆さん方の保険料率を上げないように、そのために被用者保険の本人の皆さん方にも定率の御負担をお願いしたいということは、私は今日の情勢の中で医療保険制度の将来、国民の健康を守る責任者としての厚生大臣として、これはどうしてもお願いしなければならないことだし、必ず国民の皆さんの御理解もちょうだいできることだという信念で今回の案を出しております。
  126. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) できるだけ現行制度を維持したいという念願を持っておるのでございますけれども、現在の国家財政の状態等を考えてみますと、甚だ遺憾ではございますけれども、一部御負担を願わなければ、この長期的安定、あるいは今保険金を納めている若い人たちの時代になってこれが崩れてしまいはしないかという、そういう世代間の公平、制度の持続性の維持等々のこともあり、あるいは退職者に対する新しい保険制度をつくっていこうと、そういうような配慮もございまして、いろいろ考えた結果、このやり方が今の状態ではやむを得ざる最善の策であると、そういう判定になりまして実施いたしたのでございまして、決して喜んでやっているわけではございませんので、御理解をいただきたいと思います。
  127. 和田静夫

    和田静夫君 審議会長、二月二十三日に答申をお出しになりましたが、これはかなり異例の答申でないかと思われます。まず、「改革を進めるためには慎重でなければならないし、国民の理解と納得を得ることが肝要である」とされています。今回の政府案は、国民の理解と納得を得た上で出されたと言えましょうか。
  128. 大河内一男

    参考人大河内一男君) ただいまの御質問にお答えいたします。  今回の政府の諮問の内容が国民全体の納得を得た上で出されたかどうかというお尋ねのようでございますが、社会保障制度審議会としては、その問題については審議の当初から明確な考えを持って審議を始めたわけではございません。政府の諮問の内容を篤と検討して、そしてそれが具体的に法律になる場合には、どういう点とどういう点について慎重に考えて、国民の十分な納得を得られるような具体的な施策をさらに考えていただかぬと困るということを議論のあげく全員一致で決めまして、したがって、答申にもその旨を書いたわけでございます。政府の提出された諮問の要綱が最初から国民に納得されているということは審議をしてみないとわからぬものですから、審議の過程でまあいろいろ意見が出て、意見の交換をして、そして心配な点があれば、それについては事が重大だから国民の各般の納得を得られるような具体的な施策をさらに進んで考えてもらわないと困るというふうに申したわけでございます。したがって、制度審としては審議の当初から政府案が絶対に満点だという前提を置いて審議したわけではございません。その点申し上げておきます。
  129. 和田静夫

    和田静夫君 答申は、財政対策にとらわれる余り、「医療保険本来の趣旨に照らした検討が必ずしも十分になされたとは思われない」というふうにされています。私は同感であります。これは拙速に過ぎて、成案として練られたものとは言えないということだろうと思うんですが、答申は、今回の改正が拙速で場当たり的だというふうに読んでおいてよろしいでしょうか。
  130. 大河内一男

    参考人大河内一男君) それは読み過ぎだと思います。
  131. 和田静夫

    和田静夫君 本人の「一部負担については、さらに慎重な取扱いが望まれる」と。「慎重な取扱い」というのは、会長はどういうふうにお考えになったのでしょうか。
  132. 大河内一男

    参考人大河内一男君) その「慎重な」という意味を、具体的にはどの程度というふうな議論審議会ではいたしませんでした。大勢の委員がおられますので、各委員がそれぞれお考えになってその言葉の意味判断をなさるということで、その言葉の解釈を審議会の席上で大いに論議をするということはいたしませんでした。ただ、その「慎重な」という意味がかなり広い意味でございますから、それについては、具体的にはその中身はどういうこと、どういうこと、どういうことがあるだろうと、その内容の項目については審議会の委員のそれぞれの方のお立場によっていろいろ違います。また、方策について委員の間でかなり意見が闘わされるということもありましたので、定義のようなことをそこで決めるということは、これは余り審議会の委員としては、審議会の席上ではそういうことをやることは必ずしも適当ではない。それぞれの立場の制度審の委員がそれを踏まえて、同時にまたそれを超えた広い立場を加味して慎重に判断をなさればよろしいということで、中身を決めるということはいたしておりません。
  133. 和田静夫

    和田静夫君 総理、この社制審答申は尊重されますか。
  134. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原則として尊重すべきものと考えております。
  135. 和田静夫

    和田静夫君 会長、あと二問ぐらいお願いしますが、長期的展望は政府から示されましたでしょうか。
  136. 大河内一男

    参考人大河内一男君) 長期的展望は、厚生省の説明をなすった局長さん、審議官の方、その他事務次官の方等がいろいろとお話しになりましたが、書かれた内容、諮問の中身で長期的というのはどの程度の長さであるかというようなことは別にありませんでしたし、また審議会の席上、委員の間で議論して決めたこともございません。大体、長期と申しました場合に、中長期といいましょうか、中期の幅で例えば十カ年将来とか、あるいは長期の幅で五十年将来とかいろいろ考えられますが、そのどれと決めたわけではありません。議論の中では、中期をとって議論した場合もあり、また、それだけでは足りないで、二十一世紀に入ったある時点で長期の現在からの展望をやって、それを議論した場合もございます。したがって、中期と長期の間でどこまでが安全圏かということはなかなか決めかねます。二通りの議論があったと思います。
  137. 和田静夫

    和田静夫君 高額療養費についてはいかがでしょうか。
  138. 大河内一男

    参考人大河内一男君) 高額療養費については、かなり説明も当局から聞きましたし、また委員の間でいろいろと議論がございました。必ずしも全員一致した結論は出せないような状態で議論がいろいろ分散いたしましたけれども、何回か議論しております間に、それの内容がさらに具体的に細かに施策の中に盛り込まれないと、今回の諮問の内容が国民に信頼を得がたくなるだろうというのが、大体その議論に参加した制度審の委員の皆さん方の共通の御意見だったと思っております。
  139. 和田静夫

    和田静夫君 審議会長、最後ですが、この答申は医療の合理化を政府は怠ってきたと指摘されているわけでありますが、少し敷衍して御説明願いましょうか。
  140. 大河内一男

    参考人大河内一男君) 今、和田議員がおっしゃったような表現が答申の中に書かれておりますが、それはそのとおりでございますが、この場合に怠ってきたというのは、かなり長い期間の、少なく見積もりましても戦後の昭和の三十年代から、制度審としては私が委員になるもっと前の時点でございますが、こういう長期の見通しについて政府が具体的な施策を準備し、それが現在の制度あるいは数年後の、つまり短期のあるいは中期の制度にどうはね返るかというようなことまで考えた上でその問題について議論することが必要であるにもかかわらず、必ずしもこの問題については歴代の内閣が十分な準備と議論をなすったとは思われないと、そう申すと大変失礼でございますけれども、そういうふうに今感じております。これは制度審がかなりもう数十年前から繰り返し論議をしてまいったところでありますので、今回もまたそういう長期の見通しというものを要望するのは制度審としては甚だ残念でございますけれども、これは現在、医療保険についてどういう手直しが行われるにしても、やはりこの長期の見通しを持ったいろいろな改善策をやらないと、結局は国民が不満だけ残って、長い将来に向けての医療保険の安心感というものがなかなか定着しないだろうということを私どもは大いに恐れたわけでございます。
  141. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 大河内参考人ありがとうございました。もうよろしいそうです。御苦労さまでした。
  142. 和田静夫

    和田静夫君 どうもありがとうございました。  大変貴重な私は御意見をいただいたと思うんですが、私は何もこの現行制度に固執する立場から質問をしているのでもありませんし、質問しようとも思っていません。改革の必要性、緊急性を認めるものではありますが、政府案は拙速に過ぎて問題があり過ぎる、そういうふうな観点から以下論議を進めます。  少し角度を変えますが、厚生省は二月二十六日に国民医療費の推計を公表した。五十九年度の推計は二・五%の伸び、史上最低の伸びにおさまるとされている。本人一割負担導入しなかった場合の伸び率は幾らですか。
  143. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 来年度何の対策もしないで自然のままに放置したならば七・二%の伸びでございます。
  144. 和田静夫

    和田静夫君 つまり、本人一割負担導入しなくても、厚生省のガイドラインである国民所得の伸び六・四%、まあそれの半分ぐらいにはおさまっていくというようなことになりますね。
  145. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 自然的な伸びは七・二%でありますが、私どもいろいろ医療費の適正化あるいは薬価基準の引き下げあるいは指導監査、それからレセプトの審査というようなことをやりまして、さらにその上に今回の本人一部負担というものをやっていくという前提に立ちまして二・五%の伸びでおさまる、こういうことでございます。
  146. 和田静夫

    和田静夫君 それなら国民所得の伸びの半分ぐらいにはおさまるわけでしょう。
  147. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 五十九年度に関する限り、仮に国民所得の伸びが六・五%ということでございますから、大体ほぼ半分以内でおさまる、こういうことでございます。
  148. 和田静夫

    和田静夫君 つまり、厚生大臣、急ぐ必要はないという結論になるんですよ。
  149. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今回私どもが思い切った医療保険の改革案をお願いしておりますのは、単に一時しのぎの財政問題だけでございません。国民の皆さんから医療費の適正化、あるいは現行の出来高払い制度という中で患者の皆さんが医療費を知って明瞭にした方がいいとか、あるいは先ほども私が申し上げましたように、社会福祉というものの本来の目標は、これは農業をしている人もサラリーマンの方もすべての国民がひとしくその制度の恩恵を享受しなければならないと。そういう意味からいいますと、医療保険とか年金とか、そういうものは国民がすべて平等に給付を受けることが望ましいということは今や最大公約数の考え方になっておるのでありますが、この医療保険については長い健康保険の歴史や沿革があるためにいろいろの制度間のばらつきがありまして、七〇%の給付、あるいは八〇%の給付、あるいは全額給付、そういういろんなものがありますから、こういうものも将来の方向としてはこれは一つにまとまっていった方がいいということでありまして、今回も、ただ五十九年、六十年、一割被用者保険本人の皆さんに御負担をいただくということだけが目立っておりますが、先ほど総理からお話のありました退職者医療制度というものを創設しますと、これはサラリーマンの方でも現役のうちは十割の給付を受けますけれども、退職をされましてかえって収入が少なくなって、また病気にかかる、お医者さんにかかる率が多くなるとき、今度は国保に入って七〇%の給付しか受けられないというような大変不合理がありましたので、今回はその不合理を是正していって八割の給付をするとかそういう前進的な問題もありますので、私は将来の方向としてはやはり国民が同じような給付を受けられるような制度に今からしっかりと一歩一歩これは前進をさせていただかなければならないと思います。  私はこの前も、ちょっとこれは冗談でありますけれども、どうせ厚生大臣にさせていただくなら国保の七割を八割に上げるときの厚生大臣にしていただけた方がよかったななどと冗談を語ったわけでありますが、たまたま私の厚生大臣のときに被用者保険本人の皆さん方に一割、さらに二割の御負担をお願いしなければならないということで、大変にこれは、総理が先ほど申し上げられましたようにお願いをこちらが申し上げると、こういうことでありますけれども、しかしこれも全体の国民負担ということにかんがみますと、現行の保険料率は幾たびか申し上げましたように上げない、なるべく上げないようにこれは努力していく、医療費はこれは節減されていくということでありますから、また国民の皆さんのとうとい税金による負担もこれ以上ふやさないということでありますから、被用者保険の加入者の皆さんには一カ月六百二十円程度の御負担、また病気にかかってお医者さんに行かれる方で約八五%の人は一カ月二千円以内程度のこれは負担でありまして、また先ほど大河内先生からお話のありました社会保障制度審議会の答申を私どもは十分尊重して、今まで大きな問題でありました五人未満の零細な商工業者の皆さん方も今度はより有利な条件の保険に加入できるというような道を開いたり、また低所得者層の皆さん方にはこれからまた社会労働委員会の皆さん方の御審議を十分にちょうだいしながら、できる限りの配慮を考えていこうということでありますから、決してこれは唐突なものでも拙速でもなく、我々は今や二十一世紀というものに大きな責任を担わなければならない、政治家として今やらなければこれは二十一世紀の国民の皆さんの健康に対する安心を期待できないということでございますので、どうぞ御了承を賜りたいと思います。
  150. 和田静夫

    和田静夫君 竹下内閣か河本内閣があるいは安倍内閣ができたときの厚生大臣のお願いを今厚生大臣はされていましたからあれですが、私はこの改正作業というのはちょっと考えてみる必要があると思うんですよ。参議院選挙後の自民党の勝利、しかし比例代表区の選挙じゃ自民党が敗北したわけですけれども、その勝利から始まったわけですね、概算要求は。そのときにこの概算要求が出たんです。ところが、その後総選挙では自民党が大敗北を喫した。そうすると、ここでは政策がチェックされなければならなかったはずですよ。その敗北の原因の一つは、総理、この医療保険制度の改悪にあったんですよ。いろいろなことが言われていますけれども、国民はあなた方の政治姿勢にノンと答えたんですよ。ところが、厚生省の官僚はそんなことは知ったものじゃないというような形でもってこの作業を進めてきたんですよ。後から私は保険局長などの言質を挙げますが、私は、再検討されなければならない筋合いのものであった、それがまかり通っているということについて総理はもっと謙虚でなければならぬ、こう思うんですが、いかがですか。
  151. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 医療保険制度につきましては、選挙のときに公約をつくる際に党でもいろいろ議論いたしまして、既定の案につきましては幅広い見地から総合的にこれを検討すると、そういうような形にいたしたわけでございます。その結果、いろいろな議論がございましたけれども、終局的に今のような形に落ちついたわけでございます。  これは一つには、やはり医療保険制度というものの長期的安定性をあくまで維持しなければならない、特に今若い人たちがいろいろ保険金を納めているけれども、そのときになって医療が今より低下するという状態を来してはいけない、そういうような配慮と、それから退職者に対する扱いというものが急に落下してはいけない、そういうような二つの考慮でいろいろ苦労しまして今のような形に落ちついたわけでございます。多少国民の皆様方には御負担を願う点も出てまいりますけれども、医療費の合理化の一面という面も多少ございまして、そういう点につきましては御了承いただきたいと思うのでございます。
  152. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時委員会を再開し、和田君の質疑を続けます。  これにて休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ——————————    午後一時一分開会
  153. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十九年度総予算三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き和田静夫君の質疑を続けます。和田君。
  154. 和田静夫

    和田静夫君 何か警察庁長官急がれているようでありますから、簡単に一、二問先に入れますが、去る三月一日、兵庫県警職員が銀行強盗を働いた事件がありました。私は二つほど原因があると見ていますが、一つは兵庫県警あるいは大阪府警など関西の警察に特にこのところ不祥事がずっと続いているわけであります。新しい材料をきょうは出しませんが、関西に不祥事が続いていることについてどのような認識をお持ちですか。
  155. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 不祥事件が大阪、兵庫等関西の代表的な県で昨年ありまして、ことしまた兵庫で起こったわけでございますが、このこと自体甚だ遺憾であると存ずる次第でございます。今おっしゃるように、関西の警察がそのために特別におかしい状態にあるのではないかということにつきましては、私たちは必ずしもそうは考えないわけでございますけれども、不祥事案が起こったということに対しましては、関西であろうとどこであろうと、的確に対処して再発防止等に努めてまいりたいと考えます。
  156. 和田静夫

    和田静夫君 国家公安委員長の見解を承ります。
  157. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) こうした犯罪を起こしたことは言語道断でございまして、私どもは今後こういうことが起きないように厳しく指導してまいるつもりでございます。また、一般の警察官がこういう事件によって士気が低下しないように元気づけてまいるつもりでございます。
  158. 和田静夫

    和田静夫君 行管庁長官、元警察庁長官としてどういう見解をお持ちでしょうか。
  159. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 所管でございませんので、今、長官答弁したとおりだと考えます。
  160. 和田静夫

    和田静夫君 前官房長官としてあなたは人事院勧告を凍結されました。警察官の生活の状態というのは非常に苦しい状態に置かれています。こういうようなものもやっぱり影響している、こういうふうにお思いですか。
  161. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 衣食足りて礼節を知るということもございますから、公務員もみんな家族を抱え生活を維持しているわけですから、財政の許す限り私は公務員の処遇というものはよくすべき筋合いのものである、かように考えますが、しかし他面、やはり納税者の立場と今日の一般の給与の状況、それらともにらみ合わせて考えなければなるまい。警察官の場合には、御案内のように公安職俸給表というもので特別な扱いをしておるわけでございますから、それで我慢をしてもらわなければならぬ、かように考えるわけでございます。
  162. 和田静夫

    和田静夫君 沖縄で発生をしました警察官の主婦の犯罪を見てみましても、警察官の家庭の状況というのはやはり厳しい状態にあると思うんです。ちょっと稼ぎに出たいと思いましても、警察官の主婦なるがゆえにその道も閉ざされるなどなどということが非常にある。一方では警察官には団結権すら保障されていない。こういう状態でありますから、警察庁長官、何かお考えになることありますか。
  163. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 沖縄の警察官の妻が起こしたという事件につきましては、これは御本人といいますか、事件を起こした本人自身の浪費癖とか資質の問題が一番大きな原因であると考えております。  一般に警察官の勤務は厳しい、それに引きかえ給与は必ずしも十分でないという御指摘であろうかと思いますけれども、私はこのように考えるわけでございますが、警察官の給与につきましては、一般の公務員よりも初任給その他において有利に特性にかんがみ扱われておるという点はございます。しかしまた一方、警察官はその勤務の実態、警察官としての階級制度等がありますので、おっしゃるように実態に着目いたしますと、もっと有利に扱っていただきたいというようにも思うわけでございまして、警察庁といたしましては毎年人事院総裁あてに給与改善については要望を申し上げ、必ずしも完全にそれが充足されておるわけではございませんけれども、人事院当局におきましてもそれなりにいろいろ考慮をいただいておるということでございますので、警察官の非行の問題等を給与のせいにするというようなことではいけない、給与のいかんにかかわらず、警察官はその職責を十分に自覚して責任を果たすべきであるというように考えておるわけでございます。
  164. 和田静夫

    和田静夫君 やはり給与問題というのも家庭生活には非常に大きな影響を与えていることは間違いがありません。したがって、総理、これらを含んで人事院勧告はやはり完全実施をされる。よろしいでしょうか。
  165. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人事院勧告につきましては、既にたしか十二月に総務長官がお答えしていると思いますが、誠実に人事院勧告を尊重して実施することに努力いたしてまいりたいと思います。
  166. 和田静夫

    和田静夫君 昨日ですか、イランから二名の戦傷兵が東京女子医大に入院したわけでありますが、戦傷兵を受け入れるということは外務省としてほおかぶりをすべきことでは私はないと思うのでありますが、やはり明快な見解を出すべきだと思いますが、外務大臣いかがでしょうか。
  167. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) イランの戦傷兵が日本に入ってまいったわけでございますが、これは日本としましても民間の病院がこれを引き受けたということで、政府は直接これに対して関知しておらないわけでありますが、イラン政府から政府に対する事前の連絡はあったわけであります・
  168. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣として何か見解はお持ちでありますか、この傷兵の受け入れについて。
  169. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは国際法上から見ましても、こうした戦傷兵が日本の国内に正式な手続で入ってきて治療を受ける、そういう場合においてはこれはそれなりに日本としても扱っていかなきゃならない、こういうふうに思います。
  170. 和田静夫

    和田静夫君 国立病院を避けてくれと言われたと言われますが、そうですか。
  171. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 国立病院としては承知をいたしておりません。
  172. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣に聞いているのです。
  173. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私が聞いているのは、イラン政府から傷病兵を日本に送るということの通知があったということだけを聞いておるわけでございまして、今お話しのような点については承っておりません。
  174. 和田静夫

    和田静夫君 外務省の側が、日本の国立病院に入院することは避けてもらいたいという見解を出されたというふうに報道されていますが、それじゃ事実ではないと、こういうことですか。
  175. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そういうことは私は承っておりません。イラン政府から傷病兵を日本に送るということについての事前の通知はあったということは聞いております。そしてこれは国際法上これに対して日本として受け入れるということは当然のことであります。それ以上のことは私としては聞いておりません。
  176. 和田静夫

    和田静夫君 折衝に当たられた外務省の側ではそういう事実はありませんか。
  177. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私、今聞いておりませんから、折衝といいますか、そういう通知を受けた外務省の事務当局に早速問い合わせまして、そして御返事をいたします。
  178. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣に二、三続けます。  農産物自由化ですが、これは農水大臣、外務大臣両方になりましょうが、アメリカは牛肉、オレンジの輸入国ですよね、これ。輸入国が我が国の輸入枠を拡大せよということはかなり政治的な要求という感じがいたしますが、いかがでしょう。
  179. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカとしましても、日本に対していわゆる農産物の自由化というものを求めておる。これは政治的な要求というよりも、貿易の自由化という基本的な考え方に基づいて、農産物についてもこれは例外でない、こういう立場から日本に対しても、あるいはまたヨーロッパに対してもアメリカ政府はこれを求めておるわけであります。ただ、自由化を求めてもなかなか日本の場合においてはこれに応ずることは直接できない、こういうことで日米間でいろいろと協議があったわけでございますが、最終的には、アメリカ政府はこの自由化の要求をいわばわきに置いて、そしていわゆる枠の問題で日米間で話し合いを詰めようということで現在交渉が行われておるわけであります。
  180. 和田静夫

    和田静夫君 農水省の試算によりますと、アメリカの牛肉枠は五千五百トンが上限で、アメリカの要求に比べて半分にすぎないわけですね。二十日過ぎの佐野経済局長の訪米で決着がつきますか。
  181. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) お答えいたします。  佐野経済局長をやりましていろいろ交渉をさせますが、最終的には私が責任でということになるのじゃないかと思います。
  182. 和田静夫

    和田静夫君 農水大臣、いつ行かれますか。
  183. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 経済局長の交渉の経過を見まして、行くか行かないかを決めたいと思います。
  184. 和田静夫

    和田静夫君 総理の最終的な決断がかなり影響すると思うのですが、総理としてはどういう心構えでしょう。
  185. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前から申し上げておりますように、私は、農は国のもとである、農業は生命産業である、工場で物をつくるようなそういうものと性格を異にする、そういうことを言っておりまして、安全保障の面からも農業というものの自給制というのを非常に考えておる一人でございます。そういう意味におきまして、日本の農家の正しい主張というものを通すことは、我が国の国益を守る日本政治家として当然やるべきことであると思っております。しかし、一面はおきまして今、対外関係の経済摩擦ということが論ぜられておりまして、その国際関係をスムーズに調整するということもまた政府の大きな外交的な仕事にもなっております。この間の調整をどうするかという問題が今きておるわけでございますけれども、やはり第一義的には日本の農家、生産性を確保しつつ日本の農業というものを守っていくということを基本にしつつ、その上に立って可能な限り外国との調整に努力していく、そういう立場で努力してまいりたいと思っておるわけであります。
  186. 和田静夫

    和田静夫君 総理、二十三日に訪中されるわけですが、今朝鮮問題が微妙な動きを示しております。朝鮮の緊張緩和に向けて中国首脳と話し合う、そういう中で何らかの共同歩調をとる、そういう努力をされるおつもりでしょうか。
  187. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 朝鮮半島の平和確保、安定の問題については重大関心を持っておりまして、当然話し合いの対象になると思います。それはやはり緊張緩和、平和の長期的確保という問題等も話し合う対象になるのではないかと思います。
  188. 和田静夫

    和田静夫君 総理は、ニュージャージー寄港に際して、我が党の田邊書記長あるいは上田衆議院議員の質問の中で、核兵器の有無を尋ねてみたいと答弁をされているわけでありますが、具体的にどのようにして確かめられようとしていますか。
  189. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題では、衆議院予算委員会の最終段階でも私の真意を御説明申し上げておきましたが、私たちは、岸・ハーター交換公文あるいは藤山・マッカーサー口頭了解及び日米安保条約を機能的、効果的に運用する、相互信頼の上に立ってこれを行う、そういう基本線の上に立ちまして、今まで向こうに対しては非核三原則を厳守するように申し入れもしており、一々の入港については、これをチェックしたり何かするということはしないで、向こうから言ってこない限りは、これは日本の主張をよく理解して実行していると考えてきたわけであります。この原則は今でも変わりません。だから、一々チェックしたり申し入れするというようなことはやりません。ただ、ニュージャージーにつきましては、これだけ論議に上った問題でありますから、念のために、日本の国会におきましてもあるいは民間におきましてもこういういろいろな議論があるということを先方に通知いたしまして、そして心がけと申しますか、向こう側といたしましても日本の非核三原則にさらに注意を払って行動をしてもらう、そういうように我々の要望を伝達したい、そう思っております。それに対してアメリカ側がニュージャージーをそれにもかかわらず入港させるということがもし将来起きれば、それは我々の考え方をよく理解した上での処理でありまして、それは我々も認めて、非核三原則は守られていると、従来どおりの考えに立って実行いたしたい、そう思っておるわけであります。
  190. 和田静夫

    和田静夫君 二月十四日の田邊質問に対する総理は確認をされて、それから三月十日の上田質問に対しては外相が食い違いを見せて、三月十三日の上田質問に対して総理はどうも後退をされたように思う。大使を呼んで話を聞く、核の有無はわからぬ、こういうことになろうと思うんです。結局わからないまま米政府を信頼ということになろうと今の答弁考えられます。総理予算委員会答弁をどういうふうにお考えになっているのか。しかも一党を代表する書記長に対した答弁予算委員会が続いているうちに後退をしてしまう、これはもうちょっと許せませんので、確認をしておきたいのであります。
  191. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の考えは、我が党及び今までの内閣の基本線に立ったベースでお話を申し上げたわけでございます。そういう意味におきまして、御質問になりました田邊さんの立場とは安保条約等に対する扱いの考えも違っておりました。そういう面から言葉足らずの点もあったと考えておりますが、私が今申し上げましたように、これだけ議論になり、国会でも問題になっておる問題でありますから、アメリカ側に対しまして念のため注意を喚起する、それによってアメリカ側がもう一回よく検討もし、そしてそれでまた入ってくるというようなことになれば、我々の考えをそれで確かめ得た、そういうふうに考えて処理していきたいと申し上げる次第でございます。
  192. 和田静夫

    和田静夫君 私は、政府部内にこういうことを考えるなら核持ち込みの点検委員会ぐらいをつくったらどうだろう、必要とあらは実態の調査を行う、そういうものをお考えになってもいいんじゃないだろうかと思うのですがね。
  193. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日米間につきましては、安保条約を堅持してそれを効果的に運用するというのは我が万の方針でございます。そしてそれは相互信頼の上にこれは実行されておるわけでございます、アメリカ側におきましては核の存在は公表しない、そういう国策を持っております。また、国際法上から見ますと、外国の軍艦に対しましてはこれを臨検したり検査することは外国としてはできない、そういう国際法上の制約がございます。そういう諸般の点を総合的に考えまして、そして今行っておるのが我々の事前協議制の運用でございまして、そういう点で私たちは今後もいきたいと思っております。
  194. 和田静夫

    和田静夫君 総理答弁、ここの部分は納得ができません。昨日衆議院予算委員長も、非常に重要な問題でありますので引き続き討議をしていただきたい、こういうふうになっています。この予算委員会でもこの問題についてはそういう取り扱いを委員長にお願いをしたいと思いますが、いかがですか。
  195. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  196. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  197. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣、最近自治体外交といいますか、民際外交と言われて非常に盛んであります。次のようなことを積極的にお進めになることをお考えになりませんか。  我が国は唯一の戦時被爆国でありますから、非核三原則の堅持を国是としている国、我が国のイニシアチブで非核都市宣言をした諸外国の都市代表を広島に招待する、そこで新たな非核宣言を行う、招請する郡市はいわゆる西側に限らずに社会主義国も入れる、そういう構想を進めること、私非常に今大切じゃないかと、こう思うのですが、そういう立場に立ったお仕事をおやりになろうと思いませんか。
  198. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 世界で一番大事なのはやはり核廃絶、それから核軍縮であろうと思うわけでございます。そのために日本も唯一の被爆国としてあらゆる努力を惜しんではならない、そういうふうに思うわけでございます。そういう中で今広島あるいはまた長崎、こうした被爆を受けられた都市が市長さん等を中心にいたしまして、積極的な核廃絶あるいはまた核軍縮に向かって世界の世論を喚起すべく自治体外交を展開しておられます。これは国連総会等においてはよく広島の代表の方やあるいは長崎の代表の方もお見えになってやっておられることを我々はよく承知しておるわけでございますが、そういう意味におきまして、これからやはり広島とかあるいはまた長崎とか、そうした自治体が中心になりまして、今お話しのような世界の核廃絶を進める、あるいはまた核軍縮を進めていく運動を世界的に展開をしていかれるということは大変結構なことであろうと、こういうふうに私も思うわけであります。
  199. 和田静夫

    和田静夫君 田川自治大臣、外務大臣と組んで今私が提案をしたようなことをぜひ実現をされませんか。
  200. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 外務大臣がおっしゃったように、大変結構なことであると思っております。
  201. 和田静夫

    和田静夫君 もう一つ私は常日ごろ考えているのですが、各国の首都の代表を鈴木都知事ぐらいと一緒に協力をして東京に一遍集まってもらうというような手だてを外交政策としてやる。まあ安倍外務大臣、総裁選に向かってそのぐらいのことをひとつ一遍やってみられたらどうですか。そうすれば、モスクワの市長もやってくる、北京の市長もやってくる、アメリカのワシントンの市長もやってくる、ニューヨークもやってくる、あるいはニカラグアの市長も来る、レバノンのベイルートの市長もやってくる、そういう中で詰めた話、言ってみれば二十一世紀に向かって都市を戦争から守るためのフォーラムをつくるということができるのじゃなかろうか、私は今非常にこのことが求められているのじゃないだろうかと思うのです。こういう構想を外務大臣、積極的にお進めになりませんか。
  202. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は去年世界の各都市と姉妹都市を結んでおられる日本の市長さん方に一堂にお集まりを願って、いろいろとお話をする機会を持ったわけで、外務省としては初めての試みでございましたが、日本の非常に多くの都市が、大半の都市が積極的な姉妹都市の縁組を結ばれて、積極的な対外親善活動をやっておられるということに非常に感銘を受けたわけで、やっぱりそれだけ世界の中で日本というのが非常に国際化したし、また日本の外交というのは政府だけでできるものじゃありませんで、そうした自治体外交とかあるいは経済界の外交とか国民外交というのが本当に基盤でなきゃならぬということもあわせて感じたわけでございますが、その中でやっぱり大事なのは今おっしゃるような自治体外交であろうと思います。東京都の知事さんなんかに聞いてみますと、東京都の知事さんが中心で、東京都が姉妹都市を結んでおる世界の大きな都市の市長さん方に集まっていただいて、ことしも何か会合をやられるということを承っておるわけでございますが、もっと市長会等が中心になりましてこうした運動が積極的に進められるということは広く日本が世界に理解をされる、同時にまた、日本と世界との関係をさらに深めるという意味においては大変大事なことであろうと思います。そういう意味におきましては、今の和田委員のお考えについて私も賛成でありまして、また田川自治大臣等とも相談をいたしまして、こうした活発な自治体外交というのはひとつぜひとも展開してもらいたい、こういうふうに思います。
  203. 和田静夫

    和田静夫君 私も非力でありますが、世界を飛び歩いて姉妹都市の仲人をたくさんやってまいりました。したがって、もうこの辺は一区切りつけて、今私が提案をしたような形でぜひ役割を政府も担ってもらいたい、そう思うのですが、もう一遍自治大臣、答弁を。
  204. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 和田さん並びに外務大臣の言われたこと、全く支持いたします。私どもの河野洋平代議士が先年アメリカとソ連と両方へ原爆のフィルムを持って映写をしてまいりました。非常に大きな影響を与えたようでございまして、こういうようなことはどしどし進めていくように私も協力してまいります。
  205. 和田静夫

    和田静夫君 ODAで質問いたしますが、外務大臣、日本のこのODAは諸外国が大変な問題を指摘していますね。日本のODAは実効を上げていない、そればかりか、被援助国の矛盾を拡大する逆効果にもなっているという指摘です。きょう具体例を出す時間もありませんが、私の調査でもそうなっています。  そこで、一つの改善策ですが、ODA予算をNGOに回す、これにはもちろんなお制度的に検討しなきゃならない問題もあるようでありますが、どうですか外務大臣、何かお考えありませんか。
  206. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本のODAの予算は毎年財政の非常に厳しい中では突出して伸ばしていただいておるわけで、五十九年度も九・七%ということでございますが、今の日本のGNPの中で占める割合というのはまだまだOECDの言っているような水準まで達しておらない。ですから今倍増計画をつくってそれに向かって努力を重ねておるわけでございますが、全体的に見ればODA予算の実施状況は私は全体的には平均してうまくいっているのじゃないかと、こういうふうに思います。私も各国の皆さんといわゆる海外援助問題につきまして話し合う機会を多く持つわけですが、日本がそうした積極的なODA予算の拡充に努めておるし、また努力を重ねておるということについては比較的評価の声が高い、こういうふうに私は存じております。特に、日本のODAは御案内のように七割がアジアでございまして、アジアにおきましてもいろいろと当初は問題があったように思いますが、最近では全体的に見ましてやはりアジアの日本に対する評価というものは高まってきておるのではないか。一部まだ批判もありますけれども、しかし全体的に見れば日本のアジアに対する援助というものに対して、アジアの関係の政府だけじゃなくて一般の国民の皆さんからも評価が出ておる、私はそういうふうに実感として感じておるわけでございますが、しかしいろいろと今後ともさらにこれを定着し、発展をさせるために工夫をしていかなきゃならぬことは事実でございます。  そういう中で、今お話しのように、もっと直接政府が関係しないような、そうして援助活動をやっておられるような団体にODA予算を回すということも、これは確かに多少今やっておりますけれども一つのやり方だと思うわけでございますが、この辺はやっぱり団体の実績、そして意欲といったようなものも十分見ながら、せっかく大事な資金でありますから、やっていかなきゃならぬと思うわけでございます。元来政府の開発援助の予算でありますから、これは主として政府であるとか国際機関であるとかそういうものを中心に回していくべきじゃないか、民間は民間でそれなりに資金を集めて、そしてこれを国際的な援助活動に回していくというのが筋であろうと思うわけでございますが、しかし、そういう点についてはやはり効果を上げるということが大事ですから、そういう点、援助の効果をいかにして上げるかということも全体的に見て、そして判断をしていくということも必要であろう。その辺は場合によっては弾力性を持って考えていく必要もあると、こういうふうにも思っておるわけでございます。
  207. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ、午前中の質問のところへ戻りますが、どうも保険局長答弁は、ずれた答弁をされているのですが、結果的に再検討をいろいろされてきた、そしてその内容を見てみると二割負担を二年先送りしただけ、根本的な再検討にはならない。厚生大臣は就任の際に、私は厚生行政は素人だと謙虚におっしゃった。ところが、衆議院予算委員会が始まるともう厚生省案が最良のものだと言って、いち早く大変な玄人におなりになっているわけであります。大変勉強されたのだろうと思いますが、ゆめゆめ疑いませんが、私は、どうも保険局長があちこちで今回の改正案でいくんだ、もう根回しはすべて済んでいるんだというような暴言といいますか、そういうものを吐いていることが頻繁といろいろの角度から入ってくる。確かに衆議院選挙に立候補をうわさされる方だからそれぐらいのことは言われるんだろうと思うのですが、公務員としての公平性がどうも欠いているように思われる。そういう目的があるのなら早く役人をおやめになって、選挙区にお帰りになって事前の運動をやられたらいいだろうと思っているのですが、そこのところは抜きにして、厚生大臣、どうも素人の大臣を功を焦る余りに玄人の官僚が押し切っていくという形でこの作業が進んでいるのじゃないか、どうですか。
  208. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) おっしゃるとおり私は厚生行政は全くの素人でありますけれども、政治家の一人として、今日まで、やはり国民の健康を守る医療保険制度というものをできるだけ将来にわたって国民負担を軽くして適正化していくということについては常日ごろ考えておったことでありまして、幸いに私のいままで考えておったことと、今回の厚生省でつくられておる案の基本的な考え方が全く一致しておりますので、私は喜び勇んで答弁を申し上げている次第でございます。
  209. 和田静夫

    和田静夫君 総理の方がもっと謙虚だったのですがね。それは厚生行政に関する限り、きょうは時間がありませんから言いませんが、厚生大臣としてやられた仕事、今の立場が変わってみたり、いろいろなことがありますけれども、その辺は触れません。財政問題から私は見てみてどうしても厚生大臣、玄人に素人が押し切られている。私たちも押し切られようとしているという感じがするんです。私は医療費の適正化によってさらに浮く財源というものを考えてみる必要があると思うのですよ、あなたも私も。そこで、医療費の適正化こそが制度改革の大前提だということを忘れてしまっていますよ。  きょうは一つの例しか挙げられませんが、けさ資料を全部お渡ししましたけれども、薬の値段です。依然としてこれは問題があります、私の調査によっても。この点について、まず資料をごらんになった総理の見解を承ります。
  210. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 薬価につきましては今までいろいろ御議論がありまして、実勢価格と定価との関係で非常なる乖離がある、そういう面でしばしば国会でもお取り上げになりました。厚生省といたしましてもそういう御議論を踏まえて薬価については厳正なる対策を講じておるように思っております。今後につきましても同じような厳正なる態度をとっていくべきものであると考えます。
  211. 和田静夫

    和田静夫君 厚生省、三月一日付でこの薬価基準を一六・六%引き下げたわけですね。ところが、薬価を二〇%、二五%、三〇%引き下げると国庫負担はどれだけ減額されますか。
  212. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 現在の薬価が四兆六千億でございますので、一〇%引き下げるならば医療費ベースにいたしまして四千六百億減るわけでございます。そしてそれに伴いまして国庫負担は千三百億円ほど減ることに相なります。一五%でございますと、医療費ベースにいたしまして六千九百億減ります。国庫負担は二千億減ります。それから二〇%は、一〇%の倍でございまして、九千二百億医療費が減りまして、国庫負担ですと二千六百億減る、こういうことに相なります。
  213. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、やっぱりこれはずっといきますと、三〇%引き下げてもやっていける。私それを確認するために今答弁を求めたのです。  今回のこの薬価基準全面改定に当たって実勢価格をお調べになったと思うのですが、その全容を明らかにしてください。
  214. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 今回の薬価基準の改正に当たりましては、昨年の五月に薬価調査をいたしまして、それに基づきまして一応八一%バルクラインまたは九〇%バルクラインという従来からのルールに従いまして薬価の算定をした結果、一六・六%の薬価の引き下げに相なったわけでございます。
  215. 和田静夫

    和田静夫君 実勢価格を答えてくださいよ。
  216. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 実勢価格ということでございますが、私ども全国の医療機関に販売をされております個々の医薬品につきまして個々に薬価を調べるわけでございます。したがって、個々の実勢価格につきましては、各病院め購入量だとかあるいは取引条件あるいは支払い形態、お金の支払い形態でございますが、そういうものによって非常に高い取引が行われている場合、それから低い価格で取引が行われている場合と、さまざまな購入価格の実態があるわけでございます。しかも、それが個々の医薬品の銘柄に従って成立するわけでございますから、実態と申しますと、薬価基準に現在約一万六千品目が載っておるわけでございまして、その一万六千品目について個々ばらばらの薬価が成立しておるわけでございまして、どの実態を言えばよろしいのか少しわかりかねるのでございますが……。
  217. 和田静夫

    和田静夫君 そう言われるのならば、譲歩いたしまして繁用品五十品目について。
  218. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) お尋ねの趣旨とちょっと違うかもしれませんが、国立病院とかそういうところで購入をしております薬価基準との差について御報告申し上げたいと存じます。調査機関と調査品目それぞれ一致をしておりませんけれども、省略をいたしまして申し上げます。  国立病院につきましては百一カ所の平均八七・二%、国立療養所百五十三カ所八四・七%、それから民間病院、これは十四カ所でございますが七二・八%。以下、厚生省所管ではございませんけれども、関係省庁からいただきました資料に基づきまして便宜上私の方から御報告申し上げます。  国立大学附属病院、これは一カ所についてでありますが八三・三%、防衛医科大学病院一カ所八五・二%、造幣局病院一カ所八三・〇%、印刷局病院二カ所八三・一%、営林病院一カ所九五・〇%、逓信病院一カ所八二%、宮内庁病院一カ所八一・六%、鉄道病院九カ所につきまして七九・〇%、専売病院二カ所八二・四%、労災病院三十七カ所八一・三%、警察病院一カ所八四・三%となっております。
  219. 和田静夫

    和田静夫君 少し進めてからにしますが、今のは医務局に答弁求めているわけじゃなくて、これは保険局長答弁されなかったら、社会保障制度審議会に何をかけてきたのかさっぱりわからぬことになりますから御注意を申し上げておきますが、したがって、私が以下やっている間に答弁の用意しておいてください。  私の調査によれば配付資料のとおりなんです。第一表は、ある公立病院への納入価格です。これはどこの公立病院でも大体この価格で購入しています。東菱のインタセリン二ミリリットル、これは新薬価の六二%という大幅な値引き率になっています。ごらんのとおりです。ダィゴのウロキナーゼも同様です。薬価の半額程度あるいはそれ以下の薬がメジロ押しに並んでいます。この実勢価格と薬価基準価格とのさやが公立病院の赤字を埋める財源となっているわけです。しかし公立病院の赤字と薬価とは全く別問題でありますから、今は薬価についてのみ問題にしますと、病院の赤字問題は診療報酬体系の問題だから、そういう意味で私は別だと、こう言っているわけであります。  第二表は民間病院、今言われましたが、開業医への納入価格ですよ。公立病院よりも低い価格になっています。三共の高血圧の薬であるカルビスゲンは一錠の薬価基準価格は六十一円二十銭、ところが実勢価格は四十円、差し引き二十一円二十銭がお医者さんの懐に入る仕組みになっている。さらに驚くべきことは、いわゆるゾロゾロ薬品の問題であります。カルビスゲンと同じ薬効を持つ日医工のピンドロールN錠、これは薬価が四十二円五十銭、ところが実勢価格は何と四円にすぎないのですね。ただの四円ですよ。差額が三十八円五十銭ですよ。これはまあ薬九層倍どころの話じゃなくて、十層倍、二十層倍というようなことなんでしょうが、四円で売れる薬が四十円で売られている。しかも薬価基準は六十一円二十銭。私が薬価を一六・六%どころではなくて三〇%下げたってまだまだいいんだと言っている根拠はここにあるんですよ。厚生省、私の調査結果、これ、違っていますか。
  220. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 今、先生が御指摘のような価格で売られているものもあるだろうと思います。
  221. 和田静夫

    和田静夫君 間違っていませんね、厚生大臣、私のこれは。
  222. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今、政府委員から御答弁申し上げたとおりでございます。
  223. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 確かにそれを調べたわけではございませんので、私どもも先生の御指摘のものが間違いないというように確言はできかねるわけでございますが、そういうものに近い価格で売られているものもあるであろうと、こういうように考えます。
  224. 和田静夫

    和田静夫君 国立医療機関への納入価格は出ますか。さっきの答弁はわかっていますから。
  225. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) はい。ちょっと今個々のものについて即答できませんけれども、出ます。
  226. 和田静夫

    和田静夫君 保険局長、民間大病院から個人医院まで、薬価基準改定の基礎となったいわゆる市場実勢価格の全データ、出せるでしょう。これを出せなければ、審議会に何をかけていたんですか。
  227. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 一万六千品目の薬剤……
  228. 和田静夫

    和田静夫君 繁用五十品目と言っている。
  229. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 繁用五十品目につきまして薬価調査の結果を出すということになりますと、かなり膨大な資料に相なります。保険医療機関が約十万五千あるわけでございますので、十万五千件に個々の価格が一万六千の品目について成立するわけでございますので、相当膨大な資料になります。  私どもは、その薬価調査をいたしまして、少なくとも下から数えて八〇%あるいは九〇%のところにラインを引きまして、それを薬価基準価格にする、こういうことでございますから、その価格の範囲内におきましていろいろな薬価がある。実際に製薬メーカーと医療機関との間に取引が成立する価格というものは非常にたくさんあるわけでございまして、今先生御指摘の資料を出せと、こうおっしゃいますが、なかなかこれは相当膨大なものに相なるわけでございまして御勘弁を願いたいと、こういうように思うわけでございます。
  230. 和田静夫

    和田静夫君 私は、先ほど大臣に申し上げましたように、医療費の適正化こそ制度改革の大前提だと思っているんですよ。ところが、今保険局長答弁したような状態なんです。明確に大臣も私もごまかされようとしているんですよ。ここのところはお互い政治家としてこういう処方は許さない、国民生活のために、本当の意味での大衆が求めている医療制度の健全化のためにこういうことは許さないということをやっぱりはっきりしなきゃいかぬですよ、これ。進みませんよ。
  231. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、正確な調査をして、膨大な資料から一つの薬価基準のバルクラインを引いておるわけでございまして、その個々の資料というものを出すということになると、かなり膨大なものになりますということを申し上げておるわけでございます。
  232. 和田静夫

    和田静夫君 もう一言だけ言っておきますが、あなたの方の調査というのは私も大体知っている。民間大病院だけをやっている。開業医は含まれていない、言ってみたところで。しかもそれは三月一日から十二月までの調査ですよ。二月時点でぴったり押さえないと本当の実勢価格は出ません。厚生省が調査することがわかって価格が合わされています。合わされていることも私は実証します。これはいまの答弁ではこれ以上進めませんから、ちょっと協議してください。
  233. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、大病院だけに限らず開業医も含めまして、全医療機関についての購入価格を調べておるわけでございます。
  234. 和田静夫

    和田静夫君 情報公開ということについては、私は予算委員会でたくさんの論議をしてきましたから、きょうはそのことをやろうと思いません。厚生大臣、資料は出せません、膨大だから出せませんと。それじゃ、あなた方は論議をしてもらわなくてもよろしいということですが、私の方は資料が出てこなければこれは論議できませんから。
  235. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 薬価調査でございますが、先生御案内のように本年度につきましては四月取引分、丸一カ月分を五月に自計調査いたしました。これは販売サイドで全卸し、それから医療機関につきましては、病院は十五分の一、診療所は百分の一を抽出いたしまして、全品目について調査をいたしたわけでございます。この薬価調査につきましては、医療機関の開設者別等の分類は集計をいたしておらないわけでございますが、いずれにしましてもこの薬価調査は販売サイド、医療機関の協力を得まして実施をしておるわけでございます。先ほど保険局長も申しましたように、非常に膨大な資料になっておりますという点が一つと、もう一つは、個々の品目ごとのそれぞれのメーカーがどういった医療機関にどういうふうに納めているかというのは、やはり販売政策にかかわるような問題もございまして、従来から公表をいたしておらないわけでございまして、その結果につきましては、薬価基準の改定の結果に端的にあらわれているということで御了解を賜りたいというふうに思っております。
  236. 和田静夫

    和田静夫君 これはもうお役人さんの答弁ではだめです。言ってみれば大臣と私の関係において。こんなことであなたも論議できますか。あなた、内容わかりますか。全然わからないでしょう。わからないまま大改革が行われようとしているのですよ。大改革の前提になるものが我々わからなくて論議ができますか。
  237. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今、和田先生御指摘のように、薬価の問題、今日の医療費の中で大変な重要な役割を果たしております。しかも、今御質問に、また答弁にありましたように、実際の取引されている価格が基準価格との間で相当の開きがあるというような実情もございます。そういうことから厚生省といたしましても皆さん方のいろいろの御意見を尊重いたしまして、五十六年の六月には一八・六%の引き下げを行い、さらに五十八年の一月には四・九%の引き下げを行い、さらに本年三月は一六・六%という大幅な薬価の引き下げを行いました。しかしまた、これもことしのさらに実勢価格というものの調査をいたしまして、さらに必要とあらば改定していく方向でございますので、また先生から御指摘の調査資料につきましては、できるだけ政府委員に指導をいたしまして先生の御納得のいくような勉強をさせたいと思いますので、どうぞ審議をお進めいただきたいと存じます。
  238. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  239. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  240. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) ただいま先生から要求のありました資料の提出につきまして、これを何とか先生に十分御満足のいくような方法を討究いたしましたが、これは先生御承知のように、一万六千点この薬価基準対象になる薬品がございますから、これを購入している医療機関が十万でございますから、ちょっとその資料をこの委員会に配付することは極めて物理的に困難だと思いますが、しかし先生にぜひこれは御高覧を賜りたいと存じますので、必要とありますれば、先生に十分御調査いただけるような最大の便宜を厚生省として図りたいと思いますので、審議を継続していただくようにお願いいたします。
  241. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、そうだから私は精力的に与野党書記長、幹事長会談における自由民主党側の回答の趣旨に基づいてここで論議をさせてもらっているわけでありますから、そういう観点で見せていただいてさらに論議を深めますが、実は大臣と私でやっぱり合意しておかなきゃならぬのは、どうも製薬業界と癒着がある。天下りを考えてみましても、社長に行っていらっしゃる方や、いろいろ厚生省の局長だとかあるいは次官経験者が主要なポストにいらっしゃる一覧表もあります。あるいは課長クラスで製薬会社に行かれた方の三十八名の名簿もございます。こういうものがもし原因になって、言ってみれば薬なんかの問題、薬価の問題が進まないとすれば、これは知らないところにいる国民は非常に不幸です、我々を含んで。そういう意味では、十分精力的な大臣ですから、この辺のところもメスを入れていただきたい。  市場の実勢価格については提出をされるということでありますから、それを見て論議を進めますが、薬価問題というのは既に五十七年六月の公取委のレポート、同じく五十七年九月の中医協答申で実勢価格と薬価基準とを等しくするように勧告されている問題なんですよ。そういう問題でありますから、私の言っていることは本当に社会正義に基づいた発言ということになるわけでありまして、今回のような大改革をやる前に片をつけるべき問題なんです、片をつけるべき問題。したがって、総理、こういう状態だということを踏まえて健保の問題の取り扱いはもう一遍中曽根内閣としてはお考えになることが必要ですよ。
  242. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 薬価基準の問題については、かねがね当委員会におきましても御指摘をいただいておるところでございます。あるいは乱診乱療の問題等につきましてもまた指摘していただいているところでございます。特に薬価基準の問題というものは非常に大きな内容を持っておる問題であるというように私たちも思っております。そういう点から、今後とも厚生省におきまして厳重にこの取り扱いを行うように私からも特に厚生大臣に指示いたしたいと思います。
  243. 和田静夫

    和田静夫君 行管庁長官、国立病院の値引き率が約一二%あるんです。これはどういうことなのだろうか。国が薬価基準を守っていないということなんですが、何のための基準だとお考えになりますか。
  244. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 厚生省の方からお答えをしていただきます。
  245. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 薬価基準につきましては、先生御案内のように健康保険で使います医薬品の種類及びその健康保険として扱う価格を定めておるわけでございます。その価格で保険の方は支払いをするということで、実際の取引価格というのは医療機関と製薬メーカーとの間の自由な取引ということで価格が形成されるわけでございます。そしてさらにつけ加えますと、実際の取引された価格はどうかというのを毎年薬価調査をいたしまして把握いたしまして、それに基づいて薬価の改定を毎年実施する、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  246. 和田静夫

    和田静夫君 業務局に答弁を求めているのじゃないんです。行管庁長官に求めたのは、昭和五十六年十二月に国立医療機関等の業務運営に関する調査結果報告書というのをおたくが出しているわけでしょう。したがって求めているのじゃないですか。
  247. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 事務当局から答弁をいたさせます。
  248. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) 今、先生のお話しの調査をいたしておることは事実でございます。そうしたような調査に基づきまして厚生省に諸般の改善を一応お願いをいたしておるわけでございますけれども、その後の措置状況につきましては、まだ私どもの方でも十分な把握をいたしてないところがございますので、御趣旨の点、改めまして厚生省の措置を伺いたいと、このように思います。
  249. 和田静夫

    和田静夫君 答弁になりませんね。大変政府側は不勉強だと思うんだな。これだけ重要な大改革案を出しておりながら大変不勉強だと思うんですよ。  もう一つ行管庁、それじゃ長官といっても余り気の毒だから行管庁に聞くが、東大病院は差額約一七%でしょう。この分でもうけた額は、あなたの調査結果はどこへ行っていますか。
  250. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) 失礼いたします。ただいま手元に資料ございませんものですから、今直ちにはお答えはできません。帰りまして再度その資料の調査をいたさせていただきたいと思います。
  251. 和田静夫

    和田静夫君 では、これは待ちます。もうこれ以上がたがたしていて断続的では困りますから、待たせてもらいます、この答弁。これは調べればすぐわかるのですから、調査票があるのですから。
  252. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 質問通告がなかったのでしょうから、すぐと言っても無理な場合がありますから、これは次にやってもらうことにして質疑を続行してください。
  253. 和田静夫

    和田静夫君 これはできません。これは明確にもう少しまじめに答弁してもらわなければ続かないですよ、委員長。もう一問やればまた同じことを言わざるを得ない。
  254. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 参考人前川さんも見えているところですから、では、これを保留して、次の質問に行ってください。
  255. 和田静夫

    和田静夫君 そうはいきません。大改革をそれじゃ撤回されたらいいです、政府は。健保の改革をやめなさい、基礎がなっていないんだから。
  256. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 資料をすぐ取り寄せますか。
  257. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) ただいま、調査を当時いたしました者に対して調べさせております。何分にも急な御質問でございますものですから、ただいま手元に資料がございません。今調べさせておりますので暫時お待ちをいただきたいと思います。
  258. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔午後二時十一一分速記中止〕    〔午後二時三十二分速記開始〕
  259. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  260. 竹村晟

    政府委員(竹村晟君) 昭和五十六年の十二月に国立医療機関等の業務運営に関する調査をやっております。このときは三公四現の職域病院が中心でございまして、経営の合理化ということで、薬価については触れておりません。ただ、診療報酬の単価につきまして、当時の職域病院が国立病院等に比べて高いというふうな結果には触れております。
  261. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃもう一遍言いますが、これは恐らく文部大臣のお答えになるのか、あるいは担当かもしれませんが、さっき私は、東大病院で差額が約一七%ある、この分でもうけた額、これは各国立大学に大学病院あるのでしょうけれども、どういうふうな処理になっていますか。
  262. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お答えいたします。  和田さん御指摘の東京大学の場合は確かに一六・七%、その分だけ安くなっているということになります。御承知のように、国の予算はそのまま国立学校特別会計の中で処理をいたしますので、支払いはその値引きをされた分だけが外に、薬メーカーに支払われるということになりますから、その差額分はいわゆる国立学校特別会計の中に残るということになりまして、したがってそのお金は別にほかのものにという、おかしなふうにということではなくて、大学の研究費等に有効に使われているということになるわけでございます。
  263. 和田静夫

    和田静夫君 同じ質問を会計検査院に。
  264. 鎌田英夫

    会計検査院長(鎌田英夫君) ただいま文部大臣から御答弁ありましたとおり、国立学校特別会計の歳入歳出の中で操作される問題でありまして、予算の残がありますと、それはその特別会計にとどまる、後有効に使われる、こういうふうになると考えます。
  265. 和田静夫

    和田静夫君 院長、考えますじゃ困るので、会計検査院が検査された結果についてはどうなんでしょうか。
  266. 鎌田英夫

    会計検査院長(鎌田英夫君) 私、今院長の立場で、実際に検査したことがないものでございますので、考えますと申し上げましたが、担当の局長に聞きましたところが、そのとおりでございます。
  267. 和田静夫

    和田静夫君 ここのところは私は疑問を残したまま後でやりますが、九〇%バルクライン、オンライン方式がある限り、この基準価格と実勢価格との乖離というのはどうしても生じてくるということに厚生大臣、なるわけです。パルク方式に固執するのであれば、オンライン方式ではなくてカットオフ法あるいはテレスコープ法の導入を私は考えてもよいのではないだろうかということを常日ごろ申し上げてきました。一律に八〇%ないし七〇%というようなぐあいで、こういうような形で基準を下げてよい、それはその制度の抜本的改革にはつながりませんけれども、現在のこのばかげた価格差の是正に私はつながると思うんですよ。大臣、お考えになりませんか。
  268. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 確かに先生御指摘のように、バルクラインを下げていけばこれは薬価は下がります。ただ私どもは、一昨年、中医協の一つの答申をいただいておりまして、従来は九〇%バルクラインでやっておったわけでございますが、それ以来八一%のバルクラインも適用をするということで徐々に下げてきておるわけでございまして、それに基づいて現在の薬価基準を算定した、こういうことでございまして、今後の問題としまして、バルクラインの引き下げ等も含めて薬価基準の算定方法についてはひとつ検討をしてまいりたい、こう思います。
  269. 和田静夫

    和田静夫君 さらに幾つか提案を厚生大臣にいたしますが、開設者別あるいは地域別の共同購入方式を段階的に取り入れる、それを公開させる、それで薬価基準価格を共同購入価格に引き寄せていくという手だて、それひとつあなたが大臣のときに考えられませんか。この方式は既に自治体病院などでは行われています。福島県下をお調べになればわかります。したがって非現実的な構想ではないんですよ。問題は価格を公開させることなんですね。ここのところは厚生大臣、直ちに薬価制度の改革に手をつけるべきだということで提案するのですが、いかがでしょう。
  270. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 私も厚生省に入って勉強させていただいて、非常にこの薬価の問題、難しいのであります。それで、普通の価格の場合は生産費というもの、これを割り出していくのですけれども、これは研究費が伴ってまいりますので、なかなか自動車やテレビのように生産費というものが割り出せません。そういう中で最も公正な国民の皆さん方に納得のできる価格形成というものをきょうまで考え続けておるのでありますけれども、なかなかこれは決め手というものがないのでありますけれども、しかしその中では、今私どものやっておる実勢価格に合わせて実態を調査して、そのたびに薬価を改定していくという方式でございまして、今の先生の御提案のございました自治体病院等では非常に成果が上がっておりますので、きょうの先生からの貴重な提案を今後の薬価行政に強く反映するように努力をしてまいりたいと思います。
  271. 和田静夫

    和田静夫君 総理、私の主張は、まず第一に医療費の適正化を図る、薬価、医療機器価格の適正化を図る、その上で医療制度改革について国民議論を起こす、社制審答申あるいは社保審答申が端的に示していますように、コンセンサスが得られていない現状のもとで、拙速かつ場当たり的に制度に手を入れるということは極めて危険で、後世に私は悔いを残すだろう、そういうふうに考えています。やはり撤回をされて再検討されるべきだと、こういうふうに考えますが、いかがでしょう。
  272. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回の医療保険制度の改正の問題につきましては、前に申し上げましたように、財政的な非常に苦しい状況にもなり、かつまた、この医療保険制度を長期的に安定的にこれを将来崩れないようにしていくという配慮もありまして、特に世代間の不公平が起きないようにするという問題と、それから退職者医療制度という問題について新しく制度をつくってあげよう、こういうようないろんな発想を持ちまして考えたものでございます。その中にありましては、もちろん医療行政の合理化という問題がございまして、まずそういう問題に手をつけて行うべきであるという御議論も十分うなずけるところでございます。それらの問題につきましても、今の薬価基準の問題等につきましても、今まで何回か改善もし、努力もしてきておるところでございます。なおまた、乱診乱療等の問題につきましても厚生省は鋭意努力しておるところでございまして、今までそういう努力を積み重ねてまいりました上に立ってさらにこの制度を永続的に続けていくという配慮から、やむを得ずこういう処置に踏み切ったのでございまして、ぜひともこの点は御了承をいただきたいと思う次第でございます。
  273. 和田静夫

    和田静夫君 まあ了承するわけにいきませんし、先ほどの薬価の資料を見てからさらにこの質問は続けさしていただきます。  日銀総裁、非常にお待たせしました。ここでちょっと入れさしていただきます。  金融問題でありますが、どうやら円高傾向が定着しつつあるようですけれども、円高と同時に流れ始めたのはドル暴落説であります。これまで高金利によってアメリカに吸い寄せられていた資金が逆流し始めているという見方がありますが、この辺はどうでしょう。
  274. 前川春雄

    参考人前川春雄君) アメリカの国際収支が大幅な赤字を続けておりまする現状から、いつまでもドル高が続くわけではない、そのうちにドル高修正が行われるだろうという機運が為替市場には強くなってきておるわけです。そういう背景の中で、円が割安であるという感じが出まして、円高の方向に働いてきたわけでございます。ただ、アメリカの高金利の方は一向におさまる気配がないということから考えますると、この先ドルがどういうふうに動きまするか、この二つの要素、国際収支の問題と金利、この二つの要素どちらが強く働くかということによりますけれども、必ずしも先行きについて的確な見通しをつけることができない状態でございます。
  275. 和田静夫

    和田静夫君 アメリカの金利見通しはどういうふうに見ているのですか。
  276. 前川春雄

    参考人前川春雄君) アメリカの財政赤字に関してなかなかアメリカの議会と行政府との間の妥協がつかない。一方、アメリカの経済回復、景気の回復はことしになりましてかなり強いようで、そういう点から民間の資金需要が起きてくるということもございまして、アメリカの金利についてどうも先行きそう下がらないのではないかという見方が最近強まっていることは事実でございます。現にこの数日間、アメリカの金利が若干強くなっているという傾向でございます。先行きにつきましては、今申し上げましたような二つの要素がどういうふうに絡むかということでございまするので、なかなか見通しは困難だと思います。
  277. 和田静夫

    和田静夫君 円高とともに浮上してくるのが例によって公定歩合の引き下げであしますが、私は、時期尚早の感もなきにしもあらずですけれども、総裁はどういうふうにお考えですか。
  278. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 円高と申しますけれども、まだ一週間ようやくたったぐらいでございまして、市場では円相場に対する相場観というのがまだはっきりしていないという感じでございます。そういう環境のもとでは、新しい金融政策について論ずる段階ではないというふうに判断をしております。
  279. 和田静夫

    和田静夫君 通産大臣、公定歩合の通産行政との関係で、何か日銀に注文ありませんか、いまの段階で。
  280. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 実態的に見ますと、この円高によりまして輸出関連産業あるいは加工産業はどうかと申しますと、これが進展すると大変だなという厳しい感じはございますけれども、この程度では影響はないという状況でございます。素材産業はどうかと申しますと、やはり円高によりまして原材料、その輸入コストというものが低下するというプラスはありますけれども、やはり製品輸入が多くなってくるだろう、そういう心配はあるけれども、やはりこの程度なら大丈夫だ、あるいは中小企業に対してヒアリングを実は行ったのでございますけれども、この程度では適応可能だ、したがって現状では影響はないと判断いたしております。
  281. 和田静夫

    和田静夫君 企画庁長官、公定歩合の引き下げについて何か御意見ありますか。
  282. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 今財政の力が非常に弱くなっておりますので、こういうときには金融政策を機動的に運営していただきたいということは非常に強く期待をしておりますけれども、しかし今お話しのように、機動的運営を妨げておる幾つかの要因がございますので、物価は安定しておりますけれども、物価水準よりもはるかに高い今金利水準になっておりまして、なかなか思うような方向に行っておりません。幸いに最近の円高が定着をいたしますと、金融政策を機動的に運営をしていただける一つの条件が整うのではないかと、このように期待をしておりますが、しかし問題が大変複雑でございますので、そこは日本銀行が適当な判断をされることと思います。
  283. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、いかがでしょう。
  284. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさに日銀の専権事項でございますが、私どもが、いわゆる国際会議等でいろいろ議論される中で、一つだけしょっちゅう気になるのは、そうした行為が円安誘導を作為的にやっておるではないかという批判ということに対しては絶えず神経をとがらしております。
  285. 和田静夫

    和田静夫君 金融の自由化がこのタイムスケジュールに上っていますが、長短市場金利はかなり急速に自由化が進行しているわけですね。預金金利の自由化についてはさまざまなネックがあったり、また預金者保護の観点からもさまざまな問題があると考えますが、日銀総裁はどうお考えでしょう。
  286. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 国際的にも資金移動が自由化されておりまするので、今後の金融政策を進めてまいりまする上におきましては金利機能の活用ということがどうしても中心になるというふうに思います。そういう点から申しますると、金利も自由化されるということでないとその効果が出てこないということでございまするが、その中の預金金利につきましては、預金者の立場もございまするのでなかなかそう一挙にはまいりませんけれども、預金金利の自由化もどうしても進めてまいらなければいけないというふうに考えております。
  287. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵省、アメリカがこの経済摩擦の中で金融の自由化を厳しく要求しているわけでありますが、その概要と今後のスケジュールを聞かしてください。
  288. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) お答えいたします。  アメリカから金融の自由化につきまして、この間のアドホック委員会でございますか、その席上でいろいろ問題が持ち出されまして、一つはユーロ円市場の問題でございます。一つは国内の金融市場の開放の問題でございまして、この二つにつきまして私どもに対しまして要請があるわけでございます。私どもといたしましては、対外的な問題も配慮しつつ、この問題につきましては自主的な判断で積極的に対応してまいるということでございますが、ただ、自由化につきましては金融の混乱を起こさしてはいけないとかいろいろな問題もございますので、段階的にこれを進めたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  289. 和田静夫

    和田静夫君 一部の報道によりますと、預金金利、公社債金利の規制撤廃、あるいはTB市場の拡大、あるいは日本の高貯蓄を不振な住宅投資に誘導する措置などが挙げられているわけですが、そういう内容について大蔵省は確認できますか。
  290. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先月の終わりにアドホックグループの会合ございまして、それから今月は二十一、二十二、また東京でございます。時を同じくしてリーガン財務長官が来日されまして、これは中国からの帰りでございますけれども、今おっしゃいました具体的ないわゆる住宅投資への誘導といったような政策までについては、これはいわば政策立案の過程ではそういう議論はそれぞれの国々にあるでございましょう。また、そうした評論家の論文もございますが、具体的に今のような政策指向の問題が議題になるという問題ではございません。
  291. 和田静夫

    和田静夫君 そこで大蔵省、預金金利の自由化ですが、どういうスケジュールをお持ちなんですか。
  292. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 我が国におきましては、預金金利の自由化の問題で一番の問題は、やはり小口の預金金利の自由化をどう進めるかでございます。この点につきましてはやはり郵便貯金金利の問題もございます。あるいは非常に小口の零細な貯金金利についてまで完全にこれを自由化してしまうことにつきましては、やはり問題点も随分指摘されているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、とりあえず大口預金金利の自由化というものを進めたい。そのためにはまず金利自由な商品、例えばCDの一層の弾力的な運用であるとか、あるいは今提案されておりますような市場金利連動型の新しい預金をつくるとか、そういうことを進めることによりまして、できるだけ早い時期に大口預金金利の自由化ができるような環境をつくっていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  293. 和田静夫

    和田静夫君 今、銀行局長答弁にもありましたが、郵政大臣、預金金利の自由化に関しては郵貯がいつもやり玉に上げられるわけですよ。大臣としてはどういう見解をお持ちですか。
  294. 奥田敬和

    国務大臣(奥田敬和君) 自由化の方向は避けられないだろうと見通しておるわけですけれども、したがって郵貯の場合には金利決定の原則が郵貯法で決められておりますが、やはり市場実勢に対応していかなければいかぬということになりますから、今後は運用面においても大変慎重な対応策が必要になってくると思っております。ただし、他方では郵貯資金は何分財投の主要な原資でもございますし、そういう面においても配慮しながら、大蔵省の方と相談し合っていくべき時期が近づきつつあると思っております。
  295. 和田静夫

    和田静夫君 郵政大臣、自主運用との関係はどういうふうに御理解になっていますか。
  296. 奥田敬和

    国務大臣(奥田敬和君) こういった自由化に対応していくために、自主運用についても大きな関心を持っておるところでございます。したがって、今年度の予算編成の過程におきましても、郵政省といたしましては一部自主運用という面で一兆円の国債購入等々をお願いしたところでございます。残念ながら両省間協議ならず、断念をいたしました。
  297. 和田静夫

    和田静夫君 今、大臣、御答弁にありました時期が近づきつつある、近づきつつある時期というのはどういうふうに判断されているんですか。
  298. 奥田敬和

    国務大臣(奥田敬和君) もう国際的な傾向でございますから、既にヨーロッパではほとんどの先進国は自由化しておりますし、アメリカもそうでございますし、やがては当然その波が来るだろう。時期がいつかと言われると、これは私の領分ではございませんけれども、想像以上に早い形で既にその兆候が出てきておると認識をいたしております。
  299. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、預金金利の自由化に伴って、預金者保護の観点からするならば預金保険機構を拡充するなどの措置が前提としてとられる必要が私はあるだろうと思うのですが、いかがお考えですか。
  300. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、郵政大臣からもお話がありましたが、この時期ということを明確に申し上げるわけにはいかないまでも、そういう国際的な環境にあるということになりますと、まあ端的に言えば日本の場合はすべて預金者保護、そして投資家保護、被保険者保護。アメリカの場合はどちらかといえばいわゆる自己責任主義、だから自己責任主義が強まるためには、やはりそこにいわゆる保険機構というものが充実されていかなきゃならぬ。しかし、第一義的にはやはり自主的な運営の健全性を指導しながらいくというのが建前でございますが、当然の方向として私は御指摘の方向で充実していかなきゃならぬ課題だというふうにこれはしっかりと認識しております。
  301. 和田静夫

    和田静夫君 日銀総裁、今の……。
  302. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 預金者の保護ということは非常に重要なことでございまして、そういう点から預金保険の拡充ということも当然必要であり、また金融制度調査会の報告にもそういうことは挙がっております。しかし、一番基本的な預金者保護はあくまで金融機関の経営が健全でなければいけない、そういうことによって経営基盤が強固になるということが大事であるというふうに思います。したがいまして、そういう金融機関の健全な経営を図っていくという点につきまして、私どももこれから大蔵省とも、ともどもそういうことが実現するように努力してまいりたいと思います。
  303. 和田静夫

    和田静夫君 私もこの一月にアメリカの金融革命の状態をずっと調査に。行ってきました、個人で。中小金融機関の倒産が相次いでいるわけですが、預金保護機構がしっかりしているために取りつけの騒ぎなどは起こっていませんよね。日本でもぜひこういう制度というのはやっぱり拡充をすべきだろう。そういうふうに、今日の相銀の状態だとかいろんなことを、きょうは固有名詞を挙げませんが、考えてみると、そのことを痛感するんですよ。いかがでしょうか。
  304. 前川春雄

    参考人前川春雄君) アメリカの預金保険機構は膨大な資金、責任準備金を持っておりまして、それによって預金保険ばかりでなしに金融機関の再編成ということのためにも非常に活動しておる。時にはその資金を弱い金融機関に貸して合併を推進するとか、そういうこともやっております。それによって金融機関全体の機構の整備、再編成ということが行われているということでございます。日本ではそこまでの資金の余裕がございませんのでまだそこへ参っておりませんけれども、そういう意味で、預金保険機構を拡充するということの必要性はもちろんございまするけれども、その資金量もアメリカほどには到底短時日の間に高めるということはなかなか困難でございまするので、将来の方向としてはそういうことも一つ方向だというふうに思っております。
  305. 和田静夫

    和田静夫君 ところで、中期国債ファンドが鳴り物入りで宣伝されているわけですが、これはある種の定期預金といった印象を与えているわけですが、これの暴落の危険性が指摘されていますが、そういう可能性及び対策は、大蔵大臣、どういうふうにお考えですか。
  306. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 証券の方の商品でございますので私がお答えするのが適当かどうかわかりませんが、証券局長がきょう来ておりませんので……。  中国ファンドにつきましては、五〇%以上を中期国債を組み込んだ投資信託になっているわけでございます。ただ、この点につきましては、非常に中国自体の値段がかなり変化するというようなこともございまして、予定の利回りを維持できないというふうなものも出てくる可能性もあるわけでございますけれども、しかし、いずれにいたしましてもそこは過去におきますようないろいろな経験もございますので、その商品の安全性につきましては当然証券界においても考えておるのでございましょうし、また証券局の指導もあるわけでございまして、それが非常に金融を混乱させることのないように私どもとしても対応をしていかなくちゃいけないと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  307. 和田静夫

    和田静夫君 総裁、自由化に関してもう一問ですが、TB市中売却ですが、やはり私は限界があるのじゃないかという点、これはどういうふうにごらんになっていますか。国債の償還に関連してこのTBの大量発行が予想されるわけですが、それを日銀が引き受けるということになると、事実上の国債の日銀引き受けにつながるのじゃないかということが危惧されますが、この二点いかがでしょうか。
  308. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 日本銀行は政府短期証券の市中売却をその都度行っておりまするが、それは金融調節の手段として行っておる、資金が市場に非常に潤沢になっておりまするときに、金融調節上これを吸収しなきゃならないというときにこの政府短期証券を使って吸収するということが従来の私どもの市中売却の大きな眼目でございます。そういう点で、これからもその市中売却ということはそのときどきの金融情勢に応じて実行してまいりたいというふうに思います。  一方、今第二の御質問でございました償還に関連した、借りかえに関連したその短期国債につきましては、借りかえに対応する短期国債が出るのか出ないのか、その点につきましては私も、まだ政府で御決定になっておらないと思いまするので、その点につきましては今お話のございました政府短期証券とは別のものであろうというふうに思っております。
  309. 和田静夫

    和田静夫君 総裁、カントリーリスクですが、中南米あるいはフィリピンの累積債務問題というのは急ピッチであります。それで、貸した債権国側にも責任があるという主張があるわけでありまして、この点についてどういうような見解をお持ちか、また銀行の指導をどのように行っておるわけですか。
  310. 前川春雄

    参考人前川春雄君) オイルショック以降、膨大な資金が産油国に集まって、それをどうやって回していくか、リサイクルというふうに言われておりまするが、そういうことが市場を通じてかなり円滑に行われた。それが円滑に行われている間はよかったわけでございまするけれども、そういうことから債務国の債務が累積してしまったということであり、またそういうオイルショック後、世界全体が低成長になりましたので、今までのような高度成長を当てにした拡大政策がその実を結ばなくなったということがこの債務累積問題の大きな根幹であったというふうに思います。そういう点で、借りた方も借り過ぎた、貸した方も貸し過ぎたという面がないことはございません。しかし、今申し上げましたような世界経済の大きな変革期に当たったわけでございまして、ある点ではそういうこともやむを得なかったということもあろうかと思います。  これからの問題といたしましては、もちろん金融機関の融資に対しまして、今お話のございましたカントリーリスクということもございまするので、そういう点を含めて金融機関が慎重な対応をするということが必要でございまするけれども、当面起きておりまするこの債務累積問題はこれをほうっておきますると世界の信用秩序にも影響するということがございまするので、その点は世界の信用秩序を維持しながら、一方今申し上げましたような慎重な対応をしてもらうという兼ね合いの問題でございます。なかなか難しい兼ね合いでございまするけれども、そこはうまくバランスをとってこれに対応していかなければならないというふうに考えております。
  311. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣はどんな見解ですか。
  312. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、日銀総裁からの大体御意見に尽きるところでございますが、やっぱり指導をしていかなきゃいかぬということで、まず一国に対する過度集中、これを避けなさい、それから絶えず連携し、あるいは個々で情報を収集しなさい、それからもう一つは、国際協調のもとの債権国経済調整の努力を見守りながらそれによって配慮していく。パリ・クラブでございますとか、それから我が国においても前財務官が参りまして、だんだんそういう情報収集等の機能も今充実してきております。そういうような形と、なお検査に当たって海外債権についての適切な管理を絶えず求めていく、こういうことをやっております。  御指摘ありました五十七年度からいわゆる累積債務国問題が表面化してまいりましたので、そこで我が方も五十七年度決算以降カントリーリスクにかかる特別の引当金を設けさしていただいた、今後ともカントリーリスクの問題には絶えず注意をしながら適切に対処していきたい。とりあえずはああして以降の問題でございますけれども、そのときもいろいろここでも御議論がございました、仮にカントリーリスクの国を日本国の機関が指定したらそれは国際不安をまた生じることにもなるので、そういうようなことをいろいろ総合勘案の結果、五十七年度以降のものについてのそうした制度を設けて、今はその制度自体が持ついわばある種の抑止力的な機能も私は果たしておるのじゃないかという見方でこれからも適切に見守っていかなきゃならぬ課題だというふうに認識いたしております。
  313. 和田静夫

    和田静夫君 個別銀行別に見ますと、東京銀行はやむを得ないとしましても、一般都銀では住友が群を抜いているわけですね。これは日銀、大蔵、私は余り好ましい状態じゃないと思っているのですが、どういうふうに理解するのでしょうか。
  314. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 個別の銀行の数字はちょっと今心得ておりませんけれども、それぞれの銀行の健全経営と申しますか、そういうことが基本にならなければいけないことであろうと思います。しかし同時に、銀行としての戦略と申しますか、これから国際業務へだんだん進出していくというような戦略もございまするので、それはそれぞれの銀行の判断の問題であろうというふうに思います。今大蔵大臣からお話がございましたような、特別の準備金というものもそこに認めてまいることになりまするけれども、しょせんはそれぞれの銀行の自己責任でやってもらうということでございます。
  315. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさに金融機関自身がそれは選択する問題でございますが、私どもといたしましては、絶えず先ほど申し上げましたようないわば指導に基づいてこれに対応して誤りなきを期していきたい。幸いにしていろいろな問題がそれぞれの個別の国で起こりましても、日本の銀行に対する信用も今日非常に高こうございますし、またそれが過度に集中して世間一般に言われるような赤信号というような感じが幸いにも日本の金融機関には全く起こっていないということは、諸外国からもむしろ注目されておるところではないかというふうに考えております。
  316. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 前川参考人、結構です。大変御苦労さまでした。
  317. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、先ほど述べられました特定海外債権引当金を無税化することですが、これは銀行がカントリーリスクも省みず貸しまくったことについてのツケを国民に転嫁する、私はそういうふうに考えるわけで、銀行はリスクの中でいわゆるリスク太りをしているという説があるんですね、これ納得いきませんけれども。
  318. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆるカントリーリスクの特定海外債権引当勘定の際にいろいろ議論されたところでございますが、銀行というものは、やはり自主的に、俗に言うISバランスとでも申しましょうか、国内の個人企業、あるいは国、地方、あるいは外国というところへ投資をするといたしまして、それの選別は銀行そのものの自主性において行われておりますが、私はこの問題は、やはり諸外国等を見てまいりますと、一番この勘定を設けること自体も非常に後発であったと思うのです。だから、むしろ私どもは銀行に対して、時には貸し続けてもらいたいという希望を持つこともございます、その国との信用関係からいたしまして。だから総合的に見て、今日、日本の金融業界というのがこれだけの信用と力というものを持っておる場合、国民にそのリスクを転嫁するというようなことには私は結果としてはなることを心配はいたしておりません。むしろこの制度そのものがあるということがいま一方の信用にもなるじゃないか、こういう認識をいたしております。
  319. 和田静夫

    和田静夫君 金融自由化に関連して金融再編成が進行することは必要でありましょう。その見通しですが、相銀以下の経営状態というのは私はかなり悪いと思って見ております。一般で具体的な事例を幾つか挙げるつもりでいますが、信相業界は合併話で持ち切りという状態でしょう。この辺はどういうふうに思われますか。
  320. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほど銀行局長から、いわゆる金融自由化、その問題は同時に国際化の問題と一緒に進んでくるわけでございますが、確かに御指摘のありましたようなことを我々は絶えず念頭に置きながら、これを主体的に、しかも積極的に進めていかなきゃならぬと思います。が、私ども、基本的に一つ考えておりますのは、日本は相互銀行以上を見ましても百五十七行でございます。アメリカは一万四千五百。明治三十四年ですから一九〇一年を見ますと日本も千八百、それがいわゆる政府の指導がその当時どのようなものであったか、私定かには存じませんけれども、日本の金融機関の自主努力によって、銀行は倒れないものという形から、ある意味においては国民の貯蓄性向も今日他の国に比べてダントツになっておるかもしらぬ。したがって、金融機関自身の持つ信用力と力というものは、これは私は諸外国の金融再編成等に比べれば、はるかに根は強いものだと思っております。  しかしながら、今おっしゃったように、まさに相銀以下と都銀等に力の差がございます。したがって、やはり金融自由化、なかんずく金利問題におきましても、まず短期の大口から順次その環境を整備してから、その環境整備の中へ、そういういわばこの相銀以下の金融機関等もなじんでいくように、なじむと同時に、それによってもって立つ信用組合は信用組合、相互銀行は相互銀行なりの歴史的背景があるわけでございますから、それとどういうふうに調和をとりながら進めていくかというのが、私どもが絶えず念頭に置いて、急ぎつつも焦らず、ちょっと矛盾した言葉でございますが、主体的に、しかも機動的に進めていかなきゃならぬ基本的な考え方の御指摘だというふうに私も受けとめさしていただきます。
  321. 和田静夫

    和田静夫君 厚生大臣にもう二問だけ、ちょっと戻りますが、チバガイギーですが、消炎鎮痛剤ブタゾリジンとタンゲリール、死亡した症例について、これはやっぱり遺族にその事実を知らせて、救済の道を講ずべきじゃないかということが一つ。  それから、やっぱりこの機会に消炎鎮痛済の安全性の問題というのは、ほかのものも調べてみる必要があると思うのですが、どうですか、再点検をやる、全体に当たって。
  322. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 先生御案内のとおり、この問題が起こりましてから最初に要指示薬として指定しまして、中央薬事審議会で御相談をいたしまして、私は国民の皆さんの不安を解消するためには販売禁止の処置をとりたいなとも考えたのでありますが、これは専門家の御意見を聞きましたら、現在の病状の中では、消炎鎮痛剤としてはこれ以外にどうしても効かない病気というものがあるそうでありますので、そこでこれは実質的にはもう禁止処置に近い状態なんでありますけれども、できるだけ使わない。しかし、病状でどうしても、これの場合はほかの薬をいろいろ使って、最後のラストチョイスとして、最後に患者の理解によって使うという、いわばもう販売禁止に近い極限状態の今回の処置をとったわけでありますが、御指摘のように、いろんな国民の皆さんにこれについての御不安があってはなりませんので、これからも御指摘の点を踏まえまして、国民の健康の安全確保のために最善の処置をこれからとるように検討を続けてまいりたいと思います。  それからもう一つの問題は、これからも副作用が、そういうものが出てきたりしては困りますから、そのためには厚生省として、薬を使用する医療機関に対して、これはできるだけ情報収集をしなければならない。そういうことのために、これを公表するということになりますと、今度はなかなか厚生省の情報の収集に医療機関が協力してくれなくなるとかいろいろな問題がございますので、なかなか困難な状態があるようでありますが、これも先生御指摘の方向に向かって検討を続けてまいりたいと思います。
  323. 和田静夫

    和田静夫君 再点検は。
  324. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 再点検します。局長から。
  325. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 今回の消炎鎮痛剤はフェニルブタゾンとオキシフェンブタゾンを中心としたものでございましたが、これを中央薬事審議会の副作用調査会で十分御審議をいただきまして、その調査会でも今後消炎鎮痛剤全般についての安全性に関する評価検討を進めると言っておられます。厚生省といたしましても、今回の問題発生にかんがみまして、安全性確保の観点から全般の再検討を行いたいというふうに考えております。
  326. 和田静夫

    和田静夫君 特別会計予算書二百三十八ページ、日雇健康勘定の未収金二十三億九千四十万円が計上されていますが、これは一体どういうことでしょうか。
  327. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 日雇い健保の未収金でございますが、通常の場合、日雇い健保は印紙方式で保険料を徴収いたすわけでございます。しかしながら、印紙によらずに現金で徴収する場合もございまして、これは実際に日雇い労働者が事業所などで働いて就労したけれども、たまたま印紙の貼付がなかったというような場合に、後ほど調査をいたしまして、その際の保険料を決定して現金で徴収する、こういうことでございますが、一応調査をいたしましても、いろいろな事情がございまして直ちに徴収のできないという事情もある場合がございます。そういうものが決算段階で出てくる。これまた後年度に至ってできるだけ徴収に努める、こういうことになっておりまして、その金額を未収金として計上いたしておるわけでございます。
  328. 和田静夫

    和田静夫君 私は、過去の実績をずっと調べてみたら、どの年も二億円台ですね。それがなぜ今年度だけ一挙に十倍にはね上がるのですか。しかも、今年度は七月一日に日雇い健保を廃止するわけでしょう。わずか三カ月でこれほど多額な未収金がどこから出てくるのですか。
  329. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 未収金の金額、私、今手元に数字がございませんので正確なお答えをするのがちょっと困難でございます。よろしゅうございますか。あるいは正確なお答えにならないかとも存じますが、貸借対照表でございますので過去からの累積などもこれには入ってきておるのではないかというふうに思うわけでございます。したがいまして、これまで徴収の努力をいたしておりますけれども、その結果、金額的には最近の実績等が徴収の関係で少し未収金がふえてきておるというようなこともあるいは影響しておるのではないかというように考えておるわけでございます。
  330. 和田静夫

    和田静夫君 これ、予算書が違っているのじゃないでしょうな。
  331. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 数字につきましては念入りに調査しておりますので間違いはないと思っております。
  332. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵省答弁を求めましょう。
  333. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 突然のお尋ねでございますが、ただいま厚生省からお答え申したとおりであろうかと思います。
  334. 和田静夫

    和田静夫君 厚生省は答弁になってないんだよ。これ、予算書が違っていたらもう予算委員会は成り立ちませんからね。これは正確に答弁してください。
  335. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) まことに恐縮でございます。私も突然のお尋ねでございますので、数字等について金額、今手元にございませんので、ちょっと先生の御要求なさるような正確なというところまですぐにお答えが難しいという気持ちでおりますが、数字として間違いはないと思っておりますので。
  336. 和田静夫

    和田静夫君 今のような答弁だったら、かつてのやつは全部予算決算は粉飾予算決算ということになるんですよ。したがって正確にしてください、特別会計予算書の二百三十八ページ。
  337. 西村尚治

    委員長西村尚治君) すぐに確認できますか。
  338. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 数字としては間違いないはずでございますが、かなり開きがあるので御不審を抱かれたというふうに思いますが、これは貸借対照表でございまして、ここに三つ数字がございますけれども、五十七年度、五十八年度、五十九年度とございます。五十七年度はこれは決算の結果でございますし、五十八年度は見込みでございまして、五十九年度は予算でございますが、五十九年度の場合には一応これからの数字ということでございますし、五十七年度、五十八年度は過去の実績あるいはそれに近い見込みということでございますので、その違いであるというふうに理解をいたしております。
  339. 和田静夫

    和田静夫君 そんなことにならないよ。二億円と二十億円ですよ。十二カ月で二億円、三カ月で二十億、そこを説明してもらえばいいんです。
  340. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 失礼いたしました。  日雇い健康保険は六月末で廃止いたしまして、七月に政府管掌健康保険の方へその新しい日雇いの事業の財政は受け継ぐわけでございます。今回の五十九年度の予算は、そういう意味で非常に特殊な形になっておりまして、旧日雇い健康保険制度の方の未収金は、一応日雇い勘定で一たん計上しておきますが、新しい七月以降の政府管掌健康保険の方で今度は収納の手続をとれるような仕組みとして予算を組んでおりますので、見かけ上は日雇いの方の数字が大きくなっておりますが、最終的には後ほど政府管掌の方へ大部分が収納される、こういう形になっておるために数字が大きくなったということでございます。
  341. 和田静夫

    和田静夫君 額で言ってください、額で。
  342. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) ここに書いてある額でよろしゅうございますか。細かくてよく読めまぜんが、二十三億九千万円程度でございます。
  343. 和田静夫

    和田静夫君 日雇いの分とあとの分。
  344. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) この日雇いの部分でございますけれども、後の収納が政府管掌健康保険の方で行われるという姿でございます。ちょうど六月と七月の間を境にしまして、所属するこの特会の勘定が違いますものですから、古い勘定の方には大きく出て、新しい勘定という方へ今度は収納の金額の方で入ってくる、こういう特殊な姿になっておるわけでございます。これは会計技術的な、たまたまことし制度改正という特殊な事情にございますので、非常に形態が複雑になっておりますが、そういう事情にあるわけでございます。    〔和田静夫君「法制局長官、こういう組み    方でいいですか。さっぱりわからぬです    な、私には」と述ぶ〕
  345. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 予算編成の非常に技術的な問題でございまして、予算書は私の方を通るわけじゃございませんし、大蔵省の方で十分に御検討になられた上で出された結論であると信じております。    〔和田静夫君「じゃ、主計局長」と述ぶ〕
  346. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 和田君、発言は立ってお願いします。一々そうしてください。
  347. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) ただいま厚生省の方からお話ししたと同じなんでございますが、今度はこの旦展健康勘定は六月で切れちゃうわけです。したがって、この五十九年度の貸借対照表は六月末の姿をあらわしておるということになるわけでございますね。そこで、六月に債権を生じて七月以降に現金で支払いを受ける国庫負担金がある、その分が未収金という格好でここに計上されておる。四月から三月までの通常の年度でございます場合には、二月分を三月に払っちゃいますから、三月末ではそういうものはない。そういう未払いの、この特別会計から言えば未収の国庫負担金はない、こういう関係になっておるわけでございます。
  348. 和田静夫

    和田静夫君 私の理解がなかなか進みませんから、ここのところは少し留保しておいて、一般でもう少し詰めます。  教育問題に入りますが、教育問題について、総理教育の荒廃というものをどのような要因によって生じたと思っていらっしゃいますか。
  349. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 戦後の教育制度が果たした役目もまた我々は多いに評価しなければならぬ点があると思います。子供たちが伸び伸びとしてまいりましたし、義務教育も長期になったりいたしました。しかし、最近の動向を見ますと、偏差値の扱いとかあるいは共通一次テストとかあるいは教育の弾力化というような問題についてかなり批判も出てきております。そういうような情勢を踏まえまして、憲法並びに教育基本法の精神を踏まえ、このもとに国民のさらに幅広い各方面の御意見も承って、みんなで教育改革をやろう、こういう考えで、まず手始めに各党と自民党と教育問題についてお話しを願いまして、そうして、でき得べくんばそろそろ新しい機関の法案の準備をさしていただきたい、準備をやる前にできたら各党と話し合いをさしていただきたい、そういう考えに立ちまして、できるだけ国会内における合意を形成するように努力してまいりたいと思っております。
  350. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 久保亘君の関連質疑を許します。久保君。
  351. 久保亘

    ○久保亘君 今の総理が御答弁になりました教育改育のための新たな審議機関の設置法案は、国会に御提出になるのはいつを予定されておりますか。
  352. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お答え申し上げます。  新しい機関の設置に関します法律はただいま文部省が中心になりまして検討を進めておりまして、お尋ねの時期でございますが、大体三月の末をめどに、目標にいたしておりまして、できれば三月二十七日の閣議で御決定をいただいて国会提出の運びにいたしたい、そういう目標で今鋭意作業を急いでおるところでございます。
  353. 久保亘

    ○久保亘君 新しい審議機関の主管省はどこをお考えになっておりますか、総理大臣。
  354. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは内閣総理大臣の諮問機関として置きたい。それは今まで中教審もいろいろ御努力願いましたが、さらに幅広い基礎に立って、いろいろ国民の皆さんの声も聞きたいし、また人材も集めたい、そういうような考えに立ちまして、そういうふうにいたしておるわけでございますから、一応は総理府という形になります。しかし、事務局が当然できると思いますが、この事務局につきましては、文部省を中心に、事務的責任者も文部省から出していただく。文部省を主軸にして考えております。
  355. 久保亘

    ○久保亘君 主管省が総理府であります場合に、事務局は文部省というのはわかりますが、主務大臣はどなたですか。
  356. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 恐らく形式的には総理府総務長官であると思います。しかし、その事務局の構成は各省から簡抜して人材を集めるものでございますから、その事務局長格になる者は文部省から出していただく、そういう形で、事実上は文部大臣あるいは文部省というものがやっていただく。ちょうど行政改革につきまして、臨調というのも総理府の所管でございましたが、事実上は行管長官、あるいは行管の事務当局が事務局を運営してきた、そういうような形で文部省にお願いしたらいいと思っております。
  357. 久保亘

    ○久保亘君 審議会の委員は国会の同意人事をお考えになっておりますか。
  358. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 主務大臣は総理大臣でございます。総理府のいわゆる各省大臣に当たる者は総理大臣でございますから、訂正さしていただきます。  大事につきましては、文部省を中心にいろいろ広い視野から人材を集めていただくようにしたらいい、そう思っております。
  359. 久保亘

    ○久保亘君 いや、私お聞きしているのは、この審議機関の委員は国会の同意を求められる大事になりますかどうですかということです。
  360. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 委員の両院に対します同意などを含めまして、名称あるいは、人数、そうした面につきましては、できるだけ各方面と今検討をいたしながら、そしてまた、各党の皆様方の御意見も十分踏まえてまいりたい、こんなふうに考えております。率直に申し上げまして今詰めております段階でございますので、現在のところで、どのようにいたしますかということについては、まだここで申し上げる段階に至っておりません。
  361. 久保亘

    ○久保亘君 この設置法の中に問題になっております教育政治的中立を保障する、そういうことを明文化されるお考えはございますか。
  362. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 衆議院予算委員会審議の中でも、こうしたことが各党の皆様からもかなり御質問にあわせて御意見としてちょうだいをいたしました。したがいまして、総理もたびたび御発言申し上げておりますが、教育基末法という、この法律の精神をより大事にします。これまでの中教審の審議を踏まえて行うということも大事にいたしていきたいと考えております。したがいまして、教育的にいわゆる中立であるというところは、一番この法律のところで気をつけていかなければならぬところだと考えておりまして、こうしたことも含めながら今関係当局と法律制定のための準備を急いでおるところであります。
  363. 久保亘

    ○久保亘君 総理大臣にもう一つお尋ねしたいのは、この法案をつくる前に各党と教育改革審議機関のあり方について協議したい、こういうことを再三おっしゃっておりますが、三月二十七日の閣議で決定したいということになれば、あなた中国に行かれるので、実際にそういうような日程が可能でしょうか。
  364. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自由民主党に対しまして、予算衆議院を通過したら早速各党と個別的に話し合いを始めてくれと、政調会長も大体了解しておりまして、そういう段取りでお願いしたいと思っております。
  365. 久保亘

    ○久保亘君 もしそういう話、協議と、いうものが、かなりいろいろともっと慎重にやらなければならぬ状況があれば、提出期日にこだわらないで十分論議を尽くされるおつもりか。それとも提出の期限のめどを決めておいて、そこまで各党との協議をやったら、後はあなたの方のお考えどおり、こういうことなのか。そこはいかがですか。
  366. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今までの慣例で言いますと、公務員というものは、ちゃんとしたかんぬきをつくりませんと、なかなか各省が権限争い等をしてまとまらぬものですから、一応めどを決めております。今回におきましても、やっぱりちゃんとめどを決めて、それまでに精力的に努力さしたい、そう思っておりまして、そういうふうな期限を決めて一応やりたいと思っていますが、しかしこれは人間のやることでございますから、各党間で了解ができれば法案の成立も早いでしょうし、そういう点では少し情勢を見ながら考えてもいい、そう思っております。しかし、やっぱり公務員その他というものは、一応かんぬきをしませんと、何といっても権限争いをやるのであります。そういう点で、やはり期限は設けなきゃいかぬだろうと思っております。
  367. 久保亘

    ○久保亘君 最後に総理大臣にもう一つお聞きしたいのは、あなたも憲法教育基本法の上に教育改革をやりたいとおっしゃる。日教組も憲法教育基本法を理念として教育改革をやるべきだと主張しております。また、政治的中立とか国民的合意という点でも言葉の上では一致しております。ところが、その入口の審議機関のあり方で対立が生ずるというのは、国民にとってはいかにもわかりにくいことであります。この際、総理大臣、積極的に日教組と教育改革の問題についてお話しになることが必要なのではないかという感じがいたしますが、あなたのお考えをお聞きしたいのであります。特に、日本教育に直接責任を持っている有力な一つの教師の団体としての日教組とお話しになることは必要なことではなかろうか、こう思いますので、あなたのお考えをお聞きしたいと思います。
  368. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 久保さんのそういう勇気のある御発言を聞きまして、非常に私も情熱を沸かすものでありますが、今まで所管大臣が文部大臣で、文部大臣が時々日教組の代表の方とお会いしておるようでございますから、適当な折に文部大臣にこなしていただく、それが適当ではないかと思うのでございます。しかし、将来そういうことがいいという情勢を私が感知し、また先方がそれでいいという形になり、自民党の方もそれが好ましいという情勢が生まれれば、当然考えていいことではないかと思います。
  369. 久保亘

    ○久保亘君 終わります。
  370. 和田静夫

    和田静夫君 イランの負傷兵問題について、答弁の用意が整ったようですから……。
  371. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどイランの負傷兵問題についてイランの当局と折衝いたしました局長がおりませんでしたが、今来ておりますので、局長から直接答弁させます。
  372. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) この問題につきましては日本政府は一切関与しないという方針でございまして、この意味において、私から在京のイランの大使に対しまして、国立病院は望ましくないということを申しました。これに対してイランの大使は、よくわかった、それはもっともであるというふうに答えておりました。
  373. 和田静夫

    和田静夫君 国立病院が好ましくないというのは、ちょっともう少し理由を詰めてください。
  374. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 政府は一切関与しないというのは多分にイラクへの配慮を含むものでございまして、国立病院で治療をする場合には政府の関与というふうにイラクから誤解される、批判されるおそれがあるということでございます。ちなみに、その後、在京のイラクの大使も、この問題に日本政府が全く関与していないということはそれなりに評価するということを申してきております。
  375. 和田静夫

    和田静夫君 私立の医科大学病院に国は関与していないのですか。
  376. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 関与の度合いが国立病院の方が多いということで、イラクから批判される可能性が多いということでございます。
  377. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと大変責任逃れの答弁ですから、私はもう少し静めますが、容認できません。  赤字国債の借りかえ問題ですが、政府が赤字国債の現金償還ができない、約束が守れないと認識したのはいつですか。
  378. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる赤字国債の現金償還の財源として借りかえを行うということを今度お願いしているわけでありますが、借換債の発行を検討しなければならないというふうに私どもが思いましたのは昨年の今ごろでございます。その後、したがって国会の議論等を踏まえながら、財政審の方で議論をお願いして今日に至った、こういうことであります。
  379. 和田静夫

    和田静夫君 これは珍しく竹下さんらしくない答弁ですね。あなたは昨年三月十五日のこの席上で、我が党の勝又委員に対して、赤字国債の借りかえは法律そして国会答弁からしても念頭にありませんと答えたんですよ。
  380. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今ごろと言っても、もう少し後でございます。それは財特法が通った後のことでございますが、これはいささか私の答弁が適切でなかったかと思いますが、本委員会等において借りかえやむを得ないじゃないか、こういったびたびの御指摘というものも、借りかえをしなきゃならぬかなという一つの背景になったと、こういう意味で申し上げたわけであります。
  381. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、やっぱりあなたは非常に苦しい答弁をされていますが、現金償還の準備を怠ってきた、にもかかわらずできませんというのは、あのとき納得できなかったのですが、百歩譲っても定率繰り入れを停止した五十七年度でわかっていたわけじゃありませんか。
  382. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やっぱり当時の答弁をもちろん全部御承知の上での御質問でございますが、私どもはあの定率繰り入れをやめさしていただいた。しかしながら、私どもとしてはやはり財政に対する節度という立場から、その当時お答えしておりますのは、その後ずっと答えが多少のニュアンスは変わってきておりますけれども、六十年度のいわば大量償還の行われる時期までに各界各方面の意見を聞いて幅広く検討していきたい、こういうお答えを続けてきたわけであります。
  383. 和田静夫

    和田静夫君 さっぱりわからない答弁ですが、私はやっぱり竹下登さんらしい政治責任をこのことについてはおとりになるべきだと思うのですが。
  384. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やっぱり責任のとり方というのは、みずから感じたらみずからで直していくというのも責任のとり方ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  385. 和田静夫

    和田静夫君 「財政展望に関する試算」というのは私は私なりに資料としてつくって、第一表、第二表を大臣のお手元にお届けをしました。これについてのお考え方を明らかにしてください。
  386. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 先ほどちょうだいしたばかりでございますので、印象的なことを申し上げることになりますが、私どもが提出いたしました仮定計算の数字をモディファイした数字ではなかろうかと思います。ただ、このケースA、これは中期展望の方かと思いますが、この一般歳出の伸び率が平均して四・四%だというお話かと思いますが、この中期展望の一般歳出の推計は後年度負担推計でございまして、この後年度負担推計は確かに当然増あるいは計画増の自然体における推計でございますけれども、これをこのままほうっておくということではございませんで、例えば五十九年度予算で申せば、昨年お出ししました後年度負担推計の五十九年の分は一兆七千億も前年よりふえるという数字であったわけでございますが、これを前年より若干少ないところまで圧縮する、こういう歳出面での努力ということを毎年続けていっているわけでございまして、したがって、その後年度負担推計における平均伸び率というものをずっと前提に置くというのは、一つの仮定ではございますけれども、これでいいというような感じではなかろうかと思うのです。したがって、それに対しまして第二表の方で平均伸び率ゼロから四%というケースをお示しになって、それで六十五年度までの要調整額の合計の四・四%ケースとの差額をずっとお示しになったということではなかろうかと思うわけでございます。
  387. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、具体的なお示しいただいたものに対する分析と申しましょうか、そういう角度から主計局長からお答えをいたしましたが、私といたしましては、私どもがあのようにしていろいろ各方面の意見を聞きながら展望とそして仮定計算というものを出した、それがいわゆるその仮説の前提をいろいろ工夫しながら国会の場で個々の議員の方々から提出されてきて、それが国民のコンセンサスを求めるための議論の大きな資料となるということは私どもが最もこいねがっておったことであるというふうに考えております。
  388. 和田静夫

    和田静夫君 ともあれ、要調整額に対して増税なしでゼロに持っていく場合の歳出カットはどういうことをお考えになりますか。
  389. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはまさに具体的に何を念頭に置いてあるかと言われると、それは臨調で御指摘いただいたもの、財政審で御指摘いただいたもの等々を具体的には今日まで制度、施策の根本にさかのぼりながら工夫をしてまいりました。しかし、これで済んだという、かなり私どもとしていわゆる削減対象に置くこの範囲は縮まったかの感は私も持たないわけではございませんが、やはり制度、施策の根源にさかのぼり、と同時に、これはまさに個人、企業に所属すべきものか、あるいは地方に所属すべきものか、まさに国そのものの仕事かというような分野調整等をも考えながら、これからなお削減対象というものに対して厳しく対応していかなきゃならぬ。今、何と何かと、こう言われましても、仮にお答えするといたしますならば、財政審からいただいた資料とか臨調からいただいた資料を御提示するにとどまるではないかと、こういう感じでございます。
  390. 和田静夫

    和田静夫君 主計局長、歳出カットの展望というのは描けますか。
  391. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 一般歳出について申せば、ただいま大臣が申し上げましたように、臨調答申その他を踏まえてこれから先努力を重ねていくということかと思いますが、ただ、私ども計算いたしましたこの仮定計算の中で、一般歳出をずっとゼロで続けていくというケースがございます。そうすると、六十五年度は脱却できると申しますか、おつりがくる計算になるわけですが、こういう話になりますと、一般歳出の経済に占めますウエートというのがただいまより大分、三分の二ぐらいに落ちてしまうということで、これが本当に実現可能かという感じは持っております。  それから今一般歳出だけということではなしに、一般歳出が中心的な課題かと思いますが、そのほかに国債費も地方交付税もございますので、そういう面すべて聖域にしないで、検討すべきものではないかと思います。
  392. 和田静夫

    和田静夫君 産業投資特別会計の役割は私は終わった考えているのですが、どうでしょう。
  393. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) かつてのような役割はかなり少なくなってきた、しかし現在におきましても、産業投資特別会計が出資しておりますものを管理いたしますとか、それから納付金を主たる財源にいたしまして新規の投資を行いますとか、金額は非常に減ってまいりましたが、なおそういう機能を果たしております。
  394. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、制度改革一つの視点を今言ったところに置かれるというお考えはありませんか。
  395. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 検討をさしていただく課題だと思います。
  396. 和田静夫

    和田静夫君 総理、何を不公平税制とお考えになっていますか、具体的税目。
  397. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 具体的に何かと言われると困りますが、よく言われますのは、産業関係に関する、ややもすると補助的と言われ、あるいは援助的と言われる項目の税制が言われ、ある場合にはまた医師税制等も言われ、またある場合にはマル優制度というものが乱用されている、その部分も大きな不公平税制であると言われておると思います。
  398. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、よろしいですか、今の答弁
  399. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 不公平税制とは個人の主観によって違いますが、例示された総理の御発言はそれなりに結構だと私も思います。
  400. 和田静夫

    和田静夫君 そのマル優の論議をしたかったのですが、時間がなくなりましたから一般に譲りますが、総理、不公平税制問題といえば法人税やクロヨンなどさまざまな問題があるわけでありますが、この不公平税制の是正に向けて、それこそ与野党協議の場をつくる、最近は与野党協議ばやりですけれども、私はこういう問題こそすぐれて与野党間協議でやるべきだと考えているのですが、一歩踏み込んでおやりになりませんか。
  401. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原則的には私は結構であると思っております。ただ、何をもって不公平とするかという点については、今まで国会における御論戦や御質問を承ると、ちょっと我々とニュアンスの違う点やあるいは認識の相違の点もございます。そういう点で果たして意見が合うかどうか、国会における御質問や我々の答弁から見ますとそういう差が多少あるように思いますが、しかし原則的には私は結構なことであると、そう思っています。
  402. 和田静夫

    和田静夫君 午前中の答弁に関連するのですが、総理の認識で、こう理解しておいてよろしいですね、新規の消費税の税目は導入をしないと。
  403. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が申し上げましたのは、流通の各段階において、ちょうど投網をかけるように普遍的にぱさっと各段階税金を取る、そういうようなものは大型間接税としてやる気持ちはございませんと、そういうことを申し上げたので、今和田さんが示されたものがそれに当たるかどうか、それはもう少し検討をさしていただきたいと思います。
  404. 和田静夫

    和田静夫君 その検討の結果は、どういうふうな形で私に返ってくるんでしょう。
  405. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今、和田さんは、新規の消費税というお話でしたが、新規の消費税でほかに特に限定とか性格を特定するということはないのでございますかどうですか、その辺がよくわかりませんものですから。
  406. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ、総理と私との間で詰めさしてもらうということになりますか。
  407. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今の私の考えを確認していただくならば結構なことでございます。
  408. 和田静夫

    和田静夫君 金融問題の最後でありますが、サラ金規制について触れておきますが、規制法にもかかわらず実態は依然として改善をされていません。自殺や強盗が後を絶たない、悪質な取り立ても依然として続いている、サラ金の経営状態も悪化していると聞きます。大蔵から概要報告を求めると同時に、この資金源ですね。いわゆる生保は何と三千百二十億円も融資しているでしょう。それから担保別で見ると、担保らしいものを取っているのは全体の三六%にすぎない。規制法にもかかわらず一向に改善されないという状態ですね。大蔵省としてはこの状態をどう把握し、どう対処されますか。
  409. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 和田君、時間がなくなりました。
  410. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 金融機関のサラリーマン金融向けの融資につきましては、今、和田先生の御指摘のとおりいろいろ問題がございまして、私どもといたしましても、昨年の六月三十日に通達を発しまして、「利用者の利益を不当に害する行為を助長するおそれがあると考えられる場合には、厳にこれを抑制すること。」、それからさらに仮に融資をいたします場合にも、「当該融資がサラ金業者や消費者金融全体の健全化に役立つよう努めること」というような通達を出しまして、その正常化に努めているところでございます。しこうして、その後半年ごとに調査をいたしましてその実態を調べているところでございますが、先生御指摘のとおり、際立った改善はなされておりませんけれども、最初通達を出しましたとき以上にはその増加が大変抑制されつつあるということでございます。ただ一方で、急激な資金の引き揚げになりますと、また業界全体が混乱するという点もございます。その点につきましては、私どもといたしましては、絶えず検査等も含めまして金融機関の実態把握というものに努めまして適正な指導をしてまいりたいと、こう思っております。
  411. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で和田君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  412. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、田中正巳君の総括質疑を行います。田中君。
  413. 田中正巳

    ○田中正巳君 私は与党の議員であります。しかし、現在の政治の姿勢並びに予算あるいは財政については幾多の疑問あるいは危惧を持っているわけでございまして、そういう観点から率直に意見を申し述べさせていただきますので、率直なお答えをいただきたいと思います。  総理、まず第一に承りますが、昨年十二月に行われた選挙では、政府・与党は大変不振な結果に終わりました。あの理由、原因をどう分析、把握をしておりますか、御心境のほどを漏らしていただきたい。
  414. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前にもこの席で補正予算の際に申し上げたと思いますが、一つには、いわゆる政治倫理というものに対する我々の考え方が少し甘い感じもありまして、国民の皆様方に十分対処、方針について御納得を得ることができなかった、そういう点もあったというふうに反省をしております。しかし、一般の教育問題とか、あるいは外交政策とか、あるいは行政改革とか、あるいはがんの対策とか、花と緑で人の和をとか、ああいうような政策は支持されていたのではないかと、そういうふうに考えております。
  415. 田中正巳

    ○田中正巳君 確かに私は、政治倫理が大きな一つの原因になったというふうに考えております。  そこで、まず政治倫理について承りたい。  政治倫理確立のために政党法をこの際策定したらどうだという御意見がありますが、一体、政治倫理と政党法の制定、この間の関連をどのように理解をしたらよろしゅうございますか。
  416. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは、政治資金の扱い方につきまして、特に政党は選挙等に相当な金が要ります。そういう場合に、西ドイツ等におきましては投票の数に応じてある程度国家が補助しております。そういうような公的なやり方で選挙資金というものが得られるようになれば、選挙のときに金を集めるという場合にかなりガラス張りにもなってくるのではないか、そういう面もあり、そういうことを行う場合にはやっぱり政党法というようなものが必要ではないか。そういうような観点から政党法の問題が論ぜられてきているのだろうと思います。
  417. 田中正巳

    ○田中正巳君 今、政治倫理で言われていることは、政党そのもののファイナンスの問題よりも、むしろその他の政治団体あるいは政治家個人のいわゆる政治資金ということが実は問題の焦点になっておるものというふうに思われるわけであります。したがって、政党のファイナンスについて、これは確かに総理のおっしゃるように政党法の制定というものはある程度意味もあるし、また世間に一部会計検査等に危惧の念を持つ者もあり、これがなじむかどうかという議論も実はあるわけでございますが、しかし、今問題になっている政治倫理というものは、政党そのもののファイナンスよりも、その他のところに問題があるというふうに思いますが、総理はいかがでございましょうか。
  418. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり個人の政治家の進退という問題もございます。これは個人の政治家の良心と責任にまず帰すべきことが第一義である、そう考えております。それから一面におきまして、やはり組織、仕組みという問題もまた考えていく必要があると思うのであります。そういう面からは、選挙運動のやり方、あるいは公的規制、選挙公営問題等々もやはり関係してくる問題であり、また政党のあり方、あるいは資金の集め方、そういうような問題もやはり関係してくる問題であるだろうと思います。
  419. 田中正巳

    ○田中正巳君 まあ政治倫理確立のための一つの手段、手法ということは私は否定はいたしません、しかし、問題の所在とはいささか違った角度の実は改善手法だというふうに私は思うわけであります。  そこで、今度は話題を変えまして、これは法制局長官に承りますが、政治倫理確立と関連をいたしまして、一審有罪の判決を受けた者は次回の選挙に立候補を禁止してはどうかという議論が実は国会の内外にあります。これについてはいろいろ政治的な背景もあろうと思いますが、純法律的に考えて、一体このような措置が可能であるかどうか、法律上からの見解をお述べいただきたいと思います。
  420. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  御承知のとおり、立候補の自由は憲法十五条一項が保障する重要な基本的な人権の一つでございます。したがいまして、国会議員への立候補を制限すること、つまり国会議員の被選挙権を制約することにつきましては、それ相当の合理的な理由がなければならないことは当然でございます。ところで現行の公職選挙法第十一条は、選挙権とともに被選挙権を有しない者を定めておりますが、そのうち、刑に処せられたことを理由とするものはすべて裁判が確定したことを前提としておることは御承知のとおりでございます。  ただいまの御質問は、このような制度を改正いたしまして、一審で有罪判決を受けた者につきまして、その判決を受けたことを理由として、すなわち裁判が確定しないうちに被選挙権を失わせることとするのは、憲法上の理論からいって問題ではないかどうなのかと、こういう御質問と承りましたが、このような制度改正を行うことにつきましては、三審制をとっておる現行制度のもとで果たして合理的な理由が見出せるものであるかどうか。さらには、仮に上級審で最終的には無罪の判決を受けた場合を考えてみますと、一審有罪判決を受けたことによって被選挙権を奪われていたことに対していかなる救済の道があるのかというような種々の困難な問題があるわけでございまして、もとよりこの席で断定的なことを申し上げるわけにはまいりませんが、果たして憲法の枠内におさまる問題がどうか。まあ無理と申しますか、極めて難しいのではないかという感じがいたしております。
  421. 田中正巳

    ○田中正巳君 私も、実は三審制の裁判制度をとっているわが国において、一審判決有罪であるから立候補を禁止せよということは、単なる立法政策上の問題ではなしに、やはり憲法あるいは国の制度の基本にかかわる問題であって、かなり慎重に取り扱わなければならないというふうに思っているわけであります。さらにひとつ慎重な御検討を政府部内でお願いをいたしたいというふうに思います。  そこで総理、一体政治倫理だけであったのか。そして、その他のいわゆる政治に取り組む内閣のステータスが全面的に一体国民の歓迎を受けておったのか、あるいは国民があの当時の内閣の政治に取り組む姿勢について、あるいは政策についていささか物足りないものを感じ、違和感を持っていたものではなかろうかという感じが実はするわけであります。この点を総理はどういうふうにお考えになっているか。その点は全くないんだ、おれの政治はあらゆる点について間違いがなかったんだが、ただ政治倫理だけがまずかったのでああいう結果が出たというふうにお考えになっておるかどうか、その点についてもう一度承りたいと思います。
  422. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の感じでは、政治倫理というものがやはり一番大きなポイントであって、それで国民は自民党あるいは中曽根内閣におきゅうを据えよう、あるいはそれで嫌気が差したというようなところから投票に行かなかった、寒さもありましたけれども。しかし、自民党の投票を見ますと、大体三%動くことによって三十人の当落が動くという今までの経験則がございます。今回のあれを見ますと、やはり三%がほかの党にはいかなくて棄権しておるんです。自民党に大体入れるという親自民党的な必ず行くという人は別として、まあ自民党がよさそうだというので今まで入れてくれた、調子のいいときに入れてくれた、そういう方々三%が大体今度は棄権してしまった。ほかの党の投票率が上がっているかというと、そう上がってないんです。自民党だけそういうふうに落ちている。そういう点を見ますと、やはり嫌気が差したり、おきゅうを据えようという気もあった。それは何であるかと見ると、どうもあの辺にあるんじゃないか。  それで、じゃ行革はどうかと言えば、それらの人々は行革はやれやれという方だと思うんです。教育改革はどうであるかと言えば、あのときの雰囲気は教育改革に非常に賛成で、偏差値とか共通一次テストをぜひ見直してくれというものでありました。それから財政再建についても皆さんは御理解をしていただいておったと思うのであります。その中で一つは医療保険の問題がございました。医療保険の問題については、党で公約をやりまして、幅広く見直すという形にもなったわけであります。あと、がんの問題とか、あるいは緑を植えようというようなのは、大歓迎を受けておったと私は思うんです。そういうような個々の政策自体をずっと見てみると、そう悪いものはなかった、だけれどもなぜこれだけ落ちだろうか。三%が移動したろうか、行かなかったんだろうか。それを見るとどうもあの辺にあるのではないかと私は推定しておるんです。
  423. 田中正巳

    ○田中正巳君 私は総理といささか見解を異にするわけであります。当時、いろいろ総理の胸の中にあったものが、それぞれある程度国民の間に出てまいりました。しかし、殻も強く印象づけられたのは何であったか。それは外交と防衛について政治が強く取り組む姿勢、内政については、いわゆるがんというのがちょっとありましたけれども、行政改革、この行政改革というのは極めて私は大事な政治テーマだというふうに思いますけれども、反面またこれについては、高度成長経済にならされた国民には理解のしがたいいわゆる違和感、拒絶反応というものが出てきたことも事実だろうと思います。したがって、行政改革は極めて大事なことでございますからやらなければなりませんけれども、こうした点についての国民との対話あるいはPR、こうしたことが不足をし、どうも今の政治はちょっといただけない、こういったような倫理以外の問題が、やはりある程度あれに影響したものというふうに私は考えておるわけでございますが、これは見解の相違でございますから、これ以上論議をいたしましても平行線になりますから、私は意見だけ申し述べさしていただきます。  さて次に、経済と財政の問題について触れてい、きたいと思っております。  大蔵大臣、ことしの財政、予算、これは景気に対してどういうスタンスをとっておりますか。もっと具体的にわかりやすく言うと、景気浮揚型保か、中立型か、緊縮型か、こういうことであります。いかがですか。
  424. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、今年度予算について、五十九年度経済見通しにおける政府支出の実質寄与度は〇・〇%でございますから、その限りにおいては中立型、こういう表現ができると思っております。ただ、政府支出以外私どもは、今度の予算の中身で申してみますと、言ってみれば、制度改革を含め、歳出の徹底した節減合理化を図って公債の減額に努めました。それから景気浮揚をもたらす効果を期待することは大変難しい状態でございますが、種々工夫を凝らして、例えば公共事業等にしますと、一般会計では減りましたが、財投その他で現状よりも幾らかでもふやした、こういう配慮が行われております。そうして景気が今順調な回復過程にあるという意味におきましては、今こそ財政改革を進めていくための一つの機会ではなかろうかというふうに考えております。  税制面においても、エネルギー利用の効率化と中小企業の新技術化等におきます投資減税、こういうようなものに工夫が凝らしてございます。しかし、これが政府支出の実質寄与度からいえばまさに〇・〇%でございますから、それは申立型、こういうふうに言えるではないかと思います。
  425. 田中正巳

    ○田中正巳君 財政の経済に対する寄与度はゼロだと。これは一体どういう理由でそういうことになったのか。つまり景気を浮揚させる必要がないからなのか、あるいはその必要があるけれども金がなくてできないのか、あるいはこうした経済に対し財政は無力で、やってもだめだからそういう結果になったのか。その辺の御判断はいかがですか。
  426. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は基本的にはこの問題では、人それぞれによっての相違もございましょうが、言ってみれば、確かに財政が対応力を失っておる。だからその限りにおいては、これは一時的にはやろうと思えばあるいはできないことはないかもしらぬ。また、金利に多少の影響はもちろんありますが、公債の増発だってそれは可能でないわけではない。しかしながら、私は総体的に対応力は減っておるという認識であります。  そうしていま一つは、石油ショック以来、言ってみれば、世界全体の同時不況の中で、いわば八〇年代後半の「展望と指針」で経済運営のことが言われておりますように、私がよく申します七、六、五抜きの四、三、二、一。すなわち六はないし七%の名目成長。五がありません。四の実質成長、三者の消費者物価、二%の失業率、一%の卸売物価というようなものが、もちろん五%になることもございましょうし、三%になることもございましょうが、そういうものが、言ってみれば日本だけが世界の中で例外ではない、これが普通だ、先ほどもおっしゃいましたが、高度経済成長になれた我々の体質をこれが普通だというある種の意識転換というようなものを中長期にわたって考えてみますときには、私は今度の予算というものは、なお国民が必要なときにいつでも財政の出動を期待できるような体力を取り戻すための第一歩なりあるいは二歩なりの状態にあるというふうに理解をしております。
  427. 田中正巳

    ○田中正巳君 経企庁長官に尋ねますが、一体政府は、フィスカルポリシーというものは今日日本では行っても意味がないのですか、それともそれはある程度有効な政策手段であるというふうにお考えになっておりますか。
  428. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 現在でも有効だと思いますが、ただ、大蔵大臣から御説明のように、財政の力が弱くなっておりますから、五十九年度の予算というものは景気に対しては及ぼす影響はゼロである、こういう内容になっておりますけれども、ただ一応ゼロで、マイナスにはなってない、下支えはしておる、こういう効果はある、こう思うんです。ただ、今日本経済も五年ぶりに景気の回復期に来ておりますから、こういうときには財政がもう少し力が強ければと、こういう感じはいたします。
  429. 田中正巳

    ○田中正巳君 もう一度経済企画庁長官に尋ねますが、あなたは早いころですか、四兆円ほど減税をいたしまして、内需振興によって景気浮揚を図るべきだということをおっしゃったということを報道で私どもは知ったわけですが、これは事実だろうか。そして今でもそのようなお考えをお持ちになっておるのか、その点についてのお考えをお聞かせいただきたい。
  430. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私は、私自身から四兆円減税ということを言ったことはないんですが、大型減税ということは言ったことはあります。そのときに、大型減税とはどういうことかという御質問がありましたので、昭和四十九年当時一兆八千億の所得税の減税をしたことがある、それは現在の経済規模に直すとおよそ四兆円ぐらいになるでしょう、これは一つの参考になるでしょう、こういうことを言った記憶はありますが、私自身から四兆円の減税を提案したということはありませ。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕  ただ、抜本的に現在の税制を見直して、その中で大型減税を含む抜本的な税制の見直しをやっていただいたらどうだろうか、こういうことを政府・与党連絡会議でしたことはございます。
  431. 田中正巳

    ○田中正巳君 結局、大型の減税、また公共投資についても同じようなことが言えるわけでございますが、確かに景気を刺激し、景気を浮揚させる側面を持っていることはこれは事実でしょう。しかし、このことをやるためには、今の日本の財政では相当多額の公債を発行しなければならないという盾の半面を持っているわけであります。したがって、景気を刺激し、浮揚するか、あるいは公債発行を抑止するかという政策選択の問題だと私は思うわけでありまして、そうしたことについて、これは財政と経済との接点でございますから、したがって私は総理からの答弁をいただきたいというふうに思うわけであります。それは、減税、公共投資、いずれもそれ自体は景気浮揚にある程度有効な手段であることは否定ができません。しかし、これをやれば現在の日本の財政では公債増発という側面を持っている。要はそのどっちをとるかという政策選択の問題だと私は思うのでありますが、当面一体これについて総理はどのような選択をいたす所存でございますか。
  432. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中曽根内閣におきましては、昭和六十五年に赤字公債依存体質から脱却するということを目指してやっておりまして、そういう目標に向かって一年一年ずつ努力していかなければならぬと思っております。現在、百十兆になんなんとする公債を抱え、この公債利子の負担、公債費だけでも九兆から十兆ぐらいに及んでおるという情勢を見ますと、遺憾ながら、さらに公債に依存するという政策は余りとることはできません。現在の状況を見ますと、減税をするにせよ、あるいは公共事業費を追加する、あるいはふやすにしても、財源がどこにあるかという点で非常に困難に逢着しておるわけでございます。今回の一兆一千億円に及ぶ減税につきましても、遺憾ながら予算書にお示ししましたような財源措置を講じなければならなかったのでございます。  そういう状況から見まして、やはりこの目標を貫いていくためには、歳出歳入構造の見直しを行い、あるいは税収入をふやし、あるいはそのほかあらゆる手段を通じて財政を堅実にするというやり方で進まざるを得ぬのであります。そういう面から見て、健全財政という面で均衡予算をつくるべく努力をしております。しかし、それでもまだ公債十三兆ばかり依存せざるを得ぬという情勢にあるわけでございます。ですから、どちらを選ぶかと言えば、やはり堅実に財政を運営していくという方向を選ばざるを得ない。しかし、その間にありましても、金融政策であるとか、あるいは民間の活力をさらに増大して民間資金を動員するやり方であるとか、今までの手法でない新しい手法も生み出して新しい成長を目指した経済政策をとろうと、そう思って踏み出しておるところでございます。
  433. 田中正巳

    ○田中正巳君 私もそうだと思うのです。  そこで、この際ひとつ、最近国会の内外に、公共事業をもっとふやせ、あるいは減税をもっとやれという声がかなりあります。一体これで公債を増発して、それでリカバリーができるのかどうかというのが一つのポイントだと私は思うわけなんです。  そこで、こうした公共投資と減税による乗数効果あるいは税収効果、これについて経済企画庁からひとつ御説明を願いたい。古いのはたしかSPモデルでやっていたと思いますし、最近はたしか世界経済モデルで計算をなさっておるようでございます。これがまた、こうした政策を選択する場合、増発した国債がこれでリカバリーできるというのならば話は別ですが、できないというならば、これは慎重にならざるを得ないという判断一つのポイントになるだろうと思いますから、この点についてひとつ経企庁から御説明を願いたいと思います。
  434. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) お答えいたします。  今御質問の減税及び公共投資の実施が経済に及ぼします影響につきましては、これは実施されるときの経済の状況によって基本的に非常に違うものでございますから、このモデルの数字をそのまま信用するというわけにはなかなかまいりませんが、経済企画庁の経済研究所で開発いたしました世界経済モデルによります計算によりますと、まず個人税減税の乗数でございますが、初年度が〇・四二、次年度が一・三〇、三年度が二・五四という乗数効果でございます。それから公共投資の乗数でございますが、初年度が一・二七、次年度が二・二五、三年度が二・七二という数字になるわけでございます。  それからもう一つお尋ねのございました減税及び公共投資の税収効果につきましても、先ほど申し上げましたように、これも前提の置き方によりまして非常に違うということをまずお断りした上で、世界経済モデルによって計算をいたしてみますと、まず名目公共投資を三年度にわたりまして各年度一兆円ずつ合計三兆円を追加したケースについて試算を行いますと、税収の増分は、初年度千九百六十億円、次年度が五千五百六十億円、三年度が七千六百億円、累計いたしまして一兆五千百二十億円という数字になるわけでございます。減税につきましては、今申し上げました乗数効果から見まして、公共投資の場合に比べまして相対的に小さいと考えております。  以上でございます。
  435. 田中正巳

    ○田中正巳君 これは委員長にお願いいたしますが、これは非常に大切な数字でございます。我々が政策判断する場合に極めて大切な数字でありますし、もちろんこれには与件が大きく影響することもお互いよく知っているわけでありますが、ひとつ資料として我々に配付をするように理事会で御協議を願いたい。いかがですか。
  436. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) さよう取り計らいます。
  437. 田中正巳

    ○田中正巳君 さて、財政再建の問題に入ります。  総理はさっきすでに財政再建のお話を随分いろいろとおっしゃいましたが、これから私、財政再建の話に入っていきたいと思います。  総理、鈴木内閣のときには昭和五十九年度特例債ゼロというお話がございました。あなたが総理になったときには、今度は昭和六十五年度特例債ゼロという話になりました。そして最近、政府は借換債を発行する、特例債について借換債を発行するということを決意をい化し、今、国会に法案を出している。一見大した違いがなさそうに見えますが、これは私は実は財産再建のテンポとしては大変大きな違いがあるものだというふうに思いますが、そうお思いになりませんか。
  438. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、総理大臣に就任いたしまして、財政状況等もよく調べ、また将来展望等もいろいろやってみました。そこで、まず第一に、いわゆる五カ年計画というものがございましたけれども、この五カ年計画という考え方を少し変えよう、いわゆる定量的な政策から定性的なものに変えて「展望と指針」というふうに変え、特に民間活力の培養、増大を期するという方式を取り入れたわけであります。そして、特に高度情報社会というものが今後の景気の牽引力になるであろうというような感じも中に込めさせていただいたわけでございます。それから大蔵当局に命じまして、六十五年ぐらいまでの展望の財政の試算というと言い過ぎでございますが、大体の見当、粗見当、どれくらい公債が累積していくか、それがどういうふうに毎年償還として出てくるか等々も、内面的に鉛筆書きで出させてみまして、そういうものを全部踏まえまして、今までの発想を変えなければとてもこれはできるものではない、真実に近い形で努力を持っていこう、そういう考えに立ちまして新しくつくった計画も実は非常に厳しい計画でございます。そのことは、すでに大蔵省が財政の構想としてこの間A、B、C案をお出しになった昭和六十五年の末の要調整額をごらんになってもおわかりでございます。もっとも、あれは前提条件が幾つかございますが。  そういうような状況下、これは非常に厳しいとは知っておるけれども、しかしともかく努力する目標をつくらなければいけない、そうして一生懸命努力すれば達成必ずしも不可能でないという、そういう「展望と指針」及び大体の見当をつくりまして今努力しかかったと、そういうことでございます。その中に最近の情勢から見まして借換債という構想も出てきたわけでございます。
  439. 田中正巳

    ○田中正巳君 私の言っているのはそういうことじゃないんです。鈴木内閣時代昭和五十九年度特例債ゼロというのは、償還期間が来る前にゼロにしてしまうというのですから、これはかなりの意味が実はあったわけであります。六十五年度特例債ゼロというのは、六十年から六十五年までの間特例債を発行しながらだんだんと少なくしていってゼロにしようという考え方であります。そして今我々が法案を審議している借換債の発行による六十五年ゼロということになりますと、これは要するに、公債残高がかなり長い将来まで累積して実は相当のたまりが出てくる、つまり予算編成上、公債費の重圧が非常に大きく国家財政の上に残っていくんだといったように判断をするものですから、この三つの考え方については実はかなりの違いがあるんだというふうに私は考えているわけでございますが、大蔵大臣はそうはお思いになりませんか。
  440. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、田中先生おっしゃいました、まず五十九年度特例公債ゼロ、これは特例公債の借りかえは行わないということももちろんありますし、そうして大量償還は六十年から来る、こういう前提の上に立ったものです。御指摘のとおりです。今お願いしておりますのは、今度は六十五年にこの特例公債をゼロにしたい、しかしその一方、六十年から償還期の来るものに対しては借りかえをも認めていただきたい、こういうことでございますから、それは確かに大きな違いがございます。  基本的に今総理から経過的にお話がありましたように、それの共通性を求めますならば、まず一つは、一般会計において新規財源債として特例公債をゼロにしよう、これが五十九年から六十五年に変わった、このことは同様であると思います。そこで、五十九年特例公債脱却という方針は環境の大きな変化によって達成できなくなったということでございますので、今度新たに我々がお願いしておりますのは、まず一般会計が特例公債に依存している体質から一刻も早く脱却しよう、それが六十五年。そうしますと、おっしゃいますように、六十年から大量償還の来ますのは借換債として残るわけでございます。それで、おっしゃるように、それが公債費の重圧となってくる。しかし、私どもの考えは、この百二十兆のうちの百十兆というのは、これは五十年度以降のものです。これは言ってみれば今日の金融市場の中で一応消化されたものだ。これから発行をお願いするであろうものは、いわば今後の新たなる預貯金の伸びの中で消化していただこうというものである。この新たなるものの伸びの中で消化していただくものをなくすことによって、金融全体のいわば弾力的対応力をつけていこう。  そこで、今日までのものの中で消化されておる、埋め込まれておる問題については、まず新規発行をしない状態の後に、今度はこれを対GNP比に対して努力して逐次減らしていこうという二段構えと、こういうことになったわけでございますので、御指摘の限りにおいては、大きなそこに相違があるという理解を私もいたしております。
  441. 田中正巳

    ○田中正巳君 まあ確かに大きな違いが実は財政再建の上に出てきているということはもう間違いがない。ただ、大蔵大臣のおっしゃったのは、国債の管理政策あるいは国債の金融市場における問題をちょっと横の方角から御説明になったんですが、財政そのものの見地から見ると、私が申したことはそう誤りがないだろうと。あなた方の方からいただいた表を見ても、昭和七十二年度約二百兆なんという国債発行残高であると、こういうことですから、このころになってよほどしっかりしなければ、予算編成はとてもじゃないが、国債費の重圧のもとに政策などは実行できない心配があるということを私は申し上げたかったわけであります。  ところで、政府はやっぱりいまでも昭和六十五年度特例債ゼロという、これは努力目標とおっしゃっているようでございますが、いずれにしてもそういうことをぜひおやりになりたいと考えておりますか。
  442. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 努力目標としてこの旗はおろさないつもりでおります。
  443. 田中正巳

    ○田中正巳君 大蔵大臣に尋ねますが、先般我々がいただいたあの「中期的な財政事情の仮定計算例」、あれは一体どういう目的、どういうインテンションで公表し、どんな効果を期待しているのか、その辺のところをひとつお知らせをいただきたい。
  444. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 提出いたしました中期展望、それに伴う仮定計算例の問題のことについてのお尋ねでございます。総理からお答えがありましたように、中曽根内閣になっていわば「経済社会七カ年計画」というものが世界同時不況、その他の環境の変化によってこれは適当でなくなったというので、八〇年代後半における経済のいわば  「展望と指針」というものをお出しになりました。そうなりますと、これが経済の中の、まあ一部にすぎないとはいえ、財政の果たす役割はそれなりにございますから、財政もそのものにある種の整合性を持ちながら中期壁というものを描いてみようということで、国会等からの議論もありまして、さてそうなると、どういう形で苗けるかということでいろいろ工夫いたしました結果、いわゆる後年度負担類推計を基本として中期展望というものを作成をしたわけです。したがって、これは提出した私どもから見れば、この財政改革を進めていく上の検討の手がかりであると。それから、お出しいたしましたのは、やはり財政改革を、国民の最終的には合意と選択でございますから、それの審議のまた手がかりとして使っていただこうと、こういうことでお出しいたしたわけです。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕  ただ、総理からもお話がありましたように、非常に機械的手法といいますか、前提の置き方等によりまして、まあ名目成長率は七、六の真ん中の六・五をとりますとか、四%程度とかいうようなことでつくりましたので、これが非常にリゾットな中期計画的なものではないと私も思っております。が、これらをお出しすることによって、参考にして、具体的に歳出歳入面を通じてどういうことをした方がいいのか、あるいは国民にこの辺は負担増をお願いした方がいいのか、そういう組み合わせの問題を幅広い角度から検討を進めていただくための参考にしていただきたいという考え方でお出ししたわけであります。いろんな批判を受けておりますが、きょうも和田委員から、自分でまたある種の前提を置いてお出しいただいたと、そういうのが出ていくことは大変いいことじゃないかなあと、いささか自己満足でございます。
  445. 田中正巳

    ○田中正巳君 確かにそういうことだろうと思うんです。もっと平ったく言えば、こういう状態だから何とかしてくれと、しなければならぬじゃないかと、こういうことで国民の、ことに国会議員などの考究をひとつ深刻に考えてくれやと、こういうことじゃないかと、こういうふうに思うわけでありまして、私などはこれを見ると何か大蔵官僚の悲鳴が聞こえてくるような気がするわけでありまして、まあこれは一応の仮定計算ですから覊絆性を持つものでないことは十分知っておりますが、これにもまた、いろいろと実は問題があるようであります。  そこで、いままで行革関連法案と称して随分国会で議論をして審議をした法案がたくさんございますが、この中には二つの種類があったようであります。つまり、機構改革に類するもの、いま一つは、財政に関係をいたしますが、ほとんどが実は歳出の繰り延べを意図した法律と、二つに私は分けられると思うんであります。そこで、後者について一体この仮定計算例ではどういうふうに計上をしているのか我々にはわからぬわけであります。もちろんこれについては予算編成の覊絆性はないんだということは断っておりますから、したがって、それだからこうという意味ではございませんが、どうも私どもとしては、これはどういうふうに扱ったんだろう。例えば厚生年金の国庫負担金の繰り入れ減額とか、住宅金融公庫の一部利子の繰り延べとか、あるいは外航船舶の建造利子の一部繰り延べとかその他いろいろあるんですね。これは行革法案の問題について後ほどお話をいたしますが、こういうものを一体どのようにお扱いになったのか。これは主計局長の方がいいんじゃないかと思いますから、ひとつお述べをいただきたいと思います。
  446. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 御質問、仮定計算例というお言葉でございましたけれども、中期展望の方かと思います。  中期展望は、五十六年以来、現行の制度、施策を前提といたしまして、一定の仮定のもとに後年度負担を投影するというやり方、これは先進各国でやっているやり方でございますが、これをこの手法でことしもやったわけでございます。  そこで、行革特例法は五十九年で切れてしまうと、六十年以降はいずれも本則に戻るというのが前提でございます。実際に行革特例法の取り扱いはそのときの問題だと思いますが、この推計をいたしますに際しましては、そういう前提ではじいております。具体的に申しますならば、厚生年金の四分の一繰り延べというこの特例は、六十年度から通常の負担に戻るということにいたしております。それから住宅金融公庫の利子補給につきましても、六十年度から繰り戻しを織り込むというふうに、すべて本則に戻るという前提で計算しております。
  447. 田中正巳

    ○田中正巳君 これはなぜ聞いたかというと、厚生年金繰り延べについては、返すことは返すと言っているが、いつから返すかということは、国会で金輪際答弁しなかったものですから、こういうところを見れば一体、これは予算の覊絆性ないんですから信用なりませんけれども、その辺一遍聞いてみたかったわけであります。
  448. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) この特例期間内に減額した分の繰り戻しについてただいま御説明を落としましたが、繰り戻しについての具体的なやり方があらかじめ決められているところではございませんので、推計にはその点は織り込んでおりません、繰り戻し分は。ただ、その四分の一負担を落とすという点については、もとの負担に戻しておるということを申し上げた次第でございます。
  449. 田中正巳

    ○田中正巳君 どうもこの種の政府の立法はわかるんですけれども、特例適用期間というのが五十九年までだというふうに規定をされておるわけであります。ところが、最近また、どうもそれじゃ財政再建不可能だということで、例えば地方交付税法などについては借金はしないということでもって半々にして、これは六十五年からと、こういう法律を国会へお出しになった。ずるずる延びていて、こういう特例的な措置をするのは一体いつまでなんだかということがどうもはっきりしない。理由は私はわからぬわけではございませんが、余りにもどうも整合性がなさ過ぎるというふうに思いますが、これについてひとつ見直しをする気持ちはございませんか。これはどなたに聞いていいことですか。総理、いかがですか、これは。
  450. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、田中さんおっしゃいますように、それを基本にさかのぼりますと、あの行革特例法の場合は五十九年ということを念頭に置いて、それを財政再建期間という認識で対応しておったと、私も委員の一人でありましたが、そういう認識を持っております。したがって、私どもは、今はそういう目標というものは六十五年度までに特例公債依存体質からまず脱却するという努力目標というものを今総理からもお答えがあったように掲げております限りにおいては、財政再建期間と言えば一応はそのときがひとつのめどかなと。まあしかし、そうなれば例の特例措置を六十五年まで無条件に延ばしちゃうのじゃないか、そういう勘ぐりが当然出てきますが、その問題はそれこそその時点において各方面の意見を承りながら慎重に対応してどうすべきかを決めることで、今決めたわけではございません。
  451. 田中正巳

    ○田中正巳君 どうも借金の言いわけ聞いているような気がしてならないわけでございまして、まあこうなった理由は私もわからぬわけじゃございませんが、いかにも不統一だと、こういう感じがするわけであります。  そこで、これは総理に承りますが、先ごろからいろいろ言われております増税なき財政再建、これの意味をいろいろ尋ねていますが、意味は大体定着をいたしましたから聞きませんが、これはやはり堅持をなさるおつもりですか。そして、それを踏まえて一体財政再建ができるんだというふうにお考えになりますか。
  452. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 堅持してまいるつもりでおります。  ただ、定義につきましては、いまおっしゃるとおり、臨調答申の線に基づいた定義に従ってやっていくということであります。  今、いろいろ田中委員からお話しになりましたとおり、御推察のとおり、日本の財政状態というのは非常に重症患者でおるわけであります。やっぱり重症にあるということを国民の皆様方にありのままお見せして、そしてこの重症からいかに脱却するか、健康体に戻るかということをもうざっくばらんに御相談するときにきていると。そういう意味からして、田中委員が今御指摘になった諸般の繰り延べ措置というようなものは、私らの感じからすればちょっと申しわけない措置であると、そう思っておるんです。言いかえれば当面のびほう策のように反省しなければならぬ問題であるんです。しかし、あの当時にはあの当時の事情がございまして、まだ国民の皆様方にもそれほど重症であるという意識もなしに、また自民党や政党、政界側におきましてもそれほどまだなかったと。そういう意味においてソフトランディングをやってきている、経済に余り急激な打撃を与えない、そして漸進主義で次第次第に濃度を深めて、そしてショックを与えないということがやはり経済政策一つの要請でもありますので、そういう面の配慮もあったのではないかと自分は考えております。
  453. 田中正巳

    ○田中正巳君 そこで、またさっきお話をした仮定計算で、あるいは中期展望、これは六十二年までしかございませんから、まあそれを延ばしたんだろうと、こう思いますが、あの中にある、あれは何種類かありますが、一番私は現実性のあるのは、結局a−(1)−(イ)という歳出五%アップをやっていたものが一番これが現実的だと思うんですが、あれの要調整額というのはたしか十兆円程度に実はなっているわけであります。しかも、あれは、公務員給与は一%アップで計算しているんですからもっと大きくなるはずなんでありますが、こうした大きな一体要調整額をどうやって埋めるんだろうか。これは、私どもとしても極めて実は不安でならないわけであります。  これについては、後ほどどうするんだということをさらに実はしつこく聞きますけれども、大体税収が総歳出の六〇%台だというのは一体どういうことだろうか、現在。これは歳出が多過ぎるのか、あるいは税収が少な過ぎるのか、その両方だろうと、こういうことになってくるだろうと思いますが、一体どっちが病気が大きいのか、この辺は一体竹下さん、あなたどういうふうに考えますか。
  454. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは本当に難しい問題でございますが、いまの場合、やはり税収が歳出の六割台という現状、これは先進諸外国と比べまさに著しく低いと、この認識が私としては先行しております。ただ、ここに至ったことをやっぱり考えてみますと、この公債依存度ゼロの時代からずうっと今日まで長い間それが続きまして、オリンピックの翌年に初めて公債をわずかながら発行した。そうしてやっぱりドルショックの際それから第一次石油ショック、さらに第二次石油ショックと、私は公債政策というものが果たした役割というのは、あの公債政策があったから世界の中では一番早くあのショックから脱却したじゃないかという意味においては、その功績を評価すべきだと。それのいわば後始末がいま今日きておる状態ではないかというふうに思います。したがって、やはりこの歳出の六割という現状については、これは低いという認識を私自身は持っております。
  455. 田中正巳

    ○田中正巳君 税収を上げる手法としては、一つは景気がよくなって税の弾性値が上がってくる等々のことが考えられるんですが、それを期待するというのはどうもやはり安易であろうというふうに思いますし、また本当に日本の経済が好調になってきた場合にはこんな大きな国債が発行できるんだろうか、一種のクラウディングアウトの傾向さえ出てくるんじゃないかと思いますから、こうしたことに頼ることも実は安易であり、また危険だというふうに思うわけでありまして、よほどのやっぱり決意をして対策をいたさなければ私は財政再建赤面倒だというふうに思うわけです。よく下世話に言うんですが、経済力は世界第二とか、世界じゅうからジェラシーで見られる日本が、政府だけが火の車というのは一体何でしょうかと、こういう話があるわけですが、歳出についてはこの後いろいろ申し述べますが、いずれにしてもだれかが税金を納めなさ過ぎるんじゃないかというふうな声も実はないわけではございません。だからといってどうしろという意味ではございませんが、いずれにしてもこの辺にまあ我が国財政の苦悩があるというふうに思うわけであります。  そこで、総理と行管長官に承りますが、行政改革財政再建の関係は一体どのように考えておりますか。
  456. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 行政の改革という問題は、理論的には財政再建とは立場が違うと、こう思います。本来、この行政の改革は、アメリカの例のブラウソローの勧告等を見ましても、その結果どれだけ経費が多くかかったかといった計算をあえて出さないといったような答申が出ております。それに従ってやった。日本も第一回の佐藤さんが会長であった行政調査会の御答申、これも政策そのもの、つまり政治の分野、これは与えられた与件として、そして行政の中においての効率化、あるいはむだの排除、そういうようなことで行政の機構のスリム化といいますか、合理化といいますか、それの答申になっておったわけですね。  ところが、今度の第二臨調の答申は厳しい財政状況のもとでこれは出てきたわけでございますから、そこで政策そのものに触れて、そしてその際に政策の取捨選択ということから始まって、行政の機構、組織、運営と、こういうことに入ってきたわけでございますから、大変私は実施の段階になるといろんな御意見が出てくるのは当然、つまりそれまでの制度の中でなれ親しんでおるところにメスを入れるということになってきますから、これは財政再建という財政の厳しい状況のもとにおいて発足したから私はそうなったと思います。そうなると、大変これは痛みを伴うわけでございます。そういった痛みを伴うときに、安易な増税ということに踏み切った場合には、行政の改革というものは実行ができないではないかということで、土光臨調としては増税なき財政の再建ということをてこにして行政改革をやりなさい、こういうことでございますから、私どもとしては、やはり今回の答申の趣旨に沿って行政の改革を進めながら、同時にそれが財政の再建につながるようにということでやっていかなければならないと、これが今回の行政改革財政再建の関連であろうと、かように考えておるわけでございます。
  457. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行管長官が御答弁申し上げたとおりでございます。例えば、土光さんの臨調答申の線を受けてゼロシーリングを設定する、あるいはマイナスシーリングを設定する、そのほか政府みずからが財政について厳しい態度をとらざるを得ないというのは行政改革の結果きておるところでございまして、今後も努力してまいるつもりです。
  458. 田中正巳

    ○田中正巳君 どうもこの点についてやや思想の混迷が実はあるように私には思われるわけであります。なるほど、財政再建と行革というものは二律背反のものではございません。むしろそれは同一方向に進む事だと私は思っておる。しかし、この政策範囲というものはかなり実は違うわけであります。行革だけで財政再建ができるわけじゃなしに、行革は財政再建の一助だというふうに私は思うわけであります。財政というのは、行政改革だけではなしにやはり内外の景気動向、金融事情あるいは社会事情の変化によってこれが左右されるという性質のものであるわけでありまして、行革路線を進めば財政再建ができるというのはいささか短絡した考え方だというふうに私は思うわけであります。  事実、また今、後藤長官がおっしゃったように、臨調の最終答申を読んでみますると、一次答申からの考え方というのが微妙に実はぶれているわけであります。そこで、最終答申には「行政改革財政再建の手段ではない」、そしてもう少したったところに、「そのような行政改革を推進するテコとして当調査会が掲げた方針が、「増税なき財政再建」にほかならない」と書いてあるわけであります。つまり、増税をして行政改革をやったんじゃ行政改革にインセンティブが働かないから、したがって増税をやっては行政改革は難しくなりますよと、こういうことだろうと思うのであります。しかし、行政改革財政再建と全くイコールならば私は問題がない。しかし、両者は既に次元の違った問題であり、スケールの違った問題だと思うわけであります。  したがって、行政改革のために増税をしてはいかぬということを言っておるということは、今日の日本財政事情考えてみると、それが果たして一体適当な判断だったか、政策であったのか、この辺についてやはり我々は考える必要があるんじゃないかというふうに思わざるを得ないわけであります。もちろん、私はこういうことを言う立場では、決して行革をやめるとかネグれとかいうような意味ではない、行革は一生懸命やりましょう、しかし行革だけでは財政再建はできませんよということを我々は考えなければいかぬと、こういうことだろうと思うのであります。しかも、財政再建に最もキーポイントである税収というものが行革だけの実はてこに使われてしまったというところに今の私は日本の財政の悲劇があるのじゃないかというふうに思うわけですが、総理、この点についてどうお考えになりますか。
  459. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調がそういう命題を掲げました大きな理由は、今までややもすれば増税というものは経費の乱費を招き、そして行政機構を肥大化させ、政府を大きなものにするという癖があった。また、行革をやろうという精神を麻痺さしてしまう、そういう今までの慣例と申しますか傾向にかんがみまして臨調当局が厳しくかんぬきをつくったものであると、そう考えて私は妥当であると思っております。
  460. 田中正巳

    ○田中正巳君 行革を推進すれば財政再建が完全にできるというならば、私はそれでいいと思うのであります。しかし財政再建というのは、行革よりももっと幅の広い、またいろいろな条件に左右される命題であります。ところが、政府では行革をやるためにそのてこに増税再建を使ってしまった。なるほど行革は私は大事なことであり、大いにやらにゃならぬと。しかし、一部の目的のために大事な実は政策手段をここに使ってしまっておるというところに私は問題があって、そして身動きならなくなってきているんじゃないかというふうな感じがするわけでございますが、それは今ここで総理が、いやあれはちょっと違っておりましたと言うわけにもいかぬだろうと思いますから、私は御答弁は御答弁として承りますが、問題点として指摘をしておきたいと思います。  それで、臨調も政府予算編成方針あるいは今後の財政の運用方針とかなんとかいうのですが、ひとつ歳出をできるだけカットいたそうと、こういうことを言っているわけでありますが、私も歳出をカットすることについてはある程度賛成するにやぶさかではございません。しかし、さっき私が言ったように、今までの行革法というのは、ほとんど実は財政そのものに、削減に寄与するような立法はやっておらぬわけであります。機構の改革、なるほど機構の改革も多少の財政再建には役に立つでありましょうが、それは知れたものであります。そして、片や財政に直接関係のあるものは繰り延べ策であったわけであります。今度初めて制度の根本に立ち至って財政を浮かそうと、こういう政策を挑んだのが、これはそれ自体の問題もあるだろうと思いますが、健康保険法が私は唯一の例だと言っても過言でないくらい。それがこの騒ぎであります。私はあれがいけないという意味ではございません。しかし、ちょっとやっただけであれだけの騒ぎなんです。あれはたしか六千二百億の歳出削減を心がけたものでありますが、あれをやってこの騒ぎで、今こうやって国会の内外で大騒ぎしている。  さっき言ったように、あの仮定計算例における十兆円の要調整額は一体どこから出してくるつもりだろうか。私も長い間国会議員をしていますが、それは確かに一兆円やそこらは何とかなると思いますが、とてもじゃないが、あんな大きな金額が出てくるということについて、私はいろいろ考えてみまするが思い当たらないわけであります。つまり、歳出カット一本やりで財政のつじつまを合わせるということは私はしょせん無理じゃないか。財政再建はぜひやらにゃならぬ、行政改革も大いに進めなさい。私の言っている趣旨は、行政改革はやるなとか、あれはだめだとかいう意味じゃありませんよ。大いにひとつお互いに勇気を出してやりましょうと、しかし、それだけじゃ日本の財政は再建できませんよということを我々は肌で感じているわけでありますが、この点について一体何か特別にうまいお考えがございますか。
  461. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり行政改革の道を通らずして財政再建はできないと。しかし、田中さんのお話にありますように、未来永劫、行政改革だけで財政再建ができるものでもあるまい、そういう御判断はまた御判断として成り立ち得ると。しかし、少なくともあの状況、今日の状況において行政改革の門をくくらずして財政再建はできない、これは私は言えると思うんです。それは政治の現実からいたしまして、いろいろ理屈はあると思いますけれども、ともかく臨調答申を受けてマイナスシーリングまで来た。あのゼロシーリングをやりマイナスシーリングをやるというようなことは普通の状況ではとてもできるものじゃありません。しかし、行革ということで、増税なき財政再建という旗のもとに土光さんを初め国民の皆さんの激励があって初めてこれができたのでありまして、そういう意味においても、これは法案としては出ておりませんけれども、予算編成の方針において大きな変革が昭和五十六年から始まっておるわけです。五十六年の緊急答申から始まりました。そういう意味において、予算編成で大きな変革がいままでのコースから見ればあり、また今回は、お示しのように医療保険の問題について本格的な改革に入ってきた、こういうことでございます。したがって、この道をあくまで追求してやり切ると。そして、その後のことはこれをやり切って世界の情勢を見て、展望して考えていく、こういうことだろうと思うんです。  行政改革の主眼として臨調が言っていることは、政府の請け負う範囲はどの程度であるか、官業と民業との関係、中央と地方との関係等に対して見直しを行う、あるいは歳出歳入構造の見直しを行う等々ということも言っておりまして、それら全部を含めて我々は今後努力していかなければならぬ場合であると考えております。
  462. 田中正巳

    ○田中正巳君 私は、行政改革なり臨調の果たした役割というのを決して評価しないわけではございません。また、予算編成で、あれがなければ今日のような抑制的な予算の編成がここ数年できなかったということも私は高く評価しているわけであります。ちょっと総理と私の考えの違うのは、確かに行革という門をくぐらなければこれはできなかったと言うんですが、門をくぐっただけじゃ、もう今日の状態じゃ財政再建はそれだけじゃだめなんだということを考えなければいかぬということであります。したがって、行政改革を進めましょうと、しかし財政再建については行革だけではだめですから、したがってこれについてはさらに広範多岐にわたる対策を考えなければいかぬじゃないですかというのが私の主張なんですが、誤りですか。
  463. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 田中さんのおっしゃることも私よく理解できるんです。それで、理論的にはあるいはそうであるかもしれません。しかし、政治の現実から見ますと、人間には怠け心がありまして、きついことは逃げようとする習性があります。そういう意味において、この与えられた増税なき財政再建とか、あるいは行革を推進する、この道を今もうひた走りに走っていくというのがやっぱり政治の現実を処する我々の心構えである、こういうふうに申し上げるのであります。
  464. 田中正巳

    ○田中正巳君 確かに行革をひた走りに走ることは結構ですが、しかしそれだけでは事が済まないのだというふうに私はかたく信じております。この点についてはこれ以上問答を繰り返しても、これはお互いに立場がございますから、そうその妥協点、調和点に達することはできないと思いますが、私はこのことを強く考え政府側にその決意を求めてやまないわけであります。  そこで、問題を今度は変えましょう。今、日本経済はアメリカ経済の好調に影響されまして、国内経済はテンポはスローですが、若干好転の兆しがあるということは事実であります。しかし、このアメリカ経済、一体いつまで好調が続くのか、これについてはエコノミストやあるいは経済界の人たちにはいろんな観測があります。これはここでは議論はいたしません。しかし、日本全体のマクロの経済は確かによくはなりつつあるようですが、しかし政治の場として注意しなければならないのは、この間にあって、マクロの観察だけではなしにもっときめの細かいことを考えなければいかぬじゃないかというふうに思うわけでありまして、いわゆる地域経済の跛行性ということに政治は目を向けなければならないというふうに思うわけであります。事実、いろんな諸指標、経企庁あたりから出ているものも、官製のものもそうですが、民間のものを見ましても、かなり国内の経済動向については跛行性があると言われているわけであります。  その典型的なものが、一つはいわゆる一次産品に頼っている地方、あるいは行政の施策がおくれた地方というような理由があると思うんですが、沖縄と北海道の経済状態というのは、かなり実はその他の地域から見るとおくれをとっているということであります。これを何とかしなければならぬというふうに私は思いますし、それをまた十分手当てをしなければ政治にならない、かように思うわけであります。これは理由はもう言うまでもないんで、輸出産業に乏しくて一次産品の産業に依存しているものですから、このごろ政府は金もありませんし、また国際的な感覚から農産物価格も抑制ぎみにしている。そのほかに、この種の地域はそんなことですから、今まで公共事業による県民所得の占めるシェアというのは非常に高いわけであります。ところが、公共事業は最近こういうことですから抑制されているわけであります。したがって、格差はひどく出てきているわけですが、こういう問題に対して政府はどういうところでどういう対策をお立てになり、実行なさるつもりですか、この点についてまず総理に承りたい。
  465. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) まさに御指摘のとおりでございまして、先月も企画庁で全国十カ所の地域経済の調査をしてみましたが、やっぱり一番厳しい状態で残っておりますのが北海道と沖縄でございます。もっとも、それ以外にも二、三ほぼそれに近いような厳しい地域もございます。大勢としてはいい方向に行っておるんですけれども、長い間不況が続いておったものですから、やはりこの地域別、業種別の非常にばらつきがある、跛行性があると、こういうことでございます。  そこで、これから関係の各省それから自由民主党も含めまして、一体これに対してどう対応したらいいのか、例えば、予算の中の公共事業の執行等をもう少し工夫する必要があるのではないかと、こういうことについて相談をすることになっております。
  466. 田中正巳

    ○田中正巳君 確かにこの問題は、私は政治としては見逃すことのできない問題だというふうに思うわけであります。もともとがやはりこの種の地域における産業構造が近代化をしていないというところに実は問題があるんだろうと思います、根本的には。しかし、この産業構造を変えるにはかなり長い年月の努力が必要でございまして、直ちにこれができるものとは思いませんので、今、経企庁長官がおっしゃったように、この間のいわゆるとりあえずの施策というものは私は忘れてはいかぬというふうに思いますし、また、この種の地域にはそれぞれ開発庁がありますが、どうも開発庁のやっている政策を見ると土木開発が主軸でありまして、産業構造を変えるという視点が欠けているように実は思うわけであります。この点についてはひとつよくお考えおきを願いたいというふうに思うわけであります。  ところで、こうしたいわゆる県単位の経済のおくれをとっているもの以外に、いわゆる特殊な立地条件等々で実はやはり相当に経済発展のおくれをとっている地域があるわけでありまして、そうした地域についてひとつ亀井さんからの関連質問を許してやっていただきたいと思います。
  467. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 亀井久興君の関連質疑を許します。亀井君。
  468. 亀井久興

    ○亀井久興君 地域間格差の問題に関連いたしまして若干質問させていただきます。  入口の都市集中による弊害をなくすとともに、人口の地方への分散を促進いたしまして均衡ある国土の発展を図るということは、これからも大きな政治課題だと思います。そのためには、さまざまな地域格差を是正いたしまして、特に地方から職場を求めて都市に出た若い人たちが喜んで郷里に帰れるような環境をつくる必要があると思います。その意味で、今日まで過疎法や山村振興法あるいは離島振興法等が地域間格差の是正のために果たしてきた役割は極めて大きいものがあると思うわけでございますが、今後の地域振興を図る上におきまして、いままでとかく日の当たらなかった半島の振興についてお伺いをしたいと思います。  全国で二十七の都道府県に四十四の半島があるわけでございますが、かねてからそうした地域から半島振興について強い要望が出されております。また、最近私ども自民党におきましても半島振興を促進するために有志の懇談会が発足をいたしまして、その動きを受けて藤尾政調会長も政務調査会に何らかの調査会を設けるなど、前向きな考えを明らかにしておられます。政府におかれましても、稻村国土庁長官は、先月金沢における記者会見で半島振興の問題について触れられまして、積極的に取り組む姿勢を示しておられるわけでございますが、一方で、特定の地域に対する特別の助成措置については極力抑制する方向で見直しを行うべきであるという臨調答申が出されておるわけでございますが、この問題について今後どのように対処していかれるのか、半島振興法の立法化の必要性を含めて国土庁長官にお伺いしたいと思います。
  469. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村佐近四郎君) 地域格差、これは国土の均衡ある発展をという場合における基本的な考え方でなければならぬと私は受けとめております。そういう意味からも、半島だけがというわけでもありませんが、離島でも振興法がなく過疎の中の過疎と、こういう形で大変大きな差があることは私もこの目でよく承知をいたしております。半島というのは、御承知のように経済の中心からも遠いですし、また行政からも遠いわけです。また、半島というのは、高い山があったから半島として残ったわけでありまして、普通平たんならば恐らく埋没をして半島はなかっただろうと思います。そういう意味で、水もありませんし、また企業立地においても大変困難な場合が多うございまして、これはその半島に住む者でなければその悲哀というものは私はわからぬのではないかと思うのです。ただ、亀井さんの場合は島根ですから、出雲の神様がいい政治をされたと思って、島根半島というのは水もありますし大変いいところだと思っておりますが、そのほかの半島におきましては、とてもじゃないが水もなく、失業者も多く、今なお社会的な問題を起こしてまでもやはり出稼ぎに出なければならぬ、こういうことでございますから、やはり半島を持つ人たちに呼びかけて、これは私が突然申し上げたのではなく、前からも半島法という問題がいろいろ水面下で論議をされておったことは私はよく知っております。  そういう意味で、この際は臨調等との問題もありまして大変やりづらいときですが、しかしながら政治の基本として、政治の哲学としてやはりこれはお互いに幸せな生活ができるようにと、こういったことを考えた場合に、この臨調の問題がございまして、なかなか言い出す時期としては適当であるかどうかわかりませんが、私はこれはこれとして、やはり政党間においてこの問題をぜひ論議をしていただきたい。例えば、北海道には昭和二十五年開発法という振興法があります。これによって支えられておる。あるいはまた、奄美大島においても振興法があるから奄美大島の今日があり、また将来の希望があるわけであります。また、沖縄においても同じことです。沖縄の開発もこの振興法がなければとてもじゃない、あの発展はできるものじゃないし、将来においても希望が持てるわけではありません。離島においても山村振興法においても同じことであります。そういう意味からひとつ、亀井さんがきょうはいい質問をしていただきまして、提唱しておる私といたしましては百万の味方を得たように思いますので、今後はぜひ一緒になって半島振興法のために全力を尽くしていただきますことをむしろ私はきょうお願いを申し上げたいと、こういうふうに思うわけであります。
  470. 亀井久興

    ○亀井久興君 大変積極的な御答弁をいただきまして心強く思っております。  そこで、もう一問伺いますが、現在国土庁で昭和六十一年を目途にいわゆる四全総、第四次全国総合開発計画の策定を進めておられるようでございますけれども、三全総の中でも部分的には半島というとらえ方もあるように思いますが、四全総における課題地域として、半島の中で共通の条件があるところを全国的に取り上げまして振興計画をつくるようなお考えがおありかどうか、その点お伺いしておきたいと思います。
  471. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村佐近四郎君) 今、四全総に着手いたしましたところでございまして、当然地域格差というこういう問題も考えながら、その中で特に半島振興は、これは国民の声、むしろ恵まれない人たちの多くの人々の声ということでございますから、当然、半島振興法という問題は取り入れていきたいと、こういうふうに思っております。
  472. 田中正巳

    ○田中正巳君 次に、公務員給与と人事院勧告制度についてお尋ねをいたします。  人事院勧告、おととしは全くこれを無視せざるを得ませんでした。去年は二%という、これはどこから出てきた数字かよく私にはわかりませんけれども、値切ったと、こういうことだろうと思います。そのよって来るゆえんというものはわからぬわけではございませんが、こういうことを続けておるということになりますと、人事院勧告制度というものは一体このままでいいんだろうかどうだろうかということをわれわれは素朴に考えるわけであります。もちろん、人事院勧告制度は労働基本権の代償のもとに生まれたものであるということはよく認識をしておりますが、半面、人事院勧告というのは、国の財政のことは考慮の外にあるというふうな立場で勧告をなさる。ポイントは、いわゆる給与の官民較差を是正するといったような機能に終始をしているということだそうであります。半面、我が国においては、人事院勧告というのはこれを尊重するということを長い間言い続けてきたものですから、これを変更するということになると、政府が何やら悪いことをしている、けしからぬと、こういうことになるわけでありますが、こういうことを今日の状況下でいつまでも続けておっていいのだろうか。かなり難しい問題ではございますが、この辺でひとつ人事院勧告制度のあり方について検討というか、勉強をなさる意思は政府にございますか。総理府総務長官じゃないかと思うんですが、いかがでございましょうか。
  473. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) お話の問題、大変何といいますか次元の高いお話であります。また、新聞論調その他で似たような意見の開陳があるということもよく承知をいたしております。しかし、当面の問題としましては、我々、今の国家公務員法はございますし、人事院制度もございます。また、かねて人事院の勧告というのは尊重してまいるんだという政府の方針も確立をいたしております。そういったもとでの去年の問題あるいは一昨年の問題があるわけであり、本年もまた大変難しい情勢の中で対応しなければならない、そういうことでございます。  大きな問題として一体どうするんだというお尋ねでございますが、これは私一人で答弁できる問題でもございませんし、自民党としてもまた広い視野で検討をしていただかなければならない問題であると思いますので、立場上検討はいたしますが、すぐどうだということは申し上げかねる次第でございます。
  474. 田中正巳

    ○田中正巳君 なるほど、政府としては今これでどうだということは私はなかなかよう言い切れないだろうと思いますが、問題点の一つであるということだけは御理解願えるだろうと思うわけであります。  そこで、私も世界じゅうの国で公務員給与というのは一体どういうふうにして策定しているんだろうかということについて知りたいというふうに思っていろいろ勉強してみましたが、なかなかはっきりわかりませんし、また制度そのものだけではなしに、実際の運用の問題も重なっているだろうと思いますので、これについて、恐らく人事院はお立場上先進主要国の公務員給与の策定の仕方についていろいろ御勉強になっているだろうと思いますので、これはひとつ簡単に御説明を願えたら幸いです。
  475. 斧誠之助

    政府委員(斧誠之助君) お答えいたします。  いま先生御指摘のように、私ども参考のために先進国の公務員給与の決定方式をいろいろ調査しておりますが、運用とかあるいは決定に至るまでの手順の実態とか、そういうことをつまびらかにしない部分がございます。したがいまして、アメリカとイギリス、フランス、西ドイツにつきまして制度の概要を御説明することでひとつお許しを願いたいと思います。  アメリカでございますが、アメリカは公務員には争議権がございません。人事管理庁の中に人事管理庁長官、それから労働省の長官、それから行政予算管理庁長官、この三人で構成します大統領給与代理人というものを編成いたしまして、ここで民間給与との比較を行いまして、それを基準に労働団体と協議をする。その結果、官民の格差を埋めるということで大統領に対して報告及び勧告を行うわけでございます。この場合、大統領はそのまま実施する場合もございますし、それから実行がなかなかできないということになりますと、大統領の代案というものを作成しまして、これを議会に提出して審議をお願いする、こういう手続になっておるようでございます。  それからイギリスでございますが、イギリスは、従前民間賃金準拠方式ということで労使が協議をいたしまして、いわゆるホイットレー協議会、こう称されておりますが、しかる後に交渉するという手順でやっておりましたのが、一九八一年からはその民間賃金準拠方式という手順を省略いたしまして直ちに直接労使の交渉に入るということでございます。その場合、妥結いたしますとそれが法案として議会に提出されるわけでございますが、受納しない場合は仲裁にかけまして裁定を得る、その裁定結果が法案として議会に提出される、こういうことでございます。  フランスの場合は、これは労働三権がございまして、大体物価の上昇率、これを基準に労使交渉を行いまして、合意の成立を見て給与法が改正される、こういうことのようでございます。  西ドイツでございますが、ここは公務員が二つに分かれておりまして、官吏、それから雇員と労務者という二つの範疇に分かれております。雇員・労務者につきましては労働三権が認められておるのでございますが、官吏につきましては争議権がございません。雇員・労務者につきましては、したがいまして団体交渉を行いまして、そして合意が得られて成立すると、こういうことでございます。官吏につきましては、交渉は行うのでございますが、争議権がございませんので、大体雇員と労務者に対して改定される賃金改定、これを基準にいたしまして大体同率で決定される、こういうことのようでございます。
  476. 田中正巳

    ○田中正巳君 この問題は非常に複雑な問題であり、政治的な背景もありますからこれ以上余り言いませんけれども、どうも外国の制度を見ておりましても、アメリカあたりでは日本と違ったところが二点あるようであります。第一点は、つまり最初にいわゆるファイナンスの代表が入って原案をつくるというところが日本の場合と若干違う。アメリカの場合は大統領がこれを適当に政府の都合で変えるということについて慣習法的に定着をしているらしいのでありまして、日本の場合と大分違うということでございますので、これについては今後検討を私は労働三権の問題を含めてひとつお考えを願わなければならないところに来ているのではなかろうかというふうに思いますし、高度経済成長期のように自然増収があるときには秋に補正予算を組んで人事院勧告をこなすことができた時代でありますが、今ではそういう状況ではございません。四月調査の八月勧告ということをこなすのに大変に財政上困難を生じているということを考えると、いろいろと今後やはり適当なやり方を模索する必要があるだろうということを提言をいたしておきます。  そこで、ちょっと順序を変えまして防衛の問題についてお話を承りたい、こういうふうに思います。  今年度予算防衛費は対前年度六・五五%ふえましたが、これ自体は私は、国民に、あるいは国会議員の間にもいろいろな意見があると思いますが、私などから言わせれば、もっと前に、経済、財政がしっかりしておるときにちゃんとしておけばよかったのに、今ごろ金がなくなってからこういうことをやるので、どうもかなりの抵抗感が国民の中に出てくる。これは我々を含めて抜かったわいという感じが実はするわけでありますが、したがってこれについてあれこれ申し上げませんが、国会でGNPの一%を突破しそうだとか、しないんだとかいう議論がありまして、どうも政府答弁はそのときになったら考えるさ、こう言わんばかりの答弁でございますが、私はやはりこの際、この状態を続けていけば必ずこれはGNP一%を超えることはもう明らか、これは常識の問題なんでございますから、したがって新しい基準というものを考えておく必要があろう。そのときまで逃げ回るということは、私はやはりよくないというふうに思うわけであります。  いま一つは、GNPというのは景気動向によって非常にフラクチュユートするわけでありますが、防衛というのは、景気がいいから伸ばすとか、景気が悪いからそれじゃ減らすというような性質のものではございません。したがって、GNPに対してリンクするというやり方が、必ずしも私は防衛という事の性質から見て適当だとは思っておりませんので、したがって私としては、できるだけ早く新しい基準、メルクマールというものをおつくりにならなければ、いろいろと世上、これの問題について無用な疑惑と疑念を生ずるということになろうと思いますので、この点についてできるだけ早くひとつ新しい基準をつくっていただきたいということを、これは要望をいたしておきます。  そこで、防衛の問題について私が常日ごろ考えていることは、確かにこうして政府は今や、こういう言葉が適当かどうかわかりませんが、防衛のハード面、つまり装備、機材あるいは弾薬等はいろいろと、ない金を使って充実をいたしておりますが、しかしそれだけでいいんだろうか。いわゆる防衛のソフト面というものを考えてみなければならぬのではないかという感じがするわけであります。  そこで、そのソフト面には、第一はやはり隊員の練度、士気、義務感、愛国心、こうしたものについて一体十分おやりになっておるか、その辺について防衛庁長官いかがですか。
  477. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 今いろいろとお話を承りまして、恐縮をしているところでございます。  私、今度の予算防衛費について六・五五%の伸びをお認めをいただくその責任者でございますが、御指摘のありましたとおり、財政状態の非常に厳しいところでございまして、これをお認めいただいた場合には、文字どおり国民の皆さんのあぶらと汗をいただく、そういうことから、この執行に当たりましては厳正を期さねばならぬと考えております。  そういうようなときに、先般、新聞紙上を通じまして国民の皆さんに大変不安と御迷惑を与えるようなそういう事件が起きまして恐縮をしておるわけでございまするが、ただいま田中さんからお話のありましたとおり、装備とかそういうものだけではない、むしろ心だと、訓練だと、士気がどうなんだと、愛国心がどうなんだと、そこら辺の御指摘は全くそのとおりだと思います。今回の事件につきましては、既にいろいろその対策なり、あるいは事件の処理につきまして公表いたしましたけれども、私どもはこういうことが二度と起こらないようにひとつしっかりやらなければならぬと思います。  ただ、総体的に私が防衛庁長官という立場で自衛隊を見ますと、こういうものはごくわずかであると思っております。大多数の隊員は、士気旺盛に、しかも愛国心を持ってしっかりやっておると、そういうふうに考えておりますが、せっかくの御注意でもありまするし、私どもさらにその御指摘の点につきまして、意を用いて御期待に沿っていきたいと考えております。
  478. 田中正巳

    ○田中正巳君 私が承ったのは、実は山口の駐屯地のああいう事件を指して言うわけじゃございませんで、一般的な問題として、こういう点についてはひとつ十分やっていただきたい。下世話に、まさかのときに一体自衛隊は本当にやってくれるのだろうかという庶民の声がないわけでもございませんので、そうした点については、ひとつ十分抜かりなしにやっていただきたいというふうに思います。  それ以上に問題なのは、現在の国民の国家防衛に対する気概、意識、愛国心、こうした点について問題がないだろうかということを私は心配をするわけであります。特に近代戦では、いわゆる戦争の犠牲者というのは、前線の兵士よりも、航空機等の発達によりまして一般市民が犠牲を受ける度合いが高くなってきているというこの状態を考えるときに、国民のこうした問題についての気概なり気持ちというものが一体このままでいいのだろうか、果たして国民が今日のような感覚で本当に国の防衛ができるんだろうかということについて心配でならないわけであります。市民防衛の体制も、全くないのは日本だけだと言われているわけであります。あるいはまた、向学心のある自衛隊員が夜間の学校に入りたいと言うと、学校がこぞって拒否をするなどということをやるのも、世界広しといえども日本だけだと私は思うわけであります。こうした感覚で一体本当に国を守るような体制ができているんだろうかどうか。やはり私は政治はこの点について着目をし、努力をしなければならない一つのテーマだと思うんでありますが、総理、いかがでしょう。この点について、どういう御認識を持ち、どういうふうになさっていくつもりでありますか。
  479. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まさにお説のとおり、防衛力というものは国民考え方、認識、決意の上に初めて成り立ち得るものでございます。その上に立って総合的安全保障というものは成り立ち、その一部として自衛隊や防衛力、自衛隊、自衛力というものがあり得るのであると思っております。そういう意味におきまして、その基幹部分について御指摘のような不安やまだ政策の行き足らざるところがあることは日本防衛政策上の欠陥であると思いまして、今後とも大いに努力してまいらなければならぬと思います。
  480. 田中正巳

    ○田中正巳君 まあ防衛の整備を図ることは私は結構だと思うんですが、形だけやって実際がこれに伴わないということになったんじゃ、一体何の国の防衛だろうということになるわけであります。したがって、防衛費をこれだけ伸ばしましたとアメリカに説明するのはいいですけれども、しかし本当に財政不如意の中からこれだけのお金を使ってやるということになると、本当に名実ともに国を守るだけの体制というものをつくらなければいかぬのだというふうに私は思うわけでありまして、この点についてはひとつ大いに努力をしてもらわなければいかぬし、このままでは私はいかぬと、こういうことでは形だけの自衛力になってしまうというふうに思うわけでありまして、どうぞこの点について努力をしていただきたいというふうに思うわけであります。  さて、そろそろ時間もなくなりましたので、教育問題について若干触れますが、今、日本教育でまずい点、これは総理、一体どういう点が具体的にあると思いますか。
  481. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど社会党の先生に申し上げましたが、いいところも戦後やっぱりあります。伸び伸びしておったり、あるいは義務教育が九年制になったり、そういういい点もありますが、しかしまた一面、教育が画一主義になりまして、そして才能のある人間が伸びようとしても伸び切れない、あるいはその反面においてはつっぱりとかそういう現象が非常に激増して出てきておりますし、青少年犯罪が非常に激増しているという現象も顕著でございます。そういういろんな面において、やはり教育のシステムあるいは教育の内容等について、ここで大いに検討しなければならぬときに来ているのではないかと考えております。
  482. 田中正巳

    ○田中正巳君 総理は、衆議院のたしか藤尾質問だと思いますが、これに対して答弁なさって、中教審の答申の中には必要な案は七、八割盛られているが、二、三割は何か欠けているらしいというふうにおっしゃっております。また、同じような答弁に、文部省の問題を超える問題が多く出てきているというんですが、具体的にどういうことを考えているんでしょうか。
  483. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中教審の答申の中で、四十六年の答申、四十九年の答申等にはかなり網羅的にかつよく検討なすった内容が含まれた充実したものであると思っております。これらをやはり基礎に踏まえまして、我々の教育改革というものは考えていくべきであると思います。しかしまた、その後、共通一次テストであるとかあるいは偏差値であるとか、そういうようなものが顕著に出てまいり、またその後、青少年犯罪の激増というものも五十年代になりまして非常に顕著でございます。そのほか、学校によりましてはコンピューター教育みたいなものも出てまいっております。子供の嗜好もまた大分非常に変わってきまして、パソコンとかそのほかに非常に興味を持つような状態も出てきており、かつ、いまや高度情報社会の玄関口に日本自体が差しかかっておりまして、そういう時代を前にして教育というものはいかにあるべきかということをやはり点検するときであると、そう考えておる次第であります。
  484. 田中正巳

    ○田中正巳君 文部大臣に尋ねますが、文部省の範囲を超える問題というのは一体どういうことを具体的にあなたは考えていますか。
  485. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 戦後の教育日本の中に定着をいたしまして、そして今日も世界の中でこれだけの大きな力を得た、これはやはり戦後の民主主義教育というものが徹底したということも言えますが、もう一つは、恐らくこの議場にいらっしゃる方はまずほとんどだろうと思いますが、私自身が小学校二年生までは戦前教育でありますから、やはり戦前の教育を受けた皆さんの力と、戦後の新しい活力ある民主主義教育を受けた日本国民とが相まって今日の日本を築き上げてきていると私は信じております。したがって、日本教育はある意味では世界ではかなり注目をされております。レーガン大統領も日本の初等中等教育を目標にしたいとまで言っておられるんです。  しかし、現下の情勢を見てまいりますと、やっぱり日本教育については不満が多いんです。国民も何かどっかを変えてくれというんです。受験がおかしい、難問奇問が多かったから共通一次というものを考えてみました。また、量的な拡大に対して、これを解消するためにも共通一次を考えましたが、何かこれが今諸悪の根源のように言われてしまいます。もっとゆとりのある教育をしましょうということで、ゆとりある教育をやりました。海部文相の時代です。ところが、家庭の親からはゆとりのあることをやってもらったんでは進学ができないから、もっと英語の時間や数学の時間をふやしてくださいという請願が今日国会に山積みになっているんです。  こういうふうに、教育の問題というのは、一つだけを何となく直しても、結果的にはいろんな不満が多いということはよくわかります。したがって、確かに世界の中でこれだけの力のついた日本でありますが、やはりこれからは世界の国の中でどんな役割を果たしていける日本人なのかということも考えていかなければならぬ。そういうふうに考えますと、教育を一部抹消的なものだけを取り上げるのではなくて、もう少し生涯教育全体、あるいは人間が一体幾つの年に教育を受けたらいいのか、あるいは入試の問題一つ考えても、高等教育のいろんな矛盾の点もやっぱり考えてみなければいかぬのではないだろうか、こんなことを幾つも取り上げてまいりますと、やはり今日までの中教審の答申を踏まえ、なおまた先ほど和田委員の御質問に関連して久保さんの御意見の中にもございましたように、教育基本法というものをしっかり守りながら、二十一世紀に向けて新しい角度や視野をもう少し変えてみるということが必要ではないだろうか。そして、わが国の社会全体の機能の中で教育というものはどういう位置づけをしたらいいのだろうか、こういうことを検討してみるために、やはり新しい機関が国民的な多くの議論のすそ野の広い中から、もう一度構築をしてみる必要があるのではないか、これが総理が提案をされておられます新しい教育機関でございます。  長くなって恐縮でありますが、中教審の答申の中でもやはり先導的試行でありますとか幼保の問題でありますとか、こうしたことはどうしてもやはり中教審の答申だけではなかなか結論が得にくい。各行政部局にいろいろと関連のある施策があるということでもございます。こうしたことももう少し角度を変えて検討してみたらどうかというのが、今度の新しい教育機関をつくろうという一つ意味でもあるわけでございます。
  486. 田中正巳

    ○田中正巳君 今、文部大臣が触れましたが、幼保の問題。これは文部大臣一体どういうふうに、何か衆議院での御答弁、幼保一元化を指向するというふうに考えておるということを言ったんですが、あれはどういうことですか。
  487. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 幼稚園と保育所は、これは先生御専門でありますから、それぞれの法律、そしてそれぞれの目的、機能によってそれぞれの分野において打ち立てられているわけであります。しかし、現実の問題といたしましては、これを受ける子供たちあるいは保育園や幼稚園に通わせる親の立場から見ますと、機能と目的は違っておりますけれども、地域的には遍在をいたしておりますし、親の角度から見ますとそう違ったものにはなっていないはずであります。ですから、このことは中教審でも幼保の一元化という問題を一応出しておりますけれども、厚生省、文部省両方から出ました学識経験者によります懇談会でも議論をいたしましたが、結果的にも意見はまとまらなかったのも御承知のとおりでございます。しかし、もう既に大体同じような事柄をやっているということであれば、もう少しこのあたりのところに工夫を凝らしてみる必要があるのではないだろうか、そんなふうに私は衆議院予算委員会答弁を申し上げております。そして幼稚園が保育所と一緒になるとか、保育所のところに幼稚園が一緒になるとかということでなくて、もう少し幼稚園と保育所の両方の機能を上手に生かしていく新しい考え方ができないだろうか、そんなことも両方から出てきた学識経験者による懇談会では結論が得られなかったことでありますから、できれば新しい機関で幼保であれ保幼であれ、もう一度このことを、そういう教育を受ける、あるいは保育を受ける親の立場や子供の立場に立って一遍もう少し新しい角度から考え方をつくり直してみたらどうかというような答弁を申し上げております。
  488. 田中正巳

    ○田中正巳君 この問題について厚生大臣はどのようにお考えですか。
  489. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今、文部大臣からもお話がありましたが、私どものやっておる保育事業は、お母さん方の家庭の保育を補完するという立場でやっておりまして、その機能にしましても、幼稚園は二百二十日しか開園しておりませんが、保育所は三百日開所しております。また、対象となる子供たちもゼロ歳から五歳までということで、また開所時間も幼稚園は四時間ですけれども、保育所は八時間開所をいたしまして、職場に行くお母さんが子供を預けて、そして職場から帰るときにまた子供さんを引き取っていくというふうになっておるわけですが、それでもいま八時間では足りないから、これを十時間にしろとか、あるいはもっと時間を多くしろという強い御要望をちょうだいしております。今日の経済状態の中ではますますお母さん方が職場に行くことになりますので、保育所の任務とするところの必要性は非常にこれは大きくなっております。  ただ、御指摘のように、最近幼稚園の機能をかなり保育所が持つようになっておることも事実でありますが、残念ながら今の幼稚園は保育所の機能を十分満たしておりません。こういうことから、幼稚園はまた幼稚園としての長い歴史と伝統があり、幼児教育という目的を持っております。また、保育所には、どうしても必要な、今日どんどん職場に進出しているお母さん方の子供さんをお預かりするという任務がこれございますので、お互いにむだのないようによく連絡し合って、よく設置場所とかそういうものを連絡し合って、むだのないように合していくことが望ましいことで、今すぐ一元化というようなことはかえって混乱を起こすのではないかと、こういうふうに考えております。
  490. 田中正巳

    ○田中正巳君 この問題は、かなり根の深い問題であります。同一のほとんど同じ年齢層の子供を対象にしてやるものですから、これを調整する必要は、私は全くないとは言いません。しかし、これを検討する場が問題だということであります。教育という視点だけでもって問題を、これを掘り下げるということになりますと、問題が実は解決をしない、場が重要だと。したがって私は、十分検討はなさることはいいんですが、教育という場だけでこの問題を議論をし、結論を出すことについては、よほど考えものだというふうな感じがいたしますので、よくその点は政府内で調整をしていただきたいというふうに思います。  ところで、教育問題というのは結局世界観や価値観に大きく影響をする問題でございまして、行政改革とはちょっと性質が違っているだろうと思うんです。したがって、このいわゆる新機関というんですか、新機関でいろいろと御検討なさることは結構ですが、その人選についてはよほどお考えにならなければ、人間というのはやっぱりその置かれた立場からの価値観を強調するものでございますから、やはり広い視野を持ったそうした人をひとつお選びになることを要望をいたしておきたいというふうに思います。  そこで、問題を変えまして、もう今月いっぱいが期限とやら言われている農産物の自由化問題について若干触れたいと思いますが、時間がございませんからはしょってお聞きをいたします。  外務大臣、この予算編成が終わったときにあなたはアメリカに行ってこの問題について語をしてきたというんですが、どういう話をしてきたんですか。
  491. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 一月の終わりにアメリカに参りまして、アメリカのブッシュ副大統領、シュルツ国務長官、ブロックUSTR代表を初め、日米間のいわゆる懸案問題それから国際情勢等につきまして隔意のない意見の交換をしたわけでございます。その懸案問題の一つとして、農産物の問題についても話をしたわけですが、私は交渉に行ったわけではありませんで、やはりこの日米間の懸案問題を解決をするに当たって、アメリカが基本的にどういう考え方を持っておるか、日本がどういう考えを持っておるか、そういう点をお互いに率直にすり合わせる、これが解決につながっていくんだということで話し合いをいたしました。  農産物につきましては、やっぱりアメリカは非常に象徴的にこれを考えております。これはもうアメリカとしては何としても農産物は自由化を求めてきたわけでございますが、日本としては日本の農政を守るという立場から、自由化にはどうしても応じがたい、こういうことで交渉も決裂寸前になっておりました。しかし、日米間全体のことを考え、さらにまたこれからの将来のやはり農産物問題についての日米間の問題を考えると、やはりこれは何とか解決をしなければならないと私は思うわけでございます。そういう中で私も、結局この問題を解決するには日本としてもできるだけのやはり譲ることは譲らなければならない。しかし、アメリカが自由化だけを主張していたんじゃこれは解決のめどはつかないわけですから、アメリカにもやはり自由化という考え方はそばに置いてもらって、そうしてやっぱり枠の問題等で弾力性を持って日本に対応してもらいたいということを強く訴えまして、アメリカは当初は、全く日本に対して譲るべきものは何もないんだと、日本が一方的に譲ってこいと、こういうことでありましたが、最終的にはこの問題をやはり日米間でこじらして、そして日米間の悪い空気をこれによってつくることは何とか避けなければならぬ、こういうことでアメリカもやはりだんだんと弾力的にこれに対応しようという空気が出てまいりました。  そこで私は、そのアメリカの弾力的な対応というものをさらに要請をいたしまして日本に帰ってきたわけでありまして、したがって血農産物問題については私自身が交渉したわけではございませんが、私が行きました結果、アメリカ政府としましては農産物に対しては弾力的にこれに対応するという姿勢を引き出すことができたと思っております。その結果、今日両政府間で今話し合いがまた復活をし、続いてきておるわけでございます。何とかこれが解決の道につながっていけばいいというふうに考えておりますが、まだまだ交渉は非常に難航しておる、こういうふうに承っておるわけであります。
  492. 田中正巳

    ○田中正巳君 この問題について、我が国の農業者は異常な危惧の念を持っているというのもまた事実であります。甚だしいのは、鉱工業生産物の輸出の犠牲に農業者がなるんだという議論さえ、実は農村等には流れていることも事実であります。こうしたことについて一体政府はどのように考えておるのか。また、実は牛肉、かんきつ以外にガットの二十三条一項協議の対象十三品目というのがありますが、これ等を含めて一体どう対応していくのか、これは農林大臣から承りたい。  しかし、何しろ期日が三月いっぱいということなんですが、期限に押されて妙な妥結をされたんじゃ大変だという農民の心配がございますが、一体農林大臣はこの点についてどのような態度と覚悟で相臨むつもりでありますか、お答え願いたい。
  493. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 私といたしましては、この農産物の輸入というものはあくまでも国内農産物の需給、これを見た上で我が国農業が健全な発展をするというのと調和のとれた形で輸入をすべきものというぐあいに考えております。  今、先生おっしゃいました農民の皆さんの気持ち、これは私は、一昨年の五月参議院の農林水産委員会で御決議もいただきました。そして本年一月には同委員会から申し入れもございました。この趣旨を体しまして日本農業を守るという立場を堅持してまいります/農業者が犠牲にならないように我が国農業を着実に発展させるということを念頭に置いて交渉に当たってまいるつもりでございます。そしてまたガット、この条項につきましては十三品目が対象になっておるわけでございますが、せっかくのこの牛肉、かんきつ、これに対する新たな合意を目指してこれに当たるわけでございますので、これらの懸案問題も一挙に解決して、やはり日米関係が、特に日本の農業、これがいわゆる安定的に営農ができるというような立場を目指してまいりたいという気持ちでございます。  また、最終的に先生がおっしゃいましたこの三月いっぱいと、確かにそうでございます。四月以降は空白状態になってしまうわけでございますので、これだけは何とか回避したいというのが今の農林水産省としての気持ちではございますが、ただ先生おっしゃいましたように、この期限にとらわれてそして無理な要求をのむ、そういうようなことは絶対いたさないつもりでございます。
  494. 田中正巳

    ○田中正巳君 この問題は日米経済摩擦の一環でございますから、問題は非常に深刻ですが、しっかりひとつやってきていただきたいというふうに思います。  そこで、さっき和田委員からちょっと御質疑があったODAの問題について若干触れたいと思いますが、いわゆるODAについて実績ベースではかなり実はまだ問題があるのでありまして、これにはまた政府にはエクスキューズがあるんだろうと思うんであります。例えば、円ドル為替相場の問題がどうの、あるいは世銀に対するシェアの問題が解決しなかったというふうないろんなエクスキューズがあるんですが、しかしせめて予算ベースでは、私は、国際的に約束をした新中期目標はこれをちゃんとするのが日本としてとるべき姿だと思うんであります。いろんな方がいろいろな場所で国際的にこれをお約束になって、それを今日の日本が果たせなかったということになると、私は国際信用が非常に落ちると思いますが、明年度がなり実は残っておるんですが、これについてお約束を果たす気持ちがございますか。
  495. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まず私からお答えをいたしますが、ODA、いわゆる政府開発援助につきましては、これはやはり日本がこれまで国際的に大きな存在になってきた以上は、まさに国際責任としてこれを進めていかなければならぬ基本的な課題だろうと思います。そういう中で予算も順次伸びてきております。そしてまた、いわゆるこの五年間倍増計画を発表いたして、その旗のもとに努力をしておりますが、残念ながら実績ベースでは今お話しのように円が安くなるという事態が起こる。あるいはまた、アジ銀であるとか世銀だとか、そういうところのいわゆる増資の問題が片づかないということで、これは日本の責任ではないんですが、そういうことでは実績ベースではむしろ一九八一年は四%、八二年は四・七%というふうにドルベースではむしろ落ちておるわけでございまして、大変に残念に思うわけでございますが、しかし我々としてはこの旗をおろすことはできない。この五年倍増計画のもとにこれからも努力を重ねていきたい。  そういう意味で、予算については少なくとも最大の努力をしなきゃならぬということで、大変財政的な厳しい五十九年度予算でありましたが、五十九年度予算ではODA予算は御承知のように九・七%と、防衛費が六・五五%でありますから、それを超えてもう大変な突出をいたしたわけでございます。私たちはさらに来年、再来年、今二年終わったばかりですから、来年からもこの一つの方針を貫いていきたい。財政当局にも特にひとつ御奮発をお願いしなければならぬ、こういうふうに思っておりますが、しかし五年の少なくとも予算の倍増を果たすには来年は二〇%ぐらいやらなければならぬわけですが、しかしこれは日本は国際社会の中で非常に大事な存在、国際世界の協力がなければ日本という存在もあり得ないわけですから、ぜひともこの問題は頑張ってまいると、こういう決意であります。
  496. 田中正巳

    ○田中正巳君 とにかくこの問題については国際的にいろんなところで言明をなさっている。総理自身もたしかクアラルンプールでお話、クアラルンプール・スピーチというのですか、おっしゃったし、鈴木さんなどあっちこっちへ行って、サミットでおっしゃっているわけでありまして、これを予算ベースでは達成いたしましたということにしなければ、私は日本はメンツはないというふうに思いますが、二一%伸ばさなければだめだそうですが、大蔵大臣、一体いかがですか、この問題について明年度予算で考慮いたしますか。
  497. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、外務大臣からお答えあったことを踏まえ、また田中先生からの御鞭撻を踏まえ、誠心誠意対応したいと思います。
  498. 田中正巳

    ○田中正巳君 最後に、年金統合の問題についてちょっと触れたいと思います。  昨年成立した地方公務員共済法の一部改正法案、これは財政調整を指向したものですが、これには地方公務員共済で警察官と教職員については外になってますが、一体いつこれを財政調整の枠の中に入れていくつもりですか、自治大臣。
  499. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 御承知のように、地方公務員共済組合の数は九十一に上っておりまして、これを連合するということは並み並みならぬことでございまして、ただいま御指摘の警察とそれから公立学校職員の方の組合につきましては職域、いろいろな問題がございまして間に合いませんでした。そういう意味で、この二つの組合についてはとにかく残る八十九を連合させるということが最も必要なことでございますので、この二つにつきましては例外にしたわけでございますけれども、この二つの組合も早くこれに統合する、加入するということが好ましいことでございますので、できるだけ早い機会に関係者と話し合いを進めて実現をしたいと、このように思っております。
  500. 田中正巳

    ○田中正巳君 できるだけ早くというんじゃ年金統合はできませんよ、これは本当の話が。地方公務員共済が非常に複雑になっていることは私も知っておりますが、ひとつ自治大臣の特段の勇断をもっての対処を望みます。  ところで、一体政府考える年金の一元化というのはどういうものなんだろうか。具体的に言いますと、給付と負担の整合性をとるといったようなことで終わるのか、年金財政を統合して一元化するのか。その辺について、これは年金担当大臣、または行革の一環でもありますから行政管理庁長官とお二人から、一体年金の一元化というのはどういうところまでいかなければならぬのかということについて御説明を願いたいと思います。
  501. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 年金問題については、これは田中先生の御指導をちょうだいして成案を得られたところで、何か私が答弁するのも冷や汗の思いでありますけれども、おかげさまで五十九年、厚生年金、船員保険、国民年金の一元化の改革案をまとめることができました。また、先般の閣議において、六十年度には共済年金も一元化するという方向ができ上がりましたので、ここで国民共通の基礎年金を発足させることができます。  六十一年以後、御承知のように厚生年金あるいは共済年金にこの一元化された基礎年金に対する二階建て年金ということになってまいりますから、これらのことについてはまた先生の御指導をちょうだいしながら、やはり二十一世紀の将来に国民が等しく安定した年金を得られるという目的に向かって進んでいかなければなりませんし、また制度の一元化をまず進めて、その方向の中で今度は機構の一元化という問題もありまして、これも行政管理庁長官等から今御指導をちょうだいしながらその方向に向かって進んでまいりたいと存じますので、特に御指導をお願いいたします。
  502. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) もう先生御承知のとおりに、五十七年に年金を扱う大臣がばらばらになってはいかぬというようなことで、厚生大臣を年金担当大臣に指定して、そして昨年度、御案内のような国家公務員と公企体の共済を一本にする、そして五十九年度は厚生年金、それから国民年金、船員保険のうちの年金部分というようなものを基礎年金を採用して統合していく、そしてその次の年、六十年度は国家公務員の一本になったものについても基礎年金を統合をする、そこまで一応決まっておるわけですね。そして七十年までには全部の年金を一元化すると、こういうスケジュールを担当大臣の方としてはお決めになっておるようでございますが、問題はその際の年金行政機構をどう考えているんだと、こういうことになるのだろうと思いますが、今申しましたように年金担当大臣を指定したことによって年金の統合が進んでおりますから、行政機関がばらばらであってもできないということではないと思いますけれども、今までの改革の中でも現業処理機関は厚生省の外局で一元化をする、こうなっておりますが、先行き年金行政機構を一本化するということは一つ方向ではなかろうか、今の段階でどうするということは断言できませんけれども、しかし私は一つ方向であろうと、かように考えておるわけでございます。
  503. 田中正巳

    ○田中正巳君 この問題が実は政府がはっきりしておらないわけであります。したがって、年金統合をやるというときに一体どこまでやればいいんだということがはっきりしないものですから混乱が起こるわけであります。この二月の二十四日の閣議決定も、六十一年までは書いてあるんですがその先はほとんど何も書いていない。つまり、年金一元化というのは財政を一緒にするのか、制度だけは同じものにするのかということについての意思統一をしておかなければ、年金統合なんてできるものではございません。  なぜこんなことを言うかというと、私も実は正直言ってこの問題で苦労しているんですが、積立金の資産運用と財産の管理というのは何としても彼らは放したがらないわけでありまして、何かいいことがあるのか僕は知りませんけれども、とにかく財政調整はするが財産はおれのところへ置いておいてもらわなければ困る、こういうことを言って、言うことを聞かないわけであります。したがって、私は、年金の本当の一元化というのは財政を一元化しなければ、あの国鉄共済のときに見られたような例がこれから出てくるということであります。システムは同じにしても金のあるものとないものが出てきますると、実際問題として公的年金の本当の一元化はできないということですから、これについての政府側の確たる目標、これは年金関係者の間にも実は一体政府の腹はどこにあるんだということをいろいろと取りざたしているわけでありますから、政府がここまでいくんだということをはっきり決めて、内外に表明をしなければ、年金一元化は途中で挫折をするというおそれがあるものですから、あえて申し上げたわけであります。  これ以上の御答弁は今の段階として御無理だろうと思いますから私は控えますが、十分ひとつこの点については考えていただかなければ、年金統合は、一元化は画餅に帰するということを申し上げておいて、私の質疑を終わりたいと思います。(拍手)     —————————————
  504. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で田中君の質疑は終了いたしました。
  505. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 引き続き、派遣委員報告を聴取いたします。大蔵大臣農林水産大臣通商産業大臣、建設大臣、自治大臣、国土庁長官にはお残りを願いたいと存じます。総理大臣以下他の閣僚は御退席くださって結構でございます。  本委員会は、昭和五十九年度総予算三案審査のため、広島県、大分県及び秋田県にそれぞれ委員を派遣し、去る三月二日各地において同時に地方公聴会を開催し、つぶさに理地の実情を聴取してまいりました。  それでは、その概要について御報告を願います。  まず、広島班につきまして、金丸三郎君にお願いいたします。金丸君
  506. 金丸三郎

    ○金丸三郎君 広島班につきまして御報告申し上げます。  広島班は、西村委員長内藤理事、梶原委員、久保委員、佐藤委員、小西委員、それに私金丸の七名で構成され、三月一日、東洋工業株式会社を視察し、翌二日、広島市において公聴会を開催し、六名の公述人より、意見を聴取した後、派遣委員から熱心な質疑が行われました。  以下、公述の要旨を簡単に御報告申し上げます。  まず、地域経済と地方財政につきまして、広島県知事竹下虎之助君、鳥取県知東西尾邑次君から意見を聴取いたしました。  竹下公述人は、広島県は全国に比べ重化学工業化比率が高く、不況業種を多く抱えていることから、経済成長率、工業生産とも全国水準以下となっている。  景気回復も全国から見て立ちおくれているが、設備投資、消費に回復の兆しが見えてきており、中小企業の景況感調査においても、二十二業種中悪いとしているのは工作機械、造船下請等八業種である。  財政については、歳入に占める県税の比率がオイルショック以降低下し、三割を切った年度もある。このため、県債に依存せざるを得ず、その償還額も増大している。また、義務的経費や準義務的経費の割合が高く、県が自主的に分配可能な金額は一割にすぎない。そのため、本県においても人件費対策、機構縮小、補助金の整理合理化等財政健全化方策を推進している。県側の要望としては、国と地方の財源の再配分、自主財源の充実強化、超過負担の解消等につき配慮されたいということでありました。  西尾公述人は、鳥取の県民所得は、大企業がないことから、全国平均の八二・八%であり、また、二次産業のウエートが低く、零細製造業が多いため、工業出荷額は全国の〇・二五%と非常に低い。本県においては不況による影響は比較的少なく、鉱工業生産指数は徐々に伸びており、業種により跛行性が見られるが、電気、機械は好調である。  財政については、県債残高が一千五百億円となっており、この償還が今後の重大課題である。歳入中の自主財源の割合は二八%であるが、歳出面では、義務的経費、特に人件費費の割合が少ないため、投資的経費が三八%と大きく、財政構造上効率的な運営が行われている。  当面の要望及び今後の課題としては、中国横断自動車道岡山−米子線を初めとする道路整備、国鉄智頭線の早期完成と若桜線等の存続、鳥取、米子両空港の整備、新産都市にかかわる財政特別措置の延長が望まれるほか、特に昨年末以降の異常積雪による被害が甚大であり、対策を講じてほしいと述べられました。  次に、テクノポリスと地域開発につきまして、東広島市長讃岐照夫君、広島大学教授櫟本功君より意見を聴取いたしました。  讃岐公述人は、オイルショック以後、広島中央地域の造船、鉄鋼等の素材産業が停滞しており、今後、時勢の変化に対応した産業への転換が課題となる。テクノポリス建設によって、経済活動の活性化、新しい地場産業の創造、雇用拡大による定住化促進等が期待され、県、関係市町一体となって取り組んでいる。  国におかれては、テクノポリスの早期指定、広島大学の総合移転、工業技術院中国工業技術試験所の拡充強化、広島新空港の早期実現、山陽自動車道等の建設整備、その他国庫補助事業の優先採択と枠拡大を行ってほしいと述べられました。  櫟本公述人は、広島県の経済活性化のため、テクノポリス構想に期待するものがある。しかし、地域指定が行われ、IC産業などが立地するだけでは不十分である。IC産業は使用原材料が少なく、外注もまた少ないため、下請や関連産業が育たず、また、より高密度の新製品をつくる際には、立地条件の有利な他地域へ移転してしまうおそれもある。したがって、テクノポリスの成否は、ICを部品として使用する加工型の産業を育てるなど、先端技術産業を地域にどう利用し、活用するかにかかっている。  また、技術者、研究者の交流を密にするための広島県産業技術振興機構に社会科学系の研究者も参画させるべきであると述べられました。  最後に、造船業、中小企業の現況につきまして、幸陽船渠社長溝手顕正君、広島県中小企業団体中央会副会長内海得治郎君からそれぞれ意見を聴取しました。  溝手公述人は、造船業は不況に直面しており、この十年間に世界の建造量は約二分の一の一億七千七百万トンに落ち込んでいる。日本のシェアは四〇%台で変化していないが、韓国は一・三%から一〇・九%へと著しく増大しており、今後の進出が懸念される。造船業従事者数も、七万八千人と最盛時のほぼ半数となったが、生産量に比べて減少幅が小さく、各企業の固定費の負担増の原因となっている。昭和五十八、九年度は、ピーク時の約四五%の操業規制勧告を受けているが、これは、残存設備能力に対して七割の操業度にすぎず、苦しい状況に追い込まれている。当面の対策として、船舶等の輸銀必要資金量の確保と融資比率の改善、長期低利の計画造船建造費の安定的確保、不況業種・地域雇用安定法等の継続強化などを、長期対策としては、国際協調の推進による過当競争の回避を望むものである。また、絶対的設備過剰については、関係当局の尽力により解決してほしいと述べられました。  内海公述人は、造船下請、建設、鋳物等、多くの中小企業ではいまだ不況感が強く、輸出好調な自動車業界でも、国際競争の激化から関連下請企業への合理化要請が厳しい。中小企業の不安定要因は、同業者の乱立による過当競争にある。特に下請企業は、親企業の圧力というより、過当競争のため苦境に陥ることが多い。倒産した場合、会社更生法の適用により無借金経営となり、これが過当競争を激化する場合もあり、同法の検討をお願いいたしたい。また、基盤の弱い中小企業への課税強化は遺憾である。今後、地域経済振興のためにも、波及効果の大きい公共工事の拡大、住宅建設促進、中小企業対策費の強化拡充を図るとともに、大型間接税等の新設は行わないようにされたい、このように述べられたのであります。  以上で広島班の報告を終わります。
  507. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、大分班につきまして初村滝一郎君にお願いいたします。初村君。
  508. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 大分班は、藤井和田、伊藤の各理事、古賀後藤、田代、梶原、中野の各委員、それに私、初村の九名で編成。三月一日、大分県日出町のボックス電子工業、大分市の石井工作研究所を視察し、翌二日、大分市で公聴会を開催してまいりました。公述項目は、テクノポリスと地域経済、地方財政、農業問題の三項目であり、六名の関係者より意見を聴取いたしました。  以下、公述の内容につき、簡単に御報告申し上げます。  まず、テクノポリスと地域経済について大分キャノン社長水越一雄君、大分経済同友会代表幹事小尾知愛君より意見を聴取いたしました。  水越公述人は、大分キャノンは昭和五十七年に進出後、月四万台のカメラを生産、東京に空輸しておる。大分に進出の理由は、地元の強い要請があったほか、大分空港に近く、先端産業に重要なる情報が人を通じて速やかに伝達されること、優秀なる人材が確保できること、カメラ生産に必要な半導体を手に入れるのが地理上便利なことである。大分のテクノポリスは広域点在型で、農業併存方式がとられており、工場集中の工業団地方式よりすぐれていると述べられました。  小尾公述人は、新産都市建設で大分県の人口も過去のピーク時に近づいているものの、集中と過疎の問題があり、テクノポリスはその是正に役立つと期待している。景気は、建設業が倒産件数も多く、厳しい状況にあるが、電子関連が活況を続けている一方、素材関連も輸出の増加や集中生産増加によって回復が進んでいる。テクノポリスは新産都市に先端技術が結びついたもので、新産都市に対する財政特例措置を延長するとともに、地域技術水準の向上と交通体系及び情報網の整備に財政援助を願いたいと述べられました。  地方財政につきまして、大分県知事平松守彦君、大分県市長会会長佐藤益美君より意見を聴取いたしました。  平松公述人は、大分県は自立自助の地域づくりを目指すとともに、二十一世紀へ向けての人づくり、高齢化社会への対応を課題として一村一品運動、先端企業による臨空工業地帯、老齢者に対するニューライフ・プラザを推進している。五十九年度の県の予算編成では、スクラップ・アンド・ビルドを徹底し、前年度と横ばいの予算規模にとどめたが、公債費がふえ、硬直化が進んでいる。国は外形標準課税等によって安定した地方の財源を確保するとともに、零細補助金を各省別に統合し、メニュー方式にすることを望みたいと述べられました。  佐藤公述人は、大分市は合併や新産都市以来、人口急増対策で苦しい財政運営を続けてきた。特に、オイルショック後交付税の不交付団体となったこともあり、起債に依存して公債費比率は高まってきている。都市財政の改善には法人所得税の市町村への配分割合を高めるとともに、国鉄を除く公社所在市町村納付金の軽減措置を撤廃すべきであり、また、補助金の超過負担解消と地方に負担転嫁とならぬ補助事業の廃止を要望すると述べられました。  最後に、農業問題について、大分県農業協同組合中央会会長合沢栄君、宮崎県農業協同組合中央会副会長大崎茂君より意見を聴取いたしました。  合沢公述人は、保護すべき資源産業にかかわらず、農業は輸入食糧の増加で田畑の荒廃を起こしている。食糧を外国に依存し、国民生活の安定は難しく、米中心の日本型食生活を守っていくべきである。農業過保護論は、道路予算等の実態や外国の農業保護の実情を無視したものであり、農産物の輸入枠拡大は農業の一層の荒廃と農村人口の流出を促進するので反対する。農業臨調を設置し、国民合意の上で農業を見直してほしいと述べられました。  大崎公述人は、宮崎県の畜産農家は価格の下落で、これまでの投資に要した借入金がたまり、困っている。農協は県当局と一体となり、農業経営管理指導センターを発足させ、指導しているが、なお改善が困難である。政府は、畜産農家に明確な将来展望を示すとともに、固定化負債を新規の低利、長期融資に切りかえてほしい。また、農協の預託事業に近代化資金を利用できる措置を講ずべきであると述べられました。  以上、御報告を終わります。
  509. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 最後に、秋田班につきまして亀井久興君にお願いいたします。亀井君。
  510. 亀井久興

    ○亀井久興君 秋田班につきまして御報告いたします。  秋田班は、海江田委員佐々木委員出口委員、瀬谷委員、鈴木委員、近藤委員、秦委員そして私亀井の八名で構成し、三月一日秋田県立脳血管研究センター、秋田県工業技術センター、秋田酒類製造株式会社を視察し、翌二日秋田市において公聴会を開催してまいりました。  私田班の公述項目は、地方財政、農業問題、地域経済の三項目であり、六名の公述人からそれぞれ意見を聴取した後、派遣委員から熱心な質疑が行われました。  以下、公述の要旨につきまして簡単に御報告いたします。  まず、地方財政につきましては、秋田県知事佐々木喜久治君、秋田県町村会長工藤清一郎君から意見を聴取いたしました。  佐々木公述人は、五十九年度の地方財政対策は、健全化を第一目標とした点で評価したいが、地方交付税特別会計の累積借入金十一兆五千億円を折半して国及び地方の借金としたことは、地方交付税の趣旨に合致するのか疑問がある。厳しい地方財政の状況に対処していくには、地方税源の充実強化を図ることが肝要である。児童扶養手当制度の改正については、地方への負担転嫁を行うもので残念に思う。東北一の新空港開港を県経済発展のためのばねとして時代を先取りした秋田テクノポリス構想を早急に進めるなど、各地域の活力を積極的に引き出したいとの意見が述べられました。  工藤公述人は、地方財政の現況は、地方交付税率現行三二%の引き上げが、地方財政制度の抜本的改正を迫るほどの非常事態となっている。地方債増発等の常態化は好ましくなく、住民税、所得税減税に伴う補てん措置、地方交付税所要額安定確保の施策を講ぜられたい。過疎バス問題は、不採算路線を抱える町村財政にとって相当の重圧となっていることを理解してほしい。地方交通線については、地域住民の生活に支障ないよう慎重な対応を願いたい。今冬の異常豪雪に対する特別助成措置を要望したいとの意見が述べられました。  次に、農業問題については、秋田県農業協同組合中央会会長土肥大四郎君、秋田県畜産農業協同組合連合会会長成田広造君から意見を聴取いたしました。  土肥公述人は、農産物の自由化では日米経済摩擦の解消にはつながらない。事態解決の道は、行き過ぎた工業製品の輸出を抑制し、内需拡大を図る経済運営への方向転換や、地域経済活性化で対処すべきである。第三期水田利用再編対策の中で、一定の在庫水準を確保するため計画的な在庫積み増しを行うことは一歩前進の政策であるが、少なくとも五年程度を期間としたゆとりある需給計画への方向転換が必要である。全国的に最も高い生産力水準にある秋田県稲作の現状等を考慮した転作面積の配分を要望したいとの意見が述べられました。  成田公述人は、農業全体に占める畜産物のウエートは約三割と大変なものがあり、牛肉を初めとする農産物の市場開放は阻止願いたい。農業の基本は土づくりであり、畜産を盛んにし、有機質の堆肥を使用する必要がある。諸外国を見ても、米国の食肉輸入法等、農業問題については相当の保護政策をとっている。消費者に安い牛肉を提供するため経営合理化努力を行っているが、我が国の穀類自給率は先進国の中でも最低となっており、自給率向上政策が必要であるとの意見が述べられました。  地域経済につきましては、秋田県経営者協会会長辻兵吉君、秋田経済法科大学経済学部教授横山幸一君から意見を聴取いたしました。  辻公述人は、低迷する県内経済に活力を与えるためには、雇用機会を増大し新規若年労働力を地元に定着させるため、先端技術産業を中心とする秋田テクノポリスの指定を要望する。地元中小企業の向上や質の高い労働環境づくりに努めると同時に、一連のハイテク指向の指導によってハード面のみならずソフト面にも力を入れる必要がある。中小企業の倒産は最近増加の一途をたどっているが、個人債務保証者または担保提供者に限り、その経営する企業が債務超過となった場合、個人資産提供による所得税の免除を要望したいとの意見が述べられました。  横山公述人は、秋田県は地元にすぐれた商店街がないため新規大型唐の定着を容易にしており、地元商業による商店街の強化が必要である。代表的な地場産業は木材、木製品工業であるが、五十六年には製造業の首位の座を電気機械工業に譲っている。五十八年以降の製造業の動向は、震災復旧事業を中心に建設業が伸びを示したものの、木材、木製品工業は民間住宅の不振から低迷し、また全国第三位の出荷額を誇る酒造業も停滞を続けている。こうした中で特に弱電部品業界は好調である。秋田空港を中心とした空輸型工業基地として先端技術産業が操業を開始したが、今後本県製造業の拠点となり地場産業との関連づけを行うことが重要であるとの意見が述べられました。  以上で報告を終わります。
  511. 西村尚治

    委員長西村尚治君) これをもって派遣委員報告は終了いたしました。  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十五分散会      ——————————