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1984-02-23 第101回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年二月二十三日(木曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員の異動  二月十三日     辞任         補欠選任      高杉 廸忠君     梶原 敬義君  二月十四日     辞任         補欠選任      大島 友治君     田代由紀男君      杉山 令肇君     出口 廣光君      山本 富雄君     佐々木 満君  二月十五日     辞任         補欠選任      佐々木 満君     宮島  滉君  二月十七日     辞任         補欠選任      長田 裕二君     後藤 正夫君      内藤  健君     佐々木 満君  二月二十日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     近藤 忠孝君  二月二十二日     辞任         補欠選任      梶原 敬義君     高杉 廸忠君      太田 淳夫君     中西 珠子君      中野  明君     中野 鉄造君      野末 陳平君     宇都宮徳馬君  二月二十三日     辞任         補欠選任      後藤 正夫君     長田 裕二君      佐々木 満君     内藤  健君      出口 廣光君     杉山 令肇君      中西 珠子君     塩出 啓典君      宇都宮徳馬君     野末 陳平君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 金丸 三郎君                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 志村 哲良君                 杉山 令肇君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 竹内  潔君                 土屋 義彦君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 鈴木 一弘君                 中西 珠子君                 中野 鉄造君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 柄谷 道一君                 喜屋武眞榮君                 秦   豊君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  住  栄作君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  森  喜朗君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        農林水産大臣   山村新治郎君        通商産業大臣  小此木彦三郎君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        郵 政 大 臣  奥田 敬和君        労 働 大 臣  坂本三十次君        建 設 大 臣  水野  清君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    田川 誠一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       中西 一郎君         国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       後藤田正晴君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官) 稻村佐近四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       岩動 道行君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  上田  稔君    政府委員        内閣参事官    中村  徹君        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        総理府人事局長  藤井 良二君        日本国有鉄道再        建監理委員会事        務局次長     林  淳司君        行政管理庁長官        官房総務審議官  古橋源六郎君        行政管理庁長官        官房審議官    佐々木晴夫君        行政管理庁行政        監察局長     竹村  晟君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁衛生局長  島田  晋君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        経済企画庁調査        局長       廣江 運弘君        環境庁企画調整        局長       正田 泰央君        環境庁企画調整        局環境保健部長  長谷川慧重君        国土庁長官官房        長        石川  周君        国土庁長官官房        会計課長     安達 五郎君        法務省刑事局長  筧  榮一君        法務省入国管理        局長       田中 常雄君        外務大臣官房審        議官       都甲 岳洋君        外務大臣官房領        事移住部長    谷田 正躬君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        大蔵大臣官房審        議官       行天 豊雄君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局次        長        吉居 時哉君        大蔵省証券局長  佐藤  徹君        国税庁直税部長  渡辺 幸則君        文部大臣官房長  西崎 清久君        文部大臣官房審        議官       齋藤 尚夫君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省管理局長  阿部 充夫君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生大臣官房審        議官       新田 進治君        厚生大臣官房会        計課長      黒木 武弘君        厚生省医務局長  吉崎 正義君        厚生省薬務局長  正木  馨君        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省援護局長  入江  慧君        社会保険庁医療        保健部長     坂本 龍彦君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        通商産業大臣官        房会計課長    山本 雅司君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        資源エネルギー        庁石油部長    松尾 邦彦君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        運輸省航空局長  山本  長君        郵政省電気通信        政策局長     小山 森也君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        労働省職業安定        局長       加藤  孝君        労働省職業安定        局高齢者対策部        長        守屋 孝一君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省河川局長  井上 章平君        建設省道路局長  沓掛 哲男君        自治大臣官房審        議官       津田  正君        自治大臣官房審        議官       土田 栄作君        自治省税務局長  関根 則之君        消防庁長官    砂子田 隆君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        日本国有鉄道総        裁        仁杉  巖君    参考人        国連大学学長特        別顧問      永井 道雄君        航空法調査研究        会代表幹事    宮城 雅子君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十八年度一般会計補正予算(第1号)(  内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十八年度一般会計補正予算昭和五十八年度特別会計補正予算の両案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 西村尚治

    委員長西村尚治君) まず、理事会における協議決定事項について御報告をいたします。  審査を行うのは、本二十三日及び明二十四日の二日間とし、審査方式総括審議方式とすること、質疑割り当て時間は総計百七十二分とし、各会派への割り当て時間は、日本社会党六十九分、公明党・国民会議四十三分、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会それぞれ十七分、新政クラブ九分とすること、質疑順位及び質疑者等についてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右、理事会決定のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十八年度補正予算案審査のため、本日の委員会国連大学学長特別顧問永井道雄君及び航空法調査研究会代表幹事宮城雅子君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等につきましてはこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは、これより順次質疑を行います。久保亘君。
  9. 久保亘

    久保亘君 昨日、社会保険審議会は、健康保険法改定関連をして賛否両論併記答申をいたしましたが、期待どおり答申が行われるということを前提にしてこられた厚生大臣は、この答申をどのように受けとめておられますか、お尋ねいたします。
  10. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 昨夜答申をちょうだいいたしましたが、私どもが諮問をいたしました二十一世紀の未来に向かってわれわれの健康を守る、国民の健康を守る保険制度をより確実なものにするための改革が必要であるということにおいては、基本的に御理解をちょうだいしたものと思っております。
  11. 久保亘

    久保亘君 審議会としては、賛否両論を併記する答申を出さざるを得なかったということは、政府諮問を了承できなかったということではないんですか。
  12. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 一本化した答申は得られませんでしたけれども、基本的には、今後の国民の健康を守る保険制度をしっかりとするためには改革が必要であるということについては、御理解を得られたものと解釈をいたしております。
  13. 久保亘

    久保亘君 解釈の問題じゃなくて、あなたの諮問は了承されたのかされなかったのかということを聞いているんです。
  14. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ほぼ了承されたものと、こう理解しております。
  15. 久保亘

    久保亘君 この両論併記答申が了承されたのだという解釈は、それはあなたの勝手な解釈じゃないですか。
  16. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私の経験はまだ浅いのでありますけれども、私は農村出身議員でありますから米価審議会米価を決定することを十数年見ておりますけれども、あの米審等でも両論併記という答申はたびたびありますが、これらのものを十分熟読玩味し、勘案し、大臣はその中で一つの方向を決めなければならないと思います。
  17. 久保亘

    久保亘君 それは了承されたということじゃないのでありまして、総理大臣厚生省案見直しを総選挙中も総理大臣は公約されておりますけれども、今度の答申厚生省案を了承しなかったということになるわけですが、総理大臣としてはどうお考えですか。
  18. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私の答弁で、了承されたと思うというのが行き過ぎであるとすれば、ほぼわれわれの考え方を理解していただいたものというふうにお考えいただきたいと思います。
  19. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 両論併記という場合を考えてみますと、要するに諮問に対するお答えが両論併記ということでありますから、その両方をよく読んで、そして責任者である厚生大臣がよく検討して考えなさいと、そして処理をしなさいと、そういうような意味の意思表示ではないかと私は解釈いたします。
  20. 久保亘

    久保亘君 であるとすれば、総理大臣選挙国民にお約束になりましたことを尊重すべきではないでしょうか。
  21. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 選挙中私が申し上げましたのは、厚生省事務当局が案を出しておるけれども、自民党党内においてはいろいろ議論もあり、幅広い見地に立ってこれを見直しますと、そういうことを申し上げたので、そういう筋で先般来、政務調査会等を中心にしまして党内の論議で、選挙中得たいろんな経験等々も踏まえて、各議員議論もし、意見も言い、そしてあのような結論になったと、そういうことであります。
  22. 久保亘

    久保亘君 次に、もう一つ補正の前にお尋ねしたいことがございますが、政治倫理が最も厳しく問われているときに、昨日来、自民党代議士にかかわるクレーン船を使っての保険金詐取告発事件が報道されておりますが、告発の事実と検察当局捜査状況について法務大臣にお答えいただきたい。
  23. 住栄作

    国務大臣住栄作君) お尋ねの件につきましては、東京地検が、昭和五十八月九月二十六日付で加藤卓二代議士外一名につきまして詐欺罪告発をされまして、これを受理したということを聞いております。その受理に基づいて所要捜査をしておるものと思っております。
  24. 久保亘

    久保亘君 じゃ刑事局長捜査状況を御報告ください。
  25. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) お答えいたします。  ただいま大臣からも御答弁がありましたように、昨年の九月二十六日付で加藤卓二代議士外一名に対します詐欺罪告発が出されました。現在、東京地方検察庁において所要捜査を行っているところでございます。詐欺罪内容は、新聞等に一部出ておりますが、クレーン船を故意に転覆させたにもかかわらず海難事故を装って一億二千五百万円の保険金の支払いをしたというのが詐欺に当たるという要旨でございます。  捜査状況につきましては、目下捜査中でございますので、詳細は差し控えさせていただきたいと思います。
  26. 久保亘

    久保亘君 検察当局捜査中ということでありますならば、捜査の結果を待たなければなりませんが、最近、保険金詐取をねらった殺人とか放火というような事件が頻発いたしておりまして、これは憂慮すべき社会情勢だと思うのでありますが、もしも国会議員がこのような保険金詐取事件にかかわるということになれば重大な問題でございまして、このような疑惑が報ぜられることだけでも政治の信頼を根本から揺るがすものだと思うのですが、政治倫理の立場から、総理大臣の御所見を伺いたいと思うのです。
  27. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題はもう少し司直の調べを待ちまして、内容が正確に規定されたときにいろいろ意見を表明すべきであると思っております。
  28. 久保亘

    久保亘君 それでは、五十八年度の補正予算関連をして二、三の御質問をいたしますが、最初に、租税印紙収入四千百三十億円が減額補正されておりますが、減税千五百億円を除きましても二千六百三十億円の税収減額であります。財政運営の基本として税収見積もりが適正でなければなりませんが、この減収の原因とその責任についてお答えいただきたいと思います。
  29. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 五十八年度の年度を通じました税収につきましては、これまでの税収実績、これは毎月報告を受けるわけでございます。それから改定されました経済見通し、さらに大法人からの聞き取り調査、そういう結果を基礎として税目ごとに積み上げによりました見直しを行いました結果、御指摘のようにそれぞれの税目につきまして過不足が生ずる、それを補正計上したわけでございます。したがって、いわゆる名目GNPが五・六、当初見通し。それを改定見通しあるいは実績見込みと言った方がいいかもしれませんが四・五。それで実質は三・四、三・四となっておりますが、やっぱり名目がこれだけ落ちたということが一つでございます。実質が落ちなかったというのはいわば物価が安定しておったということになろうかと思うのであります。したがいまして、今御指摘がありましたように、一番大きな部分は所得税減税の千五百億、それから物価安定等に伴います名目賃金伸び低下等によりますものが千百億というようなものになるというふうに承知いたしております。  これは別に定義が決まっているわけではございませんけれども、一%は誤差のうちと、こういうようなことをよく申します。したがって、現在の段階におきましては、所得税減税等を入れますならば、一%の範囲内におさまっておりますものの、かっても六兆円の、これは国際同時不況影響があったわけでございますが、そういうこともございましたが、やはり税目ごとに積み重ねて、見込みでございますから多少の狂いはございますものの、できるだけ確度の高いものにしていくという努力は今後とも重ねなければならぬというふうに考えております。
  30. 久保亘

    久保亘君 誤差のうちということも、まあ御説明としてはわかりますけれども、しかし今度の場合には、特に源泉所得税などが減少をいたしておりますのは、政府の二カ年にわたる人事院勧告を無視した公務員賃金の抑制とか、財界の賃金抑圧の結果などがやはり経済運営上の問題として影響を及ぼしているのではないかと思うのですが、いかがですか。
  31. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御案内のように、やっぱりその分は先ほども申し上げましたように名目成長率のいわば鈍化に伴いますところの名目賃金伸び低下ということは申し上げましたとおりあったと。しかし、それは実質成長率ということが現在もなお見込みではございますものの維持されたということになれば、経済政策として言ってみれば当初の見通しに対して実質では沿い得る状態になっておるということも一方御理解をいただける問題ではなかろうかというふうに考えます。
  32. 久保亘

    久保亘君 それでは、経済企画庁長官にお尋ねいたしますが、五十八年度の当初経済見通し実績見込みを対比をいたしますと、完全失業率で二・三%が二・六%、一人当たり雇用者所得が五・二%から三・二%と、いずれも悪い状態になっているわけですね。このことは所得税減収影響が及んできている実情を示すものだと思うのですが、このことについては政策運営上の欠陥といいますか失敗が考えられると思うのです。長官としてはこのことについてどういうふうな反省を持っておられるのか、それが五十九年度にどういうふうに生かされなければならないとお考えでしょうか。一
  33. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 雇用者所得が総額でも減っておりますし、それから一人当たりも減っておることは御指摘のとおりでございます。この背景は物価が非常に安定をしたということもありましょう。それから先ほど御指摘の人権問題もあろうと思いますが、いずれにいたしましても相当額が当初見込みより減っております。  それから第二の失業の問題につきましては、雇用者数は前年に比べまして約八十万人ほどふえております。しかし、失業率そのものは若干ふえておる、こういうことでございますので、その点は、私は、多少の誤差はあったにいたしましても、雇用者全体がふえておるということはこれは大変いいことだと、こう思っております。本年も雇用者は約八十万人、五十八年に比べまして五十九年はふえますけれども、失業率そのものは大体横並びである、このように考えております。
  34. 久保亘

    久保亘君 次に、今度の補正予備費減額が千四百億円ございますが、そして既定経費の節減で千九百七十七億円が補正されております。予備費は五十七年度も千二百億円減額補正されておりますし、それにもかかわらず、ずっとここ数年続いて三千五百億円が当初に計上されている。予備費の計上がそもそも大き過ぎるのじゃありませんか。
  35. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは久保さん御指摘予備費、まずその規模をどうするかというのがやっぱり一番問題でございます。予備費というのは、財政法第二十四条に基づきまして、まさに予見しがたい予算の不足に充てるという性格のものでありまして、特別の基準があるわけではございません。したがって、いろんな要素を総合的に勘案して相当と認める類と、こうして計上するわけでございますが、おのずから幾らが適当かということになると限度がございますが、現下の厳しい財政事情を勘案して結局前年同額ということで三千五百億円を計上したわけでありまして、ただ、これについて言えますことは、従来の予備費計上額と比較をしてみますと、徐々に抑制的にはなっております。まあ戦後の例をずっと見てみましても一、二%、今〇・六九%と、こういうことになっておりますので、総合的に見た場合に私は妥当であろう。確かに御指摘のように、幾らでなければならぬという厳しい基準を選定することは非常に難しい課題であります。
  36. 久保亘

    久保亘君 それならば、今度は既定経費の節減についても御説明をいただきたいのですが、既定経費の節減の中で、節減という名前で大蔵省の国債費が二百五十億円不用額として減額されておるのは、これはどういうことでございますか。
  37. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) お尋ねのとおり、節減額ではございませんで不用額でございます。これは主として金利変動に基づく割引料の低下に基づくものでございます。
  38. 久保亘

    久保亘君 国債費というのは既発の国債の償還金利の費用だと思いますが、これはどうして当初に計算されたものから二百五十億円も不用になってくるのか、それをお聞きしているんですよ。
  39. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 国債費で経理しておりますのは、今お尋ねの長期債のほかに年度内の資金繰りを助ける意味の短期証券、一般会計でございますと大蔵省証券、そういうものの割引料も経理しているわけでございまして、これが金利の変更によりまして割引料が下がってまいる、そういう場合には当然不用にいたす、こういうことでございます。
  40. 久保亘

    久保亘君 これはあなたの方が細かい資料をお持ちだと思うんですけれども、当初に全然想定できなかったものなのかどうか、それはどうですか。
  41. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 金利でございますから、当初予算におきましても一定の想定を置くわけでございますが、その後、これまた金利でございますから変動するわけでございます。当初予定しなかった引き下げがありました場合には、それに応じて修正するということが適当かと思います。
  42. 久保亘

    久保亘君 それでは、二百五十億に見合う金利の変更の実態を数字できちんと示してみてください。
  43. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 十月三十一日発行分から割引歩合の引き下げがございました。改定前は五・三七五%でございましたのが四・八七五%、つまり〇・五%引き下げになりました。それに伴います節約額、それからさらに細かく申しますれば、五十七年度に決算上の剰余金が発生いたしました。そうすると、資金繰りがそれだけ楽になるわけでございますから、金利がその分だけ浮く、そういう要素も含めまして約二百五十億でございます。
  44. 久保亘

    久保亘君 次は厚生省。社会福祉施設整備費で百四十億、社会保険国庫負担金で三百三十二億の不用額を出されたのはどういうわけですか。
  45. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 第一点の社会福祉施設費については、御案内のようにこれは地方と一緒にやりますので、最近の地方財政の逼迫、また用地の取得を伴う状態で、今日御承知のように用地の取得が非常に困難をきわめる客観条件にありますので、これらのために不用額を残すことになってしまいました。  第二点については、これは総額の四%程度でありますが、これは老人保健法等を通していただきまして老人医療にも著千の自己負担ができたこと等により、最近医療費がおかげさまで低減状態にありますので、そのために不用額を残すことになってしまいました。
  46. 久保亘

    久保亘君 厚生省のこの大きな二つの不用額は、五十七年度の補正後の予算額にちょうど五十八年度の当初で上乗せした分に見合うくらい今度補正減額になっておるんです。だから、初めから使えないものを組んだのじゃないですか。
  47. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 先生御指摘の今のお話は、地方改善施設整備費におきまして五十七年度の補正後予算が四百六億でございまして、五十八年度で五百十六億の当初予算を組みまして今回お願いしている補正後の予算が四百六億と、こういうことの御指摘だろうと思いますけれども、実は地方改善施設整備費、五十六年、五十七年と六百四十二億、六百三十七億という予算を計上いたしてまいりました。五十八年度でその後の実績から多少の見込み減はございましたけれども、事業の性格上急激な予算の落ち込みを来すこともいかがかというようなことで五百十六億という百億以上の予算減額をいたして計上したものでございまして、結果的には御指摘のようなことになりましたことは、私どもとして大変残念なことだと思っておりますけれども、こういう傾向を見まして、今後、来年度予算におきましてはさらに実態に見合った予算を計上してまいりたいというふうに考えております。
  48. 久保亘

    久保亘君 時間がありませんので、それでは補正予算に関してもう一つだけお尋ねしたいと思いますが、今度の補正で災害復旧事業費四千四百四十二億円の追加がございますが、五十八年災の状況、それから既に予備費等で措置された額とか、復旧の進捗状況などについて御説明をいただきたい。  それから、特に今年は豪雪で近年まれな災害を引き起こしておりますが、この雪害を政府はどういうふうに把握されておりますか。特に、九州にも及ぶ異例の広域、長期にわたるこの雪害に全国から復旧、救済の要望が強いと思うのですが、これらに十分にこたえられるのかどうか、この点について御説明いただきたいと思います。
  49. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村佐近四郎君) 昨年の災害でありますが、五十八年度は多様な災害が発生した年であります。日本海中部地震、青森、秋田、それから山陰地方の水害、それから三宅島の噴火と、大変多様な災害の多い年でありました。  そこで、公共につきましては前倒し七五%、現在補正を審議されておりますが、来年度は八五%と、大変こう私が見ましても滑らかにうまく進捗をしておる、感心をしておるというのが、他の状態から見てそういうふうに思われるわけであります。  ただ、三宅村につきましては、今月中に激甚災害の指定が事務的に終わっておりまして、もう二、三日後にこれが決定をすることになっております。ただ、集団移転の問題につきましては、この前も都知事とも話をいたしましたり、また民間の代表の方ともお会いいたしまして、これは東京都の意見もございますし、また地元の住民の皆さん方らの大変な希望の問題もございましょうから、よくこれらは住民のサイドに立って皆さんと話し合ってその集団移転の問題については決定してまいりたい、こういうふうに思っております。  今豪雪の問題ですが、これは大変な豪雪であります。恐らく戦後初めてじゃないかと思います、この豪雪は。そういう意味で、その被害状況にかんがみまして、十日の日に政府の豪雪対策本部を設置をいたしました。そして私が団長として新潟、富山、石川、福井等を回ってまいりまして、その豪雪の多いのに驚きました。そればかりでなく、今おっしゃったように四国、九州までにもどか雪が降っているというわけでありまして、その被害の状態は極めて私は大きいものがある、こういうふうに受けとめております。そこで、政府の第二次調査団も二十七日から今度は東北の方に向けて出発をすることになっております。  そこで、行ったときの空気といたしましては、私も雪国でありますからよく承知をしておりますが、これはいろんな意見、いろんな陳情を承ってまいりました。特に高速バイパス等々においては除雪が完璧である。これは本当の経済の動脈であったと受けとめておりますが、ただ問題は市町村道がやっぱりこれは一番困っておりますね。市町村道がやはり途絶えておるところもございますし、特にことしの雪は長いんですね。十一月の末からずっと降り続いておりまして、特に厳寒である、寒さが強かった、なかなか氷が解けない。こういうような関係から除雪機が壊れる、あるいはまたその他のいろんな関係から市町村では除雪費が底をついておる。こういうような形から一日も早く助成費に対するところの除雪費を追加をしてもらいたい、早く何とかしてもらいたい。特別交付税もこれはとてもじゃないが考えられない。あるいはまた、とか雪の九州、四国についてもこの被害は極めて大きいです。こういう問題をこれからどうするかということで、各省庁一生懸命に一日も早くその現況の状態調査をさせております。そういう意味から、そういったことが近くこれは調査ができるものなりと考えております。ただ問題は、なかなか豪雪というものはむずかしい問題でございますけれども、  幸いにして、三八は多少時間がたっておりますから例にならない場合がありますが、五六の例があるわけです。五六のときの例をこれは下るというわけにはいかぬだろう。私も雪の国に育ちまして、いろんな雪の状態についてはだれよりもだれよりも私はそれに鍛えられてきたというふうに考えておりますから、今度の場合はこれは五六の例を下回るというわけにはいかぬ。あの例を見ながら、あの例を参考にしながらこの対策は遺漏なきようにしなければならぬなあと。雪の降るところと雪の降らないところ、これは大変なやはりハンディがあります。ただ、過疎と言っているのじゃないんですね、やはり雪の降るところと雪の降らないところと。そういう意味から、政府としましても最大限の努力をしてこの災害にこたえることが最大の道なり、こういうふうに考えております。  以上でございます。
  50. 久保亘

    久保亘君 詳しく御説明いただきましたけれども、ぜひ今お答えのような方針で積極的にやっていただきたいと思います。私どもの党でもこの雪害の調査団を先日新潟、富山等へ派遣いたしました。いろいろと地元の地域の要望等もございますので政府にも申し入れをいたしていると思います。お願いをいたしておきます。  最後に、戦後政治の決算ということをよく言われるのですけれども、この戦後政治の決算ということを予算の面で考える場合には、やっぱり予算編成のあり方というものについていろいろやることが大事になってきているのじゃないかという気がいたします。特に大蔵省が復活財源と称するものを大蔵省案決定の段階で留保しておいて、そしてこの復活財源をめぐって陳情合戦やいろんなことが行われる。こういうことは今日のやっぱり政治が構造的に利権につながっていくその誘因ともなっているんじゃないかと思うのであります。または、そのことによってもたらされる非能率、それから自治体や団体等の労力や経費の浪費、こういうようなものについても考えるならば、もっと予算編成のあり方というものについてこれは配慮があってしかるべきではないか。戦後続いてまいりました予算編成に当たっての陋習を打破するお考えはないか、大蔵大臣にお聞きをいたします。
  51. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 予算編成の際、御案内のようにこの調整財源、いわゆる公共事業、非公、それぞれ八百億、千六百億、そういうようなものを第一次内示の段階で留保いたしまして、それから予算の最終的な政府・与党一体の責任で編成するわけでございますから、調整財源としてそれを使う、こういう手法をとっておるわけでありますが、これはやっぱり長い間の一つは定着、いろんな予算編成の知恵とでも申しましょうか、そういうものの集積であるという一面と、それから、なかんずく今ごろのように財政の対応力を回復するという大きな課題で、むしろ分捕り合戦というよりも、どこでどうしてお互いが知恵を出し合って調整するかというための手法としては、私は、この複雑多岐にわたりますところの各省庁のそれぞれの考え方を円滑に進めていくためには、原案の内示後、復活折衝という形で各省庁、与党等々と協議をしながら調整を行うことはこれは必要である。しかも、年々その時間は非常に短縮されておるという感じがいたしておりますので、これはやっぱりお互いの出し合った大変な、人類の知恵というと少しオーバーでございますが、予算編成の知恵の集積ではないかという意味においては、この段取りを変えることはむずかしいのじゃないか。ただ、御案内のように陳情政治、そういうものは自粛するのが結構だと思いますし、恐らくは久保さんが予算編成をなさる責任ある立場におなりになったといたしましても、やはり同じような知恵になるなという感じがいたします。
  52. 久保亘

    久保亘君 知恵にも悪知恵というのもあるんでしてね。それで私は、しかしイギリスなどのやり方というのは、やはりもっと財政民主主義の立場をきちっと踏まえた上で合理的なやり方というものがあると、こういうことを思うんです。それで意見を申し上げたのでして、ぜひひとつ検討していただきたいと思います。  参考人に御出席いただいておりますので、教育改革についてお尋ねいたします。  最初に、中曽根さんのお考えになっている教育改革の目標とか目的というのは何だということを国民に示していただきたいと思います。
  53. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 戦後の教育には、非常に子供たちが伸びやかになったり自由に開放されたりして非常にいい点もございますが、三十数年間の経験を経ているうちにまた多くの困難や問題も起きております。例えば偏差値の問題であるとか、あるいは入学試験の問題であるとか、あるいは塾や予備校の制度、大学入試の問題、そういうような点にもいろいろ今父兄たちが困って批判も出てきております。中央教育審議会は文部省の諮問機関としていろいろ専門的な見地からいい立派な作業を残していただいております。特に昭和四十六年、四十九年等の答申はなかなか立派ないい内容でございます。しかし、それからもう相当時間もたちまして、今新しい観点に立って次の時代を見つつ、二十一世紀に今の子供たちは生きていくわけでございますから、新しい視点に立って、しかも国民的なこれだけ関心を呼んでいるときに入ってきておりますから、できるだけ国民的なすそ野を広げた立場に立って、新しい視点に立ってもう一回教育を見直してみようと、そういう時期に来ておると思っておるのであります。もとより憲法及び教育基本法を踏まえて、その上に立って行うということは当然でございます。
  54. 久保亘

    久保亘君 教育基本法の上に教育改革を行うということをおっしゃいますが、それでは重ねてお尋ねいたしますけれども、教育基本法が中曽根さんの教育改革の基本理念としてきちっとあるんだと、こういうことで理解してよろしゅうございますか。
  55. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのようにお受け取りになっていただいて結構でございます。
  56. 久保亘

    久保亘君 それでは、あなたの率いられる自民党の皆さんが教育基本法の改正を叫ばれたり、全国各地の地方議会で教育基本法改正を求める決議をなさろうとしているのは総理の意に反することなんですね。
  57. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自民党がやっているということは私聞いておりません。いろんな団体がおやりになることは自由であります。しかし政府は、恐らく最近、清瀬さんのころは別としまして、歴代文部大臣は憲法及び教育基本法の基礎に立って教育を行い、改革も行うと、そう言っていると確信しております。
  58. 久保亘

    久保亘君 中曽根さんのお考えはよくわかりましたので、それではそういう立場に立って今後教育基本法を基本の理念としながら教育改革考えられる、こういう立場を貫いていただきたいと思うんですが、ただそのやり方なんですけれども、これは、こういうことは余り取り上げるのはよくないのかもしれませんけれども、新聞によりますと、あなたは昨晩憲政記念館で、教育改革を通じて野党の分断、再編につなげていくようなお話をなさったということなんでありますが、こういうことがありますと、やっぱり中曽根さんは教育改革政治に利用しようとしているんじゃないか。つまり、政治の教育を支配する考え方が出ているんじゃないかということで非常に危惧の念を抱くわけでありますが、これはどういうことですか。
  59. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) けさ新聞を見まして私も驚いたのでございますが、あれは極めて不正確な記事であります。私は川崎秀二君の七周忌に出まして一応ごあいさつをして、それから参加者のところを回って歓談をしたわけで、いろんな人に会ったわけです。私は、皆さんがおっしゃるのをああそうですかそうですかと聞き役に回っておったので、立場上それは当然のことであります。いわんや他党に干渉がましいことや失礼のようなことは一切申しておりません。しかし、あの中にはいろんな党の人もおり、自民党員ももちろんおりましたけれども、いろんなことをパーティーの場所ですからがやがや言っておったわけであります。そのにはいろんな議論もありました。しかし、私がああいうようなことを言ったということはございません。全く本当にございません。  それから、私が一つ思い当たるということは、教育問題について言ったことはあるんです。それは、各党と自民党とお話し合いを願った方がいいと自分は考えておると。その際には、法案ができてから話し合うよりも、その前に各党の人たちが自民党とも話すときに自由に討議してもらって、それをブレーンストーミングという言葉は確かに使いました、もう自由に討議してもらって、そしてだんだん性格やら骨格づくりをやったらどうだろうかと。自民党で法案をつくってからこれでどうですかということよりも、つくる前にそういう各党と自民党で話すときにブレーンストーミングみたいな形でみんなで話し合って、そして性格や骨格を決める方がいいんじゃないのだろうかと、そういうことは申し上げました。その点は正直にそのとおり申し上げますが、それ以外、政界の再編成みたいだとか人の党をどうするかなんて、そういうことは言っておりません。
  60. 久保亘

    久保亘君 わかりました。そういうことをもうおっしゃるようなら総理の資格もないと思うので、きょうはそういうことでお聞きをしておきます。  ところで、総理大臣が言われている教育改革のいわゆる選挙中に言われた七つの構想、今おっしゃいました共通一次とか偏差値教育の是正の問題とか、あるいは高校入試の改善であるとか、そういったような問題は本来文部省の責任において考えられるべきものなんじゃないでしょうかね。それで、私はきょう永井先生においでいただきましたのは、教育家でもあられるし、ジャーナリストでもあられますが、元文部大臣として特に共通一次にかなり責任を持たれた立場のお方でございました。共通一次そのものがこれは大きな教育改革であったわけです。その共通一次という教育改革が六年にして再び中曽根さんから教育改革の課題として取り上げられてくるということが、これが重大なのであります。当時の文部大臣として、永井道雄さんはこの問題についてどのようにお考えでしょうか。
  61. 永井道雄

    参考人永井道雄君) ただいま共通一次のお言葉がございましたが、その前に、教育改革との関係においてどう考えるかというそういう御質問でございますので、初めに教育改革について、次に共通一次に関連する入試制度について私の考えを申し上げさせていただきたいと思います。  今日、いわゆる偏差値教育というものが非常にはびこりまして、そして入学試験制度の圧力のもとに、高校生、中学生、予備校生、すべてが勉強せざるを得ない状況の中で狭い意味の学力教育が行われますために、幅の広い、そしてしなやかな、また力強い人間が育ちにくいということは多く指摘されておりますが、この問題について総理大臣もそのように述べておられる、また文部大臣もそう述べておられるということを私は新聞報道等で知っておりますが、全く同感でありまして、敬意を表したいと思います。  そこで、どうするかという問題でありますが、最初に共通一次「これは私が文部大臣在任中に行いましたことでありますから、当然責任もあることですので申し上げたいと思います。共通一次について私は決心をして実施をいたしましたが、その後の推移を見ておりますと、残念ながら、これは当時考えたような方向において成功したというふうに見ることはできません。大変残念なことであります。  どういうことであるかというふうに御説明を申し上げますと、当然、大学の自治というものは尊重すべきことでございますから、したがって文部省が責任を持って共通一次を行いますけれども、しかし入試制度全般について国立大学協会がどのようにお考えになるか、これを極めて長い期間にわたって大学協会において御審議を願いました。大学協会は学長の集まりでありますから、学長先生方だけが合意をされたのでは不十分でありますので、御審議の結果を各大学の評議員会、さらに教授会において御検討を得た上で最終報告書をおつくりいただきたいという手続をとったわけであります。そして、昭和五十一年に国立大学協会の報告書ができまして、これが文部省に提出されました。それに基づいて実は共通一次に踏み切ったわけでありますが、その文書は非常に重要でありますので、私は、その特に重要な部分について今日もそらで申し上げることができるほどであります。  共通一次につきましては五教科七科目について必修科目の中から選んでこれを全国的な試験を行う、しかしながらこれだけでは到底大学の入試制度として不適切であるので、このほかに二次試験というものを行いますが、その二次試験というのは共通一次に含まれていない科目から選び、そして試験の方法は記述試験、論述試験、あるいは面接試験、さらに実技試験などの方法によって記述力、表現力、創造力などを調べることとする、そして共通一次試験の結果ともう一つの結果、二次の結果、この総合判定を各大学が行うことによって入学試験を実施する、改革を実施する、これが国立大学協会の御決定になった御意向であります。  それに基づいて文部省の方は共通一次試験を実施いたしましたが、しかしながら二次試験の方で、今申し上げたような実技、論文あるいは面接等の方法によって記述力、表現力、創造力というふうなものを調べる試験が十分な形で進行していないことは皆様御承知のとおりであります。一部の大学におきましてそういうことを行った例が、例えば宮城教育大学においてあります。また筑波大学が相当努力したという例もございます。しかしながら、全般的には共通一次試験に依存いたしまして、そして二次の方がそれほど力を入れられていない。東大などの場合には二次に力を入れておりますが、しかし一次と違った形の試験をするというのではなくて、一次と類似の科目について類似の問題を東大の責任において繰り返すということでありますから、これが国立大学協会報告書の趣旨に沿っていないことは明らかであります。すなわち、残念ながら国立大学協会は文部省その他天下に公表された報告を今日まで実施されていないわけでありますから、私の考えでは、入試改革はいまだに半分が行われただけであって、あとの半分は行われていないと見るのが妥当であると考えます。  そうした状況の中で偏差値教育というものが蔓延いたしまして、そして狭い意味の学力テストだけがあたかもテストであるかのごとき状況を呈しているのは、実は当時から予想していたことでありまして、私は最初の報告書に基づいてもう一回やり直しをしなければならないのだと考えております。すべてをやめてしまうというのではなくて、最初の報告書に戻るということであります。  その場合、まず最低限の方法としてどういうことが必要であるか。ただいま申し上げましたように、国立大学協会におかれましては、当時の天下に公表された報告書どおり何ゆえに行われないのかということの御説明の文書が必要であると考えます。私も長く大学の教師をいたしておりましたから、したがいまして、論文試験というようなもののためには大変大学教師の労苦が必要であるということは十分に承知いたしておりますが、しかしながらわが国の国立大学の教官諸氏が労苦をいとって第二次試験を行わないというようなことは私として考えたくなく、またさようなことはあり得べからざることと思っております。  さらに、文部省に一つの注文がございますが、当初この試験に踏み切りましたときに、一挙に試験改革というものはできるわけではない。そこで大学入試センターを設けますが、その入試センターの中に二つの部門を設置する。一つは共通一次の実施部門、もう一つは研究部門というものであります。この研究部門は、果たして入試改革がうまくいっているかどうか毎年実情を調査して、これを天下に公表して、国民とともに考えるというはずのものでございますが、大学入試センターは今日に至るまで研究部門の研究を発表いたしておりません。私にとって理解のできないことでありますので、二代の所長、加藤先生、小坂先生、それぞれに伺いました。陰で伺ったわけではなく、私はNHKの討論会で伺ったことさえございますが、これに対してお答えがございません。最近のある文部次官に聞きましたところが、私の質問の方がごもっともであるというお答えでございましたから、私は、私だけがそう考えているのではなく、でき上がった一つの部門が動いていないのだということは文部省内においても御理解のあることと思っております。  以上が入学試験に関する問題点でありますが、これと、首相その他の御発言との関連において教育改革について見解を述べさしていただきますが、実は入試改革を行うときには労働省の協力が非常に必要であります。なぜかといいますと、指定校制度というものがありまして、相当の企業が実は学校をあらかじめ選定いたしております。そのことが大学間格差というものを強化いたします。しかしながら、実は相当数の企業が極めて良心的に我が国の学校教育というものの成長を願いまして、採用、昇進に当たって、学歴にとらわれないで人々を遇していこうという努力を続けておられています。既に経済同友会においてそうした研究が行われて公表されておりますが、この問題は、私は文部大臣だけで解決しようと思ってもなかなかできない、我が国の雇用形態の問題でございますから、文部省、労働省においで御努力いただくほかはないのだと思います。  また、先ほどの総理の御発言との関連で申しますと、昭和四十六年の中教審答申は立派なものでございますが、その後、推移、変化があったという御趣旨でございましょうが、私はそのお言葉は社会の実情を反映している点で正しいものであると考えます。どういうことであるかというと、その間、生涯教育というものも極めて必要になり、社会の高齢化を迎えて不安の中にいる多数の老人と高齢者がいるということも明らかであります。その間、我が国の家庭に崩壊現象があるということは、経済企画庁の国民生活審議会報告書も明らかにしている点でありまして、特に昭和五十四年度以降、家計の構成、また家庭内における夫婦、親子の関係などに不安が増している、すなわち第二次石油ショック以後の我が国の家庭の変化について経済企画庁も指摘しているとおりであります。  さように考えますと、今日、教育をどのように扱っていくかという問題は確かに文部省だけではできない、労働省も自治省も、あるいは経済企画庁も、またそのほかに、我が国の企業内教育というものは世界的にも極めて大きな規模を持つものでありますから、通産省の協力も必要であると考えます。  では、そうならば、中央教育審議会の見解をさほど尊重しないというよりは、尊重しても全くほかのものにただいけばよろしいかというと、私はこの点について若干保守的な考え方を述べさしていただきたいと思います。  今のように各省にまたがりますけれども、しかしながら教育の問題について中核としての責任を持たれるのは文部大臣並びに文部省であると私は考えております。そして、そこの現業というものが動かなければ、幾ら立派な文章が臨調においてできましても実際に発展というものを望むことができない。これは行政管理庁長官を御経験になった中曽根総理御自身が臨調と行政管理庁との現業の関係について恐らく私が今申し上げたようなことについても御腐心になったのではないかと私は推察する次第であります。したがって、中教審と重なるから臨調は問題だということよりもさらに重要な点は、文部大臣並びに文部省が中核になって仕事ができるかということが重要な点でございまして、この点について基本的な詰めがございませんというと、私は、どんな立派な答申が総理府でできましても、あるいは中教審においてできましても事は動かないというふうに考えます。  さらに第二番目、改革を進めるに当たりましては、先ほどから申し上げましたように、各省にわたりますから連絡会議のようなものが必要でございまして、他の事項についてもそうでございますが、教育問題閣僚連絡会議というような方法も考えられるのではないか、これは素人としてこんなことも夢見る一人でございます。  さらにまた重要なことは、一億二千万の国民のすべてが教育者であり学習者であるというところが教育の特色でございますので、これをどれほど立派な専門家が集まって文章をつくり、文部省の役人さんたちが本当に獅子奮迅の仕事をいたしましてもなかなか解決はつかない。そうすると、そういう国民の全般的な地盤と今後の改革の関係をどのようにしていくかということが重要であります。その国民を代表される各党各派というものがあると理解いたしておりますが、その国民を代表する政治勢力の間にこの問題について政争を離れて国民的課題として取り組むということがなければ、これまた教育改革を推進することは極めて困難であるということにつきましては、私が申し上げるまでもなく、ほとんどすべての人々はさように考えているのではないかと思います。  以上やや長い時間をいただきまして多岐にわたりましたが、私自身力が足りない点もあって、共通一次試験について決して満足しているものではなく、その後なお新たな改革を行わなければいけない。ただ、諸外国の例を見ましても、大規模な教育組織ができました場合、我が国の場合一億二千万人中四人に一人、三千万人が学校教育に関連いたしておりますが、そうした巨大な組織というものを動かして適正な制度をつくっていくときに一挙に解決はできない。それであるからこそ文部省も、もっと積極的に研究成果というものを入試センターは発表いたしまして国民の中の論議を盛んにする、国立大学協会も国民に対して責任を持って報告書の追跡をしていただく、そうしたことで試行錯誤を繰り返しながら、あくまでも中核は文部省の現業部門の人たちにおいて手がたく一歩一歩進めていく、かようなことが必要であると、私が思うままに率直に申し上げさしていただいた次第であります。まことにありがとうございました。
  62. 久保亘

    久保亘君 いろいろ御意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。  もう一つだけ私お伺いしたいのは、文部大臣を御経験になりまして、今お話しになりました中教審か臨調がというようなことを離れて、中教審が本来の設置目的をなかなか果たしてこれなかった。今日では中教審は経過報告を行ったまま、十一月以降任命もされず、もう休眠審議会になっております。この中教審というのはもう本来だめなものなんだろうか、あるいは中教審がだめになっているのは中教審の人選や運営、そういうものに配慮が足りないことにあるのだろうか、その点は大臣を御経験なさった永井さんとしてはどうお考えですか。
  63. 永井道雄

    参考人永井道雄君) お答えさしていただきます。  私は、文部省の中教審が特に悪い組織と思いません。各省に審議会がございます。文部省の審議会に問題があるといたしますれば、恐らく他の省の審議会も、私は幾つか関係がございますが、これも問題があるのだと思います。どういう問題がありやすいか、これは人々が既に指摘している点でございますが、行政官庁の中核の人たちが政策の実行を急ぐ余り、比較的自分の政策を理解しやすい人、そうしてそれに対して助言を与えやすい人を集める傾向があるということを否定できません。  私は、文部大臣を務めさしていただきましたときに、文部省としばしば違うお立場にございます、例えば久保先生が長く御縁を持っておられた日教組の方々の御意見も承るようにいたしました。日教組に賛成というわけではございませんけれども、しかしながらそこに一つ国民の教育の勢力があるということは厳たる事実であるからであります。実は私はそのほかに懇談会メンバーには外国人の参加を得ました。これも欧米に偏るべきでございませんから、アジア諸国の方々にも御参加を願ったわけであります。  私がやったことが特にいいと申し上げるわけではございませんが、先ほどから申し上げましたように、非常に教育問題というようなものは多岐にわたりますから、繰り返し努力をいたしませんというと、とかく意見が違った人間が集まりにくい。しかし、最も意見が違った人間が冷静に話し合える場というものを審議会にしていきませんと実効が上がらないという点は、これは私は他の官庁における審議会とも同様であって、私自身たまたま文部省におりましたが、文部省の中央教育審議会が特におかしい組織だというようなことは申したくありません。そうでないと思います。  また、客観的に見まして、劔木文部大臣昭和四十二年に我が国の学校教育の拡充についての諮問をされまして、これを受けまして、森戸先生の会長の時分と思いますが、昭和四十六年につくりました文部省の中教審の答申というものは、これはOECDの教育使節団にも高く評価されたものでありまして、我が国の文部省の中教審にさような実績も事実あったということは申し上げておく必要があると思います。しかし、常にそのようにいくものではないということも先ほど申し上げたとおりであります。
  64. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 永井先生、ありがとうございました。
  65. 久保亘

    久保亘君 どうもありがとうございました。  文部大臣にお尋ねいたします。中教審はどうされるおつもりですか。
  66. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お答えいたします。  新しい教育機関をどのような構成で、どのような人選でスタートをさせるか、ただいま検討中でございます。したがいまして、この新しい機関がどのような形でいけるかという一つの構想ができ上がるまでは当面見合わせていきたい、検討する事項についてもいささか重なり合う場面も出てくるかもしれませんし、そうしたことも全部含めて、当面発足までは見合わせていきたい、このように考えております。
  67. 久保亘

    久保亘君 ということは、中教審にかえて、いわゆる世間で言っている臨調をつくる、こういうことですか。
  68. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 中教審は、文部省固有の教育、芸術、文化、それを審議いたすものでございます。新しい機関は、衆議院の予算委員会でも総理がお述べをいただきましたので久保先生もお聞き取りをいただいているかもしれませんが、二十一世紀に向けて、これから日本の国の社会全体において教育がどのような位置づけであるべきか、どのような機能を果たしていくべきか、そうしてまた、そのことが、先ほど永井さんのお話にもございましたように、いろんなところとのかかわり合いがございます。教育は、それこそ生まれて、まさに死ぬまで、生涯すべてにかかわり合うことでございますから、そうしたことを幅広く、そうして長い目で検討していきたい、こういうふうに考えておるわけでございますので、中教審とは物の見方、いわゆる視点あるいは検討の角度、それはおのずと違ってくると思っております。  したがいまして、中教審は中教審でございますし、新しい機関はむしろそういう意味で中教審そのものをまた生かすという意味もございますし、また新しい機関は、中教審がこれまでいろいろ議論をしてきたものを積み重ねた上で、その上に、その底からスタートをしていくという面もございます。いろんな意味で私は新しい機関は意義あるものだと考えています。
  69. 久保亘

    久保亘君 大体文部省は、初めから中教審を一つの、先ほどのお話にもありましたが、考えている政策を進めるための隠れみの的に使ってきたところに問題がある。中教審が悪いのではなくて、中教審の運営の仕方というか、構成の仕方に大きな問題が従来あったのじゃないか。大体今度の予算を見ましても、中教審のこの出席旅費などというのは二十三万一千円しか組んでいないんです。もう初めからやらぬつもりになっているんですね、こういう会は。だから、そういうことにしておいて、中教審ではだめだから臨調をという、そういう考え方が私は大変おかしいと思う。しかし、その議論はこれからまた機会を見ながら繰り返しやっていかなきゃならぬ重要な問題だと思っておりますが、中教審というものを一つの例にとっていきます場合に、与野党はもとより国民の大多数が納得のいく公平な人選をどう保障するかということがなければ、臨調方式をとった場合であっても同じことです。国民合意というようなことは言葉だけになる。  それじゃ、その公平な国民の大多数が納得のいく人選というものをどうやって保障するかということについてお考えになったことはありますか。
  70. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) これから国会の審議を重ねていくうちに各党会派の皆様方の御意見も十分聴取できるわけでございますし、またこれまで衆議院の予算委員会の前半行われました議論の中でも、総理もまた私も、できるだけ幅広く多くの皆さんの御意見を聴取していきたい。まだもちろん具体的にはどのような構成でいくかということは決まってはおりませんが、姿勢といたしましては、総理もたしかおっしゃったと思いますが、場合によっては、日本の教育諸団体の中の一角を占める日教組の皆様方の御意見もむしろ十分耳を傾けていきたい、それぐらいの大きな気持ちでおりますと、このように総理も申されておりますし、私自身もそのような考え方でございます。したがいまして、これからいろんな角度で議論をする前に、最初からもう反対なんだということではなくて、どういうことをやっていこうか、教育はそれこそ将来百年の日本の大計のことでありますから、できるだけ多くの皆さんの意見をいただきたいという、そういうスタンスでおりますということをどうぞ御承知おきいただきたいと思います。
  71. 久保亘

    久保亘君 お気持ちはよくわかりますが、しかし今度は人を入れればいいという問題ではないですね。その機関がどういうふうな運営を行うかということが非常に問題なんでありまして、特に国民的合意を求めるということならば、いかなる審議機関であっても、教育改革を論ずる機関が広く国民に公開をされて、そして決して拙速をとうとばない、そういうようなことについての保証が重要でありますが、これらの教育改革を論ずる機関は必ず公開をされるということについて、文部大臣は保証できますか。
  72. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) この問題につきましても、私がとやかく言うべきではないと思うのです。新しい機関の皆さんがお考えになることだと思いますが、文部大臣として常々私が衆議院の予算委員会も通して申し上げてきたことは、できるだけ議論したことは国民の前に明らかにしていこう、そしてその出てきた問題に対し考えていただいたこと、議論していただいたことに対してまた国民から多くの意見をいただいていく、それをまた議論の中に積み重ねていっていただく、そういうやり方をしてほしいなあという、文部大臣としての願望として申し上げてまいりました。
  73. 久保亘

    久保亘君 きょうは余り時間がありませんから、またこれから議論してまいりますが、この教育改革を、中教審であれ、何らかの機関であれ、これからひとつ百年の大計にかかわるものを論議していこうということであれば、教育改革の最も基本になるべき教科書の問題であるとか、教員の養成や資格に関する問題などについては、これこそ国民的合意を得られる教育改革の論議の課題とすべきものであって、政治的にこれを法案としてつくることを急ぐというような問題ではなかろうと思うのですが、いかがですか。
  74. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 先ほど永井さんと久保さんとの議論の中でお聞きをいたしまして、ちょっと時間をとって恐縮でありますが、中教審は、先ほど永井さんのお話にもございましたように、大変立派な答申をいたしております。それは先生方あるいはまた自民党もございますし、野党の皆さんもございますし、また多くの教育にかかわり合いのある団体からもいろんな要求が出ておりました。たとえば教員のいわゆる待遇改善の問題でありますとか、私学の問題でありますとか多くの問題を出してきておりまして、これらはほとんど、いろんな角度で難しい立場ながら、ある程度このことは政策として文部省は具現化をしております。また、できないものについては研究課題として取り組んでおるわけであります。  その中でやはり一番大事なところでは、先導的試行と言われてまいりましたいわゆる学制の問題、あるいは幼稚園の設置義務でありますように、他省との関係のあるもの、あるいは私学と公立になりますいわゆる教育行政の一元化というのがございます。こうしたことなどはなかなかいろいろな省との関係もございましてうまく進んでいないことは事実でございます。あるいは先ほど永井さんのお話にもございましたように、単に受験制度そのものだけを改善しても今の日本の社会的風潮というものは、いわゆる学歴社会といいますか、あるいは有名校偏重といいましょうか、こうしたことはなかなか直らない。こういうことはやはりどうしても内閣全体として取り上げていろんな角度から検討し、いろんなところで御協力をいただかなければならぬ問題であるということも先生おわかりをいただけると思うのです。  もう一つは、総理の特に強くお話しになっておられますことは、これからの日本の教育は単に日本人だけの教育であってはならないと思う、これからの日本の国というのは、人的資源が最大の資源である日本にとっては、国際社会の中で日本民族がどのように理解されて、どのように日本が多くの国々から理解と協力を得られるかというような、そういう立場をやはりひとつ考えでどのような人材づくりをしていくか、こういうことも大変大事なテーマだというふうに考えますから、新しい機関で総合的な検討をしていくことが日本にとってとても大事なことだと、このように総理も申し上げているところでございまして、こういう考え方でやはり日本の将来の教育にとって文部省としても責任を持って進めていきたいと、このように受けとめているところであります。
  75. 久保亘

    久保亘君 中曽根さんにお聞きいたしますけれども、今いろいろと文部大臣のお考えもお聞きいたしましたが、結局、教育が百年の大計であるということであるならば、諮問されたときと答申が出されたときと政権がかわっていても、その内容の妥当性から新しい政権もその答申に従えるようなものでなければならぬ、私はそう思うんです。そのためにはどのような機関をつくるべきなのか。それで、その人選や運営はいかにあるべきなのか。これは機関の設置にかかわる法律を準備される前の段階で各党いろいろと合意を得られるような努力をすべきものであって、政府一つの法案をつくって、これに賛成できるかどうかという各党との協議であってはならぬと思うのですが、いかがでしょうか。
  76. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は全く同感でございまして、そういう意味の意思表示は衆議院の予算委員会においてもいたしましたし、今久保さんの御質問に対しましても同感であると申し上げる次第です。先ほど新聞記事について申した断面でも、そういう意思を持っていることは御了知いただけるだろうと思います。
  77. 久保亘

    久保亘君 少し角度を変えまして、教育改革をこれから考えていきます場合に、憲法や教育基本法に基づく教育改革ということになれば男女の平等ということを重視しなけりゃならぬと思うのですが、今日の教育において我が国の男女平等というのは確立されているというふうにお考えになっておりますか。
  78. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 私は、小学校二年生までが戦前の教育を受けてまいりまして、したがいまして二年生の途中からずっと新しい教育、特に日本の激しい教育の変化の中で学問、まあ学問を身につけたかどうかわかりませんが、学校におりました。そういうことを子供のころと比較してみますと、とっても男女というのは同権で、そして男の子は元気で活発でありますし、同時に女性を大変いたわり大事にしておる、そういう私は教育になっておると理解をいたしております。
  79. 久保亘

    久保亘君 この問題に関連して糸久委員から関連質問がありますので、御許可をいただきたいと思います。
  80. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 糸久君の関連質疑を許します。糸久八重子君。
  81. 糸久八重子

    糸久八重子君 ただいま文部大臣答弁の中に、現在の教育の中では男女平等の教育が実現されているというお話がございましたけれども、差別撤廃条約の十条で教育の機会及び教科内容について男女同一の教育を特にうたっております。  そこで、総理にお伺いしたいのですが、家庭科などに関連をして男女同一の教育課程を保障していくお考えがあるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  82. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 先生の御指摘のところは、いわゆる婦人差別撤廃条約の批准で、いま中学校あるいは高等学校で行われている、特に高等学校における女性の家庭科の必修の問題を恐らく御指摘をいただいておるものだというふうに理解をいたしております。これはやっぱり長い日本の教育の、これはもちろん戦前だけじゃございません、もちろん戦後でも長い一つの教育の過程の中から出てきたものであると思いますが、ただ確かに女性だけこの家庭科だけは必修でございますよということを取り上げれば、男性との関係から見てそのことを必修にすることは同じように扱っていないのじゃないかという、そういう視点はあると思いますし、そういう御指摘があることは承知をいたしております。  ただ、教育というのは難しいものだと思いますし、先生も、大変失礼でございますが、お母様でいらっしゃいますか。——とすると、私もこの問題を参議院の決算委員会でお取り上げいただきまして勉強してみました。私も自分の選挙区の皆さんや自分の家内にも聞いてみるんです。確かにそういう条件という面から見ると女性に負担を与えているような気がするけれども、今の世の中の家庭から見ると、何でも学校にお願いしたいというお母さんの気持ちもあるんですね。本来は、縫い針ぐらいのことは親が、昔ならおばあちゃんが教えたことでも、どうもこういう核家族になっておりまして、おばあちゃんと一緒に生活していない、お母さんは忙しくてそんなことまで面倒見られないから学校で習ってきなさいという親もあるんですね。  ですから、そのことが差別だというふうになってしまうと確かに差別している形にはなりますが、教科の内容としてどのように知恵を生かしていくかということはこれは大変大事なところだと思います。ただ、確かにそういう男女差別だと、女生徒に対してそれだけ過重の負担をさせる、もっとやりたいことがたくさんあるのに、その科目を必修にされたために負担だということであるならば、そのことはやはり検討していかなきゃならぬと、こう考えておりますので、いま文部省としても鋭意取り上げておりますし、また関係のいろいろな方々から御意見を聴取して、何とか家庭科の取り扱いが条約の批准の妨げにならないように配慮していきたいと、このように考えております。
  83. 糸久八重子

    糸久八重子君 現行指導要領の中でやはり小学校を除きまして女子のみを対象としている家庭科教育、そして中学校では女子領域を主として女子が学ぶという傾向がありますし、高等学校ではただいま文部大臣が申しましたとおり女子のみ必修という形になっておるわけでありますけれども、この指導要領をどうしても差別撤廃条約を批准する上には改定をしていかなければならないと思うわけであります。中教審と関連して、どう具体的に対処していこうとなさるのか、文部大臣にお尋ねをしたいと思います。
  84. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 確かに教育課程全体の中でこの問題は検討していかなきゃならぬというふうに、私はその必要は認めております。この問題をどこで検討していくかということについては、先ほど久保さんとの御質疑の中でも申し上げましたように、新しい機関がどのような形で、それはそう長いことではございませんので、それがどういう内容をどういう角度からやっていくかというようなことも今検討いたしておりますから、そのこととの兼ね合いを見ながら、教育課程全体の問題についてはやはり中教審で考えていかなきゃならぬ面もございます。これは特に大事な教育の内容、教育課程の中身のことでございますので、文部省として大事に大事にそのことはこれから取り上げて積極的に対処していきたいと、こう考えております。
  85. 糸久八重子

    糸久八重子君 国連婦人の十年は来年が最終年に当たります。大変急ぎませんとこの問題の決着はつきません。したがいまして、現在の文部大臣の御答弁のような状況では、もう少し現在の状況では鮮明な態度を出していかなければ間に合わないのではないかというふうに考えるわけであります。  細かいことにつきましては次回に譲りまして、ただいま総理から御答弁をいただかなかったわけでありますけれども、次に、雇用平等法につきまして総理にお伺いしたいと思います。  過日、審議会のためのたたき台が出されましたけれども、この内容の全体を流れるものが努力義務であります。特に、募集、採用という入り口での差別すら禁止となっておりません。雇用の機会均等からして差別撤廃条約の精神にのっとっておりませんで非常に不満を覚えているわけであります。総理は、世界会議に間に合うように平等法制定をなさるという答弁を衆議院でなさっておられますけれども、国籍法の審議状況と比べると、国会で十分な審議の時間が持ち得ないのではないかと懸念をされるわけであります。今後、国民意見を十分に聞く機会や、国会でも十分な審議を尽くすことを保証なさるかどうか、お伺いいたします。
  86. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 六十年に差別撤廃条約を批准すべく国内法制の整備を今急いでおる段階でございます。男女の雇用の機会の均等、待遇の平等、そういうようなことにつきまして今審議会でせっかく取りまとめていただいております。先般、いわゆる中立委員、公益委員と言われる方々の御意見も出されましたが、この問題が審議会全体において早くまとまりをつけるように期待しておるところでございます。それをいただきました上は、政府はよく検討して、できるだけ早期に国会に提出して国会の御審議を得るようにしたいと思っております。
  87. 久保亘

    久保亘君 それでは次に、やっぱり教育改革関連をして、もう一、二点お尋ねいたしますが、ここに日経連がお出しになりました「労働問題研究委員会報告」がございますが、この報告は、今回、教育に関して非常に多くのページを割いております。その中で、校内暴力の中で対教師暴力は公立中学校のみに発生して私立中学校は皆無である、それは私立には退学の制度があるからだ、公立は義務教育ゆえにそれができないからこういう暴力が発生するというようなことを書いておりまして、したがって九年間義務教育制の見直しをしたらどうかという提言をしているのでありますが、このような考え方について総理大臣はどうお考えになりますか。
  88. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 暴力の原因が退学制度がないからだと即断することは非常に私は危険ではないかと思います。そういう考えには同調しかねます。一つの原因であるかもしれませんが、それが主たる原因であるとは考えない、もっと大きな深い原因があるだろうと思います。
  89. 久保亘

    久保亘君 それからもう一点は、この報告の中で、私立大学の補助金について憲法八十九条によってその批判をされております。憲法八十九条に言う「公の支配に属しない」教育の事業に対して政府が補助金が出せるのかという疑問を提起されておりますが、憲法八十九条に言う「公の支配に属しない」「教育」とは何ですか。
  90. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 憲法八十九条には、御指摘のように、「公の支配に属しない」「教育」の事業に関しましては、公金の支出その他の財政的な援助をすることができないという規定がございます。この「公の支配に属しない」という意味はどういうものであるかということは長い長い沿革がありまして、久保委員も十分御承知と思いますけれども、ただいまで申しますと、私立学校振興助成法の中にも規定がございますように、国費を支出する立場の者が予算とか人事とかそういうものにつきまして一定の監督権限を持っておるということがあれば、この公の支配に属するというようなことで運用されているのが実情でございます。
  91. 久保亘

    久保亘君 それでは、この日経連の報告に疑問を提起されている点については、この考え方が誤りであると、こういうことでよろしゅうございますね。
  92. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ただいまの日経連の御意見、私つまびらかには承知しておりませんけれども、ただいま私が御答弁申し上げたところに従って御判断をしていただきたいと思います。
  93. 久保亘

    久保亘君 総理大臣にもう一つお聞きしたいのは、アメリカのレーガン大統領の今度の年頭教書の中に注目すべき発言がございまして、私立学校の授業料の課税免除を低中所得層に進めることを具体的に教書の中に述べられております。その理由は、公立学校のために税金を負担し、さらに私立学校の授業料を支払うということになれば二重の負担になる、だから公平を期すために私立学校の授業料については課税免除にすべきだというのがレーガン大統領の考え方のようでございますが、我々も早くから教育費の免税について提起をしているのでございまして、このレーガン大統領の考え方についてどういうふうにお考えでしょうか。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) レーガン大統領がそういうお考えを持っていらっしゃることは私もちょっと前に拝見いたしました。それは国々によってみんな教育制度も違いますし、税の負担層等も違います。したがいまして、一概にそれを日本へ持ってきて妥当するというものでもないと思います。ただ、教育費につきまして、最近世界的に増高傾向にありますから、できるだけ教育費の負担を軽くしてあげようという政府の方針というものはこれは評価すべきであると思い、我々も一般的にそういう考えに立って施政を進めていきたいと希望しております。
  95. 久保亘

    久保亘君 それでは次に、対ソ外交の問題について二、三お尋ねしたいと思います。  アンドロポフ書記長の葬儀に中曽根総理大臣がみずから出席されて、積極的に日ソ首脳外交の機会をおつくりになられた方がよかったのではないかという意見がございますが、このことについては総理の御判断はいかがでございますか。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アンドロポフ書記長の御逝去につきましては、深い哀悼の意を表明いたしました。当時はしかし衆議院の予算委員会が開会され始めたときでございまして、予算審議上一番重要なときでございましたので、甚だ残念ではございますけれども、私は国会重視という考え方に立ちまして外務大臣をかわりに派遣した次第です。そのかわり、ソ連大使館で弔問を行います際には最初に行きまして、お悔やみの言葉を厚く大使に述べてきて、事情も申し述べてきた次第であります。
  97. 久保亘

    久保亘君 私は、外交というのは、努力して機会をつくるべきものだと思いますけれども、それだけではなくて、訪れた機会を逃さずにとらえるということも重要だと思うのであります。アメリカの大統領と中曽根さんとの関係というもの、これは大事なんでしょう。しかし、外交が順調にいっていない国との間にそういう努力をするということが特に今、皆さんの日本の防衛に対する考え方の基礎にはソ連の脅威、そして恐怖の均衡という考え方がありますけれども、そういうことを考えてまいりますと、その脅威を脅威でなくする努力ということをやることが、軍縮、平和に通ずる私は外交だと思うのでありまして、こういうような機会を逃さずにつくっていくということは大事なのじゃないかと思いまして、モスクワヘ行かれました外務大臣は、中曽根総理がモスクワヘ行けばなおよかったのではないかと思っていらっしゃいますか、やっぱりおれが行った方がよかった、こう思っていらっしゃいますか。
  98. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それは中曽根総理がおいでになった方がよかったと思います。
  99. 久保亘

    久保亘君 やはり首脳外交の機会を、特に私は、レーガン大統領と中曽根さんだったら、ロン、ヤスと言っているのだから、いつでもやろうと思えばできるんでしょう。できないところをどうやってつくるか、それがまた国民の側からの大きな期待でもあると思っているんです。  ソ連の問題にかかわって、もう一つ。これは防衛庁にお尋ねした方がいいんですね。ウラジオストクに向かっていると言われています空母ノボロシスクの今後の役割を防衛庁はどういうふうにとらえておられますか。
  100. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  突然のお尋ねでございまして、政府委員がおりませんので私からかわって答えさしていただきますが、現時点におきましてはキエフ級空母ミンスクが極東に配備になっております。この二隻目の空母ノボロシスクが増強配備になるのか、それともこれが交代するのか、現時点においてはまだ判断できない。現在バシー海峡を通過してウラジオ方向に向かっている段階でございまして、まだ判断するには十分なデータがないという状況でございます。
  101. 久保亘

    久保亘君 私どもが非常に心配いたしますのは、ノボロシスクがやってくるということが契機になって、従来アメリカの国会でもしばしば声が出ておりました、日本近海にエンタープライズ級の航空母艦隊をもう一艦隊展開きしたい、それについて日本に基地を求めるというような動きが強くなるのではないかという気がいたすのですが、このようなことに対してはどういうような判断を持っておられますか。
  102. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 御承知のように、ノボロシスクが会、日本海の方に入ってきていると、こういうことでございますが、果たしてこれが極東の艦隊の一部に配属になって活動するのかどうか、私どもよく承知しておりませんが、しかしソ連が最近SS20の配備増強はもちろんのこと、陸海空において大変な兵力の極東における増強を図っておるわけでございます。そういう状況があるだけに、やはり極東の安全保障という立場もあって、米国が対ソ戦略という立場から極東においての戦力の増強を図るということはそれなりに理解ができるわけであります。
  103. 久保亘

    久保亘君 これはもう少し状況を見てからまたいろいろお尋ねしたいと思っております。  先ほど補正予算のときにお尋ねすればよかったんですが、石油税が今度一千五十億円減額になっておりますが、この要因は何か。それからこれと関連して、石特会計の石油安定供給対策費が当初予算のほぼ一割、三百二十九億円減額されておりますが、石油備蓄との関係について御説明いただきたいと思います。
  104. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 石油税が予定より一千億以上減収になったということは、当初見積もりを行ったときに比べて状況が変化しておる。その一番大きなのは、昨年の三月にOPECの原油価格が、基準価格、アラビアンライトでございますが、バレル当たり三十四ドルから二十九ドルに五ドル引き下げられた、こういうことが一つございます。それから原油の輸入量も、省エネルギーとか代替エネルギーの導入等によりまして、当初見込みから非常に少なくなったというようなことがございまして、先生御指摘のように四千二百九十億円から三千二百四十億円、千五十億円でございますか、減ったわけでございます。  それからその次に、第二の点でございますが、石油安定供給対策費が三百数十億減っておる、これはどういうことなのかということでございますが、これは今申し上げましたように、歳入面で石特会計の財源である石油税収入が非常に減ったということがございますが、同時に、歳出面でも原油価格にリンクする経費が非常に原油価格が下がれば減るということになるわけでございまして、そんなことから一般会計の留保枠を最大限取り崩しを行うということが前提でございますが、同時にエネルギー対策の推進に大きな支障を与えない範囲で経費を最大限節約するということにいたしたわけでございまして、備蓄について申しますと、原油価格が下がったから当然国家備蓄をする場合に石油の購入代金が減る、そうするとそれの利子補給の金額が減るとか、それから節約という意味でタンカー備蓄の陸上げを若干促進するというようなこともございまして、それから民間の備蓄につきましてもやや価格引き下げに伴うものが落ちている、こういうこともございます。それから備蓄基地につきましても、予算が苦しいところで、ある程度実情に合わせて繰り延べるといいますか、おくらせる、こういうようなことがございまして減ったわけでございます。
  105. 久保亘

    久保亘君 昨年の八月の総合エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通しの下方修正などもございますし、またこの報告は石油国家備蓄基地の完成時期を二年程度おくらせるようにという意見も述べてまいっておりますが、こういうことをずっと総合的に考えてまいりますと、石油価格の値下がり、需給の緩和、そしてこの石油政策というものを根本から見直すような段階に来たということ、つまりもはや石油をかつてのように高い比重において戦略物資として見る時代ではなくなったのじゃないか。こういうことの中で国家備蓄の三千万キロリットルというのが依然として必要なのであるか、それはどういうふうにお考えでしょうか。
  106. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 石油需給は、需要の減退等によりまして緩和基調にあることは確かでございます。しかしながら、中東情勢の非常な不安定な状況、あるいは我が国の原油の輸入がほとんど中東に依存している、いわば我が国の石油供給構造というものは非常に脆弱でございます。したがいまして、先進国の備蓄状態という中でその量が我が国はまだまだ足りない等の状況を見ますときに、石油の三千万キロリットルを六十三年度までに行うという目標はやはり推進していかなければならないと考えております。
  107. 久保亘

    久保亘君 今度は、五十九年度石油税の一・二%の引き上げがございます。これで五十九年度だけで六百七十億円、平年度になりますと一千三百億余りの石油税の増税になってまいります。結局、この増税分というのは最後は消費者の石油製品の価格に吸収される、こういうことになりますか。
  108. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 基本的には消費者に回るものとなると思いますけれども、これは市場メカニズム、需給関係等によって決定されるものでございまして、一概にはそうは言えないと思います。
  109. 久保亘

    久保亘君 恐らく増税の額よりも、仮に一%上げれば一千億近い増税になってくるという状況でありますから、これが消費者に転嫁されるということになれば、その増税分が備蓄費用として回っていくという関係を考えれば、高い税金を自分たちの消費者物価に転嫁されて、そして大変高い備蓄費用をかけて、しかも環境破壊をやって国家備蓄をやる。しかし、その国家備蓄というのは、今日の石油の需給情勢から見ると、かつてのように大きな意味を持たなくなってきつつある。こういうことになれば、やっぱりこの政策自体が見直しの段階に来ているのじゃないか、私はこう思うんです。しかし、きょうは時間がありませんから、この問題は来月またこの委員会議論をいたしたいと思っております。  最後に、私、政治倫理の問題について、特に自治大臣である田川新自由クラブ代表にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、中曽根政権の安定のために連合を決意された田川さんは、選挙中の政治倫理に関する中曽根さんの発言とか、選挙後の田中排除についての総裁声明というものをどういうふうにお考えになっておりますか。
  110. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 政党が政党の存在を明らかにするために、選挙中に他の政党をいろいろ批判するというのは当然のことでありまして、私どもは、単に中曽根総裁を中心とする自民党の批判ばかりしていたわけではございませんで、社会党の批判もしてまいりました。選挙が終わりましてから、中曽根総理大臣並びに総裁の選挙に対する反省は私どもは高く評価をしておりますし、自民党総裁として述べられました声明につきましても評価をしている次第でございます。
  111. 久保亘

    久保亘君 田川さんは、中曽根内閣の閣僚となられた今でも、田中角榮氏は議員をやめるべきだとお考えになっておりますか。
  112. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 国民の代表として国会に出ている我々国会議員は、単に法律に触れたということで責任をとるばかりでなく、一般の法律に違反をしないから何をやってもいいのだということではいけないと思います。まして法律に違反をした、刑法に触れたというふうに問われた国会議員は何も田中角榮氏一人ではございません。私どもはみずから反省をして責任をとるのが当然であると私は思っております。
  113. 久保亘

    久保亘君 連合をお組みになる前とは随分歯切れが悪くなっていると思うんですね。  それで、田中さんは議員を辞職すべきであるとお考えなのかどうか、そのことをきちっとお答えいただきたい。
  114. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 当然、責任をとるべきものであるということを私は申し上げたつもりでございます。
  115. 久保亘

    久保亘君 先ほど田川さん、選挙中に他党の批判をやるのはこれは当然だということで、それは私も当然だと思う。それは政策上の批判であります。しかし、そうではない、もっと政党の基本にかかわる問題で批判をやってきた場合に、連合を組むということはよくよくのことでなければならぬと私は思っているのでありますが、あなたがお書きになりました「自民脱党」という本を丹念に読ましていただきました。そうすると、随分いいことをお書きになっておりまして、中曽根さんに対する評価も、この中曽根という「政治家の言動が極めて不安定、その場限り、出世主義によって左右されていることに気付くようになった。」、こうあなたはお書きになっておりますね。
  116. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 大分たくさん書きましたから、今、本をもう一度見なければよくわかりませんけれども、私は人を批判する場合には必ず評価もしているわけでございまして、中曽根先輩を批判もいたしたことは事実でございますけれども、また評価している面もある。非常に適宜にいろいろと態度を表明されるということや、調和ある国際政治家である、調和あるタカ派であるというような表現を使って申し上げたこともございまして、単に批判をしているばかりではございません。
  117. 久保亘

    久保亘君 そうでしょうか。私はそう思わないね。あなたのお書きになったのは、これは去年お出しになったものですよ。まだ一年もたっていない。それで、その著作の中で、社会労働委員長時代の自分の体験に立って、中曽根という「政治家にあいそが尽きた。」とあなたはお書きになっている。どうしてその愛想が尽きた人と連合が組めるんですか。
  118. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) かつて中曽根康弘先輩が改進党当時、吉田自由党を大変批判をされ、吉田茂に対しても予算委員会で猛烈に批判をしたことを私は新聞記者として傍聴しておりまして、いまだに頭に鮮明にこびりついておるのでございまして、政治はそのときどきのことによりまして痛烈に批判をしますけれども、また、かつての吉田総理をあれだけ批判をした中曽根総理大臣がその後は吉田さんに対して非常に尊敬の念を持つようになった、こういうこともあるわけでございまして、私は中曽根先輩の意向を継ぐわけじゃありませんけれども、まねするわけではございませんけれども、単に政党と政党との連合は人が好きだとか嫌いだとか、批判をしたから、されたからとかいうことで政党の連合や離反ができるものではない。政党自身の姿勢、政党同士のいろいろな政策の合意あるいは政策の対立によってこの離合が行われるものであって、個人の批判とか個人の好き嫌いだとかというようなことで政党が対立したり友好的になったりするものでは毛頭ございません。そのように考えております。
  119. 久保亘

    久保亘君 私もそう思いますよ。だからこそ政治の基本に関する、特に新自由クラブができるとき、あなたが自民党を脱党されるときのあの脱党声明の第一は、我々が脱党する第一の理由は「腐敗との決別である」と書いておられる。そして、それなら連合を組む自民党に対して、あなたは今、腐敗から自民党は脱却したという評価をされているのかといえば、そうじゃないんですよ。「現職総理の収賄事件に「有罪」判決が下りながら、政治責任の火の手が党内から上がらないとしたら、それは、すでに政党の名に値しない。」と、こう書かれております。自民党は政党の名に値しないと書いてある。そして、「私たちが七年前飛び出した当時より、はるかに汚濁の進んでいる政権政党、自民党。多くの国民はそんな自民党から、再び勇気をもって漕ぎ出す人たちを待っている。」、あなたはこう書かれている。そういうことになってくると、これは私は連合を組むに当たって政策の前段にある政治の基本の問題だと思うんですよ。  私は、あなたが単身鹿児島三区に乗り込んで政治倫理を訴えられた、あのあなたの勇気に大変感銘をした一人です。それだけに、あなたがそれだけのことを主張されて、今日、今ここで言われたことを言を左右にされるのを聞きますと、田川さんに対して非常に私は失望するんです。あなたは「ボート屋のおやじ」さんということを書かれておりますが、みんなこぎ出せと言われておるが、自分はそこへ残っておるのじゃないか、それではいかぬのじゃないかと思うのでありまして、自治大臣として、田川さんあなたは、自民党単独政権ならばやれないことを何をおやりになるんですか。
  120. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 最初の御意見にお答えをいたしますが、外で幾ら批判をしても、また外で幾らいろいろなことを申し上げても、なかなかそれが実現できないという場合が多いわけです。そういう意味で、私どもは自民党と政策合意をいたしましたことはしばしば申し上げたとおりでございます。そして、私どもが立党の原点になった政治倫理について、自由民主党と私ども新自由クラブとの間にまず第一番に政治倫理について合意をいたしたわけで、無条件に統一会派をつくったり連立を組んだのではございません。そういう意味で、私どもは統一会派を組み連立を組んだことによって、私どもがいままでは外から批判をしていたけれども、お互いにこれからやっていこう、政治倫理を確立していこうという基本が自民党との間にできたのでありますから、そういう面で実際に効果があらわれるように私どもは態度を決めたのでございます。  私どもは、自民党との合意に基づいて自治大臣として入閣をしたのではございません。たまたま自治大臣の所管の中には政治倫理に関する問題も幾つかございますから、そういう面を通じて今度は政治の執行者として政治倫理の確立を推進していこうと、このような決意で臨んでいるのでありまして、決してただ単に野合をしたとか、無条件で連立を組んだとかというようなことでは毛頭ございませんことをここで明確に述べておきます。
  121. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 久保君、時間です。
  122. 久保亘

    久保亘君 政治倫理に関して、ぜひひとつ田川曽根内閣と言われるくらい頑張ってください。  終わります。(拍手)
  123. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で久保君の質疑は終了いたしました。  午前の質疑はこれまでとし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時一分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  124. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十八年度補正予算二案を一括して議題といたします。  中野君の質疑を行います。中野鉄造君。
  125. 中野鉄造

    中野鉄造君 最初に、私は、中曽根内閣の政治姿勢の一端について一、二お尋ねいたします。  初めに、田川自治大臣にお答えをいただきたいのですが、大臣は、去る十八日の新自由クラブの第七回全国代議員大会において代表あいさつとしてこのようにお述べになっております。今、連立連合の時代の幕が開こうとしており、我々はその潮流の先端に乗って貴重な実験に挑戦している、こう述べていらっしゃいます。そこでお尋ねいたしますが、大臣は過日の国会でも田中辞職勧告決議案に対しては賛成するといった意味のことを答弁されておりますけれども、しかもいま申しますように、今やおっしゃるところの潮流の先端に乗って貴重な実験に挑戦しておられる新自由クラブの最高幹部のお一人でもあられるわけですけれども、今日閣僚として閣内にあって自民党ないしは総理に対し、この問題に対しどのような働きかけをしておられますか。
  126. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 私どもの基本姿勢、基本的な考えにつきましては、先般十二月末に自民党と私ども新自由クラブとの間で政策を合意された四項目に尽きるわけでございまして、その四項目の第一番目にあります政治倫理の確立、これを自民党と私どもとの間で誠実に実行していくということでございまして、連立をいたして統一会派をつくりましてからの今日まで一つ一つ実を上げていると、こういうふうに思っております。
  127. 中野鉄造

    中野鉄造君 私がお尋ねしているのは、その政策もさることながら、この田中辞職勧告決議案に対してどうですかとお尋ねしている。
  128. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 田中辞職勧告決議案は立法府の問題でございまして、皆さん方が国会に提出するかしないか、これが今の情勢でございます。お出しにならないのに、前に、私どもが出さないとき、どうするのかとかいうことを申し上げるわけにはまいらない。私どもの決議案に対する姿勢というものはしばしば述べたとおりでございます。
  129. 中野鉄造

    中野鉄造君 私の質問に対してちょっと当を得ていないようなお答えではないかと思うのですが、私がお聞きしたいのは、先ほども申しましたように、新自由クラブの最高幹部のお一人として、今入閣をなさっておる大臣としてではなくて、そういう立場からいわゆる政治刷新というような意味を持って、新自由クラブの最高幹部として、閣内にあって総理だとか自民党にどういう働きかけをなさっておりますかということをお聞きしておるわけです。
  130. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 今働きかける必要がありません。なぜならば、自民党と私どもとの政策合意を一つ一つ実行されておりますから、働きかける必要がないです。
  131. 中野鉄造

    中野鉄造君 これ以上は申し上げませんが、いずれにいたしましても、閣内にあって田川大臣、ただ見守るだけではなく、どうか積極的に頑張っていただきまして、この実験の成功を祈っております。  次にまいりますが、去る一月二十四日に全閣僚の資産が新聞で公開になりました。これに対し国民の間からは、なるほどこれは一歩前進だ、こういう評価もあるかと思えば、なにあれはただ単なる政治ショーだ、こういう酷評も耳にいたします。確かに今回の公開は本人名義の分だけだったわけなんですが、こういう本人名義分だけにした理由は何だったのでしょうか、総理。
  132. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは内閣官房でやや長時間検討してもらいまして、奥さんの分を入れるか入れないか、親族の分を入れるかどうか、そういう問題がありましたけれども、やはりこれは政治家個人の問題であるから個人に限定する必要がある、奥さんの分を入れるということは、ある意味では婦人の独立を侵害するじゃないかと、そういう議論もありました。男女平等と言うならば、女は女で自主性を持っておるべきであり、男性の附属物ではないと、そういう議論もございました。
  133. 中野鉄造

    中野鉄造君 総理は、衆議院の予算委員会でもこの閣僚の資産公開は毎年やると、こういうようにお述べになっておりますが、来年の一月の時点で仮に中曽根内閣がまた存続するとしたならば、来年の一月も今回と同様なこういうパターンでおやりになりますか、それとも何か改善された形でおやりになりますか。
  134. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回とりあえずまず実施した経験にかんがみまして、もし改良する点があれば改良して実行いたしたいと思っております。
  135. 中野鉄造

    中野鉄造君 ところで、森文部大臣にお尋ねいたしますが、今回のこの資産公開に当たって大臣は、こういうことになったきっかけは一にかかって田中さんにある、本当に迷惑な話だといったような、非常に迷惑なお気持ちを吐露しておられるというようなことを新聞に書かれておりましたけれども、今の御心境はいかがでしょうか。
  136. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お答えをいたします。  記者会見のときにそのことについていろんな角度から御指摘、御質問をいただきまして、かれこれ三、四十分だったと思いました。いろいろな経緯が前後ございます。新聞に出るのは一行のことだけが出るようなものでありますから。その過程の中で、どうも政治家全体を犯人扱いみたいな取り扱いというとちょっと語弊がありますが、何か悪者みたいにして、ああだこうだと言うのはいかがなものかなという感想が一つありますと。ですが、皆さんがそういうお気持ちであるなら、政治家全体をされた方が私はむしろいいんじゃないかな、事は、政治倫理のスタートは、これは田中さんの問題であろうとなかろうと、政治家全体がこのことをきちっと基本的な理念として、スタンスとして考えておくことが大事だということも申し上げました。ただ、事のきっかけはやはり田中さんの問題から出てきたことであるから、田中さんも含めて国会議員全部やった方がなおまだきれいなのかもしれませんねと、こういうような発言をいたした記憶がございます。
  137. 中野鉄造

    中野鉄造君 どうか総理、この件につきましてはやるならやるで、中途半端なことをやればかえって国民からあれこれと疑惑も出てくるわけですから、ひとつよくよく御検討をいただきたいと思います。  次に、防衛費についてお尋ねいたしますが、この防衛費の対GNP一%枠を守ることの難しさというものは、五十九年度予算編成上及びこの国会においても他の議員からもいろいろ議論を呼んでおりますけれども、その理由の一つとして、この夏の人勧との絡みでございますが、総理はこの人事院勧告が出てから考えたいと、こういうように衆議院の予算委員会でもお述べになっておりますが、この七月の人勧によるベースアップで一%枠を守れるというその根拠はおありですか。
  138. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 衆議院段階でもお答え申し上げましたが、昭和五十一年の三木内閣が決めましたその方針は守ってまいりますと、そういうふうにまず申し上げます。人事院勧告がどういう内容が出るかまだ全く未定でございますから、今、仮定の問題で予断を許す発言は控えたいと思っております。人事院勧告が出ました際に、我々はこれから方針を決めてまいりたい、その対応を決めてまいりたいと、こういうことであります。
  139. 中野鉄造

    中野鉄造君 根拠があるかないかという問いに対しては、余りお答えになっていないと思いますが、それでは総理は、今回の人事院の勧告はどの程度の勧告を予測なさっておりますか。
  140. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは全く人事院が諸般の計数を調べ、そして独自にお出しになることでございますから、我々は予想することはできないと思います。
  141. 中野鉄造

    中野鉄造君 では、きょうは人事院総裁にも来ていただいておりますので、総裁にお尋ねいたします。  総裁は、この五十九年度の人勧に対してはどの程度の勧告が妥当だとお思いになりますか。それは昨年の上積みを反映すべきだと私は思いますけれども、その点も含めてお答えいただきます。
  142. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 御承知のように、人事院の給与勧告というのは、厳密にその実態調査をいたしました結果、計数を厳密に集計分析をした結果、客観的に出てくるものでございます。したがいまして、あらかじめ私たちがどうこうということを予測してやる筋合いのものではございません。  御承知のように、一月十五日現在で国家公務員側の給与の実態を詳細に調査をいたします。それから今度は四月分として支払われまする民間の企業の給与というものを詳細に調査をいたしまして、これとの対比でもって較差が出ればその較差分を埋めていただきたいということで勧告をするというのが、これが人事院の勧告制度の骨子でございます。したがいまして、今度の場合どのぐらいになるかということはこれから始まります春闘その他の結果もございますし、私からとやかく申し上げる、これは無論資料もございませんし、そういうことを申し上げる立場にはございません。したがいまして、いまどのぐらいの数字が出るかということはこれは一切わからないわけでございます。調査の結果出てくるものを厳密に検討して出すということになると思います。  ただ、今お話しになりましたように、昨年の場合は六・四七%という勧告をいたしましたが、それに対して諸般の状況から約二・〇三というのが実施に移されたというわけであります。したがいまして、ごく算術計数的に計算をいたしますと、四・四四というものが抑制をされたということになるわけであります。今度の場合は、その後一年間にわたって公務員の職員構成も変わりますし、また世帯を持ったり、あるいは世帯がなくなったりというようなことで、手当の分布というものも多少変わります、それから民間の実態も変わってまいりますから、その四・四四というものがそのまま数字となって出てくるとはこれは無論申し上げられませんが、しかし四・四四というものが積み残しされたという現実がございますので、それに相当する部分は、当然本年の調査をいたしました民間の給与の実態調査と公務員との対比をいたしました場合には、それが反映をしてくるだろうということは申し上げることができると思います。
  143. 中野鉄造

    中野鉄造君 人事院総裁、もう結構でございます。ありがとうございました。  そこで、私、総理に重ねてお尋ねいたしますが、五十一年の防衛関係費の対GNP一%以内とするというこの枠が一応定められたわけでございますけれども、この対GNP一%ということは、今後当初予算から補正予算、そして決算ベースというあらゆる段階でこれは厳守していくとお約束できますか。
  144. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) とにかく三木内閣の決定の方針を守っていきたいと思っております。できるだけ努力をしてみたいと思っております。
  145. 中野鉄造

    中野鉄造君 過般、総理は衆議院の予算委員会で、この一%論にかわる防衛費の無制限な拡大をチェックするための新しい機関を設置したいと、そういう答弁をされておりますが、総理の言われるところの新たな歯どめ研究機関といったような、それはどういうような構想をお持ちでしょうか。
  146. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、野党の代表の方が、一%をもし突破するという場合には新たなる歯どめが必要ではないか、そういう歯どめをつくるについて我々の考えも聞いてもらえるか、そういうような御助言らしいお話がございました。私は、それはもうもし将来そうなった場合には御相談願うことができれば非常にありがたいと思いますと、そういう意味でお答えをした次第なのであります。
  147. 中野鉄造

    中野鉄造君 総理の今の答弁を聞いておりますと、何かまだまだ一%を突破するかどうかというそういう際どい時期がずっと遠い先に来るようなそういう答弁でございますけれども、今の人事院総裁答弁から見ても、もうすぐ今度の人勧というものは目の前に控えておりますし、その出てくる数字というものはわかりませんけれども、これは大体常識的にはもう一%を優に突破するんじゃないかと、こう私は思います。  そこで、そのときになったらば考えると、こういうような先ほど総理答弁をされましたけれども、実は総理は、去る五十七年十二月の予算委員会で、しからば総理としてはどういう形でこの歯どめというものを設定されるかというような質問に対して、こういうように答弁されております。「そういう事態が出てきた場合にどうするかということは、そういう事態が出てくるある時間的前からいろいろ検討し、」云々と、こう言われておりますけれども、この「そういう事態が出てくるある時間的前から」というのは、まさに今を指すことじゃないでしょうか、いかがでしょうか。
  148. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 必ずしも今であるとは思っておりません。ともかく一%を守ろうと、そう思って決心をして全力を奮っていこうと思っておるときでございます。
  149. 中野鉄造

    中野鉄造君 だから私はさっきからお尋ねしているんです、その一%を守っていけるという根拠はおありですかと。ただ努力するというようなそういう答弁じゃなくて、根拠はこうだこうだと説明をいただけば私も納得できるんです。
  150. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは、先ほど申し上げましたように、人事院勧告が出てこなければどういうふうに対応できるかということはわからないのでありまして、今も人事院総裁が申されましたように、これから諸般の措置をおとりになって勧告の準備をなさるという段階でありますから、私から明言はできない。まあそういう状況にはないわけであります。
  151. 中野鉄造

    中野鉄造君 それが出てからでは本当は遅いのじゃないかと思いますがね。そうすると、そのために、この一%を突破するとかしないとかということで全公務員がその犠牲になるようなことになるのじゃないでしょうか。
  152. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく人事院勧告というものは八月上旬に毎作出るならわしになっておりますから、どういうものが出てくるか見た上で対応を決めていく、そういう立場にございます。
  153. 中野鉄造

    中野鉄造君 この問題についてはいつまでやってもこれは平行線みたいですから次に行きますが、いま申します歯どめ論という中身について、私が耳にいたしますところでは、自民党の内部では既にいろいろなことが検討というか論議されている、こういうように聞き及んでおります。その中で一つ気がかりになるのは、一つとしてはこういうことが言われている。つまり、一%枠を動かさないで、その一%の枠の中から人件費及び糧食費、これを除くと、こういうようなことが言われているということを耳にしたことがありますけれども、御承知のように五十九年度予算案では防衛関係費が二兆九千億。人件糧食費が四四・六%に当たる一兆三千九十四億あるわけですけれども、一%を守るためにこういうこそくな手段をよもやおとりになるということはないと思いますけれども、ひとつここでお約束をいただきたいのですが、将来ともにこの一%枠の中には人件糧食費を含むのだということをお約束できますか。
  154. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ歯どめをどうするとかなんとかということは考えていないときでございますから、現状でもって対処していくというのが現在の考え方でございます。
  155. 中野鉄造

    中野鉄造君 だから、その歯どめをどうするこうするは、それはまたおいていいんです。私が今改めてお尋ねしているのは、今申しますように、一%の中に将来ともに人件費、糧食費は含むとお約束できますかと聞いているんです。
  156. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どういうふうにこれからそういう対応を考えていくかということについては全く白紙であります。しかし、今まで一%以内という判定基準の中に人件糧食費あるいは正面装備費等も入っておるわけでありますから、その事実というものは、そういうもので一%以内というものは構成されていたということは認識しておく必要はあると思います。
  157. 中野鉄造

    中野鉄造君 じゃ、将来もそれを守っていくと、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  158. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく将来の基準についてはまだ白紙であって、将来そういう事態が出た場合に対応を考えると前から申し上げているとおりなので、その点については全く白紙でございます。ただ、一%というものは、言われたその根拠の内容は、今中野さんがおっしゃったような内容で構成されている、そういう事実はよく認識しておく必要があると考えてはおります。
  159. 中野鉄造

    中野鉄造君 どうもいま一つ納得できませんけれども、非常にくどいようですけれども、そういうように認識はしておると総理おっしゃいますけれども、それはわかります。だから今後もそれを守っていただけますかと聞いているんです。
  160. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうものの中身が、判定基準の中身が変わるということはこれは大きな変化でありまして、それ相応の理由がなければできないことである。ともかくそういう将来の基準につきましては今白紙の状態でいる、しかし今現に言われている一%の中身というものはこういうものによって構成されているということはしっかり認識しておく必要はあるのだと、そういうふうに申し上げる次第であります。
  161. 中野鉄造

    中野鉄造君 この問題についてはまだ後日同僚の議員から論議していただくことにいたしまして、時間の都合もありますので、次に財政問題に入りたいと思います。  午前中の質問でも取りざたされました租税印紙収入の減少について、大蔵大臣は多少の当初との誤差はある程度これはやむを得ないといったような答弁がありました。私は、その誤差の多い少ないということよりも、当初予算で多目に見積もられ、そして補正減額修正されるというこういうパターンがもう三年間続いているんですね。ここが問題だと思うんです。特に、もう既定経費に至っては、昨年よりも多少は少な目になってはおりますけれども、相も変わらず補正の有力な財源の一つとなっております。これは問題だと思うんですが、いかがでしょうか。
  162. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほども申し上げましたが、改めて今の御意見を交えての御質疑でございますが、やはり各種経済成長の、なかんずく名目成長率、それからなお個別の積み上げ等において最初見積もりをいたします。それで確かに三年連続しておるということは事実でありまして、五十六年は実に三兆三千三百十九億円、これは決算対比でございますけれども、それから五十七年が六兆一千百二十九億円、こういうことであります。この五十六年、五十七年というのは、私はたまたまそのときは大蔵大臣でございませんでしたけれども、本当にこれはまさに予期せざる世界同時不況というものではなかったかと。そこで五十七年の補正後から私どもこれを考えまして、やはり補正後といえば時間も少ないけれども、少なくとも誤差といえばまあ一%ぐらいまでが許容限度じゃなかろうか、これも学問的な数字では必ずしもございません。それで、それに応じてやっとその範囲内に一応おさまったと。  そこで、今度五十八年でございますが、やはり千五百億円の減税と、それと名目成長率見通しを変えました。だが実質成長率は変わっておりませんけれども、それによるところの減というものが千百億ぐらいありますか、そういうものが大宗をなしておりますので、この程度の減収というのは正直に申し上げて御理解を賜り得る範囲内ではなかろうかというふうに考えております。
  163. 中野鉄造

    中野鉄造君 この誤差の範囲一%というものは余り大したことじゃないというような、そういう御認識のようですけれども、そういうことから補正で国債を増発する、そして、ために国債依存度が非常に高くなっている、こういう点への反省はありませんか。
  164. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そこで我々も今御審議いただいております補正予算につきましては、少なくとも赤字公債の発行は避けようということで目いっぱいの努力をいたしまして、まあ結果からいたしますと災害復旧分、これだけを四条公債に頼らざるを得なかったと。四条公債といえども借金には違いございませんので、御指摘のように、これも可能な限り避けるべく努力をいたしましたが、ぎりぎりこの災害復旧費につきましては四条公債に頼らざるを得なかったというのが実情でございます。
  165. 中野鉄造

    中野鉄造君 この公債の件についてはまだ後ほどお伺いしますが、先ほども申しました特に既定経費については、もう当初から補正財源として費目を膨らませていたのではないか、こういうように疑いたくもなるんですが、いかがですか。
  166. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず補正の際一つの大きな要因となりますものは、やはり人事院勧告に伴う支出増ということになります。それをしも現予算の範囲内でやろうということになりますと、やはりそこに節約というようなことが我々の意思としても非常に働きます。そこで各省庁のそういう問題についての念査をいたしまして節約を組んでいく。  それからいま一つは、やはり補正の際は不用額でございます。不用額というものにつきましても、これは不用があらかじめ見込められる性格のものではございません。しかし、いつの場合も正直に御指摘を受けますのは、少なくとも不用額が出たりあるいは節減がかけられるものならば事前にそれだけの努力をもっとすればいいじゃないか、この意見は絶えず財政当局に対する叱咤鞭撻の意見として受けていかなければなりませんけれども、少なくともあらかじめその不用額とかあるいは節減額を見込むというようなことは恐れ多いことでやらないわけでございます。
  167. 中野鉄造

    中野鉄造君 私も、今おっしゃったように、全くそのとおりの提言をしたいわけなんです。全部とは申しませんけれども、各費目について適当なパーセントを掛けて、この部分はひとつ留保しておきなさいといったようなことが現に行われているんですから。であるならば、当初から、編成時点からそうした削減した形での予算を組むべきじゃないかと思うんですが、どうですか。
  168. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かにぎりぎりの削減のための努力を当然いたします。しかしながら、やっぱりさらにその歳出というものをどうでもしなければならない問題が出たときには、まずは現予算の中でそれを消化するということにおいてさらにいわゆる節約をかけていくというようなことは現実ございます。しかし、それは決して当初からそれだけのものが非常にイージーに対応されたものではない、かなり厳しく対応されておるというふうな認識の上に立っております。しかし、補正予算の場合、いつも出ることとはいえ、そういういわば叱咤鞭撻というのが私どもが年々予算編成をしていく場合における一つのてこにはなるし、そういってこと受けとめて対応しなければならぬというふうに考えます。
  169. 中野鉄造

    中野鉄造君 この既定経費だとか、あるいはこういう所得税が三年間連続で修正されている、こういうようなことに反しまして、一方では補正予算減額修正がこうやって行われているかと思うと、必ず補正予算で増額修正されるものがあるんですね。それが何かといいますと日銀納付金なんですが、そこで大蔵省にお尋ねいたしますが、五十六年度以降五十八年度までの日銀納付金の当初見込み補正予算における追加額を教えていただきたいんです。
  170. 行天豊雄

    政府委員行天豊雄君) お答えいたします。  日本銀行納付金の予算計上額でございますが、五十六年度は当初予算が七千三百十七億円、補正予算八千百十七億円、その間の増加額は八百億円でございました。また、五十七年度につきましては当初予算が八千八百四十四億円、補正予算丸千八百五十五億円、増加額が一千十一億円。五十八年度は当初予算計上額が一兆一千二百八十七億円、補正予算が一兆二千六百二十七億円、増加額千三百四十億円となってございます。
  171. 中野鉄造

    中野鉄造君 大体、毎作一〇%内外の当初額から見て追加額となっておりますけれども、そこでこの納付金の淡路と、あわせてどういう計算方法でこれは算定されるのか教えていただきたい。
  172. 行天豊雄

    政府委員行天豊雄君) お答え申し上げます。  日銀納付金は、御承知のとおり日本銀行法の規定に従って定められておるわけでございますが、まず当該年度の収入から経費などを控除いたしまして純益金を算出いたします。この純益金から内部留保として積み立てます法律上の積立金、それから任意準備金等がございますが、これを控除いたします。さらに出資者に対する配当金を控除いたします。さらに内部留保、それからこの配当金に充てられる益金に見合う納税引損金を控除いたしまして、その残額を国庫納付する、こういう計算方法をとっております。
  173. 中野鉄造

    中野鉄造君 いずれにいたしましても、納付額見込みを当初でこれは甘く見ているのじゃないかと思うのですが、どうしてこういうように毎年毎年繰り返しになりますかね。
  174. 行天豊雄

    政府委員行天豊雄君) この納付金の計算につきましては、先ほど御説明いたしましたとおり、純益金を算定いたすわけでございますが、この純益金等の計算につきましては、当然のことながら年度内に発生いたしますいろいろ金融情勢の変化、その中には金利の動きであるとか為替相場の動きであるとか、そういういろいろな状況が入ってくるわけでございます。私どもも、こういう推定の数字を日本銀行が策定いたしますにつきましては、過去の実績、それからできるだけ最近の金融情勢、それから直前年度の見込みといったものを踏まえまして概括的な推計を行って、できるだけ正確な推計に努めるわけではございますけれども、何分そういう未確定な要素がかなりあるものでございますから、結果といたしましてその間に差が生ずるという事態になっておるわけでございますので、その辺御理解をいただければと思っております。
  175. 中野鉄造

    中野鉄造君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、税収なんですが、最近景気が緩やかに回復基調にある、こういうことを言われております。ところで、法人税は所得税と多少違うわけなんですが、どうですか、この法人税の収益の見通しはいかがでしょうか。
  176. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も、そういう今おっしゃいましたような観点のある種の期待感を持ちながら毎月の税収の実績を眺めております。正確に申し上げますと、現時点で判明しておりますのが十二月末税収、これは前年同月比にいたしまして三角の一・六%、予算の伸び率で四・〇%となっておりまして、また進捗の割合は四六・八%で、前年同月四九・五%に対して二・七ポイント下回っておるわけでございます。予算額を達成するには、これから残された期間の税収が前年の同じ期間の税収に対して九・四%と、かなり大きな伸びを期待しなければならぬというのが実情でございます。  恐らく委員は、原油価格も下がったではないかと。それらが法人税収として出てきますのが、私も、これも学問的な基準じゃございませんが、およそ十五カ月ぐらいかかるのじゃないか、こういうようなことをよく申しておりましたが、やはりそれらのおくれというものは確かにあるなという、それぐらいなタイムラグはあるような感じがしております。したがって、これからいわゆる大法人の聞き取り調査等々いろいろやって、そうして率直に申し上げると、予算額を上回る税収までは期待できないが、ほぼ予算額を達成できるではないかというのが現状の判断でございます。だから、本当は法人決算の非常に多い三月期決算に期待をしておるというのが実情でございます。
  177. 中野鉄造

    中野鉄造君 次に、公債費の関係に入りますが、今回提出された五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案、これなんですが、この法律案の第三章第六条には赤字公債がずらっと一括して借りかえが提案されております。これはどういうわけですか。大体この特例公債は毎年今まで発行されるその都度国会で審議がされた、その上で発行されたわけなんですが、そうやって発行された公債が、この借りかえの時点になると一括して持ってこられる。これは本来ならば期限到来の公債、その都度国会で審議するのが筋じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  178. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今御指摘になりましたように、かつて発行する段階において、いわば当分の間とかいうことにすれば、毎年毎年、一度一度ずつ国会の御審議を煩わすということがなくて済むじゃないかというそういう議論もしたことはございます。がしかし、やはり財政当局としてそういう厳しい姿勢を示して国会で協賛いただくという立場から一年一年やるべきである、こういうことで引き続き年度ごとの予算の際に財特法等において御審議をいただいてきたという経過があることは事実であります。  そこで、昨年あたりからいろいろこれについての議論がございまして、さはさりながら、六十年ともなればいわばその大量の償還時期が到来するじゃないかと。その際やはり考えられることは、現金償還をしなきゃならぬわけでございますから、その現金償還の手段としては、歳出を削減するのか、別の国民の方々の負担増を求めるのか、あるいは借りかえをも含むいわゆる現金償還をするための新たなる公債発行を行うのかという三つが国会の議論等にも出てまいったわけであります。私どももそれにつきましては、やはり国会の議論を中心に御報告申し上げて財政制度審議会でしっぽりと議論してもらおうじゃないかという方向でお答えをいたし、そして財政審等でもいろいろ議論していただいたわけであります。結論から申しますならば、我が国経済の着実な発展と国民生活の安定というものはもとより守っていかなきゃならぬ。そうすると、六十五年度までに特例公債依存体質から脱却を図っていくということを考えると、これは特例公債というものについてはやはりこの際借換債の発行を考えざるを得ないということで結論に到達したわけであります。  そこで、脱却後においては、特例公債及びその借換債の残高をなるべく早く減少させていくことに努めるということはこれは当然のことでございますので、やはり特例公債の償還額は、脱却後においても引き続きまだ、ことしもまた発行をお許しいただくわけでございますから、この残高というものは多額に上る。これを考慮すると、直ちに借換債の発行を行わないということはもうこれは困難なことだということで、五十九年度のお願いしておる特例公債についてはもとより借りかえ禁止規定を削除し、従来から見れば削除をしたもので御審議をいただく。そして事実上その借りかえが、そういうことで非常に借りかえをしなきゃならぬという状態になった場合には、やはりこれまでに発行した特例横についても従来どおりの借りかえ禁止規定が残ったままでありますと、やはり借りかえができるという、そのいわゆる借りかえができるという前提で初めてある意味における財政運営というものを少なくとも中期的にも考えていけるのじゃないか。  私ども議論の過程では、一年一年それを償還時期の来たものに対する手段として借りかえを許容してもらうということも考えました。しかし、やはり今度発行するものは借りかえ規定を置かないものを発行するわけでございますから、そうなると、やはり将来にわたっての財政運営考えた場合、今までの分も借りかえ規定は外さしていただこうと。しかし、それでは従来問答の中で行っておった厳しさというものが薄らいでいくのじゃないか。かれこれ我々として議論をいたしまして、いわゆるこの財政状況を勘案しつつ、できる限り借換債の発行を行わないよう努めるとともに、やむを得ず発行を行った場合においても、その速やかな残高の減少に努めることとする旨のいわゆる努力規定というものを置かしていただくことにいたしたわけであります。  それで、なお実際に毎年度どの程度借換債を発行するかということになりますと、その努力規定というものの中で我々を精神的に厳しく縛っていただいて、その趣旨に沿って当該年度の財政事情等の中で最大限の努力をしていかなきゃならぬというふうに、これは御指摘のように、ある意味においては大きな形の上にあらわれた転換ではないかと。そこで我々がその御趣旨に沿うためにいわゆる努力規定というものを設けて御審議をいただくこととしたと、こういうことでございます。
  179. 中野鉄造

    中野鉄造君 この借りかえというものは、その年度のその公債に対しては一回を限度とするというようなことをする必要はありませんか。
  180. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 特例公債の、つまり平たく申せば借換債につきましても、同じ精神で残高が速やかに減るように努めるという努力規定を設けておるわけでございます。一回限りということではちょっと無理かと思います。
  181. 中野鉄造

    中野鉄造君 この国債の問題に関連いたしまして大蔵大臣にお尋ねいたしますが、元来、財政の再建とは、究極的には政府自身もこの基本的な考え方の中で言われているように、その財政の対応力を回復することと、こういうことに尽きるのであろうと思います。この財政の対応力を回復すること、これを裏返しにして言えば、現在、財政に課せられた機能が非常に十分に機能していない状態にある、したがってこの機能を回復することが財政再建の目的だと、こう思っても間違いございませんか。
  182. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 同じ認識でございます。
  183. 中野鉄造

    中野鉄造君 ところで、昨年の四月から銀行でも国債が販売されるようになりました。国債保有の一般化が着々と進んでいるわけですけれども、国債の保有者についての所得階層別の国債保有率、これはわかりますか。
  184. 吉居時哉

    政府委員吉居時哉君) お答え申し上げます。国債の保有状況でございますけれども、昭和四十年度以降発行されました新規国債の昭和五十八年九月末の残高は百五兆ほどございますが、その保有状況は次のとおりでございます。市中金融機関が二七%、それから資金運用部が二三%、日銀が七%、個人等が約四三%、こういうぐあいになっております。
  185. 中野鉄造

    中野鉄造君 所得階層別、お願いします。
  186. 吉居時哉

    政府委員吉居時哉君) 所得階層別につきましては、現在私どもそのような資料を持っておりません。
  187. 中野鉄造

    中野鉄造君 では、こちらで教えてあげますが、これは日銀の貯蓄増強委員会で調べたものでございますが、年間五百万から六百万の所得の人たちの五・六%が国債を持っていらっしゃる、年間所得六百万から七百万までの人が九・四%持っていらっしゃる、七百万以上の年間所得の方々が一四・一%持っていらっしゃる、こうなっております。  そこでお尋ねいたしますが、まず現閣僚を代表して、甚だぶしつけな質問でございますが、総理と大蔵大臣、伺いますが、お二人は国債を持っていらっしゃいますか。
  188. 竹下登

    ○国務大国(竹下登君) 私は、資産公開の際、七百五十万だと思いましたが、大臣になってから十五万円でございましたか、毎月買っておりますので、それぐらい保有しております。
  189. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 金額は違いますが、私もそのように毎月割り当てで買っております。
  190. 中野鉄造

    中野鉄造君 私、現時点で考えた場合、おおむね郵貯や銀行等のマル優の利用者と国債の別枠非課税制度利用者との関係から見れば、マル優や郵貯の限度枠を超えた方々は国債の非課税制度を利用していらっしゃる方が一般的だ、こう思うんです。いかがでしょうか。
  191. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 現在ああして窓販ができるようになったわけでございますが、それまでの状態でございますと、これを正確に分析することは実際問題として難しい問題でございますけれども、三百方、三百万、三百万という認識のもとに、それを念頭に置いてなさっておる方もそれは多数あろうかと思っております。が、もともとがシンジケート同等を通じたり、場合によっては市場を通じたりして出ていくものでございますので、その。行き先を把握するのは大変難しい問題だが、委員のおっしゃっている感じ方とでも申しますか、それはそう大きな間違いじゃなかろうと思っております。
  192. 中野鉄造

    中野鉄造君 私も、今回の質問をするに当たりまして厳密な統計をとったわけじゃございませんが、いろいろな人に当たってみました。そうすると、やはりおおむね国債の保有者という方々は高資産階層あるいは高所得者層だということがわかりました。中には銀行の勧めによって買ったというような方々もいらっしゃると思いますが、大体そう見て間違いない。  そこで私も、ここでお断りしておきたいのは、決して高額所得者がけしからぬとか、国債を持っている人はよくないとか、そんなことを言うつもりはありません。私が申し上げたいのは、国の財政に課せられた所得の再分配機能、資源の再配分機能、景気の調整というこの三つの重要な機能の中の所得の再分配、つまり資本主義経済のもとでは必然的に出てくるところの所得の格差を是正する機能が非常に最近減退しつつある、こういうことを言いたいわけなんです。つまり、これだけ国債費がかさんできております。しかもその大部分を占める利子支払い費というのは、国債の所有者、どちらかといえばゆとりのある方、高資産階層、ゆとりのある企業、それから銀行、そういうところに対して国民一般から徴収した税金によってこれが支払われている。オーバーな言い方をすれば、金持ちの人たちの受け取る利息を平凡なサラリーマンの人だとか、零細な中小企業者の人たちがせっせと働いてその利息の分を稼いでやっている、こう言ってもいいんじゃないかと思うのです。まさに所得の逆再分配の現象が起こっているんじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  193. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の御指摘でございますが、利払い等によりまして意図せざる所得再分配が行われる可能性があることは、これは事実でございます。だから結局やはり公債依存体質というもの、多額に公債に依存しておるという財政は健全とは言えないということで、その縮減が私どもにとって大きな命題となっておるというふうに理解をいたしております。
  194. 中野鉄造

    中野鉄造君 それはわかりますけれども、あえて私がここで国債を引き合いに出したのは、御承知のように、我が国の一般会計の主要経費の中で地方財政対策費を抜いて今やもう第二位にこの国債費はのし上がっているわけなんですね。しかも三年連続で定率繰り入れをやめた額でそうなっているのですから、もうこの定率繰り入れを行っておるならばとうの昔にトップなんです、これだけの経費を要しているわけなんですから。ですから、今後このように利子支払い費が年々急速に膨張している、もう五十九年度は八兆三千九百七十三億、六十年度になると利子だけで社会保障費を上回ると、こういうことになります。  そうすると、国債費はもう一一・七%と二けた台になるのに、一方先ほど申し上げましたように、所得の再分配の重要な役割をなすところの社会保障関係費は財政難を理由に抑圧される。こういうことから今日、日本の財政の所得再分配の機能は大きく減退しつつあると言っても間違いじゃないと思うんですが、いかがでしょう。
  195. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大筋において私はそれを否定するものではありません。だからこそ私どもが、やはりこの際とりあえず第一段階としてはいわゆる特例公債からの脱却、第二段階としては国債残高そのものを少なくして、まさにおっしゃるように社会保障に続いて第二位になっておるわけでございますから、本来のいつでもまた対応力のある姿にすべきだ。私は、景気、不景気等の場合において国債政策がすべて悪ではなく、あるいは第一次石油危機、第二次石油危機等にそれなりの効果をもたらしたという、これを否定するものではございませんが、やはりそれだけの、いつでもそういうものが時期に応じて出し得る財政の対応力を回復する、こういうことであろうと思っております。
  196. 中野鉄造

    中野鉄造君 私は決してこれまた国債は無利子にしろだとか、そんな無謀なことを言っているわけじゃありません。今言うように、国債費はこれだけかさんでいる、それに対して社会保障関係費はだんだん削られている。しかも一方では、御承知のように今度の減税はされましたものの、それと抱き合わせで物品税だとか酒税が引き上げられる、公共料金もメジロ押しに値上がりする、こういうようなことになりますと、中曽根内閣の財政再建というのは結局のところ大衆負担増による財政収支のバランスをとることじゃないのかなと、このように思いたくなるんですが、いかがですか。
  197. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今日、国債がこのように大きな残高を残し、そうしてそれの利払い等に要する国債費がこれだけ多くなったというのは、やはりそれなりの私は今日までの歴史的経過があったと思うのであります。だから国民の皆様方にある意味においては我慢をお願いしながらも対応力を回復していかなきゃならぬと、これこそまさに中曽根内閣で申しております財政改革そのものであると思っております。しかしながら、それにいたしましても、年度年度の予算を組む際に、それに対応するためには、やはり社会保障の問題につきましても、真にその困った人に対する対応の仕方でありますとかというようなところには十分きめ細かい配慮と予算上のまたアクセントもつけていかなきゃならぬ。  それで、公共料金の問題ということになりますと、これはやっぱり受益と負担の関係からしまして、その都度の経済情勢等覧ながらバランスをとりながらやっていかなきゃならぬ問題だ。だから、基本としては、おっしゃるようにこの国債残高、そうしてそれに伴う利払いの大きな重圧からとにかく努力をして抜け出ていかなきゃならぬということが当面の大きな課題であるというふうに理解をいたしております。
  198. 中野鉄造

    中野鉄造君 この問題については以上で終わりまして、最近話題の一つになっております電電公社の民営移行についてお尋ねいたしますが、この関係法案の国会提出は三月下旬ということになっておりますが、この進展状況についてお聞かせいただきたいと思います。
  199. 奥田敬和

    国務大臣(奥田敬和君) 目下、法案の策定作業を進めておりますけれども、今御指摘のように、三月二十日ごろをめどにして成案化にこぎつけたい。今日、骨子の骨格がほぼ固まりかけておるといった段階でございます。
  200. 中野鉄造

    中野鉄造君 そうしますと、今の電電公社を解散して日本電信電話株式会社という民間会社に移行した際の新しい電電会社の資本金はどのくらいでしょうか。
  201. 奥田敬和

    国務大臣(奥田敬和君) 目下、関係の向きと精査いたしておりますけれども、大体一兆円規模になるのではなかろうかと思っております。
  202. 中野鉄造

    中野鉄造君 ちょっと開き漏らしましたけれども、その資本金による発行株式のうち国が保有するのをどのくらい見ておられるのか、また市場に売り出す株があるとすれば、その手順はどうなっているのか、そこのところを。
  203. 奥田敬和

    国務大臣(奥田敬和君) 大体一兆円規模の会社になろうということと、当初は全額政府出資という形で進みます。株の売却云々の形は今後の課題として検討することになると思います。まだそんな具体的な形でそこまでの検討は一切行っておりません。
  204. 中野鉄造

    中野鉄造君 新聞等を見ますと、この新電電の株というのは含み資産株であるがゆえに少なくとも市場では三倍から四倍にプレミアムがつくのじゃないか、こうも言われておりますし、もし仮に二分の一の国保有、そうすると、あとの半分が市場に出回るということになると、この売却収益というものはプレミアムが三倍と見て約二兆円ぐらい、そういうようにざっと計算してなるのですが、この巨額な株式売却収入の運用について、まあきょうの新聞でもいろいろと取りざたされておりますが、この特別会計を設置するかどうか、ここいら辺のところの展望はいかがですか。
  205. 奥田敬和

    国務大臣(奥田敬和君) 今御指摘のように、特別会計云々という形の御議論党内にあることは承知しておりますけれども、まだ全然具体的にそういったものは検討しておるわけではございませんし、またそういった形の問題点は関係の向きともよく詰めた上で語らなきゃならぬことは当然でございます。したがって、大臣としてはそういった形の具体的な案は一切持っていないということになります。
  206. 中野鉄造

    中野鉄造君 大蔵大臣、いかがですか。
  207. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 電電改革というものは将来を見通しての事業の合理的発展を期するためのものと考えておりますので、今郵政大臣がこの改革案をおまとめになっておりますので、この際私が、いわゆる今日まで電電からも五十八年度予算までで四千八百億、それからまた五十九年度予算で二千億円をちょうだいすることをお願いしてきたわけでございますが、こういう財政事情でございますから、それは電電改革に随伴して財政改革の一助となるようなものを期待したいなあという気持ちが仮にありましても、そういうまだ予見できない状態の中でそういう願望を申し述べますと、また新しい議論を呼んでもなりませんので、今の郵政大臣のお答えどおりということでお許しいただきたいと思います。
  208. 中野鉄造

    中野鉄造君 先ほど郵政大臣は、今のところは、そういうことは答えられないという答弁でありましたけれども、片や大蔵大臣は今の答弁のようなことでありますが、総理にお尋ねいたしますが、財政再建とこの新電電会社の株売却収入、株を売却するかどうかということもまだ決めていないと大臣はおっしゃいましたけれども、仮にそういうような売却したという場合に、株売却収入は別であるという意見もあるようですけれども、確かに財政再建は税収をより多くして歳出を削減するというのが本来の行き方であると私は思いますが、この新電電会社の新しい発足に対する総理のお考えはいかがですか。
  209. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 財政再建と電電公社の改組後の株の売却問題とは全く別個の問題であって、電電公社の改組は主として臨調に示された行革の考えから実行するものであり、あるいは将来結果的にそれが財政再建に寄与するという可能性も全くは否定しませんけれども、そのためにこれを行うという性格のものではございません。
  210. 中野鉄造

    中野鉄造君 次に、経済運営についてお尋ねいたしますが、五十八年度経済が当初の内需主導から経常収支二百三十億ドルの外需に大きく依存した、こういう形になっております。これについてはもう「五十八年度経済見通しと経済運営の基本的態度」という政府方針や、あるいは国会等で述べられました国内民需中心の景気回復、さらには総理がサミットで公約されました内需中心の経済拡大とはかなり違った方向に進んでしまった、こういうように思いますが、いかがでしょうか、総理。
  211. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 昨年の春からアメリカの経済が非常な勢いで回復をいたしました。その影響を受けまして世界経済がややいい方向に行っておりますので、輸出が非常にふえたという背景がございまして、貿易の黒字、それから経常収支の黒字が非常に激増いたしました。そういう背景がございまして、内需中心の経済運営から外需による成長が相当大きなシェアを占めておるというのが五十八年度の経済であろう、このように思います。
  212. 中野鉄造

    中野鉄造君 ですから、私もう一つお尋ねしたいことは、五十八年度にこの景気、内需拡大のために政府はどういう努力をされたか、その点についてお尋ねいたします。
  213. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) そういう動きもございますし、我が国の経済もなお回復力が弱い、こういうこともございまして、昨年の十月に総合経済対策を決めまして、それによりまして内需の拡大、それから海外経済摩擦の解消、こういう総合政策を決定いたしまして、今その実行を進めておる、こういうことでございます。
  214. 中野鉄造

    中野鉄造君 今おっしゃったように、一つは昨年の四月に発表になりました「今後の経済対策について」、それから二つ目には、十月に発表されました「総合経済対策」ですが、この四月の今後の経済対策、これについての大きな柱というものはどういうことだったのでしょうか。
  215. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 四月の対策は私は余り中身はなかったのではないかと思います。しかし、十月の対策は相当充実した対策になっておると、このように思います。
  216. 中野鉄造

    中野鉄造君 しかし、この十月の対策についても、私見ますところ、現在の補正と五十九年度予算頼み、まじめに果たして内需振興を図った中身であるかというものを感じるのですが、いかがでしょうか。
  217. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 昨年十月段階におけるいろんな財政力等から考えまして、私は万やむを得なかったという点もあろうかと思います。
  218. 中野鉄造

    中野鉄造君 次に、景気対策に入りますが、景気が緩やかながら上昇している、こういうように政府の月例報告でも報告されていますけれども、依然として企業倒産件数だとか負債総額、完全失業率は高いわけなんです。経済の現状について、いかがでしょうか。
  219. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 第二次石油危機が起こりまして昨年末でちょうど四年を経過しておりますが、その間、世界経済も厳しい試練を受けてまいりましたが、日本経済も大変苦しい時代が続いたと思います。ようやく第二次石油危機の調整が終わりまして、昨年後半からことしにかけましてややいい兆候が出てきたと思うのですが、ただしかし、今御指摘のように、まだようやく回復期に向かったばかりでございますから、ぱらつきが非常に多いと思うのです。地域によるばらつきも大変多いと思いますし、業種によるばらつきもまた非常に厳しいと思います。そこで、これから本格的な景気回復に進んでいくのだと思いますが、そのためには、やはりいろんな政策を機敏に進めていくことがこれから必要であろうと、このように思います。
  220. 中野鉄造

    中野鉄造君 確かに経済は生き物であると言われるようなところから、すべて計画どおりにはいかない面もあろうと思います。しかしながら、日本の経済力をもってしますと、いま少しやり方によってはその持てる力を発揮できるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  221. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 持てる力という意味は、多分我が国の潜在成長力のことをおっしゃっておるのではなかろうかと思いますが、我が国の潜在成長力につきましては、具体的な数字は政府の方でも出したことはございませんけれども、我が国経済の基礎的な条件と欧米先進国の基礎的な条件を比べてみますと、日本の方がいずれもいい条件にあると思います。したがって、先進工業国の中では一番高い潜在成長力を持っておると思います。しかし、仮に潜在成長力がありましても世界経済が非常に悪いときにはなかなかうまくまいりません。しかし幸いに、先ほど申し上げましたように五年ぶりで世界経済に明るい展望が開けつつございますので、こういうときにはわずかの工夫で非常によくなるものだと私どもは考えておりまして、力が十分発揮できるようなそういう政策を今後工夫して進めることが大事であると、このように思います。
  222. 中野鉄造

    中野鉄造君 私は、長官がかねがね主張されておりますように、思い切った大型減税をやって弾力的財政再建と、その御持論には私も一応賛同するものでございますが、ただ、賛同はしつつも、一、二点ちょっと疑問に思うのは、すなわち大型減税を仮に今行ったとして、景気回復へのいわゆる有効需要というものを具体的にどのように考えていらっしゃいますか。
  223. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私は、減税の景気に及ぼす影響につきましていろいろ考えてみるのですけれども、規模が小さい場合には余り景気には影響ないのではないか、こういう感じがいたします。しかし、相当大規模な減税をしますと、やはりそれがてこになりまして相当大きく経済に影響が出てくる、このように判断をいたしております。
  224. 中野鉄造

    中野鉄造君 もう一つ一抹の懸念をいたしますのは、長官が言っておられるように、昭和四十九年度に一兆八千億の減税が行われた、この一兆八千億というのは現在に直せば約四兆円の規模だと。それだけの大型減税を仮にやった場合に、あのころは人間の体に例えればこれは成長期、青年期だった、今はどちらかといえばもう中年過ぎた、熟年とまではいかなくても少なくとも中年は過ぎた、そういう時代に青年期の運動量をそのまま取り入れたとすればかなりのリスクを伴うのではないか、こういう議論もあるんですが、その点いかがですか。
  225. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 昭和四十九年という年は、その前年昭和四十八年の十月に第四次中東戦争が起こりまして、それが導火線になりまして第一次石油危機が起こったその翌年でございますので、世界経済が非常に大きな痛手を受けておりまして混乱をしておりました。日本の経済は、昭和四十八年までは非常に順調に発展をしたと思うのですけれども、四十九年以降随分いろんな試練に遭遇しておりますが、四十九年という年は非常に悪い条件が重なっておった年である、このように理解をしております。
  226. 中野鉄造

    中野鉄造君 やっぱり長官は、では有効内需を醸し出すためにもかなりの大型減税は断行すべしと、こういう御意見は今も変わりませんか。
  227. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私はそういう意見を持っておりますので、税体系の根本的な見直しの中で、大型所得税減税等も含めまして、先般大蔵大臣とか自由民主党の執行部に対しまして検討していただくように、今若干の提案をいたしておるところでございます。
  228. 中野鉄造

    中野鉄造君 次善の策として私ども期待しております。  一方、政府は景気の底離れ宣言をしているにもかかわらず、先ほどちょっと触れました雇用失業情勢はいまだ厳しい状況にあります。政府は今日まで中高年の雇用対策を推進されておりますけれども、その実効というものはいまひとつというような感じがいたしますが、今後高齢化社会の到来に向けて、現施策の見直しというようなものも含めて新たな強力な雇用対策が必要じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  229. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 確かに、失業率はまだ相当高い水準にございます。二・五%を超えておる、こういう状態でございますから、これまでの統計から見ますと一番憩い状態だと思いますが、ただ、それにもかかわらず、昨年五十八年は雇用者が約八十万人ふえております。五十九年度も失業率はさほど改善されないと思います。やはり二・五%前後を推移するのだと思いますが、しかし雇用者は五十九年度も引き続いて八十万人ほどふえると、このように想定をいたしております。  昨年発表されました「一九八〇年代経済社会の展望と指針」を見ましても、大体その間二%ぐらいに失業率を持っていきたい、こういうことでございますので、その目標から見ますと、若干悪い状態でございますが、先ほど申し上げますように数年ぶりでようやく経済に力がつこうとしておりますので、これから政府部内でもいろんな諸般の政策を総合的に進めてまいりまして、その目標が実現するような方向に努力をしたいと考えております。
  230. 中野鉄造

    中野鉄造君 これに関連いたしますが、最近女子労働者の増加が非常にふえておりまして、特に中高年の有配偶者の、つまり配偶者のある人たちの女子雇用者の増加が目立っております。その中でも特に顕著なのがパート労働者でございますが、二百八十四万人、女子雇用者の二割にも達しております。政府としては、このパート労働者の救済も含めて女子労働者施策をどのように講じていこうとされるのか、そこをお聞かせいただきたいと思います。
  231. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) パートタイマーの中にはおっしゃるとおり女性が大変なウエートを占めておる、こういうことは御承知のとおりでございます。それで、このパートタイム労働者の対策といたしましては、今までちょっと気軽に職場にパートタイムで働いていたような関係もありまして、しっかりとした就業規則などがきちっとセットされていなかったり、あるいはまた文書で労働条件を明示するようなこともとかくなおざりにされたようなこともありましたので、パートタイマーの労働者の皆さんを守るためには就業規則をしっかり整備したり、それから文書で雇い入れ通知書という形で労働条件を明確にして、そしてこれらの方々をお守りしていかなければならぬ、こういうふうに労働省としては今一生懸命努力をしておるわけであります。  それから専門のパートバンク、これも今専門の職業紹介としてのパートバンク、この体制もこれからますます充実していきたいと思っております。それから各県には、関係機関には、このパートタイムに対しての相談とか啓発指導、そういうこともこれから十分にいたしていきたいと思っております。それから昭和五十九年度におきましては、今までの成果を一段と進めるために総合的なパートタイム労働対策要綱というようなものを策定をいたしまして、そして女子を含むパートタイマーのために一生懸命これらの人々の生活を守って福祉の向上のために努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  232. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 中西君の関連質疑を許します。中西珠子君。
  233. 中西珠子

    中西珠子君 ただいま、パート労働法関係の法律案はつくらないけれども、いろいろの施策を講じているというお話を大臣から伺いましたけれども、パートの問題もさることながら、全雇用者の中の三四・六%を占めます女子雇用者が依然として職業上、雇用上の差別というものに苦しんでいる者が多いという実態がございます。そして先ほど、きょう午前中に出た差別撤廃条約の批准のために男女雇用平等法を早期制定するために法律案を提出されるということを聞きましたが、この法律案提出のめどについては労働大臣、どのようにお考えでいらっしゃいますか。
  234. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 御案内のように、今婦人少年問題審議会の婦人労働部会で鋭意審議を進めております。昭和五十七年からこの審議会で勉強をしてきておるわけでございますが、労使という立場に立ては相当の意見の隔たりもございましたので、ついこの間中立的立場におる委員から、やっぱり一つのたたき台を出した方がこれからの審議が深められ、進められるのではないかと。御承知のとおり、来年が婦人の作の十年の最終年に当たってやっぱり国際国家日本とすれば批准もしたいところでありまするので、そこへ詰めていかなければならぬという目標、タイムリミットもございますから、ですから今一生懸命に審議会を進めておるところでございますが、このたたき台が出ましたことによりまして促進をしていただきたいなと私どもは期待をしておるわけでございます。それで、審議会でまとまり次第早急に法案を提出いたしたい、こう思って私ども心待ちにして待っておるわけであります。
  235. 中西珠子

    中西珠子君 男女雇用平等法案は、婦人差別撤廃条約批准のために条約に合致したものでなければならないのみならず、やはり長い間の婦人労働者の願い、差別をなくしたいという願いに対応するものでなければならないと思います。そのためには男女雇用平等法案は実効性のあるものにしていただきたい。そして、たたき台のお話が出まして、また審議会において審議中ということも承知いたしておりますけれども、差別撤廃条約の第二条におきましては、婦人に対するすべての差別を禁止する立法その他の措置が必要であるということを条約は要請しておりますし、また第十一条におきましては、雇用のあらゆる分野における差別を撤廃するため、また男女同一の権利を確保するための適切な措置が必要であると言っております。外務大臣、いかがでございましょう、この点は。
  236. 山田中正

    政府委員(山田中正君) お答え申し上げます。  今、先生御指摘のように、同条約の第二条、これは一般的な規定でございますが、男女の不平等をなくするように立法その他の措置をとるように求めておりますし、特に第十一条におきましては、雇用の分野での平等を立法措置も含め適当な措置で実施するようにということを求めております。
  237. 中西珠子

    中西珠子君 差別撤廃条約第二条の(b)におきましては、「婦人に対するすべての差別を禁止する(適当な立法その他の措置適当な場合には制裁を含む。)」というものが必要だということを育っているわけでございます。この点に関しまして、先ほど出ました公然委員の試案なるものの中には募集と採用は努力義務規定とする、その他は禁止してもよいだろうというふうな案が出ております。しかし、昨年の十二月に出ました審議会の中間報告におきましては、使用者側は、やはりこれまで判例がすでに確立しております退職とか定年とか解雇、それは強行規定にするのは仕方がないけれども、その他のものは強行規定ではなく努力義務規定にしたいということを、またそうすべきであるということを主張しておりますので、我々働く婦人は努力義務規定になってしまったのではかえってマイナス効果が出てくるのではないかと大変心配しているわけでございます。  このマイナス効果が出てくるのではないかという心配は、なぜするのかと申しますと、これまでは差別に対する救済措置というものが司法的な救済しかございませんでしたので、差別を受けた婦人は裁判所に訴える、裁判所は憲法十四条の法のもとの平等という規定、男女平等の原則というものを民法第九十条の公序良俗の内容というように解釈いたしまして、公序良俗に合理性のない、合理的な理由のない男女差別は違反する、違反するがゆえにこの行為は無効であるという判決を下しまして、そういった判例が積み重なり、また最高裁によってこの判例は確立しているのでございます。  しかし、努力義務規定というものができましたならば、これは憲法十四条の法のもとにおける男女平等の原則が薄められるのではないか。そして、民法九十条における公序良俗の内容というものが努力義務規定になってしまって、使用者は努力しているからいいのではないかと、いろんな理由があって、努力しているのにもかかわらず差別が存在しているのだというふうなことになってしまいまして、司法の救済すら難しくなってしまう。こういう理由で、私たち婦人はみんな努力義務規定になってしまうということを大変憂慮しているわけでございます。  そしてまた、努力義務規定になって、一方非常に法的な強制力のある実効性のある行政救済措置ができるのかというと、その保証は何もなく、公益委員の試案の中には都道府県に調停機関をつくるというふうなことが書いてございます。調停機関というものは命令権がないということでございますし、この調停機関がいかなる法的権限を持ち得るのか、また努力義務規定というものが憲法十四条の法のもとの平等というものを薄めないかどうかということにつきまして、法制局長官の御意見を聞きたいと思うんですが、お願いいたします。
  238. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘のありました、いわゆる男女平等雇用法案についての中間試案というものの内容を私、実はまだ全く拝見しておりませんので……
  239. 中西珠子

    中西珠子君 一般論としてお答えいただきます。
  240. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 確定的なことは申し上げられませんが、一般論として申し上げますと、いわゆる努力義務規定、これは現行法のもとでも勤労婦人福祉法その他の法律で幾つかの用例が見られるわけでございますが、努力義務規定といってもこれは法規範でございます。したがいまして、その義務自体は、その規定の定めるところを実現すべく努力すべきであるということは、これはもう明らかなことでございます。ただ、この規定に対する違反があった場合に罰則を設けることはしないというのが例になっておりますし、そういったいろいろ具体的個別の問題になりますと、検討すべき点がいろいろとあると思うのでございますけれども、いずれにしましても、その個別具体的な問題につきましては、やはりその規定の内容、趣旨、あるいはその規定を含む法律全体との兼ね合いといったような総合判断によって判定すべきであって、一概にどうということはなかなか申しにくいということで、その点は御了承を願いたいと思います。  それから調停の機関、これにどのような権限を付与することができるかという点でございますが、これはもう委員十分御承知のとおり、調停というものは紛争の両当事者の互譲によって事件の円満な解決を図るというのがその制度の趣旨でございまして、事件を調停に付するかどうかとか、あるいは調停案を受諾するかどうかといったようなことは、原則として両当事者が自由に決定することができるような仕組みになっております。したがいまして、このような調停の制度からいいましても、一般的に調停機関がその調停を求められた事項につきまして、是正命令を出すとかあるいは原状回復命令を行うということまでは予定されていないのではないかというふうに一般的には考えられます。
  241. 中西珠子

    中西珠子君 是正命令も救済命令も出せないようなそういった行政救済措置というものは余り意味がないのではないかと思いますから、もっと実効性のある、法的強制力のある行政救済措置を盛り込んだ、また、禁止をする、禁止をしてそれに違反した場合は無効になるというせめて強行規定を盛り込んだ男女雇用平等法案にしていただきたいと思うわけでございますが、法制局長官にもう一つお伺いしたい。  これは労働基準法制定の二十二年当時のことでございますが、第三条の均等待遇の中に性別がない、これの理由は何であったかということを御説明願いたいと思います。
  242. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 当時もたしか国会での御答弁もあったかと思うのでありますけれども、現行の労働基準法の三条に性別による労働条件の差別を禁止していないというのは、これは労働基準法がその第六章におきまして、委員御案内のとおり、女子の時間外労働の制限等女子についての特別の労働条件の基準を定めていることによるのではないかと考えております。
  243. 中西珠子

    中西珠子君 均等待遇とそれから平等待遇、均等の機会というものを女性に与えるならば、保護規定は返上するべきである、母性保護は別として保護規定は返上するべきであるという意見の方が多いのでございますが、これは労働基準法の制定過程における保護があるから均等待遇はやらないという、こういった考え方に基づいているのだと思うのですけれども、やはり保護は基本的な人権を守るために男女ともに必要なものであり また均等待遇は人間の尊厳と基本的人権を守るために必要なのでございますから、必要なる保護は残す、そして基本的人権と人間の尊厳を守るための男女平等は実現していただきたい、そして世界に恥ずかしくない男女雇用平等法をつくっていただきたいと、総理にお願いしたいと思うのでございます。  また、私どもが組織しております超党派の参議院と衆議院と両院の男女議員からできております「国連婦人の十年」推進議員連盟の代表が中曽根総理を二月七日にお訪ねいたしまして、そして実効性のある男女雇用平等法案の早期制定をお願いし、また育児休業の法制化をもお願いいたしたわけでございますが、総理はこれについてどのようなお考えをお持ちでいらっしゃいますか、お聞きしたいと思います。
  244. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先般、婦人議員の皆様方から御陳情を受けまして、できるだけ努力すると申し上げたとおりでございます。国際水準というものもございます。また、各国はそれぞれの国情を持っておりますから、国際水準の許す範囲内において、また国情もよく込めた、しかも国際的に見て恥ずかしくないような内容の法をぜひつくりたいと念願いたしております。
  245. 中西珠子

    中西珠子君 日本の国際的地位を上げるためにも、ぜひお願いいたします。  これで質問を終わります。どうもありがとうございました。
  246. 中野鉄造

    中野鉄造君 先ほどからいろいろお話があっておりましたけれども、今の中西議員議論は前向きにひとつ推進していただきたいと思います。  次に、先ほどから河本長官からもお話がありました。現在、我が国の経済の状況について見ますと、確かに諸外国との比較では、物価においても、国際収支、為替レート、景気、そういう面、また失業率等においても、各局面ごとで比較しますと、これは相対的には安定しております。  ところで、話はぐっと変わりますけれども、過去何回か大蔵省ではデノミネーションというものが計画されたことがありますが、そのたびごとに没になったと、こういう経緯もございます。しかし、このデノミを実行していい環境というのは、今も申しますように、経済の各局面が比較的安定した時期に行うべきだというのが絶対条件でありますが、この点についての今後のお考え方はいかがでしょうか。  それといま一つ、近く新しい紙幣が発行になりますが、これに伴って今回引退する聖徳太子が現在はない、より高額紙幣に再登場するんじゃないかという、こういううわさもありますが、いかがでしょうか。
  247. 竹下登

    国務大臣竹下登君) デノミの問題でございますが、今中野委員指摘なさったとおり、その環境というものはそれは経済が最も安定しておる時期と、こういうことは申すまでもございませんが、しかしながら、現段階においてデノミを実施する考えはこれは持っておりません。率直に申しまして、明治、大正の者は昔の夢、まあ国威発揚、ちょっと言葉は変でございますけれども、そういうことがありますが、若い人に聞いてみますと、何でそんな面倒くさいことをするのと、もうちゃんと二百三十三円とかそういうことになれ切ってしまっておるというそういう人口層の方が現在多くなっておるということは、私もそういう議論をするたびに年老いたなあという感じを私自身も持っておるわけであります。  それから次の、秋に紙幣が全面的に模様がえということになりますが、当面高額紙幣を発行することも現段階で考えておりません。
  248. 中野鉄造

    中野鉄造君 財政問題について最後に一つだけお尋ねしますが、非常に今日話題になっております金融市場の開放問題についてでありますが、この開放に関しての考え方、いわゆる方法、スケジュールをひとつ明確にしていただきたいと思います。つまり、その開放というものが市場の開放なのか業務の開放なのか、あるいは現在あるもろもろの諸規制の撤廃なのか。我が国はもうさしあたっての糊塗的対応では済まされないような事態に今来ているのじゃないかと思いますが、この点についてお尋ねいたします。
  249. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一番最初、経済社会の中で起こってくる問題はいわゆる貿易自由化の問題だと思うのであります。そうしてそれは、地球上に生存する人類が安価にして良質なものを自由に交易できる状態であるという前提を置きますならば、それの手段として使われておるものはこれはいわゆる貨幣である、お金であるというところから考えてみましても、その次にやってくるものはやはり金融そして資本、これの自由化であり国際化であると思います。なかんずく世界全体のGNPの一割強というような国でございますだけに、これは避けて通れない課題というよりも、あるいはより積極的に対応しなきゃならぬ課題であるというふうな認識を持っておるわけであります。  したがって、これに対して一つのスケジュールということを今おっしゃいましたが、およそ金融資本調達の手段というものはそれぞれの国々で大変歴史的にその土壌が違っております。一口で言うならば、日本は相互銀行以上の数を数えますと百五十七、アメリカの場合は一万四千五百と、そういうふうな大きな相違もございましょう。したがって、本来の自由化というものを考えてみますと、世界共通法にすればいいじゃないかと、こういう粗っぽい議論もできないわけじゃございませんけれども、おのずからそういう国際的な土壌の中で相互がどこまでお互いの便宜を協調し合うかということを一つ一つお互いの理解の積み上げの中に解決点を見つけていかなきゃならぬ問題である。したがって、丸めて申しますならば、いわゆるそれぞれ土壌の違いがありますから、自主性を持ちながらもしかし積極的に対応していかなきゃならぬ課題だと。ちょうどきょう円・ドル委員会を今やっておるところでございますが、これも一つの相互理解と進展への場所であるというふうに御理解をいただきたいものだと思っております。
  250. 中野鉄造

    中野鉄造君 もう時間がありませんので、最後に教育改革の問題について総理にお尋ねいたします。  午前中は永井先生から含蓄のあるお話もありましたけれども、今日我が国のこの学校教育の量的普及ではそれこそ世界に冠たるものがございますが、教育の現場はと見ますと、逆にまことに荒廃の一途をたどりつつある、こういう気がいたしますが、今日の我が国のこの教育の実態について、総理はその原因をいかにお考えですか。
  251. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 戦後の教育には戦前に比べまして非常に伸びたいい面もあると思います。子供たちが割合に自由に濶達に意見も言うようになりましたし、また子供たちの健康等についても、給食制度その他を通じて非常に配慮も及ぶとか、そういう点では非常にきめ細かな措置が講ぜられつつあります。また、人によっていろいろ評価は違うでしょうけれども、教科書の無償というふうなものも賛否両論はありますが、これも一つの試みとしてやってきた画期的なことではないかと思っております。しかし、最近の情勢を見ますと、国民の皆様方がみんな教育改革の必要性を訴えられてきましたのは、臨床的には今の教育のやり方あるいは試験のやり方に象徴される、それが人間を大量生産的な数量とか数字でとらえ過ぎておる、もっと人間全体として温かみのあるやり方で人間主義的に物を考えてやったらどうかと、そういう面が非常にあるのではないかと思います。  しかし、もう一つは、やはり教育あるいは子供たちをめぐる環境というものはかなり汚染もされてきておる。いろいろの原因もありましょうけれども、衆議院段階におきましても、子供たちが読むグラフや本の類、そういうようなものについてとてもこれは子供に見せられないというようなものがはんらんをしてきたりしている、あるいはテレビの番組等においても親子同時に見るのははばかるようなものも出かねまじき状態もある、そういう意味において子供たちの精神環境を保護してやるという必要性も強く論ぜられてきておるところであります。もう一つは、国際性という問題についてまだ足りない部分があるのではないか等々の点が強く指摘されておるところであります。
  252. 中野鉄造

    中野鉄造君 そこで、今回総理直属の諮問機関としての新しい調査機関が総理の発想で計画されるようでございますが、これと既設のいろいろな中教審を初めとした審議機関と異なる点はどこでしょうか。
  253. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中教審は文部大臣諮問機関として功績のあった立派な機関であったと思います。しかし、けさほども申し上げましたように、新しい視点に立って二十一世紀を見詰めながら新しい角度からまた物事をもう一回考え直してみようと、そういう段階にもなり、また国民的広場ですぞ野を広げて、そしてできるだけ各党あるいは各派あるいは各国民の御意見をもう一回ここで徴して、そして教育問題というものをここでもう一回再検討してみようと。そういう意味で総理府の総理大臣諮問機関としての新機関を構想しておる、そういう点が違う点であると思います。
  254. 中野鉄造

    中野鉄造君 そういたしますと、この中教審、それから昨年できました文化と教育に関する懇談会、また同じく昨年の七月に設置されました学制改革のための省内連絡会議、これら一つ一つのその設立のねらい、つまり目的とその現況、実績と申しますか、いかがなものでしょうか。
  255. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 今御指摘がございました中教審あるいはまたその他の審議会は文部省には十七ございまして、これは文部省固有の事務であります教育、芸術、文化、それの調査、審議を進めていこうというものでございます。それに、同時に今お話がございました連絡会議というのは、事に応じましてそれぞれ設置して各界の多くの皆さんから御意見をちょうだいをいたしておるわけであります。今度改めて、今総理からお話がございました新機関につきましては、こうした日本の教育をもう少し視点を変えて見たい、もう少し角度も変えて見たい。午前中の久保委員との間の質疑の中でもございましたように、二十一世紀に向けて日本の教育がどのようにあるべきなのか、またこれだけの世界の中における日本の今日の力を見ましても、経済的にも社会的にも文化的にも世界の中からどのように理解をされていく日本をつくっていかなきゃならぬのか、その二十一世紀を支える民族をやはりどのように教育の中に生かしていくのか、そういう教育を新たな視点で考えてみたい。そういうことから、これまであります審議会やあるいはいろんな連絡会、協議会、多くの先生方が提言をしてくださいましたそうした事柄を大事に扱って、その中で新たな文化懇の提言、日本の教育と文化のあり方の方向づけもしてくださいますから、そういう皆さんの御意見をちょうだいをした新しい展望の検討をしていきたい、こういうものでございます。
  256. 中野鉄造

    中野鉄造君 そうしますと、今たくさんのそういう審議機関がある、そして今度また新しい機関をつくる、これは決して役割分担ではなくて、同じようなことを一つ一つ違った方向から検討していく、こういうことですか。
  257. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) ただいま申し上げましたように、従来の審議の視点、見方、あるいは検討する角度を変えてみようと、それはどういう角度か、視点かということは、いままで何回か申し上げましたとおりです。したがって、そういう角度から見ますと、もう少しすそ野を広げるということを総理はおっしゃっておりますが、いろんな多くの皆さんの御意見がいただけるのじゃないか。例えば、教育の中でも小学校長会、中学校長会あるいは高等学校、あるいは教職員組合団体の皆さんからも意見をいただいております。あるいは各党の皆さんからそれぞれいろんな教育改革の問題が出ております。こう突き詰めてみますと、皆方向づけはある程度私は同じじゃないかというような感じもしますし、みんながそういう気持ちで盛り上がっている。国民的に今気持ちがそういうふうに盛り上がって何とかしなきゃならぬというそういう気持ちの高まりの中に、やはり総理の諮問として国民全体が教育の問題を長期にこれから考えていかなきゃならぬ。そういう意味でこの機関の設置を考えておるものでございまして、従来のものはそれぞれの個々のその都度その都度必要に応じてつくり上げていったものでありますから、決してそのことと絡まってくるものでもありませんし、あるいはまたその議論を踏まえてやるものであるということも御理解をいただけると思うのであります。
  258. 中野鉄造

    中野鉄造君 非常に単純な質問でございますけれども、たくさんのものがある、しかしいろいろすそ野を広げてということになりますと、今度総理が計画されておりますそれも、とにかく今のあるものではいまひとつ物足りないものがある、だから一つ加えようと、こういうことなんですか。
  259. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 例えば、今日までの四十六年の森戸答申がございますが、それはかなりいろんな角度で具体化してきて教育政策の中にもうすでに織り込んでございますが、例えば先導的試行という話が出ておりました。あるいは、ここに私は、中野さんの所属なさっておられます公明党の皆さんがおつくりをいただきました「生命が躍動する教育を」というのを少し読ませていただきましたが、この中にパイロットスクールというのがございます。これはやはり軌を同じくするものだと私は思っておりますが、こういうこの教育の学制という問題をとらえてみると、単にその幼保の問題というのは、衆議院の段階でも随分譲論が出ましたけれども、人生五十年から既に今や七十年、八十年になるかもしれない。そういう七十年、八十年の人間の生涯というものを考えてみると、果たして学校に入る年齢というのは幾つが本当はいいのだろうか。  幼稚園や保育所の問題を論ずる前に、人間が親から離れるのはいつがいいのか。いや、ある意味ではもっと親元に、そばに置く方がいいのかという議論もある。あるいは、先ほどもちょっと久保委員のところで出ましたけれども、雇用との関係はどうなるのか。永井参考人がお話をされておりましたが、単に選抜の方向だけを幾ら改善しても必ず絶対的なものは出てこないんですね。それはやっぱり高等教育そのものがどういう存在の位置を占めていくのか、こういうこともいろんな角度から見ていかなきゃならぬというそういうことから総合的な角度、また別の視点があるというふうに申し上げたのはそういうことでございます。
  260. 中野鉄造

    中野鉄造君 もういよいよ時間が迫ってまいりまして、具体的な一つの例を挙げますが、これはちょっと話が変わってきますけれども、埼玉県の一部の県立高校で生徒の進路にかかわるコース選択を抽せんで決めたと、こういうことがこの間の新聞にも大きく取り上げられておりますが、こういう素地はこれからもありますし、十分考えられるのですが、これはいかがお考えですか、こういうこと。
  261. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) その当時の状況についてはむしろ事務当局の方が詳しく承知をしておるかと思いますが、たまたま進むべき方向の中で少し子供さんがダブったということで抽せんでというふうにどうもしたようです。日本人の感覚から見ると、これは入学の選抜も同じでありますが、どうも点数だけで、私と中野さんと一点違えば、まあ一点負けたからしようがないというふうに案外素直になるけれども、あっちの方がスポーツがよかったからとか、こっちが生徒会の会長をやっておったということになる情実から見ると、何となくそこに情感が入ったのではないかということで割り切れないものが出てくる。ついついそれならじゃんけんでやろうかとか、そういうふうに簡単にしてしまうことはやっぱり教育の現場であってはならぬことでありますが、どうもそういう形で操作をしたという、配慮をしたのではないかというような報告を受けておりますが、極めて遺憾なことだと思っております。やっぱり先生は生徒の進路の方向に従い、個人の考え方も十分聞いて、そしてでき得る限りの努力をしてやはり進路指導をしていく、あるいは所属を変え配置をしていくということはとっても大事なことだと思っておりまして、文部省としても関係の教育機関につきまして十分なる指導をいたしております。
  262. 中野鉄造

    中野鉄造君 次に、過大学級についてお尋ねいたしますが、この大規模学級の解消についてなんですが、つまり文部省は昭和五十五年から四十人学級の実現に向かって十二年計画を立て着手したわけでございますけれども、行革のあおりを受けて五十七年からストップがかかっております。本年度においてもストップがかけられたままでございますけれども、児童生徒数の多い学級は、これは子供の能力適性に合った教育指導を進めることが非常に困難になっているということはもう当然御承知のこととは思います。最近、このように校内暴力が起こるとかそういう多発化の原因を見ても、こういう大規模学級、過大学級、これに原因があるのではないかというようなことがよく取りざたされますけれども、政府としては、当初の予定どおり四十人学級の実現にこれはもっと前向きに施策を進めるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  263. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お尋ねの四十人学級につきましては、御承知のとおり五十六年のいわゆる行革関連特例法で一応抑制を受けております。しかし、十二年計画で六十六年度までの達成計画で設定をいたしました第五次教職員の改善計画は基本的にはこれはまだ変えておりません。確かに一クラス四十人が適当なのか、五十人がいいのか、三十五人がいいのかというのはこれは絶対的なものはございませんが、欧米先進国に倣ってということと、もう一つは、先ほど先生も御指摘ありましたように、先生が子供たちとの対話、子供たちの人柄、そうしたことを一人一人個々に判断をしながら教育をやっていく、教育を維持していくというにはやっぱり四十人が適当ではないかという判断を私どもも党の文教政策の責任の立場でやりました。ここに大蔵大臣いらっしゃいますが、当時竹下先生と議論しましたときに、大部屋がいいか小部屋がいいかというような議論になって、相撲取りのいいのは大部屋からたくさん出るなんというそういう御指摘も当時いただいたことがあって、私も大分やりとりもしたことがございますが、絶対的なものはないと思います。  ただ、先日私は本会議でも前島議員の御質問があったときに申し上げた特殊教育などを見ておりますと、やっぱり先生がマンツーマンでやっておられる教育効果というのはすばらしいなという、これは特殊教育でありますけれども、それは感じました。したがって、四十人学級というものはこれは私どもは基本的にはまだ変えておりません。ただ、来年度からどうするのかということになりますと、行政改革、財政の今日の状況の中で四十人を達成していくことの方がいいのか、それとも、多くの皆さんから、各党からいろんな御意見が出ております、教職員団体からも出ておりますし、また自由民主党としての考え方もたくさんございます。教頭の代替もございますし、研修代替もございますし、その他事務職員もあるいは栄養職員もいろいろございますから、そうした改善を進めていくことと、四十人学級を早く到達させることと、どちらがいいのかということはこれからやはり教育の関係の皆さんとも十分に議論をして文部省は考えていきたいと思っておりますが、少なくとも来年度の予算には、そろそろことしの八月までのいわゆる概算要求をする時点にまでは政府としても考え方をまとめていかなければならぬと、こんなふうに考えております。また、委員から建設的な御意見もちょうだいをしたいと思っております。
  264. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で中野君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  265. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、瀬谷君の質疑を行います。瀬谷英行君。(拍手)
  266. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 昨日の衆議院の予算委員会並びに本会議の経緯を見ておりまして釈然としない面がございますので、その点について若干の御質問をしたいと思います。  まず、GNPの一%という問題なんです。上田議員からきのうはGNPの一%をもし突破したならば総理は責任をとるのかどうか、こういう意味の質問がございました。それに対して総理からは、あくまでも一%以内におさめるように努力するというふうな趣旨の御答弁があったような気がするのでありますが、どうもはっきりと守りますと言い切れなかったように聞き取れたのでありますが、その点どうでしょうか。
  267. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛費を国民所得の一%以内におさめることを目途として決められました昭和五十一年の三木内閣の決定の方針は守ってまいります。
  268. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 五十九年度で人勧その他いろいろな要因がございまして、それが一%を突破するという可能性があるじゃないかというのが質問の一番先の前提になっていたわけです。その場合に突破をしないという保証があるのか、あるいは一%を突破しないように努力するというのは具体的にはどうするのか、そういう点の質問があったと思うのでありますが、きょうは中野委員からも先ほどその点についての御質問がございました。ところが、総理の答弁は、守りますということだけで、現実の問題としてそのときになってみなきゃわからぬと、こういう御趣旨の話なんですが、しかしことしなんですからね、人勧の結論が出るのも。そうすると来年の話じゃないんですから、もう目の前の問題ですから、この点についてははっきりさせておく必要があるのじゃないでしょうか。
  269. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府の方針はただいま申し上げたとおりでございます。人勧については、行政機構の中ではありますが、半独立の機関である人事院がこれから調査をなさってそして勧告をなさることでございますから、全く未定の状況でございます。したがいまして、それが出てきてから我々はこれに対する対応を決めようと、そう先ほどから。申し上げておるとおりでありますが、政府の方針はともかく一%の枠というものを守ってまいります、そういうふうに申し上げている次第なのであります。
  270. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今年度中に一%の粋を突破した場合にはどういうふうに処理をするのか、それはそのときになってみなきゃわからぬというふうに聞き取れるのですけれども、これはもうはっきりしているわけですね。そんなことはないというふうには言えないでしょう。間違いなく一%は突破をするという状況になるでしょう。その場合には自衛隊の人件費というのは別枠にするというふうな、形を変えてごまかすというようなことがあっちゃならぬという意味の御質問もさっきあったんですよ。しかし、そのときにならなくたって今からわかっていることなんだから、じゃ、こうしますということは言わなきゃならぬ。今のところは守りますだけでもっていいかもしれない、言葉の上では。しかし、言葉の上でごまかせないときがやがて来るのですから、そのときに一体どういうふうに処理しますかという問題ははっきりさしてもらわなきゃ困ると思うんですが、いかがですか。
  271. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府は一%は守るという政策を、それを実行していきますと重ねて申し上げておるのでございます。人事院勧告の方はこれからいろいろ諸般の数字等によって新しく出てくる問題でございます。したがいまして、そのときに対応するということで御了承を願いたいと思うのです。
  272. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 少なくとも五十九年度は守らなければならぬと思うのでありますが、五十九年度守り切れるということがお約束できますか。
  273. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど来申し上げましたように、三木内閣の決定した方針はこれを守ってまいりますと、そういう考えをここで申し上げている次第なのでございます。
  274. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 しゃべったことについては、そのとおり必ず守りますというふうに信用できれば別なんですよ、ところが余り信用できない。信用できない一つの証拠は、増税なき財政再建と、こういうことをしきりに去年言ってこられた。だけれども、そのとおりいかなかったでしょう。このことだけを取り上げてみても、どうもきのうしゃべったことが、きょうになって裏腹になるという今までの実績があるから私は言っているんです。この増税なき財政再建でもきのうの衆議院本会議でいろいろとやりとりがあったようでありますが、その点については一体これからどうするんですか。その方針はどんどん変わっていくというふうに考えていいんですか、その点はどうですか。
  275. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 増税なき財政再建という方針も守ってまいります。増税なき財政再建という定義が問題でありますが、たしか臨調の瀬島さんが当予算委員会参考人として公述されたのが私は一つの定義であると聞いておりました。それは行管長官のころから聞いていたことでございます。それは、GNPに対する租税負担率を基本的にと書いてありましたか、新しい措置をやらないで守っていく、そういうことのようにたしか記憶しております。そういう範囲内でやるということは、例えば自然増収というものはその中には入らないとか、あるいは不公平税制を改革するということも入らないとか、幾つかのそういう問題もあったはずでございます。そういう範囲内において我々は努力してきておるつもりなのであります。
  276. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大蔵大臣にちょっとお伺いしますが、じゃ具体的にできるのですか。右のポケットに突っ込んでおいて左のポケットから抜き取る、こういうやり方をやろうとしておるのじゃないのかという疑問があるんですよ。大蔵大臣どうですか。
  277. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 総理からおっしゃったとおり、増税なき財政再建というのは財政改革を進めていく上でのてこでありまして、これを貫かなければならぬというふうに思っております。今、租税負担率を変えるような新たなる措置をとらない、こういうお考えをお示しになりましたが、私どももそのような考え方で貫いていきたい。右のポケットから左のポケットというのは、恐らく五十九年度税制改正、所得税減税に伴うそれに見合うところの財源についてのことを意識しておっしゃったといたしますならば、これは私どもはいわゆる租税負担率を大きく変える新たなる税制上の措置というふうには理解をいたしておりませんので、ひたすらこうべを下げて御理解を賜りたいと、こう申し上げておるわけであります。
  278. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 和田君の関連質疑を許します。和田静夫君。
  279. 和田静夫

    和田静夫君 今の関連ですが、いわゆる一般消費税タイプの大型間接税はやらないと総理は言われました。私にも昨年の四月八日でしたか、ここでそういうお約束がありました。ところが、大蔵大臣の方は、衆議院の論戦を聞いていますと非常に微妙でありまして、いわゆる政府税調の中期答申の課税ベースの広い間接税の検討は避けて通ることはできない、そこの部分だけを何か拡大的に引用をされまして、この趣旨に沿って検討を続けていかなければならないというふうに大蔵大臣は発言をされる。さらに、前大蔵大臣渡辺幹事長代理は、EC型付加価値税への研究を始めるのだ、こういうふうに発言をされる。そうすると、一体われわれはどれを信用したらいいのかさっぱりわからないのでありますが、総理、どれを信用しましょう。
  280. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 総理大臣の言っていることを一審信用していただきたい。
  281. 和田静夫

    和田静夫君 それでは、総理の言っていることを信用するとして、ひとつ具体的にお尋ねをいたしますが、実は五十五年の十月、私の要求に基づいて大蔵省から大型間接税の五類型が出てまいりました。一つずつ聞きます。  総理、製造者消費税、おやりになりませんね。
  282. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どれが大型間接税に入るか、私もずっと前に大蔵省のその例を読んだことがあります。庫出税の類がたしか三つぐらいあって、それからそうじゃなくして二次、三次の分野、すそ野の分野におけるものがまた二つか三つあったと思います。それで、どれを称して大型間接税と言うか、大理というのですから中型、小型ではない。間接税という場合には直接税に対応する、そういう意味になるので、その定義は私は余り学問的に深くない人間でありますので、その辺は最終的には私は判断さしていただきますが、どれを間接税と言い、どれを消費税と言うかという定義は大蔵省の専門家にひとつお聞き願いたいと思う次第であります。
  283. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ大蔵大臣
  284. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 恐らく和田委員にお示ししたのはカナダ型とかヨーロッパ型とか、そういう趣旨の資料をお渡ししておるのではなかろうかというふうに思いますので、その点私も今手元に資料を持っておりませんので、事務当局からお答えをさせます。
  285. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 先年、和田委員にお出しいたしました五つの類型、単段階と多段階に分けまして、ただいま御指摘になりましたカナダでやっております製造者売上税、あるいは製造者消費税と言ってもいいかと思いますが、そのほかにオーストラリアでやっております卸売売上税、それからアメリカの一部の州でやっておりますが小売の売上税、それから多段階では、かつてヨーロッパでやっておりました取引高税、それから現在ECでやっております付加価値税、この五つの類型を課税ベースの広い間接税のいわば学問的な類型としてお示ししたことがございます。
  286. 和田静夫

    和田静夫君 それで、私がお聞きしているのは、その一つ一つをおやりになりますかと聞いているわけです。まず第一は先ほど質問しました。大蔵大臣、やりませんか。
  287. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる第一はカナダ型のお話であろうと思っております。私どもは、政府税調からお示しになっておる、避けて通れない課題であるから勉強はしなさいよと、こう言われておるわけでございますから、いわゆる学問的な分類の中におけるもろもろの問題について絶えず勉強はしていかなきゃならぬ問題だと思っておりますが、私自身、今日、カナダ型は未来永劫やりませんとかいうことを言う立場にはなかろうと思っておりますが、カナダ型というあの手法というのは果たしてなじむだろうかと、こういう感じは私も持っております。
  288. 和田静夫

    和田静夫君 オーストラリア・スイス型と言われる卸売売上税、おやりになりませんね。
  289. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これも、勉強の課題としてはこれは勉強すべき課題でございましょうが、なじむかどうかということになりますと、今の時点でこれはなじみますと言える範疇には入らぬだろうと思っております。
  290. 和田静夫

    和田静夫君 アメリカ州税、カナダ州税型と言われる小売売上税、これもおやりになりませんね。
  291. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわば今の日本における個別物品税も、ある意味において小売の時点において個別的にかかっておるという判断からすれば、必ずしも分類上どのように表現していいかということに迷いますが、総じて言えば、恐らく和田さんの御質疑というものは、ああした分類の中で、いわば今日の物品税、間接税が個別的な間接税の延長線上にあるものであって、総じてまず消費一般を着目してその中からこれとこれはやめると、こう言って抜き出す手法との相違があるのかなと、こういう印象を私も御質疑を承りながら受けておりますが、いわゆる一般消費税というものの手法は、国会決議というものがある限りにおいて私は今日とるべきでないというふうに考えております。
  292. 和田静夫

    和田静夫君 先ほど説明があった多段階課税のうちでありますが、EC諸国のいわゆる旧取引高税、これもおやりになりませんね。
  293. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 日本でも取引高税というのはあった時代がございますが、今勉強の外にあるとは税調での御指摘がある限りにおいては申しませんけれども、かつての問題からして、これが直ちになじむとは私も思っておりません。
  294. 和田静夫

    和田静夫君 最後ですが、西欧諸国のEC型付加価値税、これもおやりになりませんね。
  295. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これも勉強の課題といいますか、かなりこれは勉強した問題でございます。それからいろいろ勉強した結果として、かつてのいわゆる一般消費税(仮称)ということがとられたわけでございますから、一応は勉強済みの問題ではないかというふうに理解しております。
  296. 和田静夫

    和田静夫君 総理、もちろんこの一九七八年に税調が出した一般消費税は、これはもう絶対おやりにならぬのか。
  297. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一般消費税はやる考えはありません。  それから大型間接税をやりませんと申し上げておりますのは、大型、中型、小型とこう分かれると、じゃ中型、小型はやるのかと、そういう質問が出るかもしれませんが、しかし物品税というものはある意味においては小型の個別的なものですね。中型というものはどんなものになるだろうか。もう少し専門的に洗ってみないとわかりませんが、ともかく、ぱさっと投網をかけるようにしてそしていわゆる小売の各段階に全部税金をかけるような、ああいうようなやり方は自分はやりたくない、そう思っておるわけであります。
  298. 和田静夫

    和田静夫君 そのやらないというのは、いつまでやらないということかという点であります。大蔵省の財政事情の仮定計算例で少し勉強させてもらいましたが、これは私本番で少し論議をさせていただきますが、仮に赤字国債の借りかえをやったとしても膨大な要調整額が出てまいりますね。そうすると、この要調整額をどのようにして処理をするのだろうか。大型間接税を導入しないで処理するということになってきますと、そうすると歳出の削減をやらざるを得ない、こういうことになってくるわけでありますが、間接税は、中曽根総理は私には、前のときには、いつまで私の内閣が続くかわからぬけれども私の間はやらぬと、こう言われておるわけでありますからおやりにならぬと思っておりますが、この辺は一体どこまでお約束になりますか、いつまでですか。
  299. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 恐らく五十九年度予算案の御審議に当たっての何らかの手がかりということでお示しした中期展望なりあるいは仮定計算に基づいたいろいろな御疑念からの、何といいますか、本番でございませんのでまあ前座、前座というとちょっと表現が悪うございますが、そういう意味の御質問であろうと思います。やはりいろいろ本番のときに御議論することになると思うのでございますが、いろんなケースを出しました。そして今度は私どもとしては委員各位の、このような前提に置いたケースも検討してみたらどうだと言われれば、それに対して忠実にわれわれも精査して御協力申し上げてみようと。言ってみればそのように相互がいろんな前提の上に立って議論を積み重ねる中にその要調整額というものをどこに求めていくか、歳出削減あるいは負担増。そういうところで国民の合意がどこにあるかということを最終的に国会の議論等を通じながらそれのコンセンサスを得ていこうと、こういう手法で臨みたいと思っておるわけです。  ただ、その中にも総理から答弁があっておりますように、いわゆる一般消費税(仮称)というような手法は初めから国会決議等がございますのでそのコンセンサスの外にある、こういう考え方でございますので、何をいつまでか、あるいは社会党の皆さん方の方からもこのような税目があるじゃないかという指摘を従来とも受けておるわけでございますから、それらが結局相互の議論を通じながら国民の選択、合意がどこにあるかということを見定めていく一つの種ともなれば幸いだと思って、本番のときに御議論をいただければと思っておるわけです。
  300. 和田静夫

    和田静夫君 そこのところは本番でやります。  税制なんかについて提案もしたいと思いますが、総理、いつまでですか。
  301. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いつまでという、三年後とか五年後とかそういうような数量的な期限を切るというべき性格のものではなくて、私の内閣が続いている間はそういうものは避けたい。増税なき財政再建の本義は要するに歳出カットを思い切ってやりなさい、それから税外収入を思い切ってふやしなさい、あるいは不公平税制の是正はどんどんやりなさい、あるいはまた新しい税日とか新規の措置をやらない範囲内においてでこぼこ調整はそれは可能だと認めてくれておる、そういうようなすべての総合的な政策、それから経済政策におけるいろんな政策によって自然増というものも考える。我々が六十五年までに赤字国債依存体質から脱却する、まあ七年ありますから、そういう過程においていろんなものの組み合わせをそのときの経済条件を見ながらやっていきつつ所期の目的を達しようと、そういう考えでございます。
  302. 和田静夫

    和田静夫君 昨日衆議院の本会議答弁なされましたね、雇用税、福祉税ですか、どういう構想でしょう。
  303. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはせっかくの機会でございますので、むしろ私、誤解を受けたと思いますので、釈明の機会をお与えいただいたような感じすらいたしております。  これは一部中央紙に福祉税構想というものが出ておりまして、それの内容を見ますと、一般的に言われる雇用税とも言える性格のものだというふうにそれを読み取ったわけでございます。したがって、福祉税構想というものをいま勉強しておるわけでもございませんし、雇用税というものもわれわれの念頭にはございませんが、雇用税という範疇のものにあの有力紙の提案は入るものであろうというふうに申し上げたわけでございまして、雇用税は先進国二カ国ぐらいがやっておりますけれども、現実、雇用税というものは、いまの企業等で社会保険をいろいろ企業側として負担していらっしゃる、それの上にまた同じ趣旨のものをとっていくというような趣旨のものでございますだけに、私は雇用税というものが学問的にはあり得るが、いま私どもの念頭にあるわけでもなく、これはちょっと調べてみておりますが、税調等でもまだ議論されたことすらない問題じゃないかな、あんなこと言わなくてもよかったなと思っております。
  304. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、財政事情の仮定計算で一問だけ聞いておきたいんですが、一般歳出の伸びを〇%、三%、五%と置いて仮定計算を行ったわけです。今後新規の施策を行わないとして、そして現状の制度のままとして、物価上昇と当然増経費を考えますと、今後の一般歳出の伸びというのはおおむねどの程度の伸び率と見ておいたらいいんでしょうか。私の論議の参考のためにちょっと聞いておきたいんですが、三%、五%、あるいは四%なのか、六%なのか、ここのところがはっきりしませんと、計算の様式をずっと今度お変えになったわけですが、ここに出てきているのがちょっと私の方ではつかみにくいので。
  305. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは仮定計算の中で五%の場合、三%の場合、〇%の場合、それであとはいわゆる名目成長率を六・五として十年間の租税弾性値を一・一として、等率等差とでも申しますか  において機械的に出したものでございますので、そのうちどれが一番例えば実現性があるかとか、どれを大蔵大臣としては指向しておるかとかという性格のものではございません。むしろ、ああいう仮定計算の中でお互いの論議を重ねるうちに一つの方向を模索し、結論を出していくための参考資料であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  306. 和田静夫

    和田静夫君 最後の一問ですが、厚生大臣、日本チバガイギーのタンデリール、ブタゾリジンですね、これの問題なんですが、この二葉での死亡例が日本で十四と四、十八例ある。そうすると十八人亡くなった方がおられるわけで、これらの方々の氏名、それから死亡年月日、どういう状態で亡くなったのか、ここのところを明らかにしてください。これがわからないと、先日厚生省が処置をされましたね、その正否を私たち判断できない。私は当然販売中止になると思っておったところが、ああいう処理の仕方ですから。明らかにできますか。
  307. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 御質問の日本チバガイギーの消炎鎮痛剤の件でございますが、日本チバガイギー社より両剤の副作用資料を提出させまして、現在内容を精査しております。  先生御指摘のように、その同資料によります一と、日本人の死亡例が両剤合わせまして十八例ということでございますが、その中身につきましては、重複、因果関係等なお検討を要する点がございます。私どもとしては要指示薬等の指定は二十一日にいたしたわけでございますが、薬の扱いについて今月中に中央薬事審議会の専門調査会で十分審査をしていただいて、その評価を得まして内容を明らかにさせていただきたいというふうに思っております。
  308. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、厚生大臣はもう御存じだということになりますね、この十八例について。
  309. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) いまも業務局長から各弁がありましたように、チバガイギーの両剤について新聞等で報道され、また衆議院の予算委員会等でも御指摘をいただきまして、国民の皆さん方を不安なからしめるために急いで専門家等の意見を聞いて、いまお話のように二十一日付で要指示薬ということに指定し、これは三月二十一日に発令されるわけでありますけれども、私も最初は、素人でしたから、こういう心配があるものにはすぐにでも販売中止というようなことをできるのかと、またそういうことをしたいという気持ちはありましたが、いろいろ聞いてみますと、これは極めて専門的な問題でありますので、中央薬事審議会、この専門家等の意見を十分尊重して、そこでその意見を聞いて至急に処置するということで、今お話のように今月中にその精査の結論が出るのを待っておるところでありますけれども、いまの死亡の具体的実例等については報告は受け取っておりません。
  310. 和田静夫

    和田静夫君 受け取っていないんですか。
  311. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) はい。
  312. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、私も実は予算委員会でこれは判断をしたいと思っているんです、薬の問題は随分いろいろな委員会で取り上げてきましたからね。今の十八例について、いつの時点で資料として私の手元へ届けてくれますか。
  313. 正木馨

    政府委員(正木馨君) お答えいたします。  ただいま内容を精査しておりますが、確かに日本人の死亡例十八例が載っております。この死亡例は、論外国の文献にあらわれたもの、それから会社が独自に収集したもの、各国政府が収集したもの、いろいろなものを集めた事例でございます。したがって、その中身につきまして、先ほど申しましたように、重複、因果関係等を精査しておりますが、今月中に調査会で十分御審議をいただくと、その時点で明らかにしていきたいというふうに思っております。
  314. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今お聞きしますと、結局大蔵大臣からは手を変え品を変え名目を変えて、何とかして税金を取りたいと、こういう意欲だけを感ずるわけなのでありますけれども、これほど財政事情が悪化をしているときにもかかわらず、防衛費だけは特別扱いで、去年もことしも引き続き突出をしておる。なぜ防衛費をこんなに突出させなければならないのか。どこにそういう差し迫った事情があるのか。そのことを明らかにしてもらわないと国民は納得できないと思うのでありますが、総理、その点はどうですか。
  315. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは同じく、あれはたしか三木内閣のころでございましたか、防衛計画の大綱というものをつくりまして、これはたしか国防会議で決めたと思います。その大綱の水準にできるだけ早く近づくという考えを行ったはずです。そのころ基盤防衛力という概念もたしか出てきておったと思います。そういうことで、大綱の水準に近づいて防衛を全うじよう、それは当時の国際情勢の判断に基づいて行ったものでございます。歴代内閣は、その大綱の水準に近づくように一生懸命努力をしてきたところでございまして、現内閣におきましても、その延長線におきましてできるだけ早く大綱の水準に近づくように努力している、その一環でございます。
  316. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大綱の水準に近づけなければならないという差し迫った事情があるのかどうかということが問題なんですよ。その点国民は、五六中業だとか、やれ防衛計画の大綱だとか言われても、それが具体的になぜ必要なのかということを理解できなければ当然これは不満を持つと思うんです。その点の事情を明らかにしないと、私は国民に対して不親切だと思うのでありますが、その点どうですか。
  317. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その大綱の水準をどうしてつくったかと申しますと、それは、もし侵略があった場合に、それが小規模のものである場合には日本の独力でそれを排除しよう、そして日本の防衛を全うじよう。それが長引いたという場合にはアメリカの応援を得る、安保条約の発動によって。そしてこれを排除していく。そういう構想のもとに、限定的小規模のものについては日本独力で排除するという方針でこれぐらいのものが要る、そういうふうに判定をして、そうして大綱の水準というものをつくったわけです。現在におきましても、限定的な小規模の侵略があった場合にはそれに対応できる必要最小限の力をつくろうということでその大綱の水準に到達すべく努力しておるということであります。  しかし、最近はその当時とまた国際情勢が非常に違ってまいりまして、我々の周辺における外国の防衛力の増強というのは非常に増強の度合いが進んできているという情勢もありまして、多少状況変化もございます。防衛というものは相対的なものでございますから、ともかく小規模限定の侵略があった場合には排除できるというような発想に基づいて、客観情勢を見つつ日本の防衛問題に対して必要最小限の力をつくるべく努力していると、そういうことでございます。
  318. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 客観情勢を見たところで、小規模であろうと大規模であろうと、そういう侵略の可能性といったようなことが現在国民はないと思っているんですが、防衛庁同体はそういう可能性を考えているのか。何よりも総理自身が、そういう必要性を感じなければならないような具体的な事実があるというふうにお考えになっているのかどうかという点を明らかにしてもらいたい。
  319. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もし万一あった場合に、我々が素手で、丸裸でやれるというわけではありません。もし、またそういうような手薄な状態にしておいたら侵略を誘発するという情勢も世界の各地に見受けるところでございます。そういう意味において、そういうような不幸な事態を起こさせないためにも、抑止力としてある程度の限定的な力を持って、そして日米安保条約を有効的に機能させることによってそういうことを起こさせないようにしておく、そういう必要性もまた十分にあるわけであります。
  320. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 分相応ということがあるわけなんです。それがGNPの一%ということになっているんです。今やまさにその一%の垣根を取っ払おうとしているわけなんです。取っ払われたら最後これは青天井になってしまうんじゃないか。非常に今危険な状態にあると思うんです。ことしまさにこの一%が突破されようと、こういう状況にあるわけですから、財政的にやはり均衡がとれていないんじゃないか、突出しているんじゃないか、こういう疑問はぬぐえないと思うんですよ。節約をしなければならないのならば防衛費だって例外じゃないと思う。防衛費も同じように抑えるのは、これは財政の立場からいえば当然だと思うのでありますが、その点に対する配慮はないんですか。
  321. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛力の整備に各国がどの程度力を入れているかという国際的水準を見ますと、やはりソ連が一番今まで力を入れておって、今まで伝えられたところでは、GNPに対して一一%から一五、六%という数字が出ておりました。まあ最近はそれが少し減ってきているという情報もございますが、ともかく一〇%以上ぐらいにはなっているのではないかという想定がございます。それからアメリカが二番目で、これが六%前後ではないかと思うんです。それからヨーロッパの国になりまして大体四%前後、五%から四%前後。日本は一%にいかないで〇・九%程度であったわけです。  そして、社会保障費と軍事費との相関関係を見ますと、大体日本が三対一で、社会福祉関係が三倍です。ところが、フランスあたりがたしか一対一ぐらいであり、アメリカやヨーロッパの各国を見ても、日本のように三対一という国はないわけであります。こういう状況を見ると、防衛努力において、日本はほかの方面をかなり重視して、防衛の方は多少手を抜いてきていると外国から言われてきておった。言われても予算から見ればやむを得ないという、そういう分配割合になっておるわけでございます。現在におきましても、社会保障費が約九兆で防衛が二兆九千億で三対一の割合になっておるわけでございます。そういうようないろいろな情勢を考えてみまして、日本は財政が厳しい中で努力しているわけでございますけれども、今のような防衛努力をするということは客観情勢にも対応し、かつまた日米安保条約を有効に機能させるという意味におきましても必要な限度ではないかと考えておるわけであります。
  322. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 社会保障は九兆だから、防衛費の二兆に比べればというお話がございましたけれども、これは比較の対象が違うわけですよ、全然。防衛費の二兆は多過ぎるじゃないかと言っているわけなんです。社会保障が九兆だからといったって、これはパンツが高過ぎるじゃないかと言っているときに、ワイシャツはもっと高いじゃないかと言っているようなものなんでね。比較の対象が違うんですから、防衛費と社会保障費との比較をした場合には国民はやっぱり納得できないと思うんです。日本の状況でよその国がどうだとかこうだとかと言うのは、実情を見ているわけじゃないんですから、果たしてどんなものだかこれはわかりません。しかし、ともかく防衛費がこれだけ高額になってきているというその背賢とすれば、抑止力、それから外国の脅威ということがいろいろと理由になっておるわけです。そこで、この外国の脅威について、今までもよくソビエトの脅威ということが言われたし、そういう対外的な問題が取り上げられると同時に、大韓航空の問題もやはり同じようにその引き合いに出された、こういう記憶がございます。  そこで、この大韓航空の問題について触れたいと思うんです。もう既に事件が起きてから半年の年月がたっております。前回の予算委員会では、大韓航空機の犠牲者の遺族の補償の問題に対して、安倍外務大臣が側面的に協力をするというような御答弁がございました。それから、なぜああいう常識では考えられない航路の逸脱があったのか、こういう問題については、長谷川運輸大臣はよくわからない、ミステリーである、ICAOにおいて調査をすると、こういうような御答弁がございました。それからさらにその責任については、安倍外務大臣から、ソ連には国際法違反という疑いがあるから補償の請求をするんだと、こういうお話もございました。そこで、では一体政府としては具体的にどういうことをされたのか、その点についてお伺いしたいと思うんです。
  323. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 大韓航空機の撃墜事件の真相究明につきましては、事件が発生をしまして以来、ソ連側に対しまして真相究明を求めてきておるわけでありますが、先般、私がアンドロポフ書記長の葬儀に出席をしてグロムイコ外相と会談した際にも、グロムイコ外相は当該大韓航空機が米国のスパイ機であるという従来のソ連側の立場を繰り返しておりまして、誠意ある対応を示していないのはまことに残念と言わざるを得ないわけであります。他方、我が国は、真相究明に対する国際民間航空機関、いわゆるICAOの努力に全面的に協力するとの観点から、昨年十月四日より七日までの間、事故原因の究明を目的としたICAOの調査団に対し積極的な協力をいたしたわけでございますが、また米国、韓国両政府も、本件調査への協力を行ったものと承知しておりますが、この結果を踏まえた報告書が昨年十二月に公表されたことは御承知のとおりでございます。  さらに、韓国政府に対しましては、もう累次にわたりまして事故原因についての韓国側調査結果を日本政府に通報するよう申し入れを行っております。また、大韓航空機によるこのルート逸脱の結果生じた損害に関する責任の問題は、御承知のように大韓航空機と乗客の遺族との間の民事上の問題と認識しております。したがって、政府としては右に直接関与する立場ではございませんけれども、しかし可能な範囲で援助を行わなければならない、こういう立場から努力を重ねておりまして、大韓航空に対しては、日本人遺族に対する補償問題の円満な解決に特別な努力を払うよう、また韓国政府に対しましても、側面から補償問題の円滑な解決のため協力するよう何回も申し入れを行って今日に至っておるわけであります。
  324. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 何回も申し入れを行っておるということでありますが、どういう回答があったのか。また、犠牲者の遺族の方との補償問題の進展というのがさっぱりないわけです。特に、聞くところによりますと、大韓航空の社長は、これは原因がソビエトの誘導電波によって落とされたものだ、こういうことを言っておる。これはまことに人をばかにした話なんであって、少年漫画のような想定なんですね。これは到底話にならぬと思うのでありますが、外務大臣はどのように処置をされておりますか。10国務大臣安倍晋太郎君)今申し上げましたように、私自身も韓国の責任者、あるいはまた大使を招致いたしまして、韓国政府から大韓航空に対しまして、日本のいわゆる遺族との間の折衝にひとつ誠意を持って当たってもらいたい、そして十分なる補償が行われるように努力をしていただきたいということは何回か申し入れております。これは、大韓航空に政府としてはこれを伝えるということでありまして、同時にまた大韓航空の社長も一度外務省に招致をいたしまして、大韓航空としても誠意を持ってこの解決に当たってもらいたいということを日本政府として強く申し入れておるわけであります。その後、遺族側と大韓航空の間でいろいろと協議あるいは交渉が行われたということを聞いておるわけでございますが、残念ながら現在のところでは、遺族側の満足するような回答が行われていないということでございまして、これは今後の課題として、遺族会としても交渉を進めて、遺族側の満足する回答が出るように、大韓航空にこれからも当たっていかれるわけですが、政府としてもできるだけ側面的な援助はひとつ続けてまいりたい、こういうふうに思っております。
  325. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これは、犠牲者の遺族の方の立場からすれば、仮に何億の補償があったとしてもそれで気の晴れる問題じゃないんですよ。いわんや過失責任についてあいまいにして、うやむやのうちに時間稼ぎをするといったようなことはこれは許しがたいと思うんです。ところが、今外務大臣の話を聞きますと、どうも要領を得ない。では一体これから先、この大韓航空機問題の犠牲者遺族の補償問題について、政府としてはどういうふうに側面的な援助をなさるおつもりなのか、その点を再度お伺いしたいと思います。
  326. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは先ほど申し上げましたように、基本的にはやはり大韓航空と遺族の側との民事上の問題であるわけです。ですから、政府が直接これに関与するという立場にはないわけですが、しかしああした痛ましい事故でありましたし、遺族の立場に立ちまして、やはり日本政府としてもできるだけ協力しなきゃならぬということで、先ほどから申し上げましたような側面的な努力を行っておるわけであります。  なお、この事故の原因につきましては、ソ連側としては撃ち落とした責任はとろうとしない。日本の損害賠償の請求に対しましても、この要求書すら受け取ろうとしない状況にあります。さらにまた、ICAOの報告書については、御承知と思いますが、このコースを逸脱したということにつきまして大韓航空機に責任があることは認めておりますが、しかしこれを断定的に、例えば重過大といったような断定的な認め方もしていない、こういう点もあるわけでございます。現在、遺族と大韓航空との間の交渉に移っておるわけですが、今申し上げましたような立場で、日本政府としては、やはり韓国政府等に対しましても日韓の今日の友好関係という立場から見ましても、あるいは、とにかくコースを逸脱したということも事実でございます。そういう立場に立って、やはり大韓航空が誠意ある態度でひとつ交渉に今後臨んでもらいたいということを、これからもやはり辛抱強く韓国政府を通じて大韓航空側に日本政府の立場を伝えてまいりたいと、こういうふうに思うわけです。
  327. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 参考人の発言をお願いしたいと思います。
  328. 西村尚治

    委員長西村尚治君) この際申し上げますが、宮城参考人は体調をやや崩していらっしゃるようですので、発言者席に着席してもらいまして発言の際だけ起立していただきますので、あらかじめ御了承願います。
  329. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 参考人に、私も実はよくお仕事の内容を存じないのでございますが、航空法関係のいろいろ著書がおありのようでございますので、どういったようなことを今日までお書きになっておるのかということも参考までにお伺いしたいと思います。  それから、今回の事件を国際民間航空法上どういうふうに把握をしたらいいのか。つまり、ソビエトの撃墜行為、それから大韓航空機の異常な領空侵犯行為、この二つがあるわけです。原因は大韓航空機の領空侵犯であって、この領空侵犯が行われなければ撃墜という結果も生まれなかったということになるわけであります。ところが、今までこの問題について連合審査をやった経緯を振り返ってみますと、国際法上の問題、それからパイロットの技術的な問題、航空評論家の見解、いろいろございます。いろいろございますけれども、とりあえずまず最初に、このソビエトの撃墜行為と大韓航空機自体の侵犯行為に絞ってお伺いしたいと思います。
  330. 宮城雅子

    参考人宮城雅子君) 宮城でございます。ただいまの御質問に対してお答え申し上げたいと存じますが、私は法律論の立場からだけお答え申し上げるのでございまして、人道上あるいは政治上の観点からあるいはこれに関連して申し上げるわけではございませんことをあらかじめお断りいたしておきます。  ところで、初めにシカゴ条約の基本原則がどこにあるかということでございますけれども、かつて航空の発達の初期の段階におきましては、海の自由と同様に空も自由であるという空域自由の考え方があったのでございますが、第一次大戦後の一九一九年に至りまして、空域は下方の国の主権に属するという考え方が支配的になりまして、同年のパリ条約でこれが明文化されたわけでございます。以来一九四四年のシカゴ条約におきましても、このシカゴ条約と申しますのは国際民間航空条約のことでございまして、日本を初め、米ソを含め百五十二ケ国、世界のほとんどの航空国が加盟しております。  このシカゴ条約におきましても、第一条におきまして、「締約国は、各国がその領域上の空間において完全かつ排他的な主権を有することを承認する。」ということをうたっておりまして、領空主権の原則を明確にいたしております。この条約のすべての規定はこの原則を基礎としているのでございます。したがいまして、空におきましては、領海における船舶の無害航行の自由と同様な自由は航空機については認められていないのでございます。定期航空運送事業に従事する民間機といえども、締約国である被飛行国の特別の許可その他の許可を受け、かつその許可の条件に従わない限り締約国の領土の上空を通ったり、領域に乗り入れたりすることはできないことになっております。このことはシカゴ条約の第六条に明記されております。  また、この条約の第九条には、軍事上の必要または公共の安全のため、他の国の航空機が自国の領域内の一定の区域の上空を通過することを他の締約国とICAOに通知した上で一律に制限したり禁止することができるものとして、禁止区域に入った航空機に対しましては指定空港に着陸を要求することができるものとしております。これらが本件に関連いたしますシカゴ条約の主要な規定でございます。  ところで、シカゴ条約は、条約の規定の細目についての統一を図るために附属書をつくることを約しまして、附属書を成立させております。侵犯機に対しますインターセプト、これは要撃と訳されておりますけれども、インターセプトにつきまして航空規則にかかわる同条約の第二附属書の中で、「インターセプトを受けた航空機は「付録A」の規定に従う視覚信号を理解し、応答することによって要撃機より受ける指示に従う」などの措置を「直ちに」とることを「標準」、この「標準」と申しますのはスタンダードでございますが、「標準」としております。インターセプトの際の視覚信号は同附属書の「付録A」に記されております。この事故で問題になりました「要撃機は、民間航空機を要撃するいかなる場合においても武器を使用しないものとする」旨の規定は、同じく第二附属書の「添付A」の中に含まれております。  条約の規定と附属書を構成する、いま申し上げました「標準」、「勧告方式」、「付録」、「添付」などの拘束力はどうなっているかと申しますと、条約の拘束力が最も強いものでございまして、締約国を拘束いたしますが、附属書の各項に規定されております事項は、「標準」でございましても、これを実行することが不可能な場合には、ICAOに通告することによりまして拘束を受けない、したがって通告がある限り違反の問題を生じません。また「勧告方式」もいわゆる努力目標にすぎないものでございます。ここで問題の武器の使用の禁止に関して規定しております「添付」と申しますのは附属書の本体を構成しないものでございまして、単なる資料あるいは手引として位置づけられているものでございます。このことは第一附属書に記されております。民間航空機を偽装いたしまして軍事目的に使用する場合もあり得ることを考えますと、主権の行使とも言うべきインターセプトにつきまして、武器の使用を禁止する旨の記述が単に拘束力のない「添付」に記されていることは、先ほど申し上げましたとおり、領空主権の原則をシカゴ条約がとっていることから当然のことではないかと思います。  ソ連の撃墜行為は、警報の仕方が適切であったかどうかという問題はございますけれども、日本で傍受した通信内容から見ますと、警告は行っているようでございまして、国際民間航空法上はシカゴ条約の附属書の中の「添付」の記述に抵触するにすぎません。したがいまして、同条約に違反する行為とは言いがたいものと存じます。民間機が不必要かつ不条理な危険にさらされてはならないということはもちろんのことでございますけれども、国際法上、民間機に対する要撃行為が妥当であるかどうかということの判断につきましては、侵犯機の性格、軍用機か民間機か、あるいは遭難機か、またその侵犯した推定の動機はどこにあったか、また武力を用いないで支配することは可能であったかどうか、それから重要機密施設への接近があったかどうか、前例の頻度、これらのことによって決まるというのが国際的に権威ある考え方でございます。  この点につきまして国際的な判例が見当たらないことが法律上の論議を呼ぶ一つの原因となっているものと思いますけれども、本件につきましては、民間機か軍用機かの識別は困難な状況下にあったこと、またソ連の重要施設に二、三回接近している事実があること、また大韓航空機が撃墜されたのが同機がソ連領空から公海上に出る直前であったこと、また過去にも同社の航空機がソ連の領空を侵犯していること、しかも大韓航空機のロメオ20からの逸脱がニッピ付近で約二百五十ノーチカルマイル、攻撃されました時点で約三百ノーチカルマイル、約五百四十キロも離れているという事実を考え合わせてみますと、ソ連の撃墜行為が不当なものであると即断することは困難であると存じます。これに対しまして大韓航空機のソ連の領空侵犯行為は、先ほど申し上げましたように、シカゴ条約の第六条の規定に照らしてみますと、シカゴ条約の締約国でございますソ連の許可なく上空を飛行したのでございますから、これに違反する行為ということになります。  このように、先ほど瀬谷先生からの御指摘のとおり、大韓航空機のルート逸脱がなければソ連の撃墜行為はなかったものと考えられますので、まず問題にされなければならないのは大韓航空機のルート逸脱であり、そこにまず問題点があるかと、かように考えます。
  331. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今度は大韓航空機の過失責任の問題なんですが、これは補償要求の場合に過失責任を認めないということになるとなかなか話は進まないと思うんです。ところが、私も知らなかったんですけれども、航空地図というのがありまして、この航空地図は各地域についての航空地図でありますが、アメリカでつくられております。これは色分けをしてあって、色の違ったところは入っちゃならないという場所になっております。ここにはノン・ブリーフライング・エリアと、こう書いてあります。さらに注意書きとして、この飛行禁止区域に侵入した飛行機は警告なしに射撃されるかもしれない、こういうことが書いてあります。また、この大きな、つまり太平洋がそのまま入るこの大きな地図には、アメリカー日本間の北ルートを航行するパイロットは、ソビエトの管理下にある地域、特にクリル諸島に近づくこと、または上空を飛ぶことは避けるという注意書きがここに書いてあります。してみると、パイロットにとってこの航路を逸脱してこの空域に入ることは危険であるということは常識になっているのではないかと思うし、日本航空の場合はパイロットは皆そのことを承知しておると聞いているのでありますが、韓国としても同じことではないか、こういうふうに思われます。  そこで、危険な空域、しかもその中に入ると撃墜されるであろうというそういう注意書きのあるところは、ソビエトだけじゃなくて韓国の中にもあるというわけです。したがって、こういう空域を設けていること自体が違法であるということにはならぬと、こういう気がいたしますが、あえてここへ飛び込んでいってそして撃墜をされたということになると、二百六十九名の犠牲者というふうに言われますけれども、二百六十九名のうち少なくとも乗客には責任もなければ罪もないわけです。しかし、このパイロットには重大な責任があると思うんです。この危ないところを承知の上で飛び込んだということになりますと、警報器の鳴っている踏切を強引に突っ切ろうとしたバスの運転手みたいなものです。これはぶつかった場合には電車の方が悪いかバスの方が悪いかということになると、当然電車よりもバスの方が悪いということになるわけですね。  そこで、この賠償の問題がここに出てくるわけでありますが、過失責任ということとICAOのこの報告というのはどういうふうになっているのか。ICAOの報告を見ますと、最初に書いてあることは、乗組員はその当時の飛行に支障はなかった、それから精神的、心理的に異常であったということを示すものはなかった、当該航空機は正常であって正規の手続に従って整備されていた、こういうふうにあるわけです。要するに、故障はなかった。故障がなかったのに何で領空侵犯したかということになるわけでありますが、そうするとこれは故意に侵犯をしたのかどうかということになってくるし、もし故意に侵犯をしたということになると、これは意図的、計画的な飛行であったということにならざるを得ない。その場合にはだれがやらしたかという問題で出てまいります。  だれがやらしたかということになると、そこに浮かび上がってくるのが、容疑者としてはアメリカが浮かび上がってくるということになってしまう。そうすると、アメリカはそういう容疑者にされては困るから、故意に侵犯をしたということにしないで、そしてうっかり間違ったことにしてしまおうと、こういう政治的ないろんな働きかけが起こってくることが考えられるわけです。問題は、故意があるいは偶然が、二つに一つしかないんですから、この問題はここでもって過失責任というものが大きく評価をされるその方法がここで違ってくるわけなんですが、ICAOの報告書、これは初めから読んでみると、もっともな点もあるし、あいまいな点もあるし、あるいは大韓航空をかばおうとしている点もあるし、何とも言えないのですが、このICAOの報告書に対する評価、それから日本政府としてはこのICAOの報告書を受けてどうしたらいいかという問題があると思います。とりあえず参考人にそのICAOの報告書を中心にしてお伺いしたいと思います。
  332. 宮城雅子

    参考人宮城雅子君) ただいま御指摘の点でございますが、この事件によりまして生じた損害について、いかなる条約に基づいて損害賠償が行われるかということは非常に難しい問題がございます。厳密に申せば、それによりまして損害賠償責任が違ってくるわけでございますので、法律論としてはこれを一律に申し上げることは非常に困難でございますので、場合を限定して答えさせていただきたいと存じます。  この件につきましては、日本人旅客の大多数がアメリカからソウルを経由いたしまして日本に帰ってくる、そういう旅客が多かったというふうに聞いておりますので、アメリカの一地点を出発地とし、そして日本を到達地とする運送契約であったというふうに仮定いたしまして答えさせていただきたいと存じます。その場合に適用されますのは、アメリカと日本がワルソー条約の締約国でございますので、ワルソー条約を基礎にすることになるわけでございます。そして、これにいわゆるモントリオールアグリーメントと申しております航空運送会社間の協定が責任制限について適用されることになるわけでございます。そして、このモントリオールアグリーメントの賠償額の限度は訴訟費用込みで七万五千ドル、約千七百万円でございます。しかし、ワルソー条約は、故意または重過失がある場合、これは条約の表現によりますと、「訴が係属する裁判所の属する国の法律によれば故意に相当すると認められる過失」という表現になっておりますが、この場合にはこの責任限度額が外されまして、旅客の方は損害の全額について賠償を受けられることになっております。したがって、補償問題の観点から考えますと、この事故が大韓航空側の故意に相当する過失によったものかどうかということが非常に重要な問題で、最大の争点でございます。そこでワルソー条約二十五条は、ただいま申し上げましたように、訴えの係属する裁判所の属する国の法律により故意に相当する過失ということを申しておりますので、これが日本でどのように意味づけられるかということになります。  これにつきまして昭和五十一年の最高裁判所の判例がございます。これによりますと、ワルソー条約二十五条に言う「故意に相当する過失」と申しますのは、日本の法律上重大な過失であると判決しております。そして、この重大な過失と申しますのは、従前の判例によりますと、相当な注意をしなくても容易に違法、有害の結果を予見し回避することができるのに漫然とこれを見逃して回避をしなかったというような、故意に近似する注意義務の欠如の状態であると言われていたのでございますが、近時の学説では、故意に近似する過失というように厳格に解する必要はなくて、故意と過失の中間にあればいいと考えられておりますし、また重過失と過失の差は単なる量的な差で質的な差があるのではないとするものもございます。運送人の責任に関する判例を見てみますと、判例の傾向は、運送人の注意義務を厳しく解しまして重大な過失を肯定しているものが特徴的でございます。  ただいま瀬谷先生から御指摘のございましたように、このロメオ20のルートは特殊なルートでございまして、ノン・ブリーフライング・エリアがすぐそばにあって、ここに入れば警告され撃墜されることもあると、そういうことになっておりますから、こういうルートを飛行いたします場合には、パイロットは普通の場合よりも、より注意をしていなければならないわけでございます。最も基本的な航法であると言われております自分の飛ぶべき航路の方位、すなわちコースと距離、自分の機の現に向かっている進路、すなわちヘッディングと速度とをコンパスなどにより比較いたしまして、風の影響などを推測しながら航路上を正確に飛ぶ、これが飛行の最も基本的な作業でございまして、これさえ行っていればコースの逸脱ということはあり得ないわけでございます。INS航法を行っている場合でも、パイロットとしては常にこの作業を行っていると聞いております。もし仮にコンパスに異常があったといたしましても、他の地上無線航法援助施設あるいは機上の気象レーダーなどによりましてコースの逸脱は容易に知り得たはずでございます。  ところで、そのICAOの報告書についてでございますが、ICAOの報告書によりますと、その要約の項で、大韓機が航空路を大きく逸脱した原因といたしまして三つのことを仮定しております。一つは、ヘッディングモードによって飛行したのではないかという仮定でございます。二番目は、INSに現在位置を入れ誤って入力したとする仮定でございます。三番目は、ソウルまでの直行コースを入力したのではないかという仮定でございます。これらのいずれの仮定もただいま申し上げました航法の基本的な操作を行っておりませば逸脱にすぐ気がつくはずでありますが、さらにこれらの仮定につきまして吟味してみますと、この基本的な作業を行っていないばかりか、次に申し上げるような点に注意の欠如が重なっていたということを指摘できるものと存じます。  一の仮定につきましては、正副操縦士はもとより、機関士もそれに容易に気づくはずであったわけでございます。なぜかと申しますと、INSに接続した場合にはそれを示す指示灯が点灯することになっておりますから、指示灯の点灯を確認すれば自動操縦装置がINSに接続されていないことは容易に気づくはずです。  また、二番目の仮定についてでございますが、INSを始動する基点となる現在位置につきまして、一つのINSから連動して同時に三つのINSに入力することはできない仕組みになっていると聞いております。大韓機は三台のINSを搭載していたとICAOの報告書に記されております。これは一回のフィンガー・エラーで三台とも間違った数値が入力されるのを防止するためでございまして、したがって二の仮定は一回のフィンガー・エラーではなく、三回の同じエラーで入力されていることが仮定されなければなりません。しかも三人の乗務員がこれをチェックする義務があるのにこれをしていないという、極めてまれな場合を想定しなければならないわけでございます。仮にその現在位置を本件のように十度も間違って入力したといたしましても、警報灯が点灯するはずでございますから、これに気がつかなかったとするのはやはり重大な過失であったと言わざるを得ないと考えます。  ICAO報告書の三の仮定に対しましては、この原因でコースを逸脱したのであるとするならば、この大韓航空機が二ーバやナビエなどの通報地点の通過を何によって確認したかという疑問を生じるのでございます。また、ICAOの報告によりますと、二ーバの通過予定時刻を最初に通報した一五四九を後に一五五五に変更していること、あるいは実際の通過時刻を一五五八と通報していることなどから見ても、直接ソウルに向けて入力し直行したということは非常に考えにくい、このように私の聞いている限りでは専門家たちは指摘しております。  なお、そのICAOの報告書には、ただいま申し上げました三つの仮定の記述の後に、「このシナリオのすべてが乗務員全員のかなりの不注意を前提とするものであるが、このような不注意はこれまでに国際民間航空の世界で知られていないというほどのものではない」という旨の記述がございます。この記述、特に後段の記述がどういうことを意味するかということは必ずしも明瞭ではございませんし、またこれらの前例がどういうような路線で、またどういうような装備で発生しているかということにつきましてICAOの報告書は何ら触れておりません。
  333. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 宮城参考人に申し上げます。  大事な点だけできるだけ簡潔にひとつ御説明願います。
  334. 宮城雅子

    参考人宮城雅子君) はい、わかりました。  先ほど申し上げましたような観点から、ICAOの報告書が表現しております「かなりの不注意」ということは、重大な過失を示唆するものというふうに読み取れるのではないかと考えるわけでございます。
  335. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 どうもありがとうございました。
  336. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それじゃ、参考人には御苦労さんでした。
  337. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そこで、今の結論を要約いたしますと、これは重大な過失責任が大韓航空側にあるということになるわけです。これは今の宮城参考人の発言だけじゃございません。去年の連合審査参考人意見を総合しましてもそうなります。総理、寝ないで聞いておいてもらいたいと思うんです。また写真を撮られちまうとまずいと思うんです。  ここのところは大事なところなんですけれども、ICAOにどういう人間が行って、そしてこういう報告書をまとめるのか、これは今後の補償要求に非常に大きく影響するわけですよ。許しがたい重大な過失があったというふうに認めざるを得ないと思うのでありますが、ICAOの報告書も、そのような大韓航空側の過失責任というものをはっきりさせるという必要があると思うし、日本もまた、そういう結論を出すべく努力をしなければならぬと思うんです。  そこで、日本からはどういう人がこのICAOに出て、どういう発言をするのか。これも極めて重大だと思うので、その点をお伺いしたいと思うんです。
  338. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ICAOにどういう日本人が出て、どういう発言をするのか等につきましては、また政府委員から説明をさせますが、その前に私から、いまの参考人の御発言等も聞きまして、政府としての立場を申し上げたいと思います。  まず、いわゆる飛行禁止区域に侵入した民間航空機が撃墜されるということも場合によっては許されると、こういうふうな御発言もあったように思うわけですが、政府としては、非武装の民間航空機をどんな理由があっても撃墜するということは、これは人道的にはもちろんでありますが、国際法上も許すことのできない行為である、許されざる行為であるということははっきりと申し上げてきておるわけでございます。  このいわゆる条約的な根拠もあるわけでございまして、いわゆる国際民間航空条約第九条によりますれば、各締約国は、その設定した飛行を制限または禁止する区域に入る民間航空機に着陸を要求することができるとされているにすぎないわけです。また、このような場合に、着陸を要求するときを含め、民間航空機を要撃するいかなるときにおいても武器の使用を慎むべきであるとしている同条約附属文書の規定もあるわけでございまして、こういう規定に示されている民間航空機の安全の確保の観点から見ましても、非武装の民間航空機を撃墜するという行為が違法な武力の行使であり、一般国際法上認められないということは明らかでございます。したがって、仮に民間航空機がこのような区域に入った場合でも、当該民間航空機を撃墜した領域国は、その違法行為について国際法上責任を負うこととなる、こういう立場から、日本としてはソ連に対して責任、賠償の要求をいたしておるわけであります。  それからICAOの報告の問題でございますが、ICAOにつきましては、これは今さら申し上げるまでもなく、このICAOというのが非常に国際的には高い権威を有するわけでございまして、国際的な協力のもとに、中立的な立場から総合的にこの事件につきましても行った唯一の調査結果であります、この報告書は。ただ、ソ連が協力をしなかったということは残念でございますが。  この報告書の内容の概況、特に主としたものは、骨子は、第一には、大韓航空機のルート逸脱の原因につきまして、大韓航空機によるところのスパイ説、故意説等を否定をし、飛行機器への入力ミス、航行方法の選択ミスの可能性を示唆いたしております。第二番目としては、ソ連機による要撃については、要撃手続を尽くしたとのソ連側の主張には、他から得た情報と矛盾する点があるということを指摘をいたしております。第三番目には、日本、アメリカの管制ですね、管制については、大韓航空機のルート逸脱を知り得なかったと、こういうふうにいたしておるわけでございます。そして、確かに今お話もございましたように、この報告書で、大韓航空機のミスあるいは責任について断定的な結論を下しているわけではないが、大韓航空機のルート逸脱の原因として考えられるいわゆる仮説として、乗務員の操作ミスについて触れていることも事実でございまして、そういう点も考えますると、この本件調査結果は、客観的かつ重みのあるものとして受けとめられなければならないと、こういうふうに存じておるわけであります。  あとの点につきましては政府委員から答弁いたさせます。
  339. 山田中正

    政府委員(山田中正君) ICAOにどのような者が出て日本側の立場を主張しておるかという御質問でございますが、現在、在カナダ大使館の館員二名、一名は参事官でございまして、これが政府代表として、もう一名は一等書記官でございますが、これが政府代表代理及び航空委員会委員としてモントリオールに常駐いたしておりまして、通常のICAOの審議に参加いたしております。  なお、大韓航空事件の勃発に際しましては、先ほど外務大臣より申し述べましたように、本件の事実究明のために国際調査が必要であるという立場から、それを実現するために、昨年九月の特別総会には、常駐の代表に加えまして、外務本省から国連局の審議官、それから運輸省航空局の審議官を初めとする代表団を派遣して対処いたしました。また、その後に開かれました総会におきましては、在カナダの御巫大使を代表として対処いたしました。なお、この報告が十二月に最初に報告が出されましたときには、たまたま国連総会に出張いたしておりました私が出席いたしました。なお、この報告実質的審議が来週から始まる予定でございますが、それには外務省の国連局の審議官を派遣する予定にいたしております。
  340. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 出席する人は、ど素人だったら困ると思うんですよね。この事故は二つに一つしかないんです。故意に領空侵犯したのか、あるいはここに書かれているようにシングル・フィンガーズ・エラー、指の失敗だと言うんですね。寝ぼけて電話のかけ間違いをした程度に書いてある。ところが、実際にはINSというのは三つあって、しかも複数の人間がお互いにチェックしながらボタンを入れるようになっておる。だから、間違って北緯十度違って打ってしまったということは、これはあり得ない。さらに、レーダーというのは二つあって、このレーダーを見ている限りはカムチャツカ半島の上空を通過をすること、あるいはサハリンの上空を通過することはわかるわけです。目をあけていなきゃ別ですよ、目をつぶっていればしようがないけれども、そういうことは恐らくないでしょう。  だから、もしもこのフィンガーズ・エラーだということになると、乗務員はうっかりしていたということになるんですが、このうっかり説は、連合審査会のいろいろな方の出席によってみると、全部あり得ないと言うんですよ。そういうことはあり得ないと言うんです。だから、このパイロットの証言によれば、フィンガーズ・エラーなどということはないと、こういうことになる。そうすると、故意に侵犯したんじゃないかという疑いが出てくる。故意に侵犯をするということがあり得るのか。前の長谷川運輸大臣の発言だと、民間機がスパイをやるはずがないと言うだけなんですね。  ところが、ワシントン・ポスト・マガジンの一九八四年一月八日号には、アメリカで発行された本なんですけれども、「水偵察機は他国の領空にす早く侵入し、撃墜される前に抜け出す  という危険なスパイ活動を何回も行なってきた」、こういうことが書いてあるんですね。そして、「目標国の防空システム、たとえば通常では働いていないある種のレーダーを働かせるために実施された」ということが書いてあるんです。だから、考えようによっては、この大韓航空機に飛行をさせてその模様を見ていたんではないかと、こういう疑いも出てくるわけです。  そこでもう一つお伺いしたいんですが、大韓航空の犠牲者の遺族の方々から陳情書が出ておると思うんですが、それらの大韓航空の遺族会の方々の陳情書をごらんになっておるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  341. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほど、今のお話で故意にやったんじゃないかと、スパイ説を言われたんですが、グロムイコ外相がそういうことを主張しているわけですが、しかしこれはだれもわからないわけで、真相を究明するための乗員あるいはパイロットは全部死亡しておりますし、それから肝心のブラックボックスが非常に決め手になるということで、米ソ両国が大変な努力を重ね、日本も努力したわけですが、ついにこれをキャッチすることができなかったということで、今唯一に権威があるとすればICAOの今の調査報告書、これが中立的な非常に権威があるものとしてこれを中心に議論しなきゃならぬわけで、その場合において、今お話しのように、日本も専門家等も含めてこの議論には、これから報告書の採択等が行われるわけでございますから、それについて参加をいたす考えでございます。  なお、今の遺族会の陳情書につきましては承知をいたしております。この陳情書におきましては、大韓航空当局が犠牲者に対して速やかに誠意ある対応を示すよう韓国政府の一層の指導監督の強化を要請すると、こういうことを求めております。政府としましても、大韓航空機事件発生以来、大韓航空に対しましては、日本人遺族に対する補償問題の円満な解決に特別な努力を払うように、また韓国政府に対しても側面から補償問題の円満な解決のために協力するよう随時申し入れをいたしておりますが、この申し入れ等も、遺族からの陳情書等も受けまして、さらにひとつこの点についても十分留意をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  342. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大韓航空が行った領空侵犯には二つしか考えられないと、二つのうち一つだと。故意に領空侵犯をしたのか、承知の上で領空侵犯をしたのか、わからないで侵犯をしたのか、どっちかと言うんですよ。故意に領空侵犯をしたという説もこれはあるんですからね、ソビエト側に。ところが、故意でないとすれば、眠っていたか、あるいは操縦席にいなかったかということになるわけです。操縦席を離れてマージャンやっていたとか、あるいはトランプやっていたとか、酒を飲んでいたとか、こういうことになる。こうなると、なおさらこれは過失責任は重いと思うんですよ。そうでしょう。そうじゃないですか。そういうことになると、重過失問題について、ICAOに対しても当然日本側もそのことを主張しなきゃなりません。  故意だったならば、これはまさにスパイ説なんです。スパイ説じゃないということになると操縦席にいなかったということになるんですよ。目をつぶっていたということになるんですよ、領空侵犯の際に。計器も見なければレーダーも見なかった、こういうことになるんですよ。どちらかになるんですから、私はそのことを言ってるんですよ。これは故意じゃないというならば、どういう状態だったんでしょうか。外務大臣に参考までにお伺いしたいと思うんですが。
  343. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それは私自身も真相についてはつまびらかにできない、ブラックボックスその他が先ほど申し上げましたようにキャッチできてないという状況ですから。ただこの問題、この事件につきまして信頼される中立的な機関としてのICAOが報告書を出しております。これはもう非常に詳細な報告をして報告書を出しておりますが、その報告書によりますと、その骨子の中で大韓航空機のルート逸脱の原因につき、大韓航空機によるスパイ説、故意説、故意ですね。故意説等を否定をして、第一に飛行機器への入力ミス、これもよく言われておりましたが飛行機器への入力ミス、あるいは航行方法の選択ミスの可能性を示唆しておるわけであります。  ですから、今現在の状況の中でやはり一番中立的と、そして信頼される報告としては、今このICAOの報告書というものがあるわけでございます。このICAOの報告書をめぐってICAOで論議が行われることもこれからの状況になっておるわけであります。
  344. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そのICAOに、じゃ日本から出席していた人はパイロット経験者なんですか、どうなんですか。
  345. 山田中正

    政府委員(山田中正君) パイロット経験者は行っておりません。パイロット経験者で代表として行った者はいないと承知しております。
  346. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 要するに、パイロットじゃないと言うんでしょう。はっきり言いなさいよ、口の中でごにょごにょ言わないで。言いにくいことでもはっきり言ってもらわなければ困る。要するに素人が出ているんでしょう。権威がある権威があると言うけれども、何にも知らないで出ているんじゃないですか。これでいいんですか。
  347. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは私が答えることが適当かどうかわかりませんが、ICAOが調査をしたわけですね、事件が終わってから日本にもやってまいりました、調査団として。それから韓国にも行きました。それからソ連に行こうとしたら、ソ連は拒否したわけです。日本、それから韓国に長い間滞在をしまして詳細な報告をいたしまして、その結果が先ほど骨子として申し上げました膨大な報告書というものになっておるわけですから、今私が申し上げておるのはその報告書でございます。その報告書がこれからICAOで論議をされるといいますか、採択をされるということになっているというふうに私は承知をいたしておるわけです。
  348. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは、次のことが約束してもらえますか。もし故意ではないということを立証をするのならば、アメリカの方からも資料を提出してもらわなきゃならぬと思う。このシェミア基地にはこの大韓航空機の航跡がはっきり出ているわけなんです。ところが、アメリカの方ではこれを出さないというんですね。なぜ出さないのか。もしこの問題にアメリカがかかわってないというのならば、シェミアのこの資料だってアメリカでは提示しなきゃならぬ。そこで、ソビエトに対してもアメリカに対しても、両国に対して必要な資料を出してもらうということをやらないと、これは真相は明らかになりませんよ。  アメリカが出さなきゃしようがない、韓国は過失責任を認めない、これじゃ補償要求する場合の根拠がなくなっちまうんですよ。そういうことがあっちゃ困ると思うんですようやむやになるんですようやむやにされちゃいけないから、問題ははっきりしているんだから、当然政府としても側面的な援助をいたしますと。側面的な援助をいたしますと言ったって、具体的に何もやってないでしょう、今まで。何かやりましたか。韓国政府にも申し入れをしました、返ってきた答えはあいまいな責任逃れの回答だけなんですよ。何もやってないでしょう。このまま推移すれば、遺族の方は補償要求で壁にぶつかりますよ。それじゃ困るんです。だから、もっと政府責任を持ってもらいたいということを言っているんですよ。私の言うことは無理はないと私は思うんですがね、どうなんですか。
  349. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) お話はよくわかりますし、私たちも大韓航空機撃墜事件で犠牲になられた方々、特に日本人の乗客に対しましては本当に心からお気の毒に思っております。それだけに、やはり韓国としても、特に大韓航空も責任を感じて、いずれにしてもコースを逸脱したことは事実ですから、責任を感じて誠意のある補償をするように、我々も政府としてできるだけのことをしなきゃならぬと、こういうことで韓国政府、それから大韓航空に対して何回もその旨を実は申し入れて今日に至っておるわけでございますが、残念ながら今の交渉の状況では、円満な解決へ今の段階では進んでいないということは非常に残念に思いますが、今後とも努力は続けていきたいと思うわけであります。  それから、努力していないと言われますけれども、真相究明については日本政府としては最大の努力をしております。これはICAOの調査団が日本にやってきたときも、その調査団のいろいろなあらゆる要求に応じて日本も協力してまいりました。また、アメリカ側もICAOの調査団には協力をいたしておるわけでございます。その結果として、日本もアメリカもいわゆる航空管制については大韓航空機のルート逸脱を知り得なかったとしておると、こういうふうにICAOの報告書も結論づけておるということは御案内のとおりであります。
  350. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 このICAOの報告書も、もっともな点もあるけれども怪しい点もあるということをさっき私は指摘したんです。例えばフィンガーズ・エラーということを一つ考えてみたって、あなた自身考えられますか、そんなことが。INSに緯度と経度を入れる、こういう大事な作業を複数の人間でやるのに三人が三人そろって間違えてしまった、だから向こうへ行ってしまったと、こんなことが考えられますか。考えられないでしょう。考えられないことは、だれが考えたってこれはあり得ないことはあり得ないんですよ。だから日本のパイロットがそんなことはあり得ないと言っているんですよ。それを外務大臣が一生懸命、それはICAOの報告だから権威があるんだ、権威があるんだと。何でそんなことに肩を持たなきゃならないんでしょうか。どういう義理があるんですか、それは。そこまでして問題をあいまいにしちゃいけないと言うんですよ。事実は事実としてはっきりさせなきゃいかぬ、こう思います。だから、この問題は引き続いて関係委員会でも取り上げて必要な調査なり究明なりを私はこれからも続けてもらいたい。そのことを約束してもらいたいと思います。
  351. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、事実はあくまでもこれはもう究明しなきゃならぬと思います。なぜああいうことが起こったのか、私自身もそれはわかりません。ですから、それはもう徹底的に究明をしなきゃならぬ。そういうことで、ソ連に対しても申し入れておりますし、このICAOの調査団の報告の中でも、日本はこれに協力をしておるわけですし、今後ともいろいろの機会を見て真相究明に対しては我々としても積極的にこれにこたえてまいる考えであります。
  352. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今度は運輸大臣にちょっとお願いしたいんですが、今外務大臣からは非常に外交的な答弁がたくさん出ましたけれども、このICAOの報告書ですね、これは大事なんですよ。そこでいいかげんな結論を出されると困るんですね。だから、パイロットで経験のある者でフィンガーズ・エラーなどということはあり得ない、こういうことを主張できる人を出席させる。そしてICAOに、技術的なミス、例えばほかのことに気をとられていただろうなどというそういういいかげんな結論を出させない、重大な許しがたい操縦士の過失責任である、そのことを明記させるということを専門家を出してやらせるということはできませんか。
  353. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) お答え申し上げます前に、私どもの省としてはICAOの調査については全面的な協力をあらゆる方法でいたしました。それから大韓航空に私どもの方からも書面を社長あてに出しております。なお、一月二十二日に大韓航空の社長と遺族の方の代表とがお会いになるというときに専門の者に立ち会ってもらいたいという話がございまして、私の方では立ち会うことにいたしておりましたが、何かの都合でこの会合が延びたようでございます。そういうことで、今外務大臣からも話がございましたが、私どもの方は専門家がたくさんおりますので、できるだけ真相の究明ということについては努力をすることにやぶさかでないわけでございます。  なお、既に御案内と思いますが、ICAOの理事会が二月二十九日ということになっておる、今報告が出されて、途中であるわけでございます。二月二十九日の理事会をやって、そこでどういうふうに取り扱われるかはまだはっきりしていない、したがって結論というような形では出ていないと、こういうことだと思います。そこで、最後に専門家をどういうふうに扱ったらいいかということにつきましては、今突然のお話でございます。お気持ちなり御趣旨はよくわかりますので、よく政府の中で相談をさせていただきたいと思っております。いずれにしても真相究明について全力を挙げるということだと思っております。
  354. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 まあ時間も参りましたので、せっかく運輸大臣に立ってもらったからついでに運輸大臣に関係のあることをちょっと質問したいと思うんですが、ここのところ新幹線が雪でもってずっとおくれておるわけですが、これは東北新幹線と上越新幹線はちっともおくれないのに、東海道新幹線は関ケ原で毎回のようにおくれる。払い戻しをするとかしないとか、こういうことを言っておるわけです。この問題は何とかしなきゃいかぬだろうと思うんです。あそこに、関ケ原を通るようにしたことに間違いがあったのか、設備に不十分な点があったのか、その点一体これからどうすればいいのかという点もお伺いしたいと思うんです。
  355. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) お答えいたします。  おっしゃるとおりで、上越新幹線のような初めから雪を通る地帯については、建設の際にもう十二分に考慮をして金もかけて設備をしておるということのために運転障害がないわけでございます。東海道につきましては御承知のように今年は特に障害がひどいわけでございます。私は、運賃の払い戻しをやめるなどということが一部新聞に出たりしておりますが、そういうわけにはまいらないと思っております。設備をどうしたら直すかということにつきましては、今、実は国鉄の技術者が、これはもうお説のような状況でございますから、どうしたらよろしいのか全力を挙げて検討しておるわけでございます。べらぼうな金をかけて直すかどうかというような格好になるわけですから、例えば上越並みにしたらどうかというようなことだってあり得るわけですけれども、そうめちゃくちゃな金をかけるわけにもいかないとすれば、何かここにいい方法がないかどうか。シェルターという方法もあるというようなことも聞いておりますし、いろいろ技術的な問題でございますので、十分検討させて、このような御迷惑が乗客の皆さんにかからないようにしたいと、かように思っております。
  356. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 せっかくお呼びしたので、国鉄総裁にもその点についてお伺いしたいと思うんですが、あの関ケ原を通るためにああいうことになっておるわけで、大野伴睦さんの顔を立ててあそこを通したために今日あんなことになったのかどうかその辺はわかりませんけれども、一体国鉄としてはあの関ケ原の問題、東海道新幹線の問題、こう毎日のように遅延が続くと問題だと思うんです。処置しなければならないと思うんでありますが、国鉄総裁の見解をお伺いしたいと思います。
  357. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 先生の御指摘のとおり、東海道新幹線は新幹線のうちでも一番多い、一日十五万というような方がお通りになるわけでございますが、それがことしは五十二日間も規制を続けたというようなことで、まことに申しわけないと思っております。今運輸大臣が御答弁されましたように、この対策につきましては今全力を挙げていろいろな方法を考え、なるべく安くて効率の上がるというような方向で検討を続けておりますが、何とか来年の冬には全部とはいかなくても間に合うような方法がないかというようなことも含めてただいま検討を続けておるところでございます。
  358. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 終わります。
  359. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で瀬谷君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  360. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、近藤君の質疑を行います。近藤忠孝溝。
  361. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 予定した質問に先立ちまして、緊急の問題及び昨日、きょうと問題になっておりますことについて総理にお伺いしたいと思います。  本日、日本共産党は、議員田中角榮君の議員辞職勧告に関する決議案を衆議院に提出いたしました。総理は総裁声明で、いわゆる田中問題のけじめが明確でなかったことを敗因として認め、田中氏の政治影響を一切排除すると述べております。この筋道からいたしますと、この決議案につきましては直ちに本会議に上程、採決するのが当然だと思いますが、総裁としての答弁をいただきたい。
  362. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政治倫理の問題に関しましては、私たちも党を挙げて誠実にこの問題について対応していかなければならぬと思っております。したがいまして、私は第二次内閣組閣以来、諸般の政策を一つ一つ実行もし、また党にも政治倫理委員会を設けまして、具体的措置についていろいろまた検討もしていただいておるところでございます。共産党の御提案に対しましては、党におきましてしかるべき機関においていかなる対応をするか、早速協議してもらうようにいたしたいと思っております。
  363. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 現に出しておりますし、今までの経過から申しますとこれはどうするのか、これは当然今答弁できてしかるべきです。答弁いただきたい。
  364. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 党にわざわざそういう機関を設けましたのは、あらゆるそういう政党間の問題について出てくることも含めて協議してもらうつもりでやったのでございまして、いろいろ対応を勉強してもらいたいと思っております。また、各党がどういうような対応をなさるかということもよく調べて行う必要はあると思っております。
  365. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 野党が賛成すれば上程するのか、あるいはこれ、自民党一党だけで反対するというんですと、これは総裁の声明が空文になっちゃいますね。どうですか。
  366. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく、政党政治でございますから、自民党は役員会なりあるいは総務会なりあるいは政調会なり、しかるべき機関でみんなで意見を交わして、そうしてその意見を集約して党議が決まっていくわけでございますから、私一人で独断でどうこうするという独裁的政党ではないのであります。
  367. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 総裁声明に全く反すると思うんですね。  そこで田川自治大臣、先ほどこの問題につきましては提出するのかしないのか、お出しになる前にどうするのかということを言うことは言えないと。出ました。ですから、まさにあなたの衆議院本会議での発言、決議案が出たら賛成すると、この言明をここで言明すべきであります。
  368. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 田中辞任勧告決議案に対する新自由クラブの態度は、この国会が始まって衆議院の本会議が開かれた当時からもう何回も申し上げているとおりでございまして、明確でございます。ただ、私が今の心境を申し上げないのは、それが上程された場合にどうかということを、上程を拒否されたらどうするかということに対する共産党の皆さんの御質問に対して、私は今一体ある党が提出をされましても、ほかの野党がそれに対してどういうふうに対応されるのか、また自民党がどういうふうに対応されるのか、そういうわからない時期に、私どもが今態度を表明することは適当でないと、こういうことを申し上げているのでございます。
  369. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それでは自民党が上程に反対したらば新自由クラブはどうするのですか。あなたは腹を切ると表明したのですね。これは具体的にどういうことなのか。これは統一会派を解消し、閣外に去ること。今最高のことは、別に命を奪うわけにいきませんから、閣外に去ることです。
  370. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 今、共産党が提出をされても他の野党が一体どういう態度に出るかわかりませんし、自民党自体も一体どういう態度をとるかわからないのに、私どもの態度ははっきりしておりますけれども、申し上げることはできないのです。
  371. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ずるい人嫌いというのはこれはどこの党が言ったことですか。まさに今具体的に出ているのですから、はっきり言うべきじゃないですか。
  372. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 私が申し上げることができないというのは逃げているのではございません。それが悪い影響を、悪いというか、私どもの方からよくない影響をされるということを心配して申し上げないのでございます。
  373. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 全くそれは答弁わかりません。態度を表明すればできるのにしないのですから、まさにこれはずるい人嫌いということを私はここで申し上げたいと思うのです。  残念ながら時間の関係で前へ進みます。  人勧問題と防衛費一%枠問題についてずっと議論されてまいりました。三・〇七%以上の勧告は必然だと思うのです。この勧告が出ますと、総理のGNP一%粋を守る、防衛費は削減しない、人勧は最大限に尊重するというこの答弁は矛盾するのじゃありませんか。どうですか。
  374. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど瀬谷さんの御質問にもお答えしましたとおり、人事院勧告がどういうようなもので出るか、現に出たときの情勢を見て判断をいたしたいと思っております。
  375. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 内藤渇の関連質問を許します。内藤君。
  376. 内藤功

    内藤功君 この点は同僚委員からも本日いろいろ御質問がありましたが、総理の御答弁非常にわかりにくいのであります。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕 昨日来の新聞を見ましても、自民党の中でも非常にわかりにくいという御意見があるやの報道もあります。私は、GNP一%枠を守るということ、防衛費は削らぬという御答弁もある、人勧は最大限に尊重する、この三つを、三つの政治目標というものを一緒に実現しようとしたらこれはもう大変な矛盾が露呈するばかりだと思うのです。今予算の審議でありますから、特に公務員の給与に関連しまして多くの人がこの総理の考え方はわかりにくいとみんな言っておりますよ。私はそういう意味で、ぜひ今の近藤委員の質問、繰り返しになりますけれども、一体この三つというものがいずれも立つようなことができるとお考えなのかどうかという点につきまして明確な、総理自身はおわかりなんでしょうが、我々にわかりやすい答弁をお願いをしたいと思う、重ねて。
  377. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろんな条件を挙げましたが、中でも私は非常に重要な条件はGNPがどうなるかという問題があります。それからGNPが動くについては、為替相場がどういうふうに動くかということも大きな要素にもなります。それから一体人事院勧告がどういうものが出るか、こういうことによっていろいろまた変動してくるわけでありまして、今私がお答えする環境にはないのであります。
  378. 内藤功

    内藤功君 しかし、総理府自身はこの間人事局が公務員の俸給表をつくるだけの調査能力と行政能力を持っておられる。それからGNPのこれからの伸び、為替の問題、総理はスタッフを持っておられるわけですから、当然この予算の審議の段階でこれを明らかにしてしかるべきものだと私は思うのであります。特に私は、これはGNP一%という枠の中から人件費を別枠として除こうとするんじゃないか、先ほども同僚委員がちょっと触れられましたが、私はこの疑いを非常に強く持つ。今までも日米の交渉の中で、あるいは大蔵省関係の防衛費の復活折衝の中で、たびたびこの人件費別枠論というのは顔を出しておる議論でございます。私はそういう点の総理のお考えを再度伺いたいことと、もう一つは、本日のある新聞に一行政管理庁長官、ちょっとお休みのようですが、お伺いしたい。行政管理庁の首脳のお話として、国家公務員給与が一%枠に引きずられるのはおかしい、さらに、一%枠問題はあくまで防衛問題で、ベアとは別に議論すべきだ、こういう行政管理庁首脳のお言葉がある。これは私はいろんな意味があると思いますが、どうなんですか。これは別枠ということを今政府の中でお考えになっていることだと思うのですが、総理と行管長官から一言ずつお答えいただきたい。
  379. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 私がきのうの記者懇談でそういう話をしたことは事実でございます。それは私は筋論を言ったんでして、もともとこの公務員給与の問題と防衛費の一%の問題、これは全然別の問題で、公務員給与は公務員給与の問題として、人事院勧告が出ればその際に国政全般との関連において決定すべきものと、防衛費一%の枠の問題は総理が予算委員会等で御発言をしておるとおりであると、こういう私は筋論だけを申し上げたわけでございます。
  380. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今の行管長官答弁のとおりでありまして、今のような答弁も私は衆議院予算委員会でしておる次第であります。
  381. 内藤功

    内藤功君 最後に私は、今の御答弁を聞きますとますますわからなくなってくる。これはただ一つ、GNP一%をどのように守るか、GNP一%は政府が決めた枠であります。一方において人事院勧告という大事な制度を最大限に尊重する、この両方が立つのは私は、総州はこれはお気に入らない説だろうと思いますが、防衛費の削減以外にこの両方を立てる行き方はないと私は思うのであります。私はこの点を強く主張いたします。これは今後ともいろいろと議論をする問題でありますが、徹底的に内閣委員会その他で解明をしたい。政府ももっと明快な見解を速やかに明らかにして、予算審議に対する資料を速やかにお出しいただくことを要望いたします。
  382. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 大増税の論議が高まっております。国民負担率を四五%に引き上げようというのがこれが臨調全体の考えであるということは、臨調OB会発行の「臨調と行革 二年間の記録」、ここにはっきりと書かれております。  総理に伺いますが、国民負担率四五%が臨調の考えである、そう理解しておりますか。
  383. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) たしか西欧の水準よりはるか下の部分に置くというのが臨調の答申に書いてあったと思います。
  384. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それが四五%ということです。  さらに、この本の八十八ページ以下にこう書いてあります。「増税なき」というのは戦術論と内容論がある。戦術論というのは、「増税なき、増税なき」と追い込んでいく、「教科書の無償配布一つやめさせられないような行政改革じゃだめなんだ」と追い込んでいく作戦論として非常に意味がある。内容論というのは国民負担率四五%のことだとちゃんと書いてある。そして瀬島氏自身がこう言ってます。「戦術論と内容論との矛盾があるんですよ。」と。要するに、戦術論としての「増税なき」は、これはいつでも投げ捨てるんですよ。そして財政再建は国民負担率四五%でいくというのがこれが臨調の考えです。総理、これを尊重するというんですか。
  385. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調が四五%と言ったことはありません。私は行管長官時代からそういう問題には関係していましたが、四五%ということを臨調が決めたとか言ったということはありません。臨調が言ったことは、西欧の水準よりもかなり低い程度に置くと、それがよろしいと、そういうことを育っております。
  386. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それが四五%だと響いてあるんです。お読みにならないですか、これは。どうですか。
  387. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調がそういう数字を正式に出した話は聞いたことがないんです。どなたかが言ったか、あるいはどなたかが推定してそういう話をしたか、それは知りません。
  388. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 要するにここで言ってることは、四十五という数字を出しておけばよかった、そしてそれは、四十五というのは財政再建の基本だと、こう言っておるんですね。まさにこれから大増税が進んでいく、私はこのことに強く抗議せざるを得ません。  次に進みます。新規国債発行の金利の見通しはどうか。これはもう大量発行、それから金融の自由化、国際化、アメリカでの国債発行など、金利上昇要因ばかりだと思うんですが、どうですか。
  389. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはやはり各種金利とのバランスを考慮しながら、まさに市場実勢を十分配慮して決定していくわけでございますから、そのときの市場実勢によって決定されるべきものであって、今おっしゃった、すべて金利上昇要因ばかりだという御指摘は当たらないと思います。
  390. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は、具体的に言いますと、やはりその方が多いと思うんですね。ですから、仮定計算によりましてもこれはもう国債残高はピークはないんです、どこまでいくかわからない。その上さらに国債発行による金利増ということでは、これはもう国民負担の増大だけで、財政再建は絶望的です。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕 我が党が主張するように、軍事費を削ること、大企業本位の税財政を国民本位に変える以外にないと、このことを指摘いたします。  そこで次に、課税最低限問題で総理に伺いますが、夫婦と子供二人の標準世帯で、申告納税者の課税最低限、これは補正予算で百二十九万、五十九年度で百四十一万。これは生活保護基準の約七七%ぐらいだと思うんです。これで生活がしていけると思うのか、総理どうです。
  391. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いや、これは私の方がいいですよ。  東京都の定めておる生活保護基準と比較すると課税最低限はその約七〇%しかないと、こういうことでございますが、御質問の趣旨はいわゆる事業所得者の課税最低限のことをおっしゃっておると思います。この問題は、所得税の課税最低限と生活保護基準とはその性格を異にいたしますので、両者を単純に比較することは種々問題がございます。事業所得者の場合においては、奥さん、まあ配偶者について配偶者控除を適用しておられるのか、あるいはそれこそ事業専従者として位置づけしておられるのかと、そういうようなことで異なってまいりますので、一概にこれは言えることではないというふうに考えております。生活保護基準というものも今やまさにだんだん上がっておりまして、ことしが百八十何万でございましたか、そうして課税最低限もまた今度の新しい改正で二百三十数万円のところまで上げたということでございますので、そこに、両者はそれぞれ性格の異なる問題でございますが、不合理はないというふうに考えております。
  392. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 昭和五十二年を一〇〇といたしまして、五十八年の平均月収と納税者一人当たり所得税の各指数を報告してください。
  393. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 国税庁の民間給与実態調査のベースで申し上げますと、五十三年の一人当たりの平均が二百七十八万、年税額が十二万三千円でございまして、指数で申し上げますと、五十八年が年収の方が一二七、税額の方は当然累進税でございますので、指数は一六五と相なります。
  394. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これに加えまして、課税最低限の指数は五十九年でこれは一二五ぐらいだと思うんですね。これは当然やっぱり生活費に食い込んで課税されるんじゃないか、この点どうですか。
  395. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 五十二年当時の課税最低限と今回の減税におきます課税最低限、物価の基準でどうかということでございますが、五十九年までの物価伸びが大体一三一でございます、指数化いたしますと。今回の減税で税引き後の可処分所得の伸びはほぼ一三〇が保障されるという格好になっております。
  396. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は、国税庁自身がこの課税最低限の収入では生活していけるとは思っていないんじゃないかと思うんです。  そこで、各国税局で標準生計費というものを使っておりますが、それはどういうものですか。
  397. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) お答えいたします。  私どもで直接、標準生計費というものをはじいたりしているわけではございませんが、執行の便宜上、納税者に対するお尋ねというような格好で、その際に標準生計費につきまして情報を提供しているということはあるわけでございます。これはおおむね総理府統計局の家計調査年報をもとに算定をいたしております。
  398. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 数字を言ってください。
  399. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) たとえば大阪局で使用しているものでございますが、これは二人世帯で二百三十八万円、三人世帯で二百九十七万円、四人世帯で三百十五万円、五人世帯で三百四十万円、六人世帯で三百四十四万円、七人世帯で三百六十四万円でございます。
  400. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 関信の方は。
  401. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 関信の方は、これは各県庁所在地別にいたしておりまして、水戸市につきまして三百二十六万九千円、宇都宮市は三百三十四万六千円、前橋市は三百二万円、浦和市は三百二十三万三千円、長野市は二百七十九万一千円、新潟市は三百三十一万七千円でございます。
  402. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これ以下の申告は不適正な申告だというぐあいに見ているんじゃないんですか。
  403. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 冒頭申し上げましたように、これは私ども適正申告を達成するための一つの手段といたしまして、お尋ねという格好で納税者に所得を計算していただいているわけでございますが、その際の単なる参考として標準生計費をお出しをしているということでございます。したがって、これを下回ったからといって不正申告とかそういうふうに扱うつもりは毛頭ございません。
  404. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 しかし、実際、大阪国税局では標準生計費などから見て申告に問題があると思われる者を対象にいたしまして、正しい決算で適正な申告を行うよう、これは個別に文書を送っております。明らかにこれは不適正申告と扱っているんじゃないんですか。
  405. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 大阪国税局におきましても、お尋ねという格好で他の各国税局と同様に納税者にそういうものを出していることは事実でございますが、先ほど申し上げましたように、標準生計費を上回っている、あるいは下回っているというようなことによりまして差別をいたしている、あるいは不適正申告とみなしておる、そういうことはございません。
  406. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ここに文書がありますが、これは税理士さんあてに送った文書であります。税理士のもとに税理士別納税者名簿を一斉に大阪の場合送りまして、適正申告の指導を行うように指示いたしました。今この問題は一つには顧問先でない名簿まで送った税務署の守秘義務違反、もう一つは税理士を下請としたということで抗議された問題ですが、しかしこの中では明らかに不適正申告とこれは決めつけているんです。間違いないじゃありませんか。
  407. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 重ねて申し上げますが、標準生計費を基準といたしまして不適正申告とかそういうことを決めつけたことはございません。
  408. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それだけじゃないんですね。実際現場へ行きますと、呼び出して具体的にもうずっと言って、特別の支出があるかどうか聞きましてね、そこで大体標準生計費以下じゃ生活できないじゃないか、だましているんだろう、ごまかしているんだろうと、こう責めているんです。そういった事実がないと言えますか。もしあればこれやめさせますか。
  409. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 具体的な一々のやりとりについて私ども全部承知しておるわけではないわけでございますが、さようなことはないように思っております。
  410. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それが実際にあるんですね。  そこで、総理に伺いますが、これはあくまでも標準生計費でありまして、それ以下で生活する人はこれは多いんですね。あるいは借金してやっと年を越すという人もこれは多いんです。それを実際はやっぱり不適正扱いいたしましてこれを責めているんです。これは標準より下の低所得者への課税を強化する方法だとしか考えられないんですが、これに対して総理、どうですか。そういうことがないようにきっちり指導していきますか。
  411. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは今国税庁からお答えしたように、そういうことがないことを我々は信じております。
  412. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 信じているんですが、実際あるんですね。これは要するに食えなくても払えということなんですね。こういったことは、まあ信じているということは、もしあったら間違いなんだから、ひとつ具体的に今後指摘しますから、これはないように指導をしてほしいと思います。  こういう一方で大企業向けの技術開発補助金が、これは臨調関連企業に大盤振る舞いされたり、多くの租税特別措置が継続される一方で、低所得者層にこういう過酷な措置をとることは、私は国民が絶対納得しないということを指摘して、次に進みたいと思います。  そこで総理、国民の今、健康の問題ですが、これが侵害されるときに、これを防止し救済するということは、政府が緊急かつ最優先になすべきことだと思いますが、どうですか。
  413. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 憲法でも健康で文化的生活云々という言葉もあります。生命財産を守るということは一番大事ですから、防衛にも我々は関心を持ってやっておるわけです。
  414. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ところで、水俣病が大変深刻な状況に置かれております。水俣協立病院の藤野医師らの「御所浦住民の自覚症状、神経症状の推移」という報告がありますが、これは環境庁、この中身はどういうものですか。
  415. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘の研究報告書は、昨年の十一月に報告なされたものでございまして、その内容といたしましては、メチル水銀の慢性微量汚染が御所浦住民の健康状態影響している可能性が強く疑われるというものであるというぐあいに承知いたしております。メチル水銀のいわゆる慢性微量汚染の健康影響につきましては、研究者の間でもいろいろの御意見があるところでございますので、私の意見は差し控えさせていただきます。
  416. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この調査は、総理、水俣病の症状の認められた者が六年前には二十六名、これは受診者の八・六%にすぎなかったんですが、この調査時点では八倍の二百十名、受診者の六九・一%と、これは大幅に増加しておるんです。しかも患者であった者の症状がその後悪化している。要するに、現在の汚染状況でも不人知海沿岸住民の中には患者は拡大、病状は進行しているという、こういうショッキングな事実があります。御承知だと思いますが、潜在患者はこれは十万ともあるいは二十万とも言われておりまして、これは約二千名という驚くほどの認定患者も水銀による身体障害のごく一部にすぎないのであります。  総理、こういう状況を放置して。よいでしょうか。総理答えてください、長官の後。
  417. 上田稔

    国務大臣上田稔君) お答え申し上げます。  水俣病につきましてはもう大変に慢性的に伸びていくのじゃないかということにつきまして御意見がございますので、今一説を先生おとりいただいてお話がございましたのですが、これはいろいろ学界におきまして今問題になっておるところでございますので、ちょっと今意見を申し上げるということは差し控えさしていただきたいと思いますが、水俣病というのは私は環境行政にとりまして大変重要な問題でございますし、そしてひどくなっているというお話がございましたが、何分いろいろと審査を要求される方々がまだ今申し出がございますので、そういう点を非常に考慮いたしまして、何とかそういうことの早く減るようにという審査体制もいましいておるところでございますが、また、その広がらないようにということで水俣の湾を埋め立てをいたしましたり、あるいはまたそのほかのいろいろな体制、たとえばヘドロを取り除くとかそういったようなことをやらしていただく、また水質の監視をやらしていただくとか、そういうことをやって広がらないように、ひどくならないようにさせていただいております。
  418. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 まあ就任直後でやむを得ない答弁かとも同情いたしますけれども、聞いたことはこの病像の問題を聞いたんじゃないんですよ。現に認定された者以外にもたくさんの患者、それに近い人がたくさんおる、これはもう間違いないんですよ。それについて総理はどう認識し、ほっといていいのかという、これは国全体の問題です。総理、お答えいただきたいと思います。
  419. 上田稔

    国務大臣上田稔君) 今申し上げましたように、そういうことが広がらないように、そしてまた審査を申し出ていただいております方に対しては速やかにこれをやらしていただこうという体制をしいて、そして減少に努めております。
  420. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 広がらないようになんて、こんな答弁  たくさんあるもののごく一部しか認定されてない。これ、逆なんですよ。そんな認識で長官が勤まりますか。
  421. 上田稔

    国務大臣上田稔君) こういう問題につきましては県知事さんが非常に力を入れていただいておりますし、また新潟あたりは市長さんが力を入れていただいておりまして、ともにそういうお申し出のあった方を早く救済ができるように、また判定ができるように、病原がはっきりわかるように審査を急いでおるところでございます。
  422. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 総理がこの重大問題について指名しても全然答弁しないというのは本当に残念ですけれども、できませんか。
  423. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 環境庁長官が申し述べたとおりであります。
  424. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 総理もあの程度の認識、水準だということがわかりました。残念です。  そこで環境庁、水俣病の認定申請と認定の実情についてどうですか。
  425. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  熊本県におきます認定業務の現状でございますが、申請いたしました後におきまして取り下げる方がいらっしゃるわけでございますが、取り下げの方を除きますと申請者の総件数は九千九百十九件でございます。このうち、すでに処分の終わりました方は四千九百七十九件でございまして、このうち認定者の方々は千六百十二件、この中で亡くなられた方は五百三十一件でございますが、棄却者が三千三百六十七件でございます。  一方、未処分者、まだ処分が決まっていらっしゃらない方々につきましては四千九百四十件ございまして、このうち保留者は千四百四件、それからまだ審査がされてない方は三千五百三十六件でございます。
  426. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 大変な未処分者ですが、これは申請後何年たっているのか、経年別に報告してください。
  427. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  五十九年の一月末現在の三県一市におきます未処介者の申請状況につきまして申し上げます。昭和四十七年度申請者の方々は八人いらっしゃいまして、うち熊本県は八人でございます。昭和四十八年度の申請の方は二百八十八人でございまして、うち熊本県が二百八十四人。昭和四十九年度におきましては二百七十二人いらっしゃいまして、うち熊本県が二百四十一人。昭和五十年度におきましては二百三十五人で、うち熊本県は二百二十三人。昭和五十一年度におきましては二百八十人、うち熊本県は二百五十二人。昭和五十二年度におきましては七百五十四人、うち熊本県は七百八人。昭和五十三年度におきましては八百十二人、うち熊本県は七百六十三人。昭和五十四年度におきましては六百三十三人、うち熊本県は五百九十七人。昭和五十五年度におきましては六百六人、うち熊本県は五百六十六人。昭和五十六年度におきましては五百四十九人、うち熊本県は三百八十人。昭和五十七年度におきましては四百九十四人、うち熊本県は三百十六人。昭和五十八年度におきましては七百七十五人の方が申請してございまして、うち熊本県は六百二人。計五千七百六人で、うち熊本県は四千九百四十人でございます。
  428. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 未処分者に対する審査見通しはどうですか。
  429. 上田稔

    国務大臣上田稔君) お答え申し上げます。  水病俣患者の迅速なる救済につきましては、現行制度を着実に実行いたしまして認定業務の促進を図っておるところでございますが、この審査の具体的見通しについて申し上げることはなかなか困難なことでございます。従来、検診医がなかなか得られなかったのでございますけれども、これを……
  430. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 難しいだけでいいです。難しいだけで。
  431. 上田稔

    国務大臣上田稔君) それでいろいろと体制を決めましてやっておるのでございますけれども、患者の方もいろいろ御都合もございまして、検診になかなかおいでをいただかないということもありますし、またそういう点でなかなか進まないというのが実情でございます。したがいまして、いつということがなかなか申し上げられないというのが現状でございます。
  432. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そこで、未処分のまま死んだ者の数と、そのうち解剖した結果認定された者の数、これを全体、五十八年、五十九年どうですか。
  433. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  申請中に亡くなられましてまだ審査を終わっていらっしゃらない方は、五十九年一月末現在におきまして、三県一市の合計でございますが、三百五十九人でございまして、そのうち熊本県は三百二十人でございます。  この中で、解剖されて認定された方がどのくらいおられるかというお尋ねでございますが、熊本県で申請中に死亡されまして解剖を受けることを希望をされた方々はこれまでに二百六十二人でございまして、このうち認定された方は百四十四人でございます。また、五十八年に死亡なされまして解剖を希望された方は二十六人でございまして、このうち認定された方は十四人でございます。なお、五十九年に死亡されまして解剖を希望された方々は十人いらっしゃいますが、これらの方々につきましてはまだ審査が終わっていない状況にございます。
  434. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 未処分が五千名、それから申請して十年以上たっても認定されない者約三百名、五年以上は何と二千六百名です。さらに今度解剖が実現した二百六十二名、これは解剖した者のうち認定された者が五五%ですね。ごく最近、これは熊大の衛藤さんが報告したものによりますと、解剖十三例中十一例、八四%は患者だったと、これはどうですか。
  435. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  熊本大学の衛藤先生の研究報告でございますが、本年の二月十八日に水俣病に関する総合的研究総会で発表されたものでございまして、その内容はただいま先生からお話しございましたように、昭和四十五年以来熊本大学で解剖された者の中から九十歳以上の解剖の事例を集めたものでございまして、十三件中十一件に水俣の病変が認められたというものでございます。  なお、この十三件の事例につきましては、先ほど御説明いたしました解剖例の中から九十歳以上の方々を抽出されたものでございまして、これらの事例につきましてはすべて熊本大学の同じ病理学教室のスタッフによって実施されたものでございます。
  436. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 今度はそういうようにお答えいただきたいと思うんです。  要するに、長く住んでおればみんな病気になるんですね。今の数字は極めて驚くべき事実です。今現地では、水俣病と認定されるのは宝くじに当たるようなものだ、死んで解剖しなけりゃ認定されないというんです。死んでから認定されて何になるのか、これが怒りの声であります。総理、抜本的な改善、救済の立場に立った早期認定、救済を行うべきですが、どうですか。
  437. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 水俣病にかかられたり、またそのためにいろいろ御苦労願っている皆様方に対する取り扱いについては、政府としても大きな関心を持ち、そして誠意を尽くしてやらなきゃいかぬと思っております。閣僚協も既に前につくってやっておりましたし、また県のいろいろな仕事についても中央としてもできるだけの財政的協力等もしてきたところでございますが、今後とも努力をしてまいりたいと思っております。
  438. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 棄却されて、再申請中死亡、解剖、そして認定というこの件数はどれくらいですか。
  439. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  棄却をされまして、再申請いたしまして、その再申請中に亡くなられまして解剖を希望されました全体の方々の数につきましては承知しておりませんけれども、五十八年中の最近の事例だけを申し上げますと、再申請中に死亡なされまして解剖を希望されました方々は十名おられまして、そのうち認定された方々は二名でございます。
  440. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私が指摘したのは私の調査だけで十五件。それは氷山の一角なんです。  そこでもう一つお伺いしますが、ことしに入って解剖十件と言うのですが、これは月五件の割ですね。これは担当している人は何人ですか。
  441. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  熊大の病理学教室にお願いいたしまして解剖をし、その病理所見を見ていただいております。
  442. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 大体一人で月二件が普通だったのですね。五件なんてとんでもない。しかも今度これは老齢化していますからどんどん解剖が出てくるのです。とても体制がないと言うのです。こんな状況であります。  私はここで指摘をして総理の見解を求めたいのですが、今言った事実、私は三つの点で極めて重大だと思うんです。一つは、長期間待たしたあげくの棄却が誤りだった。これは水俣第二次訴訟でも明らかです。第二に、その誤りを死亡、解剖という、これは人間にとってかけがえのないものを失って、この犠牲を経なければ覆し得ないということ。第三番目には、その解剖自身がこれは危機にさらされているということであります。被害者は最後の死をもってしても患者と認められる機会と手段を奪われかねない、まさにこういう状況であります。人間無視です。  そこで中曽根さん、こんな悲しいことがあなたが首相をしているこの国に存在するのです。患者が切り捨てられ、放置されているこの状況をそのままにしてならないという、この点どうですか。
  443. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいま申し上げましたように、水俣病で御苦労している皆様方については政府としてもできるだけ誠意を尽くすべきであると考えております。しかし、病気の認定その他はすべて科学的になさるべきであり、また国民や県民の税金も使うことでございますから、やはり科学的に慎重に行わるべきではないかと思っております。
  444. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この問題はまた委員会でやりますが、そこで水俣病認定申請者治療研究事業は今後も継続するかどうか。この研究事業費が今年度熊本県関係で約五千万近く不足するんですが、政府はその二分の一を負担すべきだと思うんです。なぜこの補正予算に計上しなかったのか。それからもう一つは、申請即医療費支給を実施した場合、これに要する費用はどれほどかお答えいただきたい。
  445. 上田稔

    国務大臣上田稔君) お答え申し上げます。  今お話がございました熊本県の方において予算が不足しておるのではないかと、こういう御質問でございますが、これにつきましては今精査をさせております。この調査を十分にいたしまして支払いについては支障のないようにいたしたい、こういうふうに考えております。  それからもう一つは、研究事業でございましたか。研究事業を、申請があればすぐに支給すべきではないかと、こういう御意見……
  446. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いや、それはまだ聞いてないんです。費用がどれほどかかるかです。
  447. 上田稔

    国務大臣上田稔君) 費用がですか。費用につきましてはそれでは事務当局の方から。
  448. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それから今後継続するかどうか。
  449. 上田稔

    国務大臣上田稔君) 研究費ですか。
  450. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この事業を継続するかどうか。
  451. 上田稔

    国務大臣上田稔君) これは、事業は継続いたしたいと考えております。
  452. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生からお話がございました申請即医療を実施する場合にどの程度の予算が必要かというお尋ねでございますが、お話のような申請即医療という制度のもとにおきます所要経費の算出につきましては、申請即医療というような制度のもとでどの程度申請者を見込むのか、見込めることができるのか、あるいは申請してから死亡までの間に要する時間をどの程度見込むのかというようないろいろ難しい問題もございまして具体的な額を算出することは困難でございますので御了承いただきたいと思います。
  453. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 しかし、せいぜい一億円ぐらいだろうと聞いておるんです。  そこで、これは不知火沿岸住民というのはみんな水銀に暴露されておるんですから、申請者のほとんどが水銀による何らかの身体障害があると見なければいけないので、これは単なる得たしているからだというものではないと思うんですね。これは地域住民の切実な要求なので実現すべきだと思うんですが、どうですか。申請即医療費支給です。
  454. 上田稔

    国務大臣上田稔君) 先ほどちょっと申し上げかけたのでございますが、実はこれは研究事業でございまして、建前は、申請をされてから審査に移るまでの間ちょっと時間がかかっておりますので、それからいろいろ御病状が申請のときとは変わっていくのではなかろうか、またその間にひどくなってはいけないと、こういうことを考えて研究事業費というものを組ませていただいたものでございます。したがいまして、その性格上、申請されたときの御病状から一年を置いて、そしていろいろその後変わっていく状態を調べさせていただこうと、こういうことで支給をしておりますので、そういう点から先生のお申し出はちょっと困難かと思うわけでございます。
  455. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これも水俣病の実態をよく理解しない答弁だと思います。  最後に総理、この補償問題は、これは県債を出していますけれども、間もなく破綻は明白ですね。一体その後どうするのか。これは国として大いに積極的に乗り出す必要があると思いますが、どうですか。これが第一です。  それから、いままでずっとこのやりとりをお聞きになって、重大問題であるということは御認識いただいたと思うんですが、私は、この早急な救済を国政上の最重要課題と位置づけて対処すべきだと思うんですが、どうですか。
  456. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 事態の推移を見まして、県の当局ともよく相談し、丁重に取り扱っていきたいと思います。
  457. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で近藤君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  458. 西村尚治

    委員長西村尚治君) この際、申し上げます。  先ほどの瀬谷君に対する外務大臣の発言につきましては、理事の間で協議の結果、委員長といたしましては、後刻速記録を調査の上、適当な措置をとることといたします。  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十分散会      —————・—————