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1984-07-13 第101回国会 参議院 本会議 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十三日(金曜日)    午前十時二分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二十二号   昭和五十九年七月十三日    午前十時開議  第一 肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正   する法律案内閣提出衆議院回付)  第二 日本放送協会昭和五十六年度財産目録、   貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関す   る説明書  第三 昭和四十四年度以後における農林漁業団   体職員共済組合からの年金の額の改定に関す   る法律等の一部を改正する法律案内閣提出   、衆議院送付)  第四 港湾運送事業法の一部を改正する法律案   (内閣提出衆議院送付)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、臨時教育審議会設置法案及び国民教育審議   会設置法案趣旨説明)  以下 議事日程のとおり      —————・—————
  2. 木村睦男

    議長木村睦男君) これより会議を開きます。  この際、日程に追加して、  臨時教育審議会設置法案国民教育審議会設置法案、以上両案について提出者から順次趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木村睦男

    議長木村睦男君) 御異議ないと認めます。森文部大臣。    〔国務大臣森喜朗登壇拍手
  4. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 臨時教育審議会設置法案について、その趣旨を御説明申し上げます。  我が国教育は、国民のたゆみない努力により、著しく普及し、その水準は、国際的にも高く評価され、我が国成長発展に重要な役割を果たしてきております。特に、戦後において、その急速な普及充実が図られ、国民全体の教育水準向上に大きく寄与してきたところであります。  一方、近年における社会の急激な変化教育量的拡大等は、教育あり方に対しても大きな影響を与えており、今や教育改革必要性が各方面から指摘されるに至っております。  このような教育改革に対する国民要請を踏まえ、今後とも我が国が活力ある国家として安定した発展をしていくことができるよう、二十一世紀我が国を担うにふさわしい青少年の育成を目指して教育全般にわたる改革を推進していくことが、緊急かつ重要な課題となっております。  そこで、政府全体の責任において、長期的展望のもとに、教育改革に取り組む必要があると考え、このたび、各界の人格識見ともにすぐれた方々を委員にお願いして、臨時教育審議会総理府に設置することとし、ここにこの法律案提出した次第であります。  次に、この法律案内容概要について申し上げます。  まず第一に、今後における社会変化及び文化発展に対応する教育実現を期して、教育基本法の精神にのっとり、各般にわたる施策につき必要な改革を図ることにより、教育目的達成に資するため、臨時教育審議会総理府に置くこととしております。  第二に、審議会は、内閣総理大臣諮問に応じ、教育及びこれに関連する分野の諸施策に関し必要な改革を図るための方策に関する基本的な事項について調査審議して答申するとともに、意見を述べることをその所掌事務としており、また内閣総理大臣は、この答申または意見を尊重しなければならないこととしております。  第三に、審議会は、文部大臣意見を聞いて内閣総理大臣任命する二十五人以内の委員をもって組織するとともに、文部大臣意見を聞いて内閣総理大臣任命する専門委員を置くことができることとしております。また、審議会事務を処理させるため、事務局を置くこととしております。  このほか、審議会は、国の関係行政機関の長に対し、資料提出意見開陳説明その他の必要な協力を求めることができることとしております。  なお、この法律は、施行の日から起算して三年を経過した日に失効することとしております。  政府といたしましては、以上を内容とする法律案提出した次第でありますが、衆議院におきまして次のとおり修正が行われております。  その第一は、内閣総理大臣は、審議会答申または意見を受けたときは、これを国会に報告するものとすること。  第二は、内閣総理大臣は、審議会委員任命しようとするときは、両議院同意を得なければならないこととすること。  第三は、この法律施行期日を「公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日」に改めるとともに、これらの修正に伴う所要規定整備を行うことであります。  以上が、この法律案趣旨でございます。(拍手)     —————————————
  5. 木村睦男

    議長木村睦男君) 久保亘君。    〔久保亘登壇拍手
  6. 久保亘

    久保亘君 ただいま議題となりました国民教育審議会設置法案について、その提案理由内容概要を御説明申し上げます。  激発する少年非行暴力登校拒否高校中退者の激増など今日の教育荒廃はもはや一刻も放置できない事態であり、偏差値教育に象徴される現在の教育が早急に改革されなければならないことは国民共通の認識となっております。  この国民的要請にこたえるためには、まさに国家百年の計としての教育改革重大性にかんがみ、慎重かつ民主的に審議を行う機関を設置し、その意見に基づいて国民合意を得ながら改革を推進することが必要であると考えるものであります。その際、真に国民が求める教育改革実現するための条件として最も重要なことは、その審議機関が、教育政治的中立を確保するという大原則に基づいて、あらゆる権力の不当な支配や介入を排除し得る体制で設置されるとともに、委員人選審議の過程で、国民意思が十分に反映されているか、あるいは国民意思と離れた議論になっていないかを、国民自身が常に監視し、批判できることが保障されていなければならないということであります。  しかるに、現在政府から提案されております臨時教育審議会設置法案では、これまでの審議の中でも明らかなように、その設置目的設置形態及び運営方法が、総理大臣恣意に左右されるものになっているのではないかとの危惧は依然として払拭されず、真に国民のための、国民に開かれた審議会になるとは到底考えられないのであります。  他方教育学術文化に関する重要課題を審 議する最高の機関として、三十年余にわたって文部省に設置されてきました中央教育審議会についても、委員の選出が偏ったものであったことや、密室の中で運営されてきたことなどから、必然、国民的要請に反する官僚主導結論が出されることとなり、その結果、文部行政の隠れみの的な役割を果たすにすぎなかったという歴史を考えるとき、もはや、教育改革検討をゆだねる機関としてふさわしいものであるとは言えない存在となっているのであります。  そこで、我々は、従来の中央教育審議会にかわる恒常的機関として、新たに、より強い機能と主体性、中立性を有する国民教育審議会文部省に設置し、委員人選及び任命運営などが、公開原則のもとで、より国民意見を正しく反映させる形で行われるよう配慮することなどによって、現在の憂うべき教育荒廃を抜本的に解決する方途を検討し、ひいては、憲法及び教育基本法規定する教育目的の真の実現を図ることが最も適当であると考え、この法律案提案した次第であります。  次に、このような構想を採用いたしました理由について、政府提案臨時教育審議会設置法案と対比しながら述べたいと思います。  まず第一に、政府案が、審議会総理大臣直属機関として設置することとしていることは、極めて大きな危険をはらんでいるということであります。  過去において、総理大臣直属教育に関する審議機関が設けられたのは六回を数えますが、戦後の特殊な条件のもとに設置された教育刷新委員会は別として、いずれも戦前の国家主義軍国主義教育の推進に大きな役割を果たす結果になったことは歴史の証明するところであります。  言うまでもなく、教育基本法第十条は、教育が不当な支配に服することを否定し、国家権力教育に介入することを厳しく戒めております。しかるに、政府原案では、総理大臣直属審議機関を設置し、委員任命会長指名に至るまで総理大臣が行うこととしておりますが、これでは、国家権力教育に直接介入し、教育中立性を根本から脅かすおそれのあることは疑いのないところであります。  その不安を一層大きなものにしているという点で、特にここで強調しておかなければならないのは、ほかならぬ中曽根首相自身政治姿勢であります。首相はかねてみずからを改憲論者と称し、行政改革の次は教育改革を行うことが憲法改正への道であると発言しており、今回の提案は、父母国民が求める教育改革とは出発点において決定的に異なった危険な政治的意図に基づくものであると言わざるを得ません。さらに、みずからの政権を維持するために教育改革を利用するという意図さえ各方面から指摘されているのであります。  他方において、現内閣は、行財政改革の名のもとに、一人一人の児童生徒に行き届いた教育実現することにより今日の教育荒廃を是正するため最も緊要な四十人学級計画を凍結するほか、私学助成の削減、育英奨学金有利子化など、ことごとく国民期待を裏切る教育切り捨て政策を実施しているのであります。現在の山積する諸課題をみずから何ら解決し得ない首相に、膨大な財政支出を必要とする本当の教育改革実現がどうして可能なのでしょうか。むしろ、財政的配慮の優先と検討中の名のもとに当面の教育課題への取り組みを先送りするための道具に利用される危険性を指摘しないわけにはいかないのであります。  これに対し、本法律案においては、国民教育審議会は、あくまでも憲法及び教育基本法が目指す教育目的達成するため、教育中立性が堅持されるものとなっているのであります。  すなわち、国民教育審議会は、従来の中央教育審議会と同様、文部行政の直接の責任者としての文部大臣の所管にしておりますが、その機能については、単に諮問事項審議するにとどまらず、審議会自主的意見をまとめることができることとし、文部大臣は、教育学術文化に関する施策大綱について、事前に審議会に諮り、その意見を尊重しなければならないこととし、機能を一段と高めております。これは、社会保障制度審議会など、国民生活に極めて重要な役割を果たす機関に与えられている機能と同様であり、このことによって、審議会は、教育問題全体を体系的に検討し、行政全般を絶えずチェックするとともに、長期的及び短期的な視点から教育改革を推進することが可能になると考えるのであります。  第二に、教育改革にとって最も重要な前提となる国民的合意形成のための条件が、政府案構想には著しく欠けていることであります。  政府原案では、審議会運営とその結論を左右することになる委員任命、特に会長指名などが総理大臣の専権とされており、これでは、審議会国民の声が何ら反映されないばかりか、総理大臣恣意的人選によって教育改革方向がゆがめられ、ひいては国民合意が得られないおそれが大きいと言わざるを得ません。  言うまでもなく教育権の所在は国民にあり、教育実現国民全体に対して直接に責任を負って行われなければならないことは、民主主義社会原則であり、我が国憲法教育基本法基本理念であります。教育改革は上からの改革であってはならず、下からの草の根改革でなければなりません。審議会が、すべての子供父母教師など国民教育に対する多様な要請をあまねく吸収し、またその英知を結集する機関となるため、少なくとも、委員任命に当たっては国民を代表する唯一の機関としての国会同意を得ることとすることは、最低限必要な条件であります。  この点については、衆議院において修正上本院に送付されておりますが、国会同意人事とするかわりに委員守秘義務規定したことは、審議会密室性を強めるものとなっております。教育論議に秘密はないと言うなら、この守秘義務会議公開によってのみ排除が可能となるのであります。  そこで、本法律案における政府案との重要な相違点は、民主主義社会の常道として、審議会原則として公開のもとに運営されるということであります。密室審議官僚的独善などの弊害を生じやすいことは、教科書検定などの例を挙げるまでもなく明らかであります。自由な発言が阻害されるということが非公開理由とされているようでありますが、公開されても恥ずかしくない、かつ、その発言責任を持つ論議が行われることこそ必要であり、また、国民結論だけでなくプロセスを知ることも重要であると言わなければなりません。そして、このことが、審議会中立性を 担保するとともに、その結論国民的合意を得るための重要な要件であると考えるものであります。  以上申し述べました理由により、本法律案提案した次第でありますが、その内容概要は次のとおりであります。  まず第一に、民主主義社会における教育の果たす役割重要性及び教育が不当な支配に服することなく、国民全体に対して直接に責任を負って行われるべきことにかんがみ、教育施策国民意見が正しく反映されることを図ることによって、憲法及び教育基本法規定する教育目的達成等に資するため、国民教育審議会文部省に置くことといたしております。  第二に、審議会は、教育学術文化に関する基本的な重要事項について調査審議し、文部大臣意見を述べるものとし、文部大臣は、これらの事項に関する企画、立法または運営大綱について、あらかじめ審議会に付議しなければならないこととするとともに、審議会意見を尊重しなければならないことといたしております。  第三に、審議会は、両議院同意を得て文部大臣任命する三十人以内の委員によって組織するとともに、審議会意見を聞いて文部大臣任命する専門委員を置くことができることとするほか、事務局を置くことといたしております。  なお、委員の任期は二年とし、審議会会長委員の互選によって定めることといたしております。  第四として、審議会会議公開とすることといたしておりますが、出席委員の三分の二以上の多数で議決した場合には非公開によって行うことができることといたしております。  第五に、審議会は、国の関係行政機関の長に対して、資料提出意見開陳説明その他必要な協力を求めることができることといたしております。  最後に、この法律公布の日から施行することとするほか、関係法律所要規定整備を行っております。  以上が、本法律案提出いたしました理由とその概要であります。  何とぞ十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  7. 木村睦男

    議長木村睦男君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。田沢智治君。    〔田沢智治登壇拍手
  8. 田沢智治

    田沢智治君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま趣旨説明がありました臨時教育審議会設置法案につきまして、総理大臣及び文部大臣に若干の質問を行いたいと存じます。  まず最初に、中曽根総理は、今国会施政方針演説において、今日における国政最大課題として教育改革を取り上げ、その断行に取り組む決意を表明され、次いで、この臨時教育審議会設置法案提案されたのであります。この総理教育改革構想は広く国民に受け入れられ、大きく期待されるに至っております。そして今日では、教育改革必要性については国民的合意がほぼでき上がっていると言っても過言ではありません。ここに、教育改革というまことに重要かつ困難な課題に積極的に取り組む姿勢を打ち出された中曽根総理先見性勇断に対しまして、心から敬意を表するものであります。  今さら申すまでもなく、今日我が国教育現状は、これを一日も放置することを許さず、その早急な改革が迫られております。  すなわち、第一に、校内暴力を初めとする各種の少年非行の多発に見られるように、多くの子供たちが追い込まれ、反社会的な行動に走るに至っていること。第二に、偏差値教育に象徴されるような受験競争受験勉強が過熱化し、いわゆるできのよい子供たちは、本来必要かつ望ましい学習ではなく、受験のためにのみ役立つ記憶中心勉強に励み、他方では多くの児童生徒が、子供の特権とも言うべき未来に挑戦する気力を失って、劣等感のとりこになり、あるいは学ぶ意欲を失うに至っていること。さらには、基本的な価値観、道徳や生活習慣を育成して豊かな人間性を育ててもらいたいという父母社会の願いに反し、学校の一部においてはこれにこたえる教育学校運営を行っておらず、ために父母学校教師に対する不信、不満は極度に高まっていること。このような教育の結果として、何よりも現代青少年が困難や未知の分野に立ち向かっていく覇気を失ってきており、果たしてこれらの青少年が、多くの困難が予想される二十一世紀国家社会を背負っていけるかという心配が日に日に増大しているなど、まことに憂慮にたえない現状であります。  したがって、このような教育現状を一日も放置することは許されず、早急にその改革に取り組むことこそ、まさに現下の国政上の急務であると言わなければなりません。  では、今日のこのような教育実態を招いた原因背景は一体何でありましょうか、まことに複雑であります。俗に複合汚染と言われているゆえんでもあります。したがって、教育改革必要性については国民意見は一致するのでありますが、その改革方向内容については必ずしも意見は一致せず、むしろまことに多様な現状であります。例えば入試制度の改善を最重要視する者、あるいは教員の養成と資質向上を第一にする者など、さまざまであります。ここに教育改革が口で言うはやすく実行しがたいゆえんがあります。また、これまで教育改革が真剣に取り上げられなかった原因の一つであると思います。  今回、せっかく中曽根総理がこの困難な国民的課題に英断をもって取り組まれることになったわけでありますから、臨時教育審議会がこの期待にこたえ、国民的合意を形成するようなすばらしい改革案をまとめられることを切に願うものであります。そのためには、本審議会が多くの国民の支持と期待を担って祝福されて発足することが肝要であり、また同時に、審議会の自由な審議を望みながらも、政府としてはどのような問題の検討期待しているかが、できるだけ国民の前に具体的に明らかにされることが必要かつ望ましいことと考えるのであります。  中曽根総理総理は、今日の教育荒廃現状とその原因背景をどのように認識され、審議会に何を検討してもらいたいかを、これまでの発言内容を整理して国民の前にわかりやすく明らかにしていただきたいと存じます。  次に、教育改革を考えるに当たって基本的に踏まえなければならないところの教育理念役割とその重要性についてお伺いしたいと存じます。  教育は、言うまでもなく国家社会発展基礎を築き、人間人間として成長し、充実した人生を送るための基礎をつくるものであります。したがって、国政最大の尊重を要することは論をまたないところであります。我が国が有史以来幾多の困難を克服して今日の発展を見たのは、明治以降今日まで厳しい社会的、経済的、財政的事情のもとで教育を最重要視した先人の見識と勇断に負うところまことに大きいと言わなければなりません。  翻って、現代という時代を考えますと、我が国を初めとする地球社会は大きな転換期を迎えていると言えましょう。すなわち、情報化国際化高齢化等の急激な社会の進展に今後どう対応するか、南北間の深刻な格差や貿易摩擦などを解決して経済安定的成長をどう持続するか、そのための科学技術の革新や産業構造の転換、産業社会開発発展自然保護との調和をどう実現するか、さらには、変化が急速で複雑高度化流動化がますます進む現代社会の中にあって、人間にとって一番大切な思いやりの心を基本とした人間性豊かな社会をどう建設していくか、また、今日世界のあちらこちらで不幸な戦争が後を絶たず、全世界の平和をどうつくり上げていくか等々、まことに多くの困難な課題に我々は直面しているのであります。  しかも、かつてのようにこれらの解決の見本は世界じゅうのどこにもなく、いわば海図を持たずに航行しなければならない船のような現状の中で私たち生活しているのであります。これらの解決の多くは、これからの青少年英知行動力期待せざるを得ません。その意味において、教育の果たす役割重要性は、これまで以上に大きい比重を占めていると私は思います。  しかるに、我が国現状を見ますとき、これまでの不断の努力の結果、教育普及は目覚ましく、今や世界有数国家として世界に誇るべき極めて高い水準教育を我々日本人は持つに至っているのであります。ところが、この教育普及によって、教育を受けることを当たり前と考え、先人努力成果であることを忘れ、教育の意義、重要性やありがたさも忘れる傾向を生じております。  もともと我が国は、徳川時代寺子屋教育や藩校の普及によって国連の隆昌をもたらし、みずからの生活やその属する社会充実発展を図るために国民みずからが進んで学び、教育を受けることに大きな喜びを感じて、苦しい生活環境の中にあっても可能な限りよい教師を求め、必要に応じて学校をつくる気風国民性として根強くあったのであります。この気風と土壌があったればこそ、明治以降の教育成果によって経済大国日本の今日があると信ずるのであります。その意味において、このたびの教育改革は、我が国歴史的伝統に思いをいたし、教育のひずみを是正して二十一世紀に向かって前進する民主国家日本を建設するために必要な措置であると確信するものであります。  そのためには、現代社会の諸悪の根源と言われる偏差値重視教育実態を一掃しなければなりません。なぜならば、偏差値の高い者ほどすぐれ、低い者ほど劣るとされる社会的、学校的教育観は、天地自然の法則に反し、人同存在価値を否定するものであるからであります。  神仏の教えに、大きい木は小さい木より必ずすぐれているとは言えず、また小さな草は大きな車より劣るものではありません。野に咲く小さなスミレにも美しさがあり、背丈の高い大きなススキにもまた風情があります。それと同様に、人間一人一人の表面にあらわれている頭脳や才能や体力はいろいろの差があっても、それぞれの個性に応じてすぐれた資質をその生命に宿し、すべてがとうといものであると教えております。  教育の本質は、このような天地の理法にあり、その人の資質に適した教育を施したとき、その人の個性に美しい花を吹かせ、実を結び、世のため人のために尽くす人材が育成されるものであると確信するものであります。このような人間の多様な価値を認める教育実現することこそ、今日国民が最も求めている教育改革であると私は信じます。  そこで、二十一世紀社会を展望して、今後我が国教育はどうあるべきかという基本的な教育理念とその役割重要性について総理の御所見をお伺いしたいと存じます。  また、教育改革を行うためには、当然財政的配慮もゆるがせにはできません。もちろん、今日の財政事情を考慮しなければならないことは言うまでもありませんが、可能な限り財政配慮をしなければならないと考えます。この点、総理決意をあわせてお伺いしたいと存じます。  次に、本審議会総理大臣直属機関とした理由についてお伺いをいたします。  教育は、よく言われるように、その社会のバロメーターであります。したがって、今後の教育あり方を考えるに当たっては、単に教育的観点からだけではなく、将来を展望して極めて広い視野から、これまでの物の考え方や教育制度の枠組みにこだわらず、総合的に検討することが必要であります。また、この改革実現するためには、文部省という一省庁の力だけでは到底無理であり、内閣の総力を挙げて取り組むことが大切であると思うのであります。  そこで、私は中曽根総理に対して、国民の十分な理解を得るために、改めて総理直属審議会として設置される理由について明らかにしていただきたいと存じます。また、あわせて、内閣を挙げて教育改革に取り組み、国民期待にこたえんとする総理決意をお伺いしたいのでございます。  次に、臨時教育審議会教育基本法の関係についてお尋ねいたします。  昭和三十一年当時、それは清瀬文部大臣のころでありますが、教育基本法改正するため、内閣直属機関として臨時教育制度審議会を設置するための法律案国会提出されましたが、同時に提案されておりました教育委員会制度の改革を図るためのいわゆる地教行法を優先して成立させるため審議未了となった経緯があります。その後も教育基本法改正についてはしばしば話題になり、今日でも、我が自民党の内部を含め国民の間にも教育基本法の評価に意見が分かれていることは否定できないのであります。ところが、今回提案された法案では、第一条の目的の中に「教育基本法の精神にのっとり、」と明確に規定されております。  そこで、教育基本法制定以来これまでの論議の経過と、今日教育基本法国民にどう受け入れられていると考えているか、また、第一条にこのよ うな条文を入れた理由とその意味について総理の御所見をお伺いしたいのでございます。  また、このこととは別に、臨時教育審議会は、何らのタブーを設けることなく、また何らの拘束を受けることなく、二十一世紀を担う青少年をどうすれば立派に育成することができるかという観点から、教育をめぐるすべての問題について自由に幅広く検討することが何よりも必要であると考えるのであります。総理にその見解をお伺いしたいのでございます。  次に、審議会委員人選でございます。  審議会が成功して立派な答申意見をまとめることができるかどうかは、ひとえに委員人選、すなわち委員に適任者を得るかどうかにかかっております。衆議院における修正で、委員任命国会同意人事とされたことは、国民の代表たる国会意見を反映する意味で結構でありますが、ただ、このことによって審議会に政党色が持ち込まれることがあっては断じてなりません。さらに、各方面からの要望に顔を立てる余り、選考の枠を広げ過ぎて総花的構成になって、また実のない審議が行われてはなりません。したがって、各方面意見を聞くことは結構ですが、最終的にはあくまでも総理責任と明確な方針に基づいて、教育改革検討するにふさわしい識見と人格の持ち主を毅然として選んでいただきたいと存じます。  そこで、委員選任に関する基本的な方針と、本法案成立から国会同意を得て委員任命するまでの具体的な手順についてお伺いしたいと存じます。  次に、本審議会の存続期間は三年とされておりますが、審議会の発足から最終答申に至るまでの具体的な運営の方針やスケジュールについてお伺いしたいと存じます。  今日解決を迫られている教育課題については、短期的なものから長期的なものがあり、しかも大変広範囲にわたっております。しかも、その改革方向について有識者や国民の間に多様な意見があります。したがって、審議会意見答申国民合意を得るためには、審議会運営の過程で広く国民意見を吸収すると同時に、審議の状況を適時国民の前に明らかにして問題の所在を明らかにすることなど、運営上の種々の工夫をすることが肝要であると思います。この点、審議会運営の方針や方法について、現在文部大臣はどのような考えをお持ちになっておるか、お伺いをいたしたいと存じます。  最後に、日本社会党から提案されております国民教育審議会設置法案について、一、二提案者にお伺いしたいと存じます。  率直に申して、国民教育審議会という名称は実に大きく立派でありますが、その実質は文部大臣諮問機関である中央教育審議会を若干強化したものにすぎないと私は思っております。その意味では、政府案に比べスケールに欠けるのではないかと存じます。今日まで中央教育審議会は、我が国教育の振興上大きな役割を果たしてきたことは言うまでもございません。日本社会党におかれても、同様に中教審を高く評価して、このような改革案提案されたのではないかと思われます。ただ、先ほど来申し述べましたように、今日要請されている教育改革文部大臣の一諮問機関で適切に処理することは大変困難ではないかと考えるのであります。  そこで、日本社会党が文部大臣諮問機関として提案された理由と、この構想教育改革に適切に対処できると判断された根拠について提案者にお伺いいたし、私の質問を終わらせていただきたいと存じます。  御清聴感謝申し上げます。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  9. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 田沢議員にお答えをいたします。  まず、教育現状とその原因背景をどう認識し、かつ審議会教育改革課題としてどのような内容検討するかという御質問でございます。  現在の教育制度は、戦後の我が国の興隆と繁栄に大きく貢献してきたことは否定できないと思っております。しかし、最近の社会の急激な変化あるいは教育の量的拡大、これらの大きな変化教育あり方に大きく影響しておりまして、さまざまな問題点が指摘されておるところでございます。特に、家庭、社会あるいは学校教師、学歴、試験、こういうようなさまざまな問題が国民の側からも指摘されておるところであると思います。さらに、国際化の問題も重要な問題になっていると思います。  そういうような意味から、教育国民文化を継承してさらにこれを創造的に発展させるという大きな仕事があり、我々としては、二十一世紀に向かって世界的日本人をつくっていただこう、そういう大きな理念に基づきまして、このような審議会によって御検討願いたい。そういう意味においては全面的に現在の教育あり方自体を検討していただきたいと思っておるところでございます。制度、運用、あるいは社会環境その他すべてを含めてお願いいたしたいと思っておるのです。  具体論といたしましては、私はかつて七つの問題点を指摘したことがございます。第一は、六・三・三・四制の学校制度の改革全体の問題。それから高校入試制度を改善する。特に偏差値教育あり方等について検討を加える。それから、共通一次試験を含む大学入試制度あるいは高等教育改革というものを考えていただく。さらに、児童生徒人間形成に資するために社会奉仕活動やあるいは集団宿泊訓練など、こういうものをひとつぜひ考えていただきたい。さらに、情操教育あるいは道徳教育を充実して、心身ともに豊かでたくましい青少年の育成を考えるべきではないか。さらに、国際社会に活躍し得る日本人の育成を目指して、国際理解教育の充実あるいは語学教育の改善、あるいは大学の国際化等も検討していただくべきである。さらに、教員の養成、採用、研修等を通じて教員の資質向上に努めるとともに、すぐれた社会人の教育界への受け入れ等も検討していただきたい。  こういうような具体的なポイントもかつて申し上げたところでございますが、これらは私の念願で個人的な希望でございますけれども、今度の審議会において参考にしていただければありがたいと思っております。いずれにせよ、その審議会が取り上ぐべき課題その他は、審議会みずからがお考えいただくべきことであると考えております。  次に、二十一世紀を展望して我が国教育はどうあるべきかという基本的な理念、その役割重要性について見解を伺いたいというお尋ねでございます。  我が国教育基本理念憲法教育基本法に明 示してございますが、今後は、総合的な人間教育あるいは教育国際化人間主義、人格主義等の観点からの検討が必要であると思います。教育には、我が国のすぐれた文化を継承してその創造的発展を目指し、また時代変化に主体的に対応し得る人間を育成するという重要な使命があると認識しておりまして、それらの問題をぜひお取り上げ願えればありがたいと思っております。  さらに、教育改革を行うについて財政的配慮が必要であると思うがいかんという御質問でございます。  もとより教育改革は必ずしもすぐ財政負担を伴うものとは考えられませんが、必要な改革は当然これは実施しなければならないと思っております。なお、現下の財政事情は非常に深刻なものがあり、財政改革にも最大限の努力が必要ではありますけれども、教育につきましても効率化あるいは重点化ということが必要ではないかとも考えております。しかし、いずれにせよ、答申をいただきましたならば、これを検討いたしまして必要なことは実行しなければならないと考えております。  次に、臨教審を総理直属審議会とした理由はいかがであるかという御質問でございます。  我々は、このたびの教育改革は、二十一世紀に向けて我が国社会における教育機能全般にわたる総合的検討をお願いしたいと思っておるわけであります。こういう意味から、教育国民的広場の中に据えて、そして全国民協力のもとにこれを改革せんとするものであり、かつまたこれが答申をいただきました上は、全内閣の力を挙げてこれを実行していく、そういう意味におきまして、各省庁の協力も十分得られるような体制を今から整えておこう、こういう考えに立ちまして総理大臣諮問機関として設置し、政府全体としてこれに取り組むという姿勢を示した次第なのでございます。  次に、教育基本法制定以来のこれまでの論議の経緯と、今日基本法が国民にどう受け入れられていると考えているか、第一条にこのような文言を入れた理由はいかんという御質問でございます。  教育基本法制定以来、これについていろいろな御議論があったことは私も承知しております。基本法は、現行憲法を敷衍して教育理念基本原則を定めたものであります。具体的には、自由民主主義の理念及び普遍性を持った人間像というものが中心に据えられていると思っております。  第一条の「教育基本法の精神にのっとり、」とは、教育改革を推進するに当たっては、この基本法のもとに、その精神を受けてこれを進めるということを法律上明らかにいたしたものでございます。  臨教審では幅広く自由に検討することが必要であるという御質問でございますが、臨教審は、長期的展望のもとに我が国社会教育機能全般にわたり検討せんとするものであり、国会の御審議を踏まえつつ、審議会自身でいろいろ内容についてはお決めいただくことが適当であり、自由闊達な御議論を期待しておる次第でございます。  次に、委員の選任についての御質問でございます。  委員は、広く国民各層の意見が反映されるように、各方面の方々を網羅する必要があると思います。特に、教育問題等に関する見識のすぐれた、また経験の豊かな方々、そして大局観に立って物を御判断できる方々が適当ではないかと思います。本法案が成立次第、文部大臣意見を聞きながら人選を進め、両議院同意を得て速やかに委員任命いたしたいと思います。でき得べくんば今国会中に承認手続を行いたいと念願しておりますので、よろしくお願い申し上げる次第でございます。  残余の答弁は文部大臣からいたします。(拍手)    〔国務大臣森喜朗登壇拍手
  10. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 田沢さんの私に対する御質問は、審議会運営の方針や方法についてどう考えているかとのお尋ねでございますが、臨教審の設置や審議の過程において広く国民各界各層の意見が反映されますように、またその理解と協力が得られるように配慮が必要であろうと考えております。  審議の進め方についても、具体的な方法は国会での御論議を十分に踏まえながら審議会自身で御検討いただくことが適当と考えておりますが、例えば、御指摘のように審議経過概要を適宜公表すること、あるいは地方の公聴会を開催すること、またアンケート調査の実施や論文の募集等いろいろな工夫を尽くして、そして広く国民の理解と協力を得られるような努力をすることが大事であるというふうに考えておるわけでございます。(拍手)    〔久保亘登壇拍手
  11. 久保亘

    久保亘君 田沢議員にお答えいたします。  国民教育審議会という名称についてお褒めをいただきまして、恐縮いたしております。名は体をあらわすと申しますが、臨教審という名前こそ、まさに行革臨調を引き継ぐ教育臨調そのものをあらわしているのでございまして、私どもは、その意味国民的合意を基調とする国民教育審議会とは根本的に教育改革に対する考え方を異にするものだと考えております。  なぜ文部省に置くのか、文部省だけでできるのかという御質問でございました。  確かに、今日文部省時代の要求や国民要請にこたえるという意味で力を失っている、そのことは私も否定いたしません。むしろ文部省の自己変革も教育改革の中で必要となってきていることだと考えているのでございます。  しかし、今日、明治以来の縦割り、縄張り行政がもたらしている欠陥を理由にして、それを総理直属機関にしなければならないという理由にすることは、大変論理の飛躍があると思うのでございます。むしろ、文部省にもっと国民の全体の力を集めることができるような機関運営させて、この機関が決めた結論に対して政府がいかに実行責任を負うかという意味において総理大臣責任を明らかにしなければならぬのでございます。そのことに口を閉ざしておいて、そして今や教育改革総理大臣直属機関でなければ考えられないような言い方をするところに、今日国民が臨教審に対して大きな疑問を寄せている根本の理由があるわけでございます。  中曽根総理も、ことしの一月の初めに伊勢の皇大神宮を御参拝になりました記者会見では、中教審に諮問するのだということを神様の前でおっしゃったように思うのでございます。ところが、その後このお考えが変わってまいりまして、臨教審という考え方、総理直属の臨教審という考え方に変わってまいりました。むしろ変わっていきま した中曽根さんのこの考え方こそ、私は、従来中曽根さんが主張されてまいりました戦後教育の総決算という、憲法教育基本法を否定する立場に立つお考えではないかと大変危惧いたすものでございます。  そのような意味で、私どもは、国民の立場に立った国民教育審議会こそが、その名のとおり、今日国民合意のもとに教育改革を進め得る機関であると確信をいたす次第でございます。(拍手)     —————————————
  12. 木村睦男

    議長木村睦男君) 小野明君。    〔小野明君登壇拍手
  13. 小野明

    ○小野明君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案趣旨説明が行われました臨時教育審議会設置法案並びに対案として提案されました国民教育審議会設置法案に対し、中曽根総理並びに森文部大臣、また久保亘議員に質問を行います。  中曽根総理肝いりの総理直属の臨教審構想が発表されて以来、多くの国民がその成り行きを不安と危惧の念を持って見守っておるのであります。さきに行財政改革に名をかりまして、国民生活に直接かかわります福祉、医療、文教予算に大なたを振るう一方で、防衛予算の大幅増額を行い、今度はいよいよ教育に手をつけることによりまして、総理が望む日本列島不沈空母化、すなわち軍事大国実現へと精神的総動員をかけるのではないかと危惧をいたしているわけであります。  総理、あなたから言われるまでもなく、私たちも今日の我が国教育荒廃を心から憂慮いたしております。中学から、否、幼稚園や小学校段階で始まる有名校への受験勉強の過熱化、能力主義、学歴主義による選別と、画一化した教育の犠牲となっている多くの子供たち、そしてうっせきした子供たちが走る非行暴力等々、まことに深刻な事態に立ち至っておるのであります。かような今日のゆゆしき教育の事態を一刻も早く打開し、子供たち一人一人がそれぞれの能力、適性を最大限に開花させ、人間性豊かな社会人に育っていくことは、親、教師子供たち、すべての国民の強い願望と相なっております。  したがって、このような国民の強い願望を現実化する教育改革は、まず親、教師子供たちを主体といたします全国民的合意に基づき、慎重でかつ民主的な手続を経てその方針が形成され、実施へ移されることが絶対に必要であると思います。教育はいわゆる国家百年の大計であります。もしこの手続を誤った場合、到底国民のコンセンサスを得ることはできず、もしそのような改革を強行するならば、後世にその禍根を残すことにもなりかねません。まず、この教育改革基本的認識について総理の御所見を伺います。  本来、政策の転換は国会がすべきはずのものでありますが、今回、総理提案されました総理直属の臨教審なるものは、これを忌避して議会を迂回する手法をとるものであり、重要な施策はすべて審議会が決め、そこで無理やりに自分の意思を通していこうとするものと言わなければなりません。このことは既に第二臨調で証明済みではないでしょうか。いやしくも国権の最高機関である国会を空洞化し、枢密院的ないま一つの国会をつくり、そこで決めた方針を金科玉条にして国会に押しつけようとするものでありまして、教育臨調を突破口に、かつて総理が言われたごとく、今後安保臨調などが次々に設置されるのではないかと危惧するものであります。このような国民の懸念に対し、総理はどのように説明なさるのでありましょうか、明確な御答弁をお聞かせいただきたいと存じます。  今回、総理提案されました臨時教育審議会なるものは、その設置目的、組織、役割等において、親、教師子供たちが心から願っている教育改革、すなわち子供たちの本当の幸せな未来を願って構想されたものとは到底言い得ず、まことに思いつき的なものがあることを指摘したいと思います。さらに何よりも、今日の教育危機をもたらした原因の究明、特にこれまでの政府・自民党の教育政策に対する反省が全く欠如いたしておることであります。そこで総理は、今回の総理直属の臨教審設置法案を撤回し、教育改革についてはどのような組織で検討することが必要か、望ましいか、衆知を集めて検討し、出直すべきではありませんか。  次に、なぜ私が本案に反対するのか、その主たる理由を申し述べ、総理の御所見を承りたいのであります。  まず、今日まで国会審議における総理の臨教審に関する御発言は実に不明確であり、あいまいであり、一体何のためにかような審議会を新たに設けようとするのか、本審議会を設ける総理の真意は一体那辺にあるのか、疑わざるを得ないのであります。  総理、巷間伝え聞くところによりますと、この秋に行われる自民党総裁選で再選されたいための実績づくりであるとか、また、これがあなたの本音であるかもしれませんが、あなたが青年政治家のころから叫び続けております憲法教育基本法改正への布石だとも言われております。もし、あなたがそのような政治的思惑から、提言すれば不純な動機から今回の臨教審設置法案を提案し、今述べたようなあなたの本音を隠さんがため明確な答弁を避けているとすれば、これほど教育を冒涜し、国民を愚弄するものはなく、絶対に許されないことだと思うわけであります。総理、臨教審を設置する真意は何でありましょうか、しかと承りたいものであります。  次に、臨教審法案の第一条に「教育基本法の精神にのっとり」、この文言を法案提出の間際に挿入されました。本当のところ、与党自民党の改憲強行論者たちと同じく、挿入したくなかったのではないでしょうか。この文言を入れた真の意図は何でありましょうか。また、あなたの考える「教育基本法の精神にのっとり」とは具体的にどういうことを意味するのか、率直に伺いたいと存じます。  昭和三十年、「うれうべき教科書問題」による教科書批判にあなたは力を発揮されて以来、改憲論者として一貫して教育の保守反動化を強力に推進されたのであります。ここに至って突如変心した、いや変心せざるを得なかった理由は一体何でありましょうか。このような文言を入れることによって国民の目をくらまそうとする戦略なのではありませんか。明確に御答弁をいただきたい点であります。  明らかでない点はまだまだあります。  総理、あなたと森文部大臣との間で、この臨教審で何を審議してもらうか、そのことについて意見の相違があるように私には思えますが、いかが でありましょうか。  総理はこれまで、知、徳、体の順序を入れかえ徳、体、知と、徳を重視する教育必要性や愛国心の育成を目指す運命共同社会論を、さらには昭和五十八年十二月には、今総理からお話がございました教育改革七つの構想でさまざまなことを発言をされておられます。そして臨教審構想が出された当初は総理の私的諮問機関文化教育に関する懇談会の報告と、これまでの中教審答申を土台にして臨教審に審議を願うと述べておられました。一方、森文部大臣は、何を審議してもらうかは臨教審委員の自由にお任せすると繰り返されております。そのうち総理のトーンも落ちてまいりまして、最近では、二十一世紀を担うにふさわしい青少年教育、まことに空々漠々としたテーマを繰り返されるだけであります。  しかし、少なくとも政府としては、この審議会に対し、何を、どのような方法、手続で審議することを期待しているかを国民の前に明らかにする責務があると存じます。この点について、総理文部大臣の偽らざる所信を伺いたいと存じます。  さらに、新しい審議会委員人選について不審な点があります。  総理、あなたは去る二月六日施政方針演説の中で、「この教育改革は、全国民の皆様の御支援のもとに、長期的かつ国民的すそ野をもって進められるべきものであります。」と、この審議会がいかにも民主的なものであるかの印象を国民に植えつけようとされました。しかし、本法案を見る限り、そのような幅広い国民的合意を取りつける手だては何一つ用意されておりません。委員会長もすべて総理任命であります。なぜこういう見え透いた詭弁を弄されるのでありましょうか。これでは国民的合意を取りつけるどころか、総理好みの経済人、官僚出身者、右翼的文化人から成る、まことに政治的中立から縁遠い極めて危険な審議会になることは明白であります。  さらに、本法案の参議院審議はこの本会議から始まったのであります。法案通過も見えないうちに、早くも総理周辺や文部省を中心に委員人選が潜行していると新聞に報道されております。社会党もなめられたものだと私は思いますが、事は社会党だけの問題ではない、参議院全体の問題であると私は考えます。参議院軽視も甚だしいものと言わなければなりません。総理並びに文部大臣、この事実を国民の前に明らかにしていただきたいところであります。  また、衆議院において自民、公明、民社三党によって、委員任命国会同意事項とする修正が行われました。この修正について一応の評価はいたします。しかし、父母教師を初めとする国民各界各層の代表を具体的にどのように選ぶのか、また、国会において各会派の意見をどのように反映させるのか、具体的内容が全く明らかではありません。これでは総理恣意的人選を十分にチェックする保証はなく、この修正で到底安心するわけにはまいりません。  さらに、この三党修正にはいま一つ、審議会答申意見国会に報告するということがございます。この修正も一歩前進と評価はいたします。しかしながら、この修正でどのような効果が期待できるのか、果たして国民意見審議会に反映することになるのか、理解できないところであります。  特に守秘義務が新たに挿入されたのは、久保議員も指摘しておりますように、審議会密室性を高める点で問題があるように思われます。一体、教育に秘密があっていいものでありましょうか。重要なことは、従来までの密室審議方式を改め、思い切って公開制にすることではないかと思いますが、いかがでありましょうか。総理は、審議公開とし国民の傍聴を許すと各委員の自由な発言ができなくなると反対のようでありますが、私は、公開にした方が、かえって委員責任ある、多くの人に聞かれて恥ずかしくない意見を出すようになり、審議を実のあるものとすることができると考えます。さらに言えば、国民の前に公表されたら自分の意見が言えない、そのような人に国の教育改革を論ずる資格はないと言わなければなりません。総理文部大臣の御見解を伺いたいと思います。  次に、いま一つ大変重要なことがあるのに明確になっていない点があります。それは、田沢議員の御指摘のように、教育改革を進めるのに必要な経費をどう確保するかという問題です。  昭和四十六年の中教審答申を完全に実施するためには、当時で六十九兆円もの経費が必要になると試算されております。総理、あなたは昭和五十六年七月二十七日国策研究会で、文部省の中教審程度のスケールの小さい技術論による教育改革ではなく、教育体系の基本あり方まで掘り下げるような教育改革があってしかるべきだと思うと言われております。あなたの言われるようなスケールの大きい改革案期待されている今回の臨教審ならば、この中教審の試算額ぐらいのものではないでしょう。お考えがあればお聞かせをいただきたいものです。  このような教育改革を叫ぶ総理、あなたが、行政改革に防衛以外には聖域なしをスローガンに、現実には文教予算の削減をいたしております。このように教育条件をないがしろにし、管理的、画一的な教育行政を推進する政府・自民党の政策が、今日の教育荒廃をもたらしている大きな原因の一つであることは否定できません。そのことを反省せずに、さらに行革審は九項目にわたる教育予算の削減を検討中とのことであります。  総理、あなたは現実に必要な文教関係予算は削減しながら、一方ではスケールの大きい教育改革必要性を訴えておるのです。あなたは御自分のなさっていること、言っておられることが矛盾だらけだとお考えになりませんか。これでは金のかからない教育改革をせよとおっしゃっておるのと違いがありません。金がかからないでスケールの大きい教育改革、すなわち教育基本法改正、ひいては憲法改正の地ならしを臨教審にやらせようとお考えになっておられるのではないでしょうか。総理の明確な答弁を期待します。  以上、述べてまいりましたが、今回提案されました臨教審設置法案には多くの問題点があり、賛成するわけにはまいりません。国家機構の再編強化を目的とする行政改革に次いで、国民意思国家的統合を目指す教育改革意図していることが明らかに見え見えてあります。我々は、戦前において内閣直属教育関係の諸審議会が、我が国を軍国主義、全体主義へ駆り立てる上で先導的役割を果たした歴史の教訓をここで想起せざるを得ません。二度とこのような轍を踏むことがあってはなりません。  最後に、ただいま臨教審法案の対案として、久保議員から国民教育審議会設置法案提案趣旨説明がございました。久保議員にお尋ねいたしますが、これの政府案との基本的な相違点、また修正点に対する御見解等をお聞かせいただきたいと存じます。  以上で私の代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  14. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 小野議員にお答えをいたします。  まず、総理直層の臨教審構想については、これは軍事大国あるいは総動員体制をつくるためのものではないかという御質問でございますが、このたびの教育改革は、国民的要請にこたえ、社会変化文化発展に対応する教育実現目的とするものでありまして、軍事大国実現などという意図は一切ございません。やはり平和と文化の担い手を新しくつくっていこう、そうして文化の継承と創造的発展を行う旗手をつくっていこう、こういう考えで教育改革をお願いしておるわけでございます。  次に、教育改革につきましては、全国民的合意に基づいて慎重かつ民主的な手続を経てその方針が形成される必要があるという御質問でございますが、その点は御指摘のとおりであると思います。臨教審の設置や審議の過程で、広く国民各界各層の意見が反映されるように配慮してまいりたいと思いますし、そのように成果が上がるように念願しております。  次に、今回の臨教審構想は、結局は国会を空洞化しようとすることになるのではないかという御質問でございますが、このたびの臨教審法案は、国民的合意のもとに教育改革を進めるためのものとして国会の御審議を得て設置しようとするものでありまして、国会の空洞化を意図するものではございません。  この臨教審の成果につきましては、答申を尊重するということ、あるいは国会同意を得て人事を行うということ、また臨教審の成果については逐次報告をすること、そういうことによりましても国会のいろいろな御監督を受けるという形になるわけでございます。  次に、臨教審は思いつき的であり、このような法案は撤回して出直すべきであるという御質問でございますが、今まで申し上げましたような種々の理由により、今や臨教審を設置して教育改革する時期に来ていると私は考えて、法案撤回は考えません。  次に、臨教審設置は憲法改正基本改正の布石ではないかという御質問でございますが、そういうような政治的思惑によるものではございません。先ほど来申し上げますように、今や全国民的に教育改革の声は翕然として起こっておるのでございます。まさに教育改革の時期に来ている。そういう意味において政府はその責任を果たさんとしておるものなのでございます。  「教育基本法の精神にのっとり、」とは具体的に何を意味するかという御質問でございますが、これは憲法教育基本法の精神を基本としつつこれに取り組むということでございます。  次に、臨教審での審議内容について文部大臣意見の相違があるのではないかという御質問でございます。  審議会審議内容というものは審議会によってみずから決めていただくことが適当であると思いますが、今までの中教審の答申やあるいは文化教育に関する懇談会の御提言というものは、審議の重要な参考資料であるとは思います。しかし、それは審議を拘束するものではございません。これらの問題点につきまして、文部大臣と何ら意見は異なっておるものではございません。  次に、臨教審に対してはどのような方法、手続で審議することを期待しているか明らかにすべきであるという御質問でございますが、臨教審への諮問は、その設置の趣旨にかんがみまして、基本的、包括的に行うべきであると思います。そして、審議会における自由な討議を通じてその具体化を進めることが重要であると思います。審議会の具体的な運営あり方等については、国会審議の結果を踏まえつつ審議会自身でお願いする、このように考えております。  委員人選について御質問をしていただきましたが、これは、教育改革国民全体にかかわり、かつ我が国の将来を左右する重要な課題であり、そのためにもこのような審議会が設けられているところでございます。したがいまして、国民各界各層の意見が十分反映されるよう幅広い分野から適任者をお願いすべく、国会における審議を踏まえ、今後慎重に検討すべきことでありまして、いまだ人選には着手しておりません。新聞報道は先走りの報道でございます。  次に、国会報告に関する修正によって、委員守秘義務を課したことは秘密性を高めることになりはしないか、審議公開すべきではないかという御質問でございますが、この委員守秘義務規定は、国会同意大事に伴う、国会同意大事によって八条機関の特別職の公務員になるということでございますので、これは必然的な性格になるわけでございます。そうしてそれは、審議公開とは関係するものではないものでございます。  審議公開するかどうかは審議会によって決定すべきことでございますが、一面において、我々の危惧しているところは、審議公開するということは、そのやり方にもよりますが、外部団体、圧力団体の影響やあるいは圧力を受ける危険性がかなり日本の社会においてはあるわけであります。遺憾ながらそういう状態でございます。委員の自由な発言を制約しないように、そういう意味におきまして、これらは審議会委員の皆様方がお考えいただく、そういうことになると思います。公聴会の開催あるいは審議経過の公表等、種々の工夫をいたしてこれは運営されるであろうと期待しております。  次に、今回の改革はスケールが大きくて金のかからない改革、すなわち基本改正、ひいては憲法改正の地ならしを期待しているのではないかという御質問でございますが、そういうことはございません。今まで申し上げたような教育改革の純粋の理念にのっとりまして行わんとしているものなのでございます。  なお、文教予算につきましては、財政事情を勘案しつつ行うべきでありますが、必要なものは確保することに努力いたしたいと思っております。  また、教育改革に当たりましては、憲法を守り、教育基本法のもとにこれを進めるということは一貫して申し上げているところでございます。  残余の答弁は担当大臣からいたします。(拍手)    〔国務大臣森喜朗登壇拍手
  15. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 小野さんにお答えを申し上げます。  御質問の第一点は、総理と私の間に意見の相違があるのではないかというお尋ねでございますが、臨時教育審議会は、教育改革に対する国民的な要請にこたえまして、二十一世紀我が国を担うにふさわしい青少年を育成すべく、政府全体の責任でこの問題に取り組むため設置しようといたしておるものでございます。  諮問に当たりましては、このような審議会設置の趣旨が十分生かされますよう基本的、包括的に行い、審議会の自由な討議を通じて具体化を進めることが適当であろうと考えております。したがって、審議会における具体的な審議事項につきましては審議会自身でお決めいただくことが適当であろうというふうに考えております。総理の七つの構想、また文化懇の提言などは、先ほど総理からも申し上げましたように、多くの各方面の御意見とともに参考としていただければ極めて幸いであります、このように申し上げておるわけでございます。この点につきましては総理と私の間に意見の相違はございません。  御質問の第二点は、臨教審における審議事項運営方法を明らかにせよとの御趣旨であると伺っておりましたが、審議会運営あり方については、総理からお答えを申し上げましたとおり、国会における審議を踏まえつつ、審議会自身でお決めをいただくことが適当であろうと考えております。  なお、教育改革は、広く国民生活全体にかかわり、我が国の将来を左右する重要な課題でございますので、審議のプロセスにおいては広く国民各界各層の意見が反映されますように、さまざまな工夫を凝らしていくべきであろうと期待をいたしております。  御質問の第三点は、委員人選に関するお尋ねでございますが、教育改革国民全体にかかわり、我が国の将来を左右する重要な課題であります。国会における論議を十分踏まえまして、広く国民各界各層の意見が反映されますよう幅広い分野から適任者にお願いすべく、今後慎重に検討したいと考えております。もとより人選恣意にならないように、総理も私も慎重に対応する所存でございます。  衆議院段階の御質疑を踏まえまして、私といたしましては、どのような分野から委員をお願いするかにつきましてはこれからの検討課題でございますが、衆議院委員会の審議を通じまして、例えば、子供成長に直接かかわる父母学校教育にかかわっている教師またはその経験者、人間発達や社会発展について識見を有する学者や研究者、教育学術文化に識見を有する者、経済界や労働界その他産業構造、雇用問題等に識見を有する方々、社会教育、体育、スポーツの実践者またはこれらに精通しておられる方々、大学の管理運営に識見を有する方、地方公共団体の関係者等を幅広く加えることが人選基本的留意点であろうと、このように答弁をしてまいりました。  なお、小野さん御指摘をいただきましたが、衆議院内閣委員会で成立いたしました際、私は記者団に対しまして、重要な問題でございますので実り多い論議ができたことを大変ありがたく思っております、参議院での御意思はこれからでございますので、思いを新たにして一日も早い御同意を得たい、そのように努力をしたい、このように申しております。  御質問の第四点は、国会同意規定総理による委員人選についてのお尋ねでございますが、総理からこれもお答えを申し上げましたとおり、国会同意に関する修正が成立した場合には、国会意思に従い、誠実に対処する考えでございます。この同意規定は、委員人選の適正を確保する上で意義あることと考えております。  御質問の第五点は、衆議院における修正審議公開についてのお尋ねでございましたが、衆議院における修正によって、内閣総理大臣は、審議会から答申等を受けたときはこれを国会に報告するものとする旨の規定が加えられましたが、これは国民の理解と協力を得るための一つの方法であろうと考えます。  また、この修正によりまして委員守秘義務についての規定を設けているが、国会同意規定を加えることに伴う通常の服務に関する措置であると理解をいたしております。すなわち、この修正により、本審議会委員国家公務員法の適用を受ける一般職の公務員から同法の適用を受けない特別職の公務員に身分が変わることにより、別途服務に関する規定を設ける必要があると理解しており、したがって、審議公開とは関係するものではないと考えております。  審議会審議公開するかどうかにつきましては、審議会において決定すべき事柄でございますが、審議の状況をそのまま公開することは、一面におきましては委員の自由な発言が制約され、ひいては審議会審議に影響を及ぼすことになるなどの問題があり、例えば審議経過の概要を必要に応じて適宜公開をする、地方公聴会を開催する、あるいはアンケート調査や論文の募集などさまざまな工夫を尽くすことによって国民の理解と協力を得ることが望ましいものである、このように考えておる次第でございます。(拍手)    〔久保亘登壇拍手
  16. 久保亘

    久保亘君 小野議員にお答えいたします。  質問の第一点は、本法律案政府案基本相違点はどこにあるかということでございました。  先ほど概略は御説明を申し上げたのでございますが、基本的には、第一に憲法及び教育基本法に従って教育政治的中立を確保すること、第二に国民意見を広く正しく反映させること、第三に国民の参加を保障して合意のもとに改革を進めることについて、審議会設置形態委員の構成、審議方法などで両案は根本的に相違いたしております。  第一に設置形態で言えば、総理直属の臨時的機関であるのか、文部省恒常的機関であるのかで対立いたしております。教育基本法第十条に忠実に教育政治的中立を考えるといたしますならば、権力支配介入を可能な限りなくするために設置形態をどうすればよいかということはおのずから結論の出るところでございます。私の解釈が基本法の解釈だというような主張に基づいておやりになりますと、いろいろ問題が出てくると思うのであります。  先ほど田沢議員の御質問にもお答えいたしたのでございますけれども、国民のための文部省として、文部省に民主的な活力をよみがえらせることが重要なのであって、文部省ではできないから総理直属でやるというのは、明らかに政治権力教育介入でありまして、教育基本法に反するものだと考えております。私は、文部省の自己改革のためにも、中教審は従来の欠陥を克服しなければならないと思っておりますので、国民教育審議会を設置することは大変重要なことだと思うのでございます。  もう一点、国民が必要としている教育施策を実行する責任こそ、回避してはならない総理の権限でございます。これが従来回避をされてきている中で、教育改革総理が直接監督してやる、おれの機関でやるというところに非常に私どもは危惧の念を持つのでございます。そういう意味では、政府全体でやるべきことは、文部省国民教育審議会において得た結論を実行する責任なのではないでしょうか。  第二点の御質問につきましては、衆議院における修正点をどのように見ているかということでございました。  委員の構成とか審議の方法などについては、この修正点をどう見るかということと関連してお答えを申しておきたいと思うのでありますが、その第一点は、審議会委員任命に当たって国会同意を必要とするという点でございます。この点は、私どもの提案いたしております本法律案も全く同様の立場に立っておりまして、修正点に限って言えば賛成でございます。  しかし修正が、同時に、委員委員をやめた後まで生涯にわたって守秘義務を課することになっている点が問題でございます。同意を必要とすることが他の法律との関係でやむを得ず守秘義務を課すことになるのであれば、その守秘義務をなくするためにも審議会公開が必要となってまいります。公開された審議会には守るべき秘密がないからでございます。教育改革論議に秘密があってはならないという主張がございますが、私もそのとおりだと思います。そのためには、審議公開委員国会同意とは一体のものとして考えなければならないのではないでしょうか。  修正の第二点は、委員会の審議結果の報告の義務にとどまっておりまして、審議公開原則に及んでいない点において私は修正の全体としては大きな問題を残したものになったと考えておるのでございます。  もう一つ、この種の審議会においては、第二臨調の土光氏に例を見るごとく、会長の人事は極めて大きな意味を持っておりますが、政府案においては会長指名総理大臣の専権として原案のまま残されております。委員の互選とする私どもの提案とは、この点においても大きく対立いたしておるのでございます。  最後に、衆議院における修正に当たっての公明党、民社党の御努力に私は深く敬意を表するのでありますが、政治的中立の確保と審議公開原則において政府原案修正されていないことなどから本法律案提出いたしましたことを御理解賜りたいと存じます。(拍手)     —————————————
  17. 木村睦男

    議長木村睦男君) 太田淳夫君。    〔太田淳夫君登壇拍手
  18. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました臨時教育審議会設置法案につきまして、総理並びに文部大臣に対し若干の質問を行うものであります。  昨今における我が国教育現状は、表面だけを見ますと、学校教育を中心に世界に誇り得る規模となったと言えるほどであります。しかし、その実態は、落ちこぼれ、登校拒否校内暴力非行問題等さまざまな問題が深刻化し、受験競争の中で無気力、無関心、無感動、無責任の四無主義と言われる状況が子供たちの間に見られるようになっています。この背景には、急激な社会変化に伴って、家庭、学校にも及ぶ教育環境の変化が見られます。また、その中で、子供も含め親も教師も、その多くは自己本位に陥り、教育がゆがめられております。  いずれにいたしましても、教育は一人一人の可能性を開き、人間としての成長を支え、促進する営みであります。また、教育の事業は、当面の効果と大きな展望が必要なことは言うまでもありません。したがって、どのような社会、政治状況であっても、またどのような時代においても、教育の事業は百年の大計に立って行われなければならないと思うのであります。  二十一世紀を目前にして、教育改革をなさんとする総理は、現在の教育の問題点はどこにあり、どのように改革したいと考えておられるのか、まずお伺いしたいのであります。  戦後の我が国社会経済文化発展において教育が果たしてきた役割は確かに大きなものもありますが、他方受験競争や青少年非行の問題などさまざまな弊害をも生んでいるのであります。これからの我が国を担う青少年に求められる資質として、国際性、創造性、変化の激しい時代を生き抜くたくましさ等が挙げられておりますが、我が国においても、教育学校教育だけではなしに人間の生涯にわたって継続していく生涯教育時代に入ったと言わざるを得ないと思うのであります。したがって、教育改革に当たっても、生涯教育の立場から教育体系を総合的に再検討し、学校教育もその中に位置づけていかなければならないと考えるのであります。この点についての総理の御所見をお伺いしたいと思います。  次に、臨時教育審議会総理府に設置する理由として、文部省中央教育審議会では限界がある、また、教育改革文部省だけではなく政府全体で取り組み、幅広く国民論議を願う必要があるからとしております。  教育改革を行うことについては国民合意が形成されておりますが、その手順、方向については必ずしも合意がなされているとは言えません。そのために、当審議会を設置することは必要な措置がと思いますが、反面、審議会総理直属諮問機関であるため、総理の意向が強く反映し、政治色の濃い審議機関になりかねない危惧を抱かざるを得ないのであります。  まして、中曽根総理の戦後政治の総決算の一環として位置づけられている戦後教育の見直しには、総理の政権延命策として、さらに行政改革財政再建の行き詰まりから国民の関心をそらすために教育改革を利用するのではないか、または戦後教育を支えてきた憲法教育基本法の見直し作業を画策して、戦前への回帰を意図しているのではないかという疑問を持つのは私一人ではないと思うのであります。政府・自民党挙げて教育に強い影響力を及ぼすのではないか、あるいは政治の教育への介入によって教育中立性を侵すおそれもあると指摘されております。総理はどのようにお考えか、お伺いしたいのであります。  さらに、政治と教育の関係につきましては、一つには独裁国家に見られるような政治が教育支配する形態、二つには理想国家として言われる教育が政治を支配する形態、三つには教育と政治がおのおのその立場で独立を守りつつ、できるだけ両者がパートナーシップでいく、あるいは協力し合っていくという、この三つの形態があると言われております。その中で、総理の目指すものは政治が教育支配する形態ではないかとの危惧が国民の中にありますが、総理はどのように認識されておりますか、確認しておきたいと思います。  また、このような国民の危惧を晴らす見地から、我が党は臨時教育審議会審議原則として公開すべきであることを主張してまいりましたが、総理の明確な答弁を求めるものであります。  次に、中央教育審議会との関係について伺います。  中央教育審議会は、これまで数々の提言をしてきました。特に、昭和四十六年の答申は、明治初年と第二次世界大戦後の激動期の教育改革に次ぐような国家社会の未来をかけた第三の教育改革のときであるとの認識に立って、今後における教育改革の提言をしております。また、中央教育審議会の昨年十一月の審議経過報告は、文教政策のみずからの反省とも言うべきものも含んでおります。これらをあわせ今後の臨時教育審議会審議に十分活用すべきだと思いますが、総理のお考えを伺いたいと思います。  また、臨時教育審議会が三年間活動している間中央教育審議会の活動を停止するのかどうか、あわせて、臨時教育審議会中央教育審議会審議した期間より短い三年間という期限つきであります。この期間内に、総理意図する二十一世紀を担うに値する青少年たちをはぐくんでいく教育改革構想が本当に構築できるのかどうか、その見通しについて文部大臣の所見を伺っておきたい。    〔議長退席、副議長着席〕  さらに、教育改革に取り組むに当たりましては、教育を受ける児童生徒からの視点が重要であると思います。総理は今国会における施政方針演説において、行政改革財政再建と並び教育改革を取り上げておられますが、教育改革行財政改革と同一の視点から考え、いたずらに教育における効率化あるいはむだを省くという意識で文教予算の削減を図り、教科書無償配付制度等の廃止を図るような教育改革であってはならないと思うのでありますが、総理の真意を伺っておきたいと思います。  次に、臨時教育審議会内容についてであります。  総理は、私的諮問機関である文化教育に関する懇談会の報告を重要参考資料とする、このように発言をされております。文化教育に関する懇談会は、「教育基本法教育に関する特定の見解にとらわれず、」と報告書に述べています。このことと「教育基本法の精神にのっとり、」という今回の臨時教育審議会目的条文とは明らかに相反するものであります。総理教育基本法は守っていく考えだとし、一方文部大臣は、教育基本法にのっとって審議されることを期待しているが、しかし適切な義務教育の年限を検討する場合、教育基本法を変えないということで本当に議論ができるかとの趣旨衆議院で答弁されております。「教育基本法の精神にのっとり、」という法的規制についてどのように考えられるのか、総理並びに文部大臣に伺いたいと思います。  また、審議会が、教育及びこれに関連する分野の諸施策に関し必要な改革を図るとしておりますが、我が党は、多様な技能や実力がそれ相応の待遇によって社会的に承認されるよう、公的資格制度の拡充整備を訴えてまいりました。例えば、中学校しか出ていない人でも何らかの試験によって大学卒業と同じ資格が得られ、それに基づいて給与や職務内容が決まってくるといった公的制度のあり方です。現在でも小規模ながらこのような制度がないわけではありませんが、今後はむしろこちらの方策が本流となるような各種施策が必要と考えます。総理教育及びこれに関連する分野の諸施策について、具体的にどのようなお考えをお持ちなのか、所見を伺いたいと思います。  次に、委員の構成についてであります。  教育改革国民全体にかかわり、我が国の将来を左右する重要な課題であります。そのため、臨時教育審議会委員人格識見ともにすぐれた方々でなければなりません。と同時に、広く国民各界各層の意見が十分反映されるよう幅広い分野から選任されなければならないと思うのであります。我が党は、かねてから地方自治体を初め現場の意見を反映させるため、学識経験者のほか地方自治体の代表者、教師父母の代表を加えるよう提言しているのでありますが、委員任命についてどのような見解をお持ちなのか、総理の根本的な考え方を伺いたいのであります。  また、教育改革の推進に当たっては国民的合意の形成が欠かせないと考えますが、審議会運営に当たっては、どのような方法をもってすれば教育改革に対する国民の理解と協力を得ることができると文部大臣はお考えか、お伺いしたいのであります。  最後に、教育改革案が作成される場合、特に学制改革について、第一の視点として、現制度を充実すれば改善される課題なのか、第二の視点として、現行制度を弾力的に運用すれば改められる課題なのか、第三の視点として、制度を改革しなければならないのか、あるいは改革をした方がよい結果が得られるのか等を十分慎重に見きわめることが不可欠であることを我が党はしばしば提言してきたところであります。学制改革が重要な課題であるところから、パイロットスクール構想を実施した上でその結論を出すべきことも主張してまいりましたが、総理は学制改革を含めた諮問を行う所存なのか、改めて確認をしておきたいと思います。  なお、総理は、できるものはすぐにでも答申してもらいたい、こういう発言をしばしば行っているようでありますが、人を育てるには百年先を見なければならないと言われますように、教育改革は拙速主義をとるべきでなく、慎重に行うべきであることを申し上げまして私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  19. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 太田議員にお答え申し上げます。  まず、教育改革を進めるに当たり臨教審に何を期待しているかという御質問でございます。  臨教審におきましては、社会変化文化発展に対応し得る教育実現を期して、我が国社会における教育の諸機能全般にわたり総合的な検討 をお願いいたしたいと思っております。  次に、生涯教育の立場から教育体系を総合的に再検討し、学校教育をその中に位置づけなければならないと考えるがいかんという御質問でございます。  教育は、学校教育のみならず、幼児期からの生涯全般にわたるものと考えております。このような生涯教育の立場に立って、総合的に教育改革に取り組む所存でございます。特に、学校教育のみならず、社会環境、家庭、あらゆる分野にわたってやはり検討していただく必要があると考えます。  臨教審が総理直属諮問機関であるために教育中立性を侵すおそれはないかという御質問でございますが、臨教審は、国民的課題たる教育改革政府全体として取り組むために総理諮問機関として設置しようとするものでありまして、教育中立性に何ら影響を及ぼすものではないと理解しております。もとより、教育中立性確保については今後とも十分注意してまいるつもりでございます。  次に、国民合意の形成という観点から審議原則として公開すべきではないかという御質問でございます。  審議会の具体的運営方法公開等の問題は、審議会自身でお決めいただくことであると思います。ただ、審議公開は、ややもすれば委員の自由な発言が制約されるおそれがあると思っております。審議経過の概要を必要に応じて適宜公表する等によりまして、国民各階各層の意見が十分反映されることを期待しております。  次に、政治と教育の関係についての御質問でございます。  私は、前から申し上げますように、政治権力文化に奉仕するものであると申し上げておる次第でございますが、教育あり方は国の将来を左右する重要な問題でありまして、これらについて公党がさまざまな御主張、御政策を持つことは当然でございます。しかし、教育目的実現していくには教育中立性を確保することが重要であり、常にこのことに配慮していかなければならないと思います。ある政策等を実現するために公党がさまざまな主張、主義は持っておるけれども、一たん制定された法、教育方針というものを実行していく段階につきましては、特に中立性を確保するように政党政派は注意深く配慮して実行しなければならない、政府はもとより当然のことでございます。  次に、中教審の四六答申等これまでの答申を今回の審議に活用すべきではないかという御質問でございますが、中教審の四十六年の答申あるいは四十九年の答申等の中には非常に参考にすべき重要な問題点が含まれていると思いまして、これらの審議の経過、これは当然取り上ぐべき参考の重要な課題であると考えております。  教育改革行財政改革と同一視する視点から考え、いたずらに効率化を図ることは適当でないという御質問でございますが、それは私も同感でございます。行政改革という場合は、行政機構や人員等の節減合理化を目的とするものであり、将来への対応力を回復せんとするものでございます。ややもすればこれは物の面がかなり大きいと思いますが、教育の問題は青少年や幼児の心身の成長発達を対象とするものでありまして、基本的に違う点があると考え、そのような配慮に立って実行しなければならないと思っております。  「教育基本法の精神にのっとり、」という法的規制についてどのように考えるかという御質問でございますが、これは、教育基本法の精神のもとにこれに取り組むという大方針をここで明示しておるという次第で、この方針にのっとって審議が行われることを期待しておるものでございます。  次に、教育及びこれに関連する分野の諸施策という点についての御質問がございました。  教育及びこれに関連する分野の諸施策とは、広く社会における教育機能あり方にかかわる諸施策を指すものであります。学歴だけでなく資格や実力が社会で正しく評価されるようにする、あるいはいわゆる学歴重視の社会構造を改めていくということ、就職等社会での受け入れの際の資格問題の改善に関する御指摘、これらは今後の教育改革に関する重大な示唆に富む課題であると考えております。  委員任命についての基本的考え方の御質問をいただきましたが、広く国民各界各層の意見が十分反映されるように配慮いたしたいと思います。具体的な人選につきましては、国会における論議を十分踏まえまして、今後慎重に検討をするつもりであります。  学制改革を含めた諮問を行うのかという御質問でございますが、本審議会設置の趣旨が十分生かされるよう包括的な内容諮問をいたしたいと思います。審議会における審議の過程において、学校制度のあり方についても十分検討されるものと理解しております。  残余の答弁は文部大臣からいたします。(拍手)    〔国務大臣森喜朗登壇拍手
  20. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 太田さんの御質問の第一点は、臨時教育審議会が設置されている三年間は中央教育審議会は活動を停止するのかとのお尋ねでございますが、中教審は、文部大臣諮問に応じまして、文部省の固有の事務でございます教育学術文化に関する基本的な重要事項について調査、審議する機関でございます。臨教審におきましては、二十一世紀に向けて我が国社会変化に対応する教育実現を期して、教育及びこれに関連する分野の諸施策に関し必要な改革を図るための方策について、広くかつ総合的に御審議をいただくことを考えております。したがいまして、中教審とはその基本的な性格を異にし、かつ、その審議の視点や検討の角度もおのずから異なるものでございます。ただ、審議事項との関連もございますので、次期中教審の発足は当面見合わせることにいたしております。  御質問の第二点は、三年間という短い期間内に教育改革構想ができるのかとの趣旨のお尋ねでございますが、教育あり方国民全体にかかわり、また我が国の将来を左右する重要な課題であることから、十分慎重な審議が求められるとともに、審議の過程におきましても国民の理解と協力を得つつ進めていくことが求められております。その意味で、ある程度時間をかけた審議が必要であろうかと考えます。  しかしながら、一方、社会変化等に対応する教育実現を期して教育改革に取り組むことが現下の緊要な課題であるということから、その基本的な事項につきましては可能な限り速やかに答申が行われることを期待し、三年が適当と考えたも のでございます。  御質問の第三点は、「教育基本法の精神にのっとり、」という法的規制についてどのように考えるのかとのお尋ねでございますが、総理からお答えを申し上げましたとおり、このたびの教育改革は、教育基本法の精神のもとにこれを行おうといたしておるものでございまして、したがって、臨教審におきましても教育基本法の精神にのっとって審議が行われることを期待しているものでございます。  ただ、このことと審議会において自由闊達な論議が行われますこととは必ずしも矛盾するものではなく、二十一世紀を担う青少年教育あり方についての大所高所からの審議が進められることを期待しているところでございます。  御質問の第四点は、審議会運営に当たり国民の理解と協力を得る方途についてのお尋ねでございますが、臨時教育審議会は、現下の国民的要請にこたえて教育改革を進めるべく設置するものでございまして、その設置や審議の過程において広く国民各界各層の御意見が反映されますよう、またその御理解と御協力が得られるように配慮する必要があろうと考えております。このため、本審議会の設置に当たりましては、国民の信頼にこたえ得る幅広い分野の方々を委員にお願いすべく、国会における審議を踏まえつつ、今後慎重に検討いたしたいと考えております。  また、審議の進め方につきましても、その具体的な方法については審議会自身で検討していただく課題ではございますが、たびたび申し上げておりますように、審議経過の概要を必要に応じて適宜公開すること、地方公聴会を開催すること、そしてアンケート調査や論文の募集などいろいろな工夫を尽くす必要があろうかと考えております。(拍手)     —————————————
  21. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 吉川春子君。    〔吉川春子君登壇拍手
  22. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、臨時教育審議会設置法案に関連し、総理並びに文部大臣に質問いたします。  総理、あなたは、戦後政治の総決算として、二十一世紀青少年の育成を目指すのだと、極めて口当たりよく教育改革を主張なさいます。しかし、本当に教育現場の実態国民教育要求というものを正しく認識しておられるのでしょうか。今日の深刻な教育状況をつくり出したのは一体だれなのでしょうか。歴代自民党政府教育政策の結果ではありませんか。教育改革を論ずるのなら、まずその責任を明らかにすべきであります。ところが、総理の言われる教育改革は、この点の深い反省や真の教育配慮よりも、あなたの言う西側の一員論や不沈空母の乗組員づくりなどを目指す極めて政治的なものではないかと、私たちは危惧の念を抱かざるを得ません。  そこで、まず最初に、総理、あなたが教育改革で目指すものは何なのか、率直かつ具体的に明らかにしていただきたいと思います。  総理国民が願う教育改革をと言うのなら、まず何をなすべきでしょうか。それは国民の声に耳を傾けることです。せめて四十人学級を早く実現してほしい、マンモス校を解消して教育的環境を整備してほしいという声は、先生や父母たちの切実な声なのです。先日の新聞の世論調査でも、「教育改革でまず何から取り上げたらよいか」と八項目を挙げたのに対し、一クラスの人数を減らしてほしいというのが一番多かったのです。また、総理は、今国会でも既に千七百万人の私学助成の増額を求める請願署名が提出されていることを御存じですか。  これらの教育条件整備は、教育基本法規定するように、政府教育に対する第一の義務ではありませんか。これを放棄して何が教育改革でしょうか。まず政府責任を果たすべきです。ところが、臨時行政改革推進審議会の報告は、またしても四十人学級の実施を引き続き抑制する、私学助成も引き続き総額の抑制を図るとしています。国民教育への願いを踏みにじるにもほどがあります。  総理、四十人学級を来年から実施するとしても、年間予算は平均七十五億円、P3C一機分のわずか四分の三の予算にすぎません。行革特例法の延長を行わず、来年からこれを実施する、マンモス校の解消計画を立て予算も増額する、私学助成も大幅に増額する、そのためにも教育予算の削減をやめ、必要な教育予算は確保すべきではありませんか。これを拒否するのなら、それは安上がりの危険な教育改革を目指すものと断ぜざるを得ません。明確な答弁を求めます。  次に、総理憲法教育基本法に対する姿勢の問題についてです。  あなたは、これまで教育基本法を守るとたびたびおっしゃいました。ところが、審議が進むごとに、教育基本法の改悪にまで進むのではないかという疑念が強まる一方です。森文部大臣衆議院で、審議会では教育基本法にとらわれず自由に論議してもらうと答え、また人選に当たっても教育基本法改正論者かどうかは基準にしないとも答えておられます。自民党の藤尾政調会長は、我が党との協議の中で、教育改革目的は占領下に与えられた憲法教育基本法の見直しにあると言明し、また奥野元文部大臣も、教育基本法まで見直しはしないという中曽根総理発言について、本心からそう思っているとは思わない、彼は彼なりの戦略戦術を使ったのでしょうと述べているのです。さらに海部元文部大臣も、教育制度の根幹に触れるような議論までいくかもしれないと述べています。  このように見てくると、自由な論議の中で教育基本法改悪まで含む答申が出されるのではないかとの危惧の念を抱くのは私一人ではないと思います。結局は、この法律によって、教育基本法が守られるところか、逆に教育勅語のような教育憲章が新しくつくられるということになるのではありませんか。そうでないというならば、教育基本法改悪の歯どめがどこにあるのか、明確に答えていただきたいと思います。  総理、次に私が強く指摘したい点は、総理教育改革構想が極めて非民主的であるということです。  総理は、施政方針演説で、国民の総意による教育改革を進めると明言されました。ところが、委員はすべて首相の直接任命であり、しかも国会論戦で総理が明らかにされたように、国民の反対の声が強い中教審答申を土台にし、全く総理の私的な諮問機関である文教懇の報告を重要な資料として論議を進めるというものであります。  そもそも教育基本法理念である教育の中立と 自主性の原則からすれば、教育論議を進める第一の前提は行政からの独立、第二に、何よりも国民英知を結集し、国民合意を得ることが必要であるにもかかわらず、この法案では一体どこに国民総意を酌み取る保障があるのでしょうか。委員人選も、事実上総理諮問に忠実な人物に偏ることが避けられないのではないでしょうか。  さらに重要な問題は、自民党、公明党、民社党によって修正された部分であります。三党による修正は、首相直属審議会という基本的な性格には何ら手を触れないばかりか、首相による罷免権、委員守秘義務をあえて盛り込むなど審議会への統制と密室性を一層強化し、教育への政治の介入の道を開くものであります。これは「教育は、不当な支配に服することなく、」とした教育基本法を土足で踏みにじるものではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。  また、国民合意による教育改革のためには、審議会公開は極めて重要であります。  総理及び文部大臣は、公開にすると自由な論議ができない、一人一人に圧力がかけられるなどと言い、非公開を貫こうとしております。子供教育を語るのにどうして秘密が要るのでしょうか。戦後の公選制教育委員会も公開で行われ、あなた方が忌み嫌う中野区の準公選の教育委員会も公開で行われておりますが、ここでは委員の一人一人に区民から圧力がかけられたことがないどころか、子供教育について区民と教育委員会が一体となって取り組んでいるのです。国民的合意による教育改革と言いながら、どうして密室審議に押しとどめようとするのでしょうか。率直な答弁を求めます。  総理、結局あなたが進めようとする教育改革なるものは、国民期待にこたえないばかりか、安上がりで、しかも教育の反動的再編という極めて危険な方向をたどろうとしていることは明らかです。それは、教育の中立を侵して政府の特定の見解を押しつけ、憲法違反の教科書検定に見られるように、安保条約擁護と軍事大国に奉仕するものにほかなりません。このことを指摘し、本法案に強く反対を表明して私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  23. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 吉川議員にお答えを申し上げます。  私の言う教育改革は戦後政治の総決算論に基づく政治的なものではないか、こういう第一の御質問でございますが、近年の社会の急激な変化教育量的拡大等教育あり方に大きく影響しておりまして、さまざまな問題点が現在指摘されているところであります。教育改革への国民期待は非常に大きくなっていると認識しております。このような国民的要請にこたえて、社会変化文化発展に対応する教育実現を期して今回の改革を考えておる次第でございます。  次に、国民の要求に基づく教育改革教育条件整備責任を果たすべきではないかという御質問でございます。  教育予算につきましては、国全体の財政事情を勘案しつつ、必要なものは確保するように配慮してまいりたいと思います。答申提出をまちまして慎重に検討し、誠意を持って実行してまいりたいと思います。  次に、教育基本法を守る保障、歯どめはどこにあるのか、新しい教育憲章をつくる意図があるのではないかという御質問でございます。  このたびの教育改革に当たりましては、憲法教育基本法の精神を基本としつつこれに取り組む所存であることは前から申し上げているとおりでございます。新たに官製の教育憲章を設ける考えはございません。  また、審議会におきましては、教育基本法の精神にのっとって審議されることを期待しております。しかし、審議会審議自体を拘束することはいかがかと考えております。言論の自由の国でございますから、憲法のもとの言論の自由というものは、審議会委員にも我々は認めなければならないと思っております。  それから、三党の修正によって、このような修正を行ったということは結局総理審議会への統制を強化する、そういうことになりはしないかという御質問でございますが、御指摘の罷免権、守秘義務は、委員国会同意人事となることに伴う規定で出てくるものでございます。八条機関の特別職公務員となるということから必然的に派生する性格なのでございまして、教育中立性、これを侵害するというものとは関係ないものなのでございます。あくまで教育基本法趣旨にのっとって中立性を維持していく考え方でございます。  審議会審議をなぜ公開できないかという御質問でございますが、審議公開は、すべてこれは審議会において決定すべき事柄でありますが、一面において委員の自由な発言を制約して、審議に影響を及ぼす危険性があるのであります。なお、公聴会の開催、審議経過の公表等種々の工夫をもってそれに充てられることができると思っております。  残余の答弁は文部大臣からいたします。(拍手)    〔国務大臣森喜朗登壇拍手
  24. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 吉川さんにお答えを申し上げます。  教育予算の確保についてのお尋ねでございますが、現下の深刻な財政事情の折から、政府全体として、臨調答申にも留意しながら財政改革努力が続けられておりまして、文教予算につきましても、このような全体の枠組みの中で所要の経費の確保に努めてきておるところでございます。  来年度以降の予算編成につきましては今後の検討課題でございますが、私としては、御指摘のような事柄も含めまして、文教政策の推進上必要な予算の充実、確保については今後とも最大限の努力を払ってまいる所存でございます。  御質問の第二点は、先般の私の国会答弁との関連で、教育基本法を守る保障、歯どめはどこにあるのか、新たな教育憲章をつくる意図があるのではないかとの御趣旨のお尋ねでございますが、教育基本法は、戦後における我が国教育理念基本原則規定したものでございまして、他の教育法令の基本となる法律であると理解をいたしており、このたびの教育改革を進めるに当たりましても、国会総理も私も再三お答えを申し上げておりますとおり、教育基本法改正する考えはございません。臨教審においても教育基本法の精神にのっとる審議が行われることを期待いたしておるものでございます。  ただ、臨教審の審議に当たりましては、ただいま総理も申し上げましたように、その自由な論議を拘束することはいかがなものかと考えておりま す。義務教育年限等についての私の答弁も、このような趣旨に基づくものであると御理解をいただきたいと思います。  教育憲章を制定すべきであるとの意見のあることは承知をいたしておりますが、その内容、形式等種々検討しなければならない問題点もございますので、なお十分慎重に検討すべきものと考えます。事実上教育基本法改正意図するような意味でこれを制定する考えはございません。(拍手)     —————————————
  25. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 田渕哲也君。    〔田渕哲也君登壇拍手
  26. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました臨時教育審議会設置法案に関し、総理並びに文部大臣に質問を行うものであります。  民社党は、結党以来、教育を重視し、教育国家建設の提唱を初め、中央教育委員構想、中高一貫教育の推進、教育憲章の制定などさまざまな教育政策を提言し、その実現に努めてまいりました。  しかし、現在我が国における教育はまことに憂うべき状態にあると言わなければなりません。その一例を少年非行にとれば、昭和五十七年の刑法犯少年の数は十九万一千九百三十人と、前年に比べ七千二十八人増加し、戦後最高を記録しております。またその内容も、傷害、恐喝といった粗暴犯が著しく増加しているのであります。単に青少年非行のみならず、落ちこぼれ、登校拒否の増大等、最近の教育荒廃を見るとき、教育改革は急を要する国民的課題と言わなければなりません。  この見地から、民社党は本年一月十七日の党首会談において、教育改革国民の総力を結集して取り組むために、いわゆる教育臨調の設置を提唱いたしました。我々は、中曽根総理が本法案を国会提出されたことを評価するものでありますが、問題は、それが真に国民の望む教育改革につながるものとなるかどうかであります。ここで改めて新機関の性格、審議あり方などについてお尋ねしたいと思います。  まず第一に、臨教審を設置すべき理由についてであります。  教育荒廃、青少年非行の激増、社会環境の悪化などの問題は単なる一時的な特異現象ではなく、教育現場はもとより、社会全体の利己的な風潮、学歴偏重などに加え、都市問題といった今日の社会あり方にかかわる幅の広い、根の深い問題であります。したがって、国民英知と総力を結集してその改革に取り組まねばなりません。  これまで教育改革については、昭和四十六年の中教審答申を初め幾つかの注目すべき提案がありました。しかし、文部省の無気力、日教組等の抵抗により改革はほとんど実行されず、教育荒廃をそのまま放置する結果となっております。これは、教育文部省、日教組及び教育関係者という狭い枠の中で取り扱われ、国民のコンセンサスの上に立脚して政治を挙げて取り組む体制がなかったことに原因があると考えます。中教審の限界もまた同様であると言わねばなりません。  今や教育の抱える諸問題の解決は一刻もゆるがせにできない状況にあり、文部省、中教審といった既存の縦割り行政の枠組みを超えた全国民的視点で教育をとらえ直すことが不可欠であります。我々は臨教審設置の意義はまさにここにあると考えるのでありますが、総理並びに文部大臣の御所見をお伺いいたします。  第二に、国民合意の形成についてであります。  国家百年の計は青年の教育にありと申しますが、教育改革我が国将来の存亡にかかわる民族的課題であり、いやしくも時の政権や与党の政治的道具に利用されるようなことは断じてあってはなりません。また、一部の政党や教職員団体に見られるように、教育の場に政治的イデオロギーを持ち込み、政府が行おうとする教育改革にはすべてこぶしを振り上げて反対し、上からの押しつけであると専断するような態度もまた、国民的基盤の上に立つ教育改革の推進に背を向けるものと言わざるを得ません。  総理は、教育改革をトップダウン方式でなく、ボトムアップ方式で行いたい旨の発言をされております。私も改革の成否は国民合意の形成にかかっていると考えます。その意味において、私は、衆議院段階で審議会委員の選任について国会同意を必要とし、また審議会答申意見の報告が国会において行われるよう修正がなされたことに賛意を表するものであります。  しかし、さらに審議会運営の過程で、逐次広く国民意見を聞くための公聴会を開催するとともに、審議会は、結果だけでなく、審議の経過を国民に公表し、それに対する意見を吸い上げるというフィードバック方式をとるよう提案するものであります。総理国民合意の形成に向けてどのような方策をとられるつもりか、お伺いをします。  第三に、政治的中立の確保について伺います。  教育は政治的には中立であるべきであり、特定の政党を支持したり、特定の政治意識を醸成せしめるようなことが教育の場で行われてはなりません。しかし現実には、文部省と日教組の職務権限についての争いや、違法ストとその処分をめぐる争いなどに見られるように、その背後には政治的イデオロギーの対立があり、政治が教育現場に深く入り込んでおります。これはまことに遺憾なことと言わねばなりません。一部には、当審議会運営の過程において政治色の強いものになりかねないとの危惧もあるようですが、審議会中立性の維持についてどのような方策をとられるのか。また、教育政治的中立を確保するための行政機構のあり方についても審議会で議論すべきであると考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。  第四は、教育基本法についてであります。  総理並びに文部大臣は、教育基本法を変える考えはない旨の見解を繰り返し述べられておりますが、私は事の本質を取り違えてはならないと思います。教育基本法の精神を堅持することは当然です。それは、教育が民主的で平和的な国家社会の形成者にふさわしい人格の完成を目指して行われること、すべての国民がひとしくその能力に応ずる教育を受ける機会を与えられること、政治的偏向や宗教の強制の排除等々憲法の精神の尊重にほかならないのであります。例えば義務教育年限の変更や、教育のために国や地方公共団体が行うべき事項の拡充など、時代変化に対応するために具体的な施策について同法を改正することは差し支えないばかりでなく、むしろ必要と思いますが、いかがですか。総理並びに文部大臣の御答弁をお願いいたします。  最後に、文教予算についてお伺いします。  来年度の予算編成の作業がスタートしようとしておりますが、臨教審の答申をまつまでもなく、 国が教育内容の充実と条件改善に常に努力しなければならないのは当然であります。四十人学級の実現への努力や教科書無債の継続、私学助成の充実など必要な施策を進めるため、来年度においても十分な予算を確保すべきだと思いますが、文部大臣の予算編成に向けての決意をお聞かせいただきたい。  また、総理は、審議会が予算編成に間に合う時期に何らかの改革案答申した場合、それを来年度予算に反映される意思があるのかどうか、御所見をお伺いします。  以上、私は、臨時教育審議会国民の総意、総和を結集し、荒廃した我が国教育の立て直しのため大きな役割を果たすものとなることを期待しつつ、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  27. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 田渕議員にお答えを申し上げます。  臨教審を設置する理由は何かというのが第一の御質問でございます。  今日、教育改革への国民期待は著しく増大しておりますが、これは戦後教育におけるすぐれた部分と影の部分と二つ交錯して、しかもこの影の部分について国民の批判が非常に厳しく高まってきたゆえんであると思っております。そのような事態を踏まえまして、政府といたしましては、今般、総合的に教育について検討を加え、そして長期的展望のもとにこの問題に取り組むことが必要である、そういう考えに立ちまして諮問機関を設置した次第でございます。  次に、教育改革のための国民合意の形成に向けてどのように努力するかという御質問でございますが、教育改革は広く国民全般にかかわり、我が国の将来を左右する重要課題でありますので、国民的合意を得て進める必要がございます。このために、まず委員人選等について広く国民意見を代表する人士を網羅するということが大事であると思います。  さらに、審議会審議に当たりましては、審議経過の概要を適宜国民の皆さんに公表する、あるいは地方公聴会を開催する、あるいは教育改革に関するアンケート調査を実施する、これらの工夫をめぐらしまして、フィードバック方式によってこれを進めていく、国民の反応を見つつ進めるということは御指摘のとおり大事であると考えております。  次に、中立性をいかに確保するかという御質問でございます。  教育改革を進めるに当たりましては、教育中立性を損なうことのないように留意することは重要であると考えます。この観点から、委員人選、臨教審の具体的な運営に当たりましては、広く国民各界各層の意見が反映されるように十分留意してまいりたいと思います。  なお、審議会がいかなる事柄をどのように検討するかは、審議会自身でお決めいただくことでございます。いずれにせよ、政治が不当な圧力をかけることがないように慎重に配慮してまいらなければならないと思います。  教育基本法改正して義務教育を延長したり、あるいは日本人としての自覚を促す表現を入れることは基本法の精神にもとるものではないと考えるという御質問でございます。  審議会におきましては、法に明示されてありますように、教育基本法の精神にのっとって審議さるべきものと考えております。教育基本法は、戦後の我が国教育理念基本原則規定し、他の教育法令の基本である。言いかえれば、教育体系の基軸になっていると考えておりまして、現在これを改正する必要は認めないものなのであります。なおしかし、委員の言論は自由でございますから、我々はこの審議会の経過を慎重に見守っていきたいと考えております。  さらに、審議会から来年度予算編成に間に合う時期に答申を出された場合、来年度予算にそれを反映させるつもりがあるかという御質問でございます。  政府としては、できるだけ速やかに審議会を発足させたい考えでございまして、審議会自体がその審議内容、手続等をお決めいただき、そしてできるだけ速やかに適切な御答申をいただくことを期待しており、かつ、答申を得次第、逐次実現に向かって努力する所存でございます。  残余の答弁は文部大臣からいたします。(拍手)    〔国務大臣森喜朗登壇拍手
  28. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 田渕さんにお答えを申し上げます。  御質問の第一点は、臨時教育審議会を設置する理由についてのお尋ねでございましたが、戦後の我が国教育は、いわゆる六・三制の学校制度を中心に普及発展してきたところでございますが、この制度は、教育の機会均等を実現し、国民教育水準向上させ、今日の我が国発展と繁栄をもたらしたものとして高く評価されております。一方、近年における社会の急激な変化教育量的拡大等は、教育あり方に対しましても大きな影響を与えており、今日さまざまな問題点が指摘され、教育改革への国民期待は極めて高まっております。  このような教育改革に対する国民的要請にこたえるためには、生涯を通じた教育の全般にわたる見直しが必要であり、文部省以外の行政各部の施策との関連を含め、総合的に検討を加える必要がある。このため、二十一世紀我が国を担うにふさわしい青少年の育成を目指して、政府全体の責任で長期的な展望に立ってこの問題に取り組むべく、総理諮問機関として臨時教育審議会を設置しようとするものでございます。  御質問の第二点は、臨時教育審議会中立性をどう確保するかとのお尋ねでございますが、教育改革を進めるに当たり、教育中立性を損なうことのないよう留意すべきことは当然でございます。このため、臨教審の設置及び運営において、この点に最大努力を払ってまいりたいと存じております。  まず、委員人選に当たりましては、教育改革国民全体にかかわる重要な課題でございますので、国会における論議を十分踏まえ、広く国民各界各層の意見が反映されるように幅広い分野から適任者にお願いをいたすべく、今後慎重に検討いたしたいと考えております。  また、審議会の具体的な運営に当たりましては、広く国民の理解と協力が得られますように、たびたび申し上げて恐縮でございますが、審議経過の概要を必要に応じて適宜公表する、地方公聴会あるいは教育改革に関しますアンケートや論文の募集など種々な工夫がなされるものと考えております。  御質問の第三点は、臨時教育審議会では教育行政の中立性を確保するため行政機構の改革等も審議すべきではないかとの御趣旨のお尋ねでございましたが、臨時教育審議会においては、我が国社会教育機能全般にわたり広くかつ総合的な検討をお願いしたいと考えておりまして、お尋ねの行政機構のあり方の問題も含め、具体の審議事項をどうするかについては審議会自身がお決めになることが適当であろうと考えております。  なお、このたびの国の機構改革におきましては、文部省もこれまでの伝統を踏まえつつ、二十一世紀に向けて長期的展望に立って我が国社会変化に対応する総合的な文教行政を推進していくため、内部機構の改編を行ったところでございます。  御質問の第四点は、教育基本法改正して義務教育九年を延長すること等は基本法の精神にもとるものではないのではないかとの御趣旨のお尋ねでございますが、政府といたしましては、ただいまの総理の御答弁のとおり、義務教育九年の年限を含め教育基本法改正する考えは持っておりません。したがって、審議会審議についても、憲法及び教育基本法の精神にのっとり審議が進められることを期待いたしておるところでございます。  しかしながら、このことは、教育理念や義務教育あり方について自由な論議を拘束するものではなく、要は、二十一世紀を担う青少年あり方について自由闊達な御論議が行われることを期待いたしておるところでございます。  御質問の第五点は、来年度予算についてのお尋ねでございますが、政府全体といたしましても概算要求の枠組みが決まっていない段階でございますので、個別事情についてどういう概算要求を取りまとめることになるかは今後の検討課題でございます。ただ、私といたしましては、文教政策推進上必要な予算の充実確保については、今後とも最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。(拍手
  29. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) これにて質疑は終了いたしました。      —————・—————
  30. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 日程第一 肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院回付)を議題といたします。
  31. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) これより採決をいたします。  本案の衆議院修正同意することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  32. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。  よって、本案の衆議院修正同意することに決しました。      ─────・─────
  33. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 日程第二 日本放送協会昭和五十六年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。逓信委員長大木正吾君。          〔大木正吾君登壇拍手
  34. 大木正吾

    ○大木正吾君 ただいま議題となりました日本放送協会昭和五十六年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書につきまして、逓信委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。  本件は、日本放送協会の昭和五十六年度決算に係るものでありまして、放送法の定めるところにより、会計検査院の検査を経て内閣から提出されたものであります。  その概要を申し上げますと、同協会の五十六年度末における財産状況は、資産総額二千三百四十二億九千八百万円、負債総額九百三十八億千五百万円、資本総額千四百四億八千三百万円となっております。  また、当年度中の損益は、経常事業収入二千八百十五億七千六百万円に対し、経常事業支出二千六百六十七億九千九百万円であり、差し引き経常事業収支差金は百四十七億七千七百万円となっており、これに固定資産売却損益等の特別収支を含めた事業収支差金は百五十二億七百万円となっております。  このうち債務償還等に充てた資本支出充当額は七十六億七千七百万円であり、この結果、事業収支剰余金は七十五億三千万円となっております。  なお、この事業収支剰余金は翌年度以降の財政安定のための財源に充てるものとしております。  本件には、会計検査院の「記述すべき意見はない」旨の検査結果が付されております。  委員会におきましては、収支予算等が適正かつ効率的に執行されたかどうかを初め、ゆり二号aの故障原因の究明と今後の対応策、組織改正等業務の効率化、口座振替制度の利用促進、ロサンゼルス・オリンピックの放送権料などの諸問題について政府、会計検査院並びに協会当局等に質疑を行い、慎重審議の結果、本件は全会一致をもって、これを是認すべきものと議決いたしました。  以上、御報告いたします。(拍手)     —————————————
  35. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) これより採決をいたします。  本件は委員長報告のとおり是認することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  36. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。  よって、本件は委員長報告のとおり是認することに決しました。      —————・—————
  37. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 日程第三 昭和四十四年度以後における農林漁業団体識員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長谷川寛三君。    〔谷川寛三君登壇拍手
  38. 谷川寛三

    ○谷川寛三君 ただいま議題となりました法律案につきまして、委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。  本法律案は、農林漁業団体職員共済組合による給付に関し、他の共済組合制度に準じて、既裁定年金の額の改定措置を講ずるほか、年金の最低保障額の引き上げ、標準給与の月額の上下限の引き上げ等を行おうとするものであります。  委員会におきます質疑の主な内容は、年金財政の将来見通しと、財政基盤の強化、国の財政再建期間中の給付費補助減額分の扱い、年金一元北問題、年金額改定の内容とその実施時期、恩給に準じた年金改定の是非等でありますが、その詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。  質疑を終わりましたところ、上野委員より、日本社会党を代表して、新法組合員期間に係る年金の額の改定実施時期を一カ月繰り上げ、三月から実施することを内容とする修正案が提出され、国会法第五十七条の三の規定に基づき内閣意見を徴しましたところ、反対する旨の発言がありました。続いて原案並びに上野委員提出修正案を議題とし、討論に入りましたところ、下田委員より、日本共産党を代表して、原案及び上野委員提出修正案に対し反対する旨の発言があり、順次採決の結果、上野委員提出修正案は賛成少数をもって否決され、本法律案は賛成多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本改正案に対し、各会派共同提案による五項目の附帯決議を全会一致で行いました。  以上、御報告いたします。(拍手)     —————————————
  39. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) これより採決をいたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  40. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。  よって、本案は可決されました。      —————・—————
  41. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 日程第四 港湾運送事業法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長矢原秀男君。    〔矢原秀男君登壇拍手
  42. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 ただいま議題となりました港湾運送事業法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。  本法律案は、コンテナ埠頭等の港湾施設の整備及び物流合理化の進展にかんがみ、港湾運送事業の種類について、船内荷役事業と沿岸荷役事業を統合して港湾荷役事業とするとともに、一般港湾運送事業者に係る下請に関する規制の弾力化を図ろうとするものであります。  委員会におきましては、現地調査を行い、参考人の意見を聴取する等熱心な質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党目黒委員より反対、自由民主党・自由国民会議梶原理事より賛成、公明党・国民会議桑名理事より反対、民社党・国民連合伊藤委員より賛成、日本共産党小笠原委員より反対の意見が述べられ、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本法律案に対し、瀬谷理事より、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合の各派共同提案に係る港湾運送事業の基盤の充実強化と雇用の安定確保等四項目から成る附帯決議案が提出され、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  43. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) これより採決をいたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  44. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。  よって、本案は可決されました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十四分散会