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1984-02-09 第101回国会 参議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年二月九日(木曜日)    午前十時二分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第四号   昭和五十九年二月九日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      —————・—————
  2. 木村睦男

    ○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る六日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。八百板正君。    〔八百板正登壇拍手
  3. 八百板正

    八百板正君 私は、日本社会党を代表して質問します。  レーガン大統領のこの国会での演説を丁寧に読み返してみました。その中に、「両国はまず自由な社会を支える心は一つだから、私たち言葉は違っても、自分の意見を発表し、恐れることなく反対意見を述べ、神との語らいを通して心の平安を求める権利を守ります。」と言い、芭蕉の俳句、「草いろいろ おのおの花の手柄がな」の句も取り上げて、これが好きだとも言われました。  福沢諭吉長沢鼎の話まで、友好あふれるものでありましたが、さて日本に求めるものは何だろうとよく見ますと、それは毛利元就の話に象徴されておりました。「一本の矢は折れても、三本束ねれば折れない」と言い、米国日本韓国が束になればアメリカ武門栄光は盤石であるということであります。アメリカのおかげで金持ちになったのだから、パートナー日本はもっと軍備に金を出しなさい、韓国にも援助しなさい、その決意を求めるという趣旨のものであります。  コールもミッテラン胡耀邦も相前後して来日され、それぞれ一国を代表して日本国会演説をなさいましたが、日本決意を促すというような内政干渉の文言は見当たりません。  中曽根総理は、就任最初外国訪問を前例にない韓国とし、金は四十億ドルを出すと言って帰りました。その後米国を訪問し、日米運命共同体、沈まざる航空母艦と言いました。  さて、我が国の五十九年度予算を見ますと、生活関係予算は軒並みに抑えられ、防衛費は際立ってふやされました。レーガンの言うとおりで、守るも攻めるもくろがねのと歌った軍艦マーチを聞く思いがいたします。一国の国家目標を他の一国との対決に集中するということは尋常な姿勢とは言いがたく、総理はどこまでこの一方に加担してのめり込んでいくのか、この際、日本の宰相としての独自の見識を示していただきたい。  レーガン軍拡選挙対策であり、また背後には軍事産業の強大な圧力があると現地情報は伝え、日本軍拡日本軍事産業圧力があると見る向きもあります。この際、この種の企業政治献金は受けるか、受ける、受けないの一言で答えていただきたい。  次に、五十九年度政府予算案について伺います。  何よりも公平と公正、知恵をしぼった予算と伺いますが、七年ぶりの本格減税と言い、一方では、気楽に飲めるビールなどの酒類を初め自動車、米代医療費交通費などを上げ、妻子四人の五百万円の標準世帯を例にとると、年間約十万円の負担増となっております。奥さんがパートで働く「第二の財布」が新しい世相をつくっておるという実態を総理御存じでしょうか。  税の取り方、使い方には悪知恵を出しております。自民党が減ったのは、軍事費がどんどんふえて危ないとの不安に国民答えを出したものであります。防衛費だけが六・五五%もふえて、後年度負担分を合わせると五兆円にもなり、やがて社会保障費を上回る。文化国家とか福祉国家とか言っても、人は軍事国家と呼ぶことになりますまいか。  不公平税制見直しなどほとんど手つかずで、減税といったら国民負担が軽くなるはずのもの。実行する段になるとこんな知恵を出すのでは、公平とか公正が吹っ飛んでしまいます。  安定と信頼と言うなら、国をよくした人の老後を手厚く見てあげる。病気になったら、だれでもよい医療を受けられる。健康保険高額医療自己負担をふやすことではありますまい。年金制度も同じです。これから受益者負担をふやすという方向が、防衛費GNPの一%枠も含めてはっきり答えてください。  次に、行政改革について所見を伺いたい。  財政危機と叫ばれました。危機というのは、扱いを間違えば国がつぶれるということであります。アンデルセンの裸の王様の話を御存じでしょう。危機だ、危機だと言い、わからぬやつはばかだと言われると、危機だと言わないのはばかだと言われるから、取り巻きが皆言う。子供だけが本当のことを言った。世界一のアメリカ相手に二百億ドルももうけて、もうけ過ぎてけしからぬといって世界じゅうから袋たたきに遭っているのが日本じゃないですか。国の財政危機だなんと言って、だれが信用しますか。金は余っているのであります。  本当日本財政危機は、財政基本原則を狂わして、金の入ったところから税を取らないで、わいろを取る政治にあるのです。行政改革財政改革も、むだな金は使わないのが眼目です。原子力船むつ」も意地っ張りしないで、よくないとわかったらやめる。総理の好きな決断とか断行は仕事で示してください。  名は体をあらわすと言います。本当行革をやるなら、まず大蔵省を財務省に変える。大蔵の名前は律令制以前の倉庫係を呼んだ名前であります。国の財布持ちをよいことにして、他の専門の部署に末端まで口出しをして、時には行政をゆがめ、国会では予算の修正は困りますなどとむきになるのは本末を誤るものであります。この改革を避けてどこに行革がありますか。他の大臣も数を減らしたらよろしい。  公社行政そのものではありません。副次的なところだけ専売はとうの、国鉄はとうの、電電はどうのと聞くと、顧みて他を言うたぐいを感じます。例えば、電電公社からは国は四千八百億を取って国費に入れ、もうかるのだから民間に払い下げ、もっと競争させると言うのであります。情報伝達媒体公共のものであり、私企業のためのものではありません。国鉄でも同じ。もうからないところは一体だれがやるのか。すべては受ける国民の立場で、よいところはよい、よくないところはよくない、時をかけて検討すべきものであって、十一月目標案件などではありません。  教育についてただします。  一番悪い者ほど一番力がある、悪い金を集める腕のある者ほど実力者となる、こんな永田町政治の中で、教育改革を唱えるなら成人教育の真っ先に対象になるのは政治家自身ではないか。旗振りをする資格などありません。この大きな課題は、検討の場と、金は税金から出す、口は出さない、国民英知に任せるというやり方でよい。管理社会とか管理教育とか、国家政治や官僚がここに踏み込み過ぎてはなりますまい。教育臨調などとは行革臨調よりももっとさらに悪質な発想であり、教育政治支配に道を開くことになる。教育基本法をどう理解しておられるか、お答えを願いたい。  次に、婦人問題について伺います。  憲法第十四条は、すべてにわたって差別されないことを定めている。国連婦人の十年は来年のケニア会議最終年を迎えます。婦人差別撤廃条約批准承認はどうするのか。条約だけで中身が実行されないものが多い。女性の役割は高まったが、差別は至るところに残っている。雇用にも、募集から退職まで差別をつけている。母性保護条約の問題もある。どんな差別をどうなくするか、事実で日程答えてください。  さて、日本国際的役割としての海外協力と援助の問題について伺います。  予算伸び防衛費伸びと並ぶような表づらを出しておりますが、金額のけたが違う。この調子では世界公約したODA予算を五年間で二倍にするなどはできない。大平、鈴木、中曽根内閣と見ても、質的にも後退ではありませんか。  発展途上国生活水準向上北側先進国共同責任である。我が国は、南側とは貿易地域別シェアからもとの北側先進国より関係が深い。途上国政治指導者地位はとかく不安定で、自国の発展や開発を考えるよりも、協力を見せびらかし、自己顕示に使ったり、使いこなせない不必要なもの、世界最高水準のものを欲しがる向きもあります。出す方の先進国も高度なものほどもうけが多いから、相手指導者の見えをそそり、適切な進言をしない。また、好ましくない政権にてこ入れし、双方で利権の山分けをしたり、国の腐敗を誘い、両損となることもありました。  まず、基礎的な食糧穀物の増産を促す技能の移転が必要であります。日本自身もかつてはそこから立ち上がった国であります。また、実践的技術民間協力が実効あるものとなります。基礎研究協力も、素材を出し合って、官民ともに人の交流技術交流でその国の誇りを尊重しながら自助努力を促す形が望ましい。出先の外交官はよく知っているはずです。しかし、利権がつかないから、私企業海外進出のようにはかどらない。ODA公約も含めて、総理外務大臣経済企画庁長官に伺います。  次に、農業問題について伺います。  さきに国会では、全会一致農産物輸入自由化枠拡大反対決議を決めております。昨年十月の米の端境期には、持ち越しの米はわずか六日分しかなく、早場米の早食いでつなぎ、しのぎました。五十九年度からの水田利用再編第三期対策などをどうするのか。とりあえず三年間で三百万トンに、また、我が国のすぐれた水田を活用するえさ米づくりを進め、畜産との複合経営をやり、地方の回復を図るべきだと思うが、後で伺う二十一世紀農業展望とあわせて農水大臣の御見解を承りたい。  また、外務大臣アメリカに行って、日本への農産物の押しつけをどう受けとめて帰られましたか、御報告を願いたい。米まで自由にアメリカから買わされるようなことにならないかという心配がありますから、これも含めてひとつおっしゃってください。  さて、ここで核兵器について、はっきり答えを求めます。  日本核兵器は持たない、使わない、持ち込ませないとの三原則は、外国でも日本国民政府の言うことを信用しなくなっている。トマホークが来る。事前協議とか、核はあるともないとも言わないのが原則だとか、そんなこんにゃく問答で逃げる話ではない、日本の命運をかけた余りにも厳しい現実であります。アメリカに対し、核に対して恐れることなく発言し、米ソ核競争をやめさせる、これこそ平和を求めるアメリカパートナー日本任務ではないか。どんな役割をしたか。NATOの配備に賛成したことだけが核についての国際的発言なのでありましょうか。  最後に、私は二十一世紀展望して意見を述べ、とりわけ首相と河本長官外務大臣農水大臣所見を伺いたいと思います。  かつて地球上に生存を誇ったマンモスがなぜ減びたかマンモスはどん欲に一日に四百キロの食事をむさぼり、体は巨大化したが、環境の変化に対応する管理機能としての頭や器官がその割に伸びなかったからです。この時代は、馬もトナカイもアナグマも人類生存期も重なっておりました。食糧自給能力を失った民族国家は、戦争の殺し合いか交易に頼るしかありません。これは人類歴史が示しております。今日、古典的な国際分業論民族国家の利害の対立て破綻し、現在は農業国、原材料の供出国にとっては不利な不等価交換世界経済の中では支配的となっております。しかし、これもいつまでもそうなどの保証はありません。我が国貿易輸出の中で機械類が六〇%を超えるということ、これは先進国として世界じゅうに例のないものであります。このように極端に偏った貿易構造産業構造は、国際情勢の急変に対応し切れない大変危うい一面を持ったものであります。  廃墟から身を起こした戦後日本の復興は、自民党内閣軍拡方向に絶えず歯どめをかけ、平和産業中心日本を築き上げた我々の努力と、それを支えた国民英知によるものであります。また、この高度成長は、石油エネルギーへの転換や農村の解体を要因として成り立ったものでもあります。こういう国内自然資源の活用や産業のバランスを無視したやり方は、やればもうかるということはわかっていても、やがては取り返しのつかないことになるという重大なリスクを思い、どの国もやらなかったやり方であります。  胡耀邦はこの議場演説して、日本には「長い目でみよ」ということわざがある、「達人は大観する」との言葉を取り上げました。中国の万里の長城は、今は古城の観光として武力のむなしさを教えております。同じ時代に築かれた四川の灌県の雄大なる水利は、二千年の歴史にたえて今なお生き続けて、中国最大の豊穣なる大地をはぐくんでおります。アメリカは、二十一世紀に向けて、三つの柱を立ててその未来像を描いております。一つ農業であります。次には高度の科学技術を、もう一つ教育産業と言っております。  二十一世紀は新たな農業世紀であります。日本の二十一世紀もまた、違った意味でより新たなる農業世紀であります。国土の狭いなど条件の貧しさにためらうものはありません。「草いろいろ おのおの花の手柄がな」一本の草木の葉は、今世界科学が取り組んでいるいかなる新素材、半導体を組み込んだ新技術でも超えることのできない深いメカニズムを持っております。農業には、ハイテクノロジー、バイオテクノロジーとともに開けていく新しい限りない可能性があります。一軒の農家も最高科学工場ともなり得る。労働者も自宅の一室ですべての生産に参加することもできる。この調和のある村社会もつくれます。  肥大化して、奇形化している産業のゆがみ、ぼく進を思うとき、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」、「ルック・イースト」などと言われてチョッキに親指を差し込む姿を見ると、とてもたまらない気がします。一日に四百キロを食いあさったマンモスの滅亡を思うのは、アンデルセンの童話のせいだけではありますまい。  この国会は第百一国会であり、ことしは暦の始まり、甲子、きのえねの年に当たります。節目を迎えている。人生のかけがえのない命を刻んで働き、知能を注ぎ、すぐれた工業製品をたくさんつくって海外に売り、不換紙幣を積み上げる蓄積現実です。しかし、私は、我が国本当蓄積は、この土、国土とここに住む人間の中にその無限の可能性英知蓄積を求めたい。これは失うことのない、奪われることのない、破壊されることのない蓄積であります。ミッテランはこの議場で、聖徳太子の「和をもって貴しとなす」を取り上げました。先人の心の遺産を継承しながら、未来に向けて長い歴史にたえ得る日本を描き出すこと、その任務は絶えず我々に課せられております。  いろいろ二十一世紀を名づけた委員会も既にあります。国会もやらねばなりません。しかし、この突っ走りを文明史的に大観し、あすを開き得る者の知恵を集めて、何かを、模索でも未定型のものでも、何年かかってもよい、まとまらなくともよい、ある種の合意に近い文明の行く手を見て、その中で民族や国や集団が前進すること、人間の持つ野性が望ましい文化に純化されなくとも、何かに努力することがいま生きる私たちに課せられている務めではありますまいか。総理も絵をかき、禅を組む。ただたくましい文化をと言っても、何かそこには答えていただけるものがあってほしいと思うのであります。  質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 八百板議員お答えを申し上げます。  ただいまの八百板さんの深い人生体験に基づく御見識と哲学につきましては、非常に感銘をいたしまして拝聴した次第であります。順次お答えを申し上げたいと思います。  まず、レーガン大統領国会演説に関して、日本アメリカ韓国三つ結んで、それはアメリカ栄光にささげるものだという趣旨の御質問がございましたが、そういうことはございません。我が国国策自体が、我が国独立とまた我が国文化を厳然と守っていく、主権を維持していくというところが根本にあるのであります。  御指摘になりましたレーガン大統領演説の部分を読んでみますと、ここのところは、要するに自由世界団結を言っておりまして、日本アメリカ韓国三つ団結を言っておるのではないのであります。毛利元就の三本の矢と言っておりますのは、要するに団結意味しておるので、三本の矢が日本アメリカ韓国の三本と、そういう意味では読んでみますとなっておりません。そうして、アメリカ日米安全保障条約に基づくパートナーとしての責任を果たす、そういうことを言っておるのでございまして、日本がそれに奉仕するというようなことを示唆しているということは全然ございません。これは改めて読み直してみて、このように申し上げる次第であります。  次に、軍需会社等政治献金の御質問がございました。  私は、企業労働組合一つ社会的存在でありまして、社会的機能を果たしておるものであり、その政治活動は自由である、もちろん法律の範囲内において自由であると考えております。政治資金等につきましては、政治資金規正法あるいは選挙法で禁止されておる規制がございます。したがいまして、これらの法に反する政治献金は拒否いたします。このように申し上げる次第であります。  次に、予算国民生活に関する御質問がございました。  今回の予算編成は極めて財政事情の厳しい中に予算編成を行ったのでございまして、国民皆様方に御迷惑をおかけする点も多々あったと思いますが、しかし、政府といたしましては、将来の展望考えつつ、一日も速やかに財政健全性対応力回復を図るという意味におきまして懸命の努力をした次第なのでございます。  一方において赤字公債を思い切って減らしていく、一方において一兆一千億円に及ぶ減税を実行する、そうして物価を安定させ、国際協調の目的を果たしていく、こういうような非常に難しい諸条件を同時に達成するということは実に厳しい事態であったわけでございます。しかしその中におきましても、今回公約に基づきまして大幅な所得税住民税減税を行い、特に家庭を抱えて住宅のローンやあるいは教育費に苦しむ中堅サラリーマン減税中心に我々は施策を実行した次第でございます。  その反面におきまして、酒税やその他におきまして、これは御迷惑をおかけした点がございますが、これらは臨時行政調査会答申範囲内におきまして、政府として裁量してやり得る限度内のことを実はやらしていただいたのでございます。そういう意味におきましてぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。  公共料金につきましても、やはり現在の厳しい財政事情からできるだけ独立経営という方向に持っていきたい、そういう前提で若干の値上げもやむを得なかったと思うのでございます。しかし、それらにつきましても、物価国民生活に対する影響度を配慮しつつ実は行ったのでございます。米価とか医療費とか、あるいは授業料とか、あるいは国鉄運賃とか等につきましては御迷惑をおかけした部面でございます。しかし電話料金は若干引き下げられております。これらの公共料金物価に対する影響力はどの程度あるかといいますと、一応の試算では大体〇・三%程度であろうと、このように試算されておりまして、物価の点におきましてもそういう配慮を行いながらやった次第でございます。  パートの問題について御質問がございました。  私は、婦人問題が非常に重要な問題として登場しておりますし、また、六十年度には婦人差別撤廃条約を我々は批准しようと思っておりまして、ことしはその準備をやる時間帯にある、そのように考え努力しております。婦人のそのような社会的地位向上というものは経済的自立性という面にあると思います。そういう意味において、最近婦人パートに出てまいりまして、いわゆる第二の財布をお持ちになるようになっておるということは非常に我々ととしては歓迎もし、また御協力も申し上くべきことであると思っております。  今回、この課税に関する配偶者控除限度額というものを七十九万円から八十八万円に上げました。これもそのような考えから行ったところでございます。  年金権につきましても、婦人独立性を保障しよう、男性や主人の従属物ではない、そういう意味年金権における自立性というものもいま図ろうとしておるところでございます。  税負担の公平につきましては全く御指摘のとおりでございます。  租税特別措置につきましては、随時見直しを行ってまいっております、今後とも必要に応じて見直しを行ってまいりたいと思っております。  酒税物品税等の増税につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますが、ある意味におきましては財政事情をこれ以上悪化させない、そういう意味におきまして御負担をお願い申し上げざるを得なかったのであります。  健康保険年金制度の問題で御質問をいただきましたが、医療保険制度公的年金制度は、国民生活福祉を支える基盤であると考えております。今既に高齢化社会の到来に備え、また国民から信頼される制度基盤をゆるがせにしない、これを強く安定と信頼を維持していくということが政府としては非常に重要であると思います。それと同時に、長期的安定と同時に、世代間の公正な公平負担というものも考えざるを得ません。いま年金の積み立てをやっておる若い人たちが、我々の時代になって不公平な扱いを受けるとかあるいは額が減るとか、そういうような危惧を持たせないということが我々の大きな仕事一つでもございまして、その意味におきまして若干の調整もやらざるを得ない、そういうことでございます。  年金につきましては、既に去年の国会におきまして企業体年金と公務員の年金との統合をやりました。また、今回は厚生年金国民年金、それに船員保険法等統合を行おうとしております。そして、七十年を目途に全部の公的年金統合を行おう、そういうような考えで、いわゆる基礎年金の思想も今回導入しようと、そういう考えでおるわけでございまして、これらも長期的安定、若い人たちに不安を与えないための措置というようにお考え願いたいと思うのであります。  防衛費につきましては、防衛計画の大綱の水準に近づけるという考えを今回も持ちまして、その努力を一面においてやりましたが、一面においては国家財政現状や他の経費との振り合いというものも見つつ行った次第でございます。  GNPに対する比率につきましては、五十一年の閣議決定は現在のところ変える考えはございません。  五十九年度予算におきます防衛費社会保障費経費の額を調べてまいりますと、防衛費は約二兆九千億円です、社会保障費は九兆三千億円に上ります。絶対額におきましては、社会保障費防衛費の三倍以上になっておるというのがやはりその現状でございます。  次に、原子力船むつ」について御質問をしていただきました。  原子力船むつ」のあり方につきましては、各方面からさまざまな意見が寄せられております。政府といたしましては、関根浜の建設は、これは行う。しかし、いわゆる舶用炉原子力による推進の炉、船に使う炉、これはやはり海運国日本としては船用炉研究は進めていかなければならない。そういうような考えに立ち、この「むつ」の今後の処理につきましては地元ともよく話し合った上で処理していこう、こういうことで、党内にそういうような特別の専門の皆さんの会議体を開きまして決定してまいりたいと考えておる次第でございます。  補助金につきましては、五十九年度におきましては大幅な削減を実は実行いたしまして、四千三百五億円の減額を行いました。これは昭和三十四年以来初めての額に上るわけでございます。来年も補助金削減等については鋭意努力してまいりたいと思う次第でございます。F15に比べて何機になるかという御質問がございましたが、大体四十機程度になると、このように試算をいたします。  次に、三公社改革でございますが、臨時行政調査会答申に基づきまして三公社改革は勇敢に進めてまいるつもりでございます。  具体的には、一月二十五日の閣議決定いたしました「行政改革に関する当面の実施方針」に基づきまして、国鉄につきましては新規採用の原則的停止、要員の縮減、職場規律の確立、設備投資の抑制等を初めとする緊急対策を強力に推進することといたしており、また、将来の国鉄全体のあり方についても今審議会におきまして検討しておるところでございます。そしてさらに国鉄再建監理委員会において審議をしていただいておるところでございます。電電公社及び専売公社につきましても、同じく既定方針に立ちまして、所要の法律案を今国会に提出する予定で準備しております。  教育につきましては、これは国民各位の支援を得つつ、幅広い基礎の上に政府全体の責任で取り組む段階に来たと、このように考えまして、先般施政方針で申し上げました考えを実行いたしたいと思います。もちろん教育基本法の精神を基本にして実行するものでございます。  教育臨調という言葉を聞かれますが、私は前から教育臨調という言葉は不適当である、そのように申し上げておるのです。なぜかといえば、行政改革教育改革とは非常に本質的に違うところがございます。行政改革の場合は、政府がみずから政府または政府関係機関に自分で削減をするなり処理を行うという点ができるわけであります。ところが、教育改革の場合は、義務教育についてはこれの直接管理責任を持っておるのは市町村でございます。市町村の教育委員会中心になってやる。あるいは高校については、これは知事あるいは県における教育委員会でございます。したがいまして、文部大臣はこれを助言し指導するという立場にあるだけであります。こういうような本質的な相違があることをよくわきまえまして、そういう意味から行政改革と同じような考え方で教育改革に臨むことは間違いであるという考えを持ちまして、前から教育臨調という言葉は不適当であると私は申し上げておるのでございます。  今まで既に中教審におきましてかなりの検討が進められ、蓄積がございます。これらを十分点検をして尊重をする。また、昨年教育文化の懇談会を私的につくっていただいて、この三月に一応の所見を私にお出し願うことになっております。これらのものをすべて総合いたしまして、どういうような機関をどういうふうにつくっていくかという考えをまとめてまいりたいと思っておる次第でございます。  次に、婦人差別撤廃条約につきましては、できる限り昭和六十年に批准したい、そういう考えに立ちまして諸般の準備を今進めておるところでございます。  母性保護に関する条約は、関係国内法制等との整合性について今問題がございまして、関係国内法制等のあり方について今後も検討してまいる所存でございます。  開発途上国に対する援助につきましては、これにつきましても国際国家としての日本の重大な役割一つであると考えまして、新中期目標のもとに鋭意努力しております。五十九年度予算の中におきましては一番増加率を高くいたしまして、九・七%増と格段の配慮をしたところであります。  非核三原則米ソの核軍縮の問題でございますが、今後も我々は非核三原則を堅持してまいります。日米安保条約上、艦船によるものも含めまして、核の持ち込みが行われることはすべて事前協議の対象であり、その際に協議があればこれは拒否するという態度を堅持してまいるつもりであります。  INFやSTARTの交渉は、ソ連側の一方的な中断あるいは休止の状態になりましたことは甚だ遺憾でございまして、この点につきましては、西ドイツのコール首相が来ましたときに東京声明を発しまして、テーブルを離れないように、またテーブルを離れた場合には速やかにテーブルに戻るように、粘り掛くお互いが妥協し合って成立させて世界を安心させるようにという声明を出しましたが、その線に沿って今後も努力してまいります。  二十一世紀農業世紀であるという御指摘がございました。私は、農業は生命産業であって、工場で機械をつくるような仕事とは違う。また、農は国のもとであるということを前から申し上げておりまして、そういう部分からは八百板さんのお考えにつきましても共鳴するところが多うございます。  食糧の安定供給確保ということは極めて重大であると考えております。しかし、一方において農業といえども国際関係の中にある産業でございまして、自国の農業の健全成長を維持しつつ国際協調を図っていくという点もまた国際国家としては必要でございます。農業や農村の特殊性に十分配慮をしつつ、国際的協調を実らせるような形でこの問題を今後とも処理していきたいと考えておる次第でございます。  あとの御答弁は関係大臣から御答弁させていただきます。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇拍手
  5. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) 八百板議員の御質問お答えをいたします。  まず第一の御質問は、我が国の開発途上国に対する経済協力についてでございますが、我が国の経済協力が真に開発途上国国民の意思に沿うものでなければならぬという御指摘でございました。また、ODA予算についても政府努力しておるが、まだまだ不十分であるという御指摘もあったわけでございます。  我が国は、南北問題の根底にある相互依存と人道的な考慮を基本理念といたしまして、開発途上国の経済社会開発、民生の安定、福祉向上を支援するため援助を実施しております。  我が国は、援助の実施に際しましては、相手国民が直接辞益する基礎生活援助、すなわち農村であるとかあるいはまた農業開発、あるいは医療、人口・家族計画、そういった生活援助であるとか、あるいはまた国づくりの基礎である人づくり協力を重視しておるわけであります。  こうした協力は、平和国家であり、自由世界第二位の経済力を有する我が国としましては当然のまた国際的な責任であると考えておるわけでございまして、援助を通じて世界経済発展及び世界の平和と安定に貢献することは、ひいては我が国の平和と安定にも資するものとの考え方に立っております。  このような認識に基づいて、我が国は新中期目標のもとで援助の一層の充実に努めておりまして、五十九年度予算原案においても、厳しい財政の状況ではございましたが、政府開発援助については九・七%増と特段の配慮を行ったわけでございます。  第二の御質問は、先般渡米した際に、農産物の自由化問題について米国政府とどういう話をしたのか、あるいはまた将来米までも自由化の対象となるのではないかと、こういう御質問でございました。  今回の訪米につきまして、私は米国の当局者に対しまして、農産物問題については我が国の厳しい国内事情というものを説明するとともに、日米関係の重要性にかんがみまして、牛肉であるとかあるいはまたかんきつ問題の円満な解決のためには、米国側も柔軟性を持って協議に臨むことが不可欠であるという旨を強調いたした次第でございます。  米につきましては、我が国農業にとって基幹となる作物であるとともに、国民にとって最も重要な食糧でございますので、政府として自由化する考えは毛頭ありませんことは御案内のとおりでありますし、米国側もこの点は十分認識しておるのでございます。  最後には、先ほど総理も答弁をいたしました、矢百板先生の持論でございます二十一世紀農業世紀である、この先行きを文明史的に大観する知恵を集めて新しい時代展望を開くがための何らかの試みがあってもよいのではないかと、こういう御質問でございます。  確かに今日、農業食糧の安定的供給という使命はもとよりでありますが、国土の適正な保全、都市住民の自然との触れ合いの場としての役割など大きな意義を有しております。また、これからの農業には、ハイテクノロジー、バイオテクノロジーの導入等による豊かな可能性が開かれていることは御指摘のとおりであると思うのであります。  他方、我が国としましても、農業も含めバランスのとれた経済社会を建設していく必要があると考えますが、その際には、日本の経済力に見合った国際的責任を十分に認識し、諸外国との調和のある対外経済関係の維持に十分留意しながら世界経済発展に寄与していかなければならない、これが重要であるというふうに考えておるわけでございます。(拍手)    〔国務大臣河本敏夫君登壇拍手
  6. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 開発援助の問題につきましては、総理外務大臣が御答弁になりましたが、開発途上国の抱えております問題を整理してみますと、巨額の債務累積、それから貿易の不振、第一次産品が世界不況のために売れないという問題、それから食糧危機、それから人材の不足と、こういう問題であろうと思います。  我が国は、かねての世界公約に従いまして援助額を順次増額いたしておりますが、しかし、開発途上国の抱えております問題が非常に大きいだけに、やはり世界先進国が力を合わせてこれに対処をしていくということでなければなかなか問題は解決しないのではないかと、このように思います。こういう点につきまして、今後十分注意をする必要があろうと思います。  それから第二の御質問は、今歴史の節目に来ておるが、日本はもう少し長い目でいろいろなことを考えたらどうか、準備をしておるのかと、こういう御趣旨でございますが、昭和五十六年から経済審議会で約一年がかりで、二〇〇〇年を展望いたしましたその時点における日本の姿について、各方面の権威者約百人に集まっていただきまして一年がかりで作業をいたしました。御答申をいただきまして、総論一部、各論九部、非常に大部なものでございますが、その結果を企画庁から発表いたしております。また昨年は、昭和五十年代の後半から六十年代の前半にかけまして、一九八〇年代の後半の日本の経済社会のあるべき姿につきまして、やはり経済審議会で御検討いただきまして「展望と指針」と題しまして発表をいたしました。  しかし、これらの「展望と指針」あるいは長期展望、いずれもこの目標を達成する前提として、世界が平和であり、同時に自由貿易体制が堅持される、こういう前提に立っておりますので、ただいまの御質問はそういう点に問題があるのではないか、十分留意しなければならぬ、こういう御指摘であろうと思います。私もそのとおりであろうと、このように感じております。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣山村新治郎君登壇拍手
  7. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 八百板先生にお答えいたします。  先生が農産物貿易問題、水田利用再編対策等の当面の農業問題についてお触れになりましたが、私は、農業食糧の安定供給を初め、活力ある健全な地域社会の形成、国土、自然環境の保全など豊かな人間社会を築いていく上で極めて重要な役割を果たしていると認識しております。このような立場に立って農政の推進に努めてまいる考えでございます。  特に水田利用再編対策の問題につきましては、米の需要状況にかんがみ、引き続き転作の定着化に努めるとともに、所要の在庫積み増し、他用途利用米の導入等を内容とする第三期対策昭和五十九年度から発足させることとしている次第でございます。  さらに、二十一世紀展望いたしますと、先生御指摘のように、農業、農村、この果たすべき役割はますます重要になってきておるものと思われます。こうした中で、魅力ある足腰の強い農業を育てるため、構造政策の推進、バイオテクノロジー等先端技術の開発、国民に就業と生きがいの場を与える豊かな村づくり等により、農業、農村を含めバランスのとれた経済社会の実現を目指して農政の展開を図ってまいるつもりでございます。よろしくお願いします。(拍手)     —————————————
  8. 木村睦男

    ○議長(木村睦男君) 中山太郎君。    〔中山太郎君登壇拍手
  9. 中山太郎

    ○中山太郎君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表し、総理の施政方針演説に対し、日本が選択すべき内外の重要政策について総理並びに関係閣僚にお尋ねをいたします。  まず第一に、外交についてお尋ねいたします。  我が国の外交の基軸は、自由民主党政府が続く限り日米友好関係の維持発展にあることは言うまでもありません。しかし、アジアの動向が我が国の平和と安全に深いかかわり合いを持つこともまた事実であります。  そこで、まず中ソ和解への動きについてでありますが、両国関係の本格的な復元への道はいまだ険しいとはいえ、貿易文化、人的交流の面で逐次改善が見られているのも事実であり、先日、ソ連の大型使節団の北京訪問が十数年ぶりに行われることが報道されています。他方、趙紫陽首相は、先般アメリカ訪問の際、アメリカとともに反ソ共同戦略を築くことは不可能だと言い切っております。これらの点から見て、今後、中ソ両国が和解へと大きく前進する可能性も全くないとは言い切れないのであります。我が国としては、既に日中平和友好条約を締結し、平和友好の法的基盤は確立しているとはいえ、こうした場合に備えての対応を十分外交的に考えておく必要があるのではないでしょうか。政府にお考えをただしたいのであります。  さきに北朝鮮側から米韓両国との三者会談が提案され、これを受けて米国からは、中国をも加えた四者会談、さらに日本、ソ連を加えた六者会談の構想が打ち出されておりますが、朝鮮半島の緊張緩和と平和的南北統一へ向けての基本的な対話の促進が重要なことは明らかであります。北朝鮮が三者会談を提案したねらいをそのまま受け入れることはできませんが、この機会をとらえ、政府としても米国協力し、また、三月に中国を訪問される総理がその機会を生かして、南北朝鮮の対話促進のための国際環境づくりに積極的に努力すべきだと存じますが、お考えはいかがでしょうか、御所見を承りたいと存じます。  次に、インドシナ半島の状況についてお尋ねいたします。  インドシナ半島の軍事情勢は、日本にとってもASEAN諸国にとっても極めて重要であります。私は、去る二月一日、国連社会経済委員会の主催する技術移転と多国籍企業会議に招かれてバンコクを訪問いたしましたが、一夕、インドシナ和平実現のためにベトナムを訪問され、ベトナム政府要人と懇談され帰国されたばかりのクリアンサック前首相と数時間にわたって懇談し、ベトナム事情を伺う機会を得ました。クリアンサック前首相は、ベトナムへの経済制裁は余り効果を上げていないと自分は感じた、経済は比較的安定しており、一般市場には二十種類に及ぶ日本の商品も見られた、また大型ダムも完成している、インドシナの平和はベトナム、カンボジア、ラオス三国の協議が基本であり、ASEAN各国とベトナムとの和平協議というものは、タイとベトナムの間に非武装地帯を設置するとかいろいろの問題を含めても相当な時間が必要だろうと考えていると言われておりました。  日本政府はいかなる方針でASEAN各国とこのインドシナ半島問題を協議されるのか、また、ラオスへの無償援助をどのような方針で臨まれるのか、この際外交方針を伺いたいと存ずる次第であります。  また、中東の政治的安定が日本の死活的利益に深いつながりがあることは言うまでもありません。先日、西ベイルートの日本大使館が政府軍と民兵との兵火によって炎上いたしました。レバノンの情勢は一層混迷の度を加え、イラン・イラク戦争も解決の兆しも見えず、クウェートにおける米仏大使館の同時爆破事件等、テロが頻発し、サウジアラビアが湾岸防衛網の充実を目指して軍事力強化を急速に進め、これに対してイスラエルが過敏な反応を示しております。  政府は、複雑な諸要素をあわせ持つ中東地域の諸問題解決、この環境づくりに関してどのような考え方をお持ちでしょうか。  一方、欧州では、米国のクルージングミサイルのNATO諸国の配備をめぐって米ソ関係は極めて激しく対立をしております。その中で、サッチャーイギリス首相は近くポーランド、ハンガリー等の訪問に出かけるわけでありますが、東欧各国は貿易の不振、西側金融機関からの借り入れ累積債務の問題の処理をめぐって大変苦難な状況にあり、西側金融機関もその債務の返済をめぐっては不信感を抱いておるというのが現状であります。ソ連経済の停滞とともに、ソビエト連邦と東ヨーロッパの共産圏諸国との関係が今後どのような展開を見せるのか、政府考え方を伺いたいと思うのであります。  次に、安全保障について伺いたいと思います。  今回の予算案では、野党の方々から、あるいは一部のマスコミから防衛予算の突出が強く指摘されています。日本を取り巻く国際軍事情勢の中で、果たして自由民主党政府防衛計画責任を持って全国民の自由と生命、財産が守れるのかどうか、私どもはこの点に重大な関心を持っているのであります。いかなる国家も占領されれば政党活動は禁止され、そして言論の自由が封圧されることは世界の敗戦国の歴史がそれを証明しております。  ソ連と北の国境を接する日本にとって、シベリアにある中距離戦域核SS20百三十五基の存在、地上戦力五十二個師団、また航空戦力としてマッハ二以上の速度で四千二百キロメートルの行動半径を有し、射程三百キロメートルのAS4ミサイル搭載のバックファイア七十機の存在、また空母ミンスク及び北上中のノボロシスクは、まさに我々一億一千六百万の日本国民にとっては大きな潜在的脅威と言わざるを得ないのであります。このような大きな軍事力配備というものが一体どういう意図で行われているのでありましょうか、我々はこれに大きな関心を持たざるを得ないのであります。  ソ連が先般大韓航空の民間旅客機をミサイルで撃墜したのも昨年の九月一日のことであります。これに対し日米両国が対ソ経済制裁を発表した直後、ソ連は最新鋭のバックファイア爆撃機三機を日本上空に接近飛来させたほか、十一月十五日には爆撃機バジャーを含む九機は対馬海峡を南下し、うち三機は日本領空を侵犯して、ベトナムのカムラン湾基地に配備されています。これらのソ連の政治的意図、これに対する我々のあり方、これが日ソのこれからの問題解決にとって不可欠の解決しなければならない問題であろうと考えております。  日本貿易で生きていく国であります。経営者も働く人たちもその家族たちも、すべて貿易による利潤の配分によって我々は生存をしているのであります。輸出総額三十四兆円、輸入三十兆円、これだけのいわゆる貿易をやる国家、その国家の政策というものは、自分の国の周辺及び世界が平和であって初めて日本は生産された商品の輸出が可能であり、その商品をつくるための原材料の輸入が実現するのでありまして、野党の方々からは自民党がいかにも軍備拡大を好み、戦争を求めるかのように攻撃されていますけれども、一番平和を望み、平和のために最大限の努力をし、戦後三十八年間安全な国家として維持してきた今日までの自由民主党の政府のあり方というものは、戦後の一貫した姿であったと私は考えているのであります。万一周辺国に戦乱が起こったときでも、海上輸送路の安全確保をして、我々一億の国民がその原材料、食糧を輸入しながら生存を守らなければならないというのが自由民主党の基本的な政策であることをこの機会に申し上げておかなければなりません。  この周辺海域の航行の安全を保障するために、いろいろとシーレーンの問題が先般来予算委員会、本会議等で議論をされておりますけれども、我々は最も安い投資で最も高い効果を上げるような防衛制度を整備する必要があるのではなかろうか。そういう意味で、攻撃力を全然持たない海上偵察衛星というものを政府は打ち上げる計画はあるのか、ないのか。また、そういうことを検討する意思があるのか、ないのかということをお尋ねいたしたいと思います。  米ソ超大国は、今や本格的な宇宙核戦略本部を設けております。まさに我々の目の届かないところで核戦争の準備が進行しているわけであります。私どもは世界で唯一の原爆被爆国であり、我々はあらゆる機会を通じて、増大する世界の核の制限のために全力を尽くして人類の平和を維持するべきであろうと考えております。総理は近くサミットにも御出席のようでありますが、どうかサミットを通じてこの核軍縮というものを、総理はかねてバランスのとれた軍事力の中で初めて平和の会議が開かれるであろうとおっしゃいましたけれども、我々日本国民としてはあらゆる機会に核軍縮というものを強く訴えてやってまいらなければならない、そういう意味総理のお考えを伺いたいのであります。  次に、国際収支と外交でありますが、昨年の経常収支は二百十億二千四百万ドル、貿易収支は三百十六億四千九百万ドルと発表しております。輸出の好調、輸入原油価格の低落がこの日本の大きな黒字の原因と見られます。これが一方では、日本の市場開放を求める欧米各国の批判の火に油を注ぐ結果に相なるわけであります。  今般、安倍外務大臣アメリカを訪問され、農産物交渉を初め困難な外交懸案に対処された御苦労に深い敬意を表するものであります。しかし、アメリカ側は通信衛星の購入問題で依然として強硬な態度をとり、また付加価値通信網VANへの外資参入問題やコンピューターのソフトウエア保護問題に関し、日本側の規制立法の動きに深い懸念を示しているのも事実であります。  通信衛星購入問題については、我が国の宇宙開発政策との調整、配慮すべき点が多いと考えておりますが、VANについては、電電公社改革関連の電気通信事業法案において相互主義のもとに外資企業の参入規制の例外を設け、米国側の要請を実質的に満たし得るものにしようとするのに対し、米側は依然として不満の意をあらわしております。  ソフトウエア保護問題については、米国では著作権としてその権利を保護しているのに対し、通産省が考えておるプログラム権法案では、特許権的なものとして取り扱おうとしております。米側から開発者の利益保護が不十分だと指摘されておりますが、この点の整合性について政府はどのように考えておられるのでありましょうか、お尋ねをいたしたいと思うのであります。  このように経済摩擦の焦点が、農産物交渉をめぐっては日本政府の強い姿勢によって一定限度以上の農産物の輸入は国の食糧安全保障の観点から認めない、こういう姿勢を一貫して貫いてまいりましたが、これから先、先端技術産業、金融、証券あるいはサービス産業分野の市場開放、こういうものが日米間の大きな外交交渉となって登場してくるわけであります。  今年十一月、米国大統領選挙を控えて、米国政府また米国議会は、我々と同様にアメリカ人の利益を代表する国会議員が、鉄鋼、自動車、繊維の議員協議会を中心に、このアメリカの記録的な貿易赤字解消のために極めて強い姿勢で日本に迫ってくると私どもは考えざるを得ません。海外に対しては輸出国である日本は絶えず自由貿易原則を主張しておりますが、政府はこのアメリカあるいはヨーロッパ各国からの日本に対する要請に対してどのように対応していこうと考えておられるのか、国民諸君にわかりやすく御解説を願いたいと思うのであります。  次に、国際経済に関連した問題についてさらにお尋ねをいたしたいと思います。  我が国としては、金融・資本市場の開放は中長期的な観点から取り組まざるを得ない問題であり、総理もこの問題が六月のサミットで議題になると考えて既に検討を指示されております。政府は、政府保証債の発行等も海外市場で行う、こういうことを考えておられるようでありますが、どのようにその方針を立てておられるのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。  続いて、財政再建問題について伺います。  五十九年度予算のいわゆる増減税抱き合わせの方式が採用されたことで、中曽根内閣財政改革に対する熱意を国民は疑問の目をもって見ていると私どもは感じております。今後とも、増税なき財政再建の方針のもとに歳出歳入構造の合理化、適正化の財政改革を強力に進めていくことを期待するものでありますが、総理の見解をお伺いいたします。  第二は、赤字国債の借りかえであります。竹下大蔵大臣は先日の演説において、赤字国債を六十年度から借りかえるとの方針を明らかにされました。赤字国債発行の歯どめとも言うべき償還期限十年の全額現金償還方式を建設国債と同様の償還期限六十年の借りかえ方式に移行することは、従来の方式を支持してきた国民にとって重大な政府の政策転換であります。変更の理由を詳細に明らかにするとともに、今回の措置によって国債価格の下落や借換債が増大する等今後の国債管理政策に支障を来すおそれがあるかないか、その点を明らかに願いたいと思うのであります。  税に関して、私は、今日三十五歳から五十五歳のいわゆる働き盛りのサラリーマンの方々の家族、サラリーマン約二千万人、この人たち日本社会の中枢をなしているわけであります。一例を四十代にとれば、住宅取得で平均六百三十六万円の借金を抱えている。ローンの返済に平均月六万円、子供の学習塾、予備校の費用など家庭教育費は二万から三万円以上、税負担の公平化が叫ばれている中で所得は完全に捕捉、税金、社会保険料は高い負担となり、長寿国となって生きている両親の面倒も見なければならない三十五歳から五十五歳の世代。また、その人たちは同時に子供たち教育負担を最も多く受けている世代であります。このようなサラリーマン家庭、働く人たちの子供たち教育費に対する減税の意思はあるのかないのか、それについてお伺いをいたしたいと思います。  次に、教育問題であります。  近年、過度の受験競争、校内・家庭暴力、非行問題、いろいろと教育のあり方が問われております。戦後行われた教育改革から既に三十八年を過ごした今日、新しい教育条件と環境の確立を図ることが極めて肝要であろうと思います。今日全国の家庭では、子供が適齢期、幼稚園に入る年ごろになると、どの幼稚園を選ぶか、またどの小学校へ行かすのか、どの中学へ入学させたいか、どこの高校へ行くのか、どこの大学に入れるか、これが親と子の共通の悩みであります。このような試験地獄とも言われる子供たち社会、子を持つ親の悩みというものを解決するために、総理は思い切った教育改革をやろうと考えておられるようでありますが、どのような考え方で今後取り組んでいかれるのか。一文部省ではなしに、政府全体が二十一世紀の国づくりのためのお考えをお持ちであればお示しを願いたいと思います。  次に、社会保障について伺います。  経済の低成長化、人口構造の急速な高齢化に伴い、今後各般の厳しい対応がやってくるでしょう。我々が目指した欧米の福祉国家は、今高い税金、行き過ぎた福祉、高い社会保険料、国民政府依存体質、労働意欲の低下、いわゆる先進国病があらわれています。これを国民所得に占める租税負担及び社会保障費負担の割合で見ると、スウェーデンは六七・八%、イギリス、フランス、西ドイツは五〇%台、我が国は三三・六%で今日まで経過してまいりましたが、これからやってくる高齢化社会では、社会保険給付費の膨張と負担は避けもれないと思います。医療保険制度の大改革が行われるのは将来の高齢化社会に対処するものでありますが、政府は、この給付と負担の適正な関係はどうあるべきか、この点を明らかに願いたいと思います。  次は、国民医療の問題について触れてみたいと思います。  国民医療費は、年々一兆円程度の増加を来しております。この原因は、人口の増加、人口の高齢化、疾病構造の変化、医学の進歩、患者負担の減少などが医療費増大の原因であります。現在医療費は対国民所得の六・三四%でありますが、昭和七十五年、いわゆる二十一世紀初頭には、欧米先進国のように一〇%になろうと計算されています。対国民所得との関係で適正な医療費の規模をどういうふうに政府は見ておられるのでございましょうか、御答弁を願いたいと思います。  今回の予算編成で決定を見ました健康保険の本人給付率九割を初め、薬価基準一六・六%引き下げ、さらにこれに伴う診療報酬の二・七九%の引き上げ等は、いずれも財政危機下の医療費の抑制政策でありますが、そこにあるのは、医療費適正化対策という名のもとに医療費六千二百億円の削減という帳じり合わせであると考えざるを得ないのであります。医療保険制度を将来とも安定させるには、医療の実態、背景、これを十分踏まえて、計画的、長期的な対策を実施していかなければならないと考えております。一挙に改革を進めれば国民は戸惑います。医療というものは、診療を受ける国民と診療を行う診療側の理解がなければうまくまいりません。政府は、今後に残された医療費適正化対策にはどういう事項、内容のものがあり、どういうふうにやっていくか、手順を示されたいと思うのであります。  また、各地方自治体では、独自で老人医療費とかあるいは家族負担の一部の補てんをいたしております。政府が一割の本人の自己負担というものをやってまいりました場合に、家族のいわゆる地方自治体からの補てんによって、本人は九割給付、家族は十割というような矛盾が起こってくる可能性もあるわけでありまして、この点について政府はどのような行政指導をやっていくのか、その点も明らかにしていただきたいと思います。  これから起こってくる問題の一つに、医師の過剰問題があります。昭和四十四年、自民党は六十年までに人口十万に対して医者は百五十人程度にすべきという方針を出してまいりました。昭和四十四年私立医大の新設が認められ、地域対策として一県一医大の設置が進められてまいりました。  昨年十一月、厚生省は五十七年末現在の医師、歯科医師、薬剤師の状況を発表いたしました。届け出医師数は十六万七千九百五十二人、人口十万に対する医師数は百四十一・五人、しかし無届けの医師が八千人余りいるので、これを加えると医師数は十七万六千人と相なります。そうすると、十万に対して医師数は既に百四十九を示しています。厚生省が当面目標とした昭和六十年に人口十万に対し百五十人を達成することが明らかになってまいりました。毎年、一年間に国公立、私立の医学部の入学の学生数は八千三百六十人であります。医師過剰時代に備えて、政府は一体どのような考え方でこれから医学部の学生の応募に対する方針を立てていくのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。  次に、経済援助と技術移転について伺います。  我が国のアジア諸国への経済協力は、二国間援助のうち七割を占めています。とりわけ中国韓国、ASEAN諸国に対する円借款供与は五十七年度末で約二兆七千五百億円に達しております。こうした経済協力は、アジアの発展途上国の工業化と中進工業国への成長を助ける効果があったと思いますが、既にブーメラン効果が起こっております。ブーメラン効果というのは、オーストラリアの人たちが使う遊戯のおもちゃでありまして、一度それを投げたら必ず輪をかいて自分のところへ返ってくる。これをブーメランの遊びと申しておりますが、こういうふうな効果が既にあらわれ始めた。最近米国からは韓国の第二浦項製鉄所に対する日本の援助は鉄鋼製品の世界的な設備過剰を招くとの批判を呼ぶなど、避けがたい問題点を内蔵していることも事実であります。我々はここで、技術移転と産業構造の変化について日本も含めて深い配慮をせなければいけないと考えざるを得ません。  我々の国を振り返ってみても、明治時代農業国家でありました。そうして大正、昭和の軽工業国家へ、そうして今や大工業国家発展し、さらにコンピューターが導入されて情報化が進み、総理は高度情報社会日本は向かうだろうと話をされておられます。一九八一年の国際比較では、日本は一兆千四百十億ドルのGNPを示しています。世界百六十六カ国全体の一割を占め、アメリカ、ソ連に次いで世界第三位の国家であります。また、貿易の面でも昭和三十五年のそれを二倍以上も伸ばしています。  こうした我が国世界への日覚ましい輸出の成果は、必然的にこれまであった日本産業構造、輸出構造を大きく変革させました。戦前の主要な輸出品であった生糸、絹織物、綿製品、真珠、緑茶、これが今日、自動車、VTR、超LSI、海水淡水化装置、つまり付加価値の高い工業商品の輸出が海外に稲妻のように出ていって、これが相手国の企業を倒産させ、失業者をふやし、今日の国際貿易摩擦の原因をなしているのであります。つまり、世界市場二兆ドルというパイの中で、日本は平和を維持し、国内の労働市場等の条件整備が比較的うまく行われてまいりました。労働賃金もずっと上がってきました。  しかし、これから先、どのように日本政府はパイを考えていくのか。今日、米国の失業率は八・二%、失業者九百二十万人、EC各国の失業者は約千三百万人に及んでおります。この背景を検討すれば、第一に我々の民族の優秀性、明治以来の教育制度国民の勤勉性とともに、忘れてならないのが欧米諸国から導入された技術であります。  戦後、我が国の立ちおくれた技術水準のレベルアップを短期間に図るために、外国の先進技術を積極的に導入することが日本の焦眉の急務でありました。この問題を解決するために、昭和二十四年、外国為替及び外国貿易管理法、これが制定された。昭和二十五年の外資に関する法律、これも制定をされた。この法律の裏づけによって外国からの技術が導入され、その技術料の長期にわたる支払い、海外送金というものを政府が保証した結果であります。  我々は、導入した技術を利用して、できる限り外国の商品に負けないような優秀な商品の生産に労使一体となって働いたわけであります。そして、輸入された技術をさらに改良して、もとの国家のつくった商品よりもさらに優秀な商品となって自動車、テレビ、VTR、あるいは海水淡水化装置が現在世界各国に輸出されているのであります。これが今日の日本の繁栄の原因であります。  しかし、各国はどのように批判しているか。日本が自分の手で外国技術を利用して完成品をつくっていく。こういうことで各国の貿易を見ると、完成品の輸入率が日本は三四%、米国は五七・四%、西ドイツは五八%、英国は六五%、フランスは六〇%となっております。このために日本の非関税障壁の排除というものをアメリカ、ヨーロッパ各国が共同して迫ってきたのが昨年来の大きな問題であったのであります。  こういう現象を考えてまいりますと、私どもは、政治と経済と科学技術の絡まりというものを無視してこれからの日本の政策を立てるわけにはまいりません。我々の技術というものは、一体どの程度に輸入、輸出されているのか。昭和五十六年度の民間会社等の技術輸出入の実態は、輸入件数七千二百七件、金額二千五百九十六億円に至っています。技術を輸出している件数は四千八百七十七件、金額は千七百五十一億円であります。主としてアメリカ、シンガポール、インドネシア、韓国、ブラジル、これが輸出国であります。技術を導入している国は、アメリカが一番多い。それに次いで西ドイツであります。我々が発展途上国協力する技術と資金、これはやがて労働賃金の安い各国で日本の機械と技術によって生産された物件が日本の市場に迫ってくることは明らかであります。  私は、一昨年、江崎調査会のメンバーとしてヨーロッパ、アメリカ、ASEAN各国の首脳と懇談をいたしましたが、その際に各国の産業界の人たち意見の中に、ぜひとも日本の輸入承認制度の改善をしてほしい、そして日本の工業規格をぜひ我々の国家の中にある工場に認めてほしいというのが大方の要望であったのであります。これは単に経営者側だけの問題でなく、働く人たち生活にもかかった大きな問題だと私どもは考えておりますが、こういうことに関する政府考え方はどのようにこれから考えていかれるのか。また、その影響をもろに受ける日本の中小企業が、どのようにこれからの貿易摩擦や国際的な生産過剰の中で生きていけるように政府は指導されるのか、その点を明らかにしていただきたいと思うのであります。  我が国のこの繁栄の基礎は、今申し上げたように科学技術の振興とそれの改良であります。科学技術関係予算は、昭和五十年度から五十八年度までの間に実に十兆四百億円投入されております。五十九年度の科学技術振興費は、超緊縮予算の中で前年度比三・二%の増となっております。総理府統計局の科学技術研究調査報告によれば、日本研究費は昨年度五兆八千八百十五億円、うち国家と地方公共団体が一兆三千八百八十八億円で二三・六%、民間が四兆四千八百六十億円で七六・三%負担しています。  しかし、研究投資とその効果を評価する制度というものが、民間国家では大きく差のあることは事実であります。民間企業においては、研究投資が一定期間成果を上げなければこれを切り捨てるわけであります。しかし、日本政府機関においては、そのような評価をするきちっとした機関がないと言わざるを得ないのが現状であります。あえて言えば、衆参両院の我々国会にもその調査機能はきわめて弱いと言わざるを得ません。これは与野党共通の課題であろうと思います。科学技術政策の最高意思決定機関である科学技術会議も実は形骸化していると言わざるを得ません。  研究目標が設定されて調査費がつき、官庁に担当窓口ができると、パーキンソンの法則によって予算と人員は膨張の方向をたどるのが今日の姿であります。いかなる研究予算は単年度方式で、次の年の予算をもらうために研究たちはその書類づくりに追われているのが、今日の大学を含めた各研究所の実態であります。科学技術庁の調整局には、各省の予算を調整する力はあっても、決定をする権限は与えられていない、そこに大きな問題点があるわけであります。こういう点を考えると、我々の国家にとって一体何が今欠けているのか、何が必要かということが御理解いただけると思います。  これはただ日本だけの問題ではございません。アメリカにも同様なことがかつてございました。米国には、しかし、全米科学財団や科学アカデミー、あるいは大統領科学顧問というスタッフがおりまして、投資と効果の評価を極めて厳しくやっておるのが実態であります。その一つに、日本アメリカと西ドイツの石炭液化プロジェクトが、石油価格の下落とともに打ち切られたということを見ても明らかであります。  米国では、科学技術の変貌、膨張あるいはその影響あるいは公害問題も含めたいろいろな問題が大きな社会問題として登場したときに、この問題を予期し、あるいは理解し、それに対応する政策あるいは機関が必要として、米国議会は一九七二年、テクノロジー・アセスメント法を承認して、議会を補助する機関として七四年一月、上院、下院両院議員からなる技術評価局を国会の中に設置いたしたのであります。ちなみに、今年度の予算は邦貨に直して約三十億円、専門家百三十名を米国議会は擁しているということを我々日本の議会も忘れるわけにはまいりません。  科学技術立国を国是とする我が国にとって、当然私どもは衆参にもこのような努力が必要と思いますけれども、政府におかれても、政府の投資をする研究に対して一定期間厳しい評価を行うところの制度を制定する御意思があるのかないのか、明らかにしていただきたい。日本では、科学技術会議も、日本学術会議も、日本学士院も、科学技術庁もそれぞれ努力をされておりますが、政府の意思というものが明確にならなければ、このような評価というものはなかなかできないということも事実でありまして、ぜひこの点明らかにしていただきたいのであります。  産業、経済、国民生活水準の上昇の基盤をなすものが、そのあらわれとしてGNPという形であらわれております。昭和五十年から昭和五十四年までのGNPの成長寄与率、これは日本の場合でありますが、資本力、労働力、技術の進歩、この三つの分野で計算をする方式がございます。その三分野で見ると、資本は五二・二%、労働は一・二%、技術進歩は四六・六%の数値を示しております。昭和五十八年度の年次経済報告によると、過去四カ年の技術進歩の対GNP成長寄与率は、資本や労働といった他の要因による寄与率を上回って四三・二%を示しておるのであります。  二十一世紀に向かう日本の経済発展のために、科学技術の投資の重要性というものがこれで明らかに裏づけされているわけでありますが、我々が迎えようとする高齢化社会を維持するためにはどの程度GNP伸び率が最低必要であろうか。試算によると、最低三%のGNP伸び率が毎年必要となってくるのであります。その一%は、現状よりも低いような形での、失業者を完全雇用のような形での姿に維持するためのGNP伸び率が最低一%、また高齢者のための給与の費用が一%、あるいは後進国への経済協力のために一%が必要と言われております。  科学技術研究費の予算というものは、単年度で見るとさほど大きなものではありません。しかし、一つの大きなプロジェクト、例えば当院に議席を持たれる伏見康治先生が努力をされた核融合の研究等、研究開始から成功まで二十一世紀に向かって行うわけでありますから、実に莫大な投資金額であります。あるいは他に、これから始まるバイオテクノロジー、ライフサイエンスあるいはファインセラミック、新素材、いろいろな研究がありますが、膨大な税金の投資が行われるわけであります。  こういう中で、私は中曽根総理に申し上げたいことが一つある。中曽根総理は、日本政治家の中で最初に原子力の平和利用に目をつけた、極めて先を見通す力を持った政治家であったわけであります。昭和二十六年一月、まだ日本独立して間もないころ、アメリカの特使ダレスが日本に来日した際、日本原子力研究の自由を認めるように要請する文書をダレスに渡されたのが、今日の内閣総理大臣中曽根康弘氏であります。昭和二十九年三月、二十九年度予算をめぐる改進、自由両党の予算修正折衝の中で、議員としてのみずからの、何と申しますか、責任あるいは洞察力をもって、この予算の修正項目に原子炉の開発とウラン採鉱費二億五千万円の予算をつけたのも、この中曽根康弘氏であったわけであります。それに協力されたのが川崎秀二、稻葉修、齋藤憲三の三代議士でありました。  昭和三十年八月、ジュネーブの第一回原子力平和利用会議、この国際会議に出席したのは中曽根康弘、前田正男、松前重義、志村茂治という各代議士であります。この各代議士は超党派の原子力合同委員会をつくり、日本原子力法体系、原子力体制の整備に尽力をされたのも歴史が物語っているのであります。  この先覚者であった政治中曽根康弘氏は、二度にわたり科学技術庁長官を務められ、今日総理として二十一世紀への日本の政策の確立をするべき責任を負われておりますけれども、これからの科学技術の開発と評価の制度の創設にどのようなお考えをお持ちなのか、総理大臣としての御答弁をお願いしたいと思うのであります。  最後に、私は政治倫理について一言触れてみたいと思います。  政治倫理の確立について所見を申し上げる。その所見も、私は、現代の発展した近代社会もまた古い中国時代も、政に対しては同じものがあったということをつくづく痛感している一人であります。「民信なくんば立たず」、これは論語の一文であります。孔子は、政治の要請は食糧の充足、軍備の充足、人民が政治家を信頼する心を持つことこれにある、もしやむを得ずにどれからか捨てるという順番を問われたならば、第一に軍備を捨てる、第二に食糧を捨てる、やむを得ず捨てざるを得ない場合にあっても、有限の人生条件となる信頼感、信義はどんな場合でも捨ててはならないと言っているのであります。  すなわち、政の原点は人民の信であり、これがなくんば存立をしないという説であります。まさに、政治を支えるものは国民信頼であります。国民より政権を託された自由民主党は、いかなる政党にも増して一人一人が公私を厳しく峻別し、身を清潔に持し、国民の心を政治の心として誠実な政治をやってまいらなければなりません。当院においては、昨年七月新しく導入された初の試みである全国区比例代表制の制度で当選された新しい議員を迎え、衆議院においては政治倫理をめぐる与野党間の激しい対立の中で長期間国会がストップしたにもかかわらず、当院においては与野党一致して、政治倫理の確立が何よりも急務であるとして、政治倫理に関する協議会が全与野党一致のもとに設置された。そうして与野党で国民信頼にこたえるためにまじめな論議を展開されたことも、参議院の特徴であったと私は考えております。  中曽根総理、難しい時代であります。アジア全体を見ても、共産主義国と自由主義国の間の対立、共産圏同士の対立、中近東の宗教をめぐる民族間の対立、あるいはヨーロッパにおける東西両陣営の対立、これからの日本の生きていく道、私はそれは安易な道ではないと考えております。しかし我々は、完全に敗北をした廃墟の中から、日本人の英知努力によって今日の日本を築き上げてまいったのであります。優秀な働く人たちの力、自由経済市場、この二つがかみ合って今日の日本ができたわけであります。これからの難しい世界情勢の中で、日本国民が安心して政治を任していけるような政治、どのような政策が必要なのか、この点を御答弁願って私の質問を終わらせていただきたいと思います。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中山議員にお答えを申し上げます。  広範多岐な問題について非常に深い御見識を示していただきまして、感謝する次第でございます。  まず第一に、外交関係で中ソ関係について御質問がございました。中ソの接近関係をどういうふうに見るかということでございます。  私は、中国、ソ連双方がお互いに接近し合って、緊張を緩和していくということは歓迎すべきことであると思っております。しかし、今までの経緯等を見ますると、その接近が必ずしも期待どおりいくかどうかは疑問な点が多々ございます。というのは、基本的問題について意見の対立があり、それはいまだ解決しておらないし、当分解決する見込みが立っているとは思えないからであります。  すなわち、それは一つは、中ソ両国の国境問題、国境周辺における兵力展開の問題があります。最近は、その中にはSS20の問題も入ってきておるようです。第二は、アフガニスタンに対するソ連の武力侵入の問題があります。第三はカンボジア問題であります。このような基本的な問題に関する見解の対立が依然として残っておるという点から見ますると、中ソの接近につきましては、現状におきましてはやはりある程度限度があると、そのように考えざるを得ません。    〔議長退席、副議長着席〕  しかし、いずれにしても国際緊張を緩和して各国間の交流が盛んになるということは歓迎すべきことであると思って、深甚の注意をもってこれを見守っておるということでございます。また、中ソの関係は中ソの関係であり、日中の関係は日中の関係であり、日ソの関係は日ソの関係である。おのおの独自性を持った関係をおのおのが築いている。そういう考えに立ちまして、今後も外交を進めてまいるつもりでおります。  次に、北鮮の三者会談の提唱の問題でございます。  いかなる考えに立ちましてあのラングーン事件の前後にこのような考え方が出てきたか、我々は鋭意検討を続けておるところでございます。いずれにせよ、朝鮮半島の平和と安定につきましては、我が国は重大な関心を持ってこれを見守っておる状態でございます。  北鮮の提案につきまして、アメリカあるいはそのほか等からある程度情報も我々は得ておりました。それに対しまして、アメリカ側が中国も入れてはどうかというような提案をしたという情報もございます。それに対して北鮮側が肯定的でない反応を示しているということも情報として聞いております。私は、朝鮮半島の現状につきましては非常に深い重大なる関心を持っておりますが、もしそのような会談が仮に行われるとすれば、やはり休戦交渉、休戦会談の当事者であった国々がまず関係するのが妥当ではないだろうか。その前に、やはり北と南の両国自体がまず第一義的に交渉し合うのが筋ではないだろうか、そのように考えておる次第でございます。  いずれにせよ、我が国は独特の憲法を持ち、また個別的自衛権の範囲内において防衛を行っているという独特の性格を持っておる国でございますから、これらの問題の処理につきましては慎重なる態度を要すると思っております。それと同時に、友好国との間には緊密な連携を保持して対処していくということも大事であると考えておる次第でございます。  次に、ベトナム及びASEANの問題の御質問がございました。  ベトナムに対する一番大きな関係は、御存じのようにカンボジア問題でございます。我が国は、カンボジアからの兵力撤収を行わない限り経済協力は凍結しているという状態でございまして、これに対してASEANの諸国はこれを支持しておるという状態でございます。やはりこの問題は国連を中心に包括的な和平が行われることが望ましい。このASEAN諸国の態度を我々は支持して解決に努力してまいりたいと考えております。  中東外交の問題、特にイラン・イラクの問題でございますが、中東のレバノンの情勢はまことに憂いにたえない状態でございまして、我々も注意深く見守っておるところでございます。  特に、イラン・イラクの問題は国際政治にも重大な影響を及ぼす可能性のある問題でございます。一方において、先般来伝えられておりますようにフランスからシュペールエタンダール機が来るとか、エグゾセが来るとかということに対してイラン側が緊張をして、ホルムズ海峡に機雷を投下するとかというような未確認情報も時々入って、そういう危険性もなきにしもあらずであります。このような中東地帯における緊張を一日も早く緩和して、世界政治及び経済が安定の方向に向かうことが非常に重要な要素であると考えております。特に中東地方は日本にとりましては死活的な影響力を持っておるところでございますから、できるだけ平和回復につきましても日本努力してまいりたいと思っております。  さきに安倍外務大臣がイラクにも参り、またイランにも参り、また特使も派遣をいたしました。この二つの対立している国の両方と今交流が行われ、話し合いが行われているのは日本だけであります。特にイランの場合はそうでありまして、日本だけであります。そこで、安倍外務大臣からイラン政府に対しましてもいろいろな働きかけをやっておりまして、イラン政府の側におきましても経済閣僚を最近派遣するやの情報もございますし、あるいは外務大臣日本に来るかもしれないという可能性もなきにしもあらずであります。一方、イラン側におきましても、日本に閣僚を随時派遣されており、また派遣される可能性もなきにしもあらずであります。特にイランのようなホルムズ海峡を制しているというような重要な国につきましては、常に対話と交流を開いておくということが重大でありまして、これと関係のできない自由世界の諸国も、日本に対して異常な期待を持っているというのが現実であります。  これは、我が国がイラン・イラク双方に対して今まで歴代内閣が築いてきた外交の結果でもありますが、これらを大切にいたしまして、できるだけ戦争をエスカレートしないように、そしてできるだけ局部的でもいいから停戦へ持っていくように、そういう方向で我々は積極的に努力してまいりたいと思っております。しかし、我々がこの仲介者とか調停者になるような力も資格も我々はあるとは思っておりません。そういうような戦争がエスカレートするのを防止する、あるいは両方が世界情勢全般を考えて和平の方向に動いてくるような環境づくりをやる、そういう面で今後も積極的に努力してまいりたいと考えておるところでございます。  次に、安全保障問題について御質問がありました。  ソ連の海空軍等による極東における兵力増強が潜在的脅威を増しているという御指摘は、私も同感であります。我々はこれを注目しておるところでございます。しかし、我が国の防衛は、まず第一に何といっても防衛以前に平和を確保するということが先決でありまして、貿易国家日本は、世界の一カ所でも戦乱が起これば日本の経済に対しては甚大な影響が出てくるわけであります。ですから、平和は日本にとりましては死活的な存立条件であると考えております。そういう意味から、総合的安全保障という考えに立ちまして、平和の保持につきましても努力し、世界の平和、地上の平和についても国際協力をもって行わんと考えておるところでございます。  当面の日本の防衛につきましては、すでに御説明申し上げましたように、節度ある防衛力を持って、憲法の範囲内で国是に従い日米安全保障体制を有効に機能させつつ防衛を全うしていく。まず第一に、やはり自国の国民の生命、財産、文化を守る、その基礎条件を最小限果たしつつ、その上に立って軍縮やあるいは核軍縮について積極的な努力を行いつつ、そして世界の軍備に向かうお金をできるだけ節約して発展途上国やあるいは飢餓その他に悩む国々の方へ回す、そういう人類的良心に立った政策を我々も追求してまいりたいと思っておる次第でございます。  次に、通信衛星の購入の問題でございますが、この問題は日米間の経済摩擦の一つの対象と言われてまいりました。しかし、お互いに今話し合いを進めておりまして、我々は我が国の国策に基づいた固有の衛星開発国策はこれを推進していく、しかし将来民間企業におきまして通信等に要する衛星購入の必要が出てきた場合にはこれも認める、そういう立場に立ちましてアメリカ側と今鋭意折衝もし、了解を得るように努力しておるというところでございます。  いわゆる付加価値通信VANにつきまして米国が懸念を持っておることは十分承知しておるところでありますが、今我々は通信制度全般の見直しの中におきましてどのように位置づけるかという点で検討しておるところでございます。もちろん国際水準というものを常に考え、相互主義の原則のもとに、できるだけ自由化し開放していくということは我々の基本的立場でございます。外国におきましても、この通信制度につきましてはある程度の規制あるいは保護を行っておる面もございます。我々はそういう外国のいろいろなやり方等もよく勘案をいたしまして、そして国際的水準あるいは相互主義というものを頭に置きつつ、できるだけ自由化していくという方針でまいりたいと思っております。  ソフトウエアの保護もこれから非常に出てくる大事な問題でございます。超LSIとかいろいろなそういうものが出現してまいりますと、ソフトウエアの価値というものは非常に大きく、飛躍的に上昇してきておるわけでございます。アメリカにおきましては著作権法でこれを保護する、したがってその保護期間がたしか五十年ぐらいに及ぶ。日本側の立場はいかなる立法あるいは法体系によってこれを行うか、今これを検討しておる、そういうところでございます。  ここでいわゆる特許権に類するようなものに考えますと、特許の期間はたしか十五年であります。そういう意味におきまして、アメリカ側の五十年と日本側の十五年というものの差がもう既にここへ出てきております。これらの問題につきましては、よく国内法全般を見渡し、かつ国際関係も考慮して、外国制度等も十分に調べ上げた上、将来これは重大な問題の岐路にも当たっておりますから、慎重に検討してまいりたいと思っております。  日米経済摩擦についてお話がございました。  いろいろな諸般の問題について経済摩擦があることは事実でございます。しかし、いずれにせよ、日米世界GNPの三割五分ぐらいを占めつつ太平洋の両岸に繁栄し、平和と安定の基礎になっているという、この偉大なる事実を損ねてまでも経済摩擦というものが影響を及ぼすようにすることは、政治家のとるべき態度ではありません。我々は大局的見地に立ちまして、日米の存在が世界の平和と安定のために果たしている機能を大局的に把握しつつ、両国間の具体的な摩擦その他の問題は話し合いによりまして大乗的に解決していくべきである、そのように考えて、今の問題につきましては二、三カ月のうちに解決すべく努力してまいりたいと思っております。  金融・資本市場の開放につきましてもやはりこれは同様で、原則的にはこれを自由化の方へできるだけ早く持っていきたいというところです。しかし、日本には郵便貯金制度とか独特の制度もございます。中小零細金融機関もございます。そういうものに対する影響等々も考えまして、それらに対する影響等を十分考えた上に立って、この自由化、開放化という問題を着実に進めていくという態度でまいりたいと思っておるところでございます。  次に、財政の問題でございますが、増税なき財政再建という臨調答申に示された方針はこれを守っていきたい、そういう考えでこれは一貫しておる次第でございます。  教育改革についていろいろ御指摘をいただきましたが、従来の文部省あるいは中教審がやりましたこの機能、貢献というものは相当高く私たちも評価し、その答申の中には非常に貴重なものがまだあると思っております。埋没しているものもかなりあるのではないかと思っております。それらのことも踏まえ、かつまた、今文化と平和の懇談会を昨年以来つくりまして、この三月に大きな方針のお示しを願うようにしておるわけでございますが、それらのものを踏まえまして、そして適当なときに、先般ここで御説明申し上げました法律案、機関の設置という問題に取りかかってまいりたいと考えております。  教育改革は、二十一世紀我が国を担うにふさわしい青少年を育成すべく、まず総合的、人間的な教育のあり方を探求する。そして国際国家日本国民にふさわしい教育の国際化を求める。そして、道徳性や社会性、純真な理想と強健な体力、豊かな個性と創造力をはぐくもうとする人間主義、人格主義の理念のもとにこれを進めてまいりたい。改革の全体構想につきましては、今検討しておりまする諮問機関における審議調査にまつところでございますが、やはり長期的展望のもとに慎重にこれを行う必要があると考えております。  先ほど申し上げましたように、文部大臣教育に対する立場というものは、各省大臣が自分の省務に対する立場とは非常に違っておるわけでございます。そういう独特の立場をよく踏まえまして、全国民の世論、あるいは各党各会派の御意見等も十分に勘案して、全国民的な支持のもとに国民の広場においてこれらを開拓していく、そういう考えに立って進めてまいりたいと思っております。  社会保障の関係でございますが、ヨーロッパ諸国における諸経験を他山の石といたしまして、我々はこれを推進してまいりたいと思っております。臨調答申に示されましたように、租税負担と合わせた社会保障関係負担率を将来においても現在のヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低い水準にとどめることが望ましい、そういう基本方針で臨みたいと思っております。  技術革新の問題につきましていろいろ御経綸を話していただきました。  私も、この技術革新の問題を非常に重要視しておる一人でございます。特に、高度情報時代というものを迎えますには、景気や経済の先導的な力を持ち得るものがこれらの分野における技術革新であると考えております。そういうような考えに立ちまして、単なるいままでのような改良的技術でなくして、先端的なあるいは創造的な技術の分野に日本の力を注ぐときに来ておるように思うのでございます。  次に、これらの技術革新の問題に関係いたしましてブーメラン効果等のお話がございました。また、自由貿易の推進等々に関する御質問もございましたが、やはり日本は国際国家でございますから、できるだけ開放性、自由性を持って各国に協力していく、そういう立場が基本的に望ましいと思っております。しかし、個々の産業の前途に対する問題につきましては、これは関係各省が業界等ともよく相談をし、かつまたそれらの関係各国との調整もこれを適切に行いまして、相ともに共存し得るような道を進めていく。日本はこれらの技術革新を相当スピードアップして、それを有効に行うことによって日本が持っておる技術を必要とする関係各国にこれを供与していく、そういうような立場をとっていくことがやはり望ましいと考えておる次第でございます。  ただ、貿易につきましては、自由主義あるいは自由貿易推進を我々は国是としておりますが、やはりECやその他との関係等も考えてみますると、集中豪雨的な輸出というものは一国の国民生活文化まで破壊する危険性なきにしもあらずという面もあるわけであります。それはヨーロッパ人と日本人の人生観の違う点もございます。そういう意味におきましては、深い思いやりを持ちまして、節度のある、自粛のある輸出というものを関係各国との間に考えていくことが結局は自由貿易を長期的に推進する大事な要素になってくるのだ、そのように考えまして、自制を持った輸出政策というものも各国ごとに適切に行ってまいりたいと思っています。  中小企業対策につきましては、我が国の中小企業を取り巻く環境は非常に変わってまいりました。また、中小企業は、技術的にも設備的にも非常に飛躍的に前進してきておるのが最近顕著な例でございます。これらの中小企業の新しい環境への積極的な対応を支援するために、技術対策の強化、金融対策の拡充、投資促進税制の創設等総合的な政策をさらに力強く展開してまいりたいと思っております。特に、発展途上国の追い上げの影響の大きい分野につきましては、新商品の開発、あるいは国内需要の開拓、人材養成、技術の開発等の支援につきましても、また地場・産地産業等につきましても鋭憲法律等に基づきまして努力してまいるつもりでございます。  研究管理等研究評価に対して御質問をいただきました。  これは非常に重要な問題の御指摘をいただいたと思っております。やはり研究費をいかにつけてやっても研究する成果が上がらない、あるいは方法が間違っているという場合には、非常に大きな損害を国家に及ぼすわけでございます。基盤研究、それから目的的研究、それから中規模、大規模研究等々、あるいは民間に適さない、官庁がまず負担してやるべき研究、さまざまな研究分野があるわけでございます。これらのものが総合的に一つのハーモニーを持って複合的効果を上げるように努力していくということが我々の政策でなければならないと思っております。  現在におきましては、総理府にあります科学技術会議が全般的な統括を総理の諮問機関としてやっておりまして、工学から医学から農学からあらゆる分野をカバーしてやっております。このような体系のもとに、各省庁が行っておりまする研究開発等につきまして遅滞や怠惰が生じないように常に刺激を与え、そして研究管理と研究評価を適切に実行していく必要ありと私も考えております。これらにつきましては、御指摘に従いまして格段の検討を加えてまいりたいと思っております。  最後に、政治倫理について御質問がございましたが、政治倫理は議会制民主主義の原点であり、国民信頼の上に民主政治は成り立っているものと考えております。さきの選挙における審判を厳しく受けとめまして、深い反省の上に立って政治倫理の確立に今後とも努力してまいりたいと思っておる次第でございます。よろしくお願い申し上げる次第であります。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇拍手
  11. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) お答えをいたします。  第一の御質問は、インドシナ情勢と、さらにカンボジア問題についてでございますが、カンボジア問題解決のためには、カンボジアに駐留しておりますところのベトナム軍隊の撤退とカンボジアの民族自決とを柱とするところの包括的な政治解決ということが不可欠でございます。我が国としましては、こうした考え方に立ちまして、立場を同じくしておりますASEAN諸国と協力しながら、その努力を引き続き支持してまいりたいと考えております。  ラオスでございますが、ラオスは、隣国のタイあるいはまた我が国を含むところの西側諸国との間にも友好関係維持に努力をしていると我々は評価をいたしております。こうしたラオスの姿勢にこたえて、また同国との伝統的な友好関係にもかんがみまして、我が国は今後ともラオス側の要請を十分踏まえながら、可能な範囲内で無償援助を実施していきたいと、こういうふうに考えております。  インドシナの他の二国との関係につきましては、ベトナムにつきましては、御承知のようにカンボジアに軍隊が侵入している間はベトナムに対しては経済援助をストップいたしておるわけでございます。またこの方針は変わらないわけでございますが、しかし、やはりカンボジア問題の平和的解決に応じるように、ベトナムとの外交関係が存在しているわけですから、粘り強く説得を続けていきたいと、こういうふうに考えております。カンボジアについては、ベトナムの武力介入を是認しない、こういう立場から、民主カンボジア連合政府、この政府との関係を今後とも維持していきたいと考えております。  次に、東ヨーロッパすなわち東欧の経済、金融の状況、さらにまたソ連と東欧諸国との関係の今後の動向をどう見るかと、こういうお尋ねでありますが、東欧諸国は、一九七〇年代前半に高度成長を誇りまして、西側から積極的にプラント等の設備を輸入しましたが、七〇年代後半以降、石油価格の高騰あるいは生産性の伸び悩み、世界経済の停滞等の要因によりまして、経済が不況に陥るとともに、対外累積債務が増加をし、ポーランドであるとかあるいはルーマニアに対しては西側諸国により債務繰り延べが実施されることになったわけであります。我が国も積極的にこの対外累積債務の解決には協力をいたしておるわけです。  こうした状況に対処するために、東欧諸国は規律引き締めやあるいは輸入抑制等に努めた結果、八一年を底に経済、金融情勢は全体としては改善の方向に向かっておりますが、しかし、本格的な好転は、東欧諸国にとっては依然として大きな課題となっておるわけでございます。これからが問題だと思っております。  以上に対しまして、ソ連、東欧諸国は域内の経済関係の強化にも努めておりますが、ソ連の東欧諸国への石油供給能力等にもおのずから限界があります。そういうことで、東欧諸国としては西側との経済関係の維持発展にも関心を有しておるものと考えておりまして、我が国に対しても積極的な協力要請が続いておる状況にあるわけでございます。  最後に、最近ソ連機の日本上空の飛来あるいは侵犯の事態をどう受けとめておるかという御質問でございますが、近年の極東におけるソ連軍の増強には実に顕著なものがあることは今さら申し上げるまでもございません。これに対して我が国としては強い懸念を有しておりまして、従来からこの懸念をソ連に対して累次にわたりまして表明してきたところであります。  御指摘のソ連機によるところの我が国領空侵犯につきましても毎年のごとく生ずるに至っております。極めて遺憾なことであると考えております。こうした領空侵犯が生じた際には、我が国としましては対ソ抗議を毅然として行って今日に至っておるわけでございます。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇拍手
  12. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず、総理からもお答えがございましたが、金融・資本市場の開放、自由化、国際化は、我が国の伝統とか歴史とかを踏まえまして、主体的に、しかも一方積極的に取り組んで、内外経済の伸展に柔軟に対処し得るような市場形成を図ってまいらなければならない、このように考えております。  そこで、その国際化の一つとして、御指摘のありました政府保証債の米国市場での発行の問題であります。この問題は、円の適正な対外価値の維持を図るという観点から、調達コストに留意しながら政府保証外債の米国市場での発行に積極的に取り組む、これを十月の総合経済対策で決めたところであります。したがって、今後はこれらの措置の着実な実施を図って調和ある対外経済関係の形成を図ってまいりたい。既にこのことはいわゆる準備中、こういう状態にあるということが言えると思うわけであります。  それから次の、財政再建の基本からしていわゆる赤字国債の借りかえ問題に対して御言及がありました。  これは第二次石油危機という予期せぬ事態の発生を契機として、経済成長率が大幅にダウンした。そうして税収の伸びも急激に鈍化した。したがって環境が大きく変化した。そこで、遺憾ながら従来の五十九年度脱却の実現は不可能となったという方針から、今後は特例公債の大量償還を行いながら一方で新たな特例公債を発行しているという状態になるが、今後の厳しい財政事情考えてみますと、この特例公債の償還財源の調達、すなわち持っていらっしゃる人には現金償還をするわけでありますが、その償還すべき現金の調達、これに借換債の発行を行わないという従来の方針は遺憾ながら見直さざるを得ないというふうに財政演説でもお述べいたしたところであります。  したがって、今後は、我が国経済の着実な発展国民生活の安定を図りながら財政改革を進めていくという観点から、借換債の発行という手段に対していろいろ工夫をしていかなければならぬということになるわけであります。そうなれば、そこで国債管理政策に支障を来すおそれがあるではないかと、こういう御質疑でありました。  確かに、この大量の国債の円滑な償還、借りかえのための方策については、これから十分、各局面において国民経済に円滑に受け入れられるような工夫、努力を重ねていかなければならぬわけでございますので、これからもそれこそ国債管理政策の適時適切な運営に努力をすることによってまた市場の拡大、安定化と、こういうことを考えながら対応していかなければならない重大な問題であるというふうな問題意識を持っておるところであります。  それから、今回の減税案におけるいわゆる三十五歳—五十五歳、そういう年代層の家計負担についての御言及がございました。  多人数世帯の生活のゆとりが相対的に小さいということに配慮をいたしまして、基礎、配偶者、扶養、この三控除を一律四万円引き上げて課税最低限の大幅な引き上げを行う、こういうことにしたわけであります。そして給与所得者控除といたしまして、給与収入三百万円以下の給与所得控除率の適用対象となる給与収入の範囲をおのおの一割拡大する。そしてさらに税率構造の点におきましては、よりなだらかな累進構造を実現する。そのようにして特に中堅層にかかる税率を引き下げる。そういう結果、中堅以下のサラリーマンの税負担は相当軽減されることになるということになります。  そして、まさにこの対象となる方々がいわゆる住宅ローンを抱え、そしてまたお子さんの教育問題を抱え、さらには年老いた両親を、これを扶養の義務を負う、そういう方々に当たるわけでございますので、これらの税負担の緩和に配慮して、今日の、これから御提案して御審議を願うところの法律改正等でその方向を明らかにするということになるわけであります。  以上でお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣河本敏夫君登壇拍手
  13. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) ブーメラン効果につきまして総理答弁に若干補足をいたしますと、この現象が起こるのは万やむを得ないと思いますが、しかし、特に留意をしなければならないのは国内 対策だと思います。特に中小企業に対する非常に深刻な影響が出てまいりますので、この点は十分具体的に配慮する必要があろうと思います。同時に、中進国のまねのできない新しい先端技術の開発、その分野で日本が積極的に進めていくということが非常に大切な課題でなかろうかと、このように思います。  それから第二の御質問は、三%成長、GNP三%成長で大体日本はうまくいくのか、いかないのかと、こういう御意見でございますが、第二次石油危機の厳しい影響を受けまして、昭和五十六年から五十八年まで大体三%成長が三年間続いておりますが、この間、失業率は相当高くなっております。過去の、失業の統計をとり出しましてからほぼ一番高い水準でなかろうかと、このように思います。それから倒産も非常に厳しい状態が続いております。特に中小企業の倒産が厳しい状態であります。それからなお財政危機という問題が起こっておりますし、さらに対外的には内需の不足から貿易摩擦が起こる、こういう現象等も起こっております。したがって、過去三年の三%成長時代、一言で言いますと不況である、こういうことでなかろうかと思うのであります。  そこで、やはりわが国の政策といたしましては、日本の持っております潜在成長力、これができるだけ高い水準で発揮できるようなそういう政策をとってまいりまして、その成果を国民に還元する、生活水準の充実向上に努める、また対外問題の解決にこれを使っていく、こういうことが必要でなかろうかと思います。現にアメリカはことしの目標は五・三%成長と言っておりますが、日本もことしは四・一%成長でありますけれども、潜在成長力が幾らありますか数字で正確にあらわすことはできませんけれども、今後の政策は、その潜在成長力ができるだけ高い水準に発揮できるような、そういう財政経済政策が望ましい、このように考えております。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣渡部恒三君登壇相手
  14. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 中山先生の御質問お答えさせていただきます。  医療費の適正規模の問題については、御指摘のとおり医療費は人口の高齢化等に伴い増加することが予想されておりますが、先ほど総理から御答弁がありましたように、臨調答申においても、租税負担社会保障負担とを合わせた全体としての国民負担率は、現在より上昇するとしても、高齢化社会においても現在のヨーロッパ諸国の水準よりかなり低位にとどめることが必要と指摘されており、一方、今後年金のための負担は相当に増加することが避けられないと見込まれることから、中長期的に医療費伸び国民所得の伸び程度にとどめることが適当だと考えております。  次に、医療費の適正化については、臨調答申初め各方面から強い要請が寄せられており、きわめて重要な課題であります。今回の改革案におきましては、不正請求や濃厚過剰診療の排除、薬づけ医療の是正等を図る上で当面必要と考えられる適正化対策を盛り込んでおります。これらの対策に当面全力を挙げ、その実施状況等を見た上で、必要があれば改めて対策を講じてまいりたいと思います。あわせて、健康管理、疾病予防対策の強化や地域医療供給体制の計画的整備等を進め、国民の健康水準向上に努めていく考えであります。  また、各地方自治体では家族給付の差額を自治体自身が政府独立してやっているが、本人九割、家族十割という矛盾をどのように地方へ指導するかという御質問でございますが、これら地方自治体による医療費補てんの問題については、それぞれの地方自治体が独自の政策的判断に基づいて医療費自己負担部分について支給する制度を設けておるところもあります。しかし、その措置が今回の本人十割給付の見直し趣旨を没却するような場合であれば好ましくないと考えております。  次に、医師、歯科医師及び薬剤師の数の問題につきましては、将来の需給バランスを見通した適切な養成が求められております。特に、御指摘のとおり、医師、歯科医師数につきましては、現状のまま推移すれば将来大幅に増加するものと見込まれます。このため、現在文部、厚生両省の間において、将来を見通した適正な水準について鋭意幅広い検討を進めておるところであり、できるだけ早急に結論を得て対処したいと考えておりますので、御了承をいただきたいと思います。(拍手
  15. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十六分散会      —————・—————