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1984-04-26 第101回国会 参議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十六日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  四月二十六日     辞任         補欠選任      浦田  勝君     吉川 芳男君      大城 眞順君     出口 廣光君      菅野 久光君     大森  昭君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         谷川 寛三君     理 事                 川原新次郎君                 北  修二君                 最上  進君                 村沢  牧君                 藤原 房雄君     委 員                 岡部 三郎君                 熊谷太三郎君                 坂元 親男君                 高木 正明君                 竹山  裕君                 出口 廣光君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 水谷  力君                 吉川 芳男君                 稲村 稔夫君                 上野 雄文君                 大森  昭君                 刈田 貞子君                 鶴岡  洋君                 下田 京子君                 田渕 哲也君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農林水産大臣   山村治郎君    政府委員        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        農林水産省構造        改善局長     森実 孝郎君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        林野庁長官    秋山 智英君        林野庁次長    後藤 康夫君        水産庁次長    尾島 雄一君        労働大臣官房審        議官       野見山眞之君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        防衛庁防衛局運        用第二課長    上田 秀明君        防衛施設庁施設        部連絡調整官   田中  滋君        外務省北米局安        全保障課長    加藤 良三君        林野庁職員部長  土屋 國夫君        林野庁指導部長  高野 國夫君        労働省労働基準        局補償課長    佐藤 正人君        労働省労働基準        局安全衛生都労        働衛生課長    福渡  靖君        労働省労働基準        局賃金福祉部福        祉課長      山口 泰夫君        建設省河川局防        災課長      狩野  昇君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○国有林野法の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付) ○国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定  措置に関する法律の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案国有林野法の一部を改正する法律案及び国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 村沢牧

    村沢牧君 林野三法についてわが党同僚議員からも二日にわたって質問を行ったところでありますが、私はこれを補足し総括する立場から質問いたしますが、最初に要請しておきますけれども、時間の関係答弁は簡潔にお願いしたいというふうに思います。  まず、保安林法改正案でありますが、保安林法を改正して保安林機能を発揮するために特定保安林制度を導入するについては、それにふさわしい助成措置を講ずるべきであるというふうに思います。補助金金融、税制の面等においてどのような対処をしたのか、また、今後どのように対処しようとするのですか。
  4. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) このたびの法改正によります特定保安林制度は、通常森林所有者が当然行われるような内容施業がなされないために、林相の粗悪化あるいは機能低下を来しておるということでございますので、私どもはこの内容としまして、実施すべき施業方法、具体的な規範を示しまして、最小隈の必要な施業管理を計画的に遂行しよう、こういうことであります。  したがいまして、その措置といたしましてはまず第一に、森林総合整備事業あるいは一般造林事業助成のほかに、特殊林地改良事業複層林造成パイロット事業、これらの事業につきまして優先的に実施を配慮すること。二つ目に、農林漁業金融公庫造林資金につきまして貸付対象林齢をこの分については二十年から二十五年に引き上げる、それから融資率を八〇%から九〇%に引き上げるというようなことによりまして積極的な活用を図ってまいる。それからもう一つ、本年からやることにしています重要流域保安林総合整備事業を初めとしまして各種の治山事業を積極的に実施してその内容整備を図ると同時に、林道事業につきましても優先採択をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  5. 村沢牧

    村沢牧君 特定保安林制度を導入したけれども、それにふさわしい名の補助体制ができたというふうに私は見受けられませんので、今後一層この充実を図ってもらいたい、そのことを要請しておきます。  そこで、特定保安林を指定するに当たって面積について、例えば何ヘクタール以上というふうに規定をするのですか。
  6. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 地域情勢によって違いますが、少なくとも五ヘクタールないし十ヘクタールぐらいの単位は最小限してまいりたいと考えております。
  7. 村沢牧

    村沢牧君 特定保安林はそんな大きなところだけ指定するのですか。
  8. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) その中に今度は要整備森林というものを具体的に取り出して、そこについてするわけでございますので、広がりの中から要整備森林としてそれを引き出して、そこに具体的な施業をさせるという仕組みになっております。
  9. 村沢牧

    村沢牧君 そうすると、その要整備森林面積が少なくてもいいわけですね。面積には規定ありませんね。
  10. 高野國夫

    説明員高野國夫君) これから法律の御審議が終わりまして、もし仮に成立した暁にはまた具体的にいろいろさらに詰めたいと思っておりますが、水源涵養保安林につきましては、大体平均しまして二、三百ヘクタールのところかなという心づもりでございます。なおそのほかの保安林につきましては、それぞれ大きさなどが違いますし、実態がまたそれぞれ異なりますので、それに応じました面積特定保安林を指定してまいりたい、このように考えております。
  11. 村沢牧

    村沢牧君 保安林改良事業について伺いますが、昨年まで実施をしてきた保安林改良事業大変地域でも好評であった。この保安林改良事業には災害関連整備事業劣悪林整備事業二つがあったわけであります。しかし、五十九年度に今話がありました重要流域保安林整備事業を新しく設けたことによって、従来の劣悪保安林整備事業が全体で三百カ所ぐらい箇所数が減ってしまった。この重要流域事業はその流域が決められておるし、採択基準も非常に大きい。従来のような小面積改良ではこれに当てはまらないということになってしまうわけです。新しい事業をつくって新規予算を盛ったならば結構だけれども、新しい事業をつくったことによって今までのいい制度がなくなってしまった。こういう制度に漏れたもの、採択されないものについては、例えばそのものが特定保安林であった場合にはどういうふうに救済していくのですか。
  12. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 従来の保安林改良事業は、先生指摘のとおり二種類がございます。その中で特に重要な流域につきましては、総合的に質的整備を図って機能発揮早期実現を図ろうということで今回重要流域保安林総合整備事業を制定したわけでございますが、これは今先生からお話がございましたように、一定規模以上の保安林対象として林相改良荒廃移行地整備のみならず下刈りから保育までやろうということで、これはそれなりの効果を私は発揮し得ると思っております。  そこで劣悪保安林改良のものは、私はこれはほぼ改良はなり得ると思いますけれども、ただ小規模の劣悪保安林につきましては、私どもはまず治山事業はやりますが、さらに従来やってまいりました劣悪保安林の中で採択し得るものはこの保安林改良事業実施してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  13. 村沢牧

    村沢牧君 災害関連保安林整備事業なり重要流域保安林整備事業で採択できるものは当然採択しますけれども、従来やっておった劣悪保安林制度採択基準がなくなってしまった。この仕事森林組合などがやるには一番適当な仕事なのです。しかもまだ、地域の小面積保安林改良についてできることは御承知のとおりであります。この制度はやはり全然なくしてしまうということは不合理だと思う。しかも、一度になくしてしまうことは不合理でありますから、将来何とかできるような方向で検討すべきだと思いますが、どうですか。
  14. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 保安林改良事業全体といたしましては、ことしは対前年比一〇九・二%でございます。しかも、今の予算事情が許す限り緊急度の高いものから劣悪保安林改良事業もやってまいりたいと考えております。
  15. 村沢牧

    村沢牧君 じゃその制度がなくても救済をしていく、そのように理解しておきます。  次に、分収育林制度についてお伺いしますが、分収育林制度を結んだ費用負担者はその山林事業収益金についてはどんな権利を持つのか、つまり、契約者はいつでもその山林に入って森林に触れ合い、あるいは山菜、キノコなどの採取をすることができるのかどうか、この辺はどうですか。
  16. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 今度の分収育林におきますところの費用負担者には、地上権であるとかあるいは賃借権のような権限はございません。山菜採取につきましては、これは地元との関係がございまして調整をとる必要があると同時に、これから私どもがやろうと考えておりますスギ、ヒノキの中齢林と申しますと、これはいわば山菜とかはその林地には大体生えないようなところが一般でございますので、私ども法的権利としてはこれは認めない考えでございます。ただ、費用負担者方々が、このねらいでございます縁資源整備充実に参画するという意識がございますので、やはり森林に親しみたいというそういう気持ちを我々も配慮いたしまして、国有林野事業管理運営上支障のない範囲で、地元公共団体あるいは住民の御理解を得ながら、対象地周辺レクリエーションの森あるいは国有林に御案内して森林に親しんでもらうという、そういう考え方で進めてまいろうと思います。
  17. 村沢牧

    村沢牧君 森林に触れ合い、しかも緑資源重要性からこういう分収育林を造成したのだという答弁が何回も繰り返されておりますが、今の答弁をお聞きしますと、その契約者当該山林に入ることはできない、別のどこかレクリエーション国有林の場所へ行って緑を親しむのだということになるわけですね。これでは今までおっしゃった答弁と違うじゃないか。つまり分収育林制度の主たる目的というのは、これを導入することによって国有林財政に寄与してもらいたい、そのことがねらい。そのことを言わざるを得ないのです。つまり、この分収育林制度は将来の収入先食いである。なるほど当面の資金繰りには都合がいいかもしらぬけれども、そのことが国有林財政健全化対策と言えるのですか。
  18. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 私ちょっと言い足らなかった点がございますが、当然のことながら体験林業ということで下刈りとか除伐その他いろいろ枝打ちなどやりたいという場合には、当然その森林に入ってやっていただくわけでございますが、山菜採取その他についてはということで今申し上げたわけでございます。  それから、この制度は、先生も御指摘ございましたが、緑資源確保という面からの国有林への協力ということを一義的に考えておりますが、と同時に、現在の国有林人工林大半がやはり若齢林でございますので、これらの森林管理につきまして、収入の先取りと申しますとなんですが、やはり平準化という面で非常に私ども国有林収入にも効果的でございますので、これを経営改善の一助にしてもらいたい、かように考えているところでございます。
  19. 村沢牧

    村沢牧君 言葉はどうあろうとしても、今まで成長した期間経費を見積もる、今後必要とする経費を見積もる、そして一定の金額を出して金を半分もらうのですから、これは今後かかる経費先食いですよ。私は決してこれが健全財政に寄与する国有林のあり方だとは思わない。そこで、そういう分収育林制度であってもその管理については林野庁が全責任を持って当たらなければいけない。そのためには契約者の不安をなくすためにも林野庁責任を持てる、つまり国有林野職員によってこれを管理すべきである、私はそのように思いますが、どうですか。
  20. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 分収育林にかかります樹木保育管理は、国有林地域施業計画に基づきまして的確に森林の取り扱いをするわけでございまして、当然これは国の責任実施してまいるわけでありますが、ただ事業実行形態につきましては、これはやはりその営林署を取り巻く情勢等がありまして一律に定められるべきものではございませんので、その営林署事業実行形態を踏まえながらそれぞれの分収林においてどちらの方法をとるかは選択されますが、いずれにいたしましても、国の責任におきまして適切な管理経営がなされますようにこれは詰めてまいるつもりでございます。
  21. 村沢牧

    村沢牧君 国の責任でやることは当然ですけれども、しかし契約者としては、実際だれが管理をしてくれるのかという不安もあるわけです。なるほど各営林署なり営林局実行方法によって決まるであろうけれども林野庁基本的な方針としては、分収育林制度については林野庁国有林野職員でもって管理をしていく、それが基本だと、そのことについてはどうなのですか。
  22. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) これは現地の営林署には当然のことながら、また担当区に職員もおるわけですから、その人たちが指導監督しながら、一部直営でやる場合もありましょうし、地域森林組合事業体等にお願いする場合もありましょうが、いずれにしましても計画実行基本は国が責任を持ってやってまいるということであります。
  23. 村沢牧

    村沢牧君 分収育林制度についてもこれから新しい施行方法等が決まるでありましょうけれども、その際は管理はどういうふうにするのか。私が申し上げたこと等もひとつ十分参考にして検討し、営林署に任せることは当然だけれども、第一に林野庁方針によってそのことが決まるわけですから、そのことを強く私は要請しておきます。  次に、この分収育林関連をして、官行造林について今後どういう方針でもってこれを管理していくのかということについてお伺いいたします。  問題をわかりやすくするために具体的な例について申し上げますが、強いて私はこの際、営林署なり村の具体的な名前は言いません。営林署がある村に対して官行造林契約を結んで今日まで施業した。この契約期間昭和三年から昭和七十四年まで七十年間の契約期間であります。ところが昨年、この営林署国有林収入を得るため、そのことが主たる原因であろうと思いますけれども、この村に対して官行造林をぜひ切りたいという申し入れをした。この面積は二十三・四ヘクタール、樹種ヒノキを主に若干のツガ、カラマツがある。樹齢は四十七、八年、蓄積は二千五十立米。これの収入見込みを評価すると千二百六十万ということになるのです。したがって、分収契約によって営林署が六百三十万、村が六百三十万という収入になるわけです。しかし、ここに問題があるわけなのです。つまり、六百三十万円を村が受け取っても、この伐採跡地施業する、造林をする、保育をする金が足らない。せっかく官行造林を今まで契約したけれども、それを受け取っても、ここでは後の施業ができないのです。しかもこの地域は、樹齢ヒノキが四十七、八年ではまるっきり細いものです。利用価値がない。材価も安い。そこで最終的にいろいろ話をした結果、切ることがいやだったら村が六百三十万出してくださいということで、その村は六百三十万出して官行造林樹木を買い取ったのです。  私は逆だと思う。仮にその村が金が欲しいから官行造林を切りたいと言っても営林署は、まだ契約期限もありますよ、伐期樹齢にも達していないからもう少し待ちましょうというのが営林署立場じゃないのか。こういうことを現実にやっているのです。官行造林は今後どういうふうに処分するのですか。なおまた、本年度はその隣村で約一億の金を出して官行造林を買ってくださいという既に話し合いが進められておるのです。どういうふうにしますか。
  24. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 官行造林地は現在大半保育作業を終わりまして、現在主伐期に達したものにつきましては収入対象ということで、大体毎年約三十億円前後の収入を得ているわけでございますが、私どもこの官行造林地の主伐期に達しました外分につきましては、国がこれまで造林投資してきた関係もございますので、収益分収をやるようにこれは指導しておりますけれども、相手方の方々伐採を希望しない場合等には、地域事情を配慮して国の持ち分を譲渡しているわけでございます。  いずれにいたしましても、これは契約者の相手の市町村十分話し合いをしまして、意向を十分お聞きして措置をしていくことをしておりますので、地元の町村との話し合いについては、もし強制のようなことがあればこれは遺憾といたしますので、十分配慮してやってまいりたいと思っております。
  25. 村沢牧

    村沢牧君 地元市町村の意見を聞くのは当然ですけれども、こういうことが現実に行われているのです。皆さんは承知していないのですか。皆さんがこれだけの収入官行造林から上げなさいという一定収入目標を出す、営林局に示す。営林局営林署に示す。そうするとこういう無理が来るのです。大臣、よく聞いてください。今まで長い年月をかけて国と村が施業してきたこの官行造林について、しかも期限が来ていないのです。まだ十何年、二十年もある。しかもその樹木は適正伐期時期じゃない。まだ小さいのです。それでも切らなければならないという国有林会計実態なのです。国がこんなことをしていいのですか。まるっきり契約違反じゃないですか。国民をばかにしたことじゃないですか。どういうふうに思いますか。
  26. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生の言われたことが事実であるとしたら、甚だこれは遺憾でございます。この実態をよく見まして、そしてまた、はっきり言えば国がもうしばらく我慢すればもっと利益が上がるわけでございます。そういうような実態を見た上でこれは長官ともよく相談しまして、ひとつ実態に即したような売却方法を考えていくように今後指導してまいります。
  27. 村沢牧

    村沢牧君 この官行造林も一種の部分村契約、分収育林とは言わぬけれども、同じことなのです。国が今までやってきたことを、こんなことをしておって、分収育林制度契約します、一体国のやることはどうなるかわからない、国民は信頼しませんね。分収育林制度を結んでも、将来国の財政いかんによってまた契約違反をやるのじゃないか、こういう心配が出てくるわけです。絶対にこんなことをやってはいけないし、そしてまた、官行造林についてもどういうふうに措置をしていくのか、改めて検討してもらいたい。分収育林制度についてこんなことを絶対やってはいけないですよ。
  28. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 分収育林制度につきましては、契約どおりにやることは国の当然のこれは責務でございます。したがいまして、今の御指摘の点については十分今後配慮してまいりたいと思っております。  なお、官行造林問題につきましては、そういう地域強制の及ぶようなことがあってはなりませんので、地元から要望がある場合はともかくとしまして、十分話し合ってこの問題については進めてまいりたい、かように考えております。
  29. 村沢牧

    村沢牧君 地元と十分話し合うことは当然ですが、国有林があったり官行造林地域がある市町村というのは国有林に弱いのです、営林署に弱いのです。国有林の金がないからひとつ切ってもらいたいと言えば、惜しいと思っても切らざるを得ない。切るのが嫌だったら金を出してくださいと言えば、そんな小さい過疎市町村で何百万も一億も金を出すのは容易なことじゃないですよ。無理をして皆さん会計へ納めているのです。国有林会計が赤字でも、こんなところまでしわ寄せさせちゃだめですよ。十分配慮してください。私は、国有林経営は、あるいはその施業資金も含めて国の責任において行うのが原則だと思う。民間資金を当てにする前に国の資金の繰り入れを図る、そのことが原則だというふうに思いますが、大臣どうでしょうか。
  30. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 国有林野事業というものが、緑資源確保を初めといたしまして、国民経済国民生活にとって極めて重要な役目を果たしておると私は思っております。そして、その使命を十分果たしていくためには、やはり経営健全性というものを確立していかなければならないというぐあいに思っております。私といたしましても、関係各方面といろいろ協議いたしまして、理解と御協力をいただきながら、今後国有林野事業改善に取り組み、少なくとも日本林業の模範となるような経営というものを確立していきたいというぐあいに考えます。
  31. 村沢牧

    村沢牧君 次は、改善措置法について伺います。  私は、この数年間、長野営林局を初めとして全国各地国有林に実際足を入れ、その実態について調査をし、改善策も求めてきました。こうした経験の中で率直に言えることは、国有林がこんな状態でいいかということなのです。私は時間がありませんから、具体的な事例について申し上げることは本日は省略いたしますけれども国有林改善するというために今回法律を提案したが、この程度の法律では国有林改善にはならない。私も立派な施業をやってもらいたい、いい国有林になってもらいたい、その熱望を持っています。ただ皆さん方の法案に対してあれこれ追及し、指摘するだけじゃない。そういう立場に立って以下質問いたしますけれども大臣国有林をよくしていきたい、その気持ちについて今お話があったところでありますが、もう一回大臣熱意を聞かしてください。私も随分国有林を見ています。
  32. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 私は、国有林というものが日本の国土の保全、水資源涵養等、いわゆるただ単に木材資源というものを生産するだけではなくて、公益的な機能というものも大きく有しておりますし、これは草に国有林というものを一林野庁、一農林水産省ということではなくて、やはり政府全体として育てていかなければならないというような気持ちでおりますので、今後とも熱意を持って取り組んでまいりたいと思います。
  33. 村沢牧

    村沢牧君 改善期間を六十八年まで延長することによって七十二年に収支均衡を図れるかという同僚議員の多くの質問に対して、大臣長官答弁は、頑張ります、努力しますと、こういうことに終始をしているわけなのです。七十二年収支均衡皆さんはこれは願望ですか、決意ですか、それとも実行性のある見通しに基づくものですか、はっきりしてください。
  34. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 最近におきます木材価格の動向であるとか、あるいは債務残高の累増というふうな事情を見てまいりますと、七十二年度に収支均衡達成というのは私どもも容易な目標ではないというふうにこれは理解をしておるわけでございます。しかしながら、一方におきまして、長期的にはやはり海外の森林資源が減少するというふうな見通しの中で、国有林伐採量が六十年代末から上昇に転ずるということもございます。したがいまして、私どもこの間鋭意自主的努力を一生懸命やりまして、それにまた、一方におきまして所要の財政措置確保し、また、経営改善の策定及び実施の過程におきまして、一般林政の充実強化にも全力を傾注しまして、経営健全性確保に努めて、七十二年度収支均衡が達成するように全力を挙げてやってまいりたいという決意であります。このような決意を持って、林野庁はもちろんでありますが、ただいま大臣からも御説明申し上げましたとおり、政府全体でこの経営改善に取り組むことにしておりますので、私ども七十二年度の収支均衡は不可能でないと考えております。目標として何としてもやりたいという決意でこれは実施してまいりたいと思います。
  35. 村沢牧

    村沢牧君 これが決意だということは、七十二年に収支均衡が図れるという自信ではない、絶対図れますということは言い切れない、こういうことですね、決意ですから。一生懸命やりたいという決意はわかります。わかるけれども、できるのかどうか。例えば、私ども法律を審議して、六十八年まで改善期間を延長する、七十二年に収支均衡を図るという法律でしょう。なるほど林野庁長官の決意は聞いた。果たしてできるのかどうか、法律審議していても不安でしょうがないです。それじゃ、改善計画を検討するについては、七十二年まで収支均衡ができるというその数字をここに示すべきだと思う。林政審の答申で林野庁は長期収支計画の試算を示したが、この試算は林野庁として自信と責任を持てるものであるのか。同時に、この試算を当委員会に提出すべきだというふうに私は思うけれども皆さんはこの試算を当委員会に提出して審議の参考に供することができるようなものか、そのことについて伺いたい。
  36. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 御指摘の試算でございますが、これは木材価格の上昇率、それから長期借入金の利子率、一般会計資金の受け入れ期間等各種の要素の変動が収支均衡年度にどのように影響を及ぼすかという観点から、部会の委員方々が要求されました前提に基づきましてこの長期収支見通しに関する試算をやったものでございます。したがいましてこの前提の置き方、組み合わせ方によりまして多種多様な結果が出てくるものであります。林政審議会におきましてはこれをもとにしましていろいろ検討された経緯はございますが、一つのものといたしまして公にすべきものかどうかという合意されたわけではございません。したがいまして、これをそのままここにお出しするのは私は適当でないと考えているところであります。
  37. 村沢牧

    村沢牧君 林政審には前提条件をつけて試算をつくって提出した、しかし、我が委員会には提出することができない、つまり自信がないということですね。林野庁がこんな自信のないような試算をつくって、それから林政審に出して検討してもらう。これは余りに無責任だと言わざるを得ない。この資料を参考にして林政審が国有林改善の方向、例えば、改善期間を五十九年から十年間延長すべきだというような答申を行う。これもまた権威のないものだというふうに思いますが、どうなのですか。
  38. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 七十二年を私ども経営計画改善の目標といたしまして鋭意努力してまいるわけでございますが、先ほど触れましたように、やはりこれはいろいろな各要素の変動が響いてくるわけでございますし、この審議会の先生の中におきましても、民間の常識からすれば資産処分、人員整理等早急かつ徹底的にやって早期に再建を図るべきである、目標は繰り上げろというふうな御意見もございました。一方におきましては、林業生産というのは超長期を要しますし、収支均衡の早期達成には一般会計からの繰り入れを当面大幅に増加させる必要があり、国家財政の現状からそれが難しければ七十二年度収支均衡にこだわることなく、むしろ先へ延ばすべきであるという意見もございました。今回の制度改革におきましては、七十二年度まではまだ十四年を残しておりまして、今後各般の自主的改善努力と適切な財政措置によりましては七十二年度収支均衡の達成も不可能ではないというふうに考えまして、これを目標として維持することにしたわけでございます。
  39. 村沢牧

    村沢牧君 そういう林政審からいろいろな意見があってあのような答申が出された。しかも、その答申を出す試算たるや、これは当委員会にも人様にもお見せすることができるようなものじゃない、こんなことに基づいて出した答申が本当に権威がありますか。
  40. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 重ねて申し上げて恐縮でございますが、いろいろの前提条件、各種の条件がそれぞれお互いにこれは関係し合ってくるものでございますので、目標というのはいわば私ども努力の目標でございまして、積み重ねというふうな形のものではございません。したがいまして、私どもといたしましては不確定要因が非常に多うございますし、一般会計からの繰り入れの問題、財投借り入れなども、これらの関係を一義的に現段階で見通すということは非常に困難でございます。また、林政審議会の答申におきましても引き続き検討を要する問題ということで、いわゆる不採算林地の取り扱いの問題であるとか、こういうものも非常にかかわりのあるものでございますので、固定的に長期の収支計画をつくることは非常に難しいという判断でございまして、あくまでもこれはいろいろな条件を前提としました一つの試算ということで御理解をいただきたいと思います。
  41. 村沢牧

    村沢牧君 長官答弁を何回聞いておりましても、なるほど七十二年収支均衡は決意だ、願望だと、それ以上は出ないわけですね。七十二年収支均衡は一生懸命努力するけれども、自信を持って図れるということは言えない、どうもそのような受けとめ方しかできないのです。  そこで、この法律が万一成立をすると、林野庁がこの法律に基づいて新しい改善計画を立てる。この新しい改善計画には七十二年を展望した長期収支計画を盛り込むのですか、それとも今お話がありましたような、林業をめぐる環境には不確定要素が多いから見通しは困難だというふうにおっしゃるのですか。あるいは、今から十年先の計画数値を決めることはかえって窮屈にするのであえて見通しは立てないとおっしゃるのですか。どういうことをするのですか。
  42. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 今後の収支の見通しなり計画につきましては、材価、賃金、物価、あるいは財投の借入金、こういった今後十年間を見通します場合の不確定要因が非常に多うございますし、また、収入の中には財政措置に伴います一般会計からの繰り入れあるいは財投の借り入れというようなものがあるわけでございますが、これらも物価、賃金、材価、財投金利などとの関係で一義的に現段階で見通すことはなかなか難しいということでございます。林政審議会の答申でいろいろ今後引き続き検討すべき課題の提起もございまして、そういったものともかかわってくることが考えられますので、固定的なものとして長期収支計画を数字を伴ったようなものとして作成することは難しいというふうに考えております。  また、御指摘のように、そのような計画を数字を伴ったもので確定をいたしますと、何分にも企業体として林業経営をやっておるわけでございますし、財政措置との関連その他も含めまして、将来かえっていろいろな意味で窮屈になる心配もあるというふうに私ども思っておりまして、両方の面から現在のところそういった数字的な収支計画を作成することは難しいというふうに考えております。
  43. 村沢牧

    村沢牧君 法律を改正して新しい計画を立てるのだ、その目的は先ほど来言っているように七十二年収支均衡だと。そうするならば、この改善計画の中に七十二年には収支均衡すると目標数値を示さなければ、行き当たりばったりじゃないですか。困難かもしれない、困難かもしれないのだけれどもこういうふうにしてやりますというその努力、その計画がなくては私は七十二年収支均衡などと言えないと思うのですが、できないのですか、やらないのですか。どういうことなのですか。
  44. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 現行法におきましても、七十二年度までに国有林野事業の収支の均衡を回復する、それによりまして経営健全性を確立することを目標といたしまして、五十三年度以降十年間の改善期間につきまして改善計画を定めまして、これに基づいて事業の運営をしてきたところでございます。  先ほどもちょっと触れましたが、したがいまして七十二年度の収支均衡目標につきましては林政審議会でも、もっと短縮しろ、あるいは延ばせという御意見がございました。しかしながら、私どもは七十二年度まではまだ十四年残っているわけでございますので、各般の自主的改善努力、さらには適切な財政措置によりまして七十二年度収支均衡の達成も不可能じゃないと考えまして、目標として維持することにしたものでございます。したがいまして、今後借入金の依存は、なるべくこれは借り入れない方がいいわけでございますので、厳に抑制し得るように自己収入確保と支出の削減等効率的な事業運営を行っていくことが必要でございます。私ども自己収入確保につきましては、昭和六十年代末までには資源的制約から伐採の増加は期待できないわけでありますが、林産物の積極的な販売戦略の展開、それから保有資産の活用、分収育林制度の創設等によります新たな収入源の開発等で対応すると同時に、六十年代末以降におきましては伐採量の増大に期待しているわけでございます。また、支出の削減あるいは効率的な事業運営につきましては、森林施業の合理化と投資の効率化、それから業務運営の簡素化、合理化、要員規模の適正化、組織機構の簡素化というものを推進してまいるつもりでございます。  このように自主的な改善努力の一層の徹底を図りながら、さらにはこれに加えまして所要の財政措置確保一般林政の充実強化に全力を傾注いたしまして経営健全性確保に努めまして、七十二年度の収支均衡の達成を期してまいりたい、かように考えているところであります。
  45. 村沢牧

    村沢牧君 いろいろ御説明がありましたが、聞いておりましても、やはりいろいろなことをやって改善をしようとする決意を一歩も出ないのですね。ですから五十三年度に立てた現計画でも長期見通しは立てなかった、したがって今後の新しい計画についてもそれは見通しは立てない、そういう御意見ですけれども、五十三年度計画が見通しもないまま場当たり的なことをやったから今日のこういう状況があるのです。新しい計画を立てる限りにおいてはしっかりした見通しと計画を持って進めるべきだと思いますが、どうなのですか。
  46. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 私ども非常に変動要因の多い中で固定的な計画を立てるということは、先ほど次長からも御説明申し上げましたとおり非常に難しく、むしろこれを窮屈なものにする面がございます。したがいまして、具体的数値が五年間程度出し得るものについてはそれなりに考えてまいりますが、七十二年度を目標とした収支というものにつきましては固定せず、また、改善計画におきましても固定的な計画をつくらない考え方で進めてまいりたいと思っています。
  47. 村沢牧

    村沢牧君 我が党は、国有林野の現状から見て改善期間をもっと延長しなさい、そして措置法の内容充実すべきだという意見を何回も申し入れをしてきました。しかし、政府はこうした私たちの意見を無視して今回のような法律改正をしてきた。私は、林野庁が林政審に示したこの試算、その前提条件になっている例えば木材価格は四・五%上がったらどうだ、賃金は三%、物価は一%上昇したならばこういうことになりますよというこんな試算はまじめに論議をする価値のあるものだなどとは思わない。したがって、そんなことを私は論議しません。こんな試算どおりいきません。論議してもむだなことだ。しかし、このことは論議をしないけれども林野庁として本当に七十二年度までに収支均衡を図るその根拠をもう一回示してください。決意じゃだめですよ、決意はみんな持っているのだ。
  48. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 私が先ほど御説明したことを重ねて申し上げることになるわけでございますけれども、やはり七十二年度までに収支均衡を回復するということを目標といたしましてやってまいったわけでございますが、これからも先ほど触れましたようないろいろの自主的改善努力をし、さらに自己収入確保を図り、また、所要の財政措置確保をし、一般林政の充実強化を図りながら、総合的に七十二年の収支均衡の達成を図るべくこれは努力してまいるということでございまして、具体的数字の根拠ということは、ここでは私ども固定的に申し上げることはしない方が今後の改善計画のためによろしいかと考えます。
  49. 村沢牧

    村沢牧君 申し上げない方がいいということならば、あるということですね。あるけれども、言わぬ方がいいということになるわけですね。まあいいです。  そこで大臣に、法律期限内に達成しようとする目標はある、これはぜひやりたい、その決意は理解します。しかし、どのようにして達成するかというこの根拠は言えないという。言えないのではない、ないのだ。たとえ目標どおりに結果としてはいかないことがあるかもしれぬ、あるかもしれぬけれども一定の目標を持つ、そしてこの法律を審議をさせる。どうなるかわからぬけれども、ともかく法律だけは通してくれという、こんな無責任な態度はないと思うのです。そんな態度じゃこれ以上審議は進まないじゃないですか。大臣もいろいろなことを経験していると思いますが、例えば時限立法で五年延長する、十年延長する場合には、五年後には、十年後にはこういうふうになります、しますから延長してくださいという前提がつくわけなのです。この場合には何にもないじゃないですか。ともかく努力してみます、やってみます、決意だけじゃないですか。大臣、どうですか。大臣答弁ですよ。
  50. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 長官からまず。
  51. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 申し上げさせていただきますが、今後の収支計画を立てるに当たりまして材価の見通し一つとりましても、これは今後の住宅政策の長期見通しというようなものがやはり基本になりましょうが、そういうものも現在ないわけでございますし、材価の見通しそれから賃金、物価、財投金利と非常に不確定の要因が多いわけでございます。また一般会計からの繰り入れの問題、財投借り入れの問題と、これらもいろいろ関連しているわけでございまして、一義的に現段階で見通すということは非常に困難だと私は理解しているわけでございます。  それから、先ほどのことを重ねますけれども、やはり林政審議会でも今後引き続き検討を要する問題というのが幾つかございますので、これも同時に検討していくことによって、またそれがいろいろ今後の施策に反映されるわけでございますので、固定的に長期的な収支計画を策定することは非常に難しいというふうに私は考えているわけでございます。
  52. 村沢牧

    村沢牧君 そんなような内容でありますから、後ほど採決のときには私はどうしてもこの法律に賛成することはできませんが、よしんばこれに賛成する皆さんがあったとするならば、これは七十二年にできるかどうかわからぬけれども、ともかく一生懸命やるということで法律は通したよということになってしまうわけですね。やはり法律というものはそんな無責任なものであってはいけないと思うのです。大臣、どうでしょうか。
  53. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 林政審の答申でも示されておりますように、自主的な改善努力とあわせて所要の財政措置を講ずることということでございますので、我々としては、今先生言われましたような一般会計からの繰り入れというような所要の措置というものもできるだけ努力してまいります。また、現在御審議いただいております国有林野事業改善特別措置法の中で改善期間の延長、それからまた退職手当にかかる財政措置と、いろいろこれは出ておるわけでございますので、これを一応退職、そしてまた期間の延長、これらを徹底しまして、そしてその他の問題につきましても引き続き真剣に検討してまいるつもりでございます。  また、国有林野事業経営悪化と申しますけれども、これは我が国全体を取り巻く林業の構造的な問題とも深くかかわっておるところでございますので、今後ともこれらの問題につきまして、答申に提起されておりますいろいろな問題とともにあわせて検討いたしまして、真剣にやってまいるつもりでございます。
  54. 村沢牧

    村沢牧君 その決意だけはひとつ理解しておきましょう。  そこで、十年を見通した計画はできないという答弁ですが、仮に百歩譲って五年後ならある程度見通しはできるのか。ということは、林政審答申も、前期についてはよく検討して林政審にも報告しろということにもなっているわけです。財政的な数値は言えぬとしても、前半期における立木、製品の販売数量はどのくらいになるのか、あるいは資産を処分すると言っているけれども、土地を初め資産の処分はどういうことになるのか、その二点について。
  55. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 御指摘のとおり、林政審議会では、十年先というのはなかなか見通しが難しいであろうけれども、今後五年くらいの期間につきましては、特に林野庁がみずからやろうとすればかなり確実にやれる事項についてはできるだけ具体的な目標設定をして改善に取り組めと、こういった御提言をいただいているわけでございます。  伐採量につきましては、国有林野事業経営基本計画というものがございまして、これで五十八年度から昭和七十二年度までの十五年間の総収穫量が定められておりまして、その年平均量は、当委員会でもたびたび御議論の出ておりますように、目下の国有林が置かれております資源的な制約等によりましてこれまでよりも減少せざるを得ない状況にございます。このため今後の伐採量につきましてはここ数年間漸減をいたしまして、それからしばらくの間千二百四十万立方程度で推移をし、昭和六十年代末以降、資源の充実に伴いまして伐採量が上向いていくといった円滑な伐採量の調整を図っていく考えでございます。五年後には千二百四十万立方程度の伐採量ということを私どもは現在事務的に見通しております。この改善計画を、この法律が成立をいたしました暁におきまして、林政審議会の意見を聞きながら農林水産大臣が定めてまいるわけでございます。この伐採量の数値につきましては、今後改善計画を審議する過程におきまして、現在私どもの考えでおりますところは、この資源整備の目標との関連もございますので、計画に盛り込むことになろうというふうに考えております。  それから、第二点の林野、土地の売り払いにつきましては、林政審答申の趣旨に沿いまして資産利用の見直しを行い、林野、土地の売り払いなどのほか、先ほど先生から御指摘を受けました官行造林の持ち分の問題あるいは分収育林といったようなものの収入等も含めまして、資産処分の全体として、五十九年度から六十三年度までの五カ年間に、過去五カ年間の林野、土地売り払い代及び官行造林収入の実績のほぼ三倍に相当する三千億円程度の収入確保するように努力をいたしたいというふうに考えております。  なお、改善計画におきまして数値の扱いをどうするかということでございますが、前半期についてできるだけ具体的な目標を設定するような提言もございますので、改めて審議会にお諮りをしなければなりませんが、これも、伐採量と同じく書き込むことになるものというふうに私ども考えております。
  56. 村沢牧

    村沢牧君 前半期で伐採量千二百四十万立米、現在は千三百二十万ですから減るわけですね。そのことを確認をしておきます。  今答弁の中で、新しい改善計画の中に、前半期についてはできるだけ伐採量等も具体的に織り込むという答弁だったわけですから、これは前の改善計画よりも一歩前進したものだというふうに私は受けとめておく。しかし、このような伐採量が減ってくる、この間には、林政審答申を尊重するということで要員整理もする。そういう中で、これは数字は示さぬとしても、前半期において国有林の財政は現在よりも好転をするのか、まだ厳しくなるのか、その見通しはどうなのですか。これは見通し、次長の感じでいいです。
  57. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 前半期、今後五年後の収支の見通しということでございますが、これも先ほど来申し上げておることの繰り返しになろうかと思いますけれども、木材価格の変動等によって左右される点が非常に大きいわけでございますが、自己収入確保の、先ほど申し上げましたような努力目標の達成に努力をしながら、また、林政審答申で打ち出されておりますような要員規模の適正化の努力というものを、たまたま五十九年度末に定年制が施行されるというようなことも含めて考えてまいりますと、現在、業務収入をもって賄い得ないような状況になっております人件費も、年々の賃金のアップをある程度織り込みましても絶対額として減少してまいるというようなことも見通されるわけでございまして、今日ただいまの収支よりは、自己収入確保等を通じまして収支を好転をさせてまいりたい、そのためのまた手だてをいろいろ凝らしていかなければいけないというふうに考えております。
  58. 村沢牧

    村沢牧君 今よりも収支を改善したいということは当然のことですけれども、十年間の見通しができないとすれば、せめて五年間くらいな計画を立てて、その計画に従ってやっていくということがなくてはいけないのです。外的要因が大き過ぎるといっても、全然見通しができない、来年のこともわからない、ましてや再来年のこともわからない、これでは何としても心細いのです。新しい計画を立てるときには、今ここで、五年後には赤字が減るのかどうかはっきり言えと言っても言えないことは私もわかっている。しかし、そのくらいのやはり見通しは立てなければいけないが、どうですか。
  59. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) ただいま次長から申し上げたことの繰り返しになりますが、収獲量あるいは自己収入のもとになります資産の売り払い、さらには要員規模というものにつきまして具体的に数字の出せるものは、前半五年間分は期間の計画としてやはり立てていかなきゃならぬと思っていますが、収支そのものにつきましては、例えば、非採算外分の取り扱いの問題その他もこれから検討していかなきゃならぬ問題等もあるわけでございますし、林政の拡充強化もこれから検討していかなきゃならぬ問題もございますので、なかなか、五年間につきまして収支を具体的に出すということは非常に私は困難だろうというふうに思っておるわけでございます。
  60. 村沢牧

    村沢牧君 十年はできないと言うから私は一歩譲っておるのです。せめて、林政審も答申しておるのだから五年ぐらいの見通しはつくってもらいたいと思います。まず無責任ですよ。じゃ、三年後はできますか。三年後のものでもそんなことじゃできないでしょう。三年後も五年後も見通しがなくて、法律を認めてください、こういうふうにしますと言っても、余りにもこれは無責任だ。強く指摘をしておきます。これ以上言っても長官答弁は同じことの繰り返しばかりやっているのです。前進しませんから、次に進みます。  皆さんが試算を出した、その試算のとおり改善計画を実施したとするならば、この改善における主な要素への影響度はどういうふうに考えますか、次長の方から。
  61. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 林政審におきましていろいろな前提条件のもとに試算を求められまして試算をいたしましたけれども、その中で、特に前提条件を動かすと収支均衡にどのくらい影響するかというような、いわば、そういう変数の持つ影響度というふうなものが議論されたことがございます。木材価格の上昇率が一%違ってまいりますと、収支均衡への影響は約二年程度違ってくるということに相なります。
  62. 村沢牧

    村沢牧君 もっとほかにあるでしょう。要素はそれだけじゃないでしょう。
  63. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 借入金利の負担の一%の変化は約一年でございます。  それから、償還期限の延長でございますが、現在は、造林資金二十五年、林道資金十年ということでございますが、これを仮に財投の長期貸し付けの中で一番現在償還期限の長いところに合わせるといたしますと、事業の性格等も考えまして、仮に造林資金を三十年、林道資金を二十五年というふうに償還期限の延長をいたしますと、これも収支均衡目標に約一年の影響が出てまいります。
  64. 村沢牧

    村沢牧君 要員規模、全部言ってくださいよ、出し惜しみしないで。
  65. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 要員につきましては、これもいろいろな影響度のほかり方があろうかと思いますが、職員の新採補充率一〇%の差というものは一年未満の影響でございます。  それから、一般会計の繰り入れの延長を、現行法では六十二年度まででございますが、仮にこれを七十二年度まで十年延長するというようなことを仮定いたしますと、収支均衡は約一年早まるというような影響でございます。
  66. 村沢牧

    村沢牧君 林政審にはいろいろな資料が出されたようでございまして、私もこの林政審に出された資料というものを持っているのですが、それを見ると、今の次長の答弁とは違っている。例えば、私の持っている資料によると、一般会計繰り入れが十年延長だとすると、これは一年、これは合っています。金利一%について、私の持っておる資料は二年なのですが、次長は一年と言ったわけだ。借入金の変更については、この資料は二年と書いてあるが、次長は一年だと言った。材価については三年になっているが、次長は二年だと言ったですね。要員補充率は、一〇%について、私の持っておる資料では〇・三年、二〇%について〇・六年と資料にある。これも林政審でどこかで論議された資料なのですね。どっちが正しいのですか。
  67. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 先生の今お挙げになられました資料は、先生がどこからお知りになられたのか私どもちょっと承知をいたしかねますので、私の推定に基づく御答弁になりますけれども、林政審議会では、先ほど申し上げましたように委員要求という形で委員方々がいろいろな前提条件を提示されました。今、私が申し上げました影響度と申しますのは、これこれこういう前提条件を組み合わせれば七十二年度の収支均衡という計算になるという試算につきまして、それをベースにして動かした場合の影響度でございますが、いろいろ検討の過程ではむしろ非常に収支均衡について厳しい前提条件を置いてみる。そして一般会計の繰り入れも、六十二年度までというような厳しい前提条件を置きましてやりますと、例えば収支均衡昭和七十年代の後ろの方にいってしまう。それを前に倒してくるためにはどういう要素をどういうふうに入れたらいいかというような議論をいたしたことはあります。この場合にははるかかなたの遠くにありますものを手前に持ってくる影響度ということになりますと、例えば金利などは複利で響いてまいりますので、そちらの方をスタートにして考えれば影響度が何年というのが大きく出てくるというようなことでございます。
  68. 村沢牧

    村沢牧君 いずれにしても、今次長が示した資料もこれは自信の持てるものじゃない、私が持っている資料も間違っているとも正しいとも言えぬと、どうでもできるわけですね。こんな資料をもとにしてこの改善計画がどうだこうだと林政審が論議しても、私は権限のあるものだと思わないですが、そのことは林政審のやることですから、これはさておきましょう。  もし、今次長が言ったことが絶対正しいとするならば、私がこんな質問をする前に、長期資産なりこういう資料を全部提出していてくれればいいですよ。じゃ私はあなたの提出した資料が本当の正しいものと認めてやっていきます。そういう資料を全然出さないからだめなのです。そんな審議に対する協力のあり方というものはないわけです。  いずれにしても影響度がこのようにある。この影響度を見ても、大体の答弁を聞いておっても影響度の強いのは木材価格だとか財政措置が一番大きいのだ。要員削減など自助努力はするけれども、これでもって国有林の健全な経営確保されるとは考えられない。したがって、最初から六十三年には四万人にしますなどとこんな方針を打ち出すのではなくて、国有林施業実態、民有林労働者の実態を見て慎重に私は検討すべきだと思うのですが、どうなのですか。
  69. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 要員規模の問題につきましては、林政審の答申におきましても、昭和六十年度末までに現行の五万五千人体制を約四万人の規模に縮減することを目標として要員管理を行うこととしております。これはやはり職員並びに関係労働組合の協力を得つつ努力してまいりたいと考えているわけであります。ただ、年々の具体的な運営につきましては、退職者の動向、それから省庁間の配置転換の推移その他各般の事情を慎重に考慮しまして決定してまいりたい、かように考えているところであります。
  70. 村沢牧

    村沢牧君 要員規模については、林政審からそういう答申も出されておるので、これを尊重していかなければならないであろう、しかし、毎年の運用については、各般の事情を慎重に考慮して決定していきたいというような趣旨の答弁ですが、慎重に考慮して決定をするということは、関係する労働組合等の意見も聞いて対処していく、そのように理解しておきますが、よろしいですね。
  71. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 理解協力を得られるように努力してまいりたいと思っております。
  72. 村沢牧

    村沢牧君 ですから、慎重ということは重要な意味を持ちますから、以後もそのように取り扱ってください。  したがって、自助努力によってこの国有林の健全化を図っていく、しかし、今申し上げましたような、お聞きになりましたような要素の影響度から見て、国有林財政をよくしていくためには何といっても財政措置、あるいは一般林政の充実だ。そのための新たな施策の展開がまず何よりも必要だというふうに思いますけれども、これは大臣、ひとつ答弁してください。
  73. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 今先生言われました国有林野事業改善のため、これは何といっても自主努力が必要でございます。しかし、今先生が言われました財政措置というものもこれはあわせて行っていかなければならないというぐあいに考えております。そして、その財政措置につきましては、今御審議いただいておりますこの国有林野事業改善特別措置法によりまして改善期間の延長、そしてまた退職手当に係る財政投資、また、一般会計からの利子の手当というようなぐあいにやっていくわけでございますが、しかしそのほかの問題につきましても、その方策につきまして、この法案を御審議いただきました後でも真剣に引き続き検討してまいるつもりでございます。そしてまた、国有林野事業経営悪化というものは、これは日本のいわゆる林業全体の構造的問題とも大きくかかわる問題でございますので、これらの問題につきましても、林政審の答申で提起されているいろいろなことにつきましてあわせて検討してまいりたい。この問題について、これは林野庁農林水産省ということだけではなくて、政府を挙げて真剣に取り組んでまいるつもりでございます。
  74. 村沢牧

    村沢牧君 いろいろお聞きをしてまいりましたけれども国有林を本当に改善をする方途は何か、私はそのためにはまず国有林の使命というのをもう一回振り返らなければならない。  申すまでもありませんが、国有林の使命は、一つには公益的な使命を持っている。一つには林産物の供給である。一つには農村地域へ寄与することである。したがって、国有林改善もこの使命を達成するものでなくてはならないけれども、どうなのですか。
  75. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 国有林野事業の使命は、今先生からお話がございましたように、林産物の計画的、持続的供給、国土保全、水資源涵養等森林の有する公益的機能の発揮、それから農山村地域振興への寄与等、国民経済国民生活の上で非常に重要な使命を担っているわけでございます。  そこで、私ども新たな改善計画におきましては、この国有林野事業改善特別措置法の一部改正が行われました後に、これは関係行政機関の長に協議すると同時に、林政審議会の御意見も聞きましてこれが策定されることになるわけでございますが、経営改善実施の過程におきましても、これらの使命を十分に果たすように努力していく必要がございますので、新たな改善計画におきましてはこれを明確に盛り込んでまいりたいと考えておるところであります。
  76. 村沢牧

    村沢牧君 法律ができて、新たな改善計画をつくる際には国有林の使命を明確に考えて盛り込んでいくというような答弁ですが、私はそれだけでは足らぬと思う。国有林野改善計画の使命が国有林の使命を達成するならば、まずこの法律の目的に、この使命を達成するために改善計画を以下どのようにやるのだということを明記すべきだと思うのです。答弁は要りませんから考えておいてください。  国有林は公益的機能を持っている。この公益的機能を持つ保安林、自然公園、公有林地は全国有林面積の五割以上に及んでいるわけなのです。これらの多くは制限林だと。木材生産は少ないけれども公益的な立場から投資をしなければならぬし、管理もしなければならない。こうした非採算林も今後とも林野庁管理し、国有林野会計の中で処理していくという決意ですか。そのことがまた望ましいですか。
  77. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 先ほど使命を申し上げましたが、先生指摘の国土保全、水資源涵養、自然環境の保全形成、あるいは保健休養の場の提供という公益的機能の発揮も非常にこれは重要な使命の一つであるわけでございます。したがいまして、今お話が出てまいりました、公益的機能は高いけれども収入確保には結びつきがたいいわゆる非採算林分と言われる林野につきましても、私は他の経済的な外分と一体といたしまして、国有林野事業特別会計の中で管理経営していくことが適当であると考えているところであります。
  78. 村沢牧

    村沢牧君 公益的機能の強い非採算林についても今後とも林野庁管理をしていく、私もそうあるべきだと思う。しかし、そうだとするならば、その公益的な部分に関する費用というものはもっと他から求めでいいのではないか。例えば、一口に言って国有林の一年間の財政約五千億、立木伐採が三千億、借入金が二千億、その間に百億ばかりの一般収入がある。百億なんからょろちょろとしたものです。F15なんか一機幾らするのですか。一機百十五億するのですよ。それしか一般会計から入っていないじゃないですか。したがって、林政審答申も、国有林機能区分を行って、経理区分のあり方についても早急に調査検討しろというふうに言っているのです。林野庁はこうした答申を受けて、ことしの予算に調査費を盛っておるようですけれども、これはいつまでにはっきりするのですか。
  79. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 合いわゆる非採算外分の御指摘でございますが、これは確かに私ども相当保有しているわけでございまして、この適正な管理経営を行うとともに、その管理経営に必要とする費用につきまして、経理分担のあり方をどうするかという問題を解明していくことが今後の国有林野事業改善の上から極めて重要であると私どもも考えております。しかしながら、この問題につきましては、森林をどう区分するかというような問題、それからいわゆる非採算外分管理体制をどうするかという問題、それからその森林施業方法はどうあるべきかというような問題、さらには受益者負担の問題等、これからこれを具体化していくためにはいろいろ問題が実はあるわけでございます。  そこで、五十九年度におきましては、まず公益的機能の高いところの林分が対象になるわけでございますが、調査をいたしまして、さらにこの調査の結果を踏まえて検討をしなければならないわけでございますので、答申にもこの問題については早急に調査検討を進める必要があると指摘されておるわけでございまして、できるだけ早くこれをやらなきゃいかぬわけでございます。現段階ではいつまでに結論出すというようなことはちょっと申し上げられないわけでございまして、まずは、これは五十九年の実行を踏まえてさらに検討してまいりたいと思います。
  80. 村沢牧

    村沢牧君 長官が今おっしゃったようなことは、林政審答申で言われたからやるのじゃなくて、そんなことは皆さんがもうとっくにやっていなきゃならないことなのです。答申を受けて一千万の予算を持ってこれから調査をする。皆さんが自助努力によって前向きに努力するのだったら、そんな調査なんか一年間でやってしまうべきだ。ことし一千万もらったけれどそれじゃできない、また来年も何千万かもらう。国家財産はそんな余裕がないわけなのだ。ことしじゅうにやってしまいますか。どうなのですか。
  81. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 先般も参考人の方が、これは非常に難しいというふうに学問的にも言われているように、なかなか不採算林の問題は動的な要素で決まってくる面がございますので、潜在的な森林の持つ機能というものをもとにしてやっていくこともこれから検討しなきゃならぬことでございますが、いろいろこれについてはさっき触れましたような幾つかの問題がございますもので、一年で結論を出すというような簡単なものではないだけに、これはぜひともこの点については御理解をいただきたいと思います。
  82. 村沢牧

    村沢牧君 そういうのが前向きでないと言うのです。自己努力でそういうことはできるのじゃないですか。しかも予算をつけておるのじゃないですか。それが自己努力と言うのです。本当に皆さんがそういう調査をして他会計から導入をしてくるとなるとすれば大事な資料なのです。そしてその調査結果に基づいて一般会計から導入するという根拠が出てくるのです。それを早くやらなきゃだめじゃないですか。  ですから私は、その調査結果によって、公益部分についてはなるほど林野庁の特別会計で負担しては無理だという結果は出るでしょうけれども、出たら、そのことは一般会計から導入をしていくのだと、これははっきりした決意を持たなければいけない。これは今答弁できないでしょうから、強く指摘だけしておきます。  次に、森林レクリエーションに要する費用だとかあるいは造林実施費用について、私は、これも一般会計その他、他の資金を導入すべきだと思いますが、どうなのですか。
  83. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 森林レクリエーション事業と申しますのは、公益性があると同時にやはり収益性を有する事業でございます。したがいまして、直接一般会計の負担を求めるというのは非常に難しい点がございます。  そこで、施設の整備であるとか事業の運営等につきましては第三セクター等を積極的に活用しまして、施設整備費の削減やあるいは貸付料の収入の増大を図るということでしているわけでございますが、最近の結果におきましても、逐次その収益性はよくなってきているわけであります。  以上でございます。
  84. 村沢牧

    村沢牧君 レクリエーションに要する事業あるいは造林資金についての他の資金の導入については、どういう考え方を持っているか。
  85. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 次に、保安林以外の造林でございますが、一般会計資金を導入することにつきましては、これは民有林におきます助成との均衡もございまして大変難しい問題でございます。部分林制度等を活用しまして民間資金の導入等も図ってまいらなければならない、かように考えておるところであります。
  86. 村沢牧

    村沢牧君 次に、財投からの金融措置について伺っておきます。  これも多くの議員から質問があったのですけれども、後藤次長の答弁は極めて消極的である。林政審答申も、検討しろということを指摘しているのですから、もっと前向きに検討しなければいけませんが、具体的に何をどうしようとするのですか、簡潔に答弁してください、時間がありませんから。
  87. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 私どもこれまでも償還期間の延長問題については検討はしてまいっております。なかなか他の財投対象事業との均衡等から実現ができないでおるわけでありますが、今先生指摘ございましたように、林政審答申でもこれは指摘されておるわけでございますので、償還期間がどのくらいとするのが適当であるか等の問題を含めまして、今後引き続いて検討していかなければならない、かように考えているところであります。
  88. 村沢牧

    村沢牧君 そういうことは、検討は自己努力でできるのです。相手があるなら交渉もしなければいけませんが、皆さんが検討するのだったら自分の努力でやれる。自己努力というのはそういうことを指すと思います。  そこで、私はこの際、国有森に限らず林業資金について一言要請をしておきたいと思うんです。例えば、農林漁業金融公庫造林資金の貸し付けの最高限度は四十五年です。ところが、四十五年という期間は今の林業の実態に合っていない。なるほど金を借りて四十五年たったけれども、その木材は切れないのです。この法律制度をつくった当時においては、除伐や間伐を行うその間に収入があるであろうから四十五年でもいいと思ってつくったけれども、今除伐、間伐は恐らく収入にならないです。ですから、償還期限が来たその当該山林の木材は伐採することができない、他から金を借りて返さなければならないという実態が起きているのです。ですから、この林業資金全般について見直しをしなければならないと思いますが、どうなのですか。内容の説明は結構ですから。
  89. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 私どもは先ほど先生指摘の四十五年というのは大変これは努力したつもりでございますが、まだだめだという御指摘でございます。ただ、国家財政の非常に厳しい中で私どもは今後、農林漁業金融公庫資金あるいは林業改善資金、国産材産業振興資金の融資条件の改善とかあるいは林業金融充実強化については、大変厳しい情勢下でありますがさらに一層勉強してまいりたいと思っております。
  90. 村沢牧

    村沢牧君 検討だか勉強だか、私はその使い分けがよくわかりませんが、しかし、長官全国各地の林業団体や森林組合がぜひ延長してくださいという陳情を何回もしているわけです。長官、御存じないですか。四十五年では現実困るのです。ですから、この期限実態に合わして延長すべきである。これは勉強じゃなくて、勉強はもうしていると思うから、前向きに検討してください。お願いいたします。  私は今、国有林改善について幾つかの問題について指摘をいたしましたが、真に国有林改善するためには、我が党が要求しているような、後ほど提案いたしますが、法律そのものから変えていかなければならない。そして、私どもの意見も取り入れて立派な法律にしてもらいたい。そのことをこの段階で強く要請をしておきます。  そこで、次は林業労働問題ですが、国有林の実行形態として請負を執行しているわけなのですが、率直に言って、民間の林業労働者、民間林業にはその受け皿があるというようにお考えになりますか。今の老齢化しておる、数の少ない実態の中から、これから十年もたったらどうなってしまうか、なくなってしまうのじゃないのですか。それでも請負の受け皿があるというふうにお考えなのですか。
  91. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 私どもは、林業事業体は国有林、民有林を通じました今後の林業の担い手であるわけでございますので、今後この林業労働力の育成確保につきましては、各地の林業施策の振興対策を通じまして、まずは雇用機会を増大するということを基本にいたしまして、就労条件の改善とかあるいは若年労働者の確保に一層努力していかなきゃならぬと思っておるわけです。  そこで、現在国有林につきましては、事業体としましては千三百七十九事業体がございます。今後、地域林業の担い手としてこれを育成強化することが非常に重大なことでございますので、まずは一般林政におきますところの経営基盤の整備ももちろんしなきゃいかぬわけでございますが、同時に国有林野事業といたしましても、計画的に請負事業の発注をするということを通じまして経営の安定強化に、さらには労務改善に関する指導を一層強化いたしまして、その内容充実していこうと思っています。もう一つは、やはり働く場を多くするということになりますと、国有林におきましても素材生産と造林事業を組み合わせるとか、あるいは特用林産物の資材を供給して内容を多角化させるとか、あるいは林業事業体の協業化を推進するとか、いろいろそういう意味でこの事業体の長期的な安定強化に資するようなことを鋭意進めてまいりたい、かように考えているところであります。
  92. 村沢牧

    村沢牧君 先日、参考人の調査をした際、ある学者の先生は、国有林のこういう実態の中から、民有林労働者の組織化を国が積極的にするべきであるという意見があった。私はある面において拝聴すべき意見だと思う。長官は先ほど、新しい機能区分をしておったら、参考人は難しいということを言ったというような余分な答弁あったわけです。こんなことはかり聞いておるのじゃなくて、もっといいことを聞かなきゃだめなのです。どうなのですか。
  93. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 私ども林野庁といたしましても、森林組合を初め林業事業体の健全な育成を図る中で、民間の林業労働力の組織化問題というものは大事なことでございまして、私ども国有林野事業としましても、健全な林業事業体の育成を図っていかなければならぬということでこれまでもやってまいっておりますが、さらに今後ともこれについては進めてまいらなければいかぬと思っているわけです。特に請負実行に係る林業事業体の登録制のより一層の整備の問題、それから、計画的な発注によりまして経営の安定強化をしていく、それから責任執行体制を確立させていく、さらには労務改善に関する指導を一層強化してこの内容を安定的なものにしていかなければならない、かように考えておるところであります。
  94. 村沢牧

    村沢牧君 林業労働の問題については、いずれまた時間を改めてもっと細かく要請もし、審議もいたしたいというふうに思います。  労働省にお聞きしますが、民有事業実態については私が詳細に申し上げるまでもなく低賃金である、あるいはまた労働条件も劣悪だと、このことは皆さんもお認めになるというふうに思いますけれども、民間林業労働者の雇用の確保あるいは社会保障、振動病を初めとする労働災害対策に今までも取り組んではおるけれども、もっと積極的に取り組むべきではないのか。こうした問題について一定の義務づけを行う、指導の徹底を図ることが必要ではないかと思いますが一どういう取り組みをし、今後どういうふうにしようとされるのですか。
  95. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 林業労働対策の雇用面につきまして申し上げますと、御承知のとおり雇用関係が必ずしも明確ではない、あるいは季節労働等によりまして、まず大事なことは雇用関係の近代化ということではなかろうかと思いまして、その面では林業における生産基盤の整備あるいは経営基盤の整備農林水産省のお進めになっている対策と連携をとりながら、労働省といたしましては、雇用条件の改善指導、あるいは通年雇用を目的といたしまして通年雇用奨励金等の制度の活用、さらには若年労働者の確保という意味から、職業安定機関と学校等が連携いたしまして、林業地域における林業に関する職業情報を提供するというような面で雇用の改善に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  96. 村沢牧

    村沢牧君 その他労働災害。
  97. 福渡靖

    説明員(福渡靖君) 振動障害に関しまして、予防それから治療両方にわたる総合対策について御説明を申し上げます。  振動障害対策につきましては労働省も一つの重点事項として取り組んできておりますけれども、林業関係につきましては、まずチェーンソーの規格の制定、それからこれに伴いますチェーンソーの低振動化及び低振動チェーンソーの普及、それからチェーンソーを使用する場合の作業管理対策の推進、それから委託巡回方式による健康診断の実施による受診率の向上及び健康診断の実施結果に基づく健康管理の推進、それからチェーンソー取扱者に対する特別教育の実施等、これは予防対策としてこういうものを推進をしてきております。  それからさらに、これらの作業管理の徹底につきましては、事業主、労働者、行政機関と林業関係者による林業振動障害防止対策会議を林業関係都道府県段階で設置をして、その周知徹底を図るということをしてきております。  それから、振動障害に対する補償面でございますけれども、まず業務上外の認定につきましては、認定基準を定めましてそれを運用しつつ、さらに専門医等の意見を十分に聞くようにいたしまして認定の万全を期してきておるところでございます。  また、治療につきましても治療指針を示しまして、振動障害の治療を十分に行う、また療養期間中は療養に専念するように適切に指導してきておるところでございます。  休業補償給付につきましても、その支給要件の確認を的確に行うなどによりまして給付の適正化を図ってきております。  さらに、林業において振動障害に罹患されました被災労働者の方で、療養の結果振動障害の症状が軽快いたしまして、振動業務以外の一般的な労働が可能と認められるようになった方々の就労の機会を確保するという観点から、都道府県労働基準局に林業振動障害者職業復帰対策協議会を設けております。さらにこれを徹底するためには、関係の労働基準監督署に地区協議会を設けて、さらにその徹底を図ってきておるところでございます。  さらに、この振動障害につきましては、林業以外の業種にもだんだんと広がってきている状況を踏まえまして、昭和五十六年度から振動障害総合対策を立てまして、さらに広く周知徹底を図り推進に努めてきておるところでございますが、五十九年度からは第二次総合対策を立てましてさらに推進をしていきたい、このように考えているところでございます。
  98. 村沢牧

    村沢牧君 よく経過についてはわかりましたが、また時間を見てそれらの話し合った項目について質問をさせてもらう機会をつくりたいと思いますが、より積極的にお願いします。  そこで、最後になりますが、民間林業労働者の退職金の共済制度の見直しについて一点だけ伺っておきます。  この制度は資本金が一億円以内、労働者が三百人未満というふうにたしかなっていると思いましたが、現在林野庁の指導よろしきを得て広域森林組合というのができまして、やがて一億の資本金になろうとする森林組合があるのです、三百人を超えようとする雇用者ができてきているのです。そうするとこの対象にならないということになるのですが、これはやはり見直しをするべきだと思います。どうなのですか。
  99. 山口泰夫

    説明員(山口泰夫君) お答え申し上げます。  御指摘の林業退職金共済制度はほかの中心的な退職金共済制度と同様に、中小企業の雇用者を対象とするということで、いわば国の中小企業対策の一環として行われるものでございます。その観点から、その範囲も中小企業基本法に合わせているところでございまして、御指摘のとおり資本金一億円以下または従業員が三百人以下のいずれかの条件を満たしていれば対象となるということになっております。お尋ねのように、合併等のことによりまして中小企業の要件を満たさなくなりました場合は、原則としてはこの制度契約が解除されるということになるわけでございますけれども、ただ、契約を解除するということが被共済者に非常な不利益を与えるというような場合につきましては、労働大臣の承認を受けることによりまして、引き続いてこの契約に残ることができるということになっておりまして、御指摘のようなケースも制度の運用によって十分に対応できるのではないかと我々は考えている次第でございます。
  100. 村沢牧

    村沢牧君 最後に申し上げます。  林業労働者対策についてもいろいろと答弁もあったわけですが、私は、林業労働者の雇用を確保する、社会保障をよくしていく、さらには確保していく等々もっとやはり法的な立法措置を講じなきゃいけないと思うのです。我が党は既に当参議院に対して林業労働法というものを出しているのです。皆さんは余り耳を傾けませんが、やがてこのことは必要になってくるので、我々が議員立法で出すよりも、皆さんの方から率先して出すような前向きな検討をしてもらいたいことを強く要請して、私の質問を終わります。
  101. 下田京子

    ○下田京子君 国有林野改善特別措置法の問題で、前回に引き続きお尋ね申し上げます。  私は、前回の質問の際に、今日の国有林事業経営悪化の問題で具体的にお話をいたしました。特にこの経営悪化を正していく上で一般会計からの繰り入れの大幅な増額と、それからまた借入金の金利の引き下げです。こういった抜本的な改善というものをとらないでは、これはまさに行き着くところはサラ金財政、つまり収支均衡ということだけを努力目標にして、結果としてはより一層の財務悪化を招くだろう、そしてその行き着く先は人員の大幅削減、そして事業の縮小、さらには国有林事業の民営化というふうなことになりますよということを指摘いたしました。特に人員の削減の問題についてお尋ねした際に、現行の五万五千人体制を六十三年度までに四万人にする、さらにその後は六十三年時点の経営改善状況を見て考えたい、こういう答弁がたしかされていると思うのです。  ここでお尋ねしたいのは、つまりはこの六十三年度時点で財務状況が好転すると見ているのかどうか。私は、この時点の見通しという点では、伐採量は年々減少していくし、それから材価もそう急に上昇するということは見込めないと先般長官も言っております。しかも、借入金の償還や支払い利子は年々累増していくというふうなことを申し上げておるのですが、六十三年時点で一体どういうふうになると見ておられるのですか。
  102. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 昭和六十三年度におきます財務状況につきましては、伐採量の減少、退職者の急増による退職金の経費の増、累増する長期借入金にかかります支払い利子、償還金の増大という要因が引き続き継続すると見込まれますので、依然として厳しいものが予想されるわけでございます。
  103. 下田京子

    ○下田京子君 依然として厳しいという状況、その時点で現行の五万五千人を四万人にしてまた見直すということですね。ということは、七十二年度の収支均衡という約束手形を出しているわけですから、結局詰まるところは、臨調や林政審の答申の方向に向かっていわゆる経営改善なるものをやっていけば、残るのは要員の削減、これをもっと思い切ってやりなさいということになるのじゃないだろうかと私は心配しております。このことについて毅然としてはねのけていくという決意がおありなのでしょうか。
  104. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 私どもは林政審の答申を踏まえまして、昭和六十三年におきまして現在の要員規模五万五千人を四万人の規模に縮減を図るということで、これは要員の縮減をしながら経営改善をさらに一層進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  105. 下田京子

    ○下田京子君 ちょっとあれでしたが、確認したいのですけれども、人減らし合理化はどうなのですかと聞いている。
  106. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 今申し上げましたのですが、五万五千人の体制を六十三年度におきまして四万人の規模にしてまいるということであります。
  107. 下田京子

    ○下田京子君 聞いていることに答えていないじゃないですか。六十三年のときに財務状況が厳しくなってしまう、厳しくなったらもっと経営改善だといって、残るところは労働強化というか、同時に労働合理化ということで人減らしということになるのじゃないでしょうか、そういう事態を毅然としてはね返していくのかどうかと聞いているのです。私はそうしてほしいと思います。
  108. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 私どもといたしましては、六十四年以降の改善計画、これは後半期でございますが、もちろんこの経営改善努力は当然続けていかなきゃならぬわけでございますが、要員規模につきましては、その前半期を終わった段階で、経営改善の進捗状況を踏まえまして、その時点で判断をすべきだと考えています。
  109. 下田京子

    ○下田京子君 長官、よく聞いていてください。経営改善が六十三年度ではより一層その財務状況が厳しい状況になって困難なのだというのはお認めになったわけでしょう。そうしたら残るのはもう人員の合理化しかないじゃないか、その合理化が出されてきたときに毅然たる態度ではね返しなさいと、こう言ったのです。もうこれは出てくることなのです。見直すということで人減らし合理化が進むと一体どうなるかということになりますと、私はいい出づくりということにはならないと思うのです。大臣、そうでしょう。  そこで、具体的に出づくり、とりわけ天然更新ということでお尋ねしたいのですけれども、五十九年一月二十五日の閣議決定の中で、「行政改革に関する当面の実施方針について」というその具体的な第一のところに、「経営健全性を確立するために」と称しまして、「天然林施業の一層の推進等により、森林施業の合理化及び投資の効率化を図る。」と述べております。私は、そもそも問題の立て方としまして、経営健全性とか投資の効率性という観点から人工林施業をすべきなのだろうかと。そうではなくて、例えばお尋ねしましたらこういういい例がありますよと持ってきていただきました亜高山帯の天然更新、こういうふうなものが私は真の天然更新じゃないだろうかと思うのです、どうでしょう。
  110. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 森林の造成につきましては、その地域地域の自然的立地条件を踏まえ、また、経済的な条件も踏まえまして適地適木主義でやっていることが基本でございます。したがいまして、亜高山地帯におきましては、自然条件が大変厳しいところでございますが、そういうところについては昭和四十八年以来、新しい施業方法ということで天然更新を中心とした施業を取り込んできております。
  111. 下田京子

    ○下田京子君 長官は質問していることに答えていないのです。出づくりというのは、単なる投資の効果だとか経営健全性ということだけで押していっては、結局詰まるところ、天然更新一つとってもそれは手抜きに通じるようなものになるのじゃないだろうか。真の天然更新というあるべき姿、例えば亜高山の状況というのはまあいいなと私も思ったものですから、そういうことで例に出してお尋ねしたのです。  それで、具体的に聞きますけれども、天然更新には天下一と天下二との区分がありますね、その違いは何でしょうか。同時に、昨年立てられました経営基本計画に基づいて、その施業計画の中で、全更新面積中、天下二類の面積の割合はどうなっていますでしょうか。
  112. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 国有林におきますところの天然下種更新につきましては、今御指摘のように、天然下種一類と天然下種二類に区分してやっております。天然下種一類と申しますのは、天然の更新力を活用するとともに、それだけでは更新の確保ができない部分につきまして、植え込みとか発芽促進のためのかき起こし、幼稚樹の発育促進のための刈り出しというふうな人工を加えて更新を図っているものでございます。それから天然下種二類と申しますのは、全面的に天然力を活用して更新を図るものでございまして、主としてこれは択伐作業による更新でございます。  そこで、現在の地域施業計画におきますところの天然下種一類、天然下種二類の指定量は年平均で五万五千ヘクタールでございまして、全体の人工造林に占める更新量の割合は、全体では九万四千ヘクタールでございますので、それぞれ天然下種一類が一三%、それから天然下種二類が四六%となっております。
  113. 下田京子

    ○下田京子君 じゃ、その天然下種二、つまり天一と違って人工をしていないで択伐だけだというものは、過去十年間どういう比率になっているか、御承知いただいていますでしょうか。さらにもう一つ、その天然下種の占める割合、これは手抜きというふうに言われるのではないかというふうに批判されております。天然更新の完了基準というのがあると思います。その完了基準に達しない場合、植えつけなどの人工的補整が必要だと思うのですが、そういう人工補整の実績はどうなっていますか。
  114. 高野國夫

    説明員高野國夫君) 天然更新の実績について、五十五年から五十七年にわたりますものを申し上げたいと思います。
  115. 下田京子

    ○下田京子君 いいですか、十年間ですから。
  116. 高野國夫

    説明員高野國夫君) 恐れ入れますが、十年までさかのぼっての数字を今持ち合わせておりませんので、御了解いただきたいと思います。
  117. 下田京子

    ○下田京子君 なければないで、次へ移ってください。
  118. 高野國夫

    説明員高野國夫君) 五十五年度はいわゆる天一が八千ヘクタールであります。それから天二が五万五千五百ヘクタール。それから、五十六年につきましては、天一が九千百ヘクタール、それから天二が五万二千三百ヘクタール。それから、五十七年度につきましては、天一が七千六百ヘクタール、天二が四万九千八百ヘクタールでございます。
  119. 下田京子

    ○下田京子君 そんなのを聞いていないでしょう。聞いていることに答えてください。人工補整が必要なところはどうなっていますか、実績です。
  120. 高野國夫

    説明員高野國夫君) 人工補整の必要なところは、今申し上げました天一の八千、九千百、七千六百、こういったところについてやったわけであります。
  121. 下田京子

    ○下田京子君 天二は。
  122. 高野國夫

    説明員高野國夫君) 天二につきましては天然力を活用してやるわけでありますから、人工補整的なことはないというのが考え方であります。
  123. 下田京子

    ○下田京子君 私はここでひとつお願いしておきたいというか、質問づくりの中で大変苦労しました。委員長、資料が出てこないのです。審議ができないじゃないですか。今も、過去十年間と言うのに、二年間の比較でしょう。  なぜそれを出したかというと、天然に人工的な手を加えない、それが年々ふえているのです。それを林政審や臨調はもっとふやしなさいと言っているのです。つまり、人工補整もしないし、しかも天然更新の際に完了期間というものもあるそうです。そういう完了期間を延長したりしてやっているということになったら、実際に手抜きと言ってもいいことになるのじゃないでしょうか。長官、どうですか。
  124. 高野國夫

    説明員高野國夫君) 天然下種更新によりまして更新が完了したかどうかにつきましては、実態に即して判断をするわけであります。例えて申し上げますと、ブナでありますと、たくさん実のなります年が七年に一遍めぐってまいりますので、そういった種の落ち方、生え方を現地について見た上で更新完了か否かというものを判断する、こういう建前になっております。
  125. 下田京子

    ○下田京子君 建前は知っています。知った上で聞いたのです。  そういうことで、一定期限を決めている、その期限を勝手に延長してしまったりしているという話を伺ったわけです。それは手抜きになるのじゃないかということで指摘したのです。これは、長官、いいですか、人工補整もしない、それから完了延長もしていないで行われた天然更新というのは、逆な意味で言えば、もう更新が基準どおりうまくいっているというふうにすべて理解されているのでしょうか。
  126. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) これは現地の実態に即して判断をしております。
  127. 下田京子

    ○下田京子君 その現地が実際には補整もやられていない、自然を利用しつつという中で、実態は人減らしてますます手抜きにつながるということを私は指摘しておきたいと思います。  次に、できるだけ請負にしろという指摘もされております。そこでお尋ねしたいのですけれども、天然更新にしても、保育間伐にしましても、経済効果という面からだけで判断することはできないのじゃないかと思います。このことは、民有林における保育間伐のおくれが今非常に深刻な問題になっているということは御承知だと思います。そういう点から見ても言えますし、しかも技術的にもより高度なものを必要とするのが多い、そういう点から見まして、民営化ということでいくのは国有林の持つ意義というものをやはり軽視することになるのじゃないか、こう思うわけですが、どうでしょうか。
  128. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 天然林施業実施に当たりましては、伐採木を適正に選定するという問題あるいはそれぞれの生育環境に合った更新方法をとるというふうな面におきまして、やはりそれらの中には高度な技術的判断を要するものも含まれておると考えております。  そこで、林政審答申におきましても、「保育間伐等のうち高度な技術的判断を要する作業及び小規模分散的な作業であって、請負に付する手続を省略して直ようで実行する方が有利な業務」というものにつきましては直用事業として特化すべき業務として例示されておるところでございまして、私どもは今後もこの趣旨を踏まえて検討をしてまいりたいと考えております。
  129. 下田京子

    ○下田京子君 ところが、林政審答申では、直用と請負の選択の問題についてこう述べているのです。「企業的能率性尺度の厳正な適用」、こう言っています。つまり、あくまでも企業的なところから見てどうなのかという効率性、能率性だけで考えなさいよということです。しかし、今も何度も言われておりますけれども地域によって違う。つまり地域によって地形が違う、自然、気象条件が違う、そういう自然相手なのです。自然相手でやるわけですから、臨調が言っているような企業的能率性というだけでやるということについては非常に私は問題があると思うのです。  この点については大臣からお答えをいただきたいのですけれども、実は先週の土曜日でしたか、私の地元の福島県の山口営林署に行ってまいりまして、いろいろお話も伺ってきたのですけれども、その地域地域によってどれだけ重要なのかということを再度改めて私も認識したわけなのです。ところが、私が今そこで問題にしたいのは何かというと、苗畑の問題、苗づくりが民間と比べまして非常にコスト高だ、だからこれはもう廃止せよと何度も言われてきた。しかしそこに働く苗畑の労働者というのは、かつて七人だったのが今四人に、なって、しかも造林部門とも相合わせて非常にコスト軽減のために努力をして、一人は大変な病気にまでなっているというような実態もありますけれども地域から苗畑なくさないでくれ、国有林野を撤退させないでくれということで、あそこは非常に国有林に依存して暮らしている人たちが多いだけに、地域を挙げて要請しているわけなのです。そういう意味で、本当に直用と請負の選択基準というものを単に今言ったような効率性だけではっさりと切ってしまうようなことはしないで、地域実態をよく見て、自然の状況等を勘案して対応していただきたいという点で、大臣の決意を開かせてください。
  130. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 具体的な話でございますので、私の方から答弁申し上げたいと思いますが、私どもはただいま経営改善に取り組んでいるわけでございます。今御指摘の山口営林署の長浜種苗事業所でございますが、これは企業的能率性で見てまいりますと、民苗に比べますと五十五年が四〇九%、五十六年が三二三、五十七年が三〇〇ということで前橋営林局平均の一六〇以内に比べましても倍以上のコストがかかっているわけでございます。そこで私どもは、これは業務運営の簡素化、合理化を図るために苗畑の立地条件、企業的能率性等を勘案して、存置する必要のない事業所につきましてはやはり統廃合をしていくということであります。  なお、民間におきましても、これは山林用種苗が非常に優秀なものができるようになっておるわけでございますし、民間の力も活用するということも必要でございますので、私ども経営改善の一環として今申しましたような形でこれからも進めてまいりたいと思っております。
  131. 下田京子

    ○下田京子君 今の具体的な苗畑は経営改善対象なのだというふうにも聞こえましたけれども、そういう形で効率性だけで撤退していくことがどんなにその地域の振興にとってマイナスなのかという点は、私が改めて指摘するまでもなく重々理解しているはずです。  あえて申し上げますけれども、苗畑の事業所の場合には、五十三年が三百三カ所であったと思います。五十八年が二百五十四カ所で、五年間に五十カ所も廃止されております。しかも、事業所の廃止にとどまらないで、苗畑そのものもどんどん売却されている。五十三年から五十八年までに苗畑の売り払い箇所は五十五カ所です。一部売り払いが六十カ所で、合計面積にいたしますと三百二十五ヘクタールにもなるわけです。売ったものはもとに返らないのです。しかも、さっきの山口営林署の苗畑のことなのですけれども、ここは物すごく条件が悪いのです。何でコスト高になるかわかりますか。現地を御存じですか、長官。あそこは石がごろごろしているのです。機械が入らない、手作業なのです。水も不足している。そういう自然条件なのです。しかし、その苗畑が地域の振興にとって欠かせないということなのです。そういう点で私は具体的なあそこの苗畑も含めまして、苗畑を売り払っていくということがやがてどういうことになるかという点で大きな問題がある。つまりこれは六十八年以降は伐採に適した木がふえできます。そのときに人工造林面積もふえてくるわけです。そうしたら苗畑が必要になってくるじゃありませんか。どうするのですか。
  132. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 苗畑で生産する種苗関係は、五十七年度の苗木の所要量が、造林面積は過去最高の四十一年度の三三%に縮小しているわけです。一方五十七年度の育苗地の面積というのは、四十一年度の七三%の減少にとどまっておるわけでございまして、我々はさらに需要に見合った形で苗畑の合理化を進めていかなきゃならぬというふうに考えておるわけでございます。  苗木につきましては、それぞれ苗木の需給圏というのがございまして、その中で生産供給をしていくという体制がとれていますので、私どもの計画にはそういうものを踏まえた形で統廃合を現在進めておるところでございます。
  133. 下田京子

    ○下田京子君 必要なときに、国有林責任を持って提供する苗木を生産する苗畑はない。しかも、さっき民間の苗木とのコストの比較がありましたけれども、一体その民間の苗木のコストの差はどこから出てくると思いますか。私は、これはまさに労働者の賃金格差にあるのではなかろうかと思うのです。  具体的にお尋ねしたいのですけれども、民間のチェーンソー伐木造材手とそれから機械造林手の定額給ですね。これは出来高給との加重平均した日額賃金が出ていると思いますが、それと基幹作業職員の基準内外賃金の合計の比率で一体どうなのか聞きたいと思います。よろしいですか。一つずつ確認していきたいのですけれども、民間労働者の場合には、伐木造材手、これは一万一千三百七十円、そして基幹作業職員の方が一万三千四百十七円、こうなっていると思いますが……。
  134. 土屋國夫

    説明員(土屋國夫君) 民間林業労働者の賃金と、いわゆる基職の基準内外の賃金の実態でございますが、今先生から御指摘いただいたのは、林野庁における五十八年十一月の賃金実態調査の数字を御引用されたのだと思いますけれども、私どもは、五十八年十一月段階でいわゆる聞き取り調査という方法で全国千の事業所を対象にいたしまして、民間林業事業所の実態調査をしたわけでありますけれども、今伐木造材作業の例につきましては、先生のおっしゃったとおりでございます。  ただ、この私どもの調査は、今申し上げたように、非常に調査対象数が大変全体から見れば、抽出率三・七%ということで限定されているというようなこと、あるいは聞き取りというような方法によっておりますので、果たしてどの程度正確かどうかということに若干問題があるというふうに思っておりますけれども、現在ある資料で判断すれば、今御指摘のあったような状況でございます。
  135. 下田京子

    ○下田京子君 伐木造材手でも基幹作業職員ですか、これを一〇〇としますと、民間労働者の賃金は八五%ということになります。造林手の場合にはどうなっているかといいますと、これは基幹作業職員を一〇〇とした場合に民間の労働者の賃金は六九%、これだけ低いということです。しかも今お話しのように、聞き取り調査で云々ということですが、正確に実態が把握されていないというところにも問題があると思うのです。うなづいておられますけれども、それだけ民間労働者は非常に劣悪な賃金の中で生産活動に参加しているということがはっきりしたと思うのです。  次に聞きたいことなのですけれども、社会保険などの適用状況でございます。  これは林野庁、まず数字だけ確認したいと思いますけれども、五十六年度末現在で雇用保険の加入率が三九%、それから労災保険の加入率が九三・七%、健康保険の加入率が七・七%、日雇い健保の加入率が〇・五%という状況は間違いございませんね。
  136. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 今御指摘森林組合の作業班についての統計を私どもの方でとっているわけでございますが、五十一年度から五十六年度までの林業労働者の社会保険等の加入状況を森林組合作業員について見ますと、雇用保険が九%増加、それから……
  137. 下田京子

    ○下田京子君 数字の確認をしているのです、間違っているかどうか。間違っていないでしょう。
  138. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) そのとおりです。
  139. 下田京子

    ○下田京子君 つまり非常に低いということなのです。しかも、これは森林組合の労務班員の実態です。ですから森林組合の労務班員というと、比較的直接皆さんの指導のもとに置かれての実態なのです。ですから数字が出てくるわけです。それ以外のことについては実態もどうなのかという点、これは恐らくわからないのじゃないかと思います。それほど社会保険の適用状況から言っても問題がある。  さらに、労働安全対策面でお尋ねしたいのです。  労働省にお聞きしたいのですけれども、これも数字の確認。一つは、一番やはり労働安全対策の面でいろいろ社会問題になってきたのが振動病だと思います。その振動病、つまりチェーンソーの問題なのですけれども、民間労働者に対して労働省が、チェーンソーの使用についての規定は、連続十分、一日二時間以内という規定しかないと思うのですけれども、どうでございますか。
  140. 福渡靖

    説明員(福渡靖君) そのとおりでございます。
  141. 下田京子

    ○下田京子君 一方、国有林労働者の場合にはどうかといいますと、労働者の非常に過酷な振動病の増発という中で粘り強い闘いもありまして、チェーンソーの使用時間というのは一日二時間以内、連続二日を超えない、さらに週四日以内、一カ月三十二時間以内と。しかも、連続操作の時間は十分ですよということで細かく規定されているのです。そういうものから見ましてもかなり格差があるというふうに思います。  そこで労働省、またお尋ねしますけれども、振動病の新規認定者の推移、これはピーク時が五十三年だったと思います。五十七年でも六百十人というふうに聞いておりますが、これに間違いないかどうかというのが一点と、さらに、一人親方等もあって、実際に訴えてくる人がつかみにくいという実情下に置かれているのではなかろうかと思うのですが、この点どうでしょう。
  142. 佐藤正人

    説明員(佐藤正人君) 前段の新規認定件数でございますが、先生おっしゃったとおりでございます。後段の件につきましては、残念ながらちょっとわかりません。
  143. 下田京子

    ○下田京子君 ここでも実態がわからないということですね。いいですか、さらに労災死亡事故の面を見ていただきたいと思います。  林業労働者の作業環境というものは非常に問題が多いのです。地形上も危険が高いのです。これは林野庁は御承知だと思いますが、去る二月十三日の日に福島県の原町営林署で高校を卒業して林野庁に就職してまだ二年です、二十歳という若い青年が亡くなりました。この遺族の方々のことを思うともう本当に残念でなりませんし、しかも、若い青年がこうして命を落としていくというようなことを繰り返し起こしていいのだろうかということを私はしっかりと受けとめていただきたいのです。万全の補償はもちろんですけれども、こうした事故を繰り返さないという気持ちで対応をいただきたい。大臣、さっきから聞いているのですが、どうです、ずっと民間労働者との関係で、こういう状況をなくすためにも、努力をいただく決意をここで聞かしてください。
  144. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 国有林野事業経営改善を進めていくためには、やはり請負化は促進することが必要であるというぐあいに考えております。
  145. 下田京子

    ○下田京子君 質問に答えてください。
  146. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 私ども国有林野事業におきまして、労働安全の確保は人命尊重の立場からもちろんでありますが、円滑な事業運営にとりましても不可欠の条件でございます。これまでもこれについては大変努力してまいったところでありますが、この直用事業におきましても、特に重大災害の絶滅を期するという意味から、安全管理体制の活性化と安全意識の高揚、それから重大災害の大半が行動災害であるということから、やはり技能訓練の充実、新しい作業行動の定着化、正しい作業行動の定着化、さらには製品生産事業における重大災害を防ぐ意味から、機械につきまして十分整備し、安全な作業方法を確立するということで徹底していますが、さらに今後ともこの問題については一層努力をしてまいりたい、かように考えております。
  147. 下田京子

    ○下田京子君 大臣、私は今、亡くなった二十歳の青年の話をしたのです。そういう災害が起きているという状況なのに、国有林労働者でさえそうやって亡くなっているのです。そして、民間の労働者がどんな状況の中で労働しているか、それを訴えたのです。私は涙が出てまいります、今の答弁を聞いて。
  148. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) あなたの質問は、いわゆる請負化というものの質問をしていたのです。ですから私は請負化が必要だといって答弁して何が悪いのです。
  149. 下田京子

    ○下田京子君 請負化をこういう格好で進めていくのは労働者の犠牲につながると、そこの実態を今ずっと私は述べてきたのです。ですから——もういいです。  五十八年の場合なのですけれども、立木販売で二十二人の人が亡くなっています。請負で十人の人が亡くなっています。直用で八人亡くなっています。合計四十人です。そういう状況を見ましても、直用で働いている人に比べまして請負で死亡している人がいかに多いかということも死亡災害から見てもわかるのです。ですから、本当に直用で今やっていてもなおかつ死亡もあり、そしてまた、賃金も民間に比べても低い、また公務員に比べても低い、そういう国有林労働者に比較して民有林労働者の実態がどうかといったら、賃金も低い、安全面でも保障されていない、保険面でも実態すらつかまれてないと。そういう状況の中で請負化を進めていくということは一体何を意味するのか、そこがはっきりすればいいのです。私の質問の中でこれは明確になりました。    〔委員長退席、理事北修二君着席〕まさに民間労働者の犠牲のもとで請負化をどんどんやっていくということになれば、それは働き手の、山づくりの担い手になる労働者の確保もできません。山村の振興にもつながりません。それは山を荒らすことにつながります。重大な問題だということを私は最後に指摘して、こういう全林業労働者の犠牲によってやるような経営改善は断じて許せないということははっきり申し上げておきたいと思います。  次に移りますけれども、沖縄の北部訓練場の問題でございます。先般も当委員会で、議論がありましたが、国有林野の軍事利用問題という点で非常に私どもは心配しております。  まずお尋ねしたい点なのですけれども、喜屋武議員の質問に対しまして、水資源涵養地域としてこの北部訓練地域が非常に重要な意味を持つのだということは林野庁大臣もお認めになっていると思います。そして、関係省庁と協議もしているというお話もお聞きしました。具体的に御説明を伺いましたところが、林野庁、外務省、防衛施設庁、それに沖縄開発庁など四省庁の担当の課長さんが過去二回ほど会議を開いて話し合いを進めていると聞いておりますけれども、この協議の際に、北部国有林森林法に基づいて水資源の涵養林として非常に大事なのだということを明確にお話しされているのでしょうか。
  150. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 北部の国有林につきましては、これは水資源上極めて大きな役割を果たしているわけでございます。しかしながら、この基地内の森林につきましては、地位協定に基づきまして米軍に提供されておりまして、現在米軍が使用している現状であります。林野庁としましては、これらの森林につきましても、特に水源涵養機能の推持充実を図るために関係省庁と研究を持ちながら進めておるところであります。
  151. 下田京子

    ○下田京子君 外務省においでいただいていますのでお尋ねしたいのですが、昭和四十七年の五月十五日、この地域に対して、地域を米軍に訓練場として提供する際に、日米間で使用の条件が協議され、合意されていると思うのです。その内容を簡単に申し上げますと、「合衆国軍は、本施設及び区域内にある指定された水源涵養林並びに指定された特別保護鳥及びその生息地に対し損害を与えないよう予防措置をとり、水源涵養林に大きな形質変更をもたらすような計画をたてる場合には、事前に日本政府調整する。」というふうになっていると思うのですが、間違いございませんね。
  152. 加藤良三

    説明員(加藤良三君) ただいま御指摘の使用条件についてはそのとおりでございます。
  153. 下田京子

    ○下田京子君 この合意内容にあるように、保安林として指定することは水資源涵養林としての機能推持という点で大変重要だと思うのです。そういう点で、実は五十七年の四月二日に参議院の沖縄北方特別委員会で、我が党の立木議員がこの件で質問した際に、松田外務大臣官房審議官がこう言っております。「この地域の水源涵養上の必要性についてはつとに米側にも伝えておりまして、米側も十分理解しております。」と、こういうふうに外務省も述べております。これは大臣、丁寧に答えてください。  そこで、大臣にお聞きしたいのですけれども、先般の喜屋武議員の質問に対して、沖縄のその地域水資源の涵養林としての機能も含めて重要な意味は重々承知している旨の話があって、やるべきことはやるというふうなお話があったと思います。そこで、私は大臣に言いたいのは、事務レベルでは過去二回ほど協議もした、正式な協議ではなく営々として研究もしている、こういう話なのです。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕 外務省自身も米側にその必要性を言っている、こういうことなので、私はこの際、国有林責任者であります、山の責任者であります大臣から、外務大臣や防衛庁長官とも協議をしていただきたい。それからもう一つは、この際、日米農産物交渉であれだけ大変な中をアメリカに行って政治決着を図ってきた大臣ですから、こういった点についても、米大使館を通じて、この地域が本当に沖縄の地域皆さんの水がめになっているのだ、大事なのだということを直接伝えていただきたいと思うのです。
  154. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 沖縄の森林重要性につきましては十分承知しておるつもりでございます。そして、せんだって喜屋武委員に対して御答弁しましたとおり、できるだけのことはいたします。
  155. 下田京子

    ○下田京子君 できるだけのことはしているということなので、そのできるという中に、直接話すこと、これはできることでしょう。ぜひ話してください。
  156. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 今林野庁当局もいろいろ勉強しておるようでございますから、その勉強を踏まえて、できるだけのことはいたします。
  157. 下田京子

    ○下田京子君 勉強を踏まえてと、事務当局だけに任せないで、外務大臣と協議をし、そしてまた米大使館にお話しする、これはできるでしょう。
  158. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 勉強中でございますので、勉強の結果を見まして、できるだけのことはいたします。
  159. 下田京子

    ○下田京子君 それは実情をよく理解した発言と言えるのかなと思うのです。というのは、米側に外務省も言っているのです。だから、大臣が言うのも差し支えないのです。どうです。
  160. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 勉強中というのは、実情を把握するために勉強しているわけです。これを見て、できるだけのことはいたします。
  161. 下田京子

    ○下田京子君 勉強したらやっていただけるというふうに私は理解させていただきます。それは勉強中と営々と続くのじゃなくて、近い将来に具体的な対応がなされるというふうに判断させていただきます。  防衛施設庁に聞きたいのですけれども、この北部訓練場がどういう演習をやっているのでしょうか。実弾射撃は行われていますでしょうか。
  162. 田中滋

    説明員(田中滋君) 北部訓練場につきましては、実弾射撃を行わない一般訓練が行われていると承知しております。なお、北部訓練場におきましては、いわゆる沖縄の本土復帰後実弾射撃が行われたことはありません。
  163. 下田京子

    ○下田京子君 どんな訓練が行われているかということでお尋ねしたわけなのですが、お答えがなかったようでありますね。  訓練の中身なのですけれども、これは沖縄県の資料によりましても、どう書いてあるかといえば、地形が東南アジアと非常に似ているという点から、格好のゲリラ作戦の基地になっている。それから二十カ所のヘリパッドもあり、ジャングル地帯であるという点で、ゲリラ戦の作戦遂行に必要なあらゆるすべての訓練がやられているというふうに述べられております。しかも、訓練場の機能の役割がますます拡大されているというふうに私たちは重大な関心を持って受けとめております。  五十六年の十一月にこれはバリア機の訓練場が建設されたと思うのです。その際、立木の伐採が、軽微なものという理由で単なる届け出だけで行われたと思うのですけれども林野庁、間違いないですね。
  164. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 突然のお尋ねで、時間をとりまして申しわけございません。  軽微な現状変更ということで向こうからお話がありましたのに対しまして、こちらが、そういう軽微な現状変更というふうに認めまして、承認をしたということでございます。
  165. 下田京子

    ○下田京子君 ところが、この建設に対して地元皆さん方が挙げて強く反対したということは承知のはずだと思うのです。  防衛施設庁にさらに聞きたいのですが、さっき、実弾演習はございませんのような話がありましたけれども、非公式な打診があると聞いているのです。どういう点で非公式な打診があるかというと、大砲の実弾射撃や、対戦車ミサイルの試射場にしたいという米側の要求ですが、どうです。
  166. 田中滋

    説明員(田中滋君) 沖縄におきます北部訓練場におきましては、復帰時におきます日米間の取り決めによりまして、実弾を射撃する場合には日米間であらかじめ着弾区域を特定するという取り決めになっております。先ほど御答弁申し上げましたように、現在、復帰以後現在に至るまで実弾射撃が行われてないというのが実情でございますが、米側から着弾区域をこの取り決めによりまして特定したいという希望は米側においては持っているということは私どもとしましても伺っているところでありますけれども、やはり北部訓練場におきます森林水資源涵養林としての重要性ということを配慮いたしまして行っていない、米側もこれを十分承知の上その森林の保護に意を尽くしているというように私どもは解しているわけでございます。  なお、質問の中で北部訓練場におきましてTOWの、対戦車ミサイルの訓練計画があるかというお尋ねでありますが、私どもとしましては米軍が現在そういうTOWの発射訓練を行う計画があるとは承知しておりません。
  167. 下田京子

    ○下田京子君 水資源の涵養林として重要なのだという点で米側に外務省も繰り返し言っているということですから、そういう点から農水大臣が毅然たる対応で、もし実弾射撃場にしたいという点で、非公式にもう話があるわけですが、公式にそれが相談されたときにはきちっと断っていただきたいというふうに思います。  次に、入林状況の問題で、自衛隊の方のことで聞きたいのですけれども、私がいただいた資料では、北海道、青森、秋田、東京、熊本の五営林局に入林届を出して自衛隊が軍事目的に使われているお話、これは三百二十四件で延べ二万二千四百三十人というふうに承っていますが、よろしいですか。
  168. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) そのとおりでございます。
  169. 下田京子

    ○下田京子君 防衛庁にちょっとお尋ねしたいのですけれども、ことしの二月十六日、青森営林署に大林届を出していますね。この入林目的は何であったでしょうか。
  170. 上田秀明

    説明員(上田秀明君) 御指摘の本年二月、青森営林署に届け出を出しましたのは、陸上自衛隊の第九師団が実施いたします八甲田演習という演習のためでございます。
  171. 下田京子

    ○下田京子君 もう時間がなくなったので残念なのですけれども、この八甲田演習というのには村井統合幕僚会議議長、それからワイアンド在日米軍司令官、こういう方々も研修と称して参加されていると思うのです。うなずいているからそうだと思うのですが、つまり私がここで指摘したいことは、自衛隊が入林届を出した、その届け出によって行われている訓練の中で実際に米軍も参加してやられているということなのです。こういう実情がこれが札幌の例でも出てきます。その他至るところに出てきます。今お話しになった点は実はこの「朝雲」という新聞に大々的に出ているのです。どんな訓練をやっているかといいますと、まさにもう大変な合同訓練です。
  172. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 下田君、時間です。
  173. 下田京子

    ○下田京子君 私がここで申し上げたい最後の点は、とにかく、かつて自衛隊の大林に対して許可だったものが届け出に変わった、そして届け出に変わったのが、自衛隊の単独訓練だけではなくて米軍も参加されている。そういうことで国有林野が軍事目的に利用されている、重大なことが明らかになったわけです。時間もございませんから、終わりたいと思います。  委員長、私の持ち時間は二十四分なのです。もうわずかでしょう、そんなに騒がないでください。  以上で質問を終わります。
  174. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 まず初めに、国有林野事業改善特別措置法関連をした質問をしたいと思います。  アメリカの政府が発表した未来予測「西暦二〇〇〇年の地球」によりますと、地球上の森林資源は年間千八百ないし二千万ヘクタールの割合で消滅しつつある。二〇〇〇年までに発展途上国の森林の四〇%はなくなってしまう、こういうことが述べられているわけであります。今や緑の防衛は地球規模の重要課題となりつつあるわけでありますけれども、しかし、我が国の木材需要に対する供給の三分の二は外材であります。世界最大の木材輸入国と言われているわけでありますけれども、しかし、既に世界的規模のこの緑を守るという運動の観点から産地各国は輸出規制ということを強化しつつある、こういう現状を踏まえますと、いつまでも大量の外材に頼るということがこれから可能であろうか、この点についてどのような見通しを持っておられますか、まずお伺いをしたいと思います。
  175. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 我が国の木材の需要に対する供給という面から見ますと、今後も相当量の木材を外材に依存せざるを得ない状況でございます。  今先生指摘のように、特にこれは開発途上国におきまして資源が急速に減少するということが米政府の「西暦二〇〇〇年の地球」あるいはFAOの報告書で出ております。ですから、先進地域におきましては現在程度の輸出余力は維持されるわけでございますが、南洋材につきましては産地国における資源的な制約、丸太輸出規制等のために将来的にはこれは減少する方向で推移するものと考えます。  そこで、私ども今後の対応としましては、産地国との対話の促進であるとか技術協力を通じまして、円滑な木材貿易が維持できる環境を醸成することが重要でございますが、同時に、今後供給能力の増加が見込めます国産材の振興を図りまして、質量ともに安定的に、計画的に供給体制の整備に努めることが大事であろう、かように考えております。
  176. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 我が国の現在の木材需要は低迷しておると言われておるわけですけれども、将来にわたってこの木材需要というものがどうなっていくのか、また、その中に占める国産材あるいは外材の依存率というものがどういうふうに変化していくか、お伺いをしたいと思います。
  177. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 長期的な観点に立ちました林産物の需要と供給の見通しにつきましては、昭和五十五年閣議決定の「重要な林産物の需要及び供給に関する長期の見通し」において明らかにしておるわけでございますが、これに基づきますと木材需要は傾向としては微増し、昭和六十一年には一億二千八百四十万立方メートル、七十一年には一億四千四百万立方メートルの水準に達するものと見込まれておるわけであります。  また、外材の依存率でございますが、六十一年には六一%、それから七十一年には五六・七%と見込んでおるわけでございまして、戦後植林されました人工林が徐々に伐期に到達することから、外材の依存率は漸次減少する見込みとなっておるところであります。
  178. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それにしましても、将来も大体半分以上は外材に頼らなくてはならない。果たしてそれだけの外材の輸入がさらに長期にわたって見通した場合に確保できるかどうか、この辺はどうですか。
  179. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) まずもちまして国内の一千万ヘクタールに及びます人工林内容整備して、将来の需要に見合った形で供給量を高めていくというのが大事でございますが、と同時に、先ほど触れましたように、私どもは相手国と情報の交換その他人事ベースの話し合いも含めまして積極的に進めると同時に、技術協力その他の協力を通じまして、必要な部分については円滑に入っていくような措置を講じなければならないと考えておるところであります。
  180. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 我が国の林業というものの拡充を図って木材生産を継続的に充実していくという政策をとった場合に、大体どれぐらいのものが生産できるのか、この辺はどうですか。
  181. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 失礼いたしました。ちょっと準備がおくれまして恐縮でございます。  先ほど触れました五十五年の閣議決定によります林産物の見通しによりますと、国内の供給量は、六十一年には四千六百万立方メートル、それから七十一年には五千七百七十万立方メートルというふうに漸次増加していくわけでありますが、さらに超長期の話になりますが、百一年には八千七百九十万立方メートルというふうになっております。
  182. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、我が国の国有林野事業経営悪化ということが最近言われておるわけですけれども、これの原因についてお伺いをしたいと思います。
  183. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 収入面と支出面で見てまいるわけでありますが、まず収入面におきましては、自己収入の大宗を占めています林産物の販売に関しまして、伐採量が近年資源上の制約などによりまして縮減せざるを得ないという状況がございます。さらに、自由市場のもとで形成される材価が、近年の住宅需要の不振等のために下落、低迷していることであります。  それから、支出面におきましては、戦後の伐採量の増加に伴い拡大いたしました要員規模を伐採量の減少に対応して縮減すべく努力をしているわけでございますが、いまだに調整過程にあること、それからこの事業運営の能率化につきまして鋭意努力していますが、まだ不十分であることなどによりまして、人件費を初めとする諸経費が課題となっていることであります。  それから次に、造林、林道等の投資資金につきましては、近年自己資金が減少傾向にあるために借入金への依存度を高めておりまして、これに伴う支払い利子が増高していることなどが挙げられます。
  184. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それぞれの原因に対する対応並びに今後の見通しについてお伺いをしたいと思います。
  185. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 国有林野事業経営悪化に対応するためには、まずもちまして借入金の依存を厳に抑制し得るように自己収入確保と効率的な事業運営などによりまして、支出の削減を図ってまいりたいと考えておるわけであります。  若干具体的に申し上げますと、収入面におきましては、資源量の制約のために伐採量を六十年代末まで抑制せざるを得ないわけでございますが、林産物の積極的な販売戦略の展開、それから保有資産の活用等によりまして自己収入確保増大を図るわけでございますが、一方におきまして、支出面におきましては、森林施業の合理化と投資の効率化、さらには事業実行形態の見直し等による事業運営の簡素化、合理化、それから新規採用の抑制等による要員規模の縮減、組織の簡素合理化等を推進していこうとしているわけでございます。これらの自主的な改善努力に加えまして、所要の財政措置を講ずることによりまして経営健全性確保に努めてまいりたい次第であります。
  186. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 今言われた中で、私は非常に構造的なもの、それから外部環境によるもの等と、それから自助努力によるもの等があると思うのです。例えばこの要員と事業量のアンバランスを適正化させるとか、あるいは官業に伴いがちな非効率というものを改める、これは自助努力に属するものだと思います。ただ、伐期を迎えていない人工林が多いというのは過去の過伐の結果でありまして、これは非常に構造的なものだろうと思います。  そこで、お伺いをしたいのでありますけれども、もしこういう構造的な要因が何年か後に解消されて、伐採量が適正な量まで回復するならば、この林野事業の収支はバランスするのだろうか、この辺の見通しはいかがですか。
  187. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 現在の国有林野事業経営の悪化の問題につきましては、国有林野事業の固有の問題、それから我が国林業全体の問題がやはり重なり合っているわけでございます。そこで、私どもはまず七十二年を目標といたしまして、鋭意先ほど申し上げましたような自主的努力をすると同時に、また必要な財政措置をいたしまして経営改善に努力するわけでございますが、一方におきまして、やはり林業全体の構造的問題につきましては、林政の拡充強化ということで、この経営改善を進める過程におきましても鋭意努力しまして、七十二年には収支均衡できるようにしてまいりたいということで、これからも鋭意努力してまいりたいと思っています。
  188. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、この伐採量とか材価というものが適正な水準に回復しても、やはりすべてを事業収入で賄うというやり方では足りない面が出てくるのではないかと思うのです。例えば保護育成の費用負担の問題、あるいは緑資源を守るという経費、これを木を売った収入でバランスできるかどうかというのは、例えば経済林と非経済林がどの程度あるかというようなことでも変わってくるわけであります。したがって、国有林の場合は特に非経済林というものが多いわけでありますから、ただ単に木を切って売るその収入で収支をバランスさせるということは、若干無理があるのではないか。  それから、将来を考えると、この林政というものの重点が、保護という面、緑の持つ公益的機能というものの評価がますます高まってきて、森林の保護という面に重点がいくのではないかという気がします。現に保安林というものもだんだんふえてきて、第四期の末には八百七十万ヘクタールが保安林になるという計画も組まれておるわけであります。そうすると、林業生産を経済的にやるといった面よりも制約の方が非常に多くなる。そうなると、私は木を切って売ったその事業収入で収支のバランスを図っていくということ自体が不可能になるのではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  189. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 国有林は、先生御存じのとおり、脊梁山脈地帯に多く分布している関係もございまして、いわゆる非経済林というものが相当あるわけでございまして、森林管理経営をするに当たりましては、なかなか収入は上がらないけれども管理経営を適正にしなければならぬということでございまして、これの取り扱いはやはり今後の経営改善の一環として極めて重要な課題でございます。林政審答申でもこの問題につきましては御指摘いただいているわけでございますが、私どもこの問題を取り扱うに当たりましては、地帯をどう区分していくかという問題、あるいは経理の区分の問題、それから森林施業方法をどうしていくかという問題、あるいは受益者負担の問題をどうしていくかという問題等いろいろとこの問題については今後やはり早急に検討していかなきゃならぬ問題がございますので、私ども五十九年におきまして、まずこれらの問題に積極的に取り組みまして、できるだけ早く成果を得て、それをまた国有林経営改善に反映させていかなきゃならない、かように考えているところでございます。
  190. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、そういった非経済性の部分とそれから経済的な部分というものをやはりはっきりしないといけないと思うわけです。そういう保護のために費用がかかる、特に国有林野事業というものはそういう責務というものが大きいわけでありますから、そのために一般財源なりあるいは他の財源をつぎ込むということは絶対に必要だと思うのです。しかし、だからといってこの林野事業を進める上において効率性というものを無視してはいけない。これを両立しないと健全な国有林野事業というものにならないと思います。  そこで、森林の公益的機能というものについていろいろ論議されておりますけれども林野庁の計画課の調べた数字が出ております。これの根拠についてお伺いをしたい。
  191. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 林野庁が、昭和四十七年に公益的機能計量化調査というものに基づきまして試算をいたしました評価額は年間約十二兆八千億ということで、これを五十六年時点に換算をいたしますと、年間約二十五兆四千億円というふうに相なるわけでございますが、この算出の方法につきましてはかなり大胆ないろいろな仮定を置きまして計算をいたしております。例えて申しますと、水資源の涵養機能につきましては、森林土壌の降水貯留能力というものを計算いたしまして、仮にそれだけの貯留能力をダムによって代替させたとした場合の水生産原価が幾らかということから計算をいたしておりますし、土砂の流出防止とか、崩壊防止機能につきましては、森林がありますことによって土砂の表面侵食なり崩壊が防止されるという機能を砂防堰堤に代替をさせて考えまして、その堰堤の建設費を基礎にして推計をするということで、なかなか公益機能の評価というものはこれを価額で表示することはむずかしいわけでございますが、森林の公益機能を広く一般方々にアピールをするというような意味合いから、大胆な仮定を置きまして評価算出をいたしたものでございます。
  192. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 現在、林野関係予算で民有林に使われている部分と国有林に使われている部分の内訳はどうなっておりますか。
  193. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 公共事業、非公共事業、また国有林予算というふうに分かれますが、公共事業におきましては治山、造林、林道等トータルで五十九年度二千九百八十九億二千九百万でございます。  それから、その中で国有林に、治山事業におきましては二百五十五億九千三百万、それから造林におきまして五十二億五千六百万、それから林道におきまして三十六億九百万というものが入っております。それから非公共事業、これは全体で申し上げますと、これは民有林でございますが、五百七十九億三千四百五十二万五千でございます。それから国有林事業勘定につきましては、全部で五千四百八十九億円の歳入で、収入、支出とも同じ額でございます。
  194. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 一般会計予算林野関係が合計が三千五百六十七億、そのうち民有林に使われている部分が三千二百十四億円、国有林が三百五十二億円と、集計すればこういう結果になりますが、間違いありませんか。
  195. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) そのとおりでございます。
  196. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 そうすると、やはり一般会計から国有林に使われている部分が非常に少ないような気がするわけです。国有林野事業はそのほかは林野事業収入と、足りない分は借入金ということになっているわけでありますけれども林野面積からしても、大体民有林と国有林の比率は二対一だと。それから林業生産、木材の生産も大体素材では二対一ぐらいの比率だと。その規模の比率からすると、この一般会計予算は民有林と国有林は大体十対一ということになっているわけですけれども、これはどうなのでしょうか。
  197. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 私ども国有林野事業は、本来先生御承知なとおり企業的に経営すべきであるということで、原則として特別会計制度でこれは運営されるべきものでございますが、最近の財政事情の悪化によりまして、五十三年に国有林野改善特別措置法の制定をいたしまして、造林、林道に要する事業、施設の一部を一般会計から繰り入れを行っているわけでございます。さらに、五十八年からは林道の災害復旧に要する経費一般会計から繰り入れ対処した。さらに、国有林野内の治山事業はすべて一般会計の負担による治山管理を行うという、大変私どもとしては国家財政厳しい中で、これまでも一般会計の負担で国有林野事業経営改善に必要な措置をしてきたわけでございますが、さらに五十九年におきましては、御審議をいただいておりますように、最近の経営事情にかんがみまして改善期間の延長を行うほか、急増する退職手当の財源の借り入れ、その利子財源への一般会計の繰り入れということを大変厳しい中でやってまいっておるところでございます。私どもこういう財政措置と、これは本来が特別会計制度で運営されるべきものでございますので、やはり自己収入の増大確保、それからより一層適切な運営、管理の実行等によりましてまず自主的改善努力を徹底し、将来におきましてはやはり特別会計制度のもとでこれを管理経営していくことが大事である、かように考えているところであります。
  198. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 独立会計事業を運営するというのは、これは民有林も国有林も同じなのです、民有林だって一つの事業としてやっておるわけですから。ところが、その生産高とか面積に比べて、比率において民有林の方が国の一般会計予算からたくさん出ている。これは理屈から言うとちょっとおかしいと思うのですけれども、どうなのですか、これでは国有林野事業というのは赤字が出るのは当たり前だという気がするのですが。
  199. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 金額の面で面積を直ちに比較をいたしますと、そういう御見解も生まれるかと思いますけれども、民有林の施策につきましても、例えば造林というようなものに対する助成をとってみますと、何分にも我が国の民間におきます森林所有者は非常に零細なものが多いということで、これにつきましては森林の公益機能ということを考えまして公共事業助成をいたしておるわけでございますが、その際も大規模な森林所有者、五百ヘクタール以上の森林を所有しておりますような、製紙会社等が持っておりますような山林造林につきましては、これは保安林等の施業の制限を受けているようなところの造林と申しますか、そういうものには助成をいたしますけれども、それ以外は原則農林漁業金融公庫の融資というふうになっております。  言うまでもなく、国有林野事業は国土の二割を占めます日本一の大山林所有者でございますので、零細な森林所有者の助成の程度とは、民有林行政の中の論理からいたしましても違わざるを得ないという面が出てまいろうかと思います。しかしながら、現在国有林野事業は非常に厳しい状況にございますので、この国有林野が持っております公益性というものを重視いたしまして、五十三年から一般会計からいろいろな繰り入れをいただいておるわけでございまして、これの財政措置充実には私どもなりに相当努力をいたしてきております。ことしの五十九年度の予算について申しますと、農林水産省予算が全体で四・一%、マイナスシーリングでマイナスでございますが、国有林に対します一般会計からの繰り入れは、退職手当の利子補給金も含めまして六・三%の増というふうなことで、私どもそれなりに努力をいたしてきておるところでございます。
  200. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 確かに民有林の方は零細が多いということもあるでしょうけれども、反面保安林国有林の方がはるかに多いわけで、そういう点から言うと国有林の方がたくさんもらうという理由もあるわけであります。いずれにしましても、私は国有林野特別会計に対する一般会計の投入が少な過ぎるという気がするわけであります。しかし、これも無制限に何ぼでもつぎ込めばいいというものではないわけで、私は、やはり森林の保護とか公益的機能という面を加味して一般会計の投入の拡充についてルールづくりをそろそろ考えないといけない時期ではないかと思うのです。もちろん民有林に対しても同じことは言えるわけですけれども、緑の保護のための国の助成とか、そういうものについての拡充のルールづくりをしっかりして、これは国有林にもやはり適用されないと、独立会計でやる以上はとてもやっていけないのではないかという気がします。この点はいかがでしょうか。
  201. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 現在の国有林は、昭和二十二年に林政統一によりまして、当時の山林局の所管の森林、それから御料林並びに北海道の内務省所管の国有林が合併してできてきたわけでございまして、この木材収入をもちまして森林造成、林道施設その他の事業を賄うという独立採算制の制度でやってきておるわけでございまして、私どもは、やはりこの問題につきましては今後とも特別会計制度の中で一体として経営をしていかなければならない、かように考えておるところでございます。  ただいま先生指摘のいわゆる不採算外分の問題につきましては、先ほども御説明申し上げましたとおり、今後の経営改善をするに当たりましてそういう不採算外分の取り扱いを、経営をどうするか、あるいは森林施業法をどうするか、さらには管理体制をどうするかというふうないろいろ問題もございますので、これらは早急にできるだけ早く調査をいたしまして、合理的な経営につながるように努力してまいりたいと思います。
  202. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 やはり自助努力を進めると同時に、そういった面の改善もやっていただきたいと思います。反面この自助努力もやらないと、こういう点があるのにそんなことを言っても無理だというふうに財政の厳しい中ですから言われると思いますので、自助努力の面はきちんとやると同時に、国として援助すべきものは援助する、この点をはっきりしていただきたいと思います。  次に、保安林関係のことについてお伺いしますけれども保安林における機能の低位な森林面積が増大しておる、国有林で九%、民有林で一五%ということでありますけれども、この一番大きな理由は何ですか。
  203. 高野國夫

    説明員高野國夫君) 保安林におきまして、疎林でございますとかあるいは粗悪林と言われますような機能の低い森林が増加しておりますのは、一つには、近年におきます木材価格の低迷でございますとかあるいは林業諸経費の増昇といったような林業にまつわりますいろいろな条件が悪化しておりまして、森林所有者の皆さん方が意欲を低めつつあるといったようなことが一つございます。それからもう一つは、以前は山村地帯に大勢の方が住んでおりまして、またそういった皆さん森林との結びつきが非常に深かったわけであります。家庭用の炭でございますとかまきでございますとか、そういうようなものを森林から入手するわけでありますし、あるいは森林地帯を牛、馬などの放牧的な場所としても使うといったようなことで、森林山村住民の皆さんとのつながりが非常に深かったのでございます。そういった事柄が燃料革命その他の事情によりまして大きく変化をしてまいりまして、その影響を受けて森林との結びつきも大変薄らいできた。こういったような事柄が重なりまして機能の低位な森林が生じてきている、このように認識をいたしております。
  204. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 つまり森林にそれだけ手入れをするだけの経済的価値がなくなってきたということか、あるいは経済的余裕がなくなってきたということが大きな理由ではないかと思うのです。そうするとその原因を除去する対策を講じないとなかなかこれは改善しない。今回特定保安林制度ができるわけでありますけれども、果たしてこの特定保安林の指定だけでこれが可能かどうか、やや疑問に思うわけであります。  まず、特定保安林に指定されて若干経済的な援助がされるとしても、これは微々たるものであります。それから、もし必要な施業をしない者については都道府県知事が指定するものと権利の移転または設定に関し協議すべき旨勧告することができる、果たしてこの勧告程度で効果があるかどうか疑問だと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  205. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 大変林業をめぐる事情は厳しいわけでございますが、その中におきましても保安林等につきまして、やはり適正な森林管理経営をされておる方もおるわけでございますが、今回の法改正で我々考えておりますのは、森林所有者が通常の林業活動として行われているような内容について定めているわけでございます。そこで、私どもは、造林、林道等に対します助成などの優遇措置とあわせましていろいろの施策を講ずることによりまして十分対応できるものと考えておるわけでございます。  具体的には、やはり造林、林道のほかにも、例えば特定保安林機能を回復するために治山事業などの各種の事業の優先的な実施に配慮するということやら、さらに森林所有者に対する助言指導はもとよりでありますが、地元市町村地域の住民の方々、いろいろな方々の御理解を得ながら、全体的にやはり効果的になし得るような普及啓発活動も当然都道府県を通じて積極的になさなければならぬと思っております。さらに不在村の森林所有者であるために施業あるいは管理実施することがなかなか困難な方々に対しましては、施業を行い得る人たちへの施業委託、あっせん等をしましてこれに対処してまいると同時に、必要な場合には協議の勧告も行うということでこれは進め得るというふうに考えておるわけであります。
  206. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 勧告に従わなかった場合はどうするわけですか。
  207. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) これは粘り強く御指導をし勧告申し上げる、こういうことでございます。
  208. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、それで効果があればいいのですけれども、より効果あらしめるためには、やはりもう少し支援措置を強化することと、それから現在でも森林法で罰則というものがあるわけですから、これもやはり厳正にやるということが必要ではないかと思うのですけれども、いかがですか。
  209. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 今まで保安林機能の維持増進を図るために、先ほど御説明申し上げましたような治山事業あるいは水源林造成事業を補助すると同時に、造林補助等で優遇措置をとったのですが、今回の法改正によりまして機能の低下している保安林につきまして、その機能の回復を図るための措置をしようとして、まず特定保安林整備につきましては、今各地域で積極的に進められております森林総合整備事業、こういう造林補助事業の優先的な実施に入ると同時に、農林漁業金融公庫造林融資資金につきましては、貸し付け対象林齢を二十年から二十五年に引き上げる。それから、融資率も八〇から九〇に引き上げるというようなことも考えておりまして、これらの資金の積極的な活用を指導すると同時に、またことしから重要流域保安林総合整備事業というのを始めることにしておりますが、これらの施策も特定保安林と十分連携をとりながら積極的に実施すると同時に、林道等についても優先採択をするというようなことで進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  210. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 罰則との関連お話がございましたが、森林につきまして必要な施業をしてその機能を発揮させていくということは、森林所有者として当然行うべきことでございますので、このため森林法におきましては地域森林計画に基づく計画的な施業の推進を図る、これに従わない森林所有者に対しましては、計画に従った適正な施業がなされるように知事による勧告の制度があるわけでございます。今回の特定保安林におきます施業につきましても、このような体系の中で計画的な整備を緊急に実施するために、森林所有者がやっていただきたいという具体的な施業森林計画を改定をいたしまして定めることにしておりますし、これに従わない場合には、森林法の十条の五に基づきます施業の勧告、さらに必要な場合には権利移転の勧告、協議の勧告という仕組みをつくっておるわけでございます。  なお、保安林の無許可伐採でございますとか、伐採跡地に植栽義務があるにもかかわらず植栽しないというような場合には、森林法上罰則が付されておりますが、これらは保安林機能を低下させるおそれのある伐採という法律上の禁止行為に伴う許可なり、あるいは植栽を怠ったことに対します責任をいわば問責するというために行うものでございまして、今回のように機能の低下している保安林につきまして一定の望ましい施業を計画に従って行わせるという措置とはやや、性格を異にするものではないかと考えておりまして、いろいろ私どもも法案の作成の過程で議論をいたしましたけれども、これについて罰条の適用というようなところまでは考えるべきではないのではないか、こういうことで結論を見たわけでございます。
  211. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に分収育林の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、これは一般の人の森林育成への参加とか意識とかいろいろなことが言われておりますけれども、具体的な林野事業改善のためのメリットというのはずばり言って何ですか、お伺いします。
  212. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) 第一義的には、ただいま先生指摘森林造成への参加による緑資源重要性の御理解協力ということでございますが、と同時に、現在の国有林の資源整備の現状を見てまいりますと、戦後植えられました人工林が大変多うございまして、まだ伐期には至らない、収入に結びつかない若い三十年生以下の森林が全体の八割強を占めている、こういうことが経営の悪化の一因になっているわけでございますので、こういう森林に分収育林制度を導入しまして成育途上の森林収入を前倒しで確保していこう、こういうことによりましてやはり具体的な自己収入の増大が期待できるわけでございまして、国有林野事業経営改善にも資するものだというふうに理解しておるわけであります。
  213. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に一つだけお伺いしますが、そうすると結局は資金対策、低利の資金を借りられるということだと思います。今でも財投の金を借りておるわけですから、それよりも低利な金が借りられればメリットになるけれども、低利にならなければメリットにもならない。ところが、余り低利にすると、今度は募集する方についてそれほどのメリットがないということになるわけであります。その辺をどう考えるのかということと、それから、最終的にどれくらいの資金量を集めることを目標としておるのか、お伺いをしたいと思います。
  214. 秋山智英

    政府委員秋山智英君) この制度は、先ほども先生おっしゃいましたが、やはり国民皆さん国有林野事業緑資源確保に御参加いただいて御理解いただくということがこれは第一義的でありまして、あわせて収入確保ということでございます。そこは私ども国有林野事業経営改善につきましての収入確保ということもございますけれども、一義的な面も相当大きな意味がございますので、ある意味におきましては夢を買うという側面が相当あるというふうに考えます。また、森林の長期にわたりましての利回り、木材価格のアップを見なければ、杉、ヒノキ等によって若干違いますが、たしか三%前後程度でございますが、これはある意味におきましてインフレヘッジのような性格もございますので、夢を買うということと、それからそういう側面のあることも御理解いただきたいと思います。  それからなお、資金計画でございますが、これは五十九年度に北海道におきましては各営林局で一ないし二カ所まずモデル的に実施したいと思っております。それで、その段階で対象となる適当な林地、これは地元市町村の意向も十分配慮しなきゃなりませんし、また、応募する方々の意向も考えなきゃなりませんし、場所としては比較的便利なところを選ばなきゃならぬこともございますので、それらの諸般の情勢を五十九年度中に把握して今後の計画を立ててまいりたい、かように考えておるところであります。
  215. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 三案に対する質疑はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後一時七分休憩      —————・—————    午後二時三分開会
  216. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  委員の異動について御報告いたします。  本日、浦田勝君及び大城眞順君が委員を辞任され、その補欠として吉川芳男君及び出口廣光君が選任されました。     —————————————
  217. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  218. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ただいま審議されることになりました農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案について、私は若干の点について疑問に思う点あるいは意見等もございますので、それらの点をお伺いをし、あるいは意見、要望を申し上げ、本案に対する最終判断をいたしたい、このように思っておりますので、ひとつよろしくお願いをいたします。  最初に、この法律の性格、目的といいましょうか、そういうものについてお伺いをしたいと思うのでございます。この表題も随分長い表題ですけれども、それにまた、あわせて暫定措置に関する法律ということであります。この法律は何回かの改正を経てきておりますけれども昭和二十五年に成立をした法律でありますから、今日までの長い間を経過してもなおかつ暫定という名前がついておりますが、これはどういうわけでございましょうか。
  219. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 暫定措置法という名称を使いました法律は御案内のようにかなり多様でございます。ある程度制度として関係者の間に定着しながらも暫定法という名称を持っている法制はほかにもあるわけでございますが、この法律自体について申し上げますならば、法律制定当時、農業用施設、農地その他の災害復旧に助成を出すということは私益性と公益性との均衡をどう考えるかという議論があったわけでございます。実際この暫定措置法の対象になっておりますものは両面を持っておりますが、特に私益性の強いものから公益性の強いものまで多岐にわたっているわけでございます。そういった議論の過程で、本来自分の経済活動のための経済手段が災害を受けた場合に自力で復旧するのが基本ではなかろうかという議論で、そういったことが可能な状況、つまり負担能力のある状況があるまでの間ばこういった助成が要るであろうというふうな論議の過程で暫定法という名前をつけられ、それが今日まで残っているということだろうと思います。
  220. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 たしか、発足当時の経過を議事録等で見てまいりますと、本院の農林委員会におきまして、ちょうどシャウプ勧告の後で、建設省と農林省が災害について全額国庫で負担をするという行き方については反対ではあるけれどもシャウプ勧告があるから当面やってみようということで、負担法の方は二十五年を一つの契機にして出発をした、こういうことでありましたが、こちらの暫定法の方は、そのときに地方財政委員会というものがあって、ここで国と地方公共団体との事業の区分とか、経費の分担の区分とか、そういう割合とかそういうものや、それから自然災害についても今検討しているから一定のそういう体系が近く出るであろうから、それまでの間という意味で暫定という名前になっているのだというようなことを政府委員から答弁をされているわけであります。  しかし、もう既にこれらのそれぞれの法律はでき上がって、法体系は整備をされている、こんなふうにも思うわけでありますから、そういたしますと、発足当時の暫定の意味というものは全然なくなったのではないだろうか、そんなふうにも思うわけです。しかも、今のお話のように、私権とのかかわりということをお考えになっているのであれば、そういうものに対する補助は補助なりに、やはりそれはきちんとした法律としてつくり上げていってもよかったのではないだろうか、暫定というのがいつまでも続くというのは極めて不自然だと思うのですけれども、その点はいかがでございましょうか。
  221. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) いろいろな立法例を見てみますと、確かに暫定措置法、臨時措置法という法例はかなり広範にございます。また、そういった立法例に徴してみますと、単に名称がそうであるだけではなく、当分の間とか一定期間を限ってその法律の適用を予定している法制があるわけでございます。実は、この災害復旧の暫定措置法は、本文の中に当分の間という名称は使っておりません。率直に申し上げまして、ある程度制度として定着しつつあり、関係者も、変な言葉でございますが暫定法という名称でなれ親しんできているという事実もあるわけでございます。今委員指摘のように、名称についても再検討したらどうかという御議論は、私は一つの御議論であることは事実だろうと思いますが、先ほど申し上げましたように、やはり根っこには純粋の公共土木施設と違って公益性と私益性の均衡の上に着目して、また、したがってその施設の種類に応じて補助率も差があるという体系をとっておりますし、それがまた経済発展との関係においていろいろ中身も変わってきているわけでございますので、特に今名称に暫定法という名称があっても支障があることはございませんし、また、枠組みに影響することはありません。逆に名称を変えるということになると、またいろいろ存亡論を巻き起こすようなこともあるかと思いますので、当面やはり従来の暫定法というなれ親しんだ名称を使わせていただくというふうなことではなかろうかと存じているわけでございます。
  222. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 今のお話もわからぬことないのですけれども、しかし、三十六年の四月七日の委員会でしたか、本院のこの委員会で、当時の農地局長でありました伊東正義政府委員答弁ということで、その中でも暫定法ということでいいのだろうかどうかということも、ここで文章どおりに読みますと、「私どもとしましても暫定法自体がこれも暫定でいいかどうかもまた問題でございますので、その辺のところを検討いたしたいと思います。」、こんなふうに御答弁になっています。そうすると、それからずっと検討された結果、まだやはり暫定の方がいいということなのでございますか。
  223. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) なかなか難しい問題がございます。私事で恐縮でございますが、私は当時伊東局長の下で事務官で法律を担当しておりましたので、その間の事情を私も記憶しております。問題は、先ほども申し上げましたように、一応社会的に安定して機能している制度でございますが、一体、農地なり農業施設なりあるいは共同利用施設といったようなものに対して災害の際に補助をどうするかという議論になりますと、もっと手厚くしろという御議論もございますが、逆の御議論もいろいろあるわけでございまして、事実として機能している今日のことに着目して今の基本的な枠組みは変えないと。したがって、基本的な枠組みを変えないということは名称も変えないというふうな理解で、継続させることが比較的当たりさわりがない扱いではないだろうかという、甚だ論理的でなくて恐縮でございますが、そういう感じであるということは事実でございます。
  224. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 論理的でないということをお認めになった上でのお話でございますから、これ以上申し上げてもいたし方ないと思うのでありますが、同じような経過をたどって、公共土木施設の場合には、これは負担法ということでずっときているわけであります。そこで、この負担法と本暫定法との相違点というのはどんなところにありましょうか。
  225. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 負担法と暫定法の対象施設なり事業内容についてはいろいろな面から相違があると思います。  まず第一は、基本的に施設について公共性に差があるということだろうと思います。いわば公共土木施設は純粋に不特定多数の者が受益する施設でございますが、これに対して暫定法の対象になります農林水産業施設は、国土保全とか食糧生産基盤の確保といった公共的側面と、それから一方においては、個人の資産であるとかあるいは特定の者が受益するという経済活動に密着した私的な側面という二つの面の組み合わせの上に成り立っている、そういう意味ではまず一つ差があるだろうと思います。  この性質的な差がいろいろ体系上も差を持っているわけでございます。まず一つは、管理主体の問題でございますが、公共土木負担法の対象になります公共土木施設は、すべて国または地方公共団体ということになるわけであります。農林水産業施設は、農地という純粋の個人の資産であるものから土地改良区が管理するもの、あるいは国や県が管理するもの、あるいは農協等が所有管理する共同利用施設といったように多種多様でございまして、管理の体系が基本的に異なる点が第二点だろうと思います。  第三は、そういった二つのことを前提にいたしまして、国が財政支出を負担する態様が異なっております。負担法は、国と地方公共団体が公共の福祉を確保するという純粋の目的から、いわば法律上の義務として負担するという構成で負担金という制度になっております。暫定法は、農林水産業の維持発展なり農業経営の安定という視点から、いわゆる復旧について補助をするという補助の体系になっております。  そういった三つの違いがさらに実は補助率の体系にも、つまり国が補助をしたり負担する率の体系にも非常に差がついておりまして、負担法につきましては、委員も先刻御案内のように、市町村なら市町村の単位に公共土木施設の災害復旧費の総額と、一切のものの総額と標準税収入等の比較において負担率に刻みをつけるという仕組みになっております。これに対して農林漁業施設につきましては、いろいろ施設の種類によって刻み方は違いますけれども基本的には受益者というものがあるという前提で、受益者の負担能力に応じて、例えば農地、農業用施設であれば一戸当たりの負担額の程度に応じまして、一戸当たりの事業費の額に応じて補助率がスライドアップするという仕組みになっておるわけでございます。そういう意味で、同種の機能を果たしながら体系的にも性質的にも基本的に差があることは御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  226. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 今の御説明で、特に暫定法の対象になるものは私的所有といいますか、それと経済というようなものとの結びつきということを考えていったときに管理面も含めて一つ大きな差がある、こんなふうに言われたと思うわけであります。この点についてはまたさらに、後でもう一度お伺いしたいと思っている面もありますけれども、もう一点この法律の性格といいましょうか、目的ということについてお伺いしておきたいと思いますのは、これは災害規模としては大体小さな災害からずっと網羅するような形にはなっているようでありますけれども、主として余り大きくない規模の災害というものを想定してつくられているのでありましょうか、それともそれとは全く関係なしにということになるのでありましょうか。
  227. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 制度的な側面と機能的な側面と申しますか、実質的な側面には多少見方が違ってくるだろうと思います。制度的に申しますと、ただいま委員指摘の後段にございましたように、災害の大小に関係なく適用されるということになります。ただ、機能的に見てまいりますと、公共土木施設の場合にはやはり市町村とか県が管理主体であり、事業主体であるということで、実質的にはかなり大きなものを対象にしているのに対しまして、私どもの担当しております暫定法は、例えば農地という個人の資産を対象にしておりますから、実質的にはかなり細かいものを決め、細かく拾っているという体系になっております。しかし、激甚な場合の手当であるいは連年災害等による手当てについては、これは自治体の財政能力ではなく、農家自体の負担能力に着目いたしましてかなり手厚い措置を講じるというふうになっているわけでございます。
  228. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 大体法律の持っている性格、似たような役割を一方では果たしている負担法との違い等々につきましてはある程度わかりました。そこで、災害というものに対する認識と規定ということについて若干お伺いをしたいと思うのであります。  私は、農業用施設というものは、それそのものがこれが言ってみれば災害ということでいけば、防災の役割を果たしているという面というのは極めて重要なものを持っていると思います。例えば農地、確かに私的な所有という形は持っておりますけれども、この農地によって例えば湛水なら湛水能力というものはかなり大きなものを持っていたり、いろいろな形でこれが役割を果たしている、あるいはがん排施設というものが、地域の災害を防止するという上でも非常に大きな使命を果たしているというふうにも言えると思うのであります。ですから、所有形態に私的なものがあるといたしましても、全体的に見れば私は、防災の観点から農業用施設というものはそれこそ公共的な大きな役割を果たしているというふうにも思うわけでございます。その点につきまして、特にこれは農林水産省というそうした大きな視点からどう考えているか、どう見ているかということを、大臣から御見解を伺いたいと思います。
  229. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 農業用施設は、公共性のあるもの、例えば食糧の生産基盤とか、また国土の保全とか、こういうようなものもございますが、一方でいわゆる受益者が特定な者になるというような私的な面も含んでおりますので、そこでそれをやはり負担法とは別の位置づけとしてやっていくべきではないかというようなことで別にいたしたような次第でございます。
  230. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 大臣、ちょっと受け取り方が違っておられたのじゃないだろうかなと思ったのです。といいますのは、私が今お聞きしたのは、その負担法とのかかわりではなくて、これは法律の性格と目的のところで伺ったのでありまして、そしてそこで今度は、農業用施設というものが災害を防ぐという上で非常に大きな役割をしているじゃないか。実は私がこれを申し上げるのは、例えば、そのことがどういうふうに受け取られてこの法律に盛られたかは別にいたしまして、臨調等の指摘等もあって少額の補助金はどうとかなんというようなことで、そんなことも今回の法律の改定の動機の一つでもあったのか、こんなふうにも思われますので、それだけにむしろもっともっと自信を持って大きな観点から、農地というものは公共施設なのだ、農業用施設というのはまさに全国民の公共施設なのだ、そういう観点で政府もリードしていっていただくくらいのお気持ちも欲しい。だから、これをそういう防災施設というふうに見て対処をされるのでしょうか、どうでしょうか、こういうことで伺っていますので、よろしくお願いいたします。
  231. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農業用施設、特に水利施設等については国土保全に直結いたしました防災的機能を持った施設は非常に多いわけでございます。ただ率直に申しまして、例えばかんがい施設と排水施設ではかかわり合いが違ってまいりますし、それから、私ども実施しております土地改良事業の中には、いわゆる農地防災事業という、老朽ため池の整備とか、防災ダムの設置等極めて公共性が高いものもありますし、またそれほど高くないものもあるというふうに千差万別でございます。  この問題は、結局やはり土地改良事業として一本でとらえていく中で、その管理なり費用負担の体系をどうするかということで現実的に処理することが私ども妥当ではなかろうかというわけで、実は本体をつくります場合の補助体系についても補助率に差がありますし、肝心の受益者負担につきましては、例えば防災ダム等についてはほとんどない、ほとんど県と市町村が持っていただくという形で運営しておりますし、それに対する起債なりあるいは基準財政需要額での手当て等もそれにふさわしい手当てをしているわけでございます。  そこで、暫定法におきましては、そういう非常に機能的に幅のある農業用施設を一本としてとらえて、確かに委員指摘のように、公共的側面をいずれも持っているということは、私どもも絶えず主張しているわけでございますが、同時に、その公共性に複雑微妙に差異があるということも頭に置きまして位置づけを考えなければならない、かような意味で、いわばそれを一つとしてとらえた場合においては、やはり公共土木負担法の体系とは違うということを大臣が申し上げたというふうに御理解を賜りたいと思います。
  232. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 今の御説明でわからぬわけじゃありませんが、そういう公共的役割というものについて、これは大臣がその気になって取り組むのと、それからその辺のところを十分に踏まえないのとでは全然違うと思うので、その辺をぜひ大臣から伺いたい。
  233. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先ほども申しましたように、農業用施設というのは食糧の生産基盤また国土の保全など公共性といいますか、これを大きく有しておるものでございまして、今後とも国民、国全体に対してこれだけの大きな役割をしているということは、これは政府全体としてもよく理解をしてもらうように努力してまいります。
  234. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ぜひ頑張っていただきたいと思います。それこそ人間の尊厳にまでかかわる、極端な言い方になりますけれども、そのくらいの使命を持った農業なのですから、ということでぜひお願いをいたします。  それから、今度そこから急転直下、余りにも身近なことになって恐縮なのでありますけれども、これは大臣にぜひ伺いたいと思うのです。実は、私の地元はことしかなりの雪害にやられておりますけれども、特にことしのおくれは大変でございます。そこで、大臣にお聞きする前に、こういう災害というものには雪害も含まれるのかどうか、これをちょっとお伺いいたします。
  235. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のように、雪害自体はもう当然含まれます。ただ、雪害と申します場合は、積雪自体によって被害を受ける場合もあるわけでございますが、特に災害復旧という視点から議論する場合は、融雪後の大雨による水害が実は非常に経験的には高いウエートを持っているというふうに御理解を賜りたい。
  236. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 わかりますが、しかし、そのときによって積雪そのものの被害もかなり出ることもあります。その辺も雪害も含まれるということでありますから安心をいたしました。  そこで、これはこの課題と直接でなくて恐縮なのですけれども大臣は千葉県でいらっしゃいます。多分雪国というのは十分に御承知ないと思うのでありますが、私が今回この日曜日に行ってまいりましたときに、座談会をやりました南魚沼の一地域では、まだ田面から一メーターの積雪がございました。これは例えば苗代のところだけブルでのけてみても、周りが雪でありますから冷蔵庫に囲まれているようなものでありますし、大変な状況なのであります。それで、連休でもまだ間に合うのでありますが、一度そういうところをごらんになってみるおつもりはございませんでしょうか。
  237. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 農林水産大臣を拝命しましてから、水産庁それからまた林野庁、そしてまた食糧庁、これらの関係するところをできるだけ自分の目で見て、そして現地の話を聞くというのが一番であろうと思いまして回ってまいりましたが、実は連休、御存じのとおり、今までずっと日曜日も帰れませんような状況でございまして、日程がびっしり組まれておりますので、そちらへ参りますと先に約束したところの日程が狂ってしまうということになりますので、今回はひとつお許しいただきたいと思います。
  238. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 聞くのが遅かったかとも思いますけれども、本当にこれは目でごらんにならないとわからないという部分がございますので、大臣が行けなければ、ぜひ農水省の幹部の方でも実際に現地でもって物を見てきていただきたい、このことをお願いいたします。
  239. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 私は参れませんが、現地へ実務者をたれか早速派遣するようにいたします。
  240. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 こんなやりとりをしていても法案審議になりませんので、ぜひ政策的に大きな役割を果たせる方を派遣をしていただけるようにお願いをいたします。  では次に、中身の細かいことに入ります前に、もう少し、今度沿整が中に組み込まれることになりましたから、そのことについても聞きたかったのですが、これは後の方に回しまして、条文の具体的内容の解釈と理解について若干お伺いをしてみたいと存じます。  補助対象が復旧工事費が十万円以上というものから今度は三十万円以上ということになったわけでありますが、三十万円以上になったことによって対象から外れるものが当然出てくるわけであります。それを今度は一件あたりのあれに見ていく、距離を五十メーターから百メーターにしたということで大体カバーできるというふうに私は御説明を事前に受けました。しかし、これで完全に果たしてカバーできるのであろうか。これによって今までは十万円でありましたから対象になれたものが、つまり二十九万円くらいで、そして百メートルからわずか離れたというようなことで対象にならないというようなものが出てくる可能性というものはかなりあるのではないだろうか、こんなことも心配されるのですが、その辺はどのように見ておいでになりましょうか。
  241. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 今回の採択限度額の引き上げ、現行の十万円を三十万円に引き上げたわけでございますが、これは農業所得の伸びとか土木の総合工事費の伸びとか、消費者物価の伸び等を見ますといずれも五倍とか六倍以上、しかしやはり、衝撃を緩和する意味においても三倍にとどめるのが妥当であろうということで、計量的に言うならば、制度発足時に比べるとかなりそれ自体狭いものになっているということは事実でございます。  さて、どのくらい落ちるかにつきましては、過去五カ年の状況から推計しますと事業箇所では二割、二〇・六%でありますが、事業費では二・九%程度の減少になります。ただ、今御指摘のように、一カ所の工事の範囲を五十メートルから百メートルに拡大することによってかなりカバーされる。正確に申しますと、まさに委員指摘のようにカバーされるものもあるし落ち込むものもある。逆に今までだめだったもので拾われるものがあるというのは論理的には正しい帰結だろうと思いますが、ここら辺は災害の態様や地理的条件、それから一つは基盤整備の進捗状況によって非常に差がありますので一律に把握することは困難だと思います。  ただそこで、非常に具象的な話で恐縮でございますが、五十八年に起きた災害につきまして、代表的な災害が起きました数市町村で農地、農業用施設についてサンプルで調べたわけでございます。例えば水路等については例の東北の地震で被害を受けました青森の木造町を初めとして七町村、それから農地では山梨県の河口湖を初めといたしまして七町村の例を調べてみますと、まず代表的な水路について申しますと、改定前と改定後で比較してみますと箇所数は五四%に減ります。しかし工区数では実は若干ふえまして九九%ということになります。それから事業費で見ますと九八%という数字になります。それから農地の場合で申し上げますと、まず箇所数では四四%に減りますが、工区数ではまさに一〇〇%そのものでございまして、正確に言うと一〇〇%を若干超える数字でございます。それから金額では九九%という数字になっております。この試算というものが果たしてどこまで代表性あるかは私は断言はできませんが、総じて申し上げるなら箇所数はかなり減少する。事務の合理化には役立つと思います。工区数はほぼ同じである、対象事業費もほぼ同程度であるということではなかろうかと見ているわけでございます。
  242. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 大体今のはサンプルであれですから、これは実態ではどうなるかということはいろいろと複雑な要因も絡まってきて予測もできない部分もあろうかと思います。だが、とにかくそういう中で私はもし外れるものが出てきて、それが本来復旧をしなければならないのに、対象にならないために復旧をしないというようなことが原因になって、それが次にまた災害を招くというようなことがあってもならないと思うわけであります。例えば、私の地元あたりでもみの一枚田なんというのもありますけれども、これが結構保水能力を持っていまして、それで結構それが防災の役は果たしているのです。どこか欠壊したけれども、ちょうど今それが当てはまらないからやめた、そうすると、それがさらに今度は次の災害のときには大きくしてしまう、そういうこともあり得るということで心配になります。  それからもう一つは、これは市町村等のこれに関係をする現場担当というところに、かなり距離が変わったということを周知徹底していただきませんと、従来この法律があったわけですから、そうすると五十メーターなら五十メーターだと思うから、対象になるものまでこれを知らないで、逆に対象からそういうあれで拾い上げられないというようなことが起こってもならない、こんなふうに思うのです。さらに三十万円に達しないために工事をしないというわけにはいかない。そういう箇所についてやむを得ないから関係農民とか、あるいは自治体とかが手当てをしなきゃならぬ、こんなことも起こり得ると思うのです。これらのことを考えていきますと、特に農地災害が今までのあれの中でも約四〇%ぐらいになっていたやに聞いていたこともあるのですけれども、農地では三十万円以下と、こんなふうにも聞いていた面もあるのです。それだけにその辺が大変心配であります。いろいろな手だてというものを工夫をしていただきまして、こうした関係農民や自治体にしわ寄せなどが起こらないように、こういう配慮をぜひしていただきたいと思うのですが、その辺いかがでしょうか。
  243. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のとおりだと思っております。特に一カ所工事の範囲の拡大の問題につきましては、これは今までも制度の改正に当たって自治体の意見をいろいろ聞いてみましたが、さらに法律が成立後はその周知徹底を図ることが非常に大事であると思っております。  なお、落ち込むものにつきまして、これはもう委員御明察のとおり、実は農業用施設については余り問題にならないので、農地だろうと思います。ただ、文章的に表現するのはなかなか難しいわけでございますが、一体三十万程度というのはどの程度のものか、あるいは連続して起きる場合どの程度のものかということを実は写真その他を通じまして、私も感覚的にはかなり検証してみたつもりでございます。率直に申しまして、百メートルの範囲で工事の範囲を広げて、三十万円で広げることになると、実質的には非常に目に見えて、あ、これは大変だというようなものが落ち込むようなことはほとんどないのじゃないだろうかというふうには思います。しかし、念には念を入れなければならぬと思います。そういう意味においては、特に小規模な災害の多い農地につきまして、一つは土地改良資金等の公庫資金、その他の融資の確保ということをきめ細かくやることが大事であろうと思います。それからまた、普通の小災害につきましては、三十万円まで今回の改正に伴って小災害の起債の対象にもなるわけでございますので、その起債の確保なり、あるいは元利償還金、基準財政需要額への算入というふうな地方財政上の手当てについては十分適切に行われるように、事態を注視しながら要望してまいりたいと思っております。
  244. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ぜひそうお願いしたいと思います。小さな災害といえども災害というのはやはり非常に重大な問題でありますから、よろしくお願いをしたいと存じます。  次に、この法律でいきますと、この災害復旧は原形復旧が原則になっているわけです。この原形復旧ということについて私は若干疑問が幾つかあるわけであります。というのは、一つは、最近のいろいろな形での技術の発達というものが必ずしも原形復旧ということとマッチしないのではないか、そういう場合があると思うのです。これはたまたま一つの例になるわけですけれども、このごろはもう田植え機からコンバインを使わないのは不思議なくらいの、田んぼでもそういう時代になってまいりました。私の地元でそういうところがあるのですけれども、それでもなおかつ、そういうコンバインがまだ入らない山間地の田んぼなどがあります。こういう田んぼが災害を受けた。この災害を受けたことを契機にして今度はコンバインが入るような田んぼとして復旧をする。こういうことはもう時代の要求でもある、こんなふうにも思うのです。現在だと原形を超える部分は多少の救いはあるようでありますけれども、そこではもうかなりがくんと格差がついてくる部分が出てまいります。  こういうことが一つありますし、それから政府方針といいましょうか、政府の方でこうしてほしい、こういう方向で行ってもらいたいというような方向があるときに、例えば、これも農地でありますけれども、災害を受けて復旧をするときに、原形復旧でない方がいいというふうなこともあると思うのです。これも一つの例になりますけれども、例えば二線引き畦畔がありますね。二線引き畦畔というと、これは政府の方ではこういう厄介なものはぜひなくなってもらいたい、解消したいということになるのだと思います。特にそういうところは山間地でありますし、急傾斜地でありますし、そういうところで原形復旧といったとき、改良復旧ということで今の時代に合うように復旧をした方がいいのじゃないか。だけど、そのときに改良になる分は、今度は別の予算補助の方の小さい補助しかもらえない。こういうことになると、超えるのは厄介だから、それじゃこの辺でもって原形でやはりやめちゃおうかというようなことになることも結構あるのじゃないだろうか。だから、その辺のところは私は画一的にはいかないと思いますけれども、何か改良復旧というものを場合によっては取り入れていくという、そういう改正はできないものでしょうかということです。
  245. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 先ほど委員指摘の、実は三十六年の改正の際に、従来の非常に厳しい原形復旧主義から改良復旧を大幅に取り入れる方式に切りかえまして、自来かなり広範に改良復旧をやっております。一つは機能の回復という問題、それからもう一つは安定度の確保と申しますか、要するに耐久性を与えていくという問題、そうした面ではやっているわけでございます。  そこで、今御指摘の区画整理との関係をどう見るか、なかなかむずかしい問題でございますが、現在は全面的に被災が生じている場合は区画整理方式で災害復旧を認めております。だから部分的な被災の場合、被災しなかったものを含めなければ区画整理はできないわけでございますから、そこら辺に問題のむずかしさがあるわけであります。確かに一般の土地改良事業と災害復旧事業とを同時並行的に進め、その中で経費をどうアロケートするかという行政技術的な問題で吸収できるものもかなりあるわけでございます。この点につきましては、私どももできるだけ実は弾力的に考えてみたいと思っております。  特に、実は最近の実例を申し上げますと、原形復旧め方がかなりお金がかかるという場合もあるのです。そういう点もございまして、そこら辺は御指摘の点も頭に置きましていろいろ具体的に指導なり、また前提となる調査をさらに進めてまいりたいと思います。
  246. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 いろいろなケースが考えられると思いますけれども、ぜひその辺は柔軟に対応できるように工夫をしていただきたいと思うのです。特に、私はこれも自分の経験の中で、確かめに行ってないだけに、それで心配をしたのではしようがないのですけれども、しかし、かってはそうだったということなのですが、農業用水の用水池があって、その用水池の堤がある。その下が最近団地化をしてきまして、私の友人がそこで工場を始めた。それでこれが溢水でやられました。ところがそれを復旧するときに、少しかさ上げをしてちゃんと下に心配ないようにしてもらいたいというのがその下の方の工場の友人たちの要望だったのです。しかし農事組合の方は、これは原形以上のことは絶対やりませんということで、私の方で言うと来り者というのですけれども、来り者とそこのもとの住民である農民との間でトラブルが随分長い間続いたというような事件もありました。だから原形復旧といったときに、かなり柔軟で、こういうふうに改良復旧というのもこういう場合はできるのですよというふうにして進めていただかないと、実際の現場の運用の中でそんな問題が起こってくるということで、そこを十分に留意していただきたいと思います。
  247. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 十分具体的な問題については、弾力的な対応ができるよう指導してまいりたいと思います。  ただ、結局今御指摘のような問題は、経費の負担区分の問題が基本にあると思いますので、やはり県なり市町村が中心になってどういう合理的な調整をされるかということを見守りながら私ども対応する必要があるだろうと思っております。
  248. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 次に、共同利用施設の中に今度はその他政令で定める、営利ではないそういう法人が入るということで、これは農事組合法人が入るということになるのだろうかとも思います。「政令で定める」ということでありますから、ここで具体的にいろいろと名前が出てくるのでありましょうが、一つは農事組合法人というのにはもう本当にいろいろな形態といいましょうか、規模からやり方から本当に千差万別といっていいいろいろなものがございます。それだけにこの辺なかなか面倒なところがあるのじゃないかなという気もいたします。それから、ここで政令の中で並べられる名前の中から一たん外れてしまうと、なかなか今度入れていただくというのがむずかしくなってくるということなどもございます。そこでまず、政令でお決めになるそれまでの過程の中で、これらの問題については十分関係者の意見をお聞きになるのでしょうか。聞いていただけるのだと思いますけれども、その点をひとつお聞きしたいと思います。
  249. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 共同利用施設を災害復旧の補助の対象にすることについては、実はなかなかむずかしい問題がございます。それ自体がやはり経済施設でございます。その中で特に公共性の高いものをどうとらえるかという問題があります。とらえ方といたしましては、いろいろな側面があるわけでございます。一つは施設の種類、もう一つは所有主体、それからもう一つはその共同利用施設の利用の仕方や運用の仕方。どうしてもやはり施設の種類だけではとらえられませんで、そういう意味でやはり所有主体の縛りで考えていくという制度を従来からもとってきたわけでございまして、今回も農事組合法人を対象にする場合においても、例えば一戸一法人で実質的には個人経営と全く差がない場合、あるいは組合員の加入、脱退に対する制限に合理性を欠いているというふうなものは、これは公益性に問題のあるものとして除外していかなければならないだろうと思っております。その内容等につきましては、いろいろ関係者の意見も担当局で聞いているわけでございますが、御指摘の点も頭に置きまして、十分妥当なものとなるよう努力をしたいと思います。
  250. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ぜひそこのところはできるだけ関係者の意見などを聞きながら、遺漏のないような工夫をいろいろとしていただきたいと思います。  同時に、「営利を目的としない法人」ということで、「営利を目的」というところでいろいろと私はちょっと気になる点が出てまいります。  例えば協同組合です。協同組合というのは本来営利を目的としないということなのかもしれませんけれども、大きなあれでいけば現在の農業協同組合というのはかなり営利事業を中心にして行っているわけです。それから例えばシメジ、ヒラタケの栽培で協同組合を設立してやっているというようなところがあります。そうすると、これは協同組合でありますから営利事業でないと一応そうなるかもしれない。法人の資格はそうかもしれないけれども、実際は営利を目的としたものになるわけです。ところが、営利を目的としないで営利会社として登録されておるような場合というものが出てくるわけでございます。  私のこれも身近な話で恐縮なのですけれども、養鶏場をやっています。養鶏場は御承知のようにかなりの大資本がもう入っておりますから、そこでそういうものとの対抗上もあって会社組織などにしている人たちが結構います。そういう人たちの中で公害などの問題などもあって共同で鶏ふんを積んだりする施設をつくりまして、そして事務員を一人置いて、これも地域に肥料にして配ったりしているのですけれども、販売をしています。そこで出てくる費用でもって事務員を一人養っている、こういう形なのです。ところが協同組合で設立しようとするとこれはなかなか厄介なのでありまして、簡単に認可がもらえないです。だから結局一番簡単な有限会社でもって登録してしまう。これはやはり「営利を目的とした法人」ということになってくるわけです。その地域ではかなり果樹地帯で、鶏ふんの新しい肥料の需要というのが物すごくあって、これがなくては困るというような形で、最近はよそからもらってきてまでやるような状況になっている。こういう場合もあるのですが、これも営利を目的とするという形になります。  あるいは今秋田で、これは組織としてではなくて、ただ私の想定にしかすぎませんけれども、秋田では今試みにえさ米ということを中心にしてホールクロップサイレージのあれを進めていてかなりいいものができてきています。そういうものを今度は委託生産をしていく。委託生産で委託費をもらってこれで事務員を養ってやっていく。こうやっていけばこれまた営利を目的としたということになってしまう。そうすると、農業の生産のために一生懸命ある一定程度の公共的な役割も果たしながらやっていくけれども、こういうものは一体救いかないのだろうかなと、そんなことが気になってまいります。その辺何かいい知恵はないでしょうか。
  251. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 実は、御指摘の点は私はなかなか難しい問題があると思います。  まず一つは、協同組合、農協なり漁協が所有している共同利用施設で客観的な条件に該当するものはすべて営利を目的としないかという御設問を反すうしてみますと、これはそうとは言い切れない場合もあるだろうと思います。やはりこれはこの災害復旧制度の持っている多様性の一つの側面でございまして、中に農協なり漁協なり森林組合の持っている共同利用施設については、広い視点からその公益的機能を評価して画一的に拾うという形で、ある程度そこに営利という観念とは別に一つの割り切りがあったということは事実だろうと思います。  さて、それ以外のものを追加するかということになると、かなりこれは一つの統一的な法制でその法人が組織化されて、事業活動が客観的に決まっているわけではございませんからなかなか拾いにくい、そうなってくると、やはり公益性という視点をどうしても重視せざるを得ない。  そういたしますと、一つは、農林水産業の振興を目的とする公益法人という場合があるだろうと思います。それからもう一つは、先ほど申し上げました一戸一法人とかあるいは閉鎖的なものを除く農業生産法人という問題があると思います。それからもう一つは、やはり自治体が保有する共同利用施設のうちで特に汎用性のないもの、こういったものが問題になるのではないかと思います。こういった点を当面対象として取り上げていかなければならないだろうと思います。だからやはり、営利を目的とするかしないかというのは判断基準の一つであるが、それが客観的に一定の条件として表現できるものでなければなかなかこの問題は取り上げにくい。と申しますのは、私が申すまでもなく、共同利用施設の災害復旧の助成というのは一番経済手段に密着した場所でございまして、いわばどちらかというと収益性が非常に高い部門だけにその問題の難しさがあると思います。そういう意味でこれからもいろいろ私は問題はあるだろうと思います。実態をとらえながらどう勉強していくかというふうにひとつ受けとめさしていただきたいと思います。
  252. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私はいい知恵がないかというふうに申し上げましたけれども、言ってみれば私は現在のあれの中で一つの問題点として、農業生産法人という形のものにしてもいろいろと一定の経過がありましただけに設立に当たっては難しさがございます、協同組合を設立といってもいろいろと手続上の面倒さがあります。その辺のところが比較的、これはなかなか難しいですけれども、しかし目的に合うようにできるだけ早く、できるだけ簡素に設立できるようなそういう指導をしていただくことによってこういったものを一定程度公益法人化していくということで救えるものがあるのじゃないだろうか、そういう御指導もぜひお願いをしたい、このように思うわけです。これは要望でございます。  次に、災害関連事業についてでございますけれども、これは実施件数はかなり少ないようでありますけれども、これはどういう理由でございましょうか。
  253. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 災害関連事業費の実施件数、予算額はそう大きな金額ではないことは御指摘のとおりでございます。実は昔は、例えば堤防が災害を受けて復旧する場合、従来の高さまでは災害復旧、それ以上安全度を織り込んでのかさ上げは、むしろその分は災害関連でやるという運用がかなり長期間にわたって定着していたわけでございます。現在はやはり一つの基準に従って、従前の効用の回復以外に客観的に見て安全度を維持できるかどうかを頭に置きまして、かさ上げても合理的なものはどんどん災害復旧事業で、改良復旧の中でやるという仕組みが生まれてきております。したがって、災害関連事業は接続個所で復旧事業と同時に改良しなければ再度災害は防止できないところというものに限定されている関係で、比較的大きく出てこないという実態があることは事実でございます。
  254. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そういう理由もあろうかと思いますけれども、やはりこれは予算補助ということで、そして補助率もほかのあれに比べていけばということで、特に負担法があったり暫定法があったり、あるいはそのほかのものがいろいろとあるわけでありますから、そういう中でやはり魅力が少ないという面もあるのじゃないだろうか。私は、これは補助率を上げ、もっと有効に使われるような方法を考えていただくことが必要じゃないだろうか、こんなふうにも思うわけでありますが、この辺は意見であります。  時間も大分経過してまいりまして、たっぷりあるつもりがだんだん足りなくなってまいりますので、申しわけありません、急ぎます。  次に、申請手続の簡素化とそれから査定権限の委譲などについてお考えを伺いたいと思います。  災害を受ける、被災をした側からいきますと、災害の復旧工事というものはそれこそ迅速であって、そしてもちろん効率的でなければならぬということになるわけでありますが、渡されました資料を見ましても、結構、これはやはり役所のやる仕事でありますから、そこにはいろいろと問題点ができるだけ出ないようにという配慮がどうしても働くことは私もわかるのであります。しかし、やはりそれだけ片一方では迅速を要求される、こういうものでありますから、もっと手続を簡素化する、書類審査などの方式の活用や、あるいは査定権限にいたしましても、これは都道府県知事というわけにはいかないものはあろうと思いますけれども、そういう場合もその地方出先機関への委譲といいましょうか、そこに権限を持たせるというような形で迅速化の方向というものができるのではないだろうか。その辺のところをどんなお考えがお聞きをしたいと思います。
  255. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 今回の暫定法改正で一カ所当たりの工事の範囲を拡大しましたことと、採択限度額の引き上げで申請件数が大幅に減少することは事実でございます。しかし、御指摘のように事務処理自体をどう簡素合理化するかということは私も大事だろうと思います。そこで、当面まず一つは、机上査定を拡大する。それから二番目は、それと関連を持っておりますけれども、総合単価の適用範囲を拡大する。それから三番目は、災害査定官の保留額を引き上げる。それから四番目は、先ほども指摘がありました災害関連事業費等についての出先の地方農政局長等の権限の拡大。そういった点を中心にして、この法律の改正等にあわせて事務の簡素合理化の問題についてはひとつ取り組みたいということで今検討を進めております。
  256. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ぜひ簡素化、迅速化ということができますように御努力をいただきたいと思います。  それから次に、災害の際に、これは私はかねがねそう思っていたのでありますけれども、三十万くらいの単発の小さなときにはこういうことはありませんけれども、例えば激甚との組み合わせで発動されるようなとき、市町村単位でそういう対策に取り組んでいきます。こういうときに土地改良区であるとかあるいはその他の団体から応援をもらったり、それから自治体間の応援というものをよくやるわけでございます。そういうものは経費は実はかなり自主的にみんなやっているものですから、いわゆる法律的な対応を受けたあれにはなっていないのです。この辺のところも、だけれども現実にはみんなやられています。私なんかでもやはり借りがあるところは飛んでいって返さなきゃなりませんし、そういう場合も結構ありました。こういうものに対しての対応というものはできないのでしょうか。
  257. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) やはり災害を受けましたとき、早期に担当官を派遣いたしまして緊急査定を実施し、災害復旧の事業費を確定することが何といっても御指摘のように基本課題だろうと思います。そこで実は、災害復旧額の査定官というのはかなり専門家でないとできない点もありますので、農水省としましても本省、農政局にそれぞれ持っておりますが、それの相互の応援体制はかなり強力に進めております。大体災害というのは大災害が起きるときは特定地域に集中いたしますから、この数年の例を見ましてもやはり相当長期の応援体制をとっております。それ以外に県間の応援、市町村間の応援を私どもも実はあっせんしてお願いしているわけでございます。これについては応援をお願いした人が必要な基本経費を負担するわけでございますが、何といっても応援を派遣した方はそれなりに人間を割愛し、経費も要るわけでございますから、やはりこれは相互の理解と連帯の上に立って片づけなければいけない問題だと思っておりまして、なかなか制度的な表現というものは難しいのです。大体今自治体は、条例、規則等で応援を受けた場合に費用の支出その他の分担のルールも決めておられますので、そういったものを活用してあっせんをできるだけして支障がないようにする、あとは連帯の上に立ってやっていただくということが基本ではなかろうかと思っております。
  258. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 水産庁の方、お見えになっておりますね。——今度この法律に沿岸漁場整備開発事業対象として繰り入れられるということになったのですが、これは沿整の発足が四十九年ですからかなり時間的には経過をしております。それが今、今度の法改正で繰り入れということになったのはどういう理由からでありましょうか。この点は実は昭和三十六年の四月七日の本委員会の審議の結果として附帯決議がついておりまして、その附帯決議にはこういうふうに書かれています。二つありますけれども、もう一つの方は伊勢湾台風等に関係することですから省くといたしまして、「一、漁場及び牧野に関する災害復旧事業費の国庫補助について、これを制度化すること。」こういうふうに附帯決議がされております。そういたしますと、当然沿整という制度を発足をさせるに当たってこのことが配慮をされてしかるべきではなかったか、こんなふうに思うのですが、その辺はどうなのでしょうか。
  259. 尾島雄一

    政府委員(尾島雄一君) 沿整法が制定されましたのは、先生今御説明のとおりの四十九年でございまして、五十一年から実は第一次の整備計画がスタートいたしまして、五十七年からは第二次の沿岸漁場整備開発計画がスタートしたということでございます。実は五十七年の四月に長期六カ年計画で総事業費四千億ということで策定されまして、五十九年度まで今予算も計上して実施しているところでございます。何分五十一年からスタートした沿整事業でございますが、この沿整の施設につきましては、開発法の制定時には実態上緊急に復旧する必要があるものが実はなかったということでございます。そういう意味で制度面での整備が行われていなかったわけでございますが、四十九年以降、その後の沿整事業が着実に進んできておりますし、また社会資本としても蓄積が増大してまいっております。こういうことから今回の暫定法の対象とすることになったわけでございます。
  260. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 しかし、私は今回これが入れられたということは大いに評価をしているのですけれども、それだけに遅きに失したというところでちょっと問題を感じているのであります。しかしと今申し上げたのは、沿整が発足したのが四十九年で、そのときには必ずしも十分にそういう災害などについての配慮がなかったということのように聞こえるのですけれども、当然、海を相手にして事業をやるのですから、災害が起こるということを初めから想定していなきゃならなかったはずであろうということがまず第一にあります。  それから法改正、例えば本法に繰り入れるということを希望するとするならば、五十三年に、これは主たる改正ではありませんでしたけれども、たった森林組合を入れるというだけのほかの法の改正に伴ってのあれだったようですが、それでもやはり法改正というチャンスもあったわけであります。そのときには沿整が発足をしてもう数年たって、沿整が発足してすぐ現実に災害というものは起こっているでしょう。数はそうないけれども、災害というのは起こっているのです。そうすれば災害の問題というのは、それこそあなた方の立場からいったら、これを繰り入れてもらう時期を虎視たんたんとしてねらっていなきゃならぬ、そういう状況になるのではないかと思うのですけれども、これはうかっだったのですか、それとも何かほかに理由があったのですか。
  261. 尾島雄一

    政府委員(尾島雄一君) 沿整がスタートした当時の事業等から見ましても、社会資本としての蓄積等から見ましても実は非常に少量でございまして、今先生おっしゃったような形で進めていくというような実は実態上緊急に復旧するというような必要性のある施設整備というものは、それほどの件数はなかったということでございまして、そういう意味で、実は予算措置従来の復旧については実施してきたというのが実態でございます。
  262. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、言いわけとしか聞こえませんので、言いわけをされるからなおこういうふうに聞かざるを得ないのです。ということは、沿整というのは、そうしたら、ほんの部分的に一部しかやらないというつもりで出発したのですか。そうじゃないでしょう。沿整そのものは、やはり今後とも大きく拡大をしていくという目的を持って取り組んでおられた、出発もしたのだと思うのです。そうすれば当然、災害対策ということをあわせて考えていなきゃならなかったのじゃないだろうかと思うのです。しかもそこに、今のように、私はこのときの審議の経過を見ていますと、例えば当時の東委員が、漁業関係の共同施設等についての対応がないということで随分いろいろと問題にしておられますし、それからまた秋山委員が、養殖場等の土砂の流入だとかなんとかということがこれは対象にならないということで随分問題にしておられます。漁業について、東委員の言い方の中には、漁業の方がどうしてこうおくれているのですかという言い方もありました。そういう経過などがあって、私はここに委員会の附帯決議というものがついたと思うのです。もちろんその養殖場については、またその後、激甚の指定だとかその他の方で繰り入れられるとかなんとかいろいろ手当てがあったようであります。何か私は、沿整というものを提起をされた段階で、少なくともこういう国会の附帯決議があるのですから、そうすれば、そのことを十分に配慮してしかるべきだったのではないか、これはもう私はそうしか言えないのですけれども、その辺いかがですか。
  263. 尾島雄一

    政府委員(尾島雄一君) 再度繰り返しのようなことになりますが、沿岸漁業整備開発施設にはいろいろな施設があるわけで、異常な高波とか潮流とかということによって被災されるわけでございますが、現在、昭和五十一年四月に沿整がスタートいたしましてから五十八年、昨年の十二月までの被災の実績等から見ましても、件数として四十八件、二十四億ということで、年平均で六件程度の件数でございます。ただ、これからいろいろと事業が急速に伸びてまいりますし、伸びてまいると同時に、いろいろな種類の構造物も集中的に築造されるということもございますので、今後の対策という形では、ぜひこれからの社会資本の復旧ということについても充実していかなければならぬという形で今回提案をいたしたところでございます。
  264. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 これをいつまで言っていても私の時間がなくなってしまいますのであれですが、今の御答弁の中でまた実績の話がちょっと出ました。私は実績、実績という話では、役所へ行くと実績がどうということがすぐ問題になりますので、実績主義というものから我々がいろいろ考えさせられるものがあります。ですから、少なくともこういう事業をやっていけば、そういう事業は全国的に広げていこうというあれがあるならば、当然そこには、災害の実績がどうだとかこうだとかということではなくて、初めから起こり得べきものに対しては対応するという姿勢が今後ともぜひ欲しいと思うのです。  そこで、全国的な今の沿整の進捗状況はどんなふうになっていますか。
  265. 尾島雄一

    政府委員(尾島雄一君) 第二次沿整は、五十七年から六十二年まで六カ年の計画で実施しておりまして、これが約四千億の総事業費ということに相なっております。五十九年末、今年度の予算の末まで一千五十一億ということで、進捗率で三〇・九%という事業実施される見込みでございます。今後とも、沿岸漁業生産の増大とかあるいは経営の安定というものを図っていくためには、沿岸漁場の計画的な整備、開発というものは推進していく必要があるわけでございまして、これの整備計画の達成にはこれからも十分努力してまいりたいと考えております。
  266. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ここに喜屋武先生がおられるので、私は、ちょっと立ち入って伺うというのはそれこそ失礼だと思うのですけれども、沖縄の漁業あるいは海洋資源というようなものは本土とまた違いがいろいろな面であると思うのです。沖縄の場合には、沿整というのはどういう形に対応することになりますか。
  267. 尾島雄一

    政府委員(尾島雄一君) 沖縄の漁業は南方系の、しかも島嶼漁業として、カツオ、マグロとか、あるいは沿岸漁業におきましては養殖業、クルマエビとかいろいろなことが実施されておるわけで、この地域における主要な産業であるというぐあいに位置づけておるわけでございまして、当然ながら、これにつきましても沿整事業対象の中に入れて実施をいたしたということでございます。
  268. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そうすると、言ってみれば、沖縄から北海道までこの沿整事業というものはそれこそ全国沿岸漁業を網羅をしていくという体制でつくられていく、今後事業が進められていくというふうに理解してよろしいのですね。
  269. 尾島雄一

    政府委員(尾島雄一君) そのように考えておりまして、特にこの沿整事業は、海洋二百海里時代に備えまして、日本の沿岸漁業を見直して、日本の沿岸漁業の中から動物たんぱくなりいろいろなものを確保していくということで策定されておるわけでございますから、北海道から沖縄まで全国を網羅してやりたいと思います。
  270. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そこで、そういう重要な沿整なのですが、これは連年災の高率の適用あるいは激甚災害法の適用というのはどうなるのでしょうか。それから、災害関連事業の方の適用はどうなるのでしょうか。
  271. 尾島雄一

    政府委員(尾島雄一君) 連年災というのは、農地とか農業用施設のように一つの市町村に幾つもの施設が存在している場合に、これらの施設が次々と被災をするということが一応想定されておるわけでございますが、この沿整事業は、まだ全国で実は三百三十五カ所という施設を持っているにすぎません。そういう意味では、一市町村に幾つもの施設が集積しているという実態にはないわけでございますので、連年災を受ける蓋然性が非常に少ないということで、連年災の対象にしなくても支障がないと実は考えておるわけでございます。先ほどからも繰り返し申し上げておりますように、今後施設が逐次蓄積されるわけでございます。そういうためにも、今後必要が生じた段階で検討してまいりたいと考えております。  また、激甚災につきましても、これを激甚災の対象としてどういう対処をするかということは、結局は被災の実績等を踏まえて判断してきているところでございまして、現に、暫定法の対象施設のうちで、林地荒廃防止施設とか漁港については激甚法の適用はないわけでございます。沿整事業につきましても、先ほどから申し上げておりますように、またほかの事業から比べますと緒についたばかりということで非常に若い事業でございます。そういうことで、今後の被災の実績というものを、十分推移を検討した上で考えてまいりたいというぐあいに思っております。当面は、沿整施設に甚大な被害がいろいろ生じたような場合には、暫定法による補助率のかさ上げによって対処していきたいというぐあいに考えておる次第でございます。  また、災害関連事業につきましては、これも被災の実績が少ない、それから災害の関連事業が必要かどうかということは、今の段階では明確にその必要性についても明らかにすることはまだ十分でありませんので、これも今回措置することはしなかったわけでございますが、これも前から言っておりますとおり、今後の事業の増大に伴いまして必要性が明らかになった段階で十分対処してまいりたいというぐあいに考えておる次第でございます。
  272. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 やはりそういう御答弁しか聞けないのかと思うと極めて残念なのです。そこで大臣、事務当局から御答弁が出るときは大体、実績がどうでございましてと、そういう格好になるのです。そうして、これから先まだよくわかりませんのでとか。しかし、現実の問題としてその事業が進められて、特に今の漁港施設、これは協同組合、漁協のものですね。それだとか林地荒廃防止施設というのもこれは連年災高率から外れてくるとか、いろいろそういう問題も今の問題と同じにあるわけでありますが、これも当然私は全部同じように扱われるべきだというふうにも思うのです。特に今の沿整の施設については、被害が起こるときは、ほかのものに比べれば大きいのだと思います。    〔委員長退席、理事北修二君着席〕 それから連年災の可能性というものもないということは言えないでしょう。そういうことなどもあるわけでありますから、私は少なくともこうしたものは実績とか何とかということに余りとらわれないでこれからのあり方というものも考えながら対応していくべきだと思うので、そういうことを大臣がむしろいろいろとトップとして御指導をなさっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  273. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) いろいろ事務局とすると悩みもあるようでございますが、少なくとも現実に即しましてそれぞれの実績が上がるように、今後それを目指してやってまいります。
  274. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 最後に、これは私とうとうきょう時間がなくてお聞きすることができなかったのでありますけれども、防災という観点から農業施設というものは大変重要だということを先ほども確認をさせていただいたわけです。ところがその工事をやっていく中では、役所間の違いからくるいろいろな問題が現実としてあるのです。例えば、水路一つにしても水量計算などが違ってくるというようなことがあって、そういう役所間の違いというものを乗り越えて、そしてそこで全体に整合性ある総合対策というものを、これは少なくとも一番広い面積の防災施設である農地と農業用施設を持っている農林水産大臣として、それこそ閣内でリーダーシップを発揮していただきたいと思うのですが、いかがでございましょう。
  275. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生おっしゃるのは、基準の統一ということではないかと思いますが、これらにつきまして統一できるものは私は統一することが望ましいことだと思います。私もいろいろ勉強さしてもらいましたが、ダムなどで原則として目的が一緒のものは各省間でこれは相談して統一してやっておるようです。ただ難しい問題というのが、水路の問題になりますと、いわゆる農林水産省の利水という面と建設省のいわゆる治水という面がいろいろ絡み合うようでございますが、いずれにいたしましても、今後とも統一基準をつくるというようなことで努力してまいります。
  276. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 あと一分ありますから。済みません、ぎりぎりまでで申しわけありませんが、特にこのごろは農業過保護論だとか、何かというと農業というものに少し手当てが行き過ぎているのじゃないかというような誤った考え方があると思うのです。こういう農業災害問題を中心に議論したということを一つの契機にいたしまして、それこそ農業全体が国民の命と暮らしを守るという、今の輸入問題なんかとひっからまったそういう側面と、同時に、もう一つは防災という、災害から国民を守っているのだというそういう観点からもぜひとも自信を持っていただきまして、諸制度の国庫補助を削ろうなどという方向にはいかないで引き上げの努力を一生懸命していただきたいし、閣内でそういうためにも一生懸命頑張ってもらいたい、そのことを要望いたしまして、質問を終わります、
  277. 下田京子

    ○下田京子君 暫定法の質問に先立ちまして、急を要しますことしの豪雪被害対策で一、二お伺いします。  四月二十四日に、国土庁の防災業務課の方から、実は森林災害の復旧に対する激甚の問題では、本日次官会議をやって、あす閣議で、五月二日に公布、施行という話を伺っています。農作物被害全体がどうなのかということで、例年に比べて融雪期が非常におくれていて、それらについて調査し、また、いろいろと指導通達もしていることは承知はしているのですけれども、特に限定してお願いを申し上げたいのは、麦の被害の問題なのです。特に秋田県の大潟村から相次いで御要望が出てまいりました。平年時に比べますと根雪期間が平年が六十五日間、ことしが百十日間というふうな状況になっていまして、被害の状況も、例えば小麦ですと七割以上不良というのが一八・一、それから五割以上のものが三七・五。大麦に至っても五割以上の被害が三〇%出ている。これは大潟村の農業総合指導センターで四月十一日現在なのですけれども。  それから、新潟県からも出ていまして、時間もないから簡単に申し上げますけれども、大麦が三千二百九十七ヘクタールのうち転作麦が三千二百二十九ヘクタール。小麦は全部が転作なのですが、百七十五ヘクタールで、これは三月二十九日現在でもって被害が五四%になっているというふうなことなのです。北海道からもお話があったので道の方に問い合わせてみましたら、実態はまだつかめない、まだ雪が残っている、こういう状況なのです。第一番目に、そういうことでございますだけに、融雪後直ちに損害評価を実施していただけるように通知を出されたことは承知していますが、その通知が末端まで徹底できるように御指導をいただきたいというのが第一なのです。
  278. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  先生指摘の降雪及び寒波で東日本を中心にして発生しております麦の被害につきましては、損害評価要綱の定めに基づきまして転作等耕地を含め損害評価の的確を期するとともに、広範かつ激甚な被害を受けた地域の被害農家に対して共済金の仮渡しも含め早期支払いに遺憾のないよう通達を出したところでございますが、今後ともさらに末端まで十分浸透するよう指導を強化してまいりたいと思っております。
  279. 下田京子

    ○下田京子君 もうその答弁でよろしいのですが、あえて申し上げますと、実を言いますと、転作麦というのは被害に遭いますと根も葉もなくなっているということで、休耕田とみなされたり荒らしづくりではないかなどということでいろいろ問題が出ているということの心配が出ておりますものですから、再度今の趣旨にのっとりまして末端農家に周知徹底方をお願いしておきます。あとよろしいです。  法案の方に入りまして質問申し上げたいのですが、今回の暫定法の政府案では三点が新たな措置になっていると思います。  第一は、沿岸の漁場整備開発施設などを入れていくということ。それから二つ目には、一カ所の工事による国庫補助の採択限度額を十万から三十万に引き上げる。三番目が、工事に係る範囲を五十メートルから百メートルに拡大するのだ。一、三はいいのです。問題は二なのです。  そこでお尋ねしたいのですが、今回の政府案では、災害復旧制度改善と運営の合理化を図るために提案したのだ、こういうわけなのです。さて、運営の合理化といいますけれども、この二にかかわるところで運営の合理化とは何なのだろうかと思いまして改めて確認したいのですが、一つは、一カ所の工事の範囲を五十メートルから百メートルに拡大した点もあると思うのですけれども、やはり採択限度額を引き上げたことによって件数自体が減少するというふうに見ているのではないかと思うのですが、どうでしょう。
  280. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 一カ所あたりの採択基準でございますが、これを十万円から三十万円に引き上げるということは、やはりこの法律制度が発足して三十年たったわけでございます。その間の動きを見ておりますと、農業所得も農家所得も非常に伸びているわけでございますし、実は土木の総合工事費自体も六倍以上に伸びている、消費者物価も五・四倍ぐらい伸びているという実態からそれを三倍にとどめてやったというわけでございます。そういう意味では、現実にのっとった事業の運営の合理化という機能を果たしていることは事実でございます。ただ、御指摘のように、つまり一カ所として採択します工事の範囲を五十メートルから百メートルに広げたわけでございまして、そういう意味でかなり落ち込むものも逆に救済される、あるいはまた今まで拾われなかったものも拾われるという側面もあるわけでございまして、そのこと自体はいわゆる箇所数の減少にはなりますが、工区数とか事業費の金額には大きな影響はないだろう。そういう意味においては、常識に合わした合理化でございますが、合理化という側面だけからいけばあるいは不徹底という御批判を受けるのかもしれないと思っております。
  281. 下田京子

    ○下田京子君 災害箇所は、農地の場合には十万から三十万未満でどのくらいの割合になっているかというと、五十三年から五十七年の一年当たりの平均にすれば三七・二%になると思うのです。だからそれだけの件数が落ちるということは、言ってみれば、件数自体で言えば一定の減少ですから、そのことによっての合理化という点でも見ているのかな、どうなのですかと、最後はそこを聞いたのです。
  282. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) その限りにおいては、他の条件を固定して考えれば合理化でございます。
  283. 下田京子

    ○下田京子君 それが本当に合理化なのだろうかという点で問題を感じるわけなのです。つまり件数を減らす、それが合理化かという点。  次に、今度は実際に事業量の問題です。事業量の金額ベースのところで見たいのですが、農地はこれもやはり五十三年から五十七年の一年平均当たりにしますと、十万から三十万未満で農地が十七億九千八百万ということでありまして、率にすると一一・四%、単純に言えば、これは災害の復旧事業から、補助対象から外されるというふうになるわけですね。
  284. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 他の条件を固定すればそのとおりでございますが、先ほど御指摘もございましたように、一カ所の範囲を百メートルに広げることによって大幅に救済されると思っております。
  285. 下田京子

    ○下田京子君 大幅に救済されるということなのですが、確かにいろいろ私も、この前に問題になった山梨県の河口湖の事例なんかも見せていただいたのですが、それで相当程度救済される、だけれども、すべて救済されるとは断言できないのじゃないかと思うのです。確認です。
  286. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) そのとおりでございます。すべて救済されるわけではございませんし、逆に今まで対象にならなかったもので対象になるものもあるということでございます。
  287. 下田京子

    ○下田京子君 そういう場合もあると思うのです。さらに、外れてしまった、だからすべては救済されない、外れてしまった場合の救済措置として、じゃ何があるのだろうかということなのですけれども、一つには、激甚に指定されればこれは起債もありますけれども、激甚に指定されないと全く個人の融資という以外何もないと思うのです。そうですね。
  288. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農地については、激甚災の小災害以外は個人の融資でございます。ただ、実態は、農地の小規模な災害というのは比較的融資の性質になじむ本質を持っていることは御理解を賜りたいと思います。
  289. 下田京子

    ○下田京子君 いずれにいたしましても、激甚に指定されるというのが今までの平均的なベースで、今後どうなるかということはまたわからないでしょうけれども、農地の場合には適用比率が八七・二%、ですからそれ以外は激甚の指定を受けない、つまり残りの部分は融資に頼らざるを得ない、融資というのはつまり借金だということになる、それがはっきりしたと思うのです。  あともう一つ、その激甚の話なのですけれども、激甚の場合に、今まで十万のときには三万以上救済されたと思うのです。今回は十万を三十万に引き上げることによって、激甚の指定の基準も三万から十万に上がったというふうになりますから、そういう点では、単純にいけばやはりまた個人の負担にかかわる部分がふえてきたというふうに言えると思うのですが、よろしいですね。
  290. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 先ほど申し上げましたように、他の条件を固定して考えればそういうことになります。
  291. 下田京子

    ○下田京子君 融資の道しかないということがはっきりしたわけで、今回、その融資の点で一定の何か改善というものが期待できなかったのだろうかと思うわけなのですが、その辺は検討をいろいろされたのですか。
  292. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まず、農地については、激甚災でない場合に限定するならばいわゆる融資中心になる。その場合に、中心になりますものは公庫資金による土地改良資金、それから近代化資金等があると思います。従来からもこの種の小災害の農地の復旧については融資の制度は円滑に運用されておりますし、それからまた、事実、そういった土地改良融資は、今の制度基準の中では最も優遇された体系として実施されておりますので、そういう意味において現状の制度を維持することにしたわけでございます。
  293. 下田京子

    ○下田京子君 今お話しになった、優遇されている土地改良費というところなのですが、確かに消費者物価指数なんか、昭和二十七年と五十七年を比較すれば、資料にもありますが、五・四倍になっている。そういうところから見て、余剰経済という点からいったら、三倍ぐらいでまあまあでないかというふうなことでるるお話があったわけですが、土地改良費の方を見てみますと、これは、二十七年度を一としますと五十七年は二十六・四倍というふうになっております。そうですね。
  294. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私もちょっと今その計数を持っておりませんが、御指摘は間違いないのだろうと思います。後で確認さしていただきます。
  295. 下田京子

    ○下田京子君 政府からいただいた資料で間違いないと思いますが、念のために確認いたしました。  つまり、そういうことで、消費者物価指数の方は五・四倍だけれども、土地改良費の方は二十六・四倍にもなっている。しかも、五十八年版の農業白書を見ますと、農家の平均農業所得は五十七年度には、お米の生産調整が強化された五十三年度と比較しますと八割弱にも低下しているというふうなくだりがございます。そういう点で、絶対額では確かに農業所得、農家所得も伸びておりますけれども、農家全体の経営の状況という点から見たらどうなのだろうか。長引く不況とそれから消費停滞という状況の中で、価格は抑えられる、農産物輸入枠拡大で、もう子牛の価格もぼおんと低落したと、大問題が今起きているわけでございます。しかも、地域によっては四年連続の災害というふうなことが、私が言うまでもなくはっきりした情勢であります。つまり、農業をめぐる諸情勢というものは、どれ一つとってもいいものはない、まさに厳しい状況の中にあるということを考えますと、幾ら金額的にわずかであって、あるいはまた、切り捨てられる部分は、これからやってみないとわからないと言いますが、    〔理事北修二君退席、委員長着席〕 相当程度救われるといっても、落ちる部分はこれは出てくるということを考えますと、一体どうなのだろうということを非常に心配するわけなのです。特にその点で認識を改めて伺いたいのは、農家がそういう状況ですから、お金を貸しますよということですけれども、借金ですから返さなければいけない。そうしますと、このまま農家によっては放置されるようなところが出てくるのではないだろうかという心配もしているわけなのです。そういうところは全然心配ございませんか。
  296. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) なかなかいろいろ将来のことを想定しての御質問でございまして、私も一義的、断定的に申し上げる自信はございません。  その前に、先ほどの御質問の数字で確認しましたところ、私どもが資料として出しましたのは、農業所得はこの三十年間に四・七九倍、農家所得は十五・〇三倍、土木の総合工事費は六・〇六倍、二十六ではございません。それから消費者物価が五・四四倍という数字になっています。これに対して今回の引き上げは三倍ということでございます。  そこで、先ほどからお話がございます農地の小規模災害というものをどう見ていくかということでございますが、これについては、年利四・六%で償還期間二十五年、据え置き十年を含む災害復旧の融資の枠が設定されております。これは私が再三申し上げましたように非常に優遇された制度になっておりますし、かたがた、御指摘のように、三十万円程度の被害というものがどういうものであるかということについては委員も御案内のとおりでございまして、特にこのことが負担の急増につながるという問題ではない。やはり自分の資産の保全という観点から皆さんはやっていくだろうと思います。  放置する者がいるのじゃないかという御指摘でございますが、これは個人の対応でございますから、一義的に私がここでお答えするのもいかがかと思いますけれども、やはり農家の自作農というものの基本なビヘービアと申しますか、対応から見るならば、やはり自分の農地を保全するための努力は絶えず行っている本質があるわけでございます。こういう制度もあるわけでございますので、その点については特に心配する必要はないと思いますが、御懸念の向きもございますので、これからも、要するに事実の把握等必要な指導については留意してまいりたいと思います。
  297. 下田京子

    ○下田京子君 今お話しされたとおりだと思うのですが、ただ一つだけ認識でどうかしらと思う点がありますので申し上げておきたいのは、農地は個人の財産だと、そのとおりです。ただ、災害というのは降ってわくのです。個人の責任の分野じゃないのです。どんなに努力していても出てくるわけです。それを個人で賄わなきゃならないというふうな状況が小災害といえども起きるというのは、これは否定はされていないと思うのですが、あえて私は、個人の土地なのだけれどもということでなくて、災害というのはそういう性格だ。しかも、個人の土地といえどもこれは国土保全で果たす役割というものも重大なのです。そういう意味でこういう法も仕組んできたのだと思いますので、あえてここで議論するつもりはありませんが、一言申し上げておきたいと思います。  最後に、そのことを原則にいたしまして思いますのは、やはりいろいろお話の中で、臨調から補助金の見直しで零細な補助金は削れよ、それから事務の合理化、簡素化をやれよという指摘が強硬にされてきたという中で、いろいろ苦労して今回こういうことになったのだと思うのです。ただ、その結果はっきりしたことは、事務の簡素合理化と言うけれども、それは採択が五十から百メートルに延ばしたところで見るということよりも、むしろ落ち込むところで、件数が減るというふうなところで出てくるのではないだろうか。それから、本来の事務の簡素合理化というなら、百メートルなら百メートルの区域内で、同じような施行技術を要するものだったらくくってやるという方がもっと合理化できただろう。そういうことで研究はされなかったのだろうか、ひとつ。
  298. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まず、臨調の答申との関係でございますが、正確に申しますと、きわめて低いものに据え置かれて支出されているので、最低額の見直しを行い引き上げを図るということと、書類審査の活用等事務の簡素合理化を図ることという二点の指摘になっているわけでございます。  今回の法律改正というものは、そのこと自体、最低額の見直しということにまず取り組んでおりますが、逆に、私どもは諸般の情勢も考え、また需要というものも受けとめまして一カ所当たりの工事費の範囲を広げるという措置をあえて講じたわけでございます。  それから事務の簡素合理化は、最低額を引き上げるとか一カ所当たりの工事費の範囲を広げることによってそれ自体図られますが、私どもはそれだけでは十分でないと思っておりますので、この際、事業査定の拡大とか総合単価の適用範囲の拡大とか災害査定官の保留額の引き上げとか、あるいは災害関連事業費の決定権限の地方委譲の問題等には真剣に取り組んでいきたいと思うわけでございます。  そういう意味で、臨調の答申も一つの重要な理由ではございますが、それも要因の一つとして総合的に考えて今回の改善措置をお願いをしているわけでございます。  落ち込むか落ち込まないかという問題との関連において、御指摘のように、例えば二種類以上の施設であっても災害の箇所が一定の範囲内で、今度の法律改正では百メートルなら百メートル以内のものは一カ所とみなしてやったらどうかという御指摘ではないかと思いますが、実はこれはなかなか難しい問題がありまして、農地、農業用施設は管理主体も補助率も違うわけでございます。そういう異なる工事を一カ所の工事として取り扱うことは大変実は事務の煩雑を伴うという実態があります。  それからもう一つは、実は分離して施行することが困難な場合においては一カ所の工事として運用しておりまして、あとは事業費をアロケートするという仕組みもでき上がっております。ところがそういたしますと、関係者も違い補助率も違うものをそういう形で法律で取り上げるということについては、いささか今日の状況のもとで事務の合理化を図る視点からいかがなものかと思います。確かに、他の条件を固定して考えれば、毎度同じ言葉を使って恐縮でございますが、落ち込みを救済する効果はあるだろうと思いますけれども、しかしながら、やはりそういう補助体系なり管理体系の関係で制約があるということは御理解を賜りたいと思います。     —————————————
  299. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、菅野久光君が委員を辞任され、その補欠として大森昭君が選任されました。     —————————————
  300. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、本法案に対する質問を幾つか書き抜いてありますが、今までの皆さんの御質疑の中でほとんど触れられましたので繰り返す気持ちはございません。ただ、ちょっと席を外しておったときに触れられたかどうか、気になることがありますので、確認のつもりで一つだけお尋ねをいたしたいと思います。  それは、共同利用施設の所有主体を農事組合法人にも広げることとなっておる。全国で六千三百ですか、あると言われておりますが、その中でどのような性格の法人が補助の対象になるのであろうか、このことについて伺いたいと思います。
  301. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 共同利用施設を補助対象にする問題自体には、利益性と公益性との調整からなかなか難しい問題もございます。  そこで、農事組合法人を追加する場合におきましては、そういう視点も考慮しまして、一戸一法人で実質的に個別経営と変わらないものや、それから組合への加入、脱退に関する制限に合理性を欠くものなどはやはり公益性に疑問のあるものとして除外してまいりたいと思っております。
  302. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは、きょうは特に時間も少のうございますので、私はこの法案が沖縄県とどのような関連を持つか、こういう観点からまずお尋ねいたしたい。  一つは、本法案の適用の対象となる災害発生の実情はどうなっておるのであるか、過去五カ年の経過を承りたいと思います。
  303. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 沖縄県におきます暫定法の対象施設の過去五カ年間の累計額は、査定額で約十一億八千九百万円でございます。復旧実績を見ますと、五十六年災までは既に完了しております。五十七年災には、復旧進度五十八年度中に九五・五%となっておりまして、五十九年度に完了をする予定でございます。なお、五十八年災につきましても既に八五・二%復旧しておりまして、五十九年度にはおおむね九割を超える大部分の復旧が行われると心得ております。
  304. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それが具体的にこの沖縄に結びつけた災害復旧事業の実績といいますか、実績はどのようになっていますか。さっきは災害の事実でしょう。私が言いたいのは、本適用の対象となる災害発生の実情はどのようになっておるか、それに対する対象の実績はどうなっておるか、こういう意味で聞いておるわけです。
  305. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 先ほどちょっと舌足らずだったかもしれませんが、五カ年間で約十一億八千九百万円が災害復旧の対象として査定され、取り上げられております。内容的に申しますと、農地の査定額が九千七百七十万円、それから農業用施設の復旧費が十億四千四百万円、それから林道の復旧費が査定額で申しますと四千六百八十七万円、合計いたしまして十一億八千九百万円というのが過去五カ年の数字でございます。
  306. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私があえてきめ細かにお尋ねしたい気持ちは、沖縄は自然災害をこうむりやすい条件がいっぱいあるということなのです。例えば、何と申しましても離島県であると同時に多島県である。そうして土壌が本土と異なって非常に保水力とかそういった条件が悪いとか、あるいは地形上狭い上に急傾斜をしておる土地が多いとか、それから台風銀座と言われておるとおり台風が多発する、台風がない年はまた干ばつがやってくる、こういう特殊事情の島なのです。それにかてて加えて戦争の被害、戦後の立ちおくれから基盤整備が極めて他県に比較しておくれておるという実情なのです。  そこで、沖縄の災害被害がこのように悪条件の上に基盤整備がおくれておるということを思いますときに、沖縄のこのような実情に対して果たしてどのように取り組んでいこうとしておられるのであるか、このことをひとつ大臣にお聞きしたい。
  307. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 沖縄県の農業基盤整備事業につきましては、気象的また地形的に、台風そしてまた干ばつ、これらの災害を受けやすいということは十分念頭に置いております。そして本土復帰以来、採択率、補助率また予算につきましても特別の優遇措置をとってまいりました。しかし、沖縄の基盤整備事業はやはり本土に比べてかなり立ちおくれております。そこで、昭和五十九年度予算におきましても全国の対前年度比が九九・一%という厳しい状況の中で、総額で二百二十八億二千二百万円、前年度対比一〇二・七%という予算確保いたしました。今後とも沖縄農業の振興を図るために防災面にも十分留意しながら、基盤整備事業を積極的に推進してまいるつもりでございます。
  308. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、転ばぬ先のつえという言葉もありますとおり、私は災害復旧と防災対策は表裏一体であり、表裏をなすものだと思います。そういう点から特に強調しておきたいことは、三つの柱から述べたいと思うのであります。  まず、一つの柱は、農地侵食整備事業という柱がございます。先ほども申しましたように、特に沖縄は地形狭く急傾斜の土地が多い。それから土地の表土の流出が激しい。それからサンゴ礁からできておる土地でありますために非常にその点からも不利であるわけです。例えば要整備量という観点から見ますと、昭和五十六年の実情を押さえますと七千八百ヘクタールを持っておりますが、そのうちで整備されたのは二千七百四十ヘクタールになっているのです。ところが、これは整備率からすると三五%、まだ三分の一しかやっておらぬという状況。  それから、二つの柱のため池等整備事業、この柱からしますというと要整備量は二千二百ヘクタールあるのです。ところが、これもやはり五十六年現在の数字でありますが、実績は三百五十ヘクタールしか整備されておらない。これは整備率からしますとたった一六%なのです。そうすると、あと八四%というほとんどまだ手をつけておらぬという状態であるのです。  次に、もう一つの柱は、農地海岸保全施設整備事業、この柱からしますというと、先ほど私は沖縄が離島県、多島県であると申し上げましたが、地形上農地海岸が比較的多うございます。それは全国的にも長崎、愛媛で、その後第三位が沖縄なっておるわけですが、二百十二キロメートルで全国第三位の農地海岸を持っておる。こういう事情にありますけれども整備率からしますと、五十六年現在で四・五%しか整備されておらぬ。ところが、全国平均整備率と比較しますというと、全国平均は二九・一%になっております。まさに六分の一という実情であります。  ですから、これは本土並みということを目標にして第一次振計の十年を締めくくって、第二次振計へ差しかかっておるわけでありますが、こういう実情からしまして、まさに格差是正ということもほど遠い、こういうことを思うときにいよいよ焦りを感ずるわけであります。どうか、このような実情も踏まえて対処してもらわぬと、災害復旧と防災との表裏一体で考えてもらわないと、ますます格差が大きくなるのじゃないか、こう思われてならないのです。促そういうことをにらみ合わせて、大臣のそういった実情に対するこれからの取り組みに対する決意をお聞きしまして、時間が参ったようでありますので、終わりたいと思います。
  309. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 今後とも沖縄県農業の振興を図るために、計画的に事業の推進を行っていきたいと思います。
  310. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案について二、三お伺いをするわけであります。  一つは、災害がここ例年非常にふえたというのか、被害額が金額的にも非常に大きな金額になっておるというふうに統計上見ざるを得ないと思うのです。災害は深化するということも言われておりますが、最近の気象状況というものもいろいろあるのだろうと思いますし、それに対する災害復旧事業というものが適切だったかどうかということや、また、山村振興ということ、工事のことから、こういうものと関連いたしまして総合的に考えなきゃならない。ですから、一概に軽々には論じられないことかもしれませんが、被害金額の推移を見ますと、最近は農業に関する被害が、ここ五十六年、五十七年を見ましても、一兆円に近い被害を受けているというように数字の上からも言えると思います。農地または農作物や林地、施設も全部を入れましてですが、こういう農作物、農林漁業を取り巻く被害が一兆円に迫るような大変な被害が最近続いておる。こういうことから、農林水産省といたしましては前向きのいろいろな施策をしなきゃならないということは当然のことであります。また、新しい時代に即応し、国際化ということの中で基盤の脆弱な農林漁業に対しましては、この被害金額等を考え合わせますと、これは非常に農林水産省としても重要な課題として取り組まなければならない問題であろうと思うわけであります。  今日までもいろいろな法律金融制度、共済制度、それぞれの制度があるわけでありますけれども基本的に農林水産省としてこういう災害の問題についてどのように認識をし、今後取り組もうとしていらっしゃるのか。また、災害の被害金額がどんどん一兆円を超すような状況になっておるという状況については、気象だけに任せることではならないのだろうと思うのです。確かに気象状況もありますけれども、今後のことについて何か省内での御検討事項等がございましたらお伺いしたいものだと思うのですが、どうでしょうか。
  311. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 農林水産省といたしまして、農地等に対する災害に対しましては、個人の資産という私的な面もございますが、また反面、いわゆる食糧を供給する基盤でもございます農地、そしてまた、国土の保全という公共的面も有しておりますところから、この災害復旧に関しましては補助を行いまして、そして農林水産業の維持と経営の安定を図っていくという基本姿勢でまいります。  先生がおっしゃいました年々被害の額が大きくなっていくということでございますが、これらにつきましては、ひとつよく検討をいたしまして、これらに対する対策も考えてまいりたいと思います。
  312. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 農林漁業で一番大事なことは基盤整備ということなのだろうと思います。台風、豪雨、地震、豪雪その他ということでいろいろデータいただいておりますが、同僚委員からもいろいろ指摘があったと思うのでありますが、やはり山村というものがいかに国土保全上重要な役割を果たしているか、または水田にいたしましても水源涵養、また国土保全上これがいかに大きな役割を果たしているか。平地の平坦部ですとそれはそれなりにわかるのですけれども、だんだん過疎化現象の進んでおります山村というところでどんどん人口流出ということ、これは前の委員会のときにもいろいろお話を申し上げて、大臣もよく御存じのことだろうと思うのですが、やはりそこに働く場がなきゃならないということです。このまま手をこまねいておきますとますますこういう状況が進んでいくのじゃないかと思います。こういうことから、特に山村部における林野に対する手入れをするということはもちろんのこと、田畑につきましても土地基盤の整備、特に平坦地の大規模なところについては基盤整備や何か大きな規模でどんどん進めるわけですけれども山村地域ではそんな大きな面積ではできないわけです。しかし、だからそういうことを小まめにすることが、また国土保全上、水源涵養とかいろいろなことの上から非常に重要だということは言えるだろうと思うのです。これも今日までいろいろ論じられてきておることでありますし、当然十分に御認識いただいていることだと思うのであります。やはり今日のこの異常気象というのは、いろいろな気象条件があるのかもしれませんけれども、雨の降り方が過去と現在とそんなに大きく違ったのじゃないだろう。そうすれば、そういう山村というものに対してもっと目を向けていかなきゃならない問題があるのではないか、このように思えてならないのですけれども、どうですか。
  313. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) いろいろな御指摘があったわけでございます。最近の災害を見てみますと、幾つか特徴的な点がございます。一つは、この数年間の冷害等で農作物被害がかなり大きくなっております。それから施設や農地の被害につきましては、ある程度局地集中性が出てきている。ただ、どちらかと申しますと、従来に比べて公共土木施設に対する、農地や農業用施設のいわゆる災害の比率というのは、幾らか比較的には下がってきているという実態があります。これはやはり今先生指摘のように、基盤整備が進んだ地域では災害がだんだん少なくなってくるという実態を反映しているのだろうと思います。  そこで、今後の問題といたしましては、やはり一つは、かなり気象の異常性というものがあるので、安全度を見た事業実施、特に防災事業というものをどう進めるかが一つの課題だろうと思います。それからもう一つは、従来は災害が出なかった地域が、いわゆる人口が増加いたしまして過密になっている。そのために、例えばため池等の決壊が大変な人身被害を及ぼしたり、施設被害を及ぼす結果になる。そういう意味においては過密に対応する対応という点が要ると思います。それから三番目は、今御指摘がございましたように、過疎地域において自然管理の体系がうまくいっていないということが災害を多発させるという問題だろうと思います。  私どもは、やはりこういったことを広角的にとらえることが非常に重要であろうと思っております。特に山村、中山間地帯につきましては私ども土地改良事業、防災事業について既に採択基準とか補助率等については多分の優遇を図ってきたつもりでございますが、これから実需を受けとめて運用の改善に努めるとともに、やはり第三次の土地改良長期計画の時期においては西日本、特に中山間地帯に対してかなり高いウエートの予算の配賦が必要になることは受けとめていくし、また取り組んでいかなければならないと思います。また、次の機会に本委員会で御審議を願うことになっております土地改良法あるいは農地法の改正等も、いわば定住社会を実現していく、村づくりを考えるという意味で諸般の手法や計画事項を盛り込んだということも、それはやはり一つの側面においては国土の有効利用であり、保全であるということを重視してのことでございます。そういった意味で、広角的な努力をこれからも続けてまいりたいと思っているわけでございます。
  314. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 今何点かに分けてお話がございました。都市部についてはそれは問題はあるのですが、きょうは農林水産委員会ですから、山の方というか、農林水産省の担当分野ということから、いうと、今局長からいろいろお話があったそういうことが大事だと思います。それだけに総合的な施策というのは大事になってくると思いますし、これは農林水産省だけでできることじゃございません。また、林野三法のときにもいろいろ申し上げましたように、自治省とか国土庁の各省庁と御協議いただいて山村振興の施策というものをがっちりやっていく。ちょうど三全総がいろいろ見直されておりまして四全総策定という作業に入るようであります。そういう中で山村振興というものについてのもっと具体的な、実効の上がる、そしてまた、今日まで森林三法でいろいろ論じられてまいりました山を大事にすることが、それは山だけのことじゃなくて、下流域に対する国土保全の機能という大きな役割があるのだということがいろいろ各党から論じられてまいりましたけれども、閣僚の一員としまして大臣にもしっかりこの点について御発言をいただき、そしてまた、そういう方向でこの施策が進められるようぜひ大臣に御努力をいただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  315. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 農林水産、これは今先生おっしゃいましたように、林業におきましても国土の保全、水資源の涵養、自然の保全、そしてまた農業におきましてもこれが国土の保全と水資源の涵養、これらを備えておるわけでございます。今までもいろいろ農林水産業の重要性というものを言ってまいりましたが、今後ともこれは農林水産省一省でやることではなく、内閣全体として取り組むというようなことの雰囲気づくりもやってまいりたいと思います。
  316. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 大臣の決意を聞いておると、あしたにもできるような感じがするのですけれども、ぜひその意気込みでよろしく御努力いただきたいと思うのです。だれかが本当に気違いのようになって一生懸命にやっていただきませんと現在の過疎化には歯どめがかからぬというふうに思います。そしてまた、各省庁にまたがることだけに大変なことだろうと思うのであります。  さて、本法でございますが、二十五年に施行になりまして、今日まで確かに物価上昇とか、それから五十七年度沿岸漁場の整備開発事業の進展、臨調の答申、こういうことでこのたびこの法改正ということであります。同僚委員からもお話があったと思うのでありますが、このデータ等を見ますと、百メートルにするということには異論はないのでありますが、このいただいたデータで、補助対象施設の規模別被災状況等を見ますと、事業費で十万から三十万というのは農地では大体シェアが一一・四%ということです。それから箇所数から言いますと、十万から三十万というのは三七・二%というとても大きなウエートを占めているということで、採択にならない部分というのは非常に少ないのかなというような感じもしますが、この法律を提出するに当たりましては皆さん方もモデルか何かでいろいろ検討したのだろうと私は思うのです。そのモデルなんかで実際やってみた状況の中で、非採択件数といいますか、そんなものはどのぐらい、どういう状況であったのか。これからやってみなきゃわからないと言うのじゃしょうがないので、今までのそういうものがございましたら承っておきたいと思うのですが。
  317. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 実は災害の形、基盤整備の進捗状況、地形等によって千差万別で十分に把握できませんので、具体的に問題になります代表地区を五十七年災から抽出いたしまして調査したものがございます。農地、水路、それから道路、農道等に分けて整理しております。現在の一カ所五十メートルという範囲で十万円以上というものと、今度は一カ所百メートルで三十万円以上ということで拾ってみますと、まず農地につきましては箇所数は四四%に減りますが、工区数では実は若干ふえて一〇三%になるという形になります。金額的には九九%でございまして、箇所数は減って合理化されるが、工区や金額、復旧事業費では大きな変化はない、ただ落ちたものは百メートル広げることで全部カバーされるわけでもございませんので、その間に若干の出入りはあると思います。  水路につきましては、同じように比較してみますと、これは他の別の調査で七市町村について調べたものでございますが、箇所数では五四%、工区数では九九%、金額では九九%でございまして、やはり水路の場合でも箇所数が大幅に減って、工区数、金額は大きく変化がないという数字が出ております。  それから、農道につきまして七町村調べてみましたが、これで見ますとやはり同じような形が出ておりまして、箇所数では七〇%に、三割減りますが、工区数では九四%、事業費では九九%という形になっております。  総じて具体的な数字でチェックしてみますと大きな変化はない。箇所数が減って事務手続自体は大幅に簡素化されるだろうというふうに見ております。
  318. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 これは単純に今ここでやりとりする数字だけでは論じられない地域性とか何かいろいろなことがございますので、私もその点は十分わかるのです。ただ危惧するのは、経営規模とか農家の立地条件それぞれによりまして、どちらかというと北の方、東北、北海道、特に東北地方なんかですと四年も連続で冷害というような環境の中で不採択、採択にならない部分が多いというか、できるという。そういう網から漏れたものが出てまいりますと、非常に農地が多いわけですから、そういうことからいうと農地の荒廃というものにつながっていくのではないか。特にそういう経済基盤の弱い、また経営規模の小さい脆弱な農家に与える影響、またその地域に及ぼす影響というものは決して少なくないのではないかという危惧があるものですからいろいろなことを申し上げておるわけであります。この非採択になったものについても融資制度とかいろいろなことがあるのだろうから、何らかの対処はするのでしょうけれども、しかし、四年も冷害を受けるということになりますと、なかなか農家の力でやるということは非常に難しい一面あります。こういうことで、今後もう少し綿密にそういう現在の農家の経済状況等も勘案しながら実態というものはつぶさに見ていただきたいものだと思いますが、どうでしょうか。
  319. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のとおりであろうと思います。先ほども申し上げましたように、一カ所当たりの工事の範囲を百メートルに広げておりますので、実際は経営単位に見てもたくさんの被害が出るような場合は救済される場合が多いと思いますが、確かに理論的には落ち込む場合があるわけでございます。これにつきましては、市町村が行う復旧事業につきましては融資の確保、特に激甚災については手厚い措置も予定されておりますし、また、元利償還金の金融財政需要における算入等の手当てもあるわけでございます。また、特に農地の小規模な災害につきましては、何と申しましても自力復旧が大きなウエートを持っております。そういう意味で土地改良資金は非常に優遇された制度として災害の枠がございますので、これを積極的に活用するよう留意していきたいと思います。一部の県では、農業施設等については県単でまとめて救済する事例もあるように聞いておりますが、やはり基本的な枠組みは今申し上げたような点を基本にして考えてまいりたい。私どももそういった落ち込みがあって、そのことが農業の再生産なり国土の保全にマイナスな影響を及ぼさないよう十分に留意して、事態をウォッチして必要な指導なり手当てを講じてまいりたいと存念しております。
  320. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 本法では補助対象施設が今度拡大されて、沿岸漁場整備開発施設も対象になることになりますが、「消波施設その他政令で定めるものに限る。」ということですが、その他の政令で定める施設というのは、これは魚礁とかいろいろなものがあるわけですけれども、こういう施設で現在政令の中で考えていることはどういうものがあるのかということ。それから補助率については漁港施設と同じ程度のものが考えられているのかどうかということ。それから激甚災害ですね、暫定法に基づく補助のかさ上げされた農地とか農用地というのは大体八割ぐらいあるのですけれども、そういうことからいうと今度の沿岸漁場整備開発施設の災害についても激甚災の指定を受けられるような法改正が必要ではなかったのか。これらのことについてはどうでしょうか。
  321. 尾島雄一

    政府委員(尾島雄一君) 今回、新たな施設として沿整施設が具体的に入るわけでございますが、その際、消波施設を一応代表的な事例として出しておるわけでございますが、一般的に災害復旧事業対象とするものといたしましては、災害を受ける蓋然性が非常に高い、それから災害の実績があるということがやはり必要な条件ではないかと思っております。さらに、災害復旧の緊急性が高いということ。これは災害復旧は原形復旧を原則としておるわけでございますので、災害前の現状が常に把握されているということが必要でありまずし、またその把握された現状からどの程度の災害があったかという、その災害の査定が技術的に可能でなければならぬという条件があるわけでございまして、このような観点から今度の沿整事業により造成されております各施設について検討を行って、今回は法律で定めてある消波施設のほかに導流堤とか護岸、堤防、突堤、それから水質保全のための水路、それから水産動植物の着底基質を対象としていきたいというぐあいに考えているわけでございます。  なお、漁港との補助率と整合性があるか否かということでございます。これにつきましても、沿整施設の補助率は漁業用施設であります漁港施設と同程度の水準になるように定めたいと考えておるわけでございます。一般的な補助率のほか、さらに高率補助率につきましても、具体的には市町村ごとにその年に発生した沿整施設の災害にかかわる災害復旧事業費の総額が当該市町村の標準税収入に当該市町村の世帯数に占める漁家世帯数の割合を乗じて得た額の一定の倍率、これを例えば三倍とかを超えるときには一次高率といたしまして十分の九の補助率、さらにそれを大きく上回る倍率、例えば六倍程度のようなときには二次高率ということで十分の十が適用されるようになるようにその適用基準を定めたいというぐあいに実は検討いたしておるところでございます。  また、沿整施設が激甚災に対しての対象となるかどうかということでございますが、暫定法の対象施設のうちで何を激甚法の対象とするかということは、やはり何といっても被災の実績を踏まえて判断してきているところでございまして、現に、暫定法の対象施設のうち漁港等については激甚災の適用はないわけでございます。沿整事業につきましてもいまだ緒についたばかりでございまして、まだ被災実績も少のうございますから、激甚災の適用について今後の災害の実績の推移を見た上で実は検討をすることといたしたいというぐあいに考えている次第でございます。
  322. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 ちょっと話が前へ戻って申しわけないのですけれども、これは原形復旧が原則ということなのですけれども、私も、災害がありまして現地に参りますと、特に山村僻地といいますか、山村に参りますと、原形復旧ということよりも改良復旧ということの方がより実際的じゃないかと思うことが間々あるのです。これは最小限度といいますか、原形復旧が不可能な場合に限られるような制度になっているのですけれども、最近はそれでも随分改良復旧というものが考えられるようになりました。特に山村地域につきましては、実態に即した改良復旧というものをもっと大胆にやれるように考えていくべきじゃないかと私は痛感するのですけれども大臣、どうでしょう。——大臣はわからないかな、じゃ局長から。その後で決意を伺います。
  323. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私からちょっと前座でお答えさしていただきます。  改良復旧につきましては、実は伊勢湾台風を契機といたしまして大幅に認めております。それは従来の機能回復以外に長期にわたる効用の確保ということを認めております。したがって、施設の内容や使用いたします資材等については従来のものに必ずしもこだわった実施をしておりません。今先生指摘のような山村等で問題になりますダムの問題とか水路の問題等は、特にそういう問題があると思います。私どもも十分に配慮して運用したいと思います。  これ以外に実は災害関連がございます。災害関連対策については、改良復旧がかなり認められました関係上、最近では比較的件数も金額も少なくなってきておりますが、やはり立地の特性を生かした災害関連事業制度化したいということで、五十八年予算からは緊急地すべりにつきましては、災害に関連あるものは災害関連事業実施する道を開きましたし、先般成立いたしましたことしの予算におきましては、いわゆる老朽ため池整備、これも実は山間地帯では非常に防災上重要な問題でございまして、これにつきましても、災害関連事業制度を認めているわけでございます。一挙に何もかもというわけにはいきませんが、御指摘の点を頭に置きまして、改良復旧の適切な運用と関連事業の拡充ということに今後努めてまいりたいと思います。
  324. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 災害状況を十分踏まえまして、現地の実情に見合ったところの復旧作業をやらせたいというぐあいに考えます。
  325. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 特に山村振興というか、山村部については大胆にひとつ進めていただきたい、いろいろやっていることは私どもも認識しておるのです。  ところで、昨年日本海中部沖地震がございまして、ちょうど一年になるわけでありますが、あの痛々しい悲惨な事件から私どもは多くのものを学ばなければならないと思うのです。それぞれの省庁でいろいろな分析をいたして、また、今後の教訓としていろいろなさっていると思うのでありますが、私はそういう災害的な問題については後日の機会にさしていただくとして、きょうはこの災害に関連しまして、人命は何よりも大変悲惨な被害であったことで、これは本当にお亡くなりになった方々には衷心よりお悔やみを申し上げるものであります。それぞれの立場で大変な被害を受けたことは御存じのとおりです。  日本の農業の夜明けとまで笛や太鼓で宣伝されました八郎潟の堤防が決壊したということは、これは大変な驚きであり、そしてまた、その被害というものは大変な大きいものである。ところが……(「決壊していない、決壊したら大変だ」と呼ぶ者あり)崩壊、一部決壊、一部陥没、いろいろだよ。そういう壊れたことは事実です。これは予想し得ない大きな地震であったと、こういうことになればそれまでのことでありますが、だれが一体復旧するのかということになりますと、これは事業団が実は事業をしたわけでありますが、五十二年に解散をいたしまして県の方に移管になった。今は建設省が監督する立場にあるということでありますけれども、これは公有水面の埋め立てということで建設省なのか、建設省が公共土木施設ということでこの堤防のことについての責任を持つ立場になる、もちろん県ですけれどもね。  これは災害復旧ということになると三年で復旧しなきゃならないわけでありますが、およそ当時は三百億か四百億か、いろいろなことを言われておったのです。その後、この被害についてはどのような査定をなさって、そして三年の計画の中で工事が進められるかどうか。その後また、さらにいろいろな問題が絡んでいるのですが、この復旧のために建設省が計画をなさった経緯というか、その辺のことについて建設省にちょっとお聞きしたいと思うのです。
  326. 狩野昇

    説明員(狩野昇君) お答えいたします。  先生から今御指摘の八郎潟の干拓堤防並びに周辺の堤防も含めてでございますが、これは二級河川馬場目川水系の堤防として現在秋田県において管理しておるものでございます。したがって、日本海中部沖地震により被災いたしました件につきましては、その復旧は公共土木施設の災害復旧事業として採択して、現在鋭意工事を促進中でございます。昭和五十八年度の災害復旧事業として採択したわけでございますが、復旧事業だけでございませんで、改良復旧を加えまして災害復旧助成事業として採択しております。復旧延長は九十九キロメートル、うち中央干拓堤防部分が五十一キロメーターでございます。  それから、総額は約三百四十五億円でございまして、このうち災害復旧に該当する部分が二百四十九億、改良復旧に相当する、助成費に相当する部分が九十六億でございます。  昨年度、被害発生後、直ちに秋田県を中心といたしまして災害の復旧対策工法につきまして検討する委員会を設けております。委員長には土本部長がなっていただきましたけれども、その他学識経験者、建設省、農林水産省等の担当官を入れまして、緊急に災害復旧の工法の検討をいたしたわけでございます。その結果、ただいま申し上げましたように助成事業を含む三百四十五億円という形でもって災害復旧事業を決定いたしております。  それに基づきまして昨年度は事業費二百三十四億円を計上しております。これは先生御承知のように、昨年度大幅な災害復旧の前倒しが行われましたので、このような非常に大きな金額になっているわけでございます。考え方といたしましては、災害費が七五%、助成費は四〇%ということで前倒しの計上になっております。したがって、総計で二百三十四億円でございますが、進度に直しますと六八%ということになっております。ただし、昨年からといいますか、ことし非常に豪雪でございまして、工事の方は相当部分を繰り越しまして、現在鋭意進めておる段階でございます。  なお、今後につきましては、これも先生指摘のとおり、災害復旧の部分につきましては、三カ年復旧でございますが、助成事業の分につきましては非常に大規模なものでございますので、五カ年というぐあいに考えております。したがって、災害復旧の全体の事業費に占める割合が多うございますので、最初の三年間が非常に大規模な事業の執行になるわけでございますが、我々といたしましては、最初三年間で主として中央干拓堤防を完成させまして、五年間で、昭和六十二年度までを目途としまして周辺干拓堤防のあわせて完成を図ってまいりたい、こういうぐあいに考えております。
  327. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 今お話しございましたように、三百四十五億ということですから大変な事業であるわけですが、時間がございませんから、後からこれは資料でぜひ提出していただきたいと思うのです。地方自治体の、県の自己負担分もこれはあるわけで、最も県財政として大変な秋田県がこれを背負うことになるわけです。これは事業団がまだそれを管轄しているときだったら事業団がやるのでしょうけれども、県がこれをということになりますと、こういうことになった県の負担は大変だという。これはどのくらいの比率になってどういうふうになるのか、その辺の助成部分と、それから県の負担分と区分して、資料としてぜひ出していただきたいと思います。  時間がありませんから、その次に一つだけお聞きして終わりたいと思います。  それは、秋田県の知事に対して農林事務次官から五十一年の八月十五日、「八郎潟新農村建設事業の完了と今後の指導について」というものがございますが、この中に田畑複合経営ということが必要だということをうたわれて、しっかり指導せよということになってるのです。これは五十二年の当時の時代の推移の中でそうせざるを得なかったのはあれですが、しかし、ここは排水の非常に悪い地域がございます。  これは五十六年から県営で排水事業をやることになっているというようなお話でありますけれども、本来、これは事業主体がやることだ。五十二年から県に移管になったからあれですけれども、国というか、本来なら事業団がやるのですから、これは自治体に大変な負担を強いるということはいかがなものか。償還金だけはちゃんと納めていただくということになっているのですけれども、こういう事業について、それは制度的には県営排水事業ということになるとそれぞれの負担割合というものは出てくるのかもしれません。しかしこういう大きな事業で、そして今まで事業団がやっておったものが県に移管になるということからしますと、額面どおりの負担割合というのは非常に割り切れない気持ちがするのです。ここらあたり、農林水産省としてはこれを決めるに当たりましては何か物差しがあるだろうと思うのですけれども、そういうことと、また特に配慮とか、いろいろなものがあるのかどうか。そのまま県に負担をさせるということになると非常に多額なものになり、特にこういう被害を受けた後ということでありますから、一遍に県に対する負担が大きくなるというふうに思うのですけれども、その辺ひとつ御説明いただきたいと思います。
  328. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 実は、若干私どもの担当からの説明が悪かったのかもしれませんが、事業団とか公団事業で一貫施工をいたしますとき、それが県営級、団体営級の事業も一貫施工で実施する場合はございます。しかし、補助率自体は、つまり国の負担率自体はやはりそれぞれの負担率によって決めているわけでございまして、公団事業の基幹事業はあくまでも国営事業と同じ負担率、しかし末端まで一貫施工する場合は県営なり、場合によっては団体営まで及ぶわけでございますから、それはそれぞれの補助率ということで総合的な補助率で決めているというのが基本的な制度の仕組みであることは事実でございます。  さて、この問題につきましては、既に入植が決定し、公共土木施設は河川管理者なり道路管理者に、それぞれ県に移管が完了された後の問題なわけでございます。このいわゆる八郎潟において田畑複合経営をつくるにつきましては、従来十ヘクタールの経営単位であったものを十五ヘクタールに広げまして配分をいたしたことも御承知のとおりでございます。私どもはしかし非常に重要な事業だと思っておりまして、裏負担の融資の確保等についてはできるだけ配慮をしたつもりでございます。実は、はっきり申し上げますと、水路等の底が浮き上がってくるとか、のり面の崩壊が起こっている、それから暗渠の沈下が起こっているというようなことが、実は地震等で関連して起こってまいりまして、事業が必ずしも順調に進んでいないことを残念に思っております。御指摘の点は頭に置きまして、まず事業の計画的な実施、早期効果の発現ということに努力をしたいと思っております。  なお、必要な裏づけの負担、県等の負担あるいは受益者の負担等については今日の制度一般原則で処理しておりますが、負担能力は平均的には十分あるものと思っておりますが、必要がありますれば、補助事業でございますから、具体的な判断をいたしまして所要の措置は考えていきたいと思っております。
  329. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 大臣、いろいろお話ししましたが、もっとやれというのともう時間だという人といろいろあるようでありますけれども……。  大体この法律そのものについては先ほどちょっとお話しいただきました。また、災害そのものについてはまた後日やりたいと思いますけれども、災害というものは、災害の起きたときはもうみんなで大変だぞということですが、時間がたちますととかく忘れがちになってしまいます。しかし、実際にそこで被害を受けた方々は大変な思いの中で、しかも先ほど来お話がございましたように、ここのところ非常に気象状況がよくない、畑作物がよくない、こういう中で大変な苦労をなさっているということであります。きょうはほんの一部を申し上げたのですけれども、災害というのは農林水産業については非常に多い、しかもその被害を受けやすい、そして金額も非常に多い、そういう中で大変な、農林水産業の中の大きなウエートを占める部分である、こういうことで、今後、災害問題については積極的にお取り組みいただきたい。  最後に大臣の決意を聞いて、終わりたいと思うのであります。
  330. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 災害は忘れたころにやってくるというようなことでございますけれども、ふだんから災害に対して配慮することを忘れませんように、今後とも引き締めてやってまいります。
  331. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  なお、本案の自後の審査は後刻に譲ることにいたします。     —————————————
  332. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案国有林野法の一部を改正する法律案及び国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。  三案につきましては、理事会で確認いたしましたとおり、これにて質疑を終局いたします。  ただいま議題となっております三案のうち、国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案の修正について、村沢牧君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。村沢牧君。
  333. 村沢牧

    村沢牧君 私は、三案のうち、国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に対し、修正の動議を提出いたします。  その内容は、お手元に配付されております案文のとおりであります。  これよりその趣旨について御説明申し上げます。  御承知のように、今日、地球的規模で緑資源の枯渇が問題化しており、森林を育てることが国際的にも緊急、切実な課題となっています。  言うまでもなく、森林は木材の生産、水資源の涵養、大気の浄化、災害の防止、自然環境の保全、保健休養の場の提供など国民生活にとって不可欠な資源であります。しかしながら、我が国の森林、林業は高度成長期を通じた乱開発と過伐による資源の減少と荒廃、山村の人口流出、過疎化による森林管理機能の低下と低成長下の長期不況によって危機的な状況にあります。  我が国の森林、林業の中核的役割を担うべき国有林野事業の財政、経営の危機的な状況もこの日本林業の危機と不可分一体のものとして進行しているのでありますが、我が国最大の林野所有者であり、林業事業体である国有林野事業の改革、再建なくしては我が国の森林、林業の再生、振興はあり得ないのであります。  しかるに、本委員会に提案されました政府国有林野事業改善特別措置法の一部改正案は、林政審の答申を受けて、現行法の七十二年度収支均衡の目標として、改善期間の延長と退職金に関連する資金対策のみの改正案であり、国有林野事業の外部、構造的要因に基づく経営悪化に対する抜本的な打開策も持っておりません。私は本委員会で指摘もいたしましたが、これでは早期再建はおろか、七十二年度収支均衡は到底おぼつかないことは明らかであります。  私は、かかる欠点の多い政府案を抜本的に修正し、林政審の指摘する国有林野事業の持つ公益的機能の重視など三大使命を総合的に発揮させ、国の積極的な財政措置等を盛り込み、七十二年収支均衡の目標達成を図れるよう提起をいたしているところであります。  以下、修正案の要旨を御説明いたします。  まず第一に、本法の趣旨に、国土保全、水資源の涵養、良好な自然環境の保全など公益的機能の維持増進、林産物の計画的、持続的な供給、農山村地域の振興への寄与等、国有林野の三大使命を明らかにしたことであります。  第二に、改善計画の期間昭和五十九年から昭和七十二年までとし、改善計画のうち、「林業基盤の整備に関する事項」を「森林資源の整備に関する事項」に改め、改善計画に資金確保に関する事項を加え、なお一層国有林野事業の使命が総合的に発揮できるよう充実したのであります。  第三に、一般会計から特別会計への繰り入れとして、まず、治山事業森林保全管理事業森林レクリエーション事業、林木育種事業保安林にかかわる造林事業などの経費は当然経費として繰り入れるものとし、この他の造林、林道の開設、改良、災害復旧事業経費についても、予算の定めるところにより繰り入れ、財政的措置を明らかにしたのであります。なお、退職手当に係る借入金等につきましては政府案どおりであります。第四に、資金の貸し付けにつきましては、資金事情の許す限り特別の配慮をするものとし、借入金に係る資金の償還期間等については、資源の育成途上にあるところから緩和措置をとり、借入金の利子についても一般会計から予算の定めるところにより繰り入れることにしたのであります。  以上が修正案の要旨であります。  何とぞ、御審議の上、委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  334. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  ただいまの村沢君提出の国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。山村農林水産大臣
  335. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) ただいまの修正案につきましては、政府としては反対であります。
  336. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 別に御発言もないようですから、これより三案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  337. 上野雄文

    ○上野雄文君 私は、ただいま議題となりました案件につきまして、日本社会党を代表して、政府提出の一部改正法律案に反対をし、同法案に対する日本社会党の一部修正案に賛成の立場で意見を述べたいと存じます。  二十一世紀における人類の課題は、平和な国際環境づくりと資源、自然環境問題だと言われています。その意味では、森林の持つ人類に与える公益的な機能はより評価されなければなりません。木材の生産、水資源の涵養、大気の浄化、自然災害の防止、緩和、自然環境の保全と保健休養の場の提供など、国民生活にとって不可欠な資源であることは、この法律の審議の過程で明らかになったところでありまして、政府並びに各党ともその点では意見が一致するものと思います。  そこで、資源小国と言われる我が国ではありますけれども、その森林資源はまさに唯一の再生可能な資源であり、十年後には国産材時代が来ると言われているように、木材の自給率は飛躍的に向上すると言われています。今こそ森林の果たす公益的機能を高めるという国民的な要請にこたえ、国家百年の大計のもとに我が国の森林、林業とその中核である国有林事業の民主的な再生と再建策を確立しなければならないと考えるものであります。  しかるに、本委員会で審議した国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案は、林政審でも、「新たな政策展開なしには、昭和七十二年度までの収支均衡の達成は困難である」として、財政措置及び一般林政などの施策の充実強化を提起しているにもかかわらず、七十二年度収支均衡を掲げ、それは目標ではなくて、それまでのプロセスとしての数字的な長期収支試算も明らかにされず、それは決意と願望という形であることが明らかにされています。  そして、その中身は、改善期間の延長と退職金に関する資金対策づくりだけの改善策であって、何ら抜本的な打開策を持たないまま対応するにとどまっているとしか言えないのであります。これでは再建はおろか、七十二年の収支均衡は到底おぼつかないと考えざるを得ません。そして、政府案では、当面の自助努力のみの改善策に追われ、結局、国有林野の再建どころか、ますます手抜き施業による国有林野の荒廃を招き、そのツケを後に回す愚かな施策と言わざるを得ません。  今国有林野事業の再建、充実のために緊急に必要なことは、我が国の森林、林業の中核的存在である国有林野事業の使命、役割の総合的な発揮ができるよう明確に位置づけるとともに、国有林野資源の充実保育重視、これらの計画的な施業の遂行、国有林野事業の使命達成にふさわしい事業の実行形態及び運営のあり方、使命達成に必要な機構、要員の確保充実、財政措置についても、抜本的な見直しを図らなければなりません。日本社会党の修正案は、まさに国有林野事業改善計画を抜本的に見直したものであります。  すなわち、まず趣旨の中に、公益的な機能の維持増進、山村地域の振興等の修正をすることは、国民森林資源の充実を求める声が高まっているときだけに、時宜に適したものと言わざるを得ません。  林政審答申では、国有林野事業の公益的機能の強化を強調しています。また、改善計画を七十二年度までとし、森林資源の整備、そして必要な資金確保を盛り込んだことは、国有林野事業の使命達成の上で当然のことであり、資金計画のない改善計画では絵にかいたもちと言わざるを得ません。  また、一般会計から特別会計への繰り入れについても、治山事業を初め、森林保全管理レクリエーション事業など、当然経費として繰り入れることは、非経済林、公益的機能を十分に発揮できるようにするために絶対に必要な経費であります。  また、借入金に対する償還期間の延長、借入金の利子補給など、民有林並みの措置をとるべきであり、国有林野事業が赤字になるのは、これらの財政措置がとられていないからだと考えるものであります。  社会党提案の修正案が仮に満場一致で決定された場合でも、国有林野改善はなお厳しいことには変わりはありません。ただ、これらの措置がとられることにより、国有林野事業に命をかけている人たちの一層の励みが、この事業改善の大きな力になることは間違いのないことだと私は考えるものであります。今ほど、木材は輸入できても、森林は輸入できないという言葉をかみしめる必要なときはないと考えます。  以上、私は、政府提出の国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に反対の意見を述べ、同法律案に対する日本社会党提出の修正案に賛成の意見を述べた次第であります。各位のよりよき山をつくる社会党の修正案への御賛同を願ってやみません。  なお、我が党は、保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案及び国有林野法の一部を改正する法律案については賛意を表するものであることを申し述べまして、討論を終わります。
  338. 川原新次郎

    川原新次郎君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となっております保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案国有林野法の一部を改正する法律案国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に賛成し、村沢君提出の国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案に反対する討論を行います。  御承知のとおり、世界的に森林資源の減少が予想され、また、緑資源確保に対する国民の要請が高まっている中で、我が国の森林、林業及びその中核たる国有林野が果たすべき役割はますます大きくなっていくものと思われます。  このため、国有林、民有林を通じた森林資源の整備が必要であり、林政各般の施策を強力に展開していかなければなりません。  また、経営の悪化している国有林野事業については、経営健全性の確立が緊急な課題であると考えております。  このような観点から、以下、私はこれらの法律案に賛成する理由を申し述べます。  まず、保安林整備臨時措置法の改正でございますが、水資源の涵養や災害防止のために保安林機能整備拡充を図ろうとするものであり、極めて時宜を得たものであります。  また、国有林野法の改正は、国有林に分収育林制度を導入するものでありますが、国民緑資源の造成への参加要請にこたえるとともに、国有林野事業収入確保に資するものであり、極めて意義の大きいものであると考えます。  次に、国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案でありますが、この法律案は、国有林野事業改善のため、自助努力の徹底と所要の財政措置を講じようとするものであり、国民各層の理解協力を得て経営健全性を確立していく上で極めて適切なものと考えます。  このことをもって、私ども自由民主党・自由国民会議は、政府提案の三法律案に賛成するものであり、村沢君提出の国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案は財政措置を求めることに偏り過ぎていると思われ、反対するものであります。  以上をもって私の討論を終わります。
  339. 下田京子

    ○下田京子君 私は、日本共産党を代表して、国有林野事業改善特別措置法改正案並びに国有林野法改正案に対する反対討論を行ないます。  国有林野事業は、林産物の安定的な供給、国土の保全や水資源涵養等の公益的機能の発揮、さらに国有林野の活用や国有林野事業の諸活動等を通ずる地域振興への寄与など、国民経済国民生活の上で重要な使命を担っております。  ところが政府は、経営悪化を理由に、昭和五十三年度以降、国有林野事業改善特別措置法に基づく改善計画によって、要員一万人余の削減、十六営林署の廃止など、管理経営組織の大幅縮小と、直用事業の請負化等による事業の縮小を進めてきました。  そもそも、国有林野事業経営悪化の原因は、かつての高度成長時代の過伐、乱伐による森林資源の減少や、公益的機能維持の要請による伐採量の落ち込みと、外材輸入増と木材需要の減退による木材価格の低迷など、基本的には政府の大企業本位の経済、そして林業政策の結果であり、経営合理化など内部努力の不足によるものではありません。したがって、五十三年当時、我が党は、経営収支改善のためには一般会計からの繰り入れの大幅増額など抜本的な対策が必要であり、赤字を専ら財投からの借り入れに依存することは一層の経営悪化をもたらすものと指摘したのであります。  今日の財務状況は、我が党の指摘どおり、五十九年度予算で見ても、国有林野事業特別会計の歳入の四一・四%が財投からの借り入れで、歳出の二〇・一%が借入金の償還と支払い利子に充てられており、今年度末の借入金残高は一兆一千四百六十一億円に達するという、まさにサラ金財政とも言うべき危険な状況です。  今回の改正案は、一般会計の繰り入れの改善は退職手当の財投借入金利子のみであり、その一方で、要員や営林署など機構の大幅縮小、立木販売や事業の請負化をさらに進め、労働者に一層の犠牲を押しつけ、さらに天然林施業の推進や不採算部門や地域の切り捨てなど、山を荒廃に導く方向を強めています。また、大規模な林地、土地の売り払いなどによって大企業の進出を進めるものでもあります。  こうした方向は、臨調答申の言う、国の行う業務を計画、管理等必要最小限の分野に限定し、事業実行は民間事業体の活用を図るという、国有林野事業の民営化の道を突き進むものであり、これでは国有林野事業の真の改善に逆行するばかりか、重要な使命の放棄につながるものと言わざるを得ません。  国有林野法改正案については、本来、国家資金で賄うべき国有林野の資源の整備に分収育林制度を創設し、外部資金を導入しようとするものであります。しかも、小口投資者の保全など将来の見通しも明確でないばかりか、口数に制限を設けないなど、一部の大企業、大資産家に集中する危険性があるものです。  我が党は、国有林野事業が持つ使命を発揮し、真に国民経済国民生活に寄与するために、要員、機構の充実確保を図り、当面、公益的機能の分野にまで一般会計から必要な資金を導入するとともに、借入金利の引き下げ措置をとること、外材輸入の規制や木材需要の一層の拡大を図ることを主張し、反対討論を終わります。
  340. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより順次三案の採決に入ります。  まず、保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  341. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  村沢君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。村沢君。
  342. 村沢牧

    村沢牧君 私は、ただいま可決されました保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     保安林整備臨時措置法の一部を改正する     法律案に対する附帯決議(案)  政府は、最近における林業生産活動の停滞により森林施業が十分に行われないため、保安林機能が低下している状況及び保安林の果たす役割の重要性にかんがみ、その機能を一層充実させるため本法の施行に当たっては、次の事項の実現に努めるべきである。  一、保安林の国土保全、水源かん養等公益的機能の発揮に対する国民的要請の増大に応えるため、必要な箇所への保安林の指定、造林保安林機能回復のため行う措置を早期に完了するよう努めること。  二、保安林の適切な整備を図るため、治山・林道事業及び造林保育等についての積極的な助成措置を講じ、特定保安林については、その優先的実施を図るとともに、保安林内の人工林については、間伐、保育等の促進のための森林整備計画制度を積極的に活用すること。  三、保安林機能を維持し確保するため、適切な指定施業要件の設定及び施業を徹底し、保安林内の立木の伐採、林道の開設に当たっては作業方法等について適正を期すること。    右決議する。  以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  343. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいま村沢君提出の附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  344. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 全会一致と認めます。よって、村沢君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  次に、国有林野法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  345. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 多数と認めます。よって、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  最上君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。最上進君。
  346. 最上進

    ○最上進君 私は、ただいま可決されました国有林野法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     国有林野法の一部を改正する法律案に対     する附帯決議(案)  政府は、本法の施行に当たっては、分収育林制度の適切な実施に資するよう次の事項の実現を期すべきである。  一、国有林における分収育林制度実施に当たっては、地元関係市町村と協調し、地元関係者の定住条件の整備、推進のための環境づくりに寄与するよう努めること。  二、分収育林契約の募集に当たっては、特定の法人や団体に偏ることのないよう努めること。また、将来の国有林野事業の財政に支障をきたすことのないよう配慮すること。  三、分収育林実施に当たっては、国は、その保育及び管理について、国の責任確保するよう努める等費用負担者権利が損なわれることのないよう十分配慮すること。  四、国民の参加による国有林野の利用を促進するため、分収育林制度の導入とあわせ、「ふれあいの森林づくり」など多様な参加方式を積極的に推進すること。    右決議する。  以上であります。  委員各位の御賛同をお願いを申し上げます。
  347. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいま最上君提出の附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  348. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 全会一致と認めます。よって、最上君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  次に、国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、村沢君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  349. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 少数と認めます。よって、村沢君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  350. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  北君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。北修二君。
  351. 北修二

    ○北修二君 ただいま可決されました国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     国有林野事業改善特別措置法の一部を改     正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、本法の施行に当たり、我が国の森林・林業の重要性にかんがみ、かつ、その中核的役割を担うべき国有林野事業が課せられた使命を十分に発揮できるようにすることを旨として、次の事項の実現に遺憾なきを期すべきである。  一、国有林野事業改善については、自助改善努力はもとよりこれが我が国林業を取り巻く構造的要因ともかかわっていることを認識し、政府全体の問題としてその打開に取り組むこと。  二、森林資源は、国民の生活向上及び国民経済の発展にとって重要な役割を果すとともに、国有林野事業基本的な経営基盤であることにかんがみ、国有林野事業の使命として林産物の計画的・持続的供給、国土の保全、水資源のかん養、良好な自然環境の保全形成等、公益的な機能を十分に発揮させるため森林資源の整備充実に必要な措置を積極的に講ずること。  三、国有林野森林資源の拡充をはかり、公益的機能を一層発揮させるため、一般会計から国有林野事業特別会計への繰入れ等財政上の援助措置を積極的に講ずるよう努めること。  また、財政投融資資金からの借入条件の改善の問題については、早急に調査検討を進め  ること。  四、新たな改善計画の策定に当たっては、国有林野事業が直面している構造的問題を認識し、その策定及び実施の段階において、財政措置及び一般林政等の充実強化について、関係各層の意見を徴し、積極的に推進するよう努めること。  五、国有林野事業がその事業を通じ、農山村地域の振興へ寄与する使命にかんがみ、組織機横の整備に当たっては、地方自治体及び関係団体等の意見を踏まえつつ地元サービスの低下を招くことのないよう慎重に対処すること。  六、国有林野森林資源を維持培養するため、不成績造林地、緊急に保育施業を要する林地、荒廃林地等の実態を把握し不成績造林地等の解消に努めること。  七、国有林野事業における素材販売については、生産技術の開発、高品質材の有効・公正な販売、材価の市況調査、木材需要の開発、付加価値の高度化等の必要性にかんがみ、適正な実施に努めること。  八、国有林野事業における木材販売については、新たな販売戦略を積極的に導入するとともに、価格評定、契約方法等木材販売のあり方を検討し、収益確保に努めること。九、木材需要の拡大を推進し、国内需要動向に応じた需給安定を期するとともに、木材の輸入についての産地国との政府間協議に際しては、国産材の自給率及び利活用の向上等に配慮し、木材関連産業の積極的な振興を図ること。  十、林業労働者を将来にわたって安定的に確保していくため、林業労働者の所得の増大をはじめ雇用関係の明確化、労働条件の改善、労働安全衛生及び福祉の拡充等の施策の整備充実を図るとともに林業労働の特質を踏まえ林業従事者の経済的、社会的地位向上に努めること。  十一、林業労働における労働災害、職業病の多発にかんがみ、林業事業体等に対し、法令及び通達にもとづく指導監督を強化し、あわせて国有林内での安全対策について積極的な指導監督を行い優秀な林業労働力の確保に必要な労働環境改善に努めること。  十二、山村地域森林資源を有効に活用し、林業生産活動の活発化、就労機会及び所得の増入並びに生活環境基盤の整備などについて市町村等を主体とし、地域実態に即した山村地域林業の振興等に努めること。    右決議する。  以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  352. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいま北君提出の附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  353. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 全会一致と認めます。よって、北君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいま可決されました三決議に対し、山村農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。山村農林水産大臣
  354. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 御可決いただきました三法案の附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。     —————————————
  355. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 次に、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は既に終局しております。  本案の修正について下田君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。下田京子君。
  356. 下田京子

    ○下田京子君 私は、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、修正の動議を提出いたします。  その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。  これよりその趣旨について御説明申し上げます。  修正案の内容は、政府案の二条関係に当たります。すなわち、国が事業費の一部を補助する災害復旧事業に係る一カ所の工事の費用の最低額を引き上げるとともに、一カ所の工事の範囲を拡大する点に対する修正でございます。  修正のその第一は、国が事業費の一部を補助する災害復旧事業に係る一カ所の工事の費用の最低額を、現行の十万円に据え置くものです。  第二は、現行では水田や畑地、農業用道路など、それぞれの施設ごとに区分して災害復旧工事を行うこととされていますが、これを著しく工法が異なる場合を除き、施設ごとに区別せず一括して災害復旧工事ができるように改めることとしています。  政府案は、一カ所工事の範囲の拡大、国庫補助対象施設の追加という改善部分もありますが、国庫補助の対象となる採択限度額を十万円から三十万円に引き上げ、今まで補助対象とされていた災害復旧事業の切り捨てを行おうとするものです。これはたとえ一カ所の工事の範囲が拡大されることによって若干救済されるとはいっても、農地、農業用施設等の災害復旧事業に係る農家負担をこれまで以上に増大させるものであります。  また、政府案は、国庫補助の対象となる採択限度額の引き上げや一カ所の工事の範囲の拡大によって、災害復旧事業の件数が減少することで事務量等の簡素合理化を図ろうとするもので、不十分な内容となっています。  以上が修正案の内容と提案理由でございます。  何とぞ、御審議の上、委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  357. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  ただいまの下田君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。山村農林水産大臣
  358. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) ただいまの修正案につきましては、政府としては反対でおります。
  359. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 別に御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  360. 下田京子

    ○下田京子君 私は、日本共産党を代表して、政府提出による農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行います。  現在農家経営の状況は、長引く不況による食糧消費の停滞と農産物輸入の拡大、臨調路線による生産者価格の抑制と農業関係予算の縮小、四年連続の冷災害などにより、これまでにない厳しさに直面しております。  こうしたときに、国庫補助の対象となる採択限度額を十万円から三十万円に引き上げることによって、昭和五十三年度以降五カ年間の年平均で災害復旧事業が十万円以上三十万円未満の事業費と件数では、主に農地を中心に事業費では三十一億五千万円、件数では二〇%が国庫補助の対象から外されます。このうち一カ所の工事の範囲が五十メートルから百メートルに拡大されることによって、相当程度救済されるとはいいながら、たとえ激甚災害の指定を受けて起債が認められるとしても、国庫補助の対象から外されたすべての災害復旧事業を救済することはできません。したがって農地、農業用施設の災害復旧事業に係る農家負担をこれまで以上に増大させることは、改悪であると言わざるを得ません。  我が党は、一カ所の工事の範囲を拡大し、国庫補助の対象として新たに沿岸漁場整備開発施設などを追加する措置を講じようとすることについて、一定の評価をするものです。しかし同時に、農林水産業施設等の災害復旧にとって重大なことは、災害がも国民の命を守り、緑豊かで安全な国土を目指すため、防災予算を拡充するとともに、災害復旧では原形復旧を原則としている災害復旧方式を改め、再度災害を防ぐ改良復旧を原則として復旧作業を進めるよう指摘をし、反対の討論を終わります。
  361. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、下田君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  362. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 少数と認めます。よって、下田君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  363. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  藤原君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。藤原房雄君。
  364. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 私は、ただいま可決されました農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助     の暫定措置に関する法律の一部を改正す     る法律案に対する附帯決議(案)  政府は、最近の農林水産業をめぐる厳しい社会的経済的情勢にかんがみ、本法の施行に当たっては、次の事項の実現に努め、農林水産業施設の災害復旧等に万全を期すべきである。  一、国庫補助の採択限度額の引上げが、被災農林漁家及び地方公共団体の急激な負担増を招くことのないよう、融資の活用や地方債の円滑な起債等につき十分配慮すること。  二、災害復旧事業をより一層効率的に実施するため、書類審査の活用による事務手続の簡素化、災害応援体制の整備拡充等各般の施策を講ずること。  三、災害復旧に当たっては、工事の早期完了を図るとともに、災害の再発防止の観点から、改良復旧を推進し、併せて、災害関連事業等の実施に必要な予算確保に努めること。  また、災害を未然に防止するため、農地等の防災事業の推進に努めること。    右決議する。  以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  365. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいま藤原君提出の附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  366. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 全会一致と認めます。よって、藤原君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、山村農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。山村農林水産大臣
  367. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。
  368. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) なお、四案の審査報告書の作成は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  369. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十九分散会      —————・—————