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1984-09-04 第101回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年九月四日(火曜日)    午前十時三十二分開会     —————————————    委員異動  八月七日     辞任         補欠選任      稲村 稔夫君     梶原 敬義君      秋山 長造君     上野 雄文君  八月八日     辞任         補欠選任      森田 重郎君     小林 国司君      梶原 敬義君     稲村 稔夫君  八月二十一日     辞任         補欠選任      三木 忠雄君     鶴岡  洋君     —————————————    委員長異動  八月八日谷川寛三君委員長辞任につき、その補  欠として北修二君を議院において委員長選任  した。     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         北  修二君     理 事                 川原新次郎君                 谷川 寛三君                 最上  進君                 藤原 房雄君     委 員                 岡部 三郎君                 熊谷太三郎君                 小林 国司君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 水谷  力君                 稲村 稔夫君                 上野 雄文君                 菅野 久光君                 刈田 貞子君                 鶴岡  洋君                 下田 京子君                 田渕 哲也君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農林水産大臣   山村治郎君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        科学技術庁計画        局資源課長    平山量三郎君        沖縄開発庁総務        局企画課長    櫻井  溥君        農林水産大臣官        房長       田中 宏尚君        農林水産大臣官        房審議官     吉國  隆君        農林水産省経済        局長       後藤 康夫君        農林水産省農蚕        園芸局長     関谷 俊作君        農林水産省畜産        局長       野明 宏至君        農林水産省食品        流通局長     塚田  実君        農林水産技術会        議事務局長    櫛渕 欽也君        食糧庁長官    石川  弘君        林野庁長官    角道 謙一君        水産庁長官    佐野 宏哉君        水産庁海洋漁業        部漁船課長    高山 和夫君        運輸省海上技術        安全局舶用工業        課長       田中 正行君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○農林水産政策に関する調査  (当面の農林水産行政に関する件)     —————————————
  2. 北修二

    委員長北修二君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  この際、一言あいさつを申し上げます。  去る八月八日の本会議におきまして農林水産委員長選任され、その重責を痛感しております。  本委員会運営に当たりましては、皆様方の御協力を賜りまして、公正、円滑に行ってまいりたいと存じますので、何とぞよろしく御指導、御支援のほどをお願い申し上げます。  この際、前委員長谷川寛三君から発言を求められておりますので、これを許します。谷川君。
  3. 谷川寛三

    谷川寛三君 一言あいさつ申し上げます。  昨年七月、当委員会委員長選任されまして以来一年余り、この間、我が国農業にとりまして内外とも多事多端の厳しい状況に置かれまして、当委員会におきましても重要な案件が山積しておりましたが、これら案件を処理し、つつがなく委員長の職責を全うできましたのはひとえに皆様方の御協力のたまものと深く感謝しておるところであります。改めて謹んで厚く御礼申し上げます。  なお、私も引き続き当委員会に籍を置くことになりましたので、当委員会の円滑な運営を期するよう御協力を申し上げ、かつ倍旧の皆様方の御鞭撻、御指導を賜りたくお願い申し上げまして、ごあいさつにかえさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  4. 北修二

    委員長北修二君) まず、委員異動について御報告いたします。  去る八月七日、秋山長造君が委員辞任され、その補欠として上野雄文君が選任されました。  また、去る八月八日、森田重郎君が委員辞任され、その補欠として小林国司君が選任されました。  また、去る八月二十一日、三木忠雄君が委員辞任され、その補欠として鶴岡洋君が選任されました。     —————————————
  5. 北修二

    委員長北修二君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  私の委員長就任に伴いまして現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例によりまして、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 北修二

    委員長北修二君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事谷川寛三君を指名いたします。     —————————————
  7. 北修二

    委員長北修二君) 農林水産政策に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、当面する諸問題ということについては改めてまたお聞きをする機会を得たいというふうに思っておりまして、きょうは日本農業基本といいましょうか、農政展開基本につきましていろいろとお伺いをしたい、このように思っておりますので、ひとつよろしくお願いをいたします。  最初に、基本ということになりますのでやはり大臣からお考え伺いたいわけでありますけれども、我が国農業は今、国際的な視野から見ていかなる役割を果たしているであろうか。今、世界的に食糧不足等が言われている時期でございますし、その中でFAO等先進国における農業生産についていろいろと過去何回か言及をしているというようなこともございます。こうした中で、どのような役割を果たしていこうとしておられるのか、あるいはまたさらに、どのような役割なら担っていけるとお考えになっておりましょうか。私は本委員会でもいろいろな機会に、EC農業一つ目標にしておられるように御答弁の中で聞いてきたような気がいたします。そうすると、国際的にもそういうEC並みの位置づけというものを目指しておられるのかどうか、その辺のところをまずお聞きをしておきたいと思います。
  9. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 今お話がございましたように、特に我が国農産物価格につきましては、EC並みを目指してやってまいるという方針でございます。  発展途上国におきます食糧事情というのが、今おっしゃられましたFAOによりますと、世界人口の一割に当たる四億人を超える栄養不足人口が存在しているということが報道されております。発展途上国食糧増産農業開発、これは世界的な課題となっておるというぐあいに考えます。このような情勢にもかんがみまして、我が国といたしましては、南北サミット等の国際的な場でも、国際協力実施に当たっては食糧増産農村農業開発等について重点的に行っていくことを表明して、農業協力を積極的に推進しておるところでございます。  すなわち我が国は、食糧不足に悩む諸国への食糧援助を行うとともに、専門家を派遣いたしまして、研修員受け入れ等技術協力、また、円借款等資金協力を積極的に推進しており、我が国食糧農業援助実績は約一千三百億円で、世界第二位ということに今なっておるわけでございます。これによりまして、我が国と密接な関係にあります東南アジア諸国を初めといたしまして、発展途上国農林水産業発展に貢献してきておるというぐあいには考えております。  国際協力実施に当たりましては、相手国自然条件農民状況等現地の実情にも即した、真に相手国のためになるよう、今後とも細かく配慮して臨んでまいりたいというぐあいに考えます。
  10. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 大臣の今の御答弁で、大体目指しておられる方向というようなものはある程度理解できたように思うわけであります。しかし、そういう中で、特に今お話しの中で、価格の面ではEC並みを目指しておられる、こんなふうに言われたと思いますけれども、それではEC農業というものをどのように評価をしておられるのかということをお伺いしたいと思います。  例えば、ECにおきましてはかなり厳しい国境保護措置というものがとられております。こうした国境保護措置というものをEC農業はなぜとったのであろうか。要するに、私は、一面ではECにいろいろと学ぶ面もあると思いますし、また、それはいい面で学ぶ面もあるし、あるいはまた、その轍を踏まないという観点からの評価というものもきちっとしていかなきゃならないだろうと思います。  そこで、まず、こうした本当に厳しい国境保護措置というものをなぜECがとったのであろうか。この保護措置というものがEC農業にどういう影響を与えてきたであろうか。EC農業というものは、この国境保護措置によってどのような成果をもたらしたというふうに評価をしておられるのか。その辺のところを外国に学ぶということで、まずお伺いをしておきたいと思います。
  11. 後藤康夫

    説明員後藤康夫君) ECにおきましては共通農業政策目標といたしまして、これはECを設立するためのローマ条約という条約に書いてある農業政策の目的でございますが、農業生産性の向上、それから農業従事者所得増加市場の安定、供給確保、それから消費者への合理的な供給価格確保、この五つ政策目標を掲げております。よく考えてみますと、この五つ政策目標、その一つだけを追求しますと他の目標に抵触をするというような、全体としてバランスを持って遂行していかなきゃいけないという関係にあるように思われますが、この五つ目標に照らして域内農業の振興を図るということでEC共通農業政策展開をしてきたというふうに承知をいたしております。  今御指摘がございましたように、可変輸入課徴金を初めとします国境保護措置を講じておりますけれども、これはやはり、安価な国際価格によります域外農産物EC域内市場への無秩序な流入を防ぐ。そのことによりまして域内農産物価格の安定なり、あるいは農業従事者所得確保増加なり、さらにまた、それらを通じまして域内農業生産発展を図るということを目標にして共通国境保護措置を講じているということでございます。一九五八年にECが発足いたしましてからちょうど四分の一世紀をけみしておるところでございますが、EC域内農業はこういった共通農業政策目標に総じて沿って、全体として順調な発展を遂げてきているというふうに見られるのではないかと思っております。  他方、一部の農産物、穀物でございますとか、乳製品に典型的に見られますような過剰の問題、さらにはそれを処理いたしますためのいろいろな財政負担増大といったような問題も抱えている。そのために今年、これまで引き上げてまいりました農産物価格を全体として若干引き下げるというような措置をとる状況になっているというふうに承知をいたしております。
  12. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 EC農業全体としては一応目標を掲げて、言ってみれば、その目標達成のためにかなり厳しい国境保護措置もとられてきた。自由競争にさらされるといいましょうか、そういうことをある程度防ぐということでやってきたと思います。そういう中で一応私どもは、それなりに計画目標というものは順調に進んできたと思うのでありますが、同時に、最近になってからこのEC農政にはいろいろと反省も出てきているというふうに聞いております。  特に、これは前にもちょっと触れたことがございますけれども、かつてオランダの農業大臣EC農政推進役でありましたマンスホルト博士が、最近いろいろと今まで展開をしてきた農政というものに疑問を投げかけておられるというようなことを論文等でも拝見をしたりしております。  そうした中で、特に規模拡大努力をしてこられたけれども、そういう中で農業を離れていく、つまり離農していくということが労働力バランス関係にかなり影響を与えていて、結果として社会保障費増額等の形になり、国家財政全体としては、離農を促進をしたということが財政負担としてかなり大きな問題になっているというような反省もしておられるようであります。   、  それからさらに、国際的な関係では、特にアフリカの今の砂漠化の問題だとかなんかということも、先進国農業技術というものの怒濤のような流れ込みといいましょうか、そういうことが招いているという側面がある。つまり、現在の先進国農業と言われているものが生態系をいろいろと壊していくといいましょうか、そういう役割を果たしつつあるということについてまた反省をしなきゃならぬ、こんなことも言っておられるわけでありますけれども、そうした反省というものについて、これは今の社会保障費増大等については何もマンスホルト博士だけではないのでありますが、こうした反省というものをどのように受け取っておられるか。  ということを伺いますのは、我が国も言ってみれば、今規模拡大でいろいろと努力をしているという形になるわけであります。規模拡大ということは、必然的に農業労働者化というものを促進をしていく、こういう形もやはりあわせて持つわけでありますので、その辺のところをどういうふうに理解をしておられるか、これを伺いたいと思います。
  13. 後藤康夫

    説明員後藤康夫君) EC農政見直しというようなことをめぐりましてのお尋ねでございますが、私は二点あるというふうに思っております。  一つは、先ほど申し上げましたような一部の農産物が非常に生産過剰になり、また、価格支持のための財政負担が急増してきているというようなことから価格政策を抑制的に運営をする、あるいはまた、例えば乳製品について申しますと、過剰になりました在庫を処分します場合の費用につきまして生産者にこれを分担してもらうというような、過剰につきましての対策という点で、今までの価格政策方式にいろいろ生産割り当て方式その他を取り込みまして、財政負担増大をこれ以上急増するのを防いでいくというのが一つだと思います。  それからもう一つは、ただいまお尋ねの後段にございました経営規模拡大の問題について見直しが行われているのじゃないかという点でございますが、たしか最初のマンスホルト・プランというものが出ましたのが一九六八年ごろでございます。この当時は世界的に高度経済成長が続いていた時期、その中でやはりEC農業競争力を高める、また、非常に発展してまいりました農業面での技術進歩を十分使いこなせるだけの経営規模を持った能率的な経営をつくるというところに重点を置いた改革案であったというふうに思っております。そして、当時はまた、余りヨーロッパ失業というような問題がまだ大きな問題として投げかけられていなかった時期でございます。最近、小規模経営なりあるいは地域農業、特に過疎だとか山岳地帯でそこに定住して農業をやっている人たち地域社会の維持でありますとか、あるいはそこでの良好に管理された自然を維持していくための機能というものについて見直しが行われるようになってきているというふうに承知をいたしておりますが、経営規模拡大なり経営の能率を上げるという基本的な方向には変わりはないのではないかというふうに考えております。  ただ、今御指摘がございましたように、かつてに比べますと、ヨーロッパ失業者、特に若年の失業の問題というのは非常に大きくなっておりますので、そういった面への配慮もやはりやっていかなきゃいけない、あるいはまた価格政策を抑制いたしますときに、一律に抑制をいたしますと、どうしても規模の小さな、またそういう過疎地域のところの農民が大きな影響を受けるというために、そういう小規模農家に及ぼす影響を緩和するような配慮をしなくてはいけないという点での配慮増加をしてきているということではないかというふうに思っております。
  14. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、今局長の御答弁にありましたように、EC農業が積極的に規模拡大という形で農業合理化に踏み切ったその時期というのは、おっしゃるように成長度がかなりいいときであったということになると思うのです。しかし、経済には必ずそういういいときと悪いときとかあるわけであります。そして、農業というのはそれこそ一過的な勝負というのはなかなかできないわけでありますから、長期的に見て対応していかなければならぬということになるわけであります。その点では、ECがそうした、当時はまだ十分に予想していなかったそのことに今反省をしなければならぬという状況にあるということは、我が国としても大いに学んでいかなければならないことなのではないだろうか、我が国も今、経済成長というものは、それこそ低経済成長の時代に入ってきているわけでありますから、そうした観点からいくならば、私はやはり規模拡大ということについていろいろと検討をしなければならない時期に来ているのではないだろうか、そんなふうにも感ずるわけでありますが、その点はいかがでございましょうか。
  15. 田中宏尚

    説明員田中宏尚君) ただいま御指摘がありましたように、何といいましても日本の零細な経営規模というものをどういうふうに持っていくかということは、目標に掲げておりますEC並み価格実現ということにとっても緊要なことなわけでございますけれども、御承知のとおり、これだけ狭隘な土地の中で、しかも高地価という中でございますので、規模拡大を従来のように一直線で所有権移転というような形でなかなか推進するというわけにもまいりません。ここ数年間、利用権の集積というようなことを通ずる規模拡大ということも並行してやってまいるということで、利用増進事業でございますとか、いろいろな事業に現在力を入れているわけでございますし、それからそういう経営規模そのもののほかに、あと、作業の受委託でございますとか、あるいはいろいろな共同活動というものを通じまして、実質的な経営コストの低減あるいは規模拡大ということに何とか力を注いでまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  16. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の官房長の御答弁でいきますと、何か土地流動なり何なりということが起こってくることには、なかなかこれから今まで計算したようにはいかないということになるけれども、それだけに今度は利用権設定だとかなんとかという形で、言ってみれば兼業を中心にしていろいろまた考えていきたいというふうに言っておられるのかともというふうに思います。  しかし、それが利用権設定であろうと、あるいは土地流動化であろうと、いずれにいたしましても規模拡大していって、しかもそのコスト面EC並みにということを目指してということになりますならば、私は農業従事をする労働力というものが大幅に削減をされていくということにならなきゃならぬのじゃないだろうかと思うのです。それでは農業から出ていく労働力というものを今度は他の産業面で果たして受け入れられるだけのキャパシティーがあるのだろうか、我が国でも今失業率がかなりいろいろと問題になり始めておりますが、それだけにその辺も随分気になるわけであります。それとの兼ね合いではどういうふうにお考えになりますか。
  17. 田中宏尚

    説明員田中宏尚君) 日本経済全体もこういう安定成長期に入ってまいりまして、農業の中から外に人を出すということが客観情勢としていろいろと難しい情勢になってきているということは御指摘のとおりでございます。そういう中で、農業の場合にはむしろ高齢化社会でございますとか、非常に高齢者経営というものがまだ残っているわけでございまして、そういうものの世代交代でございますとか、そういうものと農地の流動化というものをどういうふうにタイミング的によく重ね合って推進していくかということが長期的な問題としては肝要かと思っておるわけでございます。
  18. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうもそこのところは議論がいろいろと平行線のままに今までもなってきているし、これからも今お話を聞いていると平行線にならざるを得ないなというような感じがしないわけではありません。私は特に、農業農業労働力として受け入れるキャパシティーがなければ他の産業でそれを受け入れるか、他の産業キャパシティーがなければ農業一定程度確保していけるか、こういうことがなければ、労働力の絶対量というものがあるわけでありますから、そうすると、農業の方でも合理化が進んでいきます、他の産業の方でも労働力は余ってきます、こういうことになれば、必然的にそこにはもう余剰労働力として農業従事者の中にいろいろな問題点を残してしまうというふうに思うのです。それが今は通勤兼業という形で、あるいは出稼ぎというような形で一定程度の職場なり何なりを確保しているといたしましても、これからの問題としてその辺が随分問題になってくるのじゃないだろうか。  私は自分の周辺のことを申し上げて大変恐縮なのですけれども、今までの中小零細企業地場産業あたりでは、農家の皆さんに労働者として来ていただいた場合に、例えば農繁期には休暇を、いわゆる労働基準法でいわれている二十日間の有給休暇とかなんとかということは全然関係なしに、言ってみれば農繁期休暇というものを出してきたのが普通である。でも最近は、やはりそう休まれるのだったら来てもらわぬでもいい、こういうような話がかなり一般的になってきていまして、それだけにますます朝晩、休日農業に精を出すというか、今までだと途中何日か休んでいたものを休まないで、日曜日とか朝晩でやるというような形になってくる、稲の単作地帯ですけれども。  そうすると、これは後でまたいろいろな議論一つになるのですけれども、規模拡大というものを面積的な規模だけで考えていったのではいろいろと問題があるでしょう。そうすると、複合経営なり何なりという形で拡大していこうとしたときに、今度はそういう労働力としてはもう農業に割く時間を極端に減らしているという、そういう格好になってきていますから、そうすると、規模拡大の方で一生懸命やろうとすれば、やはりあれからははじき出されざるを得ない、そういう状況の中にあります。  ところが今の状況で、例えば複合経営に取り組んでいこうとしても、それですぐに生活ができるだけの対応ができるかというと、これまたなかなか困難です。こういう状況現実に周りで幾つ幾つも目につくのです。というと、今のお話のように、理想としての将来の方向をこんなふうに全体として考えたらいいだろうというお話は、一応机の上の計算のこととして伺えますけれども、現実に対応していく中では非常に困難性がいっぱいあるのではないだろうか。現実に即してもう少し、今までも、かつての方向から今の兼業も含めての中核農家という発想になってきたところに、現実に大分近づこうという努力をしておられるということはわかりますけれども、もっと現実というものを踏まえて、その辺のところを検討し直してみることが必要なのではないだろうか。そうしないと農村のそれこそ余剰労働力として問題になってくるのじゃないだろうか、そんなふうに思います。その辺はいかがでしょうか。
  19. 田中宏尚

    説明員田中宏尚君) 情勢はその地域によっていろいろ違っていると思うのでございますけれども、いずれにいたしましても地域ぐるみで就労条件でございますとか、規模の問題というものを特徴を生かしながらどう育てていくかということが肝要でございまして、一つには、今もお話がありましたような地場産業というものをどういうふうに持っていくか、あるいは複合経営という中に兼業農家も含めながら、規模というよりは質的にどうやって経営を高めていくか。それからさらには、付加価値を農村の場面においてより多くつくるということで、最近一村一品運動でございますとか、そういう現場の知恵の集積ということで、いろいろな努力が行われておるわけでございますけれども、そういういろいろな萌芽というものを地道に我々といたしましても育ててまいりたいというふうに考えております。
  20. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の方向、問題ではいろいろとそういう知恵も生かしていただかなければならないし、地域ごとに特性を生かしたいろいろな形の地域農業というものがつくり上げられていくように、こういう方向性についてはわかりました。そして、そういう方向に向いてもらわなければならないとは思います。しかし、それにしても私は、今の農水省の計画というものがやはり文章上の検討というような形のところに流れているのではないか、こんなことを大変心配をいたします。  ちょっと話題を変えて恐縮でありますけれども、これはごらんになったかもしれませんけれども、「日本農業変革の時代」という、これは農水省の次官などをやられたOBの方々が大勢載っておられる、対談形式のものになっております。この中で、今規模拡大お話がいろいろと出ておりましたけれども、例えば小倉武一さんあたりが、中核農家というのはごまかしてはないかと。中核農家を中心にしてという物の考え方というのはもう変えてもらわなきゃならぬのじゃないかというようなことを提起をしておられますけれども、これは御存じですか。
  21. 田中宏尚

    説明員田中宏尚君) その本自体は私まだ残念ながら読んでおりませんけれども、小倉先輩がかねてそういう御意見だということは承知しております。
  22. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 言ってみれば、私は今までの農水省の進めてきた規模拡大を目指しての方針というそのものに——こんなことを言ったら大変失礼で、それこそマンスホルト博士にも失礼になりますけれども、EC農業を推進をしてこられたそのマンスホルト博士ECの責任者の席から退かれて、客観的に第三者として物を見ていかれたときに、改めてそのときの問題点、欠点というものに気づかれて、そして今いろいろと反省をされたりした論文を書かれたりなにかしています。こういうことと似ているのではないだろうか。  農水省の中で、言ってみれば農政推進の中心的役割を担ってこられた方が、一たんその席を退かれて第三者の目で見ていかれたときに、いろいろと感じておられるところがあるのじゃないだろうか。それだけに、今私は実は言うと、農政問題についていけば、小倉さんとはそれこそずっといろいろな面で見解が違ってきた立場であります。しかし、こうして今まで進めてこられたことに大胆に反省をといいましょうか、批判をしておられるということには私は大いに評価する面があるのじゃないだろうか。そうした小倉さんあたりが提起をしているような中核農家というものの考え方というもの、これは少し抽象的過ぎる、私は、小倉さんと表現はちょっと違いますけれども、そんな感じがいたします。  したがいまして、今の中核農家育成というものの考え方というものをいろいろと再検討をしてみられる必要があるのではないだろうか。その意思がおありかどうか、こういうことを伺いたい。
  23. 田中宏尚

    説明員田中宏尚君) これから生産性を上げていって、国際競争力をつけていく、あるいはEC並み価格水準を実現するという観点から申しますと、どうしてもやはり中核農家というものを基本にしたすそ野の広がりというものは何とか基本ラインとしてはつくってまいりたいと思っております。しかし、いろいろな形でこれだけ多様化しながら進めていかなければならない事柄でございますので、中核農家だけではなしに、そういうものを中心にいたしまして、先ほど来話の出ております複合経営でございますとか、そういういろいろな形を総合した形で経営をどう持っていくかというような方向でこれからも考えてまいりたいというふうに思っております。
  24. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そこで、ちょっとまた話題を変えましてあれですが、先ほど大臣は国際的な協力関係につきまして、特に技術協力円借款等は一生懸命やっているのだ、これはもう千三百億円でしたかで、世界第二位の地位にあるのだと、こんなふうに言っておられました。  私は、こういう積極的な協力をされているということは評価をいたしますが、しかし、同時にもう一点では、技術の協力というのは、それは今すぐに役に立つというそういうものではないのです。これは非常に大事なことですけれども、将来その国の農業発展という、そういう観点でのものになります。  それから、お金というのも、これは確かにそのお金でどこかから食糧を買うとかなんとかということに使えば、それなりに口に入るということになるかもしれません。しかし、世界観点でいけば、飢えている多くの人々というものにこうしたお金での援助もさることながら、これはFAOで、いつのころでしたか、提起をしていたことがありました。先進国は最大限そういう面では農業生産力を上げて、そして食糧での援助というものをすべきではないかという提起をしていたことがございました。そういう観点から言うと、我が国の具体的な食糧での援助というものは、これまでどの程度やってこられた実績があるでしょうか。
  25. 後藤康夫

    説明員後藤康夫君) 先ほど大臣がお答え申し上げました中で、我が国食糧農業援助実績千三百億ということを申し上げましたが、これは一九八二年の最近の、要するにまとまっております実績で、我が国食糧農業援助が、全体で五億五千六百万ドルということでございますが、この中で多国間の食糧援助が三千五百万ドル、それから二国間のいわゆるKR食糧援助、ケネディ・ラウンドのときに食糧援助の枠組みができまして、それが現在もずっと続いているわけでございますが、これが一億四千百万ドルというような実績を一九八二年に上げておるところでございます。  先進国食糧増産開発途上国に対します食糧援助関係、これは食糧の生産を増大する易しさ、難しさという点から申しますと、先進国の方が技術なりいろいろな生産振興策の手段、即効性のある手段を含めまして持っておるわけでございますが、例えば我が国の過剰米を食糧援助に使っておった時期がございます。こういった時期にタイというような自分で米を生産している国から、先進国農産物を出してくれないでもよろしいのだ、そのお金で例えば開発途上国のタイのお米を買って、それをパキスタンに持っていってくれればいいのだ、こういうふうなお話がございまして、実は食糧援助の場合も、国内産米とあわせてやはり開発途上国の米も使用して、飢餓に悩んでいる開発途上国に食糧援助をするというふうな形をいたしております。  そういう同じ食糧につきましての輸出国たる発展途上国との関係、また同じ金額を使うにいたしましても、要するに開発途上国の安い米を買えば量としては何倍にもなるではないかというような議論も含めまして、開発途上国に対します食糧援助先進国農産物を使う、これは実際先進国農産物を非常にたくさん使っておるわけでございますが、政策としてそういうことを打ち出しました場合に、開発途上国との間ではいろいろな問題なり議論があるということも過去の経過からしてあるわけでございます。
  26. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の局長の御答弁もわかります。だけれど、現実には飢餓に悩んでいる人々の量というのは膨大なものでして、それで今の援助でとてもじゃないけれども救い切れるような状況ではない。つまり幾ら援助してもこれで十分だという状況には今の世界各国の余力からいって、それだけのものはないということは言えると思うのです。だから、そこは生産国である途上国とのかかわり、いろいろと難しさがあるかもしれませんが、そこはやはりそれこそ国際的な協力体制、話し合いというものを進めていきながら対応をしていくべきものである、最大限の援助、努力をすべきことであろう、こんなふうに思うわけです。  この点はまた、後ほどの議論の中で多少いろいろとさせていただきたいと思う部分もございますけれども、要は私は、我が国食糧生産というものが、例えば米の生産に見られるように、極端に出ているのだと思いますけれども、自分たちの必要なものだけはつくって食べます、しかし、余るものは要りません、つくりません、こういう行き方というものは、世界の飢えに悩む人々というものを考えていったときは、やはり先進国のおごりというふうにとられてしまってもやむを得ないという側面も持っているのじゃないだろうかというふうにも思うわけであります。それだけに私は、これからの我が国農業というものの取り組みというものを考えていったときは、あらゆる努力をして食糧をできるものは最大限生産をするというふうになってもらいたい、こんなふうに思うわけであります。この点はまた今後の課題とのかかわりでもっていろいろと御意見も伺いたいというふうに思っております。  そこで、先ほど来から農産物価格の問題が出てきているわけであります。実は私は、今後の課題としてお聞きをしようと思っていたのでありますけれども、大分そっちの方の議論の方に傾いてきておりますから伺いたいのでありますけれども、そうするとEC並みのコスト、これは現実我が国は実現をすることができるのだろうか、その辺のところは私はかなりいろいろと疑問があるのであります。例えば耕種農業の面におきまして経営面積、経営規模というものは全然違います。もちろん比較をするには、水田と畑作というそういう大きな違いがあります。しかしそれにしても、規模的な問題は一つ大きく違いがございます。  それから、畜産にいたしましても、確かに飼養頭数等についてはデテール、規模というようなものが同じような規模のところまで追求することができるかもしれません。しかし、その経営形態の中での自給飼料をどの程度確保できるかという問題になってくると、かなり格段の差になってしまうということになってくるのではないでしょうか。そうするとEC規模というふうに一口に言いますけれども、現実にはなかなか簡単にはいかぬのじゃないか。まず目標そのものに問題が出てくるのではなかろうか、こんなふうに思うのですけれども、その辺はいかがでございましょうか。
  27. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) 私の方からまず耕種作物の米、麦を代表にして今の問題にお答え申し上げますが、基本的には先生の御指摘にございましたように、経営規模の問題が基本にあるわけでございます。ただ米と麦ではかなり事情が異なっておりまして、米の場合には御承知のように、日本の作物として非常に日本の気候に向いているということもございまして、単収においては日本の場合大体二十年間で二割ぐらい向上しまして、御承知のように全国で四百八十キロのラインまでまいりましたが、大体これはヨーロッパの米作国と見てもそう差異はない。  ただ、問題は労働時間でございます。これがどうもEC諸国でも十分な数字がございませんが、イタリアの例などで十アール当たり五、六時間程度ではないかというような資料もございまして、日本の場合にはこれも二十年間で大体四割、六十時間ぐらいまで減らしてまいりました。これはやはりこれからの問題となりますと、規模拡大を通じまして労働生産性を上げるということが重点だと思います。先ほどの御質問の中にございましたように、この問題は非常に日本の構造問題等から見て簡単ではないわけでございますが、この前の農政審議会の技術展望等におきましても、少なくとも十ヘクタール規模ぐらいの稲作で、十アール当たり労働時間で三十時間ぐらい、現状の半分ぐらいを当面目標にしようじゃないかということで、こういうコスト面でのEC水準へ向かっての精いっぱいの努力を続けていこうということになりますと、規模拡大問題にさらに取り組んでまいりたい、かようなことでございます。  それから、麦の方でございますが、これはもうよく御承知のように、非常にヨーロッパ諸国の単収五百キロ、これは大変な、日本のような梅雨がございまして、こういうふうに麦の収穫期を早めてまいりますと、それだけ単収が目立って落ちますので、現状大体十アール当たりで二十年間で二四%増、しかし、大体三百十キロぐらいのところまでまいったところでございます。一方、労働時間の方は、どうもヨーロッパの方は十アール当たりで申しますと一・何時間というような、大変低い数字でございます。日本の方は、これはどうかと申しますと、これも二十年間で十アール当たりで見ますと、実に八三%減らしてまいりまして、現状全国平均で十三・四時間でございますが、これも北海道と都府県で大変な差がありまして、北海道は現状で既に三時間、十アール当たり、という水準までまいっております。  こういうことになりますと、基本的には単収面ではどうしても、小麦の場合には日本ヨーロッパ水準を実現するのは非常にいわば生物的か植物的限界がございますけれども、規模拡大の面で今の北海道の例に見られますような方向をさらに進めまして、やはり目標としては大変高うございますけれども、EC水準に向かってさらに努力を続けていくべきではなかろうか、こう考えております。
  28. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の局長の御答弁、労働時間を減らしていかなけりゃならない、そういうことはわかりますけれども、しかし、その労働時間を減らしていくには、結局機械化あるいはその他の省力的な作業体系というようなことで対応していくしかないと思います。だから、主としてやはり手労働を機械に頼るというところになっていかざるを得ないわけです。そうしたときに、例えばヨーロッパ農業との経営規模観点で全然そこが違ってくるわけであります。この間、私の方で請求をしていただいた資料の中で、「農業機械の利用の国際比較」というものを出していただきましたけれども、これでいけば要するにEC各国、フランス、西ドイツ、オランダ、英国というようなものはすべて一農家に一台以上農業用トラクターを持っている、普及台数になっているということになりますけれども、我が国の方はこれが非常に少ない。これでいくと大体三軒に一軒くらいになるのですか、そういうような形になるわけでしょう。そうなるのは、結局経営規模が根本的に違うということになるからです。  だから、例えば農業機械一つ、特にトラクターの例が出ましたから申し上げますと、例えばトラクター一台を入れても、そのトラクターがどれだけ有効に利用できるかということによってコスト面のはね返りというものは全然違ってくるわけです。私の知っている範囲でいけば、例えばトラクターは耕うんで使うだけではありません。もちろん運搬にも使いますし、そのほかにも、例えばスプリンクラー等を稼働させるための動力源としても利用したりしています。いろいろな工夫をして、その機械がフル稼働するようなそういう努力もしています。こういうことに比べていきますと、例えば我が国の今の農業機械化の状況というものを見ていったときには何か慄然とせざるを得ない面があるわけです。  例えば、これも具体的に自分の回りのことで大変恐縮ですけれども、これは古い表現で申しわけありませんが、二町歩やっている人が使っているコンバインの稼働時間を聞いてみましたら、請負もちょっとやったりしていろいろと工夫をしているようですけれども、それでも大体二十時間そこそこしか稼働していないというのです。この程度の稼働のために機械化をしている。経営規模は結局は拡大というふうに言われたけれども、そう簡単になかなか大幅な拡大ということができることにはならぬでしょう。  そうすると、私は、結局我が国の省力化というものを一生懸命農水省でかねと太鼓で宣伝をすれば、言ってみればみんなそれは過剰投資みたいな格好になってしまうのじゃないでしょうか。現実にもうかなり過剰投資ぎみにあります。こういう中で、今局長答弁されたように、投下労働力を減らすという、そういうコスト軽減の方法というのは果たしてうまくいくのでしょうか、こういう疑問になるのですけれども、いかがでしょう。
  29. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) お尋ねの中にございましたが、私ども一種の農業機械の導入については、基本方針ということで目安を出しておりますが、その目安で申しますと、例えば四十から五十馬力ぐらいのトラクターですと、利用規模の最下限は十五ヘクタールとか、それから自脱型コンバインで十ないし十五ヘクタール、こういう数字があるわけでございます。これから申しますと、まさにお尋ねのように過剰投資が現実にあり、これからなかなか解消されるという見通しは実は非常に難しいわけでございます。  これは、基本的には日本農家が非常に兼業農家の率も高うございますし、早く農作業を終えて、短かくして、兼業面で稼ぎたいということがございますものですから、過剰投資を抑制ないしさらには解消するという見通しを持つことは非常に難しゅうございますが、我々としては、基本的には個別農家経営規模拡大ということで、先ほどお話の出ましたような利用権設定、借り地方式規模を広げることのほかに、やはり利用の組織化ということで農業生産組織を育成しますとか、それから私ども年来進めております、これは外国の例なども参考にしたわけでございますが、農業機械銀行というような、一つ地域の農協を中心にしました効率的な利用組織を育成するという、広い意味での一種の共同利用的な方策を進める。これが個別経営規模拡大と並びまして、御指摘にありましたこれからの機械の効率利用、さらに先ほどのコスト低下へ向けての私どもとしての努力すべきことではなかろうか、かように考えております。
  30. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 努力すべき方向だということはそれでわかりますけれども、しかしこれで本当にEC並みコストということに持っていけると思っておられるのですか。可能性について私は大変疑問なのですけれども、局長、それじゃいつごろこういうEC並みというのが実現できるということになりますか。
  31. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) 私が例に挙げました米麦を代表とします耕種作物については、率直なところいつということは難しゅうございます。  先ほどちょっと例に挙げました、先般の農政審議会の技術展望の場合にも、大体十年後ぐらいを目標にして、米の場合には十ヘクタール規模で労働時間三十時間、現状の半分ぐらいというような規模経営をかなり支配的なものに持っていこうというような目標設定したわけでございます。そういう非常にEC並みにいわば近づけるということが難しいということでございますが、我々生産担当者の立場としましては、やはりそういう農政の大目標としまして、難しいけれどもそういう方向に向かって努力しようじゃないかというような方向が示されたというふうに考えておりまして、これはなかなか何年後とか、あるいはいつごろということを非常に展望を持ちがたい状況でございますが、最大限の努力をすべき目標ではなかろうかと考えております。
  32. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は今の局長お話を伺っていながら、ますますそういうEC並みへの展望はそれこそ夢でしかないということになってしまうのじゃないかという感じを強めています。永久にというと言葉が悪いかもしれませんけれども、今のその状況の中では私はEC並みコストというのは実現は不可能だと言わざるを得ません。特にそれは中核農家育成の方向というものとも結びついてきていると思いますけれども、通勤兼業をある程度認めながらというような形の中で規模拡大が、今局長が言われたように例えば水田でもって十ヘクタールですか、という規模に簡単にはなかなかならない。逆に通勤兼業でもって一定収入を確保していけば、土地は自分で一生懸命やれる範囲のものだけは確保しておくというような格好のものの方がむしろ進んでしまうのじゃないか、そんなふうにも思いますし、そういう中にやはり私は、中核農家というものの発想にもまたいろいろと問題があるというふうに言われるのじゃないだろうか、こんなふうにも思っています。  それにいたしましても、そうすると耕種はそういうことでいろいろと問題は私の方から見ればあります。ということですが、畜産はそれじゃどうなりますか。
  33. 野明宏至

    説明員(野明宏至君) 畜産につきましては耕種の場合とはまたかなりいろいろ事情が異なるわけでございますが、畜産と申しましても土地条件の制約が少ない施設利用型の作目、例えば豚とかブロイラーとか、あるいは卵とか、そういった畜種の作目につきましてはもう既に相当体質強化が進みまして、ECに比べても遜色のない水準に到達しているのじゃなかろうかと思われるわけでございます。  それからもう一つ土地条件の制約がなかなか大きい大家畜生産、酪農とか、あるいは肉用牛生産といったものにつきましてはなかなか、先ほど申し上げましたような中小家畜と同じようなわけにはまいらないわけであります。  そういう中にありましても、酪農につきましては頭数で見ますとEC諸国とほぼ同じような状況に達した。ただこれも、日本の酪農も戦後急速に発展してまいったわけでございますが、オランダ、その他EC諸国と比べればその歴史に大きな違いがございまして、なお負債を抱えているとかいろいろの問題があるわけでございますが、これにつきましても、先ほど先生おっしゃられましたような粗飼料の給与率を高めていくとか等々の努力を重ねてまいる必要があろうというふうに考えておるわけでございます。  一番おくれておりますのは牛肉生産でございます。私どもEC並みというふうなことを目標に掲げて、いろいろ比較をしながら検討してまいります場合に、土地条件が基本的に異なりますいわゆる新大陸型の農業、アメリカとかあるいはオーストラリアとか、そういうところと一緒になるというのは、これはなかなか難しいというふうに考えております。ただ、土地条件が比較的に似通っておりますECとの関係、そういったところと比べますれば、そういったEC諸国バランスのとれた水準に到達することは可能ではなかろうかと思っておるわけでございます。  その場合に、じゃ問題はどういうところにあるのかといいますと、一つはやはり購入飼料に依存する度合いが非常に強いということでございます。それからもう一つ規模の問題がございます。それから三番目には、日本の牛肉生産特有の問題を抱えておりまして、やはりこれから合理的な生産ということをいろいろ考えていかなければならないのじゃなかろうかというふうに思っておるわけでございます。
  34. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 小家畜についてとか大家畜について、それぞれ議論をしていけばいろいろとあるわけでありますけれども、私は、小家畜についても、規模の面では立派に、それこそEC並みのあれにはなっていますけれども、やはり細かい点ではまだいろいろと農家の犠牲になっていて何とかなっている部分というのがかなりあるというふうに思っておりますが、とにかく大家畜の場合には購入飼料を基本的なあれにしなければならぬという、そこの辺のところにそれこそ基本的にECのあれと違っているというところがあると思うのです。そういう今の状況の中で、私は、局長は今EC並みに何とか行ける展望は開けるように言われたと思いますけれども、私はこのままではEC並みというのは、小家畜の場合は、それでも農家の犠牲というのは一定程度までそれでカバーできるけれども、大家畜の場合にはなかなかそれがし切らぬだろう。そうすると、EC並みというのは規模の面では確かにそう見えるけれども、現実にはなかなかいかぬのではないか、そんなふうに思います。そのことの一番最大の証明みたいなものが北海道の酪農における借金の累積というようなことにあらわれているのじゃないでしょうか、こんなふうに思うのですけれども、この借金というのがこれほどまで累積をしたという理由はどこにあるとお思いになりますか。
  35. 野明宏至

    説明員(野明宏至君) 北海道の酪農の場合には、頭数規模は逐次ふえていってまいっておるわけでございますが、酪農の場合にはそれなりに施設投資がやはり必要になってまいるわけでございます。これらについては制度資金その他で長期の融資をしていってまいっております。先ほども申し上げましたように、我が国の酪農はかなりの歴史を経過しておるわけでございますが、まだまだ世界各国と比べれば歴史が浅いと言ってよかろうと思います。そういたしますと、そういった投下いたしました資産の償却という面からすれば、まだまだそういった金融の面でいろいろ考えていかなくちゃいかぬといった問題を抱えておるわけでございます。こう言ってはなんでございますが、長期の資金でございます、そういった長期の資金の負担がなくなった状態になりますと、かなりこれは競争力の強い経営体というものが可能になってくるのではなかろうかというふうに思っております。
  36. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 確かに長期の融資の返済が済めばということはそのとおりなのですけれども、私は先ほどもちょっと文章上だけじゃないかとか、言ってみれば机の上の計算じゃないかという意味のことを申し上げたのですが、長期の借金というものが返せるということがやはりそれには前提条件になるわけです。ところが現在の累積という状況は、返せないでいくから累積がだんだんふえる、膨らんでいくわけであります。私の知り合いや親戚なんかにも結構酪農をしているのがおります。開拓部落に入ったのもおりますけれども、彼らの状況を聞いていると本当に深刻です。こういう状況というのが出てくるのはやはりECと違うところがたくさんあるからです。例えば北海道の経営一つにいたしましても、ECの自給飼料、先ほど局長は粗飼料のことだけ言われましたけれども、粗飼料だけでない、濃厚飼料も一定程度は自給できるわけでありますから、そういったものとのかかわりでいくとやはり規模的に違うのですということが言えるわけです。そういう中で私は、畜産についても今の形の中でEC並みのコスト実現というものはなかなか困難、実際は不可能ではないか、こんなふうに思うのですけれども、その辺はいかがですか。
  37. 野明宏至

    説明員(野明宏至君) 酪農の場合には、今申し上げましたような点を着実に対応しながらEC並み価格実現に向かって努力をしていく必要があると思います。また、肉用牛につきましても、先ほど三つの点を申し上げたわけでございますが、例えば飼料の面でございますが、ECの場合には濃厚飼料を与える率は非常に少のうございます。大体〇・八トンないし一トンぐらい。それに対して日本の場合には購入飼料三トンないし四トンぐらいの間。それで粗飼料、草中心でございますが、ECの場合には干し草換算で千五百キロから千八百キロぐらい。これは日本の場合には五百キロないし六百キロ。こういったいわばえさの構造というのは随分違っております。したがいまして、この辺のところにつきましてはやはり粗飼料基盤を強化していくということで、私どもは計画的な草地開発なりあるいは既耕地の飼料作物の作付拡大ということを積極的にまた着実に進めていきたいと思っておるわけでございます。  それ以外の点といたしまして、例えば規模の問題が一つございます。これは肉用牛生産の場合まだまだこれからということでございますが、昨年、肉用牛生産の近代化の基本方針というのを明らかにいたしておりますが、土地の制約が比較的少ない場合、それから比較的多い場合に分けまして、土地の制約が比較的大きいような場合には、例えば肥育の場合も三十頭程度を目標にいたしまして、かつ他の作物との複合経営というものを考えていく。そういたしますと、畜産から出てまいりますふん尿を土地還元していく、それがまた土地を肥やしていくというふうなことで経営全体としては規模がそう大きくなくてもかなりの合理化ができる、そういった点も加味しまして着実な規模拡大ということを考えていきたいと思います。  それから三番目に、合理的な生産ということでございますが、日本の場合には肥育期間がECなどと比べてかなり長い、それから出荷体重も大きい、それからいわばさしの多く入った肉をどうしてもつくる。したがいましてそれのところは経済肥育を進めるとか、あるいは哺育過程での事故率が低下するように乳肉の複合経営を進める、いろいろな形の努力を積み重ねていけばEC並みということはそう遠くない将来に可能ではなかろうかというふうに考えております。
  38. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今局長の御答弁、いろいろと私はまた反論もあるのですけれども、しかし、それは時間も余りありませんからきょうは差しおきます。  それで、今局長の御答弁の中で、一つは肉質の問題が出てきました。これはいわゆる消費者ニーズということで、日本消費者の要求する肉、牛肉のあり方というようなものがやはりヨーロッパ、アメリカと違うということにもあろうかと思います。こうした消費者ニーズとのかかわりの中で、今度は今の粗飼料部分を多くしてというお話もありましたけれども、これは粗飼料部分をふやしていくということは、さしの問題と極めて重大な関係があるということになりますから、これもそういう御指導をされても、そうなかなか簡単に乗らないということも一方では出てくるという側面も持っているのではないかと思います。そういう中でEC並みということは、私はこれはやはり問題が出てくるのではないだろうかと思います。  それからもう一点は、これはいろいろと耕種農業の方に特に強力に出てくるわけでありますけれども、日本農業経営というものは言ってみれば狭い土地の中でやってきておりますし、日本での地代というものはヨーロッパECに比べれば非常に大きいものになります。そうすると、いろいろとあれをしていっても、結局、経営の中で商品生産にその地代分というものは必ずかぶさっていくわけでありますから、そういうことになりますと、そこの地代が高いということだけでももう既にECとギャップができているのではないだろうか。  農産物価格という観点でいきますと、言ってみればEC並みと言うけれども、なかなか完全にEC並みにそろうわけにはいかない。結局、私は今地代の例を一つ挙げました。地代と農産物との価格についてはいろいろきょう議論したいと思ったのですけれども、時間がなくなりましたからここは割愛いたしますけれども、要するに、そうした日本的な特徴というものが、結局EC並み価格実現ということの中で経営農民農家の言ってみれば犠牲、負担というものでカバーをしない限りEC並み価格実現ということが実際はできないのではないでしょうか、こんなふうにも思うわけなのです。  これは畜産にしてみても、やはり粗飼料、濃厚飼料も一切くっついてくるわけでありますからそういうふうにして考えているのですけれども、その辺はそれぞれ担当局長の方ではどうお考えなのでしょうか。
  39. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) 日本農業のコスト低下にとりまして規模拡大というのは非常に大事なことですが、今お話にございましたように、日本の特に農地改革後のこういう農家の方々がみんな自分の土地を持っている状況でどうやって規模拡大を進めていくかという問題は大変難しい問題でございます。売買が難しいので貸し借りでということですが、お話のありました地代がございまして、米の生産費調査でも第二次生産費の大体四分の一ぐらいになっております。絶対水準としては外国と比較すれば大変なことでしょうが、結局こういう状況で、中核農家というか、本当にやる気のある人が規模を大きくしていくにはどうやったらいいかということで、一番いいのは所有権取得あるいは利用権で借りるということですが、反面やはりこういう状況の中では一種の地域ぐるみ的な共同部な組織化という方法もかなり活用しなきゃいけないのじゃないか。言葉はちょっと語弊がございますが、地代問題をいわば回避するような作業規模拡大とか、そういう実質的な規模拡大という道を相当重視しなきゃいけないのじゃないかという気がしております。  そういう意味で、農業生産組織でありますとか、機械銀行でありますとか、そういう方式もそういうラインの上に考えられているわけでございまして、反面そういうそれぞれの地域での土地をやる気のある農家がたくさん使えるようにということになりますと、その地域の中でそういう土地の利用をいわば調整をするような仕組みも必要であるということで、地域農業集団でありますとか、農用地利用増進法によります農用地利用改善団体とか、そういう地域でできるだけやる気のある人に土地が集まる、あるいは作業の中心がそちらに移っていく、こういうやや幅広い規模拡大方式考えながらやっていくというのが、これからのいわば農村における規模拡大を進める場合の一つの心得るべきことではなかろうか、かように考えております。
  40. 野明宏至

    説明員(野明宏至君) いずれにいたしましても、畜産農家経営体質が逐次強くなるような方向を踏まえつつ、一方、EC並みということでまた努力をしてまいりたいと考えております。
  41. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうも私は今のお二人の局長のそれぞれの御答弁では納得ができないのでありまして、確かに目指して努力をするという一つ目標を持つことは大事ですから、その目標に向かっての努力をしましょうと、その意気込みはよくわかりますが、しかし、現実にそこまでいけるかどうかということになってくると、余りにも日本現実というものは厳しいです。簡単になかなかいきませんということを痛切に感ぜざるを得ないのですよ。今農蚕園芸局長の言われるような方向も、結局借地農業というのが地代が高いために現実の問題としては日本では一般的なものにはなかなかなっていかないという側面も持っているというふうにも思いますし、先ほどからこれは何回も言っているように、それが通勤兼業とのかかわりでいきますとますますそれを阻害するという要因にもなりかねないです。借地農業というのは、一定程度までは貸すけれども、だけど、また自分の労働力でできる範囲内は確保しておくという、そういうのが通勤兼業の中ではかなり定着化してきつつあるという感じがいたします。  そうすると、一定程度の請負だとかなんとかという形で現実に今いろいろと進められてきたこの範囲のところが限界であって、もうこれ以上にかなり大幅に進むということはちょっと考えられない、こんなふうな感じもするわけです。この点は議論が乾かないところでありますけれども、時間も経過しておりますから、さらに私はもう一点、たまたま畜産局長から肉の質の問題なども出てまいりましたから、消費者側からの需要の観点でどう見ているかということをお伺いをしておきたいと思うのです。  日本型食生活というものを農水省が強力に進められるということになっているわけでありますけれども、この日本型食生活の特徴の一つに、動物たんぱくとして水産物を欧米各国よりも多くとる、こういうものもあるということなのですけれども、この水産資源について実は私はいろいろと心配があるわけであります。というのは、二百海里の問題もございます。それからまた、最近栽培漁業などと言われていろいろと努力をしていることは、それでそれなりの実験的な成果は上がっているということはわかります。しかし、何か水産資源については最近心細い感じがするわけでありますが、その辺、将来の見通しということを含めてどのように考えておられましょうか。
  42. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  先生御承知のとおり、現在我が国では約一千万トン見当の水産物が生産されておるわけでございますが、実はこの中に相当部分食用以外の用途に充てられておる部分がございます。したがいまして、私ども水産庁といたしましては、イワシなど食用として利用度の低い多獲性魚の食用利用の促進と魚介類に含まれている有効栄養成分の高度利用を進めるためにいろいろな施策を講じているところでございます。私どもの率直な感想といたしましては、日本型食生活の普及定着に伴いまして、このような食用以外の用途に充当されております魚が消費者の皆さん方のお口の中へ入るようになることを切望しておるわけでございまして、そういう意味では、私どもとしては早くそういう心配がしたいという気持ちでございます。もちろん、それはそれなりの理由があって現在食用以外の用途に充当されておるわけでございますから、私どもとしてはそれだけではなく、もちろん先生ただいま御指摘のございましたような栽培漁業の振興、あるいは沿岸漁場の整備についてももちろん努力をしてまいりますし、遠洋漁業につきましても海外漁場の確保について引き続き一層努力していかなければいけないと思っております。
  43. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 せっかく水産庁長官に御出席いただいて、それで細かくいろいろとまたさらに御意見を聞くという時間がもうなくなってしまって、まことに残念なのであります。  私は、水産資源の活用というのが極めて日本の過去においても一つの特徴であったし、これからもそうあってほしいと思っております。今長官の御答弁の中で特にイワシの話などが出ましたけれども、確かにイワシは余り食べないで高級魚志向というふうな傾向が一般的にある。だからイワシはえさにして、そしてイワシを食べた魚の方を食うというようなスタイルもあるようであります。しかし、私はここでやはり重要な問題の一つに、こうした国民の志向といいますか、そういうものを形づくっていくいろいろな要因が考えられると思うわけです。そうした中で、例えば今長官から、イワシをたくさん食べてもらいたいという話があったけれども、幾ら農水省がイワシを食え食えと宣伝をしても、なかなか簡単にはイワシを皆さんがブリやハマチよりも先に食いますというふうにいく人は、私はそうふえるとは思わない。  そうすると、やはり私は一つには、私たちが今の食生活のパターンをつくり上げてきた要因の一つに学校給食というのがあると思うのです。学校でヨーロッパ型の食事をいろいろと子供のうちからしてくる。その中でいつの間にか嗜好がそういう方向に変わってしまうということになると思うのです。だから私は、例えば米の需要が減ってきているという問題も、この辺のところとそこはかとなく関係があるのじゃないかというふうに思うのです。ですからここでひとつ文部省と十分協議をされて、そして積極的に米飯給食で、そして日本型食生活の典型として魚を、それこそ大衆魚を積極的に食べる子供たちをつくっていただくということが非常に大事なのじゃないだろうかと思うのですけれども、その辺のところはいかがでございましょうか。
  44. 塚田実

    説明員(塚田実君) お答えいたします。  確かに、先生お話しのように、日本型食生活は次第に普及して定着してきております。日本の食生活は非常に栄養的にもバランスがとれておりましてそれなりに高く評価すべきでありますし、日本人の平均寿命が世界的にも非常に最長寿国の一つになっているということもまたそのあらわれだと思います。また他方、飽食の時代とも言われておりまして、そういうことではそれなりに結構なことでありますが、内容的に見ますと、子供の中で肥満児が非常に多い。過去十五年を見ても、肥満児の出現率というのは十四歳以下で二倍以上になってきております。それから朝食を食べない若者が非常に多いとか、いろいろ問題があります。そういう意味で、食生活を望ましい形へ誘導していくということにつきましては、農林水産省はいろいろこれまで知恵も絞り努力もしてきているわけであります。しかしながら、先生も今御指摘のように、食生活というのはそれぞれ個人のものでございまして、押しつけということではこれはなかなかうまくいかないわけであります。  そこで、私どもも学校給食の重要性というのはそこからきているというふうに思いますが、子供のころに正しい食習慣を植えつけるということが将来の国民の食生活に大きな影響を及ぼすということでございます。農林水産省としては学校給食ということの重要性に着目しまして、例えば米飯給食につきましては昭和五十一年度から鋭意推進してきておりますし、五十一年度には米飯給食の実施校の比率はわずか三六・二%でございましたけれども、五十八年度には九五%に上がってきております。そういう意味で米ばかりに限りませんけれども、牛乳も大事でございますし、果汁も大事でございます。そういう意味で、学校給食といえばお話のように文部省でございますけれども、今後とも緊密な連携を保ちながら正しい食生活の定着へ向かって取り組んでいきたい、このように考えております。
  45. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 この問題は極めて大事な問題なのでありまして、今後の我が国食糧の消費動向を決めていくと言ってもいいくらいのものになるわけであります。それだけに局長の段階でもいろいろと連絡を密にしてやっていただくということも大事なのでありますが、同時に、やはりこれは高度に政治的な課題でもあると私は思うのです、随分大上段に言って申しわけないけれども。本当に将来のことに全部影響するわけですから、そういう観点から大臣からその辺は文部大臣との間でそれこそ十分に詰めていただいて、今後の日本型食生活が普及できるようにしていただきたいと思うのですけれども、その辺大臣、いかがですか。
  46. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 今局長から答弁ありましたように、日本人の平均寿命というのがこれだけ延びてきたというのも、日本型食生活に負うところが大きなものであろうと思いますし、また、魚の話が出てまいりましたが、実際のところ今三百五、六十万トンのイワシがとれるということで、これもよく調べますと二割少々しが食べない、食糧にならぬ、あとはえさ、肥料ということになってしまうということで、前の水産庁長官でありました渡邉長官に、何とか食べらせるように、イワシをどうにが食べられないかということでやりましたら、日本人一人、平均毎日十匹ずつ食べれば三百五、六十万トン食べるということでございますが、これは赤ん坊からお年寄りまで入れた数字でございますから、成人の方は二十匹食べていただきたいということでちょっと難しいということでございました。  しかし、それにしましても、これを今いろいろ粉末にしまして、ちょうどこの間も試食会へ呼ばれまして行ったのですが、本当にハンバーグそのものというようなイワシの加工品もあるようです。ただ、それをつくるまでの経費がかかりまして、やはりイワシをハンバーグにするよりは肉の方が安いというようなことでございました。しかし、これからも研究が進んでまいって、恐らくそれを何とか、もったいない話でございますので、それをひとつ食糧でできるだけ食べるようにいたしながら、文部省の方へは、日本型食生活の定着という方に向けて文部大臣とも相談しながらやってまいりたいというぐあいに考えます。
  47. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ぜひお願いをいたします。  そこで、今の日本型食生活に大分自信を持ってこられているようでありますけれども、私は消費の日本型の方はそういうことで目指しておられるということ、これは評価をいたします。しかし、生産の側で私は日本型というものをもっともっと積極的に進めていただかなければいかぬのじゃないかという気がしているものがたくさんございます。  私は冒頭に申し上げましたように、日本農業は、あらゆる食糧を可能な限り最大限に生産をして、例えば米はとれ過ぎて困るなんて言わないで、積極的にできるものは全部つくって、そして我々が食べるものと、それから余力はそれこそ世界の飢餓を救うという役割の方に回していくというくらいのことが当然考えられていいと、こんなふうにも思うのです。  そこで、もう菅野先生にバトンタッチをする時間が来たのですけれども、少し時間をわずかいただきまして、最後に技術開発の面でお伺いをしておきたいと思うのです。  というのは、私は実は、日本農業の技術というのは、米については、それは日本型ということで、これは定着をしているというよりも伝統としてできていると思います。しかし、そのほかのものについては多くのものが日本型というよりも、やはり輸入した品種は輸出国のそういう技術体系に合ったものであるということにもなるわけでありますから、当然その形を踏襲しなければならぬ、こういうことになると思うのです。だから、我が国我が国の気候、風土、それから国民の嗜好やその他いろいろな形でもって特徴があって、それに合った品種改良なりが進められなきゃならない。  例えでいきますと、私は北陸農試へ伺って大いにうれしくなったのですけれども、例えばイタリアンライグラスの新しい品種を、言ってみれば北陸地方でも非常に適した新しい品種を開発される、私は大いにこれを評価していきたい。それと同じように、例えば畜産も、酪農で言ったらホルスタインオンリーだと。そのほか畜産でいけば大体輸入のあれがみんな中心になっていますけれども、これが日本的なこの気候、風土、経営規模に合った、日本人の食味に合った、そういう形でやはり技術的には開発されていかなければならないものだと思うのです。こういう観点でのお取り組みは、技術的にはどの程度になっていますでしょうか。
  48. 櫛渕欽也

    説明員櫛渕欽也君) ただいまのお話のように、我が国は立地的に寒地から亜熱帯の沖縄まで大変広がりがある、南北に非常に長い。それから山間傾斜地も非常に多いとか、そういう非常に多様な複雑な立地にあるということがありまして、私は今ここで、先生のお話の中で品種改良の問題に仮に絞って考えますと、世界の他のこういった育種の体制に比べまして我が国の育種の体制が非常に注目されておりますのは、それぞれの立地条件の中で育種のセンターを配置しているという生態的育種方式と言うのですけれども、そういうことは稲の場合なんかは典型的でございます。仮に牧草に例をとりますと、寒地型牧草とか暖地型牧草とかいろいろあるわけですが、寒地型牧草ですと北海道農試中心に東北農試とか、そのほか県の指定試験場なんかも含めましていろいろと取り組んでおります。暖地型牧草は当然九州農試が中心でございますけれども、全体で十四カ所で実際の現地の気候、風土に適する育種をとっております。  今お話のありました積雪寒冷地対応ということでは、北陸農試が中心になりましてイタリアンライグラスの育種ということをやっております。これは全体として経常的な試験研究の体制でございますけれども、特にこういう中にプロジェクト研究を設けまして、例えば北陸でございますと、多雪地農業における耐雪性生産技術の確立というような、先般北陸農試でお話をお聞きしたかと思いますけれども、そういうプロジェクトは北陸農試と北陸の関係の四県が共同でやっておる研究でございます。こういった中で、具体的にはイタリアンライグラスなどの北陸地域に適する牧草の品種の選定とか、あるいはそれを中心にした全体の栽培技術の確立等で畜産経営に十分意を尽くした研究の進め方をやっておるわけでございます。そういう点では傾斜地問題なんかも含めまして我が国の研究の進め方としては、先生も今御指摘のような非常に日本型、日本の複雑な立地あるいは風土というものを十分念頭に置いた研究の進め方をとっておると申し上げてよろしいと思います。
  49. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 時間がなくなりました。  最後に大臣にお伺いしたいのですけれども、いろいろと今までお聞きをしてまいりましたが、結果として、我が国農業というのは言ってみれば技術的にも経営的にも日本型の対応をしている。そういう形の中で、それこそ米と限らずあらゆる食糧については最大限に生産をできる、増産努力をしていく、こういうことをやはり基本に置いて、そしてあとは財政事情だとか何とかといろいろ絡んでくるかもしれませんけれども、そういうときに財政事情はどういうふうにして克服していくかという工夫をしていく、これが基本でなけりゃいかぬのじゃないだろうか、そういうふうに思うのですが、今後の展望等も含めまして、大臣、どのようにお考えになるか、御決意のほどを聞きたい。
  50. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 食糧の安定供給は、安全保障ということを確保するというような見地からも国政の一番基本となるべきものであり、また、農林水産省としての一番大きな責任であるとも考えております。  そこで、今先生おっしゃいましたように、国土の有効利用そして生産性の向上を目指しながら国内で生産可能なものは極力国内生産で賄う。総合的な食糧自給力の維持強化に努めてまいりますし、今言われましたように、余ったものはこれをいわゆる飢餓であえいでいるそれらの国々へ援助ということでございますが、しかしまた、これは米などにつきましても大変な財政負担ということがございまして、私はやりたいと思いましても恐らくなかなか難しいと思います。しかし、それにしましても、いわゆる基本として国内生産を十分賄い得るように、また他の外国に対しても、先ほど局長の方からお話がありましたが、伝統的輸出国等もございますし、それらも配慮しながらやってまいりたいというぐあいに考えます。
  51. 菅野久光

    ○菅野久光君 私は水産関係について、大臣が今月十六日、ソ連のカメンツェフ漁業相の招請に応じて訪ソされるということになっているようですので、当然行かれた際に漁業問題が話し合われると思います。そこで、今日のソ連との漁業交渉の基礎になっているのは、やはり海洋法とのかかわりであるというふうに思うわけです。それで、まず海洋法についてお伺いをいたしたいと思います。  海洋法は、一昨年の十二月にジャマイカで国連海洋法条約の署名会議が開催されて、世界は海洋法時代に入ったというふうに思います。この条約は批准が六十カ国に達した一年後に発効することになっているわけですが、現在、署名は百三十四カ国に上っているものの、まだ批准は十二カ国にとどまっております。水産においては、条約を先取りする形で一足早く二百海里時代に突入してしまっていたとはいうものの、一日も早くこの条約が発効して、安定した海洋法秩序のもとで操業できることが望ましいというふうに思います。我が国は、条約に反対していた米国に気兼ねしてということになるのだろうと思いますが、二カ月おくれで署名をしたわけですが、まだ批准には至っておりません。  そこで、政府は海洋法条約の発効をいつごろと予想しているのか、また、我が国の批准はいつごろまでに行うのか。批准に至るまでの具体的な計画があるなら、それを端的に示していただきたいと思います。時間もございませんので、ひとつ端的にお願いいたしたいと思います。
  52. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  署各国、批准国の数等は、今先生のおっしゃったとおりでございます。そういう時期でございますので、まだ十二カ国でございますから、現在の段階で私どもとしては発効の正確な時期を予測するということは難しいというふうに思っております。  政府といたしましては、条約の発効に備えて各種の準備は行っておりまして、諸外国の条約の批准の状況を見ながら外務省を中心に行っております国内での作業の進捗状況を考慮に入れて、批准の時期について最終決定を行いたいというふうに思っておるわけでございます。
  53. 菅野久光

    ○菅野久光君 批准のためには国内体制の整備が何といっても必要になるわけですが、関係する省庁、それから法律制度等が大体明らかになっているというふうに思いますが、それを明らかにしていただきたいと思います。特に水産関係の法律の見直し作業の進捗状況はどうなっているでしょうか。また、水産関係の二国間条約、多国間条約見直し作業の進捗状況についてもあわせてお答えいただきたいと思います。
  54. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  先生ただいまお話しのございましたように、水産の分野では先取り的に二百海里が行われております。したがいまして、我が国の水産関係の国内法制もおおむねその時点での国連海洋法条約の作業の最新のテキストに合わせてつくっておりますので、私どもといたしましては国内法制の基本的な枠組みを変更する必要はないだろうというふうに思っております。ただ、子細にわたりまして一点一画修正を要するところがないかという点につきましては、現在なお検討中でございます。  それから、日本が当事国になっております条約についてでございますが、現在のところ我が国から手直しをしようではないかというふうに問題提起をする必要がある条約はないというふうに考えております。
  55. 菅野久光

    ○菅野久光君 条約署各国の中で先進国日本とフランスだけなわけです。米、英それから西独、イタリアなどはまだ署名をしておりません。これらの未署名の先進国は、今マンガンノジュールなどの深海海底資源の開発に強い関心を持っておって、海洋法条約によって拘束されるのを避けたい意向を持っているからだというふうに言われているわけですが、我が国もそのマンガンノジュールなどの開発には非常な関心を持っておりますし、技術も持っている。これらの未署各国と共通の利害を有する面もあるわけであります。しかし、世界の海洋秩序の形成に、この海洋法条約は不可欠であるというふうに思うのです。これが、我が国がこれらの未署各国に引きずられて批准をおくらせるなどということがあっては私はならないというふうに思うわけです。むしろ、これら諸国を説得して署名や批准に至らせることこそ海洋国、水産国としての我が国の責務と言えるのではないかというふうに思うわけであります。それだけに、この点に関する政府の見解をぜひ示していただきたいというふうに思います。
  56. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  日本国政府もこの条約について署名をしたわけでございますから、その点についての日本国政府の態度は既にそれで明らかになっていると思います。  それで、私ども水産の側から見ますと、海洋法秩序について無用の混乱が継続するということは決して望ましいことではございませんので、国連海洋法条約について、それぞれ条項ごとにはいろいろ言いたいことがないわけでもございませんが、こういう形で発効してくれることが望ましいことであるというふうに考えております。そこから先の、先生がただいま提起なさいました、未署各国を説得すべきであるという点につきましては、これは未署各国が署名を留保しております主たる原因が先生も御指摘のような深海底の鉱物資源をめぐる問題でございます。  具体的に申しますと、国連海洋法条約が定めております深海底の資源は人類全体に与えられたものであるという認識、したがって、国際海底機構がこれについて人類全体のために行動するマシーナリーとして国際海底機構が中心になっていくという、このレジーム自体が気に入らないということが未承認国の署名を留保さしている主たる動機であるというふうに伺っております。したがいまして、その点につきましては、どういうふうに議論をすればそういう国が考え直してくれるかということにつきましては、ちょっと水産庁長官である私がお答えをする範囲をやや越えておるように思いますので、私どもとしては水産サイドから見て先ほど申し上げたような見解を有しておるというところまでで御容赦いただきたいと思っております。
  57. 菅野久光

    ○菅野久光君 この問題については、日本は当初自国本位の姿勢で、いわば第三世界諸国からは非難の目を向けられていた。ところが、この海洋法会議の進展につれて日本は多数派である第三世界諸国との協力の道を選んで署名をしたわけです。そういうことから、時には米欧先進国との対立も覚悟でこの国連の海洋法条約の成立に努力した日本に対してこれらの第三世界を中心にした国々が非常に熱いまなざしで見ている、期待をしているということでありますので、この海洋法秩序の確立のためにも日本の果たす役割というのは非常に大きいというふうに思いますので、この辺はひとつ踏まえて大臣も今後の批准の問題あるいは先進国、そういうところに向けての日本としての説得の立場といいますか、そういうもので頑張ってもらいたいと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  58. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 外務省ともよく相談しながらやってまいります。
  59. 菅野久光

    ○菅野久光君 いよいよ十六日に一週間程度の訪ソということが決まったやに新聞に出ておるわけでございますけれども、今度の訪ソに至る経緯及び話し合いを予定している事項などについてはっきりしているものであれば、この際、はっきりさせていただきたいというふうに思いますが。
  60. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  まずいきさつでございますが、これは昨年、前の金子農林水産大臣がカメンツェフ漁業大臣をお招きをいたしまして、カメンツェフ漁業大臣が訪日をなさいました。その際、カメンツェフ大臣は、お返しに金子大臣をぜひソ連にお呼びしたいということをおっしゃっておられたわけでございますが、いろいろ日程の調整がつかずに前大臣は結局訪ソなさいませんでした。しかるところ、ことしの三月になりましてカメンツェフ大臣から山村大臣あてに、金子大臣への御招待の引き継ぎがございまして、御都合のいいときに一週間程度ぜひ気楽にお越しをいただきたいというお話がございました。それで現在先方と日程を調整中でございますが、日取りとしては今先生がおっしゃいました一応十六日出発ということで日程調整中でございます。  それから、どういうことを議論するかという点につきましては、日ソ双方が関心を有する水産の分野の問題について高いレベルにふさわしい隔意なき意見の交換が自由に行われるということになる予定でおります。
  61. 菅野久光

    ○菅野久光君 八月三十一日の北海道新聞では、今のやられている漁業交渉について、「農相訪ソ前にも決着」というような見出しで、実は櫻内日ソ友好議員連盟の会長がソ連のクドリャフツェフ漁業省の第一次官との会談で、山村農水相の訪ソが有意義で快適的なものになるよう努める、というようなことが報道されておったのですが、翌九月の一日になりますと、「日ソ漁業交渉中断 農相訪ソ前決着は微妙に」と、一日置いたらこんなような見出しで出ておりまして、「これまでの交渉では、ソ連が来年以降の日本のサケ、マス漁の継続を認めながらもソ連二百カイリ並みの規制に応じるように主張したのが最大の争点。新協定の基礎となる海洋法条約の規定をめぐる解釈の違いも残り、案文作成までに至らなかった。」というような報道がなされているわけですけれども、実際のところはどんな状況なのでしょうか、その辺ひとつ。
  62. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  私は、今回、ちょうど三回目になるわけでございますが、八月二十日からの第三回目の協議というのは私は有効ないい協議であったと思っております。それで、雰囲気も実務的ななかなかいい雰囲気の協議であったというふうに思っております。  それで、問題は、サケ・マスの沖取りの問題でございますが、前回までの交渉のときに比べますと、ソ連側は確かに沖取り継続の問題につきましてそれ以前に比べますれば柔軟な態度をとり始めたことは事実でございます。  しかしながら、そこで一つお断りしておきたいと思いますのは、国連海洋法条約で遡河性魚種についての規定ができたわけでございますが、あの規定を念頭に置いて沖取りをするということについて現実に協議が行われておるというのはこの日ソ間が初めてでございまして、そういう意味では前人未到のことをやっておるわけでございます。二百海里の中でお互いに魚をとったりとられたりということについては、これは幾らも例のあることでございますが、そこで前人未到のことをやっておるわけでございますから、沖取りをかたくなにだめと言い切るわけにはいかないなということはソ連側も認識しておることはうかがえるのでございます。  そこにつきましてはおのずからやはり、しからばそれを法律上いかに構成するかということになりますると、母川国としての立場を強く押し出した規定の仕方、あるいは沖取り国の立場を強く押し出した規定の仕方ということについてはまたいろいろ多岐にわたる議論があるわけでございまして、そういう議論を日ソ双方それぞれ整理をする中休みを一遍持った方が協議がより能率的に進められるであろうということで中断をしたということでございまして、私どもとしては、できるだけ早い機会に協議を再開したいというふうに思っております。
  63. 菅野久光

    ○菅野久光君 ソ連は、国連の海洋法条約を踏まえて、去る二月に、ソ連邦経済水域に開するソ連邦最高会議幹部会令を布告した。ソ連は、このことを前提に、去る六月、日ソ漁業協力協定の破棄を我が国に通告してきたわけです。このため、我が国は、来年以降、北太平洋沖合でのサケ・マス漁が不可能となって、新たな協定をせざるを得ないことになってきたわけであります。新協定締結のための交渉は、先ほどからお話にありますように、日ソ両国の専門家の間で五月、七月、八月の三回なされた。その最も大きな争点になったのが、ソ連側が海洋法条約に規定されているサケ・マスの沖取り禁止の原則、先ほど長官が言われたとおりなわけですけれども、それを新協定に盛り込むことを要求して、我が国がこれに反対をしたことがこの話し合いの難航になっているのだというふうに伝えられておりますし、またそうだというふうに思うのです。  北洋における我が国のサケ・マス漁業は、古い歴史を持つばかりでなくて、近年我が国がソ連に対しサケ・マス資源増殖のための資材協力費の形でこれは提供し続けてきた。そういうことで、日ソ間の極めて特殊な関係のもとで、長い間歴史的に継続されてきたものであるわけです。こうした事実を考えれば、ソ連の要求は余りにも一方的であると私は言わざるを得ないのです。  そこで、農相の訪ソの最大の目的は、新たな協力協定の締結にめどをつけることにあるというふうに私は思うのですけれども、沖取り原則禁止を新協定に盛り込むことのないように、これだけは何としても大臣に頑張っていただきたいというふうに思うのですけれども、大臣の決意をお聞きしたいというふうに思います。
  64. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 過去三回行われました日ソ漁業協力協定協議、これは今長官から御答弁したとおりでございます。ただ、沖取り原則禁止もかなり弾力的だというような話もございましたし、私としましては、いずれにいたしましても我が国の北洋サケ・マス漁業、これは漁業従事者だけではございませんで、流通、加工業者など多くの関係者がおることでございますので、特に地域経済を支える重要な柱ともなっております。  これらの点から、できるだけ早くソ連側との交渉を今長官が申しましたように、中断でございますが再開いたしまして、何とかうまくソ連と話し合いがつくように努力してまいりたいというぐあいに考えます。
  65. 菅野久光

    ○菅野久光君 サケ・マス関係の漁民は、農相の訪ソによって協力協定締結のめどがつくのか、その枠組みがどうなるかをかたずをのんで見守っているというのが真相であります。もしも交渉の結果、残念ながら新協定の枠組みが我が国に不利なものとなって、その結果現行のサケ・マス漁業に打撃を与えるものになったとすれば、これは漁民の落胆は大きなものになるし、当然その救済措置考えなきゃならないわけです。ならないことを私は願って、農相の努力をひとつ期待するわけでありますけれども、もしも仮にそうなった場合には、やはりその責任というものを農相も感じていただいて、その救済措置を講ずべきだというふうに思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  66. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  先ほど来再々話題になっております国連海洋法条約の第六十六条第3項(a)の中にも、沖取り国、条約上は「母川国以外の国」というふうに書いてございますが、「経済的混乱をもたらす場合は、この限りでない。」という規定がございまして、さらに「経済的混乱を最小にするために協力する。」という規定もございます。したがいまして、ただいまお尋ねのようなケースが起こらないよう私どもとしては全力を尽くす決意でございますし、同時にそれが国連海洋法条約の精神でもあると、はっきり条文の上でも、経済的混乱を回避するための私どもの主張を支持する条文もあるわけでございますから、そういう決意で協議に当たりたいというふうに考えております。
  67. 菅野久光

    ○菅野久光君 時間もございませんが、例外規定があるということで、それを盾に何としてもこれは新協定を締結をするように一層の御努力を願いたいと思います。  先ほども申し上げましたが、昭和五十三年に日ソ漁業協力協定が締結されてから日ソ間でさまざまな技術協力が行われてきましたが、その実績の概要を明らかにしていただきたいと思いますし、その実績を政府はどう評価しているのか、その辺も明らかにしていただきたいというふうに思います。これは新協定の締結交渉において、この協力問題について日ソ両国がどのような態度をとっているのかということが例外規定の問題を含めて大事なところになってくるというふうに思うのです。今回の訪ソで、農相はこの問題も話し合うつもりなのかどうかもこの際はっきりしていただきたいと思います。時間もございませんので、ひとつ端的に。
  68. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  現在、日ソ間で行われております漁業の分野での協力というのは幾つかのタイプがございます。  一つは、現行の日ソ漁業協力協定の定めるところによりまして、毎年の日ソ漁業委員会議論をしてプランをつくって、それで実施されている科学技術協力というのがございます。この分野で日ソ間で情報資料の交換あるいは共同調査専門家の交換、種苗の交換などが行われております。それから、それ以外に先生ただいま御指摘のございましたサケ・マス漁業との関係での俗称コンペンセーションといわれております事業もございます。それから民間ベースのものといたしましては、いわゆる日ソ共同事業。これは単に金を払ってソ連水域でとらせてもらっているというだけではなくて、その過程で技術移転なども行われているという意味で、やはり協力一つの形態であるというふうに考えられると思います。それから大日本水産会が主催をしております漁業者の相互交流、あるいは水産施設の視察とか、サケ・マス分野における協力発展のための技術者交流なども行っております。  それで、私どもといたしましては、このような日ソの漁業の分野での技術協力というものは、日ソ間の漁業関係を全体として安定的なものにしていくために、私どもは重要な貢献を果たしているというふうに思っております。  それから、今回行っております日ソ漁業協力協定の改定をめぐる協議の際にも、先方のソ連側は、従来から行われておりました日ソ間の技術交流に対して極めて高い評価を与えておりまして、これを今後も引き続き継続拡大をしていきたいということを希望しております。そういう意味では、現在の日ソ間で行われております協力協定の改定交渉にも有益な効果を果たしているというふうに思っております。両大臣間で議論をなさる際にも、当然話題の中に入るべき項目であるというふうに思っております。
  69. 北修二

    委員長北修二君) 菅野君、時間でございますので簡単に願います。
  70. 菅野久光

    ○菅野久光君 一言だけ、済みません。  協力こそ相互理解に最も有効な方法だと思いますので、新協定においてさらに充実した内容になるように一層の努力をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  71. 北修二

    委員長北修二君) 本件に対する質疑は午前はこの程度とし、午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      —————・—————    午後一時四十分開会
  72. 北修二

    委員長北修二君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農林水産政策に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  73. 星長治

    ○星長治君 大臣初め農水省の幹部の方々、米価の決定、そしてまた韓国からの輸入米の問題、臭素の問題いろいろ問題ばかりありまして、本当に御苦労さまでございました。  それで、今日になりましてまず第一に心配しておったところの主食の不足、九月半ばごろには不足が出るのじゃないだろうかと懸念しておったわけでございますが、幸いに天候がこのとおりでございまして、二百十日も無事過ぎ、作況指数がどんどん上がっている、こういうような状態になりましたので、本当に安心しているわけではございますけれども、総括の意味をもちまして、大臣から現在の状態としての主食の問題、加工米の問題、その他臭素の問題、その他いろいろな問題につきましてお伺いいたしたいと思います。
  74. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 今先生からお話しのとおり、主食の問題につきましてはどうやら、いろいろゆとりがあると言えるような状況ではございませんでしたが、何とか天候のあれで今のところ心配ない。作況指数の方も一〇三ということでございまして、これから、前に総理が当委員会でも申し上げましたとおり、米の需給についてはゆとりのあるという計画を持ってやっていきたい、そのようなぐあいにやりたいと思っております。  また、臭素問題等いわゆる食糧の安全性につきましては、今後とも慎重に取り組んでまいるつもりでございます。  そのほか、来年度の転作目標、それらにつきましても、作況を見た上で弾力的にこれに取り組んでまいりたいというぐあいに考えます。
  75. 星長治

    ○星長治君 それでは食糧庁長官お尋ねいたしたいのですが、米価を決定する途中におきまして、農業団体との中でいわゆる加工用米のことでいろいろお話があったわけでございますが、その後の経過などをひとつお知らせ願いたいと思います。
  76. 石川弘

    説明員(石川弘君) 今お話がございましたように、七月二十七日の米価の決定の際に、他用途米につきまして主食に転用するという考え方に立ちまして、その基礎となります諸条件を整備するということになっておりまして、その場合には生産者の御希望によってそういうことが可能に、そういう御希望がある場合には主食に転用するわけでございますけれども、それによって不足を生ずるおそれがあります加工原料につきましては、生産者団体が自助努力によってこれを満たすというお約束になったわけでございます。その後、需要者側でございます米菓、お米のお菓子だとかあるいはみそ、しょうゆ業界、そういうものの方々と生産者の組織とが協議をいたしまして、その後、全中におきまして何度か米対の委員会というものを開きました結果、三十日に全中から私どもの方に三つの考え方を基本にしました取り扱いの方針を持ってまいりまして、政府の了承を得たいということがあったわけでございます。  中身は、集荷の目標は二十万トン、県別にこれは契約数量に応じて割り当てをする。規格につきましては三等に準ずる米、別途定める標準品によると。それから集荷方法につきましては、米販売農家について米の輸入阻止を訴えて各県の実情に応じた方法でやりたい。それから集める期日は五十九年十二月末とするというお話があったわけでございます。  私どもはそういう要請の中で、こういうことで可能かどうかということを他用途米の利用協議会に実需者とも話し合いをしました結果、そういう方向でやろうということで、近く方針を定めまして、各県、市町村、農業団体等に協力を求めるわけでございますが、考え方といたしましては、五十九年産限りの措置といたしまして、他用途利用米の生産出荷契約を行っている生産者を対象といたしまして、その生産者が希望いたしました場合にその契約の範囲内で転用を認めることとするということ。それからこの転用を認めます場合には、そのお米は政府買い入れまたは自主流通のいずれかの方法によって対応をするということ。それから他用途米の主食への転用により不足となることになります加工原材料米につきましては、農業団体が自助努力によって農家保有米等を集荷して確保すると。それからこの加工原材料用米の確保につきましては、他用途米として集荷いたしますものと、自助努力によって集荷されますものとを合わせて、農業団体の言っておりますように、最低限二十万玄米トンを集めていただきたい。  それから、どういう方法で集荷するかということにつきましては、生産者団体も自主的に各県でということになっておりますが、私どもとすれば契約どおり他用途利用米として集荷する方法、それから他用途米として予定した米を政府米あるいは自主流通米として主食用に転用し、別途自助努力によりまして農家保有米等を集荷する方法、それから今言いました二つのいずれかの方法、二つの方法を併用する方法、この三つの方法によって各県でおやりいただいて結構であろうと思っております。  それから、集荷されます米の品質につきましては、三等に準ずるという表現につきまして農業団体と話し合いをいたしておりまして、これは最低限度三等の規格を満たすものと、これは三等米といいますのは整粒歩合が四五%から六〇%という幅のある規格でございますので、少なくともその最低限度の要件を満たしておれば足りるという考え方で一致をいたしております。それから、そういうものにつきましてはやはり一定の見本を示しまして、こういう品位のものということをやる必要がございますので、見本を作成しようということになっております。それからこれらの米は、他用途利用米と同様に実需者と全国の集荷団体との間で契約によりまして、原則として破砕加工をして行おうということ、以上のようなことを中心としました流通の考え方のほかに、転作の見方につきまして、これは主食への転用をいたしまして、それが転作カウントがされないということになりますと非常に不利でございますので、それらについては転作にカウントするというようなその他の措置を加えまして、先ほど申しました農業団体からの申し入れを以上のような形で実施をしていただくということで下部に指導していくつもりでございます。
  77. 星長治

    ○星長治君 今長官は二十万トンと申したのでございますが、他用途米は多分二十七万トンという数字を出したと思うのです。  それから価格の問題はどうなっているのか、ひとつお願いしたいと思います。
  78. 石川弘

    説明員(石川弘君) まず、数量でございますが、当初二十七万トンを予定しておったわけでございますが、現実に末端で契約をされておりますものが、あの当時の時点で二十二万トンと言われていたわけでございます。最近農業団体等の調査によりますと、それが若干上回るという数字になっておりますが、私どもは、御承知のような韓国から返還を受けましたものと、それから若干五十三年産米を活用いたしまして何とか一月いっぱい、二月に若干かかるぐらいのところまでは供給が可能と考えておりますので、それからあと次の六十年産につなぐまでの間ということで十月いっぱいを予定をいたしますと、ほぼ二十万トンあれば足りると考えておりましたので、当初二十七万あるいは二十二万ということを言っておりましたが、最低限二十万トンを集荷していただきたいということで生産者組織との合意を得ているわけでございます。  それから価格につきましては、これは御承知のように他用途で出してまいります場合には、約十二万円ぐらいの価格に七万円の助成がつくわけでございます。それから主食用に買い上げた上で自助努力で出すということになりますと、当時からそういうお話をしていたわけでございますが、これは特別の援助をすることができませんので、十二万円程度の価格で流通されるという前提で出していただくということになろうかと思います。これらについても生産サイド及び実需サイドとお話し合いが続いているところでございます。
  79. 星長治

    ○星長治君 大体農業問題はこれで終わりたいと思いますが、引き続きまして水産問題を質問いたしたいと思います。  まず第一に、先ほども菅野委員からいろいろ水産問題で質問がございましたが、とにかく今水産業界というのは不況の一途をたどっております。その原因はいろいろございます。やはり二百海里時代に入りまして漁場が狭められた。それと燃油の高騰、輸入、こういういろいろな問題がございますが、この輸入というものも黙視するわけにはいかない。現在では百二十万トン、一兆円の輸入品があると言われておりますが、この内容などをひとつお聞かせ願いたい。
  80. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  百三十二万トン、一兆円、確かに先生のおっしゃるとおりでございますが、目ぼしいものについて申し上げますと、まずサケ・マスが、これは五十八年の数字でございますが九万九千トン入っております。御参考までに国内生産が十六万一千でございます。それから、マグロ、カジキ類が十三万九千トン輸入されております。これは国内の生産が四十万七千トンでございます。エビの場合には、輸入が十五万六千トン、これは国内生産は六万二千トンでございます。それから、イカの輸入が十万二千トン。これは国内の生産が五十三万九千トンでございます。大口を申し上げますと、以上のようなものでございます。
  81. 星長治

    ○星長治君 いろいろな業種を見ますと、特に畜産物を見ましてもやはり需要と供給バランスをとりながらやっているのでございますが、私は決してこの漁業、いわゆる水産物の輸入を云々というわけじゃない。これは輸入はやむを得ないと思っておりますけれども、何とか調整のとれた輸 入というものを指導していくわけにはいかないのかどうか。現に、輸入品を取り扱うのはだれでもかれでも取り扱っているということを聞いているのですが、その辺を需要と供給バランスをとりながら指導していくような方法をとれないかどうか、お伺いしたい。
  82. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  水産物のうちでもイカとかタラとか我が国の沿岸沖合漁業の基幹的な魚種につきましては、無制限な輸入から国内の零細な沿岸沖合漁業者を守るということで輸入割り当て制度をしいておりまして、こういう輸入割り当て制度の対象になっております水産物につきましては、国内の需給動向を十分勘案しながら輸入割り当て数量を決めておりますから、これは大体先生今御指摘になりましたようなお考えに即して運営されているというふうに申してよろしいかと思います。  それで、それ以外の物資は建前上自由ということになっておるのですが、この中で一番大口の問題になりますものとしてマグロがございますが、マグロの場合には、主な輸入先国でございます韓国との間に政府間で四半期ごとに需給協議会を開いて、輸入数量について合意をする。これを担保するために、輸入貿易管理令に基づいて事前確認制をやるということをやっておるわけであります。  それで、それ以外の制度的に特に手当てのない水産物でございますが、これにつきましてはちょっとなかなかむずかしいのですが、私どもが今やっておりますのは、輸入関係者の参加も得まして二月に一回ぐらい冷凍水産物需給情報検討会というものを設けまして、これでサケ・マスとかエビとか目ぼしい水産物の需給動向について情報交換をやる。それを通じて適正な需給関係が形成されるように努めていきたいというふうに思っておるところでございます。
  83. 星長治

    ○星長治君 とにかくこの水産物の輸入の問題につきましても、いろいろ情勢を踏まえてひとつやっていただきたい、こういうことでございます。  それで私は、漁業経営の問題について触れてみたいと思いますが、ある個人の船主を対象にいたしますと、余りにも経費がかかり過ぎている。これはいろいろ問題があるのではございますけれども、私はここで水産庁の方々にお願いしたいことは、何とか組合の統合の問題とか、それからまた保険制度のあり方とか、そういうことをひとつ検討願いたいと思います。  例えば百トンの船で諸経費が約四千万ぐらいかかる。その主なるものは船員保険二千万。ところが、労働契約を結んでも船員保険だけで事足りない。それでいわゆるノリコーとか民間保険に依存せざるを得ない。こういうような経費がたくさんかかっている。それと同時に、一つの漁船でありながら二つの組合、三つの組合に加入せなければならないような現在の状態。そうすると、この負担金だけでも何百万というような金がかかる、こういうような問題があるのですが、それらの点でひとつ御指導願いたいと思うのですが、どうですか、長官、考えたことはございますか。
  84. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) 今先生が御指摘になりましたいろいろな漁業者にかかっております負担のうちで、私ども水産庁としてまず制度上直接関係があるものといたしましては、漁船保険の保険料がございます。漁船保険の保険料につきましては、できるだけ漁業者の負担を軽減したいということで、原則は収支均等ということでございますが、百トン未満の漁船につきましては国庫負担の制度を設けまして、漁業者の負担軽減を図っておるところでございます。  それからまた、現実の料率の計算につきましても、ここのところ危険率が低下傾向にございますので、ことしの四月、平均して五・四%ぐらいになるかと思いますが、保険料の引き下げを実施したところでございます。  それから、いろいろな業種別漁協の関係でございますが、これは実は私どもも余小にも業種別の組織が多過ぎて、業種別組織が多過ぎれば、ともすればいろいろ漁業者間のかえって内ゲバを助長するというような欠陥もございまして、実は困惑をしておるところなんでございます。ただ、実際問題としては、それぞれ漁法別に錯綜した利害関係がございますから、それぞれの利害に即した組織をつくりたいというふうに漁業者の皆さん方自身がお思いになるということは、これまたちょっと無理からぬ事情があって、なかなか役所としても余り指図めいたことは申し上げにくいのでございますが、気持ちとしては先生のおっしゃるとおりだなというふうに思っているということだけお答えさせていただきたいと思います。
  85. 星長治

    ○星長治君 これは所管外でございますが、一応参考に申しておきたいと思いますが、漁船の検査体制なのですが、これは水産庁が検査するのじゃなく、運輸省が検査する。二年に一遍の定期検査で経費が一千万ずつかかる。これを自動車並みに三年にできないか。これは別な機会に私は運輸省の方を呼んでもらって聞こうと思っておるのでございますが、参考のためにこのことも申し上げたいと思います。  さらに私は、金融の問題を申し上げたいと思うのでございますが、いろいろ政府としても施策をとりまして、現在千四百五十億円という融資をしているわけでございますが、なかなか漁業全体がこういうような状態でございまして、私の推定によりますと、五〇%は相当ひどいのじゃないだろうか。その五〇%のうち三〇%は負債整理でもやったならば何とか出るのじゃないだろうかと思っておるのでございますが、今後の金融対策について長官の御所見などを伺いたいと思います。
  86. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) 漁業金融の問題につきましては、実は星先生自身が一番学識経験者の最たるものでございまして、私ごとき浅学非才が答弁を申し上げるのは大変心苦しいのでございますが、一つは、まず制度として農林漁業金融公庫の資金につきましても漁業近代化資金につきましても、それぞれ借り受け者の実情に応じまして償還条件の緩和ができるような制度がございまして、従来から公庫なり融資機関なり住宅金融機関なりにつきまして、それぞれ償還条件の猶予の規定を適切に運用をして、債務者の漁業者の事情にマッチしたような取り扱いをするように指導をしておるところでございます。  それから、そのほかに私どもが現在設けております制度は漁業経営維持安定資金という制度がございまして、これで固定化負債を抱えて経営が困難になっている漁業者の負債整理に使っていただくということで、五十九年度で四百二十億ほど枠を用意しているところでございます。ただ、そういうことでございますが、先生御指摘のように、にもかかわらずなお漁業者の借金の問題というのは非常に深刻な事態になっておるということは私どもも十分承知をいたしておりまして、例えば一番端的なあらわれが、漁業の分野では信用補完制度が代位弁済の多発によって非常に困った事態になっておりますので、六十年度の課題としてはそれに対するてこ入れに取り組んでいきたいというふうに思っております。  それと、基本的にはそういう金繰りの話もございますが、漁業経営の根本的なあり方の問題にさかのぼって考えてみるべき問題であるというふうに思いますので、一つは漁船の省エネ化の促進、あるいは業界が自主的に行う計画的な生産構造の再編整備、こういうものに対する助成を推進してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  87. 星長治

    ○星長治君 今長官が言うのわかるのです。特に私が指摘したいのは漁業の省力化の問題で、十年前につくった船と今日つくった船を比べますと、同じトン数で約二〇%ぐらい燃油費がかからないわけです。ところがそれをやれないという立場になっているそうです。ところが公庫の内容を見ると大体一千百三十一億円の水産枠があるのですが、どうも農林公庫が余りにも建造資金なんか出さないということになっているのですが、これはどういうふうな状況になってますか。公庫の実態というものは、一千百三十一億円という水産枠というのはあるのですが。
  88. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) 私は、公庫の水産の資金枠が円滑に流れないという実情は確かに先生御指摘のとおりあると思います。そのうちの相当の部分は公庫資金といえども系統のパイプを通して流れていくわけでありますが、途中でパイプが詰まってしまっておるという問題があるというふうに私は思っております。それで、実はそういうことに対する対策といたしまして漁協の転貸資金については、転貸をする漁協に対する漁業者の債務について基金協会が債務保証をするという道を今度新しく開いたわけでございまして、そういうことが先生御指摘のような公庫の漁業関係資金が円滑に流れないということに対する対策として、私どもとしては相当効果が出るだろうというふうに期待をしておるわけです。  ただ、そうは申しましても漁協のパイプというのがいろいろ問題があるということは、そういうびほう的な対策のみをもっては処理し切れないような問題があるというふうに思っておりますので、私どもといたしましては六十年度の課題として、現在漁協の信用事業に対する対策をせっかく検討中でございまして、六十年には何らかの形で対策を打ち出したいというふうに思っておるところでございます。
  89. 星長治

    ○星長治君 今長官から言われましたいろいろな金融問題、何としても漁協を強化していかなければならないと、今漁協の強化の問題を打ち出されたわけでございますが、まだ具体的な構想というのはないのですか、どうですか。
  90. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  私が水産庁長官を拝命いたします二週間か三週間前に金融問題研究会の報告が出て、それで、実はその報告をいただいてから、せっかくそれをどう具体化するかという作業に取り組んでおるわけでございますけれども、何しろ正直に申しまして漁業金融の分野についての私どもの従来の知見というものは決して多いわけではございません。実際に政策として具体化するためにはなおいろいろ研究すべきところがございますので、若干時日をいただかなければならないと思っております。
  91. 星長治

    ○星長治君 いろいろ政策をとっていただいているのですが、なかなか順調にいかない。  特に減船の問題をひとつ取り上げてみたいと思うのですが、マグロが二〇%減船をやった、ところが減船をやってみたけれどもなかなか向上していないというのが現在の状況、さらに今度は北転船の減船というものが打ち出されてきておる。今、北転船がこの問題でいろいろ頭を悩ましておるのでございますが、これが共補償になっておるというような結果でございますので、どうしてもかつて北洋母船式サケ・マスの減船の場合に取り扱ったような方法をとらなければならないと思うのですが、この北転船に対する具体的な施策というものをひとつ御説明願いたいと思います。
  92. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  実は北転船の減船に絡みまして、確かに先生のおっしゃるような御議論をいろいろな機会に承るわけでございますが、この減船に対して政府交付金を支給するというやり方は、これは二百海里時代の幕あけの時期に、ともかく言うなれば青天のへきれきのように二百海里時代に突入をして、それで個々の漁業者の経営者としての知恵と才覚で対応しろと言ってももうそれはとても無理だという、そういう事態の中で出てきたものでございまして、それ以来いろいろ曲折はございましたけれども、相当長い間既に二百海里のレジームのもとで漁業をやってこられて、それでこの現在の時点に立ち至っておるわけでございまして、そういう中で果たして政府交付金というものを出して対処をすべきものであるかどうかということになりますと、減船に対する政府の助成のやり方というのもそれなりのシステムができ上がっておりまして、既存の予算措置もあるわけでございますので、私どもとしては既存の予算措置、既存のシステムを前提にして、その中で減船のお手伝いをしていくということにせざるを得ないというふうに今思っておるところでございます。
  93. 星長治

    ○星長治君 確かに減船すればその業種はよくなるだろうと思うのですが、全体としてはどうしても減船ばかりやったらば地方の問題も考えなければならないと思うのです。  御案内のとおり、東北でも北海道でも魚市場が水揚げ減で困っておるというような現状になっておる。魚市場が水揚げ減で困っておる限りは、いわゆる関連業者も相当困っておることは、これは否めない事実です。それで余りにも減船、減船と言ったならば漁業というものを絶やしていく、せめて七五%ないし八〇%は守らせなければならないし守っていかなければならない、そのためには国も思い切った政策を打ち立ててもらいたい、こういうことでございますが、それについてひとつ。
  94. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  減船に伴って現実に水揚げがどうなるかということでございますが、現在北転船の皆さん方が計画をしておられます減船計画というのは、アメリカの二百海里水域の中で現在北転船の皆さん方に割り当てられておりますクォータを減少した隻数で山分けし直すということでございますから、北転船業界に割り当てられるクォータ自体が減船によって減るわけではない。要するに国内配分の問題として北転船の業界に割り当てられるトン数というのは、別に北転船の隻数が減ったからといって減らすというような、そういう因業なことをトロールやはえ縄の皆さんも考えておるわけではございませんから、そういう意味では北転船の隻数が減りましてもそれは一隻当たりの漁獲高としてはふえるということで、北転船の水揚げは総量としては減らないはずだというふうに思っておるわけです。  ただ、もちろん減船する隻数が港別にどこの港がどう減るかということによっては先生御指摘のような問題が起こりかねないわけでございますが、その点につきましては、これはどうせ業界の中でのコンセンサスを形づくりながら減船対象船が決まっていくものであるというふうに思われますから、その中で当然今先生が提起されておる問題につきましても、関係者の皆様が十分注意を払いながら減船計画をつくっていただけるものというふうに信用申し上げておりますけれども、もしそうばかりとも言えないということがございますれば、私どもとしてもお口添えすることにはやぶさかでないという気持ちでおります。
  95. 星長治

    ○星長治君 終わります。
  96. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私は、捕鯨の問題についてお伺いをいたします。  この捕鯨の問題については既に百一国会会期末、衆議院農林水産委員会においてかなりの論議がなされておるように聞かされておりますし、私も会議録等で読ませていただいておりますので、私からはこの八月十三日から始まりました日米捕鯨協議がどんなふうに終わったのか、この報告の中身からひとつ聞かせていただきたいと思います。
  97. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  八月の十三日から十五日までワシントンで日米間で捕鯨の協議が行われましたが、議題になりましたのは四つ項目がございます。一つは、沿岸のマッコウ捕鯨の問題が一つ、それから第二の議題が南氷洋のミンクの捕鯨の捕獲枠の問題、第三番目が商業捕鯨モラトリアムが発効してから後の捕鯨のあり方について、それから第四番目の問題といたしましてIWCの問題がございます。  それで、第一の問題につきましてどういう議論が行われたかと申しますと、我が国といたしましては、今度の漁期についてマッコウの捕獲枠はゼロということになったわけでございますが、マッコウの捕獲枠がゼロということになってしまうという結果を導いた規定につきましては日本政府は既に異議申し立て済みでございますので、今回のマッコウの捕獲枠ゼロということについては日本政府は拘束されない立場にいるわけであります。ですから、ほっておけばマッコウをとってしまうわけでございます。そこで、そのマッコウがとられた場合にそれについてアメリカ側がどう反応するかということでございます。  それで、実はブエノスアイレス会議の際に、科学委員会は、現在程度のレベルでマッコウの捕獲がある期間続いても、そのもたらす結果というのはさしたる問題ではないということの結論を出しております。したがいまして、現在程度の捕獲頭数で日本がマッコウをとっても、それについてアメリカがとやかく言うべき筋合いのものではないというのが日本側の主張でございます。  アメリカ側としては、よくわかりました、そうしますともちろん言えるようなことではないわけでございますが、日米間のマッコウの問題についての意見の交換をして、さらにその中からできるだけ認識の幅を狭めるということを念頭に置いて、早期に日米の科学者会議を開こうではないかというアイデアが浮上いたしました。日米の科学者会議を開こうということで合意を見ております。  それから、第二の南氷洋のミンクの問題でございますが、これにつきましては、ブエノスアイレス会議で決定されました捕獲枠の大幅な削減について、日本側としてその不合理なゆえんを主張してアメリカ側と応酬をしたということでございまして、これは結論を見るに至りませんで、引き続き協議ということでございます。  それから、第三番目の商業捕鯨モラトリアム発効後の捕鯨のあり方につきましては、先般の捕鯨問題検討会の最終報告につきまして日本側から説明をして、アメリカ側の反応を探るということを主体に議論をしたわけでございますが、これも今の段階ではアメリカは必ずしも明確な反応をいたしておりませんので、引き続き協議ということでございます。  それから、IWCの問題でございますが、これについてはIWCが、アメリカ側の立場から見ますと、商業捕鯨モラトリアム発効後はIWCは閉店休業状態に入るという前提で、そういう状況下での国際捕鯨委員会のあり方ということを念頭に置いて、それを検討するワーキンググループということを考えているわけであります。  日本側といたしましては、モラトリアムの問題につきましては、捕鯨国と非捕鯨国との間で深刻な意見の不一致があるわけでありますから、その双方の言い分が平等に意見交換ができるようなフォーラムで、それにふさわしい国が参加してやるのでなければ、そういうワーキンググループをつくってやるということをやっても意味がないし、日本側が考えているような捕鯨国反捕鯨国双方の平等な偏らない意見交換の場としてのワーキンググループをつくろうという意見を日本側が述べまして、これも引き続き協議ということになっているというところでございます。
  98. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それで、今のまずマッコウのことでございますけれども、十月から漁期が始まるわけですね。これは我が国としては操業に入るわけですか。
  99. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  ライセンスは既に捕鯨業者に発給されております。これはブエノスアイレス会議よりも前でございますけれども、既に発給されております。それから先ほど申し上げましたように、国際捕鯨委員会のマッコウの捕鯨枠ゼロという決定については日本は拘束されないという状態でございますから、現状では、捕鯨業者の皆さんがとりたければ自由におとりになれるという、そういう状態でございます。
  100. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 その際、アメリカの国内法とのかかわりで、報復措置というようなことがあるのでしょうか、ないのでしょうか。その辺の見通しを。
  101. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) アメリカの国内法と申しますと二つございまして、一つはパックウッド・マグナソン修正法という、アメリカの二百海里水域内での漁獲割り当てに絡むものでございます。もう一つはペリー修正法という水産物の輸入に絡むものでございます。それで、このいずれにつきましても実際問題として先生御指摘のような危険は十分存在するわけでございまして、先般の日米協議の目的も、そういう事態を回避するにはどうしたらいいかということを議論するのが主題であったということでございます。
  102. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 これは衆議院の委員会でも質問が出ていたと思いますけれども、それについては日米協議にすべてを託してということでアメリカ側の理解を求めるというような御答弁をたしかなさっておられるはずなのです。そうするとアメリカ側の理解が得られなかったという了解でよろしいのでしょうか。
  103. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) 理解するとは言わなかったということでございます。  それから、常識的に考えれば報復措置と申しますか、今の国内法上の手続が始まってしまうという危険は非常に大きいと思います。
  104. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 そこで、アメリカがそういう強硬な姿勢を持っていることの背景に、やはり国際捕鯨委員会というものをバックにした発言があるというふうに私思うのですけれども、IWCの現在の機構について、その機能性といいますか、それが私ども種々海員組合の方等からの言い分などを伺ってみますと、かなり変則化しているということが言われているわけであります。このIWCの機能について水産庁ではどんなふうに考えておられるのでしょうか。
  105. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  環境保護団体などの影響によりまして非捕鯨国が多数国際捕鯨委員会に加盟するようになりましてから、国際捕鯨委員会運営というものは非常に不正常な形になってきておるというふうに私どもも認識をいたしております。  幾つか例を挙げますと、そもそも商業捕鯨モラトリアムということ自体が鯨種別の資源状況のよしあしというようなことを一切論ぜず、委細構わずモラトリアムを議決してしまうというやり方自体が、それ以前の科学的な根拠に基づいて物事を決めておった時代の国際捕鯨委員会に比べますと大変大きな変質を遂げておるわけであります。それだけではなくて、手続面から見ましても分担金を払わない国がいっぱいあるとか、中身の面、手続面どちらから見ましても大変不正常な状態になっておるというふうに私どもは認識しております。
  106. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから、先ほど話し合いの中身の中に、モラトリアム後のあり方についてということで、この中身も物別れになっているというお話でございます。種々の情報で商業捕鯨の全面禁止が打ち出されて、後にはとにかく日本も商業捕鯨というものを転換して、調査捕鯨というふうな考え方を水産庁もお持ちになったようでございますけれども、この調査捕鯨というような形のあり方についてはアメリカの方に御説明なさったのですか。
  107. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) まず前段でございますが、私どもといたしましては商業捕鯨を断念して調査捕鯨に切りかえるという決断をしたわけではございません。御承知のように、日本は商業捕鯨モラトリアムの決定には異議申し立てをいたしておりまして、現在もその異議申し立てば維持されておるわけであります。  それから、先般アメリカ側と協議をいたしました際には、捕鯨問題検討会が出しました報告、その中では先生御指摘のように商業捕鯨モラトリアムに対して真っ向から挑戦することが難しいという状況の中で、調査という形で捕鯨活動の継続を図るという考え方が示唆されておるわけでございます。捕鯨問題検討会のこういう考え方をアメリカ側に説明をして反応を探ってみたわけでございますけれども、現在のところアメリカは特定の反応をするに至っておらないというのが実情でございます。
  108. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 日米捕鯨協議が終わった後のニューヨークタイムズの社説等では、日本がモラトリアムに挑戦するようなことがあれば強い制裁を、というようなことをうたっている記事があるようでございます。こういう制裁措置というようなことは今後も覚悟の上で、なおかつ息の長い交渉を進めていくというふうにお考えだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  109. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) 制裁措置云々というのは、恐らく先ほど申し上げましたパックウッド・マグナソン修正法とかペリー修正法のことであろうと思いますが、私どもとしてはパックウッド・マグナソン修正法とかペリー修正法という法律がアメリカに存在するということは十分承知の上で異議申し立てを行ったわけであります。
  110. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから、これも国内の関係者による言い分ですけれども、沿岸捕鯨についてはやはり現にノルウェーやアラスカのエスキモーなど特例として認められている人たちもあるわけで、なぜ日本の沿岸捕鯨が六十一年以降認められないのかという言い分があるわけですけれども、こんな点についても御指摘なさったのかどうなのか、お伺いします。
  111. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) その点は、エスキモー類似の生存捕鯨として位置づけてその存続を図るというアイデアは、先ほど申し上げました捕鯨問題検討会の報告の中にも提起されておる考え方でございますから、捕鯨問題検討会の結論を米側に説明をする際、その一部として当然そういうこともアメリカ側に話をしております。
  112. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 さらに、関連産業に携わる方たちの言い分では、IWCの決定に対して日本は全く素直過ぎる、無抵抗であるのではないかというような言い分がありまして、もっと日本の立場を主張してほしいという陳情を受けました。それからブライトンの会議以降全く歯がゆいほど手が打たれていないのではないかということです、三十四回の問題ですけれども。そのような言い分、声があるわけですけれども、こういうことについてどんなお考えをお持ちでしょうか。
  113. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  まず、私どもの感想では、身びいきかもしれませんが、日本の米沢コミッショナーというのは各国コミッショナーを横に並べてみても傑出した練達のコミッショナーでございまして、多数の反捕鯨国の代表の中で孤軍奮闘しているわけでございますが、海員組合やなんかの皆さん方の、米沢コミッショナーの活動について、日本の主張を十分述べておらないという御批判があるということは私は全くあり得ないことだと思っております。今私の承知している限りでは、皆さんは米沢コミッショナーの仕事については高く評価していただいているものと私は信じております。  それから、IWCの決定が行われて後、その決定に対して日本政府がどういう態度をとるかという問題についてでございますが、従順過ぎるか過ぎないかということは、何を尺度にするかによりますが、今一番クリチカルな問題点になっております商業捕鯨モラトリアムについては、ただいま申し上げておりますように異議申し立てをいたしておりますし、それからマッコウをゼロにすることになる規定、すなわち国際捕鯨委員会が捕獲頭数枠を決定しなかったときには禁漁にしてしまうという規定でございます。あの規定についても日本政府は異議申し立てをしておるわけでございますから、ここぞというところではきちんと異議申し立てをしているわけでございまして、日本政府の態度がIWCの決定に従順であり過ぎるという御批判に対しては、私はそうは思わないのです。
  114. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 今後も、先ほど科学委員会ですか、日米科学者会議ですか、というようなお約束を取りつけてきたように伺いましたけれども、今後粘り強い話し合いを進めていくことの中にどういう方途を期待して話し合いを続けていかれるおつもりですか。
  115. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) 私どもが一番考えておりますのは、アメリカの二百海里水域の中で操業をしております我が国の漁船が、パックウッド・マグナソン修正法によりまして捕鯨問題の人質のような状況に置かれているわけであります。その問題をどうやって解きほぐしていくかというのがこの問題の核心であろうというふうに思っているわけです。  それで、この問題につきましては、私どもは漁業の分野での日米の関係というのは互恵的な関係であって、アメリカの二百海里水域内で操業している日本漁船というものは、確かにアメリカの二百海里水域の中で魚をとらしてもらっているといえばとらしてもらっているわけですけれども、同時に、それを通じて日本側からアメリカ側に対してマーケットを提供するとか、技術移転が行われるとか、いろいろな形でアメリカ側にも便益が提供されているわけでございますから、人質だと思って勝手に打ち殺してしまっていいものではないということをアメリカ側によくわからせるということが、本件解決のための基本的な接近法であろうというふうに考えております。
  116. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 大臣お尋ねいたします。  私はこの関係の方たち、船に乗る方が千三百人、それから関連業者の方が五万とも伺っておるわけでございますけれども、生活に直接かかわってくるので大変この成り行きに心配をいたしている事実があるわけです。大臣、この問題解決のために御決意をひとつ。
  117. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 今まで長官からお話ししましたとおり、我が国の捕鯨が何らかの形で存続し得るよう、これは努力をしてまいりました。せんだっても、ちょうどアメリカのブロー、下院の水産関係の小委員長ですか、おいでになりましたときも私はお会いいたしまして、そして日本の捕鯨というものに対する実情、これが及ぼす影響、これらをよく御説明もいたしまして、我が国の捕鯨が続けられるような御協力方もお願いもいたしましたし、今後とも捕鯨が存続し得る方向に向かって努力してまいるつもりでございます。
  118. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 ひとつ大臣よろしくお願いいたします。  それから次に、私は漁港を歩きました。そして、そこでプラスチック船の廃棄処理についての質問を受けました。それで大変問題を感じましていささか質問をさせていただくわけでございます。  これは水産庁の方にまずお伺いするとすれば、このプラスチック船というのは操業に大変メリットがあるというふうに伺うわけですけれども、そのプラスチック船なるものについてちょっと御説明いただきたい。
  119. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) 申しわけありませんが、漁船課長から答弁いたさせます。
  120. 高山和夫

    説明員(高山和夫君) 漁船課長の高山でございます。  お答え申し上げます。  FRP漁船は、強化プラスチックガラスを樹脂で固めてつくりますが、非常に軽くできますし、また型も同じようにできますし、スピードも増すような型ができますし、非常に性能がいいということで、昭和三十年の後半からつくられまして、現在漁船の隻数の大半がFRP船にかわっておるという現状でございます。
  121. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 経費は。
  122. 高山和夫

    説明員(高山和夫君) 経費につきましては、当時木材が非常に国内で払底してきた関係上、それにかわるべき材料で船をつくるといったような過程からつくられてまいりましたが、当初につきましては、やはりそういった新生素材でございますので非常に高価だという時点がございましたが、最近につきましては相当そういった材料そのものの研究も進みまして、それなりに経費も安くでき上がるようになってきております。
  123. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 運輸省の方お見えになっていらっしゃると思いますけれども、小型漁船からモーターボートに至るまでFRPの漁船が四十年代にかけて全盛で生産されたわけですけれども、今廃船になってきているものがかなり出てきておりますようで港で大きな問題になっている。私の伺うところによりますと、通産、運輸省あわせて、この処理方の問題について何かプロジェクトをおつくりになって研究しておられるというようなことを聞きましたけれども、このプラスチック船についての処分法、どんな御見解をお持ちなのか、お伺いしておきたいと思います。
  124. 田中正行

    説明員田中正行君) お答えいたします。  プラスチック船は、普通の鋼船の場合の、解撤と申しますけれども、船をばらす場合と比較して、鋼船ですと船を解撤した後の鉄板が出るということでございますけれども、FRP船の場合は、その廃材が焼却するかもしくは埋め立てるしか適当な方法がないということでございます。  それからもう一つ問題点は、廃船になったFRPを切断する方法、解体する方法というのが若干の問題がございますけれども、小型の船ですとある程度解体処理というものは可能でございます。非常に大きくなってきますと、二十トンを越えると申しますか、三十メーターを越えるようになりますと非常に解体をするのに難しゅうございます。それはFRPの中に骨がございまして、その骨と船体とを切るということが非常に難しい。そういった観点から、例えば爆破して解体処理をするといったような研究を来年度から船舶技術研究所の方で行うことになっております。また、四国の工業技術試験所でも、そういった現在の解体する方法の改良とそれから非常に大きなFRP船の解体の技術の開発ということをやることになっております。
  125. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 全漁連あたりではこれに対してFRPの代替というような問題も考えているやに聞いているのですけれども、そういうことはそちらの方でお考えになっておりませんか。
  126. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) 現在私どもが全漁連から要請を受けておりますのは、そろそろ廃船が出始める六十五年には六千隻ぐらいの廃船が予想される、これからもだんだんふえていくということですが、廃船がふえていくのでそれの処理をどういうシステムでやるかということについては、できるだけ早く漁業者の安心できるような廃船処理のシステムを早期に確立してもらいたいということの要請を受けておるわけでございます。それで私どもとしては、確かにもっともな御要望であるというふうに思いますので、漁業者の立場から見てどういう仕掛けであれば円滑にそういうことが実行できるか、処理体制でございますとか、あるいは費用負担の関係をどうするかとか、それから廃船処理事業をどうやるかとか、そういうことについて検討会を来年やることにしたいと思いまして、これは言い出しっぺですから全漁連にやってもらおうということで、そういう検討のための経費を予算要求しておるところでございます。全漁連の方にもそういうことで予算をとるからおまえの方でやってくれよということは話をしています。
  127. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 つくるときには、捨てるときのことも考えてつくっていただきたいというのが、私ども消費者問題をやっておりました者の一番の言い分なのでございますけれども、捨てるときのことが考えられていなかったのがこのFRPではないかというふうに思います。燃やせば大変有毒な塩素ガスが出るということで、これは焼却ということは恐らく難しいであろうというふうに私どもは考えるわけでございますけれども、ぜひ適切な処理方を御研究いただきまして、港でそういう問題を抱えている人たちに安心をさしていただきたい、このように思います。
  128. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 百一国会では輸入牛肉のことや米のことが中心になりまして、漁業白書等が発表になっておりましたが、これらの問題等については触れる機会もございませんでした。さっきも同僚委員からいろいろお話もございましたが、漁業の問題について二、三若干質問をしたいと思います。  白書の中にもございますが、一千万トンの漁獲高というものを維持しておるということで高らかにうたいとげておるのですが、金額で言いますと約二兆九千億ですか、一千万トン台をずっとこことっておるのです。しかし、きょう同僚委員からもお話がございましたように、そういう中にありましていろいろな変化がここに出ておるということを申し上げなきゃならぬと思うのです。  この一千百万トンの中で三五%を占めるイワシ、この活用等についても先ほどお話もございましたが、若い人たちの郷愁というかそういうことだけじゃなくて、生活様式も変わったことは変わったのですけれども、生で新鮮なものが食べられればということがよく言われるのです。しかし、お店が少ないという現実で、消費者の心の中にあってもなかなか買い得ない。現在のようなアパート生活ですと、昔のようにイワシ、サバを焼いて食べるということもなかなかままならぬ現状もありますけれども、生で焼いて食べるというのはもうそういう時代ではなくなったのか、そういうものに対応する施策というものについても日本型食生活なんということでいろいろ言われておりますけれども、こういう問題についても以前にも提起をしたことがございます。この三五%とれるイワシの活用というものをもっと考えなきゃならないのではないかと、思うのですが、まず最初に、その辺のことについて水産庁としてのお考えを聞いておきたいと思うのです。
  129. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  イワシ等の多獲性大衆魚の食用利用の促進というのは私どもかねてから重要な政策課題であるというふうに思っておりますが、ただ先生御指摘のございましたように、なかなか近ごろ焼いてなんとかというわけにもいきません。要するに、生鮮消費にはおのずと限界があるというふうに思われます。それで食用利用を促進するためにはどうしても水産加工を促進して、消費者のニーズに合った形で供給するということが大事なのじゃないかというふうに思いまして、食用利用を促進するための設備資金及び運転資金について水産加工施設資金、水産加工経営改善強化資金、これらの資金を融通する、あるいは主要水揚げ地における流通加工施設の総合的な整備を行う。それから多獲性魚を利用した加工食品の展示即売会等の開催に対して施策を講ずる、あるいは多獲性魚を含めた水産物の消費の拡大を図るためにテレビの放映とか、料理コンクールとか、そういう消費者に対する理解を深めるための施策、それから一昨年度からやっておるのでございますが、水産物に消費者の関心の高い鮮度を表示して流通にのせるパイロット事業というようなものもやっております。  本年度から新しく手がけております事業といたしましては、外食向けの水産物の潜在的な需要を開発するために、水産加工業者等による原料魚の共同購入の新しい供給システムづくり、あるいは魚食の普及啓発を図るために水産物の栄養特性とかお料理の仕方とか、そういうことを解説した刊行物、これは仮称「ザ・サカナ」ということにしておりますが、それを出すとか、いろいろなことを今年度も新しい施策として打ち出しているところでございます。
  130. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 最近、日本型食生活ということで食生活のあり方等についていろいろ農林省も研究をしたり、またPRにお努めになっていらっしゃるようですが、確かに国民のニーズに合わせた食品の開発ということと、やはり本来好ましい食生活のあり方への誘導ということと両方あるのだろうと思うのです。今日まで水産庁中心で魚のことですから、いろいろな問題については検討はしておるようですし、またそれなりの成果も上がっておるのかもしれませんが、現在国民の動物性たんぱく質を供給する一つの大きな資源になっております漁業というものについて最近非常に関心も払われておりますし、そういう食生活の大きな変化に対応します新しい時代の嗜好というものもあわせて考えていかなきゃならないのだろうと思います。  そういう食生活云々のことについては後日またいろいろ機会があったときにお話を申し上げたいと思うのですが、私はこのイワシの三百六十万トンというこういう多獲性大衆魚というのが今後もこういう形でとり続けていくのかどうかということを水産庁としてはどうお考えになっていらっしゃるのか。サバなんかも昔は相当とれたものですが、最近は、サバはちょっとことしはとれませんでした。これは五十七年の白書をもとにしてのあれですけれども、この多獲性大衆魚と言われるものもやがで減少傾向に来る。そういうことも考え合わせなきゃならない。そういう資源状況等についてはどのように分析していらっしゃるのか、ちょっとお尋ねをしておきたいと思います。
  131. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  先生御承知のように、元来浮き魚類の資源というのはなかなか予測しにくいものでございまして、サバについて今先生が御指摘なさいましたけれども、まさにそういう浮き魚類についての資源の動向がなかなか予測しがたいということの一例であろうと思います。ですから、今これから申し上げられますことも、その点は多少割り引いてお聞きいただきたいのでございますが、マイワシの資源は四十七年ごろから急激にふえてまいりまして、太平洋系群を初めとして各系群とも高い水準を維持しております。これは近年の海洋環境条件がマイワシの発生及びその後の生育にとって良好であり、このため、産卵海域の拡大等によって総産卵量が増加し、また、生残率が高くなったということによるものと考えられまして、そういう意味では近年産卵量に若干減少傾向が見えておりまして、その点不安がないわけではございません。そういう意味で今後の動向には注意をしていかなければならないというふうに認識をいたしております。
  132. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 日本の国の漁獲高というのは金額にして三兆円。一方では輸入が一兆円ということが言われておるわけです。この輸入が伸びておるということで、今この漁業を取り巻く諸情勢というのは非常に厳しい。また、漁業白書の中にもその点についてはいろいろ述べられておりますけれども、一つは水産物の消費の伸び悩み、または国際漁業規制の強化と漁場条件の変化、また二度にわたる石油危機、漁業経営の悪化ということが挙げられております。  最近は、動物性たんぱく質ということになりますと畜産と比較されるわけでありますが、水産物も決して安くない。しかし、漁業経営者もそれなりの努力をしておりますけれども、各経営もまた非常に四苦八苦しておる。こういう現状が白書の中にも出ておりますが、こういう問題の中で、今後食生活の変化の中で日本人の動物性たんぱく質というのは畜産の方に大きく移行するのか、また、動物性たんぱく質としての水産物というこの位置というのは現在からまた大きく変化を伴うものと見ているのか、そこら辺はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  133. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) 最近の傾向を見てみますと、動物性たんぱく質の中での水産物の割合というのはほぼ横ばいに推移しているという状況でございまして、私どもとしては、うんと先のことになれば別でございますが、一応予見し得る将来において、動物性たんぱく質の中での水産物のシェアがそう大きく変わることはあるまいという判断をいたしております。
  134. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 私どもが漁業関係者の方々にお会いいたしますと、やはり燃油の高いことには、もう本当にどの方もこれは生産費の中に占める支出が非常に高いということが言われております。そういうことから漁業者の方々は、その中の燃費に対する国の施策が必要だということを声を大にして叫んでおるわけです。いろいろな情勢の中で非常に難しいことだろうと思いますけれども、今日までもいろいろ叫ばれてきたことでもあり、また、農林水産省としてもいろいろ検討してきたことだと思いますが、さらにまた円安で高くなりつつあるということですから、ますます、これは漁業者の努力とか云々じゃなくて、交換レート、そういうものでどんどん、使用する漁船に燃費が上がるということで影響を及ぼすという非常に大きな問題だろうと思うのです。  それともう一つは、先ほど申し上げました国際漁業規制の強化等による漁場条件の変化、これもきょういろいろ同僚委員からもお話がございましたが、この二つのことが今後漁業政策というものを推進する上において重要な問題だろうと思うのです。  最近、船についても省エネ型とか、合理化とか、いろいろなことを言われております。いろいろ新しい型の船も考えられておりますけれども、なかなか燃費を節約できるなどということは、現在の漁船の中でそう大きな節約、合理化、省エネということはできないのではないか。そうしますと、経営いたします漁業者にとりましては、燃油が高いということは非常に経営悪化の一つの大きな要因として今後も尾を引く、こういう問題だろうと思うのです。この点については、大臣も選挙区にありますのでよく御存じのことだと思うのですが、どのようにお考えになっていらっしゃいますか、お聞きしておきたいと思います。
  135. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) 一つは、燃油の高騰によります漁業者の受けますインパクトを軽減するために燃油資金を融資して、利子補給をしておるわけでございますが、今年度もそれで三百億の融資枠を用意しているところでございます。  ただ、こういう対策はエネルギー価格の高騰に対する根本的な対策ではないわけでありまして、根本的な対策としては、やはり漁船の省エネルギー化ということを推進していく以外に道はないわけであります。私どもがやっておりますのは、一つは公庫融資の中で省エネルギー型の漁船の導入に対しては六・五%という有利な金利で省エネルギー型漁船の導入を助成をいたしておりますし、それから船体重量の軽減とか肥瘠度の適正化等を目標にした技術開発普及のために漁業技術再開発事業というものを実施しているところでございます。  こういうことで省エネ、省コスト対策に努めているところでございますが、先ほど先生の省エネ型船型といってもそんなに効果があるものが出てくるはずがないというお話でございますけれども、最近例えばマグロ関係の漁業者から聞きますと、省エネルギー型のマグロ漁船というものはこれは大変威力があるようでございまして、従来の古い船に比べると格段の差があるという話を聞いております。いずれにせよ今後とも省エネルギー漁船の普及にさらに一層努力をしていきたいと思います。  それともう一つは、今先生御指摘の問題は、漁業経営対策一般の問題としてもこれを受けとめることができるような問題を提起しておられるというふうに思います。その問題につきましては、やはり業界の自主的な発意によりましてそれぞれ当該漁業種類の構造改善に取り組んでいただくというのが基本であろうかというふうに思っておりまして、私どももそれに対する助成措置は用意をしておるところでございます。
  136. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それから沿岸の方とか沖合の方、特にことしはちょっと親潮が強かったとか沿岸とか沖合ではいろいろ変化があったようです。それから遠洋の方なんかは最近は、マグロ船なんかでも非常に資源がひところから見ますと減少して、操業日数がどうしても多くなるということがよく言われます。半年、一年、一年以上というような長期にわたるものもあるようでありますが、確かにそういう省エネタイプでそれなりの効果が上がりつつあるというのは私どももいろいろなデータ等も見ておりますけれども、一方ではそういう漁獲高が余りとれないために操業日数が長くなるという面からいいますと、これは大変な燃油の高騰というものが大きな経営上の圧迫になる、どうしても魚が高くなるというようなことがいろいろ取りざたされておりまして、関係者の方々は非常に心を痛めておる。  だから、これは魚種にもよるのでしょうけれども、海域それぞれにおきまして七つの海を日本の漁船がとりまくっておりました時代から最近は大きくさま変わりしたのではないか、こういう話を聞くたびに痛感をするのです。こういう資源調査ということについては水産庁でもいろいろなさっていらっしゃるのだろうと思いますけれども、先ほどマイワシ等沿岸問題についてのお話がありましたが、総体的にこういう資源なんかについてはどのように分析をし、また認識をしていらっしゃるのか、そこらあたりをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  137. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) 今先生が提起しておられます問題は、私がかかわっておりまして感じますのは、資源論プロパーの問題であるよりも、むしろ資源と漁獲努力量との関係におきまして、資源に比べて漁獲努力量が過大であるという問題に直面をしている漁業種類が相当あるという、そういう御認識をお述べになっておるようにお聞きしたわけであります。そういう意味では私どもも全く同感でございまして、そういうものは現に相当あるというふうに思っております。  ただ、その点につきましては、あなたのところの漁業種類はかくかくしかじかの資源に比べてこれだけ漁獲努力量が過大であるから何割減船したらよろしかろうということを官僚主導型で決めるということに、どうも事柄の性質としてなかなかなじみにくいということがございまして、業界の皆さん方の発意によってコンセンサスで進めるというやり方をやっていただいておるわけであります。現にそういう御相談が進んでいるものとしては、イカ釣りでございますとか、あるいは先ほど話題になりました北転船であるとか、そういうものがございます。私どもとしてはそういうことでお話がまとまればそれについての共補償資金の融資でございますとか、あるいはその共補償資金の金利負担を軽減するための措置とか、あるいはスクラップにする船に対する助成措置とか、そういう計画的な減船をお手伝いする制度は用意をしておりますので、そういう制度を御利用いただきまして過大な漁獲量を削減するということを業界のコンセンサスで進めていただくというのが望ましいことであるというふうに思っておる次第でございます。
  138. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 さらに、先ほど申し上げた三点目の国際漁業規制の強化等漁場条件、これが五十七年の十二月、国連の海洋法会議の最終議定書署名会議が開催されて、去年の十二月末、署各国が百三十二になったということから、日本が米国、ソ連はもちろんのこと、諸外国におきます二百海里水域内での漁獲というものはだんだんとれなくなる、こういう対応が迫られてきたわけであります。特にアメリカとソ連との問題について、これは日本が今日まで先人が切り開いた漁場として、好漁場として日本経済に及ぼす大きな影響力を持っておったわけでありますが、予測し得たこととはいいながら、本年ソ連から日ソ漁業協力協定の失効ということが持ち上がってまいりました。  今その交渉の三度目の交渉中ということですが、一回、二回、それぞれいろいろな議題があって協議をしてきたことは私ども新聞等で話は聞いておるのであります。現在三回目の会談が開かれて、新聞等に見ますところ、また先ほどの長官のお話を聞く範囲内では、友好的な空気の中での話し合いだということでありますが、この三回目の話の中で、交渉中でありますから具体的な問題についてはどこまで述べられるのかわかりませんけれども、現在一番問題になっている、両国間で早急に議題として詰めなければならない問題としてどういう問題が今あるのかということについてお伺いしておきたいと思います。
  139. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) 第三回の協議は、二百海里の外側で日本が引き続き沖取りを行うということを前提にした議論が行われておるという意味では、第二回までの議論に比べて大変な進歩をしているわけであります。  それで、第三回の協議で何が問題であったかといいますと、まさに今申し上げました二百海里の外側で行われる日本側の沖取りというものを一体法的にいかなるものとして位置づけるかという問題であります。これにつきましては国連海洋法条約六十六条が規矩準縄になるべきものでございますが、それにつきまして、母川国たるソ連側から見ての主張、沖取り国である日本側から見ての主張というのはそれぞれ対立をしておるわけでございまして、そこの処理の仕方について、途中で一服入れて再協議をすることが能率的に協議を進めるゆえんであろうということで一時中断をしておるというのが現状でございます。
  140. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 国連海洋法条約の六十六条の第三項の(a)とか(b)とかこのただし書き、こういうことがありますから、そういう主張をし、最初はなかなかそういう日本側の主張というものは認められなくて原則論に終始したのだろうと思いますが、今長官からお話がございましたように、沖取りを前提としての話し合いということで、これは法的にどういうふうに位置づけするかということなのだということですが、これは日本の今日までの長い歴史の中でそういう実績を積み重ねてまいりました日ソ北洋のサケ・マスということでありますから、漁業者もこのたびのことについては非常に関心を持っておりますし、また今回の話し合い、協定が、二百海里ということから、そしてまた国連海洋法条約によりまするこのたびの取り決め、ここで定められたことというのは、今後に大きな変化を予測し得るものはないのだろうと思うのです。  それだけに、今回ここでこの協定が結ばれる条文というのは、実は日本の北洋サケ・マスについての非常に命運を分ける重要な意味を持つ、それだけに、沖取りを前提としてとは言いながら、法的な、どういうふうに明文化するのかということや、今後にわだかまりのないような形でこれを処理するということは、これまた非常に難しいことではないか、私どもは新聞や何かを見てそんなような感じがするのです。今後交渉ということは、非常に明るさがあったという一面、まだ詰めなきゃならない大きないろいろな問題があるのだろうと思います。  そこで、大臣が招聘で、閣僚としては五年ぶりですか、おいでになるという、ちょうど時期的に大事なことが協議されているときでありますから、関係者も何らかの、今後に対して禍根を残さない形での決着なり、また話し合いが明文化し、話し合いがっくことを期待をしておるわけです。  そういう大臣が行くということとは別に、この交渉というものがそれまでに話し合いがつけばいいのでしょうが、あと半月、十数日の間に、予測はでき得ないのかもしれません。大臣がこういうときにたまたま、今までにも要請があったのに国会で行けなかった、それで日にちをとることになったときがこのときになったということで、大臣が行ってそれを決めるということではないのだろうと思うのですけれども、チャンスとしては非常に大事なときにいらっしゃる。それから、大韓航空機の問題でちょうど一年経過をして、どちらかというと日本と冷え切った状況の中にあって、閣僚として五年ぶりにいらっしゃるという意義は非常に大きいのだと思うのです。  こういうこと等を考え合わせますと、大臣のその役割というのは非常に大きいと私どもは思うのでありますが、大臣がこの場に臨みまして、大臣の訪ソなさいます立場でのお考え、そしてまた、先人が築きました北洋のサケ・マスの問題が一つの大きな転換点に立って今漁業協力協定の問題が取りざたされておる。そういう主管いたします大臣としてソ連にいらっしゃるということで、どういうお考えでいらっしゃるのか、また、その取り組みはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、その辺の御心境といいますか、お考え、決意とか、そういうものを含めてお聞きしたいと思います。
  141. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 私あてにカメンツェフ漁業大臣から招待がございまして、今一応九月の十六日から一週間程度訪ソをするということでスケジュール等について調整しているところでございます。  今回の日ソ漁業協力協定につきましては、ソ連側のいわゆる母川国としての厳しい主張、そしてまた日本側からはサケ・マス漁業の安定継続の主張、これに隔たりがあるということでございます。しかしいずれにいたしましても、我が国北洋のサケ・マス漁業というものは、漁業従事者だけではございませんで、流通加工業者など関係者が数多く関与しておりますし、そしてまた、地域経済を支える重要な柱となっているということから、できるだけ早くソ連側との交渉を再開して本漁業協定継続が図られるよう努めてまいりたいと考えておるところでございます。  今回の私の訪ソに当たりましては、日ソ漁業協力関係の一層の安定化を図るという観点から、日ソ間の漁業分野に関する諸懸案についてカメンツェフ大臣と幅広く、忌憚のない意見交換を行ってまいりたいというぐあいに考えております。
  142. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 大臣がいらっしゃるわけですから我々が大きな期待をするのは当然なことだと思いますし、また、今まで閉ざされておりましたソ連との話し合いというものも、大臣が行くことによってまた一つの大きな展開があるようにということでは、私どもはひとしく大きな期待をするところであります。  しかし、今日まで過去にいろいろな取り決めがあったり、日ソ間にはいろいろな話し合いがなされてきたのですけれども、漁業協力促進とか、また民間漁業協力とか国際漁業機関における協力とかいろいろな問題が今日まであって、また、サケ・マス流し網漁業の問題のときなんかは、日ソ科学者会議で資源の問題についていろいろ議論をしようということですが、これがまだ開催をされていないなどということもございます。  それから、サケ・マス流し網漁業については、最近は経営が非常に大変だということで、漁場転換とか、経営の協業化資金制度とか、漁船のリース制度の創設とか、こういうこと等についても提起をして、非常に漁業経営というものの悪化に対しましていろいろな要望が寄せられております。先ほど申し上げましたように、日ソ間についてのこの協定はもちろんのこととして、今日まで共同事業または民間漁業協力ということでも数多くソ連との間の問題点があるのですが、そういう問題等についても幅広くお話し合いをしていらっしゃるというお考えなのですか、大臣どうでしょう。幅広くという話ですけれども、どういうことを念頭に置いていらっしゃるのかということもあわせてちょっと。
  143. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) 日ソ漁業協力協定の改定問題は、私どもとしてはできるだけ早く決着をつけたいというふうに思っておりますが、もし大臣訪ソのときにはだ決着がついていなければ、意見交換をするべき事項の最重要問題の一つだということは当然であろうというふうに思います。そのほかに当然予想される問題としては、日ソ双方の二百海里内でのそれぞれの漁船の操業に関するいわゆる日ソ、ソ日協定の長期化の問題とか、あるいは先ほど先生が言及なさいました共同事業の問題などもその項目の一つとして入るものと思っております。  私どもとしては、日ソ間で双方の関心のある問題につきましては、何しろ両国の大臣同士が意見交換をしていただくという機会はめったにないことでございますので、隔意のない意見交換が行われるようにという心づもりで準備をしておるところでございます。
  144. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 日ソ漁業共同事業は民間レベルでやっているということで、政府の方の関心が非常に薄いというか、力を入れていないのではないかということも言われておりますけれども、こういう民間レベルの問題についてもやはり幅広くお話し合いの対象としていらっしゃるのかどうか。  それから、ニシン漁が全面禁漁になってるのですけれども、この問題なんかも、今までいろいろな経緯がこれありなのですけれども、どのようにお考えになっていらっしゃるのか、ひとつお伺いしておきます。
  145. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  民間レベルでの協力につきましても適宜話題になるものと思っておりますが、殊に先生がただいま言及なさいました共同事業の問題につきましては、これは当然話題になるものというふうに思っております。  ただ、私どもといたしましては、共同事業につきまして一つ考えておりますのは、ソ連側としてはこれはどうもソ連の方の役所は本件に余り直接日本政府と議論をすることを好まないという傾向がございますのと、それから日ソ共同事業というのは、先生御承知のように、相当膨大な協力金を支払わされてそろばんがほとんど合わないような状態になっておりますので、そういう状況にふさわしいような議論の仕方というのは一工夫なければならないところではないかというふうに思っておるところでございます。  それから、ニシンの問題につきましては、これは何と申しますか、日ソ、ソ日の交渉がどうせこの暮れにございますから、むしろそういう場で議論するにふさわしい問題ということになるのではないかという感じがいたしますけれども、ただ私ども率直にその交渉の任に当たる者として感想を述べさせていただきますと、日ソとソ日というのは一種の利害のバランス関係の上に成り立っておるわけでございまして、ニシンの漁獲というような大変メリットの大きいことを要求しようといたしますと、当然それでは見返りがソ日でどうなのかという、そういう問題を考えなければなりませんので、私どもとしてはどうもそっちの側面を気にするとなかなか態度は慎重にならざるを得ないという感想を今のところ抱いております。
  146. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 時間もありませんから余り詳しくお話しできないのですが、今大きな問題になっています北転船の減船問題です。これは確かに二百海里問題が起きて、いろいろな国際間の状況の中で減船を強いられたときとは現在は違うのかもしれません。しかし、北転船が減船に追いやられた要因というものも決して北転船の経営者のみの問題ではございませんで、米国の入漁料の大幅の値上げとか、またアメリカの漁獲量の削減とか、オブザーバー一〇〇%の乗船とか、いろいろなこういう問題がありましたね、外交上の問題も伴っているわけですけれども。  こういうことからいいますと、自主減船ということですが、やはりこれは何らかの国の処置も必要であろうかと思うのです。しかし、当時とは違うということならば、これは最大限この減船のための処置というのはしなきゃならないだろう。詳しい数字やなんかのことについてはもうよく御存じのとおりですから一々は申し上げませんが、この四十三そうの減船ということは大変なことです。そこに追いやられたのはやはり経営が成り立たないということであって、どの経営者も大変だということであります。  また、加工等に携わる方々の地域経済に及ぼす影響ということを考えますと、今巷間言われておりますような処置だけでこれは本当に対処できるのかどうか。北転船の関係の業界からいろいろな要望が出されていることは、水産庁でも要望についていろいろ御検討なさっていらっしゃるのだろうと思いますが、やはり業界の経営の建て直しのためにということからして、約半数に近い減船をするということは、よほどのことでなければここまでのことは思い切ってはできないだろうと思うのです。それに対する処置として政府が今考えている金融面についても一つ一つ見ますと、ちょっとこれは残った人もやめた人も大変な状況に陥るのじゃないかという感じがするのです。  それから、働いている方々の離職者問題も、どちらかというと船に乗っている人はやはり船に乗りたいという人がどうも多いのです。陸に上がるともうかっぱみたいなもので、ほかの職業にはなかなかつき得ないということを言うのです。この二百海里の問題のときも離職者の対策としていろいろ施策をしましたが、なかなかつくった制度に乗らない一面もあったように私どもは見ておるのです。これだけの四十三そうからにわたります、北転船の自主減船とは言いながら、これに対しては現在の財政事情ということを考えると、大臣余り大きなことは言えないのかもしれませんけれども、これはこの時点で最大限政府としても、農林水産省としても取り組むべき問題である。  どんどんこれが大きく拡大するときはいいのですが、こういう縮小再生産といいますか、強いられた問題に対しての対策というのは、やはりその経営者及び地域経済というものに及ぼす非常に大きな問題をはらむ。特に東北、北海道といいますか、景気回復ということで経企庁も笛や太鼓で一生懸命宣伝しておるのですけれども、そういう中でも比較的落ち込みの大きいところに影響が出てくるということですから、この点についてはやはり農林水産省としましても十分な配慮をしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  147. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  私どもといたしましても北転業界の皆さんが現に直面しておられる窮状については十分理解をしておるつもりでございます。ただ、私どもがともすれば北転業界に対して冷淡なのではないかというふうに疑われがちでございますが、それは、先ほど来申し上げておりますように、二百海里時代の幕明けのときにやったようなやり方を今の段階で採用するわけにはまいらないということを申し上げておるので、そのためにえてしてどうも北転業界に冷たいのではないかというふうに誤解されがちでございます。私どもとしてはそれなりの減船対策を用意して、その制度の枠組みの中ではできるだけのお手伝いはさしていただきたいというふうに思っておるつもりでございまして、ただいま先生から御指摘がございました離職者の問題につきましても、漁臨法等に基づく離職者対策は十分手当てをしていくつもりでございますので、その点はただいまの先生の御指摘を十分体して事に当たっていくつもりでございます。
  148. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 もう時間もわずかになりましたからちょっと……。  これは春に申し上げたのですが、ことしは非常に春先は寒くて、根室、釧路を初め、襟裳それから利尻に流氷が参りまして、昆布を主産地としております地域にとりまして大変な被害を受けたということで、当局からもいろいろな調査をしていただいたり、また処置をしていただいたわけであります。その後のいろいろな状況を聞きますと、やはり来年はいい昆布ができるのだなどということを言う人がいるのです、いそを洗ったから。しかしことしは実際は大変でございまして、また水温が低かったり高かったり、いろいろな状況がございまして、いそを洗われたわけですから、融資について特段の御配慮をということでお話ししましたが、道庁なんかのお話を聞きますと、大体総額二十三億ぐらい融資の申し込みがあったのだけれども、融資の実績は八億ということで非常に大変な状況で、ぜひお願いしたいという方々の四分の一ぐらいしか融資が受けられなかった。  それからもう一つは、融資枠が百五十万という限度額になっておりまして、これは制定当時はそういういろいろなことがあって決められたのでしょうけれども、現在百五十万という限度額というのはもうちょっと時代に合わないのじゃないか。やはり限度額の枠の拡大ということと、また今回のこういう地域経済に及ぼす、特に漁業の地域というのは非常に地域的に地域経済の弱いところでありますから、漁業が中心というこういうところ等についてはそれなりの配慮が必要ではないか。利尻なんかのことしの目標と見込み額なんということをずっと調べてあるのですけれども、大体各漁協で悪いところは目標額の二%ぐらいしかとれていない、いいところでも四〇%程度ということで、融資の申し込み状況というのは非常に多いのです。こういう実態をもう少しお調べになっていただいて、来年はよくとれるのかどうか、来年のことはわかりませんけれども、ことしの被害があった事実は事実でありますから、そういう実態に即した対応というものをお考えいただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  149. 佐野宏哉

    説明員(佐野宏哉君) お答えいたします。  まず、沿岸漁業経営安定資金でございますが、八億五千万という先生が今引用なさいました数字は、現在の時点までで貸し付けの実行された金額が八億五千万という話でございまして、これだけしか貸さないというつもりではございません。まだ資金枠が用意をしてございまして、貸し付けの手続が済んで融資が実行されたものが八億五千万ということでございます。  それから、公庫の沿岸漁業経営安定資金のほかに、道単でもいろいろな資金の手当てを用意してくださっておるというふうに伺っております。  それから、ちょっと補足して御説明をいたしますが、実は金融以外にもいろいろな対策があるわけでございまして、一つは漁獲共済の共済金の支払いでございますが、これは一応水産物の販売が完了した段階を待ちまして支払い額が確定するということになりますが、これにつきましても、今回の流氷の被害につきましては、道庁や漁済連に対しまして損害査定の早期実施によって被害の状況に応じて仮渡しを含め早期支払いを行うように指導をしておりますし、それから施設の災害につきましては、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律に基づきまして復旧事業が四漁協、五十三施設で現に行われているところでございまして、私どもといたしましては精いっぱい、各般の救済対策を講じているところでございます。
  150. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 過日、水産工学研究所へちょっと行ったのですけれども、これはなかなか、五十四年にできて、こういう先進科学技術を水産業の中へ積極的に導入しようということで、非常に画期的なことだろうと思うのです。目的はしっかりしておるのですけれども、施設またはそこの中にいらっしゃる研究者ともどもいろいろ悩みながら少人数の中でやっているようです。確かに水産業といえども、今後を考えますと、こういう先進的な科学技術、革新的な技術というものが非常に大事なことだろうと思いますし、そういう積み重ねというのは重要な意味を持つということで私は非常に感銘を受けました。そういう大事なところで働いている、これから何年、何十年先には非常な大きな使命、大きな役割りを果たすのだろうと思うのですが、そこで働いている研究者の方々、非常に少ない予算の中で、住環境の余り設備されていない中での研究ということで、いろいろ大事なことでありますから今後もぜひこれは充実強化といいますか、先々考えますと非常に重要な意味を持つということで本当に感銘を受けてきたのです。今後二十一世紀を目指すといいますか、新しい漁業のあり方としてぜひこれらの研究施設等に対しての御配慮もお願いしたい。具体的なことについてはちょっと申し上げる時間もございませんので……。  農業のことについてもいろいろお尋ねするということで来ていただいておりますので、一言だけ申し上げたいと思いますが、ことしは豊作だ、豊作だといって、笛や太鼓で、北海道は指数が一一四ということで、全国平均一〇三だということですが、地域に参りますとそう受け取れないいろいろな問題がございます。また急激な暑さだけが七月、八月にあったということで、そのためにいろいろな問題が起きているようです。政府の言う作況指数というものも、今後どういうふうに推移するのか非常に難しいところです。それで干ばつが心配されておりまして、山形とか宮城とかそういうところでも対策室を設けてその処置を講じているようです。  今までも干ばつ等につきましては政府でもいろいろな処置を講じて、五十三年ですか、干ばつのありましたときに干ばつの対策の処置をしたようでありますが、この干ばつ応急対策事業、今回もやはりいち早く県によりましては対策室を設けて揚水ポンプを用意するとか、それからいろいろな施設、または干ばつ問題について取り組みをしたのでありますが、ことしも全国的には相当な面積になるのだろうと思います。やはり政府としましてもこのたびの干ばつ応急対策事業の助成問題については五十三年と同じような助成策が講じられなきゃならないだろうと思うのですけど、これはどのように現在把握していらっしゃって、またお考えになっていらっしゃるのか、この一点だけお聞きしておきます。
  151. 吉國隆

    説明員吉國隆君) 干害応急対策事業を国の助成で実施できないかというお尋ねでございます。過去、先生からもお話しのございましたように、干害が全国的に及んだ場合、かつ事業費が非常に多額に及ぶという場合に国が臨時特例的な措置として予備費で助成を行ったという年がございます。ことしにつきましては、なお今後の推移をよく見守っていく必要があるというふうに考えております。  現在までの状況としましては、かなり局地的な被害という特徴であろうというふうに考えておりまして、一部の県からそういった御要請があったわけでございますけれども、関係事業費の金額といたしましては、一番大きかった山形とか福島のお話で見ましても一億円余りというような規模になっておる次第でございます。そういった点からいたしますと、国の予備費による助成ということについては現在の状況では非常に難しいのではないかというふうに考えておりますが、関係県とも今後よく御相談を申し上げていきたいというふうに考えております。
  152. 下田京子

    ○下田京子君 最初に韓国米の輸入とのかかわりでお尋ねしたいのです。  韓国米は来るなという抗議が相次いでおりますが、きょう九月四日も横浜港に約四千百トンが荷揚げされております。しかも、この韓国米が一体どんなお米なのか、いろいろな意味で不安が抱かれているところなのです。厚生省は、第一船、八月九日神戸港に入港の四千八百トンと第二船の八月十日名古屋港入港の五千二百トン、この分の検査結果については公表されております。検査項目は二十一項目で、幸いといいますか、カドミウム、臭化メチル等を含めましてすべて検出されなかったということになっております。  ところで、食糧庁は事前チェックをなさっているわけですね。私は厚生省と同じような形で公表してしかるべきではなかろうか。しかも、聞くところによりますと、BHCなどに一部残留等が認められたというようなお話も伺っているのです。ですから、公表いかがなものでございましょうか。
  153. 石川弘

    説明員(石川弘君) サンプルで入手いたしておるものにつきましてはいずれも問題がないということで向こうに伝えました上で、さらに入港いたしました際に厚生省当局で検査をいたしまして、何らそういうものはないということを発表しているわけでございますので、私どもがサンプルにつきましてこのサンプルは大丈夫といったものが入港してきているわけでございますから、公表という手段をとりませんでも、私どもがそういうロットについて入れるということを認めておりますものは、サンプルについて何ら問題はないわけでございます。
  154. 下田京子

    ○下田京子君 何ら問題がないようなお話なのですけれども、農蚕園芸局長お尋ねしたいのですが、東京港に荷揚げされた五千五百トンを初め、その後宇野港とか大阪港などに荷揚げされてきましたそのほとんどにコクゾウムシなどが発見されたというふうに聞いておりますけれども、その実態について明らかにしていただきたいと思います。一つは虫が発見された港、それからどんな虫であったのか。以上です。
  155. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) 植物防疫法によります検査の方でございますが、第一便から九月一日まで十一船入港しておりまして、そのうち五船は合格、六船分が害虫付着により不合格ということになっております。  この害虫が発見されました港でございますが、申し上げますと、東京、宇野、大阪、鹿児島、横須賀、舞鶴、以上の六港でございまして、発見された害虫でございますが、コクゾウが多うございまして、そのほかにココクゾウそれからノコギリヒラタムシ、ノシメマダラメイガ、カクムネヒラタムシ、以上の害虫が発見されております。
  156. 下田京子

    ○下田京子君 食糧庁長官、今報告された事実についてどのような認識をお持ちなのか。当然御存じだと思うのです。特に現地の保管状況がどうだったかということは食糧庁が一番よく御存じでしょう。そしてまた、事前チェックもしているわけです。たまたま一港からだけ発見されたというのじゃなくて、総量で言うと、既に荷揚げされた数量五万五千二百三十五トンに対しまして虫が発見されたその数量三万二百三十五トンですから約五五%、こういうことになるわけです。この点どういうふうにお考えなのか、大変やはり現地の保管状況が気になりますので。
  157. 石川弘

    説明員(石川弘君) これは先ほど申しましたように、衛生上の問題として各種の要素を調べますと同時に、やはりこういう虫がいる、これは米に限りませんで、他の国から入れますいろいろな穀物等についてもこういう虫がいるわけでございます。したがいまして、それは植防の検査で厳重にチェックをしていただいているわけでございます。こういう虫の発生につきましては、私どもはある程度そういうことがあり得るということを想定いたしておりますので、他の穀物についてもやりますように、必要なものは薫蒸その他の形で穀物を薫蒸してそういう害がないようにする。これについては米ばかりではございませんで、他の穀物類についても通常あり得ることでございます。
  158. 下田京子

    ○下田京子君 農蚕園芸局長にお聞きしたいのですが、植物防疫上から見まして、今食糧庁長官からも、他の穀物にもたまたま虫が出るというのはあり得るから、だから植防上ちゃんとやっているのだと。それはわかるのですけれども、大体保管状況がどうなのかというところで大変疑問なのです。私たちがお米屋さんから買ってくるときに、そんな虫が入っているのは当たり前とかいうふうにはなりませんでしょう。ですから一般的で結構です。こういうようないろいろな虫が発生するという点での保管状況という点が大変やはり問題になるかと思うのです。どういうことが推定されますでしょうか。
  159. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) なかなか韓国側の保管状況を私ども直接はわからないわけでございますが、例えば今申し上げました虫の中でコクゾウについて申し上げますと、卵から成虫になりますまでの期間は大体三十日ぐらいのサイクルでございますので、今ついているものが仮に前に成虫でつきましてそれがまた次の卵を生んでということになりますと、やはり一カ月程度前ぐらいに虫がついたということが想定されるわけでございます。あるいは現在の成虫が成虫状態でついたということになりますと、例えばもみずり中とか、そういういずれにしましても加工、保管の状態でもってこういう虫がつくということが推定されるわけでございます。なお、これは多少つけ加えたことでございますが、例えば家庭のようなところでも、一回こういうコクゾウムシの卵などがつきますと、そこのうちの米びつの中ではいつも出るというようなこともあったりいたしますので、そういうような保管中の付着ということが一番考えられる状態だと思います。
  160. 下田京子

    ○下田京子君 そこでまた、続いて農蚕園芸局長お尋ねしたいのですが、今後どういう対応をするかということです。  現在は臭化メチル等で薫蒸中というお話なのですが、とにかく虫があるわけですから、それをきちっと処理した後でなければ、たとえ加工用であろうと流通にはのせることはできないですね。その辺お聞かせください。
  161. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) 先ほど申し上げました検査の結果不合格になりましたものについては、私どもの決めております輸入植物検疫規程というものがございまして、それに基づきまして臭化メチル薫蒸で対応することになっております。今回の場合には、消毒の実際のやり方としましては、臭化メチルを一立方メートル当たり九ないし十一グラム四十八時間薫蒸ということで処置しております。従来の臭化メチルの消毒後の状況からしますと、こういう消毒をしました後でございますと、今暫定基準全臭素五〇ppmというのがございますが、これはその結果として超えないということが確認をされておりますので、こういう虫の発見されたものにつきましてはこういうような消毒方法で対処していくということが対応として今とっておるわけでございます。
  162. 下田京子

    ○下田京子君 食糧庁長官、何かたまたま虫というのはやたらめったらどこへでも出てくるみたいなお話もあったのですが、今一般的に言えば、コクゾウなんかの場合には一カ月前にそういうのがあった。そうしますと、保管状況というのは大変やはり私たちどうなのかなと心配です。ぜひおわかりにならないのなら調査いただきたい、おわかりになっているのなら速やかに公表いただきたいのです。韓国ではもみ貯蔵だということなのですが、もみの段階でそういうコクゾウムシ等々があるのかというのは、一般的に少ないというお話を伺っています。すると、加工段階でどうだったのかということになりますが、東京に入港されているのが八月二十四日でしょう。実際に船積みと決まったのは七月下旬でしょう。そうすると本当に一カ月なのです。だから、ずっと今まで言ってきたように、韓国はもみ保管ということは本当なの だろうかというふうなことで心配します。これが一つ。  同時に、長官、これは私、国民の感情をまさに逆なでし、政府の無責任さを露呈したのではないかと申し上げざるを得ないのです。なぜかといったら、皮肉にもお米の需給計画が失敗して五三米が臭素で汚染されていた、それに対して国内で十分な対応もしないで一方的に韓国米輸入だと、こうなった。荷揚げされた後にそこに虫が出て、同じようにまた臭化メチルで薫蒸せざるを得ない。そして、臭素の残留基準がどうなのかということになってきた。どうお考えなのでしょう。少なくとも保管状況等はこうだ、それから事前チェックの際にもこういったことがないような対応ということは、私は、これはやはり従来から韓国米の輸入けしからぬということの態度は変わりませんけれども、今現時点でその点の手はきちっとやるべきじゃないかと思います。
  163. 石川弘

    説明員(石川弘君) 韓国はもみ貯蔵でやっておりますので、日本のような玄米流通というのはないわけでございますが、返還米につきましては船積み前に玄米に加工されまして、その加工段階で票せんをつけまして、産地、何年産だということもつけておりまして、その船積みいたします直前に国際検定機関によって確認された形で入ってきております。したがいまして、玄米から加工されたものであることは間違いございません。  問題は、玄米にすりましてから、これは袋詰めで持ってきておりますので、そういう期間、いわば外に触れる可能性はあるわけでございまして、そういう中でそういう害虫等が入り込んだものと考えられておりますが、私ども一般論といたしまして、御承知のように国内の米につきましてもこれらの害虫はつくわけでございます。したがいまして、それをいろいろな薫蒸その他の方法で害虫駆除をしてきているものでございまして、全くそういうものを皆無の状況にするというのはこれは望ましいことではございますが、国内におきましてもこれはある程度の時間がたちます際には、そういう駆除ということを併用しまして安全性を確保するということをやっておるわけでございます。  私どもは、現地の状況等につきましても、特にどこから出てきたものに多いかというようなことも調べまして、こういうものがなるべく入らないようにする。しかし、これは全量全く害虫皆無であるということになると、向こうでむしろ薫蒸して出してくるということになるわけですが、今回は私どもは向こうでは薫蒸させない、その方がこちらで最終的にやれば一回なら一回の薫蒸で済むわけでございますから、そういうことで御安心をいただけるような対応をしていくつもりでございます。
  164. 下田京子

    ○下田京子君 御安心いただけるといっても、その不安が大きくなっている中で虫が出てきているのです。一般論としてとおっしゃいますけれども、国内で、さっき言いましたけれども、お米屋さんからもらってきてすぐにそういうのが出てくるなどということはないのです。これははっきりしています。しかも、農家の皆さんはこのことを知らないと思いますよ。それ見たことかと。私の言ったのは、国民感情をまさに逆なでするところもいいところだ、どうして国内で対応できないのかということなのです。もう繰り返し言ってきましたが、その関係でまさに韓国米の輸入をめぐって表面化してきた他用途利用米の主食転用、これに伴うことでお尋ねしたいのです。  第一番目に、端的にお答えくださいませ。八月二十九日、全国農協中央会がお決めになりました昭和五十九年の加工原料用米の確保対策、その中身なのですが、一つは、他用途米の主食転用に伴う加工原料用のお米の確保の問題として、まず数量は二十万トン、次にそのお米の規格は主食になり得る品質規格としての三等米、そして集荷の方法は三通り。一つは、奨励金のつく一万八十円で買う他用途米。二つは、奨励金のつかない六十キロ五千八百八十円の農家保有米。三つ目に、今言った一、二の、つまり他用途米と農家保有米の組み合わせ、このいずれでも結構だと、こういう中身かと思いますが、そうでしょうね。
  165. 石川弘

    説明員(石川弘君) 今おっしゃった二十万トン、それから三等の規格に最低限適合するというところはそのとおりでございます。  それから、一万八十円で買うとおっしゃいましたが、これはそういうことではございませんで、私どもは実需者と供給団体がほぼトン当たり十二万前後の金でございますが、それで売買をしますときに七万円の他用途の助成金を出すということでございます。
  166. 下田京子

    ○下田京子君 とにかく、結果としては一万八十円になるというわけです。  今のお話なのですが、細部にわたるいろいろな事務手続というのは今後また詰めなければならないこともあると思うのですが、確認したい点は、これは農業団体とそれから政府と協議してこういうことになった、そして形式的には全中からの申し入れで、そして今度政府としても対応していく、こういうことでございますね。
  167. 石川弘

    説明員(石川弘君) 三十日の日に全中よりそういう申し入れがございまして、我々といたしましても関係者、これは実需者側もございますし、それからいろいろな関係の方々とも御相談の上で、趣旨を確認し合った上でそういう方向で処理をしたいと思っております。
  168. 下田京子

    ○下田京子君 ところで、今回の対応が果たして農家にどんなメリットがあるのだろうかという問題なのです。米販売農家に米輸入阻止を訴えて、各県の事情に応じてさっき言ったような三通りのやり方、いずれどれでもいい、選択して集めるということなのですけれども、個々の農家が他用途米の主食転用結構ですよというお話を伺ったときには、これは一万八十円というその他用途米が主食の価格で政府に買ってもらえるのだなと、こう喜んだわけですね。その喜びもっかの間で実際にはふたをあけてみたら、主食転用によって穴があいた分は一俵五千八百八十円で売らなければならない。とすれば、農家にとって他用途米を主食に転用すればするほど経済的に損失分が大きくなるということになると思うのです。  具体的に申し上げますと、他用途米一俵六十キログラム一万八十円、これを主食転用にいたしますと、政府米三類三等米で買い上げてもらえばこれは一万七千百八十五円ですから、その差ざっと七千百円プラスになります。しかし、一方で穴のあいた分を農家保有米で出すということになれば五千八百八十円で出さなきゃなりません。農家保有米といいますけれども、これは売り渡すときになれば、予約限度数量の枠外ですから、マル超扱いになるのじゃないかと思うのです。そうすれば、これは宮城県なんかでも伺いましたが、マル超米でも一万七千円以上で売れると。しかし、最低でも少なく見ても一万四千円程度には売れるとすれば、五千八百八十円との差で何と八千百円もの損になる、こういうことですから、主食転用によって七千百円得するけれども、穴埋めのために八千百円損するということになればその差千円、まさに他用途米に主食転用すればするほどその穴埋めのために損をするということになりますでしょう。理論的に成り立ちますね。
  169. 石川弘

    説明員(石川弘君) 最初に申し上げておきますが、決まったときに、買ってもらえるということで喜んだというお話でございますが、私どもが生産者団体と長い間いろいろな形で交渉しました結果、決まりましたことをまず口頭で確認いたしました際には、五十九年産他用途利用米については希望者につき主食用に転用するという項目、それからそれに伴い不足する加工原料用米については、農協がその自助努力によって農家保有米等を集荷することにより充当する。自助努力ということを言っておりまして、助成なしにも出そうというお話でございます。その数量等について今後、政府、農協間で協議の上決定するとなっておりまして、この点は何度も申し上げておりますが、農協からのそういう強い要請の中でこういうことで決着したわけでございまして、決して買うということだけがひとり歩きをしておるわけではござい ません。  それから次に、御指摘のどちらが損か得かということでございますけれども、これは当時の論議の中でも農業団体自身が申しておったわけでございますが、損得勘定で考えるのでございますれば、買ってもらうことだけ買ってもらって、後の措置については何ら言わないというのが一番利益の多い方法でございますが、それでは農業団体として米について極力国内で調達をするという趣旨に反するということで、農業団体がそういう損得勘定ということだけではなしに、そういう国内の米というものを極力供給することによって不足する他用途原料を補おうという趣旨で決められたことでございますので、私ども損得勘定だけではこの問題は説明できないと考えております。
  170. 下田京子

    ○下田京子君 損得関係だけではないけれども、損するのだよということも言ってきたし、買うということだけがひとり歩きしたのはおかしいと。しかも国内だけじゃなくて、輸入との関係で言ったときには、損得だけじゃだめなのだよとおどしもしてきたのだというような話になりますが、まとめますと、とにかく経済的に農家に損失を与えるということは明らかです。否定していないです。だから今いろいろ話し合っておりますが、福島、秋田などでは結局他用途米で対応しようという方針を決めたというふうに聞いております。福島の場合ですと他用途米が九千トン契約しています。その八掛けですから七千二百トン分、これは全部他用途米によって充てようというふうなこと。担当者の話ですと、いや、振り出しに戻った、あげくの果てに宿題をいっぱい負わされたと言っていました。その宿題に当たる部分かとも思いますが、それが政府のメリットにはっきりなってくるのではないか。  第一に、財政的負担は特にございません。具体的に言いますと、他用途米の主食転用により二十万トン全部やったとしても、トン当たり七万円の奨励金を出さなくて済む。そのことによって浮く財源がざっと百四十億円。片や二十万トン全部主食用に売った場合に、逆ざや分がざっと三十三億円ですか、管理経費を含めても百五十二億円で、トン当たりにいたしますと七万六千円程度ですからほぼとんとんです。  二つ目に、しかも加工用原料米については、農家の方で責任を持って集めてくれるということになったわけで、政府は農協等の自助努力を信頼しているということで済むわけです。しかも、その上に集まらなかったときには、今度はあなた方農協は信頼を失ったのだからということで堂々と第二次輸入がなされるようなことにもなってくる。それにつけ加えれば、作況一〇三ということでちょっとほっとしているようですが、一部主食転用ということもあって、かなり逼迫して、五三米などどんどん主食に回してきた中で主食転用でも若干の潤いが出てきた。もう挙げたら本当にこんなうまい話は私はないと思うのです。長官、私は言いたくないけれども、どうなのですか。
  171. 石川弘

    説明員(石川弘君) 米価決定以来、生産者団体と私どもは大変いろいろの面で苦労をしながらこういう解決案をつくってきたわけでございまして、決して財政負担がどうこうとか、そういうことでこれは実は動かしている案ではございません。私どもは財政負担のことでございますれば、前から申し上げておりますように、主食で買って主食で売るということと他用途で助成することはほぼ同じ財政負担だということを前から申し上げておりますから、別にそういうことで誘導しているわけでもございませんし、それから今何か農業団体に責任を負わせたから云々というお話でございますけれども、これも農業団体がいろいろな形の上で、これは大変議論が分かれたことでございますが、それをこういう形で何とかやろうということを決めましたことは、私はそれなりに農業団体の自主的努力というものを評価しているわけでございまして、今の段階でもしできなければどうだとか、そういうことは一切申しておりません。したがいまして、あの決定の中で団体は団体なりに大変な苦労をなさいましたし、私どもも調整にかなりの努力をしたわけでございますが、こういう扱いの中で何とかこの他用途問題というものが一歩でも二歩でも前進できればと思っているわけでございます。
  172. 下田京子

    ○下田京子君 他用途米が一歩でも二歩でも前進できることのみを願って、農業全体の前進ということが抜けているのじゃないか。しかも、政府に一切の責任がないようなことを言っていますけれども、そもそも政府が今日他用途米の主食転用という点で道を開いた根拠は一体何なのかということなのです。  七月三十一日付で、農産園芸局の企画課長食糧庁の企画課長連名による「五十九年産他用途利用米の主食用への転用について」の中ではっきり私は述べておると思うのです。  この「他用途利用米の主食用への転用を図ることとなった。」と。「その背景としては、」ということで一部読み上げます。(1)で、「全中において、他用途利用米の契約は行わないという内部申合せが行われていたという事情からして、本年の場合あえて他用途利用米の契約どおりの集荷を行おうとしても系統組織において円滑な集荷が行われなくなるおそれがあり、ひいては現行の集荷体制の維持に支障をきたすことが懸念されたこと。」だ。二つ目に、「本年の端境期においては、農業者、農業団体の理解と協力のもとに早期集出荷をはじめきめ細かな需給・売却操作を行うこととしているが、(1)のようなこととなればこれに相当の影響を及ぼすものと考えられたこと。」、こういうふうに言っているのです。  要するに、他用途米の契約が契約どおり集荷できなくなったら大変だ、安い加工原料米が確保できなくなりかねない、しかも端境期操作がうまくいかなくなってしまう。だからみずからの失敗もここにちゃんと述べているのです。  この政府の思惑を受けたかどうか、全中が六月二十二日に決めた他用途米契約は行わないという抗議行動を解除したのです。そして、二十万トンという実需者が必要とする量が、五十三年産米はできるだけ主食に回して、その結果不足するということで新米の三等米を集めてくれるようになった、こういうことでしょう。そういうことであることはみずからがお述べになっているのですからどうこう必要ないのです。ただ、さっき長官が財政負担じゃないのだとおっしゃった。とすれば、百歩譲って、傷み分けで一定の財政的な持ち出しを考えていただけますか。
  173. 石川弘

    説明員(石川弘君) 先ほど読みあげられたのはまさしくそのとおりでございまして、国会でも何度も申し上げておるので、主食が足らないから買えということではない。集荷体制にひびが入るというのは、何も加工米のことではございませんで、主食も含めた集荷体制にひびがいくということは大変だということを言っているわけでございます。したがいまして、何か失敗がどうこうというお話でございますけれども、米全体の円滑な管理をするのは食糧庁の任務でございまして、それをお読みになって、何かそれを失敗の理由づけとしておっしゃるのは私は理解しかねるわけでございます。  それから、もう一つおっしゃいました、財政でないから何か持ち出したらどうかというのは、これは厳しい論議の中で、向こうもこれは自分の方から金をくれという筋合いのことではないから自助努力で出すというお話でございまして、私どもがさらにそれにつき足す必要はないことは明らかでございます。
  174. 下田京子

    ○下田京子君 長官、それは苦しいは。だったら、農業団体が正式に金を出せと言ったらお出しになるのか、お出しになるのですね。  韓国輸入米に抗議して頑張っていらっしゃる宮城県の農協青年部の役員の方々、その他宮城県の農政部長さんとか団体の方にも去る八月三十一日に会って懇談してきたのです。そのときにその農協青年部の方々が言っていました。そもそも最初から輸入か安い他用途米かとその選択を迫られた、やむなく安いけれども他用途米を引き受けた、ところが、一方的に韓国米輸入を政府は決めてしまった、これに抗議して他用途米の契約はしないということを決めて主食転用を要求したのだ、ところが、今度は主食転用のしりぬぐいを全部農家がかぶって、主食転用による加工原料の不足による輸入を阻止するためなのだという、そういうことで加工用原料を自分たちの責任で確保せざるを得ないところにだんだん追い込まれていった、当初の運動の評価というものを再検討しなきゃならないとはっきり述べられているのです。それで、さっき私が言った、せめて傷み分けということだったら、政府も加工用のお米の確保に財政的負担をするということなら一定の納得もできるということで、怒りの声を上げていました。  それから、さっき買うということでひとり歩きどうのこうのと言いましたけれども、何も決まっていなかったわけでしょう。ただ主食転用をするということだけは決まっていたのです。宮城県の場合、国からの他用途目標がどうだったかというと、当初は六千五百トンだったのです。その後、いや主食に買い上げますよとなりましたものですから一万トンになったのです。一万トン契約だったから、契約目標の八割ということで八千トン今度出さなきゃならないのですね。こういうことで、踏んだりけったりなのです。しかも、そういうことで、これはいただいてきたのですが、「他用途利用米・青刈稲をやめて主食用米として予約を」、こういうことをお出ししました。それというのも、さっきの両課長名の連名の御指導があったからなのです。しかも、それを受けまして八月三日には、「他用途利用米並びに青刈稲の取扱いと当面の進め方について」ということで、「他用途利用米は主食用として買上げる道は開けたが、転作奨励金の計画加算がからんでいるため、転作面積の内枠としてカウントすることになるので、農協は他用途利用米生産者よりその全量について売渡し契約を受けます。」、こうなったのです。だからさっきのような状況になってきたのです。  大臣、私はいろいろ申し上げてきましたが、最後に、損得じゃないのだと、言った言わないと随分やったようですけれども、ここに文書もいただいていますが、国内で賄うのか輸入かといって選択を迫られた、そのあげくの果ての結果なのです。ですから、そういう大変な犠牲の上にやられた今回の措置に基づいて、第二次輸入などということはない、仮にも加工用が足りなくなったときには、今度は逆に主食用を加工用に転用してでも国内で賄うというような明確なお答えをいただきたいと思います。
  175. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 国民の主食でありまして、かつ我が国農業の基幹作物であります米につきましては、国会におきましての米の需給安定に関する決議等の主旨を体しまして、国内産で自給するという方針は堅持してまいります。
  176. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 日本国民の主食であります米が、いついただいても安心していただける米、そしていつでも間に合う量の確保がなければいかぬと思っております。そういう観点に立って米のことをまずお尋ねいたしたいと思います。  二月二十四日に大臣は、所信表明の中ではっきりと、基幹作目である米についての、また、米どころじゃない、食糧確保についての姿勢を述べておられます。まことに御立派であると思っております。ところが、結果的にはまことに遺憾な結果になって、韓国米を輸入しなければいけなくなったということについて、もう一遍私はこの場で、そのことに対する大臣の所信を改めてお伺いいたしたいと思います。
  177. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 総合的な食糧の自給力を維持していく、強化していくということを申し上げたわけでございますが、今先生言われましたように、韓国米——五三米の臭素問題に端を発しまして、これを現物返還しなきゃならないというような事態になったことは、農業者に対しまして、今第三期水田利用再編対策など、いろいろ御理解と御協力を求めておるところでございますのに、このような事態になったことはまことに遺憾でございます。
  178. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次から端的にお尋ねしますから、関係者は端的にお答え願いたいと思う、時間がわずかでありますので。  次に、韓国米は、我々が言う新米、ことしはまだとれぬかもしれませんが、いわゆる日本流で言う新米なのですか古米なのですか、これが一つ。  次に、最終的には幾ら輸入ということになりますか。
  179. 石川弘

    説明員(石川弘君) そういう御質問に対してお答えいたしますと古米でございます。ことし産米ではございません。それから、年産を今申し上げますけれども、一九八一年産から一九八三年産米でございます。  それから、数量は十五万トンでございます。
  180. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 きょうはそれだけこの場では聞いておきます。  次に、自由米という形のお米があるわけですが、これは言葉を変えればやみ米でしょう。食管法という法律で米は国が完全管理すべきであると思うのです。ところが事実は、市場に出回って、しかも新聞広告までもされておるというこの事実をまさか御存じでないことはないと思いますが、このことについてどのようにお考えでしょうか。
  181. 石川弘

    説明員(石川弘君) いわゆる不正規流通につきましては二通りございまして、一つ生産者の段階からそもそもいわば自由米業者等を経て流れるものでございまして、もう一つは、正規に流れている販売業者の米が、いわば品質その他のこともございまして他のルートへ流れるという二通りあろうかと思います。現在、絶対量がかなり限られてきておりますし、食管法を改正しました折にそういう不正規業者に対して相当な厳しい措置をいたしまして、販売業者のような業としてやっておる不正規流通につきましてはかなり是正をしてきております。  今御指摘のように、何かやみ米の相場を立てるようなことをやっておるのもあったわけでございますが、そういうものもかなり厳格な取り締まりをやりまして、数量的には、あるいは業者の数としてもかなり激減をしてきているはずでございますが、物によりましてまだ例えばかなり有名な、なお名うてのそういうものがございまして、そういうものにつきましては、私どもは都道府県それから食糧事務所等を通じまして、そういう不正流通をさせないように中止の勧告その他いろいろなことをやっております。どうしてもなかなか行政指導に従わない者については法的な措置考えざるを得ないようなものもあろうかと思いますが、数としましては新法施行後かなり激減をしていると考えております。
  182. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 事実を申し上げましょう。この公の機関紙にまで週に二回程度これで打ち出されておるというのです。このことを黙視なさる、大目に見るという態度なのですか。やはり法に従って厳重に取り締まるという姿勢なのですか。これは大臣がお答えください。
  183. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) これはもう原則として取り締まる方針でございます。
  184. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もし不明でありましたら、実態を調査の上、今のお答えのとおりに完全に法に照らして守っていただかぬというと経済の乱れだけでなくして、これが人間の倫理の問題にもつながる、国民の心につながる重大な問題だと思っております。  次に、五十三年度古米がいつも話題になるのですが、いわゆる臭素米です。この暫定基準はppm五〇ですか、五〇ppm以上は売買は不可ですね。ppm五〇以下は売却ということになっていますね。その不可の量は、売ってはいけない量は幾ら確認しておられるか、売ってよろしい量は幾ら確認しておられるか、そして売ってはいけない量はどのようにして処置なさる計画なのですか。以上、答えてください。
  185. 石川弘

    説明員(石川弘君) 五十三年産米の八月中旬までの検査結果で申しますと、全体では十九万一千トン残っているわけでございますが、そのうちの十四万六千トンを検査いたしまして、適合するものが七万三千トン、不適合が七万三千トンでございます。未検査のものがまだ四万五千トン残っているわけでございますが、まず不適合のものにつきましては、これを直接そのままの姿で食用に向けますことはできないわけでございますので、これらの使途につきまして現在検討いたしております。これは臭素の残留がそういう大きくならないような用途につきどの程度使えるかどうか、それからもう一つ、こういうものをえさにいたします場合、えさについて、それがどのような残留の仕方をするかというようなことを今検討をいたしておりまして、私どもといたしますれば、なるべく早い機会にその方法につきまして関係省とも協議の上決定をし、かつなるべく財政負担の面ではマイナスが大きくならない方法から採用をしていきたいと思っております。
  186. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いわゆる売却不可の過剰米に対して、その処置を確実にとっていただきたい。このことが国民の健康に、命にかかわる問題である。そしてこの問題が特に私が強調したいことは、国民全体の立場からもこれは重要でありますが、特に沖縄県民は米の自給がたった三%なのです。だから、九七%は移入米にまたなければいけない。ということは、最もつながりの深いのがこの移入米あるいは古々米です。古米、古々米、この恩恵に比率的に多く受けておるのが沖縄県民であるということをまさか御存じじゃないことはないと思いますが、沖縄出身であるだけに、非常に私は気になることがいっぱいあるから申し上げるわけです。これをひとつ徹底さしていただきたい、安心していただけるようにお願いします。  次に、このように米だけじゃなくして、農作物の収穫が多い少ない、過剰、不足ということは、それなりの理由はありましょう、原因はありましょう。だけれども、私は基本的に考えていただきたいということは、いわゆる終戦以来、本当の日本農政を守るという立場から、農は国のもとであるという基本的な姿勢から、そのときどきにおける、かいつまんで申し上げると、戦後の食糧確保するという立場から、いわゆる自給向上を最大限に意図するという立場から、品種改良ということに対してどれだけ日本農政が金と技術を傾けて取り組んできたかというところに私は疑問を持つものであります。そういう点、大臣、いかがお考えでしょうか。
  187. 櫛渕欽也

    説明員櫛渕欽也君) 農業生産力を高め、かつ食糧の安定的な供給を図るためには、ただいま御指摘のありましたように、すぐれた形質を備えました品種の開発が特に重要でございまして、この点につきましては諸外国も同様でございますけれども、わが国も戦後一貫して農畜産物の品種改良に積極的に取り組んでまいったところでございます。特にわが国におきましては農産物の品種改良は、国と都道府県の試験研究機関が一体的な組織的な分担、協力をいたしまして、全国に各作物の育種の体制が築かれておりまして、それに基づきまして品種開発の推進が図られております。特に最近極めて進展の著しいバイオテクノロジーの革新的な技術手法をさらに活用しまして、画期的な新品種の作出といったものを図るために、昨年十二月に筑波に農業生物資源研究所を新設いたしまして、こういったところをさらに中心にして一層新しい品種改良の研究体制を充実強化するという状況にあるわけでございます。
  188. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今のお答えに対するまた結びつきはちょっと今取っておきにいたしまして、このことを私は申し上げたかったから今前提に質問いたしたわけです。  この品種改良の関心と取り組みですが、灯台もと暗しということがあります。他に依存をして、そしてみずからの足元を耕すという、こういうところに私は盲点があったのではないかということは、終戦以来日本農政がいわゆる国際分業論に立って、あなた任せに受ける姿勢、その都度都度、問題が起こるというと、農産にしても畜産にしても何にしても国内自給を高めるという、こういう都度都度に打ち出されておることも事実であります。私は、根本にはそこの見直しを今度こそやってもらわなければいけないと思うわけでありますが、一例を米に、稲に例をとりますと、ハイブリッドライスですね、これはアメリカの種苗会社から日本に売りつけられようとしておるいきさつがあります。これがテレビで取り上げられて大きな話題を呼んでいることは大臣以下御承知でしょう。  ところが、次のことを御存じでしょうか。この稲が、何と琉球大学の新城長有教授が多年にわたる苦心惨たん、研究の結果、それがアメリカに流れて、そしてこのように日本に売りつけるというこの事実を御存じでありましょうか。私は、国内にもこういった立派な学者がたくさんそのほかにもおられると思うのです。そういった技術と頭脳を日本農業に、農業だけではありませんが、反映さしていく、発展さしていくというこの結びつきが、私は無関心であったとは申し上げませんが、この事実は何よりの真実でありますから、こういうことで、私は一例として申し上げておきたいと思うのでありますが、大臣、いかがでしょうか。
  189. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) ハイブリッドライス、これにつきましては我が国でもいろいろ研究しておるようですが、まだいわゆる倒伏等のことがございまして、なかなか実用に向かないというようなことも聞いておりますが、これらの研究も続けておるようでございます。  それとまた、頭脳の海外流出というものはこれは極力避けなければなりませんし、また、先生言われましたように、今後の我が国の研究、決して外国に劣っておるとは思いませんが、ますますこれに力を入れてまいりたいと思っております。
  190. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、林野庁に尋ねます。今からお尋ねすることが林野庁でお答えできない面がありましたら、最高責任者の大臣のコメントをお願いします。  まず、「'84国際植生学会日本大会」が八月二日から十九日まで持たれております。そのときのテーマが、二十一世紀に向けて地球の緑の環境をいかに保全、創造していくか。次に、その延長として、八月二十一日から二十三日まで三日間、環境問題国際シンポジウム沖縄県北谷町大会と銘打って、そのテーマは「緑と人間生活−快適な環境を求めて」、こういうテーマで展開されております。私は沖縄大会に出席いたしまして、非常に深く感銘をいたしました。残念ながら多くを語る時間を持ちませんので、どうしてもこの柱は申し上げたい、または聞いてみたい、この点からお尋ねいたします。  それは、二十一世紀への展望を含めて、将来の林業施策はいかにあるべきかということを一応柱にこれもお聞きしたいのですが、柱だけ立てておきます。  そこで、お尋ねいたしたいことは、一つ、治山治水、土壌流出防止等の観点から、常緑広葉樹の重要性が指摘されております。常緑広葉樹の樹林の保全と造林拡大についてはどのように考えておられるでしょうか。これが第一点。  次に、実地調査の結果、沖縄県北部四ダム周辺の集水地域における土壌流出とダムへの土壌堆積の問題がシンポジウムで指摘されたのであります。その対策についてはどのように考えていらっしゃるか。その内容ちょっぴり申し上げますと、沖縄の四ダムの水の問題は、現状においては解決の兆しが期待できるかもしらぬけれども、今のままでいくというと、あと二十年を待たずして土の流れのためにそのダムは埋まるであろう、二十年の余命しかないだろうということまでもずばり言っておられたのです。  以上、二点お聞きします。
  191. 角道謙一

    説明員角道謙一君) 第一点の常緑広葉樹の重要性の問題でございますが、一般に広葉樹と針葉樹につきましての水の保全の問題あるいは土壌流出の問題につきまして、非常に端的に広葉樹の方がいいというような御議論もあるようでございますけれども、これは樹齢等によりましても非常に相違がございますし、一般的に針葉樹の方が若齢でありましても成長も速いし、根の張り方あるいは保水力も強いわけでございますが、逆に広葉樹の場合には相当樹齢が高いものでないと、針葉樹に相当するほどの保水力なり土壌流出防止機能がないようなものも多うございます。土地条件によりまして広葉樹がいいかあるいは針葉樹がいいかということがございますので、一概にどちらがどうだということを決めつけるのは非常に問題であろうかというふうに考えております。  ただ、よく例として言われます松でございますが、松の場合にはどちらかといいますと地味がやせている、あるいは砂質であるとか尾根筋とか、そういう土地条件の悪いところに植生をいたしますので、その場合には松についての保水力あるいは土壌流出防止機能というものは弱いということは言われておりますけれども、これは針葉樹が一般に持っている機能ではありませんで、むしろ松の生えている植生、土地条件というものにあろうかと思っております。  私どもとしましては、そういうことで土地条件、自然条件というものに合致した樹種を選定をしていくということを考えておりまして、昭和五十五年五月に森林資源に関する基本計画というものを立てていまして、長期的な観点から、どういう地域にどういう樹種を植えるかということも各地域別に施業計画等を定めております。これによりますと、人工林、主としてこれは針葉樹でございますが、これと広葉樹が将来は大体半々ぐらいになるというのが日本の樹林としては望ましいのではないかというふうに考えております。  ただ、沖縄の場合には地理的条件なり自然条件、あるいは今までの歴史から見まして、これは広葉樹が主体でございまして、やはりそういう土地条件に即しまして、私どもとしては広葉樹を主体にしまして天然林改良を主体とした施業というものを考えているわけでございます。特に沖縄の荒廃林地につきましては、五十五年、五十六年両年度にわたりまして、どういう樹種がいいか、あるいは更新の方法としては何がいいかということを基礎調査をやりました。五十八年から五カ年計画で、現在その現地適応化の調査をやっているという状況でございます。  それから、第二点の北谷町での北部ダムの話でございますが、これは残念ながらダムそのものにつきましての所管は私どもでございませんので、先ほど、けさでございますが建設省の方に照会いたしました。建設省の方の回答では、四ダムの計画堆砂量は大体百年でございます。それに対しまして、現地で、お話しになりましたように、エレンベルグという方だと思いますが、現状ではどうも二十年ぐらいしかもたないのではないかというお話があったことは事実なようです。しかし、建設省の方では、現在の堆砂量は計画堆砂量の範囲内である、二十年程度で埋まるようなことはおよそないと考えているというように私ども聞いておりますので、この点につきましては私ども所管官庁でございませんので、建設省の方の回答ということでそう申し上げておきたいと思っております。  それから、私どもとしましては、あと周辺地域の森林施業につきましては、現在あの地域、四ダムの集水面積が約七千ヘクタールございます。そのうちの森林面積は約六千七百ヘクタールでございますが、人工林はわずかに一〇%程度、琉球松等は約一〇%程度ございまして、ほとんど天然林でございます。広葉樹立体の天然林、イタジイ、オキナワウラジロガシ等のものでございます。したがいまして、私どもは、この地域につきましてはやはり水源涵養機能なり土砂流出防止機能という基本的な観点から森林施業を行っていく。特に天然につきましては、今申し上げましたイタジイなりオキナワウラジロガシというものにつきましてやはり植生をさらに高めていく。また人工につきましては、琉球松の造林が過密になっているところは除伐していくとか、あるいは今後針葉樹、広葉樹の混交林を誘導していくという形で水源涵養あるいは土砂流出防止ということをやっていきたいと考えております。  以上でございます。
  192. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 最後になりますが、今の問題について質疑をもっと交わしたいのですが、次回に譲りたいと思います。最後に科学技術庁と沖縄開発庁に、また問題提示の形にもなりますが、現在における構想をお聞きしたいことがあります。  その一つは、さっき取っておきと申し上げたつながりは今申し上げる点であります。資源生物保存センターの設置と、それから遺伝子資源確保推進会議の設置ということが科学技術庁で打ち出されております。今度は沖縄開発庁の中西開発庁長官のバイオマスランド構想というものがまた打ち出されております。そのことについて非常に共感を持ちながらも、また一体どう結びつくのであろうかという疑問を持つものでありますので、まず、科学技術庁長官の遺伝子資源確保推進会議、あるいは資源生物保存センターの設置、その目的と構想をもしお聞きできたらお願いいたしたいということ。  それから、開発庁に対しても、バイオマスランド構想の具体的な点が、きょう時間の点からもお聞きできぬと思いますが、基本の柱だけで結構でありますから、その立場からお聞かせ願って、そして結論として科学技術庁、それから開発庁、両方から受ける感触は、沖縄がその適地の一つである、こういう感触を十分うかがえるのであります。そういうことで、位置の問題も場所の問題もお伺いできるかどうか。  以上申し上げまして、それぞれの立場からひとつ聞かしていただきたい。
  193. 平山量三郎

    説明員平山量三郎君) お答えいたします。  本件につきましては、去る六月の二十六日に、科学技術庁長官の諮問機関でございます資源調査会というのがございますが、そこから「遺伝子資源としての生物の確保方策について」という答申をいただきたした。その資源生物保存センターと申しますのは、その答申の趣旨を踏まえまして、科学技術庁が実施する施策の一つでございまして、現在はまだ野生のものでございますが、将来有用な資源としての可能性が十分あるような野生の植物についてそれを確保するというような趣旨でございまして、これをどういうふうにしたらいいか検討を行うために遺伝子資源確保推進会議というものを現在招集するように準備を進めております。そこで国としての体制その他を検討する予定でございます。  それから、そのセンターの内容、規模でございますが、これは最終的にはただいま申し上げました推進会議の方で御検討いただくことでございますが、諸外国の例を見ますとその規模運営方法等、具体的内容については非常に参考になりますのは、イギリスのキュー植物園なんかですともう二百年から三百年の歴史を持ちまして、いろいろな資源植物を育てているとか、敷地面積ももう百ヘクタールを超えておりますとか、それからドイツのダーレム植物園というのがございますが、ここでは温室を四十数個も持っているという非常に大きな規模運営されております。そういう外国の進んだ例を参考にいたしまして我が国にふさわしいものをつくろうということを考えてございます。それで具体的なあれでございますが、今はまだ構想の段階でございまして、来年度所要の調査費を要求してございますので、それを使って来年一年間十分検討さしていただきたい。  それから、お話の設置場所の件でございますが、これも最終的には検討会の結論をまって一番適地に設置することになろうかと思いますが、気象条件それから風土、そういう自然条件それからいろいろな社会条件その他を踏まえまして検討していきたいと考えております。  以上でございますが、よろしゅうございますか。
  194. 櫻井溥

    説明員(櫻井溥君) 先生御案内のとおり、今後はバイオマス資源としての植物の確保の重要性がますます増大するものと考えられておりますことから、植物資源の保存についての機能を持った施設の整備が急務になっておるわけでございます。御質問の資源生物保存センターもその一環としまして将来の食糧確保に備えて多種類の野生植物をあるいは種子を保存して狭い国土の有効活用を図ることを目的とした施設であると私どもは伺っておるわけでございます。  御案内のとおり、沖縄県は地理的あるいは気象的な条件から亜熱帯はもとより熱帯あるいは温帯いずれの植物も成育する極めて好条件のもとにございますので、その設置につきましてはぜひ沖縄県に設置していただきたいということで関係省庁にお願いする所存でございます。
  195. 北修二

    委員長北修二君) 本件に対する質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後四時四十七分散会