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1984-08-06 第101回国会 参議院 内閣委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年八月六日(月曜日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――    委員異動  八月四日     辞任         補欠選任      菅野 久光君     久保  亘君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         高平 公友君     理 事                 亀長 友義君                 坂野 重信君                 小野  明君                 太田 淳夫君     委 員                 板垣  正君                 岡田  広君                 源田  実君                 沢田 一精君                 林  寛子君                 林  ゆう君                 桧垣徳太郎君                 堀江 正夫君                 穐山  篤君                 久保  亘君                 矢田部 理君                 峯山 昭範君                 橋本  敦君                 藤井 恒男君                 前島英三郎君    衆議院議員        内閣委員長代理  深谷 隆司君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  森  喜朗君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君    政府委員        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第二        部長       関   守君        人事院事務総裁  内海  倫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        総務庁人事局長  藤井 良二君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        大蔵大臣官房審        議官       大山 綱明君        大蔵省主計局次        長        的場 順三君        文部大臣官房長  西崎 清久君        文部大臣官房総        務審議官        兼内閣審議官   齊藤 尚夫君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省教育助成        局長       阿部 充夫君        文部省高等教育        局長       宮地 貫一君        文部省学術国際        局長       大崎  仁君    事務局側        常任委員会専門        員        林  利雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○保臨時教育審議会設置法案内閣提出衆議院  送付) ○国民教育審議会設置法案久保亘君外二名発議  )     ―――――――――――――
  2. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四日、菅野久光君が委員を辞任され、その補欠として久保亘君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 高平公友

    委員長高平公友君) 臨時教育審議会設置法案及び国民教育審議会設置法案の両案を一括議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 矢田部理

    矢田部理君 質疑の前に、委員長に一言申し上げなければならぬと思いますのは、私は前回四時間の時間を与えられながら四十数分残してしまった。それは大蔵大臣出席その他の問題があってそうなったのでありまして、それを今日まで持ち越しておりながら、きょうはまだ日がありますので、また会期も二日間残っておりますのに、前回残した時間をも認めないという委員会運営のあり方は極めて遺憾だというように思いますが、委員長、どうですか。
  5. 高平公友

    委員長高平公友君) そのことにつきましては、理事会でいろいろ御相談をいただきまして、五分必ずしも残したと、それから持ち時間のいろいろな関連からいいまして、この範囲で明快な御質問お願いしたいということで決定をしていただいた次第でありまして、どうかその辺を御了察いただきまして、ひとつその範囲の時間の中で御質疑お願いしたいと思います。
  6. 矢田部理

    矢田部理君 こういうやり方で委員会運営をやられたのではたまったものじゃありません。極めて遺憾であるということをまず申し上げて、質問に入りたいと思いますが、最初に人事院に伺います。  会期は八月八日までです。通常であれば八月の五日ないし七日ごろには人事院勧告を出す、人事院勧告政府だけではなくて国会にも出す性質のもの、ことしは延長のこともあって、会期がここまで来ておるのに、なぜ会期内に出さなかったんですか。
  7. 内海倫

    政府委員内海倫君) 私どもも、できれば会期内にということは十分承知はいたしておりましたけれども、まことに弁解がましくなりますけれども、今度の勧告というものの意味が、既に過去二回にわたる見送り、あるいは厳しい抑制というふうな後を受けております上に、私自身まだ初めての勧告であり、加えでいろいろな官民給与調査結果、あるいはどういうふうな考え方で臨むか、あるいはそういうことに伴ういろんな検討というふうな面で非常に時間がかかるということは予想をしてきたところであります。  率直に申しまして、今日の時点でもまだ精いっぱいの今検討を続けておるところでありまして、大変国会からの御要望もあろうと思いますけれども、私どもとしては最も適切で、人事院としましても確信のある勧告をいたしたいという存念に尽きますので、その点が会期中というものを外れざるを得なくなるであろうということを申し上げざるを得ないのでありまして、決して意識して外した、そういうふうにはお受け取りくださらないようにお願いを申し上げる次第であります。
  8. 矢田部理

    矢田部理君 もともと、四月から実施すべき性質のものです。お話があったように、凍結抑制が続いているから、一刻も早く今年度は勧告をし、かつ実施に移すべきだというのが当然の要望だと思うのでありますが、あなたがなったばかり、つまり素人だからおくれたのだいうのでは余りにもひど過ぎるじゃありませんか。いつ勧告されるおつもりですか。
  9. 内海倫

    政府委員内海倫君) 決して素人であるがゆえにおくれたというわけではございませんが、たびたび申し上げておりますように、今回の勧告というものの意味を私は極めて重視いたしておりますし、かつまた、素人という意味ではなく、個々の調査項副について厳しい私は検討を加え、また場合によりますと資料等拝見等希望いたしましたので、そういうことが事務的なおくれを結果として生じたわけでございます。もし、そういうふうなことでおくれたことが私の未熟ということにあるとすれば、これは私自身その責めに任じないといけないと思いますが、私としましては、夜を日に継いだ誠心誠意努力を今、現にやっておるところでございます。
  10. 矢田部理

    矢田部理君 勧告内容についての考え方でありますが、未実施分は今年度勧告に上乗せするという従前考え方には変わりございませんね。
  11. 内海倫

    政府委員内海倫君) この点も在来から申し上げておりますように、勧告の基礎をなす官民較差というものは、本年四月の時点における国家公務員と選定いたしました民間企業給与を比較いたしまして、その較差を出すわけでございますから、その結果は当然に昨年における、通常積み残しと言っておりましょうが、私どもは積み残しということではなくて、昨年実施されなかったものが今度の較差の中に反映をしてくる。私どもは現在おおむねの調査を進め、かつ、ある程度の答えを得ておる段階におきましても、そういうふうなものは私はあらわれてきておるように思います。したがいまして、今回の勧告もそういうふうなものを反映したものに基づく勧告に相なろうか、こういうふうに思っております。
  12. 矢田部理

    矢田部理君 凍結抑制が続いておるわけでありますが、ことしは何としても完全実施ということをしてもらわなきゃ困る。それに向けての人事院心構え決意を伺いたいのですが、いかがですか
  13. 内海倫

    政府委員内海倫君) 勧告を今、現に検討しておるところでございますが、やはり私どもとしては、この勧告意味政府におかれても、一般国民におかれても理解していただかなければまた在来のような轍を踏むわけでございますから、何としても私どもとしては、どうしたらそういうことを実施していただけるか、これについて考えてきておるわけでございます。  勧告といいますか、報告文の中にも私どものそういうふうな願いを込めた表現はいたしておる、あるいはいたしたい、こういうふうに思っておりますし、この際、国会におかれましても、勧告というものについて十分御理解と御審議をいただいて、政府ともども完全な実施に相なりますように期待をいたしておるわけでございます。人事院としてできるだけの努力はいたす所存でございます。
  14. 矢田部理

    矢田部理君 勧告は八月十日と伝えられておりますが、そのとおりでしょうか。
  15. 内海倫

    政府委員内海倫君) 私どもは、できるだけ早くということを目標で努力はいたしまして、現在もこの努力を続けておりますが、率直に申し上げて十日さえもどうかと思うほどに詰んでおりますが、十日にはぜひ勧告をできるようにあと数日を全力を挙げて努めたい、こういうふうに考えております。
  16. 矢田部理

    矢田部理君 官房長官に伺いますが、いよいよ十日ごろには勧告が行われるようでありますが、給与担当閣僚会議の座長を官房長官はおやりになるわけですが、勧告を受けた際の心構え受け皿づくり等々が官房長官の主要な役割になろうかと思うんですが、考え方等についてお聞かせをいただきたいと思います。
  17. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 本年度の人事院勧告につきましては、勧告制度を尊重するという基本姿勢に立ちまして、国政全般との関連を考慮しながら、誠意を持って完全実施に向けて努力をいたしたい、このように考えておる次第でございます。  この考え方は、従来も国会における御質疑に答えておりますし、また春の政労会談におきましてもその考え方を明らかにしておるところでございます。一昨年、昨年と見送り、抑制で来ておりますので、今年度の発表になりました人事院年次報告の中などでも、公務員勤労意欲あるいは活動意欲にも大きな影響があるというような指摘もございまして、ぜひ誠心誠意取り組んでいくようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。  ただ、財政事情などが、先生御高承のように、それでは一昨年と昨年とことしとどう違うか、どれだけ好転したかということになりますと、なかなか情勢は厳しいものがでざいますが、その中で法の精神に照らしてぜひ誠意を持って取り組んでいくようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  18. 矢田部理

    矢田部理君 従前努力するとか尊重するとかという表現だったのを、ことしは一歩進めてというか、より積極的な表現として完全実施に向けて取り組むという決意を披瀝されているわけでありますが、従前よりは前進させるというのは、最低限度の歯どめとしてそう受けとめてよろしゅうございますか。
  19. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 一昨年も恐らく時の政府誠意を持ってお取り組みになったと思いますし、昨年も誠意を持って取り組んできた。ことしも誠意を持って取り組む、法の精神を大事にして、ぜひひとつ公務員生活条件を向上させるために勧告を尊重して進みたい。こういう気持ちで、例年、真剣に取り組んできておるところでございます。しかし、御存じのとおりの財政事情のために、非常に残念な結果で一昨年、昨年と来ております。この上に立ちまして、ことし、ひとつ誠心誠意勧告実施に向けて努力をしていくようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  20. 矢田部理

    矢田部理君 凍結とか抑制というのは、今の人事院制度公務員給与制度から見れば異常、異例事態なんでありまして、この異常、異例事態を長く続ければ人事院制度そのものが危機に瀕するというか、存在そのものが否定されるような状況になるわけでありまして、それは憲法上の問題も生ずると既に人事院総裁指摘をされておるわけでありますから、これはゆゆしき問題になりかねないのでありまして、その点は財政事情を超える大きな価値として心してもらわなきゃ困るというのが第一点でありますし、そのためにもことしは完全実施に踏み切ってもらいたい、当然の話でありますが、強く要望しておきたいと思います。  同時にまた、完全実施だけではなくて、早期実施すべし。人事院は、わざわざ国会を避けて、終わってから勧告するなどというのはもってのほかだと私は思うのでありますが、早期実施に向けてどんな受け皿をつくるのか、手順、段取りはどういうふうになりますか。当然のことながら、給与担当閣僚会議等早期開会が望まれるわけでありますが、この点を含めてお話をいただきたいと思います。
  21. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) ことしの勧告に対してどのように取り組むか、一昨年、昨年とどう違うかという御指摘につきましては、これは建前を申し上げるようでございますけれども、ことしの勧告がどういうものが出るかまだわかりませんので、勧告が出ました段階でそのことに誠心誠意取り組んでいくということでお許しをいただきたいと思います。  なお、人事院から出されます勧告意味合いにつきましては、先生今御指摘になりましたとおりだ、このように私ども認識をいたしておる次第でございます。  今後の段取りといたしましては、勧告が出ました段階で連絡をとり合って判断をいたしたいと思いますが、なるべく早く給与関係閣僚会議を開きまして、諸般の事情をいろいろ検討いたしまして、政府態度を決定するようにいたしたい、このように考えております。なるべく早くそういった段取りを整えていくようにいたしたい、こう考えておるところでございますが、いずれにいたしましても、勧告が出ました段階でその段取りにつきましても判断をしていくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  22. 矢田部理

    矢田部理君 関係閣僚会議早期開催とあわせて、最終的には、給与法で処理するということになりますれば国会が当然必要になってくるわけでありますが、この辺の考え方はいかがでしょうか。
  23. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) この延長になりました国会がどういう形で終わることになりますか、秋以降の国会についての日程はまだ総理自身判断をしておりませんので、どのような運びになるかを今ここで私から申し上げることはお許しをいただきたいと思いますが、法の精神に照らしますと、なるべく早く給与関係閣僚会議を開いて政府態度を決めて、そして給与法提出運びにするということが正しいと思いますので、その線に沿いまして努力をいたしてまいりたい、このように考えております。  どの時点国会が開かれることになりますか、それはまだ全く将来のことでございますので、ここで明言を申し上げることはお許しをいただきたいと思いますが、今御指摘がありましたような方向で誠心誠意取り組んでまいりたい、このように考えております。
  24. 矢田部理

    矢田部理君 ことしこそ早期かつ完全な実施を強く求めまして、次の質問に入りたいと思います。  臨教審委員人選についてでありますが、伝えられるところによりますと、八月四日の午前中に、総理文部省佐野次官を呼ばれて、委員人選会期内にすべし、その努力を指示したと伝えられておりますが、そのとおりでしょうか。
  25. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 本日の御質疑等もございましたので、文部事務次官以下の方々が官邸におきましていろいろ国会に臨む打ち合わせをいたしたところでございます。その節、いろいろ御質問も出るわけでございますから、どんなふうに総理自身がお考えになるかということを事務次官から尋ねられまして、やはりこれだけ国民的に広く教育改革への希望が高まっておるときに、せっかく皆様方の御審議をいただきまして臨時教育審議会法案成立お願いして、審議会を出発させていくようにいたしたい。しかも、それはなるべく早く審議会を出発させるようにしたい。こういう希望政府として持っておりまして、そのためにこの臨教審法案成立を待って、その後人事に入るようにしなければなるまい。文部大臣の御意見を聞いて総理大臣が任命する。そして、国会承認を得るという手続をとっていかなければならぬ。段取りとしてはそのように考えておる次第でございまして、しかしこれはあくまでも法案成立をいたしましてからでなければ人事に取りかかることもできません。そのことは文部大臣総理大臣もよく理解をいたしておるところでございますので、法案成立を待って、一日も早く審議会が出発できるように段取りを整えろというのが総理気持ちでございまして、そのように文部事務次官にお伝えをしたところでございます。
  26. 矢田部理

    矢田部理君 その法案成立しないうちに総理大臣人選にあらかじめ着手すべきであるかのような言辞を弄したとすれば、これは大変問題だ。特に、まだ未成立段階であります。人選問題については手をつけないというのがここにおける約束だったはずでありますから、そこはやっぱり厳重にしてもらわなければ困るわけなんですが、いずれにしたって従前からの言い分によれば一週間か十日は人事にかかる、だから早く上げてくれなどということを公式、非公式に伝えられてきたわけでありますから、とてもここまで来たら人選に間に合うはずのものではないと思うのであります。したがって、人選国会終了後ということにならざるを得ないと思いますが、いかがですか。
  27. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 一日も早く審議会を出発させたい。国会承認を受けるようにということに御修正がなったわけでございますので、国会の御承認を受ける手続をとらなければならぬ。次の国会事後承認ということが許されておりますけれども、この国会承認を受けることができれば大変ありがたい、このように考えておりますことは従来の態度と変わっておりませんで、一日といわず一刻も早くこの法案成立をいたしますように御配慮をいただきまして、そうして事後人事運び段取りが進んでいくことができますようにぜひ御理解をいただきたい、このように心からお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
  28. 矢田部理

    矢田部理君 人選成立を前提として手をつけるなどというのはもってのほかなので、その点は極めて慎重にやっていただきたい。  それから、軽率に人選を運んでやるということはいかぬというふうに私は思うと同時に、人選の顔ぶれがその後もちらほらしておりまして、特に私が気になりますのは、公正な人事各界代表などを含む広い幅の人事ということが言われてきたわけでありますが、どうも伝えられるところによると、財界主導型の人事になる可能性が強い。それで行革とリンクさせるというようなことになると、あと財政の問題もありますが、これは大変なことになる。とりわけ、財界人などが候補に挙がっているわけです。これは余り個人の名前を挙げるのは失礼かもしれませんが、伝えられるところによると、瀬島さんだとか、その他二、三の方が挙がっておりますが、こういう一分野の人を会長に据えるというようなことになると、これは大変な偏りといいますか、財界主導型の教育改革ということにもなりかねないのであります。その辺はどう考えますか。
  29. 藤波孝生

    国務大臣藤波孝生君) 法案成立をいたしますまでは人事に手をつけないということでずっと来ておりまして、文部大臣総理大臣もそのお気持ちで進んできておられるところでございまして、全く人事に手をつけていないということを明確に申し上げておきたいと存じます。  一部、いろんな候補名前が出ておるというお話でございますが、新聞などがいろいろ予測記事などを書く向きはございますけれども、当たるやら当たらぬやら、それは全く手をつけていないのでございますから、法案成立をいたしまして以後のことになるということだけは明確に申し上げておきたいと思います。  なお、委員につきましては、各方面からといいますか、バランスの保たれるように公正にひとつ選ばれるべきだということにつきましては、衆参両院法案審議の過程におきまして文部大臣かろいろいろとお答えを申し上げてきておるところでございまして、ぜひ御理解をいただきたい。ひとつ公正な、各方面国民総参加というような形の出る、そういう委員の御委嘱をお願いできれば非常にいいが、こんなふうに考えておる次第でございますが、いずれにいたしましても、文部大臣意見を聞いて総理大臣が決める、こういう段取りを進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  30. 矢田部理

    矢田部理君 会長人事などになりますと、教育はもともと政治からの中立を強く求められている、その中立基本にする教育の問題の論議に当たって、やっぱり総理大臣の意向が強く反映するような会長人事ということになると、ますます問題の本質がゆがんでくるということがありますので、心していただきたいということを特に注文をつけておきたいと思います。  時間がありませんので論議がつまみ食いになって恐縮なんでありますが、守秘義務の問題について伺います。  前回審議で、今回の法案修正の部分で盛られた守秘義務は、公務員法百条にいう守秘義務、つまり秘密と同じであって、実質秘を指すということを言われておるわけでありますが、これは修正案提案者及び法制局長官、確認してよろしゅうございますね。従来、人事院などの解釈の一部、これは正式なものでありますが、その人たちが書いた本などによると、形式秘まで入るかのように読める文書などもあるわけでありまして、その点、今後の立法者の意思、法制局の見解として明確にしておいていただきたいと思うのですが、結論的にお述べください。
  31. 茂串俊

    政府委員茂串俊君) 私から先に申し上げますが、前回の七月十九日の当委員会におきまして矢田部委員の御質問に対しまして私御答弁申し上げましたとおり、衆議院修正によってつけ加えられました第五条第六項の規定にいう秘密というものは、それは実質秘であるということで私は理解しておりますし、またそれが正しいものと今でも思っております。
  32. 深谷隆司

    衆議院議員深谷隆司君) 私ども守秘義務を加えましたのは、この審議会密室で行われるというものを好んでやったわけではなしに、むしろ逆にできるだけ国民理解と協力を得られるような状態で進めていきたい。そういう点から考えますと、この守秘義務実質秘としてとらえて、例えば非公知性とか秘匿必要性と二つの要素が具備しているというふうに、むしろ範囲をつぼめた方がいいだろうというような考え方に立っておりますから、これは実質秘と考えております。
  33. 矢田部理

    矢田部理君 それにしましても、審議会公開せず、公開の原則を明らかにしない、しかも守秘義務規定まで置くということになりますと、ますます二重の意味密室性が強くなるということを重ねて指摘せざるを得ないわけであります。  特に、ここでもう一つ問題にしておきたいと思いますのは八条委員会国会人事承認しなければならぬ委員会でも守秘義務規定のない委員会が相当数あります。地方財政審議会などを含めてここに一覧表がございますが、守秘義務のない審議会もあるのに、なぜ教育というとりわけ公開論議が必要な、秘密など持つちゃならぬ性質審議会に置いたのか、その実質的理由がいまだにわからないんですが、いかがですか。
  34. 深谷隆司

    衆議院議員深谷隆司君) この審議会委員国会の同意で行うということのために、従来その原案の提案内容からいけば国家公務員法百条で秘匿義務がついているにもかかわらず、それがなくなりますので、従来の、特に戦後三十年以降の審議会の規則等を参考にいたしまして、むしろ最近ではほとんど守秘義務を入れているという、そういう通例から私たちはこれに載せたわけでございます。  なお、その法的な問題等については、三党の代表が相談いたしましたが、いずれもそれぞれ政治家で法律の専門家でありませんので、法制局の御意見等を十分に聞いた上で、それを背景にして決定していったものでございます。
  35. 矢田部理

    矢田部理君 文部大臣も述べておられるように、教育論議秘密なし、この原則に立ては秘密を守るべき規定は要らないんです。特に審議会は、歴史的に見て、戦後、ずっと三十年以前は全部守秘義務規定を持っていなかった。地方財政審議会、それから例えば商品取引所審議会、漁港審議会あるいは社会保険審査会、中央更生保護審査会など相当数の審議会、八条機関がいまだにこの守秘義務規定を持っていない。なぜ教育に持たなければならなかったのか、これは一切、実質的理由は説明つかないのであります。とりわけ、文部大臣も再三強調しておりますように、教育秘密なし、教育論議秘密なしということであるとするなら、この際、その部分は削除してしかるべきではないでしょうか。その点、深谷さんいかがですか。
  36. 深谷隆司

    衆議院議員深谷隆司君) 審議会論議の過程の中で、秘密が一体あるだろうかないだろうかという議論も私たちはしたのでありますが、例えばまだ公開されていない文書等を閲覧するとか、個人のプライバシーにかかわる問題等についてそれが話題になったとかいったような場合に、当然秘匿しなければならない、それによっていわゆる公務の遂行に影響があるとか、そういう部分があるのではないかというふうに考えたためにこのようなものを設けたわけでございます。
  37. 矢田部理

    矢田部理君 地方財政審議会や商品取引所審議会秘密がなくてオープンにしたのではなくて、同じような問題はどこにでもあるわけであります。同じような問題があるにもかかわらず、守秘義務規定を置いていない。それはやっぱり民主化の要請、行政をガラス張りにしようという要請が基本にあったからだと思うんです。その点で、今の御意見については納得しがたい。これは削除してオープンに教育論議国民の前にやるべきだ、開かれた論議にすべきだということを強く要望しておきたいと思いますが、これまた時間がありませんので、この程度で終わりまして、大蔵大臣に伺っていきたいと思います。  この教育と予算、財政の問題について幾つかの議論があるわけでありますが、どうも総理も、大蔵大臣も臨調答申を尊重してやるのだ、臨調答申は教育予算を全体として抑制ないしは圧縮して自助勢力を求めるということに基本が置かれていると思うんでありますが、これからの臨教審論議、これもこの臨調路線の枠の上にしかできないということになるんでしょうか。
  38. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かに臨時行政調査会、これにおきましては教育のみならず各般にわたっての抑制、そういう施策の提言がなされておることは事実でございますが、臨教審はこれは私の専門ではございません。ただ、国会に提出いたします際の内閣の共同責任において私も署名した一人でございますが、それらも含めて、相当私どもよりもはるかに数層倍民度の高いところで議論なされるのではなかろうか、こういうふうに私は感じております。
  39. 矢田部理

    矢田部理君 どうもよくわからぬのでありますが、答弁を聞いておりますと、臨調答申を尊重する。行革審も最近意見を出しましたが、例えば教職員の定数改善計画の極力抑制、公立文教施設の整備を厳しく抑制、私立助成総額抑制、全部抑制基調で来ているわけです。このいわば行革審なり臨調路線を尊重してやるのだ、財政の裏打ちのない議論は幾ら教育論議でも意味がないというような発言も大蔵大臣はしておるわけでありますが、大蔵大臣、財政当局の立場として言うのはあるいはそう言わざるを得ないのかもしれませんが、あなたもニューリーダーを目指すとすれば、銭金の話だけでは済まないのじゃないでしょうか。その点、この教育論議についてどういう構えで臨もうとしているのか、もう一度お聞かせをいただきたいと思います。
  40. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 教育論議ということになりますと、所管の文部大臣が最高権威者でありまして、私どもは拳々服膺していく立場にあるというふうに考えておりますが、教育そのものが大事であるということは私も承知しておるつもりでございます。  きょう、たまたまここへ四人並びましたら、全部早稲田大学でございまして、よかったなという気持ちも持っておる一人でございます。
  41. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、その話が出たついでにではありませんが、伺いたいと思うのでありますが、あなたは、ある席で教育予算の多い少ないは教育水準を決定しないのだ、こういう認識を持っておられるようですが、そうなんですか。
  42. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私がそういう批判を受けましたのは、ちょうど森文部大臣が自由民主党の文教部会長でございまして、私が第一次大平内閣の大蔵大臣でありましたころ、いわゆる四十人学級論争のときに、いささかこれは二人の間の厳しい教育論争の外にあった議論でございましたけれども、おまえ何人学級で育ったかと言いましたので、おれは六十人学級だ、相撲でも大部屋の方が強い力士が出るというようなことを二人で論じたことがいろいろ新聞紙上等にやゆされたことがございますが、私は、教育というものは必ずしも金銭の多寡によって論ぜられるものではなかろうと思いますが、いわば財政全くネグって教育の崇高なことばかり論じておっても教育行政そのものはスムーズに進まないだろうという程度の認識は持っておるつもりでございます。
  43. 矢田部理

    矢田部理君 ついせんだって、私大の財政白書が出ました。皆さん早稲田大学出身だそうでありますが、早稲田大学の総長が次のような厳しい指摘を冒頭にしております。  「ようやく財政の足腰を強くしはじめた私学にとって、その削減は財政の、したがって教育研究条件充実のための長期計画を突如として狂わせ、その計画を縮小ないし放棄する」しかないという深刻な現状を指摘した上で、「公費支出割合は、もともと欧米先進国に比して著しく低い。まして私立大学に対する助成率は、国民総生産の優位を誇る国とは思われない低さにある。このような状況のもとで、いかに財源難とはいえその削減を意図するなどということは、高等教育の意義を解しない非文化的発想」だというふうに皆さん方を切りつけているわけです。まさに、これは西原さんという早稲田大学総長の「まえがき」であります。  お金の多寡で教育水準をはかるのは間違っている、関係ないというようなのは非文化的であり、不見識も甚だしいと西原さんは言っているのではありませんか。とりわけ、教育基本法の精神にのっとると言っておりますが、教育基本法の十条は何と言っておりますか。教育条件、教育環境の整備を教育基本的な任務の一つとして指摘をしているわけでありまして、その点は極めて心得違いなのではないかと思われるのでありますが、一言、大蔵大臣お願いしたいと思います。
  44. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 時子山先生、村井先生、それから西原先生、しょっちゅう私どもは集められていろいろ御薫陶を受けて厳しい指摘を承っておるところでございますが、私どもなりにその先生方の意見を尊重しながら、それぞれの持ち場持ち場で教育行政に無関心であるわけでは決してございません。
  45. 矢田部理

    矢田部理君 逐一、私は大蔵大臣のそのお金と教育水準は関係がないということに反論するための問題点を幾つか持ってきているわけです。大規模校と問題校というようなこともそれでありましょうし、四十人学級の問題もそれであるし、最近の家計費の中での教育費の負担が非常にふえてきた、これは教育の機会均等という原則を経済的な理由によってゆがめていくという問題点などもいろいろデータを挙げて指摘をしたかったのでありますが、残念ながら委員会運営のまずさで私の時間がありません。  この点で、臨教審が自由闊達な論議を保障するために非公開にするのだと一方で言いながら、財政面で極めて厳しい締めつけをして、臨調路線の上に乗せて、金のかからない極めて精神主義的な教育論議にこの問題を持っていこうとする。とすれば、なおさらこのことは大変問題だ。中曽根さんの考え方基本的には国家主義の思想が非常に色濃いわけでありますから、この路線を教育の中に押し込もうとすればさらに問題は増幅する。その点で、財政面からの裏打ちをきちっとしない限り、この臨教審意味をなさないというふうに考えるわけですが、文部大臣いかがですか。
  46. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 臨時教育審議会におきまして教育改革に関しますどのような方策を御論議するかというのはこれからの段階でございまして、国会で諸先生方の御了承をちょうだいいたしまして成立いたしましてからいろいろと審議の事項等について審議会が御検討されるわけでございますので、所要経費の予測は今の段階で議論をするということは非常に難しい問題だろうと思いますので、その点についての言及は困難だと私は考えています。しかし、矢田部先生がいろいろとおっしゃいますように、やはり教育改革についてはそれなりにまた経費の必要という議論も出てくるだろうと思います。  私は、たしか穐山さんの御質問の際に申し上げたような記憶をいたしておりますが、臨調は、行政改革をして、そして財政の計画を立て直して、二十一世紀に向けていよいよ柔軟に、そしてまた飛躍的に進んでいこう、こういうことでございます。その一つの大きな具体的な政策としてこの教育政策があるというふうに私は理解をいたしております。ですから、財政再建、行政改革でみんな切り倒して、そして教育もまた切ってしまうのだという、こんな考え方のいわゆるスタンスで物を考えているわけではない。むしろ、二十一世紀に飛躍的に国際社会の中で日本は生き延びていかなきゃならない、繁栄をしていかなきゃならない、そのことを考えるに当たっては柔軟な教育の新しい一つの諸政策を考えているかざるを得ないではないか、こういうことであろうというふうに思います。  ですから、これは若干、大蔵大臣におしかりをいただくかもしれませんが、行政改革は少しずつスリムにしていくという面がある。教育の面でも確かに抑制基調が強い。しかし、教育のこともある程度御議論をいただきながらでありますが、これは教育改革はやはり教育の視点から物を考えていかなきゃならない、そういう点では議論の視点、角度というのは違ってまいります。むしろ、場合によってはもっとより柔軟で、もっとすばらしい教育の将来の方向づけというものが出てくるのではないか、このように私どもは期待をいたしておるところでございます。
  47. 矢田部理

    矢田部理君 行革の次には教育改革、そして憲法改悪へ、この路線が依然として消されていない。とりわけ、教育改革を臨調路線の枠内でやろうということになったら教育の自主性も中立性も大きく損なわれてしまう、この点は特に御注意を申し上げておきたいというふうに思います。とりわけ、財政面からの圧力が非常に強い中での船出ということになりますと、ますますこの問題がゆがめられるのでありまして、その点、私は厳しく指摘をしておきたいと思います。もう少し論議をしたかったのでありますが、大蔵大臣との関係はこれで終わります。  最後に、一点だけ時間が来ましたので申し上げたいのは、本委員会でも問題になりました財団の最近の管理運営をめぐって非常に問題が続出をしております。先般、東京工大、慶応大学などの問題が出ましたが、もう一つ私が指摘をしなければならないのは、筑波大学や経団連が主としてつくった国際科学振興財団というのがあります。  これは既に指摘をされておりますように、一億以上の大赤字を抱えている、二千万円以上の使途不明金がある、三千九百万円にも及ぶ基本財産の取り崩し、本来は文部大臣承認なしにこれはできないのでありますが、これが公然とやられてしまった、などなど多くの指摘がなされているわけでありますが、決算内容も極めて乱脈をきわめておる。内部告発によっても、大半の数字はつくったものだ、領収書も偽造が多い、そして一部幹部の遊興費や接待費などに多く使われたのではないかという疑問すら実は投げかけられているのであります。文部省はこれに対して事情聴取をしたそうでありますが、事情聴取や一部幹部の更迭で終わる性質のものではない。  その後、私がいろいろ受け取った資料を見ましても、例えば文部省自体の資料の中で、研究員の数や職員の数まで違っている。あるいはまた、受託研究費を大量に受け入れているのでありますが、財政の悪化に伴って研究の未完了部分が異常に多い。さらには、大学の認可を受けていない研究員が多数に上っている。例えば、ここに国土庁の依頼した計画書がありますが、十四人中九人までが大学の承認ないしは認可を受けずに研究員として参加をしている。こういう仕組みも実は問題なのであります。だから、例えば東京工大などの場合は、大学の会計を通さずに直接この受託研究を受けたことに問題があったとされるわけであります。  もう一つ、この国際科学振興財団などの場合は、大学の承認を受けずにどんどん研究員として参加をして、実質上お金を受け取って受託研究をやる。ここも大学が抜かされているわけです。大学のチェックが及ばないことになっている。同じような意味で、本質的に問題があるというふうに私は思わざるを得ないわけであります。  まとめますが、いずれにしましても、文部省だけではないのでしょうが、財団という公益法人を隠れみのにして非常に金銭的な運営がずさんに行われている。学内の選挙資金に使われたり、遊興費に使われたりする疑いすらある。その点で財団のあり方、ありようについて根本的に文部省は洗い直してしかるべきだと思いますが、文部大臣の姿勢を伺い、それから私はこれに関するこれからいろいろな資料を出してほしい。特に、収支決算の内訳など明細を含めて出してほしいと言ったのでありますが、いまだに支出の方については出されておりません。これらをやっぱり出していただくことを強く要望して、最後に文部大臣考え方をお聞きして、私の質問を閉じたいと思います。
  48. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 御指摘ございました国際科学振興財団は、昭和五十七年の末に基本財産の一部を正規の手続を経ずに取り崩した、こういう事態がございまして、御指摘ございまして、文部省といたしまして厳重に注意をいたしまして運営の適正化等につきまして指導をいたしたところでございます。  先生から、それに関しまして、いわゆる民間資金を大学等で研究委託費として使うことについてという、そのことについての文部省考え方についてのお尋ねでございますが、法人の行う事業と大学との関係のあり方については、民間資金の大学への受け入れのあり方等の関連におきまして、確かにいろいろの問題も最近は先生方からもこの国会で大変御論議をいただいたところでございますので、省内におきまして検討会議を設けまして、ただいまそのことについて検討いたしておるところでございます。  必要な書類等につきましては、また取りそろえまして、国会に御報告をさせていただきたい、このように考えております。
  49. 橋本敦

    ○橋本敦君 大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  新聞が報ずるところによりますと、来年度概算要求基準について大蔵省は、防衛予算は三・五%くらいの伸びにしたい、こう言っていたにもかかわらず、防衛庁長官と大蔵大臣との大臣折衝の結果、またまた防衛費は四年連続の大突出で七%という概算基準で話がついたと報じておりますが、事実は間違いございませんか。
  50. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 先月の三十一日の閣議で六十年度予算の概算要求基準を決めるための大臣折衝を、その前日でございます三十日に行いました。別に、私どもの方が初めから一つの線を持っておったわけではございません。大筋申し上げまして、人件費、年金、ODA等々、増分を認めるもの、また昨年並みのもの、そして経常経費で一〇%、投資的部門で五%、それだけの基準で話し合いをするわけであります。したがって、このたびの防衛庁の概算要求基準というのは、防衛自体の整備と日米安保条約と財政事情、この三つの調和点をぎりぎり模索した結果であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  51. 橋本敦

    ○橋本敦君 今お話しのように、日米安保条約ということを一つは踏まえて模索したぎりぎりの判断だという重要なお話がございました。  それじゃ、文教関係についてはぎりぎりどれだけの模索と配慮をしたのであるか。私は、最近の防衛予算の伸びを調べてみますと、五十五年が六・五%に始まって、五十六年七・六一、五十七年七・八%、五十八年六・五%、五十九年六・五五%、こうしてずっと伸びております。五十七年から三年とっただけでも二〇・八五%の伸びであります。教育予算は、五十七年二・六%、五十八年にはマイナスに切り込まれてマイナス一・一%、ことしはわずか〇・八%でありますから二・三%、まさに伸び率は十分の一であります。伸び率だけですべてを私は比較しようと思いませんが、防衛費がどんどんこういうことで伸びていく。教育、文教予算は減っていく。そして同時に、絶対額も減って、政府予算全体に占める文教予算の割合も一九七六年一一・三六%であったのがことしは八・八%に減っていく。まさに、これは政府が進めている行革路線そのもののあらわれた姿でありましょう。  そこで、これから二十一世紀に向かって教育改革を論じていくというそのときに、こういった防衛費の突出、教育予算の後退、来年度一〇%経常費切り込みということでやられていくそのことが、一体教育改革をこれからやっていくという今の時点に立って見直さねばならぬ非常に大事な経済的な土台の問題ではないか。このまま続けていったら教育改革はあり得ない、私はこう思うのですが、大蔵大臣の所見はいかがでしょうか。
  52. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 教育予算の多い少ないということが必ずしも教育の水準を決定する絶対要件だというふうには必ずしも思っておりません。教育予算というものにつきましては、やはり従来の厳しい財政事情のもとにありましても、必要な予算はこれを確保してきたつもりでございます。したがいまして、これからも、あるいは教育改革というものはその内容によりましては効率化、合理化によりまして財政負担を軽減する場合もそれは幾らかあるでございましょう。また、新たな負担を伴うものでもあるでございましょう。しかしながら、現在の置かれておる財政の立場というものを御理解いただきますならば、その土台の上に立って、より効果ある議論が積み重ねられていくべきものではなかろうかというふうに考えておるところであります。
  53. 橋本敦

    ○橋本敦君 今の大臣答弁は、私はこれから教育改革を論じていくに当たっての大蔵大臣の政治姿勢としては絶対に承服することができません。  端的に伺いますが、今の現状で概算要求基準一〇%切り込まれるという状況の中で、五十九年度で四十人学級実現の凍結は終わるはずでありますが、六十年度から四十人学級実現、これは回復をして手がけていく、抑制解除をする、当然だと思いますが、それは財政的に展望がありますかありませんか、大蔵大臣いかがですか。
  54. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ちょうど五十五年予算編成の際に、当時の森文教部会長さんと議論をいたしましたわけでありますが、いろいろ議論を詰めまして、ぎりぎりの決着点として十二年間ということを考え出していただいたわけであります。そうして、その後、行革特別委員会等において、いわば財政再建期間中としての措置が行われておることも承知いたしております。しかし、私どもは今日の時点でいわゆる四十人学級の計画そのものを放棄したわけではございません。したがって、これが財政面においての対応につきましては、年末に向かっての予算編成の際、国全体の予算との調和を図りながらもその計画というものが現存しておるということを念頭に置いて交渉に当たるべきものであるというふうに考えております。
  55. 橋本敦

    ○橋本敦君 時限立法という本来の法そのものの性格からすれば抑制措置は消滅するわけでありますから、当然六十年度から復活しなければならぬ、そのことを頭に置いて財政運営は協議に応じていく、やっていく、こういうふうに受け取ってよろしいですか。
  56. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 十二年間でやらなければならないこと、そしてあくまでも五十九年までの時限立法であるということ、これは当然念頭に置いておかなければならない現実の問題だというふうに考えております。
  57. 橋本敦

    ○橋本敦君 少し含みがありますか。六十六年度までに実現すればよろしいので、だからしたがって六十年度から二、三年、事情によってはこの行革審の極力抑制という意見に従ってさらに凍結延長することもあり得る、だがしかし六十六年度までには計画達成、こういう含みも含まれての御答弁ということでしょうか。
  58. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) そこまでぎりぎりお詰めいただきますと、私ども財政当局は予算の原案の作成、そしてまたそれまでの間は原局との間の調整ということになりますので、私がそこまで踏み切ったお答えをするのは私の答弁の能力の範囲外のことになるではなかろうかというふうに考えます。
  59. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は、教科書無償廃止を大蔵省が打ち出す、あるいは今言ったように四十人学級実現に向けて大臣の決意を表明できない、ここに今日の重大な問題があると思います。  そこで、最後の質問になりますが、この教育改革なるものを文部大臣の直属の審議会に任せないで、総理が内閣を挙げて取り組むということで臨教審という、こういう状況で進めようとされているということについて、内閣を挙げて取り組む教育改革の中で大蔵省、大蔵大臣はどういう役割が期待されているのか、それをどうあなたが認識していらっしゃるか、私はそのことをはっきりと聞きたいのであります。  先ほど大臣は、財政事情の困難であるということを言われました。しかし、財政事情は戦後直後は最も困難な時期であったでしょうのそのときに教育刷新審議会報告書、「教育改革の現状と問題」と題して一九五〇年に出されたこの報告書はどう言っていますか。こう言っています。「敗戦日本の経済財政の窮乏の時に当って、何よりも経済産業の復興が第一」だけれども、しかし教育は揺がせにできない、「それ故に、わが国の財政政策において、教育に占むべき正当な地位を与え、できれば、他の諸事業に優先して一定の予算が教育に与えられるよう要請しても、不当ではないであろう。」、こう言っているのであります。まさに教育はそれほど大事だということです。軍事費の伸びを多少抑えても四十人学級復活は必ずやる、教育条件整備は必ずやる、これであります。この法案自体は教育基本法の実現を目指して、こう言っているんです。その教育基本法は、まさに教育条件の整備を最大の政府の任務としているわけです。  そこで、最後に伺いますけれども、こういうような状況の中で大蔵大臣として、この行革審の中で政府挙げて取り組む教育改革の財政を担当されるあなたとして、一体いかなる任務を果たすべきなのか、大臣の御認識と御意見を最後に伺って、私の時間が参りましたので、質問を終わります。
  60. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 一九五〇年当時と今日との事情の差はございますが、当時は、なかんずく一九五一年が講和条約でございますから、そういう厳しい中でありましただけに、いわゆる社会経済情勢の変化に対応するための教育ということがより強く論じられておった時代である、私もそういうふうに事実認識をいたしております。  私もそのころは教師でございましたが、今、大蔵大臣としての立場で申し上げますならば、当然のこととして、内閣一体の責任において、また御可決いただきますならば総理大臣の諮問機関としてできるであろう臨教審でございます。当然、私どももその閣員の一人として責任を負わなければならない立場にあるということは自覚をいたしておるところであります。したがって、みずからの財政という厳しい立場を踏まえつつも、従来同様、その中で教育予算というものの必要性に対しては、絶えず文部大臣の意図せられる方向と協議、調和をとっていくべきものである、それが財政当局に与えられた務めではなかろうか、このように事実認識をいたしております。
  61. 橋本敦

    ○橋本敦君 終わります。
  62. 久保亘

    久保亘君 私は、ただいまここで議題とされております国民教育審議会設置法案提案者でございますが、きょうは内閣委員会のメンバーとして、政府提案臨時教育審議会設置法案について、特に中曽根総理にお尋ねをいたしたいと思います。  教育改革国民の声である、そして教育改革国民合意のもとに進められなければならないという点において、言葉の上では総理と私ども考え方は一致しているように思います。しかし、なぜ国民教育改革を求めているか、そしてその教育改革を何の目的でやるかということになってまいりますと、かなり総理と私の考え方は違いがございます。その点について、本会議並びに委員会審議を通じて政府の見解を私もずっと確かめてまいりました。しかし、今日でも国民の皆さんがこれらの問題について納得のいくような政府の説明は行われていないように思うのであります。なぜ教育改革が必要なのか、それは何の目的でやられるのか、まずこの点について総理大臣から改めてここで御回答いただきたいと思います。
  63. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 久保さんと私の考えが、私はそう差があるとは思っておりません。やはり教育基本法のもとに、よい子供、またよい社会を、そしてもっと大きく世界的日本人をつくりたい、そして行く行くは東西文明を融合するていの大きな気持ちを持った日本人をつくっていきたい、そういうような気持ちで今回の教育改革というものを考えて、二十一世紀に向かって目を向けておるつもりでおります。  それには、終戦以来今日まで続けてまいりました教育については、非常に立派な功績を残した部分もございます。またしかし、最近いろいろ指摘されますような教育上の欠陥、あるいは青少年の暴力問題や犯罪問題であるとか、あるいは子供の入学試験の重圧の問題であるとか、あるいは社会における採用基準等の改革の問題であるとか、教育内容の問題その他についても、いろいろ社会からも指摘されているところもあり、それらの欠陥を是正しつつつ今のような目的に向かって教育の改革を目指していく、こういうことでございますから、私はそれほど違っているような気はいたしません。多少やり方においては違っているかもしれませんが、理念においては一致しているのではないかと拝察いたしております。
  64. 久保亘

    久保亘君 それでは、私は少し具体的なことをお尋ねいたしますが、今教育基本法の精神に沿って教育改革をやるというお話でございました。私は、中曽根さんのそういうお言葉を聞くときに、どうしても心にひっかかって離れないあなたの国会における御答弁があるわけです。教育基本法の解釈は私の考えが中曽根内閣としての解釈である、これは私は御訂正になった方がよいのではないかという気がいたします。法の解釈を時の政権の頂点にある者が自分の解釈で決めていくということは、私は間違いだと思うんです。教育基本法の精神にのっとりという御主張ならば、やはり教育基本法の精神というのは、これは法の国民全体の理解に基づく解釈、専門的には法のしかるべき解釈を行う機関があるわけです。意見が食い違えば、そのときには。おれの解釈が基本法の解釈であるということでは、やっぱり私どもは納得のできないことがございます。この点はいかがでございますか。
  65. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) およそ、行政を行うときには、法にのっとって行うべきものでございます。そして、政府が法にのっとって行政を行うという場合には、その法に関する解釈を一定して、政府側の見解というものを確立して行わなければ正しい行政は行えません。そういう意味におきまして、法制局というものもありまして、法の解釈を常に我々は聞いておるわけでございます。そういう考えに立ちまして私は申し上げておるので、一個人中曽根というふうにもしお受け取りになりましたらそれは誤解でありまして、内閣総理大臣中曽根康弘として解釈をしている、こういうことで御理解願いたいと思うのであります。
  66. 久保亘

    久保亘君 そのように申されますと、私どももここで議論をしていくことが非常に難しくなるのでありますが、それでは私は聞きたいことがございます。  中曽根さんは、これまでしばしば教育臨調という言葉をお使いになりました。そして、実際に臨教審提案する段階に至るころからは、教育臨調という言葉はむしろ不適当である、このように申されておりますが、臨教審教育臨調というこの言葉はどこが違うんでしょうか。
  67. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 過去におきまして、大分前ですが行管長官のころ、教育臨調ということを公でない場所で使った記憶はございます。それから総理大臣になりましてから教育臨調というような言葉も使ったか使わないか、これは余り記憶にありません。むしろ、中教審を中心にしてという言葉は、正月に伊勢参宮をいたしましたときにたしか申し上げたと記憶しております。  しかるところ、いよいよこの機関をつくるについて野党の皆さんと党首会談をいたしました折に、特に民社党の委員長から教育臨調というはっきりしたお言葉がございまして、むしろ中教審よりもっと幅の大きい、スケールの大きい発想でやれという御意見もあり、また公明党の委員長からもそれに似たお考えをいただきまして、党首会談のその会談の結果を援用させていただきまして、そして今回のこういう法律にしたわけでございます。  教育臨調という言葉は私は余り適当でないと、その後思いました。特に、総理になってからそう思っております。なぜなれば、行革と教育とは違うのでございまして、教育という面は非常に心の問題があるわけであります。行革の面は、心もございますが、むしろ政府機構の削減あるいは予算の縮減というような物の世界がかなり強いわけでございます。そういう意味において、教育と行革とは基本的に違う点もございます。一致している面ももちろんなきにしもあらずでありますが、違う面があるわけです。そういう意味において、行革における臨調という考え方でこれを類推されることは適当でない、そういう意味におきまして、今回このような名前にもし、内容もしたわけでございます。
  68. 久保亘

    久保亘君 中曽根総理がこれまで教育臨調というお言葉をお使いになりますときには、行革、そして教育臨調、それから憲法改正、こういうものがずっとつながっていった御発言が多いわけでございます。教育臨調は適当ではない、こういうふうにお考えになったというのは、臨教審というのは、将来の憲法改正の布石とか、入り口にするとか、土台づくりにするとか、そういうものでは絶対にない。臨教審というのは、あくまでも日本国憲法、教育基本法の上に立って日本の教育の問題を考える機関である、こういうことで臨調と明確に区別をされたものだと理解してよろしゅうございますか。
  69. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 教育改革あるいは今回の臨教審というものは、憲法改正につながるものではございません。これは前からも明確にしておるところで、要するに、先ほど申し上げましたような理念に基づいて教育を改革し、二十一世紀に向かっての堂々たる世界的日本人をつくろう、そういう考えに基づいて行うものでございます。
  70. 久保亘

    久保亘君 それでは、今度は憲法改正ともかかわってまいりますが、総理がこういうことを御発言になったことがございます。徴兵制というのがもし憲法改正によって行うことが困難であるならば、それ自体を国民投票にかければいいではないかという御発言があったと物の記録に書かれてございます。それからまた、ある大学の総長をなさっておりましたころには、特攻隊についてお話しになったことがあるようです。これらの総理のお考えというのが今も変わっていないとしますならば、やはり中曽根さんは、やがて自分の国家観といいますか、そういうものに基づけば徴兵制というのはこれは必要なものなんだ、こういうふうにお考えになっているのじゃないか。憲法改正を必要とするかしないかという論議を離れて、徴兵制というのはあなたの政治観といいますか、国家観といいますか、そういうものの上に立てはこれは必要なものである、こういうふうにお考えになっているのではないかという御発言を数多く見受けております。この点については、現在どのようにお考えでございましょうか。
  71. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、徴兵制は否定しております。マッカーサー占領下、あるいはその直後におきましては、憲法問題が論ぜられました際に国の防衛という問題が論ぜられまして、そういういざ国を守るという場合に、やむを得ぬという場合に、そういうことが起きた場合には国民の意思にかかってそういう問題は決めるというようなものを書いたことはございます。しかし、それも上から命令してやるとかなんとかというのでなくて国民の意思が決めるものだ、そういう意味でそれは言っておったものです。それもマッカーサー占領中、あるいはその後の短い期間で、憲法調査会が昭和三十二年から始まってからは私は徴兵制というものは否定もし、三十六年憲法調査会の最終総括におきましては正式に私はそれについては否定をしております。それが私の一貫した態度であります。  それから特攻隊に関する面については、私も過般の戦争には従軍をした一人であって、我々の戦友も特攻隊として国を守るために壮烈な戦死をした人もあるわけであります。それらの人々の国を愛する気持ちを毫も疑ったことはないし、私は立派なお心がけであり、感謝しておるところであります。戦争に負けたからといって、すべてが悪であって、国のためにそのように美しく殉じた人まで私はむちを打とうとか、あるいは異議を差し挟もうという気持ちはありません。
  72. 久保亘

    久保亘君 私が申し上げておりますのは、そういうことではございません。その時代に生きた人たちのその時代における評価がございます。あなたも軍隊に行かれたということでありますが、私は少年時代に軍隊に参りました。終戦まで軍隊の学校におりました。その中で戦前の教育を体験してまいりました。私が今申し上げているのは、あなたが御発言になっておりますのは、いわゆるあの特攻隊的なあり方というものが国家主義的な感覚のもとにおいて今日の時代においても是認されるというような御発言になっているように私は読み取ったから、そう申し上げたのでございます。しかし、その点については、時間もございませんから、これ以上論争をいたしません。  ただ、そういう総理におなりになります前の中曽根康弘という政治家の一つの信条といいますか考え方というものを、ずっと各種の発言をつないで見てまいりますと、私どもは何かやはり中曽根さんのもとであえて総理直属の機関をつくってやるとおっしゃっております。そのことの中に、この教育改革が今、国民が求めているものとは違うものをおやりになるのではないかという危惧の念は、これは私一人ではございません、非常にたくさんの人たちが感じているのであります。その点について、ぜひ総理の明確なお答えをいただきたかったのでありますが、きょうは時間もございませんから、次のことをお尋ねいたします。  今のことと関連をいたしまして、それでは、そのような立場に立って教育改革を話し合ってもらうその審議会に対して、一体何を諮問されますか。具体的に諮問をなさるその柱となるべきものは何なんでしょうか。この点について、この委員会審議においても必ずしもみんなが納得がいくほど明白になっていない、私はこう思いますので、総理から直接お聞きしたいのであります。
  73. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 諮問は、法律が成立いたしましたら文部大臣と相談をし、文部大臣の助言をいただいてつくってまいるつもりでありますが、いずれにせよ、包括的な諮問になると思います。そして、先ほど来申し上げましたように、二十一世紀を目指したおおらかな世界的視野を持った日本人をつくっていきたい。それも教育基本法の精神のもとにつくっていく。そういうような気持ちの上に立って諸般の教育、生涯教育から幼児教育、あるいはそれらの制度、内容等々すべてについて包括的な意味における諮問をいたしたらいい、そう考えております。
  74. 久保亘

    久保亘君 ただいま文部大臣と相談し、文部大臣の助言を得てというお話がございましたが、法律には私の記憶では明示していないように思いますが、この審議会の主務大臣は文部大臣とする、こういうことのようでございますが、諮問については最初、総理大臣が大綱的なことを審議会お話しになることはございましても、具体的な審議会に対する諮問はこれは文部大臣がおやりになるものと理解してよろしいでしょうか。
  75. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 諮問は内閣総理大臣が行うべきものであります。しかし、諮問の内容については文部大臣の助言を得て行うつもりであります。
  76. 久保亘

    久保亘君 この諮問の中で、これまで幾つかお述べになったものの中に教育理念という言葉を使っていらっしゃいます。その審議会でやってもらいたいことに、教育理念、人間的な教育のあり方の探求というような言葉もお使いのようでございますけれども教育理念ということについて具体的にはどういうことをお考えになっているんでしょうか。
  77. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ、諮問の内容について文部大臣と相談もしておりません。法律もできもしないうちにそういうことは行っておりません。だから、理念とかなんとか言われましても、まださわっていないことでございますから、お答えすることは難しいと思っております。
  78. 久保亘

    久保亘君 しかし総理大臣も、去年、教育改革論を打ち上げられてから既に一年以上たちますが、この間に随分具体的なことをおっしゃったこともございます。それから今のようなふうにおっしゃることもございます。これは随分変わってきたと思うんです。例えば、あなたの私的諮問機関でありました教育と文化に関する懇談会の提言、これも審議会の重要な審議の柱だという意味のことをおっしゃったこともございます。そういうようなことをずっと通していきますと、やっぱり総理自身は胸の内にこの審議会で何をやってもらいたいということはおありになるのじゃないですか。何をやってもらいたいということがなしに、とにかく教育改革審議会をつくればおれの再選間違いなし、そんなことでお考えになったのじゃないと思うんです、私は非常にまじめな宰相だと思っておりますから。それで、何をやってもらいたい、その柱になるべきものはおありになると思うので、それをお聞きしておるんです。
  79. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何をやってもらいたいと思うものはうんとあります。これは体に満ちているぐらいあります。ありますが、正式に諮問となりますと、それはちゃんと整理して、後世にまで残る大事な内容でもございますから、文部大臣と相談をしてやらなきゃいけません。したがって、国会の重要な御審議の中で理念という言葉が出てまいりますと、これは責任と権威を持った内容にわたることでございます。したがって、もし久保さんかどういう気持ちで改革を欲しているかと言われればお答えする用意はございますけれども、しかしそういう権威と責任を持つような調子の発言を聞かれますと、こちらも慎重に考えなければならぬと思っておる次第であります。
  80. 久保亘

    久保亘君 それでは、きょうは時間が非常に制限をされておりますから、理念にかかわって私はお聞きしたいんですが、憲法や教育基本法に基づく戦後教育の理念の根底にあったものは、民主主義と平和主義、そして個人の尊厳の上に国家を考えてきた、こう思います。この理念についてはこれは変わるべきものではない、このようにお考えでございましょうか。
  81. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 立派な理念でありまして、変わるべきものではない。そのほか、もし入れれば国際的視野、そういうものも入ると思います。
  82. 久保亘

    久保亘君 とかく二十一世紀論で幻惑される面がございまして、それでみんなわかりにくくなっているうちに、何かやっぱり従来の鳩山内閣のときの臨時教育制度審議会などの諮問事項などというのが生き延びてずっとつながってきて、今、中曽根内閣のもとで日の目を見ようとしているのではないかという危惧の念があるわけです。  鳩山内閣のときには、諮問事項というのは大きく四つに絞られておりまして、教育基本法の改正というのが第一の柱になっております。そして、道徳の基準の検討とかありまして、そういうものをつないでまいりますと、戦後の民主主義、平和主義、そして個人の尊厳の上に国家を考えていくという、そういうものについて戦前の考え方に引き戻そうとする色合いが非常に濃かったと私どもは当時のいろいろな文献を見ながら強く感じているのでありまして、これらの点について今、中曽根総理が、私の考え方と一致しておる、理念については変わりはない、こうおっしゃいました。私は、大変今の総理のお言葉を安心して聞きました。そのことが具体的にこの教育改革審議会を運営されていく中で生かされることを強く期待いたしております。  しかし、教育改革について何を審議するかというのもこれからの問題である、そして文部大臣を中心にしてこの審議会をやってもらう、こういうことでずっと御説明になってきましたのに、なぜ総理直属の臨教審でなければならないのかという点については国民の皆さんの中にもいまだにどうしても理解できない。なぜ臨教審でなければならないのか。今の存在する制度で言いますと、中教審ではなぜいけなかったのか、それがどうしても理解できない。ただ、わかっておりますのは、こういうことをおっしゃっております。もはや、教育改革は一文部省の問題ではない、内閣レベルの問題である、こういうことを説明されておりますが、教育に関する改革の審議をしてもらうのがなぜ一文部省の問題ではない、これは内閣レベルの問題であると言って総理大臣の直接管理する機関に持っていかなければならないのか、その点については大変理解がしにくいのです。この点を、ひとつ国民の皆さんに十分理解がいくような説明をしていただきたいと思うんです。
  83. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 教育改革につきまして、鳩山内閣時代の臨教審お話が出ましたが、あのころはマッカーサーの占領下から独立したそのほてりがまだあった時代で、我々もやはりそういう人間の一人、あのころ生きてきた人間でありますから、独立国家への回帰というものを強く念願しておった、そういう面もあったので、あれも時代のさがであったろうと思いますが、その後、随分大きな時代の変化もあり、今の文部大臣は戦後派でありまして、戦後派もまだ四十代のちゃきちゃきの戦後っ子であります。そういう意味におきまして、清瀬文相、鳩山総理のコンビと森文相、中曽根総理のコンビというのは、非常に時代も変わり、またそういう現実の上に我々は立脚してやっておる、また受けた教育内容も学生時代受けたものはおのおのまた違う内容を持っておるので、久保さんが御心配なさるようなことはいささかもございませんので、御安心願いたいと思う次第であります。  それから第二に、なぜ総理直属に持っていくかということでございますが、これは内閣を挙げて総がかりでやろうという我々の決意のあらわれであり、それを実行しようとしておる我々の意思の強さ、願いというものを示しておるのであります。  中教審におきましても、もちろん四十六年の答申あるいは四十九年の答申等におきまして、なかなか立派な見ごたえのある答申もしていらっしゃいます。それらについては、今後の御検討に当たって十分立派な資料として御参考にしていただきたいと思いますし、また先般の文化と教育に関する懇談会の結論等についても、あるいは審議過程についてもよく御参考にしていただきたいと念願をいたしておりますが、しかし今日の時点になりますと、今日ぐらい教育改革国民全体が関心をお持ちになったことはないと思うのであります。これを実行していくというためには、中教審の答申が出たころからさらに大きな時代の変化もあり、新しい問題も続々と出てきております。国際的視野の問題なんかは非常に強くまた登場している問題でもあります。そういう面から見まして、今回におきましては、もっと総合的な広い視野に立って、そして内閣総がかりで行おう、そういう気迫と念願に立ってこれを行わんとしている、そういうことで御理解を願いたいと思っておるのであります。  一言で言えば、例えば大学教育を改革する。大学教育の改革の中で一つ大事なことは、その卒業生たちを受け入れる社会の問題です。就職の基準というものもあります。青田刈りであるとか学歴偏重であるとかということから来る大学教育のひずみや、高校、中学校にわたる大きなひずみという問題もございます。こういうような大学から社会へ出ていくときの接点というものをどう改革するかということがまた一つの大事な関所でもあります。そういうような点を改革していくというときには、通産省なりあるいは大蔵省なり、内閣全体の力がなければこれはなかなかできにくいのであります。一つの例を申し上げればそういうことでございます。  そういう意味において、今回は強い意思を持ってそういう徹底した改革を行う、そのために各省あるいは各国務大臣の全面的な協力体制をつくっていこうという考えに立って総理の直属にした、こういうことであります。
  84. 久保亘

    久保亘君 教育改革について、政府がその実行について総理大臣以下全責任を持ってやろう、こうおっしゃる気持ちはわかります。これまでにそれをやってもらいたかったと思います。今までは、とにかく教育予算も行革と一緒にして切ってしまうということはおやりになったけれども、今のような総理の気迫というものを教育予算にお示しになったことは余りないように思います。むしろ、そういう実行責任という点について、総理大臣以下それこそ一致団結して火の玉になってやってもらいたい、これは国民の願いでございます。  しかし、教育改革の方向を議論していくその審議会については、余り総理大臣が面接御介入にならない方がよいのではないかという意見国民の間に非常に多いのでございます。だから、その教育改革の方向が審議会から答申されたものをどう実行していくかという内閣の責任と、教育改革の方向を論議することについて内閣が直接介入しようということとは全然別の問題である、このことを私は前々から指摘し、そういう立場に立って対案も提出をしているのでございまして、今の総理の御熱意はぜひ実行の方で生かしていただきたいのでございまして、あなたが国会において後ほど御訂正になったとも聞いておりますけれども委員の任命に当たって国会の同意を得るようにすることは教育の問題についての中立姓の確保が特に要請されることからして余り望ましくない、こういうことをおっしゃった。これは総理の一つの本音だろうと思う。  それならば、なおのこと、私は教育基本法第十条との関係に疑義を生ずることがないように、そして教育改革の方向が国民的な視野で論議ができるように、この両方を調節して、そしてそこから生まれた結論については、行革審の意見がどうであろうとも、この教育に関する審議会の答申について総理大臣が先頭に立って責任を持ちます、こういうことで教育改革を考えてもらいたい、これが国民の多くの人たち希望ではないか、私は今でもそう思っているのでございますが、違いますか。
  85. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 教育基本法を守って、そして今回の教育改革を行わんとしているという点は、文部大臣も私も全く同一であります。しかも、国会に対する内閣全体の行政首班としての責任者は私でありまして、その私が国会に対して全責任をしょっていかなければならぬのであります。教育に関する重大性というものを考えれば考えるほど、自分が国会に対して責任を持ち、諮問からあるいは審議に対するその実行、全部責任を持って行いたい、こういう考えに立って行う、そして国民皆様方にもそういう政治姿勢を見ていただいてまじめに一生懸命やりたい、こういうことであります。
  86. 久保亘

    久保亘君 今の憲法上の内閣の制度からいたしますと、必要があればあなたが文部大臣を兼務されることもできるのでありますから、そういう点では私どもが申し上げていることは制度上必ずしも政治権力の介入を防げるものではないかもしれません。しかし、それであるにしても、教育基本法の定めている精神というものを生かしていくために、やっぱり政治が直接介入する危険性というものをできるだけ排除する努力というのは、教育基本法の精神にのっとって教育改革を考えるという立場からは必要なことだ、私どもはそういうことで意見を申し上げているのであります。この点は、中曽根さんと私との考え方が最も食い違うところかもしれません。しかし私は、先ほど申し上げましたように、内閣がやるべき教育に対する責任というものも、これは憲法や教育基本法を読めばはっきりしているのでありまして、その責任には限界もあります。その限界を超えて、しかもやるべき責任の方は少しあいまいにしていくというのが今のやり方ではないかということを私は大変気にしているのであります。  それで、その点について具体的なお尋ねをしたいんですが、行革審が総理大臣のもとに意見書ですか答申を、この前、提出されました。あの中には教育予算の抑制に関する項目が列挙されております。大学に関するもの、教職員の定数に関するもの、私学の助成に関するもの、学校給食に関するもの、公立文教施設に関するもの、一つとしてこの点については教育の重大性にかんがみ抑制すべきでないと書いてあるものは一つもありません。みんな「抑制」、「極力抑制」、「厳に抑制」、いろいろ言葉の使い分けはありますが、「抑制」という言葉で統一されているのであります。この答申をお受けになった総理大臣は、閣議においてこれを最大限に尊重する、こうおっしゃったそうです。これが内閣の方針だとするならば、臨教審は生まれる前から重大な制約を受けたということにならないでしょうか。もし、日本の教育のあるべき姿、必要なことについて臨教審が答申を持ってくるならば、それも最大限に尊重するとおっしゃるんですか。そうすると、この矛盾するものを、どちらも最大限に尊重するというのはどこで調整されるのでしょうか。
  87. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先般提出されました土光さんの行革審の意見書は、最大限に尊重してこれが実現に努めるつもりでおります。教育に関する点についても、たしか四項目が触れられておりまして、大学教育あるいは公教育あるいは施設の問題あるいは私学の問題等にわたった点がございます。我々はそれらの点も片っ方では踏まえ、また片っ方では今回の成立させていただきまする臨教審意見も踏まえ、こちらの方も尊重すると内閣尊重義務がうたわれておるわけであります。  そういう意味におきまして、両方よく勘案しながら、節約すべきものは節約し、冗費は省き、しかし必要なものはこれは出さなければいけない。さもなきゃ、何のための教育改革であるか、そういうことになるのでありまして、両方の尊重義務というものを内閣の責任において判定をして実行していく。今、行革審の意見書が出ました今日においては、まず一般的にこれを尊重すると、従来どおりの我々の決意を表明いたしました。次に、臨教審の答申が出ましたら、これまた同じように我々は尊重義務を負っているわけでございますから、それらの点は内閣の責任において取捨選択させていただく、そういう考えに立って、必要なものは経費として出さなければならぬ、そう考えております。
  88. 久保亘

    久保亘君 既に、大蔵大臣の方からは、財政再建という国民的な課題を無視して教育改革などということを考えることはこれは現実的でないと国会の中で答弁されております。そうなってくると、その行革審が財政再建という立場に立って重要な制約を加えている。もっとさかのぼって臨調の答申まで行きますならば、既に育英会の有利子などというのは法案として提出され、成立しております。教科書有償論はいまだに大蔵省の方から強い意見としてあると聞いております。しかし、これを行革審の中に入れるとどうも臨教審審議にぐあいが悪いということがあったとかなかったとか報道されております。そういうことでやられてまいりますと、結局、総理の意気込みのいかんにかかわらず、教育改革は行財政改革の枠の中でしか考えられない、こういうことになってくるのじゃないでしょうか。  もし、その枠にとらわれる必要はない、制約はしない、これはそれこそ二十一世紀にかけての日本の教育という立場に立って自由に論議し、すぐれた結論を出してもらいたい、そのときには私が尊重の義務を負います、こうおっしゃるならば、そのときもし食い違ったら臨教審の答申をまず尊重するという立場がないと、両方最大限尊重しますと言ったって、これはできないことを言っているんです。できないことでしょう。制約しなければ矛盾することはわかっているのだから、できないことじゃないですか。できないことをどうして両方最大限尊重できるんでしょうか。
  89. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それをやるのが政治というものだろうと私は思っております。政府は、三大改革ということを言っております。行政改革、財政改革、それから教育改革、この三大改革の中に教育改革というものもあるわけでございます。しかし、まだ教育改革内容は答申として出てきておりません。既に、前の二つは出発して実行中であります。そういうような中で、これから新しく何が出てくるか、我々はそれを刮目して待っておるわけでございます。  もとより財政改革というものは、今まで政府が汗を流して国民の御協力を得て努力してきたところであって、行政改革、財政改革の枠の中で教育改革というものも一応おさめられるものであります。この枠外に無条件であるものではありません。しかし、教育改革内容で非常に重要なものでこれはやらなきゃならぬという問題については、政府の責任においてそれは処理すべきことは当然であります。しかし、今までの教育制度の中で、これは我慢できるとか、これよりもこっちの方が優先度が高いとか、新しくこっちに出てきたお金をもっとふやさなきゃならぬから少しこっちの方へ回してもらうとか、それはそのときの情勢を見て、そして重点度合いによって政府の責任においてやることであり、新しいお金をつけ加えることも出てくるだろう、そう考えておるのであります。
  90. 久保亘

    久保亘君 中曽根さんは大変頭のいい方ですから、こう言えばああ言うという言い方で、大変上手に応答をしておられます。しかし、考えてみると、そういう応答をなさっても構わないような気もするんです。この答申が出るのは三年後ですから、そのときには恐らく中崎根総理は責任ある地位にいらっしゃらないと私は思う。しかし私は、そのときの内閣総理大臣がやったことについて、それこそ守秘義務ではないが、やめた役といえども政治家としての責任はついて回る。  それからもう一つは、今少し本音を言われたのは、行財政改革の枠を超えての議論はそれはできないという意味のことをおっしゃいました。やっぱりまだ諮問事項も決まらないうちから行革審の方が先行して、教育改革論議に一定の財政的枠をはめたことは事実です。これは私は大問題だと思います。きょうは、この問題について深く議論をする時間がありません。もう少し、どうしても聞いておきたいことがありますから、次に質問を進めます。  次に、私がお尋ねしたいのは、臨教審の組織と運営について若干お尋ねをしたい点がございます。  まず、主務大臣を文部大臣にする。それから総理の御答弁の中に、臨教審の実質的責任者は文部大臣だ、こういう発言がございます。実質的責任者は文部大臣だ、そして事務局の局長は文部次官、こういうことから見ても、何であえて臨教審総理直属としなければならなかったのかという疑問が残るのでございますが、それはここでは議論はおくとしまして、実質的責任者を文部大臣とすると御発言になっております総理大臣は、文部大臣にどこまで臨教審に関する権限を委譲されるんですか。
  91. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最終決定は、事を行う場合には私が決めます。私が決めるというよりも、内閣で決めるということであります。しかし、それに関するいろいろな案を出していただく、あるいは私に対するいろいろ助言をいただく、これは文部大臣にしてもらおう、一言で簡単に申し上げればそういうことだろうと思います。
  92. 久保亘

    久保亘君 それでは、具体的な問題で少し承りますが、主務大臣を文部大臣として、法律の中に、委員の任命は「文部大臣意見を聴いて、」総理が「任命する。」と定められております。「文部大臣意見を聴いてこというのは、具体的にはどのような手続なのでしょうか。これは、文部大臣がいろいろと選考した委員について総理大臣判断をするということなんですか、それとも総理大臣がこういう人を委員にしたいと思うことについて文部大臣意見も聞くということなんですか、どちらでしょう。
  93. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) お互いに胸襟を開いて相談をしてということだろうと思います。
  94. 久保亘

    久保亘君 「意見を聴いてこというのは法律に定めてある文章なんです。これは任命の手続なんです。そんなあいまいな言葉じゃいかぬのです。「意見を聴いて、」「任命する。」となっているのですから、「意見を聴いてこというのはどのような手続なのか、これは文部大臣どうですか。
  95. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 任命するのは私でありますから、責任は私のところへ全部がかってくる。責任はしょいます。しかし、どういう人が適当であるかという点については、私よりも教育については視野の広い、今までの経緯をよく知っておられる、そして教育専門家の補佐も十分得ておられる文部大臣意見をよく聞いて、そして相談して決めたい、こういうことであります。
  96. 久保亘

    久保亘君 具体的には、文部大臣がまずその選考の最初の段階をおやりになって、その上で総理大臣と協議される、こういうことになりましょうか。
  97. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 文部大臣意見をよく聞いて、あなた何を考えているかな、どういう人がいいかな、そういうふうに意見を聞いてみる。しかし、これはこういうことはないかねとか、こういう人はどうだろうかとか、私が言うことももちろんあり得るでしょう、最終任命権者は私でありますから。しかし、そういう教育の改革という問題については、かなり技術的な問題や今までの経緯という問題もありますから文部大臣意見もよく聞いてやる、そういうことであります。
  98. 久保亘

    久保亘君 次に、会長の指名については、総理の専権事項とされて、法が定めることになっております。民主主義の一般的なルールというのは、この種の審議会などの会長というのは、委員になられた方がどなたも会長を選ぶ権利もあり、選ばれる権利もあるということが民主主義の一般的なルールなのじゃないか、私はこう思っておるんです。会長に限っては文部大臣意見を聞いてということもございませんで、総理委員の中から指名する、こうなっております。これは一体、会長の指名について総理が専権事項として御所掌になったのはどういう根拠でございますか。
  99. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この審議会の成果、運営等については、国会並びに国民に対して総理が全責任を持って行います、しょっていきます、そういうことの一つのあらわれであり、審議会重視の意味でもあると私は考えております。
  100. 久保亘

    久保亘君 私は、その点において大変見解を異にいたします。これは会長を自分の意中の人を定めて、これだけはたとえ国会の同意で修正をされようとも会長の指名権だけはおれが握って離さない、ここにやっぱり総理大臣のこの教育改革にかけるあなたなりの非常な意欲を私は見るわけです。しかし、それは私どもから見ると大変危険な意欲であります。教育に対する政治の支配介入、権力の支配介入というのはまずそういう点において私どもは排除されておかなければならぬ非常に重要なことだと思うのでありますが、少なくとも総理が指名をされるにしても、審議会の全体の意見を尊重するというような手続は必要なんじゃないでしょうか。会長は、初めから会長としてそれでは国会に同意を求められるんですか。決まっているわけでしょう。その任命する委員の二十五人の中に一人これは会長だということで交渉なさっているわけでしょう。そうすると、国会委員の任命同意を求められるときには、会長候補会長候補として出てくるのですか。
  101. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府は、今回の教育改革については全責任を国会に対しあるいは国民に対して負う、そういうまじめな気持ちから責任感というものも表へ強く出てまいりまして、それで会長総理大臣の指名、そういうことにしたわけであります。したがいまして、委員の任命という場合に、ある審議会においては会長互選というのがよくありますけれども、今回はそれをとらなかったのであります。委員を任命するために将来いろいろ交渉する場合があるでしょうけれども、そのときに会長はどなたでしょうかと聞かれるかもしれません。その場合には、多分この人になるかもしれませんとお答えするかもしれません。その人では自分は嫌だ、そういう現合にはそういう方はならなくてもいい。私らはぜひなっていただきたいと思いますけれども、どうしても嫌だという方を委員お願いするということはできない、そういうことになると思います。
  102. 久保亘

    久保亘君 わかりました。その点について、やはり私ども総理と大変意見を異にするものであります。  ところで、会期あと二日になっておりますが、総理大臣は、なおこの国会委員の同意をお求めになるおつもりでございますか。
  103. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最後まであきらめないで努力いたしたいと思います。
  104. 久保亘

    久保亘君 ということは、八日の会期までに委員の同意を求めるように作業を進めたいということですか。
  105. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 本法律案の成立の日にもよりますけれども政府としては最後の瞬間まで努力すべきものであると考えています。この国会同意というものが、衆議院におきまして修正せられました。その修正意味をわきまえますと、政府としては全力を尽くして努力すべきものであると考えておるわけであります。
  106. 久保亘

    久保亘君 わかりました。  それでは、私聞きたいことがございます、委員の任命の基準について。あと二日間の間に同意を求めるところまでやりたいと今もお考えになっているんですが、具体的な折衝はしない、これはこの委員会でも文部大臣が公言されてきたことです。ところで、その任命の基準についてはいろいろお考えがおありになるのじゃないかと思う。まず、分野別の基準とか、男女別の構成比であるとか、あるいは年代別の構成比であるとか、こういうものについてもし御検討になっておれば、大体こういうようなことを考えているということを教えていただきたい。
  107. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点については文部大臣が既にお答えであると思いますが、幅広く国民全体を代表し得るような性格を持った方々で、その中には女性ももちろん含むべきでありますし、教育関係者、現場の声を反映できるような形も考えるべきでありますし、あるいは教育に対する学識経験を持っておる第三者の地位にある方々もまた尊重すべきでありますし、そういう全国民の視野に立った学識経験者、立派な方をぜひ選ばせていただきたいと考えておるところでございます。
  108. 久保亘

    久保亘君 男女、特に婦人の委員をどういうふうに考えるか、それから連合審査でも質疑がございました年代別の基準、こういうものについてはどういうふうにお考えになっていますか。
  109. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全国民の中には御婦人も含まれております。毛沢東は、天の半分は婦人が支える、そう言っているくらいでありますから婦人を無視することはもちろんできませんし、また若手の方々も日本の有権者の中には非常に大きな率を占めておられます。そういういろんな面、各分野を代表し得るような方々をできるだけ網羅する。二十五人という数の限定がございますから、どの程度まで網羅できるか。これからやってみないとわかりませんが、できるだけ網羅する、そういう気持ちでやっていきたいと思っております。
  110. 久保亘

    久保亘君 それは、従来、政府の各種審議会等では見られなかった婦人の起用、それから若い年代の起用が行われる、こういうふうに理解しておいてよろしゅうございますか。
  111. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 結構であると思います。
  112. 久保亘

    久保亘君 最後に、この審議会の運営について、非常にこの審議会の今後の方向を考える上で公開、非公開の問題が重要であるというので論議が行われてまいりました。総理大臣も、この審議会についてはすそ野の広い国民的な参加、国民意見の反映が必要である、国民合意のもとにやりたい、こういうことをしばしばおっしゃっておられまして、その御主張には私は全面的に賛成でございます。ところが、実際にはこの審議会公開、非公開を明らかにしていないばかりでなく、政府のこれまでの審議における答弁では非公開が望ましいという立場が主張されておるのでございます。これでは国民が参加しようにも参加しようがない、意見を反映させようにも一体どういう意見が闘れされたのかがわからなくては反映のさせようがないと思うんですが、総理国民の参加とか国民意見の反映とか、あるいはすそ野の広い国民的レベルでの教育改革という御主張を審議会の運営の面ではどういうふうに生かしていかれるのでしょうか。
  113. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは委員の選任でまず幅広い国民的視野に富んだ方々を選任する、それから運営におきましても、これは委員がお考えになることでございますが、公聴会を開くなり、あるいは地域的に各方面へ出張っていただいて関係者の、正式の公聴会でなくても、いろいろな参考人の皆さんの御意見を聞くということもありましょうし、あるいは問題別によってはアンケートを国民からいただくということもありましょう。あるいは論文を募集してもいいと思います。そういうあらゆる国民と接触する場面を新しく創意工夫を持ってつくり上げて、新たな審議会の運営というものを国民的ベースで行われるように考えてみたらいいと思っております。
  114. 久保亘

    久保亘君 政府公開を望ましいとお考えにならなければ、当然、審議会の意思を問われても審議会公開の原則を定めるということは難しいだろう、こう思います。私どもは一歩譲って、会議そのものを公開することが困難であっても、それならば議事録を通じて国民審議会論議内容を明らかにするということはこれは絶対に必要なことなんだと思うんですが、この点についてはいかがでございますか。
  115. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 議事の結果を適当なときにまとめて、国民皆様方に御報告することは大事であると思います。ですから、適当な時期にそのような措置をやっていただくことになるでありましょう。これは審議会の皆さんがお決めになることですが、当然そうなると思うのであります。  我々がなぜ非公開ということを申し上げるかといいますれば、委員の発言が一々克明に公表されてはいろんな団体から委員が圧力を受けるという危険性が今日においてなきにしもあらずであります。何千何万という手紙が舞い込むという経験も我々今までございますし、脅迫電話がかかるということもなきにしもあらずでございました。そういう意味から、委員の発言の自由を守るということがこの審議会を公正に運営する大事なキーポイントになるのであります。そういう配慮を持ちまして、委員の発言の自由を確保するという意味において我々は非公開ということを考えておるので、そういうものが守られるならばできるだけその範囲内において議事の経過なり結果というものを国民の皆様にお知らせすることは大きな仕事であると考えております。
  116. 久保亘

    久保亘君 個人の自由とか生活権を脅かすような、そういうようなことは別でありますが、しかし私は、国民が自分の持っている意見をこれはあの委員に伝えておかなければならないということで、それは意見が違えば抗議的な文面になることもある。そういうものを出すことは、これは民主主義の社会においては認められなければならない。もし、そういうものを圧力だからということで一切排除するというやり方、そしてそういうような国民意見を出させないために審議を非公開にするとか議事録を公表しないとかいうようなことでは、余りにもこの教育改革に関する論議密室の中に閉じこもって、総理が言っておられるような国民の参加とか国民的レベルでの教育改革ということを進める上では効果を上げ得ない、むしろ矛盾したものとなるだろう、こう考えております。  私の質問の時間が参りましたのでこれで終わりますが、これまで総理にいろいろとお尋ねをいたしましたことを通じても、なお私ども論議をさらに詰めるべき多くの問題点を残しているように思います。特に心配をいたしますのは、金は出さぬが教育に対して口は出す、それからこの教育改革に対しての審議については「由らしむべし知らしむべからず」、こういうような考え方が、かつてのような強い内務官僚のやり方のようなものではなくても、そこにじわっと流れて、私は国民合意の教育改革とはほど遠いものになっていくのではないかという心配を今もなお非常に大きく持つものであります。どうか、これらの問題についてさらに論議を尽くして、まず教育改革国民の合意のもとに進められるためには、その改革の論議国民の合意したルールで審議会において行われることを私は強く望むものであります。  私の時間が参りましたので、これで質問を終わります。
  117. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 続きまして、この法案に対しましての質疑を行わさせていただきますが、多少ただいまの久保委員の御質疑と重なる部分があるかと思いますが、質問したいと思います。  私たちの党としましては、今回のこの法案につきまして衆議院段階におきまして人事国会承認あるいは答申の国会報告の義務づけ等、そういう修正を行って、今回賛成しているわけでございますけれども、やはりいろいろと審議の中で論議をされてまいりましたけれども、四十六年の中教審の答申、これがいわゆる第三の教育改革、こういうふうに言われてまいりましたし、その内容を見ましても、確かにいろんな面でこれはすぐれたものもあるわけでございます。総理も一月の半ばごろまでは中教審に諮問をするということをおっしゃっておりましたのが、これが臨時教育審議会の設置の方に変わってきたわけでございますが、その真意というものを最初に承っておきたい、このように思います。
  118. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、やはり内閣レベルの大きな審議会をつくる方がいいではないか、そういう気持ちは一貫して持っておったのであります。それは行管長官時代に教育臨調というようなことも私的に発言した。それはやはり内閣レベルの大きな委員会が必要ではないかという発想が深層意識にあったからそういうことにもなったのであります。  しかし、四十六年、四十九年等の中教審の答申というようなものを見ますと、非常に立派なものでもあり、いろいろないきさつもあったようであります。したがいまして、私はお正月に伊勢神宮へ行って参拝したときの記者会見では、たしか中教審の結果とかなんとかを中心にしてと、中心にしてという言葉を使ったんです。それはそういうような配慮もありまして使いました。しかし、その後、野党の党首との党首会談をやりまして、民社党並びに公明党の委員長さんから内閣レベルの大審議会をつくるべし、そういうような御意見も承って、与野党協議というものの結果を尊重もいたしまして、今のような考え方を確定した次第でございます。
  119. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そこで、私ども今おっしゃったほかにもいろんな真意があるのじゃないかということは思っておるわけですけれども、ことしの二月十五日の衆議院の予算委員会で我が党の矢野書記長が総理に、施政方針演説で提起しました教育改革につきましていろいろと質疑を行っているわけですが、その中でこう言っています。  「今日のいろいろな教育の矛盾点、問題点がありますけれども、戦後の教育行政の歴史」は「大ざっぱに言えば片や文部省、片や日教組、この対立の歴史であった」、「私は、教育改革の根本は教育の現場におけるこの対立をどのように解消していくか。」にあるということを申し上げまして、教育改革におきます総理の日教組に対する位置づけをただしているわけです。  私も、この本法案提出の真意というものは、文部省あるいは日教組との対立の図式の歴史にピリオドを打って、教育問題をこの両者の対決の中からさらに広い国民の立場に取り戻そう、こういうところにあるのじゃないかというようなことも考錬えるわけですが、その点はいかがお考えでしょうか。
  120. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もし、矢野先生が御指摘のように教育の現場において対立があるとすれば、それは非常に不幸なことでございます。文部省対日教組という図式は好ましからざる図式であります。今度内閣レベルに持ってまいりまして、幅広い国民全体の視野の中でおおらかな議論が行われれば国民皆様方もさぞお喜びになっていただくと思います。そういうことをぜひ期待したいと思っておる次第であります。
  121. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 できるだけ重複質問を避けろということでございますが、先ほど総理からも委員人選についてはお話がありました。この委員というものは、国民を代表しまして、今後の我が国の教育について論ずることのできる立派な人で審議会が構成されるような人選が行われるべきだということを私たちも考えております。最終的には総理大臣が任命者でありますし、先ほどいろんな構成の分野についてもお話がありましたので、ここでは質問は譲ります。  過日も、当委員会が参考人をお呼びいたしまして、ここでいろいろな御意見を賜ったわけです。出席をされました方々、賛成、反対を含めまして、今回の審議会はやはり国民に開かれた審議会にすべきである、そういう御意見が圧倒的でございました。特に、審議会審議につきましては公開すべきだという方が全員でございましたが、私ども公開ができないならば、せめて議事録の公開ぐらいはすべきじゃないか、このように思うんですが、総理、どのようにお考えでしょうか。
  122. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほどお答えいたしましたように、委員の言論の自由を守るということが我々の念願でございまして、その言論の自由を守る範囲内において最小限の非公開ということが考えられる。言論の自由を守れる範囲内におきましては、できるだけ議事の内容等も国民皆様方にお知らせする、そういう手だては考うべきものでありましょう。したがいまして、審議が終わった場合に、一区切りしたらそれを関係者が国民皆様方にお知らせするとか、そのほか、さまざまなこともお考えいただきまして、ともかく委員の言論の自由、発言の自由を守る、脅迫とかあるいはいろいろな言論の自由を守るために故障になるようなことが起こらない、そういうことを保障する、そういうことも片っ方で確保しつつ実行していただきたいというふうに思っております。
  123. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いろいろと御心配されているようですが、今の日本の民主主義国家の中で脅迫等のそういうことは考えられないのじゃないかと思うんですけれども、先ほど総理は三大改革というものを掲げられましたけれども教育はこれは百年の大計に立ってやらなきゃなりませんし、その諮問の内容につきましては文部大臣もいろいろとこの委員会で追及をされておみえになりましたが、やはり総理がこれは諮問をされるということで、今までは詳しいことはおっしゃっておみえになりませんでした。しかし、総理のお考えの中には、もう既にその形というものは決まっているのじゃないかと思うんですが、教育には短期的にやるもの、中期的に考えなければならないもの、あるいは長期的に考えなければならないもの、いろんなものがあると思いますが、総理がそういうお立場でいろいろとお考えになってみえる教育改革の短期的なもの、中期的なもの、長期的なもの、そういうものについてはどういうものを挙げられますか。
  124. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 諮問につきましては、包括的に行うということを申し上げました。また、急を要するものについては中間答申をいただきまして、その中間答申の結果を適時実行していくということも必要ではないかと思います。試験問題とか、そのほか今問題になっているような問題については、中間答申をいただいてできるだけ早く実行するということも一つの考え方ではないかと思っております。  しかし、いずれにせよ、その短期、中期、長期にわたる諸問題、それから学校教育、小、中、大学に関するものの内容あるいはそのやり方、それらの小、中、大学の関連、その問を結ぶ試験の問題、あるいは子供の教育の仕方の内容に関する問題、あるいはさらに生涯教育から社会教育に至る問題、またその子供の教育環境の問題では家庭とか社会の存在も非常に重要な問題であり、さらに教師の問題も非常に重要な問題であり、さらに国際関係や国際的視野に関する問題も非常に重要な問題であります。  今の子供たちが私たちの年になるには二十一世紀も半ばの時代にもなりますから、高度情報化時代の真っただ中に生きる子供たちでありますから、そういう先を見通した教育というものも重要になってまいると思います。そういう諸般のものをよく考えて包括的に諮問をする、状況によっては中間答申もいただく、そういうことになるだろうと想像いたします。いずれ、これらについては文部大臣と相談して着実に決めてまいりたいと思っております。
  125. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 先ほどを同僚委員からもお話がございましたけれども、私たちが心配しておりますことは、教育改革の推進に当たりまして、これは精神上の改革だけではなくて、やはり相当な財政負担がかかる問題でございます。四十六年の中教審でさえも、この実現には六十九兆円という多額な経費がかかるわけでございますので、どうしても私たちは、この臨教審答申によってなされました教育改革の推進に当たりましては、総理を筆頭にして政府の非常な決意というものを望んでおかなきゃならないと思うんですが、再度、御決意をお聞きしたいと思います。
  126. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど久保さんの御質問の中で、行革や財政改革と教育改革関連について御質問をしていただきましたが、私は一般論として既に先行している行革あるいは財政改革というものがまず原則として適用されると申し上げましたが、それはそういうことでありますけれども、しかしこの臨教審の答申も我々は尊重義務を負っておるのでございまして、その答申の内容等を点検してこれは重大であるという場合には、これはある程度財政の枠を破ったりあるいはその範囲内において最大限の重点政策を行うとか、さまざまなことをやるべきものであります。たしか、山本有三の小説ですか、「米百儀」という小説を昔読んだことがございます。教育というものは、そういう意味において自分たちの食事を節しても子孫のためにやらなきゃならぬという要素もあるのでございまして、そういう精神も我々は踏まえてやってまいりたい、そう思っておる次第でございます。
  127. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、先ほどから総理教育改革というのは教育基本法に基づいてこれは行われるということをおっしゃっておりますし、またそれに基づいて今回の臨教審も進められることは私ども間違いないと思うんですが、教育基本法には教育の目的とか、あるいは教育の理念、哲学、ビジョンというものが規定されておりますから、臨教審には新しい哲学とかビジョンというものを求めるのではなくて、本当の具体策、どのようにして教育を改革していくかということを総理としては求め、期待をされている、こう考えてよろしいですか。
  128. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一言で申せば二十一世紀を踏まえた世界的日本人をつくっていく、こういうことで表現できるのではないかと思います。
  129. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 私たちの党も昨年の十一月、これはちょっと手前みそになりますけれども、二十一世紀に向けての教育改革構想というものを提言しているわけですけれども、その内容はやはり教育審議会、今度の臨教審においても教育改革に当たって参考になり得るのかどうか、その点ちょっと文部大臣にお聞きしたいと思うのですけれども
  130. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 先ほど総理も申し上げましたように、この教育改革は幅広くいろんな国民各界各層の御意見をお伺いして、それを教育政策全体に反映していくということが基本的に極めて大事なことでございます。したがいまして、例えば四六答申などもございまして、私は予算委員会で申し上げましたが、ゼロから出発することではなく、四六答申などを踏まえていろんな考え方、そうしたものを基盤に新しい教育制度全般に対して政府全体が長期的な視野で取り組んでいきたい、このように申し上げてきておるわけでございます。  四十六年の中教審の答申でございました例えば先導的試行、当時といたしましては大変斬新で、そしてまたすばらしい将来に向けての一つの教育のあり方を問うものであったというふうに私たちは理解をいたしておりますが、しかしその当時の世評といたしましては、それに関連するさまざまな意見がございまして、当時の新聞等を読んでみましても必ずしも新聞論調なども賛成というような立場でもございません。そういう中で、今日的な時代の環境といいましょうか、その背景は少し異なってはおりますけれども、その当時の示唆に富む考え方は、今日の教育改革をいろんな角度から各党の皆さんが呼びかけていただいておられる、そういうことに対してはある程度これは軌を同じゅうするものが非常に多い。例えば、公明党の皆さんがパイロットスクールなど提案をされましたのも、やはりこの先導的試行の一つの軸といいましょうか、軌を同じゅうするものであろうというふうに私ども考えておるわけでございます。  総理もたびたび申し上げておりますが、教育の諸制度の改革についての国民の要請はきわめて高い、そういう今日的な時点の中で、こうした四六答申などを中心にして、そして幅広く多くの皆さんから御意見をちょうだいしながら、二十一世紀を担う青少年にとってどうした教育制度がいいかということを幅広く論議をしていただきたい、こうしたことを審議会の皆さんに私どもとして心から期待を申し上げたい、こういう立場でございます。
  131. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、かつて教科書問題等で多少文教にも関連いたしますのでお聞きいたしますが、韓国大統領が来日されるわけでございますが、韓国は私ども考えましても地理的に極めて近い国でありますし、これは一衣帯水の位置にあると言えばあるわけでございますが、過去の歴史に由来しますいろんな重圧あるいはわだかまりというものがありまして、あるいは金大中氏事件あるいは教科書問題等ありまして、ともに自由陣営の一員でありながら必ずしも正常な友好関係とは言えない面もあったと思うんですが、中曽根総理の訪韓に続きまして、今回、全大統領が訪日されることはこうした両国関係に新たな友好協力関係を築く機会になるものと私ども期待しておりますけれども、一方、このことによってさらに複雑な問題が発生しないかという懸念も少なくないわけですが、まず全大統領の来日の意義等、総理のお考えをお聞きしたいと思うんです。懸案処理等についてもお話をいただきたいと思います。
  132. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全斗煥大統領が日本にお見えになることは、まだ正式に日程等を得て確定したわけではございませんが、今秋にはおいでいただけるものと確信しております。  韓国の大統領が訪日なさるということは、恐らく日韓両国の歴史、朝鮮半島と日本との関係、長い歴史を見ましてもまさに歴史的な一大壮挙でございまして、非常に大きな厳粛な意味を我々は感じますし、またわざわざおいでいただく全斗煥大統領の御好意、御熱情に対しても感謝と敬意を表したいと思いまして、全国民を挙げて熱烈に歓迎申し上げ、かつ非常に実りのある会談をし、両国関係を、さらに友情を深め、協力関係を固めてまいりたいと考えております。
  133. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そこで、今回お見えになりますことにつきましては総理も非常な期待をされているようでございますけれども、やはりこれが日韓の友好関係にプラスにならなきゃならないと思いますけれども、その際、警備とか天皇陛下接見の問題等もございますし、あるいは中曽根総理との間で話し合われると考えられるような両国間のいろんな政治経済上の問題、そういうものの展開によってはかえって複雑な感情問題等が両国間に発生しないか、こういうような心配もしているわけですが、その点はどうでしょうか。
  134. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我々は国を挙げて御歓迎申し上げたいと思いますし、既に日韓両国にありまする友好協力関係というものを考えますと、我々が誠意を尽くすことによって大きな実りある御訪問が得られるものと確信しております。
  135. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そこで、一つお尋ねしておきたいことは、あと提案もありますけれども、北朝鮮との関係がやはり多少まだまだ不正常であると思うんですが、北朝鮮におきましても南北緊張が依然として続いているのが実情ですが、こうした中で全大統領が来日されるわけですので、北朝鮮あるいは朝鮮半島での南北緊張というものを一層深刻にするようなものになってはならないと思うんですが、我が国としましても朝鮮半島における平和と安定の維持が日本を含む東アジアの平和と安定にとって緊要との立場を従来から総理もとっておみえになりましたし、今回の金大統領の来日を機会に、さらに一層その北朝鮮との関係改善を積極的に進める考え方を明確にして、南北緊張緩和の方向に前進することに役立つように総理としては努めるべきだと思いますが、その点はどうでしょうか。
  136. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 朝鮮半島の平和確保あるいは南北統一の問題は、韓国と北朝鮮当局との話し合いによって両当事者が進めることが第一義でありまして、この両当事者によってそのような道が開けていくということを我々は希望してやみません。この両当事者の意思を無視して、第三国が強制したり、あるいはほかの場所をしつらえたりするということはできないし、適当ではない、あくまで両当事者の意思に基づきまして自主的にそれらのことが行われることが望ましいと考えております。
  137. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは次は、いよいよ人事院勧告が八月十日に提出をされるわけですけれども総理は、この完全実施に向けて取り組む決意に変わりはございませんでしょうか。
  138. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人事院勧告につきましては、総務庁長官が言明いたしておりますように、これを尊重して、できるだけ努力を尽くして、実現していくようにしてまいりたいと思っております。
  139. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 今までもそのようにおっしゃっておるわけでございますけれども、この過去二年間の公務員給与抑制凍結というのは、これは労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告制度の維持、尊重を根本から揺るがせるような状況になっているわけです。五十八年度の人事院年次報告においても指摘されておりますし、これは生活権の侵害と見られる措置じゃないかと思うんです。また、いろんな面でこの弊害というものが起きているわけです。公務員を志望される方々の激減ということも今あります。特に、今後問題になりますことは、先端技術関係に勤められるような公務員の方々が志望が大きく減っているということが今実際にあらわれておりますし、あるいは公共事業を提当するような建設省あるいは公団におきましても、職員の士気が上がらないで作業能率の低下を招いている、したがって予算がついても実際にその予算が消化されないで今いるというようなことも、現場からは報告されているわけです。  そこで、五十八年度の一般会計決算概要というのが七月三十一日に大蔵省から報告されておりますけれども、その税収増加が四千五百六十三億円にもなっているんですけれども、今まで財政難を理由としまして国家公務員の皆さん方に犠牲を強いてきたのでありますから、こういうときにこそ完全実施をする必要があるのじゃないかと思うんですが、総理としてはどのようにお考えになりますか。
  140. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人事院勧告を完全に実施すべく、今後も努力してまいりたいと思っております。昨年度の剰余金につきましては、財政法の規定等もありまして、たしか半分は公債の償還等に充てる、そういう条文もあったように思いますが、これらはいずれ今後の財政経済、諸般の政策の進行度合いによりまして、いかが処理すべきか、よく検討してまいりたいと思っておる次第でございます。
  141. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 本院の決算委員会でも私は指摘をいたしましたけれども、ここにも公務員の方々がお見えになっておりますけれども、実際に人事院勧告と申しますのは、五十四年、五十五年、これは指定職の俸給表が十月実施となったわけですが、五十六年が管理職については一年間凍結、五十七年が異例の措置で完全凍結、五十八年が圧縮実施ということで、不完全実施が五年間も続いているわけです。その間、政府側の御答弁としては誠意を持って最大の努力をするということでいつもおっしゃっていながら、こういうことが行われてきました。実際にその委員会でも、総理はお見えになりませんでしたけれども公務員の皆さん方が役職段階別にどれだけの損害をこうむっているのかということも私申し上げました。  例えば、局長クラスの方ですと、五十四年から五十八年までの間に合計二百三十二万六千円という損失になるわけです。それから課長クラスの方でも、五十六年、五十七年、五十八年三年間で百二十三万七千円ということです。課長補佐クラスの方でも五十六年、五十七年、五十八年三年間で合計五十七万二千円。係長クラスの方で四十七万七千円、係員クラスの方で三十万八千円、また独身の方ですと十八万一千円ということになって、三年間における損失というのは非常に大きいわけです。  昨年の十一月二十七日のこの内閣委員会におきましても、丹羽総務長官は、「五十九年度の人事院勧告の取り扱いについては、人事院勧告制度尊重の基本方針を堅持しつつ、俸給表等の勧告内容を尊重した完全実施に向けて最大限努める所存であります。」、こうおっしゃっているわけですが、今回の人事院勧告が八月十日ということで今いろいろと努力をされているようでございますが、五十九年度だけは、私たち国会としても政府側に要望いたしますことは、俸給表についての勧告内容を尊重してもらいたい、こういうことを私はこの場をかりて申し上げておきたい、こう思うんですが、その点どのようにお考えになりましょうか。
  142. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど来申し上げましたように、勧告が出ましたらよく検討もいたしまして、最大限これを尊重して実現すべく努力いたしたいと思っております。
  143. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それから総理、時間がないということでございますのでお聞きしておきますけれども、今完全実施に向けていろいろ努力をされるということを御発言になりました。私も、今度最大限というのは、防衛費関係でも最大限とおっしゃって最大限努力されているんですから、それと同じように最大限のこれは努力をしていただくことが公務員の皆さん方の士気あるいは協力関係等の向上になるのじゃないかと思います。  そでで、総理にお尋ねしますが、防衛費の一%の問題ですが、総理は予算委員会等におきましても、中曽根内閣におきましては一%枠は堅持する、こうおっしゃっておりますが、その点はお間違いございませんね。
  144. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 三木内閣が五十一年につくりましたあの閣議決定の方針は、今後も守ってまいる方針でございます。
  145. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 七月三十一日の閣議で六十年度予算の概算要求基準が決定されましたけれども、これを見ましても防衛費は七%アップでございますが、これは緊縮財政という中でこの四年間で三〇%増加しているわけです。その中で、先ほども同僚委員から文教費につきましては伸び率が非常に鈍化して、予算の中に占めるその占有率というものも低下しているという指摘がございました。そういったしわ寄せが来ているわけですし、社会保障費でも一〇%程度の伸びしかございません。  せんだって、ある新聞社が自衛隊に関する全国世論調査を行いましたけれども、この世論調査におきましても、防衛予算の増加につきましては国民の七〇%が反対、こういう意向を示しているんですが、総理はこの国民の世論についてどのように受けとめでみえますか。
  146. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国民皆様方気持ちは、自衛隊はこれは必要である、しかし余り増強はしないで現状維持がいい、大体そういうようなお気持ちであるやに思います。しかし、政府といたしましては、防衛という問題は常に客観情勢との相対的関係にあるのでございまして、最近における諸般の情勢、それから防衛計画の大綱水準に近づく必要がぜひともある、そういう考えに立って今まで努力してきた経緯、またその必要性が依然として今日もあるという実情、そういう点を考えてみますと、そういうような問題について国民皆様方によく御理解をいただきまして、そして適切な防衛費というものを生み出すように今後とも努力してまいりたいと思っておるところであります。
  147. 高平公友

    委員長高平公友君) 最後の締めくくりをしてくたさい、時間が来ましたから。
  148. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 最後だということでございますが、五十九年度の防衛費というのは二兆九千三百四十六億円で、これはGNP比で〇・九一%になりますので、あと一%枠までわずか二百五十四億円ということになっておりますが、これで人事院勧告三%以上のベースアップがありますと計算上は一%を突破することになります。これは予算委員会でも問題になりました。  さきの概算要求基準で防衛費の七%増が決定されましたんですが、そうしますと、六十年度のGNPの成長は七%でなければ一%枠を守るという公約は果たされなくなると思うんです。しかし大蔵省では、本年十一月に発表予定の六十年度の経済見通しては六ないし六・五%程度、このように予測しているようでございますけれども、また総理は一%枠問題は来年度のGNP次第である、このように記者会見等で述べてみえますけれども、仮に十一月の経済見通しで来年度のGNPを七%以下、こういう予測をした場合には六十年度の予算編成で概算要求基準のこの七%を下方修正することが必要になってくるのじゃないかと思うんですが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  149. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一%問題というのは、やはり経済成長というものがどの程度になるであろうか、そういうものが一つの大事な決め手の要素でございます。これは今のところまだよくわかりません。来年に至りますればなおわからない状態でございます。それから人事院勧告というものがどの程度に実行されるであろうか、またどういうものが出てくるであろうか、そういうような点にもまた絡まってまいる問題で、全く条件的にまだ未定でございますので、今どうこうと申し上げる段階ではございません。
  150. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 終わります。
  151. 橋本敦

    ○橋本敦君 総理に、まず端的にお尋ねしたいと思いますが、今文部省を巻き込んでいる重大な大学、文部省をめぐる汚職事件について総理はどうお考えかということであります。  私は、この問題は極めて重大な問題でありますから、戦後、今日までいやしくも汚職事件で文部省に司直の手が入ったことがない、ところが教育改革を論ずるやさきにこういう事態が起こったということは極めて重大である、こう考えて、二回にわたってこれの徹底究明と責任の所在を明確にして国民の信頼を回復することこそが臨時教育審、この問題を進める以前に重大な課題だと指摘をしてきました。総理大臣はこの問題についてどういう御見解をお持ちなのか、まず最初に伺いたいと思います。
  152. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 文部省管轄の大学あるいは文部省自体にこのような不祥事件が起きましたことは甚だ遺憾でございまして、国民皆様方におわび申し上げる気持ちでいっぱいでございます。  この状況につきましては、文部大臣から中間報告を私は受けておりますが、文部大臣にも、さらに引き締めてこの真相を徹底的に究明して将来このようなことの禍根を断つように、それから部内の綱紀粛正についてはさらにこれを徹底して行うように指示したところでございます。まことに遺憾のきわみでございます。
  153. 橋本敦

    ○橋本敦君 総理もお聞き及びかもしれませんが、いやしくも公務員として最も恥ずべきわいろの収受という汚職犯罪が、しかもわいろのお金の受け渡しが役所である文部省の中でも行われたという事実を、捜査当局は私の質問に否定しませんでした。そして、こういう事態が生み出された背景に、今日までの文部省人事管理なりあるいは会計経理をめぐる問題点があることも指摘をしてまいりました。  総理は、かつて、知、徳、体の三つの教育目標を、今は知に偏重しているからあえて徳、体、知の順位に教育の重点を移していかぬばならないとお書きになったことがあるのですが、まさに文部省自体が徳を失っているのではないか。汚職に汚れた手で教育改革を、臨教審を論ずることができるのだろうか。しかも、この臨教審が設置をされましたならば、この法案自体が明らかなように、文部省事務次官が事務局長に法的に就任されることになっている。だから、ますます、こういう発足以前に文部省自体の責任をもっと徹底的に国民の前に明らかにする、このことをなさるべきではないかと思いますが、重ねて御意見を伺いたいと思います。
  154. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 教育改革をやらんとするやさきに、その足元の文部省でこのような不祥事件が起きましたことは、まことに遺憾のきわみでございます。  具体的処理につきましては、文部大臣から御答弁いたします。
  155. 橋本敦

    ○橋本敦君 きょうは、私の持ち時間が少のうございますので、文部大臣の所見は伺っておりますから、先に進めてまいります。  私は、まず第一に、今国民の切実な教育要求に政治がどうこたえるか、このことを抜きにして二十一世紀を展望した教育改革論を、いたずらに論議をもてあそぶような形にしてはならぬ、こう思っております。まさに今教育現場は、教育の荒廃といわれる状況をなくすために現場の先生たちは必死の努力をしておりますし、父母もまたそのために知恵を出し合って努力しております。ところが、そういった問題を、教育基本法十条で示された文教行政の最大の責任である教育条件整備という側面からなぜ今政府は積極的に努力をしないのであろうか、この問題であります。  例えば、ある新聞の世論調査では、いろいろ教育改革が論ぜられているが、どの点から最も手をつけてほしいかという設問に対して、一学級の生徒数を減らしてほしいというのがトップでありました。また、国民教育研究所やあるいは日教組の皆さんの主体的な調査によりまして、教員の九〇%以上が、落ちこぼれのない行き届いた教育をやるためには個別指導が十分できるように一学級三十五人以下に早急にやってほしいと切望しています。そして、これは教育現場のそういう声だけではなくて、全国の教育長協議会、教育委員会会議、これらが主体である連合会から五十九年度、六十年度続いて寄せられた予算要望の中でも、教育予算のこの面での充実を強く希望しています。  私がこれで教育ができるのかと思わず心を痛めたのは、一つは、私の住む大阪で、マンモス日本一と言われる生徒数二千二百三十七人、五十六学級という大阪市立の豊里小学校の例が研究会で報告されているのです。例えば、今、夏です。子供たちはプールで泳ぐことを覚え、体を鍛えたいでしょう。ところが、この過密校ではプールは、学年ごとに使うその時間が少なくて、平均十分。泳ぎというより水遊びになってしまう。運動場が少ないために運動能力はほかの学校より劣っている。まさに重大であります。そして、この過大校のために、教師と生徒との心の触れ合いと信頼関係がずたずたに切られて、子供は知らない先生をおっちゃんと呼ぶという、そのことが心から無念の思いで教師によって報告されているのであります。  今、七月二十五日の行革推進審議会意見は、こういう状態にもかかわらず極力文教予算の抑制を、こう言っておりますが、私は、ここに手をつけて、今すぐに総理文部大臣教育条件の整備に全力を挙げてもらいたい。そして、このことはこの臨時教育審議会を設置する以前にやるべきであるし、設置しなくてもできることであるし、それとかかわりなしに全力を挙げてやってもらわねばならぬ課題だ、こう思っておりますが、総理の御見解を伺いたいのであります。
  156. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四十人学級の問題、マンモス校の解消の問題等については、まず四十人学級等につきましては、たしか昭和五十五年に方針を決めまして、それをスタートとして、そして昭和六十六年を終期の目標としてやっておるはずであります。行革が始まりまして五十七、五十八、五十九、これは抑制するという形にはなっておりますが、この全体の枠及び到達年次というものについてはさわらないで、これをそのまま生かして実行する、そういうことで今進めておりまして、そういう方向でこの問題はまた努力してまいりたいと思っておるところでございます。  マンモス校につきましては、その弊害について私たちもよく見聞をしておるところでございまして、今後ともその解消に努力してまいりたいと思っております。    〔委員長退席、理事坂野重信君着席〕
  157. 橋本敦

    ○橋本敦君 総理、今私が要求し、国民が求めているのは、六十六年度までの十二年計画で最終年度までに四十人学級を達成する、それは変えないということではないのです。五十九年度で行革による四十人学級実現の抑制凍結は終わらねばならぬ、六十年度からもとに戻して着手に取りかからねばならぬ、このことを本当におやりいただけるかどうかという課題であります。だから、そのことにお触れいただけなかった答弁はその意味でも残念でありますが、私はこういうことで教育条件整備がおくれていくその重要な背景的事実として防衛予算の相次ぐ拡大、これは避けて通れない問題だというように思うのであります。  総理は、言うまでもなく御存じのとおりでありますけれども、最近の軍事費、防衛費の伸びは大変であります。ことしもまた、四年連続で七%突出という概算要求基準が定められました。先ほど私が大蔵大臣質問いたしましたが、文教予算は一〇%マイナス基準、またまた軍事費は七%、これで教育改革が語れますか、こう聞いたときに大蔵大臣は、日米安保条約があるということも指摘をされました。日米安保条約が日本の教育を荒廃させていることを事実上お認めになった答弁とも受け取れるのでありますが、実際に数字を見ますと、昭和五十七年から五十九年度、この三年間で防衛費伸び率は二〇・八五%、同じこの三年間で文教予算の伸び率はわずか二・三%、防衛予算は九倍も伸びているのであります。  そして、これまで教育の問題で四十人学級と教員増大計画は十二年間ということではありますけれども、現在までの達成率はどれくらいかといいますと、わずか二千十三人、四・六六%にすぎません。第二次教材整備十カ年計画・昭和五十三年から六十二年まででありますが、七年目の今の達成率は半分以下の四八%であります。ところが、防衛関係の達成率を見てみますと、五十三年中業と言われる昭和五十五年から五十九年までの計画は、正面装備購入で、F15戦闘機一機百七億円いたしますが、この目標は七十七機でありましたが、この五三中業の基準で見ますと、八十七機購入、一一三%、超過達成であります。しかも、この五三中業は五十六年度から五六中業へと飛躍的に格上げされるということで、ますます防衛予算の増大へと向かっているのであります。防衛予算は超過達成して軍事費及び防衛体制は強めるが、教育予算は臨調行革の名で相次いで削っていって、しかも改善計画の達成率は私が指摘したように五〇%以下だという、こういう状況は臨教審を語る以前にまずもって思い切って改善をされねばならぬのではないでしょうか。
  158. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛の問題につきましては、これはみずから日本の自主性において決めることであります。やはりこれは、先ほど来申し上げますように、周囲との環境において相対的に必要最小限のものは用意していかなければならない、そういう性格のものであります。最近における日本の周辺における状況というものは、既に皆様御承知のごとく、かなりの軍事力の増強が目に立ってきております。また、世界的な情勢から見ましても、情勢は厳しい情勢に推移しております。  そういうような諸般の情勢から見まして、防衛計画の大綱の水準をできるだけ早く達成するということは、また非常に国家存立の上から見ても緊要なことであります。そういうような日本の独立と安全を保障する、これまた平和を維持するための非常に大きな要件でございます。そういうような観点からも、防衛費につきましてもある程度の配慮をするということは政治の責任であると私たちは考えておりまして、財政の許す範囲内において必要最小限度のそういう経費は見てまいりましたし、今後も見ていかなければならぬと思っておるのであります。  今回の七%という数字は概算要求の基準の数字でございまして、最終決定は十二月の予算編成のときに行われるべきもので、中間的な数字であるということも御了承願いたいと思いますが、いずれにせよ、この国防という問題は独立国家としての存在を維持していくために緊要なものでございまして、世界各国が非常に重要視してやっておる国政上の重大案件でございます。日本も同じように必要最小限の枠内におきましては努力していかなければならぬ性格のものである、このように我々は考えていることを申し上げるものでございます。    〔理事坂野重信君退席、委員長着席〕
  159. 橋本敦

    ○橋本敦君 余りにも教育を軽視し過ぎるという事実について、私は総理の認識を問うたはずであります。防衛が政治にとって肝要だというお話がありましたが、政治にとって国民意見をしっかりと受けとめることも、これまた民主主義の要諦でなくちゃなりません。自衛隊発足三十年というときにある新聞社が実施した世論調査で、国民の意識は大きく今の行革に対する批判を強めております。例えば、防衛予算はふやした方がいい、こういう答えはわずか一四%、そうは思わないというのが七四%と圧倒的に多くなっておるのであります。  それもそのはずです。今、私が指摘したような教育の現状に心を痛めるならば、今日の国家財政赤字まみれ、こういう状況を自民党政治はつくり出してきたわけですが、その中で教育を本当に守りていくためにはどこを抑えるか、真の行革、私どもの言葉で言えば軍事費の削減以外にないはずであります。それをやらずして、行革審の意見に沿って進めていくとなれば一体どういうことになるか。私は、臨教審の目指す二十一世紀への教育改革はまさに安上がりの教育でしかなくなると思うのであります。  そこで、総理に伺いますが、行革推進会議意見は最大限尊重すると政府でお決めになりました。そうすると、この臨教審で議論される今後の教育改革論議は、政府がこれを最大限尊重するというこの枠にはめられるのではないかというおそれがあるのですが、その点について総理のお考えばいかがでしょうか。
  160. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行政改革、財政改革、教育改革は、現政府がとっておりまする三大改革でございます。既に、前の二つは発足してやっておるところであり、先般も行革審から意見書の提出をいただきまして、内閣としても最大限に尊重してその実現に努める、そういう趣旨のことを明らかにしたもので、そのとおり実行してまいるつもりでございます。  今度の教育の問題につきましては、臨教審におきまして答申をいただきました上は、同じように法律にも尊重義務をうたっておるわけでございますかう、我々は尊重しなければならぬと思っております。この間の調和というものは、事の重大性をよく我々が識別いたしまして、そして必要なことは、教育のことでございますから、行革審あるいは臨時行政調査会の答申がありましても、出すべき金は出さなけりゃならぬし、改革すべき改革は行わなければならない。それは、そのときの内閣の責任と判断によって行うことである。しかし、この行政改革あるいは財政改革というものの軌道の上を我々は一般的には走っていく、実行していくというものでございますが、事と次第による、そういうことであるとお考え願いたいと思います。
  161. 橋本敦

    ○橋本敦君 今、総理が、一般的には行革のレールの上を走っていく、そのことをお述べになりました。まさに、それを私は心配するのであります。  現に、後藤田総務庁長官は、ことし三月二十四日、参議院予算委員会において、教育審議会の議論がどうなるのかという問題で、こう言っております。「教育審議会も行政改革のこの意見書というものを頭に置きながら私は適切な御審議、そして適切な御答申がある」、こう思っておりますと、こう言っておるのであります。この臨教審では自由な論議をやってもらうということを文部大臣はかねがね強調されました。総理もそうおっしゃっています。そうおっしゃっても、今の臨調行革というレールと枠はこの臨教審の皆さんをも事実上支配し、臨教審の皆さんはこれを頭に置きながら適切な答申、つまり行革推進審議会の文教費極力抑制という、そういう政府が最大限尊重するという方向に真っ向から反するような答申はしないだろうと後藤田長官は期待しているわけであります。私は、既にここのことにおいて教育改革論議は出発点から重大な誤りを持つものと言わざるを得ないと思うのであります。  時間がありませんから先に進んでまいりますが、しかもこの論議は非公開で行われる。非公開だけではなくて守秘義務が終生課せられるという、そういう状況の中で行われるのであります。この守秘義務の問題について、私は十分時間をとって論議をしてまいりました。そこで、私は総理が七月十三日の本会議で我が党の吉川議員の質問に対してお答えになった答弁を御訂正をいただかなくてはならぬというように思うのであります。つまり、それはこういうことであります。  なぜ、この審議会守秘義務を課すのか。それは、総理の答弁によりますと、「委員国会同意人事となることに伴う規定で出てくるものでございます。八条機関の特別職公務員となるということから必然的に派生する性格なのでございまして」、こうおっしゃっています。しかし、事実はそうではないことを私は論証いたしました。国会同意人事審議会でも守秘義務規定していない審議会が、私の調査で九つもあります。守秘義務規定しているのは十一ですから、約半数あります。そして、内閣法制局長官は私の質問に答えて、私の法解釈に賛成をして、守秘義務を課すのは国会の同意大事にしたことから法的に必然的に出てくるそういうものではない、そういう根拠法規はないということも認められました。したがって、この問題については、法解釈としても事実としても総理の答弁は事実にも反し、法解釈としても間違っていたということが明らかになったのでありますから、この点についてまずお取り消し、御訂正いただくように求めたいのでありますが、いかがでしょうか。
  162. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会同意人事ということによりまして、特別職の公務員たる地位になるのではないかと私は考えております。そういう面からいたしまして守秘義務というものも必要上出てくる、そういうふうに私は考えておりますが、詳細は政府委員から答弁させます。
  163. 齊藤尚夫

    政府委員(齊藤尚夫君) ただいま総理からお答え申し上げましたとおり、特別職の公務員となることに伴いまして必要な規定になるわけでございます。  ただいま先生から御指摘ございましたように、すべての審議会にそのような規定があるわけではございませんが、昭和三十年以降設けられます審議会におきましては、そのような取り扱いは通例になっておるというふうに御説明を申し上げてきたところでございます。
  164. 橋本敦

    ○橋本敦君 私の質問にお答えになっていないのであります。  総理は、守秘義務を課すことが必然的だ、こういう答弁をなさっています。しかし、今の話でも必然的だという答えは出てまいりませんで法制局長官前回、必ず守秘義務を課さねばならないという法的根拠はないということを説明されました。私は総理の答弁を御訂正いただく必要があると思っておるのですが、御訂正いただけないとすれば明白に政府答弁の食い違いであります。この食い違いをきちっとしていただかなければ、私は先へ質問を進めることができません。この問題について明確な態度政府側に委員長求めていただきたいと思います。
  165. 茂串俊

    政府委員茂串俊君) ただいまいわゆる臨教審の設置法案修正部分である第五条第六項に守秘義務規定が入ったわけでございますが、それについていろいろと御意見が出たわけでございます。  私、かねがねから申し上げておりますように、この衆議院修正に盛り込まれました五条六項の規定は、これはいわば立法政策的に絶対的に必要であるという意味でこの規定が入ったというふうに理解をいたしておるわけでございます。すなわち、先ほど先生もおっしゃいましたように、いわば法理論的に必ずこの規定がなければ法律として成り立たないという意味ではないわけでございまして、恐らく総理がおっしゃいました、必然的に必要な規定であるというふうに言われましたその真意は、まさに立法政策的な合理性から見るとこの規定は絶対に必要である、そういう意味で言われたのでありまして、あくまでも政策面での合理性を強調された言葉ではないかと私は推測いたしております。
  166. 橋本敦

    ○橋本敦君 納得できません。明らかに総理の答弁を政策的に擁護される答弁です。法制局長官が法律的に私の指摘をきちっと解明される答弁じゃありません。  総理は、この守秘義務を課することは、これは八条機関の特別職公務員となるということから政策的に必要だと言っているのじゃないんです。「必然的に派生する性格」だ、法的性格だ、こう言っているんです。私は、この総理の答弁は重大ですから訂正されること、あるいは訂正されないなら統一見解を政府が示されることを強く要望します。これ以上、この問題はっきりしなければ、私は質問を続行できません。
  167. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、言葉が足りなかったかもしれません。要するに、最近におきましては通例的にそういうふうな解釈で行ってきているものである、そしてそういうふうに取り扱ってきているものである、そのように発言させていただきます。
  168. 橋本敦

    ○橋本敦君 事実上、答弁の訂正を総理はなさったというように私は今の答弁で理解できるわけでありますが、そうでしょうか、総理
  169. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今申し上げたとおりであります。
  170. 橋本敦

    ○橋本敦君 残念ながら、私の持ち時間はあと三分しかなくなっておるものですから、これ以上議論できないのがまことに残念であります。時間切れで政府は救われたかもしれませんが、私は納得できないんです。  最後に、総理に伺いますが、教育基本法を守り、そしてこの精神にのっとって教育基本法の理念と目的を実現するということがこの法案の目的として記載されています。教育基本法をしばしば守るとおっしゃってきました。だがしかし、問題は、本当にそうであろうか、その保障があるであろうか。文部大臣総理も、委員の発言の自由を保障し、そして何物にもとらわれずに、教育基本法そのものについても、これも含めて議論をしていただくということも言われました。まさに、それはうたい文句とは違う方向で問題が出ているということを私は端的に指摘せざるを得ないのであります。  総理は、「新しい保守の論理」という七八年にお出しになった著書の中で、こう言っておられます。「文部省教育方針にしても、」「約三十年前、占領軍によって指導された外来種の教育理念や制度の上を走りながら小刻みの改善を行っているにすぎない。その外来種の教育方針は抽象的な理想主義にあふれ、普遍性を持った人類史上の輝やかしい産物ではあった。しかし教育とは、民族の個性や歴史や風土や社会体質を無視して、抽象的理念が良いからといって必ずしも適合するものではない。」、こうおっしゃっている部分があるのであります。  これもまた抽象的な議論でありますが、要するにここで、三十年来、教え子を再び戦場に送るな、あるいは平和と真実と科学に立脚した人間の尊厳や人格の形成を目指す、この教育基本法に示された教育をと営々と教師たちが努力してきたそのことが、外来種の教育方針だという言葉で批判されているのではないか。そのことが今度の臨教審を通じても、総理の諮問の方向づけとして総理の意図の中にあるのではないかということを私は深く心配せざるを得ないのであります。  そしてまた、同時に、総理は戦後政治の総決算ということをおっしゃられました。その戦後政治の総決算とはこの教育問題についてどうしようとおっしゃるのでしょうか、この点を明確にしていただきたい。そしてまた、戦前の教育がまさに天皇人権に基づく勅令主義であったし、同時にまた教育勅語を最高の道徳観として国がその価値観を支配して教育に押しつけて、それが本当に暗黒の時代をつくっていったというこのことから、まさに公権力は、国家権力は教育に対して謙虚でなければならぬ。そういう意味で、不当な支配を排除し、教育条件整備を旨とする教基法十条が生まれたと思うのですが、戦前を振り返ったこの歴史の教訓を戦後政治の総決算ということとともにこの臨教審の中で消し去るようなことは絶対に許してはならぬと私は思っているのでありますが、総理のこの点についての御意見を伺って、私の質問時間がちょうど終わりますので、質問の最後にいたします。
  171. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) マッカーサー元帥に占領されましたときに今の教育体系というものが導入されたわけでありますけれども、あのころはアメリカ軍の強い影響力がありまして、教育についても、私は国会におりましたが、かなり助言を受けたわけであります。その後、独立に伴いまして、この教育体系というものをできるだけ日本化していく、こういう努力をみんなで営々としてやってきたのではないかと思っております。それは、相当程度そういう方向に成功してきていると思っておるのであります。  私は、教育というものはその民族の持っておる精神的土壌の上に育たなければ長続きするものではない、そういうことを言ってきておるもので、その考えは間違っているとは思いません。そういうような考えに基づきまして、世界的普遍性と、これは教育基本法に明示されております、それと同時に、この日本における教育という特殊性とを調和させていくところに教育の運用上の大きな問題がある、そういうふうに考えておりまして、そういうような教育改革というものを運用上ぜひやっていただきたいと考えておるのであります。
  172. 橋本敦

    ○橋本敦君 まだありますが、時間が来ましたので、残念ながら終わります。
  173. 藤井恒男

    藤井恒男君 総理文部大臣、お昼抜きで大変お疲れだろうと思うのだけれども、もうしばらくだから頑張っていただきたいと思います。  先ほど総理の御答弁の中で、我が党の佐々木委員長が一月十七日の党首会談で教育臨調ということを提唱した、しかしその後いろいろ考えて呼称面においていかがなものかということで臨時教育審議会という形をとったというふうにおっしゃいました。我が党の佐々木委員長が提唱した問題は、これまでの教育改革というものがどちらかといえば文部省、そして日教組及び教育関係者という特定の狭い枠の中で取り扱われてきている。したがって、国民のコンセンサスに立脚して、政府が挙げて取り組む姿勢に欠けていた。かつ、今日、教育問題が国民的課題であるということにかんがみて、あたかも行政改革における臨調的な規模ということを申し上げたわけでありまして、一言つけ加えさせていただきたいと思います。  そこで、総理にお伺いするわけでございますが、本法案審議もいよいよ大詰めを迎えておるわけであります。与野党ともに重要法案という位置づけで、衆議院、参議院の内閣委員会でかなり長時間かけて慎重な討議が行われてまいりました。参考人あるいは公聴会における公述人などからも貴重な意見が開陳されてまいりまして、総理文部大臣等を通じて逐一報告を聴取されておられることと思うわけでありますが、これまでの審議を踏まえて、この時点に立って、総括的な形での総理の御感想あるいは御決意というものをお伺いしたいと思うんです。  また、審議会が答申を出しても、これを実行しなければならないわけでありまして、多少の困難を生じてもそれを乗り切って、勇断を持って実行してもらわなきゃいけない、こういう点にもどのような決意を持っておられるのか、この際、総括的な意味での御所見をお伺いしておきたいと思います。
  174. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 本法案国会に提出させていただきまして以来、国民各位の大変大きな関心を呼びまして、教育改革というものは今や全国民的課題になってきたと考えております。そして、衆議院及び参議院におきまする長時間にわたる審議の過程におきましても、さまざまな有益な御意見を与野党の皆様方から伺うこともでき、また参考人の皆様方からも伺うことができまして、教育改革というものがますます国民的になると同時に、非常に豊かな、しかも潤いのあるバラエティーに富む教育改革、しかもやはり凛然として教育には一本通るものがなければならぬ、そういうような御主張も聞こえてまいりまして、我々も非常にいい勉強をさせていただきました。これらの与野党の御議論あるいは権威者の御議論等も踏まえまして、もしこの本法案成立させていただきましたならば、この運用等について誤りなきを期したいと思っております。  また、この審議会発足後におきましては、試験問題やあるいは入試問題その他、子供たちの点数評価の問題等につきましても、中間答申をもしいただくならば、できるだけ早期にそれを実現していきたいと思っておりますし、また答申全体につきましては、内閣を挙げて、これを尊重して検討の上、実現してまいりたいと考えておる次第でざいます。
  175. 藤井恒男

    藤井恒男君 文部大臣も、長時間の審議に当たって、体力もあるし、お若いし、あるときは勇断を持って、またあるときは男おしんの心境で、大変粘り強く精力的に頑張ってこられました。まことに御苦労さんでした。敬意を表します。  ここで、いよいよ審議の終結を目前にしているわけてありますが、数々の意見が、しかも異なった意見もたくさん出てまいりました。私は、異なった立場の方たちも我が国の教育改革という熱意の中から出てきた言葉であって、大変重要な問題だと心得ております。そこで、大臣として、この終結を目前にして、さまざまな審議の経過の中から今後何を重点的に留意していかなければいけないのか、その辺のところ、整理がついていたら、ひとつ述べていただきたいと思います。
  176. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 衆議院、参議院の予算委員会あるいは内閣委員会、そしてまた文教委員会、数々の各党の皆さんからいろんな御意見をちょうだいいたしました。どの政党、どの会派も、それぞれ教育に対する大変な御見識を持っていらっしゃいます。総理と私に寄せていただきます。ある意味での激励でもあり、そしてまた期待感でもあるというふうに受けとめさせていただきまして、謙虚に、そしてまた勇敢に教育改革について取り組んでいきたい。この国会の長い御論議を踏まえて、私はそういう責任も持たなければなりませんし、同時にまた、そういう新たなる意欲も私は創出をさせていただいた、このように受けとめております。  今の時点で、どのようなことを大体まとめたかということのお問いかけでございます。大変多くの論議がたくさんございました。私は、国会成立をさせていただいて臨時教育審議会がスタートいたしましたら、この国会論議を踏まえて、多くの皆さんから寄せられました疑問点やまた御意見やら、そうしたことなども全部整理をいたしまして、総理に御進言を申し上げたい。そして、総理に改めて諮問の内容をおつくりをいただきたい、このように思っておりますが、先ほど総理もおっしゃったように、大変私はこれは幅広いと思います。したがいまして、やはり包括的、基本的な諮問になろうかというふうに考えておりますが、そのときに大事なポイントといたしましては、各党の皆さんからお寄せをいただきました国会におきます御質問等を踏まえて、大体視点を三つばかりに私は整理をいたしたい。  その一つは、学校教育の現状を再検討して、学校制度の改善や教師の指導力の向上等を図ることが基本的な課題であろうということがまず第一点。第二は、教育は家庭や社会においても行われる営みであるということ。そのことを十分考慮をいたしますと、学校教育のみならず、広く我が国社会に存する教育の諸機能全般に対する活性化の方途を探求することが極めて大切なことであろうということ。そして三番目には、学歴社会を是正して、生涯にわたる学習の機会をどのように充実、確保していくかということ。  この三つの課題を中心にいたしまして、総理がたびたび申し上げておりますように、二十一世紀を担う青少年が主体的に苦難に立ち向かっていくということ、そしてまた広く国際的な視野を持って、そして良好な人間関係をつくり上げていくということ、このことが私たちが求めていく大事な教育改革の視点であろう、このように考えておるわけでございます。
  177. 藤井恒男

    藤井恒男君 総理にお尋ねしますが、総理国会答弁で、審議経過の概要を適宜国民に公表するということは大事なことなんだというふうにお述べになっているわけですが、教育改革の成否というものは、やはり国民合意の形成いかんにかかっていると私どもも考えているわけです。したがって、この考え方臨教審にどう反映させていくのか、また政府自身が具体的に、主導的にどのような対応をするのか、この辺についてお尋ねいたしたいと思います。
  178. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、臨教審委員につきまして、全国民を代表し得るような各分野から見識と経験を持っておる人士を選ぶということが大事であると思います。  それから第二に、審議につきましては全く自由に審議をしていただきまして、既往のものはもちろん参考にはいたしますけれども、二十一世紀を見据えた展望力を持った、かなり思い切った大胆な案をお考え願った方がいいと思っております。  先ほど来申し上げますように、教育改革というものは何回も行われるものではございません。一回やったら、それが成果を生むまでには二十年はかかるものでございます。したがいまして、基準を決め、物をやるというときには非常に慎重にやる必要がありますけれども、今のこの教育改革を受ける子供たちが私たちの年になるときには二十一世紀も半ばでありまして、時代は大きく激変している世界に突入すると思うのであります。そのときに生きる日本人というものがどういう日本人が望ましいかという展望力も持ちつつ教育というというものをやっていただく、そういうようなかなり思い切った放胆なアイデアを持ち寄って的確な案をつくっていただきたいと思います。政府は、それらの御答申に対しましては、十分検討の上、大胆に、かつ周到に答申を尊重してまいりたいと思っておるところでございます。
  179. 藤井恒男

    藤井恒男君 ただいまの御答弁の中にもありましたように、委員人選というのは極めて重要であるとおっしゃられました。私どもも同感であります。衆議院修正されまして、その人選国会の同意が必要となっておるわけでありますが、現実的に、この時間帯の中で同意人事を今国会提案することが非常に難しいというふうに私は思うわけでありますが、提案できない場合は、委員を選任するに当たって事前に各党に提示して了解を求めるなどの方途を講ずる用意があるのかどうか。私どもは、との審議会審議に当たって、各省庁のOBが委員の中にいて、その利益となることを代弁したり、省庁同士の縄張り争い、あるいは権限争いが行われていくというようなことを厳に避けなければいけないというふうに思っているがゆえに、修正の中で国会同意ということを取り入れたのであるし、また今申したことを総理にお尋ねしているわけです。いかがですか。
  180. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府は、この法案早期成立を念願して全力を尽くしておるところでございまして、成立しないということも考えて括りませんし、また会期内に最後の一秒まで努力をし、また御同意も得られるように努力してまいりたいと思っておるところでございます。  委員につきましては、やはり全国民的視野に立った全国民を代表するような委員で、行革と違うところは、行革は政府機構を削減したり予算を調整するという仕事がありますから各省のOB等も入りましてその事前調整という役目もやりましたけれども教育の問題は行革とはまるきり性格の違う、機構とか何かの問題よりも、むしろ教育をどうするかという心の問題あるいは対社会関係の問題が多いのでございまして、そういう意味におきましては、行革のようにOBの皆さんが自分たちの旧官庁の利益を擁護すると言われているようなことは絶対に起こさせないように、またその必要もないだろうと私は思いまして、臨教審臨教審として立派な業績を残すように御協力も申し上げたいと思っております。
  181. 藤井恒男

    藤井恒男君 間もなくこれは本委員会審議終結して、一両日中の本会議に上程されるであろうと私は思っておるわけですが、その前提に立って、いつごろを目途に審議会を発足させたいとお考えなのか。最終答申は昭和六十二年の夏があるいは秋ごろに行われるのじゃないかと我々は予測しているんですが、そうだとすれば、本格的な教育改革は遅くとも六十三年度から実施しなければならないというスケジュールが立つんです。この点、先のことですけれども、どのようにお考えでしょうか。
  182. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 法案成立させていただいて施行させていただきましたら、できるだけ早期委員人選を完了したいと思います。そして、御同意もいただきたいと思っております。  それから三年間の期間でございますけれども、これは審議会皆様方の御意向にもかかわりますが、先ほど来申し上げるように、必要あらば中間答申もいただきまして、やれることはどしどし先にやるということも考えております。  それから最終答申が行われましたならば、これは恐らく相当な改革の答申が出てくると思いますから、全内閣を挙げまして、これを点検の上、実行するというふうに持ってまいりたいと思っております。
  183. 藤井恒男

    藤井恒男君 国民的な基盤の上に立って教育改革を推進するためにということで、衆議院において二点について修正が行われたわけです。その意図するところは、党利党略ではなく、国家を挙げて教育改革に取り組もうという視点からのものだと心得ております。答申が出て実行に移す場合、重要な事項については、それをどう実行していくかについて政府自身提案する前に、あらかじめ各党の意見を聞く、例えば政策協議的な場において意見を聞くというような考えを持つべきだというふうに思うんですが、いかがですか。
  184. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 教育という問題は、できるだけ超党派的に持っていくことが望ましいと思います。本法案提出に至るまでにいろんな経緯もございますが、藤井さんの御意見はひとつこの法案成立以後よく検討させていただきたいと思っております。
  185. 藤井恒男

    藤井恒男君 我が党は、教育の政治的中立を確保するために、かねてから現在の立法権、行政権、司法権に対して第四権的に教育というものを位置づけなければならないということを提唱してまいりました。そういった発想の中から、例えば中央教育委員会というものを国に設置していくのも一つの道じゃないかということを提言してきているわけですが、将来、臨教審を新しい機関として発展させて、例えば中央教育委員会というような形のものにつないでいくというような構想もあってしかるべきだと思うのだけれども、いかがなものですか。
  186. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 第四権というものの内容をまだよく私は知っておりませんので何ともお答えできませんが、独立性を持った国家機関的意味を持つ第四権という考え方には消極的であります。やはり内閣制度のもとにおいて内閣で責任政治を行う、そして国会及び国民に責任の持てる、そういう体制を持つのが現在の制度の根幹でありまして、それを揺るがすような制度には賛成することはできません。  しかし、教育中立性を持って長期安定的に持続的に行われなければならぬという御意味であるならば、その意味するところはよく理解もでき、同感であります。したがいまして、この臨教審以降、教育中立性や安定性、あるいは強力推進というものを確保するのに文部省や内閣との関係でどういう機構が要るかという点については検討させていただきたいと思っております。
  187. 藤井恒男

    藤井恒男君 この問題については、また改めていろんな角度で論議を深めさせていただきたいと思うわけです。  最後に、総理にお伺いいたしますが、総理は戦後政治の総決算として行革を進め、また教育改革というものを提案なさっておられるわけでありますが、戦後政治の総決算というものは行革と教育改革、これで終わりなのかどうか、課題としてこれで一応ピリオドを打つというふうにお考えなのかどうか、仮にまだあるとすれば何があるのか、その辺のところをお聞きしておきたい。
  188. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 戦後政治の総決算というのは、私が申し上げた言葉で大変恐縮に存じておりますが、私が当面やっておる行政改革、財政改革、教育改革、これは今私が取り組んでおるところでございまして、その後の問題についてはまだ社会的な問題とかあるいはさまざまな問題もあり得るだろう、そう思っております。それらにつきましてもいろいろ考えているところはございますが、しかしとりあえず、ともかくこの三大改革を実行するということが大事であると思って、鋭意これに努力しておるところでございます。
  189. 藤井恒男

    藤井恒男君 終わります。
  190. 前島英三郎

    前島英三郎君 いよいよ私が最後になりますけれども、今国会におきまして総理質問する機関を得られましたのは、二月十日の本会議におきます代表質問以来およそ半年ぶりのことでございます。  代表質問の際にも、私は教育改革の問題につきましてお尋ねをさせていただきました。その答弁の中で、総理は大変すばらしいことを述べておられたんです。御記憶があるかどうかは別としましても、大変すばらしいことを述べておられました。「障害児が持っておる直感的なセンシビリティーというものは、我々から見れば非常に貴重な人間の宝のようなものが自然にそこに埋蔵されているということを感じた」と、こうお述べになっておられたわけです。障害者や障害児の問題を語るときに、どうしても障害という部分、ディスエーブルという部分がクローズアップされてしまいまして、何となくマイナスの要素として人々はとらえがちなんですけれども、そういう傾向というのは、これは人間社会に何となく今日まで培われてきて、なかなかこれをぬぐい去るのは難しいかもしれません。  ところが、総理はマイナスというよりもかえって貴重なプラスなものを発見され、それに大変感動されておられたわけでありまして、これは非常に大切なポイントであると私は思います。そして総理は、さらにそうした能力をいかに引き出すかが大切であり、また仲間として社会の一員に当たり前のこととしてお迎えするという態度でやっていきたい、こう結んでいただいたわけでございます。  この答弁を承りまして、私は実はその場で再質問をいたしましてさらに深めさせていただきたいと思ったんですけれども、これは代表質問で本会議のことでありますからそれはできなかったんですが、その後、二月の末ごろでありましたか、NHKのテレビ番組で「総理にきく」というのを実は拝見をしたんです。この番組の中でも総理は大変すばらしいことを述べておられます。障害児の教育のあり方に触れられておりまして、普通の学校の教育ともっと一緒にミックスしていく必要があるということを御自分から発言されておられたわけです。  その後、予算委員会でも私の出番がなくて総理のお考えを伺うチャンスというのがなかったわけなんですけれども、あれは総理が持っている一つの政治家としての知られざる美点というものをもう少し早い時期に引き出すことが、もっと早くチャンスがあればできたんですけれども、今ようやくそのときがやってきた、これはちょっと大げざ過ぎますけれども。そして、私はこの臨時教育審議会設置法に対しましてこれまで賛否を明らかにしてまいりませんでしたが、いよいよ結論を出さなければならないときでもございまして、大げさかもしれませんが、私はこの質問にかけたい、そう思って実はここに臨んでおることをまず申し上げておきたいと思うんです。  教育改革といいますと、教育を改革する必要があるという一般的な認識ではこれは一〇〇%に近いコンセンサスが得られるのではないかと思うんですけれども、ところが、一つとしては、現状のどのようなところに問題を感じるのか、二つ目として、それをどのような方向で改革するのか、そしてまた三つ目として、それをどんな方法で進めるのかという部分が、今日までいろんな論議の中で要約する部分だろうというふうに思います。  そこで、大筋として、この順序で総理に私は質問してまいりたいと思うんですけれども教育をめぐる諸問題の基本認識についてまず伺いたいんですが、余り一般論ではなくて、私が関心を持っておりますテーマに即してこの中から教育全般を私見たいものですから、お尋ねしていきたいと思うんですけれども、一九八一年、昭和五十六年、国連の決議に基づきまして国際障害者年とされました。この年を起点として世界じゅうで大変な努力が続けられてきたわけです。  この障害者年のテーマは障害者の完全参加と平等、これは非常にポピュラーな言葉になりました。この完全参加と平等を実現するためには、これは広く教育全般が寄与することが必要であるということは言うまでもありません。学校教育を初め、あらゆる教育の場の中で、その理念とかあるいは関連するもろもろの事項について普及をして、あるいは啓蒙していくことは、これは行きつくところが私は教育の場であろうというふうにも思っているわけなんです。これを逆の見方をしてみますと、教育改革の視点から障害者などの完全参加と平等の実現というテーマはどのような位置づけがなされるかということでありますけれども、私はやはり教育改革にとっても完全参加と平等の実現が不可欠であるというふうにも思っているわけです。これは確信してもいいと思うんです。  教室の中で、いかに徳を教えて、あるいは平等を教えても、教室の外の社会で差別と不平等というのが広まっていたら子供たちは正しく学ぶことができないと思うんです。私もちょっと通りすがり聞いた言葉で、何とからゃん、勉強しないと何とからゃんのようになっちゃうのよと、こう我が子を障害児を引き合いに出しながら叱咤激励をしているという母親に遭遇したこともあったわけであります。子供たちの教育の中に、多かれ少なかれ必ず社会の現実というものがこれは投影していくことは間違いないことだと思うんです。特に、差別と不平等といった問題は、より鋭敏に子供たちの心に大きな影響を与えずにはおかないであろう、こう思うんです。  それがまた一つの引き金となった、あの横浜のああした浮浪者襲撃みたいな子供たちの私はアクションであったようにも、ふと思うことがあるわけでありますが、教育改革と完全参加と平等の実現とは、こういう立場から非常に密接な関係があると私は思うのでありますけれども総理の率直な御見解をまずお伺いをしたいと思います。
  191. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、障害児の生態をじっとこう見詰めておりまして、特にねむの木学園の子供たちに会って、あの絵を見まして、これはすばらしい才能を持っている、これはピカソそのものだと、そういう気がしました。人間はみんなこういう天性と直観力を内包しておる、あの子供たちにはそれが指導者の力によって非常にそのまま出てきたのだ、だから宝を持っているのだから大事にしなければいけない、そういうふうに感じてきておるということが第一であります。むしろ、障害児の方がそういうような点においては鋭敏性を持っておるし、正直に大胆にそれを出す力を持っているのだ、そういうふうに感じております。それを大事にするというのが大事なことであります。  それから第二は、やはり障害児の教育というものの一番要請は、母親も学校も周りの人も、君でもやれるんだよ、我々の仲間なんだよ、人並みにやろうじゃないか、そういう気持ちだろうと思うんです。それを先生は完全参加と平等という言葉で表現しているのだろうと思いますが、簡単に言えば、我々の仲間で当たり前にやるんだよ、そういうことであるだろうと思うんです。これはやっぱり非常に大事なことであると思っております。人間というものは、みんな生きがいを持ち、使命感を持ち、そして自分の全能力を発揮したいと考えて生きておるので、それがなくなったら人間の生きる気持ちはなくなっちまうだろうと思います。  先般、オリンピックの入場式を見ているときに、フィンランドでありましたか、車いすでアーチェリーの選手が先頭を走っていきましたですね。私は、あれくらい感動を与えたことはないのではないか。やれるんだ、みんなと同じようにやれるんだと、そういうことを見せてくださったと思うのであります。パラリンピックというのもそういう精神のあらわれで行われているのだろうと思います。  そういう意味におきまして、障害児に対する教育というものは、先生がおっしゃるような基本的な理念とやり方に基づいて日本も行わなければならぬと確信しておる次第であります。
  192. 前島英三郎

    前島英三郎君 今の総理お話ですと非常に一般論的になってしまうんですけれども、私が申し上げたいのは、つまり一〇〇%の子供たちがいて、その中に障害児が一%として、九九%の子供たちのためにその一%をやっぱり疎外していく、それが今の一つの障害児選別教育の中にあるわけですね。健康な子供は校区の近い学校で学ぶのに、障害を持った子供は遠くの学校へ現実は行かなければならないわけです。  私は、実はつい一カ月ほど前に、兵庫県の明石とそれから姫路の間にあるある養護学校に行ってまいりました。ここで夏休みを控えた障害児たち全員が、兵庫県下の中学生が寄宿をしているわけです。寮に入って勉強しております。夏休みが近いですから、みんな、夏休みが近くてよかったねと、こう言いましたら、この子供たちは非常につまらなそうな顔をしたんです。帰るのと、こう聞きましたら、実は帰らないんだと、夏休みを。なぜか。帰っても友達がいないんです。いないものですから、むしろこの中で、六人部屋、四人部屋の中の友達との触れ合いしかこの子たちの夏休みはない。  ある子供は、去年勇んで帰ったけれども、最初の一週間は、実は夏休みは一カ月しかないのかいとお母さんに言われた。しかし、一週間が過ぎて、あるいは一日、二日、三日目とたつと、あと何日夏休みがあるんだいと今度は母親が逆に聞くようになってきたということを見たときに、また親から離れた障害児たちが、親が大変やはりそのとき突然夏休みの期間に帰ってきたことによって迷惑になってしまうという、これは離れてしまった一つの必然的なことだろうと思うんです。  こういうことを考えてみますと、欧米諸国の場合は、一つの国際障害者年をきっかけとして、障害児と非障害児の統合教育というのが当たり前のように叫ばれてきているわけですけれども、日本の場合には統合教育といいますと、日本でも欧米には負けておりません、日本にも特殊学校という教育の場があるわけですから、そこで欧米並みのことはやっているんですよというようなことを文部省は言うわけですけれども、しかし統計的な実態の比較では、確かに盲者、視力障害者には視力障害者の専門的な教育、聾者には聾教育という百年の歴史の中でやっておりますけれども、一般的なものはやはり選別で、あなたは普通学校、あなたは養護学校。普通学校に入りたいと親御さんが幾ら言いましてもやっぱりだめなんですということで、実は一つの町、二つの町離れた遠くの学校に転校といいますか、就学を余儀なくされるというような今実態が現存しているわけです。  ですから、やっぱり子供たちは地域の子供たちと遊ぶことができない。もちろん、地域の子供たちも遊ぶなどという子供は今おりませんです。今、私のそばの公園にも、本当に子供たちは夕方おりません。みんなかばんを持って学校から帰ってくると、さらにもう一つの学校へ行くということを繰り返しているわけですから、そういう問題に一つの教育改革の私は端を発しているということを見たときに、やっぱり今こそ障害児の教育も私はこれからの臨教審の中では大きなテーマとして、むしろ健康な子供たちのために、私は統合と一気に踏み込むのではなくて部分的な統合、体の不自由な子供たちが地域の学校でも学べるというような門戸を開く、入り口を閉ざすのではなくて広げる、そしてそれぞれ能力に応じた出口を見つけてあげるということが、私はこれからは大変大切な教育のあり方だというふうに思うんです。  私は、国際障害者年のときにいろいろな子供たちに実は聞きましたら、私は車いすですから申し上げますが、一〇〇%車いすは知っているんですが、九八%の人はやっぱりさわっていないんですね。乗ってもいないんです。ですから、障害児たちにどう手助けしたらいいかわからない。横断歩道で困っている目の不自由な人に、どう白いつえの方に協力したらいいかわからないということをよく聞くんです。余りにも地域の中では障害を持っている子供たちと普通の子供たちの距離感があり過ぎるということを考えますと、やっぱりこれから新しい財政再建という時代を迎えできますと、私はむしろ健康な人のそうしたエネルギー、ともに車いすを押したり押されたりする、義務教育の間に一〇〇%の子供が車いすを押したり乗ったりする体験を持つなどということが当たり前になってきますと、日本の福祉というのは少ない予算でも私は高福祉というのは必ず望めると、こういうぐあいに思うんです。  どうしても高福祉は高負担というのがパターン化していますけれども、私は低負担でも高福祉というのはあり得る。その低負担でもあり得る高福祉は何かといったら、子供たちの世界の中にやはりスロープになる心や点字ブロックになる心を統合という形で一緒に学び合うという中で私は育てていくことこそ最良の財源だというふうに思うんです。その財源をどうしても今は子供たちの世界では触れさせないまま、現実の分離教育というものが行われております。そして、健康な子供も教育工場というベルトコンベヤーから落ちないようにしがみついている。まさしくトンネルの中の新幹線が二百キロで走るような形の教育形態の中で子供たちはその汽車にしがみついているというような状況を見できますと、やはり私はこの臨教審の中に一朝一夕に統合というのは当然無理でありますから、やはり部分的な統合という模索をぜひ、総理の直轄するこの臨教審なら私はできるであろう、総理の英断を私は期待したい、こういうぐあいに思うんですけれども、その辺の部分的統合あるいは統合教育を目指す今後の臨教審での御論議というものに対する期待が持てるのかどうか、総理に伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  193. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 障害者の教育の問題の理念というのは前島先生が申されたとおりで、私は前から同感、共鳴しているところであります。すなわち、我々の仲間で君たちと我々と同じだよ、そういう気分と、また実際の子供たち同士、あるいは親、子供、すべての関係においてそういう扱いをしなければならない、そう思っております。  ただ、具体的な学校教育の問題になりますと、これは子供の能力の問題あるいは身体的条件の問題、そういう問題も絡んでまいりまして、その能力とか身体的条件の許す最大限普通の子供と同じ方向に扱うようにしていく、そういうやり方が望ましい。それはおのおのその子供たちを見て決められる問題ではないかと思っております。しかし、いずれにせよ、これは子供の幸せのためにそういうことも考えられると思っておるのであります。その能力やら身体的条件というものをよく見た上でやって、かえって一緒にしたために不幸になるということではいけない、そういうふうに思っておるのであります。  しかし、国際連合の身体障害者年というものが世界的に行われて以来、非常に認識と運動は広がりました。偉大な大きな成果があったと思っております。日本におきましても、国連が世界全体でこれだけの仕事をやろうというぐらいの大きな大事な問題としてとらえられているわけでございますから、今度の臨教審におきましても、その人選あるいはその討議の内容等について、この障害者の問題、障害者教育の問題という問題についてやはり見識のある人とか、あるいは経験もある方とか、そういうような観点から障害者教育という問題も臨教審の取り上げるべき一つの大きなアイテム、大事なアイテムとして考えていただきたい、そう念願しております。これは、いずれ、委員審議内容というのは自分たちで決めることでありますが、私は文部省をしてそういうような資料なり助言というものを適切にやらせるようにいたしたい、そう思っております。
  194. 前島英三郎

    前島英三郎君 今、総理が、それぞれ障害を持った適切な教育の場と、こういうことをおっしゃったわけですけれども、まさしくそれは当然のことだと思うんです。しかし、日本の場合は学校教育法施行令二十二条の二の表というのがありまして、それによってこの表に書いてある障害の程度より重い障害のある児童生徒は特殊教育諸学校に行けば適切な教育が受けられると、こういうことになっているんです。それは意味とすればわからないでもないんですけれども、しかし、就学指導委員会というのがありまして、そこが総合的に判定をする。その二十二条の二の表は厳然として存在しているがために、そこによって実はいろいろトラブルが起きるわけですね。  すなわち、障害の程度によって自動的に教育の場が決まるはずだという前提に立っているものですから、諸外国とは違うという一つの基本的理念が、選別のそこに哲学が内包されているものですから、親がこの子にとってはこの学校がとこう思いましても、どうしてもだめなんだということで選別、振り分けということが行われるわけです。ですから、私は五十六年、鈴木総理のときにも申し上げたんですけれども、親がやはりこの子にとってどの教育の場がいいのかという選択は任せる、この子の幸せを。親を思わぬ子はあっても、子供を思わね親はないと思うんですね。この子供のためにどこがいいかというやっぱり判断は、決して専門官ではない。その専門官はまだまだとても日本は育ち切ってはいない。やはり親御さんがこの子にとってこの学校がいいと思ったときには素直に門戸を広げる。そして、そこで統合させ、通ってみてだめだと思えば、この子にとって普通学校はマイナスだと思ったらまた養護学校ということも当然あってしかるべきであろうというふうに思うわけですね。  それの部分が、非常に実は文部省の一つの壁というものが、私は国際陣害者年の完全参加と平等、子供たちの世界がこうした不平等の形で幾ら大人の社会で完全参加と平等と叫んでいっても、そこはますます大きな距離感になり、やっぱり心という一つの差はおのずと生じてくるような気がするんですけれども、改めて総理質問させていただきますが、ぜひこの臨教審の、一つの部分的な統合という形で障害児にとって普通の学校で今後は学んでいくという方向をぜひ打ち出していただきたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  195. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 世界的水準でやっていることは日本でもやれないことはないので、やらせるように努力していきたいと思います。  それから今度の臨教審における討議の内容等につきましても、障害児教育という問題は、先ほど来申し上げますように、国連の身体障害者年という世界的な企画の中でも大きく行われたような大事な仕事でもありますから、今回の臨教審の討議の内容等につきましても、十分それらを検討していただいて、その成果を我々は実現していきたいと考えております。
  196. 前島英三郎

    前島英三郎君 私は、参議院の会としてこの内閣委員会委員の割り当てをいただいているんですが、参議院の会では法案に対する賛否は拘束しないことになっております。そして、法案に対する賛否が全員一致でない場合は討論しないという申し合わせがございますので、この後、臨教審設置法につきましては、私は質疑が終わった後は討論に参加はいたしませんけれども、私は今の総理の御答弁を前向きとしてとらえたらいいのか、やはり相変わらずの厳しい分離教育は今後も続いていくのだという前提に立って答弁を私が判断したらいいものか、その辺の総理大臣の心を文部大臣はどのように読んでおられるか、ひとつ伺いたいと思いますが、いかがですか。
  197. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) この臨時教育審議会を通じまして、先生の大変御熱心な障害児教育に対するお考えをお示しをいただきまして、私も総理も同様に、先生のそうしたまじめな障害児教育に対する考え方については、基本的にはやはり先生のお考えをできる限りこれを具体化していきたい、こういう気持ちでおるということであろうというふうに思います。  ただ、先生は、基本的には障害児の人たち、子供たちを皆同じようにまず入れて、その中からやはりついていけない子、あるいは種類、程度に応じて違った教育をせざるを得ないというお考え、これは先生がおっしゃいました。文部省は、今日まではやはり基本的には種類、障害の程度に応じてまずひとつ子供たちの立場に立って考えていくべきだ、そこのところは若干スタートが違っておると、こう思うんですが、基本的な考え方は同じだろうと思うんです。  問題は、やはり子供が同じような条件の中から、子供たちの教育的な個性といいましょうか、能力といいましょうか、それをどう引き出して、そして社会に参加させてあげるかという、こういうところが基本的にとても大事な、私たちも大事に考えているところでございます。総理は、したがいまして、今日、文部省側としてとっております考え方、このことを十分踏まえながら先生のお気持ちをどうやってこの新しい障害児教育の中に生かしていけるであろうか、こういうことを、総理としての大変私は気持ちとして前島さんのお考えをどう生かしていくのかということについて非常に私は総理として十分御判断をなされながら、ごしんしゃくをなされながらお考えを述べられたものであろうというふうに考えております。  したがいまして、先般も先生の御質問に対してお答えを申し上げましたけれども、これから学校教育全般にわたりまして、教育のあり方、見直しをするわけでございます。当然その中の一つとしては、障害児教育というものはとてもやはり大事なテーマになるであろうというふうに私どもも考えておりまして、そういう意味では先生のお考え、また総理の考えておられます障害児に対する考え方、そうしたことなどを踏まえて、新しい教育審議会の中でいろんな論議が私は出てくるのではないか。また、国会を通じて先生方の、先生の御意見等もまた当然踏まえていかなければならぬと思いますが、そういう中で障害児の子供たちに対して本当にすばらしい教育が展開できるように今後審議会の中で論議を私は期待をしていきたい、このように私は先生お話を承って感じた次第でございます。
  198. 前島英三郎

    前島英三郎君 じゃ、最後になります。  一九八七年、国際障害者年十年の中間年で、国連ではどういう経過なんだということを当然待ちわびているはずであります。総理は、推進本部長であります。そのころには、この臨教審の最初の答申もちょうど相まって出てくるはずであります。そういう意味では、一つのこの今の分離教育が文部行政の終えんではない、そして新たに障害を持った子供、健康な子供もともに学ぶ方向に日本の教育行政は大きな変換をこれから踏み出していくという総理の前向きな答弁を期待をいたしまして、その答弁に対して私は賛成、反対の意思表示を今したい、かように思っております。ぜひ最後のお答えをお願いします。
  199. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、前島さんの御意見に、本当にこれは言葉だけではなく賛成して、基本的に本当に同感の人間なのです。君らも我々の仲間だよ、やればできるんだよ、それが一番基本なんだ、人間が生きている以上はそれが当たり前のことだと、そう思っているわけです。だから、できるだけそういう方向に持っていきたいと思っておるんです。  ただ、臨教審というものは、我々が委嘱して審議してもらうわけですから、ああしろこうしろと命令や強制がましいことはやれないわけです。みんな審議委員の皆さんの御見識によってそういうものをつくってもらう以外にないわけです。しかし、選任についてはこれは我々の権限でもありますから、その辺もよく考えて選任をしたいと、そう思っております。  それからいよいよ審議に入りましたというときについては、前島さんのような御意見も十分拝聴していただきたいと思いますし、文部省は必要あらば資料も出すでありましょうし、できるだけあなたのような御意見を実現する方向で私たちは協力申し上げたい。判断審議会委員がなさることでありますが、そういうことを期待していきたいと思うんです。  ただ、いろいろな段階的な要素もあるだろうと思うんです、現実問題になりますと。しかし、理念としてはあなたのおっしゃっていることは正しいと私は思っておるので、そういう方向で日本が一歩一歩前進する。そして、私申し上げました国際水準でやっていることは日本でもやるべきである。もし、そういう障害があれば障害を克服していくべきである。そういう考えを持っておるのでありまして、そういう考えで前向きに前進していきたいという私の念願を申し上げたいと思います。
  200. 前島英三郎

    前島英三郎君 どうもありがとうございました。  以上で終わります。
  201. 高平公友

    委員長高平公友君) 以上で臨時教育審議会設置法案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか……
  202. 橋本敦

    ○橋本敦君 委員長、反対です。
  203. 高平公友

    委員長高平公友君) 橋本さんの御意見は、さきの理事会でもお話ありました。しかし、私はこの理事会の方向に沿って議事を進めていかねばならぬ、そういうことで進めさせていただきたいと思います。  御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 高平公友

    委員長高平公友君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  205. 小野明

    ○小野明君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました臨時教育審議会設置法案に対し、反対の討論を行うものであります。  反対の第一の理由は、臨時教育審議会が真に国民のための教育改革審議する審議会にはなっていないからであります。  教育改革を推進するに当たっては、教育の政治的中立を確保するという大原則に基づいて、あらゆる権力の不当な支配や介入を排除し、慎重にして、かつ民主的に審議を行う機関を設置して、真に国民が求める教育改革を実現することが肝要であります。  しかるに、今回の政府案では、総理直属の審議会を設置しようとするものでありまして、これでは国家権力が教育に直接介入し、教育中立性を根本から脅かすおそれのあることは疑いのないところであります。総理大臣直属の教育に関する審議機関が、過去において国家主義、軍国主義教育の推進に大きな役割を果たす結果となったことは歴史が証明しているところであります。  教育基本法第十条は、教育が不当な支配に服することを否定し、国家権力が教育に介入することを厳しく戒めておりますが、政府案による審議会は、その設置形態はもとより、設置目的、運営方法に至るまで総理大臣の恣意に左右されるものとなっているのでありまして、これでは教育基本法の精神に反し、真に国民のための教育改革を行う審議会にはなり得ないと考えられるからであります。  反対の第二の理由は、教育改革にとって最も重要な前提となる国民的合意形成のための条件が政府案の構想には著しく欠けていることであります。  今日の我が国の憂うべき教育の荒廃を抜本的に解決するためには、設置形態に配慮した審議会を設け、委員人選や任命、その運営などが公開のもとで、より国民意見を正しく反映されることに配慮して行わなければならないのであります。  しかるに、政府案では、審議会委員の任命を初め、会長の指名に至るまで総理大臣が直接行うことになっているのでありまして、これでは審議会国民の声が何ら反映されないばかりか、総理大臣の恣意的人選によって教育改革の方向は著しくゆがめられ、ひいては国民の合意が得られなくなるのであります。  委員の任命は国会の同意事項とするとの修正が、衆議院において公明、民社両党並びに自民党によって行われておりますが、この修正は一応評価するといたしましても、なお父母、教師を初めとする国民各界各層の代表を具体的にどのように選ぶのか、また国会において各会派の意見をどのように反映させるのか、具体的内容が明らかとなっていないばかりか、民主的な人選に関する具体的な保障はなく、国民的合意形成のための条件が著しく欠如していると思うからであります。  第三の理由は、政府案では、民主主義の原則に反して国民に開かれた審議会となっておらず、非公開となっていることであり、加えて審議会委員守秘義務を課していることであります。  一般に、審議会設置の目的は、行政の民主化と官僚制の弊害の打破という視点にあると言われますが、これらの理念に反して審議会密室審議が行政の民主化を阻害し、官僚的独善の弊害を生じやすいことは、教科書検定などの例を挙げるまでもなく、枚挙にいとまがありません。臨時教育審議会公開要求に対して、自由な発言が阻害されるという理由で非公開とするとしているのでありますが、公開制にした方がかえって責任ある議論が行われると思うのであります。教育改革は、今日、国民の最大関心事であり、また我が国の将来を左右する最重要課題であることからいえば、国民は結論だけではなく審議のプロセスを知ることも重要であると言わなければなりません。そして、このことが教育中立性を担保するとともに、その結論が国民的合意を得るための要件でもあると考えるのであります。  審議会委員国会の同意人事とすることによって守秘義務を課したのは必然だと政府は述べておりますが、委員会審議でも明らかとなりましたように、国会の同意を必要とする大事につきましても、その委員守秘義務を問わないものも多くあります。教育秘密はないはずであります。  教育改革を推進するに当たって最も要請される政治的中立性の確保が危惧され、あまつさえ、審議公開されず、加えて審議会委員守秘義務を課していることによって国民不在の論議が行われましても、国民自身がそれを監視し、批判することは全くできず、閉ざされた審議会になることは自明のところであり、私どもはこれを容認することは絶対にできないのであります。  第四の理由は、当面解決すべき課題を回避し、臨教審を隠れみのとして先送りしていることであります。  今日、教育改革に対する国民の願いは、非行、校内暴力、登校拒否などの教育の荒廃の改革と受験体制の変革等であります。同時に、教育財政の充実を図り、四十人学級の凍結解除、過大校の解消など、教育条件の拡充を図ることであります。にもかかわらず、政府は行革審の答申どおり教育財政を一層削減しようとしているのであります。これでは臨教審を隠れみのとし、当面の課題を回避しようとするものでありまして、教育改革への逆行と言わなければなりません。  以上、私は本法案に反対する主な理由について申し述べましたが、日本社会党は、民主主義社会において教育の果たす役割が重要であること、及び教育が不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきであることにかんがみ、その施策に国民意見が正しく反映されることを図ることにより、憲法及び教育基本法が目指す教育の目的の実現に資するため、中央教育審議会にかえて新たに国民教育審議会を設置する法案を提出したのでありまして、この案こそ真の教育改革審議するにふさわしいものであることを申し上げて、私の反対討論を終わります。
  206. 坂野重信

    ○坂野重信君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となりました臨時教育審議会設置法案に対し、賛成の討論を行うものであります。  我が党は、これからの日本を担う子供たちを、豊かな個性と創造性に富み、社会的連帯感と公共の精神を持ち、さらに国民意識と国際的感覚を備えた心豊かな日本国民として健全に育成していくことが、今の世代に生きる我々の使命であり、責任であると考えるものであります。  このような見地に立ち、これまでにも教員給与の改善、学級編制や教職員定数の改善、学校の施設、設備等の充実のために一貫した努力を積み重ねてきたところであり、我が国の教育は世界に誇り得る水準に達していると考えるものであります。  しかしながら、これまで積み重ねてきた教育の改善の努力にもかかわらず、今日、我が国の教育には校内暴力事件等の非行の増加や偏差値重視を生み出すような過熱した受験競争に見られるようなまことに憂慮すべき事態が生じており、さらには基本的な価値観、道徳や生活習慣を育成して、豊かな人間性を育ててもらいたいという父母の願いに必ずしも十分にこたえていないという不満が国民の間に非常に高まっているのであります。  このことは、これまで進めてきた諸施策のみでは一人一人の子供の心を豊かにはぐくむ上で、必ずしも十分な成果を上げているとは言いがたいものがあると言わざるを得ず、早急に教育改革に取り組むことが国政上の緊要な課題であると考えるものであります。  このような時期に、教育基本とした広範な分野にわたって論議と改革を進めるために臨時教育審議会を設置することは、極めて時宜にかなっていると思います。  教育改革は、口で言うはやすく、実行は難しいのでありますが、中曽根総理はあえてこの困難な国民的課題に英断を持って取り組む決意を表明しているところであり、臨時教育審議会国民的合意を形成するようなすぐれた改革をまとめることを切に願うものであります。  教育は、よく言われますように、その社会の反映でもあります。したがって、今日の教育の現状は、単なる教育的な原因や背景のみから生じているとは言えず、近年における激しい変化と社会経済の複雑、高度化に伴って、今や社会のあらゆる分野でさまざまなひずみや適応不全が起こっていることの反映とも言える面があると考えるのであります。  したがって、今後の教育のあり方を考えるに当たっては、将来を展望した極めて広い視野から、これまでの物の考え方や枠組みを超えて総合的に検討することが必要であります。  また、その改革を実現するためには、文部省のみではなく、内閣の総力を挙げて取り組む必要があるのであります。  その意味で、今回の臨時教青審議会総理直属の設置形態としたことは、まことに適切であることを申し上げて、私の賛成討論を終わります。
  207. 橋本敦

    ○橋本敦君 共産党を代表して、反対の討論をいたします。  本議案を審議する定例日はあしたであります。しかも、あさってもまだ会期末の日があります。慎重審議を尽くすとすれば、それ自体可能であります。にもかかわらず、定例日外のきょう、委員会を開き、まだまだ質疑を我が党が要求しているにもかかわらず、質疑を終局させて議了するということに対し、まず私は厳重に抗議の意思を表明したいと思うのであります。  反対理由の第一は、何といっても教育改革を論ずるなら、今起こっている文部省をめぐる汚職についてしかるべき責任を明確にし、徹底解明をする、このことを抜きにやるべきではありません。  私は、そのためにも、当内閣委員会で汚職問題をめぐっての集中審議を強く要求してきたのでありますが、残念ながら入れるところとはなりませんでした。教育は、まさに崇高なものであります。文部大臣総理も、また委員長もこのことを否定はなさらないと思いますが、ならば、なぜ徹底的に汚職の究明と、責任を明確にするための手続をおとりにならないのか、まことに遺憾と言わねばなりません。  反対理由の第二は、今、国民が切望している教育要求にこたえるために、二十一世紀へというその口実のもとに先へ延ばすのではなくて、今直ちにやるべき、政治責任としてなさねばならぬ教育課題が山ほどあるということであります。  過密校の解消もしかりなら、四十人学級の実現もしかりなら、何よりも臨調行革、軍事費増大の陰に文教予算を犠牲にする、このことをまず根本的に転換させる、これなくして教育改革を論ずることは、私は重大な二律背反だと思うし、同時に、教育基本法が定める教育の条件整備という教育行政に課せられた最大の任務を放棄することにほかならぬと考えるからであります。  総理は、臨調行革、行革推進審議会意見と将来の教育改革との関連について私が質問をした際に、臨調行革路線というレールの上で教育改革の絵をかいていくということを認めざるを得ませんでした。まさに、それは国民に教科書の有料化あるいは育英会資金に利子まで課して働く学生たちに負担を強いながら軍事費は増大させるという路線の延長の上に、一体どういう教育改革を語ろうとするのでありましょうか。私は、その意味からいっても絶対に承認できないのであります。  第三は、教育基本法、その崇高な理念と戦後今日まで培われてきた民主教育の成果が奪い取られかねないという重大な問題であります。  この委員に対して、会議を非公開にするだけでなく厳重な守秘義務を果すというこの問題は、委員会でも取り上げられてきました。私も、この点は厳しく追及しました。なぜなら、強大な政治権限を持つ総理が、罷免権を背景として委員守秘義務を課し、審議の一層の密室性、これを強化するならば、教育秘密はないと文部大臣がいかにたびたびおっしゃっても、教育改革を論ずる場として全くふさわしくないところか、それ自体、教育基本法十条が厳しく禁止をしている教育への不当な支配となりかねない問題を含むからであります。  この問題について、守秘義務を課すことが法的必然性だという答弁は、総理は事実上訂正されました。しかし、その訂正によって、この法案の危険性は私はさらに重ねて重大になったと思うのであります。こう言われました、法的必然ではないけれども守秘義務を課すということは政策の問題であると。いかがでしょうか。中曽根内閣の政策として教育を論ずる審議会委員に、守秘義務を押しつけるというのであります。まことに許しがたいことであります。教育が政権党の政策によって支配されるときに、その教育は一体どうなるのであろうか。そのことを、私たちは戦前の歴史を振り返っただけでも忘れることはできないのであります。  私は、この法案審議する過程で、幾らかの教育史をひもといてみました。国が教育を政策として支配した戦前、どういうことが行われたか。昭和十五、六年、心ある数百名の教師は治安維持法によってつづり方運動で弾圧をされ、有罪にされました。その一つにこういうのがあるのであります。  お母さんと題して作文をさせた。か弱い幼児が子守をしなければならなかった。その家庭の状況を子供は痛々しく書いた。そのつづり方に対して教師が、お母さんはなぜお守を頼んだのでしょうと、考えさせる指導語を書いた。そのときに、これは貧困なる境遇の洞察により、階級意識に目覚めるよう誘導したものであるとして弾圧されたのであります。まことに恐るべきことであります。  国は、その政策として教育を支配してはなりません。私は、本法案が将来にわたって、中曽根総理の言われる戦後政治の総決算路線の中で、民主教育を危殆に瀕せしめる重大なおそれがあることを指摘して、反対の討論を終わります。
  208. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました政府提出の臨時教育審議会設置法案に対し、賛成の討論を行うものであります。  昨今における我が国の教育の現状は、学校教育を中心に世界に誇り得る規模となっているのでありますが、その反面、落ちこぼれ、登校拒否、校内暴力、非行問題等、さまざまな問題が深刻化しているのであります。  このような教育荒廃の背景と原因はまことに複雑でありまして、このため、教育改革必要性については国民的合意が形成されているのでありますが、何をどのように改革すべきか、改革の課題、方向については必ずしも国民意見は一致していないと思うのであります。  中央教育審議会は、教育改革に関しては今日まで大きな役割を果たしてきているのでありますが、同審議会は単に文部大臣の諮問機関でありまして、その答申は文部大臣の権限、機能の範囲内に限定されているのであります。教育改革を推進するためには、広く国民の支持を得つつ、国会政府が挙げて取り組まなければならない国政上の最大課題であり、ひとり文部省のみに改革をゆだねておくことは適当ではないと思うのであります。  このような見地から、我が党は、全省庁にまたがる広範囲な改革課題を検討するためには、教育改革のための新機関を総理府に設置し、国民合意のもとに教育改革に係る長期的かつ基本的構想を策定する必要があることを提言しているのでありまして、今回の臨時教育審議会は我が党の主張する設置形態に沿うものとなっております。  今回の臨時教育審議会の設置に当たって重要なことは、国民合意の改革案づくりの体制をつくることと、改革案作成上の諸原則を明確にすることであります。  このような視点に立って、我が党は、国民合意の改革案づくりの体制をつくるため、委員任命の国会同意、答申等の国会への報告義務、審議公開制並びに現場の教師、父母等の代表を委員に加えることを主張してまいりました。幸い、これらのうち、委員任命の国会同意、答申等の国会への報告義務に関しましては衆議院において修正によって実現が図られ、審議公開につきましては審議の概要を一定の区切りをもって公表するとの答弁が行われ、さらには委員に現場の教師と父母を含める点につきましても積極的、前向きの答弁が行われているのでありまして、我が党の主張はほぼ取り入れられたものと考え、今後の措置を見守っていきたいと思っております。  我が党は、改革案作成上の諸原則につきましては、憲法、教育基本法の厳正な遵守、教育の政治的中立の確保等々を打ち出しているのでありますが、政府は、今後の審議会の運営に当たりましてはこれらの諸点について厳守すべきだと思うのであります。  申し上げるまでもなく、教育は国家百年の大計でありまして、いかなる改革を志向するかは我が国の将来を決定すると言っても過言ではないと思うのであります。  我が党は、二十一世紀を展望した教育改革を推し進めるべきであるという主張をいたしておりますが、臨時教育審議会が今後の教育改革に向けて大きな役割を果たすか否かは今後の運営いかんにかかっていると思うのでありまして、政府審議会の運営に際しましては我が党の指摘した点に十分配慮すべきことを強く要望いたしまして、私の賛成討論を終わります。
  209. 藤井恒男

    藤井恒男君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました臨時教育審議会設置法案に賛成の討論を行うものであります。  民社党は、本年一月十七日の党首会談で、中曽根総理に対して、いわゆる教育臨調の設置を提唱いたしました。時代の進展に応じて教育の制度、内容等にも常に改善が図られなければならないことは言うまでもありませんが、我々があえてこのような呼びかけを行ったのは、これまで教育改革についてさまざまな注目すべき提案があったにもかかわらず、教育文部省、日教組及び教育関係者という狭い枠の中で取り扱われ、国民のコンセンサスに立脚して、政府を挙げて取り組む体制がなかったために、教育の荒廃は放置され、このままでは国民の期待や時代の要請にこたえていくことができなくなってしまうという認識に基づくものでありました。総理が我が党の主張に理解を示し、政府が本法案国会に提出してこられたことに対し、まず敬意を表したいと思うのであります。  また、審議会委員人選は、審議会審議、ひいては我が国の教育に重要な影響を与えるものであること、教育改革は行政府がその責に任ずることはもちろんでありますが、あらかじめその問題点を国民及びその代表たる国会に提示し、十分な協力を仰ぐべきであること等の理由により、我が党が主張した修正要求が衆議院段階において入れられ、審議会委員国会同意及び答申、意見国会報告の義務づけにかかわる修正が行われたことにより、臨時教育審議会に関する国会のかかわりはより強まり、国民的基盤に立った教育改革が推進され得るものと、私は高くこれを評価いたすものであります。  臨時教育審議会には、今後も我が国が活力ある福祉国家として発展していくために、二十一世紀の我が国を担うにふさわしい青少年の育成を目指して、教育全般にわたる改善策について調査審議していくことが期待されるのでありますが、今後の審議に当たっては、政府並びに審議会に次のような希望を申し述べたいのであります。  第一に、審議会委員には各方面の方々を網羅するよう特に留意されるとともに、委員には広く国民的な立場からの議論をお願いしたいのであります。  第二に、審議会の運営に当たっては、逐次、公聴会の開催、審議経過の公表など、可能な限り公開の原則を貫き、国民合意の形成に努めていただきたいのであります。  第三に、審議会が政治的に中立であるのはもちろんでありますが、教育の政治的中立を確保し、責任の所在を明確化するような行政体制のあり方について、十分な御議論をいただきたいと考えるものであります。  今、教育改革に対する国民の期待はかつてないほど高まっております。臨時教育審議会がこれにこたえ、長期展望に立って、国政の最重要課題の一つである教育改革に真剣に取り組んでいただくことを強く希望申し上げて、賛成の討論といたします。
  210. 高平公友

    委員長高平公友君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。(「反対、反対」と呼ぶ者あり)  臨時教育審議会設置法案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  211. 高平公友

    委員長高平公友君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  212. 高平公友

    委員長高平公友君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時二十四分散会      ―――――・―――――