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1984-05-08 第101回国会 参議院 内閣委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月八日(火曜日)    午前十時二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高平 公友君     理 事                 亀長 友義君                 坂野 重信君                 小野  明君                 太田 淳夫君     委 員                 板垣  正君                 岡田  広君                 源田  実君                 沢田 一精君                 林  寛子君                 林  ゆう君                 桧垣徳太郎君                 堀江 正夫君                 穐山  篤君                 野田  哲君                 矢田部 理君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 柄谷 道一君                 前島英三郎君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       中西 一郎君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        内閣総理大臣官        房管理室長    菊池 貞二君        北方対策本部審        議官        兼内閣総理大臣        官房総務審議官  橋本  豊君        総理府人事局長  藤井 良二君        総理府恩給局長  和田 善一君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君    事務局側        常任委員会専門        員        林  利雄君    説明員        外務省アジア局        外務参事官    瀬崎 克己君        大蔵省主計局主        計官       小村  武君        厚生省年金局年        金課長      山口 剛彦君        厚生省援護局業        務第一課長    森山喜久雄君        労働省労政局労        働法規課長    廣見 和夫君    参考人        社団法人日本貿        易会会長     水上 達三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  恩給法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会社団法人日本貿易会会長水上達三君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高平公友

    委員長高平公友君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 高平公友

    委員長高平公友君) 恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 矢田部理

    矢田部理君 五十九年度の恩給受給者内訳等について最初お尋ねをしたいと思うのでありますが、受給者の数、軍人とそうでない人の内訳、それぞれの金額等について、まず御説明をいただきたいと思います。
  6. 和田善一

    政府委員和田善一君) 昭和五十九年度予算におきます文官軍人別恩給受給者数、それからその予算額につきましては、まず文官受給者数が十三万四千人でございまして、予算額は千二百六十一億円でございます。それから旧軍人につきましては、受給者が二百十四万八千人でございまして、予算額が一兆五千九百九十八億円。両方合計いたしますと、年金受給者は二百二十八万二千人で、予算額が一兆七千二百五十九億円ということでございます。
  7. 矢田部理

    矢田部理君 軍人恩給が、内容から見ますと、圧倒的な比重を占めるわけでありますが、第二次大戦が終わってからも相当期間が経過をしているわけです。関係者も年々減っていくということになろうかと思うのでありますが、今後の将来見通し、いつのころにはどのぐらいの数になるのか、予算規模から見てとの程度規模になるのか。現段階ですと、旧軍人関係が二百十五万、一兆六千億という相当膨大な金額恩給費の支給があるわけでありますが、これが将来どんなふうに動くのか推計できませんでしょうか。
  8. 和田善一

    政府委員和田善一君) 推計は、いろんな要素がございまして難しいわけでございます。将来におきます恩給受給者数恩給費推計と申しましても、恩給受給者失権による減少をどの程度に見込むか、それから来年度以降におきます恩給改善をどのようにするかという点につきまして、社会情勢とか経済情勢に影響される面が非常に多いわけでございまして、その見通しはなかなか困難でございますけれども、仮に昭和五十九年度予算において見込んだ人員等基礎といたしまして、昭和五十九年度における恩給制度のままその後も推移するということでそれぞれ推計すれば、一応まず本年度は、ただいま申し上げましたように、二百十五万人、一兆六千億というのが軍人恩給軍人受給者数でございます。  これが昭和七十五年度になりますと、受給者数が百二十四万人、恩給費が七千六百億円。それから受給者が百万人を切りますのが昭和七十九年度でございまして、九十三万人になりまして、恩給費が五千四百億円。それから五十万人を切りますのが昭和八十五年度で、受給者数四十七万人、恩給費が二千五百億円。それから昭和九十三年度になりますと、受給者数が十万人を切りまして九万人、恩給費が五百億円。  あくまでも現在の制度前提といたしまして、今後のベースアップ等を見込むわけにいきませんので、現在のままという形で一応推計しますと、このような推計ができるわけでございます。
  9. 矢田部理

    矢田部理君 これはなかなか難しいと思うのでありますが、しかし推計ができない内容ではなさそうでありまして、恐らく初めてだろうと思いますが、今数字を出していただきました。およそ後三十年くらいで大勢は終わるというふうに伺ってよろしゅうございますね。九十三年度ということですから、三十年ちょっということになりましょうか、約九万人になる。現行の予算基礎にして考えれば五百億程度ということに予算規模もなる。  そこで、ゼロになるというのは大体いつになりますか。
  10. 和田善一

    政府委員和田善一君) はっきりお答えすることはできませんけれども、九十三年といいますと、今から三十年以上でございますが、大体四十年を越せばほとんどいなくなるのじゃないかということが一応予想されます。
  11. 矢田部理

    矢田部理君 私がきのう昼ただしたところによりますれば、昭和百十三年にゼロになるというお話もあったんですが、そんな推計でしょうか。
  12. 和田善一

    政府委員和田善一君) 完全にゼロになるというところまで追跡していきますと、先生おっしゃるようなことに相なろうかと思います。
  13. 矢田部理

    矢田部理君 ゼロにいつなるかということも一つ関心事でありますが、全体としては予算に占める比重、これは今がピークというふうに考えてよろしゅうございますか、数の面でもあるいは金額の面でも。金額は毎年スライドしたりしておりますからこのままではもちろんいかないわけでありますが、予算に占める比重とか数とかは、従来の関係から見ていつの時期がピークであり、どの時期から急速に下がるかというようなことを特徴的に説明できませんか。
  14. 和田善一

    政府委員和田善一君) 一般会計予算に占めます恩給費比重と申しますか割合は、ここ昭和五十一年以降をとってみましても三・七%あるいは三・五%、現在は三・四%でございますが、そういうようなところでございまして、将来この一般会計予算に占める割合がどうなるかということは、これは将来の恩給改善あるいはベースアップ等がどういうふうになっていくかということがわかりませんので、私ここで多くなる、少なくなるということをにわかにお答えしにくいわけでございます。
  15. 矢田部理

    矢田部理君 ここ十年ばかりの状況を見てみますと、一九七三年に三千八百億ぐらいでしょうか、そして十年間で一兆六千億、四倍ぐらいにふえてきているわけです。この傾向はさらにまた続くのか、それともほぼ山を越えてきているのかという問題点でありますが、いかがですか。
  16. 和田善一

    政府委員和田善一君) 受給者失権ということがございますが、一方、毎年の恩給、ベースの改定その他の個別改善がございます。  それで、ことしをとってみますと、前年恩給ベースアップがございませんために全体としまして恩給費約七十億円が前年より減ということになっておりますけれども、これは前年ベースアップがなかったからでございまして、またことしのベースアップあるいは今後のベースアップ等改善がどうなるかということが今わかりませんので、にわかに恩給費の比率が今よりも増加の割合が多くなるか少なくなるかということをはっきりお答えできないわけでございます。
  17. 矢田部理

    矢田部理君 先ほど予算面でもいろいろ推計していただいたわけです。ですから、将来、人事院勧告幾ら出て、それにリンクしてどのくらい上がるかということの予測はなかなかできにくいかと思うのでありますが、恩給受給者の数とか年齢構成とか等々の関係から見てどういう傾向をたどってきているのか、これからのたどり方についてはある程度伺いましたけれども、ということから見て、どの時期が上限で、既にもう下降線に入っているとかという説明は可能なのじゃありませんか。
  18. 和田善一

    政府委員和田善一君) 先ほど申し上げましたように、受給者数が年々減少していくということで恩給費予算の中に占める割合というのは減っていくことは、長期的に見ればこれは当然でございます。しかしながら、その予算の中に占める割合が今後下がる一方なのか、あるいはさらに上がることもあるのかどうかというような点につきましては、ちょっと私ここでお答えできる資料を持ち合わせていないことを御了解いただきたいと思います。
  19. 矢田部理

    矢田部理君 その質問は、その程度にいたします。  これは防衛庁だ、こう言うんですね、総理府に聞きましたら。軍人恩給につきましては、各国、とりわけNATO諸国においては軍事費の一部だ、こういう位置づけがなされているということでありますが、そうでしょうか。
  20. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) NATO諸国におきまして、いわゆるNATO方式軍事費というのがあるわけでございますが、この中に軍人恩給費が入っているのではないかという話はよくあるわけでございますが、私ども調査をしてみますと、これがなかなか難しい話でございます。と申しますのは、それぞれの国におきまして、軍事費内訳についてはNATO秘ということになっておりまして、詳細不明でございます。したがいまして、今せっかくの先生お尋ねでございますが、わからないというのが率直なお答えかと存じます。
  21. 矢田部理

    矢田部理君 これは軍事評論家などの指摘も幾つかあるわけでありますが、調べていないからわからないということなのか、調べてもわからないという趣旨なのか。
  22. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) 調べてわからないということでございます。
  23. 矢田部理

    矢田部理君 どうでしょうか。軍人恩給的なものはあるわけでしょう。それが軍事費の中に組み込まれているのか、そうでないのか。総体として、例えば西ドイツなら西ドイツが計上している軍事費はそれを含んでいるのかいないのか程度のことは、調べてわかりませんか。
  24. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) 各国では軍事費として組んでいるわけでございませんで、軍人恩給費として組んでいるのだと思うのでございます。私ども日本での防衛関係費というもののくくり方ございますが、そのほかに恩給費の中の軍人恩給費があるわけでございまして、それをどういうくくり方で物を考えていくのか、こういう問題かと思います。  それで、先ほど申し上げましたように、NATO方式各国軍事費比較いたしますときの基準というものがあるはずでございまして、それについて私どもがそれぞれの国にお尋ねするわけでございますが、内訳を教えていただけないわけでございます、それぞれの国で。でございますから、はっきりその内訳がどうなって、入っているのか入っていないのか、これは詳細のところをお答えすることができない、こういうことでございます。
  25. 矢田部理

    矢田部理君 軍人恩給というのは、機密費でも何でもないんですね。そうでしょう。
  26. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) そのとおりです。
  27. 矢田部理

    矢田部理君 だから、聞いても教えてくれないというのも説明としてはいかがでしょうか。
  28. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) 軍人恩給そのもの機密費でないということはそうなんだと思うのでございます。私が申し上げておりますのは、いわゆるNATO方式の中に軍人恩給費が入っているのか入っていないのかということについては定かでございません、こういうことを申し上げているわけでございます。
  29. 矢田部理

    矢田部理君 聞いてもわからぬということでしょうか。通常、例えばフランスの軍事費年間幾ら、ちょっとここへ今データを持ってきておりませんが、恐らく数兆円でしょう。西ドイツ幾らイギリス幾ら、こう出るでしょう。その軍事費の中に軍人恩給費は入っているのかという質問です。つまり、国連などに年々、各国軍事費が出ます。それから他の戦略研究所等でもこれが明らかにされるわけですが、それにはNATOの場合には入れているという説明が一般的にはなされているわけです。そのぐらいのところは防衛庁もやっぱり調べておいてもらわないと困ります な。
  30. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) 各国軍事費についてはいろんなとり方がございます。一番私どもがよろしいのではないかということで使っておりますのが、先生もよく御承知の、ミリタリー・バランスの数字でございますが、このそれぞれの国防費というのは、それぞれの国につきましてそれぞれの金額があるわけでございますが、その中に軍人恩給費が入っているのか入っていないのか、入っているのではないだろうかという説があることは私、冒頭申し上げたとおりでございます。それを確認できないということを申し上げているわけであります。
  31. 矢田部理

    矢田部理君 それは緊急に確認してください。  私が申し上げているのは、今GNP比との関係で一%枠論議があります。日本経済力に比して軍事費が少ないという議論もある。私は、それに賛成はしませんですよ。ただ、少ない少ないと言われている比較前提になるものが、他の国は軍人恩給費を入れてやっているのに、我が国は入れていないためにGNP一%にも満たないというふうな非難というか意見が仮にあるとすれば、それはやっぱりきちっとすべきなのであって、私もいろいろ計算はしてみておりますが、例えば海上保安庁関係費などというのも、沿岸警備費などということで軍事費の中に計上されている。こういうことを含めて考えてみますれば、既にGNP比で一・六%前後に日本軍事費はなっていると見れるわけです。金額的に見ても四兆五千億ぐらいになっている。決して西ヨーロッパ諸国に見劣りするような内容じゃない。むしろ相当の負担になっているということも一つの事例として指摘できるのでありまして、それを相手の方の出している数字軍人恩給費がいまだ入っているのか入っていないのかわからぬというようなことでは、防衛庁としては少しく不勉強ではありませんか。
  32. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) まず、軍人恩給費の話でございますが、先ほど来申し上げておりますように、定かには入っているかどうかわからないわけでございます。  それで、ことし、五十九年度の予算で見ますと軍人恩給費約一兆六千億でございますから、仮に先生おっしゃるような形でこれを各国比較いたしますときに、防衛関係費に加えて比較した方がいいのじゃないだろうかというお説に立ったといたしまして足しますと一・五三%になります。一・五三%になりますから、それじゃ日本国防費が外国に比べまして見劣りしないのかというと、そういうことでございませんで、一%弱のものが一・五%になりましても、GNPに対します国防費割合からいたしますと、それでも抜群に小さいわけであります。ヨーロッパ諸国は御承知のように四%ないし五%、アメリカで七%台のGNPに対する国防費でございますから、一%弱が一・五%になるということで、今、先生指摘のような例えばそういう非難があったとして、それに一%が一・五%だよということで答えられるような数字にはなり得ないということは言えるかと思います。  それからもう一点、海上保安庁経費につきましてこれがNATO方式防衛費の中に入っているのかどうか、これも定かでございません。よくよく調べてみますと、どうも入っていないのではないかと思われる。例えばイギリスでございますと、コーストガードの経費はどうしても入っているようには思えないような節もございます。でございまして、保安庁の経費NATO方式の中に必ず入っているのだということも言えないわけでございます。
  33. 矢田部理

    矢田部理君 相対として各国軍事費が、日本が多いか少ないかという議論を私はきょうは主としてするつもりはないんです。そんなことをあなたに聞くためにきょう来てもらったのではなくて、軍人恩給費軍事費としてNATO諸国は計上しているということであるならば、日本も少なくとも、国連などに軍事費幾らというのが出るわけでありますが、そういうことを含めてヨーロッパ各国と同じような方式軍事費を世界的に明らかにすべきではないか。それがいまだにNATO諸国に入っているのかいないのかわからぬというのは不勉強じゃないか、こう言っておるわけだ。  私は、もともと経済力に見合った軍事費などという議論をとるつもりは全くない。日本軍事費を小さく抑えてきたことが今日の経済の発展の一つの要因をつくってきたわけですから、逆にこの軍事費が多いことが経済や福祉に非常に重圧になってきたことも多くの人たち指摘しているところでもあるわけです。そんなことをここで議論するつもりはないのだけれども、少なくともNATOがどんな方式をとっているのか、ヨーロッパ各国がどういう計上をしているのかぐらいはきちっとしてしかるべきではないか。わからない、定かでない、聞いても教えてくれないというのはいかにもいかがか。それで、各国軍事費比較などとやられたのではたまったものではない、こういうことを言っているわけです。
  34. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) 我が国の方の軍人恩給費でございますが、御承知のように、我が国軍人恩給費は旧軍の名残と申しますか、旧軍の後を引いたものとしての軍人恩給費でございまして、今ございます防衛関係費は新しい自衛隊としての防衛力を整備するための経費でございまして、旧軍とそれから新しい自衛隊との間の違いというものが歴然といたしておりますから、先生おっしゃるような形で我が国の場合に防衛関係費軍人恩給費と一緒にくくってしまって国防関係費として観念することは適当でない、こういうことは歴代防衛庁の方から御答弁申し上げてきたとおりでございます。  それから各国軍人恩給費NATO方式の中に入っているのか入っていないのか、調べてもわからないのは不勉強ではないかということでございますが、確かに、わかる程度調べていないのかという御叱責かと存じますけれども、それぞれの国で、NATO秘ということで、NATOとしてこれは中を秘にしようということになっているわけでございますから、その秘を公式にお尋ねいたしまして御回答を得られないということでございますれば、そのほかになかなか道がないということかと思います。  なお、私ども努力はいたしまして分析等には努めておりますが、どうも細部になりますとよくわからないというのが現状でございます。
  35. 矢田部理

    矢田部理君 軍人恩給費と現在の自衛隊関係がないという言い方はちょっと違うのでありまして、軍人恩給費というのは、どこの国だって第二次大戦に参加した軍人人たちも含めて軍人恩給費というのは計上しているのでありまして、それをNATO諸国軍事費の一部に入れているのか入れていないのがが問題にされているのでありまして、単に自衛隊軍人恩給との違いを言われてみても説明にはならぬのであります。  それから調べても教えてくれないということですが、いつ、どういう照会をしたんですか。どこの国からどういう回答があったんですか。それを全部、今詳細を明らかにしてください。
  36. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) 詳細、今手持ちにいたしておりませんが、私どもが、在外武官もおりますから、在外武官からそれぞれの衝に当たっておられます公式な機関に照会をいたし、そして回答が得られておらないということでございます。  いつ何日、だれそれがというのは今持っておりませんが、それは調べてみたいと思います。
  37. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと待ってください。  いつ、どこの国に、どういう照会をしてどういう回答があったのか、全く回答がなかったのか、各国全部、それを明らかにしてください。
  38. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) でございますから、ただいま手持ちにいたしておりませんが、調査をいたしてみます。
  39. 矢田部理

    矢田部理君 私は通告しているんですから、調査してみる事項じゃないでしょう、いつ照会したのかという事実の問題ですから。
  40. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) ですから、事実の、いつ何日、どこの国に、どう照会したかということにつきまして、きちんと整理をいたす時間をいた だきたい、こういうことを申し上げているわけであります。
  41. 矢田部理

    矢田部理君 じゃ、今待ちましょう、調べているなら。  きのうからあれだけ言っておって、そんなことを今ごろ言っておるのじゃ困りますよ。
  42. 高平公友

    委員長高平公友君) 速記をとめてください。    〔速記中止
  43. 高平公友

    委員長高平公友君) それでは、速記を始めていただきます。  ただいま理事会でいろいろと御協議をいただきました。宍倉経理局長に申し上げたいわけでありますけれども矢田部君の質問NATO諸国恩給費軍事費に含めておるかどうか明確にしろということでありますが、この問題につきましては、今までいろいろと努力はしておられるわけですけれども、できるだけ今までの経過をひとつはっきりして、そしてこの後も明確になるように努力を続けていただきたい、このことを私から申し上げて、確認していいでしょうか。
  44. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) 委員長のおっしゃるように努力をいたしたいと存じます。  それから今までの経緯につきましては、整理をいたしましてできるだけ速やかに後刻提出さしていただきたいと存じます。
  45. 高平公友

    委員長高平公友君) 矢田部君、そういうことで。
  46. 矢田部理

    矢田部理君 委員長努力だけでなしに、今まで調べた経過についてここに報告を求める、それから足らざるところは至急調査をして当委員会報告を求めるという措置にしていただけませんか。
  47. 高平公友

    委員長高平公友君) 局長、ただいまの矢田部君の発言どおりにやっていただきたいと思いますが、そのことについてのお答えをいただきたいと思います。
  48. 宍倉宗夫

    政府委員宍倉宗夫君) そのように作業をしてみたいと思います。
  49. 矢田部理

    矢田部理君 私、余り難しくないので、そう最初から言ってもらえばまたそれでいいわけですが、変に問題をそらすからそういうことになるんです。  そこで、次の質問に入ります、質問事項はたくさんありますから。  恩給について上薄下厚という、つまり上の方には少しく薄目にしても下を上げるべしという議論を私どもは当委員会でもしばしばしてきたわけです。この指摘に対して、どうこたえてこられたのか。最近の傾向、状況について御説明をいただきたいと思います。
  50. 和田善一

    政府委員和田善一君) 恩給ベースアップ等の改善の都度、上薄下厚という先生の御指摘も十分考慮に入れましていろいろ作業したわけでございまして、例えばベースアップのときには、現在では公務員給与を指標といたしておりますけれども、公務員給与のアップ率を単純に各仮定俸給に掛けるのではなくて、行政職俸給表(一)の改善傾向、すなわち行政職俸給表(一)の改善傾向といたしましては通常上薄下厚という傾向がございますが、その傾向を回帰分析いたしまして恩給の改善のアップ率にも取り込んで、同じような傾向で改善していくというような努力をいたしております。
  51. 矢田部理

    矢田部理君 それを従前と今日の状況などを比較して、数字的にあらわせませんか。
  52. 和田善一

    政府委員和田善一君) 今の回帰分析の結果に基づきますべースアップを続けました結果どうなったかという点をまず申し上げますが、行政職俸給表(一)の改善傾向恩給ベースアップにも取り込んできたというのは昭和五十一年からそのようにしておるわけでございまして、昭和五十一年をとってみますと、要するに昭和五十一年のそういう改善を行う前の昭和五十年当時、大将と兵の間の上下格差というのが六・九倍あったわけでございます。これが毎年回帰分析に基づきますベースアップを続けました結果、昭和五十七年の改定後は六・〇倍というふうに、そこに縮小の結果があらわれております。
  53. 矢田部理

    矢田部理君 今数字を出されたように、ある程度上薄下厚という考え方が取り入れられ、かつ、そういう方向で改善がされてきていることは認めることにやぶさかではありませんが、依然として六倍の違いがあるわけです。人の命をこんなに倍数が違ってはかるというのはよろしくないというふうに私は考えます。特に、戦中の階級で物を決める考え方にも大変問題がある。そこで、上薄下厚、とりわけ下に厚くするということにさらに努力をしてほしい、意を注いでほしいと思うんですが、いかがですか。
  54. 和田善一

    政府委員和田善一君) 恩給の仕組みと申しますものが、公務員の退職当時の俸給を基礎にして恩給額を決定するという基本的な仕組みがございますものですから、従来から仮定俸給というものを設けまして、階級ごとに恩給年額計算の基礎としてまいったわけでございます。この仕組みの基本自体をここですっかり変えるということは困難でございますが、上下格差を縮小する方向でいろいろな努力をやってまいりまして、ただいま申し上げましたような回帰分析もその一つでございますが、その他、まず昭和二十八年に軍人恩給が再出発いたしましたときに、兵の階級の仮定俸給をまず全部兵員の階級に一本化した、それからその後仮定俸給の格付是正等におきましてもできるだけ下に厚くいろんな改善を行ってまいりましたし、それから今の回帰分析方式の導入、それから最低保障制度の導入ということ、これが一つの大きなまた上下格差縮小の原因となってまいっております。  終戦時では兵と大将の上下格差というものが十六・七倍であったわけでございますが、ただいま基本的には今申し上げましたように六倍になっている。そのほかに最低保障制度というものが導入されましたので、最低保障制度、これは一定の要件、年齢でいきますと、最短恩給年限を満たしている者で六十五歳以上の者というものをとってみますと、大体階級で言いまして大尉のところぐらいまでは最低保障金額で保障されてきておるというような実態もございまして、先生のおっしゃるような上下格差をできるだけ縮小していこうという趣旨でいろいろな努力をしてまいりましたことを、どうか御理解いただきたいと思います。
  55. 矢田部理

    矢田部理君 その努力を今後とも期待することといたしまして、今回のアップの問題について問題を移したいと思いますが、恩給を値上げする根拠は何ですか。
  56. 和田善一

    政府委員和田善一君) 恩給法の二条ノ二に基本的な規定がございます。経済情勢の著しい変動があった場合には速やかに恩給年額を改定すべきであるという基本的な規定が恩給法の二条ノ二にございまして、それを基本といたしまして恩給ベースアップ等を行ってきたわけでございます。
  57. 矢田部理

    矢田部理君 大蔵省、見えておりますか。——年金の方の値上げの根拠は何でしょうか。
  58. 小村武

    説明員(小村武君) 年金につきましては、年金の実質価値の維持及び現役労働者との均衡等を考えてアップをするという基本的な考えがございます。
  59. 矢田部理

    矢田部理君 条文上の根拠は。
  60. 小村武

    説明員(小村武君) 厚生年金及び国民年金、船員保険につきましては、物価スライド制ということで条文にスライド条項がございます。その他、財政再計算の折に、さらに現役労働者との均衡を考慮し、年金の構造的な水準の改定を行うということで従来改定をしてまいりました。
  61. 矢田部理

    矢田部理君 私が伺っているのは、国家公務員等についての考え方、根拠について伺っているわけです。
  62. 小村武

    説明員(小村武君) 共済年金につきましては、現役の公務員の給与との均衡上改定を行っているということでございます。
  63. 矢田部理

    矢田部理君 恩給の値上げの理由と共済年金の値上げの理由、これは違いますか、同じですか。
  64. 小村武

    説明員(小村武君) 共済年金につきましては、現在社会保険方式をとっております。その財源の大半は現役の公務員の保険料で賄われている。恩給につきましては、恩給法の考え方に基づきまし て、ただいま恩給局長が御説明になったとおりでございます。
  65. 矢田部理

    矢田部理君 恩給や年金額改定の理由、これは全く同じではありませんか。
  66. 小村武

    説明員(小村武君) ただいま御説明申し上げましたのは、年金につきましては現在社会保険方式をとっております。現役の労働者の保険料及びそれに対する国庫負担が一部ございます。恩給につきましては全額国庫負担で行っております。両方とも年金でございますが、実質的な価値の維持ということで、社会保険方式では物価スライド制をとっているということでございます。
  67. 矢田部理

    矢田部理君 あなた、共済組合法の一条の二を読んだことがありますか。
  68. 小村武

    説明員(小村武君) 共済組合法におきまして、年金額の改定につきましては国民の生活水準、国家公務員の給与、物価その他の諸事情に変動が生じた場合には改定をするというふうに決められておりますが、これまで胴家公務員の給与に準じて改定を行ってきたということでございます。
  69. 矢田部理

    矢田部理君 恩給の額の改定と理由は同じではありませんか。違いますか。
  70. 小村武

    説明員(小村武君) 現在まで恩給との取り扱いは、現役の国家公務員の給与等に準じて改定してきたわけでございます。
  71. 矢田部理

    矢田部理君 あなた、少し不勉強なんじゃないか。恩給法と年金法をよく読んでごらんなさい、文章を。どこが違いますか。違いがあったら言ってごらんなさい。
  72. 小村武

    説明員(小村武君) 私が御説明しておりますのは、その制度の立て方が、恩給と社会保険方式を持っおります共済年金あるいは厚生年金等との違いを御説明いたしたわけでございます。
  73. 矢田部理

    矢田部理君 私が聞いていないことを、あなた、繰り返し言うなよ、時間もったいないのだから。  年金額改定の根拠、恩給額引き上げの根拠、これは違いますか、同じですか。
  74. 小村武

    説明員(小村武君) 基本的な思想は、現役の労働者と退職をしましたOBとの生活水準において格差の生じないようにするということで同じでございますが、そのやり方が各年金において違ってきているということでございます。
  75. 矢田部理

    矢田部理君 やり方などを聞いているのじゃない。恩給法の第二条ノ二と先ほどの国家公務員共済組合法の第一条の二は同じですか、違いますか。
  76. 小村武

    説明員(小村武君) 共済年金につきましては、恩給法の経緯を踏まえて規定されておりますので、社会保険方式をとっておりますが、同じような思想でこの条文が書かれているというふうに理解しております。
  77. 矢田部理

    矢田部理君 文体は、古い文章とそれから口語体になっていますが、全く同じではありませんか。余計なことを言いなさんな。次の質問をしたいので、ぐるぐる回りは困るんだよ。同じでしょう。
  78. 小村武

    説明員(小村武君) 思想は同じでございます。
  79. 矢田部理

    矢田部理君 思想も文章も全く同じでしょう。どこが違うんですか。
  80. 小村武

    説明員(小村武君) 条文の書き方は同じでございます。
  81. 矢田部理

    矢田部理君 書き方も中身も同じなんだよ。それなのになぜ恩給は三月から改定し、共済年金の方は四月からなんでしょうか。
  82. 小村武

    説明員(小村武君) その点につきまして、先ほど来御説明しておりますニュアンスがちょっと違ったところがそこにあるわけでございまして、共済年金につきましては、社会保険方式をとっているというところでその財源は現役の公務員が大半を負担する。それから共済年金につきましては、現在横並びと申しますのは、民間の労働者の大宗を占めます厚生年金等との均衡も考えなきゃいかぬというところで、現実の物の考え方としては社会保険としての位置づけをしながら考慮をしているということでございます。
  83. 矢田部理

    矢田部理君 あなた、少し違うのじゃないの。値上げの根拠はこの私が指摘した条文なんですよ、すべて。法律を基本に置かなければ物事の考え方は統一的に把握できませんよ。軍人恩給というか、一般恩給を早く上げることは、私、別に異議はありませんがね。だとするならば、同じ条文上の根拠を持つ、全く文体も同じ、共済だって同時に上げてしかるべきなんでありましょう。どうもあなた方の考え方はおかしいのじゃないかと私は思うんです。とりわけ、軍人恩給というか、一般恩給も含めてですが、国家財政が厳しくてもやっぱり三月から上げるということになっており、そうなっている以上、全く同じ根拠、同じ内容で値上げをしなきゃならぬ共済年金、これもやっぱり同時期から上げるというのが筋じゃないかと思う。事実この提案理由なども恩給準拠論に立っているわけでありまして、その点、大蔵省の態度は少しく解せないというふうに私は思うわけであります。  もう一つ問題点は、恩給も共済年金の方もそうでありますが、一年おくれという対応をしているのはどういうわけでしょうか。これは総理府と大蔵省と両方から聞きたいと思います。
  84. 和田善一

    政府委員和田善一君) 一年おくれという考え方、そういう考え方もあろうかと思いますが、私どもが考えておりますのは、ベースアップの指標として何をとるか。前年度の物価をとるというような指標もございましょう。恩給の場合には、これが公務員の退職者の年金でございますから、国家公務員の給与の改定の結果を指標としてとるのが適当であるということで給与をとっているわけでございますが、その指標として何をとるか。これは経済諸情勢の集約された結果として前年度の公務員給与の改定結果を指標としてとるのが最も適当であるという判断を私どもいたしておりまして、指標としては前年度の給与改定の結果をとる。そうして毎年ベースアップをしてきたということでございまして、一年おくれというお考えもあろうかと思いますけれども、私どもといたしましては指標として前年度のをとったにすぎず、必要な改定を重ねてずっと行ってきたということで、これで私どもとしては水準そのものが必ずしも一年おくれになっているというふうには考えていないということを御了解いただきたいと思います。
  85. 小村武

    説明員(小村武君) 恩給局長お答えになったと全く同じ思想で、私どもも退職公務員の恩給の水準がいかにあるべきかという考え方に基づきまして改定を行っているということでございます。
  86. 矢田部理

    矢田部理君 公務員給与は、凍結されたり抑制されたりしながらも、四月から二・〇三でありますが上がったわけです。とすれば、恩給や共済年金等もその時期から上げてもいいのではないか。それを一年後から上げる、その二・幾つかにリンクするというのはどう見たって一年おくれと言わざるを得ない。これはあなた方の説明にもかかわらず、附帯決議等でもそういう問題の指摘があるわけでありますから私だけの議論ではないはずでありますが、いずれにしても、そういう同じ考え方で恩給年金も来た。ところが、恩給は三月から、共済は四月から、これはどういうふうに説明するんですか。
  87. 和田善一

    政府委員和田善一君) 恩給を三月にいたしました理由というものを私どもの立場からお答えさしていただきたいと思いますが、恩給ベースアップの実施時期につきましては、長年十月実施という慣行から次第に前進いたしまして、昭和五十二年度からは四月実施という原則でやってまいりました。これが本来の姿であろうと思います。ところが、本年度につきましては、前年厳しい財政事情のもとで五十八年度のベースアップを見送らざるを得なかった、そうしてまた恩給受給者と申しますもののほとんどが老齢者、戦傷病者あるいは戦没者というような方々でございますので、前年そういうべースアップが全くなかったという特殊事情を考慮いたしまして、そういうお気の毒な方々でございますので、特例的な措置といたしまして実施時期を一月繰り上げて三月実施とした、こういうのが恩給の考え方でございます。
  88. 矢田部理

    矢田部理君 その考え方は、そっくりそのまま 大蔵省の方に差し上げてもいいのじゃないでしょうかと私は思うんです。あなたに聞いてもしようがないかもしらぬ。  前年度ベースアップがなかった、だから少なくとも、これはいろいろ裏の話も取りざたされてきました。当委員会でも問題になっている。総務長官と大蔵大臣の話し合いなどというものも間に挟んであるわけでありますが、いずれにしたって恩給が基本にある。その後、制度の改変があって、三十四、五年ごろからですか、共済年金制度になった。流れは同じ流れに沿って制度改変が行われてきた。今まで一緒に歩んできたわけです。値上げの率、時期、それから事情からいっても、法制度からいっても同じ議論が可能だ。大蔵省は盛んに厚生年金議論をするわけでありますが、厚生年金だって私は四月からでいいなどとは言いません。できるだけ早目に上げてやるのが当然だと思います。特に、財政事情が厳しいにもかかわらず恩給は上げる。共済の方の財政事情というのは、国はほとんど出さない、独自の運営をみずからの拠出でやってきておる。国が出すのはわずかであります。一緒に歩んできた制度について、国がこれだけ財政事情の厳しいのに、一方は出すが、独自の財源を持っている共済年金の方については出さなくていい、出してはならぬというのは大蔵省の態度はいかにも困る。  現に、今井さんのところでやっております国家公務員共済組合審議会におきましても、「施行期日の間に差異を設けたことも理解に苦しむ。」、ここまで言われていて、大蔵省は説明のしようがないのじゃありませんか。この点で、いずれ私どもは修正案等も考えているわけでありますが、公務員賃金が凍結をされ、そして昨年度低額で抑えられておる、そのためにことしは恩給等についてもいろいろ問題があった。しかし、恩給は、これはいろんな文書もありますから、少しく聞きたいところもないわけではありませんが、一月などという議論があった中で三月からスタートすることになった、改定が。共済だけおくらせる。これはどうしたってやっぱり統一性に欠けるのでありまして、この点で大蔵省も十分考えてもらいたいし、それから我々としてもこれは考えなきゃならぬというふうに思っているわけですが、この点、大蔵省に注文だけしておきます。あと結構です。  そこで、値上げの時期の問題を一つ申し上げました。同時に、値上げの率につきましても、公務員が厳しいから当然恩給も厳しくていいのだということには必ずしもならないと思うんです。公務員には定昇があるが恩給にはもちろん定昇もない、共済年金の方もそうであります。特に、老後、年配者ということになれば他の収入もなかなか期待できない非常に厳しい時代になってきているわけです。その点で、一つは公務員給与にリンクをするという議論、これは一体どういうことなのか。  先ほどの条文に戻りますが、条文では、公務員給与を一つの根拠としては挙げておりますが、三つばかり指摘をしているわけです。一つは、国民の生活水準。恐らくこれは民間給与、民間労働者の給与などが少なくともこれには含まれるだろうと思われるわけです。この国民の生活水準が第一。それから二番目に、国家公務員の給与。そして三番目に、物価その他の諸事情というふうになっているわけです。ここで言う公務員給与というのも、公務員の凍結された給与とか抑制された給与、勧告を守られなかった給与なのかどうかということも一つこれ自体でも問題になりますが、公務員給与だけにリンクするという議論も少しく問題の幅を狭めているのではないかというふうにも制度上考えられるわけですが、この点はいかがですか。
  89. 和田善一

    政府委員和田善一君) 私どもが、恩給ベースアップの指標といたしまして公務員給与の改定の結果というものをとっております理由は、公務員給与の改定というものが、民間の給与水準あるいは物価等の変動をその底に持ちまして、それらのいろんな社会事情の総合勘案の結果として公務員給与が決まってくるというふうに見ているわけでございますので、公務員給与に経済諸事情の変動が集約されているというふうに私ども今まで見てきたわけでございます。しかも、恩給と申しますものが、退職しました公務員の年金でございますので、現職公務員とのバランス感覚というようなものからしましても、現職公務員の給与改定の結果をそのままとってくるというのが適当であるということで、この方式昭和四十八年以来ずっと定着してまいっておりますので、この定着したやり方を現在行っているということでございますので、この点、どうか御理解をいただきたいと思います。
  90. 矢田部理

    矢田部理君 公務員給与を決めるときには民間準拠だ、こういうふうに言う。物価とかその他の事情はどうしたかというと、民間給与の中にそれは入っているのだと。恩給を決めるときには今度は公務員給与だ、公務員給与に物価が入ると。公務員給与を決めるときには民間給与、民間給与に物価が入っていると。間接のまた間接みたいなお話なんですね。それは全く物価事情とかあれこれが無縁だとは私は思いませんが、特に法が制度をつくるに当たって三つの指摘、問題を立てたのは、公務員給与だけにリンクすればいいという考え方では必ずしもなくて、公務員給与にもそれはある種の物価とか全体のいろんな情勢が反映していることは私も否定はしませんけれども、あわせて物価とか国民の生活水準というのは、恐らく民間労働者の賃金のアップなども考えてしかるべきではないかということが示唆されているのではないかと思うんです。  公務員給与が民間給与に準拠して、そのまま人事院勧告が守られたときにはあるいはある意味で相当程度妥当する可能性もあるけれども、そうでなくて、国家の財政事情によって大幅に値切られた、事実上人勧が実施をされていないというような状況のもとにおいては、むしろこういう他の指摘ども少しく反映させながらあの問題を立ててもいいのではないか。事実上人事院勧告が守られない公務員給与にリンクさせなければならぬという議論は少しく引きずられ過ぎてはいないのか、恩給制度論としてあるいは年金の物の考え方として。こう思うんですが、いかがですか。
  91. 和田善一

    政府委員和田善一君) 先生おっしゃるような考え方も十分わかるわけでございますが、恩給ベースアップにつきましては、昭和四十八年より前のころにはいろんなことを試行錯誤いたしまして、公務員のベースアップ、それから当時の消費水準というようなものをいろいろ計算いたしましてやったりした時期もございます。しかしながら、結局公務員給与に準じてやるのが一番いいということで、四十八年以来ずっとそれが定着してまいっておりまして、現在まで参っておる。これがほぼ確立されたベースアップ方式になっております。  昨今、極めて厳しい財政事情のもとで、公務員給与が人事院勧告どおりにはならないという事情がここございますが、だからといって、今直ちに四十八年以来ずっと確立してきた方式を変えなければならないということは私ども今考えておらないところでございます。また特に、先ほども申し上げましたとおり、恩給というものが公務員のOBといいますか、公務員だった方々の年金でございますので、現職公務員との関係というようなことを考えましても、前年の公務員給与改定の結果を指標とするのが最も適当であるというふうに今考えているわけでございますので、どうかこの点、御理解いただきたいと思います。
  92. 矢田部理

    矢田部理君 総務長官、まだ全然発言がないようでありますが、こういうふうに考えられませんか。  人事院勧告がありまして、あった以上は政府はこれを守るのが義務だと言っている。当然だと考えられる。ところが、一昨年は凍結、昨年は二%ちょっぴり、これは総務長官として決していいことだとは考えないわけでしょう。当然、尊重し、実施する、完全に守るというのが基本でなければならない。恩給の立場から見たってその議論はそうなるのじゃありませんか。公務員が抑えられた のだから仕方がないのだという議論ではなくて、公務員の方もけしからぬ、よろしくない、恩給の立場から見ても妥当でない、困ったことだということになりませんか。
  93. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) どこからお答えしていいのか、いろんなお話がございましたが、困ったことだというお言葉がございましたが、まさにそのように思っております。といって、勧告どおり実施すべきであるという立場で努力はしなければならない、しかし結果はそうなりませんでした。これで我慢をしていただきたいというのが公務員の皆さん方に対する私どもの気持ちでございますし、それを右へ倣えした恩給の皆さん方についても同じ気持ちであるということでございます。
  94. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、いろいろ議論はあるわけでありますが、何といっても人事院勧告が一番大きな土台、基礎になり、それを受けた公務員労働者の賃金決定が中心に座る。その上で恩給とか年金とかということに現実は流れていくわけですね。  そこで、もう一度、人事院勧告問題から少し問い直してみたいと思うのでありますが、人事院総裁お見えになっておりますが、きのうあたりからことしの四月以降の民間の賃金実態調査に入ったということですが、その経過と状況について、まず御報告をいただきたいと思います。
  95. 斧誠之助

    政府委員(斧誠之助君) 民間給与の実態調査につきましては、今御指摘のありましたように、昨日から調査に入っております。  これは例年どおりの方式でございまして、職種別、年齢別、学歴別、地域別、それぞれ実際に労働者一人一人に支払われた給与額を調査いたしまして、同じ条件のものを公務員と民間と比較する、あらわれました結果が較差が出まして民間の方が高い、こういうことになりますと埋め合わせをしていただきたいということで勧告をするという手順を考えておりまして、大体六月半ばまでに調査を終わりまして、作業も例年どおりのペースでやっていきたい、こういうふうに考えております。
  96. 矢田部理

    矢田部理君 これは予算委員会等でもしばしば問題になってきたわけでありますが、昨年度の不履行分といいますか、勧告どおり履行されなかった分などもあるわけですが、それはどんなふうな扱いになりますか。
  97. 斧誠之助

    政府委員(斧誠之助君) ちょっと御説明さしていただきたいんですが、今新聞報道などでは、民間の本年の春闘結果が四・数%であった、昨年の六・四七に対する実施が二・〇三であった、そういう残り分と本年の春闘結果分と合わすと六・数%になるのではないかというような記事が出ておりますが、私たちはアップ率を基礎にして官民較差というものをはじき出すということではございませんで、先ほど説明しましたように、実際に支払われた額、これを比較するわけでございます。  どういう額になっていくかと申しますと、公務員は五十七年以来、昨年の二・〇三%、これだけベースアップになっただけでございます。一方、民間は、これは定昇込みでございますので必ずしも裸のベースアップ分ではございませんが、一昨年がたしか七%程度、昨年が四・四四%程度、それから本年が四・数%というようなことでアップしておるわけでございまして、それと、先ほど申し上げた我が方は二・〇三%しかアップしていない、そういう給与が比較されるわけでございますから、今おっしゃいました昨年の抑制分というのは比較の結果にあらわれてくるでありましょう、こういうふうに考えております。
  98. 矢田部理

    矢田部理君 時期的なめどとしては、まだ始まったばかりですから必ずしも確定的には言い切れないかもしれませんが、大体昨年と同じような作業内容だとすれば、八月上旬には例年どおり勧告を出すという運びになりそうですか。
  99. 斧誠之助

    政府委員(斧誠之助君) 最終的には総裁の御判断を仰ぐわけでございますが、事務方といたしましての私たちの立場は、これは八月上旬には勧告可能なようなペースで作業を進めたい、こういうふうに考えております。
  100. 矢田部理

    矢田部理君 ところで、この一両年、勧告をしても守られない、凍結をされたり大幅に抑制をされたりする時代が続いているわけですが、これは特殊異例の事態だと考えますか。人事院総裁、それから総務長官、両方にお伺いしたいと思います。
  101. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) これはかねて政府見解を申し上げていますが、特殊異例の事態であると考えております。
  102. 矢田部理

    矢田部理君 したがって、特殊異例の事態は長期にやるべきでない、一刻も早く克服すべき課題だというふうに同時に受けとめてよろしいわけですね。
  103. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) できるだけ早く正規のルートに戻すべきであると考えます。
  104. 矢田部理

    矢田部理君 人事院総裁、凍結とか抑制が常態化する、あるいは継続をするというようなことになりますと、これは一回だっていいというわけではありませんが、人事院制度の根幹にかかわる問題、制度はなきに等しいと言われてもいたし方ないような状況になろうかと思うんですが、これについてはどんな見解、どんな受けとめ方を持っておられますか。
  105. 内海倫

    政府委員(内海倫君) ただいまの御質問にかかわることにつきましては、私、人事院総裁を拝命いたしまして以来、国会における各委員会におきましても私どもの所信を明らかにしてきたところでありまして、本日もまたそれを繰り返すわけでございますが、先ほど総務長官から御答弁がありましたように、人事院勧告というものが守られないということは特殊異例の問題であって、基本的にというよりも、当然のごとく人事院勧告というものはそれが尊重されるとともに守られるべきものでなければならない、それがこの人事院の制度を設け、また勧告の制度を設けた基本理念でございます。  もし、これが今後も、いろいろな理由はあろうと思いますけれども、政府があらゆる努力をされることは当然と思いますが、これが守られないような状態が継続いたしますと、この上に築き上げられておる公務員の給与の決定という問題に大きな問題が出てくるわけであります。私は、そういうことが繰り返されますと、やはり残念ながら人事院というものの機能の問題にかかわってくる。これがもし機能しないようなことになった結果生ずる問題は極めて重大でありまして、今安定しておる労使関係というもの、あるいは公務員の士気、あるいは公務員の勤務の中における情熱というふうなものに大変な大きな影響を与えてくる。いわば長い間の経験を積み重ねて今日の合理的な人事院の勧告制度とその勧告内容というものができ上がっておるわけでありますから、これは私どもが勧告をいたしました限りにおいては、この国会におきましても、かつまた内閣におきましても、それの尊重と実現ということに全力を挙げていただかなければいけない、これが私の所見でございます。
  106. 矢田部理

    矢田部理君 総裁の認識はわかりました。  同時に、問題は極めて重要であるというだけでなしに、従来議論されてきましたのは、凍結とか抑制がずっと続くということで人事院が無視をされてくるということになると、これは制度の根幹というだけではなくて、憲法上の問題、そういう問題にまでならざるを得ない。これは全農林の判決などもしばしば議論に供されながら論議をされてきているわけですが、総裁もそうお考えでしょうか。
  107. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 既に御存じのように、最高裁判決におきましても一つの答えを出しておるわけですが、その最高裁判決で示しておる限りは、政府があらゆる努力を傾けて、その傾け尽くした結果というものをあわせて考えておるようでありますけれども、もしそういうことが、しかしだんだん例外が実は常態になるというふうなことになってきますと、私どもは今憲法に違反するとかしないとかという判断をする立場ではございませんし、また判断する機能でもございませんが、しかし憲法上論議の対象になってくるであろうと いうことは私も感ずるところであります。
  108. 矢田部理

    矢田部理君 従来、藤井人事院総裁などがとってきた考え方と同一線上で新人事院総裁も受けとめておられるというふうに伺ってよろしいわけですか。
  109. 内海倫

    政府委員(内海倫君) これもたびたび申しておりますが、こういうふうな問題は、総裁がかわったからといって急に問題の本質が変わるわけのものではございません、これは政策の問題ではないのでございますから。
  110. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、昨年、もう一つ今度は、各論的な問題点としては俸給表まで書きかえられちゃったんです。これは人事院としてどう思いますか。
  111. 斧誠之助

    政府委員(斧誠之助君) 俸給表は、先生御存じのとおり、公務員の職務に対する対価を表示している金額でございます。人事院が勧告いたしましたのは、公務員というものは民間と比較した場合に、課長以下各段階に応じてそれぞれの職務に見合った給与額というものはこれが一番適当でありますということをお示ししておるわけでございます。それが変改を加えられるということになりますというと、人事院としてはいわば給与の根幹である俸給表が人事院の意見どおりにならなかったということでございますので、大変人事院にとっては重要問題である。したがって、人事院は従来から勧告というものはこれは情勢に合った内容をお示ししておるのであるからして、情勢適応の原則に基づいてそのとおりひとつ実施していただきたいということをずっとお願いしておるところでございまして、まことに残念でありましたというほかないわけでございます。
  112. 矢田部理

    矢田部理君 総務長官に伺いたいのでありますが、かつて人事院勧告が守られなかったこともあります。つまり、四月実施を四月からやらずに月をおくらせるとかというようなことは古くはあったかと思うのでありますが、俸給表まで書きかえてしまうというやり方は昨年がたしか私の理解では初めてだと思うんです。その点で言えば、単に凍結したとか抑制したということで人事院を無視しただけではなくて、内容的にも極めて問題になる対応をとった。こんなことは異例というよりも異常だというようにお考えになりませんか。
  113. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) お話のとおり、異常だと思います。なぜそうなったかということ、これもまた財政事情が異常だった、また土光さんにお願いして行政改革をやらなきゃいかぬというようないろんな各種の条件が重なっておったこと、そういったようなことがやむを得ざる措置として俸給表を書きかえざるを得なかった、そのように経過としては考えるわけでございます。
  114. 矢田部理

    矢田部理君 異常だという認識に立つとするならば、長官も役人の御経験もおありになる。やっぱりそんなことは私の長官のときにはやらないで全力を尽くして人事院勧告を守るために取り組む、努力するなんというものじゃなくて、私の政治生命をかけてもやるというような決意に立てませんか。
  115. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) 今、現にどういう影響を受けておるかという計算は大変難しいと思うんですけれども、私の勘で言いますと、中堅の公務員といいますか、中堅にも幅がございますけれども、恐らく一年間に、金額を申し上げるのは乱暴なことですが、数十万円の影響は出ておるのではないかと思うんです。こういうことをいつまでも続けるということは、これは今、人事院総裁も言われましたけれども、公務員の士気の問題とかあるいは労使間の良好な関係がせっかく維持されているのにこれを破壊するようなことにつながる心配があるというふうに考えますので、最大限の努力をして実現のために取り組んでまいりたいと思います。
  116. 矢田部理

    矢田部理君 とりわけ私が指摘をしたいのは、俸給表の改定などはやりません、それを約束したらどうですか。
  117. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) 努力の結果、そうなることを期待いたしております。
  118. 矢田部理

    矢田部理君 期待するのじゃなくて、あなたの政治姿勢の問題なんだから、そうします、そういうふうに考えますというふうに述べていただきたい。
  119. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) ここはちょっと声を大きくして申し上げますが、全力を挙げて努力をいたします。
  120. 矢田部理

    矢田部理君 人事院勧告については全力を挙げて完全実施のために取り組む、俸給表の改定などはやらないようにするというふうに受けとめてよろしゅうございますね。——うなずいておられるから、そうお聞きいたします。  それはひとり公務員の給与だけの問題ではなくて、いろいろな波及効果を持っているということを、長官、考えていただきたいんです。現に恩給も担当大臣なわけだし、それから担当ではありませんが、国家公務員等の共済についても波及する、そしてそれがまた個人消費や福祉や経済にいろんな響きを持つ、そういう点で非常に重要な立場におられるわけでありますから、いずれこの八月に勧告がありますれば給与担当閣僚会議なども開かれて仕切られるわけでありますが、担当長官としてこれは重大な決意で臨んでほしいということで、ひとつ最後の見解を承りたいのと、人事院総裁も、内閣と国会に勧告をするんですが、それまでの作業は非常に大変だろうと思いますが、勧告の実現方にこれまた重大な決意を持って臨んでいただかないと事態は動かないのではないか、そのために特段の御努力をお願いしたいと思うんですが、御両人から最後に見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  121. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) 御指摘の点につきましては、重大な決意を既に固めております。これからもそのことを念頭に置きながら努力をいたして取り組んでまいります。
  122. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 理解を得るように、大いに努力をいたしたいと思います。
  123. 野田哲

    ○野田哲君 恩給法の審議をやっているわけですが、まず恩給の問題と心情的に非常にかかわっております靖国神社の問題について官房長官に伺いたいと思います。  新聞の報道するところによりますと、去る四月十三日に、中曽根総理は自由民主党から靖国神社問題についての党としての見解を受け取られた、こういう報道がありますが、その点は事実でありますか。
  124. 藤波孝生

    ○国務大臣(藤波孝生君) 靖国神社の公式参拝問題につきまして、自民党でいわゆる奥野小委員会、奥野誠亮議員が小委員長になられましていろいろ検討を重ねてこられまして、各方面の御意見なども聴取されつつ考え方をおまとめになられたわけでございます。自民党の総務会にその報告がありまして、その趣旨に沿って内閣としても実現方努力するように、こういう御意見が付されまして、自民党の総務会長から政府に対しましてお話がございました。四月十三日に、そのまとめられたものを受け取らせていただきました。よく勉強させていただきたいとお答えをしたところでございます。
  125. 野田哲

    ○野田哲君 その内容は、いろいろ報道されておりますし、私の手元の資料によりますと、第一項から第五項までになっていて、その中で要点を要約いたしますと、   公的機関が、慰霊、表敬、慶祝等を行うことが適当であると考えられる場合に、その目的で神社・寺院等を訪れて礼拝等を行い、同時にまた宗教行事に参加して弔意を述べ、功績をたたえ、祝意を表する等のことは、憲法が禁止する宗教的活動には当らないと考えられる。  その際の玉串料、香華料等を公費で負担しても、それは供物、神饌、生花、榊等を整える経費などにあてられるものであって、当該宗教法人に対する財政援助を目的とするものでないから憲法  八十九条に違反しないと考えられる。 こうなっておりまして、そこでこの靖国神社に対して第五項で、   国を代表する内閣総理大臣が時に靖国神社を訪れるのは当然の関係である。内閣総理大臣と記帳しながら、私人としての私的参拝だといっ て物議をかもしてもきた。内閣総理大臣と記帳しての参拝は、公人としての公的参拝とうけとめることができる。  五項目になっていますが、要点は大体そういう内容になっているということですか。総理のところに自由民主党から届けられた党の決定というのは、そういうことであると理解していいわけですか。
  126. 藤波孝生

    ○国務大臣(藤波孝生君) 自民党の出されました見解は、今、先生がお話しになったとおりかと私どもも心得ております。
  127. 野田哲

    ○野田哲君 この自由民主党が見解をまとめて、党としての見解を四月十三日に総理に手渡した。ここに至る経過を見ると、昨年の七月に中曽根総理が前橋に行かれて、そのときには藤波長官もたしか同行されていたのじゃないかと思うんですが、その場で記者会見をされて発表されている。この中曽根総理の指示を受けて自由民主党が検討を続けてきた。総理が自由民主党に対して検討を求めたのは、総理の靖国神社参拝についての合憲論の根拠づけをするように、こういう指示によって検討が続けられてきた、こういうふうに報道されているわけでありますが、総理はそういう趣旨で党に対して検討を指示されたということなんですか。
  128. 藤波孝生

    ○国務大臣(藤波孝生君) 昨年の七月に総理が群馬入りをいたしましたときに、私も官房副長官としてお供をいたしまして、その記者会見の席に連なっていたのでございますが、そのときの総理の考え方というのはこういうことであったと思うんです。  それは、公式参拝につきましては、歴代の内閣が国会で答弁をしてきておりますように、憲法違反の疑いがある、こういうことで特に法制局の見解としてそういう考え方が出されておりまして、政府としてもそれを受けて御答弁を申し上げてきておるところでございます。しかし、その見解を具体的に検討してみますると、疑いがある、あるいは慎重にした方がいい、こういうふうな表現になっておりまして、それできちっとそういう考え方というのは表現されているのだといえばそれはそういうことかもわかりませんけれども、疑義があるとか慎重にした方がいいとかいう表現というのは非常にわかりにくい、したがいまして、もう少しよく勉強をして、そういうあいまいな感じでこのまま時間を推移することのないように考え方をよく勉強したらどうだろうか、こういうような意味で総理はそのときにお話しになったというふうに私は心得ておるわけでございます。  したがいまして、それを受けて自民党の方でも奥野小委員会が出発をして、いろいろ御検討、勉強をしていただいて今日に至った。こういうふうに考えておりまして、それは公式参拝を合憲であるということの理論づけをするようにという意図のもとに発言され、作業が始まったというのではなくて、非常にあいまいであるからよくもっと勉強をしよう、こういうことでそのときに総理が発言をされたのを受けて勉強が始まってきているというふうに考えておりますので、そのように御理解をいただきたいと思うのでございます。
  129. 野田哲

    ○野田哲君 それまでに国会で何回も議論が行われて、そして何回か官房長官が当委員会なりあるいは議院運営委員会理事会に出て政府としての見解を表明しているわけです。そういう政府の統一見解があるにもかかわらず、よく勉強して見解をつくれという指示をされるということは、官房長官は今非常に慎重な答えをされましたけれども、ニュアンスとしてはやはり別の見解をつくれとこういう指示をされた、こういうふうに私どもは受けとめざるを得ないと思うんですが、そういうことでしょう。
  130. 藤波孝生

    ○国務大臣(藤波孝生君) お話のように、靖国神社公式参拝についての政府の考え方は、昭和五十三年十月十七日、当時の安倍官房長官、それから昭和五十五年十一月十七日、宮澤官房長官、それぞれ発言をしておられまして、その政府の統一見解に基づいて今日もずっと継承をしてきておるのでございます。  政府として今考え方はどうか、こういうふうに御質問があれば、従来の政府の統一見解に基づいてその方針を継承してきております、こういうふうにお答えをすることに今立場としてなっておるわけでございます。しかし、今お話を申し上げましたように、非常にあいまいな表現になっておりますので、こういうものというのはあいまいな方がいい場合もありますけれども、あいまいなことによっていろんな国民的な論議というのが揺れるということになりましても、ただ、その統一見解を守ってまいりますとだけ言っておるということではいかがかというような総理のお考えがありまして、もう少しよく勉強してみたらどうだろうか、こういうふうに指示をしたというよりも提案をしたような形で、そして自民党の方で御勉強いただいて今日に至った、こういうふうになったものと私ども考えておるわけでございます。  政府の方も、したがいまして、自民党の奥野小委員会がおまとめをいただきましたその意見に対しまして政府としてどのように対応するかということにつきましては、この問題についてよく勉強をしていくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  131. 野田哲

    ○野田哲君 あいまいにされたのは、これは従来の統一見解があいまいなのではなくて、中曽根総理大臣や、その前の鈴木前総理がそれをあいまいにされたんです、私どもから見れば。三木総理、福田総理は、靖国神社に参拝されたときに、私人であるという立場をわざわざ事前に誤解があってはいけないなどということで記者会見をして、私人という立場を明確にした。特に、三木総理は、車さえも総理の車を使わなかった、あるいは公務員の供をつけなかった、こういう慎重な参拝をしてきているんです。それをあいまいにしたのは、鈴木総理が靖国神社に参拝したときに、私人ですか、公人ですかという質問に対して、私人とも公人とも明確にする必要はない、こういう態度をとられた。さらに、中曽根総理は、内閣総理大臣たる中曽根康弘、去年はこう言われた。ことしは、内閣総理大臣である中曽根康弘、こう言われたそうでありますが、あいまいにしてきたのは、これは政府の統一見解があいまいなのではなくて、総理大臣自身があいまいにしてきたわけなんです。だから、総理大臣自身がきちっとしさえすれば何もこの問題はあいまいではないはずなんです。  先ほど、長官は答えられました。昭和五十五年十一月十七日、宮澤官房長官が衆議院の議院運営委員会で見解を示されている。   政府としては、従来から、内閣総理大臣その他の国務大臣が国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは、憲法第二十条第三項との関係で問題があるとの立場で一貫してきている。  右の問題があるということの意味は、このような参拝が合憲か違憲かということについては、いろいろな考え方があり、政府としては違憲とも合憲とも断定していないが、このような参拝が違憲ではないかとの疑いをなお否定できないということである。  そこで政府としては、従来から事柄の性質上、慎重な立場をとり、国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは差し控えることを一貫した  方針としてきたところである。 こう述べておられます。  さらに、その前の福田内閣当時の安倍官房長官は、   閣僚の地位にある者は、その地位の重さから、およそ公人と私人との立場の使い分けは困難であるとの主張があるが、神社、仏閣等への参拝は、宗教心のあらわれとして、すぐれて私的な性格を有するものであり、特に、政府の行事として参拝を実施することが決定されるとか、玉ぐし料等の経費を公費で支出するなどの事情がない限り、それは私人の立場での行動と見るべきものと考えられる。 こういうふうに極めて公私の限界というものを明確にされているわけであります。  私も、そのことについて特にただしたわけであ ります。「決定される」ということは、具体的に言えば、総理大臣の場合であれば参拝を閣議で決定をした、こういうような場合がこれは公のことであって、それ以外は私的なんだ、玉ぐし料の問題についても公費で出すということでない限りは私的なんだ、こういうふうに言っておられるわけですから、政府の態度は極めて明確であったと思うんです。それをあいまいなわかりにくい立場にしたのは、私は総理自身だと思うんです。特に、中曽根総理、その前の鈴木総理、そこのところから非常にわかりにくいことになってきた。総理自身が記者会見などでわかりにくい言葉を使って答えられている。ここに問題があったと思うんです。したがって、現在の政府の統一見解というのは、今の五十三年十月十七日の見解、五十五年十一月十七日の見解、これが生きていると私どもは考えているんですが、そういうことでいいわけですね。
  132. 藤波孝生

    ○国務大臣(藤波孝生君) あいまいなところにつきまして、今明確ではないかというふうにお断りの上で御朗読をいただきました。  その中で、もう一回繰り返しますが、   右の問題があるということの意味は、このような参拝が合憲か違憲かということについては、いろいろな考え方があり、政府としては違憲とも合憲とも断定していないが、このような参拝が違憲ではないかとの疑いをなお否定できないということである。 非常にあいまいな感じがあるわけです。ですから、これは政策上とか思想上という話ではなくて、やはり主として憲法との関係の問題ではないかというふうに思うわけでして、そこが非常にあいまいである。しかも、それがどうなるかというのは、最高裁判所の結論が出なければ右とも左とも言えないというようなそういうことではなくて、よく勉強してみてあいまいな感じというものを何とかもっとすっきりしたものにならないか、そういう方法はないのかということについて勉強しようということなのでありまして、私はその勉強が決して間違っているとは思っていないわけでございます。  ただ、政府として今どういう態度をとっているのかということにつきましては、ただいま先生から御指摘がございましたように、従来政府の統一見解として内外に示してまいりましたその考え方をそのまま今日も踏襲しておるということを申し上げたいと思うのでございます。その上に立ちまして、なおよく勉強をさせていただきたい、こう考えておる次第でございます。
  133. 野田哲

    ○野田哲君 あいまいな点があるのだ、だからよく勉強するのだということで、これは政策問題というよりも憲法とのかかわりの問題、こうおっしゃっているわけですが、そこで官房長官、勉強をするに当たっては、特にこれは憲法解釈にかかわる問題、法制上の問題なんですから、内閣には法制上の問題、憲法解釈等については内閣法制局というのがあるわけです。今までの鈴木内閣当時、その前の福田内閣当時の靖国神社参拝問題に対する見解というのは、これは官房長官も最初説明されましたが、法制局の検討の上にそういう統一見解を出されたのだ、こういうふうに説明されているわけであります。  内閣法制局の設置法の中には、そういう問題についての所掌というものがうたわれていると思うんです。「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること。」「内外及び国際法制並びにその運用に関する調査研究を行うこと。」「その他法制一般に関すること。」、こういう形で、憲法解釈、法制上の検討をやる場というのは、私は内閣法制局だと思うんです。  今まで内閣法制局で検討したものを統一見解として出されている。そこにあいまいさがあるからさらに検討し勉強しろということならば、それは内閣法制局に指示されるというのが当然の手順、検討の場じゃないでしょうか。特に、内閣法と内閣法制局設置法によりますと、内閣法による主任の大臣というのは、内閣法制局に関する限りはこれは内閣総理大臣内閣法制局の主任の大臣だ、こうなっています。  そうすると、この種の問題をあいまいさがあるから検討し勉強しろというのは、私は内閣法制局に命じられるのが当然のことじゃないかと思うんです。それを、内閣法制局が検討して過去に国会に示された見解にわかりにくい点がある、あいまいな点があるからということで、それを全然別の、政党に検討を命じられる、これは私は検討を命じられる場を間違えておられるのじゃないか、こういうふうに思うんですが、いかがですか。
  134. 藤波孝生

    ○国務大臣(藤波孝生君) 従来の政府統一見解を発表されるに当たって、内閣法制局の意見を中心としてまとめられてきたであろうことは、これは安倍長官にも宮澤長官にも聞いたことはありませんけれども、多分そうだろうと思うのでございます。  お話のように、今日、いろんな法制上の問題について内閣で考え方をまとめます場合に、内閣法制局が中心になって意見を述べて、それを政府の見解としてまとめていくということになっていることも現在事実でございます。いわゆる自民党の小委員会にも何回か内閣法制局が来て意見を述べるようにというような機会もございまして、内閣法制局から出向いて意見を述べてきておるところでございます。  自民党の方の御意見が示されましたので、政府としてもどんなふうにして勉強していくかということにつきまして今いろいろ検討をしておるところでございますが、どんな形で勉強していくか、いずれにいたしましても内閣法制局を中心として勉強していかなければなるまい、こう思っておるわけでございますが、政府も勉強するが自民党の方もひとつ与党として勉強してもらいたいというような意味で総理が発言をされて、それを受けて自民党の方で勉強が始まったのでございますので、いろんなところで勉強するのがいいと思いますから、自民党で勉強したのが悪かったということではないと思いますし、自民党も勉強をしてもらい、その御意見がまとまったので政府にお示しがあった、それを受けて政府としてもよく勉強していきたい、こんなふうに思っておりますので、今後よく勉強させていただきたいと思っておる次第でございます。
  135. 野田哲

    ○野田哲君 日本の内閣制度は政党内閣制になっておりますから、政策の問題につきましては与党である政党が政策の決定に大きくかかわる、これは当然であろうと私は思うんです。しかし、憲法の解釈、これは内閣法制局、それから最終的には最高裁の判断、こういうことだと私は思うので、今まで政府が内閣法制局で検討したものを受けて統一見解が出されているものを、今度は政党が憲法解釈を変更する、これは私はあるべき姿ではないと思うんです。参考にはあるいはされるかもわかりませんけれども、検討の中心的な場というのは法律で定まった内閣法制局というのがあるわけですから、そこのところは私はやはり慎重に考えなければいけないのじゃないか、こういうふうに思うんです。  そこで、さらに重ねて伺いたいのは、これからの官房長官の言われる勉強の手順でありますけれども、党にも勉強してもらい、内閣法制用にも勉強してもらう、こういうふうなことをおっしゃっているわけですが、四月十四日の新聞報道によりますと、政府首脳が語った、こうなっているわけですから、これは政府首脳といえば大体あなたのことだろうと思うんです。総理の私的諮問機関を設けて従来の政府見解の見直しを含めて検討に乗り出す、こういう報道があるわけですが、大体そういうことを考えておられるわけですか。
  136. 藤波孝生

    ○国務大臣(藤波孝生君) どのように勉強を進めていくかにつきまして、今、内閣官房でいろいろ検討をしていただいておるところでございますが、先ほど申し上げましたように、憲法とのかかわりに関する問題が中心のところでございます。したがいまして、お話のように、内閣法制局に引き続いて勉強してもらうということが主になるかと思うのでございますが、この問題は宗教にかかわる問題でございますだけに、国民意識にも深く かかわっていく問題でございますので、単なる法律論だけでなしに、各方面の御意見を聞くというようなことも、この問題を考えていく上で勉強の仕方として非常に参考になるのではないかというふうにも考えております。  ただ、どういうふうにしてその勉強を進めていくかにつきましてはなお検討中でございますが、総理大臣ということになりますか、官房長官ということになりますか、あるいは総務長官ということになりますかは別といたしまして、いわゆる内閣からお願いをいたしましていろんな意見を述べてもらうというような意味での私的の懇談会といったような、そういう形式も勉強一つの方法かというふうにまだ考えておる段階でございまして、どのように勉強していくかを徐々に煮詰めてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  137. 野田哲

    ○野田哲君 事は、官房長官も言われたように、憲法の解釈にかかわる問題です。これを、私的な諮問機関といいますか、私的懇談会というようなところで検討して方向づけをする、従来の政府見解よりは別の見解を固めるというのは、私はどうしても検討の場として理解できない、憲法解釈で別の見解を出せるはずはない、こういうふうに思うんですが、いかがですか。
  138. 藤波孝生

    ○国務大臣(藤波孝生君) 予算委員会でもたびたび御指摘を受けましたが、いわゆる八条機関の審議会と私的懇談会との区別というお話がよく出まして、そのときにもお答えをしたのでございますが、私的懇談会の場合には、その懇談会で方向づけをするということよりも、その懇談会の中に何人かの方に来ていただいて一人一人の御意見を述べてもらう、それを行政推進の参考にさせていただくというような意味での懇談会が私的懇談会であるというふうに心得ておりますが、そういう意味では、いろんな角度からこの問題を勉強することが大切であろう、それには各界の権威の方々に来ていただいて意見を述べてもらうというような場が勉強の場としてあっていいというふうには考えておりまして、そこで方向づけをしていく、あるいは方向づけをするのに利用をするというような意味ではなくて、あくまでも勉強する機関としてそういった懇談会が持たれることはいいのではないか、そんなふうに思います。  しかし、そこで方向づけが決まるというのではなくて、何回も先生がお話しくださっておりますように、内閣法制局がありまして、内閣法制局も、いろいろ勉強してもらう中で最終的に政府がどういうふうに考えるかという見解を決定するという場面が必要があればあると思いますけれども、そういう意味では私的懇談会というのはそんなふうに私どもは考えておるわけでございます。そのことは御理解をいただきたいと思います。
  139. 野田哲

    ○野田哲君 靖国神社問題がいろいろ議論をされているわけですが、議論の中で一つ重要な課題になっているのは靖国神社の性格についてであります。ここで法制局の見解を、靖国神社の性格について伺っておきたいと思うんです。  これは、靖国神社への総理の参拝の公式や非公式の論議を行う場合にいつも性格が問題になっているわけです。靖国神社が宗教性を持った宗教団体であるのか、あるいは非宗教性か、こういう問題であります。靖国神社への公式参拝が合憲であると主張される立場の人々の見解の背景には、靖国神社というのは宗教性はないのだ、超宗教的なものなんだ、こういう考え方が根底に一つあるのだと思うんです。私も、先日、見解をまとめられた奥野衆議院議員とある新聞社の企画で議論をしたわけですけれども、やはりそういう点を感じているわけなんです。  しかし、靖国神社の規則によりますと、第一条で、「本神社は、宗教法人法による宗教法人であって、「靖国神社」といふ。」、それから第三条で、「本法人は、」「神道の祭祀を行なひ、その神徳をひろめ、本神社を信奉する祭神の遺族その他の崇敬者を教化育成し、」、こういうふうに目的で定めてあるわけです。最近は、聞くところによると、私も兄が戦死をしておりますが、遺族の家に行きますと、以前は「遺族の家」という小さいあれが、おやじの存命中には入り口の門のところに張ってありました。最近はそれが「靖国遺族の家」、こういうふうに表示が変わっているという話を聞いたわけですが、そういう性格を持った団体といいますか、神社です。そうして、その恒例の行事としては、降神、昇神の儀とかあるいは招魂、慰霊といった神社神道に基づく儀式がずっと行われているわけでありますから、私どもはやはりこれはれっきとした宗教の団体、宗教法人としての神社、こういうふうに考えられるわけですが、この靖国神社の性格について法制局はどういうふうに受けとめておられますか。
  140. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 靖国神社の具体的な活動状況についてまでは承知しておりませんけれども、靖国神社は、ただいま先生お読み上げになりましたように、靖国神社規則第一条からも明らかなように宗教法人でございますし、宗教法人法の第四条の規定によりますれば、宗教法人となることができますのは宗教団体とされているところでございます。したがいまして、法制局といたしましては、昭和五十五年の政府の答弁書におきましてもお答えいたしましたとおり、靖国神社は憲法上の宗教団体であると考えております。
  141. 野田哲

    ○野田哲君 もう一つ法制局に伺っておきたいのは、昭和二十六年の九月十日付で、文部次官と引揚援護庁次長の文宗五一発総四七六号、こういう文書が出ております。そして、今度はそれのまた解釈をめぐってのいろんな照会に対して、文部省とか厚生省とかの所管の課長がこの解釈はこうなんだああなんだ、こういう解釈をめぐっての通達といいますか、返事を出されている。  そこで、今起こっている議論は、こういう通達が出ているのだから、知事や市町村長は公式参拝も自由で違憲ではない、玉ぐし料も公費で出すのは違憲ではない、こういうふうな立場に立った通達が出ているにもかかわらず、総理や閣僚としての靖国神社への参拝は違憲の疑いを否定することはできない、総理が玉ぐし料を公費で出すことは違憲の疑いがある、こういう政府の統一見解は地方自治体に対して文部省が示した次官通達との間に矛盾があるのではないか、こういう説を立てる人がいらっしゃる。私も、いわゆる奥野小委員会の議事録を拝見いたしましたけれども、奥野小委員長自身がそういう立場に立っておられる。これもやはりきちっと整理をしておかなければならない問題だと思うんですが、この文部次官通達について法制局としてはどういう見解をお持ちですか。
  142. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 御指摘昭和二十六年の通達は、何分にも当局ではございませんで、文部省から出された通達でございますし、その経緯、内容等につきまして詳細に承知しているわけではございませんけれども、通達の中で遺骨の伝達等について触れられているところから見ますと、当時の状況にかんがみまして出されたものではないかというふうに推測しております。  いずれにいたしましても、この通達は、ただいま申し上げましたように、当時の事情にかんがみて出されたものでございますし、またこの通達自体、信教の自由を尊重すること、特定の宗教に公の支援を与えて政教分離の方針に反する結果とならないこと等につきまして、万全の注意を払うよう述べておるところでございます。そういう観点からいたしまして、同通達が先ほどお挙げになりました政府の統一見解と特に矛盾するものではないというふうに考えております。
  143. 野田哲

    ○野田哲君 靖国神社問題、時間がございませんので、終わります。  せっかく時間をやりくりして官房長官に御出席をいただきましたので、最後に、特に今回官房長官に一言伺っておきたいのは、それは七月から総務長官のいすがどうなるか、ちょっと先行きどなたがやっておられるかも明確ではないので、やはり内閣で責任を持つ立場としては、後で総務長官にも伺いますけれども、官房長官に伺っておきたいんですが、恩給議論をやっておりますが、この恩給わずか二・〇三%しか改善されない。その根底には、結局、昨年の公務員の給与について人 事院が六・四七%の引き上げの勧告を行ったにもかかわらず二・〇三%しか政府がやらなかった、そこに起因をしているわけであります。ことしも既に民間の賃金はほぼ決まっていると思うんです、特殊のところを除いては。三公社四現業も近く仲裁という形で決定の運びになるというふうに言われております。公務員の給与について大体八月には勧告が行われる、こういうふうに考えているわけですが、四月四日に、総務長官それから労働大臣も含めて、官房長官が中心になって労働団体に対して人事院勧告の扱いについての政府の考え方を説明されているように伺いますが、ことしはこの人事院勧告について政府としてはどういう態度でこれに臨まれようとされるのか、そのことを最後に伺っておきたいと思います。
  144. 藤波孝生

    ○国務大臣(藤波孝生君) 一昨年の人事院勧告につきまして、これを見送るといういわば財政の上から非常事態宣言とも称すべき措置が講じられまして、国家公務員の方々には非常につらい措置になったわけでございます。昨年も、人事院勧告をちょうだいをいたしましたが、抑制をするような形で推移をしてきておりまして、非常に異常な措置をとって今日に至らざるを得なかったことをまことに申しわけないと思いますし、そのことで公務員の士気の低下を来したり、あるいは人材確保などに支障を来してはと、本当に心配をしながら来ておるところでございます。  本年度の人事院勧告につきましては、人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢に立ちまして、完全実施に向けて誠意を持って取り組むことにしたい、四月四日にも労働界の皆さん方にもそんなお話を申し上げてきておるところでございます。具体的には、人事院勧告が出されました段階で給与関係閣僚会議を開きまして、閣僚それぞれの立場でいろいろな意見があることかとは思いますけれども、それらを総合いたしまして、諸般の事情を考慮しつつ政府としての態度を決めることになろう、こう考えておる次第でございますが、今申し上げましたような趣旨、精神でこの勧告を受け取り、政府の方針を決めていくようにいたしたい、こんなふうに考えておりますので、今後の推移をお見守りをいただきますようにお願いを申し上げたいと思うのでございます。
  145. 高平公友

    委員長高平公友君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時二十分休憩      —————・—————    午後一時十七分開会
  146. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  147. 野田哲

    ○野田哲君 恩給と非常にこれまた密接なかかわりを持っているいわゆる戦後処理問題と言われている問題について、総理府の現在の取り扱いの状況なり、これから先の方針等について伺ってまいりたいと思います。  政府委員の方、担当者の方で答えていただきたいと思うんですが、いわゆる戦後処理問題で今どのような問題が政府の方あるいは国会の方に請願なり陳情なりとして出されているのか、その内容を示していただきたいと思うんです。
  148. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 戦後処理問題と申します場合、どの範囲までをとらえるかということは実は大変難しい事柄でございまして、人により、あるいはそのときの状況によりまして、かなりの差もあろうかと思っております。  一昨年六月末に、戦後処理問題懇談会が開催されまして、基本的に戦後処理問題というものをどう考えていくべきかということにつきまして御意見をちょうだいいたしたいということで、これまで二十二回の開催がなされたわけでございます。  この懇談会におきましてどういう問題を取り上げて議論していただくかということは、基本的にはあるいは第一義的にはこの懇談会でお決めいただく事柄でございますが、この懇談会が開催されるに至りました事情、それは政府といたしましては昭和四十二年の引揚者に対します特別措置をもって戦後処理問題は一切完了したものとするということで来たわけでございますけれども、この数年間、特にシベリア抑留者の問題、在外財産の問題、それに恩給欠格者の問題、この三つの問題が大変大きな問題として浮上してまいりました。そういう経緯がございます。  そういう経緯を踏まえまして、現在、戦後処理問題懇談会におきましては、ただいま申しました三つの問題を中心といたしまして、これまで政府がとってまいりました措置というものをどう評価するのか、さらに今後検討すべきあるいは政府として措置すべき事柄があるのかないのか、その場合の問題点はどうであるかというふうなことにつきましていろいろ御意見の交換がなされておるというふうなことでこの懇談会は今日まで来ておるわけでございます。  今、先生からお話がございました請願とか陳情とかいうものでどういうふうなものが一体寄せられておるのか、こういうお尋ねでございますが、戦後処理問題懇談会に対しまして、あるいはそのメンバーに対しまして寄せておられます要望とか陳情のほとんどは、ただいま申しました恩給欠格者の問題、それから戦後強制抑留者の問題、それから在外財産の問題及びこれに関連する事柄でございます。それ以外に、一般戦災者の関係とか、あるいは戦災によって死亡いたしました遺族に対する援護というふうな問題も陳情という形で寄せられております。  細かく申し上げますとあれでございますが、恩給欠格者の問題におきましては、例えば短期軍歴者に対しまして軍歴期間に応じた年金の支給をしてくれとか、あるいは軍歴期間を厚生年金、国民年金に通算してほしいとか、いろいろございます。あるいはまた、戦後強制抑留者の問題にいたしましては、ソ連強制抑留者並びにその死亡者の遺族に対しまして抑留補償をしてくれとかいうふうな問題等々がございますし、在外財産の問題といたしましては、在外財産に対しまして法的な補償措置をしてもらいたとかいうふうなものがございます。そういうふうな事柄が大体中心で御要望等が寄せられておる、こういう状況でございます。
  149. 野田哲

    ○野田哲君 抑留者の問題というのは、これはシベリアだけの問題なんですか。期間の長期、短期はあったと思うんですが、抑留という経過はほかのところにもあったのじゃないかと思うんですが、その点はどうなんですか。
  150. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 戦後、強制抑留者という問題になってまいりますと、確かに敗戦後各地におきまして、あるいは戦犯とかいう形で抑留されたり、あるいは引き揚げ船が来るまでの間一定の箇所に集合してその間船が来るまで待っておった、これを抑留と称しますかどうか言葉の問題であろうかと思いますけれども、戦犯と言われておりますのはまた特殊な事情がございますが、現在大きな問題として関係の方々から御要望が寄せられておりますのは、専らと言っていいほどシベリアに戦後強制抑留をされた方々からのものでございます。  御承知のとおり、ソ連は八月九日、対日宣戦布告をいたしまして、旧満州方面にずっと入ってまいりまして、そして当時の軍人、さらには一般の邦人で労働にたえ得ると認定をされたような人たち五十数万人をシベリアに強制的に連行いたしまして、かなり長期にわたりまして非常な悪条件のもとで強制労働、これを求めたわけでございます。したがいまして、強制抑留と一般に言われておりますのはシベリアに強制抑留をされた方々の問題、こう解して間違いではないのではないか、かように私ども考えております。
  151. 野田哲

    ○野田哲君 私どものところへ来ている問題として、ほかにもたくさんあるんですが、旧満州国の軍隊へ国の政策によってあるいは命令によって入隊をした旧満州国軍人というような問題が来ているわけですが、これは検討課題になっていないんですか。
  152. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 今、御指摘がございま したのは、一般的な意味におきましては確かに戦後処理の問題と言えるかもしらぬと私ども考えておりますが、冒頭にも申し上げましたとおり、戦後処理問題というものを取り上げていきます場合に、その取り上げ方いかんによりましては大変多種多様にまたがるわけでございます。そういう多種多様、非常に広範囲の、しかも個別の問題というものをこの懇談会で取り上げて御検討いただくというのは実際上不可能に近いことでございますし、それぞれの問題につきまして現在既存の制度とか何かのもとにおきまして対応すべきいわゆる個別具体的な問題、これはやはり戦後処理問題懇談会から最終的にはそもそも戦後処理問題というものをどう考えるべきかということについて御意見を出していただこうという懇談会の性格から見ましても、あるいは物理的な事柄から見ましても、それを取り上げて、裁定機関というわけでもございませんものですから、そういうことを御議論をいただき、御意見をちょうだいするというのは実際問題難しい事柄だろうと考えております。  したがいまして、先ほども申し上げましたとおり、この懇談会におきましては、三つの大きな問題、これを中心として戦後処理問題についてどう考えるべきかというふうなことの意見の交換が行われておる、こういう状態でございます。
  153. 野田哲

    ○野田哲君 今、審議室長の方から説明のありましたシベリアへの強制抑留を受けた者、それから恩給年限に達しない恩給の欠格者、それから在外資産ですか、この三つの項目で大体対象人員はどのぐらいいるのか、あるいはこの要望事項を満たすとどのぐらいの経費がかかるのか、そういう基礎的なデータというものは把握されているわけですか。
  154. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 突然のお尋ねで、私どもその資料を持ってきておりませんが、例えばシベリアの抑留者の問題でまず申しますと、厚生省のいろいろの資料によりますと、戦後シベリアに強制的に抑留された方が五十七万五千人ぐらい、そして現地で死亡された方が約五万人ぐらいということで、ざっと五十万人の方が強制抑留後日本に引き揚げてこられた、かように聞いております。  それから恩給欠格者の問題は、恩給局で実際上恩給を出しております数字はすぐぴたりとわかるわけでございますが、いわゆる欠格者の問題というのはなかなか正確には把握できないわけでございますが、たしか間違いがなければ、そういう該当の方々が約三百万人ぐらいはおられるのではなかろうかというふうな数字がかつて出たというふうな話も聞いたことがございます。  それから在外財産の問題でございますが、戦後外地から日本に引き揚げてこられた方の中で、これまたいろいろのとらえ方がございますけれども、在外財産ということになりますと、外地に一定の期間以上そこで生活をしておられる方という方が対象になろうかと思います。兵隊で引っ張られて外地にちょっと行って引き揚げてきたという方は対象外と思いますが、その辺で申し上げますと、引揚者の総数が大体六百二十九万人と言われておりますが、軍人軍属がそのうち三百十万余り、したがって一般邦人が三百十八万ぐらいと言われております。団体の方々の主張しておられる数字は三百六十万とか四百万とかいうふうなことがございますが、大体一般邦人で引き揚げてこられたこの三百十八万というのが基本的な基礎になる数字ではないか、かように思っております。  こういう方々に対します措置の結果との程度のあれか、こういうお話でございますが、まさにこういう方々に対してどう考えていくかということを今懇談会の方でいろいろ御議論をちょうだいしておるわけでございまして、私どもの手元でこれに対してどれだけの国費と申しますか、経費が必要かというふうなことは現在何も検討いたしておらない、こういう状態でございます。
  155. 野田哲

    ○野田哲君 いわゆる戦後処理問題、昭和四十二年に一回これで終わったという決定をされてきた経過がありますね。昭和四十二年までに戦後処理問題としてはどんな問題が処理されたことによって終わったという判断をされたわけですか。
  156. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 政府としての基本的な考え方から申し上げますと、さきの大戦に関しましてはすべての国民が何らかの犠牲というものを余儀なくされてきたところでございまして、それはやっぱり事柄の性質上国の力にも限界がある、こういう点から見ましても、国民一人一人の方々に大変お気の毒ではございますけれども、それぞれの立場で受けとめていただかなくてはならないことであろうという基本的な考え方がございましたが、その中でどうしても国としてそういう戦争による犠牲者に対しまして特別な措置を図らなければ政府としての責任が果たせないと思われるような方、特にまた気の毒な方というふうなことに対しましていろいろの措置をとってきたわけでございます。  それで、四十二年までにとってまいりました措置、これはとり方によりましていろいろあろうかと思いますけれども、主要なものとして考えられますのは、例えば軍人に対しましては昭和二十八年に恩給制度を復活いたしまして、公務扶助料、あるいは増加恩給、傷病年金の支給を行うとか、こういう措置をとってきております。  それから軍属の方に対しましては、戦傷病者戦没者遺族等援護法、これも昭和二十七年でございますが、この制定によりまして障害年金あるいは遺族年金の支給、こういうふうなことも行ったわけでございます。  さらに、昭和三十年代から四十年代にかけまして、例えば戦没者等の妻に対する特別給付金の支給、これは昭和三十八年でございますが、こういう措置を行い、四十一年には戦傷病者等の妻に対する特別給付金の支給、こういう措置もとられてきたわけでございます。  それから未帰還者に対します措置といたしましては、昭和二十八年の未帰還者留守家族等援護法、これによりまして留守家族手当の支給等の措置がとられてきたわけでございます。  それから引揚者に対します措置といたしましては、もちろん引き揚げに伴います各種定着のための援護措置がとられたわけでございますが、そういう措置のほかに、昭和三十二年に引揚者給付金等支給法の制定があり、さらに四十二年には先ほどお話がございました引揚者に対します特別給付金の第二次の措置が行われてきたとか、あるいは細かい点では、在外公館等借入金の返済の実施に関する法律というものが昭和二十七年に制定されるというふうなこと等の措置がとられてきたところでございます。  それから原爆被爆者に対します措置といたしましては、昭和三十二年に原爆の被爆者に対します医療の給付の措置のための、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律、こういうものの制定が行われたわけでございます。  以上が、大まかに申しまして、昭和四十二年までにとられた主要な措置の項目かと存じております。
  157. 野田哲

    ○野田哲君 今説明のあった中で、昭和四十二年に引揚者に対する特別交付金の支給が行われましたが、この措置と現在検討課題になっている在外財産の補償の要求とは、これは別個のものなんですか。ダブっているのじゃないですか。
  158. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 引き揚げてこられた方方に対します措置といたしましては、第一次それから第二次のいろいろ給付金の措置というものが講じられまして、特に昭和四十二年の措置、これは総額で約千九百億円を超えるという想定のもとでの措置でございましたが、そういう措置をもって終わりにするということがこの法律案の閣議決定の際にも確認をされたわけでございます。そういう点で申しますと、今いろいろ言っておられます御要望の方々と、これに対しまして今までとってまいりました措置の対象者とは同じ方々でございますし、いわばダブり、こういうふうなことも言えるかとも存じますが、引揚者に対します今までの政府の措置、それではまだ不十分である、自分たちは在外財産を失っておったのだから、こういう給付金というのでなくて補償をできたらして もらいたい、こういうふうな御意見が最近あるところでございます。
  159. 野田哲

    ○野田哲君 念のために伺っておきますが、いずれこれまた当委員会議論の対象になるかとも思いますので念のために伺っておきますが、海外に居住されていた民間人の方々の財産の補償の問題につきまして、四十二年に措置された単なる交付金でなくて補償的な意味のものをやってくれ、こういうことですね。それについては、海外に所有されていた財産を証明する措置というのはあるんですか。
  160. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 関係の方々ないし団体の御要望は、今申しました補償をしてほしい、あるいは補償とまで言わないにしても、何らかの特別の政府の温かい措置というふうなあれがあるわけでございますが、これに対しましてどういうふうに考えたらいいのかというのは、まさに戦後処理問題懇談会の一つの大きな検討項目ということで現在実は御検討いただいておる段階でございますので、私どもの方からこれに対しまして私どもなりの意見を申し上げるのは差し控えるべきだと存じております。  だ、今技術的な問題で先生からお話がございました、一体それを証明する手段があるのかないのかというふうな問題も実は当懇談会におきましても、そういうふうな非常に難しい問題があるということを七人のメンバーの方々にもその辺をいろいろ頭に置きながら御議論をしていただいておる、こういう状態でございます。
  161. 野田哲

    ○野田哲君 昭和四十二年にこの引揚者に対する特別交付金の支給の措置をとったことによっていわゆる戦後処理問題は終わったという決定をされたということですが、この昭和四十二年までいろいろ今説明のありました措置をとってこられた、これは政府が独自に判断をされたわけですか、それとも何か諮問機関的なものがあって、そこの議を経て答申を得てやられたわけですか。その点いかがでしょうか。
  162. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 在外財産の問題につきましては、実は昭和四十一年に第三次の答申が出ますまで、この在外財産問題審議会というものがございまして、そこで詳細な御検討をいただいてきたわけでございます。そして、第三次の答申が昭和四十一年十一月三十日に提出されまして、これを受けまして引揚省に対します四十二年の特別給付金の支給措置というものが講じられたわけでございます。
  163. 野田哲

    ○野田哲君 さて、残されているといいますか、今検討されている戦後処理問題について、戦後処理問題の懇談会、ここで近く答申を出すというふうに言われているわけですが、まず答申はこの六月までには出すのだというふうなことで検討されているやに伺っているんですが、この問題は、今度のこの機構が七月から変わっていくわけですが、そのときにはどこの所管になるんですか、この戦後処理問題というのは。
  164. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 戦後処理問題懇談会は、二年前の六月三十日に第一回の開催がありましたんですが、これは総務長官の私的諮問機関ということで開催されてきたわけでございます。発足当初から各メンバーの先生方、大変難しい問題なので、どうしても二年ぐらいの期間はかけていろいろ研究をしなくてはなるまい、こういうことで出発してきたわけでございまして、それからまいりますと、大体この夏ぐらいまでには御意見がちょうだいできるのではないか、こういう状況で来ております。  今御指摘がございましたとおり、現在の総理府は六月三十日をもって終了いたしまして、七月一日からは新しい総理府ということになるわけでございます。ただ、どうも事務的にこういうことを申し上げるのは大変恐縮でございますが、総務長官が廃止になりまして新しい総理府の所管大臣は内閣官房長官ということに相なるわけでございますので、そのまますっきりいきますと。また、あるいはそれまで、六月三十日までに御意見がちょうだいできない場合には内閣官房長官に切りかわると申しますか、そういうことに相なろうかと考えております。  ただ、事務的なことで大変恐縮でございますが、新しい総理府におきましても、庶務は現在の総理府審議室がそのまま庶務面を担当させていただきますので、懇談会の事務的な運営、これには支障を来さないように私ども十分心がけていきたい、かように考えております。
  165. 野田哲

    ○野田哲君 ここから先は総務長官に伺いたいんですが、よろしいですか。  中西総務長官が今のポストにおられる間に、一応戦後処理問題の懇談会から何かの答申が行われるような段取りでこの問題の議論が進められているようでありますが、それをどう処理するかということになりますと、今度は官房長官のところに機構が移るのだそうでありますが、それまでの担当の大臣としての総務長官に伺っておきたいと思うんです。  私どもも、内閣委員会恩給の審議などをやっており、それから総理府の所管事項を審議する委員会におりますので、随分いろいろいわゆる戦後処理問題についての陳情やら請願を受けております。今、審議室長から説明のあったような三項目以外でも、大変広範な問題について請願なり要請を受けているわけです。三十八年たってもやはりこの問題はずっと尾を引いているわけですが、いずれにしても決着をつけなければ、うやむやのままでずっといると、期待感を持つ人は期待感を持つし、あるいはまた政府がやっていることや国会でやっていることに対して、随分納得できないということで感情的な気持ちになる人もいらっしゃると思うので、非常に難しい問題だと思うし、範囲も非常に広いのでこれは大変だと思うんですが、戦後処理問題を担当しておられる中西総務長官としては、この難しい問題について、どういうふうな形でこの問題に対処されようと考えておられるのか、基本的な考え方を聞かしていただきたいと思います。
  166. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) 今お話しのように、大変広範にわたりますし、審議室長も申し上げましたが、私が考えましても、三月十日の東京の大空襲で命を失った方もおられるし、家を焼かれたり、その他不幸な目に遭った方も大変おられる。そういったようなこと全体を念頭に置きながら考えるわけでございますが、ともかく今は、先ほど申し上げた恩欠の関係と抑留者の関係と在外資産ということで御議論をいただいている。  そこで、二年をめどにということで始まった作業でございますから、できればこの六月あるいは夏までの間に、概算要求までには何らかの考え方の柱を立てて、そして予算要求するならしていくというのが一番望ましいとは考えております。しかし、現在の段階で、二十数回の会議をやって、御意見がぼちぼち出始めている、それを最終的な役所の態度までに決めていくということはこれは大変な作業だと実は思っています。  幸いにして、恩給法の法案を上げていただくようなことになれば、あとは専らそれに専念しなければならないなというのが私の偽らざる心境でございまして、今までもいろいろ個人的には考えてまいりました。しかし、大変なお話がいっぱい出ておるわけですから、全部そうですかと言えるのかどうか。また、根本的な議論をしておりますと、一体そういうお話まともに全部承っていいのかどうかというようなことを言う方もまた、なくはございません。そういう中でどういうふうに柱を立てていくか、これからのことでございまするが、現在では大変苦慮をいたしておるということでございます。
  167. 野田哲

    ○野田哲君 私は、いずれの結論を出すにしても、これは大変な問題だと思うんです。今の財政状況の中で、ある程度要望にこたえようとすれば財政当局にかなり納得をさせるだけのものを持たなければいけないし、断れば断ったで国民の皆さんにも大変な不満が残る。こういうことになるし、何かいろいろ国会議員が代表になったかなりプレッシャーをかけるような団体もあるようでありますが、そういう問題をさばいてけじめをつけようということになればこれは大変な作業なり関 係者との政治的な折衝が必要になってくると思うんです。  そこで、そういう説得力を持った結論を出すにしては、私は戦後処理問題の懇談会の方々が二十二回も精力的に二年間の間で議論されたことは大変御苦労であったと思うんですが、性格として、この種の問題を扱うことについて私的懇談会という形では私は説得力がないのではないか。対外的にはこれは全部総務長官の責任でやらなければいけない、こういうことになって、私的懇談会がこうおっしゃったからということでは説得力に乏しいように思うんですが、行革ということで新たな審議会等設けることが制約をされているから、きょうの午前中の官房長官との議論の中でも、憲法解釈までも私的懇談会でやろうなんというような傾向になってきているんですが、この問題についてはやはり私は国会の中でも内閣委員会は衆参で小委員会ぐらい設けて国会としても検討すべき性格を持っているのではないかと思うんですが、今の戦後処理問題の懇談会も、私的懇談会で一応の結論は六月までには出されるだろうと思うんですけれども、それで一応全部検討は終わり、こういうことであとは政府独自の裁断にゆだねられる、こういうことになるんでしょうか。
  168. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) 今の私的懇談会を二年前につくった経過からいいますと、そのときのお気持ちはそれぞれ御意見を伺って、その上で政府が結論を出して、そこで決着をつけようじゃないかということで出発はした、かように思います。  いよいよ、あと数カ月になってきたわけでございますが、ともかくここのところ役所も相当な陣容を抱えてやっておりますし、先ほどお話がございましたが、私、数回会合に出ました。委員の具体的なお名前は申し上げませんが、よくぞここまで議論を詰めてくださっている、並み大抵の審議会の議論とは少し質が違いまして、言ってみれば法律論もございますし、人情論もございますし、政治論もございますし、それを真剣に議論していただいております。そういうことで頭が下がるわけでございます。  そこから何が最終的に出てくるかということになりますと、予断ができないのでございます。そういう意味では、ここでは、ともかく二年前に発足したのですから、この懇談会自身の終点というものをやはりどこかで見出す必要があるのではないか。その終点で、結論といいましてもいろいろ御意見が一致しない点も出てくるかもしれません。そういうようなものを踏まえて、これは我が党としてはそれぞれ関心を持っておりますから、皆さんとも相談をしなけりゃいかぬでしょう。  さてそこで、結論がうまく出て、いろんな関係団体ございますが、皆さん御納得、それでわかったということになるのかならないのか、その上で政府はいかなる決意をするのかということでございますから、まさに御指摘のように大変難しい問題でございます。ともかく、ここ一月余でございますので、やってみるよりしようがないということで今のところは進ましていただきたい、かように思います。
  169. 野田哲

    ○野田哲君 大変御苦労さんです。この問題はこの程度にして、別の問題に入りたいと思いますので、審議室長、どうもありがとうございました。  労働省、おられますか。——そろそろ、この連休前後から、ことしの賃金問題、春闘といいますか、ほぼ山を越したということで、仲裁裁定の問題とかあるいは人事院勧告、ある新聞でははっきり数字まで示して六・六%だ、こんな報道がありますが、まず労働省の方でことしの民間の企業の労働者の賃金の引き上げ状況についてどういうふうに現状を把握しておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  170. 廣見和夫

    説明員(廣見和夫君) お答え申し上げます。  労働省の方といたしましては、毎年、民間主要企業賃上げ状況調査というのをやっております。これは六月中旬ごろに取りまとめておりまして、したがいまして現段階におきましては、私どもまだ労働省といたしましては民間の賃上げ状況を取りまとめておらないわけでございます。しかし、主要関係団体等がいろいろ調査をなさっておられますので、私どもそういうものを拝見させていただきながら状況を見てみますと、大方主要なものを見てまいりますと次のようになっております。  まず、春闘共闘会議が発表されておりますものを見てみますと、四月二十七日現在、これは九百三十二組合の妥結したものでございますが、加重平均で見てみますと、額で昨年と比べましてといいますか、額の上げ幅でございますが、九千六百七十八円、これが四・六%アップということになっております。  次に、同盟がなさっておられる調査、これを見てみますと、やはり同じく四月二十七日現在でございますが、千五百六十四組合、ここでは額にいたしまして八千八百五円ということになっておりまして、この率は四・五三%でございます。これもやはり加重平均でございます。  次に、事業主側ということで日経連の調査を拝見いたしますと、五月二日現在でございますが、原則として東証の主要企業二百七十八社、妥結したものが取りまとめられております。これは額にいたしまして九千二百四十八円、率では加重平均でやはり四・四二%というふうになっております。
  171. 野田哲

    ○野田哲君 今のそれぞれの数字は、去年と比較をして、傾向としては金額、率で上回っているわけですか。
  172. 廣見和夫

    説明員(廣見和夫君) 昨年との比較でございますが、厳密に申し上げますと、それぞれの集計対象組合、企業等が違っておるようでございまして、正確な比較は難しいようでございますが、大まかな傾向として見てみますと、それぞれの今申し上げました団体で昨年の調査、これは最終調査でございますから時点も違うわけでございます。しかし、最終的にどうであったのかというのを見てみますと、春闘共闘会議では率だけを申し上げてみますと四・五%になっております。それから同盟の方の調査によりますと、最終取りまとめが四・四五%というふうになっております。いずれも加重平均でございます。それから日経連の調査を拝見いたしますと、やはりこれは三百十社で全部まとまった段階のものでございますが、四・三六%ということになっております。
  173. 野田哲

    ○野田哲君 そうすると、去年よりは若干上回っている、こういう結果のようですが、いわゆる定期昇給とそれからべースアップの割合というのはわかりますか。
  174. 廣見和夫

    説明員(廣見和夫君) いわゆる定期昇給制度でございますが、これは各企業によりまして非常に違っておるところでございます。今、私それぞれ申し上げました資料といいますか、調査につきましても、定期昇給とそれからベースアップ、これはいずれも区別されておらないわけでございまして、その点ははっきりいたしておりません。
  175. 野田哲

    ○野田哲君 人事院の方に伺いますが、午前中の矢田部委員の質問で大体のみ込めたわけですが、ほぼ例年と同じようなペースで調査をやっておられる、こういうことですが、今の官民比較基礎になる公務員の平均基準内給与の月額というのはどういう数字になっているんですか。
  176. 斧誠之助

    政府委員(斧誠之助君) 公務員給与につきましては、例年一月十五日現在で在職します公務員につきまして、その者に四月分に支払われる給与額、こういうことで調査しておるわけでございます。したがいまして、現在ちょうどまだ各省から収集中でございまして、大体今月半ばには収集が終わりまして、それから集計にかかる、こういうところでございますので、数字は何とも申し上げかねます。  ただ、一昨年と昨年の関係で見ますと、若干昇給昇格あるいは人員構成の変化等で公務員給与は凍結の状態の中でも若干上がっていくという傾向があるというふうに見られます。
  177. 野田哲

    ○野田哲君 労働省の方に伺いますが、三公社四現業の問題について、来月中旬ということですから、これは四月の記事ですから、今月の中旬にも裁定ということになるのだということで、率については四・二六%で事実上決着、こういうことで ずっと三公社四現業の基準内賃金、ベア、定昇、そしてアップ率、金額、こういう形で表にして出されているわけです。これは事実こういう形で裁定ということになるということなんですが、この裁定はいつ行われることになるんですか。
  178. 廣見和夫

    説明員(廣見和夫君) 現在、公共企業体等労働委員会の方におきまして、関係者の方々から、仲裁の一つの手続といたしまして事情聴取をいたしておるというふうに私ども承知いたしております。今ちょうどそういうことで鋭意作業中でございます。必ずしも私どもいつの段階で仲裁裁定が出されるか、まだ公労委の方からもはっきりしたことは受けておりませんが、現在そういう状況でございますので、そう遅くない時期にというふうに私ども見ておりますが、現在とにかく作業中というところでございます。
  179. 野田哲

    ○野田哲君 この数字についてはこれは動かない、こういうことなんですか。
  180. 廣見和夫

    説明員(廣見和夫君) 数字につきましては、先生御案内のとおり、公共企業体等労働委員会がああいう形でいろいろと調停に苦労されたわけですが、調停がまとまらずに仲裁に移行が決議され、現在仲裁の手続が進んでおるわけでございます。したがいまして、これはすぐれて公労委が独立の機関として仲裁をやっておりますので最終的にどういう形になるか現段階では申し上げられない。私どもとしましても、独立機関としての公労委がどういう形で仲裁を判断されるかというのは申し上げられないと思います。ただ、従来の過去の例なんかを拝見いたしますと、調停の段階で何らかの形で示されてきたようなものが大体仲裁で裁定として出されているというような例が多いことは事実でございます。
  181. 野田哲

    ○野田哲君 人事院の斧局長に伺いますが、五月六日には朝日新聞が、定昇抜きで六・六%前後、こういう報道をしておりますが、先ほどの労働省で把握をしておられることしの民間の給与の引き上げ状況の傾向を見ても、それから午前中の矢田部委員の質問から見ても、一つは昨年の六・四七%は二・〇三%しか実施されていないわけですから、この未実施分が較差としてそのまま引き継がれることになるだろうと思います。これに、昨年よりは若干上回るという傾向が出ております。ことしの民間の給与の引き上げ状況望見、そしてさらに三公社四現業の状態を見ても、昨年に比較して若干上回ることになるだろう。そういうことから類推をすると、この朝日新聞が報道している六・六%前後に勧告がなるのじゃないかというのも、これは斧給与局長、なかなか数字に今触れるということにはならぬと思うんですが、大体、的外れではないと見ていいのじゃないか。私も、公務員の給与問題、民間の問題、公労協の問題も含めていろいろかかわる立場に立ってきておりますので、大体そんな感じがするんですが、いかがですか。
  182. 斧誠之助

    政府委員(斧誠之助君) 数字は、全くこれからの調査結果を待たないとわからないということでございますが、ただ、ただいま労働省の方が申されました春闘の結果でございますが、説明がありましたように、妥結企業でございます。我々が調査いたします場合の調査対象企業は、必ずしも春闘でアップした企業だけということではございませんで、無作為抽出でございますのでいろんな条件の企業が入っておるわけでございます。しかも、中小というのは例年アップが決定するのが遅いわけでして、そういうものも我々の調査時点において妥結しておりますというと入ってくるわけでございます。昨年の例で見ますというと、日経連調査あるいは東商、日商あたりの調査では中小企業の方がアップ率では高くなっている傾向が出ております。片や、労働省の方の調査では中小の方が低く集計されているという結果が出ております。  そういうことで、必ずしも妥結した企業だけが対象でない。それから今労働省の方から説明がありましたようなアップ率だけじゃなくて、これから出てくる中小企業の影響が入ってくるというようなことがございますし、それから先ほど説明いたしました公務員給与も一年間で凍結の中でも動いていくのだということがございます。したがって、昨年四・四四とか、あるいは四・三六とか、まだ較差が残っているという議論があるんですが、それもそっくりそのまま反映してくるものかどうか、これもわからないということでございますので、何とも現在のところ数字は申し上げかねるということでございます。
  183. 野田哲

    ○野田哲君 人事院の勧告の基礎になっている国家公務員法の二十八条情勢適応の原則、これについて人事院としての見解を承りたいと思うんですが、私も二項の方でなくて一項の方についてもう一回実は読み返してみたわけですが、「この法律に基いて定められる給与、勤務時間その他勤務条件に関する基礎事項は、国会により社会一般の情勢に適応するように、随時これを変更することができる。その変更に関しては、人事院においてこれを勧告することを怠ってはならない。」、こうなっています。それから二項があって、五%以上増減する必要が生じたときには国会及び内閣に勧告をしなければならない、こうなっているわけです。  一項の方のことなんですけれども、これを読むと、内閣の方のことは全然出ていないわけです。国会が情勢に適応するように変更することができるのだ、その変更に関しては人事院がこれを勧告することを怠ってはならない。去年、おととしの状況からすれば、私は、公務員の給与水準というのはこの情勢適応の原則からいえば情勢適応の原則が損なわれている、こういうふうに思うわけです。だからこそ去年もおととしも勧告があったのだし、その勧告が実施されていないということ、あるいは三分一ぐらいしか実施されていないということは情勢適応の原則にかなっていない現状だと思うんですが、この一項においては内閣の責任のことは一つも触れていないで国会と人事院のことがうたわれているんですが、ここはどう理解をすればいいんですか。
  184. 斧誠之助

    政府委員(斧誠之助君) 公務員の勤務条件は、法定主義ということでございます。これは最高裁の判決でも、そのこと自身が一つの保障である、こういう判断が示されておるわけでございますが、そういうことになりますというと、立法機関であります国会で法定していただくということでございますので、勤務条件に関しては国会が随時変更することができる、これは当然のことであろうと思います。これにつきましては、情勢適応するためには一体どういう条件がどういうふうになっておるのかという、そこのところの調査なりあるいは物の判断なりということがないといけないわけでございますが、その点はひとつ人事院が勧告を怠らないようにしなさい、こういうことだろうと思います。  過去、五%以下になった場合、一体勧告権ありやなしやというようなことで大分御議論になりましたですが、たとえ四・数%であろうと、あるいは三・数%であろうとも、人事院が考えます場合に、それが現在相当な額に上る、あるいは世間一般の人がみんなその程度であってもベースアップの恩恵に浴しているというような情勢を考えますと、それはやっぱりそういう情勢にも適応さした方が適当であるということで怠らぬ勧告を申し上げてきたわけでございます。  それともう一つ人事院勧告の根拠規定は、このほかに給与法の二条がございます。給与法の二条では、内閣と国会両方が明示されておりまして、両方に給与の改定が必要ある場合は勧告を行いなさい、調査研究の結果、必要ある場合は勧告を行いなさい、こういう規定になっておりますので、国会と内閣両方に勧告を申し上げておるわけでございます。
  185. 野田哲

    ○野田哲君 労働省の方は結構です。ありがとうございました。  人事院の機能という問題について、これは人事院とそれから総理府の方と両方に見解を承りたいと思うわけです。  まず、人事院の機能についてでありますけれども、三公社四現業の労働者については公労委によ る仲裁や調停の制度があり、公務員については人事院による勧告の制度があるわけですが、これが労働基本権制約の代償機能、こういうことになっているわけですが、この労働基本権制約という面からいえば、三公社四現業に比較をして公務員の方がその制約はかなり強いということが言えると思うんです。  それはどういうことかといいますと、三公社四現業の場合には調停なり仲裁という形で処理される前に、一応形骸化したとはいいながら、団体交渉機能というものもあるし、それから問題にはならないにしても、一応有額回答が出ているわけです。それから調停なり仲裁によって決まった場合でも、配分機能というのはこれは労使交渉が持っているわけであります。そして、最終的にはその配分機能、労使交渉、そして協約、こういう形で実施されているわけですけれども、国家公務員の場合は、これは給料表までも人事院の勧告になっているわけでありますから、そういう意味からすれば、給与の問題を考えてみると、引き上げの率を決めるだけではなくて、一人一人の給与の決定にまで人事院の機能は及んでくる。そしてさらに、勧告の機能だけではなくて、人事院規則、給与準則という形で実施の機能までも持っている。  そういう意味からいえば、公務員に対する労働基本権制約の方は三公社四現業の職員よりもかなり強い制約を受けている。給与のことについて言えば、ほとんど一〇〇%人事院の機能によっている。そういう性格を持っていればいるほど人事院の勧告というものは、むしろ比較すると、三公社四現業よりもその尊重の度合いというものは、三公社四現業は多少は軽視してもいいという意味ではなくて、尊重される度合いというものはこれは国家公務員の方が強くなければいけないと思うんです。それほど公務員としての基本権の制約はすべてに及んでいるからであります。ところが、それがないがしろにされているというのがここ二、三年来の状況でありますが、そういう人事院の持っておる機能、性格、こういう点について人事院なりあるいは総理府としてはどういうふうに考えておられるのか、それぞれ見解を承りたいと思うんです。
  186. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 人事院の機能につきましては、ただいま野田委員の御質問内容が極めて最も適切にお話しになっておると思うのでございますが、私どもも、在来から代々の総裁がお答え申し上げておりますように、まさしく人事院の機能というのは労働基本権を制約されております国家公務員に対してその代替機能を営む、そしてまた勧告はそういう代替措置である、しかもそのことは人事院というものの組織的な性格をいわば準独立的な機関として組織上の地位を設け、それらについて非常に厳しい第三者的な立場で機能を営むようにつくられておるわけであります。そういう機能あるいは組織上の特徴のもとに人事院の仕事というものは行われておるわけでございますから、その中の重要な機能である勧告というものは、やはり政府におきましても、あるいは国会におきましても尊重していただくということがこの人事院の機能というものの意味を認めていただくことになる、端的に申しまして私どもはそういうふうに理解をいたしております。
  187. 藤井良二

    政府委員(藤井良二君) 人勧制度と仲裁制度とは労働基本権の代償措置であるという点では共通したものでございますけれども、これらの制度の対象職員の職務の公共性の程度、あるいは労働基本権制約の態様、勤務条件決定の方式についての差異、それぞれ制度の基盤が同一でないことから国会及び内閣のこれに対する関与のあり方も異なってきておるわけでございます。したがって、人事院勧告と仲裁裁定の拘束力について比較することは適当ではないのじゃないかというふうに思いますけれども、いずれにいたしましても、人事院勧告制度は公務員の労働基本権を制約する場合講じなければならない代償措置の一つでございまして、憲法上の評価が与えられているものでございますから、この制度が実効を上げるように最大限の努力をしていかなければならないというふうに考えております。
  188. 野田哲

    ○野田哲君 時間が参りましたので、最後に人事院総裁の見解を承りたいと思うのですが、一応民間の給与実態調査が終わり、人事院の作業が完了すれば官民較差の解消のための勧告を出されるということになると思うんですが、人事院が勧告をしても政府がここ二、三年来のようなやり方をやっていたのでは、これは午前中の矢田部委員の議論もありましたように、人事院の勧告制度そのものの意義が失われてくるということを私は懸念をするわけであります。そしてまた、今のここ二、三年政府がとってきた措置というのは、二十八条の情勢適応の原則からしても私はそれにかなっていない、こういうふうに思えるわけであります。  そこで、ことし内海総裁が就任されて初めて勧告をされるわけでありますけれども、ことしは単にこういう較差が生じているのでこれだけの改善措置を行うことを勧告するということにとどまらないで、完全実施を求めることについてもっと強い意思表示をされることが必要なのではないかと私は思うわけですけれども、総裁はその点についていかが考えておられるか、このことをお伺いして終わりたいと思います。
  189. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 在来も勧告を国会及び内閣に提出いたします際、その尊重と完全実施ということにつきましていろいろな形での要望事項を厳しく申し述べておるところでございますし、また勧告に際しまする総裁談話を発表いたしましてその意味合いを強く申しておるところでございますが、なお今回、この八月、多分八月初旬ごろになろうと思いますが、そういうふうな勧告に際しましては、私は私なりにその尊重と完全実施ということに関しての要望を改めて国会及び内閣に対してはいたしたいということは考えておるところでございます。
  190. 穐山篤

    ○穐山篤君 最初に、参考人の時間のこともございますので、戦後処理の取り扱いについて水上懇談会座長さんにお伺いをしたいと思います。  きょうは、本当にお忙しいところわざわざ御出席いただきまして、厚く感謝を申し上げます。  衆議院でもこの戦後処理の問題が審議をされまして、その会議録の出るのを待っていたわけですが、まだ出ていません。したがって、これから御質問する事項が、場合によりますと、衆議院と同じものをお尋ねすることになるかもしれませんが、その点はひとつお含みをいただきたいと思うんです。  さて、最初でありますが、この懇談会の主たる話題というのは、強制的にソビエトに抑留をされた者の取り扱い、在外財産の補償にかかわる諸問題、それから恩給欠格者の取り扱い、この三つが主たる話題になっている、懇談会の課題であるというふうにお伺いをしているわけですが、その点は間違いないんでしょうか。
  191. 水上達三

    参考人水上達三君) おっしゃるとおりでございます。
  192. 穐山篤

    ○穐山篤君 そうしますと、先ほども質疑が出ておりましたが、いわゆる個別的な諸問題についてはこれは懇談会の話題から外されている、言いかえてみると、それの対応とか処理というのは行政上の問題である、こういうふうに理解をされて個個の問題は外されているんですか。どうでしょうか。
  193. 水上達三

    参考人水上達三君) 申し上げるまでもなく、今度の大戦というのは国民の全般が、ほとんど全部の方々が何がしかの被害を直接間接受けられていたものと考えておるわけでございます。したがいまして、この戦後処理問題というものを一体どう考えるかという基本的な考え方を出してもらいたいというふうに私どもは仰せつかっているものと理解しております。  したがいまして、今おっしゃったような三つの問題はまず検討しなければならぬ問題でありますけれども、その関連におきましても、広げていきますというと非常に個別的な問題、その他非常な広範な問題に及んでくるわけでございます。そういうものに対して、一々限られた時間で討議するということも適当でもないし、また不可能に近い 問題だと考えておりますので、今の三つの問題を中心に、特に気の毒な点はどういう点であろうとか、あるいは何かまだ落ちていたことはあるだろうかとかいうようなことでいろいろと討議をしている、こういうことでございます。
  194. 穐山篤

    ○穐山篤君 今まで二十二回審査をされてきたという報告がありました。それからこの三つの課題一つ一つ分析をしてみますと皆性格の違う問題、おるいは次元が違う話、あるいはそれぞれ確認をするにいたしましても非常に捕捉困難な状況下にあるわけです。  そこで、懇談会としては、この三つを一つの土俵に乗せているわけですが、審査としては個別に議論をされて個別に答えを出す、それともこの三つを一つのテーブルの中に乗せて一まとめで問題の処理の考え方を出す、いろんな進め方があると思うんですけれども、今の懇談会の座長さんのお考えとしてはどういうふうに運ばれていくおつもりでしょうか。あるいは今までそういう審査はどういう経緯をたどってきたのか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  195. 水上達三

    参考人水上達三君) 三つの問題を個別にももちろん検討しなければなりませんが、また共通した背景とかいうふうなこともございますので、特にどの問題、どの問題についてどういう結論を出すかというふうなことを特に考えておるわけではありません。しかし、例えばいろんな問題の中で共通の問題もございます。例えば官民格差の問題とかいうふうなものはある程度共通した問題かと思います。それから何か信憑性のある資料があるとかないとかいうふうなこともそういうたぐいの中にあるかもしれませんが、そういうものは不可能でございます。もし、そういうものを求めるとすれば、政府が今まで既に調べたものがあればそういうものによるのが適当だと思いますけれども、そういう点についてはそれぞれ関係の政府当局からもヒアリングしております。  それから特に私が意図的にどういうふうにまとめていくかとかいうふうな、そういう余り指導的なやり方はとっておりません。各委員それぞれ大変識見の高い方々でございますので、できるだけそういう方々の御意見を率直に御遠慮なく引き出していくというふうな考え方で進めておるつもりでおります。
  196. 穐山篤

    ○穐山篤君 私の記憶によりますと、先ほども審議をされましたが、いわゆる戦後処理問題につきましては昭和四十二年に一たん政府の手において締めくくりをしたわけです。しかし、その後いろんな請願、要求というものがありました。  そこで私は、昭和五十六年の鈴木総理大臣の当時、本会議の代表質問で戦後処理の問題についてお尋ねをしました。そのときに明確に、政府としては一切戦後処理は完了した、自今そういうものには一切手をつけない、こういう答弁があったわけですが、実はその直後に、沖縄の戦闘員のうち幼児を含めるか含めないかという問題が出たわけです。私は、その沖縄の戦闘におきまして五歳、六歳、七歳の幼児が戦闘員だという、そういう主張をしておったものですから、戦後処理はまだ残っているじゃないかという意味で質問をしたわけですが、鈴木総理は、それはそういうものを含めて全部終わっています、こういうふうに片づけられた。  ところが、その直後、その幼児の戦闘員の問題につきましては、国の責任においてそれは該当するという解釈を下したわけです。言いかえてみますと、一たん締め切りました戦後処理問題が依然として続いている。そして、この懇談会は、田邊総務長官のときだと思いますが、つくられたわけです。つくられたときに、私、衆参両院に請願の出されておりますものを全部拾い上げてみましたら、何百項目と出ているわけです。国民の要求、請願がある以上、政治が耳を傾けることは当然だ、そういう意味で、同郷でもありましたので、田邊総務長官をかなり私は激励をした組なんです。そういういきさつの中で生まれたこの懇談会です。国民も非常に注目をしておりますし、当該者は相当の関心を持っているわけです。しかし、お互いに目の黒いうちにということになりますと、国民全体の合意を得なきゃならぬ、コンセンサスを得る、だめだというふうにするにしてみても、なるほどという答えが欲しい、あるいは何らかの措置をするにいたしましても、ああいう視点から眺めた問題提起ならこれはいいのではないかという合意も得られると思います。  その意味で重ねてお伺いをするわけですが、この懇談会は、三つの問題についてより積極的な対応を念頭の中に入れて審議をされているのかどうか。政治的に言いますと、政府はもはや戦後措置は終わったというふうに天下に表明しているわけです。にもかかわらず、長官の私的諮問機関として懇談会が生まれたわけです。そのよしあしについても議論があるでしょうが、私どもお伺いしたいのは、この懇談会が三つの問題についてより積極的に具体的に問題の解決に当たろう、こういう意思を常に持って審査をされているかどうか、その点いかがでしょうか。
  197. 水上達三

    参考人水上達三君) 先ほども申し上げましたが、その三つの問題というのはいろいろ陳情、要望のようなものがその方面からございますし、それから考えてみますというと、いわゆる戦後の問題もあるかと思いますので、そういう問題について白紙の立場でどういう点が戦後に該当するだろうかというふうな点は討議しておりますし、特にどの問題にというふうな、例えば三つの問題だけに限ってということもないのでございます。いろいろ、先ほど申し上げたように、広げていけば限りない問題でございますからそれは不可能でございますけれども、この三つの問題に関連する問題も相当ございますので、そういう問題については討議はしておりますが、何といいましょうか、常識的といいましょうか、そうしまして、今おっしゃられた三つの問題というものに重点を置いてやっていることは事実です。その中で特にどれに重点を置いてという、そういう考え方は特別には持っておりません。
  198. 穐山篤

    ○穐山篤君 まだ作業の途中のようですから最終的なお答えは難しいとは思いますが、仮にソビエトの強制抑留者についてだけ何とかしましょうとかということはないであろうとは思いますけれども、掌握可能な問題、それからある意味で国民の合意を得るためには理屈が必要であります。その理屈が、最小限度これならば国民も了解するであろうという一つの建前という問題もあるだろう。それから戦時中はいろんな人がいろんな場面で御苦労されたわけですが、その格差、程度の問題、それから現在実施をしております恩給とか年金とか援護法とか、あるいは原爆被爆の問題であるとか、いろんなものとのバランスの問題もあるだろう、こういうふうに思うんですが、重ねてお伺いします。  ざっくばらんに申し上げて、私なんかまだ若い方ですが、水上座長さんの場合には御年配でありまして、戦前、戦中、戦後三代そろっている国民の中で問題を処理しなければ問題は片づかないと思うんです。昭和生まれの人だけがこの問題を審議するとすれば、おのずから方向というのは決まっちゃうんです。そうでない三代にわたります各層の人が集まってこれを審議し話題にしているわけですから、何らかの答えを欲しいというのが我我の希望でありますが、それが、仄聞するところによりますと、六月になりますか七月になりますか、そういう懇談会の結論というものが見出せるんでしょうか。その点、ひとつお伺いをしておきます。
  199. 水上達三

    参考人水上達三君) 結論を出すべく努力をしておるというのが率直な感じでございます。  具体的に申し上げますと、一体、戦後処理とはどういうことなのか、これがなかなか人により考え方はいろいろだと思います。おっしゃるように、国民各層の中でも昭和生まれの方と私どものように明治生まれでいろんな場面を通ってきた者と大分考えが違うところがあるのではないかとも思います。  いずれにしましても、非常に気の毒だったことは事実で、それからまた戦後起こった、ただいま おっしゃったシベリア抑留の問題なんというのはそういうたぐいの中に入ることですが、そういう問題もあるわけでございます。  それから具体的に申しまして、恩給の欠格問題とか、在外財産処理の問題とかというふうなものに関しましては、それぞれの沿革的に見ていろんな処理がなされておることもまたある。  それから恩給なんかに関しましては、むしろ戦前のものが形の上でそのまま実質的には引き継がれているというふうな面もあるかと思いますが、しかしそうかといって官民格差の問題とか、軍人軍属の間のいろんな問題とか、そういう問題は現実にまたあることも事実です。  ですから、なかなか複雑で難しいんですが、結論は出さなければならないと思って努力しております。
  200. 穐山篤

    ○穐山篤君 ちょっと形を変えてお尋ねをするわけですが、現行法の恩給法、それからこれに準じた戦傷病者戦没者遺族等援護法がございます。それから公的年金制度が今八つあるわけです。そのほかに、独立して新しい分野としての問題を言うならば、広島、長崎の原爆被爆による補償といいますか手当金の支給、これは新しい独立した問題です。  そこで、特に恩給とか援護法とか共済組合なんかについて言えば、常に適用の可否の基準になりますのがまず第一に日本人であるかどうか、日本の国籍を持っているかどうか、三つ目には、軍と雇用関係が存在しているかどうか、大きく言えば国との間に雇用関係が成立をしているか否か、そこで軍人軍属あるいはその家族、またはそれに準ずる者、こういうふうに一つの柱があるわけです。過去の立法上のものと、この三つの問題というのをそういう角度で比較をしてみると、これまたいろいろ問題があります。ソビエト抑留者の中には、国との雇用関係があった者もあるし、全くない純粋な民間人もある。それから在外資産の補償という課題について言ってみても、国との雇用関係を持っていた人の在外財産、そうでなくまた純粋民間の人の在外財産。それから恩給欠格者の救済というのは、これは軍人としての期間が三年未満あるいは加算年にして十二年未満。ですから、これは軍との雇用関係あるいは国との雇用関係がありますから、おおむねここの部分ははっきりするわけです。  今まで現存する法律の立法の精神から考えてみて、このソビエト抑留者、在外資産の補償、恩給欠格者の処理のあり方というのは、そういう角度からも研究をされているんでしょうか。あるいはそういうものを要素に入れて何らかの答えを出さなきゃいかぬのか、あるいは全くそれを飛び越えて政治的な決断をする、こういうふうな方向に研究が進んでいるかどうか、その点はどんなものでしょうか。
  201. 水上達三

    参考人水上達三君) 政治的に研究というふうな、そういう意図で進めておりません。  いろいろおっしゃられました中で、例えばシベリア抑留者の問題は、これは私個人の感じですけれども、若干不十分といいましょうか、調査その他も含めて不十分ではないかという感じがいたします。ただし、シベリア抑留者の中でも非常に個人差がまた相当ございますし、おっしゃるように身分の違いもございますが、同じ身分の人の中でも個人差が非常にあるということを体験者から聞いておるわけでありますが、そういうものを一々どうというふうなことはとてもできませんので、そういうものをどう扱うかということは、いわゆる国民の合意を得られるような形で、またその範囲で何らかの措置を講ずる道があればというふうな感じは持っております。  それから結論はできるだけ私どもも急いで出したい。五十七年の六月発足いたしまして、二十二回の会議を重ねておりますが、その会議のほかにいろんなことをやっておりましたので、かなり精力的にやってきているつもりでおります。また、できるだけ早目にと考えておりますが、大体初めのころのめどとしましては二年ぐらいはかかるだろうということでございましたので、この夏ごろというふうなことになっております。
  202. 穐山篤

    ○穐山篤君 お約束した時間が参りましたので、お願いだけしておきますと、先ほども申し上げましたように、相当の人が関心を持っているわけです。この問題の行方いかんによりましては、今あります国内法の種々の分野にも大きな影響を持ってくると思うんです。したがいまして、十分にひとつ資料を参考にされまして、優秀な結果が生まれるように特段の御指導を心からお願い申し上げましで、水上座長さんに対する質問はこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  203. 高平公友

    委員長高平公友君) 水上参考人、御苦労さまでした。
  204. 穐山篤

    ○穐山篤君 今の話を土台にして、総務長官の方にお伺いをします。  先ほど野田委員からも相当の部分突っ込んでお伺いをしてありますので、ほとんど尽きると思いますが、結果としては財政上の問題に帰すところが多いと思いますけれども、財政上の問題を頭に入れて、これはだめとか、これがいいとかというふうにいたしますと、戦後処理問題というのは理屈を超えた話になってしまって、説得力に弱いというふうになると思うんです。力のある圧力団体が存在すれば、こういう問題は解決して、こういう問題は解決しないという印象を与えたのではうまくないと思う。戦後処理の最終的なチャンスではないかなと私は思うわけです。私はよく言うんですけれども、私より相当若い議員の方に聞いてみましても、旧満蒙開拓青少年義勇軍というのは何でしょうかと私が質問をしても、答えられない議員さんが山ほどいるわけです。ですから、それほど風化しつつあるわけです。そういうことを考えてみますと、銭金の問題もあります、それは重要な因子でありますが、戦後処理の問題に当たる姿勢としては、銭金の問題でなくて、問題の性格を十分に把握して対応すべきだ、こう考えますけれども、どんなものでしょうか。
  205. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) 白紙で考えさしていただくと、やはりまず合理性があるかとか、あるいは公平という観点からどうだとか、当時の被害状況が特別のものであるかどうか。といいますのは、国民それぞれ被害を受けておるわけでございますから、そういった意味で何かの特殊性、特別性ということをやはり一つの柱にせざるを得ないのではないか、私自身なりにはそういうふうに考えます、委員の方々がどういうふうにお考えになりますかは別といたしまして。いろんな問題が頭に浮かびます。それらを基礎にしながら、お話もございましたが、だからといって財政の問題を全く考えなくていいかというとそうはならない、どこかでやはりこれは考えざるを得ない重要な因子であろうと思います。ともかく現段階の作業といたしましては、理屈づけ、合理性の有無あるいは公平の問題、お気の毒な程度の問題、そういったようなことがまず作業の初めとして取り上げられるべきではないかというふうに思います。
  206. 穐山篤

    ○穐山篤君 これは答申が出てそれを総理府総務長官が受けるか、官房長官が受けるか、時期によって違いがあるんでしょうが、それが改めて出た段階でやっぱり国民全体のコンセンサスが得られるような解決を図ってほしい、また我々もそのための勉強をしたいということを申し上げておきたいと思います。  さてそこで、質問の通告が、水上参考人の時間のことがありまして、一番最後に通告してあったものを一番前に持ってきたんですが、それとの関係で似たような問題を二つ問題にしたいと思うんです。  実は、衆議院で恩給法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議、その一番最後に、「旧満州国軍内の日本人軍官の処遇問題について検討すること。」、こういう附帯決議がついていました。これは多分こういうものだろうと思うんです。たくさん出ておりますけれども、せっかくでありますので、紹介議員堀江正夫先生の第八八七号、昭和五十八年十月二十一日受理、これに類するものを衆参両院で各党各派で取り上げて、これが受理されて審議をした末、衆議院においてもこれが附帯決 議で上げられた。多分その資料は、「別冊 満洲国軍内の日系軍官の応召確認の件」という文書が一つのよりどころであるし、それからもう一つのよりどころは、総理府から答弁が行われておりますこれらのものも参考にしながら審議をした結果、こういうふうに附帯決議が入ったと思うんです。私は、そのことを否定はしませんが、もう少し深く掘り下げてみる必要があると思うんです。  そこで、多少一方的な意見になるかと思いますが、しばらく聞いておいていただきたいと思う。  昭和七年九月十五日、満州国の元号でいきますと大同元年九月十五日、日本と満州国との間に議定書が成立をしているわけです。それに基づいて満州国と関東軍との間にいろんな文書の交換が行われた、交換公文がなされたのは御存じだと思うんです。私は、この附帯決議にかかわるもので少し調べてみました。  昭和十二年の十一月三十日、満州回の元号でいきますと康徳四年十一月三十日に、関東軍司令官、特命全権大使植田謙吉、満州旧総理大臣張景恵、この代表者によって合意文書が調印され、交換公文が発表されました。たくさん膨大なものがあったんです。  その中で、一つは満州国内に駐屯する日本国軍の軍事関係法規適用に関する件というのがあるわけです。これは治外法権撤廃に伴う具体的な軍事関係のものであります。  それから二つ目は、日本国軍の軍事関係法規適用に伴う日本国軍事警察機関の満州国の法権に服する者に対する権限行使等に関する件という交換公文が結ばれました。  それからその翌年でありますが、昭和十三年、満州国の元号でいきますと康徳五年二月二十三日、満州国の治安部から治安部会第八号という軍機保護法の施行規則というものが出されているわけです。これを理解するのには多少説明が必要であろうと思うんです。  この「別冊 応召確認の件」によりますと、こういう文書になっています。「以上各項の理由により日系軍官は昭和二十年八月九日の関東軍の対ソ全面開戦の命令下達と同時に召集せられたものと認むべきである」、こう書いてあるんです。関東軍が発したものと同じだ、これが「応召確認の件」なんです。  ところが、私が先ほど具体的に交換公文を申し上げましたが、日満の議定書が結ばれて、満州国軍と関東軍との間には治外法権撤廃に関するものが議定書で結ばれたわけです。原則満州国人が満州国軍、原則日本人が関東軍、それで部隊の編制をした。特に、昭和十三年に出されました軍機保護法の施行規則というのは、一番危険な地域第一種、その次が第二種、第三種というふうに地域を決めて、関東軍と満州国軍の配置がみんな決められているわけなんです。  昭和十六年十二月八日の前後から、関東軍は南にどんどん進駐をしているわけです。関東軍が防衛守備に立っていたところに満州国軍が入っているんです。関東軍がほとんどいなくなったから満州国軍が第一種の最高の危険地域にいる。その中に、私が先ほど原則満州国人と言いましたのは、日本人で満州国軍隊に入っていた人もかなりいるわけです。その第一種地域に、とにかく言葉が適当かどうかわかりませんけれども、匪賊とかなんとか防衛上いろんなことがあったわけですが、関東軍の戦力低下補充ということを考えて、満蒙開拓青少年義勇軍とそれから一般の義勇隊がそこにかわりとして配置をされている。  時間がありませんから、また別の機会に説明をしますけれども、私が申し上げたいと思いますのは、少なくとも昭和十二年からこの請願にあるような問題は存在をしていたということになるわけです。その点をお間違えのないようにしていただきたい。  「昭和二十年八月九日」、こういうふうに書いてありますけれども、私は昭和十二年から問題の提起をしているわけです。その証拠には、昭和五十三年に私はこの問題を取り上げたんです。満蒙開拓青少年義勇隊、通称義勇軍と言っておりました。このときに、軍との雇用関係がありやなしやということが大いに議論になって、当時の厚生大臣は、国との雇用関係、軍との使用関係はありませんでしたと。一年間論争した結果、私が出しました資料に基づいたかどうかわかりませんけれども、結果として私の主張が全面的に認められて、援護法の中で適用がされた、こういういきさつが過去に残っているわけです。  そこで、せっかく請願が出て、衆議院で検討しよう、こうなったことは非常に喜ばしいことなんですが、私の研究とこの堀江先生の研究では多少時間的に物の見方、現実の場面、背景になります資料で違いがある。ですから、私はそのことをあえて申し上げませんけれども、ぜひそういう意味でもう少し期間をさかのぼって検討をしてもらえるかどうか、検討する場合に何を根拠に検討されるか、そういう問題について私は若干今触れたつもりでありますが、その点は恩給局になりましょうか、厚生省になりましょうか、どこの主管庁でも結構であります。どういうふうに認識をされているか、ひとつお伺いしたいと思うんです。
  207. 和田善一

    政府委員和田善一君) 先生指摘の問題は、恩給法上の問題でもありますし、また厚生省所管の援護法の問題にもまたがっていると思います。したがいまして、私からお答えできるのは恩給関係でございますが、恩給関係におきましても御陳情あるいは請願の採択あるいは附帯決議等ございまして、私どもとしてもいろいろ検討しておるところでございますが、恩給制度におきましては、先生先ほど御指摘のように、日本人で満州国軍にいた者もかなりいる。そういう日本軍人が退役いたしまして、満州国軍を指導するあるいは援助するということが必要だという要請に基づきまして満州国軍人となって、そして終戦までずっとそのままおられまして、終戦という図らざる事態によりまして、そこで満州国軍の身分を失ってしまったというような方につきましては、恩給法上も、前に日本軍人があたっという恩給法上の経歴がありますから、それにその後の満州国軍の期間を通算して恩給法の資格期間として見るというのが適当であるというふうに考えまして、その点は恩給法上既に措置済みでございます。  なお、満州国軍が関東軍と雇用関係があったかというような問題につきましては、これは軍人の主務官庁でございます厚生省におきまして、日本国軍として召集したのかあるいは召集しなかったのかということは御検討いただきまして、日本国軍として召集されたというような場合につきましては恩給法においても日本軍人と同じ、要するに召集されたわけですから、日本軍人でございますからそのように取り扱っているというのが現状でございます。
  208. 穐山篤

    ○穐山篤君 少し整理して申し上げますと、日本軍人あるいは軍属で関東軍に所属している、その方々は軍人あるいは軍属という取り扱いによって恩給法も共済組合法も原則的に適用になり通算をされる。ところが、先ほども申し上げましたように、昭和十二年十一月三十日以降からは日本国軍関東軍と満州国軍が、力量の差はともかくとしまして、立場上はお互い対等、こういうことになって、その満州国軍の中に日本人の軍人、関東軍の一部軍人、そのほか軍属、それから私が先ほど引用しましたけれども、開拓団その他という方々が満州国軍の一員またはそれに準じた形で守備隊に入っていたわけです。その場合に、日本人で日本の国籍を持っておって軍人さんであれば、生存をして戻ってきて公務員に復職した場合には恩給法の適用がある。それから途中で亡くなった、あるいは戦傷病を受けたという場合にもこれまた適用はあるわけです、現行法では。ところが、終戦後、国内に戻って公務員に復職できなかった人、公務員でかつては行ったのだけれども復職できなかった人、それから純粋な民間人になった人、そういう方々につきましては恩給法上の適用は現行法ではないんです。その点は間違いないと思いますが、いかがですか。
  209. 和田善一

    政府委員和田善一君) 先ほど申し上げましたように、日本軍人であった方が退役されまして 満州国軍隊を援助するあるいは指導するというようなことで満州国軍人になられて、しかも終戦までおられて、図らざる終戦ということでそこで身分を失ったという方々につきましては、その資格権は恩給法に見ているということでございます。それ以後公務員になられた、あるいは民間に行かれた、それぞれの進路によりましてまた年金等の扱いもそれぞれ違うと思いますが、恩給法上は今申し上げたようなことでございます。
  210. 穐山篤

    ○穐山篤君 現行法で言う解釈について、私の解釈と皆さん方の解釈は一致していると思うんです。  そこで、私はあえてさかのぼって研究してほしいと言いましたのは、この「応召確認の件」でいきますと、一九四五年のソ連参戦のときだけに限られているわけじゃありませんけれども、要約をされているわけです。実際はその以前から同じ状況にあったということをまず第一に認識してほしいということです。どう直すかという話はこれからの問題です。その点はどうなんでしょうか。昭和十六年の十二月八日前後をして旧満州の関東軍の配置も満州国軍の配置もかなり態様が変わっているんです。全面的に変わったと言ってみても間違いないと思うんです。そういう現実を十分に熟知していただきませんと、問題の解決を図ろうとしましても障害がたくさん出てくる。そういう意味で、私はまず第一にこの認識の問題をお尋ねしているわけです。
  211. 和田善一

    政府委員和田善一君) この問題は、恩給上の問題あるいは援護法上の問題等いろいろあると思いますが、恩給法上の問題につきましては、ただいまも御説明しましたとおり、昭和十六年という年を特に取り上げてその前後で処遇を異にしているということはございません。その年にかかわらず、先ほど申し上げましたようなことで、満州国軍人に指導あるいは援助等の要請に基づいていなかったかどうかという点で恩給法上の処遇を考えている次第でございます。
  212. 穐山篤

    ○穐山篤君 きょうの場面でこれをどうしてくれと言ってみてもそれは即答ができないと思いますから、これは恩給法、援護法、それから共済組合、さらには懇談会で議論をされている問題との兼ね合いで解決を図らなければ戦後処理が終わらないという問題意識をぜひ持ってほしいと思うんですが、その点いかがですか。
  213. 和田善一

    政府委員和田善一君) たびたびの御陳情あるいは請願御採択あるいは附帯決議等ございますので、私どもも検討を十分にいたしておる次第でございます。
  214. 穐山篤

    ○穐山篤君 それから先ほど野田委員からも、昭和四十二年でしたか、山中長官のときに、もうこれで終わりでございます、そのために最終的な断を下すための勉強をして一応の答えを出した、こうなってはいますけれども昭和四十二年以降、微細なことと言えば語弊がありますけれども昭和四十八年に外国特殊機関の職員期間通算条件の昭和四十八年度緩和措置、それから昭和四十九年にも同様に緩和措置が出ています。それから昭和五十一年に同様に緩和措置が追加指定がなされています。それから五十三年に、これは援護法でありますけれども、適用の解釈の拡大、こういうものがあるわけであります。  したがって、戦後処理懇談会で大きな三つの問題は審議してもらう、これはそれで私ども十分理解をしますが、その他の個別的な戦後処理の問題については、一たん昭和四十二年に締め切りましたとはいえ、その後の調べで雇用関係が明らかになる、あるいは国との使用関係が明瞭になる、こういうふうな場面で追加、追加が行われているわけです。そういう意味では、ほかに、個々の問題ではありますけれども、相当の請願、陳情が出ている。この問題について、きょうは総括的でいいんですが、恩給局、厚生省両方から、問題意識としては残っている、こういうふうに答弁してもらえるかどうか。いかがでしょう。
  215. 和田善一

    政府委員和田善一君) 附帯決議あるいは請願の採択等ありまして、請願につきましては検討いたしまして政府としての御回答を申し上げましたが、なお附帯決議その他御陳情等もありますので、私どもといたしましても、この問題をこれっきりで後はやめてしまうということではなく、検討は続けていきたいと思います。
  216. 高平公友

    委員長高平公友君) 厚生省、来ていますか。
  217. 穐山篤

    ○穐山篤君 厚生省からは、来ておらないそうです。  きのう通告はしておりましたが、来ておらないそうですが、これは今答弁がありましたように、国民の請願の権利に基づいていろんな請願があって、なるほどと思うやつは委員会で取り上げる、これは当然のことだろう。その気持ちをそのまま今後も生かして、できるだけ早く個々の問題の戦後処理もこれは解決をしなきゃいかぬ、こういうふうに私は考えます。  次に、旧日赤の看護婦さん、あるいは従軍看護婦さん、それから旧満州赤十字社に勤務した日赤の看護婦さんなどの問題であります。これはもう既に慰労金ということで該当者本人、五十五歳以上、一定の条件をつけて五十四年、それから引き続いて陸海軍に慰労金を給付するということになったわけです。これは長年の懸案事項が解決されたということになるわけですが、この慰労給付金が発足して以来、日赤及び従軍看護婦に分けて適用者はどのくらいだったんでしょうか。あるいは支給金額、これはどんな状況になっているんでしょうか。その点お伺いします。
  218. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) それでは、五十四年度の旧日赤救護看護婦に対する措置から申し上げますと、五十四年度に支給をいたしました人員が千四十四名、それから金額にしますと八千百九十一万三千円。それから五十五年度もやはり旧日赤の救護看護婦でございますが、人員にいたしまして千八十九人、金額にしまして一億三千二十二万三千円。それから五十六年度になりますと、旧日赤のほかに旧陸海軍が加わっておりますので、合計の金額でよろしゅうございますか。
  219. 穐山篤

    ○穐山篤君 はい。
  220. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 合計の人員が二千五十九名、金額にいたしまして二億一千百五十九万円。それから五十七年度でございますが、人員が二千百五十三人、金額にいたしまして二億六千七百三十一万一千円。五十八年度は人員で二千二百六十六人、金額にいたしまして二億九千四百六十五万九千円。五十九年度は予算でございますが、人員で二千二百七十五人、金額にいたしまして二億七千九百三十六万六千円。こういう状態でございます。
  221. 穐山篤

    ○穐山篤君 この支給対象範囲に、たしか台湾と朝鮮は含まれていなかったですね。その点いかがですか。
  222. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 支給の資格要件が戦地、事変地という限定がございますので、朝鮮、台湾はこの対象になっていない。ただ、北朝鮮の場合、例のソ連の参戦いたしました時期、二十年の八月九日、それから二十年の九月の何日でしたか、その期間は一応対象になっているわけでございます。
  223. 穐山篤

    ○穐山篤君 今これは慰労金という独立した制度になっているわけですが、創設をされました当時もこのあり方の問題について議論がされました。一時的な見舞い金という性格にするのか、あるいは長年御苦労でありましたという性格にするのか、いろんな議論があったんですが、とりあえず慰労金。これは将来にわたってこの制度というのをこのままで残していくのか、あるいは別のものと合併をするのか、あるいはその種似たようなものはまた新たに一つのものに集合するのか、いずれこれは研究課題だというふうに私は申し上げておったわけですが、そのことについての考え方はどうでしょう。
  224. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 確かに、この給付制度が発足するとき、いろいろ議論がございました。ただ、私どもといたしましては、この制度が設けられた趣旨、そういうことから考えまして、現在の措置は続けてまいりたい、かように考えております。
  225. 穐山篤

    ○穐山篤君 ということは、慰労金という単独措 置ですか、こういう格好で残して継続をしていくという考え方ですか。
  226. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) おっしゃる考えでやってまいりたいと考えております。
  227. 穐山篤

    ○穐山篤君 それから、当初十万円から三十万円以内、こういうふうになっているわけですが、これは慰労金の性格によって、最低保障といいますか、目安を決める基準になると思うんですけれども、十万円から三十万円というのはこの四、五年凍結をしたままです。恩給法でいきましても、昭和五十五年、それから五十七年、今回を含めて、一例でありますが、ベアについても改善が行われる、最低保障の改定についても同様に行われる、その金額の当否はまた議論するにいたしましても、改正のチャンスがあった。この慰労金のスライドの問題についても、当然当該者も期待をしておりますし、また我々もスライドがあるだろう、こういうふうにも見ておったんですが、そのままに据え置いております根拠というのは何でしょうか。
  228. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) この旧日赤救護看護婦並びに旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金につきましては、先生御存じのとおりに、女性の身でありながら戦地、事変地で非常に御苦労なさった、その御苦労に報いるために特別にとられた措置であるわけでございます。そういう意味で慰労給付金という名前も使用されているわけでございます。そういった意味におきましては、恩給のように所得の保障を図るとか、またほかの年金のように生活の保障を図るという性格のものではないわけでございます。そういった意味で所得のスライドあるいは物価スライド、そういった形の増額は非常に慰労給付金としては難しい問題ではないか、かように考えているわけでございます。しかし、今後の取り扱いにつきましては、こういう性格ではございますが、社会経済の変動、そういったものを見つつ引き続き検討させていただきたい、かように考えております。
  229. 穐山篤

    ○穐山篤君 創設をしたときにも、物価の変動など特殊な状況が生じた場合には検討します、こうなっているんです。この五年間で、物価についても上がりました、それからその他類似のものについての最低保障スライドも行われている、条件としては私は熟していると思うんです。皆さん方は、これを増額するとまた千波万波を別の意味で呼ぶということを考えるから上げられない、こう言っているんでしょうが、もうぼつぼつ研究の結果こうしたいという目安がついてもよさそうなものだと思うんですけれども、その点はどうなんでしよう。
  230. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 確かに、先生今おっしゃいましたように、五十五年のときにも当時の政府委員管理室長が、社会経済の変化、こういったものを見ながらということを御答弁申し上げております。私ども、その後、そういった物価の変動あるいはその他所得の変化、こういったものを見つつ、またそういった慰労給付金の性格、こういったものを考え合わせながら検討を続けているということでございますので、その辺御理解を願いたいと思う次第でございます。
  231. 穐山篤

    ○穐山篤君 私は、先ほど、随分古い証文でありますけれども、日満議定書であるとか、そのほかの資料を申し上げました。旧日赤看護婦にしろ、旧陸海軍従軍看護婦さんにいたしましても、国との使用関係、軍との使用関係を事実上調べていきますと、これは軍属と全く同じ扱いを受けているんです。もちろん、戦闘地域とそうでないところの地域では多少の違いがありますけれども、事実関係を調べていきますと軍属に倣ってもほとんど遜色がないという具体的な実情もあるわけです。そのことはきょう多く申し上げるつもりはありませんけれども、そのことを十分にひとつ認識してもらいたい。  そこで、当然問題になりますのは、御本人が七十何歳で死亡した場合にはどうするのだろう。それからこの従軍看護婦さんの中には、率直に申し上げまして、だんなさんのいないという人も数の中にはあるんです。そうかと思うと家族がいる人もあるわけです。本人の死亡した場合に、ほかの制度では弔慰金というのが出ている。また、ほかの制度では遺族に対する給付金とか、それに類似した支給の方法もあるわけです。これが対象が本人のみというところに原則が立てられているためにそうなっているわけですが、そのところをもう少し弾力的に考える考え方はないんでしょうか。どうでしょう。
  232. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 確かに、先生指摘のように、この慰労給付金は苦労した本人自身に対して支給をするという定めになっているわけでございます。これは、特に慰労給付金が支給されることになりました一つのあれといたしまして、御本人が女性の身でありながら戦地で非常に御苦労された、その御苦労に報いるためにということでスタートをした制度でございますので、苦労された御本人自身に対して慰労給付金が支給をされるということが建前ということでございますので、先生おっしゃいましたように、その遺族に対して何らかの措置を及ぼすということは現在考えていないということでございます。
  233. 穐山篤

    ○穐山篤君 女の身でありながらというのは昔の人はよく使ったんですが、最近そんな言葉は余りはやらないんです。  時間がありませんからこれ以上申し上げませんが、創設をした当時の議論が依然として今日も続いているわけです。何らかの措置もしなければならぬ政治的な環境にあることも間違いないんです。ですから、日赤の関係当事者、その他の方々の意見も十分にひとつ聴取をしてもらいまして、ほうりっ放しにしておくという手はないと思うので、再検討を特に要望しておきたいと思うんですが、どうでしょう。
  234. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 引き続き検討させていただきたい、かように考えます。
  235. 穐山篤

    ○穐山篤君 それでは、恩給の方に戻ります。  一つは、恩給についての臨調の答申というものが幾つかありました。それからそれを受けまして、行革の大綱というものも政府は決めたわけです。それによりますと、「恩給については、当面抑制を図るとともに、年金制度改正とのバランスを考慮し、必要な検討を行う。」、こうなっているわけです。これを過去にさかのぼって見ますと、昨年はごく限られた部分で恩給法の手直しが行われた。今回は、去年が相当抑制をされているのであるから、ことしは仮定俸給表の改定あるいはスライド、最低保障などなど、幾つかのことが法律案になって提出をされているわけです。個々の問題は別にしまして、総理府としては、行革大綱に、「年金制度改正とのバランスを考慮し、」、こうなっておりますのは、その給付の水準をバランスをとれというふうに理解をしているのか、あるいは最低保障の分野について均衡をとれということを指しているのか、あるいは給付の支給の体系についてバランスがとれるようにしろと言われているのか、その辺の理解はどうしているんですか。まず、そこからお伺いします。
  236. 和田善一

    政府委員和田善一君) 恩給と申しますものは、公的年金とはその本質を異にいたします。恩給というものは、公務員が相当年限忠実に勤務して退職した場合とか、公務による傷病のために退職した場合、あるいは公務のために死亡した場合におきまして、国がその者との特殊な関係に基づきまして使用者として給付するのでございますから、一定の拠出金に応じまして保険数理の原則で支払われる共済年金とか厚生年金等の他の公的年金とは基本的な性格とか制度の沿革において異なる面があるわけでございます。しかし、国民皆年金体制のもとで恩給年金としてその一翼を担うということは事実でございますし、またその果たしている機能という点から見れば他の公的年金と類似する面もありますので、水準あるいは体系というような具体的なある面をということまで限定して考えているわけではございませんが、総合的に見て著しく他の公的年金と均衡を失することのないよう配慮しなければならないという程度の趣旨であるというふうに理解しております。
  237. 穐山篤

    ○穐山篤君 厚生省、課長来ていますね。——今 の点について、この恩給というのは年金制度改正とのバランスを考えて再検討しなさい、こう書いてあったものをどういうふうに厚生省年金課としては受けとめているんですか。
  238. 山口剛彦

    説明員(山口剛彦君) 年金制度恩給との関係につきましては御指摘のような御提言があるわけでございまして、私どもそれを受けまして、年金制度の改革については「公的年金制度の改革について」ということで政府としての方針を一応決めておりますが、その中では恩給制度については直接的には言及をいたしておりません。したがいまして、私どもの立場といたしましては、公的年金としての今回基礎年金を導入するというような点も含めました大改革を五十九年にやりまして、六十年にその趣旨に沿って共済年金についての改革をしていただく、六十一年に同時に実施をする、七十年にはさらに一元化に向けて努力をしていくということでございますが、その関連で、当然、厚生年金、国民年金との関連で共済年金についても制度改革をしていただくということになっておりますので、その共済年金と最も密接な関係がございます恩給制度につきましても、今御説明がございましたような特殊性というのはあるだろうと思いますけれども、その特殊性も踏まえた上で恩給制度の問題として考えていただけるのではないかというふうに私どもは考えております。
  239. 穐山篤

    ○穐山篤君 大蔵省は、国家公務員等共済組合を新たに所管をことしの四月から総合的にやるわけですが、この恩給について年金制度とのバランスを十分に考えて検討しなさいというものを読んで、どういうふうにお感じになりましたか。共済制度を担当している大蔵省としての考え方。
  240. 小村武

    説明員(小村武君) 私、厚生担当主計官でございまして、共済担当としての立場で御答弁ということにはならないかと思いますが、ただいま恩給局長からも御説明がありましたように、恩給制度のその意義、沿革等につきましては、保険数理で経理しております他の年金制度との性格とは異なることは私どもも十分認識しておるわけでございます。ただ、恩給につきましても、戦前の制度そのままということではなしに、昨今、社会保障的な要素も加わってまいりました。こういった観点から再検討するものがないだろうかというような御指摘であろうと認識しております。
  241. 穐山篤

    ○穐山篤君 今回の提案でもそうでありますし、それからまだ保留審議になっております共済組合法の今年度の改定についても、例えば恩給法の改定に倣い、あるいは準じて、これは提案理由の一つになるわけです。それから具体的な項目の中にいきますと、公務関係年金の何とか何とかの最低保障額に照らし、あるいはそれに準じ、こうなるわけです。  午前中から審議されておりますように、恩給を引き上げるにも、あるいは年金を改定するにいたしましても、法律の条項は違いますが、法律の文章は全く同じものを根拠規定にしているわけです。にもかかわらず、片方は、昔は違いました、恩給につきましては俸給の一%を出資しておりましたけれども、今は原則全額国庫負担、片方の共済あるいは保険法について言うならば、これは保険の原則、相互扶助の原則に基づいて、労使の割合が多少違いはありますけれども、お金を出し合って世代間の相互扶助を組む、こういう性格が全く違うわけです。しかし、ところどころでラップをするわけです。  そういうことを一応頭に入れながらもう一遍お伺いするわけですが、検討の結果金額が同じになったというのは私はあってもいいと思いますが、年金制度というのと恩給というのは性格的に全く別のものでしょう。厚生省の立場からまずその建前のところをはっきりしてもらいたい。厚生省が国民年金、厚生年金、船員保険法を一緒にして二階屋あるいは将来三階建ての年金をつくるという思想と、恩給の方の思想とは全く違うでしょう。本来、制度的には区分けをする、こういうのが私は建前だろうと思うんですが、その点どうでしょう。もう一遍答弁をしてください。
  242. 山口剛彦

    説明員(山口剛彦君) 年金の水準その他を考えますときに、私どもも、先生指摘のように、先ほど恩給制度の特色ということで御説明もございましたけれども、社会保険を原則にいたしまして世代の連帯の中で所得保障をしていこうという年金制度恩給制度に基本的な差異がございますので、恩給制度がどうこうということで年金制度の建前なり仕組みなりが変わってくる、水準が変わってくるというようなことはなかろうと思います。  ただ、実際問題といたしまして、スライドの件について申し上げますと、年金制度についても物価スライド制というのがございます。それは物価が五%上がったときに年金額もそれに応じて引き上げるという法律的な義務があるわけでございますけれども、ことしのように物価が五%上がらなかったときに年金の物価スライドをどうするかという政策判断を要する問題がございます。そのような判断をいたしますときに、例えば恩給が年金額を上げると共済も上げるという判断がそれぞれされましたときに、厚生年金、国民年金受給者だけ我慢をしろというようなことが果たして納得されるかというような問題を判断いたしますときには、恩給の額改定のあり方等も当然総合勘案の中の一つの判断材料にさせていただいて年金の方の政策判断をするというようなことはございますけれども、基本的には冒頭申し上げたような考え方でございます。
  243. 穐山篤

    ○穐山篤君 現実的には、共済組合年金の裏側には文官恩給というものがくっついているわけです。文官恩給の裏側には軍人恩給というものが現実的にはくっついている。もっとどぎつく言うと、毎年度予算編成をするときに、恩給についての予算措置が決まらなければ、ざっくばらんに言いますと、その他の社会保障あるいは共済なんかについての最終的な予算確定ができないという厄介な政治的な問題を持っているということは私ども承知をするわけです。  いろいろそういうことを承知をしながら、さて行革大綱で、年金制度改正とのバランスを考えて恩給制度について研究しろ、こうなっているわけです。この年金制度の改正というのは、一つは国民年金、厚生年金、船員保険の二階屋の改正の問題です。それからそれに付随をして国家公務員等共済組合法というものがこれにラップをしているわけです。ですから、それを横目で見ながらバランスを考えなさいと言われている恩給局としては、来年なり昭和六十一年度にはいや応なしに見直しをしなければならぬ時期が到来をするわけです。  今回行うのは、その意味で言うと現行制度の中の最終年度に私は当たるのじゃないかと思うんです。その意味で、この年金制度との改正のバランスをどういうふうに考慮をしていくのか。私は、先ほど言いました。支給内容ということでいくのか、あるいは給付水準ということでいくのか、あるいは体系上の問題でいくのか、いろんなことが含まれていると思います。主としてこの行革大綱で言っております「バランス」というのは、何のことを指されて、恩給局はどういう今勉強をしているのか、そのことをはっきりしてほしい。
  244. 和田善一

    政府委員和田善一君) 恩給制度と公的年金制度との性格が違うということは、先ほど申し上げました。  さらに、その点をもうちょっと敷衍いたしまして今のことにお答えしたいと思うわけでございますが、恩給制度は、その対象者が新たに生じてくるということはない、すべて既裁定、権利の裁定された人たちばかりでありまして、ほかの年金制度のように新しい受給者が今後もどんどん生まれてくるという制度ではないというところが、考えるときに全く違う点が一つあるわけでございます。さらに、対象者の大部分が旧軍人という特殊な職務に服した方々やその御遺族で極めて高齢であるというようなこと、それで一定の拠出金に基づく保険数理の原則によって運営される年金とは違う特殊性があるという、そういうことをまず前提としなければならぬと思います。  したがいまして、こういう基本的な点を前提と しながら、他の年金制度とのバランスをとるためにどういう検討をするか。これにっきましては、ただいまのところ、まだ具体的にこの点をこう検討するというお答えをする段階には達しておりません。恩給制度とも密接な関連があります国家公務員等共済組合制度についても今具体的な改革案が検討されているところでございますので、その動向等も見きわめながら、基本的な制度の相違を前提としながら、バランスをとるために必要な検討を行っていきたい、かように考えている次第でございます。
  245. 穐山篤

    ○穐山篤君 明確な答弁がいただけないのは非常に残念ですけれども、いずれ、ことし、末年、再来年を通して八つの公的年金制度のあり方が少しずつ固まっていくわけです。したがって、年金につきましても私は個人的に別の意見を持っておりますけれども恩給局の考え方が明らかにならないというならば、きょうはやむを得ないと思います。また、いずれ別のチャンスにお伺いをしたいと思います。  本日、まだ仮定俸給、改定日の問題などありますが、時間が来ました。ただ、我が党は、恩給法の改定の時期、それから共済組合法の改定の時期というものについて乖離があることについては甚だ不満であります。過去の歴史を見ましても、ことしは三月、あるいはその前は五月、その前は四月というふうにいろいろ変遷があるわけです。これからは、当然なことでありますが、少なくとも今回実施をします三月が後退をするようなことはなかろう、こういうふうに期待をしているわけですが、その点はどうでしょう。
  246. 和田善一

    政府委員和田善一君) 今回、恩給ベースアップの時期を特に前年度、要するにことしの三月までさかのぼったという理由は、前年に恩給ベースアップというものがなかった。恩給ベースアップがなかった理由は、またその前年、公務員給与の改定がなかったから恩給ベースアップがなかったわけでございますが、現職公務員の方々は一年間丸々ベースアップなしで五十七年度が過ぎた。しかし、恩給受給者につきまして十二カ月丸々何もないというのもいかがかということでございますので、本年限りの特例的な措置といたしまして、三月まで例外的に前年度までにさかのぼったという、本年限りの特例的な措置であるというふうに御了解いただきたいと思います。
  247. 板垣正

    ○板垣正君 私は、まず恩給の本質、またその将来についてお伺いいたしたいと思います。  恩給局に伺いますが、けさほど恩給受給者全体についてのある程度見通しのお話がございました。もし、おわかりでしたならば、現在の公務扶助料の受給者、これがあと五年、十年、十五年ぐらいの刻みで、人員だけで結構ですが、どういう見通しを持っておられますか。
  248. 和田善一

    政府委員和田善一君) お答え申し上げます。  公務扶助料の推計について申し上げますと、昭和五十九年度は五十二万九千人が対象でございますが、これが昭和七十五年をとってみますと十三万七千人という推計になっております。
  249. 板垣正

    ○板垣正君 十数年で、現在の恩給受給者、いわゆる旧軍人受給者が一番中心でございますが、これは半分になる。特に、今お話のありました戦没者の遺族、これは四分の一です。十数年で四分の一になってしまう。この計算でありますから、恐らく毎年三万人ないし四万人が失権をしておる。これが現在の恩給法の大宗をなす旧軍人それから遺族の実態であると思うんです。  そこで、恩給法が戦後果たしてきた役割は非常に大きなものがあったと思うわけであります。御承知のとおり、終戦後は占領政策によってこれが停止を命ぜられた。昭和二十八年に復活するまで、一切、遺族に対しても旧軍人に対しても処遇が停止をされた。これはまさに占領政策、占領軍のいわば懲罰的な措置であった。幸いにして、昭和二十七年に援護法ができ、二十八年に恩給法が復活をして現在までに至っておるわけであります。  恩給法は、現在、大正十二年に改正されて以来まさに六十年、淵源をさかのぼればまさに百年の歴史をけみしつつ今日まで来ておる。この根底を貫いております恩給法の特殊性と申しますか、これは恩給法第一条にうたわれておりますように、「公務員及其遺族ハ本法ノ定ムル所ニ依リ恩給ヲ受タルノ権利ヲ有ス」、受ける方は権利を有する、つまり国家は義務を有する、責任を有する。恩給は、公務員であった者及びその遺族に対し厳格な条件によって給付する国家補償である。これはいろいろ厳しい条件がございますが、この本質は国家補償である。ここに恩給の本質がある。したがって、今伺ったように、今日まで大きな役割を果たしてまいりましたけれども、年々受給者も減っていく。同時にまた、戦後処理問題もいまだ解決されておらない。そういう中における恩給の役割というものは、今後限られた期間でありますけれども、極めて重大なものがあると思うわけであります。  そういう点で恩給に対する基本的な、先ほどもお話がございましたが、他の公的年金とはおのずから別個な、独自な、実質的には国家補償を柱とする恩給法のあり方というものは今後においても何ら変わりはない、一貫して行われていく、こういう点について総務長官いかがでしょうか。御確認いただけますか。
  250. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) お話のとおり、恩給法の淵源をさかのぼりますと、文官は無定量の仕事をするという義務を負っていました。今の公務員の制度とは違う。軍人についてはもとより違います。そういったようなことで恩給受給権というものは権利である、国家はそれに対して義務を負っているという基本的な制度でございますから、今の各種の年金制度とは本質的に違うということは先生おっしゃるとおりだと思います。
  251. 板垣正

    ○板垣正君 そういうことで、いわゆる戦後処理問題、これはきょうずっとお話がありましたように、懇談会でも検討されております。私ども重大な関心を持っておりますけれども、いわゆる個別の問題についてどうも行政の立場が少し消極的ではないか、もっと積極的に取り組んで解決できるものはどんどん処理をしていく、こういう姿勢が切に望まれるわけであります。恩給法の今申し上げたような趣旨からも、そして今後の運営からいっても、今までの恩給法の本旨が占領政策等の影響もあってゆがめられてきたものが是正されつつある、加算の問題とか、いろいろ復活しつつあるという問題があります。それと同時に、もう一つは、戦後の特殊性によって抑留加算がつくとか、遺族加算がつくとか、あるいは最低保障制度が設けられるとか、これは今までの恩給法になかったわけでありますけれども、ある面はいわゆる社会保障的な手法を取り入れてはおるけれども、あくまでこれは本質においては国家補償を実現していく、こういう立場においてもっと積極的に取り組んでいただきたい。  そこで、具体的に申し上げたいわけであります。これは、先ほどもお話がございました。昨年の本委員会で全会一致をもって採択された問題であります。一つは、満州同軍に服務した旧軍人等の処遇の問題であります。もう一つは、昭和十六年以降、中国における戦地指定の問題。後から具体的に申し上げます。  満州国に勤務をした旧軍人軍属の問題については、先ほどもお話がございましたが、このポイントは、実質的には日本軍人軍属と全く同様に勤務をし、同様に関東軍司令官の指揮のもとに戦闘に参加をして、あまつさえソ連に抑留もされる、全く日本軍人軍属と同じ。ある意味では、昭和七年以来、国策によって満州国軍に入って、むしろ最も苦労の多い場面でいろいろ犠牲を払ってきた。だから、私は昭和七年から日本軍人と同じに扱ってもらいたいぐらいな気持ちがあるし、関係者もそういう要望でございます。しかし、とにかくとりあえずは、あのソ連が参戦してきた八月九日。  先ほども資料がございました。かつての関東軍の司令官山田乙三大将、あるいは総参謀副長松村少将、さらには第一課の作戦主任、この方だけ今生存しておられますが、当時の草地大佐、これら の方々はみんなソ連に抑留されてきた。昭和三十七年でありますけれども昭和二十年八月九日午前、対ソ全面対戦の命令を下達して、そして関東軍司令官の権限のもとで満州国軍の日本軍人は現地で現地司令官の指揮下に入り、実質的にも形式的にも関東軍の司令下に入った、実質的にも召集された、これを認めてもらいたい。まさに実情はそうであったと思うんです。  したがって、そういう状態のもとで侵入してきたソ連軍と戦って戦没をされた方は、戦没されたときにさかのぼって、その時点で日本軍に召集をされたということで公務扶助料を受けておる。ところが、同じ戦闘に参加をし、同じ相手に戦い、そして命をそのときは長らえた、そういう方については、恩給法の上ではあれは外国の政府職員である、考慮の余地ない、こういうことで今度請願が採択され、それに対する政府見解というものもまことに事務的に困難である、なお慎重に検討したいと言っているところだけはあれでございますけれども、その辺がいかにも実情に合致しないのではないか。  したがって、抑留された方々の問題、これも差別があるわけです。日本軍人軍属の抑留された方方は、恩給法上年限のある方々は加算という制度がある。しかし、満州国日系軍人と言われる人たちは、抑留されたけれども、それは何らない。この満州系の軍人軍属の方々が言っておるのは、ある水準以上のことをやってくれと言っているのじゃなくて、本当に日本の国策に従い、日本軍人軍属と実質的には全く同様な立場、同様な境遇、場合によってはもっと困難な条件の中で身をささげて国のために尽くした、それを日本軍人軍属として認めてほしい、この切なる願い、これは無理からぬお願いではないか。だから、ここでも請願が採択されましたし、衆議院の内閣委員会でも附帯決議についておる。こういうわけでありますが、この問題いかがでしょうか。
  252. 和田善一

    政府委員和田善一君) 恩給制度におきましては、満州国軍人になられた日本軍人の方々、日本軍人の方が退役されまして満州国軍を指導、援助するために行くのが必要だということで満州国軍に入られまして、終戦を迎え、終戦という図らざる事態で満州国軍というものがなくなってしまったというケースにつきましては、これはその前の日本軍人という恩給公務員期間がありますから、それに満州国軍の時代を通算するという措置をとっているところでございます。初めから満州国軍に入っておられる、要するに満州国軍軍人であって日本軍人ではない、あるいは途中一時日本軍に召集されたけれどもまた満州国軍に戻られた本来満州国軍であるような方々につきましては、これは恩給制度というものが、その創設の当初から日本の公務員を対象といたしまして、日本の公務員が長年忠実に勤務した、あるいは戦傷病等に遭われまして、そういう戦傷病あるいは戦死あるいは長年の忠実な勤務というととに服されたことに対する国の給付であるという、恩給の創設以来の本質からいいまして、日本国の公務員でない方方まで恩給法の適用を及ぼすということが非常に困難であるという点は御理解いただきたいと思います。  ただ、満州国軍と一緒に戦闘して戦死をされたというようなことで、日本国軍に召集されたという事実があります場合には、恩給法も日本国軍として取り扱って恩給法上の措置をいたしておるわけでございます。満州国の軍人軍属が日本軍人として召集されたかどうかというこの事実につきましては、軍人恩給の本属庁としての厚生省がお決めになるところでございますが、そういう事実がないのに恩給制度の中に取り入れるということは現在非常に困難であると申し上げざるを得ないわけでございます。
  253. 板垣正

    ○板垣正君 やはり形式というものと実態というものと、そこはよく考慮すべきだと思うんです。それは形式的に恩給法はこう流れが来た、こういうことである、満州国の軍人なんだというととで。実態的なもの、しかも戦争末期、ソ連が一方的に条約を破って侵入をしてきた。しかも、満州国軍というものは関東軍と不離一体、そして実態的にあらゆる指揮下に置かれておった。そういう状況の中で、しかも一緒に戦争に参加をした。戦闘に参加をし戦没をされた方は恩給法上認める。そうでなかった人はというのは、余りにも形式に走り過ぎて、実態を無視して、むしろ国家としての責任を形式の口実のもとで逃れるものではないのか。そういう気がしてなりません。その点、厚生省はいかがでしょうか。
  254. 森山喜久雄

    説明員森山喜久雄君) 満州国軍にいた日系軍官を身分変更して日本軍人にしてくれという御要望があるわけでございますけれども、厚生省は旧陸海軍の残務を今やっておるわけでございますが、これが実際に召集されたということはないわけでございまして、それを召集されたとみなすという規定も、旧陸軍の内規などを調べましたけれども、ございません。したがって、なかなか身分変更というのは困難な問題であろうと考えておるわけでございます。  ただ、先生おっしゃいました死亡者につきましては、これはソ連参戦前、旧満州におきまして日満共同作戦で擾乱地の戦闘に参加してここで亡くなった人はその日付で日本軍人に身分変更をするという陸軍の内規がございまして、そういう内規があるものでございますから、例えばソ連参戦後に戦闘で亡くなった方、それからシベリア抑留中に亡くなられた方、こういう方はその時点で日本軍人に身分変更しているということでございます。
  255. 板垣正

    ○板垣正君 厚生省も極めて消極的な見解ですが、その点は慎重に検討をするという政府見解も出ておりますから、ここでこれ以上問答しても決着はつかないわけですが、しかし願わくは、その実態を踏まえて、形式に走らずに、積極的にこれはひとつ取り上げていただきたい。  現に、日系軍人として満州国におる人たちには、普通出ておる召集令状は出さない。召集令状は一般の郷土からです。召集令状は出ないんです、満州国に日系軍人として入っていた人たちには。あるいは満州軍に二年以上務めれば、それで日本人として日本の軍隊でその二年間の徴兵義務は果たした、そうみなされる、こういう根拠もぴちっとあるわけです。ですから、ましてあの混乱のさなかに一々召集令状そのものが関東軍司令官から出ておった、出なかった、余りにも形式的なことでこの問題をあれすることは、私はかえって当時の国としての責任、そのもとで大きなさらに犠牲を払われた方々に対して納得ができない、そう言わざるを得ないわけであります。さらに検討して、善処をしていただきたい。  それからもう一つは、中支の湘桂作戦という作戦に伴う問題でありますが、これは要するに、昭和十六年の五月までは中国本土は全部いわゆる戦務地甲、一番激戦地と指定されておったわけであります。十六年五月一日以後は今度は乙地区になった。そういうことになりまして、現在、この湘桂作戦、これは一つの典型的なあれですが、相当な部隊を動員しての作戦が行われて、相当大きな犠牲が払われておる。かつて甲地区であった時代よりは乙になったときの方が調べてみると戦死者が多い。この地区を甲に指定するか乙に指定するか、これは当時の軍においても極めて重大視された問題で、最後は天皇陛下の裁可を得て決定するというくらい慎重な手続がとられたわけでありますが、しかしだからといって戦前のものを——当時の陸海軍がそうやって決めたものだから指一本触れることができませんよと言って放置しておるのが現在の状況であります。  そこで、この湘桂作戦に参加をされた中支の関係の方々は、ほかの地域、満州にせよ、一時期の北鮮にせよ、同じその当時の戦没者、何をもって甲とし乙とするか、なかなか難しいでしょうけれども、戦没者が非常にたくさん出た、やはり激戦であった、これは大きな根拠であろうと思う。むしろ戦没者の少ないところが甲になっておる。実質的に戦没者が多かった。部隊によっては、連隊によっては半分以上が戦没者。いろいろなデータもございますけれども、そういう方々から、いろ んな犠牲を払いながら、防衛庁の戦史を調べたり、戦友会のいろんな集まりで戦死者を確認するとか、そういうことを非常に何年もかかって部厚い資料を集めて、汗水垂らして大変苦労されながら、これもただ亡くなった戦友、あるいは生き残って非常に苦労してきた、非常な激戦で戦ったそういう人たちに対して、せめて甲地区としての、激戦地区であったという国としての処遇を求めてやまない。  これも、過般、請願採択された問題でありますが、この湘桂作戦ということについては厚生省はどういうふうに把握しておられますか。
  256. 森山喜久雄

    説明員森山喜久雄君) 湘桂作戦でございますが、これは昭和十九年の四月から二十年の二月にかけましてシナ派遣軍が一号作戦というのを行ったわけでございますが、これは当時、中国に進出しておりましたアメリカの空軍の基地をつぶす、そのことによって日本本土への空襲を防止する、それと東シナ海における海上交通を確保するというような目的のもとに行われたものでございます。  この一号作戦と申しますのは、北支から南支にわたります大陸縦貫作戦といいますか、非常に大きな作戦でございまして、このうち中支の作戦を湘桂作戦と言っているわけでございます。この地域にあります戦略基地といいますのは、長沙、衡陽、桂林、柳州といったようなところでございます。この湘桂作戦は昭和十九年の五月から十二月にかけて行われたわけでございまして、防衛庁の戦史叢書によりますと、参加兵力は三十六万二千名というふうになっておるわけでございます。
  257. 板垣正

    ○板垣正君 関係の方々の調査によりますと、これは一つの連隊でありますけれども、第一六師団の第一三三連隊、この連隊史によって戦没者を明確に掌握しておりますが、明細がありますが、戦死、戦病死合わせて二千三百五十、死亡率が五六%、こういうデータがあります。それから第一六師団第一〇九連隊、第四〇師団第二三四連隊も全滅状態、一三三連隊以上の犠牲が相次いだ。あるいは五八師団幹部が相次いで戦死し、玉砕状態で、記録保持者も倒れてしまった。第一三師団歩兵第一一六連隊第三中隊、幹部相次いで倒れ、昭和十九年八月三日午後六時、中隊長代理以下全員玉砕。これは三十何万の軍、師団があり、連隊があり、それにしましてもこれだけの大きな犠牲が払われている、戦死者が出ておる。そうした地域、これがいわゆる戦地扱いからいうと乙である、これでは納得が得られないのではないか。  昔こう決まったことだから今さら変えられないということではなく、これも恩給法あるいは援護法にも国家補償の精神に基づいてやるのだという趣旨も明らかにされておるわけでありまして、こうした方々の問題、日系軍人の問題にせよ、あるいは今申し上げている問題にせよ、もっとそういうところで行政の対応が積極的に当時の実情に合致するような、国家としての責任を明確にしていくという措置がとられることによって、今戦後処理問題懇談会で出てきておりますいわゆる恩給欠格者、恩給欠格者と言われる方々もこういろいろあるわけでございますけれども、そういう中ではやっぱりそういう立場からどうしてもあきらめられない恩給欠格者にも、今言ったような問題、行政の立場で個々の立場でも積極的に対応すれば相当の数の方が国家補償を受けられる。  特に、冒頭申し上げましたように、もう既に国家負担の上からいっても、人員がどんどん減っている。恩給法は、いわゆる戦後処理をやっていく最も関係者が頼りにしておる。そして、この機能を果たしつつ、この最後の段階というか、あと四十年たてば一人もいなくなる。四十年待たずして十数年で半分以下になる。決して、これは長期にわたって国家財政を圧迫するとかいうものでもない。それは広い意味において、戦争犠牲者はすべての国民が犠牲者であります。しかし、国家の立場において、それを口実にして、国家として当然責任をとるべき問題すらあいまいなままに、結果的には関係者が死んでいくのを待っていると言われてもやむを得ないような状態では、これは私どもも極めて遺憾と言わざるを得ない。そういうことで、ひとつ今申し上げました問題を積極的に取り上げていただきたい。  それから最後に、戦後処理問題の中で取り上げられて、お話いろいろございましたが、審議室長に承りますが、四月二十五日の朝日新聞でございますが、「シベリア抑留補償に前向き」、こういうことできょうもお見えになったわけでありますが、水上座長が、二十四日午後、衆議院内閣委員会参考人として出席し、同懇談会が検討対象としているシベリア強制抑留者への補償等々の救済のうち、シベリア抑留者に対しては他の二つの問題より前向きに考える姿勢を明確にした、以下、記事がございますけれども、これが報道されたわけでございます。  私も、率直に言って、このいわゆる三つの問題、これは恩給法の関連で検討すべき問題もあるとともに、資産の問題ありますけれども、シベリア抑留者の問題というのは極めて特殊な、そしてまさにその問題については国は戦後手をつかねたままでおるという点において、この戦後処理問題の中でも特に際立った問題であろうと思うわけでありまして、きょうは余り出てこなかったようですけれども、こういうことがあったのか、あるいはそういう空気があるのか、その辺どうでしょうか。
  258. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 戦後処理問題につきまして、懇談会がどういう姿勢で現在取り組んでおられるかというのは、先ほどの水上参考人のお話、白紙でいろいろ検討、勉強しておるという御説明に尽きるかと思います。事務方であります私どもが、懇談会の結論の方向みたいなことを、どういう方向に行くのではないかという推測みたいなことを申し上げるのはかえって非常に僭越でもございますし、また現実にわからないというのが率直なところでございます。  ただ、朝日新聞の記事にそういうふうなあれが出ておりましたが、衆議院の内閣委員会に四月の二十四日、水上座長が行かれましたときにいろいろ御質問がございましたのが、かなりの部分が実はシベリア抑留者の問題に絡んだお尋ねがございました。そういうことで、いろいろシベリア抑留時代の御自分の御体験も踏まえた実情のお話等々もございまして、ぜひこの辺のところは前向きに考えてもらいたいのだというふうな御要望等もございましたものですから、ああいう記事になったのではないか、かように考えております。
  259. 高平公友

    委員長高平公友君) 最後に、締めくくってください。
  260. 板垣正

    ○板垣正君 はい。  時間ですから、これで終わります。ぜひ前向きの検討の結果を出していただくようにお願いをいたしたいと思います。  最後に、要望でありますが、きょうはあえて触れませんでしたけれども、これまた戦後処理の一つの懸案であります金鶏勲章の問題について。これは予算を伴う問題ではありませんので、ぜひこれは総務長官においても決断をしていただきたい、そういうことを最後に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  261. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 きょうは、総務長官に主にお伺いしたいと思います。  本年で、戦争が終了いたしまして、ちょうど満四十年になります。四十年たちまして、いまだに戦争の傷跡のような問題が残っているということはまことに残念であります。中曽根総理大臣も、最近の予算委員会等で、戦後政治の総決算という問題を大きな旗印に最近はしておられます。そういうふうな意味から考えますと、きょうこの委員会議論になっております戦後処理問題の解決という問題も大きな問題だろうと思います。そういうふうな意味で、この戦後処理問題の解決ということについて、総務長官、どういうふうにお考えか、初めにお伺いしておきたいと思います。
  262. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) 戦後処理問題については、私、実は総務長官になってから、四十二年のあの全部終わったということは知っておりましたが、その後いろんな問題が出てきて戦後処理懇が できた。その後の経過というようなことについて改めて勉強をするようなことでございまして、そういったことで現在まで自分なりにも勉強いたしております。しかし、これはいつまでもほうっておくわけにいかない。今まで随分長い年月を経ておるんですけれども、せっかく戦後処理懇ができた経過もございますし、大変困難な問題だとは思いまするけれども、夏ごろまでということを再三申し上げていますが、何とか国会の諸先生方はもちろんでございますが、世論の御理解も得て、来年度の予算で措置ができるように努力してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  263. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、特に戦後処理の問題は、これは担当大臣である総務長官の何としてもこの問題を解決しなければならないという決意と、それから当然総理大臣の指導性いかんにかかっている、そう言っても過言ではないと思います。今、総務長官もおっしゃっておりましたように、これ以上ほっておくわけにはいかない問題であるというのも事実であります。  そこで、私はこの問題についてきょうは二つ申し上げたいと思っております。  まず一つは、私は、いつも足を引っ張るようなことで申しわけないのでありますが、例によりまして申し上げたいと思うんですが、この戦後処理問題懇談会というのは、これはどういうふうな会なんですか、一遍御説明いただけますか。
  264. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 戦後処理問題懇談会は、総務長官のいわば私的諮問機関と申しますか、そういうことで一昨年の六月に第一回目の会合が開催されたものでございます。先生からも十分御指摘をいただいておりますとおりに、あくまでもこれは私的懇談会というものでございまして、国家行政組織法の八条に基づく審議会とかいうものとは異なっておるわけでございます。有識者の参集を求めまして、行政運営上のいろいろ参考になる事項、これについて御意見をちょうだいをしようというものでございまして、いわば審議会におきますような合議機関としての意思決定をお願いするというものではございませんで、有識者によりますところの意見交換の場というふうに認識をいたしておるわけでございまして、そこで示されますところの御意見等はあくまでも行政運営上の参考として使わせていただく、こういうものであると認識いたしておるところでございます。
  265. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総務長官、私が余りこの問題について突っ込んで言いますと、逆にこの問題について私が反対をしているかのような印象を受けては困りますから、具体的に申し上げますと、禿河さんは八条の審議会とは違うというふうにおっしゃっておりますね。それから午前中、官房長官がお見えになってお話がございました。あのとおりなんです。しかし私は、戦後処理という問題は大変重要な問題であるから総務長官の私的な諮問機関で置いておくのではなくて、逆にやっぱりきちっとした八条機関にして、そして総務長官も正式にその答申を受ける、そして答申を受けてそれをきちっと行政に反映をする、そうすべきじゃないか。そうでないと、今の私的諮問機関というのは、中西総理府総務長官が全く私的に、個人的に勉強する機関なんです。しかも、それはまとめちゃいかぬのです。同じ会合を何回も開くというのもまずいんです、同じ人から十回も二十回も意見を聞かなくちゃわからないのかということになるわけですから。  わかりますか。要するに、回数をようけ開いちゃいかぬのです。同じ人が何回も集まってくるというのも、禿河さん、これはいかぬのです。ですから、同じ人から多くても大体五回ぐらいでしょう、聞きゃ大体わかるのは。それを、今皆さんが言っているのは、まさに法律に基づく審議会と同じことをやっているわけです。もう二十回近くあれをやったわけでしょう、同じ人ばかり集まって。中西さんという総務長官は同じ人から二十回も聞かにゃわからぬのかということになってくる、逆に言えば。それはそうじゃないわけですから。これは私は趣旨もみんなわかっているわけです。  ですから、これはいずれにしても法律に基づいたきちっとした審議会にして、そしてしかるべき結論をきちっと出してもらいたい。そうでないと、我々内閣委員会としては、国家行政組織法とかいろんなものを扱っておるわけですから、やっぱりそれに違反しておると黙っているわけにいかぬわけです。そこら辺のところをそういうふうに考えてもいいのじゃないかと私は思うんですけれども、そういう危険性もあるわけですし、そこら辺のところは、禿河さん、やっぱりこれはきちっとした方がいいのじゃないかなという僕の考えがあるわけですが、審議室長のお考えと総務長官の決意いかんにかかっているわけですから、この点もお伺いしておきたいと思います。
  266. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 先生の御指摘、私どもにもよくわかるわけでございます。  ただ、この懇談会が開催されるに至りました経緯からちょっと申し上げたいと存じますが、御承知のとおり、政府といたしましては、昭和四十二年の引揚者に対します特別給付金の支給、これをもって戦後処理に関する一切の措置は完結したものとする、こういうことでずっと対応してきたわけでございます。しかし、特にここ数年来、シベリア抑留者の問題であるとか、在外財産の問題、さらにいわゆる恩給欠格者の問題、こういう問題をめぐりまして関係の方々から非常に強い御要望が出てきておるわけでございます。これに対しまして政府としてどう対応すべきであろうかといろいろ検討の結果、五十七年度予算編成の段階におきまして、これも十分御承知のところで恐縮でございますが、そういう問題につきまして、従来の政府の姿勢を踏まえながら、しかもそういう情勢に対応するためには、総務長官のところでそういう私的懇談会を設けまして、公正中立な民間の有識者の方々の御参集を求めてその御意見をちょうだいするのが適当であろう、こういうことで発足をした、こういう経緯はひとつ御理解をいただきたいと存じております。  それからなお、戦後処理問題ということを考えます場合に、一体、戦後処理問題とはそもそも何であるかというのは実は大変難しい事柄でございます。各省庁におきまして、その関係のことをそれぞれ分担所掌している面もございます、各省で行っております仕事の中には。戦後処理と言えるものも、たくさん厚生省あるいは総理府恩給局でもあるわけでございます。そういう関係各省が非常に多岐にわたるもの、しかもそれを全面的に一カ所で全事項を取り上げるということは実はなかなか難しい面もあろうかと思います。そういうふうないろんな事情を踏まえまして、八条機関という方が組織としては確かに国家行政組織法上のあれとしてすっきりはするかと思いますけれども、そこでどういう点を御審議いただくかというのは実は大変難しい事柄ではないか、したがいまして、現在のような形に落ちついて、有識者の御意見をちょうだいしようということになったものと考えられます。  なお、補足で大変恐縮でございますけれども、今までこの懇談会は二十二回という非常に多く開催されておりますが、事の内容が大変難しい上に、これまでの沿革、制度上の変遷とか、当時の設けられました、あるいは措置されました事情の背景とか理由、さらにそういう事情を今日どういうふうに考えていけばいいのかとか、いろいろ難しい問題がございまして、実は一昨年六月の第一回の会合から昨年の暮れまでは、主としてこれまで政府がとってまいりました各般の措置のヒアリングと、それからこの三つの問題につきまして民間団体等から寄せられております御要望のヒアリングとかいうふうなことをずっと重ねて勉強をしていただいてきたようなわけでございまして、いろいろそれを踏まえまして御議論をいただく、あるいは御意見を出していただくというのはことしに入ってからでございますので、その辺の事情もひとつぜひ御理解を賜りたいと存じます。
  267. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは禿河さん、おっしゃることはよくわかるんです、承知で言っておるわけです けれども。  要するに、専門家で物すごくようわかっている人の意見を総理府総務長官が聞くというのが私的諮問機関です。ところが、そういう人たちに、一年半もかかって一生懸命皆さんが教えておったというわけでしょう。おかしな話ですよ、本当に。私的諮問機関というのは、総理府の総務長官の私的諮問機関ですから、総務長官がわからないことを来て教えていただくというのが総理府総務長官の私的諮問機関です。ところが、この任命された皆さん方がこういうことについて非常にわからないから、一年半も、何回もそういう人に来ていただいて皆さん方が教えておったというわけでしょう。それが、要するに八条機関のいわゆる審議会なんです。今皆さんがやっていることは、審議会と同じことをやっている。それだから、僕は、国の五百万という正式の予算もついておるわけですから、きちっとした審議会にしなさい、こう言っておるわけです。これは、ぜひそうしてもらいたいと思うんです。  できるんです。何でかといいますと、御存じのとおり、国家行政組織法が昨年改正になりました。ですから、ことしの七月一日からは政令でいけるんです。今度は法律で出さぬでもいいわけです。これは、まさにできるわけです。ですから、これは総務長官、やっぱりきちっとした政令でやってもらいたい。政令できちっと決めて、それで正式の体制でもいいから権威のあるものにして、そして答申をきちっと受けられる。その答申については、きちっと政府もそれを尊重する。  これは禿河さん御存じの、先ほどおっしゃいましたが、昭和四十二年に戦後は終わったということで政府がその処理をした。何でそうしたかといいますと、これは御存じのとおり、当時、昭和三十九年に、これは第三回目ですか、三回目ぐらいになりますね。昭和二十九年に在外財産問題審議会というのが初めに設置されて、そしてそのときには答申が出なくて、それから後、昭和三十一年の十二月十日に第二次在外財産問題審議会というのを正式の機関として発足させ、その後昭和三十九年にもう一回在外財産問題審議会という八条機関をきちっと発足さして、その答申が昭和四十一年の十一月三十日にあって、その答申に基づいて昭和四十二年に政府が戦後処理をしたわけでしょう。これはやっぱり正式の八条機関に基づいて戦後処理をしているわけです。  それと同じように、これで一切終わった、当時はみんなそう思っていたわけです。ところが、現実の問題として、あの昭和四十二年の初めから十数年たちますと、御存じのとおり、今のこのシベリア抑留者の問題とか、あるいは在外財産の問題とか、あるいは恩給欠格者の問題とか、また最近は御存じのとおり、元日本軍人軍属の台湾の皆さん方の問題とか、いろんな問題が出てきているわけです。どうしても処理しなきゃいけない問題が出てきているわけですから、そういう問題全部を含めて、新しいきちっとした審議会をつくって、スタートして検討していただく、やっぱりそうした方がいいのじゃないか。これは総務長官、七月以降総務庁になるわけですが、大臣はどういうふにおなりになるのか私知りませんが、これからの決意として、きちっとした体制で審議をする、そういう体制でなければいかぬのと違うか、そういう気持ちでおりますんですが、これはどうですか。
  268. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) 一つ申し上げることができるのは、極めて事務的な話ですが、七月一日からこの私的懇談会は総務庁の方には参りません。総理府に残りまして、内閣官房長官の所管になるということは申し上げることができます。  それから八条機関にすべきではないか、その理屈は非常によくわかります。ただ、今まで二年間やってきております。七月一日までにはまだ少し時間もございます。その間、どういうふうに懇談会の先生方が御議論くださるか。ぼちぼち意見も出始めております。そういうふうなことで、私の感じでは、政令でもって審議会をつくるということは手続的にはそう難しいことではない、関係の役所と相談すればいいことなんでございますが、しかるべき答えが出てくるということになれば、それなりに政府としてはそれについて勉強さしていただいて結論を出せないものでもないというふうにも思いますので、いましばらく様子を見さしていただきたいと思います。
  269. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題は、これ以上やっても前進しないと思いますが、今、総務長官のおっしゃっている発言の中身は、きちっとした結論が出てこないものでもない、大体出てくるのじゃないかと。結論が出てくるか出てこないかというその結論というのは、一人一人の意見とかそんなのじゃ結論は出てこないのでありまして、今の水上さんを中心にした何人かの皆さん方がよく相談をして、それでみんなでまとめて結論を出す、そうなるわけです。そういうことをすると、それは法律に違反しておる、こうなるわけです。本当にそうですよ。ですから、そうじゃなしに、法律に基づいてきちっと結論を出す、そういうふうにした方がすっきりしていまして、その方がまたこの戦後処理問題懇談会の委員に名前を連ねた皆さん方にとっても、ああやっぱり私たちがやったこのことは法律に基づいてちゃんとしたあれなんだなというようなことで、それだけの権威も出てきますし、本当からいえばこういう委員の皆さん方の選び方という問題も、法律に基づいて選ぶ場合と私的諮問機関で選ぶ場合とは違うわけです、本当は。そこら辺のへんぱがないようにというのが法律の趣旨でもあるわけです。そういう点からいえば、このメンバーを見ますと、私詳しく知りませんが、それはそういうへんぱはないだろう、そういうふうに思いますが、そういうふうな意味で、ぜひきちっとこういう問題については取り組んでいただきたいと思いますし、早急に決着をつけていただきたい。このことだけこの問題について御要望と、私はきちっとしたそういうふうな法律に基づいた審議会によって、多少煩わしいところがあるかもしれませんが、きちっとした結論を得て、そして戦後処理という問題に取り組んでいただきたい、こういうふうにお願いをしておきたいと思います。  そこで、きょうは、まず台湾人の元日本人等に対する補償問題というのがあります。これは当委員会でも何回か議論をしてまいっております。昭和五十七年から当内閣委員会におきましても二回にわたりまして附帯決議が行われております。その附帯決議の文章によりますと、「かつて日本国籍を有していた旧軍人軍属等に係る戦後処理の未解決の諸問題については、人道的見地に立って検討すること。」という、項目になっているわけであります。こういうふうに附帯決議でも申し上げているわけでありますが、この問題について政府としてはどういうふうに取り組んでいらっしゃるか、お伺いしておきたいと思います。
  270. 瀬崎克己

    説明員(瀬崎克己君) 旧日本軍人軍属として戦死されました台湾初め分離地域の方々に対する補償の問題でございますが、これは先ほど先生指摘のとおり、本委員会の附帯決議あるいはいろいろな委員会で諸先生方から指摘されているところでございますが、この問題の人道的な側面というのは十分私ども承知しているわけでございますけれども、他方、この救済問題につきまして、政府としてどのように対応できるかということにつきましては非常に複雑な問題がございまして、例えば法律的な側面で参りますと請求権、財産権の問題につきましては、最初はサンフランシスコ条約で処理することになっていたわけでございますが、これに基づきます日本と台湾との国交正常化の際の平和条約、特別取り決めで処理するということになっていたわけでございます。  ところが、日中国交正常化によりまして、台湾との外交の関係が一切絶たれるというような歴史的な経緯がございまして、この問題は政府として直接対応できない、こういう事情にあるわけでございます。他方、この問題につきましては、台湾との全般的な請求権問題が解決されていないということのほかに、分離地域につきましては、公平の問題それから台湾に対して措置した場合にそれ がどのように波及効果を及ぼすか、こういうような側面もあるわけでございます。それから特に近年に至りまして我が国の財政事情等非常に逼迫しているような事情もございまして、この問題を解決するのは非常に困難であった、こういうような状況が現状あるわけでございます。
  271. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題になりますと外務省ですか、——この問題は、参事官も御存じのとおり、当内閣委員会におきましてもたびたび議論になっているわけでございますが、これは昭和五十七年の二月に東京地裁の判決がありまして、その後昭和五十七年のこの内閣委員会におきましても、外務省の中国課長さんがお見えになって随分議論をしたことがございます。それで、そのときの中国課長さんの御答弁によりますと、まず一つは、関係省庁が集まりましてこの人道問題をどう処理するか、それからこの問題を解決するためにはどういう方法があるか研究を進めているという二つの答弁がありました。これは五十七年からちょうど二年以上たっておるわけですから、ある程度詰まっているのじゃないかと私は思っていますが、これはどういうふうになっているかというのが一つ。  それからもう一つは、欧米各国において同じような問題をどういうふうに解決をしているか、その先例等についても現在調査中でございます、こういうふうに御答弁していらっしゃるんです。ですから、欧米各国においてこの問題をどういうふうに解決しているのか、その先例等を、二年もたちましたから調査は終わっていると思いますが、大体どういうふうになっているか、御説明いただけたらと思います。
  272. 瀬崎克己

    説明員(瀬崎克己君) 先生の第一点の御指摘でございますが、関係省庁あるいはその他と人道的な問題につきましてどのような見地から検討できるかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、基本的な問題につきまして非常に大きな障害があるわけでございまして、こういった問題を放置したままに細かい技術的な詰めはできないということでございます。  それから第二の欧米等の事例でございますが、これにつきましては、外務省が在外公館を使いまして調査いたしました結果、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、西ドイツ、このような国につきましては、外国人元兵士に対しまして年金または一時金を支給している事例がございます。ただ、この年金、一時金につきましては、同じ国籍の兵隊さんないしはそういった戦争のためにとうとい生命を失われた方に対する補償とは若干差別があるというのが実情でございます。
  273. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、まず第一点の基本的な障害があってどうしようもない、こういうふうにおっしゃっておりますが、その基本的な障害というのは具体的にどういうことか、一遍お伺いしておきたいと思います。
  274. 瀬崎克己

    説明員(瀬崎克己君) 最大の問題は法律的な側面でございまして、日中国交正常化によりまして台湾との外交関係が一切絶たれてしまったということでございまして、この問題につきましては、当初申し上げましたとおり、日台平和条約第三条におきまして、財産請求権につきましては特別取り決めを結ぶということで取り決められておるわけでございますが、この特別取り決めが成立しないままに国交関係が絶たれてしまったということでございます。  この特別取り決めにつきましては、当初、日本側から特別取り決めを結ぶ必要があるのではないかということを再三にわたりまして台湾側に注意を喚起したわけでございますが、この財産請求権につきましては、台湾側に日本に対する請求権があると同時に、当時台湾におられました日本人の方々の財産請求権があるわけでございます。これを総合勘案いたしますと、どうも台湾の方に持ち出しになるのじゃないかという懸念があったようでございまして、我が方から再三台湾に対しまして交渉を持ちかけたわけでございますけれども、先方が乗ってこなかったというのが実情で、こういった歴史的な経緯がございまして、政府間としての交渉には至らなかったということでございます。
  275. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 したがって、第一点の問題については、これは後ほど総務長官のお考えをお伺いしたいと思っております。  第二点の欧米等の具体的な問題につきましては、これは先ほど年金、一時金等で支払いをしたことがあるということですから、この問題につきましては、私、実はあさって、十日の日にももう一回質問させていただきますので、十日までに資料をいただきたいと思いますが、よろしいですか。
  276. 瀬崎克己

    説明員(瀬崎克己君) 欧米の事例でございますが、これは一応外務省で取りまとめまして、調書になっておりますので、後刻、資料として提出させていただきたいと思います。
  277. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題、実は戦後処理問題懇談会に、この問題についてはどういうふうに考えていらっしゃるかということを、御意見をお伺いしてもいいのじゃないかと思うんですが、これは長官、どうですか。
  278. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 広い意味ではこれも戦後処理問題の一環であるという御指摘、私どもわからないわけではないわけでございますが、この懇談会でいろいろ御検討いただき、御意見をちゃうだいしたいと思いますのは、先ほど申しました三つの問題を中心といたしまして、戦後処理問題というものを基本的にそもそもどう考えるべきかというふうなことで開催されてきたわけでございまして、そこでどういう問題を取り上げていただくかというのは、第一義的にはこの懇談会の場であろうかと存じております。  ただ、懇談会でいろいろ御研究、御検討を願う問題を考えてみました場合に、非常に広範多岐にわたる問題を全部やるというわけには到底まいりませんし、それからまた個別具体的な対応、既に制度があり、あるいは何らかの措置が講ぜられておるような問題に関連する個別具体的な問題というものをここで取り上げていただくのも、その懇談会の性格からいって余りなじみにくいのではないか、さらに外交上の非常に機微にわたるような問題をこの懇談会で取り上げるということはいかがなものか、こういう感じも懇談会にございまして、この台湾の元日本兵の問題はすぐれて外交上の問題に関連をいたすわけでございますので、現在この懇談会におきましては台湾の元日本兵の問題は対象といたしていない、こういう状況でございます。
  279. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 こういう問題を戦後処理問題というところで検討するということについて皆さんの御意見はどうですかと、総務長官の諮問機関だから総務長官聞いたらどうか、こう言いますと、審議室長さんが立って、外交上の問題だからこれはいかぬ、こう言うているわけです。これは総務長官、ちょっとおかしいと思いませんか。総務長官の私的諮問機関です。  そういうような意味では、ですからこれは禿河さん、もっと言いますと、一つは、この間の東京地裁の判決にもありましたように、外務省の今の御答弁の中にもありましたように、外交関係もない、またそういうお金を支給する法律もない、したがって裁判としてはこれは国の立法政策上の問題である、こういうふうにおっしゃっているわけです。ですから、それが一つあるということと、それからもう一つは、これは外務省の答弁で、もし政府が例えば補償を払うとした場合に、これは五十七年の衆議院の内閣委員会の御答弁で、この問題、要するに中華人民共和国の了解を得てこういうことをしているのかということに対して、これは外務省の木内さんが、「中華人民共和国当局者の了解は得ておりませんが、事柄の性質上、御相談申し上げてもそれが大きな障害になるというふうには考えておりません。」、こういうふうに言うているんです、外務省の方が。  ですから、禿河さんは非常に御心配になってそうおっしゃっておりますが、ここら辺のところはやっぱりもう一歩、これは我々としては、立法政策上の問題ということになれば我々立法府でこれ は何とかしなければいかぬわけです。だから、そのためにはみんなの意見も聞かなければいかぬわけです。総務長官がだれに意見を聞くかということになれば、今この問題を検討しておるこの戦後処理問題の審議会、シベリア抑留の問題とか、いろんなことを検討しているそこへ聞くというのは、これは妥当なことと違うんですか。それは外交上の問題はありましょうけれども、そういうふうな外務省の木内さんの御答弁もあるわけです。そういうことを含めて考えますと、それは場合によってはそういうこともできるかもわからないというふうなぐらいの御答弁はできないものですか。非常に歯どめのかかった、あなたがあかんと言うと総務長官絶対あきまへんで。何となく逆ですな、これほんまに。総務長官、やっぱりそこら辺のところは聞いていただいて、もう一歩前進せなあきませんで。
  280. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 一昨年、この第一回の会合が開催されまして、一回目でしたか二回目でしたか、戦後処理問題というのは一体どういう問題があるだろうかということで、各メンバーの先生方でもいろいろお話がございました。特に、その三つの問題が最近大きな問題、一つずつとってみましても大変難しい問題ではあるけれども、やはり二年間ぐらいは時間をちょうだいして自分たちなりの意見を出さなくちゃならないだろう、こういうメンバーの方々のお話もございました。その際に、台湾の元日本兵のこういう問題があるということは実は懇談会のところでも出ましたけれども、先ほど私が申し上げましたように、これをずっと手を広げていろいろな問題をすべてやるとなれば、これは二年どころか何年かかってもなかなか難しい問題になってきて大変難しい。やっぱり懇談会といたしましては、日本人の戦争犠牲と申しますか、戦争による犠牲に対して政府がどういう措置をとるべきかということで、その三つの問題を中心にして我々は議論していこうかという懇談会の空気と申しますか、大体大方の御意見がそういうことになったわけでございまして、決して私どもが事務的にこれとこれに限定すべきであるとか、そういう僭越なことを申したわけじゃございませんが、懇談会のメンバーの方々もそういうことで現在まで来ておる。こういう状態でございます。
  281. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、これはもう一回この問題について政府側にもお伺いしておきたいと思うんですが、この問題につきましては大体各党賛成なんです。何とかせにゃいかぬなと皆思っているんです。現実に、自民党さんの中からも、これは議員立法せにゃいかぬということでそういう動きがあったのも事実なんです。それで結局、成案の寸前まで行きまして、その後立ち消えになっているわけです。それで、そういうふうな意味から考えて、そこら辺の御事情、総務長官御存じでしたら、教えていただきたいと思うんですが。
  282. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) それにお答えする前に、実は先般、二十数名でございますが、御婦人も入れまして、台湾の元日本兵だった、またその遺族の方などが来られました。これは委員会で申し上げるのはどうかと思いまするけれども、どういう事情か知りませんが、宮中へ行かれたらしい。天皇様が自動車の中から手を振って御会釈してくださったということで、その後私のところへ参りまして、みんなが大変感動しておられるんです。わずかな時間ですが、お話を聞きましたが、本当に私自身もそういった方々の御心情を伺って大変胸打たれました。このままで日本人としてほうっておいていいのだろうかということをつくづく身にしみて感じたところであります。  そこで、そのこととは直接関係ございませんが、自民党の中で議員提案で措置するから総務長官心配するなという話も実は半年ほど前ございました。その後立ち消えになっているかどうかは知りませんが、ともかくそういう動きがあるということは了解しています。ただ、これは法律技術的にといいますか、大変難しい問題があるのじゃないかという気がします。そこを乗り越えて御成案いただけるならば大変ありがたいなというのが私自身の気持ちでございます。  なお、先ほど来の御質問に対して御答弁申し上げましたが、実は本格的な勉強はこれからしたいと思っておるやさきのきょうの先生方からの御質問でございました。大変申しわけないんですけれども、幸い戦後処理懇の方もいよいよ委員各位の御意見が伺える、そういう時期に当たっておりますので、一層の勉強をいたしたいと思います。ただ、この台湾問題については今までの経過で委員の方々は余り御議論なさっていませんということもこれは御理解賜りたいと思いますが、私自身としては幅広く勉強をいたしたいと思います。
  283. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題は、私も実はきょうはほかの問題を質問しようと思っておりまして、多少違う問題を質問していますので、まことに申しわけないんですが、いずれにしても、長年、当内閣委員会におきましても議論をされてきた問題でありますし、昭和四十三年ごろから当委員会でもたびたび取り上げられてきた問題であります。また、きょうと十日の日に二日にわたって私も質問したいと思いまして、今までの会議録もずっと読み返してみました。これは長年続いている問題でありますので、いろんな問題があろうと思います。  例えば軍人軍属の皆さんがどのくらいいたのかとか、あるいは戦没者がどのくらいいたのかとか、そういうことも全部数字の面でもほとんど今具体的に会議録の中に出てきております。ただし、その中で厚生省がつかんでいる名簿とか、そういうようなものも、年がたつに従って正確なものが少なくなっていくであろうと思います。ですから、そういうような面をいろいろ考えてみますと、大体台湾問題については少なくともこれは五つぐらい問題があるのも事実です。  例えば、一つは、元日本軍人軍属のうち、いわゆる戦没者並びに戦傷者に対する問題があります。これはどうしても解決しなきゃいけない問題であります。それから元軍人軍属の皆さんに対する未払いの給与というのがあるわけです。この問題もあります。また、軍事郵便貯金の支払いの問題というのがあります。こういうようなのも調べてみますと、加入者六万口座、元利合計で昭和五十七年で一億八千六百万ある。それから四番目には、元文官の皆さんの恩給の問題です。それから五番目には、いわゆる台湾記号の郵便貯金の支払いの問題。  いろいろとこういうような問題があるわけでありますが、外交上の問題としては、先ほど外務省からも説明がありましたように、いろんな問題があるのも事実だろうと思います。しかし、私もいろいろとこの問題について調査をしてみましたし、また先日、私もちょっと関係者の方にお会いをいたしました。そのときの御要望によりますと、この要望書というのを私もいただいたんですが、大体こういうようなことを要望書の中で述べておられるわけであります。ちょっと読ませていただきます。前文はちょっと省きます。   日本側の統計に依れば当時日本政府の徴収を受けて充軍した台湾籍の軍人軍属は二十万七千百八十三人に上り、戦死者は三万余人であります。彼等は日本のため、戦場に屍を曝したことは、日本の戦死者と何らかわらないもので、死傷当時は日本籍でした。それなのに、中華民国国籍になったから「援護法」と「恩給法」による補償がなされていません。  外務省の調査によれば、戦後世界各国で、これに類似したケースで、未だ補償していないのは、日本国だけです。戦死戦傷当時は日本国籍であり四十年を経過し、遺族は期待から失望と怒りに、そして塗炭の苦しみにあります。  この問題は、普通の債権債務でなく、人道問題であり、遺族がまだ生存中に速やかに解決すべきであり、貴国国会で人道主義に基づき国会立法などの措置が取られ、関係遺族に代り、実施の早からんことをお願い申し上げる次第であります。こういうふうになっておりまして、この続きもあるわけでありますが、いずれにしましても、これ は何とか解決しなければならない問題であろうと思います。  私がちょっと気になりますのは、これは総務長官、いろいろと細かい問題もやりたいわけでありますが、時間の関係で省くといたしまして、確かに、予算上の問題とか、今法律がないからできないとか、いろんな問題があると思います。あると思いますが、私がお会いした皆さんも口酸っぱく何回もおっしゃっておりましたけれども、こういうふうな問題を解決するつもりがあるのかないのか、日本の国はそういう問題について誠意があるのかないのかというのを何回も聞いておりました。ですから、総務長官、これは総務長官のお答えをいただきたいと思うんですが、どうしてもこの問題は我々としては何とか解決しなければならない問題であろうと思います。そういうような意味では、戦後四十年もたっておりますし、そういう方々もだんだん高齢に達しているわけであります。そういうふうな意味で、何とか解決しなければならない問題であると私は考えておりますが、総務長官のお考えをお伺いしたいと思います。
  284. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) 要するに、この問題は、日本人の心が問われておる問題じゃないかというような感じを持っております。それだけに真剣に取り組みたいと思います。ただ、技術的にどういうふうに乗り越えていくのかというまた別の次元の問題があります。その山を越えないと志は達せられないということでもございますので、大勢の方々、先生方の御意見も伺いながら考えてまいりたいと思います。
  285. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 終わります。
  286. 高平公友

    委員長高平公友君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時二十六分散会      —————・—————