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1984-04-17 第101回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十七日(火曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員の異動  四月十三日     辞任         補欠選任      赤桐  操君     穐山  篤君  四月十六日     辞任         補欠選任      穐山  篤君     赤桐  操君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高平 公友君     理 事                 亀長 友義君                 坂野 重信君                 小野  明君                 太田 淳夫君     委 員                 板垣  正君                 岡田  広君                 源田  実君                 沢田 一精君                 林  寛子君                 桧垣徳太郎君                 堀江 正夫君                 野田  哲君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 柄谷 道一君                 前島英三郎君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       中西 一郎君    政府委員        北方対策本部審        議官内閣総理        大臣官房総務審        議官       橋本  豊君        宮内庁次長    山本  悟君        皇室経済主管   勝山  亮君        大蔵省主計局次        長兼内閣審議官  保田  博君    事務局側        常任委員会専門        員        林  利雄君    説明員        宮内庁長官    富田 朝彦君        外務大臣官房儀        典官       甲斐 紀武君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送付) ○昭和四十二年度以後における国家公務員等共済  組合等からの年金の額の改定に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付  )     —————————————
  2. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 太田淳夫

    太田淳夫君 それでは、ただいま議題になっております皇室経済法施行法の一部を改正する法律案につきましてお尋ねいたしたいと思います。  最初に、皇室経済法規定によって今回改正法案が提出されてきたわけでございますが、皇室経済会議任務構成等について、これがどのようになっておりますか、お答え願いたいと思います。
  4. 山本悟

    政府委員山本悟君) 皇室経済会議は、皇室経済法規定によりましてその権限といたします事項は、内廷費及び皇族費定額の変更、それから二番目が皇族が初めて独立の生計を営むことの認定、第三が皇族がその身分を離れる際に支出する一時金の額の認定、この三つの事項任務といいますか、審議事項といたしている機関でございます。  その構成員は、衆議院及び参議院の議長、副議長内閣総理大臣大蔵大臣宮内庁長官並びに会計検査院長の八名で構成されている機関と定められております。
  5. 太田淳夫

    太田淳夫君 この皇室経済法につきましては総務長官が一応提案者になっているわけですけれども、総務長官とこの皇室経済会議のかかわりはどのようになっておりましょうか。総務長官皇室経済会議参加をされていないということでございますけれども、このことは国会でもいろいろと論議があったように聞いておりますけれども、現在、一応議員八人になっておりますけれども、総務長官はこの議員の中に入っておりませんけれども、オブザーバーとして参加をしてみえるのかどうか。長官、どのようにお考えでしょうか。
  6. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 私、立場としましては、内閣総理大臣を助けて、総理府の外局であります宮内庁を監督する権限を持っています。皇室会議議員となってしかるべきではないかというお話は、かねて国会でも何回か御議論されておると聞いております。しかし、総理府の長はこれは内閣総理大臣でございまして、その内閣総理大臣皇室経済会議議長として加わっておりますので、総理府総務長官が加わる必要はないということで八人のメンバーには入っていないというのが経過でございます。  たびたび問題になっておるのですが、以上のような見解で八名のままでいいのではないかというふうに考えておるところでございます。
  7. 太田淳夫

    太田淳夫君 法案の中身に入りますけれども、第二条の各項目、要するに国会議決を必要としない場合ということが列挙されているわけですけれども、今までにこの項目以外で国会議決にかけた場合がありましたでしょうか、どうでしょうか。
  8. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御指摘のとおりに、この第二条に列挙されておるものは国会議決は要らないが、これに外れる場合には国会議決が要るということになっているわけでございます。  この事例、ただいま資料で御説明申し上げますが、現行のような立て方になりましたのは、昭和二十七年からこの皇室経済法立て方になっておりますが、それ以降は二遍ございまして、一度は昭和二十七年の十二月でございます。高松宮宣仁親王が御所有になっておりました福島県に所在の土地及び家屋を観光及び厚生施設に用いるために福島県に賜与をなさいましたが、このときは金額的に申しまして特別の議決をいただいております。これが一遍でございます。  それから、第二遍目は昭和三十四年三月。これは皇太子の御成婚の際でございますが、この場合に、「三十四年三月二十一日から同年四月三十日までの間において、内閣の定める基準により、皇太子明仁親王の婚姻を祝するために贈与される物品を譲り受けをこと」、これが国会特別議決をいただいて処理をいたした事項でございます。  二十七年以来、この二遍のみ御議決をいただい ているということでございます。
  9. 太田淳夫

    太田淳夫君 内廷費及び皇族費定額改定することになっているわけですけれども、これはどのような理由によって今回改定するんでしょうか。
  10. 山本悟

    政府委員山本悟君) 現在、内廷費及び皇族費改定お願いいたしますのは、昭和四十三年以来一定ルール皇室経済会議懇談会においてお決めいただきまして、そのルールに従って改定を必要とする際にお願いいたしているわけでございます。その四十三年の皇室経済会議懇談会でお決めいただきましたルールは、物価上昇率及び国家公務員給与改善率を勘案して、前回定額改定後の増加見込み額定額の一〇%を超える場合を目途として改定をする、こういう御方針をお決めいただいているわけでございまして、四十三年以降このルールに従いまして定額改定お願い申し上げているという事情になっております。既に六回でございましたか、改定が行われたと存じますが、いずれもそのルールお願いを申し上げているということでございます。  現在の内廷費及び皇族費につきましては、五十五年度改定が行われて以来既に四年間、平年度分は三年間となりますが、実質的には四年間同じ定額基礎を使っているわけでございまして、この間の物価上昇率、これは東京都の消費者物価指数をとらしていただいているわけでございますが、物価が一八・七%、それから国家公務員給与改善率が一二・三二%、こういう率になっているわけでございまして、いずれも一〇%を超えているというような状況になっているわけでございます。したがいまして、経費の効率的な御使用お願いするといたしましても、やはり内廷で雇っている職員につきましては公務員と同じような給与改定もいたさなければなりませんし、各種物価といったようなものもそういうような状況でございますので、四年間実質同じ基礎でアップしていなかったというようなこともございますので、この際五十九年度定額改定お願いいたしたいということで今回の定額改定改正案お願いいたした次第でございます。  ただ、現在のような厳しい経済情勢あるいは国の財政事情といったようなものを考慮いたしまして、前回五十五年に改定お願いした際も同様な措置をいたしたわけでございますが、初年度であります五十九年度につきましては増加額の二分の一に相当する額を節減する、こういう考え方によりまして算定することといたしまして、初年度は計算されました額の半額、二年度から計算されました額をお願いする、こういうような改正案にいたしている次第でございます。
  11. 太田淳夫

    太田淳夫君 最近の改正を見てみますと、大体二年ぐらいの範囲内で改正されてきているわけですね。四十三年、四十五年、四十七年、四十九年、五十年、五十二年、五十五年ということですが、その間いろんな物価上昇等、これは石油ショックのときでございますので相当な変動もあったと思うんですが、今回は四年経過しているわけです。その間やはり物価は多少鎮静をしているとしましても、皇室としてのいろんな活動範囲が広がったりなんかしておりますし、相当な面で御不自由をおかけしているのではないか、この間四年改定がなかったものですから。その点、どうでしょうか。
  12. 山本悟

    政府委員山本悟君) 確かに四年間改定なしで参りました。先ほど申し上げました一〇%という率だけで申し上げますと、昨年度におきましても一〇%を超えていたと存じます。しかしながら、その超えている率というのはさほど大きくはないというような事情もございますし、なおかつ、その当時の経済情勢財政情勢、あるいは公務員のべースアップに対する対処、いろいろな事情を総合勘案いたしまして、多少一〇%は超しておりましたが、いろいろの経費等につきまして御工夫をお願いするというようなことは考えなければならなかったわけでありますが、御不自由をおかけするというような事態に立ち至ることはないという確信を持ちまして昨年度は見送った次第でございます。しかしながら、それがやはり何年も重なってまいりますと、次第に今御指摘のございましたような点も危惧をされるわけでございまして、この際お願いを申し上げたいというような考え方に立った次第でございます。
  13. 太田淳夫

    太田淳夫君 次に、内廷費宮廷費の性格を比べると、どのようになっているわけでございますか。
  14. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御案内のとおり、内廷費は、皇室経済法規定にございますように、天皇及び内廷にある皇族の日常の費用その他内廷諸費に充てるためのもの、こういう規定になっているわけでございます。そして、その内廷費として支出されたものはお手元金となりまして宮内庁経理に属する公金とはしない、いわゆる全くのお手元金内廷でのお使いになるもの、こういうことになろうかと存じます。宮廷費は、それに対しまして天皇及び皇族公的地位及び公的活動に関する経費ということが申せるわけでございます。これはあくまで宮内庁経理に属する公金でございますし、会計検査その他もすべて通常予算の執行というようなものと全く同様に受ける、こういう建前のものでございます。そういう意味から申し上げますと、宮廷費はいわゆる公的な皇室活動ということになりましょうし、内廷費は私的な御生活というようなものを主とした経費というように考えられる次第でございます。
  15. 太田淳夫

    太田淳夫君 皇族費の方に入りますけれども、皇族費範囲内で各皇族が支給をされておりますところの職員人件費ですね、これはどのように算出をされているんでしょうか。
  16. 勝山亮

    政府委員勝山亮君) お答えいたします。  皇族費の中の人件費支出状況でございますが、現在、宮家が五つあるわけでございますが、五つの宮家のうち、高松宮家を除きまして他の四つの宮家につきましては、職員といいますか、人件費として対象となる人間というのは五人ずつ。特に三笠宮家においては七名、こういうことになっておりますが、二人については三笠宮殿下の御研究のお相手ということで非常勤でございますので、常勤の職員としては五名ということでございますので、大体五名というものを宮家の一般的な必要な人件費、このように考えまして、これを積算基礎といたしまして大体皇族費定額積算の積み上げの基礎にしているということでございます。これは大体比率で申し上げますと、人件費物件費比率がございますが、大体皇族費の中の人件費の占める比率というのは約五五%ということになっておりまして、したがって物件費の方は約四五%、こういうふうになっておりますのが現在の積算状況でございます。
  17. 太田淳夫

    太田淳夫君 こういう職員の方々のベースアップ等は、これはやはり公務員給与のベアと連動しているんでしょうか。
  18. 山本悟

    政府委員山本悟君) 私的にお雇いになっている職員でございますので、制度的に申し上げて連動ということではもちろんないわけでございますが、法律的な意味制度としてはもちろんございませんが、考え方といたしましては、やはり同じ官邸に仕え、あるいは内廷で仕事をしている者でございますから、これは基本的な考え方公務員ベースアップに準ずる、それから給与の決め方も公務員に準ずるというような考え方で具体的には処理をいたしております。
  19. 太田淳夫

    太田淳夫君 最近の賜与及び譲り受けに該当する事例というのは、具体的にどのようなものがございますか。
  20. 山本悟

    政府委員山本悟君) 賜与の具体的な事例といいますと、極めて典型的なものを申し上げれば、全国各地に大規模災害が起こったような際におきますお見舞い金。これは具体的に申せば、天災の場合、人災の場合いろいろございますが、例えば数年間のものでございますが、人災で言えば静岡においてガス爆発があったといったようなとき、あるいは有明鉱災害があるようなときにお出しになるとか、あるいは山林火災でお出しになったとか、三宅島の噴火でお出しになったとか、こういったような天災あるいは人災を含めまして大規 模な災害というような際のお見舞い金をお出ししていらっしゃるものが一つございます。  それから何か御慶事その他のことのあった際にある特定の団体にお出しになるというような場合もございます。最近で申せば、天皇皇后陛下の御結婚満六十年に当たりましてがん対策振興事業に御奨励のために金一封をお出しになった、あるいは先般ございました天皇皇后陛下満八十の御誕生日に当たってはおのおの障害者福祉事業の御奨励のために金一封をお出しになった、そういったようなことの御慶事のあるような際に特定の適当な事業に対しまして御下賜金を賜るというような事例がございます。  そのほか、経常的な、定例的といいますか、毎年のようにございますのは、いわゆる赤い羽根中央共同募金あるいは緑の羽根国土緑化推進事業といったようなものにはそのときごとに御下賜をなさっておりますし、またお金じゃないものといたしましては、日本学士院賞あるいは芸術院賞、この受賞者に対します恩賜賞、これは銀の花瓶でございますが、これをやはりこういったところからお出しになっていらっしゃる。そういうようなこともございますし、ごく最近で言えば、皇太子同妃殿下の御結婚満二十五年に際しましては社会福祉法人であるこどもの国協会金一封を御下賜になった、こういうようなことがいろいろあるわけでございます。  賜与の方といたしまして典型的なものというあれであれば、以上のようなことが例を挙げることができるであろうと存じます。  そのほか、今度もう一つ譲り受けの方でございますが、皇室国民の方からお受けになるという方の典型的なものといたしましては、内廷の場合には、陛下全国植樹祭あるいは国民体育大会等地方行幸啓がありました際に、その県の知事を通じまして地方特産品地場産業側奨励といったような意味からお受けになるというのが中心でございます。しかし、こういった場合には、御案内のとおり、財産的価値の高いものとかあるいは宣伝に利用されるものというようなものは原則として常にお受けにならないというような建前で運用をいたしておるわけであります。まとまったある程度のものということは、両陛下で考えれば、ただいま申し上げましたような地方行幸啓の際、知事を通じて地場産業の製品をお受けになるというのが大部分でございます。
  21. 太田淳夫

    太田淳夫君 ちょっとお尋ねしたいんですけれども、五十四年、五十五年、決算報告等から見ますと、各所修繕費というのがございますけれども、そこから流用があるわけですが、これはどのような理由で、どの部分への流用がされておりますか。
  22. 山本悟

    政府委員山本悟君) 五十五年度決算の数字、具体的にちょっと手元にございませんが、あの際にお願いをいたしました流用は、いわゆる国際親善費、現在で言いますと国際親善等経費という名称になっておりますが、皇室関係国際親善経費でございますので、主といたしまして国内での使用例からいえば、国賓、公賓がおいでになったときの晩さん会その他の各種行事経費、それから皇族が公的な関係海外に御旅行になったときの経費、これを国際親善等経費というところで賄っているわけでございますが、それが想定をいたしましたよりも経費が余計にかかったというために流用をいたしたものでございます。  通常ベースで言えば、陛下海外旅行というのは最近計画がないわけでありますが、皇太子同妃殿下海外の御旅行、御答礼によります場合もありますし、あるいは親善のための場合もございますが、これの経費というのはやはり航空機の借り上げというようなところで、距離によっても違うし、いろいろな計画によって違ってまいりますので、なかなか次年度予算を編成いたします際には想定がしにくいものでございますので、一定の総体の額、当時で言いますと約一億二千万程度だったと思いますが、国際親善経費というものを組んでおきまして、その中から逐次決まったところで支出をさしていただく。これは大蔵省と協議の上でやっているわけでありますが、いらっしゃる場所、あるいはそれまでの皇族の公的の御旅行の数、あるいは国公賓の来方、そういったものが想定よりも変わってまいりますとどうしても不足を生ずる。その際に、やむを得ず他のところを少し縮めまして流用さしていただいている。さらに足らない場合にはこれは予備費お願いせざるを得ない。こういうような状況になっている次第でございます。
  23. 太田淳夫

    太田淳夫君 この決算関係資料を見ますと、それは今お話がありましたように、海外訪問あるいは海外からの賓客の来訪とか、そういう予算編成時に予想できなかった事態が生じたときにその費用を充てるということで、予備費あるいは各所修繕費等から流用しているということが報告されているわけですが、この流用というのは、財政法上から見ましても、また予算上からも認められておりますけれども、そのために不用額を出すより有効に他の費目で使用する手だてが当然とられている方法でございますけれども、これをちょっと見てみますと、五十年には約一億七千万円ですね、予備費使用方法は。それから五十一年は約二千万円、五十五年は二千六百七十七万円、こういうふうに使われているわけですね。それで、先ほど申し上げました各所修繕費流用額が占める割合は〇・二%から四・二%になっているわけです。五十年度は百七十万、五十一年度は約二千二百五十万、五十三年度は約一千万円、五十四年度は約四千三百万円、五十五年度約二千七百万円、こういうふうに流用されておりますし、五十五年度については約二千七百万円の各所修繕から流用をしながら、さらに足りなくて予備費からも約二千七百万円使用しているということでございますけれども、こういうような各所修繕からの流用等が行われているということは、例年これが行われておるわけでございますので予算立て方とか使用方法に何かやはりもう少し考えるべきことがあるのじゃないかと思うわけです。  先ほど私申し上げました、改定をされていない点でいろいろ御不自由をおかけしたのじゃないかということもここにあるわけでしてね。各所修繕ということで予算を立てておきながらそれがほかの方に回っていくということはどこかで我慢しなければならないところが出てくるのじゃないか。いろんな修繕をしなきゃならないところ、生活の回りのところ、天皇皇后陛下あるいは皇太子殿下等のそういう点で御不自由をおかけしているところがあるのじゃないか。ですから、そういう点の予算についてはもっと何か思い切ったそういった手だてはとれないだろうか。こう思うわけですが、その点どうでしょうか。
  24. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御指摘ごもっともな点でございますが、確かにただいま御指摘のような金額流用いたし、あるいは予備費からもらっている。五十年の予備費の一億七千万というのは、これは両陛下の御訪米ということで多額な予備費使用ということになったものと存じます。  また、その他の各年度、ある程度ずつのものを各所修繕費から宮廷費の中で流用をいたしておる。これも御指摘のとおりでございまして、ただいま申し上げましたように、一定金額で、約一億二千万ということでもって国際親善費を組んでいたわけでありますが、これがやはり各種のただいま申し上げましたような国公賓の数、あるいは皇族の公的な親善訪問の数、あるいはその訪問国距離、いろんなところから変わってまいりましたためにやむを得ずいたしたわけであります。  流用財源といたしましたところというか、もとといたしましたところは、これはいわゆる各所修繕費でございますが、この各所修繕費の中には皇室用財産全体の各所修繕費が入っているわけでございます。その中には、もちろん宮殿もございますし、御用邸もございましょうし、いろいろな皇居の中全体もございましょうし、あるいは陵墓関係、御陵でございますね、あの各所修繕というのに全部入っている。皇室用財産全体の各所修繕であるわけでございまして、ある程度金額を計上さしていただいている。  もちろん、その額が余っているという意味じゃございませんで、要るのでございますが、各所の非常に多くの場所の箇所づけの中を担当いたしておるわけでございますので、その中の優先順位を高いものからもちろんやっていく。どうしても今のような財源に充てざるを得ないときには残念ながらそれは翌年回しになる。これは本当はいいことじゃございません。御指摘のとおりだろうと思いますが、やむを得ざる処理といたしましてそういう操作をなさしていただいている。  それじゃ、初めから国際親善経費を余計に組んでおけばどうだということになりますと、これまた実際上、殊に現在のようなシーリング制度をとられておりますとこれは非常に難しい問題でございます。と同時に、これは執行されない場合には全く不用額でございます。いろいろなそういったような財政運営経理上の問題といったようなものを踏まえまして、ただいま申し上げましたような経理をやってまいったわけでございます。しかし、原則から申し上げれば常に何千万というものが流用になるということはいいことではもちろんないわけでございまして、なるべくそういうことをしないように、やはり必要がありますので各所修繕お願いをいたしておるわけでございますので、それが順次延びていくということはどこかに何かが起こったときに皇室用財産についての管理に手薄なところが出てくるということを意味するのじゃないかと思って心配をいたしておるわけでございますので、御指摘の点は十分踏まえましてこれからも対処させていただきたいと思います。
  25. 太田淳夫

    太田淳夫君 総務長官、どのようにお考えになりますか。
  26. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 同じように考えております。
  27. 太田淳夫

    太田淳夫君 総務長官にお尋ねしますけれども、天皇のお誕生日は何月何日でございますか。
  28. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 四月二十九日でございます。
  29. 太田淳夫

    太田淳夫君 皇后陛下のお誕日はいつでしょうか。
  30. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 三月六日でございます。
  31. 太田淳夫

    太田淳夫君 三月六日でいらっしゃいますな。そのように、天皇陛下につきましては私たちもよく知っているわけでございますが、皇后陛下のお誕生日となると私もつい失念をしていたというような形でありまして、テレビ等で報道されて初めて気がつくということでございますね。  天皇皇后陛下の御健康状態はいかがでございますか。特に、皇后陛下の御体調については週刊誌等でもいろんな記事等が出ておりましたけれども、その点はいかがでございますか。
  32. 山本悟

    政府委員山本悟君) 両陛下、現在は大変御健康ということを原則的には申せると思います。  天皇陛下は特段の御持病というものをお持ちではない。先般お風邪をちょっとお引きになりましたが、あれも一年半ぶりのお風邪というようなことでございまして、全くお元気に御公務もなさり、御研究もなさっているというような御日常をお送りになっていらっしゃると存じます。  皇后陛下は、御案内のとおり、たしか五十二年だったと思いますが、那須においてお腰を痛められまして、それから大分お腰のことがいろいろあったわけでございますが、現在、お腰は非常に安定をいたしておると承知をいたしております。ただ、何しろ八十のお誕生日をお過ぎになった方でありますので、いろいろな意味での御負担をおかけしないように、いろいろな諸行事への御出席というのはだんだんと減らしていらっしゃるというような状況にあろうと思います。ただ、日常の御生活にお腰の関係で御不自由がある、あるいはお痛みを感じていろいろなさっているというような事実は現在のところ全くございません。そういう意味では日常の御生活には何ら御不自由はない。しかしながら、宮中の行事というのは非常にきちんとした格好できちんとしたものを長時間やるというふうなものが多うございますので、そういうところはお避けあそばしているような状況であろうというように存じます。
  33. 太田淳夫

    太田淳夫君 せんだって、私どもも宮中に参りまして、いろいろと拝見させていただいたわけでございますが、天皇陛下の御公務が非常に多種多様で相当の量であるということがわかったわけでございますけれども、一年間通してどのような公務の状況なんでございましょうか。
  34. 山本悟

    政府委員山本悟君) 陛下の御公務は、毎日、宮殿の表御座所にお出ましになりまして執務なさっているわけでございますが、一番中心になりますのは、内閣から提出されます憲法六条及び七条に定められた国事に関する決裁の処理というのがございますし、それから宮内庁関係各種の書類というものをごらんになっております。そして、御署名またはそれに対して御押印になるというようなことでございますが、その数が、五十八年分の数字でございますが、内閣関係の書類が千三十三件、それから宮内庁関係のごらんになりました書類が千六百二十九件、合わせますと二千六百六十二件の書類につきまして御決裁になりあるいはごらんになっているわけでございます。  御裁可の書類は、五十八年で言いますと、総理大臣の任命から栄典の授与、外国大使の接受といったようなもの全部合わせますと二百三十七、それから国務大臣その他の認証官の任免、全権委任状といったようなものとか、大赦、特赦あるいは条約の批准書、こういったものが百四十一件、それから御署名になりましたのが、国会の召集といったような詔書等でございますとか、条約、法律、政令の公布、それから勲記、官記、信任状といったようなものを合わせまして六百五十五件、これが内閣関係千三十三と申し上げましたものの内訳でございますが、そういったような御書類の処理をされているわけでございます。  そのほか、当然のことながら儀式、行事といった各種のものも、これは書類じゃございませんが、実際上やっていただいているわけでございますが、これは一、二申し上げますと、新年祝賀の儀とか、あるいは親任式、信任状奉呈式、認証官任命式といったような国事行為、あるいは国事行為に関連した儀式が五十八年は五十三回ございました。  それから象徴としてのお立場から催される儀式というぐあいに分類しておりますが、例えば国賓の接遇あるいは歌会始あるいはいろいろな御会見、拝謁、御引見といったようなものが百六十三回、それから御日常の御会釈が八十六回というような回数の行事をおこなしになっているわけでございます。それから皇居の外にお出ましになります式典、あるいは地方への行幸、合わせまして二十四回五十八年にはなさっている。  こういうのが五十八年におきます陛下の御公務ということが申せると思います。
  35. 太田淳夫

    太田淳夫君 大変な激務の中でおみえになるわけでございまして、このような御多用の中でありますと、御用邸でおくつろぎになったり、あるいはライフワークとされている御研究される時間等は一体どの程度お待ちになれるのか私たちも伺っておきたいと思うんですけれども、下田の御用邸等へはことしは行かれる予定はございませんでしょうか。
  36. 山本悟

    政府委員山本悟君) 須崎の御用邸は大体冬場の御用邸、それから御案内のように那須の御用邸は夏の休養地としていらっしゃる。それから葉山の御用邸は、これは近くでございますので、いらっしゃるとすれば週末、こういったような格好になろうかと思います。  現在、御用邸は那須と須崎と葉山と三カ所つくっていただいているわけであります。実際の、年間で見てみますと、那須の御用邸には、大体例年のことでございますと、七月の中旬か下旬の初めごろから九月の上旬ぐらいまで行っていらっしゃいます。両陛下で行っていらっしゃいまして、陛下は八月十五日の関係がございますから、その間、八月十五日を中心にいたしまして一度御帰京になるというようなのがこの数年間の例でございます。  それから須崎の御用邸は、十二月から三月まで の間におおむね三回程度、これは一週間ないし十日間ぐらいで、一回がそのぐらいになりますが、御滞在になるのが例でございます。  それから葉山は、昨年で申しますと、年に一回ぐらいしか行っていらっしやいませんが、週末に三日間ぐらいいらっしゃたというようなことでございます。  大体、季節のいいときと申しますか、やはり四、五、六月あるいは九月の中、下旬から十、十一月というようなときには各種の行事が重なるが例年でございます。例えば叙勲者に対します拝謁といったようなこともその時期に重なります。いろいろなものが重なりますし、また外国関係国公賓というような方々も主として季節のいいときにいらっしゃる場合が多いというようなことで、どうしても御用邸で御静養になるといいますのは夏と冬、御公務に差しつかえのない範囲でそういうような御用邸の御使用をなさっていらっしゃるということと存じます。
  37. 太田淳夫

    太田淳夫君 天皇陛下も御高齢であられますし、皇太子殿下も銀婚式を迎えられたわけです。満五十歳を超えられていますが、そのためかどうかあれですが、一部には天皇の生前退位ということも考えてはどうかという声もあるわけですけれども、宮内庁としてはこれはどのように考えてみえますか。検討されたことがございますか。
  38. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御指摘のとおり、いろいろな御意見を伺う機会はあるわけでございますが、先ほど来申し上げますように、現在、陛下は御高齢ではいらっしゃっても非常にお元気に御公務をお務めあそばしていられるわけでございます。  現行の皇室典範は、御指摘のとおりに、生前の退位というものについての規定を全く置かない。置かないということは、制定当時からその制度をとっていないということを申していいのだろうと思います。  この現行の皇室典範が制定されます際にいろいろな場において議論がされているようでございますが、制定いたしました趣旨としては、退位を認めると歴史上見られたような上皇とか法皇とかいったような存在がでてきてそれが弊害を生ずるおそれがあるのではないか。歴史から見るといろいろな批判があり得たわけでありまして、こういったことは避けた方がいいということが一つ。それから、そういった制度があれば必ずしも天皇の自由意思に基づかないで退位の強制ということがあり得る可能性もないとは言えない。これも歴史の示すところだと思います。それから三番目には、逆に今度は天皇が恣意的に退位をすることができるということになるとそれもまたいかがなものか。こういったようないろいろな観点からの論議がございまして、典範制定当時、そういった制度は置かないということになったと存じております。  結局、ねらったところは、天皇の地位を純粋に安定させることがいいのだ、それが望ましいというような意味から退位の制度を認めなかったというように承知をいたしているわけでございまして、こういったような皇室典範制定当時の経緯を踏まえて、かつまた身体の疾患または事故等がある場合には現在でも摂政なりあるいは国事行為の臨時代行なりというような制度によりまして十分対処ができるわけでありますので、現在、宮内庁といたしましてこの皇室典範の基本原則に再考を加えるというような考えは持っていないところでございます。
  39. 太田淳夫

    太田淳夫君 そうしますと、国事行為臨時代行法による代行の適用ということも考えてみえるということですね、宮内庁としましては。
  40. 山本悟

    政府委員山本悟君) 国事行為の臨時代行法によりますその代行という場合の要件というのは同法に規定をされているところでございまして、疾患あるいは事故ということが明確に規定をされている。それに該当をしない限りにおいてはこの法律の動く余地はないわけでございます。もちろん、先生御承知のとおり、さらに事故が重大であり、かつ疾患が重ければこれは摂政の問題であるというようなことでございますが、そこまではしなくても、それぞれ事故なり疾患というものが要件としてあるわけでありますので、これに該当する場合には当然この規定の活用を図るということになろうかと存じます。  ただ、先ほど来申し上げますように、陛下は大変御健康で公務を御処理になっておりますので、この規定を働かすという必要をただいまのところ感じたことはこの数年ございません。
  41. 太田淳夫

    太田淳夫君 それでは、次は皇太子殿下と同妃殿下が最近海外を訪問されましたんですが、その状況、成果について御報告いただきたいと思います。
  42. 山本悟

    政府委員山本悟君) 先般、皇太子同妃殿下は、アフリカのザイールとセネガルの両国を公式に御訪問になりました。この御訪問の儀は、十三年前にザイールのモブツ大統領が、それから五年前にセネガルのサンゴール前大統領がそれぞれ我が国を公式に御訪問になりましたことに対し、答礼の意味におきまして天皇陛下の御名代として御訪問になったものでございます。  両殿下は、セネガル、ザイール両国大統領との御会談、または一般国民と接せられた際、国際親善の実を大いに上げられたと存じているわけでございます。両国の大統領との御会談では、天皇陛下の御伝言を伝達されるのを初めといたしまして、歴史、民族、自然、文化を中心に相互に意見の交換をされ、両国の理解と友好を深められたと承知をいたしております。  また、両国政府の配慮によりまして、両殿下はそれぞれの国において各地を御訪問になり、その国の実情を御視察になったわけでございますが、各地で一般国民の温かい歓迎を受けられ、両殿下はその歓迎に細やかにおこたえになられることを通じ、両国の国民一般の親近感と深い印象を与えられたと存じます。  このことは、セネガルあるいはザイール両国の新聞等マスメディアが両殿下の御訪問を連日トップニュースで取り上げまして、歓迎ムードと対日親善ムードが御滞在中に日を追って盛り上がったということからもうかがえると思っている次第でございます。  さようなことでございまして、この御訪問によりまして、両国と日本の相互理解がより一層深まり、親善友好関係が一層緊密なものになったというぐあいに評価をいたしているところでございます。
  43. 太田淳夫

    太田淳夫君 今後のそういう外国訪問の計画はどのように立てられているんでしょうか、あるいは中国等はそういう計画の中に入る可能性があるのかどうか、その点お聞きしたいんですが。
  44. 山本悟

    政府委員山本悟君) 天皇陛下の場合ももちろんでございますが、皇太子同妃殿下あるいは他の皇族の方々でも同様でございます。公的なお立場で外国を御訪問になるといいます際には、これもやはり政府の広い意味の助言と承認というのがございますが、そういった政府の方の意向というものをもとにいたしましてそれぞれ決まってまいるというものであることは当然であろうと思います。  そういうような観点から申し上げまして、ただいま具体の問題といたしまして、例えば東宮同妃両殿下がどこにというような具体の話というものはまだ目鼻がついている段階ではございません。ただ、外国の国王なり大統領なり元首の方が日本を御訪問になった方は多数あるわけでありまして、お返しにそういう立場で御訪問になっていないという国もまだ随分ございます。そういうような意味からいえば、いつかの時期には今回のアフリカ御訪問と同じようなお立場でのこともあり得るとは思いますけれども、まだそれがどことどこというぐあいにというようなことを申し上げる段階に全く至っていないというぐあいに存じます。
  45. 太田淳夫

    太田淳夫君 今、浩宮様が英国に留学されておりますね。これは御本人の御意思によって決められたことでしょうか。
  46. 山本悟

    政府委員山本悟君) 外国への御修学ということでございますから、どこでも同じでございま しょうが、普通の家庭で考えましても、留学する者だけで飛び出して行けるわけじゃございませんから、いろいろな御相談もあり、また相手国との相談もあり、いろいろなことがあったと存じます。そういう意味で単に御本人の御意思だけでもってものが決まるというものではなかろうと存じますが、御本人も大いにそれに賛同され、喜んでいらっしゃったというぐあいに思っております。
  47. 太田淳夫

    太田淳夫君 私も賛同しているわけです。日本が国際国家として大きな立場で今活動を展開しているわけですから、皇室の皆さん方もさらにいろいろな面で国際人としての活躍の場がこれから大きく展開されていくのじゃないかと思いますので、そういった面で賛同しているわけです。  二番目の方は何とおっしゃられましたか。
  48. 山本悟

    政府委員山本悟君) 礼宮様です。
  49. 太田淳夫

    太田淳夫君 礼宮様も、やはり海外に留学される御希望はおありなんでしょうか。できれば、御長男の浩宮様が英国ですから、礼宮様はアイビーリーグとか、そういうような可能性はあるんでしようか。
  50. 山本悟

    政府委員山本悟君) 礼宮殿下は、ことしの四月から学習院大学の政経学部に御進学になったところでございまして、そういう意味での大学生としての御勉学はこれから始まるわけでありますが、まだ外国でどうというようなものが具体化なり具体の日程に上ったわけではございませんが、お若いうちにいろいろな御経験をなさるということは大いに必要なことではないだろうか。それぞれの御真意はあろうと思いますけれども、他の皇族の三笠宮の若い方々それぞれがいずれかの国にある程度の期間勉学されたというような例もございますし、浩宮殿下もいらっしゃっているというようなことであれば、そういった御経験をお積みになることが将来の皇族としての御活動をなさる上からも御必要であろうというように考えております。
  51. 太田淳夫

    太田淳夫君 皇室のいろんな御活動につきまして、やはりもっと国民の皆さん方にも知ってもらう必要があろうかと思いますし、かつては菊のカーテンとか言って閉ざされたような存在のようにも思えたわけでございますが、そういうことのないように宮内庁としては広報活動に力を入れていただきたいと思いますし、また力を入れてみえると思うんですが、最近、皇太子と同妃殿下の銀婚式のインタビューが報道されていましたね。まことに好評だった、このように思いますし、私も何人かの方にお会いしましたけれども、非常に人間性のよく表示されたほほ笑ましい情景だった、非常に身近に感じるということで好ましい感想をよくお聞きしているわけですけれども、またこういった機会をもっとふやしていくことが必要ではないか、このようにも思っておりますが、宮内庁としてはどのように考えてみえるか、あるいはどのように今後努力をしていかれるつもりか、その点お聞きして質問を終わりたいと思います。
  52. 山本悟

    政府委員山本悟君) こういう開かれた日本の社会でございますので、皇室といえどもいろいろな意味でマスメディアにも登場するというような機会というのがこれからもふえることはあっても減ることはなかろうというように存じております。  ただ同時に、今の日本の社会のマスメディアというのはいろんな問題を抱えているのじゃないか、これは私見でございますけれども、言わしていただければそういったような気もいたします。プライバシーの問題その他、これはいろいろと考えていただきませんと、皇族、殊に内廷の方々というようなことになってまいりますと、その辺、放列にさらされるということではやはり困った面も出てまいる可能性があるわけでありまして、それらの間の調和をうまくとりながら、将来、基本的には今御指摘のような気持ちでもって対処しなきゃならぬと思いますが、そういったことも含めてこれから考えてまいりたいと思います。  ちょっと一つだけ訂正をさしていただきます。  先ほど、礼宮殿下の大学につきまして、学習院大学の政経学部と申し上げましたが、法学部の政治学科でございますので、訂正をさしていただきます。
  53. 内藤功

    ○内藤功君 まず、宮内庁にお伺いいたしたいんですが、現在、政府は臨調行革路線というものに基づいて、国の財政が非常に苦しい、国民生活面、福祉、社会保障、医療、教育等々で犠牲を求め、痛みを分かち合うのだ、我慢してくれ、こういうことを政府は求めておるわけですが、宮内庁の場合には、このいわゆる臨調行革の範囲内にあるのか、範囲の外にあるのか、どのように御認識でございますか。
  54. 山本悟

    政府委員山本悟君) 宮内庁は、通常から見まとやや特殊性を帯びた官庁というぐあいに感じられる方が多いと思いますが、国の行政機関の一つであることには変わりはないわけでございまして、国が行います行政改革の対象であるともちろん考えているわけでございます。
  55. 内藤功

    ○内藤功君 昭和五十九年一月二十五日の閣議決定「行政改革に関する当面の実施方針について」、これをずっと見ましても、各省庁それぞれ書いてありますが、宮内庁はここには書いてないんですね。今まで、この臨調行革路線というものの範囲内だとおっしゃるのであれば、経費とか人員とか機構でどのようなことをなさってきたか、またそれらは行政管理庁に御報告なさっておるのかどうか、こういった点伺いたい。
  56. 山本悟

    政府委員山本悟君) 行革の対象かという意味におきましては、当然対象でございますので、臨調におきましても各種の調査をされたわけであります。しかしながら、臨調の第一次から第五次までの答申におきましても当庁に対しまして個別的に特に指摘受け事項はないということでございますが、その他一般の各省共通事項につきましては、歳出の節減合理化あるいは定員の削減計画、そういった各省庁並びの事項につきましては当然に適用があるものというように存じております。  職員のことで申し上げましても、今までも累次にわたりまして職員削減計画というのは閣議で決めてやってきているわけでありますが、その場合には宮内庁におきましてもそれぞれ他の官庁と同じ建前におきましてその適用を受け職員数の減員を受けるものは受けるというようなことになっております。
  57. 内藤功

    ○内藤功君 次に伺いたいのは、天皇及び皇族を初め宮内庁に出入りしていることをもって宮内庁御用達、こういうふうに言っておるんですが、一部の業者は自動車やPRポスターに「宮内庁御用達」と刷り込んで利用している人がおりますが、このような御用達ということを宮内庁としては公式に認めておられるのかどうか、また認める場合にはどういう手続で従来やってきておるのか、こういった点を伺いたい。
  58. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御指摘のいわゆる宮内庁御用達の制度は、古くは明治二十四年に宮内省用達称標出願人取扱順序という内規をつくりまして、当時といたしましては商工業の御奨励というものを目的としたようでありますが、そういうものが明治二十四年にできまして、その後、昭和十年に改正になって宮内省御用達称標許可内規というものになりまして、この制度は実は昭和二十四年の二月まで運用していたわけでございますが、それ以降はそういった取り扱いをやるということをやめまして、現在はそういう制度を全く運用いたしておりません。  したがいまして、今新しく宮内庁の何らかの手続によって御用達というものを認めるというようなことはいたしていないわけでございます。現在は、いい商品のものであれば通常べースでどの業者からも買っているというようなことで、いわゆる御用達制度という昔式なものは全くやっていないということでございます。ただ、実際に宮内庁に物を入れており、そしてかつ弊害がなければ実際に書いているものを一々目くじらを立ててとがめ立てまではしていないというようなことでございまして、特段にそのために弊害があるというようなことが感ぜられる場合でありますならばそれ は実は個々の問題といたしまして注意をするというような取り扱いでいたしているわけでございます。  したがいまして、基本的に申せば、制度としての御用達制度というものは昭和二十年代の初めまではあったけれども、それ以後はないということが申せると思います。
  59. 内藤功

    ○内藤功君 今のでよくわかりました。今の御答弁ですと、今、御用達制度というのはないんですね。  ところが、我々が町を歩きますと、至るところにいろんな商売、いろんな商品で御用達というのが書いてあるんですね。私は商売に天皇宮内庁がこういう形で利用されているというのは、どちらかといえば余り好ましいことじゃないと思うんですね。具体的な弊害が出てから是正するというのもわかりますが、なおこれについて何か注意をするとか一般的な対応をとるとかいうことは全然お考えになっていませんか。
  60. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御用達というのを調べてみましても、それほど多くのところのものがやっているとも思えませんけれども、田舎あたりに行ってみますと古い看板に何々殿下お買い上げという式なことが書いてあるようなものもございます。私ども地方へ参りましても時々目につきますが、ああいったようなものまで考えていきますと、そのこと自体はうそじゃなかった、だから今消しなさいということまで言わなきゃならないほどのものなのかどうか。例えば非常に大きな新聞広告にわっと出す、そこに麗々しく御用達と書くというようなことにつきましては実は注意した例もあるわけでございますが、そういったような具体の問題といたしまして、どの程度影響があるかというようなことで個別の問題として判断していった方が適切なんじゃなかろうか、実際に合うのじゃないかというような気持ちで今までやっているわけでございまして、なお、さらに御注意のありました点も踏まえながら、具体の問題の処理として対処をしていきたいと思います。
  61. 内藤功

    ○内藤功君 次に、一年間に皇室で行われる祭祀等は何十件ぐらいありますか。  それから、ついでに聞いておきますが、掌典職の人数は何名いらっしゃいますか。
  62. 山本悟

    政府委員山本悟君) 毎年、定例的に行われております祭典はいろいろあるわけでございますが、多いものから申しますと、十日目ごとに旬祭というようなお祭りがあるわけでございます。これは十日目ごとでございますから、一月一日だけ別になっておりますので、これだけで三十五ある。それからこういったもののほかに、毎年の大きなお祭りとしましては、約二十一ぐらいの祭典が行われているということでございます。
  63. 内藤功

    ○内藤功君 掌典職の数は何名ですか。
  64. 山本悟

    政府委員山本悟君) どうも抜かしまして失礼をいたしました。  掌典職の職員といたしまして、内廷職員として雇用いたしております者は十二名でございます。
  65. 内藤功

    ○内藤功君 内廷費のうち、こういう掌典職を初めとする天皇家の私的な使用人の方の人件費金額でどのくらい、また割合でどのくらいですか。
  66. 勝山亮

    政府委員勝山亮君) お答えをいたします。  現在、昭和五十五年に改定をいたしました定額内廷費二億二千百万円というのがございますが、このときに、今お答えいたしましたように、内廷関係人件費は二十五名でございますが、この人件費は約三五%でございます。現在もおおむねその数字ということになっております。したがいまして、物件費の方は六五%ということに現在なっております。
  67. 内藤功

    ○内藤功君 宮内庁職員、これは国家公務員でございますが、こういう宮内庁職員天皇の私的行事と言われておる各種皇室の祭祀に関与している点につきましてお尋ねしたいと思うんです。  宮内庁の従来の御説明を拝見いたしますと、皇室祭祀は私事であるため天皇の私的な使用人である掌典職がとり行う、こういうふうに御答弁なさっていますが、このようなお考えでよろしゅうございますか。
  68. 山本悟

    政府委員山本悟君) そのとおりでございます。
  69. 内藤功

    ○内藤功君 そこで、私最近読みました元侍従職の入江相政さんの「宮中侍従物語」、それから針生誠吉氏外がお書きになった「国民主権と天皇制」、これをちょっと読んでみたんですが、これを読みますと、宮内庁の式部職の儀式第二係という職員の方が掌典職を補助して祭儀を手伝ったり、祝詞、お祝いの言葉を書いたりしていると書いてある。私は、これは憲法の定めた政教分離という原則に反するのじゃないかと思って読んだのです。  また、こればかりでなくて、毎朝行われる宮中三殿に対しての代拝、これを宮内庁職員天皇にかわって代理を務めておられるということも聞いておりますが、これも現在続いているのかどうか。  この二点です。
  70. 山本悟

    政府委員山本悟君) 宮中三殿におきますお祭りに際しましてのことでございますが、先ほど申し上げましたように、祭祀そのもの、祭儀そのもの、これは内廷職員でありますところの掌典それ自身が行っているわけでございまして、ただいま御指摘になりました事項は、祭祀そのものということではなく、職員皇室が宮中三殿において祭典等を行うに際しまして事前の準備とか後片づけといったような意味での用務に携わっている、こういう考え方でございます。また、実際にその行っているところを見ましても、それは準備ないし後片づけということでありまして、お祭りそのものに携わっているということはないわけであります。これは、そういう意味におきまして宗教活動を行っているというぐあいには私どもはとっていないわけでございます。  それからもう一つ、御代拝についてでございますが、現在、侍従が御代拝を行っております。これはやはり侍従というものの職務というのは、陛下のお身近にあってあらゆる陛下の御行動につきまして御用を行うというのがこれがまさに侍従というものの職務であろうと思います。これまた御先祖のみたまに対します礼拝を陛下の側近に奉仕するという職務に関連して行っているというぐあいな考え方でございまして、まさに祭祀といいますか、宗教行為を行っているというぐあいにはこの面につきましてもとっていないわけでございます。
  71. 内藤功

    ○内藤功君 かつて昭和五十年、一九七五年五月二十九日の当委員会におきましての質疑で、宗教法人としての伊勢神宮における侍従の御参拝の問題が出たことがございますね。その問題と私は相通ずる憲法解釈上の問題でもあると思う。私は、天皇にも私人としての信教の自由はあると思うんですよ。信仰は本来個人の問題でありまして、天皇ともし違う異宗教の信者の方が侍従でいらっしゃった場合、こういうことも考えられるわけですね。その侍従の方に代拝させるというようなことになりますと、これは行き過ぎであって違憲の疑いが濃くなる、こういう場合が私は考えられると思うんですね。いろんな人の信条がありますから、表からわからぬ。憲法二十条との関係、大体お答えが出たけれども、改めてこの点でお伺いしたいと思います。
  72. 山本悟

    政府委員山本悟君) 憲法二十条の関係で、信教の自由の規定でございます。その意味から申し上げまして、確かに陛下にも信教の自由はある、同時にお使いに立つ者にもある。もしも、お使いに立つ者がそういう感じでもってそのお使いには立てないということであれば、これはまさに信教の自由で何らお使いに立たないということについて特段のことはなかろうと思います。そこの自由は、これはやはり個人に保障されたものであろうと思います。  私は、そういう意味で、拝礼をすること、御代拝をすることが強制されるという意識を持ったことはございませんし、また今まで私の経験あるいは聞いたところによりますと、そういう意識を持った侍従がいたということも私は聞いておりません。しかしながら、もしも仮定の問題として そういうことがあったらどうだとおっしゃられれば、これはやはり信教の自由の規定というものは非常に重い価値を持つものであろうというように存じます。  しかしながら、伊勢神宮への御代拝というのは、現在で言えば別な宗教法人になっております伊勢神宮というようなことでございます。そういったような意味からいって、侍従が立つということにつきまして、侍従のほかの内廷職員の方がベターじゃないか、安全じゃないかというようなことであったことは間違いないし、御指摘のあったようなことで現在は内廷職員が神宮の場合には代拝に立っているというようなことでございますが、宮中三殿と申しますのは、建物は別でございますけれども、通俗的に言えばそれぞれの家にあります神棚みたいなものだろうと思います。言葉は非常に世俗でございますけれども、家の中でお祭りになっているものでございます。そういうようなものからいって、おそばにお仕えする者に、かわって毎日先祖の霊に拝礼をさせられるということは、侍従というものの職務から見ましてもそれをもって憲法違反であるというようなことまで私どもとしては考えていない。こういうようなことで現在まで処理をさしてきていただいていると思います。
  73. 内藤功

    ○内藤功君 いろいろ興味深くお答えを伺っておきます。  次に、質問変わりますが、掌典職、とりわけ掌典長の権限についてお尋ねしたいんです。  まず、私は神社新報という新聞を拝見したんですが、これを読みますと、昭和五十八年の二月に神社本庁より皇室祭祀に関し富田宮内庁長官あてに質問書が提出されています。その内容は全体的に九項目から成っておりますが、二、三の内容を紹介しますと、例えば侍従の毎朝御代拝が古来の伝統的な祭服からモーニングに変わったのはなぜか、それから明治節祭などが行われなくなった、廃止された理由を承りたい、それから皇族の妃殿下のキリスト教入信についての風評が多いが事実か、浩宮が英国の宗教大学オックスフォードヘ長期留学されることの関係をどのように考えるか、これは私が言うのじゃなくてここに書いてあるんですが、等々の質問がここに出ておるんです。非常に幅広い質問です。宮内庁からの返事をもらうのに相当時間がかかったというようなことも記事として見えます。  まず最初に、私が今紹介したような質問は、宮内庁長官あてに届いたんですか。
  74. 山本悟

    政府委員山本悟君) そのとおりでございます。
  75. 内藤功

    ○内藤功君 この新聞によりますと、昨年の五月十三日付をもちまして、天皇の私的使用人でいらっしゃる掌典長の東園基文氏から書簡という御返事が出ております。  そこで、宮内庁長官にお尋ねしますが、宮内庁長官あての質問書に天皇の私的な使用人の掌典長が宮内庁長官にかわって回答することができるのでありましょうか。この点をひとつ。
  76. 富田朝彦

    説明員(富田朝彦君) ただいまお尋ねの掌典長の回答、性格でございますが、私は陛下が祭祀にみずから当たっておられるその御動静をうかがっておりまして、長官としては十分な関心を持つのが当然のことと思います。しかし、この場合、この掌典長の、そこのお手元の新報に回答文が要約されておりますが、その中にありますように、いわゆる三殿、宮中三殿をお守りしている者としてという表現がありますが、これをもう少しかみ砕いて考えますと、宮中祭祀をつかさどる責任ある者という意味の掌典長でございますから、そういうことに関して掌典長が回答するということは十分権限を有する者、また権限を有する者として神社本庁事務当局もこれを受け取られておると理解をいたしております。
  77. 内藤功

    ○内藤功君 私が指摘したのは、掌典長はあくまで身分としては国家公務員ではなくて天皇の私的な使用人だ、従来こう言っておられるので、それが宮内庁当局の指示や指導があれば格別ですが、そうでなくて対外的に掌典長の肩書でもって回答するのはどういう権限かということでお聞きしたわけであります。私は、宮内庁それから内部の体制を、この問題も含めて今の時代にマッチした、一般国民からも理解できる、そのほか、失礼な言い方かもしれませんが、時代に非常におくれたものではなく、進展にやっぱり応ずるような、変化というものには柔軟に対処さるべきだということだけ申し上げておきたいと思うんです。  先ほどの皇族の妃殿下のキリスト教云々とか、それから浩宮の留学される大学がどういう大学だとかというようなことをいろいろ言われる向きもあるでしょうけれども、やはり時代の進展、それから皇族といえども一人のやっぱり人間としての信教の自由というのは持っていると私は思います。そういった点についての、時代から離れない感覚というものは必要なんじゃないかなという感じがします。何かございましたら、これについてお答えいただきたい。
  78. 富田朝彦

    説明員(富田朝彦君) ただいま例として示されました事柄については、回答が遅くなったのもその理由が私はあったと思いますが、その間に何回か掌典職とも神社本庁側の方は接触されておりますから、そういう過程で妃殿下にそれは当然なられる方が信仰の自由があるということは当然のことでございます。しかし、そういう現状にはないというようなこと等、それから浩宮殿下の今のお話の件について、これは委員も仰せでございましたが、オックスフォード大学が直ちに宗教大学とは考えられませんので、そういうようなこともそれぞれその間において話が出て、したがいまして掌典長の回答文の中にはそういうような点は省かれているわけでございます。  そういうこととあわせまして、これは第一問にございましたが、行政改革のさなかにおいて多いわゆる国家行政組織としては十分現在の感覚というものを承知の上、合理化その他、感覚を含めて磨くべきであろう、こういうことの御指摘につきましては十分心得ております。
  79. 内藤功

    ○内藤功君 次に、問題変わりますが、四月の十三日に政府・与党の方で靖国神社公式参拝について合憲とする見解をまとめまして、この報告を中曽根内閣総理大臣に報告をされて、総理の方では、新聞の報道によれば、内閣法制局で検討させ、できるだけ早く結論を出すように指示をすると、こういうふうに答えられたと聞いております。しかし一方、政府は、昭和五十五年の十一月に、内閣統一見解として、「違憲ではないかとの疑いをなお否定できない」、こういうことで結ぶ統一見解を示しておられるわけですね。私は、昨日、この問題について内閣官房長官に当委員会での質疑通告をいたしましたけれども、きょう記者会見という理由で官房長官に御出席いただけない。私は、記者会見も大事だが、国会は大事だと思いますね。非常に遺憾であります。遺憾でありますが、担当大臣である官房長官はいない、しかし総務長官おられるので、あなたのお答えすることができる範囲で私は質問したいと思うのであります。  私は、率直に言いまして、昭和五十二年の七月十三日に最高裁が判決を出したという問題も含めて、国務大臣の靖国公式参拝についてはこういうふうに指摘をしておきたいので、総務長官、よく聞いていただいて、私の見解についての御反論なり御答弁があれば承りたい。  一つは、総理大臣を含めた国務大臣が靖国神社に公式参拝するというのは、これは私は憲法の宗教上の信条告白ということで宗教的活動だという見解を持っておるのでございます。それから、国務大臣の公式参拝というものによって靖国神社という一つの宗教法人、宗教団体に一定の権威を与えることになる、これは二十条一項の特権を受けてはならない、ここにも抵触をしてくる。もう一つ、玉ぐし料等の問題は、国費から支出されることになれば、これは明確な憲法八十九条の公金を宗教上の組織または団体の使用、便益、維持のために支出してはならぬという、ここに抵触をしておる。こういう見解を持っておるわけです。  五十二年の七月十三日の最高裁の判決は、この宗教的活動とか、公金支出とか、こういう範囲 を狭く解釈するという、こういう手法をとったのであります。今、合憲の見解をとる方々はこれをよりどころにしておるんですが、私は、この判決は地鎮祭という世の中で非常に世俗的に行われている行事についての判決だというふうに見なくちゃいかぬと思うんです。この地鎮祭の判決と同一線上に、靖国神社に対する総理以下国務大臣のその資格における公式参拝というものをずっと論理的につなげていくことは、私はこれは大きな間違いを犯すものだというふうに思います。ですから、津地鎮祭判決の最高裁の理論から推していっても、靖国の公式参拝というのはこの観点に立っても違憲だという結論に私はなると思うんですね。  特に、津地鎮祭判決、最高裁の判決は目的と効果というところで限定解釈をしている。つまり目的が宗教的意義を持つ行為、それから効果においてはある特定の宗教に援助、助長、促進、あるいは逆に圧迫、干渉を加える行為が憲法で禁止している宗教的活動、宗教的行為だと、こう言っているわけです。これで見ますと、やはり靖国の公式参拝というのは、靖国神社あるいは神道というものに対して非常なやっぱり援助を与える、ほかの宗教には圧迫を与えるという性質の行為ではなかろうか。これが一つ。  それから玉ぐし料の国費負担につきましても、財政援助的な行為ならばこれは憲法違反だ、これが最高裁の考え方ですが、まさにこれは財政援助、間接的な財政援助ですね、経費をそれでもって償うことによって財政援助をするというところに私はなると思うんです。ですから、昭和五十二年のこの最高裁判所の判決の出たことによって靖国公式参拝が合憲の根拠に使われるということは私は軽率に断定できない、むしろ逆の結論になると思うのでございます。  私の見解だけを述べましたけれども、総務長官、これらの点について今どんなふうに考えていらっしゃるか。お考えの点がありましたらば、また私に対する御反論がございましたら御教示をいただきたい。
  80. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) いろんな角度からの多岐にわたってのお話でございますので、私のお答えは外れることがあるかとも思います。いろいろ私、個人的には考えておりますけれども、まだ十分私自身の考えはまとまっていないのが現状でございまして、これが私の見解であると申し上げるのは差し控えた方がいいのではないかと実は思っていますが。  そこで、戦前に限らず、いろんな方々が靖国神社にお参りになる。そのお気持ちというのは、そう一色でなくて人さまざまじゃないかというようなふうにも思えます。したがって、一義的にこういう目的のもとですべての人がお参りしておったと言ってしまうのも言い過ぎではないかというような感じがしなくはございません。大変個別的になりますし、私自身十分熟していない点がございますが、一つ言えることは、公金で玉ぐし料をお納めする、このこと自身が今お話がございました公的な援助あるいは助長あるいは他宗教に対する圧迫ということになるのであろうかという点については私、疑問を持っています。というのは、いろいろ法律用語で言えば役務を提供していただくわけで、それに対する対価というふうにもとれるのではないか。それを超えて援助だ、助長だ、他の宗教に対する圧迫だということまで言えるのかなという気持ちがしなくはございません。  また、日本人の宗教観というのは、これも人によりますが、大変に多様であり、個々の宗教、いろんな宗派なりがありますが、それに対して、何といいますか、寛容といいますか、私自身もいろんな宗教団体にお参りもしますし、たすきもかけていったりします。また、ある宗教団体に属しておられる方々が神社にも行かれる、おさい銭も出されるということもあろうと思いますし、日本人の宗教観というのは西欧的な意味での宗教観と少し違った面も、大勢の人がと言えるかどうか別として、無宗教的な立場をとる人とそうでない人がおられるのじゃないか。そういう観点から、この靖国神社問題というのもいろんな角度から考えてみる必要がありはしないだろうか。したがって、津の判決にいたしましてもこれは地鎮祭だけの話でございますが、それだけから一般的な結論を出すのは少し早急かなという気がいたしておるところでございます。  十分なお答えになっておりませんが、とりあえず浮かびました考え方だけを御紹介いたします。
  81. 内藤功

    ○内藤功君 今のお話の中で、津の地鎮祭判決をひとつよくお読みいただくと、あれには財政の援助となるような行為あるいは財政援助的な行為というふうに書いてありまして、私は経費の一部を支弁するというのはこれは少なくとも間接的な財政援助行為だと、こういう見解をあの判決を読んだときから持っておりますし、そう言う学者もかなりおるわけでございます。ただ、これは論争になって、もう時間がありませんから、私はこのことを指摘しておく。  それからもう一つは、今、神社というものについての考え方がいろいろあるということを言われました。これについても、例えば、一つ指摘しておきたいのは、これはまだ上級審の判決がありませんので地裁の判決が一つの権威を持ちますが、箕面の、大阪地裁の忠魂碑判決、五十七年三月二十四日、それから慰霊祭判決、同じく五十八年三月一日、これもごらんになったと思います。これには、特に我が国の国民性について触れて、「宗教については極めて無節操であり、神と人との区別がつかない特異な民族である。このような社会に、新憲法で採用された政教分離の原則を根づかせるためには、この原則を厳格に解して貫き通さなければ、画餅に等しい。」、こういう指摘をしておるんです。今、中西長官の答弁に関連して、政教の分離を日本の過去の歴史、憲法の規定というものから見て厳格に解釈すべきと、こういう見解が存在しているということも十分にやっぱり政府は考えに入れなくちゃいかぬと思う。  最後に、報道によりますと、総理の私的諮問機関ですか、あるいは私的懇談会、これをつくって靖国の公式参拝について広く有識者の意見を聞く、こういうことが報道されております。総務長官、こういう動きがあるんですか、こういうものをつくるということが決まっておるんですか、この点のお話を伺いたい。
  82. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 先ほどのことに関連して、最後のことにもお答えいたします。  私は、玉ぐし料については、いろいろ儀式をやっていただくその役務に対する報酬ということであって、助長とか、援助とか、あるいは他宗教に対する圧迫というふうには理解しがたいのではないかということを先ほど申し上げました。予算でも組んで、国がそれでもって何か補助金を出すとかいうことになればこれは援助あるいは助長と言えるかもしれない。そこまではまだだれもやった事実はないというふうに思えるんです。  それから箕面の忠魂碑あるいは慰霊祭のことについて判決が、日本人の宗教というものは大変無節操であるというようなこと、確かにあったように思います。この点については、無節操というよりは、日本人の信条そのものからいいますと、西洋的な一神教的な、他の宗教を排除するようなそういう宗教観というのは日本人には余り一般的ではないのじゃないかというふうに私は思っておるところであります。  それから最後の問題ですが、懇談会をつくるという話、私もこれは新聞報道で知っておる程度でありまして、けさも官房長官ともお話ししましたが、これはまだ話題になっておりません。どういうふうになるか、もう少し推移を見なければ何とも私からは御答弁しかねるのが現状でございます。
  83. 内藤功

    ○内藤功君 政府の統一見解も明確に示しておりますように、また憲法の明文の解釈からもはっきりしていますように、この公式参拝などということは、今の段階で合憲の決定を出し今までの見解を覆すということは、私はこれは重大な問題だと思うんです。  なお、官房長官の御出席を得まして、引き続き 他の機会にこの問題は質疑を申し上げたいと思います。
  84. 高平公友

    委員長高平公友君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。    午前十一時三十五分休憩      —————・—————    午後一時二十一分開会
  85. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  86. 柄谷道一

    柄谷道一君 宮内庁要覧を拝見いたしますと、天皇陛下が日本国憲法の定めによって内閣の助言と承認により行われた国事に関する行為、五十七年度の場合、陛下がごらんになり毛筆で御署名になるか捺印される書類は、法律、政令、条約の公布、国会の召集、総選挙施行の公示、内閣総理大臣の任命、最高裁長官の任命、国務大臣の任免等の認証、大赦等の認証、栄典の授与、批准書等の認証、外国大使等の接受等で年間約千百件。新年祝賀の儀のほか、認証官任命式、外国特命全権大使の信任状及び解任状の奉呈式等国家的儀式が約五十回。国の象徴としての立場から催される儀式、行事、御会食、茶会、拝謁、御引見が約二百回。外国元首との親書、親電の交換、約五百六十件。その他、これに関連して陛下のお手元に差し出された宮内庁関係の書類も相当に上っておる。そして、このような国事に関する行為のほか、お受けになった御進講、五十四回。その上、行幸、外国御訪問等々を考えると、御高齢であられる陛下には相当のこれは激務ではないか、こう拝察されるわけでございますが、宮内庁はこのような現状をどのように見ていらっしゃいますか。
  87. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御指摘のとおりの公務を陛下はおこなしになっていると存じます。そういう意味ではなかなかの御激務でもあるし、いろいろの行事等も多数に上っているわけでございますが、幸いに、現在、陛下は大変御健康で、また公務を優先するというようなお考えによりまして、ただいまおっしゃられましたような各種の御公務を精力的にこなしていらっしゃる、こういうような御状況であろうと存じます。  ただ、言うまでもないことでございますが、こういった数多くの御公務をおこなしになります反面、やはり陛下は御高齢である、これも事実であるわけでございますので、こういった基本的な御公務はおこなしになりながら、かつ、そのおこなしなされるやり方がよりスムーズ、より御負担を軽減するような格好でできないかということに今宮内庁としては知恵を絞らなきゃならないというふうに感じているわけでございまして、そういった努力は常に続けてまいる必要があると思っているところでございます。
  88. 柄谷道一

    柄谷道一君 また、陛下の御日常は、毎日、九時半ごろ、吹上御所から宮殿の表御座所においでになりまして、午前中、公務室で国事に関する執務を行われ、一たん吹上御所にお帰りになって昼食をされる。これらの行事があるときは、再び午後にも宮殿に出かけられて、お帰りになるのは夕方遅くなることも多い。また、昼間ごらんを願えなかった書類は、夕刻、吹上御所に届けられて、午後五時から六時ごろまでの間、時としては御夕食後も吹上御所で公務をおとりになっている。そして、その日の公務はその日のうちにお済ませになっているとも聞き及ぶわけでございますが、そのとおりでございますか。
  89. 山本悟

    政府委員山本悟君) ただいま仰せになりましたことは、事実さような事例はあるわけでございます。  お考えといたしまして、陛下はその日の仕事はその日のうちに終わらせてしまう、こういう原則を立てて御公務の処理をなさっていると存じます。そういたしますと、具体的に、時期にもよりますけれども、例えば年度末のような時期には、内閣から持ち込まれる書類が夕刻以後になって届くということもないわけではございません。そういうような場合には、やはりその日のうちに処理するというお考えから、ただいまおっしゃいましたように、吹上にお帰りになりましてから後でも、書類を持ってこいということで、侍従がそれをお手元に差し上げて御決裁になるというようなこともあるわけでございますし、また午後持ち込まれたものが、その日はちょうどいろんな宮中行事があるというようなことになりますと、やはりその間を縫ってということになりますから、吹上に持って参上をして、その日のうちに御決裁になるというような場合も起こっているようでございまして、ここに記載をされておりますことは事実としてあるというぐあいに存じております。
  90. 柄谷道一

    柄谷道一君 陛下の御性格を拝察いたしまして、国事に精励されるお姿はとうといと私も思うわけでございますが、しかし国民として御高齢を配慮いたしまして、そのような忙しい御日常をいつまでもお続けになることがよいかどうかということはまた別の問題ではないかとも思えるわけでございます。  現在、国事行為の臨時代行に関する法律がございます。これは昭和三十九年五月二十日に施行された法律でございますから、当時、陛下はまだ六十代であったと思うわけでございます。その第二条に、「天皇は、精神若しくは身体の疾患又は事故があるときは、摂政を置くべき場合を除き、内閣の助言と承認により、国事に関する行為を皇室典範第十七条の規定により摂政となる順位にあたる皇族に委任して臨時に代行させることができる。」、こう定められております。したがって、委任による臨時代行は、現行法では「精神若しくは身体の疾患又は事故がある」場合ということに限定されているわけでございますが、なぜこのような場合にのみ限定されているのか、お伺いいたします。
  91. 山本悟

    政府委員山本悟君) 法律行為としての陛下の御行為、これは憲法で定められた国事行為になるわけでございます。国事行為はやはり憲法で定められたところによって象徴である天皇御自身がおやりになる、これは当然の基本原則であろうと存じます。  その場合に、代理という格好になりますのは極めて例外であるということは申せますし、またそうでなければならない性質のものであろうと存じます。そういうような配慮から、この臨時代行法におきましても、「疾患又は事故」というような言葉を使いまして、非常に限定をいたしているというように存じます。  御案内のとおり、摂政を置く場合には「精神若しくは身体の重患」、疾患よりも一つ程度が重いわけでございますし、それから事故の場合には、摂政の場合には「重大な事故」ということでございまして、この摂政を置く場合にはいずれもこれは法定代理ということで、御本人の意思に基づくものではないということになっていると存じます。  それに対しまして代行法の方は、これは「疾患又は事故」ということでございまして、これは御本人の意思に基づく委任というような建前にもなっているわけでございますが、いずれにしましても、国事行為としての法律要件を伴います行為そのものは極めて重要な事項でございますので、それの代理ということは極めて慎重な態度をもって臨んでいるということであろうと存じます。事実行為としてのいろんな各種の御行為、これをどう扱うかというのはこの代行法そのものとの法律論ではないわけでございまして、これはいろいろな意味でもって幅広く考えていかなきゃならない、こういうことになろうかと存じます。
  92. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、国家の象徴として国事行為をなされる、これは当然のことと思うのでございますが、これは総務長官にお伺いいたしますが、一言で国事行為といいましても非常にたくさんのものがあるわけですね。国会の開会式においでになるとか、内閣総理大臣の任命であるとか、非常に重要なものもございますし、また考えようによれば、外国大使の接受ないしは法律、条約、政令等にいたしましても、例えば政令の場合どうかという問題もございます。認証官の任命につきまし ても、これにも認証官にはおのずと軽重があろう、こう思うわけでございますし、栄典の授与につきましてもいろいろ議論すれば問題がある。したがって、この際、現在の国事行為の臨時代行に関する法律そのものを内閣で見直しまして、代行の範囲を拡大して、皇太子が代行できるような問題についてはできる限り代行することにより陛下の御多忙な業務を軽減するということについて、内閣は助言をされる用意はございませんか。
  93. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 柄谷先生の御質問の趣旨といいますか、お気持ちは十分理解できるところでございます。  先ほど来、山本次長もお答えしていますが、ともかくお健やかでお過ごしでございまして、臨時代行法の要件には現在は当たらないのが実情でございます。そういったようなことで、今この臨時代行法を急いで改正しなければならないというふうには考えておりません。  ただ、御公務を御遂行いただく場合に、過重な御負担が健康上に悪い影響を与えるようなことがあってはならない、そういうようなことについては宮内庁はかねていろんな配慮をしております。具体的な問題についてはちょっと詳細にわたり過ぎますから私からは申し上げませんが、いろんな配慮をして可能な限り御負担をおかけしないようにしようという配慮は実はいたしておるところでございます。
  94. 柄谷道一

    柄谷道一君 私も今直ちにということは必要はないとは思うのでございますが、陛下も何歳まで御健康で国事行為をとり行われるか。これは皇室典範の定めによりまして生涯天皇でございますから、やがて九十歳を過ぎられ、百歳近くになってくる、こういうことになりますと、おのずからこの法律についても範囲そのものがもう一度見直されていい時期があるのではないか。これはひとつ内閣においても宮内庁と十分御協議になりまして、陛下がまだお元気だからいいわというだけではなくて、やはりこの問題については絶えず陛下の御健康等を配慮しながら見直していくという姿勢が必要ではないだろうか。あわせまして、儀式、行事、御会食、茶会、拝謁、御引見等につきましては、これは運用の問題でございますから、その一部ないしは相当部分皇太子が代行をされても差し支えないのではないかとも思えるわけでございます。この点に関してはいかがでございますか。
  95. 山本悟

    政府委員山本悟君) 確かに御指摘の点は運用の問題でございますので、そういうような実態に合ったいろいろな執行の仕方というものを考えていく必要があるわけでございます。  ただ、先ほど来申し上げますように、現状においては非常に御激務ではございますが十分に御元気をもっておこなしになっている、こういう実態が現状あるわけでございますが、さらにその上で、もう少し申し上げれば、過去から比べればずっといろんな意味の儀式にいたしましても諸行事にいたしましても減らしもしてもき、短くもしてきているわけでありますけれども、そういう体制であるからまた現状は十分におこなしになっているというような言い方もできるのかとも思いますけれども、そういったようなことは常に頭に置きながら、今御指摘にありましたように、いろいろな諸行事につきましても考えていく必要があろうと思っているわけでございます。確かに御高齢であることは間違いないわけでございますので、それで御負担になる、要するに御負担と思えるかどうかというような判断はおそばにいる者として十分にしなければならない責務でございますので、そういったことはよくよく頭に置きながら考えさせていただきたいと思っておるところでございます。
  96. 柄谷道一

    柄谷道一君 陛下のお気持ちはお気持ちとして、私が今申し上げましたような国事行為の臨時代行に関する法律について見直す必要があるかどうか、そして公的行事についてどのような部分について皇太子がこれを代行して行われることがいいのか、この問題はやはり総理府長官なり身近にあります宮内庁がそんたくをして配慮していかなければならない問題であろう。総務長官は、今直ちに法律改正の要はないということでございますけれども、絶えず私の指摘しましたような目を注ぎながらこの問題に対処願いたい、こう思うんですが、どうでございますか。
  97. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) お気持ちは十分に理解できますし、そのお気持ちを体していろいろ検討もし、研究もいたしたい、宮内庁と相談もいたしたい、かように思います。
  98. 柄谷道一

    柄谷道一君 次に、外務省にお伺いいたしますが、外務省は五十九年三月十六日の閣議で国賓及び公賓の接遇について手直しをする決定を行われております。したがって、かつて三十九年六月三十日の閣議決定というものが約二十年ぶりで改められたということになるわけでございますが、これをあえて改めました理由を明らかにしていただきたい。
  99. 甲斐紀武

    説明員(甲斐紀武君) お答えいたします。  国公賓の接遇様式を改めました理由でございますが、近年、我が国の国際的地位の向上に伴いまして、外国との諸般の交流が非常に活発になっております。それにつれまして、多くの外国の首脳クラスの人々が我が国を公式に訪問したいという強い希望を表明いたしておるわけでございます。私どももこういった諸外国の首脳からの希望にできるだけ応じていきたいという気持ちを持っておるわけでございますが、従来の国公賓制度のもとでは毎年度せいぜい七件か八件程度国公賓受け入れしかできないという事情にあったわけでございます。  したがいまして、こういった事情にかんがみて、第一には、国際的にも十分に礼を尽くしているというふうに考えられる範囲内におきまして従来の国公賓に対する接遇を若干簡素化、合理化いたしますとともに、賓客の地位とか訪日の目的に応じた適切な接遇を行うことができるようにする、第二には、毎年度の一年間の受け入れの数の増加を図る、こういった点から従来の国公賓制度改定を行ったわけでございます。
  100. 柄谷道一

    柄谷道一君 その新しい接遇様式と申しますか、これは諸外国とのバランスは失しておりませんか。
  101. 甲斐紀武

    説明員(甲斐紀武君) 新しい制度といいますか、様式の内容が諸外国との間でバランスを失していないかという御指摘でございますが、国際的な趨勢といたしましても、国公賓に対する接遇は一般に簡素化するという傾向にございます。したがいまして、今回我が方で接遇様式を改めましたことによりまして、外国からの賓客に対して礼を失することにはならないというふうに考えております。  特に、今回の改定におきましては、従来は国賓として接遇することになっておりました外国の首相クラスの賓客を公賓として接遇するようにしております。ところで、諸外国におきましても、通常首相クラスの賓客は現在のところ公賓として接遇しておりますし、さらに首相クラスの賓客の受け入れに当たりましては、儀礼面を簡素化して実務的訪問としてむしろ遇しておるということがふえておるわけでございます。したがいまして、こういった首相クラスの受け入れの点を含めまして、その他の面におきましても、今回私どもが決定いたしました内容は諸外国の接遇ぶりと比較いたしましても決してバランスを失しておるということはないというふうに考えております。
  102. 柄谷道一

    柄谷道一君 宮内庁にお伺いいたしますが、この新しい国公賓の接遇は、国公賓に対する接遇をある程度簡素化、合理化するという一面と、そこで簡素化、合理化されたことにより年間の国公賓受け入れ件数の増加を図るということでございますから、この接遇の変更により陛下のお仕事は全然軽減されず、一回一回の接遇時間は簡素化し短縮されても、むしろ陛下のお仕事としては加重されているのではないだろうか、こう思うんですが、実態はいかがでございますか。
  103. 山本悟

    政府委員山本悟君) 新しい接遇基準によりましてどの程度国公賓が増加するのか、これはまだ実績がございませんので明確には申し上げられな いわけでありますが、この改正のねらいが先ほど外務省から御説明になりましたようなことであれば国公賓はむしろふえる、御指摘のとおりであろうと思います。そうなりますと、それぞれの際に、国賓は国賓なりに、公賓公賓としての御接遇を皇室としてもされるわけでございますので、ただいま委員御質問のようなことも起こり得る。これは可能性としてはございます。  ただ、一つ一つの扱いという格好になります場合、国賓の方はほとんど変更ございませんが、公賓の場合等におきましては、向こうの人数の変更でございますとか、今実務的というお言葉が外務省の説明でありましたが、そういった場合の扱いのやり方でございますとか、例えば同じ午さんをやるにいたしましても、従来でありますと豊明殿でしたのが、先般ベルギーの総理が数日前参りましたが、あのときは連翠という部屋で行われるというような、いろいろな変更というものはこういったことに伴って起こってくるというような事態がございます。ただ、総数としてふえてくれば陛下としてのお出ましになる回数はふえる、そういうことも可能性としては考えられないわけではございません。
  104. 柄谷道一

    柄谷道一君 この接遇について、すべてについて陛下がおいでになるのがいいのかどうか、この点についてもよく御配慮になりながら運用をしていただきたい、こう思います。  そこで、西欧諸国の王室に比べまして、日本の皇室が閉鎖的で国民に体温が伝わらないのではないかと指摘する向きがございます。  例えば、スウェーデン国王及び王妃の御来日を報じました五十五年四月十日付の新聞にはこのようなことが書いてございます。   訪日に王室からついてくるのは、侍従長、女官長、侍従武官長に新聞係秘書の四人。あと首席随員としてのウルステン外相ら外務省関係者に駐日大使夫妻を含めて公式随員は十人という少なさだ。非公式随員も、ご夫妻の身の回りを世話する王宮使用人が二人、ほかに護衛官など計六人に過ぎない。  日本の場合はどうだろう。両陛下のご訪米の際の公式随員は二十二人でそのうち宮内庁関係者十三人、非公式随員十五人のうち十二人。昨年秋、東欧を訪問された皇太子ご夫妻さえ、公式随員十人のうち宮内庁関係者七人、非公式随員十人のうち同じく七人、といった具合だった。  「時代に調和しながらスウェーデンのために」というのが、一九七三年九月、王位につかれた時、政府や国会国民に誓われた国王のモットーだ。そのことば通り、スウェーデンの王室は時代の流れに即して、国民と共に歩んでおられるようだ。その歴史と国情の違いはあるにしても、日本の皇室宮内庁関係者が参考とすべき点も少なくない気がする。 こういう指摘もございます。  さらに、本年二月二十九日付のロンドン特派員の報道によりますと、   英国留学中の浩宮さまは、オックスフォードの寮生活を満喫されているようだ。二十四歳の誕生日の記者会見では「結婚相手はどんな人を」との質問に、「会った時のひらめきとフィーリング。でもまだ現れていない」と即答した。頭の回転の速い好青年である。  だが、殿下の肉声は日本に伝わらない。宮内庁が「前例がない」と拒んでいるためだ。最近では、趣味のビオラ演奏の音も困るとエスカレートしてきた。楽器の音までだめだとは、どう考えても不自然で理解に苦しむ。そして、英国の状況を述べました後、   英国は英国、日本は日本とはいえ、英王室一家からはその「体温」が伝わってくる。  寮の自室で友人のためにコーヒー沸かしで日本酒の熱かんをつくる。そんな様子を楽しそうに紹介される浩宮さまのナマの声は、一生懸命勉強に励む彼の何よりの英国便りと思うのだが。 これは二つの事例を挙げたわけでございますけれども、もちろん日本には日本の歴史と伝統がございます。国情も異なり、西欧のまねをせよと私は言うつもりはございません。しかし、宮内庁はもっと開かれた皇室国民に敬愛される皇室という点について配慮をいたすべき点が多いのではないか、こう思うのでございますが、御所見をお伺いします。
  105. 山本悟

    政府委員山本悟君) ただいまお読みいただきました二つの記事、私も承知をいたしているところでございます。  第一の方のスウェーデンの国王、王妃の来日の報道のこと、そのとおりであろうと思います。随員、随行員合わせますと、スウェーデン国王の来られたときは、調べてみますと十六人ということでございます。スウェーデンの国王その当時三十三歳、御旅行期間七日間という御旅行であったようでございます。それに対しまして、確かに両陛下が御訪欧あるいは御訪米の際はもっとずっと多いということでございますが、このときの御旅行日程からいえば、御訪欧十三日、御訪米十五日というようなことで、行かれた先も広範囲にわたるあるいは国情の違いからの組織の違いもあろうかと思います。いろいろな事情が重なっているわけでございまして、一概には申せませんと思います。  ちなみに、エリザベス女王が来日されたときの随員、随行員は約三十五名でございまして、ほぼ違わない。やはりいろいろな国々によりましてやり方等あるわけでございますが、方向といたしまして今御指摘になりましたようなことは配慮の念頭に置くべきである、これは私どももさように存じます。儀礼を張って、いたずらに数が多いということをもってよしとするということはもちろんないわけでありまして、なるべくお考えのようなことに沿ったような格好でのことは考えていくべきである。  御案内のとおり、皇太子同妃殿下が御名代として外国にいらっしゃいますときは、大体十八名から二十名程度の随員、随行員というようなことになっております。これも相手の国々というようなことでもいろいろ状況も違いますし、いろいろなことがございますが、やはり両殿下というようなことになりますと、例えば一番の首席随員というのを外務省関係その他からもらう、それから宮内庁関係では両殿下の場合で言えば東宮大夫か東宮侍従長かどちらか一人が行くというようなことでずっとやってまいりますと、おのずとそういうような数になってくる場合が少なくございません。  しかしながら、御指摘のような気持ちというものは常に失わない格好で対処をしていきたい。なるべく簡素にということは必要な条件であろうと思います。また同時に、しかし国々によりまして警備の問題でございますとか、いろんなこともあろうと思います。それはそれなりに必要な向きにおきましてはいろいろ配慮されているというようなこともございますし、一概に申し上げかねるわけでありますけれども、方向は御指摘のことは十分に念頭に置いてまいりたいというように存じます。  それからもう一つ、浩宮殿下の「肉声伝わらず」という報道、私も読みました。最後にお読みになりました部分の音の問題、殊に楽器の問題等はちょっと行き違いも実はあったようなことでございまして、そこまで言わなきゃならなかったのか、あるいはしなきゃならなかったのかとか、いささか我々の方でも反省すべきところあると思いますが、皇族さんの場合でもいろいろな方もいらっしゃる。一律に、この方はできたのだからこの方もということがいいのか悪いのか、いろいろな場合があり得るわけでありまして、そういったことも特段に配慮をしながら事に処していかなきゃならないというような気もいたします。  これまた、いろいろ国々のやり方があるわけでありまして、例えばイギリスの女王というような方が、例えば年一回でもいいのですが、定期的に多数の記者と一斉にお会いになる、いわゆる記者会見と日本では陛下の場合には言っております が、そういうことをなさっているかといえば、そういうことはイギリスでは全然ございません。だから、やっぱりいろいろなやり方というものがいろいろあるわけでありまして、それはそれなりにその国に合った格好で処していくことが一番基本としては必要じゃないか。しかし、いたずらにカーテンをすればいいということをもちろん思っているわけじゃございませんので、そういった実情を踏まえながら、また各種の世の中の要望というものを踏まえながら対処をしてまいりたい、かように存じております。
  106. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は非難しているのではなくて、より国民に身近な天皇、身近な皇室、こういうものを希求するがための指摘でございます。例えば国民にとって非常になじみにくい宮内庁用語というものについてもこれを改める必要があるのではないか、現在の取材の範囲についてももう少し広げて皇室の模様というものがより国民に広く理解される、こういう配慮も必要ではないか、こう思うものでございます。この点につきましては、ひとつ宮内庁でも十分の配慮を今後していただきたい。  そこで総務長官、お伺いしますが、私たち三月二十七日に皇居を高平委員長以下視察いたしました。総務長官、皇居内の生物学研究所をごらんになりましたか。
  107. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 残念ながら目の当たりにはいたしていませんが、写真では承知いたしております。昭和三年にできた大変古い建物であるというふうには伺っています。
  108. 柄谷道一

    柄谷道一君 委員長はどうお感じになったか存じませんが、恐らく私の感じでは、当日視察に参加いたしました内閣委員がひとしく感じましたのは、余りにも古く、余りにも質素ではないかという感を深くいたしたと思うわけでございます。陛下が現状でいいというお気持ちはお気持ちとしてとうといものがございますけれども、これらについても一度再建といいますか、改造といいますか、そういうものを内閣としてお考えになる必要があるのじゃないでしょうか。
  109. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 御趣旨でございます。宮内庁の御意見もよく聞きたいと思いますが、私伺った限りでは、現状で御不便はないようであるというふうには伺っておるのでございますが、なおよく相談をいたします。
  110. 柄谷道一

    柄谷道一君 陛下は当然御遠慮なさると思うのでございますけれども、一遍、長官御視察になりまして、あの研究所の中といい、机といい、いすといい、これでいいのかなと私たち本当にそういう感慨を深くいたしましたので、そういうものに対してやはり配慮するのが助言をすべき内閣の役割の一つではないだろうか、私はこう思いますので、ひとつ至急に御視察になって、閣議でも一つの問題提起をしていただきたい。これは要望をいたしておきます。  それから、時間が参りましたので、あと二点だけ簡単にお伺いいたしますが、皇室典範二十二条では、「天皇皇太子及び皇太孫の成年は、十八」となっております。その他の皇族の成年は、民法第三条で二十歳となっております。ここで二歳違う理由について、参考のためにお教えをいただきたい。これが一つでございます。  もう一つは、皇室が宮廷儀礼などを行うために抱えている人々は内廷職員及び各宮家職員合わせて五十七名ぐらいおられるのではないか、こう思うんですが、これらの人々の身分関係給与はどうなっているのか。  この二点をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  111. 山本悟

    政府委員山本悟君) 第一点の、天皇皇太子及び皇太孫の成年が十八歳であるという点で一般の皇族の二十歳と二年の差がある理由でございますが、御案内のとおり、天皇はもちろんでございますが、皇太子及び皇太孫というのは皇位継承権の第一順位者であるわけであります。言うまでもなく、この場合の皇太孫というのは皇太子のいない場合の皇太孫でございますので、いずれも皇位継承権第一順位者ということでございます。  そこで、他の皇族よりは皇位継承順位が高いという、まず第一にその条件があるわけであります。そして、「天皇が成年に達しないときは、摂政を置く。」という規定を定めているわけでございますから、天皇につきましては、意思能力が認められる時期になればなるべく早い時期に、未成年であるがゆえの摂政という制度をなくして、本来の天皇が国事行為を行うという立場に立つということがまず必要であるというようなことになるわけであります。これが恐らく天皇の成年を二十歳じゃなく十八歳にしている理由ということで皇室典範の制定の際から説明されているところでございます。  そして、皇太子及び皇太孫、先ほどのようにいずれも皇位継承順位第一順位者でありますから、天皇が重患または重大な事故があった場合の摂政の就任順位はこれまた第一順位であります。したがって、その際にも、もしもそういう事例が起こった場合にはなるべく早い時期にその第一順位者である方が摂政になる方がベターである、こういうような考え方がとられておりまして、そこで他の一般の皇族と違いまして継承権第一順位者に当たる皇太子及び皇太孫は満十八をもって成年とする、こういうようなことが考えられているわけでございます。  したがいまして、もう一回繰り返して申し上げますと、天皇の場合には、未成年なるがゆえに摂政の置かれる期間をなるべく短くしたいということ、それから皇位継承順位第一順位者の皇太子及び皇太孫については、もしも摂政を必要とする場合には他の皇族が摂政になる期間をなるべく短くする、そして第一順位者の方が早い機会に摂政になる、こういう必要性があるというような考え方かう一般皇族と違って十八歳をもって成年になるというような制度を定めたというのが皇室典範の制定以来の説明でございますし、そのとおりであろうと存じております。  それからもう一つ、国家公務員でない皇室関係職員、これは御指摘のとおりに内廷及び宮家関係で五十七名の者がいるわけでございます。これは言うまでもなく内廷職員でございますから、普通に言われますのは皇室の私的な職員ということで、公務員ではないわけでございます。勤務の形態もいろんな多種のものがあるわけでございます。掌典の関係職員とか、生物学等の御研究の職員とか、あるいは宮家の場合で言えば一種のお手伝いさん的な職員とか、そういった家庭的な意味での職員がいるわけでございますが、いずれも給与の扱い等におきましては公務員に準じて経費支出する。  それからなるべく、こういったものでございますから、家事使用人的な扱いじゃなくて、いろんな社会保険でございますとか、年金でございますとか、年金も社会保険でございますが、そういったようなものにつきましても一般の企業に準じた格好のとれるものはとっていきたいというような扱いにいたしておりまして、社会保険は政府管掌の社会保険に入っている。それから企業年金につきましては、保険会社と企業年金保険契約をなるべく結びまして、そういったもので保障をするようなことにしている。それから労働保険は、労働保険及び雇用保険に加入をいだしている。そして、事業主負担というのは内廷費ないし宮家負担というようなことで出しているわけでございます。そういうようなことによりまして、いろいろとなるべく単純な家事使用人じゃないように持っていくような格好での待遇をし、安定をした職場にしていこうというような努力をいたしております。
  112. 前島英三郎

    前島英三郎君 私は本改正案に賛成なんですけれども、きょうもいろいろ開かれた皇室という問題、国民に開かれた皇室であってほしいといういろんな願い、そういう観点からの議論が行われておりますので、そうした部分も含めまして幾つか質問してまいりたいと思います。  皇室そして皇族の方々が一方におありになりまして、それからこちら側に私たち国民がいる。その間に宮内庁というものがありまして、開かれた 皇室というものを実現せしめる。図式的にはこういうことになるのだろうと思っているんですが、皇室国民の間の関係を基本的にどのような姿でありたいとその間におる宮内庁としては思っておるのか、その役割を果たそうとしておるのか、基本姿勢とでもいいますか、そういうところからまず伺っておきたいと思います。
  113. 山本悟

    政府委員山本悟君) 確かに、よく宮内庁がカーテンをかけているというような言い方をされるわけでございまして、本来的にそういったような宮内庁というものになってはいけないというものであることは十分に心得もし、また気をつけなければいけないことと自戒もいたしていると思っております。国民に親しまれるというのがどういう内容で具体になるのか、いろいろ議論もしなきゃならぬ点もございますけれども、やはり直接親近感を持っていただけるような皇室ないし皇族であるようにということが基本になければならぬということは御指摘のとおりだろうと思いますし、私どももなるべくそういう格好に持っていきたいという気持ちは人後に落ちないつもりでございます。  ただ、実際問題ということになりますと、非常に難しい問題が起こってまいります。例えば警備一つにとりましても、世の中の変動とともにどういう格好になっていくのか。警備当局は警備当局でやはり非常に一生懸命にお考えになる、これもまた職務としてありがたいことであるし、無視することのできないことであることは申すまでもないと思います。そういったようなことをうまく調和をとりながらということが私どもの気持ちでございまして、この点は先ほど来もいろいろ出ておりました報道関係といったようなものについても当てはまると申さざるを得ない。  いろいろの要求、要望のあることも存じておりますけれども、それじゃそれに飛び込んでいって本当に大丈夫なのか、やはりそこも私どもは職務として考えざるを得ない。そういったところで調和のとれた格好というものを模索していかなきゃならない。そのときに、基本的には今先生御指摘のようなことをもとにしながら我々としては対処していくべきであるというぐあいに思っております。
  114. 前島英三郎

    前島英三郎君 私は宮内庁がカーテンをかけているというふうには思いたくないわけです。皇室及び皇族方と宮内庁、この関係なんですけれども、開かれた皇室というあり方は皇室及び皇族方のお気持ちでも私はあるのではないかと、こう思うんです。私もいろいろなところでお目にかかり、お言葉もいただいたりするわけですけれども、開かれたという言葉はイメージとしてはだれでも描く簡単なことのようにも見えるんですけれども、その実、具体的にはどういうことなのかと詰めてまいりますと必ずしも簡単なことではないというふうにも思います。それはわかるんですが、そこで皇室及び皇族方のお気持ちというものを宮内庁として的確かつ正確に理解をして進めていかなければならないということは基本姿勢だろうと思うんですね。この辺は宮内庁としてどのように理解をしているおつもりなんでしょうか、まず伺いたいんですけれども。反映をしている部分がありましたら。
  115. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御指摘のように、皇族方は本当にそういったようなお考えでいろいろな場で接していらっしゃると思います。外部の方にあるいは地方に行かれたときのいろいろ御行動を見ておりましても、まさにそういうようなことじゃないかというように存じます。それを十分私どもといたしまして承知をした上で、それで現実のいろいろな諸要請というものとの、それこそ先ほどの言葉そのままで抽象的で恐縮でございますが、調和をとったようにスマートな格好でというようなことを常に頭に置いて、具体の衝に当たる者としまして上から下まで宮内庁としてはそういう気持ちでもっていかなきゃならないというように存じているところでございます。
  116. 前島英三郎

    前島英三郎君 私は、宮内庁が、そうは言っても、やっぱり慎重というか、場合によっては非常に官僚的といいますか、形式的なやり方に偏っている可能性というものがかなりあるのじゃないかということを思うんですね。  このことと関係があるかどうかわかりませんけれども、例えば陛下は記者会見というものは、いつでしたか、一度見たことはありますけれども、そうたびたびはおやりにならない。そしてまた、ちらっと新聞などで見ますと、御散策中に偶然記者団に出会われてお言葉を賜るという、こんな話も時として聞くわけなんですけれども、こういうことは事実なんでしょうか。いかがなんですか。その辺をちょっと伺いたいと思います。
  117. 山本悟

    政府委員山本悟君) いろいろな機会に記者の方にも陛下もお会いになっておりますが、最初のころ、そういうようなお言葉とか、そういうようなセットの仕方というのがあったことも否定はいたしません。ただ現在は、まさに御散策の途中から合流をいたして、そして、この数年来の例で申し上げますと、ある建物の中に入って、そこでもってちゃんといすが出ておって、紅茶等も出ましてお話しになっているわけでありますから、偶然お会いしたことにしてお言葉を賜るという印象ではございません。  そういうようなことで、やはり時代時代で少しずつ実態に合ったように変わってきているぐらいでして、そういう例が全くなかったときに新しくそういう機会をつくるというときにどういうような発想をしたか、いろいろなことがあろうかと思いますけれども、現在そういったようなことにこだわっているようなことはございません。
  118. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう意味でも宮内庁のもろもろの配慮というものが大切でしょうし、皇室及び皇族方ももっとフランクなお気持ちというものを、先ほど柄谷委員から浩宮様の訪英先におけるそうした明るい姿の御報告もございましたけれども、そういうものを私はやっぱり願っているのではないか、その橋渡しが一つの宮内庁の役割として大変重要になっていくというふうにも思うんですけれども、今後開かれた皇族というものを皇族方また国民も大変願っているものがあるものですから、そうした将来に向けての宮内庁の開かれた方向への模索といいますか、イメージづくりといいますか、そういうようなものがございましたら伺いたいと思うんですけれども。
  119. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御指摘のような世の中の考えあるいは国民の方々の気持ちというようなことは全く私どもも痛いように感ずるわけでございまして、そういうようなことを常に念頭に置き、かつまた実際の諸要請とうまくいきますように、実際の具体の問題といたしまして努力を積み重ねてまいりたいと思います。
  120. 前島英三郎

    前島英三郎君 国民の間からは、恐らく幅の広い多様な希望や声が出てきていると思います。だからといって、それをまたすべてというわけにはこれは当然いかないだろうということはわかるわけですけれども、また世代の違いによりましてもその開きというものは実に大きいものがあろうかと思います。陛下のお心、また皇太子様のお心、あるいは浩宮様のお心、そういうお心の違いなども時代の変化によって多々あるのではないかというような気がするんですけれども、そういうような声にやっぱり細かに対応していくことはなかなか簡単な仕事じゃないと思うんですけれども、しかしこうした幅のある国民の声に耳を傾けていただいて、そしてその幅の広さに対して十分におこたえしていただきたいという必要があることはこれは大変大切なことではないかという気がするんです。幅の広さがあるということが私は無形の財産であるというふうな気もいたしますので、こうした幅の広さに対して宮内庁にもこれから十分努力をしていただきたいというふうに思います。  さて、皇室皇族の方々と国民とのつながりということで言いますと、社会福祉の面でのさまざまな御活動ということがございます。一九八一年、国際障害者年でありましたが、天皇陛下は満八十歳のお誕生日をお迎えになられまして、この誕生日を記念されて、障害者の福祉事業の御奨励のために厚生大臣に御下賜金を賜りました。この 御趣旨を長くお伝えするために、障害者リハビリテーション振興基金が設立されまして新しい活動が始まったということでございます。大変意義深いことだと私も思っております。このような例を初めとしまして、皇族の方々も幅の広い御活動をされていると承知しているんですが、その状況といいますか、御様子につきましてお答えをいただければと思うんですが。
  121. 山本悟

    政府委員山本悟君) ただいま御質問にございましたように、陛下八十の賀の際に、厚生大臣を通じまして金一封の御下賜がございまして、厚生省の方ではそれをもとにいたしまして財団法人日本障害者リハビリテーション協会の中に障害者リハビリテーション振興基金をつくりまして、御下賜金を核にいたしましてこういった基金をつくっていろいろと運用をし、それによりましてリハビリテーション関係各種事業の発展を期しているというように伺っております。  また、皇后陛下の八十のときにも同一の団体にさらに御下賜金下賜されまして、両陛下がこの身障者福祉のための基金に御下賜になったというような事情になっております。  こういったようなことで、両陛下を初め皇族方いろいろと福祉関係については御尽力になっていると存じます。  一、二その関係の御活動につきまして申し上げてみたいと思いますが、皇后陛下は日本赤十字社の名誉総裁になっていらっしゃいますし、それから多くの皇族方が名誉副総裁というようなことになっていらっしゃるわけでございます。そして、実際の御活動としても、日赤関係各種の会合あるいはその他の諸行事の際にはよく皇族方はお出ましになっているわけでございまして、多い年には一人の皇族で五、六回も地方にも行っていらっしゃるというようなことも聞いているわけでございまして、そういったような格好での、日赤だけ申し上げましたが、そういうことは随分あるようでございます。  各宮様方で福祉関係の役職についていらっしゃいますことを一、二申し上げますと、例えば常陸宮殿下は、日本肢体不自由児協会の総裁であり、あるいは日本障害者リハビリテーション協会の総裁をなさっている。秩父宮妃殿下は、結核予防会の総裁であり、交通遺児育英会の名誉総裁である。高松宮殿下は、藤楓協会の総裁であり、恩賜財団済生会の総裁。高松宮妃殿下は、高松宮妃癌研究基金名誉総裁。あるいは三笠宮の妃殿下は恩賜財団母子愛育会の総裁である。寛仁親王は友愛十字会の総裁といったようなことでもっていろいろの各種の福祉関係の団体の総裁あるいは名誉総裁を引き受けられまして、熱心にそういったような活動をなさっていると伺っております。  先ほどのような両陛下からの御慶事の際の賜金というような点から申し上げますと、ことしございました両陛下の御結婚満六十年に当たりましては、がん対策振興事業奨励意味で厚生大臣に金一封下賜になっているというようなことでございまして、皇室といたしましては、両陛下を初め各皇族様方含めまして、そういう意味での社会福祉関係については皇族としての最もやるべきことというようにお考えになって非常に御活動になっているというぐあいに存じております。
  122. 前島英三郎

    前島英三郎君 皇族の方々が社会福祉活動にかかわりを持たれる場合は今の御報告から伺いましたが、名誉総裁、そういうような役職につかれるケースも相当多いわけですね。あるいはまた、役職につかれない場合でも、大会とかあるいは会合に御臨席になる等々の形で福祉活動参加される、あるいはもしくは間接的にその活動に対して協力される、こういうケースも大変多くおありだと思うんです。このような形で役職につかれる、あるいは役職にはおつきにならないがかかわりを持たれる、こういう場合につきまして何か一定の基準といいますか、どういう場合はよいがこういう場合はだめだとか、こういう場合はこういう条件があるとかという、その定まった考え方というようなものはおありになるんですか。
  123. 山本悟

    政府委員山本悟君) 皇族方が公的に各種団体の名誉総裁等に御就任になる場合ということを考えてみますと、これはやはりいろいろの制約も考えなければならないわけでございますが、一般に考えられますことは、よく言われますように、政治的でないこととか、あるいは営利を目的とするものでないこととか、あるいは宗教的活動と見られるようなものでないこととか、それからさらに積極面で言えば社会福祉とか、スポーツとか、学術文化、国際親善等で公共に寄与するものであるといったような、いろいろな事項が考えられると存じます。  そういったような条件があるわけでございますが、社会福祉というような格好で申せば、まず目的の方からいえば問題はほとんどないわけでありまして、それぞれの団体なりあるいはそれぞれの事業から、各皇族さんの御縁であったり、あるいはその方のいろいろな御経歴というようなものを見ましていろいろとお願いをしてくる。そういうことで、宮家自体に直接参る場合が多うございますけれども、宮内庁を通じて言う場合もございますし、宮内庁を通じた場合には、そういったいい条件に該当するものであればその依頼された宮家お話をいたしましてお引き受けいただくと、こういうような格好で処理をさしていただいております。
  124. 前島英三郎

    前島英三郎君 その場合、宮内庁がイニシアチブをとって決められるのか、あるいは皇族の方々御自身が判断されるのか。そのウエートといいますか、いろいろそれは御様子はお伝えするだろうと思いますが、中身につきましてもお伝えするだろうと思いますが、どのくらいの割合になりましょうか。
  125. 山本悟

    政府委員山本悟君) 実際の問題といたしますと、宮家の方に直接その行事なり団体なりから願い入れをいたしまして、それはいいじゃないか、どこから見てもおかしいことはないという場合には宮家自体でお引き受けになりまして、こちらの方には届け出が出るという場合が数からいえば一番多いだろうと思います。場合によっては、団体から宮内庁に直接来るときがございますが、そのときは先ほど申し上げましたような手続によって判断をした上でお話をするというようなことになろうかと思います。  いずれにしましても、宮内庁が判断をしてお話をいたしましても、実際におやりになるかならないかは宮様でございますから、これは最終的には宮家の判断ということになろうと思います。そういう意味で申し上げれば、どちらにウェートがかかるかといえば宮家自体、例えばいろんないいものであってもその時期がちょうど宮家と合わないとかなんとかということも起こってまいるわけでありますから、そういった御判断はやはり宮家自体でしていただくよりほかにないわけでございまして、そういう意味では宮家の方がウェートが多いといえば多いと申し上げてもいいのじゃなかろうかと思います。
  126. 前島英三郎

    前島英三郎君 それに伴っていろいろな御助言も宮内庁は当然おやりになるだろうと思いますけれども、そうした意味では的確な情報ということも大切でありましょうし、もう一つ、皇族の方々の御学習のお手伝いということもまた大切であろうというふうにも思います。御進講ということもありましょうし、学校に行かれたり、あるいは御自分で研究をされたり、幅広く勉強されているということは私ども聞いているわけなんですけれども、しかし例えば英国の王室では手話ができる方もおられるというふうなことを聞きますと、先ほど柄谷委員からも英国の話が出ましたが、日本との国情の違い、また歴史の違いということでそう一概には言えませんが、大分違いがあるように思うんですけれども、実際に社会福祉関係皇族の方々が大変寄与しておられる、それがまた障害者福祉の向上にも大変大きな力となっているということを見てみますと、やはり福祉のことに御進講の中でも御学習の中でも触れられる、そういうお気持ちをまた私どもは国民の側から期待をしたいという部分もあるんですけれども、この点も含めまして、宮内庁からこの社会福祉に対する御様子 などをもしお伺いすることができましたらひとつ伺いたいと思うんです。
  127. 山本悟

    政府委員山本悟君) 皇族様方、社会福祉関係には先ほど来申し上げましたように非常に御熱心で、またいろいろな会合でもいろんな方から話も聞いていらっしゃるし、実際に御自分でもやっていらっしゃる方は随分あるわけであります。本当に我々よりはるかにお詳しいという方が多いというように存じております。例えば、先ほど手話のお話が出ましたが、日本の例でも、五十六年の五月でございますか、四国の方で全国聾唖者大会がありましたときに手話をなさった皇族がおられます。  そういうようなことでございまして、実際、活動という面でも随分やっていらっしゃる方があるわけでございまして、そういう意味では皇族というのは随分そういう社会福祉関係については詳しいなというような気持ちを私どももいたしておりますし、またそのことは皇室のあり方あるいは皇族の公務活動として極めて適切なことだと思いますので、そういうような方向にさらになりますようにお手助けをしてまいりたいと思っております。
  128. 前島英三郎

    前島英三郎君 次に、皇居を初めとしまして皇室用財産における障害者等に対する施設とか設備面の配慮について伺いたいと思うんですけれども、私生活に御使用になるところは別にいたしまして、公式行事等に使用される施設あるいは一般に公開されているところにつきましては、国民に開かれた皇室という見地から、可能な限り、どのような国民でもあるいは高齢者でも障害者でも利用しやすいような配慮が行き届くということが大切だと思いますし、望ましいこれからのあり方だというふうにも思うんですね。皇居におきましても、宮殿には車いすが用意されておられるということですし、車いす用のリフトが設置されている。いつでしたか、私、陛下のお誕生日にお招きをいただきまして参りまして、そのリフトを使わしていただきました。そういうことも含めまして、宮内庁としての考え方並びに現状ではどのような配慮がなされているか、あわせて伺いたいと思うんです。
  129. 山本悟

    政府委員山本悟君) 宮内庁の管理いたします皇室用財産のうちで、各種の行事などに使われます施設につきましては、車いすの利用者など身体障害者なども来られますので、不便をかけないように備品、設備面につきまして必要な対策を講じてまいったところでございます。  ただいま御指摘もございましたように、宮殿におきましては、北車寄にリフトを取りつけておりますし、それから車いすは現状では十九台持っておりまして、これを配置いたしまして利用に供しているところでございます。  御参考までに申しますと、五十八年に儀式等に御参会になって車いすを御使用になった方は二百十四人になっております。  宮殿はそういうことでございますが、東宮御所につきましても、先般の、五十七年でございますか、内部改修の際に身体障害者用の便所をつくりました。その他、皇居の東御苑でございますとか、そういったようなところにもトイレの設備等におきましてできるだけやってまいっているわけでございまして、なるべくそういうような対策をとりますように機会あるごとに施設、設備を今進めているというような状況で、このことはまた大いにいろんな意味で必要なことではないかというぐあいに存じております。
  130. 前島英三郎

    前島英三郎君 一般への参観を実施しております、例えば京都御所とか、あるいは桂離宮とか、修学院離宮。京都は多くの障害者が行ってみたいところでありますし、このごろでは海外から日本を訪問する障害者も多くなっておりますし、あるいは御高齢の方々は時と場所によっては車いすを利用したいというふうなお気持ちを持っておられます。そうした方々は当然京都に行きたいと希望しているわけなんです。  そこで、ここに「京都 車イス観光ガイド・ブック」というのがありまして、これなどを見ておりますと、京都御所等は載っていないわけです。載っておりません。文化財として一定の制限があるということもわかりますし、庭園の場合は地形の問題があることもなども含めまして困難な面があることは十分承知しているんですけれども、全体ではなくても結構ですから、前向きにこうしたところをもあわせて検討していただきたいというふうにも思うんですけれども、その辺はいかがですか。
  131. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御指摘のございましたように、例えば桂離宮、修学院離宮というようなことになりますと、庭園としての通路は車いすの幅よりは狭うございましょう。かつ、例えば石の橋がかかっている。それはあの車輪よりも狭うございますし、でこぼこの飛び石があるわけでございますので、こうなりますといささか困難だろうと思います。  京都御所ということになりますと、これは平たんでございます。下は砂利でございますから動かしにくいとは思いますけれども、大部分平たんで、門のところなんかは上に出ているわけでございますが、ああいうような地形でございますので。実際問題といたしまして、京都御所の方は春秋に実施いたしております一般公開、このときには実を言うと人手なんかは随分京都市の方でやってもらっているわけでございます。  それから非常に多くの人が通りますので、門のところなんかはスロープをつくりますので、これは実際上も随分と車いすの方も来ていらっしゃるようでございます。大方、一緒の方がいらっしゃれば、そういう意味で、スロープですから、京都御所の中は平たんでございますから実際はそれほど問題なくやっていらっしゃる。それから、通常の参観の場合でございましても、門のところあたりでしたら、例えば一緒に来ている方があって、あるいはそのほかに手伝ってくれる人があってこうやってできるのであれば、京都御所の参観は車いすであっても不可能ではございません。  全部来られたときに、職員が必ずこうしろという体制になりますと、何百人かのものを一人か二人でもって誘導していくわけですから、非常に難しい問題が起こります。しかし、そちらの方の手間というのを車いすの方自身の方でもってやっていただけるという体制であるならば、それは現在におきましてもいわゆる介添え者、付添者がいれば京都御所の方は可能じゃないか。実際にお申し出があればさような扱いもしているようでございまして、全く不可能ということで車いすなるがゆえに初めから門前払いというような態度はとっていないところでございます。
  132. 前島英三郎

    前島英三郎君 これは四年前につくられたものですから、新しいものが最近出るようですので、今おっしゃったお言葉を観光マップの実行委員の方によく伝えておきたいと思います。  最後に、宮内庁職員の問題について触れておきたいと思うんですが、来年から公務員の六十歳定年制が実施されるわけでありますけれども、一般の官庁の場合、大体におきまして退職年齢が早まるということがないのに対しまして、宮内庁の場合、特に大多数の生え抜きの職員につきましては六十歳定年では退職年齢が数年間早まることになるのではないかというふうに聞いております。宮内庁に限らず、職務の性格上六十歳定年では早過ぎるという者につきまして定年年齢の特例、それから勤務延長、再任用といった三つの道が人事院の方からも出ているようでありますけれども、この定年年齢の延長が適用されるケースは宮内庁の場合どのくらいありますでしょうか。
  133. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御指摘のとおり、宮内庁の場合には、従来は管理職が六十歳定年、それから一般職員は六十五歳ということで大体やってきたわけでございまして、ほぼそれが守られてきたわけでございます。したがいまして、六十歳定年制度ということが全面適用になります六十年度からは一般には定年が短くなるという通常の官庁にはない体制になることは御指摘のとおりであります。非常にその対策に苦慮をしてまいったわけであります。  同時に、宮内庁というのは非常にいろんな職種を持っているところでございまして、極めて一般の官庁にない職種なり勤務態様のものというのがあるわけでございますので、そういったものにつきましては、今御指摘になりました六十五歳あるいは六十三歳の特例定年、あるいは必要な場合には勤務延長ということを活用していかざるを得ないということになろうと思います。  侍側の職員といったような長年の経験を必要とする、かつ、その職種が非常に特殊な職種でございますとか、雅楽の演奏に従事する職員でございますとか、古文書の修補をいたします職員でございますとか、特殊でかつ職務遂行能力を有します者が非常に少ないといったような職種につきましては定年年齢を六十三歳あるいは六十五歳とする特例措置が人事院との間にも予定をされているというようなことになっております。  また、そのほか、例えば一般的に言えば陵墓関係職員でございますとかといったようなものにいたしましても、非常に特別な専門的知識と豊富な経験を必要とするといったようなこともございますし、そういった必要な職員については勤務延長の制度を活用するというようなこともぜひ必要なことじゃないかというようなことで、そういった方向で対処をしてまいるというような措置を考えているところでございます。  しかしながら、一般的には何しろ六十五歳が六十歳の原則になるということでございますから、非常にその意味では他の省庁とは違った意味での対応の難しさというのをひしひしと感じているところでございます。
  134. 前島英三郎

    前島英三郎君 他の省庁との兼ね合いも難しい、しかしそれだけにまた、定年年齢が延長される傾向にある中で、だからといってそういう形の中で三年間退職年齢が早まるとかあるいは五年間早まってしまうというようなことになりますと、内容が内容だけに大変対応も難しいだろうと思います。そういう意味では、定年年齢の特例、あるいは勤務延長、再任用、こういうようなものが絡み合っていくというふうに理解してよろしいわけですね。長い間皇室皇族方のおそばで勤め上げてきた方々は何となくこうしたものは不利になるような気がいたしまして今御質問したんですけれども、やっぱりこれからも人事院ともよく協議をして十分な努力をすべきだと私は思います。  一方、宮内庁と他の省庁との人事交流につきまして一言申し上げておきたいと思うんですけれども、宮内庁の幹部及び管理職の方々は他省庁から転任をされてくるわけですね。私も地方行政委員会でやりとりした記憶があるんですけれども、自治省から宮内庁へあなたの場合行かれたわけですけれども、宮内庁がより視野の広い立場に立った判断をするためにはそれは必要なことであると思うんですけれども、しかし今後はその反対に、例えば宮内庁の人が他省庁の業務を経験して戻ってくるという面もあっていいのではないか、こういう気がするんですけれども、そういうことこそが実は国民に開かれた皇室という一つの土台づくりにもなるような気がするんですけれども、その辺はいかがでございましょうか。
  135. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御指摘のとおり、宮内庁の現在の職員のうち相当数が他省庁から来ております。私も御指摘のとおり自治省におったわけでございまして、もう既に九年余を宮内庁でお世話になっておるわけであります。そういうような格好の者も随分おりますが、宮内庁で採用した者自体も、宮内庁だけの空気じゃなく、他のところの空気も知っておく必要がある、これも御指摘のとおりだろうと思います。  私どもも、その辺の必要は大いに感じておるわけでございます。転任してきてずっとこちらにいる者に比べますと、数は少のうございますけれども、宮内庁の者が他省庁に出ているのも現在三人おります。これはいろんなところであるわけでございますが、現在ではございませんけれども、この前帰ってきた者では、例えば在外公館の勤務をしておる者もおりますし、総理府の方でお世話になった者もおりますし、厚生省に行ったことがある者もおります。というようなことで、いろいろなところでそういったような意味での他省庁の経験をさせていただく。それは殊に将来幹部になるような者については大いに必要じゃないかというようにも思っているわけでありまして、できるだけそういう機会をつかまえて交流というものを図っていきたい。要するに、閉ざされた中に入ってしまわないように努力はしたいと思います。
  136. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう意味では、他省庁が割合閉ざされた部分が、国民に開かれていない部分がありますから、そうした人たちが管理職として宮内庁に入って、さらにそこに大きなカーテンをおろしてしまうというようなことがますます皇室皇族国民とを遊離させてしまうというようになってはならないという思いから今申し上げたわけですけれども、ぜひそういう意味での宮内庁からの他省庁への交流ということも含めまして、国民に開かれた皇室であるように宮内庁はその責任を果たしていただきたいということを強く申し上げまして、私の質問を終わります。
  137. 高平公友

    委員長高平公友君) 以上で質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  138. 高平公友

    委員長高平公友君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 高平公友

    委員長高平公友君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  実は、大蔵大臣の出席が衆議院会議関係で十分ほどおくれますので、暫時休憩いたします。    午後二時三十八分休憩      —————・—————    午後二時五十九分開会
  140. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案及び昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  141. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ただいま議題となりました国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案及び昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、最近における国家公務員旅行の実情等にかんがみ、外国旅行における日当、宿泊料、移転料等の定額改定等を行うため、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案の内容について御説明申し上げます。  第一に、国家公務員等の外国旅行に際して支給される日当、宿泊料及び食卓料の定額につきまして最近における宿泊料金の実態等を考慮し、平均四〇%程度引き上げることといたしております。  なお、その際、外国旅行の実情に即して日当及び宿泊料の支給に係る地域区分を改めることといたしております。  第二に、外国旅行における移転料の定額につきましても、国家公務員の赴任の実態等にかんがみ、二五%程度引き上げることといたしておりま す。  次に、昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。  政府は、国家公務員等共済組合法等の規定により支給されている年金につきまして、別途、本国会に提出しております恩給法等の一部を改正する法律案による恩給の改善措置を参酌し所要の改定を行うとともに、掛金及び給付額の算定の基礎となる俸給の最高限度額の引き上げ等の措置を講じるため、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案の内容について御説明申し上げます。  第一に、国家公務員等共済組合等からの年金の額を改定することといたしております。  すなわち、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法、旧国家公務員共済組合法、国家公務員等共済組合法及び旧公共企業体職員等共済組合法に基づく年金につきまして、恩給における措置を参酌し、昭和五十八年度国家公務員給与の改善内容に準じ、年金額の算定の基礎となっている俸給を、国家公務員等共済組合法及び旧公共企業体職員等共済組合法の施行前の期間に係るものについては本年三月分から、施行後の期間に係るものについては本年四月分から増額することにより年金の額を平均二%程度引き上げることといたしております。  ただし、昭和五十七年度において仲裁裁定等による給与改定の適用を受けた者で同年度に退職した者及び国鉄共済組合から年金の給付を受ける者については、年金額の引き上げは行わないことといたしております。  第二に、六十五歳以上の者の受ける退職年金、遺族年金及び公務関係年金の最低保障額を恩給における措置に倣い改善することといたしております。  その他、掛金及び給付額の算定の基礎となる俸給の最高限度額について、国家公務員給与の引き上げ等を考慮し、現行の四十四万円から四十五万円に引き上げることとするほか、昭和五十七年度において退職した公共企業体職員の旧公共企業体職員等共済組合法に基づく退職年金等の額について、退職手当支給額との関連から既裁定年金の額の引き上げに準じて引き上げること等の所要の措置を講ずることといたしております。  以上が、国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案及び昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案の提案の理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。  なお、両法律案は、施行期日を昭和五十九年四月一日と提案しておりましたが、その期日を経過いたしましたので、衆議院におきましてこれを公布の日とするなど所要の修正がなされておりますので、御報告をいたします。
  142. 高平公友

    委員長高平公友君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  両案についての質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四分散会      —————・—————