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国務大臣(
竹下登君) 大変広範な角度からの御
質問でございますが、私、具体的な問題については所管省からの
お答えの方が正確であろうと思うわけでございますけれ
ども、日本の国が貿易立国と申しましょうか、すなわちエネルギー源のほとんどを諸外国に依存しなければならぬという
立場から、工業立国あるいは貿易立国としての
立場を鮮明にした場合、開放経済への移行、保護貿易の台頭をいかにして抑制するかということが、
一つの国是として存在すると思うのであります。およそ貿易自由化の原則とは何ぞやということになれば、地球上に生存する人類が安価にして良質なものを自由にどこからでも使用する環境、状況をつくることであろうと思います。しかしながら、それぞれの国々におきましておのずからその事情がございます。なかんずくその焦点は、農産品というものに対して最終的にはいわば保護施策というものが必然的に存在して今日まで来ておるというのは、特に日本のみならず世界的な傾向ではなかろうかというふうに思っております。
で、我が国に眼を移して見ますときに、
たばこということになりますと、勢いアメリカの巨大産業、ビッグスリーというようなことを対象にしてまいりますと、アメリカの農業と日本の農業から見ますと、面積こそ二十六分の一でありますが、農用地面積にすれば六十分の一でありますから、人口が倍といたしまして、一人当たりおよそ三十倍の農地面積を所有するアメリカと日本において、生産性向上の
立場から
一つのハンディが背負わされてきておることは事実でございます。そういう中から少しでもそのハンディを縮めていこうというのが今日まで農政上でとられてきた農業
基盤整備ということではなかったかなと、こういうふうに思います。そして、逐年農業
基盤整備が進んでまいりまして、時にはいわゆる私有財産に対して国家資金、すなわち国民の税負担を投下することに対する異論というようなことも経過的には昔あったようでございますが、いずれにしても、土地
基盤整備というものが農政上の柱として今日まで掲げられてきた。一昨昨年でございましたか、目標値のたしか九千億に達したときに、土地
基盤整備に関心のある
方々が万歳を叫んでおられた姿を私も覚えております。
それが、私が
大蔵大臣に就任いたしましてからそれを五%カットのいわゆるシーリング、今日言うところの概算要求
基準などを設けるということになりますと、みずからを振り返って、本当に
大蔵大臣の希望者が少なくなるのもむべなるかなと、こういう感じを率直に受けたことも事実でございます。
そういう角度から、私
どもといたしましても、今度の概算要求
基準におきましても、五%削減とはいえ、全体の
事業量が減りますところの省庁においては、その半分をいわばお返ししようと、正確な
意味においてそれぞれが二・五%という
意味ではございませんけれ
ども、およそそのような措置でもって概算要求
基準というのを昨日進めてきたところでございます。
したがって、そういう農産品を主原料といたしますところのこの
たばこ産業でございますので、私は、本当に経過的に見ますと、いろんな問題がございましたけれ
ども、
たばこ産業について日本政府が今日までとってきた経過といえば、まず
一つは関税というものによってこれを
調整してきた、それもぎりぎりの二〇%になった。いま
一つは外国の製品に対する
販売の店舗数をふやしましょうということでこれに対応してきた。しかし、日本の今日置かれてくる
立場からすれば、これで防ぎ切れるものではないというので、いわゆる
輸入自由化というものに踏み切らざるを得なかったという状態でございます。
本当に
考えてみますと、二十年前には自動車も何もかもいわゆる
輸入不自由化の時代であったわけでございます。アメリカということを意識しますと、自動車は、アメリカを仮に意識すれば、日本から毎日五千台輸出されて、アメリカから入ってくるのは、この間見ますと、九・七台ぐらいでございます。そういう角度から見ると、あるいはこの産業ならば勝てるというつもりがいわゆるビッグスリーにはあるかもしらぬ。それに対応してこれから国際
競争場裏の中で戦っていくわけでございますからよほどの覚悟が必要だ。そこで商法と労働三法というところで環境を整備し、そうして、頭と言っては失礼でございますが、知識
水準、技能を含む労働生産性では絶対私は負けないと思っております。今日の
専売公社の労使
関係なんというのは、私は先般の国際
会議でも申し上げましたが世界一だと、私自身が所管しておるからいささか手前びいきの感はあったけれ
ども、そういうことを明言しておきました。だから、そういうことに対しては
国際競争力にたえ得る。
そうすると、巨大な
たばこ産業のこの三集団というものが、本当に協調して相互
理解の中でそれぞれが合理化努力を行っていかなきゃならぬ。その一部門がいま御
指摘になっておりますところの、国際的に見ても、どの国においてもそれぞれの問題を残す農業部門のうちの葉
たばこ生産部門である。したがいまして、生産者団体の各位とも絶えず
議論なり
意見の交換をしながら、それに対して、あなた方だけがこの合理化の対象になるべきものでなく、総合した合理化によって
国際競争力をつけていくために本当に相互
理解でやっていきましょうという精神でこれに対応していかなきゃならぬではなかろうかというふうに
考えるわけであります。
したがって、農政上の措置としても、農林水産省におかれ、今日まで以上のいろいろな措置が行われることを期待し、また新
会社自身もそれに対応してのもろもろの措置を絶えず念頭に置きながら
考えていかなければならぬではないか。
少し長くなりましたが、以上をもって決意表明を終わらしていただきます。