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1984-06-26 第101回国会 参議院 大蔵委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十六日(火曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員の異動  六月二十六日     辞任         補欠選任      鈴木 和美君     稲村 稔夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         伊江 朝雄君     理 事                 岩崎 純三君                 大坪健一郎君                 藤井 孝男君                 竹田 四郎君                 塩出 啓典君     委 員                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 倉田 寛之君                 中村 太郎君                 福岡日出麿君                 藤井 裕久君                 藤野 賢二君                 宮島  滉君                 矢野俊比古君                 吉川  博君                 赤桐  操君                 稲村 稔夫君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君                 青木  茂君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        内閣法制局第三        部長       大出 峻郎君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        外務省経済局長  村田 良平君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        大蔵政務次官   井上  裕君        大蔵大臣官房長  吉野 良彦君        大蔵大臣官房総        務審議官     吉田 正輝君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        大蔵省主計局次        長        兼内閣審議官   保田  博君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  西垣  昭君        大蔵省理財局次        長        志賀 正典君        大蔵省証券局長  佐藤  徹君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       酒井 健三君        大蔵省国際金融        局次長      佐藤 光夫君        郵政省貯金局長  澤田 茂生君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        郵政省貯金局次        長        岩島 康春君        自治省財政局地        方債課長     柿本 善也君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置等に関する法律案内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 竹田四郎

    竹田四郎君 私に与えられた時間は六十八分でありまして、その間にも関連質問が入りますので、大蔵大臣要領よく、お話はうまいから非常に結構でございますけれども要領よくひとつ御答弁をいただきたいと思います。問題はまだまだ十分審議されておりませんので、竹下さんの博学のところをお伺いするのも一つの勉強でありますけれども、時間にかなりの制約がございますので、よろしくお願いしたいと思います。  そこで、まず昭和五十年度に借りました二兆二千八百億、これは当時の法案には借りかえ禁止規定もなかったわけでありますが、来年にはその分が満期到来ということになるわけでありまして、六十年に返ってくる。これは一体どういうふうに扱うんですか。
  4. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 特例公債、今おっしゃいましたように二兆二千八百億円が六十年度に償還が参ります。これにつきましては、現在御審議願っている段階でいろいろ御答弁申し上げましたように、一応の考え方といたしましては、六十年度においてほぼ建設国債と同様の方式で借換債発行を行い、財源を調達するということで償還してまいりたいと考えております。
  5. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、もう六十年度返還分から借りかえをする、こういうことになるわけですね。そうすると、もとの法律には借りかえ禁止規定は確かにないわけでありますから、借りかえる、こういうことにはっきりなるわけですね。
  6. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 六十年度の問題でございますので、そのときの財政事情についてはまだ現段階で確たることは申し上げられませんけれども御存じのように、その返済資金の積み立てが六十年償還ということでやってきておりますので、一応の考え方としては、先ほどお話し申し上げましたように、四条公債償還分と同様に十年債については六十分の十現金償還して、残りは借りかえたいということで考えられると思っております。
  7. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、こういうことを勝手にあなたはやっていいんでしょうかね。このときの議論になった五十年十二月三日の衆議院速記録、それから同じ二十三日の当委員会、ここで当時の大平大蔵大臣、それから三木総理答弁ではっきり、これは借りかえはいたしませんと、こういうことを言っているんですね。これは御存じですか、三木総理大平大蔵大臣がそういう発言をしたというのは御承知ですか。
  8. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そういう発言もあって五十一年から借りかえ禁止規定をつけたということで承知しております。
  9. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、このとき確かに、特例国債は十年で一切借りかえをしない、この担保を求められて五十一年度から借りかえ禁止規定がついたといういきさつだというふうに私、承知しております。ですから、五十一年借りて十年あるいはそれ以内のものについては借りかえを禁止するというものがついたわけですが、このときのはついていない、ついていないから勝手に借りかえをしてもいいと、法律だけの問題ではそうなりますね。ところが、わざわざ——読んでみましょうか。読むには及びませんでしょう。それを勝手に事前了解もなしにいきなりここで、それはやめますと、こういうことじゃ、しかも同じ自民党政府の中で十年前にそう言っていて、ここへ来て突然に、それは借りかえをいたしまして建設国債と同じようにしますというのでは、国会に対する事前了解もなしにそういうことをするというのはどうも私は承服しかねるんですがね。何らかの形で、そういう借りかえをいたします、さきの三木大平大臣の公約についてはこれを変えますという話をいつかどっかでなさいましたか。それで、その了解をとられた上で、こういうふうな借りかえをいたしますということになったんですか。どうなんですか。
  10. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この問題は、五十年審議の際に、借りかえはしないということを政府答弁において申し上げた。それに基づいて今度は根拠規定そのものに五十一年からは借りかえ禁止規定を入れた。したがって、また重ねて言うようですが、政策転換の中で法律に基づく借りかえ禁止規定は外していただきたいということで今御審議をいただいているわけであります。したがって、そういう禁止規定をもたらした前段の一年分の、借りかえ禁止規定のない、政府答弁という形の中において国会にお約束申し上げておる五十年債の償還期到来につきましては、本法自体なくしましたので、それ以前のよって来るものについても借りかえをせざるを得ないということを明瞭に本日申し上げるべきだと、御質問に対してお答えすべきだというふうに考えるわけであります。
  11. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理大臣答弁というのはそんなに軽いもんですかね。あるいは大蔵大臣答弁というのは、速記録に残されているものはそんなに軽いもんですかね。ここでがちゃがちゃと言って答弁すれば、それでもう変えられる、そんなに軽いのが日本の総理大臣大蔵大臣答弁ですか。私はそうは思わないですけれどもね。少なくともここでおっしゃられたことは、国会に対してはっきりと、十年後特例債は現金で全額償還をいたしますという約束だと思うんですよ。それを聞かなければ答えない。これではけじめがつかないんじゃないですか、こういうあり方では。今まで私も理事をずっとここ一年やってきているわけでありますけれども、一回たりとも、六十年の満期のものについては借りかえをいたしますという答えは、今まで聞いたことないわけです。だからこの間も青木先生が、六十年度は繰り入れをするのかしないのかといってしつこく聞かれたゆえんというものもその辺に私はあると思うんですね。  こういうような形で審議が進められるということになったら、総理大臣大蔵大臣もここへ来て何ら答弁してもらう必要ない、こう思いますが、竹下大蔵大臣、そういうことであなたの答弁もこれから扱われていいんですか。その都度ぽんぽん変えてしまっていいんですか。
  12. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、いいですかと言われると、そんなにいいとは思っておりませんが、しかしながら、この客観情勢の推移の中で大きな政策転換があった場合、あるいは前任者答弁等を訂正していく場合も、これは将来とも皆無ではないじゃないかというふうに考えております。
  13. 竹田四郎

    竹田四郎君 それは確かに情勢が違ってくれば変えなくちゃならぬということは私はあると思いますよ。変えるときは変えるだけの手続が必要じゃないですか。例えば質問をした人は衆議院では佐藤観樹君であるし、当委員会においては大塚喬君それから矢追秀彦君がそういうことを聞いて、それに対する答弁としてちゃんと出ているわけですよね。当然、質問してその答弁を求めた人に対しても何らかの話があってしかるべきでしょう。そういう手続はなさったんですか。あるいはその当時の、その答弁を聞いておられた大蔵委員長に対しても、そういうような事前の手順というものですか、そういうものはおとりになったんですか、どうなんですか。
  14. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはそういう、何といいますか、念には念を入れると申しますか、お話をある時期にすべきだなという感じは私にもございます。その限りにおいては私ども反省しなきゃならぬ。ただ、努力規定の中については、五十年度の公債発行特例に関する法律の第一条についても、努力規定の中に包含するという法律書き方そのものはいたしてあるわけであります。しかしながら、やはり事前の、根回しという言葉は適当でありませんが、事前関係方面へ、そういう努力規定の中に少なくとも五十年債も入っておりますということは特にメンションしてお話しすべきではなかったかな、こういう反省はございます。
  15. 竹田四郎

    竹田四郎君 中曽根内閣やり方は、私はもっと違うと思うんですがね。例えば、あなたは「展望指針」というのをお読みになりましたか。「展望指針」の中に借りかえの問題について一言触れているわけでしょう。「国民的合意を得つつ」という言葉がちゃんと入っているでしょう。国民的な合意を得つつというのは、一体どこでそういうことをおやりになったんですか。確かに財政審にはおかけになった。そのほかで借換債についてどれだけ国民合意を得られているんですか。今まで約束をしたのまで国会には黙ってきて、私がここで質問して初めて、六十年は借りかえをいたします。——今までそんなこと一言も言ってない。こういうことでしょう。こういうやり方を続けていくということになれば全く歯どめがなくなるということですよ。でありますから、私どもはここで歯どめの問題というのはこれだけやかましく言ったんです。あなただって今ここだけで答弁するのはよろしくない、こう言っている。いいとは思わないと言っている。あなたはまだそういう発言をされているからいい。ほかの大蔵の者はだれ一人としてそういうことを言ってないじゃないですか。私の部屋へ何回か足を運んだけれども一言といえどもそんなことを言ったことないじゃないですか。こういう状態でこの法案がどんどんと通っていく、歯どめはない、一体どうなりますか。まさに私はそういう意味じゃ恐ろしいと思う。  まあ、この問題にいつまでも触れているわけにはまいりませんので、私はここでもう大きく大蔵省反省をしてもらわにゃ困る。大臣大蔵大臣約束をしたことを一片の答弁ですっとはねのけてしまう。それで世の中は済むと思っておられるような考え方、私はこの考え方にはどうしても納得できません。これは大蔵大臣、なぜ言えなかったんですか。その辺の経緯をここでちょっと明らかにしてくれなければ、私先へ進めませんよ。委員会がさんざんばかにされているということになりませんか。
  16. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは御案内のように、「昭和五十一年度の公債発行特例に関する法律の一部を次のように改正する」、すなわち「第五条を削る」。で、五十二年、五十三年、ずっとそれを削ると、こういうことにお願いをしておるわけであります。したがって五十年は、法律そのものはございませんから、だから事前なりあるいは正式に本委員会等で申し上げるべきであると。ただ、努力規定の際におきましては、「できる限り行わないよう努めるものとする」という第六条の中の一として、「昭和五十年度の公債発行特例に関する法律昭和五十年法律第八十九号)第一条」を書き、努力規定対象となるものとして、五十年度の公債発行特例に関する法律をこの法律の中で書いておりますので、その限りにおいては、努力規定問題については、五十年から以後のものが一応一貫して努力規定の中に包含されておる。ただ、五十一年度以後のものはその第五条をそれぞれ附則で削っておる。したがって、五十年のものにつきましては、法律の中にはございませんだけに、この委員会等で正確に御答弁申し上げるというのが筋ではなかったか。ただ、法律を見ますと、努力規定の中には五十年債も入っておりますので、へ理屈を言えば、その中で、なるほどこの五十年分も政策転換対象になっておるなということが読み取れなくはないというふうに思いますが、それは読み取ってくださいというよりも、ちゃんと事前お話しした方が、その方が適当であったと思います。
  17. 竹田四郎

    竹田四郎君 破られてからですから、それ以上言えないでしょうから、この問題はこれでやめますけれども、しかし竹下さん、よく大蔵省の内部へぴしっとそういうことは言っておいてくれないと、今後ますます国民的合意は得られなくなりますよ。国民的合意を得るということが、私はこの問題では非常に大きいことだと思うんですよ。それはひとつ強く要望しておくわけです。  それから財政審の話もそうでありますが、これからどんどんと満期に来る国債というのがありまして、借りかえをしていくということでありますけれども、その減債基金というのは将来一体どういうふうにする考え方でいるわけですか。今のお話でも、これは六十年も減債基金繰り入れをしない、こういうことになるわけでありますか。これを空にしておくということですね。これは確かに六十二年になると恐らく空になってしまうと思いますけれども、これは空にしておいていいんでしょうか。ここにある程度のお金があるということは、国債に対する信用度を強めることでもある。  あるいは、けさの新聞でもはっきりしているように、七月の国債を一体どうするか。休債するかしないか。六月は税金が余計入ってきたからということで休債にするのを一つの理由にしたようでありますけれども、これも本来は国債の値段が下がった、利回りが上がった、このことで代償をせざるを得なかった。七月債だって同じような状況になるんじゃないですか。こういうようになって国債利回りが上がってきたときには、一体どういうふうにこれからオペレートをするつもりなんですか。一体そのオペレートはだれがやるつもりなんですか。  私はそういうことはこれからどんどん起きてくると思いますね。きょうの新聞に書いてある七月債を外債にするかしないかの問題も、言うなればドル高・円安、アメリカ金利の高騰、これがそうした問題を余計大きくさせているというふうに私は思います。そうなってくると、こういう問題は一体どういうふうにこれから対応するんですか。だから、もちろん話し合いがつかなければシ団の引き受けはやめてしまう、休債休債休債というのを続けていくつもりなんですか。それとも、どんどんシ団の言うとおりにある程度金利を上げてそれに対応していく、その辺のオペレートということはもう全然これから考えなしでやるということなんですか、どうなんですか。もしやるとすればどこでやるんですか。
  18. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 国債整理基金への繰り入れの問題につきましては、主計局の問題でございますので、私からは七月の起債の問題と、市況が悪いときにどう対応していくのかという御指摘がございましたので、それについてお答え申し上げます。  七月の起債条件につきましては、アメリカ金利が上昇する、あるいは円が安くなるという状況のもとで国債市況が非常に悪くなっておりまして、従来の条件では発行できないというような情勢でございます。そこで、七月債起債するためには条件の改定をせざるを得ないということでございますけれども、できるだけ発行者としても不利な条件にならないようにさらに市況の進展も見ながら検討していきたい、こういうふうに考えております。  一般的に言いまして、そういう状況のときに不利な条件起債をせざるを得ないようなところに追い込まれないようにするためには、ある程度の国債整理基金残高があることが望ましいわけでございまして、私どもといたしましてはそれを期待しているわけでございますが、ただ、どの程度あったらいいかという点についてはなかなか難しい問題がございますので、今後主計局ともよく相談していきたい、こういうふうに思っております。
  19. 竹田四郎

    竹田四郎君 確かに理財局長の言うように、私はなかったら困ると思うんですね。これは主計局の問題だと言われるんで、主計局はどう考えるんですか。一体主計局は、その問題は、赤字国債発行をそれだけ多くしなくちゃならぬからということで繰り入れはしないという方針を堅持するんですか。それともある一定のものは、今理財局長が言ったように基金勘定の中に、どれだけの金額が適当かということは私もよくわかりませんけれども、しかしある程度そういうオペレートができたり、あるいは休債のときには何らか使えるというようなものというものがある程度金庫の中になければ金繰りができないわけですよ。主計局はこれをどう考えるんですか。
  20. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 国債整理基金に今おっしゃいましたようにある程度の余裕金残高が必要であるということは、そのとおりだと考えております。したがいまして、国債整理基金繰り入れる方法は、御存じのように一・六%の繰り入れと、それから剰余金繰り入れと、予算繰り入れと三つのルートがございますので、それらのルートを使いながら、かつまた一般会計財政事情も考え、それから今申し上げました基金余裕金必要性程度等も考えながら予算の上で配慮してまいりたいと考えております。
  21. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、整理基金勘定というものは、ある程度足りなくなったらば、予算繰り入れでも剰余金とかいうような繰り入れというのは恐らく当分考えられないと思いますよね。赤字国債を出すような事情でありますから、それは考えられない。そうすると、定率繰り入れ予算繰り入れか、この辺が中心だろうと思います。あとは、短期国債のことが新聞にちらちら出ておりますけれども、適当に短期国債でファイナンスをしていくということになるんですか。  その辺をもう少しはっきりしませんと、単なる借りかえ禁止条項を入れたということだけで果たしてこれからの国債相場——これは国民が大変たくさん保有するようになっているわけでありますから、そのあり方というものは国民の関心もあります。また外国との金利関係の枠がとれたわけでありますから、今度の七月の休債云々ということも、結局昔に比べれば、枠がとれたからこういう問題が出てきたと私は思うんですよ。そうなってくると、この国債相場相当な動き、乱高下と言えるかどうかわかりませんけれども、それに似たような問題というのは私は起きてくると思うんですね。そのことも考慮の中に入れて対応をしていかなければいけないだろう、こう思うんですよね。  今のお話だと何かあやふやですね、まだその辺の問題が。もう既に六十年度は借りかえをするということを言いながら、もうその辺は非常にあやふやですな。もう少しその辺を詰められませんか。
  22. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 対応につきましては、そのときの情勢に応じまして弾力的に対応していく必要があろうかと思っております。当委員会でもしばしば申し上げましたように、六十年度に入りましてから建設公債借りかえ所要額だけでも相当の額になっております。それに特例公債借りかえということがオンされますと、新規財源債につきましても相当規模の起債確保せざるを得ない。こういう状況のもとで新規債、借換債あわせました起債額というのは当分の間相当大きいわけでございます。しかも借りかえがある時期に集中する、特定月に集中するというようなそういう問題もございます。  一般論として申しますと、借りかえ債につきましては、償還財源が市中に出るわけでございますので、それをもう一度起債で吸い上げるということでありますから、金融市場につきましては、これはいわば中立的でございますので、何とか工夫をして償還月起債をして吸い上げるというふうな努力をしなくちゃならないと思いますけれども、ただそのときの市況が必ずしも有利になっているかどうか、それから償還を受けた者が直ちに同じような国債に買い向かってもらえるかどうかという点については、それは確としたことは言えません。そのときの市況に応じまして弾力的にやらざるを得ない。考えられることといたしましては、繰り上げたり繰り下げたりというような時期的調整を図るとか、あるいは国債多様化を図りまして、短期国債も含めまして、そのときの投資家のニーズに合わせた国債発行していくとかいろいろの工夫をしなければならない、こういうふうに思っております。  いずれにいたしましても、国債の円滑な発行消化を図ることが六十年度以降一段と重要になってまいりますので、私どもといたしましては、情勢の変化に弾力的に対応できるように十分勉強していきたい、こういうふうに考えております。
  23. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、来年から借りかえをやると言っているんですよ。今の話だと随分のんびりした話じゃないですか。私は本当に借りかえをやるというなら、もう少し責任ある体制をつくってもらう、あるいはそれに対するプログラムを国会に示してもらう、こういうことをしないと——この問題は、一つ特例債借りかえをするという問題は全く初めてのことです。しかもかなり膨大なものが出てくるということです。金融情勢も昔の情勢とは違っているということです。それから国債保有者の問題も今までより違っていることです。  今、理財局長の言っているお話は、お金を返すんだから、そのお金で全部買ってくれればお金の総量には影響ないじゃないか、こういう話ですね。確かに机の上じゃそうですよ。机の上じゃそうですけれども、そんな簡単に——買ってくれるときもあるでしょう。買ってくれないときだってあるんですよ。戻ってこないでしょう、それは。資金の偏在がどこかに出てくるわけですよ。そういうものはすぐ私の頭でもわかるわけですよ。それをあなた方みたいないろいろな情報を持っている人たちから、これはこうします、これはこういうふうな研究をいついつまでに達成しますというぐらいの話は出ていいじゃないですか。そういうのは全然なしでしょう。短期国債を出すのか出さないのか、これだってはっきりしていないでしょう。短期国債必要だろうと私は思いますよ。じゃ短期国債いつから出すんですか。そういう体制をいつからしくんですか。この間だって参考人の方が見えられて、銀行筋は短期国債は困る、私どもの商品と競合するから困るということをかなり明確に言っておるんです。そういう話し合いだって今必ずしもついているわけじゃないでしょう。  そういうことでこの法案審議してくれ、これから大量に出回ってくる国債を考えてくれと言ったって、対応がなければ考えようがないでしょう。しかも我々の経験の中では、国債の大量発行によってかつてインフレになったという苦い経験があるわけでしょう、国民は。それだけに、あつものにこりてなますを吹くのたぐいかもしれません。しかし自分の財産がどうなるのか、これからの高齢化社会に向けて一体どうなるのか、私は非常に心配だと思うんですよ。それについて聞いても、抽象的にああです、こうですということだけで、ちっとも具体的でない。これは大蔵大臣、こういうなまくらな形、ぼやっとした形で来年まで行くんですか。
  24. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私自身素直に申し上げて、実は六月代償しましたときに、全般的な金融が緩んで、それから金利も、徐々にではあるが実勢金利は下降傾向にある、にもかかわらず国債市況は悪い。一体その理由はどこにあるか。今、竹田さんおっしゃいました開放体制になったからということが直ちに影響しているかどうかということに対しては、私もにわかに、それも一つ考えなきゃいかぬ要因だなとは思ってみましたが、しかし一方、ドル高・円安、アメリカのまた高金利金利が押し上げられていくというようなことからすれば、六月債、幸いに手元はあるから様子を見た方がいいなと、こう思いました。七月債を見ますとその状況は変わってない。したがって、これはやむを得ずある程度の条件改定を決意して、近々にでもシ団とネゴに入らなきゃいかぬかなというところまで来ておるというふうに私も思うわけであります。  そこで、どういうことの勉強が必要かというと、私なりに整理いたしますと二つ。一つは、今おっしゃいますように、いつどうしてということを決めたわけではございませんが、短期国債というものの勉強を始めて、それがどういう形で金融市場に受け入れられるかというようなことが勉強の一つの点。それからもう一つは、先ほど来議論があっておりますように、国債整理基金が空っぽになりますとそうした場合の機能も果たさない。が、まあ六十年はまだ幾らかストックがあるなど。そうすると、考えますと、六十一年仮にもし国債整理基金へ入れることをやめたとすれば、六十一年には非常にストックが少なくなる。そうするとこの国債整理基金に、どの程度かは別として、予算編成上幾ばくかのものを考えなきゃいかぬ。これが勉強の二つ目の課題ではないか。  したがって、それはそのときどきの財政状況を見なきゃわかりませんが、仮に幾ばくか必要とすれば、六十年で少し入れておいて六十一年で少し余計入れるかとかいうような、これは思いつきでございますけれども、そういう議論は若干はしております、率直に言って。だから国債整理基金にどれだけのストックを持たしておくか。少なくとも六十一年のことを考えると、それが大きな勉強の課題。それから今おっしゃる短期国債というものをいつ、いかなる形でということ、この二つが国債管理政策の中での勉強の二つの大きなポイントじゃないかなと、そういうふうな事実認識を自身は持っております。
  25. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣答弁を聞いても、理財局長、それから主計局次長の答弁を聞いても、準備は全然できていないということですよ、わからないですよ、我々には。私にわからないくらいですから国民の大多数はわからぬと思うんです。ですから私どもは、この問題は、繰り返すようでありますけれども、もう少し勉強して来年度でもよかったんじゃないか。来年の二兆二千八百億も恐らく十二月ごろ以降でしょうからよかったんじゃないかと、こう言うんですが、非常にこれを急いでいるということはよくわかりません。これはもっと聞かなくちゃいけない問題だと思いますね。  それで、短期国債はどうするんですか。これは発行することにするんですか。発行するとなると、どういう形で発行するということですか。これはまだそういう話は全然してないというんですか。
  26. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) ただいま大臣からもお答えがありましたように、私どもの重要な検討課題でございます。  先ほども申し上げたわけでございますが、六十年度以降も新規債、借換債を合わせまして大量な国債発行消化、それを円滑に国民経済の中に受け入れていただくということが必要でございます。年度を通じて、大量であるだけじゃなくて、特定月に集中するという問題があるわけでございます。先ほども申しましたように、それに対する対策といたしましては、有利な時期に前もって起債して分散を図るとか、後へずらすとかということも一つの方法でございますし、それから短期国債も含めまして国債多様化を図って、投資家のニーズに合わせて円滑な消化を図っていくということも一つの対策だと思います。そういったことも含めまして、六十年度には間に合うように検討を急ぎたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
  27. 竹田四郎

    竹田四郎君 それはあなたの得意な借換懇談会の結論を待ってやるんですか、どうなんですか。
  28. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 借換問題懇談会におきましてもこの問題についていろいろと御意見がございました。そういった御意見も参考にいたしまして、私どもといたしましては最善の道を検討していきたいと、こういうふうに考えております。
  29. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうも大蔵大臣大蔵大臣はよくわかるかもしれませんが、私の頭が悪いのか、どうもイメージが全然浮かんでこないですね、具体的にどういうふうにするのか。お役所というのはいろいろな約束事、規定やなんかをつくった上で大体おやりになるのが多いわけですよ、我々と違って。そういうものも何にもなしで、サラリーマンがサラ金で金借りるのと全く同じですな、これは。どういう返し方をする、どういうファイナンスをする、どういうようなつなぎをやっていくかということは、もう全然なしでやるというんですからね、もうサラ金と同じだと思うんですね、これじゃ。  そこで、もう一つは、こういうふうにたくさん国債が出る、借換債が出る、こういうことになりますと、市場が非常に混乱する場合が多いと思いますね。恐らく今、日銀、運用部資金で持っている国債の保有の割合というのはそう多くないと思うんですね。恐らく日銀で持っているのが七、八%程度のものじゃないでしょうか。そうなってまいりますと、これは日銀が余り国債の保有をするということは慎まなくちゃならぬ問題であろうということになれば、そのときの市場の状況にもよりますけれども、この運用部資金ですね、運用部資金が今三兆七、八千億ぐらいの引き受けになっておりますか、これなんかがもっと活動をするような体制というものをつくらなきゃいけないんじゃないだろうか。これに対する対応を一体どう考えておられるのか、運用部資金の蓄積というものを相当程度頑張らなくちゃ、とても整理基金勘定だけで対応できるという状態には私はならぬだろうと思うんですが、運用部資金に対する国債借りかえ、あるいは残高の増加、こういうことについて、それとの関連は大蔵大臣、どう考えていますか。
  30. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 運用部資金につきましては、国債発行されるときの市中計画とその引受額をできるだけ確保するという問題と、それから余資を運用して国債を市中から買い取るという問題と二つあるわけでございます。  最初の、資金運用部資金による国債の引き受けにつきましては、従来から財投の検討をいたしますときに、資金運用部の原資事情、市中の金融情勢、それから財投に求めております国、地方、財投機関それぞれについての投資の必要度のバランス、そういったものを考えながら国債の引受額を決めているわけでございますけれども、私どもといたしましては、国債の引き受けには相当な重点を置いてやっているつもりでございます。  五十九年度につきましては、国債発行額、新規国債発行額そのものが六千五百億ばかり減額したわけでございますけれども、資金運用部の引受額は、三兆七千億でございましたのを千億減しました三兆六千億確保いたしまして、国債発行額に占める資金運用部の引受額のシェアを引き上げております。私どもの気持ちといたしましては、資金運用部資金に十分な余裕があって、その他の地方、財投機関等の資金需要につきましても相当な配慮は必要でございますけれども、できるだけ国債の引き受けを確保したいと、こういうふうに考えております。  それからもう一つ、第二の問題でございますが、資金運用部におきましては、資金の預託と運用の間のずれなどによりまして余資が生じます。その運用といたしましては通常、政府短期証券の保有の形で行っておりますけれども、余資のより有利な運用を図るために資金運用部の原資の状況、公社債市場の動向等を勘案しながら、短期間の運用条件として長期国債の購入を行ってきております。最近におきましては、資金運用部資金の原資の伸び悩みが続く中で、各種の資金需要も根強く、資金運用部の資金繰りも厳しい状況にありまして、余資の発生も少なくなっておりますが、今後とも極力余資の有利運用を図る観点から長期国債の買い入れを行ってまいりたいと考えているところでございます。  ただ、資金運用部の長期国債の購入は、今申し上げましたように、運用部資金の有利運用の観点から行っているものでありまして、先ほど先生おっしゃいました、国債市場の安定という話がございましたけれども、そういったものに資する面もございますけれども、資金運用部資金の現在の余裕の状況から申しますと、国債の価格支持を目的として購入を行っていくということはなかなか困難な問題でございまして、慎重な検討が必要ではないかなと、こういうふうに思っております。
  31. 竹田四郎

    竹田四郎君 資金運用部の資金というのはいろんな意味で私は制約があると思うわけですね。例えば財投に資金運用部の金をやるわけですから、そのときの金利とか何かそういうものに関連してきますし、これは集めているところは、御承知のように、資金運用部の金は郵便貯金が大半で、それにあと年金、こういうものだと思いますね。  そうしますと、どうなんですか、これは郵政省の方からお答えをいただきたいのですが、今、郵便貯金の伸び率というのはどちらかというとダウンしてきてますね。これでこれから金融の自由化、あるいは個人貯蓄等についても、日米の話し合いによりますと、三年後ぐらいからは小口預金についても検討するということになりまして、金融の自由化ということが出てくれば、これはアメリカの例でありますから、それはわかりませんけれども、恐らく金利は上がる、こういうふうに見なけりゃならぬと思うんですね。そうしますと、郵便貯金のあり方というのは非常に難しくなる。民間ではいろんな形で恐らくたくさんの銀行、証券会社がいろんな金融商品を出して、恐らく物すごく競争すると思うんですよ。そうすりゃ、どうしたって金利は上がってくるというのが通例だろうと思いますね。郵便貯金というのは余り上げるわけにいかぬと思うんです、財投があるから。  その上、今後老齢化社会というようなことになってまいりますと、郵便貯金の集まり方というのについては、ぐんぐんふえていくということはちょっと考えられないような情勢というものが出てくるんではないだろうか。郵政省の貯金局の方、民間の銀行なんか、最近盛んにいろんなビッグだ、ワイドだというのを売り出していますね。それに十分対抗して今後やっていけますか。
  32. 岩島康春

    説明員(岩島康春君) 御説明申し上げます。  先生御指摘のとおり、最近郵便貯金の伸びというのは非常に急激に落ち込んでございます。五十五年の伸び、急激に伸びたときを除きまして、五十三年以降伸びが落ちているわけでございますけれども、特に伸びの落ち込みというのは、去年あるいは今年度に入りまして急でございまして、例えば昨年度でございますと、純増といいますか、つまりお客様から受けた郵便貯金とお払いした郵便貯金の差額でございますけれども、市中から引き上げました純増価額というのが二兆七千億でございまして、これはおととしに比べますと八〇%ぐらいの伸びでございます。今年度に入りましてこの伸びがさらに落ち込みまして、現在時点でございますと四千億くらいの純増になっておりまして、これは悪かった昨年度に比べましても半分くらいでございます。  おっしゃいますように、この急激な落ち込みというのは、一つは所得の伸びの低下ということもございますけれども、いろんな預貯金以外の、半ば自由商品といいますか、ビッグ、ワイドと先生おっしゃいました、そういったようなものが出てまいりまして、預金者がそちらの方に先行いたしましてシフトしておる。郵便貯金としてはなかなかそういったものに対抗する新商品というものが急にはできかねる状況でございまして、こういった伸びの落ち込みというのが急に回復できないのじゃないかと私ども大変危惧しているところでございます。
  33. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうなってきますと、年金の方がどのくらいふえるか、今ちょっと計算しておりませんけれども、資金運用部の資金量というのは非常に多くなって、余裕金が多くなってくるということは、相当努力しないとこれは多くならないと思うんですね。そうすると、この国債の借換債を含めての発行量というのは多くなる。その中で資金運用部が本当に機能するかどうか、この辺も私は非常に心配の種なんです。この辺は大蔵大臣、どういうふうにやるおつもりですか。恐らく私はそう資金運用部の金というのはふえるとは思わないんですがね。これはこれからの方針ですよ、大蔵大臣。あなたの担当の方針ですよ。これに対して、どういう方針でいくのかということを明示していただくことが私は必要だと思うんですが、どうなんですか。
  34. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 今御指摘がありましたように、財投の原資はしばらく厳しいと思います。郵政省から御説明がありましたように、郵貯の伸びがそれほど大きくなることは期待しにくいのではないかと思います。資金運用部の原資の六割が郵便貯金、それからさっき触れられました年金が約三割を占めているわけでございますが、この年金につきましても、今後給付が相当進んでまいりますこと、これも当然予想しなければなりません。そうしますと、こちらの方も伸びが鈍化すると考えざるを得ません。そういった意味で、資金運用部資金全体を見まして原資はこれから厳しい状況が続くだろう。それを前提といたしまして財投計画を組まざるを得ない、こういう状況でございまして、先ほど申しましたように、地方のニーズ、それから財投機関、それとあわせて国債への配分ということで厳しい財投計画を組まなくちゃならない、こういう状況でございます。
  35. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣どうですか。理財局長は計算の話だけですけれども、これを一体どういうふうにしていくつもりですか。
  36. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、今郵政省からもお答えがありましたように、いわゆる財投原資としての資金運用部資金が窮屈になるという事実は、私もそのように理解をいたしております。したがいまして、そうなればいわゆる財政計画の洗い直しか、こういう議論が当然出てくるわけであります。これにつきましては、従来から当初は基幹産業であります鉄鋼とか電力とか、そういうところが対象になったものが、今日はいわば生活面というようなところに対象がある程度移ってきておるわけであります。  したがって、今後の問題につきましては、新規事業ということになりますと、真に必要なものに厳しく限定するということ、それから認める場合においても、スクラップ・アンド・ビルドの原則にのっとっていわゆるサンセット方式とかいう考え方を導入する等の措置を、今も講じておりますが、今後一層厳しくそういうような形で、極力この事業・融資規模、財投の規模を抑制していくという考え方に立たざるを得ないではないか、こう。いうふうに考えております。これは財投計画。そうして、国債引き受けの問題等々ございますだけに、これはよほど私どもとしては見直しという考え方の上に立って、厳しく対応していかなきゃならぬ課題だというふうに理解をいたしております。
  37. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうも大蔵省は、頭に浮かぶことをおっしゃることは非常にうまいんですがね、いろいろと並べ立てることは。しかし、具体的に何をするかということについては、私はほとんどないと思うんですね。これだけ政策の大転換と大蔵大臣が言う割には内容が何にもない。今大蔵大臣がおっしゃられた財投の問題は臨調からも、特別会計やあるいは政府関係機関やあるいは特殊法人の見直しについては出ているわけですね。その辺について、具体的に一体どういうことを政府としておやりになりましたか。大蔵省は、財投が所管でありますから、財投関係をどういうふうに調べてみましたか。なお、私も若干あちらこちらのものを見てみました。実にむだが多い、実に複雑怪奇だ、実に国民の目が届いていない。また政府も、財投は、個々の審議のための資料を出そうと今までしなかった。何回か言ったけれども出そうとしなかった。国民の目にはなるべく触れさせようとしなかった。住宅金融だって窓口一体幾つありますか。十幾つありますよ。今そういうふうなことでいいのか、どうなのか。そのほかいろいろ役に立たないような会社も随分あります。あるいは金庫にしてももう少し統合したらいいというようなものが随分あります。そういうものの再検討のための方向というのは、口では言っておりますけれども、具体的には何にも出ていないじゃないですか。  今おっしゃったのも、一つの特別会計必要があったら、一つをつぶす程度のものであって、名前を変える程度のものであって、数をふやさない程度のものであって、内容までの検討にはちっとも入ってないじゃないですか。もしそういうものが入っていたと言うなうば、資料として、臨調の答申があってから、こうこうこうしました、こういう検討をしまして、ここではこういう成果がありました、こういう欠陥がありました、ここはこう直さにゃいかぬと。大蔵省が財政投融資についておやりになったらその結果を出していただきたい。恐らく幾らも出せるものはないでしょう。そういうところも厳しく締めていかないと、私は資金運用部のファイナンスする基金、お金、余資というものは余り出てこないだろうと思うんですね。そのくらいの厳しさが今度の場合なければいけないんじゃないか。それでなければ本当に財政再建にもつながらないし、このままいったら、六十五年度特例債依存体質から脱却するなんということはできないと思うんですね。その辺の決意をひとつ大蔵大臣から伺いたいと思うんです。  今のままこんなだらだらしてたら六十五年度に特例債ゼロになるどころじゃないと思うんですよ。もっと点検し、直すべきところはもっとやるべきだ。そのためには、場合によればそういう組織をつくることも必要でありましょう。あるいは行管庁は今度なくなるわけでありますが、そういうところに徹底的な調査を頼むということも必要でありましょう。その辺についての対応というのがどうも私には見られない。これじゃ借換債がどんどんふえてくる。そのときにどんな対応ができるかということになると非常に心細い。どうですか。
  38. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この財投計画、五十九年度を見ていただきますならば、三十年ぶりとか、二十年ぶりとかいう低い伸び率に抑えるための努力を続けてきたわけであります。地方を除きますと、いわば〇・〇%というところまでいろいろな洗い直しをしてまいりました。それから、いわゆる政策金融機関の財投額等についてはマイナスを掲げてきた。  しかし、今御指摘なさっておりますように、容易じゃないぞよということは私も同じような認識に立っております。引き続き財投の見直し検討につきましては、これは進めていかなきゃならぬ。その進めていくに当たりましてどういう場所で集中的に検討するかということについては、どういう場所が最も適当であるか、あるいは能率的に審議してもらえるかという問題につきましても、何といいますか、場所につきましても十分考えていかなきゃならぬ課題だという問題意識は私どもも持っておるところであります。
  39. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもこれも問題意識を持っているだけのもので、先にスタートするということが考えられないわけですね。これだけこう伺っていて、借りかえ禁止規定を削除して六十年から借りかえをやろうというのに、それの対応というのができていないんですがね。国民的な合意がこういうことで得られるでしょうか。少なくとも大蔵省としてこういう借りかえをやっていくのだから、この面ではこういうふうにきちっと整理していく、こちらはこういうふうにやっていくのだ、資金運用部の預金についてはもう少し集める工夫をこうするのだ、こういうようなものがなければならないんじゃないですか、これだけの政策大転換だから。政策大転換をされて、そしてそれに対応する施策というのは何があるんですか。短期国債発行するということですか、あるいは借換債の前倒し後倒しということがあるということですか。  それはまだ聞くことがうんとあるのですが、理財局長、六十二年の三月ですか、五月ですか、三十幾らくらいばっと来るでしょう。そのときの金融情勢というのはどんな情勢だか今からわかりませんね。そのときの対応なんかどういうふうにするんですか。前倒し後倒しという形でいくんですか。それとも短期国債発行するということでおやりになるんですか。この短期国債発行というのは国会に対してはどういう措置をされるんですか。国会には話なしでどんどんお進めになる、こういうことなんですか。あるいは短期国債の期限というものは一体どんなふうに考えていらっしゃるんですか。予算の単年度主義との問題も出てまいりますね、TBと違いまして。その辺のことも我々全然わからない。口では短期国債お話もちらっと出る。新聞には借りかえ時期の前倒し後倒しがちらっと出る。全然わからないですね。その辺のことはどうなさるんですか。
  40. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 今直ちにお示しできないということでまことに申しわけないわけでございますが、先ほどからるる申し上げておりますように、六十年度以降いろいろと難しい問題がございますので、私どもといたしましては、間に合うように十分検討して間違いがないようにしていきたい、そういうふうに考えております。
  41. 竹田四郎

    竹田四郎君 だから私ども借りかえの問題は、赤桐さんがおっしゃったように、別の問題だからもう少し時間をおいて検討しなさいと言っているわけですよ。これだけの法案を出すならば、その辺ちゃんとそろえて出してくれなければ議論にならないじゃないですか。私が先ほど聞いているのでも一つとして胸に落ちるものはないわけですね。例えば郵貯と普通の銀行、証券との関係などというものも全然見通しないんですね、今までも難しい問題であったことは事実であります。何かその辺全体として何が何だかわけがわからぬというのが、私の過大な評価と言えば過大な評価とというふうにあなたはおっしゃるかもしれませんけれども、私はそう過大だと思っていないですよ、私の考えていることは。そういう疑問点はたくさんあるままにこの法案に対する態度を決めなくちゃならぬなんというのは、今まで余りなかったことですね、こういうことは。もう少しはっきり私はしてもらいたいと思うんですがね。前倒し後倒しなんかどうするんですか。
  42. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 先ほども申し上げましたように、六十年度には相当な準備を整えていく必要があろうかと思います。その準備を整えるために私どもとしてはできるだけ早期に検討の結論を得たいと、こういうふうに思っております。その中で予算なり法律なりに反映されることが出てくるということになりましたら、そのときにはそういうものとしてお示しをしていろいろと御審議をいただきたい、こういうふうに考えているわけでございまして、今はその準備をしている段階でございまして、前倒し後倒しの問題も制度を改正しないでやれるものもございますし、制度を改正しなければやれないようなものもあるいはあるかもしれません。それから国債多様化の中でも、今の制度の運用としてやれるものと制度の改正をしないとやれないものとがあるかもしれません。そういったものの検討が固まりましたら固まったところでお示しをして御審議をいただくと、こういうことになろうかと思いますが、今、じゃどうするんだと言われましても、私どもといたしましては、六十年度を目指して検討しているものでございますので、その検討の途中で煮え切らないものをこうなるんじゃないかというようなことを申し上げることは差し控えた方がいいんじゃないかと、このように思います。
  43. 竹田四郎

    竹田四郎君 六十年度でしょう。とにかく財確法なんか早く上げちゃって、それぞれの人がそれぞれの部署へついて新しいシーリングを決めなくちゃならぬというので、私どもはある方面から早くやらないと来年の予算のシーリングはできないぞとまでおどかされているわけだ。そういう状況なのにまだ六十年度——もうあなたたちは作業に入るわけでしょう。それなのに私どもはまだこの問題で明らかにならないなんていうのはどういうことですか、これは。六十年度というのはそんなにはるか遠いもんですか。  大蔵大臣短期国債はどうするんですか。前倒し後倒しを考えるということになれば、短期国債はどうしても、私どもの党の方針とはいささか異なりますけれども、これを考えなければ混乱しますわな。これはどうするんですか、来年は。もう具体的にすぐの問題ですよ、出すか出さないかは。
  44. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 非常に大ざっぱなスケジュールで申しますと、大蔵省全体の課題としては、法律、政令に基づく概算要求というのが八月末ということになっております。その作業の一予算編成上の手法として昭和三十六年以来続けてきたシーリング問題というのがございます。そうして私どもとしては、五十九年に発行するものをこの借りかえ禁止規定を外したもので御審議いただかないことには結果としてうそをついたことになる。さようしからば、それ以前に償還期の来るものも整合性の上において一緒に外してくださいと。そしてその体制が、この法案を通していただくという前提の上に立って、それができたらば、私どもとして六十年度予算編成に向かってやらなきゃならない問題点が、そういう角度から見ると、歳出の問題は別として考えますと、およそ三つある。それは国債管理政策上の問題からするところの整理基金のストックのあり方の問題の勉強と、それから今前倒し後倒しという御議論を現実的に見れば、そうなればそこでつなぐのは短期国債ではないかとかいう議論が事実出ておるわけであります。したがって、正式に言えば、国債多様化問題という問題がもう一つ問題意識として存在する。いま一つは、まさに資金運用部のあり方。そうすれば当然今度は財政投融資計画との関連と。これが十二月までの私どもの精力的に問題意識を持って答えを出していかなきゃならぬ三つのポイントではないかと、こういうふうな理解の仕方をいたしておるわけであります。
  45. 竹田四郎

    竹田四郎君 私が頭が悪いせいかどうかわかりませんけれども、とにかく今まで一時間何がしの時間を費やしたんだけれども、具体的には何もわからぬ。これからどうしていくかという点については何もわからぬ。関係はいろいろわかりましたよ。これからのシ団との関係は一体どうなるのか、あるいは短期国債発行するとなればどういう対応になるのか、いろいろまだあと問題が山ほど私はあると思うんです。この問題は、もう私の時間は参りましたので、特に委員長にお願いしておきますけれども、私は、政策の大転換であるだけに、もっと明らかにすべき問題点というのは多いし、次の機会までに大蔵省としてもそれに対する対応というのをもっとまじめに具体的に検討して持ってきてもらわないと困るんですがね。そういうものは次の機会には出るんですか。いついつまでに出るんですか、そういうものは。そのいつまでに出すという点ぐらいまでははっきりしてくれませんか。このままでずるずるずるっと来年度の予算審議まで入っちゃうということは、これはちょっと許せないと思う。その辺をお聞きして私の分は終わりますけれども、後にひとつ委員長、御配慮をいただきたいと思います。
  46. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほど申し上げました問題意識の三つの点というものは、きちんとしたものが予算編成期までにどの程度御提示できるかと。しかし、精力的な検討を進めていって、可能な限りの問題意識を持っておるものの検討経過等はお示ししなきゃならぬ課題だと思っております。
  47. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 最初に、経済企画庁と専売と自治省の給与課長さん、きょうはそこまでちょっと入れそうもございませんので、お引き取りいただいて結構だと思います。    〔委員長退席、理事大坪健一郎君着席〕  この間質問で要求しておりました資料が出てまいりましたので、大変細かいことから入らしていただくんですが、借換懇の関係をもう少し明らかにしていかないと先に論議が進みませんのでお答えを願いたいと思うんです。  昨日ちょうだいしました資料によりまして、借換懇の委員の費用弁償その他については、謝金及び委員等の旅費、それから会議費というふうな予算費目からそれぞれ出ているということでございます。それで、委員等の旅費ということになりますと、これは当然政府の機関である審議会というふうなものの委員も旅費規定によって出しているんで、恐らくこの費目から出るということになると、何々審議会の規定を準用するとか、旅費規定と言うのかどうかわかりません、自治体では旅費規定と言うものですからついそういう言葉になるんですが、そういう何か準用する根拠がなければ計算ができないと思うんです。ですからこれは必ず根拠があるかと思うんですが、いかがでございましょうか。
  48. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) ちょっと細かいお話ということでございましたが、私も細かいお話だったものですから、その根拠は実は調べてまいりませんでした。もしお許しいただければ、調べまして御報告申し上げます。
  49. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 おたくの方からもらった資料で御質問申し上げているんで、多分私はそれはあると思うんです。なければ出せませんからね。これ単独の規定でなくても何かを準用するというふうなことがなければ。  それで、私が申し上げたいのは、そういうことなので、先日理財局長からお話のありましたように、この借換懇というのは全くの私的諮問機関だというわけにはいかないんじゃないかと思うんです、これだけ明らかな予算費目から出ておりますとね。例えば地方自治体なんかでも首長の交際費といいますかね、そういうポケットマネーから出るようなことで集まってもらう場合には私的と言えます。しかしきちんと予算費目の中に分けて支出をするということになると、これは単なる私的諮問機関ではなくて、私的諮問機関といっても公的な審議会に準ずる懇談会だというふうに理解せざるを得ないんです。そういうふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  50. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 前回、丸谷先生から国債借換問題懇談会につきましていろいろと御質問ございまして、私どもいろいろと申し上げたわけでございますけれども、それを整理させていただきましたので、その整理したところに従いましてお答え申し上げたいと存じます。  まず第一に、国債借換問題懇談会は、答申といった形で機関意思を決定するいわゆる審議会、国家行政組織法八条の審議会ではないわけでございます。したがいまして、同懇談会における出席者の御意見は、今後の国債の大量償還借りかえを円滑に行うための行政運営についての一つの参考にさしていただく性格のものというふうに受けとめているわけでございます。  なお、この懇談会の開催に要する経費は、国債制度の調査、企画及び立案、これは大蔵省設置法の十条の大蔵省の職務でございますけれども、このために要する一般的な事務経費として支出をしているという性質のものでございます。
  51. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 お説のとおりだと思うんですが、それでそういう点での参考にするということで、この懇談会は一応理財局長あての報告が出ておりますわね。この報告の中で、私はこれがなぜこんなニュースになるのかなということで確認しておかなきゃならぬのは、報告の中では、「国債管理政策の弾力的運営」の中で、「借換債発行のより一層の弾力化の検討を行うことにより、金融・資本市場の状況に機動的に対応できる体制を整備する必要があるのではないかと考える。」と。これが、今竹田理事からも質問がありました、一体借換債が大量に出てくるときに短期国債あるいは単年度主義からの転換というふうな大きなことが行われるようになるというふうな新聞の発表、これのもとになっているのはこれだけしかないんじゃないか。借換懇の報告の方は極めて漠然としているのに、あたかも借換懇が非常に大きな変革の具体的な提言をしているような感じを受ける、こういうニュースが出ているわけです。ですけれども、これは新聞のニュース間違いですね。こんなことは大蔵からもどこからも出ておりませんね、借換懇の意向を体してということで。
  52. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 性格といたしましては、先ほど申し上げましたような懇談会の性格でございますので、あくまでもこの懇談会での御意見を参考にしながら私どもとしては具体的な方策を検討していく、こういうことでございます。  それからもう一つ新聞では、この懇談会で何々が決まったというような、そういう報道があったかと思いますけれども、懇談会の性格からいいまして、この懇談会で何かが決まったということではなくて、参考までにいろんな御意見が出されて、それをこういった形で取りまとめた、こういう性格のものでございます。
  53. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、参考にこれはなりますか、こういう取りまとめて。再度読まなくてもおわかりと思いますけれどもね。こんな取りまとめがどういう参考になるんですか、こんな抽象的なことで。これを参考にどういうふうにするんですか。参考にというけれども何にも参考にならないじゃないですか。「機動的に対応」する、これだけですよ。これをどういうふうに参考にするんですか。
  54. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) この懇談会の中では幅広くいろんな御意見が出ました。ここで言っておりますのは、今後の金融情勢対応して機動的、弾力的に国債管理政策を進められるように、制度面、運用面で準備をするようにと、こういうことでございまして、その枠の中で私どもとしては検討していくわけでございます。  そのほかの点につきましても、例えば新規債、借換債を通じまして、それを一つ国債として発行消化を円滑に図っていくようにということもございますし、そのいずれにつきましても、公募とシ団引き受けを二本の柱として進めていくようにとか、多様化の問題であるとか、いろいろと貴重な御意見が出ておりますので、私どもといたしましては、そういった御意見を参考にして検討を進める、こういうことでございます。
  55. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうすると、この報告を参考にするのではなくて、この報告に取りまとめる間に出てきたけんけんがくがくたる議論のうちから、これはと思うようなものを参考にすると、こういうことですね。
  56. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) この取りまとめられたものの中にエッセンスがあるわけでございますが、その解釈、あるいはそれを参考にするに当たりましては、こういったものに取りまとめられるまでの間にいろんな方からいろんな意見が出ましたものを十分参考にさせてもらう、今先生御指摘のとおりでございます。
  57. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうしますと、時間がないので先に進みますけれども、これは借換懇の意見を参考にしてというのじゃない。これは借換懇の意見となれば、報告されたものですよ。今のはそれ以前のものですからね。これを答弁の隠れみのにするのは私はちょっとオーバーだと思います。そのことだけ申し上げておきます。  それからそういう点でしばしばいろんな懇談会が質問の中に出てまいりますので、ちょっと調べてみたんですが、事あるごとに大蔵の皆さん方の方では、何々審議会の意見を尊重してと言われるが、実態はちっとも尊重してないんですよね。例えばその機関である財政制度審議会、これなんかでも、借換債新規財源債とを区別して特例債からの依存体質脱却と、こういうふうに言っているんだけれども、これらの区別をつけることも結局、何らかの方法でというだけでこういうことを言われているけれども、ちっとも区別するような段階に入っていませんし、それからまた五十四年のときにおきましても、国債の依存度を抑えていかなきゃいかぬというふうなことについても、どうも余り守られていないようですね。  さらにまた、「中期的な財政事情の仮定計算例」、これになると、全くこれはもうよくわからないんですがね。例えば「仮定計算例要約」というのが出てきまして、そしてこれは六十年度三・八%から六十五年度九・九まで一般歳出五%に伸び率を見た場合にこうだというのが出ています。しかし、例えばこの六十年度の三・八%というのの計算の根拠、こういうものもちっとも実はわからないんです。ですから、これについては一体どこの課でどういう人たちがこの計算の根拠をやっているのか。そして三・八%というこの根拠になった数字、こういうものを明らかにしていただきたいと思う次第でございます。  それから先ほどもサラ金財政という話が出て、これも新聞などでもサラ金財政というふうなことをいろいろ取り上げております。昨日、資料として「五十七年度末の国債・借入金残高の種類別内訳」をちょうだいいたしました。地方債残高が五十六兆三千七百十九億円になっております。    〔理事大坪健一郎君退席、委員長着席〕 これは自治省、地方債残高だけでございませんね、地方債課長。自治省が発表している四十七兆何ぼというのと違うんでないかなというふうに思ったんですが、どうですか。
  58. 柿本善也

    説明員(柿本善也君) 今申されました金額五十六兆というのは、五十七年度末の普通会計分とその他の企業会計等を含めた地方債の残高が五十六兆何がしになっております。通常言っております普通会計の地方債の現在高は五十七年度末では三十五兆六千億ぐらいでございまして、その他四十数兆あるいは五十何兆と言っておりますのは、交付税特会の借入分であるとかあるいは企業債のうち出資金等で最終的に普通会計が負担することとなる額、これを加えた場合に五十四兆円とか、そういう金額になるということを通常申し上げております。
  59. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、この関係につきましても理財局長衆議院で、財投の関係では国の段階ではふえてないけれども、地方に財源をどんどん回しています、こうおっしゃっているんですよ。ところが、どうも地方債の関係その他見ますと地方も全然ふえてないみたいなんですがね。何かのお間違えではないでしょうか。地方もちっともふえてない、ここ三年ほど。
  60. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 五十九年度の財政投融資、これは財投計画と国債の引受額を合計したものでございますが、これが約三千億の増加でございます。その中で国債の引受額が千億減額しておりますので、財投計画といたしましては四千億の増額でございますが、この財投計画の内訳を見てみますと、一般財投の伸びがゼロで地方の分が四千億増加している、こういう状況になっております。このことを私申し上げたわけでございます。数字で申しますと……
  61. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 いや、そこまででいいです。  地方債課長ね、大蔵省では地方にどんどん資金は流していると言うんですが、どうも地方の感触として、地方債はとっても厳しくてなかなか伸びがよくないというふうにこぼされるんですが、そんなに伸びているんですか。今も伸びていると言うんですから間違いなく伸びているんだと思いますよ。
  62. 柿本善也

    説明員(柿本善也君) 今理財局長さんからお答えになったことは、地方債計画の中で、今も先生御承知だと思いますが、いろんな資金がございますが、そのうちの政府資金につきまして、五十九年度は前年度に比べまして四千億増加して三兆五千億の金額を計画上いただいた。それは確かに一〇%を超える伸びでございますのでかなり伸ばしていただいた、こういうことでございます。  それから地方債計画全体の規模の話を別途されているように受け取ったわけでございますが、地方債につきましては、御承知のように、現在地方債計画膨れておりますのは、地方の財源不足を埋める一つの手段として建設地方債を増発しております。これが年度年度の不足額の状況によりまして変わっております。  五十九年度におきましては、我々の立場といたしましては、できるだけ一般財源の層を厚くして地方債に依存する度合いを少なくしたいということで努力したわけでございますが、それでも一兆二千億余りの建設地方債の増発ということになったわけでございますが、前年度に比べますと一千百九十五億若干建設地方債の増発を抑えたという姿になっておりまして、そういう意味におきましては、むしろ借入金依存度を下げるという努力をした結果として地方債計画の規模も縮小している、こういうふうに理解をしている次第でございます。
  63. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで結局、国の方からそれだけ余計出たけれども、地方債の全体計画の中ではほかの方からの借入金あるいは縁故債、いろんな点での資金が非常に詰まってきているから、トータルで見た国からそれだけ余計出た分はほかで引っ込んでいるから、そんなに多くはならないんだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  64. 柿本善也

    説明員(柿本善也君) 五十九年度の地方債計画で言いますと、先ほどお答えいたしましたように、政府資金が四千億ふえておりますが、結果として、銀行等から借り入れます民間資金を七千億ほど減額しております、前年度より。これはまあ確かに……
  65. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 わかりました。それで結構です。  大臣ね、こういうことなんですよ。国会答弁の中で地方に余計出しているんだ、事実うそ言っているわけじゃなくて出している。ところが、いわゆる市中金融機関の方も今度は非常に苦しくなっているから、そちらの方の縁故債とかいろんな借り入れを地方自治体は抑えざるを得なくなって、だから差し引きすると、結局それは片方から出た分片方が引っ込んでいくわけです。どういうことかというと、それは国の全体の財政計画の中でそちらへ余計出したと言っても、それは全体の資金が詰まってくるとどこかが引っ込むから、どこか押せばどこか引っ込むというふうなことで、同じサイクルの中のもんだということなんです。  それで、そういう面を踏まえますと、私は先ほどのサラ金財政というふうなこと、まさにそのとおりだと思うんですが、そういう残高を全部政府関係機関の長期借入残高、その他五十七年度末で見ましても、国際だけを我々問題にするわけにいかない。国債のほかにこういう地方債の残高政府関係機関の残高、こういうふうなものを全部合わせていきますと、もうかれこれ三百兆に近いものになるんです。これらを踏まえませんと、百二十兆の国債だけを問題にしても、これは財政政策としての問題にならぬわけです。そうなると、今まで論議していたのよりははるかに大変だ。前回も結局、国鉄の借金だって、最後は国の借金だというふうにおっしゃいましたね。最終的にはまた国が支払いの責任を持つわけです。そういうふうに全部合わせますと、国民の預金残高が、個人の残高が四百兆。そうすると、もう大体財投がどうだ、資金運用部がどうだ、いろんなことで差し引きしましても、七割五分ぐらいは国家財政、地方財政というそういう一連の公的な財政の仕組みの中で食っているんですよ。もう食うところはなくなってきているんです。さらにこの前資料をいただいたんですが、普通財産でもってさしあたって売れそうなのは二兆五千億くらいしかないですよね。これにも驚きました。特定財産、公共財産いろいろありますよ。しかし大蔵省が持っている普通財産として売却可能なのはこんな程度なんですよね。  だから私は、今のあれから言いますと、憲法の財政の七章を踏まえた中で、これから借金をどう返すかということのあれは、きょうも答えができないようないろいろな問題を抱え込んじゃっているんです。この認識を大蔵省国民にもっとはっきりした形で大変なんだということをしっかり言わないと。きょうは経企庁にも景気の問題を聞こうと思ったんですが、日銀とは多少違っても大体上り坂だと。ちょっと上り坂になると、そういう問題については非常にイージーに考えて、シーリングの問題なんかにすぐ走っちゃいます。しかし、事は私はそんな生易しい問題じゃないというふうに実は慄然としているんです、この法案を中心にして。  それで大蔵大臣、ひとつ蛮勇を振るってもらわなきゃならないんじゃないかと思いますのは、なぜここまで来る間に、日本をしょっているのは我々だというふうな使命感を持って入っていった大蔵省の皆さん方が、机をたたいて、政府・自民党に対し苦言を呈する人がいなかったのだろうかというふうに考えます。ここまで来る間には、冗談ではない、おれたちはとてもこういうことはできないと。こういう声がなぜ出なかったんだろうかなと、こう考えたんです。そうしましたら、そういうことをすると今度は天下りに響くんですよ。で、私は、天下りを現況ではやむを得ないと思ってますよ。なぜならば、そうしなければ方法がないんです。年金の今の制度の中で、机をたたいて、今の権力にこれは大変だというふうなことをお役人さんが言えば、後、浪人して今の年金で食えるかという問題に来るんですよ。これはやっぱり食えないんです。  諸悪の根源は、僕は、この食えない年金制度、こういうものをそのままにしておいて、天下りだけけしからぬと言ったってそういうことにならないなと、こういうふうな感じを強くしたんです。私は、年金制度については、厚生年金と国の年金との差があるのは当然だと思っているんですよ。それなんかももう少し大臣が角を大きくして言ってもらわなきゃ困るんです。国家公務員や地方公務員の年金が一般と比べて高いのはおかしいというふうな議論がまかり通っています。しかし、これは守秘義務だとか職務専念義務とかいろんなのがあるんですから、義務が違うんですから、ここいら辺もきちんとしないで天下りけしからぬとか、なぜ抵抗しないんだと言ってみても始まらぬと思う。そういうところも全部くるめないと、これからの財政問題を論ずることはできないなと。  特にその点で、実は一昨日のテレビを見ていて、これは大蔵大臣しっかりやってもらわなければならぬと思ったのは、今度の総務庁です。評論家の意見ですけれど、とにかく一律シーリングというのはおかしい、それぞれ重点をどうするかというふうなアクセントをつけていくということになれば、これは今度できた総務庁でやらなければしようがないなと。大蔵省はどこへ行っちゃった。大蔵省はそういうことをきちんとやるところのはずで、本来一律シーリングをやるところで、各省庁にシーリングの枠をおろすということは、私は大蔵省としてはまさに自殺行為じゃないかと思う。主計局が当然やらなければならないものをそれぞれのところに平均して分けて、上げてこいと。こういうことにも手をつけなければ、国債借りかえの論議だけやっていても財政の問題というのは解決いかないと思うんです。で、そういう面につきまして言いますと、まだ借換債公債の制度があるんですが、そういう点でもう少しぎっちりしてもらわなければならないということ。  最後に、それはおまえ、田舎町のことだから国には参考にならぬと言われるかもしれませんけれど、大臣ね、どうしようもないときに私は池田町で管理職三分の一、三割でないですよ、三分の一に減らしたんです。そしてそのかわりほかの仕事をつくって、退職者は一人も出しませんでした。まず上の方からやらないで行政整理で財政を縮めようといったって、これは労働組合でも何でも腹に入らぬのは当然ですよ。第一、これは行政府のことですから、そこまで言っていいかどうかわかりませんけれども、最後に言わしてもらいますと、行政改革で総務庁できたけれども大臣の数は減らないでしょう。そういう点から考えますと、この戦後最大の財政の政策転換、これは公約違反だと思いますよ、いろいろなことを言っていますけれども。公約違反までしてやらなければどうしようもないところまで追い込まれている国家財政として、そういう戦後最大の財政転換に対処する総理あるいは大蔵大臣のもう少し決意がなかったら、結局こんなものは六十五年だの六十九年だと言ってみたって、やれっこないことを腹の中でわかりながら言っているだけにすぎないというふうにしかとれないんですが、大蔵大臣の決意を聞いて、もう時間ですので、きょうは残念ながらこれでやめます。
  66. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 示唆に富んだいろいろな御鞭撻をいただいてありがとうございます。私どもといたしましても、いろんな意味における歳出圧力、これはございます。しかし、それに対応いたしまして、私どもは大ざっぱに言えば、臨調路線というものが今日あるわけでございますので、その趣旨に沿ってこれからも厳しく対応していかなきゃならぬと思っております。その大変な際に、ただ一大蔵大臣の進退とか、そういう問題で済む問題ではないと思って、私も自重自戒をしていきたいというふうに考えております。
  67. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大蔵大臣にお伺いしますが、ことし発行する特例公債の返還は十年後でございますが、昨年まで特例公債借りかえをしないということをことしは取りやめると。大蔵大臣は、今日までの答弁では、十年後に現金償還をすることは約束できない、だからこの借りかえ禁止規定努力規定にするのだという御答弁だったんですがね。私たちも十年後の経済がどうなのかということはまことにわかりにくいわけでありますが、現金償還する可能性は全くないと考えているのか、そのあたりどうなんでしょうか、十年後の感じとしてですね。現金償還するということは約束できないかもしれませんが、しかしそういう可能性が全くないのかどうか、その点はどのようにお考えですか。
  68. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 逆に言いますと、仮に満期のものを現金償還した場合に、今予測せられるもろもろの状況からすれば、余りにも国民生活に急激な変化をもたらす結果になるではないかというふうに思うわけであります。仮定の事実として全くないかと、こうおっしゃいますと、それはいわゆる調整インフレ政策をやるとかというようなことになればそれは別でございましょうが、そういうことは毫も考えていない現時点においてこれを予測してみますと、そうしたことは、歳出の物すごいカットとか、あるいはある意味における国民負担の物すがい増加とか、そういうことをもたらす結果と相なって、国民生活全体に急激な変化を与えることであるという限りにおいては、全額現金償還をするというような前提に立って物を考えるわけにはまいらないというふうに考えます。
  69. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ことし発行する国債償還は十年後です。大蔵大臣は、私が十年後のことを質問したのに、やっぱり急激な変化はいけないと。ということは、一体何年ぐらいの感覚で物事を考えていらっしゃるんですか。私は、そもそも赤字国債というものは発行してはならない、もし発行するならば少なくとも十年で返せという。ところが、十年後返すのは、返そうとすればかなり急激な変化を伴うから、だから六十年間に返せばいいんだという。余りにも変化が激しいんです。   〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕 しかし、もちろん急激な変化はいけないにしても、今の日本の国の財政から考えれば、歳出と税収とのアンバランス、そういうものを変えていくにはかなり急激な変化が必要なわけで、それを五年とか十年という期間に分けてソフトランディングしていくという、私はそういうことじゃないかと思うんですね。だから、十年後は急激な変化でいけないというんであれば、大体何年ぐらい先を考えていらっしゃるんですか。
  70. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはなかなか難しい問題でございます。したがって今考えておりますのは、「展望指針」等で申し上げておりますように、少なくとも六十五年度においては新発債の赤字公債を出さない状態にまずは持っていきたい。したがって、その第二段階として、それ以後は対GNP比、いろんな計算の方法はございましょうが、残高そのものを減らしていくという大筋二つの方向を明示申し上げておるわけであります。  それでは仮に努力目標を達成されたという前提で、その後どのような形でこの既発債、いわゆる公債残高を減らしていくか、こういうことになりますと、にわかに今何年で何ぼという計画を立てて御提示申し上げるような状態にはまだ残念ながら至っておりません。当面、六十五年度に新発債としての赤字国債を出さないというところに精いっぱいの努力目標を置いて対応しておるということであります。
  71. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると、十年後に五十九年度発行した特例公債を現金償還できる可能性は全くないわけではないが、そういうことだと余り経済の変化が急激過ぎるからもっと先へ延ばしたいと、こういうような御趣旨でございますか。
  72. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まあ、大筋平たく言えば、国民生活に急激な変化をもたらす状態に至らないようにするためにも、先ほどお使いになった言葉を援用すれば、いわゆるソフトランディングで公債残高そのものを滅していかなきゃならぬということになろうかと思います。
  73. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ちょうど一年前は借りかえ禁止法案を通したわけですけれども、一年前どことしとはどういう変化があったわけでしょうか。一年前には十年後には借換債発行しないという法律大蔵省は出したわけですけれども、一年前と今と考え方を変えなければならない客観的な事情の変化はどういう点があったんでしょうか。
  74. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それは大きな変化というものは、結局五十九年度赤字公債脱却を断念せざるを得なくなった、したがって、第一期としてその六十五年を努力目標として定めますという政策転換をやったことそのものが私は大きな客観的変化ではなかったかというふうに、基本的にはそこにあると考えております。
  75. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それは政府が変えたわけでありまして、そういうように去年は十年で国債を必ず償還しますという法案を出して、そしてことしになったら十年では返せませんと。じゃ二十年かというと、そうじゃない、六十年で返しますと。それだけではない。九年前に借りた借金も、過去五十一年からずっと五十八年までに借りた借金も一遍に十年で返すよと言ったのを六十年にしますというのは、余りにもこれは変化が激し過ぎると思いますね。  じゃ去年とことしとでそのように考えを変えなければならない客観情勢はどう変わったか。確かにそのずっと以前には第二次油ショックもあったと思うんですが、去年どことしというのは何ら変わっていない。ということは、去年からもうそういう下心はあった。だから政策転換というのは、去年は建前を貫いて、ことしは本音を出してきたという、そういうだけであって、大きく政策転換をするような理由は何もないんじゃないかと、私はこのように思うんですけれども、その点どうですか。
  76. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、私は五十九年そのものの発行するものが、借りかえ禁止規定をつけても、結果として背くことになるということが第一義の考え方でございます。そうすれば、それ以上に苦しい状態の中に借りかえ時期に到来するものが出てくる。そうなれば事柄の整合性からしても、結果としては、今おっしゃいましたように一挙にそういう法律改正をしたと、こういうことになるわけでありますが、政策転換の中でそのような手法でお願いをしなければならないではないか。    〔理事岩崎純三君退席、理事藤井孝男君着    席〕  そして、去年はまあまあであってことし本音を出したかと、こういう御質問でございますが、これは見方によってそのような批判を受けることも私どもは覚悟をいたしております。五十九年脱却をギブアップいたしました段階において、私ども国会の議論等も聞きながら、現金償還のための財源を借換債に求めなければならないではないかと、こういうもろもろの御意見を聞きながら、さようしからば財政制度審議会等で議論をしていただいて、その御議論の経過等を見ながら私どもとしては対応してまいりますと、こう申し上げて、予告をしたわけではございませんが、そういうことの経過は申し上げてきたわけであります。    〔理事藤井孝男君退席、委員長着席〕 そして、その結論をいただいて、今日、新しい措置として法律の御審議をまさにいただいておるというふうに考えられると思うわけであります。
  77. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これはどうなんですかね、ことし発行する国債償還は十年後ですからね、特に赤字国債ですから、やっぱり十年後にはちゃんと返せるように努力をしていくのが、私は現在におる政治家あるいは大蔵省の責任じゃないかと思うんですけれどもね。十年後、一生懸命頑張って、そしてどうしてもできないときにはまた十年と。人から借金した場合でも、何日までに返しますといった場合にはぎりぎりまで努力して、返せなかったら、もう一カ月待ってくれと、これが普通じゃないかと思うんですね。それを、金を一年貸してくれ、こう頼んでおいて、期限が来てもう一年と。けれども借りる前から——借金の場合は自分が返すんだからまだいいわけですけれども、これは後世に返してもらうわけだから、十年にして、そこでまた難しい場合には十年と、こういうようにすべきではなかったか。大蔵大臣、個人的にどうですか、そういう意見は。
  78. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の塩出さんの考え方というのは、ある意味において、特例債は十年期限であるべきである、そしてその際の財政事情によって、その時点で現金償還のための財源として新規にまた発行することによってこの赤字公債というものを、会計でいえば一般会計になるのでございましょうが、それで新たにつないでいけと、こういう一つの論理になるんじゃないかなというふうにも思うわけであります。が、当面私どもは、新発債の特例債を少なくとも六十五年までには努力目標として脱却をしようということを第一義に立てておるわけであります。したがって、公債残高を減らしていくということは、二番目のとでも申しましょうか、その六十五年まず達成の後我々に与えられた最大の責務であるという認識の上に立てば、長期にわたって国民の皆さん方に一つの姿として御認識をいただくことが適切ではなかろうか。ただ、それが全部六十年になるものだということは、最低限、当面四条債と同じような方法をとるということを申し上げておって、なおそれ以上の努力をしるということを、すなわち努力規定の中で自分の身に言い聞かしておるというのが、今次法律の御審議をお願いしておる基本的な物の考え方ではなかろうかというふうに理解をいたしております。
  79. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この努力規定、六十年をもうちょっと早く返すというのはだれが決めるんですか。
  80. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 今の御質問でだれが決めるかということでございますが、努力規定が入りまして、今おっしゃいますように、例えば十年債において十年たったときに償還が来て、じゃ、どれだけやるかということにつきましては、そのときの財政状況その他を勘案いたしまして、予算国会に提出して、その中でお示しするということになろうかと思います。
  81. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあ、予算の中にあるわけだから、最終的には国会が決めることでしょうけれどもね。そんなことを言えば、特例公債だって毎年毎年出す必要はないわけですわね。  だから、これはどうなんですか、大蔵大臣、六十五年脱却という意味が、特例公債発行しない場合と発行する場合と大分内容は違ってきますわね。今まで、五十九年脱却、六十五年脱却というのは、赤字公債借りかえるなんということは考えになかったわけですわね。五十九年が六十五年に延びた、その六十五年が、借換債発行するということでさらに後六十年先に延びちゃったわけです。だから六十五年の赤字国債脱却を見せかけだけに実現させるために借換債発行を認めた。まことにこそくな手段である。これはどうですか、そういう意味でしょう。六十五年の特例公債依存体質脱却という公約を見せかけだけでも達成したいと、こういうことで今回の改正があったと、こう判断せざるを得ない。そうじゃないですか。
  82. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは塩出さんは一面の方向からそういう御指摘をなすったと思うのでございますが、六十五年に脱却することを第一義的目標とし、なお公債残高をその後可能な限り減らしていくという両方に通ずるところの借換債を許容してくださいということになろうかと思っております。
  83. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これはどうでしょうか、臨調も財政再建には国民の協力が必要だ、財政のありのままの姿を国民に知ってもらわなきゃいかぬと。ということは、歳出カットも協力してもらわなくちゃいけないし、ある場合には税収増も協力してもらわなくちゃいかぬ、そういう意味で財政の姿を国民に知ってもらわなければならないという、これが私は臨調の意図する考えじゃないかと思うんですね。  そういう点から考えれば、借換債を認めないで、十年来た赤字国債償還財源が足りなければ新たに一般会計国債発行する。こうすれば、財政が大変だということは国民によくわかると思うんですね。  それで、新規国債償還財源のための国債というのをちゃんと数字の上にはっきり分ければ、こんなのはもうはっきりするわけですからね。だから、そういう国民から見て見せかけだけを格好よくするよりも、見せかけはもっと財政が大変なんだ、こういうことを示した方がよっぽどいいんじゃないかと思うんですけれどもね。財政の内容は全く一緒なんですから。そのようにするお考えはありませんか。
  84. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは一つ考え方でありますが、財政制度審議会の報告の中に、仮に特例公債償還財源一般会計における特例公債発行により調達する場合には「相当長期間にわたり事実上の借換債としての特例公債一般会計において残ることとなるため」財政改革の進展状況や「展望指針における財政改革の目標との関係が不明瞭となる」ものと考えられると、そのように財政審の御報告でもいただいておるわけでございます。したがって、私どもといたしましては、借換債新規財源債としての特例公債の圧縮状況を適切に判断することが必要である。そのために借換債を特別会計で発行する方が適当であるというふうに、それらの報告に基づいて判断をいたしたわけでございます。
  85. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 財政審のそういう一面はあるわけですけれども、しかしそれは数字の上に今年発行する特例公債の内容はこうだということを示せばはっきりするわけです。それ以上に大事なことは国の財政。借換債だって赤字国債、本来発行してはならぬものですから、それを発行しているということを国民の前に示さないから、そういうことで結局はマイナスシーリングなんていうのはけしからぬ、人心をうむとか、もうそろそろやめろとか、こういうようなことになっちゃうんじゃないかと思うんですね。そういう点で、私は今回見せかけだけをよくしようという、こういう法律の改正には全く賛成はできない、こういうことを申し上げておきたいと思います。  それから、これから公債残高がだんだんふえるわけでありますが、公債がふえるということは日本経済にどういう影響を及ぼすのか。財政審等では世代間の不公平、所得再配分の問題、それから金融・資本市場で金利が上昇し、その結果、設備投資の意欲が抑制されて日本の経済体質が弱体化していく。さらには潜在的なインフレ要因がある。こういうように国債がふえるということが日本経済の体質に非常な影響を及ぼすのではないか、こういうことが憂慮されるわけでありますが、大蔵大臣として日本の財政を健全に保つためには、日本の経済の体質というものが強くなければならないと思うんでありますが、そういう点に及ぼす国債の増発の影響についてはどのようにお考えですか。
  86. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 日本経済がいわゆるパフォーマンスとかあるいはファンダメンタルズとかよく言われますが、それが他の先進国に比べて今日よろしいということは、これは事実であると思って、それなりに私どもは事実であると思っております。その基本的な要因はどこにあったかと言えば、世界一勤勉であり、そして知識水準が高い国民であるということであると思っております。そしていま一つは、今日、国民の負担そのものを急激な変化をもたらさないで今日までやってこれたというのは、公債政策の裏づけとなるところの我が国の貯蓄率が三倍とか、そういうような高い水準にあるからであったというふうに私も理解をいたしております。  しかしながら、このまま財政そのものを放置いたしますならば、先ほど御指摘のありましたように世代間の問題はもとより、また私ども予算編成するに当たりまして、これは建設国債あるいは赤字国債の区別なくいつも感じますことは、最初にまず国債費ありき、すなわち利払いでございます。その利払いがややもすれば意図せざるところへ、本来予算の持ついわゆる所得の再配分機能から逸脱したところにそれが移っていくということに対し私どもは絶えず胸を痛めるわけであります。したがって建設国債にいたしよしても、いわば一時的な景気対策等の場合、これの対応をするということにはもとより意義があつうと思いますが、これ自身が恒久的な財源対策しなることは慎まなければならないことだ。そうはりますと結局、厳しく歳出そのものを抑制し、そしていま一方では歳入の合理化というものも困りながら国民の理解を得て何としても今の財政炉対応力を失っておる姿から回復していかなけれはならぬというのが私どもいわば鉄則ではなかろうかというふうに考えておるところであります。
  87. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 公債残高がふえるしいうことは非常によくないことでありますが、政府の計画では借換債発行をする場合は昭和七十一年に至ってもどんどんふえ続ける、約二百兆に近い。しかもこれは要調整額という額を増税、歳出カットでちゃんと埋めてすらこういう状況になる。今までのあれから言うと、なかなか埋まらないわけでありますが、今回も電電公社から集めてさたり、そうしてようやく何とかつじつまを合わしている。こういう状況でありますが、公債残高の歯どめというか、大体この程度以下にはしなくりゃならないというそういうお考えはありますか。そういうラインは既に今超えておるんでしょうか、それともこの程度まではまあまあいいんじゃないかという、そういう一つ公債残高の歯どめについての大蔵省の考えはどうでしょうか。
  88. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは事物当局からもお答えさせますが、公債残高をはかる一つのバロメーターとして私は対GNP比というものもあるのかなあと思っております。ところが、その残高を対GNP比で対比してみましても、日本、それからイギリス、それからアメリカでございます。イギリスの場合は、我々とちょっと違いますのは、アメリカのごとくあるいは日本のこの十年間のごとくという形でなく、言ってみれば、戦勝国でございますから、我々のかつての戦時国債のようなものが何か回転して今日まだ残っておるというような説明を聞いたことがあります、正確かどうかわかりませんけれども。したがって、日本、イギリス、アメリカと、こういうような順序になっております。だからどこにめどを置くか。まあ対GNP比というのは一つのめどになる数値だなあと思っておりますが、さて、あるいは何年度でどれぐらいまでというようなのは、一応新発債としての赤字国債を脱却した後、一つのめどとして検討に値するものではあるというふうに考えておりますが、今のところどれが一番、どの辺が一番適当かということについては確たる数値を持っておるわけではございません。
  89. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 今の大臣の御答弁を補足することになりますが、一つは、今もお話がございましたように、国債残高の対GNP比を比較いたしますと、これは長期政府債務残高しか諸外国と比較ができませんのでそれで見てみますと、日本が五十九年度四七・七%になっております。次がイギリスでございまして四四・八、これは五十六年でちょっと古い数字ですが、そうなっております。それからアメリカの三二・一ということでございまして、現在その水準自体が国際的に非常に高くなっているということが一つの問題でございます。  それからもう一つの問題は、この国債残高の増加のテンポが極めて急速であるという点がございます。したがいまして、先ほど数字で対GNP比を申し上げましたが、日本の場合四十八年度において八・一%、一けた台でございましたのが、五割弱ということでございますから、非常に急激にふえている点が第二の問題でございます。  それから三番目は、このようにふえました結果、先ほど大臣の御答弁にもございましたけれども、この利払い費の歳出総額に占める割合が国際的に比較いたしましても日本が極めて高くなっております。現在二割弱ということでございます。したがいまして、諸外国はそれが一割あるいはそれを下回っておりますので、財政面での硬直化が非常に進んでいるという点が第三番目の問題ではないかというふうに思うわけでございます。  将来それではどういうふうになっていくことが推定されるかということでございますけれども、仮にその仮定計算例と同様の前提で今後の推移を機械的に試算いたしますと、特例公債残高は六十四年度がピークでございます。しかし、先ほども委員がおっしゃいましたように公債残高は徐々に増大していく。しかし、対GNP比で見ますと、六十二、六十三年度ごろまでは横ばいでございますけれども、その後は次第に低下していくという計算が出ております。しかしこれはあくまで仮定計算例のもろもろの前提を置いた上での計算でございますので、実際これがどうなるかという点につきましては、将来の問題として残されているわけでございます。
  90. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      —————・—————    午後一時二十一分開会
  91. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  92. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 午前中の国債残高の歯どめの問題でございますが、現在、GNPに対する比率も四七・七%で世界最高でございますが、国債残高の歯どめについての大蔵省としての一つの方針——少なくとも国債残高は日本経済の体質を考えるときに、これはゼロにこしたことはないわけですけれども、現実問題としてこの程度にとどめるべきである、こういう歯どめをどう考えているのか、お伺いします。
  93. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 国債残高の歯どめの問題につきましては、これまでも何度か財政審の場あるいは国会の場におきまして御議論があったわけでございます。その場合、一つの数字といたしましては、財政に占める国債の割合を歯どめとしている例が今まで多いわけでございますけれども、それでは具体的にそれにつきまして現段階でどういう率がいいかということでございますが、先ほども答弁申し上げましたように、既に海外の諸国と比較いたしまして極めて高い率にあるわけでございますので、まずその率をできるだけ低くするのに努力していくということが重要ではないかと思うわけであります。  ただ、その結果、どこまで下げていったらいいかということでございますけれども、それについては具体的にリジッドな率としてはなかなか考えられないのではないか。なぜかといいますと、いろいろの諸条件が極めて流動的でもあるわけでございますし、諸外国とそのままずばり比較してこういう率がいいかというのもなかなか出しづらい点もございますので、その辺についてはずばり何%というようなものをお答えするのは非常に難しいということでございます。
  94. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大蔵大臣は、四七・七%というのは病気で言えば非常に重症であると、このようにお考えですか。
  95. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やっぱりかなりのものだというふうに私も理解しております。
  96. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、私たちが一番心配いたしますのはインフレヘの懸念でございます。我が国の場合は、今まで貯蓄性向が高いためにインフレには至っていない、物価も非常に鎮静化しておるわけでありますが、世代が変わっていくと申しますか、昭和一けた、また二けた、戦後時代、こういう間には貯蓄に対する考え方も変わってくると思うのでございますが、貯蓄動向は今どうなっているか、将来の見通しについてどのようにお考えでしょうか。
  97. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 我が国の貯蓄率でございまして、どう考えるかということでございますが、例えばここ十年の推移を眺めてみますと、国民経済計算ベースでも家計調査ベースでも約二〇%の上からその前後を推移しておるわけでございます。やや低くなっているかなという感じはいたしますけれども、国際的に見ましても、諸外国と比べますると高水準で推移しているということが言えると思います。  そこで、今後でございますけれども一つは御承知のとおり人口の高齢化、つまり貯蓄する年齢を過ぎての高齢化という現象が進んでおりますことが一つ。それから金融資産の蓄積が相当進展しつつあるということが第二点でございます。三番目には年金制度の充実ということなどがございまして、中長期的には低下の方向に向かうと考えられるわけでございますけれども、御承知のとおり、日本国民の根強い貯蓄意欲がございますことと、近年さらに消費水準がかなり高水準に達しているということを考えますると、消費の残りが貯蓄に回るわけでございますから、消費がどんどん進んでいくということでもございませんでしょうし、我が国の貯蓄率は国際的に見てもなお高水準で推移すると見るのが妥当ではないかというふうに考えております。  ちなみに、これは参考でございますけれども、経済審議会長期展望委員会、これは正式の諮問ではございませんけれども、のレポートでございます「二〇〇〇年の日本」というのがございますが、家計の貯蓄率は二〇〇〇年までに二ポイント程度低下して、ただいまの水準から一六ないし一七%になると予測しているようなことなども一つの参考として申し上げることができると思います。
  98. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これから借換債も含めて非常に大量の国債償還国債の消化をしなければならないわけでありますが、そういう見通しについてどのような感じを持っておるのか。  それともう一つは、財政審におきましても、いわゆるクラウディングアウトということにつきまして、現在は起きていないけれども国債金利が高どまりの一原因になっておるんではないか。そういう現象は起きていないにしても、それに近い状態ではないか。さらには将来、民間設備投資、景気回復に伴い民間資金需要が活発になれば、そういう意味でクラウディングアウトを生じインフレに結びつくことを懸念しておるわけでありますが、そういうような点についてはそういう懸念はないのかどうか、その点、どうでしょうか。
  99. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 第一点の消化の問題でございますが、今先生も御指摘になりましたように、まだまだ新規債相当規模の発行が予想されますし、六十年度以降には借換債が非常にふえてまいります。そういった意味で、新規債、借換債を合わせた国債発行額も今後相当の規模のものが続くということでございますので、それをできるだけ円滑に国民経済の中に受け入れられるように発行消化していくということが大変重要な課題でございまして、私どもは繰り返しこの委員会でもお訴え申し上げておりますように、多様化努力等金融・資本市場に混乱を招かないように、できるだけ円滑に投資家のニーズに合った国債を出すようにということで、弾力的に国債管理政策を進めてまいりたい、こういうように考えております。  クラウディングアウトの問題とか、民間の資金需要というような問題につきましては、恐らく他の政府委員からお答え申し上げると思いますが、そういったことも配慮しながら円滑に国債発行消化に努めていくというのが発行当局の立場でございます。
  100. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 国債の増発がいわゆるクラウディングアウトを通じてインフレに結びつくおそれがあるのではないかというのは、まさに委員お話のとおりだと思います。  しかし、現在の日本経済の状況は、原油価格が非常に安定していること等もございまして、極めて好条件の、物価につきましては、そういう状況にありますので、ここしばらくは安定的に推移するものと考えられます。しかし国債の大量発行が続けば、結果的にその資金調達によって民間の資金調達が締め出される、その結果、民間の投資がなかなか進まないというようなことから、結果的には資金供給に対して需要の方が上回るわけでございます。そういうふうになりますと、日本銀行が通貨供給量をふやさざるを得ない状況が招来することも考えられるわけでありまして、そういうふうになりますとインフレを引き起こすおそれも出てくるわけであります。そういう意味から、この問題につきましては、国債発行額をできるだけ縮減していく、その努力を続けていくというところに政策のポイントがあると考えております。その意味で、六十五年度までに赤字国債から脱却するという目標も掲げているわけであります。
  101. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 財政審でも述べていますように、「インフレが経済活動のすべての分野に悪影響を及ぼし、国民生活を圧迫することは明らかである。」、そういうことで、そうならないような配慮をしていくのは政府の責任であると思いますが、先ほど国債発行を減らす、これがその対策であるという、これは当然のことでございますが、特に政府としてこれだけはインフレを招かないために断じてやっていかなくちゃならない、もちろん日銀の引き受けによる通貨の増発を防ぐとかいろいろあると思うんですけれども、そういう点、我々が安心できるように、こういう点とこういう点はちゃんとやっていくから、ひとつインフレにならないようにするから安心しろ。こういうポイントはどこでしょうか。
  102. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) ポイントの第一は、先ほど答弁申し上げましたように、国債発行額をできるだけ減らしていくということにあろうかと思います。  それから、そういう中で、これは財政当局の問題ではございませんけれども、金融政策を弾力的にやっていくということも重要ではないかというふうに思っております。
  103. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵大臣はどうですか。こういう重要な問題については大蔵大臣の不退転の決意が必要だと思うんですが、その点どうでしょうか。
  104. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはポイントとしては先ほど申し上げました、主計局次長から申し上げておりましたが、財政改革を推進して財政赤字の縮減に努める、これが第一であろうと思っております。そうしていま一つは、通貨の総供給量の動向を引き続き監視しておって適切な運営を図っていくということ。原則として二つのことが言えると思うのであります。  ただ、私はここで最近感じておりますことを申し上げて、あるいは私の決意と申しますか、気持ちの一端を披瀝いたすといたしますならば、先般サミットヘ参りました際に、今日世界がアメリカを初めとする高金利にさいなまされておる。したがって、開発途上国等、あるいは中進国等非常に高金利にさいなまされてファイナンスできなくなって、これが開発途上国の大きな課題になっておる。その中でも日本の国民の貯蓄性向というものがいわば資本の提供国としての役割を果たし、もっと上がるべきところを幾らかでも金利を下げておる方向に日本の貯蓄が働いておる。こういうようなことが議論として出ておりました。したがって、日本でそれこそクラウディングアウトを起こすような形になり、それがインフレにつながった場合は、開発途上国を含む世界全体の資本輸入国に対して大変な迷惑をかけ、それによってまた世界全体の購買力が減って、日本のせっかく優秀な工業製品等もこれが出なくなってしまう。こういう意味においてまさに財政改革というものを通じて公債発行額あるいは財政赤字という言葉でも結構でございましょうが、それを滅していくということが、国民生活のみならず、世界全体に対しての果たすべき役割ではないか。こういう感じを最近しみじみと持っておるところであります。
  105. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 その点ひとつよろしく頑張っていただきたいと思います。  そこで、何といっても六十五年脱却という問題でございますが、今までだんだん後退をして、六十五年脱却、それがしかも、午前中御質問しましたように、借換債発行するということでさらに六十五年度脱却の意味が後退をしたわけでございますが、これはこれ以上もう後退できないぎりぎりじゃないかと、このように思うのでありますが、大蔵大臣として、その当時大蔵大臣にあるかどうかは別としても、いずれにしてもまだ六年後ですから、竹下さんも日本の政治にはいろいろな形で関与されていると思うんですが、六十五年に特例公債依存体質脱却が、借換債発行を認めるならばこれは十分可能なのでしょうか。自信はどの程度おありでございますか。
  106. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは非常に難しい御質問でございます。借りかえというものを許容していただいたといたしましても、六十五年までに結局赤字公債そのものの新発債を出さないことを努力目標としておるわけでございますので、それこそ歳出の削減、もう一度、いろいろ言われます、もうあんまりないんじゃないかと言われますが、制度・施策の根源にさかのぼってメスを入れなきゃならぬ。同時に一方、歳入面においても合理化を国民の理解を得ながらやっていかなきゃならぬ。その二つの組み合わせの中で相当な構えで対応していかなければ容易になし得ることではない、それぐらいの難事であるという認識のもとにこれに対応していくべきだと自分の身に言い聞かしておるところであります。
  107. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大体今までは毎年一兆円ずつ赤字国債を減らしていくという、こういうような中期試算等が出されたわけでありますが、六十五年脱却に至っても大体一兆円ずつ減らしていくという、こういうお考えでございますか。そのあたりの道筋はどうなんでしょうか。
  108. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一応機械的にやってみますと、一兆八百億ずつ滅していけばなくなると、こういうことになるわけでございます。で、予算編成の手法にも関することでございますが、五十五年のように初めに一兆円の減額ありきという構えで、あるいは一兆八百億の減額ありきとでも申しましょうか、そういう構えで対応して、そして時の経済、財政事情等を勘案しながら、終局的には、逐年多少のでこぼこはあろうかと思いますが、その目標の達成のために結果としてそうなるような努力を払っていかなければならないというふうに考えております。
  109. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあことしの予算ではもちろん六年ぶりの減税があり、一方それに見合う増税等もあったわけでありますが、今年度の、五十九年度の予算というものは六十五年度に至る第一歩の予算と判断しているのかどうか。ということは、大体五十九年度予算編成で示された方針を守っていけば六十五年に到達すると考えでいいのかどうか。その点はどうでしょうか。
  110. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、五十九年度脱却をできませんと告白して編成した意味においては、六十五年度脱却の初年度というふうに位置づけられて結構だと思うわけであります。ところが、現実、一兆円に足りないじゃないか、一兆円に満たないではないかと。そのとおりでございます。したがって、これは今後の経済の状態等に期待をかけるだけではいけませんけれども、例えば五十八年も赤字公債の出納整理期間内発行を三千億円ほどしなくて済んだとでも申しましょうか、そういうようなことも期待のうちに入れて、この五十九年度の財政運営もやっていかなければならぬのだなあ。七月初旬になりますと最終的に剰余金幾らというようなことが出るわけでございますけれども、今ある程度出るであろうという前提の上に立ちながらも、そういうことに結果として五十九年もなってほしいものだという、これはまあ願望でございますので今から予見するわけにはまいりませんが、そのような気持ちも持ちながら、これから二年度、三年度と汗をかいていかなきゃならぬなというふうに考えております。
  111. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 願望は、我々もそういう願望を持っているわけですけどね。願望だけではまた悪い方に動く場合もあるわけですので、ひとつ慎重にやっていかにゃいかぬと思うんです。  そこで、ことしの予算御存じのように定率繰り入れも停止し、電電公社から二千億、専売から三百億、しかもそれで一兆円の赤字国債の減額には至らずに五千二百五十億、約半分であった。そういう点を考えれば、先ほど大蔵大臣も六十五年脱却にはかなり厳しい歳出の削減あるいは歳入の合理化をと。これは極端に言えばある種の増税だと思うんですけれどもね。歳出を切るか税収をふやすかという、そういうことでかなり今までよりもさらに一歩突っ込んだ処置が必要であると。臨調等においても、一般会計予算とそれから税収との比率というものは少なくとも八割とかそれ以上に上げなくちゃいかぬと。そういう点から見ると、今までこの数年間それは余り上がっていない。そういう点考えれば、六十五年赤字国債脱却には今までよりも一歩前進した歳出カットなり税収増なりが必要であると、私はそういう感じがするんですが、大蔵大臣のお考えはどうでしょうか。
  112. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今塩出さんのおっしゃいましたような気構えで五十九年度予算においても一生懸命やってまいりました。が、一般歳出で前年度に比して三百三十八億円というマイナスに立てて御審議をお願いしたわけでございますが、さて来年度もと、こういうことになりますと、当然増、例えば国債費でございますとか、あるいは地方交付税でございますとか、そういうものを抜いて、それこそ一般歳出そのものを考えたときに、これをマイナスで押さえ込むというのは相当努力をしなきゃならぬ。まさにもう一度制度・施策の根本にさかのぼり、あるいは国と地方の負担、分担とかいろんな角度からまずそれに対応していかなきゃならぬなと。それから、ふだんから絶えず御指摘をいただいておりますところの税の合理化等々歳入の道も図って、歳入歳出両面から不断の努力を重ねることによって所期の目的を達成していかなきゃならぬというふうに考えておるところであります。
  113. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そういう意味で、来年度の予算の編成においてはマイナスシーリング、もちろんこれは一律ということじゃなしに、いろいろ省庁別なり内容によってはそういう濃淡の差はあるにしても、全体としてはかなり厳しい姿勢を貫くのが私は当然じゃないかと思うんであります。  景気対策として公共事業というけれども、景気に占める公共事業の割合というのは非常に減ってきておるわけですし、今の日本の経済、これはもちろんある一方に偏っているのかもしれませんが、新聞等では史上空前の利益とか史上空前の決算とか、こういうような状況で、業種間、あるいは同じ業種の中でも規模別にそういう格差がかなりあるかもしれませんが、全般としてはそういうシーリングを緩やかにしたからといって最気対策になるものでも私はないんじゃないか。そういう意味で、大蔵省としては、大蔵大臣としては、六十五年脱却への力強い一歩となる六十年度の予算編成を組んでいただきたい。五十九年はそういう意味では余り近づいていない。一歩じゃない、一歩のもう一つ前ぐらいであって、本格的な一歩ではないと思いますけれどもね。そういう意味で、ひとつ大蔵大臣の決意を伺いたいと思います。
  114. 竹下登

    国務大臣竹下登君) おっしゃいますように、いろんな指標を見てみますと、確かに景気は緩やかながら上昇傾向にあるということは言えると思います。ただ、御指摘なさいましたとおり、地域別、業種別、規模別というようなところにばらつきがあることも事実でございましょう。しかし、設備投資等の指標から見ましても、いわばその規模別の点も徐々に改善されてきておるというような傾向にあるかと思っております。  大事なことは高度経済成長というものにお互いになれております、体そのものも。したがって、かつての高度経済成長のようなものは今日見ることもできない、すなわち安定成長。五十八年が大体締めまして実質三・四%と申しておりましたのが、三・七%、うち内需一・九、外需一・八でございますが、そういう傾向から見ますと、私は当初見込んでおる四・一%程度、これは達成可能な数字ではないか。すなわちこの程度が普通の姿であって、かつての高度経済成長がむしろノルマルな姿ではなかったというふうに国民全体の意識転換というのをお願いしなきゃならぬじゃないか。こういう考え方に立ちまして、したがって、六十年度予算につきましても、今おっしゃいました第一歩とはいえ、いわばストライドが、歩幅が少なかったんじゃないか、そのストライド、いわば歩幅そのものも仲はしながら、この六十五年脱却の努力団機に近づいていくための、それこそ不断の研さん、努力をしなければならぬというふうに考えております。
  115. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは最後に二問ほど。一つは外銀等の国債引き受けシ団新規加入の問題でございますが、昨年七月以降シティーバンク、アメリカ銀行、チェース・マンハッタン銀行が相次いでシ団への加入を希望したことから、今年五月から外国証券会社四社、それからさきに述べました米国系外銀三行が正式メンバーに加えられたわけでありますが、さらにこの十月には外銀五行が新規加入を予定されていると聞いております。外銀等はこれまで資金運用の一環として市場で国債を購入するにとどまっていたが、今後公共債の窓口販売、これは六月認可になっておるわけでありますが、ディーリングなどの証券業務を行っていくためにシ団加入を希望しているものであります。在日外銀の公共債ディーリングは今年中に認可するとの方針が日米円・ドル委員会合意をされておるわけでありますが、シ団加入をその前提条件としないとの日米円・ドル委員会合意があるが、前提条件とはしないのか。またそれ以外にどのような条件基準を設けるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  116. 佐藤徹

    政府委員佐藤徹君) 御質問の点についてお答えいたします。  日米円・ドル委員会のレポートの中に、外銀のディーリング業務の認可について書かれているわけでございますけれども、できるだけ早く準備の整ったところについては認可をするということが結論でございます。その際に、日本の国債引き受けシ団への参加は一つの判断要素ではあるけれども、前提条件とはしないということが同時に書かれております。これはどういうことかといいますと、御指摘のように、既にシ団に何行か加入しておりまして、実際に窓販の認可はこの六月から三行行っております。ただ、ディーリング業務につきましては、その部分だけとらえてみますと、必ずしもそのシ団に参加して新発憤を引き受けるということと直接的には結びついておりません。したがって、この点は絶対条件ではない。ただ、現実にその証券薬務を行う銀行、これは当然窓販もやっておることでございましょうし、そういった意味で一つの判断の要素にはなりますということを書いてあるわけであります。これ以外の点についての認可の条件は、我が国の銀行に対して認可をする条件と何ら異なるところはないわけでありまして、窓販を行うに足る能力があるかどうか、それから勘定をきちっと区分してくれるかどうか、そういった点をこれから個別の銀行ごとに事情を聞きまして、認可をして差し支えないと思われる銀行があれば、これはできるだけ早く認可をするという考え方でございます。できるだけ早くと申し上げましても、準備に相当時間がかかりますので、早くても年内いっぱいぐらいだという感じは持っております。
  117. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 もう一つは、六月の長期国債は外債になったわけであります。現在の債券相場について当用の見方をお伺いしたいと思います。  六月の国債外債は、円滑かつ平準的に財政資金を調達するという観点に立てば好ましい事態ではございません。国債発行条件を弾力的に改定するということを大蔵省はいつも言っておりますが、実際には市場実勢とのずれから外債という事態に陥っておるわけであります。そのため、七月国債金利引き上げは必至と思われるが、そうなると長期金利の全般的引き上げということも予想されるわけであります。また、景気への影響等についてはどう判断されるのか、これをお伺いをして終わります。
  118. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) お話がありましたように、五月の状況は、連休明けの直後から国債市況が急落いたしまして、先の見通しも立たないような状況で、六月債は外債にしたわけでございます。六月に入りましてから、中旬ごろまでは米国の債券市況にやや落ちつきが見られるようになりまして、円相場も二百三十一円前後の小動きで推移していたというような状況から、ひところに比べますと国債市況は値を戻しておりました。ところが、最近になりまして、アメリカの八四年第二・四半期の実質GNP推計値が予想を上回る伸びになったというような事情から、アメリカにおける先行きの金融引き締め懸念が強まったこと、それからそれに伴いまして円相場も二百三十五円を上回るようになったといったようなことから、市況は軟化してきております。こういう状況でございますので、従来の国債発行条件ではシ団とセットをする見込みがないと思います。七月債をとにかく発行するということでまいりますと、発行条件は改定せざるを得ないというような状況でございまして、私どもといたしましては、今の市況を十分に分析をいたしまして、どんな条件シ団に提示をしたらいいか、発行条件の改定を現在検討中でございます。
  119. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 終わります。
  120. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、前回の当委員会で、アメリカで既に行われております業種別、国内・海外所得別の実効負担率を明らかにしたらどうかということを提起したんですが、いろいろな弱点——それは弱点あるのは当たり前ですが、いろいろな弱点を挙げて、反対であるということであります。しかし、私が大変大事だと思いますのは、アメリカの法人税が減っている、そして海外所得に対する実効税率に比べて国内所得の実効税率が極めて低いという、こういう傾向なんですね。これは外国税額控除制度の活用による影響が大きい、こう考えられるわけですが、その点どうか。  それからこういう法人税がだんだん減収していく傾向は我が国でも考えられるんじゃないか。我が国でも企業の海外進出が一層大きくなっておるわけですから、今アメリカで起きていることは近い将来の我が国の状況ではないか。そういう状況を避け、それに対する対応をきちっとやっていくことが必要じゃないか。これは将来我が国にもこういう状況が出てくるんじゃないかという、この見通しについてはどうですか、二点。
  121. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) アメリカにおきます法人税の実効税率の実態につきまして、国会の両院合同租税委員会のスタッフによって最近その計数が公表されておるという問題、それからその問題につきましてアメリカ財務省の見解も含めまして種々の問題があるということは、前回委員に御説明申し上げたところでございます。  ただ、今委員の御提案になりました全世界所得を国内の実効税率と国外の実効税率で分けて、アメリカの場合今公示されておるわけでございますが、業種によっていろいろでこぼこはございますけれども、どちらかと言えば、海外の所得に対する実効税率の方が高いという問題は、これは外国税額控除とは関係ないわけでございます。つまり外国でまさに課税されておる手法によって計算されておるわけでございますから、したがいまして、アメリカの国外の実効税率と国内の実効税率との差といいますのは主として国内の税制上ということになろうかと思います。  もう一つは、先般も申し上げましたように、あの方法自体が黒字企業と赤字企業を合算してやっておるものですから、業種によって非常にでこぼこになっておりますので一概には言えませんけれども、理屈としては、その外国税額控除の影響でああいう差が出ているのではないということでございます。
  122. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは大蔵省の人の書いたものでも、外国における税額控除の影響である、こう書いてあります。  それからことしの正月に発表になった大商社が国内税額ゼロというのはその影響じゃないんでしょうか。
  123. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 私は、正確に申し上げますと、今委員アメリカの公表された数字で国内の実効税率と外国の実効税率の差が外国税額控除の影響であるかとおっしゃったので、それはそうじゃございませんということを申し上げたわけでございます。
  124. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いやいや、だんだん減っている傾向にあるのはその影響ではないか、そういう質問についてはどうですか。
  125. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 国内の実効税率が下がってきておるというのは、いろいろな見解があるわけでございますけれども一つの問題として、これは前回申し上げましたように、ここ二、三年のアメリカの企業税制で若干の、若干のと申しますか、各種の償却制度をかなり広範に認めた、あるいはその加速の度合いを強めておる、あるいは投資税額控除についても若干それを強化しておる、そういった影響があるいはあらわれているのかもしれないということは申せるかと思います。
  126. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 アメリカにあらわれている法人税額が減少傾向にあるというのは、やがて日本にもやってくる可能性はあるんではないか、その辺は大蔵省は全然心配していないんですか。
  127. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 国内の法人の実効税率が日本の場合今後下がっていくという懸念はないかという御指摘でございますけれども、この問題を考える場合には二つの要因があるかと思います。  一つは、法人の基本的な実効税率を今後どういうふうに設定していくのか。これはむしろ、我が国の場合いろいろ御議論はございましたけれども、五十九年度の税制改正では、時限措置ではございますけれども、むしろ税率を引き上げさせていただいておるわけでございます。  それからもう一つは、タックス・ベーシスの問題でございまして、課税標準をどんどん広げていくのか、あるいは縮小していくのかということでございますが、我が国の場合、この十年来の経緯を見ましても、法人の租税特別措置による減収額は法人の全税収額に対しまして、昭和四十年代のピークの時点ではおよそ一〇%に近かったわけでございますけれども、現在年々縮減合理化を図りまして、むしろ三%台の水準に落ちてきているということでございます。今後とも企業の税制につきまして我々は租税特別措置を全面的に否定するものではございません。政策的に必要なものはこれをスクラップ・アンド・ビルドの方向によって認めていくものは認めていかなければならないと思いますけれども、縮減合理化の態度を堅持してまいるつもりでございますので、課税ベーシスがどんどん拡大していって法人の実効税率が下がるというふうな方向は私どもは今懸念しておるわけではございません。  それからもう一つ、外国税額控除の関係で本来日本に納めらるべき税金が減少していくという問題でございますけれども、これも毎回申し上げておりますように、外国税額控除の制度はむしろ国外における源泉所得は、現在の諸外国のルールによりまして、それぞれの国の主権のもとにそれぞれの国で課税をするという原則が確立されておりまして、この外国税額控除はその意味では二重課税を調整するという意味で国際的に定着した制度でございます。  我が国におきましても、外国である企業が外国の所得につきまして当該国で課税をされた場合には、我が国の実効税率の範囲内で税額を調整しないと、その法人は二重に課税を受けるわけでございますから、この制度はやはり堅持していかなければならない。問題はそれが乱用に陥らないようにということでございますが、我が国の場合は一昨年でございましたけれども、詳細な点についても見直しましてそれの制度の厳正な運用を図っておるところでございます。  それからもう一つ、えてしてこれは誤解があるわけでございますけれども、外国税額控除は企業によってなるほど国内の最終的な納付額がかなり減少するという場合もございます。これは業種によりまして、例えば商社あるいは昨今でございますと銀行、金融機関でございますが、当該法人の全世界所得の中で海外、国外における所得のウエートが事業活動上ふえてきておりますので、これはその限りにおいてはそれぞれの業種によっていろいろばらつきが出てくるというのは、これはやむを得ないことだと私どもは考えております。
  128. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今局長言われたとおり、企業の海外進出がどんどんふえていますし、またこれからもふえるだろうと思うんです。  そうして現にまた、アメリカで多国籍企業化していることが、そういう法人税額が減っている一つの原因だと思うんですが、そういう傾向が日本に出てくるとなれば、この傾向は日本に避けがたいのじゃないか。先ほど外国税額控除はそういう制度だからということで、ことしの衆議院予算委員会でも我が党の工藤議員が質問したらば、それはそういう制度なんでやむを得ないんだということなんですけれども、やむを得ないはやむを得ないでそれはそれでおきますが、しかし傾向として法人税額が減っていくという、これは趨勢として認めざるを得ないんじゃないでしょうか。
  129. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) それは一概に私言えないと思うわけでございますけれども、ただ先ほど申しましたように、業種によりまして、非常にぱらつきといいますか、偏りがあることは事実でございますし、日本のそれぞれの業種、企業部門によりましては、むしろその企業の全所得のうち国外に源泉を持つもののウエートが大きくなってくるという傾向がもしあるとすれば、その企業にとっては全税負担額のうちむしろ外国の方に納める税金の方が多くなるということはあるいはあり得るかと思います。
  130. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 もう一つ、法人税制の問題について大切なことは、国内における各種の特別措置による減収問題だと思うんです。これもちょっとアメリカの例で若干議論したいんですが、アメリカでは租税支出あるいは租税補助金と呼んでおって、これが議会で大きな問題となっておるわけです。  まずお伺いしたいのは、アメリカ予算でいう租税支出ないしは租税補助金の概念及び我が国の租税特別措置との違い、それからアメリカでこういう概念が議論されるようになった経過ですね、これについて答弁をいただきたい。
  131. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) アメリカにおきます租税歳出といいますか、租税支出の概念内容でございますけれども、これは一九七四年議会予算法の制定で初めて定義が確定したものでございまして、簡単に申しますと連邦税制上の特別免税措置、特別控除措置、特別税額控除、優遇税率または課税の繰り延べ措置による減収額という定義がなされております。基本的には本来正規と考えられる税制がございまして、それに対して政策的な観点等から特別の軽減等の措置が行われた結果、財政上の損失あるいは減収額が生ずる場合、その減収額をある意味での歳出と観念いたしまして、租税歳出というふうに定義づけられて、毎年度大統領が議会に提出する予算と一体のものとして提出されておるということでございます。  我が国の場合は、最近の例で申しますと、昭和五十年に政府の税制調査会の答申がございますけれども、そこでの概念定義とアメリカの租税歳出の定義はほとんど同じであるというふうにお考えいただいてよろしいかと思います。  それからアメリカの場合、一九七四年の改正に至りますまで、私ども記録によるところによりますと、一九六〇年代の後半から歳出の補助金と実は裏腹の関係にある税制上の措置を講ずる実質上の補助金の問題というのが議論されまして、それは最初一部の学者の問題提起に始まり、結局一九七四年の、ただいま申しました議会予算法でタックス・イクスペンディチュアという概念が確立したということでございます。
  132. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 アメリカの資料を見てみますと、直接支出と今の租税支出の推移を見てみますと、一九七二年と八二年を比較してみますと、直接支出の方は約三倍ですね。それに対して租税支出の増加は四・五倍。特に最近は対前年、七九年で二一・三%、八〇年で一二・二%、八一年で二六・六%、八二年は一六・四%、大変増加率が直接支出に比べて多いんですね。  で、私はなぜこれを問題にするかといいますと、アメリカでは、今局長が言われたとおり、これを予算と一体のものとして出している。これは日本でもこのことは学ぶべきだろうと思うんです。租税支出の増大による税収減を放置できないということが上院の予算委員会において議論になっているわけですね。この租税支出に対して歯どめをかけるべきであるということ。この点で我が国の検討は極めて弱いわけです。これは大蔵省の言う、先ほど概念は同じだと言ったけれども、私は租税特別措置と先ほどの租税支出とは、概念はもう一回り租税支出の方が大きいんだと思うんですね。もうちょっと大きなものを予算と一体としてこれを検討していく。  我が国の場合には、予算資料の中で減収見込みという形で大ざっぱなのが出ているだけであって、その整理合理化も一定程度行われてきましたけれども、まだまだ不十分です。前回も指摘しましたけれども、例えば今年度税制改正でもエネルギー関係、テクノ関係、あるいは銀行の海外債権引当金など新たな新設が示唆されていますし、それからさらに今度は次に向けて技術開発基盤整備法案、こういうのがどんどん出てくるというと、我が国の場合、支出についてはマイナスシーリングで限られたものですが、一定の歯どめという形になっていますが、同じ観点でこの特別措置等についても十分な検討をすべきではないか。こういう点で、こういう一体のものとして、アメリカの租税支出と同じような形で日本でもやる意思はないのか。この点どうですか。
  133. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) アメリカの場合は、先ほど申しましたように七四年の議会予算法によりまして、我が国で言いますと、いわば予算書と一体をなすものとして、租税歳出額の減収額なり項目別のリストが毎国会出されておるということでございます。ただ、御理解を願わなければならないわけでございますけれども、我が国の場合は、そういった法律制度上あるいは国会法上の、あるいは財政法上のそういう制度的裏づけは持ちませんけれども、毎国会、租税特別措置の減収額を項目別に国会に出させていただいておりますけれども、これは実は昭和三十三年からもう既に二十五年間この制度が実は定着をしておるわけでございまして、政策税制による減収額をどのように考えるかという問題提起なり議論をした発端はアメリカより我が国の方がはるかに古いわけでございます。先ほど申しましたように、そういう意味で毎国会予算あるいは税制上の御審議の参考資料といたしまして、租税特別措置の減収額なり項目別の資料をずっと提出申し上げておりますし、毎年度租税特別措置法の改正を行わさせていただいておりますので、当大蔵委員会におきましても、各項目につきまして毎年度立法府で御議論をいただいておるわけでございます。
  134. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 議論する場合も、一定の減収見込みという程度のものではなくて、歳出とそれから租税支出と一体のものとして見ていく、私はそういう時期だと思うんです。  大臣、今までの議論をお聞きになっていただいて、国債発行についての政策の転換と言われるほどの大変大事な重大な段階に来ているという状況なんですね。そしてこれも何度も何度も議論になっているとおり、特に国債金利が十兆円規模でそれが意図しないところに所得再配分逆機能で行くというそういう事態であれば、国の政策をどうやっていくのか、どこに重点を置いていくのか、また置くべきか、そいつを明確に本当に国民がわかりやすいように、また我々も議論しやすいようにそういうものを出していくべき時期ではないか。今主税局長は今までアメリカに先駆けて出してきたと言うけれどもアメリカではさらにそいつを越えて、もう一歩進んだところで全体として見ているわけですね。我が国でもそれを採用する時期ではないんでしょうか。
  135. 竹下登

    国務大臣竹下登君) たびたびお答えしておりますように、租税特別措置とアメリカの租税支出は概念的には一緒のものである。今までも租税特別措置による影響というのは予算審議のときにお出しして御審議いただいておるわけでございますから、特別にどのような形でそれを特にメンションするかということになりますと、にわかに私も今判断がつきませんが、今までで事足りておるという感じで聞いておりました、率直に言って。
  136. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今までで事足りているというのは、それは今までの大臣答弁。例えば国債金利についてはそれが意図しないようなところに行くかもしれぬ。そうであれば、どういうそれに対して対処をするのかということは、私前回聞きましたけれども、何ら具体的なものは出てこないんですね。しかし、それは国会も含めて、大蔵省も含めて、もっと全般的に見まして、ここはちょっと行き過ぎだ、今の租税支出も含めて、となれば、今度はこういう面でこれは対処していこうというようなことを今やらないと、それこそ意図しない方向へ方向へどんどんどんどん税金からも流れていくし、支出として流れてしまう。そういうことになりはしないか。その点はどうですか。
  137. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいささか勘ぐりでございますが、租税特別措置等による減収というのは、中小企業対策でやるとかという出し方しておりますね。それから近藤さんのあるいは研究開発等に関するもの、大企業なんかもありますね、当然のこととして。そういうようなものがより明らかになればというようなこともあるいは背景に置いての御議論であろうかなと。これは勘ぐりでございます、間違っておったらお許しいただきたいんですが。だから、可能な限りそれらは要求に応じて詳しいものを提供するということはいささかも私ちゅうちょするわけじゃございませんが、いわゆる租税支出、今までの出し方でおおむね事足りておるんじゃないかなという感じがいたします。国債の行き先の問題もこの前議論がございましたが、確かに点々流通しておるもの、なかなかつかみがたい点はございますけれども、これも努力してみなきゃならぬなとは思っておりますが、租税特別措置の場合は比較的つかみやすいことでございますので、今まで以上にどのように対応するか。御議論を聞きながら、にわかに私の乏しい知識では結論が出せませんが、勉強はしてみてもいいなという感じは受けましたが、おおむね事足りておるんではないかという印象の方がまだ私としては強い。
  138. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、その議論はその程度にして、今度は具体的な問題です。  先ほどもちょっと引用しましたが、先端技術開発支援へ新法という動きがありますね。技術開発基盤整備法案、これは税制、金融面で優遇して産業振興の基本法としていこう、こういう通産省の方針がありますね。これは今の問題とも関連する問題ですけれども、こういう動きについては大蔵大臣いかがですか。
  139. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まだ予算編成作業にも入っておりません。そもそもが概算要求枠をどうするかというところまで行ってないものですから、したがって各省の考え方を承る段階にはないわけでございますが、一般論として、国際競争力等々を十分に具備するために、そのような施策は従来は各種産業においてやられてきた措置ではある。今の問題を特定しての返答にはなりません。
  140. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ですから、今まで議論してきた租税支出の面がこれはふえていく一つの側面だろうと、こう思うんです。  それから、時間が来ましたので最後にもう一つだけですが、防衛庁の来年度の予算要求が大変強いように新聞報道ですと見えますね。しかし一方、大蔵省は、これも報道によりますと、抵抗というか、ある程度抑えようという攻防戦が行われていると聞くんです。そこで、これは詳しくは別の機会に聞きますが、一般論としてで結構です、大臣の所見を最後に伺いたいんですが、軍備拡大が始まったら経済もくそもない、費用が膨れ上がるのを抑えられないのが軍隊の本質だという、こういうことが言われていますが、このことについて大臣の見解を伺って終わります。
  141. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それは六十年度予算編成の具体的手法はまだ決めておらぬわけでございますよね。したがって、各方面の意見を伺いながらこれから勉強さしていただくわけですけれども、といって、あと一月先ぐらいでございましょうか、いずれにしても、あらゆる分野に聖域を設けることなく厳しい対応をしなきゃならぬという、概念としてはそういう考え方を持っておるところであります。
  142. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 終わります。
  143. 青木茂

    青木茂君 借換債の問題につきまして、五十八年当時のことをちょっとお伺いしたいんですけれども、前年度予算審議されているときに大蔵大臣のお気持ちの中には借換債という発想は片影すらなかったかどうかということなんですけれども、まずそこを。
  144. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは強烈になったのは補正予算審議のときからだと思うんでございます。本院等においても借りかえやむを得ないじゃないか、借りかえを進めるという意味じゃございませんが、そういう指摘を受けて、私としても、権威あるということで結局選んだのは財政制度審議会、こういうところを選んだわけでございますが、そこにかけて御議論をしていただく段階に来たということをお答えでも申し上げておりますので、強烈になってきたのは補正段階なのかなと、こういう感じでございます。
  145. 青木茂

    青木茂君 どうも税調でもそうですけれども、財政制度審議会という、すべて政府の御答弁の、よく言えば寄りどころ、悪く言えば隠れみのにされてしまうようなところがあるんですけれども、少なくとも財政事情の基本的な体質というものは去年もことしもそんなに変わっていないわけですね。それで去年は借換債という法案は出なかったわけですね。ことしは出た。そこら辺で大臣のお気持ちですね、お気持ちにどういう変化があったんだろうかということなんです。あるいは昨年の段階においては、増税とかあるいは歳出カットとか、そういうことでことしも切り抜けられるんではないかというようなお気持ちがあったんじゃないかとそんたくするわけなんですけれども、ここのところどんなものでしょうか。
  146. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、こういうことだけは申し上げたんです。昨年の国会質疑では、特例公債償還財源を生み出す方法として、歳出カットか負担増があるいは借りかえということも含めたいわゆる公債発行という三つが考えられますと。で、いかにするかというのは検討課題であるということをお答えしておるわけでございますから、脳裏にあったという表現は適切でないかとも思いますが、五十八年度予算編成時において、五十九年度の脱却の実現は困難と考えられました段階から、将来の問題として検討をしなきゃならぬなという気持ちがあったことは事実であります。
  147. 青木茂

    青木茂君 そういたしますと、そういう三つの選択肢がございまして、二つが捨てられて借換債ということになってきたわけですね。そうすると借換債しかない、ほかのやつはあかんというふうな決断に踏み切られたのは補正予算を契機としてでございますか。
  148. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは要するに、今の三つが考えられます、そのいずれを選ぶかは国民の選択に帰する問題であります、というのが九十八国会でございます。今度は百国会のときに、財政審に小委員会を設け検討をお願いしたところでありますというふうにお答えしております。だから、借りかえについて検討課題となるということを明確に申し上げたわけであります。ですから——正確なのがございました。  五十八年二月が、三つの方法が考えられる。それから五十九年一月に財政制度審議会の報告をもらいました。それが「償還財源の調達について借換債発行という手段によらざるを得ない」と。それで、今度は五十九年の二月に、「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」、これを出したという順番になりますから、第百回国会というのはこの五十八年二月と五十九年一月の間に入りますから、五十八年の九月に多田省吾先生の御質問に対して、その検討お願いのことを言っているわけでございます。
  149. 青木茂

    青木茂君 その九十八国会のとき、そのとき三つの選択肢があったと。それで、どれをとるかは国民の選択であると、こういうことですね。だとしたら、国民の選択は行政カットをとるということが常識じゃないですか。それが国民は行政カットということは選択しなかった、借換債発行の方を選択したという論理のプロセスにならないでしょうか。
  150. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それもとり方によってはそうともとれぬわけじゃございませんが、なお歳出カット、負担増、借りかえも含めた公債発行の三つが考えられる。その中で、たびたびお答えしておりますのは、そのまた組み合わせが考えられる。だから、組み合わせのワン・オブ・ゼムではあるが、政策転換としてはよりこの方が大きいということだと思います。
  151. 青木茂

    青木茂君 そこら辺のところが国民レベルの問題と永田町レベルと申しますか、そこら辺の問題との若干のずれです。  やや問題を転換さしていきますと、日本の国債政策ですね、国債政策の中には日本の高い貯蓄率に対する期待感というのか、が少し多過ぎるんではないかという懸念があるんですよ。なるほど百二十兆国債のもとでインフレも大して起きなかった、それからクラウディングアウトも出なかった、それが国民の非常に高い貯蓄率の結果だと、こういう御答弁は再三、再四にわたってございました。  ただ問題は、私どもが心配いたしますことは、じゃ国民のこの高い貯蓄率ですね、高い貯蓄率の背景と申しますか原因と申しますか、それは一体どこにあるんだろうか。その点はどうお考えでしょうか。
  152. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは二宮金次郎、二宮金次郎さんは適当であるかどうか、我が国の古来からの伝統の勤勉貯蓄というのが一つあると思います。もう一つには、戦後の急激な問題は別といたしまして、いわゆるインフレ懸念が比較的少ない、近時は特にそうでございます。それからもう一つは、これはちょっと私が最近感じていることでございますけれども、いわゆる日本の預け先は、金融機関はと言った方がいいかもしれませんが、倒産しないという安心感も幾分手伝っておるのではないか、こういう感じがしております。
  153. 青木茂

    青木茂君 日本の経済のシステムが国民に非常に安心感を与えているというのが高い貯蓄率の原因だというふうなお答えなんですけれども、ちょっと伺いたいんです。これは当局にお伺いいたしたいんですけれども、家計貯蓄率はどうでしょう、戦前と戦後で大きな開きはございますでしょうか。
  154. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 戦前、昭和十年前後でございますが、大体一五、六%というふうに言われております。最近は、五十八年で見まして二〇・九でございますから、戦前よりは最近の方が高いという数字でございます。
  155. 青木茂

    青木茂君 国民の非常な二宮金次郎的勤勉が高貯蓄率の背景だとするならば、戦前もかなり高くなければ、むしろ戦前の方が「欲しがりません、勝つまでは」というわけで貯蓄、貯蓄と戦争させられたわけですから、戦前の方がかなり高くなければおかしいんじゃないかという気がするんですけれどもね。非常に開きがございますね。そうすると、私は日本の高貯蓄率の原因というものは勤勉論だけではちょっと説明し切れないんではないかという気がしておるわけなんですけれども、どんなものでしょうか。
  156. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、ちょっと今メモが参りましたので申し上げます。  今、私がとっさの場合申し上げました、二宮金次郎だ、金融機関が倒れないだと申し上げましたが、整理しますと、一、高度成長期の高い所得上昇率を反映した趨勢的上昇、二、ボーナス比率が高いこと、三、老後のための貯蓄という考え方が強いこと、四、住宅取得、子女教育のための資金確保という考え方が強いこと、五、公的負担率が欧米諸国より低いこと、六、マル優を初めとする利子優遇制度の存在、こう書いてきましたので参考のためにお答えします。
  157. 青木茂

    青木茂君 それだけたくさん列挙されますと最初のところを忘れてしまったわけなんですけれども、もう高度成長経済は永久に戻ってまいりませんから、高度成長経済の時代のように豊かな消費と高い貯蓄が並行して実現するということは、ちょっとこれからは考えられないと思うわけでございます。そうすると、どうしても今第三番目にお話ございました老後不安というものが非常に大きな貯蓄原因になっていく。あるいは住宅不安、家を建てなきゃならぬというための貯蓄も考えられますね。あるいは教育費が非常にかかり過ぎるからその教育費のための貯蓄をしなければならないというようなことがどうしても考えられる。そうなりますと、日本の貯蓄というのは、日本社会全体に安心感があって高い貯蓄が行われるんじゃなしに、逆なんですね。住宅、教育、老後という将来生活に対する大変な不安感がある。不安感があるから税金をたくさん取られておるけれども無理してなおかつほかに貯蓄しなければならない。一種の不安貯蓄という様相があるんではないかと私は考えております。  だから、それを裏づける意味においてもちょっとお伺いしたいんですけれども、貯蓄全体の伸び率ですね、貯蓄全体の伸び率が何%あって、その中で例えば生命保険なんかの伸び率が何%あるかというようなことはちょっと当局の方で資料はございませんでしょうか。
  158. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 昭和五十八年の一年間といいますか、五十八年の一年で見まして貯蓄全体が一〇・三%伸びております。それに対しまして預貯金は七・八%でございます。それから保険が一四・四、それから信託が一一・四、それから公社債が一〇・四、それから投資信託が一番伸びておりまして五八・六。預貯金の中でも、預貯金の全体が七・八と申し上げましたが、郵便貯金はその中でも一番高うございまして一一・一と、こういう数字でございます。
  159. 青木茂

    青木茂君 そうすると、今私伺ったのは生命保険についてですけれども、貯蓄全体の伸びが一〇・三%であるのに対して生命保険の伸びが一四・四%と大きいということ。それからもう一つは、総貯蓄の中に占める生保の比率はどれぐらいの割合でしょうか。
  160. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 今の先生の御指摘で保険は、私は一四・四と申し上げましたが、これは損保も含めてでございまして、生保だけで申し上げますと一三・九でございます。生保の比率は一七%でございます、全体の。
  161. 青木茂

    青木茂君 そうすると、これは別の資料で、例えば貯蓄増強中央委員会が毎年発表いたしますところの貯蓄に関する世論調査というようなものを見ましても、住宅、教育、老後の備えであるとか、あるいは病気になったときとか、そういういわゆる不安に備えるという意味の貯蓄目的が非常に多い。高いものを買うためとか旅行に行くためとかいう余裕を持った貯蓄はむしろ少ない。これは貯蓄内容の日米比較を考えてみましても、日本の場合は普通預金だとか定期預金だとか、困ったときはすぐ出せるというようなものに行く割合が非常に多い。これに対してアメリカなんかの場合は株式みたいなまさにゆとりを楽しむ貯蓄方法ですね。そっちへ行く場合が非常に多い。  そういうふうに考えてみますと、日本の高貯蓄率というものは、むしろ日本人が住宅、教育、老後といった将来生活に対して不安を持つ、不安を持つからこれは無理して節約をしてやらざるを得なかったんだという観点が成り立つんですよ。単に勤勉論だけでは少し説明ができないんじゃないか。そうなりますと、非常に比喩的な言い方をいたしますと、貯蓄率の高さは内閣の経済政策の信頼度に反比例するということになるわけです。つまり政府が住宅、教育、老後というような国民生活にウエートを置いた政策を立ててくれるならば国民は安心して消費に回すわけですね。ところが、どうも政府を期待できないということになると無理してでも貯蓄に走らざるを得ない。それが日本の高貯蓄率のもし、原因の全部とは決して申しませんけれども、原因の大きなものを占めておるとするならば、これから政府の経済政策、このごろ中曽根内閣の支持率はいいようですから貯蓄率が下がっているんじゃないですか。それはともかくとして、政府のこれからの経済政策の方向は、この高貯蓄率をさらに上げようとする方向をおとりになるのか。それとももう高貯蓄率はここら辺だ、むしろ下げようとする、下げてひとつ国民に金を使ってもらおう、そして景気をよくしよう、それで税金の自然増収を図ろう、そういうような政策の方向をおとりになるのか。ここのところ、大蔵大臣の御見解いかがでございますか。
  162. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 非常に難しい問題でございますが、消費の美徳とかということにはくみすべきではないではないか。私は老後あるいは教育、住宅、いずれをとりましてもいわば勤勉の蓄積というもので富への追求の一つではないかというふうに見た場合に、それはそれなりにいいことだなと思っております。
  163. 青木茂

    青木茂君 そういたしますと、高い貯蓄率をとにかく現状さらにアップしていく方向がこれからの経済誘導と申しますかね、そういう方向だというふうに理解してよろしゅうございますか。
  164. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、金融、特に貯蓄問題は、今までいろんな統計を見ますと、二十一世紀ですかになるとあと二%程度下がるんじゃないかという議論もされておりますが、格別の誘導施策というものでもって経済の中に位置づけるものではなく、国民性とかいろんな形がそこに帰結した結果を見るべきものじゃないかなと、こういう感じがしております。
  165. 青木茂

    青木茂君 余り貯蓄率向上政策をとられますと、先ほど申し上げましたように、国民の不安感を大きくすれば大きくするほど貯蓄率は高まるという変なことになりますから、こういう方向はとっていただきたくないと思うわけなんです。もし貯蓄率というものを下げる政策をとらないという基本的な前提でいきますと、現在問題になっております利子配当分離課税と申しますか、マル優是非論と申しますか、グリーンカード是非論と申しますか、そういうものとの相関関係がここで問題になってくるわけなんですけれども、この貯蓄率とマル優制度と申しますか、ここら辺のところはどうなんでしょうか。
  166. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほど申し述べました一、二、三、四、五、六の六番目にあるように、マル優を初めとする利子優遇制度の存在ということもそれなりに役割を果たしておる。が、しかし、その問題が今日当初の意義からいえばかなり離れてきたというような御指摘はいただいておるところでございますが、ただどうするかということになりますと、これこそまさにジャスト・ナウ税調審議、こういうことでございますので、予見を申し上げるべきではない、こういうことではないかなと思います。
  167. 青木茂

    青木茂君 どうも最後の問題になってまいりますと、財政審が出てきたり税調が出てきたり、予見を持ってということになるのですけれども、これはいつかも申し上げましたように、政府税調の答申を政府が全部お酌み取りになったという歴史はないわけなのだから、むしろ政府税調の方が政府の鼻息をうかがいながら追っかけ答申をやったというケースの方が結構多いのだから、余り税調であるとか財政審で予見云々をやられると困るのです。  もう時間が来てしまいましたから申し上げますけれども、そうすると、要するに日本人の高貯蓄というのはいいことなのだ、だからそれに水かけるような政策はとらない、これはマル優問題に絡んでですね。しかしながら、一方においてこのマル優問題が不当に悪用をされまして、アングラマネーの税逃れというものに悪用されている。そうするとこのバランスですね。貯蓄率を高くすることは、高くするというのか、日本人の高貯蓄率は善である。その意味においてマル優は善である。ところが、マル優が税金逃れに悪用されている。これは大悪である。この善と悪をどううまく善を残しながら悪を切るか、ここを最後に伺って終わります。
  168. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは政治家論議でございますからアバウトなりに私が答えた方がいいかなと。  私は、この貯蓄率が高いというのは世界から感謝されておるという印象を最近持っております。日本の貯蓄率というものが言ってみれば、良質な資金を開発途上国等を含めて提供してくれた。だから資本提供国として感謝する、こういうことです、簡単に言えば。だから国内のみならずそれはそれなりの大変な役割を果たした。  それで、六つ挙げました中の一つにマル優という問題ございますが、ただ一つだけ言えることは、マル優というものの従来貯蓄奨励策として出発したその意義が変化した、こういう指摘があるわけですね、今まで。したがって、これが中ぐらいの善が小善になったか、まるきりもう善悪半ばするものになったか、もう一つの脱税の問題は別に置きまして。したがって、マル優というのはそういう議論を含めて税調で審議されていくべきものであって、マル優も一つの貯蓄性向を高める要因のワン・オブ・ゼムであったが、しかし今それが当時の意義をそのまま持ち続けておるかどうかという判断は、これからもしてもらわなければいかぬじゃないかなと思っております。
  169. 青木茂

    青木茂君 最後にもう一つだけ。  お願いでございます。私も高貯蓄率結構だと思います。ただ、国民に住宅、教育、特に老後、老後の不安を残しておくことが高貯蓄率誘導であるという方向の政策だけはおとりにならないようにしていただきたいということをお願いして終わります。
  170. 竹田四郎

    竹田四郎君 先ほども申し上げたわけでありますけれども、各党の御了解をいただきまして、総理がお見えになる時間まで若干の問題について、まだ余り触れられてない問題について触れさせていただきたいと思います。もちろん私自体もこういうやり方は異例中の異例だというふうに理解をしておりますので、どうぞひとつよろしくお願いをしたいと思います。  そこでお聞きをしたいのは、これから借換債あるいは新規財源債というものが非常にたくさん出てくるわけでありまして、これはどこがお答えいただくのが適当か知りませんけれども、日銀やあるいは資金運用部等の所有しているものは、そのまま全額借りかえということになるだろうと思いますけれども、市中の保有している分というのはどんなふうな動きを今示しているわけですか。国債の市中保有分というのはどんな動きを示しているのですか。
  171. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 従来から日本銀行及び資金運用部保有分につきましては、乗りかえということでお願いしてきております。それから現時点での姿を申しますと、従来は借りかえされる国債の中で、日本銀行それから資金運用部が保有していたものの割合がかなり高うございました。六十年度以降に償還期が参ります国債の保有状況で見ますと、その割合が低くなってきております。したがいまして、市中保有分の借りかえをいかに円滑に進めるかということにつきまして、従来になかったような工夫が必要になってくるんではないかなと、こういうふうに思っております。  で、その借りかえに当たりましては、新規債と全く違った扱いをすべきかどうか、借換債について何か特別の工夫ができるかどうかという点がございますけれども、借換懇で検討していただいたときに出てきた意見の多くは、確かに新規債と借換債は違うけれども、しかし償還金を受け取った投資家が何に投資するかということについては、全くその投資家の自由であり、そのときの金融情勢に応じてどういう対応をするかわからないわけでございまして、投資家の立場から言えば、新規債借りかえのために発行される国債も同じ投資物件でありますので、基本的には新規債、借換債同じように考えるべきではないか。新規債、借換債あわせたところでどういう消化を図るのが最も望ましいかということを検討すべきではないかというのが多くの御意見でございました。
  172. 竹田四郎

    竹田四郎君 最近の日銀の調査月報等で見てみますと、市中保有債というのは非常にふえてますね。八割ぐらいは市中保有償というふうに最近の日銀の調査月報には出ていたわけですね。これからますます多くなるということは日銀が指摘するとおりだろうと私は思いますね。そうしますと、大蔵省の方は、借換債はできる限りその償還のお金が渡った人が全部買ってくれることが一番望ましいわけですね。そうすればすっきりと借りかえができるということですが、しかし最近の動きを見ておりますと、それはそのときの金利動向から、あるいは金融・資本市場の動向に大いに左右されると思いますが、最近はどちらかというと、短期的なもの、中期的なもの、この辺に選好といいますか、市中の人たちの期間別の要求というのは中期から短期という形へいっているわけですね。  そうしますと、その借換債自体が、どういう借換債をいつ、どういうふうに発行するかということは大変大きな問題になると思うんですけれども、市場の要求に違ったような形での発行がされるということになりますと、今度は新しく借換債を引き受ける側という立場で考えてみますと、そのお金は戻ってくるわけじゃないわけですから、最後の最後は戻ってくるかもしれませんけれども、すぐには戻ってこないということになりますと、これはシ団としては自分たちが引き受けたやつがすぐかわっていかない。そういうふうな金融情勢というのが起きてくる可能性が非常に多いんじゃないだろうか。また金融機関の中でもそのときの動向によっていろいろ違うと思いますけれども、例えば景気が上昇に向かうということになりますと、都銀、地銀等は、資金量が恐らく忙しくなってきて、そうなってくるとここでは余りそういう借換債は要求しない、もっと企業の方に金を貸してやった方がいいと、こういう要求も当然起きてくると思いますな。そうなってまいりますと非常にこの辺が難しくなってくる。  しかし、今までシ団の引き受けの割合というのは大体決まっているわけですよね、大体固定されているわけですね。資金量は減るかもしれない、まあふえるよりも減るという割合の方が多いでしょう。しかし、シ団の引き受けの割り当て量というのは今までと同じだと、こういうことになると非常に消化が難しくなってくると私は思うんですよ。この辺はどうなんですか。シ団の方からも恐らくその割り当てのシェアをもう少し考えてくれという要求が当然出てくるだろうと思うんですよ。しかし、またこれは大体今までを何とかして踏襲しているような感じがするわけですけれども、この辺は今後固定的に考えるんですか。あるいは流動的に考えて、そのとき今の金利と同じように資金量についても話し合いでやっていくという線をこれからは貫いていくんですか。その辺はどうなんですか。
  173. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 今、二つの問題を挙げられたように思います。第一の問題は、借換債について、例えば十年債の借りかえ期が来たときに十年債を引き受けるかどうかということはわからぬだろうと。これはまさにそのとおりでございまして、現に発行されております国債につきましては、実は持ち主は転々としておりまして、流通しておりますもので、持ち主はどんどん変わっているわけです。償還期まで持ち続けている投資家が、十年物に投資をしてるのか、もっと期近債に投資をしてるのかわかりません。したがって、償還期が来て借りかえるというときに、現に持っている人が長期債を望んでいるのか、中期債を望んでいるのか、あるいはもっと短期のものを望んでいるのかということは、実はよくわからないわけでございまして、その辺のところは、そのときそのときの国債市況を見ますと需要の強いものの値が相対的に上がるわけですから、そういった市況の中から投資家の需要動向というのを的確につかみまして、そこのところは弾力的に、長期債を発行するのが不利で、中期債の方が有利に発行できるという状況のもとでは、多少中期債にシフトをする。こういうような工夫をしながら円滑な消化を図っていかなくちゃならないんじゃないかなと、こういうふうに考えております。  それから第二の問題として、シ団の構成、引き受けシェアの問題を挙げられましたが、確かに御指摘のようにシェアを固定しておいていいかどうかという問題がございまして、今までも何回か改定されてきております。これは本来シ団内部でシェアをどうするかということを自発的にお考えになって、我が方もそういうシ団の中の要望を受けてシ団改定に応じているということでございますので、今後シ団の中からそういう要望が強まってまいりましたときにはそれを尊重するような形で私どもも相談に応じたい、こういうように考えております。
  174. 竹田四郎

    竹田四郎君 今のお話で、借りかえの場合に長期債か短期債か中期債が、こういういろいろな問題が出てまいりまして、そういう需要というものを十分に知りながら、何年債をどうしていくのかという形でいらっしゃると言うんですけれども、その次にまた借りかえが出てくるわけですね。そうすると、その期間構成を一体どういうふうに考えていくのか。これも相当綿密に将来の計画を立てながらいかないと、ある時期にもっとたくさん返さにゃならぬという満期債の到来の物が重なってしまう。こういうようなことが出てくる心配はありませんか。その辺は、きっとそのときの情勢によってある一定の時期にまたどっと集まる。こういうことはどういうふうにして調整するのか。私もよくわかりませんけれども、その辺のことは、何か一つの尺度といいますか、大ざっぱな基準といいますか、そういうものをつくっていく。  あなたが理財局長をやっているときには、皆さんの要求があるから短期債をぼんぼん売っちゃう。あなたはやめちゃうからいいや、これで。よく売れましたと。西垣理財局長は非常に借り換えがうまかったというふうに書かれるでしょうがね。その次の人の段階へ行ったら、もう多くなっちゃって、あっぷあっぷして売れやしない。こういうような状況が私は起きてくる可能性が非常に多いと思うんですね。こういうものをどういうふうにやっていくのか。  今までは、大体十年債のものは十年債で借りかえていく、相当無理をして借りかえていく。今までは金利が自由化でなかったんですから、そういうことをしても無理やりに押しつければ、それはそれで御無理ごもっともで十年債は十年債でいく。今度は十年債は十年債でいくというような形は必ずしもとらないわけですね、今のお話でいきますとね。そうすると満期構成というのをどうつくっていくのか、これは今後の国債管理政策の中でかなり織密にその辺の状況というものを考えていかないと、後の人が、あなたはいい、それからあなたの次におやりになる理財局長さんもそれでいいが、五年後、十年後の理財局長さんになったら、私はそれは大変な問題だろうと思うんですが、その辺はどんなふうに考えたらいいんですか。
  175. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 今竹田先生御指摘になった問題が大変重要な問題でございます。満期構成をどうするか、これにつきましてはいろんな御意見がございます。財政負担の軽減を図るということからいいますと、通常の状態でございますと、短期債の方が利子が低いわけでございまして、長期になればなるほど利子率が高くなるというのが普通の形でございます。したがって、財政負担の軽減という見地からいいますと、短期化した方が有利ではないかと、こういう御意見がございますが、今お話しになりましたように、短期化しますと早く償還期が参りますので、借りかえを必要とする量がそれだけ多くなってくるわけでございます。したがいまして、財政負担の軽減の問題と将来の借りかえ量をコントロールできるような適当な規模に抑えるという問題のバランスをどうとるかということが非常に大事な問題でございまして、私ども今までも満期構成の短期化ということが好ましくないということで、今までもいたずらに満期構成が短くならないように努力をしてきているところでございます。  例えば最近の例で申しますと、確かに五十年当時には新しく発行された国債償還期間がすべて十年でございましたので、平均償還期間が十年ということでございましたが、その後中期債が出されもようになりまして、やや短くなる傾向がございましたが、できるだけ短く、いたずらに短くならないようにということで、五十八年度におきましては超長期債の発行工夫して実現するというふうな工夫も凝らしながら、最近の例で申しますと、昭和五十四年度が平均償還期限が八・八年、五十七年度が八・三年、五十八年度が八・九年というふうなことで、いたずらに短期化しないように努力をしているところでございます。  そういったことで、五十八年度末の残高につきましての約百十兆の全体につきましての平均残存期間は五年半ということになっておりまして、アメリカの例を申しますと、八三年ですから五十八年末で四年程度でございます。アメリカと比べれば満期構成は日本の方が長期でございますし、この問題についてはバランスを失しないようにこれからも努力をしていかなくちゃいけないと、こういうふうに思っております。
  176. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは先ほどのお話ですと、五十四年ぐらいは八・八年、五十八年の年度末は五・五年だと。大変ここ短くなってきていますね。この傾向がそのままいくかどうか、これはわかりまぜん。しかし諸外国は一体この辺はどんなふうな形になっておりますか。これは諸外国の今までの例というのが一つの教訓にはなると思うんですね。そういう中で大体満期構成はこのぐらいにする方がいいという一つの目安というようなものが出てくる可能性はあると思うんですがね。
  177. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 既発の国債の残存期間が一年ずつ短くなっているわけでございます。したがいまして、既発の残高の大きさによりまして短期化の圧力がそれだけ大きくなる、こういうことでございまして、さっきも申し上げましたように、新発債につきましては八・九年というような満期構成としてはかなり長い構成にいたしましても、既発の物が一年ずつ短くなるものですから、傾向としてはそれが短くなりがちでございます。そこで新発債につきましても、いたずらに短期化しないようにというふうなことで努力をしないとどんどん平均残存期間が短くなると、こういう問題がございます。  それで、諸外国の例ということでございますが、今手元にはアメリカの例しかございませんで、さっきも申し上げましたようにアメリカが四年程度、日本が今のところ六年に近い物ということでございまして、この辺はよくウオッチをしながら満期構成につきましていたずらに短期化しないようにという努力を続けなければならないのではないか。さっきも申しましたように、財政負担の問題もございますので、その両者のバランスをどうするかということにつきましてはよく考えなくちゃいけませんけれども満期構成の短期化というのはさっき申しましたように、発行残高が大きくなりますとどうしてもそれが平均を落とす働きをいたしますので、その辺のことも頭に置きながら満期構成の問題を考えていく、こういうことかと思います。
  178. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうなんですか、局長ね、ある意味では国民にわかるように一つの目安というようなものができたら掲げた方がいいんじゃないか。先ほどもGNPに対する国債費というのもありますけれども、今度はその満期構成ですが、また違った立場になると思います。そういうものの目安があれば私はそれをむしろ示した方がいい。これはどうなるかわかりませんけれども、やっぱり短期的になりやすい、今後。そうなってくると、確かに利子は安くて売りやすいということはありますけれども、あと濃縮されてしまうという問題がありますからね。その辺はそういうものはできるならつくった方が私はいいと思うんですけれども、どうなんでしょうか。
  179. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) お示しになりました問題意識は、大変貴重な問題意識だと思います。  これは借換問題懇談会でもいろいろと御意見を伺ってみました。ただ、量的にどの程度がいいかという問題につきましては、これは長短金利の格差が開くとき、小さくなるとき、それから起債市場、金融市場の動きがどうなるか、これはわかりませんので、なかなかそこのところは難しいんだろうと思います。しかし、私どももこういった問題意識を持っておりますので、よく検討していきたいと思います。
  180. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、今まで政府はいろいろなシーリングをやってまいりました。これからも恐らく特例債をどうするかというようなこともおやりになるだろうと思います。ところが、今までのシーリングなんかを見ておりますと、どうも本当の意味で減らしているんじゃなくて、先送りをしてみたり、ほかの会計ヘツケ回しをしてみたりして、見たところ非常にすっきりするんだけれども、おできはほかの方へいっちゃっているというようなことを非常に我々体験してきているわけですね。これから努力義務の中で、一般会計特例債を含めて、あるいは建設国債もある意味ではそんなにふやさないでいく、こういうことをやる。そのために、今度はほかの会計で、政府保証債だとか、あるいは政府保証の借入金とか、こういうようなもので特例債を少なくした、あるいは建設国債を少なくしたしわ寄せがそっちの方へいくという例が多いんじゃないか。現に政府の資料からでも、最近の特会とか、以下いろんな特殊法人とか、そういう機関でも政保債の割合が多くなっているような気がする。数字の上で見てそう思うんですよ。ふえ方が非常に多い。  だから、幾ら一般会計をスリムにしましても、こっちの方に穴抜けしてしまうということになれば、これはやっぱり問題だと思うんですよね。あるいは、一般会計はスリムにしたけれども、そのしわ寄せは今度は地方債という形でふくれちゃうということになれば、これは現実に特例債を少なくする、あるいは国債を少なくするというのもしり抜けになっちゃうと思いますね。こういうものについては、一体政府としてはこれからどう考えていくんですか。私はそういうことが強くなると思いますよ。  今までだって確かにやっていると思いますね。例えば住宅公団ですか、ここから返す金は、片一方で政保債で財源を得てこれを返すとか、そういうふうなことをやっておりますし、電電公社の政府納付金なども、片一方で金を借りて返すというようなこともたしかやっているように私は伺っているわけですが、そういうことをやれば、こっちはスリムになってもこっちはだめになっちゃうという問題が私は当然出てくるだろうと思うんですね。こういう面は一体政府としてこれからどういうふうに国債の減額ということと関連してお考えになるのか。どうですか。
  181. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あるいは必ずしも正確な答えになりますかどうですか、今竹田委員がおっしゃいました一つの例示として申し上げれば、行革特例法の場合でございますね。全部が全部じゃございませんが、言って見りゃ、当分の間、補助率のかさ上げ分を地方に負担を求めて、それは償還期に地財計画の中で償還部分を交付税の算定基礎に入れていくというような措置が今行われております。これも確かにおっしゃいます一つのツケ回しということにあるいはなろうかと思うのでありますが、その場合、いわば痛みを分かち合うということで、地方と国の負担部分をどうするかというようなことについてはもっと基本的なメスを入れなきゃならぬではないかなという考え方一つは持っております。まさに特例措置のみでなく。総体的に言いますと、確かにそういうことが、苦し紛れという問題とあるいは政策上の問題と両方で行われておると思います。したがって、たまたま行革特例法の期限もちょうど五十九年でございますから、五十九年脱却のつもりであったわけでございますから、来ます際に、そういうものも含めて負担のあり方というようなものには基本的な検討を加える時期に来ておるんではないかな、こういう印象は持っております。  その際、例えば地方は自主財源でなさるのか、あるいは仮に起債でなさるとしましたならば、いわば国債のツケ回しがそっちへ行ったという議論にもなりますが、しかしその際はまた、いわゆる縁故債等、地方自身の独自性の中において調達された方がむしろいい面もあるいはあろうかというようなことを考えてみますと、私は今日、国、地方の分担のあり方についての検討を加える時期に到達したというふうに思っております。  それからもう一つの点から御指摘なさいました、住宅金融公庫等のいわゆる孫利子を生む、とりあえず財投で措置しておるというような問題につきましても検討を加える時期に来ておるなと。あれはあの当時事業量を確保するためのやむを得ざる措置としてやったことではございますけれども、考える時期に来ておるという事実認識は私もいたしております。
  182. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは大蔵大臣に聞くより首相に聞いた方が私はいいと思うんですけれども、そういう面での総ざらえということをもう少しお進めになったらどうなんでしょうかね。先ほどもその点は伺ったわけですが、余りはっきりしなかったんですけれども、私はある一定の計画に基づいてそういうものを総ざらえしていく、そうして余分なものはもちろん切る、それからいたずらに下へ負担をやっているものはそこでチェックしなくちゃならぬし、あるいは下の方が甘えて一つの何か既得権益のように思っているようなものも切らなくちゃいかぬと思いますが、その辺をもう少しすっきりすることによって国民はもっと国債の整理というものに対して協力してくれるんじゃないだろうかというふうに思いますから、これはぜひひとつ御検討をいただきたい、こういうふうに思います。    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕  それから、時間がありませんから、その次へ入っていきますけれども短期国債というのは、さっきも伺ったんですが、今までのと別個に例えば一年以内のものというような形で考えておられるのか、あるいは年を越して二年にわたるようなものを考えておられるのか。もし非常に短い二カ月か三カ月ということになると蔵券との関係も出てくると思いますね。そして、そういう短期国債というのは、蔵券の場合には全額日銀引き受けということになっていると思うんですけれども、今度の短期国債というふうになった場合には、それは日銀が引き受けるのか、それとも公募でやっていくのか、あるいはその他の方法で何かやっていくのか。その辺もすぐ問題になるわけですね。この辺はどんなふうなお考えですか明らかにしてほしいと思うんです。
  183. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 短期国債を含めまして、六十年代対策として国債多様化を検討しなければならない、これは借換問題懇談会でもそういう御意見が多うございましたし、私どももそのように考えております。  現在どういう種類の国債を出しているかといいますと、基本的には十年の長期利付債と二、三、四年の中期利付国債と五年の割引債、これが基本的に出されている国債でございますが、これだけでは足りないということで、今までも臨時的に十五年の利付国債や二十年の固定利付債、こういったものも出しておりますが、私どもといたしましては、短期化の方向も長期化の方向もあわせまして、資金が円滑に集められるような工夫はしなくちゃいけないと、こういうふうに考えております。  短期化の方向といたしましては、今先生御指摘になりましたような極めて短い物、それから年度越しの物、こういったものも検討課題だと思っております。  極めて短い物がもし検討されるようになりますと、今の大蔵省証券との関係がどうなるのか、こういう問題がございまして、これは日銀引き受けの問題と絡んで極めてデリケートな問題でございますが、これはこれからの検討でございますので何とも申せませんけれども、いずれにしても財政法四十五条、七条というものがございますので、その精神に即して検討していくということではなかろうかと思っております。
  184. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、短期国債の場合は蔵券と違って日銀の引き受けはしないと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。あるいは短期国債をどういうふうに使うかということについても私はいろいろ問題があると思います。例えば先ほどの質問で前倒し後倒しというお話をしたわけでありますけれども、そういう一時的な借りかえの場合の資金のつなぎをやるときこういうような短期国債でやるんですか、それともどこかほかの形でやるんですか。そういうことが当然私は起こり得ると思うんです。そういうお金はどういう形になるのか。
  185. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 先ほども先生の御質問にお答えできなくて困ったわけでございますが、私ども極めて重要な検討課題というふうに受けとめておりますけれども、まだ具体的に検討しているわけじゃないものですから特定のイメージをまだ実は持っておりません。したがいまして、今御指摘になりましたような問題は、検討が進んでいきましたときには当然避けて通れない問題として真剣に取り組まなくちゃならないものである、その際には今の財政法の精神に従って検討すべきものであると、ここまでしかお答えできないだろうと思います。
  186. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういう短期国債を出す問題というのは国会にかけてやるんですか、それとも国会にかける必要は全然ないということなんですか。それはどっちなんでしょうか。少なくとも予算総則の中あたりにはそういうものを種別に書き入れるぐらいのことは最小限私は必要だと思うんです。蔵券だって借入限度額というのを予算総則の中で示しているわけでありますから、当然そのくらいのものは必要だと思うんですが、それ以外に法的なことは別に何らないわけですか。例えば場合によればそれが単年度主義の枠を外れていくようなものも恐らく中にはあると思いますね。そういう点は一体どう考えるのか。
  187. 西垣昭

    政府委員西垣昭君) 財政予算制度に絡む問題になってまいりますと私の方でお答えするのが適当かどうかわかりませんが、私どもが今持っております検討課題を検討してまいりますと、財政国庫制度の現在の制度でやれるかやれないかということが問題になってくる場合も当然予想されるわけでございます。その場合には、これは例えば法律改正事項であるとか予算事項であるとかということで整理をいたしました上で御審議をいただくことになろうかと思います。これはあるいは理財局長としては少し踏み越した答弁かもしれませんけれども、事柄の性質としては、検討の結果、そういうものが必要になればその時点で御審議いただくと、こういうことかと思っております。
  188. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣短期国債という問題は、これからの国債管理政策にも、あるいは日本の金融政策にも、あるいは予算制度にも大きくかかわりのある問題のような気がするわけであります。したがいまして、これを一回、国会全体といってもあれでしょうけれども、そういう場合には一応当委員会に話していただく、そして論議をした上でそういうことをやっていただくというようなことはできないものでしょうか。
  189. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私はそうあらぬばならぬかなと実は思っておるんであります。今、気持ちの上で自分の範疇を超したようなつもりで理財局長お答えしたと思うんでありますが、当然TBとは違った、あるいは年度越しの短期とであり得るんじゃないか、そういう時期にたまたま集中すれば。そうすると、まさにTBとはその限りにおいては異質であるにいたしましても、短期ということになれば同質であるという問題も出てまいります。TBは今御指摘のとおり、予算総則の中で限度額で示されておる。これはその都度最も適当な商品として見た場合はあるいは法律改正の必要等はないかもしれぬ。しかし、それらも含めてもう一遍本気な検討をしようじゃないかといって、部内でもこれは一理財局だけでなしに議論すべき課題だと。そういう問題がございますと大方の関心のあるところです、この問題につきましては。    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕 だから、私は委員会等である種の経過等を説明し、議論の対象にしてもらうことが適当ではないかというふうに私自身は考えております。
  190. 竹田四郎

    竹田四郎君 時間がほぼ参りましたので、最後に銀行局長の範囲がどうかよくわかりませんけれども、今までの金利の形というのは、国債が幾らだ、金融債幾らだ、プライムレートはこうやってこうやるんだという形で格付というのが決まっていて極めて狭い範囲を押しつけている。一番基本は、国債を一番信用があるから一番金利が低いものなんだ、信用度が一番高いから一番とにかく利回りを低くしておかなきゃいかぬという、そういう物の考え方が基盤になっているわけですが、最近は金融債と国債とがひっくり返ってみたり、あるいは事業債と国債とがひっくり返ってみたり、いろいろ現実にはしているわけですけれども、こういうものはいつまでも残しておきますと、短期国債は出てくる、借換債は出てくる、それから外国からはCDなんかの問題も出てくるでしょうし、非常に内外の金融状態というのは複雑になってくると、むしろこれが金利の自由に動くのを妨げる大きな望みたいなものになってしまうと思うんですがね。もうあんまり意味がだんだんなくなってきているように私は思うんですが、これはどんなふうなお考えですか。
  191. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 御指摘のとおりでございまして、ただ金融と申しますのは、一つは信用度で、その商品の持つ信用度で決まっている面が一つございます。  それからもう一つは、その商品の持つ需要供給の関係で決まるという問題がございまして、したがいまして、信用度の面からいいますと、なかなか金利の体系は崩さないという面がございますが、ただ、金融経済の原則に従って金融商品の価値が決まっていかなくちゃいけませんから、したがって、その辺は例えば現在でも既に今御指摘のようにクーポンレートでは一応体系立っておりますけれども、応募者利回りでは事業債と国債すら逆転する、あるいは金融債と国債は既に三、四年前から逆転しているわけでございまして、そういう意味におきまして、漸次そういう金利体系自体のものが崩れていくことは確かでございます。  ただ一方で、商品の持つ信用度というものがございますから、その辺はやはりバランスをとった金利の決まり方が自然になっていくんじゃないかというような気がいたします。実際問題として、実勢としては先生おっしゃるとおり、金利相当かなり弾力的にフラクチュエートしていく、体系が崩れていくということは確かでございます。
  192. 竹田四郎

    竹田四郎君 じゃ大蔵大臣に最後に伺います。  国債の消化とそういうふうな金利体系というもの、これはうまくいかないと国債の消化も私はうまくいかないと思うんですね。そういう意味では私はぜひとも金利の自由化というもの、今銀行局長のおっしゃられたような無理に格付をやるというようなことに余り大蔵省は抵抗なさらない方がいいんじゃないだろうか、こういうふうに思いますが、その辺のお考えを聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  193. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 傾向としては、今竹田さんがおっしゃったような傾向に私はこれはまさにいくと思います。それを従来の経緯等にかんがみ、いかにソフトランディングさしていくかということではなかろうか。したがって、私どもが従来の経験に徴しての格付等に固執していくという考え方は持つべきでないということは、私もほぼ意見は一緒でございます。
  194. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  195. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記を起こして。
  196. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理にお伺いしたいと思うんですが、この「一九八〇年代経済社会の展望指針」というのは、五十八年八月、去年の夏でありますから、総理になられてから、諮問のときには鈴木さんでありますけれども、受け取られたのは総理が受け取られたわけですが、この「財政の改革」の項目の中に、その項目の最後の方でありますけれども、「借換債発行ということも含めての公債発行の手段によって行わざるを得ないが」云々で、その「過程で、国民的合意を得つつ、検討を進める。」という言葉があるわけです。これは一回お読みになっているはずです。この「国民的合意を得つつ」というのは一体どういう意味なのか。  ちょっと初めから読んでみましょう。「なお、昭和六〇年代の特例公債を含む公債の大量償還に要する財源確保については、基本的には歳出の抑制、歳入の確保又は借換債発行ということも含めての公債発行の手段によって行わざるを得ないが、その具体的な方策については、今後、財政改革を着実に進めていく過程で、国民的合意を得つつ、検討を進める。」。こう書いてあるんですが、今度は、私ども審議しているのは借りかえの問題を半分含んでいるわけですね。それと関連して、「国民的合意を得つつ」と言いながら、今まで私どもはこの借換債についてお話を聞いたことはないわけです。借換債の問題というのは財政審議会で議論をされたぐらいのものである。それは新聞では議論されておりますけれども、正式にほかで大量的に、多面的に議論をされたということは余り聞いていないわけです。これは一体どういうふうに総理はお考えになっているのか。
  197. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公債は、国民の力をおかりして発行もし、また財政運営のよすがにしておるわけでございますから、この借換債発行という問題については国民の皆様方の御理解、御了解をいただかなければできない次第でございます。しかし、国民の皆様というと、具体的には今の代議制におきましては国会ということで、各党の御意見、与党野党の御意見等も十分踏まえつつ、かつまた新聞の論説や、そのほかのジャーナリスト、ジャーナリズム等に出てくる国民の世論というようなものも踏まえ、幅広く総合的に勘案しつつ、この問題に対する考え方をまとめ、かつ実行していく、そういう考えに立っておる次第でございます。
  198. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理のそのお言葉は私もそのとおりだと思います。ところが、昭和五十年度の特例債発行ということが十二月に行われました。そして、それが十年たって来年の十二月には二兆二千八百億という特例債償還が行われる予定であります。五十年度の特例債には借りかえ禁止の条項というのはなるほどなかったわけです。しかし、衆参両院におきまして悪い国債というふうな表現をかなり前には使いましたね。見合い資産のない、後代に負担を残すところの悪い国債だ。建設国債は資産が残るけれども特例国債は悪い国債だ。だからこれは早く返さないといけない。  こういうことで五十年の十二月の三日の衆議院大蔵委員会、ここで大平大蔵大臣は、これは一切十年たったら全部現金で償還いたします、こういうふうに答弁をしました。そして、特例債は十年で返すもんなんだから、五十一年以降には担保する意味で借りかえ禁止規定をつけてもよろしゅうございますということで、五十一年からずっと借りかえ禁止の条項がついてきたわけです。去年までついてきた。今度はありません。ないだけでなくて、外してしまった。で、五十年の十二月二十三日にはこの委員会大蔵大臣大平さん、総理大臣三木さんが、借りかえはいたしません、こういうふうに言ってまいりました。これは今速記録に残っておる。  ところが、今度のお話をけさ聞きますと、六十年は借りかえをいたします。それは第六条の努力規定を読んでもらえばわかります。——今まで私ども社会党の国会対策委員長にもあるいは公明党さんの国会対策委員長にも、一回といえども、これを借換債にいたしますという話はなかったわけです。  この間、青木委員がなぜ六十年には繰り入れをしないかと言ったらば、そんなことは新聞の推測記事でありますと。きょうは、はっきり繰り入れはしないということと同じことを言って、借りかえをするというんですから繰り入れをする必要はない。こういうことでは国民の信頼を得るということには私はならぬと思う。国民的な合意を得るということにはならぬと思う。  あなたの先輩の三木さんが、大平さんが、国会の中で約束をしたのを、事前の通告もなしにやってしまうというやり方は、こういうことをやる限り、国債発行について歯どめは得られない、こう思うんですが、総理は今の私のお話ししたことをお聞きになっているかどうか知りませんけれども、私は先ほどの論議でそれは明らかだと思う。総理はそれに対してどうお考えですか。
  199. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、借換債発行せざるを得ない事態に至りましたことは、まことに遺憾次第でございます。  大平さんが五十年にそういうことをおっしゃいましたことは、私もかねて聞いております。その後、石油危機が二度もありまして、(「一度だ」と呼ぶ者あり)そのために世界的な大不況が起こって、思いがけない税収減というものもあり、あるいは景気を維持していくためにはやむを得ず公債発行せざるを得ぬというようなことで、建設公債もあるいは特例公債も増発に次ぐ増発という状態で経済を維持してきた次第でございますが、いよいよ六十年が近づく。しかし、最後のぎりぎりまでその努力はすべきである。そして政府が正式にどうしてもやもを得ず借換債発行せざるを得ぬ、そういうことを決定しましてからは、これは政府のそういう方針につきまして各方面の御理解、御協力を得るように全力を尽くして努力する。それまではできるだけの最大限の努力を尽くしてみるというのが、財政再建に関する財政当局の姿勢であるだろうと思うのであります。  そういう意味で、歴代の大蔵大臣は、また総理大臣とともに、懸命に借換債に及ばず、そこにいかないようにという意味で努力をしてきたと思っております。しかし今日の事態になりますと、時期がもう切迫いたしまして、やむを得ずそういう措置をとらざるを得ぬということを政府として決定しました。そして国民の皆様や国会の皆様方に御了解を得るように努力しているというのが実情であるのであります。
  200. 竹田四郎

    竹田四郎君 中曽根総理、あなたのおっしゃったことはそのとおりで、私はちっとも否定をするつもりはないんです。国債借りかえを行う、特に特例債借りかえを行うということは、私どもも党の方針としてはそれは反対です。しかし現実問題としてみれば、この苦衷というのも私はわかるわけです。だから借換債まかりならぬと、どんなことがあってもこれをとめるんだというほどは考えておりません。しかし五十年に公約したことですね、五十年に公約したことをやめるときには、いや、こういう事情でやめざるを得なくなりましたから、あのときはこういう約束をしたんですが御理解をいただきたいというくらいの話が大蔵省からあっていいと思うんですがね。それが国民的合意を得るための一つあり方だ。こういうような形でこれからどんどんやられてみれば、国債の歯どめなんていうのは私はあり得ないと思うんですよ。国債の歯どめをやるには私はそれなりに大蔵省も痛みを感じてもらわなきゃ困ると言っているんです。汗を流してもらわなきゃ困る。平然と公約を破れ草履のように捨てるようなことがあっちゃならぬ。だから私は、これは政府の責任で、この際公約を破ったことについて遺憾の意を表明してほしいと思うんです。いかがですか。
  201. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 歴代内閣及び私の内閣がいろいろ申し上げてきたことについて、それを翻さざるを得ぬという事態になりましたことはまことに遺憾でございます。
  202. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうも私の気持ちとは大分違っているようでございます。  そこで、この「展望指針」に、この期間の間に特例国債への依存体質から脱却する、一番長く見て昭和六十五年度にはゼロにする、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、これは中曽根総理の公約として受け取ってよろしゅうございますか。
  203. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 内閣の方針でございます。
  204. 竹田四郎

    竹田四郎君 今までの論議の中で、実際六十五年に特例国債の依存体質をゼロにするというのは並み並みならぬ努力が要るであろう、こういうふうに私は思っております。もしこれがゼロにならなかったら、中曽根総理がそのとき総理でいらっしゃるかどうか、それはわかりませんけれども、六十五年でありますからわかりませんけれども、中曽根さんの責任というものは私は言われるだろうと思いますけれども、もしできなかったというときにはどういうふうにお感じになりますか。
  205. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかくまだ相当時間もあることでございますから、全力を振るってこの方針を貫徹するように努力し尽くすのみであります。
  206. 竹田四郎

    竹田四郎君 今まで時間をかけてこの問題を議論してきたわけでありますけれども大蔵大臣はこの借りかえ禁止規定を削除したのは政策の大きな転換だと、こういうふうに再三再四にわたってこの席上で述べているわけです。確かに私どもも政策の大きな転換だと理解はしております。しかし、今までの私ども国債の歴史というものを考えてみますと、国債の多発というもの、あるいはその管理を誤るということが、インフレを引き起こしたりあるいは国民生活や経済に大きな影響を与えてきたという、そうした体験や経験、こういうものを日本の国民は持っているわけです。今まで十年で返すというものを今後は六十年にわたって借りかえをする、建設国債と同じ借りかえをする、こういうことになる。  今まで特例国債は悪い国債である、あれは早くなくさなくちゃいけないのだ、これは悪玉だ悪玉だと言って政府は宣伝してきたわけです。建設国債の方は橋ができたり、学校ができたり、道路ができたりするから、見合い資産があるからこれは借金をしてもいいのだ。ちょうど家を買うローンを借りるようなものだ、だからいいのだ、こっちは悪いのだと。今度は六十年これを借りかえていくということになれば善玉も悪玉も一つになっちゃう。特例債が何で悪くて、建設債が何でいいかという論拠は一遍に失われると思います。そして特例債借りかえもどしどしやっていくということになりますと、歯どめというものは一体どこへ求めたらいいのか。今は総理は中曽根康弘さんですね。三十年たって中曽根康弘さんが総理をやっているということは常識的には考えられませんね。そのときでもあなたが発行された国債借りかえが行われるわけです。こうなってみますと、これだけの政策転換であるならば、例えば建設国債と同じように、六十年の借りかえということじゃなくて、これは三十年で返還しますよ、あるいはこれは二十年間で完全返還しますよ、これは悪い国債なんだから。そういう議論、あるいは歯どめというものがあってもいいと思うんですが、それは六十年でなくちゃならないという理屈があるんですか。
  207. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 特例国債をできるだけ出さないようにしよう、そういう意味で六十五年赤字国債からの脱却という政策を掲げてかんぬきを入れて一生懸命努力しておるのが今の現在の状態でございます。  六十年という期限をどうして区切ったかという御質問につきましては、いろいろほかの面との関係もあると思うのであります。財政当局から答弁させます。
  208. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いつも申し上げますように、最低限建設国債と同じ状態で償還すべきものであって、そして努力規定の中において毎年毎年汗をかいて可能な限り借りかえ等を少なくしていく、こういう考え方でお願いをしておるわけでございます。何度か御議論も申しましたように、今の段階で、まず総理からもお答えがありましたように、赤字国債からの脱却の努力年度に向かって一生懸命努力していこう、その後の問題として公債残高を滅していこう、こういうことでございますので、今後の経済情勢、財政状態等を見ながら可能な限りその年度を縮めていくという努力はしなきゃならぬというふうに考えております。
  209. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理ね、今大蔵大臣のおっしゃったことはもう十分ここで議論していることなんですよ。それでは危ないのだ、三十年も四十年も前に借金したのを決められた返還計画以上に余分に返すなんということは恐らくできるものじゃないんですよ、そんなもの、特に官僚の世界では。そういう点では、六条の努力規定はありますけれども、全く努力規定にはならない。ただうたっているだけだ。これの歯どめが何か必要だ。これは総理ですから大蔵大臣にその辺のことはお任せになっているだろうとは思いますけれども、しかし、これは中曽根総理として十分今後考えていただきたいということを私は強く要望しておきます。  それから中曽根内閣は、方針として六十五年度に特例国債の体質から脱却する、これは方針でございますというふうに今お話しになったわけでありますけれども、私はこれをやるには相当努力が要ると思いますよ。そのためにあなたは臨時行政調査会等をおつくりになってそこの答申も得られたと思いますけれども、実際にはかなりの努力が要る。一年度に一兆八百億ずつ特例債を少なくしていかなければ六十五年度にはゼロにはならない。一兆八百億を減らすということは、いろいろな要求のある中で大変なことだろうと、こういうふうに思いますよ。  そこで、この借りかえを行うという法律ができて特例債が初めて満期償還になって、それも借りかえをするという六十年度の予算、これはかなり厳しい態度で予算編成をやってもらわにゃいけないと、こう思います。ところが、最近シーリングに対していろいろな意見が出てきております。あなたが総裁をお務めになっているあなたのところでも、総務会長やあるいは政調会長、こうした方々はもうマイナスシーリングではないんだと。あなたもどこかで、あんまり緊縮的なことをやっていると人心はうむから時々は考えにゃいけないような趣旨の御発言もあった。あるいは野党の中にもそれと同じような意見がかなりある。そういう意味では私は、ここでシーリングをどう構えていくかということは総理の大きな指導性というようなものが物を言うときだろうと思うんです。もうこのシーリングというのは恐らく来月は決めなくちゃいかぬだろうと思いますね。総理はどう考えていらっしゃいますか。
  210. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、臨調方針、臨調の答申を守っていくということを基本線とすると前から言っておりまして、そのようにこれを基本線にしてまいるつもりです。それと同時に増税なき財政再建の理念を堅持していく。また六十五年赤字国債依存脱却というようなことも一つの大きな政策目標として実践していく。そういうような前提条件に立ちまして予算編成もやらなければならないと思います。そういうようないろんな情勢を考えてみますと、来年度の予算もかなり厳しい予算にならざるを得ぬであろうと、そう考えております。  シーリングにつきましては、まだ時間があることでございまして、いろいろ大蔵当局の意見あるいは臨行審からの意見等もあるはずでありますので、そういうものをよく考えてみまして、そして総合的に財政当局や党の皆さんと相談して決めていきたいと考えております。
  211. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもオールラウンドのお答えでございまして、どこがポイントなのかがさっぱりわからぬ。党の方と相談するというけれども、田中幹事長はちょっと厳しいお話のように承っておりますけれども、あとのお二人はかなり増額の方向でおっしゃっているような気がいたします。また防衛庁などはこれからどういう要求を出してくるかわかりませんけれども新聞の伝えるところだと八%ないし九%増しの概算要求をする、こういう話も出てきているわけでありまして、厚生省の方とかそっちの方でもかなり前向きというか、増加要求が出てきている。この点を私は明確にしていかないと、今そういう意味では私は一つの分岐点に立っていると思う。総理がどっちを向いているのか、少しは甘い顔してもいいんじゃないか、いやもっと厳しくしなくちゃだめだというようなことが、六十五年度特例国債ゼロにできるかできないかの大きな分かれ道だと、こういうふうに思うわけです。したがって、その辺の考え方を鮮明にしていただかなくちゃいけないと思いますね。  行政審あたりでも大変厳しいことを言っておりますね。これはまだ最終的な決定であるかどうかわかりませんけれども、地方分は一兆円減だ、国の単独事業は一兆円減だ、あとは繰り入れを削ってしまって均衡予算にするんだと、こういうようなことでありますけれども、今まで見てまいりまして、いつも防衛費というのはシーリングの枠から見ますとかなり出てますね。今度は聖域は設けないというふうに大蔵省はおっしゃっているようでありますけれども、今度は具体的にこの防衛費については一体どういうふうにするんですか。これはほか並みにするんですか、あるいは若干、これはアメリカの要求もあるから少しはふやすと、あるいはソ連の最近の軍事情勢から見てふやさにゃならぬと、こういうふうなお考えなんですか、どうなんですか、その点。
  212. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) おまえはどっちを向いているかというお話でございましたが、私は基本的には土光さんの方を向いていると、そういうふうに考えを申し述べたいと思います。  それからシーリングに関係しまして防衛費の御質問でございますけれども、まだシーリングをどうするかということも決まったわけではありませんが、防衛費については、三木内閣のときの一%、GNP一%というあの方針を守るように努力してまいりたいと前から言っておるとおりで、今後もそういうふうな努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。今まで予算で、私の場合におきましては、ODA、対外経済協力無償援助、それから防衛、それから科学技術、それからエネルギー、こういうものは重点政策として最終的な決をとるときに重点的に政策を行ってまいりました。今度とういうふうな重点政策をとるかということは今後の情勢を見きわめてやらなければならぬと、そう思っております。しかし、大蔵省が言うように別に聖域を設けることなくやってまいりたいと思っております。
  213. 竹田四郎

    竹田四郎君 くどいようですが、もう一問それに関連してお伺いしたいと思います。  国民からは、聖域が、特に防衛費について聖域ができるということに対してかなり強い批判のあることは御承知のとおりだと思う。それと同時に、今までGNPの一%の枠というのがある意味では私は相当な歯どめだったと思う。これによって大蔵省もあるいは政府も一%以内と。しかし、最近おたくの党の中では、これを一回見直そうじゃないか。どういうふうに見直すのかその方向は出ておりませんけれども、そういうことが新聞で伝えられますけれども、防衛費のGNP一%、これは大変厳しい段階に来ているということだそうで、退職金も出さないために一年余分に勤めさせるというようなことも何かおやりのようでございますけれども、本当にもう一%の上限に張りついているというふうに言っていいと思うんですが、これはどうなんですか、お守りになるんですか、それともおたくの党で考えているように再検討をなさるというおつもりでしょうか、どうですか。
  214. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今申し上げましたように、三木内閣のGNP一%以内というこの政策は守ってまいりたいと思っております。
  215. 竹田四郎

    竹田四郎君 国債に対する信用度というものは一体どこではかられていくだろうかというふうに考えますと、いつもその期日が来たら約束どおり払ってくれる、このことがその国債に対する物的な信用度であろうと思います。もちろんそのほかにも国の経済というようなものが間接的には担保になっていると思いますけれども、具体的にはいつでも払ってもらえる、このことが国債に対する大きな信用度だろうと思います。  国債整理基金特会ですね、これにはいろんな形で積み立てて、そして国債償還財源に常に充てている、利子の支払い財源に充てている、こういうことに相なっているわけでありますが、これはあなたの非常に信頼していらっしゃる土光さんのところでも、来年度は定率繰り入れはやめてバランスをとれと、こういうふうにおっしゃっているわけですね。今後、大きくこの国債がいろいろな形のものがたくさん発行されていく、一年に十五兆円から二十兆円ぐらい、恐らく借りかえ発行を含めればそのくらいの額にいくわけですね。これが長、短、中そうした期になったものがいくわけですね。この際に、果たして国債も最近はなかなか発行が難しくなってきているときに、この基金がゼロということは対応ができないんじゃないだろうか。ですから、確かにバランス上は定率繰り入れの額を計上するということは、一時的には赤字国債をその分だけふやすかもしれませんけれども、この基金勘定というものはある程度、それはどのくらいが適当かということはまたいろいろ議論があるところであろうと思いますけれども、ある程度は基金というものに残高を置いておく方がいいんではないか、こう私は考えるんですが、総理はこれをいつも空にしておいていいのかどうなのか、その辺はいかがですか、総理自体のお考えは。
  216. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 竹田さんのお考えが正常なお考えであり、健全財政を維持していくゆえんであると私も考えます。  しかしながら、現在の我が国の国債の累積状況等を考えてみますと、一・六%の定率を繰り入れるためにまた赤字公債でやらなきゃならぬというような、そういうような矛盾もできかねまじき状態にあると思います。我々といたしましても、できるだけ歳出削減あるいは税外収入の確保等々によりまして、財政均衡を得るように努力してまいりたいと思っておりますが、今日の現実の状態から見ますと、これは財政当局にひとつ弾力的に考えてもらう状況に来ているんではないかと、そう考えております。
  217. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理、先ほどもこれ議論したわけですけれども、この借りかえというようなことを行いますと、その借りかえに償還を受けた人たちが素直にまた応じてくれるかどうか、これはなかなかわからぬわけです。もう十年はいやだ、おれは二年のを欲しいという人もあるかもしらぬ。いや、おれは十年より二十年の方がいいという人があるかもしらぬ。そういう形で必ずしも借りかえをやるというのがスムーズにいくかどうかということは私はわからないだろうと思うんですね。それにはどうしても政府の金で借りかえをする。今までも日銀と資金運用部の保有債は、これは全部借りかえ、全額借りかえということになっていたと思うんですね。そういう意味では、私は資金運用部も今三兆六千億か七千億ぐらい引き受けをしているわけでありますけれども、もっと多く借りかえを含んだものまで含めなくちゃいかぬだろう。そうすると、資金運用部の金というものはもっと大きくしなくちゃいかぬと思いますね。  しかし、御承知のように、資金運用部の金というのは郵便貯金とそれから年金関係のものが大部分ですね。その中で郵便貯金の占める割合というのはかなり多いと思いますね。ところが、資金運用部の金というのはこれは国で使う金でありますから、むやみと金利を高くするわけにはいきませんから、弾力性やあるいは流動性というものにおいては非常に欠けている商品だと思うんです。一方、今度は国債の自由化で、あなたがサミットでお話し合いになってきたように金利の自由化というのはどっと進むと思いますね。銀行や証券では高い金融資産というのをどんどん国民に提供するということになると、郵便貯金がそれに対応できなくなると思う。そうなってまいりますと、この資金運用部の余裕資金というようなものは少なくなってくるだろう、こう思います。  それで、いつも郵政省と大蔵関係の金利の争いというのは常に大騒ぎになっておるわけです。この辺は、総理あたりがこの関係というものは調整をして、資金運用部の金も集まるような対応というのをつくらないと、この間の問題というのは、私は大蔵省と郵政省だけでは解決できないだろうと思う。この辺は大蔵大臣はどういうふうにお考えですか。
  218. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 金利自由化、いわば市場開放、国際化、自由化、そこで金利の自由化で最終的にだれしもがこれをどうすべきかというのは、我が国特有の存在であります、まさに郵貯であろうと思っております。したがって、私どもがこれを主体的にかつ漸進的にと育っております根底にはいつでも郵貯のことが念頭を離れないからであります。したがって、郵貯のあり方をどうしていくかということにつきましては、ただ郵政省あるいは大蔵省のみでなく政府全体の問題として答えを出さなきゃならぬ問題だ。ただし、今現在で申しますと、所管が私の所管では必ずしもございませんので、予見めいたことを申し上げることは控えなければならないかとも思っておりますが、従来のいわば公定歩合の操作が行われたとき等の金利決定のあり方等は、これは三大臣合意とかいうような形で逐次これはおさまっていくでございましょう。が、今度の分はそれ以上の問題でございますだけに、全体の問題としてこれから検討して、大きな混乱が起こらないように持っていかなければならないという問題意識だけは十分持っておるつもりであります。
  219. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理は何か御答弁ありますか。
  220. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 郵便貯金が果たしている役目というのは、かなり大きな役目があったと思います。財投の原資として、日本経済の発展のためには大きな役目を果たしてくれてきておるのであります。最近、世界的な経済の影響を受けて、銀行預金も郵便貯金もネット増は増加率が減ってきまして、たしか年間ネットで五兆ぐらいふえておったのが一兆くらいしかない、縮減してきたということは、残念な次第であります。  しかし、世界的なシェアから国内金融市場というものを見てみますと、金利の自由化ということは世界の趨勢であり、我が国が国際市場に乗り出していくためには避けて通れない道でありまして、そういう面から見ると、郵便貯金の問題という問題は、そういう面からも考えさせられる大きな課題であります。ただ、しかし、郵便貯金の果たしてきた大きな役目というものも、一面において財投関係考えれば、考えなければならぬ面もあり、我が国の貯蓄の体質という面もまた考えなきゃならぬので、急激な措置はとれない。漸次次第次第に順化していくという形で金利自由化という方向に進めていくのが妥当な政策ではないかと考えております。
  221. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理ね、そういう点でかなりこれは総理の主導権というものがないと、大蔵大臣が言うと今度は郵政大臣がかっかしてしまいまして対立的な意見をむしろ出している。最近もどうもそういう形のものが伝えられているわけでありますから、これは今おっしゃられたように財投の資金でもあるし、あるいは国債消化のための資金でもあるから、これは相当考えていただかないと。これが枯渇するということになると、借りかえの問題というものも私はかなりつらくなる。ぜひ考えていただきたい。  そこで、この資金運用部のお金というのは御承知のように財投資金としてはほかへずっと行っているわけですね。この財投資金というのは年額にすれば大変な額だと思うんですけれども、これがうまくいく、あるいはこれで節約するものは節約してその分は資金運用部としてとっておく、余分なものは切っていく、このことが私は非常に重要なことだと思うんです。ところが、一般会計はなるほどスリムにする、しかし財投の方では膨らんじゃう。こういうようなやり方では六十五年にゼロにしても本当に財政再建ということには私はいかぬだろうと思うんですがね。  そこで、臨調の報告にもその辺のことはかなりページを割いて書いているわけですけれども、どうもその辺が私ども国民の目に見えるような形でない。特別会計から政府関係機関あるいは特殊法人、まあ特殊法人なんか特に目につきにくいわけであります。三公社の点はかなり目に見えるわけでありますけれども、そうした百十幾つの特殊法人、この中にはもう本当に民間に任してもいいというようなものもあると思うんですね。例えば三つの中小企業投資育成株式会社などにも財投の資金がかなり行っているわけでありますけれども、こういうものはもう民間に任しても私はいいだろうと思うんですね。一回これを大整理するという計画あるいは検討委員会というようなものを政府の中におつくりになって財投に使う金も節約していく、こういうような計画をお立てになる気持ちはないでしょうか。これは大蔵大臣は財政投融資というお金の面ではできますけれども、業務の一つ一つの面では各省庁に分かれていると思いますから、そう簡単に人の省庁のことを、お金の面じゃ言えますけれども、そのほかのことじゃそう言えるような組織になってないだろうと思います。この辺をもう一回洗い直してみる、余分な財政投融資は切っていく、こういう御計画なりそういう目標をお立てになって行動する、そういうおつもりはございませんか。
  222. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのお考えには基本的には賛成でございます。臨調におきましても、特殊法人の整理に関する部会がございましていろいろな努力をしていただきました。また、臨行審におきましても引き続いてその努力をしておるところでございます。行管庁におきましても、それに基づきまして具体的にどういうふうに整理していくかという点について今いろいろ努力しておるところでございます。  私は、特殊法人の整理統合、簡素化という問題は今後我々に課せられた大きな行政改革の一つの目標である、このように思いまして努力してまいりたいと思っておりますので、機構的には、現在あるその機構を十分活用することによって可能ではないかと思っております。
  223. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理、それは国民にもっと見えるようにひとつしていただけませんか。  それから同時に、各特別会計にいたしましても、特殊法人の会計経理にいたしましても、もう少しばらばらでなくて統一をできるものは統一をする、わかりやすいものにして、こっちの帳簿を見ればこっちの帳簿もわかる、こういうような形のものにしていただいて、そのおやりになっていることが国民の目にもっとわかるようなそういう措置をひとつ講じていただけるように努力していただけませんか。
  224. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点も実行してまいりたいと思います。行管庁で調べましたところによりますと、特殊法人によって会計処理の方法が非常に違うのがあるようであります。  そこで、標準会計処理準則みたいなものをつくりまして、どの特殊法人も同じ準則によって会計処理を行う、そして一目瞭然としてわかるようにしていく、そういうふうに努力してまいりたいと思っております。
  225. 竹田四郎

    竹田四郎君 この間サミットヘ行かれましてレーガン大統領とも特にお話しになったというふうに御報告を受けているわけでありますけれども、きょうあたり幾らになっているか、一ドルが二百三十八円台だろうと思います、あるいは若干動いているかもしれません。そういうこともあったと思いますけれども政府は七月債も今のところ見通しがあるのかないのか非常に微妙なところへ来ている。こういう状態が直ちに影響していると思うんですけれども、総理はもう少しアメリカの財政赤字の問題、あるいはアメリカの高金利ドル高の問題、この問題を、確かにあなたの親友であるレーガンさんに言いづらいかもしれませんけれども、これをはっきり私は言ってもらわなきゃいけないんじゃないかと思うんです。それでないとますます日米の貿易赤字の問題あるいは南の途上国の累積債務の問題、こうしたものは解決がついていかない。幾ら日本がODAで張り切ったとて、そんなものは追いついていかない。こういうふうに思うんですが、世界の一割の経済国家に日本はなっているわけでありますから、その辺はもう少し積極的に、今の一番大きな問題であるアメリカの財政赤字、それから来る高金利、こういうものについて日本は物を言っていいんじゃないか。こういうふうに思いますが、いかがでしょう。
  226. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点はかねがね私も言い、努力もしておるのであります。去年の十一月、レーガンさんが日本に見えましたときも、私はアメリカのTBレートの変動の図表と、それに応じて円・ドルがどういうふうに変動していくかという図表を示しますと、まさに並行しておるわけです。TBレートの動きによって円・ドルが動いている。その図表を示しましてレーガンさんの前に見して、こういう状況だからあなた方の方のTBレート、すなわち、それは結局はインフレ率とかあるいは財政赤字の状況、クラウディングアウト、そういうようなものがここへ響いてくるわけですから、その点について注意を喚起したのであります。そのときはいろいろもっと研究しようというような話で終わりました。  それからサミットにおきましても、まず貿易インバランスの問題は、我々はいろいろ言われておるけれども、その原因はどこにあるかと言えば円が安いということにある。それはどこから来ているかといえば、アメリカの高金利というものから来ておる。それから債務国の問題というものは、アメリカ金利が一%上がれば四十億ドル債務がふえると言われておる。したがって債務国の問題というものは、南米の大統領が集まっていろいろ宣言を発したり、いろいろしているけれども、無理ないところがある。そういう意味において我々は金利の問題という問題もここで考えてもらわなきゃならぬじゃないか。そういうふうな趣旨のことも言いまして、それは私が言っただけじゃなくて、みんなが大体そういうことを言いまして、そうしてあのような今度の声明の中の経済宣言の中に歳出を削減する、財政赤字を削減するという文章が載っておる。また金利の引き下げに努力するということも正式に載っておるのであります。アメリカ側も最近は三年間に千四百二十億ドルでしたか、削減しようという案を大統領の方から出してきている。そして上下両院とも与野党協調してそれに努力しようという方向に動いてきておるようです。この超党派的な努力を我々は高く評価いたしますが、アメリカ側もそういうふうな努力を今しつつあるということも我々は頭に置いておいて、さらにそれを促進していくように我々としても努力してまいりたいと思っておる次第です。
  227. 竹田四郎

    竹田四郎君 もう一つは、今度のロンドン・サミットの中で大きい問題は、新ラウンドをどうしていくかという問題は、これは日米で出された問題であろうと思いますけれども、恐らく当初日米では、八五年ですか、一九八五年準備開始、八六年交渉開始、こういうことで新ラウンドを進めるというお話で出ていかれたように私は思いますけれども、八五年準備という準備開始の点は、これはなるほどおおむね合意ができたわけでありますけれども、交渉開始の問題というのは決まらなかったわけですね。これはかなり大きくこの間のあなたの本会議における報告とは勝手が違っているんじゃないか。日本として、今までの東京ラウンドの見直しをもっとやっていかなくちゃいけないんじゃないか。そういう問題があるからこそ、これについて八六年交渉開始というところにはいかなかったんではないか。またヨーロッパにおけるところの経済動向というものもそれになじまなかったんではないか。私どもはなるべく早くより自由な貿易、あるいはアメリカ以外の国々との自由な貿易ができるということが望ましいと思いますけれども、この辺はこれから一体どう考えて、この準備開始は結構でありますが、その次への段階というのはどういうふうに踏んでいかれるおつもりでございますか。
  228. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 保護貿易に対抗して自由貿易を推進するというのは我が国の大国策であります。そこで、ニューラウンドを推進しようと昨年の秋に考えまして、十一月にレーガンさんが参りましたときに話をして賛成を得、またドイツのコールさんが参りましたときも賛成を得、それからカナダのトルドー首相が来ましたときも賛成を得て、大体その三つの国が固まった。そこで、東南アジアや発展途上国についても大使等を通じまして、いろいろ理解を求める努力をして、その上でサミットに臨んだわけであります。それで、八五年準備、八六年から交渉開始と、そういう線で私も発言し、レーガンさんも発言し、カナダも賛成をしてくださったんでありますが、ヨーロッパの抵抗が非常に強い。  それで、どうしてそういうことになっているかということを考えると、前から想像しておったところですが、要するに日本とアメリカの経済が飛び離れて強くなってきていて、特にハイテクにおいては、ヨーロッパは引き離されてしまっておる。そこで、アメリカと日本が組んで押しまくるというと、ヨーロッパとしてはまずます離されてしまうという不安感がある。東京ラウンドで一番得をしたのは日本じゃないかと。要するに経済的に強靱な国が得をすると。だから、彼らはまた次の東京ラウンドを考えているんじゃないかというような疑心暗鬼がヨーロッパ筋にはあったのであります。  そういうことも十分我々踏まえまして、そこで撃ち方やめをどの程度でやるかということも考えまして、三月でしたか、五月でしたか、五月にやったOECDの理事会の決定の線、その必要を認め、可及的速やかにその準備に入るというその線以上もう一歩出たいということで努力をいたしまして、あの線よりはもう一歩出たような表現で手を打った。しかし期日を明示することは遺憾ながら我々の方は遠慮した。これは何となしに日本とアメリカが提携してヨーロッパを押しまくるというような警戒心を解くためにも必要な措置であったと思っております。  その後、いろんなディナーとかパーティーで立ち話をヨーロッパの人たちとしておりますと、あの程度で妥協したのは非常に賢明であった、我々も事態はよくわかっておる、したがって来年あるいは再来年にかけては十分相談しようと、割合に理解のある言葉をパーティーの間では我々に言ってきております。したがって今のような多少緩急自在の方法でいくことが日本にとっては賢明であると考えております。
  229. 竹田四郎

    竹田四郎君 最後に、若干経済問題と離れますけれども、私は神奈川県でありますから、横須賀の基地や厚木の基地やあちこちの基地を実は抱えているわけでありまして、この六月からはアメリカの艦艇はトマホークを装備するというようなニュースも出ているわけであります。  この間二十日の日ですか、東大の坂本教授あるいは明治学院の、前の明大の教授であります豊田利幸教授ですか、こういう人たち百十二名が藤波長官を訪れて、従来の非核三原則に加えて、使わせず、捨てさせるという非核五原則を提示して、これを新しい国是としてくれと、こういう話があった。こういうわけでありますが、これに対して一体政府はどのようにお考えになっているのか。  このうちの特に使わせずという問題点ですね。使わせずという問題の考え方は、恐らくジュネーブ条約の第一追加義定書の精神に基づいているんではないだろうかというふうに思うわけであります。日本はこれを署名もしていなければ批准もしていないわけでありますけれども、使わせずということになりますと、要するに無防備の地域についてはソ連といえどもSS20を撃ち込むことはできないぞ、そのかわり日本もそういうふうに宣言された地域には、ちょうど赤十字を書いたと同じように、そこについては抵抗するようなものは置けないということがその反対の条件としてあるわけであります。  今の戦争というのは、この間のベトナム戦争で死んだ人の割合を言いますと、戦闘員がわずかに五%、非戦闘員が実に九五%死んでいるというわけでありまして、この割合はもっともっと多くなると、こういうふうに言われている中で、これからますます大量殺りく兵器というものができてくる中で、無防備な国民を守っていく、抵抗できない人たちを守っていくということは政府の大きな役割じゃないか。ということになりますと、私はその追加議定書というものを政府が早く署名し、国会が批准するということで、戦わない無防備な国民を戦争の被害から守っていく、このことが必要ではないかと、こう思いますが、この二つの件について総理のお答えを聞きたいと思います。
  230. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 追加議定書についてはよく慎重に検討さしたいと思っておりまして、今条約局を中心に検討さしております。  それからいわゆる非核五原則につきましては、言わんとするところはよくわかるのでありまして、ただ日本といたしまして二つの矛盾した考えがあるわけです。と申しますのは、一つは、我々は、現在の世界というものは均衡と抑止によって維持されている。遺憾ながら事実はそうであります。戦争が起きないということは結局、均衡と抑止両方が起こさせない力を持っているから起きない。そういう状態にある。その中には核抑止力というものもあって、日本は日米安保条約によってアメリカの核抑止力に一般的に依存している、そういう形で安全を保持しておる。日本列島防衛については、これは日本の自衛隊の力を中心にし、またアメリカの援助、増援というものによってもまた防衛を全うしようとしておるわけであります。そういう意味において抑止力というものに依存してやっておることは事実であります。その中には核抑止力も一般的には入っておるわけです。  そうすると、使わさせないという場合に、アメリカにも使わさせない、ソ連にも使わさせない、これが同時にうまくできると非常にいいんです。しかもそれが検証が伴って安心できるそういう素地でできれば非常にこれはいいことなんです。しかし遺憾ながらまだそこまではっきりした状態でこれはいける可能性がまだないわけであります。そういう点が一つ。  しかし、一面においては、また我々は核の災害を受けた唯一の国家として核兵器をやめさせようとしておる、核の廃絶ということを私は真剣に考えておる。アメリカもゼロオプションということを言ってやはり核の廃絶を言い、レーガン大統領も我が国会へ来て核戦争に勝者はないという演説すらしておる。最近のダブリン演説を、ちょうどサミットの前にやりましたダブリン演説を読んでみますというと、同じように検証を伴うような有効な方法を保持した上でお互いやめようじゃないか、そういう呼びかけをやっておる。私は非常にこれに共鳴するものであります。そういう意味において、検証の伴ったそういう安心できる方法によって、使わさせないし、また使わないし、また絶滅していく、そういう方向に進めるように私たちは努力していきたい、そう思っております。  私は現在のところ、非核三原則を守っていくという形が日本として適当であると考えておる次第です。
  231. 竹田四郎

    竹田四郎君 終わります。
  232. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理にお伺いしたいんですが、ロンドン・サミットにおける経済宣言の中の九の項目で、「我々は、従って、次のことに合意した。」、こういうふうにございます。それは「インフレ率及び金利を低下させるため、並びに通貨供給量の伸びを管理し必要な場合には財政赤字を削減するための諸政策を引き続きとり、必要な場合にはこれを強化すること。」と、こうあります。具体的にはサミット参加国はそれぞれ固有の国内の経済問題を抱えているということからこういうような表現になったんだと思いますけれども、我が国の場合で言うと、現状ではまだインフレというわけじゃありません。また通貨供給量もほぼ正常だ、こういうふうに思います。そうすると、この中では財政赤字を削減するための諸政策ということが一番ひっかかってくるんじゃないか。参加国じゅうの中で最大の赤字財政というのはアメリカよりむしろ日本だと私は思うんです。そこに陥っているのが我が国でございます。したがって、こういうような提言を合意したということは、赤字国債発行残高の減額もこの場所においてお約束をしたんだ、こういうふうに私はとった方がいいんじゃないかと思うんです。  といいますのは、現在の国債残高昭和五十九年末で百二十二兆二千億になります。これが政府の示した六十五年には赤字国債ゼロということにいたしましても、昭和七十二年には百九十二兆円を超える国債残高がある。二百兆でございますから、現在の予算規模の四倍の借金が残っていくわけです。これは我が国の財政にとっては大変なことでパンク寸前というふうにも考えられるわけですから、そういう点では赤字国債発行残高の減額ということを私は考慮されてきたというふうに考えているんですけれども、いかがでございますか。
  233. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 財政赤字を削減するという方向で努力するという合意をいたしました。そういう意味におきましては、我が国の国債あるいは毎年毎年度発行する赤字国債、こういうような問題、これはもちろん財政赤字削減の中に入ってくると思います。したがってその努力をしなければならぬと思います。
  234. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次は、ただいま竹田委員からの質問がございましたけれども、来年度予算に関するシーリングの問題です。この方式での一律削減方式について非常に微妙な御発言をなさっているように今まで思いました。与党の中でも論議が大変盛んである。総理は一体シーリングについてどう考えているんだろうか。今のお話答弁を聞いていますと、よく相談をしてということがございました。顔の方は土光さんの方に向いているというお話もありました。私はそういう点からかなり厳しくいくのかなと思ったんですが、今までの御発言から見ると、マイナスシーリングには必ずしも固執しない、こういう柔軟な姿勢を示しておられた。その考えの中で、シーリングというのは経済成長とか税収の伸びとかそういう問題もある、こういうように述べられておりますけれども、本年度当初見通しを上回るような経済成長率の伸びと税収が高まると来年度のマイナスシーリングを見直す、こういうことでございましょうか。
  235. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだシーリングについて大蔵省からも意見がありませんし、私も相談したこともないのであります。したがって白紙の状態であると申し上げます。  ただ、方針はどうかと問われますと、先ほど申し上げましたように、臨調の答申を守っていくということは基本線でありまして、そして今の財政状況等々を考えてみれば非常に厳しい予算にならざるを得ません。そのように考えておりますと申し上げた次第なのでございます。
  236. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 このシーリング問題につきましては、私どもの党からも竹入委員長が記者会見で発表しておりますけれども、一律削減方式はやめてすべての各省の予算を根っこから見直す、つまりゼロオプションから出発をしていく、そういうことを前提にして政策の優先順位を決めて政策別にシーリングを設定する、そうして国民の要求にこたえていくべきではないかという提言をしているわけでございますが、この点は総理はどういうふうにお考えでございましょうか。
  237. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは非常に一つの御達見であるだろうと思います。でき得べくんば基本的、根本的にそういうことをやりたいと実は思っておりますが、予算編成上の技術的な面から見ますと、今の予算編成を見ると各省にある程度任して、各省自体が選別をして自主的にやっておるわけです。それを党あるいは大蔵省というものが相談にあずかって、そして各省の自主性を認めて政策の優先順位を決めさしておる。それも各省だけにやらしているんじゃなくて、自民党も各部会がありますから相談を受けてやっておる、これが政党政治でございます。ですから、部分的に鈴木さんがおっしゃるようなことは各省別には行われておるんです。しかし、国全体としての優先度とか何かになると多少弱くなります。しかしそれは我々の場所である程度切り盛りをしていかなければならぬという考えでやっておる次第なのでございます。
  238. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 また自民党の中には、公共事業についても足らなくなったら建設国債を出せばいいではないか、そうすれば公共事業は伸びるではないか、こういうような意見があるんです。私はいろいろ計算をしてみてわかったんですけれども建設国債が五十九年度末で残が六十八兆四千億円ですよ。今の国の予算よりも建設国債残高の方が多いわけです。これが七十二年末になると百三十三兆円になるわけです。百九十兆円のうちの百三十三兆が建設国債です。出てしまえば建設国債特例債も借金であることには間違いございません。  そういうことになりますと、こういう物の言い方をして公共事業を伸ばそうということになりますと、私は調整インフレというふうな考え方になっているんじゃないかというふうに思うんです。前に総理は調整インフレということをお唱えになったことがございました。私は、そういうのが底流に潜んでいるのかどうかということで大変心配をしているわけでありますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  239. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前に言ったことはありません。これは通産大臣のときに私が言ったとかという伝説があるのでありまして、私は調整インフレなどということを言ったことはございません。それは当時新聞にもちょっと書かれまして、すぐそれは否定しておいた次第なのでございます。  財政運用あるいは経済運営の基本、政治の安定の基本というものは、物価の安定、通貨価値の維持、国債価格の維持というものにあるのでありまして、この資本主義経済の中枢である貨幣関係の価格維持というものが失われたら経済は暴走するわけであります。これは国民生活は非常な悲惨な目に遭うことは明らかであります。そういう意味において、今、現政府及び自民党・政府がとっておる施策というものは、これはどの内閣が出てきても、通貨価値の維持、物価の安定、国債価格の安定、その基本線を死守していくという線でやっていくべきものであり、やってまいりたいと思っておるものなのでございます。
  240. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 インフレ政策はとらないということは、これは大変安心できることですし、もしその歯どめがなくなれば、もう完全に国債等に対する信用はパアになってしまいますので、消化ところではないということになってきます。そうでなくても膨大な赤字国債を抱えているだけに十分な対応をしていただきたいと思うんです。  それからもう一つは、ことしの三月十九日の予算委員会で、総理に対して、西ドイツが以前行ってきたいわゆる予算均衡保持法とか中期財政計画の発足とかあるいは財政構造改善法のようなもの、こういうものをやって、州であろうと地方であろうと、国と同じように努力して財政再建に努めた、これに対して我が国でもそういう必要があるんではないか、財政改革法のようなそういうようなものをつくる考えがあるかということでお伺いしたときに、総理は将来の問題として検討したいということをおっしゃっておられた。その後の経過はいかがなものでしょう、またそのお考えは変わっておらないかどうか、お伺いいたします。
  241. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は検討に値するお考えであると思います、将来研究してみたいと、そういう御答弁を申し上げたと記憶しております。それは今でも変わっておりません。
  242. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 将来検討というのは、将来というのは非常に無限の、全部将来でございますので、一体こういうことがあって、これが財政当局なりあるいは経済企画を図る方なり、そういうところに対してどうかというようなことはお述べになったことはございますんですか。
  243. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ具体的に各省に命ずるというところまでにはいきません。ただ、私自体の頭の中でいろいろ検討もしておるところです。例えば今まで臨調答申を中心に我々がやってきたこと等を見ますと、大体その中に入っているものは多いわけです。国会ではいろいろ御反対もありましたが、行革特例法による延期であるとか、あるいは今回の健保もある意味においては財政健全化の措置でもあるわけであります。あるいはそのほか今の財政節減の方策、今までやってきたゼロシーリング、マイナスシーリングというのも、ある意味においては大きい意味においてはその中に入るものでもあるわけです。その中にまた地方と中央との関係というものも出てまいります。これもまた中央と地方との間で調整すべき問題、また将来についてもあるだろうと思います。  そういういろんな諸般の問題を考えてみますと、六十五年赤字公債脱却という目標を達成していくためにかなりいろいろ研究しなきゃならぬ問題は私はあり得ると思っておるんです。それを包括的なそういう形でやるのがいいのか、あるいは個別的になし崩し的にやっていくのがいいのか、そういう点は課題課題をもう少し洗い出してみて、そして研究してみる必要があると、そう自分の腹の中で考えているわけです。そういう状態であって、非常に関心を持って研究してみたいと思っているということを申し上げる次第です。
  244. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今のお話の中で地方との関連の問題がございました。これを調べていくと、財政を圧迫している大きなものは、国債費と地方交付税、法人税、所得税、そして酒税の三二%というのが大変な歳出における大きな圧迫要因になるわけです。そうなると、今のお話から伺っていてわかるんですけれども、若干これは削るようなことがあるかもしれない、時限的に、一%や二%も切るかもしれない。中央だけが痛みを感じるんではなくて、地方もともに痛みを感じてやっていかなければ西ドイツのような財政再建はできないと思うんです。今のお話のような総括的なものはできないというのであれば、そういう方向へだんだんだんだん持っていくような方向でいらっしゃるのかどうか、そういうお気持ちがおありなのか伺いたいと思います。
  245. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは今、行革審におきまして検討していただいておるところでございます。臨時行政調査会の答申におきましても、地方関係については幾つかの提案がございます。これについてもいろいろな面で検討もしておるところでございますが、毎年度の予算編成に関する具体化というような問題になりまして、それは今、行革審において検討していただいておる、その意見を踏まえて研究しよう。そういうことでございますので、意見の提出を見守りたいと、そう考えておりますが、いずれにせよ、中央・地方との関係というものは、これから幾つかの点において財政的調整を相談する必要はあるだろう、そう考えております。
  246. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは地方側から見れば固有の財源であるということから、大変な難しい問題なんですけれども、そういうお覚悟で臨まれるというのなら見守っていきたいと思います。  今回のこの財源確保法案について総理はどういう見解をお持ちなのかということを伺いたいんです。五十年度から、財政法で発行禁止されておった財政赤字補てんの国債を特別に立法して、そうして二兆九百五億円を最初発行しました。それ以来毎年度特別立法でずっと続けてきたわけで十年間来てしまったわけであります。本来ならもうとうにこれはなくなっていていいわけでありますけれども、十年間続いてきたということは、財政法が禁止しているのに穴抜けしてつくったわけで、財政法それ自体の特例公債発行禁止規定というのが空洞化したということを言わざるを得ないだろうと思うんです。その点、これは財政法というのはあって死に体になっちゃっている。この条項については完全な空洞化されたんだというような御認識をお持ちかどうか伺いたいと思います。
  247. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 空洞化という言葉を聞くことは甚だ申しわけないと思うのでありますが、五十年代に入りましてから石油危機及び世界経済の大きな不況のあおりを受けまして、しかも景気を維持し、雇用を喪失させないようにするという緊急やむを得ざる措置から、赤字公債発行せざるを得ない、そういう事態になりまして、そういう意味においては財政法の規定にかかわらずそういう措置をとらざるを得なくなってきた。それが累年続いて、しかもかなり大きな金額になっているという事態は甚だ遺憾な事態であると思っております。しかし、それを当然のことと考えるのは間違いでありまして、そういう意味においては空洞化させないという意思を持っておるということを申し上げたいのでございます。
  248. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 現行の財政法というのは、御承知のように、その考え方というのは健全財政主義なんですね。ですから、現在政府が当然出して当たり前と考えていらっしゃる例の建設国債、この発行についても発行してはならない、「但し」ということでただし書きの方でようやく認めているという条項でございます。ところが、先ほど申し上げたように、現在建設国債残高は大変な金額に上ってきている。こういうふうに見ますというと、今の我が国の財政から見て、国債発行なしの財政運営はもうできなくなってきているというふうにしか考えられなくなってきているんじゃないか。したがって、総理は、現行の健全財政主義に基づいている財政法はもう変えるところへ来ているというふうなお考えを持っているんじゃないかというふうにも思われるんですけれども、方やむを得ずなってったんだ、なってったんだと言いながらもう既に十年だったということは、また建設公債の方で言えばもっと長い時間かかっているわけでありますから、そういうふうな考えじゃないか。財政法改正という考えをお持ちなのかどうか、この点ひとつ伺いたいんです。
  249. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この財政法に書かれていることは、健全財政主義を堅持する上に貴重な非常に大事なことが書かれていると思うのでありまして、これを改正することは毛頭考えておりません。現在のこの事態が異常な事態で、その異常な事態を必要やむを得ずこういうことをやっているんだ、そういう意識を常に持たなきゃならない、そして正常化していく努力を営々としていかなければならない。そのために六十五年赤字公債依存脱却ということすら今一生懸命やっておるのでございまして、この財政法を変えたら財政の基準は非常に放漫になるというそういう危険性も生み、またそういう予測を生んだら日本経済の基調というのは崩れる。そういうことも考えてみまして、財政法は堅持していく、そういう基本線に立って今後もいかなければならない、そう思っております。
  250. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 財政法堅持ということは当然のことだと思いますけれども、しかしもう十年も十五年も続くということになると、これは本当にあれどもないようになって、建設国債は出すのは当たり前、毎年特例債発行法律案を出し、それを審議し、通すのが当たり前というような空気になっている。私はそういうことを本当に怖いことだと思うんです。この点だけは重々、今後とも今の総理の御決意のとおりにしていただきたいと思います。  その次に、同じく財政法のことでありますけれども、日本の国は現在自由世界の中では米国に次いで二番目の経済大国だと、こういうふうに自他ともに認める立場にございます。こういうような国際経済社会の立場からすると、昭和三十年代や四十年代に見られたような、日本の国のことだけ考えていればいいというような行き方はできなくなってくる、全世界的に見てやらなきゃならない。したがって、先ほど累積債務国の問題もございました。あるいは貿易摩擦の問題とか、新しいラウンドの話もございましたけれども、そういうところに対しては、累積債務の問題では場合によったらかぶらなきゃならないこともあるでしょう。私は、そうすると健全財政主義だけではいかれなくなるのじゃないか。一緒に世界の一員として、世界を救っていくためというか、そういうおごり高ぶった気持ちではなくて、分に応じてという立場が大きくなっているだけに、健全財政主義だけでいけるんだろうか、今の時代に合わなくならないかという心配をしているのでございますが、その点はいかがお考えか、明確にしていただきたいと思います。
  251. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国民経済を維持していく方策としては、健全財政主義を基幹にして崩すべきではないと思います。
  252. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 しかし、それを超えて国際的に分担を求められるということがあった場合はどうなさいますか。そこが問題なわけでございます。
  253. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国際的に分担を求められるということがなるほどあると思います。それは債務国に対するいろんな処置、あるいはODA、さまざまの問題があると思いますが、国民経済を維持し、国家の財政を運営していくという基本は健全財政主義にあるのであって、その上に立って諸般の政策を考うべきであると考えております。
  254. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 国債整理基金特別会計法の第二条で、建設国債償還について毎年、前年度初めの国債残高の百分の一・六の定率繰り入れ規定しております。この定率繰り入れ昭和五十七年度から三年間停止している。このままでいけば恐らく昭和六十五年度まで停止のままいってしまうんではないかというように私も思っております。先ほどの総理の御答弁から見ても、一方で赤字国債を出しながら、他方で定率繰り入れするというのは、借金返すための借金をどこかでするというのは私は非常におかしいという感覚です。私非常によくわかります。また、答弁の中で、大蔵当局に対して弾力的運用をということ空言われました。  そうすると、このことは成立をしたときの明治三十九年のことを考えると、外国からの国債借り入れが多かった、買ってもらったのが多かった。その返済ということから、日本国の信用ということで私はこういう国債整理基金特別会計法ができたんじゃないかと思う。ところが、現在世界じゅうを見渡してみますと、減債計画というか、減債基金制度というものを持っているのは恐らく日本だけじゃないかと思います。アメリカもございません。どこにもない。確かに借金をしたものを借金で返すというのは非常に変なんですけれども、そういうこともあるわけでございますが、総理が言われた弾力的運用というような言葉からずっと敷衍して物を見ていくと、将来はアメリカであるとか欧州諸国のようにこういう減債基金制度というものを廃止するということの含みがおありなのかどうか伺いたい。
  255. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 減債基金制度というものは有意義な考え方で、健全財政を維持していく一つの大きな目玉であると私は思いまして、制度自体というものは維持していくべきであると考えます。ただ、その毎年毎年のやり方につきましては、そのときの予算状況によりまして特例的に例外を設ける、そういう考え方の方が正しいのではないかと思います。
  256. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 国債整理基金特別会計法での建設国債の先ほど申し上げた定率繰り入れの百分の一・六、これは六十年間で行えばいいということから出たことです。いろいろの計算の基礎等聞いてみると、土地もある、これは百年に見るとかございます。場合によると、これは国税で言っている耐用年数よりも長い六十年というふうになるわけでございますので、果たしてこれが現在の時代に適当かどうかということを考えるわけです。私はこれはもう少し減らしてもいいじゃないかという感じがするんですけれども、そういう意見もあるんですが、これは大蔵大臣に最初ちょっと、細かいことにもなりますので、お伺いしたいと思います。
  257. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは土地、永久資産、これを百年に計算いたしまして、あとそれぞれの資産の耐用年数等からおおむね六十年と、こういうことで決めたものでございますので、私はまあこれは妥当なものではなかろうかと。ただ、建設国債といえども後世代に負担を残すことになりますので、いわばそれがより早い機会に償還されていくという努力は続けるべきであるが、制度上の年数としてはおおむね妥当なものではなかろうかという認識に立っております。
  258. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは、私先ほどから申し上げているように、将来に残っていく国債残高では圧倒的に多いのが建設国債残高でございます。百九十二兆のうちの百三十三兆、大体四分の三ぐらいが建設国債残高で、特例国債よりも今度は大きな問題になるということは目に見えてくるわけです、これは昭和七十二年の話でありますけれども。そういう点を考えると、現在の昭和五十九年だって、百二十二兆のうち残っているのは六十八兆、約半分でございますから、こういう点からすると、六十年が果たしていいんだろうか、またそれに右へならえする特例債償還期限というものもいいんだろうかということを考えないわけにはいかないわけです。  これはあわせてもう一度伺いたいんです。
  259. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは税法上等の考え方から、理論的に永久資産を百として計算しますとおおむね妥当ということになると思うのであります。だから、政策的な観点からの鈴木委員の御主張は私も理解できないことはありません。  一方、赤字国債借りかえは、現在ございますところの建設国債借りかえの方式を最低限とらしていただいて、しかしながら、現実問題としては、より多くのものをまたより短か目に努力していく。こういうことでございますので、毎年毎年のその都度の努力によって対応していかなければならない問題だと。  ただおっしゃいますように、仮に今年度発行したものを後六十年の後世代までにツケを回すということを考えますと、財政当局者としては情けないなという感じを持つことは、これは事実でございます。
  260. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今のことで総理、お考えはいかがですか。
  261. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 聞くところによりますと、土地が百年とかダムが六十年ぐらい耐用年数を持っている、コンクリートの建物が四十年とか、一応の目の子算用でそういう基準をつくっておるようであります。しかし、何かの基準をつくる必要はあるんではないかと思います。そういう意味において、一応六十年という見当でつけてきたものはこのまま維持していくのがやっぱりいいと思います。  ただ、一般の国民の皆様から見れば、六十年なんというのは一生が終わってしまうぐらいのあれですから、ちょっと長過ぎやしないか、そういう御議論があるかもしれませんけれども、しかし国の存続といいますか、歴代相受けてやっていくという国の生命力といいますか、そういうものを考えてみますと、その程度のことはいいんではないかと、そういう気がいたします。
  262. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 わかりました。  今回の財源確保法案の内容ですが、今までの三木内閣、福田内閣大平内閣、そして鈴木内閣と、昭和五十年度以来の内閣が、その年度発行特例国債について、十年後には必ず一括現金償還をいたしますということを国民約束し、この国会でも約束してきた、実に事細かにまでおっしゃって、財源の調達方法まで言われて、そうして約束をしてきてくれたわけでありますけれども、この約束をしてきた特例国債残高が、昭和五十八年になりますというと、四十八兆六千億円という巨額に達しております、この三月で。一括現金償還約束をこの財源確保法案ということで一遍に今度ほごにしたわけです。これは大変な問題だと思うんですね。しかも法律の中では「等」の一字で片づけておりますからね。歴代内閣約束をほごにして、そうして今の国の借金を六十年先の国民に負担させる。今言われたダムだとか道路とかいうものとは違いますので、これはもう給与であるとか諸経費に消えてしまったものでございます。それを六十年間負担させるということは、言いかえれば、まだまだ生まれていない子供、赤ん坊、こういう者たちにもその負担を押しつけようということになるわけですから、この点が私にとっては一番かちんときたところでございますが、これはもう総理自身も責任をとれない先の話のことです。そうなりますと、いかがお考えでございますか。
  263. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろ世界経済のあふりを受けたとはいえ、我々の子孫に向かってそういう大きな負担を残していくということは非常に心苦しいことでございます。我々のときに、大きな借金を一たん返して四十年代にはさばさばしたところ、今度我々の時代においてまたそういう借金をしたということは、我々の大きな責任であると思っておりまして、子孫に対しては甚だ申しわけないという気持ちがいっぱいでございます。
  264. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 中曽根総理自身、現在の有権者の支持によって国会議員になられ、総理としての負託を受けているんで、これから生まれてくる子供たちの負託を受けているわけじゃございませんのでね。だから、そういうふうになるというと、特例公債について建設国債とは違う方法による償還ということを考えるべきだ。私ども特例債発行に反対してきました。反対したからといって、今あるものをあした全部返せと、こういうことじゃありません。今ある残高について一体どう償還するかということは、これは本当に一緒になって苦しんでいかなければならないことでありますので、いろんな方法をとらなきゃいけないと思いますけれども建設国債とは異なる方法をとるということが、私は政府の責任者として非常に大事じゃないか。これは総理の姿勢がそうあるべきだと私は思うんですけれども、この点についてのお考えを伺いたいんです。
  265. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 鈴木さんが申されたことは全く正しいと思いまして、我々はそういう気持ちで反省していかなければならぬと思います。
  266. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理はことしの予算委員会で、増税なき財政再建のかんぬきは外せないという答弁をしました。本当にこれで行っていただきたいと思ったんですが、この内容をよく考えてみると、本来は赤字国債の一括現金償還というのをきちっとやるということが入っているんじゃないかなと私は思ったんです。昭和六十年度に償還の来るのが二兆九百億円、それから毎年三兆、四兆とふえていって、六十五年には七兆二千百億円というような、こういう巨額な赤字国債償還が予定されております。総理が言う財政再建を行うという昭和六十五年までには、これ全部合計すると、現金償還していけば二十七兆ぐらいになってしまうんですが、そういうのをきちっと現金で償還した上で、昭和六十五年度の予算赤字国債発行ゼロであるというふうにするんじゃないかと、こういうように私どもは理解をしていたんですが、どうも何か内容が違ってきたみたいな感じがするんです。  この点について伺いたいのと、先ほど私どもの塩出委員質問しておりましたんですが、本来ならば、一括現金償還をちゃんとした上で、そうして不足分について新規に新しい特例債として新発債の中に追加をして出していく、そうして国民に、借りかえじゃなくて、こうなんですよということを示して、財政は大変だということを納得してもらう必要があるんじゃないかという質疑がございました。この点についてと、二つ、総理に伺いたいんです。
  267. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 正常な考えではそういうお考えが正しいと思います。約束したことは実行する、大蔵大臣が現金で償還しますと言ったものは現金で償還するというのが約束だろうと思います。しかし、国の財政事情から、どうしてもそれがやむを得ずできないという状況になった場合に、そういう直接国民が受けるインパクトというものをできるだけ最小限に防ぎつつ、個人以外のものについてある程度の措置も考えていただく。そういういろんな組み合わせ等も考えつつ、衝撃をできるだけ緩和する形で健全財政維持の理想に合う方向でできるだけ努力していく、そういう誠意を持ったやり方が必要ではないかと思います。
  268. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大蔵大臣、ちょっと今のことで関連してですが、特例公債国債について、建設国債と違うという償還計画というものはできないものですか、これは再度の質問でございますが。
  269. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは再度の御質問でございますが、私ども努力規定の中で何としても絶えず念頭に置いてかからなければならない課題だと。ただ、財政改革の第一段階としては、赤字国債そのものを新発債として出さない、それを六十五年までを努力目標としてやろうということでございますので、まずはそれに重点を指向きしていただきたい。おっしゃる意味は私も痛いほどわかっております。
  270. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは総理、最後になりますが、先ほど申し上げたように、赤字国債の一括現金償還をやるとなれば、六十五年までに約二十八兆円近くのお金が出なきゃなりません。この事実は、総理が言う昭和五十九年度から昭和六十五年度までの間に財政再建をする、つまり特例債の新発憤はやらない、六十五年になればという、そういうふうに五十九年度限りでやめると言ったのを六十五年にしました。六十五年に変えだということは財政再建の政策変更をなさったわけですが、そのときにもう既に明らかだったと思うんです。そうであれば、当然この借りかえをやるという借換債発行については、建設国債の借換債赤字国債の借換債発行とは性格が違うというふうに検討をされたんじゃないかと思うし、またその検討を担当者に指示すべきじゃなかったかというふうに思うんでございます。この点、性格が全く違うものを、金は金だ、国債国債で、借金は借金だから一括して全部まとめてぽんとやってしまえと、極端な言葉で言えばですね。乱暴な言葉で言えばそういうことになるわけですが、そういうふうなお考えでおったのか、それとも性格が違うんだから違うように扱うべきだというようにお考えになっておったのか、この点ひとつ伺いたいんです。
  271. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 建設国債の場合に比べて赤字国債の場合は後ろめたさが非常に多かったと、そう思います。
  272. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 先ほど竹田委員質問に対しまして総理は、サミットでアメリカの高金利や財政赤字については大いに発言してきたと、こういう答弁でありました。そこでお伺いしますが、世界じゅうからこのように問題になっているアメリカの財政赤字の原因は何であるとお考えか。アメリカの財政再建を阻んでいるのは何であるとお考えでしょうか。
  273. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 余りアメリカの財政内容を私調べておるわけじゃありませんが、新聞等で伝えられるところによれば、社会福祉とか文教とか軍事費とか、そういうものが削減の対象になっており、また地方に対する負担や交付金等も削減の対象になっていると、そういうことのようであります。
  274. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これはレーガン大統領もみずから教書の中で言っておりますが、一つは国防費、それから二番目に当然増経費、三番目に国債利払い費ということですが、この最初の国防費は強いアメリカを維持するためには削減できない、こういうことで、このことがレーガン政権下の国防費の急増になっており、そしてこれが財政赤字をもたらす大きな原因になっているんじゃないかと、こう思うんです。これは具体的に見てみますと、アメリカ予算における国防費は八五年度予算でほぼ三〇%。これはますますふえる計画となっております。国債費の方は一二・五%ぐらいですが、これも今後の高金利の見通しから、政府の計画よりもっともっと大きくなるんだと思うんですね。  それで問題は、レーガノミックスのもとで今後軍事費はますます伸びる一方。これは総理も今言われたような福祉削減、これを推し進めていく。その財政支出のふえていく分をほとんど国防費また国債費、中心は国防費ですが、その増加分として占めていくんだというのがアメリカ予算の示すところなんですね。総理はこの点をどのように理解されておりますか。
  275. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国防費の削減というのもときどき議会で与野党の論議の対象になっておりますから、そういう問題も非常に大きいのであろうと思います。
  276. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは私の調査によりましても、歳出の伸びに占める国防費の比率、これは八五年が四八・一%、八六年が五八%、八七年は四九・九%と大半を占めている、こういう状況です。国防費の伸びが財政赤字の解消を阻んでおることは明らかだと思うんですね。それで、大いに発言したということになりますと、原因を言わないで幾ら削れ削れ、なくせなくせといってもこれはなくならないわけでして、率直に親しいレーガン大統領にこのことも指摘をしてお話しになるべきだったんじゃないかと思うんです。そういうお話はしなかったんですか。
  277. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そう内政干渉にわたるような個別的な話はいたしません。
  278. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうしますと、一番のこの赤字の原因は、これはもうレーガン大統領が言うだけじゃなくて、全体でもそういう指摘はもうされておるわけでして、私はそのことが大きな問題だと思うんですね。私は、このことを勇気を持って指摘することが本当にアメリカの財政赤字をなくし、そのことが世界経済の好転につながっていくものだと、こう思うんです。  このことから翻って我が国の防衛費の点を見てみますと、この点も先ほど質問ありましたが防衛庁の方では、来年度に防衛費八・五%増要求、総額三兆円を突破するという方針を固めたというんですが、その点はどうですか。
  279. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 一部新聞報道でただいま御質問のようなことが伝えられたことがございますが、私どもはまだ来年度の話につきましては検討を今いたしているところでございまして、そのようなことになるのやら、ならぬのやら、これから先の話かと存じております。
  280. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 なるのやら、ならないのやら、どうもなるのやらの方が大きいんではないか、こう思うんですが、その原因は、一つは後年度負担に伴う歳出化増ですね、それから人件費、施設整備費、修理費など、こういうものが挙がっております。それで、義務的経費の性格を持っている人件費の伸びが五十九年度の場合を大きく上回る。こういう状況ですと、必然的にこれはもう高くなっていく。先ほどの新聞報道のようなところへ近づいていくんじゃないか。そういう実情にあるんじゃないでしょうか。
  281. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 確かに防衛関係費の中には義務的な部分がかなり多うございますが、それが明年度どの程度になるかというのは、先ほど申し上げましたように目下検討中でございます。
  282. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは新聞報道でなくて、総理、総理が総裁を務めておられる自民党の国防部会もほぼ同様の意見をお持ちだと思うんですね。となりますと、防衛庁はこう言っていますけれども、ほぼこういう方向が出てくる。そこで大蔵省と攻防戦がされるという、こういう状況になると思うんですね。これはむしろ自民党総裁として、そういう動きなども踏まえて、この防衛費増、アメリカの問題はこれは内政干渉だとおっしゃるんだけれども、これはまさに国内問題で、総理の決断でこれは決まっていく問題だと思うんですが、その辺どうですか。
  283. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いずれ予算編成のときが来ましたらどういう選択をするか決断いたしますが、まだその時期には来ておりません。
  284. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それは具体的に額を幾らにするか、一%の枠内におさめるのかどうかという問題ですが、しかし財政の方はとてもそんな軍拡していくような状況ではない。先ほどずっと議論していたとおり、後世に対して申しわけないと、こういう状況ですよね。となれば、今の総理の方針として、削っていく方にいくのか、それとも必要なものはふやしていくんだ、そしてその場合に一定のところまで来るのはやむを得ない、そういうお考えをお持ちなのか。大体おおよそのことはわかっておるんですからね。ただ、どういうのが具体的に出てくるか。例えばパトリオットを含めるか含めないのか、そういう具体的な問題はそれはあると思うんです。しかし、おおよその問題は大体わかっておるんだから、今の段階答弁できるんじゃないでしょうか。
  285. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国の安全と独立を保持して文化を守っていくのも子孫に対する大きな責任の問題であると思います。結局、国政のバランスの問題にかかってくるので、いずれ具体化した場合にいろいろ調和を考えつつ選択してまいりたいと思っております。
  286. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 次に、先ほど来問題になっております昭和六十五年度赤字国債発行ゼロということについて質問がありまして、それについてはゼロにならなかったらどう責任を負うのかという問題については、これを貫徹するように努力するのみというんですが、これにつきましては、有力なる学者その他から六十五年赤字国債発行ゼロは難しいんではないかと。かなり大蔵省に理解を持っておられる人もそういう指摘をしておりますし、その話を聞くとなるほどと思うんですね。総理、先ほど貫徹するのみと、こういう答弁でありましたけれども、必ず六十五年ゼロになると、こういうお考えなのか。その点について自信はおありなんでしょうか。
  287. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全力を奮ってやってみたい、努力してみたいと思っております。
  288. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 やってみたいと。やる決意であるというのはわかるんですね。しかし、そのことについて必ずそうなるという確信を持って邁進するのと、どうも危ないけれどもともかくやる以外ないというのと大分違うと思うんです。確信を持って必ず六十五年ゼロになるという自信はおありかどうか、総理の自信のほどを。大体総理は自信の強い方と聞いておるんで、その総理が今のようなただ邁進するのみで、自信を聞かれても出てこないとなると、これはやっぱり自信がないんじゃないかということをあちこちで吹聴しなきゃいかぬことになるんですが、自信のほどはおありでしょうか。
  289. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 情勢は非常に厳しい情勢にあると思いますが、ともかく全力を振るって一生懸命努力するのみであります。
  290. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 適進するのみで、ついに自信の言葉が出てこなかったというんで、これは大変やはり難しい問題だし、恐らく総理も内心では心配になって、もし達成できなかったらどうしようかと、こういうお考えがあるかと思うんですね。  そこでもう一つ、これも財政問題として、国債発行残高のピークはいつになるのかということをここで幾ら聞いても、昭和七十二年度に約二百兆近くになるということで、いつから下降線に向かうのかという、こういう答弁はほとんどないんです。しかしこれは総理の決断の問題。今土光さんの立場というんですけどね、今の自民党政府やり方を見ていけば、いつか必ず大増税があるいは福祉予算などの大削減が、これをやらなきゃどうにもならないということはもうだれでもわかることなんですね。そうしますと、これはいつからこの国債発行残高が下降線に向かうかどうかというのは、まさに総理がいつ土光さんの増税なき財政再建から離れるかということなど、そういう大決断をし、それを実行に移す。票が減って内閣がつぶれるのを覚悟してもやるかどうかという、恐らくその辺にかかっているんではないかと、こう思うんです。  そこで、総理にお伺いしますが、今のままいけばピークはまさに仮定計算によってもふえるばかりだけれども、それを下降線に向けなければいかぬという、向けるために邁進するのみということなんでしょうけれども、そうでなくて、必ず向かっていく時期があるのかないのか、あるとすればどの辺に総理としては今その見通しなり考えを置いているのか、その点どうですか。
  291. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今後のいろいろな諸般の政策によることでございますから、必ずしも明確な線は今出しにくいと思いますが、数字にわたることでございますから大蔵省から答弁させます。
  292. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 数字の問題はもうさんざんやってきた問題で、とうとう数字は出てこないんです。そこで総理にお伺いしておるんですが、総理としては、ふえていくのはやむを得ない、ただGNPとの関係で一定の率で保っておればいいと、そういうお考えで財政運営をされていくおつもりなのか。その辺はどうでしょう。
  293. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) GNPも見るし、国民の負担率も見るし、貯蓄率も見るし、物価の安定ぐあいも見るし、やはり全般を見なければならぬと思います。
  294. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 全般を見てもちろん運営していくんですが、ふえていくのはやむを得ない、しかし一定のところで終えんしていくという、そういうことでやむを得ないんではないか、そういうふうにお考えなんですか、それとも必ず下降線をたどらせなければいかぬと。この辺私は財政運営に関する基本的な問題だと思いますので、ぜひ御答弁いただきたいと思うんです。
  295. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 六十五年赤字公債脱却を目標にともかく全力を尽くすあるのみであります。
  296. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それは先ほどお聞きしたんですがね。今のところ歯どめとかでいろいろなことを議論されてきたんです、当委員会で。しかし具体的な策らしいものは六十五年赤字国債発行ゼロというのが唯一のものなんですが、それさえ危ないんじゃないか、それに対しても総理は自信がない。しかし、いずれにしたって、もうちょっと長く見て必ず下降線の方へ発行残高をしていくんだと、こういうお気持ちはあると思うんですよ。お気持ちはあるけれども、それを本当にやっていくという確たる方針をお持ちなのか。それとも、一定のところでふえていくのはやむを得ないし、その程度ならば一定のところで終えんしていくんならば、それはそれでいいんだと、こういうお考えをお持ちなのか。そこのところをしかとお聞きしたいんです。
  297. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一定の時が来たらもう減債するようにしていくのは当たり前のことで、その時期をできるだけ早めるように努力したいと思っております。
  298. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それ以上御答弁ないんで、もう時間来ましたのでやめますけれども、これも自信家の総理にしては何ら具体的なものが出てこなかったということで、大変困難なことであるんだろうということを指摘しまして質問を終わります。
  299. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、今の財政を最も端的に表現するものは何かといいますと国債費だと思うんです。国債費は五十九年度で約九兆、中期展望によりましても六十二年度で十四兆、そのころの予算規模が六十兆ですから十四兆というのはそれは決して少ないじゃなくて、えらい高い数字。一番困るのは、中期展望によりますと、予算規模の対前年度伸び率よりも国債費の伸び率の方が高い。これはこのままいったらちょっと財政はどうしようもなくなるということだと思うんです。一方、五十九年度で見ますと、九兆利払いを含めて国債費を計上しました。特例公債を九兆の国債費と直接つなげるわけではありませんけれども、とにかく利払いをするわけですから、その資金調達として六兆の特例債発行したと見ても、これは何も間違ったことではありません。そうすると借金の利子を払うためにまた借金をする。そういう関係の国債費が予算規模の伸び率よりも毎年高い。非常に荒っぽく言いますと、大蔵大臣はもうなかなかのものですとおっしゃいましたけれども、大ざっぱに言えば、私はこれは破産状態だと言った方が正しいと思うんです。私はそうなった責任を言うんではなくて、そこから先なんです。  民間企業が破産しますと、まず破産管財人が出ます。破産管財人が再建計画を立てて、それに従って再建が進む。これは民間企業の場合だと思います。地方自治体が歳入歳出のバランスをえらく壊して赤字に急転落した場合どうするかといいますと、実は地方財政再建促進特別措置法というものがあります。これはどういったものかといいますと、まず再建の中期計画をつくらせます。これは地方議会の承認を必ず求めます。これに沿ってやるんですが、当然この再建計画に従ってやる以上はどうなるかといいますと、この計画は毎年の予算編成を規制するんです。従来ですと、国の場合には会計の独立の原則がありまして、俗に言う単年度主義です。そこで、そういう中期的なものになじまないという御説明がいろいろあったんだけれども、これは地方財政の場合も全く同じであります。やはり単年度主義であります。だけれども、こういう破産状況になったときにはもうやむを得ぬから、したがって計画を組みなさい、毎年の予算編成は当然のこととして拘束をされなさい、そして再建を進めなさい、こうなるわけですね。  民間企業で言うと破産管財人がつくる再建計画、地方自治体で言いますと、自然その首長が自治省の監督を受けながらつくるであろう再建計画、こうあるんだけれども、国の場合にはなぜないんだろう。これはさっきから聞き方違いますけれども、結局同じことを伺っていますし、結局長い時間かけてこの委員会でやってきたこともこの繰り返しなんです。  そこで、六十五年度特例公債依存体質脱却目標はおっしゃいました。問題は、目標はいいんです、そこに至る道筋を再建計画として明らかにしないと国民にはわからないんじゃないか。そうしたものを政府としてお組みになるのか、それとも政府としてもしようがないから、政府そのものがこれだけの赤字体質の財政をつくってきた張本人になるわけですから、したがってこれはできないというんで破産管財人を選ぶか、どっちかしか私は道がないと思うんです。したがって、来年の予算どうしますかと言うと、まだ白紙でありますというお答えをされてしまいますと、いかにもはぐらかされた気がして、本当に真剣に六十五年の目標に向かっておいでになるんだろうか。確信を我々自身が持てない。もともと借りかえ禁止つきの全額返済で、一括返済でやってきたわけですけれども、それを借換債にするということは、ある意味で言いますと、これは債務の繰り延べになるわけですね。    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕 累積債務国が債務を繰り延べる場合どうなるかといいますと、内政干渉と言われようと何だろうと、IMFを初めとする機関は相当中に突っ込んだ規制枠を設けます。それをのまないとつなぎ融資せぬぞと。これは当たり前なんです。そういう今の財政を再建するに当たってどういう自己規制を国はしょうんだろうか、今国民が求めているのはこれだと思うんです。その自己規制の具体化というのは、もう再々出てまいりました中期財政再建計画、これは毎年ローリングしていいんですよ、もちろん。いいんだけれども、その計画で我々はこう規制をします、これがなかったら、それはとても財政の再建は進むものではない。私はこう思いますけれども、御意見いかがでしょうか。
  300. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非常に良心的な正確なお話だろうと思います。そういうような御構想も一つの立派な御構想であると思いますが、我々の方は第二臨調の答申を受けまして、その線に沿って行財政改革をやっていく、そういう過程におきまして今のような御議論をいろいろ踏まえまして実効のある計画を次々につくってやっていきたいと、そう思う次第でございます。  今のような膨大な赤字公債をしょっておりまして、これをどういうふうに処置していくかということは、ある程度国民の皆様方にも御協力を願い、また我々自体も節度を持った財政運営を行いつつ、公平を旨としていろんな政策を推進していかなければならぬときに来ていると思うのでありまして、それらの点につきましては、国会の御議論等もよく踏まえつつ努力してまいりたいと思う次第でございます。
  301. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 総理は、フリードマンの書かれた「奇跡の選択」という本をお読みになりましたか。
  302. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大分前に読んだことがあります。
  303. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 この中で言っている言葉が身につまされるんです。引用して申し上げますと、これは加藤寛先生が監訳されているんで、序文の中でこういう要約文をつくっておられました。「民主主義は多数派の利益を守ることを大前提とするはずだが、その多数派はいくつかの少数派の利益集団によって形成され、利害が分散した一般消費者大衆の声は反映しにくい」。同じことを今度フリードマンの文章へ直しますと、「利審の集中しているグループを良くも悪くも大きく左右する政策は、個々の構成員に対しても即座に目にみえる重大な影響を与える。ところが、一般納税者のように利害が分散しているグループの場合には、同じ政策が個々の構成員に及ぼす影響は小さく、波及にも時間がかかり、とらえどころがない。民主主義国のみならず、どんな政体のもとでも、特定の利益団体がすばやく集中的に行動すれば、大きな力を発揮する」。これは日本の国会の現状を見ても、アメリカと言わずほかの国を見ても同じですけれども、結局、これが一つの現実だと思うんです。    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕  こういった現実の中で、行政改革、財政再建を進めようとしますと、不特定多数の多数の納税者が逃げ道を求めていったら一切進まないから、意識して遮断をしてしまおうというのが増税なき財政再建ということだと私は思うんです。今、遮断をして、総理も守りますとおっしゃっていますね。さあ遮断をされた。いろんな利益団体を背景にして日本の議会政治はあるわけでありますから、したがって来年度の予算のシーリングをどうするかも実はなかなか決めづらい。これが実態ですよね。そうすると増税なき財政再建の逃げ道もふさがれちゃった、こっちの調整はなかなかできない。どこに行くだろう。結局、特例債に逃げていくしか調整の道がなくなってくるんではないか。そうみんな感ずるから六十五年の目標脱出はだれも信用していない。したがって、当初第二臨調をつくるときには、財政再建も含めて一応やってもらおうということになっていましたけれども政府税調とか財政制度審議会が、いや、それはおいらの持ち分だということがあったんで、一応行政改革にして、政府税調も財政制度審議会も頑張ってくださいと、こうなっているんですが、財政問題と行政改革というのは決してイコールではないんですね、底ではつながっていますけれども。  したがって、冒頭申し上げました予算規模の伸びよりも国債費の伸びが大きいというものをどうやって解消していくか。これはだれでもわかっていますが、特例債発行をまずやめて、特例債の借換債残高をふやして、その次は四条債を減らす。これしかないですよ。それをどういうタイミングを刻んでやっていくかということになりますと、必ずしも第二臨調にはなじまない。そうしますと、ではだれがやるかというと、この破産管財人の事務は大蔵省でしょうけれども、なかなか大蔵省だけというわけにいかぬです。したがって、今の政府がみずからおつくりになるか、あるいは財政再建につけての第二臨調に準じた機関をおつくりになるか、どっちかしかないと私は進まないと思う。  そこで、総理としますと、今、私二つ申し上げたんですが、どっちの道を歩いておいでになりますか。
  304. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今のお話に似た話が、さっき鈴木一弘先生がおっしゃった財政再建に関するドイツの考え方にやや似ているお考えだろうと思うんです。私は、新しい機構をつくるという考え方よりも、むしろ今までやってきたこの道で、臨調答申の線に沿って今度はいよいよ政府が機動的に財政を運営しつつその目標に向かって努力を傾注していく、そういうやり方でやっていきたいと思っております。
  305. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 総理、お言葉ですけれども特例公債から脱却しない限りは財政の機動力というのはほとんど期待ができない。したがって、機動力のある財政をやるためにも、対応力を高めるためにも、六十五年の脱出というのはこれはもう一年の遅滞も許されない大目標ですね。それを各省庁知恵を集めながらやっていくんだ、こうなりますと、毎年小刻みに言われるのと、六十五年までにこれだけの額をどうするか考えると言われるのと、どっちの方がお役人の人たちは取り組みがいがあるんだろうか。毎年やられますと、いかにも大蔵省に抑えられていじめられる、こんな意識しかありませんよね。ところが、六十五年までには脱却を何としてもしないと財政の機動力、対応力がない。しかもその間には世界経済を含めてどう動くかわからぬ。何とか日本を救おうではないかという運動をもしやるんでしたら、各省庁の中に起こすしかない。そのときの各省庁別の目標ですね、補助金を含めて。削減目標を与えないでおいて、とにかくみんなやれと言ったって、それはだれもやらぬのですよ。ですから、もしそうだったら、幸いに要調整額というのがあらかじめ仮定計算であるわけですから、それを頭からヤッと各省庁に振りまいて、さあみんなで知恵を尽くそうとやるのも私は一つだと思うんです。  単年度ごとに考えていったんではできないんです。地方自治体の場合にはもともと単年度会計主義なんです。あれも憲法からきているんですよ、国と同じです。だけれども、緊急事態だからこの際は中期再建計画を優先して予算を拘束しよう。地方にやらせているのになぜ国ができないか。わかるんです、これは。相当大変なことなんだとわかるんですが、これは大胆に取り組まないと六十五年がまたずれてしまう。そうなると、日本の財政は処置なしになる。そのときに後代に何を残すか。インフレしかないですよ。したがって、今の時期にこれだけの借換債を残すんですから、今の我々がとにかく汗を流すしかない、その目標はこうだと。この計画は、鈴木先生の御意見にもありましたけれども、ぜひ早くおまとめいただきたいし、それが確実に財政再建、行革を進めていくもう一つのてこになるんじゃないか。  増税なき財政再建は、臨調の答申の中でてこだと言っていますけれども、あのてこは後ろ向きのてこなんですよ。逃げ道をふさいだだけなんです。前に歩くためのてこをもう一本つくらないと私はいけないと思います。  以上申し上げて、御所見を伺って終わります。
  306. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非常に有益な、また国を思った御意見を拝聴いたしまして、私たちもまじめによく考えてまいりたいと思います。  基本的には六十五年赤字公債依存脱却というのが大きな我々の目標でございまして、それを何としても貫徹していく、それを実行していくために各年度ごとにどういうことをやっていくかという点については、また今後もよく子細に検討してまいりたいと思います。
  307. 青木茂

    青木茂君 質問の順番が後になりますともうほとんど蒸し返しになってしまうんですけれども、ずっと話題になっております六十五年度赤字国債新発ゼロ、これにしぼりまして御質問申し上げます。  何よりもこの問題は、十人のエコノミストが集まりますと、それはだめだ、絶望的に不可能であろうと、こういう答えがはね返ってまいりますし、それからオフィシャルな席以外で与野党の議員さんでこの問題の話をしますと、やはり難しいという答えしか出てこないわけですね。総理は、そういうような情勢下において、総理の最後のおなかの中はわかりませんけれども、どこまで本気なんだということを聞かざるを得ないような財政状況なんだということですから、まずそこをお願いを申し上げます。
  308. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今まで申し上げましたように、増税なき財政再建、それから六十五年赤字公債脱却を目指す、そうして臨調答申を最大限に尊重する、それを基本線にしていく、こういう三つの原則は守ってまいりたいと思っております。
  309. 青木茂

    青木茂君 「展望指針」で出ました毎年一兆円ずつ返すと、これはもう初年度において崩れたわけですね。そうすると、約五千億ぐらいなものを以後毎年分割して回していく、それからまたそれが崩れたらまた回していくということになって、積み上げ積み上げという形になってしまうわけなんですよ、実際問題といたしましては。そうすると、どうも後世代論というのが非常にやかましい。つまり、次の世代の我々になぜ迷惑かけなきゃならないのかと次の世代からはそういう批判が出ます。それと同じように、現在は借りかえでいけば簡単に片づいてしまいます。しまいますけれども、例えば次の次の内閣はこれで非常に困らなきゃならないことになってくるんじゃないか。そうすると、次の次の内閣ぐらいに対する現内閣の責任というものは僕はあるんじゃないかと思わざるを得ないわけですね。  そうなりますと、とにかく財政は、首が回らないんだから、首が回るようにしなきゃならぬということは私どもよくわかりますよ。だから、六十五年新発債ゼロという目標をお掲げになるならば、いかなるスケジュールとプログラムでもってこれをやってらっしゃるか、そういうマスタープランが出なければ、単に全力を尽くしますということだけでは、これはどうにも我々として不安で仕方がないわけなんですよ。だからそういう意味で、きょうすぐどうだということでなしに、六十五年借金返済計面というものを、サラ金から借りたら家庭経済やりくりしますから、それと同じようなものをお出しになれないだろうかということですね、単に毎年毎年努力するということだけでなしに。お気持ちはいかがでございましょうか。
  310. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、三つの原則、この軌道の上に乗って毎年毎年全力を尽くしてまいりたいと思う次第でございます。
  311. 青木茂

    青木茂君 それでは来年はどういう御努力をなさいますか、毎年毎年はわかりましたから。もう来年のことですから。
  312. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 恐らく八月に概算というものが出てまいります。その前に概算に関するいろいろな基本的考え方大蔵省から出されると思います。それで十二月に予算編成をするというのが常道であります。そういう線に沿って今の三つの軌道に乗った予算編成をやっていきたいと思っております。
  313. 青木茂

    青木茂君 政治的スケジュールとしてはそのとおりだと思いますよ。思いますけど、全責任を総理がしょっていらっしゃるわけだから、総理としてこういう具体的なマスタープランでもってやりたいと思っている、それをシーリングに指示なさればいいわけですから、それの解明はできないでしょうか。
  314. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今のような三つの軌道を頭に置いて、そしてそのプリンシプルのもとに今度は具体的な数字の策定に入っていく、そういう努力をしたいと思います。
  315. 青木茂

    青木茂君 まあ論議は堂々めぐりでございますね。  もう一つ、じゃ伺いますけれども、とにかく過去八年間において借換債は出さないという論議を毎年毎年国会でやってまいりまして、それが今度一片の条項変更でもって八年間が崩れるわけですね。ですから、そういう意味においては私は政治責任は残ると思うのですよ。だから、その政治責任が残ることがけしからぬとかけしかるとか、そういう問題じゃなしに、その政治責任というものを、単なる精神規定であるとか努力規定であるとかいうことでなしに、もう少し具体的に、例えば毎年毎年百億でも二百億でもいいから返す努力をこれだけした、残りについて借りかえをひとつ認めてもらいたいというように、それは一例です、一例ですけど、何か精神規定努力規定を一歩超えた具体的政治責任規定ですね、それが出ないもんだろうかということが、私どもがこの法案を前にいたしましてこの法案審議が始まる当初から思っておった不満なんですが、この点いかがでございましょうか。
  316. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど来申し上げましたように、赤字公債に関する部分というものは後ろめたい気持ちがより一層ありますと、そう申し上げたのが私の心境でございます。
  317. 青木茂

    青木茂君 そういたしますと、六十五年度の新発債、赤字特例債脱却ですね、それが毎年毎年御努力なさって、そうするとだんだんだんだんそれが可能か不可能かが見えてきますね、年を追うに従って、もうこれはあかんと。ちょうど五十九年脱却がもういかぬと見えてきたときに六十五年になったわけですね。六十五年がもうこれはだめだということが見えてきたという仮定をひとつ置いた場合に、じゃどういう政治責任を含めたところの方法をおとりになるおつもりか。これはビジョンの問題としていかがでございましょうか。
  318. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 青木さんは仮定の問題を御設定になるのが大変お好きのようでありますが、政治家というものは、やはり「撃ちてし止まむ」といいますか、徹底的にやりぬくというのが真骨頂でなければならないと肝に銘じております。
  319. 青木茂

    青木茂君 「撃ちてし止まむ」、懐かしい言葉が出てきたわけなんですけれども、それは結構ですよ。結構ですけれども、「撃ちてし止まむ」でおやりになったいわゆる歯どめですね、歯どめが一つ一つ崩れているのが実際戦後の国債史の現実なんですよ。だから私は、一つ一つの歯どめというものがこれでどんどんどんどん崩れてしまう。そうすると、六十五年歯どめもあえて例外とは言えないんじゃないかという不安があるからこういうことを申し上げておるわけなんです。だから、その不安というものをさらに延長してまいりますと、絶対にあってはいけないところの日銀介入の影がちらほら見えてくるわけですよ。どうしてもそういう延長路線上に日銀介入の影を我々として見ざるを得ないわけです。  もう最後でございます。もう時間来てしまいましたから、最後でございますから、総理の御決意を伺っておきたいんですけれども、いかなる状況になっても、これは「絶対」という表現をつけていただきまして、国債償還に対して日銀の介入はやらせないというその御決意を御表明いただけるかどうかということを最後に。
  320. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 健全財政の建前からも日銀引き受けにはよらないで、民間消化の原則、これによってやっていきたいと思っております。
  321. 青木茂

    青木茂君 それはやっていきたいということでなしに、総理の御決意としてこれだけは断固それこそ死守するんだ、古い言葉で言えば、死守するんだ、しかもそれは一中曽根内閣が存続する間だけということではなしに、中曽根先生の生ある限りこれはあくまでも守るんだと、どういうお立場になられようとも。それだけの御決意の表明が欲しいんですよ。大変なことです、インフレ化したら。最後に……。
  322. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 市中消化の原則を堅持していく決心であります。
  323. 青木茂

    青木茂君 まあ、決心という言葉を強くいただきましたから、それを額面どおり解釈いたしまして終わります。
  324. 野末陳平

    ○野末陳平君 この財確法案について言いますと、長いことこの委員会でやりとりをしてきた議論とか、それから政府答弁約束、そういうものが結果的にはほごになってしまったんで、それは非常に残念なことですが、総理も後ろめたいとか遺憾であるというようなお答えをなさっておりましたんで、これについては過去の責任を一方的に問うというのは非常に難しいんで、もう残念ながらやむを得ないと、そういう気がしているんです。  ただ、将来のことで言いますと、増税なき財政再建ですね、これを貫くことはもう非常に結構だし、またそうなくてはならないと思っています、この増税なき財政再建を貫く。一方においては、国債の増発を将来歯どめがないぐらいに招くのではないかという心配もあるわけですよね。総理自身はそういう心配をなさいませんか。
  325. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 増税なき財政再建という臨調に示された方針、内容というものを守って堅持していきたいと思っております。
  326. 野末陳平

    ○野末陳平君 ですから、それを堅持することが結果的に国債の増発につながっていって今以上の破産状態を招くのでは困るんで、その辺が微妙だとは思うんです。  総理にかねてからお聞きしたいと思っていたんですけれども国債をどんどん増発していくと、現在においてももう百二十兆ですが、いずれ百五十兆あるいは二百兆の声も聞く。こういうことは決して好ましいことではないわけですが、どうも子孫に対して申しわけないなんというような程度で終わるんでなくて、総理自身の認識なんですが、この事態、そして今後とも国債が増発されていくということはどういう点で危険であるのか、どういう点でまずいのかということを総理のお言葉で聞きたいと思うんです。というのは、国民は増税を単純に嫌がりますが、国債発行はぴんときませんので何となく抵抗がない。そうすると、政府もどうしても国債の増発にという誘惑に負けてしまいますから、ここで、こういう点で実は非常に危険なんだというその認識を総理のお言葉でちょっと説明してほしいと思うんです。
  327. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから、六十五年赤字公債脱却、赤字公債依存体質から脱却するという目標を掲げましてそれを実行していこうと、そう思っておるわけでございます。  おっしゃるように、赤字公債というものは麻薬みたいなものの性格がありまして、切れるというときになるともっと麻薬が欲しい、アルコール中毒の例にもあるようなこと。しかし断酒するというときには苦しみがある。それと似たような作用が財政作用にもある。国民の皆様方にも、アルコール中毒をやめるようなと同じようなもんだということをある程度知っていただかないと、こういう政策を強くやっていくことは難しいと、そういう覚悟でやっていきたいと思っています。
  328. 野末陳平

    ○野末陳平君 どうも麻薬にかかるのは先に政府がかかっちゃうんで、その結果国民にもそれを分けてやっているようなものですからね。まず政府みずからが麻薬の誘惑に負けないことが大事なんですが、その意味からも、来年度の予算編成で、もし最近新聞などで取りざたされているシーリングの問題、ここでマイナスシーリングという枠を外しましたら、これは今の麻薬の誘惑に負けることになるんですが、さっきから聞いていますと、どうも総理は臨調答申の方を向いているというものの、それはマイナスシーリングじゃないわけですがね。いまひとつ、まだ時間もあるし意見を聞いてからなんという心細いことをお答えになっている。これでは困るんですね。ですから、まず来年度ももちろん次も予算編成はマイナスシーリング以外にない、この堅持以外にないということをこの際断言できなきゃおかしいと思うんですが、どうですか。
  329. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 予算編成に関しては数字は言わないことにしておるんです。しかし、方針としては、臨調答申の線に沿って厳しい予算になるということを申し上げておるんです。
  330. 野末陳平

    ○野末陳平君 それはもうマイナスシーリングそのものだというふうに私は受けとりたいと思うんですがね。ただ、その場合に私自身もどっちがいいのかわからないというか、現実にどちらがいいのか選択に迷うんですが、一律にマイナスにしていくというのか、それとも別枠のようなものを設けざるを得ないというのか、そこが難しいと思うんですが、総理はどちらの方針なんでしょうか。
  331. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは聖域は設けないという基本方針を実行していきたいと思っております。ただ、政党がやることでございますから、重点政策というものはおのずから予算編成の現実化する場合には出てくるだろうと思います。
  332. 野末陳平

    ○野末陳平君 その現実化のときに総理がどういう方針をお立てになろうが、政党の問題と同時に、総理個人の秋にかけてのいろんな問題とが絡まってきますと、どうも好ましくない方向に行くかもしれないとか、そんなことまで心配するんですが、そういうことはなく、臨調答申どおりいけるんですか。土光さんも大分不満を漏らしているようですがね。
  333. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どうぞ御心配なきようにお願いいたします。
  334. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあ、政治家の言葉は大体信用できないことになっているから、どうも私も長いこと、余り信用するのは後で腹立つという、そういう体質になってしまっていますから、どうも御心配なくじゃ何となく心配だなあとむしろ思っちゃうんですが、まあしかし、それはともかくとして、マイナスシーリングだけは貫いてほしい、それから臨調答申というものももっと厳しく尊重してほしいと、そういうふうに思っています。  で、国債については、これはいけない、まずいんだと言いつつ、結局それにしばらくは頼らざるを得ないんですけれども、ただ、この六十五年の問題ですがね、これも総理の口からは先ほどのお答え以外にはないと思いますが、非常にこれも難しいでしょうね。だからまた恐らくそのころになって、ことしと同じような議論になってしまうんじゃないかと思って、それはもうあえてお答えは要りませんけれども、いずれにしても、この財政再建は大変だなあという実感をますます強くしているんです。  で、この行政改革との関連、直接はないんですけれども予算委員会のあたりでは総理の口からも衆議院の定数是正の問題が出ておりましたけれども、この国会中に定数是正を出すのかどうか。あるいは政党の問題というんじゃなくて、総理自身の強い意思のもとに方針を決定することの方が大事だと思うんですが、あれはどうなりましたか。
  335. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ぜひ国会へ提案、それは政府がやるのか、党がやるのか、議員立法でいくのか、ともかく提案したいと思っております。
  336. 野末陳平

    ○野末陳平君 あれはもう絶対にこの国会でけりをつけておくべき問題だと思うんですね。  それから、私どもの参議院の方についても総理の意見をちょっとお聞きして終わりにしたいと思いますが、これも単なる定数是正ではなくして、定数を減ずることによっての是正を私はこの間も提案しておりますが、それについても総理のお考えをお聞きして、今後どうなさるおつもりか、それもお願いして終わりにします。
  337. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 参議院の問題につきましては、各党各派の協議、樽俎折衝の結果を待ちたいと思っております。     —————————————
  338. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、鈴木和美君が委員を辞任され、その補欠として稲村稔夫君が選任されました。     —————————————
  339. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  340. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、日本社会党を代表して、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案に反対の意思を表明します。  反対の第一は、今次法案が今日まで続けてきた特例国債借りかえは行わないという国民に対する約束を、一回の全額償還を行うこともなく、三木総理大平蔵相の公約を弊履のごとく破棄し、全面削除したことであります。  特例国債は、その名の示すとおり、異例の中の異例であります。したがって、発行に当たっては毎年度国会の承認を求めてきたものであり、特例国債償還の負担を後年代に残さないよう、常に痛みを感じつつ、十年以内に償還を終わるように借りかえ禁止規定を付してきたものであります。これを今回、一挙に外してしまうということは、暴挙と言わざるを得ないのであります。  国債の麻薬性については一般的常識と言えます。借りかえ禁止規定の削除は麻薬の使用をやめさせる歯どめを失うことであって、国債発行残高の膨張化と国債費の増額による財政の硬直化あるいはインフレ化を招くものであって、承服できません。  第二の理由は、特例国債発行は財政法第四条の趣旨に相反し、財政民主主義、国民各層間の所得再分配機能を抹殺するものであります。したがって、過去十年の長きにわたって毎回反対をし続けてきたゆえんであり、今回、抜本的な政策転換には特に強く反対するものであります。  第三の反対理由は、減債基金への繰り入れ停止措置についてであります。  特に今日は、国債の大量発行とともに、国外からの金融の国際化に伴う金利の自由化が激しく進展することが予想され、国際流通市場においても価格の急激な高下がないとは断言できません。日銀に買い支えを求めることはできません。緊急に大量に買い支えに出るとするならば、減債基金であり資金運用部等であろうと思われます。資金運用部に巨額の余裕金を置くことは許されないという困難もありましょう。したがいまして、常に償還と緊急にオペに出動できるだけの基金のために繰り入れ措置を残しておくべきであろうと考えます。  第四に、第六条に、特例国債発行額を減額せしめ残高減少のため償還を早める努力規定を置いてありますが、特例国債建設国債借りかえが行われることにより、両者の具体的な区別は不明となるだけではありません。建設国債と同様、長期的返済ということになりますれば、官僚機構が予算編成権を実質的に握っている中で、たとえ歳入歳出のバランスで余剰が出たとしても、規定額以上に返済し積極的に特例国債残高の縮小を図ることを期待するなどは木によって魚を求めるのたぐいであります。官僚機構はその権域の拡大のみにきゅうきゅうとして、余剰資金を国債残高の減少に振り向けることはよもやあり得ないのであります。これは今日の膨れ過ぎた行政機構からくるあしき慣習の結果であります。官僚の努力規定などよりも、国民の監視にゆだねるべきであります。  第五に、この法案は二つに分けるべきであります。  最近、政府は、国会での審議を避けるために、不急不要の条項を法案の表題に「等」という一字を挿入して提出する傾向が顕著になったことは極めて遺憾であります。所得税法案においても直接関係のない国税通則法第百十六条を含めて日切れの中で通過をさせました。今回も、財源確保の問題と昭和六十一年以降各年度の借りかえ問題とは全く関係ありません。借りかえについては、借換問題懇談会の議論も不十分なまま、また国民的コンセンサスを得ないまま、また国会での各般にわたる十分な審議を経ないまま、専売、電電公社の臨時納付金の日切れを理由に一括して通過を図ることは遺憾のきわみであり、将来に悔いを残すことになろうと思います。  最後に、第六点として、専売、電電両公社からの臨時納付金について反対します。  二千三百億円は本年度二重取りであります。まず、その他の特別会計、政府関係機関、特殊法人等の収支、事業内容を十分に精査するなど、これより先に行うべきことがあるはずであります。せっかく稼ぎ出した利益を一方的に国に吸い上げるということでは、職員の勤労意欲にも影響するところ大きいと思われます。  以上で反対討論を終わります。
  341. 岩崎純三

    ○岩崎純三君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となっております昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案に対し賛成の意を表明いたします。  我が国経済は、長期の低迷からようやく離脱して、生産、設備投資、企業業績などに曙光が見え始めておりますものの、財政の状況はまことに厳しいものがあり、ここにおいて思い切った改革の断行をちゅうちょするならば、後世に重大な悔いを残すことになると判断せざるを得ません。  先般成立いたしました昭和五十九年度予算は、このため歳入歳出両面の厳しい見直しを行い、前年度当初に比べて〇・五%の微増という、昭和三十年度以来の超緊縮予算が編成されたところであります。  しかしながら、政府のこのような努力にもかかわらず、五十九年度においてなお財源が不足するため、本案によって特例公債発行国債定率繰り入れの停止、電電公社及び専売公社からの特例納付金を納付させようとするものでありまして、本案はまさに五十九年度予算と一体不可分の重要な財源確保のための法案であり、現今の国の財政状況を考えますと、いずれの措置もまことに必要にしてかつやむを得ないものと考えます。  まず第一に、特例公債発行は、前年度当初予算に比べ五千三百五十億円の圧縮が行われており、六兆四千五百五十億円の発行が予定されておりますが、本年度の財政運営のための財源確保策といたしましては必要にしてやむを得ないものであります。  第二に、国債費の定率繰り入れ停止により、約一兆六千億円の歳出削減を図っておりますが、現行の減債制度の維持を図りつつ、財政状況を勘案して一時これを停止することは、特例公債の増発を避けることにも通ずるものであり、この措置をとっても本年度の公債償還には支障はないものと認められます。  第三に、電電公社からの二千億円、専売公社からの三百億円の特例納付金は、五十九年度予算における税外収入見直しの一環としてとられた措置であり、両公社の遂行上支障がない範囲において、また利用者などへの配慮を加えた上の単年度限りの措置でありまして、これまた必要にしてやむを得ないものと考えます。  第四に、特例公債借りかえについてであります。  本委員会においてこの問題について論議が集中いたしましたが、政府はこれをもって財政政策の一大転換であると認識しつつ、償還財源確保のために特例公債借りかえの必要性があることを明らかにしてまいりました。  また、既発債について一括して借りかえができるようにしたことについては、法律の整合性の上からも、また我が国経済や国民生活への影響を考慮しつつ、財政改革を具体的に進めていくためにも、これは是認せざるを得ません。  改めて申し上げるまでもなく、重要なことは、特例公債残高を速やかに減少させることであります。このため、政府は従来の借りかえ禁止規定にかえて設けられた努力規定を最大限に尊重し、かつ国民のコンセンサスを得て、事実上の財政改革に向けてより一層の努力を傾注されるよう切望いたしまして、私の本案に対する賛成討論を終わります。
  342. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案に対して、反対の討論を行います。  我々が反対する理由の第一は、昭和五十一年以来、毎年の財政特例法で明示してきた赤字国債借りかえ禁止の歯どめを取り払い、財政再建を大きく後退させることであります。  昭和五十年度に赤字国債発行に陥って以来、政府昭和五十二年度においては、公債依存度三〇%の突破、五十七年度から国債整理基金への定率繰り入れの停止、そして今回は赤字国債借りかえと、次々に国債発行の歯どめ策を崩してきました。今回、赤字国債借りかえ禁止の歯どめを失うことは、財政再建を大きく後退させ、財政のツケを六十年後の後世代にまで残すことになり、このような本法案を到底認めることはできません。  反対する理由の第二は、当面の最重要の目標である昭和六十五年度特例公債依存体質脱却への具体的な手順と方途をいまだに示そうとしないことにあります。  中期的財政再建計画を示さず財政運営を行うことは羅針盤なき船と同じで、安易に流れ、問題を先送りし、結果として財政再建を後退させることは今日までの経過が示すとおり明らかであり、賛成できません。  反対する理由の第三は、赤字国債借りかえがこれまでの国会審議の経過を全く無視して強行されることであります。  五十年度補正予算赤字国債発行されるとき、当時の故大平大蔵大臣は、赤字国債発行の歯どめ策として借換債発行は行わないと明言され、五十一年度からは借換債禁止条項が法文に明記されてきたのであります。にもかかわらず、本法案において、五十九年度発行特例公債借りかえ禁止の歯どめを一方的に葬り去り、それだけでなく、八年前にさかのぼって約束を破り、借りかえ禁止を削除するというのであります。まさに憲政史上例を見ないものであり、議会制民主主義を根底より揺るがす暴挙であり、断じて容認できません。  反対する理由の第四は、借換債償還についての方法が本法案では何も規定されていないということであります。  政府は、今行われている建設国債の借換債償還と同じ扱いにするとの見解をとっております。このことは、具体的に言えば、赤字国債についても建設国債と同様六十年間で返済すればよいということなのであります。  赤字国債建設国債は性格が異なる点からも、赤字国債借りかえて、その償還を六十年先まで延ばすことは断じて認められないのであります。  反対する理由の第五は、安易に赤字国債借りかえを実行する上に、大量の国債償還と利払いが必至であるにもかかわらず、国債管理政策の整備に手をこまねいていることであります。  言うまでもなく、安易な赤字国債借りかえは、赤字国債発行と同様に財政赤字の実態を隠し、財政運営の節度を失わせるものであります。したがって、赤字国債借りかえについても、毎年度の予算編成、行財政改革、不公平税制の是正などとあわせてその借りかえ額を決定するのが筋であり、当然、単年度立法とすべきであります。この立法府による歯どめ策を一挙に崩すことは、国会軽視であり認めるわけにはいかないのであります。  以上で私の反対討論を終わります。
  343. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表して、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案に対し、反対の討論を行います。  本改正案の最大の問題は、言うまでもなく、戦後の国債政策の大転換を行い、赤字国債借りかえを行うという点にあります。  そもそも我が国財政法は、憲法の求める健全財政主義の立場から、基本的に国債発行を建前としており、例外的に公共事業の範囲に限って建設国債発行が認められているにすぎません。したがって、今日の巨額の赤字国債発行の恒常化自体、全くの異常事態であり、そのゆえにこそ、赤字国債については満期到来とともに全額現金償還することが毎年の授権法で法定され、義務づけられてきたのであります。  ところが、本改正案によって、この最後の歯どめが骨抜きになることによって、財政法の精神は全く否定されてしまうわけであります。さらに、このような安易な借りかえ政策によって国債残高が累増し、毎年の国債費がかさむ結果、財政再建はますます遠いかなたに追いやられてしまうのであります。  政府は、六十五年度赤字国債からの脱却という新目標を示していますが、大蔵省の仮定計算によっても、六十五年度約十兆円の財源不足が見込まれており、これをどう埋めるかは何も示されていないのであります。  六十五年度赤字国債脱却どころか、高金利、低成長のもとでは、新ドーマーモデルが示唆している財政破綻の道を突き進んでいるものと言わざるを得ません。  このほか、本法案は、五十九年度予算財源確保のための赤字国債の増発、国債定率繰り入れの停止並びに電電公社、専売公社からの特別納付金の納付が定められていますが、これらはすべて安易な財源調達策であり、財政危機を一層推し進めるものであり、反対であります。  殊に、今年度は、歴代内閣による赤字国債依存からの脱却を図る目標年度であり、本来なら晴れて赤字国債に依存しない財政に立ち返っているべきであるにもかかわらず、六兆四千億円超の赤字国債発行するに至っているのであります。  しかも、二年続きのマイナスシーリングのもとで、福祉、文教関係予算が大幅に削られる一方、軍事費、大企業向け予算が異常突出した予算財源確保としてなされるものであり、いわば軍拡予算財源調達策というべきものであります。  また、このような大量国債発行に伴う国債費の負担は約十兆円にも上り、歳出予算の二割を占めるに至っています。一方で福祉の切り捨てと国民負担の増強を図り、他方で大資産家への利子所得となる国債費支出の比重を高めるという財政構造は、財政が本来の機能に逆行し、所得の逆再配分の役割を果たすということにほかなりません。  以上の理由から、本法案は断じて認められるものではなく、強い反対の意を表明して討論を終わります。
  344. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、ただいま議題となりました昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案について、民社党・国民連合を代表して反対の討論を行います。  昭和四十九年度に初めて歳入欠陥が生じた際、我が党が政府に要求したことは、この歳入欠陥の原因は第一次石油危機であり、早急に経済の混迷が回復することは期待できないこと、したがって歳出構造の全般にわたって基本的な見直しを行うこと、特に高度成長期に肥大化した財政支出の思い切った削減を行うことでありました。  しかし、当時の政府は、歳出を削減しないことも景気対策であると強弁し、特例公債発行してもこれは借りかえ禁止であり、予算繰り入れをしてでも全額償還いたしますと再三にわたって公約をしてきたのであります。  もしそのときに我が党が主張したように歳出の見直しに踏み切っていたら、特例債発行残高は今日ほどの水準には達していなかったはずであります。そしてこの反省が私たちにとって最大の痛恨事であります。  今回の政府案では、借りかえ禁止全額償還の公約は弊履のごとく捨て去られ、最大限今後六十年間にやっと償還が完了するというまことに気の長いやり方に変更されました。現在の実情を直視する限り、借換債発行も借換債償還方法としてとりあえず四条債の減債制度を利用することもやむを得ないかもしれません。しかし、それはサラ金に悩む人間に向かって、なぜそんなに借金をしたのだと問い詰めてみたところで、今現在の差し迫った問題の解決にはならないということがわかるというだけの意味であります。問題は、サラ金に依存している不健全な生活態度であります。  公債の利払いのために特例公債発行を余儀なくされている今の財政の態度をどのように立て直すのか。例えば昭和五十九年度の場合、国債費九兆円の支払いは特例公債でその七割を調達しております。政府は今回借換債発行国会に提案する以上、こうした財政の体質からどのように脱却するのか具体的な道筋を明らかにすべきであります。  六十五年度に特例公債依存体質から脱却したいというのは単なる政府の期待と願望であります。このことを信じている人は一人もおりますまい。なぜなら目標だけあってそこに至る具体的な財政再建計画が何も示されていないからであります。しかも、将来の経済と、その中にあって財政に要請される機動力、対応力を考えると、六十五年度脱却の目標は一年の遅滞も許されません。しかも、この特例公債依存体質からの脱却は、特例公債発行残高を減少させるための最大かつ不可欠の前提条件であります。  政府は、これまで具体的な財政再建計画を示すことを、会計年度の独立、すなわち単年度会計主義を口実として断ってまいりました。しかし、このような口実が果たして事実上財政が破産状態にある現在許されるものでありましょうか。  累積債務国の返済繰り延べを承認するに当たって、債権国はさまざまな内政干渉にわたる諸規制を要求しております。  特例公債の一括償還を借換債にかえることはそれ自体返済の繰り延べにほかなりません。単なる口先の努力規定だけで債権者たる国民が納得すると考えたとしたら、よほど国民をばかにした話だと言わなければなりません。  地方自治体が歳入歳出の著しいアンバランスから赤字に転落した場合に適用される法律として地方財政再建促進特別措置法があります。そして、この法律は中期的な財政再建計画の策定並びにこの計画に基づいて毎年の予算を編成することを地方自治体に義務づけております。会計年度の独立、すなわち単年度会計主義は国も地方も何ら変わるところはありません。  財政再建という緊急事態において、地方には中期計画の策定と毎年の予算の拘束を求めておきながら、なぜ国ではやろうとしないのか、だれもが理解に苦しむ点であります。  政府は、この際、特例公債依存体質から脱却するためにいかなる自己規制を行う用意があるのか、そのための具体的な諸方策を明らかにすべきであります。そして、この点に言及していない本法律案は問題外であるとしな言いようはありません。  以上で反対討論を終わります。
  345. 青木茂

    青木茂君 私は、参議院の会を代表して、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案に反対の意思を表明いたします。  理由は次の三点であります。  第一に、六十五年度新特例債発行をゼロにするということは、我が国財政の現状から見て絶望としか言いようがありません。にもかかわらず、政府はこれをただ一つのよりどころとしてすべての歯どめをなくそうとしています。とするならば、やがては直接、間接、日銀の全面引き受けがあらわれざるを得ませんが、総理の絶対否定をひとまず信頼したいと思います。  しかし、それならば、六十五年度ゼロに向かっていかなる具体的方法を考えているか必ずしも明らかではありません。すなわち、この法律案は、六十五年度ゼロ目標の具体策を欠く点、インフレという最大の社会悪を内包するという意味において反対せざるを得ません。  反対の第二は政治責任規定の欠如に関してであります。  これだけ重大な政策転換を行いながら、政府の良心に対する痛みが甚だしく希薄であることは残念です。我々も我が国財政が借金で首の回らない状態であることはよくわかります。だから、何でも反対ではなく首が回るようにしなくてはならないとは考えております。しかし、この法案の持つ重大な意味に比べて政府の政治責任規定がゼロに等しいことは納得できません。すべてが精神規定努力規定にすぎません。  四条債そのものが例外だったはず、特例債国債の中で例外中の例外だったはず。五十九年度新発債ゼロも崩れました。予算繰り入れ剰余金繰り入れ既になく、定率繰り入れも今や形骸化しつつあります。そして特例債借りかえの一般化です。努力規定、精神規定がいかにむなしいか、この事例だけですべてを物語っています。その場逃れ、一時しのぎでしかない本法律案には反対せざるを得ません。  第三は国会軽視に関してであります。  特例債償還のために借換債発行しないという過去八年の国会論議の積み上げを一片の条項削除で済ませてしまう。四条債、特例債を突如同一扱いにしてしまう。すなわち一挙に過去八年をすべて否定してしまうのは甚だしい国会軽視と言わざるを得ません。  毎年百億でも二百億でも返す努力をし、努力の及ばなかった残高について毎年度借りかえを認めよという法案を出すのが政治責任として当然なのに、政府はあえてこれをしようとはしません。これは少なくとも民主政治のもとにおける行政府あり方ではありません。  以上で反対討論を終わります。
  346. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  347. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、竹田君から発言を求められておりますので、これを許します。竹田君。
  348. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、ただいま可決されました昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、参議院の会、新政クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案に対する附帯決議(案)   本法律案における特例公債の借換債発行は、公債政策の大転換であり、今後その運営を誤るならば、インフレを惹起し、国民生活に深刻な影響を及ぼすものである。  したがって、国民生活の擁護及び財政民主主義の観点に立って、政府は、次の事項について十分配慮すべきである。  一、昭和六十五年度を目標とする特例公債依存体質からの脱却は、現下の財政における最優先課題である。したがって、政府は、この目標達成にいたる手順と方策を具体的に明らかにすべきである。  二、公債残高の減少を図るために、公債償還方法及び国債整理基金特別会計への繰入れのあり方については、おおむね三年をめどにその時々の経済情勢財政事情等を踏まえて見直しを行う。また、毎年度の償還計画を明示するとともに、特例公債建設公債別の公債発行・消化・償還・保有等の状況国債整理基金特別会計への繰入れ状況等について、毎年報告する。  三、国債管理政策の円滑な推進を図るため、金融・資本市場の動向を踏まえた金利等の発行条件及び発行時期の適正化に配慮するとともに、財政法第五条本文の精神を遵守して財政インフレの防止に資するため、日本銀行に係る特例公債建設公債別の保有残高の四半期ごとの状況を逐次報告する。  右決議する。  何とぞ皆様方の御賛同をお願いいたします。
  349. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいま竹田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  350. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 全会一致と認めます。よって、竹田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、竹下大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。竹下大蔵大臣
  351. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。  なお、第一の事項につきましては、具体的な歳出削減計画とか、増税計画といったものを策定してお示しすることは無理だと思われますが、目標達成に至るいろいろな道筋についてどのようなものができるか、今後工夫してまいりたいと存じます。  ありがとうございました。
  352. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  353. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  354. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) この際、先刻の理事会における申し合わせ事項につきまして御報告いたします。  案文を朗読いたします。     参議院大蔵委員会理事会申合せ  特例公債建設公債別の公債発行、消化、償還、保有等の状況国債整理基金特別会計への繰入状況等についての報告に関する審議の扱いは、理事会において協議する。  以上であります。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十五分散会