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1984-05-17 第101回国会 参議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十七日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  五月十六日     辞任         補欠選任      中村 太郎君     山本 富雄君  五月十七日     辞任         補欠選任      宮島  滉君     松岡満寿男君      多田 省吾君     中野  明君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         伊江 朝雄君     理 事                 岩崎 純三君                 大坪健一郎君                 藤井 孝男君                 竹田 四郎君                 塩出 啓典君     委 員                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 倉田 寛之君                 福岡日出麿君                 藤井 裕久君                 藤野 賢二君                 松岡満寿男君                 矢野俊比古君                 山本 富雄君                 吉川  博君                 赤桐  操君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 中野  明君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君                 青木  茂君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   井上  裕君        大蔵大臣官房長  吉野 良彦君        大蔵大臣官房総        務審議官     吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       山田  實君        大蔵大臣官房審        議官       行天 豊雄君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  西垣  昭君        大蔵省理財局次        長        吉居 時哉君        大蔵省証券局長  佐藤  徹君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       酒井 健三君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        経済企画庁調整        局経済協力第二        課長       田島 哲也君        通商産業省貿易        局輸出課長    土居 征夫君    参考人        日本輸出入銀行        総裁       大倉 真隆君     —————————————    本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○調和ある対外経済関係形成を図るための国際  通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う  措置に関する法律等の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、中村太郎君及び木本平八郎君が委員辞任され、その補欠として山本富雄君及び青木茂君が選任されました。  また、本日、宮島滉君が委員辞任され、その補欠として松岡満寿男君が選任されました。     —————————————
  3. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  調和ある対外経済関係形成を図るための国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律等の一部を改正する法律案の審査のため、本日、参考人として、日本輸出入銀行総裁大倉真隆君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 調和ある対外経済関係形成を図るための国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律等の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  6. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま議題となりました調和ある対外経済関係形成を図るための国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  最近における我が国社会経済国際化の進展には、まことに顕著なものがあり、また我が国経済規模は、世界経済のほぼ一割を占めるに至っております。我が国経済繁栄発展は、世界経済との調和ある関係を欠いては、もはや考えることができない状況にあり、同時に、我が国が相応の国際的責務を果たさなければ、世界経済繁栄発展は望み得ません。  このような環境のもとで、昨年来我が国貿易経常収支は、原油価格の低下、ドル高及び米国を中心とする世界景気の回復を主因として、大幅な黒字を続けており、諸外国では我が国に対しその不均衡の是正を求める声が高まってきております。  このような我が国貿易経常収支黒字は、必ずしも我が国のみの努力では制御し得ない要因によるところが大であります。しかし、世界経済の重要な一翼を担う我が国としては、この際率先して自由貿易体制を維持強化し、調和ある対外経済関係形成していくため、積極的な努力を行うことが緊要な課題となっております。  以上のような情勢を踏まえて、政府は昨年十月に「総合経済対策」を策定し、市場開放輸入促進のほか、資本流入促進、円の国際化金融資本市場自由化及び国際協力推進等広範多岐にわたる施策を講ずることといたしたところであります。  本法律案は、この総合経済対策に掲げられている諸施策のうち、調和ある対外経済関係形成を図るとの観点から、一括して法律改正提案することが適当な措置について定めるものであります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部改正国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部改正及びアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部改正につきまして申し述べます。  今般、国際復興開発銀行国際開発協会及びアジア開発銀行におきまして、その円滑な事業活動の継続を図るため、増資を行うこととなるのに伴い、我が国は、国際復興開発銀行に対しては総額六億六千二百四十万協定ドル国際開発協会に対しては総額五千三百三十五億九千八百五十七万円及びアジア開発銀行に対しては総額十二億三千三百七十五万協定ドル追加出資を、それぞれ行うこととしております。このため、所要追加出資ができるよう規定整備を行うこととしております。  第二に、証券取引法の一部改正につきまして申し述べます。  外国会社に係る有価証券報告書提出期限につきましては、本国における法制度等を考慮して弾力化することとしております。  第三に、外国為替及び外国貿易管理法の一部改正につきまして申し述べます。  非居住者による対内不動産投資につきまして、その自由化を行うべく手続改正することとしております。  また、非居住者である個人等による株式取得に関する指定会社制度を廃止するほか、対内直接投資に関し規定整備を行うこととしております。  第四に、日本輸出入銀行法の一部改正につきまして申し述べます。  日本輸出入銀行輸入金融につきまして、その貸付相手方に、新たに外国法人を加え、輸入金融機能の充実を図ることとしております。  また、余裕金運用方法として、新たに外国通貨をもって表示される預金等を加えることとしております。  最後に、外貨公債発行に関する法律の一部改正につきまして申し述べます。  財政法第四条第一項ただし書き等規定により発行する外貨公債につきまして、発行地の法令または慣習によることができることとする等、所要規定整備を行うこととしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。
  7. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 竹田四郎

    竹田四郎君 まず、国際復興開発銀行の今回の増資についてお伺いをしたいと思います。  今度の増資によって日本シェアが今までよりも上がりまして、アメリカの次になる、こういうことが二月でありますか、世界銀行理事会で決まったんだと、こういうふうに言われておりますけれども、しかしその後の新聞情報によりますと、アメリカ出資割り当て出資比率ですか、これについてオーケーを出したことはないんだ、こういうふうに言っているというわけであります。その後四月の中旬でありますか、その委員会が開かれたようでありますけれども、一体その後どうなっているのか。アメリカがこういうことを言っているということは、アメリカは今度の増資についてはみずからは出資をするつもりはあるのかないのか、あるんだけれども、どこが気に入らないのか、その辺の事情をひとつお話をいただきたい。それとIDA関係は一体どうなっているのか、そこまでひとつお話をいただきたいと思います。
  9. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) お答え申し上げます。  世界銀行の今回の特別増資につきましては、今年の一月ワシントンで拠出国蔵相代理会議というものが開かれまして、第二世界銀行増資の話、及び世界銀行増資の話につきまして実質的な合意成立したわけでございます。もちろん、その会議にはアメリカ側の正式の代表も参加しておったわけでございます。ところがその後、アメリカ財務長官が、円の国際化金融資本市場自由化の問題と関連をいたしまして、日本自由化のおくれにややいら立ちを覚えたんでございましょうか、今度の世界銀行増資の案では、先生御指摘のように、日本シェア地位が第五位から第二位に上がるというような案になっておりますので、どうも自由化自由主義世界第二位としてふさわしいように行われていないとすれば、我々は日本世界銀行増資で第二位になるような案をサポートするのは難しいというような意向を示したときがございました。  ところが、円・ドル委員会の方は最近におきましても東京で精力的に話し合いを行いまして、円の国際化金融資本市場自由化の問題につきましておおむね話し合いがまとまりまして、アメリカもそれを考慮してか、世銀増資及び第二世銀増資につきまして事務的な手続を進める、そしてまた総額世銀につきましては事務局提案しております、そしてまた一月に実質的な合意を見ました八十四億ドルの規模日本地位が五位から二位に上がる、そういうような事務局の案についてサポートをする、そういうようなことで、そして、けさ入ってきた情報では、来週にも世界銀行及び第二世銀理事会が開催される運びになるというような動きになってきております。  アメリカも、もう一つ理由として、世界銀行の今回の特別増資につきまして、当初三十億ドルぐらいの規模考えておったんでございますが、開発途上国資金需要等考えまして、主要国がもう少し大きい規模、八十四億ドルぐらいの規模というようなことで、アメリカも含めて合意をいたしまして、もちろんアメリカはその中で第一位の拠出をするという意向でございますんで、一月の合意の線で進みつつあるということでございます。  そして、世銀と第二世銀との関連でございます。第二世銀の第七次の融資の期間というのが今年の七月から始まるわけでございますが、今後三年間の第二世銀資金規模としてどのくらいが適当か、各国シェア、分担をどのぐらいにするのか、ことしの一月まで一年余り関係国話し合いを続けてまいりまして、日本といたしましては、世銀の方でのシェアの増加、第五位から第二位に上がるということについて各国みんながそれについて同意するというようなことであるならば、第二世界銀行におきましてできるだけの協力をする意向を表明いたしまして、私ども世界銀行と第二世界銀行増資及び日本シェアにつきましては、両者は深く結び合っている話というふうに理解をいたしております。
  10. 竹田四郎

    竹田四郎君 今の国際金融局長の話では、来週中にも理事会を開いてまとめていく方向だということでありますが、この出資の完了時期というのはこの話し合いで決まっているんですか。それともそれは決まらないで、随時出資をしていってその後の締めくくりはという、そういう話し合いの決まった点というのはどっかにあるんですか。それでないと、今のお話ですと、そのアメリカの話、必ずしもまだ完全に詰まっているというような感じはしないわけでありまして、その辺はどんなふうになっているんですか。
  11. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) まず最初に、世界銀行の方の増資払い込みの時期について御説明さしていただきますが、現在の世界銀行事務局の方の案では、今回の世界銀行特別増資払い込みは本年の十月から六十一年の六月までの間に行うという案になっております。  それから第二世界銀行の方の払い込みにつきましては、これは本年の六月から六十一年の十一月まで四回に分けて払い込みを行っていくという案になっております。  もちろん、この増資の案につきましては、理事会決議成立をし、それに基づきまして加盟国総務投票が行われ、そして総務投票増資の案が成立をし、それから払い込みを行うという手続になるわけでございます。
  12. 竹田四郎

    竹田四郎君 その払い込みは、ここでこの問題を可決すれば、日本とすれば払い込み体制はできるということに恐らくなるだろうと思うんですけれども、今理事会の最終的な総務投票が終わってというようなお話がありましたけれども、そういう手続が終わってしまう。そして実際に払い込みという行為が行われるというのは、結局いつごろになりそうなんですか。
  13. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) これは世界銀行、第二世界銀行、いずれについてでも、増資について協定上、効力の発効が定められております。したがいまして、その理事会決議、これは世銀なり第二世銀としての各国総務への提案する案を固めるということになるわけですが、例えば日本の場合でございますと、理事会決議成立をし、そして日本総務大蔵大臣でございますが、それにその理事会決議案についての賛否の投票が求められる、そして投票各国国内手続等を終えて行う、そして増資の案が世界銀行なり第二世界銀行全体として成立をする、そしてそれから払い込みを行うという手続になります。したがいまして、今日の時点各国総務投票がいつまでに何%行われるのか、明確な見通しを立てるのは困難でございますが、私どもとしては、私どもの賛成しております案での理事会決議成立ということになりますれば、総務投票を行い、そしてそういう増資の案が成立をいたしますれば、それに基づいて払い込みを今年度中にも行いたいというふうに考えておるわけでございます。
  14. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、この増資というのは、今日の南北経済というもののバランスをとっていく、あるいは南の経済を活性化していくという意味では、融資額としては大したことはないと言えば大したことはないと思いますけれども、それにしても一つの大きなセンシティブを与えるものとして実は評価をしたいわけです。その意味では早く決定をされて、この八十四億ドルというものが早く貸し付けなり贈与なりへ回っていく、ここは貸し付けでありますけれども、回っていく。こういうようなことが日本責務ではないだろうかと思うんですけれども、この辺は大蔵大臣は私と同じようにお考えになっているだろうとは思うんですが、ちょっとその辺を確認しておきたいと思うんです。
  15. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的考え方は全く同感でございます。  ただ、いよいよ融資ということになりますと、いろんな手続問題等がございますので、必ずしも増資が完了したという条件が南の経済を活性化するスピードをどの程度大変に速めるか、あるいは、心理的にはもちろん速めるわけでございますから、今おっしゃいましたように、大きなセンシティブを与えるということにはなろうと思っております。したがって、この種の会合に出かけますときには、私どもも基本的に、どちらかといいますと、必ずしも幾ら幾らという金額を明確にお示しするということでなく、我が方の主張はおおむね理事会なんかの多数意見の方になります。が、どちらかといえば、アメリカの方がいろんな国内事情もあるようでございます、承ってみますと。いわゆる南の関係等につきまして、なかんずく債務累積国なんかについては、民間銀行が貸し込んでいるのを国際機関が助けることに結果としてなるんじゃないかとか。それは日本の場合と違って一万四千五百も銀行がございますと、そういうような感じを個々のアメリカ国会構成員の方がお受けになったりして、かなり渋い意見をお吐きになるという傾向にあるようでございますが、我が国の方は、この問題につきましては、与野党絶えず政府側を鞭撻していただくという環境にありますので、理事会等に出かけました際にも、我が方の主張というのは、どちらかといえば、最大公約数になる方向議論をリードするような立場をとっておるんじゃないかというふうに今日までも考えてきておるわけであります。  したがって、これが一刻も早く、先ほど国際金融局長が話しましたように、実はけさも電信が参りまして、理事会が早急に開かれるようにアメリカの方からアプローチがあった、日にちがきちんと決まったというわけじゃございませんけれども。そういうことに絶えず関心を払いながら、我が方としては、今おっしゃいましたセンシティブ、かなり大きなセンシティブを与えるものであるという認識の上に立ち、しかも、あるいは近いところではサミット等もございますが、そういう場に出たときにはすべての手続が完了しておるということが、我が国南北問題等に対する一つの姿勢を示すことにもなるというような考え方で臨んできておることは、意見をおよそ等しくしておるんじゃないかと思います。
  16. 竹田四郎

    竹田四郎君 そこで、私ちょっとよくわからない点は、どうも世銀出資のたびに、日本出資をするということに対してアメリカはいつも頭を抑えるようなことが、この前も起きたというふうに私は思います。これはいつの出資のときだかわかりませんけれども日本シェアをもう少しふやそうじゃないかということを日本側から申したときに、そんなに出すな、おまえの地位をそんなに上げるわけにはいかぬと、こういうことを私はこの委員会でかつて——この委員会だったか、あるいは外務委員会であったかわかりませんけれども、そういうことの御報告を受けたような気がするわけでありますけれども世銀におけるアメリカ立場というのは、余りどうも世銀というものを、今お話がありましたように、ふやしたくない、こういう形というのが非常に強いと思うんです。これは後の問題と関連ありますけれども、こういう国際的な融資機関、こういうものをどうも軽視していくという風潮があるんでは。ないだろうか、こういうふうに思うんですけれども、この点はどういうふうに今のアメリカ態度を我々は理解していったらいいのか、どうもいつもその点に私は増資のたびにひっかかるわけでありますけれども、どういうふうに考えていくべきか。
  17. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはそれぞれ主観の存するところであろうかと思いますけれども政治家議論としての今の御意見を交えた御覧間でございますが、そういう感じを持たないわけでは私どももございません。一つは、これは私のいささか出過ぎたお答えになるかもしれませんが、私的に感覚的に受けとめた場合も、例えはよくアメリカ議論されます国連方式とかIMF方式とか、国際連合でございますと、一億も一票、十万人も一票というようなことで、最大の拠出国であるアメリカが大変な拠出をし、ニューヨークであれだけの、建物の大きさは別としまして、立派なものを建てて、いざ集まってみると不都合な決議が大体まかり通るとか、だから十万人も一票、一億も一票というのはおかしいじゃないかというような議論が時にアメリカ政治家の中で議論されるという話は前々から承っております。したがって、IMF方式といえば、これは出資比率に応じて投票権があるということでございますが、しかし全体として考えますならば、先ほど申し上げた問題も一つの小さい例であると思います。たくさん金融機関があって、それぞれが自由濶達な仕事をしておって、たまたま債務累積国等に集中した場合には、そういう国際機関に対する増資とか出資というのは、そういういわば自己責任主義のもとでやった国内金融機関を助けることになりはしないか、こういう議論が出てみましたり、それからすべての問題がいわゆるバイでやった方がより効果的であって、国際機関というのは政治というものが強く介入し過ぎて必ずしも本来の機能を果たしていないじゃないか、こういうような議論も行われておるというふうなことは私どもも承っております。  そういう中で、どちらかといえば我が方は今日までも国際機関中心主義ということ。それは考えてみますと、新幹線も、黒四ダムも、あるいは東名高速も、世銀から金を借りて、かつては、開発途上国ではございませんけれども中進国のような立場で、そういう機関を活用することによって今日の日本経済があるという、国民全体の中にそんな心理的なものも日本の国の場合はあるじゃないかという感じもいたしますが、その限りにおいては、例えば額の交渉の場合も、アメリカアメリカ財政事情アメリカ国会事情ということをお考えになるでございましょう。だが、我が方の方がどちらかと言えば、比較して私どもから見れば積極的ではないか、こういう感じがしております。  ただ、この出資比率シェアの問題でございますけれども、これもいささか私見を交えたお答えになりますけれども、古くからの歴史を見ると、もうなくなっておりますが、いわゆる戦勝国敗戦国という、私はそういう感情というものが十年、二十年前にはまだ残っておったんではないかという感じがしないわけでもございません。しかし、今はそうした感じはなくなって、まさに世界のそれぞれの経済的基礎条件というようなものが勘案されるようになり、そして先般は、全体的に申しますならば、祝福された形でこの二位という地位は獲得することができたんじゃないか、こういう感じがしておるところでございます。今日時点で、いわば日本シェアが上がっていくことに対して、アメリカが、あるいはそうでない国が頭を押さえるという意図的な要素はなくなってきた。ただ、全体の額の場合は、日本の方はどちらかといえば積極の側に立っており、どちらかといえばアメリカは、アメリカ財政事情アメリカ国会事情もございましょうが、日本ほど積極的ではない、こういうようなことではないかな。  いささか正確を欠く答弁でございますけれども、たび重なる折衝の中で私が感じたことを素直にお答えをしてみたわけであります。
  18. 竹田四郎

    竹田四郎君 日本政府態度というのは、竹下大蔵大臣が前向きであるということについては理解をするものですけれども、しかしどうも世界的に見ますと、国際機関を通じた経済協力、マルチラテラルと言ったらいいか、そういう形の経済協力というものと、二国間の援助、バイラテラルのものというふうな形で見てまいりますと、どうもマルチラテラルの援助のあり方というものが、最近はその地位がどうも落ちてきたんじゃないだろうか。むしろバイラテラルな形の方向に流れているんではないだろうか、こういうような感じを持たざるを得ない幾つかの問題があると思います。今のお話の、アメリカ態度なんかにも私はそういうものを感ぜざるを得ないと思いますし、日本自体の中にもそういうふうに感ずる面があるわけでありますけれども、その辺は大蔵大臣としてどのようにお考えなのか。  私は、日本とすれば、むしろバイラテラルでなくてマルチラテラルな形での協力というものをもっと積極的に進めていくのが平和、経済、あるいは世界経済交流と貿易の拡大とか、あるいは自由貿易、そういう今の我々が持っている方向というものに、その方が合っていくんではないだろうか、こういうふうに思うんですが、その辺はどんなふうにお考えでございますか。
  19. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的に、今竹田委員のおっしゃったことと私ども考え方とあんまり相違がないと思っております。  整理をしてみますと、二国間援助の場合は一体どういうメリットがあるか。仮に申しますと、我が国の援助努力が直接的に相手国に印象づけられていく、したがって外交政策上有利である。これは一つ確かにあると思います。  それから二番目には、我が国固有の技術というものが活用できまして、したがって、それが一つの契機となって二国間の人的交流が大変に活発化するというようなことの利点が二国間ではあると思います。  国際機関を通ずる援助の方式ということになりますと、まず長所は、国際機関に蓄積されておりますところのいろいろな国がいろんな経験をしておりますから、専門的技術能力を活用して効率的な援助ができる。地理的に例えばその国はそのような国の土地柄もいろいろ似ておるし、技術を活用すべきではないか、こういうような非常に専門的技術能力を活用して、それが効率的にやれるということ。  それから二番目には、二国間の場合の最初申し上げた点と裏腹になりますが、中立的な立場政治情勢に左右されない、これが有利な特徴であると思います。  それから三番目には、特にアフリカのような国は、何といいますか、旧宗主国とでも申しますか、そういう国との関係が強くなって、かつ地理的に遠い地域については、国際機関のノーハウを活用した援助が効果的であって、これら機関を通じた協力によって比較的従来余り人的交流等のないところに対してでも地域とのつながりができる、国際機関を通ずることによって。バイではなかなか話の通用しない地域という意味で申し上げました。  それからもう一つは、こっち側の立場からいきますと、国際機関への出資等は、我が国の援助条件をこれだけ改善しましたということを国際会議等で言えるというような点があるんじゃないかなと思っております。  したがって私どもは、今おっしゃいましたように、どちらに重点を置いておるか。そもそも我が国もいわゆる債務国であった時代から見れば、マルチというところから出発してきております。今バイとマルチの比率が大体七・三前後で推移しておるという状態でございます。ただバイの場合は、御案内のように、それは特別な遠隔の地もございますが——世界の人口が少し古い統計になりましても四十五億八百万おって、その五七%のおよそ二十五億がアジアにおる。そのアジアの中で一億二千の日本のGNPとそれを除くオールアジアのGNPとでは十村八で恐らく日本の方がまだ大きい。そういうアジアに対するといいますか、ASEANを初め、そういう問題で、日本としては、人的交流とかいろんな問題からするとバイが問題になる。もちろん、アジアだけじゃございませんけれども、アジアが大きな比重を占めてきて、今日そういう比率になって、その比率はあんまり世界の中で突出もしていなければ大変低いこともない。ただ、考え方としては、その基礎にありますのは、少しお互い古くなったかもしれませんけれども、かつて債務国であったという物の考え方が、マルチというもので果たさなきゃならぬ役割というものをどうしても、その衝にあると、それを意識するという環境にあるんじゃないか。自分自身をそういう形で私はこの問題では見詰めておるところであります。
  20. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、今大臣がおっしゃった中で、マルチについてはある程度国際機関を通じてやるという形では大蔵大臣のおっしゃったことにほとんど意見をともにするわけですが、バイラテラルの場合というのは、双方の政府の間だけでの話し合いということが中心に今までなってきたと思いますね。例えばその国の社会構造なり、経済構造を通じて本当に将来経済力がそうした国々が大きくなって、そしてそうした力を持って日本との経済交流というものがさらに発展していくという形でなくて、とかくその時の政府のてこ入れにお金を出していく、こういうような例というものが余りにも多過ぎるんじゃないだろうか。  相当な金をここで出すわけでありますが、これだって、ある方面をカットして我慢してここへ予算の率ではかなり伸ばしているわけですよね。それをただ単なる一政権の問題として金を出していくということでは国民に対して私は申しわけないと思うんです。出したものはやがて返ってくる。日本経済にとっても、あるいは日本が将来暮らしていくための安全にとっても、返ってくるようなものとするためには、かなり効率的に使ってもらわなくちゃ私は困ると思うんですよ。ところが、どうもバイラテラルな援助というものは、一つはそういう形で単なる贈与であるし、民間融資を通じての協力というようなものは、これはもっとひどい営利主義といいますか、もうからなくなれば資本を引き上げるとか、あるいは援助、協力をやめるとか、こういうことが随時行われている。とかくそういうものの中には、日本の余った商品を押しつけるといって後でそれぞれの国から大きな批判を生んだり、あるいは排日的な行動に出ているところも現にあるわけですね、一部に。  そういうことを考えてみると、なるほど国際機関を通じてやる点は、被援助国にもかなりつらい面はあると思うんですよ。いろんな材料を出せとか、こうせい、ああせいという拘束を受ける点もあると思うんですけれども、一部には世銀の人たちは官僚的だという批判もないことではないようであります。しかし国内のだって銀行が金貸す場合には、おまえ一体これから何するつもりで、どのぐらいどういうことでどういうふうにするつもりだということは、これはやっぱり調べるわけですよね。そういうことと同じょうに、国際的な金融機関がそれぞれの国の状態を調べるということは、バイラテラルよりももっと金が有効的に使われるではないか。しかも、これはただ二国間の問題じゃなくて、多数の国の監視の中で行われるわけでありますから、そういう意味では、もっとバイラテラルでなくて国際機関を大きくしていく、そういう中で効率的に金を使う。もちろん世銀の幹部なり世銀の職員が官僚的であるということは、これは克服してもらわなくちゃならぬ問題であろうと思いますけれども、そういう方向日本としては述べ、国際会議においてもそういう主張をもっと強くしていくべきじゃないだろうかと思うわけですね。  経済力としても、率直に言って、世界の一割の経済力という大きな評価でありますから、私は新しいそういう指導というものを、平和憲法を持っている日本でありますから、そういう意味では対立を激化したりするんではなくて、その国の本当の実力をつけてやって民生を向上させていくというところをもっと強調していくことが、将来の日本経済にとっても、市場をより広く深くするという大きな目標というものにも合致する。こう思うわけでありますし、さらに多くの国際的な交流がそれによって図られていくという状況をつくり得る。それがこれからの我々の海外協力でなければ、たくさんのお金を使う、これからも新目標というんで今までよりも倍加しよう、そういう金を出していこう、財政困難なときでも出していこうということを公約しているわけでありますから、そういう意味では、少ない金ではあってももっと効率的に使えるような形というものをどうしてもここで日本がリードしていくべきだ。サミットもあることでありますけれども、その辺はもう少し強調すべきじゃないでしょうか。
  21. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、およそ意見を等しくしております。  国際機関、たびたび申すようですが、我が国もかつて、そう遠い時期でない昔と申しますか、近い昔と申しますか、言ってみれば、債務国であったということ等をも考えてみますと、政治的に中立性が保持されていくという形においては、マルチというものを絶えず念頭に置いて、そしてその主張は南北問題の主要な柱として主張し続けていかなきゃならぬ問題だと思っております。した。がって、マルチの場合は今御指摘なさったように、官僚的というか、要するに厳し過ぎるというような批判も南側から受けることも確かにあっておるようでございますが、それはそれなりに私は国際機関である限りにおいては当然のことだと思うんであります。  したがって、サミット等に参りました場合も、私どもは絶えずその種の会合に対してはそのような主張をしてきております。現実、サミット国そのものを考えてみましても、日本世界全体の一割といたしまして、アメリカの二億三千から、日本の一億二千から、西ドイツの六千から、イタリー、イギリス、フランスと足してみますと、大体六億程度の人間がおります。六億というのは世界人口のおよそ一二%。その一三%の人間でこの世界経済の五七生言う人がありますし、およそ六割と言う人もございますが、それだけのものを生産しておるわけでございますから、特に南北問題についてサミット参加国だけで物を決めるという性格のものじゃございませんけれども、サミット参加国の中で南北問題の重要性、なかんずくそれがマルチに対する協力姿勢において示されていくというようなことは、私は絶えず念頭に置いていかなきゃならぬ問題であるという認識は、およそ等しくいたしておるところでございます。
  22. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣は、そう私と意見が違わないと、こうおっしゃっているわけですが、どうも現実にやっていることは、これは大蔵大臣の姿勢なのか、とにかく対外経済協力というのは大蔵省だけじゃありませんから、通産省も外務省も経済企画庁も関与しているわけでありますから、大蔵省だけというわけにはいかぬのかもしれません。しかし、政府としてはどうもやっていることは私は違うんじゃないだろうかという気がするわけです。  ことしもフィリピンヘの円借款というものを決めたようでありますけれども、この円借款も必ずしも、総選挙を前にしてマルコス政権が昨年の夏ですか、アキノ氏の暗殺事件以降大変揺れ動いている。そういう中で四百二十五億ですか、繰り延べを含めますと何か五百五十五億の借款を決めたと、こういっているわけでありますし、特に商品の援助ですか、機械部品や肥料などの商品借款ですか、こういうものがかなりの額に及んでいる。しかも、基準からいきますと当然LDCの国でありますから、こういうものは、商品借款というものは今まで余りやっていないというふうに言われているところにかなりの額が行っているわけであります。  これはどういう経過でそうなったか私どもつまびらかにしませんけれども、しかしこのことがそれではフィリピンではどうとらえられているかというと、これは全部というわけではないでしょうけれども、ある新聞報道によりますと、フィリピン大学の第三世界研究所長のダビッド教授などの発言を聞きますと、こういうやり方はフィリピンのためにならないということを言っているし、現実にフィリピンではそういう意味では排日デモ等もたしか起きていたし、そういう世論というものも、この選挙を通じてでありましょうけれども、かなり高まってきたということを見ますと、どうもバイラテラルのやり方というものは必ずしもいい結果だけを生んではいない。むしろ、そこには腐敗の構造とか、あるいは独裁への構造とか、そういうようなものに対するてこ入れ的な役割、こういうものすら私はあるような気がしてしようがありません。この間の中曽根総理のパキスタン、インドヘの訪問等を通じて見ても、そういう感じを、印象を私ども受けてしまう。こういうことでありますけれども、もう少しその辺は将来というものをかみしめながらやっていかなくちゃいけないんじゃないか、こう思うんですが、これについてはその辺の経緯と、それから大蔵大臣のこれに対する見解を示していただきたいと思います。
  23. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あるいは後ほど補足をしていただいた方が適切かとも思うんでございますが、すべての問題、先ほどもおっしゃいました民生の安定に直接寄与し、将来にわたっての問題は別として、民生の安定の極限として人道的な問題ということになりますと、過般の食糧援助なんというのはその一番具体的な問題かもしれません。しかし、それとて国際機関を通じてやるというような方向で今日まで努力しておるわけでございます。他のいわゆる援助案件等、民生の安定に役立つと同時に、将来は、これは遠き将来でございましょうが、我が国の工業製品等の確かに大きな市場にもなり、また資源国へのいろいろな協力我が国がエネルギー等資源を多様的に受け入れる対象をふやすというような意味にも将来はなろうというふうに思って、そういう基本的な考えはいつも維持していかなきゃならぬ問題だと思っております。  ところで、バイの問題になると、本委員会におきましても、あるいは国会内外において、一番近いところで申しますとフィリピンの問題がいろいろ議論になったことは事実でございます。私どもが最終的にフィリピン問題に踏み切りましたのは、商品借款というのはもっと最貧国であって、フィリピンは商品借款の対象とするにしてはもろもろの条件が必ずしも最貧国でないじゃないか、こういう議論もございました。しかしながら、現状のフィリピンの経済というものを考えるならば、せっかくお約束したものの中において必要な商品借款もやむを得ないであろうというふうに踏み切ったわけであります。  そうして今度は時期の問題でございます。時期の問題ということになりますと、アキノ事件とかいろいろな問題がございまして、フィリピンの新聞紙上等にもいろいろな意見が出ておるというようなことも承知をし、現地の出先大使館等とも種々連絡を重ねまして、最終的には、いわゆる外交権はまさに政府そのものにお互いあるわけでございますが、フィリピン国民というものの経済の現状というものを考えた場合に、この際これは踏み切るべきであるという結論に到達したわけであります。  その中の議論一つといたしまして、選挙前は特定政権に対してのメリットを与えることになりはしないか、だから選挙後まで少なくとも延ばすべきだ、こういう御意見も確かに議論の中にございました。しかしながら、選挙ということを考えてこれに対応するということは、また一つには一方フィリピン国民全体の今日の民生、経済考えておる立場からすると、選挙ということを意識してそこに判断するということは、またある意味において政治というものの介入を肯定したことにもなる。いろんな角度からいたしまして、フィリピン国民全体の経済情勢ということを勘案いたしました。  同時に、いま一つは、当初から申しましておりましたIMFの意見がどう出てくるか、こういう問題も当然のこと、緊密な連絡をとりながら意識して、およそIMFとフィリピン当局との間では諸条件等が整う方向に進んだということを見きわめてこれが妥結に踏み切ったということではなかろうかというふうに考えておるわけであります。  で、インド、パキスタンの問題は、およそのことが当初からこの両国の間で合意を得るべく努力されておった問題ばかりでございますが、なかんずく若干の相違は国柄としてはございますでしょうけれども、それぞれの例えば中立の代表としてのインドという立場に対しても、双方の意見交換の中で外交的にも大変意思の疎通が図られたというふうに私は承っておるという状態でございますので、私はこのインド、パキスタンの訪問に際しての間にいろいろ報道されました援助問題等については、国際的にも国内的にも非常に理解をされてきておる問題ではなかろうかというふうに考えておるところであります。  ちょうどたまたま、私もよくわかりませんけれども、フィリピンの開票は今ごろ始まって何か本当の開票が出るのは一週間ぐらい先だなんて言う人もありましたが、相当な暇のかかるところだなという、これは選挙屋としてそういう感じを持ちながらも、しかしあのときのタイミングというものは、フィリピン国民全体の今日の状態ということを考えながら適切な時期の選択ではなかったかと、直接の責任者じゃございませんけれども、そういう印象を私は持っておるところであります。
  24. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 私ども二国間援助を行う際に、国際機関がその援助を受ける国の経済計画あるいは全体としての援助の所要額や何かにつきまして意見を申します。例えばインドの場合であるとかパキスタンの場合であるとか、あるいはインドネシア等の場合、援助国会議というものを持ちまして、全体としてことしはどのくらいの援助をみんなが協力して供与してやるのが適当だというような意見を言う場合がかなりございます、大きな援助は。そういうような国際開発機関あるいはまたIMF、そういうものの意見も聞きまして、その中で判断するようにしているわけでございます。  フィリピンの援助につきましては、フィリピンは私どもが毎年原則的に援助を供与する国の一つでございます。五十八年度の援助につきまして、実は私どもプロジェクト借款を供与するというようなことでいろいろ調査団を派遣したりして進めておったんでございますが、昨年の夏以降国際収支の状況が非常に悪くなりまして、フィリピンの方としてはむしろ商品援助の方に主力を置いてほしいという希望を申し述べてきたわけでございます。フィリピンに対しましては私どもも数年前まで商品借款を供与しておった事実がございますが、その後フィリピンの国民所得も上がり国際収支も改善してきたというようなことで、私どもの商品援助の供与というのは、大臣がおっしゃいましたような貧しい国、しかも国際収支の困難な国に例外的に供与するという立場であったものですから、ここ数年フィリピンに対して商品援助を供与しなかったわけでございます。  ところが、昨年の夏以降のフィリピンの経済情勢は非常に国際収支も悪くなり、外貨の資金繰りも困った状況になって、フィリピンの方も何とか必要な物資につきまして、商品借款によってそれが輸入できるようなことにしたいという強い希望を申しておりました。そこで、そういうような援助を受ける国の強い希望も考え、そしてまた私どもの援助は原則としてプロジェクト、その国の民生安定、社会基盤の整備、そういうものに重点を置いていくという立場考えまして、若干のプロジェクト援助とそしてまた商品援助を供与するということにしたわけでございます。  なお、パキスタン、インドにつきましては、これもまた毎年、原則として援助を供与する国になっておりまして、今回の中曽根総理御訪問の際に、特別に借款を供与するというようなことではなくて、パキスタン、インドに対する五十九年度の援助の際には、パキスタン、インド側の希望というものは十分考えましょうというような意図表明にとどまっているわけでございます。
  25. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういうふうに向こうの話を聞き、こちらの希望を述べてやると、時期はそれぞれの国の状況によるだろうと思います。こちらがこういう時期だからやろうと思うこともあるでしょうし、あるいはこちらがやろうと思う時期とずれることもあるでしょうし、向こうがもらいたいと思うときの時期とずれることもあるだろう。幾らこちらの希望を述べても、向こうがそのとおりにぴしっとやるかどうか、これはわかりません。それ以上供与するということになると、相互の主権の問題にも関連してくることでありますから、恐らく供与するということはなかなか難しいことであろうと思うんです。フィリピンの援助でも、これが具体的にどう使われてきたかという証拠は、これからいろんな形であらわれてくるだろうと思いますけれども、少なくともこのダビッド教授とのインタビューの中では、これはマルコス政権につながる企業や実業家のところへ行ってしまって、国民のところには行かないであろうと。行かないであろうでありますから、行っているか行かないかということはまだわからないわけでありますけれども、きのうの話からすれば、過去的な教訓によって、大体そうなるだろうというふうに我々は推測しているわけであります。そういう点では私は、バイラテラルな援助だとこういう問題があるんだ、だから国際機関を通じてやっていくというところに原則を持っていかないと、せっかくこっちで我慢して金を渡してやっても案外向こうでは喜ばない、信頼関係というものは生まれてこないという問題があるだけに、特にアジアは私はこういう問題があると思うんです。  ですから、先ほどお話がありましたように、日本もアジアの一国でありますだけに、そうした点ではもっとこの援助を通じての関係というものを、一部の人たちじゃなくて国民的な、経済全体にわたる形のものをつくっておかなくちゃいけないんじゃないか。そういう点で、バイラテラルよりもマルチの形のものを中心にしていく、そっちを主力にしていく、このことが必要だと、こういうふうに思うんです。  もちろん、災害等によって一時的に早く救援物資を渡さなくちゃいかぬというときも、それはマルチでいけというふうに私は言いません。すぐに必要だというときになれば、すぐ持っていってやるということも確かに必要だと思いますけれども、原則としては国際機関を通じてやる方が将来のためにいいんではないかということを私は強く要望して、できたら今までの政府の政策というものを大幅にその点は変えていってもらわなくてはいけないだろうというふうに考える次第であります。  次の問題に移りたいと思います。  そこで、確かに日本がアジアで最も先進国でありますし、世界的に見ても一割の経済力を持つ国ということでありますから、当然私は、海外に対する経済援助というものは国民がある程度の我慢はしても進めていくということ、しかもそれが効率的に公正に使われていくということであるならば、それを進めていくことについては私はやぶさかでない、進めていくべきだと、こういうふうに思うわけであります。  そこで、これは鈴木政権の当時でありましたか、海外援助を大きくしていこうという約束をだしかアジアでなされてきて、さらに今度は新しい中期目標、五年間の中期目標というものを打ち立てられて、今までの五年間の約倍の額にする、八一年から八五年にかけて約倍の二百十億ドルぐらいになりますか、そのくらいにしようというふうに新中期目標というのが決まったようでありますけれども、もうこれも八四年度に入っているし、予算も決定したということでありますが、これの進行状況というのは一体どうなっているのか。あと具体的に私どもが予算で考えていくということになりますと、八五年度しかないわけでありますけれども、その達成というのはどんなふうな状況で、達成目標をどのぐらい消化していくのか。またその残は一体どういう形で、どういうような方向で消化していくつもりか、援助していくつもりか。その辺の経過と展望をお語いただきたいと思います。
  26. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 政府開発援助の中期目標につきましては、五十六年一月に定められておりますが、それによりますと、先生御指摘のように、一九八〇年代前半五カ年間のODAの実績総額というものを一九七〇年代後半五カ年間の総額、これは実績ベースで百六億八千万ドル程度でございますので、それの倍ということで数字的には二百十三億ドル余りということを目標に掲げておるわけでございます。  そこで、今日までの実績でございますが、一九八一年ODAの実績は、ドルベースで申し上げまして三十一億七千万ドル、それから一九八二年は三十億二千三百万ドルでございます。そこで残りが、まだ一九八三年の実績の数値が出ておりませんが、八三年、八四年、八五年と残り三年ということになるわけでございます。もちろんドルに換算して考えておりますので、為替レートが影響することを否定するわけにもいきませんが、しかし、八一年から八五年までにドルで換算しまして二百十三億ドル余りの目標を達成するというためには、八三年、八四年、八五年、この三年間年平均約二八%の伸びがないとトータルの二百十三億ドル余りの数字にならないという計算になるわけでございます。もちろんまだ三年間ございますので、現段階におきましてこの目標の達成の可否につきまして明確な答えを申し上げることはなかなかできかねるんでございますが、非常に率直に申し上げまして、目標の達成というのはなかなか容易ではないということは事実でございます。しかし、私どもとしましては、新中期目標のもとでODAの拡充につきまして、乏しい予算の中でもできるだけの格別の配慮を行ってきておるわけでございますし、今後ともこの目標を念頭に置きましてODAの拡充にできるだけの努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  27. 竹田四郎

    竹田四郎君 局長、今のお話の中で、なかなかあれは困難だ、国際機関に対する出資というのも限度があるということになると、やっぱり今までのようなバイラテラルなところが中心で金をばらまくということ以外に手はないんじゃないですか。だから、何も私は全部ばらまけということを言っているわけではございませんけれども、今までこうしたODAのお金というのも、ほとんど三分の一からそれ以上のものが、恐らくアジアの国々に行くものが大半だろうと私は思うんですが、そうすると、いろいろな信頼関係ということになりますと、少なくともこの二百十三億ドルのうち、実際今数字は出てないでしょうけれども、八三年はもう実際は出ちゃっているだろうと思うんですがね、数字が出てないだけで。そういう意味では、あと実質的には八四年、八五年度の二年間ということだろうと思います。そうなってまいりますと、どうもこのお金が果たして本当の意味で使われるのかどうなのか、その辺にも私は大変疑問を持たざるを得ないわけです、今のお話を伺いまして。  しかも一方では、ASEAN諸国を中心とするそれらの国々への恐らくこれは国際的な公約的なものになっていると思うんです。ぴしっとは約束をしないにしても、日本がこういう中期目標を出したということは、アジアの諸国は恐らく知っているだろうと思いますし、そうすると五年間にこれだけの金は出してくれるんだろうなということをみんな期待していると思いますね、当然。そして、それが出されないということになると、これは不信につながるんだし、急いで出すということになると、どうも果たして公正な使い方、効率的な使い方になるのかどうなのかという疑問を私は禁じ得ないんですがね。この辺どうなんですか。
  28. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) ODAの中でのまず国際機関に対する拠出出資の問題でございます。これにつきましては、オイルショック後やや先進国で援助疲れが見えているという面は否定できないわけでございますが、我が国といたしましては、先生御指摘のような国際機関へできるだけ重点を置いていくというような姿勢でまいっておりまして、ただ援助の全体、その国際機関資金拠出の全体の額をどうするのか、その中で日本拠出をどうするのかという問題が絶えず出てくるわけでございます。そういうような点につきましても、私どもとしてできるだけ前向きに対応しておりますが、しかしこれも主要国との合意のもとで総額あるいは日本拠出額が決まっていくという面があろうかと思います。  それから二国間の援助の問題につきましては、もちろん貴重な国民の税金を使っての援助でございますから、ばらまき的な要素があってはならないことは申し上げるまでもなく、国際機関のみならず二国間の援助につきましても、援助の効率性というものにつきましては、私ども最大の注意を払っていかなければならないことは先生の御指摘のとおりでございます。  そこで、新中期目標というものは、国際的な公約とまではなっていなくても、しかし私どもはこれは内外に申しておるものですから、ほかの国々、先進国のみならず援助を受ける開発途上国も重大な関心を持って見ていることは事実でございます。私どもといたしましては、この目標に向かって、厳しい財政事情の中でも最大限の努力をしているんだというところを被援助国に対して十分説明を行っておりまして、今日の時点におきましては、開発途上国日本側のこのODA拡充に対する積極的な姿勢につきまして評価しているというのが今日の状況でございます。
  29. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、こういう財政逼迫のときにこの二百十三億で、あととにかく毎年二八%の伸びをしなければ援助計画額、目標額ですね、これが達成できない、こういう今のお話であります。これを早急に大量に消化するということになると、これは私はまたいろいろな問題が出てくる可能性が非常に多い。しかも、その援助をやって双方の国民とも喜ばない、疑惑の目で見ているなどということは、これは私は全くむだ遣いだというふうに言わざるを得ないと思うんですが、こういうふうにならない何か歯どめを、私案は今ここで案を具体的に持っているわけではありませんけれども、何らかの形でやっていかないと、国民の血税を使って双方から非難が出てくるという、こんなばかなことは私はないと思うんですね。何らかの形でもう少し受ける方もあるいは出す方も国民が納得できるような援助というものをつくり上げる必要があるんじゃないですか、ただ政府間で話をして出すというだけじゃなくて。その辺は何かお考え、私も具体的な案はありませんけれども、何らかの形で考えて、もっとフェアにやっていく必要があるんじゃないか。それでないと、片方ではアジア諸国からの日本への信頼は薄らぐし、国民からまた、政府がこれだけの金を財政危機の中で出して、ほかの方の福祉を削ってやっているということに対する非難も出てくる。だから、もっと効率的に、もっと公正にわかるような、しかも効果のあるような、何かの審議機関というのがいいのか、ちょっと今のところわかりませんけれども、何らかそういうものをここ一年間で結構だと思いますけれども考えいただいて、みんなが納得できる効率的な使い方というものはできませんでしようか。
  30. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あるいは私の答弁ですべて尽きるというわけにはまいらないかもしれませんが、御案内のように、一般会計ODA予算、それから政府借款、それから国際開発金融機関への出資、この三つを、カウントの仕方はございますが、これにそれぞれ拡充する形で対応を積極的にして実現を目指していこう。で、今日に至ったゆえんの問題として今出たのは、おっしゃるように五十八年暦年はおおむね事務当局ではつかめるかもしれませんが、定かになっているのは五十七年暦年までということになりますと、確かに三番目の国際機関への出資問題等が五十八年へずれ込みまして、したがって五十八年の問題は、若干そういう突出と申しましょうか、そういう姿にはなるんじゃないかというふうに思われます。  したがって、一つには、国際金融機関への出資が、我が方が予測しておったという表現は適切でないかもしれませんが、描いておるものよりも相対的に若干少なかった、これは相対的に。したがって、我が方の出資比率等は上がっても、相対的な少なさの中で若干思っておったよりも少なかったではないかという感じ一つあります。それともう一つは、あのカウントいたしましたときの為替レートが大変いいときで、それの五十六、七の今度は計算をしましたときとの乖離というものが、数字の上で見たときに、我が方に不利な形に出てきておるというふうにも言えるんじゃないかなと思っております。したがって、どうしてもそれを埋めていこうという努力をすれば、今おっしゃいましたように、バイラテラルな分に対して勢い積極的になってこれを埋める方向に行くんじゃないか。感じとしては私もわからないわけじゃございません。  ただ、幸い、あるいは時にはこれは感ずることがございますが、我が国の場合は予算が単年度主義でございますから、したがって各国との経済協力を行う場合におきましても、例えばこのプロジェクトとこのプロジェクトとこのプロジェクトを五年間で足してみれば、結果としてそのような数字になるでございましょうという、いわばそれをコミットするという形でなしに、例えばそれを足してみればこういう形になるでございましょうが、それは年々の単年度主義の予算の中で決めていきますというので、プロジェクトごとに毎年積み上げて、結果としてそうなっていくというようなことを、今日までも原則としてこれを貫いてきておるわけであります。だから、時によってちゃんとコミットすべきじゃないかという議論も出ますけれども、それは我が方の予算の単年度主義ということを主張して、必ずそういう形でいつでも交渉の結末をつけるという姿勢で対応しておるわけでございますので、単年度主義というのはそれなりに内に対しても厳しさというものを要求されるものでありますだけに、私はいわば厳しさを欠いた形でそれらが惰性的にふえていくということは注意もしなきゃならぬし、単年度主義の立場からみずから厳しくして対応すれば、そういう批判は受けることなく済むんじゃないかなと、こういう感じは持っておるところであります。  そこで、最後におっしゃいました、国際機関でございますと、国際的サーべーランスとでも申しますか、いわば事後調査とでも申しますか、そういうことが当然のこととしてできるわけでございます。したがって、国際機関との協調の形でバイラテラルのものがプラスされておる問題になりますと、私はその機能が果たされる。だが、単発のいわばバイの場合において、言ってみれば、ほかの国に対して、事後監査という言葉を使うのは適当ではないかと思いますが、そういう事後のフォローすることに対して時に国民が疑惑を招くようなことがあってはならぬではないかと、こういう御指摘は私どもにもわかる議論でございます。それは外交ルート等を通じ、向こうの相手側からいろんな角度でそうした進捗の度合い等々の御報告といいますか、お知らせをいただいておるわけでございますが、バイのものを何かの審査会といいますか、そういうものでフォローしていく仕組みということは検討する課題であるなど、こういう感じで私話を承っておりますが、今までに両国の委員会においてそういう機能を果たしておるものもあるいはあるかもしれませんので、そこのところいささか正確を欠きますので、事務当局からお答えをいたすことをお許しをいただきたいと思います。だが考え方は私もよく理解できます。
  31. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 私ども援助を供与する場合には、プロジェクトのフィージビリティー、その国の経済のためにどの程度の効果をもたらすものであるかというようなことにつきまして調査団を派遣して調査を行っております。そしてまた援助を実施した後におきましても、関係省庁あるいはОECFというような実施機関から調査団を出しまして、援助が予定されたとおり着実に実施されたかどうかというものを調査するようにいたしております。  何か新しい委員会をつくって、サーべーランスをバイラテラルの関係で行うことがどの程度実行可能かどうか、大臣申し上げましたように、今後そういうような点につきましても私ども考えていかにゃいかぬ課題かと存じますが、現在のところは、今までのような実施機関あるいは関係省庁が調査団を出して供与した援助が所期の目的のとおりに着実に実行されるかどうかを調査するような体制で進めております。
  32. 竹田四郎

    竹田四郎君 これはひとつ御検討いただきたいと思うのです。なかなかそう簡単な問題では恐らくないように思いますが、しかし両国民から願われているようなものにしていかなくちゃならないし、後からこっちが追っていってもなかなか主権の問題もありますから、そう深くは入れないと思うのです。特にその点では強く要望しておきたいと思います。  それから、先ほどの趣旨説明の中でもちゃんとお述べになっていたわけでありますけれども我が国自由貿易体制を守っていくということは明確な国の方針だろう、こういうふうに思うわけでありますけれども、二階堂副総裁がこの間プッシュ副大統領とお会いをしたときに、日本は自動車の自主規制を引き続いて続けるべきだ、こういうふうに表明をしたというふうに言われております。アメリカの自動車業界というのは大変去年は——去年といいますか、過去一年は景気がよくて、自動車会社の重役の中にはえらいボーナスをもらっている人もあって、政府からもボーナスを出せるようなら日本車の規制はやめるべきだというふうな意見すらあちこちに出ている。またアメリカ国内でも、もうこの際そういう自動車の日本からの自主規制というものはやめるべきではないか、こういう世論もかなり上がっているというようなときに、むしろ逆な方向で、国際的なカルテルの一種ということになるだろうと思いますけれども、そういうような自主規制というものを、私はやめるべきだと思うのですけれども、あえて自民党の副総裁が言われる。自由貿易体制というものを党是とし、また国の政府の政策ともしている中で、どうも私は逆行的な発言であるというふうに思うわけであります。通産当局は一体これに対してどう考えて、どう対処しようとしているのか、まず主管省の通産当局、どなたがお見えですか、その方から通産当局はこれに対してこれからどうしようとしておるのかをお伺いしたいと思います。
  33. 土居征夫

    説明員(土居征夫君) 先生御指摘のように、最近米国内で乗用車の対米輸出自主規制措置の八五年度以降の扱いについていろいろ議論があるわけでございますけれども、これはいずれも発言者の個人的見解ということであるというふうに承知しております。  それから自民党の首脳の発言につきましては、その真意を確認させていただいておりますが、規制撤廃後に集中豪雨的輸出が生ずることは適当ではないという趣旨のものであるというふうに理解させていただいております。  通産省としては、この問題については現在静観しておるところでございます。
  34. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、通産省では自主規制をすべきであるという意見はよくない、だからもうこれから自主規制はやめていきたいと、こういう方針が通産省の方針ですか。
  35. 土居征夫

    説明員(土居征夫君) 今年度、八四年度の対米自動車の自主規制措置につきましては、先生御承知のとおり、過去三年間の輸出自主規制が終了した直後の年度でございますので、日本からの輸出が急増してアメリカの自動車産業をめぐって混乱が生ずるおそれがあってはならないということから、これを防止する目的で一年限りの経過措置として実施したものでございまして、この方針については現在変更する予定はございません。
  36. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは大蔵大臣としてよりも、むしろ国務大臣竹下さん、閣僚の一員あるいは自民党の大物の竹下さん、こういうことでひとつこの点はお聞きをしたいと思いますけれども、こういう形の発言というのがどうも私は今通産省の方がおっしゃったのとは違うような感じを持っておるわけでありますけれども、これはかなりこれからの日本貿易に対して大きい影響を与える発言ではないだろうか、あるいは日本政府の政策とも違うんではないだろうか、こういうふうに思うんですが、竹下大臣はこの点をどういうふうにお考えになっているのか見解を明らかにしてほしいと思うんです。
  37. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはちょっと見解を明らかにするということにしてはいささか難し過ぎる問題だなと思っております。  今通産当局からお答えがありましたように、私もきのうちょっと別の会合に出ておりまして、なるほど一つ考え方だなと思いましたのは、百八十五万台を三百六十五日で割ってみなさい、そうすると五千台になります。アメリカから入ってくる車が三千五百台だそうでございますので、一日に十台でございまして、いかにも十対五千、なるほど、統計なんかは比較的好きな私でございますが、五千と十と言われたときに、これは国民にわかりやすい話だなという感じを受けながら、そのお話をきのう聞いておりました。その会合のときにも今の問題が出ましたが、通産当局からお答えがありましたように、恐らく自主規制撤廃後といえども、売らんかな、まさに洪水の起こるような集中豪雨的なことをやらないで、日本日本として相手の立場考えながら節度を持ってやらなきゃなりませんよというような原則を踏まえておられる発言がそういうことになったんじゃないか。  きのう聞いてみましたら、四時の飛行機で帰ると言うものですから、夜訪ねていってみようかと思いました。が、その機会を逸しまして、きょうでも会って本当は聞いてみてやろうかと思っております。二階堂さんそのものの発言については、きょうでも会って聞いてみてやろうと思っておるところでございます。  が、現実問題として、私どもは直接この自動車問題についてお答えする立場にはございませんけれども、自由貿易主義を踏まえて日米経済貿易関係の重要性にかんがみたいわば節度とか良識とかいうものは大事だなという認識はいたしておりますが、この問題について私が私なりの、あるいは国務大臣として、政治家としての見解を申し述べるというにはいささか荷物の重過ぎるお尋ねではないかなと、こういう感じがいたしております。  確かに、よくアメリカの下院議員の方、二年に一回選挙がある仕組みになっておりますが、いらっしゃいますと、南部の方へ来れば、それこそ選挙の演説でも、日本の自動車輸入賛成と言った方が票になる。デトロイトの方へ行けば、そんなことをやったら票にならぬとかいうようなお話もよく承りますけれども、そういう集中豪雨的な問題が逆に向こうの今度は保護主義の台頭に刺激を与えることになってはならぬという意味の、一つの節度というようなことを二階堂副総裁はおっしゃったんじゃないかな。で、きょう聞いてみようかなと思っておるところでございます。これは余り答弁になりませんでしたけれども、それ以上に竹下登の見識を述べよと言われても、ちょっと私の荷が重過ぎるんじゃないかなと、こういう感じがいたします。
  38. 竹田四郎

    竹田四郎君 なかなか偉い人が言う発言というのは、いろいろ解釈を勝手にしたり、勝手に走り出したりしてしまうものだなというふうに思いますけれども、しかし、きょうのこの委員会では大蔵大臣ははっきり、自由貿易体制を固持、確立していくんだと、こういうふうにおっしゃっているわけですからね。少なくともそうした自由貿易の流れを少しでも妨げるようなものは提案者として排除していくということでなければならぬと思うんですね。そういう意味で、私はもう少しはっきりした政府の政策——二階堂さんは党の副総裁ですから必ずしも政府の一員というわけじゃないと思いますが、政府と党との間に意見の相違はあっていいと私は思いますから、そういう点はもう少し明確に、幾ら二階堂さんがあなたの大先輩であろうとも、もう少しはっきりひとつ答えてもらわないと国民にはわかりにくいと思うのですよね。片方では自由貿易を進めていくと言いながら、片方でそういう発言がある、あれは私には荷が重過ぎるというふうに言われてしまうと、国民の方の理解というのはこれはなかなか難しくなってくる。こういうふうに思いますから、この点はこれ以上申し上げませんけれども、その辺はひとつ今後明確にしていただきたいと、こういうふうに思います。  それから、時間がなくなりましたのですが、私の主張を少し明らかにしながらお聞きをしたいと思います。  日本経済というのは恐らくこれからもどんどん進んでいくだろうと思いますし、技術的にも非常に高い水準というものを持っていくだろうと思うんです。技術的には私はかなり今高い水準に日本はあるというふうに見てもよいと思いますし、これがこれからの日本経済の伸展あるいは活性化というものに当然つながっていくでありましょうし、政府もそういう技術の発展ということには力を尽くすでありましょうし、企業もそうであろうと、こういうふうに考えるわけでありまして、日本はそういう方向しかないだろう。そういう高い技術で経済を活性化することによって一億の人間を養い、職を与えていくということになるわけでありますが、しかし全世界的に市場というものを見てみますと、必ずしも高い技術によった製品がどこの国でも喜ばれて使われるというものでは私はないだろうと思うんです。  かつて発展途上国への日本の援助というものが、機械電気ポンプですか、そういう機動的なポンプをやったときに、それは使わないで、昔の手押しポンプの方がはるかに喜ばれたということがありますから、それぞれの国の水準に合ったものでなければ喜ばれないということであります。これから高い技術水準の中でできてくる品物というのは、なかなか南北間では消化できないというようなものというものがこれからの日本の商品の大宗を占めるようになってくるだろうと思うんです。しかし、そうした点では現実に日米、ECと日本、こういう米欧と日本との経済摩擦というような問題も、そういうところからも一つ出てきているだろう、こういうふうに思うわけであります。  そうした意味では、日本の高度に発展した経済、技術、そうしたもの、日本の国の市場というものをもっと広げていかなくちゃいかぬだろうし、深めていかなくちゃならぬだろうということは日本経済の大きな要請であろう。これに我々はこたえていけるような方向というものを経済的にもまた政治的にもつくり上げていくということが必要じゃないだろうか、こう思うわけであります。そうした観点から見て、最近の東西貿易というのは一体どんな状況になっているのか。時間もありませんからひとつ簡単に御説明をいただきたいと思います。  私の考えでは、高い技術には高い技術に近いところの市場、私は東欧圏というふうに考えておりますけれども、そういうところの市場開拓というものはもっとあっていいし、つくらにゃいかぬじゃないか。こういう気持ちでありますけれども、そういう立場からひとつ東西貿易の現状というようなものをちょっと述べていただきたいと思うんです。
  39. 土居征夫

    説明員(土居征夫君) 御承知のように、日本の輸出は、アメリカの景気拡大で最近先進国のウェートが若干高まっておりますが、中近東あるいは発展途上国はいろいろ経済事情も悪いもんですから、輸出市場としてのウエートは必ずしも拡大してないという状況でございますし、共産圏にっきましても、中国は、最近の経済事情が非常によろしくて、日本との貿易は拡大基調にございますが、ソ連、東欧圏につきましては、基本的には先方の経済事情ということでございまして、ここ一年ばかりは若干縮小傾向ということでございます。
  40. 竹田四郎

    竹田四郎君 時間がありませんからあれですが、私は今の御報告では全く賛成いたしかねます。  こういう中でも、注目すべきは西独の貿易で、東欧との貿易というものはかなり伸びてきている。これはそのかわりアメリカとの間のいろんな問題点があったことは事実であります。そういうことで西ドイツのあり方、物の考え方、こうしたものについてはかなり学ばなければいけないではないだろうか。そして、西ドイツはいろんな問題はありましたけれども、例のヤンプルグのガスのパイプラインですか、これについて成功させたことは事実でありますし、ことしの正月から西ヨーロッパに天然ガスが入ってきたということは、西ヨーロッパにとっては大きい問題であった、こういうふうに思うわけです。  ただ、あれですね、日本の技術が発展をしてくる、民生技術と軍事技術との間、こういうものは汎用技術というふうに片方では言ってもいいと思うんですけれども、その辺はどっちだというふうになかなか決めかねる面があると思うんですね。例えば日本で富士通のあの光ファイバーなどもアメリカでの契約をしたけれども、国防省の方から、あれは軍事的なものであるから富士通のものを使っちゃいかぬというのでキャンセルする。しかし、後では何か日本電気のものを使ったという話もあるわけであります。そういうふうに日本の技術水準も高まる、民生技術も高まるということになりますと、それは一体どっちに使うのか、使い方によってどうにでもなるという問題というのが出てくる。いわゆるグレーゾーンといいますか、そういうものがますますふえてくる。  そこがまた同時に、日本のこれからの経済中心になってくるということを考えてみますと、そういうものの輸出市場というものを確保するという問題点というのが、大変大きな問題として日本経済のこれから大きな課題になってくるんではないだろうかと思うんです。しかし、こういうものに対して、アメリカの七九年の輸出管理法、これは純粋に対ソ技術移転の防止だけの法律でないように思います。むしろ逆に、アメリカの企業の技術を守って日本の技術の発展あるいは輸出を抑えるような問題すらこの中にはあるように思うんですけれども、これはアメリカのことでありますけれども、しかし、こういう輸出管理法自体もココムの協定の問題と無関係ではない、こういうふうに思うわけです。  で、ココムというのは、これは紳士協定であるし、秘密協定であるから、今通産省の方々にこれを示せと言っても恐らくお話はできないだろうし、ココムで何が決まったかということもお話はできないだろうけれども、しかし、具体的には審査事項というような形であるものは出され、あるものはチェックをされる、この辺の問題をこれからかなり真剣に考えていってみなければいけないだろう。摩擦ももちろんあるだろうし、下手をすれば、このココムというものを利用されて日本の技術の水準を取り込まれてしまって、日本の技術の発展ということがとめられる、あるいはその商品の市場をチェックされるというようなこともこれから出てくるんじゃないだろうか。そういう意味では、ココム自体も、これは対ソというよりも、自由主義世界のお互いの自由貿易というものをむしろ阻害している条件になってきつつあるんではないだろうか。こういう意味では見直すべきである。したがって、それに基づくところの日本の法規等ももっと自由貿易体制という形の中で見直していくべきである。  確かに、日本世界の自由主義の西側の一員だということが言われると思うんですけれども、西側の一員と言ったって、ただ一点ではないと思うんですね。広い面があると思うんですよ。こっちの面での西側の一員なのか、ここの面での西側の一員なのか、どこに日本は西側の一員として立っていくのかということも、そうしたものとの関連考えてみなくちゃいかぬだろう。こう思うんですけれども、その辺のココムの見直し、西側の一員としての見直し、技術の移転の問題、こうした問題について通産省なりその他からお話をいただいて、私の時間五十五分まででありますから、その点について最後に大蔵大臣意見を聞いて終わりたいと思うんです。
  41. 土居征夫

    説明員(土居征夫君) 先生御指摘のアジア自由主義諸国の一員といたしまして、国際協調の立場からココムに参加しているわけでございます。ただ、これも先生御指摘のとおりでございますが、高度技術は一方では世界経済再活性化のてこでございまして、その自由な移転と国際協力というのは、サミットにおいてもその重要性がうたわれているところでございます。したがって、我が国としては、ココムによる規制が我が国貿易の円滑な発展を不必要に阻害するものであってはならないという立場でございます。  したがって、我が国としては、ココム規制は、技術進歩等の情勢の進展に適応するものについては、これを規制する必要があるということでございますが、規制の必要性がなくなったものについては対象から外すということで幅広い国益の見地に立って対処しているところでございます。その中でもまた共産圏との良好な経済関係の重要性ということも十分配慮しつつ対処していかなきゃいかぬということでございます。
  42. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の御意見を交えての御質問でございますが、一つは最初の技術的に高い問題等からの例を挙げての御質問でございました。  確かに技術的には世界で特定の分野を除いて最高水準にあると思っております。したがって、そういう最高水準のものがいわゆる工業製品として海外経済協力等々にこれが現実の姿として供与された場合に、今手押しポンプのお話がございましたが、せっかく行ったのに故障が起きたとき修理する者がだれもいなかったということから、いわゆる平和部隊、青年海外経済協力隊等の関係を年々拡充して、そういう中間技術、あるいは修理技術とか、そういうところに対しても今日意を体しておるところでございます。  したがって、南北間だけで解決のできないいろんな問題につきましては、それこそ国際機関というようなものがおのずから立っておりますところの地理的なあるいは慣習的な立場等からして、それが巧みに機能していくことが望ましいというふうに思っております。  それから、自由貿易ということを主張する限りにおいては、市場開放というようなことに我が国も意を用いなければならぬということは当然のことであろうと思うんであります。これは国内産業に影響するところが多いわけでございますので、慎重に対応しなければならないものの、このたびの対外経済対策の中で一例として申し上げますならば、金融資本市場自由化とともに、関税等におきましてそれぞれの処置を今行わんとしておる。我が国として、絶対今それが許容できないものは別として、逐次そうした問題についても市場開放の実を上げていかなければならない。ブドウ酒とか紙製品とかいうのが今次の対象に上っておるゆえんのものもそこにあるのではなかろうかと思っております。  それから東西貿易の問題でございますが、総体的に申しますと、確かに政治という問題が絡みました場合に、それが間々縮小傾向に陥ることは事実であります。だが、西ドイツの場合は、宿命的にいわゆる天然ガスというものが、東欧と西欧との間に、彼我において、両方とも必要とするものが存在しておったというところから、紆余曲折を経ながらも私はよかったことだと思っておりますが、西ドイツがとっておられる東欧諸国との貿易関係についても、時には狭い範囲の中で模索しながら進めていかれた努力というのは、私はそれなりに評価すべきものであるというふうに考えております。  それから最後の問題が民生技術と軍事技術との問題でございます。浮きドック一つ仮に持ってまいりましても、その浮きドックにたまたま潜水艦が寄港したらそれは軍事的だという批判を受けてみたり、使用されるその目的によってそれぞれその場の議論が生じてくるというのは間々ありがちなことでございます。したがって、我が国の先端技術というものが、今日ココムにまで至っておりますのに、そういう状態になっておるのにかんがみまして、今通産御当局からもお答えがありましたように、日本の国の国益ということを考えながらココムの立場の中においても対応していかなきゃならぬというのは、私どもが絶えず守っていかなきゃならぬ使命ではないかという感じを持っておるわけであります。  少し幅広になりましたが、御意見を交えての御質問に対して、私なりにいろいろ教えていただきましたので、私の素直なお答えを申し述べたわけであります。
  43. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      —————・—————    午後一時開会
  44. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、調和ある対外経済関係形成を図るための国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  45. 矢野俊比古

    矢野俊比古君 私は、今度提案されましたこの法律案、昨年の十月二十一日の経済対策閣僚会議で決定された総合経済対策ということに基づいてこの法律案提案されていると伺っております。しかし、その後いろいろと新聞紙上では金融サービス面における国際化自由化という問題が取り上げられていまして、十一月には竹下大蔵大臣とリーガン財務長官との間で合意メモというものも決められた。そういったことから、最近まで日米両事務当局間で、金融サービス関係の行政の自由化というふうなものをめぐって、あるいは国際化をめぐっていろいろと相談が進められているというのを聞いているわけでございます。今、合意ができる前でございますから細かなことを伺うわけにいかないと思いますが、私などの理解では、例えばユーロ円債の源泉課税、こういったものを免除しろというふうな声もあったりしているようでございまして、こういうのは日本の税体系全般に響く問題なので、そう簡単には合意できるようなものではないと思っておりますけれども、そういった形でこういうものは合意できるだろうとか、あるいはこれは非常に難しいというような点につきまして、差し支えない範囲で大蔵省の方から御説明を願いたいと思います。  さらにまた、そういった仮に合意ができるであろうというような部分は法律改正がさらにこれから要るのか、それとも、ほとんど実施済みのものもあるのかもしれませんが、行政指導と申しますか、通達というようなことで処理がされるのか、そういう点についても触れていただきたいと思います。
  46. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 私ども、円の国際化金融資本市場自由化の問題につきましては、先生御指摘の昨年十一月の竹下大蔵大臣・リーガン財務長官の共同新聞発表に基づきましていわゆる円・ドル委員会というのが設置され、その下での作業部会をことしの二月からほぼ毎月一回のペースで開催してまいりまして、多くの項目について合意を得るようにしてきたわけでございます。特に先週の木曜日、金曜日、土曜日、三日間にわたりまして双方精力的に話し合いを進めまして、多くの問題、ほとんどの問題につきまして意見の一致を見るような状況になり、先週は主要点についてのドラフティングもあわせて行うというような状況になっております。今月の二十日、二十一日にローマでさらに日米双方で報告書の草案作成の作業を進めまして、月内にはそれぞれの大臣に報告書を提出する運びで進めております。  今日の時点におきまして、かなりの点について双方の意見の一致を見ておるんでございますが、若干の点につきましてどうしても意見の一致を見ない。これは両論併記的な報告書というような形態になろうかと思う点が幾つかございます。  例えば為替レートの決定要因の問題等につきまして、私どもは、アメリカの高金利というものが非常に大きな要素である、その背後にはアメリカの財政赤字がというような点を強く言っておるわけでございますが、ただアメリカの財務省の方の立場は、財政赤字とドル高とは直接的な因果関係、実証されるような因果関係がないというような主張をしている。そういうような点の違いがございます。  しかし、そのほかにも幾つかの違いがございます。一つは、先生の御指摘のユーロ円の問題。これにつきましてアメリカ側は、いわゆるユーロマーケット、通貨当局も税務当局も介入しないようなユーロマーケットにおいて円が自由に使用されるようにし、そしてそれは日本国内金融資本市場自由化促進するために非常にエフェクティブであるというような言い方をしているのでございますが、私ども円の国際化というような観点からは、国内金融資本市場自由化を進め、我が国金融資本市場をベースにしまして、海外の方々が円を調達運用するというようなことで円の国際化が進むのが基本であって、しかし他方、今日の時点でも七兆円という規模でユーロ円というものが存在しますので、国内自由化とバランスのとれた、見合ってと申しましょうか、そういうような形でユーロ円の使用を認めていく。そういうような点での違い、その辺は税金の問題にも関係してくるわけでございますが、そういうような点が主な違いのところでございます。  合意内容につきましては、今月中に大臣に御報告申し上げ、そして公表することを双方考えております。合意内容につきまして今日個別的に御説明させていただくのを、大変恐縮でございますが、差し控えさせていただきたいと思いますが、それによりまして合意事項の実施する個別的な事項、日本側がやるといったことについて申しますと、それにつきましてさしあたり法律改正がすぐ要するというような事項は、今のところはないんじゃなかろうかというふうに考えております。
  47. 矢野俊比古

    矢野俊比古君 いろいろマスコミを通じますと、何か外圧というような感じで受けとめられることが多いわけであります。経済国際化の時代でございますから十分対外協調も必要ですけれども、しかし制度とか慣行ということで日本へ大きな影響を与えるようなものについては、私はできないものははっきりできないと言うべきで、後に何か残るような格好というのはかえって混乱を招くように思いますので、そういう点留意して最後の御努力をいただきたいと思います。  それに絡みまして、最近、これも新聞紙上でございますから不正確だと思いますが、日銀総裁が、ただいま国金局長おっしゃったように、国内金融自由化ということにちょっとお触れになりました。日銀総裁は、むしろこういう金融自由化というのは国内市場からなんで、海外の方から云々という形はおかしいじゃないかというふうに発言されたような記事を見受けておりますけれども、もしそういうことが事実とするならば、これはまたいろいろと整合性という問題が出てまいりますので、この受けとめ方、通貨当局としてどういうふうに受けとめておられるかお示しをいただきたいと思います。
  48. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 私ども、ユーロ円市場及び円の国際化の問題は国内金融市場にも非常に大きく影響する問題でございますので、日本銀行とは非常に密接に意思の疎通を図っております。  日本銀行総裁が、たしか三月の二十八日のときの記者会見で、円の国際化というものは国内金融資本市場自由化を基本とすべきであるというふうにおっしゃったというふうに私どもも承知しておりますが、私どもも円の国際化という問題につきましては、国内金融資本市場を積極的、自主的に、そしてまた段階的に自由化を進めていく、それに応じまして若干ユーロの使用、ユーロにおける円の使用というのを認めていく、これはやっていかなければいけないことかと思いますが、円の国際化というのは国内金融資本市場自由化が基本であるべきである、そしてまたこの進め方というものは、円の国際化の進め方というのは人為的なことというよりも、自然の進展、ナチュラル・エボリューションと申しますか、そういうものを基本とすべきであるというふうに考えておりまして、そういう点で私どもと中央銀行との間で意見の相違はないというふうに思っております。
  49. 矢野俊比古

    矢野俊比古君 今後、経済国際化ということで恐らく金融サービスの自由化という問題、どんどん進展あるいはいろいろと話が出ると思うわけでございますので、ぜひ通貨当局と金融当局が、今局長が御表明されたように、そごはないということでございますから安心でありますけれども、そごのないようにひとつ十分意思疎通を図っていただきたいということを要望するわけでございます。  実は、この法案の内部についていろいろと私なりに議論もいたしたいと思いますけれども、時間的にも制約がありますからその辺は省略いたしまして、この法案は昨年十月二十一日の総合対策から出ているわけで、きょう現在、もう五月十七日で、もちろんこの間総選挙とかいろいろ政治情勢の変化がありましたから、なかなか早い提案が難しいことは私なりに理解しておりますが、とかく外国日本評というのは、意思決定というのは大変遅いんだけれども、決定ができれば誠実かつ迅速にやるというふうによく言われているわけでございます。仮に、この法案が成立したとした場合の仮定でございますが、その後、政令、あるいはまたいろいろ通達その他も御用意をされなきゃならないんだろうと思うんですが、そういう点の準備作業というのは今どんなふうに進められているのか。例えばこの中でも公布してから三月以内に政令で定むるというような規定もございます。こういったものは相当早目にできるのかどうか、そういった準備状況をちょっと教えていただきたいと思います。
  50. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) この法律の施行期日につきましては、証取法の改正と外為法の改正法律公布の日から「三月を超えない範囲内において政令で定める日」というふうになっておりまして、外為法の改正関係について申し上げますと、幾つかの政令及び省令の改正あるいは公布が必要になっておりますので、現在その改正作業を進めておりまして、法律成立いたしますと、ある程度外国投資家とか証券界、市場関係者等への改正の周知も必要かと思いますが、私ども作業をできるだけ急ぎまして、公布後三カ月以内でございますが、なるべく早い時期に実施をするようにしてまいりたいというふうに考えております。
  51. 矢野俊比古

    矢野俊比古君 今のようなお話で、できるだけ決まれば迅速に実施するということをぜひ励行していただきたいと思います。  今も触れましたけれども、今後円の国際化あるいはまた金融自由化というのは、外からの要請もあろうし、あるいは内からもまたいろいろな議論も出て、非常に強まってくることこそあれ、おさまってしまうという問題じゃないだろうと思うわけでございます。しかも、特にアメリカの最近の市場というのは、日本の制度の中で内外差があるということについてではなくて、要するに相互主義といいますか、レシプロカルに彼らが自国で認めている金融機関の活動と同じようなことを何で日本がやれないかということでございますから、そういう点ではまた日本アメリカ、あるいは彼我の慣行、制度、さっきも申し上げましたように、いろいろな格差があるわけで、そういう点でまた対応というものも大変厳しいというふうに私は思っております。  したがって、そういうような大きなうねりの中にむしろ外圧をしのいでいくという体制でなくて、自主的にいろいろと解決策を講じていくべきではないだろうか。たしか大場財務官が新聞で発表しておられたと思いますけれども、何かこういう問題については自主的に、積極的に、そして段階的にというようなことを述べられておったわけでございますけれども、今後の自主的な、あるいは積極的な、あるいは段階的な、これの一体どこに一番の重点があるのかということをちょっと教えていただきたいわけでございます。一括してそういうことを含めて、今後の対外調整、あるいはいわゆる自由化という問題に対して大蔵省としてどういう基本的姿勢をお持ちなのか。これを大蔵大臣にお伺いいたしまして、私は質問を終わりたいと思います。
  52. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今矢野さんおっしゃいましたように、自主的にあるいは主体的に、積極的に、あるいは漸進的に段階的にと。大ざっぱに分けまして自主的、積極的、段階的と、こういうことになろうかと思っております。実際問題、仮に日本人の会合でも自主的、積極的、段階的といいますと、一体それはどういうことか、それを英語に訳すとどういうことになるだろうかと思って、私も一つ一つの筋道だけは解明しておかなきゃいかぬと思って折々相談をいたしたところであります。  自主的とか、主体的とか申しておりますのは、なかんずく金融資本市場の開放ということになりますと、よってもって立つ歴史的な経過が大変に相互に相違があるんじゃないか。例えば銀行一つとってみますと、アメリカは二億三千万の人間で一万四千五百の銀行があり、日本の場合は一億二千万人の人間で銀行の数が、この間一つまた合併しましたから百五十六、百五十七の方が国際連合加盟国の数と一緒だから覚えやすかったわけでございますが、一つ減りまして百五十六と、こういうことになったわけです。  したがって、日本の場合にしても一九〇一年、すなわち明治三十四年には千八百あった。それが預金者保護という立場からだんだんサウンドバンキングということで合併されて、今日相互銀行を含んで百五十六と、こういうことになっておる。アメリカの場合はすべてが自己責任主義、極端な言い方をすれば、おまえがああいう銀行へ預けておったからばかを見たんだ、あるいはおまえの経営が劣っておったから倒産したとか、日本銀行に買収されたんじゃないかとか。歴史的に見ると、投資家保護、預金者保護、被保険者保護、自己責任主義と、そういう発生の根源が非常に違うと思うんであります。したがって、その理解を、双方がまず理解の差を縮めていかなきゃならぬ。だから、それぞれの国のよってもって立った歴史的淵源にさかのぼって、日本金融機関です、日本資本市場ですということを基礎に置いて進めなきゃならぬというのが、いわば自主的、主体的と申しておるゆえんのものであります。  それから二番目の積極的というのは、こういう世界第二位の経済力を持って、そして世界の中に果たさなきゃならぬ金融資本市場等々の力からして、これが先ほど来御指摘になっております外圧とか、そういうものでなく、積極的にそういう方向にさお差していかなきゃならぬという意味において積極的という言葉を使っております。  それから段階的と申しておりますのは、特に一例を挙げれば預金金利等の問題になろうかと思うんでありますが、大口預金のCDを五億を三億にしたとか、これはもう既にしたわけでございますけれども、そういう大口預金の金利等から自由化方向へ進めていって、最終的には、この日本には、御案内のように、郵便局という、ほかの国では余り例を見ない、国民の勤労意欲を今日までも刺激しその一面を担当してきた金融機関というものが現存しておる、そういう問題をも考えていくならば、当然のこととして、この大口から漸次小口化への漸進主義とか、あるいは段階的手法というものを今とらざるを得ない。  こういうことをこの三つの言葉の中に具体的な例示等を含めながら私どもは御説明をして今日に至っておるわけであります。  したがって、私とリーガン財務長官との申し合わせ、共同新聞記者発表に基づいてアドホックグループができまして、五月の終わりまでには私どももその報告を受けるという立場にあるわけでありますが、リーガン財務長官アメリカのいわば金融の責任者でありますし、私は日本の大蔵省の責任者でございますから、この報告を受ける立場にあると同時に、その作業の進みぐあいに対して双方とも関心も持てば、実際は中身にも立ち入るわけでございます。したがって、私が今日見ておりますところにおいては、これらの双方の歩み寄りというものは、恐らく祝福されてという言葉はいささか表現が適切でございませんが、円満な話し合いの中で報告書は五月中にいただける状態になるではないか。  そういたしますと、その中に、自由化への一つの展望、あるいは国際化への展望というものもおのずからその中へ入ってまいりますともなれば、もう当然のこととしてそれらを勘案しつつ、国内に対しても自由化国際化の展望というものをお示ししなきゃならぬではないか。たまたまそういう作業グループがございますので、問題の中には非常に似た問題もたくさんございますだけに、それとの整合性を持ちながら展望を国内向けにも発表していくという措置もその辺でとっていかなければならぬではないか。  考えようによれば、為替レートがフロートいたしました一九七一年が、一つ金融改革、あるいは革命であったとすれば、今度の自由化国際化というのも金融市場から見れば大きな変革期でございますだけに、国民の理解と協力を可能な限り得やすい形において展望等を示しながら、これからも最初に申しました自主的に、積極的に、そして段階的にこれらに対応していかなきゃならぬという責任を、今の御鞭撻をも含めて、ひしひしと感じておるというところであります。
  53. 矢野俊比古

    矢野俊比古君 ありがとうございました。終わります。
  54. 多田省吾

    多田省吾君 本法律案について若干質問したいと思います。  最初に、増資関係法について伺いますが、国際復興開発銀行への出資、それから国際開発協会への出資アジア開発銀行への出資について、それぞれ総額六億六千二百四十万協定ドル、五千三百三十五億九千八百五十七万円、それから十二億三千三百七十五万協定ドル追加出資ができるように今回改正されるということでございますけれども、今日までの出資の経過について簡明にまず御説明いただきたい。
  55. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 世界銀行、第二世銀、アジア開銀の今回の出資の経緯について簡単に御説明さしていただきたいと思います。  最初に、世界銀行の方の増資の経緯でございますが、今回は特別増資でございまして、世界銀行の方は従来から、国際通貨基金増資がございますと、それに合わせまして各国世界銀行における出資額を調整するというようなことをやっておりまして、昨年、IMFの第八次の増資を行いましたので、それに伴いまして今回世界銀行において八十四億四千万ドルの増資が行われることになったということでございます。  それから第二世銀、いわゆるIDA増資の経緯でございますが、IDA貸し付け資金融資の財源を調達するために、一九八五年からの三年間、世銀年度、これは毎年七月からスタートするわけでございますので、ことしの七月から今後三年間の資金調達というようなことで、関係国、拠出国が相談をいたしまして、最近における第二世銀融資の状況等を勘案いたしまして、総額九十億ドルの第七次増資を行うということにしたわけでございます。それとともに、昨年合意をいたしました八四年度の特別拠出、それが約二十億ドルございますので、その増資もあわせて行う。  それからアジア開発銀行増資でございますが、これも五十八年から六十二年までの五年間を対象とする第三次の一般増資でございまして、これは約九十一億ドルの増資を行うということで関係国の合意を見ているというようなことで、増資の話がそれぞれまとまった次第でございます。
  56. 多田省吾

    多田省吾君 今御説明あったうち、国際開発協会IDAに対する増資の中で、一九八〇年の第六次増資の際、アメリカはこれについて、レーガン大統領が財政状況が厳しいということで、また多国間援助よりも二国間援助を重視するということを理由として、当初の約束を一部削減いたしました。そのために、第六次の財源確保策として、我が国がそのうち約千三百十四億円肩がわりする、そして第七次の四千二十二億円を含めて今回は約五千三百三十六億円の増資になったというぐあいに聞いているわけでございます。結局、今回の措置は、こういった米国にかわる特別拠出が含まれている、このように考えていいわけですね。
  57. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 第二世銀につきまして今回御審議をお願いしている増資の内訳といたしましては、委員御指摘のように、八四年の特別拠出が千三百十四億円、それから第七次の増資の分が四千二十二億円、合計五千三百三十六億円でございます。  八四年の特別拠出をするに至りました理由といたしましては、確かに第六次の増資払い込み、これは本来でございますと、八一年度から八三年度までの三年間に払い込みを行うことが予定されておったんでございますが、アメリカの方が財政事情等によりまして、それを八四年度までの四年間にわたって拠出をするというような事情が発生いたしまして、本来でございますと、第二世銀の第七次の融資対象になりますのは一九八四年からであったわけでございますが、先ほども申し上げましたような事情で第七次の増資融資対象の発足というのが一年ずれて八五年度からとせざるを得ないような状況になったわけです。  そこで、八四年度の第二世銀融資財源というものが急に落ち込むというようなことになりますので、それを回避するためにアメリカ以外の全拠出国が原則として第六次の増資、これは本来一九八一、二、三年度を予定しておりましたが、その第六次の増資の三分の一を八四年度分として拠出しようということで合意をしたわけでございます。それによりまして、第二世銀としての融資財源一九八四年度分につきまして大幅な落ち込みを回避するということにしたわけでございまして、言葉の定義の問題もあろうかと思いますが、米国の拠出不足額とか、削減額を各国がそれを割り振って分担したというようなことでは必ずしもないという状況かと思います。
  58. 多田省吾

    多田省吾君 経企庁は去る四月十二日に開発途上国の債務の使途について実態調査を発表されましたけれども、その概要について簡明に御説明いただきたいと思います。
  59. 田島哲也

    説明員(田島哲也君) ただいま御指摘の調査について簡単に御説明いたします。  御指摘の調査は、発展途上国の債務累積問題の現状と問題及び今後の展望を提示することを目的として行いました。調査結果につきましてはおおむね三つに要約できると思います。  一つは、発展途上国の債務問題の特徴は、特に一九七〇年代、中所得国が、相当程度信用力が高まったということを背景にしまして、民間銀行からの借り入れが可能になったということで、一九七〇年代後半に債務が急増した。その結果、特に第二次オイルショック後世界の景気が低迷し、さらにはアメリカの高金利等によって支払い金利負担が増大したということで、それが現在の問題になっているというファクトファインディングが一つございます。  それから二つ目の調査結果でございまして、二点目は債務問題の解決のためには、基本的には発展途上国の経済成長を確保する、開発を確保する、その中で債務返済能力を強化するということが重要であるということでございます。そのため、特に発展途上国のサプライサイド、生産面をより市場志向型経済に持っていく、さらには輸出志向型経済構造へ転換をするということが必要であるということでございます。  それから三つ目の御指摘でございまして、これは我が国経済協力の基本的な政策についての提言でございます。我が国としては、世界銀行の構造調整融資を支援するということで、世界銀行の構造調整融資が、発展途上国の市場志向型、輸出志向型経済構造に転換するため一つの重要な役割を果たしているということで、そういう提言をしてございます。それから二つ目は、さらに発展途上国の生産効率の向上のために組織面、制度面の整備のための協力、これは技術協力等ございますけれども、そういうことが重要な課題の一つであるというふうに提言してございます。  以上でございます。
  60. 多田省吾

    多田省吾君 それから、その中で発展途上国の債務累積は一九八三年末におきまして約八千百億ドルに達している、こういう把握がなされているようでございますか、その辺をもう少し詳しく御説明いただきたいし、あわせて今後の見通しについてお伺いしたい。
  61. 田島哲也

    説明員(田島哲也君) 先ほどのアジア経済研究所の調査につきましては、一九八三年末までの債務累積の残高について過去の資料を収集、整理、分析してございまして、それによりますと、一九八三年末につきましてはおおむね六千億ドルないし七千億ドル、これは非産油発展途上国でございます。  今後のことにつきましては、実は調査されてございませんけれども、一般的に言えますことは、今後、債務支払い負担額、これは元本及び金利両方でございまして、今後とも引き続き発展途上国は債務負担を負いながら経済開発をしなきゃいけないということで、ある意味で債務負担と共存した形の経済開発が必要であるというふうに考えられるわけでございます。  以上でございます。
  62. 多田省吾

    多田省吾君 経企庁の発表によりますと、本来発展途上国の経済発展に寄与すべきものが余り役立っていないという調査結果も一部出ているわけでございまして、我が国は防衛費を増額させるのではなくて、国際的責任は海外協力等によって果たすべきである、このように私は思います。協力には異存ないのでありますけれども、本来の趣旨と目的と別な方向で使われていたのでは、発展途上国の国内産業の発展には寄与しないことになります。その点効果ある海外援助という点につきましてどのように経企庁は考えておられますか。
  63. 田島哲也

    説明員(田島哲也君) 基本的に、特に昨年八月に経済企画庁で出しました一九八〇年代の「展望と指針」、これは計画の名称でございますけれども、そこにおきまして、今後経済協力というのは総合的効率的に行われなければいけないということが書かれてございます。  具体的に申しますと、「展望と指針」の中では、発展段階別の経済協力指針というものを明確化してございます。これは発展途上国は自律的な発展といった発展過程というのをたどるということでございまして、一次産品の輸出段階から軽工業品の輸出段階、さらには重化学工業品の輸出段階ということで、市場メカニズムを生かした形の自律的な経済発展促進するために経済協力が重点的に行われなければならないということがございます。  先ほどアジア経済研究所の調査結果でも申し上げましたとおり、市場経済メカニズムを生かし、それから債務問題の解決のためにも基本的には発展途上国は輸出外貨を稼いでそこで債務返済をしなければいけないということでございますので、特に発展途上国と比べまして、国内経済規模と比べまして世界市場というのは膨大に大きい、何百倍何千倍と大きいということで、世界市場を目指した輸出志向型での経済発展を図り、そこの中で外貨を稼ぎ、債務を返済していくということが必要じゃないかというふうに考えられます。  以上でございます。
  64. 多田省吾

    多田省吾君 大蔵省に御質問します。  政府開発援助、ODAの中期目標について伺っておきたいのでございます。昭和五十六年一月二十三日の閣議決定では、ODAは積極的に拡充するということで、一九八〇年代前半五カ年間の総額を一九七〇年代後半五カ年間の総額程度の二倍以上とするということを決定したわけでございますが、これまでの実行状況はどのようになっているか。また、中期目標期間はあと八四年、八五年の二年間しか残っていないわけでございますが、目標達成は困難ではないかと思われますけれども、今後新たな目標を立てる考えもおありなのかどうか。また、ODAのうちで円借款を担当している経済協力基金の収支状況が非常に悪化しているけれども、その原因と背景についてどう考えるか。まとめてひとつ御答弁をいただきたい。
  65. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 政府開発援助の中期目標につきましては、委員御指摘のように、昭和五十六年の一月に政府として定めておるところでございます。  その実施状況につきましては、ODAの実績でございますが、一九七六年から一九八〇年まで、一九七〇年代の後半のODAの実績は、ドルベースで申し上げまして百六億八千六百万ドルでございます。  中期目標におきましては、これを一九八〇年代前半五カ年間で、七〇年代後半五カ年間の総額の倍以上とするように努めるというふうに表明いたしておりまして、その後の実績でございますが、一九八一年が三十一億七千万ドル、それから一九八二年が三十億二千三百万ドルでございます。あと、まだ一九八三年の実績は発表するに至っておりませんが、一九八三年も含めまして、八三年、八四年、八五年と三年間だけでございます。その三年間もどういうような伸び率ていけば七六年から八〇年までの百六億八千六百万ドルの二倍、約二百十三億ドルの数字になるかという計算をいたしますと、一九八三年、八四年、八五年の各年が、対前年に対して、平均で申して二八・一%の伸びをしないと、一九八一年から一九八五年までの実績が二百十三億ドルにならないというような計算になるわけでございまして、もちろんまだ八一年、八二年の実績しか出ておらず、そしてまたこのドルベースで表明いたしておりますので、為替相場の動向というものも関係してくるわけでございまして、現段階におきまして目標達成の可否につきまして確たることを申し上げがたいのでございますが、率直に申しまして、今後三年間にこのような二八%の高い伸びというものを実現することによって新中期目標を実現するということはなかなか容易なことではないと私どもも思ってはおりますが、しかし、こういうような新中期目標のもとで、私どもとしてはODAの拡充につきましてこれまでも格別の配慮を行ってきたところでございますが、今後ともなお一層拡充のために努力していかなければならないというふうに考えております。  それから二番目の海外経済協力基金の収支状況が悪化している原因についてのお尋ねでございますが、海外経済協力基金が欠損金を生じておりますが、これはいわゆる経営の非効率等に起因するものではなくて、むしろ我が国経済協力推進の実施機関といたしまして、円借款を拡充してきた、実施してきたことに伴って発生した性格のものでございます。  少し具体的に申し上げさせていただきますと、ODA倍増の目標に従いまして、事業規模を急速に、基金の方も拡大してまいってきたわけでございますが、基金に対する一般会計出資が事業規模の増加になかなか追いつかなかったこと。さらにまた国際的な要請に基づきまして、OECFから供与します円借款の援助条件のソフト化というようなことで、基金からの貸し付け金利というものの利回りも近年かなり低下してきたというようなことが基本的な原因でございます。
  66. 多田省吾

    多田省吾君 いろいろ問題ありますが、次に証券取引法の一部改正についてまとめてお伺いします。  現在、外国会社にかかわる有価証券報告書提出期限を三カ月としているわけですが、これを今回弾力化する。政令ではどの程度に改めようとしているのか。六カ月程度だと思うんですが、翻訳等で時間がかかるなんという話もありますけれども、そのはっきりした理由をお伺いしたいと思います。  それから主要国における有価証券報告書等の提出期限を見ますと、内国会社につきましては、我が国アメリカは事業年度経過後三カ月以内でございますが、EC、例えば英国、フランス、西ドイツ等はそれぞれ六カ月、七カ月、八カ月と異なっているようでございますが、その辺の関係。聞くところによりますと、政令で六カ月に延ばすというようなことのようでございますけれども、この辺、外国との関係はどうなのか。  それから現在、我が国の株式上場の外国企業は十一社と聞いておりますけれども、今後これがふえると見込まれております。法律改正とか二重監査制度の廃止等によってふえる可能性がある。大蔵省としては大体どの程度の上場会社数を見込んでいるのか、その辺あわせてお伺いします。
  67. 佐藤徹

    政府委員(佐藤徹君) 最初の政令で予定しております提出期間の延長は、原則として六カ月ということで予定をいたしております。ただ、原則としてと申し上げましたのは、後で申し上げます諸外国の法制との関連で、場合によっては六カ月内ということが本国の法制で無理なケースが出てくる可能性もございますんで、そういった場合には大蔵大臣の個別承認で期間延長はできる道をあけておくということを考えておりまして、原則は六カ月を予定しております。  それから第二番目の主要国提出期限との関連でございますが、御指摘のとおり、主要国アメリカは三カ月でございますが、ヨーロッパでは六カ月、七カ月、八カ月というように国によってまちまちでございますが、例えば西ドイツは八カ月になっておりますけれども、これは株主総会の期限との関連で八カ月と定められているわけですが、大企業の場合にはおおむね事実上六カ月程度で提出されているようでありますので、実際の問題としては六カ月という制度の中で処理をできるのではないかというふうに考えております。  ただ、先ほども申し上げましたように、場合によってそれに間に合わないような企業が出てくれば個別承認制度を活用していくということになろうかと思います。  第三点の現在十一社上場しておるのが一体どういうふうにふえる見込みなのかというお尋ねでございますが、これも大変難しい話でございまして、従来、東証に上場しておりました外国会社は一番多い時期には十七社ございました。それが現在十一社に減っているわけでございますけれども、その際の一つの撤退をする理由として挙げられておりましたものが、この提出期限の問題と、それからもう一つ二重監査、つまり本国の公認会計士あるいは監査人の監査を受けたものについてもう一度日本の監査人の監査を受けなきゃいかぬ、非常に手間もかかるし、金もかかるといったようなことが挙げられておりました。  したがって、そういう障害は、今回の法改正成立いたしますとなくなるわけでありますが、しかし、外国の会社が東証に上場する場合に一体何を目的に上場してくるのかということを考えますと、そこでのある程度の流通が行われることによって日本の市場における資金調達が容易になるというのが最大の効果であると思います。したがって、そういった資金調達のサイドのこれからの成り行き、これは予測することは大変むずかしいことでございますので、具体的に何社ぐらいにふえると思いますということを申し上げるのはなかなかむずかしい問題でございます。ただ、現在既にアメリカのシアーズローバックという会社が上場を申請しておりまして、外国株の取引も五十八年はかなりふえておりますので、そういったことから見ても、今後十一社からまたふえていくであろうことは予想されるところであります。
  68. 多田省吾

    多田省吾君 次に、外為法関係でお伺いします。  「非居住者である個人等による株式取得の特例措置を廃止すること」とありますけれども、現在業種としては、麻薬、農林水産、原子力、航空機、石油業関係十一社となっておりますが、このような業種で指定会社を決めた理由はどういうわけかお伺いしたい。
  69. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 指定会社制度というのは、昭和五十五年度の外為法の改正の際に、当分の間の措置として外為法の附則で設けさしていただいたわけでございますが、この指定会社というのは、非居住者外国投資家全体の持ち株比率が一定の比率を超えた場合には、国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げる等のおそれが出てくるとか、あるいは我が国経済の円滑な運営に著しい悪影響が生ずるおそれがある、そういうものがないかどうかということを審査する必要があると考えるときには、大蔵大臣及び事業所管大臣が指定することができることになっておりまして、それでこの規定に基づきまして、国の安全とか公の秩序等に関連の深い業種である、今先生御指摘の原子力、航空機、麻薬業あるいは石油業につきまして、そういう会社の中から指定会社を設定したわけでございます。
  70. 多田省吾

    多田省吾君 この指定会社制度を廃止いたしますと、合いろいろ理由を述べられておりますけれども、フリーになりますと幾分かの心配、懸念が生じてくると思いますけれども、これに対する対応策はいかがですか。
  71. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 今度指定会社制度を廃止いたしますと、いわゆる間接投資と申しますか、ポートフォリオ・インベストメントというのが完全に自由になるわけでございます。しかし他方、私どもとしては、対内直接投資にっきましては、この現在の規定を存続する考えでございまして、対内直接投資につきましては、国の安全とか公の秩序、我が国経済の円滑な運営等に支障を生ずるおそれがあるときには、法律に定められた手続によりまして規制を行い得ることになっております。しかし、間接投資、ポートフォリオ・インベストメントが完全に自由になった場合に、そちらの方を使って直接投資の規制を潜脱する、例えば実質的には直接投資であるのにもかかわらず名義を分散するというようなことによりまして、形式的にはポートフォリオ・インベストメント、市場経由の投資目的の取得であるというようなことで、直接投資の規制の潜脱を生ずるようなおそれがあり得るかというふうに思っております。  したがいまして、今回私ども指定会社制度の廃止に際しましては、対内直接投資手続の潜脱の防止を図るため、そういうような利害関係者が名義分散等によりましてこの直接投資の規制を潜脱するようなことのないように、直接投資規定整備を行いまして、国の安全等に支障を生ずることのないように配慮をいたしているところでございます。
  72. 多田省吾

    多田省吾君 次に、日本輸出入銀行法の一部改正について伺いたいと思います。  今回、貸し付け相手方に輸入金融のために外国法人にも門戸を開くということでありますけれども、輸銀法上行える輸銀の業務を列挙していただきたいと思います。と同時に、外国法人を加えることによる輸銀内部機構等への影響は全くないのかどうか、あわせてお伺いしたいと思います。さらに外国法人による輸銀に対する輸入金融の需要がどれほど見込まれるか。  以上三点お伺いします。
  73. 大倉真隆

    参考人大倉真隆君) お尋ねの第一点でございますが、輸出入銀行の行うことができます業務は輸銀法の第十八条の各号に規定されております。これを私どもの言葉で申しますと、金融種類別に分けて簡単にお答えいたしますと、大体三つとお考えいただけばよろしいかと思います。  一つは、主としてプラント類を輸出いたしますときに、その輸出に必要な資金融資を行う輸出金融。第二番目には、重要物資を日本に輸入いたしますときに必要な資金金融、これを輸入金融と申します。第三番目に、海外投資海外事業に必要な資金融資いたします。これを私ども投資金融と申します。大体、金融種類別に申し上げまして大きく三種類の業務をやっておると御理解いただければ幸いでございます。  今回法律でお願いいたしておりますのは、第二番目の輸入金融のうちいわゆる製品輸入金融について輸銀でお手伝いできることがあればやれるように法律整備していただきたい、こういうことでございまして、この構想が表に出ましたときに、外国法人の側から、今までの法律だと輸入金融日本企業にしか貸せない、輸銀は。そうではなくて、日本で活動しておる外国法人の支店が現にあるんだから、そういうところが日本に輸入するときにもこういう輸銀の輸入金融を利用できるようにしてほしいという希望が寄せられたという経緯がございまして、それで今回の改正をお願いしているわけでございます。  この改正をいたします結果、そのいわゆる製品輸入金融を実質的に、法律上いろいろと解釈の仕方はございますが、実質的に新しい仕事で始まるということになるわけでございますけれども、そのために特に新しい人間をお願いするとか、あるいは新しい機構をつくっていただくようにお願いするとかということは考えておりません。現有の機構、人員でやりくりして仕事をこなしてまいりたいと思っております。  第三点、今後どれくらい外国法人日本に輸入する金融についての資金需要があるだろうかというお尋ねでございますが、これは率直に申し上げて非常に見通しを立てにくい問題でございまして、こういう道が開けておるということを私どもも一生懸命説明いたしておるわけでございますが、現在外国法人日本に支店なり事業所を持っております企業の数は大体二百ぐらいございます。その二百の事業所その他で年間輸入しております金額が千五百億円前後であろうかというふうに考えております。そのうちでどの程度輸出入銀行輸入金融に入ってくるかということでございますが、大変予測が難しい。せっかくつくっていただく制度でございますから、これをなるべく利用していただいて、日本が製品輸入のために一生懸命やっているんだということが具体的に欧米諸国にわかってもらえるように私どもとしても努力いたしたい、こう思っておる次第でございます。
  74. 多田省吾

    多田省吾君 ありがとうございました。  次に、外貨公債発行に関する法律の一部改正でございますが、これはどのような意味を持っているのか。また何をねらったものか伺いたい。  また、現在のドル金利は非常に高いわけでありますが、外貨建て公債発行は金利負担の面で国民に負担を強いることになると思いますが、どのように考えますか。
  75. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 昨年秋に決定された総合経済対策におきまして、外貨公債に関する法制の整備等を行うこととされたわけでございます。その考え方は、円の適正な対外価値の維持を図る観点から、資本流入促進を図るために、調達コストに留意しながら政府保証外債の米国市場での発行に積極的に取り組むこととしたのとあわせまして、国債につきましても、条件が整えば機動的に発行できる体制をとることができるように、建設国債等について外貨債発行に必要とされる規定整備を行うことにより、この問題に対する我が国の姿勢を対外的に示す、調和ある対外経済関係形成に資することということでやっているものでございます。なお、このような措置を講ずることは、国債の多様化といった見地からも有意義であろうというふうに考えております。  しかし、今御指摘がありましたように、現在ドル建てで外貨公債発行しようといたしますと、ニューヨークと東京の金利差が相当大きくなっております。今十年物を発行しようといたしますと、ニューヨーク市場では調達コストが一二%を超えるというような状況でございます。国内での調達コストが約七・五%でございますので、五%以上高くなる、こういう状況でございます。したがいまして、財政負担の観点、ひいては御指摘のような国民の負担といった観点からは外貨公債発行は適当でないという面があることは事実でございます。このために、基本的には外貨公債発行するにはドル金利が低下するかまたは調達コストを引き下げるための何らかの工夫、例えば政府保証の開銀債につきましては、スイス・フランのカレンシースワッフというような工夫を凝らして実質的な調達コストの引き下げに成功しておりますが、何かそういう工夫をするということが必要になってくるわけでございまして、ストレートにこれだけの金利差があるのにニューヨーク市場で起債をするということは困難ではないかというふうに考えております。
  76. 多田省吾

    多田省吾君 総合経済対策を昨年発表し、そのための法律案が出されて、今その質問をしたわけでございますが、あわせまして、法案とは直接関係ないかもしれませんが、国際経済金融問題について若干質問をしておきたいと思います。  この前、一部の新聞でも報道されましたが、アメリカが合算課税を廃止する勧告を行ったということでありますが、これは当然のことだと思います。一歩前進だとは思いますけれども、実行するについては各州の判断によりますことで疑問視されているわけでございます。アメリカの各州がどのような法的措置をとるのかまだわかりません。この実行性の見通しと、それから対米投資がスムーズになるように我が国としても強く申し入れるべきだと思いますが、どう考えますか。
  77. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ユニタリータックスの問題でございますので、総合的に私の方からお答えをします。  今まさに多田委員御指摘なさいましたとおりに、この合算対象企業を基本的に米国企業に限定するという方向報告書を作成されて、そうしてその報告書は大統領の承認を得た後各州に勧告と、こういうことで送付されるというようなふうに我々も事態を認識いたしておるわけであります。  そこで、今おっしゃいましたように、ユニタリータックス作業部会での議論に基づいてユニタリー課税方式是正措置をとるかどうかということになりますと、これは御指摘なさいましたとおり州税でございますから、各州の判断にゆだねられる問題であるということであります。したがって日本政府としては、今後とも機会あるごとに各州が速やかに是正措置を講ずるように働きかけていくということになります。  私の体験からいたしましても、例えばカリフォルニアの議会筋に日本の企業の方等々、政府関係者も含む企業の関係の方等がいろいろ働きかけられますと、実際問題としてこの矛盾点というようなものはかなり理解していただける課題のようであります。ところが、いよいよそれが予算編成期になりますと、これはいずこも同じとはいえ、財源の問題としては貴重な財源だということで、現実問題わかっちゃいるけどやめられないというような実情が今日まであったことは事実でございます。  したがって、私どもといたしましては、投資環境整備する政策を各州が採用するように、特にこれは関係の民間企業が直接その各州にそれぞれ働きかけていくということが不可欠なことであると思っておるわけであります。政府ベースでは確かに今おっしゃいましたように、部分報告あるいはまだ実行されておりませんが勧告という状態をたどる。が、今度は州自体の問題になる。そうなると、出先あるいは関係者を含め民間企業自体が直接働きかけていかれるということは、私は不可欠のこれから努力しなければならない要件ではないかというふうな事実認識をいたしておるところであります。
  78. 多田省吾

    多田省吾君 それから外銀等の信託業務参入問題でありますけれども、信託業界は絶対に容認できないという主張をことしの一月なされているわけでございますが、いろいろ理由を挙げておられるわけです。  米国銀行の中でもバンカーズトラスト銀行が大蔵省に非公式ながら要請を行ったと聞いておりますが、この辺の対策をお尋ねしたい。
  79. 行天豊雄

    政府委員行天豊雄君) 米国それから欧州の有力な銀行が、我が国におきまして従来外資の参入が全くございませんでした投資資金の運用の分野、つまり信託銀行の分野に参入を認めてほしいという希望を表明しておりましたのは御指摘のとおりでございます。この問題、今回の円・ドル委員会においても取り上げられまして、米国側から強い要求がなされておるわけでございます。私どもも、確かに市場開放という観点から見ますと、そういうことをする必要が原則的にはあるというふうに考えておるわけでございますけれども、同時に、従来外資が全く入っていなかった分野に外資が参入してくるということになりますと、それは今までの一つの仕組みが変わるわけでございますし、それに伴いまして信託銀行の経営にも影響が出てくるということになりますので、この問題は慎重に検討しなければいかぬということで話をしてまいりました。  例えば、こういうふうに外資が参入いたしますと、その機会に日本のほかの金融機関、都市銀行であるとか証券会社であるとかというものも信託銀行面に参入するんではないかというような懸念をする向きもあるわけでございますが、私どもそのようなことは軽々に認むべきものではないというふうに考えております。  こういうふうに市場開放の要請と同時に、国内金融秩序をできるだけ混乱なく開放化していくという観点から、実は米国側と鋭意検討を進めてまいりまして、現在までにほぼ両方が納得できるような解決の道が見出されたというふうに考えております。多少まだ詰めが残っておりますが、先ほどから御説明ございました円・ドル委員会報告書が今月末までにまとめられる中で、本件につきましても解決の道が見出されるというふうに考えております。
  80. 多田省吾

    多田省吾君 最後に、日米間の摩擦あるいは金利動向についてお伺いしたいと思います。  今回、アメリカがまた一段と高金利になりまして、ここ一週間円安が続いているようでございます。また、五十八年度の日米間の貿易収支の実績も報道されておりますけれども、大分アンバランスがひどくなっているということでございます。一方、アメリカにおける景気が大分回復して、五十九年の一月から三月までの第一・四半期の実質経済成長率が八・三%だと。また、鉱工業生産も対前年比五十九年三月現在で一四・八%となっていると聞いておりますが、その後ちょっと低迷しているということも報道されました。しかし、日米摩擦を解決しようとしても、日米間の金利格差が開く一方では、幾ら摩擦解消をやろうとしても結局一時的な解消策で終わってしまうことになります。我が国は引き続いてアメリカの金利引き下げを強く要求すべきだとは思いますが、また貿易収支につきましても、アメリカの数字の中には武器の輸出が入ってないんじゃないかとか、あるいは全世界貿易収支の数字がどうも信用できない、一千億ドル程度の誤差があるんじゃないかとか、いろいろ言われておりますが、日本アメリカ貿易収支に関しては、残念ながら相当開いているということは事実だろうと思います。そういう意味で、我が国としてどのように摩擦解消あるいは金利動向、あるいは貿易収支の解決を図っていこうとするのか、あるいはアメリカの金利に対してもっともっと強く要求すべきだと思いますが、大蔵省のひとつ御決意というものをお聞きしておきたいと思います。
  81. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 最初に先生お尋ねの米国の金利動向と景気動向のことについてお答え申し上げさせていただきたいと思います。  金利動向でございますけれども、確かに先生御指摘のとおり、ことしの三月以降金利は上昇傾向を強めておりまして、三月末から五月の初めにかけましてプライムレートも三回にわたって引き上げられた状況でございます。三月十九日に一一%から一一・五、四月五日に一二・〇、五月八日に一二・五と、こういうような各種長短の金利の上昇を背景といたしまして、公定歩合も四月九日に八・五%から九%に引き上げられているような状況でございます。  この上昇の主たる要因でございますけれども、先生がちょっと御指摘になりましたとおり、予想外に景気拡大が力強いということのほか、財政資金需要が大幅である。それから若干物価などにも出ておりますが、インフレ警戒感の高まり、それからそういうようなものに対するFRB、米国連銀でございますけれども、引き締めスタンスを強めている模様でございます。その他企業買収などが盛んになりまして資金需要等が強い、こういうようなことでございます。  したがいまして、こういう傾向がどういうふうになるかということでは非常に関心を呼ぶところでございます。世界経済に対しての影響もございます。我が国為替についても影響がございますが、この金利につきましては二つ説がございまして、なかなか難しい。上昇するという説と、それから低下するという両説がございます。上昇するという説は、景気拡大が依然力強いということと、先ほど申しましたように、財政の資金需要も大きいということが上昇するという説でございます。一方、下落するという説は、御指摘のとおり、第一・四半期には年率八・三%の経済成長率でございましたけども、第二・四半期以降は景気の拡大テンポが鈍化するという見方も強うございまして、それからなおインフレ再燃の兆候も見られないというようなこと等がございまして、両説でございます。  したがいまして、この金利の動向につきましては、種々の要因がございますので、断定的なことは申し上げられないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、こういう米国の高金利は、先生御指摘のとおり、各国からの資本流出をもたらしてドルの全面高をもたらしてきたと考えます。したがって、我が国といたしましては、この米国の金利が低下して内外金利差が縮小していくということが望ましい、ということで考えておりますので、機会あるごとに米国の金利低下が望まれるというふうに米国に指摘してきたところでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、円・ドル委員会なんかでもそういうことを議論しておりますが、今後とも米国に対して適切な経済運営を行っていくよう要請してまいりたいというふうに考えております。  一方、景気の動向につきましては、私、今少々もう既に触れたところでございますけれども、八・三%というのがことしの一—三月の、年率でございますけれども、成長率でございまして、急速な拡大を示しております。理由は、在庫投資の大幅増、それから個人消費、設備投資、住宅投資というようないわば需要項目のすべてにつきまして強いということでございますので、鉱工業生産も御指摘のとおり一四・八%というようなことでございます。  ただ、こういう景気動向の中でちょっと懸念されますのが大幅な貿易赤字、それから大幅な財政収支赤字の見通しでございまして、この財政収支につきましても、レーガン政権は四月十日にも見通しを立てておりますが、八五年でも千七百億ドル台というような赤字見通しを持っております。今後も共和党と大統領との協議なども続けて削減の案を講じていくということでございますけれども、なかなか困難な状況にあるのじゃないかというふうに懸念の材料となっております。  貿易収支につきましてのあれにつきましては別途お答えさせていただきたいと思います。
  82. 多田省吾

    多田省吾君 結構です。
  83. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 補足答弁があるんじゃないですか、だれか。
  84. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 私の答弁で大体お答え申し上げたつもりでございます。
  85. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) よろしいですか。
  86. 多田省吾

    多田省吾君 はい。
  87. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、まず最初にお尋ねをいたします。先ほどの御答弁で、いわゆる円・ドル委員会の作業部会等を終えて大体結論がほぼ出ると、こういうお話でございますが、今回のアメリカの対日要求というもののその真意というものはどこにあるのか。伝えられるところによりますと、日本の円が非常に過小評価されて、その結果非常にアメリカ貿易不均衡である。そういう意味で円の国際化を図り、そうして円とドルのバランスを直し、そして米国のそういう輸入の増加をストップさせる、そういうところにアメリカの真意があるんではないか。このように言われておるわけでございますが、そういう考えで正しいのかどうか。どのように考えておりますか。
  88. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) アメリカ側がなぜ円の国際化金融資本市場自由化を求めてきたかという背景でございますが、アメリカ側の言い方によりますと、今日、日米の貿易収支については大きなギャップがある、その真の原因は何だろうかとアメリカ側考えてみた。そうすると、どうも円というものが広く国際的に使われていないという面がある。今日、日本経常収支なりそれからファンダメンタルズを反映するような円相場の水準になっていない。それはなぜかというと、円が広く国際的に使われていない面があるのでそこで十分な経済力の反映が行われない。  それじゃ円の為替相場が日本国際収支なりファンダメンタルズを十分に反映するようにするには一体どういう方策があるのだろうかということをアメリカ側考えてみた。そうすると、もう少し円が外国の人にとって魅力あるようにすることが必要ではなかろうか。円が外国の人々にとって魅力あるようになれば、それは円に対する需要の高まりをもたらし、円の需要の高まりというのは為替市場で円を買ってくることになってくる。そうすれば円の為替相場というのが日本のファンダメンタルズを反映するような水準になってくるんだ。そういうふうに考え、そして円が国際的に十分使われていない、日本経済力が自由主義世界第二位の状況にあるけれども貿易の面それから準備通貨の面、その他の面をとってみても、自由主義世界の第二位の通貨としての役割を十分に果たしていないんじゃなかろうか。今までドルが基軸通貨としての役割を果たしてきたんだけれども日本経済力に応じて、日本の円が国際社会においてそれなりの役割を果たすことを期待したい。  そして、そのためには、日本金融資本市場自由化が進み、外国投資家にとってみても日本資金調達をするのが自由になり、そしてまた資金のある程度魅力ある運用もできるようにしていくことが必要である。そういうようなことから円の国際化金融資本市場自由化を求めてき、それによって円の為替相場が日本のファンダメンタルズを反映するようになるように期待しているというところが背景でございます。
  89. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほども御答弁がありましたが、今度の作業部会で非常に意見の合わなかった点の一つとして、いわゆる円安の原因は米国の高金利にある、そういう点で我が国主張と向こうが合わなかったというお話ですが、今言ったアメリカ立場日本は認めるわけですか。ということは、合いろいろとられようとしている措置がとられていけば、円というものは実態に見合って評価されるようになると大蔵省は考えているんですか。
  90. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) アメリカ側も、円の国際化金融資本市場自由化のためにいろいろ日本側がとる措置というものが、これは短期的にはむしろ日本からの資本の流出というような形になって円安に作用することがあるかもしらぬ、しかし円に対する魅力が高まるということは、中長期的に見れば円に対する需要というようなことで、為替相場で円高の一つの要因となり得るというような言い方をしているわけです。  私どもも、円の国際化金融資本市場自由化というような自由な資金の交流というものが、時にはそれは円安に作用するときもあるし、時には円高に作用するときもあって、円高の方に作用し、円相場が日本のファンダメンタルズを絶えず適正に反映するようなふうに必ずしもなるかどうか、それは一概には言い切れないかと思います。  しかし、他方、私ども国内的な問題として考えた場合でも、自主的な立場からも金融資本市場自由化の必要性、ニーズというものに対して積極的に取り組んでいく必要がございますし、そしてまた円が国際的に使われるというようなことにつきましては、日本経済的な力の高まりに応じましてある程度それなりの役割を果たしていくということは受け入れていかざるを得ない。そういうようなことで、直接的に為替相場と結びつけることは一義的には困難かと思いますが、それはさておいても、円の国際化金融資本市場自由化には積極的な姿勢で対応していかなければならないかというふうに考えている次第でございます。
  91. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵大臣にお尋ねをしたいと思うんでありますが、今回の日米円・ドル委員会での合意、これは最終的には我々は聞いてはいないわけですが、新聞の報道するところ等である程度は感じておるわけですが、これは外圧ではなくて米圧じゃないか、こういうように言っている人もいるわけです。今さっきお話ありましたように、ユニタリータックスの問題とか、多少は日本主張によって向こうが検討する、そういうものがあるわけですが、あとは大体アメリカの要望で何となく押し切られてしまった、こういうような感じが非常に強いわけなんですが、それぞれ担当者の人は一生懸命頑張ったとは思うんですが、何かそういう感じが非常に強い。これは相当ドラスチックな改革が今後なされていかなければならないのであって、我が国の業界への影響もかなり大きいんじゃないか。こういうことが言われておるわけでありますが、今度の三回にわたって行われた一連の作業部会を通して、今回の合意についてはどのようなお考えを持っておるのか、お伺いしておきます。
  92. 竹下登

    国務大臣竹下登君) せっかくの機会でございますが、今御意見を交えての御質問であります。国際金融局長からお話を申し上げましたように、ユーロ円を初めとするいわゆる国際化自由化問題という問題、私なりに振り返ってみますと、今のリーガン財務長官が五十六年に来られた際から、国際化自由化はリーガン長官の一つの持論であったというふうに私どもは理解しております。  で、その間にどんな議論がなされたかと。先ほども議論ありましたように、円が普通売られれば安くなりますし、円が買われれば為替相場としては高くなる。したがって、円というものが国際化すればそれが絶えず円が買われていくという、言うなれば、買われる方が強い立場になれば、円高になっていくわけであります。国際化ということは、そこにリーガンさんの一つの物の考え方がございます。  そこで、初歩的な段階においては、そうはいったって、一朝有事の際にドルを持って逃げる人はおっても、円を持って逃げる人はベトナム——ベトナムという言葉は別として、なかなかおらぬじゃありませんか。しかしながら、現実には円はどこの国においても通用する通貨でございます、おおむね。しかし世界あるいは日本国民もそうでございますが、円がまさに国際基軸通貨だという考え方は持っていない。新準備通貨としての価値はあるということはお互いが認識しておる。  そういうところからいろいろな議論が積み重ねられてまいりまして、そこで最終的には、昨年の中曽根・レーガン会談の際に、呼応いたしまして、リーガンさんと私の間で今後国際化自由化の問題を専門家会議をつくってやろうじゃないかと、こういうことに合意をしたわけです。したがって、考えようによれば、三年間そういうお互いの立場に立って勉強はしておった、こういうことが言えるんじゃないかなというふうに思うわけであります。  確かに私は、一九七一年、昭和四十六年に戦後長い間三百六十円という固定相場というものが変動相場制になったときが、一つの通貨改革の大きな時期であったと思います。出来事としてはトラスチックな出来事ではなかったか。今度は、その意味においては、そういう通貨改革の大きな二番目の節目ではないかというふうに自分なりには厳しく受けとめて対応しなきゃならぬ問題だというふうに思っております。それだけに、主体的、積極的、段階的といいながら、その主体的と積極的をしばらくおきまして、段階的という一つのことが日本国内にスムーズに受け入れられていくためには必要な措置である。しかし、世界の流れ全体を見た場合には、円が国際化することによって一時的には、今申しましたように、資本が流出して円安の傾向になることも一時的にはあるかもしらぬ。しかし中長期的に見たら、この円というものが国際化すれば、いかなる通貨に対しても、いわば買われる立場になれば、それは至当な為替相場というのが円とドルとの間にもおのずから形成されていくであろうし、そして世界第二位の経済力をもってすれば、一つ世界経済全体の中に果たさなければならない役割としての市場開放問題も生じてくるだろうという流れに対しては、積極的に対応していかなきゃならぬ課題ではなかろうか。  こういうような考え方を持ちまして、私どもといたしましては、双方の主張というものを繰り返しながらだんだん歩み寄ってまいりました。中には、問題によっては誤解に基づく問題もありました。例えばアメリカ銀行日本銀行を買収できないじゃないか。法律的に買収できないわけじゃございません、売り手がないだけの話でございます。アメリカの場合は売り手がたくさんございますから、日本銀行はどんどんアメリカヘ進出していく。これは法律的にそういう障害があるわけではないという理解はおおむね一致している。こういうことになるわけであります。そうすると、先ほどの多田先生の御議論にもあるような、今まで信託投資だけは日本は完全にシャットアウトしておったのじゃないかというような問題、個別的に出てくる問題もございます。  したがって、私は、外圧あるいは光圧ということではなく、積極的にこれに対応していかなきゃならぬが、双方の意見を、双方の現実の姿を理解していくためには、こちらの主張、より自由化されておるのはアメリカでございますから、アメリカの要請が表面的に出て、それを一生懸命ガードしておるというのが日本というふうに間々目に映る場合があろうかと思いますが、私は現実問題としては、その限りにおいては積極的にこの流れの中にさお差していくべきものであるという考え方に立っております。  ただ、トラスチックなという御表現をお使いになりましたが、従来いわば投資家保護、被保険者保護、あるいは預金者保護という大原則の中に、言ってみれば、いささかオーバーでございますが、護送船団の中に守られた我が国金融業界が、この嵐の中へ投げ出されるわけじゃございませんけれども、そういう点については、まさに段階的に慎重に対応して、いわゆる国損をもたらすようなことがあってはならぬということは、十分踏まえた上でこれに対応してまいりたい。確かに一つの通貨、あるいは金融革命という言葉はおかしいのでありましょうが、金融改革の大きな節目の一つであるという理解の上には私も立っておるものであります。
  93. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 新聞報道等で見ますと、例えばユーロー円債の主幹事を外国業者にも開放するとか、今の信託業務に外銀を単独に参入させるとか、あるいはCDの有価証券化を検討と。きのうの参考人からも、現先に関する有価証券取引税をまけてくれと。CDとの間に不公平だという参考人の御意見がございましたが、どうも逆にCDの方に有価証券取引税をかけるような方向に検討と、こういうようにあるわけで、こういう問題はかなりある業界は喜んでも、ある業界は反対、大変そういう問題の多い内容であります。こういう問題は今新聞報道の方向に行くのかどうか。そうして、そういう関係業界等との話し合いというか、大体理解は得られておるのでしょうか。その点どうなんですかね。
  94. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それぞれ銀行局でありましたり、あるいは国金局でありましたり、証券局でありましたり、そういう関係の個別案件になる問題にわたりますので、私からあるいは総合的にお答えをしたが適当かとも思うわけであります。  確かに今例示なさいましたいわゆる信託、その業務は日本の場合は、今日までは全く外国企業にはこれを認めていなかった。これは若干長くなりますが、法律そのものが違っております。  例えばアメリカ銀行でございますと、大部分が信託業務を兼営しております。だから、日本銀行アメリカヘ進出したものは、内国民待遇になれば、信託をやろうと思えばできるというわけであります。ところが、日本は信託業務というのはいわば専門分野化しておりますから、したがって向こうの銀行が出てきた場合、信託業務はできない。これも理屈から言えば、日本法律なり伝統はそうなっているのだからそれも内国民待遇じゃないかと、こういう議論は一応は成り立ち得る議論であります。  しかし、全く一つの業務について外国企業が進出できない分野を持っておるということは、国際化の中でいささか非国際化とでも申しましょうか、貝の中に閉じこもり過ぎておるではないかと、こういう議論ももちろんございます。したがって、そうなりますと、信託七行というものに対する影響は相当なものでございますし、先ほど銀行局からもお答え申し上げましたが、さらに国内銀行がその要望を持ったときに、今日の信託業界のいわば経営の基盤も揺るがすことになりはしないか。そうなるとそれは絶対に避けなければならぬが、相互主義等々いろんな角度からの議論はできますものの、それは認めざるを得ないということになれば、その問題について業界とは率直に言って話し合いというものをしなきゃならぬ。少なくともこういうときにはやむを得ざるものであるという認識に大筋の理解が達しないことには、率直に言って国内金融等々の監督官庁である私どもとして見切り発車ということは、すべての問題でなかなかできるものじゃございません。したがって、それぞれある種の理解と協力を得る努力は今日も重ねておりますし、今日までも、この円・ドル委員会始まって以来はもとよりでございますが、これを進めてきたわけであります。  また、例示なさいましたいわゆるCDと現先、これはかねてから国内問題として、現先は証券業界のものであるだけに有価証券取引税がかかる、だから不利じゃないか、こういう議論がございます。これは非常に漫画みたいな話でございますが、そういう議論がなされておったら、私の友人が、CDというのはわかるが現先というのはどういうスペルかと、こういって質問をした。いや、あれは日本語だと。こういう話があったことがあるわけでございます。CDが徐々に小口化されていってより流通しやすくなった場合の現先との問題は、これは引き続き、これは税制調査会そのものの問題になりますが、検討しなきゃならぬ課題であろうという事実認識は持っております。  したがって、そういう国際化自由化の段階で、従来国内問題であった問題もその影響を受けてより国内問題として検討を要する課題も出てくるでありましょう。そういうものにも絶えず適切に対応しながら、関係方面との理解は絶えず得る努力をしつつ、いわば言葉の上ではソフトランディングとでも申しましょうか、けがなく離着陸していくという方向で、しかも先ほど御指摘なすったトラスチックな問題でございますだけに、その認識を持ちながら進んでいかなければならぬということにお互いが、大蔵省そのつかさつかさによってみずからに言い聞かせながら、この委員会に臨んでおるというのが実情であろうというふうに御理解をいただきたいと思っております。
  95. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほど矢野委員の質問に対して、こういうものを実行するのには国会による法改正はほとんどないというお話でございましたが、私は、これは相手がアメリカであるだけに、もう決まってしまったものを発表して、後これが非常に問題だとわかってもなかなかそれを変更できないと思うんですよね。しかも、業界と業界が意見が対立するという場合に、ただ大蔵省がその業界を説得しただけで果たしていいのかどうか。これは一つのバランスの問題もあると思うんですね。そういう意味で私は、今は何となく大蔵省だけで検討しているようでございますが、例えば金融制度調査会とか、より広いそういう人たち、また国会意見等も聞き、ある程度常に連携をとりながら、そういう中で最終的な合意に至らないと、結局、アメリカと約束したんだから納得をしろと、こういうやり方ではこれは逆じゃないかと思うんですけどね。そういう点を非常に憂慮いたしますので、そういう点、今後そういう心配がないのかどうかですね、これを承っておきます。
  96. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは今大事な御指摘でございまして、したがって今度報告書、まだもちろん双方が最後の詰めを行うわけでございますから具体的に報告する段階にはございませんが、その報告書の中にも、今御指摘なさいましたところの金融制度調査会へ諮って結論を出すべき問題、あるいは税制調査会等で御議論をいただく問題、あるいは外為審議会等で御議論をいただく問題等々についても、我が国のそういう専門的な審議会というものが存在しておるということも相手方に理解させて、それを問題によっては報告書の中へ書き込まれる方向で調整されておるというふうに——私自身、実際私も困りますのは、報告を受ける立場でありますが、実際中身に入らぬことにはいけないわけでございますから、時に自分にもらう報告書を自分も参画して議論しておるというような、やむを得ずそういう立場にあるわけでございます。そういうことからして、そのような既存の専門審議会で十分議論していただく等々のことも含めた報告書がいただけるではないかというふうな期待を持っております。  同時に、国会議論をしていただくというのが私はなれない問題、国民次元全体から言いますと   私も、古い話でございますけれども、一九七一年の為替レートがいわゆる変動相場制になりましたときに、これから円高になる、円高になる、こういう話をしたら、ある人が、いつになったら千円になりますかと、こういう質問を受けた。国会じゃございません。そういう話をしたことがございます。が、考えてみると、私を含めて当時の日本人の平均的金融問題に対する知識水準じゃなかったかなという感じがしないわけでもありませんでした、みずから言い聞かせながら。と同時に、今ユーロ円といいますと、本当にこの間ある人が冗談で、ユーロ円というお札はどんなお札が、あの聖徳太子さんのところにキリストが書いてあるのかと。こういうような話があるぐらい、ある種の国民次元の中にもこの問題が理解されていくというためには、その国民次元に理解される窓口はどこかといえば、これは国会です。したがって、国会でいろいろこういう問題に対しての検討をいただき、そして法律事項にかかわる問題もございますし、それらは国会でまたチェックしていただいて、これは私は専門家でないだけに、何だか自分自身がこの国会等で議論をしながら自分の知識を深めておるような印象すら持って円・ドル問題にはいつも対応をしておりますので、一層の御鞭撻を願うやまさに切なるものが私にはございます。
  97. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それではもう時間がないので簡単でいいと思うんですが、投資顧問法の制定についてはどう考えているのかですね。非常にそういう機運がまた高まってきておるんじゃないか、そういう必要性があるんじゃないかと思います。それと株式手数料の問題でございますが、これは結局、結論的にはどういう方向で進まれるのか、この二点だけ簡単にお伺いいたします。
  98. 佐藤徹

    政府委員(佐藤徹君) 第一の御質問の投資顧問法の問題は、あるいは法律がないわけでありますから私がお答えするのが適当かどうかわかりませんが、投資顧問会社というような名称の会社を多くの証券会社が出資してつくっておりますので、そことの関連で私からお答えいたしますが、かねてから日本にもアメリカで制定しておりますような投資顧問法というのをつくったらどうかという御主張はあるわけであります。そういった主張が出てぐるゆえんのものは、現在のように野放しにしておりますと、一方で証取法で一任勘定というようなものを禁止しておりますので、そういったことから投資顧問業として行い得る業務が非常に制約をされるということが一つあろうかと思います。しかし、実際に、多少勉強いたしてみますと、投資顧問業と名乗って現実に今日本で営業活動をやっております会社は大小まちまちでございまして、大きなものは例えば四社の出資会社が投資顧問業をやっておりますが、小さなものになりますと、どこかその辺に机一つ電話一本ということで女の子が店番をしておるというような投資顧問業があるわけでございます。  これらを一括して一つ法律でどうやって規定をしていくのか、なかなか難しい問題があります。ちょっと比喩として適切かどうかわかりませんが、金融分野でいきますと、大きな都市銀行と今多少議論になっておりますサラ金と一緒の法律でやっていこうというような話に近いものですから、そういった点で、御主張はあるんですが、なかなか現実の問題として難しい面がございます。さはさりながら、これから先いろんな問題も出てくると思いますので、将来の問題としては勉強はしていかなきゃいかぬなという感じは持っておりますが、今直ちに法律をつくるような議論があるかというと、そこはまだそこまでいっていないという状況でございます。  それから二番目の手数料の問題でございます。株式の売買委託手数料の問題でございますが、これについては最近、新聞とか雑誌で、金利が自由化されるならば、イコール株式の委託手数料も自由化ではないかというたぐいの御議論が若干あるわけでございますが、私ども感じておりますところを申し上げますと、金利の自由化と株式の売買手数料の自由化とは必ずしもイコールの問題ではないんではないか、性格的に見ましてですね、というふうに思っております。  どうしてかといいますと、金利というのはいろんな意味合いを持っておるわけでございますが、特に今、金利の自由化が喫緊の課題として求められておりますのは、金融市場における商品をいわゆる体系金利が規定をしておりまして、そのために市場そのものが若干弾力性に欠ける点がある。したがって、そこを自由化することが市場の自由化あるいは国際化のためにはどうしても必要なことになってくるわけです。そういった意味で金利の自由化が特に要求されているのだと思いますが、株式の手数料の場合はそういった要素はないわけであります。資本市場におきましても、その商品をいろいろな意味で規制しておりますのはやはり金利でありまして、資本市場の方の金利は御承知のとおり既にかなり弾力的になっておりまして、そういった意味の御要請は余り強くはない。したがって、株式の手数料自体は、今市し上げたように金利の自由化とはかなり違った側面を持っておりますので、これを全く金利の自由化をやったら株式の方の手数料も自由化じゃないのかねという御議論は、ややそこに飛躍があるのではないのかなというふうに思っております。  ただ、もちろん手数料そのもの、国によって完全自由化しているところもありますし、体系手数料をとっているところもあるわけでありますけれども、体系的な手数料をとっている、そういう仕組みをとっている場合でも、そのときどきの情勢に応じて体系自体の見直しはやっていかなければならない。我が国の場合も過去に何回かそういった見直しをやってきておるわけでありまして、現在の体系が唯一いいものだというふうにまで考えておるわけではありませんが、今直ちに全面自由化というようなことはする時期ではないのではないか。例えばアメリカで数年前に、あるいは十年近く前に自由化をいたしましたけれども、その結果として起こりましたのは、全体の水準は確かに下がった。特に大口の手数料の水準の低下が激しかったわけでございますが、逆に小口といいますか、一般投資家の手数料は上がったというような現象がございます。したがって、アメリカの中でもその自由化という措置に対する評価は必ずしも画一的ではないのが現状でございまして、そういった問題とか、国内におきます中小証券に対する影響の問題でありますとか、一般投資家に与える影響、そういったものを考えながら、今後も時宜に応じて考えていかなければならない問題だとは思いますが、今直ちにそういう必要がある問題だというふうには考えておりません。
  99. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この法案には幾つもの法律改正案が含まれておりますが、    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕 そのうち対内直接投資規定整備、これについては改善措置として評価いたしますが、その他の部分については反対であります。  反対の理由を冒頭に簡単に申し上げておきます。  世銀などへの出資は、大体これらの機構がアメリカ中心の運営がなされておる。そういう中でアメリカの対外援助の肩がわりになる等々という点で我が党としては賛成できません。また、外債発行は国債管理政策に風穴をあけるものであって容易な国債発行を招く。そのほか、有価証券報告書提出期限の延長などは企業内容の開示を緩和するものであって、投資家保護の立場から見て問題がある等、その他ありますが、そういう点で反対の態度を表明しておきます。  で、法案に即して若干の点について質問いたしますが、まずきょうの提案理由説明の中でもありましたが、世銀国際開発協会アジア開発銀行への増資に関して「所要追加出資ができるよう規定整備を行う」とあるんですが、私は、これは単なる規定整備でないところに問題があると思うんですね。今までは、例えばこれこれの金額の範囲で出資する、法律事項だったんですが、アジア開発銀行につきましては、今回の法律改正で次回以降の増資に関しては法律改正を必要とせず予算に計上するだけでよいということになるわけであります。これは国際機関のこういう援助についてその実態を国民の目に触れさせない、あるいは国会のチェックを外すことになるわけで、なぜそういうことをするのか、これについて答弁をまずいただきたいと思います。
  100. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 今回のアジア開発銀行増資に際しまして、予算に定める範囲内で増資ができるような法律改正をお願いいたしておりますが、この考えといたしておるところは、今近藤先生御指摘のような国会軽視とか、あるいはそのチェックをどうのこうのというような趣旨では毛頭ございませんで、私どもの趣旨といたしますところは、地域開発金融機関につきまして各地域の特殊性が反映される結果、増資の頻度等を予測するということがなかなか困難な場合が多い。そして、このために地域開発機関のバランスを総合的に勘案しながら機動的にそういう増資問題に対応することによりまして、対応したいというようなことで、増資は予算で行わさしていただきたいというふうに考えたわけでございます。  このような考えに基づきまして、これまでも地域開発金融機関のうち米州開発銀行、IDBと申しておりますが、これにつきましては昭和五十四年のときに、そしてまたアフリカ開発銀行の場合には昭和五十六年の増資の際に、予算方式によることを国会でお認めいただいたところでございます。    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕  アジア開発銀行につきましては、昭和五十一年以後増資がなかったものでございますので、今回の増資の際にアジア開発銀行加盟措置法を改正さしていただきまして、米州開銀及びアフリカ開発銀行と同じような措置をとらせていただくようにさせていただきたいというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、今回アジア開発銀行について予算方式によることをお認めいただけますと、日本の参加しております地域開発金融機関につきましては、同じような予算方式ということになるわけでございます。  もちろん、私どもといたしまして、予算で定める範囲内で出資することができるというふうにお認めをいただきましても、政府だけで決めるというようなことではなくて、予算として国会の御審議を十分いただく考えでございますし、そしてまた必要に応じまして増資の状況等につきまして委員会にも十分御報告、御説明させていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  101. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 法律と予算は違うわけで、予算ですと予算委員会で、しかもあれだけの場所、時間でやるわけですから、法案であればこれだけじっくりできるわけでして、それは違うと思うんですね。だからこそ、昭和五十四年に、先ほど答弁されたアフリカ開発基金、それから米州開発銀行の問題のときに、これは衆議院の理事会ですが、こういう申し合わせをしていますね。「他の国際開発金融機関への増資等について、この種の法改正は、今後原則として行わない。なお、止むを得ず政府が今回と同様の法案を提出する場合には、理事会に対し事前にその理由及び内容を明らかにし理解を得るようつとめること。」。  当時五十四年のときには私はおりませんでしたけれども、参議院の理事会もこれはほぼ同じことを了承したと聞いておるんです。しかし、今度やむを得ず出すんだと思うんですが、少なくとも我が参議院の理事会に対して事前にこの理由及び内容を説明したでしょうか。理解を得るように努めたでしょうか。委員長なかったですわ、この問題は。
  102. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 近藤先生御指摘のように、五十四年に衆議院の大蔵委員会理事会で今御披露のございましたような申し合わせがございました。しかし、その後五十六年になりまして、五十六年の四月九日にやはり衆議院の大蔵委員会理事会で申し合わせがございまして、五十四年の理事会の申し合わせがあったけれども、その後問題を検討した結果、今後は世界規模国際開発金融機関への増資については、その規模世界全体の経済協力における地位の重要性等にかんがみ、その都度法律改正を行う、しかし地域的な国際開発金融機関への出資については、その地域性、増資の頻度等にかんがみ、当初の出資法律によるけれども、二回目以降の出資すなわち増資は予算によることを法律規定する、そういうような方針でどうだというような申し合わせがございまして、五十四年の申し合わせは五十六年の申し合わせによりまして御改定になられたと私どもも理解しておりまして、私どもも今回五十六年の申し合わせの線で処理をさせていただいているという状況でございます。
  103. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 委員長、これは衆議院の大蔵委員会理事会の問題でして、五十六年のときには私も今度は議席あったけれども、そんな話は一つもなかった。だから、衆議院だけは了解したかもしれませんよ。しかし参議院の方は、冒頭に申し上げたとおり、五十四年の先ほど申し上げた了解は参議院の大蔵委員会としても一応了承したというぐあいに聞いておるんです。だから、この範囲、要するに原則としてはこの種の法改正は行わない、なお、やむを得ない場合には事前にその理由及び内容を明らかにして理解を得るようにと。だから、衆議院だけ済んだって参議院は済んでないんですね。そういう意味では参議院軽視じゃないんでしょうか。委員長、参議院ちょっとコケにされておるんだと思うんですが、どうですか。
  104. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 答弁求めましょう。
  105. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 私ども衆議院の理事会の申し合わせを積極的に申し上げるつもりはなかったんでございますが、先生の御指摘がございましたので、過去の経緯の御説明ということで申し上げたわけでございまして、私どもといたしましては、五十四年のことにつきまして文書に残っておりますのが先ほど先生御指摘の点、それから五十六年の文書というのがこれというようなことで、過去の経緯を踏まえまして今回こういうような法案の御審議をお願いしているということでございます。
  106. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それは説明にならないんでね、あくまで衆議院ですからね。衆議院で了解受けた。要するに、先議の方が了解したからおしまいまでいいと。参議院は、チェック機能が憲法上の要請ですから、そこを黙って出してしまって事前の了解もないというんじゃ、これはちょっと参議院軽視じゃないんでしょうか。大臣どうでしょうか。
  107. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の御議論聞く限りにおいては、我々の配慮の足りなかったところを痛烈にお突きになった、反省すべきだと、こう考えます。
  108. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、反省してどうなさいますか。
  109. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 反省を謹んで表明し、御理解をいただきたい、こういうことです。
  110. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、基本的には国会のチェックが予算だけで法律としての審議が欠けるということは、やっぱり極めて重大な問題だと思います。  特に、アジア開発銀行の援助の問題につきましても、内容が十分にまだ資料を出してくれないのでわからないんですが、わかった範囲で申しますと、韓国、インドネシア、フィリピン、これが上位三カ国、ここに援助が行っておるわけですね。しかもそれが通常資本で申しますと、七六年末の残高、これが上位三国で五一%であったのが八三年末の残高で六〇・七%、要するに一〇%ぐらいふえているわけですね。これは大半が韓国などアジアの中でも中進国に集中しているんです。しかし、日本立場から本当に議論するとなれば、もっと後進国、あるいはもっとほかの援助の仕方があるんじゃないか。これは十分議論すべきだろうと思うんですね。こういう点をもっともっと私は国会審議の場にのせるべきだということが第一点。  それから、こういうことが必要だということは、世銀の副総裁をやっておられた服部正也さんという人が「エコノミスト」でこう書いておるんです。これは世銀の問題ですが、要するに世界銀行の反省として、これはアフリカに対する問題ですが、「私はアフリカ人は企業能力はもっており、これが発揮されないのは情報の不足と、参入資本の欠如であると見ていたのだが、当時の世銀ではアフリカ人は企業能力がなく、まずその能力を教育指導すべきだという態度であった。」要するにこういう方針でやっておったということなわけですね。それは我が国のこの服部さんの立場から、出資する場合には十分こういう問題も検討し、この場合は世銀へもっともっと物を言うべきだろうと。  それからもう一つ、これもアフリカについてですが、「アフリカ人中小企業家の進出する部門は、個々の企業家に十分の情報を与えたうえ、その独自の判断にまかせるべきであると考えており、また現地に出張して、アフリカ諸国の担当者の賛成をえていたのであるが、世銀の当時の考え方は、国家発展計画の重点分野に指向するよう世銀が指導すべきである」と考えておった。  いわばこういう投資のあり方、援助のあり方について、かなり考えがいろいろあるんですね。そういう点では、私はこれを国会審議事項から外すということは大変ぐあいが悪いんじゃないか、こういう面から見ましてもね。その点どうでしょうか。
  111. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) まず、アジア開銀の融資のインドネシア、韓国、フィリピン、三国に対する割合の問題について申し上げたいと思います。  委員御承知おきのように、アジア開銀からの融資につきましては、コマーシャルベースに準ずるような通常貸し付け、金利が今日の時点では一〇%をちょっと上回っておりますが、それと金利がゼロ、金利のない特別基金の貸し付けと二種類の貸し付けがあるわけでございます。それで、インドネシア、韓国、フィリピンというのはアジアの地域の中では経済成長が割合と進んできている国でございまして、一九七五年以前はこれらの三国もかなりの金利ゼロの特別基金からの融資を受けておったわけでございます。ところが、一九八〇年以降は経済成長が進んできた、それから金利ゼロのコンセッショナルなローンはできるだけ開発の程度の進んでいない国々に振り向けるというようなことで、一九八〇年以降はこれらの三国は専ら金利の高い方の通常貸し出しを受けていたというようなことで、三国に対する全体の融資割合は、若干は上昇しておりますが、これらの三国は人口も多く、経済活動もかなり活発でございまして、その結果ADB融資適格の割合と優良な大型プロジェクトも比較的多いというようなことで、御指摘のような数字になっているわけでございます。  それからその次に、世界銀行のアフリカの融資関連する服部前世銀総裁の御意見でございますが、私どもも服部前副総裁にワシントンから帰ってこられましてから直接何度がお目にかかりまして、先生御指摘のような服部前副総裁意見も聞いております。私どもも前副総裁の体験に基つぐ御意見というものを十分今後重視していかなければいけないと思います。しかし、また世界銀行の問題につきましては、私ども今後とも増資がある際には世界銀行加盟措置法の改正というようなことで当委員会の御審議も十分受けさしていただくというふうに考えております。
  112. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃこの問題はもう時間がないんで次に進みますが、ただ大臣一言御答弁いただきたいのは、まあ法律事項ではなくなったからとはいえ、先ほど塩出議員の質問に対してお答えになっておったとおり、国際金融問題についてこの国会のこの場所でも十分議論ができるようにいろいろ資料なども提供し、常時一緒に議論をしていく、もっともっと深めるべきだと思うんですが、この出資の問題につきましても。その点どうでしょう。
  113. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 衆議院でも同じ議論がございまして、あれは日本社会党の委員から、国際金融問題については資料として、なるほど御要求に応じられない部分も確かにございます、中身によっては、しかしそういう資料等も積極的に提出してもらうと同時に——失礼しました。日本社会党の川崎寛治委員でございました。同時に、各種国際機関のことについて国会でもっと議論を深めたらどうだという御意見がございまして、それは私がお答えすると同時に、たしか委員長から、その問題等はまさに重要な問題として理事会等で協議して今後の進め方を決める趣旨の御発言がありました。確かに国際機関の問題というのは、国内法ばっかりをやっておりますと、とかくネグりがちになりますので、私どももそういう姿勢ではいけませんし、国会に対する要求については十分の可能な限りの資料等の提出におこたえすると同時に、その意見に絶えず耳を傾けていくという姿勢は我々としてもとるべきものであるというふうに考えております。
  114. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 委員長、今の大臣の答弁もありましたし、経過から見まして、本来委員長にまず理解を求めてきてしかるべきものを、こなかった経過もありますんで、採決前までにひとつ委員長としてのこの問題についての見解表明をしていただきたいと、こう思います。  次の問題、第二世銀に対する出資の問題ですが、これは先ほど多田議員の質問に対する答弁の中で、今回の増資総額百九・九億ドルですが、そのうち第七次増資分が九十億ドル、残りの十九・九億ドルは第六次増資の積み残し分だということであります。なぜ積み残しが出たかといいますと、第六次増資払い込みがこれはアメリカ理由で一年間おくれたためであります。そのための不足分を今回アメリカ以外の国で分担することになったものなんですね。しかも第七次増資についても、その増資規模を決めるに当たってアメリカ出資できる予算から逆算して出資の枠が決められたんじゃないかと思うのですが、私はそういう点では日本の大蔵省も随分腹に据えかねることがあったんじゃないかと思いますが、その点が第一点。  それからそれと関連して、第二世銀資金を賄うのにどれくらいの資金が今必要とされているのか、それに対して九十億ドルという規模で十分なものなのか、我が国出資規模についてどういう提案を出したのか、この点について答弁いただきたいと思います。
  115. 酒井健三

    政府委員酒井健三君) 第二世銀の第七次の増資につきまして、これはことしの一月、実質的な合意を見たわけでございますが、それまで一年余り主要国拠出国の間で何回も会議を開きまして協議を進めてきたわけでございます。その過程におきまして、我が国を含みますが、米国以外のすべての国、拠出国というのは開発途上国資金需要、最近の状況にかんがみまして、IDAの第六次の増資規模が百二十億ドルでございましたが、少なくとも百二十億ドルぐらいの程度の増資が望ましいという見解を表明いたしました。アメリカはこれに対しまして、近年におけるIDA融資の実績等、年間大体三十億ドルぐらいのコミットメントという推移でございますので、そういうことを勘案しまして、三年間分とすれば九十億ドルぐらいでいいんじゃないかという主張をいたしておったわけです。私ども開発途上国資金需要から、何とか百二十億ドルぐらいの規模というようなことで合意を得るように努力をしておったんでございますが、なかなか合意に至らず、他方またIDAの第七次の融資というものも今年の七月からということになりまして、それまでの間に各国それぞれの国内手続等も必要でございます。そういうような時間的な切迫という問題もございまして、IDAセブンにつきましては、とりあえず九十億ドルで合意をしたという経緯がございます。  私ども率直に申しまして、少なくともあと三十億ドルぐらいの資金がある方が望ましいというふうに考えておりまして、今、主要国それから世銀事務当局も追加的な拠出の問題につきまして検討を進めるという話が起こっております。この問題につきましては、私どもといたしましては、全拠出国がそれに参加するというような形で追加拠出の問題をさらに議論したいというふうに考えておる次第でございます。
  116. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この問題は、私が冒頭に指摘したように、やはりアメリカ中心の運営というものを裏づけておるんだと思います。  ・時間がないので最後にもう一点だけ伺いますが、先ほど来大蔵省は、金融自由化国際化に積極的に対処すると言っているんですが、問題は国内への影響であります。いろんな論点がありますが、私は一つは、国内金融機関の競争激化が著しく進むんだと思うのですね。現にこの競争は大変な状況でして、そういう中で各銀行は競争、競争、持ち帰り残業なんというのは日常茶飯事になっていますね。そういう中で、これはことしの四月十一日の新聞に出たんですが、七十七銀行で持ち帰りしておった資料が置き忘れられて、そしてそれが暴力団の手に入っちゃったんですね。その暴力団の手に入った資料——私の手元のこれには、このように名前の部分は隠しまして、そのほかに金額とかかなりいろんなことが書いてあるんですね。暴力団は早速これで千五百万円よこせと脅迫した事件がありますね。なぜ脅迫したかと言えば、その中身がプライバシーの問題だからなんですよ。  この問題は、たくさんの問題を抱えているんですが、時間がありませんので簡単にしかできませんけれども、要するに持ち帰って置き忘れるほど労働強化されている。しかもその中には、これなんかいい方で、交友関係とか、それからその人のいろんな性格とか、その他の資産とか、いろんなものが書き込まれているんですね。銀行がそこまで、競争の中でそんなプライバシーまで調べ上げていること自身も問題なんです。しかもそれが労働強化の中で、持ち帰りの中でまさに置き忘れられて暴力団の手に入るという、こんな事態が発生したわけです。私はこれはいろんな面でゆゆしき事態だと思うんですが、これに対してこういうようなプライバシーを侵害するような調査を、一般国民の調査を銀行がまずやるべきじゃないと思うんですね。それに対する一つは対応策、これは銀行局長ですな。そして、こんなことまで、持ち帰りで置き忘れるような事態をさせないような、そういう厳格な通達を私は出してしかるべきだと思うんですが、御答弁をお願いして終わります。
  117. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 自由化を進める過程におきまして競争が激しくなるということは、それは確かでございますが、私どもは適正競争を期待しているわけでございまして、過当競争に陥るようなことは厳に戒めるべく、かねてから指導いたしているところでございます。  それからプライバシーに関する調査ということでございますが、これは資金融資というようなことになりますと、かなり突っ込んだ会社の経営状態等までも調査をしなければいけないわけでございますが、不必要な点についてまでの調査、行き過ぎた調査というようなことは、これはやはり好ましくないことでございますので、それについてもけじめをとってまいりたい。  それからまた、重要書類等につきましては、かねてから無断で外へ出すことは実は銀行としても禁じているわけでございまして、こういうようなものが外へ持ち出されること自体につきましては、そのこと自体が大変問題でございまして、そこは経営者と職員との間の一つのルールづくりの中で解決されるべき問題だと思っております。  なお、通達を出したらどうかという点につきましては、かねてからかなり厳しい通達を出しているところでございますので、もう少し事態の推移を見守らせていただきたいと思います。
  118. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 先ほどの近藤君の御提言につきましては、それを含めて次回の委員会理事会で相談をいたします。御了承ください。     —————————————
  119. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、多田省吾君が委員辞任され、その補欠として中野明君が選任されました。     —————————————
  120. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ほかに御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  調和ある対外経済関係形成を図るための国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  121. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会します。    午後三時二十三分散会