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1984-05-10 第101回国会 参議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十日(木曜日)    午前九時五十一分開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月十九日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     小笠原貞子君  四月二十五日     辞任         補欠選任      小笠原貞子君     近藤 忠孝君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         伊江 朝雄君     理 事                 岩崎 純三君                 大坪健一郎君                 藤井 孝男君                 竹田 四郎君                 塩出 啓典君     委 員                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 倉田 寛之君                 中村 太郎君                 福岡日出麿君                 藤井 裕久君                 藤野 賢二君                 宮島  滉君                 矢野俊比古君                 吉川  博君                 赤桐  操君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君                 青木  茂君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   井上  裕君        大蔵大臣官房総        務審議官     吉田 正輝君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  西垣  昭君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        郵政省電気通信        政策局監理課長 五十嵐三津雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件昭和五十九年度財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置等に関する法律案内閣  提出、衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  昭和五十九年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  3. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま議題となりました昭和五十九年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、我が国財政を取り巻く環境には異例に厳しいものがあります。  このため、政府は、昭和五十九年度予算において、財政改革を一層推進するため、特に、歳出構造の徹底した見直しを行うことを基本とし、あわせて、歳入面についてもその見直しを行い、公債減額に最大限の努力を払ったところであります。  まず、歳出面において、制度・施策の根本にまで踏み込んだ改革を行うなど徹底した節減合理化を行い、その結果、一般歳出の規模は前年度に比べ三百三十八億円の減額となっております。  他方歳入面においては、所得税大幅減税等所要税制改正を行うとともに、税外収入について、特別会計及び特殊法人からの一般会計納付等措置を講ずるなと思い切った増収を図ることとしております。  しかしながら、これらの措置をもってしても、なお財源不足するため、昭和五十九年度においては、特例公債発行を行うこととするほか、国債費定率繰り入れ等停止せざるを得ない状況にあります。  また、特例公債償還財源の調達問題については、我が国経済の着実な発展と国民生活の安定を図りながら、どのように財政改革を進めていくかという観点から検討する必要がありますが、今後の厳しい財政事情考えれば、借換債発行を行わないという従来の方針については、遺憾ながら見直さざるを得ないものと考えます。  本法律案は、以上申し述べましたうち、特例公債発行等昭和五十九年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置を定めるとともに、特例公債償還のための起債特例を定めるものであります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、特例公債発行についてであります。  昭和五十九年度一般会計歳出財源に充てるため、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で特例公債発行できることとしております。  第二に、国債費定率繰り入れ等停止についてであります。  昭和五十九年度における国債の元金の償還に充てるべき資金一般会計から国債整理基金特別会計への繰り入れについて、国債総額の百分の一・六に相当する金額繰り入れ及び割引国債に係る発行価格差減額年割額に相当する金額繰り入れは行わないこととしております。  第三に、特殊法人からの一般会計への納付についてであります。  すなわち、日本電信電話公社及び日本専売公社は、昭和五十八事業年度の利益のうち、それぞれ二千億円、三百億円に相当する金額を、昭和六十年三月三十一日までに国庫に納付しなければならないこととしております。  第四に、特例公債償還のための起債特例についてであります。  昭和五十一年度以降、特例公債については、その償還に当たり借換債発行しないという、いわゆる借りかえ禁止規定が、各年度発行根拠法において定められてきたところですが、先ほど申し上げましたように、特例公債について借換債発行考えざるを得ない状況にあります。しかしながら、特例公債残高をできるだけ早く減少させるという考え方には基本的に変更はございません。したがって、従来の借りかえ禁止規定にかえて、政府は、昭和五十九年度以前の各年度において発行した特例公債については、財政状況を勘案しつつ、できる限り借換債発行を行わないよう努めるとともに、借換債発行を行った場合においては、その速やかな減債に努めるものとする旨の努力規定を置かせていただいております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。  なお、本法律案は、その施行日を「昭和五十九年一月一日」と提案しておりましたが、その期間経過しましたので、衆議院におきまして「公布の日」に修正されておりますので、御報告いたします。
  4. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 赤桐操

    赤桐操君 まず私は、五十年度以降、財政法では発行を認められていない赤字補てん国債を特別に法律をつくって毎年度発行し続けてまいりました。この特例法では赤字国債借りかえなしの現金償還が義務づけられておるわけでありますが、今回の財確法案ではこれをほごにいたし、借りかえ制度を導入するということでございます。まず、この間の経過をひとつ御説明願いたいと思います。
  6. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに特例公債につきましては、財政節度を保つという意味から、借りかえはこれを行わない旨特に明記され、それが五十一年度以後、毎年国会においてお許しをいただいてその措置をとらしていただいたという歴史的な経過に立っております。しかしながら、当初予定いたしておりました昭和五十九年度赤字公債脱却、これは残念ながら断念せざるを得ない状態になりましたことも御案内のとおりでございます。そういう前提に立ちました場合、何しろ私どもがとても予測の外にあったと言われる五十六年、五十七年の世界同時不況の中で大きな歳入欠陥をもたらしました。そうなれば、まず財政再建を行う一つの切れ目といたしまして、赤字公債脱却期間というものを、これを昭和六十五年を努力目標ということに定めなければならぬと、こういうことに相なったわけであります。そうして第二段階として、その後、いわゆる公債残高を可能な限り減していくという手法を財政改革を進めるに当たっての考え方として申し述べてきて今日に至っておるわけであります。そうなりますと、この償還期が到来いたしますことを考えてみますと、国民生活に大きな変化をもたらさないということを前提考えました場合、やむを得ざる措置として、従来のいわば政策転換をいたしまして、借りかえをお許しをいただかなければならないという考え方に立って今日本法律案提案し、御審議をいただいておるという経過をたどって今日に至ったわけであります。  したがいまして、その節度問題等につきましては、確かに本院における議論の中でも、これからもいろいろ議論があることと思います。昨日の本会議においてもそれぞれ指摘を受けたところであります。それには正直に実態を申し上げて御理解を得るほかないという考え方で本日の委員会にも臨んでおる、このような次第であります。
  7. 赤桐操

    赤桐操君 財政難で赤字国債現金償還が大変困難になっておるということでございまするけれども、私ども実は何回もこの国会大蔵委員会はもとよりでありますが、予算委員会等におきましてもこのことを指摘してきておるところであります。赤字国債現金償還準備状況、これについてただした際には、必ず政府は、償還時六十年以降において財源不足するならば、その場合には予算繰り入れで賄うという答弁で今日まで来ているはずであります。そこで、どうしてそれができないことになったのか、現金償還にどんな努力が重ねられてきたのか、まずこれはただされなきゃならぬと思いますので伺いたいと思います。
  8. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) ただいま大臣からも御答弁がございましたように、この特例公債借りかえの問題につきましては、我々もこれまでいろいろの角度から検討し、かつまたいろいろ悩みながら結論を出して今回法案をお出ししたわけでございます。特に今委員指摘の、それでは数字的にどういうような観点からそのような判断に至ったかということでございますが、特に我々が強く意識いたしましたのは、第二次石油ショックによりまして予期せぬ事態が発生いたしました。その結果、我が国経済成長率というのは大幅に低下したわけでございます。したがいまして、税収伸びも急激に鈍化するというようなことから、財政を取り巻く環境というのは非常に厳しくなったわけでございます。先ほど大臣からもお話がございましたように、その結果として、遺憾ながら、従来から申し上げておりました五十九年度特例公債脱却ということも実現が不可能になったわけでございます。  特に、税収の減というのは、御存じのように大変大きな額でございまして、ほぼ二年間にわたりまして約十兆円の減でございます、当初予想いたしておりました数字よりも。そういうような非常に厳しい財政状況の中で、歳出の方はいろいろ努力いたしまして、ここ数年ほぼ伸び一般歳出についてはゼロというような状況で来ているわけでございます。しかし、そういうような中でも、今後の厳しい財政事情考えますと、どうしても借換債発行によりませんと財政を組んでいけないというような厳しい事情が予想されたわけでございます。そういう中で、今回法案で従来五十一年度以降借りかえ禁止規定を置いてまいったわけでございますけれども政策変更をお願い申し上げまして法案をお出しして御審議をお願いしているというのが実情でございます。
  9. 赤桐操

    赤桐操君 収入構造問題等については私の方でも考え方を持っておりますが、それは後にいたしまして、今日まで社会党はもちろんでありますが、野党が挙げて主張してきたことは、赤字国債を十年で償還するためには発行額の十分の一ずつ毎年積み立てて財源をつくるべきじゃないかということを主張してきたはずであります。借金しながら他方では返すという資金を積むのは無意味だと言ってきたのは政府でありまして、今日の事態は、政府のこうした借金を返済していく準備のない態勢が招いた結果だと指摘せざるを得ないんですよ。このことについて財政当局はどのように責任を感じておられますか。
  10. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 今委員からお話がございましたように、これまでも国会の場におきまして、各委員から償還財源を十分の一ずつ毎年繰り入れてはどうかという御意見がありましたことを我々は重々承知しているわけでございます。しかしながら、この償還財源を仮に御指摘のように毎年度十分の一ずつ繰り入れるということになりますと、その財源をどうするかということになるわけでございます。その場合に、大変厳しい財政事情でございますので、十分の一ずつ繰り入れるとすると、その財源歳出をさらにカットするか、国民皆さん方負担をさらにお願いするか、それがかなわない場合ですと、どうしても特例公債発行して財源を調達してこれを繰り入れるという方途をとらざるを得ないということでございます。そういたしますと、片方で特例公債発行しながら繰り入れていくということになるわけでございまして、財政的には非常に苦しい状況がさらに続くわけでございますので、この問題につきましては、これまでも御答弁申し上げておりましたように、特例公債発行している間におきましては従来の方式でいかざるを得ないのではないかということで申し上げてまいったわけでございます。
  11. 赤桐操

    赤桐操君 政府はこれまでしばしばいろいろ予算繰り入れについて言明してきておりましたけれども赤字国債期限到来分相当額を本当に予算繰り入れという形でもって考えておったのかどうか、まことに私は疑問に思っているのです。実際問題として、大蔵省が提示されてきたいろいろの資料でも明らかになっておりますが、五十九年度計画どおり赤字国債発行がゼロにできていたとしても、六十年度から毎年数兆円の金が償還繰り入れられなければならない、こういうことになってくるわけでありまして、これを予算に組み込めるということについて本当に思っておったのかどうなのか、いささか疑わざるを得ないのです。それにもかかわらず、これは今のお話のような考え方で繰り返し強調してこられた。これは一体どういうことですか。
  12. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、五十九年度赤字公債脱却ということ、歴代の内閣、なかんずく私が大平内閣時代におきます大蔵大臣等のときに際しても、その目標をおろしたわけではございません。したがって、それまでの間の問題点からきますと、なるほど積み立てるためにまた赤字公債発行するというのは確かに議論のあるところでございます。したがって、そういう形であくまでも特例公債特例措置であるという考え方からして、五十九年までにはあるいは国民皆さん方に、受益者国民負担するのも国民という考え方の中に御理解をいただいて、まずは大量償還期の参ります六十年度には、不足するものはいわゆる予算繰り入れによってそれを行っていかなきゃならぬという方針の上に立っておったわけであります。しかしながら、国会論議におきましては、一体それは可能かどうかという議論をたびたび本院においてもかまびすしく論議されたところであります。  したがって、これに対して本当に考えなきゃならぬという時期はいつであったかというと、私は五十六年の半ばからではなかったか。したがって、五十七年に至りまして補正予算等を御議論いただく折から、将来それだけの負担増を求めるのか、あるいはそれだけの歳出の削減を行うのか、あるいは借りかえをも含む公債発行によってその穴を埋めるのかということについて議論を重ねていかなきゃならぬ時期に到来したということを申し上げたのが、五十七年の補正予算であったと思うのであります。しかしながら、私どもとしても、それには従来この特例債発行に至る間、政府政策選択の裏打ちとして財政制度審議会でいろいろ議論をしていただいておった経過にもかんがみまして、財政審に現状を、国会議論等を正確に報告し、御議論をいただいて、現金償還のための財源確保するための借りかえもまたやむを得ないという結論をいただいた。それに基づいていわば政策転換を行って今日に至っておるということではなかろうか。  したがって、まさに唐突にこれが出た、形の上ではまさにそのとおりでございますが、それには国会議論なり、あるいは財政審等議論というものが我々の苦悩しておる間に存在した問題である。国会でやむを得ず借りかえせざるを得ないじゃないかという意見が多かったからそれでやりましたというような安易なことを決して申し上げる考えはございませんが、総合的な判断の中で、財政審等考え方をも参考にしながら政策の大きな変更ということに踏み切らざるを得なかったというのが、正直な私はお答えではなかろうかというふうに考えております。
  13. 赤桐操

    赤桐操君 昨年の予算委員会でも私はいろいろお尋ねしておりますが、終始一貫大臣の御答弁は、今国会で明らかにされているような形ではなかった、あくまでも従来の形で表現をされておったはずであります。私どもはいろいろそういう状況の中で少なくともこの一年間を考えてみましても、今まで十年間ずっと続いてきて、五十年以降続いてきた経過の中と比較してみまして急激な変化が出ているわけじゃないんですから、当然今大臣の言われたとおりだと思うんですよ。それだったならば、もっと早目にそうした態度を明らかにすべきではなかったのか。結果的には、政府自体国民や議会に対して偽りを続けてきたと言わざるを得ないことになるのではないですか。今になって大変急変したような形の中で出てくる。こういうことについては国民の側においても納得ができないのではないか、私はこう思うんですが、大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  14. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに五十年は借りかえ禁止規定のついていない法律でございますが、それを審議する際からの国会の御指摘等を踏まえて、五十一年からまさに毎年毎年借りかえ禁止規定をつけた特例公債発行お許しいただいてきたわけであります。したがって、その当時の答弁から今日のいわゆる政策変更というものを見ますと、これは指摘される側から言えば公約違反ではないか。これは私は甘んじて受けなきゃいかぬ御指摘ではないかと、そういう事実認識をいたしております。  ただ、それに至る経緯の中で、私は五十四年というものが、五十四年度決算を見ます場合に、いわば予定しておった公債をかなり発行しなくて済んだ。ちょっと表現は適切でないかもしれませんが、予算ベース決算ベースとがかなり開きがあって、結果として公債発行額が少なかった。そのときが、一つ公債政策というものが日本経済運営、なかんずく景気、それに伴う税収等に与える爛熟期とでも申しましょうか、そのときがピークではなかったか。したがって、これが五十五年に至りまして、当初予算ベースではありますものの、一兆円の減額ありきという形で進んでいった。そして結果として五十五年も、わずかでございましたが、四百八十四億でございますか、いわば剰余金の出る形の中で終止符を打った。  したがって、それからの経済成長率、それに伴う税収等々が大きな変化をもたらしたのは五十六、五十七というときではなかったかというふうに私は今これを見ております。しかし、これは学者さんのような立場で見るわけでもなく、その中にあって財政を担当する衝にありながら、したがって、私自身も五十七年度補正予算ぐらいから幾らか本院における答弁等も若干スローダウンしたとでも申しましょうか、これはニュアンスの相違とも言えるでありましょうが、そのことは借りかえを検討せざるを得ないようになったというある種の事実認識がございましたから、答弁も若干のトーンダウンをいたしまして、財政審等で勉強してもらおうと思っておりますということの経過を経て今日に至ったわけであります。  しかし、御指摘なさいますように、少なくとも五十八年度予算までは借りかえ禁止規定をつけたのでお許しをいただいてきたわけでありますから、その限りにおいては政策の大きな変更だと私は申しておりますが、少なくとも法律の姿としては、唐突に国民は感ずるだろうとおっしゃることは私も否定できないではないかというふうに思っております。ただ、国会議論の中にはそういうことも可能性としてあり得るかなあという感じを幾らかお与えしなきゃならぬというふうな気持ちで今お答えをしながら今日にまで至った。しかし、いかに予期せざる世界同時不況等とはいいながら、政策の衝にあったのは現内閣でございますから、それが政策変更せざるを得なかった状態を御説明申し上げたにしても、国民に映るのは大きな変化で、しかも前ぶれなしにと申しましょうか、そういう形で到来したという印象をお与えしたとすれば、我々の努力不足でもあるが、またこれはまことに遺憾であるということは素直に申し上げるべき事実認識ではないかという考え方であります。
  15. 赤桐操

    赤桐操君 それでは次に、この五十九年度財確法案の中へ五十年度以降五十八年度までの既発赤字国債を一括して一潟千里にひとつ処置しようと、こういう形で今回出されてきておりますね。私は昨日の本会議質問でも申し上げてきましたけれども法律制定の仕方からいっても、これは大変乱暴なやり方じゃないのか、こういう例は余りないんじゃないかと。五十九年度財源不足を補うために赤字国債を出す、そのための根拠法規と、過去に発行した国債発行当時の借りかえなし現金償還規定を改めることとは、およそこれは筋の違うことではないんですか。言ってみれば、全然関係がないと言っても過言ではないと思うんです。別の事項です、案件としたならば、明確に。国会審議を省略して一括で一潟千里に片づけるというのは、それは政府や行政の立場にすれば大変簡単で便宜的でよろしいかもしれぬけれども、こういう筋の立たないものをこの権威ある大蔵委員会一体論議ができるんでしょうか。私はまず冒頭に大蔵大臣考え方を伺っておきたいと思います。
  16. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、赤桐さん、きのうの御質問でも御指摘あったように、この法律はまさに五十九年度財政運営に必要な財源確保するための特例公債発行、それと、その前に各年度発行した特例公債について借りかえのための起債特例を定めるという二つの大きな柱、もう一つ強いて言わしていただくならば、財政節度ということからこの訓示規定というようなもので埋め合わされた法律であります。  そもそも最初オリンピックの翌年、すなわち昭和四十年の補正予算のときに公債発行に踏み切りました。それは戦後最大の不況に対応するための対策として、建設国債であるのかあるいは特例公債であるのかわからないようないわばまさに特例債、こういう形で発行した。その後ずっと経過をいたしまして、建設国債のよってもっておるその機能というものは、日本経済がいわばニクソンのドル兌換制停止、すなわちドルショックとでも申しましょうか、あるいは第一次石油ショックの際、それに機能した財政上の措置としてはそれなりに意義があったと思っております。で、第二次石油ショックというもの、厳密に言えば四十八年の暮れから四十九年度、それで五十年度から特例債発行というもの、明らかに建設国債とは別の特例債発行というものに踏み切った。そうしてその都度財政節度はどこにあるかということは、当分の間というようなことにしないで、少なくとも一年ごとに必要なものを国会で御審議いただくことによってその節度政府自身も自分の心に言い聞かし得る形で国会の御議論を経てまいりましょう、こういうことで続いてきた。  したがって、今度大きな政策変更をするにいたしましても、私どもも部内で一番議論をしたのが今赤桐さんの御指摘なすったところでありまして、毎年その年度ごとに借りかえを必要とする額について少なくともそれを御審議いただいていくことにして、すなわち過去のものを一挙に借りかえ禁止規定を外すんじゃなくして、毎年償還の必要になる部分の全部なり一部なりを借りかえさしてくださいという形で法律の御審議をいただいた方が、財政節度、みずからに対する厳しさの上でいいじゃないかと、こういう議論を随分いたしました。この議論、私自身も中心になってしてみたわけでありますが、しかし新発債の五十九年というものを借りかえ禁止規定をつけないままで御審議をいただく、そして一番最初に借りかえ期間がやってきますのは、新発憤じゃなくして既発債であるわけでありますから、そうすると最も近い機会に償還期が到来するものは借りかえ禁止規定がついていて、そして新たに発行する、しばらく先のものに借りかえ禁止規定はないというところについて法制局等ともいろいろ議論もいたしましたが、一つ法律の整合性というものも、そうなれば既発債に対しての借りかえ禁止規定というものもこの際除くべきではないか、そうした意見もあって、ならば政策転換として御理解をいただくしかないじゃないかということでぎりぎり踏み切ったというのが、今度の、今御指摘なすった大きな二つの要素をセパレートしないで、一緒にして法律で御審議いただいておるということ。しかし、そうすれば、一体がつての年度ごとに、しかも借りかえ禁止規定をつけた財政に対する節度の問題はどうなるかという議論から、これは精神規定だ、訓示規定だと言われましょうとも、その趣旨を訓示規定の中に生かしておくべきではないかというので、訓示規定というものをつけたわけであります。  そうして、さらにもう一つ節度の問題としては、ああして「八〇代経済社会の展望と指針」というようなものから、いろいろ議論を重ねた六十五年度努力目標にして、ここでまず赤字公債のいわば既発公債国民の貯蓄の中へある程度埋め込まれておる。だから、これから増加する国民の貯蓄を当てにした新発憤、赤字公債は六十五年度をめどとして何とかなくしていこうということを財政改革の進め方という政府考え方の中にお示しして、それを提出して、それらをこの政策財政への節度という問題として御理解をいただこうと、こういうことにしたわけでございますから、きのう以来赤桐さんの御指摘なさっておる問題は、私ども部内でも一番関心を持ってと言うと表現おかしゅうございますが、最も議論を積み上げてきた部分であるということを率直に申し上げてみたいと思ったわけであります。
  17. 赤桐操

    赤桐操君 どうも大臣の御答弁の中で私理解できない点が一つあるんです、私の頭がおかしいかどうかわからないんですけれどもね。  五十九年度特例公債と今までの既発債の根拠法が整合性を欠くから前のやつを全部外すんだと、こういうような御説明ですね。だから一つにして出したんだということなんですけれども、五十九年度というのは十年後なんですよ、来るのが、今もお話のとおり。五十年に出した既発債が六十年に来るわけでしょう。払わなければならぬことになるわけでしょう。それなら五十九年度は五十九年度で従来のまま出して、既発債の措置をどうするかということが改めて別に問われるべきじゃないんですかね。これも論争されたと言われればそれまでかもしれませんけれども、私どもが御説明を受ける範囲ではそういう受けとめ方になってしまうんですが、この点、大臣いかがですか。
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あらかじめ私の答弁を予測した御発言を含めての御質問でございますが、確かにその議論はいたしたわけでございます。五十九年度特例公債償還期より以前の財政事情の厳しい時期に償還期の到来する五十八年度以前の特例公債、この借換債発行を行わないということは、五十九年度よりも一層財政状態の苦しいときに償還期がやってくるものでございますから、既発債が借りかえ禁止規定の存置されたままの状態にあるということは適当ではないではないか。五十九年度お願いしているのは、借りかえ禁止規定の伴わないものをお願いしている。それの償還期より以前に来るものに対して、もっと苦しいときに来るものに対してそのままの状態に放置しておくということは適当でないという考え方が、先ほど申し述べましたが、一つありました。  それからもう一つは、特例公債は、それ以前の各年度特例公債も五十九年度特例公債も、いわば経常収支差を補てんするという意味では、言ってみれば同一性格のものである。しかもそれが途中で切れておることもなく毎年度継続して発行されておるということを勘案すると、それは一連のものとしてこれをとらえることが適切である、こういう議論でございます、最終的なお答えとしてまとめましたものは。  したがって、そういうことから言いますと、それでは何の節度もなくなるからというところで努力規定というものをそれに定めさしていただいて、継続して出したものは、結果として今日見たとき、一連した性格であるということから一緒にして国会議論をお願いするのが一番正直ではないか、こういう考え方に立って、かなりこれは議論したところでありますが、お願いをしておる。だから私はこの問題が、議論一つの、大局的に財政運営がだめだったからこうなったのがけしからぬというのは別といたしまして、本法律案を御審議いただくに当たって一番頭の痛いところであると同時に、私ども正直に我々の苦悩した議論経過をも訴えて正直に御審議いただく、正面から御審議いただいた方が適切だ、こういう考えに最終的に到達したわけであります。
  19. 赤桐操

    赤桐操君 私は率直に申し上げますが、大臣の御説明はちょっといただけません。これは何といっても整合性を欠くといったって、五十九年度のものについては従来どおりやれば整合性を欠かないんです。しかも十年後にその返還が迫られることになるんですよ。そうだとすれば、六十年度から開始されるものについて改めて御相談があれば、これは本委員会で討議すればそれで済むことです。私は遺憾ながらその御答弁はいただけない、こういうようにひとつ申し上げておきたいと思うんです。  続いて内容に少し入ってまいらなきゃなりませんが、五十年度発行赤字国債償還期限が到来する、そして六十年度以降の財政状況をどうするんだということについては、これはしばしばいろいろの面で明らかにされておりまするように、正確にきちんと把握するということは大変なことだと思います、今こういう経済情勢でございますから。したがって私は、六十年以降に出てくるものについて、赤字国債償還について毎年度まず現金償還努力して、そしてなおかつどうにもならぬということについて相談があるべきものではないだろうかと、こういうように私ども考えるのであります。  それがなくては、先ほど大臣もおっしゃっておられましたけれども赤字国債発行節度というものがなくなってしまうんではないか。今まで出されてきたものまで全部これはほごにするという、そういうばかげた話は、これはあり得ないんではないのか。そして、今申し上げたような形で行われていくのが今までの既発債に対する措置の正常なあり方ではないのか。なるほど今出されているようなやり方で一挙に処理してしまえば財政運営は楽になるでありましょうし、そして赤字国債残高を減らす努力、こういうものもそう今までのような形でもって差し迫られることもなくなるでありましょうし、しかしその後に出てくるものは、反面出てくるものは財政再建ないし財政の健全化という問題がそこに大きくクローズアップされてくると思うんです。そういう努力がみんな消えてしまうんです。こういうことを今やっていいのかどうなのか、これは私は大変な問題だと思うんです。大臣、いかがですか。
  20. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今赤桐さんのおっしゃった議論の中で、私どももいたしました議論は、今度はもう一歩考え方を変えて、今年度発行の分も収支差を補てんするための措置でございますから、むしろ借りかえ禁止規定をそのまま置いておいて、本当に大量償還のやってくる六十年度から単年度ごとに必要なものの借りかえを許してもらう法律、こういう考え方議論の中に入れてみました。しかし、今の時点で五十九年度発行したものを借りかえ禁止規定をつけたままでやることは、十年後とはいえ、かなり難しい状態にあるだろうという事実認識を持ちながら、借りかえ禁止規定を置くということについては、これはまた国会に対する、今度は国会の御審議に対応する考え方としては適切ではないではないか。  そこからして今度は、さればその前の既発債というものがなお困難なところに来るものを、それをそのままにしておいて、言葉の中で、大量償還の参ります年度ごとに借りかえを含めて法案の御審議の形で相談してまいりますということに対しても、政策変更するとなれば一貫性がないではないかといういろんな議論の末、この既発債部分についてとらしていただく。しかし既発債部分について借りかえ禁止規定を外さしていただくというのには、既発債に少なくとも借りかえ禁止規定があったというのは、私ども国会で説明したのは、少なくともこれが節度ですということを説明してきたわけでございますから、その節度というものに対する担保をどうするかというと、そこに訓示規定ということで努力規定を設けることが最小限私ども国会に対する従来の節度を継続するあり方としてその措置をとるべきだという考え方になったわけであります。  したがって私は、なるほど大蔵大臣の言うことよくわかった、そのとおりだと言っていただけるという環境を期待してこの法律案を出したわけではございません。この議論は、従来からの財政運営の問題をも含めて、法律の出し方の問題をも含めて、十分議論をいただく課題だという事実認識で今日もここへ参っておるということを正直に申し上げるべきではないかというふうに考えます。
  21. 赤桐操

    赤桐操君 赤字国債借りかえをこういう形で出されてきております。何らの特別規定を設けないで建設国債と同様の形で出ておるわけでありますが、六十年の償還にした理論的な根拠、これはどこにあるのでありましょうか。四十二、三年ごろに建設国債償還が問題になった当時、大蔵省国債見合いの資産の平均的な効用発揮期間が六十年と見られている。現在、税法上の耐用年数で、岸壁や堤防やこうしたものが五十年、鉄筋コンクリートの学校、病院等の建物は六十年、ダムが八十年などとなっておる。したがって、平均六十年ぐらいとして借金も返す期間は六十年間と、こういう趣旨で答弁がなされているわけでございます。赤字国債は見合いの資産がないのに六十年で償還する、したいと、こう言っておるわけでありますね。何が根拠で建設国債と同じような位置づけをなさったのか、この点ひとつ伺いたいと思います。
  22. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 仮に特例公債借りかえをお認めいただくということになった場合に、この特例公債につきましてどのように借りかえていくか、委員指摘のようにどのように償還していくかという点が問題になるわけでございます。  そこで、この問題につきましては、従来は禁止規定がございましたので全額現金償還していくということが片方にあるわけでございます。それからこちらの方のもう一つのサイドには、全部借りかえる、極端に言えば永久に借りかえていくという考え方もあるわけでございます。しかしこちらの方は、今申し上げましたように、種々の厳しい財政事情からいって全額現金償還していくということは不可能であるという判断に立っているわけでございます。この点につきましては、国会にお出しいたしました仮定計算例等をごらんいただきましたら、要調整額が非常にふえまして、六十五年度において十五兆円というような、伸ばし方によってでございますけれども一般歳出のような要調整額が出てくる。そこで、それでは全額いつも借りかえていくということも考えられないわけでございますけれども、そういたしますと、常にその分だけ残高特例債残ってしまう。  そこで、それではその間のどこに償還の仕方を置いていくかということでいろいろ議論いたしました。その結果、これは財政審の答申にもございますように、当面「差し当たり、最小限、既に確立している四条公債」と同様の方法で一応頭の中に置いて考えてみてはどうかという結論になったわけでございます。しかし、従来からの財政節度という我々としてはどうしても今後とも追求していかなければならない節度という問題がございますので、これは今申し上げましたように「差し当たり、最小限」そういう方法でやることを頭に置いて、今後各年度財政事情を十分勘案しながらできるだけこれを前倒ししてやっていくということで努力してみようということでございまして、その意味で、今回の法案の中に努力規定を置いているということでございます。  しかし、いずれにしましても、この特例公債の具体的な償還方法につきましてはまだ、六十年度に二兆二千八百というものの償還が大量に参りますが、それまでに時間がございますので幅広い観点から精力的に検討してまいりたい、そういうふうに考えているわけでございます。したがいまして、建設国債と同様の方法でいくということをきちっと決めているというわけではございません。
  23. 赤桐操

    赤桐操君 せっかくの御説明ですが、実際努力規定とか訓示規定というものについては、これは私、後でも申し上げたいと思っているんですが、それがあるから六十年の建設国債とは全く同じだということにはなっておりませんということにはならぬと思うんですよ。これは遺憾ながらそうなりませんよ。  大体、従来政府自体国民に対して説明したのは、建設国債というのは資産の裏づけがあるんだ、だから健全でいい国債なんだ、こう言っておったじゃありませんか、予算委員会でもどこでも、大蔵委員会でもそう言っとったじゃないか。赤字国債というのは消費的な支出に使われるものであるから、これは大変危険性を持つものであって、この種国債は出すべきものではないんだ、しかし今やむを得ず出しておるわけだ、こういうように説明をされてきたと思うんですね。国民はそういうように理解しておりますよ。私どもも、大蔵省やあるいは大臣の説明をそういうふうに受けとめておりましたからそのつもりで考えておった。今になってこれは同じ性格でございましたということには私はならないと思うんですね、どう考えてみても。建設国債というのは資産が残るから後世代の人たちにも負担をさせる、これはわかりますね。これはわかる。今のように六十年、八十年という寿命を持つ投資となるわけですから、これは話もわかります。しかし、従来の政府建設国債六十年償還の後世代負担論、これは私も否定はしませんが、赤字国債についてはツケだけが後世代に残ることになるんですね。  しかも、六十年ということでもって出てきたということになったらどういうことになりますか。今オギャーと産まれた子供が六十歳になるんですよ、その時期は。私ども国会議員として二十歳以上の方々からは負託を受けているけれども、その後の後世代の人たちからはそういう負託は受けてない、そんなことはできるものじゃない。建設国債については理由もつくし、後世代の皆さん方にも理解をしてもらえるだろう。しかし赤字国債特例国債についてはそういうことにはならないんじゃないかと私は思うんですがね。あるいは今まで学者先生方からはそういう意見も出ていることも私も承知しておりますが、大蔵省は、あるいはまた大蔵大臣はそうしたものとは違う立場で、さっきも言われておりましたが、私どもは実際に財政を預かる責任者の立場からいろいろ申し上げてきた。ということをしばしば聞いておるわけでありますが、そうだとすればこれはいささかいただけない内容ではないんですか。
  24. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 先ほどの私の説明が不十分な点があったかと思いますので、もう一度御説明いたしたいと思いますが、財政審のこの報告にもまさに委員が御指摘のような観点がまず書いてあるわけでございます。ちょっと読まさしていただきますと、「特例公債償還ルールについて」という題でございますが、そこに、「仮に、特別会計において特例公債の借換えを行うこととした場合」、仮にですね、「その償還ルールをどのように定めるかが問題となるが」、次のところでございますけれども、「本来、できるだけ早く残高を減少させるべきである特例公債の性格を考えれば、あらかじめ新たな一定の年限による償還ルールを設定する適当な理由は見出し難いと思われる。」というふうに書いてございまして、その後、「しかしながら、特例公債については厳しい財政事情の下でも可能な限り残高を減少させていくことが望ましく、また現行の総合減債制度の下では」、あと若干省略いたしますが、一・六という方法で繰り入れていって、建設国債同様の償還の方法があるので、仮に、先ほども申し上げましたように、最小限さしあたりこの方法によって考えてみてはどうかということでございます。しかし、最初に申し上げましたような財政節度、できるだけ特例公債を減らしていくというこの大前提がございますので、仮にそういうことで一応考えてみたとしても、今後この問題については幅広い観点から議論を行って、今申し上げましたようなことを十分念頭に置いて検討を進めていけと、こういう報告をいただいているわけでございます。  したがいまして、先ほど申し上げました建設国債償還方法がそうであるから特例公債もそうなんだということは考えてないわけでございまして、委員がおっしゃいましたように、十分その点は我々としても念頭に置いているということでございます。
  25. 赤桐操

    赤桐操君 五十九年の財確法案、三章の赤字国債償還のための起債の歯どめの問題、それから財政当局が今説明されておりまする法案六条一項の赤字国債償還のための起債は、国の財政状況を勘案しつつ、できる限り行わないよう努めるものとする。」、これは今説明されておりますね。この規定ですけれども、正直に申し上げて、この規定が有効に今後の将来にわたって機能すると、こういうように判断されますか、現実の問題で。だから、私どもは六十年になっちゃうんじゃないのかと。建設国債特例公債との間には考え方に相違がございます、私どもの方は提案しておりますけれども、それは違う考えておりますと言ったって、何にも歯どめがないんですよ。あるのはこの訓示規定みたいなものだけですよね。努力するというだけの話です。私はきのう本会議でも指摘いたしましたけれども、これは機能しないだろうと私たちは考えているわけですね、この訓示規定は。  だから一体、こういうものがあるから、あるいは財政審等でもいろいろそういうあれをやっておるということになったと言われたとしましても、ちょっと私ども立場からすればこれはいただけない内容だと、こういうことに考えざるを得ないじゃありませんか。この点いかがですか。
  26. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この問題議論する間に、お互い財政の専門家の議論とまた政治家の議論とそれぞれあろうかと思うんであります。建設国債赤字国債の問題につきましては、これは概念的に、赤桐さんのおっしゃること、私は同じ考え方であります。  ただ、公債政策そのものをもう一つ考えてみますと、たとえこの資産が残るものであるにいたしましても、今日の時点で例えば五十兆を超す予算の中の一八%が国債費であります。言ってみれば利払い費であります。本来予算というものは、財政支出というものは二つの要素があって、一つ国民が共通する道路とかあるいは学校とか、そうしたものに対して財政がそれに対応していく。いま一つは富の再配分の機能だと思うんであります。あるところから御負担をいただいて、それを生活保護とか等々の足らざるところへそれを還元していくという富の再配分の機能があろうかと思うんであります。その後者の富の再配分という機能から考えてみますと、いわば利払い費というのは、どちらかと言えば、具体的にどれだけ個人がお持ちになり、どれだけ企業がお持ちになり、それはわかりませんけれども、いわば利潤を生むところへさらに利払い賞として国債費という形で出ていくわけでありますから、ある意味においては富の再配分が意図せざるところへ行くという意味で基本的にいいことじゃない、まあ極端な言葉を使いますと。それがもう一つ基本にあろうかと思うんであります。  しかし、そういう性格を持つ中においても、今まで御議論なさいましたように、建設国債というものに対しては資産が残り、そしていずれにしても後世代の国民にその負担を求めるわけでございますけれども、それは国債という名において債権自身も持っていただく、結果としてはそうなる。だから、後世代の納税者は人により債権者であり、債務者であるという両方の側面を持つということにもなるわけであります。したがって、赤字公債ということになりますと、まさにそのときばったりの消費的経費にこれが使われていく。  で、ただこれに対しても、これは私の議論ではございませんけれども議論の中にはある議論といたしましては、それによって後世代の納税者たちは高い教育を受け、あるいはそれだけに世界に冠たる日本民族としての諸要素を、自分たちにツケは回りながらも、有形でない無形の資産というものが人一人一人に残っていくから、赤字公債というものもそれなりの意義があるものじゃないか、こういう議論をする人がおるんです。これは私の議論じゃございません。  それで、その議論をしたら全く歯どめない議論になるじゃないか。したがって、公債政策節度というものには、やっぱり四条公債特例公債というものが厳然として存在しておるというのがあるべき姿である。  そこで、今度借りかえを行うということになりますと、言ってみれば、この特例公債と建設公債のある意味において区別がなくなってしまう。だが、特例公債というものは、財政審等々でも御指摘なさっておりますように、可能な限り速やかに償還すべきである。されば可能な限り速やかに償還するということになると、その方法やいかにということになりますと、それにもおのずからある種の計画が必要であろう。その点については幅広くもう一遍検討してみようじゃないですか。が、特例公債の持つこの六十年というものを最小限のものとしてこれを守っていく、最小限既に確立しておりますところのこの四条公債の方法によることとするということで、最小限のものをそこに置きまして、そしてそうなると、きのうの御議論にもございましたように、あるいは十年とか二十年とか、あるいは三十年、二分の一とか三分の一とか、いろんな議論も出てくると思います、その幅広い議論の中には。が、できるだけ早くなくすべきものであるという考え方で、借りかえというものをお許しいただく法律を出して、そのできるだけ早く返す計画は、さればこうですということをにわかにこれを策定していくというのはなかなか困難な問題だ。で、策定すれば、場合によってはそれがそれまでに返せばいいというある意味においてイージーな環境をつくることにもなるかもしらぬ。だから、この問題は年度ごと精いっぱい努力して、そしてその六十年の問題がやってくるまでに衆知を集めて、幅広く各方面の意見を聞いて検討しましょうということに、この財政審でもいろんな議論を、私のような政治論でなく、専門的な議論の中から出た結論というふうに私はこれを受けとめておるわけであります。したがって、今いわゆる無形の資産が残るという話をしましたが、そういう議論をする向きが皆無ではございませんが、私はそれをとりません。それをとるのがある意味において一番危険な財政運営だと思いますので、渋ちんだと言われようとも、その議論はとらないという考え方を今後とも貫いていこうと思うんであります。  これを非常に短絡的な点で考えた場合に、例えば減税財源赤字公債によって補てんするという立場をとった場合、一つの企業経営のあり方の中では、今日借入金をして設備投資に回しても、数年後それが果実を生めば結構だと思います。それは企業の責任の中で結構なことだ。仮にそれが失敗したらそれもまた企業の責任であろうと思います。企業責任の範囲内において埋め込まれるべき問題である。しかし、国の財政ということになりますと、それが予算が単年度主義であるという厳しい現状と、仮に失敗に終わった場合は、それは一企業責任ではなく、国民全体がその責任をかぶることになりますだけに、そういう施策はとれないという意味で、いわば後世の負担、無形の資産が残るという考え方議論をちょっと言の葉に上せましたので、私自身はその考え方を持っていないということもつけ加えてお答えの中へ含めさしていただいたわけであります。これはちょっと横道に入りまして申しわけありません。
  27. 赤桐操

    赤桐操君 大臣、私、歯どめの問題を今心配しておるんです。皆さんみんなそれを考えておると思うんです。少なくとも今のお話の中では、国の財政状況を勘案しながらできる限りそういうことはやらないようにするんだと、こう言っているわけでありますけれども、この国の財政状況の勘案の問題あるいはできる限り行わないように努めると言ったって、私どもにしてみれば、これは機能しないだろうと、こう考える。あなた方の方は、これはかなり大きな重みがあるんだと、こう言っておるわけですが、そうなってくると、考え方についての相違があるように思うんですね。どういうようにこれは理解したらいいんですか。
  28. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 今お話しのように、特例公債借りかえを認めると歯どめがなくなるのではないかという御議論は、これまでの御審議の際もいろいろ御心配が出ておったわけでございます。したがいまして、我々としてもこの問題につきましては非常に重く受けとめておりまして、今回法案をお出しする際も、これにつきましては、いろいう可能な限り検討し、いろいろのものを歯どめとして置けないかということを考えたわけでございます。  そこで、借りかえ禁止規定を削除いたしますと、まず第一に、制度面でどういう問題があるかということと、それから財政の運営面でどういう節度を保っていくかというふうに二つに分けて考えられると思います。  まず第一に制度面でのお話でございますけれども、御存じのように、国債整理基金特別会計法第五条の規定をごらんいただきますと、そこには国債借りかえについてきちっと限定が入っております。そのところを読んでみますと、「償還ノ為必要ナル類ヲ限度トシ」ということでございます。したがいまして、借換債発行いたしましても、これはあくまで償還のためということで、大きく枠がかかっているわけでございます。  それから、それでは制度面で具体的に償還のためとは言うが、どうやっていくかという点でございますが、これにつきましては、先ほど来いろいろこの場で議論がございましたように、さしあたり最少限四条公債償還ルールによることとするが、しかし財政事情が許せばできるだけ速やかにその残高を減らしていく方向で努力するということでございまして、その点につきましても、くどいようでございますけれども法案の中にそのための努力規定を入れているわけでございます。制度面ではそういう点の措置を我々としては念頭に置いているわけでございます。  次に、財政運営面でどういうことがあるかといいますと、これはまず第一段階といたしましては、いわゆる新規財源債としての特例公債から六十五年度に脱却することに全力を注ぐということでございます。御存じのように、新規財源債というのは、新たに生じた貯蓄の中から消化してもらうわけでございますから、これは六十五年度までに全力を挙げてそういう財源債の発行から脱却する。脱却をし終わりますと、もう特例公債はそれ以降は残高がふえないわけでございますから、その六十五年度に残りました残高、一応仮定計算例でいきますと六十六兆円程度ございますけれども、これをその後、第二段階としてその残高をできるだけ減少していく方向であらゆる努力を払っていくということで財政運営を行っていくということをしばしば国会等の場を通じまして明らかに申し上げているわけでございます。
  29. 赤桐操

    赤桐操君 そういうことは、あなた、当たり前の話なんで、歯どめじゃないよ、そんなものは。これは少なくとも財政運営の原則じゃないですか。それは当たり前の話ですよ。それなら何も六十年に延ばしちゃってそんなことをすることはない。このままずっと償還期限が来たものについて努力しながらやっていってできるはずじゃないですか、財政状況よくなれば返せばいいんですから。できない場合には国会のこうした機関に諮って相談していくということで、財政民主主義を貫いていけばこれはできるはずだと私は思うのですよ。そういうことは私はちょっといただけないな、これは残念ながら。その規定や条文は当たり前の話ですよ。これは原則なんだ、財政当局の当たり前な当然踏まえておかなきゃならぬ原則じゃないですか、それは。特例公債発行の経緯から考えてみてもこれはもう当然のことであって、ここで言わずもがな、載せるほどの内容じゃないと、こういうふうに私は考えるのですがね。この点はいかがですか。
  30. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは特例債というものは可能な限り財政事情の好転なり、あるいは歳出の削減なりで返すべきであると、これは当然のことであると思うのです。しかし、借りかえをせざるを得ない状態に立ち至ったという変化からしますと、五十九年度発行いたしますものに対して借りかえ禁止規定を付さない。が、それの償還期が来るよりもなお苦しい財政状態の中に来るであろう既発債の償還期というものを考えれば、整合性からいえば既発債をも含めて借りかえ禁止規定はこの際外さしてもらいます。されば、特例債のこの本来の性格というものはどこに残るかというあかしは、当たり前のことだという批判をいただくのは当然でありますが、この訓示規定というものがあることによってそれのあかしというものを法文の中に生かすということもまた、この国会国民に対するあかし、そしてなすべき法文の中へ入れるべき性格のものではないかという考え方に立ったわけであります。
  31. 赤桐操

    赤桐操君 同じことを繰り返して御答弁いただいておりますけれども、実際簡単に言えば、これは私ども立場からすれば、何も歯どめじゃないじゃないか。全くのしり抜けじゃないのか。このままずるずるずるずる六十年金部建設公債と同じように扱われていくことになるんじゃないか、こう僕は質問しているわけなんです、はっきり言えば。それに対する答弁になっていますか、今の御答弁は。国民に納得させられますか、この論争を通じて。私は端的にお伺いしているんですよ。これは歯どめになりますかと言っているんですよ。気にもしないでしょう、こんなものは。  これは今まであなた方財政当局として当然の常識であり、当たり前のことじゃないのか。これは言わずもがなのことじゃないのか。大蔵大臣、大変もっともらしく説明されるから聞いているとだんだんだんだんそんな気になってくるけど、終わって帰ってみてよく考えてみると、何かごまかされたような気がするんです。予算委員会でもよく僕はごまかされたんだが  ちょっと失言しました。これは訂正しますが、なかなかうまいんだ、大臣は。だから、だんだんだんだん引きずり込まれていくんだけれども、後で考えてみると何のことはないんだ。私が質問したことは一つ答弁されてないということが後でわかる。どうも今もそういう形で引きずり込まれたような感じがするので、これはいかぬと思って、今、私もはっと自分に返って言っているわけなんだけれども、これは大臣、まじめに質問しているのを、国民の代表で僕ら質問しておるんだからごまかしちゃいけませんよ、ちゃんとはっきり言わなけりゃ。  大体この訓示規定というものは無理な話だよ。私はそう思う。率直に申し上げて、これはしり抜けたと言わざるを得ないと思うんです。しり抜けの法案ですとあなた方言えないから、この訓示規定は我々の努力目標規定でございますと、こう言っているだけのことじゃないですか、端的に言えば。しかし、これは間違いなく訓示規定ですよ。効果を発揮するということはあり得ない、私はそういうふうに考えている。これは日本だけじゃない、諸外国でもそうだけれども、借金財政へ一遍入ったらなかなか脱却できないんです。そういう事実から考えていってみても、そう簡単なものではないということがわかる。そこで、このための起債に少なくとも一定のもっと厳しい義務づけをすべきではないのか、返還に対して。そういうことを言っているわけなんです。答弁になっていませんよ、残念ながら。
  32. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、だから最小限の措置として、今日ございます建設国債と同じ償還規定は最少限の措置としてあるわけでございまして、本来はあしたにでも、これは不可能なことでございますけれども、返していくべき、減らしていくべき性格のものでございますだけに、そこに新たなる償還計画に対する法文等をつくるというのは、これは事実上その理由を見出すことは難しい。これは私も表現に随分工夫されたと思います。「特別会計において特例公債の借換えを行うこととした場合、その償還ルールをどのように定めるかが問題となるが、本来、できるだけ早く残高を減少させるべきである特例公債の性格を考えれば、あらかじめ新たな一定の年限による償還ルールを設定する適当な理由は見出し難いと思われる。」。なるほど言われてみればそうだな。私も考えてみてなかなか適当な理由は見出し難いなと。そこで、「特例公債の具体的な償還方法については大量償還の始まる六十年度を目処に、幅広い角度からの議論を行い、なお検討を進めていくことが適当と考える。」というのを財政審の小委員会の報告でことしの一月十八日にちょうだいしたわけであります。  本来、おっしゃるとおりに、早く残高を減少さるべき性格の特例公債でございますから、だがしかし、今おっしゃいましたように、これが無限に続いていくということの最小限の歯どめは何ぞやということになりますと、既になじんでおります建設国債と同じものを最小限まず置いていく、それで大量償還の始まる六十年までに国会議論等を集約しながらこれを考えて検討していこう。が、訓示規定というものが仮になかったといたしますならば、これまた赤桐さんからしり抜けの標本じゃないかと言われる。訓示規定というのは相当なあかしとして、赤桐さんにはそんなのはあかしじゃないとおっしゃるでしょうが、私はあかしとしてこれが残っておると思います。財政節度というものは、いかに訓示規定だ、努力義務だとおっしゃっても、それはあかしとしてあるべきのが本来の姿じゃないか。  この議論はある意味においてエンドレスに続く議論のような気も私もいたしますし、仮に私が赤桐さんとそのところを異にしておったとすれば、今赤桐さんのなさったような質問を一生懸命でするであろうなということを考えながら本当は御提案申し上げた法律であります。これは正直に申し上げます。
  33. 赤桐操

    赤桐操君 これでやられちゃうんだ。  それで、私も非常に口くどく申し上げるんだけれども、ずっと今までのことを考えてみますと、四十年に建設国債発行が行われてきております。それから五十年度から赤字国債特例公債発行されてきている。そして五十九年度の段階で赤字国債借りかえが提案されてきている。十年に一遍ずつこういう形でもって国債政策というものをめぐって不健全化の度合いを増してきているわけですね。これは大臣お認めになると思います。しかも、この間に国債になれ過ぎてきておって、大蔵省財政当局はもちろんでありますが、警戒心もかなり薄らいできている。あるいは国債に対するところのいろいろ危険であるとか、一番最初にこれが扱われたときのそういう初心というものがなくなってきている。これは大変な段階に今置かれているように私は考えるのです。国債に対する見方とか受けとめ方や扱い方について私はそういう気持ちになっていると思うのです。だから、こうしたものが、訓示規定のようなものを入れて、いかにもそれが大きな歯どめのような格好で説明をされるようになってきている、そうした背景があるのではないか。そういう精神的な状態環境がつくらられてきているのじゃないだろうか。これは四十年以降二十年間を顧みてみると恐ろしい現象じゃないかと私は思うのですが、大臣はそういうようには考えられませんか。
  34. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の赤桐さんの議論はいわゆる国債麻薬論、少しオーバーな表現をしますと、それにつながるのではないか。一遍その政策、なかんずくそれが特例債であった場合、国民歳出削減の痛みかあるいは負担増の痛みを分かっことを求めなくして、特に日本の場合、世界に冠たる貯蓄率でございますから、そういうものがあるだけにイージーになって、振り返ってみたら、後世代にまさにツケを回す安易な財政運営の体質になれて、一度手を突っ込んだ麻薬に侵されたと同じような体質になってしまっているんじゃないか。それは私も国債がある時期における不況時等において、大きな景気てこ入れ策として財政が対応する場合の機能としては十分に認めますが、なかんずく特例債の持つ性格は麻薬論に通ずるものがあるという事実認識は私自身も持っておるつもりでございます。それだから難儀しているわけでございます。  もう一つ、これは私見でございますから大蔵省考え方であるわけじゃございませんが、よく私、議論をする中で考えることがございますのが、いわば間接税の問題について、麻薬などという表現をしようとは夢にも思いませんが、間々かつての先進国等で間接税依存型の財政運営になった場合に、入る直前まではかなりの批判を受けつつも、一度入ると物価に転嫁すればそれで済むという安易さから、どんどんどんどん直間比率の間の方がふえ過ぎていって、それが気がついてみたら五〇とか六〇とかが国民負担率となって、そして隣の失業保険をいただいていらっしゃるおじさんと勤労しておる青年との間に、隣のおじさんを自分が知らず知らずのうちに養っているということから、勤労意欲そのものを失わしめてきたというのがよく言われる先進国病というやつじゃないかなと、こういう感じです。これは私の自論で申し上げたわけじゃございません。そういう議論をよくする場合がございますので申し上げただけであります。  したがって、間接税というものにも、もちろんこれはいい面がございます。選択の自由もございましょう。そして総じて脱税は少ないでございましょう。が、しかし、それのみに傾斜がかかり過ぎた場合、そのようなこともあり得るという感じを持ちながら、それ以前にもっと、今御指摘なすった麻薬論といいますか、特例公債に体質がなれていった場合、それは大変なことになる。その節度だけは持ち続けていかなきゃならぬ。したがって、いわゆる政策インフレといいますか、調整インフレということにも私はくみしてはならないことだと。戦時中の国債が超インフレの中に、我々に何の痛痒も感じないままに消化されたということは、あれはちょうど同じ年配の我々としまして、敗戦とか大混乱とかいう中に、我々はそれがアブノーマルなものであるということを全体がアブノーマルだから許容したんじゃないか。我々の子や孫がそういうものを許容するような環境をつくらしてもならぬし、またそういうものになじむものではないから調整インフレというものにもくみすことができない。  これは若干自論でもございますけれども、そういうことを考えておりますだけに、今赤桐さんの指摘される、いわゆる特例国債に歯どめを失い、財政節度を失う体質になってはいかぬということは、絶えずみずからの心に言い聞かせ、国会等でも指摘を受けながら、絶えず指摘を受けて、余り毎日指摘を受けておりますとマンネリになりがちな点もないわけじゃございませんが、その衝にある者はそのことだけはいつも考えていなきゃいかぬことかなと。幾らか赤桐さんに引き込まれまして、ちょっと横道にそれましたけれども、素直に申し上げます。
  35. 赤桐操

    赤桐操君 私は、この赤字国債借りかえ禁止の問題が取り除かれて今提案されているわけですけれども、これでまいりますると、一つの大きな財政運営上の新しい転換期に入るんじゃないか、こう思うんです、率直に申し上げて。ここで大きな歯どめがなくなるということになるわけで、そうすればこれはある意味においては、二十年前、四十年当時に国債が初めて発行されるときに大論争が行われて、幾つかのこれに対する非常に貴重な三つ、四つにわたる論議が集約されておりますね。  しかし、現実の問題として私はそれを考えながら、今この提案を見ると、まさに二十年前の四十年当時に匹敵するか、それよりもっと大きな段階に来ているんじゃないか、こういうふうに考えさせられるんです。大臣は大分慢性化されておるかどうか知りませんが、率直に申し上げてそういう事態じゃないだろうか、こう思うんですよ。ということは、これで政府自体として私は解放されたといっても過言じゃないと思うんですね。精神条項だけなんだから、何の圧迫感もなくなると思うんですよ。  それで、言うなれば、この赤字国債は端的に申し上げれば、六十年間どっぷりつかり切っていくことができるわけなんです。そういうことにすればできないわけじゃない。これはまさにたれ流し状態と同じだ、私はこういうふうに言わざるを得ないわけなんです。  だから、今回こういう大変な措置がとられることになれば、私は二十年前の状態ところじゃなくなるんじゃないか、もっと重大な転換期に入ってくるんじゃないだろうか、こう考えるわけでございます。  大臣はどのようにこれを受けとめておられるか、ひとつ伺っておきたいと思うんです。
  36. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 昭和四十年度予算の補正のときでございます。当時、佐藤内閣大蔵大臣が福田赳夫先生、で昭和四十年七月内閣改造がありまして、それから議論をされて、私は内閣官房副長官でございました。今までの閣議というものの中で、あのときぐらい閣議の長かったことは私の体験上ございません。  しかし、あのときは、今日と非常な違いがありますのは、確かにオリンピックの翌年でございますから戦後最大の不況でございました。したがって、まさに戦後最大の不況のあのときだから、建設国債でもなければ今で言う特例債でもない形の公債でございます。  それで、いろいろ議論されたのは、インフレに対する歯どめという問題がございました。が、結果として、あれは即効性があった。だから戦後最大の不況も、高度経済成長が昭和三十五年から始まりましたといたしまして、その半ばで戦後最大の不況が一時的にあったが、私は公債政策が最も巧みに機能した結果としては即効的役割を果たしたと思います。今度の場合、より悩みますのは、まず即効性がございません。借りかえ禁止規定を外すことによって、あしたからよくなるという即効性がございません。そういうところにこれを議論しますにつきまして、五十七年度補正予算ぐらいのときから逐次御議論をいただき、そして五十八年度予算のときからまた御議論をいただきながら、財政審に持ち込んで基本的な議論をしていただかなきゃいかぬのだなという方向を、自分で誘導したわけじゃございませんが、たどってきたわけでございます。たまたま私自身が続いてこの職におりましたので、そういう経過をたどったというふうに思うわけであります。  でございますから、この問題の重要性というのは、なかんずく即効性の期待された四十年度などというものを考えてみますと、大きな相違のある問題でありますだけに、より重く受けとめるべきことではないかという事実認識は私もいたしております。赤桐さんから質問を受けても、多少ニュアンスにちゅうちょ逡巡しつつも、五十八年度特例債借りかえ禁止規定があることによって歯どめでございますと申し上げておるんですから、同じ人間がやや同じような委員会で、今度はこれもやむを得ざる措置でありますと、こう答えておるんでありますから、それは心中じくじたるものがあるということは、これは事実であります。
  37. 赤桐操

    赤桐操君 私は、そこでずばり伺いたいと思うんですが、要するに私どもの受けとめ方からすれば、このままでいくならばたれ流し的な状態になっていくんじゃないかと、こう考えるわけです。したがって、この赤字国債が少なくともゆるふんの状態になっていくということになれば、必ずこれは財政素乱が出てくるわけでありまして、何としても赤字国債だけは早期に処理していかなきゃならない、そういう性格のものだと思います。したがって、この赤字国債、十年の償還の原則、これだけは絶対に放棄すべきじゃないと、こう考えるんですが、この点はいかがですか。
  38. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 今委員の御質問の御趣旨は、赤字国債を十年で償還するという従来の方針はこれを放棄すべきではないということだと理解いたしますと、現在の借りかえ禁止規定をそのまま置いておくと、こういう御意見理解してよろしゅうございますか、今の御質問は。
  39. 赤桐操

    赤桐操君 そうです。
  40. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) その問題につきましては、今回の法案委員の御意見と違う内容になっておるわけでございまして、これにつきましては、本委員会において今までるる政府当局といたしましても法案の趣旨を御説明申し上げたわけでございますので、我々としては委員の御意見と違う法案を今お出ししてお願い申し上げているということでございます。そういう意味でよろしくお願いしたいと思います。
  41. 赤桐操

    赤桐操君 いろいろと大臣財政当局の説明を承っているというと、どう私たちが皆さんの立場に立って考えてみてもこれは歯どめにならない、機能しないだろう、こういうように考えられるので、いろいろお尋ねの結果として、十年という期間というものはとうとい期間ではないのか、これはもう我々は死守すべきではないのかと、こういう感じになって今申し上げているわけですよ。私ども立場からはそういうような提案をしておりませんから、よろしくお願いしますと言われたんじゃ、今の論争は何にもならないことになるわけです。あなた方の意見も聞いた、私の言うことも聞いてもらった。しかし結果的には歯どめになりますと言い切れないじゃないですか、皆さんの方からだって。だとするならば、十年という今日までやってきたところの実績というものはとうといことでないのか。この十年をとりあえずきちっと守っていくという姿勢は国民の皆さんに対しても出さなきゃならない。国債というものは国民の皆さんの信頼がなければ成り立たないものでありますから、その国民の皆さんの期待にこたえる道ではないのか。幾ら財政運営が厳しいといえども、少なくとも筋目というものを立てるべきじゃないのかと、こういうことで今申し上げているわけなんですよ。ですから、法案の修正を行って、これは少なくとも十年で償還するようにすべきじゃないか。大蔵大臣いかがですか。
  42. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに特例債十年償還というのは今までのもとより原則でありますし、だから今度の場合は、十年ごとに一枚一枚は現金で償還をいたします、それは守りますが、償還のための財源借りかえという措置によって行わなければならなくなったのを許容していただきたいという性格でございますから、確かに赤桐原則論に対してはその方法は変えてくださいと、こうお願いしておるということを率直に申し上げざるを得ないというふうに考えます。
  43. 赤桐操

    赤桐操君 この赤字国債償還について、私は歯どめということをずっと一つ考え方の基本に置いて今お伺いしてきたわけでありますが、これは五十九年度のものについても同様であります。少なくともこの歯どめの考え方に立って原則的にやるべきじゃないかと、こういうことを重ねて申し上げておきたいと思うんであります。  それからまた、今いろいろこれからの問題について言われておりますが、今後の問題についても、六十年ずっとたれ流しでいかれたんじゃ困るわけでありまして、これに対する一定の歯どめというものを具体的に今私が申し上げたような形でとるべきでないかと思うんですよ。このことについては大臣はいかがお考えですか。
  44. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる歯どめ、いろいろな歯どめがございましょう。一つは、政府が明らかにしております六十五年度までを努力目標として、まずは新発債を抑える努力をいたします、その後残高全体を抑えますと、これも一つの歯どめだと思います。それから申し上げましたいわゆる努力規定訓示規定、これも歯どめであると思います。しかし、今まで非常にわかりやすかったのは、特例債借りかえいたしませんと、これはまさに歯どめとして国民にも非常にわかりやすかった。それが借りかえをもせざるを得ないということになると、その歯どめがなくなってしまう。そうすると、これに対する今の借りかえ禁止規定に相応するような一つの歯どめとしては、一つ考え方としては、六十年の三分の一の二十年とか半分の三十年とか、あるいはそういう議論もあり得るかもしれません。しかし、それは可能な限り速やかに返すべきものを一つの年限を提示することは、直ちには正当な理由がそこには見出しがたい。そこで、大量償還の始まる六十年までに衆知を集めて検討をしなさいということに財政審の報告等もなっておりますので、そういう報告等に基づきながら、国会論議等を通じて、その問題に真剣に検討を続けていきたいというのが本日申し上げる限界ではなかろうかというふうに考えます。
  45. 赤桐操

    赤桐操君 私はいろいろお尋ねしてきた一時間余にわたった内容をもっていたしましては、残念ながら政府の説明は国民皆さん方を納得せしむることにはならないじゃないかと、こういう結論に到達をいたしました。したがって、今申し上げた考え方について、政府自体として再検討されることを強く要望いたしておきたいと思います。  それでは、時間の関係がありますので、財確法と電電公社特別納付金、専売公社の納付金関係の問題について若干伺っておきたいと思います。  この財確法案四条では、電電公社から二千億、専売の方から三百億、合わせて二千三百億の納付金を納付させることにいたしておりますけれども、これについての経過の御説明を願いたいと思います。
  46. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 五十九年度予算の編成に当たりまして、歳出面では、御存じのように、一般歳出伸びを対前年度若干、三百数十億の減というような厳しい予算を組んだわけであります。しかし、片方歳入面におきましては、そういう中で税外収入等も努力いたしましたが、やっと赤字公債について五千二百五十億円の削減が可能となったような大変厳しい状況であったわけでございます。そういう厳しい予算編成の中で、今申しました税外収入を何とか確保できないかということで各方面にいろいろお願いしたのでございます。  その中で、電電公社と専売公社から納付金をいただけないかということで、従来納付金をいただく場合には積立金を取り崩していただいていたわけでございますけれども、今回は、そういう積立金ではなくて当期利益金の中から、いわゆるストックからではなくてフローから納付していただこうということでお願いしたわけであります。電電公社について申し上げますと、見込みではございますけれども、五十八年度において三千四百億円の当期利益金の見込みがございますので、その中から二千億円ということでございますし、専売の方は、六百億ちょっとの見込みでございますので、その中から三百億円ということで納付をお願いするということでございます。その意味での規定を今回の御審議願っております法案の中にも入れておるということであります。
  47. 赤桐操

    赤桐操君 電電公社の方からの四年間にわたって納めた金額は四千八百億円、こういうことになっておりますね。五十九年度分については既に前倒しで納付済みである。それをさらに今回追加納入をさせる、こういうことになるわけだ。これは大変酷なやり方だと思うんですね。また今三千億の剰余金が出ておると言っておりますけれども、電電公社というのは政府とは別な公益法人ですよ、率直に申し上げて。公社の経営努力と電話加入者の利用の中から出てきた利益金じゃありませんか。これを一般会計の穴埋めに使うということについては、本来これはやってならないことじゃないかと私は思うんですね。この点私は、政府の姿勢については若干安易過ぎるんではないだろうか、こういうように考えております。  それで、今の電話料金なんかの値上げ等も考えてみると、値上げは受益者負担で全部行われてきている。しかし値下げはやらない。受益者に対する還元はいささかもしていない。そうして三千億を超えるその金については剰余金とみなしている、召し上げる。たばこについても同様の形をとる。こういうことは、これは本来なさるべきことではないのではないかと、こう思うんですが、この点いかがですか。
  48. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 電電公社から納付金をちょうだいするということは今、赤桐さん御指摘のような問題がございます。それは中距離を下げるとかいろんな問題をも含めて、絶えず念頭に置いておった問題でございますが、政府としての考え方は、先ほども申し上げましたが、とにかく予算編成において徹底した経費の節減合理化を行うと同時に、いわゆる税外収入というものの見直しを行って、財政改革のあかしたということで公債減額を最大限にやろう。そこで、電電公社に対して二千億円を国庫にお納め願いたいと、こういうことをお願いするに至ったわけであります。専売公社も同じことであります。  とにかく、今までちょうだいをしておりますだけに、それを一年繰り上げてちょうだいして、これで約束終わりというところへまた五十八年度の利益の会計からとはいえ、そこへ手を突っ込んだ――手を突っ込んだはちょっと表現は悪いですが、お願いをしたということでございますから、それなりにはじくじたるものが私なりにございました、今後こういう措置はとりませんという趣旨の答弁をしてきておるわけでございますから。  しかし、だんだん見てみますと、電電公社、今本社へ行ってみましても、エレベーターが使えぬようになっております。エレベーターが使えないようにという表現はちょっとおかしいんですが、要するに皆三階までは歩いていけと、そういう厳しい経営姿勢の中で合理化されておる。そういう努力の中で毎年度、五十二年度以降、三千六百億円から四千五百億円の利益、だから大変良好な経営にある。五十八年度においても三千四百億円程度の利益が見込まれる。そうなれば、税外収入ということを国会でたびたび申し上げておる立場からすれば、私が昨年の暮れぐらいの国会で、よだれが出るほど欲しいものではございますということをアナウンス――アナウンスじゃございません、予告と申しますか、素直なそういう気持ちを一遍お伝えしておきまして、それから随分お願いをいたしました、御協力をいただいたと。これには深くこうべを垂れて、ありがとうございますと言うほかにはないというぐらいな気持ちでございます。
  49. 赤桐操

    赤桐操君 時間の関係がございまするから、御答弁も簡単に願いたいと思いますが、要するに、五十九年度納付金、これは私は賛成できません。一般会計がいかに苦しいからといって、こうした筋違いのことというのは許さるべきものではない。まさに見境のない取り方だと言っても過言ではないと私は思います。  そこで、次に移りたいと思うんでありますが、電電公社の民営化と株式の関係が大分最近論議されてきている。新聞にも出てきておりまするし、各種雑誌にも載せられてきておる。そこで郵政関係の担当の方から伺っておきたいと思います。簡単にひとつ要約してお願いしたいと思いますが、電電公社に関するところの民営化の法案が今出ておりますね。これについてはこれから大論議がなされるだろうと思いますが、仮にこれが実現されたと仮定しますね、公社が民営化されていく。この場合の株式のプロセスを御説明願いたいと思うんです、どういうふうに推進していくのか。
  50. 五十嵐三津雄

    説明員五十嵐三津雄君) 現在、国会に提出をいたしております日本電信電話株式会社法案、この法案の中で株式の扱いがどうなるかということを簡単に御説明申し上げますが、電電公社を民営化し、株式会社化していくという中にありまして、法案で予定しております期日、六十年の四月でございますが、このときに、株式は電電公社に割り振られる、そのときに割り当てられる、これに対して、現在の電電公社が丸ごと現物出資する、そして割り当てられました電電公社のその株式は無償で政府に譲渡される、こういう過程になってございます。処分の問題につきましては今後の課題になっているところでございます。
  51. 赤桐操

    赤桐操君 そうしますと、これがまた一つ大きな問題になるんですが、新聞などで見ると、大分財源確保の関係でこれがまたねらわれてきているというように思います。  最初、全株を電電公社民営化と同時に公社関係が持っているわけですから、それをそのままお伺いいたしましたとおり国の方に移管される、それを大蔵省が保管されることになると思うんですね、所管省として。そうすると、これが三分の一になるまで売却していくわけでありますから、当然そこには利益金が出てくるわけですね。こういう場合において、これは行政の考えだけでもって専行されるということになるというと、これは、先ほどの話しやありませんが、もっと大変がめついやり方が出てくるだろうと思うんですね。今あるところの電電公社の持ち株というもの、想定される持ち株は、これは経営努力と、さらに加入者の協力によって得たものでありまするから、それはそういう形でもって専行さるべきものではないと思うんですね。これは明確に一つのルールに従ってその処置というものがなされていくべきだと思いますが、大臣、簡単に御答弁願いたいと思います。
  52. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この問題、各方面でいろんな議論があることは私も承知しておりますが、しかしこれは法律が通ってそういう事態になった六十年度以後の問題として、また株式の売却につきましても国会の議決も要することでございますので、検討すべき問題である。今よく言われております、大蔵省はそれを全部財政再建の原資にしようと思っているんじゃないか、一方ではもっと研究開発にと思っているんじゃないかとか、いろんな議論もされておりますが、私はそれは六十年度以後に議論されるべき課題であろうということで冷静に見守っておるところであります。
  53. 赤桐操

    赤桐操君 重ねて念を押しておきたいと思いますが、これは本来的には、電電公社から大蔵省に移管されたとしても、いわゆる一般の扱いになるべきような財源ではないと、こういうことだけ一つ申し上げておきたいと思います。  それからまた、その性格は、今申し上げたとおり、これは国際電電にしても、今の電電公社にいたしましても、技術革新の企業努力というものは大変なものです、率直に申し上げて。そういう状況の中で得たものであるし、また加入者の協力によって得ているものでありますから、この点はひとつ重ねて念を押しておきたいと思います。  最後に、総括的に私の考え方を申し上げておきたいと思いますが、この約二時間にわたった論争の中で、残念ながら、私はこの提案されておりまする昭和五十九年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案、これは私は残念ながらこのままでいただくことはできません。この特別措置に関する法律案として、そして五十八年度以前のものについては別な法案としてこれは審議をいたしたいと思います。もちろん、五十九年度の差し迫った財政運営に必要な財源確保を図るための論議については、これは当然先行すべきであると思いますが、その他の既発債の問題等を中心とした、これからのいわゆる「等」の中に入る部分につきましては、別な扱いとしてこれは政府の方で考えていただくべきだろう、私ども同一の論議はできないと、こういうことを最後に申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  54. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 前回、私は予算委員会でもかなりこの借換債のことについてお伺いしたんですが、そのことからまず最初、後追いをしてちょっとお伺いをしたいと思います。  あのときに大蔵大臣が御答弁をなさいました、特定の日に償還が大量に来るという問題がございます。その特定の日に償還が大量に来ると、例えば六十年の五月二十日が一兆六百七十六億、十一月二十日が二兆二千五百九十四億というふうになると、六十三年の五月二十日は三兆五千百五十四億円という大量償還のときが来るわけですけれども、そういうときにどういうふうに資金繰りするかということについてお伺いした。そのときの大臣答弁の中に、国債借換問題懇談会というものをつくっている、そういうのは前からあったものだけれども、そこで今いろいろお話をして議論をいただいていると、こういうことで答弁がございました。そうして市場の動向とか投資家のニーズとかいうことを勘案して、国債の多様化、そういう国債管理政策の運営をしていかなきゃならないだろうと、こういうふうに言っているけれども、まだ議論の段階だというふうに言われているんですが、それから以降の方向はどういう方向に動きは行っておりますか。
  55. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは借換懇の模様につきましては、理財局長が来ておりますので、正確には後で理財局長からお答えする方が適当かと思いますが、今でも私どもはあのとき鈴木さんに申し上げました方向と大体一致しております。  それで、借換懇というのは、今も御指摘になりましたとおり、今度の特例債借りかえるためにつくられたものではございません。これは理財局長さんの方の相談機関として存在しているわけでございますが、従来とも建設公債等の借換期が来ておりますのでいろいろな貴重な意見を賜っておるわけでありますが、私どもといたしましても、せっかくそういうところでそういうことが今までなされておりますので、これらの御議論というのは非常に参考になる御議論であるという認識のもとに引き続きお願いをしておるわけであります。  その際、鈴木さんなら鈴木さんにも、国債そのものが多様化しておるし、ある日あるとき突如として、まあ突如じゃございませんが、ある日あるときに集中して大量な償還が来ますと、いろんな意味でそれを散らしたりするためにも、あるいは多様化の中で短期国債とかいろんなものが考えられるんじゃないかという趣旨の御議論というのは、専門家議論の中によくある議論でございますので、それが既に出て今議論されておるという状態で申し上げたわけではございませんが、国民のニーズというものによって今までも中期債など山さしていただいておるわけでございますが、いろんな角度から、その多様化の問題ということもございますし、検討をしていかなきゃならぬ課題だというふうなこの問題については事実認識を持っております。が、最近の模様につきましては、あるいはお許しいただくならば理財局長からお答えをいたします。
  56. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 補足して御答弁を申し上げますが、大臣から御答弁がありましたように、国債借換問題懇談会で六十年度以降の国債借りかえをいかに円滑に進めていくかということにつきまして議論してもらっておるところでございます。  予算委員会鈴木先生御質問になったのはたしか三月の中旬だったかと思いますが、あの当時までにたしか五回ぐらい会議を開催したと思いますが、その後も二回ばかりやっておりまして、これからもしばらく続けて懇談会の中でもコンセンサスの形成に努めていきたいと、こういうことでございます。  そういったことで検討を進めている段階でございますけれども、煮詰まっていないという意味ではあの当時と今とそう変わっているわけではありません。非常に活発に御議論いただいておりますが、まだ結論を得るというような段階には至っていないということはお断りしておきたいと思います。
  57. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 あのときの段階から現在に至るまで煮詰まってきていないと。いろいろ資料もいただいて見たんですけれども、率直な御意見等を承るために非公開とされているということですからどういうことが議論されたかわかりませんけれども、しかしその当時と現在と変わらないということになると、大臣が御答弁するときには借換懇もございましてそういう議論もいただいた上でという、何かこれは隠れみのにだけ使っているような感じがしてならないんで、何かそういう点でどうもぴんとこないわけです。  だから、当然これは私的な諮問機関というか懇談会だろうと思いますから、全体の意見としてまとまって出てくるより、個人個人の意見が局長のもとへ反映され、それがこれからの運用の方へ出てくるということでしょう。メンバーを伺うと、大変立派な人ばっかりでございますから、しかも業界関係というか関係者が多いことですから、そんなに簡単に物がいかないだろうと思うんですが、それにしては、大臣の御答弁がそういう問題は懇談会で議論をいただいてなんていうことをおっしゃるものですから、そうすると、これは何も出そうもない、下手をすれば進歩、進展もあり得そうもないものを何か隠れみのにして、御答弁の詳細なところを、大蔵省の本当の腹のところはお隠しになっていると、こういうふうに受け取れるんですがね。どうでしょうか、意地悪な質問なんですけれども
  58. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) そういうことでは全くございません。六十年代ということで、もう六十年度は次の予算期でございますので、それまでには準備を整えなければならないわけでございまして、私どもとしてはできるだけ早く結論を出したいと、こういうふうに思っております。  それから会議を非公開にしておりますのは、それぞれがそれぞれの業界に身を置いておられます。しかし、私どもといたしましては、そういう業界の代弁にとどまらないで、天下国家を考えて六十年度以降の借りかえ問題についての御意見を承りたいと、こういうことからひとつ遠慮なく意見を出してください、これは非公開にいたしますのでと、こういう約束になっておりますので、まことに申しわけございませんが、どういう議論がということはひとつ許していただきたいと思います。ただ、隠れみのというようなことを言われましたけれども、そんなことは決してないということをここで強調させていただきたいと思います。
  59. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それから、これは大蔵大臣、このときに、いわゆる一年未満の短期国債発行の問題について、これが念頭にないわけではない、そういう考えがないわけじゃなく、議論を進めている最中である、しかし現段階ではその議論は報告申し上げられないという答弁があったんですけれども、現状ではいかがでございますか。
  60. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これも短期国債発行する場合というようなこと、私ども考え方が全くないというわけじゃございませんが、事務当局の専門家は別といたしまして、私の議論はいささか思いつきの議論が多い傾向もございますので、したがってせっかく五十八年十一月でございますか借換懇、私的語問機関――最近は私的諮問機関という言葉もできるだけ使わないようにしております。何条に基づくものだという議論がありますから、まあ相談会といいますか懇談会、借換懇でございまして、その懇の中におきまして専門的ないろいろ議論の中で、私もまだ定かにこの問題こういうふうな議論がありましたという報告を受けてもおりませんし、あんまり早く報告を聞いておりますと、私自身の未熟者の頭の中へ何かが定着すると悪いような気もいたしますので、今は借換懇の中でいろいろな貴重な議論が行われておるその推移を見守っておる。したがって、鈴木さん、この辺まで議論しましたと、私はこう思いますというような段階には至っていないということを率直に申し上げます。
  61. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いわゆる大量償還ということで借りかえをする、そういうことにもし事態がなったとする。そのときに全部同じ商品で出てくるとは思わないわけですね。その中に中期、長期、そして短期国債も入るかということになるわけです。その短期のところが一年未満ができるように五十七年の省令改正でなっておりますからね。これは明らかに出てくるのじゃないかというふうに思うわけです。そういうふうに多様化も考えられるという程度の答弁ですけれども、間違いなく多様化されるかどうか、もちろん現金償還する部分もあるでしょうと思います。全部が全部借りかえられるんじゃないだろうというようにも思いますので、そういう点ではそういう方向性が考えられ得るか、ちょっともう一遍念を押したいのです。
  62. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 六十年度以降、五十年度から非常に国債発行が多量になっておりますものの償還期が参るわけでございます。先ほど大臣お答えになったように、私どもといたしましては、建設公債についての借りかえについてもそれまでと様相が大分変わってまいりますので、これを研究するということで始めたところが、特例公債についても借りかえるという方針になりまして、その分も含めて借換債をいかに円滑に発行していくか、さらに新規債につきましてもまた六十年度以降相当な規模を予定せざるを得ない、だから新規債、借換債あわせまして相当規模のものを市場で消化しなければならない。そういうことになりますと、市場の資金の中にいろいろな性質のものがございますので、ニーズに合わせまして必要な期限を持った公債発行をしなければならない。現在出しておりますのは、基本的には十年利付国債とそれから中期国債と言われているもの、これは二年、三年、四年の利付がございます。それから五年の割引債がございます。それから市場の状況によって超長期というものも出しておりますが、こういったものだけで対応できるかどうかということから、国債の種類の多様化ということも重要な検討課題であるということで検討いたしておることは事実でございます。  で、多様化の方向といたしましては、今出しておる種類以外のものということで、超長期の方向におきましても、短期の方向におきましても検討いたしているわけでございます。私どもといたしましては、国債の円滑消化、円滑発行ということで、必要があれば多様化に努めていきたいと、こういうふうに思っておりますが、マーケットの状況がどういうふうになるかということもにらみながら結論を出すべきものでございますので、必ずどうだというふうなところまで煮詰まっているわけではございません。ただ、重要な検討課題として検討いたしておりますし、必要があればそういった方向へ進めていきたいと、こういうふうに考えております。
  63. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今の話からすると、非常に短い期間の短期国債も出ざるを得ないと。しかし、そうすると、この前も指摘したんですが、蔵券とか、食糧証券とかというものとどうしてもぶつかってきますからね。同じような商品が出てくるとそれをどう消化するか、よほど気をつけていかないと短期の金融資産に対しての影響というものは物すごく大きな影響を与えざるを得ませんから、そういう点が金利の自由化と二つの方向であわせていくと、何だか国債の整理をするために借換債を出したおかげで異常な金利の高騰を招くとか、あるいはコールマネーについても非常にタイトな状況になって、今のような状況にいくんだろうというように予想されるわけですけれども、こういうような市場の実勢を見ながらと言われたんですけれども、その実勢を見ながらということになると、かなり変動するというか、多く出したり少なく出したりする部分は、短期の方が多くなってくるんじゃないかという感じがするわけですけれども、その辺はどうお考えですか。
  64. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) いずれにいたしましても、今後の国債管理政策は硬直的な姿勢ではなくて弾力的に進めていく必要があるんではないかと思いますが、その際に常に念頭に置かなければならないことは、国債の円滑の消化ということと同時に財政負担をできるだけ低く抑える、それから金融への影響をできるだけ小さくする、さらに将来の借りかえ負担ということもございますので、満期構成につきましてもそこのところは十分に考える。したがって、例えば短期の方が一時的には金利負担が低いということで魅力がありましても、満期構成につきましても十分考えながらその辺のバランスをとってやるということが、弾力的な国債管理政策を進めるに当たりましても必要なことではないかと、こういうふうに考えております。
  65. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今のことでちょっと関連して伺いたいんですが、対外関係の一括法案がありますね、今度これが通過するということになると、今度は外国においても国債発行は可能になってきますね。金利の低いのを求めて、今の答弁からすると、外国での公募をするという債券がふえてくるかどうかということです。それは政府としては金利の高いものよりも安いものの方がいいわけですから、国民に損失を与えないことになるわけですから、当然高い金利のものより安い金利の方に動くだろうと私は想像しますが、その点はどうでしょうか。
  66. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 現に政府保証外債につきまして外国で発行いたしておりますが、そういった政府保証外債の発行を決めるに当たりましても、利子負担というのが大きな要素でございまして、国内で発行する場合と比べて損得ということは常に念頭に置きながら発行すべきかどうか、発行条件をどうするかということを考えなければならないと思います。  で、今御指摘がありましたが、実は日本は今先進国の中で金利水準が高い方じゃありませんで、むしろ低い方でございます。そういった中で外国で利子負担日本以上に負担しないで発行するためにはいろいろと苦労が要るのが現状でございまして、今言われたような問題は今のところはむしろないと、こういう状況でございます。  ちなみに申しますと、十年利付国債を本邦で発行します場合とニューヨークの市場で発行します場合の利率といいますか、利子負担の率は、為替は別にいたしますと、五%以上の開きがあるんじゃないかなと、こういうふうに思っております。
  67. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今御意見を交えての御提言というのは現実問題あり得る問題。今理財局長からお答えをいたしましたが、政府保証債につきましても、従来金利の安いところ、それは政府が保証したり政府が関与したりしておりますと、それが日本の金利体系を大きくいびつにするようなものであってもならぬので、絶えず眼を海外にも開いておる。そこで特定国、あるいはスイスならスイスで発行いたしましょうか、で従来、公共団体、公的機関の場合は、これは私も前から多少承知しておりましたが、港神戸というので、神戸市が比較的昔からそれを巧みに発行しております。したがって、私は公営企業金融公庫にも入れたらどうだというようなことでそういう問題を逐次やっておりますが、ただ国債ということになりますと、政府保証債と違いましてロットが欠きゅうございますわね、片方ですとまあ百億でございますとかそういう単位になります。そういう意味においては非常に慎重に物を見ていかなきゃならない。  で、ニューヨーク市場ということになりますと、今理財局長お答えしたとおりの金利差が今ございますし、したがって、場合によっては、この間やりましたいわゆるスワップつきという方法によりまして、適当な相手、スイスで起債するニューヨーク市場を利用する人がおって、それと、現実このニューヨーク市場でこちらが起債をいたしましても、それとスワップすることにおいて結果として金利はアメリカそのものの金利ではなく、そのスワップの相手の国の金利になっていくとか、そういうふうな、私には余りよくわかりませんけれども、極めて何といいますか、細かい配慮をしながらやっておるというのが実情でございます。
  68. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今理財局長から、また大臣答弁から、現状では確かに金利差は私はニューヨーク市場であると思いますが、しかし大量国債借りかえということになってこれが発行されますと、どうしたって規制金利はだんだんだんだん全部なくなっちゃうだろう、日本の中に。そうすると高金利時代を日本も迎えるかもしれませんね。そういう時代が来るとまたかなり情勢は変わるんじゃないか、こう考えざるを得ないわけですよ。そうすると、今までは日本の国内だけでの借金ですから、まあ一家に例えれば、親が金がないから子供から借りたとか、女房のへそくり持っていったとかってことになるわけですけれども、今度はよそからということになりますと、はっきり今度は本当の借金という感じになるわけですからね。そういう点で何か歯どめとかそういったことについてはお考えがございますか。
  69. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) あるいは大臣からお答えすることかとも思いますけれども、とりあえず私からお答えいたしますが、先ほど申しましたように、利子負担というのは一つの要素でございまして、今御指摘になったような点、あるいはその市場において例えば発展途上国が起債をしなくちゃならないものをクラウディングアウトしてはならないとか、いろんな要素があると思います。そういった要素も踏まえてそういったときには十分検討しなければならない問題で、単に利子負担が安いからというふうな安易なことで外債の発行をするというわけにはまいらないのではないかなと、こういうふうに思っております。
  70. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今理財局長がお答えしましたとおり、今度の法律をつくりますにも我々意を用いましたのは二つあったと思います。一つは、これはたまたま鈴木さんと私は同じ一九二四年生まれでございます。我々の時代で外債発行といいますと、一つはスイス等を連想して、いわば良質な低利の金を求めていくという考え方と、もう一つはかっての戦費調達というイメージがわいてくるわけです。したがって、この法律をつくるにも少なくとも後者のイメージがわくような形は本当に一番避けなきゃいかぬ。  それともう一つは、今理財局長申しました、開発途上国が起債する場、いわば先進国の日本がそこの場を占領してしまうということに対する国際金融全体に対する配慮という問題を議論いたしました。ところが、いずれも幸いにして、各方面の議論は、それに対する懸念は、まあ思い過ごしという表現は適切かどうか、そこまで考え、そこまで議論を詰めているなら立派なものだと、そう褒められたというわけじゃございませんけれども、そういう議論もして実は今度のあの法律で、まあ俗称中曽根ボンドのお認めをお願いしようということになった経過がございますから、その辺の配慮は確かにいたしました。年代なら年代なりに、恐らく今の若い人はかつての戦費調達なんというものを全然考えないかもしれませんけれども、私どもの年配ではちょっとそんなことを考えたり、そういう国民全体の中に中曽根ボンドというのがどういうふうにイメージづけられるかという感じも十分検討いたしまして踏み切った措置でございます。
  71. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 借換懇のことでもうちょっと伺いたいんですが、国債借りかえの新ルールについて借換懇の方で、期間一年以下の短期国債発行する、借換債発行について単年度主義を撤廃する、借換債の消化についてもシンジケート団引き受けを採用する、そういうことで何か国債借りかえの基本的考え方をまとめたとの報道があるわけでございまして、それをもとに法改正を行うというようなことも出ているんですけれども、この点はどうですか。
  72. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 新聞にはいろいろな推測記事が載っているようでございますが、借換問題懇談会について申し上げますと、先ほど申しましたように、まだいろんな御意見を自由に出していただいている段階でございまして、一つの方向が出てしまったというふうなことではありません。あくまでもそれは新聞の推測記事ということだと思います。  それから借換懇を離れていろんな記事が出ているのもございますけれども、私どもとしては検討課題としていろんなことを考えてはおりますけれども、方向としてどうだというところまで煮詰まったものは現在持っているわけではございません。
  73. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 もう一つ国債発行については、新規発行分は一般会計、それから借換債については国債整理基金特別会計という現行制度に対して、昭和六十年度から始まる大量償還のことに対して新たに別の特別会計を設置して国債発行の一本化をし、国債発行しやすい方向にしよう、こういうふうなこともちょっと出ているんですけれども、この点はどうですか。
  74. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) その問題につきましても先ほどの私の答弁に尽きるわけでございますが、ただ、こういうことがございます。衆議院大蔵委員会におきまして堀昌雄議員から、いわゆる堀構想ということでそういう特別会計をつくったらどうだ、こういうふうな御提言がございました。それに対しまして、六十年度以降円滑に国債発行、消化をしていくについてはいろいろと工夫を要するということで検討しておりますので、そういった問題も検討の一つとして、今後検討さしていただきたいと思いますというふうにお答えをしたことがございます。私どもといたしましては、いろんな御意見があれば、今の制度にとらわれることなく弾力的に検討を進めていきたいというふうに考えております。
  75. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今ので大体わかりました。今のところは皆さんの御議論を踏まえてということが一本入っておりますので、これからのあれになるんだろうと思います。  いま一つは、これは大蔵大臣にぜひ伺いたいんですが、財政再建の問題が借換債には全部入ってくるわけですね。この財政再建のことについて、前回の予算委員会の席上で私が総理大臣に伺いました。総理大臣に伺って、西ドイツがやっているような財政再建についてのいわゆる財政再建法といいますか、予算均衡保持法とか、財政構造改善法とか、中期財政計画ということになるわけですけれども、そういったものをやるというような考え方はないかということに対して、総理は、将来の問題としても検討してみたいと思っているというような答弁が出ているわけです。もちろん野党の御協力がなければ云々とか、そういうことはございますけれども、よく見きわめた上でまとめたいと思うというような答弁があったわけです。当然、財政再建ということになれば、主軸をなすのは大蔵省だろうと僕は思います。この点については今のところどんなふうなお考えでしょうか。
  76. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この問題につきましては、私もその当時の事情は承知しておるところでございます。今までいろいろのことを考えてみますと、かつて行革関連特例法を五十六年にお出しいたしましたあれも、財政改革を進めていくための手段として一括法で出したという意味においては、財政再建法的な一部の性格を持っておるというふうに思っております。そういう問題は将来の課題としてあり得るのかなという感じがないわけじゃございませんが、鈴木先生がかねて御主張なさっておりますのは、むしろ、ドイツ等で行いましたいわゆる財政再建計画というものをまず定めて、それに向かっての一つ一つの手法を財政再建法という形でくくって、そうして進めていくという手法のように、私自身はそういうふうに受けとめたわけであります。  そうなると、その財政再建計画の方から一応議論を詰めていかなきゃならぬということになりますと、かねての御主張でございますが、アメリカの分を見ても西ドイツの分を見ても、言ってみれば後年度負担推計方式ではあるわけでございます。すなわち現行の制度・施策をそのままに置いてというところからいろいろ考えられてきておりますが、我が国の場合、現行の制度・施策をそのままに置いて考えた場合に、一体財政再建なり財政改革というのはできるかということになりますと、なかなか問題は難しいと思うんでございます。そこで、後年度負担推計方式でいわゆる展望とか指針にはそれを使わしていただいて今日まで来たわけでございますが、非常にリジッドな計画を立てるということになりますと、例えばレーガン政権が誕生いたしましたときの計画からいたしますならば、ことしは五億ドルの黒字になっておるという一応の計画を発表していらっしゃいますが、現実千八百億ドルの赤字、それをレーガン政権の場合は、おれはそう思っていたが国会が承知して財政削減に協力しなかったからこんなになったと、そういうふうな表現も教書等では見受けられるわけでございます。  したがって、非常にリジッドな、非常に固定した形の中の財政再建計画というのはまあ難しいではないかというので、いわば展望とか指針とかになっておるわけでありますので、したがって、それ全体をインクルードした形の財政再建法というのはなかなか難しいのかな、しかしやっぱり勉強はしてみよう。が、例えば五十六年度にお出ししたようなもののいろいろな手法を一つにひっくくってそれを国会で御審議いただくという手法等はやっぱり考えていくべきものだというふうに考えておりますので、一つは、前提財政再建計画と我が国の展望と指針というところのずれというものもございますが、考え方としては財政改革財政再建が今至上命題だと言われている今日、検討すべき課題だというふうに考えておるところであります。
  77. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 西ドイツの場合の財政構造改善法というのはもうすべての歳出に聖域を設けてないわけです。例えば州への財政交付金も抑え込んで、病院建設に対する州への補助金、そういったような地方財政に対するものも全部切り込んだわけですね。そういうことで国と地方と一緒に痛みをともにして財政再建に努めているところがあるわけです。私はそういう点では、地方団体から怒られるかもしれませんけれども、地方交付税ということになると、地方団体から見ると、これは既得権益の歳入であると言い、ところが国の方から見ると、よく見るとこれは膨大なる財政赤字をつくるための大きな歳出になっていくわけですから、こういう点はよく考えていく必要があるんじゃないかと思います。この点いかがお考えでしょうか。
  78. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはまず行政改革というようなものの中で国、地方が一体となって痛みをともに分かち合うべきだという思想が逐次定着をして、今法律案、今度の国会でもいろいろございますが、見ますと、そういう方向へ、確かに若干の時間はかかりましたが進んでおるんじゃないか、そうすると財政改革の点においても当然考えられなきゃならぬ。今御指摘なさいましたように、実際交付税とは何ぞや、こういう議論をしますと、それはある見方からいたしますと、あるいは国が地方にかわって徴収しておる固有の財源だと。国の方は、いや、あくまでも交付税であると。そしてそれがひもがついていない限りにおいては地方の固有財源であるけれども、別に地方にかわって徴収しておるものではなく、国税三税の一定比率を交付しておるものだと、その辺からの議論がいつもあるわけでございます。それの応援団、ちょっと表現がおかしいんでございますが、財政審とそれから地方制度調査会の報告を見ましても、両者そういうふうな多少の感覚がございます。  しかしながら、私ども予算のたびごとに、なかんずく今度予算が通過いたしました後も、これは六十年度予算の編成について地方も御協力をお願いしたいということを少しく具体的に触れてお願いをしたという段階でございますので、それは本当にあるべき姿であろうというふうに思っておりますけれども、一方地方自治の本旨というものがございますだけに、それはやっぱり時間をかけた話し合いというものが必要だ。したがって、この財政改革財政再建の問題につきましては、今度も大変内なる改革一つとして私が申し上げております地方財政制度自身にもいわば一つ改革がお願いできたわけでございますから、来年度予算編成作業を通じながらも不断の連絡、協調をやって、痛みをともに分かち合うという形で持っていかなきゃならぬ。えてして、いや、おれの方も大変だ、おまえの方も大変だ、おまえの方が大変さが少し少ないとか多いとか、そういう議論にはならないように、これから両者で絶えず意見交換を進めながら建設的な方向で模索を続けていかなきゃならぬことじゃないかなあという基本理念は持っておるつもりでございます。
  79. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今度の法律案によると、赤字国債償還は一括現金償還になるのか、借換債になるのか、これははっきりわからないわけですね。そうして、今の答弁から伺ってわかることですけれども、この法案自体が財政再建と表裏一体の問題である。そういうことになりますと、国債の歯どめ等の問題もありますし、財政再建法をつくったり、国債発行を禁止している現在の財政法をどう取り扱っていくかという問題もありますし、さらに国債整理基金特別会計法もいじらなければならないかもわかりません。こういうことを全部検討した上で、この法案による借りかえのところについては決めるのが本当じゃなかったのか。五十九年度債についてはわかります。しかし、それ以前のものについてまとめてというのを一遍に入れて今後は全部借りかえにしたいという、できるようにしようという、そういう行き方は順序が逆じゃないかというふうに思うんです。この点どうも納得ができないわけなんです。本当はきちっとした財政再建の方途を示して、だからこうすると、こういうふうにするべきじゃないかと思うんです。この点いかがでしょうか。
  80. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 実態から言いまして、その議論は私は当然のこととして議論経過の中においても存在する議論だと思うのであります。借りかえをしなきゃいかぬ状態に立ち至った。そのことは、第二次石油ショック等の世界同時不況の中で歳入欠陥が生じだということは仮にお認めいただいたと、仮にでございますが、お認めいただいたとしても、大きな政策変更をするならば、されば将来計画はどうなるかというものと一緒に、あるいはそれの後追いをしてでもと申しましょうか、そういう形で議論を求めていくというのが一つのあり方ではないかという議論は、私はあり得る議論だと思うのであります。  ただ、この問題というのは、実際問題、最終的には国民皆さん方負担の増かサービスの低下か、そういう選択、そのコンセンサスがどこにあるかを認めていかなきゃならぬ。そうすると、先を見込んだ計画的なものでもってお示しして、それにはとりあえずこういう方法とこの方法を今年度国会においてはお許しを願いますというのは、自由経済だからだと言えばそれまでのことになりますが、なかなか難しい問題でございます。したがって、予算の単年度主義の原則の中で、そのときどきの経済財政状態を見ながら、逐年努力していくということで実績を積み上げていくということ、財政あるいは予算年度主義からいえばそれしかないのかなと、こういう感じが私もいたしておるわけであります。  だから、試算をお出しいたしましたり、仮定計算をお出しいたしましたりする中で御議論をいただく、それらの議論の中で国民のコンセンサスがどこにあるか、あるいはどこへリードできるかという方途を見つめながら、施策がそれを後追いして出てくるということにならざみを得ないんではないか。だから将来、六十五年までにはかくかくしかじか、あるいはそれ以後の公債残高を減していくためにはかくかくしかじかの目標を定め、それにはこういう手法をとる。だから、とりあえずはこういう形での御審議の仕方というのは実際問題としては困難な問題が多いというふうに私は認識をいたしておるところであります。
  81. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ちょっと論点を変えていきますけれども昭和五十年から毎年度こうやって特例公債のための特別立法をしてきました。そのたびに十年後には現金償還ということを明確にお約束をしてきております。当時、昭和五十年の十月の参議院の予算委員会会議録等を見てみましても、大平さんが大蔵大臣でございますが、償還財源として借りかえによって調達した財源は使わない、言いかえれば、借りかえでなくて満期になりゃ耳をそろえてお返しいたしますということだと、こういうふうにもうはっきり言っている。だからこそ特例にしたんだというふうに言っております。  で、減債基金のいわゆる百分の一・六という繰り入れの問題についても、これは特例公債の方は特例なんだから、あくまでも特例なんだから、異例なんだから、そういうような十分の一を繰り入れるという質問に対して、いや、そんな必要はない、そのとききちっとお返しするんだからいい、剰余金を半分だったのを全額入れることにしたし、あるいは予算繰り入れ考えるんだからと、こういうことで答弁をしてきているわけですね。こういうことできちっとお約束をしてきているわけです。十年後には現金償還、それは御答弁聞けば、今までのものはちゃんと現金償還します、その財源は別にと言うんですが、まあ同じことです、これは。借りかえしたってだけのことで、これは現金償還がなくなったということです、真実のことを言えば。  だから、これは国会でこれだけ十年間毎回毎回きちんきちんと審議をして、特例法でもって通ってきたということの、これはなぜ特例かということの重さ、これは実に私は大変なことだと思うんです。それがもし今回この法律案が出るとなると、出るというか審議していますが、この法案でいくというと、今後国民に対しての負担はややこっちにかけなきゃならぬわけでございますから、だからこういうふうにきちっと特例法ということで、異例中の異例として明文化してきた重さというのはどう認識しているんですか、今。
  82. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、私はその御指摘はそのとおりだと思うんであります。五十年度国会でいろんな議論をいただいて、少なくとも五十一年度以降借りかえ禁止規定というのは、その議論に基づいて財政節度としてつけてきたわけであります。したがって、国債の信認性というものは、それが現金で手元に返ってくるということによって信認性があるわけでありますから、したがってこのたびも借りかえによらざるを得なかったといたしましても、それはあくまでも持っておる個人に対しては現金で償還するための財源借りかえによって調達するというわけでありますが、一部乗りかえの部分もあることは事実でございます。だが、そうなることが、あの当時の答弁からすれば一貫性はございません。  したがって、五十六年、五十七年、なかんずくこの両年でございましょう、今日もなおその影響がもちろんございますけれども、この予期せざる経済財政状態の中でもって、これからのことを、五十九年をギブアップしましたということを申した段階から、一つの大きな政策変更というものを余儀なくされざるを得なかったんじゃないか。そこで六十五年度努力目標というものを持って、その間もろもろの諸要素から考えてみますと、経済に急激な変化、あるいは国民の暮らしに急激な変化を与えてもならないという考え方を基調に持てば、償還財源償還のための財源借りかえに求めざるを得ないという政策変更をやらざるの余儀なきに至ったというわけでございますので、従来の答弁からすれば、著しい政策変更であり、あるいは国会に対してのそのときの言明からすれば、まさに約束を破ったことになりはしないかという批判は、これは甘んじて受けなきゃならぬことじゃないかというふうな事実認識を私はいたしております。
  83. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 きちっと三つの方法ということで、一つは例の定率百分の一・六繰り入れ、それから剰余金金額、そして予算から入れて、それで間違いなく六十年にはきちっとやります、特例公債というのは速やかになくさなきゃならぬのだからと。こういうのがスタートのときの話ですよね。だから、私たちも毎回毎回来るけれども速やかに減債をしていくんだと思っていたわけなんです。それがここへ来て、その部分もあるかもしれないけれども、今の御答弁からすると、しようがない、どう非難攻撃されても仕方がないから借りかえでいくんだと、こういうふうに聞こえるわけです。私はむしろ、なきゃないてしょうがない、お支払いくださいと言ったって、ないものは払えませんよという、そのぐらいのきちんとした大蔵省の毅然たる態度が必要じゃないか。お金に余裕があるときには、必要ならそれを減らしなさい、こっちのお金を出してあげるからと言うことできるけれども、ないんだから今度は一番強いと思うんですね。それでなけりゃ本当の財政再建はできないんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょう。
  84. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 非常に下世話な言葉になりますが、ないもいいぞ気が楽な余りないのもみっともないと、こういうこともございますが、事、私経済と違って国家財政ということになりますと、そういう自暴自棄と申しますか、そういう姿勢で済まされるものではございません。そこに苦悩する問題があるわけです。今三つ御指摘なさいました点につきましても、これは百も承知の上で御議論なすっていただいておるわけでございますが、例えばこの三年間にわたって定率繰り入れ停止しておる、したがって停止するについても私どももいろいろ考えて、財政審の方でも議論していただいたら、この減債制度の根幹は残すべきだ、だからその都度都度やむを得ない措置であるにしても根幹は残すべきだと、やっぱりそうだなと私も思っております。  それから二番目の問題にいたしましても、剰余金が出たらその半分を、いや全額をと、こう言って大平さんのときに申し上げたわけです。それもいわば減税財源に、五十八年度も千五百億でございますか、それに使わしてもらう、あるいはその前四百八十四億でございましたか、いわゆるラーメン減税と言われたときもそれを財源として使わしていただいた。だからまさにその限りにおいては、そういう償還のための財源として考えられるものにその都度手がついておりますので、別の財源として、したがっておっしゃる指摘はそのとおりであると私は思います。  したがって、そういう中において、結論から言うならば、償還のための財源は、急激な経済変化をもたらさないでやるためには、借りかえを認めていただかざるを得ないという状態になったことを素直に申し上げて、御理解を得ていくという我々としての責務がそこにあるんじゃないかという考え方に立ってお答えを申しておるわけであります。
  85. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 何度も何度も同じことを言うようですけれども財政法では赤字国債は禁止されている、したがって特例として赤字国債を出さなきゃならない、そうしなきゃ予算がどうしょうもできないからということでやってきた。審議の際にいつも言われたことは、減額の問題、何年か先には必ずゼロにいたしますというお約束、それがあるからこそ通ってきたわけです、今まで。それが今度は何か歯どめがなくなってしまう。私はその点で大変おかしいと思うんです。  国債整理基金特別会計ができた明治三十九年の審議をずっと見てみましても、時の大蔵大臣ははっきりと、このときは日露戦争の費用を償還するということでやっているわけでございますけれども、二千万円ずつの償還をやって、三十カ年には必ずこの償還が済むという、こういうことをはっきりとこのときの阪谷大蔵大臣答弁しているんです。  私はこれをずっと読んでいきましてわかったことは、とにかくこのころは外債が多いせいもあるでしょうけれども、過半数を外国人が引き受けているからどうしても公債の価格維持をしなきゃならぬということが一方あったようでありますけれども、しかし私は大事だと思ったのは、その戦費のために十何億という借金ができた、それを戦争後明治三十九年にまた再び発行していますから十八億になったが、三十年間で必ず払うということで一年間に一億一千万円ずつ一般会計からの繰り入れをしてきているわけです。私はそういうきちっとした目標を持ってやっていくのが当たり前だろうと思うんですね。  そうなると現在残っている国債残高、いわゆる特例公債についての残高を一体いつまでにゼロにしよう、こういうふうにしていくかということが今の減債計画の中に出てくるかということなんです。いろいろな計画では六十五年とか、発行ゼロのベースでございますけれども、じゃ借金ゼロにしていくには一体どうするのかということが残ってくるわけなんです。こういうことがきちっと示されないと私はいけないのじゃないか。このときのやり方がそのとおりでよかったかどうかわかりません。十八億は減ったけれども、終わったときには鉄道公債そのほかの借金は残っていくわけですから、別の方はあるけれども、一方はちゃんと償還ができてきている。そういう点で何か、どうせ法律をつくるならいつまでにゼロにするということぐらいはきちっとして出すべきじゃないか。それがない財政再建みたいな法律じゃどうもぴんとこないわけです、財源確保ではいかがでございますか。
  86. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の御意見でございますが、事務当局からちょっと差し入れていただきましたのを見ましても、「明治三十九年一月二十九日午後一時二十二分開議」「印チ兆十八億ノ公債ノ処分ヲ書ケルカタメニ、年々一億一千万円ノ公債元利仕払ノタメニ資金ヲ支出スルト云フコト二極メマシタノデゴザイマス、デサウ致シマスルト云フト」、このころの言葉でございますからかなり窮屈でございますが、「先ヅ初年二於キマシテ凡ソ二千万円位ノ償還ガ出来マシテ、諸リ三十箇年ニハ残ラズ此償還ガ済ムト云フ勘定ニナル所ガ此予算委員会デモ質問ノアリマシタヨウニ、既二三十九年度二於テハ一方二四億三千万ト云フ公債ヲ暮リ、一方二償還スルト云ブハ、ドウ云フ訳デアラウカ、寧日償還ヲ省イチ募債ヲ減ジチヤドウカト云フヤウナ御説モアリマシタガ、此公債ノ価格ヲ維持スルト云フコトガ将来財政ノ上二付イテハ、種メテ必要ナコトデアル」というふうな、やっぱり先輩たちも非常に似たようなことを心配して議論されたものだなと思っておりますが、三十カ年でこのようにして残高をなくしますと言うのは私は勇気があったと思っております。  結果は、その後いろいろな経済情勢の推移がありましたから、とはいえ、今日私どもが申し上げておりますのは、その議論は私どもにもわからないわけじゃございません。しかし第一段階は、先ほど申し上げましたが、とにかく六十五年度努力目標年度として定めて、新発債の特例債発行をゼロにするということを第一段階としてお認めいただきたい。そこで第二段階としていわゆる残高全体の問題についてこれを減していきます。さればそれを何年に減すのか、あるいはおよそ、今ごろで言えば対GNP比で言った方がわかりやすいかもしれませんが、対GNP比どれぐらいに何年かかって持っていくか、せめてそれぐらいのものは今漠然とながらも出すべきじゃないか、こういう御議論であります。  ただ、それこそ今日の事態から考えてそれを正確なものとしてお出しするということについては非常に難しい現状にございます。だからとりあえず今考えるのは、新発債の特例債というものを努力目標年度に何とかゼロにするための逐年の努力の積み重ねをやっていくということであって、その後の公債残高全体をどのようにして減していくかということについては    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕 その第二段階においてまた国会等の議論を通じながら国民のコンセンサスを求めてやっていこうというのが偽らざる現状の姿であるということで、私ども自身が自分にも言い聞かしておるところであります。
  87. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この明治三十九年のときのを見ると、当初は二千万円、ところがそれから十年たった大正四年には五千万円元金償還できているようになるわけですね。それが定率繰り入れが一万分の一一六になっていった理由になっているようですけれども、私は今あるものについてはこういうふうにきちっと始末をいたしますというものが明示されるべきだろうと思うんですね、現状においては。それから以後のものについてはまた別に考えなきゃなりません。そういうようにきちっきちっと私はするというのが本当じゃないか。何か知らないけれども、このままでいくと例の高橋財政のときのようになし崩し的にだんだんだんだんふえていって、最後にはパアになってしまうようなおそれを、僕らはそういう世代で過ごしたからそう思うのかもしれませんけれども、本当に残念な感じで、そういうおそれを持つわけですよ。だからその点では、何か今回の行き方は、昔の政治家は随分気骨ときちっとした良心と責任を持ってやったんじゃないか、政治家というか、官僚にいたしましても。現在はそうじゃない、財政当局もそういったものがないんじゃないかという感じを受けざるを得ないわけです。私はそういう点でどうも納得がしがたいものがあるんです。  この問題はこのままでもうちょっと留保しておきますけれども一つ伺いたいのは、赤字国債現金償還が困難になった。これは大蔵省としてはいつごろ不可能と判断をしたんですか。定率繰り入れを取りやめた五十七年じゃないんですか。そのときにその繰り入れをやめなきゃならなくなってくるほどであるということは、これは特例債についての現金償還はもうできないな、こうみなしたと、こういうことじゃないんですか。
  88. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) これまでの過去の経緯でございますので、私の方から御説明したいと思います。  御存じのように、従来特例公債借りかえは行わないことということと、それから五十九年度までに特例公債依存から脱却するということを政府方針としてきたところでございます。しかしながら、いろいろ御議論もございましたように、第二次石油ショックという予期せぬ事態が起こりまして、我が国経済財政を取り巻く環境が大きく変化したわけでございます。その結果、財政の面において特に収入面で大幅な歳入欠陥が生じたということになったのでございます。  そこで、五十八年度予算編成のときにおきまして、従来言っておりました五十九年度脱却の実現は困難だというふうに考えられたわけでございます。しかし財政をめぐる環境はなお極めて流動的でございましたし、それから財政についての中長期的展望、指針の検討がちょうど行われておりまして、それが出てくるということで、その中で財政の将来展望も検討して考えていこうというふうに考えられたわけでございます。  その後、昨年の八月に今申し上げました経済についての中長期的展望指針といたしまして「一九八〇年代経済社会の展望と指針」が閣議決定されたその中において、従来の五十九年度脱却ということがだめになりまして、対象期間中である六十五年度までに脱却するという努力目標が改めて示されたわけでございます。その後、本年の一月になりまして財政制度審議会から、今後我が国経済の着実な発展と国民生活の安定を図りながら、今申し上げました六十五年度までに特例公債依存体質から脱却を図ろうとすると、どうしてもその特例公債について借換債発行を検討せざるを得ないという報告をいただいたわけでございます。  そういうことで、今回政府部内でもその報告を受けましていろいろ検討しました結果、遺憾ながら借換債発行を含みます今回の法律案を御審議願っているという状態に立ち至ったわけでございます。
  89. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 現行の財政運営の方法では毎年五兆円から七兆円というそういう巨額な現金償還が不可能だということは、これはだれでもわかることですよ。だから急にここへきてだめになってきたということじゃなくて、五十七年補正で定率繰り入れ停止をした、しかしそれ以前からもう既に現金償還が不可能だということは見当がついてたんじゃないかと僕は思うんですね。そうなのに、ことしの予算編成時に急にこういうふうに借換債によらなければ不可能であると大蔵省判断したなんということはあり得ないわけです。今の話から聞いても私はそういうふうに思いますよ。    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕 だから、そういう点で、それならそれで五十九年債についてはこういうわけで借換債発行するかもしれませんということで法律案を出す、そしてそれ以前のものについては一括してこういうふうに借換債をやりたいんだということで別に法案を出すとかいうことをやるべきじゃなかったかと思うんですね。性格の違う財源の問題と一方の償還の問題と両方をごちゃごちゃにして出してきている。何だか洋食と日本食がまざったようなものを食べさせられたような感じがしてしようがないんですけれども、こういう法案の出し方というのは何かどさくさに紛れてやった感じがして仕方がないんで、この点どういうふうにお考えですか。
  90. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かにこの問題、私どもがこのたびの法案を提出するに当たりまして最も中心的に議論した問題でございます。素人議論から玄人議論にずっと積み上げていったわけでございますけれども、最初は今御指摘なさいましたとおり、今の法律というのは五十九年度財政運営に必要な財源確保するための特例公債発行、その特別措置法の問題と、もう一つはその償還のための起債特例を定める法律と二つが出ておるわけです。私も財政節度という観点から妥協を考えてみますと、ある意味においては毎年毎年、ことしは償還期が来るのはこれだけございますが、これだけのものについては借りかえをお願いをしたいということが、昭和五十年以来ああして毎年毎年その年度の必要な収支差額の補てんについて特例債をお認めいただきたいということで出しておるわけでございますから、毎年毎年必要な償還額をお許しいただきたいという形にして、五十九年度はなるほどもう今からこの借りかえを完全になくすというのはなかなか困難であるならば、借りかえ禁止規定のつかない形のもので出して二本の姿にすべきであるという議論もいたしてみたわけであります。  さらにいま一つは、償還期が本当に到達するのは六十年だから、言ってみれば、もう一年議論した上で、場合によってはそういうことは私が考えることじゃございませんが、この特別国会等にお願いして議論してみる課題でもない、こういうようなことも随分部内で議論を重ねてみたわけであります。  ところが、五十九年度特例公債発行に関する規定を定めるに当たりまして、財政審で御審議をいただいたのでございますが、従来どおりの特例公債財源確保法に定めてまいりました借りかえ禁止規定をそのまま置くというのは極めて困難だということ、まずこの五十九年度発行分についてそういう事実認識の上に立たざるを得ない。しかし、この特例公債のよってもって立つ責任からして努力規定というものをこれにかえて設けなきゃいかぬ。さて、そうなりますと、五十九年の特例公債償還期よりも前にそれこそ財政事情の厳しい時期に償還期が参ります既発債についてこの借換債をそのまま残しておくということは、現実問題として借りかえを行わないとすることは困難ではないか。そういう意味で、この新発債は借りかえ禁止規定は外して既発債はそのまま残すということについては適当ではないという考え方一つございます。  それからもう一つは、五十九年度特例公債もそれ以前の各年度特例公債も、いずれも経常収支差を補てんするという意味では同一性格のものである。しかもこれも毎年毎年出しておった。これからも特例公債を六十五年の努力目標はございますが、毎年毎年出していかなきゃならぬ。そうすると、毎年継続して発行されたということから考えると、収支差額を補てんするものであるという同一性格と同じように一連のものとしてこれを考えざるを得ないだろう。法律の整合性等の角度からも議論をいたしました。  そこで結局、最終的にはこれはこの際政策転換、大きな意味における政策を変えていくわけであるから、したがって努力規定を設け、そして今のように国会議論をいただいてこの問題はお願いするのが筋じゃないか。いろいろ議論をした結果そういう結論になって、そのような姿で御審議をお願いしておるというのが現実の姿であります。
  91. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 昭和五十九年度赤字国債発行予定額は六兆四千五百五十億、今までの特例債赤字国債の一括現金償還、借換債に切りかえるという場合の額は五十三兆八千億、これは何か一緒の法案で出るということが大変乱はぴんとこないわけですよ。昭和六十四年になれば六十七兆円になる。それが六十年先まで償還を引き延ばすことができるように今度はなってくるわけです、場合によって。商品を多様化するでしょうけれども、しかし借換債ということになるというと、今度は国債整理基金の中で扱うようになりますから、もう四条公債も何も同じことになってくるわけですね。全く性質が変わらないということになります。そういう後代に大変な負担をかける。一方の建設の方は六十年たてば一つの建物についての問題とか、セメントのダムの寿命とか、そんなことで六十年ということがあるかもしれませんけれども、一方の方についてはこれは一般財源としては使っていくわけですから、給与のほかに。それは当然そういうようなものはないわけですからそれが一緒になってしまう。これではどうしても後の世代にえらい負担をかける。今オギャーと言った子供が六十になるまでかかるわけですし、これから十年後に償還の来るものもございますから、そうすると、これから生まれてくる子供が六十歳になるまでもそれを背負っていかなきゃならない。これは国会議員として審議できません、こんなのじゃ。責任ある立場として、こういうものをこれで結構ですなんということは到底言えるものじゃないと思う。  私は、だから、これはどうしてこんな大蔵省の姿勢が急激に変化して――建設国債とは違うんですから早く償還しなきゃならないものです。それを、そういう姿勢をぱっと変えてしまった。余りにも無責任だという感じがするんですよ。どうですか。
  92. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その批判にはこれは甘んじてこたえなきゃならぬ問題だと私も事実認識をいたしております。  先ほど御意見を交えての御質疑の中にございましたように、五十七年度補正の際に、おまえさんらはいわゆる定率繰り入りを外したじゃないか、そのころから赤信号でございますか、黄信号でございますか、ぐらいはついておったじゃないかという御趣旨に受け取れる御発言でございましたが、私自身も考えてみますと、実際問題、あの五十七年度補正というのは、事実いわゆる性格としては大変な補正だったと思うのであります。あれだけの歳入欠陥というものを認め、そして当初の見積もりからするすべての点についての手直しが行われたような内容に基づくものが、これは五十七年度予算じゃなかったかなというふうに考えるわけであります。したがって、そのときから客観的に見れば黄信号とか赤信号がついておったじゃないかという御批判は、私は、人それぞれによってその受けとめ方は違うにしても、可能性のある、そういう見方も成り立ち得るポイント、タイムポイントじゃなかったかという感じはいたします。  しかしながら、五十八年度予算編成に当たりまして、まさにこの五十九年度、しかし、その段階では五十九年度脱却の困難性を意識しつつも、それをギブアップしたということを国会で申し上げるだけの勇気と準備はなかったと思うのであります。したがって、五十八年度予算議論し、正確に今度はそれを見直す時期であるということをお答え申し上げつつ、今度六十五年度というものにこれのまさに政策変更を行いました、五十九年はギブアップしました、六十五年度努力目標として「八〇年代経済社会の展望と指針」の中で議論されたところに焦点を合わして、私どもは新たなる目標を、六十五年に努力目標を設定したのでありますというところから、言ってみれば出直しになったわけであります。  したがって、私は、五十七年度補正の際黄信号がついておったという見方は、人によってそれはあり得ると思っておりますが、政府として正確に政策転換をいたしましたのは、その目標変更を行いましたのはその後であって、そしてそれがための政策変更としてこの借りかえということをお願いしておるというのが、これが現実の姿であります。したがって、それが国民に与える影響として余りにも唐突な印象を与えておるじゃないかという議論もまた甘んじて受けなければならぬだけに、国会議論等を通じながらその意のあるところを訴えつつ、国民理解と協力を求めていかなきゃならぬ課題であるという事実認識の上に立ってお答えを申し上げておるところであります。
  93. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 我が国国債政策の一大転換をやるのが今度のこの法律です。それに対して本年度財源確保ということ、それに絡めて国会を通過させるというやり方は大変納得しがたい。私、認められません。現在生まれた者が六十歳になるまで負担を背負わされる、そんな無責任な遺産は国会議員としても国会としても残せないものだと思うんです。大体これを通してきた衆議院がおかしいのだ。私はそういう点で借換債変更についての――大蔵大臣は随分と苦労されて今答弁をされていました。その苦衷のほどはわかりますけれども、この点について明確になってこなければ審議は進められない。法案の名称に「等」をつけただけでもって全部一緒にしてしまった。なぜ二つの法案にしなかったのか。建設国債と借換債との間にどういう違いがあるのか、これもはっきりわからないことですよ。実質的にこの借換債が必要になってくるのはまだまだ先のことですよ。何も本年度のここでもって法案を通す必要はないことです。  私は、そういう三点のことが明確にならない、今までの審議でははっきりわかってきませんので、これはもう質問を留保しますし、また委員長においても、これは国会議員としても、こんな審議到底できるような代物じゃありません、法案じゃないので、大蔵委員会としても直ちにきょうは散会しちゃった方がよろしいんじゃないか。要求をいたしておきます・
  94. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それだけの御批判をいただくことを覚悟の上で、あえて言語明瞭にできるだけ気をつけながら一生懸命お答えをしておるところでございます。それぞれの問題点につきましては、先ほど来申し述べておりますように、いろんな角度から我々としても議論を通じながら、今日このような形で御理解を得るべく努力をしておるという、そのまさにさなかにあるという事態認識をいたしておるものであります。
  95. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 委員長答弁求めていますよ。
  96. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  97. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記を起こして。  ただいまの鈴木君の御発言に対して後刻理事会で相談して、その結果をまた報告します。
  98. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 質問を留保しておきます。
  99. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 鈴木君の質問はそれじゃ留保することにいたします。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  100. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記を起こして。  暫時休憩いたします。    午後一時十九分休憩      ―――――・―――――    午後三時三分開会
  101. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十九年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  102. 宮島滉

    ○宮島滉君 言葉を重ねるまでもなく、今日我が国財政再建国民の最も関心事であります。今回の財源確保を図るための特別措置等に関する法案については、従来の政府方針変更するものであり、そのことについては政府におかれても遺憾の意を表明されているところであります。この一事をもってしても、いかに我が国財政再建が厳しいかをうかがえるものであり、今後の我が国経済の発展と国民生活の安定の基盤を確かなものにするためには緊要な政策が必要であります。それらの観点から次のような事項についてお伺いをいたします。  今回の特例公債借りかえ問題について基本的な事項をさかのぼって整理させていただきます。  まず、借りかえというと、国民の中には素朴な疑問として果たして現金で償還してもらえるのか、借換債の債券をもって償還されるのではないかという危惧もあるようであります。そこで借りかえとは何なのか、わかりやすく御説明をいただきたいと思います。
  103. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 借りかえの意味についてでございますけれども、今委員がおっしゃいましたように、国債償還期が来ましたらすべて現金でこれを償還いたしておるわけでございます。それでは借りかえとはどういうことかということでございますけれども国民の保有する国債について満期が到来した場合現金ですべてお返しいたしますが、その財源について何で賄うかというときに借換債発行により賄うという場合には、これを借りかえと言うということになっておるわけでございます。したがいまして、借りかえの場合であろうと、それ以外の財源調達によって償還する場合であろうと、いずれにいたしましても国債の保有者には不利益はないわけでございます。すべて現金で償還を受けるということになるわけでございます。
  104. 宮島滉

    ○宮島滉君 さらに建設国債特例国債とはどう違うのか、幼稚な質問でございますが、御説明をいただきたいと思います。
  105. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 建設公債というものでございますけれども、これは財政法第四条第一項のただし書きの規定によりまして発行する公債でございます。この公債は見合いの資産の残る公共事業費、それから出資金、貸付金の財源として発行されるものでございます。これに対しまして、特例公債財政の経常収支差を補てんするために発行されるものでございまして、先ほど申し上げました建設公債に対しましてあくまで特例的なものでございますので、毎年度年度その根拠法を国会に提出し御審議願い、国会の議決をいただいているわけでございます。
  106. 宮島滉

    ○宮島滉君 ただいま建設国債特例公債の違いにつきましての御説明をいただいたわけでございますが、従来建設国債特例公債との間には垣根がありましたが、今回借換債発行によってその垣根がなくなるように思われますが、いかがでございますか。
  107. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 建設国債及び特例公債、いずれにつきましても、これを償還期が参りました際に借換債発行によってその償還財源を賄うときには、国債整理基金特会法第五条の規定に基づいて借換債発行を行うわけでございます。その意味では法律上両者に差はないわけでございます。
  108. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) ちょっと補足させていただきますが、従来から投資家にとりましては建設国債といい、特例国債といいましても、同じ有価証券でございまして、投資目的としては全く同じものでございます。ただ、国債としての性質が違う、あるいは根拠法が違うということで、その間には違いがあるということになっておりますが、今主計局の平澤次長から御答弁申し上げましたように、それの借換債ということになりますと、いずれも国債整理基金特会法の五条に基づく国債ということで根拠法が同じになってしまうと、こういう問題がございます。  ところで、財政再建を進めるに当たりまして、まず第一段階といたしましては、特例公債の依存体質から脱却する、それから第二段階としては特例公債残高を減少してゼロに持っていくと、こういうことを目指しているわけでございますが、そうしますと特例公債残高を把握しなくちゃならない、こういう問題がございます。このことにつきましては、財政制度審議会からも何らかの形で特例公債残高が幾らあるかということを把握してわかるようにしろと、こういう御指摘がございますので、私どもとしましては、六十年度を目指しましてどういう方法でやるかということを検討していきたいと思っています。例えば今は利率でありますとか、そういったものが変わります場合には、根拠法ごとに何回何号というふうに区分けをしておりますが、今後、根拠法といたしましては、国債整理基金特会法という同じ根拠法でありましても、建設公債の方の借換債特例債の方の借換債とは分けるような方法を考えるとか、何かそんな方法を考えまして、特例公債残高が幾らあるかということは把握し、お示しできるようにしたいと、こういうふうに考えております。
  109. 宮島滉

    ○宮島滉君 五十一年度特例公債法から借りかえ禁止規定が置かれておりますが、その置かれた経緯、特に財政審における議論がなされたように存じますが、その中身について少し御説明をいただきたいと存じます。
  110. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 今お話がございました五十年度特例公債につきましては、その御審議の際の国会における当時の大平大蔵大臣答弁におきまして借換債発行は行わないようにするというふうに答弁があったわけでございます。その際に、そのような政府の決意があるのならこれを法律上も明らかにせよというお話がございました。そこで、その問題につきまして政府といたしましては財政制度審議会に諮問したわけでございます。  そこで、今御質問のございました、それでは財政制度審議会での報告ではどのようにこの点について述べられているかということでございますけれども、これは五十一年一月十九日でございますが、その報告がございます。その中を読まさしていただきますと、「公債の借換えは、公債管理政策の機動的運営の必要から、国債整理基金特別会計法第五条の規定により政府に授権されているところである。」。それから「特例公債についても上記の規定が適用されるところであり、したがって、借換えを行うか否かは、現行法制上は政府判断に委ねられている問題である。事柄の性格上、必要かつ妥当なものとして法律をもってその運営を政府に授権されている事項について、その一部を法律をもってあえて制約する必然性はないものと考えられる。」。次に、「特例公債について政府が前記のような方針を明らかにする趣旨は、今後、できるだけ速やかに特例公債依存の財政を克服するとともに、特例公債の満期時にその全額を現金償還することによって将来の財政運営の健全性を確保するという政府の決意を示すことにあると考えられる。」。これを受けまして、「以上の点から考えると、これを法定する必然性はないが、立法政策の問題として財政節度を示すという観点からこれを法定するのであれば、あえてその意義を否定すべきものでもないと思われる。」という報告が出ておるわけでございます。
  111. 宮島滉

    ○宮島滉君 五十一年度以降毎年置かれてきた借りかえ禁止規定、これは特例公債のバックボーンをなしてきたものでありますが、それを置かないというのはよほどのことであると考えます。借りかえについての今回の方針変更に至った経緯につきまして少し詳細に御説明をいただきたいと存じます。
  112. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) この経緯につきましては、本委員会において御説明した部分もあるので若干重複するかもしれませんが、その経緯を述べさせていただきたいと思います。  中期的に見た場合の我が国財政事情は、今国会政府が提出いたしました中期展望、さらに仮定計算例というのもあわせてお出ししておりますが、これらでもごらんいただきますと明らかなように、財政事情は非常に厳しい状況に置かれておるわけでございます。  そこで、このような財政事情の中で、今後財政改革を進めていく際に経済国民生活への影響を十分に考慮していく必要があるわけでございますけれども、それへの悪影響をできるだけ少なくしながら進めていくには、遺憾ながら、従来言っておりました特例公債についての借りかえの禁止を外しまして、借換債発行によらざるを得ないというふうに考えたわけでございます。仮に特例公債の借換債発行を行うといたしましても、今後とも財政事情は大変厳しい状況が続くわけでございます。したがいまして、そういう状況が見込まれるわけでございますので、過去にお出しいたしました禁止規定につきましても、あわせてこれを禁止を解いていただくということをお願いせざるを得ないということでございまして、そういうことから今般法案を提出して御審議を願っているということでございます。
  113. 宮島滉

    ○宮島滉君 歯どめであった禁止規定が削除されることによって国債依存が安易に高められるおそれがありますが、その点についてはどのような御見解でありますかお尋ねをしたいと存じます。
  114. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 今委員指摘のように、特例公債借りかえを行うとすれば財政面で歯どめがなくなるのではないかということ、あるいは安易な財政運営に流れるようなことがあるのではないかということでございます。この点につきましては我々としても非常に問題としているところでございまして、この歯どめをどうするかということにつきましては、いろいろな角度から検討したのでございます。  そこで、まず、先ほども申し上げましたように、今後とも財政事情が非常に厳しい状況が続くことが予想されるという中で財政改革を進めていく場合には、歳入面負担増をお願いするかあるいは歳出面で縮減合理化を図っていくか、言うならばその二つの方策あるいはそれを合わせた方策が考えられるわけでございます。家計と同様にその方策しかないわけでございます。あとは引き続き借金をふやしていく、借金によって財政を運営していく方法があるわけでございますけれども、これはできるだけとらないでいかなければならないのではないかというふうに考えられるわけでございます。  そこで、今後の財政運営考えます場合に、八〇年代の「展望と指針」というのを経済の運営の方向としてお出ししたわけでございますが、その中に財政の部分に触れているところで、特例公債については六十五年度に脱却するという努力目標を入れたわけでございます。したがいまして、歳入歳出両面にわたってあらゆる努力をしつつ、その中で特に新規財源債としての特例公債による財源調達、これも縮減していく、しかも六十五年度までに脱却という努力目標を掲げていくということでございまして、このことは今後の財政運営にとって非常に厳しい指針ではないかというふうにも考えられるわけでございます。しかし、こういう指針を掲げることによって今後安易な財政運営に流れないための大きな歯どめが置かれたというふうに考えるわけでございます。  そこで、それでは新規財源債による財源調達を六十五年度までに脱却いたしますと、あとは既往の特例公債の残が残るわけでございます。ピークといたしまして、六十四年度がピークになるわけでございまして、数字的には六十七兆円強の特例公債残高があると予想されるわけであります。  そこで、第二段階といたしまして、今後はその特例公債残高をできるだけ減らしていこうということで、これは国会にお出しいたしました今後の財政運営の基本的な考え方においても示されているわけでございますけれども、まずその残高について、償還期が来ましたときにできるだけ借換債発行を抑制していく、そういう方向で努力していくということで、これにつきましては今回お出しした法案にその努力規定を入れているわけでございます。しかもこの基本的な考え方におきましては、特例公債のみならずそれを含めた総公債発行額についてもできるだけこれを抑制する。さらに具体的な問題といたしましては、国民総生産に対する公債残高の比率、これをできるだけ低く、極力低くとどめるように努力するということもこの考え方の中に示されているわけでございます。そういうことで、今申し上げましたような考え方で今後の財政運営を厳しく行っていくということで対処してまいることといたしたいわけでございます。
  115. 宮島滉

    ○宮島滉君 さて、六十年度からは、ただいま御説明もございましたが、特例公債の本格的な償還が始まることに伴い、その償還財源確保の問題が生じていますが、公債償還する国債整理基金は近い将来枯渇することは避けられません。そこで償還財源の問題は償還財源繰り入れの増加という形で一般会計にはね返り、国債費の大きな増加要因となるのに対応するため、消化面を含めた国債管理政策をどのようにお考えになっておりますのか、御説明をいただきたい。
  116. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 今御指摘の問題の中で国債償還財源確保、これは端的に言えば、一般会計からの国債整理基金特会への繰り入れ財源確保の問題でございまして、これは今後大事な問題として予算編成の都度いろいろと工夫をしていただく問題でございますが、それはそれといたしまして、国債管理政策の面におきましては、発行、消化、流通、償還、これをそのときどきの情勢に応じまして弾力的に進めることによりまして円滑に国民経済の中に国債を溶け込ませるということが必要だと思っております。  今御指摘がありましたように、六十年度以降は五十年代に大量に発行された国債償還期が到来いたしますので、借換債が飛躍的に増加いたします。さらに新規財源債も相当規模の発行が続きますので、新規債、借換債合わせた大量の国債発行消化を円滑に図らなければならないという問題がございます。これが六十年代にとりましては最大の国債管理政策の重要課題ではないか、こういうふうに思っております。  それを円滑に進めていくためには、消化面におきまして、そのときどきの市場のニーズ、投資家のニーズに合わせました国債の多様化あるいは償還時期を前提としながらも、その発行時期の選択を誤まらないようにするとか、そういった努力が必要でございまして、今後私ども十分に検討してまいりたい、こういうふうに考えております。  なお、検討の場といたしましては、私どものところに国債借換問題懇談会というのを設けまして、その場を通じまして各界の意見も吸い上げながら検討いたしておるところでございます。
  117. 宮島滉

    ○宮島滉君 大量の国債借りかえに当たっては国債の多様化に伴い短期国債発行が避けられないのではないかと思われますが、どうお考えでありましょうか、お伺いをしたい。
  118. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 先ほども申しましたように、円滑な消化を図っていくためには投資家のニーズに合わせた国債の多様化ということが必要だということで多様化の検討をいたしておりますが、国債多様化の一環といたしまして短期国債についても検討していく必要があるのではないか、こういうふうに考えております。  ただ、その検討いたしております国債借換問題懇談会におきましてはまだ検討の段階でございまして、具体的に短期国債発行を必要とするかどうか、必要とした場合にどのような形での短期国債発行するのかといった問題につきましては、まだ方向がはっきりしているという段階ではございません。
  119. 宮島滉

    ○宮島滉君 大連の国債借りかえという大きな火種は金利自由化につながるおそれがありますが、今日、金融市場の周辺対策が施されていない現状では大変なことではないかと思われるわけでございます。その点についてどのようにお考えになっておりますか、お伺いをいたしたいと思います。
  120. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 短期国債発行に踏み切った場合の金融市場に及ぼす影響等の問題だと思いますが、今も申しましたように、国債多様化の一環として検討を行っているところでございまして、まだ具体化しているわけではございませんので、具体的にどのような影響があるかということを申し上げることはできないわけでございます。ただ、強いて一般論として申し上げますと、国債借りかえが行われる場合には、原則として国債償還額と借換債発行額がほぼ見合っているということでございまして、マクロ面で見た資金需給面ではほとんど影響を与えないということになります。したがいまして、その限りでは金融市場に与える影響はそれほど大きくないのではないかというふうに考えられます。  ただ、仮に借換債発行が円滑に行われないようなことがありますと、市場金利が乱高下したり、結果として民間企業の資金調達が不安定化するといった問題が生じまして、金融市場に悪影響を与えるおそれもございますので、今後とも国債の円滑な償還借りかえに努めるとともに、金融の自由化を自主的、積極的かつ漸進的に進めまして、御指摘のような悪影響を招くような事態にならないように対処していきたいというふうに考えております。
  121. 宮島滉

    ○宮島滉君 さらに、大量の国債借りかえは、今後、ただいまも御説明にありましたが、金利の高まりを招来し、景気拡大の足かせとなるおそれはないのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  122. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 国債発行と金融市場の関係でございますけれども、一般的に申し上げますならば、国債が大量に発行される、あるいは急激に発行されるようなことがございますと、量的にもあるいは金利的にも民間市場を圧迫する要因があると思います。いわゆるクラウディングアウトでございますけれども、そういう点がございますので、国債発行につきましては、できるだけその発行につきまして減額に努めていくというのが現在の政府方針でございます。
  123. 宮島滉

    ○宮島滉君 特に、財政再建のためには景気拡大策をとるべきであるとの意見もありますが、その点についてどうお考えでありますか。また、今年度経済成長率四・一%の目標になっておりますが、今日その見通しはいかがなものか、お尋ねをいたしたいと思います。
  124. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 今委員の御質問のうち、第一の財政再建のためにも景気拡大策をとるべきではないかという問題につきまして、私から御答弁申し上げたいと思います。  公共投資や減税などによって景気拡大を行うという御意見は、従来からも各方面であるわけでございます。しかし、この財政依存の景気拡大策の効果といいますのは、近年、特にオイルショック以降世界的に同じでございますけれども我が国経済、社会構造の変化が急激に進みまして、いわゆる財政による乗数効果、財政投資等による経済拡大の効果、これがかなり低下してきておると考えられるわけでございます。また財政によってということになりますと、そのための財源をどうするかという問題もございます。現在のように赤字公債発行財源を調達しているような段階におきましては、当然なことながらその財源公債発行に頼らざるを得ないわけでございますけれども公債発行を行いますと、先ほど来も御議論がございましたように、市中の金利上昇要因ともなってかえって景気に悪影響を与えるおそれもあるわけでございます。それとともにこの景気刺激によって経済が拡大すれば、ある程度その税収増が見込めるという御意見も従来の拡大論者の方々のお話の裏にあるわけでございますけれども、それに伴って得られる税収増は、公共投資の追加等に要する財源に比べますと非常に小さなものでございます。  したがいまして、結局、公共投資等の追加等を行いますと、財政の収支面で見ますと、現在既に非常に深刻な状況にある財政状況をより一層悪化させるというおそれが強いことも考えられるわけでございます。それとともに、それでは現在の我が国のその状況経済状況を見ますと、比較的順調に回復過程にあると一般的に見られているわけでございますから、そういうようなときに極めて深刻化した財政が非常な無理して景気拡大に出ていく、そのような余力があるかないかということは、その余力は極めて乏しい、むしろないといっていいわけでございます。しかも先ほど申しましたように、そういうことをやれば財政に過度の負担をかけるわけですから、財政の悪化はますます深刻化するという問題もあるわけでござざいます。  そういうことから景気拡大のために財政に役割を期待するということにつきましては、従来より、政府といたしましては、この問題については消極的に考えざるを得ないのではないかというふうに思うわけでございます。まず何よりも景気の情勢が比較的順調なときに財政の体質改善を進めておくことが重要でございまして、そういう中で本当に経済が底を割ってきたときに体力を回復した財政が対応力を発揮して景気の下支えに出ていく、その力を今こそ養うべき時期ではないかというふうに考えております。
  125. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 先生の御質問の中で、財政の景気拡大策に対する関係の御質問がございましたが、それに関連いたしまして五十九年度経済成長率は達成できるか、見通しはどうであるかという御質問について私の方からお答えさせていただきます。  五十九年度経済でございますけれども、まずその前に世界経済がどうなっているかということの見方が重要かと存じますが、御承知のとおり原油価格も安定しておりますし、それからようやく世界も第二次石油ショックを脱却しつつあるわけで、物価の鎮静などが出てきております。こういうことを背景としまして、米国を初めとしまして引き続き回復が期待されておるわけでございます。OECDとかIMFとか世界の国際機関の経済見通しにつきましても、八四年、それから来年にかけましても明るい見通し、あるいは成長率などについても上方修正をしているような傾向でございます。  国内経済でございますけれども、物価は御承知のとおり安定傾向が続いております。五十八年度の消費者物価も政府見通しの二・〇を下回る一・九というようなことで安定傾向が続いておりますし、企業収益の改善も予想されるということで、このような景気回復を支える要因は今後も持続すると見込まれておるわけでございます。  五十九年度につきまして申し上げますと、個人消費も所定外労働時間も増加しておりますし、企業収益の改善なども見込まれますので個人消費にはよい影響を及ぼすと思われます。それから設備投資などについて見てみますると、中小企業などにも久方ぶりに大幅増加の傾向が見られますので、全体といたしまして、国内民間需要を中心に持続的な安定成長が達成できるという見込みでございます。最近の政府が出しました「月例経済報告」におきましてもそのようなことで、「我が国経済では、輸出が増加しているほか、国内需要も持ち直しつつあり、景気は緩やかながら着実な回復を続けている。」、若干のばらつきはございますけれども、緩やかながら着実な回復を続けているというのが政府の一致した見解でございます。  そこで、先生お尋ねの成長率の見通してございますけれども、これは何分年度が始まったばかりでありますので、現時点での見通しということでありますると、今申し上げましたようなことなどを背景としまして、政府見通しの実質成長率四・一%というのは最も蓋然性の高いものであるというふうに考えているということで申し上げたいと思います。その中でも好ましいことは、内需中心の成長のパターンが固まりつつあるのではないかということを質的にも申し上げることができるのではないかというふうに考えております。
  126. 宮島滉

    ○宮島滉君 過般政府予算委員会に提出されました中期的な財政需要の仮定計算例では、一般歳出伸びについて〇%、三%、五%の三ケースが示されておりますが、そのいずれを見ても財政改革への道程が容易ならざるものであることが理解できます。なかんずく特例公債について借換債発行する場合としない場合とでは、各ケースとも六十五年度において要調整額に五兆円近い差があり、この意味でも借換債発行はやむを得ない、そのように思料されます。しかしながら、借換債発行を行う場合でも要調整額極めて大きなものがあります。したがって、政府は六十五年度において赤字国債からの脱却を行うよう努めるとおっしゃっておられますけれども、五十六年度脱却に向けて要調整額をどのように解消していくおつもりか、また六十五年度脱却目標もおぼつかないとの意見もございますが、その点についてどのようなお考えであるかお伺いをいたしたいと存じます。
  127. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 本国会に提出いたしました仮定計算例あるいは中期展望の数字をごらんいただきますと、今委員のおっしゃいましたように、借換債発行を行う場合あるいは行わない場合、いずれにつきましても巨額の要調整額の発生が予想されるわけでございます。  そこで、それでは六十五年度脱却、それに向けて脱却しながらしかも要調整額をどのように解消していくかということでございますが、そのための方策といいますのは、先ほども答弁申し上げましたように家計の場合と同様でございまして、歳入歳出両面にわたりあらゆる努力をするということが基本になるわけでございます。そういうことを行うことによって初めて財政が対応力を回復して財政としての役割を十分に果たすことができるわけでございます。  そこで、それでは具体的にどうしてきたかということでございますけれども、まず五十九年度までの予算編成に当たりましては、歳出面において政府と民間、あるいは国と地方との間の役割と責任を明確にする見地から、既存の制度・施策についていろいろ踏み込んだ改革を行ってきたわけでございます。大蔵大臣のお言葉をかりますと、内なる改革が特に五十九年度予算において歳出面において行われたのではないかということを言っておられましたが、そのような意味でも非常に根本にまで踏み込んで行ってきたというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、この歳出面でのそのような努力は今後とも引き続き続けていかざるを得ないというふうに考えられるのでございます。  他方歳入面におきましても、各種のいわゆる公共サービスは、そのためには国民負担によって裏づけられるわけでございますから、そういう観点を十分念頭に置きながらやっていかざるを得ないのであります。しかし、その場合も社会経済情勢の変化を十分に踏まえながら、公平適正な税制のあり方等についても当然検討が行われる必要があるわけでございます。また税外収入等についても十分いろんな角度から引き続き見直しを行っていく必要もあると考えられます。  このような歳出歳入両面における努力を引き続けることによりまして、その結果、六十五年度までに特例公債依存体質から脱却する、その努力目標を達成するために着実に進めていくということが重要ではないかと思うわけでございます。その結果、そういう努力の中で要調整額を解消していくということだと思っておる次第であります。  しかし、この要調整額をそれでは具体的に今後毎年度定量的にどのように解消していくのかということでございますけれども、そのようなリジッドな処理計画ということはいわゆる財政再建計画を具体的にしかもゾルレンの形で示せということでございまして、極めて流動的なこの経済財政の現在の状況のもとでは定量的に示すということは非常に難しいのではないかというふうに思っております。  いずれにしましても、この問題につきましては、最終的には、大臣もたびたび予算委員会その他でも答弁申し上げておりますように、国民の選択がどのようなものであるかというところに帰着すると考えもれますので、今後とも各方面の御議論を伺いながら、歳入歳出両面において種々の努力を積み重ねていく必要があるのではないかというふうに考えております。
  128. 宮島滉

    ○宮島滉君 御説明は伺いましたけれども借りかえを行いつつ特例公債をゼロといたしましても、特例公債依存体質からの脱却とは言えないのではないでしょうか。いかがでございますか。
  129. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 八〇年代の「展望と指針」で、六十五年度までに特例公債依存体質からの脱却を努力目標としてお示しいたしました際の特例公債依存体質といいますのは、新規財源債としての特例公債依存、まず六十五年度までにそういう依存をゼロにするという目標努力するということでございます。したがいまして、その努力目標が達成されますと、その六十五年度以降においては既往の特例公債残高が残るわけでございまして、新規にいわゆる貯蓄残高の中から調達するものがなくなりますので、あとは努力規定に従いまして残高を減らす方向で鋭意努力することによって減少していくということでございまして、その意味では、御指摘のように、特例公債依存体質からの脱却という問題については、片方で借りかえながらという点は、我々としては十分に整理して今国会法案をお出ししているというふうに思っているわけでございます。
  130. 宮島滉

    ○宮島滉君 先ほど国債償還財源の話をいたしましたが、国債費の定率繰り入れの問題があります。五十七年度補正以来三カ年停止しておりますが、六十年度にはどのようにお考えでありますか、お伺いしたいと思います。
  131. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 定率繰り入れにつきましては、これは現行の総合減債制度の基本の仕組みでございます。いわゆる六十年償還ルールを担保するものでございます。したがいまして、この定率繰り入れ制度の問題は、財政制度審議会におきましても、「基本的には現行の減債制度の仕組みはこれを維持するのが適当である」との御意見をいただいているところでございます。したがいまして、そのような考え方を頭の中に置きながら、六十年度以降の定率繰り入れの問題につきましてもこれを取り扱っていくべきであるというふうに考えております。  具体的にそれでは六十年度以降どうするかということでございますけれども、これにつきましては、そのときどきの財政状況あるいは国債整理基金の資金繰り状況等を十分に考慮する必要もあるわけでございまして、今後の予算編成のそれぞれの過程において、今申し上げました基本的な考え方を頭に置きながら適切に対処してまいりたいと考えております。
  132. 宮島滉

    ○宮島滉君 六十年度以降定率繰り入れ停止を継続すれば、国債政策に対する国民の信頼が失われるのではないかと判断されますけれども、いかがでございますか。
  133. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 先ほどもお話し申し上げましたように、これまで定率繰り入れ停止は、五十七、五十八、五十九と三年間にわたって行ってまいりました。これはそれぞれの年度の困難な財政事情にかんがみまして、しかしながら他方において国債整理基金の資金繰りの問題、あるいは公債償還に支障があるかどうかというようなことも十分考えた上で定率繰り入れ停止をお願いしてきたわけでございます。したがいまして、先ほども答弁申し上げましたように、減債制度そのものを廃止するということではないわけでございます。したがいまして、今回五十九年度におきまして定率繰り入れ停止せざるを得ないことになって、その法案をお願いしているわけでございますけれども国民国債に対する信頼というものがその結果失われることがないように我々としてもあらゆる努力を払っていく必要があると考えます。  したがいまして、まず国債を保有しておられる国民の皆さんに、満期が到来した場合には必ず全額を現金で償還するということは当然のことでございますし、これはやはり国債政策の根幹にかかわる問題と思うわけでございます。したがいまして、それを根幹といたしまして、今後とも国民国債に対する信頼を維持するということから、基本的には現行の減債制度を維持していかざるを得ないというふうに思っております。そのためにも歳出節減合理化等、財政の健全化のためにはあらゆる努力をする必要がございますし、そのことがひいては公債政策に対する国民の信頼を維持してまいることになるわけでありますので、そういう方向であらゆる努力を尽くしてまいりたいということでございます。
  134. 宮島滉

    ○宮島滉君 以上をもって終わります。
  135. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 宮島同僚の質問に引き続きまして、関連して質問をさしていただきます。  今度の借換債の問題は、実は野党の先生方からは大変厳しい御批判がありますし、今まで大蔵大臣が借換債発行しないということを言明してこられておるわけですから、事情変更があったとしても、このことについていろいろ御批判が出るのは当然だと思うんです。しかし、私はちょっと観点を変えて考えますと、年間約三百兆の国民所得があって、そしてそのうち毎年予算が五十兆、十二、三兆の新規国債ということのバランスで見れば、債務の蓄積が百兆をちょっと超える程度でそんなに大騒ぎをすることがあるんだろうかという感じがするわけですね。要するに、負債が非常に重なるということは大きな問題でございますけれども、負債を返すということを、単に現物としての負債の償却を行うというふうに考えるべきなのか、歯どめ論をそういうふうに考えるべきなのか、あるいはその負債に見合うような資産が国家としてめどがついておる、あるいは対応すべき国の対策がちゃんととられておるということであれば、経済規模が大きくなっていく過程で少々借金をふやすことにそれほど神経質になる必要はないんではないかという感じが実はしておるんです。そこで、そういうことについて答えると言ってもなかなかむずかしいと思いますから、そういうことの関連で若干質問をいたしたいと思うんです。  まず一つは、今度借換債をお出しになることになりました。借換債は、手続的に言うと、大体二月と五月と、あとは七月と十一月でしたかな、の二十日に返すわけでしょう。だから、一遍に二兆円とか三兆円のお金をわっと返さなきゃならない、調達しなきゃならない。そうすると、金融市場に非常に大きな混乱をもたらす。一方で十二兆の金はまたシ団あるいは自由応募でやらなきゃならないということですから、金融市場にいろいろ注文がたくさん出ることになろうと思います。そういうことになると、借換債償還、今までの特例債償還と借換債を立てる時期の間の金繰りというものは、どうしたって短期的に処置する特別の国債が要ることになると思うんで、短期国債というものを思い切って相当出さなくちゃならぬのじゃないかという感じがいたすんです。何か短期国債については金利の問題も絡むので大蔵省は少し渋っておられるような点もありますけれども、これは後でもう少し話を詰めたいと思いますが、そこの感じからひとつお答えを願いたいと思います。
  136. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 今大坪先生が御指摘になりましたように、六十年度以降借換債が激増いたします。激増するだけではなくて、要するに償還時期、つまり直ちに借りかえをするとすれば借りかえをしなくちゃならない時期が五月、十一月というようにある時期に集中するという問題がございます。それをいかに円滑に一時期に集中するものを市場の中に消化していくかというのが非常に大きな問題でございます。  御指摘がありましたように、例えば五月に二兆なり三兆なりの償還期がまいりましたときに、同じ十年債でその時期に借換債を二兆、三兆という大きな規模で発行できれば、これは最も望ましいわけでございますが、そのときの市況によってはそれが難しいということがございます。で、そのつなぎとして例えば中期債であるとか、もう少し短期の国債であるとかいうものを出せばもっと円滑に国債の消化ができるというような場合には、そういうより短期なものというものも選択をして円滑な発行消化を図るべきではないか、こういう議論がございまして、国債の多様化の一環として短期債をやったらどうだと、こういう議論になるわけでございまして、私どももそれは重大な検討課題であると、こういうように考えているわけでございます。
  137. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 今お話がありましたように、例えば十年後の借換債ということになりましても、償還すべき国債が途中で何回も売買されるわけでしょう。そうすると、最終的に手に入ってから換金する間はそんなに年数はなくなるのが普通ですから、結局これは短期債と同じことになるんじゃないかと思うんです、効果はですね。だから、そういう意味で言えばどうしても短期国債について本気になって市場を考えなくちゃいけない問題が出てくる。  これはちょっと横に置いておきまして、大蔵省全体として、銀行局長も来ておられるから、お考え願いたいんだけれども、実は金融の自由化は必然の趨勢でございます。スプリンケル氏と大場さんの話も近々結論が出るようですけれども、今ブッシュ氏も来ておりますし、いろいろ圧力が加わっておる。圧力だけじゃなくて、当然金融の自由化をやらなくちゃならない。その中で金利の自由化が相当進む。国債についても従来大蔵省国債の金利については方針をお持ちで、それで引き受けをさせておられたようですけれども、実際上過去の例にもありますように、市中金利に見合う金利にした方が売れ行きがいいということになると、やっぱり借換債の場合にもそういう金利を考えなくちゃいけないんじゃないだろうか。ところが、一方で市中が閉塞しているような状態だったらば、例えば資金運用部の資金についてもこの借換債の窓を開かなくちゃならぬのじゃないか。その辺の兼ね合いを一体今後どういうふうに考えたらいいのかというのが一つ問題点でございます。  それから金融が自由化してきまして、特にきょうの新聞にも出ておりましたけれども、ユーロ円を自由化する、それからユーロ円起債を認めるということになる。非居住者のユーロ円起債が認められるということになりますと、ヨーロッパにおける日本円の金利が形成されてきまして、それが国内に非常に影響をもってくるようになるだろう。そうすると、日銀の窓口規制とか、あるいは公定歩合操作というようなもので金融政策を進めることが非常に難しくなるんじゃないかと思うんですね。そうなってくると、どうしたってお金の出し入れをどっかでやるマシーンナリーをつくっておいて、そしてマーケットオペレーションをやるよりしょうがないというのは、これは国際的な原則ではないかと思います。日本にそれがまだ十分成熟してないときに急速に金融の自由化を迫られておる。  こういう状態考えますと、短期政府債の市場を意図的に大蔵省は育てられる必要があるんじゃなかろうかと思うんです。これは単に国債の処理の問題だけではなくて、大蔵省全体としての大きな金融自由化に対する日本国の対応の仕方としての問題だと思うんですが、その辺はどのようにお考えか、まあお答えできる範囲でひとつ。
  138. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 国債に関連する部分につきまして私からお答え申し上げます。  今大坪先生は借換債との関係で金利といいますか、国債発行条件をもっと弾力的にしなければ消化できないんじゃないかと、こういう御議論だったかと思いますが、実は借換債だけではなくて、新規債も同じようなことでございます。実際にやっておりますのは、現在既に発行されました国債は、これは自由金利商品として現に市中で自由に取引が行われているわけでございまして、流通市場が形成されております。その流通市場での流通利回りと申しますか、国債に対する評価というものが国債の市況ということで流通利回りとして、そのときそのときに変動いたしておりまして、それを無視して発行条件を決めるというわけにはまいらないわけでございまして、非常に大ざっぱに言えば、現在でも既に国債の流通市場における評価をもとにして発行条件が決められていると、こういうことでございます。  さらに細かく申しますと、今出しております国債は十年利付の長期債と、二年、三年、四年の利付の中期債と、それから五年の割引債でございますが、二年、三年、四年の中期債につきましては全く公募で発行条件を決めておりまして、これは発行者が勝手に条件を決めて発行するというものではなくて、市中の評価そのものの条件で発行されるといっても差し支えないのではないかと思います。  十年利付債と五年の割引債につきましては、国債引き受けシンジケート団との折衝によりまして発行条件を決めますが、その発行条件を決めるに当たりましては、そのときそのときの政策当局の姿勢はもちろんございますけれども、結局そのときの市場条件を尊重して決めざるを得ないというのが現在の状況でございまして、現在でも毎月のように市況に応じまして発行条件を変更する、毎月のように変わっているのが実情でございます。  借換債につきましても、借換債の円滑な消化を進めていきますためには全く同じようなことでそのときの流通市場における国債の評価というものをベースとして発行条件を決めていかなければ円滑な消化ができないのではないかと、こういうふうに思われます。  それから、先ほど言われましたように、五十年以降大量に国債発行されておりますので、期近債がどんどん出ているわけでございます。そういった意味では短期のものも実際には出回っているわけでございまして、量として申しますと、この五十八年度末、五十九年三月末で締めてみましても、償還期が二年未満のものというのが十六兆もあるわけでございます。これが自由化を促す一つの大きな要因になっているということは言えると思います。そういった意味で、国債が大量発行されていることによりますインパクトが自由化の方向で進んでいるということはおっしゃるとおりだと思います。
  139. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 今先生の御質問の中で、国債の大量発行、それから金利の自由化の進展とかかわりまして金融調節手段について御質問があったわけでございますが、一般的に金融調節手段は、公定歩合とオペレーションと準備率と、もう一つ日本独特の制度として窓口規制があったわけでございますが、最近のように低成長時代になってまいりまして、資金需給が緩和してまいりまして借り入れ需要が少なくなってくるというふうな場合には、まず窓口規制の有効性が失われてくることは確かでございます。それからまた、そういう時代には量的な規制手段であります準備率操作も余り有効ではなくなる。  残りますのは金利とオペレーションでございますが、公定歩合政策につきましても、実は金利の自由化が進みますと、実勢といいますか、市場の需要と供給によって市場で決められる金利が先導することになりまして、先進国などにおきましては、市場の実勢に公定歩合が追随して上げ下げするということでございまして、市中金利を追認するのが公定歩合ということで余り政策的な意味がなくなってくる。そうすると、残りますのは結局オペレーションによって金融政策をやっていかざるを得なくなるわけでございまして、そういう意味におきましては、今大坪先生御指摘のように、中央銀行がそういう債券売買、特に短期証券などの売買を機動的に行って、そして市中の市場の金利を中央銀行が誘導していくといいますか、中央銀行の政策意図を持って市場に介入していく、こういうオペレーション政策が非常に重要なものになってまいるわけです。  そこで、日本の場合には、現在御指摘にもございましたが、短期市場は先進国のような政府短期証券市場がございませんで、一般に金融機関同士の市場でありますところの手形とコール市場を通じて現在日銀が金融政策オペレーションをやっているわけでございますが、もう少しさらに市場全体の金利の有効性といいますか、金利機能の活用を図っていきますためには、もう少しオープンの、金融機関同士だけではなくて、いろいろな機関投資家とか、いろいろな金融集団がオープンに参加し得るような市場が必要だということが指摘されているわけでございます。  現在、日本の場合にオープンの市場といいますのは、CD市場と現先市場しかない。そこで現在、先ほども指摘ございましたが、アメリカからの要請といたしまして、円建てのBA市場をつくったらどうだろうか、あるいは今申し上げましたCD市場をもう少し何といいますか、流動性を高めて短期の市場としてもっと機能するような市場にもっていったらどうだろうか。もう一つは今御指摘のTB市場をつくったらどうかというふうないろいろな御指摘があるわけでございますが、金融政策的な見地だけから申し上げますと、そういうようなオープンの市場が形成されまして、中央銀行当局がその市場に機動的に出ていくというようなことが必要かと思うんでございます。  ただ、TB市場につきましては、実は国庫制度財政制度とも非常に絡まっておる問題でございまして、特に先ほど来御指摘のように短期の国債発行されるとか、あるいは期近物の国債がどんどん流通するとかというようなことで、短期の国債市場というものが形成されつつあるわけでございまして、これと政府短期証券のTB市場とがどう絡まっていくのかというような問題もございまして、これからの検討課題だと思いますけれども、現在直ちにTB市場をどんどんつくっていくというふうな状況にはないということを申し上げておきたいと思います。
  140. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 国際金融の話をすべきときじゃないんですけれども、ちょっと気になることがありますので二、三追加さして質問させていただきたいのです。  実は、非居住者のユーロ円について起債は認める方針ではなかったと思うんですね。ところが、アメリカとの話し合いでユーロ円債については非居住者についても認める方向に動いているように思われますが、そうなるとますます日本の金融政策は、初めは国内を整備してそれから外を追随させようという方針だったように思うけれども、並行して動かなければならなくなってくる。そうすると、今言っておったような議論でも、財政当局が、金利の自由化では政府債はちょっと困ると、財政上の制約からいろいろ文句を言われても、金融政策全般から見ると、どうしてもそういうものが必要だということになってくると、大蔵省の統一性がなくなってくるのじゃないかという気がしますがね。そこは一体どういうふうにお考えになっておられるのか、大臣がおられれば大臣に聞きたいところだけれども、主計局の平澤さんどうですか、そこは。
  141. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 御指摘のように、金融の中におきましても、まず証券と銀行の問題がございますし、それからその中でも国際金融と国内金融の問題もございます。さらに御指摘のように財政と金融全般との絡みもいろいろ出てきているわけでございます。特に財政と金融との関係は国債発行を通じまして非常に互いに密接に関連してきているのが現状であるわけでございます。諸外国の例を見ましても同じような状況がだんだん進化してきているのも事実でございます。  そういう際に、それでは行政当局がこのような事態の大きな変革に対して十分対応しているかどうかという点についての意見をということでございますが、いろいろ努力をしながら対応してきていると我々は思っておりますけれども、その辺につきましては、なおそれに弾力的に対応できるように体制をどのようにつくっていくかということについても、引き続き熱心に検討を進めていかざるを得ないのではないかというふうに思っております。あくまで個人的な意見でございます。
  142. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 今のような問題について我々も非常に関心を持っておりますので、ひとつ今後政策をお決めになるときに大蔵省として内部調整をしっかりしていただきたいと思います。  大蔵省の今回の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案参考資料の中に、十七ページですが、国債の所有者別の構成比というのがありますが、海外の構成比は日本が四・三%です、八二年度末で。アメリカはちょっとそのものの数字じゃありませんけれども非常に高い率ですし、イギリスが七・九、西ドイツが一二・九。いずれにしても西欧諸国は国債の持ち合いをやっておるような感じがいたしますが、日本の場合はまだそれが非常に少ないように思います。  今、日本国債総額は百二十兆を超えようとしておるし、財政上の要求もこれあり、借換債をどうしてもやらなくちゃならないという事態ですが、政府は思い切って、貿易自由化の問題との兼ね合いもあり、貿易摩擦の兼ね合いもあることだし、アメリカの国会では何かしょっちゅう政府から、財務当局からそういう情報をとっておるということもありますし、外貨公債発行す畜考えがあるか。これはどうも新しい法律で形だけは発行できるようにするということではあるようですが、実際上は金利の問題その他で障害があるんではないかと思うんですけれども、それを克服すべき方策ですね、スワップを考えるとか、あるいはアメリカの大蔵証券とそれこそ日本国債をスワップするとか、何かそういう知恵を出して外国の外貨建ての国債を少しお出しになる、それを積極的に進めるということはお考えになっておられませんのでしょうか。
  143. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 最初に、非居住者の国債保有状況を国際比較されまして、日本国債が余り持たれていないという御指摘がございましたけれども、それはドイツ等と比べますとそのとおりでございますが、我が方に規制があってそのために非居住者の保有が進んでないと、こういう状況ではないわけでございまして、買いたければ幾らでも買える、こういう状況にはなっております。そのことをちょっとお断りしておきます。  それから外貨国債の問題でございますが、昨年十月の総合経済対策の中で、条件が許せば外貨国債発行できるような法整備という方向が打ち出されまして、今国会にも対外一括法の中でそういう御審議をいただくということで準備を進めているわけでございますが、具体的にいつ出せるか、出す可能性が当面あるかどうかという点につきましてはなかなか難しい問題がございます。  私どもといたしましては、国債管理政策を進めるに当たりまして財政負担をできるだけ低く抑えるということを常に心がける必要がございますが、例えば今世界の主要市場で日本の国内よりも金利水準が低いところというのはスイスぐらいでございまして、あとは大体日本よりも高いわけでございまして、利子負担だけを、為替の面を除きまして比較いたしますと、よそで出すと普通に出せば不利になる、こういう状況でございます。ニューヨーク市場と東京市場と比較いたしますと、最近また向こうの金利水準が上がりまして、十年利付債、政府債ということで比較してみましても、五%以上差があるというような状況でございます。  ただ、そういう状況でございますが、いろんな工夫はしなくちゃならないということで、先般政府保証の開銀債につきましては、きょう午前中大臣からも御説明しましたように、スイス・フランとのカレンシースワップというようなことで、長期先物というようなことで取り決めることによりまして、日本よりも金利水準の低いスイスで出したのと同じような条件でニューヨークで起債が可能であったと、こういったことがあったわけでございまして、ただ、それじゃ国債もそれでやるかということになりますと、だんだんそういうパイプが大きくなりますと全く同じような方法も可能かと思いますが、国債につきましては、国内で発行いたします規模が年間十数兆ということでございますし、国内で発行いたします規模が三千億から七千億というような規模で発行してるわけでございますので、そういったことから考えますと、外国で起債するとしましても、相当規模の起債をしないと国債にふさわしい規模にならないというような感じがございますが、そういうカレンシースワップ付債というような方法だとなかなか国債にふさわしい規模にならないというような問題がございまして、よほどうまい方法を考えないと、発行コストを国内債と比べておかしくないような条件で発行するということを考えますと、なかなか難しいのが現状でございます。私どもといたしましては、政府保証開銀債につきましてもいろいろと苦労した結果実現したという経緯もありますので、今後政府保証債も含めまして何か工夫をしてみたいと、こういうふうに考えております。
  144. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 同じような趣旨で、私どもは主としてアメリカのことを考えますけれども、ヨーロッパの円市場が動き出すということですと、ユーロ円市場で国債を処理するということはできませんかね、これもひとつ教えていただきたいんです。
  145. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) ユーロ円市場の問題でございますが、現在のユーロ円市場の規模から考えまして、先ほど申し上げましたような国債にふさわしい規模ということを考えますと、そういったものが実現できるかどうかということがございます。それから国内発行の場合に比べまして、ユーロ円市場で国債発行した場合により有利な条件で発行できるかどうかという点についても相当問題がございます。この問題につきましては私ども慎重に検討していきたいというふうに考えておりますが、先ほど申し上げました対外一括法で手続面で、マーケットの状況が許せば発行できるように手続を整備いたしておりますのは外貨建ての場合でございまして、ユーロ円の方につきましては当面考えていないわけであります。このことをちょっとお断りしておきたいと思います。
  146. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 それじゃ最後で、これは私も実はよくわからない情報をもとにして御質問するんで、あるいは間違っておるかもしれませんけれども政府間の約束のような形で非居住者預金として日本に置かれている金が大分あるように思うんですけれども、そういうものを国債財源として動かすわけにはいかないんでしょうか。意味はおわかりになりますか。例えば日銀の非居住者預金のようなところに相当大量の金があると思うんですけれども、そういったやつを、日本はこんなに貧乏で、政府だけが貧乏なんですけど、国債の調達に困っているからどうだというような話にはならぬのでしょうかね。
  147. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 完全なお答えになるかどうかわかりませんが、非居住者が円で国内のマーケットで国債に投資しているというものも相当あるわけでございまして、そういった非居住者円預金がそういったものに使われているということも相当あるんではないかなという想像はいたしておりますが、はっきりしたケースをつかんでいるわけではございません。
  148. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 そこで、結局、結論になるわけでございますが、六十年に大量の借換債が出まして、国債管理政策ということが非常に大きな問題になってくるんではないかと思います。今大蔵大臣答弁その他を拝見いたしますと、相当弾力的な運営をされるということを伺うわけでございますけれども、あるいは先ほどの御答弁の中にもありましたように、借換債についても特例債見合いと四条見合いとを分けて処置するようなことができないだろうかというような話がございましたけれども、特に六十年度以降の国債管理政策のあり方というのは非常に重要な問題があろうかと思いますので、おさらいの意味で恐縮ですけれども、もう一遍そこのところを、今あなたが考えておられる考え方をちょっとはっきり教えていただきたいと思います。
  149. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 今御指摘がありましたように、六十年度以降の新規債、借換債合わせた国債発行消化、これを円滑に進めていくためにはいろいろと工夫が必要だと思います。そういった意味で、今後国債管理政策につきましては、従来も必要に応じまして例えば国債の種類の多様化につきましても、当初は長期物、十年利付債だけでございましたのが、五年の割引債を発行するようになりましたり、二年、三年、四年の利付債を発行するようになりましたり、そういった弾力的な対応はしているわけでございますけれども、今後ともそういった方向で努力をしていきたい。  それから国債の多様化のほかに、先ほど来御指摘がありましたように、一時期に集中するものをいかに散らしてうまく溶け込ませていくかというふうな点につきましても十分に検討いたしまして、国債管理に遺漏のないようにしたい、こういうふうに思っております。ただ、それを進めていくに当たりましていつも念頭に置いておかなければならないのは、財政負担を極力軽くするというような問題、あるいは将来の借りかえ負担を増加させないためにも満期構成につきましては十分気をつけなくちゃならない。さらに国債を消化する金融・資本市場に対する影響等につきましても十分に配慮をいたしまして、民間金融等に変なゆがみが起きないようにというようなことを配慮しながら弾力的に国債管理政策を進めていくということが必要であろうと思います。
  150. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 最後に、ちょっと時間をいただきまして、せっかく銀行局長お見えですから、金融自由化の兼ね合いで特にBA市場のことについて、新聞等も書いてますし、我々も気にしているんですけれども、まだ御方針がはっきり決まっておらないのか、あるいはこういう行き方で考えておるということがおっしゃれるのか、それをちょっとお聞かせいただきたいと考えております。  それからもう一つは、これは先ほど理事会なんかでも雑談で出たんですけれども資金運用部の資金がもう相当日本ではありますね。これは回転はしておるんですけれども、産業界の育成的な意味で使われた時期はもう過ぎてきているんじゃなかろうか。だから、資金運用部資金についても、これを膨大な我が国国債の充当財源に本格的に動員する体制をとることができないのかどうか、あるいは資金運用部資金の回転のサイクルの中に国債のサイクルをちゃんと入れ込んでいくことができないのか、この辺についてお答えをいただきたいと思います。  これで質問を終わります。
  151. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) BA市場の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、我が国の短期市場を育成していくという見地から、私どもといたしましてもこれを前向きに取り扱っていきたいということで、今度のアドホック会合のやりとりの過程におきましては、これについて前向きの発言もいたしておるわけでございます。そのために、外為審なりあるいは金融制度調査会なりでどういうような姿でもってこれを育成していくのかという点について御検討いただいた上で何がしかのルールづくりなどをいたしていきたいと思っております。  ただ、こういう金融市場といいますのはつくろうと思ってもなかなかできるもんじゃございませんで、そういう需要が出てきて初めて形成されるものでございまして、結局BA市場といいましても、金融機関の資金の調達市場になるわけでございますので、今のような状況でコールとか手形市場がかなり発達しているような我が国の段階でこのBA市場が果たしてうまくいくのかどうか。あるいはそもそも輸入と輸出を考えてみますと輸入の円建ての割合というのは非常に少ないわけでございまして、逆にBA市場をつくりますと輸出の促進につながるのじゃないかというような点などもございまして、いろいろ問題点はあるのでございますけれども、しかし市場の拡大、自由化を円滑に我が国経済の中に軟着陸させる上で少しでも効果のあるものについては、これを前向きに取り組んでいくというのが私どもの姿勢でございまして、BAにつきましては近々そういう方向で結論を出したい、こう思っております。
  152. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 資金運用部の点につきまして私から御説明いたしますが、資金運用部をできるだけ国債の消化に活用すべしという御意見は、私どもそのとおりだと思います。私ども資金運用部、これは配分に当たりましては、国債、それから地方への配分、それからいわゆる財投機関への配分と、この三者にそのときそのときの状況に応じましてできるだけ有効に公平に分配をしたいと、こういうことでやっておりまして、国債には十分重点を置いてやっているつもりでございます。  ことしの状況を申しますと、資金運用部資金伸びは、五十八年度の予定よりも五十九年度の予定は減っている状況でございまして、原資としては減額しているわけでございますが、国債の新規発行額が六千五百五十億減額された中で、資金運用部の引き受け分は千億の減額にとどめるというようなことで努力をいたしておりまして、国債消化の中の資金運用部のシェアはむしろ上がっているような状況でございます。今後とも地方の資金需要、それから財投機関の資金需要等もにらみながら国債の消化のために資金運用部を有効に使うという努力は続けていきたいというふうに思っております。
  153. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 終わります。
  154. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記をとめて。    〔午後四時三十七分速記中止〕    〔午後四時五十九分速記開始〕
  155. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記を起こして。  引き続き質疑を行います。
  156. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 きょうの午前中からの質疑を聞いておりまして、赤字国債借りかえを認めることは国債発行の歯どめがなくなることだと、それに関して訓示規定についてもいろいろ議論があったんです。しかし、大体借りかえ禁止規定は、法律で禁止しているんですが、生きている法律さえ殺してしまった大蔵省ですから、訓示規定というのはそれに対していえば最初から空文句なんですね。私は、生きている法律を死文化させたものが、訓示規定なんか最初から空文だということで、守る気遣いかないんじゃないかということが率直な印象であります。  それからもう一つは、現在の残債務をどうするのか、それに対して何の方針も見解も示されないまま終わってしまったことで、これは国会議員として国民に責任を負い得ない、特に後世の国民に責任を負い得ないという各委員の発言がありましたけれども、全く同感であります。  さらに私が気になるのは、竹下大蔵大臣自身の発言としまして、国債発行の危険性を毎日のように言われているとついマンネリになってしまうということを言われましたね。それからもう一つは、戦前の国債は超インフレの中でいわば痛痒を感ぜずに来た、全体がアブノーマルだから受け入れられてもきたんだ、こういう発言を私は聞き、かつ先ほど来の議論を聞いていますと、大臣のこのマンネリ感というのは、既に現状がもうアブノーマルになっている、だからこんなマンネリ感が出てくるんじゃないか、こう思うんですが、この私の率直な疑問に対してどうでしょうか。
  157. 竹下登

    国務大臣竹下登君) だから、毎日聞いておってもマンネリになってはならないぞよとみずからの心に絶えず言い聞かしておる、こういう意味の自重自戒を含めて申し上げたわけでございます。  それから戦後の同じゼネレーションのもとに過去を振りかえってみますときに、確かに超インフレ、超大混乱の中で、翻ってみれば、二十代の我々がその間に生きるための努力をしておる中に、余りにも混乱が大きかったために、インフレによる戦時国債がだんだん減価していくことに気がつく以上の生活環境の中にあったから、我々はあの時代思うほどにはなく見過ごしてきたんではないかという私の戦後史における歴史的一考察を述べた、こういうことであります。
  158. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これも先ほど来、赤字国債発行はやむを得ないとか、それから苦しい財政事情から借りかえ禁止規定を解いていただかざるを得ない、こういった答弁が繰り返されてきたんです。  私はこれをずっと聞いていまして、これまた率直な私の印象を申しますと、人間の病気に例えて申しますと、最初赤字国債やむを得ないということで発行した、そのときまず病気になったわけですね。一回や二回でやめてしまえば病気ももとへ戻ったんでしょうけれども、そのまま進行しまして、第二段階が赤字国債恒常化、そして国債整理基金定率繰り入れ停止、これもやむを得ないといって済んじゃったわけです。私はこの段階で単なる病人から重病人になったんじゃないかと思うんですよ。そして第三段階で、そういう状況はいいことではない、悪いことであると知りながらもやむを得ない、やむを得ないというのでやってまいりまして、それで今回いよいよ借りかえ禁止規定を解く。これは今までの病気がぐあいが悪いということを知りながらやむを得ず進んでしまったわけですから、私はもう一歩進んで、まさに人間で言いますと不治の病に入った、もう治らない、そこに突入し、やがて死に到達する、こういうぐあいに思うんですが、私のこの率直な印象について大臣どうお考えですか。
  159. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 端的に言うならば、そういうことにならぬように今一生懸命で治療をしておるということではなかろうか。健全な身体に回復するということがもろもろの環境が悪くてできなかった、なおあるいは重病になった、でも生に対する強烈な執念を持ってやっていくということが、財政改革という計数的な問題といささか表現の相違はございますが、今の我々の立場じゃなかろうかなと、こういう感じでございます。
  160. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これも先ほど来、こういう状況では国会議員として責任を負い得ないという発言もあったんですが、私はやはり責任を負わなきゃいけないので、現段階ではこういう状況に対して正確な診断を下し、かつ今まさに不治の病に突入するかどうか、あるいは突入したという見方もできるわけですけれども、その点を明確に指摘をすることが私たちの責任だと、こう思うんです。  問題は、我々は外から見でいるわけですが、問題は患者たる大蔵省が自覚病状がどうなのかということだと私は思うんです。そこで幾つか診断をしてみたいと思うんですが、まず法的な面で見てみますと、財政法四条、五条、これが実質的な歯どめになっておるわけですが、これは悪法上の要請、現在の憲法ができた経過、そして特にあの敗戦という状況、借金に借金を重ねて戦争をやり、やがて敗れて深刻な状況になったというそういうことから言いまして、四条、五条の歯どめというのは、憲法の国民主権及び平和的な生存権を担保する規定としてこれができてきたのだと私は理解しておるんですが、その点についての大臣認識はどうですか。
  161. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 戦時国債というものの目的そのものは戦争遂行のための国債、それが戦後の財政状態に大変な悪い影響をもたらしたというその現象面をとらえた場合は一緒でありますが、今日の国債政策は憲法九条から直接的につながった特例債発行という認識では、私は異にするではなかろうかというふうな理解をしております。
  162. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この辺からだんだんと患者の自覚症状が少し怪しくなってくるんですが、問題はこの四条、五条、特に四条から見てみますと、建設国債自身がまず例外だということですね。まず公共事業の概念自身が不明確じゃないかということで、その拡大的運用によって健全財政主義が破られるんじゃないかという、こういう議論もあります。さらにその立場から一歩進めば、特例国債発行自身がこれは財政民主主義の形骸化であって、もともと赤字国債発行はできない、だから特例であるのですが、これはごく例外なんですね。特に借りかえ禁止規定は、このごく極めて認めがたいのだけれども認める、ごく例外を承認するぎりぎりの約束だったわけですね。これを破ったということの違法性、あるいはまた財政民主主義という面から見た違憲性ですね、そういう点についての自覚はおありでしょうか。
  163. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今日までも特例法という形で国会に権限の授与を求めておるわけですから、それそのものが特例措置という意識は私どもにはあるわけであります。そうしてその中に五十一年以降お願いしておった借りかえ禁止規定というものをさかのぼってこれをなしにするということは、私どもがそれそのものも国会お許しをいただこう、こう考えておるわけでございます。
  164. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 どうも法的に見て診断した状況では大変症状は重いというぐあいに理解せざるを得ません。  次に、財政の運営上から見ましてお聞きしたいんですが、昭和五十七年の九月十六日に当時の総理鈴木首相が財政非常事態宣言をいたしましたね。これは中身は、第一は、五十七年も歳入不足穴埋めのために年度途中で赤字国債増発は避けられない、それから国債整理基金への定率繰り入れ停止するということで財政非常事態宣言をしたんですが、これはまさに財政危機、経済学上財政危機という概念があるわけですが、この段階でまず財政危機という状況に到達しておったと私は思うんですが、大臣の御認識はどうでしょうか。
  165. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 財政危機ということはいつからであるか。あるいは人によっては、特例債発行を余儀なくされたその時期をとらえて財政の危機あるいは非常に苦しい状態という判断もできるでありましょう。今日の時点もまた財政的危機であるという判断もできるでありましょう。先ほど来おっしゃっておりました国家破産ということに対する明確な必ずしも定義があるわけじゃございませんが、財政危機とはということについての定義はあるわけでございませんが、それぞれの段階で危機的状態にあるという認識はできるというふうに考えます。
  166. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 概念を明確にしておかなきゃいけないんで、この財政危機について私の方でちょっと申してみたいと思うんです。  まず、歳入が歳出に対して慢性的に不足状況になるということ。それから財政上の赤字が一般会計決算においてまず発生して、歳入を補てんするための国債を大量に発行せざるを得ない。それから三番目には、これらの償還や金利負担のために再び歳出が膨張して赤字が拡大再生産される状況。私はいわゆる財政危機の概念としては大体この三つの要件があると思うんですが、この点についての認識はどうでしょうか。
  167. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それ一つ一つ財政というものを危機的状態であると言う要因の一つにはなり得るであろう。三つそろったものが危機的状況ということでは必ずしもないではないかと思います。
  168. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 竹下さんは余り危機ということを認めるのがお好きでないような感じがするんです。  鈴木さんの非常事態宣言の少し前、昭和五十五年二月五日の衆議院予算委員会で我が党の工藤議員の質問に対して、大体昭和五十九年から六十年にかけて第二の財政危機が来るんではないかということに対する大臣答弁を見てみますと、「財政危機という言葉を使う使わないは別といたしまして、私も、一つの期を画する財政再建のまた一つの年代に入っていくというふうに理解をいたしております。」というような答弁をされている。御記憶があると思うんですが、なかなか危機という言葉を使いたがらない竹下さんの気の強さがここで出ておるんです。  問題は、そのすぐ後に鈴木さんの財政非常事態宣言が出て、これはさっきの竹下さんの発言でも、やっぱり財政危機と認めざるを得ないと思うんですが、竹下さんが昭和五十五年の大蔵大臣なすっているころ、鈴木さんが非常事態宣言をせざるを得ないようなそういうことは予想しておったんでしょうか。
  169. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 財政が大変な危機的状況にあるという認識は私も五十五年ございました。が、今二月とおっしゃいますので、あのとき私どもがいささか、ほっとしたという表現が適切かどうかというのは、五十四年度発行を予定しておった国債発行しなくて済む状態にあった。そうして、あのときは、五十五年の二月には一回公定歩合を上げさしてもらって、三月にもう一遍上げさしてもらって、言うなれば公共事業等を後ろ倒しにしなければやや物価等に赤信号と、こういう状態がございましたので、過熱を抑えるという状況があそこのところ数カ月続いたわけですね。そういう状態でございましただけに、その後の危機的状況指摘とは若干この環境は違っておったではないかというふうに記憶を呼び戻しております。
  170. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 今おっしゃるとおり、その後事態が進んで、増発せずに済むと思った国債を増発せざるを得ない。それから、さらに国債整理基金も繰り入れ停止をせざるを得ないというんで、さすがに非常事態宣言をせざるを得なくなったんだと思うんです。私は、この財政危機の極限状況が、さっき大臣言葉にされて、これがこれから私が主に聞こうと思っている国家破産状況だと思うんですね、その財政危機の極限状況が。  そこで、その問題に入っていく前に、大臣にこれも御認識をお伺いしたいんですが、歴史上、国家破産と言われる状況は各国に存在したとお考えかどうか。存在したとすれば、これは有史の先のことまでいくことないんで、近代国家以降でいいんですが、どんな状況のもとにこういう国家破産と言われる状況が発生したと御認識でしょうか。
  171. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この国家破産という言葉がどういう状態を示すか、これはなかなか難しい問題でありますし、学問として定説というものが私は必ずしもあるとは言えないと思いますが、例えば財政学の学者の本で見ますと、国債の元利の支払い不能、すなわち国債を破棄するとか、一定期間または無期限の間元利の支払いの停止が行われる状態という問題、それから同じその文献の中で見ると、二十世紀において国債破棄宣言をしたのはソビエト、ロシアであると、そういうこと。それから兌換紙幣、今は兌換制はなくなっておりますが、兌換制というものを各国が維持しておったときに、それがある日本換紙幣になっていくというようなことからして、紙幣が不換紙幣になりますと、それに付随して国債価格が暴落するというような状態、暴落というよりも無価値に等しくなるとでも申しましょうか、そういうことが学者さんの書物の中で例示としては挙げられておるということじゃなかろうかと思います。
  172. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 古くいけば、さらにフランス革命直後の状況もそうだと思うんです。むしろ議論を現在につなげるために、例えば第一次世界大戦後のドイツの状況、各国から相当多額の賠償を課せられて、同時に多額の国債発行しておって大変な状況だったんです。賠償の方は全部は払わずに済ましちゃったんですが、国債の方は、これは要するに超インフレで、またたく間に解決しちゃったわけですね。それから我が国の敗戦直後の状況、これもまさに超インフレで、いわば債務を実質的には支払わずに済んじゃったと同じような状況ですが、私はああいう状況をまさに国家破産と言うんじゃないかと思いますが、御認識どうでしょうか。
  173. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一つ考え方ではなかろうかと思います。先ほど言いましたように、いわば日本の場合はモラトリアム、それから新田の発行とかいう経過をたどっておりますが、それよりもいささか、今おっしゃいましたような第一次大戦後のドイツとかポーランドとかオーストリアというのは多少違います。いきなり兌換紙幣が不換紙幣になってという状態でございますから、それとは若干の相違もございますけれども、まあ国債価格を暴落さして無価値に等しいものにしたという状態を指して、学者の中には国家破産の状態と例示される方もいらっしゃる。
  174. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 学者の意見ということで答弁されましたけれども、恐らく同じ認識をお持ちだからだと思うんですね。  そこで、私は現在の日本がそういう状況であるとはもちろん思わぬし、今すぐそこへ行くとはもちろん思わないんです。ただ、先ほど大臣も国家破産状況の現象として幾つか述べられたんですが、私は、そこへまさに第一歩を踏み込むのが今回の赤字国債借りかえを認める措置じゃないかと思うんです。で、さっき言われたように、元金の切り捨てとかあるいは利子払いの延期、あるいは低利強制借りかえなどなどはまさにいわゆる国家破産の現象だと思うんですが、その前に、国債償還期限の延期というのは私はその一現象ではないかと思うし、今回の措置はまさにそのことに一歩踏み込むことにならないのかという点ではどうでしょうか。
  175. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは基本的には、いわゆる国家破産とか破綻とかいう状態の中の国民生活国民経済というものの両者の中においてそういう言葉が成り立つんではないか。だから今の場合、幸い国民の英知と勤勉によって世界の中ではずば抜けて消費者物価が上がらない国になっておりますし、マイナス成長の数ある国の中で安定成長路線をたどっておるんで、国家予算というものと国民全体の実態との両者の中で国家破産というものは成り立つものであって、それを総合的に見た場合、これは国家破産という状態とははるかに離れたものではないかというふうに考えます。
  176. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 今大臣言われた国民の勤勉さとか、特に第一次、第二次石油ショックの際に、大量の国債発行してまさにあの危機を切り抜けた。しかし、私ずっと数字を見てみますと、その後の賃金指数の伸びはせいぜい一十三、四ぐらいなものですね。もうちょっといっていますかね。それに対して主要企業、要するにいわゆる大企業ですね、その株主に配当する純利益は約二倍ぐらい、内部留保は三倍ぐらいいっておるんですね。そのときに借りたものが結局はそこへ行っておるから、だから現象的に見ればこれは世界の中で最もよく見えるんですが、内情は国民の中にさらに、これは後から触れますけれども、所得格差がだんだん出ておるし、国の財政は大変ということで、決して大臣が言うように楽観できるものじゃないと思うんです。  ここで指摘したい点は、今回借りかえを認める、それに対して先ほど来の議論で、何も借りかえは全然返さぬということじゃなくて、国債を持っている人にはお返しをしてまた借りるんです、だからそれはいいんだと、こうおっしゃるんですけれども、しかし十年ということで借りたお金は国民との関係では結局返さないわけですよ。建設国債は六十年だから、そういう約束だからそれはまあいいんですよね。ところが、この赤字国債については、対国民――個々の国債保有者の面では別ですが、対国民という面から見れば、十年で返すと言ったものを結局返さなかった。ということは、先ほど私が国家破産の一つの現象、まさに初期的な現象だと思うんですけれども国債償還期限の延期ということと同時に、元金の切り捨てにさえつながっていくという面を持っているんじゃないか。この辺についてはどうお考えになりますか。
  177. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは五十九年度予算編成に関する建議、これは財政審でございますが、その中の言葉でも、「今や破綻寸前にあるといっても過言ではない。」というような指摘表現としてもあるわけでございます。それは個々によるこの定義は別として、表現としてそのような表現の建議をいただいておるということはまさに異例に厳しい状況下にあるということには違いない。  で、今の問題は対国民と保有者。保有者というのは個人であるか法人であるかということになりますと、それは同一に論じてもいいんじゃないか。個人だけに限定すれば、近藤さんの議論はそれなりに成り立つかもしれませんが、個人、法人すべて見た場合{私は、償還期の来たものに対しては現金でお支払いするという原則は貫かれるわけでございますから、一緒のことではないかと思います。
  178. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 個人と法人を区別する理由はちょっと私はのみ込めないんですけれどもね、それはどういうことですか。
  179. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 近藤さん自身が仮にお持ちになっておる、これはまさに個人が所有しておりますね。それを機関投資家でございますとかあるいは金融機関でございますとか、そういう法人そのものが所有しておるということも、所有形態としては同じことじゃないかという意味で申し上げたわけです。
  180. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 さらに中身に入っていくんですが、私が申し上げた、今までのいわゆる財政危機より一歩踏み込んだ事態だということは、実質的な面からも言えると思うんですね。これは先ほど来示されいる試算の点で、毎年毎年要調整額が、もうすぐ十兆ですよね。それから金利だけでも間もなくもう十兆、それから昭和七十二年には十三兆に達していくという状況ですね。そして、結局この試算によりますと、借りかえを認めた場合にはピークがないでしょう。借りかえを禁止した場合にはピークが出てくるんですね、国債発行残高の。ところが、借りかえを認めた試算によればピークが出てこないんですよ。となりますと、要するに今後ともかく国債発行残高が減っていく見込みはない。要するに山がないということですよ。どこまでも上がっていくんですね。現に今までとは違う、借りかえを認める。  ところが、単に定率繰り入れとは次元が違うんですね。定率繰り入れの場合は、要するに返していくやつをためるという返済計画をやっておるのだけれども、今度はこれはさっき言ったとおり国民政府という規模で見れば返さないのだから。となりますと、私は本当に国を憂えるから言うんですけれども、大きく見た場合には発行残高のピークが出てこない。同時に、この借りかえを認めるということは、先ほど申し上げた、それこそずるずると、何とかもとへ戻ろうと思っても、がんに侵されりゃ戻れないと同じように、まさに今そこに入ろうとしているのじゃないか。他の委員からは、返済の状況は何も言っていないじゃないかとか、歯どめがないじゃないかということの指摘がありましたけれども、私は別の面から見れば、今まさに日本大蔵省が病気で言えばがんに一歩踏み込む、ここで借りかえしなきゃ何とか防ぎ得るのだけれども、そこへ入らんとしておる。あちら側に並んでおる方はそいつを認めようとしており、こちら側はだめだと、こう言っている状況だと思うんですが、その辺についての深刻な認識がおありかどうか。これは先ほどのマンネリの問題と私は同じだと思うんですけれども、どうでしょうか。
  181. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 数字のお話ですので、私の方からまず答弁させていただきます。  今委員がおっしゃいますのは、建設国債特例公債を合わせた数字で言っておられるわけでございますが、特例公債だけをとってみますと、あくまで例の仮定計算例で借りかえをするというときでございますけれども、ピークが六十四年度の六十七兆五千億円でございまして、それ以降は特例公債はずっと減っていくことになるわけでございます。これは当然そうなるわけでありまして、新規債が六十五年でゼロになるわけでございますから、後は償還していくだけということですので、減っていくということになります。したがいまして、建設国債のあの計算でいきますと、毎年同額ふえていくという計算をしておりますので、その分が乗っかっていく。しかし将来、その乗っかっていくものと赤字国債が減っていくものとがまた交差しますと、減っていく可能性もあるわけでございまして、その辺の数字は今後どうなるかは具体的にぴったしとはお答えできないわけでございます。
  182. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 もう時間が来てしまったので終わりますけれども、それはもうよくわかっていることなんで、ただ問題は、今度借りかえを認めることによって建設も特例も差がなくなってくるんですよね。同じ国債なんですよ。そうなれば、問題は発行残高ということで見なきゃいかぬし、残高がどんどんふえていって、減るのがとても見えないというところにこの借りかえが始まるという点、本当にこれは大変な事態で、まさに私の言う破産の危機に、がんに入っていく。まさに踏みとどまるべきだと思うんですが、最後に大臣の見解をお聞きして終わります。
  183. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる国債政策を論ずるときに発行額、いわゆる国債費、それで議論しないで残高議論すべきだという議論はございますよね。今近藤さんの議論残高から入る議論であって、それはそれなりに議論としては私は成り立ち得る議論だと。しかし、今言っておりますのは、第一義的には、特例債の新発債を出さない努力目標を定めて、それに努力して、第二段階として、今度は全体の残高ができるだけ早い機会に減っていく、対GNP比ならGNP比、そういうことだけは一応方針として明らかにしていく。だから、これに対して、泥水すすり、草をかみながら一生懸命でやっていこうというのが我々の考え方でございますから、それに対して、その立場の相違から鞭撻は受けているわけですから、きょうの現象に対して反対、賛成ということについては、私どもは、それはそれなりに謙虚に受けとめていくべき課題ではないかという認識であります。
  184. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 終わります。
  185. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 引き続いて借りかえ禁止問題でお尋ねをしますけれども特例債借りかえ禁止というのはこれまでは大蔵省の確固たる公約でございました。それをここで踏み倒すわけですから大変ばつの悪いお立場だと思いますけれども、ちょっと見方を変えてお尋ねをしたいんです。特例債か四条債かという話は新規債の発行について確かに議論になる問題だと思うんです。ところが、借換債になりますとちょっと性質が違う、根拠法規国債整理基金特別会計法の第五条ですから。ということだけではなくて、片一方は償還に要する資金調達の問題でしょう。もう一つは、歳出財源をどうやって確保するかという意味での特例債、四条公債。したがって、本当は特例債、四条公債議論と借換債というのはステージが違うんです。借換債になりますと、それは片方では国民が持っている資産でもあるわけですから、そういった議論も当然出てくる。したがって、素直に分けて見てみると、従来、特例債借りかえ禁止と言ってきたけれども、事柄の性質が違うのであって、むしろ借りかえ禁止と言った方がおかしかったんですと言う方が、理解とすると素直なんではありませんか。
  186. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その考え方は私は成り立ち得る考え方だと思います。  五十年に、したがって最初のときは、借りかえ禁止規定といいますか、なかったわけでございます。特例債というものは可及的速やかになくすべきものであるだけに、これは借りかえのついた特例債とか借りかえのつかない特例債とか、そもそもそういう議論は別の次元の問題だ。ただあのとき、五十年の議論をいたしましたときに、さて、その歯どめはということから、翌年、それぞれの意見参考にしながら財政審へもかけて、そして財政審意見も、ちょっと今定かに記憶しておりませんが、それは当たり前だという意見ではなく、そういうことがあり得るだろう、こういう意見に基づいて、五十一年から借りかえ禁止規定というものをつけたという意味においては今の議論も成り立ち得る議論だと思っております、論理的にですね。
  187. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それで、これは借りかえ禁止を決めてもとても無理ですよと、実は質疑のたびに申し上げてあったんですが、なおかつおっしゃったのは、これは財政当局としての節度でありますということで繰り返し御答弁がございました。節度だとおっしゃるんですが、いよいよ償還期限が来たら、やっぱりだめだったということになりますと、一体この節度というのはどういう具体的な効果を上げたんだろうか。上げないんだったら何を言ったってむだなんですよ。要するに借りかえ禁止を守るんです、これは財政当局としての節度でありますということを言い続けてきて、いよいよ償還が目の前に迫ったら、とてもできないと。こっちは、無理だからやめなさいと言ってきたことですから、言わぬこっちゃないじゃないかと言うだけなんだけれども。それまでの間、とにかく節度なんですと言い続けてきたことは、何か具体的な効果を生んだんでしょうか。この点いかがですか。
  188. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ちょっとつけ加えさせていただきますと、「以上の点から考えると、これを法定する必然性はないが、立法政策の問題として財政節度を示すという観点からこれを法定するのであれば、あえてその意義を否定すべきものでもない」と、こういう報告をいただいたわけでございます。ちょっと正確に覚えてなかったもので、今事務当局から提示されたわけであります。  さて、では、その節度というものをどこで示そうとしたかということになりますと、年々の発行限度額をいかに落としていくかということが努力目標であったではないか。それは事ほどさように、法定してまでお許しをいただいたという性格の違いというものが、その後の発行することに対しての一つの、何と申しますか、それを極力しない姿勢で対応していこうという意味における影響はあったではないか。しかし、それはいつまであったかと、こうおっしゃいますと、私は、最後がそれでも五十五年度だったかな、こういう感じがいたします。
  189. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 聞き方を変えて言いますと、借りかえ禁止というのは、五十九年度赤字公債依存体質からの脱却という目標と連動していた議論だと思うんです。なぜ五十九年度かというと、六十年度に入ったら償還が始まる、それまでに赤字公債をゼロにする。その努力を持続しながら、でき得れば、一般会計からの繰り入れも頭に置いて現金償還に踏み切っていきたいというのが、そもそも最初のシナリオだったと思うんですね。これがなぜできなかったかというと、一番大きいのは第二次の石油ショックでありました。これはやむを得ざるところですからよくわかるんです。  そこで、五十九年は六十五年にスライドをして、六十五年度努力目標としながら赤字公債発行ゼロにしたいというふうにおっしゃっているわけですね。そうすると、第一段階とすると、六十五年まで赤字公債発行をゼロにする、その努力を継続しながら六十五年度以降一般会計からの繰り入れを含めた償還考えていくとなりますと、シナリオは同じなんです。ところが今度は、五十九年度発行特例債も外しちゃうわけですね。そうすると、十年とすると支払いは六十九年でしょう。そこにけさ以来の議論のこんがらがりがあると思うんですよ。これまでのことはわかりましたと。悪いのはどっちかというと、それは石油情勢がもしらぬ、不可抗力の面も多かった、したがって、五十九年度はやむを得ないけれども、六十五年度を立てるんだったら、少なくも六十五年度以降は借りかえ禁止の精神を生かすべきではないのか。それもだめなんだということになると、百八十度の方向転換なんだろうか、そもそも六十五年赤字公債脱出という目標そのものがいよいよ自信がなくなってきたということを暗に言っているんだろうかと、そう我々は受け取らざるを得ないんです。この辺についてはどう理解してよろしいでしょうか。
  190. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) この問題につきましても、今回法案を提出いたします前にいろいろ議論をしたわけでございます。  そこで、本国会に提出いたしました仮定計算例をごらんいただきますと、数字が出ているわけでございますが、一般歳出をどう伸ばすかということによって六十五年度の要調整額の数字が違ってまいりますけれども、いずれにしましても、極めて巨額の要調整額が六十五年度においてもなお見込まれるわけでございます。したがいまして、それ以降の財政状況を現段階である程度見通した場合に、依然として非常に厳しい状況が続くということが予想されましたので、今回の法案におきましても、今委員指摘の面につきましても禁止規定を外してお出ししたということでございます。ほかに法案の整合性の問題とかいろいろ御議論があった点もございますが、主たる理由はそこにあるわけでございます。
  191. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 結局、今のお答えがすべてを尽くしているわけでして、中期見通しですと六十五年度特例債はゼロになっているんです。その下に要調整額があるわけ。いいですか。要調整額がこんなにあるんだから大変だということは特例債ゼロにならぬということですよ。ですから六十五年度もだめなんでしょうと聞いているんです。特例債は計画でずっと減らしてますよ、一兆八百億円。六十五年度ゼロ。要調整額はその下に書いてあるんですよ。これがとても大きくて、大きければ一体どうするんですか。特例債発行せざるを得ないじゃないですか、ほかに要件に変化がなければ。というのが大蔵の本音なんでしょうねど私はお尋ねをしたんです。ですから、要調整額がこんなにあるんだからとてもじゃないということは、実はお答えになってなくて、私が言ったとおり、六十五年度ではとても特例債ゼロは無理でありますということをおっしゃったに等しいと私は思うんですが。
  192. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 例の仮定計算例をごらんいただきまして、要調整額が、計算の方法によっていろいろございますけれども、巨額になるケースも入っているわけでございます。しかし、歳出面におきまして、仮定計算例でございますけれども一般歳出をゼロということで現在の歳入面での制度はそのままにしてやっていきますと収支均衡するという事例もあるわけでございます。そういう意味で先ほど申し上げたのでございますが、それ以外に、六十五年度を過ぎましても特例公債についての償還額、これは極めて多額に上るわけでございます。したがいまして、その償還額、要調整額以外にあるわけでございますから、その償還額を現金で仮にお返しするということになれば、さらに大幅な歳出カットかさらに大幅な負担増をお願いしない限り調整されないということも予想されましたので、今回の法案をこのような形で提出して御審議を願っているということでございます。
  193. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私が申し上げているのは、従来から一貫してきた大蔵省の主張というのは、まずもって赤字公債をゼロにするんです、そのあたりに努力を継続しながら借りかえ禁止をしなくて済むような格好でやってまいりますということをおっしゃってきたわけです。六十五年度努力目標年次とすると、そこでも同じ理屈が言えるはずなんだけれども、仮定計算例で実態を見るとなかなかそうはいきそうもない。そうおっしゃるんだったら、六十五年度赤字公債発行ゼロにしたって当てにならないんだろう。  なぜこんなことが議論になるかといいますと、財政節度というのは一体何なんだろうか。私は法律を守ることだと思います。そこで、財政の一番基本法というのは財政法でしょう。財政法四条では特例債発行できないことになっている。ところが、法律的にできないんではなくて、公債発行して給料で使っちまおうというのは、だれが見たって不健全そのものですから、何としてもこれは出してはいかぬという認識が最初あったと思うんです、大蔵省に。そうは言いながら、なかなか思うに任せない財政運営をしてまいりますと、貸すれば銘するではないけれども特例債というのは出してはいけないんだということがだんだん薄れてきた。薄れてきておいて今度借りかえ禁止を外す。そうなると一体どこまでいってしまうんだろうか。今問われているのは私は財政節度だと思うんですよ。  仮にですよ、一兆八百億円赤字公債発行減らしてまいりますと、六十五年度ゼロになった。その努力を継続しながら、これを繰り入れて、一般会計の方からそれて特例債残高を極力減らしてまいりますと、こうやったとして、六十五年度特例債残高は何年たったらゼロになりますか。
  194. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) これはあくまで仮定の計算でございますけれども、先ほども御説明いたしましたが、特例公債を六十五年度に新規債の発行をゼロといたしました場合に、六十五年度の前の六十四年度において六十七兆五千億円というピークになります。それ以降すべて既往の特例公債残高が残るわけでございますが、これにつきましては、今回提出いたしました法案にございますように、財政状況の許す限りできるだけその残高を減らす方向で努力するということを申し上げておりますので、その方向で努力していくということでございます。したがって、努力の程度が進めば残高はそれだけ早く減ることになるわけでございます。ただ、仮定計算例等で使っております例の六十年償還の仮に計算方式でいけばずっとなだらかに減っていきまして、六十年先にゼロになるという計算になりますが、しかし先ほども申し上げましたように、それよりも早目に財政状況をできるだけ早く回復して特例債の残を減らす方向で努力すべきだと考えますし、努力することになります。それよりも前の方に近づいていくという可能性も多くあると期待しているわけでございます。
  195. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 その可能性絶無とは言いませんよ。言わないけれども、今の状態考えて、ごく単純に考えますと、一兆八百億円毎年特例債減らしてまいります、六十五年度以降も一兆八百億円一般会計から繰り入れてでも償還を早めますとやったにしても、六十七兆ですから六十七年かかるわけ。建設国債六十年ですよ。実際、今の話は一兆八百億円だけで物を言っていますから、このほかに定率分があるんですから、若干それは早まりますけれども、よほどこれは並み並みならないことだ。  そこで、では借りかえ禁止を解いた場合に、財政節度をどう示したらいいんだろうか。解くことを御提案になるときには定率繰り入れはやめてはだめなんですよ。せめてこれはやります、だから禁止は解いてください。私それがせめてもの節度だと思うんですよ。今度は、借りかえ禁止は解きます、定率繰り入れもだめであります。六十年度予算どうやって組むんだかさっぱりまだわかりません。これは大臣がとは私言いません。大蔵省と言いませんよ。言わないけど、財政に対する無責任。もともと財政法というのは触れてはいけない財政の憲法でしょう。それを臨時特例と言って特例法をつくったあたりから肝心の財政節度が失われてこなかったか。特例法を出す。今度は、あのがちがちの公約であった借りかえ禁止を解く。本当はこれは目に見える格好で責任をとる人がいなかったらやってはいけないんです、こんなことは。このままいったら節度がいよいよだめになる。その意味でいよいよ特例公債を抱いた財政になっていますので、しようがないなということになるかもしれませんけれども、そうであってはいけないんだということを改めてかみしめてもらいたい。特例債というのは出してはいけないんですよ。特例債発行残高をゼロにするかどうかは別な議論ですよ。新規債については一日も早くゼロにする。まずここに全力を入れながら、あとは特例債、四条債ひっくるめた国債残高をGNPとの関係でどのぐらいに管理をするかということをまた考えていけばいい。  そこで、基本的なことはやっぱり国債整理基金の定率繰り入れですよ。そこまで手をつけてやらないとなったら、もうどこまで崩れるかわからない。深い危惧の念だけ表明しておきます。
  196. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その危惧としては私ども理解できます。私は、定率繰り入れの問題ももちろんこれは一つの大きな節度であります。したがって財政審へも率直にこれを諮りました。減債制度というものはこれは原則は堅持すべきである。しかし、そのときどきの財政事情によって今やむを得ざる措置として許容されておる、その許容されたものをここ五十七年の補正予算以後三年にわたってお願いしておる、こういう状態であります。その事実認識は私も持っております。  だから、節度の第一義的なものは、もちろんこれは財政憲法からして発行すべからざりしものを発行する。ですから、一番議論のありましたのが、四十年の補正予算のときからがその議論で、そのときはオリンピック後の戦後最大の不況ですから、言ってみれば建設国債でいくべきだと。しかし建設国債と銘打った途端にそれなりのまたイージーさが出てくるからそうでないものでいくべきだと、こういう議論で始めたわけですね。しかし、その議論はいろいろなその後の国会等の議論を通じながら、建設国債ということでずっと続いて、そうして特例債ということになって、そこでもう一つ財源が行われたことは事実です。そういう意味においては悪化の一途をたどってきた。しかし、それでも最初おっしゃいましたように五十九という脱却は――五十一年から五十九年脱却を言ったわけではございません。もう少し早うございました。が、五十九というものまで追い詰められながらも耐えしのんだのは、六十は、言ってみれば、大量償還期になるんで少なくともその前年までは。こういうのも一つ考え方であったと思います。それをギブアップした。  そうなると、まずは第一段階では新発債を消す努力をして、第二段階では、前にもおっしゃったように対GNP比どれくらいがいいかは別として、残高を減す努力。しかし、その中でおっしゃいましたように減債制度そのものはがっちりとやっておれという意見は、これは節度の問題からくればいただける意見である。しかしそのこと自身を金額だけで考えてみたら、そこへほうり込む金がまた赤字国債の増発によってほうり込まれるというところ、かれこれ勘案して、財政上やむを得ざる事情が三年続いておる。こういうふうに御理解を――御理解といいますか、現実認識といいますか、でお答えするしか私どもお答えの仕方はないという感じでおりますので、ことごとくその御意見を否定しようなどという考えはありません。
  197. 青木茂

    ○青木茂君 大変えらい法律案を出していただいたという思いが強いのですけれども、これは我々から言わせますと一種のハムレット法案なんですよ。財政が首が回らないのは大変よくわかるわけですよ。だから首が回るように何とかしなければいけないということはわかります。わかるけれども、この法律をそれじゃ簡単に賛成してしまえば首が回り過ぎて後ろ向いちゃいますよ、これは。首だけ後ろ向いてしまう。財政はひっくり返ってしまいますよ。これは国家のまさに破滅につながる。だから、私どもとしましては、この法律案を突きつけられて、やむを得ず賛成すべきなのか、断固反対すべきなのか、まさにハムレットなんですよ。ですから、これは委員の先生方も本音はみんなそうだと思いますよ。だから、そういう立場財政当局は我々を非常にいらいらさしているんだから、そのいらいらを少しでも解消できるように一工夫も二工夫もしていただきたい。これがまず基本的なお願いなんですよ。  だから、その立場から御質問大臣に申し上げたいんですけれども、どういう形をとろうとも、どういう表現であろうとも、日本国債発行史というのは、何というんですかね、ただし書きの本則化というのか、財政節度放棄の歴史というのか、そういうものだと思います。それじゃ国民財政あるいは政治全体に対して不信感を燃やすだけなんですよ。これは何とかどっかで食いとめなきゃならない。  そのために僕が大臣にぜひお願いしたいことは、努力規定というやつが入っていますが、これは努力規定ではしようがないんです、精神論では。だからこの努力規定を何か具体的に表現できないか、その一工夫も二工夫もないだろうか、財政当局として、単なる精神論ではなしに。精神論を何か具体的な形で表現できないのかということをまずお伺いしたいんです。
  198. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは努力規定訓示規定、それは法律そのものではなかなか書きにくいでございましょうが、それを裏打ちする計画とかいうものがあれば、それは一つ節度だと言っていただけるかもしらぬが、しかし、そのいわゆる計画ということになれば、仮に、この努力目標というものが今ございますが、そこで脱却をして将来の問題にわたる返済計画、そうなればそれの歳入、財源に対する計画というものもお示しすれば、一つ認識していただける要素になるのかなという感じは私もございますが、それが今日国会議論等を通じながら国民のコンセンサスがどこにあるかということを見定めながら、それを今後の課題として議論していこうという今、段階であるという理解をしていただくしか、率直なところこの方法はないと言わざるを得ません。
  199. 青木茂

    ○青木茂君 国民のコンセンサスということになれば、借りかえというような一条の法律の条文でもって過去十年をひっくり返してしまうということに対しては、国民は非常な不安感、不快感を持つだろうと思うのですよ。ですから、私はそれも首が回らない財政状況のもとにおいてはあるいはやむを得ないかもしれないんだから、どこかで節度的なもの、この努力規定のどこかで具体論的なもの、これを出せないか。例えば五十年度既発債につきまして、もう百億でも二百億でも三百億でもいいですよ、これだけ返しました、こういうふうに返す努力をいたしました、残りは何とか借りかえを認めてくれというようなものを毎年国会に御提出になる。これも私は努力規定一つの具体論化だと思いますよ。ここで通ってしまえばもうあと知らぬではなしに、特例債についてこれだけ返す努力をしたのだ、どうしても返せないから残りは借りかえを認めてくれと、これも一つの方法だと思います。あるいは今出ましたように、定率繰り入れは断固堅持しますということでここで御言明をいただくというのも、私は一つ努力規定の具体論化だというふうに考えます。  これはあくまで例でございます。例でございますけれども、そういうような単なる精神論的努力規定ではなしに、具体論的努力規定というものを何か出していただけないかということです。いかがでしょう。
  200. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の意見は別の角度からも、仮に六十年からは言ってみれば借りかえ規定を外しますと、国債残高という残高の中にインタルードされた既発債は全部ある意味において同じ性格になってしまう。それで、一体幾らが赤字公債で幾らが建設国債かということを国民に明らかにするために、何らかの方法を考えるべきだというところまでは我々も思想統一があるわけです。そこで、努力規定をその都度実行に移して態度で示すと申しますか、実態で示すということになれば、今おっしゃいましたように、これだけのものが来て、そのうち赤と白に分けるわけでございますからなかなか難しい問題ございますが、いわばこれだけのものは借りかえなしに済んだ実績になるとかいうような工夫、これはしてみなければならない。少なくともその色分けぐらいはどういう形でやるかしなきゃならないということは、今考えておる一つではあります。
  201. 青木茂

    ○青木茂君 考えておる一つ、やや前向きだと思いますけれども、ここで、どうなんでしょうね、その努力というものをこのままにほっておいたならば、努力をすると言ったけれども努力しなかったらそのままずっと来てしまうわけなんですよ。だから私は、これだけの努力をしていただいたということを毎年毎年国会に御報告いただいたらどうか。法律規定の中に盛り込むことが難しければ、国会へレポートしていただいたらどうかということをむしろお願いを申し上げている。いかがでしょうか。
  202. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それは、議論を詰めてみますと、御審議いただく予算書そのものがいわばレポートというものと同質な意義を持つことにもなるではないか、そういう議論にもなりますが、私は、おっしゃる意味を感覚的に吸収することについては恐らく同質的な吸収をしておるんじゃないかと思うんでございますが、予算書そのものがいわゆるレポートだという答えもまたあり得るのかなと思っております。
  203. 青木茂

    ○青木茂君 そういう答えもありますよ。しかしね、いわゆる国債の原則をここまで崩してきたんだから、どこかで節度をつけますということを国民の前にはっきりわかるような努力をしていただかなきゃいかぬわけ。予算書というのは私ども見てもわからないんだから、もっと――いつか言いましたように、永田町ですらわからない。それでは私は国民の皆さんはおわかりにならぬだろうと思うんですよ。ここまで崩れてきた財政なんだから、これだけの努力政府はしておりますという、具体的に国民にわかるような表現、わかるような言葉でもっての努力ということが必要なんじゃないか、もうここまで来た以上は。それを申し上げているんです。
  204. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私、肌ではわかるんですが、しかし、具体的にさてどうするかというと、一番正確なレポートといえば予算案そのものなのかな、しかしそれを国民がよりわかりやすいための具体的措置というものは、これは検討すべき課題であろうなという今印象を持っております。
  205. 青木茂

    ○青木茂君 誠実なお答えなのか巧妙なお答えなのか、ここら辺がよくわからないんですけれども、とにかく財政は国の政治の基盤ですから、それに対して国民が信頼を失ったら本当に政治自体が全く密室化してしまう。くどいようですがもう一度念を押さしていただきます。  精神的な努力規定を具体的な努力規定に、方法はもうお任せします、何らかの形でお示しになる御意思があるかどうかと、もう一度伺っておきます。
  206. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いずれにしても特例債でございますから、六十五年まではまだ出していくわけですね。それを一年、一年でお出しして、そのときの議論の中で明らかにしていくというのも一つの手でございましょう。本当は正確な意味で言えば、予算書そのものがレポートになるという議論は一応はできる議論ですが、それは国民にすぐわからないじゃないかと言われれば私もそう思う。だから、議論の過程の中で工夫してみようじゃないですか、これは。
  207. 青木茂

    ○青木茂君 議論の過程の中でこれから工夫していただくということで、きょうはとどめます。大臣もお疲れでお忙しいでしょうから、あとの質問は事務当局に対する質問でございますから、私が最後ですから、お引き取りいただいて結構だと言う権利が私にあると思います。
  208. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ありがとうございます。  ちょうどトルンEC委員長と私の会見の時間が二十分からなものですから。
  209. 青木茂

    ○青木茂君 引き続きまして御質問を申し上げます。  定率繰り入れの問題と絡みまして、大蔵当局から出していただきました「国債整理基金の資金繰り状況についての仮定計算」ですね、これのケースA、借換債を出す場合なんですけれども、非常に数字がずらっと並んでいて解析しにくいんですけれども、簡単に考えて、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。六十年度の要償還額ですね、これが大体十兆二千六百億円ある。そうすると借換債を出す場合に、借換債の収入が八兆九千六百億円ある。そうするとその差額は一兆三千億ですね。これを何とか返さなきゃならぬ。これを返す財源として五十九年度の余裕金が一兆七千九百億ある。それから返さなきゃならない一兆三千億引いたらもう四千九百億円しか残らない。まあ底をつくわけですね。ただ、定率繰り入れ一兆八千七百億円を入れれば二兆三千六百億円、これに運用益千二百億円を入れると、私の計算では二兆四千八百億円になっちゃって、余裕金残高二兆四千七百億と百億違いますけれども、まあこれは何か計算上の私の方のミスでしょう。  こういうことでやや余裕金ふえますね、これはわかるんだ、この計算は。しかし、五十七年、五十八、五十九ですか、定率繰り入れゼロにしちゃったわけですね。ところがこの表では、六十年度定率繰り入れ一兆八千七百億、以下ずっとありますね。これは絶対できますか。できますというより、やってもらわなきゃならないんだけれども、この表をここへお出しになった以上は、仮定計算であろうがなかろうが、これをやるという当局の決意がなければこの表は出せないだろうと思うんです。その辺のところ、いかがでしょうか。
  210. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) まず、委員が今お挙げになりました数字は、私もここでずっと伺いながらあれしましたところ、おおよそそういう数字になると思います。  そこで、六十年度に定率繰り入れをこの仮定計算例ではやる、それから引き続き定率繰り入れをやっていくということで出してるわけでございます。これは五十七、五十八と定率繰り入れ停止いたしました。それから現在御審議願っております五十九年度法案においても停止していることでお願い申し上げているわけでございますので、六十年度以降は、したがいまして、この法律が通りました後は一・六繰り入れるということになっておりますので、こういう計算をしたわけでございます。しかし、具体的にそれでは今後どうかということでございますけれども、我々としては、たびたび御答弁申し上げておりますように、国債償還制度の基本はできるだけこれを守っていきたいと考えております。かつまた財政審の報告においてもその基本は守るべきではないかというような報告もいただいております。したがいまして、そういうものを頭に置きながら六十年度以降も対処していきたいと思っているところでございます。
  211. 青木茂

    ○青木茂君 私が大変心配いたしますのは、とにかく四十年以来の国債の歴史の中で歯どめがどんどんどんどん崩れていくわけですね。この定率繰り入れが今残された最後の歯どめかもしれぬと思っているんですけれども、それも五十九年はまだわかりませんけれども、五十七、五十八崩れ去ったわけです。だから、こういう計算例を出していただいたけれども、定率繰り入れできるのかいなあと。また崩してもやむを得ないというのが当局の本音じゃないかという心配が非常に強い。強いからこういうような質問を申し上げておるわけなんですよ。だから、こういう表がここに出てきた以上、定率繰り入れ最後のとりで、最後のとりでだけは絶対に守るんだという決意の表明ですね、これがいただけるかどうか。来年の今ごろになって、やってみたけどまたできませんでしたというんじゃ、もう財政とは何なのかという不信感を私どもも持ちますし、国民の皆さんも持たざるを得ないと思う。ですから、どうなんですかね、ここのところは、果たして大丈夫なのかということです。
  212. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 定率繰り入れにつきましては、先ほど来御答弁申し上げておりますように、その制度の仕組みにつきましては、基本的にはこれを維持する方向でいくようにという財政審お話もございますので、そういう方向でできるだけ頑張ってやっていきたいというふうに思っております。
  213. 青木茂

    ○青木茂君 できるだけとか基本的にという言葉を抜きにしてほしいわけですね。あるいは事務当局に申し上げる質問じゃないかもしれないけれども、できるだけとか基本的にという言葉をつけてしまえば、我々としてはなんだまたかと思わざるを得ないわけです、過去の歴史が歴史だから。絶対という言葉を使って表現をしていただけないかどうかということです。
  214. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) ナポレオンの辞書ではないわけでございますが、みだりに絶対という言葉はこの人生の中において使わないつもりで私はきておりますので、将来のことでございます、何が起こるか将来わかりませんので、そういう意味では今の御要望にはこたえられないということでございます。
  215. 青木茂

    ○青木茂君 ナポレオンの辞書には不可能ということはないんだから、ひとつ不可能はないと、そうしたらこれは維持できますね。不可能はない、とにかく定率繰り入れをやめなくても財政再建できるんだ、それは不可能ではないと。これがナポレオンが言っていることなんであって、そこのところをひっくり返さないようにしていただきたい。時間がございませんから次へ移ります。  この定率繰り入れがそのまま維持されるといたしまして、六十年度国債費というものは一体どれぐらい、これはどこかの表にありましたが、どれぐらいになるんでしょうか。
  216. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 仮定計算でございますけれども、そのAケース、特例公債借りかえを行う場合の六十年度国債費は十二兆一千四百億円ということになっております。
  217. 青木茂

    ○青木茂君 そうすると、この中で定率繰り入れがあるわけだから引かなきゃいけませんわな。そうすると約十兆ですか。
  218. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 六十年度の定率繰り入れは、このケースで計算いたしますと一兆八千七百億円となっております。したがいまして、先ほど申し上げました十二兆一千四百億円から一兆八千七百億円を引きまかと、十兆二千七百億円ということになります。
  219. 青木茂

    ○青木茂君 利払い中心で十兆を超えるということになりますと、六十年度は社会保障総額を国債費が上回ってくる、そういう可能性はかなりあるわけですね。そうなりますと、所有者別構成比というのを見てみますと、約四割を「その他」というのが日本では八二年に保有している。この「その他」というのは個人プラス企業ですね。そうなりますと、四割が大体個人、企業に流れる。国債というのは、例えば個人で考えてみますと、マル優の枠を使い切っちゃった人が国債を持つという状況が非常に多い。企業も非常に余裕のある、いわば大きな企業が国債を持つ条件が強いということになると、財政構造が強者にスライドする、余裕のおる人に国債が流れていく、社会保障を上回っていくということになれば、私はそのバランスをとる意味で税収構造、税収の方を弱者にスライドさせなきゃいけないんじゃないか。財政支出が強い方へ流れるとするならば今度は税収の方を弱者に向けていかないと、財政の持つ所得再配分の機能が基本的に崩れるんじゃないかという危惧を持っておるわけなんです。そういう理論は成り立ちますかね。
  220. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 今おっしゃいましたように、国債の利払いは、国債の所有者が高額の資産の所有主であるからそちらへいく。それから国債の利払いに支払われるお金は税金によって賄われているから、それは税法に従って取られていく。したがって、比較的所得に応じて課税されているので、その間にギャップがあるから所得の配分に当たっていろいろ差が出てくるという理論は従来からあるわけでございます。しかし具体的に弱者にとってマイナスか、あるいは所有者、高額所得者にとって大きいプラスになるかどうかという点は、具体的に調べてみませんと結果は出てこないわけでありまして、今そういう資料を私は現在持っておりません。
  221. 青木茂

    ○青木茂君 時間もございませんから、この問題では私の感じだけ申し上げておきます。  そういう意味におきまして、これから税金を中・低所得者によりしわ寄せが強いような間接税的なものは、私はちょっと無理ではないか。それからこれから減税があるかないか知りませんけれども、税率の刻みを中堅所得者以下に厚くしなきゃならぬし、課税最低限を上げるという方向に持っていかなければならない。最高税率を下げるというようなことは所得再配分の機能から見て少しおかしいじゃないかというふうに思っております。  もう時間が来てしまいましたね。終わります。
  222. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。
  223. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。昭和五十九年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  224. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  225. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十一分散会      ―――――・―――――