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参考人(
辻弥兵衛君) ただいま吉川先生の御質問に対しましてお答えをいたしたいと思います。
まず第一点の
原料米の問題でございまして、先ほ
ども意見で申し上げましたように、私
ども日本酒は伝統ある民族酒であるというふうに考えておりまして、その
原料はあくまでも
国内産米でということは私
どもの悲願でございます。ただ、その場合に、今の
原料米の
価格はどう考えても
国際価格に比べて非常に高い。先生はみずから
日本のお米や産米の
価格を引き下げる
努力をしたらというお話でございまして、国税庁におかれましても、食管制度にどうこうというわけにはまいりませんので、今の
酒類行政の範囲内では多収穫米を既に目下三県におきまして試験栽培をやっていただきました。その米による試験醸造も既に行われております。収穫は
平均的に見て二割なり三割なり多収になっておりますので、それだけコストの引き下げに役立つと思います。
それから今先生がおっしゃいました、私は岡山でございますけれ
ども、例えばかっての藤田農場、今の興除というところでございますが、あそこあたりで、機械化農業、かなり農地の集約化、大規模化が進んでおりまして、そういうところで米作をやった場合には、はっきりした
数字はよく覚えておりませんけれ
ども、現在のような
価格よりもかなり低い
価格で採算がとれるというようなケースも聞いておりますし、また岡山以外のところでも、そうした機械化農業によって大規模化が行われた場合には、ある程度のコストが引き下げられて、いわゆる米の
価格が下がっても採算がとれていくというケースも、もう
幾つか先例的にあるようでございます。
ただ、今、先生も御承知のように、農地の集約化というものは、その所有権を、たとえ三アール、五アールでありましても、なかなか手放したくないというあれもございまして、なかなか農地の集約が進まないと思いますので、例えば農協に対する委託というような形で、賃貸借契約によりまして農地の規模の拡大を図るというふうなことがもっと行われていきましたならば、
国内産米におきましてもかなりな程度にコストダウンができていくのではないだろうかと、かように考えております。
それから二番目の級別制度の問題につきまして、先生御指摘のような
幾つかの矛盾点が出ておることは承知いたしておりますし、私
ども中央会の中の紋別制度の研究
委員会におきまして過去一年間いろいろと検討もいたしております。現在の級別制度をどのように改めたらいいのか、
消費者の信頼に足る級別制度というものを目標にいろんなことを議論いたしております。先生の御指摘のように、低級酒といいますか下級酒といいますか、そういうもので非常に高価なものがあるとか、あるいはこの級別の審査の基準が、いわゆる任意出品制であるということと、主として官能審査によってやっておるために、非常に個人的といいますか、そうした客観的な基準がないということで、非常に個人の嗜好によってその品質が優良、佳良というふうなことが決められるようなおそれもある、そういったことで、何とか客観的な基準というものが行われないか。
例えばウイスキーのようにモルトの混入率とか、そういったようなものが
一つの客観基準でございますが、
清酒の場合、米の使用率、あるいは精白度、あるいは
アルコールの使用率といったようなもので特、一、二というふうな、
一つの級別にそうした客観基準を当てはめるというふうなこともいろいろ議論をしてみました。しかし、精白度が高ければ必ずいい酒ができるという——全体的にはそういう
傾向にありますけれ
ども、技術によりまして、
比較的精白度の低い
原料米でも立派な酒をつくり出す技術を持っておられる方もいらっしゃるわけでありますし、必ずしもその精白度だけで決めるというわけにはいかない。
それからいわゆる官能審査というのは非常に主観的な色彩が非常に強い、客観性に乏しいというふうに常識的には思われておりますけれ
ども、専門の
先生方の御
意見を聞きますと、それほどあいまいなものではなくて、私
どもも経験的にこうしたすばらしい官能審査をする能力を持った
先生方、それも一人や二人じゃなくて、五人とか十人とかの
先生方によって級別審査が行われる場合に、出た答えというものは決してそんないいかげんなものじゃなくて、ある程度客観的に信頼に足るものであるということを経験的にも知っております。
しかし、そうは申しましても、先ほど先生の御指摘のようないろんな制度的な矛盾というものがありますので、これをどのように変えたらいいのか。例えば三段階を二段階にするとか、思い切り級別をなくして一本にしてしまうとか、それぞれ
メリット、デ
メリットがあるわけでございます。
で、私
どもの現在の考えとしましては、
昭和十八年以来級別制度というものは
業界の中に定着してまいっておりますし、先生の御指摘のようないろいろな矛盾があり、
消費者がどうもよくわからぬという、その信頼が揺らいでおることも、率直に申しまして、本当にそうであろうと思いますし、私
ども何とかそれを回復する道をいろいろと検討いたしておりますが、現在の段階では、特、一、二級というものは、ある
意味においては、大手
メーカーと
中小メーカーとが事業分野調整的な機能もかつては十分に持っておったわけでありまして、現在では、先ほど申しましたような大手
メーカーがどんどん二級酒
業界へ入ってくるというふうなことによって、ややその機能は弱められておりますけれ
ども、そうは申しましても、まだ今の級別制度というものが
消費者の中にある程度定着しておるし、またそういった分野調整的な機能も果たしておりますので、今すぐこれを取っ払ってしまうということについては、むしろ多くの混乱があるのじゃないだろうかということで、私
どもも今何とか早急に、この級別制度についても、
消費者の信頼に足る級別制度に持っていくように現在検討をいたしておりますので、御
理解いただきたいと思います。
それから最後に近代化の問題でございますが、私
どもは
昭和三十九年第一次から
昭和五十六年度において終了いたしました第三次の近代化まで、前後十七年間近代化に取り組んできたわけであります。その結果が先ほど来申し上げたような
業界の
状況にあるということはまことに申しわけない、残念なことだと思っておりますので、今回の第四次近代化は、あくまでも現状を踏まえた上で、先ほど申し上げましたように、
清酒部会から出ました
中間報告の中には、当面私
ども業界が取り組まなきゃならない
問題点、そうして中長期的な観点で我々
業界が取り組まなければならない問題、さらにその中で個別の企業がやらなきゃいけないこと、あるいは組合あるいは分
業者として取り組む問題、あるいは行政に
お願いしなきゃならない問題、さらにまた行政の範疇を超えるものとしては、先ほど
お願いいたしました
原料米の問題ございますが、そういった仕分けが一応この
中間報告ではっきり出されておりますので、それに基づきまして、現在の
清酒業界の
需要の
減退に歯どめをかけ、そうして
清酒業界が新たな展望を持ってそれを現実のものにするようにする。
この第四次近代化構造改善は、いわゆる経営戦略型の構造改善と申しますか、個別の——これは当然のことでありますけれ
ども、個別企業それぞれ二千六百
業者が二千六百通りの行き方があるというふうに考えておりますので、小さい
業者が必ずしも不利というわけじゃございませんので、小さくても立派な成績を上げておられる
メーカーもいらっしゃるわけでありますし、大きくても赤字の会社もあるということでございますので、それぞれが自分の置かれた環境、条件をフルに生かして立派に生きていっていただくことを、第四次近代化としては目標にいたしておりますので、最初から何百者を企業整理するとか、あるいは転廃が出ることを予測しておるというわけでは決してございません。
したがって、幾らになったら
業界が安定するのかというふうなお話もよく聞きますけれ
ども、私
どもは、この
業界は数が減ってもそれで
業界が安定するとかいうふうな問題ではないというふうに
理解をいたしておりますし、また
清酒業界が全国各地に散在しておりまして、それぞれの地域の
産業あるいは文化を支えておるという自負を持っておりますので、何とか二千六百軒が生き残っていただくような知恵をお互いに出し合おうということで取り組んでおるわけでございます。
ただ、しかし、現在のような厳しい
情勢の中で戦線から脱落せざるを得ない人、あるいはまた後継者がいないためにほかの方へ転換したいというような
方々もいらっしゃるわけでありますから、そういった
方々に対しまして
一つの制度を設けておくことは必要ではないかということで、転廃給付金の制度を継続きしていただくことを
お願いしておるわけでありまして、幾らぐらいと思っておるかと言われると大変困るわけでございますけれ
ども、過去における実績としましては、第三次のときに約四百者の方が転換をしていらっしゃいますので、第四次の場合、まあ三百者程度のそういった
方々が出るということを一応予測して計画を立てておけばいいんじゃないだろうか。我々はそれができるだけ少ないことを期待もいたしておるわけでございますが、一応感触としてはそのように考えております。