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1984-03-28 第101回国会 参議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二十八日(水曜日)    午前十時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         伊江 朝雄君     理 事                 岩崎 純三君                 大坪健一郎君                 藤井 孝男君                 竹田 四郎君                 塩出 啓典君     委 員                 梶木 又三君                 倉田 寛之君                 竹山  裕君                 中村 太郎君                 福岡日出麿君                 藤井 裕久君                 藤野 賢二君                 宮島  滉君                 矢野俊比古君                 吉川  博君                 穐山  篤君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君                 青木  茂君                 野末 陳平君    政府委員        大蔵政務次官   井上  裕君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵大臣官房審        議官       大山 綱明君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    参考人        日本酒造組合中        央会企画委員会        委員長      辻 弥兵衛君        ビール酒造組合        専務理事     都島 惟男君        主婦連合会事務        局長       清水 鳩子君        税制調査会会長  木下 和夫君        日本税理士会連        合会顧問     武田  亨君        日本弁護士連合        会事務総長    樋口 俊二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○租税及び金融等に関する調査  (昭和五十九年度の税制改正に関する件)     —————————————
  2. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  租税及び金融等に関する調査のうち、昭和五十九年度の税制改正に関する件を議題といたします。  本日はお手元に配付の参考人名簿のとおり六名の参考人方々をお招きいたしております。  まず午前中に三名の方々から、午後に三名の方々から御意見を聴取いたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  参考人方々から忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じておりますが、これより参考人方々から御意見をお述べ願うことにいたしまして、議事の進行上、最初に参考人方々からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしく御協力をお願い申し上げます。  それではまず辻参考人からお願いをいたします。
  3. 辻弥兵衛

    参考人辻弥兵衛君) 私は、ただいま御紹介いただきました岡山県におきまして清酒製造業を経営いたしております辻と申します。  本日、参議院大蔵委員会におきまして参考人として清酒に関し意見を申し述べる機会をお与えいただきましたことに対しまして、心より御礼を申し上げます。  まず、今回の酒税法等の一部を改正する法律案につきまして、そしてその後で、清酒業界の当面する二、三の問題につきましてそれぞれ私見を申し上げ、国会の諸先生方の御理解と御配慮を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。  酒税税率引き上げにつきましては、清酒製造業者立場から判断いたしまして、今回の増税が国の財政再建のため、かつまた所得税減税財源調達のためとられたやむを得ない措置であること、そしてまた税率引き上げ幅につきましても、清酒製造業特殊性、つまり第一には需要長期停滞ないし減退傾向にありますこと、第二には原料米国際価格に比し極めて高い国内産米を専ら使用していること、第三には全国二千六百余の業者の中、その九九・六%は中小零細企業者であるという産業構造上の問題などを、御配慮いただいておることをも十分に承知いたしており、かつまた大変ありがたく存じておりますが、今日の酒類業界、なかんずく私ども清酒業界を取り巻く環境は極めて深刻な様相を示しておりまして、今回の税率引き上げが我が業界に与える影響は、過去何回か行われました増税のいずれの場合に比較しても格段に厳しいものであろうことを憂慮いたしております。  私ども清酒業界は、昭和五十二年度の移出数量百六十七万キロリッター、約九百二十五万石でございますが、それをピークに、昭和五十七年度におきましては、百五十一万キロリッター、約八百三十七万石でございますが、そこまで落ち込んでおりまして、回復のめどが立たないまま苦悩を続けておるのが実態でございます。  このような清酒需要の低迷をもたらした原因は、基本的には私ども努力不足というわけでありまして、業界全体として最近における消費者ニーズ多様化、嗜好の変化に適切に対応することのできなかったことによるものでありますが、同時にまた製造コストの七〇%を占めております原料米が極めて高いことなどの特殊性があり、他の種類の酒類比較しまして、相対価格が常に高い水準にあることが大きく影響いたしておることも否定できないと存じます。  しかも、このように需要が低迷する中で、特級、一級などのいわゆる上級酒に対する割高感より、中小メーカーはもちろんのこと、大メーカーさえもがいわゆる下方志向を強め、特・一級酒減少、二級酒の増加というパターンが漸次鮮明となっておりまして、さらにこの二級酒の中での価格下方展開市場における安値競争を誘発するような形になり、市場安定とはほど遠い極めて深刻な情勢に立ち至っているように思われるのでございます。  このような情勢の中で迎える増税でございますので、果たして増税分を酒の価格への転嫁が可能かどうか大変に心配をいたしておるところでございます。このような事情を十分に御理解いただき格別の温い御配慮を賜りますようお願いを申し上げる次第でございます。  次に、今回の増税に関連いたしまして、清酒業界が当面いたしております課題につきまして若干の私見を申し述べたいと存じます。  第一に、前回昭和五十六年第九十四国会におきまして、衆参両院附帯決議に基づきまして中央酒類審議会清酒部会が設けられました。同部会は昨年の五月、「清酒産業の今後のあり方について(その発展のための中間報告)」を発表されました。この中間報告によりまして、私ども清酒業界の今後向かうべき方向が明示されたものと理解をいたしております。それを受けていわゆる第四次近代化構造改善事業の作業が来る六月の大臣への承認申請を目指して鋭意続けられておるわけでございますが、今回さらに近代化事業基金制度創設と、その基金の貸し付けに関する清酒業安定法改正等、我が業界に対します支援政策が、現下の極めて厳しい財政事情のもとであえて配慮されておりますことに対しまして、私どもは心から感謝を申し上げますとともに、何としても今回の近代化構造改善事業を成功させまして、増税の壁を乗り越えて清酒産業の新たな飛躍へ向けて決意を固めておる次第でございます。  第二に、酒税制度部分改正について申し上げます。  今回の改正案によりますと、基準アルコール度数を十五度一本とし斉一化、簡素化されておる点、第二に減算税率の適用されるアルコール度数の下限が十度から八度に引き下げられている点、これらいずれも最近の消費者需要動向でありますいわゆる低アルコール化志向に対応して清酒業界製品多角化戦略や新製品の多様な展開を容易にすることが期待され、大変タイムリーな改正であると感謝いたしております。  以上は御礼でございますが、あとの二つお願いでございます。  その第一は、何と申しましても、原料米の問題でございまして、先にも申し上げたように、私ども清酒メーカー国際価格の三倍以上と言われる国内産米を使用せざるを得ない宿命を背負っております。他の酒類が海外より比較的安価な原料の輸入によりメリットを享受しておられるのに比べて大変不利益を甘受いたしております。私どもは今日日本農業政策について云々するつもりは毛頭ございませんが、せめて他用途利用米の対象にお認めいただきますように、そしてさらに一歩進めて、工業用米制度創設にまで前進していただきたいのでございます。  このことは政治的な対応によらなければ実現をいたしません。ぜひとも国会先生方格別の御理解と御高配を懇請申し上げる次第でございます。  次に、清酒市場安定対策についてでございます。  さきにも触れましたように、現在の酒類市場は極めて憂慮すべき事態に立ち至っております。本来、市場安定の問題は、個々の業者のモラールの問題と言われており、そのことも十分承知いたしておるつもりでございますが、今日の状態はもはや放置できないところまで来ているように思われるわけでございます。酒類価格は現在自由価格ではありますが、重要な担税物資であるという特殊性よりしても、一般商品と同じように考えることはいかがなものかと存じます。産業政策独禁政策との調整はあらゆる産業におきまして極めて難しい問題だとは思いますが、酒類行政の場合はもう少し行政指導を強化していただきますようお願いをいたしたいのであります。このことは、長期的に見て、業界の安定と良質の酒類を安定した価格で供給できるという意味におきまして、消費者利益にもつながるものと私どもは確信をいたしております。  以上、二つお願いを申し上げ、私の発言を終わります。御清聴ありがとうございました。
  4. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) どうもありがとうございました。  次に、都島参考人お願いいたします。
  5. 都島惟男

    参考人都島惟男君) ビール酒造組合専務理事をいたしております都島でございます。  日ごろからビール先生方に御愛飲いただいておりますこと、あるいは業界に対して御理解、御支援、御指導をいたただいておりますことを初めに厚く御礼申し上げます。  ビール酒造組合は、昭和二十八年に、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律、いわゆる酒団法と言われる法律に基づいて設立されました国内ビール生産者団体でございまして、現在国内ビール会社は六社ございますが、そのうちの五社、ブランドとしては四つでございますが、五社四ブランドの会員を擁する団体でございます。この五社で国内消費されますビールのほぼ九九%を調達しているわけでございます。その業界を代表いたしまして、以下、今回の税制改正案に対する意見中心に若干見解を陳述させていただきます。  初めに、わざわざ申し上げるまでもないと思いますが、ビールという品物そのものでございますけれども、麦芽ですとかホップですとか、あるいは米ですとか、そういったものを原料といたします非常にアルコール度数の低い飲料でございまして、酒税法酒類という中に入っておるわけでございますけれども、致酔性の非常に少ない、のどの渇きをとめるということで止渇飲料という言葉を使っておりますが、止渇飲料ということで、コミュニケーションを促進させるとか、あすへの活力の源になるとか、そういったようなことで国民生活のいわば潤滑油のような役割を果たしている、半ば生活必需品と言ってもいい商品に現在なっておるかと思います。  現在、日本消費されます酒の約六七%がビールでございます。またその飲まれ方も、所得階層によって多い少ないというその差が余りございません。まんべんなくあらゆる階層によって飲んでいただいております、いわば国民飲料といったような状況に現在なっております。  そのビール消費動向でございますが、戦後の混乱期がおさまりました三十年代以降をとってみますと、昭和三十年代は、高度成長の波に乗りまして、年の平均伸び率が一七%という高い伸びを記録しております。それが、昭和四十年に戦後初めて前年比割れという状態が起こりまして、以後四十年代は、年平均伸び率が七%というふうに鈍化してまいりました。御承知の四十八年、オイルショックがございまして、四十九年に大幅な減少をいたしまして、その後激しい乱高下を繰り返しながら五十年代に入りました。五十年代は、昨年までの年平均伸び率が三%ということで、言ってみれば成熟期あるいは低成長の時代になっております。  特に近年の傾向としまして、酒全体が伸び悩んでおります中で酒類の間の競争が激しくなってきております。景気が不振であるとか、あるいは可処分所得伸び悩むといったような状況の中で、低い税率の酒の伸びが顕著になってまいりまして、ビールは大体伸びて、他酒類を食って伸びてきているという感じがあったビールでございますけれども、五十七年から、例えば首都圏で一人当たりビール消費量減少に転じているというようなことで、かなりそういう酒類間の競争影響を受けているのが実情でございます。  そのビール価格でございますけれども、先ほど申し上げました高度成長期に、設備の増設、革新、拡充といったことを行いまして、スケールメリットを獲得いたしまして価格を非常に低位に安定させてまいりました。これは四十年代以降の安定成長期に入りましても、合理化投資あるいは省力化投資というようなことで、経営努力を重ねまして価格の安定に努めてきたわけでございます。  その結果、昭和四十年を一〇〇といたしました昨年度の価格について一般比較してみますと、五十八年度の消費者物価指数総合が三三九、同じく食料品が三四三でございますが、ビール標準小売価格は二三八、生産者価格で二〇九というような状況でかなり低目になっているということが言えます。  ただ、これも五十年代に入りますと、合理化省力化によって原価低減という、そういう努力もようやく限界に近づいてまいりまして、これに原材料費あるいは物流費等の上昇、それから割高な国産ビール麦使用比率が上がってくるといったようなことのために価格改定を余儀なくされることが多くなりました。五十年以降現在まで既に三回の価格改定をさせていただいております。これに加えまして、増税も相次いで起こりまして、五十年代、今日まで既に三回の増税がございます。ことしが四回目ということになるわけでございます。そんなことが重なりました結果、ビール割安感も近年は失なわれてきているように感じております。  それを数字で申し上げますと、先ほど四十年を一〇〇としたものを五十年を一〇〇ということに置きかえて、五十年代の中での伸び比較いたしますと、消費者物価指数総合が一五〇、食料品一四三、これに対してビール標準小売価格は一五八でございます。平均よりちょっと多いという感じになってまいりました。その中の生産者価格で見ますと一六二とさらに上の数字になりますし、生産者価格の過半を占めます酒税だけを見ますと、一八九とかなり高い数字になっているわけでございます。  その税金でございますけれども、現在、大瓶一本当たりの方がわかりやすいと思いますが、二百八十五円という標準的な小売価格のうちの百二十六円六十六銭がビール税でございます。税負担率で申し上げますと、四四・四%ということになります。外国と比較すると、単純には比較しにくい要素が幾つかございますんですが、世界の先進諸国の中で、例えばアメリカが一〇・〇%とか、西ドイツ、フランスで一七・一%とか、イギリスで三二・五%とか、ヨーロッパ諸国付加価値税を加算した上での数字でございますが、そういったものに比べて日本は非常に高いということが言えるかと思います。  それから国内比較でも、一般物品——一般といいましても特に奢侈品と言われるような物品と比べましても、例えば、ミンクのコートあるいはダイヤの指輪が一三%といったようなものに比べましてかなり高い。  しかし、酒は致酔飲料であるから、他の物品よりは高い税を課して消費適正水準に抑えるという考え方もございます。そういうべースに立ってみますと、それではアルコール一度当たり税負担はどうであるかということになりまして、これは他酒類の話は私はするあれじゃございませんが、酒類間の比較をいたしましても、ビールは最も高いというところにきておるわけでございます。  そういったことで、業界といたしましては、長年にわたりまして酒税負担軽減を関係各方面にお願いをしてきておるわけでございます。  そういう中での今回の税制改正ということでございますが、これまでそういう税負担軽減お願いしてきておりました立場からしますと、本当は、どんな増税であろうとももちろん見送っていただきたい、特定の税を繰り返し引き上げていくという歳入調達方法はぜひとも再検討をお願いしたいというのが本音でございます。仮に酒類へのある程度の高課ということがやむを得ないとしましても、その負担増にもおのずから限界があるというふうに考えまして、現在の案に即して申し上げますならば、先ほど申し上げましたような近年の消費動向あるいは値ごろ感の推移といったことからしまして、需要減退を強く憂えているところでございます。また、そういう税負担増加というのは、最終的に消費者お願いをすることになるわけでございますので、消費生活への影響という面からしましても、慎重な配慮が必要ではないかというふうに感じておる次第でございます。国民生活にかかわります国家財政上の要請ということで、国家的見地から、ほかの多くの税目とともに酒類にも負担増加が求められるということでありますと、ビール担税物資財政物資としまして応分の負担は引き受けざるを得ないかなというふうにも考えますけれども、先ほど申し上げましたような事情がございまして、消費への影響につきまして従来になく強い懸念をしているというのが実情でございます。  また、前回、五十六年の増税の際に国会決議がございまして、それに基づきまして酒税問題懇談会が設置されました。そこで一定の方向が提示されておりますこと、あるいは政府税制調査会におきまして中長期的な一つ方向が提示されておる、そういった中に出ております酒類間の税負担格差是正といったことがございますが、今回の増税案の中でその一歩が踏み出されているというお話もございますのですが、私どもの方から見ますと、税負担率格差がむしろ拡大している面もあるようにも思います。また増税小売価格にどう反映するかというその度合いからしましても、ビールは極めて大きい方のグループに入っているというようなことでなかなか厳しいというふうに受けとめているわけでございます。  以上くどくどと申し上げましたが、既に問題は国政の問題ということで審議の場に出ているわけでございまして、私ども業界立場とか利害を超えるところに既に来ていると思います。しかしながら、現在約一兆円の酒税を調達しておりますビール業界実情ということをぜひともお酌み取りいただきまして御審議お願いしたいというふうに思っております。  どうも失礼しました。
  6. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) どうもありがとうございました。  では次に、清水参考人お願いしたいと思います。
  7. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) ただいま御紹介いただきました主婦連合会事務局清水でございます。きょうは酒税物品税石油税、この三つの間接税につきまして主に暮らしとの関連で意見を申し上げてみたいと思います。  臨調、税調の答申を拝見しますと、間接税と直接税の直間比率の見直しということが基本的にあるわけでございますけれども、これらの間接税というものは、私はかねがねから、見えない税金、どのくらいの税率消費者負担しているのか、それからどのくらいの税率がアップされているのかということが非常にわかりにくい税金、このわかりにくい税金に今度のわずかばかりの所得税減税財源探しを充てるということに対しては、一消費者として基本的に納得できない点でございます。今も参考人の御意見にもございましたように、これらの間接税は一〇〇%もしくは、便乗値上げ、波及的な値上げなどを考えますと、一〇〇%以上の負担を末端の消費者がしょっていかなければいけない、もう悪税中の悪税じゃないかというふうに思っております。  そういう意味で、皆様方にちょっと暮らし向きが一体どういうふうになっているかということを、最近の厚生省の発表にございました五十八年国民生活実態調査から申し上げてみたいと思います。私たち消費者団体も、税金負担暮らしをどういうふうに圧迫しているかということについては、いろんなレベルで数字を持っておりますけれども、むしろこの場合には政府の発表された数字の方が適切かと思いまして引用させていただきたいと思います。  五十七年の一世帯当たり年間平均所得金額は四百四十四万四千円、前年よりも十四万七千円ふえておりますけれども、この増加率は三・四%で、過去十年最低でございます。これくらいに私たち生活実態というのは、外目には非常に豊かなように見えますけれども、税とか社会負担、それから各種の公共的料金負担で非常に苦境に陥っているということを数字が明らかにしていると思います。そして間接税の特徴でございます、いわゆる所得の低い者に対してより痛みが強いという一つの象徴といたしますと、この調査では全世帯の半数は年間所得が三百八十万以下だというふうに示しております。また、これからは高齢化社会に向かいまして、年金恩給だけで生活する人が非常にふえてくるわけでございますけれども間接税はこれらの限られた所得の中で暮らす者にとっては最大の痛みを持つものでございますけれども、この調査によりますと、年金恩給だけで生活しているお年寄りの世帯というのは、前年の三二・八%から、五十八年は六%ふえまして三八・八%になっているわけでございます。これらの傾向はこれからますます強くなると思います中で、間接税とそれから暮らしの中への影響というものをもう少し配慮した財源探しというものをぜひしていただきたかったというふうに思います。  これから幾つか例を挙げまして、間接税がどういう問題点を持っているかということをちょっと整理して申し上げてみたいと思います。今申し上げましたのが第一点でございまして、第二点は、今も申し上げたように、間接税の低所得者に重い負担を強いるということは、これは税の応能負担という原則を切り崩していくのではないか。一体どこに歯どめがかかるのか。私どもが見ている限りでは間接税財源を求めるという今の政府のやり方は、どうも応能負担原則を限りなく崩していくのではないかという非常に大きな危惧を抱いております。  次に、第三点でございますけれども間接税中心租税体系への移行というのは、これは今私たちが本当に願っております真の不公平税制是正というものから目をそらすと申しますか、本当にしなければいけない不公平税制是正をやらずに、取りやすいところから取るというふうな税の体系をここでつくっていくのではないかというふうに思います。  次に申し上げますのは、どうも今の物品税の徴収の仕方、それから大衆消費者生活の苦しい中で安い酒をというところに一番重い税金をかけようというこの酒税の発想は、今までの散発的な消費税の網の目を一つずつ取り崩していきまして、税調の答申にもうたっておりますけれども、今の税率の低いところ、そしてよく売れているものに対して積極的に税金をかけるべきであるという、その税調の答申をそのまま安易にここに取り込んでおるというふうに思います。  税調の答申というのは、これからのあるべき税制の一つの答申の姿だというふうには私も思いますし、それなりに参考にしなければいけないところもたくさんあると思いますけれども、この税調の答申を行政府政府なり国会がそのまま取り入れるということは、余りにも政治というもの、国民全体の生活配慮した政治という視点が欠けているのではないかというふうに思います。  こういうふうに間接税の増徴傾向というのは、行く行くは既成事実をつくりながら大型間接税一般消費税の導入というものをしやすくするというか、むしろ既成事実をつくった上でそういう税制の体系の中に移行するのではないかというふうなことで、これはむしろ当面する暮らし以上に私たちの目から見ると非常に心配の点でございます。  それから具体的に最後に申し上げたいのですけれども、この税率のアップ分というものが一〇〇%消費者段階に転嫁されるわけですけれども、その間接税を上げた場合に、便乗値上げとか、それから関連するほかの商品への価格転嫁というものは一体どこでだれが責任持ってやってくれるのかということなんです。今度新しく石油税の対象に入りましたLPGを一つ例にとりましても、私たちは、都市ガスなどと違いまして、このLPガスというものは、本来自由価格競争が行われているということで消費者メリットがあるわけですけれども法律改正によりましてメーター制が導入されて、そして安全確保という視点から、ボンベから元栓までは業者の責任、それから元栓から家庭の中における責任は消費者というふうに安全の上から責任が非常にはっきりと線引きされたわけです。そこで、計量器が取りつけられることが半ば義務づけられておりますために、本来自由競争であるべきプロパンガスの価格が、今や全く協調的値上げと、それから非常にカルテル的な体質が強くなりまして、もう自由価格ではないような実態がそこに生まれております。そこに今度の石油税が一・二%、プロパンで約五百億ぐらいの増収を見込んでいるというふうに伺いましたけれども、そういうふうにいたしますと、自由競争であるべきプロパンガスというもののカルテル的な業界の体質の中の便乗値上げ、他への波及効果というのはどこでだれが一体チェックできるのかという問題が、この間接税の中には潜んでいるのではないかと思います。  それから酒税についても全く同じでございまして、私たちは今家庭生活を見ましても、日本人というのはそんなにむちゃくちゃな酒の飲み方もしておりません。私のような主婦の立場から言えば、酒税値上げというものはむしろ賛成して、お酒なんかうんと高くしたらもっと家庭でのアルコール消費は減るんじゃないかというふうな意見も一方にはございますけれども、私たち暮らしの中から見てみますと、今のお酒の飲み方というのは非常につましいです。主婦も外で酒を飲まれるよりは家族で一緒に酒を飲もう、少しでも安いお酒を買ってきて飲もうというふうな中で、諸外国のようにアルコール中毒で社会問題が起こっているということもないと思います。そういう意味で、非常に大衆的な消費財だというふうに思いますが、それが一体税金で幾ら払っているのかということが今の酒の表示の中では一切わからないわけです。  生活協同組合で売っておりますお酒はちゃんと原材料表示をして、そしてウイスキーなんかですと原酒が何%入っているのか、そしてこのお酒はいつつくられたもので税率はどれだけかということが明記してあるわけですけれど、そのほかのお酒というものはそういう税率の表示がないわけです。これだけ間接税一般消費財の中にどんどんどんどん入ってくるという既成事実め中では、私は間接税の表示ということについても、これはぜひ今度の御審議の中で深刻に討論していただきたいし、ぜひ、間接税の表示というところで一般の納税者も、税の済みというものをよくわかって、そしてその税金の使い方について一つ意見を持てるような情報というものを明らかにしていただきたいというふうに思います。  非常に取りとめのないことを申し上げましたんですけれども、私が申し上げたいのは、一つは今の暮らし向きが非常に窮屈になっていること、公共料金を初め社会負担増加も明らかな中で、間接税という見えない税金でこれ以上国民の懐を苦しめないでいただきたいということが第一点でございます。そして今度の間接税の導入を見ておりますと、どうも私たち一般消費税の導入と大型間接税の導入のステップであって、そのための既成事実づくりではないか、そのために一つの税の体系というものが非常に国民生活から遠く離れていくというふうに思っております。ぜひ先生方暮らしへの御配慮の上での御審議お願いしたいと思います。
  8. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 最初に辻さんにお願いいたします。  ちょっと最初気になったのは、今回の税の値上げはやむを得ないとおっしゃっていますね。そうすると、日本酒の業界としてはこれは仕方がないということで肯定をしているわけですね。これが一つ。  それから中小零細企業が九九・六%、私の間違いかもしれませんが。そうすると大企業と言われるようなものはほとんどないと。この仕分けをどこでしているか、大企業と言われるものと中小零細企業というものとの区別を。  それから百五十八万キロリットルと落ち込んでおります。これはよくわかるんですが、落ち込みの原因、これがどうもいま一つ業界としての内部的な反省というか詰め、こういうものが欠けておって、専ら外部の嗜好の多様化とか、そういうふうに原因を求めておるようなんですが、業界内部にもいろいろこういう問題もあって落ち込みの原因になったというふうなことでお気づきの点があったらそれをひとつお話しいただきたい。私は外部の要因だけじゃないと思っておるんです。日本酒が大変まずくなったという声は至るところで聞かれますわね、原料米の問題から何から。そういう点で非常に問題があるかと思うんですが、そういう内部的な要因についての御説明がなかったので、それができたらひとつぜひお聞かせをいただきたいと思う次第でございます。  それからもう一つ、これ特に日本酒が一番多いんですけれど、リベートの問題ですね、これについては中央会としてはどのような対応をやってきたか、また実効が実際に上がっているのかどうかということ。  以上四点、ひとつ。
  10. 辻弥兵衛

    参考人辻弥兵衛君) ただいまの丸谷先生の御質問にお答えいたしたいと思います。  まず最初に第一点の増税を是認しておるかと、こういうことでございますが、これは是認するとかということではないのでございますけれども、先ほど申し上げましたように、現在の我が国の財政が極めて窮乏いたしております。私どもが我々の後継の者にこの莫大な国家の債務を引き継がせるということは忍びない、どこかで歯どめをしなければならないということは、現在の世代に生きておる国民として、当然考えなきゃならないと思いますし、臨調のいろんな、先ほどもお話ございましたが、いわゆる歳出の削減であるとか、いろいろな問題についてさらに努力を私どももしなきゃなりませんし、また国、県、地方自治体挙げて取り組まなきゃならないのでございますけれども、そういったような国の財政再建のため、また今回行われる所得税の減税の見返りの財源調達というふうな点から考えられまして、ぎりぎりの線で、先ほども清水参考人からもお話がありましたように、取りやすいところから取るとか、いろんな御意見はあろうかと思いますけれども、私どもはある程度やむを得ない措置だというふうに……
  11. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 是認していると。
  12. 辻弥兵衛

    参考人辻弥兵衛君) 是認というよりも、やむを得ないというふうに覚悟させられておるなあというふうに理解しておるわけでございまして、決してこれが当然だというふうに考えておるわけではございませんので、その点ひとつ御理解いただきたいと思います。  それから先ほど御指摘ありました私ども業界構造の九九・六%と申しますのは、先生も御承知のように、中小企業というのは概念的に、我々製造業の場合には、資本金一億円以下、従業員三百人以下というふうな、そのいずれかの条件を満たせば中小企業ということに一応なっておるわけであります。その業種業態によって、またいろんな別のあれもございますが、大体においてそういうことになっておると思います。したがいまして、私どもの二千六百業者の中で、極端な場合は資本金は一千万とか五千万とかいうふうな金額であって、五百人、六百大使っておられる、私どもの常識的な観念から言えば中堅あるいは大企業だと思われる方々も、定義の面では中小企業に入るわけでございます。したがいまして、はっきりした数字は私ここで記憶いたしておりませんが、現在二千六百の中のいわゆる大企業と言われる方々は二十者足らずではないかと思います。いわゆる中小企業に入らないという意味でその方々は二十者ぐらいではないかと、かように理解をいたしております。  それから三番目の、清酒需要の落ち込みに対する内部的な原因というのは、私どもも大変お答えにくいといいますか、残念な、私どもも十分平素から反省をいたしておるわけでございまして、清酒業の低迷の原因は、申し上げましたように、最近におきます消費者ニーズ多様化、個性化といったようなものに敏速適切に私どもが対応をようしなかったということによるものでありますけれども、そのことが先生御指摘のように、日本酒がまずくなったというふうな消費者の御指摘というものが我々の技術の向上に対する努力不足ということであるならば、確かにそういう点も反省をいたしておりまして、現在品質の向上には鋭意私どもとしては努力をいたしておるのでございますが、しかし二千六百業者の中にはそういった点でまたそうした努力の十分でない業者がたくさんおるということによりまして、そうした消費者からの厳しい御批判をいただいておる者があることは私も承知をいたしております。  また、先ほど申し上げましたように、私どものそうした内部的な要因は、製造コストの面におきまして相対価格が非常に高い、むしろこのことが他の種類の酒に比べまして清酒というものがいかにも割高であるといったようなことで、そうした相対価格の高水準を解決できないというところにも、清酒に対する需要伸びない大きな原因があるんじゃないんだろうか。今先生が御指摘になりましたような内部的な要因のあることも十分承知いたしておりますし、それらにつきましては、個々の業者を初め、中央会といたしましても、そういった品質の向上についても従来にも増していろいろと努力をし、業者指導に当たっておることもこの際申し上げておきたいと思います。  それからリベートの問題でございますけれども、これは先ほどもちょっと市場の深刻な状態ということの中で申し上げたんですけれども清酒業界は数が多いからリベートが行われるということではないと思います。業者はいろいろなスケールの業者があり、そして販売戦略というものは、いわゆる品質あるいはサービスとか、非価格競争によって正常な望ましい市場競争というものを維持するということが、私どもとしては一番基本的に大切なことであるというふうに理解しておりまして、ただ価格を引き下げること、あるいはリベートを出すことだけによって自分のマーケットを維持していこうという考え方は、究極において自分の足を引っ張るものであるというふうに私自身も考えております。  そういった点では、そうしたリベートとか、あるいは値引き競争といったようなものから超然と自分のマーケットを堅実に守っていらっしゃるメーカーの方も、たくさんいらっしゃるわけでありまして、二千六百の中には先生御指摘のような方々が相当あり、そのことが先ほど私が申し上げましたような過当競争的な市場の混乱を起こしておる大きな原因である。いろ中央会としても正常取引、あるいは行政庁におかれましても市場の安定、正常取引の励行については、種々の行政指導あるいはまた組合の自主的なそうした努力をいたしておるのでございますけれども、現在なおそれが十分な成果を上げ得なくて、先ほど申し上げましたような状況になっておりますことに対しては、大変遺憾に思っておりますけれども、しかし、業者の皆さんが、先ほど申し上げましたように、価格を下げたり、リベートを出すことだけで自分のマーケットを維持していこう、自分のブランドだけを売っていこうということが、いかにむだなといいますか、つまらない競争であるかということをだんだんと理解され、そうした流れから離れた独自の部分市場といいますか、そういうものを形成することに心ある業者の方は立ち向かっておられるように見受けております。  以上でございます。
  13. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 リベートの問題ですね、例えば一〇〇%米でつくってて、原料が相当高くなっているところはやりたくてもやれない。むしろリベートを出さないでも売れているという現状です。三倍増醸酒の方が、あれは原価が安いからできるんだなと、こう私は思うんですけれどもね。  あとビール都島さんに一つお伺いしますけれど、止渇飲料だと言うんですけれども日本ビールアルコール度数が高いんですよね。どうしてもう少し本当に止渇飲料だと言われるような度数の低いいろんなバラエティーに富んだビールができないんだろうか。余りにも寡占体制であるということがそういう道をふさいでるんではないかという気もいたしますんで、その点を一つお願いいたしたい。  それから、この間も本会議でやったんですけれども、値ごろ感の問題ですね。二十五円上がると三百十円にするんですか。三百十円にだけ上げたんでは小売屋さんはちっともあれなんですよね、逆にマージンが下がることになるでしょう。そこら辺に対しての配慮ということはやらないんですか。  その二点ひとつ簡単に。
  14. 都島惟男

    参考人都島惟男君) 簡単に申し上げます。  最初の止渇飲料の件でございますが、全世界平均した数字があるわけではございませんが、おっしゃるとおり、今日本の標準的なビール度数四・五%に対して、それより少し軽目がメーンであるという国の方が多いような感じがいたしております。  ただ、この度数の問題といいますか、度数を含めた味の問題につきましては、これはビールに限らないと思いますが、嗜好というのは急激な変化をしないものでございまして、ビール業界の中を見ておりますと、新製品がいろいろ出ましても、なかなか急速にそちらの方に嗜好が移るということをいたしておりません。ですから、一つの大きな方向としてライト化していくといいますか、度数を軽くしていくということ、その方向自体のよしあしはともかくとしまして、そういうことをしようとしましても、そう目に見えた変化はすぐは出てこないんではないかというふうに思います。  なお、現在の標準的な四・五%よりも軽い度数ビールが近年出現しておりまして、従来一種類でございましたものが、ことしになりまして二種類になるというような現象も起こっておりますので、一つ多様化の中でいわゆるもっと軽いビールというものが徐々に出てくるというような感じも持っております。  それから値ごろ感でございますが、二十五円の増税がありまして、それがそのまま転嫁されたときに、流通の小売店のマージンの率が減るということは、割り算で当然そういうことになるわけでございます。それにつきましても、いわゆるメーカー立場で見ましても、この増税につきましては、全くの負担増といいますか、金利的な意味では同じことでございまして、その二十五円の負担メーカーが一部見るということに、理屈の上でそういう立場になるというものではないように思いますし、機会を見てメーカーと流通の間でいろいろ価格について、マージンについての相談等があるようでございますので、そういう機会にそういう相談をしていくということになるのではないか。業界団体立場でございますので、そういう個別企業ベースで行われますマージン価格の問題についてちょっと責任持った御意見申し上げられませんけれども、現在の増税負担がそのままそういうお話のようなメーカーと小売との配分云々ということには直ちにはならない性質のものではないかなというふうに思っております。
  15. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 清水さんにお伺いいたしますが、実は見えない税金、これもこの間本会議で私取り上げたんですが、物品税法の四十二条で必ず税金を表示しなさいという法律があるんですよ。これは御存じだったでしょうか。  それからもう一つ、LPGのガスの問題なんですが、おっしゃるとおりだと思うんです。ただ、例えば田舎の大して売れないところで配達するにしても、小さな一キロボンベが専門の地域、それから業務用を含めて十キロボンベがどんどん出る地域、これは一概には言えないんです。一概には言えない問題だと思うんですが、全体として自由価格というふうなものを維持していくためにおたくの方で進めようとしている何か運動がございましたら、特にお願いしたいのはそういう見えない税金じゃないはずなんだということについて、消費者立場からもう少し頑張っていただきたい。  この二点をお伺いいたします。
  16. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) 最初の表示することが法律で決められているのを知っているかどうかという御質問ですけれども、これは存じております。今の表示の仕方ですね、それは大体小売段階でわかればいいということでございますから、そこまで知っている方は小売店で根掘り葉掘り聞けば聞けるんでしょう。しかし、積極的に小売の段階で法律を守って質問をしない消費者にもわかるように税金を見せるという習慣がないところに問題があると思うんですね。聞きますと出してくる。まだ出してくる方は良心的な方で、そういうことは知らないというふうな店員さんもたくさんおりますし、法律消費者商品を買う便宜には実際的にはなっていないところに問題があるので、もう少しその小売の指導と申しますか——私は幾ら小売店に言ってみても、今のように店員さんの入れかわりが激しいときにはとても無理だと思いますので、商品にだれでもがわかるという表示が必要な時代になっているのじゃないかというふうに思います。  それからLPガスも、先生のおっしゃいましたとおりで非常に地域差がございますし、それから業態の非常に大きいところと小さいところとございますから、私が先ほど申し上げましたのは、横断的に意見を申し上げましたのですけれども、もう少しきめ細かい対策が必要だと思います。  私たちは、そういうことのなくなるように価格調査を随分しております。通産省もモニター調査というのを毎月やっております。これを見ましても、一番新しい五十九年二月で、札幌が十立方メートル当たり平均五千八百二十三円に対して、四国は四千七百八十五円ということなんですね。こういう価格を実際に明らかにすることによって、何というのでしょうか、寡占的な価格にメスを入れるということしかちょっと私どもの方ではできませんし、それからこのプロパンガスの価格というのはもう幾ら運動してもなかなか決め手が見つからないくらい流通が複雑でございますので、そういうところも、通産省自身も流通をもう少し合理化して価格を下げるようにというふうな御努力はされているようですけれど、何せメーター制がもろ刃の剣みたいになりまして、メーター制というところに隠れて価格競争が以前よりはなくなってきている実態だと思いますけれど、これからも一生懸命やってまいりたいと思います。
  17. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 お三方、御多忙のところありがとうございました。  終わります。
  18. 鈴木和美

    鈴木和美君 関連で、短い時間で恐縮ですが、私、都島参考人にお尋ねしたいのです。  五十六年、つまり九十四回国会のときに二五%の値上げがございまして、そのときにビール業界にお尋ねしましたら、もう担税能力は限界だ、これ以上上げられたのではもうパンクだと非常に強く強調されたことを私は今記憶しているのですが、ところが今五十六年から今日までの状況を見てみますと、二%か三%伸びているわけですね。担税能力がもう限界だとおっしゃりながら伸びているわけですよ。もちろん、それは努力がされておったことは十分承知しておりますけれども、今度、今お述べになっている意見を聞いておりまして、酒類の中でビールの税が四四・四%から四八・九%、つまり五割が税金だということはもうどうにもならぬというお話が今ありましたけれども、もう一度この機会に、ビール業界として、もうこれ以上ビールが上げられたら一体どういう状態になるのかということについての、つまり売れ行きの展望などについて一つだけお伺いしたいと思います。
  19. 都島惟男

    参考人都島惟男君) 現在の酒税改正案が実施されたらどうなるかということが中心になろうかと思うんですが、予測にかかわりますことでございますので、余り権威をもって申し上げることもできませんのですが、私どもビール酒造組合なりに需要予測というものを毎年つくっておりまして、ごく最近五十八年までの実績を含めました需要予測を一応出しております。  最初にお断りしましたようにそう権威のあるものじゃございませんが、一応要素といたしましては、国民総生産ですとか、あるいは夏場の最高気温ですとか、あるいはビールの実質価格消費者物価指数でデフレートいたしました実質価格、そういった三つの面から過去の実績値から多重回帰分析をしているわけでございますけれども、ことし価格が昨年の十月に改定をいたしておりまして、価格面ではかなり高くなったわけでございますが、政府見通しどおりの消費者物価であり、かつ実質経済成長率であり、天気だけは予測がつかないわけですけれども、五十年代の過去八年間の平均であったというふうにいたしまして、ほぼ価格が変わらなければ二%程度の伸びであろうかというのが、算式上出てきた見通しでございました。これに増税がかかってまいりますと、当然算式でございますから実質価格が上昇いたします。その係数はマイナスでございますから、価格弾性値が働きまして当然二%という数字が減ってまいりまして、下手をすると前年割れの危険もあるなどいう状況になっております。さらにそれが長期的なところにいきますと、一般の物価の動向ということとか、あるいはほかの酒類との競争関係ということも一つございますので、それが永遠にマイナスで続いていくということは言えないと思っておりますけれども、当面ごとしの需要に関しましては、かなり厳しく見ておく必要があろうというふうに私の業界団体の計算では考えております。
  20. 鈴木和美

    鈴木和美君 私の感じでお気にさわりの点があったら勘弁していただきたいんですが、どうもお酒の税金の全体を見てみますと、日本業界というか、日本酒に関係する議員さんはたくさんおるんですよ。だから日本酒のことについてはいろんなことがやられるような傾向にあるんですが、ビールは、私が見ている限りにおいては、余りそんなこと持ってなくて、正直だというか、そんな感じなんです。だからビールの方にどんどん税金がかけられている、そんな感じを率直に私は持ちます。なぜかというと、今回も三千二百億の中でビールがどれほどこれに占めていますか。減税の財源の約何%ですか。減税財源の中でも二割ぐらいはビール税で持っているような感じです。そういうことですから、もう少し業界もきちっとしたことをやってもらわないと高いビールばっかり飲まされるようなことになると思うんです。  それからあなたもおっしゃっているように、酒類の縮小するのを酒の懇談会でやっていますよ。しかしビールを下げるということはやってないんですよ。ビールを基準にしてこっちを上げるという方法をやっているんですから、もう少し業界の方もしっかりやってもらいたいということを要望申し上げて、あと清水さんにちょっとお尋ねしたいんです。  私、たばこ屋なんですが、たばこは「吸いすぎに注意」というのがあるんですよ。それで今非行問題が非常に問題になっていますね。業界は恐らく反対だと思いますが、清水さんの認識では、余り日本人は酒を飲んで酔っぱらいがいないという認識のようですけれども、非行問題などを考えたときには、飲み過ぎに注意というものを張っておけというような、そういう注意表示をやれという意見も私のところにあるんですが、そういうことについて、私も今必ずしもきちっとした意見は持っていませんよ。持っていませんけれども清水さんの感想だけでもいいから聞かしていただきたいんです。
  21. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) それは無理に反対することでもないのでございますけれども、ただ、お酒を青少年が飲みたいという状況が一体ステッカーでとまるかどうかというのは、まだもう一つもっと根の深いものでございますと思います。  それで、今自動販売機で酒を子供たちが自由に買えるような状況がありますので、それについては、深夜に自動販売機の電源を抜いて青少年が買えないようにするとか、そういうふうな運動は全国の婦人団体では一生懸命やっているんです。そういう運動が社会的にと申しますか、地域的には随分定着しているというふうに思いますけれども、ただ、青少年がお酒を飲むとか悪書に心を奪われるとかということは、ステッカーだけでとまるものでもないと思います。だからといって、じゃステッカー張るなということではなくて、張れば張らないよりは歯どめにはなるかと思いますけれども、私の子供なんかももう大きくなりましたけれども、やっぱりお酒を飲みたくて、やたらにむちゃくちゃに飲みたいいっときがございますけれども、それだからそのままずっと酒ばっかり飲んでいる子供に育つかというと、そうでもないようなふうに私は思っています。
  22. 吉川博

    ○吉川博君 まず最初に辻参考人にお尋ねいたしたいと存じます。  今回の酒税法改正案で示しております酒類間、級別間の税金負担のバランスを確保するという意味で見ますと、清酒は例外扱いとなっておるわけであります。これは清酒が米を原料としておるという特殊な事情でございます。そこで今回この税の値上げの機会に、日本の米が三倍するということを言われておるわけでありますが、あたかも農業側でいけば水田再編ということで農地の集団化が今鋭意されておるわけでございます。したがって、みずからの手で原料米を安くするような方策を講じられたらどうであろうかというようなことを思うわけでございます。そうした意味につきまして御所見を伺いたいと存ずるわけでございます。  第二点目としては、現在の酒類の級別制度は任意出品制でございます。官能検査によって識別されておるわけであり、種々問題が指摘されておるようでございます。価格の点についても論ずるといたしましても、先日新潟へ参りましたが、一・八リットル二万円の酒があって、しかもなかなか手に入りにくいと聞きました。あるいはまた二級酒で一万円の酒が売りに出されておると聞き及んでおるわけでありますが、そういたしますと、一体級別制度の存在価値はなくなるのではないかと思うのであります。あるいはまた等級別による従量税率においても同様のことになるわけでありまして、級別制度に大きな矛盾を感ずるわけでございます。それに対する御所見も伺っておきたいと思います。  第三点目に、清酒業界では、ことしの七月から第四次近代化計画に取り組まれるということでありますし、また改正案で酒造組合中央会が三回目の転廃給付金事業を行うこととしておられるようであります。第四次近代化計画の目標について説明をお願いするわけでありますが、今回の転廃業者数をどの程度と見込まれておられますか。最終的に清酒業者をどれほどの数に抑さえていくお考えであるか、お伺いする次第であります。  以上三点をお願いいたします。
  23. 辻弥兵衛

    参考人辻弥兵衛君) ただいま吉川先生の御質問に対しましてお答えをいたしたいと思います。  まず第一点の原料米の問題でございまして、先ほども意見で申し上げましたように、私ども日本酒は伝統ある民族酒であるというふうに考えておりまして、その原料はあくまでも国内産米でということは私どもの悲願でございます。ただ、その場合に、今の原料米価格はどう考えても国際価格に比べて非常に高い。先生はみずから日本のお米や産米の価格を引き下げる努力をしたらというお話でございまして、国税庁におかれましても、食管制度にどうこうというわけにはまいりませんので、今の酒類行政の範囲内では多収穫米を既に目下三県におきまして試験栽培をやっていただきました。その米による試験醸造も既に行われております。収穫は平均的に見て二割なり三割なり多収になっておりますので、それだけコストの引き下げに役立つと思います。  それから今先生がおっしゃいました、私は岡山でございますけれども、例えばかっての藤田農場、今の興除というところでございますが、あそこあたりで、機械化農業、かなり農地の集約化、大規模化が進んでおりまして、そういうところで米作をやった場合には、はっきりした数字はよく覚えておりませんけれども、現在のような価格よりもかなり低い価格で採算がとれるというようなケースも聞いておりますし、また岡山以外のところでも、そうした機械化農業によって大規模化が行われた場合には、ある程度のコストが引き下げられて、いわゆる米の価格が下がっても採算がとれていくというケースも、もう幾つか先例的にあるようでございます。  ただ、今、先生も御承知のように、農地の集約化というものは、その所有権を、たとえ三アール、五アールでありましても、なかなか手放したくないというあれもございまして、なかなか農地の集約が進まないと思いますので、例えば農協に対する委託というような形で、賃貸借契約によりまして農地の規模の拡大を図るというふうなことがもっと行われていきましたならば、国内産米におきましてもかなりな程度にコストダウンができていくのではないだろうかと、かように考えております。  それから二番目の級別制度の問題につきまして、先生御指摘のような幾つかの矛盾点が出ておることは承知いたしておりますし、私ども中央会の中の紋別制度の研究委員会におきまして過去一年間いろいろと検討もいたしております。現在の級別制度をどのように改めたらいいのか、消費者の信頼に足る級別制度というものを目標にいろんなことを議論いたしております。先生の御指摘のように、低級酒といいますか下級酒といいますか、そういうもので非常に高価なものがあるとか、あるいはこの級別の審査の基準が、いわゆる任意出品制であるということと、主として官能審査によってやっておるために、非常に個人的といいますか、そうした客観的な基準がないということで、非常に個人の嗜好によってその品質が優良、佳良というふうなことが決められるようなおそれもある、そういったことで、何とか客観的な基準というものが行われないか。  例えばウイスキーのようにモルトの混入率とか、そういったようなものが一つの客観基準でございますが、清酒の場合、米の使用率、あるいは精白度、あるいはアルコールの使用率といったようなもので特、一、二というふうな、一つの級別にそうした客観基準を当てはめるというふうなこともいろいろ議論をしてみました。しかし、精白度が高ければ必ずいい酒ができるという——全体的にはそういう傾向にありますけれども、技術によりまして、比較的精白度の低い原料米でも立派な酒をつくり出す技術を持っておられる方もいらっしゃるわけでありますし、必ずしもその精白度だけで決めるというわけにはいかない。  それからいわゆる官能審査というのは非常に主観的な色彩が非常に強い、客観性に乏しいというふうに常識的には思われておりますけれども、専門の先生方の御意見を聞きますと、それほどあいまいなものではなくて、私どもも経験的にこうしたすばらしい官能審査をする能力を持った先生方、それも一人や二人じゃなくて、五人とか十人とかの先生方によって級別審査が行われる場合に、出た答えというものは決してそんないいかげんなものじゃなくて、ある程度客観的に信頼に足るものであるということを経験的にも知っております。  しかし、そうは申しましても、先ほど先生の御指摘のようないろんな制度的な矛盾というものがありますので、これをどのように変えたらいいのか。例えば三段階を二段階にするとか、思い切り級別をなくして一本にしてしまうとか、それぞれメリット、デメリットがあるわけでございます。  で、私どもの現在の考えとしましては、昭和十八年以来級別制度というものは業界の中に定着してまいっておりますし、先生の御指摘のようないろいろな矛盾があり、消費者がどうもよくわからぬという、その信頼が揺らいでおることも、率直に申しまして、本当にそうであろうと思いますし、私ども何とかそれを回復する道をいろいろと検討いたしておりますが、現在の段階では、特、一、二級というものは、ある意味においては、大手メーカー中小メーカーとが事業分野調整的な機能もかつては十分に持っておったわけでありまして、現在では、先ほど申しましたような大手メーカーがどんどん二級酒業界へ入ってくるというふうなことによって、ややその機能は弱められておりますけれども、そうは申しましても、まだ今の級別制度というものが消費者の中にある程度定着しておるし、またそういった分野調整的な機能も果たしておりますので、今すぐこれを取っ払ってしまうということについては、むしろ多くの混乱があるのじゃないだろうかということで、私どもも今何とか早急に、この級別制度についても、消費者の信頼に足る級別制度に持っていくように現在検討をいたしておりますので、御理解いただきたいと思います。  それから最後に近代化の問題でございますが、私ども昭和三十九年第一次から昭和五十六年度において終了いたしました第三次の近代化まで、前後十七年間近代化に取り組んできたわけであります。その結果が先ほど来申し上げたような業界状況にあるということはまことに申しわけない、残念なことだと思っておりますので、今回の第四次近代化は、あくまでも現状を踏まえた上で、先ほど申し上げましたように、清酒部会から出ました中間報告の中には、当面私ども業界が取り組まなきゃならない問題点、そうして中長期的な観点で我々業界が取り組まなければならない問題、さらにその中で個別の企業がやらなきゃいけないこと、あるいは組合あるいは分業者として取り組む問題、あるいは行政にお願いしなきゃならない問題、さらにまた行政の範疇を超えるものとしては、先ほどお願いいたしました原料米の問題ございますが、そういった仕分けが一応この中間報告ではっきり出されておりますので、それに基づきまして、現在の清酒業界需要減退に歯どめをかけ、そうして清酒業界が新たな展望を持ってそれを現実のものにするようにする。  この第四次近代化構造改善は、いわゆる経営戦略型の構造改善と申しますか、個別の——これは当然のことでありますけれども、個別企業それぞれ二千六百業者が二千六百通りの行き方があるというふうに考えておりますので、小さい業者が必ずしも不利というわけじゃございませんので、小さくても立派な成績を上げておられるメーカーもいらっしゃるわけでありますし、大きくても赤字の会社もあるということでございますので、それぞれが自分の置かれた環境、条件をフルに生かして立派に生きていっていただくことを、第四次近代化としては目標にいたしておりますので、最初から何百者を企業整理するとか、あるいは転廃が出ることを予測しておるというわけでは決してございません。  したがって、幾らになったら業界が安定するのかというふうなお話もよく聞きますけれども、私どもは、この業界は数が減ってもそれで業界が安定するとかいうふうな問題ではないというふうに理解をいたしておりますし、また清酒業界が全国各地に散在しておりまして、それぞれの地域の産業あるいは文化を支えておるという自負を持っておりますので、何とか二千六百軒が生き残っていただくような知恵をお互いに出し合おうということで取り組んでおるわけでございます。  ただ、しかし、現在のような厳しい情勢の中で戦線から脱落せざるを得ない人、あるいはまた後継者がいないためにほかの方へ転換したいというような方々もいらっしゃるわけでありますから、そういった方々に対しまして一つの制度を設けておくことは必要ではないかということで、転廃給付金の制度を継続きしていただくことをお願いしておるわけでありまして、幾らぐらいと思っておるかと言われると大変困るわけでございますけれども、過去における実績としましては、第三次のときに約四百者の方が転換をしていらっしゃいますので、第四次の場合、まあ三百者程度のそういった方々が出るということを一応予測して計画を立てておけばいいんじゃないだろうか。我々はそれができるだけ少ないことを期待もいたしておるわけでございますが、一応感触としてはそのように考えております。
  24. 多田省吾

    ○多田省吾君 参考人の皆様には本日は大変ありがとうございました。  初めに辻参考人にお伺いしたいと思います。  今いろいろ業界の現状と貴重な御意見をお伺いしたわけでございますが、今回の酒税税率引き上げにつきまして、増税額は初年度で三千二百億円、平年度で三千五百十億円となっておりまして、全国三千七百四十万世帯としますと、一世帯当たり負担増は八千六百円と、酒税だけでそのように値上がりするわけです。これは小売原価にそのまま転嫁されると思いますが、このことが消費動向にどのように影響を及ぼしていくだろうか、その辺どう考えておられるのか。  それから昭和三十年代以降酒税増税は、三十一年、四十三年、それから五十年代に入りますと五十一年、五十三年、五十六年、五十九年と、二年ないしは三年ごとに実施されておりますが、これが清酒業界にどのような影響を与えているのか。  それから第三点目は、今原料高等清酒業界がきわめて厳しい現状にあられることはわかっているつもりでございますが、三倍増醸酒等大変味も悪いということで戦後ずっと評判が悪いわけでございますが、今マスコミ等で話題を呼んでおりますいわゆる吟醸酒、銘柄で言いますと愛媛県の梅錦とか熊本県の香露とか、こういうものがシェアはわずかでありますけれども、売れ行きが次第に上昇しているということを聞いておりますけれども清酒の品質を高める上で、今後どのように取り組んでいかれるのか。  それから第四点目は、先ほど主婦連の清水参考人から間接税商品に表示したらいかがかと、税率の表示というお話がございまして、まことにごもっともだと思いますけれども、その辺はどうお考えですか。  その四点お伺いしたいと思います。
  25. 辻弥兵衛

    参考人辻弥兵衛君) ただいまの先生の御質問にお答えいたしたいと思います。  最初、増税の問題でございまして、それによってどのような影響が出るかと、こういうようなお話でございまして、二番目の御質問の需要減退が過去における増税のたびにどうなってきたかというふうなことと関連いたしておりますので、二つあわせてお答えしたいと思います。  私どもは率直に申しまして、清酒としては、増税の本当にもう余地はないというふうに理解しておるのでありますが、他の酒類方々増税負担を受けられるわけでありますし、また先ほども吉川先生から御指摘がありましたように、我々清酒業界に対しましては特別な御配慮をいただいておるということでございますので、万やむを得ないというふうに考えておるのでございますけれども、率直に申しまして、この増税が本当に価格に転嫁できるんだろうか。もちろん、私どもはこれを企業努力によって吸収するというような金額じゃございませんし、どうしても価格に上乗せをせざるを得ないわけでありまして、これは力関係でございまして、それが果たしてできるかどうかということを非常に心配いたしておるわけでございます。  過去におきまして増税が何回か行われてまいりましたが、そのたびに、数年間を考えますと、特級酒の売り上げが非常に減退してきております。このことは、増税によって値段が上がっていくというのは——当時私どもも二級酒は大衆酒であるということで、過去における増税のたびに二級酒だけは据え置くというふうな特別な措置をとっていただきましたことが、いわゆる特級と二級酒との間の税の格差を結果的には増大したことになったと思います。したがいまして、特級酒がだんだん売れなくなってきて、それが一級酒になり、さらにまた二級酒になるというふうな低価格化、級別がだんだん下がることによって何とか増税負担に歯を食いしばって耐えていくというふうな形が、現実にはそういう形になってきたように思っております。  したがって、今回の増税によってどうなるかということになりますと、先ほども申し上げましたように、五十七年ですでに百五十一万キロリッターというピークのときからいえば、百万石近い落ち込みが現在起こっておるわけでありまして、これが今回の増税によりまして、特級酒は他の酒類に比べていろんな配慮は、先ほど申しましたようにしていただいておりますけれども、なおかつ二〇%の増税率でございますので、さらに特級酒というものは今後急速に、まあ売れなくなると言ったら語弊がありますけれども減少していくのではないだろうか。それが一級酒にかわり、あるいは二級酒にかわるということによって、増税の目標というのが果たして現実に増収につながるのかどうかということについても、私どもは非常な不安を持っておりまして、我々も、大手の皆さんが毅然として特級酒、一級酒を出していただければいいわけですけれども、先ほど申しましたようなことで大手メーカーの方が競って二級酒市場へ入ってくるというふうなことになりますと、末端における価格競争というものがさらに深刻になっていくのじゃないだろうかというふうなことを非常に心配いたしております。  それから三番目の原料米の問題につきましては、先ほど一番最初に丸谷先生からも御指摘がありました、日本酒がまずいといううわさが非常に高いぞというおしかりを受けたんですけれども、これは基本的にはいい原料米を使って丹念につくるということがいいお酒ができる根本的な条件であろうかと思います。  現在、御指摘のように吟醸酒というものが見直され、地方においてそうした丹念につくられた酒がそれなりの評価を受けて伸びておりますことは、大変私どもを勇気づけることでございまして、将来まず、まあ私の個人的な考えでございますけれども比較アルコール度数の低い吟醸酒というものが技術的にもっと開発されまして、そういったもので低アルコールであってしかも飲みやすい吟醸酒というふうなものが市場へ出回りましたならば、清酒需要というものはかなり回復していくのじゃないだろうか、私はかように思っております。  それから最後の税率のラベルその他への表示ということでございますが、私どもとしては、別にこれをいけないという理由は全然ございませんので、そういうことが消費に対する正しい知識を消費者の皆さんに持っていただく上で役立つということでありますれば、決して反対するものではございませんので、そのことも申し上げておきたいと思います。  終わります。
  26. 多田省吾

    ○多田省吾君 ありがとうございました。  次に、都島参考人にお尋ねしたいんですが、昭和五十七年度の酒税課税総額を見ますと一兆七千七百三十五億円で、そのうちビールは九千六百二十二億円と圧倒的な税額を誇っておりますけれども、今回の増税で、現行小売価格ビール大瓶が二百八十五円から三百十円となると思いますが、そういった価格値上げと、それから本年の気候条件とかということを考えますと、生産者のお立場からどのように消費量が影響を受けるとお考えでございますか、本年の見通しをお伺いしたいと思います。  また二番目に、現在ビールの広告費と消費あるいは売り上げについてどのような実情にあるか。これも要点で結構ですからお伺いしておきたいと思います。  それから三番目に、清水参考人のおっしゃった間接税表示、これをどのようにお考えでございますか。
  27. 都島惟男

    参考人都島惟男君) 三つございましたので、要約して申し上げたいと思います。  一つはことしの需要の見通しでございますが、先ほどちょっと申し上げましたように、私ども業界の中の各社それぞれの見通しは持っているわけでございますが、きょうはビール酒造組合ということで参っておりますので、組合で需要予測をいたした内容を簡単に申し上げますと、気候条件を平年並み、五十年代の平均のところに置きまして、夏場の気温だけでございますが、あとは政府見通しによります実質経済成長率あるいは消費者物価、その中でビール価格が上がった場合、五月一日から三百十円に大瓶が上がった場合というようなことを機械的に計算いたしていきますと、非常に残念ですが、多少マイナスが出るという結果になっております。  ただ、この中には各社がそういった予測の中でどういう企業努力をしていくかといったようなこと、あるいは同じアルコールの中での競争がどうなっていくかといったような要素が含まれておりませんので、余り権威を持ってこうなりますということを、業界団体ではございますが、まあ言えない。ただ非常に心配なデータになっているということを申し上げておきたいと思います。  それから広告費と消費、売り上げの関係といいますか状況でございますけれどもビールの広告は非常に目立つ、広告が多いというようなことが感じられているかもしれません。ちょうどシーズンに向けてビールの広告というのは集中いたしますことと、それから近年各社とも新製品を出しますものですから、新製品を出した以上はその物の存在をまず認知してもらう必要がございます。そういった意味もございまして、かなり広告が目立つというようなことがありまして、またそういった認知がなければ消費に結びつかない、酒屋に買いに行くということ自体がまず起こらないわけでございますので、広告というのは消費に対して効果があるかどうか、数量的な測定は非常に困難でございますが、そういったことを意図しながら各メーカーがやっているんだろうと思います。  ちなみに広告費でございますけれども、関係四社の有価証券報告書等から単純に広告宣伝費を集計いたしますと、直近の一年間で約五百億ぐらいの数字になります。ただ、これはあくまでその四社の広告宣伝費ということございまして、ビールの広告宣伝費ではございません。あるいは洋酒を主として出している会社も含まれておりますし、清涼飲料の広告もかなりなものになると思いますので、これがすべてビールということになりますと誤解になりますので、申し上げておきますが、業界の規模等からしますと、大衆商品を扱っているだけに広告のウエートというのは比較的高いかと思っております。また重要な販売促進の手段であろうというふうには思っております。  それから表示の問題でございますが、私どもビール業界あるいはビール酒造組合では、ビール税負担が非常に高いということを共同広告という格好で、一般誌あるいは週刊誌等に継続的に訴える広告を出しております。消費者へのアピールをしているわけでございますが、そのことが直ちに商標の中にそれをそのまま入れることが妥当かどうかということになりますと、企業の経営政策、営業政策等がございますので、私がここでいい悪いということを申し上げる能力はございませんけれども一つは大衆の方々に飲んでいただくという大衆商品でございますので、イメージの問題も大事かと思うわけです。税金が高いということを知っていただくことは大事なことなんでございますが、言い方は悪いんですが、税金が多いというと損をするという感じがちょっとわきますものですから、そんなもったいない物ならやめておこうかということになりますと、企業としてはこれは真剣に考えなくちゃいけないことだと思いまして、趣旨そのものは賛成でございますけれども、それを商標の表示にするのが適当かどうかについてはかなり中で議論をする必要があろうかというふうに思っております。
  28. 多田省吾

    ○多田省吾君 清水参考人にお尋ねしたいと思いますが、先ほどお話をお伺いいたしましてまことにごもっともだと感じました。  特に、今回の酒税だけを取り上げましても、一世帯もし八千六百円ほど負担増になるとすれば、消費者物価に〇・八%それだけで転嫁されるわけでございますが、それのみならず、先生がおっしゃるように、便乗値上げ等もたくさんあると思いますし、あったら大変でありますが、残念ながら今までの状況を見ますと便乗値上げも考えられますし、物価への影響はもっと多く出てくると思います。  またさらに酒税物品税石油税等の間接税増税が、おっしゃるように大型間接税導入の突破口になりかねないというおそれもございます。また物品税なんかを見ましても、ぜいたくな物にかけるという姿から、今は生活必需品にも相当かかっておりますし、よりぜいたくな物が据え置かれたり、大変不公平、矛盾もあるわけでございます。  そういった点に関しまして、お話は承りましたけれども、なお御心配の点がありましたらお伺いしたいと思います。  それから、きょうは間接税でお伺いしておりますが、一つだけ所得税の公示制度についてお答えいただければありがたいと思います。といいますのは、新聞等に報道されておりますように、所得税法二百三十三条を今回変更いたしまして、今ままでは所得一千万超の者を公示していたのでございますが、今度は納税額一千万にしようとしているわけです。所得一千万超ですと対象者が四十万人を超えるので大変だというような言いわけをしておられるようですが、もし納税額一千万にしようとしますと四分の一に減ってしまって、十万人を割る対象者になりますし、所得換算しますと二千五百万円の所得者以上になりまして、このことは納税のチェック機能を果たす意味が非常に薄れてまいります。  それで、私個人としましては、四十万人が大変だったらせめて所得一千五百万超の者とか、あるいは納税額一千万じゃなくて、五百万とか六百万とか、その辺で公示すべきだと考えておりますけれども、この点どうお考えでございますか。お答えいただければありがたいと思います。
  29. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) 第一点目の暮らしへの影響ですけれども、これは特につけ加えることはございません。今、公共料金の値上げで、米価がこの間上がりまして、また国鉄も近々上がるようでございますし、医療費、教育費その他国の公共料金だけでなくて、地方の公共料金も軒並み値上げが予定されておりますので、そういう中で間接税の四千三百二十億、この三法だけでも四千三百二十億の増税ということが、これはかなり全体の物価を押し上げる要因になるということは否定できないと思います。  それから第二番目のことは私もちょっと不勉強で、ここで中途半端なことを申してもかえっていけないかと思いますので、また後で先生の方にお答えしたいと思います。
  30. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最初に辻参考人にお伺いしますが、第四次構造改善問題で、これでもいろいろ業界の中にも賛否両論あったんだと思うんです。ある業界紙によりますと、「三回も実施して何の効果もないのに、第四回目で二、六〇〇の蔵が生き残る妙策が果たしてあるのか。寧ろ混乱を増長し、業界の恥部をさらけ出すことになるのではないか。」と、こういう指摘もありますし、「赤字転落の企業は、人間でいえば瀕死の重体である。一時的にカンフル注射をしても、何れは、生存の見込みのない重患なのだ。」と。あるいは今度は金を出す方ですが、金を「仮に拠出しても自分が生き残れる保証は何一つない。他人のことより、自分がどうなるかが問題である。それとも第四次構改で、生き残る保証をしてくれるのかどうか。」こういったこととか、ともかく要するに「体裁のよい企業整備の推進ではないか。」、こういう大変悲観的な見方があるんですが、これについての御見解を端的にお伺いしたいと思います。  それからもう一つは、私はむしろ業界がいい酒をつくっていくということで、中身で勝負していくことが生き残る道だと思うんですね。そういう点では精米度を高めるなど大変な努力をされておるんですが、ただいろいろ聞いてみますと、そういう本当に良心的な、本当に清酒を守っていこうという真剣な努力を阻むものに、精米度が高まると今度は白ぬかがたくさん出ますね、その白ぬか糖化液を大量使用する。これができるのは大メーカーなんですね。そうしますと、せっかく中小の方が本当に真剣に努力しても、それがそういう業界の中の事情でうまくいかない。こんな状況をどう打開していくのか、お考えをお聞きしたいと思うんです。端的にお願いします。
  31. 辻弥兵衛

    参考人辻弥兵衛君) ただいまの近藤先生の御質問にお答えしたいと思います。  第四次近代化につきましては、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、ただいま先生御指摘のように、第一次から第三次が終わります五十六年まで、十七年間ほどになろうかと思いますが、そういった長い間かけてやっても余り効果がなかったじゃないかと。これは私ども効果がなかったとは考えておりませんので、ただこの取り組みが、自分が主体的に取り組んでいくという気持ちがなくて、どちらかといえば、役所でつくられた計画に、悪く言えばそれに便乗して何とかいいことがあるんじゃないだろうか、税制とか金融のメリットだけを受けようとかというふうな、そういういわば横着な考えの業者も中にいたと思います。自主的に取り組むという姿勢が非常に乏しかったということが、過去における近代化、三次にわたる近代化をやりながら、なおかつ清酒業界が今日のような状況に落ち込んでおる一番大きな理由だというふうに私は思っておりますし、それから第四次近代化というのは、先ほど申し上げましたように、清酒部会中間報告によりまして現在のような清酒の、総体的にも酒類全体のマーケットが伸びない中で特に清酒業界が落ち込んだ理由については、先ほど来諸先生の御指摘もありましたし、また私も申し上げましたいろんな要因があったと思うんです。  そこで、第四次近代化については、先生御指摘のように生き残る保証があるのか、残存者というものはメリットがあるのか、それからトータルマーケットがふえないときに、例えば私が申し上げたように、三百者が減ったからその分が自分に回ってくる、三百者分だけトータルマーケットが減れば同じことでございますので、そういう意味では生き残る保証というのはどこにも私はないと思うんです。  ただ、この第四次近代化というのは、何も先ほど申しましたように数を減すというのが目的ではなくて、私は長らく商工会の世話をしておりました関係もありますし、田舎におりますので、できるだけ二千六百の方々が、この近代化が始まった当時から言いますと約千者近い方がやめていらっしゃるわけで、大変私どもは残念に思うわけなんですが、何とか二千六百はみんなが生き残る。しかし、その二千六百が生き残るといっても、そんな調子のいいことができるわけがないじゃないか、一体おまえらの計画というのは何ぼ減す計画なんだという、そういう御意見業界の中からも出ておりますことも事実ですし、先ほど先生が御紹介されたような声があることも事実でございます。  清酒というのは、先ほど申し上げましたように、本来の清酒というものは、国民酒として、民族の伝統のある民族酒として世界に誇るべきものであるし、また消費者方々清酒に対する愛情といいますか、愛着といいますか、清酒は一体どうしたのか、もっとがんばらにゃだめじゃないかという声なき声といいますか、そういう温かい御配慮というのが国民の各界各層の中にあることは、私は間違いないと思っておりますし、先生が御指摘のように、中身で勝負というふうなお話ございましたが、まさにそのとおりだと思いますし、消費者がどういう酒を本当に欲しがっていらっしゃるのか、それに対して適切にいいものを皆さんに飲んでいただくという、言ってみれば簡単なことでございますけれども、それをやっていくということが基本的だと思います。  それから白ぬかの問題について先生から御指摘ございました。これは一部の業者の中に大変多くの米粉を使っていらっしゃる業者がありまして、それの制度に乗れる人、それを利用できる人と利用できない人との間に先生御指摘のようなコスト面での格差があるじゃないか、そのことも問題だと。このことについては共同でやろうと思えばやれないことはないわけでありますが、これについては国税庁としても、使用する白ぬかの原料の歩合というものを一〇%以内ということで厳しい行政指導をしていらっしゃいますし、歯どめもかけられておることでございますから、私どもとしては、先ほど先生が御指摘のような中身で消費者の皆さんに愛飲していただけるようなものを提供していくということで、十分他の種類に対して競争ができるんじゃないだろうか、生き残っていけるその道は私は求められるというふうに理解しております。
  32. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 あとの参考人、時間がなくなってしまったので失礼いたします。
  33. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私も時間の関係で辻参考人にだけお尋ねをいたします。  しばらく前に、たしか浜松のあたりだと思うんですが、酒屋さんに見学に参りまして、ほうろう引きの大きなおけがあって、中にお酒が入っているんですけれども、こっちは素人なものですから、これは一級酒が入っているんですか、二級酒が入っているんですかと聞いたら、いや、どっちでもないんですと言うんですよ。どうしてですかと言ったら、二級酒と張って出せば二級酒で、一級酒と張って出せば一級酒なんですと。一級二級というのはその程度のものであるようなんですね。そんなことを背景にしながら、特級から一級一級から二級へ下級移行が進んでまいりましたね。この最大の原因は、たび重なる増税が要因だと思うんです。  私の質問というのは、特級から一級一級から二級に落ちてくる。そうしますと級別が持っている分野調整機能が失われてまいりますね。そうすると、おっしゃるように二級酒を中心にしたゾーンで過当競争が起こってくる。このことは日本酒、清酒業界として歓迎すべきことなんであるのかという質問。  もう一つは、酒造組合中央会で近代化のいろんな研究委員会を持っておられるようなんですが、聞くところによりますと、その委員会が考えていた近代化の方向に今回の法改正はむしろ逆行している、大変困ったものだということを私伺ったんだけれども、どういうことだったんでしょうか。私が聞いたのはあるいは間違いだったかもしれませんが、この二点だけお伺いいたします。
  34. 辻弥兵衛

    参考人辻弥兵衛君) ただいまの栗林先生からの御質問にお答えしたいと思いますが、最初に、浜松で先生がごらんになりましたタンクの中に入ったのは、一級を張れば一級で、二級で張れば二級だというような、これは審査を受けていないつくったままの清酒の場合ですね。これを一級の審査へ出し特級の審査へ出して、中央酒類審議会で審査を受ければ特級になるし、受けなければ二級だという意味でありまして、一級になったものを二級で出すというわけではありませんので、いいかげんなものというふうなお話ございましたけれども、それは決してそういうものではないと思います。  それから、もう一点先生がおっしゃったのは……
  35. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 特、一、二と下がってきますね。
  36. 辻弥兵衛

    参考人辻弥兵衛君) 先生の今の御質問で、増税によって下方の下級酒への志向をだんだん大手がやっていく。このことは、先生御指摘のように、かつては級別制度というのは、いろいろ先ほど来御指摘のような矛盾がありましても、事業分野調整的な機能を果たしてきたわけなんですけれども、現在ではそれがだんだんと果たしにくくなっておることも事実でございます。したがいまして、私どもは、清酒の特級という名称はどうあろうとも、非常にすぐれた清酒が特級として売られ、そして一級として売られるということは、大手の方が意欲的に特級を出していただける、消費者の人もそれを認めて飲んでいただけるような級別というものが欲しいと思います。したがって、そのためには、特級酒を売れば、それだけのメリットメーカーの方にもあるというふうな制度がひとつ必要であるのではないかと思います。  ただ、今回のこうした増税によりまして、先ほども私申しましたように、特級酒は二〇%の増税率になっております。このことは、いろいろと先ほど来申しましたように、我が業界に対する御配慮の結果決められた数字ではありますけれども、二〇%上がるということは、特級酒にとっては、絶対額としてはかなり上がっていくと思いますし、そのことが特級酒の需要減退をさらに強めるであろうということは容易に想像できるわけであります。したがって、だんだんと上級酒のシェアというのが下がってまいりまして、全体が二級にだんだんとなっていくということは、決して私どもとしてはそれはいいことだとは思っておりません。  ただ、そこで、格差というものが——今まで、さっきも申しましたように、過去の増税の場合に、二級酒は中小メーカーがやっておるんだから、二級だけでも増税を何とか勘弁してやろうという先生方の御配慮によって二級が据え置かれ、五十六年のときに初めて増税が行われたわけなんですが、それまではしばらくの間、二級酒だけは増税の対象から外されておったわけです。そのことが、結果的に特級と一級との格差をだんだん広げてきた。そこで特級がだんだん売れにくくなってきたということなんです。  で、これを縮めていこうというふうな努力、それをやる必要があるんじゃないだろうか。そういう意味で、私どももそういう政策はとられるであろうというふうに思っておったわけですけれども、結果的にはそうした配慮は、さらにまた二級酒に対して特別な配慮がいただけたということで我々としては非常にありがたいことなんですけれども格差是正という意味からは、不十分といいますか、余り格差是正をすることが十分にはできなかったという意味で、不満とかどうとかいうことよりも、確かに格差是正というのが、我々から言えば、特級酒は増税をもう少し引き下げていただいて、そして格差是正していただくことが一番望ましかったというふうに思っております。そういう意味で、先生のお耳に入ったのは、最初に皆さん考えたことが十分に実現しなかったというのは、そういうことを御指摘になっておられるんだろうと思います。
  37. 青木茂

    ○青木茂君 主として清水参考人にお伺いしたいんです。  その前に業界のお二方にお願いしたいんですけれども、まず、酒税が今度上がるんじゃないかということのにおいがしだしたというのか、お気づきになったのはいつごろでしょうか、昨年の。
  38. 辻弥兵衛

    参考人辻弥兵衛君) 私どもとしては、酒税の増徴というのは、率直に申しまして、今回このような形で行われるということは余り考えていなかったわけでして、酒税というものの増徴によって、財政的ないわゆる所得税の減税の見返りが行われるというふうには私ども最初考えておりませんでした。
  39. 青木茂

    ○青木茂君 ありがとうございました。  ビール業界、いかがでしょうか。
  40. 都島惟男

    参考人都島惟男君) 常におびえていると言うとちょっとオーバーになりますが、五十六年に増税がございまして、その翌年、連年ということはないわけでございますので、八年ということになってまいりまして、特に一つのきっかけになったのは、何月でしたかよく記憶しておりませんが、所得減税に関します国会与野党合意というのがたしかできました。その一年前には、たしか減税問題に関する特別小委員会というのが国会の中にできたりしまして、所得減税というのが日程に上ってくるのにつれて、もしかするとねらわれるんではないかという感じが出てまいりまして、だんだんそれが濃くなってきたというのが実態でございます。
  41. 青木茂

    ○青木茂君 それを踏まえまして清水先生にお伺いをしたいんですけれども、政治というやつは密室ではいけないんで、先般、私、予算委員会で、増税なきということをおっしゃっているんだから、大きな増税をやるときは直接的に民意を問うていただきたいということを大蔵大臣お願いをしたんですけれども、どうも御回答ははっきりしなかったという、そういうようなことを踏まえてお願いを申し上げますけれども、もう時間ございませんから、一括して御質問申し上げます。  第一点は、昨年の十二月の初旬の時点で我々は非常に減税を喜びましたね。喜びましたけれども、その裏に物品税中心とする増税があったということを庶民の代表である主婦連合会はお考えになっていたかどうか。特にその間に選挙があったものですから、特にお伺いをしたいということでございます。これが第一点。  それから第二点は、こういう言葉があるかどうか知りませんけれども、永田町ディクショナリーですね。減税の方は減税である、増税の方は、あれは増税じゃなくて増収であると、そういう用語が果たして庶民の中でわかってもらっているかどうか。あるいは増税なき財政再建は堅持するけれども、でこぼこ調整ならやむを得ないんだというようなことも、有権者が理解して投票行動をしたかどうかというような問題、これが第二点でございます。  それから第三点は、総理は先般、中曽根内閣が続く限り大型間接税の導入はしないというふうに言明をなさいました。それに対して国民は、これからはいわゆる物品税拡大の、あるいは間接税拡大のもう心配はない、恐怖は消えてしまったというふうに安心してしまっておるかどうかということを率直に、これはもう国民感情としてお答えをいただければありがたいと思うわけでございます。
  42. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) 私ども増税なき財政再建というスローガンで選挙を始めましたときに、私たちはその言葉を信じて政党を選んでいったんじゃないかと思いますけれども、選挙が終わってみると、それは空約束だった、有権者はだまされたなという率直な感じはみんな持っていると思うんですね。今、酒造メーカーの、お酒の関係の方もおっしゃっておりましたけれども、だんだん具体化するにつれて、それはただの心配ではなくて事実だったということを私たちは今痛切に感じておりまして、先生が今おっしゃったように、最近の政府の言葉を聞いておりますと、増税ではなくて増収だと、それから税率じゃなくて税収だとか、もういろいろ言葉が、私たちには全くわからない言葉がひとり歩きしておりますけれども、その本質は、私は一般的な大衆課税によってこの財政赤字を切り抜けていこうということを政府が決断したんだろうというふうに思っております。そういう意味では私たちは選挙で非常にだまされたという率直な感じを持っておりますし、増税なき財政再建というのは本当にだれもがわかるような方法で、私たち庶民のわかる言葉で政策を選択していただかないと、中曽根総理がおわかりになるような言葉で庶民を押し切られては、これは困るというふうに思っております。  大変抽象的なお答えでございますけれども、本当に庶民は今どれが本物がうそかということを一つ一つの言葉の中で見抜こうとしておりますし、大蔵大臣も大型間接税は手段であって目的でないというふうにおっしゃっていらっしゃいますけれども、こういう言葉も私たち庶民には全くわからない言葉でございます。
  43. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々、長時間にわたりまして御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。  午前の調査はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時休憩      —————・—————    午後一時二分開会
  44. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  租税及び金融等に関する調査のうち、昭和五十九年度の税制改正に関する件を議題といたします。  午前に引き続き、参考人方々から御意見を聴取いたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。参考人方々から忌憚のない御意見を承りまして今後の審査の参考にいたしたいと存じます。  これより参考人方々から御意見をお述べ願うわけでございますが、議事の進行上、最初に参考人方々からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしく御協力をお願い申し上げます。  それでは、まず木下参考人からお願いいたします。木下参考人
  45. 木下和夫

    参考人(木下和夫君) 木下でございます。  昭和五十九年度の税制改正、特に直税三法について所見を述べよという御要請でございますので、税制調査会が本年一月に提出いたしました「昭和五十九年度の税制改正に関する答申」に沿いまして述べることにいたします。  最初に、「昭和五十九年度の税制改正に関する答申」で示しております基本的な考え方について申し上げます。  まず、昭和五十八年十一月の中期答申におきましては、中期的な視野から見た今後の財政運営及び税制のあり方につきまして、基本的な考え方を、以下申し上げるように述べているところでございます。  すなわち第一に、深刻な財政状況のもとで、財政本来の機能の障害、世代間の不公平、将来のインフレやクラウンディングアウト等への危惧が生じており、速やかに財政の健全化を図り、財政の対応力を回復しておく必要がある。  第二に、財政改革を進めるに当たっては、まず徹底した経費の節減合理化による歳出の抑制に努めるべきであって、その場合には単なる経費の節減の範囲を超えて、制度や施策の基本にまで立ち返った歳出構造の抜本的な見直しが要請される。  第三に、これと並行して、歳入面においても、社会経済情勢の変化に対応して、税制をより公平かつ適正なものとするよう見直しを行うことが、それ自体として必要であるばかりでなく、適切な税収を確保するためにも不可欠の条件となっている。  四番目に、税務執行体制の充実を図るとともに、より公平な執行を担保するための制度上の措置も含め、社会経済の実態に即した税制全体の見直しを行うことが要請されているということでございます。  昭和五十九年度につきましては、このような基本的考え方を踏まえまして、まず歳出面において行財政の守備範囲を見直すという見地から、制度・施策の基本にまで立ち返った抜本的な見直しを行い、一般歳出を前年度より減額する等厳しく抑制していくとともに、これと並行しまして、歳入面におきましても、税外収入の確保に努力する一方、税制については、財政状況をこれ以上悪化させないとの基本方針のもとでその改正を行うべきであるとしたところでございます。  具体的に申し上げますと、おおむね次のような改正を行うべきであるとしております。  まず第一に、所得税及び住民税の全般的な見直してあります。  中期答申におきましても、まず所得税制は、今後とも我が国税体系の基幹的地位を占めるべきものであり、それだけに国民の理解と信頼とによって裏づけられなければならず、負担の急激な増加やゆがみをもたらすことのないよう、社会経済情勢の変化に応じ、数年に一度は適宜見直しを行う必要があること。また、現に中堅所得者層を中心負担の累増感が高まっており、また一般的に多人数世帯における生活のゆとりが独身者等に比べて相対的に小さいと考えられること等が指摘されたところであります。したがって、昭和五十九年度において厳しい財政状況のもとでありますけれども、このような事情に配意して、税制全体の見直しの中で課税最低限の引き上げ、累進税率構造の改正等所得税制の全般的な見直しを行うのが適当であると判断したところでございます。  第二に、所得税制の全般的な見直しが行われるこの際、申告納税制度の定着と課税の公平の一層の推進を図るという観点から、納税環境の整備を図るべきだとしているのでございます。  これは給与所得者と事業所得者との間にあるある種のわだかまりの解消に役立つとともに、所得税制のみならず税制全体に対する国民の理解と信頼とをより強固なものとするのに役立つものと期待しておるわけでございます。  第三に、所得減税を行います場合、現在の財政事情をこれ以上悪化させないという見地から、これによる減収は、原則として他の税目による増収措置によって埋めることとせざるを得ず、しかも現在は税体系の抜本的見直しを行い得る情勢にはないと判断されますので、増収措置は基本的には現行税制の枠内にとどめざるを得ない。具体的には消費課税等について社会経済情勢の変化に対応した見直しを行うとともに、企業課税についてもある程度の負担水準引き上げを行うこととしております。  以上申し上げましたように、昭和五十九年度の税制改正におきましては、社会経済情勢の変化に対応して、個人所得課税、企業課税、消費課税等を含む現行税制全体の見直しを行うべきであるとしております。  ただ、現行税制の枠内での増収措置にはおのずから限界があり、今後の問題としては、中長期的な観点から着実に財政改革を進める上で歳出の抑制努力と並行いたしまして、歳入構造、特に税体系の抜本的な見直しを中心に幅広い角度から税制について検討を進めることが要請されておると考えるわけでございます。  それでは次に、昭和五十九年度改正に関する考え方のうち特に直接税に関する部分について、より具体的に申し上げます。  第一に所得税につきましては、中期答申の考え方に沿って人的控除の引き上げ、給与所得控除の拡充を行うとともに、累進税率構造を若干なだらかなものとすべしとしております。  第二に、納税者の実態に十分配意した記録及び記帳に基づく申告制度を確立し、課税の公平の一層の推進を図る見地から、記録保存制度、所得金額が一定額を超える者に対する簡易な記帳の義務、その年の事業所得等に係る収入金額が一定額を超える者に対する総収入金額報告書の提出の義務、資料収集制度の整備、過少申告加算税の二段階制等を導入すべきであるとしております。  法人税につきましては、所得税減税を行い、財政事情をこれ以上悪化させないという見地から、税体系において相当の比重を占める法人税について負担の見直しを行わざるを得ないこと、その場合、中期答申においても法人課税に若干の負担増加を求める余地が残されているという指摘があること、また法人税負担の若干の引き上げが設備投資や景気にそれほど悪影響を及ぼす懸念はないと考えられること等の理由から、法人税率の一・三%程度の引き上げを行うことはやむを得ない措置であると述べております。  最後に利子配当課税制度のあり方について言及しておきたいと思います。  利子配当課税制度のあり方は、多数の貯蓄者及び貯蓄取扱機関等に関連するほか、金融市場に大きな影響を与える問題でございますので、今後さらに時間をかけて検討を進めることが適当であると考えます。ただ、グリーンカード制度の凍結期間との関連から、できれば本年の夏ごろまでに結論を得られるよう税制調査会としても審議を進めてまいりたいと考えております。  この点に関して、とりあえず総合課税の税率との関連において分離選択税率引き上げを行ってはどうかとする考え方がございます。しかし、非課税貯蓄の問題、特にその限度管理の問題について具体的な対応策が得られないままに分離選択税率のみの手直しを行うことは必ずしも適当ではないと考えております。利子配当課税のあり方を考えますに当たりましては、非課税貯蓄についてその見直し、合理化を行うことが重要な課題であり、郵便貯金を含む金融資産相互間の制度面、取り扱い面での均衡を図りつつ、早急に具体的方策を得ることが必要であると考えております。  以上でございます。
  46. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) どうもありがとうございました。  次に、武田参考人お願いいたします。
  47. 武田亨

    参考人(武田亨君) 武田でございます。  昭和五十九年度の税制改正のうち、ただいまと同じように直接税三法について意見を申し上げます。特に税理士としての立場から、納税環境の整備を中心に申し上げたいと思っております。  昭和五十九年度の改正中心点は、所得税、住民税の抜本的な改正にあると拝見いたしますが、その場合に単に負担軽減するということだけではなくて、税負担の実質的な公平を一層確保して、所得税、住民税という税の根幹である税金に対して国民の信頼感を高めるという点が重要だと考えるわけでございます。そういう点から見まして、今回の改正における申告税制の定着を目標にした記録及び記帳に基づく申告制度の導入と資料収集制度の整備等が図られたということは、何よりも喜ばしいことと評価しております。  まず、記録及び記帳に基づく申告制度の導入でございますが、税金というのは本来国及び地方公共団体の公共的支出を支える財政収入の根幹であって、納税義務は憲法上の国民の義務ともされている。民主主義のもとでは国家は国民みずからの責任で自発的に支えるべきものであり、その意味で納税に関しては国民の協力が不可欠でございます。この理念を明確にしたものが申告納税制度であると言えようかと思います。  こういうふうに考えてまいりますと、申告納税制度とは、納税者が自分自身で税額を確定する、そうして自主的に納めるということが原則でございます。この税額を確定するというのは恣意に基づいたものではなく、税法に基づいて税額を確定するという意味でございます。そうすると、その過程において納税者がみずからその課税標準を計算しなければならない、税額を算出しなきゃならない。そうすると、具体的には納税者がその税額を算定するのに必要な資料を持って、これを計算整理して適正な申告をするということが根幹であろうかと思います。  そういたしますと、その記録を持ち適正な計算をするというのは、申告納税というものの当然の前提であって、申告納税制度下にある限りこれは納税者の責務と言えるものではなかろうか。そうして同時に、自分の行った経済取引の内容とか、課税標準がどうあるかということは納税者本人が一番よく知っておられる。この実態からしまして、我々が日常の業務から知り得る限り、納税者がこういう資料を全く持っていないということはまずないというふうに考えております。したがって、納税者が自分の持っておる資料に基づいて申告することが現実的なものであり、適切である。今回の改正というものは、この申告納税制度に内在する責務というものを明文化したという点で極めて意義があり、当然のことであろうと考えております。むしろ遅きに過ぎたという感じさえ持っておる次第でございます。  それから今度は、記録の保存、記帳の整理と一体となって適正な納税義務の実現に役に立つものが資料収集制度である、そういうふうに私は考えております。仮に記帳いたしましても、その記帳が正確であるかどうかということについてチェックというものが必要である。会計のあるところ監査ありというのは現代の常識でございますが、この監査をどうするかという問題でございます。  そのために当面まず考えられるのは税務調査の充実であろう。この税務調査というのも税務署が行う調査のほかにもいろいろな方法が考えられようかと思いますが、現実的な問題としては、税務執行人員の増員ということなくしては記帳内容のチェックということは適正には行われ得ない。その点実務の実際の経験から申し上げますと、納税者人員に比べて税務執行に当たる人員の余りにも過少であることを感じます。しかし現実には、これの増員というものは思うに任せるわけではございませんので、最も有効な手段が税務資料の活用であろうか。これによって不足がちな人員の能力を補てんし、有効なチェックが行われ得るというふうに考えております。  これは会計監査においても、外部証拠というものは極めて重要なものというふうに考えておることと軌を一にするわけでございます。言いかえますと、資料収集制度というものが十分でありませんと、せっかくの記帳制度も本来の意味において十分な効果を発揮することはあり得ないとまで考えております。今回の改正案では、この資料収集制度についても一定の収入金額を超える事業所得者等に対しましては、総収入金額報告書を求める、官公庁に対して簿書の閲覧、資料の提供等協力を求めることができることとされたことは、一つの進歩であるというふうに評価しております。  しかしながら、今回の改正案で、一般的な資料収集の目的のために民間関係者に協力を求めることができるということが、実は昨年十一月の税調答申にもたしかあったと思うのでございますが、それが見送られた。それから官公庁からの資料収集についても、もう一歩踏み込んだ協力義務という格好にはお願いできなかったという点が若干疑問でございます。今後これらの制度の改善につきましても、十分検討していっていただきたいと要望する次第でございます。  参考のために申し上げますと、アメリカの金融機関等では、一定額以上の現金取引に関しては報告義務があると聞いております。フランスにおいても、銀行口座の開設等についてはやはり報告義務があると聞いております。さらには、フランスは、官公庁及び官公庁により許可されまたはその監督に服する公企業が税務当局から情報を求められた場合には、所掌する事務に関する資料について、守秘義務をもって対抗することはできないとあるとも聞いております。一概にこれを我が国に直ちにと申し上げるわけではございませんが、これも十分御考慮のうちに入れていただきたいものと考えております。特に税務資料という意味におきましては、官公庁資料は民間の資料の何分の一かの労力で何倍かの効果のあるものでありまして、要するに、税の負担公平実現のためには極めて重要なものであるという点に目を向けていただきたいものと考えるわけでございます。  それから、今申し上げましたほかに、今回の改正では、過少申告加算税の二段階制の導入とか、証拠申し出に関する規定の整備が行われておりますが、これらは全体として考えまして適切な改正であると考えております。  この中で、証拠申し出に関する規定の整備というのは、現行の国税通則法百十六条の規定が十分活用されてはいないという状況にかんがみまして、課税処分の取り消し訴訟に限定して、納税者に有利な証拠の提出の促進を図るということを目的としたものと受けとめております。実際、実務の感覚から推しましても、適切な改正であるというふうに考えております。  なお、この制度の運用は、引き続き、最終的には裁判官の判断にゆだねるということになっておりますから、今までの百十六条に比べて納税者の地位を危うくするということはないというふうに理解しております。  それから今回の納税環境の整備が一歩となりまして、今後とも税負担の公平確保、これは税制にとって極めて重要かつ永遠の課題ではございますが、進むように期待しております。それが、その結果として現在巷間にいろいろ言われております、クロヨンとか何とかいう卑俗な表現で言われております、給与所得者と事業所得者との間にあります、何といいますか、不協和音というものを解消する非常に役に立つものと、こういうふうに考えております。その結果、いわゆる納税道義というものの高場に資するんではないかという点に期待をかけているわけでございます。  あと若干細かい点を申し上げますと、現在の所得税制では各種の人的控除がございます。これが非常に規定がややこしくて、我々商売人でございましても、簡単にすぐあなたの人的控除の合計は幾らになるかということを出せない。特に今度は、医療費控除等の特殊な所得控除、これは具体的な適用基準というものに関しましてなかなか難しい。そのために税務署と納税者との間に解釈の相違等で紛争も起こりやすい等がございまして、本来申告納税制度というものはだれでもわかるというシステムが望ましい、そしてだれでもできるということが望ましいという点から考えまして、今後こういう各種の控除制度の簡明化に向けて一歩を進めていただきたいものというふうに考えております。  それから最後に、今回の税制改正におきましても、今まで我が国の特色でありました直接税偏重という傾向是正はされませんで、かえって甚だしくなったように感じております。今後ぜひこの直間比率是正といいますか、間接税というものに目を向けられて直間比率是正是正というと語弊がありますが、直接税と間接税の適切な組み合わせという方向に進めていただきたいものと考えておるわけでございます。  以上で終わらしていただきます。
  48. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ありがとうございました。  次に、樋口参考人お願いいたします。
  49. 樋口俊二

    参考人(樋口俊二君) 日弁連の樋口でございます。  私どもは、国民の基本的な人権を擁護するという立場から、今回の税制の改正を検討いたしましたが、その結果、二点について重大な問題があるという結論に到達しております。  その第一点は、所得税法等の一部を改正する法律案第三条による国税通則法百十六条の改正案でございます。  この改正案は、訴訟におきましては、課税庁が一応の課税の経過を述べますけれども、原告、つまり不当な課税処分を受けたという者が、まず、必要経費または損金の額の存在、その他これに類する自己に有利な事実について、課税処分の基礎とされた事実と異なることを主張しようとするときは、直ちに具体的な主張をし、そして証拠の申し出をしなさい。もしこれを怠った場合には、民事訴訟法の適用上、時機におくれた攻撃防御の方法とみなす、却下するという規定でございます。  現行法は、この処分取り消し訴訟におきまして、課税庁側の主張が合理的であるかどうかということをまず裁判官が判断をいたします。そして合理的であると認めた場合に、反対事実の主張、証拠の申し出をすればよろしい。そして時機におくれた攻撃防御方法であるかどうかという問題につきましては、民事訴訟法の原則に従って裁判官が判断をする、こういうことでございます。  民事訴訟法百二十九条には、この時機におくれた攻撃防御方法を却下するという規定がございますが、これには要件がございまして、当事者が故意または重大な過失によって時機におくれて攻撃防御方法を提出する。故意または重大な過失、それからこのために訴訟の完結を遅延せしめるという判断がされる場合、これを遅延させるかどうかということを裁判所が認定をする。そしてこの場合でも、却下の決定をしなければならないものではなくて、却下をするかどうかも裁判官の判断に任せる、こういうふうになっております。  したがって、裁判官の自由心証によって具体的な妥当性を裁判所で考えながら訴訟を進行する、これが民事訴訟法の原則。ところが、今回の改正によりますと、第一回目は課税庁側が課税の根拠を述べます。そういたしますと、第二回目に原告側はすべての主張、立証をしないとその後のものは全部だめだ、こういうことになるわけです。ところが、課税庁側の主張も推計課税というようなことが行われておりまして、具体的な事実の根拠でされる場合は少ないのでございます。推計というのは、例えば青色申告の同業者のデータをもとにして幾つか集めて、そして原告の事業所は例えば仕入れが三百万円であった、それでは売り上げが五百万円になるはずだというような課税の方法でございます。ところが、その推計のデータそのものについては、課税庁は職務上の秘密ということで一切明らかにいたしません。したがって、これを反論するということはむしろ不可能というような実態でございます。  現在、増額更正決定が年間十五、六万件出ているのではないかというふうに考えられますが、その中で、二、三万件の方たちが異議の申し立てなどをしておるようでございます。現実に訴訟になりますのはどのくらいかといいますと、二百件ないし三百件という非常に数が少ない、それほど税務訴訟というものは起こすこと自体が難しい。何となれば、そういうことをいたしますと、処分庁の方で徹底的に関係方面を調査する、そういうこと自体がもはや零細業者にとっては非常な信用の失墜になるというようなことがあります。  そういうよくよくの訴訟事件について裁判官の手足を縛って、そして迅速解決を図るということは、裁判所における不当な課税処分の救済を事実上不可能にする。しかも、この訴訟というのは、本来当事者対等主義というのがなければならない。こういうふうに却下をする規定というのを一方的に国民の側だけに認めるというようなことは、これは到底黙認、黙視しがたいところであるというのが第一点です。  第二点といたしましては、この記帳義務、所得税法改正案二百三十一条の二、それから同種の問題が法人税法改正案の百五十条の二という両方にございます。この点につきましては、立法の専門家の反対もございます。要するに、実効性のない、期待しがたいこういうことを法律で仮につくったとしても守られない法律ではないかということ。  それから記帳義務を課するならば、それを尊重して実額課税をするということであるなら話はわかります。記帳義務を履行するためにはそれ相当の経費を要します。零細企業にとって専門家に頼んでこういう帳簿を整えるということ自体もはや期待できない、そういうことであります。  さらに簡易の記帳をさせたといたしましても、例えば所得税法三十六、七条あるいは法人税法二十二条に債権発生主義というような原則がございます。現金が入らなくても債権が確定したならば収入とみなすというそういう主義がございます。これとは全く関係のないようなものにしかすぎない。そういたしますと、税務当局としては単に推計課税の資料にするというだけのものになってまいります。記帳の習慣あるいは能力あるいは意欲を持たない多数の小規模事業者あるいは非営利法人などについて、こういう義務を課するということは、立法政策としても妥当ではないし、推計課税によってますます国民が窮地に追い込まれる材料になるにすぎないということで、この問題についても反対であるということを決定をいたしております。
  50. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) どうもありがとうございました。  以上で参考人意見の陳述は終了いたしました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  51. 鈴木和美

    鈴木和美君 本日はお忙しいところ、わざわざ私たちのためにおいでをいただきました参考人の皆さんに敬意を表しておきたいと存じます。  まず最初に私は木下先生にお尋ね申し上げます。今もお話の中に出てまいりましたが、今回の所得税減税は直接税の減税と間接税増税というような形で提案されておるわけでございますが、これから減税をするというような将来の展望を考えたときには、税調としては、もうこの方法しかないと、こういうふうに考えられましょうか。また近いうちに別な方法がとり得るようなそういう作業が進行するとお考えでしょうか。同時に私は、所得税の減税をするということであれば、今もお話が出ましたが、配当所得課税の強化とか不公平税制是正とか、そういうものを先にやってから間接税増税というのであれば、まだ国民が納得すると思うんです。そういう面では、政府税調も、なかなかそこのところは、つまり踏み込めないでおるような状況だと私は見ているんですが、どんな感想をお持ちでしょうか。  同時にもう一つ、これに関連して聞きたいことは、利子配当の所得総合課税ということを考えたとき、グリーンカードがいつも問題になってきています。今お話では、ことしの夏までに何かこれからの対案というものを考えたいというようなお話だったんですが、このグリーンカードについては税調はむしろ積極的にやれと、こういう態度をおとりになっておったのが、自民党さんのいろんな状況の中でこれはおくれちゃったということなんですが、税調としてもう一度、このグリーンカードに対するお気持ちというか、感想というか、それを聞かしていただきたいと思うんです。
  52. 木下和夫

    参考人(木下和夫君) 鈴木先生の御質問の第一点は、今後の増税方向あるいは減税の方向を五十九年度の増減税措置をベースにしてどのように考えるかということであろうと思いますが、五十九年度の増減税のセットといいますものは、一方において歳出節減に徹底した努力をしていただいて、しかもなお所得税において相当規模の減税をやるということになりますれば、残る方法といたしましては、特例公債の増発というような方法がまず第一に考えられるかと思います。しかし、現在の財政状況から見まして、特例債の増発によって減税を行うという道をとることは、政府もそのような態度、行動については拒否的な意向を示されておりますし、私ども審議の中身におきましても、借金をふやして減税をするというようなことはまことに望ましくないし、国会での御議論も踏まえまして、それにかわる何らかの方法を探さなければならない。そこで、言葉は憩うございますけれども、思い余った末が、法人税の増率と物品税の課税範囲の拡大というようなことで、何とかして減税の穴を埋めるということに苦しい努力をしたわけでございます。  この五十九年度の改正案を踏まえて今後どうするかということについては、全く審議をしておるわけではございませんし、恐らく昨年の十一月に総理に答申をいたしましたいわゆる中期答申という線に沿いましてまた論議をし直すということになりましょうが、その中で、御指摘の直接税及び間接税の比率の問題、言いかえれば直接税の比重をどんどん減らしていって、その分を間接税で埋めていく、あるいは増収が出るような間接税を仕組むというようなことを考えておるか、ずばり言えばそういう御質問だと思いますが、その点につきましては、全くただいまのところは白紙でございまして、考え得る限りの消費税のあり方というものは、私どもは資料としては持っておりますし、一部については十分勉強いたしましたけれども、明年度以後の税制改正においてこれを積極的に取り上げる、あるいはこういう方向ではなしに別の方法を考えるというようなことについて固まった議論というものは全くございません。  私どもとしては、心の底から願いたいと思いますのは、歳出をもっと切ってほしいということでございます。ただ、歳出を大幅に削って、そして減税に向かうということになれば、他方におきまして、それは景気浮揚に逆行するという御批判もございますので、非常に難しい局面に立たされておるというのが私どもの実感でございます。  その後段でお触れになりました利子配当課税制度のあり方についての議論の中で、グリーンカード制度というものをどう考えるかということがございましたが、実は、グリーンカード制度は、私ども税制調査会が相当の年限を使いまして検討しました上、総合課税を徹底さすためにはこれ以外にないということを自信を持って答申したわけでございまして、その当時の気持ちから言えば、一歩も退かないという気持ちで答申をしたわけでございますが、これが御指摘のようなことになりましたので、現在はそうではございませんけれども、その当時凍結されるというニュースが伝わりましたときは、一種の虚脱状態と申しますか、どうしたらいいかわからないということでございました。これが率直な感じでございます。  その後、凍結期間の制約がございますので、ことしの夏までに何とか結論を出すようにしてほしいという御要望を承っておることは事実でございますが、果たして今後夏までにどのような具体的な方策を講ずることが望ましいのか、短期間でございますが、全く見当はつきません。いろいろな細かい条件の問題、例えば個人の貯蓄の態様というものが非常に変わりつつありますし、それから金融取引が御承知のように目まぐるしく変化しております状況、しかも預金の口座の口などは郵便貯金を入れますともう大変な膨大な口数になっておる。こういうふうなものを背後におきまして、どのようにしたら公平な課税ができるかということについて鋭意努力して検討いたしますけれども、現在の時点でどのような方向に進むかということは、全く申し上げる能力もございませんし、事実もございませんので、お許しを願いたいと思います。
  53. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一つお尋ねしますが、今お話しのように、いい悪いは別といたしまして、この財政の大変厳しい状況の中で財政再建を図るということであれば、私は今木下先生のせっかくのお話ですが、歳出のカットというのはもう限度にきているように思うんです。したがいまして、いろんな意味で、財政再建を考えるときにもう少し、政府自民党というか、政権の座についている与党としてはもっとはっきりすべきだと思うんです。そのときに中曽根総理が、課税ベースの広い間接税は導入しないとか、大型間接税は導入しないと言いながら、今度は片っ方、大蔵大臣は中小の消費税というような言葉を使われておりまして、国民の側から見ると全くわからないんですね、増税なき財政再建という耳ざわりのいいものがありながら。そういうことから見ると、私は、政府税調は毅然たる態度をとりながら、この中曽根さんの言うことを真に受ければ、税調はどうしようもないんじゃないでしょうか。そういうふうに私は思うんですが、税調の考え方もお尋ねいたしたいと思います。  同時に私は、昨年の実績を見てみますと、政府税調はグリーンカードの場合でもそうですし、一般消費税問題もそうですし、自民党の税調の税制改正方針が出た後に五十九年度の税制の改正政府税調から出ているわけですね。非常に権威が私はないと思うんですね。そんなら何も政府から頼まれなくたっていいぐらいの気持ちだと思うんです。そういうことから考えれば、もう少し独自性を発揮する意味では、十二月とか十一月とか、そういうところに発表するぐらいの気構えを持ってほしいと思うんです。  あとは最後ですが、直間比率の問題なんですが、私は、今度確かに課税最低限が引き上がりましてみんな減税が及んだように見えるんですけれども、一方課税所得ベースで見ますと、百万円とか、二百万円とか、五百万円の課税所得の人は全部増税なんですね、これ。だから、非常におかしいんですね。課税最低限を上げて非常に格好はよく見せますけれども、実際の課税所得を見ますと増税になっていますね。そして上の方が、つまり非常に高い方が下がっているわけですよ。グリーンカードのときは、グリーンカードでいろいろ資産の捕捉が行われるから、上の方は高くなるからしようがないんじゃないかという話だったんですね。グリーンカードはそっちのけにしちゃって、今度高い方だけは下げるというようなことでは非常に理屈が合わないと思うんですが、先生の見解をお願いしたいと思うんです。
  54. 木下和夫

    参考人(木下和夫君) 御質問の論点は三つあると思いますが、第一の御論点は、総理の発言と大蔵大臣の発言の問題でございますけれども、これはこの国会で御発言になりまして、私どもはこの国会の開会中は税制調査会は休んでおりまして、皆さんかどういう反応を示されるのか、これはまたそのうちに会合がありまして、そこで御論議があるかと思います。  この問題につきまして税調がどういう反応を示すかということについては、私は全く今日の段階でお答えできないわけでございますが、ただ大型とか中型というふうな言葉も私どもにはよくわからないわけでございまして、中型と小型というに至りましてはもう全くわからないのですが、まあ恐らく多段階の課税というものは自分はやりたくないというのが総理の御意向で、それで多段階をやりたくなければ単段階の、一つの段階の課税、例えば製造段階、卸売段階、小売段階と、こう三つございますが、それのうちで何か工夫の余地はないかというような意味を込めた発言が大蔵大臣の発言ではなかろうか。これは手前みそでございますけれども、あるいは好意的過ぎるかもしれませんけれども、そういうふうな解釈をしておるわけでございます。これは私個人の解釈でございます。しかし、さて税調の席上になりましてどのような方向へ進行いたしますか、これは全く見当はつきません。  それからもう一つは、二番目の問題は、直間比率が第三番目でございましたが、第二番目は、まことに恐縮でございますが……
  55. 鈴木和美

    鈴木和美君 税調の権威がないじゃないかと。
  56. 木下和夫

    参考人(木下和夫君) これはもう古くから言われた話でございまして、私も税制調査会に関係して長いんでございますが、この話は始終聞かされておりますが、一々どちらが早いかというようなことで権威の問題まで議論をするのは少し大げさで、私どもはまあそれで一々おくれたから権威がなくなるというようなことは考えておりません。それで、私どもが幾ら理屈をこね回していいと思う案を出しましても、政治的にそれが好ましくなければ、政治の方でチェックが加わるとなれば、これはあきらめなければ仕方がないということで、要するに問題は、総理大臣の諮問機関でございますから、総理に対してお答えを申し上げる。その中で総理がどれをおとりになるか、全部を採用していただければ非常に私どももやりがいがありますし、論議も熱が込もりますけれども、そのうちちょっぴりしか実現されないとすると、ある種の、何と申しますか、挫折感のようなものがないというのは、これはうそでございましょう。したがって、権威の問題その他を別にいたしまして、私ども意見が採用されたとすれば非常にうれしいが、しかしそういう気持ちが次第に薄らぐ、もし自民党の税調で拒否されてしまいますればね。しかし、現在のところ、まあ八割ぐらいは五十九年度の税制改正におきましても実施されておるようでございますので、そこまで荒立てて目くじら立てる問題でもないんではないだろうかという感じもいたしております。  ただ、将来の税調のあり方というふうなことになりますとこれは非常に難しゅうございますので、三年に一回中期答申を出せばそれでいいじゃないかという議論もありますし、いや、年度答申も何らかの形で、御指摘のように十月とか十一月のタイミングで出すということの方がいいというような御意見は、実は税調内部にもございまして、この点は今後の問題として考慮しなければならないと思います。  それから最後の直間比率でございますが、もともと直接税と間接税という概念の区分は便宜上の区分でございまして、中には、所得税も純粋に直接税とは言えない、言いかえれば転嫁があるかどうかで直間を、直接税、間接税を分けるといたしますれば、例えば所得税も、所得税が上がった場合に、それが給与の引き上げにいくとかその他転嫁することがあり得るわけでございます。したがって、転嫁の有無で直接税、間接税を分けるというやり方も、これは必ずしも一般的に通る話ではないので、ただ所得税、法人税、相続税というようなものを直接税と言い、消費税とか流通税とかその他全部含めてこれを間接税と言うという約束で議論をしておりますので、もともと精密な議論ではございませんから、その比率について正面から政策目標にするというだけの値打ちがあるものかどうかも疑問がございます。  それから例えば五〇、五〇というようなことが望ましいという意見が一部にございますけれども、なぜ五〇、五〇でなくちゃいけないのか、六〇、四〇ではなぜいけないか、逆に四〇、六〇ではなぜいけないかということになると、なかなかこれをうまく説明してくださることもいままでないわけでございまして、仮にそういうめどを決めましても、現実に税を執行いたしまして、結果としてその比率にぴちっと一致するという保障もございません。したがいまして、これは一種のめどというふうに御理解賜りたいと思うわけでございますが、その場合でも、現在の約七と三という比率を、いわゆる間接税の方の比重を少し高めた方がいいんではないかという御意見のあることは事実でございます。  ただ、いつも申しておりますけれども、私は間接税より直接税の方が好き——好きと申しますか、こちらの方がいいと思うわけでございまして、できるだけ直接税が、特に所得税が日本の社会でうまく定着して、巷間いわゆるクロヨンとかなんとかというようなことが起こらないように努力をする、そして所得税をきちんとするということの方が先決であろう。その意味では私は直接税の方に肩を持つわけでございますが、それもどうも我が国ではうまくいかないということであれば、間接税的なものをこれから考慮していかざるを得ないんではないかという感じが個人的にはいたしております。  以上でございます。
  57. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 樋口先生にお伺いしますが、今人権を踏まえての反対の論議をお伺いしたんですが、実はきょう脱税にも供述拒否権ということで犯則法の方の判例が出ました。これを見ますと、今度の通則法の百十六条も何か裁判所の判断に属することを税法でもって抑え込んでしまう、こういう危険性が非常に多い、違憲の疑いもあるんじゃないかというふうに感じられるんですが、法律の御専門家としてここいら辺の見解をひとつ教えていただきたい。  それから民訴の百三十九条ですか、故意と重過失、今度のこの通則法ではこういう網がかからないわけですね。みなし規定ですから、みなされちゃって、そういう判断が前にもう決まってしまうという感じがいたします。ここいら辺ひとつ、どうも全体としてここまで縛ってしまって裁判の進行に重大な影響を及ぼすということになりますと、税務署ファッショと言っていいかどうか、大変なことになるんじゃないかという心配もございますんで、そこいら辺もう少し突っ込んで御説明いただきたい。
  58. 樋口俊二

    参考人(樋口俊二君) 違憲の疑いというお話でございますが、これ釈迦に説法でございますけれども、我々の民主主義は、個人の基本的人権を国政上、立法上最大限に尊重するということになっております。そして公権力によって個人の正当な権利が侵害されました場合には、裁判所がこれを救済するという三権分立の制度をとっておるわけでございます。そして先ほども申し上げましたように、裁判官に立法及び行政に対する批判の権限を与えまして、裁判官独立という原則のもとに、その自由な心証で具体的な正義がどこにあるかということを発見してもらうということになっております。  ところが、この法案によりますと、裁判官の自由な裁量の余地というものが非常に狭められてしまう、司法による国民の救済につきまして裁判所の手を縛るということであります。一般の民事訴訟あるいは行政訴訟でも、その効果の発生を主張する方が主張、立証責任をまず負うということになっております。  で、今回の改正によりますと、主張、立証でなくて、しかもそれは合理的でなくてもよろしいんだ、現在はともかく合理的な主張をまず税務署側がしなければならない、今度はそれをしなくていい、一応の根拠を述べたならば、原告側がそれに対する反論をすべて出せ、我々にはそのような所得はないということまで主張し、立証せよということになるわけです。ないということの主張、立証は、本来これはできないことなんです。ですから、民事訴訟法では、あるということを主張する方が立証せよ、ないということを言う者はこれはその責任はないということでございますけれども、今度はないということを含めてすべて原告、つまり不当な課税処分によって権利を侵害された人に責任を押しつけるということになりますので、憲法の精神にはやっぱり反している。行政、徴税の論理側からだけのこれは方策になっている、便宜を図る方策になっている、そのように考えるわけでございます。  それから故意、重過失の問題は、今回の改正案では、一番最後の方に「ただし、当該訴えを提起した者が、その責めに帰することができない理由によりその主張又は証拠の申出を遅滞なくすることができなかったことを証明したときは、この限りでない。」ということで、一応そこは顔を立ててはございます。しかしながら、大幅に裁判所の権限を奪っているということについては、全くこれは疑いのないところだと思います。
  59. 藤野賢二

    ○藤野賢二君 参考人方々におかれましては、本日まことに御苦労さまでございます。特に税制調査会におかれましては、常々御労苦に対して感謝申し上げ、また御見識に対して敬意を表するわけでございます。  木下先生にまず第一点といたしまして、五十九年度税制の具体的内容に入る前に、まずマクロとしての租税負担の問題についてお聞き申し上げたいと思います。そして次に、所得税減税について特に年金の問題についてお伺いしたいわけでございますが、あと時間が許せば順次法人税、そして武田先生に納税環境についてお伺い申し上げたいと思うわけでございます。  それではまず最初に租税負担の問題でございますが、税制調査会の五十五年の中期答申においては、特例公債の本格的償還が始まる昭和六十年度より前に歳出総額に占める国税収入の割合を八〇%程度に引き上げる、こういうふうに言っておられるわけでございますが、現状は昭和五十年代後半においても六五%に満たない数字であり、そしてことしの五十九年度予算においては六八・三%と、こういうふうになっているわけでございます。  まず第一点といたしまして、歳出総額に占める国税収入の割合についてはどの程度の数値が望ましいと考えておられるか、そしてまた八割という目標値に達しないことについて税制調査会としてはどう受けとめておられるのか、これが第一点でございます。  第二点といたしまして、これからさらに高齢化社会に対応して年金、医療、こういったものが財政需要に応じていくためにはある程度租税負担率が高まらざるを得ない、こういう状況でございますが、しかし他方、財政の肥大化を防止して国民の活力を維持する、この租税負担率には一定の限界がなければならないと思うわけでございまして、いつも大きな問題になっているわけでございます。そこで、我が国の場合、長期的なターゲットとしては租税負担率限界をどの程度に見ておられるか、これはお答えにくいと思いますが、数字でずばりとお答えいただければ大変ありがたいわけでございます。  第三にお聞きしますが、所得税減税の問題でございますが、今回個人年金の掛け率について特別の控除が導入された、こういうことになったわけでございますが、今我が国の非常に大きな問題、これは急速な高齢化社会、そして老大国になっている、こういうことはもう国民的な課題となっているわけでございます。例えば厚生年金においては、七〇年代は赤字で八〇年代にはもう積立金もなくなるんだと、こういうふうに言われているわけでございまして、政府税調におかれましては、今後公的老齢年金の給付の水準に大きな変化が生じる場合には個人年金税制優遇措置とその創設を改めて検討することが適当である、こういうふうに御指摘になっているわけでございます。  しかし、ここで非常に大きな問題は、ひずみが生じたときと、こういうふうに言っておられるわけでございますが、この年金というものは大体生じたときにはもはや末期的症状と、こういうことであるわけでございまして、今すぐにでも手を打っていかなければならない、こういう性格のものであると思います。特に問題となりますのが、国民の意識の中に、これは某機関のことし初めの意識調査では、老後不安がもう半分以上、五四%老後に不安である、こういうふうに言っているわけでございまして、特に私がここで申し上げたいのは、その中でも三十代、四十代、特にこれからの日本を支えていくこういった層に老後が非常に不安である、特に公的年金はもう受け取れないんじゃないか、こういう不安と不満が充満しているわけでございまして、これは大変な大きな問題である、何としても対処していかなきゃいけない問題だと、こういうふうに思うわけでございます。  しかし一方において、今ここで御質問申し上げましたが、国民の負担率がどんどん上がっていけば、これは国の活力が衰えているわけでございまして、現在三五%という数字は世界的にも大変いい数字であるわけでございまして、そういう意味ではこういう活力も落とさずになおかつこういうものにこたえていく、言うなれば、自分で働いて自分で残していくんだと、こういう自助努力をやっていかなきゃいかぬ。こういうことになってまいるわけでございまして、そういう意味で、税制上においてもこのような自助努力の奨励を考えることは一つの重要な研究課題であると思うわけでございまして、この点について税制調査会としてはどういうふうにお考えになっているか、この三点について先にお伺いしたいと思います。
  60. 木下和夫

    参考人(木下和夫君) 第一の問題につきましては、御指摘のとおり、昭和五十五年の中期答申におきまして、歳出総額に占める国税収入の割合を八割までもっていこうという目標値を掲げました。うまくいかなかったことは御指摘のとおりでございます。これは恐らくその後の財政状況が、世界経済停滞の客観的な経済変化によりまして不況が長期化いたしまして、我が国の経済成長率が低下する、税収入の伸びも急速に鈍化するというような悪条件が重なりましたために、この割合が実現されずに、五十九年度でも御指摘のように六八%程度にとどまっております。  ちなみに、私どもが八〇%という目標を立てましたときに、これは我が国の財政特有の問題もさることながら、諸外国におきまして大体七〇%、八〇%というのが普通でございまして、八〇%を超えておるところもかなりあるわけでございますから、せめて八〇%という気持ちで目標値を設定いたしましたわけでございます。  今日においてこれをどのような具体的な数字を頭に置いて税制改正に取り組むかという御質問でございますが、この問題について税制調査会でその後審議をしたことはございません。したがいまして、私個人のいわば希望と申しますか、感想だけを申し上げてお答えする以外に方法はないわけでございますが、私は依然としてやはり八割を目標にするというのがしかるべきであろうと思います。と申しますのは、残りの二割というのは、依然として公債その他の借入金に頼らざるを得ないという状況を考慮しつつ、しかし主として基本は税収によって歳出は賄うんだという考え方が通りますので、八〇%というのは依然として妥当な数字であろうと思います。  それから第二番目の個人年金の問題でございますが、これは御指摘のように、公的年金改正が近々行われようとしつつあることを承知しておりますし、それから今後の公的年金に関する社会保険料負担というのが増高することも目に見えております。給付をなるべく落とさずに年金の手術をしていくためには、やはり負担をしていただかなければならぬ。社会保険方式によります以上は、これは当然のことだと思いますが、社会保障関係ではその他医療の問題も大きな問題がございます。いずれもこれは個人の社会保険負担並びに雇い主の負担というものをあわせて考慮しなければなりません。これらを何とかして問題を解決するために個人年金にウエートをかけるというのは、よく使われます自助努力ということから主張されておりますが、これについても何ら異存はございません。  今回政府から提出されております法律案におきましては、老後生活の安定のための今申しました自助努力を奨励し、老後生活に対する相互扶助の推進と社会的連帯意識を助成するという見地から、年金保険料の年五千円の別枠の所得控除を認めるということを含むところの法律案が提出されておるように承っております。ただ、税制調査会といたしましては、このような提案は、五十九年度税制改正に関する提案の中に入れておりませんでした。その理由でございますが、私どもは、こういう個人年金保険の積み立て段階、保険料の支払い段階での税制上の措置を講ずることについては、受け取り段階も含むところの年金課税のあり方に関する審議の一環として相当の時間をかけて審議をいたしました。さまざまな意見がございました。さしあたって、我が国の公的老齢年金制度自体が昭和五十九年度において抜本的に改正されるという時期を控えておりましたので、一種の政策税制でございますから、今後の政策税制のあり方として十分検討に値するということは認めておりました。ただ、そういう制度を税の方で、まだ年金制度の改革が具体化する前に、先行的に実施するということについては、私どもは基本的に慎重な態度をとろうということになったわけでございます。  今後老齢化の進行のテンポが非常に激しいわけでございますから、税制上の措置につきましては、私ども税制調査会において公的年金制度の改正が行われました後において、十分に総合的な見地から熱心に検討を進めてまいりたいと考えております。
  61. 藤野賢二

    ○藤野賢二君 ちょっと今の質問で、国民所得に対する租税負担率はどの辺が限界が、ずばりこの数字はいかがでございましょうか。
  62. 木下和夫

    参考人(木下和夫君) 国民所得に対する租税負担率という概念を使うことが非常に最近流行しておりまして、第二次臨時行政調査会におきましても、ヨーロッパ水準が五〇%と仮に仮定をいたしますれば、それを超えない程度ということで、超えない程度がどのぐらいかということになると、例えば四五%程度だというような話は出ておりますが、これは租税負担及び社会保障負担と合わせた数字でございます。  もともとこういう国民所得をベースにして率を出すということには若干の疑問がございまして、約十年ほど前に税制調査会でこの問題について相当慎重に審議をしたことがございますが、国民所得と申します場合、この場合は国民所得計算上における分配国民所得でございまして、間接税が入っておりません。それからもう一つ、目的税と言われる税がいろいろございますが、道路関連の目的税あるいは石油関連の目的税等がございますが、こういうものを税の中に入れる方がいいのか入れない方がいいのかという問題もございます。それから仮に国民所得べースにして租税負担率を考えるといたしましても、固定的に考えるのは妥当ではあるまい。中長期的に考えました場合には、国民の実質所得水準が高まるにつれまして、政府が公的なサービスとして行います領域も広がりますでしょうし、個人の負担能力も高まってまいりますでしょうから、長い間一定の率に固めておくということがよいか悪いかということも、これは検討に値する問題でございまして、国民所得をべースにする負担率を中心にして議論を進めるということは、税制上必ずしも正しい議論だとは思いません。  以上で終わります。
  63. 藤野賢二

    ○藤野賢二君 法人税は時間がございませんので、武田先生に納税環境の整備につきまして、申告納税制度が定着して正しい申告が行われることは、長い目で見て申告者にもいいことだと思うわけでございますが、また先ほど先生おっしゃられましたように、給与所得者との無用の摩擦感もなくす、その意味においては記帳義務の法制化ということは十分肯定できるものであると思うわけでございますが、他方、我が国の申告納税者の実態を考えますと、このような記帳義務等の法制化に直ちに対応できる素地があるのか、こういう問題がいろいろと聞かれているわけでございます。そこで武田先生に、長年の実務の経験に照らして、今回の納税環境整備が十分に機能していくのかどうか、また機能させるためにはどのような点に留意していく必要があるか、時間がございませんので本当に簡単で申しわけございませんが、お答えいただきたいと思います。
  64. 武田亨

    参考人(武田亨君) まず最初の機能していく素地があるかどうかという問題でございますが、今回の案ですと、記録の保存、記帳義務が要求されておりますのは三百万円以上、それ以外は記録の保存でございます。そういたしますと、これは非常に貧しい私の経験でございますが、商売をしていく以上何らかの記録のないという方にはお目にかかったことがない。あとはそれを保存するかしないか、保存する意思があれば保存する、保存したくなければ破って捨てるだろうということでございます。そうしますと、その記録の保存をさせるかどうかというのは、納税者にその気を起こさせるかどうかという一点にかかるかと思います。そうしますと、ある意味で、なければ通るということが仮に今まであったとすれば、これが是正されない限り保存する気はなくなるだろうということでございます。これが一つでございます。  その次に記帳でございます。記帳というのは、私どももよく税理士あるいは会計士として帳簿の指導に招かれますが、皆さんすぐ複式簿記は難しいとおっしゃる、すぐ複式簿記ということを記帳というとお考えになる。だが実際今度提案されておりますのは、先ほどの御意見にもありましたけれども、現在法人は原則として複式簿記が建前になっております。ところが、青色申告のごく簡易なる帳簿というのは現金主義でございます。今回提案されました記帳を要求するのはそれをまたさらに簡易にしたものでございます。そうしますと、これは記録を持ち、それを若干整理する意思さえあればできるものと私は確信をしております。  問題は、そのする気を出すようにするにはどうしたらいいのか。その意味で、施行されました当初の間は税務当局の指導ということが非常に物を言うだろうと思います。これは昔の話でございますが、青色申告というものが初めて日本の制度に導入されたときに、納税者も国税当局も、これはもう三十年近く昔でございますから、非常に厳格にお考えになって、一件でも漏れたら青色申告取り消すということをやられた時代がございます。そういう態度で今度の記帳をおやりになればこれは定着しないだろう。しかしながら、最近の税務署の行っておられるいわゆる申告指導、記帳指導というのを拝見しても、極めて教育的なものでございます。そうすれば、その方向をもっと一工夫していただくことによって何らの恐怖心なしに定着していくんではないかと、こういうふうに考えております。くどく申し上げますが、その記録を残せば損だ、書いたら損だというのをどうやって是正していくかという問題がポイントだと、こういうふうに思っております。
  65. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 参考人の皆さんには大変有益なお話をいただき本当にありがとうございました。限られた時間でございますが、二、三の点についてお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、木下参考人にお尋ねいたしますが、さきの税調中期答申におきまして、納税者の増加に税務執行体制が追いついていないことが税制に対する不公平の因であると、こういうようなことでございます。私たちもそういう点で執行面における税の公平を保つことは非常に大事じゃないかと思うんでありますが、そういう意味で大蔵当局も、機械化を進めるとか、人員も、わずかではありますが、ふやすとか、大変な苦労はしておるわけでございますが、率直に言って現状のような進歩でいいのか、あるいは総体的にはちょっと悪くなっているんじゃないかなという、そういう心配もするんですが、そのあたり率直な御意見を承りたいと思います。実は今武田先生の方からもこれについてお話がありましたので、実際に税理士業務をやっている上で今の問題についての御感想はどうか、これを承りたいと思います。
  66. 木下和夫

    参考人(木下和夫君) ただいまの先生の御質問でございますが、私が国税庁当局から聞いております数字に基づいて若干御参考になるかもしれないことを申し上げてみますが、課税対象の増加現象というのは、ここ十年間で申告所得税の納税者数は三〇%増し、還付申告者数は二・八倍と、法人数は一・五倍というふうになっております。これに対して国税当局の定員はどうかと申しますと、十年前の五万二千二十七人から五万二千八百十六人にふえただけでございまして、この状況で課税対象の増加に対応するということは、この数字を見ましただけでも非常に難しくなっておるということがおわかりいただけるかと思います。  それからそのほか経済取引が非常に変化をしつつございます。最近におきまして経済産業構造の変化は著しいものがありますが、取引が非常に広域化いたしておるということ、それから国際化いたしておるということでございます。これが著しい変化を示しておりまして、税務調査も非常に困難の度を加えておるというわけでございますが、これに対する対応というのがなかなかできにくいという状況があることを御認識いただきたいと思います。  それからその結果、いわゆる実調率というものが低下をいたしております。最近の数字を調べてみますと、申告所得税では、実調率が四・一%、法人税では一〇・九%というふうに非常に低い水準にとどまっておるわけでございます。したがいまして、第二次臨時行政調査会のいわば行政改革というものもございますけれども、税務執行を取り巻く環境がこのように変化いたしております場合に、適切な課税を行いますためには、やはりどうしてもただ単に機械化だけで対応できない問題がございます。人員の増加等はこれは不可欠の要件だという感じを持っております。
  67. 武田亨

    参考人(武田亨君) 先ほど最初に意見の中で申し上げましたように、税務執行に関する人員の増加というものは極めて必要だと思っております。その細かい理由は、今木下参考人が申し上げられたのと同じ根拠に基づいておりますが、実際において、法人においては十年に一遍の調査、個人においては二十五年に一遍の調査というので、いかに良心税とはいいながら、人間には迷いが出るということをどうやってチェックするんだろうかなということを私常々考えておるわけでございます。その意味で、先ほど申し上げました人員の不足、機械等の導入によっても対応することができない人員の不足を補う一番有力なものとして、私は資料の収集ということに重点を置いて考えております。その意味で冒頭に資料収集についてくどくどとお願いを申し上げた次第でございます。以上でございます。
  68. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 続いて、これも木下参考人にお尋ねしますが、いわゆるグリーンカード制の実施の論議の段階で、総合課税になった場合には、我が国の税率のカーブが非常に厳しいからそれを緩くしなければならない、こういう論議があの当時あったと思うんであります。ところがグリーンカード制のような分離課税をそのままに放置して税率だけカーブを変える、最高税率を下げ、最低税率を上げるということは、国民感情から見ても非常に理解のしがたい、非常に金持ち優遇減税ではないかという批判がある。私もっともだと思うんですが、なぜこのような時期に税率のカーブを変えなければならない必然的な理由があったのかどうか、それはどうなんでしょうか。
  69. 木下和夫

    参考人(木下和夫君) 御指摘のように、利子配当課税のあり方に関する抜本的な改正が行われた後に税率構造を変えるというのが物事の順序であろうというようなお説に対しては、私も一部同感をいたします。    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕  ただ、しかしながら、御承知のとおり、利子配当課税については、私ども総合課税の立場に立ってグリーンカード制の採用を提案いたしました。私どもはあれが流れるということは考えておりませんでした。ところが、それがうまくいきませんので、今度は別の、かわりの案を考えろということでございます。考えるまで所得税の税率カーブの調整というものを待つべきであるという御意見がもしれませんけれども、私どもは別途の観点から昨年の十一月の中期答申に申し述べておりますように、昭和四十九年度以来税率構造の改正、手直しというのは全く放置されたままでございます。何らかの形の所得税減税を求める声はちまたに満ち満ちております。  そういう場合に国民の希望を受け入れて減税をするという場合にどういう方法が考えられるかというと、一方におきましては税率構造を変えるということが一つ、第二の方法は課税最低限を大幅にアップするということが一つ、こういう大きな目玉を基礎にして所得税減税の中身を考えたわけでございますが、委員の中のある人は、税率構造の改正に重点を置くべきであるという御意見もございましたし、他方では、課税最低限の引き上げに重点を置くべきであるという議論がございまして、これは議論伯仲いたしまして、何ともこの間の調整というのは非常に難しい状況であったわけでございます。  ただ、私どもは、過去長い間の税率構造の定着というものの背後に経済社会の状況が変化しておって、それは言いかえれば所得水準の平準化現象が非常に起こっておる。これは御承知のとおり、我が国の所得分配の姿というのは、先進国中最も分配が均等化されておるという資料がさまざまの機関から発表されておりますが、実感としてもそういう感じがするわけでございます。  そういうふうに所得水準の平準化の傾向等を考えますと、我が国で所得税を減税するとすれば、どうしても中堅所得階層負担の緩和というものに重点を置く、そして税率構造を全体としてなだらかなものに持っていくということではなかろうかということに多数の意見が集約されました。そのために、高いところは少し税率を落とす、低いところはそれにつれて若干税率を上げるということになりましたけれども、それは一〇%を極めてわずか上げることにとどめて、実際の税負担額は、これは今までより減るという仕組みにしたわけでございます。  先ほども御質問がございましたのでついでに申し上げて失礼でございますが、適用される税率は、確かに例えば五百万円というところをとりますと上がっております。しかし、あれは超過累進制のもとにおける限界税率でございまして、下の方がずっと下がっておりますから、限界税率は上がっておりますけれども、税額を計算していただきますと税額の総額は下がっております。これは人的控除が引き上げられ、そして累進課税の税率がある所得層については限界税率が上がっておっても、適用される税率は下がっておるということでございますから、ごく簡単に申しますと、すべての所得層に減税の恩恵が及んでおるという結果になっておると思います。  そのような形にいたしましたので、これは一部にはまだ依然として高額所得者優遇というような御議論があろうかと思いますが、私どもはまず今の経済の現実に対応させて、苦しい中を減税したという点をおくみ取りいただければと思うわけでございます。
  70. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それからさきの税調の中期答申等におきましては、民間消費支出に対する間接税の割合は諸外国に比して低いし、趨勢的に低下をしている。一方、経済がソフト化いたしまして、サービス等がほとんど課税の対象になっていない。今後は課税ベースの広い税金ということになりますと、私は一つはサービスというものも課税対象にすることを考えてよいんじゃないかと思うんですが、そういう点具体的にどういうサービスを検討したのか。  もう一つ所得と資産、消費、こういう点の間を見まして、我が国の税負担は非常に所得に偏っておるわけでありますが、今後、資産というものを、かなり国民の資産もふえてくればそういうストックというものに課税すべきではないかという、そういう意味から、たしか税調は長期的な課題として特定の資産に偏らない資産課税について幅広い検討をしろ、こういうことを言っておるわけでありますが、その真意はどのあたりにあるのか、簡単で結構です。
  71. 木下和夫

    参考人(木下和夫君) サービス課税の問題ですが、時間をとらないようにできる限り簡略に申し上げます。  サービス課税と申しますと、現行のサービス課税でお考えいただくと一番よくわかると思いますが、例えば料理飲食等消費税などのごときはサービス課税でございます。ホテルに泊まりましたり食事をいたしましたときに料飲税がかかりますが、あれはサービス課税でございます。いわば物財以外のもののサービスに対する課税でございまして、現在どういうものを考えているかとおっしゃれば、現在税調でそういう具体的なサービスの中身、課税の対象として好ましいサービスの中身を規定しておるわけではございません。ただ、意見がありましたのは、運輸、通信等含めて、広い意味のサービスに対して課税をすべきではないかという御意見が、最近の経済のソフト化、サービス化に伴って起こっておる、これは我々としても検討に値するという御意見があったということでございます。  それから資産ストックに対する課税ということでございますが、これはもう御指摘のとおり、所得ばかりでなく富の再分配ということを目標にする限り、所得課税の補完税としてこの種の税が一定の役割を果たすべきであるということは、私どもも十分認識いたしております。しかしながら、諸外国の例を見ましても、資産課税の税収に占める比重というものは極めて軽いものでございまして、我が国では例えば固定資産税が地方税にございますが、これも一種の資産課税でございます。国税では相続税とか贈与税がそうでございますが、その他この資産課税をどう進めるかにつきましては、昨年の十一月の中期答申の中で、資産課税を充実させる観点から、今後の国民貯蓄の状況等を勘案して、長期的な課題として、特定の資産に偏らないものを含めて、資産課税について幅広い検討をいたしましょうということを述べております。したがいまして、資産あるいは財産の把握というようなことが前提になるわけでございますが、この把握がうまくいかない場合には極めて不公平な課税になります。したがいまして、どういう形にしたら公平な資産課税ができるかという問題につきましては、私どもの長期的な課題として十分検討していくつもりでございます。
  72. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 武田参考人にお尋ねしますが、いわゆるクロヨンという問題につきまして、渡辺大蔵大臣のときにはクロヨンはない、先般の本会議で竹下大蔵大臣は、クロヨンはあるけれどもいわゆるクロヨンほどの格差ではない、一部の悪い納税者にはこれはあるかもしれないけれど、そういうようなお話だったんですが、武田参考人は税理士としてそういう実態もよく肌で感じておられるわけでありますが、クロヨンというものに対して率直にどのようにお感じになりますか。
  73. 武田亨

    参考人(武田亨君) これは十年ぐらい前になると思いますが、ある会合で当時の税調委員をしておられますジャーナリストの方から、武田さん、あなたは税理士だね、税理士はクロヨンの六をさらに切り下げるのが商売だね、あなたらが介在する限りクロヨン(九六四)がクヨヨン(九四四)になると言われたことがございます。これが当時の税理士の職責に対する世間の認識であると同時に、サラリーマンの方は、クロヨンがあるというふうにもう先入観で思っておられるなということをしみじみ感じたわけでございます。  ただ、制度的に言いますと、例えば基礎控除の問題はございますが、同じ所得を上げた場合に、事業所得者には地方税で事業税というものがかかります。給与所得者にはかからない。そうしますと、事業所得者の方は、あの事業税だけはおれたちは余分な税金負担しているんだということをおっしゃいます。さらに給与所得者の方は、退職金に対して一定の非課税限度がございます。中小企業の方は、おれたちもあれだけのものをごまかしてもサラリーマンと同じクラスになるんだとおっしゃいます。これは立場によって、他人のバラは赤いと申しますから、給与所得の方はクロヨンが実際はクロヨンじゃない、トーゴーサンピン(十五三一)だというふうにおっしゃるでしょうし、事業所得者の方は、それは少しは楽をしているかもしれないが、絶対に言われるようなことはない、さらに給与所得者は制度的に保護されているではないかということをおっしゃいます。  私の結論として申し上げますのは、お互いにそういう不信の念を持っていることが所得税に対する信頼感を揺るがしているもとでありまして、現実にどれだけクロヨンか、トーゴーサンピンであるかどうかということは、だれもわからないんではないかと思います。ただもうそう思い込んで、所得税というものは給与所得者に対して重いんだ、    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕 事業所得者はうまくやっているんだと言うことが、現在の申告、現在の日本所得税制の根幹を揺るがしている、こういうふうに考えるわけでございます。その意味で今回の納税環境の整備というものを私が評価しているのはそういう意味でございます。  お答えになりましたかどうか、これで終わります。
  74. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、ちょっと時間が来たんでございますが、樋口参考人一つだけ。  今回の納税環境の整備とかいろんな問題は、一面ではそういう税の公平、しかも税務署の効率化という点からこれは必要であると、しかし、いろいろなきょう先生の御意見もありましたように、実行性の問題とかあるいは個人の権利の問題、そういう点からの一つの反対の意見もあるわけでありますが、私たちはいずれもこれはよく聞かなきゃいかぬと思います。そういう中で税の公平を保ち、まじめなそういう納税者の不公平を是正するために何か今政府の提案しているようなもの以外に何かお考えがあるかどうか、御意見等があれば承りたいと思います。
  75. 樋口俊二

    参考人(樋口俊二君) 私どもは税制全般についての意見を持っておるわけではございません。したがって、税の公平を保つために見解がないかと言われましても、それにはちょっとお答えが難しいわけでございます。ただ、現実にそういう目的のもとに提案されたという制度の中で、特に民事訴訟法の原則に例外を設けるというようなことについては全く妥当ではない。それから記帳義務などというものについては、立法的に見てもこれは守らない人が大勢残るであろうし、ざる法になるだろう。こういうことは立法政策上問題ではないか。のみならず、そのことによって推計課税の強化というようなことが行われ、そしてそれに対する権利の救済が難しくなるであろうということでございます。
  76. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 共産党の近藤であります。私の持ち時間わずか七分ですので、樋口参考人に絞って質問したいと思います。  まず記帳義務についてですが、政府は記帳義務は申告納税制度に内在したものだから、これは規定するのは当然だと言うんですね。それがないのは立法上の欠陥だとさえ、こういう意見もあるわけです。ただ、一方では、この間衆議院で答弁を聞いていましたらば、今回の改正案は、記帳義務としては、法律上義務の創設であると。こういうわけでして、考えてみれば権利義務というのはすべて法的でありまして、それ以外のものはあり得ないので、私は内在的なんという考え自身がおかしいんだと思うんですが、それについてのお考えがどうか。これが第一点です。  それからもう一つ、この法案の記帳義務は制裁がないからこれを決めても権利侵害にならないんだと、こういう意見があります。しかし私は、最終的な救済制度としての裁判において不利な取り扱いを受けるということが実質的な制裁措置として機能するんじゃないかと、こう思いますが、弁護士としての立場からのお考えをお聞きしたいと思います。  第三点は、先ほど国税通則法百十六条についてお話がありましたが、結局縛られるのは納税者側であって、課税庁側はフリーなんですね。今までですと、裁判所が一応合理的だと。しかし主張を聞いただけで、反論も聞かずに合理的というにはよほどのことであって、これは実質上余り機能してなかったわけですね。しかし今度は、どんな不合理な主張でも、主張だけで後すぐ主張、反証が納税者側に来る。というと、これを例えば野球に例えますと、一回の表に課税庁側が攻撃して、一回の裏に納税者側が攻撃をして、後二回以降は納税者側が守備だけと。これでは絶対に勝てませんよね。私この規定を見て、もし裁判をやったら勝てないんで、絶対弁護士としてははやらないと、こういうぐあいに観念させられちゃうわけですけれども、こういう点について、まさに先ほど言われたとおり、これは訴訟の当事者主義の根幹にかかわる問題だと思います。  そこでお伺いしたいのは、こういうことについて、これは片方の当事者である弁護士の集まりである日弁連に当然意見の聴取があってしかるべきだと思うんですが、あったのか、なかったのか、あるいは私は、これは法制審議会にかけられるべき問題だと思うんですが、その点のお考えを聞きたいと思います。  最後にもう一つ追加してお聞きしたいのは、例えば減税とか税率などは、これは時の状況や政策等によって改正が当然予想されています。またこれは予算の裏づけでもあるわけですね。ところが、この申告納税制度というのは税制の根幹にかかわるものでありますし、国税通則法百十六条問題はまさに訴訟的な問題、いわば当事者対等主義の問題として司法制度の根幹にかかわる問題だと思うんです。性格的にいって、税率や減税の問題とは全く性格の違うものだと思うんですね。ところが、今、現状は御承知のとおり、年度末にきて日切れだということで間もなく通過を——私は反対なんだけれども、通過をさせようという。こういうことだと、私はこれはもっと十分時間をかけて各界の意見を聞いて決めるべきだと思うんですけれども、こういう拙速な方法で果たしてよいのかどうか、この点についての御意見を承りたいと思います。
  77. 樋口俊二

    参考人(樋口俊二君) 記帳義務は申告納税制度に内在するものだというお話で、そういう説の当否でございますけれども、それは観念的な考え方だろう。実際には我々の立場から言いますと、不当な課税を免れるために自分で武装しなきゃいかぬということでございますけれども、それが現実にできない階層が非常にたくさんいらっしゃるということです。したがって、こういう立法をした場合に果たして立法として機能するだろうか、どういう効果があるだろうかということが問題です。恐らく多くの方が、こういう法律ができても依然として記帳義務などは実行されないだろうし、そのことによって今度は訴訟法を改正して、推計でもって不当な課税が行われる、それを争う方法が閉ざされてしまう。恐らくそういう国民にとって非常に都合の悪い事態が発生するんではないかというふうに考えます。  それから記帳義務には制裁がないから別段国民の権利の侵害には当たらないということにつきましては、この青色と白色との間に不公平があるわけです。青色の場合も簡易の記帳義務でよろしい。そしてこの場合、更正決定をする場合には理由をつけるということになっておりますけれども、今度は記帳をした人に対して更正決定する場合に全く理由は要らない。しかも記帳したその記帳資料につきましては調査することができるというだけです。記帳させるならば、それを尊重して実額課税をする、そこまで考えませんと、これは結果的に国民の権利が侵害されることになる、そういうふうに考えます。  それから国税通則法の改正問題でございますけれども、現在でもこの課税庁側の訴訟の態様は、いわばモグラたたきのようなことでございまして、自由自在に主張を変更してこられる。で、訴訟遅延があるとするならば、そういうことを許しておること自体が問題ではないか。訴訟物が何であるかということをあらかじめ確定し、課税庁側の主張もこれ以上は変えないということにしておいて初めて原告側の反証をさせる、そういうふうに考えるのが訴訟経済の上から合理的ではないかというふうに考えます。現状では、この税務訴訟を担当する弁護士は大変苦労して、そして実りがないという状況になっております。  それからさらに、予算関連ではないはずでございます、この問題は。そして司法の分野と行政の分野では一線があるのではないかと思います。行政的な理念で司法制度の基本法でありますところの民事訴訟法を一方的に変えていくということは重大な問題であろうと思います。ですからこういう問題は、制度の問題として司法側の意見も十分に取り入れて検討すべきではないかと思います。この問題につきましては、いかなる段階であれ、訴訟実務を担当しております日弁連に対してどこからの意見の照会もなかったということはまことに遺憾であると思っております。
  78. 青木茂

    ○青木茂君 私の持ち時間も七分でございますから、木下先生に絞ってひとつお伺いをしたいと存じます。  私どもが、今の財政を見ておりまして大変いらいらいたしますのは、これだけ深刻な状況の中において一体これからどういうスケジュールとプログラムで再建方法を進めていくんだという具体策がどうも出てない。それで六十年度に、あるいは六十一年度につきましてもどうなっていくんだ、歳出カットでいけるんですか、いわゆる増税を続けるんですかと伺ってもはっきりしない。この前も増税はしないけれども、でこぼこ調整なら仕方がないと。それならなぜどこがでこでどこがぼこですかと聞いたら、それは税制調査会が今検討していらっしゃるからそれまで待ってほしいと。ただその間に選挙が入ったわけですね。全部税制調査会という、私ども悪い言葉で言えば、隠れみので逃げられてしまう。  一方、それだけ税調が重きをなしているかというと、みなし法人の問題がございましたね。それからグリーンカードの問題がございましたね。無視されるところは完全に無視されてしまっているというようないらいらが私どもには尽きないわけでございます。  時間がございませんから、これはもう五つのお願いを申し上げておきます。時間が余りましたら御感想なり御意見なり承れれば大変ありがたいと思うわけでございます。  一つは、私は昨年の暮れ、減税と景気浮揚と財源、このトリレンマを解決するために思い切って減税国債というような第三の国債を出したらどうだ。そしてそれの償還財源は、脱税と言うと語弊がございますから漏れた税金と過少申告加算税を伴うものというようなもので返していくとするならば、しかもそれを戻し税方式でやるということになれば、日本経済に何ら悪影響を及ぼさないではないかということを提案してみましたら、それは素人のたわ言ということで一蹴されたんですけれども、御意見をお聞かせ願えれば大変ありがたいということ。  それからお願いを申し上げたい第二点は、税制調査会の答申は、今、木下先生からもお話がございましたように、歳出カットがすべての前提であるということからスタートをしている、ところがそれが素通りされてしまっている。だから、これから答申をお出しになります場合は、歳出カットがすべての前提であるというところだけ大きな活字でひとつ書いた答申を出していただきたい。私はまだ歳出カットは限度に来ているとはどうしても思えない点がございます。これがお願いしたい第二の点でございます。  お願いしたい第三の点。これは諮問があるなしにかかわらず、とにかくグリーンカードの問題、あるいはそれに含めてマル優の問題、そういうものは税制調査会として基本的にもう一度御検討をいただきたい。さらに言うならば、済んでしまったことかもしれないけれども、みなし法人に対する御見解をもう一度出していただきたい。これがお願いしたい第三の点でございます。  それからお願いしたい第四の点は、最近定量から定性へということが非常に流行語になっております。定性ということならば、言葉の意味ですね、言葉の意味を一度税調で御論議をいただけないでしょうかということ。例えば給与所得控除というのは一体サラリーマンの必要経費のみを意味するのか、あるいはそれ以外の要素があるのかどうか。あるいは人的控除というのは最低生活費保障という意味以外の何があるであろうか、あるとするならばその割合はどうであるのかといった問題。あるいは課税最低限。課税最低限も、これは税金をかけてはいけないところの最低生活費を意味するというふうに考えられるのか、あるいはよく国際比較が行われるけれども、課税最低限というインターナショナルな言葉遣いがあるのかどうかというような、言葉の定義というものも一応税調において煮詰めていただきたい。これがお願いしたい第四の点でございます。  最後にお願いしたい点は、クロヨンがあるかないかは別問題といたしまして、所得把握のシステム上の違いがあることは間違いございません。それ以上に私ども所得の分散という意味においてアンバランスがあるというふうに考えております。そうなると、もう具体的にぼつぼつ、いろいろ批判はあるにしても、二分二乗あるいはそれらしきものが出てきてもいいんではないかという気がしております。そういう点も今後の御検討の課題に加えていただきたい。  大変たくさんお願いを申し上げましたけれども、よろしくお願いします。
  79. 木下和夫

    参考人(木下和夫君) 五点、御指摘をいただきましたが、その中でただいまお答えできる問題についてのみ申し上げます。  第一番目の減税、景気浮揚に関する新しいアイデアとして減税国債を発行するという御議論でございますが、これは減税見合い分あるいはそのうちの一部に国債を購入することをもってその負担を免れるというアイデアで、かつてこれに似たようなものが我が国でも実施されたことがありますが、ただ私の考え方では、おっしゃる過少申告加算税の分を財源にする云々というところが、どうも技術的にうまくいくかどうかにこれはためらいを感じますので、この辺はまた一度考え直してみますが、そういけば非常にいいんでございますけれども、いくかどうかがわからないということでございます。  それからもう一つは、現在の状況、それから見通し得る近い将来においては、目下のところ国債消化は非常にうまくいっておるということで、数年前と状況が変わりました。したがって、減税のメリットを与えて国債を消化させざるを得ないような状況ではないということでございますので、もう二、三年早ければこの提案の意味がもっと積極的になったのではないか。もちろん、今後どのような事態になるかわかりませんので、そういう場合にはこの御提案は生きてくるというふうに考えます。ただ、財源の問題でちょっと私、問題が残されておると思います。  それから歳出を削るということを大きな活字があるいはゴシックにするというようなことは、いかがなものでございましょうか、ここだけ目につくというのも余りあれでございますが、まあ強調するということはこれ必要なことであろうと思います。  それからマル優の存廃を含めてグリーンカードをもう一度検討しろというお話でございますが、これはそのとおりやるはずでございます。  それから定量的な表現から定性的な表現というのが最近流行しておる、この中で給与所得控除その他人的控除の話がございましたが、最初に申し上げますと、課税最低限に当たる言葉は外国に、探しますけれども、なかなかないようでございます、ぴちっと当たるものは。この辺から税がかかるというような言い方はしておりますけれども、例えばミニマム・タクサブル・インカムというような言葉も使われてないんで、まあそれに相当する何らかの言葉はあると思いますけれども、ぴしゃりとこれに翻訳できるような外国語は私見たことはございません。  それから、これは大きな問題ですが、給与所得控除というのは、給与所得を稼ぐに必要な経費の控除分であるということと、そのほかにさまざま理由が挙げてありますが、その中を析分いたしまして、この分がどのくらい、どのぐらいということは非常に至難のわざであると思います。これはできればそれが望ましいと思いますけれども、非常に難しいということだけ申し上げておきます。努力はいたします。  それから二分二乗方式はもうたびたび取り上げて議論をいたしております。繰り返してまた今後も論議を続けていきたいと思っております。  御協力ありがとうございます。
  80. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ありがとうございました。  以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、長時間にわたり御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。この際、暫時休憩をいたします。    午後二時五十七分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕      —————・—————