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1984-11-20 第101回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年十一月二十日(火曜日)    午後一時一分開会     —————————————    委員異動  八月七日     辞任         補欠選任      木本平八郎君     青木  茂君  八月九日     辞任         補欠選任      岩崎 純三君     長田 裕二君  八月十日     辞任         補欠選任      長田 裕二君     岩崎 純三君  十一月二日     辞任         補欠選任      中村 太郎君     川原新次郎君  十一月九日     辞任         補欠選任      岩崎 純三君     下条進一郎君      川原新次郎君     中村 太郎君      河本嘉久蔵君     岩動 道行君     —————————————    委員長異動  八月八日伊江朝雄委員長辞任につき、その補 欠として藤井裕久君を議院において委員長選任 した。     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤井 裕久君     理 事                 伊江 朝雄君                 大坪健一郎君                 藤井 孝男君                 竹田 四郎君                 塩出 啓典君     委 員                 岩動 道行君                 倉田 寛之君                 中村 太郎君                 福岡日出麿君                 藤野 賢二君                 宮島  滉君                 矢野俊比古君                 吉川  博君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君                 青木  茂君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        大蔵政務次官   中村正三郎君        大蔵政務次官   江島  淳君        大蔵大臣官房審        議官       橋本 貞夫君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局次        長        中田 一男君        大蔵省銀行局保        険部長      加茂 文治君        国税庁税部長  冨尾 一郎君        運輸省地域交通        局自動車保障課        長        福島 義章君        建設省都市局下        水道部長     中本  至君    参考人        日本銀行総裁   前川 春雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○租税及び金融等に関する調査  (当面の財政及び金融等に関する件) ○派遣委員報告に関する件     —————————————
  2. 藤井裕久

    委員長藤井裕久君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  私、先般当委員会委員長選任されました藤井裕久でございます。甚だ微力ではございますが、理事委員皆様方の御指導御協力をいただきまして、当委員会の公正、円滑な運営に努めてまいる所存でございます。何とぞよろしくお願いいたします。(拍手)  この際、伊江委員長から発言を求められておりますので、これを許します。伊江君。
  3. 伊江朝雄

    伊江朝雄君 大変長いことお世話になりました。また引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  4. 藤井裕久

    委員長藤井裕久君) 委員異動について御報告いたします。  去る十一月九日、岩崎純三君、河本嘉久蔵君が委員辞任され、その補欠として下条進一郎君、岩動道行君が選任されました。
  5. 藤井裕久

    委員長藤井裕久君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 藤井裕久

    委員長藤井裕久君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事伊江朝雄君を指名いたします。(拍手)     —————————————
  7. 藤井裕久

    委員長藤井裕久君) この際、大蔵政務次官から、それぞれ発言を求められておりますので、これを許します。江島淳君。
  8. 江島淳

    説明員江島淳君) 今般、大蔵政務次官を拝命いたしました江島でございます。  職責の重大さをひしひしと痛感しておりますが、微力ながら全力を傾けて職務遂行に当たる所存でございますので、委員各位の御指導と御叱正をよろしくお願い申し上げます。(拍手
  9. 藤井裕久

    委員長藤井裕久君) 次に、中村正三郎君。
  10. 中村正三郎

    説明員中村正三郎君) 今般、図らずも大蔵政務次官を拝命いたしました中村でございます。厳しい財政情勢の折から、その職責の重大さを自覚し、誠心誠意職務遂行に当たる所存でございます。御指導御鞭撻のほど何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  11. 藤井裕久

    委員長藤井裕久君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  租税及び金融等に関する調査のため、本日、参考人として、日本銀行総裁前川春雄君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 藤井裕久

    委員長藤井裕久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  13. 藤井裕久

    委員長藤井裕久君) 租税及び金融等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 竹田四郎

    竹田四郎君 時間が私、四十分しかございませんので、ひとつ簡明にお答えをいただきたいと思います。  そこで、今政府非課税貯蓄制度見直しをやっていらっしゃるというふうに報道されておりますけれども、この前のグリーンカードを凍結して、その凍結期間の三年間というのがやがて来るわけでありますけれどもグリーンカード制度というのが一回法律として通って、そしてそれによって、貯蓄に対する課税の中で総合課税というようなあり方グリーンカードで追求しよう、こういうことがグリーンカード制度の一番大きい点であったと思うんですが、今度は大蔵省見直し作業をやっている中でそうしたものが抜けてきている。例えば三五%以上の源泉分離選択というのは今度は一回も触れていない。その他いろいろ割引債の問題だとか、あるいは最近流行の抵当証券の問題だとか、税金がかからない部分というようなものが非常に大きいわけであります。確かに五十四年度の政府税調のときには総合課税制度というものが公正な課税制度だということで非常に強調されて、それまでもずっと政府税調としては総合課税制度を進めてきたわけだけれども、ここで急にそういうものをなくしてしまった。  それから非課税制度見直しの問題でも限度枠の問題がほとんど議論されてない。これは一体どういうことなんですか。政府として戦後ずっと続いてきた総合課税制度というものは今度で大変大きな曲がり角へ来て、総合課税制度という税制の公正なやり方というものはもう不公正になったのだと、こういう観点でやっているのか、その辺の総括というものが今までのところ一切出ていない。そうした総括に基づいて新しいことが——まあこれが提案されるのかどうかまだわかりませんけれども、恐らく取り組まれていなければならないと思いますけれども、そうした総括あるいは反省、そうしたものに立って、新しいものがスタートすべきだと思うのですが、突如としてこういうものが出てきた理由というのはどういうことですか。
  15. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) 利子配当課税あり方をめぐる今日までの作業の状況についてまず御報告申し上げなければならないと考えるわけでございます。  ただいま御指摘がございましたように、昭和五十五年の所得税法改正で、いわゆるグリーンカードによる利子配当課税総合課税というものの法律を成立させていただきまして、予定どおりでございますと、六十年一月一日からこれが施行されるということでございましたけれども、諸般の事情から、現在租税特別措置法によりまして三年間その実施が延期されておるという法的な状態にあるわけでございます。  一方、このグリーンカードによる総合課税というのは、税制調査会昭和四十年代後半から五十年代にかけましての議論の積み重ねの中で、答申としておまとめいただいたわけでございますけれどもグリーンカードを延期するという当時の情勢、客観的な情勢というものを踏まえまして、いわばグリーンカード制度を提案されました後の各種事態を踏まえて、もう一度原点から利子配当課税検討作業を進めるという形で今日まで税制調査会で御議論をいただいてまいったわけでございます。その具体的な審議経過といたしましては、昨年十一月の中期答申にそれまでの作業の結果が取りまとめられておりまして、それを引き継いだ形で、本年新しく発足いたしました税制調査会利子配当特別部会というものが、この中期答申の延長線上でいろいろ御議論を賜りまして、九月に実はこの特別部会中間報告が出ておるわけでございます。  その中間報告の内容につきましては、既に御案内かと思いますけれども、従来の利子配当課税に対する総合課税議論総合課税という考え方は維持すべきであるという基本的な考え方は、今度の特別部会中間報告でも維持されてよいという意見が多数意見を占めたというふうに明記をされておるわけでございます。  ただ、グリーンカード制度提案後の各種事態を考えてみた場合に、特に利子所得というように、発生が非常に大量的である、したがって捕捉そのものが技術的に非常に困難を伴う。かたがた金融商品として各種商品が昨今金融市場にたくさん出てまいっておるわけでございますが、そういった商品多様性あるいは浮動性、そういった観点から眺めてみた場合に、当面現実的な課税あり方として総合課税という原則は維持しながら源泉分離選択制度を並置することは、制度論として評価すべきである、あるいは現実問題としてやむを得ないというふうな中間報告がまとめられておるわけでございます。その限りにおきましては、完全総合課税を追求したグリーンカードのときの税制調査会考え方と、グリーンカード後の情勢を踏まえての現時点におきます税制調査会の、中間的な集約ではございますけれども考え方に若干の、何と申しますか、差異と申しますか、考え方変化というものは皆無ではないと私どもは考えておるわけでございます。  ただ、これは税制調査会の今後の御審議、お取りまとめの結果の問題でございますので、私からいろいろ申し上げることはいかがかと存ずるわけでございますけれども、今申しましたのは、あくまでも特別部会での作業中間結果でございまして、いずれにいたしましても、税制調査会の基本的な形、最終的な答申という形で、恐らくことし十二月下旬にいただけるであろう税制調査会答申としてはどういうふうにお取りまとめになりますのか、グリーンカード自体をどのように扱うかということについては、今の税制調査会ではまだ結論は出されていないということでございます。したがいまして、六十年度の税制改正の時点で具体的にグリーンカードを含めて利子課税全体、これは課税貯蓄非課税貯蓄あり方、総体を含めましての結論を賜りたいというふうに考えておるわけでございます。
  16. 竹田四郎

    竹田四郎君 何か、主税局長の話だと、おれの方は責任ないんだ、政府税調がまとめるんだからというような意見ですけれども大蔵省自体はどう考えておるのかということを僕は聞きたいです。税調税調です。大蔵省自体はどう考えておるか。大蔵省自体は今までの総合課税制度というものをどうするのか、不公平税制を是正するにはどういうことをやっていくのか、そういう大蔵省の基本を私は聞きたい。今のお話を聞いていても、何か新しい非課税制度見直しについても税制調査会が出してくれるだろう、じゃないと思うんですね。現実主税局の方が五つ出された答申二つにまとめたんでしょう。そして今お願いしているわけでしょう。そういう意味で、全然無関係じゃないと思うんですよね。その辺をしっかり答えてもらいたい。それでなければ、一体税制改正が今後にどういう影響をもたらしてくるかということが国民にはわからないわけです。この点はひとつ、大蔵大臣審議を引き続いておやりになるわけでありますから、その辺は国民に明確にしてもらわないと私は困ると思うんですね。  それからもう一つは、ただ単に、三五%以上の問題でなくて、今の限度枠だけの問題だと私は大変な不公平だと思うんですね。その辺は一体どう考えるんですか。例えば、貯蓄調査によると、一世帯が六百四十六万円ですか、こういう話がありますね、世帯単位で。金融資産貯蓄普通我我が考えている貯蓄、保険とか何か除いていくと、これはいろいろな数字が出るでしょうが、一世帯当たり貯蓄というのは約四百万前後だと、こう言われているわけですね。ところが、今この非課税の問題を見ますと、一人九百万ですね、マル優それから郵便貯金を入れて一人九百万。四人家族だとすると三千六百万ですね。それに財形貯蓄を入れると実に四千百万円というものがあるわけですね。そうすると、平均の十倍、これだけ貯蓄のある人も非課税ということですね。実際、四人家族で、現実に私どもが銀行の窓口へ行って、もう非課税の枠は満杯ですと言ったら、お宅にはお孫さんいませんかとか子供さんいませんかという、こういう話になっているわけですからね。  国税庁の方もその辺は必ずしも明確にやってないというふうに思いますから、その辺が不公平なんですね。この辺についてはお話が全然ないわけです。だから、その辺を一体根本的にどう考えるか。今こうした税金で優遇を受けている面というのは、貯蓄制度非課税というのは金額の上ではかなり大きいわけであります。ここが崩れるということになると総合所得課税制度というものは大きな穴があいちゃう。こういうふうに私は思いますけれども、これはどうですか。大蔵大臣主税局長、お二人からひとつ御意見を賜りたい。
  17. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) 大臣の御答弁の前に、御指摘のございました幾つかの点について私からまずお答え申し上げたいと思うわけでございます。  利子配当課税課税貯蓄非課税貯蓄も含めまして大蔵省として一体どう考えておるのか、それをはっきり明確にすべきではないかという御指摘、まことにごもっともな御指摘かと思うわけでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、グリーンカード以後、利子配当課税国民各層の間で広範な議論を呼んでまいった問題でございます。なおかつ利子課税はほとんどの国民に関係のある、その意味では非常に普遍的な影響を持った税制でございますので、私どもは従来のこの問題の経緯から見まして、特に間もなく税制調査会での御審議が核心に触れる段階でございますので、この問題につきましては、大方の合意が得られるところへ結論がまとまるということが最も望ましいわけでございますので、現時点大蔵省として一義的にこういうふうに考えておるということについての態度の表明を差し控えさせていただいておるし、またそういうことを申し上げるのは適当な時期ではなかろうという判断があることを御理解賜りたいと考えるわけでございます。  そういった考え方に基づきまして、先般、今月の九日に税制調査会二つの方式をフィージビリティーテスト一つ集約の結果として出したわけでございますけれども、この案自身もどちらかに決めていただきたいという性格のもので出したわけではございませんで、もう少し技術的な議論を深めていただく場合の手がかりとして、この二つの案を出したということでございます。したがいまして、今しばらく税制調査会での御審議と、その中におきましていろいろな委員間の御指摘がございますれば、私ども税制当局としてのいろいろな考え方も御説明申し上げながら最終的に結論を賜りたい、そういう手順で進めさせていただきたいと考えておるわけでございます。  それから、ただいま御指摘になりましたように、総理府の貯蓄動向調査等を見ますと、一世帯当たり貯蓄額が大体年粗収入の一・二倍ないし一・三倍の水準にございます。今おっしゃいました六百万をちょっと超えるぐらいの数字平均として出てまいっておるわけでございますが、この六百万という数字も、子細に分析いたしますと、非課税貯蓄制度対象になります定期性の預金でございますね、民間と郵便貯金も含めまして、その貯蓄残高は、実はこの六百万の半分ぐらいの数字になるわけでございます。したがいまして、現行の非課税貯蓄の枠が過大に過ぎるという議論は従来から各方面でもあるわけでございまして、私ども税制当局としては歴年この三百万を引き上げるべきであるという各方面要求に対しましては、これは今の水準すらかなりの水準にあるということで御遠慮願ってきたような経緯が従来もございます。  それから先ほど御紹介いたしました特別部会中間報告でもそういった観点からの指摘がございます。つまり非課税貯蓄制度を存続するという場合でも、低所得者とか社会的に恵まれないような人に限定してはどうかとか、あるいは非課税貯蓄の枠を世帯単位で設定してはどうかといったような意見も提出されておるわけでございます。したがいまして、今後の非課税貯蓄制度あり方に関する税制調査会の御審議の中では、先ほど申しましたように二つの案、どちらかに絞るという格好での審議ではないわけでございますので、そういった観点も含めて検討が続けられるということになろうかと思いますが、ただ一言申し上げますと、世帯単位非課税貯蓄枠を設定するという視点につきましては、私どもフィージビリティーテストの中での五類型の中には含めていないわけでございますが、これは我が国の現在の所得税課税単位個人単位になっておりまして、世帯単位非課税貯蓄だけを構成するというのは税制上いかにも無理があるということで、これは出していないわけでございます。
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御案内のような経過を経まして、この中間報告をちょうだいいたしましたのが九月十一日でございます。最終的に、「いずれにせよ、この問題については、この報告でとりあげられた論点を踏まえ、具体的、技術的な検討を行い早急に結論を得る必要があるが、税制当局においてこのための専門的、技術的な検討作業に着手するよう、当特別部会として特に要請する」、こういう中間報告をちょうだいいたしまして、それに基づいて、いわば技術的、専門的なフィージビリティースタディーとでも申しましょう、それをお出しをして今御議論をいただいておる。したがって、今竹田委員のおっしゃいましたようなもろもろの議論審議の過程において出ておるわけでございます。  私どもといたしまして、今私ども政府税調に対して対応しております姿勢としては、国会等議論された問題を正確にお伝えし、そして大蔵当局としての予見は差し挟まない、こういうことで審議を今見守っておる最中でございますので、私どもとしての基本的な考え方というものをお出しする状態には今日ないということを御理解いただきたいというふうに考えておるところであります。
  19. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵省は当面の税金あり方というものについての考え方というものを私はあえて避けようとしていると思うんですね。私は間違いだと思います。確かに高度成長時代というものは、今の税制というのが自然増収を多く生んできて比較的財源は豊かであった。しかし五十年代に入っての経済情勢というのは、高度成長というものは、もう既にああいう形のものは期待できないという時代へ入っていると思うんですね。四十年代と五十年代ということで金融資産がどんなふうに伸びたかという数字をとってもらいましたんですが、四十年代から五十年代、特に五十七年と四十四年というのを比べてみますと、金融資産全体としては六・一倍にふえています。その中で家計の金融資産は七倍にふえているわけですね。ですから、今や我が国の経済的な構造というのは——昔はとにかくフロー時代であった。だから、所得へどんどんかけていけばそれによって、所得は上がる、あるいは雇用人員はふえる、工場はふえる、こういうことでどしどしと所得がふえるから、税金はしたがってふえてくる。しかし、これからはそういう形でないと思うんですな。結局、今までの所得税、従来の所得税から上がるというものの伸びというのは非常に少ない。むしろ資産を持つことによって資産の生む果実に対する課税、そういうものがこれからふえてくる時期へ私は入ったと思うんですね、これからの何年間か、十年間ぐらいは。  そうなりますと、これはよくいろいろ自然増収がどうなるかという議論の中にもあるわけでありますけれども成長が上がらないわけですから自然増収というのもそれほど上がってこないという、そういう時代に入るわけでありますから、そういう意味では、税制自体も今までの税制というものをこの辺でちゃんと振り返ってみて、新しい時代への税制としてどういうものが適応するかというようなことを考える時期へ入ってきているんじゃないですか、竹下さん。そうなってみますと、今のフローからストックヘの時代ということになれば、金融資産に対する課税あり方というものは、そういう全体の中から利子課税にしても配当課税にしても考えてみるようなそういう時期へ私は到達していると思うんですよ。そういうものの全体の中からさて利子課税をどうすべきか、非課税制度はどうすべきか、こういう議論が出てきて当然だろうと思いますし、大蔵省としては当然そういう議論を始めるべきだ、こう思いますが、どうですか。これは大蔵大臣にお伺いしたい。
  20. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今竹田委員の御見解は私もうなずける点がたくさんございます。いわゆる高度経済成長のときにはまさにフロー対象になり、そして安定成長になれば、その間の成長の中に蓄積されたストックというものから生み出す利潤に対しての担税力を求めていくという考え方がより強く生じてくるということは、基本的には考え方がそう違っていないと私も思っております。  で、今の問題につきましては、発生がいわばグリーンカードというところ、それがある時期延期されておる、それまでの間にいわゆる利子配当というものに着目して議論しようということでございますので、言ってみれば、今おっしゃった大所高所論よりはかなり具体性議論になっておるという嫌いは私もあろうかと思っております。ただ、中間報告等を拝見いたしますと、経済社会情勢変化に対応した議論も中に出ておることは事実でございます。だから、高度経済成長から安定成長へ来た今日、別の議論としては、恐らく直間比率議論なんかもいずれは特別部会という形ではなく税調全体の議論としてはなされるんではなかろうか、こういうことを私も推測はいたしておるわけでございますが、今の御見解等につきましても、私は国会の論議として税制調査会には正確にお伝えすべき議論だというふうに考えております。
  21. 竹田四郎

    竹田四郎君 そこで大蔵大臣審議のやり方について、この問題はどうなるかわかりませんけれども、六十年度の予算の一環として恐らく租特法に関する改正法案というような形で出てくる可能性があると思いますがね。まあそういうふうにするのかしないのか、これからの問題であろうと思います。今までの参議院の審議あり方を見ますと、大体租税特別措置法なんというのは三月三十一日か二、三日前に一日ぐらいの審議でぱっと通っていってしまう、我々が何を言おうと届かない。こういうようなやり方をやっているわけであります。今度の非課税貯蓄見直しというのは、そういう立場、全体を考えて議論して位置づけをしていくような時期へ来ていると思うんです。問題もそういう問題だと思うんですよ。そういう意味では他の法案と一緒にしないで——しかもこの非課税制度見直しというのは四月一日からすぐという問題ではないと思うんです。若干時間的な余裕もあるわけであります。別法案としてしっかり審議をさしてほしいと思うんですよ。恐らくこの問題はもう一回議論できるかどうか実際わからないと思いますね。ですから、会期に入って十分に議論できるような法案のつくり方、そういうものにしてほしいと思うんですが、この点どうなんですか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  22. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) 非課税貯蓄制度それから課税貯蓄制度を含めまして現在の法体系で申し上げますと、大部分のものは所得税本則で定められておりますけれども、例えば非課税貯蓄、特別マル優等は租税特別措置法で規定されております。それから源泉分離選択課税はもちろん租税特別措置法で規定されておるわけでございまして、現実的には所得税法と二つ法律にまたがっておるわけでございます。どういう形で御提案申し上げることになるのか、これは立法技術の問題でございますので、内閣法制局と十分に議論を重ねて成案を得たいと存じますけれども、ただいま御指摘のありました点は十分に念頭に置きまして作業を進めさせていただきたいと考えております。
  23. 竹田四郎

    竹田四郎君 まだ税金問題や予算関連のことで御質問申し上げたい材料はあるわけでありますけれども、時間がありませんので次の問題へ移ります。  きょうは、日銀総裁はほかの用事を何かキャンセルしてわざわざ委員会にお出になっていただいて、その点では大変ありがとうございます。また、何か来月でもう任期が切れてしまうというように聞いておりますけれども、この五年間通貨の番人として大変御苦労をされた点については敬意を表したいと思うんです。  そこで、日銀総裁にお伺いしたいと思いますが、時間がありませんから、一々確かめての御質問にはならないかとも思いますが、政府の方で今度国債がたくさんになってきて借換債もやる。特例国債の借りかえ禁止のことについては、この前の国会で借りかえ禁止規定を解除するという形で六十年度から借りかえが非常に多くなる。だからなかなかこれはうまくいかぬということで国債資金特別会計というのをつくられる方向だ、こういうふうに新聞は報じておりますが、その辺はつくるのかつくらないのかはまだわかりませんが、恐らくつくられるだろうと思います。これをつくられて一般会計の新規財源債と借換債、それをうまくやるために短期国債という形になるのか何になるのか名前はわかりませんけれども一つの会計で処理する。この処理の仕方には何かいろいろなやり方があるように新聞は報じておりますが、これも私どもまだ聞いておりませんからわかりませんけれども、いずれいろいろなやり方をやってみても、この一般会計と特別会計の借りかえ、資金操りということで一緒にやるというやり方は大変間違っている、こういうふうに思うんですよ。その辺は一般会計なら一般会計、特別会計なら特別会計という形ではっきり分けて、一緒にさせないということが非常に必要だと思うんです。  その点は、総裁もことしの六月二十一日に本委員会で丸谷先生からの質問に対しても、直接引き受けはもちろんのこと、間接的にも引き受けになるようなやり方についてもいけないというふうにはっきりとおっしゃってたんですがね。例えば、一緒にしてしまうと、金が足りないと蔵券で資金繰りやっておいて、後で返せばいいんだという形で、それを借換債なりあるいは新規財源債というようなものにしてしまうということもある。あるいはあなたはおやりにならないかもしれませんけれども、どこかで間違えて、短期国債はシ団が引き受けましょう、あるいは銀行が引き受けましょう、しかしそれにかわるお金は日銀の方で何とか面倒見ましょうというようなことも、今までもあったというふうに私どもは聞いておりますけれども、そういうこともあり得ると思うんですね。  こういうようなやり方では、もう将来は崩れていってしまう、そして財政法の趣旨がなくなってしまう、そしてそれが、総裁がおっしゃるように、かつて来たインフレの非常に苦しい道、この道につながっていってしまうんではないだろうかという危惧は私も非常に強く持っているわけです。その辺のことは一体どんなふうにお考えなのか。  それから同時に、総裁はかつてTB市場の創設ということを非常に強く主張されておりましたけれども、短期国債が出ていくというようなことになりますと、大変重要なことであろうし、それがなければならない、こう思うわけでありますけれども、そういうような現状は一体どうなっているのか。これについて、後で結構ではございますから、政府の方からも市場創設についての考え方をお聞きしたいと思うわけでありますが、日銀総裁から、今のような私の疑問に対してぜひひとつこの際御意見をお述べいただきたい。私は非常に期待しておりますから、どうぞよろしくお答えいただきたいと思います。
  24. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 今お話がございまして、大量の国債償還期を迎えるわけでございまするので、そういう事態に対して大蔵省でいろいろお考えの段階であろうと思います。私ども、どういう構想が最終的にまとまりましたかまだ聞いておりませんので、具体的な構想自体に対する考えを申し述べるわけにはまいりませんのでございまするけれども、一般論として申し上げたいと存じます。  第一の御質問で、直接並びに間接に日本銀行信用が供与されることは適当でないということを私も六月にこの国会において御答弁申し上げた記憶がございます。日本銀行の信用供与、財政面に対する信用供与は法律でも限定的に書いてございまするので、それ以上に、現行認められている以上に日本銀行の信用を追加するということは私ども全然考えてないわけでございます。  それで、直接並びに間接ということで、六月ごろ問題になりましたのは、私の記憶では、当時、資金運用部に新発債を引き受けてもらう、資金運用部の持っている国債を日本銀行が買う、そういうことも一つの方法ではないかと考えられることで、それは日銀信用が間接的に供与されることになるのではないかという御趣旨であったと思います。それに対しまして私は、直接的に日本銀行の信用を供与することはもちろんいたしませんけれども、間接的にそういう今申し上げたような形で財政法の精神を逸脱するようなことは、私どもはするつもりはないということをお答えした記憶がございます。  ただいまそれに関連いたしましての御質問で、大蔵省証券を使ってやればそういうことがまたできるかもしれないという御趣旨ではなかったかと思います。大蔵省証券、短期の政府証券に対しまして私ども引き受けを行っておることは事実でございまするけれども、これは財政法あるいはその他の法律による制度的な歯どめがあり、また大蔵省証券については、一時的な資金繰りをつけるためということでお引き受けしておるわけでございます。それで、今のお話のような償還資金というものにつきましてはそういう制度的な歯どめが全然ないものでございまするから、そういう目的のために大蔵省証券を引き受けるということは、日銀信用が安易に使われるということになるわけでございまして、私どもは、そういうことは、償還財源であるか、あるいは一時的な資金繰りであるかということは、厳密に言うとなかなか区別することは難しい場合もあるわけでございまするけれども、少なくとも実質的にそういうことになる、償還資金に使われる、日銀信用が使われるということがないようにしてまいらなければいけないと思います。私どももそういう資金を、信用を供与するつもりはございません。  それから政府短期証券、TBの問題でございます。TBマーケットと申しまするより、私どもは短期の金融市場というものの何かオープンのマーケットをどうしてもつくらなければいけないというふうに思っておるわけでございます。これは国債償還が非常に重なるということもございまするけれども、一方、円の国際化と申しまするか、自由化に伴いまして海外からも大量の資金が入ってくる可能性がある。そういう事態になってまいりましたので、金融政策をめぐる環境が非常に変わってきたということでございますが、そういう中でどうやって金融政策の効果を発揮さしていくか、金融政策の有効性を確保するかということがこれからの我々の一番大きな問題でございます。  基本的に申しますれば、金利機能というものを活用していくよりしようがない。統制あるいは規制に頼るわけにいきませんから、金利機能ということで対応していくわけでございまするが、金利機能が有効に発動されるためには金利の自由化が必要であるということと、もう一つは金融政策の波及が直ちに行われるような環境の整備、短期の金融市場というものを整備していく必要があるというふうに考えております。現にもう金融機関による手形市場その他の短期の金融市場があるわけでございまするけれども、現在もう既に企業あるいは証券あるいは外国の投資家が日本の国内の短期の金融市場にいろいろ投資しておるわけでございます。現先とか中国ファンドとか、そういうものが専ら使われているわけでございまするけれども、私どもは、金融機関も、それからそういうふうな企業あるいは投資家も全部同じに取引ができるオープンなマーケットをつくることがどうしても必要であるというふうに考えておるわけでございます。  そのオープンなマーケットで取引される最も適当な金融資産政府短期証券ではないかと思います。それ以外の例えばBAというものが使われることは当然でございまするけれども、BAはそのときどきの取引に基づくものでございますから、金額がなかなかまとまらないということもある。政府短期証券は最も信用もあり流適度も高いということでございまするので、一番適当な金融資産政府短期証券ではないかというふうに考えておりまするので、そういう意味でTBマーケットというものができることが望ましいというふうに考えておるわけでございます。  そういう観点から私どもが保有しておりまする政府短期証券を市中に売却いたしまして、そういうマーケットの育成に目下努めておるわけでございます。必ずしもまだ私どもが考えておるほど理想的にはいっておりません。しかし次第にそういうTBというものが市場になれてまいりましたし、そういう動きがさらに広まることが私どもの金融政策の有効性を確保する上において一番必要であろうというふうに考えておる次第でございます。
  25. 竹田四郎

    竹田四郎君 もう一つお伺いしておきたいと思いますが、私の時間はないですから、あとは政府の方の答弁は要りません。  この金融の自由化というものの考え方ですけれども、特に日銀と政府との考え方、この両方の問題点ですけれども、金融の自由化というのは一般に通用しているような制度を使ってお互いに金を借りかえする、これが金融の自由化だと私は思うんですね。ところが今政府のやっていることは、例えば短期証券の場合には非常に安い金利で日銀にやらしているわけですね。たしか公定歩合よりも低いので短期証券の場合には割引さしている。今度も大蔵省考え方の中には短期国債もそういうふうにやろうとしているんですが、私はこういうのは間違いだと思うんですね。そのときの一般のレートで短期証券も割引をする。もし日銀がもうかれば、これは日銀の納付金で返せるわけですから、別に日銀だけが特に得をするという問題じゃないと思うんですね。だから、払うものは正規の金利で払う、もうかったものは国に納める。国の方もだから何か潜って安い金利で短期国債を何とか融通してもらおうなどということではなくて、むしろ正々堂々とやるのが金融の自由化というものではないだろうかと思うんですが、その辺は総裁、どういうふうにお考えですか。
  26. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 償還期が大量に来ることによって借換債の発行は大量に上るということが現実でございますが、それに対応する大蔵省のお考えにつきましては、まだ具体的なことを伺っておりませんものですから、直接その構想に対してどうこうということではなくて、これまた一般論でお答えいたします。  その国債の多様化ということから短期国債が出るということ自体は、多様化という趣旨から言えばいいのだと思いますが、もしそれが借りかえのための償還資金を調達するためのいわゆる借換債ということであるならば、これは当然市中で、市場で公募されるべきものであろうというふうに考えております。現に借換問題懇談会でもその借換債は市場で公募されるということを原則に議論されておったというふうに理解しておりますし、その際も短期国債というものはまた検討に値する方法だという結論であったと記憶しております。  いずれにいたしましても、短期国債というものはもしそういう意味で出るならば、これも一般論でございまするけれども、それは市場で公募されるべきものであろうというふうに考えております。  それから自由化との関連でいろいろ御質問ございましたが、大蔵省証券を現に日本銀行が引き受けておりまするのは、一般の金利よりも安い金利で引き受けておることは事実でございます。この大蔵省証券は先ほど申し上げましたように、財政法の制度的な歯どめのもとで一時的な資金繰りをつけるということでそういうふうな引き受けが行われておるわけでございます。一般会計の歳入歳出にはどうしても時期的にそごが起こり得るわけでございまするから、一時的な歳出が先行するというようなときには資金繰りをつけなければいけない。そのときに大蔵省証券を使うということは、そういう範囲で私どもは引き受けておるわけでございます。この金利が安いというところが御質問のあれだったと思います。長年の慣行でございまして、また国庫の方の御都合もあってそういうことになっておるわけでございます。  私どもは、この引き受けました大蔵省証券を市場に放出してそういう政府の短期証券の市場を育成しよう、整備しようという努力を今しておるわけでございます。そのときには市場レートでやっておりまするので、今御指摘のような日本銀行の収益にも影響が出てきているということは事実でございます。  このTBの発行調達問題をどういうふうに考えるかということにつきましては、今申し上げましたような国庫の方のいろいろ御事情もあり、また長年の慣行でやっておるということもございまするけれども、将来の展望といたしましては、この発行を含めて、先ほど来お話がございました政府短期証券の市場性というものをどういうふうにつけていくかということを中心に検討されるべきものであろうというふうに考えております。
  27. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 最初に大臣にお伺いいたしますが、最近国債資金構想というものをめぐって新聞紙上が毎日にぎやかであります。それにはいろいろな御意見が出ております。しかし、これは六月の時点で竹田理事から質問がありまして、このままでは借換債の段階で市場操作をやりにくくなるから何らかの方法を考える必要があるんじゃないかということを再三にわたって御質疑している中で、大臣から、短期国債というふうなものと国債整理基金のあり方という二つの課題をこれから勉強していかなきゃならないと。どうももうその時点で今のこういう新しい制度に対する構想が、勘ぐってみると、大蔵省でできつつあったんじゃないか。それで大臣は非常に含蓄のある表現で、これから勉強していかなければならない、こういうふうにおっしゃったんじゃないかというふうに判断するんです。  大分あれから勉強されたと思いますので、おおよそそうした構想というふうなものは固まってきておる、大臣がこの期間に御勉強なさった成果を我々にも教えて勉強さしていただきたいと思います。
  28. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) この問題につきましては、前回の国会におきましても本委員会等でいろいろ御議論があったところでございます。そのような御議論等も受けまして、その後政府部内においてもいろいろの角度から検討し、現在検討を続けているところでございます。その際、特に財政制度審議会という場がございまして、その財政制度審議会の中に中期財政運営問題小委員会というのが設けられておりまして、既に二回にわたって勉強をしていただいております。具体的に申しますと、第一回目は五十九年度の財源確保法案の国会での御審議の模様、その際に出てまいりました特にいろいろの問題点、これを説明をいたしたわけでございます。それから二回目は、諸外国におきましてこの問題がどう取り扱われているかということ等につきまして、この小委員会で説明し御議論をいただいたわけでございます。したがいまして、今後この二回を踏まえまして、さらにこの小委員会で問題点を煮詰めていただいて、何らかの結論を出していただくことを現在期待しているという状況でございます。
  29. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうすると、最近新聞をにぎわしている問題等については財政制度審議会の中の部会で今検討している、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  30. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 新聞にはいろんな案が出ておるわけでございますが、現在小委員会で御議論いただいておりますのは、先ほど御説明いたしましたように、従来の経緯あるいは外国でのこの制度あり方等々でございますので、具体的な制度あり方をどう持っていったらいいかというようなことについてはこれからの議題になるということでございます。
  31. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 借換懇のときには、あれは私的な機関だとかいろいろなことで論議の中身がなかなか我々に明確にされない形で進んでいったような気がするんです。しかし、この財政制度審議会となりますと、法令等を取り寄せますと、明らかに大蔵大臣が任命する、法令で定めた審議会ですね。間違いございませんね、まず確認からしていきます。
  32. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 委員がおっしゃるとおりでございまして、財政法附則第八条に、この財政制度審議会について設置するという規定とともに、その他所要の規定を入れておるわけでございます。それに基づいて設置されているということでございます。
  33. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうすると、この審議会の審議の内容というのは公にされるものですか、いかがですか。
  34. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 従来、結論を得ました段階で原則として公開いたしております。その前の段階では、非公開の場合と公開して行っている場合と両方ございます。
  35. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 例えば我々が傍聴できるんですか。
  36. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) それにつきましては、財政制度審議会議事規則第三条でございますけれども、会議は非公開にするということになっておりますので、委員だけで御議論いただくということでございます。
  37. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大臣、以上のようなことですと、私たちは財政制度審議会の結論が出た段階でしか知りようがないわけなんです。そうすると、結論が出てから、先ほど竹田理事からも話がありましたように、私たちは今度それから勉強しなきゃならない。大臣がおっしゃったように、六月の時点で、この二つの問題は私自身も勉強しなきゃならぬと、こうおっしゃっておる。そのころからいろいろ二回やった、三回、四回ずっとやって勉強するわけですわね。その得た結論に基づいて制度の問題が私たちに提示されますと、それをいつもの調子で、さあさあ早くやれと言われても、なかなか審議できないということがございますので、そこのところの間隔を十分あけるような形で勉強を一生懸命進めて早く出していただく。早くこの問題を国会のテーブルにのせて十分討議ができるように御配慮願いたいと思いますが、いかがでしょうか。皆さんの方は長くやって十分勉強して出てきた。私たちの方はそれからでないとわからないんで、そうすると、それについてはそれからやらなきゃならない。この点はひとつ考えていただかないと審議ができないことにならないかと思うんですが、いかがでしょうか。この点は十分お考えいただきたいと思うんですが、大臣も六月からこれを勉強していると言っているんですよ、しなきゃならぬと。
  38. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 財政審のいわば建議をちょうだいするわけでございます。大蔵原案作成直前ぐらい、おおむね大蔵原案を確定いたします少し前ぐらいに建議をいただく。ただ、その建議も、御議論をいただきますところのまず素材は、五十九年度のそれまでに至る国会等の御審議を正確にまとめて、それを披露して、そこで御議論をいただくわけでございます。したがって、その議論に応じては、場合によってはこのような資料を当局自体に提出せよとかいろんな御要請があって、それにこたえて御議論をいただくわけであります。したがって、建議されるのは、まさに煮詰まってまいりますのはいつでも大蔵原案直前ぐらいになりますので、その建議が出た段階で初めて先生方には御披露申し上げる、こういうことになりますが、それから予算が編成され、御審議いただくまでにはまあ四、五十日の間はあります。その建議を取り立てて、例えば十二月の二十日ぐらいに大蔵原案を出すのを、十一月中に建議してもらいたいというようなことは実際問題としてなかなか難しいんじゃないか。最後ぎりぎりの議論の中でいろんな素材を提供しながらやるわけでございますから、いろいろなデータも直近の段階まで事によっては御供覧いただくというふうな形でございますので、それ以上前に建議をちょうだいするということは御趣旨にあるいは沿いかねるんじゃないかというふうに思います。
  39. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 御趣旨には沿いかねるけれども、ある程度の検討の期間はある、少なくとも四、五十日というふうには判断してよろしいわけですか。
  40. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それで結構だと思います。
  41. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、実は今もお話ございましたように、従来の国会の論議等を踏まえて審議会の方には勉強してもらう、こういうことになりますと、前国会の特に六月の特例債の問題のときの議論というのが極めて重要な意味を持ってくるんです。あのとき大きな問題は、果たして六十五年までに赤字国債の脱却ができるかということが一つと、借換債がどんどんと出回って発行高がふえていくと、いわゆる市中の消化というふうな従来の仕組みだけで消化できるのかどうかという歯どめ論、これらが極めて大きな問題として出てきたし、私たちもその後非常に心配してきておるところでございます。  それで、今度、日銀総裁にお尋ねしたいんです。あのときも日銀総裁に私お尋ねしたんですが、歯どめは、このままの状態じゃ日銀に国債を引き受けさせるよりないんじゃないか。そのときも、いわゆる日銀信用の拡大ということについてはそうしないように十分留意していくという総裁からの御発言がございました。それでまた最近も、新聞でも、こういうことについては日銀としては了承できないと言うし、大蔵省も短期国債の引き受けというふうなことについては歯どめ策を盛り込む、こういうふうな話になってきておるわけです。  私たちが一番心配するのは財政インフレです。昭和二十三年に、前回も指摘いたしましたが、日銀が特別会計予算総則の七条で国債を引き受けたという例がございます。このとき一体通貨の発行高が、二十三年の初頭と二十三年の末、それから二十四年の初頭と二十四年の末というふうにここのところ三年くらいの間どのように膨張したか、これは質問通告を申し上げておったのであると思うんですが、簡潔にひとつ。
  42. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 現行財政法が制定されましたのは昭和二十二年三月でございまして、その当時に特別会計の資金不足が続いておりましたので、政府貸し上げ金、日本銀行が貸し付けたわけでございます。国会の御承認を得まして、二十三年度予算で資金調達を日本銀行の信用によって行ったという事実がございます。現実には九十九億円でございました。  今お話しのその当時の物価あるいは銀行券の状況でございまするが、昭和二十二年中に消費者物価が上昇した上昇率は二・八倍、二八〇%ほどでございました。銀行券は二十二年中に二・三倍、二三〇%増発になりました。二十三年は、消費者物価の上昇率が六一・八%でございまして、銀行券の増発が六二・一%でございました。二十四年は、消費者物価の上昇がずっとおさまってまいりまして、年間五・一%の上昇でございました。銀行券は、年末だけをとってみますると横ばいでございました。
  43. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 要するに、このときは通貨だけで見ていってもよかった。しかし、今は通貨の発行高だけでは、カードとかいろんなものがありますから、マネーサプライで見ていかないといかなくなっております。しかし、考え方としては私は同じだと思うんですが、明らかにこのとき悪性インフレに移行する、そのことと日銀信用が膨大するということと相関関係にあったということは、総裁お認めになりますか。
  44. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 二十二年、戦後のいまだ混乱期でございましたので、当時通貨の増発が非常に顕著でございました。日本銀行はもちろん通貨の流通高の抑制に極力努めたわけでございまするけれども、先ほど来申し上げておりまする財政面の赤字が非常に大きい、それに対してある程度日本銀行の信用を供与しないといけないという関係にもございまして、なかなか通貨の増発を抑制することが困難であったということで、先ほど申し上げました二十二年中には二三〇%の通貨の増発があったという事態でございます。そういういろいろの事態に対応してこの財政法が二十二年にできて、それ以降は日本銀行は財政面に信用供与を原則として行わないということになった、財政に対する日本銀行信用との関係がその後ははっきりしたわけでございます。
  45. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 二十四年におさまってきたというのは、シャウプ勧告の関係でございますね。そういう大英断というか、大政策的な方向があってできた。私は、今回もいろんなことが出ておりますけれども、ここのところで中央銀行としての日銀、いみじくも大蔵大臣が日銀というのは通貨の番人だというふうな表現で答弁していることもございます。したがって、日本銀行としては、財政法によりますと、明らかにこれは五条で「借り入れてはならない。」、「特別の事由がある場合」と言っております。しかし、この「特別の事由」というのは、今回のような借換債その他で公債がどんどん出回る、これの歯どめはあくまで市中の原理で行うべきであって、仮にもこういうことが日銀信用の膨大につながるということは、財政法の趣旨からいって「特別の事由」に入らないというふうに前回も私は申し上げたんですが、そのことをもう一度ひとつ総裁にも確認していただきたいと思います。
  46. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 財政法に基づきまして、日本銀行は第五条によって、政府に日銀信用を原則としては供与してはいけないことになっております。特別の事由があって国会の承認を受けた場合だけが例外でございます。今お話がございましたように、国債の大量の償還期が到来するときに、その国債の償還財源を借換債によって調達するのに日銀信用をつけることは適当ではないではないか、私どももそういうふうに考えております。借りかえということは、前の国債が償還されるわけでございまするから、償還資金を調達するための借換債は市中で調達が資金の量から言えば当然可能であろうというふうに思っております。したがいまして、借換債の発行条件さえ市場実勢に対応するものであるならば、借換債の消化はそれほど困難なものではないというふうに考えておりまするので、そのために日銀信用を新たに追加しなければならないという必要は、私は金融的にはないのではないかというふうに考えております。今のような日本銀行の政府に対する信用供与には非常に厳格な制限がございますので、私どもも現行の制度以上に日銀の信用を供与する考え方はございません。
  47. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大臣、実は六月のときも、要するに市場で消化ができるかできないか、消化ができなくなったときはそれは赤信号なんだ、そのシグナルを我々はちゃんと読み取って対応しなきゃならぬというふうに御答弁なさっている。今の日銀総裁の答弁と同じように、そうした場合に市中で消化ができる限度、それと、消化するためにはそのときの状況によって金利の問題がございますわね。金利を弾力的にやっていくという操作の中である程度、先ほど総裁の言われたようなTB市場というふうなことは考えられても、かりそめにも日銀の信用が拡大するというふうなことに持っていくべきでなくて、シグナルはそういう形で読み取って、財政インフレにならないような対応をこれからの審議会の論議の中で十分ひとつ生かしていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  48. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の丸谷委員の御議論というのは、かつてこの場所で御議論いただいた議論一つでございますので、私どももそれは正確に財政審にも御報告を申し上げておる中身でございます。したがって、そのような御議論があったことは財政審の先生方も十分に理解の上で御議論を進めていただけるものであるというふうに私どもは信じております。
  49. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そして、その議論のほかに附帯決議がございます。これはもうまさに国会の意思です。この中では明らかに「特例公債依存体質からの脱却は最優先課題」であって、「この目標達成にいたる手順と方策を具体的に明らかにすべきである。」と。ですから、新しいそういういろんな議論をし、制度を設けていく場合に、議論でなくて決議ですから、この附帯決議だけは十分に尊重すると言っているんですが、外れないようにもう一度附帯決議を、これは議論でなくて国会の意思なんで、十分ひとつ守っていただきたいことをお約束願いたいんですが、いかがでしょうか。
  50. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いろいろ国会で御議論をいただきました。何分にも償還期がある時期に集中してくる、その場合どういうふうにするか。それを市場の金利の動向によって分散していかなきゃならぬかもしらぬ。そこに短期国債の御議論もいたしました。そしてこの法律通過に際しては、今丸谷委員が御指摘なさった附帯決議がきちんとつけられておる。これも当然のこととして財政審に提示して、それは財政審の先生方もみずからの議論の歯どめとして心得て御検討いただいておるというふうに私は理解しております。
  51. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 日銀総裁、どうも御苦労さまでございました。私の方はこれで結構でございます。  次に具体的な問題で御質問いたしたいんですが、実は環境の委員会で霞ケ浦、それから諏訪湖を調査してまいりました。その過程で、財政が非常に苦しい苦しいと言いながら、今政府大蔵省として発表しておる補助金の一律カット、一体どうしてそういうばかな発想が出てくるのかということを私は痛感したんです、具体的な問題から類推して。自治体側は十月三十一日に国庫補助負担金の一律カットに反対する七つの理由を挙げて、今そういう大蔵方針に対する猛烈な反対を表明した運動を行っております。こういう一律カット、こういうばかなこと——というのは、予算の編成というものはもう自分たち自身が放棄してしまうことにつながるのではないか。  この問題を中心にして一つ申し上げたいと思うのですが、全国の流域下水道の促進について陳情を受けました。会長は大阪府の知事さんです。これによると、五カ年計画の最終年度を迎えても達成率は四五・七%と半分しか達成していない。これはお金がないからだと、こういうことにつながるわけなんですがね。実際には流域下水道そのものを全体的に見直さなければならないのに、膨大な計画を立てておいて達成率は低いというふうなことだけではちょっと問題ではないか。そしてそれによって一律カットというふうなことがなされるということも問題でないかと思うのです。  要求してありますから御承知と思うのですけれども、下水道法によるところの流総計画というのがあります。これには国の補助金がついて、私たちの知る限りでは、百六十くらいの箇所について計画箇所を決めるということについての補助金が出ているんです。実際には約四十カ所程度しか決まっておりません、十何年かかって。こういう補助金をどうして出すんだ。主計局ちょっと説明してください。
  52. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) いわゆる流総計画につきましては、まず計画を組んでいただいた上で整備にかかっていく仕組みになっておるわけであります、端的に申しますと。その流総計画でございますけれども、これにつきましては、委員が御指摘のように、なかなか計画が決まらないのも事実でございます。いろいろ理由もあるわけでございますけれども、聞いておりますところによりますと、関係市町村が非常に多いためにその話し合いに時間がかかるとか、それから県がまたがっている、非常に広域の場合には県同士でまた利害が対立するとか、いろいろなこともあるわけでございます。したがいまして、その促進方につきましてはここ数年鋭意努力しておりまして、五十一年度からでございますか、県の間の調整は特に国が入ってやるような仕組みにも変えてきたわけでございます。  しかし、いずれにしましても、先ほども指摘がございましたように、現在までに百六十二カ所一応調査を行うというふうに決めましたわけでありますけれども大臣承認されている箇所はそのうちなお五十二カ所で、残りはまだ策定中ということも事実でございます。したがいまして、今後の予算編成に当たりましては、このような実態を十分念頭に入れて我々としても予算査定をしてまいりたいと考えております。
  53. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 この流域下水道整備総合計画をやりなさいという下水道法という法律があるんです。それによって大蔵省は出すと思うのですよ、こういう法律があるんですから。ところが、この間諏訪湖へ行って聞いてみたら、流総計画がないんだけれど流域下水道はどんどん進んでいるんですよ。そうすると、流総計画を立てても立てなくても下水道事業は進むんです。そんなところにどうして流総計画をやりなさいという補助金を出さなければならないのか。実際には、県というけど、市町村や県の段階が済んで建設省に上がってきたまま五年も七年もそのまま全然進んでないというのがたくさんあるんですよ。そして片方の流域下水道の事業はどんどん進んでいっちゃう。おかしいと思いませんか。
  54. 中本至

    説明員(中本至君) 諏訪湖についての御指摘でございますが、諏訪湖につきましては、五十九年の四月二十七日に天竜川の流総計画として建設大臣承認がなされておりまして、御指摘のように、それまでそれならどうしておったのかということでございますけれども法律上流総計画に沿って流域下水道あるいは公共下水道をやるということになっております。言うなれば、流総計画をやる途中段階においても、その流総計画の骨格的なものを見ながら事業を実施するということでございます。  なお、諏訪湖につきましては、現在、窒素と燐の見直しがございまして、このために流総計画の見直しをもまた実施しておるところでございまして、御指摘のように、今後はこの窒素、燐を含めた流総計画に基づいて諏訪湖の流域下水道事業を実施したい、かように考えておるところでございます。
  55. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 今、話がありましたように、流総計画と流域下水道の事業を進めることとは関係ないんですからね。諏訪湖の流域下水道は昭和四十年代からやっているんです。そして流総計画をやりなさいということになってからもう十年たっている。事業の方はどんどん進んで、流総計画はついこの間できたということです。なぜそういうことになるか。今たまたま諏訪湖の問題を申し上げますけど、流域下水道に非常にむだがあるんです。建設省から予算要求が出てくる。一律カットというふうなことで平均して削っていく、こういうことになるんです。よく聞いてください。  実は、この計画書を私ちょうだいしたんですが、この計画書を読んでみますと、一番最初の計画では、人口が二十一万二千人だったんですが、その後十九万二千四百人に処理人口は減らしているんです。ところが、計画面積はふえているんですよ。計画面積が四百六十五ヘクタールふえているのに人口は減っているんですよ。人口は減らした計画。これは計画のつくり方が悪かったということです。過大な計画です。しかし、これによりましても、処理能力を三十万六千立方ですか、あるんです。私たちも小さいながらも下水道計画を立てて施行した経験から言いますと、当時建設省は、我々のところでは大体一人当たり使用するのは五百リッターだと、こういうことで行政指導を受けました。  そうすると、計算してみますと、人口で割ると非常に多いんです。莫大に多いんですよ。しかし、これは工場排水を考えているからだと、こういうことになるんです。実際にはそんな工場排水は全然入ることにならないんです。そうすると処理場だけが膨大なでっかいものになる。管渠も大きいのが入っている。個々にやればそれほどでないやつを流域下水道にして何でも大きくしている。それをあなたたちの方はきちっと調べないで一律カットだなんというような調子でやる。計画あるいは処理能力に対して補助率が幾らだから、これは事業をここまでにせいということで、百億円のところは一割カットしたら九十億だけれど、五億円のところは一割カットして五千万です。こういうふうに平均カットしちゃうでしょう、一割カットということになると。そうすると、計画自体が非常に過大な計画をしているところも、まじめにきちんと計画しているところも同じカットされるんですよ。こんなばかな一律カットなんということを行っていいと思いますか。大蔵省がきちっと一つ一つの計画を見て、これおかしいじゃないか、面積がふえて人口どうして減ったんだと。  それから、もっとこれはまだまだたくさんあるんですよ。今三十万六千といいますけれども、実際の処理しているのは幾らありますか、今現在処理している量は。十分の一もないでしょう。
  56. 中本至

    説明員(中本至君) 現在、処理人口は十九万二千人でございまして、普及率が三〇%を超えております。  それから、先ほどおっしゃいました計画処理人口が大きいではないか、あるいは工場排水が大きいではないかというのは、流域下水道計画なり立てるときにおいて、その社会情勢、すなわちその都市都市において人口が伸びるであろうという要望あるいは工場を誘致するという要望が非常に強い時期に計画を立てたところは、それなりに私どもいろいろ十分なる審査をしながら、抑えたりあるいはいろんな指導をしてまいっておりまして、その当時としては適正なものだったと信じております。  それから予算配分につきましては、私どもの方で原案をつくるわけでございまして、おっしゃいますような、いわゆる一律とかそういうものじゃございませんで、流域下水道あるいは公共下水道等、その重要性あるいはそのときどきの効率等を考えまして配分したりしておるところでございます。
  57. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 処理能力が三十万六千。今、何ぼ処理していますか。
  58. 中本至

    説明員(中本至君) 先ほどのは見直してございまして、現在の処理人口は、諏訪湖流域下水道で、五十八年度末におきまして六万四千人でございます。すなわち普及率で申しますと……
  59. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 処理量を聞いているんです。
  60. 中本至

    説明員(中本至君) 一日の水量が三万六千トンでございます。
  61. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それをさっきから聞いていたんだよ。  三十六万トンの計画で十五年かかってまだ一割しか処理してないんですよ。こんなところにでっかい管を入れて、管だから腐らないからいいというものじゃない。いつできるかわからないでしょう、こんなもの、完成するのに。  ですから、例えば私は、この流域下水道を絶対やめろと言っているんじゃなくて、こういうばかなことをしないで、琵琶湖だとか、諏訪湖だとか、霞ケ浦だとか、急いでやらなければならぬところも、みんなじんたじんたなんです。こういう予算査定のあり方には問題がある。  それから建設省まで上がってきていても何にも決定しないようなところに補助金つけて流総計画なんかやらしている。いつまでにできるんだ。建設省に一体諏訪湖はいつできるんだと聞いても返事できないんですよ。それはもうあなたたちの方の予算のつけ方次第だということなんです。  だから、今大蔵が出している補助金の高額補助一律カットなんというばかな予算の査定の仕方なり方針というのはおかしいと思うんです。必要なところにはどんどんつけて、こんなばかなことでないように。それから見直すときは見直させる。こんなのは明らかに過大なんですから。  三協精機なんかに行ってみますと、これら何もこんなところに入れなくてもいいです、きれいな水を出しているんです、企業自体が。東京都も既に紙パですか、六社が公共下水道に入れないで自分たちできれいにして流す。そういうふうに世の中変わってきているのに、この流域下水道なんというのは当初からほとんど計画変更……
  62. 藤井裕久

    委員長藤井裕久君) 丸谷君、時間が経過しておりますので。
  63. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 ということで、ここら辺で一律カットということはおかしいということだけ申し上げて、大臣、今の聞いていて何か御感想ありましたらお聞かせ願いたい。
  64. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 箇所づけと一律カットというのは、一定の予算に対して原局でそれぞれ箇所づけをなさるということでございますので、一律カット問題といわゆる工事の個々の箇所における進捗率の問題についての整合性というのはちょっと私では答弁の限界を超しております。
  65. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは国債の借りかえの問題について最初に大蔵省にお尋ねをいたします。  国債借換問題懇談会も報告書が出されたわけでありますが、いわゆる国債特別会計を創設して新規債と借換債の発行を一元化する、あるいは満期到来時に短期国債を発行して弾力的に運用する、非常に高金利のときにはむしろ短期、低金利のときに中長期、こういうような方向で検討する。これは今まで先国会においてもたびたび論議になったことでありますし、私たちも大量の国債ですからできるだけ金利負担も安くする、そういうような点から弾力的な方向というのは非常にいいんじゃないか、このように考えているわけでありますが、大蔵省としてはこういうのは次の国会に提出する方向でやっておられるのか、その点はどうなんでしょうか。
  66. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) この問題につきましては、先ほども申し上げましたように、本委員会等で多々御議論のあったところでございます。その際の御議論にもございましたように、六十年度から今おっしゃいましたように大量の借換債の発行が必要になるわけでございまして、そのための仕組みをどういうものにしたらいいかということは非常に大きな問題であるわけでございます。そういうことから、六十年度にそういう問題が来るわけでございますので、それに間に合うように我々としては法案その他の問題も含めて検討を進めていきたいと考えております。
  67. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 日銀総裁にお尋ねをいたしますが、こういう短期国債でつなぐというやり方、これは私は国債の金利負担を軽くする、そういう点からも必要であると思うのでありますが、しかし一方、余り短期国債を発行するということはほかの金融商品と競合する、こういう点でいろいろ反対もあるんではないかと思うのでありますが、こういう方向についてどのようにお考えでしょうか。
  68. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 大量の借換債が発行されますので、市場にいろいろ影響するところが大きいわけでございまするが、そのときどきの市場の状況に応じて長期の国債の発行がなかなか容易でない、短期のものならば比較的容易に発行できる、あるいは将来金利が下がるということが見通されるというようなときには、あるいは短期債によって泳いでおくということが必要な場合もあろうかと思います。そういう意味で、国債の種類の多様化という意味ではこの短期の国債というものを活用するのも一つの方法であろうというふうに思います。  ただ、そういうことをすればほかの金融資産影響が出るではないかという御質問がございました。確かにそういう面がございまするけれども、しかし国債の消化という点だけについて言えば、そういう国債の種類の多様化ということも一つの方法であろうというふうに考えております。
  69. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、これも日銀総裁にお尋ねいたしますが、こういう国債の借りかえのための短期国債というものをもし発行するとしても、これは当然日銀の引き受けはない、そういう点ははっきりいたしまして、私もそのとおりだと思うのでありますが、現在の大蔵省証券あるいは食糧証券あるいは外国為替資金証券、こういうものを日銀が引き受けている、しかも金利が非常に安い。そういう意味で、政府としては非常に安い金利で運用できるということは非常にありがたいことではあるのでありますが、ただ金融の自由化、あるいはまた日銀と政府の独立性とか、そういう点から考えれば、そういう市中金利よりも非常に安い金利で買う、こういうようなことは余り望ましくない。将来としては早くこれを改めるべきではないかなというそんな感じがするわけでありますが、これについての日銀総裁と、それから大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  70. 前川春雄

    参考人前川春雄君) ただいま日本銀行は大蔵省証券、外為証券あるいは食糧証券の引き受けをしておるわけでございます。これも一時の資金繰りということで財政法あるいはそれぞれの法律の制限のもとにそういう制度的な歯どめのもとに引き受けておるわけでございまして、しかもそれが資金繰りということに限定されておるわけでございます。その金利が、現に引き受けておりまする金利が市場金利より安いことも事実でございます。これももちろん私ども市場金利並みであることが望ましいことは当然でございまするけれども、一方、大蔵省の国庫の現実からいって、一時の資金繰りであるということのために長年の慣行でそういうふうな安い金利ということになっておるわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたけれども、私ども自由化のもとにおいて短期の金融市場というものをどうしても整備していかなければいけないというふうに考えておりまして、その際の取引される最も適当な金融資産政府短期証券であろうというふうに考えておりまするので、私どもが引き受けました政府短期証券を市場に売ります場合には市場レートで売っておるわけでございます。そういうことで、もしこの金融資産として最も適当であるということであるならば、この政府短期証券の金利というものが将来は市場の金利をリードする、あるいはその中心になるというふうなレートになると思います。それと、日銀はその市場レートより低い金利で引き受けておりまするのは全く別の事情でございまして、そういうふうな一時的な資金繰りということの趣旨がありますので、長年の慣行あるいは国庫の都合によってそういうふうになっておるわけでございます。
  71. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、日銀総裁からもお答えがありましたが、長い慣行の中に樹立しておる、国会で予算総則において限度を議決してもらったその範囲内における資金繰りということで長い慣行に基づいてこれが現行のような形になっておるわけであります。ただ、金融自由化の展望と指針、それから円・ドル委員会報告の中に、必ずしもTBを対象としたという意味ではございませんが、短期市場の検討ということは検討課題の一つとして挙げておるというのが現状でございます。
  72. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから今短期市場の育成についてはいろいろ日銀の考え方もお聞きしたわけでございますが、特にこのBA市場については非常に消極的のように理解をしておるわけでありますが、この理由は何かお尋ねいたします。
  73. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 短期の金融市場の育成をしてまいります上におきまして、取引される金融資産、いろいろのものがあろうと思いますが、BAにつきましても、いわゆる銀行引受手形につきましても、当然短期の金融市場において取引される優良なる金融資産であろうというふうに思っております。したがいまして、私どもBAの創設に反対しておるわけではございません。当然そういうものは扱われるべきであろうと思っておりまするが、私ども考え方を申し上げますれば、BAというのは銀行引受手形一つ一つの取引に基づいて振り出される手形でございますので、あるいは金額がばらばらである、あるいは償還期がばらばらであるというようなことがありまして、短期の金融市場で取引されるのに必ずしも政府短期証券ほど適当ではない。そういうことから政府短期証券が中心の金融資産になるであろうというふうな展望を持っておるわけでございます。  そのBA、銀行引受手形につきまして日銀が消極的ではないかというふうに報道されておりまする一つの理由は、その振り出される手形の中で国内の決済をするための単名手形までその中に入れてはどうかという意見があるわけでございます。それを入れませんと余りBAの市場規模が大きくならないということからそういう意見が出てきておるわけでございます。私どもは、その銀行の引き受けがございまするけれども、手形の決済性ということ、特にそれが取引に基づいて振り出されるということから申しますると、単名手形というのがその中に入ることは必ずしも適当でないという見地から、やや異論を持っておるわけでございます。ただ、それを余り強く主張いたしますると、BAの市場規模というものが、銀行引受手形の市場規模が余り大きくならないということもございまするので、銀行の引き受けがあるということもございまするから、その辺はあるいは弾力的に考えなければいけないかなというのが現在の検討の段階でございます。どちらかに決めたというところまではまだ行っておりませんけれども、そういう問題がございます。
  74. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それからこの際総裁にお尋ねしておきますが、六月以降アメリカのプライムレートは一三%から段階的に下げられて、現在では一一%台のレートが出始めております。FRBの短期市場金利の引き下げ政策も進められ、フェデラル・ファンド・レートが九から九・五%程度におさまってきておるわけであります。米国の公定歩合が九%に引き下げられる動きも出始めておると聞いておるわけでございますが、この米国の金融緩和姿勢が我が国の金融政策にどのような影響を及ぼすと考えておられるのか伺いたい。  それと、特に日本の経済の現状、米大統領選後の米国の景気がどうなるのか、そういう点から日本の経済の現状というものが非常に税収にも響くわけでありますが、我々が地方へ参りまして感ずることは、国全体は経済成長はかなり高いと言われながら、実際の肌で感ずるものはそういうものは余りないわけでありますが、そういう我が国の経済の今後の見通しについてどう考えるか。  それともう一つは、内需拡大に向けて金利引き下げの環境が出てきたんではないかと思うがどうか。この三点について最後にお尋ねいたします、
  75. 前川春雄

    参考人前川春雄君) アメリカの景気が上半期かなりの急テンポで回復いたしまして、もし今の成長、景気の回復というものを長続きさせるためには、むしろ若干スローダウンをする方が望ましいということが一般の見方でございました。そういう環境の中で夏場以来スローダウン、やや成長が上期ほどの急成長でなくなってきているという環境にございます。そういう環境の中で米国の金利が少しずつ下がり始めておるわけでございまして、この八月ぐらいに比べますると、今では市場金利は大体二%前後下がってきておるのではないかというふうに思います。今後のアメリカの景気がどういうふうな推移を示しますか、これはちょうど流れの変わり目でございますので、非常に見通しが難しいわけでございまするが、この第四・四半期あるいは今までのようなスローダウンがそのまま続くのかあるいは多少持ち直すのか、この辺のところはなかなか見通しのつけにくいところでございます。  ただ、いずれにいたしましても、今先進国の共通の課題は、現在のようなインフレなき経済成長をいかにして持続させるかというところにあるわけでございまして、そういう意味でアメリカの景気の動向ということは非常にこれからも注意していかなければならないところであろうかというふうに考えます。  このアメリカの金融の緩和というのはそういう環境の中でこれから先もある程度行われるであろうという期待が強まっておるわけでございまして、御案内のようにアメリカの金利は今でも非常に高い、いまだに二けたでございまするので、今の世界のインフレ状況からいえば、このアメリカの高金利というのはいろいろな意味で世界に大きな波紋を投げかけておる。そういうことでこの金利がもう少し下がることが望ましいことでございます。ただ、今申し上げました経済の見通しとも関連いたしまして、どの程度のスピードでどの程度上がるかということにつきましては、まだにわかに結論も出しにくい状況でございます。  日本の経済について着実な回復過程にあるというふうに考えます。ただ、これはいわゆるマクロで総体として見たところでございまして、業種別の跛行性あるいは地域別の跛行性というのはまだもちろん若干残っておるということでございましょう。一般的に申しまして、素材産業は加工産業に比べて若干よくない。しかもそういう中で建設業であるとかあるいは建設業関連のセメント、公共事業関連の業種というのはよくないということも事実でございます。しかし、全体いい方と悪い方と合わせまして総体として見れば、現在は着実な回復過程にあるというふうに考えていいのではないかというふうに思っております。  アメリカの景気いかんということが世界経済にも大きな影響をもたらしまするけれども、今の状態は、今後の見通しにつきましても、まだ大きな変化がうかがわれるという状態ではございません。金利の引き下げ、アメリカの金利というものあるいは公定歩合というものが引き下げられるかどうかよくわかりませんけれども、そういうときに日本としてそれにどういうふうに対応するのかという御質問であったと思います。  今私どもの金融政策は、全体として量的には緩和政策をとっておるわけでございまして、マネーサプライの状況といい、あるいは銀行の貸出金利が依然として低下傾向をたどっているということから申しましても、金融そのものは緩慢な緩和状態が依然として続いておるというふうに思います。そういう中で日本経済にとって一つの問題は、対外国際収支の経常勘定の大幅黒字であり、その黒字にもかかわらず円相場が安いというところでございます。円相場が余り安くなりますると、日本の物価にも影響が出てまいりまするので、私どもは円高方向で安定するようにということを常々念頭に置いて対応しておるわけでございます。  この円相場が国際収支の経常勘定が大幅黒であるにもかかわらず安いということの背景は、大量の長期資本の流出が続いておるということでございまして、この長期資本の流出にはいろいろの理由がございまするけれども、そのうちの大きな要素の一つでございまするが、アメリカの高金利ということがあるわけでございまして、アメリカの高金利、それに対して日本の金利の方が比較的低い水準にある、内外の金利差が大きいということがその大きな要素の一つでございます。そういうことがございまするので、我々も金融政策を遂行してまいりまする上におきましても、円相場に関連いたしまして、この内外金利差というのは非常に大きな障害になっておるわけでございます。そういうこと、そういう環境にございまするので、アメリカの金利が下がるという場合に、それに対応いたしまするのには、そういうふうな内外金利差の動向がどうなるか、それが円相場にどうなるのかということもあわせて対応していかなければならないというふうに考えております。
  76. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 どうもありがとうございました。  そこで、大蔵省にお尋ねをいたしますが、今年度の税収動向でございます。九月までの税収の累計では前年度比六・五%の伸びで、当初の見込みでは六・九%、こういうことで予算を下回っておるわけでありますが、しかし一般にはことしは非常にこれだけ経済の実質成長、名目成長も上方に修正したわけですから、かなり税収増が期待されるということでありますが、現実には予算ほども伸びていない。もちろんお酒なんかが予定どおりいかなかったという点もあると思うんですが、そういう点も踏まえてことしの税収の見通しはどのようにお考えですか。
  77. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この五十九年度の年度を通じます税収の動向につきましては、まだ三分の一程度ということしか実績が出ておりませんので、確たることを申し上げるということは非常に難しい状態でございます。私ども今の塩出委員指摘なさいましたとおり、税目ごとに見てみますと、いわば今御指摘なさったような酒税の伸びが予定よりも低いとか、そういうこともございますが、全般的には今言われますように、経済企画庁独自の案とはいえ、実質成長を上方修正と、こういうことをしていらっしゃる。これはむしろ政治家議論の方がいいかと思って私からお答えするわけでございますが、かなり税目ごとに積み上げておりまして、法人税など相当高い予測を当初からいたしておるわけであります。非常に大ざっぱに申し上げますと、所得税が大体とんとんぐらいかな、最終的に。そしてその他がとんとんで、そうすると問題は法人税だけ。これが伸びれば少しは自然増収が出て、これが伸びなければまあとんとんぐらいかな。  今、年度を通じて六・九が六・五、今おっしゃいましたとおりでございます。それを見ますとちょっと悲観的でございますが、もう一カ月前のやつを見ますと七・〇になっておりましたので、そうすると、六・九でこのまま推移すれば三百億程度の算術計算しますと伸びがあるのかなとか、一喜一憂しております、率直に申しまして。ただ、かなり高目に見込んでおるということからいたしますと、世上言われるような大きな増収というものは期待はできない。ただ、今の段階でも歳入欠陥が出そうでございますという答弁はしなくて済むというのが大体今の平均的な私どもの受けとめ方でございますので、今後の推移を慎重に見守っておる。特に九月決算は法人が余計ございますから、その推移を、十二月にならぬとわかりませんけれども、そういうのを慎重に見守っておるというところでございます。ただ、世上言われますような五千億とか一兆円とかというような話は世上でもだんだんどうも小さくなりつつあるということであります。
  78. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 六十年度の予算編成につきまして二、三お尋ねをいたしますが、大体規模はどの程度か。一般歳出等はどの程度にされるのか。試算ではゼロか三か五か、三%、五%という案があったと思うんですが、どうされるのか。  それから国債整理基金への繰り入れ等は報道では停止であると、こういうようなことが言われておるわけでありますが、そういう点についての大蔵省としての考えはどうかお尋ねをいたします。
  79. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 今三つ御質問があったわけでございますが、まず第一の六十年度予算の規模というお話でございますけれども、歳入歳出両面にわたりまして、今歳出の方は概算要求を受けまして、それを一生懸命今何とか削減できないかということで努力している途中でございます。それから片方歳入の方も、これは税の方が主力でございますけれども、一体どれだけ税収があるかということも、先ほどの大臣等の御答弁からもおわかりのように、六十年度についてまだ数字が出ておりませんので、したがって規模そのものがどれぐらいになるかは今の段階ではわからないというのが事実でございます。  それから二番目の一般歳出がそれではどうかというお話でございます。これにつきましては、我我といたしましては、過去五十八、五十九と一般歳出をほぼゼロないし若干減でやってまいりました。六十年度予算につきましても、今のところ概算要求は一般歳出で二千八百億出っ張っております。その後ベースアップその他で四千強また乗っておりますので七千強出ている。これを先ほど申し上げましたように今一生懸命査定しておりまして、何とかゼロに近づけられないかという努力をしておりますけれども、現段階ではまだめどが立っていないという状況でございます。いずれにいたしましても一生懸命やっているということであります。  それから第三の御質問は、来年度国債整理基金への繰り入れをどうするかということでございますけれども、この問題につきましては、五十九年度の財確法の御審議の際にたびたび本委員会等で大臣初め事務当局が御答弁申し上げましたように、六十年度の定率繰り入れの取り扱いについては、六十年度の財政の状況、それから国債整理基金の資金繰りの状況、これらを考慮しつつ考えていかざるを得ない。それからいずれにいたしましても、現行の減債制度の仕組みは維持するという基本的考え方は常に念頭に置いておかなければいけない。そういうことで今後の予算編成の中でこの問題を適切に対処していくということになろうかと考えております。
  80. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 一兆円赤字国債を減額するというのは、これは大蔵省としてはっきりした方針であると、こう理解していいわけですか。
  81. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) この特例公債の問題についてでありますけれども、これは政府の方針といたしまして六十五年度までに脱却するように努める、努力するということが基本方針でございますので、したがって六十五年度へ向けての、また六十年度という中でこれは考えていかざるを得ないわけでございます。ただ単純に現在の特例公債の発行高を割りますと、中期財政試算にございますように一兆円強ということで減額していくとちょうど六十五年度に脱却できるという計算になるわけであります。それを念頭に置きながら考えていきたいと思っております。
  82. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ぜひひとつ、念頭に置くだけではなしに、そのように実現するように努力してもらいたいと思います。  そこで、来年度の予算編成に伴う税制改正でいろいろな増税案が出されておるわけでありますが、特にOA機器に対する課税、あるいは広告税等が検討課題になっておるようですけれども、これは私の認識では増税なき財政再建という政府の方針にそぐわないものである、このように私は認識しておるわけでありますが、大蔵省はどう認識されておりますか。
  83. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) 六十年度の税制改正検討項目なり具体的な方向につきましては、現段階、本日の段階におきまして具体的なことを申し上げられる状況にはまだないわけでございます。今後税制調査会等の審議を賜りながら徐々に内容を固めていくということでございますので、冒頭まずそのことをお断わり申し上げなければならないわけでございますが、一般的な方向といたしましては、昨年十一月に税制調査会中期答申というものが出ておりまして、各税目につきまして中長期的な検討の方向が示されておりますので、私どもは常々そういうものを勉強しながら、具体的にそれでは六十年度に何をやらせていただくかという結論はこれから詰めていくことでございます。  ただいま御指摘のありました物品税の課税範囲の拡大につきましては、五十九年度の税制改正のときに検討課題として取り上げ、成案を得られなかった問題でございますので、これだけにつきましては本日も具体的なことを申し上げられるわけでございますが、つまりワードプロセッサー初め五つの品目につきまして物品税の課税範囲の中にこれを課税対象として取り上げることについての勉強を引き続きいたしておるわけでございます。  広告課税の問題につきましては、税制調査会の中では賛否両論がございまして、一つ結論的な方向が出ておる問題ではないわけでございますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、適正公平な負担という観点から税制改正見直しを行い、大方の御理解を得られるものについては具体的な税制改正として取り上げさせていただく、結果としてそれで財源的に増収効果が生ずれば、これはまたそれなりに非常にありがたいことだというふうに考えておるわけでございます。
  84. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵大臣にお尋ねしますけれども、いわゆる増税なき財政再建は堅持するというその増税というもの、今まで既存の税制を拡充するのは増税でないとかいろいろな論議があったわけですけれども、しかし今までの論議を踏まえた増税の中に広告税も入るし、あるいは物品税であってもこのようなOA機器のようにむしろ生産のために使うような機械には今まで課税をしていないという点から言うと、これは新税に匹敵いたしますし、そういう意味でこういうものは増税なき財政再建という場合の増税に当たるものであると、このように理解していいわけですか。これを次に上げる上げないということじゃなしに、公約として、今まで言われてきた言葉としてこの増税の中にこれは入っちゃうと、こう理解していいのかどうか。
  85. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず増税なき財政再建というのは理念としてこれは堅持すべきものであるというふうに考えております。  さて、それでは増税とは何ぞや、あるいは増収措置と増税とどう違うか、こういう議論になりますといろんな議論があるところでございますが、先ほど主税局長がお答えいたしましたように、いわば物品税の範囲の拡大というような問題は、物品税の歴史をさかのぼって、その過去からずっと今日までに至る経過を見ますときに、いわゆる便益性というようなものに着目をしてそこに担税力を求めていくということは、税調の御答申の中でもちょうだいしておる問題で、昨年はそれがありましたけれども結論を得るに至らなかったということでございますので、引き続き勉強をさしていただいておる問題でありますので、私はいわゆる理念として掲げる増税なきという言葉の中に含まれておるというものではなく、いわば税の権威であります税調答申に基づく便益性に着目した増収措置ではないかと、こういうように理解をいたしております。
  86. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 広告税は。
  87. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは昨年の答申の中でも賛否両論ということになっておるわけでございますので、税調答申の中ではこれはやるべきであるというふうには書かれておりません。が、いわゆる増税なきに入るか入らぬかという問題でございますが、媒体課税として取り上げた場合は新税、それから交際費と同じ経費否認で考えれば新税という範囲には入らないでございましょう。私も正確に理論づけをしてここで問題を起こそうとは思っておりません。
  88. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから先ほどのマル優の税制の問題ですが、ひとつ国税庁にお尋ねをしたいわけですが、ことしもいろいろ金融機関を検査された結果、昨年よりも一段とマル優の悪用が発見されておると、こういう点は私たちとしても非常に残念に思うわけでありますが、その現状と今後の対応をお尋ねをしたいと思います。
  89. 冨尾一郎

    説明員(冨尾一郎君) マル優の運営の適正化につきましては、私ども国税当局としては、従来から金融機関等に対します調査でございますとか指導を通じましてその適正化に努めてきておるところでございます。また、銀行局の方でも金融機関等に対しまして仮名預金の受け入れをすることにつきましては、そういうことのないように厳しく御指導されているというふうに伺っております。  私どもとしては現在のところ、民間の金融機関のほぼ一〇%程度をめどにいたしまして毎年金融機関のマル優の利用状況の調査をいたしておりますが、五十八事務年度、五十八年七月からことしの五十九年六月までの一年間の事績でございますと、加算税を含めて約二百億円をマル優の不正利用を原因として追徴をいたしております。これまでの結果から見ますと、預金者が意図的に仮名預金あるいは他人の名義をかりるということで不正に利用されているケース、それから場合によれば、金融機関等が預金者から依頼を受けて不適正な処理をしているというケースが見られるわけでございまして、現状としては必ずしも適正なマル優の制度が施行されていたいという感触を持っております。  私どもとしては、このようにマル優の不適正事例が依然として多いのは、預金者の立場から見て、また金融機関の双方で、このマル優制度というものが一種の税の優遇制度であるということを十分に御理解しておられないということではないかというふうに考えておりますが、今後とも金融機関などに対しまして調査指導を通じて適正化に努めてまいりたいというふうに考えております。
  90. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこでこのマル優問題をどうするかということが今税制調査会でも論議が始まったわけでありますが、特に私は大蔵省にお願いしたいことは、幾つかの案が出されておるわけでありますが、そういう一つ一つの案について税収増がどうなるのか、それから金融機関の負担がどうなるのか、あるいは税務上の負担、実際仕事量がどれだけふえるのか、あるいはまた納税者にどれだけの負担がふえるのかと、そういうようなことを税務当局はもっと国民に明らかにして、幾つかあった案のうちの二つの案を推薦しているようですけれども、なぜそうするのかというあたりもよくわからないし、そこをきょう説明をしてもらおうとは思わないんですけれども、今言ったように、もうちょっと一つ制度をこのようにしていけば、税収も大事だと思うんですけれども、しかしそういう今言った三つの人たちの負担というのが、仕事量がどういうようにふえるのかという、こういうような点をもっと明らかにして我々にも示してほしい。この点はどうですか。
  91. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) 非課税貯蓄制度の改革という問題に取り組みます場合に、ただいま御指摘になりましたように、貯蓄者、それから貯蓄取り扱い機関、それから税務当局、この三つを通じまして何らかの形での手間、あるいは新たに税負担を求めます場合には税負担といったものも含めました広い意味での負担とか、あるいはコスト、何がしかのコストがかかってまいるということは、これは避けられないことだと思うわけでございます。したがいまして、先般の税制調査会のこの問題に関する特別部会報告等におきましても、繰り返しこの広い意味でのコストベネフィットの問題が提起されておるわけでございまして、今後税制調査会でこの問題さらに議論を詰めていただく際にも、今申し上げました広い意味でのコストベネフィットという観点がこの問題を考える場合の重要な視点の一つになるというふうに私どもも考えております。したがいまして、もう少し議論が熟していきます段階で具体的にその手間なりコストなりの選択をしていただくための具体的な手がかりになるような、議論の手がかりになるような各種の資料なりあるいは私ども考え方なりというものは具体的に明らかにしていかなければならないというふうに考えております。
  92. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、入場税の問題で大蔵省がこの入場税の免税点を下げると、こういうような話から、最近文化人等を中心にむしろ入場税撤廃の動きがあるわけであります。入場税は昭和十三年に戦費調達のためにつくられたものでありまして、また昭和五十年から免税点が大幅に引き上げられたわけでありますが、そのときの衆議院大蔵委員会の附帯決議等も、順次物価の動向に従って免税点の見直しをやると、こういう附帯決議の趣旨から言うならば、また美術の鑑賞は無税であるのに音楽やお芝居に税がかかるのはどうか、こういうような意見もあるわけでありまして、税収は現在五十九年度で約九十億でございますが、九十億といえば、これは少ないとは言えないかもしれませんが、これを撤廃する考えはないのかどうか。この点はどうでしょうか。
  93. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) 先ほど申し上げましたように、六十年度の税制改正の具体的な事柄についてまだ御説明あるいはお答え申し上げる用意を持っておる段階ではないということをまずお断わりいたしますが、入場税の問題につきまして少なくとも六十年度にこの税負担が実質的に引き上げられるような方向で検討しておるという事実はございません。ただ、ただいま御指摘のありましたように、免税点の引き上げあるいは撤廃等の御要請が従来からあるわけでございますが、これはたびたび引用いたしますけれども、昨年の税調中期答申等におきましても、我が国の間接税体系の中で今後の一つの方向づけとしてサービスに着目した税負担というものは重要な視点の一つであるということの御指摘も受けておりますので、税制当局として入場税を撤廃するというようなことは考えておりません。ただ、免税点の引き上げの問題につきましては、これは昨今のような非常に厳しい財政事情でもございますので、相なるべくはその免税点の引き上げということについては六十年度は見送らせていただきたいというのが税制当局としての願望でございますけれども、これはまた今後税制調査会でどういう御議論が行われますか、その御議論の結果等を踏まえまして対処いたしたいと考えております。
  94. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは土地信託の問題について一問だけお尋ねをしておきますが、特に中曽根内閣は民間の活力を活用すると、そういうようなことが大きな政策の一つでございますが、去る九月十二日全国知事会議でも、国は土地信託を活用した遊休国有地の開発を検討している、各自治体もぜひ参考にしてほしい、こういうように述べたと伝えられておるわけであります。  そこで、信託銀行等に国が土地を信託するというようなことは現在の法制ではできないわけでありますが、こういう点、私は今後の方向として、国の土地であっても民間の知恵によって活用していく、そういう方向を進めるためにも大蔵省として法改正を検討すべきではないかと思うのでありますが、この点の御意見を承っておきます。
  95. 中田一男

    説明員(中田一男君) 土地の信託の問題というのはある意味では非常にユニークな制度でございまして、ことしの三月に民間ベースで第一号の土地信託契約が締結されましてから、民間のベースではかなり進んでおるわけでございます。これが非常に広がっております理由といたしましては、例えば土地の所有権を実質的に手放すことなくしかも地主として面接開発資金を用意しておらなくても土地の有効利用を図ることができるし、また開発利益を長期にわたって享受することができる。これは税制の問題とも絡んでくるわけでございます。さらに信託契約終了後には土地、建物について返還を受けることができる。こんな特徴がございますし、特に個人の土地所有者の場合にはこういった土地の有効利用について、経験、ノーハウ、あるいは信用力、こういったものが十分ではございませんので、信託銀行の力をかりると非常にそれが有効に動くというメリットがあるわけでございます。  しかしながら、一方、土地信託には、例えば信託期間終了後土地が所有者に戻ってくると申しましても、現実にはその上に建物が建っており、そこに人が住んでおるということであれば、その状態のまま戻ってくるわけですから、決して更地で再利用できるというふうな状況ではないというような問題がございます。あるいはまた信託契約でございますので、順調にいって黒字が出ればいいんですけれども、順調にいかなくて赤字が出た場合には、信託契約終了後赤字と同時に財産が戻ってくるというような問題などがございまして、どうも現在の国有財産法あるいは予決令等を見ておりましても、土地の信託ということを予定して法制ができておるというふうにはなかなか理解できない。したがって、大々的に国が土地の信託というような制度を活用するとするならば、そういった法制上の整備をしておいた方がいいであろう、そういうことが必要になるんじゃないかという感じがしておるわけでございます。  したがいまして、こういう問題についていろいろと我々も勉強しておるところでございますが、あわせて先ほど申し上げましたようなメリットというのは、個人の土地所有者の場合などには非常に大きく働くわけですけれども、国の場合にはそれぞれ目的を持って土地を使っておるというふうな状況でございますので、果たして国が土地を信託に出して、なるほど信託でなきゃこれは活用できないねというふうな事案が具体的にあるのかどうか、そういうことも含めまして法制上の問題、実態上の問題、両々検討を続けておるというのが現状でございます。
  96. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後の問題で、いわゆる投資顧問業法の制定についてお尋ねをしたいと思います。  本年五月の大蔵委員会で私も法制定の必要性を主張したわけでございますが、当局はまだその制定には積極的でなかったわけでありますけれども、先般の投資ジャーナル事件等々をきっかけに法制定の機運が高まっているようにも理解をしておるわけでありますが、この点どのような認識かお伺いをいたします。  それともう一点は、先般の投資ジャーナル事件等は、何も投資顧問業法というものができる前においても、これは明らかに異常であり、そういうものを排除する努力が必要であると思うのでございますが、そういう売買をチェックすべく売買審査の機能、例えば証券取引所の売買審査部とか大蔵省の流通市場課等が十分に機能を発揮して、こういうものを未然に防ぐべき努力をすべきではないか、そういう点についてのお考えを承ります。
  97. 橋本貞夫

    説明員(橋本貞夫君) まず第一点の投資顧問業に対する法的整備のあり方でございますが、摘のように、当委員会におきましても従来からの御議論があったところであります。最近の幾つかの事件を契機に、何らかの措置を講ずるべきではないかという声が大変強くなってきたものと認識しております。  私どもといたしましても、これまでのような対応に加えまして、投資顧問業に関する何らかの法的規制の可否について検討を行う必要があると考えておりまして、このため、去る十月十七日の証券取引審議会の総会におきまして、当面の株式市場の諸問題の一つとしてこの点をお諮りしたわけでございます。  その際、多くの委員から御議論がございました。規制の対象とか方法等の問題点についても、あるいは健全な投資顧問業者の育成のあり方についても御議論がございましたけれども、積極論、消極論いずれも出ておりまして、結局のところは、今後詰めるべき問題が多いので、何か特別部会のようなものを設けて法的規制の可否も含めて投資顧問業等のあり方について掘り下げた検討を行ってはどうかということになり、今鋭意準備をしておるところでございます。  それから第二の御質問の方でございますが、証券市場におきます株価操作等を含む不公正な株価形成につきましては、投資顧問業者のみならず、何人もこれを行うあるいは疑いの持たれることのないように、御指摘のように証券取引所あるいは大蔵省においてチェックする体制を整えておるところでございまして、今後ともそういう形で十分に努力してまいりたい、そういうふうに思っております。
  98. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は一点だけ関連質問しておきたいと思います。  先ほど同僚の塩出理事から入場税の問題で質問がございました。私は日本文化を守り育てるために、また進めるためにこのような舞台入場税を初め入場税は撤廃すべきだ、このように強く思います。そういう意味で、先ほどの塩出質問に対しまして梅澤主税局長から、今現在撤廃は考えていない、また引き上げも考えていないとおっしゃいまして、大変残念に思いますが、遺憾に思いますが、少なくとも引き下げるというようなことは絶対考えていないんでしょうね。その点どうですか。
  99. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) 先ほど申し上げましたように、入場税の税負担を実質的に引き上げるような方向、それは免税点の引き下げということとかあるいは税率の引き上げとかいろいろあると思うんでございますが、そういった方向での検討はいたしておりませんということは申し上げました。
  100. 多田省吾

    ○多田省吾君 大臣に最後にお尋ねしますが、塩出委員も質問しましたように、昭和十三年に戦費調達のためにつくられたようなこういった入場税、舞台入場税を初め、その他の入場税も含めて撤廃の方向で進めるべきだ、また、できれば全部撤廃すべきだと、私はこういう考えでございますが、大臣としてはこの問題どうお考えですか。
  101. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに御指摘なさいましたように、入場税が初めて我が国税制の中に取り入れられたときの考え方はそのようなものでありました。が、私どもが一応バイブルとしていつも御提示しておるのは、いわば最も近いところにおける税制調査会答申でございます。その答申、昨年暮れの答申の中では、社会経済情勢変化の中でサービスというものに着目した担税力検討すべきであると、こういう指摘がなされておるわけであります。この指摘がある限りにおいて、私どもは撤廃の方向で検討しますとかいうお答えはできないという立場にございます。  また、ある文化人によりますならば、そういう入場税は、いわば見る側の意見として出るべきものであって、芸術というものにみずから崇高な自信を持っておる立場から言えば、どんどんそういうものが高くなっても、それに対応する自己研さんこそより芸術に対する崇高な挑戦である、そう言う方も時にいらっしゃるということを私は最近感じました。それだけでございます。
  102. 多田省吾

    ○多田省吾君 時間ですから簡単に言いますけれども、私は、それは暴論でございまして、文化的な世界各国の先進国の税制と比べましても、このような文化に入場税を課するなんというのは日本の非常によくない税の一つでございまして、そういうものは早く撤廃すべきだ、そういう方向で進むべきだと、このように私は強く要求しまして終わります。
  103. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最初に利子配当課税問題ですが、先ほどの竹田委員の質問に対して、結局は税調答申待ちだということで明確な答弁がなかったんです。しかし私は答弁できると思うんですね。一つは、これは税制の基本的方向として総合課税の方向に向かっているんだ、またその態度が示された、この点が第一点です。第二点は、これも先ほど来の議論にありましたけれども議論されている現在の問題は、非課税貯蓄制度をどうするかに限定されたいろんな案がある、結局そういうわけですね。  第一問との関係で、大蔵省総合課税化をあきらめたのか、あきらめないのか、これについて端的にお答えいただきたいと思うんです。
  104. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) 先ほどの竹田委員の御質問にもお答えいたしましたように、現在中間段階の御報告ではございますけれども、先般の利子配当特別部会中間報告の御指摘では、基本的には、利子配当につきましては、総合課税という原則を維持しつつ、源泉分離選択課税を並置することはそれなりに意義がある、あるいは現実問題としてやむを得ないという位置づけが、現在中間段階として行われておるわけでございますが、最終的にどういう御答申をいただけますか、これはグリーンカード問題の取り扱いも含めまして、いましばらく税制調査会の御審議を見守ってまいりたいということでございます。
  105. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 まあ、時間がないんで次の問題に入りますが、大臣に大蔵行政の基本的な態度をお聞きしたいんです。  いろんな大蔵関係の法案についてこの委員会議論します。大蔵省から答弁がありますね。大蔵省のその法案に関する答弁が今度は部下の方に、例えば税務行政であれば実際税務署の方に通達で出されます。ここで答弁したことと矛盾するような、あるいは食い違うようなそういう通達は出していないと、そう断言できますか。これが第一点  それから、もし食い違っておった場合には、もちろんこの国会の答弁の方が優先すると思うわけです。そういう場合には、そういう事実を認めれば、これは速やかに通達の方を訂正する意思があるかどうかお答えいただきたいと思います。
  106. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ここで答弁したことは、これは国権の最高機関たる国会の場で私が答弁するとすれば、大蔵省あるいは政府を代表して答弁するわけでございますから、重い責任を負荷されたものである。したがって、通達等もその範囲を逸脱するということはないというふうに考えております。
  107. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それは大臣だけじゃなくて、大臣にかわって答弁する局長あるいは部長の答弁も同じだと思うんです。  そこで、これはまだ記憶に新たなところですが、ことしの三月三十日、私はちょうど記帳義務化の問題についてこういう質問をしたんです。特に青色について大蔵省の基準が実際守られているかどうか、実際守られていない場合があるんではないか、もしこれを守っていないような事例があった場合に、実際の扱いとして全部青色が取り消されるのかどうか。しかし実際は守っていないということで取り消せば、今やっているうちの大半がみんな青でなくなってしまうという事実を指摘したんです。  それを受けて渡辺部長は何点か答弁しております。確認してみますと、一つは、青色承認取り消しは、納税者や取引先などに非常に重大な影響を与える、これを勘案して取り消しは慎重に行っている、青色取り消しの数はそんなに多くない、また記帳が大蔵省令どおりになっていない事実もあろうかと思う。私の指摘をお認めになっている。さらに、そういう場合には、関係の団体や税務署員の方から指導するという格好で運営している。この指導という問題を大変強調されまして、多少の記載事項の不遵守の件については指導をもって臨んでいる。あるいは青色の記帳については指導的態度をもって臨んでおり、多少の書き違い、間違いがあっても強いてとがめだてはしない。全体として帳簿がどうにもならない程度に達しているときは、数は少ないが取り消しをすると。さらに続けて、今回お願いする記帳の内容は、より簡易なものであると。  大体こういう答弁をされたんですが、この趣旨は、大蔵省の現在とっている態度、これをそのままお答えになったというぐあいに承ってよろしいですか。
  108. 冨尾一郎

    説明員(冨尾一郎君) さきの百一国会におきまして、近藤先生の御質問に対しまして渡辺直税部長から、先生御指摘のような趣旨で答弁をいたしたいということは私ども承知いたしております。
  109. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうしますと、その基準のとおりでなくても、いきなり取り消しというのは国税庁の方針ではないと、こう理解もできるわけですね。それから多少の違いがあっても指導で臨むと。  ところが、ことしの五月、国税庁直税部所得税課から各税務署に出された「記帳制度等の執行体制に関する当面の応答要領」というのがあります。該当部分を見てみますと、「問」として、青色の特典は、予定する基準ですね、基準を守っていない場合にもこれを享受させるのかという問いに対してこういう回答です。「青色申告の新規申請者などを中心に記帳の不慣れな者に対しては、税理士会や商工会議所」「などの協力を得て記帳指導を継続して実施」しているということを答えた後、「しかし、中には依然として記帳及び保存状況に問題がある者が、一部にいることも事実であり、こうした者については、青色申告の承認取消しや取り止めをしようとしており、杜撰な記帳や保存状態を放置したまま青色申告の特典だけを利用させるというようなことはしていない。」。  私は、この回答を否定するわけじゃないんだけれども、ここの委員会の場では、指導をまず第一に行い、その機能をまず基礎とすると言いながら、守っていないものが当然あるわけですから、私の質問に対してもそういう状況をお認めになっている。しかし、こうした者については、指導は全然書いてなくて、申告の取り消しそして取りやめ、これで臨むと。こうなりますと、竹下さんの部下五万の税務署の署員がおりますが、みんな忠実なんですよ、国会議論を知りませんから。これが現場では、まずこれによって行政をやるわけです。となれば、方針は指導ではなくて取り消し、取りやめだと、こういうことで臨みはしないか。この点どうでしょうか。
  110. 冨尾一郎

    説明員(冨尾一郎君) 今御指摘のありました「当面の応答要領」ということの中の記載は、私どもとしては二つポイントがあるというふうに考えております。  まず第一点は、青色申告をお始めになった納税者の方々はまだ記帳にふなれでございますので、私どもの方で十分な御指導をしてきちんとした青色申告の帳簿をつけていただく、つまりちゃんとした青色申告者になっていただくという方向で御指導をさしていただくということでございます。そういう意味でいろんな形で納税者の方々の希望も私ども伺いながら指導の体制を整えているということでございます。また、その後、一応の育成期間と言ったら失礼でございますけれども、一本立ちの記帳ができるような方々につきましても、必要に応じまして帳簿の確認をさしていただくということによりまして、青色申告をされる以上は、また青色申告の特典を税法上受けられる以上は、きちんとした帳簿をつけていただくようにお願いをしていくということが第一点でございます。  しかし、青色申告は御承知のとおり一定の基準の帳簿をつけていただく、また帳簿書類等を保存していただくということを前提にしたものでございますので、基本的にこのような中に当てはまらない納税者に対しまして、何もしない方に対しまして青色申告の特典をルーズに認めるということは制度の趣旨に反しますので、その場合には青色申告の取り消しをいたします場合もありますし、また今後に向かって青色申告を取りやめていただくということもあるわけでございまして、私どもとしては、青色申告について基本的に指導的立場で臨むということはそのとおりでございますけれども、納税者の今後の青色申告として誠実に記帳していただくという納税者自身の基本的な御努力ということを尊重していくということを基本にしておるということを御理解いただきたいと思っております。
  111. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 質問をすり違えちゃいかぬですね。私は何も記帳をしない者を保護しろなんて言ってないんですよ。一生懸命記帳している、しかし能力その他仕事の関係でできない人がおるんですね。現に私が指摘して渡辺部長もこれを是認されたようにそういうのがたくさんおるんだから、基準どおりやってない者は、それをどうするのか。そうしたら、それに対しては、国会の答弁では指導で臨むと言うんですね。これは最後にこう言っているんですよ。一番最後の方でも、「そういう意味で私ども指導とこの取りやめの運用によりまして青色制度の実効を期しておるわけでございます。」。ところが、こちらには指導は何もなくて取り消しと取りやめですよ。大臣、これは全然趣旨が違うでしょう、ここには指導が全然入ってないんです。こういうことでいいのか。  これは現に衆議院でも我が党の正森議員の立ち会い問題に対する指摘で、正森議員の指摘したことを全然載せないで大蔵省に都合のいい部分だけ載せたものを配ったわけですね。それで正森議員から指摘されて、今税務署に行きますと追加した資料が行っています、こういうのが。正森議員にこれはもう徹底的に聞かれたでしょう。それと同じことが私の質問についてもあるんですよ。こういうことではここの国会議論が正確に第一線の現場に反映しないじゃないか。  ですから、私はここで具体的に指摘したいんです。この中で今指摘されておるように、「こうした者については」のその後にこう指摘すべきなんです、まず指導をもって臨みと。その後取り消しや取りやめがあったっていいでしょう。この一番大事な、ここでは指導が基本でありますと何回も何回も繰り返ししゃべったことを全然欠落させる。これは全く意図的じゃありませんか。現場では指導なんかしないでいきなり取り消しすることがどんどん起きますよ、こういうことが。どうですか、これを是正しますか。大臣にお答えいただきたいんです。事務的なことはいいから、大臣です。
  112. 冨尾一郎

    説明員(冨尾一郎君) 私どもといたしましては、基本的には青色申告者がきちんとした帳簿をつけていこうという努力をされているのをお手伝いするということを基本に考えているわけでございまして、これは私どもの立場から申しまして、指導的な立場で臨むということで首尾一貫しているつもりでございますし、そのために指導体制、それから個々の納税者に対する指導というのをやっているわけでございますので、私どもとして青色申告の取り消しというのは、あくまでも青色申告の記帳の内容に基づいてこれでは青色申告としての特典が与えられないという場合で、十分にいろんな形で納税者の接触を通じまして指導するという基本的な立場にはいささかも変わりがないというふうに理解しております。
  113. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 その立場に変わりがなければ、これは今度の制度改正に伴う「応答要領」ですからいろいろ質問がある。当然この問題が出てくるんですよね。それに対する回答に一番大事な指導に変わりがないと言うんだから入れたらいいんじゃないですか、ないんですから。これは衆参で同じように、大臣言われたとおり、国権の最高機関で答弁されたことを趣旨が全然曲がって大事なことが欠落して現場に行って一体どうなるのか。ここで答えたことと全然違う行政が行われるんです。これは大臣今あるいは初めて聞いたかもしれぬけれども大臣の率直な答弁をいただきたいと思うんです。
  114. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 事の実態が私には理解できませんので、私の答弁の能力の限界を超しております。
  115. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大臣のまさに権限の範囲ですよ。大臣にかわって答えた局長、部長の答弁が、大臣言ったとおり、まさにそれは対国民の関係ではそれが法に関する見解なんです。現場でもし違っておる——今、私のやりとりを聞いておって指導が入ってないことは間違いないじゃないですか。だとすれば、大臣の答弁としてはこういう答弁であるべきなんです。よく検討してそういうことが載ってなければひとつ考えてみましょうと。そういう答弁で初めてこれは私ども指摘に対する回答になる。全然権限外だと。とんでもないことですよ。
  116. 冨尾一郎

    説明員(冨尾一郎君) 大臣が答弁をされる前にちょっと私の方から一言申し上げさせていただきますと、実は先生も御指摘の「応答要領」の問いの問題は、青色申告の特典は、法令の予定する記帳及び保存をしていなければ認められないのかというそちらの方からの御質問でございます。私どもとしては、きちんと記帳していただかなければ、私どもとしては困りますということを強調するためにこのような構成をとっておるわけでございまして、実はこの「応答要領」はこの一項だけではございません。いろいろと他にも指導すべきことも含めて全体としてのシステムで書いてございますので、この一つの問いの表現だけでお取り上げになって、これでどうということでなしに、全体としての御理解を賜りたいというふうにお願いしたいと思います。
  117. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いや、そうではないんですよ。これは青色についてはここしか書いてないんだから、ああいうことではだめなんで、大臣お答えできませんか。
  118. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私が申しましたのは、事の実態を承知していないで答えるということは非礼にも当たるし、私の能力の限界を超しておる、こう申したわけでございまして、権限外とかということを申したわけじゃございません。が、実態が、私は問答を聞きながら理解できないものですから、それで理解できないままにお答えするというのは、まさに非礼この上もないことだと思ったわけです。
  119. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 しかし、基本的には国会の答弁が優先するということですので、これはまた指摘をしたいと思うので、さらに大事な問題がありますから、あと残された時間質問したいと思います。  先ほど来年度税制については随分渋い話ばかりだったんですが、そこで大臣に提案したいのは、金がかからない、あるいは税の減収が少ない、それで国民に喜んでもらえ、かつ国土の保全にも役立つというようなものがあれば、大臣、取り上げたらよろしいと思うんですが、そういうお気持ちはありますか。これも端的にお答えいただきたい。
  120. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 税制の上で取り上げるというような問題についても、税理論体系の中で消化される問題でない限りにおいては観念的にお答えするわけにはいかないと、こういうことです。
  121. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 みんな大臣の能力を超える質問でもないと思うんですが。  私がこれから提案したいのはナショナル・トラスト関係で、今自然を守るために本来国や自治体がやるべきことをみんなの自発的な意思で、いろいろ土地を買ったり、あるいは相続財産をぽんとそこに寄附したりというようなことがあるんですね。ところが、今それが進まない理由としては税制上の問題なんです。詳しく御紹介する、本当は各地でいろいろやっていることがあるんですが、もう時間がなくなったので、問題点だけ指摘をしますと、そういう団体、一つは自治体主導のそういう自然保護の団体がありますし、あるいはそうでないもの、あるいは両方ミックスしたものがあります。ことしの十一月四日に「ナショナル・トラストをすすめる全国の会」が開かれました。そこで、まさにその一番ネックはこの税制問題だということで、次の三点を要望しております。「(1)ナショナル・トラスト活動に対し、寄付金を行った場合、掛付金を控除する所得税課税の特例および損金算入の法人税の課税特例の新設。(2)ナショナル・トラスト活動に対し相続財産を贈与した場合における当該財産に係る相続税の非課税措置。(3)ナショナル・トラスト活動により取得し、管理する不動産に対する不動産取得税、登録免許税および固定資産税、特別土地保有税の非課税措置」  これは一つは自治省関係もありますけれども、こういう問題、これはもう既に環境庁もこの問題で要望しておるようです。こういうものを積極的に受けとめ、そして税制上私はそんなに矛盾するものはないと思うんですが、前向きにこれを受けとめていく御意思があるかどうか。いかがですか。
  122. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) ナショナル・トラストの寄附金関連で、今おっしゃいましたように、所得税それから法人税の課税の特例、それから相続税の非課税措置、それから流通税に対する若干の非課税措置の要望が、環境庁から来年度の税制改正の項目として出ておることは事、実でございまして、ただいま環境庁御当局からヒアリングを始めたという段階でございます。したがいまして、本日の段階で具体的にどうこうするということをお答えできる段階ではないということを御了承賜りたいと思います。
  123. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間が来ちゃったので、残念ですが、終わります。
  124. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は自賠責の保険料率の問題についてお尋ねをしたいと思います。  現在自賠責の料率引き上げ問題というのは審議会にかかっておりまして、審議会が答申を出しますと、やがてそれを受けて大蔵大臣のところに料率アップの申請が出てまいると思います。そのときに大蔵大臣は、能率的に経営されているかどうか、また適正な原価を償うものであるかどうかという目で見ながら、妥当なものであったら許可をしなければならないことになっております。その限りでは、能率的に経営されているか、あるいは適正な原価であるかどうかということは御関心があるだろうと思いますので、ここで質問をするわけであります。話が込み入った質問になるかもしれませんので、後ほど御意見を伺うことにして、当面は事務当局の御答弁で結構であります。  問題は、この自賠責というのはいかなる性質の責任なんだろうか。物の本を読んでみますと、ある本では、自動車損害賠償保障法第三条は無過失責任を認めた規定であると書いてあります。別な本では、事実上は無過失責任に近い、こう書いてあります。三番目は条件つき無過失責任である。四番目、無過失責任に近い責任である。私はこれは間違ったことを言っているとは毛頭思っておりません。もともと法律用語とすると、無過失責任というのは非常に幅が広い概念でありまして、したがって、こういった御表現をとるのも私はあながち間違いではないと思います。ただ、問題なのは、この無過失責任というのは、一般的な日本語として見ますと非常にわかりやすいんです。ということを逆に言うと、誤解を招きやすい。したがって、無過失責任なんだから被害者側は何をしようと関係ないというぐあいに誤解を生んでまいりますと、またそうだとしますと、実は保険財政が放漫になるおそれがある。その意味で実は細かい点ですが込み入った質問をしているわけです。厳密に考えて、自賠責というのは無過失責任なんだろうか、そうではないんだろうか、これが私の第一の御質問なんです。  こう伺う意味をもう少し申し上げますと、例の医療費の問題について日本医師会が見解を出しております。中を見ますと、こう書いてあります。厚生省側の方では健康保険を使ってもいいんですよと言うんですが、医師会の方はだめです、あくまでも自賠責でやるんですという理由として書いてあるのは、こう書いてあるんです。「自賠法の適用される自動車事故については、無過失責任に近い責任を加害者に負わせるとともに、この賠償責任が強制保険制度によって裏打ちされているのであり、被害者は確実に保険金がとれる」。ここまで来ますと私はこの文章は間違いだと思います。  そこで、この自賠責法に言うところの自賠責というのは、厳密に言って、無過失賠償責任なんだろうか、あるいは過失賠償責任なんだろうか。これは大蔵省、運輸省、どちらからでも結構であります。お答えください。
  125. 福島義章

    説明員(福島義章君) 先生お尋ねの件は、自動車損害賠償保障法第三条についての御質問だろうと思います。自動車損害賠償保障法第三条によりますと、自動車事故が起きました場合の損害賠償責任につきましては、自動車事故が非常に複雑な態様のものであって、これを通常の不法行為の場合と同じように被害者側に過失の挙証責任を負わせるというのは著しく被害者側にとって不利になるというおそれがある関係から、挙証責任を民法上の不法行為責任と異なりまして、加害者側に転換いたしております。  さらに、その挙証すべき内容といたしましては、第一番目に「自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと」、第二番目に「被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと」、第三番目に「自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと」と、この三つの要件を挙証すべきことを求めております。そういう意味におきまして、この自動車事故の場合の自賠法第三条によります損害賠償責任というものは、実質的に無過失責任に非常に近い形の責任であるということであろうというふうに解釈しております。
  126. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 今御説明になったとおりなんですが、端的に伺います。厳密に言って、この責任というのは過失責任なんでしょうか、無過失責任なんでしょうか。どちらですか。
  127. 福島義章

    説明員(福島義章君) 過失責任か無過失責任かという二者択一の形で求められれば、過失責任と言わざるを得ないと思いますけれども、実質的には、今申し上げましたように、無過失責任に非常に近いということでございます。
  128. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 大蔵省の担当部局も同じ見解でございますか。
  129. 加茂文治

    説明員(加茂文治君) 同じ見解でございます。
  130. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 これは実は議論の前がありまして、厳密に言いますと、私の言い方を整理しましょうか。第三条を言うとこうなっているんです。自動車の運行者に責任があることをまず明らかにした。これは主文であります。本文ですね。ただし書きでは、ただし過失がないことを明らかにした場合にはその限りではない、こうなっているんです。本文とただし書きというのは一体のものとして読むのがこれは法の常識なんです。したがって、書き方が逆になっていることは事実だけれども、逆になっているからといって責任の性格まで変えるというのは、これは読み間違いです。したがって、これはどっちかと聞かれたら過失責任なんですよ。いいですか。主文で責任は自動車の運行者にあることをまず明らかにしております。ただし書きで、だけど過失がないことが明らかにされたらその限りではないと書いてある。書き方は民法七百九条とは逆ですよ。逆だけれども、主文とただし書きは一体のものとして読むのが常識なんですから、したがってどっちなんだと聞かれたら、これは過失責任なんです。過失責任なんだけど、被害者保護があってちょっと無過失損害賠償責任の方を向いていますと言うのならいい。本質はあくまでも過失責任なんです。その点については異論はないわけでしょう。
  131. 福島義章

    説明員(福島義章君) 先ほど御答弁しましたとおりに、過失責任か無過失責任かという二者択一の形で求められましたならば、先生おっしゃいますように過失責任だと言わざるを得ないと思いますけれども、実質的には非常に無過失に近いということを申し上げているわけでございます。
  132. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 最近、男が女に近寄ってきた、近くなったという俗語がありますけれども、そのときの男というのは最後まで男ですよ。男が女になるわけじゃないですよ。こうなったら内閣法制局に来てもらったらよかったかなと思うのだけれども、内閣法制局に聞いたところでは、これはあくまでも民法七百九条過失責任の範疇内なんです。だけれども、問題はこの過失責任、要するに過失なければ損害賠償責任なしというこの原則と被害者保護とどうやって両立させるかというときに立法者の悩みがあったわけでしょう。したがって、挙証責任は加害者に転嫁をします、同時に挙証責任の内容は多岐にわたらせました、こうなっているのですね。多岐にわたらせようと何だろうと、挙証責任の転嫁というのは裁判の心証の問題でしょう。責任の性格まで決めるものではないのですよ。  そこで、内閣法制局が大体同じことを言っていますよと言うから、じゃきょう出なくてもいいと言った。だから僕が内閣法制局の言葉をそのままオウム返しに言えば、どっちかと聞かれりゃ過失責任なんだ、あくまでも民法七百九条、あの流れに沿うものだと内閣法布局も言ってしるんです。  なぜ私がこんなことを議論するかといいますと、大蔵省の担当者は私にこう言ったのです。これは無過失損害賠償責任ですと。どうしてと言ったら、三条に書いてありますと。それから運輸省に聞いたら、一々過失の有無をとりたてて議論していたら被害者の保護はできません、これは事車上無過失損害賠償責任なんです、むしろ社会保障政策として理解すべきですと、そう言ったの。気持ちはわかるのですよ。しかし、あくまで法律に従って行政は動かなきゃいかぬわけです。その黄味でいってこの責任はどうか。あくまでも過失賠償責任だとお認めになりますか。
  133. 福島義章

    説明員(福島義章君) 民法七百九条の過失責任の範疇には入ってないと思いますけれども、これは民法七百九条のいわば特別法としての規定にたっているわけでございますので、そういう意味では民法七百九条とは異なりますけれども、先生おっしゃいますように、過失か無過失か、過失責任か無過失責任かと問われれば、過失責任であると言わざるを得ないというふうに思っております。
  134. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 過失責任と認めて何がぐあいが悪いのですか。あなたは今二つのことを目的にしているわけです。一つは被害者保護ですよ。もう一つは過失なければ損害賠償責任なしというのは、社会の公平、別の言葉で言うと公共の福祉ですよね。この両方を守るためにどうするかというのが立法者の悩みであり、各国でこの種法律が千差万別になっている理由でしょう。あくまでこれは七百九条の範疇の中なのですよ。責任は自動車運行者にある、しかし無過失の場合にはその限りではない。書き方が逆になっているだけじゃないですか。  それじゃ、なぜそう言うかといいますと、これが過失損害賠償責任だという性格をはっきり認識したら、過失の有無を、程度は別にして、厳しく問いただしていかなければいけないことになるでしょう。それがそうではなくて、これは無過失賠償責任なんだ、したがって何があろうと払うんだ、こうなってしまうと何か不公平なんではないか、この議論が自賠責をめぐって絶えないのはそのためでしょう。したがって、過失賠償責任を認めたら、例えて言うと過失相殺はもっと広範に認めなければいけませんね。ところが過失相殺——相手方にも過失があった場合、この過失相殺というのは自賠責の案件の中で何%あるか。わずかに〇・九三%、最近の例で。ということは、ほとんど見てないということだよ。  では伺いますが、過失相殺というのはどの程度やられているんですか。
  135. 福島義章

    説明員(福島義章君) 第三条の過失責任か無過失責任かという問題につきましては、加害者側の過失の問題でございますが、過失相殺という話になってまいりますと、これは第三条の責任を前提といたしまして、被害者側の過失について損害賠償額の算定に当たってこれを考慮していくということになろうかと思います。  自賠責保険の取り扱いにおきましては、この自賠責保険の目的といいますか、本旨が被害者保護ということを強く目的といたしております関係上、実務的な取り扱いといたしましては、重大な過失がある場合に限りまして過失相殺を行うという取り扱いをいたしております。
  136. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 今の重大な過失というのはこの法律のどこに書いてあるんですか。
  137. 福島義章

    説明員(福島義章君) 損害賠償額といいますか、自賠責保険の支払いの場合の実務的な取り扱いとしてそういう処理をしているということでございまして、法律上に直接的な規定はございません。
  138. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 法律の方は四条で「損害賠償の責任については、前条の規定によるほか、民法の規定による。」とありますね。民法七百二十二条、当然それは不法行為における過失相殺が書いてある。そのときに過失相殺するかしないかはだれが決めることになっているんですか。
  139. 福島義章

    説明員(福島義章君) 損害賠償額の認定につきまして争いがございます場合には、当然最終的には裁判所の方で決着が図られるということになるわけでございます。
  140. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 最終的もヘチマもなくて、民法七百二十二条には「裁判所ハ」と書いてある。時間がないのでこの問題は後にまた譲ります、もう一つ聞きたいので。  私は、今の問題は、要するになぜ言っているかというと、無過失賠償責任というのは法律用語としては幅が広いんですよ、これは。ところが、一般用語とするといかにもわかりやすい。わかりやすいことが誤解を招き、しかもその上に被害者保護であるということを盾にとると保険財政が放漫になりはしないか、なってはいませんかという質問なんです。後にこれは譲ります。  もう一つ、適正な原価であるかどうかという点について伺いますが、医療費の支払いをする場合、何が適正な原価なんですか。この自賠責というのは強制賠償保険ですよ。国が六割再保険しているんです。最も公的な性格が強い。そこの中で自賠責法の精神を受けて、最低保障か基本保障かは別にして、ある社会通念に立った医療費を保障しなきゃいかぬ。片一方では社会保険診療報酬基準がある。まずだれでも考えるのは、これが参考になるんだろうな、こうなりますよね。ところが、実際にはどうかというと民間自由診療で、社会保険診療基準に対して倍以上払っている。倍以上払っているというのは適正な原価なんだろうか。ところが困るのは、この診療費の支払いに対して一体大蔵省が見るのか運輸省が見るのか、どう伺ってみても定かではないんですが、どちらかの省庁でも結構です、今の自由診療に対して社会保険診療基準よりも倍以上払っているのは正当な原価なんでしょうか、お答えください。
  141. 加茂文治

    説明員(加茂文治君) 医療費の適正化の問題でございますが、確かに先生御指摘のとおり、自由診療が八六%で健保が一四%でございます。  この問題につきましては、実は厚生省の見解といたしましては、これはどちらの保険を適用しても差し支えないと、こういう見解が出ております。これは四十三年でございます。  これに対して医師会は、交通事故の医療については、これは救急医療の性格を持っておること、それから複雑な事故がある、そういうような問題もありますので、医師会の言い方によりますと、制限診療であるところの健保の適用を受けるのはおかしい、したがってこれは自由診療であるべきだという見解で一貫して現在までまいっておるわけでございます。したがいまして、自由診療か保険診療かということについては私どもはどちらでも適用できるというふうに考えておりますけれども、そういうことで現在は自由診療の割合が圧倒的に多いわけでございます。  ただ、この医療費の適正化の問題につきましては、現在までに例えば診療報酬明細書の提出を義務づけましてそれについての審査を行っておりますし、また高額医療あるいは濃厚診療等の疑いがあるものにつきましては、顧問医の助言を得ながら医療費のチェックの担当者が個別の医療機関に対して照会を行い、あるいは改善の依頼をしていく、こういうことでやってきております。また、地方の医師会と損保協会の地方の支部とでいろいろ話し合いいたしまして、今申しましたように、平均で自由診療の単価は健保よりも二・一八倍高いわけでございますが、これも地方によっていろんな差がございますが、なるべくその単価を引き下げるように協力を依頼しておるところでございます。  しかしながら、このような努力には一定の限界がございます。したがいまして、この医療費の適正化の問題につきましては、自賠責審議会において現在審議をいただいておるわけでございますが、最近審議会におきまして診療報酬基準案を作成すべきであるという意見が出てきております。私どもといたしましては、審議会でそういう方向の答申をいただくことになった場合には、その意見に従いまして、現在集積されつつあります医療費統計等を参考に基準案の作成に努力をしてまいりたいと考えております。
  142. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 お答えが私はずれていると思うのです。被害者が社会保険診療にかかるかどうか、自由診療にかかるか、これは被害者の自由なのかもしれませんね。どっちでもいいのですよ。私は特別室に入ってゆっくり治してもらうんだ、結構じゃないですか。それと国が六割再保険している、しかも最も公的な強制力が強い保険が払う最低保障。基準が逆でしょう。したがって自賠責としては医療費はここまでであります、それ以上は御自分で立てかえて払ってくださいというものであって、本来まずこちらの方である尺度がなきゃだめでしょう。自賠責の審議会が尺度をつくると言っているから結構なんですと、単年度赤字になっておいて何を寝ぼけたことを言っているんですか。もっと早くこの基準がなきやおかしいということになるでしょう。いいですか。被害者にとって社会保険診療を使うか自由診療を使うかは自由なんだ。  問題は、保険診療の方から幾ら補てんするか、結果として全額なのか一部なのか。本来こういった筋合いの問題であって、それが正当な原価ということの中身ではありませんかと言っているんです。能率的な経営と正当な原価。その正当な原価というのは、公的医療機関に入ったら労災よりちょっと安い。民間診療に行ったら社会保険の二・二倍近い。これを全部向こうの言い放題に払っているのが適正な原価なのでしょうかという質問なのですよ。  そこでもし仮に、もし仮にですよ、社会保険診療が基準である、百歩譲って労災保険の基準が基準なのだと言ったら、それ以上のものはこれは正当な支払いなのだろうか。これは国が六割再保険している、しかも強制力が強い公的保険だから、この質問は優に成り立つと思うのです。会計検査院はこれまでこの部分については何にも調べてきませんでした。どうしたのだと言ったら、これから調べます。そのときに、過失責任か無過失責任かの問題どうする。興味があります。医療費の支払いどうかね。あれはたしか法律の中に社会保険診療基準を限度としてと入ってなかったでしょうか。これが会計検査院の私に対するお答えなんです。もっともだと思いますよ。その意味では、肝心の支払いが保険会社任せ、しかもそれを指導監督する国の方は無過失賠償責任となりますと、勘ぐって言うわけじゃないけれども、放漫な保険財政であるなという感じが私はぬぐえない。この感じを残しておいて、単年度赤字累積数千億、よってもって料率アップと簡単にいけるのだろうか。もう時間になりました。もしこの点について大臣の御所見がございましたら伺って、無理だったら結構です。質問を終わります。
  143. 加茂文治

    説明員(加茂文治君) 実は診療基準という物差しの問題については、四十四年の審議会においてもそのような提案がございましたが、その当時におきましては、先ほど申しましたように、医師会は、これは自由診療であるべきだ、制限診療になじまないということで猛反発をして現在に来ておるわけでございますが、最近になりましていろんな医療に関する統計も整備されてきておりますことが一つと、それから医師会の方も、世論の動向あるいは健保制度の改革等もございまして、自由診療ではあるが何らかのそういう基準を設けるべきだというような空気に変わってきつつあるわけでございます。したがいまして、私どもは、もしも答申でそういうことが提案されれば、診療基準についての一つの物差しをつくっていき、その診療基準を超えたものについては、それは被害者の自由でやっていただくということになろうかと思っておるわけでございます。
  144. 青木茂

    青木茂君 税法と教育費の関係について御質問申し上げます。  この委員会、いろいろな角度からいろいろの御議論があるのですけれども、すべてそのお答えの価値の原点と申しますか、それが国債に抱かれた財政、厳しい財政ということですべて退けられてしまって、つまり財政の都合が第一価値になってしまって、我々に最も必要な国民生活と申しますか、国民の家計簿を黒字にすると申しますか、そうしう点が非常に片隅に追しゃられてしまっているのじゃないかという不満が私にはあるわけでございます。国民の家計、経済生活を圧迫するというのは、一口に申しまして、住宅、教育、老後と三つあるわけなのですけれども、住宅と老後については曲がりなりにも税法のバックアップがあるわけです。ところが教育については取り上げるべきものがほとんどないというのが現状でございます。ところが、この教育費の負担というのが今国民生活を非常に圧迫している。  例えば五十九年一月の経済企画庁の物価モニター調査によりますと、家庭の約八割が教育負担に対してプレッシャーを感じているという結果が出ておりますし、あるいは消費支出に対する教育関連費の割合をとってみましても、四十五歳から四十九歳までは一一・七%教育関係に吹っ飛んじゃっている。しかもそれが高校、大学の子供であったとしたら実に四分の一、二四・七%が吹っ飛んじゃっているというような事実が出ておるわけでございます。こういう現状に対しまして、国としては政策的配慮というのか政策的援助というのか、それを打ち出すのが国民の基礎に立つ政治である限り当然だと思いますけれども、その必要性についてまず大臣の御見解を承りたいのです。
  145. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 教育問題につきましては、いわば助成政策というものが一つの柱としてあると思っております。したがって、今度は逆に税の中において父兄に対するいわば税制上の政策税制を適用した場合、助成政策とその一方の政策税制の問題と、教育そのものは助成政策が根幹であるということからすれば、基本的な議論を一遍してみなきゃいかぬ問題ではないか。ただ、中期答申にもございますように、いわば個別の事情をしんしゃくして税法上これを取り入れることについてはおのずからの限界があるという答申も私どもの念頭にはいつもある事実でございます。
  146. 青木茂

    青木茂君 助成政策の場合は各教育機関にばらまかれるわけなんですけれども、それが一体どういう使われ方をしているか、問題もかなりあるわけですね。我々の場合は各家庭レベルと申しますか、生活レベルに対する何らかの措置をも講じるときが来ている。つまり助成政策の中においてもこれだけの八割の人が負担感を感じているということでございますね。個別の問題、例えば私は教育費の控除を新設したらどうでしょうかということを考えておるわけなんですが、個別の問題に対する税法的な配慮をすることはどうかということでございますけれども、今や義務教育でも金がかかる状況であるし、それから高校進学率が九〇%を超えるということになりますと、必ずしもこれは個別の事情ということにはならないんではないか、もうほとんど全国民の問題だと私は思います。もちろん子供のある家庭、ない家庭、いろいろそれはございますけれども、それは他の控除でも同じことでございますから、そういう点において教育費控除の新設ということは検討の余地はございませんかね。
  147. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いま一ついつも指摘される問題といたしましては、いわば所得税を納めない家庭には何らの恩典がないという問題とのギャップが生ずる、こういうこともございます。したがって、私どもといたしまして、過般の減税の際もいろいろ御議論がございましたが、いわば総じてその年齢層に教育費が余計かかるであろうというような世代の減税幅が大きくなるような形が結果として出てくるのが、一番好ましいということで一応理論を消化したということであります。
  148. 青木茂

    青木茂君 では税制当局にお伺いいたしますけれども、教育費控除というものを仮につくった場合、それが何か差しさわりはございますか、税理論の中において。
  149. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) これはたびたびお答え申し上げておりますように、それから先ほどの大臣答弁の中にも触れておられますように、税制調査会の累次にわたる中期答申を見ましても、この教育費控除のほかにしばしば要求として出てまいりますのが寒冷地控除、それからこれはアメリカに広範な例があるわけでございますけれども、借入金の利子控除、こういった新規の所得控除の要望があるわけでございます。そもそも教育費というのがそれは家計の処分であるという基本的な観点があるわけでございますけれども、そういう議論を除いたといたしましても、負担の調整を図るという観点から、さまざまな社会的条件あるいは地域的な条件の中で家計負担にいろいろな一律の条件に必ずしも皆さん置かれていないわけでございますから、それを税制面で調整するという考え方は、考え方としてはあり得るわけでございますけれども、あえて税制議論といたしましては、やはりそういった家計処分であるようなものの所得控除といったものは本来的にはなじまないという観点のほかに、新規の控除を新設するということは税制を非常に複雑にするという問題もございますし、それからそういったもので基本的な調整を図るというのはやはり税制としては限界があるのではないか。  それからもう一つ、基本的には、先ほど大臣の御答弁にもございましたように、およそ税制というのは、当然のことでございますけれども、納税者だけにしか恩典が及ばないという限界があるということも、私どもは常にこういう議論をする場合に念頭に置かなければならない問題ではないかと考えております。
  150. 青木茂

    青木茂君 控除の新設によって納税者が少なくなればそれでいいことなんで、控除を新しくつくることが非常に税を複雑にするということにつきましては、既に昨年の税法で例の個人年金保険の控除というものをおつくりになっておるわけですよね、前例がないわけではない。それから、もしどうしても新しい控除をつくるのがぐあいが悪ければ、扶養控除を増額すればいいことで、これはやる気があれば私は極めて簡単なことだと思うわけですね。かって扶養控除が基礎控除に比べまして金額が少なかった場合、それを同額にいたしました。同額にいたしましたときには、これは教育費を見ているんだというような国会答弁があったようにうわさに聞いておりますけれども、それはともかくとして、僕は税技術の面においては何ら支障はないということ。要はやる気があるかないかということでございます。  そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、一体財政の都合ということと、企業の損益ということと、家計簿の黒字赤字ということ、この三つをとってみましたら価値の原点はどこにあるんですか、政治において何を価値の中心にお置きになってこれからの大蔵行政をお進めになるおつもりでございますか。ここのところをちょっとお伺いしたいのですけれども、何が一番重要なんだと、こういうことです。
  151. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 三つ並べられますと、それぞれいろいろな生活態様の中に存在しておると思いますけれども、私はその三つとも大事であると思っております。
  152. 青木茂

    青木茂君 一つえらい古い話を御紹介申し上げます。  今の三つとも大事、八万美人という言葉がございますけれども、これは三万美人というやつで、これは一番何にもならないということになるんじゃないかと思います。  七十年前に同じように国家財政が窮屈だったときに、これは澁澤榮一さんの言葉なんですけれども、そのときの政府財政の都合ですべて判断していたと、澁澤さんはこう言っています。   由來財政は其基礎を經濟に置くのが常道であ  る、經濟事情の如何を顧念せずして、ひとり財  政の便宜の爲に財政策を樹立し施設するは、國  家の進運に大禍根を植うるものであって、久し  からずして擧國其弊に悩まなければならぬ。   財政の基礎の經濟にあるは申す迄もないけれ  ども、經濟の基礎は又國民の生活事情の如何に  由つて常に左右されなければならぬ。然れば則  ち、國民の生活事情を等閑に附して、経濟の發  展を策し財政の確立を議するは未だ以て首尾完  しと稲し難い。  ここでは明らかに財政と企業と生活と三つ並べました場合においては価値の原点は生活にあると。それを逆にして財政の都合だけで物を判断したら国家の進運に大禍根を残す。まさに今の日本ですね。今の財政、国家の進運に大禍根を残すような方向に動いていはしないかということが私どもとしては非常に懸念せざるを得ないのです。財政が困っているから定率分離課税でいこう、金融機関が困るから限度管理を甘くしよう、国民が困っているから知っちゃいないということで果たしていいかどうかということでございます。もう少し財政、税法、この国民生活というところにアクセントを置いたような物の考え方、つまり冷たい理論によって物を考えるのじゃなしに、血の通ったセオリーで国家全体を考えるということがおできにならないかどうか。これは財政当局はお立場がお立場だから、それはなかなか言うようなことは難しいと思いますけれども国民生活を預かる大臣のお立場としてはまた別な御感想もあろうかと思います。それをちょっと伺いたいんです。
  153. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに澁澤先生の御議論は私は間違っていないと思っております。したがって、ある種の反省をしてみますならば、いわば国民生活、これも確かに一九四〇年代後半、五〇年代、六〇年代、まあ七〇年代の始まりぐらいまででございましょうか、と比較いたしますとそれなりに充実してきておる。その充実の中で財政が出動してそれに寄与した点もあったではないか。しかしながら、今日は財政自体が今の国民に対する暮らしの問題を左右するというそれ以上に後世代にツケを回しておるというところに、暮らしの問題の中にも少し切り詰めていただいて、我々の後世代の納税者の暮らしにも眼を向けていかなければならぬではないかと、こういう感じでございます。  率直に言いまして、昭和三十九年までは公債ございませんし、ちょうど私そのときに内閣官房副長官というものになって初めてクーラーのついた車を配給になりまして、えらいものになったと思いましたが、あのころは随分我慢しておったんかなと、こういう感じもいたします。四十九年まではまた赤字国債もございませんし、そうするといささか、今日のサービスというものに対して後世代にツケを回すことに幾らか無関心であったではないかという感じがして、後世代のことを考えながら財政というものを見詰めていかなきゃならぬ今日だというふうに思っております。
  154. 青木茂

    青木茂君 後世代のことを考えるからこそできるだけたくさんの人に教育を受けさしてやりたい、できるだけ上の学校へやってやりたいと、そういう意味で親は一生懸命教育費に金をかけるわですね。ところが、それが非常に重圧になっておるんだから、財政的配慮というのか国家的援助というのか、そういうことを——私、厳しい財政のもとですから金額を云々は申しません。申しませんけれども、そういう姿勢というものが必要なんじゃないか。今の大臣の御答弁を伺っておりまして感じることは、どうしても大臣の頭の中にいわば九割中流論、日本人の生活はもうよくなったじゃないか、もう少し税金納めるぐらい何だというお考え、あるいは家計黒字論、家計調査を見たら黒字じゃないか、この一部を割いて税金を納めるぐらい実は何でもない、それ以上言うのがわがままというものだ、ぜいたくというものだというようなお考えがどこかの片隅に僕はある御答弁じゃないかと思うんです。しかし、政治というのは国民の生活をよくすることなんだから、九割が中流だったら十割が中流になるように持っていこうとお考えいただくのが私は当然だと思うし、家計が一割黒字だったらその黒字を一割五分黒字にしようというふうに持っていってくださるのが当然だと思います。九割中流、家計黒字といっても、それはあくまでフローの面だけで、ストック、住宅、教育、老後ということになりますと、とてもじゃないが、大変な努力をそれぞれの家庭経済はしなければならないわけですね。  ですから、そこのところを政治の世界において十分な御認識というのか御同情というのか、そういうものをぜひちょうだいしたいというのが私のこれは希望なんで、そして単にそれは財政事情という貧血の論理で、冷たい論理でもって物を判断できない問題なんだということなんですけれども、いかがですかね。恵まれた階層の立場から見ると恵まれない階層の生活というのはちょっとわからないんですけれども、そこをやっぱりわからないといけないんじゃないかと思うんですけれども、再度大臣にひとつ。
  155. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 財政当局を預かる者としていつも考えますのは、百二十二兆と一口に言いましても、七%の金利をつけて六十年間で十年に六分の一ずつ償還するとすれば、三百九十兆を後世代の納税者にツケを回したというのが現実の姿じゃないか。六十五年に脱却いたしましたときの姿を描いてみても、残高は百六十五兆、それで建設国債が百兆、赤字国債が六十五兆。まあ大体そんな姿になりますと、それは五百十兆ということになります。そういう後世代へのツケ回しということを考えてみるときに、確かに税金が高い安い、物価が上がる上がらない、これは非常にわかりやすいが、財政赤字というのは自分が金を借りているわけじゃございませんから、わかりにくいというのはこの間のレーガンさんとモンデールさんの討論会にもあったようでございますけれども、しかしそういうことをかどあるごとにお話し申し上げて、お互いの後世代への負担転嫁というものについては、可能な限りそれを軽減していく努力をしていくのが生きとし生けるもののまた務めではないかと、こういうふうに考えております。
  156. 青木茂

    青木茂君 じゃ最後に伺います。  それがわかるからこそ我々は行政改革の徹底推進ということをもうずっと申し上げているんで、じゃ行政改革の実がどこまで上がっているかというと、これは別次元の議論になって、あともう時間ございませんから、とてもじゃないが別に譲らなければなりませんけれども、じゃ最後にもう一回、くどいようですが念を押します。  財政の都合ということと企業の損益ということと生活の向上ということと、三つ同じように重要だとありましたけれども、それじゃ私、政治はできないと思います。中でも、わずかでもどこにアクセントが置かれるんですか、価値の順序として。それを最後に伺って終わります。
  157. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 価値の順序というのは、それは基本的には個人個人の生存権の問題が最優先されることであるというふうに考えます。
  158. 青木茂

    青木茂君 わかりました。終わります。
  159. 野末陳平

    ○野末陳平君 来年度の税制改正にはいろいろ大事な問題もあろうかと思いまして、これまで出ましたマル優の問題とか、あるいは物品税の問題、広告税とか入場税とかありますけれども、どうしてもできるだけ早く大臣にいい答えを出していただきたいと思う点、幾つかこれをきょうは質問させてもらいますが、サラリーマンの例の単身赴任の問題ですね。どうもこれは社会問題としても非常に大事なことになってきまして、これを減税の対象検討しなきゃいけないんじゃないかという気がしてきているんです。前国会でもかなり主張が野党からもありましたけれども、来年にかけてどうしても大臣に何らかの形で単身赴任減税を考えるというお答えをいただかないと、ちょっと難しいとか、あるいは検討しているんだという程度だと、余りにも社会各方面からの実現要望の声が高いので、この点ただしたいと思うんですが、いかがですか。
  160. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) 大臣の御答弁の前に、税制の固有の議論として、今取り上げられております単身赴任減税というのは、税制当局の立場からどうしても納得できないという点をまず率直に申し上げたいと思うわけでございますが、税制上配慮する手段といたしましては、企業から支給されるいわば単身赴任手当のようなものを非課税にするというやり方か、あるいは二重生活のかかり増し経費のようなものを所得控除として認めるのか、そういった税制上の手段はあると思うわけでございますが、いずれにいたしましても、この問題は単身赴任という企業のいわば労務管理といいますか、人事管理に付随して生じてきている問題でございまして、当該単身赴任者の問題というのが経済的補償の問題であるとすれば、これはまさに労使間で適正な経済補償が行われるべき問題であろうと考えるわけでございます。したがって、あえてこれを税制上優遇するという措置を講ずるとするならば、それは政策税制として位置づけなければならない。そういたしますと、単身赴任を国が税制面で奨励するというふうなことすら考えられる問題を含んでおるわけでございまして、単身赴任者に対して経済的な観点からこれを税制面から優遇するということは、どうしても税制議論としては納得しがたいということでございます。
  161. 竹下登

    国務大臣竹下登君) たびたびお答えをいたしますが、確かに一つの観念として今非常に先行しておる問題ではないか。実態として見ると、雇用政策の範疇の中でまずは第一義的には考えるべき問題ではないか。  税制の問題ということになりますと、先ほどの議論と似たお答えになりますが、個々の事情をしんしゃくしてそれを税法の中で消化するというのにはおのずから限界があるというのは、中期答申の中でも書かれておるところでございますだけに、また公務員そのものを扱っておる立場からいたしますと、いわゆる寒冷地手当等についても、給与としてそれが税の対象になっておるわけでございますから、そういう個別の事情に対してのしんしゃくの限度というものはおのずからあるんじゃないか。だから、もう一度雇用政策の中で議論を詰めていく問題ではなかろうか、こういう感じが実はいたしております。
  162. 野末陳平

    ○野末陳平君 理論的に言えばそういうことで、前国会と余り変わらないようですけれども、ここら辺は政治的な判断というものを加味していただかないとだめではないか、そう思って大臣にいい答えをお願いしたいところですが、もうちょっと検討してほしいところですね。  それから次は、税の不公平の観点からいいますとかなり改善されていますけれども、幾つか残っている。中でも不公平感をあおっているような幾つかの事情がありまして、お医者さんについてはちょっと最近はいろんな角度から考え直さなきゃいけないと思いますが、公益法人の課税の問題、これはやはり税調などの答申にもありますが、来年はひとつ大臣に何らかの答えを出していただかないと困ると思うんですね。私もかなりしつこく言っていますけれども、これは大臣は前国会では前向きにお答えいただきましたが、来年また通り過ぎてしまうわけにはもういかないところまできているんじゃないか。  そこで、どうなんでしょうか、来年は答えが出そうですか、税制改正に。
  163. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはまさに六十年度税制についてということで年末に政府税調からお答えをいただくわけでございますが、その際に一つの方向が明示されることを期待しておるという、現在で言えばそういうことになります。
  164. 野末陳平

    ○野末陳平君 じゃ、その答申の以前に、大臣にだってもちろんいろんなお考えがあるわけですから、もう少し課税強化の中身について、言うなれば収益事業に関する法人税の税率が余りにも低いですよね。ですから、これをアップして一般の法人税率との差を縮めなきゃならない、そういうふうに考えているんです、そうしないとこの不公平感というのはおさまらないから。  そこで、税率を上げるという点に関しては大臣はどういうふうに考えていますか。
  165. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 昨年の中期答申を見ましても、公益法人等の課税範囲、課税対象となる収益事業の範囲の見直しがこれまでも行われておるが、もっとやれ、それから一般法人との間の課税の不公平が生じないように絶えず見直せ、こういうことを言われておって、一応大蔵当局が現状でお答えするのは、中期答申というのはバイブルとしてお答えするわけでございますが、それに基づいて今後ともこの六十年度税制あり方について議論がしていただけるであろうというふうに今期待をしておるという状態でございます。こちらからこのような答申を期待しますということは、実際問題としてやらないで、国会等議論を正確に伝え、そこから出てくるものを参考にして取り上げるという一応の原則的姿勢というのを持っておりますので、したがって予見を与えるお答えは、今の段階では、せっかくでございますが、お答更しにくい事情にある、こういうことであります。
  166. 野末陳平

    ○野末陳平君 お得意の予見を与えると言いますが、余り答申任せの御答弁でなくて、もう目前に迫っているので、大蔵省だって相当な用意も検討もあるわけですから、そこでお聞きしているんです。  主税局長に聞きますが、私の考えでは、これは税率のアップはほんのちょっぴりというわけにはいかないだろう。かなり大幅なアップを考えて一般の法人税率との差を縮めないことにはおさまらない、つまり不公平税制の立場からはそういうふうに考えているんですよ。だから、期待するところはかなり大幅なる税率アップである。こうなるんですが、これはどうして難しいんでしょうかね。
  167. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) 基本的にはただいまの大臣の御答弁のとおりでございまして、大臣の御答弁の範囲を出るようなお答えを私からできるはずのものでもないわけでございますが、税制調査会の従来の累次にわたる答申を見ましても、公益法人の現在の特別税率というのはいわば政策的な軽減税率であって、本来は普通法人の留保所得に課せられるべき税率と同じであるべきであるという基本的な考え方は一貫しておるわけでございます。したがいまして、昨年の十一月の最近時点での中期答申におきましても、この較差の縮小を図るべきであるというかなりはっきりした方向づけをいただいておるわけでございまして、私どもといたしましては、六十年度税制改正で具体的にどういう結論が出まするかは別といたしまして、そういった方向で真剣に勉強していることは事実でございます。
  168. 野末陳平

    ○野末陳平君 この問題は余り深入りしませんが、最後に大臣、これについては、今までも税調答申は何度もこの問題に触れていたんですね。だけれども、なかなか大蔵省が重い腰を上げなくて、本年度の税制改正も収益事業の範囲をちょっと広げたような程度で終わってたんですが、今度答申課税強化という面が強く出れば、これはもう間違いなくやらざるを得ないと、こういう認識と受け取ってよろしいですね。
  169. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 「これらの軽減税率制度については、基本税率との校差を縮小する方向で検討することが適当である。」とまでされたわけです。それで、今度はそれを受けて六十年度税制についてということがございますので、それがさらにそうした方向の答申が出れば、それに沿った私どもとしては政策立案をするということに運んでいくべきであろうというふうに考えます。
  170. 野末陳平

    ○野末陳平君 もう一つ関連して主税局長にお伺いしますが、公益法人などの金融収益に関する課税ですね、これについてはどういう検討をしておりますか。参考までに、この運用量がどのくらいと見られておるのか、その辺もよくわからないんですが、いずれにせよ、金融収益にも課税するというのも税調にありましたね、ほんの一行でしたが。これについては来年度についてどういうふうに検討なさるおつもりか。
  171. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) 公益事業に属する金融資産から生ずる収益につきましては、現在の公益法人課税におきましては、収益事業は非課税でございますので、そういった金融収益に税負担はかかっておらない。そういった現状に着目いたしまして、これも十一月の中期答申でその点について検討すべきであるという方向づけをいただいておるわけでございます。  ただ、この問題は先ほど来議論になっております収益事業の範囲なり、あるいはそれに適用されるべき税率の問題とは全く別の次元といいますか、別の問題の提起でございまして、この点については私どもよほど慎重に今後勉強を続けていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。六十年度の税制改正でしたがってどういった結論を出していただけるかというのは、本日の段階ではまだ予断をもって申し上げ得る段階ではございません。  それから公益法人の金融資産収益がどの程度の規模のものであるかというのは、私どもいろんな統計から推計する作業をいたしておりますが、現在課税の範囲から外に出ております経済取引なり現象でございますので、率直に言いまして税務統計はございません。したがって、いろんな観点から推計はしておりますが、低く見積もって数千億は下らないというふうに申し上げていいかと思います、年間。
  172. 野末陳平

    ○野末陳平君 これについては非常に問題があるようなんで私もよくわからないところありますので、今御質疑を通じてもそちらの資料などをいただきながら考えていきたいと思っております。  それからさっき出ました入場税ですけれども、建前としては入場税の撤廃は結構なことなんですが、しかしこれが当面撤廃はないという前提でさっきはお答えがありまして、むしろ免税点の引き上げになるんでしょうが、これもいわゆる観層のプラスになるんならいいんですが、そうでない場合の方が多いので、これは慎重にやるべきだと思いますよ。  建前としては、撤廃がいいから撤廃するというのならこれはいいんですけれども、免税点を引き上げる、引き下げるという場合に何を根拠にやるか知りませんが、例えば映画が今千五百円であると、免税点が。入場料千五百円になっていますね。前回の場合に千五百円に引き上げたら入場料金そのものが千五百円に上がりましたね。ということば、免税点を引き上げたということがお客にプラスは全くなくて、入場料の引き上げを招いたわけでね。こういうことは当然起きてきますから、これはだれのために引き上げるか、あるいはどういう根拠で引き上げるかというようなことがはっきりしないと意味ないんですよ。ですから、入場税に関しての基本的な、よくないという議論はこれは私もそうだと思うんですが、現実に今あるし、それから撤廃する考えもないとなれば、これを引き上げるかどうかということはやはり慎重にやってもらいたい、こういう気がするんですが、大臣どうですか。
  173. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) 入場税につきましては、先ほど他の委員の御質問に対してお答え申し上げましたように、税制当局としてこれを撤廃する方向では考えておりません。それから六十年度の税制改正におきましても、税制当局として現在の免税点を引き上げるという方向で検討はいたしておりません。  ただ、免税点の問題、ただいま野末委員が御指摘になられましたように、どうしても免税点という設定をいたしますと、免税点に入場料金の水準が張りついてしまうという問題は、避けられない現象として起こるわけでございまして、これは単に入場税だけに限らず免税点という設定をいたしますと、そこを境界にして負担の逆転が起こるものでございますから、そういった点につきましては、私ども野末委員がおっしゃるような点も十分考えながら、これは一般論としてでございますが、免税点の問題を考える場合にはそういった観点は常に念頭に置いて検討すべき問題であると考えております。
  174. 野末陳平

    ○野末陳平君 もう一つ広告課税のことですが、さっきの答えではいわゆる媒体課税だったら新税になる、しかしながらこれは経費を否認するという方向でいけば従来の税制の中でおさまると、こういうことの大臣のお答えで、確かにそのとおりですが、その議論の前に広告費と交際費がどこが似て、どこが同じ性格のもので、どの部分が違うかという、そこをはっきりどういうふうに大蔵当局がつかんでいるかがちょっとわからないのですが、この点を少し説明していただかないと何とも私も自分の考えがまとまらないんですがね。媒体課税が新税になるのはわかりますし、これはなかなか難しいのじゃないかと思うのです。強いてでき得るとすれば経費という観点からの検討だろうと思うのですが、その場合には交際費は今ほとんど課税になっていて広告費はそうでないという、なぜそういう違いが出てくるのか。業種によってはほとんど交際費も広告費も同じような性格だし、あるいは業種によっては違う場合もあるしで、その区別がいま一つはっきりしないので、その説明を聞きまして、また後日質問したいと思います。
  175. 梅澤節男

    説明員梅澤節男君) 先ほどの広告課税の御議論の際に、大臣の答弁もございましたように、税一制調査会の答申ではいわば賛否両論という格好で、この問題について結論が従来から出ていないわけでございますが、その議論の過程を紹介することでただいまの野末委員の御質問にお答えしたいと思うわけでございますけれども、企業の経済活動という観点から言えば、交際費も広告費も販売促進経費であるという点については異論がない、税制調査会の中でも輿論がないわけでございますが、一方、交際費の方は政策的観点から課税対象にし、広告費は課税対象にしていないという点について、広告費も交際費と同様課税すべきであるという意見をとる委員の方々は、今言いました販売促進経費ということで、交際費と全く性格が同じであるから税制上の取り扱いもバランスをとるべきであるという議論に立たれますし、販売促進経費であるが、交際費は課税してもいいけれども広告費課税についてはよほど慎重でなければならないという立場をおとりになる方は、交際費の課税の根拠というのは、いわば交際費の支出を通じて必ず金品なり飲食の利益なり、そういう経済的利益を受ける人たちがあるわけでございますから、それに対するいわば代替課税という観点から根拠づけられるけれども、広告費の場合は、交際費のようなそういった代替課税という理論的根拠はないのではないか。そこが広告費を課税すべしとする方と、慎重であるべきであるとする方の意見の分かれるところの一番大きなポイントだと思います。  もちろん広告費について課税すべきであると主張する方々は、そのほかにも、例えば誇大広告の抑制というような、そういう社会政策といいますか、そういう政策的観点に立った議論を展開される方もございますが、またそういう議論に対しては、むしろ消費者に自由な情報を与えて、自由な市場というのが市場経済の一番望ましい姿であるから、そういった形での広告課税というのは自由な市場に対してかえって中立的でない働きをするといった反論もあるということで、それぞれの立場によっていろいろ意見があるわけでございますが、ポイントはやはり代替課税であるかないかというところが一番大きな議論の分かれ月の一つであると考えております。
  176. 野末陳平

    ○野末陳平君 終わります。
  177. 藤井裕久

    委員長藤井裕久君) 本日の調査はこの程度といたします。     ————————————
  178. 藤井裕久

    委員長藤井裕久君) この際、派遣委員報告に関する件についてお諮りいたします。  先般、当委員会が行いました租税及び金融等に関する実情調査のための委員派遣については、各班からそれぞれ報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 藤井裕久

    委員長藤井裕久君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会      —————————