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1984-04-19 第101回国会 参議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十九日(木曜日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         斎藤栄三郎君     理 事                 降矢 敬義君                 森山 眞弓君                 市川 正一君     委 員                 石井 一二君                 岩本 政光君                 亀井 久興君                 佐藤栄佐久君                 杉元 恒雄君                 鈴木 省吾君                 松尾 官平君                 松岡満寿男君                 山木 富雄君                 梶原 敬義君                 対馬 孝且君                 福間 知之君                 田代富士男君                 伏見 康治君                 井上  計君                 木本平八郎君    国務大臣        通商産業大臣  小此木彦三郎君    政府委員        公正取引委員会          事務局取引部長  奥村 栄一君        通商産業大臣官        房審議官     山田 勝久君        通商産業省通商        政策局長     柴田 益男君        通商産業省立地        公害局長     石井 賢吾君        通商産業省機械        情報産業局長   志賀  学君        通商産業省生活        産業局長     黒田  真君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        資源エネルギー        庁長官官房審議  松田  泰君        官        資源エネルギー        庁石炭部長    村田 文男君        特許庁長官    若杉 和夫君        特許庁特許技監  齋田 信明君        中小企業庁長官  中澤 忠義君        中小企業庁指導        部長       粟屋  忠君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    説明員        警察庁刑事局捜        査第一課長    藤原  享君        警察庁刑事局保        安部外勤課長   望月 秀一君        国土庁地方振興        局東北開発室長  石井  武君        厚生省薬務局審        査課長      代田久米雄君        通商産業大臣官        房参事官     島田 隆志君        消防庁救急救助        室長       大山 昭夫君    参考人        元北海道大学教        授        磯部 俊郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (三井石炭鉱業株式会社池鉱業所有明鉱の災  害に関する件)  (植物特許に関する件)  (絹織物の流通問題に関する件)  (核燃料廃棄物に関する件)  (中小企業者承継税制に関する件)  (製品輸入の促進に関する件) ○中小企業等協同組合法及び中小企業団体の組織  に関する法律の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査のため、本日の委員会参考人として、元北海道大学教授磯部俊郎君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 産業貿易及び経済計画等に。関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 対馬孝且

    対馬孝且君 きょう私は、三池災害の集中的な審議をしようと一応の申し合わせもございますので、三池災害問題と今後の石炭保安対策を含めて若干の質問をしたいと思います。  私は、何といってもここに八十三名の亡くなられた今次三池災害罹災者に対しまして心から御冥福をお祈り申し上げるとともに、まず保安なくして生産なしというのが保安の鉄則でございまして、保安第一主義の基本に立ちましてこれから国の監督行政の万全をぜひ期してもらいたい、こう冒頭に申し上げておきます。  私は、この災害幾たび経験をいたしておりますが、今度の三池災害、私も現地へ行きましたけれども、明らかにこれは生産第一主義に走った余り、まさしく保安軽視だった、このことを大前提に申し上げなければなりません。しかも、私も炭鉱マンでございますけれども、本来今までの大きな重大災害というのは、例えばガス突出自然発火あるいは山はね、これは私も体験しておりますけれども、今回のようなベルトコンベヤー坑道における単純災害で八十二名を犠牲にしたというのはございません。私も長い経験をしておりますけれども、ないわけであります。したがって、これはそういう意味ではむしろ不可抗力ではなくてまさに人災であると、はっきり断定をしなければならない、私はこう申し上げるわけでございます。したがって、私はそういう意味でこの三池炭鉱につきましては、昭和三十八年十一月九日、日本で戦後最大の炭じん爆発を起こしております。この当時の死者というのは既に御承知だと思いますけれども四百五十八名、CO患者が八百三十九名、大変な犠牲者を出した大惨事の三池炭鉱でございます。四年後また再び、四十二年の九月二十八日に三川鉱坑内火災を起こしておりまして、これまた死者七名、CO中毒患者が四百二十五名の災害事故を起こしております。最近では三川坑道の大崩落がございまして、これまた六名の犠牲者を出しているわけでございます。そういう意味では、総括して私は申し上げることができるのは、どうも三井三池、今次の有明炭鉱災害というのは、私の体験を通して申し上げますと、かなり近代化装備をしている。同時に日本では最優良な炭鉱である。こういう労使ともに私は率直に申し上げてこれに対するやっぱり過信、保安に対する危機感というものが欠如しておったのではないか、このように考えているわけでございます。この点につきましてまず冒頭にひとつ大臣から――大臣もいち早く現地へ飛んでおりまして、私も現地小此木通産大臣現地に来られたときもお会いをいたしておりますので、所感を含めまして大臣に今後のひとつ所見をまず冒頭に承っておきたい、こう思います。
  6. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 今次災害の起きたところの責任所在、いろいろ私考えてみますけれども、この成り行きにつきましては今司法捜査によりましてその解明を急いでいるところでございます。しかし先般取りまとめられました事故調査委員会中間報告内容を見てみますときに、これは必ずしも発生防止し得ないようなそんな複雑な災害であるとも考えられないのでございます。今対馬委員のおっしゃるようにあの災害から三カ月近くたっているわけでございますが、災害の起きた直後、私現地に赴きましていろいろな実情を見、また現地方々のいろいろなお話を聞きまして、こういうことが起きてしまったということは非常に残念な気がしてなりません。と同時に今さらながらあの事故発生ということを考えてみるだけでも本当にそら恐しいような気がいたしますし、また御遺族の方々の悲惨さ、また犠牲になられた方々のお気の毒なことなど本当にいろいろと考えさせられることが多いのでございます。  そこで、今後引き続きこのようなことが起きないように徹底的な原因の究明を行っているところでございまして、何としてもこの責任所在をはっきりして法規に照らして厳正な措置を行うと同時に、今後このような類似災害というものが絶対に起きないようにしなければならない。もとより委員のおっしゃるように生産よりも保安の方が絶対大切なんだという考え方のもとに今後処していきたいと心に戒めておる次第でございます。
  7. 対馬孝且

    対馬孝且君 今大臣からまさしく今回の災害が私が指摘しましたように未然に防止し得た災害であるということと、やっぱり生産よりも保安優先を第一義としてこれからの対応をすべきものである。これから二度とこのことを繰り返さないようにということの大臣決意を表明されまして、まさしく確たる決意表明でございますので、その決意を踏まえてこれから私は具体的にひとつ問題点幾つ指摘をいたしまして、この機会でなければやっぱりこの保安の撲滅はなし得ないと、こう私も考えます。その意味では石炭鉱山保安規則のこの際改定あるいは補強あるいは指導基準というものを見直す時期に来ている。私自身もこれ炭鉱マンとしてこの保安規則ができ上がったのは二十四年ですから、昭和二十四年を基礎としてこれつくり上げて、その後もちろん改定幾たびかしておりますけれども、当時二十四年といいますと私も炭鉱に入っておりましたけれども、現実にこれは木柱採炭でありまして、ピック採炭をやってその後カッペ採炭に変わり、やがて山によっては水力採炭になり、あるいは採炭技術が年々進歩して、今日は自走枠の大型化機械採炭体制に入っております。この体制を考えますと、その当時の次元と今日的炭鉱事情というのは相当大きく変化している、こういう意味でも私は、全部とは言いませんけれども、もう一度石炭鉱山保安規則を基本的に見直してみる必要がある、このことを痛切に感じました。今回の場合、単純に言うと、まさに地下鉄に火災が起きたと同じ現象ですから、これで八十三名を犠牲にしたわけですから、その意味で現状の石炭鉱山保安規則全体から見て私は、やっぱり問題点があったということを指摘をしなければなりません。  そこで、時間もありませんから、具体的にこれから一つ一つ問題点を私、絞ってみたい、こう思います。  なぜ、こういう災害発生したかという問題であります。これは非常に私自身を含めて冷静にこの問題を現地へ行ったときも振り返ってみているんでありますが、大体、事前予防をなし得たんじゃないか、今、大臣も答えておりますように。私もそう思うんです。肝心の問題は何かといえば、ベルト坑道ベルト番が、作業員がゼロであったという答弁が実は衆議院でも石井局長お答えになっておりますけれども、このベルト作業員がゼロであったという問題は、これは極めて重大な問題だと私は思うんです。この点について、実際問題として、これは災害の以前の段階で、もちろん監督局として事前巡回あるいは改善命令等はもう常識的に出されていると思います。思いますが、こういうまさに、ベルトコンベヤーの全体の坑道の中に、巡回の以前の問題として作業員が全くゼロであった、このこと自体私は極めて重大な問題だ、こう思っておるわけです。このベルトコンベヤーにおける事前管理体制に大きなやっぱり欠陥があった、こう私は思うんでありますが、この点とういうふうにお考えになっているか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  8. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 中間報告にも明らかにされておりますが、火災発生箇所でございますナンバー一〇のベルトコンベヤー、ここにいわゆるベルト当番といいますか、ベルト保守管理に当たる人員配置されていなかったということは事実でございます。これはあくまでも会社側説明でございますが、ナンバー一から八までが要するに二百二十メーターレベルにございますが、これが主として三川鉱有明出炭部分を運びます主要坑道ベルトになっておるわけでございますが、ナンバー九以降のベルト部分に関しましては、一三までいきますが、四百二十メーター坑道の掘進準備及び三百二十メーターの一部部分につきましての採炭準備にかかわります岩石あるいは石炭の運搬に当たるベルトコンベヤーだったようでございます。その意味におきまして、一日の岩石あるいは石炭ベルトコンベヤーで運ぶ量は大体三百ないし三百五十トンということで、非常に少量の、言うならば主要生産ベルト坑道でなかったということがあるように思われます。  そういうようなことで、会社側ベルト保守管理要員を配番してなかったんではないかというふうに考えられるわけでございますが、いずれにいたしましても、昨年の十回の鉱山保安監督局の立入検査におきまして、延べ七カ所のベルトコンベヤー近傍におきます落炭の事実の指摘及びその清掃必要性について指摘をしておるわけでございますので、そういった意味におきまして、いわば坑内火災という観点からする危険度といいますか、そういう意味での人員配置に適切さを欠いておった面があるのではなかろうかというふうに考えております。
  9. 対馬孝且

    対馬孝且君 今の石井局長が素直に認めておりますから、私も重複を避けようと思います。ベルトコンベヤーだって三百八十メーターあるわけでしょう、約四百メーター近いベルトコンベヤーですから、その状態から判断すると、ベルト番自体がいないということも問題だし、それからこの間、これは時間がありませんから、私、重複を避ける意味でカットしますけれども、当然これは巡回巡視をしているわけでしょう。例えばこの周辺に働いておったのが電気係員機械係員だと、こういうわけだ、私も現地で聞いたんだけれども。実際に巡視なり巡回したのかというと、いや、しておりましたと、言葉では五時間前まで動いておりました、あるいは三時間前まで動いておったと、こういう言い方だって、動いておったとすれば、これは当然その時点で、あなた、この災害状況判断ができなかったというのは、これは炭鉱マンであれば常識的に坑内であれば、これわかりますよ。ただ歩いているんじゃないんだから、ガス検定器を持っているだろうし。実際そこらあたりを聞いてみると、保安日誌はないと、こういうわけだ、私行ったときには、警察に持っていかれて保安日誌はまだございませんと、いま手元にまだ返ってきておりませんと、こういう状況ですから、私に言わせれば、完全にこれは巡回その他もサボっておったものであるし、また配置も怠っておったし、それから巡回もほとんどこれは行われていなかった、私は率直にこれ申し上げるんです。  それを今あなたがはっきりそういう体制に欠けておったというふうに認めておりますから、私は、この機会にこの点を考えた場合に、保安規則問題点をいま一度との点がどういうふうに補強をすべきであるかという、後で申し上げます。これをもう一回やっぱりここらあたりの、ベルト番だけでなしに、保安上の巡回監視、あるいは巡視、このあり方についてもう一回再見直しをしてみる必要がないか、この点いかがでしょうか。
  10. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) ベルトコンベヤー保守管理は、先ほど申し上げましたように、従来、石炭鉱山で一番こわい自然発火、あるいは山はね、ガス突出といったような問題へのセンシティビティーというのは非常に進んでおるわけでございますが、どちらかといいますと、四十三年に北炭平和砿で悲惨な坑内火災事故があったわけでございますが、そういった面でセンシティビティーをもってもう一回見直す必要があるんではないかというふうに現在考えておるわけでございますが、四月十六日に、鉱山保安技術検討委員会というのがございますが、そこに坑内火災防止対策部会というのを設置いたしました。坑内火災防止という観点からもう一回危険度徹底的に見直して、それで必要な対応策を考えていくべきではなかろうか。ただいま御指摘ベルト保守管理要員配置の問題、それから巡回監視という面におきましては一方一回の最低の、炭則による義務づけの履行という問題ございますが、それらを含めて坑内火災防止観点からどう今後進めていったらよろしいか、現在検討を進めておるところでございます。
  11. 対馬孝且

    対馬孝且君 それから、簡潔に申し上げますから、これは答弁はそのとおりだ、そのとおりだと言ってもらえればいいわけですから、端的に申し上げます。  ベルトコンベヤー保安装置に対してスリップリレーがついていなかった、これは事実ですか。これは現地ではそのとおりだと、こう言っているんだけれども、保安監督局の立場からどう見ているかという点。もう一つは、ベルト蛇行防止機能を持つものはなかったと、これも指摘をされているのでありますが、この事実がそのとおりかどうかということ、端的でいいですよ。私、これは後の関係がありますから。
  12. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 第一点のスリップリレー装置につきましては、一応ついているわけでございますが、ナンバー・テン・ベルトの第三調量門以降についての蛇行防止装置はございませんでした。
  13. 対馬孝且

    対馬孝且君 はい、わかりました。  そうすると、蛇行防止装置は全くなかったと今お認めになりましたね。  そこで私は、そうであれば今回のこの災害の実態から判断をいたしまして、三池労働組合が一月の九日、十日に、両日に三井有明鉱に入坑しまして、このことを保安体制全般についての指摘をしているんですね。これは一月九日、十日。その八日後にこの重大災害起きているわけだ。その時点での保安監督局としてのこの対応はどうだったんですか。この五十八年以来三回指摘しておると、こう言うんだけれども、私は、大事なことはこの三池労働組合が一月九日、十日に実は入坑して、そのときの点検としては非常に問題があると。その八日後直ちに重大災害起きたという経緯からいきまして、なぜ私が冒頭このことを申し上げたかと申しますと、全くその時点である程度蛇行装備、そういうものもなかったし、またそういう巡視点検というものは行われていなかったと、このことを幾つ指摘をしたと、こう言っているんでありますが、この点とういうふうに受けとめていますか。
  14. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 私ども承知している限りにおきまして、一月七日の保安委員会、これは会社側及び労働組合の代表が構成されておる保安委員会でございますが、その保安監督員等によります保安検査が行われたというふうに聞いておりますが、検査内容につきましては社内検査だった、要するに労組と会社側社内検査ということで、詳細についてはこちら側はその当時においては承知しておりませんでした。  いずれにしましても、その時点で今回の災害原因となるような状況が既に存在していたのかどうかという点でございますが、現段階でまだ事情聴取すべて完了いたしておりませんので、明確にお答えをすることは差し控えさしていただきたいと思います。
  15. 対馬孝且

    対馬孝且君 中間報告が出ておりますからね。ただ、私はなぜこれを言うかというと、事前のそういう指摘をされていながら、会社側のつまりは保安巡視保安巡回保安点検、その時点での保安教育というのが私は大事だと思うんですよ、局長、大事なことは。少なくともそういう指摘があったとすればね、社内の話し合いなんてそんなものは何も問題にならぬですよ。問題は、具体的にその時点従業員に対して、どういう保安教育なり、保安体制にどういうアクションを起こしたかと、ここが大事なんだよ、ここが。災害が起きるたびに私はこれ言うんだけれどもね、いやそのときは、見直してまいりますとかいろんなことをしゃべるけれども、私が言いたいのは、その時点での保安監督局対応というのはどうだったのか。少なくとも社内的にそういう話があったとするならば、従業員に対して当然これはその時点保安規則第七十条にある退避訓練あるいは消火訓練というものを、やっぱりこれは教育すべきじゃないですか、私に言わせれば。それで、例えばそこまでいかなくてもですよ、私の言いたいのは、どうして保安教育をその時点で行うことができなかったのかと、これはどう思いますか。私は、当然その時点保安教育をなされるべきだったと、こう思うんだけれどもね。その点私は、やっぱり保安に関する認識というのはやっぱり欠けていたと、この一つを見ても明らかではないかと、こう思うんですが、どうですか。
  16. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 昨年、三回延べ七カ所につきましての落炭清掃必要性指摘をいたしまして、これは文書でいたしておりますが、さらに口頭で、この種の清掃必要性について口頭指摘をいたしまして、これを保安委員会報告するようにということで、保安監督局の方から指示をいたしておるわけでございますが、会社側がさらに組合と一緒に保安検査を行い、その社内検査によってその問題を解決していっていただくことを我々は期待いたしておるわけでございます。今回のその原因になった火災発生箇所になった地点においてそのような事態があったかどうかは、今の段階では捜査をしている段階でございますが、その捜査の結果を待ちませんと、それが原因であったかどうか確定できないわけでございますが、いずれにいたしましても、そういったベルト保守管理についての徹底という面については、少なくとも落炭清掃炭じん清掃、こういったものの注意は十分徹底をさしておったつもりでございます。
  17. 対馬孝且

    対馬孝且君 いや、そういう改善命令なり、そういう指示を出したわけでしょう。今お答えできないというのは、そこは私は何も言っているんじゃなくて、本来そのことに伴ってこの原因というのは、時間がないから僕は詳しく申し上げませんけれども、完全にあれでしょう、炭鉱事故というのは水か火かガスよりないんだから、今回の原因というのは、明らかに言うまでもなく、つまりベルトの下にある堆積した炭層があるいは摩擦的にかんで、そこから火源が生じて火が、煙が出ていったんではないかと。まあこれも一つ考え方として中間報告に出ていますよね。これは炭労調査にも出ている。時間ないから僕は省いているんだけども。  問題の聞きたいことは、そういう状態になるというには、幾つかのやっぱり原因があったわけだから、その点検が、あんた方は改善命令を出したと言えばいいんだよ。あるいは文書でも出した、こう言うんだから、出したとすればどうしてこの鉱業所が、会社が、保安教育としてのアクションなり行動が起きてないかと私は言うんだよ。そこが問題ではないかと私は言っているんだ。何も今ここで直ちに答えを出せと言っているんじゃない。そういうことは当然行われるべきであったでしょうということについての監督局の受けとめはどうなんですかと聞いているんだから、そこを素直に答えればいいんだよ。
  18. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 先ほどお答え申し上げましたように、監督局からの改善指示、これを文書で行うほかに、他の箇所についても同様のことを行うようにという口頭での指示をいたしまして、これを会社に設置されてございます会社側労働組合から構成されます鉱山保安委員会報告をして、そこで議論をするようにということでお願いをしておったわけでございます。そういう意味におきまして、その鉱山保安委員会討議内容をつぶさに承知はいたしておりませんが、そういったところでこういった問題のこなしができていくというふうに我々は期待しておったわけでございます。
  19. 対馬孝且

    対馬孝且君 期待はしておったけれど、実際はなされてなかったということなんだよ。そこに今回の災害発生した一つの要因がある。このことをしっかり受けとめなければだめですよ。それからあなたは改善命令その他を出したと言うけれども、衆議院で同僚の多賀谷議員質問にだよ、「今回の箇所についてはこれまで指示は行われておりません。」と、こう言っている。そうあなたは答えていますよ。今回の火災の起きた坑道の、あの時点における箇所については、あんた方は監督署としては指摘をしてなかったと、こう認めてますね。それで、私、聞いているわけです。だから、その五十八年以来三回勧告したと言ったって、具体的な災害発生した箇所の監督的行政指導というのは、いま一度やっぱりしっかりしてなかったんじゃないか。この点はどうなんですか。
  20. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 大変失礼申し上げました。私が五十八年に行われました巡回検査において三度、延べ七カ所と申し上げましたのは言葉足らずでございまして、当該火災発生箇所と目される地点については、そこは含まれておりません。その地点についての指摘は行っておりません。
  21. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこらあたりに私は、だから監督局を含めて、冒頭申し上げましたように、昭和二十四年以来保安規則改定されていない、部分的にはあっても、全体的な根本的な見直しはされてないというあたりに、やっぱり甘い判断があったんではないかと。こうまあ∴あなたはされていないと今認めたから、その点は指摘をいたしておきます。  そこで、時間もありませんから、次は連絡指令体制の問題についてどうだったかということです。これは私は明らかに、これこそ保安規則の私は重大な見直しをしなければならない問題だと思います。これは、この現場実態を調査してみますと、時間帯で言うなら、一時三十五分に災害発生状況があって、そして一時五十分に坑内誘導無線による火災発生に伴う連絡があって、二時五分に排気坑道を通じて退避せよという命令を出した。この間十五分間あるんですよ、局長。この十五分間というのは坑内の煙を考えた場合に、これは言うまでもなく、素人が判断しても一酸化炭素が発生するのは当然であるし、こんなことあなた言うまでもないことなんだ。ここらあたりの問題をどこに原因があると思いますか。  私は率直に申し上げます、時間もあれだから。指令室というのは大体保安発破係をやった古参が行くんですよ。これは夕張炭鉱も同じです。私は夕張災害でもこの問題は指摘したんです。その指令室にいる保安係員に指揮監督権がないんだよ、はっきり申し上げて。だから直ちに対応しようと思ったって対応できないんだ、今の場合。これは保安規則上そうなってないんだよ。これは保安の最高権者は三井三池鉱業所所長でしょう。所長の指示を仰がなけりゃならぬという今日の管理機構が悪いと私は言っているんじゃないですよ。やっぱり指令室にいる係員に一定の機能があって、適材適所、判断を的確にして対応すればこれは十五分間の間に全部やれるんだ。この場合退避命令だってこれはまちまちなんだ。一時は排気坑道を通じて撤去せよ、今度は救急センターに籠居せよ、まるで二転三転ばらばらで、殺さなくてもいいのを殺したと私は言いたいんだ。  そういう命令の指令系統それ自体にやっぱり問題はもちろんあるんだけれども、私の言いたいのは、この連絡指令体制ということに根本的にやっぱり問題があるんじゃないか。ここらあたりの指令体制というものの衝に携わっている者の権限というものをもう一回保安規則上見直す必要があるのではないか、このことを言っているわけです。この点どうお考えになりますか。
  22. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 現在の炭則におきましてはその二十五条の二によりまして、保安係員におきましても、緊急の危険が発生し、またそのおそれがあります場合には、労働者に必要な指示を与えて、直ちに作業の中止、あるいは通行の遮断その他必要な応急処置を講ずることができることとされておるわけでございますが、御指摘の指令センターにおりました者は保安係長が当時おったようでございます。これは三池の有明区域におきます保安計画によりますと、保安統轄者及び保安技術管理者及びこれの指定をした者が一応避難退避命令等を発出し得る権限があるというふうに保安計画上定めてあるわけでございますが、現実には先生御指摘のように十五分余を経過したわけでございます。その間、会社側報告によりますと、指令センターでいわば火災発生箇所より以深の坑内状況を把握するための問い合わせを行っておったということ、それから副長及び鉱長へ連絡をとったということがその間にあったようでございます。  これが果たして適切であったかどうか。問題は火災という極めて大きな災害に発展し得る可能性があるわけですから、直ちに権限的には対応しなくてはいかぬはずのものだろうと思われますが、今回こういった事故にかんがみまして、従来の保安計画あるいは炭則、こういったものだけでは社内の周知徹底を期しがたいということで、三池鉱業所としましては保安技術者管理通達を発しましてその辺の体系をきちっと整備いたしました。  これらにつきまして、先生御指摘のように、これは有明はその教訓を踏まえて体系をきちっと整備いたしましたけれども、その他の炭鉱につきましても十分検討する必要がございますので、先ほど申し上げました坑内火災防止部会におきまして、避難退避命令あるいはその連絡方法等のあり方ということを早急に検討を進めたいというふうに思っております。
  23. 対馬孝且

    対馬孝且君 これは指令センターの日常体制は確かにそれは問題はないですよ。やっぱり重大災害発生した今のこういう時点の場合の指令センターの対応、機能というのが問題なんだよ。ここはやっぱり、単に会社側の強化指示とか対策というものも必要なんだけれども、いま一歩、規則上からいって私はこの指令センターの責任者が直ちにそこでもって対応できる機能というものをもっと強化する必要があるのではないかと、そのことを言っているわけだ。  あなたも検討すると今言っていますから、ひとつこれをこれからの見直しの一つの中に入れてもらいたい、これはよろしゅうございますか。
  24. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) せっかく検討を進めたいというふうに思っております。
  25. 対馬孝且

    対馬孝且君 次は、三番目は消火体制の問題について私は率直に、申し上げたいと思うんです。  これも鉱山保安規則の百二十八条の七、「ガス突出警戒区域においては、適当な箇所に空気供給設備その他鉱山労働者の退避のための適当な設備を設けなければならない。」この問題もあるし、防火体制とあわして私は申し上げるのでありますけれども、消火体制問題でもう一つの問題は、二百八十九条の三、つまり水栓系統の備え、準備をする必要がある、ここらあたりの問題もあわしてちょっとお伺いしますけれども、消火体制そのものは、全くあれでしょう、たった四人で、現場で確認しますと、作業員三人でしかも組夫もかき集めてあそこで火を消したという状況になっているわけだ。ところが水圧が降下したというのは、つまりダムにあった水が、あそこが焼け落ちたために水路がとまっちゃったわけでしょう。だから水の応急処置ができなかったわけだ、問題は。  だからそういう場合に備えての対応措置というのは、私はこの現行の規則ではやっぱり問題がある。一系統以上の予備の水路を持って直ちに消火体制に入れるような対応が今備えられていない。そういう意味で私は今この規則を読み上げたわけですけれども、二百八十九条の三、あるいは関連して申し上げますならば百二十八条の七、これは日常の体制だから、ガスがないから問題がないんだと、こういうあたりをやっぱり見直してみる必要があるんじゃないか。私は抽象論を言っているんじゃない、具体的に申し上げている。この点は一体どういうふうにお考えになっているかということを聞きます。
  26. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 有明鉱におきましての火災では、先生御指摘のように、二百二十メーター斜坑の坑底の湧水を利用した一系統、これがケーブルの切断によって不能になりまして、二百二十メーター坑道の近くにございます他の水源との接続を図ったわけでございますが、この接続がうまくいきませんために消火が効果を上げ得なかったという大変悲惨な結果を招いたわけでございます。  現在、御指摘のように水源の一系統化ということにつきましては従前より指導してまいっておりまして、各炭鉱では一応一系統化が達成されている今現状にございます。今回それではその一系統が役に立ってないではないかという御指摘をいただくことになるのではないかと思うのでございますが、それにつきましても当然、十分活用できるような例えばバルブサイズの調整統一化、こういった問題についてもさらに組み込んで検討してみたいというふうに思っております。
  27. 対馬孝且

    対馬孝且君 これをひとつ、今私が具体的に指摘しましたように、もしもう一系統の水路があればあるいはこれは十分に対応できたと思うんですよ。そこらあたりが問題だと、こう私指摘しているんですから、ぜひひとつ改正問題点の中に入れてもらいたいということが一つです。これはよろしゅうございますな、今の問題は。検討の課題として十分に善政の方向で検討するということはいいね、大事なことだから。
  28. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 実態から申しますと一応二系統化が達成されておりますが、それをさらにどういうふうに有効活用できる態勢に持っていくか、そのあり方について検討さしていただきたいと思います。
  29. 対馬孝且

    対馬孝且君 ぜひひとつそういう点で検討していただきます。  次の問題は、これは何回もしばしば、幌内炭鉱災害でも私ここで指摘をいたしました。なぜかと申しますと、この防火施設の体制の問題です。つまりもしあそこに救急センターが機能しておって、ビニールハウスがあって、エアマント体制とかそういうものが全部機能すれば私は八十三名助かったと思う。これは遠くは茂尻炭鉱もあるけれども、卑近な例は昭和五十三年の三井砂川です。三井砂川災害のときにこういう例があった。当時、たしかマイナス五百八十メーター付近での文珠坑という災害が起きまして、私も現場へ行きましたからわかっているんですけれども、そのときに、あのときは防火体制として、防災設備の体制としてビニールハウスの中に入って実はあのときは助かったという実情があるわけです。しかも四十七時間後に助かったんだよ。ところが今回の場合、完全に救急センターも機能していなければ、全然これ体制がなってないでしょう、この問題について私に言わせれば。これはもう本当に返す返すも私は残念だと思うんです。もしこれがビニールハウス体制なり救急センターが機能しておって――これは時間がありませんから、その原因は私全部読んでいますからくどくど申し上げません。ここらあたり保安監督局としてのやっぱり指導のやり方に私は問題があった、日ごろのそういう体制の確立に問題があるということを指摘をせざるを得ません。これはどういうふうにお考えになっていますか。
  30. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 御指摘のように、有明区域がガス突出警戒区域でございませんものですからいわゆる救急バルブを採用はいたしておらないわけでございまして、目抜きを利用いたしました救急センターというものが設置されておるのは御指摘のとおりでございます。過去のその気密性に関しましては、一応入排気の差圧がそれほど大きくなければセンター内にございます空気取り出し口から圧気を放出いたしますと外部からの空気の導入を遮断できる漏気防止が一応できるテストが完了いたしておるわけでございます。今回の事故におきまして、御指摘のようにこの救急センターが機能しなかったと申しますか、利用した形跡もございません。これはできなかったからそうしたのか、この辺の問題がございますが、鉱山保安監督局の方で当該救急センターについての気密性について現在もう一度調査をいたしておりますが、こういった日常監督時においての目視検査に加えて、そういった気密性が肝心のときに確保できるかどうか、こういった点について今回の調査結果を待って対応いたしたいというふうに考えております。
  31. 対馬孝且

    対馬孝且君 これは今あなたが言っていることはあれでしょう、百二十八条の「ガス突出警戒区域」。つまりガスが多い警戒区域については設定をしなければならない。それから百二十八条の七、ガス突出区域における「適当な箇所に空気供給設備その他鉱山労働者の退避のための適当な設備を設けなければならない。」、こうなっているわけです。私はこれを言っているんだよ。これを見直せって言っているんだ。何も、その坑内にある限りはこれはいつどこで発生するかわからないんだから、あんたが知っているとおりだね。ガスは、かつて夕張炭鉱が九十三名犠牲になったときに三十八秒ですよ、火源から坑口まで突き上げたのが三十八秒ですよ、私は現地へ行ってわかっているけれども。そのくらいのスピード、速さで災害が起きるんだよ。だから、炭鉱全体が、坑内はやっぱり危険であると、こういう設定をするのがこれは当然であって、ただ事故が起きたから見直しというやり方ではなしに、これは何回も僕はこれを委員会で言ったことがありますよ。私はこれ十年間しゃべっているんだ、とのことについて。やっぱりこの機会に私ははっきり申し上げて、百二十八条の二、それから七、この問題をもう一回私は全炭鉱の区域に現実にここで災害が起きたんですから、八十二人犠牲になったわけですから、それはその最終結論を待ってということもわかるけれども、これもやっぱり検討の対象にぜひしてもらいたい。どうでしょうか、この点。
  32. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 御指摘の緊急時の施設、機器、あるいはその配置の適正化という問題については、先ほど申し上げました坑内火災防止対策部会で年内に結論を得べく現在作業を進めておりますので、その結果を待ちまして対処いたしたいというふうに思っております。
  33. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこで時間もありませんから、今幾つか挙げて、挙げればまだ二時間ぐらい僕は具体的な例を挙げたいんだけれども、時間がないからあれですが、先ほどの局長答弁によりますと、この災害を踏まえて坑内火災防止対策委員会ですか、これを設置したということを話しましたね。私は対策委員会を設置したということは了とします。その中でひとつ私が今指摘をした七十条の四の退避訓練、この三カ月に一回という退避訓練問題。今申し上げました百二十八条の二、ガス突出警戒区域の設定のあり方の問題。それから二百八十九のさっき言った消火体制、水栓系統の準備についての問題、こういうあたりも具体的にひとつ見直してもらいたいと。これらも含めてこの委員会でぜひひとつ検討し、改善の方向で検討してもらいたいと、そういうことについての局長の確たる答えを求めます。
  34. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 坑内火災防止対策部会検討を進めておりますのは火源、要因別の火災発生防止対策、それから早期発見対策、それから消火対策、警報連絡体制、それと大きく分けまして退避という五項目でございますが、その退避の一環といたしまして今御指摘の救急センターのあり方、こういったものについても検討いたしますし、それから消火体制といたしまして防火水源についての検討ということを含めてやっていきたいと思っております。
  35. 対馬孝且

    対馬孝且君 今私が申し上げました問題点のうち、具体的な鉱山保安規則、これは見直せというのは、私が言っているのは、規則だけを改正せいと言っているのじゃないですよ。指導基準なり運用基準というものをつくった方がいいだろうと、こう言っているのだ。こういうことを言っているのだから、現実に合ったことを言っているのだよ。あなた方自身が日ごろ感じていながら、そういう指導基準なり運用基準を含めて規則改正をしてもらいたいと、こういう方向でひとつ強く今検討し、改善の方向へ行くということだから、そういう方向で確認してよろしゅうございますね。
  36. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) そのとおり検討さしていただきます。
  37. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣に、それじゃ今局長から答弁がございまして、今申し上げました具体的な保安規則あるいは指導基準、適用基準というものをひとつこれから見直していただきたいと、改善の方向でいたしますと、こういう局長答弁でございますが、大臣にひとつ締めくくりの意味大臣のこの考え方についてお伺いします。
  38. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 先ほど申し上げましたとおり、保安ということが何よりも重大であるということにかんがみますれば、今後類似災害を起こさぬというようなかたい決意で私どもは監督指導しなければならないわけでございます。局長対馬委員質問に答えまして、今後厳重に監督の立場にあるとするならば、対馬委員の御意見に対してこれらを検討するということは当然なことでございまして、私もよろしく善処いたす次第でございます。
  39. 対馬孝且

    対馬孝且君 わかりました。大臣お答えどおり、ひとつぜひ実効あるものにいたしてもらいたいということを申し上げます。  そこで、時間もあと十分足らずしかございませんから、まだたくさんあるんですけれども、時間の関係上、私はかねて去年の十月六日、これは会議録を今持ってきておりますけれども、時間もありませんから、十月六日のエネルギー特別委員会、昨年の四月二十日のエネルギー委員会で、数重なる保安事故を省みるならば、やっぱりこの際、――北大の名誉教授、後ほど参考人でおいでを願っておりますけれども、二回にわたりまして、私は、試験炭鉱というものをこの際検討すべきである。このことを十月六日の新鉱再建対策の課題のときに、時の大臣、エネルギー庁長官、それから保安担当者にも申し上げております。それからここにございますが、四月二十日、同じく申し上げておるのでありますが、はね返ってきた言葉は、これは率直に申し上げて、なかなかそう簡単にはまいらないと。つまり急傾斜山もあれば三池のような山もあるし、太平洋のような、つまり水平坑道の山もあるし、あるいはシールド採炭やっている山もあるというようなことで一様にはなかなかまいらない、こういうお答えをいただいております。私はこれはもう一度、やっぱり今日のこれだけの災害発生をしているわけですから、だんだん深部へ深部へと深くなっていっているし、一方では急傾斜になってきているし、こういう問題等も含めて、そんな、ただ谷山の自然条件が違うんだという、予算上の関係があるから言っているだけの話であって、そんな甘い判断ではだめですよ。もう一回これをやっぱり本当に試験炭鉱というのを検討を見直してみると、一応保安管理上の面からも検討すると、こういう対応をひとつ検討してもらいたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  40. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) この問題につきましては、私どももかねがね石炭亜炭部会に御議論をお願いをいたし、また海外へ調査団を派遣いたしたわけでございまして、十分検討を進めてきたつもりでございます。もう先生十分御承知でございます、我々の言い分につきましてはここで省略さしていただきますけれども。ただ、そういった鉱山の深部化等大変な厳しい条件がこれからふえてまいるわけでございますから、決してその試験というものをなおざりにするわけにいかないわけでございます。御承知のように、ガス突出対策につきましては応力解放技術総合実証試験といいますものを現実に実施をいたしておりまして、赤平炭鉱でやっておるわけでございますし、また山はね対策に関しましては三井砂川、幌内、こういったところで岩盤振動の連続観測解析を現在進めておるわけでございます。そういった厳しい自然条件で炭鉱特有の事故の大きな原因になるものにつきましては、そういった生産現場におきまして現実の生産と並行して試験を行っておるわけでございます。その意味におきまして、私どもは地質等の自然条件が各炭鉱において異なっている、だからできませんと言うだけではなしに、そういった個別の試験につきましてはそういった生産現場でその試験を並行して実施することによってその実を上げていきたい、そういうふうに考えておるところでございます。
  41. 対馬孝且

    対馬孝且君 これは時間がないから、論争をここで今しても時間的な限界があるんですがね。北海道新聞の「論壇」という、これを参考までにあんた方の方も後ほど読んだ方がいいと思うんですがね。政府側もこれ勉強した方がいいと思うんだけれども。「三井砂川を試験炭鉱に」ということで、「人命救出の研究開発可能」であるということで、これはむしろ一般人の方でございますけれども、これは単に炭鉱だけでなくて、今地下鉄が、相当これ札幌も地下鉄になりました。これから都市型で地下鉄の工事もどんどんふえていくだろう。その場合の災害の場合でもこの試験炭鉱と重大な関係、かかわり合いを持っていると。つまり、今も言ったんですけれども、坑内火災と同じように、そういう見地からも、単にこれは鉱山保安、鉱山だけの問題じゃないですよ。都市型のつまり地下都市、こういう問題等も含めて、これからの産業の新たなやっぱり二十一世紀に向けて考えてみる必要があるという提起が実はございます。これは読んだかどうか知りませんけれども、後で石井局長の方に差し上げますけれども、こういう問題を含めて、やはり試験炭鉱というのは私は何も個々の個性とかそんなことを言っているんじゃないんですよ。それは赤平でやっていることもわかっているし、夕張に技研があることは私も百も承知でしゃべっているんだよ。しゃべっているが、問題は何が問題かというと、私は今この一つの例ですけれども、「三井砂川を試験炭鉱に」という記事をここに持ってきたのは、シールド採炭をやっております、現実に三井砂川が。私も何回も入っていますけれども。だから、そうなると、災害の原点というのは、今私が言ったでしょう。一つは、何と言っても炭鉱災害というのは水とガスと火以外ないんだと。火源がなければこれは事故が起きないんですから。あるいは水の問題、こういう問題なんですからね。やっぱりその基本に立って、試験炭鉱という問題をもう一回やっぱり検討してみるという意味では、これは後ほど、時間がないから、これは徹底的に審議しようと思ったんですが、石炭鉱審議会、中央鉱山保安協議会というのがあります。私自身参考人で議員になる前に出たことがございますけれども、この場で実際問題として、こういう問題をそれじゃ徹底的に議論したことがありますか、私ちょっとお伺いするけれども。中央鉱山保安協議会あるいは鉱業審議会で、そういう問題というのは、私の言うのは単に机上のプランでの検討だけでなくて、三井砂川なら三井砂川の急傾斜山、端的に私は申しますよ。赤平なら赤平の急傾斜山に現実に入って、そういうデータのもとに、この試験炭鉱内容というものはどういうふうにやっぱり発展されるべきだ、こういう問題を検討をしたことがありますか、私は常に言うんだけれども。そういうあたりをもう一回検討してみてもらいたいと私が言ってるのは、今すぐできるとはもちろん思いませんけれども、そういう幾つかの急傾斜山、水平坑道、あるいはシールド採炭、あるいは自走枠の関係における機械化採炭の今日的な現象、それから深部、浅部、具体的に例を挙げれば。こういう全体的な問題を含めて、試験炭鉱としての見直しというものを私はしてみるべきではないか。総合的な見地からしゃべっているわけです。この点もう一回確たる答えを求めます。
  42. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 先ほど申し上げましたように、中央鉱山保安協議会の石炭亜炭部会におきまして本件につきまして徹底的な検討をしていただいたわけでございます。また、その間に海外調査団も派遣をいたしまして、こういった検討を深めたわけでございます。また、先ほど御報告申し上げました生産現場におきます各種試験につきましても、そういった鉱山保安協議会等の意見を伺いながら現実に進めておるわけでございまして、私どもとしては五十四年の段階で十分この検討を尽くしていただいたんではないかというふうに思っておるところでございます。
  43. 対馬孝且

    対馬孝且君 これもう一度私は率直に申し上げますけれども、この問題について個別に現場を中心にというお話がございましたけれども、私が聞いてる限りでは、そんな段階ではないというふうに私は聞いております。むしろ私は総合的に、あえてここで申し上げますよ。私は失礼だから申し上げなかったんだけれども、それでは現実の問題として、鉱業審議会のメンバーというのは、私は率直に申し上げますけれども、このメンバーを考えた場合に、本当に石炭をわかって、みずから坑内の体験を持つそういう方々はいますか、鉱業審議一つとってみたって。決して僕は名前を言ってるんじゃないですよ。そういう構成それ自体だって、本当に炭鉱経験されて、みずからやっぱり炭鉱に命を張ってた、私に言わせるならば、体をかけて炭鉱の体験をしたという人が何人いますか、鉱業審議会のメンバーの中に。私は率直に申し上げますよ。こういう問題あたりだって、ただ検討しましたというようなこと、検討したかもしらぬけれども、評論家的な検討と実際問題として坑内災害保安対策、犠牲になった方々に対して本当に救ってやろうというならば、私は会の構成のあり方を見直すべきだと、このことを私は求めます。もう一遍答弁を願います。
  44. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 誤解があるといけませんので申し上げますが、私どもが検討の場として設けましたものは中央鉱山保安協議会でございます。これはあくまでも学者と会社側及び労働組合の技術経験者が入っておるわけでございます。
  45. 対馬孝且

    対馬孝且君 僕は鉱業審議会のことを言っているんだよ。
  46. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 審議会でこの問題を検討いたしてもらったわけではございませんで、保安協議会の石炭亜炭部会で検討いたしたわけでございます。
  47. 対馬孝且

    対馬孝且君 だから、答弁があんた、私の言ってるのは、正確に言ってるのは、鉱業審議会でやったことがあるかと。これはないはずだよ。それは亜炭部会でやったかもしらぬけれども、鉱業審議会としては検討しましたか、はっきり。石炭部長もここにいるけれども、検討はしてないでしょう。私はこれ前二回にわたってここで、当委員会で、エネルギー委員会でやってますよ。だから、私は、亜炭部会の検討はそれは結構かもしらぬけれども、鉱業審議会として今日の深部に移行した段階、あるいはそういう段階を含めて検討してみる時期に来てるんではないかと、こう言ってるんであって、そのことを私はもちろん、石炭部長に通告してなかったからきょうあれですけれども、そういう問題は総合的にひとつ検討してもらいたい、こう言っているわけですが、どうですか。
  48. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 御指摘の石炭鉱審議会でございますが、私ども保安問題に関しましては石炭鉱山保安協議会で徹底的に議論をする仕組みになっておりまして、この場を使って今後とも所要の対応について検討を進めたいというふうに思っております。
  49. 対馬孝且

    対馬孝且君 検討はしてみたいという答えですから、私は今時間ないから省いたんだけれども、鉱業審議会のあり方だってこれ問題ですよ、私は率直に申し上げますけれども。この点は後に譲るとしまして、今局長から検討していただくというお答えですからひとつ試験炭鉱問題というのは、私は単に何も予算措置のこととか、そんなみみっちい考え方持って言っているんじゃないんです。日本石炭の将来を誤ったらだめだと、保安体制を誤ったらだめだという見地から申し上げているんであって、この点ひとつ、大臣、時間も参りましたので、一言だけひとつあらゆる角度からこの際検討していただくということを申し上げたいと思います。
  50. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 委員指摘の問題につきましては、過去におきましてもかなり深く検討をいたした問題ではございます。せっかく御指摘でございますので、今後もなお心を改めて検討してみたいと思っております。
  51. 対馬孝且

    対馬孝且君 終わります。
  52. 伏見康治

    ○伏見康治君 対馬さんと同じように有明事故に関連して石炭採炭場のいろいろな保安問題についていろいろお伺いしたいと思います。  私は、実は石炭の現場のことは何にも存じませんので、きょうは私の友人である、ごく最近北大を定年退職されました磯部先生に参考人としておいでいただいて、いろいろ磯部さんからの御意見をお聞きしたいと思っているわけでございますが、それに入る前に私自身の立場をちょっと説明しておいた方が私の話がわかりやすくなるのではなかろうかと思いますのですが、私は過去二十年近く核融合という未来エネルギーの探索という仕事をやってまいりました。そういう立場でございますために、世間で誤解して私はもう石炭なんかには興味がないんだろうと、石炭というのはいわゆる斜陽産業であって、そういうものはもう死んでいくべきものだと私が考えていると、石炭をつぶすために私が何か保安問題をやっているのではないかというような誤解があるいはあるのではないかと思いますので、そういうことは毛頭ないということを申し上げたいと思うわけです。  私が核融合ということに興味を持ったのは、私が要するに、物理学者として出発いたしましたときの最初の原子核反応というのが重水素核に重水素核をぶつけるという核融合反応と呼ばれている。反応を使って中性子を出し、その中性子のいろいろな作用を調べるというのが私の研究の出発点でございましたので、そういう意味で核融合というものが私のいわば専門でございますから、その道で将来の日本のエネルギー源を探るというのが私の責任だと考えて始めただけのことでございまして、いろいろなエネルギー源のたくさんあるものの中で核融合だけが、あるいはそれに似たようなものだけが日本の将来のエネルギーを担うなんということを考えているわけではございません。しかし、世間には石炭産業というものがもはや終わりに近づいているというような考え方を持っておられる方があると思うのですが、日本では確かに相当深いところまでいかなければ振れないという枯渇状態に近づいているということは確かでございますけれども、世界全体を眺めますれば石油がなくなった後にも石炭というものは大量に残っているはずでございまして、将来エネルギーとしての石炭の役割というものは厳然たるものがあるわけですね。  そこで、日本の特殊事情ということもありますのですが、石炭産業の将来というものについて大臣としてはどういうお考えを持っておられるか、もはや斜陽的に衰えつつあるものとして、まあ適当に考えておけばいいというふうにお考えなのか、もっと真剣に取り組むべき問題とお考えになっているか、その辺のお考えをまず確かめておきたいと思います。
  53. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 私、もとよりかような問題には専門的な知識が非常に薄いものでございますけれども、そういう意味からも申し上げて、先般の三池炭鉱のあのような災害、その原因その他は徹底的に究明中ではございますが、そのような事故の際に思うことは、非常に危険なエネルギーであると、危険な場合を起こすようなエネルギーであると、そういう場合から考えれば、もっともっとそのような採掘に関しては安全なエネルギーの獲得手段というものはないものかということを思いがちでございますが、しかし危険とかそのようなことを考えずにエネルギーだけということを考えますれば、それは石油が枯渇した以後も石炭そのものはなお存在するというような学問等もあるわけでございまして、今後、人類にとりまして石炭というものがいかに大事なものであるかということは、委員指摘のように、厳然と存在する、学問の上からも私自身重大な資源であると考えておる次第でございます。
  54. 伏見康治

    ○伏見康治君 そういう観点からぜひ石炭産業についても真剣に取り組んでいただきたいと思うのでございますが、その石炭で一番弱点と思われるところは、今大臣が言われたとおりに、その採掘の際にいろいろな事故発生して非常にたくさんの方々がお亡くなりになるというような事件が相当しばしば起こるという点にあると思うのです。しかし、ほかのエネルギー源が絶対安全かというと、そうは必ずしも言えないわけでございまして、石油に伴う火災のようなものは大きなものが相当あります。それから、原子力というものもよく言われているように潜在的な危険性は非常に大きいわけでございまして、現在までは原子力に関する限り表面上にあらわれた事故を出しておりませんけれども、潜在性という点では非常に大きなものがありまして、どういうエネルギー源にいたしましてもその危険性をはらんでいないものはないわけでございます。  石炭については特に問題になるのは、まさにその石炭生産なさる方々が、つまりレジャーで山へ登山して事故でお亡くなりになるという意味のそういう事故とは質的に差があると思うのですね。いわば日本の経済的繁栄の基礎の縁の下の力持ち的な非常に貴重な人材を亡くすという意味が重なっていると思いますので、この鉱山における保安問題はあくまでも真剣に、あらゆる手段を講じてそれを守るという観点からやっていただきたいと思うわけでございます。  もし御存じでしたらちょっと数字を伺いたいのですが、労働災害で普通の一般的な労働災害というものの起こる割合と、それから例えば土木建築に従事されている方々災害率というのか、何というのですか、そういうものの数字が格段の差がある。さらに、海の上で働いている方、それから鉱山、石炭鉱山で働いている方の災害率というものがさらにまた大きくなっているというようなことを言われておりますが、その数字がもしありましたら教えていただきたい。
  55. 島田隆志

    説明員(島田隆志君) 詳細な数字でございますので、私の方から説明させていただきたいと思います。  お尋ねの産業別の労働災害でございますが、一つの指数としまして度数率、過去延べ百万時間当たりの罹災者数というのがございますが、それで見てまいりますと、石炭、亜族鉱業が二三・三四でございます。その次に大きいのが林業でございまして一七・九九、お尋ねのメタル、金属工業でございますが四・九だとか、あるいは建設業にまいりますと二・〇五、あるいは運輸通信業で四・七三というような数字がございます。御指摘のとおり石炭、亜炭というのは非常に災害率が高いということでございます。  それから、最近の傾向といいますか災害状況でございますが、石炭について申し上げますと、例えば災害回数で見てまいりますと、昭和五十年が二千六百七件でございましたのが五十八年、これは速報ベースでございますが六百八十四件ということでございます。ここ二、三年で見てまいりますと、五十六年が千八十三件、五十七年が九百八十九件、五十八年が今申し上げました六百八十四件という形で減少傾向にあるわけでございます。  死亡者の方で見てまいりますと、五十年が六十八名でございます。五十六年が北炭の夕張新炭鉱の大事故がございまして百二十四名、五十七年が二十四名、昨年は一応史上今まで一番少なかったわけでございますが十七名ということでございます。
  56. 伏見康治

    ○伏見康治君 ありがとうございました。  その数字を拝見いたしましても、とにかく石炭採掘関係の方々が非常な率で災害にお遭いになっているということは明らかでございますので、あらゆる災害はもちろん防がなければなりませんけれども、特に石炭産業に対して格段の努力を政府がしていただくように希望したいと思います。  実は私自身石炭のことをよく知りませんので、これから磯部参考人にお話を承りたいと思うのでございますが、磯部さんをちょっと御紹介申し上げたいと思うんですが、つい最近まで北大で石炭採掘に関する専門の教授として仕事をしてこられましたのですが、日本の大学の先生方というものは、世間の動きに対して案外敏感でございまして、石炭が斜陽産業になるという傾向が出てまいりましてから石炭の専門家というのはどんどんいなくなりまして、大学の先生で石炭のことを真剣にやっておられる方は磯部先生お一人という状態が長らく続いていたわけでございます。磯部さんは後半は大学人でございますがそれ以前には現場でお働きになっていたという御経験もある方で、つまり学問の場と現場というものとを両方知っておられるという非常に貴重な存在だと思いますので、対馬さんも言われますように、とかく机上だけの議論になりがちのこういう議論を現場の立場をも含んで、しかも学問的な立場を失わないで議論していただける唯一の方として、僕は磯部さんを参考人として呼んでいただいたわけでございます。そういうつもりでひとつお話を聞いていただきたいと思うのでございます。  まず参考人に伺いたいと思うのでございますが、私は対馬さんと違って具体的なことはよくわかりませんので、科学者の一員として石炭保安に関する学問的な面、つまり研究面というのが大体どういうことになっているのか、これはお役人の方に伺ってもいいんですが、それの組織とか、それのあり方とか、性格とか、そういうことについては磯部先生に伺うのがよかろうと思いますので、まずその点からお伺いいたしたいと思います。どうぞよろしく。
  57. 磯部俊郎

    参考人磯部俊郎君) お答え申し上げます。  現在日本石炭産業につきまして研究開発を行っておりますのは、通産省では工業技術院の公害資源研究所、現在は本所が筑波にございます。それの支所が九州と北海道にございます。それらのところでやや現場に密着した研究をやっております。  それから、各大学の資源工学科あるいは資源開発工学科、これは五つないし六つの大学がございますけれども、それらのところで主としてそういったものを研究をしております。これは基礎的な理論面について行っております。  さらに財団法人石炭技術研究所というのがございまして、これは業界と政府とである比率で資金を出し合って、いわゆる現場に直結した研究を行っております。それらの研究機関は相互にできるだけ連携をとりまして現在の石炭技術を進展させるのにやはり相当の努力を払っているというのが現状でございます。
  58. 伏見康治

    ○伏見康治君 一通りいろいろな研究所あるいは研究機関のようなものがあるというお話を承りましたが、そういうものは全体としてちゃんと連絡をとってやっているんでしょうか。つまり現場と実験室というようなこともありますでしょうし、それから同じ現場でもいろんな立場があると思うのでございます。  例えば石炭をたくさんとるという方の研究もあるでしょうし、災害防止するという立場もあるでしょうし、いろいろな立場というものがあると思うのですが、そういういろいろな面の全体的な有機的な連携というものは極めて大事だと思うのですが、その辺はどういうふうになっておりましょうか。
  59. 磯部俊郎

    参考人磯部俊郎君) 今の答えの中に一つだけちょっと落としましたことがございます。これは本当に採掘並びに保安問題を現実に研究する機関、これが私が従来唱えております試験炭鉱というものでございますが、これは九州の福岡県の碓井町に試験炭鉱と称するものがあるのですけれども、それは余り機能しておりません。と申しますのは、施設が実に貧弱であります。しかも大きな爆発実験その他を行いますと付近の住民が非常に大きなクレームを起こしまして、現在はそれが不可能になっております。そんなような関係がありまして、大きなプロジェクトいわゆる全体的な、総合的な形においてはやはり問題があるというふうに。考えているわけでございます。
  60. 伏見康治

    ○伏見康治君 いろいろな研究機関間の連携というような面ではどうなっておりますか。
  61. 磯部俊郎

    参考人磯部俊郎君) 研究機関間の連携につきましては、現在一番元締めになっているのは業界関係それから大学関係もう一つは試験所関係。これは通産省が主として元締めになって連携をとらせております。それからもう一つは、大学間の連携でありますが、これは文部省関係の総合研究という形で連携をとっております。それらの連携の方法、やり方につきましては完全に十分とは申し上げられませんが、現在の予算の範囲内でできる限りのことはやっていると私は考えております。
  62. 伏見康治

    ○伏見康治君 そういう意味の連携もありますが、私が特に問題にいたしたいのは、本当の現場といろいろな学問的及びそのほかの法律的なことをお考えになる方々との間の関係が必ずしも密着していないんではないかということを感ずるわけなんですが、素人で申しわけありませんけれども、例えばCO、一酸化炭素のマスクが実は大変熱くなってとてもつけていられないような状態になるというようなお話を承りますと、つまり一応何か機械は整備されてもそれの現場での使い方という点においての研究が足りないのではないか。そういう意味の試験が足りないのではないかというような感じを受けるわけですが、その点はどうでございますか。
  63. 磯部俊郎

    参考人磯部俊郎君) 今の私が申し上げました研究諸機関、その中で基礎的な研究をやっておりますのは大学関係であります。したがって、これは現場からかなり遠いといえば語弊がありますけれども、そのような研究に終始しております。いわゆる基礎をやっております。  それから、次の応用研究に類するものでありますが、これは通産省の公害資源研究所で、やや現場に近いところまでの研究をやっております。さらに現場に密着した研究としては、石炭技術研究所が行っている研究であります。これらがそれぞれの立場で連携をとっていることは事実でありますけれども、事、保安、それから特殊な採掘、特殊な採掘と申しますのは、現在、石炭の条件というのは非常に厳しい条件にありまして、経済的にもあるいは採掘条件、保安条件も大変な状況になっております。そのために新しい技術を開発し、言うならば革命的な採掘法も考えていかなければいけない。それから、大きな事故が起こって中に人が閉じ込められたような場合にはどうやって救出するか。それから大きな事故がどういうふうに坑内の中を伝播していくかというような、いわゆる現実に即した研究、これについてはほとんど行われていないということが現状でございまして、この点はよく御認識いただきたいと思います。  これなしには今後の石炭産業の発展ということは私は非常に難しいだろう。やはりだんだんしぼんでいくんではないか。しぼんでいくということはいいことか悪いことか、これについてはいわゆる国民の皆さんが結論を出すことだろうと考えております。
  64. 伏見康治

    ○伏見康治君 先ほど磯部先生は、試験炭鉱がどっかにあるけれども、それは規模が小さくて問題にならないということを言われたと思いますが、実は試験炭鉱については、先年日本学術会議がそういうものを考えるということを政府に対して勧告いたしました。私は長らく学術会議におりましたので、そういう意味合いからもこの試験炭鉱の問題をさらに議論したいと思うわけでございますが、磯部先生は学術会議における試験炭鉱の御議論の、少なくともイニシアチブをおとりになったわけでございます。磯部先生だけが別に決めたわけではございませんけれども、非常に大勢の学者が集まって、最後にそういう案をつくり上げたわけでございますが、そのイニシアチブをとられた磯部先生から試験炭鉱、特に学術会議が勧告している試験炭鉱といったようなものの性格をお伺いしたいと思います。
  65. 磯部俊郎

    参考人磯部俊郎君) 試験炭鉱というのは、ただに我が国ばかりじゃなくて、我が国にも先ほど申し上げました福岡県の碓井町にもございます。そのほか中国の重慶にもそれをまねたものが現在あるやに聞いております。しかし、本当に試験炭鉱らしいというものは、西ドイツのトレモニアというところにある、ドルトムントの近くにある試験炭鉱、それからポーランド、この二つが私の知っている限り本当に試験炭鉱らしいもの、そのほかのものはうわさには聞いておりますが、現実には私はまだ見ておりません。しかし、それにしてもその試験炭鉱は、いわゆる保安面、坑内火災とか爆発とか、そういったことに対しての研究が主体であります。  私の構想しております試験炭鉱というのは、採掘も含めましたいわゆる現在の日本石炭産業の苦境を救う一つの試金石として、世界に対してユニークな姿の試験炭鉱を構想しております。その中には新しい採掘の方法も研究をする。それからもし災害が起こったならば、坑内でどのような伝播をするだろうか。もしその中に人が閉じ込められたとしたならば、それをいかなる方法で緊急救出をすべきであろうかというようなことを含めた研究ができる試験炭鉱を要望しております。  なぜそういうことを要望しているかと申しますと、少なくとも日本は先進国でありまして、先進国はやはり周囲の開発途上国の先頭に立って学問技術を進めていかなければならない責任を持っていると思います。  同時に、日本炭鉱の採掘条件というのは、先進国でありながら地質条件その他は非常に劣悪であります。しかも深部化している。この状況は、日本だけの現在の状況でありますけれども、決して未来永劫にそういうわけではございません。いかに豊富な炭量を持っております諸外国の石炭であっても、やがてこういう状況になるということはそれは当然でございます。  私どもが学生のときは、日本石炭は無尽蔵にあると考えておりました。しかし、それから数十年たった現在、私が定年退官した今日に、日本にはもう石炭はないんだということを言っている人さえあるわけであります。つまり掘ればなくなる、掘れば条件の悪いところに入っていかざるを得ない。それでも我々は石炭を掘らなければいけない。世界の状況はやがてそうなる。それの先取り研究をやれるのは現在の日本しかあり得ない。そういう意味で極めてユニークな試験炭鉱の構想をしてみたわけでございます。その点を御理解いただければ大変幸いだと思っているわけであります。
  66. 伏見康治

    ○伏見康治君 余り時間がありませんので、もう少し承りたいところですが、この試験炭鉱については、先ほど対馬さんの質問に対して、大臣もあるニュアンスに富んだ答えをされましたが、従来、お役所の方ではこれに対して余り積極的でないように見受けられます。その積極的でない一つの要素は、ある段階で有吉さん、伊木さんという偉い学識者が発言されて、余り役に立たないとか、あるいは国費のむだ遣いになるとかいうような発言をされているということが一つの要因になっているようにうかがうんですが、この御発言に対して磯部さんはどういうふうにお考えになりますか。
  67. 磯部俊郎

    参考人磯部俊郎君) 有吉石炭協会の会長並びに東大の伊木名誉教授の御発言につきまして、私なりの意見を申し上げたいと思います。  時間も余りありませんので、ごく手短に申し上げます。  このお二人の意見の共通します点は、炭鉱はそれぞれ条件が違う、試験炭鉱をつくって、そこで研究をしても、その族鉱には合う技術は開発されるかもしれないけれども、それを全炭鉱に応用するようなものとはなり得ない。したがいまして、そのようなものをつくることは国費のむだ遣いになるんではないかと、断定はしておりませんが、と思いますというのがほぼ発言の骨子でございます。  私は、この二つを分けて考えてみたいと思います。  有吉さんの御発言は、これはいわゆる炭鉱側の立場に立っての御発言でございます。炭鉱の人というのは、往々にして私どもの方は他山と自然条件が違うんだ、したがって他山のやり方では我々の山は振れないんだということを理由にいたしまして、生産減あるいは保安の問題に対して対抗手段をとるのが、私も炭鉱におりました関係でそれが常套手段のように思います。したがいまして、有吉さんの御発言はその見地に立っていると考えております。  一方、伊木先生の御発言につきましては、私は学問というものはそういうものではない。例えば人だってそれぞれ違うだろう。同じ人は二人といない。しかも、人はいろいろな病気をするだろう。その病気に対してどんな研究をやっているか。人を使って研究をやっているでしょうか。私は、それは動物を使ってやっていると思います。動物と人間は違う、違うからそれは人間には応用できないんだということが言えるか。それは国費のむだ遣いになるんでしょうか。動物実験は決して国費のむだ遣いにはならないと思います。試験炭鉱でやったことは、それは全炭鉱に共通する部分、いわゆる爆発を起こしてもどこの炭鉱でも同じように爆発を起こします。それから、急傾斜の採掘でもどこの炭鉱でも同じような悩みを持っております。それを試験炭鉱で行うべきであります。  何も、個々の問題はその違いは個々の責任において処理すればよろしい。個人個人の個性の修正とか伸張というのは自分自身がやればよろしい。しかし、社会性とかそういうものに関して、現在教育の問題が問題になっておりますけれども、それは共通性において社会の責任において考えるという意味であります。試験炭鉱は、そういう意味で決して私は国費のむだ遣いにはならない。むしろ、そういった共通性の中にどんな真理が含まれているかという学問と、技術の発展のために一つの我々が描き出した大きなロマンの中の一つの実現であると考えております。
  68. 伏見康治

    ○伏見康治君 ありがとうございました。  残念ながら時間切れなんですけれども、最後に一つだけ。  素人として、新聞を読んでおりまして、有明災害が起こって何週間がたった後で、福岡鉱山保安監督局が鉱山採掘の何か許可を出したという新聞記事を拝見いたしまして、全くの国民の一人として、つまり全くのずぶの素人としていささか不安を感じたわけなんです。つまり、監督局というのは前から監督されていたわけで、それで事故が起こったわけで、その事故原因究明がまだ中間報告といったような段階でしかないのに、既に再びその採掘が行われてもいいという許可を与えるということは、一体どういう根拠によるのか、こういう許認可的な仕事というものと、それから保安法をあくまでも守る立場とは、やはり一人の人間ではできにくいことで、違った人格でないとやれないと思うんですが、お伺いいたしますと、通産の中にはいわばそういう二つの役割をそれぞれ受け持つ部局があって、その間でいわば緊張関係があるように伺っておりますが、そもそも鉱業法とか鉱山保安法とかというものが終戦直後に成立いたしましたときに、GHQの考えでは、採掘する方の話は通産省に任せて、そして保安面は労働省に任せるといったようなサゼスチョンがあったように伺っているんですが、実際はそうではなくて通産省が一切を賄うような形になったと思うんですけれども、こういう事故がたび重なってまいりますというと、やはり役割というものはそれぞれ別々にした方がいいのではないかといったようなことが私は十分考えられると思います。  終戦直後は、とにかく日本の産業を復興することが大事で、そのためにはまず石炭を掘らなくちゃならぬという至上命令みたいなものがございまして、しゃにむに石炭を掘ったと思うんでございますが、そういう状態と近ごろのようにやや背さんがゆったりと物を考えられる状態になったときとでは物の考え方が当然違ってくるはずで、この保安体制というものを独立した機関が見守るという体制をこの際改めて考えるべきだと思うんでございますが、すぐさま結論を出すことはできないと思いますけれども、そういう意味での検討もひとつやっていただきたいと思うんですが、大臣、どうお考えでしょうか。
  69. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) この問題に関しましては、御指摘のように鉱業法体系と鉱山保安法体系とチェック・アンド・バランスの関係で処理をいたしておるわけでございます。御承知のように鉱業活動というものは、先ほど対馬先生から御指摘がありましたように保安管理、保安確保と表裏一体といいますか、保安がその大前提をなすものでございますが、その鉱山稼働に関します専門断知識を持ってこの管理をすることが極めて効率的でございます。その意味において、従来の保安行政体系というものが労働省ではなくて通産省で行われてきたゆえんでございますが、今後とも適切な監督指導に努めてまいりたいというふうに思っております。
  70. 伏見康治

    ○伏見康治君 もっとよく考えていただきたいと思いますが、これで終わります。
  71. 対馬孝且

    対馬孝且君 それではまず、きょう参考人にお願いをいたしましておいでをいただきました磯部先生に心から感謝を申し上げます。  先ほど先生がいらっしゃる前に一時間ほど三井有明の問題を中心に災害原因の明確化、現行の鉱山保安規則の改正問題、また試験炭鉱問題等を出して議論いたしました。大臣お答えを願っておりますが、私は先ほど時間もなくて触れなかったんでありますが、今回の有明災害を教訓にしまして、夕張新炭鉱災害なども教訓にしまして考えますと、私は現在ある鉱山保安監督機構というものを、中央鉱山保安監督機構というものを含めまして、私も西ドイツの炭鉱も入りましたし、チェコスロバキアの炭鉱、ポーランド、中国、それからソビエト炭鉱も入ってまいりました。やっぱりどうも保安機構が、磯部先生にお伺いしたいのは、独立体制日本はなっていないんじゃないか、非常に弱い体質を持っているんじゃないかと。それは私の持論なんですけれども、いつも議論することでありますが、一口に言って鉱業権者、三井三池の場合あたりを見ると、三池鉱業所の所長が年間五百万トンの生産体制責任を持っているわけですね。ところが、一方、今の現行法でいきますと、保安の管理最高権者が、三池の権者が三池の所長であると。これ、私をして言わしめれば、警察に泥棒の権限を与えたと同じじゃないか、こういうことで私はしばしばこの問題を言うんでありますが、つまり乱用されることになるわけでありまして、片方では、生産五百万トン達成する最高責任者である。片方では、保安に対する最高鉱業権者として取り締まらなきゃならぬ。こういう保安の、物の立て方ですね、基本の置き方が日本の場合は率直に言って独立な機関になっていない。西ドイツの場合も一つの独立体として体制をなしている母体が、社会主義の国はもちろんでありますけれども、私はここらあたり現状の保安監督局というものをもっと末端へ行きますと、夕張炭鉱の場合もそうでありますけれども、岩見沢監督署の夕張地区に常時配置したのはたった三ないし四名であると、私は鋭くここで指摘をいたしました。こういう問題を考えてみますと、私はむしろ現行の保安監督機構というのは独立をして労働省に所管を持つべきものであるという持論を我々持っているわけです。これはしばしばもう我我の方針として打ち出しておるんです。労働省は労働者を保護する省であり、通産はやっぱりどちらかというと産業政策重点の省であると。そういう意味では、諸外国のようにやっぱり保安省を設けろなんて私はオーバーなことを言いませんけれども、ひとつ労働省がこの保安の一体的体系のもとに監督機構を持つべき機構にすべきではないかということが一点。  それから二点目は、末端における保安監督局体制が、まあ保安監督員が私も少ないと思うんですけれども、この点はふやすべきだと私も思っているんですけれども、行政改革だ何だってこれありますけれども、むしろ強化すべきだと思うんでありますが、その山その山に臨戦態勢で常駐体制ぐらいしくというこの体制を私は持つべきじゃないかと。今、岩見沢に保安センターにありますけれども、防爆にちょっと毛の生えたようなもんで、あれでは実際の先生が指摘されるような保安の管理維持はできないんじゃないかと、こう思いますが、この点まず第一点お伺いしておきたいと思います。
  72. 磯部俊郎

    参考人磯部俊郎君) 今の御発言も私は全くもっともだと思いまして、お答え申し上げたいと思います。  ここでちょっと資料がございます。鉱山保安行政の所管問題というものがございます。これは、戦後間もなくGHQの干渉によりまして、鉱山保安法をつくれということで、主務大臣と鉱山保安局がこれを行うようにするというので三項目のものを挙げてございます。その三項目は、いわゆる鉱山施設の保護、それからもう一つは人命の保護、それから鉱害の防止と、この三項目を挙げているわけでございます。その三項目を挙げて今の、その当時ありました鉱業警察規則、これを廃止して鉱山保安法をつくるべきであると。しかも、その昭和二十三年の一月から五月にわたってアメリカの鉱山局の主任の保安担当技師という方が日本炭鉱をつぶさに視察をいたしまして、保安法の草案を作成したそうでございます。このときに坑内外の保安、それから坑内の衛生に関する規則、その実効を上げる上から一元化して、これは政府機関は単数であるべきであるということを主張したそうでございます。一方、鉱山業界では、労働組合側はこぞって労働省に所管すべきであるという主張をし、企業や技術界の方は商工省、当時商工省所管を望んだそうで、政府は二十三年の六月閣議に上程をしましたが、両省の大臣がその主管を譲らないで、とうとう官房長官の試案を出しましたけれども、GHQがこれを決定したと、そして商工省の所管になったというようないきさつがあるそうでございます。そのように、当時の時代から、労働省あるいは商工省、現在の通産省の所管にあるべき、どちらにすべきかということは非常に大きな問題だったと思います。で、三池災害あるいは夕張災害その他が起こるたびに労働省移管問題というのが起こっております。それに対しては、私は、やはり労働、安全、衛生という問題は一貫してやはり労働省所管であるべきでないかというのが私自身の考えでございますが、これはやはり議会その他で決定すべき問題であって、私の考えとしてはそういう意見を持っております。
  73. 対馬孝且

    対馬孝且君 大変どうもありがとうございました。時間もありませんから、先ほど試験炭鉱の問題で、これは去年の四月二十日、十月段階でも先生のとうとい試案のもとに委員会で議論しているんです。    〔委員長退席、理事降矢敬義君着席〕 先ほどお答えもありましたけれども、伏見先生のお答えにもありましたが、私もかねて先生に何回か政策的な御意見を賜りまして、大変貴重に感じているんでありますが、三池の炭鉱の教訓からいきまして夕張新炭鉱がなぜ再開発ができないかと。あのとき私も、思い切ってあそこを、夕張炭鉱全体を、私が言うのは総合開発をすべきであると。つまり、全面開発、石狩炭田株式会社というようなところまでいくべきじゃないかと。その布石として、あそこにあるのは千三百万トンですから、磯部先生に言わせれば五、六千万トンあると、こういう、当時の開発の責任者ですからおわかりだと思うんでありますけれども。あの資源を投げるべきでないという私の持論です。まだ山に、八百名もの仲間がまだ就職していないわけです。そこで考えますと、やっぱり私はあの千三百万トン、仮に通産省が確認をした千三百万トンを、これは将来ともに放棄することはできないと。しかも、大夕張だってやがてこれは命脈は尽きるわけですよ。あそこに真谷地と登川、それに南大夕張の三つの山がある。あそこを全面的な再開発の方向をとろうとするならば、私はやっぱり深部開発以外にないと思うんですよ、深部に行く以外ないと思う。ところが、日本の場合は、もうマイナス八百メートルも下がると、深部はこれは不可能であると投げちゃうわけですよ。現実は先生言ったように五千ないし六千万トンでしょう、あそこの新鉱開発というのは、現在残炭として残っているところが。そうなってきますと、これもう一つ私が心配しているのは天北開発です。天北は二億トンと言われているわけです。今現実にこれから新鉱が日本に一体あるのかと。今言われた釧路西部ですよ、はっきり申し上げて。北海道的に物を言うと釧路西部以外にないと。それから有明の一部よりないと。こういう状態を総合的に考えあわせると、その意味でも試験炭鉱というのは私は必要である。つまり総合開発、つまり一体化開発というものをしなければ、夕張の開発は、あの資源をみすみす放棄することはできないんじゃないか。私は資源の立場です、一つは。  それからもう一つは、政府が言うコスト論の立場でも、あそこを一本にすれば、縦坑二本、三本おろす必要はないわけですから、一本で済むわけですから縦坑が。そうすると、これはコスト面からいっても当然これは軽減になるわけですよ。そうすると掘れる――通産省の今の話だと、十億トンとこうなっているわけですよ。私はいつも指摘するんですけれども、日本のあれはソフレミン調査以来日本の確たる炭量調査をやったことがない。私は確信を持って今指摘しているわけですよ。またその径ないんですから、現実に。ソフレミン調査以来ないんですから、日本の確たる炭量調査もやってないわけですから。その意味では、僕は国費をかけてやれといつもここで声を大にして叫ぶんでありますが、私は鉱命延長、それから一つはコスト論、一つは資源論、一つは地域社会を維持すると、この四点の見地からでも、やっぱりこの試験炭鉱というものをやらなければ深部の開発はできないし、それから隣接鉱区の開発は不可能である。総合、一体的な開発は不可能であると、こういうふうに私も政策面で考えているんですけれども、もし先生の、この機会に、知恵があったらひとつお聞かせを願いたいと、こう思っている次第です。
  74. 磯部俊郎

    参考人磯部俊郎君) まことに私はごもっともな御意見だと思っております。今のように夕張新炭鉱は千三百万トンという試算を出しておりますけれども、あの試算に関しましては、いろいろな条件を制約して、それから過去の実績をしんしゃくして、どうしてもこれだけぐらいは大丈夫、掘れるだろうということをもとにして計算した炭量が千三百万トンであります。したがいまして、あの炭量は、当時の技術をもってしても掘り得ると考えられたものであります。そのほか、技術の進歩の外側にはまだ数千万トンの炭量があり得ると考えても過言ではございません。  なお、そのほかに現在の幌内炭鉱の周辺の、過去において閉山いたしました旧住友本別炭鉱、これは千メーター有余の深部でございますけれども、なおあの二つの縦坑のもとには数千万トンの炭量が手つかずのまま介在しているということは、これは言えると思います。それ全部掘れる振れないは問題外といたしまして、技術の発展の過程においては掘れるかもしれない。さらに、釧路西部の舌辛区域、まあ阿寒の方でございますが、ここには相当有力な炭量が存在していると。それから、天北は二億トンと言いましたけれども、一説によれば十億トン余の炭量が存在しているというふうに考えられております。また、九州の西彼杵半島の海底には、これは無慮数億トンの原料炭があるだろう、日本最後の最大の炭田であるというふうに考えられて、現在海上ボーリングなどでその採炭を続けている状況でございます。そういった点を考えますと、まだまだ炭量的にはそんなに悲観点な問題ではない。ただ、コスト、技術、これが非常に大きな問題でございます。このままの状況で開発しますといわゆる乱掘になります。その乱掘を防止するために正しい開発を行うためには、試験炭鉱による研究というものはぜひ必要であります。黙っておけば、いいところだけ食って結局むだな未採掘の炭量を残したまま撤退しなければいけない。そのいい例が夕張新炭鉱の上部区域であります。あの上部区域は恐らく十数年掘るつもりで開発したと思います。わずか数年で終掘というのはほとんど放棄炭量が多かった、それだけいいところだけ、あんこのおいしいところだけ食って撤収してしまったということに、技術並びに経済的な問題が絡んでいたんだろうと考えております。そういった問題を解決するのはやはり試験炭鉱による正当な採掘方法を検討する以外にないというふうに考えております。
  75. 対馬孝且

    対馬孝且君 大変今貴重な御意見をお伺いいたしました。  第三の問題として、これも私かねがね思っておるのでありますけれども、いわゆる現在中央の機構としては中央鉱山保安協議会、それから鉱業審議会がございますけれども、このあり方の問題について私はしばしば思うんだけれども、これはいつも傍聴しているというよりもずっと今日まで来てそれなりに鉱業審議会も役立ったと思いますよ、中央鉱山保安協議会も役立ったと思いますけれども、構成それ自体がやっぱり官僚ペースという言葉悪いけれども、出席した方が言うんだけれども、どうも通産省のおぜん立ててこの審議会が組まれてしまっている、これではよくならないという意見を私はしばしば聞くのです。率直に私これ言われるから言うんであって、したがって現行のこういう鉱業審議会のあり方、それから中央保安協議会のあり方というものについていま一度やっぱり見直してみる必要があるのではないか。どうもやっぱりマンネリ化しておるのじゃないか。私を初め、長く石炭に携わると現行制度に甘んずるということになる傾向があるわけでありますが、根本的にもう一回鉱業審議会あるいは中央保安協議会その他も、先ほど私は保安監督局を申し上げましたが、保安センターを申し上げましたが、そういう全体の問題として石炭政策並びに保安機構の先生の日ごろ感じておられる観点から、もし改善策があるとすればこういう点を見直した方がいいのではないかという御意見がありましたらこの機会にお聞かせを願いたい、こう思うわけでございます。
  76. 磯部俊郎

    参考人磯部俊郎君) 今御質問は二件あったと思います。一つは石炭鉱審議会の問題、それからもう一つは中央鉱山保安協議会の問題でございます。この両者とも私は十年あるいは数年委員をやってきております。現在は委員をやっておりません。  中央鉱山保安協議会は地方鉱山保安協議会と性格は非常に違いまして、これは大臣の直接諮問機関になっておりまして、法規の改正などかなりの権限を持っております。    〔理事降矢敬義君退席、委員長着席〕石炭関係に関するものは石炭亜炭部会というのが担当をしておりまして、私の察するところによりますとかなり頻繁に開かれ、真剣に討議が繰り返されているように考えております。ただし、私もこの中央協議会の委員であった時代に石炭亜炭部会には属しておりませんでした。石炭亜炭部会に属しておりますのはいわゆる東京在住の学識者、学識経験者と本当は申し上げたいんですが、そういう方は大抵経験がございませんので、学識だけなので学識者と申し上げます。東京在化の学識者、それから各社の本店関係の保安担当者、それから労働組合保安担当者、そういう者で構成されております。その議事録、これを私ども地方に在住する保安協議会の委員に送付するようにということを再三申し上げました。そうしたら、そのときには一、二回は送ってきます。しかし、その後はなしのつぶてで全然どういう事項がそこで協議されているか、地方に在住する私は唯一の北海道の中立委員でございましたけれども、その状況はわからなかった。そういうことで恐らくその通産省のいわゆるベースで事が運ばれているんじゃないか、これではいわゆる現地に密着した本当の保安行政ができないというふうに私は感じました。そのときも実は申し上げていたはずでございますし、しかし、私が申し上げる機会は年に一回、それもセレモニーで会長の選任その他報告事項、自分の意見を言うのはせいぜい二分か三分、お答えは通り一遍というようなことで終わっております。  それから石炭鉱審議会の方は、委員はほとんど全部評論家、それから財界の人、ジャーナリスト、ごく少数の技術者、学者、そういう者で行われております。しかも大部分が東京在住者であります。私は、石炭は東京で掘っているんじゃない、石炭は九州と北海道と、その他もしあったら常磐、そういうところで掘っている、その掘っている現地で何が行われているか、どんな苦労をしているんだということが生に返ってくる審議会でなければ審議会としての意味がないじゃないかということを実は申し上げたことがあります。しかし、その状況はいまだに改善されておりません。十年も二十年も、それこそ第一次か第二次かわかりませんが、やがて第八次が出るそうでございますけれども、ずっと委員を続け、同じ答申を出し、同じ失策を繰り返し、特に六次、七次答申は現在空振りに終わっております。そういうことがあってよいものかどうかということは私は何ともここで申し上げかねることでございます。やはり基本的な改革は必要だと考えております。
  77. 対馬孝且

    対馬孝且君 これも大変貴重な御意見でありがとうございました。  次の問題としまして石炭技研につきまして、これも先ほどの問題、石炭技研、夕張にございます石炭技術研究所、これは私は一昨年ちょっと現地へ行ってきまして見てきたのでありますが、どうも何とかやっていればいいというような、僕は非常に現地へ行ってみまして、もちろん石炭技術開発というのは液化の問題、あるいはこれからの石化体制をどういうふうにしていくかという問題ももちろんございますけれども、どうも何か現状あるんだからやっていればいいんだというような式になっちゃってどうも前進するという、改革をしていくというのがどこにもどうもないということが現地へ行ったらかなり言われるわけですよ。もっと言いますと、代替エネルギー元年と言って昭和五十五年に代替エネルギー元年を叫んで、あのときは石炭技研も政府もちょっと腰を入れたかなという感じがしたんですが、ところがまた油が最近五ドルも下がって円も円高になるとまた石油に戻っちゃう、代替エネルギーというのは遠ざかってしまう、こういうことをこの間も当委員会で私は指摘をしたわけですけれども、この石炭技研のあり方について、時間もありませんので最後にひとつお伺いをしておきたい、こう思います。
  78. 磯部俊郎

    参考人磯部俊郎君) 石炭技研のあり方につきましては、これは私どもが云々する問題では現在ないと思います。ただ、石炭技研それ自身の活動方針というものについては私は賛同するところが多いわけでございます。なぜならば、いわゆる現場から実務を経験した技術屋さんが集まってきて、そして実地に即した問題をテーマとして取り上げて現場で研究をしております。非常に地道な、しかも熱心な研究をしている。ただ、残念なことには研究費は非常に不足でございます。一例を申し上げますと、採掘と保安に関する研究費は大学その他すべて含めまして年間二十億足らずぐらいだと思います。これに対して、石炭化学、つまりガス化、液化という利用方面はもう既に三、四百億の台に上っておると思います。さらに、先ほどの伏見先生の御専門であるいわゆる原子力関係に関しては、数千億のボーダーで上がっておると思われます。また、未来のエネルギーと言われております融合反応では、兆のボーダーに迫らんとしているそうでございます。大数のスケールで書かなければならない研究費の配分という問題については、これは我々いかにその片隅にいても何となく不安を感じております。その点、石炭技研の動きというものにつきましては、私自身はそこに働いている人、研究をしている人の真摯な努力は買っておりますけれども、それに対してのいろんな施策、それはかなり不満を持っております。
  79. 対馬孝且

    対馬孝且君 どうも時間が参りましたので、大変貴重な参考の御意見をいただきまして本当にきょうはありがとうございました。  先ほど来、試験炭鉱の問題では、小此木通産大臣から今後もひとつ検討してまいりたいという大臣の答えをいただきました。したがって、今大臣やりとりをお聞きになりまして、第八次の石炭政策をつくらなきゃならないのですよ。当然これから準備に入るわけでありますけれども、今の貴重な磯部先生の参考の御意見をお聞きになったと思いますけれども、これから何とかやっぱり石炭政策の――二十一世紀につなぐエネルギーは代替エネルギーである、その中の柱は、政府が出しておりますのはもちろん原子力と石炭、LNGあるいは二十一世紀以降を展望をした場合には太陽熱、地熱あるいは風力、こういうものもございますけれども、ともあれいまひとつ第八次のこれから準備にかかる政策の課題に十分今の貴重な御意見を取り入れながら、かつこれからの石炭政策の前進のために最善の努力をお願いをしたいと、このことを申し上げまして私の質問を終わりたいと思います。
  80. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) この際、一言ごあいさつ申し上げます。  磯部参考人には、御多忙中のところ、御出席をいただき、貴重な御意見を拝聴させていただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。どうぞ御退席いただいて結構でございます。  引き続き質疑を行います。
  81. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 最初に通産大臣にお伺いしますが、今随分耳の痛いことがどんどん指摘をされたんですが、この点について素直に耳を傾ける姿勢がおありかどうか、最初にお伺いしたいと思います。
  82. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) いろいろ言われましたけれども、御意見と御批判は自由でございます。我々は政府という非常に度量の広い立場でございまして、御意見や御批判は十分今後の行政の参考にしなければならないと考えております。
  83. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私も三池炭鉱有明坑内災害事故に関しましてこれから質問をいたしたいと思うのですが、今大臣が言われました言うのは自由だ、こういう物の言い方にちょっと最初ひっかかるのでありますが、八十三名という大変な人命を殺し、そしてしかも十六名一酸化炭素中毒になっている、こういう状況の中で、本当にこれまで一生懸命言い続けてきたことがやはり政府の場で取り上げられてない、こういう点を参考人もあるいは同僚議員も指摘をしてきていると思うのです。ですから、言うのは自由だ、こういうような物の考え方に対してはどうも納得いかないのですが、もう一度その点についてお考えをお伺いしたいと思います。
  84. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 私が申し上げたそれ自体をストレートに三池炭鉱災害事故に遭われた方々と結びつけられるということになりますとこれは問題でございます。先ほど申し上げましたように、私は災害と同時に三池炭鉱に赴きまして実情を伺いまして、犠牲者方々の非常に痛ましい状況あるいは遺族の方々の御不幸の状況等を聞き及びまして、炭鉱というものが何よりも生産よりも保安第一であるということを痛感してまいりました。三月たった今もなおあのときの状況を思うだけでも、通産大臣として今後この原因というものを徹底的に究明して類似災害を起こしてはならぬという決意はだれよりもかたいのでございます。さような状況でもって、今後この炭鉱の問題に関しては保安をどういうふうにやっていくかと決意を抱いているわけでございまして、私の気持ちを御理解願いたいと思うのでございます。
  85. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 一応姿勢がわかりましたので、次に移ります。  本委員会におきまして、通産省の方で有明坑内災害事故原因と、こんなにたくさん災害が拡大をした要因について、今時点で一応中間報告も出ておりますが、通産省として一応この点について所見をお伺いしたいと思うのであります。
  86. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 先に、内容に入る前に、今回の中間報告を出しました三池炭鉱坑内火災事故調査委員会、これは九州大学の先生お二人も参加をしていただき、現場をよく何度も立ち入り調査をしていただいた上で取りまとめられたことを申し上げておきます。  この委員会報告、これは中間段階でございます。なぜならば、現段階火災発生箇所と目されますベルトコンベヤー近傍におきます不回転ローラー等のこれは火災発生メカニズムにどうつながって、どういう要因として寄与したのであろうか、そういったものの実証試験を現在行っておる段階でございますので、まだ最終的に確定してないわけでございますが、今回の中間報告を受けましてその骨子は二点、全体で三部構成になりますが、問題点としては二点あるわけでございます。  第一点は、火災発生のメカニズムでございます。火災発生箇所につきましては既に中間報告で明らかにされておりますが、二百二十メーターベルトコンベヤー連絡斜坑の坑底一番下から約十五メートルぐらい上に第三調量門というのが第一〇ベルトコンベヤーにまたがっておりますが、その第三調量門ないしその近傍、この焼損状況等からいいまして、かつ第一発見者からの報告等を判断いたしますと、この箇所火災発生箇所ということで断定できるのではないかと思っております。  この火災発生箇所における原因でございますが、先ほど申し上げましたように、最終的にどのベルト施設関係が発火原因になったのかということについての確定的な絞り込みは、試験等によって今後実証されてまいりますので、今の段階では確定できませんが、ベルト施設が発火メカニズムに大きく関与しているということは中間報告でも明らかにされておるわけでございます。それで、第一〇番のベルトコンベヤー第三調量門近辺でございますが、ベルトコンベヤーのフレーム自体がぶれている、あるいは曲がっているキャリア台があるということ、あるいはその施設に不回転のキャリアローラーあるいは不回転のリターンローラーが発見されておる、これが火災前に不回転になったのか、火災後に不回転になったのか、この不回転が発火メカニズムとしてどういう貢献をしたのか、この辺は何度も申し上げますが、今後の実証試験の結果を待たないと最終的にわかりませんが、こういったベルト施設関係が摩擦の原因になっておるというふうに考えられるわけでございます。それで、このベルト施設と他の障害物、例えば針金あるいは落炭あるいは調量門の木材、こういったもののいずれかが相互に異常接触をいたしまして、ここに摩擦熱を発生させたんではないんだろうかと、これが近傍にございます可燃物を蓄熱発火させたというふうに考えておるわけでございまして、これがほぼ現段階火災発生メカニズムとして絞り込まれた状況でございます。  それから第二点の、こういった火災が非常に多くの人命の犠牲を強いた被害拡大要因でございますが、事故調査委員会におきましても、火災発見のおくれ、連絡、指令の手間取り、こういった現場と中央指令室との連絡体制の問題、それから、初期消火の段階におきまして最初の消火活動がある程度功を奏したというふうに見受けられる状況まで至ったわけでございますが、ケーブルの切断による消火機能の低下、それにかわります消火栓との接続の失敗、こういったものによりまして初期消火活動にトラブルが発生したこと、それからもう一つ、一番大きい――これは個人的な意見になりますので差し控えますが、本来退避坑道として指定されました排気道の立て坑に近い箇所に黒煙が出てしまった、これは二百二十メーターベルトコンベヤー連絡斜坑から三百二十メーターの一一番のベルト坑道を通りまして入気が入っていきまして、その入気の主たる部分は三百二十メーターの西一卸というところへ流れていくわけでございますが、ほんの少量がその逆方向にございます炭車を巻き上げる巻き陽風道を通って少量流れて排気道へ行く構造になっております。で、煙がこの巻き場及び巻き陽風道を通りまして三百二十メーター西卸の連れ卸という排気道、これが避難道でございますが、この避難道に先回りして出てしまったということで、退路を遮断されたということがその退避を非常に困難にし、かつ犠牲を大きくした原因なんではなかろうかというふうに考えております。まあこういったいろいろな要因が複雑に絡み合いまして大災害をもたらしたものではないかというふうに考えておるところでございます。
  87. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 時間が制約がありますので、次に移りますが、鉱山保安監督局捜査の進捗状況、そしていつ捜査が終了するのか、あるいは事故調査委員会の最終報告というのはいつごろになるのか。これはやっぱりこういう事故ですから、それは慎重もいいですが、急ぐところは急いだ方がいいんじゃないかと思うんですが、この点についていかがでしょうか。
  88. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 私ども鉱山保安監督局関係では、鉱山保安法違反問題というものを捜査いたしまして、別途警察が検察の指揮を受けまして私どもと並行して捜査をいたしておるわけでございます。したがいまして、私どもの司法捜査といいますのも検察の指揮下にございまして、検察の指揮に従って現在捜査をしておるわけでございます。さきに対馬委員にもお答え申し上げましたように、四百二十メーター目抜きの救急センターの調査とか、こういうものも現在捜査の一環として調査をいたしておるわけでございますが、まあこれ、私どもだけの予定でなかなか進み得ない面がございますが、できるだけ夏前には調査のめどをつけたいというような気持ちで現在進めておるところでございます。
  89. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 その段階でまた詳細については質問することといたしたいと思うんですが、火災発生時間について少し、まあ調査報告書あるいは通産省がまとめた資料等でちょっと差が出ているようですが、その点について一つだけお伺いしておきたい。
  90. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 中間報告におきましては火災発見時刻と申しますのは第一発見者から誘導無線によりまして指令センターに坑内火災発生を通知した時刻、十二時五十分ということが一応火災発生の時刻ではないかというふうに見ておるわけでございますが、しかしながら、これは第一発見者の報告によりますと十三時三十五分ごろに煙を発見しておるわけでございます。煙を三百二十メーター西一卸の坑道で発見をいたしまして、それで火源にといいますか、煙の源泉にさかのぼって入っていったわけでございます。それで、二百二十メーターベルトコンベヤーの発火地点に到達して、その第三調量門の天井付近が燃えてるということを初めて発見したわけでございます。したがいまして、火災発生は少なくとも十三時五十分以前というふうに考えられます。
  91. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 今まで通産省の方が出した資料は十三時五十分ごろと、こうなっておりましたが、少なくとも調査報告書や、あるい博労働組合で調べた内容も、第一発見者がもう見たときには相当煙が出ていたということですから、十三時三十五分もう以前と見るべきではないかと思うんですが、これからまあそういう点ではいろいろ書類をつくるとき、通産省が時間については調査報告書よりも後になるような書き方はしない方がいいんじゃないかと思うんです。  次に、下請労働者の被災者を見てみますと、非常にウエートが高いんですね。これは結局まあ生産第一主義といいますか、会社としましては、一つは量の確保、同時に採算の問題と、この二つを同時に追求するわけですから、下請を使って少しでも安くということが基本にあるんでしょう。しかしこれは職安法でね、あれは五条ですか、労働者供給事業、これに類するような非常に――労働省にも聞いてみたんですが、なかなか微妙な見解なんですが、下請をたくさん使う、そして下請労働者のいわば未熟練労働者がたくさん被災をしている、こういう状況なんです。ですから、下請労働者に対するやはり保安の指導面、こういう点がどうも、これは最近の傾向ですが、石炭だけじゃないと思うんですが、ここが相当弱いんではないか、こう思うんですが、この点はいかがでしょう。
  92. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 確かに御指摘のように、犠牲者の中で亡くなられた方八十三名のうち四十二名が下請の労働者でございます。たまたま犠牲者を出しました坑道が掘進坑道及び採炭準備中の坑道に集中しておったために、この下請の率が高くなっていたのではなかろうかというふうに思うわけでございます。  それで、この下請の保安教育という点に関していえば、避難誘導訓練等につきましては、全炭鉱労働者同様の行動をとってもらっておるわけでございますし、保安管理機構にも下請の参加という形でその意見が吸い上げられるような仕組みはとっておりますが、今後も十分そういった点に指導監督の段階で意を用いる必要があろうかと思います。
  93. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 そういうお答えが返ってくるのは想定をしておりましたが、有明鉱の場合、特に私がいろいろ資料を見たり、いろんなお話を聞いてみて、労務管理にやっぱり問題があったのではないか、こういう感じを強く持つんであります。  二人の息子さんを坑内で亡くして、奇跡の生存をされた藤原さんが、これは三池炭鉱労働組合がまとめた「悲しみを怒りにかえて」というパンフレットの中でインタビューに答えて言っているんですね。ちょっと読んでみますと、ずっと話が前から来て途中からですが、   「俺は下請け、最初に助けるのは直轄の人たちだから組の俺の所は一番最後になる。負けんぞ、助けにくるまで頑張るぞ」  「火が消えんなら水を入れるじゃろうな。水を入れるなら助からんぞ。そんときゃそれまでたい。夕張のときは水を入れたなあー。夕張にも俺と同じような人がおったかも知れんぞー。苦しかったろうな。俺もそうなるのかなあー」 こう言っているんです。それから次に、少し飛ばしますが、   「不安と恐怖が入り混じり気が狂いそうである。気をしっかり持たなければ、と歯をくいしばった。何度も死ぬかと思った。ときどき手を出して外の様子をうかがった。折りを見て顔を出したら煙も少なく、周囲がよく見えるので外に出てみた。光りが三つ四つ見える。ひょっとすると息子たちが生きているのかな、と一瞬思った。役に立たぬとは思ったがマスクを付けて外に出て安全灯で合図するが応答がない。歩いた。近づくと救護隊のようである。今ごろ救護隊が来よるが、ガスがなくなってから助けに来るとばいなー」 と思った。それから、最後ですが、   「すぐ傍を見ると、上の息子清正が仰向けに倒れていた。頭に血かかーっとのぼった。と突然〝生きとらすバイ〟との声が聞えた。そして〝ばんざい〟の声。〝このやろうー、何がばんざいか、今ごろ来やがって、この阿呆たれがー〟力いっぱい怒鳴った。胸のなかの思いが一度に爆発した。思わず抱き起こしてやりたかったが救護隊に腕をとられてはなすすべもない。〝今何時な〟〝一時たい〟夜中の一時かと思った。よく聞くと翌日の午後一時過ぎである。二十四時間もそこにいたことになる」 こう言っているんですね。  これは後、資料ありますからお渡ししても結構ですが、その中で私はやっぱり感ずるのは、彼が言っているように、本能的に下請はもう後からしか助けてくれぬのだと、こう思っている、こういう状況なんです。だから、今扱いは同じだとこう言われておったとしても、なかなか現場はそうはいっていないのが常識じゃないでしょうかね。この点についてお考えを述べていただきたい。  それから、有明の関係は、やはり職制が随分強い、職制の横暴がどうもあの職場にまかり通っておったんじゃないか。完全な上意下達の体制がやっぱりある。だから、あの集中管理センターでも、これは当然すぐ退避命令出さにゃいかぬ、こう思いながら、やっぱり上にお伺い立てていかなきゃいけない。そして、上に立てるには、はっきりした状況を把握しておかなきゃ上に物が言えない。だから、そうこうしているうちに時間がたった。こういう、あの炭鉱の中にはやっぱり人道を無視したような生産あるいは採算重視、そして保安はその次だという労務思想が流れておったと思うんですよね。ここをやっぱり、一方では科学的に事故を起こさないような形に進むと同時に、一方では物の考え方の転換を回らせなきゃいけない、こう思うのでありますが、この点についてお考えをお伺いしたいと思う。
  94. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 下請の問題につきまして、今回の災害におきます補償につきましても、直轄と同様の処遇を行うようにと私どもは会社に強く要請したところでございまして、会社側もそれにこたえてその措置をとったわけでございます。私どもとしてはあくまでも、同じ鉱山労働者で直轄と同様の状態で作業をいたしておるわけでございますから、当然に同じ処遇を受けてしかるべき性格のものだと、現に保安管理機構、あるいは鉱山労働者として鉱山保安監督局長に対して直接物を言うことができるような手段を講じられておるわけでございまして、そういったことを通じてでも、できるだけ私ども今後とも対応に誤りのないような形で進めていきたいというふうに思っております。  それから組合との関係でございますが、これ御承知のように保安委員会というものをつくっておるわけでございまして、保安委員会の補佐として保安監督員がございますが、これが鉱務監督官の立入検査等で立会をいたして保安管理を双方で徹底化を図っておるところでございまして、もちろん今後一層の保安管理の重要性の徹底が今回の事故を契機として図られ、かつその体制ができ上がったものというふうに私どもは考えています。
  95. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 そこを答えられると黙っておるわけにはいかないんですね。結局、責任会社にもあるけれども、労働組合、働いている保安委員会を構成している人たちにも一部責任があるんだといういわばとられ方の物の言い方に、私はどうもとるんです。保安委員会が本当に機能していればこういうような事故は起きなかったはずだ。当時私どもが現地調査商工委員会で行ったときに、保安委員会を形成している三つの労働組合の役員の皆さんが、やはり鉱山保安監督局に対してもう少し厳しい保安監督姿勢をとってほしいと、こういう要請があったわけです。なぜそういう構成をしておりながらそういう状況にあるかというのは、やはり力関係が変わっておる、会社の方に力があるわけです。ここのところをあなたたちが見ておらなくていろんなことを、形はこうなっておる、形だけを言っておりますから、これはやっぱりこういう事故が次々に私はまだ起こってくるような感じを持ちます。一月の七日に、私が聞いているのは、保安委員会が、これは先ほど局長もちょっと答弁されたんですが、坑内保安調査等もやっている。で、その保安委員会のやったその報告は問題ないということのようで、ところが、十日ちょっと、十一日たってこの大事故が起こっておる。で、保安委員会が本当に機能しているかどうか監督局としてつかんでおるんですか。つかんでおって、今局長が言うような答弁が出てくるのかどうかですね。
  96. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 私どもは、法律上鉱業権者が持ちます第一義的な保安管理の責任保安委員会という労組参加の機構によって担保をしていこうという考え方をとっておるわけでございます。で、先ほど申し上げましたのは、私は、そういうチャネルを通じてでも今後ほどしどし接触をしていただきたいという希望を申し上げたつもりでございまして、責任転嫁のために発言したつもりはございません。そういうようなせっかくのチャネルを十分にワークさせることが、御指摘のように、肝要かと思います。したがいまして今後は、事故が起こりましてから二度にわたりまして大規模な避難訓練等を行い、一丸となって保安委員会がその保安管理の徹底を期そうということで対応しておりますので、各鉱山においてもそういう意識を持って今後対応していただければありがたいというふうに思っておる次第でございます。
  97. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 これは答弁要りませんが、監督局としては、会社の中にあります保安委員会が十分機能しているかどうかというのは、形だけじゃなくて、やっぱり中身まで本当につかむようにこれからしていただきたいと思うんであります。  次に、直轄という言葉がずっと出てきますね。下請けと直轄と。直轄ということは、直轄イコール正社員と受けとっていいわけですかね。
  98. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 鉱業権者が直接に雇用権を有しておる者という意味でございます。
  99. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 この中には会社の臨時雇用者も入っているんですか。
  100. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 私、今自信を持ってお答えできません。後ほど調べましてお答えいたします。
  101. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 もう時間が来ましたのでやめますが、先ほど局長が被災者に対する取り扱いはいわば直轄も下請の皆さんも同じようにするという指導をしているやにちょっと聞きましたが、そういうことは間違いないか。
  102. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) これまでいろいろの事故のたびに、弔慰金の差ということが非常に強く指摘されておりましたので、今回は少なくとも弔慰金に関して異なるようなことがあっては好ましくないということで、会社側に要請したことはございます。
  103. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 通産大臣、最後ですが、私は、将来のエネルギーの問題を展望しても、さらに今日置かれておる状況から見ても、石炭産業というのは非常に公益性の強い産業だろうと思うんですね。確かに三井が、三井鉱業所が山を持っております。まあそういう経営者であるかもしれない。しかし、政府、国が利子補給をしたり、あるいはいろんな補助金を出したり、補助金の中にもいろいろあるでしょうが、合計しますと約トン当たり、これは私がつかんだ数字ですから、大体の概数ですから間違っておれば訂正していただきたいと思うんですが、一トン当たり約三千円ぐらい、三千円近い補助金が出ておるようなんですね。補助金というか国の財政から、何らかの形で。  そうすると、非常にオープンにされなきゃならない企業だと思うんですよ。がっちりもう企業がこう抱え込むんじゃなくて、非常に公益性を持った、また将来のエネルギーの展望を持った企業でなければならない。こういう点から考えますと、やはりもっとどしどし石炭産業の経営者に対して国は言うべきことは言うと、することもしておりますからね。そして、もっと企業が地域と密着できるような、地域に企業として発展するような、そういう指導をしていただきたいと思うんですが、大臣のお考えを最後にお伺いしたいと思います。
  104. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) おっしゃるとおり、石炭産業は非常に公益性を持っているということは、全く同じ考え方であります。保安の上に今後監督指導を強化いたすことももちろんでございますが、その経営全般につきましても、通産省としてあるいは通産大臣としてさまざまな厳しい注文を出して、今後万全を期してまいるように努力いたします。
  105. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 午前の質疑はこの程度に、とどめ、午後二時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ―――――・―――――    午後二時四十四分開会
  106. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  107. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 私は、特許庁に俗に言う植物特許、この一点に絞ってきょうはお伺いいたしたいと思います、時間も余りありませんから。  この間、特許公報を見ますと、五十八年、三六四六ですか、一月二十二日に特許、何番ですかな、この中に「ヨモギ属に属する新植物」というので「日本新薬株式会社」というのが申請した申請が公告になっていますね、同じようなものが二件。これは審査されて公告というのは大体もう特許を与えようと前提のように思いますけれども、それはどうですか、どういうことなんですか、これは。
  108. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) 特許あるいは工業所有権全体でございますけれども、審査というのは審査官が責任を持って審査しているわけでございますが、今、先生のおっしゃったように、公告決定をしたということは一応審査官の心証としては特に有力な証拠を持った異議がなければ認めたいという意思表示ということに一般的にはなります。
  109. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 この公告につきましては、御案内のように異議が出ておりますね。私はこの公告した内容、それから異議内容、そういうものをよく読んでおりますからその内容は結構です、時間もありません、私はよく承知しておりますから。それで今後、本特許をするまでにはどういう手順でどういうことになりますか。
  110. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) これは異議の申し立てが出ておるのでありますから、一般的に言えば異議の申し立てが出て、それから今度は出願人の方からそれに対する反駁書が出たり、あるいはさらにその反駁書にまた異議中立人から補足の理由が出たりしてかなり往復がありまして、最終的に異議申し立てがあるかないかをジャッジするということになろうと思います。したがって、本件はかなり慎重にやっていますので、かなりその時間もある程度とって慎重にやるという方針のように私の方は了解しております。
  111. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 その決定に何カ月以内には結論を出さなきゃならぬとか、そういう制限はありませんか。  それから異議が出て、その異議を審査するのは、この公告決定までに審査した人がまた審査しますか。
  112. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) 理論的にはいつまでに異議決定をしなきゃならぬということはありません。ありませんけれども、役所の処理として特に理由がない限り不当におくらせるというのは一般論としては好ましいとは言えませんですけれども、特に期間の定めはございません。  それから異議決定をするのは、これすべて工業所有権全般ですけれども、審査官、担当の審査官がすると、こういうふうになっています。
  113. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 そうしますと、これは公告するのは大体もう特許を与えていいだろうというような審査、心証といいますか、そういうあれの結果与えてあるので、公告してあるんですから、同じ人が異議をあれされても、恐らくなかなかその異議は認められないかもしれませんね。そうなりますと、その上の段階、これは救済方法どうなりますか。
  114. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) この点についてはもちろん心証的に一たん公告決定した審査官が拒絶、異議が出た場合に自分の最初の意見にこだわってなかなか動かないだろうというのは若干――そういうことはないと思います。というのは、我々ありふれたことでございまして、審査官というのはむしろけちをつける方が商売でございまして、何かけちをつくものがあれば、だから積極的な行政をしているわけじゃなくて、どちらかというと、語弊がありますけれども、けちつけ行政をやっているわけです。だから新しいけちが出てくれば、しめたというような態度もありますし、これ非常に一般的な制度でございますから、自分が一たんしたからそういうことはないと思います。これは私信じております。  それから第二に、それでは異議申立人の理由はないというふうになった場合の救済措置でございますけれども、これは審判、さらにはその上の高等裁判所という二つのさらにチェック機関がございます。
  115. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 そうすると、裁判まで行く場合はありますね。その間はやはり本特許は与えられないということになりますね。
  116. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) そのとおりでございます。
  117. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 それでは特許申請した内容を若干私の感想と申しますか申し上げますけれども、これは何か人工的にヨモギを普通の倍の染色体につくった、そして非常に縁の遠い染色体の数の違う植物ですから、なかなか今までに交雑できなかった。それを倍数の染色体のをつくって近寄せて新しいヨモギをつくった、それがペンタヨモギ、ヘキサヨモギと称する。しかもその中にはサントニン、虫下しのサントニンの含有量が多い。それから、今までこれは栄養繁殖がなかなかできない、それが栄養繁殖できるような植物をつくった、こういうことが申請の内容のようでございますけれども、こういうことはこれは一般に行われている方法なんですね。いわゆる植物の育種上、普通のブリダーとしてはこんなものは三十年も前からやっていることなんですね。一九三七年にアメリカのカーネギー研究所のブレークスリーという人が大体コルシチンというものを使ってこういう倍数体をつくった。こういう方法を見つけた。それ以来どこの国でもこういうことをやって、日本でもたくさん例があるわけですね。この人もコルシチンを使ってそういう倍数体をつくって、そしてそういうものをつくった、こういうことなんですね。  そういうことを見ますると、特許を与える条件として御案内の二十九条にいろいろ書いてありますけれども、解説書を見ますと、新規性と進歩性の二つだと、こう言っているんですね。ちっとも新規性ではない、もう三十年も四十年も前からやっている方法ですからね。これは一向私は新規性なんというものじゃないというふうに思いますから、これは全然特許を与える条件には値しない。  それから進歩性ということですが、この進歩性というものはいろいろおたくの青本というんですか、これを見ましても、それからおたくの方の先輩で吉藤さんとおっしゃる方ですか、前に審査官がなんかやって今おたくの方の工業所有権の審議委員をやっている、本を出していますね、解説書。それなんかを見ましても、進歩性というのは、「その道の通常の専門家が、特許出願時における技術水準から容易に考えだすことができない程度をいう。」こう言うんです。これはだれでも考える、世界の技術者はもちろん日本の技術者だって当たり前の技術者はこんなこともう日常やっているんです。ですから、進歩性も私は少しもないと思うんですね。そうしますと、二十九条にいうところの特許の条件といいますか特許の要件、これは満たしていないと思うんです。ただ、今度の場合もそういった方法じゃないんだ、特許にも方法と物、方法じゃないんだと。つくったものが新しいペンタヨモギ、ヘキサヨモギというこの植物が、サントニンの含有量が多いし、それから栄養繁殖ができる、このものを申請を出しているんだ、こうおっしゃっているようですね。しかしこれも専門家に聞きますと、倍数体をつくれば当然これは大きくなったり中の成分の含有量が多くなる、こういうことは当然予想される、そのためにやるんですね。しかもいろんな植物、たまたまヨモギではそういうあれですけれども、植物全体としてはこういうことは幾らでもありますからね。そうなりますとこれは無数にできてくるわけだな。こういう新しい少し大きくなった植物あるいは少し丈夫になった植物、こういうものがあるから特許を認めてくれと出してきたら、これは無数にできできますよね。ですから、私はそういうものとしても全然特許のあれに当てはまらないとこう考えるのですけれどもね。あなたは審査官でないからあなたに聞いてもわからないかな、審査官後ろにいるから答弁できますか、どうですか。
  118. 齋田信明

    政府委員(齋田信明君) お答えいたします。  特許の場合はどういう場合に許すかといいますと、私ども目的とそれから発明の構成といっておりますが、それと効果というものがどんなぐあいだろうかということを基本に考えております。  それで、今先生がおっしゃいましたように、このヨモギがどんなヨモギであるかということは先生おっしゃったとおりでございます。ただ、このヨモギは今まで全然考えなかったつまり種間の、別々のヨモギの間に、しかも染色体数が全く異っておったわけでございますが、それを一つのものにしようとこういうことでございます。それで確かにコルシチンの処理ということにつきましては、御指摘のとおり一九三〇年代にその技術はございました。しかし、今申し上げましたように、この二つの種類の間に、ヨモギを一つにしようという考え方は全くございません。それによって構成から言いますと、新しい五から七倍体という全く新しい染色体数の構成を持った新しい個物をつくっておるわけでございます。そういう意味で構成が非常に新しいというふうに考えております。  それから効果でございますが、今先生おっしゃったようにサントニンの含有量が高いということですが、これは従来は〇・五から〇・八%ぐらいの含有量でございますけれども、これは二・五から三%という率にして非常に高い、今まで全く考えられないような効果を持っておるわけでございます。暖かいしかも湿気の多い我が国では、今までこういうものがなかなか育ちにくかったわけでございますけれども、それが育つようになったということがございます。それからもう一つ、差し木ができませんでした。しかし、その差し木がまたできるようになったわけでございます。そういう意味で私ども非予測性というふうに呼んでおりますけれども、予測されなかったような効果を生み出したということだと私ども考えております。したがいまして、私どもの解釈は、目的はもちろん新しい植物をつくるという目的でございますし、構成も新しい五倍体から七倍体という染色体数を持っておりますし、しかも今申し上げましたような三つのほとんど予測できないような効果を持ったものができたということで、特許要件に満足するということで私ども許したつもりでございます。
  119. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 今五倍体から七倍体の大変な倍数体のものをつくったからというようなお話ですけれどもね、これはそんなものたくさんあるんですよ。今の学校の教科書にだって七倍体以上になると逆にいろんな効果が劣ってくるんだということまで書いてあるんです。五倍体やそこらまではいろんな特性が大きくなったり含有量が多くなったりするあれがあるけれども、七倍体以上になるとこれはむしろ下がってくる傾向がある。そういうことは学生の教科書にまでちゃんと書いてあるんですからそんなものはとっくにつくってあるんです、七倍体でも何でも。だから、そんなものは私は理屈にならぬと思いますよ。  それから、サントニンの含有量が多いというけれども、何かこれを見ると一番多い花の部分だけとって分析したような格好になっているのです。そして、比較したのは植物体全体、基とか、あれにはないんだ。花のところに一番。それを持ってきて比較したような似向もあるように。ちょっと私、異議のあれ拝見しましたけれども、いずれにしましても、こういうような植物自体は――特許には、方法特許は今まで十件ぐらい植物にもあった。しかし物自体の特許というものは今までなかった。そして、御案内のように農産種苗法をつくりましたね、五十二年に。そのとき特許庁と農林水産省でいろいろ相談をされました。合意ができているはずだ。そしてたびたび私ども農産種苗法つくるときに審議をいたしましたが、そのときの特許庁、農水省の両方の答弁は、方法特許はこれからもあるかもしれませんが、物については恐らくないでしょうと。そして種苗法でも全部カバーできますから、それでいいんですと、こういう答弁で終始しているんですね。よほどの変わった事例でなければないだろうという答弁を、これは衆議院委員会審議、参議院の委員会審議でも何回もその点は各党の方から御質問があって、そういう答弁をしているんです。そうなりますと、これはもう本当に何十件に一回、何百件に一回の特例ですか、どうですか。
  120. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) おっしゃったように、農水省との間で種苗法の制定時、いろいろお話し合いをいたしまして、農水省の園芸局長も最近予算委員会その他で答えていらっしゃるように、いろいろ調整いたしました。  それで、基本は種苗法、特許法、両方それぞれの立場といいますか、それぞれの保護対象、保護態様でワークするけれども、植物品種については特許になるのは極めてまれだろうと、こういうような話で動いてきておりました。  それで、現実論としてそれから既に七年以上たっているわけでございますが、その間がないのものが植物自身として出願もされておりましたけれども、一件も認めたものはないわけです。現在、だからこれが唯一の、まだペンディングでございますけれども、認められればケースだと。  それから、今後を展望いたしましても、これは特許の場合には大体手持ちが、今かなり残念ながら処理期間があるものですから持っているのですけれども、ですから数年先を見て、我々としては今後出てくる可能性は非常に少ないと依然として思っていますので、まれだという前提は、現在別に事情が変わっているというふうには考えておりません。
  121. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 それではあれじゃないですか。我我種苗法あれしたときの答弁と全然違うじゃないですか。まれでない。ほとんど物のときはないでしょうと言っていたんでしょう。まれでないと今答弁されたのは、うそを言ったことになるんじゃないですか。
  122. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) 今私の説明がちょっとあれだと思いますが、まれですというのは、全然変わってないということを申し上げたわけです。そういうふうにお答えしたつもりでございます。
  123. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 ところが、こんなものやったら幾らでも出てくるんですよ、幾らでも。ざらにある。  きのうかおとといだって、農水省の種苗の登録を見ますと、やっぱり桑で、同じ五倍体と二倍体をかけ合わせて新しいものつくって、これがたくさん肉が厚いとか寒さに強いとか何かといって、種苗法でちゃんと登録している、二、三日前に。同じ方法で、同じ手法でやっている。ちっともまれじゃない、こんなものを特許したらね。全く私は、二十九条にもこれは当然当てはまらない。新規性もない、進歩性もない。さらにまた第二条からいって、「「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と。ちっとも高度でないんだ。高等学校を出た者だって、こんなものはつくれるんですよ。こんなものちゃんと教科書に書いてあるんですからね。それを特許するというのは、どうも私はわからないね。  まあ時間がなくなりますから、次に移りますが、いずれにしましても、これは農水省との種苗法をあれするときの合意に私は違反すると思いますよ。その点、よくこれから農水省とも詰めてくださいよ。  それからもう一つ、種苗法のいわゆる国際的条約、工業所有権の方の特許の方も国際条約がありますけれども、種苗法の方のあれも国際条約があるわけですね。UPOVと称している国際条約、それに日本も加盟している、批准もしていますね。そのあれには第二条かに、国内で二つの法律というかな、権利というのかな、与えてはいけないということになっているんですね。こういうもの、種苗法にも当然登録になるようなもの、二つの権利を与えることになると条約違反ですよ。これはどうですか。
  124. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) 現在、特許法と種苗法とがワークしているわけですけれども、この両方は保護の対象とかあるいは態様が違いますことは、先生御存じのとおりです。そして日本で今おっしゃいましたUPOV条約に定める育成者の権利というものを担保するものは種苗法だ、こういう解釈になっておりまして、これは先般来の予算委員会でも法制局長官がお答えになった趣旨でございますけれども、政府としてはこれがUPOV条約に違反するという理解はしてないわけでございます。
  125. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 それは長官はそうおっしゃるけれども、外務省は心配しているよ。条約をあれしているところによく聞いてごらんなさい。これは困ったなと。外務省とよく相談してください。  時間がなくなりますから先に進みます。  私は、なぜこんなことを言うかというと、こういうことをやられたら、御承知のように、これから世界の農業を支配するものは種だと言っている。アメリカの種屋なんか大変な勉強をしている。日本の企業もやってますよ、種。それを特許に、こんなものさえ特許するんだから、新しいハイテクで出てきた今の細胞融合。ポマトなんてできましょう。土の中にポテトができて上にトマトができる。ポマトなんという植物も既にできているんだから。  農水省だって、これ二、三日前の新聞に、ナスに今度は豆のでん粉を遺伝子組みかえでやろうと。そしてそれを種をとると、こういうんです。ちゃんと認可になって始まるんですね。こんなことも世界じゅうで既にやっているんです。  そうすると、そういった種が特許申請をやって断るわけにいかぬでしょう。こんなつまらぬものまで特許しているんだから。それこそ地球上にない植物ができてくる。そういう場合に断るわけにいかぬでしょう。そして、それが今度特許をとった、特許をとったら、これは大変な収量があるからといって農家はそれをまいて種をとって、またまこうとしたら、その種にはやっぱり特許権がかかっているんでしょう。どうですか。
  126. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) 特許権で、植物自身に特許権をとった場合に、問題は自家採種のものをさらに翌年種子をとって、またその種を加えて、そして収穫をしたいというところまで及ぶかどうかという御議論だと思います。特許法上は及びます。ただし、我々の解釈といたしましては、種子の販売業者が人に種子を売った場合に、当然明示の意思表示がない限り、これは自家採種の場合に免除されるだろう、こういう解釈を我々はとっておるわけでございます。
  127. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 特別に明示しない場合は自家採種は免除される、こういうような解釈のようですけれど、もうけようとしてかかる企業がそんななまっちょろいことはしませんよ、それは。それはあなた言い逃れだ。そんなことはだれもしません。それは必ず十五年なり十八年の期間、やっぱり特許権を厳重に主張しますよ。あなたが幾らそんなことを言ったってそれはいいかげんなものだ。時間がなくなりますから、私はいずれにしましてももう余りあれしません。答弁はその場限りのようになりますからね。  それで考えますと、先ほどあれしましたように、一つは今のUPOVと工業所有権の条約の二重になっていますから、この点はやっぱり解決していかなきゃならぬ。それから、今のように非常にバイオテクノロジーが進んできまして、いろんな新しい植物ができる。しかもまだ、御承知のようにNHKあたりもついこの間ハイブリッドライスなんかで大分放映して、全国民が非常に関心を持ちましたね。あんなものじゃない、もうすばらしいものが今度地球上にないものがどんどんできてくる可能性がある。アメリカ、ヨーロッパあたりの種会社なんかも非常にウの目タカの目。日本の大企業だってもうやっていますからね。そういうところから、日本の農家を守っていかなきゃ、農業を守っていかなきゃということになると、今のようなそういった考えで特許行政をやられたんじゃ、これは大変なことになると私は思いますよ。非常な被害が甚大なものになってくる、かように考えます。そういうことを考えますと、これは特許庁長官が明示をしなけりゃないんだなんて――当然及ぶんですから、これ。ですから、もともと植物は、青本にも昔、植物は扱わないんだと書いてありましたね。ところが、四十五年かなんかの改正から扱うことになって、審査基準というものもつくりました。しかし、この前の種苗法との関連のときにはほとんどないでしょうという答弁で切り抜けていますけれども、こういう時代になってきますと、そんなことも言っておられませんから、特許法の中から植物はこれは扱わないんだという明文化されなきゃ私は危険だと思います。既にヨーロッパの各国ではイギリス、フランス、ドイツ、スイス、こういったところではもう既に特許法の中に明示してありますよ。これについての御感想はいかがですか。
  128. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) 一般的に種苗法も含めてでございますけれども、工業所有権法的な無体財産法的な物の考え方というのは、一つの権利を与えるけれども、同時にそれが刺激剤になり、あるいは後に続くもの、あるいはそれを公開する、保護の代償として公開すると、ノウハウも含めて。そういうようなことで全体としての産業の発展になるんではないかと、こういう精神でできているんだろうと思います。それは理論的に言えば、農業もおおよそ産業ですから一般的には同じだと思います。そういう意味で、通常の場合でも仮に独占権があってもそれを独占していたら意味がありませんので、権利者もみんなに使わせるというふうなことで、使う方は利益があるから使うと。強制的に使わせられる必要はないわけで、利益があるから使うと。こういうようないい循環が一般的には産業で行われているわけでございます。で、現にこの間のアメリカの議会局、これはアメリカの国会で、日本と欧州とそしてアメリカのバイオテクノロジーのアセスメントというのをやっております。その報告書は新聞にも出ておりましたけれども、その中に私としては重要だと思う一節がありましたけれども、それはいろんな意味で将来のバイオは日本とアメリカだと書いてありました。その中のもう一つとして、いわゆる広い意味の工業所有権的な保護の態様がアメリカが一番強いと、はっきり言えば。日本、欧州の方が弱いと、その点はアメリカが有利だと、こういうふうに書いてあった記事もありました。ですから具体的な問題になりますと、これはまだ一つ植物特許がありませんので、どういう影響が出るかとかという問題がないものですから、観念というか、理論の問題だと思いますけれども、一般的に言えば、こういう保護というのは産業の発達に資するということでございます。したがって我々としては、しかしそうは言ってもこれが逆に現実論として大変な被害があるというような事態になれば、それはまたこれは立法論としていろいろなことを考えなきゃならないというふうには考えておりますけれども、一般論としてはそういうことでございますから、軽々に植物特許を外すというのはいかがかと私は思います。
  129. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 時間が来ました。長官長々と言いわけの答弁していたもんだから時間が来まして。  今、産業の発達云々と目的の第一条に書いてあるんですけれども、これに反対するようなことになるんですね。農業がもう壊滅されちまう。産業の発達にならないんだ。特許法の方も大体第一条から目的から外れてしまうんですね。そして何か苦しい答弁していますけれども、これはやっぱりこういうハイテクの時代になって、これはもう大変なことなんですから、このままほっておけないんです、緊急を要するんですよ。もう二、三年後そういうのがどんどんできてくるんですからね。ですからその点について、時間がなくなったからやめますけれども、今の長官と私のやりとりを聞いていて大臣どうですか。この植物特許というのはこれは大変なことになるからひとつ特許法から外すぐらいの考え持てませんか。最後にお尋ねします。
  130. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 私は戦争中、旧制中学の時代に学徒動員まではいきませんでしたけれども、農業といえばそのころ田植えや稲刈りぐらいをやったものでございまして、戦後急速に進歩してきた農業、そしてそこから生まれる新しい植物等々の実態を知りません。実態は知りませんけれども、しかし特許庁というものを考えた場合に、特許庁が特許法というものを扱う、百年にわたるこの制度をつかさどってきたところでございまして、特許庁ということの立場から考えますれば、この特許法と種苗法というものは、長官がいろいろと申し上げたように、その対象や保護の態様を異にするものであるということが十分御理解いただけることと思うのでございます。これが両々相まって我が国産業の発展に資するということが一番大事でございまして、そのためには特許庁が農水省と本当に肌をすり合わせていろいろと常々協議していくことが一番大切なことではないかと思っておるところでございます。鈴木委員の御指摘等々いろいろ参考になりますけれども、特許庁と農水省が本当に事あるごとに十分協議してこれを支えていきたいと思う次第でございます。
  131. 鈴木省吾

    ○鈴木省吾君 時間が来たからやめます。あともっともっとやらなきゃなりません。
  132. 松尾官平

    ○松尾官平君 繊維産業全体の振興問題につきましては、既におととい、日ごろ尊敬する田代委員や木本委員から的確な意見が述べられ、私も同意見の部分が大部分でございますので、これらの点については重複を避けまして、時間の関係もあり、絹織物の流通問題と新規用途開発あるいは新商品の開発に絞って質問いたします。時間がありませんので、できるだけ簡明、率直な答弁を期待したいと思います。  私はかつて京都の西陣会館を訪ねたことがございます。その折の説明者のいわくでありますが、昔は我々のところから出た商品は東京のデパートで大体二倍の価格で売られておった。しかし、最近行ってみると三倍ぐらいの値段がついて売られているようだ。その辺が売れ行き不振につながっているのではないかということで、困った傾向だということを述べられておりました。  戦後の経済界で、いろんな産業各般にわたって流通革命ということが言われ、これは大分もう前の話でありますが、どうもこの絹織物業界はなかなかそこまでいっていないようでありまして、ある人に言わせれば、いわゆる室町時代からの商慣習がそのまま残っているように思われると言う方まであるわけであります。このような現状について担当の通産省はどのように考えておられるか、まず感想を伺いたいと思います。
  133. 黒田真

    政府委員(黒田真君) 確かに京都の呉服の問屋さんの中には四百年以上続いているというような大変古い問屋さんもあるそうでございまして、取引条件等の中には大変長い間につくり上げられたものがあろうかと思います。このような長い慣行というものは、呉服という商品の性格から生まれてきたものだと思います。古いことが直ちに悪いというふうには必ずしも考えないわけでございますが、確かに中には改善を要するような取引慣行というものも存在するように思いますし、私どもといたしましても、従来からそういったものについては改善をすべきだということで対処をしてきておるところでございます。
  134. 松尾官平

    ○松尾官平君 公正取引委員会は、かねてから繊維産業の取引関係について調査をしておられるようでありますが、一昨年から昨年にかけて、特に絹織物関係について御調査をなさったと伺っております。その調査の概況と感想を、これまた簡単に御説明願いたいと思います。
  135. 奥村栄一

    政府委員(奥村栄一君) 先ほどお話がございましたように、古くからの慣行がございまして、これが下請法違反の疑いがある場合というのがございまして、数次にわたりまして調査をいたしてきておるわけでございます。  先生から今お話のございました昨年の件でございますが、改善状況を、従来から盛んに指導いたしておったわけでございますが、はかばかしくないということで昨年調査いたしましたところ、同じように歩引きといった違反の疑いのある行為が見受けられたわけでございます。そこで、すぐにそういったものにつきましては是正をするように指導いたしますとともに、業界団体に対しましても会員の指導方について要請をしたわけでございます。これにつきましては、先ほど申し上げましたように、長年私どもの方も指導いたしてきているわけでございますが、それぞれ業界の特殊の事情もございましてなかなか進捗いたさない。また、私どもの方もさらに一層努力いたしまして、取引の公正化について推進させるという立場で趣旨の徹底を図っていく必要があるというふうに考えているわけでございます。
  136. 松尾官平

    ○松尾官平君 この呉服の需要の低迷は、最近非常に急速な勢いで進んでいると言われております。一体、この呉服というものが最近売り上げが落ちていると言うのですが、どの程度売り上げが落ちているか通産でおわかりですか。
  137. 黒田真

    政府委員(黒田真君) 御指摘のように、絹製品の需要というものは和服の関係が大宗でございます。特に、生活様式が変化をしておりますとか、あるいは人口構成が変わっておるというようなことから、どうも逐年減少が続いておりまして、私どもは、絹織物につきましては面積ベースで申しておりますけれども、例えば国内の消費需要は、昭和四十八年に二億八百万平方メートルというものでございましたが、昨年には一億二千八百万平米というようなことで、半分以下に落ち込んでおります。また、呉服前売り卸の販売高というベースで申しますと、京都の織物卸商業組合加盟五百七十八社というベースで毎年の売り上げの数字が出ておりますが、四十八年ごろから五十一年ごろまでの売り上げの合計は一兆円を超える額になっておりまして、その後逐年減少いたしまして、五十七年には八千四百億円、昨年はまたさらにそれを数%下回っているのではないかというのを現状として把握しております。
  138. 松尾官平

    ○松尾官平君 今、局長は、はしなくも面積ベースで数量を押さえている御答弁がございましたが、実は、この面積ベースと目方ベースは大変な問題が輸入品に絡んであるわけでありまして、後でその点については触れたいと思います。  では、資料どうぞ。(資料配付)  従来の問屋機能は、金融、在庫、物流あるいは商品開発というような機能を持っていることは御承知のとおりでありますが、最近は、その上に企画力であるとか情報力とかいうものがなければやっていけないということになっているわけであります。ところが、問屋さん方は、今、局長から答弁がありましたように、売れ行きが不振なために力がそこまで及ばない。よって、産地メーカーと一緒になっての企画販売というのが最近ぐんぐん伸びてきているわけであります。こういうような状態から、特に呉服関係の流通が複雑であるということ、あるいは企画販売が産地メーカーに頼って行われているというようなことから、問屋は要らないのじゃないかというような極端な意見もあるわけでございますが、この点についてどのように考えておられるか。各産業は、流通革命という荒波を血を流して乗り切ってきたわけでありますが、どうもこの業界に限ってはまだその試練を経ていないというような感じがするわけで、まさに絹織物業界の流通革命が期待される時期に来ているのではないかというふうにさえ考えられるわけであります。  今差し上げました資料は、相当何というんでしょうか、類型化というんでしょうか、単一化というんでしょうか、わかりやすくまとめた、物の流を図で示しているわけでありますが、実際は、これれらにそれぞれまた枝葉がついて、もっともっと複雑になっているというのが現状のようでございます。店頭販売が減ってきて企画販売が増大しつつあるということは今申し上げましたが、今度はやっぱり産地メーカー主導型に対抗して巻き返しといいますか、問屋主導型もまた行われ出してきているわけでありますが、問題は、その筒形態が買い取りではなくて、委託販売の形になっているということが多いわけであります。その結果、売れないものはそのまま産地メーカーに返ってくる。問屋主導型で企画販売が行われていながら、そのリスクをすべて産地メーカーが負担するというのもおかしい話でありますが、中には、買い取り契約を結んでいた場合であっても、その決済は台風手形で切っておいて、その期間内に、力関係といいますか、そういう形で返品を強要することもあるというのが実情のようでございますが、これらの関係について、公取並びに通産の調査結果があるのか、御存じなのか、お考えをお聞きしたいと思います。
  139. 黒田真

    政府委員(黒田真君) 確かに繊維製品の流通段階というものは相当複雑な状況がございます。今お配りいただいた資料からもおわかりのとおりに、いろいろな段階ごとに、工程ごとに問屋さんというようなものが介在をしているわけでございます。これはやはり歴史的にそういう形の産業構造が成立したわけでございますけれども、リスクを分散する機能、特に非常に高いものでございますし、流行とか季節というものの影響を非常に受けやすいということから、問屋さんが各段階に入ることによって実はこれでリスクの分散という機能を果たしているのではないだろうかというふうに考えるわけです。したがいまして、これを短絡化することによって確かに流通コストを引き下げるということは期待できますが、同時にリスクをだれが負担するかというような問題も発生をするというふうに考えるわけでございまして、それぞれの立場でそれぞれが機能を果たしていくということが必要なように思われます。  御指摘のように、問屋の一部が力をなくしてきている、あるいは他方産地がいろいろ努力をして、商品企画等に努力しているということは確かにございます。しかしまた、問屋さんの中にもその企画力をみずから発揮して新しい道を開こうということで努力をしておられる方もございますので、私ども今回の繊維産業のビジョンの中で垂直結合とか実需直結型というようなことを申しましたが、これらの問屋さんたちと産地のメーカーの方々とがうまく結びついた形でできるだけ流通におけるむだを排していくということが今後のあるべき姿のように思われます。  御指摘のように、確かに絹織物については非常に委託販売が多いわけでありますが、中には買い取り販売という名称のもとで返品を行っているというような事例もあるというふうには私どもも調査の結果承知しておるところでございまして、本来はこういうことがないように、あるいはこういう何か問題があれば当事者間の自主的な解決というものが望ましいわけですけれども、それを私どもとしては側面からバックアップをしておるところでございまして、同時にもし異常に不当な返品というようなことがあれば、これは公正取引委員会等関係のところとよく御相談をしてそういった関係の法律の適用をお願いすると、こういうことになろうかと思います。
  140. 奥村栄一

    政府委員(奥村栄一君) ただいま御質問のございました点でございますが、昨年私どもの方で実態調査いたしました際には台風手形を交付しているという事実は、まあ限られた範囲でございますけれども、そこまでの事実は認められなかったわけでございます。しかし、繊維業界に対しましては従来から手形期間を九十日以内というようなことで指導いたしてきておりまして、期間を九十日を超える手形を交付していた卸業者が若干ございまして、それにつきましては直ちに改善するように指導を行ったわけでございます。  また、返品の事実でございますが、返品の事実ももちろん若干認められたわけでございますけれども、その内容が先生御指摘のような形なのか、それともいわゆる難物と申しましていろいろ傷がございまして、それで戻したものかが現物その他がございませんで、実態について把握までには至らなかったわけでございます。そこで先生御指摘のような点につきましては十分検討をさしていただきまして、違反であると、法に抵触するんだということでございますれば厳正に対処してまいりたい、こんなふうに考えております。
  141. 松尾官平

    ○松尾官平君 ただいまの局長答弁で、問屋や産地メーカーいろいろ一緒になってやるのはリスクの分散にもつながるんで、その長所を生かしたいというような意味答弁がありましたが、実はこのリスクがほとんど九九%まで製織業界といいますか機屋といいますか、織物関係のところに集中しているところに問題があるわけです。甚だしい場合は小売屋さんからの返品が機屋さんまで返品になっていくという例が多いわけです。そこで機屋さんは今度は苦しくなって。糸をもっと安いのをよこせと、国産の生糸が高いという論にまで発展しているんじゃないかと私は見ているわけです。ではそういう証拠を出してくれと、あるいは公取の調査でも出てこないと、こう言うんですけれども、弱い業者の方々は役所の調査にそれを出したり、あるいは通産の方に相談をしたりすれば今後の取引がシャットアウトされたりぶっつぶされるということで、怖くてそういうのは隠しているというのが中小企業の実態だと私は聞いているわけです。業界団体の相当な地位の人からはっきり聞いているんですけれども、これまた名前を出すとそこがまた反発を食らうということで、その辺はひとつ団体を通じて強力な御指導を願いたいじ、奮起を促していただきたい。いわゆる繊維業界総体の発展のために業界団体が率先して動けるように御指導をお願いしたいと思うわけであります。  今申し上げましたが、機屋さんは生糸が高いと言っているわけでありまして、確かに中国産、韓国産から比べれば国産のものは高い値段が設定されておりますが、一体絹の着物地、表地一反に占める生糸の値段はどのくらいですか。
  142. 黒田真

    政府委員(黒田真君) 匁づけと言うんだそうでありますが、どれだけの絹をある単位当たりに打ち込むかによって比較的重いもの、軽いものというものがあるように聞いておりますが、大体一反で九百グラムぐらいということだろうと思います。今の市価水準一万三千九百円ということを考えますと、それの九掛けというようなものが一反の表地に使用される絹の値段、こういうことになろうかと思います。
  143. 松尾官平

    ○松尾官平君 その場合、十五万の反物でも百万円の反物でも、あるいは先般話題になりました三百万から二千万円もするという辻が花なんという反物もあるわけでありますが、これの場合でも生糸の値段は同じだと考えてよろしゅうございますか。
  144. 黒田真

    政府委員(黒田真君) おおむね同じだというふうに聞いております。若干の特別な生糸について特定の銘柄を指定するというようなケースもあるようでございますが、その場合には先ほど申しましたキロ一万四千円の生糸が二、三千円高くなるということで非常に高い反物でございましても原料の段階での生糸でそれほどの差があるというふうには聞いておりません。
  145. 松尾官平

    ○松尾官平君 大体私の調査、知識あるいは計算によりますと、普通の振りそでといいますか、普通の上級の着物の場合八百五十グラムというのが大体の匁つけだと思うんです。それで計算しますと、輸入物の安い生糸でやったのと国産でやったのとでは約三千円弱の生糸の値段の差があるんじゃないか。ところが一方、着物の末端価格に比較しますと、そのいわゆる原糸代というもののウエートは非常に低いわけであります。日本酒のような場合は総体の価格の中で原料代、米あるいはアルコールはもう八割近い原料代ですから企業努力によって価格を抑えると言ってもなかなかできない相談でありますが、この場合は百万円の反物であっても生糸代は一万四、五千円だと。だとすれば将来もっともっと日本の美を我々も享受し、また世界に知らしめるためにも価格が安くなれば売れるし、また努力次第ではそれはできるんじゃないかというふうに考えます。いろんなアンケート、女性の若い方々のアンケート等を見ても、絹の着物は欲しい、ただ高いから手が出ないんだと、こういうアンケートであります。だとすれば、安ければ、値ごろがよければまだまだ私は販路が開けると思うのであります。そういう意味で流通業界の一層の奮起を促したいし、御指導を願いたいというふうに思うわけでありますが、こういう考え方は誤りでしょうか。
  146. 黒田真

    政府委員(黒田真君) 確かに日本の女性には着物を着たいという欲望があるように思います。そして、そういった潜在的な需要というものが、もしもう少し手ごろな値段で着物が買えるというような状態ができることによってさらに喚起されるだろうという御指摘は、私どももそのように考えております。  ただ、ちょっと一点御説明させていただきたいと思いますのは、要するに原料の段階では一反八百五十グラムなんだから、そこでの値差は何千円ということではないのかという点でございますけれども、確かに国際価格を幾らに見るのか、七千円と見るのか、あるいは一万円程度かと見るかということがございますけれども、国内の糸価が一万四千円、それに対して思い切って仮に七千円ぐらいの輸入の糸があるというふうにいたしました場合に、それは最終製品になったときにはその糸価として六千円とかそういう値段がその分だけ差が出てくるというものではございませんで、これはもう御承知と思いますけれども、いわばそういう原料を使った、幾らかのある値段の原料を使った製品をつくっていくその過程で、その製品を抱えることに伴う金利代というようなものは値段に比例をしてまいります。また、マークアップ率と申しますか、流通の各段階でそれにつけられていきますところの流通マージンと申しますか、それは物の値段にかけていかれるわけでございますから、ざっと計算をいたしますと、安いものでも原料段階の差は最終段階では二、三倍にはきいてくるのではないだろうかというようなことも考えられるわけであります。したがいまして、非常に高い反物の場合には原料の差はほとんど影響がないかと思いますけれども、比較的安い十万円以下の反物というような場合にはそういった原料の差というものが相当大きなウエートで最終価格に影響をしてくるということは実は言えるのではないかということでございまして、ちょっとその点だけ補足させていただく次第でございます。
  147. 松尾官平

    ○松尾官平君 議論してますと時間がなくなりますので、次に進みます。  今の話の中で納得できない点もあるわけです。高い反物を仕入れていると金利が高くなるからと言いますけれども、委託販売や台風手形を発行しておいて利子がつくわけがないんでありまして、そういうところ、細かい議論をすると時間がなくなりますので先に進みます。  今東南アジア諸国といいますか、アジア諸国から絹の自生地がたくさん入ってきているわけでありますが、この自生地に産地名が表示されていない。気をつけなければわかりませんが、デパートなんかでも自生地として売られている、商品として売られている自生地があるわけであります。これらに原産地の表示がない。単に高級正絹とか高級自生地とかこういう表示しかない商品が出回っているわけでありますが、これについては消費者保護の面からいっても表示の適正を期する上においてもちょっとどういうもんかなあと思うんですが、公取の方でこれをどのように考えておられますか。
  148. 奥村栄一

    政府委員(奥村栄一君) 一般的に申しまして、韓国等国外で製織されました自生地に例えば丹後ちりめんなどと表示いたしまして、これを一般消費者に販売いたします場合には商品の原産国に対する不当な表示、これは公正取引委員会の告示でございますが、これに該当いたしまして、景品表示法の規制を受けるということになるわけでございます。当委員会の方で従来例のございましたのは韓国産つむぎに関する表示でございまして、三件ほど排除命令などをいたしております。この種の問題に厳しく対処してまいったわけでございますが、御指摘のような問題がございますれば、私どもの方で現段階では具体的な情報を持っておりませんので、今後そういう情報を得ました場合には検討さしていただきたいと、このように考えております。
  149. 松尾官平

    ○松尾官平君 たしか原産地を表示するように指導通達が出ているというふうに私は聞いておったんですが、ですからそれが守られない場合には処置していただきたいとお願いしたかったんですけれども、そういうことであれば今後ひとつ適切な処置をお願いしたいと思います。今売れ行きが落ちている絹製品業界の活性化を図るためにはいろいろな方策があろうかと思いますが、原料が純国産であるという産業はなかなか少ないわけでありますからひとつ通産省も力を入れていただきたいと思います。また今まで申し上げました流通段階におけるいろいろな問題点を究明して改善していただきたいということのほかに新規用途の開発、新技術の開発、新商品の創出ということがなければなかなかうまいぐあいにいかないと思うんであります。  そこで、業界ではいろいろ苦心をして絹の背広生地であるとかいろいろつくっているわけで、尊敬する市川委員も先般御注文くださったそうでありますし、岩本委員についてはもう既に三着も注文してつくっておる。きょうは局長も着てきたようでありまして敬意を表しますが、実は私はきょうは体につけているものは全部絹であります。裸以外は全部絹であります。ネクタイもワイシャツも靴下も下着もその下も全部絹でありますが、大変結構なものであります。これを一昨日この委員会で通しました臨時措置法ですか、これらを十分駆使することによってこれらに道を開いていただきたいというふうに思うわけであります。  繊維産業全体は大変苦境に立っているわけでありますが、今度の法律の再々延長によって何とか決着を、出口を見つけたい。こういうことであります。また多品種少量短サイクル化ですか、何か舌をかむような表現になりますが、そういう道、あるいはまた先進国型産業として位置づけたいという力強いおとといの話があるわけであります。そういうことを踏まえてもひとつ大いに伝統産業であり、また健康上も非常に絹というのはいいわけであります。また災害の場合は火がついても化繊のようにばあっと燃えてやけどをするということも少ない。いろいろな利点を持った絹製品でございますので、国の産業としても力を入れていただきたいと思うわけでございますが、時間が参りましたので、大臣ひとつ私きょうオール網で来ておりますので、この悲壮な決意にめでていい答弁を最後の締めくくり、絹繊維産業奨励のために旗張っていただくという御決意をお聞きできれば大変幸せだと思います。
  150. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 御議論を承っておりますと、この御関係の問屋さんは京都に千五百年も続くところもあるそうでございます。千五百年はとにかくといたしまして明治、大正、昭和まで続く伝統的な産業、それに基づく業界の方々は、まあ言ってみれば建築様式、生活様式の変化によりまして大変な困難を極めているということが現下の情勢でございます。まあこんなのんきなことを言うわけではございませんけれども、私の家などは材木屋でございまして、もうほとんど木材が売れない、これもひとえに生活様式、建築様式の変化によるものでございましょうが、意欲あれば企業も盛んになるのでございましょうが、主人公が政治に出てしまいますとなかなか店の者も意欲的ではなくなります。絹の業界の方々が私の店のように怠け者ばかりではないでございましょうけれども、しかし、やはりこれも生活様式の変遷のもとにこの業界が構造的な困難に陥っているということも十分私も承知いたしておるところでございます。  通産省といたしましても今後いろいろな面において、和装需要の喚起であるとか、そういうような業界に対するファッションショーとか、そういうものの指導によりまして今後いかに需要を喚起するかと、こういうようなこともいろいろと考えまして絹業界の振興あるいは絹の産業の活性化に大いに意欲を燃やしてまいりたいと思う次第でございます。
  151. 松尾官平

    ○松尾官平君 ありがとうございました。終わります。
  152. 田代富士男

    田代富士男君 私は、午前中質問が行われました三池炭鉱災害事故の問題を引き続いて取り上げてまいりたいと思います。  この三池炭鉱事故でございますが、この災害を招くまではこの炭鉱は最新鋭の設備を持つ鉱山でありまして、保安生産の両面におきましても高く評価されておりました。これはもう御承知のとおりでございます。ところが事故が起きた。そして、現在事故調査委員会から中間報告が出されております。私もこの中間報告を読まさしていただきまして、総括の二ページに、死亡者八十三名、重傷者十六名という多数の罹災者が出されたことが述べられておりまして、その原因の第一は火災発見のおくれ、第二番目が連絡、指令に手間取ったこと、第三番目が消火活動中にトラブルがあったこと、第四番目に退避経路に濃煙があったために退避に大きな支障を来したと、こういうことが書かれておりまして、複雑に絡み合ったのではないかと見るのでありますが、それと同時に九ページには、ベルトコンベヤー保守管理要員配置されていなかった、また片寄りリレー等のトラブル防止の保護装置配置されていなかったと、こういうことが指摘されておりますけれども、これらのものが被害を大きくしたと思われる主な原因でありますけれども、そのうちで濃煙の問題を除いてはいずれもまさに人災と言うべきものではなかろうかと思うのでございますし、したがって、もし今指摘いたしましたそのうちの一つでも基本を忠実に遵守して対処していたならばこのような被害の拡大は防げたのではないかと悔やまれて仕方がないわけでございます。すべての面にわたって基本が無視されたという、こういう点は否定できないことではないかと思いますし、通産大臣も最初に現地視察へ行かれました。この事故調査委員会中間報告書をお読みになられた御自分のお考えとして、発生防止し得ない複雑な災害ではなかったと思うというようなことも午前中にお述べになりました。そういうことから、まず通産当局としてどのようにこれを総括的にお考えになっていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  153. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 確かに三池有明鉱に関しましては、先生御指摘のように新鋭の新しい炭鉱であり、自然条件にも恵まれているということが言えます。また、これまでの稼働延べ百万人当たりの災害率だけをとって見ましても全国の災害率に比較いたしまして半分以下で、かつ年を追って改善をされてきたということも事実でございますが、私どもとしましてはこれまで有明鉱に関しましていわゆる優良炭鉱という評価を与えたことはございません。したがいまして、通常の一般炭鉱と同様に月一回の立入検査を行う等によってこれまで指導監督を行ってきたわけでございます。  それで、ただいま先生御指摘幾つかの要因のうち、本来基本的なものをきちっと守っておれば相当防ぎ得た問題ではないかという御指摘でございますが、確かに火災発生原因について見ますとこれはベルトコンベヤーが関与して火災発生をもたらしたという現段階での認識になっておるわけでございますが、その意味におきましては、日常の保守管理点検ということの徹底を期しておれば火災発生について防止し得た面が非常に強いということは明らかに言えるかというふうに思っております。また、被害の拡大要因につきまして、初期消火段階においてのトラブル等によりまして被害を大きくしてしまったわけでございますが、そういった面についても今回の中間報告を踏まえれば十分徹底した保安教育によって改善し得る可能性が非常に大きいところがあるわけでございまして、私どもとしましてはそういった面を十分検討の上で今回の一部操業再開を認めたわけでございますが、いずれにしましても、今次災害原因といいますものは最終的にこれから調査をいたしてまいるわけでございますが、社会的にも大きな影響を与えた問題でもございます。そういう意味において厳正な捜査を今後進めていきたいというふうに思っております。
  154. 田代富士男

    田代富士男君 午前中同僚の対馬委員からも御質問がありまして、それに対するお答え等も出ておりますけれども、保安管理の人員配置されていなかったことはこれは事実であると、そういうことから局長坑内火災に対する防止に対しましては適切さを欠いていた面もあるというお答え等もありましたし、保守管理徹底がされていたならばこのようなことにはなっていなかったのではなかろうかという、こういう見方もされておりますけれども、考えてみるならば、私は炭鉱の専門家ではございませんですけれども、一般的に炭鉱事故が起こる場所というのは、我々なりにどういうところで起きるかということは理解をしておりますけれども、今回の事故発生場所というものは、従来の炭鉱事故の常識から考えて起きるわけがない場所から起きている。どうしてこういうことが起きたのかというそこに問題があるわけでございますが、私は、三井三池炭鉱は最新鋭の設備を誇った鉱山であると、すべての面に知らず知らずのうちにそういうものによって支配されていた、その盲点の中に起きたものであるのではなかろうかと思うわけでございますし、これは恐ろしいことじゃないかと私は思います。  そういう意味から、月一回の検査もやっていたとおっしゃるし、また午前中の質疑の中におきましても、監督官庁からいろいろな指示も出されている等もありました。だからそういう意味におきまして、保安教育が大事であると今申されましたし、また今後保安教育で改善し得る面があるという局長答弁でありますけれども、それはまあ今局長の立場からそういう答弁しか出ないかわかりませんが、どうしてこれを前に教育をやってなかったのかという、ここも大きな問題ではないかと思います。これは結果から見ての判断でございますが、もしベルトコンベヤー当番が配置されておりまして発火の早期発見と消火活動が十分であったならば大惨事に至ってなかったと思うんです、これ単純に考えて。そういう点いかがでございましょうか。
  155. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) きょう午前中の対馬委員の御質問に対してもお答え申し上げましたが、ベルト当番といいますかベルトの保守要員についての配置が当該火災発生箇所と目されます第九及び第一〇のベルトに配番されてなかったということは事実でございます。これはもう事故が起こってしまいましてから繰り返すのもいかがかと思いますが、やはり日々の生産活動につながっております第八番のベルトまではベルト用の保守管理要員配置されておったという事実と比較して考えますと、やはり坑内火災という観点、その危険度から十分な見直しが必要ということが痛感されるわけでございます。むしろ人がいないところ、人の目が届きにくいところについては本来機器等によってそれを補完すべきでありましょうし、その機器の補完が不可能であれば人の配置によってカバーしていかなくちゃいかぬわけでございます。そういう意味におきまして、今回の火災が早期発見あるいは早期消火、初期消火という面においてできませんでした事実を十分踏まえまして、今後の適切なベルト保守管理についての対応策を進めていきたいというふうに思っております。
  156. 田代富士男

    田代富士男君 事故が起きてから言っても仕方がありませんけれども、私が申し上げたのは、保安教育という面に対するそういう点が欠けていたのではないかということもお尋ねしたんですけれども、今後その面に対しては心がけていくということでございますが、この保安教育というものが充実していたならばこれは防げたではないかということが午前中の質問にもありましたし、中間報告書にも指摘をされておりますポンプ用の動力ケーブルの焼損地絡があったために水圧が低下しまして消火活動が不調になったようでありますけれども、これは午前中も議題になりましたが、実はこの消火用の放水管は三井三池炭鉱にはもう一系統ありまして、バルブ操作一つで切りかえることができた、私も現地で確認をいたしました。これは簡単に切りかえができたんですよと、坑内作業員が気づかなかったのではないのか、それとも社内訓練の不足であるのか、この点が現地からもまことに遺憾なことでありますと。午前中も質疑がありましたけれども、消火体制については従来よりも徹底していたという御答弁でありましたけれども、結果としてそのバルブの切りかえをすればそれが達成できたということができなかったというのは、今さっき私は保安教育というものが欠如していたではないかというこれは一つの端的な例じゃないかと思うんです。午前中の答弁では、局長は今度消火体制についてはバルブの調整等検討いたしますよ、そういう意味のお話もなさっていらっしゃいましたけれども、これは保安教育の欠如と言う以外にありません。  だから、私は、こういう面におきましてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、またそれと同時に、これは素人考えでありますけれども、これはもう保安法によって全部設置されるべきものでありますけれども、こういう焼損地絡の心配のない単体の消火器を各所に配置しておるならば、消火活動というものはスムーズに行われたのではなかろうか、これは素人的な考えかわかりませんけれども、こういうことも一般的に見たならば考えられないのではなかろうかというようなこともありますけれども、あわせてお答えいただきたいと思います。
  157. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 確かに今回の消火活動に当たりました段階で、その中に含まれておりました施設係員、施設関係であればエキスパートでございますが、すべてのこの消火栓を含めた施設関係について十分な判断ができなかった、このために簡単なバルブ操作によるいわば水圧低下を補完して十分な初期消火の効をおさめ得なかったということは御指摘のとおりでございます。その意味で非常に残念なところでございまして、今回の中間報告書におきましても当面の対策としまして消火施設の設置位置及び取り扱い方法についての教育の徹底を図れという提言がございます。こういうものを受けまして、今後適切な監督、指導に当たってまいりたいというふうに存じております。
  158. 田代富士男

    田代富士男君 このことは私は今さっきこの三井三池炭鉱が最新鋭の設備を誇っている鉱山であるし、それに支配された中での盲点であるといったその一つに午前中も議題になりましたエアマントの問題があります。これは法的に業務づけられているわけではございませんけれども、しかし、このことは炭鉱が優良であるとし、つまり、ガスの突出があるなしにかかわらず、一たび坑内火災が起これば不完全燃焼によりますCOの発生という観点があるわけでございますから、こういうことから私はこれは優良炭鉱であるということから設置されなかったということではございますけれども、しかし、現実には八十三人もの人がCO中毒で死亡していらっしゃるわけでございますし、こういう点から最新鋭の設備を誇った炭鉱であるというところの盲点じゃないかと思いますし、もしここでこのエアマントが設置されていたならば、恐らく八十三人の死亡者を出さずに済んでいたのではないかと思いますけれども、この点はいかがでございましょうか。人命尊重の立場からも私は指摘したいと思います。
  159. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 御指摘のエアマントにつきましては、法規上はガス突出警戒区域ではございませんので、その義務づけがないことは御指摘のとおりでございます。確かにエアマントを使用しておった場合、どういう効果があるかということ、いろいろ考えてみますと、エアマントの場合一人ないし少人数のための設備であるということが一方で言えるわけでございます。その効果は極めて高い。しかし、人数的な限界があるということを考慮しなくてはいけません。その意味で多人数の籠居を可能とするような避難所という仕組み、これらについても単純な比較ができないんではなかろうかと思っております。  ただ、いずれにいたしましても、安全はそれに過ぎることはありませんので、そういった意味坑内火災防止対策部会検討の一環といたしまして具体的な施設の内容及びその適正配置のあり方について今後検討をしていきたいというふうに思っております。
  160. 田代富士男

    田代富士男君 今局長ね、それは大人数は救えないかしりませんけれども、私八十二名全部が救われたと言っているんじゃありませんよ。少人数でも救われていたのとは違いますか、その点は。そういう言い方ないでしょう。少人数でもあったら救われているでしょう、どうですか。
  161. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 私は単に機能的な差だけについて申し上げたつもりでございまして、決してこれがあればすべてうまくいくというものではございません。いろいろな組み合わせでいわば施設をどういうふうに適正配置をしたらよろしいか、そういったもののあり方を十分詰めさせていただきたいというつもりでお答え申し上げたつもりでございます。
  162. 田代富士男

    田代富士男君 では、今後の原因の究明については現在事故調査委員会でおやりになっていらっしゃることでございますけれども、この中間報告におきましても今後精査すべきこととして、ナンバー一〇ベルトコンベヤーのフレーム自体のぶれであるとかあるいは曲がっているキャリア台、不回転のキャリアローラーやリターンローラーの不調が災害の前からのものかどうかということ等を挙げていらっしゃいますけれども、その他にもこの中間報告までに結論が出されずに、最終報告に向けて実験が行われているものもあるかと思いますけれども、その点が現在どうなっているのか、今後の見通しにつきまして、この原因究明に関してお答えいただきたい。
  163. 島田隆志

    説明員(島田隆志君) 御指摘のとおり、中間報告では、ベルトコンベヤーに関します発火メカニズムとしまして、原動部の過負荷等によります過熱するようなケース等々、五つのケースを挙げまして、さらに現地調査等によりまして判明しました事実等から、三つのケースのいずれかのプロセスを経まして落炭等近傍可燃物が蓄熱発火した可能性が高いということで推定しているわけでございますが、調査委員会では、今後フレームの振れ等が、今先生から御指摘ございましたように、災害以前からのものであったか否かの精査をいたしますほか、第三調量門、今回火災の起こりました第三調量門の付近の落炭のコアサンプル検査あるいは小型ベルトコンベヤー等の試験装置を用いまして、ベルトとボタあるいは金属、木片等、各種条件下におきます摩擦発熱試験等を行うことにしております。そのほか、現場におきまして、ベルト走行うストを実施しますことによりまして、これらの、今申し上げました三つのケースのうちどのプロセスを経て発火したものか、さらに絞り込みを行っていく予定だということを承知しております。  しからばいつごろその報告ができるかということでございますが、いろんな今申し上げましたような試験等を進める段階でございますので明確ではございませんが、委員会の方では夏前には報告を出したいということを委員長が言っておられることを承知しております。
  164. 田代富士男

    田代富士男君 三月の十五日に操業が再開されておりますけれども、中間報告報告書の当面の対策においては大きくは六項目にわたって指摘されておりますけれども、引き続き研究開発を進める必要があるとされている携帯用の酸素マスクあるいは緊急時の坑内連絡用通信技術等の問題を除いては操業再開時までにすべて対応できているのかどうか、この点も確認したいと思います。  また、今後の宿題として、午前中も質疑がなされました法令改正や技術開発などに残されている問題は何であるのか、これもあわせてお尋ねしたいと思います。午前中磯部参考人の御意見等がありました、この鉱山保安監督機構についても、まあこれは従来どちらにするのかということが問題であったけれども、独立して労働省に持っていくべきであるというような意見等も述べられましたし、また中央鉱山保安協議会のあり方につきまして、また石炭鉱審議会のあり方につきまして現地の苦労が生で返ってくるものでなければ審議会ではない、それが改革されてない、基本的に改革が必要であるという、こういうような声が出されました。この声に対しまして、私は、午前中の答弁を聞きまして、この声を真摯に受けとめる態度が少ないのではないかと思いますし、私はあわせてこの問題も御質問をし、お答えいただきたいと思います。これは大臣からお答えいただきたいと思います。
  165. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 前段につきまして御説明を申し上げます。  三月十五日の有明鉱の再開問題でございますが、これは十三、十四日の両日、鉱務監督官の入坑立入検査によりまして、先生御指摘のような中間報告にございます当面とるべき緊急対策、これらを含めまして必要な保安対策をハードの面で備えておるという判断をいたしたわけでございます。さらに、入坑後ソフト面につきまして十分なチェックをいたしまして、ハード、ソフトの両面においてこの中間報告に盛られております当面の対応策を含めた保安管理体制が整備できたという判断のもとに再開の了承をいたした次第でございます。  その意味で、今後残された問題といいますのは、現在坑内火災防止対策部会というのを設置いたしまして、各鉱山の調査を含めて早急に火災火源別の発生防止対策、あるいは早期発見対策、消火対策、それから警報連絡体制、それから先ほどのエアマントを含みます退避の問題、こういった五項目につきまして網羅的な再検討を現在進めておる段階でございます。これらの検討を待ちまして、規則改正を含めた所要の対応策を講じてまいりたいというふうに考えております。  それから鉱山保安協議会、保安面にかかわります鉱山保安協議会につきましては、御承知のように、学識経験省及び会社側及び労働組合、三者構成で選定されておるわけでございまして、まあ石炭亜炭部会におきましても、石炭鉱山経験を踏まえた先生も入っておるわけでございます。その意味で、私ども地についてない審議が行われておるというふうに理解はいたしておりませんが、一応現在の構成につきましてはそういうふうに理解しておるということだけをお答えいたしておきます。
  166. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 中間報告に盛られた六項目の内容を十分精査いたしまして、今後保安対策その他の問題で十分参考にして対応してまいりたいと存じます。
  167. 田代富士男

    田代富士男君 これは、参考にするという大臣御意見でございますが、午前中のあれでは意見を述べていただいておりますというような、そういうようなお話もございましたけれども、私は、もっと真剣にこれは通産大臣として責任を持って、自分がこの事故を通じて責任を痛感して、今後二度とこういうことのないように取り組んでいくという姿勢がですね、今さき、御自分の材木屋の話をされました。おやじがいなくなったら商売がだめになったというように、大臣責任を痛感して取り組むところに、解決の第一歩があるのと違うんですか。責任を痛感すべきだと思うんですが、どうでしょう。
  168. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 午前中から再々申し上げておりますように、私の決意はおっしゃるとおりでございます。
  169. 田代富士男

    田代富士男君 時間が余りありませんから、警察庁も消防庁も見えていただいていると思いますが、この事故がありまして、それぞれ鉱山保安監督局、警察そして消防に連絡が入った時間を端的にお答えいただきたいと思います。時間だけで結構です。
  170. 大山昭夫

    説明員(大山昭夫君) 会社側から地元消防本部へ正式に通報がありましたのは一月十八日二十時十三分でございまして、その内容は救急車の出動要請でございます。  以上でございます。
  171. 望月秀一

    説明員(望月秀一君) 所轄の大牟田警察署に三池鉱の方から通報がございましたのが、一月十八日の十八時五十分でございます。
  172. 田代富士男

  173. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 十五時五十分でございます。
  174. 田代富士男

    田代富士男君 今申されたような時間帯で、この事故の第一報が入ったのは随分おくれて入っております。これは日ごろ指導をしてきている通産省として、こういう事故対応でよろしいでしょうか。通産省としてどうでしょう。
  175. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) これまで、監督局に対します災害報告、急報についてでございますが、従来から速やかに行うように指導してきたところでございます。それで、ただいまも御答弁申し上げましたように、火災発生時から約二時間を経て初めて鉱山保安監督局会社側から通報があったわけでございます。まあこれにはいろいろ会社側が釈明をいたしておりますが、私ども決してそれらが極めて合理的といいますか、その二時間もの時間を要するような作業が本当にあったのかということについて、私ども十分理解できないわけでございます。この点につきましては、鉱山保安監督局長から三池鉱業所長に対しまして口頭で厳重な注意をいたしました。本社側におきましても担当の常務を呼びまして厳重な注意をいたしたわけでございます。これを受けまして会社側は連絡体制の整備を図ったわけでございますが、具体的には技術管理者通達というのを社内徹底をいたしまして、災害時の連絡体制というものを社内的にも徹底をしたと私ども理解いたしております。いずれにいたしましても、災害報告の迅速化の徹底を図るべく、既に各鉱山保安監督局部長に所管の各炭鉱に十分周知徹底するように通達を発したところでございます。
  176. 田代富士男

    田代富士男君 局長事故が起きてから通達した通達したと言いますけれども、監督局へのおくれは今おっしゃった。それから警察への報告の時間、消防への報告の時間、これ何時間たっていますか。こういうことを通達をしたということで、ただ単にこういうことで済まされますか。私はなぜこのことをあえて申し上げるかといいますと、五十七年の四月の一日、八日に商工委員会がありました。この折に私は鹿島コンビナートの石油爆発事故を取り上げました。私はこのときにおきましてもこの連絡という問題につきましては敏速にやるべきであるということを指摘をいたしました。そのときにはちゃんと心得てやりますと言った。そういう決意の開陳がこの場所で通産大臣から、担当局長からもなされているんです。それがこのような時間帯でしょう、それで厳重注意をしました、そういうことで糊塗するということは私は許されないと思いますよ。私はこれは大問題だと思うんです。大臣どうですか、通達しました、これで済まされますか。私はあえて前にも注意しているんですけれども、どうなんですか。
  177. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 先に、一番最初の答弁で従来監督局に対します災害報告、これ急報でございますが、この急報に関しては速やかに連絡をすべしということの指導をこれまで行ってきておるわけでございます。その意味で、事典今回の報告が二時間余を要したわけでございますが、これはもう私どもも十分納得できる説明ではございませんので、あえて御報告申し上げませんでしたが、有明鉱に関します限りの連絡体制と申しますのは、有明鉱業所から大牟田にございます木所の鉱業所に連絡が行きまして、本所の保安課長が鉱山保安監督局に通報する仕組みになっておりました。たまたま大雪であったということもありまして、鉱山保安部長が本所から有明鉱業所に駆けつけて確認をとる、それから三川鉱に行っておりました本所の保安課長が有明鉱に行く、こういったことでいろいろ確認に手間取って、そういう時間のおくれがあったんだという釈明を聞いておりますが、いずれにいたしましても、今回十分な体制でなかったことは私どもも痛感いたしておりますので、二度とこういうことのないような措置をはっきりとっていきたいというふうに思っております。
  178. 田代富士男

    田代富士男君 前回のときも二度とこういうことのないようにという言葉をその場所で聞いたんです。にもかかわらず、こういうことになってしまっているわけです。  私の質問の時間をオーバーしておりまして、警察庁と消防庁の方に来ていただきましてお尋ねしたいことがありますけれども、時間がありません。だから私からお願いしたいことは鹿島コンビナートのときの私の警察庁、消防庁に対するお願いは、お互いの連絡というものがとられてない、お互いの連絡をとってくださいよ、緊密な連絡をするようにということを申し上げました。これは警察の方が六時五十分、消防が八時十三分ですから、二時間のおくれがある。お互いに連絡がとり合われたか一とり合われていない。これも私は五十七年四月の八日のときに言っておきましたことが実行されてないということ、このことを指摘しておきます。あと聞きたいことがありますけれども、時間がありませんから省略しておきますけれども、それは厳重に私指摘をしておきます。  それでもう一つ、この連絡が不十分であるという、今局長がこういう方法で報告が遅くなっているとおっしゃったけれども、我々商工委員会では視察に行きました。視察の最後に病院へ見舞いに行きました。私が見舞いに行きました人は二人です。諸藤さん、山中さんという二人の方のところへ私は見舞いに行きました。そのうちの一人、諸藤さんが話してくれましたのですが、この人が寝台の上で憤っていたことは、家族の人が午後三時三十分に会社事故があったということを聞いて電話をしたと言うんです。ちゃんと記録している。そのときには火災は鎮火したと、問い合わせ先は人事課です。鎮火しましたと。それでやれやれと安心をしていた。そして御本人が救出されてきた。救出された途端に家族を呼んでくれと言っても呼んでくれなかった。家族へ連絡が行ったのが何時間後かといえば十三時間後に連絡が行っている、十三時間後ですよと。その寝台の上で、こんなことがありますかと――私はじかに聞いてきました。そのときのメモ用紙がここにあります。私、これは時間帯を書き込んできている。こういうこともあって、局長が今さっき厳重注意いたしましたとか、そういう問題以前の問題が私はあると思いますけれども、これに対して大臣どうですか、いかに思われますか、こういう実態に対して。
  179. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) そのような実情を後からいろいろと聞くに及びまして、このたびの災害におきましてさらに一層監督の指導強化、あるいは連絡等の体制にいたしましてもそれらの指導を今後万全を尽くさなければならぬと、私どももそのために最大限の努力をいたす所存でございます。
  180. 田代富士男

    田代富士男君 では最後の質問です。  地元の大牟田市議会から既に二回にわたりまして地方自治法の第九十九条第二項に基づく意見書が出されております。その主な内容災害原因究明、二つ目には炭鉱保安のための法的措置、三番目に被災者などの救済ではないかと思いますけれども、特に被災者の救済の面につきまして対策を講じていかなくちゃならない。下請、孫請の人の対策等これは真剣に取り組むべきではないかと思いますし、そういう意味からこの鉱山保安行政に取り組む通産省としての今後の決意をお聞きいたしまして、私の最後の質問にいたします。
  181. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) けさから私たびたび申し上げてまいった次第でございますが、通産省といたしましては鉱山保安の確保というものが石炭生産の大前提であるという認識でこの行政に取り組んできたところでございますが、しかもなおこのような事故が起きたということはまことに残念のきわみでございます。  今後、この災害を踏まえまして類似災害というものが起こらぬように万全の施策あるいは保安の指導を確立してまいりたいと思います。     ―――――――――――――
  182. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) この際、去る四月六日の本委員会で市川君の質問に対する答弁について政府から発言を求められておりますので、これを許します。松田審議官。
  183. 松田泰

    政府委員(松田泰君) 四月六日の商工委員会で浜岡原子力発電所の岩盤の深さにつきまして市川委員が御質問されましたが、これに対する通産省の回答につきまして事情を御説明申し上げますと次のとおりでございます。  市川委員は同日の委員会で、まず浜岡原子力発電所敷地内各所の岩盤までの深さについて数値をお示しになりました。市川委員が示された数値につきましては設置許可申請書に書かれましたボーリングデータに基づいて読み上げられたものであると考えられますが、それ自体は全くそのとおりでございます。  これに対して通産省は同発電所の原子炉機器冷却水系配管直下の岩盤の深さにつきまして整地面からの数値で、一、二号炉について約二十メートル、三号炉について約五メートルとお答え申し上げました。市川委員の御質問の御趣旨は、まず、申請書に書かれましたボーリングデータに基づく数値につきまして通産省の見解を求められたものと思われますが、これに対しまして通産省は、配管の直下の岩盤の深さについて答弁をしたというのが実情でございます。また、通産省が申し上げました一、二号炉について約二十メートル、三号炉について約五メートルという数値は、整地面から岩盤までの最大の距離でありまして、市川委員が御指摘になりました地表面からの数値ではございませんでした。  以上がそのときの事情でございます。     ―――――――――――――
  184. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 引き続き質疑を行います。
  185. 市川正一

    ○市川正一君 政府側の発言がございましたが、本日私は、今後とも答弁は正確かつ誠実になさるべきことだけを強調しておくことにとどめたいと存じます。  さて、ただいまの発言が原発関連でありましたので、私、この機会に、最近にわかに浮上してまいりました青森県下北半島に核燃料サイクル基地を建設するという構想についてただしたいんであります。  四月十七日付の読売新聞によりますと、磁気事業連合会の平岩会長らが十六日通産、科技庁両大臣に基地建設への協力要請をしたところ、両大臣ともに基本的に了承したことになっております。この問題は先般同僚議員も取り上げたところでありますけれども、電事連からの要請の内容大臣の了承したというその中身を改めてお伺いしたいんであります。
  186. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 今月の十六日に平岩電事連会長と私が会ったことは事実であります。その際、平岩会長から、十八日の社長会でコンセンサスが得られるならば二十日にも青森県に行って核燃料サイクル施設の立地について協力を要請したいという報告があったわけでございます。私からは、エネルギー政策の観点から、電力業界が核燃料サイクル施設の立地問題に積極的に取り組むということに対しては評価すると答えたわけでございますが、新聞報道で見られるような私が何らかの意味で了承したという事実はございません。
  187. 市川正一

    ○市川正一君 報道では、御承知だと思いますが、「電力業界、政府が最重点課題として一年半近くも水面下の根回しを繰り広げてきた大プロジェクトが、ようやく表に浮上したわけだ。」と、こうなっております。で、大臣は、先般はこれは誤報だともおっしゃった。しかし、電力業界が計画を考える場合に、主務大臣である通産大臣を除いて考えることはあり得ないところですが、大臣どうでしょうか。――いや、あんたじゃない。大臣にお聞きしているんです。
  188. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 今、事実関係に対して申し上げたいと思いますが、核燃料サイクルの確立がエネルギー政策上の観点から非常に大事であるということは、通産省としてもそういう立場をとっておりますし、電気事業者がその方向でいろいろと検討するということについては、当然我々の方針と合致しておるわけでございます。その映りにおいては、そういう問題について通産省と電力業界と話し合うということは、意見の交換があるということは当然のことでございます。ただ、その場合、どこにその基地を立地するかということにつきましては、基本的には電力会社自身がやることでございまして、さらに電力会社としては幾つかの候補地点につきましていろいろと検討を重ねてきたということも事実そのとおりでございます。ただ、特定地点について、どこへ立地するかという問題は、ただいま申し上げましたように、あくまでも企業の決めることでございまして、役所が事前にどこはよくてどこはいけないとか、こういう地点のことにつきましていろいろと言う立場にはございません。そういう意味で、我々としては、了承したとか、どの地点ならいい、どの地点は悪いと、そういう立場にはないということを申し上げておるわけでございます。
  189. 市川正一

    ○市川正一君 豊島長官、あなたはいつの間に大臣になったか知らぬけれども、大臣がそう言うたということについて聞いているんです。  これは読売だけじゃないんですよ。十八日の日経は、平岩会長が十七日、「藤波官房長官を訪ねてあいさつするなど政府への根回しは終わっている。」、こう言っています。また、同じく同日の読売は、平岩会長らが、藤波官房長官と稻村国土庁長官を個別に訪ね、協力を要請、「これに対して稻村長官は、協力を約束、さっそく五月下旬、基地候補地を視察することを」約束した、こう報じております。としますと、稻村国土庁長官は、協力を約束し、現地視察まで言っておられる。主務大臣である通産大臣は、その点では関知しておられないんですか。
  190. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 先ほども私申し上げましたとおり、エネルギー政策の観点から、業界がこの立地問題に対して積極的にこれに取り組んでいるということを評価するということを私の立場でするのは当然だろうと思います。しかしながら、先ほど長官が述べたように、その立地の場所について私がとやこう言うということはあり得る話ではございませんし、ましてやこれに了解したということは、新聞報道がどうあろうとない話でございます。
  191. 市川正一

    ○市川正一君 私、そんな話は政治の場合に通用せぬですよ。主務大臣を差しおいてほかの閣僚が意思表示をする、結構やと、現場も見に行こうと。私は主務大臣としての見識を疑わざるを得ぬのです。結局、冒頭申し上げた読売の報道、これは報道がどうあろうと、そういうことは言うとらぬというふうにおっしゃるけれども、事実、きょうの朝日新聞でありますが、平岩会長自身がこう言明しておるじゃありませんか、「県知事レベルまでは進出への理解が得られている。」。「県知事レベルまで」ということは、言いかえれば、政府レベルまでは根回しは終わって理解が得られている、こういうことを会長自身がけさの朝日新聞で言っております。これも誤報ですか。私は、電力業界が、政府あるいは通産省を全くなめ切った、こういうおごり高ぶった態度と言わざるを得ぬのでありますが、大臣、政府レベルの根回しは済んでいるというふうに認識されているのですか。
  192. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 県知事レベルと通産大臣レベルとどちらが偉いか私はよくわかりませんけれども、しかし、主務大臣の通産大臣といえども、電力業界に対して、この場所はいいよ、あの場所はいけないよということは言える性格のものではないと考えます。
  193. 市川正一

    ○市川正一君 そうしますと、例えばああいう、国土庁長官が協力を約束して現地まで視察に五月下旬に行くというふうなことは、これはどうなんですか。
  194. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 私、国土庁長官と電事連平岩会長との間の、立ち会っているわけではございません。私どもが国土庁から伺っているところによりますと、このために行かれるということを約束したということはなくて、かねてむつ小川原地区開発につきましては国土庁が所管しておりますので、そういうことで、かねてそういう予定があったということを申されたので、これは、そこをやっていいから、したがって見に行くと、こういうことではないというふうに承知いたしております。
  195. 市川正一

    ○市川正一君 都合が悪いと、これは誤報やと、そんなことは言うとらぬとおっしゃるけれども、事実、ずっと事態の動きは、評価するという言葉をおっしゃった。そして、それは一般論として言っているんだと言うけれども、現実に下北半島のこの構想は進んでいるんじゃないですか。  そこで伺うんですけれども、きのう社長会が、先ほど大臣がおっしゃったようにございました。そして、青森県の下北半島へ核燃料サイクル基地の立地を正式に決定したと、こう伝えられております。ですから、この件について、主務大臣であり特別に協力要請をしてきた通産大臣には社長会の決定が報告されていると思いますが、その内容はどういう報告が寄せられていますか。
  196. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 昨十八日の電気事業連合会の社長会で決定された事項につきまして申し上げますと、電力業界として核燃料サイクル施設の立地について青森県に対して協力の要請を行うということでございまして、具体的地点どうこうするということじゃなくて、その協力を要請しようということが決定されたと聞いております。
  197. 市川正一

    ○市川正一君 しかし、そういうやり方、手口は、政府に今ずっといろいろ報道されているようにやっておる、青森県に対しても同じ手口ですよ。青森の県議会ではたびたびこの核燃料サイクル基地の立地構想が問題になりました。その都度県議会でも北村知事がそういう質問に対して、要請はない、こう言ってしらを切ってきたんです。私ここに地元の新聞ずっと持ってきました。例えば三月議会でも、県に対しては水面下でも水面上でも申し入れなり要請の事実はありませんでした、このように県知事は否定をしておるんです。ところが、実は半年以上も前から日本原燃サービスから説明も受け、また要請もされていることが明るみに出てきたんです。県民はですからだまされたと、そういう行政に対する不信、そしてまた不安と憤りが広がっておるんです。  それで私国土庁に聞きたいんでありますが、このむつ小川原開発計画に今まで国などが投入してきた公共の資本は幾らになりましょうか。
  198. 石井武

    説明員石井武君) お答え申し上げます。  むつ小川原開発のためにこれまで投入されました公的資金でございますけれども、港湾等の公共事業に約四百八十四億円、むつ小川原開発株式会社への利子補給として約四十二億円、同社への出資金として約十五億円、これらを合計いたしますと約五百四十一億円となっております。そのうち国費が約三百六十一億円、県費が約百八十億円であると承知いたしております。
  199. 市川正一

    ○市川正一君 これがその計画のパンフレットですが、今お話があった合計五百四十一億円。そのほかに、きょうも地元の県会議員が来ておりますが、いろいろ漁業補償その他を含めて、聞いてみますと、動いた金が国あるいは県、自治体を含めて二千億円とも言われております。これだけの金を投入し、そしてまた動かし、当初鳴り物入りで宣伝されたこの石油関連の素材型産業は、関連工業も含めて進出は目下ゼロであります。わずかに、ここにも写真がありますが、当初計画になかった国家石油備蓄基地が建設されただけであります。近い将来に国土庁として企業進出の見込みはあるんでしょうか。
  200. 石井武

    説明員石井武君) 御案内のとおり、現行の第二次基本計画では石油精製、石油化学等のいわゆる石油シリーズの企業立地ということを予定いたしておりますが、昨今の産業構造等の動向等を勘案いたしますと、石油シリーズについての見通しは必ずしも明るいものではないと存じております。したがいまして、当庁といたしましても現在策定中でございます第四次全国総合開発計画とか、あるいは新たな東北開発促進計画の策定過程の中で、通産省を中心といたしました関係省庁とも十分御相談の上、今後の企業立地のあり方等について真剣に検討してまいりたい、かように存じております。
  201. 市川正一

    ○市川正一君 全くないんです。完全にこの計画は破綻しております。そこで当初計画には全く影も形もなかった原子力関連施設、いわゆる核燃料サイクル基地をここに押しつけようというものであります。この核燃料サイクルは全体としては安全性が確立されているものではないんです。まして再処理工場は死の灰を閉じ込めている燃料の被覆を破って外に取り出すものです。危険性は極めて大きいんです。技術的にもまだ未確立の分野であります。  通産省に伺いますが、五十五年度に稼働を始めた動力炉・核燃料開発事業団、俗に言う動燃でありますが、この東海村再処理工場が五十七年に溶解槽に穴あき事故を起こし、現在運転を停止したままであると思いますが、間違いございませんか。
  202. 松田泰

    政府委員(松田泰君) そのとおりでございます。
  203. 市川正一

    ○市川正一君 全面ストップをしたままなんです。ですから、電力各社が中心になって設立した日本原燃サービスが用地選びを続けできたものの、いずれも日の目を見なかったのは、予定地に挙げられた地元住民が大きな不安を感じて反対してきたからであります。ところが今度は上からこれを押しつけていく極めて非民主的なやり方なんです。会長に言わせれば県知事レベルまでは根回しが済んでおると、了解を得ておると、こう言っておるんです。一般のマスコミも今回の進め方が異常であることを指摘しております。今までは「あらかじめ地元との交渉を終えたあと、進出の意向を表明するのがごく普通のやり方だが、今回は、申し入れが先行し、地元との協議は後回し、という異例の形となる。」と、こう論じております。  私は大臣に伺いたいのでありますが、先般同僚議員のやりとりの中で、地元の納得、その理解が大前提だと、こうおっしゃった。こういうふうな一般マスコミも指摘しておるような事態、こういうやり方は適切だとお考えでしょうか、いかがでしょうか。
  204. 豊島格

    政府委員(豊島格君) ただいま先生のおっしゃいました県知事レベルの理解が得られているということでございますが、いずれにしましても、実際に立地いたすにつきましては地元の十分な理解と協力が得られなくちゃいけない。そういう意味で、地元の方々のコンセンサスを得るよう努力していくということはこれからやるわけでございまして、そういうことをちゃんと電力業界としてもやるように十分我々としては指導していきたいと思っておるわけです。地元のコンセンサスはこれから十分得ていきたいと、こういうことでございます。
  205. 市川正一

    ○市川正一君 大臣、今申し上げたようなずっと経過なんです。そういう経過、そういうやり方というのは甚だよろしい、結構だというふうにお考えでしょうか。
  206. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 市川委員のおっしゃるようなそのような経過は私は知りません。
  207. 市川正一

    ○市川正一君 通産大臣になって日はかなりたっていると思うんですが、一遍ぜひ経過をつぶさに御検討を願いたいと思うんです。ひとつその上に立って、先般同僚議員もこの問題取り上げました。非常に大きな社会的問題になっておりますので、ぜひ経過をつぶさに御検討願いたいと思うんですが、いかがですか。
  208. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) おっしゃるような経過については調査してみます。
  209. 市川正一

    ○市川正一君 私は、今申し上げたように、この再処理工場が立地されるということは、先ほど指摘した点に加えて、低レベルの廃棄物の貯蔵のみならず、高レベルの廃棄物を保管せざるを得なくなり、一層の危険性を持つと思うんであります。したがってこういう構想をあくまでも推し進めるという、その立場に政府・通産省が立つ限り、まさに下北半島を核のごみ捨て場、死の灰のごみ処理場にすることであるということをこの際指摘しておきまして、次の問題に移らさしていただきたいと思います。  午前中から三池の有明鉱の問題について質疑がございました。私も本委員会の一員として現地調査に参りました。  重複質問は避けまして、まず大臣にお聞きいたしたいのは、今回の事故というのは、これは落盤だとかあるいはガス突出とか、こういういわば自然条件が関与しているという事故では全くないということです。人為的に坑内に持ち込んだ装置原因となっている。したがって、午前中も大臣も、初歩的な注意さえ怠らねば防止できた、そういうものだとこうおっしゃったわけであります。私は現地で関係者の事情聴取などを通じてその確信を一層強めたのでありますが、それだけにまた何よりも三井鉱山、会社当局の責任は極めて重大である、こう思うのでありますが、大臣のこの点に関しての認識をまず伺いたいと思います。
  210. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) けさほどからしばしば申し上げるところでございますが、今次の災害責任所在につきましては、現在司法捜査によりましてその解明を急いでいるところであります。  先般取りまとまりました事故調査委員会中間報告内容を見た限りにおいては、必ずしも発生防止し得ないような複雑な内容のものではないということも既に申し述べたとおりでございます。なぜあのように多数の罹災者が生じたか、今でも非常に残念に思っているところでございますが、これも何回も申し上げておるところでございますが、あのような災害に遭われた犠牲者方々のお気の毒なこと、あるいは遺族の方々の非常に悲惨なこと等については十分私ども三カ月前のあのことを思うだけでも非常に悲しい思いがするわけでございます。今後引き続き徹底的に原因の究明を行うことによりまして責任所在を明らかにしまして、法規に照らし厳正な措置を行うと同時に、今後類似災害というものが再び起きないように私どもはさらに厳しい監督行政の強化ということを期してまいる所存でございます。
  211. 市川正一

    ○市川正一君 大臣、そこまでの答弁はまだ聞いておりません。僕が今聞いたのは、防止し得ないような事故じゃなかったってあなたが言っているから。ということはこの会社当局三井鉱山それ自身責任は免れ得ないもんじゃないですかと言って聞いているんで、もう全部言ってしもうたら何もあとありません。そこをまず聞いておる。まだ時間はたっぷりありますから、簡単にそこのところを言ってください。
  212. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 余り早口でおっしゃるからどこまで質問になったのか私もわかりませんけれども、司法捜査というものを厳重にいたしまして今後……
  213. 市川正一

    ○市川正一君 会社責任はあるんですかないんですかということを聞いている。
  214. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) ですから、司法捜査を厳重にしてこの原因を今突きとめている最中でございますから、そこの事情を御勘案願いたいと思います。
  215. 市川正一

    ○市川正一君 要するに三井鉱山、その会社当局の責任は免れ得ないとお思いになるのか、いやどうもないとおっしゃるのか、それだけ言ってほしいです。
  216. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) ただいまの御指摘でございますが、現在司法捜査を実施中でございます。したがいまして、捜査結果を待って厳正な措置をとるということで御了解をいただきたいと思います。
  217. 市川正一

    ○市川正一君 そうしたら、あなた今まで言ってきたことはみんなパァじゃないですか。防止し得ないような事故じゃなかったと言うといて、それで責任はあるのかと言うたら、それは調べてみぬとわからぬと。そんなばかなことないです。中間報告も出ているじゃないですか。ですから私は、それこそ時間がないので先に進みますが、だからきっちり私の質問にかみ合って答えてください。  そこで聞くんですが、有明鉱は三月十五日に生産を再開したんですが、その後の保安状態はどうなんですか。重傷者も出ているようですが、その点まず聞かしてください。
  218. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 三月十三、十四日と保安点検を実施いたしまして、十五日から操業を開始いたしたわけでございます。その後ならし操業をいたしまして十九日から本格的な操業に入ったわけでございます。その後鉱山保安監督局から特定項目についての特定検査を実施してこの保安点検結果後のフォローアップをいたしておるわけでございます。  これまで鉱山保安監督局報告がございました事故例でございますが……
  219. 市川正一

    ○市川正一君 人数で結構です。
  220. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 全体で九名の負傷ということでございます。
  221. 市川正一

    ○市川正一君 再開後二週間で重傷三人、軽傷六人の事故が出ておるんです。私は今、十二日中間報告、そして十五日再開という非常に短期の間に、もちろん十三、十四と坑内調査をやったと局長はおっしゃったけれども急いでなぜやられたのか。私はあえて言うならば、こういうふうに再開後も事故災害が続出しておる、これは結局会社側保安体制の改善確立を徹底的に究明せずに中間報告の三日後、当面の対策を発表後三日後に再開を許可したことに起因していると私は言わざるを得ぬのであります。もちろん同種の事故をほかの炭鉱で繰り返さないために当面の対策は早く出したということは、これは理解できますけれども、現実に起こっている事態はそうであります。  そこで私警察庁に聞きたいんですけれども、先ほどのやりとり、同僚委員とのやりとりによれば、所轄著に有明鉱の事故発生報告があったのは発生後五時間後であります。また消防署へはそれからさらに一時間半後であります。  私、消防庁にお聞きしたいんですが、会社側は消防署からの問い合わせに対しても事故発生を長時間にわたって隠していたと、こう伝えられておりますが、この点いかがですか。――消防庁は帰りましたか。じゃ結構です。  こういう警察に対する報告が五時間以上、消防署へはそれから一時間半後という会社の態度に対して警察庁は、重大だと思いますが、この点どうお考えでしょう。
  222. 藤原享

    説明員(藤原享君) 大変報告がおくれたわけでございますが、この種の重大事故の認知が発生後五時間余りかかってあったということは、人の生命、身体、財産の保護を任務としております警察にとりましてまことに遺憾であると思っております。
  223. 市川正一

    ○市川正一君 私、単なる遺憾程度では済まされぬ問題だと思うんです。まことに重大である。  そこで、こういう一連の経過と事実は明らかに会社の意識的な保安の手抜きである、またあえて言うならば犯罪的であると言わざるを得ぬと思うんでありますが、少なくとも業務上過失致死傷に当たると思います。警察の方では今捜査中と聞いておりますが、差し支えない範囲でその目的、進行状況、見通しなどについてお聞かせいただきたい。
  224. 藤原享

    説明員(藤原享君) 今後の捜査の見通してございますが、その前にこれまでの捜査でございますが、事故発生後この現地の大牟田警察署に特別捜査本部を設置いたしまして数次にわたりまして関係の施設の状況とかあるいは管理の状況、作動の状況等について検証を実施するほか、多数の方からこの衷情聴取を行う、またこの関係事項について専門家に鑑定嘱託等を行ってまいってきておるところでございます。  なお、今後の捜査でございますが、現在坑内での鑑定が非常に悪条件下でございまして、逐次現場検証は進めておりますが、なかなかこの検証が意に任せず進まないという実態でございます。しかし、全力を挙げてこういった捜査を続けておるわけでございます。あわせて、今後とも必要な関係の方々から事情聴取あるいは鑑定等を行っていきたいというふうに考えておりますが、今後の一つ捜査の重点としては、出火場所及び出火原因等についての確定、火災及び煙の拡散状況のさらに十分な裏づけ、保安施設の設置、管理及び作動状況、あるいは保安管理体制及び避難誘導の状況等の捜査をさらに進め、幅広く過失の有無の関係あるいは刑事責任所在について明らかにしてまいりたいというふうに考えております。
  225. 市川正一

    ○市川正一君 時期の見通しはいつごろになりますか。
  226. 藤原享

    説明員(藤原享君) これはちょっと坑内のいわゆる検証の関係がなかなか進まないものですから、今すぐにわかにちょっと明らかにできないような感じでございます。大変困難かと思います。
  227. 市川正一

    ○市川正一君 私は従来この種の事故に対する会社側の刑事責任が結局あいまいにされる経緯を見てまいりました。そういうことから、結局それが事故再発を許す状態を招いておると。私はこの際、警察庁があくまでも厳正にかつ峻厳な態度をもって早急に処置されることを強く要望しておきます。  時間が参りましたので、最後に、私中間報告の当面の対策に盛られた問題点について、特に石井局長にお伺いもし、また御意見もただしたいんでありますが、一つベルトコンベヤーの運用の問題です。もう一つは消火栓の問題なんです。これらは各炭鉱とも共通の課題であります。ここに鉱山保安規則を持ってまいりましたが、この中に織り込むべき要素が少なからずあると思います。  例えば、ベルトコンベヤーの問題でありますが、現在の石炭生産ベルトコンベヤー抜きでは考えられません。そして、坑道の深遠に従ってどんどんどんどん奥へ奥へ入っていっております。総延長は何キロあるいは何十キロにもなっております。こうしたベルトコンベヤーの規制は現行の鉱山保安規則では主要なものにしかかぶせておりません。今回の事故でも明確なように、火災は主要ベルトとかあるいはサブのベルトとかに関係なく発生するものであります。したがって、私はベルトコンベヤー全体についての規則を設けることが一つの教訓であると思うんでありますが、この点ぜひ御検討願いたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
  228. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 御指摘のように、ベルトコンベヤーにつきましては主要坑道ベルトコンベヤーにつきましての蛇行防止装置の義務づけ等の規定がございますが、現段階ではその他の、言うならば切り羽の部分あるいは主要坑道以外の部分についてのベルトコンベヤーについての規定はございません。今回坑内火災防止対策部会を設置いたしまして四月の十六日から検討に入ったわけでございますが、その段階で各種の火災発生防止対策を検討することといたしておりまして、その場合に、火源として考えられます種々の機器あるいは装置につきましての防止対策のあり方を十分に検討いたしてまいりまして、必要な対応策を講じてまいりたいというふうに思っております。
  229. 市川正一

    ○市川正一君 消火栓の問題も含めてぜひ前向きに積極的に検討されることを重ねて要望して私の質問を終わります。
  230. 井上計

    ○井上計君 大臣は先般の所信表明の中で、中小企業が従来我が国の経済発展に果たしてきた大きな役割、功績等につきましては評価をされております。この点については大臣のお考えと全く同感でありますから、大臣の御所見については敬意を表する次第でありますが、ただ中小企業関係の法律、これは我が国の多くの中小企業関係の法律というのは大変充実しておる。これは私もそのような評価をしております。事実先進諸外国の中でも我が国が一番であろう、これはこう私は感じておるんです。  ところが、それにかかわらず中小企業の大多数はまだまだ不十分であるという不満を多く持っておる。これもまた事実であるわけですが、その原因はいろいろありますけれども、一つ法律はかなり充実完備しておるけれども、運用についてきめ細かさに欠けておる、あるいは末端の行政面では温か味がない、こういうふうなことも原因だと、こう思うんですね。特に国と地方自治体と連動する施策については連絡が十分でないといいますか、思うようになかなか中小企業のそのような希望等について十分こたえていないというような面もありますので、それらの面はもっと今後改善をしていかなくちゃいかぬであろうと、こう思います。  それからもう一つは、現在のように非常に環境変化、特に技術革新等の中で先行き不安というふうなことがますます増大をしておりますけれども、率直に申し上げて、通産省いろいろ御努力はいただいてはおりますけれども、産業の先取り政策といいますか、これらの面についてはまだ十分でない面があるんではなかろうかと、こう思います。  このようなことにつきまして今後ともさらに一層大臣には大いにひとつ御努力をいただくということをまず前提として要望して、時間が余りありませんから、二つばかり具体的な点をさらにひとつ要望したいと、こう思います。  一つは、中小企業の事業用資産の相続、すなわち承継税制の問題であります。これは私も個人的にもまた党としても長年にわたってこれらのものを要望し、また本院においてもしばしばあらゆる委員会で発言をし、提案をしてまいりました。幸いにして五十三年の四月に一部改正され、さらに五十六年、当時の中小企業庁長官の諮問機関として承継税制問題研究会が設立をされ、それについての答申がなされましてから、昨年度、五十八年度から一部改正がなされたのであります。ところが、政府においても、また各政党においても承継税制が実現をしたと、実施されておる、このようなことを唱えておる方が非常に多いんですがね。私は若干見解違いまして、承継税制は依然として実現されていない、こういう見解に立っております。  その理由は、昨年度から改正されましたのは個人用の、個人の事業用資産については土地二百平米までのみがわずかに評価四〇%ということと、それから非公開株式の評価については長官の通達で一部これが評価方法が変わったと、大体相対的にせいぜい一二、三%か、多く見ても一五%程度しか減額されていないであろう、こう思いますから、まだまだ承継税制と言うに至らない。さらにもっと今後とも軽減のための措置をしていく必要があろうと、こう考えるわけであります。現在の財政状態など考えますと容易ではありませんけれども、何といっても大臣がおっしゃっていただいているように、中小企業の従来果たしてきた役割、さらに今後我が国の経済発展のためには中小企業の振興発展こそ重大なかぎを握っておる、こういうふうなお考えからいたしますと、難しい情勢でありますけれども、今後ともさらに御努力をいただきまして、中小企業の事業がスムーズに後継者にひとつ承継できるように御努力をいただきたい。大臣は明治以降百年以上にわたっての事業の経営者であります。しかも、三代目でありますから、恐らくその相続税については大変大臣も困ったであろうと推察をしているわけでありますから、特にその点については御努力をいただきたいと、こう思います。民間の企業の活力、特に中小企業の活力をさらに発揮するためには同時にまた後継者の育成、多く抱えておる中小企業の従業員への対策等々考えますと、私これは財政状態が困難であればあるほど、ある意味では、逆に今後金の卵を産む鶏をもっと育成していくためには、中小企業対策の振興、拡充、その中でも特に承継税制は急を要するのではないかと、こう思っておりますので、ぜひひとつお願いをいたしたい、これが第一点の要望です。  もう一つは、これも財政上大変困難な問題がありますけれども、機械等の設備の耐用年数の問題であります。我が国の耐用年数がアメリカあるいはイギリスあるいはフランス、西ドイツ等と比べて非常に高いということは事実、これは皆さん方御承知のとおりです。若干アメリカやイギリス等と比べますと、我が国と、多少計算方法について違いがありますけれども、大体日本と比べると大変短い。しかし、アメリカなんか以前は日本よりか長かったんですが、この二、三年前から急に短くしておる。短くしておる理由は、国際競争力を保持するためと民間の活力をさらに発揮をするために短かくしたと、こういうふうなことでありますから、したがって我が国としても当然それを考えていくべきであろう。具体的に、時間がありませんからとやかく言いませんけれども、技術革新に対応していくために、国際競争力を保持するために、やはり設備の更新はますます必要でありますし、また同時に、日本のこれは大企業を含めてでありますけれども、企業が自己資金がまことに乏しいわけでありますが、資本の蓄積のためにもぜひこれは急を要する問題であろうと、こう考えますが、総体的な意味でのひとつ今後とも御努力をお願いをするということと、さらに具体的に二点、大臣のひとつ今後とも一層の御努力をお願いをいたしたいと、かように考えますが、御所見承ればなお結構です。
  231. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 余り詳しく申しますと時間かかりますからごく簡単に申し上げますけれども、中小企業、中小企業と申しましても、それはもうピンからキリまでございますけれども、総じてやはり中小企業経営というものの中にいまだに国、県、市の力を利用すると言うと語弊がございますけれども、これを活用するということ、またそのようなことを知らない人が余りにも多過ぎるのではないか。このようなことを利用するという意味ではなしに、いい意味で中小企業が活用できれば中小企業経営の実態も変わってまいりますし、またそれなりに近代化あるいは新時代に適した企業となり得るのではないか。ましてや日本の中小企業というものは、例えばアメリカ、EC、さらには開発途上国の人たちといろいろ話してみますと、諸外国には日本ほど発展した中小企業のあり方というものがないような気がする現在、余計に日本の中小企業がさらに進歩できる要素というものは幾らでもあると思うんであります。そういう点から、今後中小企業政策というものを、私今の立場でやるべきことはやらなければなりませんけれども、今後も政治家としてやはり末長くやっていかなければならないということを常々考えておる次第でございます。  次に、承継税制の問題でございますが、確かに井上委員おっしゃるように、承継税制承継税制ということを通産省や政府が盛んに太鼓たたいて大騒ぎしているような感じではございますが、現実にこの承継税制というものがそれほど、まあ私の立場でこう言うのはちょっと申しわけないことでありますけれども、それほど効果が上がっているかということを考えていきますと、必ずしも政府や通産省が宣伝するほどの効果は現実には上がっておらないと思います。これは、しかし先ほども申し上げましたように、このような税制というものを我々の側でもっともっと宣伝する、啓蒙するという努力が私は足らないのじゃないか。したがって、今後こういう努力の中で、我々が太鼓たたくと同じような力でもってもっともっと浸透していかなければならないと思っておる次第でございます。  最後に、耐用年数の問題が出ましたけれども、これは設備の、何と申しますか、実態に即して客観的に決めてきた制度であると思いますので、設備の使用の実態を離れて法定耐用年数を一律短縮するということは日本の今まであった制度、例えば現行の減価償却制度というものの根幹に触れるというようなことでもございますので、私はこれは慎重な検討が必要であるのではないかと考えております。個別の設備の法定耐用年数の短縮、このようなことは今後実態をもう少し踏まえまして、実態を調査しながら我々が慎重に検討するということで御理解願いたいと思うのであります。
  232. 井上計

    ○井上計君 今、大臣お話しの中にありましたように、確かに中小企業者自体が国のそのような施策を十分承知していない、活用していないという面が多くありますことは私もそのように常に感じております。こういう面についてひとつ今後ともぜひそういうふうな啓蒙もしていただく。同時に中小企業者自体がもっと気楽にといいますか、なかなか敷居が高くてそういうようなものを活用できない。特に地方自治体へ行きますとそういう傾向があるのですね。ですからそういうようなことについても十分ひとつ御努力をいただきたい、こう思います。  それから、承継税制については、大臣から明快にお答えいただきまして私も意を強ういたしましたので、ぜひひとつ今後ともお願い申し上げたいと思いますし、耐用年数の短縮についてはこれは大臣のお考え、これも理解できます。特に従来省エネ投資減税、さらに今年度から大変御努力いただきまして中小企業の新技術の投資促進税制、かなり広範囲に指定されまして、これも大いに努力は多としておりますけれども、やはり全般的にまだまだ十分でない。特に今回の新しい新技術体化の投資促進税制にしても、これは時限立法は二年間でありますから、それから省エネ投資減税は五十九年度で切れるわけでありますから、今後将来的な問題としてはやはり十二分に御検討願いたい、御努力願いたいとこれは要望しておきます。  次に、先日当委員会で繊維工業構造改善措置法の改正についての審議がされました。全会一致で採決されたわけであります。しかし、構造改善法がもう長く続いておりますし、またこれからさらに五年間政府もまた業界もこれによって努力をするわけでありますけれども、幾ら業界が努力をし、政府が適切な指導をしても、まあ言い方は悪いですけれども、むだ骨を折る、こういうふうなことになる危険性といいますか、可能性が多分にあるわけであります。先ほど松尾委員から絹織物についてのいろいろと御質疑が行われました。私も若干絹織物、和装関係に関係をしたことがありますから重大な関心を持っておりまするし、同感でありますけれども、絹織物と同時に、あるいはそれ以上にやはり大きな問題になっておるものは綿糸、綿織物であろう、こう思うわけであります。そこで若干それらの問題等についてお伺いしたいと考えます。  中国を初めとする発展途上国から輸入をされておるものが年々非常にふえておるわけであります。特に綿織物だけで見ましても、五十一年当時から見ますと五十七年、五十八年は全体的に約倍以上になっている、こういうふうな大変な数量に上がっておるわけでありますから、繊維産業の構造改善の実効を上げるためにもやはりこれらの特に綿織物の輸入については秩序ある輸入がなされないともとのもくあみになる。先ほど申し上げたむだ骨を折ることになる、こういう危険性が多分にあります。特にこの綿織物輸入状況を見ますと、五十一年からと比較して五十八年倍以上になっておる。実は倍以上になっておるものは中国からなんですね。これはもうおわかりのとおりであります。特に中国からは大変な伸び率でありまして、五十七年、五十八年は全体の綿織物の輸入量の約八〇%近くは中国から入っておる、こういうことでありますが、これらについて対中国との間にもっと秩序ある輸入、これらのことについてのお考えはどうでありますか。政府委員からで結構でありますが、お答え願います。
  233. 黒田真

    政府委員(黒田真君) ただいまおっしゃられましたように、綿織物あるいは綿糸の輸入というものに対しまして関係業界の方から秩序ある輸入というものを要望する声が非常に強く上がっておるわけでございます。私どもももちろんそういった輸入面での秩序が保たれるということが今後構造改善を進めていくためにも極めて重要であるというふうに考えるわけでございます。しかしながら、直ちにこの規制的なところまでいく前の段階で、ある意味でソフトな対応と申しましょうか、によってこれを秩序化していく道もあり得るのではないかというのが私どもの考え方でございます。  特に中国との間の問題に関して申し上げますと、綿糸あるいは綿織物に関しまして、関係の民間団体が中国を数回にわたりまして訪問をいたしましていろいろお話し合いをする、日本側の事情を十分御説明をし、先方の理解を求め、そして秩序ある輸出の要請をするというようなことを繰り返してきておるところでございます。私は一般的に中国側もそういった問題には十分理解を示しているというふうに考えるわけであります。中国も外貨事情がございますから当然輸出の拡大に努めなければならないわけでありますけれども、他方、相手国の中で混乱を起こしてまでそれを輸出するという考え方はないんだというような説明もあるわけでございます。そういった民間ベースの話し合いというものを支援するというような考え方も含めまして、実は政府といたしましても中国側との間に繊維貿易問題の責任者のレベルで定期協議というようなものを組織いたしまして、実は私自身も昨年の五月訪中をいたしまして、我が国繊維需給の動向、あるいは現在日本が進めている繊維の構造改善政策というようなものを説明をいたしまして、先方の理解と協力を求めるというようなことを実施しているわけでございまして、今後ともこういうような努力を通じて輸入に関して秩序ある姿を確保してまいりたい、かように考えているところでございます。
  234. 井上計

    ○井上計君 政府としては大変やりにくいことがあることも、これはもう承知をしております。通産省はそんなことはありませんけれども、私どもの感じとしては外務省なんかは中国に対してはもう必要以上に遠慮して、中国の言うことは何でもかんでも全部御無理ごもっともと聞いておるんではないかとさえ思えるほど、ある意味では軟弱外交的なところがあるわけです。だから、それらのことがやはり繊維業界においても相当不満の種になっておるんではなかろうかと思える節さえあるわけです。今、局長は政府としてもこれらのことについて乗り出すというようなことで御努力をいただいておるようでありますけれども、どうですかね、中国からの綿糸、綿織物の輸入に対してはMFA方式を適用する、あるいはそれを取り入れるというようなことについてのお考えはありませんか。
  235. 黒田真

    政府委員(黒田真君) ガットの国際繊維取り決め、MFAというものを発動してほしいという要請がいろいろ言われているわけでございます。私ども現在中国との関係で見ますと、確かに例えば綿糸の輸入は相当な勢いで増加をいたしておりますが、これは従来ほとんどなかったものが最近になって中国側の輸出余力が出てきたということで増加をしているという状況でございますので、日本全体の輸入の中で占める比率というものはまだ相当低いレベルにとどまっている。綿織物につきましては、確かに過去五年間に相当な勢いで増加をいたしました。そして中国の比率が極めて高いということは先ほども御指摘があったとおりでございますが、例えば昨年の数字を見てみますと、輸入量を見てみますと、一昨年の輸入量を下回っている、わずかではございますが下回っているというような状況がございます。ことしに入りましてから大変な高水準が続いておりますが、これにつきましてもいろいろな短期的な要因があるというような説明もされているようでございますので、現在の段階で直ちにMFAを発動しなければならないというような状況にあるというふうには必ずしも考えていないわけでございます。
  236. 井上計

    ○井上計君 まあ難しい問題もあろうと思いますけれども、じゃ今後これからのやはり推移等によってはそれらのものも検討をすべきであろうというふうに思います。何しろ中国には十億の人口でありますから、中国の衣料事情を考えますと、まずどれだけ生産をふやしても、あるいは綿花の大増産をしてもそれほど日本の繊維産業界を圧迫しないであろうというふうな、そのような観測もありましたけれども、ところが外貨事情から言ってますますそれこそ集中豪雨的な輸出が今後なされるまたおそれもあるわけでありますし、我が国のやはり産業界、特に長年にわたって我が国の基幹産業と言われたような繊維業界、また現在繊維業界の従事者はあれこれ合わせますと約百万人ぐらい、こう言われております。それらの死活問題にもかかわってくるわけでありますから、ぜひひとつこの中国との、特に繊維の貿易等についても今後とも格段の配慮をしていく必要があろうと考えますが、大臣、どのようなお考えがありますか、お聞かせいただきたいと思います。
  237. 黒田真

    政府委員(黒田真君) 確かに中国が繊維産業に力をつけてきております。中国側の説明は内需の充足が先決であるということでございますが、確かに現在のところまででもその輸出の二割五分が繊維品によって進められているということでございますので、今後の繊維貿易の出方によっては相当なインパクトは出てくるように思います。  こういうものに対抗する基本的な方向といたしましては、実はせんだっての繊維工業構造改善臨時措置法の延長でもお願いいたしましたが、やはり日本の繊維産業が一刻も早く先進国型産業というような、まさに先進国、日本が持っているポテンシャルを生かした他の追随を許さないような産業にいち早く脱皮してほしいということにあるわけでございまして、そういった目的に業界挙げて現在努力をしているところだろうと思います。ただ、その構造改善の過程において、その努力を無にしてしまうような形で混乱を生ぜしめないようにしてほしいという要望があるわけでございまして、その点につきましてはできるだけ、輸入に関してできる限りの秩序化を図るということで対応をすべきものと、かように考える次第でございます。
  238. 井上計

    ○井上計君 ぜひひとつ今後の一胴の御努力をお願いしたいと思います。  次に、三池問題並びに石炭問題についてお伺いする予定でありましたが、もう時間が残り少なくなりましたので簡単にお伺いいたします。  三池炭鉱のああいう悲惨な事故につきましては、同僚委員からいろいろと多くの質問がなされました。これについてまた政府側からも御答弁がありましたから特に私から申し上げることを省略をいたします。ただ、亡くなった多くの犠牲者の霊を弔うためにも今後ともこのような事故が、しかも人災と言われる事故が絶対に生じないように格段のまた監督指導をひとつ私からも強く要望をしておきます。  既に質問の中にもありましたけれども、会社側に対する事故根絶の十分なる指導あるいは監督を行っていただくと同時に、やはり民間に任せておったんではなかなか開発がおくれる、機械、機材といいますか、保安関係の。そのようなものの開発等についても特に従来以上にまた政府が御努力をひとつお願いをいたしたいと、かように思います。  そこで、このような事故が起きます原因いろいろありますけれども、一つは輸入炭と比べて国内炭の炭価がかなり差がある。できるだけコストを安くしよう、コストを安くしなければなかなか国内炭が売りにくい、売れないというふうな、それらも一因ではなかろうかと、こう考えますときに、国内炭と輸入炭ですね、これをブレンドするような方法はないものであろうか。そうなってまいりますと、また問題になっておる生糸の一元化輸入の問題やら、あるいは最近特に大きな問題の牛肉輸入等こんがらかってまいりますからそう簡単にはいきませんけれども、何かそういうふうなことも考えていく必要ができればあるんではなかろうかということを思いますし、もう一つ石炭というのは我々の概念としては燃料だと、こういうふうに思い込んでおりますけれども、燃料以外に石炭を利用する、いわば石炭の付加価値を高めるようなそういう方法、既に通産省では考えておられるようでありますけれども、もっともっと拡充をしていくように、そういうふうなこともひとつお考えをいただいたらいかがであろうか。  以上で質問を終わります。これについてのお答をいただければ大体質問時間がジャスト終わるようでありますから、ひとつお願いをしたいと思います。
  239. 村田文男

    政府委員(村田文男君) まず、付加価値――石炭の利用の拡大の方から申し上げますと、最近における先端技術の向上あるいは石油ショック後のエネルギー事情の変化を反映いたしまして、従来利用されておりませんでした低品位炭の利用が発電を中心にかなり進んでおります。また、従来廃棄されていました石炭灰につきましても、肥料あるいはセメントの原料としてよく利用をされてきております。技術開発につきましては、今私ども積極的に取り組んでおりますのは、石炭灰のさらに有効利用を広げようということ、それから石炭の液化、ガス化等を進めておるところでございます。また、石炭の中の希少金属の利用というテーマもございますが、これにつきましては現在なかなか経済性がめどが立っておりませんで、研究も進んでおりませんが、いいテーマがあれば積極的に取り上げてまいりたい、こういうふうに考えております。  それから外国炭のブレンドの問題でございますが、私ども輸入割り当ての運用を通じまして――石炭は輸入割り当て制になっております。輸入割り当ての運用を通じましてユーザーに国内炭の引き取りをお願いしておりまして、ユーザーサイドでは実際上ブレンドという形でお願いしておるところでございます。
  240. 井上計

    ○井上計君 終わります。
  241. 木本平八郎

    木本平八郎君 まず最初に、機械類の輸入問題についてお伺いしたいんですが、それで昨年度も大分に輸出超過で、輸出が約千五百億ドルですか、それに対して輸入が千二百六十億ドルということで、約二百億ドルの出超になっておるわけですけれどもね。また、これでやはり貿易摩擦の問題も起こってくるということなんで、これ、前からやはり機械類の輸入を促進しようということは通産省としても相当唱えてこられたんですけれども、最近の機械の製品輸入の動向についてまずお伺いしたいんですが。
  242. 志賀学

    政府委員(志賀学君) お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘がございましたように、海外からの製品輸入、なかんずく機械の輸入をふやしていくということは、円滑な国際通商関係を形成していくという面からも大変大切なことであるというふうに私ども思っております。  そこで、機械の輸入の状況でございますけれども、ここ数年を振り返ってみますと、大体全体の輸入の七%から八%程度ぐらいで推移してまいっております。総額はそういうことでございますが、中身を見ますと年によってかなり変動がございます。ちなみに昭和五十八年の機械輸入額について申し上げてみますと、五十八年の機械輸入額は前年に比べまして一四・二%ふえまして百四億ドルということで、これは史上最高でございます。全体の輸入は四・二%前年に比べて減ったわけでございますけれども、その中で機械は一四・二%ふえたということでございます。  これを主要品目について見ますと、まずエアバスを初めといたしまして輸送機械、これが大変大幅に伸びておりまして、七七%前年に比べて増、こういうことになっております。そのほか電気機械、これは半導体などを中心にしてふえております。あるいは精密機械、これもかなりふえているということでございます。ただ、一般機械は国内の設備投資が低調であるというようなこともございまして、一般機械は減りました。ただ、全体として、先ほど申し上げましたように機械の輸入は非常に大幅にふえたということでございます。    〔委員長退席、理事降矢敬義君着席〕 輸入先でございますけれども、やはりアメリカ、イギリス、フランス、そういった先進諸国、そのほか台湾、韓国、そういったところからも輸入がふえておるという状況でございます。
  243. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで問題は、私、実は昨年まで機械輸入協会の常任委員をやっていまして、機械の輸入問題については本当に苦労をしたんですけれども、余り効果が上がらなかった。それで、通産省としては何とか二、三年でとにかく倍増にしたいとか一生懸命思っておられるということもよく知っているんですけれども、やはり問題は、ことしは確かに一四%ですか、とにかく伸びていますけれども、年によって品目が違うわけですね。五十八年度これ伸びたのは船の修理が入ったわけでしょう。こういうふうに、まあ修理がぼんと入るとがんと上がるけれども、またすぐだめだと。機械の輸入というのは、やはりコンスタントに、あるベースのものがふえていくのがいい姿だろうと思うんですけれどもね。    〔理事降矢敬義君退席、委員長着席〕 それで、私がまたこれ聞くのもおかしいんですけれども、どうして機械の輸入がそううまくふえないんだろうという点について局長はどういうふうにお考えになっているか、ちょっと御所見をお伺いしたいんですがね。
  244. 志賀学

    政府委員(志賀学君) これは機械に限らず、製品輸入というものはなかなかふえないというところで、海外諸国からいろいろ日本に対する批判が寄せられているわけでございます。機械についてもそういうことなんでございますが、製品輸入は大体全体の輸入の三割弱、その中で機械が製品輸入のまた三割ぐらいということで大体こう安定してるわけでございますけれども、なぜなかなかふえないのかということでございますけれども、その一つは内需の拡大基調が弱かったということも言えるかと思います。  そのほか、これは日本の機械のユーザーについて言えることでございますけれども、確かに外国にもなかなかいい機械があるわけでございます。そういう外国のいい機械を積極的に発掘して思い切って使っていくと、そういうマインドがやや乏しいということをよく耳にいたします。ただ、これは裏返して言いますと、逆に、海外の輸出業者が積極的に日本に対して売り込んでいないとか、そういうことも言えようかと思いますけれども、いずれにいたしましても日本の機械のユーザー、それから外国の機械の輸出業者、そういったところの若干こう、お互いの努力の不足と申しましょうか情報がうまく結びついていかないと申しましょうか、そういったところに一つなかなか機械が伸びにくいという理由があるのではないかというふうに思っております。
  245. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、これは何も東欧関係の方でなくていいんですけれども、機械の輸入の方で御答弁いただきたいんですけれども、ソ連だとか東欧はいわゆるカウンターパーチェスで、プラントを百億ドル出すと、それに対してひどいのはイーブンで百億ドルの製品を買えというふうな要求があるわけですね。それが、私ちょっとこの一年間余り見てなかったんですけれども、どのくらい――非常にエスカレートして条件が非常に厳しくなってきているということも聞いているんですが、それがわかる範囲でちょっと教えてほしいんですが。
  246. 柴田益男

    政府委員(柴田益男君) ソ連、東欧からのカウンターパーチェスの実態はどうなっているかという御質問でございますが、先生御案内のように、このカウンターパーチェスと申しますのは民間が、特に商社を中心としてやっているものでございまして、政府は事実上関与しておりません。そういう意味で我々取引の数量的な把握は十分できでないのが実情でございます。  ただ、商社あたりから聞くところによりますと、先生からお話ありましたように、ソ連、東欧、最近は非常にカウンターパーチェスの要求は強くなってきている、ほとんどの輸出品についてカウンターパーチェスを要求してきているというのが実態のようでございますし、またそれを実行しないとペナルティーもだんだん高くなってきて、場合によっては二〇%のペナルティーを要求するというような状態になっているというふうには聞いておりますが、政府としましては、こういうカウンターパーチェスは本来の自由貿易から望ましくないということで、再三是正を要求しているということではございます。
  247. 木本平八郎

    木本平八郎君 今、民間がやっているとおっしゃいましたけれども、民間からは必ず延べ払い調書なんかのときにCPの条件を書くわけですよね。それでいろいろ御指導いただくわけですよ。だから、まあ偉い方は余り御存じないかもしれぬけれども、窓口ではそういうふうに指導されているわけですがね。  それで、そのCPの問題については確かに余り好ましくないということで日本政府が相手に対して断るというふうにやっておられることはわかるんですけれども、そういうことで問題が解決せずに、どんどんプラントの成約が減っていくということが実情なんですね。それで、その辺はちょっとまとめて申し上げたいんですけれども、少し人ごとじゃなくて政府がみずからのこととして取り組んでいただきたいという感じがするわけですね、このCP問題については。もっと民間と一緒になって、例えば外国の政府はこういう輸出商談についてジスカールデスタンなんて大統領がみずからドバイに飛んでいったりしていましたよね。サッチャー首相だってそうですね。どうも我々民間にいますと、外国に駐在していると特に日本の政府というのは冷たいという感じがするわけですね。この問題なんかはもう少し積極的に、政府が干渉してもらっちゃ困るんだけれども、やはり真剣になって検討してもらいたいという感じがするんですが、その辺はどうでしょうね。
  248. 柴田益男

    政府委員(柴田益男君) 先生の御質問の趣旨は、広い意味でのカウンターパーチェスということで、バーター取引とかあるいはコンペンセーションを含めて御質問のように今お受けしたんですが、確かにおっしゃいますようにバーター、物々交換とかあるいはプラント輸出した場合にその代金をできた製品で引き取ってくるというコンペンセーション、これは確かに通産省の方でも許認可でタッチしておりまして実態把握はできているわけでございますが、そうその数量はまだ多くはございません。ソ連の場合は一%未満でございますし、ほかの国を見ましてもそう大きな比率ではないわけでございますが、おっしゃるようにプラント輸出に関連してコンペンセーション等を要求されるわけでございますので、その点は先生の御趣旨も踏まえて十分に検討してまいりたいと思います。
  249. 木本平八郎

    木本平八郎君 ぜひそれをお願いしたいんですが、それで輸入に関して結論的に申し上げますと、通産省の課長クラス以下の方は極めて必死になってやっておられるわけですね。ところが、どうも局長さん以上は余りやっていただいてないんじゃないかという感じがするわけで、ぜひこういう問題は、詳細的には後で申し上げますけれども、通産省だけじゃなくて日本政府全体として考えていただかないとうまくいかないんじゃないか、それを成り行きに任しておいたらこんなものはうまくいくわけないんですよ。それは、理由を聞けば皆さん御存じのように、外国は余りまじめに売る気はないし、アフターサービスは悪いし、それはもう本当にめちゃくちゃですよね。あんなものは買いたくないという日本のユーザーの気持ちはわかるわけです。しかし、これは何とかやっぱり買っていかないと国際貿易上いろいろ摩擦が起こってくるんじゃないかと思うので、今後ともぜひそういうところ、自分のことというんですかね、積極的に通産省が中心になって進めていただきたいと思うわけです。  次に、厚生省にお伺いしたいんですが、それで実は今ここに出ておりますのは航空機とか、ヘリコプターだとかエアバスとか、こういうでっかいものがあるわけですけれども、基礎的にやはりベースになる機械として、医療機械というのは非常に有望な品目なんですね。アメリカが特にそうですけれども、ドイツやほかからも極めて積極的に日本の医療機械の市場の有望性を考えて、非常に希望がある。ところがどうも思うように医療機械は入らない。そこそこは入っているんですけれども、彼らが希望するほど入っていないし、民間が希望するほどなかなか入れられないんですね。その医療機械の輸入の手続的なものを簡単におっしゃっていただきたいんですがね。
  250. 代田久米雄

    説明員代田久米雄君) お答えいたしますが、医療機器につきましては、今先生のお話もございましたように、性能あるいは安全生等を確認することは保健衛生上から必要でございまして、そういう観点から厚生大臣の承認を得るということが前提になっております。その後、この承認に関しましては、内外無差別ということを原則にいたしまして、貿易摩擦等の解消のためにも、例えば薬事法の改正とかそういうことにつきましても取り組んでまいりまして、あるいはデータ等につきましても外因のデータを積極的に受け入れるというふうな対策をとってまいってきております。  五十八年の一年間の実績で申しますと、輸入につきましては輸入承認品目は千二百三十品目ほど承認されております。そういうことで、私どもといたしましては内外の差別ということは全くないように常々配慮をいたしまして、あるいはその手続の簡素化等につきましても、行政の簡素化の面からこれを積極的にやろう、あるいは迅速化を図ろうということでやっておりまして、外国との相互理解に努めるという方向で協議を進めておるところでございます。
  251. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は約五年ぐらい前に医療機械の輸入に大分携わりまして、そのときにアメリカ人なんかから相当文句を言われたわけですね。最近それは今の御答弁で大分改まっているんじゃないかと思いますけれども、どうもやはり基本的に問題があるというのは、私がそのとき感じて今もそうだと思うのですけれども、医療機械の輸入の審査の基準が厚生省は薬事法か何かで薬品と同じように同じことを準用されているという点があると思うのです。  例えばこういうことがあるのです。血液をとって分析する機械ですね。この血液分析機械と心臓のペースメーカーを同じ基準で同じようなテストを要求されているわけですね。片一方の方は人間の体の中に入っているものですから、これは命にかかわる大変な装置ですね。片一方の方は多少分析が狂っても命にかかわる問題じゃないわけですね。これが同じ基準であるというふうなこと、それから薬品を準用されているという点、その辺はどういうふうに受けとめておられるわけですか。
  252. 代田久米雄

    説明員代田久米雄君) 確かに、ペースメーカーなどにつきましては人体に埋没するということで、できるだけ日本国内でも臨床データを集めるとかいうようなことはお願いをいたしております。それから血液の機械のお話でございましたけれども、血液分析装置等につきましては承認前例がたくさんございまして、こういうものにつきましてはほとんど資料を要求しているものはございません。ほとんどノーデータに近い承認でございまして、難しい問題点はほとんどないのではないかというふうに考えております。
  253. 木本平八郎

    木本平八郎君 今の御答弁のように運営していただいているとみんな業者は大喜びだと思うのですけれどもね。実態はそうじゃなくて、例えばある機械の型式登録をやって、そして業者の登録も全部できている。ところが、実際の輸入のときには事前にインボイスを持っていって届け出するわけですね。これは届け出とおっしゃっているけれども、実際はイエスかノーか、許可するかしないかということなんですね。こういうふうに表面上は自由化されている、あるいはノーデータでやる、アメリカのデータでもよろしいとおっしゃっているのですけれども、実際の窓口では非常に窮屈な取り扱いになっている。  この点は余り議論してもしようがないのでその辺でやめますけれども、私ぜひ通産省にお願いしたいのは、はっきり言って厚生省は機械というものを御存じないわけですよ。機械を御存じないのがそこで許認可権を持っておられるというところに極めて我々から見たら、はっきり言って素人さんがそういうことじゃ困るなという気があるわけですね。こういう問題は、やはり輸入促進ということについては厚生省は多分虚心坦懐に受け入れられると思うので、ぜひ通産省の方もよく打ち合わせていただいて、指導というとおかしいけれども、こういう機械というものはこういうふうに見るのだと、薬品を見るのと違うのだというふうな点もよく今後打ち合わせいただきたいと思うわけですね。その辺厚生省の方にお聞きしたい。
  254. 代田久米雄

    説明員代田久米雄君) 通産省との協力をというお話でございますが、私どももそういう点は十分考えてお願いをいたしておりまして、例えばJISの規格とか、そういうものにつきましては通産省の審議会を利用させていただいておりますし、それからアメリカ等に医療機器の日本に対する輸出の促進といいますか、そういうものにつきましてはジェトロにお願いいたしまして、私どももそれに出ましてアメリカを行脚して説明をしてくるというようなこともやらしていただいておりますので、通産省とは協力をしながらこの問題については対処しておるということでございます。
  255. 木本平八郎

    木本平八郎君 この問題で最後にもう一つは、確かに国産機械と外国の輸入機械を差別なさっていないということは、法律上というか取り扱い上、表面上は事実そうなんですね。ところが、実際は国産機と外国機だと一年の差ができちゃうんですね。ということは、外国の物を、仮にスキャナーならスキャナーを入れるときに、一億円ぐらいするようなものも六台ぐらい提供しなきゃいかぬわけです。データを三台でとるとか、二台は、何というんですか工場検査用に使うとか、一台は何か電気試験場がなんかのテストを受けるとか、六台を大体一年間ぐらいかかるわけです。そういうふうに非常に金がかかると。一方、それで輸入の型式登録だとかそういうものが審査をやっておられて相当早くやっておられるんですけれども、国産メーカーの方は今までのずっと実績があるものだから、割合に事務調査で済んでいるわけですね。  そうすると、事実この問題は非常に大事なんですけれども、いい機械があって、日本の現在の医療機械で七割はアメリカオリジンだと、それであとの三割が、ほとんどが欧州なんですね。日本のオリジンというのはほとんどないわけですよ。全部コピーなんです。これは僕は、医療機械というのは本当に特別な業界だと思いますけれども、あれでよく国際紛争にならないなと思うくらい、一年間の時間がありますと、日本人というのは器用だからすぐまねしてぱっとつくっちゃうんですね。外国品がそこで厚生省の登録を受けていよいよ入るというふうになったときに、日本品が安くばっと出てくるわけですね。そういうことで非常にコピーというか、これはちょっとほかの、何も通産省の肩を持つわけじゃないんですけれども、通産省の管下のなにではそんなひどいのはあんまりないと思うんです。ところが、どうもその辺やっぱり厚生省はよく御存じないから、ついつい日本の業者のなにに振り回されているんじゃないかという気がするんですが、その辺はどうでしょうね。
  256. 代田久米雄

    説明員代田久米雄君) 外国の機械で非常に、何といいますか、そのサンプルを日本へ持ってきてという話がございましたけれども、現在は電気的安全性にいたしましても、あるいは機器の性能検査にしましても、全部製造メーカーが外国でつくったデータで全部よろしいということになっておりますものですから、実際に臨床試験データをとらなくちゃいけないものだけは一台入れることはございますが、それ以外は全部外国の資料をもってかえておりますので、そういう大変な六台とかという話はもうございません。  それから何と申しますか、まねの製品が多いというお話でございますけれども、これはできるだけ私どもも早く承認を迅速におろすように努力をしておりますので、そういう点でできるだけ日本のメーカーにも創意工夫を凝らして特徴ある製品を出すように指導していきたいというふうに考えております。
  257. 木本平八郎

    木本平八郎君 そういうふうにぜひ指導していただきたいと思うんですけれども、その六台をやっているかやっていないかというのは、余りこんなことを論争してももうしようがないので、ただこれだけはよく心得ていただきたいというのは、外国から見た場合に、いかにも日本の厚生省が国内メーカーを保護するためにごちゃごちゃごちゃごちゃ言いながら時間を引き延ばして、それで開発の時間を与えているのじゃないかというふうなことになっちゃ困るわけですよね。その辺はぜひ変に痛くもない腹――半分ぐらい痛いかもしれないけれども、余り探られないようにやっていただきたいと思うんです。  時間がないですから、次に有明問題についてちょっと移りたいんですけれども、これについては同僚議員から朝からいろいろ質問がありましたので、問題はもう出尽くしていると思うんです。私二月一日に商工委員会の視察で行きまして、それでどうもあのときにいろいろと時間がもう非常に少なくて駆け足だったものだから何かよくわからぬということで、二月の二十八日、九日に私費でもう一度行きまして、それで三池鉱の中まで入って八キロ先の切羽の先まで行ってきたわけです。行ってきてその感想を率直に申し上げますと、行ってよかったと、あれを内部を知らずに変なことを言っていたらもうえらい恥をかいたところだという反省をしているわけですけれども、それで一番問題は、あれだけの設備がもしもあれで一年間廃坑にしておくともう復活できないということですね。そのために、相当今石炭関係で四百億とそれから八十五億ですか、何か相当金をかけて石炭産業を維持していこうと、エネルギー安保のためにやっていこうとやっておられるわけだろうと思いますけれども、それで私が非常に感じたのは、あの事故があったときにああいう報道を聞きながら、炭鉱というのは非常に悲惨な、グルーミーな職場だという印象があったんですね、重労働で。実際行ってみたらもう全然違う。むしろ土木機械が動いているというか、大きなカッターがずっと動いていて自動的に切り羽を崩していきますよね。つるはしなんというものは全然ないし、削岩機も実際少しは使っていても採炭には使ってない、こういう事情を全然私知らなかったわけですよ、これは私だけが知らないかもしれませんけれども。その辺で非常に感じたのは、もう少し新聞記者だとか国会議員とかというのを、日ごろからそういう案内してPRをもっとやっておくべきじゃないかという気がしたわけですね。非常にPR不足のために中のことがよくわからぬから、余計周りの者が疑心暗鬼になってわあわあわあわあ騒いだという感じがするんですけれども、そのPRの点については今までどういうふうにやってこられて今後どういうふうにおやりになるつもりなのか、その辺ちょっとお聞きしたいんですがね。
  258. 村田文男

    政府委員(村田文男君) 御指摘のように石炭産業、現在の生産量を維持するためにも相当前もって坑道の掘進を図らなきゃいけませんし、それから深部化、奥部化に対応いたしましてコストアップを吸収するという観点からも設備の近代化が相当大きな負担になっております。例えば、五十七年度におきましては石炭鉱業全体として六百十三億の設備投資をいたしております。売り上げが二千八百億ぐらいでございますので二一・六%でごいまして、他の産業に比べまして際立って高い設備投資になっております。こういうことの成果といたしまして、石炭生産性は逐次毎年上がってきております。  私どものPR、確かに不足でございます。ただ現実の問題といたしまして、石炭坑内にやはり大勢の人を参観、視察願うということは、いろいろ操業上の問題あるいは安全上の問題から困難なことはありますけれども、できるだけ石炭産業の実態を知ってもらうように私ども知恵を出してまいりたい、こういうふうに考えております。
  259. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、私労働組合の人たちとも会ったんですけれども、そのときにまず一番初めに言われたのが、先生これは飛行機事故で八十三人死亡した、それでもうだから飛行機に乗るのをやめますかと言われたわけですよ。いやいや、それは乗りますよと。彼らは、我々はこういう悲惨な事故があったけれども、これはたまたまあったのであって、決して炭鉱はそんなに危いところだと思っていないし、許可さえあればすぐあしたからでも入りたい。それからまた、追加募集に何かこんなに申込書が来ているんですね、採用するのに大変だというふうな状況だというわけですね。口では言わなかったけれども、それで補償の問題も全部解決している。だから、はっきり言ってちょっとほかからがちゃがちゃ言わんでくれ、この炭鉱、自分の職場は自分で守る、自分で再建するんだということを労働組合の人が言っていましたよね。僕は、ああそうか、それならもう何も言うことないな、わかりましたと言って私は帰ってきたんですけれども。その問題、ちょっと時間がないので一つだけなにしたいのは、トンネル技術というのは世界一だそうですね。それで、何か青函トンネルにもあの三井が応援したと。私は、それならもっとああいうものの技術の輸出を国として、これは補助金で四百億とか六百億出すのもいいんですけれども、それよりももっと自主独立させるためにトンネル技術なんかの輸出をどんどん政府としてもあっせんしてやった方がいいんじゃないか。例えば経済協力ですね、金を出せと言うとなかなか出さないけれども、無償で経済協力してやるからということでこういう技術を出していくというふうなことも必要なんじゃないか。  ちょっと時間がなくなりますので、質問だけなにしておきますけれども。それからもう一つは、ボタの処理に非常に金がかかっている。公害問題がいろいろありますけれども、こっちで補助金をこんなに出してやっているんだから、余りしゃくし定規にボタの捨て場とかなんとか規制するということは、コストがかかっちゃうわけですよ。  それから先ほどの輸入の保安機材の問題ですね、これ基準か検査か何か非常に厳しくて、ドイツなんかのいい物があってもなかなか使えないというふうなこともあるようなんですね。それももちろんそれは必要でしょうけれども、余りそういう規制を強くされるために、石炭産業なんかああいう斜陽産業になってくると、どんどんどんどん政府の規制が強くなってきて、そのためにコストが上がってきているという感じがするわけですね。鉱山監督局にもお願いしたんですけれども、要するに行政が、今度の事故があってまた厳しくやるとまたコストが上がっちゃうわけです。ますます国際競争力もなくなるし企業の力もなくなるんで、その辺は余り、事故対策ということだけでびびっちゃって――びびるというのは政府がですよ、通産省がびびって余り規制を厳しくしないようにぜひやっていただきたいと思うんですね。この三点ちょっと簡単にお答えいただいて、私の質問を終わります。
  260. 村田文男

    政府委員(村田文男君) まず、技術輸出の問題でございますが、日本の掘削技術につきましては、中国等に既に技術協力という形で進出いたしておりますし、機械そのものは広く輸出されておるというところでございます。私どもも直接こういう輸出するものに助成はするという建前じゃございませんが、技術開発等の面では前々から積極的に助成をしてきておるというようなことでございます。  それからボタの処理、有明の問題でございますが、あそこは大変ボタの処理に困っておることは事実でございます。地域によっていろいろ差はあるわけでございますが、私どもといたしましては、できるだけ地方公共団体との密接な連携のもとに、あるいは港湾の造成の一過程とか、そういう形でできるだけ経費のかからない処理をするように地方公共団体とも相談してまいりたい、こういうふうに考えております。
  261. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 第一点の輸入機械に関する問題でございますが、これは検定を規則上要求いたしておりますが、その一番大きな理由は、防爆化のきちっとした基準を満たしているということが、多数の人命にかかわる機器でございますので、一番センシティブに検定をいたしているところでございまして、あと、その他性能面につきましても現在公害資源研究所がやっておるところでございます。  それから保安監督と自主保安の問題でございますが、これはあくまでも私どもは石炭鉱山におきます保安の確保は自主保安体制の適切な運営によりまして図られるべきであるというのが基本的認識でございまして、それを、その上に立ちまして監督指導に遺漏なきを期したいというふうに思っておるところでございます。
  262. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 本調査に関する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  263. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 次に、中小企業等協同組合法及び中小企業団体の組織に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。小此木通産大臣
  264. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 中小企業等協同組合法及び中小企業団体の組織に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  事業協同組合、商工組合中小企業者組合は、集団化、共同化によって中小企業が地位の向上を図っていく上で、従来から重要な役割を果たしてきております。  しかしながら、近年、安定成長の定着、消費者需要の多様化、経営者の世代交代等中小企業者組合を取り巻く経済的、社会的環境は大きく変化してきております。  このような環境の変化に適切に対応する組合事業活動の展開及び組合員の世代交代の円滑化が必要になっていることから、組合機能を充実強化し、あわせて組合制度の改善を図るため、所要の改正を行うものであります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一は、組合の行うことができる債務保証事業の範囲の拡大であります。  現在、組合は、組合員が金融機関に対して負担する債務についての保証しか行えないこととなっておりますが、組合員の事業活動に係る債務についての保証も行えるよう範囲を拡大することとしております。  第二は、出資持ち口数の制限の緩和であります。  一組合員当たりの出資持ち口数は、現在、出資総口数の百分の二十五が限度とされておりますが、脱退した組合員の持ち分を他の組合員が譲り受けようとする場合等においては、この限度を百分の三十五に緩和することとしております。  第三は、組合事業の利用者に対する制限の緩和であります。  現在、組合の共同事業については、組合員以外の者の利用は組合員の利用分量の百分の二十までと制限されておりますが、工場等を集団して設置する組合で、一部組合員の移転に相当の期間を要する場合等においては、この制限を一時的に一定限度まで緩和し、また組合の体育施設等を一般公衆に利用させる場合にはこの制限を適用しないこととすることとしております。  第四は、企業組合制度の改善であります。  設立後五年を経過した企業組合であって、従事組合員が心身の故障で従事できなくなるような場合に当たっては、組合員のうち従事組合員の占めるべき割合等を緩和し、また企業組合に員外監事を認めることとしております。  第五は、協業組合制度の改善であります。  協業組合組合員の推定相続人が、組合員の生前においてもその持ち分を譲り受けることができることとすることとしております。  第六は、火災共済協同組合の改善であります。  火災共済協同組合の共済契約対象者の範囲を拡大し、また共済金額の制限方法の変更を行うこととしております。  第七は、中小企業団体中央会の事業の例示の追加であります。  中小企業団体中央会の事業として、展示会等の開催等の例示を追加することとしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  265. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 以上で本案の趣旨説明聴取は終わりました。  本案に対する質疑は次回に行うこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時六分散会      ―――――・―――――