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政府委員(
加藤孝君)
失業者がふえてきておりますこの辺の
背景でございますが、これはやはり第一次石油ショック以降いわゆる高度成長から低成長、安定成長という形に成長率が低下をしてきておるわけでございまして、それに伴いまして基本的に労働力需要の伸びが鈍化してきておる、こういう事情が
背景にあるわけでございます。
そしてまた、労働市場の面におきましても、先ほど来申し上げておりますように、こういうなかなか
就職が困難な
高齢者がどんどんふえてきておるというような問題であるとか、あるいはまた比較的離転職の率の高い
サービス業というようなところで
雇用がふえてきておるというような事情であるとか、やはり同じく比較的終身
雇用ではない女性の
職場進出というものがふえてきておるとか、さらにはまた、若年者を
中心といたします
転職意識の
変化、こういったもの等が一方においてもまた進行しておる、こういうようなこと。さらに加えまして、かつて日本の
経済を引っ張ってまいりましたいわゆる重化学工業といいますか、
素材産業といいますか、そういったようなところが国際
経済の大きな
変化の中でこれが非常に伸び悩んでおる。むしろ構造転換を迫られてきておる、こういうような事情が一方には進行しておる。さらにはまた、いろいろ
先生も提起しておられますようなMEを
中心とする
技術革新というものの進展が、新規の労働力の採用という面ではこれがまた抑制ぎみに作用しておる、こういうような面等もあるわけでございまして、そういう労働市場における需給両面にわたるいろんな
構造変化が生じてきておる、こういうような
背景があって
失業率が高まってきておるということが言えると思うわけでございます。
必ずしも解雇がふえたと、こういうことばかりで
失業者がふえておるわけではなくて、現に総理府の最近の完全
失業統計の特別調査におきましても、完全
失業者の約三割ぐらいは非自発的
理由による
失業ということでございますが、残りの約七割ぐらいは何らかの形による自発的
失業、あるいはまた新しく
就職したいけれ
どもまだ仕事が見つからない、こういうような形での
失業というような形のものも大きなウエートを占めておる、こういうような傾向も出ておるわけでございます。しかし、もちろんこういった
方々も私
ども労働行政の
対象として
対応を進めていかなきゃならぬという点は当然のことだと考えておるわけでございます。
失業率の国際比較の問題でございますが、基本的に、第一次石油ショック後欧米各国は大変に
失業率が上がってまいりました。日本の場合も、かって一%台でございましたが、これが徐々に、それを契機にいたしまして二%台ということでございますが、日本の場合には
雇用保険法の成立というような形の中で第一次オイルショックが始まった途端に
雇用保険制度がスタートする、いわゆる
雇用保険の三事業というものがそこでスタートするというような
対応等が行われましたこと等も大きく作用いたしまして、こういうヨーロッパに見るような急激な
失業者の増というものにならないでこれをしのいできた、こういうような事情にございまして、現在において二・六ないし二・七%ぐらいの
失業率になっておる。一方、この間アメリカ等においては七%ぐらいの
失業率がどんどん上がりまして一〇%を超える、あるいはまた、かつてヨーロッパの模範と言われた西ドイツにおいても七%からさらには一〇%を超えるような
失業率まで上がる、イギリスもまた一二%
程度の
失業率というような
状況でございます。これは日本とほかの国とのいろんな
失業統計のとり方が違うからではないか、こういうことでいろいろその辺の問題がよく提起をされておるわけでございますが、アメリカと日本の場合にはほぼ同じような統計のとり方をいたしておるわけでございます。そういう
意味ではアメリカと日本の
失業率についてはおおむね裸で比較ができるのではないか。
それからまた、ヨーロッパの各国の
失業統計は、安定所への求職者というものを
失業者数として
失業率をカウントしておる、こういうような事情がございまして、若干その辺については違いがございますが、ただこれについては、例えばOECDがこれをOECD
基準で、そういう
失業率の国際比較というものをOECDの尺度に直しまして比較をしておるデータがございます。それによって見ますと、統計のとり方は違いますが、大体現在それぞれの国が発表しております
失業率と余り大きな違いはないというような結果が一つ出ておるわけでございます。そういう
意味では数字の面での国際比較はある
程度可能でございます。
ただ、一つここで注意しなきゃならぬのは、やはり各国における
雇用慣行の違いというようなものがあるわけでございます。例えば日本の場合でございますと、人が余ったという場合に、アメリカのように直ちにレイオフをするというようなことをしないで、できる限りこれを企業内の配置転換等々によりまして抱えようとする。それからまた、逆にある
程度労働力需要がふえる、仕事がふえる、こういうようなことがございますと、まず超過勤務をふやしてそれに
対応していく。そして、それである
程度耐えられなくなった状態で人をふやすというような一つのパターンがあるわけでございます。そういう
意味で、何といいますか、そういう生産等の動きが
雇用の方にドラスチックにすぐ出てこないというような
問題等はあるわけでございます。そういう
雇用慣行の違いなどはやはり十分にらんで比較をしなきゃならぬとは思うわけでございますが、一応
失業率の国際比較という数字の面での比較という
意味におきましては、そういうOECDレベルに直した数字等はあるわけでございます。