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1984-06-28 第101回国会 参議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十八日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         石本  茂君     理 事                 遠藤 政夫君                 佐々木 満君                 浜本 万三君                 中野 鉄造君     委 員                 大浜 方栄君                 金丸 三郎君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 森下  泰君                 糸久八重子君                 本岡 昭次君                 和田 静夫君                 中西 珠子君                 山中 郁子君                 下村  泰君          発 議 者  本岡 昭次君    国務大臣        労 働 大 臣  坂本三十次君    政府委員        厚生大臣官房審        議官内閣審議        官        古賀 章介君        労働大臣官房長  小粥 義朗君        労働大臣官房審        議官       平賀 俊行君        労働大臣官房審  野見山眞之君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君        労働省職業安定        局長       加藤  孝君        労働省職業安定        局高齢者対策部        長        守屋 孝一君        労働省職業訓練        局長       宮川 知雄君    事務局側        常任委員会専門  今藤 省三君    説明員        経済企画庁調整        局産業経済課長  里田 武臣君        文部省初等中等        教育局財務課長  菴谷 利夫君        文部省大学局教        職員養成課長   糟谷 正彦君        運輸省船員局労        政課長      佐藤 弘毅君        労働省職業安定        雇用保険課長   齋藤 邦彦君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○育児休業法案本岡昭次君外三名発議) ○雇用保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  育児休業法案議題といたします。  発議者本岡昭次君から趣旨説明を聴取いたします。本岡昭次君。
  3. 本岡昭次

    本岡昭次君 ただいま議題となりました育児休業法案につきまして、日本社会党を代表いたしまして、提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  我が国における人口高齢化は急速に進んでおり、出生率の低下と相まって、来たるべき社会の担い手となる児童の健全育成が一層重要な問題となっております。  また、近年、婦人職場進出は目覚ましく、昭和五十八年には、雇用されて働く婦人の数は千四百八十六万人に達し、そのうち有配偶者が約六割を占めるに至っており、今後も乳幼児を持ちながら働く婦人の増加が見込まれております。  しかし、働く婦人職場環境を見ますと、出産後も勤続する意志を持ちながら、育児のために職場を離れなければならない例が多く見られ、一度離職すると再就職が難しく、また、不利な労働条件を余儀なくされる場合が多い実態にあります。この職業家庭生活との調和の問題に対処するためには、保育施設整備充実とあわせ育児休業制度の普及が不可欠となっております。  現在、我が国では、公務員である女子教員看護婦保母等については、育児休業制度化され、対象範囲が限られておりますが、国家公務員についてその利用状況を見ますと、対象者に対する利用率昭和五十七年度で五二・七%となっております。  また、勤労婦人福祉法は、勤労婦人育児休業の実施について事業主努力義務規定しております。しかし、昭和五十六年で三十人以上規模の事業所育児休業を実施している事業所はわずかに一四・三%にすぎません。  一方、ヨーロッパの諸国では、多数の国において育児休業制度が立法化され、働く婦人の人権と母子福祉育児について手厚い配慮がなされております。  一九八〇年に我が国が署名した国連の婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約は、「子の養育には男女間の及び社会全体の責任の分担が必要であることを認識」すると述べております。  また、ILOも、一九八一年に男女労働者特に家族的責任を有する労働者機会均等及び均等待遇に関する条約及び勧告を採択しており、その勧告では「両親のうちのいずれかは、出産休暇の直後の期間内に、雇用を放棄することなく、かつ、雇用から生ずる権利を保護された上、休暇育児休暇)をとることができるべきである。」とうたっておりますが、現在、これらの理念世界共通認識となるに至っております。  かかる実情を見るとき、我が国においても、すべての労働者対象とする所得保障を伴う育児休業制度を早急に確立する必要があります。  これが、ここに育児休業法案を提出する理由であります。  次に、この法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  まず第一に、この法律は、子を養育する労働者育児休業を保障することにより、労働者負担の軽減と継続的な雇用促進を図り、もって労働者福祉の増進に資することを目的としております。  第二に、使用者は、父または母である労働者がその一歳に満たない子を養育するための休業を請求したときは、その請求を拒んではならないものとしております。ただし、共働きである父母の一方が育児休業をするとき、または一方が家事専従でその子を養育できるときは、重ねて他方が育児休業をすることを拒むことができることとしております。  第三に、これが、最低の労働基準として遵守されるための必要な規定を設け、また、育児休業理由とする不利益取り扱いの禁止を規定しております。  第四に、育児休業期間中の給付については、別に法律で定めるところにより、賃金の額の六割に相当する額の給付を行うこととしております。  なお、この法律は、公務員を含めた全労働者に適用されますが、公務員関係規定整備等は、別に法律で定めることとしております。  以上がこの法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。
  4. 石本茂

    委員長石本茂君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。     ―――――――――――――
  5. 石本茂

    委員長石本茂君) 雇用保険法等の一部を改正する法律案議題といたします。  前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 本岡昭次

    本岡昭次君 今回の雇用保険法改正案提出背景あるいは検討過程、こうした問題について若干の質問をいたします。  まず背景として、労働省雇用失業情勢構造的変化を挙げ、雇用保険法制定以降の人口高齢化サービス業中心とする第三次産業の拡大、女子職場進出労働者転職意識変化等を力説しています。しかし、これらは単なる社会現象の羅列にすぎず、あえてこの時期に雇用保険制度を大きく変える必要の裏づけとしては説得力に欠けると私は考えます。また、そのようなごく自然な社会情勢変化雇用失業情勢の構造的な変化と称し、雇用保険の危機、雇用保険財政赤字の元凶のように言うのは、政府経済政策産業政策労働政策失敗や不十分さを、労働者失業者責任転嫁するものであると私は思います。  この際、やはり十年前にあえて旧失業保険法を廃止して雇用保険制度をつくった労働省責任をはっきりさせていただかなければならないと思いますが、こうした本法案を提出するに至った基本的な背景について的確な御答弁をいただきたいと思います。
  7. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) ただいま本岡委員がおっしゃいましたように、高齢化社会が進んでおる、婦人職場進出もふえておる、それから雇用の場においては第二次産業より第三次産業のウエートが高まっておる、サービス経済化ということになっておる、それから特に最近のマイクロエレクトロニクス技術革新素材産業などに見られるような産業構造の転換が進んでおる、それは事実であります。しかし私は、それから以上の認識が多少違うわけでありまして、やっぱりこういう情勢変化というものを背景にして構造変化が起こっておりまして、それによって雇用保険受給者年ごとに大幅にふえてきた、雇用保険財政も御承知のとおり悪化をいたしたわけでございますが、労働省といたしましては、従来より失業の予防を初めとした雇用対策の推進に努めてきておりまして、昨年十月には第五次雇用対策基本計画を策定して、産業構造雇用構造変化に的確に対応した雇用対策を一層進めることといたしておるところでございます。  雇用政策経済政策失敗ではないか、それが保険財政に悪影響を及ぼしておるのではないか、政府責任ではないかとおっしゃるわけでございまするが、もちろん私どもは重大な責任を負っておりまするが、しかし、国際的に見ますれば、物価の安定は世界の優等生の方でありますし、完全失業率にいたしましても、これまた世界では、欧米先進国に比べれば非常に成績のいい方にランクをされておると私は思っております。そういう意味合いから、経済政策あるいは雇用政策は、なおそれは足りない面は多々ございましょうけれども、相当努力をしてきておるわけでありまして、この際の保険財政悪化というようなものは、この十年の間の大きな変化というものは大変な変化でございまして、その構造的な変化によってこの財政悪化も起こってきたんだ、この変化にやっぱりできるだけ早くすばやく対応をいたさなければならぬというのが私どもの考えでございます。
  8. 本岡昭次

    本岡昭次君 今大臣答弁の中に、政府責任ももちろんあるがという前提でいろいろ労働省立場をお述べになりました。まず何よりも政府労働政策の問題に対する責任を痛感してもらわなければなりませんが、今大臣がおっしゃいましたように、雇用そして失業対策の問題についてやはり十分でなかったという反省がありながら、結局最後のところは、雇用失業の問題についてのさらに対策充実、あるいは雇用保険制度の適切な運営、あるいは必要な国庫負担を、国の財政を、必要なものを労働行政の重要な柱として投入する、こうしたことで雇用保険財政健全化を図るということではなくて、結局雇用保険財政赤字責任というんですか、その穴埋めを、今後も赤字は続くからということの前提に立って、それを失業給付の削減を中心とする今回の法案によって労働者肩がわりをさせていくということは、労働行政理念から見てどうしても相入れないものだ、こう私は思います、どのように大臣がおっしゃっても。  それで、財政上の問題とするならば問題は保険料の問題にもかかわってくるわけですから、この労働保険保険料の徴収に関する法律の第十二条第五項で、雇用保険料率弾力的変更について規定をしてあるわけです。それで、今回のこの雇用保険法改正して給付を切り下げるというふうな問題を検討する前に、雇用保険財政の立て直しのために同条項発動検討するということがどのように行われたのかということを参考までに聞かしておいていただきたいと思います。
  9. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この問題が検討されました中央職業安定審議会雇用保険部会、あるいはまた審議会等におきましても、この弾力条項というものは十分承知をしながら、今回のこういう保険財政赤字というものが単に一時的な現象、景気の好不況というような形によって起こったものであるならば、そういう弾力条項というものの発動というものもあり得るだろう。しかし、この保険財政悪化原因そのものが、今大臣からも申し上げましたように、いろいろ高齢化の問題である等々、まさに構造的なものであり、今後もずっとそれが進展していく、こういうような状況にある中で、弾力条項発動して保険料値上げという形での一時的な対応でこれはできるものではない。そういう意味で、この保険料値上げというものを考える前に、まず現在の制度において、受給者就職をより促進するための方策というもの、あるいはまた、現在の制度の持っておる不合理な点、こういったものをできる限り改善をしていく、そういう形で今後の構造的な変化というものに対応していく。そうして、そういうような努力をして、なおどうにもならぬというようなときに、初めて値上げ問題も検討する、こういう立場でなければならぬというようなことで、値上げ問題については、議論としては出ましたけれども、今申し上げましたようなそういう基本的な方向で今回の改正方向が示されたものである、こう理解をいたしておるわけでございます。
  10. 本岡昭次

    本岡昭次君 私も雇用の構造的な変化、あるいは経済産業の構造的な変化というものをよく知っております。だからこそ最初も、そのことについて労働省が十分に対応し得たか、小手先のことではどうにもならないものがあるが、労働省のそれに対する手立て、取り組み、政策は十分であったかという問題が今問われている、こういうふうに思っているんです。その問題については、後ほど個々にわたって詳しくひとつ論議をさせていただきたいと思います。一応背景的なものは時間の関係もありますからこの程度にいたします。  それで次に、改正案内容について、もう既に論議をされているものは省いて、残されている問題を二、三お伺いをしておきたいと思います。  まず、所定給付日数の被保険者期間区分の問題であります。もう衆議院等でも十分論議されておることと思いますが、改めてお伺いをいたします。  この改正案では、所定給付日数について被保険者であった期間を三段階に分けております。十年以上、五年以上十年未満、一年以上五年未満、この三段階になぜ分けたのかという理由、並びに、どうしても分けなければいかぬということであるならば、五年以上あるいは一年以上五年未満の二段階が精いっぱいのところではないか。この雇用保険という制度理念ということから考えれば三段階にも細分化するということは重大な問題がある、私はこう思っているんですが、この点についてはいかがですか。
  11. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 先生も御存じのように、現在の制度におきましては、この保険給付日数につきましては、年齢によって、すなわち就職難易度によって決めるという原則に立ちまして、具体的には年齢によって決める、こういうふうになっておるわけでございます。したがいまして、極端な例を申し上げれば、五十五歳以上の高齢者になってまいりますと、一年以上勤続した方でも十カ月の給付が受けられる、こういうような形にもなっておるわけでございます。  そういうようなことで運用を十年してまいりましたけれども、現実の運用の中におきまして、やはりこの給付日数の長い高年齢者層中心といたしましての給付とそれから負担というものの極端なアンバランス、不均衡がいろいろ生じてきておるというような問題がございまして、そういう意味で今までの就職難易度に応じて、具体的には年齢に応じて給付日数を定めるという基本的な原則は維持しながらある程度負担というものも加味をしておる。具体的にはその負担程度を示す勤続期間というものを加味した給付体系をとる。こういうことによってある程度均衡是正をして制度の健全な運営を図っていきたい、こういうことでやっておるものでございます。  この点につきましては、率直に申しまして審議会レベルでも、二段階だ、四段階だ、いろいろ御議論はございました。しかし、いろいろ御議論の中で、結局、この勤続期間を単に二段階程度に分けるだけでは給付負担の極端な不均衡というものを是正するという観点からは不十分ではないか。また、四段階とか五段階とかこういうふうになってまいりますと、今度はまたそれが大変事務的な面で非常に煩瑣になるというような問題等もございまして、審議会の御議論の結果三段階ということでお願いをしておるわけでございます。  そういう意味におきまして、私ども、三段階ということでぜひやらせていただきたいと、こう考えておるところでございます。
  12. 本岡昭次

    本岡昭次君 今も説明の中にありましたように、年齢による給付に直して十年間運用してきた、しかしここでまた手直しをしなければならなくなった。もちろん制度は一度決めたら未来永劫続けなくてはならぬということでないと思いますが、今の説明の中で、十年運用してみて給付負担の不均衡が起こったので是正をせにゃいかぬということなんですが、十年間の運用の中で給付負担の不均衡というものが顕在化して是正しなければならぬということは、考えてみたら、年齢による給付に切りかえたとき、一体その見通しはどうであったのかということですね。十年運用してみて、そして今おっしゃったような問題がだんだんと明らかになってくるというような――これからまた先の問題であれば論議意味があります。しかし、わずか十年の間で不均衡がこのように大幅に、三段階に分けなければというところへ来る。何か労働行政見通しのなさというのですかね、非常に無理があるような気がしてならない。  不均衡是正ということでなくて、問題は、雇用保険財政について国の負担をとにかく削減せにゃいかぬ、減らさにゃいかぬということが前提にあって、そのために法律中身を、まあいわばいろいろ理屈をつけて、そしてそこから給付率を落として国庫負担を削減するということになっているんじゃないかと僕は思えて仕方がないんですね、この問題でも。今おっしゃるけれども。それはそれで給付負担の不均衡是正するんだと言えば成り立つけれども、私たちはどうしてもそのことは納得できぬですね、それが正論の理由として。恐らく労働者の皆さんも十年間の運用の中でこうなってきたというその問題については理解できない。  ここでその点についてやりとりをしておれば恐らく平行線をたどるので、私、この後たくさんの質問をしなければなりませんので、そういう意味からこの法案の欠陥、あるいはまた考え方が基本的に間違っているということをここで強く強調しておきたいと思います。  それで、同じような問題として、旧失業保険法就職支度金というものが、十年前に雇用保険に切りかえたときにそれがなくなった。しかし今回また再就職手当というものを創設をして、先ほど言った十年前になくした就職支度金の復活をここへまた持ち込んでいる。何かこれも首尾一貫せぬ中身だと思うんですが、これはどういうことなんですか。
  13. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 先ほどの先生の御指摘にちょっと触れておきますと、確かに高齢者方々が急速に相当高齢になるまで就労したい、何らの職につきたい、こういう方が、この高齢化予想以上の進展の中で、そういう高齢者方々就労希望者というのがまたどんどんふえている、こういうような形というものが予想以上に大きかったというような問題も率直に申しまして一つあるわけでございます。また、ただいまのお尋ねの、この再就職手当創設いたしました関係につきましては、これは雇用保険部会の報告においても指摘をされておるわけでございますが、現行制度において受給者の再就職意欲を喚起するための援助制度がない。このことが、給付額が比較的高いこととも相まって、受給者は再就職機会があってもすぐに就職しないで、給付を受け続けた方が有利であるような状況が醸し出されている。いたずらに受給者滞留傾向が助長されている。こういうような指摘も受けておるわけでございます。  そういうようなことで、今先生指摘ございましたように、この雇用保険法改正をいたします以前におきましてございました再就職手当制度問題点、こういうようなものも十分反省をしながら、ここでそういう点についての是正をしながら、新たに、所定給付日数の二分の一以上の支給日数を残して安定した職業についた方に対して、この所定給付日数及び支給残日数区分に応じて再就職手当を支給しよう。そしてまた、これが前回ございましたときに乱用された点を是正するために、三年以内にそういうものを受けた人はこれはもう対象になりませんよと、こういうような一応のチェックなども効かせながら、これを復活させることによりまして再就職促進というものを図る一つの強力な手段にしていきたいということで、この制度を御提案を申し上げているわけでございます。
  14. 本岡昭次

    本岡昭次君 先ほどの私の意見に対して、予想以上に高齢化が進んだからだとおっしゃいましたね。しかし、高齢化が進んだことに対する対応にしては、余りにも高齢者に対しての扱いが冷た過ぎた、問題があった、高齢者差別だということが私はある意味社会問題になったと思うんです。  それで、野党が衆議院段階高齢者に対する修正というものを求め、政府の側も部分的に高齢者の部分の修正に応じられましたが、高齢化社会対応するならば、本来はもっと高齢者に対して手厚くどうするかというその問題の視点があるべきであろうと思うんですが、理屈は今おっしゃったように、予想以上の高齢化というものを正面に押し出しながら、実態は非常に高齢者を冷遇するという、どういうんですか、一貫せぬ中身があるんです。それはやはりまず財政ありきと、財政上の問題が先行するからそういうことになったんだろうと思います。  そこで、今あった話なんですが、再就職手当創設の問題で、今三年間というふうに給付制限期間延長して二分の一の問題とか、いろいろおっしゃっていましたが、今回の法改正の中で、給付制限期間延長ということもその中に大きな問題点としてあります。「被保険者自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇され、又は正当な理由がなく自己都合によって退職した場合の給付制限期間」を延長をしておるんですが、「一箇月以上三箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間」としておりますが、この制限期間具体的運用基準、こうしたものについて明らかにできるものはひとつこの場で明らかにしていただきたいと思います。
  15. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 今回の改正によりまして、正当の理由のない自己都合退職者などにつきまして、この雇用保険制度乱用の防止の観点、あるいはまた離職を決意する際の慎重な判断を期待したい、あるいはまた離職後の再就職意欲を喚起したい。こういうような見地から、改正後は三カ月間の給付制限を行う方針でおるわけでございます。  この基準につきましては、従来から労働大臣中央職業安定審議会意見を聞いて定めまして、その基準によりまして全国一律に行っておるものでございますが、これは最近の労働者生活実態、あるいは経済社会変化のもとで、やはり従来の考え方を再検討する必要のあるケースもいろいろ出てきておう、こういうふうに考えておるわけでございます。そういう意味におきまして、この給付制限判断基準につきましては衆議院での附帯決議趣旨、あるいはまたこの国会での御論議等を踏まえて検討を行いまして、あるいはまた私どもとしては現地レベル実務家いろいろ意見等も聞くというようなことを経まして、中央職業安定審議会に諮った上で基準の見直しを行っていきたい、こんなふうに考えておるわけでございます。  具体的には、例えば現在技術革新が進んでおる中で、新技術への対応がうまくできないということで退職をされるというようなケースがあるわけでございますが、こういう方が、そういう新技術の適応が自分の知識、経験、技能等の面からどうもむずかしいというようなことで退職をされるというような場合なども新しい問題として、こういう退職の場合は正当な理由ありというようなことで扱っていかなければならぬであろう。あるいはまた、単身赴任問題というようなものも新しく出てきておるわけでございまして、例えば本人あるいは配偶者の方が通勤困難な事業所へ転勤とか出向を命じられる、そのために扶養すべき同居の親族とかあるいは配偶者と別居を余儀なくされるというようなことによりまして退職をする。こういうような場合などにつきましては、今後、正当な理由ありというような形で範囲を広げていく、こういうようなことなどにつきまして、中職審において御検討を賜っていきたい、こんなふうなことを考えておるわけでございます。
  16. 本岡昭次

    本岡昭次君 産業構造変化に伴って就業構造も変化をしてくるわけで、それに伴って従来の考えを抜本的に再検討せにゃいかぬということを私も思います。今局長が二、三、例を述べられましたが、そういうようなことを軸にしていろんな場合を、ひとつ労働者意見ももっとどんどん聞いて、職場実態というものを徹底的に調査をして、その上で、範囲を広げれば広げるほど個別に不公平が起こってくるということも出てきますので、より多くの実態、事実というものをくみ上げる調査をやって、ひとつよりよい判断をしていただきたいということを特に要望をいたしておきます。  それで、今のことと関連をしまして、再就職手当の問題なんですが、再就職手当の支給対象者というものがこの三カ月間の給付制限期間ということとかかわって、一体どういうふうに考えればいいのかという問題なんですね。私、ちょっとよくわからないんですが、この制限期間内に再就職をしてもこれは再就職手当はもらえないということになるんですね、今では。だけれども、先ほどの局長給付制限期間延長理由の中に、乱用防止とか、あるいは再就職の意欲を喚起するというふうなこともおっしゃったわけなんですが、再就職の意欲を喚起されて、それでは二カ月とか一カ月でもって就職をしていっても、給付の受けるべき日数の二分の一を余したとか余さぬとかという条件が全然出てこないわけです、もらえないんですからね。しかし、先ほどおっしゃったように、退職就職の問題も、例えば単身赴任ということはよくないということで、とにかく家族そろってというふうなことになった場合に、こちらで扶養家族になるべき人が勤めて働いておって、共働きをしておって、だんなはそれは会社に勤めれば延長するけれども、やめてまた新しい赴任の地に行って、そこで働くというときに、三カ月以内に働くということだってあるし、いろいろ先ほどおっしゃったような給付制限の問題とかかわって、再就職の問題もいろいろな新しい条項が出てくるんではないかと私思うんですよ。三カ月まで延長したんですから。今までだったら一カ月だったんですよね。三カ月まで延長したんだから、ここの問題についても、再就職手当の支給対象という問題についてももっと柔軟な考え方に立って、先ほど言われたような問題を検討して、三カ月以内であっても支給するというふうなことの中身をつくっていくべきでないかと思うんですが、いかがですか。
  17. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 御指摘の再就職手当の支給要件につきましては、国会での御議論を踏まえ、あるいはまた職安審議会にも諮りまして今後具体的に決めていく、こういうことになるわけでございますが、今お話しの三カ月の給付制限期間中に就職した場合に再就職手当を支給していくという点につきまして、私どもとしては、少なくとも安定所の紹介によって就職した場合には、そういうまだ支給が始まってない人についてもこれは再就職手当を支給していくと、こういうことを考えておるわけでございます。  ただ問題は、例えば既に再就職先を決めておって、そしてそこへ行かれる途中で、要するに再就職手当をもらうためだけに保険の手続きされる、こういうようなケースもこれは考え得るわけでございまして、そういったような形での乱給というものもうまくチェックできるというような、そういった仕組みといいますか、そういったものが何かうまくあれば、我々の方ももう少しいろいろ幅広く考えてもいいと思うわけですが、その辺のところをうまくクリアできるかどうか、こういうような技術的な問題がいろいろかかわっておるということもございまして、そういう意味で、おっしゃる御趣旨は私どもも乱給にならないように、しかもまたそれが再就職促進につながるようにというような観点から、具体的な仕組みについても検討をさしていただきたいと思っております。
  18. 本岡昭次

    本岡昭次君 ぜひそれは具体的に検討して、一カ月を三カ月に延ばしたということによって起こる労働者の不利益というものをできるだけ除外するようにやっていただきたいと思います。  それでは、今の問題に関連して、船員保険にかかわって、運輸省に若干お伺いをします。  今回のこの改正案で、船員保険失業部門について保険料率を千分の五引き上げるほか、特別失業保険料を徴収することとしているなどの措置が盛り込まれていますのに、所定給付日数は押しなべて雇用保険よりも低くなっています。このような改正案背景として、何ですか、陸上労働者なりも海上労働者の方が失業情勢がよいというふうな判断があるからこういうことになっているのかということをお聞きしたいんです。  さらにまた、それでは最近陸上労働者、海上労働者失業率と求人倍率というふうなものがどのようになっているのかということを参考までにお聞かせをいただきたいと思います。
  19. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) 運輸省といたしましては、全国六十一カ所に船員の職業安定所あるいは安定業務を担当する箇所を置いておりまして、求人の受け付けあるいは求職の受け付けを行いましてあっせんを行っておるということでございますが、それによります統計で申し上げたいと思います。  五十八年の月平均の月間有効求人数でございますけれども、これが八千百六十七名でございます。同じく月間の有効求職数でございますが、これが一万一千百七十六名ということでございまして、有効求人倍率が〇・七三という状況でございます。これは五十六年、五十七年、五十八年三カ年間を見てまいりますと、五十六年が〇・九五、五十七年が〇・八四、それから五十八年が先ほど申し上げましたように〇・七三ということでございまして、厳しさが一層加わってきておるという状況でございます。
  20. 本岡昭次

    本岡昭次君 それで、先ほど言いましたその判断というのはどうなんですか。雇用保険と船員保険関係について保険料率を上げ、そして給付日数というようなものが全体で低くなっているということと、今の雇用情勢がだんだん悪くなっているという問題はどういうふうに考えますか。
  21. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) 船員保険の問題につきましては厚生省及び社会保険庁の御担当でございますので、私どもはそれにつきましてコメントするような立場でございません。
  22. 本岡昭次

    本岡昭次君 中身はコメントできぬまでも、どんどんと求人倍率から見ても悪くなっている問題、これはしっかり底支えをせなんだら、一方で雇用保険よりも中身が悪くなっていくということではこれはとてももたぬと思うんですよね。あなたがそう言うんなら、またこれは改めて厚生省のところで、別の問題で論議いたします。  それでは次に特別被保険者の問題について質問をいたします。これは衆議院において修正されたその中身の問題に関連した点であります。  六十五歳以降に採用される者は、政令で定める日までに公共職業安定所長の認可を受けたときは高年齢継続被保険者となることができるということになりました。この場合の「政令で定める日まで」とは何年ぐらいを考えているのか。また、それは場合によっては延長もあり得るのか。さらに、職安所長の認可の条件を今具体的に示せるものなら示していただきたいと思うんですが、いかがですか。
  23. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) このたびの六十五歳以上の方の任意加入の関係修正の問題につきましては、激変緩和の暫定措置である、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、この問題につきましての与野党のいろいろのお話し合いの経過、あるいはまた修正趣旨等を考えますれば、私どもとしては三年間程度が適当ではないかと考えておるわけでございますが、具体的には、国会の御審議の経過あるいはまた中央職業安定審議会意見を伺った上で定めることになる、こういうものと考えております。  また、安定所長の認可の関係でございますが、これはまたやはり職安審議会の御意見を伺った上決めるということになるわけでございますが、この任意加入制度が設けられました経過にかんがみまして、例えばごく短期間離職することがあらかじめ明らかである、こういうような場合につきましてはこれは認可の条件には該当しないというようなことを検討しておるわけでございまして、この場合の雇用期間というものについては、少なくとも受給資格を満たすことのできる程度のものでなければおかしいだろう、こんなことを考えておるわけでございます。
  24. 本岡昭次

    本岡昭次君 この継続被保険者失業した場合には、基本手当の五十日分が高年齢求職者給付金として支給されていくということになっていますが、これは保険料は免除しないで保険料を掛けているわけで、一般の被保険者と全く同様の条件にあると思うんですね。とすれば、これは常識的には基本手当を支給すべきだとこう思うんですが五十日というふうに制限をされている。どうも私たちはこれはわからぬわけで、この点、なぜこの基本手当の五十日分というふうに限定をしてしまったのかという点についてひとつお伺いしておきたい。
  25. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この点につきましては、衆議院におきます与野党合意の修正によりまして、こういう任意加入制度というものを認めるかどうかといういろいろ御論議の中で、これについては基本手当の五十日分の支給、こういうことで修正が行われたというものでございまして、この点につきましては、任意加入の人たちに対する給付金というものが被保険者であった期間の長短というものにかかわりなく一律に支給されるというものであることにかんがみますれば、基本手当の五十日分というのは妥当なものではないか、こういうふうに私どもも考えておるわけでございます。  また、この給付金と、今度は保険料を取られるではないかということとの関係でございますが、政府原案におきます高齢者給付金におきましても、これは保険料が免除されます六十四歳以上までの間はずっと掛け続けてきておる人もいろいろあるわけでございまして、これは保険料を免除されたから一時金とか免除されないからどうとかいう保険料免除との関係は直接関係のないものであると、こういうことでございまして、あくまでこの六十五歳以上の方について一時金ということにいたしておりますのは、こういう高齢者の方の離職後の求職態様といいますか、そういった実態に着目してこういう一時金制というものを政府原案においても六十五歳以上の方について御提案をしておる、それとの関係でこうなっておるという理解をいたしております。
  26. 本岡昭次

    本岡昭次君 どうも納得できませんが、次へ行きます。  衆議院修正によってもう一つ、個別延長給付の問題が出てきております。所定給付日数が減少する者のうち一定の者について改正前の所定給付日数まで給付日数延長するということになりましたね。この場合、この個別延長給付対象となった受給者が、特定不況業種・特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法上の特定不況業種離職者ということである場合、この法律によって受け得る個別延長給付が現行、制度的にありますが、この適用を受ける場合に、二重に延長をすることになるからということで、この新しい法律の適用によって今まで九十日延長をされておったものが不利に取り扱われるのではないかという懸念を示す人もあるんですが、この点はそうしたことは絶対ありませんね。その点を確認をさしていただきたい。
  27. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 私どもの理解としては、この個別延長給付が行われまして、特定不況業種離職者、特定不況地域離職者等につきましてはこれまでと同じ期間給付が受けられるというところまで戻りまして、そうしてその上に一般的にございます個別延長給付というものがくっついていくと、こういうことで考えておるものでございます。
  28. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、次に雇用対策問題について入ってまいります。  第五次雇用対策基本計画に関連する問題に入る前に、若干港湾労働法にかかわる具体的な問題を二、三質問をいたします。  まず、港湾労働法の付加金の問題なんですが、昭和五十四年に、港湾労働法を一部改正して、雇用調整手当と雇用保険を組み合わせる措置をする際に、労働省、それから日港協、全港湾の三者で、「月十四日以上の就労が確保される体制が確立されるよう努力すること。」というものを確認しているその文書を私も資料として持っておりますが、この月十四日就労保障体制が、今後ともこれが維持されていくよう現在どのように指導をされているか。また、これからそれを維持していくための対応をどのようにしようとしておられるか。この点についてお伺いをしておきます。
  29. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 登録日雇港湾労働者の月間十四日以上の就労確保の問題につきましては、昭和五十七年の中央職業安定審議会の港湾労働部会におきまして、関係労使の話し合い等も参酌いたしまして、この審議経過を踏まえまして登録制度運営改善、例えば登録の制度の問題、あるいは適正な定数の設定の問題等を行うこととしたわけでございまして、この審議経過を踏まえましてその実施に努めてきているところでございます。  なお、具体的な十四日就労の問題につきましては、労使間における協定等で行われているところでございますが、労使間の話し合いが円滑に進みますよう、この審議経過等につきまして関係者に理解を求めるよう、さらに努力をしていきたいというふうに考えております。
  30. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、その労使の話し合いの結果を見てということでなくて、労働省としてどういう努力なり、労使の話し合いがうまくいくようにどういう指導をされているんですかということを尋ねているんですよ。労働省としてどうかと。ここにあるこの文書ですか、この問題について労使が話し合いしているのを見守っていくということでは困るんじゃないですか。もう一度言ってください、労働省としてどうかと。
  31. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 十四日就労の問題につきましては、例えば、最近におきまして職種間にかなりのアンバランスがございまして、一方において十四日以上就労できておるのに対して、一方の職種においては十四日就労が必ずしも実現していないというようなこと等もございますので、職種間で融通し合いながら、できるだけ十四日就労に努めていくというような紹介面における努力をしておるところでございますし、さらに、最近の輸送革新に伴いまして技能を要するような需要が出てきておりますので、現在の登録日雇港湾労働者の中でそういう新しい需要にマッチできるような教育訓練等につきましても、労働省としてもできるだけ進めていくということで努力をしているところでございます。
  32. 本岡昭次

    本岡昭次君 どうも余りすっきりした答弁じゃないんですが、次の問題にちょっと入っていきます。  この月十四日就労保障体制を維持していくために、やはり港労法付加金を引き上げるということが非常に重要な問題になると私考えます。そこで、五十五年十月の料金改定の際に、トン当たり平均三円から一円五十銭に引き下げたという経緯がありますが、これを三円に戻すという問題については労働省どういうお考えを持っていますか。
  33. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) お話しのように、港労法付加金は、港湾運送料金体系の中で運輸省が認可しているものではございますけれども、この港労法付加金が港湾労働法の雇用調整手当に必要な経費の一部の財源をユーザーに求めているという趣旨でもございますし、労働省としてもこの料金については重大な関心を持っているところでございますが、さらにこの趣旨にかんがみまして、雇用調整手当あるいは港湾運送事業主が行います各種の港湾労働対策に要する経費の動向等も十分配慮しながら、必要な場合には所管省に対しまして港湾労働対策の面から意見を申し上げていくということを考えているところでございます。
  34. 本岡昭次

    本岡昭次君 私の聞くところによりますと、五十五年の料金改定の際、三円から一円五十銭というふうに五〇%切り下げられたというこの経緯について労働組合側は全く知らなかった。そのことで労働省に対していろいろ物を言うと、労働省の方も知らされていなかった。ということになれば、これは運輸省が一方的にそういうことをやった。もちろんトン当たりの付加金ですから、それが切り下がることによっての影響はいろいろ大きいと思うんですが、しかし、港湾労働者の問題にかかわる付加金である以上、やはりこれは労働組合なりそれの責任を持つ労働省に当然これは知らされるべきだと、こう思うんですが、こういう経過を見るときに、労働省立場が何か非常に弱いんではないかという気がして仕方がないんです。  やはり港湾労働法というものがあって、そこで港湾に働く日雇いの関係の港湾労働者がこれによって保護されているという立場がいろいろあるわけですから、労働省としてもこの問題をもっと真剣にとらえて付加金の問題についてかかわっていくべきではないかと思うんですが、いかがですか。
  35. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) ただいま御指摘のように、この付加金の性格等から見まして、港湾労働対策上重要な制度でございますので、私どももこの付加金問題につきましてどのように運営がなされていくか、非常に重要な問題だと考えておりますので、関係業界等に対しましても、この付加金の運用につきましても十分な指導が行われますように努力してまいりたいというふうに考えております。
  36. 本岡昭次

    本岡昭次君 指導じゃなくて、私が言いたいのはこれの引き上げという問題について、労働省側が検討してはいかがですかということを尋ねているんです、この付加金の。
  37. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 先ほど申し上げましたので繰り返しになりますけれども、運輸省の認可にかかわる制度ではございますけれども労働省といたしましても、港湾労働対策上必要な問題等観点から、運輸省等にも意見を申し上げていくことを考えております。
  38. 本岡昭次

    本岡昭次君 大臣、今の審議官の答弁をひとつよく理解をしていただいて、側面的な協力をお願いしたいと思います。  それで、今私が言いましたように、この港労法付加金の運用について労働組合がかかわることができていないというふうなことも聞きますので、労働組合の代表も含めた民主的な運営、こうしたものを港労法の付加金の運用についてやっていくべきではないかと思うんですが、これはいかがですか。
  39. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) この港労法付加金が、港湾運送事業主負担しております雇用調整手当の財源となります納付金の一部をユーザーに負担していただいているという性格のものでございますので、この付加金の直接的な管理運営に労働組合が参加されるということには無理があるのではないかというふうに考えておるところでございます。  しかしながら、労働省といたしましても、関係労働組合の意見も十分参酌しながら、この運用のあり方につきましては、業界に対して指導していくという方針で対処してまいりたいと考えております。
  40. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは次に、新規登録の問題についてお伺いをします。  登録日雇港湾労働者の新陳代謝について、五十四年の港湾労働法の一部を改正する法律案に対する附帯決議の中にもそれが出ております。五十七年の二月四日に出された「日雇港湾労働者の登録制度に係る運営改善について」にも具体的に実施することが明らかにされておりますが、しかし、私の知るところでは、こうした通達が出された後二百人以上がやめていく。それに対して、新陳代謝と言いながら三十二人しか新規に登録日雇港湾労働者として登録されていないというふうなことでは、これは新陳代謝が全然行われていないわけなんですね。横浜、名古屋、神戸、こうしたところについては、早急にこの新規登録が必要だというふうに思います。  特に名古屋では、十六条求人について行政はもっと慎重にすべきだという勧告を地区審が行っておって、そして新規登録を促しています。昨年はこの関連に二十名の定数枠が確保されたけれども登録が実施がされていないということがあります。今年度は十名にして、新規登録は必ず実施することで一方で組合側でもこの新陳代謝を認めてきておるんですが、しかし、この地区審の会長が事務局に新規登録を行うよう勧告しても、いまだにこの新規登録というものが実施されないということで、言ってみれば、この五十四年の港湾労働法の一部を改正する法律案に対する附帯決議とか労働省の通達とかいうふうなものが、現場では全然実施されていない。新規登録問題について附帯決議なり通達が尊重されていない、こういう状況。あるいは、地区審の会長がこうした問題についていろいろ言ってもそれも実行されない、全体としてこういう状態にあるようでございます。  これは労働省としてもひとつ実態調査等をやって、こうした附帯決議なり通達が完全に実行されるようにやる必要があると思うんですが、いかがですか。
  41. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 五十四年の港労法の改正の際に、登録日雇港湾労働者の円滑な新陳代謝を図っていくという御決議の趣旨にもかんがみまして、この港湾労働者の新規登録につきましては、中央職業安定審議会の港湾労働部会の審議経過を踏まえまして新規登録に関する運用基準を定めまして、それに沿いまして、各港湾ごとに設けられております各地区職業安定審議会での審議を踏まえまして、昭和五十七年の後半に新しい運用基準を定めまして、それに基づいて新規登録を行ってきているというところでございまして、最近の新規登録者数を申し上げますと、五十七年度が十六人、五十八年度二十六人という数字になっております。  私どもといたしましては、登録日雇労働者の新規登録に当たっては、先ほど申し上げましたように、月間の就労がおおむね十四日をめどとして定数を定めていくということ等との絡みもございまして新規登録を行っていくということでございますが、その新規登録につきましての一定の基準、十四日就労と同時に、最近の必要とする職種に沿ってそれだけの能力等が実際にある人たちが登録されるかどうか、そういったような問題等もございますし、実際に定数と実数とが五%以上乖離した場合には新規登録をしていくということにはいたしておりますが、私どもとしては、できるだけ適格者が新規登録されるように努めていきたいというふうに考えておりまして、現に横浜港におきましては、新規登録を予定しつつ数回の募集等をやっているわけでございますが、まだ残念ながらそこまでには至っていないという現状でございますので、今後適格者の新規登録が実現しますように、さらに各地区におきます努力を続けていきたいというふうに考えております。
  42. 本岡昭次

    本岡昭次君 ひとつ行政としての責任を果たしていただきたいと思います。  附帯決議というふうなものの中に盛り込まれた事柄は、国民にとってみれば、また対象となる港湾労働者にしてみれば、これは国が責任を持ってやってくれることだと、こういうふうに理解するのが当然なんです。それが実施されないということになれば、これは国会の権威の問題、信用の問題にもかかわると思いますので、ひとつ労働省、全力を挙げてこの問題を実行に移していただきたい。  それから、この問題と裏腹に、結局やみ雇用というものが発生をするわけですね。大阪港の小林組あるいは横浜港での年間延べ約六万人のやみ雇用、名古屋、神戸港のやみ雇用という問題が出てきております。私は神戸の出身なんですが、全港湾労働組合の出しておりますこの資料の「神戸港」というところを見ますと、ここに神戸港労働公共職業安定所が「港湾労働法違反行為の状況」ということで報告をされてありまして、ずっと読んでみますと、同じようなことが次々といろんな業者によって行われているんです。その結果として行政措置の内容を見ると、改善勧告を口頭でやる。あるいは改善報告の書類を提出させる。あるいはてんまつ書、始末書、ずっと行政措置がそれぞれにおいてなされております。これはこれでいいんですが、やってもやってもこれ繰り返しずっと出てくるわけで、悪質な業者について、やはりもっと強力な態度でやみ雇用を摘発し、そしてそれを告発をしていく、こういう一歩進んだ労働行政というものがなければ、先ほどの新規登録の問題が解決しないし、一方ではやみ雇用というものがいつまでたってもなくならないと思うんですが、その点についていかがですか。
  43. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 御指摘のように、いわゆるやみ雇用の問題が絶滅されていないということはまことに遺憾でございまして、港労法の適切な運用を図る上におきましても、これらのやみ雇用をできるだけ少なくするために、さらに努力をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  既に五十七年度からはこのやみ雇用の摘発のために、海運局、労働基準局とも連携いたしまして、摘発体制についての強化を図ったところでございます。最近におきましては、特に地域ぐるみで雇用秩序維持のための運動が行われておりまして、例えば大阪港におきましては、正規の登録であるかどうかということを区別するためにワッペン運動などが展開されているところでございますので、今後とも運輸省等の関係機関とも連携を強化しながら、港湾労働法の遵守に向けましてさらに地域ぐるみの運動の促進に努めていきたいと考えております。  なお、御指摘の告発の点につきましても、私どもは五十七年の運用改善通達におきましても、過去に違法雇用が発見され、是正のための指導を受けていながら、重ねて違法雇用を繰り返すといった悪質な事例が発見された場合には、告発を行うなど断固たる措置をとること等の措置を通達しているところでございますので、事態の特に悪質なものにつきましては告発も辞さないという態度で今後とも臨んでいきたいと思っております。
  44. 本岡昭次

    本岡昭次君 今の答弁どおり、関係官庁との連携を密にして、悪質な業者の告発を含めながら、やはり徹底したやみ雇用の摘発をやっていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  最後に、労働大臣にお伺いをいたします。  昨日の本会議でも、労働大臣からILO百三十七号条約の批准の問題について答弁をいただきました。これは港湾労働条約の批准についてでありますが、これがなぜ批准ができないのかという問題なんです。きのうの大臣の本会議における答弁を聞いている限りでは、何か労使間でこの問題について一致をしていないので労使間の一致点を見出すように努力をしなければならぬというふうなことをおっしゃっておりましたが、法制度の上では批准をするについて何ら特段の問題があるような答弁もなかったんですが、大臣どうですか。先ほどから私がいろいろ論議している港湾労働者の問題を解決していくためにも、この際、このILO百二十七号港湾条約というものを早急に批准する、そのための対応を進めていただきたいと思うんですが、いかがですか。
  45. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 関係者の理解が一致してないという現実の場で担当しておりますので、事前にちょっと御説明申し上げたいと思います。  例えば、ILO百三十七号条約におきましては、港湾労働者の定義あるいは港湾労働の範囲等が国内法令、慣行によって定めるということが書いてございますが、私ども、現在の港湾労働法におきましては、国内経済上あるいは港湾労働の確保の観点から、六大港について適用するということで実施いたしておりますけれども、これらの点につきまして、さらに適用港湾の拡大を御要望になっている御主張があること、あるいは、雇用の安定、収入の安定等につきましても、雇用調整手当の制度を現在の港労法において設けておりますけれども、この雇用調整手当のあり方について、関係労使の間で、求めていらっしゃるレベル等についての懸隔がかなりあるという実情にございます。あるいは登録制度が同じくILO条約においても記述されておりますけれども、これも国内法令、慣行に基づいて行うということではございますが、この点につきまして港湾労働法におきましては、常用労働者につきましては届け出制度、日雇い労働者につきましては登録制ということで必要な港湾労働者の確保等が図られるという現在の法体系になっておりますけれども、これにつきましても、さらに広い範囲にわたっての登録制度を考えたらいかがかというような御主張等も労働側からもございますし、そういった点で、この条約についての理解につきまして必ずしもまだ一致を見ているという状況でないというのが率直な現実でございます。
  46. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 大局的見地から見れば、ILO百二十七号条約の批准に向けて努力をするということは私は賛成なんです。ただ、細部の点につきまして今政府委員から申し上げたようないろいろの問題点が残されておるので、その問題をひとつ詰めていって、できるだけ批准に向けて近づけていきたい。ただ、現時点で直ちに批准するにはいろいろの問題点も残っておるので、それをできるだけクリアした上で、そしてできる限り速やかに批准に向けて進んでいきたい、こういうのが基本方針です。
  47. 本岡昭次

    本岡昭次君 これで港湾労働法の問題については終わりたいんですが、労働大臣、先ほど審議官と具体的な問題を通しながら港湾労働者雇用にかかわる問題を論議いたしました。審議官の方も前向きな発言も幾つかしていただいたわけですが、最後にひとつ労働大臣としての感想を聞かしていただいて次の問題に進みたいと思います。
  48. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 関係各省の調整もございましょうが、できるだけ積極的にそういう連絡調整も進めながら、法の趣旨に向かって断固たる措置をとるべきところはとって、そして、ただいまおっしゃったような大方の御趣旨に対しておこたえをしていきたい、こう思っております。
  49. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは第五次雇用対策基本計画関係する問題について質問さしていただきます。  この第五次雇用対策基本計画ではいろんなことが述べられておりますが、その中で労働力需給のミスマッチの解消が重要課題とされております。そこで、労働力供給の側たる労働者と労働力需要の側たる企業の両方においてどのようなミスマッチの原因が存在をしているのか。また、それについて労働省としてどのような対応策をとろうとしておるのか。説明をいただきたいと思います。
  50. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この労働力の需給のミスマッチと申しますのは、いわば求人と求職がうまくかみ合わない、あるいはまた、かみ合うまでの摩擦というものを指しておるわけでございますが、これから高齢化の進展、あるいは女子職場進出、あるいは産業構造の転換、第三次産業の拡大、あるいはまた雇用形態の多様化、こういうようなものが進展していきます中で、このミスマッチの幅が、年齢、例えば求人の方は若い人を求人しておるが求職者の方は中高年齢者ということで、量的には一致しておってもそこがうまくかみ合わない。あるいはまた、産業におきましても、求人の方はサービス業関係、ところが求職者の方は製造業を希望する、こういうような、ミスマッチ。あるいはまた、職業間といいますか、求人の方はコンピューターの関係の仕事ができる人、こう言っておりますが求職者の方は一般事務を希望しておる、こういうような形のミスマッチ。あるいはまた、地域の問題で申しますと、求人は例えば京阪神地区等で求人がある、求職者は北海道、東北等で就職したい。こういうような年齢間、産業間、職業間あるいは地域間というもので求人と求職の量が均衡した状態にありましても内容的になかなかかみ合わない、こういうような形での失業が増大する可能性がある、こういう点を大きな問題としておるわけでございます。  第五次雇用対策基本計画におきましては、このために一つにはこういう技術革新の進展なり産業構造の転換に対しまして総合的かつ積極的な対応を進めていかなければならぬ。あるいはまた、高齢化の急速な進展に対しては高年齢者の活力を高めながら雇用の安定を図っていかなければならぬ。あるいはまた、サービス経済化の進展に対応いたしましては雇用面からの対策も総合的に進めまして雇用の安定的な拡大を図らなければならぬ。そしてさらにはこういう中長期にわたる今後の労働市場の構造変化というものに対応して、労働力需給の円滑な調整を図るための需給システムというものの強化拡充というものを図っていかなきゃならぬと、こういうことを基本方針としておるわけでございます。  そういうような計画の基本方向に沿いまして、私どもとしては安定所における紹介機能というものを飛躍的に高めていきたいということの具体的な努力を今後していかなきゃならぬ。あるいはまた、こういう雇用援護措置などを積極的に活用いたしまして、このミスマッチの解消に努めていくというようなことも考えておりますし、あるいはまた、職業関係の求人求職情報、これを広い範囲にわたって即時に的確にこれが安定所の窓口等において利用されるというようなことができるように、総合的雇用情報システムというものの開発を六十一年度実施を目指して進めていくというようなことで今取り組んでおる。あるいはまた、今後の高齢者の問題に関しましては、定年延長の問題あるいはまた六十歳台前半層の多様な就業ニーズに応じた雇用就業機会の確保、こういうような対策を今後積極的に講じまして、こういうミスマッチの解消に努めていかなければならぬ、こんなことで取り組みをしておるところでございます。
  51. 本岡昭次

    本岡昭次君 今出された中の、総合的雇用情報システムという問題も述べられました。そのミスマッチを解決していくために公共職業安定所の機能ではどうにもならぬと、私もこれは思います。それで、その点についていろいろお尋ねしたいことがあるんですが、一点だけに絞ってお伺いをいたします。  職業安定法第十一条は、市町村長の公共職業安定所に対する協力事務について規定をしておりますが、この十一条に関連させて、先ほども局長が述べられた総合的雇用情報システムの問題に関連をさせて何かいい方法はないかという問題なんです。市役所あるいは町村役場に求人求職データを見られるコンピューターの端末を設置して、そして職業紹介の業務を行えるようなシステムですね。公共職業安定所の機能というのは二〇%程度と言われておりますし、さらにこれ合理的効率的な公共職業安定所の再配置を図るというようなことも出てきているわけで、とてもじゃないが総合的な雇用情報システムの機能を持ち得ると考えられない。したがって、今言っているように市町村の協力を得て、職業紹介、そして雇用情報というものがそこを通して市民、町民、村民にわかるようにというふうなことを研究をしてこれを実行に移したらどうか、こう思うんですが、この点はいかがですか。
  52. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) ただいま申し上げましたこの総合的雇用情報システムの期待しておりますものは、公共職業安定所が需給調整機能の中核として職業紹介サービスというものを高めていくということ、そしてまた、関係します雇用職業に関する情報提供サービスの向上を図る、こういうようなことで、全国の安定所の求人と求職のデータをコンピューターに蓄積整理して、この結合のための促進を図る、こういうことで進めておるものでございます。  そういう意味におきまして、職業紹介というものを直接行わない市町村に、こういう職業紹介機能を強化することを目的とする総合雇用情報システムのコンピューターの端末装置を設置するということについては、なじみにくい面もあるわけでございますが、しかし、今後とも安定所と市町村との連携強化ということは非常に大切なことでございますので、そういう意味におきまして、市町村を通じて効果的な雇用職業情報というものを提供していくという方法につきましては、私どももぜひ何とかうまく提供をする形がないのか、さらに検討を進めていきたい、こう考えるわけでございます。
  53. 本岡昭次

    本岡昭次君 それは今局長が述べられましたように、市町村の機能なり任務なりという、そういうところだけにこだわっておれば、あなたのおっしゃったミスマッチなんていうものはますますこれは拡大をしていく、このように思うんですね。その結果として六十五年に完全失業率の水準を二%程度にするんだ、これを目安として雇用対策を進めていくんだというふうに決めたこの第五次雇用対策基本計画、そうしたものが本当に具体性を持つのかということに私たちは疑問を抱くんです。  それでは、この完全失業率の目標、二%程度を目安にする、言うならばどういう積算根拠でもってこうした目標を今立てたのかという問題についても触れていただきたいと思います。
  54. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この第五次雇用対策基本計画は、完全雇用の達成ということを課題といたしておるわけでございます。この完全雇用につきましては、総量として労働力の需要と供給が均衡いたしまして、需要不足ということによる失業がない状態、こういうことに理解するのが一般的であると思うわけでございますが、しかし、そういう需要不足による失業がない状態、数字的にはそうなりましても、現実には摩擦的要因による一定の失業というものは常に存在をしておるわけでございます。今後の労働力需給につきましては、高 齢化の進展等々のいろんな構造的な変化が進む、そしてまた、それに関連いたしまして雇用形態の多様化等が一層進展するという意味におきまして、先ほども申し上げましたような労働力の需給のミスマッチの幅が、年齢間あるいは産業間、職業間、地域間等々で拡大していく。そして摩擦的要因等による失業も増大していく可能性があるわけでございます。  第五次雇用対策基本計画で二%程度という目標として掲げております失業率は、こうした点を踏まえまして、今後適切な経済運営を進めて、総量としての雇用の需要を確保していく、そういうことによりまして需要不足による失業を解消をしていくとともに、一方構造変化対応した雇用対策を進めて労働力需給のミスマッチによる失業の増大を防止する、こういうことによって達成しようと、こういう失業率の水準を二%ということで言っておるわけでございまして、その積算といたしましては、労働力の供給を十五歳以上人口と労働力率の見通しによりまして推計をいたしまして、この労働力需要が「一九八〇年代経済社会の展望と指針」という同じく昨年に策定されましたものによります四%程度経済成長見通し、こういうものを前提として推計して失業率を求める。そして、この失業率とそれから欠員率、そこに人が欲しいという欠員率、こういうものを用いまして、総量として需要と供給がバランスをしている。失業と欠員というものが等しい、こういう場合の失業率というものを推計するということをいたしまして二%程度というものを出しておるわけでございます。
  55. 本岡昭次

    本岡昭次君 これは、労働省責任あるいは労働大臣責任が非常に重要になってまいりますね。消極的な労働行政ではとても対応できないということになってまいります。経済全般、社会の諸問題全般にかかわるこの労働行政の積極的なかかわりがなかったら、今の話のようなことはとても私はできないと思う。その問題は私は最後に労働大臣にお伺いをすることにいたしまして、その前に、労働力の需要と供給の関係の問題について、ある一つの問題を取り上げてみたいと思います。  それは、教員養成と教員採用の問題、これは非常にわかりやすいのでお伺いをしたいんですが、文部省のこの資料によりますと、昭和五十四年から五十八年までの五年間、教員免許状の取得者のうち、教員になった人の割合というのは二二、三%なんです。だから免許状を取っても、あるいは教員養成大学を出ても教員になれないという人が相当いるという、これは同職種の中における需要と供給の非常なアンバラであろう、こう思うんです。もちろん教員免許状は一般の大学でも取れますから、免許状所有者がたくさんいるということは私はいいことだと、こうも思います。  そういう前提に立って若干聞くんですが、これから六十五年まで見通したときに、教員免許取得者と教員の就職者の推移というものはどのようになるという見通しを文部省として持っていますか。
  56. 糟谷正彦

    説明員(糟谷正彦君) ただいま先生指摘になりましたように、現在の我が国の教員養成制度というのは開放性の原則に立っておりまして、国立の教員養成を目的としております大学学部で養成をいたしますほかに、私立の一般の大学、短期大学等を出ましても、一定の基準の単位を取りますと免許状を出す、そういうシステムになっております。したがいまして、具体的な数を推計するというのは非常に難しいわけでございまして、一般の大学を出ます場合は免許を取りましてもまたほかのところに就職する、そういうような状況もございまして、そこを計画的に数を具体的に推計はできかねるわけでございますが、今までの傾向でございますと、教員の免許状の取得の状況というのは大体十六万人程度ということでございますので、今後もこういうような状況で推移していくのではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  57. 本岡昭次

    本岡昭次君 一方、教員就業者の割合はどういうことになりますか。
  58. 菴谷利夫

    説明員(菴谷利夫君) 採用につきましては、児童数の増減ということによる定数の増減もございます。そのほかに、退職者の数がどう動くかということによって毎年各県でどのぐらい採用するかという見込みをするわけでございます。  それで、子供の減が今後小中については出てくると思いますが、高校については第二次ベビーブームがございましてふえていくという関係にございます。それから退職者につきましては、たまたま先生年齢構成が、何といいましょうか、きれいな三角形というか、そういう形じゃなくて、五十代の後半の方々の層が非常にふえている。そういう方々がこれから五年、六年かかって退職年齢を迎えますので、これがふえてくる。そういったことを総合的に考えますと、なかなか推計は難しいのでございますが、年によって若干の振れはございますが、従来と比べて、従来といいましても最近のいわゆる児童の急増の極端な時期は別でございますが、四十年代の中ごろとかそういったものと比べてそう違いは出ないだろうという予測をしております。
  59. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、五十八年度に教員として就業した三万四千七百人というここに資料がありますが、大体この程度のものが維持されるということですか。
  60. 菴谷利夫

    説明員(菴谷利夫君) そこら辺は大変難しいのでございますが、三万四千というのはぴたりといくかどうかそれはわかりませんが、若干の減あるいは年によって増は退職との関係もございましてありますが、そう大きな狂いはないのではないか、こう思われます。
  61. 本岡昭次

    本岡昭次君 そこで、四十人学級を含む第五次教職員定数改善というものが一つの法律として成立しながら、今行政改革特別措置法によって凍結をされておりますね。この四十人学級を含む第五次教職員定数改善計画によって増員される教職員というものは何人ですか。
  62. 菴谷利夫

    説明員(菴谷利夫君) 私どもも当初五十四年ころいろいろ推計しました。それは、厚生省の人口問題研究所の当時の予測を一つのベースにしましてやりましたが、その後五年たって新しく推計が出されたということで、そういった動向も考える必要があるということと、今後どういうふうに進めるかということを各県、各市町村からの最近のデータ等をもとにいろいろ考えてみなきゃならないということから、正確なことはなかなか今申し上げられないわけですが、当時のデータで今後六十年から六十六年まで、いわゆる目標期間というものを変えておりませんので、そこでいきますと四万人内外になるのではないか。これはあくまでも推定でございまして、正確なことはちょっと現段階では申し上げられないわけでございます。
  63. 本岡昭次

    本岡昭次君 そこで大臣にお伺いをしておくのですが、問題は、教職員の場合もこれを雇用問題であって、教員免許状を取りながら教員にならないでほかの職種へ入っていく。それはそれでいいと思うのですが、それにしても、現に法律がありながらそれが凍結をされて、そしてこの四万人の雇用の場が一体どうなるかということが具体的に今起ころうとしているのですね。だから私は、この四十人学級という問題、あるいは教職員の定数改善という問題が教育の質の問題で論議をされていくと同時に、大きな雇用問題であるというふうに思っているのです。  だから、労働大臣もこの四十人学級あるいは第五次教職員定数改善という問題も雇用問題として、雇用を増大させる、拡大させるという立場からの内閣における積極的な対応を私は要請をしておきたいと思うのです。現に法律によって、今もあったように、そこに四万人の雇用増という場がありながら、それが今凍結されて実現しないということでありますから、ひとつ労働大臣立場からよろしくお願いしたいと思うんです。いかがですか。
  64. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) この四十人学級の問題は、教職員の定数増の問題、それはもちろん雇用の問題でもございましょうが、同時に教育制度の問題でもございましょうし、それから今全く緊急避難的に行財政再建の面で凍結をせられておるということは、これは残念ながらやむを得ない現実であります。この問題を、これは六十年から凍結解除をしてほしいという論は、今あなたのおっしゃったような定員増の問題、そのほか文教全般にわたってもまだございましょうし、あるいはまた産業政策の面でもありましょうし、また社会保障の面でもございましょうし、これはいろいろな各般にわたって凍結解除の問題は今議論をされております。  これは今ここで私が、よし、これだけはやりましょうと言うわけにはちょっといきませんので、大事な問題であることは重々承知をいたしておりますから、これは政府の中において来年度予算編成の過程において十分注意をし、検討をしていきたい、こう思っております。
  65. 本岡昭次

    本岡昭次君 重要な関心を持ってひとつ対応していただきたいという要望でございます。  それでは、もう時間がありませんので、最後に労働大臣に基本的な問題をお伺いをして終わりたいと思います。  まず、その第一点ですが、今回の雇用保険法の改定が高齢化社会の問題に対応するという一方策であるということが強調をされております。そこで、高齢化問題の中の非常に重要な問題が定年延長の問題であるわけなんです。六十歳定年という問題について、それは少しずつは改善がされ、近づきつつありますけれども、しかし、六十歳定年という問題が実現する過程の中で企業間格差というものがどんどんと増大をして、条件のよいところ、力のあるところは六十歳定年にいくけれども、ないところはさらにその条件が悪くなるということが今起こっております。だから、労働省として労使の自主的な問題、労使間の問題ということでこの問題を見守っていくということでは、ますます今言いました企業間の格差が増大をしていくということになって、同じ労働者でありながら、働く企業によって労働条件が非常に違うといういびつな現象が起こってくると思う。  だから、どうしても必要なのは定年延長の立法化の問題であろうと思います。昭和五十七年の八月三日の雇用審議会答申で「定年延長の立法化問題については、定年延長の今後の進展の動向をみながら、昭和六十年頃の適当な時期に改めて当審議会において検討が行われることが適当であると考える。」というふうな事柄もあり、この際、今から立法化の検討を始めて年内に結論を出して、次の通常国会に法案を提出するぐらいの決意をもって臨むべきではないかということについて、まず第一点、労働大臣にお伺いをします。  二点目でありますが、経済運営に対して労働行政が積極的にかかわらなければ、六十五年に失業率二%というものを目標にしているところの雇用問題についての目標も達成できません。また、ミスマッチというふうな問題が提起されておりますが、その問題も解決しないでしょう。結局労働行政はいつまでたっても裏目裏目、後追い、後始末という状態に追い込まれるので、やはりこの際積極的に経済運営に対してかかわっていかなければならぬという観点に立ってお伺いをいたします。  言ってみれば、経済政策雇用政策とは表裏一体のものであると思います。景気の回復と雇用の動きというのは、これは時間的にずれがあるにしても、景気がよくなれば残業がふえ、新規増員に踏み切るという企業も多くなってくるんで、労働省としても完全雇用実現のために、景気回復、内需拡大を含めた経済政策に対して積極的なかかわりを持たなければならないと考えます。  そこで、これまで公共事業の推進が景気の回復、雇用の拡大、社会資本づくりなどに大きな役割を果たしてきたことは事実であります。ところが、この公共事業については、当初予算ベースで五十五年から五十八年までは四年連続据え置かれて、五十九年度はマイナスシーリングで二%減となり、そのために建設業の倒産の多発など抑制によるひずみが深刻になり、その最後のしわ寄せは労働者が受けている、こういう結果になっております。  こういう状況を見て、建設大臣が五月二十六日、六十年度予算のシーリングについて、建設国債を増発するなどして公共事業の確保に最大限努力したいという旨の御発言をし、また自民党の中でも、マイナスシーリングを再検討して、公共投資の増額を軸とした積極財政中心となってきているように私も見受けます。また、私の所属する社会党においても、こうした問題提起もいろいろな角度から政府に対して行っているところであります。しかし、総理はやはり従来の方針を今のところ変えることを考えていないようで、六月二十六日の参議院の大蔵委員会で、六十年度の予算シーリングについてはマイナス枠を堅持して、従来どおりやっていくんだというふうなことを依然として言っておられるようです。  こうした状況下にあって、労働大臣として雇用政策という観点から、積極的にこの公共事業の推進、拡大なり、あるいは積極的な経済運営の問題について働きかけていくという必要があるのではないかと思うのですが、ひとつ労働大臣の御見解を伺って質問を終わりたいと思います。
  66. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) まず、前段の定年延長の法制化の問題でございます。  定年延長につきましては、企業が定年延長を行うに際して賃金体系を見直す必要が生ずるなどの問題もありまして、労使が自主的に話し合いを行いながら進めていくことがまず好ましいと考えております。しかし、その立法化問題につきましては、今あなたのおっしゃったように、五十七年八月に雇用審議会から「定年延長の今後の進展の動向をみながら、昭和六十年頃の適当な時期に改めて」雇用審議会において検討を行うという答申をいただいております。当面、政府としては、企業に対する指導、援助の充実強化によって定年延長を推進をしながら、立法化問題につきましてはこれからの雇用審議会検討を注目をいたしておるところであります。審議会におきましても答申にあるとおり、「六十年頃」というめどがついております。つまり、その潮どきに近づいてきたということでありまして、私どもも積極的に対応をいたしたいと、こう思っております。  それから、雇用の拡大を図っていくためにはやっぱり経済政策前提になる、おっしゃるとおりであります。この問題は、最近、ここ数年にわたるゼロシーリング、マイナスシーリングの結果、各政党の中におきましてもいろいろとただいま検討に入っておるというのが実情であろうかと思っております。適当な経済成長を、今までのような四%の計画でいいのかどうかという、その点も含めて、もっと積極的にやるべきという意見も多々あることも存じております。そういう観点から、先般の公共事業の配分の問題におきましても、今までは前倒しということで、全地域にわたって前倒し、時期を早めるというだけのあれでありましたが、今度はそれを、前倒しには違いありませんが、各地区の生産の現状と同時に雇用の実情を見まして、厳しいところに重点的に配分をするというようなことも私ども提案をしたし、実行をいたしたところでございます。  おっしゃるとおりの積極経済政策が必要であるのではないかという気持ちを私もいたしておるところでございまして、ただいま一例に挙げました、公共投資によって社会的なストックをもっとふやすべしという論も非常に最近盛り上がってきておるところでございますので、私の感じといたしましては、公共事業等も含めてより積極的な経済政策をとる方がいいのではないか、そういう感じが今いたしておりまするが、これは具体的にはいましばらく政府の中でも十分な検討を図られて、予算編成の面でなるたけ私は積極的経済政策に持っていく方がよろしいのではないかという気がいたしておりまして、そんなような心づもりで努力をしたいなと、私個人そう思っておる段階でございます。
  67. 石本茂

    委員長石本茂君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  68. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、雇用保険法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  69. 糸久八重子

    糸久八重子君 私は、今回の雇用保険法改正案に対しまして、本会議で質問を行いましたし、また、衆議院社会労働委員会質疑内容も読ませていただきました。そして、先週からきょうの質疑をお伺いしておりまして、本改正案財政再建の雇用保険版であるという感じをますます強めておるわけでございます。質疑を通じまして、国の責任による失業者の増加とこれに伴う保険財政赤字を、岡の負担ではなく失業者負担で立て直しを図るといった内容が明らかにされてきていると思います。  衆議院では若干の修正が行われておりますけれども、結果的には五十九年度で一千二百五十億円の給付削減が行われるわけでありますけれども改正項目別による給付削減額を明らかにしていただきたいのです。
  70. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 五十九年度予算につきましては、改正後の状況を見込みました上で失業給付費の支出は一兆三千百三十億というものを計上いたしておりまして、歳入といたしましては国庫負担の二千九百十億円と保険料収入の九千八百八十九億円というものを計上いたしておるわけでございます。  各改正項目ごとの効果につきましての積算見積もりでございますが、まず、再就職手当創設によりまして約千二百億円程度の増となる。しかし、一般求職者給付が減少をいたしますというようなことでほぼ見合いという積算にいたしております。それから、賃金の範囲の変更等で約三百五十億円程度の減と見積もっております。それから、所定給付日数の変更で約百五十億円程度の減を見込んでおります。それから、高年齢給付金の創設によりまして給付金について二百億円程度の増と、こうなりますが、一般求職者給付の減少額が約二百七十億円程度見込んでおりまして、差し引き約七十億円程度の減となると、こういう見積もりをいたしております。そのほか、給付費そのものが減少するわけではありませんが、自己都合退職者に対する給付制限期間を三カ月に延長する、こういうことで、五十九年度におきましては約八百億円程度の支出が次年度に繰り越される、こういう見積もりをいたしておりまして、これらの効果を合計いたしますと、五十九年度全体では現行制度のまま推移するものとした場合に比較をいたしまして約千三百億円程度国庫負担にいたしまして約五百億円程度の支出の増額が抑えられる、こういうふうに見込んで積算をいたしておるわけでございます。  また、先般の衆議院におきます修正によりまして、トータルをいたしまして、五十九年度、初年度ベースで五十二億円の増と、これを見込んでおります。  内訳を申しますと、基本手当の日額表における六〇%を超える給付率というものの範囲を拡大をする、こういうことによりまして十六億円の増、それから個別延長給付充実、こういう関係で約三十一億円の増、それから六十五歳定年等により離職した者に対する基本手当の支給、これで約十四億円の増、それからこの三つの関係で高年齢求職者給付金の減分が出てまいりまして、これが三角の十三億というものがございます。それから六十五才以上の者の任意加入制度創設で初年度四億円、こういうものでございまして、内容といたしましては、こんなことでトータル五十二億円の修正、こういうものがこれに加わってくるということでございます。
  71. 糸久八重子

    糸久八重子君 失業者がふえて求職者給付がふえるから給付総額を圧縮するために制度を変えるという考えに立っているようですけれども、そういう考え自体が後ろ向き行政であるというふうに思うわけです。失業者を減らすために積極的な雇用政策をとることこそ今求められている事柄であると思うわけですけれども、これにつきましては、今までの質疑の中で大臣の御意向はもう十分お伺いいたしました。そして、大臣答弁によりますと、今回の改正保険財政の面にのみ着目したものではなくて、今後の雇用失業情勢構造的変化対応するためとしておるわけですね。そして幾つか理由を挙げておるわけです。例えば、安易に労働者が転職をするのが問題であるとか、求人賃金と失業給付額のアンバランスがあるとか、給付終了後に再就職をするという実態があるとか、六十五歳以上は引退過程にあるとか、そういうような理由をお挙げになっているわけですけれども、やはりこういう一方的な決めつけをされているということに大きな問題があると思います。  こういう発想というものは、働く者の立場を全く考えていない。つまり、働く者を悪者と見なしていると言うと言い過ぎかもしれませんけれども、そういう点が非常に問題であると思います。労働省というのは労働者を保護するため、労働者のための行政であるというふうに考えるわけですけれども、そういう意味からいいますと、労働省の立省の精神にも反しているのではないかと思いますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  72. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 労働省の仕事は、申すまでもないかもしれませんが、我が国の働く人々に、きょうも安心して、安全で、安定した生活をしていただくように労働者の皆さんの生活を守っていく、これが目的であることはいささかも変わりはございません。  私も至るところで、今日の日本の戦後の短期間世界的な繁栄というものは、勤労者の勤勉さ、その質の高さ、これが日本の宝である、そこへ加えて労使関係も国際的に見れば非常に円滑にいった、これが非常に、我が国の発展に寄与したものである、こう私は申し上げておるわけでございます。  そういうことでございまして、この雇用保険制度の改革一つとってみましても、これは我が国のこの十年の間の大きな構造的変化というものは、もう過去の十年どころではなくて大変な大きな変化をしておる。もちろん、その裏には世界の中の日本でありまするから、二度のオイルショックの中の世界的な大きな構造の変化というものを背景にしておることはもちろんでございます。そういうような時代の大きな流れの変化、構造改革というものの一つのあらわれとして我が労働省におきましてもこの雇用保険運用面にまでその影響が及んできた、私はそういうふうに思っております。  しかし十年前につくったものが今日から考えればやはりいろいろ変えなければならぬ点も出てきたし、不合理な点も出てきたし、しかしそうかといって、給付を受けるのも労働者でありまするが、給付の支払いをするのもこれまた労働者であり、国民でもあるわけでございます。経営者ももちろん入っておりますが。そういう意味で、労使の負担をできるだけ上げない、そしてこの制度を守っていかなきゃいかぬ。この制度が壊れれば、困っておられる失業中の勤労者の皆さんに大変な不安を与える。やっぱりこの制度を守るということが非常に大切なことで、健全に維持していくということは、労働者生活を守るという労働省本来の私は責務でもあろうかと、こう思っておるわけでございます。  しかし、厳しい財政事情ももちろんございまして、いろいろ各方面にわたって工夫をし、知恵を絞り、ある程度はみんなが我慢をしていかなければならぬという点もなきにしもあらずでございますが、私どもは、労働者を守るというこの本来の大きな観点から見れば、いろいろ工夫はいたしておりまするが、逸脱をしていない、こう思っております。
  73. 糸久八重子

    糸久八重子君 構造的変化によってということをおっしゃられたわけですけれども、そして今その理由が四点、私の方からも挙げさせていただきました。これは大臣答弁をしたものですが、この内容ですね、非常に安易に労働者が転職をするのが問題だといいますけれども、なぜ転職をせざるを得ないのか。それから賃金のアンバランスがあるからというんですけれども、これは求人賃金が低いことに問題がある。問題があるから、この求人賃金を引き上げるのにはどういうふうに工夫をしていったらいいのか。そしてまた、求職者の要望を満たすための再就職先の紹介をどういうふうに拡大していったらいいのか。高年齢者の能力活用をどうしていったらいいのかといった観点から、積極的かつ有効な施策を講じていくのがやはり労働省の仕事ではないかと思います。  そういう意味で、これらの問題について今までどのように考えてきたのかということについて、簡単に説明をいただきたいと思います。
  74. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 安易な転職をしているのではないか、こういう点が一つの問題でございますが、これにつきまして、雇用保険部会等での議論もいろいろされたわけでございますが、一つには転職の率を年齢別に見ますと、特に若年者におきまして非常に高い割合、いわゆる白已都合退職者というものをとってみますと、六割程度のものが平均でございますが、三十歳未満の若年者になってまいりますと、これが八割を超える、こういうような状況になっておる。特に若い人について見ますと、やはり仕事について、いま一つ希望どおりの仕事、希望どおりの労働条件というものでないというような問題。それからまた事業主の方が、そういう人を使うという面においてのいろんな配慮というようなものでの労務管理上の問題点。こういうような問題も基本的には一つあると思うわけでございますが、やはり仕事というものはいつも楽しいばかりではないんで、いろいろつらいこともあるわけでございますが、そういう面で、特に若い人の場合、いま一つ仕事に対してこの道一筋で頑張っていくといったような、そういういわば頑張りといいますか、そういったようなものがやや足らないというようなものもあるんではないだろうか。そういうことで比較的簡単にやめていく、こういうようなこともあるのではないか。そしてまた、部会での指摘にもありますように、ちょっとやめてひとつゆっくり探すか、まあ保険もあるし、というようなこともあるんではないだろうか。こういったような問題も一つあろうかと思うわけでございます。  そういう意味で、今後のこの若年層を中心とする定着指導というものについて、我々職業安定機関としても、なお定着指導等の面でのいろいろ指導も必要であろうし、あるいはまた、こういう労働条件問題等につきましては、基準行政等を通じまして、最低賃金の引き上げの問題であるとか、あるいはまた、労働時間の問題についての規制の強化であるとか、そういったような対策というものも進めていかなければならないのではないだろうか。そういう面も今後の問題としては一つあるのではないか。  それからまた、今後の再就職先の拡大、あるいは高齢者雇用の場の確保、こういった点につきましては、基本的には私ども職業安定機関の紹介機能というものを一層高めるというようなことによりましてこれに対応していく。そのためにこういう求人求職情報をできるだけ広い範囲にわたってできるだけ早い形でそれが提供できる、あるいはそれを利用して求人求職の結合につなげるというような機能整備も進めていかなければならぬではないか。あるいはまた、いろいろ先ほどからも出ておりますようなミスマッチの解消問題という形の一つの大きな対策としましては、各人の能力開発、職業訓練というものを核といたしました能力開発という面での政策の拡充も必要ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。  また、高齢者職場の確保、こういう面では高齢者の定年を延長するということ、あるいはまた、定年後においても何らかの形でその企業での雇用延長を図っていただく、こういうような形で高齢者の就業の場をできるだけ確保していくというようなことなども重要な今後の対策として進めておるような実情にあるわけでございます。
  75. 糸久八重子

    糸久八重子君 日本の国は、やはり終身雇用制という状況なんですが、今やこの終身雇用制から職業を自由に選択するといった時代にやはりもう移ってきつつあるのではないかと思うのですね。そういう新しい時代に対応するような政策もこれからは考えていかなければならないのではないかというふうに考えるわけです。  中央職業安定審議会の答申によりますと、「今回の改正に際しては、検討のための時間が必ずしも十分でなかったという意見もあるので、今後の制度の見直し及び運営上の問題点については、十分早い機会に本審議会に諮ることを要望する。」と注文をつけております。今後、どのように具体的に検討を行おうとしていらっしゃるのでしょうか、お伺いいたします。
  76. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) まず当面の問題といたしましては、この改正案につきまして、これが成立をいたしました場合には、直ちに保険部会あるいは審議会の場におきまして、いろいろこの改正案規定されております政令、省令あるいは告示と、こういったようなものにつきまして、速やかにそれらについての御審議お願いする、こういうような問題がかかっておるわけでございますが、やはり審議会の場におきましても一番問題として提起されておりましたのは、雇用保険のそういう制度運用状況財政事情あるいはまた保険受給者就職状況等々、その運用状況について、報告というような形での労使に対する説明といったものをできるだけ頻繁にひとつやってほしい、こういうようなことがあったわけでございます。  そういう意味で、私どもとしては、この法律の施行に絡みまして随時その運用状況というものについてこれからいろいろ御説明をしていく、あるいはまた、運用の過程での問題点等についても御論議を願っていく、こういうような形での制度運用というものを考えておるわけでございます。
  77. 糸久八重子

    糸久八重子君 大変運営上の問題点が多々ありますので簡単に法律を通していくというわけにはいかないわけですけれども、具体的な問題の事項について入らせていただきます。  今回の改正案では、失業給付額の算定基準から臨時に支払われた賃金とかボーナスを削除することとしておりますけれども、先ほどの御説明によりますと、これによって五十九年度で三百五十億円の給付削減を図るといいますけれども、その内訳はどのようなものになっておりますか。
  78. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 先ほども申し上げましたように、これによりまして五十九年度予算におきまして約三百五十億円程度の支出の増額が抑えられる、こういう見込みをいたしておるわけでございますが、その内訳は、賞与等を賃金目額の算定基礎に入れないということで約五百五十億円程度の減になるわけでございますが、一方、中低位の受給者につきましての激変緩和と、こういうことで、日額の改定、給付率の範囲拡大をいたします。六〇%を超え八〇%までの給付率の範囲の変更、こういうふうなことをやるわけでございますので、これによりまして約二百億円程度の増というものが必要でございます。そういう意味におきまして、この五百五十億円と二百億円の差し引き約三百五十億円程度の減になる、こういうことを申したわけでございます。
  79. 糸久八重子

    糸久八重子君 基本手当日額からボーナスを除くことによって大体二割程度ダウンするということになるわけですけれども、これに対して労働省は最低保障額を二割引き上げて、そして、衆議院修正も行われたわけですけれども、結果的には基本手当日額は、改正前と改正後ではどのように変わってくるのですか。
  80. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この基本手当日額表におきます八〇%以内で六〇%を超える、こういう給付率にいたします範囲を現行の一等級から十三等級と、こうなっておりますものを一等級から二十等級に拡大をする、また、衆議院修正によりまして、これをさらに二等級積みまして、一等級から二十二等級までにこの六〇%から八〇%という範囲を拡大する、こういうことであり、また、賃金日額の下限を二〇%、それから上限を一〇%、それぞれ引き上げる、こういうことによりまして基本手当の日額を引き上げることにいたしておるわけでございます。  この新日額表につきましては、賃金日額表等級区分を現行どおり三十六等級といたしまして、その一等級から二十等級、これ衆議院修正によりまして二十二等級と、こうなったわけでございますが、一等級から二十二等級、それから三十六等級、こういう三つの節目が出るわけでございまして、そして一等級につきまして現行の基本手当日額を二千百四十円を二千五百七十円に改正をする。そして、六〇%に移っていくその階級のところ、二十二等級のところを、現行十三等級で二千六百七十円となっておりますところを四千六百五十円というところに引き上げる。それから、三十六等級の、最高の等級のところを六千六百七十円を七千三百三十円というふうにする。そういうことで、この節目をそれぞれ各等級別に分布して表をつくる、こういう形になるわけでございます。
  81. 糸久八重子

    糸久八重子君 法の第十六条では基本手当の日額について規定しておりますけれども、その逓減率とか日額表はお示しいただけますか。
  82. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 要するに、今申し上げました改正後の一等級のところ、そして改正後の二十二等級のところを、これを今申し上げました金額で直線に結んで、それを金額に直す、そして改正後の三十六等級のところは、この二十二等級を超え三十六等級までのところは六割の給付と、こういう形の単純な線になるわけでございまして、その金額の表はまだこれから審議会にかけて決めるというものでございますが、そういう基本的な中で、いわば直線的に結ぶような形でその数字が大体決まってくる、こういうたぐいのものでございます。
  83. 糸久八重子

    糸久八重子君 審議会で諮って決めると申されますけれども、やはり国会の審議の場にその骨子なり案なりを示していくべきではないかと思うわけです。  また、法の第十八条に、毎月勤労統計における労働者の平均定期給与額が二〇%以上上昇した場合に基本手当日額表を改正しなければならないとしているわけですね。前回の改定は五十五年と言われておりますけれども、現在までに平均定期給与額はどの程度上昇しておりますでしょうか。
  84. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 今その二〇%を超えるパーセントのアップというところに比較的近い線に来ておることは事実でございますが、これにつきましては、あとしばらくの間、それが継続的にそういうアップであるかどうか、こういうのを三カ月ばかり見ていく、こういうようなことがございまして、そしてその後におきまして審議会において検討を開始をするというような作業があるわけでございます。  そういう意味でこの二〇%を超えるということに伴いますスライド条項が仮に発動まれるといたしましても、やはり五十九年度以降のこれはテーマになっていくのではないか、こういうふうに見ておるところでございます。
  85. 糸久八重子

    糸久八重子君 前回の改定額を一〇〇とした場合に、五十九年の一月で一一七・七%となっております。これに今春闘による賃金上昇分を加えますと、やはり二〇%を超えてくるのではないかと思うわけですね。今局長おっしゃいましたとおり、賃金上昇率で二〇%を超えて、「その状態が継続すると認めるとき」と十八条では規定をしておるわけですけれども、今の状態ですと、例えば景気は上向きというようなことも労働大臣おっしゃっておりますし、こういう状況はやはり続くのではないかと思うわけですね。そうしますと、やはり今改定は行わなければならないのではないかというふうに考えるわけです。  今回の法改正で基本手当の日額を引き上げたとおっしゃっておりますけれども、この措置は、既に引き上げをしなければならない段階に来ているのを若干先取りをしたものじゃないかというふうに考えられます。ボーナス等を除外することによって激変を緩和するための措置というのならば、改めて基本日額、基本手当日額表を改正すべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  86. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この自動スライド条項というものがございますので、その辺につきましてはいずれかの時点で、現行のままほうっておきましてもある時期になればその自動スライド条項で引き上げなきゃならぬという問題が出てくることは事実でございまして、そういう意味におきましては、そういう目から見れはある時点における先取りということになることは事実でございますが、ただ、それが私どもの安定した二〇%を超える数字というもの、それからまた、実際にそれが毎勤の発表の時期の問題、審議会関係等々で、やはり五十九年度以降の問題になるのではないか。その時点から見れば先取りということにはなるかとは思うのでございますが、しかし、これにつきましては、法改正のこの時点でこういうふうに変えると、こういうことで対応するわけでございますので、先取りであれ何であれ、とにかくそういうことで給付水準が上がるという形の措置がとられれば、その問題はそこからまたスタートをすると、こういうことに理論上なるかと思うわけでございます。
  87. 糸久八重子

    糸久八重子君 そうすると、次の改定はいつになりますか。
  88. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) これはもう、改正法施行後二〇%上がった時点と、こういうことになると思うわけでございます。
  89. 糸久八重子

    糸久八重子君 法の十八条では、二〇%以上変動したときに自動的に変動するとしておるわけですけれども、高度経済成長期ということになって、最近の賃上げ状況がそういう状況対応しておりますと、非常に変動幅が縮小すべきではないかというふうに考えるわけですが、人事院勧告では官民較差が五%以上、最近では五%以下の場合でも給与の引き上げの勧告が行われて、そしてこれに基づいて恩給とか年金も改定が行われておりますね。厚生年金も、物価が五%以上超えた場合にスライドをするということになっておりますけれども失業者の最低保障額の改定も、数年おくらせるということではなくて、もっと早く改定をするようにすべきではないかと思いますが、この点についてはいかがですか。
  90. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) これは、賃金水準の変動に応じましてこの給付水準についても変動して、給付水準を維持していく、こういう意味におきまして自動スライド制が採用されておるわけでございますが、賃金の変動に伴いまして絶えず保険金額を改正するということにつきましては、いろいろ事務手続の問題、事務執行上の非常に煩雑性が増す、こういうようなことで、現在二〇%という基準を設けておるわけでございます。これはまた、その基礎を毎勤に求めてやっておる、こういうことでございます。  従来の経緯を申しますと、雇用保険法は十年前に制定されたわけでございますが、昭和五十二年に改定をする、それからまた昭和五十五年に改定をするというふうなことで今までやられておるわけでございます。そういうようなことで、今おっしゃるような意味でまいりますと、例えば毎年変えなければならぬというような問題等も出てくるわけでございまして、その辺については、私どもとしては現在の二〇%というものでやっていくということで対応をしていくことで大きな問題はないのではないかと、こういうふうに考えておるところでございます。
  91. 糸久八重子

    糸久八重子君 失業者生活を保障するという意味から考えれば、やはり労働省はそのくらいの温かい思いやりがあってもしかるべきだと思います。  それでは、次に移らせていただきたいと思います。  給付制限についてでございますが、先ほども私申し上げましたけれども労働者には職業選択の自由があります。そして、この権利を行使することで差別を受けることがあってはならないと思います。この原則からすると、失業理由給付制限をするということは大変おかしいわけで、当然撤廃をすべきが本来だろうと思うわけですけれども、今回の改正ではさらに強化をするという極めて不当な改正内容だと思います。法の三十三条の基準によりますと、自己の責めに帰すべき重大な理由とか、正当な理由がなく自己都合退職した場合とか、制限を受けることになっていますけれども、これも午前中の質疑の中でいろいろ出てまいりましたが、衆議院段階でも我が党の村山委員の方からいろいろ例を挙げられまして伺っているわけですね。  それで、こういう事例の場合はどうなんでしょう。例えば先ほど、技術革新で、新技術への不適応だとか、単身赴任の場合などでは正当な理由と認めると、そうおっしゃっておりましたね。例えば年老いた母と同居しておって、そして日中は近所の人にその母親を見てもらっていた、しかし、見てもらっていた近所の人が都合が悪くて、どうしても見てもらえなくなってしまった、付近に老人ホームもないというようなところから、つまり、老人介護のために退職をせざるを得なくなった。そういう場合は一体正当な理由というのですか、それとも個人的な理由というのですか。いかがでしょうか。
  92. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 今お示しのケースで、二つの場合があると思います。一つは、先生のおっしゃったことをそのまま受け取りまして、老人介護のために自宅へこもらなければならぬということでやめられる方ということであるならば、その方はもう求職活動をされないわけでございますね。そうであれば、これはそもそも雇用保険対象にならない。要するに、失業者でなければこれは対象にならない。求職活動というものがないわけですね。ところが、その方が老母をみずから介護しながら近所で働く、こういうようなことで求職活動をされる、こういうような事情であれば、これはやはり正当な理由になるだろう、こういうことでございます。
  93. 糸久八重子

    糸久八重子君 では、こういう場合はどうなんでしょうね。例えば、近い地域にA、Bという二つのスーパーがあったと仮定しますね。そうして、同じような条件だということでAというスーパーに就職したところが、後から聞いてみると、賃金とか労働条件がBの方が非常によかった。だから、Aを退職をして、そしてBに転職をしたいということでやめた場合にはどうなんでしょうか。
  94. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この点は、近所に二つあってという形でおっしゃいましたけれども、とにかく一般論的に、今までおったところが賃金とか労働条件の面で著しく悪いとか、安いとか、そういうような事情があって他へ転職をされる、こういうような場合には、これは正当な理由あり、こういうことでございまして、たまたま比較したところこちらの方がちょっといいので移る、こういうような程度のものでは、これは直ちに正当な理由ありという形にはならないということでございます。
  95. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、結婚によって勤務先への通勤が非常に遠方になって勤務が不可能になった、そういう場合はどうなんですか。
  96. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) そういう場合には、正当な理由ありということでございます。  それから、先ほどのケースでちょっと先生けげんな顔をなさいましたのであれですが、ほかの職場へさっと移っていかれるというのであれば、そこで離職をして給付制限を受けてどうという問題はそもそも起きないわけでございます。要するに、あちらのスーパーの方が高いから移ろうといって、そしてそこでずっと保険をもらわれる、こういう場合に給付制限という問題が出てくるわけでございまして、さっとかわられる場合には、別にその間に給付制限問題とかなんとか、保険の問題はかかってこないわけでございます。
  97. 糸久八重子

    糸久八重子君 採用条件と労働条件が著しく変わっている場合はどうなんですか。
  98. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) そういう場合は、正当な理由ありということでございます。
  99. 糸久八重子

    糸久八重子君 やはり職をやめるには、理由がなくてやめる者というのは比較的少ないんじゃないかと思うんですね。今までに給付制限を受けた者の理由別の数等はそちらではありますか。
  100. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この給付制限に正当理由という形でたくさんの規定を置いておりますが、それにかからなかった者の理由別というものは私どもとっておりません。
  101. 糸久八重子

    糸久八重子君 いろいろ給付制限を受けまして、待期期間七日に加えて三月も給付制限をされた場合に、失業者はどういうふうに生活をしていくのか、大変心配になるわけですけれども、そういう人たちの生活実態等は把握をしていらっしゃいますか。
  102. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 現行制度におきましては、七日間の待期とそれから一カ月の給付制限ということでございますが、その一カ月間の生活がどうであるかということについて特に調査したものはございません。
  103. 糸久八重子

    糸久八重子君 ちょっと法律内容についてお伺いしたいんですが、現行の基準では、自己責任に帰すべき重大な理由ありとする者については、給付制限を二カ月と四十五日に分けておるわけですね。また、正当な理由なしとされた者は一カ月間給付制限をされていますけれども、これはすべて一律に三月という形になるんですか。
  104. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 原則として三カ月というものを考えております。
  105. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、刑法等に違反して処罰されて解雇された者から自己都合によって退職した者まで、一律に三カ月間の支給停止というやり方は、ちょっとやはり問題ではないかと思うんですね。最近の雇用関係から見ますと、先ほど私も申し上げましたけれども、やはり終身雇用から自由な職業選択といった動きも見られているわけですし、また、女性の場合には、結婚、育児退職をする、そしてまたさらに再就職といった傾向が非常に多くなっていって、これがパートにもつながってくるわけですけれども、こういった状況変化対応して、むしろ給付制限の緩和を図っていくべきではないかと思うのですけれども附帯決議の中にも、給付制限は、労働者生活実態経済社会変化職業選択の自由、雇用保険法趣旨を考慮して見直しを行うことというふうに書かれているわけですけれども、その辺から考えましてお考えをお伺いしたいと思います。
  106. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 私どもも、職業選択の自由というものを侵さないで、しかもまだ安易な離職というものについてはひとつ慎重であってほしい、こういうようなことで、今度給付制限というものの延長を図ろうと、こういうものでございますが、その場合の、正当な理由のない自己都合退職というものの具体的な範囲につきましては、先生も今お示しになりましたような、現在の労働者生活実態なり、あるいはまた時代のいろいろな変化というようなものをいろいろ配慮いたしまして、その辺については、具体的には審議会等の御審議も経まして、労使の代表も加わっておるわけでございますので、そういうところでの審議を経まして、具体的にそういった面について定めていきたいと考えております。
  107. 糸久八重子

    糸久八重子君 不正受給の問題についてなんですが、これをなくす努力が必要ではないかと思いますが、これ、五十七年度のものですけれども、年間にして二万四千件、二十八億円という不正受給の実態があるということなんですが、その不正受給というのはどういう内容になっておりますか。
  108. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 雇用保険は、就職の意思と能力があるにもかかわらず就職できない、こういう場合に支給されるものであるわけでございまして、この制度趣旨に反しまして、実は就職しているけれどもその事実を隠して給付を受ける、こういう不正受給の態様が近年増加の傾向が相当に顕著でございます。    〔委員長退席、理事遠藤政夫君着席〕 五十八年度には、今先生お示しの五十七年度の数字をさらに上回りまして、約二万七千件、不正受給金額が約三十五億円、こうなっておるわけでございます。やはり具体的な態様としましては、就職をしておるということを実際には隠して保険をもらいに来られるという方が八八%程度、こんなような状況になっておりまして、あとはいろいろ虚偽記載とかなんとか、そんなような関係でございまして、圧倒的に多いのが、就職しながら保険をもらわれると、こういうケースでございます。
  109. 糸久八重子

    糸久八重子君 決算委員会等でも問題になっておりますけれども、ちょっと私、ある新聞を拝見しましたが、不正受給をする実態の中で、結局事業主制度に対する理解不足が大きな原因だというふうに書かれているんですね。そうしますと、やはり労働行政労働省として指導しなければならない部分が欠落をしていたのではないかというふうに考えるわけですが、その点についてはいかがですか。
  110. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 労働者が実際には就職しながら保険をもらうということは、率直に申しまして事業主承知の上というケースも往々にしてあるわけでございます。要するに、ある特定の日に仕事を休んで保険をもらいに行く、事業主がこういうのを見逃しているというようなことなど、やはり一つには事業主のその辺についての御理解も要るわけでございます。それからまた、極端な例でございますと、保険をもらっていらっしゃいというようなことで、勧奨するような極端な例もあるやに聞くわけでございます。それからまた、これは相当悪質な例で、たくさんあるというわけではございませんが、雇用しておる従業員の数をごまかすとか、あるいはまたそういう台帳をごまかすとか、賃金台帳を虚偽記載するとか、いろいろそんなケースがあるわけでございます。  そういうような意味におきまして、やはり事業主保険制度への理解というものも、これはぜひ求めていかなきゃならぬという事情にございまして、この雇用保険の不正受給防止のための啓発月間というものを実は昨年の十一月に初めて設けまして、事業主中心にそのあたりの理解を求める。それからまた、安定所が求職者に対して、この雇用保険というものは失業している人しかもらえないんですよ、働いている人はもらえないんですよという、まことに初歩の説明を何度も繰り返すというようなことなどもいたしましたし、また、その後も続けておるというような形で、この雇用保険制度の不正防止のための努力をしておる現状でございます。
  111. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは次に、パートタイマーについてお伺いをしたいのですが、労働省で言うパートタイマーの定義というのはどういうものでございますか。
  112. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) パートタイマーにつきましては、一般的に確立した定義はございませんが、私どもが行政指導をしていく上で、一般的にパートタイマーというのは、通常の労働者の所定の労働時間よりも短かい所定労働時間で働いている従業員を言うというように考えております。
  113. 糸久八重子

    糸久八重子君 いわゆるパートタイム労働者と呼ばれている労働者数ですが、これは私予算委員会でもお伺いしたんですけれども、五十年で百九十八万、そして五十八年では三百六万と、大変ふえているわけですが、その男女の割合ですね、これも概略女子が余計なんだということはわかりますけれども男女の割合とか、それから年齢構成とか、産業別構成とか、企業別とかというような、そういう調査は労働省はしていらっしゃいますか。
  114. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 幾つかの調査がございますが、総理府の労働力調査で申し上げますと、昭和五十八年にパートタイマーとして、これは週就業時間が三十五時間未満の者ということでとらえておるわけでございますが、それが五十八年で四百三十三万でございます。そのうち女性が三百六万ということでございます。  それから業種別の統計でございますが、それは総理府の労働力調査特別調査というのがございますが、これは男女別ではございませんが、男女計ということでございますが、一番パーセンテージの高いものから申し上げますと、一番高いのが製造業の三七・六%、それから卸小売業が三七・六%、これも似たようなものでございます。それにサービス業が一七・三ということで、これらが圧倒的に多いというようになっております。
  115. 糸久八重子

    糸久八重子君 年齢構成では出ておりませんか。
  116. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 年齢構成では、総理府の労働力調査特別調査のこれは五十六年の三月の調査でございますが、年齢別に見ますと、男女計で一番ウエートの高いのが三十五歳から四十四歳で四一・二%ということでございます。それから、その次には二十五歳から三十四歳の二一・二、それから四十五から五十四歳の二二・七、まあこの二つが二〇%台ということで、三十五歳から五十四歳というところが圧倒的に大部分を占めておるということでございます。  それを男女別に見ますと、男の方は各年齢に分散しておりますが、特に五十五歳以上が五〇%ということで、圧倒的に過半数を占めておる。女の方は、男女計と同じような傾向になりますが、三十五歳から四十四歳が四三・二%ということでございまして、両わきの年齢がそれぞれ二〇%台になっております。
  117. 糸久八重子

    糸久八重子君 今の報告によりますと、パートタイム労働者の九割が女子である、そして年齢が三十五歳から四十五歳に集中をしている。さらに、中小企業に非常に多いというような傾向であるわけですけれども、それらから勘案しますと、今度の給付の低減率が、たまたま三十五歳から四十五歳の部分がちょうど半額低減されているわけですね。そういう部分では、やはりこれはこの法律としては非常に問題があるのではないかと思うわけです。  もっとパートタイマーについていろいろお伺いしたいことがあるわけですけれども、時間もございませんのであれですが、やはり今日本の国は婦人の労働力、しかもパートタイマーとしての婦人の労働力を利用、活用しているというような状況がある中で、そういった年齢層にある人たちというのは、パートタイマーと言われているように、やはり非常に不安定な雇用者であるわけですね。そういう人たちに対してはやはり十分な保護を与えてもいいはずなのに、そこの部分を非常に切り捨てていっているという部分で、私は今度の改正案は大きな問題があるのではないかと思います。  時間が参りました。あと残されたパートタイマーの問題につきましては来週に譲ることといたしまして、以上で私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  118. 中西珠子

    ○中西珠子君 私も、本会議におきましても、またこの前の六月二十一日のこの社労委員会におきましても、雇用保険法等改正案内容につきましては大分御質問をさせていただきましたので、きょうは一番初めに、この雇用保険法の適用関係についてお聞きしたいと思います。  雇用保険法は強制適用ではあっても、適用されていない事業所が大体二割ぐらいはあるだろうというこの前の御答弁がございましたけれども、この雇用保険法の第六条の「適用除外」というところにつきましてちょっとお伺いしたいと思うんですが、第六条「適用除外」の四号、これに、「国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、失業給付内容を超えると認められる者であって、労働省令で定めるもの」となっております。それから、労働省令というところで、雇用保険法施行規則の第四条に、「法第六条第四号の労働省令で定める者は、次のとおりとする。」となっております。一、二は結構なんですが、三につきましてちょっと御説明をいただきたいと思うんですが、これの三の適用状況はどのようになっているかということにつきまして御説明いただけますか。と申しますのは、いろいろ適用除外のための運動をやっている団体もあるというふうに聞いておりますので、どのような状況対応していらっしゃるかということをお聞きする前に、この施行規則の第四条三につきまして御説明いただきたいと思います。
  119. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) そういう規定はございますが、現在までのところそういう適用除外を認めた例はございません。
  120. 中西珠子

    ○中西珠子君 では、この施行規則第四条の三というものは、全然これは死文に等しいわけでございますか。
  121. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 実際にこの条文に該当するような要件を備えておるところが出てくればこれはやはり除外する、こういうことでございまして、決して死文ではございませんが、そういう要件をぴしっと備えた者が今までないという意味で、適用したケースがない、こういうことでございます。
  122. 中西珠子

    ○中西珠子君 例えばここにございます四条の三ですが、「国若しくは地方公共団体以外の者で学校教育法第一条の学校若しくは同法第八十三条第一項の各種学校における教育、研究若しくは調査の事業を行うもの」となっておりますね。この場合は、専修学校は含まないということですか。
  123. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 専修学校につきましては、ここの規定予想しておるものではございません。と申しますのは、要するにこの規定の適用する余地がない、こういう意味でございます。
  124. 中西珠子

    ○中西珠子君 要件に合致するものがないということをおっしゃいましたけれども、その要件と申しますのは、施行規則の第五条にある、例えば都道府県の長が承認を受けようとする者の申請を労働大臣にするという場合に法令、条例、規則などを添付しなさいということなんですが、その内容が、雇用保険法失業給付内容を超える給付を支給するということを内容としたものをもって申請した者がないし、それを承認したこともないということなんですね。そういう例がないということなんですね。
  125. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) そういう例がないということでございます。
  126. 中西珠子

    ○中西珠子君 もしも要件が合致した場合にはこれは承認する可能性はあるということですか。
  127. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) そういうことでございます。
  128. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは、ただいまのは結構でございますが、この前の当委員会で労働時間の短縮につきまして御質問を申し上げたのでございますが、失業を減らすためには、ワークシェアリングの意味もあって労働時間の短縮が非常に重要だと思いますが、労働時間の短縮についての行政指導の今までの成果というものが相当あるとは思いますけれども、一層の指導をやっていただきたいということを申し上げたわけでございますが、先進諸国の状況というのはどういうふうになっておりますでしょうか。例えば先進諸外国の所定労働時間とか、また、時間外労働の規制についてお伺いしたいと思います。殊に、時間外労働の上限を男女ともに決めている国があるというふうに理解しておりますけれども、どのような状況でありますか。資料をお持ちでございましたらお教えいただきたいと思います。
  129. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) お尋ねの最初の法定労働時間についての欧米諸国の規制でございますが、週四十時間労働制の国も多いわけでございますが、例えばアメリカが四十時間、フランスが三十九時間という国もあるわけでございますが、一方、我が国と同様に週四十八時間労働制の国もございまして、西ドイツ、イタリア、オランダ等でございます。なお、イギリスは労働時間の規定法律にはございませんで、協約等でやっておるわけでございますが、ただ工業的業種の女子年少者についてのみ法律で週四十八時間という規定がございます。  それから、時間外労働の方でございますが、男女ともに上限を規制している国としては、フランス、西ドイツ等がございますが、フランスは十二週平均週四十六時間以内、これは男女ともでございます。それから西ドイツが一年について三十日間に限り一日二時間以内というのがございます。なお、アメリカは男女とも時間規制はございませんで、イギリスは工業的業種の女子のみについて一週六時間、一年百時間という規制がございます。それからイタリアは男女ともに一日に二時間以内、一週十二時間以内という規定がございます。
  130. 中西珠子

    ○中西珠子君 今回政府が提出されました男女雇用機会均等法案におきましては、労働基準法の女子保護法規の改正というものがついておりまして、その中に工業的職種以外の労働時間、殊に時間外労働の規制を大幅に緩和するということになっていまして、労働省令に委任するということなんですけれども世界に悪名高い日本の男性の長時間労働に日本の女性の時間外労働も合わせていくというふうな傾向が見受けられると考えるわけですが、世界の時間外労働規制というものの方向というものもやはりお考えいただいて、女子の労働時間の規制、時間外労働の規制の緩和というものももう一度御再考願いたいと思うわけでございますけれども、これはどうしてもやらなければならないこととして御提案になっているわけでございますか。
  131. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 外国の法定労働時間について今御答弁申し上げましたが、我が国におきましてはやはり雇用慣行が大分違うわけでございまして、時間外労働というのは、いわゆる終身雇用慣行のもとで雇用量の調整の機能を果たしておる、景気の好不況に対して弾力的に時間外労働という形で調整をしているという面が非常に外国と違うわけでございます。その点が第一点。それから、時間外労働の実態というものが業種等により、また規模の格差によりまして非常にばらばらである、相当格差があるという実態から、時間外労働を法律で一律に上限を規制するというのが非常に難しい問題でございます。  そういうことでございますので、もちろんそういう雇用慣行を考慮してもまだ我が国の労働時間は長いということは十分私ども認識しておりますので、これは男とか女ではなくて、男女を含めて長時間労働の是正ということを辛抱強くやっていきたいということでございまして、その前提に立って男女雇用均等法におきましても女性の労働時間の制限を若干緩和しておりますが、しかし、これはやはり雇用の平等を求める場合には、当然労働保護の面でも、女子のみの保護というものをそのままに残して、それから平等をやれという議論には私どもくみし得ないわけでございまして、その両方のバランスをとって雇用平等を実現していくというのが一番妥当な線ではなかろうかということでお願いをしている次第でございます。
  132. 中西珠子

    ○中西珠子君 今ここで議題になっているわけではございませんのでくどくどとは申しませんけれども男女ともに労働時間を短縮する必要があるということと、男女ともにやはり人間らしい生活をしていくためには労働時間の短縮は絶対に必要なのであるし、また、失業の予防、失業者を減らすという意味からも労働時間の短縮というものは必要だと考えます。男女届用機会均等法の中におきます新しい御提案につきましては後の機会にまた討論させていただくことといたしまして、とにかく労働時間短縮のための行政指導は続けて強化していただきたいということと、男女ともに時間短縮をやっていただきたいということを申し上げて、また、とにかく国際的に見ましても余りにも日本の男性の長時間労働というものが悪名が高いわけですから、それに合わせて女性も同じように長時間働かせることにしたということになりますと国際的にも余りいいことではございませんし、貿易の摩擦が今なかなか解消されないときにこういった問題もまた大きなウエートを占めてくるのではないかと思いますので、その点はよろしくお願いいたします。これはまた後日の討論ということにさせていただきます。  この前のこの委員会の質問のときに、雇用保険法のもとに行われている四事業のうちで、能力開発事業というものと関連いたしまして、とにかく技術革新が非常なテンポで進んでいる今日、やはり労働者の能力開発事業というものは非常に重要でございますし、また職業転換のためにも能力の向上のためにも絶対に必要ということで、非常に立派なお仕事をなさっているとは思うのでございますが、MEがどんどんどんどん導入されている中で、公共職業訓練の場、公共職業訓練校ではME機器を既に導入して訓練を行っていらっしゃるところがあると思うのですけれども、どういうところでなさっているか。  また、それが十分でないということでしたら、ME関係の教育や訓練を専修学校とか各種学校に委託を行っていらっしゃるのではないかと思うのですが、その状況はどういうふうになっておりますか。  この前の質問に対して資料がないということで御返答がございませんでしたので、この場でもう一度質問させていただきます。
  133. 宮川知雄

    政府委員(宮川知雄君) ME関係技術革新の進展に伴いましては、労働者職業能力の関発を積極的に進めなければならないわけで、そのためには事業内で一番先にそれが行われるべきだと思いますが、公共職業訓練校あるいはその施設におきましても極力その整備に努めているところでございます。  簡単に資料を申し上げますと、養成訓練では電子計算機科、情報処理科というのがございまして、五十六年度四百十人というのが五十九年度では四百九十人になっております。また、工場訓練では、コンピューター、NC旋盤等を使いましての作業がございますが、五十六年度千八百人から五十九年度一万一千八百人というような形で逐年これを増強しているところでございます。御指摘のように、特にいわゆる先端機器というのは大変値段が張りますので、リース制等を活用いたしまして整備に努めているところでございます。  それからまた、今お話しございましたように、適切な専修学校、各種学校等がある場合にはこれを活用するというのはもう当然の方針でございまして、特に経理関係あるいは電子計算機関係等でこうした学校に委託も進めているところでございます。ただ、全体としてまだまだ十分というわけではございませんので、公共職業訓練内におきましても、また委託訓練におきましてもそれぞれ増強してまいりたい、かように考えております。
  134. 中西珠子

    ○中西珠子君 委託訓練の場合はやはり委託料というものをお出しになるわけですか。
  135. 宮川知雄

    政府委員(宮川知雄君) 委託訓練の場合には、その学校で、専修学校なら専修学校で通常必要といたしますいわゆる月謝、その他は全部公共訓練校から支出するようにいたしております。
  136. 中西珠子

    ○中西珠子君 委託されている学校は幾つぐらいございますか。
  137. 宮川知雄

    政府委員(宮川知雄君) 学校の数ではちょっとはっきりいたしませんが、現在のところ、定員でございますが、経理事務関係で二千十五、それから一般事務関係で三百七十、経営実務科で二十、電子計算機科で百ということで、これだけの数の人たちを専修学校等に委託訓練しているわけでございます。特に一般経理等は、最近ワープロそれからパソコン等こういうものを特に使うということでお願いしているところでございます。
  138. 中西珠子

    ○中西珠子君 これまで雇用保険改正案内容につきましていろいろお聞きもいたしましたけれども、どうも私には、失業者がどんどんふえてきた、雇用保険給付受給者がふえてきた、そのために雇用保険赤字になって失業給付総額を抑制しなくちゃならなくなった、だから雇用保険法改正を急いでなさるというふうな気がしてならないのでございますけれども失業者がふえた理由につきましては、労働省はどのように分析なすっていますか。  また、国際的な失業の率というものを考えますと、一応日本はまだまだ低いような感じでございますけれども、その国際比較というものは厳密にできるのかどうか、どのようにお考えでいらっしゃいますか。その理由の分析とそれから国際比較の可能性についてお伺いしたいと思います。
  139. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 失業者がふえてきておりますこの辺の背景でございますが、これはやはり第一次石油ショック以降いわゆる高度成長から低成長、安定成長という形に成長率が低下をしてきておるわけでございまして、それに伴いまして基本的に労働力需要の伸びが鈍化してきておる、こういう事情が背景にあるわけでございます。  そしてまた、労働市場の面におきましても、先ほど来申し上げておりますように、こういうなかなか就職が困難な高齢者がどんどんふえてきておるというような問題であるとか、あるいはまた比較的離転職の率の高いサービス業というようなところで雇用がふえてきておるというような事情であるとか、やはり同じく比較的終身雇用ではない女性の職場進出というものがふえてきておるとか、さらにはまた、若年者を中心といたします転職意識変化、こういったもの等が一方においてもまた進行しておる、こういうようなこと。さらに加えまして、かつて日本の経済を引っ張ってまいりましたいわゆる重化学工業といいますか、素材産業といいますか、そういったようなところが国際経済の大きな変化の中でこれが非常に伸び悩んでおる。むしろ構造転換を迫られてきておる、こういうような事情が一方には進行しておる。さらにはまた、いろいろ先生も提起しておられますようなMEを中心とする技術革新というものの進展が、新規の労働力の採用という面ではこれがまた抑制ぎみに作用しておる、こういうような面等もあるわけでございまして、そういう労働市場における需給両面にわたるいろんな構造変化が生じてきておる、こういうような背景があって失業率が高まってきておるということが言えると思うわけでございます。  必ずしも解雇がふえたと、こういうことばかりで失業者がふえておるわけではなくて、現に総理府の最近の完全失業統計の特別調査におきましても、完全失業者の約三割ぐらいは非自発的理由による失業ということでございますが、残りの約七割ぐらいは何らかの形による自発的失業、あるいはまた新しく就職したいけれどもまだ仕事が見つからない、こういうような形での失業というような形のものも大きなウエートを占めておる、こういうような傾向も出ておるわけでございます。しかし、もちろんこういった方々も私ども労働行政対象として対応を進めていかなきゃならぬという点は当然のことだと考えておるわけでございます。  失業率の国際比較の問題でございますが、基本的に、第一次石油ショック後欧米各国は大変に失業率が上がってまいりました。日本の場合も、かって一%台でございましたが、これが徐々に、それを契機にいたしまして二%台ということでございますが、日本の場合には雇用保険法の成立というような形の中で第一次オイルショックが始まった途端に雇用保険制度がスタートする、いわゆる雇用保険の三事業というものがそこでスタートするというような対応等が行われましたこと等も大きく作用いたしまして、こういうヨーロッパに見るような急激な失業者の増というものにならないでこれをしのいできた、こういうような事情にございまして、現在において二・六ないし二・七%ぐらいの失業率になっておる。一方、この間アメリカ等においては七%ぐらいの失業率がどんどん上がりまして一〇%を超える、あるいはまた、かつてヨーロッパの模範と言われた西ドイツにおいても七%からさらには一〇%を超えるような失業率まで上がる、イギリスもまた一二%程度失業率というような状況でございます。これは日本とほかの国とのいろんな失業統計のとり方が違うからではないか、こういうことでいろいろその辺の問題がよく提起をされておるわけでございますが、アメリカと日本の場合にはほぼ同じような統計のとり方をいたしておるわけでございます。そういう意味ではアメリカと日本の失業率についてはおおむね裸で比較ができるのではないか。  それからまた、ヨーロッパの各国の失業統計は、安定所への求職者というものを失業者数として失業率をカウントしておる、こういうような事情がございまして、若干その辺については違いがございますが、ただこれについては、例えばOECDがこれをOECD基準で、そういう失業率の国際比較というものをOECDの尺度に直しまして比較をしておるデータがございます。それによって見ますと、統計のとり方は違いますが、大体現在それぞれの国が発表しております失業率と余り大きな違いはないというような結果が一つ出ておるわけでございます。そういう意味では数字の面での国際比較はある程度可能でございます。  ただ、一つここで注意しなきゃならぬのは、やはり各国における雇用慣行の違いというようなものがあるわけでございます。例えば日本の場合でございますと、人が余ったという場合に、アメリカのように直ちにレイオフをするというようなことをしないで、できる限りこれを企業内の配置転換等々によりまして抱えようとする。それからまた、逆にある程度労働力需要がふえる、仕事がふえる、こういうようなことがございますと、まず超過勤務をふやしてそれに対応していく。そして、それである程度耐えられなくなった状態で人をふやすというような一つのパターンがあるわけでございます。そういう意味で、何といいますか、そういう生産等の動きが雇用の方にドラスチックにすぐ出てこないというような問題等はあるわけでございます。そういう雇用慣行の違いなどはやはり十分にらんで比較をしなきゃならぬとは思うわけでございますが、一応失業率の国際比較という数字の面での比較という意味におきましては、そういうOECDレベルに直した数字等はあるわけでございます。
  140. 中西珠子

    ○中西珠子君 OECDレベルに直したときには各国が発表している数字は余り違わない、発表に近い数字になるというお話でございまして、それは私もよくわかっておりますけれども、一九八三年、昨年の七月のアメリカの労働省が出しています「マンスリー・レーバー・レビュー」に、アメリカのイリノイ大学の平恒次さんという教授が、  「日本の低い失業率・経済の奇蹟か、それとも統計のしわざか」という論文を出しているのを御承知でございましょうか。その中で、日本の失業率はアメリカの尺度でいくと約二倍にふえるという主張をしているのでございますが、これをどうお思いになりますか。
  141. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 平教授の論文については、私ども承知いたしております。この論文の中におきまして日米の比較をいたしておりますが、基本的には労働力調査を使っているわけでございますが、ただ日本の労働力調査につきましては、三月の時点におきます特別調査を使って比較している、三月時点の比較であるということでございます。アメリカの定義に調整した失業率を試算をされまして、それによると、五十四年時点でございますが、日本の失業率、公表しております失業率が二・四六%であるわけでございますが、平教授の方法によって調整した失業率では四・五%になる、こういう御指摘でございます。  ただ、この調整をされました方法を申し上げますと、この教授の論文の中では、日本の方式でやっていくと失業程度が少な目に出る傾向がある。しかも調査を受ける人に対する質問項目も簡単である。したがって、三月時点で比較をするということでやっておられるわけでございます。五十四年の三月時点におきます日本の労働力調査の完全失業者は百三十五万人であるわけでございます。ここからスタートいたしましてアメリカ方式による調整をされているわけでございますが、新たに失業者に加えてきている層といたしまして、まず第一はレイオフ、アメリカでは一時帰休の人たちにつきましては失業者に入っておりますが、日本の場合も一時休業者十四万人でございますが、これを加えていらっしゃるわけです。ところが日本の場合は、御存じのとおり、一時帰休の場合はまだ雇用関係が継続しておりますので、私どもといたしましては、これは失業者の状態になっていないということでございますので、この調整方法として失業者に加えられる点については問題があるというふうに考えております。  それから第二点は、就職内定者、一カ月以内に就業する予定の人というのがアメリカの定義では完全失業者でございますが、日本の場合八十八万人、この五十四年の三月時点で八十八万人おりましたが、そのうち、その三月に学校を卒業する予定の者が五十六万人おるわけでございます。御存じのように、学校を卒業する人たちにつきましては、三月時点においてはまだ学生の身分でございますし、しかも四月には就職をすることが内定している方々でございますので、これを失業者に入れる、五十六万人の方々失業者に加えるという調整方法につきましては、私どもは非常に疑問を持っているわけでございまして、アメリカのように、学校を卒業してそれぞれの時期に個別に就職をしていく、その間求職活動をしているというような実態と比べまして、日米の学卒の就職のパターンが違っているという点につきまして、十分な御認識をいただいていないのではないかというふうに感じているわけでございます。  そのほか、非労働力のうち求職者の一部、約五十万人でございますが、これも失業者に加えるというような調整をとられております。一方、もちろんアメリカの定義に従いまして、日本の公表している完全失業者の中から三十七万人程度失業者から差し引くというような操作等も加えられております。    〔理事遠藤政夫君退席、委員長着席〕  以上のように、この論文で調整をされる方法につきまして、日米の就業の実態就職のパターンの違い、あるいは先ほども申し上げました一時帰休の性格の違い、それから三月という学卒、就職直前の時点での比較というようなこと等々を勘案いたしますと、この方法につきましては、率直に申し上げまして、実態を無視されているのではないかという印象を受けているわけでございます。先ほどの、国際比較につきましてはOECD等の基準に従ってやっているというのが、いわば各国の比較における一応の目安というふうに考えられるわけでございます。
  142. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは、日本の労働省の方から平さんに反駁をなさらないんですか。
  143. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) この論文を私ども拝見したときに、国内の雇用問題の学者先生方といろいろ議論して、国内の実態を十分理解されていない論文だなという議論はいたしておりますけれども、これはまあ外国の労働省の冊子でございますし、そういう意味で、私どもとしては公式的な反論を加えるとか、そういうようなことは特にいたしておりません。
  144. 中西珠子

    ○中西珠子君 その「マンスリー・レーバー・レビュー」は労働省の公式な雑誌かもしれませんけれども、イリノイ大学の教授の平さんに対しては、労働省としては反論なすった方がいいんじゃないですか。
  145. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 先生指摘の点を踏まえまして、今後検討さしていただきたいと思います。
  146. 中西珠子

    ○中西珠子君 いずれにいたしましても、失業者は確かにふえているということでございまして、昭和四十八年ぐらいに比べますと、殊に男性の四十五歳以上、五十五歳以上というふうな年齢グループについては三倍ぐらいにふえている、また、女子労働者につきましても、殊に中高年婦人失業者が三倍ぐらいにふえているというふうな状況でございますね。  それで、改正案の中に六十五歳以上の者は雇用保険の適用から除外するというものがございまして、それが衆議院における共同修正で、一応六十五歳定年でやめた人などは基本手当を支給するという点と、それからもう一つ、六十五歳以上で雇用された者は任意加入の道を開くということになったわけでございますが、この前御質問いたしましたときに、任意加入の道がせっかく開けたのでございますけれども、高年齢者継続被保険者とするというその措置については暫定的な措置であって、大体政令によって定める。その政令の内容はとお伺いしたら、三年ぐらいとおっしゃったわけでございますけれども、三年ぐらいの暫定措置ということでございますと、その六十五歳以上の人の任意加入の道は三年ぐらいたったらもう幾ら申請してもまた認可はしないということになるのかどうか。そしてまた、それは結局六十五歳以上はもう年金で生活ができるようになるから、六十五歳以上の人は雇用保険適用除外していいんだということなのか。そこのところをお聞きしたいわけでございます。  六十五歳は引退年齢と考えることについてはこれは私は異論があるんです。と申しますのは、やっぱりこれは個人差がありまして、働きたい意欲を持ち、また能力も持っている人については、憲法に保障されている勤労の権利というものも尊重するという意味も含めて、その雇用機会をつくってあげて、そして働ける道を考えてあげる。また、就職した後失業した場合には、ただ一時金として五十日分の高年齢求職者給付金を与えるだけというふうなことではなくて、やはり基本手当も与えるというふうにしていただきたいと思うわけでございますけれども、一応三年間の暫定措置になすっているのは、まあ厚生省の方で六十五歳以上は年金で老後の生活保障はするから大丈夫だというふうなお約束でもあってなすっているのでしょうか。それとも、もうなるたけ年をとった者は余り求職をしてくれない方がいいんだ、そうしないと失業者がふえてしょうがないというふうな、労働力供給の抑制策としてなすっているのか。そこのところをちょっと労働省と厚生省と両方からお伺いしたいと思うのでございますが、いかがですか。
  147. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 今度衆議院の与野党話し合いの上で修正になりました形でこの任意加入制度が設けられたわけでございますが、これは六十五歳を超えてそこで離職をされるという方について保険の適用をそれ以降はしない、こういうことに伴いまして、これに対するいろいろ激変緩和の暫定措置としてこういう制度が設けられた、こういうことでございまして、いろいろこの間におきます与野党の折衝経緯等も踏まえまして、私どももその期間は三年間程度が適当ではないか、こう考えておるわけでございまして、これにつきましては特に厚生省との話し合いであるとか、あるいはまた年金制度の成熟の問題、これとは直接関連して決められたものではございません。  なお、この六十五歳以上の方につきまして、私どもがこういう方たちは早く引退してくれと、そういうようなことで申しておるわけでは全くなくて、六十五を超えて就業しておられる方、この方がおやめになって、その後安定所へ求職活動においでになる、そしてそこで保険をもらわれる、こういうケースについて、一般的なパターンとして申し上げますと、十カ月あるいはそれ以上にわたってこの保険をもらわれて、それをもらい終わられますとそこでリタイヤされる方が多いとか、あるいはまた、そこでもっと軽い仕事、あるいはフルタイムの雇用でない、そういう形に求職の方向を変えていかれる方が多い、そういう実態に着目をしてこういう制度を設けたわけでございまして、六十五を超えられた方でなお引き続いて就職をしたいという方につきましては、それがフルタイムのものでなくとも、例えば一日置きであるとか半日交代であるとかいうようなものであっても、これはまた各安定所はもちろんでございますが、市単位に設けてございます高齢者相談室であるとか、あるいはまた厚生省でやっていただいております高齢者の無料職業相談所であるとか、そういうようなところでのそういう就職促進のシステムというものはあるわけでございますし、また、働きたいときに働きたい、こういうような希望の方もたくさんございまして、そういう方については、シルバー人材センターというものを今全国主要二百二十二の都市において設けておる、こういうことでございまして、決して高齢者切り捨てではなくて、六十五歳以上の高齢者方々のそういう就労希望というようなものに合わせながらの対応をしていきたい、こういうことでやっておるものでございますので、その点についての御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  148. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) ただいま労働省の方から御答弁がございましたけれども、厚生省といたしましても、今先生の言われました暫定措置の期間というものとそれから年金保障の充実との間には特に関係はないというふうに考えております。  私ども、現在国会の方に年金改正法案を提出させていただいておりますけれども、それで現在、衆議院社会労働委員会に付託されたところでございますが、これは二十一世紀の前半の高齢化のピークを迎えます非常に厳しい時代におきましても、なおかつ公的年金制度というものが長期的に安定した、かつ公平な制度をつくる、今から準備するということで法案をお出ししておるわけでございます。したがいまして、二十年後、三十年後先の安定した制度をつくるという趣旨でございまして、当面数年の間のどうこうというようなことではございませんので、一応申し添えさせていただきます。
  149. 中西珠子

    ○中西珠子君 私は、厚生省はこう、労働省はこうというふうなことで、それぞれの所管の社会保障の、殊に社会保険ですけれども、所管のものをそれぞれお考えになって、それぞれでなさるということではなくて、社会保障というものはやはり全般的に整合性がなければいけないと考えるものですから、このような御質問を申し上げたという理由の一つでもございますが、三年間の暫定措置というのはやっぱり再考していただいて、暫定措置ではないようにしていただきたいと、強い要望を披瀝いたします。  中央職業安定審議会の答申の中にも、「高年齢給付制度については、当面の問題とは別に、将来の年金制度の整備をまって、これとの関連であらためて制度を考えること。」、改めて制度をお考えになるという意味での暫定措置ならば結構なんでございますけれども、とにかく暫定措置としてやっておいて、あとは任意の加入というものも許さないことにするということであるならば、少し苛酷に過ぎないかというふうに考えるわけで、社会保障はそのどの部門においてもやはり整合性を持ったものにして、国民のやはり福祉のために少しでも役に立てていただきたいと考えるわけで、このような御質問をしたわけでございます。  雇用対策法では、質的な量的な完全雇用を目指して、雇用確保のための総合的な政策の策定を、それと実施を国に義務づけておりますけれども、完全雇用の達成のために、やはり中長期的な産業経済政策というものが効果的に展開されなくてはいけないし、その一環として積極的な雇用対策というものを展開していただきたいわけでございますけれども、現在の中曽根内閣の産業経済政策というものは、どうも完全雇用政策からはほど遠いように思われてなりません。公共投資の抑制とか社会保障給付の切り下げ、人勧凍結、それに続く人勧不完全実施などによる民間賃金の抑圧など、そういった面からも国民の消費、購買力は減少しておりますし、内需の拡大というものが全然進んでいないというふうに思われます。五月の倒産件数も史上最高ということで、景気の回復はまだまだ進んでおりませんし、有効求人倍率もO・六四ということで低迷を続けております。  このような状況の中で、完全雇用達成のためには政府としては具体的にどのような経済政策を展開するおつもりなのでしょうか。八〇年代の経済政策の指針というふうなものをお出しになっているし、それからそれに基づいた雇用対策基本計画におきましては、やはり六十五年度には二%の失業率にするというふうなこともおっしゃっておりますけれども、これまでの政府経済見通しと実績との間の乖離というものはずっとひどく続いておるわけでございますし、また、失業率も、見通しよりもいつも悪化していて、諸外国に比べればまだいいということは言えるかもしれないけれども、日本としては、統計始まって以来の失業率の悪さだということでもございますし、これをいかに解消して完全雇用達成に向かって具体的な経済政策をおとりになっていくつもりなのか。経済企画庁にお聞きしたいと思います。
  150. 里田武臣

    説明員里田武臣君) 最近の経済、特に雇用情勢は、先ほど先生指摘になられましたように、有効求人が〇・六四であるとか、あるいは失業率が百五十四万人あるというような状況でございまして、非常に厳しい状況でございますけれども、最近の状況を振り返ってみますと、例えば新規求人は昨年の三月以来上昇しておりまして、現在、前年同月比一二%近い上昇になってございます。それからまた、所定外労働時間というようなものも、製造業に限ってみますと一六・二%というようなことで非常に増加してございまして、雇用全般で見ますとやっぱり昨年の暮れから徐々に回復してきておるのではないかというぐあいに判断してございます。  こうした雇用の改善の背景としまして、やはり今私どもは景気が着実に回復してきているというぐあいに判断しておりまして、昨年の二月を底にして景気が輸出を主導に回復してきたわけでございますけれども、最近は設備投資もこれに加わってきておりまして、着実に回復している。この一―三月の求人を見ましても、御案内のとおりに着実な回復になっておるんではないかと思います。私どもは、これからこういう景気を着実に回復軌道に乗せていく、それで物価の安定を図っていくということが当面の政策の大きな課題だというぐあいに考えておりまして、政策も機動的にこういう状況を見ながら対応していかなきゃならぬというぐあいに考えてございます。  これと同時に、先ほど来労働省の方からるる御説明がありましたように、構造的な問題というのが最近の雇用情勢の底に大きく横たわっておるわけでございまして、こういう問題を単に需要管理政策ばかりで対応し切れない面がございますので、こういうのは産業政策なりそういうきめの細かい雇用政策というものをあわせ対応していくということが必要だと思います。  それで先ほど先生指摘のように、八〇年代の経済計画におきましては、六十五年に二%程度ということでございまして、とりあえず今年度の政府見通してはこれは二・五%ということになってございますけれども、昨年の実績は二・七%でございまして、私どももことしは二・五%を達成すればいいというぐあいにとても考えているわけではございませんで、一%でもこれを引き下げて必ず六十五年度までには二%程度経済成長を達成したい。そのためにも計画では四%ぐらいの経済成長を持続する必要があるということを指摘しておりまして、ことしもそういうことを踏まえまして四・一%の経済成長を掲げておるわけでございますけれども、現在の情勢から見ましても、これはある程度上回る形で達成できるのではないかというぐあいに考えております。
  151. 中西珠子

    ○中西珠子君 積極的な公共投資というふうな面ではいかがですか。
  152. 里田武臣

    説明員里田武臣君) 先ほど申し上げましたように、景気はある程度がなり着実な軌道に乗ってきてございます。それから、御案内のような財政の再建ということも非常に重要なことでございますので、私ども公共投資というものは、今年度の公共投資は機動的に対応するということでございまして、例年以上に特に不況の地域も配慮しながら公共投資の執行については弾力的にやるということをこれは閣議で決定されてございますものですから、そういう方向で善処してまいりたいと思っております。
  153. 中西珠子

    ○中西珠子君 景気が上向いてきたと、こうおっしゃるのですけれども、五月にも史上最高の企業倒産を記録しているわけですね。結局、有効求人倍率も全然よくなっていないという状況でございますから、やはり景気回復のためには効果的な政策を一日も早くおとりいただきたいと思うわけでございますので、これを強い要望として申し上げておきます。  それから、労働大臣には、雇用保険法改正に当たりましては、失業保険部門の手直しだけではなくて、やはり雇用保険のもとで行われている四事業、殊に雇用安定事業、雇用改善事業などが失業者の増加を防ぐためにこれまで相当効果を上げてきたのではございますけれども、一層の効果を期すために、この際、四事業の厳密な評価と見直しというものをやっていただきたい。雇用保険法は、失業部門の見直しだけではなくて、やはり全般的に抜本的な見直しというものをやっていただいて、そして、中長期的な、また総合的な、積極的な雇用政策というものを展開していただきたい。経済の変動にも、MEの進展にも、産業構造変化にも、地域的な不況にも対応し、また、女性の職場進出にも対応していく。また、労働力の高齢化にも対応した、本当に柔軟性があり、また、積極的な雇用政策の展開を図っていただきたいということを御要望したいと思うのでございますが、労働大臣の御決意のほどをお伺いしたいと思います。
  154. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 第五次雇用対策基本計画に沿って、中長期的展望に立った雇用対策充実、各種雇用援助措置の整備を積極的に進めたいと思います。
  155. 中西珠子

    ○中西珠子君 私が本会議で御質問申し上げたときには、四事業の見直しもやるとおっしゃってくださいましたけれども、御確認いただけますでしょうか。
  156. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 四事業を適切に見直し、積極的にひとつ進めていくということを申し上げます。
  157. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうもありがとうございました。  これで質問を終わります。
  158. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、前回のこの委員会の本法案の改定に対する質疑で、この改定内容が、客観的に見て、例えば日経連の要請に沿っているということだとか、あるいは、初めに国庫負担をどう減らすかというところから出発をして、それがすべてで、それからあれこれの改定に着手しているという本質があるということを指摘いたしましたが、その後の、本日の委員会の議論も含めて、やはりそうしたことは歴然として浮かび上がってきているということを改めて痛感をしております。  それで、先日も指摘しましたように、雇用保険法の目的は、結局雇用の確保と失業給付という二つの柱によって成り立っているということで、これらのことについてはもちろん大臣労働省当局もお認めになっているところでありますけれども、私は、きょうのこの本改正案審議に当たりまして、雇用の安定という問題について、雇用の確保という問題について、重要な問題に反しているケースで、労働者が大量に解雇されているという具体的な事例の二点について問題にしたいと思います。  まず初めに、ごく常識的なことをお伺いするようでありますけれども、突然の解雇、こういうものは労働者生活に大きな打撃を与えるということは間違いのないところだと思っておりますけれども労働大臣のお考えを初めに確かめておきたいと思います。
  159. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 突然の解雇というものが労働者にとって大変なシヨックであり、また、今後どうしたらいいかという意味で大変大きな問題であるということは御指摘のとおりでございます。
  160. 山中郁子

    ○山中郁子君 大臣にお尋ねしたんですが、大臣のお考えもそういうことであるというふうに承ります。  それで、指名解雇の問題ですけれども、企業再編、合理化などによる大量の指名解雇が大企業で行われたということは、一九五九年十二月の三井三池の事件以来現在まであったでしょうか。
  161. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 業績不振等によりまして雇用人員の削減が余儀なくされて、希望退職に応ずる者が当初の募集数に達しないということから、こういった大幅な指名解雇の通告に踏み切った事例、少数ではございますけれども、過去にあると承知しておりまして、例えば昭和四十年新東洋硝子、ここでは従業員は千七百名おりましたけれども、希望退職募集が予定どおりいかなくて、最終的には百三十名の指名解雇を通告したというような事例ですとか、あるいは昭和四十一年の鉄興社、ここにつきましても、従業員二千八百名おりましたのが、人員整理についての組合との協議がまとまらずに、二百名近くの指名解雇に踏み切った例、あるいは昭和四十一年における小野田セメントあるいは同じ年の不二越の問題、最近におきまして昭和五十三年でございますが、志村化工におきましても大量の指名解雇通告の事例がございます。
  162. 山中郁子

    ○山中郁子君 今御答弁のあった具体的な事例も含めまして、これはちょっとひとつ大臣にお答えをいただきたいんですけれども、指名解雇、とりわけ大量な指名解雇ですね、そういうことについては一般的に言って好ましくないことであるし、なるべく避ける方がよい、これはまあ当然なことだと思いますけれども、確認をさせてください。
  163. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) それはあなたのおっしゃるとおりですよ。
  164. 山中郁子

    ○山中郁子君 あらゆる回避努力を尽くすことがまず先決であるということについては、常識的に言っても当然でありますけれども、判例もその点で積み重ねられてきております。  例えば住友重機械愛媛製造所事件、松山地裁西条支部の決定。全造船玉島分会事件、岡山地裁決定。東洋酸素事件東京高裁判決。中身について一々詳しくは申し上げられませんけれども、そうした幾つかの判例でももうはっきりしております中身というのは、整理いたしますと四点にわたります。  一つは、整理、解雇しなければならないほどの経営危機に追い込まれていたかどうか、必要性ということです。二番目、整理、解雇を避けるためのあらゆる経営努力が行われたか、回避努力ですね。三番目、労働組合との話し合いが十分尽くされたか、労使協議の手続。それから、整理、解雇基準及び人選が、だれが見ても納得のいくようになっていたか。基準、人選の合理性。こういう点が実際の判例の上に成り立って現在通説になっていると思いますけれども、その点の御見解を伺います。
  165. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今触れられた四点は、最近における判例の傾向でございまして、お説のとおりでございます。一般的に社会的相当性を欠くような解雇は解雇権の乱用であるということで、判例的にも確立しているという状況でございます。
  166. 山中郁子

    ○山中郁子君 ところが、とんでもない指名解雇の事例が出ております。労働省も御承知だと思いますけれども、きょうはそのことで二つの具体的な事件を問題にしたいと思いますけれども、まず沖電気の指名解雇です。  沖電気というのは、御承知のように日本電気、富士通とともに通信機三大メーカーの一つだと言われております。電電公社や防衛庁などの官公需を中心に、交換機、無線電機やミニコンピューター、ファックスなどの製造販売。従業員は一万二千三百人、年商売上高約二千四百八十億円という大企業です。ここで大量の指名解雇が行われました。このことについて、労働省に解雇回避努力についての相談やあるいは雇用安定事業による雇用調整交付金の申請などがあったかどうか、これをまずお伺いいたします。
  167. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 私どもで担当しております雇用調整助成金制度の問題でございますが、沖電気につきましては、解雇が通告されました当時、五十三年の十月末でございますが、この電気半導体製造業につきましては、雇用調整助成金の対象となる指定業種の事業主にはなっておりませんでしたので、したがいまして解雇に先立ちまして休業、教育訓練等の実施についての事前届け出は、職業安定所の方には提出されておりませんでした。
  168. 山中郁子

    ○山中郁子君 あらゆる回避努力がされなければならないということでありますけれども、そうしたことについてのいろいろな御相談なども全然なかったわけですね。
  169. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 私どもの方に直接の御相談その他があったという点につきましては、特段聞いておりません。
  170. 山中郁子

    ○山中郁子君 沖電気は、五十三年の十月三十一日に約三百名の指名解雇が通告されました。うち七十一名が、現在争議団を結成して東京地裁など四裁判所で解雇撤回の提訴をして争われていますけれども、解雇―提訴に至る経過をごく簡単に述べてください。
  171. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 四十八年以降のオイルショック後、経営状況悪化したということで、会社側は五十三年十月十一日に千五百名の希望退職募集を提案いたしたわけでございますが、この希望退職募集に達しない場合には指名解雇その他の合理化提案を行ったわけでございます。組合側といたしましても最終的には会社提案を受け入れましたけれども、指名解雇を受けて拒否した方々が東京地裁等に提訴しているという状況でございます。
  172. 山中郁子

    ○山中郁子君 この解雇者の中で、妊娠中の女性、また夫婦二人とも解雇されたケースが幾つあるか御存じでしょうか。
  173. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 承知いたしておりません。
  174. 山中郁子

    ○山中郁子君 それでは私申し上げますけれども、この中で妊娠中の女性が三人、そして夫婦二人とも解雇されたのが三組もあるんですよ。ひどい話じゃないですか。これは今若干の簡単な経過のお話しもありましたけれども、実際には五十三年の十月十八日に希望退職を募集した、約千五百人ということでね。それで三十日に締め切って、そして三十一日には二百八十六名の指名解雇を出しているんですね。これはまさに電撃的な指名ですよね。だから結局事前から準備していたとしか思えない。常識的には、事前から準備していなければ、三十日に締め切っておいて二百八十六名もの指名解雇をその次の日にはっと出すなんてことはできないでしょう。これ本当に常識的に考えて、事前に準備していたとしか思えないじゃないですか――ちょっと、これは大臣の見解をお伺いしたいんですけれどもね。
  175. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 事実経過でございますので、その時点の推移が長かったか短かったか、この辺はそれぞれの企業の置かれた状態、あるいは組合側の対応等によって判断されるべきものでございまして、私どもが特に短かったというような判断をし得るかどうか。特にこれは法廷等で争われているような事案とすれば、その辺の判断を私どもが簡単に下せるかどうか、ちょっとその辺は問題かなというふうに思っております。
  176. 山中郁子

    ○山中郁子君 法廷の問題なんて全然関係ないんですよ。三十日に締め切っておいて、希望退職者を募って締め切っておいて、そしてもう次の日に三百名近い人々を指名解雇しているんですよ。その時間が短いと言えないんですか。そういうふうにして指名解雇してよろしいという労働省の姿勢なんですか。私は、ごく常識的にいってこれはひどかろうと、第一、そんなことをするためには事前から二百八十六名ですか、三百名近い人々をマークして用意していなければこんなことできないですよ。そうでしょう、大臣。そこを伺っているんです。だから、大臣の常識的な御見解をお聞きします。
  177. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 時間的には、一日のことですから大変早いですね。だけれども、その内容の価値判断は、私詳しいことを存じませんから、そこまで立ち入るわけにはいきませんが、まあ早いといえば早いですね。
  178. 山中郁子

    ○山中郁子君 やっぱり大臣、ちょっと真剣に考えていただきたいんです。常識的に言ったって早いですよね。価値判断も何もないんですよ。一番最初お認めになったように、労働者が結局そこでもう首切られるという、突然に解雇を言い渡されたら労働者生活が脅かされるという、そういう問題じゃないか。それはそのとおりだって大臣おっしゃいました。まさにそういう問題です。  それで、沖電気は五十三年十月に千三百五十人の指名解雇を含む人員整理をしましたけれども、翌年からまた大量に人を採用しているんですよ。そういうことは御存じでしょうか。七八年の十月、千三百五十人整理いたしました。その後五年ぐらいにわたってどのくらいの人数の新規採用をしているかということを御承知ですか。お示しいただきたい。
  179. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 時間が切迫しておりましたので、緊急に聞いたところでございますが、五十四年度におきましては新規学卒を六十二名、五十五年度以降、学卒採用を六百名程度採用しているという数字を聞いております。
  180. 山中郁子

    ○山中郁子君 私どもの調査によりますと、今あなたがお答えになったのと若干は違いますけれども、五十四年度、一九七九年八十八人。八〇年六百三十人。八一年五百人、これにプラスアルファがあるようです。八二年七百十四名。八三年約七百人。合計しますと、この五年間に実に二千六百三十二人にさらにプラスアルファが考えられるという、そういう大量の新規採用をしているんですね。それでその直前に千三百五十人の整理をしている。一体これは何でしょうか。これでは本当に人員整理が必要であったかどうかということは大変疑わしいことだと思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  181. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 解雇を行った時期と採用した時期に若干の違いがあるにいたしましても、基本的に解雇を行う一方で新規採用を行うということは、企業における雇用維持努力という面で好ましくない問題であるというふうに考えております。  しかしながら、本件の場合、指名解雇の時点における経営状況、あるいはその後の経営状況変化といったような要素等も考慮する必要があるのではないかというふうに考えております。
  182. 山中郁子

    ○山中郁子君 だって、その間に間隔ないんですよ。七八年十月解雇、そしてもう七九年の四月にそういうふうに採用を始めている。そんな状況で、あなたも最初にお認めになったように、やっぱりそのことについては本当に必要性があったのかどうかということは大いに疑わしいところなんです。常識的に考えてそうだというふうに思います。  それで今幾つかのことを申し上げてまいりましたけれども、これをまとめますと、解雇回避努力はされなかった、指名解雇者の中には妊娠中の女性が三人、共働き夫婦が三組、また定年直前の方だとか、一家の主柱である中堅労働者どもいる、本当に非情なやり方ですよ。その上、指名解雇をして人員整理した直後から採用を始めて、五年間に二千人以上、今申し上げました数字ですね、二千六百三十二人を上回る新規採用者を雇用しているんですね。利益も多く出していて、宮崎沖工場に二百億円の新しい投資をしたり、増設をしたりしている。  私は、今幾つかのことを申し上げまして、大臣もあるいは審議官もかなりの部分はお認めならざるを得なかったと思いますけれども、どこから見てもこの指名解雇は必要ではなかったんじゃないですか。そう言わざるを得ないじゃないですか。大臣労働者の利益を守るという行政をつかさどる大臣として、本当に心のこもった御答弁をひとついただきたい。私に対してだけじゃないですよ、労働者に対して。
  183. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 私、今お話は聞いておりましたけれども、それ以上の詳しい内容は存じませんが、それは急に大量解雇して、その後で、短時間のうちに大量採用するということは、ちょっと日本の終身雇用体制の中では常識的なものではないと思いますね。しかし、それ以上の内容は、私もそれ以上詳しく存じませんで、今裁判で係争中ですから、それ以上の判断は裁判所にお任せをしなければなりませんけれども雇用の安定ということについては、これはやはりもう企業の社会責任としてでき得る限りの努力をしなければならぬ、また労働省もそういうふうに指導をしていくのが本筋だ、これは原則だと思います。
  184. 山中郁子

    ○山中郁子君 少なくとも解雇回避努力がなされていない、こういうことも含めて、今大臣もおっしゃいましたけれども、やはり労働省としても問題視し、行政指導を強めていくというお立場に立っていただきたい。少なくとも行政の責任の一端を御認識いただいて、むちゃな、常識的には考えられないこうした労働者に対する不当な解雇、こうしたものについてのきちんとした対応と指導を強めていただきたいと思いますけれども、お答えを伺います。
  185. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 職業安定機関におきましては、大量雇用変動の届け出等で、雇用の大幅変動がある場合につきましては、職業安定機関としてもできるだけ事前にキャッチして、雇用安定の努力について雇用調整助成金等の活用、その他雇用の維持等についての指導助成等も、今後とも続けてまいりたいというふうに思っております。
  186. 山中郁子

    ○山中郁子君 私、今ここで問題にしたいもう一つのケースは池貝鉄工です。神奈川に工場がありますけれども、大手の工作機械のメーカーです。これも四十四名が指名解雇され、現在三十八名が一年間解雇撤回で闘っています。この経過をやはり簡潔で結構ですけれども、お示しください。
  187. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 五十八年四月、会社側は経営再建のため、労使協議会を経まして、当時の従業員約千二百名の中から三百名の希望退職を募集すること等を内容とします提案を従業員に対して提示いたしたわけでございます。それで、組合は、希望退職者の募集に応ずる方針で募集条件等について交渉した結果、五月十八日に、臨時組合大会の議決を経て労使協定を締結したということでございます。その後同年六月九日、会社側は希望退職者の予定数が確保できなかったということで、四十四人の指名解雇を行ったという経過でございます。
  188. 山中郁子

    ○山中郁子君 このケースについても、解雇回避努力ということをお認めになれますか。また、労働省に御相談がありましたか。
  189. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 相談があったという事実については聞いておりません。
  190. 山中郁子

    ○山中郁子君 これも本当に同じケースなんですね。  それで、私はここで特にちょっと問題にしたいのですけれども局長伺いますけれども、希望退職というのは常識的に言えば、常識的にというか、普通、とにかく退職金の一定の割り増したとか、そういう一定の優遇条件をつけて退職希望者を募るということであると思いますが、それは間違いないですよね。
  191. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 必ずそういう割り増しをつけなければならぬとか、そういうものではありませんが、一般的なケースとしては、希望退職募集をいたします場合には、一般の退職の場合に比べまして何らかのプラスアルファをつけるということが、比較的そういうケースが多い、こういうことは言えると思います。
  192. 山中郁子

    ○山中郁子君 要するに希望退職というのは退職する希望者という意味ですよね。その場合、条件が若干優遇されるということでもって退職を希望するということですよね。大臣もそうでしょう、希望退職というのはそういうふうに理解されていますでしょう。
  193. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) もともと名前は希望退職ということですが、それは、本来やめたくないが、この際ぜひやめてほしいんだと、だから会社がやめてほしいという人数に応じてやめるということで名のり出てくれと、こういうようなニュアンスのものとして一般に希望退職募集、こういうことが言われておるということでございます。
  194. 山中郁子

    ○山中郁子君 どっちにしても、実態的には、一定の条件があって、必ずしも希望しないけれども希望退職というふうな形でやめるというふうなケースが実際にはたくさんあります。いずれにしても若干の優遇措置があって、大体大方の場合退職金の割り増しなどは入っていると私思いますけれども、そういう場合に退職をするということを自分が意思表示するということですね。そういうものであるということは常識的に考えていることです。  ところが、労働省は御存じないはずないと思うんですけれども、この沖電気にしても池貝鉄工にしても、希望退職というのは全然違うんですね。そういうふうに言っていないんです。そうじゃないと言うんです、これ確実につまり、希望退職というのは本人が退職を希望する、その中には実際上希望しないけれども、若干優遇されるからこの際やめようかというふうなことが出てくるということも含めてでいいですけれども、そういうものではなくて、会社が希望する人をやめさせる、これが希望退職だと言うんですよ。――笑っていらっしゃるけれども、本当にそうなんですよ。  それで、御紹介いたしますけれども、池貝鉄工の「希望退職者の募集について」ということで公示をしたものを御紹介しましょうか。「募集対象者」、こうなっているんですね、「正規従業員、常勤嘱託及び臨時従業員。」、そして、「なお、次の各項目のいずれかに該当する人には特に退職を希望し、」――会社側が希望するわけですよ。「二項目以上に該当する人には、更に強く退職を希望する。」、本人が希望するんじゃないのよね、会社が希望するんです。「但し、業務上必要と認めた人を除くことがある。」、だから逆に本人が退職を希望しても、会社の都合でその退職は認めない。こういうことが公然と公示をされていて、それで下の項目でどういうことを言っているか。実に十八項目に上って挙げているんです。全部御紹介する時間がありませんけれども、例えば「他の人にくらべ能力の劣る人」、あるいは「今後の厳しい会社諸施策に耐えうる覚悟のできない人」、あるいは「その他、前各項に準じて会社に貢献する度合の少ない人」、そういうのをとにかく十八項目並べているんですよ。こういうのはまさに恣意的な判断でしょう。他の人に比べて能力が劣るって、だれが判断するのか。そういうのを十八項目も並べて、そして、このうちの一項目に該当する人には退職を希望する、会社側が退職を希望するんですよ。二項目以上にわたる人にはさらに強く退職を希望する。そして、現実に退職を希望する人があっても、名のり出る人があっても、会社の都合でそれを認めないことがある。沖も同じですよ。  そして、単にこういう事実だけじゃないんです。裁判の中で使用者側が、希望退職とは会社の希望する人に退職をしてもらうという意味だと、ちゃんとそう言っているんです、尋問に対して。今大量解雇が出ているこういう大企業でも、希望退職というものがそういうものであるということを御存じてしたか。ひどいものですよ、それは。
  195. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 事実関係を私ども正確にその辺についてはつかんでおるわけではありませんし、まさにその辺の事実関係についても裁判所なり地労委の場でいろいろ事実の確認が行われて、争われていることでございましょうから、私どもでその事実がどうであるということをなかなか申し上げにくいのでございますが、今先生のお話を伺っただけの範囲での判断としては、日本語の普通の使い方という意味においては、そういう場合であればまあ勧奨退職といいますか、こういう方はやめてくださいというのは、むしろ勧奨退職というような感じでございまして、希望退職募集というのとは、普通使われている用語とはちょっと違うんじゃないか、こういう感じでございます。事実関係は私もよくわかりません。ただ、先生の今の御指摘のお話を伺った限りにおいての話でございますが。
  196. 山中郁子

    ○山中郁子君 それはぜひ事実関係をよくお調べになって、認識していただきたいのですけれども、これちゃんとこういう公に出ている文書です。沖もそうです。そして、そういうところにこういうふうにずらずらと今申し上げましたような項目を並べて、会社側が希望する人に退職してもらうのが希望退職だと言って開き直っているんですよ。裁判の中だってそういうふうに陳述しているんです。  そういうことはちょっと常識的にいって違うということはいま局長もお認めになりましたけれども、実際は、単にこれだけじゃなくて、現実にこの人をやめさせようと思う人を、職制を大動員して連日のように肩たたき、肩たたきなんという生易しいものじゃないんですよ、実際の問題は。もう脅迫に近いものですね。そういうことで行われて、そして指名解雇。さっき言ったように、唐突に希望退職を締め切って、もうすぐ翌日に指名解雇を出すみたいなことで、それで最終的に指名解雇を通告されて、そしてもうその場からですよ、通告をしておいて、その場からもう自分の私物をまとめて工場から出ていけと、こう言って追い出したんです。これがこの大量解雇の実態なんですよ。  職場に憲法なしというふうに私たち随分いろんなところで言ってきましたけれども、一体これは何でしょうか。大企業だからといって労働者の基本的人権、憲法も労働基準法も何もかも踏みにじって好きなことやっていいと、そんなこと絶対ないですよね。私は、まあ事実をよく知らないからとおっしゃるならば、ぜひ事実を調査していただきたいと思いますけれども、あなたの方でもお調べいただきたいと思いますけれども、事実今申し上げましたようなことが現実に行われています。だから私は、沖の場合は五年間、池貝も一年超えますけれども、そういうことで労働者が闘っているわけでしょう。そこのところをやはり労働省が本当に労働者立場に立って、この大企業の本当にもう憲法も何もあったもんじゃないというやり方について、本当に毅然とした態度での行政指導、そうした行政の態度をとっていただかなければならないと思います。こういうことが、判例の中でも積み重ねられているような、要するに合理性がないということ、労働省もお認めになって今通説となっている、そういうことも含めて、あるまじきことであるということについて、この解雇の不当性、それから反常識的な、もう全然非常識な実態、こういうものは明白だと思いますけれども大臣の御所見を、感想をぜひお伺いしたいと思います。
  197. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 今あなたからその事実関係の一端を伺いましたけれども、全貌を知っておるわけでもございませんので、それはやっぱり、その価値判断というものは、少なくとも裁判所で係争中でありますから、それを見た上で私ども判断をしたいと思っております。
  198. 山中郁子

    ○山中郁子君 裁判所の係争は係争で結構です。私は、今いろいろ申し上げました。それで、そういうことはやっぱりあってはならないことだし、裁判になっているんだからもう労働省は傍観ということではなくて、実際の問題としてそういうことはあってはならないという立場で血の通った労働行政に取り組んでいただきたい、だって、既にこの二つの事例だけだって百名を超える労働者が、妊娠中の女性や夫婦とも首切られているというふうな状況の中で皆さん闘っていらっしゃる。それはやっぱり働く権利、この不当な大企業の攻撃に屈服していったら人間としての存在がなくなるからです。人間、労働者、虫けらじゃないという、そういう労働者のかたい決意によって裁判闘争だって闘われているんです。労働省がやはり労働行政をつかさどる者としてそうしたことにもっと真剣に、本当にそんなひどいのか、それじゃよく調べてみなきゃならぬというふうに受けとめていただかなければ、労働省は一体何のためにあるのかということになります。そこのところは、裁判は裁判で、私は裁判の問題はとやかくきょう言えとは申し上げませんけれども、もちろん当然のことながら。ぜひともそこのところの基本的なお立場をお示しをいただきたい。これは心から私は訴えるものですけれども大臣いかがでしょうか。
  199. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 価値判断は別として、いろいろな労働行政の今後の推進のためにも、よく事情を調べて勉強の資料にしなさいというようなことについては、それは私どもとして勉強もいたします。
  200. 山中郁子

    ○山中郁子君 やはり労働省として可能な努力を今のお立場でもって具体的にされるべきであると思います。こうしたことがまた次々と出るということがあってはならないわけですから、そういうことを肝に銘じていただきたいと思います。重ねてそのことは要望しておきます。  こういうむちゃな解雇などで結局雇用保険受給者もまたふえる、それであなた方の言う雇用保険財政悪化というものにもまたつながってくるということになってくれば、やはりこうした大量解雇などを回避する努力の方がまず先決だと言わなければならないと思います。  そこで、きょうはもう余り時間が残っておりませんので、本法案に具体的に関係した点で一点だけ伺いたいと思います。  私は先回も、またきょうの質問の冒頭でも申し上げましたし、また他の委員の皆さん方も幾つも指摘をされましたけれども、要するに、初めに国庫負担削減という目標があって、そしてそれを失業者に対するしわ寄せ、犠牲を強いるということでつじつまを合わせるというところが大きな問題だし、また本質だというふうに思います。そのために大変無理のある分析をしている。もっと言うならば、恣意的な誘導的な分析をしているというふうに思うんですよね。  例えば、労働省が提示をしております「雇用保険制度改善の考え方」ということで資料を出されておりますけれども、その就職率の低下、受給者就職率の低下ですね。これでもって三ページの「(参考5)就職率の低下」というところで受給者就職率が低下しているんだということで給付制限ですね、その問題の理由にしているんですけれども、これは実際問題として有効求人倍率も非常に低下してきているんですね。本来ならここに有効求人倍率の表もつけて、そしてそれとの関連での分析もしなければ、このことだけで就職率が低下しているから給付制限をあれすれば、追い出し策ですね、失業者の追い出し策みたいな形でこういう給付制限延長ということの理由にできない結果になるということも出てくるんじゃないかというふうに思います。  それで、有効求人倍率の変化と、こうした受給者就職率の変化、こういうものの関連での分析というのがされているんでしょうか、そのことかちょっとお尋ねをいたします。
  201. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) その資料でお示しをしております就職率の変化でございますが、昭和五十年当時以降は全体的に有効求人倍率が低い状態が続いておるわけでございまして、昭和四十九年は〇・九八でございましたが、オイル・ショックが始まりまして、昭和五十年は〇・五九、そして昭和五十七年は大体同じような水準が続きまして〇・六〇というようなことで、昭和五十年以降は大体〇・五から〇・六前後を推移しながらきておるわけでございますが、この間におきまして、一般求職者の就職率は四十九年が三九・九%、そしてまた五十七年というところをとりましても三九・〇%というようなことで、大体一般求職者については四〇%前後の就職率が続いておるわけでございます。  一方、その間におきまして雇用保険受給者就職率が急速に低下をいたしておりまして、昭和四十九年には一般求職者とほぼ同じ四一%、こういうような状態でございますが、その後逐年それが低下をしてまいりまして、昭和五十七年には九・七%という一〇%を割るような水準になってきておる、こういうことでございまして、この間におきまして、こういう雇用情勢がオイル・ショック等の関係で非常に厳しい状態が続いた、こういう背景、そしてまた、求人倍率の動向というものが多かれ少なかれ就職率というものに影響を与えているということを否定するつもりは毛頭ございませんが、それにしても、この間一般求職者の方はとにかく四〇%前後の就職率が続いておる。にもかかわらず雇用保険受給者の方は、この間四〇%程度から一〇%を割るようなところまで就職率が落ちてきている。こういう関係でございます。その点を一つ問題として指摘がされておる、こういうことでございます。
  202. 山中郁子

    ○山中郁子君 転職の場合に一般的に賃金などの労働条件が低下する、そういう条件の中で、一般の求職者の就職率と受給者就職率、これはもう同列で対比できないということは当然だと思いますが、その問題はおくとしても、私が先ほど申し上げましたように、求人倍率との関係は当然ありますでしょう。これはもう認めるでしょう。だって四十九年で就職率四一・二%が五十七年で九・七%に下がった、こういう資料をお出しになっているわけですよね。しかし、求人倍率のところを見ますと、この四十九年は〇・九八、ほぼ一ですよ。ところがずっと下がってきているわけでしょう。そういう有効求人倍率との関係での比較分析、そういうものを抜きに、ただ一般の求職者と比べて雇用保険受給者就職率が減ってきている、したがって、失業保険をもらうだけもらってという傾向なんだから、そういうことで早く就職させるために給付制限を強化すると、そういうことでは本質的な分析が成り立っていないじゃないか、そこのところを私は問題にしているんです。  だから、余り細かいことをやりとりする時間はありませんけれども、ぜひはっきりさせておきたいのは、いずれにしても有効求人倍率の変化関係があるし、そのこととの関係で分析をしなければデータとしては非常に弱いものである。もっと言えば恣意的なものだと言われても仕方がないではないか。ここについての御見解はいかがですか。
  203. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 先生のお持ちになっている私どもでつくりました資料では、そういう逐年の有効求人倍率を並行して載せていないということでございますが、もちろん、この間におきます有効求人倍率の変化とそれから一般求職者の就職率の変化、そしてまた雇用保険受給者就職率の変化、こういったものは十分見ておるところでございます。  ちなみに申し上げてみますと、昭和四十九年の段階では、有効求人倍率はオイルショック直前ということで〇・九八でございます。この時点での一般求職者の就職率は三九・九%、そしてこの時点におけるマル保受給者就職率が四一・二%、こういうことでございます。  その後におきまして五十年になりますと、オイルショックがもろに効いてきまして、有効求人倍率は〇・五九、こういうところに落ちてまいります。この時点におきます一般求職者の就職率は四四・九%という数字でございまして、雇用保険受給者就職率は二二・二%、こういうことでございます。  その後五十一年、こういうところになりますと、ここで少しオイルショックが緩和されまして〇・六四倍の求人倍率になります。この時点では、一般求職者の就職率は四〇・一%、こういうことでございまして、またマル保受給者就職率が二二・〇ということでちょっと落ちてまいります。  今度は五十二年に入りますと――
  204. 山中郁子

    ○山中郁子君 簡潔にしてください、時間がないんですから。その資料ありますから、わかりますから。
  205. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) はい。  それでは、その間にもう一つの時点としまして、五十四年に〇・七四という数字に有効求人倍率が上がってまいります。この時点での一般求職者の就職率は四三・一%ということでちょっと上がるわけでございます。しかし、雇用保険受給者就職率はこの時点で一三・四ということで、前年一三・二でございますから、ちょっと、コンマ二だけ上がっておりますが、そういう一三・二だとか四だとかいう低い水準でございます。  さらに翌年になりますと、一般求職者の方は四二%ですが、雇用保険の方は一一・三、こういうような形で下がってきておるということで、こういう連関は見ておりますが、特にこの有効求人倍率との関係就職率が、一般求職者についてはいずれも四〇%台ということで顕著な動きはございません。しかし、マル保受給者については、この間におきまして有効求人倍率の動きというものに必ずしも連動しないで、ずっと年次的に急速な低下傾向が続いておる、こういうことが言える、こういうことでございます。
  206. 山中郁子

    ○山中郁子君 それは数字を一つ一つおっしゃっただけであって、私はそれとの関連での分析がないじゃないか。それで、一般求職者の就職率との関係だけで就職率が減っている減っているということで給付制限を強めるということは、そういうことをしたいために恣意的にそういうデータだけを取り出してきている、だって有効求人倍率は現に減っているわけですからね、実際に。それとの関係の分析がないじゃないかということを申し上げているんです。  それで、もう一つそのことについて申し上げたいのは、中央職業安定審議会雇用保険部会報告書にあるのですが、また、あなた方もこの法改定についてその背景にしているんですが、「また、自己都合退職者に対する給付制限期間が一カ月と短いことから、安易な離職をさそう結果ともなっている。」と、こういう指摘があるんですね。この部会報告の十ページです。  それで、これは何か調査なすった根拠があるんですか。つまり、給付制限期間が一カ月だから安易な離職を誘っているんだという何か調査結果をお持ちなんですか。
  207. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この点につきましては、受給資格の決定を受けられた方の離職理由の内訳を見ますと、解雇されてこの保険の受給という形になられる方が平均で二割弱、特に二十九歳以下になりますと一割弱、こういうようなことでございまして、逆に自己都合によって退職した方は平均で六割強、二十九歳以下になりますと八割強を占めておる、こういうようなことであり、また自己都合によって退職された方は給付を満額受け終わるまで就職をされない、こういうような方の割合が高い。そして、給付を受け終わった後に比較的短期間就職されるというような状況、こういうものについてそういう分析がなされておる、こういうことでございます。
  208. 山中郁子

    ○山中郁子君 だから私が今質問したのは、一カ月という給付制限期間が短いから安易な離職を誘う結果になっていると、こう断定しているんですよね。そういうふうに断定する資料があるのか、調査があるのかということを伺っている、局長の御答弁ではそれはないですね。推論の上にまた推論を重ねて、こういうことだからこういうふうになるだろう、こうだからこうだろう、こうなっているわけでしょう。実際問題として、一カ月だから安易な離職を誘う結果になっているというふうなことを言うならば、そして実際一カ月から三カ月に給付制限期間を延ばすということは、現実に今、初回受給者数及び給付制限件数の推移ということで労働省でお示しいただいた数字がありますけれども、五十七年で六三・六七%というかなり高い比率になっているんですね、一カ月で自己都合退職者の場合。だからこれで三カ月になったら実際問題としてどのくらいになるかということは容易に想像できると思うんです、給付制限率がですね。ほとんど受給できなくなるということにつながる危険がある。したがって、私はこの前保険あって給付なしということにもなりかねないと申し上げましたけれども、そういうことにつながりかねない重要な改定を、今申し上げました何の調査もない、また客観的で合理的な根拠もない、かなり恣意的な断定とか推論とか、そういうものによって引き出してくるということは、この問題一つとってみても、いかに雇用保険法の今回の改定というものが、財政上のつじつま合わせ、国庫負担の削減、そういうことが第一義的にあって、それを失業者労働者の犠牲でもってつじつまを合わせていくということになるかということが一層浮き彫りにされてくるというふうに思います。  私は、今申し上げました、例えばこの部会報告における一カ月というふうに給付制限期間が短いから安易な離職を誘う結果になっているんだということを言うならば、そしてそれを理由にして給付制限三カ月という改定が出されている、そのことなどを理由にしてね。だとするならば、やはりそれを納得させる合理的な客観的な調査、そうしたものに基づくデータ、そういうものが示されなければならないということを考えております。  もう時間になりましたので、きょうこれ以上の質問ができませんけれども、そのことを強く重ねて申し上げ、指摘をいたしまして質問を終わります。
  209. 下村泰

    ○下村泰君 ただいま審議中の法案に対しましては、いろんな委員から、いろんな角度から質問をされております。幸か不幸か私はいつも一番最後でございまして、聞くことがだんだんなくなります。したがいまして、聞く数は少なくまいります。三点ぐらいに絞りたいと思います。よろしくお願いします。  行政管理庁の五十七年五月の「パートタイム労働者等の労働条件の確保に関する実態調査結果報告書」というのがございます。これを拝見いたしますと、行管庁が十六都道府県内の六百八十事業場を抽出いたしまして調査されたんだそうですが、一日の所定労働時間の四分の三以上または一カ月当たりの就労日数が二十二日以上となっているパートタイムの労働者の中で、雇用保険に加入していない例が二百九十二事業場、四二・九%ある。それから、一日七時間以上となっている例が三百九十四事業場。つまり、先ほど言われた、労働省がこれが大体パートタイムの基準であるというのをはるかに超えている労働時間をしているところが三百九十四事業場あって、しかも雇用保険に加入していない例が二百九十二事業場ある。こういうふうな例が出ておるのです。  これは何なんでしょうかね。雇い入れ側が保険料を払うのが嫌で加入をさせないのか、それともそのパートタイマーでお勤めになっていらっしゃる方が、少しでも銭を取られるのが嫌だと。税金を取られるのでも、七十九万ですか、今度は改正されますね、しかし以前は七十九万です。そうすると七十九万から一円でも出れば税金を取られる、だからそこまででとめておく。極端に言えば七十八万九千九百九十円でとめておく、こういう人もいますわな。事実、身体障害者の方でお仕事をしている方でも、ある程度の決められた年収があって、それをオーバーすると手当もいただけない、年金もいただけないというところから、ある程度働いたらそこでとめるという方たちもいたわけです。過去におりましたね。私もそれは厚生省の方のときにいろいろ伺ったこともありますが、労働省の方でも伺ったことがあります。人間だれしももらったものから少しでもへずられるのは嫌だというのが感情なんですけれどもね。  これ、労働省の方ではどういうふうにつかんでいますか。パートタイマーの方が少しでも払うのを嫌がって雇用保険に加入しないのか、あるいは事業主の方が出すのが嫌で雇用保険に加入させないのか。どういうふうにつかんでいますか。
  210. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 実は、雇用保険制度は、賃金を得てそれで生活している労働者が、失業によって賃金を得る機会を失った、こういう場合にそれを補てんじて生活の安定を図ることを目的とした制度であるわけでございまして、臨時内職的に就労するにすぎない、あるいはみずから得た賃金によって生活するのではない、こういう人についてはこの制度になじまないものでございます。したがいまして、いわゆるパートタイマーと呼ばれる方につきまして、これ、就労実態はいろいろでございますが、一定の基準を設けて被保険者として取り扱う、あるいは取り扱わない、こういうようなことを決めておるわけでございます。  そういう意味におきまして、現在パートタイマーと呼ばれる方について保険に入っていない方については、その理由はいろいろございまして、我が方の基準で決めております一週間の労働時間というものが、これが同種の業務に従事する通常の労働者の所定労働時間のおおむね四分の三以下であるというようなことであるとか、あるいは二十二時間以下であるとか、こういうような方についてはこれはそもそも適用をしていない、こういうことが一つございます。それから、名前はパートタイマーでも、実際には一般の方と同じように八時間前後働いておられる、毎日働いておられる、こういう方であれば、これは我が方としては、適用労働者として扱っていかなきゃならぬのですが、これがまた今先生おっしゃるような事情で、保険料を取られるだけむだであるというような形であえて保険の適用者にならないという方もありますし、それから事業主の方が、パートだから一般的に保険の適用はないんだということで、八時間ぐらい働いておられるにもかかわらず、被保険者としての資格取得の手続をしない。そういったような形で、いろいろその辺パートについて適用になっていない理由として、大きなものとしてそんなようなものが考えられるわけでございます。
  211. 下村泰

    ○下村泰君 安定局長労働省も安定局長ぐらいの職になりますると、いろんな活字を見ても余り驚かない。読んでわかる。ところがパートでもって、ちょっとした時間があるからちょっとした仕事をして、ちょっとしたお給料をもらってくるんだというような御婦人方というのは、これ活字を見ると目玉が痛くなるか、頭のしんが痛くなるかという人が多いんですよね。だから、毎年毎年税務申告というときに税務署の窓口が黒山の人になるのはそれなんですよね。  私は、目黒の税務署が私の担当なんだが、担当というのはおかしいね、私の所轄です。お世話になっているんです、目黒税務署に。その目黒税務署の総務課長が、先生、国会で何とかしていただけませんかと言うんだ。何だと言ったら、税務署員がわからぬというんですよ、あれ。税務の書類が。もっと簡略になりませんか。税務署の総務課長にこう言われたんじゃ私、立場がないですよ、これは。そのくらい難しい、あれは。ですから税務署員といえどもそのたびに、毎年毎年講習を受けるんですよね、中央の方から来られて。ことしはこうなる、ああなる、そうして説明してもらわなければ税務署員ですらわからない。  これが一つのいい例で、例えばいろんな契約の書類があっても、今も街頭でやっていますわね、いわゆるキャッチャボートみたいのがいて、一生懸命若い人をとっつかまえてちょこちょこと何か話をして、うっかり判を押すとそこに難しい契約条項が書いてあって、結局はわからないで、あげくの果ては涙をのむ。これと同じような感覚というのは奥様方にあるわけですよね。  ですから、その事の理をよく説明してやれば、なるほどそういうものか、じゃあ雇用保険に入った方がいいんだという感覚にもなるわけですね。ところが、今局長もおっしゃったように、いろんな時間でお勤めしている人がいますわね。三時間で帰る人もいる、四時間の人もいる。あるいは一般の労働者と同じように長い時間労働している人もいる。こういう人はまた別でしょうけれどもね。そういうばらつきはあるんですけれども、どうなんでしょうか、労働省として、殊に雇用保険への加入促進といいますか、そういう方法をおとりになるおつもりはありますか、ありませんか。
  212. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 実はパートタイマーの雇用保険の適用の問題につきましては、中央職業安定審議会でこの雇用保険法改正問題が論議をされました際にもいろいろ論議のあったところでございまして、これについては、基本的にはこういうパートタイマーの方でございましても、今申し上げましたように一般の労働者と比べまして労働時間が四分の三以上である、あるいは二十二時間以上である、こういうような一応の基準というものに該当する方については、やはり一層適用の促進を図っていくべきであるということで、私ども指摘を受けておるわけでございます。こういう方については、私ども雇用保険というものの適用を進めていく、こういう基本的な立場にあるわけでございます。  そういう意味におきまして、いわゆるパートという名前の一般雇用労働者というような方について、いろいろ漏れておるところがないのか、その辺は私ども十分適用促進に努めていかなければならぬところだと、そういった面での、また事業主に対しても、パートという名前でも一般の人と同じように働いている人はちゃんと雇用保険の適用をしなきゃいかぬのですよと、こういうやはり周知徹底というものを進めていかなきゃならぬというふうに考えておるわけでございます。
  213. 下村泰

    ○下村泰君 そういった数が的確につかみ切れないというのは、雇われる側にも非がありましょうし、雇う側にも大きな非がありましょうし、今コンピューターの時代でございましょう。ぱかぱかとはじき出せば大体全国的にどういうふうになっているかぐらいの数はすぐ出るはずですよ。それが不明であるというのはお互いだと思うんですよ、僕は。つまり、働きに行っている側も、働かせている側も、さほどまだそんな慎重に考えていないと思うんですね。その実態がこういうふうにいろんな面で出てきていると思うんです。  労働省もこの秋にパートタイム労働対策要綱、こういうものをまとめるというようなことが記事にもなっております。この中にも、拝見しますと、パートの増加につれて賃金、休暇、解雇などの労働条件をめぐるトラブルも多発しておりまして、正社員と同じ仕事をしているのに給料、賞与が段違いに低いとか、突如解雇され退職金も払ってもらえないとかというような苦情がたくさん出てきて問題になっている。これに対して労働省も、いよいよことしの秋にパートタイム労働対策要綱をまとめる、そして行政指導をするというふうに活字の上にはなっておりますけれども、大体労働省側としてのこれに対するお考えですね、これを聞かせていただければ幸いだと思います。
  214. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) いろいろな御質問にも出ておりますように、パートタイマーが、最近家庭の主婦層を中心にしまして著しく増加をしておるわけでございますし、また、今後とも増加傾向をたどっていくというふうに推測をされるわけでございますが、このパートタイマーの雇用の安定あるいは労働条件の確保、こういう問題につきましてはいろいろ問題がございまして、特に雇い入れに際しまして、労働時間だとか賃金だとか、こういったような労働条件の面で不明確であるということがパートの一つの大きな問題点として指摘をされておるところでございます。  このため、これまで就業規則を整備していただく、あるいはまた主要な労働条件、賃金とか労働時間とか、そういったようなものを書面で明示していただくよう雇入通知書、こういうものを普及することによりましていろいろパートの就業をめぐってのトラブルをできるだけなくしていく。あるいはまたパートタイマーのこういう増加傾向というものに対応いたしまして、パートを専門に扱いますパートバンク、こういうことでパート専門の職業紹介機関を増設するというようなことに努めてきておるわけでございまして、今後こういうパートタイマーの保護要綱、こういうようなものにおきましてはやはり雇入通知書の本格的な普及を進めていくというようなこと等を通じまして、労働条件の明確化を徹底していく、あるいはまたパート労働というものに対するいろんな指針とか政府の施策等を盛り込む、こういうようなことによりまして、こういうパートタイム労働対策要綱というものをつくり上げて、そしてこれに基づきましてパート関係労使に対する啓発指導を進めていきたい、こういうような基本的な考え方でおるわけでございます。  その内容については、今申し上げましたようなことに加えまして、やはりパートにつきましての超過勤務の場合どうするのか。例えば子供さんがあるので四時には帰らしてくれ、そういう意味でパートになっているんだと、そういう人について、きょう仕事が忙しいから残業してくれというような場面になると、これはまた今度は非常にパートの主婦にとっては大変なやはり問題でございます。そういうような問題等で、一体超過勤務というようなものを絶対にできない状況を抱えておる人なのか、いやたまには超勤をやれる状況にある人なのか、そういったようなところもはっきりさしていく。あるいはまた、年次有給休暇というものが、今毎週五日とか六日とか出てきている人については基準法ではっきりしているわけでございますが、週に三日とか四日とかというような方につきましては、年次有給休暇というものを基準法上どう適用するのかという点でなかなか問題はまだあるわけでございますが、少なくともそういう年休関係を一体どうするのか、こういうようなことなどもやはり雇入通知書などで明らかにしておくというような形で問題解消に努める。  さらにはまた、パートの問題は、実はこういう家庭の主婦だけではなくて、例えば六十歳を過ぎたような高齢者の方につきましては、これまた半日勤務であるとか一日交代勤務であるとか、そういうようないわゆるパート的な就労希望者というものもだんだん出てまいりますので、そういう高齢者についてもひとつパートタイマーであると、こういうような観点からのお取り組みも必要である、こんなようなことなどを総合的に頭に置きまして、関係労使、関係方面いろいろ意見を聞きながら、このパートタイム労働対策要綱というものの策定を進めていきたい、こんなことで今作業を進めておる段階でございます。
  215. 下村泰

    ○下村泰君 いずれにしても議員提案もなされているようですし、それから、こういうお仕事をしている人は先ほども申し上げましたように弱い立場の人たちなんですから、ぜひとも労働省がお役所としてこういう国民をいわゆるカバーする、守ってやるというような立場からもきめの細かい方策をお願いしたいと思います。労働大臣、ひとつそれに対して。
  216. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 下村さんの御意見も承っておりますし、各党からもパートタイムに対する対策ということは非常に真剣な御意見もございました。これはもう最近の大きな構造変化の中で社会的ニーズに沿って生まれた必然的な産物でありますし、この問題に対する対策ということは労働省としても非常に重要だと私は思っております。しかし、これが急に生まれたような状況もあり、またそれに携わる人たちの意識もあなたのおっしゃるとおり、それは今までの常用の労働者に比べれば低い点もあるでしょうし、使う方も至らぬ点もございましょうから、今局長がいろいろと数点にわたって御説明をいたしたと思いますが、そういう点をしっかり取りまとめまして、法律ではございませんけれども、ひとつ内容はそれに劣らぬような内容にして充実、指導を強化していきたいと思っておりまして、このパートタイマーに対する対策要綱、総合的なパートタイム対策というものを、今あなたのおっしゃったような秋口とは言わず、この夏にでも、八月中にでも至急取りまとめておつくりを申し上げたいと、こう思っております。
  217. 下村泰

    ○下村泰君 とにかく働いている人の中に、先ほども申し上げましたように、活字を見ただけで頭のしんの痛くなる人も多いんですから、どうぞひとつ余りわかりにくいのでなくわかりやすく、しかもなおかつきめ細かに労働者を守ってくださるような要綱をまとめていただきたいと思います。お願いをいたしまして終わります。
  218. 石本茂

    委員長石本茂君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三分散会