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1984-04-07 第101回国会 参議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月七日(土曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員異動  四月六日     辞任         補欠選任      浜本 万三君     対馬 孝且君      小笠原貞子君     安武 洋子君      藤井 恒男君     抜山 映子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         石本  茂君     理 事                 遠藤 政夫君                 中野 鉄造君     委 員                 大浜 方栄君                 金丸 三郎君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 糸久八重子君                 対馬 孝且君                 本岡 昭次君                 和田 静夫君                 中西 珠子君                 安武 洋子君                 抜山 映子君                 下村  泰君    国務大臣        労 働 大 臣  坂本三十次君    政府委員        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省児童家庭        局長       吉原 健二君        労働大臣官房長  小粥 義朗君        労働大臣官房会        計課長      若林 之矩君        労働大臣官房審        議官       野見山眞之君        労働省労政局長  谷口 隆志君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        労働省職業安定        局長       加藤  孝君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        北海道開発庁計        画庁       宇山喜代人君        国税庁税部法        人税課長     谷川 英夫君        文部省初等中等        教育局特殊教育        課長       山田 勝兵君        農林水産省食品        流通局砂糖類課        長        高木 勇樹君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出、衆議  院送付)、昭和五十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付)、昭和五十九年度政府関係  機関予算内閣提出衆議院送付)について  (労働省所管)     —————————————
  2. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨六日、浜本万三君、藤井恒男君及び小笠原貞子君が委員を辞任され、その補欠として対馬孝且君抜山映子君及び安武洋子君が選任されました。     —————————————
  3. 石本茂

    委員長石本茂君) 昭和五十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算労働省所管を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 本岡昭次

    本岡昭次君 まず初めに、神戸精糖不当労働行為の問題についてお伺いします。  労働大臣所信表明の中で、今日の労働行政の重点の第一に「雇用対策積極的推進」を挙げておられます。そして、「雇用の安定を確保し、労働者が安んじて働けるようにすることは、国政の最重要課題であります。」と述べておられます。私もまさにそのとおりであると思います。私は、労働者が安んじて働けるようにするという労働行政の使命に立って、ここ数年来国会の中で論議をされている神戸精糖の問題の解決を初村あるいは大野歴代労働大臣に訴えてきたところでありますが、坂本労働大臣は、この神戸精糖問題に対してどのような認識を持っていただいているのか、労働者の心に通じる大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  5. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 御指摘の神戸精糖事件における紛争は、合理化について労使話し合いがつかないままに工場閉鎖全員解雇ということで、その後一年半に近い経過をしている事件でございまして、私としては、そこに働いておられる労働者皆様方雇用の問題、生活の関連に深刻な影響があるということにつきましては、非常に心配をいたしておるところであります。  しかし、これはやはり労使話し合い基本だと思っております。そういう意味で、労働省といたしましても何とかならないかということで、最近も、お話し合いを進めるようにという、労働省としても努力をしておるわけでありまするが、なかなかこれは難しい問題でありまして、早急な解決はつかぬまでも、これからもひとつぜひ努力を進めて、何とかしてやはり労使が一緒の土俵に乗って話し合いをされるようにというために、労働省としてもこれから一生懸命努力をしたい、こう思うております。
  6. 本岡昭次

    本岡昭次君 私も、労働大臣と同じような認識を持っています。なかなか難しいんです。しかし、難しいけれども、今大臣もおっしゃったように、労使話し合い基本であり、労使一つ土俵に上がって交渉という場で、話し合いという場で、とにかく問題を解決するというここに戻さなければならない、こう思うんですが、口では今のように大臣もおっしゃられるわけです。私も言えるんです。ところが、実態はそうでない、実態が伴わない、そこに私は大変もどかしさを感じ、それが高じてきますと労働行政不信に変わってくるわけでございます。  この神戸精糖問題は、昭和五十七年十一月十五日に神戸精糖が一方的に労働者解雇を通告して、その後労働者話し合いを求めても、企業は、全員解雇を認めなければ話し合いに応じないということで、三百二十人もの労働者を路頭に迷わせてしまいました。  それ以来、もう一年半が経過しようとしているんですが、その間企業側が使用者側が自主交渉労使話し合いの場を閉ざしてしまっている、その道を開こうとしない。労働組合は、裁判所あるいは地方労働委員会に訴えます。地方労働委員会も、今大臣がおっしゃったような立場に立って、とにかく話し合いなさい、話し合いなさいと幾ら企業に言っても、企業は頑としてそれに応じない。そして、裁判そのもの、あるいは審理そのもの企業側引き延ばし作戦によって、一向に問題の解決のめどがつかない。ことしじゅうに結審という見込みさえいまだについていないという状況であります。  結果として、労働者兵糧攻めに遭っているということ、雇用保険も既に切れてしまって、みんながアルバイトをしながら、そこで働いたお金をためて、そして共同でそのお金を分け合って、そしてこの問題の解決に当たろうとしているわけです。こういう状態にありながら、労働大臣が先ほどおっしゃったように、労使の正しい話し合いをとにかくやらしたいという努力も全く企業側には通じないわけなんです。  こういう状態の中で、一体労働行政とは何かという問題になってくる。もちろん、労働組合側に何も問題がなかったかといえば、問題はあったでしょう。企業の側にも問題があった。労働組合の側は、長い間の闘争の中で、自分たちの非であったことを、自分たちのやっぱり問題であったところは徐々に是正をしながら、混迷を続ける砂糖業界の中で神戸精糖がどうすれば企業再建ができるかというみずからの合理化案もつくって企業の側に出し、そして工場再建に向かって、自分たちの血を流すこともやはりこの際やむを得ないという、従来彼らが言葉にしなかったことでもやはりしながら取り組もうとしても、企業は、その問題に対してほとんど耳を傾けようとしないという状態が現にあるんです。  だから、大臣所信表明あるいは先ほどの私に対する答弁、美辞麗句と言えば失礼になるかもしれませんが、実態としては何の効果も、何の力も持ち得ない、そういう状態であります。だから、私は、もどかしさが変わって今労働行政への不信に陥っている、また私も国会議員として一体何ができるのだという問題に対して、自分自身に対するいら立ち、そして責任を痛感をしているようなことであるわけなんです。  こういう状況にあったときに、労働行政というのは、相撲の行司のように真ん中に立って、見合って見合って、はっけよい残ったと言うことが労働行政なのか。ここまで問題が進行したら、問題の解決をするためにどういう立場に立つべきかという問題を明確にしないと、本当に労働行政というようなものはあってもなくても同じなんだということになってしまいます。  企業の側は、国会本岡という国会議員がどんな大きな声でしゃべろうと、何をしゃべろうと、大臣がどのようにここで答弁しようと、そんなことは関係のないことなんだということなんです。もちろん、現在の仕組みは、市場経済競争原理の中で、資本主義社会ですから、もちろん企業企業活動は自由でしょう。しかし、自由であってもそこにおのずから社会的責任もあるし、おのずからお互いに守っていかなければならぬ規範もあるし、あるいは道義的なお互い立場というものもあるわけなんです。そういうことは全部無視されてしまっている現状、私はもう耐えがたい憤りを感じているのですね。  だから、先ほどの労働大臣のお言葉ではもう満足できない。いま一度労働大臣のこの問題に対する、私の今の質問を聞いた上での御答弁をいただきたいと思うんです。
  7. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 日本の労使関係というのは、全体から見れば、国際的な視野から見れば、非常にうまくいっている方だと私は思っております。しかし、たくさんの労使関係の中で、大きな経済変動などがありますると、そこであなたのおっしゃるように、労使ともどもやっぱり、過熱するような場合などはへまするとしこりというものが起きて、そして随分難しい事件もそれは時々出てまいります。しかし、労働大臣として、労働省として、両方をこう見まして特別の手落ちのあるところは、それなりに法に従うなり行政指導をいたしまするけれども、やはり基本両者が話し合うという基本姿勢に立たない限り、これはなかなか根本的な解決ということは難しいのではないか、そう思うております。あなたも政治家としての責任を感じ空しい気持ちにもなるとおっしゃっる、私もそういう気持ちは持ちます。しかし、これはやっぱり根気よく続けていけばどこかに糸口ができるものだということを、今までの大事件とか大問題がありましたけれども、どこかで解決糸口がつかめたというような事象もたくさんございますから、お互い努力を重ねていくということが基本であって、そして後は労使の歩み寄りを誘発をするように、誘導をするようにと申しましょうか、誠心誠意努力をいたしていくということが基本であって、ここでどちらかにつくとか、あるいはまた行き過ぎなことをやっても必ずしもそれがうまく解決への道に直結するものだとも思いませんので、やはりできる限り誠意を尽くして話し合うように努めていくということが基本ではなかろうかと私は思うておりますので、努力をいたしたい、こう存じております。
  8. 本岡昭次

    本岡昭次君 私もきょうの質問は、今大臣がおっしゃったように、両者話し合いの場につかせるためにどうしたらいいかという問題について質問を進めようと考えているわけでございまするので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  それで、神戸精糖鈴木社長は、労働基準法二十三条にかかわる退職金も支払わないということでもって労働省の方から書類送検をされるという事態にまで立ち至っております。しかし、この社長送検されようが裁判にかかろうが、たとえそれで自分が罰を受けようが退職金は払わないと、こういうふうに居直っておるのでありまして、こういう人には労働基準法違反ということで送検しても何の意味もないという気が今するんですね。しかし、実際裁判違反が確定すると、どういう態度をとられるかわかりません。しかし、事実そういうことをおっしゃっているようです。  そこでお伺いしますが、過去に労働基準法二十三条違反送検された件数一体どのぐらいあるのか。あるいはまた、送検された結果は一体どういうふうに過去はなってきたか。あるいはまた、その送検の前には文書勧告でもって注意を促すということをやっておられます。この文書勧告ということを通して送検というところまでいった例が過去にたくさんあるのかどうか。こうした問題について教えていただきたいと思います。
  9. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 労働基準法二十二条違反送検されました件数は、昭和五十五年が十一件ございます。五十六年が二十九件、五十七年が二十一件となっております。それで、二十三条違反事件に関する起訴率でございますが、過去三年間について見ますと、六割程度であると承知しております。なお、起訴された事案はほとんどすべて有罪とされているということでございます。それから、事前に文書勧告が出された例はどのくらいか、こういうお話でございますが、私ども二十三条違反を扱う場合には、まず支払われることが目的でございまして、送検するのが目的ではございませんので、そういう違反事実があった場合に、まず文書で払いなさいという勧告を必ずやるわけでございます。そして、にもかかわらずどうしても応じないという者に対して検察庁へ送検するという段取りをもってやっておりますので、過去め例について送検した例については、すべて文書でまず勧告をするという形をとっております。
  10. 本岡昭次

    本岡昭次君 国税庁は見えておられますか。——国税庁にちょっとお伺いしますが、神戸精糖は五十七年の十一月十五日に一方的に解雇通告をして首を切る。そして直ちに、従来の労働協約就業規則の中ではっきりしていた規定に基づく退職金の三分の二しか、これ以降は払わぬというふうにして、その三分の二の退職金を支払ったこととして源泉徴収をやって、所得税地方税税務署に納入しだということが現にあるのですね。そして翌年の、五十八年の九月ごろに納入した税金還付申請を行って、またその税金を戻している。このようにまことにややこしいことをやっているわけです。  国税庁にお伺いしますけれども労使退職金の金額の確定もしていないし、現に支給もされていない退職金に対して源泉徴収を行って、その税金を納めるというふうな方法ですね。税法違反するかしないかというのは、たびたび国税庁お話ししても、それはしない、間違えた税金なら後で返せばいいのだからというごく単純なことで問題にならぬようですが、しかし、このようなことが通常行われる方法なのかどうか。あるいはまた、源泉徴収を行う方法として認められる方法なのかどうかという点について、ひとつ見解を伺いたいと思うのです。
  11. 谷川英夫

    説明員谷川英夫君) 個別にわたります問題につきましては差し控えさしていただきたいと思いますけれども、先生今お話しのありました件でございます。退職金支払いがないのに源泉徴収をしてその税額を納付している、こういうケースがあるのかというようなことでございますけれども、一般的にはこういうケースというのはほとんどあり得ないんじゃないかというふうに考えているわけでございます。  それから、そういう支払いがありまして初めて納税義務があるわけでございますので、後にその会社の方からそれを還付せいという話になった場合に、退職金支払いがないという事実が確認されますれば、これはそもそも税金を払わなくていいわけでございますので、それは還付するというような形になるわけでございます。
  12. 本岡昭次

    本岡昭次君 もう一度確認しますけれども、現に支払いもされていない退職金を支払われたこととして源泉徴収をしたものを納入するということは通常はあり得ないし、そうした前例も国税庁としては知らないと、こういうことですね。
  13. 谷川英夫

    説明員谷川英夫君) 先ほど申しましたように、そういうケースといいますのは、ほとんど絶対と言うか、まあ普通はあり得ないというケースだと思います。私もそういうケースは聞いたことはございません、退職金についてですね。
  14. 本岡昭次

    本岡昭次君 そこでもう一点お伺いしますが、こうした全く無意味だと思うようなことをやるということについて、税法の問題とか税金上の問題で何か効果があるんですか。意味があるんですか、これは。それは企業の側に聞いてみなきゃわからぬと思いますけれども、単純に見てそういう操作はどういう意味を持つとお思いですか。
  15. 谷川英夫

    説明員谷川英夫君) 税法の方から申しますと、ちょっと意味は全然私にはわかりませんです。
  16. 本岡昭次

    本岡昭次君 全く無意味なことをやって国税庁手数を煩わしたというだけのことですか。
  17. 谷川英夫

    説明員谷川英夫君) 手数云々の話はさておきまして、今申しましたように、どうしてこういうことを会社がしたのか、私どもではちょっとその辺のところははかりかねるというか、要するにわかりませんということでございます。
  18. 本岡昭次

    本岡昭次君 そのように理解に苦しむことを次から次からやってのけるんですよ、労働大臣双方交渉土俵に乗せてやろうじゃないか、それが労働省の仕事だと、私もそうだと思うんですけれども、わけのわからないことを次から次へとやってくれるんで、乗せようにも乗せられないという一つの事例を今市し上げたわけです。法律には触れないけれども、やっている。これは後ほど取り上げたいと思います。  それで、今の経緯をもう少し申し上げますと、私はこう思うんですね。退職金を支給したこととして納税した行為、それは会社側として退職金を確定した、そして退職金として必要な税金を納めたから、会社としては退職金を支払う意思はあったんだという行為をそこに残しておきたい、こう考えたのではないかと、私はこう思うんです。しかし、このことは労働者側に察知されることとなって、私も国税庁を呼んでこういうことができるのかと言って尋ねました。その直後、どういうわけか会社は慌ててこの税の還付申請を行うんです。私の手元にある一つの資料では、五十八年九月三十日付神戸精糖株式会社の名前でもって「退職所得に対する特別徴収税額還付請求について」という文書を出して税金還付を求めるんです。   当社は昭和五十七年十一月十五日付をもって従業員全員解雇退職金を支給したこととして、特別徴収税額を徴収し、昭和五十七年十二月十日に納付いたしました。  以降組合員不当解雇であるということで、退職金を受け取らず、神戸地裁地位保全申立てをし係争中であります。  このような経過により、神戸税務署納付税額のうち昭和五十八年九月二十日までの退職金受領者を除き他の係争中の者について還付請求をしましたところ還付されることになりました。  従いまして所得税と同様に別紙の如く退職金受領者既納税分還付を申請いたしますのでよろしくお願い申し上げます。ということで、所得税の問題は既に返してもらったから地方税も返してくれと、こういう申し立てをやっております。  だから、この税の請求をするまでは退職金としてこれは確定していたと思います。支給されたこととしてやっているんだから勝手にさわれない。しかし、税を還付されるとそれはもう退職金として留保されない。まあ労働者の側から言えば労働債権として、確定した状況にもうその段階からならなくなる、こういうことであるわけなんです。したがって、退職金を払ってしまったといって税金を納めているんだから労働者との雇用関係はそれでないと会社がまたある意味では一方的に言い切る根拠にもなっていたと思うんですね、しかし、退職金税金還付請求して、戻してやれば、退職金を支払ったこととしているやつが支払っていない、こういう状況に現在はあるわけなんです。だから、退職金が支払われていないという状況下にあって、労働者使用者雇用関係というものは私は継続しているというふうに受け取らざるを得ぬと思うんですが、この点はいかがですか。
  19. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 雇用関係が継続しているかどうかというお話でございますが、本件につきましては、解雇された者が解雇を認めず裁判で争っているということでございますので、雇用関係が継続しているかどうかは裁判の結果によって確定するわけでございまして、私どもこれを関心を持って見守りたいということでございます。
  20. 本岡昭次

    本岡昭次君 裁判の結果って、それは当たり前のことでありまして、私はそんなことを尋ねているんじゃないんですよ。一般的に言って、退職金が支払われていないという状況雇用が継続しているという状況でなければならないんじゃないか。逆な意味で言えば、退職金が支払われたことによってそこに雇用関係というものが切れたというふうに一般的に見るのではないか、こういうお尋ねをしているんです。
  21. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 少なくともこの中の一人につきましては、定年で退職しているわけでございまして、その者についての退職金争いのない部分についてこれは確定しておるので私ども送検したわけでございまして……
  22. 本岡昭次

    本岡昭次君 そんなこと聞いてないじゃないか。
  23. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) その他の者についてはまだ争い中でございますので、それについての雇用関係ありやなしやという問題は裁判所で今決める問題でありますというお答えをしたわけでございます。
  24. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、裁判所で決める問題って、裁判所でいつ決まるかわからぬ状態でしょう。だから、今の労基法二十三条とか退職金というその性格から見たときにどういう判断ができるかという、労働省自身判断を私は求めているんじゃないですか。  退職金というものは、退職する、あるいは死亡雇用関係が切れるときに払うものなんでしょう。とすれば、払われていないということは、逆に言えば雇用関係がどういう形にしろ切れていないというふうに言わざるを得ぬでしょうと単純な質問をしているんですよ。
  25. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 一人以外につきましては、雇用関係があるかないかについては裁判所の問題でございまして、私どもが答えるのは差し控えたい、こう思います。
  26. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、判断ができないというんですか、労働省は。
  27. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 退職金を払ったかどうかということは、雇用関係の有無とは関係のないことだと考えております。
  28. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、労基法二十三条はどういうことになるんですか。
  29. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 労働基準法第二十二条は退職金規定がございまして、退職した場合には退職金を払う、こういう労働契約になっていた場合に、退職したら、退職金を払わなければ刑事罰が科されると、こういう規定でございまして、その退職金を払わなかったかどうかということと、雇用関係が存在するかどうかということとはまた別の問題でございます。
  30. 本岡昭次

    本岡昭次君 私はその判断は納得できませんね。あなたのおっしゃるとおり、労働基準法二十三条は、退職金請求があったときに、死亡とか退職のときにそれを支払わなければならないと、そこに金品の還付義務を記してあるんだけれども、しかし、今私が論議しているのは、最初労働大臣基本的な問題を議論したように、現状の問題をどう解決するかという観点で議論しているんですよ。あなたのように真空地帯の中で論議しているんじゃないんですよ。どうすれば神戸精糖の今の問題で労使交渉の場に乗せることができるかというきっかけがどこかにないかということを求めて私ら議論しているんですよ。あなたのようにある一面からだけ法律を見てそれはこうです、そんなことをすれば解決糸口はないですよ。一つ法律の裏、表、横、何かこの問題について労使土俵の場に乗せるきっかけはないかということを私は議論しているんですよ。だからそういう解釈はできないかという立場なんですよ。表だけ向いて通ればあなたの言うとおりなんですよ。逆に言えば、こういう考え方もできませんかと言って、私がわずかの髪の毛一本のきっかけでもないかということをやっているのに、労働行政の本山におるあなた方が、そんなみずから積極的に解決の場をどこかないかということを求める気迫すら何もないというようなことでは、私は本当に失望します。もうよろしい、それではそれで。また別の観点から物を言いたいと思います。  農水省おいでですか。——農水省は神戸精糖が現在工場閉鎖をされ、全員解雇されているという状況にあって、その神戸精糖現状は休止という状態にあるのか、休業という状態にあるのかお答えをいただきたい。
  31. 高木勇樹

    説明員(高木勇樹君) お答え申し上げます。  現時点で、工場が閉鎖されまして、実際に生産がなされていないという状況であるということでございます。
  32. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、私は、休止か休業かと尋ねているんです。
  33. 高木勇樹

    説明員(高木勇樹君) 休止か休業がということでございますけれども、砂糖の価格安定等に関する法律からいきますと、そういう休止、休業というような概念はございません。要するに砂糖の生産が実際に行われていないという状況にあるということでございます。
  34. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは一つ一つ尋ねます。  そういう状況は休止という状態なのかどうか。
  35. 高木勇樹

    説明員(高木勇樹君) ただいま申し上げましたように、休止とか休業とかいろいろ言葉はあるわけでございますけれども、砂糖の価格安定等に関する法律からいくとそういう概念はないと、こういうふうにお答えしているわけでございます。
  36. 本岡昭次

    本岡昭次君 先日、農水省と話をしたときには、農水省として休止ではないと、休止という手続を現にとっていないので、工場閉鎖全員解雇という現状であると言って、休止という面については否定されたでしょう。そして、休止でないなら現状として休業ということになるではないかという我々側の問題提起に対して、あなたは国会議員が大勢おる前で、それは休業という状態ではありませんかと局長もいる場で言って私たち国会議員数人、六人ほどいたと思うんですが、それを確認したことを、何ですか、この委員会の場であなたはそれを撤回されるんですか。
  37. 高木勇樹

    説明員(高木勇樹君) 今の先生のお話でございますが、これは特定産業構造改善臨時措置法の関係での御議論だと私、承知しておりまして、その中にはそういう概念があります。そこの概念に当てはまるかどうかという議論でございましたから、それは当てはまらない。それはどういう言葉を使ったらいいか、実際上生産が行われていないということでありますが、それを強いて言えば休業というような言い方もできるんじゃないか。こういうふうにお答えしたと思います。
  38. 本岡昭次

    本岡昭次君 産業構造改善臨時措置法の中で今の神戸精糖現状を強いて言えばそういうことになるのではないかと、それはそれで結構です。神戸精糖は現在産業構造改善臨時措置法に基づく構造改善をやるんだということで、他の砂糖業者とともに農水省に対して基本計画に参入してこれから昭和六十一年九月三十日までみずからの構造改善をどうするかという問題についてかかわっていくんだと、こういう立場をとっているんですから、神戸精糖の問題を論じる現状の中では新しく産構法というものがかかわってきているという認識の中で論議をそれではしていきましょう。  労働省、先ほど労働組合が、会社との雇用関係労働者あるのかないのかという問題について、労働基準法はそれは全然別の観点から言っているんで、結びつかない、こういうふうに言われました。しかし、私はそのこと納得できませんが、そのことだけ議論するわけにはいきませんから、それはまた別の立場で議論することにして、今お聞きになったように、神戸精糖は産構法という法律の中で砂糖業界の再編成に今参画をしているんです。その法律立場から言えば、今農水省の方から答弁にあったように、休止ではない。いわゆる解散という状況に対して今、会社が休止、そして引き続いて解散という手続をしているのではないんだ。強いて言えばそれは休業、すなわち生産という仕事を休んでいる状態としか言いようがない、こういうことなんです。そうだと思うんですよ。工場も現にあるんだしね、会社社長もいるし役員も皆いるんです。いないのは労働者だけなんだ。  そうすると、あなたのように解雇されているんだという立場をもしとるとしても、労働者には労働債権というものを最優先に確保する、こういう立場が当然なければなりません。そしてまた、労働基準法労働者が今の神戸精糖のような状態に置かれたときに労働債権を保護する立場というものがその中にあります。そうすると、休業という状態に現に神戸精糖があるならば、休業という状態に置かれているその労働者請求すべき労働債権、何がありますか。
  39. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 通常の賃金が不払いになっておれば、これはその通常の賃金、及び解雇ないしは退職が有効であるというような争いが決着がついた場合には、その退職金について請求権があるわけでございます。
  40. 本岡昭次

    本岡昭次君 休業中という状況はないんですか。労働債権に類する請求の中身はないんですか。
  41. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) その休業であるかどうかという問題は、私ども労働基準法の観点から見ますと、使用者の責めに帰すべき事由において休業になったという場合には賃金を請求できるということになっておりますので、休業の場合であっても賃金債権というものは存在するわけでございます。したがいまして、それも争いが決着がつけば必ずその請求権の問題が生ずるわけでございます。
  42. 本岡昭次

    本岡昭次君 使用者の責めによって休業という状態神戸精糖はまさに使用者責任によって休業という、いわゆる工場閉鎖という措置をとったんですね。そしてそれは、現在、その産業構造改書臨時措置法という法律の中から見れば、それは休業の状態と言わざるを得ない、こういうふうに明確に言っておられるんです。そうすると、そこに働いている労働者は休業という、現在の産構法の法律の中で解釈できる状態を長期にわたって放置されているということになれば、当然労働基準法二十六条に基づいて六〇%相当分を請求できるという権利も一方生じる、こう思うんですが、いかがですか。
  43. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 今の御覧間でございますが、これは今雇用関係があるかないかということが争われているわけでございまして、雇用関係があるという結論になれば、おっしゃるような休業手当の請求権が発生するということでございます。
  44. 本岡昭次

    本岡昭次君 もし休業中という解釈になれば、それは雇用関係が存在するとしないということは別のことなんですか。会社が休業中ということと雇用関係という問題は。
  45. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) この紛争の事案は、特定の日にちに全員を解雇した、いや、それは無効であるということで争っておるわけでございまして、その時点以降の点について休業であった場合、先ほど御答弁いたしましたような結果になる、こういうことでございます。
  46. 本岡昭次

    本岡昭次君 よくわかりません。もう一度はっきり言ってください。
  47. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) これは、一昨年解雇の問題が生じまして、その時点以降も雇用関係があるんだという勤労者の主張であり、使用者側はそれ以降は雇用関係がないということで争っているわけでございます。したがいまして、その時点以降の休業があった場合に、解雇が無効であるという場合には、結局休業手当の請求権が発生する。しかし、解雇が有効であるという結論になれば、雇用関係はないわけですから休業手当の請求権は発生しないというお答えをしたわけでございます。
  48. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、繰り返して言っているように、労働大臣と最初基本的な問題の確認をしたのは、要するに、どうして話し合い土俵両者を乗せるかということが大事ですと、こう労働大臣もおっしゃっているでしょう。私もそう思っているんですよ。  どうしたら乗せられるかという議論をしているのに、あなたの主張は、鈴木社長と全く同じ主張をやっているんですよ。何を言っているんですか。そうじゃないですか。解雇の問題があるって、それを裁判所はいつ解決するんですか。そうしたら、あなたの責任地方労働委員会をもっと督促して、早く解決をさしなさいよ。裁判所地方労働委員会もことし一年かかってもまだ結審できる状態じゃないというんですよ。何年かかるんですか、これ。そこで一つの問題についてまた上へ上へと上告していったら何年かかるんですか、この問題。解雇であるかないかという問題、いつ土俵に乗せるんですか。あなたの論理では、裁判所で結論が出なければ、労使の自主的な解決への土俵に乗れないということじゃないですか。そうしたら、先ほど労働大臣が言ったように、我々は一日も早くその土俵に乗るように努力するという努力も何もする必要はないじゃないですか。挙げて裁判待ちということであって、あなた方の労働行政なんて何にもないわけだ。私は、その中でも何かあるのではないかという問題を盛んにやっているのに−あなた、冷たいですね。水みたいな人だ、あなたは。本当に血も涙もない。かわいそうだよ、そんな人の下の労働者は。そんな形にしか労働基準法を解釈できないんだから。  労働大臣にちょっとお伺いします。どうですか。今のような答弁では、私は、あなたが最初に言われたように、話し合い土俵をどこかにつくりたいと言ったって、裁判の結果です、裁判の結果ですと言っていたらその土俵をつくりようがないじゃないですか。裁判はやっているけれども、それ以外に何かないかというのが土俵の場なんでしょう。私が言っていることに無理があるなら、もっとほかに何かこういう方法があると言って出しなさいよ。
  49. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 今の局長答弁は、それは司法の場に移された場合の法律論であろうと思います。  しかし、これは、この両者の間に話し合いの気運ができれば裁判だって取り下げられないこともないわけでありますし、そうすればきっかけも生まれてくることでありますし、それは行政が司法に関与することは、三権分立の建前でありまするからできませんけれども、しかし、そういう係争というものも、何らかの側面において話し合いが進めば、またこれ打開の道も開かれないわけでもない。そういう意味努力を継続しなければならない。私はそう思っておるわけでございまして、あなたの言うように、何かのきっかけをつかむということは、訴訟をお互いにそういう話し合いの気分になって取り下げて話し合いに移れば本当にこんないいことありませんけれども、たとえこれが両者平行線であっても、何らかのきっかけをつくる上において私ども努力をするということは、これはやらなきゃならぬ、私はそう思いますがね。
  50. 本岡昭次

    本岡昭次君 だから、労使一つ土俵に乗せるということは——労働者側は上がろうとしているんですよ。今まで両者の最大の問題は、会社が出した合理化案労働組合がのまぬ、こんなことであったら、今の厳しい砂糖業界の中で神戸精糖は生きていけぬということが大きなあれだったんだ。労働組合の方も、やはりそこが争点だとわかっているから、みずからも、それではどうやったら合理化問題というものについて労働組合としてかかわれるかということを積極的に検討して、そして、みずからの合理化案なるものも検討の素材として相手側に提出しようという、労働者側は積極的に土俵に上がる条件を整えようとする。  しかし一方企業の側は、解雇を認めない限り、解雇を認めない限りと言う。今の局長も同じだ、裁判のところで解雇の問題がはっきりせにゃいかぬ。企業の側は、解雇を認めない限りという前提でもって、絶対に土俵に上がらぬですよ。だから、解雇を認めない限りという企業の言っているその言葉をこちらが崩していかなければ、土俵に上れないわけなんですよ。  だから、あなたは解雇を認めない限り、解雇を認めない限りと言っているけれども、あなたは、使用者として当然交渉の場に出なければいけないでしょう、交渉の場をつくらなければいけないでしょうという、相手に企業責任使用者としての責任を持たしていくために、どう我々は現在の法律の中で物を言っていけばいいかということを私は論議しておるんですよ。  だから、労基法の二十三条もそのうちの一つじゃありませんかと、また、今農水省が、産構法の中で言えば、神戸精糖は倒産したのでもない、解散したのでもない、いわば休業という状態法律上ある。そしてその産構法の中で、その労働者自身は産構法内の法律規定された労働者と言わなければ仕方がないという状況に現在あるんです。農水省は、そうだとはよう言い切っていませんけれども、少なくとも法の解釈の中では、産構法の中で雇用の問題として論じなければならない対象となるであろうと、こういうふうに言っているんですよ。  にもかかわらず、頑迷固陋なこの鈴木社長だけが私は関係がない、関係がない、関係がないと、こう切るから舞台ができないということなんですよ。だから、私は今言っているように、その特定産業構造改善臨時措置法から言えば、それは休業中と言わざるを得ないし、そこに働いている労働者社長は首切ったと言っても、それはそこの十条による雇用問題の対象にしなければならないだろうという条件が一方あるんだから、それに基づいて鈴木社長交渉の場に出なさいということがなぜ言えないのか。あなたのように法律の解釈、裁判所へ行っているんだから、裁判所へ行っているんだからでは問題の解決裁判所でしかつかないだろうという問題を私は先ほどからここで論議しているんです。どうですか、局長
  51. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 先生のおっしゃる意味はよくわかるのでございますが、紛争の解決は、今大臣答弁申し上げましたように、労使関係の専門のところで  地労委でございますが、地労委を中心に何とか紛争を解決するようにということでやっておるわけでございます。  私に質問されたのは退職金の問題でございますので、これは労働基準法で、私どもは労働基準監督機関で、退職金を未払いの場合にはこれを払わせるというのが私どもの職務でございますので、その点について、坂崎さんという方については、これは退職の事実がもう確定しておりますので、これについては検察庁に書類を送検して、今起訴をされることを見守っているということをお答えしたわけでございまして、労働省の中でも持ち分、持ち分がございまして、私の持ち分から言えば先ほど来の御答弁になるわけでございます。
  52. 本岡昭次

    本岡昭次君 違う家の戸をたたいておるんやったら、ちゃんと持ち分の人答えてください。持ち分の局長
  53. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 解雇とか、それに関連いたします不当労働行為につきましては、それぞれ裁判所とか労働委員会に今係属している事案でございますので、そのことについての正否はやはりそれぞれの機関が判断すべきことでございますから、その内容について私どもが今ここでとやかく申し上げることではないと思うわけでございますけれども、先ほど来大臣からお答えいたしておりますように、やはりこういう紛争はできるだけ早く円満に解決されることが望ましいわけでございまして、そういう観点から労働省といたしましても既に数次にわたりまして関係労使から事情聴取をするなり、あるいは解決のための話し合いを進めるようにということで努力をしておりますけれども、なかなかそういう糸口がつかめないというのが現状でございます。  しかし、やはり何といいましても、具体的な問題になりますと、その事情は関係労使関係当事者が一番よく承知されておられることでございますし、そういう事情に基づいて話し合いに入られることが必要でございますので、そういうことを促進するという意味で、そのためにはいろんなきっかけあろうかと思いますが、そういう具体的な、地方労働委員会とか裁判所に保っております問題の正否はそれぞれの機関に任すといたしましても、何か、いろんなきっかけをとらまえて話し合いが進められないかどうかというようなことにつきましてはさらに進めてまいりたいと思いますし、その点については地元の兵庫県とか、あるいは事業を担当されます農水省とも連絡をとりながら、そういう努力を続けてまいりたいというのが私どもの考え方でございます。
  54. 本岡昭次

    本岡昭次君 まあ、とにかく話し合い土俵、舞台ができるように努力をするということで、努力努力という言葉でいつまでたってもできないから、私はいら立って声も大きくするんですがね。  それで、労働債権の問題なんですが、退職金という問題を会社側に供託させるということは、これはできないんですか、こういう場合。
  55. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) もちろんおっしゃるように、相手が受け取らない場合であっても供託ということは可能でございますが、それはまあ事業主が判断する問題でございます。  私どもは、やっぱり一番大切なのは、すべてが解決して退職金が払われるかどうかということが非常に重大な関心事でございますので、現在会社に対して退職手当について必要な保全措置を講ずることと、それから、退職金支払い時期が到来した場合には確実に支払うことについて、これは指導をやっているというのが現段階でございます。
  56. 本岡昭次

    本岡昭次君 その労働債権である退職金の確保について現在指導して努力しているということですが、それじゃ現在は確保されていますか。
  57. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 私も一〇〇%確信を持って答えられませんが、現在のところはあると私どもの出先は見ております。
  58. 本岡昭次

    本岡昭次君 最低その労働債権の問題については供託をさせるということを考えながら、それを、確保について責任を持っていただけますか。
  59. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 労働基準監督機関としては、できるだけこれは確保できるように最善の努力を尽くしたいと思います。
  60. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは農水省に若干伺いますが、神戸精糖は今のような労働紛争の中にあっても、なお糖価安定法に基づく生産数量の割り当て枠というものを現在も五%持ち続けているということなんですが、現に生産もせず、そして法律的に言えば休業中というところに対して、なぜ機械的に枠を与えるのかということがよくわからぬのですが、どうしてですか。
  61. 高木勇樹

    説明員(高木勇樹君) お答え申し上げます。  ただいま先生がおっしゃられましたのは、砂糖の価格安定等に関する法律第三十一条の規定に基づきまして、精製糖の企業ごとに一定期間の事業団の売買数量とあります、これは蚕糸砂糖類価格安定事業団でございますが、その売買数量という実績を基礎にいたしまして、農林水産大臣が定めて通知をする。これを我々、いわゆる一定数量と、こう言っております。これはどういう意味を持つかといいますと、これを超えて事業団売買を行うという場合には、結果として砂糖の供給増につながりますし、需給関係に影響を与えるということ、ひいては市況が低迷する。それは結局、国内産糖の売り戻し価格に対しまして影響を与えますので、この市価参酌の財源といたしまして、今の一定数量を超えるものには市価参酌調整金を徴収すると、こういう意味を持っておるわけでございます。ただいま申し上げましたように、需給関係に影響を与えるという点が考慮の一つになっておりますので、過去の一定期間の事業団の売買実績というものも基礎にして定めるということをしておるわけでございまして、これによって合理的な数量がはじける。  お尋ねの神戸精糖に対する問題でございますが、神戸精糖は五十六砂糖年度に事業団売買の実績がございまして、したがいまして現在の法令のもとでは一定数量を有するということに相なっておるわけでございます。ただ、現実の処理といたしましては、生産の意思を有していないということが明確でございます。そういうふうに会社側ははっきり言明をしておりますので、私どもこれをあらかじめ確認をいたしまして、一定数量については通知を見合わせるという処理をして対処をしておる、一定数量は有しておりますけれども、現実には通知は見合わせるということで対処をしておるということでございます。
  62. 本岡昭次

    本岡昭次君 生産の意思なしとして通知を見合わせるというのですが、それはいつの時点のお話ですか。
  63. 高木勇樹

    説明員(高木勇樹君) これは神戸精糖が生産の意思を有しなくなった時点からでございまして、これは五十七砂糖年度以降そういう処理を現実的にしているわけでございます。
  64. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、現在は生産割り当て枠は有していないということになるんですか。
  65. 高木勇樹

    説明員(高木勇樹君) ただいま申し上げましたように、一定数量、農林水産大臣が定めて通知するいわゆる一定数量は、これは有しております。
  66. 本岡昭次

    本岡昭次君 有しているけれども通知をしていない、こういうことなんですか。
  67. 高木勇樹

    説明員(高木勇樹君) あらかじめ企業側に確認をいたしているわけでございますが、生産の意思を有していないということでございますので通知は見合わせると、こういう処理をしているということでございます。
  68. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、一定の枠を通知しないとすれば、神戸精糖の持っている五%というその枠は空白のままになるのか。それをどこかに通知する段階で分けて、そして枠全体を充足するということになっているんですか。
  69. 高木勇樹

    説明員(高木勇樹君) 結論を申し上げますれば、それは別に、ほかにその分ということで分けているわけではございません。分けていないということでございます。
  70. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、全体を一〇〇として五%ということになれば九五%だけが通知されている、こういうふうに理解していいんですか。
  71. 高木勇樹

    説明員(高木勇樹君) 若干制度の細かいことになるわけでございますが、私ども、砂糖の全体の需給というものを、甘味に関する協議会というところで学識経験者にいろいろ御意見を聞いて、そこで大体適当な需給の数字というものを決めて、それをもとにしてただいま申し上げました一定数量を通知をしているわけでございます。したがって、そういう意味で、一〇〇であれば、そこには今市し上げたように神戸精糖の分は通知を見合わせておりますから、確かにその面だけをとらえればそういうことに相なっているわけでございます。
  72. 本岡昭次

    本岡昭次君 そこで、糖価安定法の目的は、今あなたも言われたように、国内糖価の安定と国産糖の保護にあるということでございますから、神戸精糖が糖価安定法に基づいて今実行されなくとも一定の枠を保有する。逆に言えば、保有するということは、糖価安定法の目的に対してやはり協力をしていかなきゃいかぬという義務があると私は思うんですね、糖価の安定の問題とか国産糖の保護という問題にかかわって。協力しないで、ある意味では特権的な権利だけ保有しているという状況はおかしいと思うんですよ。それは、具体的には調整金という形でもって国内糖の価格安定のために一定の金をみんな出し合っているという状況に対して、この神戸精糖は何もそれはやっていない、こういうことに結果としてなってくる。  しかし、話を聞けば、その神戸の払っていない分があったからといって、別にそれで調整金全体の会計が欠損になるわけではない。それは全体の需要と供給のバランスの中で、神戸の五%の落ちた分だけ第二次枠的なものもそこに参入してくるから、全体としてその調整金というものは充足できるんだ、こういうお話のようなんですが、しかし、そういう話になってくると、第二次枠という問題については、あなたが五十八年四月一日に日刊輸入精通信というところで課長談話ということで発表されているように、「二次枠の取り扱いは厳正に」ということで、そういう二次枠というふうなものについては非常に厳しい立場をとっておられます、この談話の中では。とすると、神戸精糖の枠があっても、現にその必要な生産をしていない。していないけれども、第二次枠のところはそこへ参入を促してきて、おのずから需要と供給のバランス、市場メカニズムがそこに働いて、そして、生産は一定量確保されて、調整金も神戸精糖が負担しなくてもどこか他の企業が負担しているということになるから何ら問題がないんだという経済上の理屈はわかるにしても、しかし、糖価安定法というその目的からするところの神戸精糖というものの責任といいますか義務というんですか、当然果たすべき協力というものを何もしないでその枠だけ保有しているということ、私非常に不当だと思うんです、このことは。だから、不当だからこそ通知をしていないんだと思うんですよね、あなたのところは。通知していなくてもその枠は現存するということ、それは現在の仕組みの上で仕方がないとおっしゃるなら、その仕組みそのものが私は間違っておると思うんですよ。その糖価安定法による枠の決定の仕方そのものが間違っておると思うんです。私の考え方おかしいですか。  だから、その仕組みを変えて、もう生産しないと言っている、意思がないんなら、神戸精糖の持っているそれを取り上げて、そして第一次枠を他のところに分け与えていく。そして糖価安定法に基づくその目的達成のためのそれぞれの体制を整えていくというのが本来の農水省の砂糖行政ではないか、こう思うんですがいかがですか。
  73. 高木勇樹

    説明員(高木勇樹君) ただいま先生おっしゃられました調整金の義務があるのではないかというようなお話でございますが、これは制度上事業団売買をするということによって生ずる反射的な問題でございますから、義務の問題ではないと思います。全体としては、先ほど先生もおっしゃられましたように、需給のバランスがとれ、その中で全体として調整金の徴収もなされておるということに相なると思います。  それで、生産の意思もないそういう者からは取り上げてしまえばいいじゃないか、こういうことでございますが、先ほど申し上げましたように、一定数量の意味は先ほど申し上げたとおりでございますが、それを超えた場合には市価参酌の調整金を徴収する。それはどういう観点からかといえば、需給関係というものに影響を与えるその程度に応じてということに相なっておるわけでございます。したがいまして、過去の一定期間の事業団の売買実績というものを基礎にして決めるということに合理的な意味がある、私どもこう思っておるわけでございます。  ただ、生産の意思がないということがずっと明確に打ち出されております。そういう制度の問題は私ども合理的な意味がある、こう思っておりますが、ただいま先生からも御指摘の神戸精糖の問題につきましては、生産の意思が現実問題として長期にわたってないということがはっきりいたしておりますし、将来もそういう考えであるということが表明もされているわけでございますので、御趣旨を体して対処をいたしたい、こう思います。
  74. 本岡昭次

    本岡昭次君 まだ、その調整金の会計の問題、現在四百億近い赤字があってそれをどうするのかとかというふうな問題等いろいろあるんですが、それはまた農水の方で、神戸精糖問題に絡んでこれから追及をすることにいたしまして、私はもう少し別の観点で論議をすることにいたします。  それで、労働省にちょっとお聞きしますが、今のように神戸精糖は産構法の中で、あるいは糖価安定法の中でもいろんな問題があるんですよね、これ。それで、この間労働省神戸精糖鈴木社長をお呼びになっていろんなお話をされたそうです。その中で、私は、聞き及んだことですから正確であるかどうかわからぬので確かめるんですが、労働省に対しては、今私が農水省と議論をしたように、産業構造改善臨時措置法のその申請前に神戸精糖工場閉鎖全員解雇をしているので、産構法上に言う労使問題、雇用問題とは関係がないんだということを言ったという話を聞いたんですが、そうしたことを労働省に言っておりますか。
  75. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 直接私が事情聴取し、話をしたことでございませんので詳しく存じませんけれども、私どもが申し上げましたのは、先ほど申し上げましたように、できるだけ具体的なきっかけ等もとらえながら円満な解決へ向かっての話し合いを進められるようにというようなことでお話しを申し上げたわけでございます。
  76. 本岡昭次

    本岡昭次君 そういう神戸精糖労使問題は産構法と関係がないと、こう言ったということなんですが、それは事実ですか、どうですか。
  77. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 今の御指摘のようなことで申し上げてはいないというふうに聞いております。
  78. 本岡昭次

    本岡昭次君 それならいいんですが、これは産構法の中における雇用問題ということにかかわるんです。そのところは、ひとつ労働省としても大切にしてもらいたいところなんですね。単なる一企業労使紛争問題ということじゃなくて、砂糖産業が現在抱えておる構造的な、危機的な状況を全体として脱して、そうして健全な砂糖業界を再編していくために、砂糖業界が産構法の適用を受けるということをしたんですね。神戸精糖もその中の一員として参画していっていますから、当然神戸精糖労働者も——だから私が雇用が継続しているのか継続していないのかということを、何をつまらぬことを言っているのかとあなた方おっしゃるかもしれませんが、非常に大事なところなんですよ。単なる労使紛争の問題じゃなくて、そういう大きな法律の枠の中で砂糖産業全体のそうした合理化問題の中での雇用関係というふうにひとつ枠を設定して、そして、そこの神戸精糖労使紛争の問題を解決していく糸口になるではないかという立場をとっておるんです。  だから、その点について労働省がどれほどの認識をお持ちなのかお伺いをしておきます。産構法上の関係において。
  79. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 産構法上の関係をどう認識していくかということにつきましてですが、いずれにしましても、この問題は、何といいますか、今精糖業界が非常に難しい、厳しい状況にある。需要低迷と供給過剰という中で構造的な不況に陥っているということを背景に進んでおる事態でもございますので、そういう厳しい状況はいろんな意味でやはり私どもも十分認識した上で、今御指摘のようなことも認識した上で対応していかなければならぬというふうに考えております。
  80. 本岡昭次

    本岡昭次君 これは労働大臣にもお願いをしておきたいんですが、産構法という法律の枠の中の雇用問題として解決をしていかなければならない案件と、現在こうなっておりますので、労働行政という立場から、今後この神戸精糖問題の検討をしっかりとやっていただいて、先ほど言われたように、どうしたら交渉の舞台がつくれるか、話し合いの舞台がつくれるかという一つのかぎもこの産構法の中の雇用問題にかかわる一つの案件になるという問題を押さえていただいて、かたくなな企業の側をひとつ話し合いの場に臨ませるというふうなことについての働きかけも一層労働省側としてしていただきたいという要請をここでひとつ強くしておきたいと思うんですが、労働大臣いかがでございましょう。
  81. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) なかなか厳しい環境にあることはよく承知をいたします。できるだけ関係の方面ともよく話し合いを進めて、そしてできるだけ改善に向けて努力をしたいと思うております。
  82. 本岡昭次

    本岡昭次君 ありがとうございます。何とか努力していただきたいと思います。  そこでもう一つの問題は、今の、労働組合が話し合おうとしても企業の側は絶対話し合いに応じてこない。話し合い土俵に上ってこないというその問題にかかわって、それでは、現状の中で果たしてその労働者の従業員の話し合う相手は本当はだれなのかという問題がそこで出てくると思うんです。  というのは、御存じのとおり、この神戸精糖の親会社は商社の丸紅でございます。だから私は、鈴木社長が確かに神戸精糖社長でありますけれども実態としては背景資本として丸紅が実権を握っている、こう私は解釈をいたしております。それで、その実態を今から申し上げますので、そういう実態の中において実質的な交渉相手、形式的な交渉相手でなくて実質的な交渉相手というものも、こうした労働争議の解決方法として一つの大きな意味を持つのではないかと思いますので、ひとつ労働省の賢明な御判断をいただきたいと私は思います。  去年の三月の決算で、神戸精糖の決算の中には「親会社短期借入金」という項目がございまして−親会社というのは丸紅なんですね、ここに丸紅から借りてきたというお金がある。その総額が百四十億六千九百九十三万二千五百七十五円ありまして、その中に債務確認額として百二億、金融機関よりの借入に対する代位弁済十六億、退職金融資額二十億、それから長期借入金に対する何か利子を払う弁済をしたんでしょうか、一億というふうなものが大きくあって、そして百四十億というようなのがここにあるわけなんです。言ってみれば、このお金によって神戸精糖は現在維持されているとこう見なければならぬ。労働者にとって一番大事な労働債権に属する退職金の問題も、今言いましたように三分の二ではありますけれども−本当はもっと多いわけです、しかし、一方的に三分の二しか支払わぬとこう言っておるんですから、その三分の二に相当するものがこの二十億であります。現在未払い退職金として保有されているのは十三億二千七百二十六万千六百八円、約二百人分のようでございます。これは先ほど税金の問題でいろいろ論議しましたように、一応去年の三月の決算段階では所得税地方税それぞれ退職金に対する必要な税金をここで払って、そしてこれは退職金でありますというふうに確定して、ここに計上されてある。果たしてことしの三月にこれがこういう形で計上されるのかどうかという問題もあります。労働省にとって大変な問題であるんですが、それにも増して大事なことは、こうしたものすべて丸紅から貸し付けられているという、丸紅の考え一つで生かすも殺すもできる、ある意味では労働者退職金の問題も右にも左にもできるという状態にあると私は実質的に見るんです。  こういう状態にあるときに、神戸精糖労働者の皆さんが実質的にみずからの労働債権を確保するために、あるいは労働条件全体のいろいろな問題について論議をする相手というのは丸紅であろうと、私はこう思うんです。どうですか。私は形式的には確かに鈴木社長だと思うんですが、しかし、実質的にこういう形になっておるということは、労働者として、当然丸紅に対しても自分たち労働債権の問題をめぐって交渉していく相手というふうに認定しなければならぬ。先ほど労働大臣もおっしゃった話し合いの場というのは、何も神戸精糖との間だけにあるのじゃなくて丸紅との間にむしろあって、その方が問題の解決のためにより重要でないか、私はこう思うんですが、いかがですか。
  83. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 法律的に制度的に、丸紅が労使の当事者とかあるいは交渉の相手になるかということについては、いろいろ問題があろうかと思うわけでございまして、話し合いを促進して事態ができるだけ早く円満に解決するという観点からいたしましたら、そういう前提に立ってどういう具体的な措置をとるかということにつきましては、やはり私どもとしては事業担当の農水省とか、あるいは地元の兵庫県とも相談をしながらやってまいりたいというふうに考えております。
  84. 本岡昭次

    本岡昭次君 私が言っているのは、形式的な問題は、もうそれは、雇用関係を結んでいる相手は鈴木社長なんですから。しかし、実態として今のようなことがあるんです。だから、労働省が、あるいは労働大臣が、とにかく労使双方を交渉の場に乗せて、そしてそこで解決させてやることが一番いいんだ。だからそのために努力したいとおっしゃっている。その努力一つとして、何か袋小路、迷路に入ったような問題を解決するかぎとして、実態として、商社の丸紅が交渉相手になり得る、あるいは使用者ということにもなり得るという実態労働省の手において積極的につくり上げて、そして丸紅に対して、あなた方もやはり使用者という立場をとらなければならぬじゃないですかというふうにして迫っていくということをやっていただければ、交渉土俵の場というものもできるんじゃないか。鈴木社長の段階は、もうそういうことでどうしようもない。もう何遍もやっておるんです。やっぱり今の実態の中では丸紅というものがあるんです。  だから、私は労働省にお願いしたいのは、私が今言いましたような事実関係をもとにして、使用者となり得るかどうかという問題を一遍検討して判断をしていただきたいというお願いなんですが、いかがですか。
  85. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) まあ使用者となり得るかどうかという、検討はいたしますけれども、今まで私どもが考えている限りは、法律的、制度的には丸紅が労使関係の当事者になるということについては非常に問題があろうかと思いますが、実質的に円満な解決が図られるためにはどうすればいいかという、そういう具体的な措置が重要だと思いますが、そういう問題につきましては、やはり先ほど申し上げましたように関係の農水省とか地元とも相談をさせていただいて、その上で対応をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。そういうことで御理解いただきたいと思うわけでございます。
  86. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは最後に労働大臣にお伺いをして私の質問は終わりたいと思います。  大臣、最後の方で私が申し上げました丸紅の問題なんですが、やはり解決のかぎは私はここにあると、こう考えているんです。だから、歴代の労働大臣もそのかぎを何とか実質的な月あらしめるためにそこの点について御努力いただきました。だから、そういう点は感謝をいたしております。しかし、なかなかそのことがきっかけになって一つの舞台がつくれなかったということも事実であって、しかし、だからといってもうそこの問題については何をやってもむだなんだということじゃなくて、依然として私は丸紅との話し合い労働者との間で持たせることだ、あるいはまた、そういうことが今おっしゃったように、法律立場から使用者としての責任を持たすことには無理がある、できないということであっても、しかし、実態としてそれと同じような立場でもってその一つの舞台をつくり、解決のための力をそこに投入することは私はできるんじゃないか。こういうふうに、実態的な問題としてやはり一番大事なかぎを商社の丸紅が握っている、こう思っているんです。  だからひとつ労働大臣、まあ初めに労使話し合い基本だと、一つ土俵に上げるように努力すべきであるとは思うと、こうおっしゃっていただいたので、たくさんのことをきょうは言いましたが、この丸紅問題もそのうちの非常に重要なかぎを握っているという御認識をいただきまして、この点についても大きなひとつ御配慮をいただきたい。もちろん、これは労働省だけの問題でございません。農水省にも大きくかかわっていただかなければなりませんので、関係する各省庁の調整もとっていただきながら、基本である話し合いの場をつくるという問題に絞って御尽力いただきますことを最後に要請を申し上げ、くどいようですが、今一度労働大臣のお考えを聞かしていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  87. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 本岡さんのただいまのお話を十分念頭に置いて、ひとつできるだけ努力をいたします。しかし、これは労使話し合いを進めなきゃいかぬ。本岡さんも、組合の方にひとつ土俵に上がるように努力をしてください。そうせぬと、一方通行ではこれはできません。お話はよく承りました。できるだけ努力します。
  88. 本岡昭次

    本岡昭次君 ありがとうございました。
  89. 対馬孝且

    対馬孝且君 それでは、きょうは予算の委嘱審査でございますから、予算の関連を一、二問質問いたしまして、出稼ぎ対策の問題を中心にお伺いをしたい、こう思っている次第でございます。時間もありませんので、三十分ですから、ひとつ答弁側も簡潔明瞭にお答えを願いたいと、こうお願い申し上げます。  まず第一に、労働大臣所信表明を読ませていただきました。労働行政を取り巻く情勢は極めて厳しい、まさしくそのとおりであります。山積する諸問題に積極的かつ機敏に取り組まなければならない、こう訴えをいたしておられます。  ところが、五十九年度予算案の概要を私ここに持っておりますけれども、一覧表でございますが、これを見る限り、マイナスシーリング予算ということではございますけれども、ことしの一般会計の縮減ということで、項目だけ見ましても大体二十数項目削られていますね、マイナスシーリング予算で。しかも定員削減は、これまた百二、三十名に達している、百数十名に上っている。こうなりますと、大臣所信表明のこれから労働行政に、雇用安定対策に重点をかける、こういうのと、予算に出た結果はいささか違うのではないか、こういう考え方を持たざるを得ないのでありますが、まずこの点について、簡潔に大臣の御所見をお伺いをします。
  90. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 五十九年度の予算案は、今委員のおっしゃったように、行政改革、財政再建というところで、マイナスシーリングはこれもう各省厳しくかけられたわけでありまして、確かにおっしゃったように、一般会計では四十八億円の減額となっております。しかし労働省の予算は、以前から一般会計と特別会計と二つ、総体として運用をしてきたものでございまして、一般会計、特別会計のトータルでは千六百六十三億円の増額となっております。  しかし、とにかくもう限られた財源の中で、今各省みんな威しゅうございますけれども、その中でやっぱり一定の枠の中で成果を上げようとすれば、時代の要請に合ったような重大な項目から優先順位をつけざるを得ません。そういうようなことで、効率的にやっていきたいと思います。  ことしの予算でも一番最後まで大蔵大臣との折衝に残ったのは、この六十歳台前半層の雇用の促進でございましたが、そういうようなところに政策の重点を志向をいたしまして、また、労働者の安全の確保はもちろんでございまするが、そういうところに重点配分をいたしたわけでございまして、ひとつこの範囲内で全力を挙げてやっていきたいと思っております。
  91. 対馬孝且

    対馬孝且君 今大臣が素直に言われた、予算の総額から見ますと私が申し上げたとおりマイナス現象でありますから、ただ問題は、予算の概要の中でどういう点が一番問題かということを、時間もありませんから私は率直に申し上げたいんですが、確かにこれを見ますと、全体では約四兆円を超える労働省予算になっています。それから、特別会計は三兆五千八百億と、圧倒的になるのでありますが、一般会計でいうと四千九百億ですね。これは、特別会計というのは言うまでもなく、ここにありますように、労災勘定、雇用勘定、徴収勘定ですから、これは労使折半の徴収率、あるいは国が一部ということですから、実際問題として一般会計だけでしょう、労働省の財政的な価値観というものは。私に言わせれば。そうすると、その中でも、さらに一般会計が対前年度予算で四十八億減額されていますね。この四十八億というのは、つまり失対事業の削減による約四十三億減、こう私の推測で考えているのでありますが、確認しますが、これ間違いありますか。
  92. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 御指摘のとおり、一般会計で四十八億のマイナスでございますが、その主たるものは、いわゆる補助金につきまして一〇%のマイナスシーリングということもございまして、労働省の場合の補助金の大宗を占めるものがいわゆる失業対策事業関係の補助金あるいは職業訓練関係の補助金でございます。出入りがございますけれども、マイナスの主要なものは、御指摘のような失業対策事業費の関係でございます。
  93. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこで、私はやっぱり問題だと思うんですよ。きょうは雇用保険法を審議する場ではありませんから、私は大臣基本姿勢だけちょっとお伺いしておかなければならぬと思うのでありますが、今率直に小粥官房長は私の指摘を認めました。そうなりますと、これはおのずから今国会で提案されます雇用保険法、つまりこれは結果的には国の責任労使に転嫁する形になり、ひいては弱者を切り捨てる。つまり、六十五歳以上、賞与の算入の問題あるいは被保険者の短期、長期ということを見直した、こう言っているわけですけれども、それはもう答弁わかっていますから私が言うんですけれども、いずれにしましてもそういう考え方に対して、きょうはもう法案を審議する気持ちはありませんから。  まず、労働大臣として所信表明で訴えられた考え方に立って、あなたは今回の雇用保険法というものに対する考え方は一体どうなのか。私はなぜそれを聞くかといいますと、坂本労働大臣、私も社労は非常に長いですから、十年になりますからずっと歴代大臣所信表明を聞いております。非常にあなたの所信表明立派なことは、「私は、この重責を担うに当たり、勤労者の雇用の安定と福祉の向上を願う国民の皆様の労働行政に対する期待と信頼にこたえ、国民の心をみずからの心としつつ、」、ここがいいところですけれども、「国民の心をみずからの心としつつ、全力を挙げてまいる決意であります。」、非常に私はこれ感動しているんですよ、坂本労働大臣の心情というもの、基本姿勢というものを。そうだとすれば、出てくる法案の内容というのが結果的にはやっぱり弱者を切り捨てる、あるいは高齢者を切り捨てることにつながっていくんじゃないか。この点についてどうお考えになっているか、これをひとつお伺いします。
  94. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 私の基本姿勢について、ただいま、御評価を半分いただいたようでありますが、後の方がどうも厳しいようでありますが、気持ちとすれば、本当にそれはもちろん勤労者の皆さんの福祉と幸福のためにやるのは労働省の仕事でありますけれども、しかし労働者だけがあるというわけではないので、その労働者を幸せにするときには、やっぱり労使関係も大事である、それから国民全体の皆様方の御理解も大切である、そういう大きな国民的な観点の中で労働者の皆さんの福祉を向上していきたい、こういう趣旨を申し上げたわけでございます。  しかしまあ、この雇用保険などの問題に相至りますれば、労使、それから一般会計、これは国民の懐でありますが、その三方どちらも負担を多くしないで、それはふやせばある程度の給付は改善されますけれども、この際はどうもその負担をかけない方がいい、労使あるいは国民の皆さん、一般会計に、という範囲内におきまして、十年の間の時代の変化を見まして、そして、そこでやっぱり、この点はもう少し手厚く、同じ財政の中でありまするから、ここはやっぱり少し我慢いただいてというところがそういう結果になったのだろうと思います。
  95. 対馬孝且

    対馬孝且君 一応大臣の考え方は今わかりましたけれども、端的に申し上げまして、これはやっぱり国民に対してもこの改正は私は誤解を招くというよりも、実態論として労働省は明確にしてもらいたい点が一つあるんです。  なぜかというと、私は「週刊社会保障」という、これをずっと読ましていただきました。これは後でそちらの方に差し上げてもいいんですが、実際問題として保険財政が五十七年が二百十七億、五十八年度は千四十億、五十九年度は千八百四十九億赤字です。これは当然失保受給者が増大をしたということでしょう。会社が倒産をした、あるいは失業者が増大をした、それは流れとしてはそうだから結構なんだけれども、しかし問題は、今回の改正が雇用保険全体の矛盾を是正する、あるいは雇用保険法のそういう労務者に対する制度の充実強化をしていくんだと、こういう視点ならよくわかるんだよ、私は。ところが、出てきた答えがどうも、これはっきりしていることは、こういう赤字が続いているからこれ以上国家財政としては財政効果雇用保険上にとることは難しい。その意味では、この「週刊社会保障」のあれが間違いであれば別ですけれども労働省の本音は、労働省の本当の考え方は、今回雇用保険法を改正することにおいて五十九年度べースでは、ここにありますけれども、千二百億から約二千五百億の幅が出てくる。この幅が出ることが雇用保険法の改正の最大の考え方でもあると、こう書いてあるものだから、これは大変なことだ、国家財政をマイナスシーリングした犠牲として弱者、高齢者、勤労者を切り捨てるというのは、そういう意味で私は、大臣所信表明と結果的に違うのではないか、こう聞かざるを得ないわけでありまして、この「週刊社会保障」というのが間違いであれば別だけれども労働省指示のあれによればということで書いてあるものだから、しかも額まで千二百億から二千五百億までの間に今回の雇用保険法の改正で赤字が解消してその財源が浮く。したがって、有効的な雇用保険を運用することができるんだ。こうなると、我々は何のために雇用保険法をまた改正しなきゃならないんだということになるものですから、ここらあたり端的に、時間ありませんから、後重要な問題やりますから、そこらあたりひとつ安定局長に実際そういう認識なのかと、そうでないとするならそこらあたりのポイントを、いずれ法案で徹底的にやりますけれども、きょうは時間がありませんから、とりあえずそういう基本的な考え方だけちょっとお伺いしておきたいと思うんです。
  96. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) ただいまの「週刊社会保障」、まだ拝見いたしておりませんのであれでございますが、少なくとも今回の改正につきましては、大臣が申し上げましたように、雇用保険が高齢者の増加とか、あるいは女子の就労者の増加、あるいはまた産業構造がサービス産業がどんどんふえてくる、こういうような変化等々の中で雇用保険受給者がどんどんふえてくる、こういう中で、これに対してどう対応していくかということでの検討をしてこの法案を提出しているのは事実でございますし、また、それに関連いたしまして、財政的にも非常に厳しい状況になってきておるということも改正の際の検討のきっかけになったことは事実でございますが、少なくともこの改正においてねらっておりますことは、この雇用保険制度の改正によって受給者の今後の就職の促進というものをどう図っていくのかということ、あるいは今後の高齢化に対してどう対応していくのかというようなこと、あるいはまた、制度の十年の運営の中で、いろいろ不合理な点についてどう是正をしていくのかというようなこと、そしてまた、労使の負担というものをできるだけふやさない形の中でどうするか、こういうような観点からやったものでございまして、結果としまして、予算的に申し上げますれば、この五十九年度の予算という形では改正をしないとすれば出ていくであろう金と、それから改正によってある程度節約できるというような関係で見ますと、約千三百億程度の金の余裕は改正をしたら出ると、こういう形になっておりますが、そのためにこういう改正をしたと、こういうものではない点を御理解賜りたいと思うわけでございます。
  97. 対馬孝且

    対馬孝且君 まあ安定局長から、財政の千三百億を浮かすためにやった、そういうことは答弁するわけもないし、またやったわけではないと思うんだが、そういうふうに明らかに活字になっているとしたら、これは大変なことだと私は思うんですよ。  やっぱり今言ったように、雇用を安定さして、保険でもって充実をさせ、かつ生活を安定させる、そうして再就職ができる、これがこの目的でしょう。そうだとするならば、やっぱり財政上の問題が大きくクローズアップしてきているということになれば我々は断じてこれを容認するわけにはいかない、こうなるものですから、これは、いずれ法案の段階で−−私はやっぱり労働省基本的に財政措置という考え方に立っての改正だというふうになると大変なことになる。我々は絶対にこれは容認するわけにいかないということになりますので、そこらあたりは、それだけではないというのであれば、今安定局長はないと言っておりますから、ないとするなら、どういう点をこれから改革をすることが雇用安定にプラスになり、再就職安定にプラスになり、それから不安定労働者雇用安定につながっていくか。こういう面の考え方がある、こういう答弁ですから、それはひとつ、お互いに一回議論をしてみたい、こう思っています。  それでは、次の問題は、そういう前提を踏まえまして、不安定労働者とは何ぞやということを私は随分当委員会でやりました。これは五十七年三月三十一日、五十八年四月二十八日にこの委員会でやっています。私は、一口に言って不安定労働者の中の季節労働者、出稼ぎ労働者についてここでずばりお伺いしたいのでありますが、これは加藤安定局長を中心に大変努力をされてそれなりの対策をやっていただいています。これを私も多として評価をします。  そこで問題は、このような雇用保険改悪が出てくるとするならば、御案内のとおり、私は十年前の附帯決議を今ここに持っているのでありますが、短期労務者特例一時金の附帯決議を私も見直してみましたが、これは、特に不安定労働者の季節労働者雇用、生活安定に必ず対応する制度を充実する、この附帯決議をやっていますね。この附帯決議は四十九年十二月二十四日。ここに当時の安定局長さんもおります。知っている人もおりますけれども、いずれにしても、私はこの問題を考える場合に、今出稼ぎ労働者、季節労働者が北海道は三十二万人おりますけれども、また全国的には五十万人−七十万人とも言われておりますけれども、心配されているのはこの雇用保険法が出たことによってまた特例一時金に切り込みあるいは改悪をされるのか。我々の主張は、むしろ五十日を九十日に復活すべきである、こういう主張に立っているわけですから、本来の九十日に戻せというこれは多くの出稼ぎ労働者の希望、願望あるいは要求でございますけれども、それは別にして、とにかくこの雇用保険法の今回の改正に伴って短期雇用一時金の五十日に改正をする意思はない、少なくともこのことだけははっきりひとつ言明をしてもらいたい。どうですか安定局長
  98. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 今回の改正につきましては、先ほど申し上げましたように、こういう雇用失業情勢の構造的な変化というものに対応いたしまして、失業者の生活の安定を図る、あるいはまた再就職の促進を図る、こういうことでお願いをしておるものであるわけでございまして、季節労働者の問題につきましては、これは一般労働者と異なりまして、季節的に入職とか離職が繰り返される、そうして年間のある特定の時期に失業する、こういうような形態にかんがみまして、昭和五十年に雇用保険法が施行されます際に、特例一時金制度、こういうものが発足をしたわけでございます。  この問題につきましては、率直に申しまして中央職業安定審議会の答申におきましても「関係の被保険者の生活の実態」「等を考慮しつつ、今後検討を行うこと。」と、こういう指摘がされておるわけでございまして、今後もこの季節労働者実態等の把握に私ども努めながら、基本的には通年雇用の促進であるとか、あるいは地元における就業機会の確保、こういったもので雇用の安定を図っていく、こういう基本的な対策を進めていくことが重要だ、こう考えておるわけでございます。しかし、この特例一時金制度の成立の経緯、あるいはまた、季節労働者の現在の就労実態等にかんがみますると、これは現段階では現行制度にかわるような新しい制度を生み出すということは極めて難しい、こんなふうに考えておるわけでございます。
  99. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣、今答弁がございましたけれども大臣も石川県の出身でございますから御案内のとおり、北海道は冬季四・三カ月は稼働できないわけです。そのための手当てとして冬期講習受講制度をつくっていただきまして、現在それなりの、一部生活の手当てになっているわけですが、大臣として、今現段階では考えていない、現段階も将来ともに弱者に−後で私申し上げますけれども、これはこの前労働省に季節労働白書というのを差し上げています。これは安定局長にも差し上げていますけれども、これをごらんになってもらえばわかるように、これは札幌市の生活保護の月収が十一万七千三百五十円、札幌のこれは生活保護ですよ。ところが、北海道の三十二万の季節労働者の五十日分と、それから例の努力をしていただいた講習給付金八万四千円、これをプラスして四・三カ月で割ってみると七万九千四百円にしかならないんです、大臣。七万九千四百円。つまり、生活保護と正確に試算してみますと、六七・七%にしかならないんですよ、現在の生活が。こういう実態だということをひとつ踏まえていただきたい。これは私も勘でしゃべっているわけじゃないですから、これは全部白書でこういうふうにアンケートをとって出したあれですからね。生活保護の七〇%に達していないこの季節労働者になおさら不安を与えることはないというためにも、私は今質問しているのは、この特例一時金は今後ともこれを確保し、また、今局長答弁されましたように、通年雇用の充実と強化に努めてまいりたいと、こういう答弁ですから、大臣はひとつしかとそれを答えていただきたいと思います。
  100. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 季節労働者、出稼ぎの皆さんの実態はあなたも私もよく承知しているところです。私のところの能登半島の奥だってなかなかみんな苦労して出稼ぎに行って、生活実態はよく知っております。この中央職業安定審議会などでは、まだまだ生活実態を調査したりして検討すべきだと、こういう意見も出ておることは聞いております。  しかし、私といたしましては、今、局長答弁いたしましたように、それじゃ、どう変えるかということになると、そう簡単なものではない。だから、私は現行制度は変えるつもりはない、こういうつもりでやります。
  101. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣の現行制度を変える考え方はないという明快なお答えですから、この点は率直に、全国出稼ぎ労働者の不安感の解消のためにもひとつ、大臣の確たるお答えに、改めて私も深く敬意を表します。  それでは次の質問に入らせていただきます。  したがって、冬期雇用奨励金制度、これは積寒給付金制度にかわりまして、五十三年以来、石田博英、時の労働大臣から始まりまして、大変労働省の当局の方々の努力は多として今日までまいりました。端的に言って、冬期雇用奨励金制度の八万四千円の額を明年度再びひとつ引き上げてもらいたい。それから適用業種の範囲をぜひ拡大をしてもらいたい。この二点。この前も大臣においで願って関係者が会見をいたしておりますので、何ぼ上げるということは私は言いませんけれども、願望としてはこの前から一貫して申し上げておりますように、季節労働者全体の労働の大体四〇%相当額を見てくれということを言っておりました。したがって、その答えが十五万という北海道に出ているわけでありますけれども、十五万と八万四千円とは大分差がありますけれども、まずひとつ額は別にして明年度の予算に向けて最善の努力をしてもらいたい。かつ、業種の範囲も検討をしていただきたい。  以上でございます。
  102. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 冬期雇用奨励金につきましては、今度の概算要求提出時点におきまして今後どうするかということについて検討させていただきますが、適用業種の拡大につきましては、これはまた既にいろいろ検討もした問題でございますし、また制度の本来の趣旨というもの、そしてまた他へのいろんな波及というような問題等もございまして、この適用業種の拡大については極めて困難な問題があるということでございまして、そういった点について御理解は賜りたいと、こう思っておるわけでございます。
  103. 対馬孝且

    対馬孝且君 いずれにしても、六十年度予算概算要求の七月ないし八月に検討されると思いますので、べースをどこに置くかは別にして、ひとつ再び検討していただきたい。これは特に要望しておきます。  そこで、時間もありませんので、端的に申し上げますけれども、御案内のとおり、特例一時金の場合は通年六カ月働かないと該当にならぬわけですね。それから、冬期雇用奨励金も同じであります。これは知っているとおりであります。ところが、最近、この白書ごらんになってみればわかるんですけれども、四月、五月、六月の、四月に職についたというのは、このアンケートの調査で全部出ましたけれども、たった二三%であります、大臣。四月に職についたというのが。それから、五月に確定したのが五一%です。六月でおおむね八〇%、七九%です。  そこで、時間もありませんので、私がここで申し上げたいことは、この間も稻村開発庁長官にお会いして、特に仕事づくりをしてもらいたい。公共事業ですね。北海道開発庁全体で七千億あるわけですから、これは開発庁全体の予算ですけれども、執行はこれは建設、農水、運輸であります、私も全部承知しておりますから。それで稻村開発庁長官も、確かに言われればそうだと。したがって、私の言いたいのは、公共事業を発注する場合に、この季節労働者を使っている事業主に公共事業を最優先的に与えてもらいたいという指導をぜひひとつ関係省庁にしてもらいたい、こういうことを大臣に申し上げておきます。この間大臣と話をしたのは、例の北海道の開発予算のときにちょっと話したのでありますが、わかった、それじゃひとつおれからも話を呼びかけていこう、こういうことを言ってくれたわけであります。  労働大臣にも、ひとつここでお願いしたいのは、今だにまだ仕事が確定していないというのが、この調査に載っておりますけれども、六月で六八%だけが確定したというけれども、あとは確定してないんです、これ。そうすると、何が問題かというと、さっき言ったことが問題なんです。六カ月、七万円ですよ、一年間を通して。そうすると、一時金の五十日分もらえなければ八万四千円の冬期雇用奨励金ももらえない。制度があってもこれは適用にならない。ここに問題があるわけでございます。したがって、ぜひひとつ労働大臣からも、今申し上げました関係省庁に対して、この公共事業の仕事づくりに、ぜひ季節労働者の事業主その他の関係方面に優先的にひとつ仕事づくりをしてもらいたい、発注さしてもらいたい、こういう要望をぜひ労働大臣からしていただきたい。  これは開発庁長官にも申し上げておりますので、長官からも、北海道の実態は大変だということはおれも承知している、こう言われておりますので、時間もありませんから、そこらあたり大臣から。それから、開発庁来ていますね、開発庁からもひとつあわせてお答えを願いたいと思います。
  104. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) この間北海道へ行きましたらね、やっぱりあなたのおっしゃるように、働きたいんだ、仕事をくれ、公共事業が一番手っ取り早い、こういうような痛切な御意見もありました。ですから私としては、これはやっぱり関係各省と連絡をとりながら、特にそういう切実に雇用を期待しておるようなそういう皆さんのところにはできるだけの配慮をするように、関係各省にも御相談をしたい。  さらには、これはあなたの質問じゃないけ札とも、これは仕事を続けにゃいかぬから、公共事業の前倒しも今度積極的にやらなきゃいかぬぞということで、今私も関係各省と相談をしたいと、こう思っております。
  105. 宇山喜代人

    説明員宇山喜代人君) 季節労働者雇用の場の確保の問題につきましては、重要な課題としてこれは受けとめているわけでございます。  先生御質問の、公共事業の発注についての問題でございますが、工事の発注は会計法令等に基づきまして行うこととされておるわけでございまして、このようなことから、工事の発注に当たりまして、先生御指摘ございました季節労働者雇用数の多いか少ないかということを受注資格の基準として考慮する、こういうことにつきましては、工事の発注のあり方といたしましていかがなものかということも聞いているわけでございますので、御質問の御趣旨につきましては、なお慎重に検討さしていただきたいと思っております。
  106. 対馬孝且

    対馬孝且君 その受注資格というのはどういう意味ですか。あなたの言っているのはぴんとこないが。大臣が言っていることとあなたの言っていることと違う。
  107. 宇山喜代人

    説明員宇山喜代人君) 受注につきましては、これは会計法令、特に予算決算及び会計令におきまして、受注者についての資格基準というものが適正に定められるようにという規定はございます。さらに、それに基づきまして……
  108. 対馬孝且

    対馬孝且君 そんなことを言っているんじゃないんだよ。これは稻村長官が言っているのは、北海道開発庁に七千億の開発予算がある、その予算はもちろん農水、建設、運輸となっているけれども、その関係者を全部呼ぶって言っているんだよ、あんたのところの大臣は。関係者を一回全部呼んで、北海道の建設業界の関係者も全部呼べと、呼んでおれからひとつ話してやろうと、あんたの大臣はそういう気性だから、おれがちゃんと一言言って、そういう質問すればやってやる、こう言っているんだよ。何だ君の答弁は。大臣はそう言っているんだよ、私に対して。私一人聞いているんじゃない、北海道国会議員団全部聞いているんだから、これ。それをあんた、受注資格があるかないかというのはこれからの問題であって、私の言っているのは仕事づくりを行政指導立場でやれと、こう言っているんだから、労働大臣としてはちゃんと積極的にそういうことを働きかけようと、こう言っているんだから、そういうことを君は大臣に伝えればいいんだよ。そういう対応をしますということでいいんだよ。何だ君の答弁は。
  109. 宇山喜代人

    説明員宇山喜代人君) 先生御指摘のように、北海道開発庁といたしまして、季節労働者雇用の場の確保について、開発予算の確保を通じていろいろ努力しているわけでございますが、具体的に御指摘がありました季節労働者雇用数をもって重点的に発注をするということについての扱いにつきましてはちょっと検討させていただきたいと、こういうことを申し上げたわけでございます。
  110. 対馬孝且

    対馬孝且君 これはぴんとこないんだよ、結局。雇用数とかなんとか僕は言っているんじゃないんだよ。現におたくの開発庁にA、B、C、D、Eというランクがあって——あんたちょっと不勉強じゃないのか、僕は全部調べてしゃべっているんだよ。そのランク別に北海道の建退共に入っている加盟業者が全部登録しているものだよ、これ。その中に現在の三十二万いる季節労働者の配置も全部決まっているんだよ、君。全部ではないけれども、そこを言っているんだよ、僕は。それがだんだん今仕事がなくなっているからそのための仕事づくりをきちっとやってくれよとこう言ったら、大臣はわかりました、一回集めてやるからとこう言っているんだよ。そういうことを君はわかりましたと言えばいいんだよ、それで。君の答弁を聞いていると、何か邪魔するようなことを言うから頭にくるんだよ、本当に。
  111. 宇山喜代人

    説明員宇山喜代人君) 誤解を招くような御説明であったとしますと失礼を申し上げたことになりますが、北海道開発庁といたしまして、開発予算の執行ということにつきましては、やはり北海道の社会資本の整備を効率的に進めまして、そこの基盤の上にいわゆる経済産業活動を活発に起こしまして安定した雇用の場の確保を図るということは、これは基本的な方針ではないかと思っておりますから、そういう観点から、先生今おっしゃいましたそういう場を通じての雇用機会の確保ということについては今後とも努力してまいりたいと、かように考えております。
  112. 対馬孝且

    対馬孝且君 最初からそう言えばいいんだよ。本当に大事な時間を余計とって申しわけないよ。  労働大臣、先ほど確たるお答えをいただきましたし、そういう関係方面であれば開発庁長官もぜひそういう働きかけをすると、石川県出身の言ったことは必ずやると、こう言って男子の本懐を明らかにこの間言われましたけれども労働大臣もそういう決意のようでございますから、時間も参りましたので、ともあれ、積極的に仕事づくりにぜひひとつ働きかけをしていただきたいということを要望申し上げて私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  113. 石本茂

    委員長石本茂君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時四分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  114. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和五十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、労働省所管を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  115. 中西珠子

    ○中西珠子君 予算の委嘱審査でございますので、まず予算関係質問からさせていただきたいと思います。たくさんお聞きしたいことがございますので、答弁はなるたけ簡潔にお願いしたいと思います。  人口の急速な高齢化とか産業構造の変化、技術革新の進展、特にMEの雇用や労働安全衛生に与える影響など、その他山積する重要問題に対応するために効果的な労働行政を展開していただきたいと望んでいる、また、期待している労働省なのですが、その一般会計予算が前年に比べて四十七億七千二百万円の減額である、こういうことになっておりまして、重点政策として大臣も挙げられたものの中にも減額されているものがあるという状況でございます。労働省は、この多くの課題に対して予算的な裏づけが十分になくて政策の推進がおできになりますか、大変心配するところでございますが、主要な減額項目の理由などを承りたいと思います。  しかし、まず第一に人件費の問題をお聞きしたいと思います。  行財政改革のために、五十九年度における定員の削減が三百二十四名となっており、そして職員の増員は百八十一名ということになっています。純減が結局百四十三名ということでございますが、そしてこの職員の増員百八十一名につきましては、この間予算委員会におきまして、もう既に日本が批准しているILOの八十一号条約との関連で、十分な労働基準監督官がいるのかどうかという御質問をしましたときに、三十名増員ということを伺いましたけれども、その基準監督官三十名増員のほかの増員の内訳はどういうものか、まずお聞きしたいと思います。
  116. 若林之矩

    政府委員(若林之矩君) 百八十一名の内訳でございますけれども、労働基準監督官が三十人、雇用指導官が三十七人、就職促進指導官が四十八人等でございます。
  117. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは、一般会計における人件費の割合はどうなっていますか。
  118. 若林之矩

    政府委員(若林之矩君) 労働省一般会計の人件費は、全体の予算の中に占める割合はちょうど二〇%でございます。
  119. 中西珠子

    ○中西珠子君 全体の予算——一般会計全体ですか。
  120. 若林之矩

    政府委員(若林之矩君) 一般会計の予算全体は四千九百三億でございますが、そのうち人件費が九百八十三億ということでございまして、二〇%でございます。
  121. 中西珠子

    ○中西珠子君 その増員を、まあそうたくさんではなくて少ない増員だとは思いますけれども、重点的に配置していただいて効果的な労働行政の展開をやっていただきたいと切望いたします。重要なところには幾ら行財政改革とはいえ、もっとふやしていただきたいという気持ちが私はするんですけれども、とにかくマイナスシーリングということですから、その点はまた来年度予算において頑張っていただきたいと思うわけでございます。  次にお伺いしたいのは、その主要な減額の項目についてでございます。まず一般会計の減額が四十七億七千二百万円という減額ですけれども、その中で一番大きいのは結局「失業対策諸事業の適正な運営」という項目になっていますけれども、この失対事業の予算が四十三億四千九百万円減るということでございまして、これが減額の大部分を占めるということで確認さしていただきますが、よろしいですか。
  122. 若林之矩

    政府委員(若林之矩君) 「失業対策諸事業の適正な運営」の関係での減額は四十三億四千九百万でございますので、いろいろと予算としての出し入れはございますけれども、四十八億のうちの主要な部分というふうに考えております。
  123. 中西珠子

    ○中西珠子君 この失対事業に関しましては、さまざまな陳情が殊に女の人から来ておりますが、これに関しまして労働大臣の御所見を伺うのは次の機会に譲りまして、予算の面での質問を続けたいと思います。また、雇用保険に関しましてもこの次、法案の提出のときに質問いたしますので、それはきょうはいたしませんで、ほかの減額の理由というものを項目別に私が気になるところをお聞きしたいと思います。  例えば重点政策に、MEの雇用に及ぼす影響などをうたっていらっしゃるんですけれども、「MEを中心とした技術革新の進展への対応」として、これが三億八千三百万円前年に比べると減っておりますね。そしてまた、「技術革新への労働安全衛生面からの対応」として四億二千八百万円減っているわけです。その理由をお伺いしたい。それからもう一つ「職業性疾病の予防対策」、これについては十一億八千九百万円減額ということになっておりますが、この三つの減額理由をまずお聞きしたいと思います。
  124. 若林之矩

    政府委員(若林之矩君) まず、「MEを中心とした技術革新の進展への対応」が三億八千三百万円減額でございまして、今御指摘のように、「技術革新への労働安全衛生面からの対応」が四億二千八百万減額になっておりますが、産業用ロボット自動化システム工場の安全に関する研究を一層促進いたしますため、産業安全研究所の中に機械安全システム実験棟というものを五十八年度予算で建設をいたしました。その予算が四億二千八百万でございまして、これが五十九年三月に完成をいたしました。したがいまして、五十九年度予算はこの建設費の予算が減額になっておりまして、その関係でこういった減額の形になっているわけでございまして、この面を捨象いたしますと、安全対策は従来以上に強化しているということでございます。  それから、第二点のお尋ねの、職業性疾病の予防の関係で、十一億八千九百万円の減額でございますが、化学物質の有害性調査を行いますため、昭和五十二年度から日本バイオアッセイ研究センターというものの建設を進めてきておるわけでございますが、昭和五十八年度をもちまして施設の建設の大半が終了いたしました。このことに伴いまして、五十九年度の予算が減少しているということでございます。
  125. 中西珠子

    ○中西珠子君 技術革新が雇用に及ぼす影響も非常に重要でございますけれども、安全衛生の面での影響というものは大きいわけでございますから、職業性の疾病というものもMEから生じてくる新しいものも出てきているのではないかと思いますので、その辺の調査研究対策を十分に考慮していただくようにお願いいたしたいと思います。  それから、その次の減額の項目ですが、「重度障害者、精神薄弱者等障害の程度、種類に応じた対策の強化」という項目が、昨年度に比べると二億円減ということになっております。また、「心身障害者の能力開発の推進」、これが一億四千五百万円減ということになっていますが、この理由はいかがですか。
  126. 若林之矩

    政府委員(若林之矩君) 「重度障害者、精神薄弱者等障害の程度、種類に応じた対策の強化」、私どもの政策のきわめて重要な柱でございますが、二億円の減額という形になっております。これは、前年度より予算額が減少いたしました理由は、公共職業安定所の紹介によりまして重度障害者を雇い入れました事業主に対しまして、その賃金の三分の一、中小企業の場合は二分の一でございますが、これを十八カ月間支給いたします特定求職者雇用開発助成金という制度があるわけでございますけれども、この対象人員が最近の推計で減少してまいりまして、その関係で見込みが減ってまいりましたので、予算が減額になっているというものでございます。  それから、もう一つお尋ねの「心身障害者の能力開発の推進」、これも障害児対策として極めて重要な対策の柱でございますが、一億四千五百万の減額になっております。これは、心身障害者に対します職業訓練のエキスパートの養成をいたしますため、職業訓練大学校に心身障害者に関します職業訓練指導員養成課程、福祉工学科でございますが、これを設置することといたしまして、昭和五十七年、五十八年度の両年度にわたりまして、施設とそれから訓練用機器の整備を図ってまいりました。そのため多額の予算を組んでまいったわけでございますが、五十九年度におきましては、施設面での整備が終わりました。したがいまして、訓練用の機器の整備のためのみの予算を計上いたしておりますので、こういった形になっているわけでございます。
  127. 中西珠子

    ○中西珠子君 「心身障害者の能力開発の推進」の件につきましては減額の理由がよくわかりましたけれども、「重度障害者、精神薄弱者等障害の程度、種類に応じた対策の強化」のところの、殊に特定求職者雇用開発助成金の問題につきましては、これはちょっといろいろ聞いているケースもありますので、この次にお聞きしたいと思います。  予算関係につきまして、次に移りたいのでございますが、労働外交、これは非常に日本の国際的地位の高まりとともに、労働外交というものを強力に展開していただくことは大変結構なことでございますが、なぜ十一億五千四百万円の減額になっているのですか。
  128. 若林之矩

    政府委員(若林之矩君) 我が国の国際的地位の向上に伴いまして、労働分野におきまして我が国の果たすべき役割は極めて増大したわけでございます。開発途上国に対する技術協力、それから先進国をも含む国際交流対外広報等、従来にも増して積極的に推進することといたしておりまして、そういった形での予算編成をしておるわけでございます。  具体的には、労働外交に関します本年度の予算は、ただいま御指摘のように十一億五千四百万減少になっているわけでございますが、これは海外職業訓練協力センターというものを建設をしてまいりました。海外の進出企業で働く労働者を日本に呼びましてそのセンターで訓練をする、あるいは海外に進出する企業の指導員を養成する、こういったような施設でございますが、この建設を進めてまいりました。五十八年度では建設費として十三億を計上したわけでございますが、このセンターの建設が終了いたしたわけでございます。そういった関係で予算の減額になったわけでございましてILOに対する分担金の増額も含めまして、今年度の労働外交関係予算はただいまの建設の関係を捨象いたしますと四億円ぐらい増加をいたしております。この中には新規事業といたしまして若手の労働組合指導者の招聘事業の実施等も入っているわけでございます。
  129. 中西珠子

    ○中西珠子君 わかりました。  一つお聞きしたいのですけれども、「開発途上国の労働問題に対する労使による協力事業の拡充」というのはどういう内容なんですか。
  130. 若林之矩

    政府委員(若林之矩君) この開発途上国の労働問題に対する労使による協力事業と申しますのは、我が国の労使が開発途上国の労使に対していろいろな面で協力事業を行うというものでございまして、具体的にはそういった海外の労使を我が国に招聘をする、あるいは我が国の労使が開発途上国に出かけていってセミナー等を開催する、こういったものに対して助成をする事業でございまして、我が国労使が大変これを重視し、積極的に活用していただいているものでございますが、五十九年度につきましてはその対象地域を拡大いたしますとともに、対象となる事業も拡大するという形にいたしまして、前年度に比しまして三〇%ぐらい拡充を見ているところでございます。
  131. 中西珠子

    ○中西珠子君 結局、これは労使全体が行うものに対して助成をするという意味ですか。
  132. 若林之矩

    政府委員(若林之矩君) そのとおりでございます。
  133. 中西珠子

    ○中西珠子君 次に、婦人労働対策の予算関係のことをちょっとお聞きしたいと思います。  まず、この大きな表の二十三ページに、「母子家庭の母等の雇用対策」、これは、今まで減額のことばかりお聞きしましたけれども、これは十五億六千九百万円増額ということになっておりますね、その理由と、また、どういうことをなさっているのかにつきましてお伺いをしたいと思います。
  134. 若林之矩

    政府委員(若林之矩君) 「母子家庭の母等の雇用対策」でございますが、就職を希望される母子家庭の母等につきましては、寡婦等職業相談員というものを公共職業安定所に配置するなどによりまして、家庭環境等に配慮したきめ細かな職業指導、職業紹介等に努めますとともに、母子家庭の母等を雇い入れた事業主に対しましては、特定求職者雇用開発助成金を支給するということをいたしております。また、訓練手当を支給しながら公共職業訓練、職場適応訓練を実施するといったようなこともこの政策の中で進めているわけでございます。昭和五十九年度におきましては、寡婦等職業相談員の増員を図りました。また、母子家庭の母等の求職者の増加に対応いたしまして、特定求職者雇用開発助成金の支給対象者の増加を見込んでおります。また、職業訓練あるいは職場適応訓練の受講を促進いたしますために訓練手当の充実を図っております。その関係での予算の増でございます。
  135. 中西珠子

    ○中西珠子君 そういった施策のために増額を図られたのは結構なんでございますけれども、ちょっと気になるのは母子家庭の母などと言った場合、生別の母子家庭、死別の母子家庭、それから未婚の母の母子家庭みんな含みますか。
  136. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 支給要件の具体的な問題でございますので、至急調べまして御答弁させていただきたいと思いますので、しばらく時間をおかしいただきたいと思います。
  137. 中西珠子

    ○中西珠子君 これに関しましては、必ず細かく調べてお答えください。と申しますのは、児童扶養手当、これは厚生省の問題でございますけれども、この間ちょっと予算委員会でやったんですけれども、これの関連で、細かい支給資格の問題をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。  それから、やはり予算の概要の中に、十九ページですけれども、「女子のニーズに応じた能力開発」というのがあるんですけれども、そして「公共職業訓練施設における女子のニーズに応じた訓練科の増設」とありますが、どのような訓練科をお考えでいらっしゃいますか。
  138. 若林之矩

    政府委員(若林之矩君) ここにございますように、現在十四科でございますが、これに二科増設をいたしました。それは土浦で経理事務、福井でトレース、この二科を増設いたしました。
  139. 中西珠子

    ○中西珠子君 現段階で女子が必要としているような訓練科目、また女性に適当と思われる訓練科目の増設をなすって訓練をなさるのは非常に結構なんですけれども、ユネスコとか、ILOの会議でもしょっちゅう問題になりますように、これは女性向きの職業、これは男性向きの職業、また訓練科目というふうに分けてお考えにならないで、女性の能力の開発というものを性別にとらわれずにお考えいただきたいということを強く要望いたしておきます。  続きまして、「女子の雇用管理改善のための啓発指導の充実」という項目がありますけれども、その内容と予算措置を御説明いただきたいと思います。
  140. 若林之矩

    政府委員(若林之矩君) 十八ページにございます「女子の雇用管理改善のための啓発指導の充実」でございますが、一つは、女子の雇用管理のためのハンドブックを開発するということをこれまでも進めてまいりまして、五十九年度は三年計画の二年次目でございます。食料品製造業等三業種についてハンドブックを開発するという形で予算を編成をいたしております。それからもう一つは、こういったようなハンドブックを作成いたしまして、これに基づきまして、いろいろな面での集団指導を実施したいというふうに考えております。
  141. 中西珠子

    ○中西珠子君 これは、雇用上、職業上の男女差別をなくすために雇用管理をよくしていらっしゃるということなんですね。そういうことですね。
  142. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) そのように御理解いただきたいと思います。
  143. 中西珠子

    ○中西珠子君 雇用における男女の機会の均等と待遇の平等に関する法制の整備というものも、この予算の項目の中に入っておりますが、これについて少し御質問したいんですが、この間、三月二日に日経連会長から総理大臣労働大臣と外務大臣あてに質問状が参りましたね。労働省はこれに対してはお答えになりましたでしょうか。労働大臣お願いいたします。
  144. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 御質問の点につきましては、三月二十七日に日経連の方が労働省においでくだすった際に、口頭でお答えを申し上げております。
  145. 中西珠子

    ○中西珠子君 その内容についてお教え願えませんか。
  146. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 日経連のお尋ねの御趣旨が、大きく分けますと二つございまして、一つは、婦人差別撤廃条約が署名をされたときに、これは企業経営に対して影響があるのではないかと思うが、どういうふうに考えて署名をしたのかという御質問と、それからもう一つは、これを批准のために雇用の分野で法的措置を講ずるということであれば、それは批准の最低の要件を満たしていれば足りるのであろう、その最低の要件は何か、こういう御質問でございましたので、その二つについてお答えをいたしました。  一つは、この条約の批准というものは社会的な影響が、一気にこれを実現しようとすればかなりな影響があるであろう。しかし、現状を踏まえながら、社会に及ぼす影響も配慮しながらこれを行っていくということは可能であろう。これは条約が漸進性を認めているということもございますので、そのようにお答えをしております。  それから、第二の点につきましては、雇用の分野においては法的措置を講ずることは必要であろう。その場合、「妊娠又は母性休暇を理由とする解雇及び婚姻をしているか否かに基づく差別的解雇を制裁を課して禁止する」というふうに条約では書かれておりますので、禁止措置、最低限民事的な強行規定により担保しなければならないと解されるということ、また、批准のための最低要件としては、母性保護措置以外の女子保護規定については、基本的には見直すことが必要であるが、条約上、これまた漸進的な実施が認められると判断されることから、批准時にすべての保護法規を改正しなくても許容されると考えられること、これだけをお答えいたしております。
  147. 中西珠子

    ○中西珠子君 やはり最低の要件というものをもう少し具体的に私はお聞きしておきたいのでございますけれども、例えば今おっしゃった強行規定にすることが必要だという、それが、例えば母性を理由とする解雇、婚姻や何かに起因する解雇、そういったものはもちろん強行規定にしなくちゃいけないという解釈でお答えになったそうでございますけれども、募集とか採用、それから配置、昇進・昇格、福利厚生、教育、訓練、それから定年退職における差別、定年の年齢における差別とか、いろいろありますけれども、そういった面については、労働省は結局とのようにお考えなのですか。  この間の婦人少年問題審議会の建議は三論併記となってしまっておりまして、これはもう労働省の裁量で結局法案を整備され、そしてそれを作成されて国会提出なさる。それが労働大臣お話ですと、今国会、できれば四月の終わりごろにはお出しになるというふうなことも伺っておりますが、その点に関していかがですか。
  148. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先ほど申し上げましたのは、日経連が条約批准のための最低要件は何かという質問でございましたので、それにお答えしたわけで、審議会ではもちろん最低要件だけを考えているわけではございませんで、いろいろどのような法制が日本では適切かという観点からこれまで慎重に審議を進められてきたわけでございます。  そこで、今御質問の内容につきましては、その項目別にそれぞれ御意見がございまして、中には一致された面もあれば、三者が全く違っているのもあれば、少数意見がついているものもある、三種類に分かれるかと思います。そこで、三者の御意見が一致されたものについては、よほどの事情がない限り、最大限その線に沿った法案づくりが可能になると存じますが、御意見の分かれている点につきましては、これまでの審議の中で言われました御意見などをよく思い返しまして、それらを反映した法案の作成に現在努力中でございます。
  149. 中西珠子

    ○中西珠子君 目下お考えになって、そしてこれから作成するとおっしゃっておりますけれども、やはり一応労働省としての基本的なお考え方はあると思うのでございますけれどもね。法案作成に当たっての基本的なお考えというものはあると思うんですけれども労働大臣いかがですか。
  150. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 今局長答弁いたしましたように、審議会の報告をちょうだいをいたしましたが、中西さんの御指摘のように、両論もあれば三論もあるというような状況でございます。しかし、私どもといたしましては、やっぱりこの際法案の提出に踏み切りたいということでございますから、今までの審議の中でいろいろの案が出ますけれども労働省として責任を持てるものはどこからか、その実情もよく勘案をいたさなければならぬし、向こうべき目標はしっかりと定めておかなければなりませんし、そういうところで、今ここで全ステージについてこれはここまで、あれはここまでというような、企業に対してどの程度の義務を負わせるかということにつきましては、これは審議会のみならずまた各界の意見も聞いて、そして今一生懸命に取りまとめの最中というところでございまして、まあ余り細かに今申し上げるというのはちょっと早いように思いますが、一生懸命にせかしていいものをと思って頑張っておる最中であります。
  151. 中西珠子

    ○中西珠子君 条約の要件に合致した、そして条約の理念に合ったものをつくっていただきたいと思います。  公益委員使用者側は、やはり募集と採用は絶対に努力義務規定にするようにということを考えていらっしゃるらしいですけれども、やはり働く婦人は、現在の段階では中高年婦人はほとんどフルタイムの雇用の機会はありませんし、また、四年制大学の女子卒業生は、特別の技能のある人を除いては大変就職が難しい。また、MEの影響で、短大や高校出の女性にも雇用機会が狭められてくるという状況でもありますし、まず募集という段階で努力義務ということであれば、もう全然入ってもこられないという状況がずっと続くわけでもございますので、ぜひ募集の段階の差別禁止ということはやっていただきたいと思うわけです。そして、今労組や四十九の婦人団体、また、公明党が過去一カ月の間に署名運動をしましたら、三十万の目標が五十万も集まってしまったということは、やはり募集から解雇、定年退職の段階まで、入り口から出口までやはり強行規定にしてもらいたい、でき得れば罰則を伴った強行規定にしてもらいたいという婦人の願いというものがこれは込められているわけですから、やはり働く婦人の立場というものを考えて対処していただきたいと思います。  差別撤廃条約の第十一条に、(a)は「すべての人間の奪い得ない権利としての労働の権利」と言っていますし、「同一の雇用機会(雇用に関する選考のための同一の基準の適用を含む。)についての権利」ということ空言っております。ですから、こういった点をきちっと考慮に入れていただきたいと思うわけです。  ほかの国で、努力義務規定ばっかりで雇用平等法をつくって、差別撤廃条約を批准した例がございますか。
  152. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 差別撤廃条約を批准した国のすべての法制について検討したわけでございませんので、ないということも申し上げかねるわけでございます。ただ、主要な国の研究をいたしましたときに、西ドイツにおきましては、募集について努力義務規定が設けられているというふうに承知しております。しかしながら、西ドイツは差別撤廃条約はまだ批准はいたしておりませんので、批准をする際にどのようになるかは将来のこととして注目はいたしております。
  153. 中西珠子

    ○中西珠子君 予算委員会の婦人問題と社会保障の集中審議におきましても、また一般質問のときにも、何回も申し上げたことなので繰り返して申しませんけれども努力義務規定では司法の救済も難しくなる。そういう今ある司法の救済というのが婦人労働者に開かれた唯一の道なのでありまして、それも、費用もまた年月もかかるという裁判の判例をかち取るために本当に大変な努力が払われてきたわけでございまして、今度は努力義務規定になってしまいますと非常に難しくなるということだけ−内容については詳しく申しません、何回も申しましたから。しかしそのことを指摘したいということと、それからまた、努力義務規定で司法救済も難しくなるということであっても、反面、非常に迅速で適正な行政的な救済措置があるということであるといいんですけれども、公益委員使用者側が同意なさったいわゆる調停機関というものは、これも私は二度も予算委員会でやりましたから言いませんけれども、法制局長官も、調停機関というものは命令権がないものだということをはっきりと明言していらっしゃいますから、やはり是正命令の出せる実効性のある救済措置というものをお考えいただきたいということを、私はこれは婦人の声を代弁させていただいて申し上げておきます。どうぞよろしく考えていただいて、お取り計らいくださるようにお願いします。  それからまだほかに、どうして条約を批准をするときには労働基準法の女子保護法規を改正しなければならないかという理由が私にはわからないんですけれども、それについてはいかがでございましょう。
  154. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) この条約が、男女の平等の基礎に立ってということを基本的な原理といたしておりますから、向かうべき方向としては、男女の労働条件その他を決めている法律は男女同じであるべきであろうと考えるわけでございます。しかし、この条約十一条の三項にも言っておりますように、「定期的に検討する」ということが書かれておりますように、直ちにあるべき姿を実現しなければならないということではなくて、漸進的にその方向を目指せば条約の批准の条件は整うのではないかというふうに考えられますが、目指すべき方向としては、母性保護以外につきましては同じということを目指すという点では、条約の解釈上、現在のところ外務省等とも協議をした結果、一致している点でございます。
  155. 中西珠子

    ○中西珠子君 条約の十一条の三には、確かに「保護立法は、科学的及び技術的知識に照らして定期的に検討するものとし、必要に応じて修正し、廃止し又はその適用を拡大する。」と言っております。これは確かに国連での考え方でもあるし、また、ILOの婦人労働者の機会均等と待遇の平等に関する宣言にも、行動計画にも同じことを言っておりますから、私は三十数年前にできた労働基準法の保護規定がそのままでなくちゃならないということを言っているのではございませんで、やはり科学的、技術的知識に照らして定期的に検討しなくちゃいけないし、必要に応じてまた修正も廃止もその適用の拡大もしなければいけないと考えております。  ですから、これは三者が合意なすった危険有害業務の就業制限についての見直し、これは母性保護の立場から見直すということで大変結構だと思います。また、坑内労働に関しましても、禁止の緩和をやるという、これも結構だと思います。それから、もう女工哀史の時代ではないので、帰郷旅費というものを廃止する、これも結構だと思います。しかし、生理休暇の問題、これはもちろん韓国とインドネシアしか生理休暇というものはないということも知っておりますし、また、昔は必要だったかもしれないけれども、昔というのは基準法の制定当時は必要だったかもしれない、また、戦争当時女子がいろいろ徴用されていて必要であったという、その発生の源を尋ねればそういうこともあったかもしれないけれども、現段階においては、有害な業務以外なものについては別に生理休暇に固執するものではありません。また、特別有害な業務でなくても、事務やなんかをやっていても、生理痛が非常に激しい人については別途配慮するということをおっしゃっているので、これは別に固執するわけではございませんけれども、男性も、非常に労働時間が長くなかなか休暇もとれない状況で、今予防医学の時代であるのに休みをとって健康診断というものもなかなか受けられないような状況であるわけですから、生理休暇というかわりに、男性もとれる、また女性も、生理痛のある人もとるし、つわりのひどい人もとる、また更年期障害でもとれるというふうな、生理休暇という名前ではなくて短期疾病休暇というふうなことでも、月に一日か二日は休めるというふうな、そういうふうなものを採用するというお考えはありませんか。
  156. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 疾病休暇を採用するつもりはないかと、こういう御質問でございますが、私ども今労働時間の短縮対策を進めておるわけでございますが、その中で年次有給休暇の消化ということに力を入れてやっておるわけでございますが、それでまだ平均的に六割しか消化されていない。あと四割を職場の中で計画的に一〇〇%とるような、そういう運動を今起こしておる最中でございます。したがいまして、そういった方向で、まず病気等があればそれとの関連で休むということも考えていったらいかがかというように当面は考えておるわけでございます。
  157. 中西珠子

    ○中西珠子君 大変結構だと思います  結構というのは有給休暇の完全消化を奨励してくだすって行政指導をなすっているということが結構だと申しますんです。と申しますのは、一月に発表されましたILOの世界労働報告でも、まず日本の年次有給休暇は短い。欧米に比べると短い。その上十分に消化されていない。そしてまた、細切れでとられるということが指摘されています。また時間外労働については、三六協定で男性はほとんど無制限に時間外労働をやっている。また割り増し賃金率も諸外国に比べると低いということが指摘されているわけです。  長時間労働は、大変勤勉だということはいいことで、そして高度経済成長も長時間労働と勤勉さでやってきたと思いますけれども、もう安定成長時代にも入ったことですし、また失業率も高くなっているので、一人の人が労働時間を長くしてそして時間外労働ばかりやっているということではなくて、やはり仕事は分かち合う、ワークシェアリングという意味も含め、また、生活の質の向上というもののためにも、男女ともにやはり労働時間というものは短縮ということでやっていただきたいし、また、昭和六十年までに欧米の水準に達するように行政指導をやっていらっしゃるということで大変結構と思いますが、進捗状況はいかがですか。なかなか難しいのではありませんか。
  158. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 先生おっしゃるように、欧米の水準から見れば日本の労働時間は若干長いということでございます。ただ、日本の労働慣行というのがございまして、景気の調整弁としてのオーバータイムというのをある程度はやっぱり配慮をしないと、終身雇用制でございますので、やっぱりいかぬかと思いますが、ただ、そういう要素も入れて考えても、おっしゃるようにまだまだ長いわけでございますので、私どもは経済状況の厳しい中でも、やはり労働時間の短縮というのは重要な課題だということで、週休二日制の普及あるいは先ほど申し上げました年休の計画的な消化、あるいは恒常的な長時間労働を改善するという三本の柱で今対策を進めておるわけでございますが、何分にも非常に経済情勢が厳しい中でございますので、思うようにはまいらぬ点もございますが、できるだけの努力をしていきたいと、こういうように思っております。
  159. 中西珠子

    ○中西珠子君 大変御苦労なことと思いますが、この労働時間の短縮の問題は大事な問題だと思います。そして、現在貿易摩擦がいろいろありまして、その要因も多々あるかと思いますけれども、労働時間が長過ぎる、長時間労働だということも一つの摩擦の原因となっているのではないかと考えます。一層の行政指導の御努力をお願いしたいと思います。  その悪名高き日本の男性の長時間労働という中で、この間の婦少審の建議に、公益委員使用者委員との考え方として、時間外労働の現在の女性に対する規制を緩める、それで工業的職種・工業的業種で働く人は時間外労働の規制をある程度緩和して存続するけれども、そのほかの業種・職種は廃止する。管理職やなんかはもちろん初めから除外されているわけですけれども、男女とむ時間外労働を規制している先進国もあると思うんですけれども、とにかく時間外労働の規制が余りにも緩やかな中に女性の時間外労働の規制を外すということは非常に危険なことだと思いますが、どうお思いになりますか。
  160. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先生の御指摘のように、先だっての建議におきましては時間外労働については、管理職、専門職は規制を解除、その他の者につきましては三論併記になっているわけでございます。したがいまして、一本の建議になっていないところからどのように私どもが受けとめて法案を策定すればいいかということについては目下検討中でございますが、日本の労働時間の実態ももちろんその考慮の中に入ることは当然であろうかと思います。そのような状態を全く無視して考えるということではございませんで、そのような実態も考慮しながら現実に合ったものを考えるということでございますので、現在の時点で具体的にどのようにするかということについてはまだお答えする段階に至っておりませんけれども、いろいろな就業実態や労働時間、その他いろいろな点を考慮に入れた上で法案の作成をいたしたい。と、かように考えております。
  161. 中西珠子

    ○中西珠子君 時間外労働の制限緩和につきましては、慎重にやっていただきたいということを要望いたします。  また、深夜業の禁止の緩和の問題も、これはやはり異論があって、労働省がお決めにならねばならない問題の一つとして浮き上がってきているわけですけれども、工業的職種・業種に従事している人、それも管理職、専門職を除いては深夜業の禁止は撤廃するということだそうですけれども、これにつきましてはやっぱり非常に慎重にお考えいただきたいということと、また、管理職と専門職の範囲というものにつきまして、これを決定するのは大変難しいし、使用者側に都合のいいように大変広く決めてしまうというようなことがございませんように、やはりこれも慎重にお願いしたいと思います。  それから、休日労働の禁止の撤廃につきましても同じような案が出ておりますけれども、これも労働省、殊に婦人少年局長の御判断が非常に働くものと思いますが、いかがですか。
  162. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 深夜業の規制、あるいは休日労働の禁止につきましても、先ほど労働時間について申し上げたと同じことが言えると存じます。  また、管理職の範囲につきまして、別途検討した上でということになっておりますので、検討に当たりましては労使それぞれの御意見を伺うわけでございまして、その範囲は、あるいは広過ぎるのはよくないという御趣旨がとも存じますが、同時に、管理職というものは機会の均等あるいは待遇の平等を進める上には非常に重要なキーポイントではないかというふうにも思われます。それにつきましては、検討をいたしまして適当な範囲に定めたい、このように考えております。
  163. 中西珠子

    ○中西珠子君 女子保護法規の問題につきましてもう一つ申し上げておきたいことは、差別撤廃条約の十一条、一の(f)に、「作業条件に係る健康の保護及び安全(生殖機能の保障を含む。)についての権利」というのがあるんですね。ですから、必ずしも保護法規をうんと外してしまわなければ雇用における平等が実現できないものだというものではないし、この条約の意図するところをよくお酌み取りくださいまして、世界に恥ずかしくないものをつくっていただきたいと思います。  それからもう一つ、よく言われることですけれども、平等を与えればやっぱり保護というものは返してもらわなくちゃならない、返上してもらわなくちゃならないと、こういうことがよく言われておりまして、これは労基法の立法当時、第三条に「均等待遇」がございますが、その中に性別を入れなかった理由の一つが、保護法規の規定があるのだから、同じ労基法の中にそれがあるのだから、均等待遇は女性には与えられない、したがって性別という言葉はそこに入れられないという主張が非常にあったそうでございますが、この第三条に性別というものを入れる予定でいらっしゃいますか。労働省としてはどのようなお考えですか。
  164. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) これまでたびたび申し上げておりますように、私どもは、婦人少年問題審議会の検討の結果を踏まえて労働基準法その他についての改正をするわけでございますが、労働基準法の三条に性別を入れるという点につきましては、そういう主張が審議会の中であったことは事実でございます。しかしながら、建議の内容としてはそのような形では一致しておりませんので、現在の段階でこの建議をよく読ませていただいて、それに沿った対応をいたしたいと考えております。
  165. 中西珠子

    ○中西珠子君 いずれにいたしましても、憲法十四条の法のもとの平等、それから二十二条の職業選択の自由、二十七条の勤労の権利及び義務、それから一九六七年に国連が採択しました婦人差別撤廃宣言、この第一条は、差別は人間としての尊厳を侵すものであると言っておりますし、この宣言が御承知のとおり差別撤廃条約になったのでありまして、雇用関係では、十一条の一の(a)で、「すべての人間の奪い得ない権利としての労働の権利」ということを確保するような手だてを講じるようにということを、差別撤廃条約は言っております。  そしてまた、日本が五十四年に既に批准しております国際人権規約、これの中にも、やはり経済的、社会的、文化的権利の中に、やはり雇用上の男女平等、職業上の男女平等を言っているわけでございますから、こういった憲法や条約の理念を具体化するような男女雇用平等法をつくっていただき、また、迅速、適正な救済措置を持った実効性のある法律をおつくりいただきますよう、世界に恥ずかしくないものをおつくりいただきますように強く要望いたします。よろしくお願いいたします。  労働大臣、いかがでございますか。
  166. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) この問題はなかなか、三論併記というぐらいでございますから、みんな立派な、恥ずかしくない国内法を整備して批准をしたいという気持ちは同じでありましょうけれども、おのおのの立場が、やっぱり今までの現実の姿、その土台からスタートをしようということになります。そういうことでやっぱり三論ということに分かれておるのでありましょうけれども、しかし、私どもといたしましては、やはりこれは現実には立脚をいたさなければならぬのでありましょうけれども、条約の目指す男女の機会均等、そしてその結果としての待遇の平等ということを目指すということになりますると、やはりそれは我が国の実情もよく考えなきゃいかぬし、それから女子の就業実態もよく考えねばならぬし、あるいはまた、これを受け入れる企業のその取り組み、意欲も確かめねばなりませんし、いろいろな点でやっぱり現実から一歩一歩スタートをしていくという意味で、私はスロー・バット・ステディーと申し上げておるわけであります。
  167. 中西珠子

    ○中西珠子君 スロー・バット・ステディーでも、差別撤廃条約に抵触しない本当に条約の理念を実現したもの、また、憲法の理念も実現したものであってほしいと願いますし、また、労働大臣がたびたびおっしゃっておりますように、この男女雇用平等法をつくるということは、文明史的に見ても、また歴史的に見ても、経済社会の歴史的に見ても、本当に一大転機を画するものだとも思いまするし、また、これからの高齢化社会に向かっても、婦人の労働力を伸ばし、開発し、活用していかなければ日本のためにもならないのではないかと思うんですよね。ですから、その点もどうぞ御配慮くださいまして、いいものをつくっていただきたいと、重ねて要望いたします。  まだ時間があるそうでございますので、今度はパート労働法の関係でございますが、労働省としては、労働法規の形でパート労働法をつくるというお気持ちはないということを伺ったわけでございますけれども、まず統計上、週三十五時間未満働いているものをパート労働者ととうえていらっしゃるようですけれども、これではパートで働いている人というものの実態が把握できないのではないかと思いますが、いかがですか。
  168. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 私ども、パートタイマーについての保護対策ということで要綱を今検討中でございますが、統計で、労働時間三十五時間未満というのは、統計がちょうどその辺でつかまるから、たまたま三十五時間未満でとれば四百二十万くらいのパートタイマーの数字がつかめますという御答弁を申し上げているわけでございまして、パートタイマー対策の場合には、そこの事業場で働いている通常の労働者の労働時間よりも短い方をパートタイマーというようにとらえて対策を進めておるわけでございます。
  169. 中西珠子

    ○中西珠子君 そこの企業の所定労働時間より短い人だけを対象とおっしゃいましたけれども、そこの企業で一般の労働者の働いている所定労働時間と全く同じ労働時間を働き、しかも十五年も二十年も同じ企業で働いている。しかし身分はずうっとパートという名前で呼ばれていて、したがいまして労働条件とか賃金とか、社会保険の適用、労働保険の適用といった面でも全く違った形で扱われているという人が多いわけですけれども、こういう人をどのようにおとらえになりますか。
  170. 望月三郎

    政府委員望月三郎君) 全く呼称だけパートタイマーだということで、労働の実態は常用と全く同じだという方が相当にあることも私どもは承知しております。したがいまして、私どもが今パートタイマーとしてとらえてやっていこうというのは、やっぱり短時間労働者ということで家庭の主婦を中心とした方々でございますので、それはやはりおのずから一般の労働者よりは特色があるということで、その人たちに焦点を当てて対策をやっていこうということでございます。ただ名称だけがパートタイマーで、しかし臨時工的な色彩で繰り返し繰り返し契約期間の更改をやって雇っている方、これはむしろ常用的な方でございますので、この人たちについての指導はまた別途これとは違えてやっていかなきゃならぬと思っております。
  171. 中西珠子

    ○中西珠子君 労働対策としてのパートの扱い方については、今時間がございませんので、次の機会にもっと詳しくお伺いしたいと思いますけれども、とにかくパートの労働条件が非常に悪い、雇用の安定がないということにつきましては、私どもは法制の必要があると思っておりますし、一応公明党はパート労働法というものを国会提出したわけでございますけれども、もう一つ、予算との関連でお聞きしたいのは、高齢短時間労働者雇用助成金というのを新たに五千百五十五万入っておりますね。これは男性ばかりを対象にしたものか。女性ばかりを対象にしたものか。男女ともに対象にしたものか。いかがですか。
  172. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) これはもう、いずれも対象にしております。
  173. 中西珠子

    ○中西珠子君 ということは、今はパートの九割までが女性と言われておりますけれども、これから将来に向かって高齢化社会の急速な到来ということで、男性も非常に中高年の失業率が高まる。また、とにかく生きがいという意味からいっても生活の面からいっても、働くことが必要だということで、短時間労働者雇用助成金というものをお始めになったんだと思うんですけれども、これから先は、パート問題は女性だけの問題ではなくなるということでございますね。
  174. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 御指摘のように、特に六十歳台前半層問題として考えます場合に、フルタイムの労働者だけではなくて、そういう半日程度の短時間勤務、あるいはまた一日交代というような形での勤務形態、そういったようなものもいろいろ出てくるであろう、そういったことについてのまた雇用の場の確保と、こういう観点から設けたものでございます。
  175. 中西珠子

    ○中西珠子君 そういたしますと、やはり男性をも女性をも含めたパート労働者、短時間労働者の賃金、労働条件その他の扱いにつきましては、これからいろいろ行政指導をなさっていきたいと思っていらっしゃるわけですね、助成金をこのように予算の上に計上なさったということは。
  176. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) これは、今度設けました趣旨は、今申し上げましたように、高齢者対策として、そういう六十歳台前半層ぐらいになりますと、体力、能力的に、フルタイム希望の方もあれば、そういう勤務の方もあるだろう、こういうことでやったものでございまして、何といいますか、今普通言われておりますパートタイマーというのは、むしろ、その事業所における労働時間よりも、それの四分の三程度とかいうような形が一般に問題にされて、そういう方たちがパートと普通呼ばれておりまして、こういう半日勤務というようなものも概念としてはもちろんパートでございますが、いわゆるパートとまたちょっと違いまして、そこのところを特別に区別するつもりはございませんが、いわゆるパート対策というのとちょっと違う面もあるというような点はあるわけでございます。
  177. 中西珠子

    ○中西珠子君 そのパートと短時間労働者、殊に男性の場合ニュアンスが違うであろう、また、お取り扱いも違うであろうということもわかりましたけれども、もう時間が参りましたので、この問題につきましてはこの次にまたいろいろお伺いしたいと思います。  これで質問を終わります。ありがとうございました。
  178. 安武洋子

    安武洋子君 天上がり職員と言われております、企業から官庁へ出向してきている職員についてお伺いをいたします。  労働省、この委嘱調査員という天上がり職員、これを五十八年五月十六日から五名配置をなさっております。これは派遣企業は、労働省の資料をいただきましたけれども、日産自動車、麒麟麦酒、日本通運、東急電鉄、新日鐵、こういう大企業から各一名ずつ、こういうふうになっておりますけれども、これは間違いございませんでしょうか。
  179. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) そのとおりでございます。
  180. 安武洋子

    安武洋子君 今度の予算委員会で資料要求をいたしております。この調査員等天上がり職員の任用状況、この資料を要求いたしましたけれども、他省庁からはちゃんと出てきております。ところが労働省からは、該当者なしということで出てきておりますけれども、これはどういうことでございましょうか。
  181. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) ちょっと行き違いがあったのかもしれませんが、担当の者としては、資料要求があったのに対して、提出しているそうでございます。
  182. 安武洋子

    安武洋子君 ここに持ってきておりますが、労働省は該当者なし、これが予算委員会に提出されたものでございます。今私が労働省からいただいたというのは、私が特別に御要求を申し上げて労働省からお出しいただいた、こういうことになっておりますが。
  183. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) ちょっと私、今その間の事情をつまびらかにいたしませんので、至急調べて御返事をさしていただきたいと思います。
  184. 安武洋子

    安武洋子君 特別に要求して、そしてやっと出てくるというふうなことになりますと、やはりこれは隠してなさるのではなかろうかというふうに思わざるを得ないわけでございます。  労働省に伺いますけれども、こういういわゆる天上がり職員、これにつきまして、十年来国会で論議がされてきておりますけれども、そのことは御存じでございましょうか。
  185. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 承知いたしております。
  186. 安武洋子

    安武洋子君 この天上がり職員の問題と申しますのは、企業との癒着とか、あるいは公務員法との関係とか、こういうことで大変問題が多いということで、国会で十年来論議がなされております。その結果、昭和四十九年の二月の七日、これは衆議院の予算委員会でございますけれども、当時の田中総理が「一挙に廃止をする」、ということは、「行政に支障があると困りますので、その方向で縮小してまいります。」、こういう答弁をなさっております。そして、同じ年の三月の十五日には、「業務遂行上必要不可欠と認められるものに限り」、と閣議で決定をされております。大臣は、このことを御存じでございましょうか。
  187. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 昨年五月に労働省としてこの委嘱調査員制度を実施いたしましたので
  188. 安武洋子

    安武洋子君 大臣が答えてください。大臣に聞いているんです。
  189. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 大臣は詳細までは御存じないわけでございます。
  190. 安武洋子

    安武洋子君 私は、大臣がこの問題を御存じですかどうですかと聞いているんです。
  191. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) その話は私詳しくは、今初めて聞きました。
  192. 安武洋子

    安武洋子君 今私が申し上げたような経過を経まして、そしてその結果、四十八年当時百三十六人も天上がり職員がおりましたが、五十五年には八十九人、そして昨年は、労働省を除きまして八十一名まで縮小をされているわけでございます。今まで労働省は天上がり職員はいなかったわけです。  ところが、そのいなかった労働省が——政府の縮小方針をよく御存じだとおっしゃった、その縮小方針を十二分に御存じなのに、なぜ政府の縮小方針に逆行してあえて天上がり職員を配置なさったんでしょうか、お伺いいたします。
  193. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 昭和四十年代の終わりからこの問題が国会等でも論議され、あるいは衆議院の決算委員会の決議等にも取り上げられたことも承知しておるわけでございます。  当時問題になりました事柄は、いわゆる天上がり職員が手弁当で来てきているというようなことがございまして、それがいわゆる公務員としての身分もあいまいなままに処理をされているというようなことで指摘を受けたというふうにも承知をいたしておりますので、その後各省もそうした委嘱調査員制度についてその辺の扱いをはっきり明確にいたすようにいたしております。  労働省の場合、従来なかったわけでございますが、昨年導入いたしましたのは、最近の労働情勢をめぐるいわゆる経済社会の変化は非常に急速なものがございます。労働省としては、当然政策のために労働経済の総合的分析をやらなければいけないわけでございますけれども、いわゆる賃金なり雇用なり労働時間といったものを、統計的な数字だけでマクロで分析をすることだけでは先々の予測をするにしてもなかなか難しい面がございます。むしろ、個々の企業のビベービアがどういうふうに動いていくかといったようなことも十分承知いたしませんと、なかなか的確な労働経済の分析なり予測といったものもしにくいといったような事情がございますので、そうした企業のビベービアに関して専門的知識を持っております人の知識を行政の参考にしたいということでやったものでございます。
  194. 安武洋子

    安武洋子君 大臣はこの五名が労働省にいることを御存じでございましたか。
  195. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) まあついこの間聞いたという程度であります。
  196. 安武洋子

    安武洋子君 この人たちはどんな仕事をしているんですか。
  197. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 専ら、調査、分析といった仕事が中心でございます。
  198. 安武洋子

    安武洋子君 私が調べますと、この天上がり職員の配置されている部署といいますのは、労政局労働経済課、官房政策課、基準局賃金福祉部企画課、官房統計情報解析課、職安局雇用政策課、こういうふうな政策部門の中枢に所属をいたしております。  労働省というのは、私は監督官庁というふうに心得ておりましたけれども、この監督官庁から政策官庁へ転換を打ち出してなさるそうです。ということになりますと、こういうふうな部署に大企業からの派遣職員が必要不可欠だという、こういうことで派遣をされている。これは労働省、大きく企業寄りということに変質するんじゃありませんか。
  199. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 労働行政が個々の企業に対して利益誘導をするとか、そうしたことがあるわけじゃございませんし、先ほどお答えしましたように、いわゆる労働経済の分析を実際に合う形でしなきゃならないといった要請もあるわけでございますので、今お挙げになりました各部課は、もちろん政策企画部門もございますけれども、それぞれその前提となるいわゆる調査、分析もあわせ行っているところでございまして、そうしたところに配置をし、また、この制度がかねて問題になりましたときに懸念をされました、いわゆる秘密の漏えいであるとかといったことがないように、十分配慮しているつもりでございます。
  200. 安武洋子

    安武洋子君 調査、分析が、なぜ労働省の職員でできないんですか。
  201. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 先ほどお答えいたしましたように、いわゆる統計の数字だけのマクロで労働経済の総合的分析をやる、それはそれなりにできますけれども、それが個々の企業のビベービアに非常に影響されて予測なり何なり変わってくるわけでございますから、そうした個々の企業のビベービアというものはどういう形でパターン化されていくのか、そうしたことも参考にしてやらなければ的確な予測もできない、分析もできないといった面があるからでございます。
  202. 安武洋子

    安武洋子君 個々の企業なら全部の企業ということになるじゃありませんか。なぜたった五つの、こういう特定の大企業なんですか。
  203. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 五つで全体がわかるというものじゃもちろんございません。また、個々の企業によって対応も違うでしょうから。ただ、そうした企業の、言うならば行動様式について詳しい専門的知識を持っている人という意味でそうした五人の人をお願いしたものでございまして、特にその企業の銘柄とかそういうものにこだわるものではございません。
  204. 安武洋子

    安武洋子君 労働省の職員でなぜできないということが一つですよね。行政の側から把握ができる、労働省はそういう役所じゃありませんか。それに、こういうものは審議会がちゃんと設けられたら、審議会の中で幾らだってそういうことできるじゃありませんか。わざわざなぜ政府の方針に逆行するんですか。そんなことが政府の方針に逆行する理由になりますか。
  205. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 労働省は、いわゆる雇用調整についてのいろんな政策手段も持ちまして従来からもいろんな形で施策の充実を図っているわけでございますけれども、例えばオイルショック後の雇用調整が大幅に行われた際の対応策として雇用調整助成金といったものもつくりましたが、実は役所だけでつくりますと、ふだんはもちろん労使それぞれの団体なり関係者との接触を持って、実際に必要な施策の姿はどうあるべきかということをやってはおりますけれども、できたものが実際にはなかなか合わないという指摘なりおしかりもそれぞれ関係労使からいただいていることもまた事実であるわけでございます。  したがいまして、これからの労働経済の先行きを見通していくといった場合に、マクロで見るそういう姿と、実際の個々の企業のビベービアといったものを踏まえた実態論等をあわせ備えていきたいという意味で申し上げておるわけでございます。
  206. 安武洋子

    安武洋子君 そんな職員が企業からたった五名来ただけ。この職員がなかったら労働行政遂行不可能なんですか。条件としては「業務遂行上必要不可欠」、これが条件になっております。この五人がいなかったら、労働行政に業務遂行上必要不可欠であるという、なぜそういうことになるんですか。
  207. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 労働行政全体がその五人がいなければだめだということを申し上げているのじゃございませんで、労働省の各担当しております部局の仕事の中でその部分が必要であるという意味で申し上げているわけでございます。
  208. 安武洋子

    安武洋子君 民間出身の労働省の職員もいるはずです。今おっしゃっているのは、全く私はそんなことは理屈は通らないと思いますよ。「業務遂行上必要不可欠」、これが条件で閣議決定されている。この閣議決定、政府方針に逆行するという理由にはなりません。  私は、大臣にここでひとつお伺いをしたいわけです。大臣は御存じなかった、今までの。ですから、労働省にこういう五人がいるというのもつい先ごろ聞いたとおっしゃっている。しかし、内閣としては継承性というものがあるわけなんです。そこで大臣にひとつお願いをしたい。大臣は今こういうことを知られたわけです。これは「業務遂行上必要不可欠」だということが条件になっていて、縮小していくということでずっと縮小されてきた。そして労働省には今まていなかった。それを去年からこういう人を入れた。私は期限が来ればやめさせるべきだと、こう思いますが、しかし大臣が御就任前のことでもあるということですし、御存じなかったと、そういう条件も入れまして、直ちに検討を始めていただきたい。どうでしょう、検討していただけますか。
  209. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 今のお話を聞いておりますと、やはりほかの役所は減らしてきたのに労働省が何か去年からふやしたというのは腑に落ちぬと、こうおっしゃるようでありますが、そうかといって今また政府委員の話を聞いておりますと、やっぱりなるほど最近の経済、雇用情勢が大きく変化をしてまいっておりまするし、そこへもってきてあの二度のオイルショック以来の余波が雇用面にも及んできておるわけでありましたし、そういうようなところで、まあ役所というのは非常にまじめで公正にやっておりますよ。けれども、何といいましょうか、民間の本当の姿というか、それから民間の知恵というものもこれはやっぱり役所には時には必要なこともあるだろうと、私はそう思っております。  そういうような意味で、せっかく五人入れたんでしょうから、その人たちの意見をよく活用をするわけですね。別にその方々に癒着をするなんというような、私は労働省はそれほど頼りないことはないと思っておりますが、もう少し様子を見ていきたいと思うております。
  210. 安武洋子

    安武洋子君 大臣、これは田中元総理のときに、総理自身が縮小していこうという方針を打ち出してなさる。それは内閣として継承されているわけです。その論議はどれほど尽くされたかというのは、十年来尽くされている。これはその抜粋なんです。こういうことで論議をされた上で、今大臣が言われたようなことも論議をされた上で、これはやっぱりまずいから縮小していこうということで、今私が数を挙げたようにずっと縮小されてきたという経過があるわけでしょう。それにたった五つの社から来ているこの人たちが業務の遂行上必要不可欠だと。なぜこれが必要不可欠なんだ。この人たちがいないでも労働省のそれぞれのところは今までやってこれたわけでしょう。それに今になって、これでは業務ができない、遂行上必要不可欠になった、そんなことはありませんよ。だから、大臣は、今までの内閣の継承性があるわけだから、検討して、内閣の趣旨どおりやっていかれる、これが大臣の責務じゃありませんか。
  211. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 労働省は普通の許認可などを主にして仕事をしているような、そういういわゆる経済官庁ではございませんので、勤労者の保護、と、そのときにはやっぱり労使関係もしっかりしなければいかぬということで、勤労者を大切にしていくときには、それを支えるものはやっぱり労使関係ですから、そこらもしっかりしなければいかぬというようなことで、労使関係省みたいな、そういうようなのは外国にもあるそうでありますけれども、そういう面もありましょうし、そうなると、労働省本来の目的のためにはやっぱり民間の実情もよく心得て、そして労働省の仕事のためには民間のある程度の知恵も、事情にも明るい人を入れても、私はほかの役所の癒着とは大分違うような気がいたします。もう少し実情を私も聞きまして、そして考えてみたいと思います。
  212. 安武洋子

    安武洋子君 なぜそれなら労使関係省に企業側だけ入れるんですか。労働者を入れるという意味じゃありませんよ、政府の縮小方針というのがありますからね。しかし、企業側の意見だけ聞いて、企業寄りと、そういうことになるじゃありませんか。民間の実情を心得ると、審議会が何のためにあるんでしょう。審議会で十分やれるじゃありませんか。大臣の論は立たないじゃありませんか。
  213. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) もちろん審議会でもいろいろ関係労使の御論議をいただいて、私ども政策立案をしているわけでございます。その面で、なおかつ先ほど来お答えしたような事情もいろいろあって、なおそうした企業ビベービアというものを踏まえた予測なり分析なり、そうしたものを的確にする必要があるということでやっておるものでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  214. 安武洋子

    安武洋子君 労働省は今や政策官庁、こういうふうに打ち出してなさる。こういう中で、政策の中枢部門に企業側だけ入れる、それが必要不可欠なんだ、こういうことになりますと、労働省の使命というのはどういうことなんですか。労働省の使命というのは、企業側に立てということになっておりますか。労働省というのは、労働者の福祉を守らなければいけないし、下支えをしなければいけない、こういう任務がちゃんとあるはずでしょう。おかしいじゃありませんか。労働省の変質につながりかねない。労働省企業寄りになった、こういう誤解を招く。  ほかのところでは、なるほどいろいろと企業と癒着をして経済的につながるということはありましょう。しかし労働省は、姿勢の問題として、労働者に対してどういう立場に立たなければいけないかという官庁として姿勢が問われる。だから私は大臣に見直をしていただきたい、そのことを申し上げております。  もう一度大臣にお伺いをいたします。
  215. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 労働省目的は、やっぱり働く人々が幸せに、そして安全に働いていけるということは当然のことでございます。しかし、働く人はそこに職場があるわけでございまして、そこにやはり労使というものの関係がどうしてもこれは不可欠であります。これがうまくいかないと労働者の皆さんもそれはお困りになるわけでございまして、そういう意味労使関係も大切である。労働者の皆さんをお世話をするためにはやっぱり労使関係というものがうまくいかなければ困る。そういう意味で民間の人たちの参加というもの、参加というよりもごく小人数でありましょうが、そういう人々の知恵を部分的におかりをするということも、そんなに労働省の本質をゆがめるなどというふうには私は考えませんですがね。
  216. 安武洋子

    安武洋子君 大臣が考えられなくたってね、企業の側からだけ採って、その人たちの意見を聞いて、労使を……(「労働組合からも採っているんだぞ。」と呼ぶ者あり)採っておりませんよ、黙っていてくださいよ、質問者は私です。——なぜ労使関係がうまくいく、こういうことになるんですか。労使と両方言われるなら、私は企業側からだけそんな人を政策部門の中枢に入れるということは、労働省としてどういう立場に立っているのかということが疑われる、そういうことを申し上げております。
  217. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) これは、お答えになるかどうかわかりませんが、私、労働大臣になりましてから、もうお会いする方々のやっぱり七割、八割までは労働界の皆さん方でございますよ。それは当然のことなんです。けれども労働行政をうまくやるときには、さっきも申しましたように、労使関係も大事である。だから、これは諸外国から見てある程度労働関係というものがうまくいったために今日の日本の経済成長があるというのも定説でございます。ですから、やはり働く人がある以上そこに職場があって、そこに労使関係が生ずるのですから、そういう使用者側の方々の意見も聞くということは、私は、このままいくと全く労働者側の皆さんの意見ばかり聞く、それは当然でありましょうけれども、その一面において、片一方の使用者側の意見も聞いておかぬことにはうまくいかない、私はそう思うんです。その一環ですよ、これは。
  218. 安武洋子

    安武洋子君 私はそんなことを言っておりませんよ。私は使用者の意見を聞いていけないなんてちっとも言っておりません。使用者の意見も労働者の意見も、対等に聞かれればいいでしょう。しかし、なぜ大企業からわざわざ五人の人を自分たちの政策の中枢に据えなければ、労働行政の業務遂行上必要不可欠、そういうことになるんですか、それでは余りにも労働行政企業側に片寄ってしまうんじゃないですか。審議会でも十分聞ける。そうして労働省でちゃんと出かけられればいいんですよ。日経連でもどこへでも聞きに行かれれば企業側の意見も聞ける。労働組合とも会われればいい。十分そういう場があるにもかかわらず、大臣が言われたように、なぜわざわざそんな人を入れるのか。それは雇用を広げようという労働省の政策とも合わないでしょう。この人たちは、企業から出向して来ている五名は、新しく労働省で雇えるそういう余地を阻んでしまうじゃありませんか。何からとっても、私はまず、基本的な立場に立ち返っていただきたい。  一体内閣のこのこういった措置、閣議決定、大臣としてはこれを軽んじられてよいと、これに反した行動をとってもいい、こういうお考えでしょうか。その点を確認しておきます。
  219. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 内閣全体としては、やはり民間の人々の知恵とか、そういうものを活用するということがそれはいいことであっても、そこには限度があるぞ。癒着もあってはならぬし、だから本当に必要でないものは減らしていきなさいというのはそうだろうと思います。  ただ、先ほどからお話を聞いておりましたが、労働省というのは仕事の職責上、こういう変化の大きいときに、そういう企業の実情も肌で知っておるような者を少し使った方が便利だという程度のことだろうと思って、労働省が占領をされるようなことは、そういう心配は私はしておらぬ、こう申し上げたわけでございまして、実情をよく聞きまして考えてみます。
  220. 安武洋子

    安武洋子君 まあ実情をよく調べて考えるということですから、随分とお考えをいただきたい。ただ便利だろう程度の人をわざわざ置くことはない。そのことを申し上げて、私は本当は男女雇用平等法、これをやらせていただく、こういうことでしたけれども大臣が余り頑迷固陋ですのでこの問題で深入りをしました。それで、また機会を改めて男女雇用平等法は質問をさせていただく、こういうことで質問を終わります。
  221. 抜山映子

    抜山映子君 このたび、男女雇用平等法案につきまして、審議会が三論併記という異例の報告を出されました。この男女雇用平等法案の中におきまして、今労基法の重大な改正が行われようといたしております。これのみを引き出して論議することになれば世論も沸騰することになると思われるのですが、たまたま男女雇用平等とセットで持ち出されたために、いささか焦点がぼけているように思われるのでございます。平等というなら保護も撤廃というのが一つの論調ですが、御存じのように、公益委員の出された案では、平等の方は実はなく保護の方はごっそり抜けるわけでございます。日本の労働環境、労働条件、そして社会環境の整備がないまま、この保護規定がごっそり抜けるということは、恐ろしいことになるのではないかと懸念いたしておるわけでございます。  そこでお伺いしたいのでございますけれども、ILO条約で、労働条件に係るもので、日本がまだ批准していないものを挙げていただくとともに、それが批准されていない理由を述べてください。
  222. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) ILO条約で採択されております条約数、百五十九条約あるわけでございますが、その中で、我が国が批准しております数は三十七条約でございます。したがって、残り百幾つかがまだ未批准ということになるわけでございますが、ILO条約の内容は多岐にわたっておりますけれども、その中で労働時間問題、あるいは婦人に関する条約といった主要なもので未批准のものを挙げますと、まず、労働時間関係では、工業的企業に於ける労働時間を一日八時間且一週四十八時間に制限する条約、これは第一号条約でございます。それから、商業及事務所に於ける労働時間の規律に関する条約(第三十号条約)、工業的企業に於ける週休の適用に関する条約(第十四号条約)、それから商業及び事務所における週休に関する条約(第百六号条約)。また婦人関係では、工業に使用される婦人の夜業に関する条約(第八十九号条約)、母性保護に関する条約(第百二号条約)、雇用及び職業についての差別待遇に関する条約(第百十一号条約)、男女労働者特に家族的責任を有する労働者の機会均等及び均等待遇に関する条約(第百五十六号条約)といったものが主要なものかと存じます。  これらの条約がなお未批准であるということの理由でございますが、日本政府としてILO条約を批准する基本的な姿勢としては、まず、その条約の内容に照らして国内法を整備して、条約と国内法との整合性を確保した上で初めて条約を批准するという考え方をとってきております。したがいまして、今申し上げました各条約、労働時間あるいは婦人の問題につきましても、例えば労働時間でございましたら一日八時間、週四十八時間といったような基本線はこれは満たしておるわけでございますけれども、例えば残業時間の取り扱いであるといったような細部についてなお合わない点がございますので、現在なおまた未批准であるという状況でございます。
  223. 抜山映子

    抜山映子君 ただいま未批准の条約並びにその未批准の理由について御回答をいただきましたが、その御回答からも明らかなように、日本の労働時間は世界的に見ても長く、そして労働条件も整備されていないということが言えると思うのでございます。ちなみに、西ドイツで年間労働時間は千七百時間、アメリカでは千八百時間、欧米では大体千七百時間から千八百時間でございますけれども、日本の労働者の労働時間は二千百時間を超えておるわけでございます。  このように日本の労働時間のみならず、日本の産業構造は、欧米に比べまして中小企業に勤務する者が大変に多いわけでございます。ちなみに我が国では、中小企業に勤める者の数の比率は八一・四%でございます。これに対しまして米国では四三・三%と格段に低いのでございます。ヨーロッパでも中小企業の従業員数は少のうございます。多少統計が古くなりますけれども昭和五十二年度の「リポート・オン・ザ・センサス・オブ・プロダクション」、英国では百九十九人以下の中小企業に勤務する者の比率は二二・五%。昭和四十五年度、西独の統計によりますと、百九十九人以下の中小企業に従事する者が三七%でございます。このような産業構造を無視して時間外深夜業を撤廃することは許されないと思うのでございます。  しかも、女性の場合は、中小企業の中でも零細企業に働く者の比率が非常に高く、一人から二十九人までの事業所で働く女性は三九・二%、三十人から九十九人までが一六・四%と過半数の女性が零細企業で働いているわけでございます。このようなところでは組合もないところが多うございますし、労働条件も劣悪なものがあるのでございます。かかるところで深夜業とか時間外の規制を取り外せば、待ってましたとばかり女性は過酷な労働条件に追いやられるであろうことを御認識いただきたいのでございます。  そしてさらに、日本では環境整備が十分でございません。保育所の問題で今伺ってみましょう。日本の保育所の数、そして延長保育所の数、そして夜間保育所の数をお教えください。
  224. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 保育所の数でございますが、五十八年度で保育所の数は、公立、私立合わせまして二万二千八百五十四でございます。ちなみに、措置されている児童数は百八十五万八千三百五十一人ということになっております。  それから、延長保育あるいは夜間保育をやっている保育所でございますが、延長保育なり夜間保育についての助成事業を五十六年度から始めておりまして、まだ歴史は浅いわけでございますが、現在の延長保育をやっている施設は、三十二道県、六十の市町村で、全部で二百五カ所ということになっております。  それから、夜間保育につきましては七県、七市町村で十二カ所という現状でございます。
  225. 抜山映子

    抜山映子君 延長保育所の預かる時間帯は何時から何時まででしょうか。
  226. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 延長保育の時間は、保育所によって若干の違いがあると思いますが、大体朝七時ごろから夜七時ごろまでが延長保育の対象時間でございます。
  227. 抜山映子

    抜山映子君 全国で二千二百保育所がある中で、七時までの延長保育所がわずか二百五カ所、そして夜間保育所が十二カ所、これが日本の保育所の実態でございます。  このような環境において、女性の時間外とか深夜業、これを保護規定を外すということは、実情に見合わないということが言えると思うのでございますが、これについて御意見をお伺いいたします。
  228. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 保育所につきましてはただいま厚生省の方から御返事があったわけでございますが、そのような実情というようなものは、私どもが労働時間の問題を考え、女性の深夜業の問題を考える場合に、考慮の中から決して外れているわけではございませんので、就業者の女子の就業の状態は、男子をも含めて労働時間も考え、また、その他の労働環境の問題もあわせて考えながら、女子労働者の保護規定については考えてまいりたいというふうに考えているわけでございまして、この点は婦人少年問題審議会の建議の中にも、「環境の整備」というような言葉で言いあらわされているところと理解しております。
  229. 抜山映子

    抜山映子君 ところで、今世界的に比較いたしまして、日本はたぐいまれな高齢化社会に突入しつつあるわけでございますけれども、ホームヘルパー、そして特別養護老人ホームほか老人の介護の充足の状況をちょっと御説明ください。
  230. 持永和見

    政府委員(持永和見君) お尋ねの、ホームヘルパーとそれから老人ホームの設置状況でございますが、ホームヘルパーは五十八年度で約一万八千人でございますが、お話しのように高齢化社会が非常に進行してまいる中でございまして、私ども、在宅の老人の福祉対策は極めて重要だという認識を持っておりまして、五十九年度はさらにこれに加えまして千六百三十人の増員を図ることにいたしております。合わせて約二万人のホームヘルパーが確保されることになる見通しでございます。  それから、老人ホームでございますが、老人ホームにつきましては、現在特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、それから軽費老人ホームというのがございます。特別養護老人ホームは、五十七年の十月でございますけれども、全国千三百十一カ所、それから養護老人ホームが九百四十六カ所、軽費老人ホームが二百四十六カ所ということで、合わせまして二千五百三カ所ということになっております。  最近の方向といたしまして、老人ホームの設置について、特に需要の高いと申しますか、社会的にニーズの高いのは特別養護老人ホームでございまして、こういった特別養護老人ホームについては、大体年間百二、三十カ所、収容と申しますか、措置人員にして約九千人のぺースで整備を推進しておるところでございます。五十九年度におきましてもそういった方向で、特養に対するニーズが強うございますので、施設整備の中で重点的に整備をしてまいりたいというふうに考えております。
  231. 抜山映子

    抜山映子君 今御答弁のように、老人ホームの介護の問題についても社会的整備がまだ不十分で、現在は女性の肩にかかっていることを十分御認識いただきたいと思うのでございます。  先ほど赤松局長様より、環境、社会整備を十分に考えて、深夜業、時間外の問題は考慮するというありがたい御回答をいただきましたが、法案に、今問題になっております工業的職種のみ云々というところでございますけれども、今事務職と工業的職種との区分は大変難しくなっております。また、事務職と申しましても、最近コンピューターとか、その他の事務機器が出回りまして、労働も単純化と緊張化、そして事務機から出ますぎらぎちした光、あるいはオゾンや放射線等の有害物質等で職場の疲労は大変に蓄積しておるわけでございます。  ここに、電機労連総務局長兼国際部長藤野さんのマイクロエレクトロニクス影響調査の講演資料がございます。  御参考までにちょっと読んでみますと、「最近四〜五年前とくらべた肉体的疲労、精神的疲労について調べた。その結果は次のとおりである。」、そして、健康状態について、精神的緊張感や疲労につきまして最近変わらないというのが二八・九%、減ったというのが四%、ふえたというのが何と六五・二%でございます。その健康状態について十の症状について調べておりますが、その多いものが、首、背中、肩がこる六六・二%、目が疲れる六五・二%、特に疲れやすい四七・五%と、こういうようになっておるわけでございまして、特に性別では、女子は男子と比べ首、背中、肩がこる、目が疲れやすいというのが特徴だと、こういうことになっております。したがいまして、事務職の方がむしろ工業的職種よりより疲れるというケースも大変に多いのでございます。この点を考慮して、深夜業それから時間外の問題について例外規定を設けるとしても、ひとつ慎重に考えていただきたいと思うのでございます。  さて、募集、採用は努力規定、その他は禁止規定となっておりますけれども、これでは、まず募集、採用で女性を門前払いしておけば後の問題は回避できることになってしまうわけでございます。まず入口で女性に道を開かなければ、有能な女性がトライする機会が当初から閉ざされると思うのでございまして、募集、採用についても同じく禁止規定にすべきと思いますが、いかがでございましよう。
  232. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先生御指摘のように、募集、採用の部分は、現在出されております建議の中で努力義務が適当というふうに書かれているわけでございます。  これにつきましては、あるいは審議会の長い審議の中でも最も長時間を費やされたのではないかというふうにも思えるわけでございまして、募集、採用のところが大切ということについては、委員の先生方も十分認識をされた上でこのような結論が出されたというふうに、私は終始御意見を伺っておりまして感じた次第でございます。  と申しますのは、募集と採用が重要でないから努力義務にしたということでは決してなくて、これの及ぼすところは大変大きいというところでどうしても労使双方の御意見は一致しなかったわけでございます。そして、その見解の差をよく公益委員の先生は聞いておられまして、そしてその結果、現在のようにここの部分は努力義務規定が適当という判断のもとに、公益試案と申しましょうか、たたき台という段階での見解の発表がございました。また、それを受けての建議の内容になってきたわけでございます。  また、努力義務になった場合に全く効果がないというような御指摘はこれまでもいろいろな場面で御批判があったのはよく承知しておりますけれども、しかし、同時にまた、努力義務規定であっても、現在何もないところから比較すれば非常に大きな転換である。努力義務を課すことによって向かうべき方向というものははっきりするのであって、しかもそれについて公益案の中にも示されておりますような具体的な指針を示すことによって、それはより明確になり、具体化する。そういうふうにした上で、行政指導を進めるということが可能になるわけでございますから、現在よりもはるかに前進であるというような評価もまた世の中にあることも事実でございまして、これは努力義務よりも強行規定の方が効果としては強いということは言えても、またそのリアクションというものも大きいということも事実でございますので、そのような多くの議論の積み重ねなどを考慮に入れて、現在のような公益案と申しますか、建議が出されたというふうに私は理解をいたしております。
  233. 抜山映子

    抜山映子君 経済界の方で、採用、募集のところで禁止規定にしたのでは及ぼすところが大きいと、もっとひどく言うなら混乱を来すとか、こういう意見があるのは私もよく熟知しております。しかし、まず平等法を成立させ、その制度のもとで、能力、意欲、体力のある女性にトライさせなくちゃいけないんじゃないか。私は採用とか募集のところで、何も男女同数に揺れと言っておるわけじゃないわけなんです。能力のない女性はそこでふるいをかけていただいて結構だと思うんです。しかし、トライだけはさせていただきたいというのが女性の願いだと思うんです。私、戦前のことを思い出しますと、教育の分野で男女平等でございませんでした。女性は大学にトライすることも許されておらなかった。しかし、それをトライすることが許されて、今では原子力の分野であろうと遺伝子工学の分野であろうと、関心と能力のある女性はそこに入ることができるようになった。それと同じことで、就業の分野においても、能力のある女性がトライすることができるようになり、そして女性が知識とか決断とか管理とか指導とか統率とか熱意、説得、判断、企画能力のある女性が、社会的な中で責任を感じながら昇進していくというようにしていくのがこの男女雇用平等法の精神であって、決してすべての女性を男女平等に扱えと言っているわけではないので、ひとつこの入り口のところを、一番大事な入り口のところを禁止規定にしていただかねばならないと思うのでございます。どうかひとつよろしくお願いいたします。  それから最後に、調停という制度で問題を解決するような案が出ておりますけれども、調停というのは、私も弁護士として調停には何度も出ておりますが、これは相手方が出てこなければおしまいでございます。また、相手方が同意しなければおしまいでございます。現に東京都にある苦情処理委員会では、労働者からの申し立てで使用者が出頭しない例があるのでございます。ひとつ強制力ある命令を出すことのできて、勧告命令を出すことのできる救済機関、できれば今の労働基準局で結構だと思うのですが、有効な調停機関を設置するようお願いしたいのでございます。  それから、ちょっとトピックがずれますけれども、女性を平等に扱っていただく上におきまして、世帯主という概念が今大変に支障になっておるわけでございます。世帯主とは、昭和四十二年に自治省が各都道府県に出した通知に規定されておるわけでございます。法律ではございませんが通達でございます。主として生活を維持する者であって、社会通念上妥当と認められるその世帯の代表者を世帯主と、こういうわけでございます。この「社会通念上」と、ここが実はみそなわけでございまして、父親の所得が長男より少なくても世帯主は父親、次男の方が長男より所得が多くても長男の方が世帯主、夫と妻では夫が当然世帯主。夫が身体障害の場合に初めて女性が世帯主になれるわけですけれども、こういうことになっておるわけでございまして、この世帯主という概念によりまして実は家族手当がもらえなかったり、あるいは住宅手当がもらえなかったり、社宅に入れなかったりということで男女差別が生まれておるわけでございます。そういうわけで、ひとつこの世帯主の概念について検討していただきたいということを特に要望する次第でございます。  それから、今調停という問題が出たので、児童扶養手当の改正——改悪といいますか、これについてもちょっと申し上げたいと思うのでございます。  たくさん問題はあるのでございますが、特に六百万円以上の者については夫に払わせろということになって、生別の母子に手当が渡らなくなるわけでございますが、実は、離婚のときにあらかじめ養育費を決めて別れる人は意外と少ないのでございます。これを決めないで別れてしまって、相手が六百万円以上であったとしますと、だんな様からは手当はもらえないわ、生別の母子手当ももらえなくなるわと、こういうことになるわけでございます。それじゃ事前に公正証書をつくっておけばいいじゃないか、あるいは調停に持ち出しておけばいいじゃないかと言われるかもしれませんけれども、それが素人の悲しさで、ほとんどそれを知らずに離婚してしまうケースが多いわけでございます。  そういうわけで、ひとつこの点も慎重に考慮していただきたい、そういうことを要望して、私の質問を終わらせていただきます。
  234. 下村泰

    ○下村泰君 私の質問は余り目くじらを立てるような質問じゃございませんから、大臣もひとつお気軽にお答え願いたいと思います。こちらの方の質問に調子よくお答えくださったら、私は時間は無視してやりますから、お願いいたします。無視ということは三十分以内に終わってしまうということですから。  大臣所信表明をいろいろと伺いました。その中に、福祉に対する、殊に重度心身障害者に対するお考えも明らかにされておりまして、大変私どもはうれしく感じておるわけでございますけれども、改めて一言お伺いいたしますが、身体障害者の就職、あるいは就労に対する大臣のお考えはどういうものを持っていらっしゃいましょうか。
  235. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 身体障害者の方々の就職がなかなか思うに任せないということを聞きまして、雇用率もまだそこまでいっていないというようなことで、これはやはり重点的に努力をしなければならないということで、労働省の中でも、それをこれから重点的に努力をするべき目標だということで、みんなで努力目標ということにしておるわけであります。
  236. 下村泰

    ○下村泰君 そういうふうなお答えで結構でございます。これからまたいろいろな折に触れましてお尋ねをいたしますので、その都度ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。  さて、文部省の方来ていらっしゃいますか。——昭和五十四年度から養護学校の義務制が施行されました。この養護学校の義務制ですけれども、何歳から何歳までの方が対象になっているんですかね。
  237. 山田勝兵

    説明員(山田勝兵君) 六歳から十五歳までで、小学部六年、それから中学部三年でございまして、九年間でございます。
  238. 下村泰

    ○下村泰君 普通のいわゆる一般の教育と同じように義務化されたわけだ、こういうことですね。
  239. 山田勝兵

    説明員(山田勝兵君) 五十四年から義務化されております。
  240. 下村泰

    ○下村泰君 実はここに東京都障害児学校教職員組合の方々の出された御本があります。これを拝見しておりますと、この制度が設けられましてから学校へ通うようになって、子供たちが非常に精神的にも変わってきているというようなことが非常に喜ばしく書かれているわけですね。一、二、例を挙げますと、友達のことも考えて行動できるようになってきた、給食、掃除当番を一緒にできるようになってきた、一人通学ができるようになったと、大変これはいい結果が生まれているんです。  さて、これからが問題なんですけれども、入学生の数、それから現在の在校生の数、それから、これが施行されてからの卒業生の数、これちょっと教えてください。
  241. 山田勝兵

    説明員(山田勝兵君) お答えいたします。  初めに入学者の数でございますが、二年間ほど申しますと、小学部一年へ入学した者は、五十七年の四月入学者数は四千八百三十五人でございます。それから五十八年の四月、四千六百五十人でございます。  在学者数でございますが、養護学校の在学者につきましては、五十七年の五月一日現在で七万六千五百二十一人でございます。それから次の五十八年の五月一日現在でとらえてみますと七万六千七百七十一人。これは高等部まで含んでいる数字でございます。  それから、卒業者数の累計はちょっとただいま持っておりませんが、五十七年の三月の時点の卒業者、これをまず中学部で見てみますと六千四百八十四人おります。それから五十八年の三月卒業した者が八千四百九人おります。それから高等部も参考までに申しますと、五十七年の三月の卒業者が四千六十八人でございます。それから五十八年の三月の卒業者、これが四千七百八十九人でございます。  以上でございます。
  242. 下村泰

    ○下村泰君 これから先の問題になりますると、これはもう文部省の方ではどうにもならないことだろうと思いますけれども、文部省の方に、高等部を卒業して就職した児童の数は出ていますか。
  243. 山田勝兵

    説明員(山田勝兵君) 高等部の卒業者の進路状況でございますが、これは五十八年の三月の時点でとらえたものでございますが、高等部の卒業者が四千七百八十九人でございますが、そのうち四十五人が専攻科または大学などへ進学しております。それから七百三十八人が、専修学校とか各種学校がございますが、そことか、それから職業訓練機関、こういうところへ進んでおります。それから就職いたしました者が千六百七十七人という数字が上がっております。  なお、重いお子さんもおりますので、施設とか病院入所した者がございまして、この数字が千二百十二人となっております。それからもう一つといたしましては、在宅等でございますが、これが千百十七人と、このような内訳になっております。
  244. 下村泰

    ○下村泰君 文部省の方結構でございます。どうもありがとうございました。  こういうふうに数字が出てはおりますけれども、こうしてせっかく学校を卒業して就職する段階になりますると、これがさっぱりどうもうまくいかないということで、むしろ、せっかく学校へ行って、外の空気に触れて、そして障害者自身が自立更生という気持ちになってはいるんですけれども、肝心のこれからというお勤めをする段階で、ほとんどまた家庭に逆戻りと、これが現状なんですね。  それで、労働省としては、今までこういうことに対する対策はあったのか。それともどういうふうに対処していたのか。それをちょっと伺わしてください。
  245. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 精神薄弱者の就職の問題につきましては、労働省といたしましても、他の身体障害者に対する雇用促進対策とほとんど同じように対策を進めてきたところでございます。ただ、その雇用率の問題だけが対象になってない、こういう点はございますが、それ以外の雇用促進のための諸対策は、いずれもこの精神薄弱者に対してもやってきたところでございまして、特に、まず最初の場面としましては、それぞれの安定所の管内の学校の養護学校、そこでの今後の進路指導という面で、そういう就職を希望される精薄の方については、希望される方のほとんど大部分は就職へ何とかつなげるという形でやっておるわけでございます。もちろんその過程で例えば職場適応訓練というような形で、まず企業に仕事をしながら訓練をしていく、こういうオン・ザ・ジョブ・トレーニングみたいなそういう職場適応訓練であるとか、あるいはまた生活指導という面がございますので、そういった面での地域のいろいろな関係機関と協力し合っての援護であるとか、あるいはまた、そういう雇用に際しましての各種の援護措置の適用であるとかいうようなことをしてやっておるわけでございますが、いろいろ今先生御指摘のように、やはり社会生活というような指導の面でなかなか難しい問題がある。あるいはまた、本当にこういう精薄の人たちにふさわしい適職の開発というものが必ずしもまだ進んでいないという面がございまして、なかなかそういう定着指導とかいうような面でいろいろ困難な問題が多いことも事実でございます。
  246. 下村泰

    ○下村泰君 労働省側でそれだけの認識があるならば、もうそれ以上申し上げる必要もございませんし、また、一生懸命なさってくださっているという感覚も受けますので、それはそれとして結構でございます。  それから、こういうふうになりますると、意外と小規模の作業所で、これはいつぞやもこの委員会でもいろいろと質問させていただいたことでございますけれども、新潟県が、新潟県の県知事さんが大変こういった福祉関係に対して熱意のある方で、新潟県下では既にもう小規模のいろいろの地域ぐるみの福祉対策というのをやっておるんです。実に国よりも先行しましてやっていらっしゃる。これはもう物の見事なところですね。そういう認識が最近非常に芽生えてきまして、小さな、むしろ大きくするのではなくて、小さな作業所というのが非常に近ごろ多くなってきています。  今労働省で把握していらっしゃる作業所の数どのくらいでございますか。
  247. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 私も以前新潟県の商工労働部長をしておりまして、君知事と一緒にミニコロニーという形で、ただでかいものをつくってそういう障害者あるいは精薄の方たちをそこへどんとみんな押し込んでしまって、後はその施設任せ、それで親たちはあるいはまた地域の人もほったらかし、こういうことでは問題がある。やはり地域ぐるみでやっていくためには、むしろ各地に小規模のものをやって、そしてまさに親も地域の人もみんな一緒になってやっていかなきゃ、これはそういう人たちを本当に仕事に結びつけていくとか生きがいを与えていくというようなことが難しい、こういうことでやっておることはよく承知しておるわけでございます。  そういうようなことで、今こういったものが広がってきておるわけでございますが、私どもの聞いておりますところでは、全国で六百三十八カ所ということで、精薄関係で二百九十四カ所、身障関係で百二カ所、その他二百四十二カ所、こういうふうになっておるというふうに聞いておるわけでございます。
  248. 下村泰

    ○下村泰君 実は大臣、ここのところがちょっと問題なんですがね。私の手元にも資料はあるんです。この資料が実は労働省の調査ではないんですね、これは。厚生省児童家庭局の調査なんです。そうしますと、作業所というのが労働省管轄で、授産所というと厚生省になるんです。この連携がどうしてなされていないのか。ここのところが私はいつもこの社会労働委員会でもって申し上げることなんですけれども、こういう子供たち、またこういうお体の状態の方たちというのは、必ず授産所と作業所と併合になる、あるいは併合してなきゃならないような状態のところが多いわけなんです。この場合、なぜ労働省と厚生省とがこの窓口が一つになれないのかというのが私のいつもの疑問なんですけれども、どうでしょうか。
  249. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 率直に言いまして、労働省の方は、そこでの雇用関係のある作業所といいますか、そういうものを対象にしている。厚生省の方は、公共団体等が運営してそういう施設をやっておる、こういうような関係で、実施主体的な面がいろいろ食い違っておるというようなことでそういう食い違いが出ておる、こんなふうに承知しておるわけでございます。
  250. 下村泰

    ○下村泰君 実に苦しい答弁なんです、実はね。いいですよ、わかっているんだから。  つまり、身体障害者といえども、経営者がいて働く方の方がいる、これが労使ですね。この契約があれば、これ労働管轄なんですね。ところが、実際のことを言って、大臣、それだけ表立ったそういうものというのは少ないんですよ本当は。大きな企業が、いわゆる労働省からの行政指導によって一・五%という身体障害者を雇用しなければならないという、法に基づいて動いている。ここはこれでいいんです。ところが、実際のこと言って、現場というのは、身体障害者の方々というのはそういうところで雇っていただけない。したがってむしろ、身体障害者同士が集まって、そしてやっているのが作業所というところの実は現状なんです。  ですから、今局長がお答えになったようなこと、私も万々承知しております。これはあくまでも手だて、法律ですわね。法というものがそういうふうに分けているのであって、中身というのは分けられているどころかむしろ一緒になっている現場が多いわけなんですね。ですから、いつも私は申し上げるんですけれども、少なくとも労働大臣と厚生大臣と閣議のときでも結構ですが、ちょこちょこっとそういうことでお話し合いになって、そして、悪口を言えば、やくざの縄張り争いみたいに、縦割りだけは親分、子分、岩頭、総代しっかりしています。ところが横になるというと、もうシマ争いみたいな関係に私らの目には映るわけなんですよ。これは橋本厚生大臣のときもお願いしたんです。なぜ大臣同士がちょこっと一言お話をなさってこういう問題を解決してくれないかということを常にお願い申し上げておるんです。どうでしょうかね。
  251. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) おっしゃるとおりでありまして、役所には時々縄張りで私どもも何でかと思うぐらいのことはよくございます。それはもう各省至るところにあります。この間、最近の新聞に出ているVANもそうでしょうし、幼稚園と保育所の一元化問題もそういうところがあるでしょう。もともと内務省で一本になっておったのが途中で分かれてきて、そのはずみで授産場とそれから作業所と、管轄が違ったというようなところもございましょうが、どうも私不敏にして、行政改革で施設を一本にしろという話もまだ聞いていなかったわけでありまするが、しかしとにかく連携をとって、実際にこの対象になられる皆さんに少しでも不便をおかけしないように、お役に立てるように連携を密にして一生懸命やりますから、どうぞひとつ督励してください。
  252. 下村泰

    ○下村泰君 労働大臣みずからのそういうお言葉を聞いているから、もう間違いないことでありますから、こちらはそれでもうよろしゅうございますけれども、とにかく、今も申し上げましたように、そういう管轄違いは、それはそれでもう結構なんですよ、そういうふうにもう役所というものの形がそうなっているのはこれはしようがないことなんです、本当は。ところが、しようがないことはしようがないんですが、一番そのしようがない対象になっているのはここにいる方たちですからね。この方たちはいつも一緒に仕事しているんですから、その方たちのことを考えていただきたいというのが私の気持ちなんでございます。  大体こういうところの作業所の人数と申しますのは、大体もう定員が二十人以下なんですね。小さいところなんです。これがまた年々今増加しています。先ほどの調査によりますと、六百三十八ということで、これは実数として出ているんですが、実際のこと言って今もう千以上ですよ。千カ所以上にこういう作業所があるわけなんです。今、自治体でいろいろと補助金制度なんかもできているらしいですが、今のところ、四十七都道府県のうち四十四の地方自治体が何らかの形で面倒を見ているんですけれども、こういう面倒の見方に対して労働省の方も何かお考えございますでしようか。
  253. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、こういう共同作業所の場合でも、その実態、内容的に見で雇用関係というものが認められるというようなところであれば、労働省としても、こういう共同作業所に対して助成金を現に支給しておるわけでございまして、そういう意味で、こういうものにつきまして作業施設の設置助成金であるとか、あるいはその重度の障害者の多数事業所設置助成金であるとか、あるいは管理助成金というようなものも、そういう実態に応じましては助成を現在もいたしておるし、特にこういう多数障害者を雇用するような事業所の設置というものは今一生懸命進めておるということでございます。
  254. 下村泰

    ○下村泰君 それじゃ次に参りましょう。  身体障害者福祉法の改正に向かいまして、昭和五十八年八月二十四日に出されました身体障害者福祉基本問題検討委員会報告書、これ、厚生省に出されておるんですね。この報告書の中に、作業施設という項目がございます。この作業施設についてこういうふうに言っていますね。「作業施設は近年小規模化の傾向にあり、将来の方向として、対象者の障害の相違を踏まえた共同利用等について検討を進める必要がある。」、こういうふうに言われております。労働省の方としては、こういういわゆる答申を踏まえてどういうふうに対処なさるおつもりですか。
  255. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 労働省の方としましては、要するに身体障害者でも、特に重度あるいは精神薄弱者、こういうような方たちの雇用につきましては、やはり企業にいろいろお願いをしておくというだけではなくて、やはりそういう方たちを多数雇用いたしまして、そしてそれぞれの障害者の特性、特徴に応じましたいろんな配慮もした施設というようなことなどにも心がけながら、そういう施設をできるだけ設置を育成していく、あるいはまた助成していく、こういうことでの今対応を進めておるわけでございまして、そういう身障者、障害者を多数雇用する事業所といたしまして、現時点で全国二百十八事業所がございます。
  256. 下村泰

    ○下村泰君 それはそれで、またそれに対する納付金制度とかもろもろございますけれども、それはまた時日を改めてひとつお尋ねすることにいたします。  実は、国際労働機関総会というのですか、ジュネーブで、一九八三年六月二十日というから、去年です、職業リハビリテーション及び雇用(障害者)に関する条約、いわゆるILOの百五十九号というのがこういうふうに採択されておるんですけれども、この百五十九号に対して、労働省の方はどうなんですか、批准するお考えはあるんでしょうか。あるいは、批准するための御準備をなさっていらっしゃるんでしょうか。あるいは、検討をなさっていらっしゃるんでしょうか、お聞かせください。
  257. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 御指摘の、昨年六月のILO総会で採択されました職業リハビリテーション及び雇用に関する条約といいますのは、これは今後の職業リハビリテーション対策の推進に関する新しい国際基準ということで採択されたものでございまして、この内容を見ますと、すべての種類の障害者の雇用機会及び待遇の平等を確保し、障害者の地域社会への統合を促進することを目的としておるということでございまして、我が国においても、障害者の雇用対策を推進する上で貴重な指針となるものと理解をしておるわけでございます。  ただ、条約の内容を細部について見ますと、例えば、すべての障害者に対して適用するというようなところについて、例えば、現在我が国におきまして、精神薄弱者については雇用率の適用をしていないとか、あるいはまた、精神障害者については雇用促進法の適用をしていないというような関係等の問題もございまして、批准については、今後なお検討を要する問題もあるというふうに理解をいたしております。
  258. 下村泰

    ○下村泰君 全然批准しないというわけじゃないんですね。
  259. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) そういう問題について、条約がどこまでその辺についてぎりぎり絞り込んでおるのか等についての一応検討を経ないと、批准するという形にすぐには踏み込めない、こういうことでございます。
  260. 下村泰

    ○下村泰君 先ほどの、いろいろ小規模の作業施設やなんかございますわね。これは大体が非政府機関ということになりますね。そうしますと、もちろんこれはまた批准するかしないかの問題もありましょうし、この中身をいろいろと検討しなければならないでしょうから、この中身から一々取り上げて何だかんだと言う気持ちは私ございませんけれども、この中にこういうのがあるんですね。非政府機関によって運営される心身障害者のための職業訓練、職業指導、保護雇用及び職業紹介の事業に対する適当な政府援助と、こういう項目があるわけなんですね。そしてまた、これは条約に関係なく、今までのお話でいきますと、当然、労働省の方としても、そういう作業所にこれからも大いに援助していくというお気持ちはあるわけですね。そうしますと、これは改めてお尋ねしなくても大丈夫ですね。
  261. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 先ほど申し上げましたように、私どもが障害者につきまして就職の促進であるとか、あるいはリハビリテーションの問題であるとか、訓練の問題であるとか、こういったものについて推進をしていく考え方はもちろん持っておるわけでございますが、条約の関係の問題で、ちょっとこの検討の中で気になりますのが、全部平等にそういうものをやれというところについて、要するに、精神薄弱者については、雇用率の問題が現在まだ完全に適用になっていない、あるいはまた、精神障害者について、この点については身障雇用促進法の対象になっていない、こういったような問題がある、こういうことでございますが、この条約の精神、考え方というものは今後とも積極的に伸ばしていきたい、こう考えております。
  262. 下村泰

    ○下村泰君 でき得るならば早い時点でこの百五十九号条約が批准されればいいなと、こういうふうには思っております。  ところで、これまた大臣、こういうのが出てきます。五十九年度厚生省公衆衛生局精神衛生課の予算で、精神障害者小規模作業所調査費というのが計上されているんだけれども、これは労働省の方に計上されておりますか、どうですか。
  263. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 計上されておりません。
  264. 下村泰

    ○下村泰君 これは、小規模作業所というと労働省の管轄でしょう、先ほどから何回も申し上げておりますけれども。どうなんですか。
  265. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 作業所というのは、一般的には労働省の管轄でございませんが、さっきから申し上げておりますのは、内容として共同作業所というような形をとっておるというものについて申し上げたわけでございまして、まさに共同作業所そのものは厚生省の所管でございます。
  266. 下村泰

    ○下村泰君 こういうふうに、一つ取り上げても、今またこれだけ矛盾が出てくるわけですよね。厚生省が一生懸命働く人の場所の調査しております、これ。労働省の方が、さっきからも何回もおっしゃっているような形で調査していないとすると、これ、ちょっと怠慢じゃないんですかな。身体障害者の方たちの働く場所も、労働省が考えてくださらなきゃならないのが、厚生省ではこういうことをやっておるのに労働省の方では全然こういう調査も何もしないというのは何となく矛盾を感じるんです、私は。それ、今答えてくれとは申し上げません。  こういうふうに大臣、話を聞いてくださっておわかりのことと思いますけれども、どうも二つの省にまたがって、いつまでたっても新幹線の鉄路みたいにずっと平行線をたどっていることが随分あるわけなんです。ですから、一番最初にお伺いしたように、身体障害者のいわゆる労働に対して、あるいは就職に対して、どういうふうにお考えをお持ちでございましょうかということを念のために伺ったわけでございますが、もう一度ひとつ大臣の口から、身体障害者の就職問題に対するお考えをちょっと聞かせておいてください。お願いします。
  267. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) ちょっと誤解があるといけませんので、一言説明させていただきますが、基本的に雇用労働になじむようなところまできております身体障害者について、私どもの方でそういう方たちの就職促進、こういうような形でやっておる。それから厚生省の場合には、同じ働く場ではございましても、やはりまだ雇用労働という形ではなかなか難しい、実際にはそこで働く場を見つけることによりまして一つの能力をだんだん伸ばしていくとか、あるいは生きがいという場合もございます。そういうふうなことで、まだ雇用労働に持っていくのはちょっと難しいというような形での仕分けになっておるわけでございまして、例えば厚生省の授産所を卒業してこられた方を労働省の多数雇用事業所で雇用するとかいうような形の連携はいろいろいたしておるわけでございます。ただ、そこのところがなかなか、御指摘のようにまだ不十分じゃないかと言われる点につきましては、私どもも十分連携をとっていきたい、こう考えておるわけでございます。
  268. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 問題は役人の縄張りではないので、問題は心身の障害のある方の福祉が向上するということが問題でございます。しかし、現実に縄張りがあるということでありまするが、ギャップに落ち込んで苦労をするというようなことのないように特に気をつけて、両省の密接な連携をとるようにして、そしてそれらの方々の雇用面でもできるだけのお世話をしたい、こう思っております。
  269. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございました。
  270. 石本茂

    委員長石本茂君) 以上で労働省所管に対する質疑は終了いたしました。  これにて、昭和五十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、厚生省所管、労働省所管、医療金融公庫及び環境衛生金融公庫についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  271. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十九分散会      —————・—————