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1984-10-19 第101回国会 参議院 決算委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年十月十九日(金曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         佐藤 三吾君     理 事                 岩崎 純三君                 後藤 正夫君                 福田 宏一君                 松尾 官平君                目黒朝次郎君                 服部 信吾君     委 員                 石本  茂君                 大浜 方栄岩                 河嘉久戒君                 倉山 寛之君                 斎藤栄三郎君                 曽根田郁夫君                 出口 廣光君                 原 文兵衛君                 星  長治君                 矢野俊比古君                 菅野 久光君                 本岡 昭次君                 太田 淳夫君                 刈田 貞子君                 佐藤 昭夫君                 木本平八郎君    国務大臣        農林水産大臣   山村治郎君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        公正取引委員会        事務局取引部景        品表示指導課長  黒田  武君        防衛施設庁施設        部首席連絡調整        官        近藤 孝治君        経済企画庁国民        生活局消費者行        政第一課長    里田 武臣君        大蔵省関税局輸        入課長      剣持 宣揚君        国税庁直税部所        得税課長     岡本 吉司君        厚生省生活衛生        局食品保健課長  玉木  武君        厚生省薬務局監        視指導課長    中井 一士君        農林水産大臣官        房長       田中 宏尚君        農林水産省経済        局長       後藤 康夫君        農林水産省構造        改善局長     井上 喜一君        農林水産省農蚕        園芸局長     関谷 俊作君        農林水産省食品        流通局長     塚田  実君        食糧庁長官    石川  弘君        林野庁長官    角道 謙一君        水産庁次長    斉藤 達夫君        通商産業省生活        産業局通商課長  新関 勝郎君        通商産業省生活        産業局繊維製品        課長       渡辺 光夫君        運輸省海上技術        安全局検査測度        課長       戸田 邦司君        海上保安庁警備        救難部管理課長  土方  浩君        建設省河川局水        政課長緒     小松原茂郎君    参考人        会計検査院事務        総局第四局長   磯田  晋君        農林漁業金融公        庫総裁      松本 作衛君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件昭和五十七年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十七年度特別会計歳入歳出決算昭和五十七年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十七  年度政府関係機関決算書内閣提出) ○昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算  書(内閣提出) ○昭和五十七年度国有財産無償貸付状況計算書  (内閣提出) ○派遣委員報告に関する件     ―――――――――――――
  2. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和五十七年度決算外二件を議題といたします。  本日は、農林水産省及び農林漁業金融公庫決算について審査を行います。     ―――――――――――――
  3. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  5. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 農林大臣に、五十七年度の会計検査院検査事項を見ますと、不当事項が十八件、会計検査院法第三十四条で改善を要するもの三件、それから同法三十六条関係が一件、合計で二十二件あるわけでありますが、私は、この内容をちょっと読んでみますと、農林省関係は、補助金を水増ししたり、やらなかったものをやったことにして請求したり、非常に悪質なものが割合に多いんですよ。おととい厚生省やったんですが、厚生省案件が多いけれども、厚生省関係は法の解釈、運用の点が多かったと。したがって、是正、改善の跡が見られるんですが、農水関係は水増しとか、やってないものをやったなんという形で請求していると、こういうことはちょっと悪質だと思うんですよ。ですから、きょうは時間がありませんから、この指摘事項に対しておたくはどういう指導をやったのか、やろうとしているのか、そういうことについてひとつ文書その他で後ほど別途提示をしてもらいたい。きょうは時間がありませんから一々言いません。そういう指導中身についてひとつ教えを願いたいということを要求しておきます。これは答え要りません。  それから、二番目の問題は、漁船違法改造問題について若干お伺いいたします。  私の田舎である仙台の河北新報が九月の十七日から九月の二十七日まで十回にわたってシリーズ物をずっと挙げておるわけでありますが、なかなか、私も読んで驚いてみたり、あるいはこんなからくりが行われているのかなと、こういうことを見て心配したりしておるわけでありますが、まず冒頭水産庁にお伺いいたしますが、この河北新報シリーズ物を覆っているようなこういうことが行われているということを、監督官庁である水産庁は認めているのかあるいは知らなかったのか、そういうことについて総括的に、水産庁はこの問題についてどういう認識を持っておられるのか、まず冒頭考えを聞かしてもらいたいと、こう思います。
  7. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 九月十七日から九月二十七日にかけまして連載されました漁船違法改造に関しまする河北新報記事に関しまして早速に事実関係調査いたしました。同新報に連載された漁船違法改造に関する記事から推定されます漁船調査したところ、次のような概要でございました。  まず、サケマス漁船につきましては三隻の指摘がございますが、そのうちの一隻につきましては水産庁担当官が、それから他の一隻につきましては海上保安庁担当官現場確認を行いましたけれども、新聞記事のような違法改造の事実はないものと判断されました。他の一隻については、現在洋上で操業中でありますので、帰港後直ちに調査をいたしたいと思います。  それからまた、一隻の漁獲物運搬船についての指摘が同記事の中にあるのでございますが、本年六月時点で関係法令に基づく手続を経ずに改造に着手した事実がございましたけれども、関係機関指導により、その後正規手続によって漁船法に基づく漁船改造許可がおりております。したがって、これについては、現在きちんとした形になっておるわけでございます。  なお、遺憾ながら、過去におきまして一部の漁船について違法改造が行われた事例があることを承知しております。
  8. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そうすると、水産庁としては、こういうことが現に行われておると。三分の一か一部かは知りませんが、こういうことが現に行われているという事実認識は確認していいんですか。
  9. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 水産庁におきましては、大臣許可に係る漁船につきましては、建造時及び三年ごと定期検認時調査をいたすわけでございますけれども、これまでのところ、過去において――数年前でございますが、年間十件程度違法改造のケースがございましたけれども、近年は減少しております。
  10. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 この中で、舞台の立て役者が大手機械総合メーカーだと、こういうことを言われておるわけでありますが、この大手機械メーカーの会社については確認していらっしゃいますか。
  11. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 先ほどのサケマス漁船につきましては、河北新報記事によりますと、大手機械メーカーだということでございましたけれども、先ほど御回答申し上げましたように、サケマス漁船三件につきましては、二隻についてはそのような事実がなかったと、あと一隻についてはこれから事実を調査する次第でございます。
  12. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 我々はつかんでいるんですがね。つかんでいるんですが、あなたがまだもう一件残っていると言うから、それはまた保留にして、私の方では、この大手メーカー秘密工場を持っているメーカー秘密工場のある場所、町の名前、番地、工場の規模、私はこの新聞をネタに追跡調査した結果全部わかっていますから、きょうの段階では、それはおたくの方の調べを待ちましょう。  それで、運輸省にお伺いいたしますが、東北運輸局船舶部は、石巻における秘密工場、これも何何町ということは今回は言いません。石巻における秘密工場船舶検査官派遣をして現場を確認したと、そういう情報があるわけでありますが、何月何日、何という船舶検査官派遣して確認したのか、事実を明らかにしてもらいたいと思います。
  13. 戸田邦司

    説明員戸田邦司君) 先生ただいま御指摘の件は、昭和五十九年九月二十二日付の河北新報掲載の件のことと存じます。これについて事実関係を申し上げます。  違法改造をしているのではないかというような情報がありまして、石巻支局から実際にその工事をしておりました山下産業という造船所検査官派遣いたしました。その結果、改造に着手しておりましたので直ちに支局長名をもって工事中止を命じました。
  14. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 中止を命じ、その後どういう措置をしたんですか。その改造現場を確認した、あなたは石巻――私が言わなくても山下産業といえばもうわかっている、我々地元の者はすぐわかっちゃう。まあそれはあなたが言ったのなら構いませんが、中止をして、その後どういうふうに現場を具体的に確認されたんですか。
  15. 戸田邦司

    説明員戸田邦司君) 六月の二十五日に中止を命じたわけでございますが、六月二十七日及び六月の二十九日に東北運輸局から関係船舶所有者及び造船所に対しまして、このような行為法秩序を著しく乱すものであり、今後かかる行為を行わないよう厳重に注意し、反省を促す旨の通達を出しております。その後、本船は当初建造されました造船所に回航されまして、船舶安全法正規手続を経まして改造を終了しております。
  16. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 これは中間飛んじゃったんだけれども、その二十七日、二十九日見たと、私が聞いたところでは長さ十九メーター、幅七メーター、高さ三・五メーター、この高さを四・〇五メーター改造して総トン数百九十六トンを二百三十トンにしたと。この船舶法で云々というのはもとに戻したんですか、四メートルというやつはやっぱりもとどおり三・五メートル、総トン数二百三十トシに考えとったやつはもと規定どおり百九十六トン、こういう原状にきちっと復帰させた上で船舶法検査で再検査をしたんですか。
  17. 戸田邦司

    説明員戸田邦司君) 当初の計画によりますと、総トン数百九十六トンの船舶でございました。これを先ほど申し上げました正式の手続を経まして二百三十トンの船舶改造しております。
  18. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そうすると百九十六トンを、その改造した二百三十トンにあなた方が追認をして、追認かどうか知りませんが制度上追認をして、やみでやろうとしたことを今度は法律的に正規に認めたと、そういうことなんですか。逆に言えば、百九十六トンは百九十六トンに見合う船舶全体の設計があるんでしょう。それを二百三十トンに変えたということは船全体の構造、例えば我我機関車であれば五百トン引っ張る機関車粘着力と五百七十トン引っ張る粘着力では軸重の車さから粘着力は全部違うんですよ。したがって、機関車設計そのもの設計し直さないと馬力の増加というんですか、昔の九六〇〇からD50にかえるにはD50らしく車両全体を変えなければ牽引力が出てこないですよ、私もエンジニアの一人としてそう思うんですがね。百九十六トンの設計でやったものを二百三十トンに設計し直すということは、関係設計を全部修正して船舶法許可を与えたんですか。
  19. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) ただいまの案件につきましては、水産庁におきまして漁船改造許可を出しておるわけでございますけれども、漁船改造許可を出しますとぎには漁船としての安全基準、それを満たしておるかどうか、その百九十六トンのものを黙って二百三十トンに改造しようとした、そのことについては運輸省の方からきついおしかりがあったわけでございますけれども、その結果改めて改造許可が出まして、それが安全基準に合っておるということで改造許可を出しておるわけでございます。
  20. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 じゃその百九十六トンの申請して許可をした図面と、二百三十トンを申請して許可をした図面、それを図面としてちょうだい。私は素人でありませんから図面見るとわかりますから、その図面をひとつ証拠物件として出してください。私は私なりに点検します。いいですか、図面提出、どうですか。
  21. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 承知いたしました。
  22. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そうすると、運輸局はこの問題について密造をやると、そういうことはけしからぬということで山本船舶部長厳重注意処分をしたと、こういうことですが、これは逆に海上保安庁にお伺いしますが、こういう海上保安上一定の規定が設けられていると。その規定の陰に隠れて秘密工場に運んで百九十六トンの設計しかないものに二百三十トン、まあ言えば頭でっかちのやつをやった場合には、いろんな意味で私は海難事故につながると、こう思うわけでありますが、海上の安全を預かる海上保安庁としてはこういうことに対してはどういう認識を持っていらっしゃるんですか。
  23. 土方浩

    説明員土方浩君) お答えいたします。  安全を阻害するような違法改造が行われれば海難につながると思います。
  24. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 こういうあなた方が長い間海難事故を扱っておって、こういうような、例えば百九十六トンが二百三十トンに船舶の安全の審査を受けないで身勝手にやったと、そういうことで海難事故につながった、あるいはそういうふうに類する事故、あなたが扱っておるかどうか知りませんが、例えばここであれば東北運輸局管内ですね、管内でこれ他に類似する事故が発生したことがあるかどうか、参考までに教えてもらいたいんです。あるいは刑事事件になった件があるかどうか、あるいは刑事事件になって逆に調査をしたらやはりこういう案件があったと、そういうことが立証される案件があるかどうか御提示を願いたいと、こう思うんです。
  25. 土方浩

    説明員土方浩君) 海上保安庁では海難が発生した場合、その船の船種、船の種類でありますが、それからトン数、それから海難の種別、そういうことを今後の海難防止に資するために統計として集計してございます。これらの海難の中で海難違法改造に基づくものであるかどうか、それは把握しておりません。
  26. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 現実にたまたまある情報を提供して、地方検察庁とが海上保安部海運当局、こういうところが情報をお互いにやって、それで東北運輸局船舶部石巻が現認を確認するわけですね。現認を確認してこの河北の取材によると、そういうことがいろいろ行われていると、東北近辺で。今第二部は仙台湾周辺やっていますよ。そういうことをやっておって、こういう違法改造の件が統計上とっておりませんと、とってないのは故意にとらないのかどうか知りませんが、今まで統計とってませんと言えば追及のしようがないんですがね。今後はやっぱり現に密造を、違法改造をやっているんだから、違法改造、これは車もやっているわね、違法改造。だから違法改造という問題についてやっぱり海上保安庁も、私は頭でっかちで転覆する可能性があると、こう思うんですがね。ですから、我々常識でそう思うんですから、あなたたち海難業務をやっておって我々以上に経験を持っているでしょう。我々はブレーキかけるには所定荷物以上の荷物を引っ張ればブレーキ効きませんよ。ブレーキ効きませんというのは頭でっかちですよ。我々の専門用語で言うと、列車頭でっかちです、そういうのは。だから列車頭でっかちがあるんだから、船だって所定以上のトン数を超えるやつは頭でっかちになることはあり得るんじゃありませんか。それを海難の問題で統計をとっていないというのは私はちょっと、今から言ってもしょうがありませんが、やはり十分そういう違法改造が行われているという原点から、今後海難事故調査の際にはその面についてもやっぱり監視の目を光らしてもらいたいと、こういうことを要求しますが、いががでしょうか。
  27. 土方浩

    説明員土方浩君) 海上保安庁におきましては、従来から海上における法令の励行、それから漁業秩序の維持、こういう観点からこの違法改造問題に真剣に取り組んでいるところであります。今後も関係行政当局と連携をとりながら取り締まり指導に当たっていきたいと考えております。
  28. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 だから、私が提案しているこういう船舶違法改造が現に行われていると確認しているんだから、船舶部で。そういうものについても監視の目なりあるいは事故調査については統計的にとってほしい、事実関係を究明してほしいという要求なんです。そんな通り一遍の抽象論で、何を答弁しているんだ。現に日本海でも行われて処分を受けているんだ。どうですか。
  29. 土方浩

    説明員土方浩君) お答えいたします。  違法改造海上保安官の立入検査で簡単にわかるようなものではないわけであります。非常に高度の技術的知識を要する事項でありまして、関係行政官庁の職員と連携しながら取り締まりに当たらなければなかなか発見できないものであります。そういうことで、今後も積極的に取り締まりに当たりたいと、こういうふうに考えております。
  30. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そんな抽象論で――もういい。  それで、運輸局船舶部厳重処分にしたということは、この程度の悪いことであれば厳重処分なんですか、これは。国鉄は三百円使って首、この程度の悪いことをしておって厳重注意。それは、海上保安庁の方がそういうことはなかなか統計上出てこないというそのことに悪乗りしておるこれは癒着処分と、こういうふうに私は理解するんですが、厳重処分というのはどういうことなんですか、その具体的な効果は。
  31. 戸田邦司

    説明員戸田邦司君) 今回の件の場合ですと、工事中止させるというようなことでございますので、その船は、正式の手続を経て私どもの方の検査を終了するまで使えないということになりますので、それ相応の処分ではないかと思っております。  なお、こういった場合、船主に対しましては、今後そういうような行為があった場合には検査を非常に厳しく実施していく、あるいは検査の時期の間に立ち入りなどを行っていくということも考えております。
  32. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 大臣、時間がありませんから、まあのらりくらり皆逃げていますから、大臣としてはこういうことはどう思うんですか。米アラスカ海の漁業を管理している北太平洋漁業管理理事会が、日本漁船不法操業は目に余るものとして、この海域から日本漁船を締め出すよう米政府に勧告したと。その資料は、日本漁船水産団体の指令を受け、組織的に違反操業を続けてきていると、こういう問題の指摘。同じ東北でいえば、べーリング海漁船衝突事故からいわゆる大がかりなアブラガニの密漁が発見された。青森県の北津軽郡で二億八千万のエビを密漁しておったグループがあったと。こういうふうに大きな世界的な問題になっていると、こういう点が指摘されているんですが、私は、今質問したこの漁船違法改造、こういうものが法に隠れて、そういうことが積み重なって国際的にも大きな話題になっていると、こういうふうに発展しているんじゃありませんか。  ですから、私は、行政きれいごとを言って逃げておれば、こういう世界的な問題になって日本漁船そのものが大変なことになってしまう。海上保安庁もそんな中途半端を言っておると、今度海難事故でも起きたら私は徹底的に突いてやるわ、海難事故。何ぼ同じ車へんだって、もう許しません。  だから、こういうものについて大臣は、漁業界の現状、それが苦しければ苦しいなりに、どういうふうにして政府としては、漁民が安心して魚をとれるような方法を含めて、石油ショックあるいは二百海里問題などを含めて、どういうふうにして国際的な不況から脱皮するために、あるいは北朝鮮における民間協定も同じこと、私も北朝鮮に行っていろいろ言われた。日本漁民はうんと言っても、結局法を犯して約束は守らないと。これは全体的にそういう風潮を助長しているのが、私が今取り上げたこういう違法漁船船舶検査に全部私はつながっていると、こう思うんですよ。ですから、あなたは大臣として、こういう国際的な非難、国内における密漁等についてどういう考えを持っていらっしゃるのか、大臣としての見解を聞かせてもらいたい、こう思います。
  33. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) ただいま御指摘のありましたいわゆる漁船違法建造ですか、やはりこれらに対しては、まことに遺憾なことであり、今言われますアラスカ方面のいわゆる組織的な違法操業というようなものを含めましてやはり正すべきものは正して、そしてまた農林水産省として、その漁業者が苦しいということに対する援助の仕方、それらはそれらとして、しかし、やはり違法は違法でございますから、正すべきものは正していかなければ国際的にも信用も失ってまいりますから、今後はひとつ、もっと厳しくこれらに対しては当たってまいりますし、また、苦しい水産業界に対する政府としてのできるだけのことはしてまいりたいというぐあいに考えております。
  34. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 じゃそれは、これ、いつ日本政府北太平洋漁業管理理事会通告を受けて、それにどう答えるかわかりませんが、通告を受け、回答をする際には、その回答中身を後日知らせてもらいたいということを要求して、この漁船問題は終わります。  それから第二番目は、宍道湖の淡水化問題でありますが、時間がなくなりましたから要点だけ一つ二つ申します。  この淡水化問題で、八月二十日、農水省から、いわゆる研究会中間報告という形で関係市町村に出されておるわけでありますが、この中身を見ますと、試みに施行するのであるから関係町村の同意をもらいたいということで、現在行われておるわけであります。しかし、この中間報告中身についていろいろ議論があるわけでありますが、この議論中身について農水省は、率直にいろんな意見について耳を傾けて聞く姿勢を持っているのか、問答無用と、こういう姿勢を持っていらっしゃるのか、この辺の基本的な姿勢についてまず大臣から見解を聞かせてもらいたいと、こう思うんです。
  35. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 中海の干拓事業は、地元市町村それから鳥取、島根両県からの強い要請でこれを始めたわけでございますが、いろいろ今現地での反対の声もあるようでございます。農林水産省といたしましては、関係省庁そしてまた鳥取、島根両県とも十分話し合いまして、御意見を伺いましてこれに当たっていきたいという基本姿勢でございます。
  36. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そうしますと、この報告書を書いた伊達先生という方が、八月二十八日の新聞にも載っておりますし、その後の資料ももらっておりますが、やはりアオコが大量に発生する、そして、中間報告を書く時点ではこの問題はそこまで追求できなかった、その後、五十八年の夏に琵琶湖、五十六年に宍道湖、こういうところでさらに精密な検査をやった結果、やはりこの中間報告は不十分であると、こういう見解を発表しているわけでありますが、こういうことについても耳を傾けるわけですな。どうですか、大臣
  37. 井上喜一

    説明員(井上喜一君) 中海と宍道湖の淡水化に伴います調査研究委員会を発足いたしまして、そこで種々検討いただいたわけでございまして、その研究委員会に参加をしておられる先生が中間報告を出しました後に、いろんな発言をされているということは伺っておりますけれども、私ども正式に伺ってないわけでございますが、新聞報道によりますと、中間報告と若干違うニュアンスの発言があるやに想像するわけでございますけれども、これらの問題につきましては、私ども再度委員会におきまして検討いただきたい、このように考えておるわけでございます。
  38. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 それから、この報告書を書いた南委員長さんという方は、自分の書いた本ですね、淡水湖化研究、京都大学水利工学工座発行、この雑誌を照らし合わせますと、ゲート除塩方式の淡水湖が一つ、ゲートプラス除塩暗渠方式淡水湖が一つ、Cがゲートプラス除塩暗渠プラス除塩ポンプ方式の淡水湖と、こう三つの方法があると。この三つの方法があるけれども、一番最初の方法については、岡山県の児島湾淡水湖で失敗をしたと。二番目の問題については、きのうも私電話をかけて熊本県の天草に照会しましたが、熊本県天草の羊角湾、これは八分どおり建設したけれども、住民の反対でこれも棚上げになっていると。それから、今度の宍道湖と、こういう三つともあるんですがね、大学の本を読ましてもらうと、この三つのうち二つとも失敗している。三つ目がこの宍道湖なんです。この問題は全部比較しますと、すべて共通していることは、淡水化すれば湖水が汚染する、そういうことが共通しているんです。この問題について、私は書いた先生は非常に学者的な先生か、相当政治性のある先生かと聞いたら、それは答えると先生の人格にかかわるから、それは目黒議員の判断に任せますと、こういうことでありますから、裏を返せばこれは、立派な人であろうけれども、自分のやっていることは二つとも失敗して、それを顧みないで宍道湖にこれを適用する、これはちょっと私はやぼなやり方だと、こう思うんですが、農水省はどうお考えですか。
  39. 井上喜一

    説明員(井上喜一君) 調査研究委員会は、御指摘のように京都大学の南先生を委員長に構成されておりまして、そのほかも水管理でありますとか、水質、プランクトン、水生動物それから底生動物――湖底にすむ動物でございます、魚類等の各分野の権威者二十七名をもちまして構成いたしまして検討いただいたわけでございます。  中間報告は、長期間にわたりまして現地調査でありますとか、あるいは模型実験、水質解析のためのシミュレーション等をいろいろ実施いたしまして、総合的に検討した上で作成されたものでございまして、私どもとしては、現在の知見及び学問水準から見れば、今回の報告は十分評価できるものというふうに考えておるわけでございます。  なお、先生御指摘の羊角湾と児島湾のことにつきましては、羊角湾は漁業補償の関係でこれは工事がストップをしているわけでございますし、児島湾につきましては除塩施設は設置しておりません。そういう意味におきまして除塩施設はこの中海が初めてでございまして、二回が失敗して三回目だということではございませんので、念のために申し添えておきます。
  40. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私は京大で発行した本から見たんですからね。京大の研究班がうそを書いてるわけじゃないでしょう。ですから、それは私が後で証拠物件出しますわ。  時間がありませんから結論から言うと、あなた方は、これは自民党の一部、現在の細田運輸大臣の元秘書であった松江の市会議員の方も含め、それから社会党、公明党、共産党、各政党それから町の方々、観光関係の方々みんな集まって「中浦水門しめ切りに反対する会」という広範な市名団体が集まっていろんな問題点を摘出したわけです。それで、これを証拠物件で私出しますから、この委員会に。あなた方の方ヘコピーやりますから、あなたの方で農林水産省にかかわる部門について、いわゆる一定の見解を文書で目黒議員に回答するという立場で示してもらいたい。時間がありませんからそういう手続をとりたいと。おととい環境庁にもお願いしました。環境庁はオーケーとっておりますから、あなたの方もこの問題についてひとつ、時間がないから、ひっくるめて、あなたの今答弁したことも含めて文書で書いてもらいたいと、こう思うんですが、いかがですか。
  41. 井上喜一

    説明員(井上喜一君) 鋭意検討の上回答いたしたいと思います。
  42. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 それから大臣ね、シジミをとって生活しておる約二百四十人の方々がね、二億四千万円の漁業補償をもらってるんですよ、漁業補償。今回この中間報告を読んでどうしても納得できないということで、この漁業補償を返すと、こういう運動をしておるわけでありますが、法務省の方にいろいろ手続面などについて今研究をしておりますが、こういう漁業補償を返してまでも湖を汚すのは嫌だと、これは全会一致、漁業組合員が全会一致で補償金の返上を決定しておるわけでありますが、漁業権を扱っている農林大臣としてはこの事態をどう受けとめますか。
  43. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 私も、留守の大臣室のところへそれらの皆さんの陳情があったということを後で伺いました。しかし、これはいろいろ今まで島根そしてまた鳥取両県、これらといろいろ話し合い、強い要望で、そして地元市町村も賛成ということで推進してまいったわけでございますので、これらの返還金という問題についても、これただ単に農林水産省でそれをどうということではないと思いますし、またそれらのいろいろな経過等も、過去のいろいろ長い日数もございますので、これらの問題等を考えましていろいろ協議をいたしますが、しかし漁業補償の補償金の返還に応ずるということを、単に農林水産省でどうというようなことは私はなかなか難しいと思うわけでございます。
  44. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 それはあなたははいそうですかと簡単に言わないだろうけれども、だから私は今法務省も含めて検討中だと。しかし、漁民がこういう決定的な対決姿勢になっているということは、農林行政について極めて不信感を持っているということだけは、あなたは肝に銘じておいてもらいたい、こう思うんです。  それから、時間がありませんから資料要求いたします。あなた方は淡水化は農民の水の要求によってやったと、こう言っておるんですが、当地が大干ばつした昭和四十八年から昭和五十八年まで、斐川町、平田町、この二つがあなた方が言う図面で見るとね、水が欲しい水が欲しいという村ですよ。図面、おたくらのPRの図面を見ますとね。この斐川町、平田町、松江市それから安来市、この辺の米のとれぐあい、毎年毎年の。干ばつと米のとれぐあい、その一覧表をひとつ資料として出してもらいたい。私はここに農水省統計事務所資料を持っているわけでありますが、そんなの当てにならないと言うと困りますから、いわゆる干ばつ時の米のとれぐあい、それから減反政策であなた方がぎりぎり減らしたその減反政策と干ばつの兼ね合い、一覧表でひとつぜひ一般人にわかるように、どんな問題で八千万トンとか一億トンとかという、この資料見ると、最初は八千万トン、今は一億トンと言っているらしいね。この問題についてひとつ参考までに資料を要求したいと思います。  それから最後に、農林大臣ね、環境庁長官はおととい原長官と同一見解だということをこの委員会で表明しました。原長官は五十七年の六月十八日、現地を見て、一つ、汚濁しないことがはっきりしない以上淡水化は認めない。二つ、霞ケ浦、八郎潟、児島湖において淡水化をした湖がいずれも深刻な汚濁に悩まされている事実からも中海・宍道湖だけが淡水化して汚れないという保障はないと環境庁長官は言明しておるんです。今の上田環境庁長官もそういうふうに言明しておるわけでありますが、これらについては大臣どういう考えを持っていらっしゃいますか。
  45. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 島根県そしてまた鳥取県、同時にまた今言われました環境庁、これは専門の役所でございます。これらと十分連絡をとりながら慎重に検討してまいります。
  46. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 建設省は五十七年の三月一日の予算委員会で、この試行、試みについても河川管理上建設省の同意を要すると、そういう議事録が残っていますが、当時の議事録と今日では違いありませんか。時間がありませんから、ある、ないだけで結構です。
  47. 小松原茂郎

    説明員小松原茂郎君) 先生が御指摘の委員会におきまして河川局長がお答えいたしましたとおりでございます。
  48. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 はい、それでいいです。  終わります。
  49. 菅野久光

    ○菅野久光君 まず最初に、去る十月十五日に妥結した朝鮮民主主義人民共和国との間の日朝漁業暫定協定についてお尋ねをいたしたいというふうに思います。  この問題は、御承知のように、一昨年のラングーン事件以降において我が国の対北朝鮮に対する制裁措置、これで代表団の入国を阻止するというようなことなどがあって二年前にこれは失効してしまったのであります。このことによってここを漁場とする漁民の人たちは年間総額百四、五十億円、この水揚げを失った。そういうことで大変ここを漁場としている人たちは零細な人たちでありまして、早くこの漁業協定の締結をしてくれと、こういったようなことが求められていたわけでありまして、私どもとしても社会党が朝鮮労働党との友好関係があるということでこの問題に取り組んでまいりました。私もことしの春行っていろいろ向こうの人たちと話をしたわけでありますが、なかなか壁が厚かった。しかし、我が党の石橋委員長が訪朝した中で、交渉再開に応ずるということで日朝議連の人たちも行ってこの十五日に妥結をしたということで、内容は大体前回までのと同じで日本漁船は入漁料なしで漁業ができる、操業ができるということで、今この入漁料の問題は大変な問題になっているわけですけれども、全く金を払わないで一方的に便宜を供与してくれる、あるいはそういう漁場を提供してくれるなんということは、今のこの世界の中では余りないわけでありますね。そういうようなことで私は大変よかったというふうに思っているわけでありますけれども、このことについての農水省としての評価といいますか、所感といいますか、そういったようなことについてどのようにお考えになっているのかお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  50. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) まず大きく評価いたしております。  これは、今おっしゃいましたように、先般の社会党石橋委員長が訪朝された後、谷会長代行、そして広瀬事務局長、日朝漁業協議会の長谷川会長ら一行が訪朝されまして、二年以上にわたって中断されていた協定が今回復活、そして更新されたことはもう本当に農林水産省として喜ばしいことであり、関係者の方々の御努力に心から感謝を申し上げます。特に昨日、谷会長代行、そして広瀬事務局長、お二人にわざわざ農林水産大臣室までおいでいただきまして、詳細にわたりましてこのいわゆる交渉の経過等をお聞きいたしました。本当にこの御苦労に対しまして感謝いたしております。
  51. 菅野久光

    ○菅野久光君 もうちょっと早くこのことがなされておれば、あの石川県の漁民の不幸な銃撃による死亡、こういったようなことがなかったのではないかというふうに思っておりますが、いずれにしましても本当に我が国としても大変よかったという評価をされている農水省のその点については、私もそのことを了としたいというふうに思います。  続いて、さきに大臣が訪ソをされました。どうも大変御苦労さまでした。訪ソされてソ連側から大変歓待をされ、カメンツェフ漁業相とも二回にわたって会談したというふうに伝えられているわけであります。私は山村大臣が訪ソされる直前の参議院の農林水産委員会で、いかにサケ・マス漁業者がこの新漁業協力協定の締結に大きな期待を寄せているか、こういったようなことを質問の形で大臣に申し上げたわけでありますが、漁業者の間には大臣がこの新協定を締結して帰ってこられるのではないかということで大きく期待していた向きがありました。しかし、ソ連漁業相との話し合いの結果合意に達した事項は、新協力協定締結のための交渉は十月一日から再開すること、太平洋中型サケ・マス漁業の漁場転換問題や科学者交流問題については、協力協定交渉の終了後に交渉を行うということにとどまって、協力協定の具体的な合意への展望は示されなかったというふうに伝えられているわけであります。  そこで、大臣はカメンツェフ漁業相との会談ではこの協力協定の問題についてどこまで突っ込んだ話し合いをされたのか、あるいは漁場転換の必要性についてどれだけソ連側をいわば納得させることができたのか、こういったようなことについて大臣の口からひとつ直接御報告をいただきたいというふうに思います。
  52. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 私は、カメンツェフ漁業大臣に御招待いただきまして、九月の十六日から二十三日まで訪ソしたわけでございますが、その間我が国の北洋漁業の安定を図る観点から、漁業分野における双方の関心のある事項について協議をしたわけでございます。会談では率直にいろいろ話し合いました。日ソ漁業関係がおおむね順調に推移し、今後ともこれを発展させる方向で努力すべきである、これは日本、ソビエト双方の意見の一致でございます。そして懸案の日ソ漁業協力協定交渉の問題については、私からカメンツェフ漁業大臣に対しまして、海洋法条約第六十六条を基礎にして、海上漁獲国としての立場にある我が国に妥当な配慮の払われた解決をするよう要請をしたところでございます。私とカメンツェフ漁業大臣との間でこの問題について早期解決に努力しようということで合意を見まして、そして十月一日から交渉を、特にいろいろ専門的な分野もございますので専門家レベルによる交渉、これを行うということで意見が一致しまして、そしてずっと行われてまいったわけでございます。これにつきましては海洋法条約を基礎としてサケ・マスの公海漁獲について二国間で協定をつくるのは初めてでございますので、海洋法条約の解釈、適用をめぐる法律的、いろいろな難しい問題がございまして、結局これらの問題について意見の一致を見るに至らず交渉が一時中断されることになったわけですが、しかしこれにつきましても中断はいたしましたが、またできるだけ早い機会にしようということで別れたようでございます。私といたしましては、我が国北洋サケ・マス漁業の安定継続のために最善の努力をしていきたいというぐあいに考えております。
  53. 菅野久光

    ○菅野久光君 十月一日から交渉再開したわけですけれども中断された。対立点なんかについても今お話がありましたけれども、しかし漁業者は一日も早い決着を望んでいるということで、特にサケ・マスの出漁期が近づいてから、何かそれが切迫した段階での交渉ということになりますとどうしても拙速で不利な協定を結ばされるといいますか、結ばざるを得ないような状況になってしまうということになっては大変なことになると思うんです。これからやっぱり長期にわたる問題でありますから、だからできるだけ、時期の問題でありますけれども、出漁期に近づかないもっと早い時点でこれは決着を見るように、私はなかなかソ連が相手でありますから大変だというふうに思うんですけれども、特に私はその出漁期が近づくまで延ばされて延ばされて不利な状況にならないように、精いっぱいのひとつ努力をしてもらいたいというふうに考えておるわけですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  54. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 私、今申し上げましたが、海洋法条約を基礎としてサケ・マスの公海漁獲について二国間で協議をつくるというのは何しろ初めてでございますので、いわゆる日本の国益等を考えた場合に、やはりソビエト側の言うままにやった場合にはというようないろいろな問題もあったようでございます。それで今回一応中断ということでございますが、会談の雰囲気は悪いものではなく、向こうも積極的に何とか締結したいという気持ちのようでございますので、今、先生おっしゃいましたように、いわゆる漁期が迫って、そして不利な条件でというようなことでなく、やはり今もしやってしまいますと我が国にとって不利なような条件というようなことになってしまいますので、中断ということになったということでございますので、できるだけこの不利な条件でないように、そしてまた早い時期にということで努力してまいります。
  55. 菅野久光

    ○菅野久光君 ではひとつよろしくお願いいたします。  次に、先ほど目黒委員からは日本漁船の無謀操業ということで話があったわけでありますけれども、私は今度は別に韓国漁船の無謀操業の問題について御質問申し上げたいというふうに思います。  特に、去る七月一日に北海道の日本海側にある武蔵堆で羽幌のエビかご漁船の乗組員が韓国のトロール船に投石をして韓国船の乗組員に負傷させる事件が発生したということが報ぜられているわけでありますが、この経過についてひとつ説明をしていただきたいと思います。時間もございませんから、簡単にひとつお願いいたします。
  56. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 御指摘のような事実が七月一日、日本海の天売島の沖合におきまして日本のエビかご漁船二十七長隆丸と韓国のトロール漁船正和十一号というのの間で投石事件が起こりまして、韓国のトロール漁船員一名が負傷をしたという事件がございました。この原因につきましていろいろ調査をしたところ、日本側のエビかご漁船が六月十七日に一度当該韓国トロール漁船とおぼしい漁船からエビかご漁具の被害を受けまして、今回の事件が起きました七月一日、この日本側の漁船がちょうど日本側のエビかご漁具の設置場所に到着しようとしたときに、そこに向かって韓国の漁船が進行してきた。それでエビかごを回避して航行してくれということを言ったのですが、意思疎通が十分いかなかったのかもしれませんが、そのまま直進をしてきた。そこでどちら側からかはっきりしないのでございますが、両方が物を投げ合った、興奮をして。たまたま日本の方が向こうのやつに当たって向こうのやつはこちらに当たらなかったという格好になったわけでございます。本件につきましては所管の海上保安本部の取り調べが終了し、日本漁船の船長ほか三名が傷害等の罪により所管の検察庁に書類送検されていると承知しております。  このような事件は日韓両国漁船操業の安全を図る上からも好ましいことではないので、今後とも我が方としては漁船指導を強化しますし、韓国側当局に向かいましても相互の安全操業に努めるようにということを申し入れてございます。
  57. 菅野久光

    ○菅野久光君 六月十七日に一度そういうようなことがあった。それで私が調査をしたのでは、三隻の韓国漁船が六月十七日に操業していた。そこでこの投石事件のあった第二十七長隆丸が漁具標識であるぼんでんが見つからずに漁具被害事故があったというふうに思われて六時四十分ごろから操業を開始したところ、予想どおり約二百四十個のかごに被害を受けていることを発見した。漁具の一番近くにいた韓国漁船KO2というのですか、何か番号振ってあるのだそうですね。それに接近したところ揚げ網中で、船尾に本船漁具と思われるかごやロープがぶら下がっていた。本船が近づくと、この船は揚げ網途中のまま逃走しだした。そのためにすぐ水産庁取り締まり船に連絡をした。これは白鷹丸に連絡をしたということで言っているのですが、きのうもらった運航の状況では白鷹丸はこの日は運航していないようなんですけれども、いろいろ言われているのですね、新龍丸じゃないかとかなんとか。とにかく連絡をしたら応答があった、こういうことなんですね。そして接舷し、乗り移って交渉したいと、自分たちの漁具がやられているわけですから交渉したいという旨を申し入れたところ、白鷹丸からは韓国漁船に連絡するので待てと言われた。その間にこのKO2という船は走り去ってしまった。このことについて水産庁としてはどのように事実関係を御認識でしょうか。
  58. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 白鷹丸については、その期間は当該海域におりませんで、いたとすれば新龍丸かあるいは美代丸という監視船、取り締まり船、これは北海道庁の船であろうかと思われるのでございますが、詳細は承知しておりません。
  59. 菅野久光

    ○菅野久光君 美代丸とか新龍丸というのは北海道庁の船であろうと思われるということですか。
  60. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 失礼いたしました。水産庁の北海道漁業調整事務所の用船している監視船でございます。
  61. 菅野久光

    ○菅野久光君 そうですね。ここはその新龍丸、美代丸、白鷹丸という三隻で交互に監視体制といいますか、そういう漁業取り締まりの運航に当たっているというふうに私は報告を受けたわけでありますが、ちょっとそこのところを今訂正をされましたのでいいのですけれども、そのような認識であっては私は困るというふうに思います。いずれにしましても私が調べたのでは白鷹丸に連絡をしたら応答があった、こういうことなんですね。しかし、この運航の表を見ますと、白鷹丸は当日は運航してないことになっている。そうすると、美代丸か新龍丸どちらかに連絡ということになるんですが、これは私が調査したのは白鷹と、こういうふうになっていますので、この辺の事実関係について、ぜひどこの船が受けたのか、それから受けてからどうしたのか、その関係については調査をして私の方に文書で報告をしてもらいたいと思うんですが、よろしゅうございますか。
  62. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 承知いたしました。
  63. 菅野久光

    ○菅野久光君 いずれにしても、このときにはそのまま船が逃げてしまったということで取り締まり船も取り締まりの実際の仕事はできなかったということなわけです。  そこで、この問題について先ほど報告の中で日韓友好上の不幸な事件であるということで、韓国側にも行っていろいろ話をした。この報告でも投石事件にも触れ、日本側よりのお見舞い及び日韓友好上の不幸な事件であるとした旨の発表を行い、韓国側も了としたとの連絡を道は七月二十三日水産庁から受けたと、こういうふうになっていますね。韓国側でどんな話をしたんですか。それをひとつ教えていただきたい。
  64. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 本年の七月十八日から十九日にかけまして、北海道それから西の方の済州島周辺の操業に関する日本と韓国の水産庁の部長、局長級の会議がございまして、そこで韓国がこの事件に限らず規制内容の遵守その他につきまして韓国側に自主規制の強化を申し入れ、他方同時にけがをさせたことは事実でございますから、けがをさせたことについては遺憾であるということを表明しております。他方、同時に漁具被害の問題につきましては元来民事の問題でございますので、大日本水産会及び韓国側の遠洋漁業協会が窓口になりまして、漁具被害の補償の話し合いを進めておるところでございます。
  65. 菅野久光

    ○菅野久光君 どうも韓国漁船の無謀操業の問題については、これは従来からいろいろな日本漁業者にとっては大きな問題になっておりまして、このときの船もはっきり日本漁民の人たちが確認をしているんですけれども、何か韓国船が逃げてしまった。水産庁を通じて韓国側に連絡をとったところ、当日その船はその海域にいなかったし、日本船の漁具を網にかけた事実もないと回答してきたと。それはそういう回答があったんですね。
  66. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 別件ではそのようなことがございましたが、本件についてはそのようなことはございません。
  67. 菅野久光

    ○菅野久光君 別件ではあったけれども、この六月十七、十八日の韓国のトロール船の羽幌のエビかご漁船の漁具に被害を与えたことについてはこのKO2という船はいなかったと。それはそういうことで確認をしているということですね。漁具を網にかけたということもないと。そういうことですか。
  68. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) はい。本件につきましてはいたかいないか確認ができておりません。ただ、漁具被害につきましては、来月中旬民間同士の話し合いが行われることになっております。
  69. 菅野久光

    ○菅野久光君 韓国漁船日本海で操業している隻数は大体決められていますね。どのぐらいですか。
  70. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 北海道周辺につきましては現在十八隻と理解しております。
  71. 菅野久光

    ○菅野久光君 韓国漁船というのは大体三百トンから五百トンぐらい。日本の船の十倍から二十倍近いそういう大きな船なんですね。ですから、取り締まり船がいるんですから、この船が1韓国船も全部あれナンバー打ってあるわけですね。KO2という船がその時期にそこにいたかいないかということは、日本取り締まり船で確認ができないんですか。
  72. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) ただいまの御質問でございますけれども、できる場合もありますし、できない場合もあると思うんでございます。そばにおれば、現認すればわかるわけでございますが、逃走してしまいますとその船名はわからないということになるわけでございます。  先ほど私十八隻と申しましたけれども、現在最高枠は十七隻でございます。失礼いたしました。
  73. 菅野久光

    ○菅野久光君 結局、確認できないというのは、いわば取り締まり船の体制が確認できるような体制になっていない。全部が全部そういうことを確認できるような体制になっていないというところに、やっぱり問題があるというふうに思うんですね。特に、漁具被害の時期というのが大分月によって違うんですね。もらった資料では一月が六件、二月はなし、三月が十二件、四月が四件、五月が三件、六月が二十二件と、こういうふうになっていて六月が非常に多いわけです。こういうふうに漁具被害が多くなっているその時期というものに対して、取り締まり船の特別な対応というようなことは水産庁としては考えたことがあるのかないのか、その辺をはっきりさせていただきたいと思います。
  74. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 漁具被害が続発する時期につきましては、できるだけ監視船の増投を道庁とも協力をいたしましていたしたいと存じますけれども、現在常時二隻はこれらの時期には張りつけるようになっておるんでございます。しかし、海上の天候の模様等によりまして、やはり現認できないというような場合が起こり得るわけでございます。
  75. 菅野久光

    ○菅野久光君 韓国漁船操業の問題については、もう本当に何というのでしょうかな、漁業秩序といいますか、そういったようなもの、あるいは漁業者としてのモラル、こういったようなものが全くない、感じられない。そういったようなことで非常に現地の漁民の人たちは怒りを持っているわけです。このことについては韓国の大型トロール船が北海道周辺の漁場を荒らしてしまう、根こそぎとっていってしまう、こういうことで大変韓国漁船の問題については大きな問題ということで横路知事も昨年韓国に行っていろいろ話をしたり、あるいは水産庁もそういったようなことでは一応の対応はしているわけであります。現在、我が国の大日本水産会北海道指導漁業協同組合連合会と韓国遠洋漁業協会の間には、操業の安全及び秩序の維持に関する民間の取り決めがあるわけですね。この取り決めに従って我が国の漁業者が漁具を設置した海域を、水産庁取り締まり船を通じて毎日韓国側に通知をしているということになっていると思うんです。これは通報があったらどのくらいの時間を置いて報告をしているのか、その辺の状況についてひとつお知らぜいただきたいと思います。
  76. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 一日三回やっております。ですから、報告を受けますと、とにかく八、三、二十四ですから八時間以内には大体届くようになっております。
  77. 菅野久光

    ○菅野久光君 そういう一日三回八時間以内には届くというような状況になっているから、したがって韓国側としては当然我が国漁船の漁具の設置場所というものはわかっているはずですね。にもかかわらず漁具被害は後を絶たないということは一体何に起因しているのかということになると思うんです。仮に民間取り決めがなかったとしても、他船の漁具が設置してある海域ではそこに近寄らないというのが、国籍を問わず漁業者の常識だということになっているんですよ。それなくしては多数の漁船が入り会って操業することは不可能です。漁具が設置してある場所というのは、そこに魚がいるから設置してあるわけですよね。そこを目がけて操業するというのは一体どういうことになるんだということだと思うんです。  漁具被害は昼夜を分かたずに発生している。特に夜間には、我が国漁船の設置漁具には、沖側には白、おか側には赤のライトを点灯させてあるので、夜間といえども視認することは可能である、そういうことになっておるんですね。韓国船は設置された漁具を目がけて突っ込んでくるという目撃者の話もあるんです。今回のエビかご漁船の漁具をトロールで引き揚げてしまったことなどとも考え合わせてみると、韓国漁船のモラルが余りにもひどいことは明らかだというふうに思うんです。政府は、韓国漁船のモラルの実態を韓国政府に繰り返し通報して、悪質な行為を繰り返す漁船については操業を禁止させるなど、強力に韓国船の操業秩序維持策を講ずるべきだと、そのように思うんですけれども、いかがでしょうか。
  78. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 我が方の監視体制あるいは漁具設置場所の通報体制を強化しますと同時に、韓国政府に対してもこれまでも繰り返し申し入れておりますし、その結果韓国側におきましても、韓国側の監視船を漁期のピークには派遣をして先方も指導に当たるということをやりました結果、昨年十一月以前に比べますと若干は減ってきていると思うんでございますけれども、今後ともできる限りの努力を重ねていきたいと思います。
  79. 菅野久光

    ○菅野久光君 ですから今回の事件は、いえば七月一日の投石事件ということだけを見れば相手にけがをさせたということで、けがをさせたことについてはいいとはこれは言えない。しかし、それもただ憎さ余って投石をしたということだけではなくて、北海水産という新聞では、何か船がこちらへ来るので、こちらに来ちゃだめだという警告の意味も含めてやったというようなことがあるわけですね。だからただ単なる漁具をやられたからぶつけたというのとは性格が違うんじゃないかというふうに私は思うんですよ。しかし、結果は石が当たってけがをしたということですけれども、ここに至るそういったような経過を考えたときに、ただ単なる傷害事件という問題とは性格が違うというふうに思うし、少なくとも今遠洋――二百海里の問題を含めて、今は外側の方は大変な状況ですね。これからの漁民の生活を守るということになれば、どうしても沿岸の漁場というものを大切にしていかなきゃいかぬ。そういうことで、沿岸の資源管理型漁業というものを目指し、政府もそれに予算をつけてそして沿岸の資源を回復して守っていこうと、こういったような政策をやっているわけですね。そして漁民自体も自主規制をしながら沿岸の魚族資源というものを守っていこうとしている。自分たちが手を出さないで大事に育てようとしているものを、目の前で韓国漁船にさあっと持っていかれる、その漁民の心情はわかりますか。
  80. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 実は我が国の遠洋漁船が外国へ行きまして、いろいろな問題が起きているわけでございますけれども、そこでいろいろ出てきます議論、それから今御指摘のありました議論、やはり立場は変わりましても共通の問題でございまして、いずれの方も我が国の漁業にとって非常に重大な問題だと思います。漁民の気持ちはよくわかっておるつもりでございます。
  81. 菅野久光

    ○菅野久光君 それで、このような不幸な事件が起きないようにするためには、私は取り締まり船をふやさなきゃだめじゃないかというふうに思っているわけです。先ほどからもお話ちょっとありますけれども、この海域の監視海上保安庁水産庁及び道の三者が連携をとり合って当たることになっていますけれども、何といっても主力は水産庁取り締まり船であります。したがって、この取り締まり船は常時一隻は配置されることになっていますけれども、広大な海域に一隻だけでは取り締まりの実効が上がらないのは当然であります。なぜなら、漁具被害等のトラブルが発生した場合には直ちに取り締まり船に駆けつけてもらって、事実の確認をしてもらわなきゃならないわけですね。それがトラブル解決の早道であると同時に、そうした能力を取り締まり船自体が持っていることが、いえばトラブル発生の抑止力にもなるわけであります。こうした機能を存分に発揮させるためには常時せめて二、三隻は常駐してほしいという切実な声が地元にはあるわけであります。できれば減船業種の漁船を用船するなら一石二鳥の効果が上がるのだから、政府としてもひとつ真剣に考えてもらいたいというふうに思うんですけれども、いかがでしょう。
  82. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 与えられました予算の範囲内で最大限の努力をいたしたいと思います。
  83. 菅野久光

    ○菅野久光君 与えられた予算の中でという、それはそういうことでしょうけれども、これは来年度のやっぱり予算編成にも向けて、もっと意欲的に日本漁民を守るという立場、日本の漁場を守るという立場でひとつ取り組んでもらいたいというふうに思うんです。  それで、補償処理の促進の問題でありますけれども、この漁具の損害等の補償問題については、先ほど、民間取り決めに基づいて両国の漁業者団体間で交渉が行われているわけでありますが、北海道の漁民が韓国漁船から受けた漁具被害であって韓国に補償請求したものは、四十一年八月二十八日から五十五年十月末までの分が千七百九十三件、約七億一千万円で、そのうち実際に補償されたのは二億一千万円です。三分の一にも満たないということであります。五十五年十一月以降分については百八十三件、八千九百万円を請求中だと。ここからも明らかなように、請求額に対して実際に補償された額が三割にも満たないということでありますし、なお請求額は漁具の金額であって、漁具被害が生ずるということは結果的に水揚げが減るということになるわけでありますね。水揚げ減分は含まれていないわけであります。それを合算するなら北海道の漁民の受けた損失はこれは膨大なものになるわけであります。しかも、被害を受けて漁具をとられたら、次の漁具を用意するまでの期間、これもう全然とれない。まさにこれ、水揚げの減というのは本当に大きいわけですよ。しかもこの被害を受けた漁業者というのは、スケトウダラやホッケの刺し網業者、エビやカニのかご業者など零細業者がほとんどなんですね。それだけに非常に苦しい状況になっているわけです。これが、補償がすぐ仮に三分の一弱にしても来るのであればいいけれども、五十五年十一月以降分をようやく現在請求中であることからも明らかなように、決着がつくまでにかなりの時間がかかっているということですね。政府は補償問題については民事上の事件だとして余り介入したくないと、介入できないといいますか、不介入の方針を一貫させているというふうに思うんです。しかし、国民の命と財産を守るのは政府の重要な責務のはずでありますから、このことを放置しておくわけには私はいかないというふうに思うんです。まして政府取り締まり船ですね、取り締まり体制の不備等の対策の不十分さが、これだけ膨大な損失を零細漁民に与えているのでありますから、単なる民事上の事件として知らぬ顔の半兵衛を決め込むのは余りにも無責任ではないかというふうに思います。地元では、まず補償請求額を政府が代位弁済して、しかる後漁民にかわって政府が韓国側に補償を求めるべきだというふうに要求をしています。私は極めて当然のことだというふうに思いますけれども、政府もその方向で検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  84. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) どうもこれ私は余り詳しいことはわかりませんもので、次長の方から答弁させます。
  85. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 現在窓口は民間になっておりまして、大日本水産会と韓国の遠洋漁業協会との間でやっておるわけでございますが、この交渉をやるための基金を国が一部助成しておるわけでございます。また、こちらの請求額、それから先方の支払い額、これらにつきましてはやはり民間当事者間でないと話のつかない性質のものではないかと思っております。
  86. 菅野久光

    ○菅野久光君 もう少し積極的にひとつ取り組むように、今後検討を進めてもらいたいというふうに思っております。  こういう事件が起きるのもやっぱり二百海里の問題だというふうに思います。これを韓国に適用するしか根本的な解決の方法はない、今や直ちに適用せよとの声が、従来は北海道だけであったわけですけれども、近年は被害の急増している西日本に至るまで、いわば沿岸漁業者の間に二百海里を韓国に適用せいという声が満ちているわけでありますね。適用がおくれればおくれただけ沿岸漁業者の損失は増大していきます、今の状況でいけば。そして沿岸漁業者を疲弊させてしまう。この事実を政府は直視して、早急に韓国に対して二百海里法を適用すべきだというふうに思います。  ことしの一日外務省でしたか、札幌市で開催された四月十四日、一日外務省において、安倍外務大臣が、これらの情勢は十分承知しており、ソ連にも二百海里を設定していることでもあり、そろそろ韓国に対しても二百海里を適用することも必要と考えているので、関係省庁とも検討させたいと考えていると発言するなど、機運も盛り上がってきているというようなことがあります。ただ単なるリップサービスではないというふうに思いますが、このことについて関係省庁とも相談をしてということでありますが、農水省としてはどのようにお考えでしょうか。
  87. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 韓国に対して二百海里制度を適用しますことは、やはり韓国周辺水域に出漁しております我が国漁業への影響、それから現存の日韓漁業秩序との関連、さらには日韓関係全般に与える影響等の問題がありますので、引き続き関係省庁と慎重に検討してまいりたいと存じます。
  88. 菅野久光

    ○菅野久光君 韓国漁船の問題については、非常に大きな無謀操業の問題についてはあるということを、今の私が指摘した問題でおわかりだというふうに思いますが、二百海里法をやるということについてはかなりな時間がかかるということについては、私もわかります。しかし、時間がかかるからといって全くこれに手をつけないでいくということにもならないし、二百海里をどうするかということを決めるまでの間、少なくともこの取り締まり船の増隻の問題も含めて、韓国漁船の無謀操業の問題については何とか抑止力を発揮して、このような事件が起きないように水産庁としてもひとつ最大の努力をしてもらいたいということを、この機会に要望をしておきます。  時間がございませんので、次は北転船の減船問題でありますけれども、ことしの六月に全国底曳網連合会が北転船の経営状態が悪化しているために、船主会に諮って四十三隻の自主減船を実施することを決定いたしました。その細目は十一月中に決定するということであります。北転船の発足当初は百五十四隻であったが、五十二年の二百海里時代の突入とともに、同年及び五十三年の二度にわたる減船を行って、現在は九十七隻となっています。そして、さらに今回は四十三隻減船して、わずか五十四隻で操業を続けようとしているわけで、当初に比べれば実に三分の二に当たる百隻もの減船になるわけであります。  このような減船を強いる原因は、漁業者側にあるのでは決してなく、主にこの二百海里体制の強化と燃油の高騰等の外圧であります。したがって、このような外圧による原因は、政府の政策の選択によってもたらされることも多くある。全部とは言いませんけれども。そうしたことから、北転船業界は今回の減船をするに当たって政府等に十四項目の要望を行っています。どれも全部当然のことばかりであるというふうに思われるし、私はぜひ要望を生かす方向で努力をしてもらいたいというふうに思いますけれども、その決意をひとつ大臣からお伺いしたいと思います。
  89. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 今回漁民の皆さんに大きく減船の御協力をいただくわけでございますが、いろいろ難しい問題あろうと思いますが、農林水産省としてはできるだけの御協力、これはやってまいりたいというぐあいに考えます。
  90. 菅野久光

    ○菅野久光君 時間がありませんので詳しくは私の方から申し上げられませんが、本来的には、やっぱり諸種の事情を勘案すれば、これを船主だけに負担をかけるということではなくて、減船をスムーズに実施をさせていくということからいえば、政府の補償金の交付、これが私は必要だというふうに思うわけでありますけれども、これが困難であるなら、せめて特定漁業生産構造再編推進事業で行っている共補償だとかあるいは不要漁船の処理対策事業ですね、こういったようなこと、この適用の問題が非常に業界ではこれは問題になっているわけですね、どちらか片方ということで。これは今北海道でも漁船漁業の再編整備対策をやって何とか漁民の生活を守らなきゃならぬ、漁業を守らなきゃならぬということでやっていく、そういう上で非常にこの適用状況では問題だということが指摘をされて、両方にひとつ適用をしてもらいたいという要望が強くある。  しかし、今回の北転船の問題については、いずれにしても十二月末までに決着をつけなきゃならぬということで、両方適用ということではもう時期的に間に合わないということで、ついせんだって共補償の問題について、四十三隻減船を十二月末までに完全実施するためには、共補償金一隻当たり四億五千万円の農林漁業金融公庫枠の満枠確保、これを水産庁にも要請をしているわけでありますけれども、このことについて水産庁としてどのように考えておられるのか、そのことをお伺いしたいと思います。
  91. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 御指摘のように、北転関係の業界が十月十三日付で御指摘の特定漁業生産構造再編推進事業のうち、共補償負担軽減助成の適用を要望してきたところでございます。水産庁としましては、業界要望の内容を十分に検討した上で関係省庁と協議をしましてできる限りの措置をとりたいと考えております。
  92. 菅野久光

    ○菅野久光君 できるだけの措置ということは、答弁としては非常にいい答弁なんでしょうけれども、今もう十二月末ということになると目の前ですね。この満枠確保ということについての可能性といいますか、見通しといいますか、その辺をどのようにお考えでしょうか。
  93. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) ただいまの特定再編事業につきましては、五十九年度の予算額として三十億円が計上されております。ただこのほかにその他の漁業、北転漁業以外の減船の問題ございますので、その他の漁業の所要額、これ等も勘案いたしまして、必要があれば関係省庁と、所要額全体が三十億円の予算に足りないというような事態になりましたときには、さらに関係省庁と討議しまして適切に対処してまいりたいと思います。
  94. 菅野久光

    ○菅野久光君 これは四十三隻の減船で、一隻当たり四億五千万というと約百九十億円かかるわけですね、今三十億しか枠がない、枠はね。それだけでやろうとしているのでしょうか。
  95. 斉藤達夫

    説明員斉藤達夫君) 三十億と申しましたのは、共補償に対する利子補給の枠でございます。必要としますのは農林漁業金融公庫からの融資でございますが、これにつきましては業界の要望の四億五千万ということの事態についてもさらに精査検討が必要かと思いますけれども、できるだけ枠の確保については努力をしていきたいと考えております。
  96. 菅野久光

    ○菅野久光君 これは減船をスムーズにさせるためには、そこのところがやっぱり大事なポイントになってくるというふうに思いますから、できるだけでなくて、絶対これをスムーズにやらせるために決意を持って満枠確保するために、ひとつ努力をしていただきたいということを申し上げて、農家負債の問題も実は予定していたわけでありますけれども、時間がございませんので別の機会にやらさせていただきます。大変どうも申しわけございません。終わります。
  97. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私の質問時間は十分ですので一点だけ農水省に質問します。  その内容は、兵庫県の加古川西部水利事業の問題であります。昭和四十二年に着手したこの事業は、二十年の長年月を経過して昭和六十二年度末までに水の供給がやっとできるというふうな状況でございます。しかし、二十年もの長い年月を要したことによって、この受益者である地元の農家の皆さんの多くが率直に喜べないという気持ちを持っておられるようであります。二十年の長期にわたった責任は挙げて農水省にあるということを率直に認め、完成後に起こる諸問題について誠意を持って対応をしていただきたいということをまず強く要望し、今地元の皆さんが問題にされている事柄の中から次の五点に絞って質問をいたします。  まず第一点は、現時点において地元農家の十アール当たりの工事費負担額は幾らになるのか。そしてその工事費を二年据え置き十五年年賦で償還すれば償還額の総額は幾らになるか、端的にお答えをいただきたいと思います。
  98. 井上喜一

    説明員(井上喜一君) 国営土地改良事業加古川西部地区の問題でございますけれども、この地元の負担金を計算いたします場合にはいろんな前提がございます。私がお答えいたします前提は現時点での計画、つまり全体の事業費が二百七十七億円、それから受益面積が四千八百五十ヘクタールと、その他幾つかのことを前提にいたしましてお答えをいたしたいと、このように考えるわけでございます。そういうこと、それからまた今後の事業の実施状況等も想定しないといけないと思いますが、そういうことを勘案いたしまして現在試算いたしますと約十六万円でございます。これを通常の国営かんがい排水事業の地元の償還金を通常のルールによって償還いたしました場合の毎年の償還金の問題でありますが、仮にこの十六万円を前提にいたしますと、事業完了の翌年度から二年間はこれは元本の方は据え置きになっておりますので、利子相当部分だけが償還されまして、これが毎年約一万円になります。その後の十五年間、これは十五年間の元利均等年賦償還になっておりますけれども、この十五年間は毎年約一万七千円強でございます、約一万七千円ということでございまして、全体の償還金を合計いたしますと十アール当たりで約二十八万円ということに相なるわけでございます。これはあくまで単位面積当たりの平均額でございます。  なお、本事業地区におきましては受益面積あるいは事業費等の変動が認められますので、現在計画変更のための準備をいたしているところでございまして、なるべく早急に取りまとめをいたしたいと思っております。新しい計画が決まりますと、その計画によりまして地元の負担金等が変動するということがあるわけでございます。その点をお含みおきいただきたいと思います。
  99. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 第二点として、この水利事業の完成後、ダム、水路等の維持管理費は十アール当たり幾らになりますか。
  100. 井上喜一

    説明員(井上喜一君) 維持管理費そのものにつきましては、土地改良区が決めるということに相なるわけでございますけれども、これの管理に必要な年間の標準経費はどういう組織で管理をするのか、あるいは管理の中身はどうかということがはっきりしないと推定の金額を申し上げるということもできないわけでございます。また、御案内のとおり、この水利事業には工業用水が乗っかっておりまして、工業用水との維持管理費のアロケーションの問題もございます。そういうことがはっきりしませんと、どうもはっきりとは申し上げられる状況にないわけでございますけれども、仮に当初の事業計画のときに予定しておりました管理経費から推定いたしますと、事業計画当初は十アール当たり一千円というのを想定いたしております、これは昭和四十一年でございますが。それを基礎にいたしまして、その後の物価上昇等を考えまして、その上昇率でもって仮に算定いたすとなりますと、大体十アール当たり三千五百円程度になるんじゃないかと思います。
  101. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 第三点目として、今も出ましたけれども、この農家負担、いわゆる受益者負担の軽減ということが前回の私の質問のときにも大きな問題になったのですが、工業用水あるいは上水道などの新規偉人によって、農家負担の軽減という方策について検討するということでしたが、その現状と見通しはいかがですか。
  102. 井上喜一

    説明員(井上喜一君) 当地区は降雨量が非常に少のうございまして、また大きな川がないということで、水が非常に貴重な地域でございます。そういうことでこの加古川西部地区の事業が始まったわけでございますけれども、長期的にはただいま申し上げましたような状況で、水は非常に貴重でありますけれども、短期的には上工水とも水の需要が低迷をしているような状況でございます。なかなか関係地方公共団体との話が進まない状況でございますけれども、我々といたしましては、ただいま御指摘の農家負担の軽減ということもございますので、さらに他の水利用あるいは水の総合利用といいますか、こういう点について関係団体と協議をしてまいりたいと、このように考えております。
  103. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 地元には今になってこんな高くつく水は要らぬ、負担金はよう払わぬ、というふうな声が一部にあるんですね。今も十アール当たり三千五百円、一町歩つくっておれば三万五千円という水代を払い、それから十七年間にわたって十アール当たり大体一万七千円、十五年間ですか、これも一町歩持っておれば十七万円、こういう高い金をずっと払い続けて、そして同じ水田で米をつくる。今でも十分米はつくれているのにわしはよう払わぬと。払わなんだらどないするんや、警察へ引っ張っていくのか、というような物騒な話もあるんですが、これはどうしますか。
  104. 井上喜一

    説明員(井上喜一君) 私どもはこの水利事業によりまして水が参るわけでございますし、また加古川西部の受益地区におきましては、本事業の関連事業といたしまして圃場整備事業等が行われているわけでございます。こういう全体の事業を通しまして、この受益地域ではかなり高度の土地利用が可能であろうと思いますし、さらに農業生産の中身も多様化していくものと考えております。そういうことで、私どもといたしましては農家負担が可能だと思っておりますが、これらについて農家の理解を得るためにさらに努力をしてまいりたいと、何とか地元の理解を得て、負担金は負担金として払っていただきたいと、このように考えておる次第でございます。
  105. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 最後に大臣に答弁いただいて終わりますが、大臣、今お聞きのように、二十年にわたってこの水利事業は完成するんですが、そのときには非常に高い水を農家は買ってそして同じ米作をやらにゃいかぬということでいろいろ地元では問題が起こっているんです。だから一つは、六十二年完成というのを絶対に、六十二年度完成というのをまず第一点にどんなことがあっても実現してもらわにゃいかぬのです。延びれば延びるほどこの問題は大きくなります。  二点目に、それから農家のいわゆる受益者負担というものを軽減するために、農水省いろいろ努力していただいております。地元も努力しておりますが、努力した結果だめだったというんではやはりちょっと私は気の毒のような気がするんで、ここでは最大限努力しましょうというお言葉しかいただけぬと思うけれども、やはり農水省としてのこれからの誠意あるひとつ態度というものを大臣の方から聞かしていただきたいと、こう思うんです。
  106. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 御存じのとおりの厳しい財政事情でございまして、工期延期、これを余儀なくされている実情にございます。しかし、国営のかん排事業は農業施策の中核でございます。農業基盤整備の中でも重点施策として位置づけておりますし、今後とも積極的に推進していかなければならない、そういうぐあいに考えております。このために国営のかんがい排水事業に対する予算につきましては、昨年御存じのとおりマイナス予算ではございましたが、そこの中でも五十九年度に一〇一・二%というようなぐあいにやっておりますし、また六十年の要求にいたしましても、前年度に比べまして一〇一・四%と極力配慮してきたところでございますが、今後とも国営事業の重要性にかんがみまして国の予算確保を図り、そしてまたこの加古川西部を初めとする他地区の事業推進に全力を挙げてまいります。
  107. 松尾官平

    ○松尾官平君 きょうは蚕糸関係に絞って御質問を申し上げたいと思います。  最近の養蚕、蚕糸業界は大変な危機に立ち至っているわけでありますが、そういう中で絹織物の新規需要開発のためにいろんな手だてが講ぜられております。そういう中で山村農水大臣には、率先して各閣僚に背広をごあっせん願い、大変な御努力を願って需要開発に御尽力賜っておりますことにつきましては衷心から敬意を表し、養蚕業界を代表して心からお礼を申し上げたいと思いますし、今後ともよろしくお願いを申し上げたいと思います。  さて、最近のこの生糸の取引市場はまさにパニック状態でありまして、ストップ安、ストップ高を繰り返しているような状況にあります。これを反映して、養蚕農家は、前途が一体どうなるんだろうかということで、大変な不安におののいておりますし、また、現実に繭の取引を協定する県養蚕連合会では、それぞれの県で初秋蚕の繭代の清算ができないという事態、あるいは前渡金も今までと違って大変低価格で協定が行われている、あるいはそれさえも実現しないというような大変な危機に立ち至っているわけであります。養蚕業界を日ごろ大変御心配をいただいて御指導願っている農水省の農蚕園芸局としては、どのように今、この緊急事態に対して指導をし、どのような措置をなさったのかについてまず伺いたいと思います。
  108. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) 最近の生糸の需給事情、あるいは価格の情勢につきましては、ただいま先生からお尋ねのあったとおりでございます。全体としましては、先物価格が大変下落をしまして、いわゆる現物よりも先物が大幅に低い、逆ざやというような状況になっておりまして、こういうことが繭の流通から絹織物の段階に至るまで大変一つの不安材料となって、流通も停滞をしている、こういう状態大変憂慮しておるわけでございます。こういう中で、当面、我々としてもできるだけこの事態の解決に努力するということで、一つは、今もお話がございました、ことしの晩秋蚕の取引というような当面の問題につきましては、これは私どももできる限り、養蚕団体と製糸団体の間のいわゆる価格協定について円滑な推進を図っていただきたいということで、ようやく、従来よりはおくれましたが、十月上旬までに大体全県ともいわゆる内渡し金というような形で当面繭の引き取りが行われる、こういう約束ができたような次第でございます。それから当面の問題としましては、従来蚕糸砂糖類事業団が行っております需要者売り渡し、実需者売り渡し、これにつきましても、当面の状況を考えますと若干の調整を加える必要があるだろうということで、このところ毎月二千八百俵の売り渡しを実施しておりましたものを千五百俵に十月分から当分の間抑える、こういうふうなことで、多少なりとも需給、価格の安定に対応してまいるわけでございますが、ただ、こういう基本的な情勢として非常に需給のなかなか不均衡という問題もございますので、この点につきましては、早急に、将来の展望も含めました価格安定制度のあり方についての検討を進めていかなければいけない、かように考えている次第でございます。
  109. 松尾官平

    ○松尾官平君 いろいろ御努力を願っていることに対しては敬意を表したいと思いますが、今後とも引き続き、養蚕農家が立っていけるように御指導を願いたいと思います。  さて、時間もありませんのでポイントを絞ってお尋ねするわけでありますが、今回のこのパニック状態はいろんな問題が、繭の生産から呉服、反物の販売まで通じていろんな問題が相乗作用を起こして、先行き不安というようなことを招き、今日の事態を招いていると思うわけであります。基本的にはこの需給のバランスが崩れているということが原因になっていることはそのとおりだと思います。我々は、これを解決するためには需要を喚起して供給をそれに合わせたものにしなければならないというようなことは当然考えられるわけでありますが、その中で、供給面における生産と流通を考えてみますと、生産よりも私はどうも流通の方に問題があるような気がしてならないわけであります。供給というと国内の生産と輸入ということになろうかと思います。絹織物の輸入は年年減少しているというふうにデータも示され、説明を受けているわけでありますが、どうも我々はこれがぴんとこない。それ以外のものが動いているんじゃないかということさえ考えたくなるような実情にあるわけであります。  そこで、大蔵省にお伺いしたいと思いますが、昭和五十三年、これがまあ生糸、絹織物の一番入ってきたピークの年と思うんでありますが、昭和五十三年以降昨年までの各年における絹織物の輸入数量の推移を御説明願いたいと思います。
  110. 剣持宣揚

    説明員(剣持宣揚君) お答えいたします。  五十三年から五十八年までの絹織物の輸入数量は次のとおりでございます。  五十三年、これは平方メートル単位で申しますと、五十三年が三千八百万平方メートル、それから五十四年が三千六百万、それから五十五年二千八百万、五十六年二千四百万、五十七年二千三百万、五十八年二千二百万でございます。  これを率で見てみますと、五十四年の対前年増加率がマイナス五%、以下二一、一六、三、二というぐあいに減っております。  以上でございます。
  111. 松尾官平

    ○松尾官平君 今示されましたこの数量の主な輸入先の国の名前をお知らせ願います。
  112. 剣持宣揚

    説明員(剣持宣揚君) 輸入国はほぼ二十数カ国ございますけれども、そのうち主なものは、大きい順に申しますと、中国、韓国、台湾、イタリア、香港でございます。これらの五カ国で全体の約九割を占めているというのが通常の形態でございます。
  113. 松尾官平

    ○松尾官平君 相手先はわかりましたが、今度はそれを受けている輸入商社の数もわかると思うんで、おおよその数をお知らせ願えればありがたいと思います。
  114. 剣持宣揚

    説明員(剣持宣揚君) 絹織物を輸入している商社数については、私ども統計をとっていないために正確な把握はしておりませんが、大体、継続的に輸入している会社、これは四百社程度ではないかと、かように考えております。
  115. 松尾官平

    ○松尾官平君 絹織物を輸入するに当たってかつて化学繊維織物と偽って輸入した事件があったわけでありますが、最近そのような事件があったかどうか。あったらその件数と態様をおしらせ願いたいと思います。
  116. 剣持宣揚

    説明員(剣持宣揚君) お答えいたします。  昭和五十三年以降五十八年までの間において、絹織物を化学繊維織物というようなことで偽って輸入しようとした事犯は三件ございます。具体的な内容は、ごく大ざっぱに申しますと、一つは韓国産のつむぎを家具用ナイロンの下地と偽った例、あるいは中国産の絹織物をベッドリネンというようなことで偽ったものと、こういうものがございます。
  117. 松尾官平

    ○松尾官平君 大蔵省、もう結構です。  輸入の実態は今のような形なんでありますが、これらの数字は、今答弁がありましたように、実は面積で押さえているわけでありまして、輸入は対前年五%、二一%、一六%、三%、二%と毎年確かに減っているわけでありますが、実はこれを重量に換算しますと、必ずしもこういう形で減っていないというふうに見るわけでありますが、その点について農水省の方では同じような理解でしょうか。
  118. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) 私どもただいまの問題について、まあ通関統計の中に面積ベースあるいは重量ベースの統計があるようでございますのでこれを見ますと、五十四年、五十八年対比で、三千百九十四トンから減少しまして、五十八年、二千四百八十九トンと、重量で二二%減少が見られております。  しかし、その間面積ベースで見ますと、五十四年三千六百三十二万平米が、五十八年二千二百六十五万平米と、三八%の減少でございますので、全体の減少のテンポからしますと、面積ベースの方の減少の割には重量の方が減り方が少ないと。重量の方が二二%減、面積の方が三八%減でございまして、その結果としますと、一平米当たりの重量が五十四年が八十八グラム、五十八年百十グラム、こういう増加が見られている、こういうような傾向でございまして、これはなかなか、実態どういうことかという問題についてはいろいろ原因があろうかと思いますが、一つには広幅の裏地用の生地が表地用の小幅絹織物に変わった、そういうことで単位面積当たりの重量が増加した、こんなような原因があるのではなかろうかと考えております。
  119. 松尾官平

    ○松尾官平君 今局長答弁にありましたように、薄いものから厚いもの、裏から表へと輸入絹織物が変化してまいりました。それだけに、この価格も高いものに移ってきているわけであります。  ところで、この表地の問題でありますが、原産地表示について公正取引委員会の方で御指導を願っているわけでありますが、残念ながら私の調査によりますと、これが一向に守られていないということになるわけであります。公取では、この絹織物表示について昭和五十六年の六月に表記改正を行って、五十七年の一月一日からの実施を指導しているわけでありますが、どうも今申し上げましたように私から見れば守られていないというふうに思うわけでありますが、公取の御見解を伺いたいと思います。
  120. 黒田武

    説明員(黒田武君) お答えいたします。  ただいま先生からお話のありましたように、五十六年の六月に私どもの方で原産国に関する告示の改正を一部いたしまして、その後実は五十六年の十二月に関係輸入業者初め末端の小売団体の集まりの方々にこの告示の徹底を図るように要望しておりまして、その後いろいろとつむぎ初め絹織物につきまして問題が指摘されておりましたものですから、ことし六月には丹後の方の精練業者につきまして調査をしております。それから、その後ことしの七月に入りまして、先ほどの五十六年十二月に要望を出しました関係団体にその後の遵守状況がどうなっているかということで、一応アフターケアはやったところであります。
  121. 松尾官平

    ○松尾官平君 まあ今の御答弁のとおりであれば一応、私が指摘したのが六月ですから、その後まあ一生懸命やっているというふうにもとられるわけでありますが、今月の五日の新聞を見ますと、そういう動きに対して絹織物流通業界では、イメージ的には国産物がいい、あえて輸入物と表示する必要はないと、従来どおりの表示の仕方を貫く構えという新聞記事が出ているわけであります。これは、そのとおり業界が言ったかどうかは別としても、流れとしては私はこれが正確な表現だろうと思うわけであります。  公取が通達を出し、それを受けて通産がいろいろと業界を指導通達をしていることはレクチャーの段階でわかりました。わかりましたが、いろんな指導をしているについて何らの反省もなければこのようにしたという証拠も出てこない。通達を出しつ放しというのであれば、何のための公取なのか、何のための通産なのかと私は言わざるを得ないわけであります。  そういう点について、もう一遍公取と通産側の説明を聞きたいと思います。
  122. 黒田武

    説明員(黒田武君) はい。先生からもお指摘のとおりの事実のところがありますれば、私どもの方としては末端の小売段階のところでとりあえずその実態調査を一度やってみたいと考えております。
  123. 渡辺光夫

    説明員(渡辺光夫君) 輸入品の表示につきましては、先ほど公正取引委員会の方からお話がありましたような指導方針が出されておるわけでございますので、私どもの関係する業者、輸入業者から始まりまして流通業者、末端は小売業者まであるわけでございますが、その中でも特にこの表示問題に一番かかわりが深いと思われますのは、輸入した者とそれからそれを国内の流通に流します問屋さんと、こういうグループがございますので、こういうものにつきましては公正取引委員会指導の徹底につきまして再三周知徹底を図るよう指導しているところでございます。
  124. 松尾官平

    ○松尾官平君 各団体を指導しているとおっしゃいますけれども、ここに現物を持ってきました。ごらんください。(反物を示す)  お客さんはこの反物を見れば当然このマークを見ます。どこで織ったものか一言も書いてありません。これを全部ほぐしますと中に出てくるわけです。ここに「製織地香港」という判こがついてあるわけです。こういう表示で通達の趣旨が守られていると思いますか。もう一遍お答えください。
  125. 黒田武

    説明員(黒田武君) そういう巻き戻しましてしんの段階でないと初めてその原産国が一般消費者にわからないということであれば、私どもの方として不当表示問題として調査をしたいと思います。
  126. 松尾官平

    ○松尾官平君 というのであれば調査してみたいというのですか。現物を見せたでしょう。今度は韓国物を見せましょうか。今香港のやつを広げました。(反物を示す)これもほどいていくと最後に「製織地韓国」と出てくるんですよ。こういう現実があるのに、調査して指導を加えたいと思いますと。現物を私見せたのはことしの六月ですよ、あなたの前任者の課長に。それ調査している調査しているって、現物幾らでもあるんですよ。自生地だけかとお思いでしょうが、染め上がりでもそうです。これは後染めのやつです、小紋。ここのマーク、委員長見てください。何のマークか全然わかりません。指導や各組合の表示方法のマニュアルなんかを見ても、不滅インキまたは転写マークによりちゃんとやれと、消えないようにやれと書いてあるわけですよ。ところが、見たって福田先生見えないでしょう、どこで何をやったか。これを全部ほどくと最後に韓国製と出てくるんですよ。こういう例もあります。それからまだあります。こういうものなんかはどこまでどうしても出てきません、製織地がどこか。しかもこれは看板がいいわけですよね。「無形文化財超極鮫小紋伝統工芸京友禅染元」ですよ。こういう染め方をしておって肝心の製織地なり精練地の判このところには、製織地のところは空欄にしておいてそこへ「絹一〇〇%」という紙が張ってあるんです。これが流通の実態なんですよ、外国から入ってきている表地の。こういうものが絹織物の信用を傷つけあるいはまた純然たる国産の絹織物の売れ行きに悪い影響を及ぼしているということは明らかなわけです。ですから私は、もうこういうものを扱っている輸入業者には事前承認は与えない、こういうことはできませんか、通産省。
  127. 新関勝郎

    説明員(新関勝郎君) お答え申し上げます。  ただいま先生からいろいろ表示について現物を御指摘されながら御指摘があったわけでございますが、私どもといたしましても、今後こういう表示の問題に関しましては公取の通達が守られますように、公取等とも連絡をとりながらいろいろ指導をしていくということで徹底してまいりたいと思います。
  128. 松尾官平

    ○松尾官平君 何か今私が質問をしたから初めてわかりました、これから調べて対応をしますというような答弁に聞こえるのですが、通産省にも私はもう何ケ月か前に言ってありますよ、担当課に。こういう状況では困るじゃないかということを言ってある。それについてどのように研究し、どのように対応し、どのような措置をとろうとしているわけですか。もう少しはっきりと言ってください。
  129. 渡辺光夫

    説明員(渡辺光夫君) 絹織物につきましての表示問題、直接的には先ほどお話がございますように、公正取引委員会の一定の制度によりまして行われているわけでございますが、基本的な考え方といたしまして、輸入品については輸入品であるということが消費者に容易にわかるように表示をすると、こういう考え方でございますので、私どもといたしましても関係の業者に対しましてはそういう趣旨の徹底を図って努力しておるということは先ほど申し上げたとおりでございます。ただ、若干の現実問題だけ述べさせていただきますと、今輸入されておりますのはいわゆる生機で輸入されているものが多うございます。これを国内で精練いたしまして、その後、染めて流通段階に出てくるわけでございますが、したがいまして、一番大もとになりますのは精練の段階でこの織物がどこで製織されたものであるかということをきちっと印をつけるということが出発点になります。現実にこの印をつける義務がありますのは、輸入業者が自分で精練をして流通に出す場合は輸入業者、それから、国内の白生地問屋が輸入業者から生機で購入いたしまして、それを精練を委託する場合にはその白生地問屋さんと、こういうことになるかと思います。したがって、ここの出発点でまず正確な情報が表示されておる必要があると、こういうことでございますので、先生の御指摘のありました幾つかの例の中で表示がなかったものも指摘受けておりますが、表示するに当たっては反物の反末に表示しておるわけでございます。これが流通段階に入りまして、染問屋さんを通りまして末端の小売店まで流れてくるわけでございますが、その過程で実は反物がだんだん今先生がお示しになりましたような、いわゆる巻反の形に姿を変えてまいります。巻反そのものにつきましては流通業界いろんな扱いをしているようでございまして、必ずしも一様な巻き方ではないようでございますが、その巻反の過程でその表示が見えなくなるというふうなことであれば、当然そこで公取の指導によりますと、それぞれの業者が表示を確認された上、かつ消費者にわかるように表示をすると、こういうことでございますから、その段階でのさらに配慮を徹底していくと、こういうことが必要かと思います。
  130. 松尾官平

    ○松尾官平君 どうもこれは基本的には公取の責任だとか、いややっている業者は通産の指導下にあるんだとか言って、役所がお互いに縦割行政の最も悪いところを弁解されると、我々はやっぱり声を大きくしなければならなくなるわけですよ。その精練業者が基本だとおっしゃいますけれども、精練業者にも通達は出してあるわけでしょう、公取で。それがなかなか守られていない。通達を出しっ放しで、その後本当に末端の業者にわたって調査したのかどうかということになれば、現実に私が一週間かそこいらでこれだけの材料が集められるわけですよね。かつてつむぎが問題になったことがあります。韓国つむぎの場合はきちっとこれにもう織り込んであります。「草木染韓国製」ということが織り込んであるわけです。だから、品質に自信があればそういうことができるわけですよ。品質に自信がないから輸入物だということを隠して売っているわけですから。明らかにこれ隠したということですよね。見えないように、――先生、御婦人ですから御存じでしょうけれども、全然見えないように判こを押して、中に韓国製という判を押しているわけですから、悪質と言わざるを得ないでしょう。だったら公取も通産も連絡を取り合って、日本養蚕農家のために、世界の第一の着物需要国である日本の消費者を守るために、もっと頑張ってもいいと思うんですよ。やる方法はあると思う。だから、幸い輸入は事前承認制あるいは二国間協議でやっているわけですから、その段階できちっと規制できないか。こういうインチキ商売やるような業者には、もう輸入承認しないような方法をとるべきでないかとさえ言いたくなるわけです。  そして、公取、通産、一生懸命やっている。それを、何と言いますか、養蚕家を守るために農水省もその相談に入って、実効の上がる方法をとっていただきたいと思うわけですよ。今、養蚕家は泣いております。もう皆さん御存じでしょうけれども、農水省の生産費調査を見ても、数字を丸めて申し上げますとキロ三千五百円ですよ。それを二千円そこそこで政府が価格を決めてくださっている。それでも頑張っている。なぜか。桑を植えて養蚕をやるしかその農家の方々は立っていかないからですよ。しがみついてるんですよ、養蚕に。それが正当な方法ではなくて、こういうインチキ商売によって害されているとすれば、これは大きな問題だと思うんですよ。もっと真剣に公取も通産も、そしてまた養蚕農家を守るために農水省もこれに取り組んでいただきたい。このことがやがては日本の絹というもののよさが世間に認められ、また日本の生糸の需要が伸びることにもつながるし、あるいはまた外国産の、日本産に比べて品質のよくない織物の輸入にブレーキがかかってくるということにもつながると思うわけであります。そういう点から公取、通産、最後に農水の方から御答弁をお願いしたいと思います。
  131. 黒田武

    説明員(黒田武君) 先ほども答弁いたしましたように、私どもの方でまず、今の反物なんかが陳列されております末端段階をとりあえず調査させていただきたいと思っております。
  132. 渡辺光夫

    説明員(渡辺光夫君) 流通の実態につきまして、公正取引委員会とも十分相談しながら、努力したいと思います。
  133. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 養蚕農家を守る、これが農林水産省の立場でもございます。ただいまの輸入絹織物についての表示が全然見えないところにあったり、特にひどいのになりますと、まるでこれはペテンというような、だれが見てもそれだけ見れば、これは伝統産業というようなことで、日本のものに間違いないと思って、中身を見ると外国産であるというようなことになりますと、これは絹製品に対する消費者の選択を誤らせまして、ひいてはこれは国産の絹製品や生糸の需要減退にもつながりかねないことでもございます。したがいまして、農林水産省といたしましては、このことに重大関心を持っておりますので、今後とも必要に応じた適切な措置を講ずるように関係省庁に強く要請してまいります。
  134. 松尾官平

    ○松尾官平君 ただいま農水大臣から大変力強い御答弁をいただきまして、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いをいたします。  ただ、一つ若干ひっかかりましたのは公取の答弁です。調査をしてみますじゃ私ら困るわけでありまして、調査をした結果、通達の趣旨が十分徹底されるように、それなりの措置を講じていただきたい、この要望を最後に申し上げて終わりたいと思います。
  135. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) 午前の審査はこの程度として、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時十五分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十分開会
  136. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十七年度決算外二件を議題とし、農林水産省及び農林漁業金融公庫決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  137. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 質問をさせていただきます。私は、農林水産省補助金の中で水田利用再編対策に関する問題についていささかお伺いをいたします。  会計検査院の五十七年度の報告では、農林水産省補助金について不当と指摘されたものが十八事業あります。その中で、水田利用再編対策に関する不当事項が大変多く出ておるようでございますが、この事情について御説明いただきたいと思います。
  138. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) 水田利用再編対策関係につきましては、御指摘のございましたように不当事項について指摘がございまして、大変私ども遺憾に思っております。  これは特にこの事業が、御承知のように大変たくさんの、三百万戸に上りますような農家を相手にして実施をしております事業でございますし、またなかなか市町村関係者等大変多数の方に交付事務をお願いをしている、こういうようなこともございまして、なかなか私どもの努力の足りない点で、この適正な交付という面で残念ながら御指摘を受けるような事態になっております。  これにつきましては従来も、今後こういうことのないように実施しますとともに、御指摘のありました事項につきましては速やかにその是正措置を講じて交付金の返還等の措置を講じているわけでございます。  いずれにしましても、大変こういう水田利用再編対策という関係者の多い仕事の中で、なかなかこういうことを根絶するというかなくすことができない状態で推移しておりますことをまことに申しわけなく思っておりますが、これからもこの事業の趣旨の徹底、適正な交付につきましては一層私ども努力してまいりたい、かように考えております。
  139. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私が今回この問題を考えたのは、会議録等を拝見いたしますと、例年出ている問題、そしていわゆる不当事項というものが何か定着して、お墨つきを得たような、こういう委員会においてもなかなかいい御回答が得られないというようなことから、質問をする方もだんだん少なくなっていくのでなかろうかというふうに思ったりいたしますし、もう一つは、この水田利用再編対策というものが七年の経過を経て三期対策に入った。今これから後半に向けていろいろな試行錯誤をしながらも、当初の目的の成果を得ていかなければならないであろう時期に達していると私は思っております。それにしてはこの種の問題がなお残っているということで、あえてこの課題を取り扱いさせていただいたわけでございます。  例えば五十五年で、これも常に指摘されておりますところのいわゆる市街化区域の土地区画整理事業、この事業が行っている地区内の宅地造成の土地に転作奨励金がおりているというようなこと、これは言わなくてもわかるよというくらい当然の事実として、何か皆様が周知の事項として語られているわけですね。  それからまた、同じ指摘が、五十五年と同じように今回五十七年度の指摘の中でもあります。写真までついております。土地区画整理事業で水稲の作付等不可能な土地に、転作奨励金が交付されているというようなことは、石川県、島根県の例などでもはっきりいたしておるわけでございます。  また、預託水田の問題にいたしましても、これは五十五年度の決算検査報告書によりますれば、これは特記事項として盛り込まれていたことでございますが、今回の指摘の中にもほとんど転作に結びついていない例ばかりが出ているということで、これは大変私は問題であろうかというふうに思います。  それでさらにお尋ねしたいことは、同じような、同じ種類の不当事項というものが毎回指摘されてなおかつ改善されない理由、不当が行われているということではなくて、改善されない理由は何なんであろうかということをお考えになられたことがあるかどうかお尋ねいたします。
  140. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) 確かに御指摘のように、従来御指摘を受けております事項の中では、こういう土地区画事業施行済み地区とかあるいは農地転用許可が既になされておったとかいうような、非常に何というか関係者の注意の足りない点、そういうものが繰り返されているという点が非常に私どもも指導の徹底を欠いているまことに申しわけない点だというふうに考えております。  我々としましては、こういうような事態についてはこれはもうあくまでもこの事業のねらいというものが水田の作付可能な地帯、水稲の作付可能な水田についてこの交付金を交付するんだという趣旨、これはもう皆さんよく御承知いただいているとは思うんですけれども、まだまだその辺の後を絶たないということで、これは決して国の交付金を私するとか、そういう意図ではないとは思いますけれども、大変その辺の趣旨の徹底がまだこれだけ時間を重ねても十分でない、ここに一つの原因があるというように考えておりまして、こういう点についてはこれからさらに一層徹底すべき我々の課題であると、かように考えております。  またもう一つ、仕組みとしましていわゆる計画加算、団地加算のようにやや加算の要件のいわば判定と申しますか、そういう面が若干難しいということが起因になって、いわばやや仕組み上の問題として不当事項になるものが従来も多かったわけでございまして、この点につきましては第三期対策を仕組みます際、これは会計検査院の処置要求にも掲げられた事項でございますので、加算の要件をできるだけ実態に即し、また比較的判定のしやすいような、あるいは地元でもって転作を定着化されるという方向で消化可能なような方向にできるだけ改善を図っていくというようなことで、こういう関係不当事項の発生については仕組み上の問題として、これから従来のような加算要件の適用上の問題が出てこないように、こういう努力もさらに徹底を図るようにいたしてまいりたいというように考えております。
  141. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 先ほど私が申し上げました預託水田制度の問題の中では、今回の五十七年度の指摘の中で、預託水田についてその実態を調査したところ、五十五年度末における預託水田は全国で四万九千二ヘクタール、うち保全管理四万八千八百四十三ヘクタール、九九・七%となっておって、預託水田の転作等実施水田面積に占める割合は八・四。ところが、五十七年度末では預託水田五万九千四百十七ヘクタール、うち保全管理部分五万九千二百四十四ヘクタールと増加しており、ということがありまして、結局、進展しておらず、より悪化しているというような事態もあるわけですね。私はここのところを読んでおりまして、どのくらい真剣に取り組んでおられるんだろうかということをまず考えるわけでございます。そしてこの指摘が一向に改善されていかない理由は、会計検査院指摘をどのように受けとめられておられるかはわかりませんけれども、対症療法的な指摘されたことだけをとにかく処置していくという、対症療法的な対応だけに終始していて、日本農業全体の流れの中で将来展望を含めた対応というようなことがないのではないかというようなことを私は考えるわけでございますけれども、多額の国費を投じて、そしてなおかつ効果が上がらないということになりますと、これはいささか問題が重なり過ぎるのではなかろうかというふうに私は思うわけですけれども、この点いかがでございましょうか。
  142. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) 先ほどお答え申し上げました中で、もともとのこの制度の趣旨が徹底されてないような、適用対象でない水田を対象にするというようなタイプのもの、これは非常に基本的な認識の問題として、これは既に期間を重ねているわけでございますが、さらに改善をもっと厳しくやらなければいけない、こういう問題であるわけでございますが、御指摘のございました預託水田につきましては、これは一つは仕組み上の問題も絡んでいるわけでございますし、それから、私どもやっぱりこの形態の水田利用再編成の交付金については、本来やはり水田預託制度はどちらかと申しますとやや緊急避難的に設定された制度でもございまして、そういう意味でこの関係不当事項なり、あるいは今後の全体の面積なりがお話にございましたようになかなか減らないということでは、やはりこの問題の基本にもかかわってくるということで、第三期対策に際しましては若干この単価の引き下げ等を行いますとともに、特にこれは今度の他用途利用米への移行とか、そもそもやっぱり預託水田というのは本来望ましくないものであるという指導を相当強硬に県、市町村からもやっていただきまして、五十九年の第三期対策第一年度目につきましては、私どもの今持っております実施見込みでは全国で二万七千ヘクタールぐらいになっておりまして、その前年が五万四千ヘクタール前後でございますので、大体半分ぐらいということで、やはりこの預託水田問題については、そういう形で実質的にこの面積を縮小を図ることによって関連する不当措置なりあるいは不当事項なり、あるいはそもそもこの制度のそういう性格というものを認識した上で、極力少なくしてもらうという方向に一層努力してまいりたいというふうに考えております。
  143. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 今回のこの会計検査院指摘の中では、不当事項に対する指摘とあわせて、今もお話の中に出ておりましたけれども、効果の問題、効果が上がらないということ、十分に発揮し得ていないということ、このことがかなり強くうたわれているわけでありますけれども、効果という面でどのようにお考えになられるか。
  144. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) これはやはり水田利用再編対策の交付金の単価も含めまして、当初、発足時点から今までの徹底を図る期間におきましては、かなり水田の転作ということに伴う農家のいわば所得減を相当カバーするというような考え方を強く出しておったわけでございますが、これだけ年時を経まして、またその間いろいろ御指摘を受けたような好ましくない事態あるいは不当な事態も出たということに対応しまして、第三期対策を始めます時点では、例えば転作の定着化もかなり進んできたということもございまして、これからの問題として基本額を原則一律八千円に引き下げますとか、それから加算制度につきましてもいろいろ仕組みがやや複雑化すると同時に、本来のねらいを達していないということもございますので、転作定着化推進加算というような新しい仕組みに、できるだけ簡略化したような交付方法に持っていく。それからただいま申し上げました水田預託の奨励金単価の切り下げ、こういうようなこと、それからよく話題になる問題としましては飼料用の青刈り稲、この青刈りについてもなかなか実態がかなり実質的に問題のあるものもございますので、今年度の指導上も前年より大分減りました九千三百ヘクタール、約六割減のところまで抑制をしていくとか、こういうような運用上の指導も通じまして、できるだけ全体として効果を上げながらしかも財政負担としてもより少なくしていく、実質的に抑制をしていくということで効果を上げるような方向へ、第三期対策の発足に伴いまして、またこれからの第三期対策の実施の上でさらに努力してまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  145. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 運用上の改正というか、手直しをしながら効果を上げていきたいということなんだろうと思うのですけれども、それでは会計検査院指摘の中で改善策を要求されている一つの項目がございますね。これについて今お話の中にもいささか入ってまいりましたけれども、どのように措置されたか、御説明をお願いしたいと思います。
  146. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) いわゆる処置要求でございますが、五点ございまして、それぞれの項目について概略を申し上げますと、まず計画加算制度についてはこれは余り団地化には寄与していないということで、団地化加算のウエートを高めるような見直しが必要であるということで要求がございまして、これに対しましては基本額の一律十アール八千円引き下げと同時に、転作定着化推進加算という制度を設けまして、従来の計画加算でありますとか、地域振興作物加算は廃止しまして、また団地化加算についても一層の推進を図るということで、新加算制度の中で継続することにいたしたのが第一点でございます。  次に水田預託につきましてはこれを抑制するという方向の見直しを要求されておりまして、これについては保全管理の単価を十アール当たり一万三千円引き下げまして、全体としては二万二千円という一番低い水準にいたしたわけでございます。  このほか、預託期間について市街化区域等に認めていた特例六年、これを一律三年ということにいたしております。  なお、先ほど申し上げましたような他用途利用米等への移行の指導を通じまして、運用面で今年度約半分にこれを減らすというようなことにいたしておるわけでございます。  それから青刈り稲から他作物への転換ということも、これは従来青刈りは飼料、えさ用ということで特定作物扱いにしておりましたが、これを第三期の際に一般作物、単価の低い方へ移行させまして、同時に、他作物への移行ということで、先ほど申し上げましたような約六割減という九千三百ヘクタールぐらいまで減少さぜるような指導をいたしたわけでございます。  さらに市街化区域内での計画団地等の設定、これについて建設省の施策との整合性に配慮するということでございますので、これにつきましては、市街化区域内水田への加算制度の適用については、早期に市街化されることが確実なものは対象としないというような措置を講じておるわけでございます。  そのほか第五番目としまして、いろいろ大麦等の出荷率の低い原因、飼料作物の無償提供、家畜に対する不供与、そういうような原因を究明して栽培管理技術、流通販売の促進について指導体制を強化すべきであるということで、これは指導上の問題でございますが転作作物の利用の効率化、それから転作への所得控除ということで、今度は第三期におきましては、市町村水田利用再編計画、こういうものを策定しましてそれに沿いまして生産の組織化、利用度の向上等を指導する、こういう仕組みを採用したような次第でございます。  なお、いずれにしましても転作という問題につきましては、いわゆるこの奨励交付金だけではなくて、従来引き続き基盤整備とか一般的な生産対策、そういう中で指導を図りながら、先ほども申し上げましたように、できるだけ少ない財政負担で転作の定着化を促進していくということに努力するということにしておるわけでございます。
  147. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 後で会計検査院の方にその改善措置でよろしいかどうかお伺いいたしますけれども、私は、できるだけ少ない費用でというふうなことがたびたび出るわけですけれども、お金がかさむという問題よりも、やっぱり投じられているものが生きていかなければいけないというところが指摘されているんだと思うんですよね。  例えばこの七年間でしょうか、七年間で、この水田利用再編対策に投じたお金が一兆六千百六十億円というふうな巨額なお金、額に上っている、ないしは五十七年度だけで三千六百億というふうなものになっているわけですね。それが捨て金、死に金になってはならないのではないかということで、言っていることは、お金が出過ぎるという問題よりは、とにかくそれで目的に近づいていかなければならぬと、日本の農政のこれからの方向に向けてそれが寄与していく形で使われていかなければならないということを、これは皆さんだれでも思いますよ。今とにかく大変な財政の中なんですから、少しのお金も有効に生かしていくということ、それを私はきょう申し上げたくて、あえてこの項を選んだわけであります。どうしても生かしてほしいわけです。たくさん使うなよりは有効に生きた奨励金ないしは補助事業としてこれが動いていっていなければ、大変なことであろうかというふうに思います。そしてなお、今日本の農政についてはいろいろな面から論議がなされ、そして国民の関心も高いところでございます。ぜひにこういう問題について論議をいただき、打てる手は打っていただきたいというふうに思うわけでございます。  ところで、会計検査院でおみえになっていると思いますけれども、ただいまの農水省改善策についていかがなものでしょうか。
  148. 磯田晋

    参考人(磯田晋君) ただいま最後に先生から御指摘いただきましたことは、まさに会計検査院検査の観点そのものでございます。  ところで、この水田利用再編対策事業でございますが、御指摘のとおり、ここずっと不当事項指摘がございます。それから改善の処置要求を出したことも再三でございます。そういう意味で、私たちの検査の結果の中では非常に特筆すると申しますか、特異な事態であろうということで今回再度改善の処置要求をしたと、こういうことでございます。  処置要求の内容につきましては、御承知のとおり、事業の実施の効果をさまざまな視点からとらえたものでありまして、要するにこのような事態を全般を通観してみますと、実施の現状をこのままにしておけばこの事業の目的達成が困難であるということの基本認識から発したものであります。  これに対しまして、農林水産省は先ほど五項目の具体的なお話をされたわけでございますが、今回の処置というものを評価いたしますと、相当具体的であり、我々の要望にこたえていただいているのではないかというふうに評価いたします。したがいまして、今後はこの実施につきまして、転作が我が国の農産物の総合自給力の向上に真に役立つ、あわせて米の生産調整に役立つものになっていくかどうか、さらに注視していきたいというのが我々の現在の考え方でございます。
  149. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 よろしくお願いいたしたいと思います。  それで、私はこういう時期にこの問題を、私も農林水産委員の一人でございますので、やっぱり真剣に考えなければいけないと思いましたのは、本年前半で起きた米の需給問題等がいろいろございまして、そして転作に関するあるいは減反に関するいろいろな議論も出てまいりましたし、また備蓄に関する課題もいろいろ出てまいりました。そして今この水田利用再編対策というものが、その事業自体がもう一度考えられていいのではないかというようなテーマを抱えたのではないかというふうに私、これは私の見解でございますが持つわけでございます。けれども、やはり減反は進められますでしょうし、進めなければならないというふうに思いますけれども、そういう大所高所に立っての水田利用再編対策、この事業についてどういう見解をお持ちでしょうか。
  150. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) 現在の水田利用再編対策は十年間ということで、現在第三期に入っているわけでございますが、この全体の基礎にあります考え方が、やはり日本の水田の作付、潜在的な生産能力から申しますと、これを全部米をつくりますと実際の主食用の需要との間に大変大きなギャップがある。一方、そもそも日本の農業のねらいとしまして、やはり需要の動向に応じて効率的な生産をしていく、こういうことが基本的な使命でございますから、そういうことから考えますと、やはりそういう需要の動向に応じた農業生産の再編成を図るという意味では、当面水稲の作付可能な水田等につきまして水稲からほかの作物への転作を進める、こういうことがどうしても必要になると考えておりまして、現在はもちろんいわゆる第三期対策の状態で、五十九年から六十一年までの三年間の一つのフレームワークで実施をしているわけでございますが、なかなかこの基本的な需給の状態、それから需要の動向に応じた農業生産の再編というこの基本的な使命については、これから今後の問題としても日本農政の課題としてずっとかなり長期にわたって存在する目的ではなかろうか、こういうふうに考えておりますので、当面はあくまでも先ほど先生からお話も出ましたような、現在の需給あるいはこれから二、三年の需給を考えました転作規模等によって実施をしているわけでございますが、基本的な仕組み、水田利用再編対策の根本にあります政策課題については、かなりこれからも長期に続いていく、こういうようなものではなかろうかと考えております。
  151. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 大臣、これは五十七年の十月に行われました決算委員会で、当時の農林水産大臣であられました田澤大臣のお話の中に出てくるんですけれども、「私はこれからは水田利用再編対策というのは単に緊急避難的な扱いでは困りますと、これこそ日本農業の新しい姿をつくる基本なんですよと、非常に重要な補助金なんですから、有効に使って新しい農業をつくってくださいということを主張」していますということをこの決算委員会でお話しなさっております。にもかかわらず、この非常に意味のある、そして重要な政策につながっている補助金だということの趣旨が徹底していないために、なかなかこの不当行為というようなものが減らないし、効果あるいは目的に近づくということが薄いのではなかろうかというふうに思うわけですけれども、この点なぜなかなかこの勧告あるいは指摘が直っていかないのか、どうお考えでしょうか。
  152. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 転作奨励補助金について会計検査院から不当交付の指摘を受けるような事実が生じていること、先生が言われるように何回も生じている、まことに遺憾なことでございます。  この対策につきましては、実は農家戸数三百万戸と言われるほどございまして、また農家個々が事業主体であるというようなことがありまして、不当交付、これを根絶することが困難な面があるということもこれ否めないと思います。しかし、これはやはり何といっても国民の貴重な税金、これを使っているものでございますので、これは当然適正かつ厳格な交付を確保する必要がございます。今後とも趣旨の徹底を一層指導してまいりたい、また、先生言われましたこの意味というものもよく農家に徹底させて、ひとつやってまいりたいというぐあいに考えます。
  153. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 また次に会計検査院から厳しい指摘を受けないように、それからこの十年間の事業が終わったときに何も残っていなかったというようなことがないようにお願いしたいと思います。  では私、次の課題として健康食品の問題をいささかお伺いしたいと思います。  健康食品、健康食品とは言いますけれども、その定義すらまだ余りはっきりしていないのに、名前だけがはせているという感があるわけでございますが、農林水産省は来年度、六十年度に向けて五カ年計画で本格的な調査及び基準づくりというようなことにかかられると聞いておりますけれども、その辺のまず計画からお伺いします。
  154. 塚田実

    説明員(塚田実君) お答えいたします。  先生御案内のように、最近におきましては国民の健康志向の高まりなどを反映して、今日確かに定義はないわけでございますが、いわゆる健康食品は大きなブームを呼んでおります。その種類、内容はまさに極めて多種多様であると言わざるを得ません。これにかかりまして消費者の皆さんからはいろいろな苦情も来ておりますし、その内容も多岐にわたっております。  そこで、そういうような苦情の処理としての規制とかそういう面も、もちろん私どもなりに当省の立場からは関心を寄せざるを得ないわけでございますけれども、他方、このいわゆる健康食品の市場規模といいますのはもう既に数千億円に達しております。そういう中でなお今後とも成長が見込まれているということもまた事実であります。このような点にも私ども着目しておりまして、農林水産省としては、このように定着しつつあるこの部門については食品行政を幅広く推進するという立場から、これらのいわゆる健康食品についてJAS規格の制定なりその品質、成分等に関する情報提供などを通じまして、消費者の適正な商品選択に役立つように努力していきたい、そういう意味でJASの規格の制定についても取り組んでいきたい、そして最終的にはいわゆる健康食品の産業としての健全な育成についても必要な指導を行っていきたいと、こういうように考えております。
  155. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 今お話の中に出ておりましたけれども、この健康食品については他省庁も皆取り組みをいたしておるわけでございますけれども、農林水産省としてこの健康食品に取り組む基本姿勢が、この健康食品というものを認知した上で健全育成をしていくというのが、規制一本やりでやっている他省庁とはいささか違う点であろうかと思うんですけれども、この基本姿勢をもう一度確認さしておいていただきたいと思います。
  156. 塚田実

    説明員(塚田実君) 先ほどもお答えいたしましたように、確かに苦情なりそうした面について農林水産省として関心を持たざるを得ないわけでございますが、他方、これも申し上げましたように、一つの産業としての大きな規模を持つに至っているということ、そして、今後とも成長が見込まれるというようなことからいいますと、このいわゆる健康食品の産業としての健全な育成と、私ども所管しております食品行政の立場からこれの育成について必要な指導を行っていきたい、このように考えているわけであります。
  157. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 二点お伺いいたしますけれども、五十七年から油脂課でやっているニュータイプ食品の実態調査の中で、健康食品のものを少し扱われておられましたですね。これは三年計画でやるはずだったんですが、この活動とどう連動させていくのかということを一つ伺うのと、それから、先ほどもJAS云々の話が出ておりましたが、JAS化に向けては大変に私は大切なことであろうかと思いますけれども、むしろ遅きの感があるというところでございますが、これまでJAS化に取り組まなかった事情が何かあったのかどうなのか、この二点についてお伺いいたします。
  158. 塚田実

    説明員(塚田実君) まず第一点につきまして、ニュータイプ加工食品生産流通実態調査事業でございますが、この調査実施品目は、小麦胚芽油、いわゆるスポーツドリンク、あと、豆乳類でございます。それで私ども、こういう実態調査とそれから今後のJASの問題について絡まして検討していくわけでございますけれども、第二点の、そのJAS化の取り組みについての御質問でございますが、いわゆる健康食品に関するJAS規格といたしましては豆乳がございます。しかし、その後私ども、これは昭和五十六年度の秋にJAS規格品質表示基準の制定を行ったわけですが、その後も検討を続けておりまして、今後JAS規格制定予定の品目といたしましては、来月になると思いますけれども、大豆たんぱくの飲料、それから低脂肪マーガリン等を取り上げていきたいと思っております。  それで御案内のように、JAS規格をつくるという面におきましては、私ども、従来からの食品の商品としての普及度なり定着度等を勘案して、また消費者や関係事業者の意向等を踏まえながら逐次やっているわけでございますけれども、いわゆる健康食品というものにつきましては、御案内のように、近年急速に成長してきた分野でありますし、また内容、成分等が極めて多岐にわたっている。それで、正直のところその品質評価が非常に難しいという面もあります。また、製品のライフサイクルの極めて短いもの、あっという間に消えていくようなものもあります。まあそういうようなことがありまして、なかなかJAS規格が定めにくい事情にあることも事実でございます。
  159. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 厚生省でお見えになっていると思うんでございますが、四月一日から機構改革によって食品保健課ができましたね。その中に健康食品対策室を設けられましたけれども、この健康食品対策室ではどんなことをやっていくんでしょうか。
  160. 玉木武

    説明員(玉木武君) お答えいたします。  御案内のように、国民の健康志向意識の高まりに伴いまして、現在多種多様な健康食品が販売されているわけでございますが、これらの健康食品の中には、栄養成分等に関して化学的にも十分に解明されていない分野のものが見られますし、また、その多くの健康食品につきましては、事業者から一方的に情報が提供されるのみでございまして、国民が健康食品を適切に選択し利用していく上で混乱が生じている場合も少なくないと我々は考えております。そのために、新設されました健康食品対策室におきましては、健康食品についての医学的、栄養学的観点から、栄養成分または用途に関する調査研究や情報収集を行いまして、国民が健康食品を適切に選択して利用ができるように、知識の普及、啓発に努めてまいりたい、このような目的で室を新設したわけでございます。
  161. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 厚生省では、四十六年通達とか五十二年のクロレラ基準づくり、あるいは五十七年の新開発食品安全性評価研究会ですか、そうですね、研究会等、健康食品の問題については先んじておられる感があるわけでございますけれども、先ごろ経済企画庁が調査なさいました健康食品総合調査、この中で薬事法に触れる商品名あるいは事例というようなことが大変目立つと、景表法と薬事法に触れる件数が一番多かったというような報告が出ているわけですけれども、その事例等を少し御紹介いただければと思いますが。
  162. 中井一士

    説明員(中井一士君) 業務局の立場からお答えいたしますが、医薬品に該当するにもかかわらず食品もしくは健康食品という名称で販売されているケースが幾つかあるわけでございますが、これらのケースについて私ども薬事法に違反する、すなわち薬事法の手続をとらないで医薬品を製造し販売しているという格好で、いろいろ監視をしておるわけでございますが、この五十八年一年間にこういう観点から私ども発見いたしました違反品目は二百五十六品目でございます。先ほど来御指摘のありますように、近年健康食品ブームということで、この薬事法に違反する、すなわち食品という名称であるけれども医薬品に該当するものが、非常に多くこういう違反の形であらわれておるというのは御指摘のとおりでございます。  そこで、今御質問ございましたどういう事例があるかということでございますが、問題になりましたこの一、二カ月の間新聞報道になったケースを御参考までに御紹介いたしますと、例えばこの前福岡で発見されたケースでございますが、ダイエット食品という名目で売られておったものの中に、フロセミドというこれは薬としても非常に危険な薬でございますが、それがその中に含有されておって、それを服用いたしますとおしっこが強烈に出る、それに伴って血圧が急激に下がる、非常に身体に危険を及ぼす事例でございますが、これが非常に大々的に販売されておったというのがごく最近の事例でございますし、またこれは十月に入って警視庁が摘発した事件でございますけれども、ハーバルティー、これはアメリカで野生じておる何かムラサキツメクサというものの根っこを葉っぱのように細かく刻んでそれをお茶のようにして飲むとがんにも効く、まあ何でも効くと、こういうようなことで、この一年ぐらいの間に十数億の利益を上げたというケースがあったわけでございますが、これも本来何らその効果がないと言われておるものでございますけれども、これはがんに効くといういわゆる薬として販売しておったということで、これも薬事法違反の摘発を受けておるところでございます。  それから、まあちょっと古くなりますが、私ども直接担当いたしました中に、いわゆるパナール紀源素という大きな事件がございまして、これはどういうものかといいますと、宮城県の何か温泉場でとれる岩石を水につけまして、その水を乳糖の中に何か垂らしてそれを乾燥して販売した、これも何億という物すごい利益を上げたケースでございますが、これもがんに効く、高血圧に効く、何にいい何にいいという、いわば一種の催眠術商法みたいな格好で大々的に売って、大きな社会問題になったというケースでございますが、このケースについては、私どもはたまたまその製造業者が医薬部外品と化粧品の許可を持っておったということもありまして、薬事法違反で三十日間の業務停止を行ったということでございます。  ちょっと事例を御紹介いたしました。
  163. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 経済企画庁、お見えになっておられますでしょうか。  このたび大変いい調査をおまとめいただいて参考にさせていただいているわけですけれども、ただ、これ部数がないそうで借りているんです。ありましたら、一冊下さい。  それで、大変いい調査をおまとめになられたんですけれども、これは今後どんな形でお使いになっていくんですか。
  164. 里田武臣

    説明員里田武臣君) 資料は早速先生の方にお届けさせていただきます。  私ども消費者保護という視点から行政に当たっておりまして、この調査関係省庁の御協力を得まして、ことしの四月公表さしていただいたものでございますけれども、御案内のとおり、先ほど幾つか質問等で、あるいは応答でお話に出ておりましたように、効用の問題であるとか、あるいは広告の面というようなもので一部にいろいろ問題があるというのがわかりましたし、それから安全性の面につきましても幾つかの問題があるということがわかったわけでございます。ただ、このほかに本調査では特に対象にしてございませんけれども、販売方法でも幾つか問題がございまして、特に訪問販売とかでいろいろトラブルがあるということは国民生活センターなんかに寄せられているわけでございます。  ただ、この健康食品につきましては、農水省厚生省初めとして、あと公正取引委員会、警察庁、それから通産省というようなことで多岐にわたるものでございますから、私どもとしましては消費者行政担当課長会議あるいは食品行政連絡会というようなものがございまして、そういうところで関係の省庁の方々と連携をとりながら、それぞれの省庁で御担当の部分について推進していただくということでございまして、したがって、私どもできるだけ消費者被害が起きないように努めてまいりたいと思っているわけでございます。ただ、私どもとしましても国民生活センターを通じまして、パンフレット等をつくりまして積極的に消費者にそういう被害に遭わないように啓発を行っているというところでございます。
  165. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 公正取引委員会、お見えになっておられますか。  公正取引委員会の中の景品表示法違反事件関係事務処理細則ですね。これはどんなふうに動いておりますんですか。
  166. 黒田武

    説明員(黒田武君) お答えいたします。  実は先ほどから関係省庁からのお答えにありましたように、私どもの方でも、最近健康食品につきましていろいろと高齢化ないしは消費者ニーズの多様化に伴いまして、各種の食品が販売されることに伴いまして、健康食品についても特に効能効果につきまして不当表示事件が多くなってきておりますので、これに対処し、特に効率的に処理するということで、ことしの五月に不当表示に関する調査基準、それから調査方法等を定めました、今先生おっしゃいました景品表示法違反事件関係事務処理細則というものを定めております。そして、現在のところこれにのっとり、寄せられております健康食品に関する不当な効能効果の表示について対処しているところでございます。
  167. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 先ほど経企庁の方からもお話がありましたように、私もこの健康食品の苦情等は長年聞かされてまいりまして、今一番エスカレートしてきて問題になっているのは、商品そのものの問題よりも売られ方の問題だということで、末端の消費者相談あるいは苦情相談に当たっている人たちが大変困っている例として、お話しいたしておきましたようなチラシによる体験談的な広告というのが一つあるわけですね。これは大変によく効きます、そして私もそれを食べていたらこんなに美しくなりましたといって、その美しい人の写真も載せて、そして広告、チラシ的に効能効果が全部その中に入ってしまっているわけです、その人の体験談の中に。これを景表法でどういうふうに扱うのかという問題が一つあります。それからもう一つは、呼び込みパーティー方式、これも大変問題が多いようで、ちょっとお寄りになりませんかということで、呼び込みパーティー方式の中で行われる体験談的宣伝。それからまたもう一つは、先ほど経企庁の方からも出ましたように、訪問販売によるセールストークの問題。この三つあたりが売られ方の問題として最近処理に当たっている相談員の人たちが困っている課題なんです。これは公正取引委員会の範疇に入る仕事かどうかわかりませんけれども、この辺のところちょっとお願いします。
  168. 黒田武

    説明員(黒田武君) それでは第一点目の方の体験談を中心にした広告に関して、公正取引委員会で主として景品表示法でどう対処しているかということをお答えしますと、まず景品表示法では、商品の品質につきまして実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるような表示を実は私ども取り締まっておるわけでございます。そうしますと、その際我々が健康食品につきまして効能効果の内容についてどういうのを不当表示にするかといいますと、目下のところ、先ほど申しましたあの事務処理基準でいきますと、合理的根拠に基づかないものを我々は一応不当表示の疑いありとしておるわけです。その中で、実は架空の体験談である等事実に反して表示をしているようなものとか、それから極めて少数の成功例などを引っ張りまして非常に自分に都合のいいように表示している、こういうものについては私どもは不当表示で対処しておるわけでございます。  それから二点目及び三点目、ちょっとあわせてお答えさしていただきますと、呼び込み販売とかセールストークにつきましても、これは先ほどから言いましたように、景品表示法では一般消費者に触れる段階で誤認される表示を取り締まっておるわけでございます。そうしますと、何分表示といたしまして印刷物とかコピーで残っておる表示でありますと景品表示法でも、非常に違反事件に対処をしやすいわけであります。ところが、個々のセールスマンあたりが口頭による説明といいますか、そういうもので行われておるときには、非常に私どもの方としては違反事件の摘発というのは難しい面を抱えておるということを御理解していただきたいと思っております。
  169. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 ありがとうございました。  では、私がきょうこの健康食品の問題を取り上げた理由は、実はちまたでいろいろそういう問題があるので、ついででいろいろお伺いをしたわけでございますけれども、決算委員会の中で私がこれを問題にして取り上げた理由は、ここのところ、五十七年以降でしょうか、みんな頭を並べてこの健康食品の問題に取り組み始めてくださったということを問題にいたしました。各省庁がそれぞれの立場で健康食品を取り扱ってくださることは私は大変好ましく思います。それぞれの予算もあろうかと思います。けれども、この中でその各省庁が持つ研究、調査、あるいはその資料、データというようなものをお互いにどんなふうに生かしていくのか。先ほど食品問題連絡会ですか、経企庁の方からお話がありましたけれども、とかく縦割りが強調されがちな我が国の行政の間で、一斉にこの健康食品の問題を取り上げてくださったその効果を、さらに効果あらしめるために消費者保護につながる施策としてどこがイニシアチブをとって、そしてこれを太いパイプにしていただけるのか。それぞれの予算が、事業が倍加して消費者保護につながっていくためには、食品問題の元締めであるところの農林水産省がその元締めをするのか、あるいは経済企画庁、そこがしていただくのか。この辺の問題にお答えいただけますでしょうか。
  170. 塚田実

    説明員(塚田実君) いわゆる健康食品問題について農林水産省の立場から申し上げますと、私どもは食品産業全般について所管する官庁でございますが、他方、食品問題、同時に食品衛生法上の問題、厚生省の所管に係る問題、いろいろございます。それから、消費者保護という立場からはまた別の見方もあろうと思いますが、食品産業の育成という見地から見ますと、やはり食品衛生法上の立場にも十分配慮しなければいけませんし、そういう意味で私ども産業としての角度からこれに取り組んでまいるつもりでございますが、もちろんその場合においても、関係省庁と緊密な連絡をとってやっていくこととしております。今後ともそうしていきたいと、このように考えております。
  171. 里田武臣

    説明員里田武臣君) 私どもは消費者行政の総合調整ということが一応役割として担わされておりますものでございますから、私ども日ごろ考えておりますのは、産業の健全な育成というのは消費者の利益の保護と全然背反するものではございませんで、やはり消費者の利益を確保することによって初めて産業の健全な発展ということがあるというぐあいに、かねがね常に思っております。そういう意味で、産業の育成ということと消費者保護というのは基本的に何ら矛盾するものではないと思っておりますので、農水省初め関係省庁と御協力いただきまして、消費者保護を推進してまいりたいというように考えております。
  172. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 最後に大臣にお尋ねいたします。  今局長が大変決意を述べていただいたわけですけれども、健康食品の問題については、実は私どもの認識では、農林水産省の取り組みが一番おくれているというふうに思っています。それで、来年度から新しい事業を五カ年計画でスタートなさるわけですけれども、まだ予算がとれてないわけですね。その予算をしっかりとっていただいて、そして何といっても私どもは食品問題は農水省がかなめであろうというふうに思っておりますので、この問題についてしっかり取り組んでいただきたいわけですが、その点いかがでしょうか。
  173. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) まあJASにつきまして国会議員の中でも一番詳しいと言われる刈田先生に私が答弁するというのは、まさに釈迦に説法でございましょうけれども、農林水産省としての健康食品に対する基本姿勢というものにつきまして申し上げます。  国民の健康志向の高まり等を背景としまして、今日いわゆる健康食品として極めて多種多様なものが出回っておりますが、その一部には品質表示などの面で適正を欠いたもの、これも数多く見受けられます。このために、農林水産省としては、健康食品についてJAS制度の適切な運用と、成分また品質等に係る情報提供システム整備等を通じまして、消費者の適切な商品選択に資してまいる考えであり、今後とも関係省庁との緊密な連携のもとに、消費者の保護と産業の健全な育成に資してまいるつもりでございます。特に、来年度からは農林水産省としても予算を獲得いたしまして、これに当たってまいるつもりでございます。
  174. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 食糧庁の方に問題を用意いたしましたけれども、また機会を得てさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  175. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 まず初めに、九月の十九日一沖縄のキャンプ・ハンセンにおいて行われたアメリカ海兵隊の核・非核両用の最新鋭原子砲、M198型百五十五ミリりゅう弾砲による実弾演習の際に、実弾が金武町伊芸区の水源涵養林を直撃をした事故に関して幾つかお尋ねをします。  まず林野庁長官、御承知のように沖縄は非常に水が乏しい地域と言われているわけでありますが、沖縄における水源涵養林の役割についてどのようなお考えですか。
  176. 角道謙一

    説明員角道謙一君) 今御指摘のように、沖縄につきましては、特に生活用水等につきましても非常に重要でございますし、森林が特に北部の方に偏っておりますけれども、こういう地域が特に水源涵養上非常に大きな森林は機能を持っているということもございまして、私ども水源涵養についてはいろいろ努力をいたしているということでございます。特に先ほど御指摘のございましたキャンプ・ハンセン演習地域内には集水面積約百八十ヘクタール程度の俗に言う水源涵養林があるということもございまして、これらの水源涵養林自体はやはり住民の方々にとっては非常に重要なも  のであろうと考えております。
  177. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで、今回の実弾演習が実施されるに当たりまして、県下の平和諸団体を初め、多くの沖縄県民は、これはアメリカの限定核戦争を想定をしたものであり、沖縄の核基地化を図るものだとして演習の中止を強く要求をしておりました。また、地元の町長も水源涵養林には撃ち込まないでほしいと米軍に申し入れ、米軍側も演習被害には十分配慮すると約束をしておったにもかかわらず、いわば沖縄の命の源ともいうべき水源涵養林を実弾が直撃をしたわけであります。沖縄県民は当然のこと、住民の命そのものが脅かされるとして怒りの声を上げています。水源涵養林を守るべき責任にある農林大臣として、今回の事故をどのように受けとめられておられるのか。また、事故を契機に改めて沖縄の水源涵養林を保護するため今後特別な方策をとる考えがあるかどうか。そのために関係省庁と話し合う意思があるかどうか。大臣お尋ねをいたします。
  178. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 沖縄の森林が水源涵養上特に重要であること、これは十分認識いたしております。今おっしゃられましたように、関係省庁よく連絡をとりながら対応していきたいというぐあいに考えます。
  179. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 次に、防衛施設庁にお尋ねをします。  まず、今回の演習の規模、内容及び事故の原因と被害実態、この点についてどのように把握をされていますか。
  180. 近藤孝治

    説明員(近藤孝治君) 去る九月十九日のキャンプ・ハンセン内の県道一〇四号越え射撃におきまして、同県道東側の砲座三カ所から百五十五ミリりゅう弾砲九門を使用しまして二百五発の実弾を発射いたしております。米軍に対しましてはかねてキャンプ・ハンセンの中に地域住民の生活に非常に大事な水源涵養林があるので、十分に留意して訓練するようにということを申し上げておりまして、この訓練の前にも厳重に申し入れたわけでございますが、結果としましてはいわゆる水源涵養林の中に米軍の調査では数発、弾が落下したということでございます。被害の実態については現在調査中でございますが、私どもは米軍に対しまして重ねていわゆる水源涵養林の重要性について十分にお話をしますとともに、厳重な注意を喚起したところであります。
  181. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 今、説明がありましたように、九門を使い二百五発撃った。これはいわば沖縄復帰後の最大規模の演習だというふうに言われています。  同時に、冒頭指摘をしましたように、最新鋭の核・非核両用の原子砲でありますから、核戦争を想定をしたそういう演習だということで沖縄の県民は強く反対をしてきた、その危惧をした水源涵養林に弾が撃ち込まれたと、こういう事態になってきているということでありますが、今、米軍の調査では数発と言っていると言うんですが、我々共産党や現地の平和諸団体が当日観測をしておったそれによりますと、二十六発が着弾地域から外れて、このうち二十発が涵養林に撃ち込まれたということを目撃をしているわけであります。ここにその写真の一部がありますが、委員長並びに大臣の方にひとつごらんを願ったらというふうに思いますが、(資料を示す)そこで我が党の瀬長衆議院議員が先日、二十六日外務省に申し入れた際に、山下審議官も二十発ぐらい撃ち込まれたと、こういうふうにみずからおっしゃっているんでありますから、実際は一体どういう様相だったのかと、こういう点について今までの段階での調査というのは極めて不十分。ですから、何よりもまず事実関係と被害の実態を早急に明らかにする責任が政府にはあるというふうに思うんでありますが、この点ひとつ厳重な調査を施設庁お願いをしたい。どうですか。
  182. 近藤孝治

    説明員(近藤孝治君) このいわゆる水源涵養林に与えた被害の実態につきましては、那覇防衛施設局の職員を現地に派遣する等、今被害状況の把握に努めておりますが、十分な調査をいたしたいというように存じております。
  183. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 今回の事故について、直後の段階では米軍はもちろん施設庁もなかなか事実を認めようとしなかったんでありますが、いよいよ隠しおおせないと、こういう段階で米軍もそれを認めるということに至っているんですが、日本政府として米軍に抗議をしたのかどうか、そして今後の防止措置についてどのような対応をしているのか、施設庁どうですか。
  184. 近藤孝治

    説明員(近藤孝治君) 当日の訓練に際しましては防衛施設庁の職員も現地に行っておりました。地元の方からもいわゆる水源涵養林に砲弾が落下したのではないかという話も聞いておりますし、防衛施設庁の職員もその疑いがあるというように思いましたが、まず訓練を実施しました米側の方に問い合わせる必要ございますので、米側の方に問い合わせをした次第でございますが、米側の方も直ちにその調査の結果が判明できませんで、米側の方からその事実を認めた回答はかなり遅くなって出てまいりました。そこで、米側の事実を認める回答をいただいた直後に在日米軍指令部に対しまして、いわゆる水源涵養林の住民生活における重要性にかんがみ、前々から申しておりますが、重ねてそういうことがないように十分配慮してもらいたいというように注意を喚起いたしました。  米側におきましても、従前からよくその重要性については承知しておりまして、十分留意しながら訓練をいたしたわけでありますけれども、たまたまそういうことが起こりましたので、米軍としても、今後さらに訓練に従事する部隊の要員等に対して、そういう水源涵養林の重要性等、それからそういうところに弾を撃ち込むことのないよう十分留意するように周知徹底を図るということを申しておりますが、さらに今回そういう状況に至った原因は、訓練をするに当たりまして標的の位置を設定しまして、その設定された位置に砲撃をするわけでありますが、その標的を設定する位置がいわゆる水源滋養林に近過ぎたためにそういう事態が起こったと考えられるので、今後は標的の設定位置をいわゆる水源涵養林の地区からできるだけ離して行うように措置するという回答でありました。
  185. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 今の説明でも、今後こういうことが起きないように米軍に注意を喚起したと、標的設定の位置をできるだけ遠ざけるように要望をしたということでありますが、この標的設定というのは何も今始まったことではない、従前からやっている問題です。ですから、その程度の対応で果たして今後こういうことが二度と起こらない万全な再発防止策になり得るかどうかということについては、とてもそういうことにはならぬのではないかというふうに私としては思うわけです。  そこで、この涵養林には撃ち込まないという、以前から米軍との間の話をやってきているということでありますが、事実、昭和五十年十二月の十八日の衆議院の沖特委員会で我が党の正森議員の質問に対して、当時の施設庁銅崎施設部長は「そこに撃ち込まないようにしてくれ、アメリカ側はそういう措置をとるという約束をしております。」と答弁をしています。そして、五十五年の二月、米軍、那覇施設局、沖縄県、この三者協議で涵養林に撃たないことを約束をしたというふうに発表されているわけでありますが、この涵養林に撃ち込まないという米軍との約束なるものはどういうものか、きちっとした文書によってそういう約束が交わされているんでしょうか。
  186. 近藤孝治

    説明員(近藤孝治君) 昭和五十五年二月に開設されました三者連絡協議会におきまして、いわゆる伊芸の水源涵養林の問題が話し合われたことは承知いたしております。米軍はこの涵養林の重要性につきましては十分に承知をしておるわけでございますが、日本側からはさらにこれについて十分に配慮するよう申し入れをいたしたわけでございます。これに対しまして米軍の方は、重要性については十分理解しておると、それに配意をして行うということでありました。これは文書のような取り決めではございませんで、三者連絡会議の席で日本側からそういうお話しをし、米軍からそのような話があったということでございます。
  187. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 その五十五年の三者協議による取り決めというのは文書ではないと、今回のこういう事件が起こって、今後同じようなことが起こらないよう重ねて主張はしているんだけれども、文書でひとつその点をきちっとしようということを日本側から提起をしているわけでもないと、こういうことでありますから、今後同じような事故が再び起こるという危険性は十分に考えられるわけであります。現に、九月の二十八日に衆議院の我が党の瀬長議員、柴田議員両名がアメリカ大使館に抗議に行った際も、アメリカ側は今後絶対に撃ち込まないということは約束はできないと、こういうふうになお言っているわけですね。ですから、こうした点で五十五年の三者協議の約束なるもの、これについてアメリカ側と日本側とでの理解の食い違い、考え方の食い違いがあるんじゃないですか。
  188. 近藤孝治

    説明員(近藤孝治君) 米側は地位協定によりまして、施設及び区域内で作業等をするときには、周辺の公共の安全性に妥当な考慮を払って行わなければならないという規定がございまして、周辺住民の生活に重要な影響を及ぼすような行為はしないよう、常に配意しておるわけでございますが、特にこの伊芸の水源涵養林の問題につきましては施設、区域の中にそういうものがございますので、米軍に対して日本側の趣旨を十分申し入れまして、米側としてもそれを十分理解しておるというように申しております。そういったものでございます。
  189. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いずれにしても、今後この種同じ事故を再び絶対に起こさない根本策としては、これは演習を中止をするということ、基地を取り払うということ、これが一番の根本策であるということは明瞭でありまして、私としてはこうした主張を今後とも一層強めていくというものでありますが、さしあたって涵養林には撃ち込まないという米軍との約束について、いわゆる先ほど来説明があるような相互信頼の精神でいく、向こうも、アメリカの方も理解をしているといういわゆる紳士協定的なそういうものではなくて、もっと厳重に守られる、実効性のあるもの、きちんとした文書を取り交わすと、そういう方向にこれを機会に、今回の事件、これを機会にそういう方向にひとつ一歩進めるということを、当然考えられてしかるべきじゃないかというふうに思うんですが、その点施設庁の考えはどうでしょう。
  190. 近藤孝治

    説明員(近藤孝治君) 米軍に提供をしておる施設、区域といいますものは地位協定上定められた要件がございますので、米軍に対してはその要件を国際義務の上からいっても認める必要がございます。そこで、米軍に対しましては先ほど来繰り返しておりますように、水源涵養林の重要性を十分にお話しをし、米軍もそれについて十分に理解して部隊、要員等への周知徹底、その他いろいろな対応を講じてそのようなことが起こらないよう最善の努力をすると申しておりますので、私どもは今のところそれ以上のことをいたす考えはございません。
  191. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 地位協定のことをしきりに言われますけれども、この地位協定の第三条第三項「合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」というふうに書いているわけでありますから、今まさに問題になっておる沖縄県民の命にかかわる水源涵養林を、これを保全をするというこの問題について、そのことが確実に全うされるような方策を日本側から主張していく、その権利はあるわけだし、そのことに対して誠実にアメリカ側もこたえてもらわなくちゃならぬという、こういう地位協定に照らしたってそういうことになると思うんですよ。それを、何か極めて屈辱的とも言えるような、そういう受け身でしか物が考えられないという、これは一体どうしたことかというふうに言わざるを得ないわけですね。ですから私は重ねて申したいと思うんですけれども、今まで相互に理解をし合っていたはずだと、こう言ってきたんですけれども、今回、はしなくもこういうことが起こっているというこの現実の上に立って、従来の継続としての約束程度のことでは県民のそういう命の水が守れないということから、それを一歩進めて、そういう涵養林には、水源涵養林には撃ち込まないということを、もっとひとつきちっとした形で取り決めを行う、そういうことをひとつやるかどうかということについて検討に上せると、まず。今直ちにひとつそういうことをやりますというふうに明言ができないんであれば、そういうことをひとつ検討に上せるということは返事できるんじゃないですか。どうですか。
  192. 近藤孝治

    説明員(近藤孝治君) この水源涵養林へ砲弾が撃ち込まれることのないようにいたす一つの具体的な措置としましては、かつてこの涵養林の地区を示す標柱のようなものを立てまして、そこでその地域をはっきりさせるというようなことをいたしたわけでございますが、やはり撃つ地点によってその標柱が必ずしも明確に認識できない場合もあるようでございまして、今回このようなことが起こったわけでございますが、そこで米軍の方でもそういう認識をするための具体的な措置といたしまして、その地域を示すことができるような高い標識四本を水源涵養林、いわゆる水源涵養林沿いに設置をしておるということを私ども聞きました。米軍もそのようにできるだけの努力をいたしておるわけでございますので、私どもはそういう米軍の今後の対応、最善の配慮、そういうものを見守っていきたいというように存じております。
  193. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 どうも今までの答弁では、今後同じような事故が二度と起きないとこういう保証にはおよそならぬという、そういう心配を強く抱かざるを得ないわけですね。  そこで大臣、この涵養林をどうやってひとつ保全をするかというこの問題については、責任ある大臣としては農水大臣、そこの責任になろうかと思いますけれども、きょう施設庁側が、政府委員クラスが必ず出てきてくれということで繰り返し言っておったんですけれども、何か公務出張中だとかなんとかということで、きょうは調整官の人しか出てこないと。こういう姿でなかなか責任ある答弁がそういう位置ではできぬという、そういうこともあるのかもしれません。この席には国務大臣として御出席をいただいておるわけでありますけれども、一遍農水大臣の側から、他の関係をする関係省庁の大臣に対して、この問題をどうしたらうまくやれるかという方策、方向についてひとつ相談を、そこらの関係省庁とひとつやってほしいということを強く求めたいと思うんですがどうでしょうか。
  194. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) これは防衛施設庁、また外務省、これらと関係することでございますし、私から呼びかけてどうという、外務大臣また防衛庁長官等にそこまでのことということよりも前に、まず実務者でひとついろいろ、関係省庁でいろいろ協議していただくというぐあいにしたいと思います。
  195. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 その、まず手始めに実務者ということでもそれは別にいとわぬわけですけれども、とにかく県民の期待にこたえるべく、そういう命の水を守るために関係省庁で協議をする、ひとつそのことを大臣としてプッシュをしていただくということをぜひお願いをしたい、よろしいですか。
  196. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) よく実務者同士で協議させます。
  197. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 この問題に関連して、もう一つ大臣にお尋ねをしておきたいんでありますが、四月の農林水産委員会で我が党の下田議員が質問をしたわけなんでありますが、沖縄の北部訓練場の水源涵養林の保安林指定の問題です。大臣として目下勉強中なので、勉強の結果を見てできるだけのことはしたい、こういうふうに答えられて以来、既に約半年ぐらいたったわけであります。この北部訓練場は、御存じのとおり、合衆国側は「本施設及び区域内にある指定された水源涵養林並びに指定された特別保護鳥及びその生息地に対し損害を与えないよう予防措置を」とるという、いわゆる五・一五メモというものがあります。この点について五十六年四月九日の内閣委員会での、これも我が党の瀬長議員が質問をしまして、施設庁側は涵養林を保安林として指定することに、新たにですよ、なれば、そのことに沿って五・一五メモの合意内容をアメリカ側も遵守をするということになりますというふうに答えている。まず施設庁、この瀬長議員に対する答弁、この見解は今も変わりありませんね。
  198. 近藤孝治

    説明員(近藤孝治君) 日米合同委員会の合意事項については、米軍もその合意を遵守していろいろと行動する義務がございます。私どもも合同委員会の合意は遵守していかなければならないと思います。そういう意味では変わっておりません。
  199. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そうしますと、前段キャンプ・ハンセンの問題の、この涵養林をいろいろ問題にしてきました。それからこの北部地域のこの問題もありますけれども、北部地域は今は実弾演習はやらぬということになっておりますけれども、しかし、米側がつとに実弾演習はあの地域でもやりたいという、そういう希望を持っているということはもう自明の問題と。そうすると、そういう米軍の演習によってこの涵養林に撃ち込まれる、こういうようなことがなくなるような方策としては、そういう涵養林地域を含む地域を保安林として指定をすると。そうしたら、そのことに基づいて米側は五・一五メモ精神で対処しますとこう言っているんですから、したがって保安林が守れると、こういうことになる。  保安林指定は農林水産大臣の判断で結局やることだと。そして、ことしの春の農林水産委員会の質問で、以来半年たってきた。よく勉強しますとこうなっておるんですが、現段階どこまで勉強が進んで、大体どういう方向でやってもらえるんですか。
  200. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 沖縄県民にとって、いわゆる北部の森林、これが水資源涵養上重要であるというのはよくわかっております。しかし、沖縄の北部練習場の区域内の森林ということでもございまして、これは保安林指定につきましては、外務省また防衛施設庁、関係省庁に関連する事項でもございますが、特にまたひとつ勉強もいたしましたら地元でも随分反対があるということでもございます。しかし、今後とも各省庁とも連絡をとりながら研究させていきたいというぐあいに考えます。
  201. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 もう既に半年たっておるのでありますから、ひとつ鋭意研究のテンポを上げて、県民の要望に沿う方向で早く決断を下してもらいたいということを重ねて要望しておきます。  それで、続いて別の問題に移りますが、九月十七日にいわゆる新賢人会議、日米諮問委員会が  「よりよき協調を求めて――日米関係の課題と可能性」と題する報告を中曽根首相及びレーガン大統領に提出をしました。その内容は、米、日、韓軍事同盟体制の強化、国連平和維持軍への物資支援と自衛隊制服の派遣日本の戦闘遂行能力の強化を提言するなど、極めて危険なものであります。しかし、本日は農業に関する報告に限って幾つか質問をするわけでありますが、後から具体的に指摘をしますように、日本農業の破壊に通ずるともいうべき数々の暴言が行われています。  ところで、報告の前書きで、この委員会の作業に当たり、政府、民間の専門家の意見を参考にしたというふうに書いているんですが、農水省として意見を述べる機会はあったんですか。
  202. 田中宏尚

    説明員(田中宏尚君) 農水省としては、この報告書の作成に関しまして、意見を述べる機会は持たされておりません。
  203. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 農水省として意見を述べる機会はなかった。片やこの諮問委員会日本側七人のメンバー、この名簿を見ましても、農業専門家というのは一人も入っていない、こういうことでありますから、日本農業の実情を無視をした暴論が出てぐるというのはけだし当然だとも言えるのであります。  そこで具体的に聞きますが、暴論の第一、日米貿易摩擦の最大の原因は、日本のアメリカ農産物輸入制限にある、こういうふうにしているわけでありますが、果たしてそうなのか。一番の原因は日本の工業製品輸出の拡大、アメリカの高金利政策、こういったところにこそむしろあるんじゃないですか。
  204. 後藤康夫

    説明員後藤康夫君) 私どももこの日米諮問委員会報告の内容につきましては、見解を異にする点が少なからずあるわけでございますが、ただいまお尋ねの点につきましては、この報告書の中では農産物貿易摩擦というものが日米貿易摩擦の中で最も政治問題化し、解決困難なものとして論議をされている、また非常に象徴的な重要性を持っているということを言っておりますけれども、貿易摩擦の最大の原因と申しますところは、この報告書の中では貿易の不均衡の増大、インバランスの増大である、それに幾つかの理由があるということで、米国の対日赤字はほかのいかなる国に対する赤字よりも大きいし、日本からの輸入品の多くは自動車とかカメラとか、非常に目につく消費財が多いというようなこと、それから米国民の大多数は対日赤字の責任は日本よりむしろ米国にあると考えているが、対日赤字の原因の少なくとも一部は日本の不公正な商慣行や両国間の市場アクセスの不平等にあるというのが米国内の一般的な認識だと、こういうふうな書き方をいたしておりまして、むしろ象徴的な、また非常に政治的に解決困難な問題がこの農産物問題だと、こういう取り上げ方をしているわけでございます。  しかしながら、この農産物につきましては、昭和五十三年から五十七年までの五年間の平均で我が国の農産物の純輸入額百五十七億ドルということでございまして、ネットの輸入額としては世界一という事実にも示されておりますように、我が国の農産物市場は十分開放的なものになっているというふうに私ども考えておるわけでございますし、農産物貿易につきましては、各国とも自国の自然的、社会的あるいは経済的な条件から各種の国境保護措置を講じているわけでございまして、これは我が国に比べまして比べものにならないほど自然条件に恵まれておりますアメリカですら同様なわけでございます。  そういう意味で、日米貿易摩擦のこれがシンボルであり、非常に大きな問題であるというふうな形で取り上げられるのは、農産物貿易全体を取り上げてみますと正当な評価ではないのではないかというふうに私ども考えておる次第でございます。  やはり貿易摩擦の解消というのは、基本的には世界経済の活性化なりあるいは我が国でもう少し内需を拡大する、あるいはアメリカの方ももう少しドル高の是正の努力をしていただく、そういう中でやはり解決されるべき問題でございまして、個別の品目がどうこうというようなことで現在の貿易不均衡というようなものが解消されるものだというふうに私どもは考えておりません。
  205. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 報告書はまた日本農業過保護論、これを非常に強調をしておるわけでありますけれども、もちろん各国のこの保護水準の比較というのは、単純には結論が出せない問題かとは思いますけれども、例えば全国農業会議所の文書によりますと、国民一人当たりの国の農業予算、この数値はフランスが六万円、アメリカ四万七千円、西ドイツ二万円、イギリス一万二千円、日本三万円、こういうことでありますから、日本はアメリカよりも少ない。こういう指標を一つとらえてみても、日本農業が国際比較で飛び抜けて過保護をしているという、こういう論というのはおよそ当たるものではありませんね。
  206. 田中宏尚

    説明員(田中宏尚君) 先生御指摘のとおり、農業保護の水準が高いか低いかということはなかなか一概には論じられませんけれども、今お話しありました予算額にとってみましても、あるいは食糧費の中に占めます消費者の負担、そういうものをとってみましても、格別外国に比べて日本が高いという形にはなっていないというふうに考えております。
  207. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 また報告は、農産物貿易における衛生検査の問題に触れて、日本の検疫基準があたかも果実、野菜、畜産物の輸入抑制のために恣意的に運用されていると、こういうくだりも出てくるわけでありますけれども、一体そういう事実はあるんでしょうか。
  208. 関谷俊作

    説明員(関谷俊作君) 私どもの方からは植物検疫の問題について申し上げますと、現在の植物検疫は国際植物防疫条約というのがございまして、日米両国初め八十三カ国が加盟しました条約に基づきまして、それを基本として実施しているものでございまして、ここにございますような悪意的な運用ということは一切されておりませんで、すべて病害虫の侵入防止という観点から科学的に対処しているわけでございます。ここにはかつてのチチュウカイミバエの例が例として挙がっておりますが、この場合、日本の方ではここに書いてありますような輸入禁止というようなことを実施したわけではございませんで、あくまでも未消毒の生果実の輸出の自粛を要請したというようなことでございますが、この場合、州単位に実施したのは、州の間では植物検疫が確実に実施されるということで自粛措置を要望したような次第でございまして、あくまでもこれらの科学的な根拠に基づいた措置として考えているわけでございまして、恣意的だというような指摘は当たらないというふうに考えております。
  209. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 その他いろいろあるんでありますが、残念ながら時間ももう来ていますので省略をせざるを得ないわけでありますけれども、例えば日本農業は農地規模の拡大を図るとともに小規模で効率的に生産し得る農産物への転換を図れということで、いわば小麦、大麦、トウモロコシ、大豆などアメリカから輸入する農産物の日本での生産はやめよと、こういう主張とか、米価の問題にも触れています。  問題は、こういう重要な問題について、大臣、確かに諮問委員会のメンバーを見ましても財界、大企業の代表がずらりと並んでいるわけですけれども、またいつもの調子で言っているわいと、こういう程度の受けとめ方ではなくて、少なくとも中曽根首相の諮問機関としてのそこからこういう報告が出たということで、今後の政治的動きというのは決して軽視してはならぬ重大な問題が予想をされる。こういうことで既に全国農協中央会とかあるいは全国農業会議所とか、こういったところから早速具体的な形での反論書が発表もされているわけでありますけれども、農林水産省としても何かの形でこれに対してやっぱり言うべきことは言う、こういう公式の見解農林水産省として発表されてしかるべきじゃないか、またそれをやるべきだというふうに私は思いますので、その点についての大臣の御意見と、もう一つ、この報告書で臨調のような国際経済強化のための特別委員会をつくろうということで、新聞なんかでは対外開放臨調の設置というようなことで報道されて、どうも中曽根首相がこれに飛びつくようなそういう発言が報道されていますけれども、こんな問題についても農林水産大臣としては、現にいろいろ審議会もあるわけですから、それを飛び越えてそういうものをつくるということに対しては、厳に戒めてもらいたいというふうに思うんですが、この点の二点、大臣のお答えを聞きまして質問を終わります。
  210. 後藤康夫

    説明員後藤康夫君) 大臣から全体的な御答弁を申し上げます前に、臨調タイプの特別委員会の設置を考えたらどうかという提言に対しまして農林水産省としてどう考えるかということについて、私からお答えさしていただきたいと思います。  従来から、この対外経済対策につきましては、関係省庁及び関係方面との連携と調整によりまして、今御質問の中にもありましたように、いろいろな仕組みが既にできておりまして、新たな組織をつくるということは屋上屋を架すということになるんじゃないかといった考え方もございますので、このような点も含めて、この点につきましては十分慎重に検討する必要があるというふうに私ども考えております。
  211. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 農業・林産物貿易に関する提言というのがございましたが、これにつきましては私は見解を異にする面が多いと率直に思っております。  例えば食糧安全保障の問題につきましては、食糧の自給自足のみに焦点を当てた政策であるとの指摘がございますが、私としては、我が国の自然、社会、経済的要因を総合的に勘案し、また食糧自給力強化に関する国会の決議もございます、これらの趣旨を踏まえて対処していくつもりでございます。また、この農林業につきまして、国際的比較優位と特化に基づいて農産物の貿易を拡大すべしというぐあいにしておりますが、農林業というものは、これはただ単に経済ベースで割り切れない多くの側面があると私は思っております。工業とは違ったものだというぐあいに考えております。しかしながら農林業の特殊性に甘んずることはなく、その生産性の向上を図ることはやはり重要な政策課題であり、構造改善等の推進を通じて今後とも一層の努力を払っていくつもりでございます。しかしまた、もしこの報告に対していろいろ言うべき場面が来れば、いつでも農林水産省としての立場ははっきりさせるつもりでございます。
  212. 木本平八郎

    木本平八郎君 私も米の問題を中心にして日本の農業問題についていろいろお聞きしたいのです。この問題につきましては、けさほどから同僚議員から、どちらかといえば農業に同情的というか、非常に温かい発言が多かったわけですけれども、私は少々厳しい立場で質問をさしていただきたいと思うわけです。  まず単刀直入にお聞きしたいのですけれども、米の生産原価の中に地代とか資本利子というのが入っておるわけですね。これ昭和五十八年度の米価一万八千六百二十六円の中に資本利子が七百二十二円とそれから地代は五千三百三十七円、両方合わせますと六千五十九円入っているわけですね。これが米価に対する比率が三二・五%になるわけです。これは労務費とかあるいは農機具代とかそういうようなものよりもうんと高いわけですね。ほかのものを合わせても四千円台とか、これは三ヘクタール以上の規模の場合ですけれども、非常に高い、一番大きなコストを占めているわけです。いわば何か我々は地代と利子を食っているような感じがするわけですが、こういうものがどうしてこういうところに入っているのか、コストとして入っているのかという点をまずお聞きしたいわけです。
  213. 石川弘

    説明員(石川弘君) 御承知のように米価につきましては、食管法で米価の算定方式を定めているわけでございますが、その中では「生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スル」、どうやったら米の再生産が確保できるかということでやっておりまして、その具体的な算定方式につきましては昭和三十五年以来、いわゆる生産費・所得補償方式という方式で算定をいたしておるわけでございます。この算定方式では、いま御指摘のように自作地地代とか自己資本利子といったものにつきまして、やはり一定の評価をしました上で算定をいたすわけでございますが、これは農業経営を継続させます場合に、米の再生産を確保するときに経営外部に支払ったものだけで再生産が確保できるかどうか、御承知のように日本の農業というのは自作農でやっておりまして、ある意味では地主的側面とそれから労働者的側面を兼ね備えたものでございますので、こういうものを評価をいたしますことによって米価を算定し、それによって再生産を確保してきたという経緯がございます。御指摘のようにこういう算定方式につきましてはいろいろと論議がございまして、長い米価の算定の歴史の中でもこういう算定方式につきまして、学者の方々、専門家の方々もおいでになりましたような小委員会で何回か検討されておりますが、こういう方式は妥当なものという結論になっておりますし、それから、毎年米価算定の際にもこの算定方式自身を御説明をしまして、専門家の方々の御同意を得ているわけでございます。  御指摘は、多分、要するに一次生産費のような直接生産費と、いまおっしゃったような、我々二次住産費と言っております。そういうものとの差での御指摘かと思いますけれども、御承知のような、これは私の専門ではございませんが、電気、ガスその他の公共料金算定等につきましてもそういう資本的なものなりあるいは土地資産についても一定の利潤を見て算定をいたしておりますので、私ども妥当な算定方式ではなかろうかと思っております。
  214. 木本平八郎

    木本平八郎君 いや、それで今コストに入りているわけですね。ところが経済原則からいきますと金とか物とか、まあ人もそうなんですけれども、こういう経営資源というか生産手段というのは、同時に異なる場所で使うことはできないというのはこれは経済原則ですね。私が今ここで質問していて後楽園で野球やるというわけにいかないのと同じことですね。ところが自作地は自分の資本でしょう、これを農業生産に使っているわけですね。使ってながら同時に利子を生むということですね。それから同時に地代を取ると、地代を発生するというのは、これは経済原則に矛盾するんじゃないですか。これは私は非常に、これ議論してもしようがないんで、こういうことでやっておられるんで、私はもうはっきり言ってこれ生産者米価というのに非常にまやかしみたいな表現があると思うんですよ。本来は私はこういう表現じゃない方がいいんじゃないかと。  それで大蔵省来ておられると思うんで、ちょっと大蔵省にお聞きしたいんですけれども、こういうふうな土地の地代ですね、例えばテニスコートとかゴルフ場とか、駐車場もそうですね、土地を使わなければやれない商売というか産業ありますね。こういうもの、それからあるいは商店でも店舗があり、自分の家で、それがなければ仕事にならないと。こういうものの地代とかそういう資本利子ですね、こういうものをお認めになるわけですか。
  215. 岡本吉司

    説明員(岡本吉司君) 多分税金の面でそういうことを認めているのかどうかと、こういう御質問だと思いますので、私国税庁の方から答弁さしていただきたいと思います。  今、先生の話のございました、例えばまあいろんな土地を使って商売等をやるといった場合の所得区分は、通常事業所得であるとかあるいは不動産所得であるとか、こういうことになろうかと思っております。所得税俵上こういった場合にどういうふうに所得計算をするのかといいますと、当然のことながら収入金額から必要経費を差し引くということでございます。との場合必要経費にどういうものが当たるのかということがポイントだと思いますけれども、我々の方で大別いたしますと、一つは、例えば商品などの売上原価あるいは従業員の給料、あるいはその借地、借家料などのまあいわば対外的に対価を支払うことによって生じました費用、これが一つ必要経費に入ってまいります。それから後は店舗などを持っていた場合の減価償却費、こういったものも当然必要経費に入ってまいります。それから、まあ、あとはめったにないと思いますけれども、店舗などが滅失したとか、あるいは貸し倒れが生じたと、こういったものも当然経費になりているわけでございますが、ところで今のお尋ねのような自分の土地に対する地代相当分といいましたものは、今申し上げましたような対外的な対価を支払うと、こういうことによって生じた費用ではございません。またそれから当然のことながら減価償却とか資産の損失とか、こういうことでもございませんので、所得税法上は必要経費に算入することは認めていないと、こういうことでございます。
  216. 木本平八郎

    木本平八郎君 今の大蔵省の見解が正しいと思うんです。それで国民の常識としても当然だと思うんですね。これは先ほど地代とか資本利子とかおっしゃいましたけれども、事実はこれは農家の利益なんですね。所得補償でしょう。したがって、これはただ算定の基準が地代とか資本利子ということで算定しているだけであって、この金額、例えば先ほどの例で六千六十円ですか、これは利益なんですね。そうするとこれは利益であれば課税される額、その限度に達しているかどうかは別にしてちゃんと利益として、所得として申告してなきゃいかぬはずなんですよ。ところが多分これ申告されてないと思いますね。その辺もう突っ込んでもしようがないんで突っ込みませんけれどもね。私は、こういう非常にまやかしみたいなものが米価にも非常に多いと。多いと言うのは、これは先ほどおっしゃったように、昭和三十五年からどんどん何か手直ししてきて、それで、だんだん何か実態と違ってきておかしくなってきているという感じがするわけです。  実は、きまうの話題はそういうことじゃなくて、いわゆる米価自身もそういうふうに非常にゆがんできているというふうな感じがあるわけですね。例えば全中の問題にしても、例えば実勢の小作料相当分を地代に欲しいということを言っているわけですね、これは百円ぐらいだと。ところが農水省の方は、とんでもないということで、いわゆる農業投資価格という非常に低い価格に抑えられていると。ところが、また一方、農水省で、例えば米及び麦類の生産費調査というふうなことをやっておられて、それを発表されているんですね。例えば五十七年度の生産コストが二万五百八十四円ですか。ところが決定された米価は一万七千九百五十一円なんですね。そうすると、全中は、農水省もこれだけのコストがかかっていると言っているんだから我々これだけ損しているという言い方をするわけですね。それで、最近全中の立場としては、食糧危機だとかいろいろなことを言って、補助金の問題とか、あるいは減反をやめるとか、いろいろなことを目的があるんでやっているんですけれども、それが実際より誇大PRになっているわけですね。米は非常にコストが高くてもうからないもうからないと、こう言っているわけですね。そういう印象が国民の側にとったら非常に何か白々しいと言うか、そういうことで非常に不信感が大きいわけですよ。その辺はやはり農水省としてきちっと指導されないと、ますます国民と遊離していくんじゃないかということを私は感じるわけですね。例えば米の平均の値段も、実際に自家用に食べているお米のコストまで平均しているとか、これをある、私どもがやりました試算では一万六千六百六十三円という値段さえあるわけですね。そうすると、一万七千九百五十一円にしても十分にもうかるわけですよ。事実もうかっているわけですね。そういう実態がありながら、何となくまやかしみたいなことが非常に行なわれているというところに、私はもう現在の一番の大きな米づくりの問題があると思うんですね。この辺はひとつぜひ農水省の方で御検討いただきたいわけです。  それで、もう時間がだんだんなくなってきますので、私の申し上げたいことを言いますと、要するに今日本の米は世界一高いんだと。年間三兆円もの補助金を何十年間にわたって出しながら、どんどん穀物の自給率が下がっていっていると。三三%ですね、今現在。これは要するに米が高過ぎるからほかの穀物をつくらないわけですよ。米が安くなってくればほかの穀物つくれるはずですね。その辺が、米の値段の高いというのは諸悪の根源だと私は思っているわけです。例えば転作をやめたいとか減反をやめたい、休耕田を復活したいという要求がありますね。これは米づくりがもうかるからなんですよ。だからさっきと違うんですね。一万七千九百五十一円でももうかるわけですよ。そういうことがあって、今生産力が非常に過剰でありながら減反して、非常に無理に無理を重ねてきているわけですね。  ところが、私のところへ投書がありまして、これは大規模農家なんですけれども、今の米価の六七%で生産コストが賄えるというわけですよ。だからどんどんつくりたいというわけですね、今の値段でも。ところが減反をやられているのでこれどうしようもないんだと。  それからある篤農家からの話では、現在の生産者米価の五五%の手取りでもやれるから減反を廃止してほしいと。またほかの農家からは、ことし四百二円ですね、米価が上がりました、一俵当たり。ところが百俵つくっていると。これは一・五ヘクタールですから、相当大きな、平均よりも大きな農家ですね。これは百俵で、四百二円ですよ、年収で四万二百円しかベースアップしないと同じことでしょう。これじゃ上げてもらっても余り、あれだけわあわあ騒いで、それでサラリーマンからは怨嗟を受けてこれやっているのじゃどうしようもないというふうな嘆きみたいなものが来ているわけです。  私は結論的に言ってやはりもう日本の農業というのは、農業高校を出た人が農業に打ち込んで、米づくりで十分に食っていけるようにしなきゃいかぬと思うんですよ。もう戦後だけでも四十年間やってきて、どんどん農家経済は悪くなる一方でしょう。これはこの辺でやはり転換しなきゃいかぬじゃないか。結論的に私は大規模農家に傾斜集中生産させるということですね。もう小さい小規模の農家には転廃業してもらうと。これはどんな産業でも全部やってきているわけですよ。もう工業関係全部やってきているわけですね。農業だけがどうしてそういうことでいいのかということがあるわけですね。例えば〇・五ヘクタール以下のものにやめてもらって、それ以上にしますと七七%残るわけですね。それから一ヘクタール以上ですと四八%残って、まあ半分以上がだめになるわけですけれどもね。これで十分に賄えるんじゃないかというふうな気がするわけです。それで、要するにフリーにして、それで一遍にやると大問題ですけれども、徐々にフリーにやっていきながらそういう体質の強化をしていく、そして国際競争力をつけるということが必要だと思うんですけれどもね。その辺御意見をお伺いしたいんですがね。
  217. 石川弘

    説明員(石川弘君) 最初に、さっきのまやかしの計算をしているというお話でございますけれども、これはかなり高名の学者の方々もみんなお入りいただいて、決して私どもが勝手に計算をしているんじゃございませんで、いろんな御意見をお聞かせいただきながら、先生自身おっしゃったように、これは先ほど生産費じゃないとおっしゃいましたが、生産費及び所得補償方式、結局自分で働いている人は自分の労賃を、自分がもらうわけじゃありませんけれども、自家労賃を幾らに評価するかというようなことも含めまして、農家が再生産できるようにという方式でございます。  御指摘の中の大型農家に一方的に全部集中ができますと、私どももそれはもうおっしゃるとおりに生産費を余り上げないで済むわけでございます。現に抑制的な米価をずっと続けておりましたのは、そういう大型農家へ生産が極力いくようにということをやるわけでございますけれども、今おっしゃいましたように、それでは農業の方から全部足を洗って他の産業部門で明らかに失業も何もなくやれるというような保証がありますと、比較的転業というようなことも可能でございましょうけれども、やはり農家の中にはそういう保証というのはなかなか得にくい。片側で戦後のつらい食生活のこともございましたから、なかなか農地を放さない。そのために我が省といたしましても、いろんな構造政策をやりながらなるべくそういう農業に足を突っ込む度合いの少ない方は極力そういう方向から抜けるように、しかし、そのためにはいろんな意味での仕事を、いわば労働力として完全燃焼できるような状況も必要でございますから、そういうことをやってきたわけでございます。  したがいまして、いろんな御指摘がございますが、私どもは決して米の生産というのが非合理的なままでいいという前提をとっておりませんで、米価算定方式につきましても、そういう要素を入れまして極力そういう合理的な生産を誘導するわけでございますけれども、時間がいろいろかかっているという御批判もあろうかと思いますが、私はこの算定方式についてはそれなりの皆さん方、特に米価に関する米価審議会の御意見も聞きながら、その米価審議会の御意見ということが、先生も今おっしゃいましたようなニュアンスも含みながら、極力合理的な生産に誘導するということをやっておるわけでございまして、私どももその米価審議会の御意見を聞きながら、米価を算定している立場といたしましてはそれなりの努力をしておるつもりでございます。
  218. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、最後に大臣にひとつ、私のアイデアを交えて、御意見を伺いしたいんですがね。  その前に、私は日本の米をだめにしたのは、これはもうはっきり言って農政の責任だと思うわけですね。これは世界の産業史に残るような非常に特異なことで、行政が産業をつぶしたということになる。これ、先ほど午前中もありました養蚕だって葉たばこだってそうですよ。これはもっともっと早いときに少し限界企業というんですか、それを整理すれば、もう葉たばこだって養蚕だって私は日本は世界的な競争力を持っていたと思うんですね。米だって、やりようによっては私は世界一的な競争力を十分に持てる産業だと思うわけです。これはもうはりきり言って、その辺はよく行政の方で指導していただかなければと思うわけです。  したがって、今、米はこれだけ保護されていながら、公共事業と同じなんですね、供給責任があるわけですよ。ところが三三%しか自給率がないというのは、供給責任を果たしていないと思うんですね。今、世界的に食糧危機の可能性があるわけですね。例えばアメリカが二、三年不作だと、もうえらいことになってくる。そのときに日本で一番初めにやられるのは都市サラリーマンなんです。我々生産手段を全然持っていませんからね。今この状況で食糧危機を考えた場合、日本の農業に頼れない。そうすると、外国に頼るかという選択を迫られるわけですよ、実際に飢え死にするかどうかの立場になった場合。こういうことから、私はもう結論的に言って、まず今の休耕田を全部復活する。そこに米を全部つくる。フル生産する。それで、平時はササニシキとかコシヒカリとか、収量の少ないうまいのをつくっておいて、余ったものはアフリカなんかに援助で出す。これについては四月の予算委員会で私言いましたけれども、ちょうど大臣アメリカへ行っておられたときですがね。それで、そうしておいて、もう非常時になったらいっそストップして、そこに多収穫米、ハイブリッドですね、こういうようなものを植える。そうすると、専門家の話でも千八百万トンぐらいとれるんですね。その米で少し代替をやっていく。もうそうなってくると麦とかなんとか国内でつくるとして、そうしますと、それからもちろん圃場の整理もして、今の三反歩なんて小さいんじゃなくて一ヘクタールぐらいに大きくして、大型トラクターが入れるようにするわけですね。今みたいに小さくて、農機具メーカーをもうけさしているような、一年に二日とか三日しか使わないような農機具を小さいのばかり並べたってしようがないんですね。そういうふうにやりますと、これは予算委員会で申し上げたんですけれども、年間二千億円ですよ、二千億円十五年間投資すれば、その間に食糧危機が来ても一億二千万の人間が生き延びられるんですよ、アメリカからの食糧がストップしても。こういう、私はその二千億が飛行機何台分だとか、今の三兆円に対して何%とか、私つまらないこと言いません。言いませんけれども、一億二千万人の人間の食糧安保というものがわずか年間二千億円で保障が買えるわけですよ。この点については大臣どういうふうにお考えになるか、その御意見を伺って私の質問を終わります。
  219. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生おっしゃいますように、いわゆる転作をやめて全部米つくらしてと、これは農家の方も喜ぶでしょうし、我々もこんないい話はございませんけれども、しかし苦しいこの財政事情で、これが実際問題として許されるかどうかということでございます。そしてまた同時に考えなければならないのは、いわゆるその米をみんな買って、そして食糧危機であえいでいるそれらの国々へということ、これはもうこれほどいいことはございませんけれども、食糧危機であえいでいる国ですと、そんな高い米ならば、その米の値段の半分でもいいから金でくれということも出てくるでしょうし、それともう一つ困りますのは、いわゆる米の伝統的輸出国、これからはもうどのような苦情が来るかもわかりません。私としてもいろいろ先生がおっしゃるのを大いに参考にさしていただきますが、なかなか現実的にはちょっと難しい問題ではないかというぐあいに私は考えます。
  220. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) 他に御発言もないようですから、農林水産省及び農林漁業金融公庫決算についての審査はこの程度といたします。     ―――――――――――――
  221. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) この際、派遣委員報告に関する件についてお諮りいたします。  先般、当委員会が行いました国家財政の経理及び国有財産の管理に関する実情を調査し、もって昭和五十七年度決算外二件の審査に資するための委員派遣につきましては、各班からそれぞれ報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  222. 佐藤三吾

    委員長佐藤三吾君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  次回の委員会は十一月六日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十分散会      ―――――・――