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1984-07-13 第101回国会 参議院 環境特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十三日(金曜日)    午後二時三分開会     —————————————    委員異動  七月十二日     辞任         補欠選任      高杉 廸忠君     片山 甚市君      高桑 栄松君     刈田 貞子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         穐山  篤君     理 事                 山東 昭子君                 原 文兵衛君                 丸谷 金保君                 飯田 忠雄君     委 員                 石本  茂君                 梶木 又三君                 藤田  栄君                 星  長治君                 矢野俊比古君                 柳川 覺治君                 吉川  博君                 片山 甚市君                 菅野 久光君                 刈田 貞子君                 近藤 忠孝君                 中村 鋭一君                 美濃部亮吉君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  上田  稔君    政府委員        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第二        部長       関   守君        環境庁長官官房        長        加藤 陸美君        環境庁長官官房        審議官      大塩 敏樹君        環境庁企画調整        局長       正田 泰央君        環境庁自然保護        局長       山崎  圭君        環境庁水質保全        局長       佐竹 五六君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        国土庁大都市圏        整備局整備課長  荒木  寛君        建設省河川局治        水課長      萩原 兼脩君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○湖沼水質保全特別措置法案内閣提出衆議院  送付) ○湖沼環境保全特別措置法案丸谷金保君外二名  発議) ○派遣委員報告議案撤回に関する件     —————————————
  2. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから環境特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十二日、高桑栄松君が委員を辞任され、その補欠として刈田貞子君が選任されました。     —————————————
  3. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 湖沼水質保全特別措置法案及び湖沼環境保全特別措置法案を便宜一括して議題といたします。  まず、先般当委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員報告を聴取いたします。丸谷金保君。
  4. 丸谷金保

    丸谷金保君 委員派遣報告を申し上げます。  去る七月六日、湖沼水質保全特別措置法案及び湖沼環境保全特別措置法案の審査の一環として、茨城県において霞ケ浦水質保全対策等実情調査を行いました。派遣委員穐山委員長山東理事飯田理事河本委員矢野委員吉川委員菅野委員高杉委員近藤委員中村委員及び私、丸谷の十一名です。  以下、調査事項のうち主要な慮について報告をいたします。  日本第二の大湖・霞ケ浦は、もともと汚れやすい自然的条件を備えておりましたが、近年は流域開発、湖内の水産養殖等により、昭和四十一年以降、水質は急速に悪化してきました。  環境基準は、四十七年の環境庁告示によって湖沼Aに類型指定されておりますが、CODは、基準値三ppmの三倍程度に推移しており、毎年、全国湖沼水質ワーストリストの上位に名を連ねるという状況にあります。また、水中の栄養塩類増加によって植物プランクトンが増殖する富栄養化現象も進行し、窒素、燐の濃度は、富栄養化の目安となる数値を大幅に上回っており、異臭味などの利水障害が生じています。  茨城県は、四十六年に公害防止条例を制定して、水質汚濁防止法に定める全国一律基準に比べて、排水量すそ切り及び排水濃度二つの面で、より厳しい規制を行っております。さらに、去る五十六年、琵琶湖に次いで全国二番目の富栄養化防止条例を制定しました。  同条例に基づき策定された富栄養化防止基本計画によりますと、計画目標年次昭和六十五年とし、この時点の水質を、四十年代中ごろの水号質、すなわち、COD六ppm台にする、現在一日当たり窒素十一・六四トン、燐一・二五トンの流入負荷があるのを、窒素九・五二トン、燐〇・七九トンにそれぞれ削減する。目標達成のための基本的方策として、生活系、工場、事業場、農業、畜産業魚類養殖業の各分野について対策を進めるほか、しゅんせつなどの湖内浄化事業を行うなどとしております。  今回の派遣では、霞ケ浦を湖上より視察し、県当局及び関係行政機関より説明を聴取、次いで霞ケ浦流域下水道事務所及び霞ケ浦水道事務所を視察しましたが、県当局、県民が一体となって霞ケ浦水質改善に努力している様子を推察することができました。  報告は以上のとおりですが、茨城県知事から、湖沼水質保全特別措置法早期制定及び同法に基づく事業に対する財政援助措置の確立などについての要望を受けております。  こうした要望事項及びその他調査事項説明資料などにつきまして、別途報告書として会議録末尾に掲載していただきたいと存じますので、委員長がよろしくお取り計らいくださるようお願いいたします。  以上であります。
  5. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 以上で派遣委員報告は終了いたしました。  なお、丸谷君の報告中にありました要望事項などにつきましては、これを本日の会議録末尾に掲載したいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  7. 穐山篤

    委員長穐山篤君) この際、議案撤回についてお諮りいたします。  先般来質疑を行ってまいりました湖沼環境保全特別措置法案について、本日、発議者丸谷金保君外二名から撤回の請求がありました。  本案の撤回を許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認めます。よって、湖沼環境保全特別措置法案撤回を許可することに決定いたしました。     —————————————
  9. 穐山篤

    委員長穐山篤君) これより湖沼水質保全特別措置法案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  10. 片山甚市

    片山甚市君 私は、湖沼法審議を通じまして厳しく指摘してきたのは、この結果、全国湖沼が生き返り、これでもう絶対に汚染と自然破壊が進まないということを担保したいと思いました。すなわち、この法案ができて、その結果、水質保全される道が開かれたい、そのためにどうしたらいいのかということを問うてきたところですが、八月二十八日からの世界湖沼環境会議に寄せられる期待は、国際的にも日本の国内にも日々に大きくなってきておりますが、我が国実態は余りにも危機的だと思います。  最近の新聞、私の手元にありますところの毎日新聞、七月十日付を見ましても、私がくどいほど指摘しておりました点が地域住民にとって最も深刻な状態であるということを如実に物語っていると思います。その一節を見ますと、「近畿千三百万人の水ガメ・琵琶湖。依然として富栄養化による深刻な水質汚濁に悩んでいる。今年も、五月二十二日、南湖水道水の生ぐさ臭の原因となる植物プランクトン「ウログレナ」が異常増殖し、八年連続の赤潮発生となった。昨年九月には、赤潮より悪い水質発生するアオコが初めて大規模に出現している。」、こう書いてあるのですが、全国湖沼周辺住民の持つ行政への不信と今後の不安にこたえる意味からも、また、世界湖沼環境会議我が国の政策が国際的にも評価を得るものとして報告し、会議の実を上げられるためにも、本委員会、特に本法案の意義が問われていると思っています。そういうことで、その立場から、政府原案ではまことに不十分だということを冒頭に申し上げて質問をしたいと思っているところです。  一つは、琵琶湖水質状況認識についてでありますが、去る六月二十日の本委員会での私の質問に対し長官は、琵琶湖汚濁状況について、汚れの進展はある程度鈍ってきていると答弁しておりますが、根拠はどういうことでありましょうか。
  11. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 琵琶湖水質現状でございますが、最近におきましては、水質指標としての総合的な指標としてのCODについて見ますと、北湖では、五十五年がピークでございまして二・四ppm、それが五十六、五十七、五十八と若干ながら低下を見てきている。南湖につきましては、五十四年が水質が最も悪く三・四ppmであったものが、五十八年二・八ppmというふうに若干低下を見ているわけでございます。これらにつきましては、琵琶湖富栄養化防止条例等による窒素、燐の規制効果を上げているというふうにも見られるわけでございまして、かような事実を踏まえて長官の御答弁になったという次第である、こういうふうに考えているわけでございます。
  12. 片山甚市

    片山甚市君 新聞記事をちょっと読んでみますと、「琵琶湖では、いま県と建設省水資源開発公団が六十六年度完成を目指して琵琶湖総合開発事業を進めている。京阪神の水需要増大に応えるため琵琶湖水位を標準から最大一・五メートル下げて毎秒四十トンの新規利水を生み出し、合わせて水位低下による被害を防ぎ、水質と自然を保全地域整備を進めようとの狙い。だが、一・五メートルの水位低下琵琶湖にとって初めての経験で、湖環境は激変し、将来への影響は予断を許さない。」こう書かれておるのですが、先ほど申しましたように、アオコ発生水質の問題に関係して、この間も質問しましたように、一方、昨年九月に琵琶湖に大発生をしたアオコの問題ですが、同日の質問で、佐竹水質保全局長は、従来琵琶湖では淡水赤潮発生はあったが、アオコは初めてで、アオコ発生は、一般に富栄養化が進んだ場合の現象であるので無視できないと答弁しておられます。  そこで、七月四日の本委員会参考人吉良竜夫氏が、琵琶湖では淡水赤潮に次いでアオコ発生している状況は安心できないと陳述していますが、これは富栄養化が進んでいて水質が悪くなったということでありまして、今局長がおっしゃるように、数値的に大丈夫と言っても現象的には進んでおるというように思うのですが、いかがでしょうか。
  13. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) アオコ発生あるいは赤潮発生につきましても、そのメカニズムは非常に複雑でございます。したがいまして、私が先ほど申し上げました水質状況とこれが直ちに結びつかない面もあろうかと思います。  いずれにいたしましても、私の答え、あるいは大臣の御答弁自身にいたしましても、決して安心できる状況であるというふうに申し上げているわけではないわけでございまして、一応とにかく水質の悪化がとまり、若干改善が見られてきた、こういうことでございまして、現在の水質状況であれば、さまざまな条件が、そのいかんによっては淡水赤潮アオコがまだ発生するような条件にあるわけでございまして、決して安心できる状況ではないわけである、私どももかように考えている次第でございます。
  14. 片山甚市

    片山甚市君 それではもう一度確かめてみますが、琵琶湖水質について今どういう状態にあるかと言えば、不安定な状態で、改善が図られるはずだと思うが、まだ見通しがつかない、そういうことでありまして、長官がおっしゃったように、よくなったなと思うという感触がありましても、現実に五月の二十二日には、御案内のように生臭い水を飲まなきゃならぬような状態にある。アオコ発生がまだあるかどうかは、太陽の当たりぐあいで、水温の高まりぐあいで変わってくる。非常に危険なといいますか、不安な状態であるということで、これからさらに改善を図らなきゃならぬということでは、私の質問について答えられますか。
  15. 上田稔

    国務大臣上田稔君) お答えを申し上げます。  ただいま先生お話のとおり、CODにつきまましては、滋賀県の条例効果を少し上げてきておるのではなかろうか、少しずつCODなんかが下がってきておるという状態には現在ございます。しかし、これからなおもっと注意をしていかなければいけませんので、この湖沼法案をお認めをいただきましたら直ちに琵琶湖は指定をさせていただいて、そうしてその計画を早く立てていただいてよくしていかなければならないと考えておるところでございます。
  16. 片山甚市

    片山甚市君 これはまた日経の七月十一日の新聞記事解説欄にこういうことが書かれておるのですが、感想を聞きたいのです。見出しは「楽観できない現状」ということです。「現在、琵琶湖霞ケ浦水質は一応改善の方向に進んでいるように見えるが、楽観できない。今後の人口増加や、総合開発が進めば再び悪化する可能性は十分ある。特に琵琶湖総合開発は、湖岸堤建設や、湖周辺の自然の改変は自然の浄化能力破壊となるおそれは十分にあると思われる。一部住民がいまも強くこれに反対しているのも理由のないことではない。」と書かれておるのですが、そういう意見についてコメントを求めます。
  17. 上田稔

    国務大臣上田稔君) お答えを申し上げます。  琵琶湖総合開発計画でございますが、毎秒四十トンを取るということになっておりますが、琵琶湖は非常に通常は水が豊富でございまして、常に南郷の洗堰から水を豊富に流しておるのでございます。したがいまして、この四十トンというのが、一番琵琶湖渇水が起こりましたときに問題が起こるわけでございまして、一メートル五十下がるということは、これは何十年という、四十年か五十年、ちょっと年数を覚えておりませんが、そういう渇水のときに一度起こるということでございますので、そういう点におきまして、常時におきましてはもう以前と同様の量で流れておる、また変動をしておるということでございますので、水質に対しての心配は全然ないということは言えませんが、そういう状況でございますので、これはひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。  それから、今先生指摘のようにアオコ発生しておりますし、毎年毎年淡水赤潮が起こっておりますので、早く計画を立ててやらせていただきたい、そうして水質をよくし、また富栄養化を早くなくしていきたいということで今考えておるところでございます。
  18. 片山甚市

    片山甚市君 長官に聞いてもわからぬから局長に聞きます。  私が聞いたのは、いわゆる総合開発が進めば、「今後の人口増加や、総合開発が進めば再び悪化する可能性は十分ある。特に琵琶湖総合開発は、湖岸堤建設や、湖周辺の自然の改変は自然一の浄化能力破壊となるおそれは十分にある」と言われておるのですが、それは局長としてはそういうことはない、こうおっしゃいますか。
  19. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 大臣からも御答弁申し上げたとおりでございますが、この琵琶湖総合開発特別措置法自身琵琶湖水質の回復を図ること、それから琵琶湖自然環境保全目的としているわけでございます。単に法律でそうであるだけでなく、水資源として琵琶湖の活用を考えられている以上、やはり水質がさらに悪化するのではこれは目的が達成できないわけでございまして、かような観点から計画当局におかれては十分配慮して事業を進められていると私どもも信じます。なおまた、我々としてもさまざまな面でいろいろ御協議を受ける機会もあるわけでございますので、そのような機会を通じて御指摘のようなことがないようにやってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  20. 片山甚市

    片山甚市君 毎秒四十トンを放水するために一メートル五十センチ下がることについては保証ができておるという話でありますが、現地の人々と意見が違うことは事実でありますが、これ以上言いません。私は、長官及び局長意見については真っ向から否定をしておきます。後日恐らく私が指摘したようなことが起こると思いますが、大変なことになると思いますが、御心配してほしいと思うのですが、それ以上問いません。  そこで、前にも言いました人工湖岸の問題ですが、私は、前回までの質問の中で琵琶湖自然浄化機能をしつこく追及してきました。特に人工湖岸化などを進める開発計画は見直すべきだということを再三にわたり主張してきたのですが、長官は、全くその必要はない、先ほどもお話のようにそういう態度に終始されておったのです。  そこで、山崎自然保護局長は、せんだって、自然のヨシ原はそのままの状態で残すのが最善の道だとまず答弁しておられ、その後から、人工なぎさや人工ヨシ原それなりに適当なものだと考えていると補足して答弁されています。そうしますと、長官は、首尾一貫して開発は善であるという、これで大体改善ができるという態度であり、それなりに明快に上田長官らしい人となりをあらわしていると思うのですが、妥当なもの、だと思うのですが、しかし、理解に苦しむのは、一方、山崎局長答弁一貫性論理性がない。環境庁立場からこうあるべきだということを明示し、そうならないときにどうするのかということを言うべきだが、どっちつかずであって、あいまいであって、山崎局長のおっしゃることについては納得できない。  この際、このような人工湖岸化のやり方が琵琶湖水質及び環境にとって望ましいものかどうか、法案第二十五条との関係を踏まえて環境庁としての責任ある見解を述べてもらいたい。
  21. 山崎圭

    政府委員山崎圭君) 自然の浄化能力といいますか、浄化作用といいますか、そういうものを考える場合に、湖辺の自然湖岸というものはこれはできる限り残していただく方がいいのではないか、こういうことをまさしく御答弁申し上げました。  ただ、いろいろな開発事業といいますか、いろいろな各種事業を進めるに当たりまして、そういうものをできるだけ残していくという基本的な姿勢は変わらないといいますか、そういう考え方に環境庁は立っておるわけでありますが、しかし、いろいろな理由でやむを得ず人工的な湖岸をつくる場合もあろう。そういう場合には、次善の策として、例えばそのままコンクリートでやっておくよりも、なぎさでございますとかあるいは人工ヨシ原でございますとか、そういうものが生育できるようなそういう状態人工的につくることもこれまた次善の策として必要なことではないか、こういう趣旨で申し上げたつもりでございます。
  22. 片山甚市

    片山甚市君 環境庁は、次善の策でなくて最善の策を求めて各省庁、各関係行政機関に対して実施させるようにすることが私は役割だと思う。妥協すれば幾らでも開発によるところの破壊が行われてくる。  水質汚濁が起こって水が使えなくなるからやかましく言っておるので、一千三百万人の飲み水である琵琶湖の水が汚れて臭いとか危ないとか言われるからいろんなことを提案するのであって、そうでなければほっておくはずだと思うのです。それが今日本の国の開発事業をやっておる主体のお考えだと思いますから、私は意見が違うということを申し上げておきます。妥協しません。後日、琵琶湖が死んでしまってから取り返しがっかなくなってから、こんな話を国会でやっておったということにならないようにしていただければ、私の言うことが杞憂、天が落ちるといって心配した話になれば幸いですが、そうならないことが日々明らかになっておる。  私も琵琶湖に友達も住んでおりますから、話を聞きながら、このようなことについての国会での真剣な答弁を願い、八月の終わりの国際会議のときには、胸を張って、日本の国はこのように湖水を浄化させる、保全させる環境にしておるんだと言えるような結論をこの委員会法案成立のときにやってもらいたい。各委員が、日本の国の水を守るというか、国土を守るというか、民族を守るという立場から議論を詰めてもらいたい。これは利権の問題でありませんだけに、そういうようなことをまたくどく意見を申し述べておきます。  次に、琵琶湖埋め立てについてですが、再度聞くのですが、琵琶湖総合開発計画によって琵琶湖は現在までにどれだけ埋め立てられ、また将来どれだけ埋め立てられるか。国土庁になるのか、環境庁になるのか、建設省になるのか、まとめた大枠の御答弁を願いたい。
  23. 荒木寛

    説明員荒木寛君) お答えいたします。  琵琶湖総合開発事業による琵琶湖埋め立てにつきまして滋賀県その他等から報告を徴しておりますが、おおむね次のとおりでございます。  その一といたしまして、現在までの埋立実績でございますが、流域下水道関係におきまして約七十ヘクタール、それから漁港関係でございますが、五・六ヘクタール、それから水産振興関係で〇・六ヘクタールでございます。  今後の当該事業の実施につきまして埋め立て計画がございますが、その一つとして港湾がございます。これにつきましては、埋め立て規模について現在検討中でございます。確定したものがございません。  その二つといたしまして、都市公園がございますが、これは現在構想段階でございまして、埋め立て規模について未確定でございます。  その三番目といたしまして、水産振興がございますが、これについては二・四ヘクタールとなっております。  これのほかに、湖岸堤等について若干埋め立てがあるわけでございますが、先般の本委員会におきまして先生の御質問がございまして、建設省の方から御答弁申し上げております。全体で湖岸堤は約五十キロメートルでございますが、そのうち自然の前浜を残す部分が約二十七キロメートルでございます。それから、人工の前浜を造成してヨシなどの植生を行い、自然に近いなぎさにする部分が約六キロメートルでございます。残りの十七キロメートルにつきましても、当該地域水深等実情に応じまして、湖岸堤自体あるいはその前面にヨシ等植生を行うなど、可能な限り自然環境に配慮しているところでございます。  なお、その埋め立て面積についてでございますが、自然のなぎさと湖岸堤との複雑な交差等によりまして、面積を算定することが非常に難しい面があると聞いております。国土庁といたしまして現在のところこの点について把握しておりません。  以上でございます。
  24. 片山甚市

    片山甚市君 ありがとうございました。  できるだけ計画的に、自然を壊さないで、しかも埋め立て最小限度にしながら湖を守るということがやはり近畿圏というところの全生活を守る基礎になる。わずか十ヘクタール、二十ヘクタールをつぶしたばかりに水が汚れてくることがあれば、その損失は非常に大きい。そういうことで大所高所から考えるべきで、単に水が欲しいという意味ではなくて、琵琶湖水質保全をするためにも、十分に開発には検討を加えた上で慎重にやってほしいというのが私の意見です。  そこで、湖沼埋め立てに対する認識についてですが、去る五月十五日の衆議院環境委員会佐竹局長は、湖沼埋め立てば幸い大したことはないと述べておるが、琵琶湖に限らず、八郎潟、中海、諏訪湖などの実態を見ても事態はそれほど楽観できるようなものではないと思います。佐竹局長認識は、湖は海に比べてもともと面積がはるかに小さいという事実を無視しているのではないかと私は思うのです。そうでなければ、この埋立状況を見てそんな言い方はできないはずだと思うのですが、局長はなぜ大したことがないとおっしゃるのですか。
  25. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 湖沼が、閉鎖性水域として周辺自然環境と非常に微妙なバランスを保っている、したがってまた非常に周辺環境の変化に対して影響を受けやすいという点では先住の 一御指摘になられたとおりでございます。  私が衆議院で御答弁申し上げました趣旨は、同じく閉鎖性水域水質等の保全を図るための瀬戸内の環境保全法でございますが、ここでは、その埋め立てについて特に配慮すべきである、こういう規定が瀬戸内法にはあるわけでございまして、これに対して今回の湖沼法にそのような規定を設けなかった理由はなぜか、こういう観点から御説明いたしたわけでございます。  ただいま御指摘のような八郎潟あるいは中海について、埋め立てがそこの水質に影響があるということについては御指摘のとおりであろうかというふうに考えるわけでございますが、例えば琵琶湖について例をとりますと、湖の全体面積に対する埋立面積の割合というのが〇・〇二%ぐらい、瀬戸内海の場合には瀬戸内海全体の面積の〇・一%程度が埋め立てられていた。これは、ちょうど四十六年から四十八年にかけて非常に設備投資が盛んで、大規模開発が進んだ時代でございますのでかような数字になっているかと思いますが、幸い湖沼につきましては、過去に行われた八郎潟等の例を別にすれば、現実に著しく湖沼埋め立てが進んでいるという実態はございませんものでございますから、そこで特にこの湖沼法自体において瀬戸内環境保全法のような規定を設けなかったのだ、こういう御説明を申し上げたわけでございます。  そもそもその事柄の性質として、湖沼にとって埋め立てば影響ないのだとか、そのようなことを考えているわけでは決してございませんので、その点御理解いただきたいというふうに思うわけでございます。
  26. 片山甚市

    片山甚市君 局長の方がそうおっしゃっていないと言われるのですから、それ以上言いませんけれども、湖と海とでは非常に違いがありますから、湖沼の問題を論議したときに、大したことがないと言われると、埋め立てばどんどんやるんだなことれるような文脈になっておりましたから、委員会に出ておりませんから、文脈から番えば、あなたが今そう言っていないと言われるのであれば、それ以上言うことはありません。  さて、埋立法の五十ヘクタール以上の根拠について聞きたいのですが、水質保全局長佐竹さんは、湖沼埋め立てば、公有水面埋立法第四十七条二項の環境保全配慮条項でチェックができると述べておられますが、これは全く疑わしいと思うのであります。  理由は、そもそも同じ面積埋め立てでも、先ほどから言いますように海と湖では受けるインパクトが全然違うと私は思います。同法施行令第三十二条の二では、環境庁長官意見を求めるべき埋め立ての要件のうち、一として面積五十ヘクタール以上を挙げているが、この数字は海における環境影響を想定して定めたものであって、湖における数字は当然違ったものになるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  27. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 確かに、同じく閉鎖性水域といっても、絶対的な広がりが内湾あるいは瀬戸内海と湖沼の場合は違うわけでございますから、同じ面積の限度ではおかしいではないかという御意見は傾聴すべき御意見だろうと思いますが、ただ、法律の実際の運用といたしましては、ただいま先生のお読みになられました政令の三十二条の二でございますけれども、「埋立区域ノ面積五十ヘクタールヲ超ユル埋立及環境保全上特別ノ配慮ヲ要スル埋立トス」ということで、「環境保全上特別ノ配慮ヲ要スル埋立」につきましては、五十ヘクタール未満でも当然環境庁長官意見を求めなければならないことになっているわけでございます。  この「環境保全上特別ノ配慮ヲ要スル埋立」というのはどういうものであるかといえば、これは関係各省間で、自然環境保全上特に配慮を要する埋め立て、つまり、湖沼等については当然御指摘のように周辺環境変化に対して敏感に水質が変化するわけでございますから、その自然環境保全上特に配慮を要する埋め立てに該当する場が多いかというふうに思われるわけでございます。  なお、さらにもう一つ申し上げますと、その埋め立てた土地の上に立地する工場等が、汚濁化が非常に大きいようなそういう工場が来るような計画になっている場合、こういう場合には、環境庁長官意見を求めるというような運用が各省間で定着されているわけでございまして、したがいまして、五十ヘクタールという規定だけが動いているのであれば先生の御指摘のような御心配もあろうかと思うわけでございますけれども、私どもは、この後段の規定を活用いたしまして御指摘のようなことが起きないようにやってまいりたい、かように考えているわけでございます。
  28. 片山甚市

    片山甚市君 長い説明をいただきましたが、そうすると、「特別ノ配慮ヲ要スル埋立」の内容については、「環境保全上特別ノ配慮ヲ要スル埋立」ということでありますが、具体的にどことどことどこが協議をして、どういう条件の問題を議論するのですか。
  29. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 現在各省でこの規定を運用いたしましてかなりの年月がたっているわけでございまして、現在の運用の状況といたしまして一応コンセンサスができているところとしては、「環境保全土特別ノ配慮ヲ要スル埋立」としては、鳥類等の生息環境としての干潟等及び衆観がすぐれ、または植生等が貴重である自然海浜であって、特に重要である地域に係る埋め立てで十五ヘクタールを超えるもの、こういうものについてはこれに該当する。さらに第二といたしまして、食料品製造業等十六業種について工場が立地する埋め立てであって、その面積の合計が十五ヘクタールを超えるもの。それから三番といたしまして、埋め立て自体が、周辺水域の潮流を停滞させる等により当該水域において著しい水質の悪化を来すおそれのある埋め立てがこれに該当する埋め立てである。こういう理解で運用がなされているところでございます。
  30. 片山甚市

    片山甚市君 それでは、どういう省庁との間にその覚書、取り決めを行っていますか。
  31. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 特に覚書ということではございませんけれども環境庁長官意見を求めるのは、主務大臣が免許する際、主務大臣の免許は建設大臣、それから港湾区域については運輸大臣ということになっておりますので、私ども建設省、運輸省との間で大体今申し上げましたような解釈で運用がなされているわけでございます。
  32. 片山甚市

    片山甚市君 それでは、私流に、素人流に解釈するとこういうふうに理解してよろしゅうございますか。  上物の水質汚濁負荷が著しいもの、これが一つ二つ目に、水域の閉鎖化を促進するもの、三つ目、自然景観への影響が著しいもの、というようなものがあれば特別に詮議の対象になって取り扱いを考える、こういうように御答弁したというように理解してよろしいですか。
  33. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 私が先ほど御説明申し上げました内容を要約されれば、ほぼそのように御理解いただきましても基本的には間違いではないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  34. 片山甚市

    片山甚市君 そこで、今挙げられた要件も海域の埋め立てを想定したものであって、私は湖沼には大変難しいものだと思うんです。例えば、水域の閉鎖性を強めるなどということの議論は、もともと完全な閉鎖性の水域である湖沼においては無意味ではないだろうか。したがって、現行の公有水面埋立法によって埋めてある湖沼水質環境の悪化の防止を図ることは不可能だと思いますが、そのためには新たな制度が必要であると私は思うのですが、いかがですか。
  35. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 私どもとしては、現在、公有水面埋立法によれば、「其ノ埋立が環境保全及災害防止二付十分配慮セラレタルモノ」でなければ免許は与えられない、こういう一応規定になっているわけでございまして、それを担保するものとして、先ほど申し上げましたような環境庁長官意見を求めるという手続も決められているわけでございますので、これらの規定を活用することによって対応できるのではないかというふうに判断しているわけでございます。
  36. 片山甚市

    片山甚市君 私が申し上げるのは、湖沼というのはもともと閉鎖的でありますから、閉鎖性を強めるというようなことで、埋め立てをされることについて許可をするということは適当ではないのではないか。もう一度聞きますが、答えてください。
  37. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 湖沼について水が停滞しやすい水域であるということは御指摘のとおりでございますが、湖沼ごとに見れば、決して将来とも永久に停滞しているわけではございませんで、水の循環はあるわけでございます。  湖沼ごとに、どのくらいの回転日数と申しますか、水が入れかわるための日数がかかるかというのは、個々の湖沼ごとに条件が違うわけでございます。したがいまして、湖沼は海とは条件が違うのだから、そういう自然的条件が完全に違うのだから制度はやはり違うべきであるという御意見には、私どもとしては直ちには賛成いたしかねるわけでございまして、現在の規定の運用でも対応できるのではないか、かように考えているわけでございます。
  38. 片山甚市

    片山甚市君 せんだってからの議論のように、湖沼は河川の一部である、流れておる、こういうような哲学で建設省もおりますし、環境庁もおるようですから、これ以上言いませんけれども湖沼というのは、流れるといっても、非常な長い月日、何カ年も何十カ年もかかるような水があり得るということをお知りだと思います。琵琶湖の一番下の水が洗堰を通って、またインクラインを通って京都の水になるまでの間、相当の年月を眠るといいますか、生きておる。死んだら大変でございますから、生きておらなきゃならぬ。  ですから、私はそういう意味で、埋め立てをするということに対して少なくともこの際はやめるべきだという説を持っております。環境を守るということ、また日本列島のいわゆる生々発展のためにも、海岸を埋め立てたり湖辺を埋め立てたりすることはこの際やめた方が日本の国のために、国益になると思う立場から言っておるのでありまして、開発しなければ日本の国の産業は成り立たないと思ってやった開発が、どこでも臨海工業地帯があいておるじゃないですか。そうでしょう。埋め立てたりいろんなことをしましたけれども、工場が来なくて大変なところがある。そこへ行ってやったらいいのです。そういうように便利なことだということでにわかにやられることについては、いまだに私は賛成できません。  そこで、特定施設の新増設について許可制をとらなかった理由について佐竹局長は、瀬戸内の場合と比較して工場排水の負荷割合が少ない、一工場当たりのCOD排水量が少ないからだと答弁しておりますが、しかし、本法案によれば、現在あるものには手をつけず、新増設のものについてだけ新たな規制をするというのだから、現状の寄与率がどうのこうのということはないはずだと思う。関係のないことまでもっともらしく言うところに本法案の欺隔性があると思えて仕方がないのですが、それについての御所見はいかがでしょうか。
  39. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 確かに、瀬戸内法が新増設する工場について許可制になっているのに、何で湖沼法では届け出で足りるのかという御質問に対して、ただいま御指摘のございましたような点について御答弁申し上げたことは否定いたしません。  しかしながら、また別のところでもお答えしているわけでございますけれども、許可制というのは、一般的にまず禁止ということになるわけでございます。指定湖沼周辺には一切新しい工場、事業場を建ててはならない、しかし、特定の条件を満たすものについてはこれは許可いたしましょう、こういうことでございます。これはやはり国民の権利義務に対するかなり強い規制というふうに言うことができるだろうというふうに思うわけでございます。  一方、私どもの届け出は、届け出をしていただいて、それがある基準に適合しなければ計画変更命令をかけるということでございまして、やはり基準に合致しなければその設置はされないような仕組みになっているわけでございまして、同じ目的を達成することができるならば、国民に対する権利義務に関する規制はできるだけ最小限であるべきである、かような法律技術的な要請から届け出制をとったわけでございます。運用の仕方によって、許可制の場合も届け出制の場合も全く同じような目的を達することはできるわけでございまして、その点をひとつ御理解いただきたいと思います。
  40. 片山甚市

    片山甚市君 現在あるものには手をつけずに、これからのものについては届け出制で、まあ信用するから、こうくる。片一方のあれは、人口がふえてきて生活雑排水等大変なことになる、下水道をしなきゃならぬ、一番問題は人間がふえることである、家が建つことである、国民の生活水準が高くなって水をむだに使うから、もっと井戸でくんだようにしてくれたら汚れぬのに、こういうような言い方をしゃあしゃあと長官もしておるようです。  そういうことになるかどうかについては、この湖沼法の制定によって明確にわかることだと思います。県民、また住民というものは知恵がありますから、よくわかれば全面的な協力をしてもらえる。もう少し実態を、水の性質をわかってもらえるような状態にしなければならぬじゃないか。水道の便が十分にできた、ポンプが十分にできた、こういう形の中で下水道の問題があるのでありまして、下水道が先にあるのじゃなくて、上水道があって、上水道を引いたときにどうするかということを考えずにやっておる生活について具体的な指摘がない。これは、上水道の問題は御承知のように厚生省の仕事、下水道の方は建設省か各地方自治体でやる、こういうことですから、このバランスがとれておらない。各省庁の縦割りの仕事の弊害だと思います。  そこで、せんだって質問をしたのですが、もう一度質問したいと思うのです。湖沼水質保全基本方針の中で、水質環境基準の達成博期について、琵琶湖はいつごろまでに達成できる予定なのか、その他については大体いつごろまでにするつもりで環境庁は考えていますか。
  41. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) ただいまの御指摘の点につきましては、湖沼水質保全計画を立てる過程で、前回も答弁いたしておりますので重複になる部分は省略いたしたいと思いますが、その過程で水質の現況、それからその利用目的、それからまた規制の厳しさ、それからまた投入できる下水道整備のための予算措置、こういうものを勘案して大体何年ぐらいかかるかというような見通しも立てていきたい、かように考えているわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、現在琵琶湖につきましては北湖、南湖とも環境基準CODで一ppm。それに対して北湖で二・六、南湖で四・二。三倍ないし四倍という状況でございますので、これを極めて短期間に達成するのは相当難しいということは現段階でも申し上げられるわけでございますが、私どもとしては、できるだけ具体的に水質保全計画策定の過程でその達成に要する期間等も明らかにしてまいりたい、かように考えております。
  42. 片山甚市

    片山甚市君 達成時期については、できるだけ目安をつくって県民にも訴えて協力方を願えるようにしてもらいたい。我々は一つの目標を持ちますと割に動きますが、待てば海路の日和ありでゆつくりしておると、悪くなることはあってもよくなりませんので、達成基準を決めたら、それは県民がわかる、住民がわかるようにしてもらいたい。あなたたちが何ぼ帳面に書いておいても間に合いませんから、そういう意味意見を述べます。  次に、都道府県知事の作成する湖沼水質保全計画の見直しの期間を五年というようにしておりますが、これは一定の期間ということにして、もう少し繰り上げて見直しをすることはできないでしょうか。
  43. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 確かに、水質保全計画を五年ごとに定めるということで、見直し期間五年としているわけでございます。  これにつきましてはいろいろな考え方があるわけでございますが、琵琶湖あるいは霞ケ浦のの富栄養化防止条例の運用の実績等を見ましても、やはりある規制措置等をとりましても、その効果が出るにはやはり三年ないし五年ぐらいはかかる。むしろ湖沼の性格等から見ればもうちょっと長く七年ないし十年というようなことも考えられないわけではございませんけれども、それでは行政の努力目標としては余りにも長過ぎるというようなこともございまして、そのような観点から五年というふうにしたわけでございます。  もちろん、計画を改定するのが五年ことでございまして、実際にその過程で計画に基づいてこういった措置が果たして成果が上がっているのか上がっていないかというようなことにつきましては、別に五年を待たなくてもその前も常に注意して見守っていかなければいけないわけでございまして、私どもとしてもそのような指導をいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  44. 片山甚市

    片山甚市君 そこで、水質保全のための下水道整備事業の問題でございますが、その事業について重点的な施策を進めることについて計画的なものがありますか。
  45. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 下水道事業の執行につきましては、すでに御承知のように、下水道整備五カ年計画に基づいて計画的に行われているわけでございます。その下水道整備五カ年計画の中で、特に湖沼等の閉鎖性水域については重点的な投資をするということがうたい込まれているわけでございまして、建設省におかれましても、大変財政事情の厳しい中ではございますけれども琵琶湖霞ケ浦等の重点的な湖沼については優先的な配分を現に行っていただいているわけでございます。  ただ、遺憾ながら、従来日本の下水道整備は、先生も御承知のように大都市圏を中心に行われてきたこともございまして、こういう湖沼周辺のような比較的農村的色彩の濃い地域の下水道整備率はまことに低いわけでございますけれども、今後は、この湖沼法の水質保全計画等に基づきまして計画的な水質浄化が図られるように関係各省間で十分協議いたして計画内容を固めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  46. 片山甚市

    片山甚市君 この湖沼法の成立を進めておるのは、自治体を含めて、流域下水道を含めて事業が進捗をするように法的な保護が受けられるようにということがあるようでありますから、その点は、法律はできましたけれども相変わらず事業がうまくいかない、こういうことにならないようにお願いをしたいと思います。  指定湖沼、指定地域のことですが、当所十カ所程度を想定しているようでありますが、下水道整備事業計画等を勘案して追加をこれからされる予定はありますか。
  47. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 具体的に名前を挙げてすでに各県等と御相談申し上げているのは十湖沼程度というふうに申し上げているわけでございます。さらに十湖沼程度の追加は当然考えているわけでございます。  ただ、先ほど先生からもお話ございましたように、やはりこれは指定湖沼になって水質保全計画を立てた以上、絵にかいたもちになっては困るということがあるわけでございまして、そういたしますと、やはり現在の下水道整備予算のうち湖沼に最大限割ける予算の部分というのがあるわけでございます。そういうことを考えますと、いたずらに数をふやしましても結局どうも広く薄くというような予算のつけ方になってしまう、それではどうも成果が上がらぬのではないかというところから十ないし二十というふうに申しているわけでございます。  今後公共事業の予算がどういうふうになっていくかもわかりませんけれども、さらに公共事業の予算が伸びて湖沼に配分できる予算の枠等がどんどんふえていくということになれば、さらにもっと追加してまいりたい、かように考えているわけでございます。
  48. 片山甚市

    片山甚市君 道路も非常に大切な一つの公共事業でありますが、今日国民の共有財産になっております湖沼というものをこれ以上悪化させないためには、流域下水道を含めて下水道事業が完全に行えるように計画を強めなければ、この湖沼水質保全特別措置法というものをつくった価値がなくなる。  私は、自然浄化の問題や、環境を変えることに反対し、開発優先を反対してまいりましたけれども、それだけではできないことでありますから、その代償といたしましては農業のあり方も変えなきゃならぬだろう、しかし、特に家庭用の雑排水を含めて何としても改善をしてもらいたい、こういうような立場で考えてきました。  そこで、本案の第三条による水質環境基準が確保されていない、またそのおそれが著しいと見られる湖沼ということで考えているのは、何回か説明を受けたのですが、今のところ幾つありますか。
  49. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 現佐、湖沼としての水質環境基準が当てはめられている湖沼は百三湖沼あるわけでございます。そのうち五十七年度現在で四十三湖沼環境基準を達成しております。残りの六十湖沼では遺憾ながら未達成、こういうような状況にあるわけでございます。
  50. 片山甚市

    片山甚市君 この間美濃部委員がおっしゃっていたように、今汚れてしないというところも汚さないようにすることも水質保全目的でありますから、汚れてしまってからやるということのないような環境の先取りをする努力をこれからやってもらいたい。  そのためには、研究体希の問題ですが、淡水赤潮発生メカニズム、湖沼自然浄化機能などの研究についての現状と今後の方針、それから予算はどのようにそれについておるのか、研究結果についてどういうように迅速に活用できるのか、これらについて説明を賜りたいと思います。
  51. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 淡水赤潮につきましては、環境庁におきましてここ数年淡水赤潮発生メカニズムについての研究を継続しているわけでございます。  これは海の赤潮も同様でございますけれども、現在その発生のメカニズムについては、やはり赤潮の原因となるプランクトンの種類ごとに条件を突き詰めていく必要がある。それから、単に窒素あるいは隣の濃度ということだけでなくて、さらに微量要素の存在、それからまたそのときの水温、気温の状態、こういうふうな複雑な条件をプランクトンごとに詰めていく必要があるというふうな知見を一応得ておるわけでございます。現在研究を続けているわけでございます。  さらにまた、自然浄化機能につきましては、私どもの国立公害研究所においても、各種水草あるいは接触酸化剤等を使った簡易な浄化施設による浄化が図れないかということの研究を行っているところでございます。さらにまた、科学技術庁の資源調査所におかれましても、先般、自然浄化機能を活用した水質の浄化対策について報告書をまとめられているわけでございまして、各省それぞれの場でこの問題に取り組んでいるわけでございます。  予算の具体的な数字につきましては、ちょっとただいま数字の持ち合わせがございませんので、もし必要があれば後刻お知らせいたしますが、淡水赤潮の調査対策費でございますけれども、五十八年度におきまして千二百万の予算が措置されているわけでございます。
  52. 片山甚市

    片山甚市君 研究の結果についての迅速な活国策というのは、研究した結果こういうことになりましたというのについては、どういう宣伝をされて活用していただいていますか。
  53. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 淡水赤潮の研究も含めまして、赤潮の研究は、究極的には赤潮をコントロールする、つまり赤潮を起こさないようにするためにどのような措置を講ずればいいかということを明らかにすることにあるわけでございますが、遺憾ながら、現在の研究段階ではそのような決め手はいまだ見つかっていない状況でございます。現在、これは淡水赤潮よりもむしろ海の赤潮の方の問題になろうかと思いますけれども発生予察、つまり、どういう条件があれば赤潮発生しやすいかということを予察して関係の漁業者等に事前に知らせる、こういうことに重点が置かれているわけでございます。しかしながら、私どもとしてこの研究をいたします意味は、最終的には淡水赤潮をコントロールすることにあるわけでございまして、引き続きそのような方向で今後も研究を続けてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  54. 片山甚市

    片山甚市君 最後に、大臣、何回か大臣が熱心に答えていただいたのですが、私の方からもう一度お願いをしておきます。  一つは、やはり湖、沼が自然自浄作用を持って自分で直していく力を持たすようにしてもらいたい。自然破壊をやめてもらいたいというのが一つ。  二つ目には、汚れる物を出さないで除去することをまずしてもらいたい。そしてその中で、先ほどからありますように、当面、湖の汚れの原因になる、工場排水だけじゃありませんけれども、家庭雑排水を含めた下水道の完備等についてしてもらって、湖中堤をつくるとか湖岸堤をつくるとかいうことで開発の方に力を入れる前に、汚れをなくしていく、自然浄化の作用を強めてもらいたいということを重ねて申し上げて、開発第一主義をやめてもらいたいということで結んでおきます。
  55. 上田稔

    国務大臣上田稔君) いろいろ先生から御指摘をいただきまして大変ありがたいと思うのでございます。  先生の御指摘のとおり、汚れておるものを出さないように、また、工場あるいは家庭雑排水等、そういうものにつきましては下水道を早く完備をしていくようにという御忠告でございまして、私どももその方針でひとつ進ませていただきたいと考えております。  また、開発を優先しないようにということでございまして、むやみな開発はもちろん私どもそういうことは覧ており喜ん極力開議非堂に重要な水を守っていただいております湖沼でございますので、この湖沼をまた私どもは守っていくということを考えて進ませていただきたいと存じます。  また、自然の自浄作用、これもひとつ十分に考えるようにということでございますが、この点も私どももそういうことを考えて、琵琶湖総合開発その他の湖沼開発におきましてもそういう点を強調をしていきたいと考えております。
  56. 片山甚市

    片山甚市君 終わります。
  57. 丸谷金保

    丸谷金保君 きようで質疑を終結したいというふうな意向もありますので、間違いなく質問に答えていただきたいと思います。記録を読んでみますと、質問に答えていないことがしばしばございますので、ひとつどうか御答弁の方もきょう質疑が終えられるように御協力をお願いします。さもないと、残念ながらもう一日やらなければならないということもございますので、よろしくお願いいたします。  最初に、大臣、私は池田の町長時代下水道事業を始めるのに、カナダが大変進んでいるというので調査に出かけました。その後五十年代になって姉妹都市を結んだ、カナダ西海岸のバンクーバーから約四百キロほど入った町でございますが、ペンチクトン、ここにオカナガン湖という湖があります。大変きれいな湖です。西からの観光団がふえていますから、これだけの景勝地を持っていればカナデアンロッキーへの西側の一つの基地になれるのにどうして観光開発をやらないのかということを聞きましたら、いやその計画はあるのだ、ただ、まずその前に環境の影響の評価をやって、この湖の水をいつまでもきれいにしていくためには環境保全をどうしたらいいかということに時間がかかってしまって、それから、今ようやく下水道事業が完成したところだ、これが完成したのでこれから観光地として町づくりを始めるのだ、こういうことなんです。  やはり湖沼水質というものをきれいにしていくためには、環境評価というふうなことが前段としてきちっと行われることが必要だということを私はそのとき勉強させられました。三次処理までやっている水道の水も見まして、市長さんが、これ飲めるよと言うくらいのきれいな水でしたが、日本に帰ってきて、三次処理までやりたいんだが、池田町では、と言ったところが建設省に怒られました。業者も、技術としては我々決してカナダに負けないけれども、予算がつかないんだという話です。  衆議院で金子みつ委員質問に対し、この点を大臣は上手に答弁していないのです。金子みつ委員は五月十五日の衆議院環境委員会で、記録では六ページにあります。「やはり幹は環境アセスメント法ではないかと考えられると思うのです。ここがもとで、それとの関連において湖沼法もあり、水質汚濁防止法もあるんだというふうに私は考えるわけです、間違っていたら御指摘くだすって結構なんです」と、こういう質問をしているのです。しかし、環境庁としてはアセスの法律、湖沼法、非常に大事だということで、先生お考えをいただいているようでありますが、湖沼法というのは云々ということで、湖沼法が必要だという答弁に終始しているのです。で、金子みつ委員質問には結局長々と答えていません。六ページの記録ごらんになったと思います。だからもう一回聞きます。  環境アセス法というのは基幹の法律であって、やはりそれを基幹にして湖沼法とか水質汚濁法とかいろいろな法案が組み立てられていくものであるかどうか、それは別だとお考えかどうか。この点簡明にひとつ、そうです、そうでない、それだけで結構です。
  58. 上田稔

    国務大臣上田稔君) お答えを申し上げます。  丸谷先生の御質問でございますが、カナダの湖を例にとって、環境アセスをやって、そうしてそれから後に観光を入れた、こういうお話でございます。そういうふうにできましたら一番私もいいと思うのでございます。しかしながら、どうも日本では、例えば琵琶湖を例にとりましても、琵琶湖周辺にはもう工場よりも以上に琵琶湖の水を今汚しておりますも人口が先に張りついておる、こういうことでございますので、この琵琶湖周辺が、滋賀県はどのぐらいの人口がいいのかというようなことも、そういうアセスはちょっとできなくなってしまっておるのが現状でございます。したがいまして、先にもうやはり悪くなっておるものを、そうしてまた関西の水がめになっておりますので、そういう意味においてこの湖沼法というものを早く制定をしていただきたいということを金子先生の御質問のときにお答えを申し上げたのでございます。  アセスの方も金子先生が一番大事じゃないかということを言われました。私もアセスというのは根本になると思うのでございますけれども、そういう趣旨で実は環境庁はアセスの法案を三年前に出させていただいて、そうして鋭意これの成立をお願いをしてきたところでございますが、昨年の暮れに残念ながらああいうような状況で解散になり、廃案になったのでございます。  それから後も、このアセスの法案はどうしても、今日本人が考えてもやはりこれは必要である、どうしても事業をやってもらう上において、それよりますアセスをやってからやらなければいけないのではないか、こういうことで、実はアセスは重要であるということでやらせていただいておるのでございまして、今もなおその重要性を認識して、そうして与党の中でいろいろと意見をまとめていただいております。
  59. 丸谷金保

    丸谷金保君 アセスがやはり環境行政の基本的な中核になる法だということについてはお認めになりますね、環境庁長官
  60. 上田稔

    国務大臣上田稔君) そういうふうにできるといいのでございますけれども、なかなかそういうふうに今現状日本実態が行っておらない。例えば先ほど申しましたような状況でございますので、やはりその場その場の対策を考えていかなければいけないというのが今の状況でございます。
  61. 丸谷金保

    丸谷金保君 もう一度お伺いします。  その場その場の状況を私は質問しているのじゃないんです。アセスが環境行政の中核になる法律だということはお認めになりますねと言っているので、その場その場のことはもう今までの質疑でわかっているのですから。
  62. 上田稔

    国務大臣上田稔君) お答えを申し上げます。  私も、環境アセスというのはこれはもうどうしても中核としてやっていかなくちゃいけない、中核というよりも先にやらなければいけないものであるというふうに考えております。
  63. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこで長官、同じように衆議院中村委員さんの質問に対しても、アセス法案につきましては、私どもはぜひとも出さしていただかなければならない、そういう調整をとって、懸命に、「二十三日にはぜひとも審議を終えて成立をさしていただきたいと念願をいたしております。」ということを雷っております。これは会期延長にならない前の話です。  それからさらにまた、岩垂委員質問に対して、「今国会におきまして成立を期するべく、努力をいたしておるところでございます。」さらに同じく、「だんだんと期日が迫ってまいりますので、今お話しのとおり、そういう方面につきましては私の方も意見を申し上げて、御意見を承ろうということでいたしておりますが、まだ、国会答弁をしております今までの状況のとおりでございます。」こういうふうに、大臣としては非常に意欲的に何とかしたい何とかしたい、できるだけ懸命な努力をしてアセス法案を提案していきたいという努力をしていることが随所に出ているのです。こういう場合、政治家というのは、一生懸命努力したができなかったということになった場合に、私はやはり政治家としての責任があると思うのです。その点については大臣はいかがお考えですか。
  64. 上田稔

    国務大臣上田稔君) ただいま先生の御質問は、アセス法案を出したいということで大臣は頑張っている、しかしながら出ない場合はどうか、こういうことでございます。  私は、このアセス法案というのは、やはり先生の御指摘のように、環境行政については非常に大事な、一番大事なものであるということについては認識をいたしておるのでございます。したがいまして、この法案をぜひとも審議をしていただいて、そうして成立をしていただきたいと念願をいたしておりますので、これについて今、廃案になったその法案をまた出させていただきたいということでお願いをしておるのでございます。  懸命にやっておるのが今現在の状況でございます。きょうも実はいろいろ御意見を伺っていただいてやっていただいておる最中であるというふうに聞いておるのでございますが、そういう状況でございますので、懸命にさらに続けてやらせていただきたいと考えております。
  65. 丸谷金保

    丸谷金保君 大変まじめな大臣が懸命にやっていると言うのですから額面どおり受け取りたいのですが、既に巷間伝わるところ、経団連はアセスは出させないことに内部で話を煮詰めて、政府方面に対してはその経団連の意向を伝えたから今国会には出ない、こういうことになっておるそうですが、そういう話をお聞きになったことございませんか。
  66. 上田稔

    国務大臣上田稔君) 直接には私は聞いておりません。直接というか、経団連からそういう決議をいたしましたということについては聞いておりません。しかし、こういう法案を出すか出さないかにつきましては経団連がお決めになることではございませんので、さらに私どもの方は与党の中の御意見を調整をしていただいておるところでございます。
  67. 丸谷金保

    丸谷金保君 巷間伝わるところでは、経団連がお決めになるそうなんで、ひとつしっかりそうでないということを立証していただきたいと思います、事実をもって、今会期中に。  きょうはもう一つ大事な問題がございますので、そのことを強く要望でなくて要求して、今国会で今まで言ってきたとおりにやってもらうことを要求して、一応この質問を終わります。  それから、法制局長官お見えになっておりますね。  実は、今回の政府提案の法案の三十条についていろいろ憲法上の疑義の問題が出てまいっております。それで、私はそのことについて、内閣法制局がいいと言っているのでいいのだというふうな話をしばしば関係筋から聞かされます。  実は、長官、こういうことがあったのです。あれは昭和四十七年の夏のことなんです。私が池田町の町長時代、三宅さんという六十七歳のお年寄りが、当時です、訪ねてまいりまして、実は長いこと役場に勤めて、その後、楽な仕事ということで町内のある産婦人科の医院で事務をとっていた。ところが院長さんが年寄りでやめてしまって、今になってみると年金では食っていけない。昭和四十七年の夏で年間の年金受給額が十七万八千円なんです。私は、少なくとも役場に長年まじめに勤めた方がこんなひどい年金で仕打ちを受けているということはもうもってのほかだ。  いろいろ紆余曲折は私の「乾杯!ワイン町長」という本の中で書いておりますので省略しますが、年金のスライド制を町だけで実行いたしました。町職員の退職者について全部計算し直して町費から出しました、労働組合から農村の人たちからみんなに理解をしてもらって議会満場一致で。それが、道それから自治省そして法制局をくるんで違法だから直ちにやめれという指示を受けたのです。自治省の当時は公務員部長といいましたか、林さんという方です。昭和四十七年です。そしてそのときも、法制局が違法だと言っているからやめれと。私はこのとき憲法で闘いました。憲法に生きる権利があるじゃないか、年金法にも食う年金を支払う義務を負っているじゃないか、財源もこういうふうにあるじゃないか。やめませんでした。  違法だからやめれという内閣法制局の御託宜をもって自治省なり県なりがいろんなことで圧力をかけましたけれど、私は、憲法と、それからもう一つは、食えない年金のままにほっとくということは不作為の違法を政府もやっているのだから、フリーハンドの原則からいっても私はこれで行政的な処分をしてきたら闘いますと。そのままに結局なってしまいました。私の方はそのまま実行したのです。そのときに思ったことで今長官にお伺いしたいのです。  法制局というのは、結局は国民のための法の番人ではなくて、政府、行政機関が法律をつくってやりやすいようにしていくことに対する、これはこれでいいんだということを具申するというか、役所だな、国民のための法の番人ではなくていわゆる内閣の一機関として、内閣の命令に従ってこれはいいとか悪いとかという判断をする行政機関だというふうに思ったのですが、その私の考えは間違いございませんでしょうね。
  68. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ただいま御指摘のございました四十七年当時の事実関係につきましては、突然のお話でもございますし、私実は十分承知しておりませんので、この席でお答え申し上げるわけにはまいりませんが、一般的な問題といたしまして、今丸谷委員からお話のございました見解につきましては、私どもも襟を正して聞かなければならないと思っておりますが、私ども立場としましては、今お話のありましたように、国民のための立場に立つわけではなくて、あくまでも行政機関の一つとして政府のためにいろいろと考えを進めるというような御意見に対しましては、私どもとしましては全くそうではない。我々の信念として、あくまでも日本は法治国家でございますから、憲法を初めとする法律の定めたところに従って行政が行われるべきであるという信念と確信を持ちまして毎日の仕事を我々一同続けておるつもりでございます。  そういう意味で、個別的な問題につきましては、お立場立場でいろいろな見方もあろうかと思いますし、また憲法に対するお考えにつきましてもまたこれいろいろあると思うのでございます。ただ、我々といたしましては、我々の立場で最も正しい憲法の解釈あるいは法律の運用、解釈、運用ということに心がけまして、そうして日常の仕事に邁進しておる、こういう心づもりでおるわけでございますので、ひとつその点は御理解をお願い申し上げたいと思います。
  69. 丸谷金保

    丸谷金保君 心づもりはよくわかるのですが、私は心づもりを聞いているのじゃないんです。基本的に内閣の中の行政機関であって、その指揮命令系統にある法制局だというふうに理解していいのか悪いのかということを言っている。いろいろ努力なさっていることわかります。しかし、法や憲法の番人であるはずがないんで、じゃ何だと、究き詰めていけばそういうことになるのじゃないですか。一生懸命おやりになっているということの形容詞は別です。
  70. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 先ほど申し上げました私ども立場ということは御理解いただけたのではないかと思いますが、今言われました心構えの問題、この点につきましても、私どもは、立場上いわば行政機関のもちろん一つでございますけれども行政機関の中における法律顧問的な立場において一つのプライドを持ちまして、そうして言うべきことはびしびしと言う。  今おっしゃいましたように、上部からの指揮監督、命令を受けて何かしているのではないかという点につきましては、これは私どもとしても大変心外でございまして、言うべきことは従来ともびしびしと上にも申し上げているつもりでございますし、また、折に触れて個別的な問題につきましても率直な意見、我々として正しいと信ずる意見を申し述べておるつもりでございます。そういう心構えだけではなくて、実際にまた仕事の面でもそのようでなければならないということを考えてやっているつもりでございます。
  71. 丸谷金保

    丸谷金保君 私の質問の仕方が悪いのかしれませんけれども、私は決して曲げた解釈をしているというふうに思っていないので、心外ととられたら私も心外なんです。  そうでなく、やはり政府の行政の一機関としてそれは相談役であり、あるいは顧問的な立場でずけずけと物をお言いになるとしても、それは内閣に対してですね。内閣の機関であるということだというふうに私が当時考えたのは間違いではないのでしょう。そのことを聞いているので、決してやっている仕事がけしからぬということを言っているのじゃないんです。
  72. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 内閣法制局設置法にありますように、まさに私どもの役所は内閣のもとにあるわけでございます。しかしながら、先ほどの仕事の面における我々の立場というのはるる申し上げたとおりでございます。
  73. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、今度その基本的なあれをまずきっちりしておかないと、往々にして何か独立した別の機関のような印象を受ける答弁を時々いただくので、もう法制局が言ったら絶対だというふうな意見をいただくので、そのことをきょうは明らかにしておきたかったのです。  それで、実は衆議院の川俣議員の予算委員会質問に対して長官が、種苗法における育成者の権利はこの条約に定める育成者の権利であるということを言っておるのです。先日第四部長に質問したときも、それは法律による権利と言ったのでなく、条約によるところの育成者の権利と言ったのだ、こういう御答弁だったので、ここら辺は実は湖沼法の三十条、罰則規定に関連してまいりますので、ここで明らかにしていただきたいと思うのです。  というのは、一体ここで言う権利、この場合には明らかに知的な所有権に属する、いわゆる権利法から言えば無体財産権です。そうすると、憲法二十九条「財産権は、これを侵してはならない。」財産権の内容は公共の福祉に合わせて法律で定めるとありますね。そうすると、農産種苗法の条約上の権利というのは日本の国の法律の中の法的な権利であるのかどうか、また、条約上の権利と法律上の権利はどう違うのか、この点についての御見解をお伺いしたい。
  74. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 御指摘のとおり、ことしの三月二日の衆議院の予算委員会で川俣委員から御質問がありまして、私が答弁を申し上げたわけでございますが、その中で「条約に定める育成者の権利」という言葉を用いたことは御指摘のとおりでございます。これは、いわゆる植物の新品種の保護に関する条約におきましては、育成者の権利という用語が随所に使われておりますし、また、川俣委員の御質問がこの条約の解釈に係る問題でございましたので、そこで私は「条約に定める育成者の権利」という条約上の用語を使って御説明を申し上げたわけでございます。  一方、また、四月の十七日に参議院の大蔵委員会丸谷委員から私どもの工藤四部長が御質問を受けまして、その中でいろいろなことをお答え申し上げたわけでございますが、そこでは、種苗法におきましては権利云々という言葉は明示しておらないけれども、ただ、五十三年の審議録にもありますように、実態的には法的保護を受ける地位にあるというような御説明をしたかと思うのでございます。したがいまして、権利という言葉と、それから法的保護を受ける地位というものは直接的に結びつく概念でございまして、特にこの両者の間で矛盾があるということはないのではないかと思います。
  75. 丸谷金保

    丸谷金保君 憲法二十九条で、財産権の内容は法律で定めなければならないとなっている。しかし、この場合、権利法におけるところの無体財産権、これは明らかに特許ということに限定しているのです。したがって、農産種苗法では法律上の権利という定め方をしておりません。権利の反映だ、そういう答弁昭和五十三年当時も再三しておりますし、そういう統一見解も出ておりますね。ですから、今長官が言うように、条約上の権利で保護されるから、保護の対象になるからそれは財産権だということは私は言えないと思うのです。憲法は明らかに財産権の内容は法律で定めると言っているのですから。法律では定めていない、日本の法律では。だから、国際条約のUPOVに加盟して、そのときも論議になりました。  きょうはそのことは時間がありませんから詳しくは申し上げておりませんけれども、UPOVの条約そのものにも相当問題があるのです。無性繁殖と有性繁殖の問題を一緒にしているような今の日本の法体系の中にも問題がありますし、アメリカがなぜなかなか加盟しなかったかという問題もあるのです。アメリカでは植物の新品種の登録と特許は有性繁殖、無性繁殖でちゃんと分けておりますから法的な権利なんです、品種登録も。しかし、日本ではそうでないということを明らかに今までしているのですから、長官が権利と言ったものですから権利だけが走ってしまいました。いろんな問題が起きております。  こごでもう一遍ひとつその点について、憲法二十九条と関連して、法律に定めていないのを権利と言えるかどうか、日本国でですよ。
  76. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 国内法としての種苗法におきましては、もう先生十分御承知のとおり、新品種の保護のための品種登録に関する制度がございまして、いわゆる育成者の立場におきましてはいろいろと国内法的な保護を受けておるわけでございます。  そういう意味で、その地位を今先生言われたように財産権の一部と見るのかどうかという点につきましては、これは見てもいいのではないかと私は思っております。というのは、この種苗法という国内法で明らかに育成者というものはいろいろな保護を受けておるわけでございまして、いわゆる法的な保護を受ける地位にあるわけでございますから、そういう意味で、ただいまお話のありましたように、単なる権利の反映というのではなくて、やはり一種のそういう地位を法的に持っておるということが言えるのではないかと思います。
  77. 丸谷金保

    丸谷金保君 その法的な地位は、財産権と理解してよろしゅうございますか。
  78. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ただいま申し上げましたように、国内法上の種々の保護を受けておるという意味におきまして、その内容の実態から見ますればやはりこれは一種の財産権的な保護を受けておる、こういうことになると思うのであります。
  79. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこで、今、はしなくも長官は「的」という言葉を使いました。これが今問題になっている法律の中にも三十条で「合理的」という言葉で出てくるのです。  私の質問は、二十九条に言う財産権ですかどうですかということで、財産権的だというふうには聞いていないのです。財産権と長官が言い切れるかどうか、法律の規定にないものを。種苗法は一つも権利という言葉を使っていない。わざとそれはいろんな内閣の統一見解があって避けたやつを今長官がここで権利的という言葉を使う。その合理的というふうに「的」という言葉を使っているあいまいきが、私たちが、この三十条は憲法上疑義があるということにつながるのです。
  80. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 先ほどからたびたび申し上げますように、種苗法におきまして育成者はいろいろな保護を受けておるわけでございまして、そのような地位に着目いたしますれば、やはりこれはそのような経済的な保護を受けているという意味では、一種の財産権としての保護を受けておるというふうに言ってもしかるべきではないかと私どもは考えております。
  81. 丸谷金保

    丸谷金保君 まだ本論に入る前にここで問題なのですが、実はこの問題については、昭和五十三年の二月十八日に川俣議員から出された質問第十二号に対する総理大臣名の答弁書をちょっと長いけれども読みます。「農林省では、植物の育種の振興を図るため植物の新品種を育成した者を保護する制度を整備することとしているところであるが、現在のところ植物新品種の育成者の地位については、知的所有権に属しないようなものとして構成する方向で検討中である。」この答弁によって、それまでの法案の内容をがらりと変えて、農林省は、農産種苗法改正案という形態で、権利法ではなく行政取り締まり法規として構成された新品種登録の反射的利益として一定の特権的利益を付与する、こういうことになったのです。  したがって、権利性は否定されることになって、法文中に一切権利という言葉を使わなかった。いわゆるこれは行政取り締まり法規として構成され、新品種登録の反射的利益として一定の特権的利益が付与された、こういうことになっているのですよ。  内閣の答弁として、知的所有権的なものでないという解釈のもとに法律ができてきたのに、どうして長官が一種の権利だと言えるのでしょうか。
  82. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 丸谷先生はいろいろ従来からの経緯を御承知であると思うのでございますけれども、先ほど申し上げましたいわゆる国際条約におきましては、第五条で育成者の権利の内容を定めておりまして、種苗法においてすべてそれが担保されております。  また、育成者の利益が侵害された場合の法的措置としましては、差しとめ請求権とかあるいは損害賠償請求権を認めるほか、刑事罰についても規定をしているわけでございまして、その意味で種苗法は条約の内容に適合するものであり、この条約に定める育成者の権利の保護について支障を来すようなものにはなっておらない。そういう意味で育成者の権利の保護が国内法的にもなされておる、こういうことであろうかと思うのでございます。
  83. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、そうした無体財産権について、特許法と種苗法とは、今特許法でヨモギが問題になっておりますけれども、これは一体どちらが権利になるかというふうな問題が残ると思うのです。  しかし、きょうは——委員長、これはとてもじゃないけれども、きょうじゅうに終わらないのですが、いかがいたしましょうか。
  84. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 続けてください、まだ時間がありますから。
  85. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、当時この法案を作成する段階における内閣の統一的な見解というのは、多少拡大解釈されて今権利だということになったのですか。権利でないと言っているのです、法に基づいた。
  86. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 五十三年当時の質疑応答の議事録を私全部はつまびらかに拝見していないわけでございますけれども、従来から我々の方でこの関係で仕事にタッチしておる人の意見では、当時は、そういった反射的利益そのものというような解釈ではなくて、これはあくまでも法的に保護される地位というふうに説明をしておったというふうに私は聞いておるのでございます。  そうとすれば、先ほど申し上げましたように、その法的に保護される地位というものは、見方によっては権利というふうな見方もできるのではないか、いわば両者は直接結びつく概念ではないかというふうに私どもは考えておるのでございます。
  87. 丸谷金保

    丸谷金保君 当時、御承知のように私はこの問題を三日間にわたって質問して、権利ではないという答弁を引き出しているのです。反射的利益だということで、そして、権利であるからには法文の中に権利ということを明確にしていなければ、憲法二十九条の法で定めるということにかかわってくるじゃないか。特許法は明らかに無体財産権を認めているのです。ですから、同じような形の中でそれはぶつかるので、権利ということが言えない。  それで私は、それじゃUPOVの条約にこれじゃ入れないじゃないかと。英文から訳したやつであなたたちそんなこと言っているけれども、フランスから来た原文を私持っています、これから言えば、このままじゃ入れないじゃないですかと。すぐに入りたいから議決してくれといってそのときに決まった法律なんです。五十七年まで入れなくて随分いろんなことがあったのです。その裏のどろどろしたことを申し上げればまたそれだけで一日とらなければならないのです。  UPOVの条約という、そのUPOVそのものがどんなものか、私は現場まで行ってきたからよくわかっているのです。もう日本を入れなければ、日本から負担金をもらわなければどうもならないというふうな向こうからの状況もあった中で出てきた国際条約なんです。世界じゅう入っているわけじゃありません、UPOVなんか。そういう中でそういう条約に加盟して、そこで権利というふうにうたわれたから権利だという類推解釈は、私は不可能だと思うのです。そうすれば、やはり今長官がおっしゃったように、あくまで日本の国内法で権利だと言わざるを得ないでしょう。  長官、あくまで農産種苗法に基づいてこれは権利だ、こういうふうにおっしゃるのですか。
  88. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) それは権利という言葉の概念規定の問題にも関係があるのではないかと思いますが、少なくとも、当時おった者の話を私聞いた段階では、当時は、育成者の立場というものは、無体財産権を有する者としては構成してはおかしいのではないか、そうではなくて、あくまでも、先ほどから申し上げておりますように、法的に保護された地位にある者というふうに判断をすべきではないかというのが当時の結論であったというふうに私は聞いております。その意味で、先ほどからるる申し上げておるような権利の概念とのつながりが出てまいる、こういうふうに御説明をしておるわけでございます。
  89. 丸谷金保

    丸谷金保君 当時、登録をしたという行政的な行為によってその反射的な利益を受けるのだ、こういう表現をしているのです、当時政府は。そして、内閣はそういう無体財産権的なものはしないと。そうすると一体何の権利なんです。法律のどこに定められたどういう権利なんですか。無体財産権でないというと、知的所有権でもないというと、ここの権利は、長官、法的にどういう権利なんですか。民法にしたって何にしたって全部法律で決まっていますね。
  90. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) その点につきましては、いわゆる権利という言葉の概念規定にもかかわりがあることだと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、条約に定める育成者の権利というものが条約で定まっておりまして、それを実現を期すべく種苗法が改正されて、そうして、先ほど申し上げましたいろいろな育成者のいわゆる権利の保護規定が置かれておるわけでございます。そういう立場におきましての育成者の利益の保護ということが法的に実現しておるということが言えようかと思うのでございます。  したがいまして、先ほども申し上げましたように、いわゆる無体財産権の一つであるというようなことは、これはそうではないのではないかというふうに現在でも考えておるわけでございます。
  91. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、少なくとも憲法二十九条の財産権ではないということですね。
  92. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) いわゆる公法としての種苗法におきまして、育成者の地位というものが、あるいはいわゆる権利というものがいろいろな仕組みのもとで保護されておるということでございまして、それを権利と呼ぶかどうかということは、権利の概念規定の問題であろうかと思います。
  93. 丸谷金保

    丸谷金保君 憲法二十九条にいうところの、法律で定めなければならない財産権のどこに入るのですかと言っているのです。
  94. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 憲法二十九条には「財産権は、これを侵してはならない。」という規定があるわけでございますが、文字どおりこの財産権に当たるかどうかという点は、確かに一つの課題であろうかと思いますけれども、いずれにしましても、この二十九条の趣旨からすれば、当然に法律でいろいろな先ほど申し上げましたような権利が担保されておるわけでございますから、育成者にとりましてはそういう法的な保護を受けておるわけでございますから、そういうものは当然に尊重されなければならないということであろうかと思いまして、これを権利と呼ぶかどうかという点は、先ほどから繰り返し申し上げますように、概念規定の問題であろうかと思います。
  95. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 丸谷君、時間です。
  96. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 この湖沼水質保全特別措置法案の第三十条に「所要の経過措置」ということがありまして、その下で「経過措置に関する罰則を含む。」こうなっております。そこで疑問になりますのは、「所要の経過措置」というその「所要」とは一体どういうことでしょうか。  これは、この文章をこのまま読みますと、行政を行いになるお方がこれが必要だと思えば、その思ったことを経過措置として決めるのだという、そういう意味の「所要」ということのように読めるのです。そういうふうに読みますと、一つの行為を特定したのではなしに、いろいろこれから必要なことが起こるであろうが、その起こると思うことということになってしまいまして、これは不特定な要素であるとしか理解できないわけでございます。その「所要の経過措置」の中には「経過措置に関する罰則を含む。」こうなっておりまして、そうすると「経過措置に関する罰則」というのもこれも特定されていないものではないか。つまり行為が特定されていない。また、「罰則」と書いてあるだけでありまして、罰則もどういう罰則なのか特定されていないというふうに解さざるを得ませんので、大変この辺のところで疑問が生ずるわけであります。  経過措置につきましては、十六条に届け出についての経過措置の規定がございまして、その違反につきましては、罰則の三十六条一号で具体的に刑罰の範囲も決めておりますし、それから経過措置の内容につきましても行為の内容が規定されておるわけであります。  そういうふうに、具体的に予想されるところはやっておきながら、あと予想されない部分を一括して「所要の経過措置」、こうやってしまわれておるので、この辺が非常に私ども実は罪刑法定主義に反するのではないかと思うのでございますが、この言葉の意味はどういうふうに理解しておられますか。
  97. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 湖沼法の性格といたしまして、規制すべき行為等について技術的、専門的な内容にかかわる部分が非常に多いわけでございます。それらにつきましては、湖沼法自体において、政省令事項として各条文に特定しているわけでございます。これらについては、法律の規定に基づきまして政省令に委任されておるわけでございますから、当然その規定について政省令を定められるわけでございます。そのような意味で、いわゆる行政権に対する白地の委任が罰則についてなされているということにはならないのではなかろうかと思うわけでございます。  一方、これらの技術的に政令あるいは省令に落とされた事項につきましても、その適用に際しましては経過規定を設けることが合理的である場合が当然あり得るわけでございます。つまり、政令に基づきましてある種の施設を例えばみなし特定施設等に指定する、このような場合に湖沼法上さまざまな義務が発生するわけでございますけれども、これについては、その経過期間につきましては、法律を機械的に適用するのではなく、若干その適用を緩和するというような措置を講ずることが合理的である場合が予想できるわけでございまして、そのような場合にその実効を担保するために罰則を設けるということもこれは許されるのではないか。  その関係を特に三十条では「合理的に必要と判断される範囲内において、」という二重の縛りをかけておるわけでございまして、つまり、まず法律そのもので政省令事項に委任されているその箇所が特定されております。その意味で事項の特定がある。それからもう一方、その内容については、合理的に必要とされる範囲内においてという縛りがかけられている。  このような意味で、「経過措置に関する罰則を含む。」というこの条文の書き方がいわゆる白地委任ということにはならないのではなかろうか、私どもはかような解釈に立っているわけでございます。
  98. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 ただいまの御説明、私は納得がいかないのです。「合理的に必要と判断される範囲内」だからいいとかおっしゃったのですけれども、所要のとか、いいとおっしゃるけれども、それは一体だれがそういう判断をするのか。客観的な判断じゃないでしょう。それは行政の衝に当たる人がそういう判断をなさるのであって、民衆の側から判断するものじゃないわけですね。刑罰を受ける側がこういう判断をするわけじゃないでしょう。そうしますと、行政側の方は自分の頭の中で、将来いろいろなことが起こった場合に、その場合場合に応じて合理的だ、こう判断をしていけばそれで具体的に特定されたというふうにお考えになるかもしれませんが、罰せられる方から見ますというと、それはわからないのですよ。どういうふうにお考えになっているかわかりもせぬことについて、もう既に定められて内容がはっきり明確になっているというふうにはとれないわけです。  刑罰というものは、御承知のように、日本の憲法の三十一条、これは罪刑法定主義でしょう。罪刑法定主義の根拠は三十一条なんですが、そのことは判例も言っておる。そうなりますと、罰せられる行為とそれから罰すべき刑罰の範囲というものは明確に法律で示されていなきゃならない、こういうわけでございますが、その点がどうも今の御説明では明確でないわけです。  その点の御説明を、憲法的にどうだということをひとつ法制局の御意見を承りたいわけですが、特に、所要の経過措置に関する罰則を含めてそれを命令で定めることができる、こう書いてある。罪の内容の決まらないようなものについて、刑罰も決めないで命令でそういう罰則を決めることが許されるかどうか、この点について御答弁をお願いします。
  99. 関守

    政府委員(関守君) ただいま環境庁水質保全局長からもお話がございましたように、この法律におきましては大変技術的に専門的な事項が多うございます。したがいまして、その技術的な専門的な事項につきましては命令で定めることにせざるを得ないというのがかなりあるわけでございます。そうしまして、そういう事項は、今お話がございましたように、法律の上で事項は特定されておるわけでございます。そうしまして、その命令を制定いたします場合に、あるいは命令也改正、廃止いたします場合もあると思いますけれども、この経過措置と申しますのは、その命令を定めあるいは改正する際に、その前の時点と申しますか、そこに今まで規定されていた定めと、それから改正後の定めというものについてどういう適用をするかということと、それから、先ほど話がございましたように、場合によっては緩和をしていくということが必要になってくる場合があるわけでございます。しかし、それらはいずれも、その特定の事項に絡みまして、法律で書いてある事項のそういう時点の経過と申しますか、適用なりに伴います経過の措置でございますので、非常に限定的なものである、かつ、その内容も非常に特例的かつ暫定的なものであるということになるわけでございます。  さらに、ここにも書いてございますように、「合理的に必要と判断される範囲内」ということでございますので、例えばその経過措置につきましては、そのもとの方の法律で決まっております措置に比べまして過酷なものであるとか、そういうものは認められない。あるいは罰則につきましても、それぞれ経過措置のもとになります規定において、先ほど御指摘もありましたけれども、罰則がこの法律で書いてございますけれども、それを超えることはあり得ないというのは当然だろうと思います。  したがいまして、そういう観点から言いますれば、これが一般的、包括的に委任をしているものだというふうには私どもは考えられないのではないか。具体的なこの法律による個別の委任があるわけでございますから、その罰則は憲法三十一条の罪刑法定主義に反する罰則ではないというふうに考えているわけでございます。
  100. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 どうも今の部長の御答弁は私の質問に対して的確に答えておられません。といいますのは、経過措置を定めることはいいですよ。私が質問したのは、罰則を内容を限定せずに決めることはいかぬではないか、こう申したので、その点を明確にしていただきたいのです。  私は今非常におかしく思いますのは、昨日私は長官の御出席をお願いしましたところ、長官は出ることができないので部長で許してくれと、こうおっしゃった。だからそのつもりでおりましたところが、きょう丸谷理事の御要求によって長官はおいでになったですね。私が要求すると来れなくて、丸谷理事が要求すると来れるということはどういうことですか。この点をまずお伺いしたい。
  101. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 大変申しわけないことでございましておわびをしなければならないと思っておりますが、きょうは衆議院の方でも実は総理出席の委員会がございまして、それに私も出ることになるのではないかという実は可能性がありまして、それで実は内々お許しをいただいたわけでございますけれども、結果としましては、そちらには私どもの部長が出席することで足りるということになりましたので、急邊私こちらの方に参ったわけでございまして、それ以外他意はございませんので、ひとつおわびかたがた御了承をお願い申し上げたいと思います。
  102. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 昭和三十七年五月三十日の最高裁大法廷の判決がございます。これは条例の罰則に関するものにつきまして、条例につけた罰則はこれは罪刑法定主義に反するのではないかという問題につきまして、条例の方は反しないんだ、それは憲法に規定があるから。また、行政府の制定する命令等とは性質を異にして、県の議会が議決したものだから、行政府の制定する命令等よりもっと緩やかに解釈していいんだ、こういう趣旨のことがありまして、その前に、「ただ法御の授権が不特定な一般的の白紙委任的なものであってはならない」、こうはっきり書いております。法律で与えた授権が、命令で罰則を決めれると響いたその内容が、不特定な一般的な白紙委任的なものであってはいかぬ、こう書いてあるのですよ。  今回の三十条のあれを見ますと、経過措置に関する罰則とあるだけなんですね。経過措置の内容を限定しておりません。つまりどういうことだということは限定していない。十六条の方でははっきり限定して、届け出違反と書いてありますね。届け出違反についてはもう罰則があるのですよ。そういうこと以外の、これからどういうことが起こるかわからぬが、経過措置を命令で決めるのだ、それはいいですよ、そのことは。それに対する罰則を決めるとおっしゃるから問題になる。経過措置の内容は明らかじゃないでしょう、あなた方が抽象的におっしゃっているだけで、どういう内容か。届け出はもうあるから別ですが、どういうことをやるんだ、どういうことをやることに対して違反があったら罰するというのか、つまり罰すべき行為の内容が明確にされておりません。  それから、それに対応する刑罰が明らかにされていないのですよ。ただ罰すると書いてあるだけだ。こういう状態は、明らかに最高裁がそういうことはいけませんよと言うた、法律の授権が不特定な一般的な白紙委任的なものではありませんか。どうですか、長官
  103. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) まず第一点の経過措置にかかわる事項でございますが、これは全くの白地ではございませんので、先ほど来法制局の二部長からも御説明いたしましたように、政令で言えば七条、十一条、十四条、十五条、二十条、二十二条、二十三条、二十八条、三十一条、それから総理府令は一々読み上げるのは省略いたしますが、そのような意味でまず限定がされている、こういうことでございます。  それから、罰則そのものが白地ではないかということでございまして、確かに、もしどのような刑罰を科することも自由な裁量ができるということであれば問題であろうかと思うわけでございますが、今の経過規定につきましては、いずれも本法で、先生も十六条について読み上げられておるわけでございますが、十六条について言えば、若干原則的な本来の罰則である三十五条よりも緩和して、例えば罰金の額で言えば二十万円が十万円というふうに緩和されているわけでございまして、このような法律全体の構造からいいまして、ここの三十条で合理的な範囲というふうに書いてあれば、これらの規定を総合的に勘案すれば、これは行政庁が自由に罰則の重みを定めることができるということにはならないわけでございまして、おのずから、先生指摘の最高裁の判例でも言われているような意味で、事項及びその量刑の範囲が限定されているというふうに理解できるのではないか。  ただ、私どもに任されております裁量の余地というのは、経過規定についてどのように、例えば本来の法律の適用をそのままにした場合に緩和することができるか、その辺のやり方については確かにこれは行政に委任されているわけでございまして、これにつきましても、しかし、同じく「合理的に必要と判断される範囲」というその縛りがかかってくるわけでございまして、全く自由にその裁量の余地があるわけではないわけでございます。  以上、るる申し上げましたが、要は、まず経過措置を定めるべき事項というのは、政省令に委任されている事項として特定している。それから、罰則のどのくらいの重みのものをかけられるかということについていえば、この法律全体の構造から見て合理的に必要と判断される範囲、確かに白地で合理的に必要と判断される範囲ということになれば、これは何が合理的かということについては極めて裁量の余地は多いわけでございますが、この法律全体の構造を見て三十五条、三十六条を比較すればおのずからその内容は限定されてまいるわけでございます。一見確かにこの条文そのものをこうすっと読みますと、いかにも授権の範囲が大き過ぎるように見えるわけでございますけれども、子細に検討すれば、それほど大きな範囲が行政にゆだねられているわけではない、こういうふうに考えるわけでございます。
  104. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 今の御説明で正しいですかね。これは法制局の御意見を伺います。
  105. 関守

    政府委員(関守君) ただいまの水質保全局長の御答弁で大体尽きていると思います。  ただ、私どもの考えといたしましては、この罰則につきましては、確かにおっしゃるように、この条文では罰金幾らというふうには書いてございません。しかし、これはその必要となる経過措置自体が、命令の改正ということ、あるいは制定ということがなければ出てこない筋合いのものでございますので、それに応じて考えるべきことは当然でございますので、したがって、今申しましたような形では出ておりませんが、その限度は、本則で、その経過措置を必要といたします事項につきましての本則についてかけられておる罰則、それを超えることはできないというふうに当然考えられますから、具体的なと申しますか、白地の委任ではない個別的な委任と考えてもいいのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。
  106. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 どうも今の御答弁は大変不満足でありますので、これから細かくこの問題についてお尋ねをいたします、分析して、一回で終わりませんので。  それで、命令で定めることができると書いてあるこの命令ですが、命令とは一体どういうものかということがまず問題になります。恐らく政令及び総理府令ではないかと思いますが。  それで、政令というのは内閣の職務として規定されておりますが、これは憲法及び法律の規定を実施するためのものだ、こうなっております。附属的な規定のものなんですね。法律を施行する、憲法を施行するためのものが政令だというふうに憲法に書いてある。そして、その政令には罰則をつけることはできない、原則としてできないと書いてありまして、例外的に、特に法律が委任した場合はできるんだ、こうなっておる。その特に法律が委任した場合というものに対する解釈の仕方は厳格に解すべきだというのが、最高裁判所の見解であるわけです。  統一意見では書いていませんが、その先ほどの大法廷の判決の中で入江裁判官の補足意見があります。補足意見というのは反対意見じゃなくて、全体の意見に対する補足する意見ですが、その意見の中でどういうことが書いてあるかといいますと、「「特にその法律の委任がある場合」というのも厳格に解釈されており、一般的ないし包括的委任は許されず、個別的ないし限定的委任であることを必要とし、すなわち罰則委任をするそれぞれの法律において、」つまり言いますとこの湖沼法ですね、「それぞれの法律において、違反行為に当たる事項を限定し、これに科せらるべき刑罰の程度を示して、委任しなければならない」、こうなっていますよ。こういう経過措置といったような一般的な内容のもので書いてはいかぬ、はっきり明確に国民の側がわかるように行為の内容を明確に書いて、しかもそれに対応する刑罰の程度を示さなきゃいかぬ、罰金なのか懲役なのか死刑なのか書かなければいかぬと書いてあるのですよ。  ところが、これはただ罰則と書いてあるだけでしょう。これは少なくとも憲法学者、刑法学者はそういう解釈は許さない。最高裁の入江裁判官の見解はこれはもう当然の通説なんですよ。それに反するような今の御見解はこれはどうもいただけないのですが、この点についての明快な御答弁をお伺いするわけなんです。特に、この罰則を設けることができる場合というのは、政令に罰則を設ける場合、どういう場合なんだと明確にしていただきたい。
  107. 関守

    政府委員(関守君) 繰り返しになりまして恐縮でございますけれども、先ほど申し上げましたように、この経過措置といいますのは命令を制定改廃するのに伴うものでございます。したがいまして、その限度は、先ほどるる申し上げますように、この個々の法律の条項、それからその措置につきましても、当然経過措置でございまして、しかも合理的に必要と判断される範囲内であるということでございますので、その本則で本体的に規定されていますような措置よりもさらに厳しいような措置を決めるということはあり得ないわけでございます。  そして、したがいまして、それぞれの経過措置につきまして規定をされます場合に、それはやはり実体上の規定について罰則が科されております場合に、それとの均衡を図るためにもやはり罰則で担保しなければならないという場合があり得るわけでございまして、そういう場合の罰則ということでございまして、その限度につきましても、先ほど申し上げましたように、そういう本体としての申しますか、もともとの事項についての罰則を超えることはできないというふうに考えられますから、決して無限定に抽象的に委任しているということではないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  108. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 どうもお答えが明確でないのです。なぜ明確でないかというと、私の聞いておることについて答えていないからです。経過措置そのものは、これは命令でやられていいですよ。その命令でやられる経過措置というものの内容は今明確でないでしょう。内容を見てください、どういう内容か。
  109. 関守

    政府委員(関守君) この法案におきまして明確でありますれば、この法案に確かに規定できるわけでございます。しかし、この経過措置につきましては、その範囲ははっきりと限定されておるわけでございますけれども、どういう措置をとるかということにつきましてはここで規定できませんためにこういう命令の経過措置の委任の規定があるわけでございます。したがって、そういう意味でのお話でございますれば、ここで決まっているというわけではございません。
  110. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 今おっしゃったことは、これは日本語で言いますと包括的という意味、抑圧的な規定という意味ですね。内容は包括的でしょう。つまり、法律で決められるなら法律で罰則を決めるとおっしゃったね。法律で罰則を決められない。なぜかはっきりわからぬから決められない。それを一括して命令に任せるというのであるなら、これは一括的委任である、包括的委任でしょう。これを包括的委任でないと言うなら何を一体包括的委任と言うのですか。しかも、刑罰につきまして罰則の内容もはっきり示しておらぬでしょう。一体罰金なのか過料なのか、懲役なのか、それさえわからないのです。罰金ならば一体幾ら以下の罰金なのか、幾ら以上の罰金なのかわからぬでしょう。これ罰則と書いてあるだけだ。  ところが、こういう問題について明確にしなければならないというのが罪刑法定主義でしょう。法制局のあなた職員で今までずっとやってこられて、罪刑法定主義の内容さえわからぬようじゃ困りますよ。いかがですか。
  111. 関守

    政府委員(関守君) 私もそれほど長い間ではございませんけれども、罪刑法定主義につきましては、大変大事な原則でございますし、よく承知しているつもりでございます。そして、罪刑法定主義と申しましても、その中で法律の委任による罰則が認められるということも、これは先ほどお示しの判例を初めといたしまして最高裁判所でも認められているところでございます。  そこで、その委任の範囲が問題になるわけでございまして、それが御指摘のように包括的限定、無限定であれば確かに問題でございますけれども、この法案におきましては、先ほど水質保全局長から申し上げましたような各条で命令に委任する事項は決まっておるわけでございます。そうしまして、ただ、その委任されている事項の適用につきまして、新しい措置にすぐにそのまま移行できるかどうかというような点から、合理的に必要とされる範囲内の経過措置が任されるわけでございます。そういたしますと、その任される範囲につきまして罰則をもって担保しなければならないという事態もあるわけでございますので、それがはっきりわかっている場合には、むろんこの十六条にも書いてございますように法律で決めているわけでございます。そういう意味では、極力明確化を図るという形をこの法案でもとっておるわけでございます。  ただ、ここで、そのような経過措置につきまして、しかし合理的に必要な範囲内でやはりとらなければならないような経過措置があり得るだろう、そういうときに、それは本体の規定にいわば付随的な経過措置なわけでございますから、その範囲もおのずから限定的なわけでございます。そういたしまして、それについての罰条につきましても私どもとしては当然その本則にかけられる罰則というものを超えることはあり得ないというふうに考えられますから、そういう点から言いましても、この経過措置に関する罰則、確かに言葉としては簡単でございます。簡単でございますけれども、法の趣旨からしてそういう内容がきちんと盛り込んである規定であるというふうに考えておりまして、そういう意味では許された委任の範囲の罰則であるというふうに考えているわけでございます。
  112. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 どうも法律が明確にわかっておられぬようですから、最高裁の判例をかりましてちょっと申しますと、この判例は、条例に罰則を決めたことは違憲だという訴えに対して、それはそうじゃないということを述べておるのです。どういう理由で言っておるかといいますと、条例を決めるということは、地方自治法でこういうことこういうことについてやれということが限定されておる、しかも地方自治法の中で罰則の限度をはっきりと「二年以下の懲役若しくは禁錮、十万円以下の罰金、拘留、科料又は没収の刑」、こういうふうに限定しているんだ、地方自治法で限定しておるから、その地方自治法で限定しておるその罰則の範囲内で条例で決めてもいいということなんですよ。そういうことになっているわけだね。  ところが今度のこれでいきますと、湖沼法では限定していないんだ、刑罰を。刑罰を限定していないのに命令で決めるわけにはいかぬわけですね。条例の場合には命令よりも緩やかな規定なんです。緩やかであっても、本法である地方自治法に限定しておるから条例につくってもよろしい、こう言っておる。  そうであるなら、行政官庁がつくる命令というものは条例よりもこれは厳しく解釈しなければならぬものだ。そういう場合のこれは問題ですが、この湖沼法の三十条はちっとも限定していないのです。地方自治法は限定しているのです、「二年以下の懲役若しくは禁錮、十万円以下の罰金」云々と。そういう限定をこの罰則では書かなければいかぬのです、法律では。法律でそういうぐあいに書いてある場合に、その範囲内で命令で罰則を決めてもいいわけなんです。そういうことでしょう。ところが実際はこれはそうなっていないん、だ。どうですか、これは。
  113. 関守

    政府委員(関守君) 先ほどから申し上げておりますように、確かに表現としては最高限度等についてここでは書いてございませんけれども、それぞれの経過措置が求められますもとの措置でございますね、そのそれぞれの条文についての措置がこれが経過措置として出てくるわけでございますので、そのもとになります条文で番いてあります措置に関します罰則がそれぞれ規定されておるわけでございますから、それを超えることはないという意味で、書いてはございませんけれども決まっているというふうに我々は考えておるわけでございます。
  114. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 今おっしゃったことはどこに書いてあるの、この法律案のどこにそんなことが書いてありますか。経過措置に関する罰則というのはもう刑罰を決めてあるんだね。もうそれが決まっておれば命令で決める必要ないでしょう。命令で決めなければならぬというのは、法律に決めていない部分について命令で決めるのでしょう。そうしますと、そうであるなら、本条に書いてあるということは理由にならないのですよ。  つまり、ここで言う「経過措置に関する罰則」というものは、この十六条違反の罰則、三十六条だけのことじゃないでしょう。そのことだけならいいですよ。そのことだけについて緩める規定だということなら、そういうふうに明確に書いてほしいわけだぱっきりと、法三十六条一号に書いてある罰則を緩めることについて、それを命令に委任する、こういうふうに明確に書いてほしい。一そういうふうに明確に書かないで、こういう「経過措置に関する罰則」とだけ書かれますと、これは間違うんです。  こういう法律は憲法違反の法律なんです。憲法違反の法律になるのですよ。なぜなら、こういう  一般的な原則で罰則をつくってもいいということをお書きになって、将来総理府令で罰則がつくでしょう。その罰則は合法的な内容の罰則じゃないから、これは。つまり、最高裁もそれはいかぬと言っているんだ、白紙委任的なものだから、そういうものは許されないと言っている。許されないような罰則を裁判官がもし適用して有罪の判決をするならば、憲法三十一条に反するじゃありませんか。憲法三十一条に明確に反するようなことをしてかすような、そういうことをこの法律で決めるということは困りますよ。いかがですか。
  115. 関守

    政府委員(関守君) 先ほどから申し上げますように、罰則につきまして命令に委任することは一般的には認められておるわけでございます。ただ、それが白地のものであってはいけない、これはおっしゃるとおりでございます。  私どもは、ここに書いてある罰則と申しますのは、その経過措置に関するものでございまして、その経過措置自体が、今すぐには命令の制定改廃によるものでございますだけに規定し得ないということでございますので命令に委任しておるわけでございますけれども、その命令に委任いたしますもとになります事項というのは法律で決まっておるわけでございますから、その決まっておる事項についての罰則、それは三十三条以下に規定をしておるわけでございます。それぞれに対応する事項がいろいろ規定しておるわけでございますから、その経過措置がどういう事項に基づく経過措置であるか、そういうことによりましておのずから罰則の限度は決まってくる。これ以上の罰則はかけられないというのは当然の事理であろうと思っております。  したがいまして、ここでその表現として幾らというふうに三十条には書いてございませんけれども、そういう内容を含んだ罰則であるということでその限度も決まっておるという意味で、ここに規定されていますような罰金ですとか、それぞれ二十万なり十万、あるいは三十万、いろいろ規定ございますけれども、経過措置のもとになる規定にかけられております罰則以上のものほかけられない、これは当然のことじゃないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、そういう罰則の委任が許されないことはないというふうに考えておるわけでございます。
  116. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 今おっしゃった経過措置のもとになる罰則というのはどこに書いてあるのですか。第何条になりますか、この法案の。それを明確に示していただきたい。そういうものはないんでしょう。これは三十三条以下にずっと罰則が書いてあるのですよ。この三十三条以下に書いてある罰則は、この法律に違反したものについての罰則なんですね。もうそれで事足りるわけです。  経過措置といったようなわけのわからないようなものにもし罰則をつけたいのなら本法の中に書きなさい。この中で、経過措置に対する命令に違反する者に対しては何万円以下の罰金に処するということが書いてあれば、その範囲内で命令に委任してもよろしい。書いていないじゃないですか。これはどういうことですか。
  117. 関守

    政府委員(関守君) その経過措置につきまして、どのような経過措置を定めるかということは命令に委任されるわけでございます。したがいまして、事項によりましては、ここに書いてありますそれぞれのどれに当たるかというのは事項によって決まってくるわけでございます。したがいまして、それの上限を一律に仮に決めますと、もっと低いものでいい場合にもその上限がそこまでいってしまうという形になりますので、それはかえって不合理ではないかということではないかと思います。
  118. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 ただいまの御答弁はこれはどうしても理解できませんので、これはもうきょうだけで終わりませんよ。そういういいかげんな答弁を繰り返してごまかそうとなさってもそれはだめなんです。  あなた方は、法律の専門家として今おっしゃったような議論を読んでわかりますか、意味が。私は何をおっしゃっているのかさっぱりわからぬ。専門家であればあるほどわからぬはずです、おっしゃることが。今言われたことは憲法学者を参考人として呼んでいただいて、そして意見を聞いていただきたいと思うぐらいですよ、今そういうことをおっしゃっていると。  これはこの法案を通すために何でもかんでもごまかしてでもいこうなんというお考えは困る。基本的人権の問題ですから、基本的人権に違反する法律は無効なんですよ。憲法にはっきり書いてある。憲法は、この憲法の条項に違反するものは法律であろうと何であろうと全部無効だと。判決も無効なんですよ。そう書いております。おっしゃったような御議論でこの法案を通すということは、憲法違反のことを許すということを法律で決めることになる。そういうことはこの参議院の良識においてできない。それを削っていただかなかったらできないのです、これは。今の御答弁ではどうにもならぬ。  これは部長ばかりに答弁させないで、長官意見はどうなんですか。部長はそういう意見なんだが、長官はまた違った意見をお持ちだと思いますが、いかがですか。
  119. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ただいままでの質疑を私も拝聴しておったわけでございますが、私どももこの法案の審査の際には十分にその点につきましても議論をいたしました。そうして過去におきましても、先生御承知のとおり、海洋汚染防止法におきましても同じような規定がありまして、今回の場合もそれと同じような規定を置くことの是非、あるいはまた、それについての、ただいま御指摘のような憲法問題につきましても十分に検討いたしまして、そして、先ほどからるる政府委員から御説明を申し上げているような筋道によりまして、これは憲法の三十一条その他の規定には違反するものではないということでただいまのような法案をつくり上げた次第でございます。  その意味におきまして、先ほどから政府委員の皆さんのお答えどおりに私も考えておる次第でございます。
  120. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 ただいまのそういう御答弁でどうしても押し切ろうとなさるということは、これは大変困りますのは、明確に憲法の条項に違反することを認めろということになりますので、私どもとしては認めるわけにはいかぬのですがね。  御承知のように、裁判官は憲法と法律だけに縛られるのですよ。命令には縛られないのですよ。命令に縛られるという場合の命令は、法律で合法的に委任した内容の命令だけには縛られます。ところが、この湖沼法で今決める内容は、これは犯罪行為の範囲を明定せず、またそれに対応する刑罰も明定しない、そういう命令をつくることを法律が委任するのですから、これは許されないと思います。これはそういうものは許されない。  憲法の三十一条では、法律に定める手続によらなければ何人も刑罰を科せられないとはっきり書いております。法律に定める手続というのは、行為の内容、刑罰の内容を明確に指定して、法律が決めたその罰則ですよ、それによらなければ何人も刑罰を科せられない、こう書いてあるのですよ。そういうふうにはっきり憲法に明文があるのに、その明文に反するようなことを法律で認めるような法律をつくるということは、これは余りにも立法府として見識がなさ過ぎると思います。  皆さん方は行政府ですから、立法府がつくった法律をなるたけ憲法に合うように解釈をして、憲法違反の分は無効だ、こうおっしゃっていれば済むのです。しかし、我々は法律をつくるんだ、法律をつくる者が無効だとわかっておって、それを含む法律をつくることはできません。  この問題が解決しなければこれは法律の採決に至らないと思いますよ。私どもを納得させてくださればいいわけです。それを力で、本院の力で、数でもって押し通されるならばそれはやむを得ませんが、そういうことは将来禍根を残すし、末代までの恥をさらすことになります。そういう点で明確な御答弁を得るまで私は質問を続けたいと思います。  きょうは私の時間は四十二分までだ、もうやめてくれと、こう言ってきましたがね……。
  121. 丸谷金保

    丸谷金保君 今の法制局の部長さんの答弁の中で、経過措置の罰則で上限を決めれば、低くしたくてもそこまでいっちゃうという答弁がありましたね。そこのところちょっと問題がありますので、議事録を後で理事会に諮って精査してください。
  122. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 後で理事会で御相談させてもらいます。
  123. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 時間が私来ちゃったんだが、どうしますか、またこの次にしておきますか。
  124. 穐山篤

    委員長穐山篤君) あと三分あります。
  125. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 総理府令、恐らくこの命令は政令だけじゃなしに総理府令も含むと思いますが、総理府令は、国家行政組織法の十二条第四項に基づく規定を根拠としてこれは恐らくおつくりになったと思いますが、この場合に、法律の委任がなければ罰則を設けることができないと書いてある。法律の委任がなければ総理府も罰則を設けることができない。  そうしますと、その法律の委任という意味は、政令において書かれておる法律の委任という意味よりももっと厳格に解釈しなきゃならぬものだと思いますよ。政令の方が上位の法律でしょう。下位の法律が上位の法律よりも緩やかでいいという理由は成り立たないから。そうしますと、今ここで書いておる政令以外の総理府令を将来出されると思いますが、総理府令で出される場合に、法律の委任があるとおっしゃるけれども、この法律の委任でどういうふうに罰則を決めているとお考えですか。経過措置に関する罰則というだけの漠然たる言葉で、これで一体、府令で罪刑法定主義に合致した罰則規定や行為を決め、それに対応する刑罰を決めるということになりますが、それは一体法律のどこに基づいておやりになるつもりですか。法律の中で明確に規定していなきゃならぬのですよ。その法律の中に明確に規定していなきゃならぬその法律がないのです。漠然と「経過措置に関する罰則」と書いてあるだけです。そんなもので総理府令の罰則はできないじゃありませんか。どうですか。
  126. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 総理府令の見込み事項といたしまして、例えば十六条一項で、届け出の様式、これは原則十五条の届け出に対する経過措置としての十六条の届け出、あるいは十七条で、十五条一項第四号から第六号までを記載する様式、あるいは十九条一項で、「当該指定施設について、総理府令で定めるところにより都道府県知事が定める構造及び使用の方法に関する基準を遵守しなければならない。」このような規定がいろいろあるわけでございますが、これらの規定を施行する際に、一つ一つその必要性を吟味した場合に、経過措置を決める必要性がある場合に出てくるのではなかろうかと思うわけでございます。その場合に私どもとしては、罰則の必要があるかどうか、また仮に罰則の必要があるというふうに判断した場合、この三十三条から三十八条までの罰則規定に比べて果たしてその規定の仕方が合理的であるかどうか、そういうことを吟味して罰則を決めることになろうかというふうに判断するわけでございます。
  127. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 もう時間が来ましたのでやめなきゃなりませんですが、私、今度ぜひ確かめておかなきゃならぬとして用意しましたもののまだ半分しかいっていないのです。それできょうはできませんので、この次に機会を見て十八日でもお願いしたいのですが、よろしくお願いします。  きょうはこれで終わります。
  128. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 せっかく法制局が来ておりますので、冒頭に若干今の三十条問題について質問いたしますので、もうしばらくお残りいただきたいと思います。  私は角度を変えましてお伺いしたいのですが、今まで環境庁の方から経過措置に関する罰則の必要な理由は文書でいただいております。中身の是非は別としまして、ここで言っていること自身の意味理解できますので、その答弁はもう繰り返さないでいただきたいと思います。  一歩踏み込んでお聞きしたいのは、水質汚濁防止法あるいは大気汚染防止法には罰則に関する経過措置がありますね。それの規定のみ書いておったと思うのですが、なのに、なぜこの湖沼法ではそれに加えて経過措置に関する罰則が必要なのか、ここのところがどうもはっきりしないので、これをまず答弁いただきたいと思います。
  129. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 具体的な事例につきまして既に先生に御説明しておるかと思いますので、それを繰り返して時間をとるのもいかがかと思いますが、要は、この湖沼法により指定湖沼、特定の湖沼についてある種の規制を行うわけでございますけれども、その行う過程で、これは水濁法等と違いまして、指定湖沼の制度あるいは総量規制対象項目を指定するとか、そういう従来やっていなかったものを特定の湖沼について規制をやるという措置が必要になる場合があるわけでございます。その場合に、水濁法の原則に戻るわけでございますが、その水濁法の原則をそのまま機械的に適用すると酷な場合が出てくる。したがってその原則を若干緩和したい。しかし緩和するにしてもやはり全く罰則なしてはその実効が担保できない。このようなところからこのような規定を設けたわけでございます。  水濁法の場合にはこれは公共用水主義でございますし、厳密に、今の申し上げました湖沼法について申し上げましたような事態が水濁法あるいは大気汚染防止法につきまして必要がないかどうかということになりますと、私そこまでちょっと今突き詰めて考えておりませんけれども、少なくとも湖沼法につきましてそういう規定を設けたのは今申し上げましたようなことでございます。
  130. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 同じ水質を対象にしながら、要するに政令委任部分があるわけですから、政令が厳しくなれば規制対象、例えば届け出義務とかその他の範囲がふえますね。今まで水質汚濁防止法では経過措置に関する罰則の経過措置が必要なかったのになぜ湖沼法では必要なのか、そこのところの説明がはっきりしないからいろいろ議論が起きてくるのじゃないんですか。そこを端的に、一言でいいかどうかわからぬけれども、時間がないので端的にわかるように説明してほしい。
  131. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 具体的に申し上げてもよろしいのでございますけれども、少なくとも湖沼法について申し上げますと、水嗣法についてそういう必要性があるかどうかちょっとこっちに置きまして、湖沼法につきましては、このような規定を設けている方が法律の執行上合理的に運用できるという事態が予想できるわけでございまして、時間がございませんでその具体例は申し上げませんが。
  132. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 要するに便宜上ということですね。  これは法制局になると思うのですが、先ほど来から、本則を越える罰則はこの規定によってはあり得ないというのですが、単純に見る限り、経過措置に関する罰則ですから、やっぱり上限がこれは決してないわけですよね。なぜあなたが言うとおり本則を超えることはあり得ないのか、どうして担保されておるのか、それを明確に答弁してく、ださい。
  133. 関守

    政府委員(関守君) 私どもは、この条文で「この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置及び経過措置に関する罰則を含む。)」と書いてあるわけでございますから、その合理的な施行をいたしますれば、当然に先ほど申しましたような経過措置に関する罰則は本則のそれを超えることはできないであろう、本則の該当する規定と申しますか、というふうに考えるわけでございます。
  134. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 絶対に本則を超える場合はあり得ない、法的にあってはならない、もしそういうものがあれば憲法違反だということになりますか。
  135. 関守

    政府委員(関守君) 私どもの考えでは、それは合理的な必要の範囲を超えておるわけでございますから、したがいまして、この法律の委任がない部分になりますので憲法に違反するということになろうかと思います。
  136. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 もう一点お聞きしたいのは、私先ほど佐竹局長答弁を聞いておって、いわゆるその方がベターだということだと思うのですね。しかし、厳格にいいますと今言ったとおりいろいろ疑義があるわけですよ。となりますと、これは要するに、政令の変更によって基準が厳しくなると多数の人が新たに規制対象になるわけですね。それに対する今度罰則が出てくる、新しく罰則の対象になる。ですから、政令で基準を厳しくしたそのときに、手数であっても、罰則の法案国会に出して、そしてこの国会で議論してよろしいとなればそれでも足りるのではないか。私はどうも行政がその手間を省いているのじゃないかという、こういう感じがするのですが、大体そんなものなんでしょう。
  137. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 大変重大な御提案でございますので、ちょっと即答はいたしかねるのでございますが、私どもは、もちろんこれは先例があるから直ちにどうこうということではございませんけれども、先ほど来法制局からるる御答弁申し上げましたように、法制局としても、法制局のお立場から見てこういう書き方でよろしいということで、先例もあり、それに従って規定を設けたわけでございますので、ただいまの御提案に直ちにそういう方向を考えたいということは申し上げかねるわけでございます。
  138. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 先例といっても、要するに海洋汚染防止法だけですからね。それまでは、先ほど言ったとおり大気汚染防止法でも水質汚濁防止法でも同じ公害対策でこれなしにやってきたんですよ。だから、大体海洋汚染防止法のときにもうちょっと注意してストップをかけておけば、問題にしておけばこういうことにならなかったのだと思うんですが、私はやっぱり手間を省いているんじゃないか、こういう感じがしてならないのです。  議論はこの程度にしますので、法制局はこれで結構であります。  そこで、次に湖沼法のほかの問題で、実はこの間七月六日に調査に参りました霞ケ浦についての質問をしたいのですが、その前に、昨年北海道をこの委員会で調査に行った際に見てまいりましたウトナイ湖、美々川流域の良好な自然環境が重大な破壊の危機に立っておりますので、緊急問題としてまず質問をしたいと思います。  まず、去る六月十一日に北海道の開発局が苫小牧市役所で千歳川の太平洋放水路計画についての説明を行ったと聞いたのです。この際にどういう団体呼んだのか。三つのルートが図面で示されたと聞いておりますが、この三つのルートは具体的にどこなのか。それをまずお答えいただきたいと思います。
  139. 萩原兼脩

    説明員(萩原兼脩君) お答えいたします。  まず、呼びました団体でございますが、苫小牧自然保護協会、これを呼んだというふうに北海道開発局の方から聞いております。  それから、説明会では三つのルートについて説明をいたしましたが、第一案、東ルートと呼ばれるものでございます。これは国鉄の千歳線の東側から遠浅川、安平川に合流する案。それから第二案としまして、中ルートと呼ぶものでございますが、遠浅川から苫小牧東部工業基地の北西部を通りウトナイ沼の下流で勇払川へ合流する案。それから第三案、西ルートと呼んでおるようでございますが、御指摘の美々川の本流からウトナイ沼を通りまして安平川に抜ける案、これについて御説明をいたしたようでございます。
  140. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この千歳川放水路計画の概要が五十七年九月に明らかにされたのですが、それによりますと、千歳川から苫小牧までの約四十キロ、川幅は、千歳川取りつけ部分で二百五十メーター、太平洋に放水する出口で三百五十メーター、最大流量は毎秒一千二百トン、総工費は概算で約一千二百億円、こうなっています。今回のこの三ルート案では取りつけ部分、それから中流部分、出口部分、この川幅はかなり拡大されたと聞いていますが、それぞれ何メートル予定しているのか、また総工費は幾らでしょうか。
  141. 萩原兼脩

    説明員(萩原兼脩君) 現在調査中ということでございますので、いろいろ出てまいります数字が今後実施の段階までに変わるという可能性があるわけでございますが、現段階におきましては、御指摘の川幅と申しますか。地幅、要するに使わしていただく幅でございますが、上流部で約三百メートル、それから中流部で約四百メートル、下流部では約四百五十メートルというふうに考えております。五十七年九月にどういう数字を開発局の方で出しましたかは、ちょっと私ども手元に数字を持っておりませんので比較しかねます。  また、事業費のことでございますが、現在、ただいま申しましたように調査中ということでございますので、正確な事業費をはじいておりません。したがいまして、幾らであるという御説明もしていないようでございます。
  142. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これはどのルートを通るにいたしましても、美々川源流部を通るようなんですね。ここにやはり問題があると思うのです。この場合、分水嶺になっている標高二十から二十五メートルの丘陵地帯を約数キロメートルにわたって掘削しなければいかぬ。しかも、大変幅が大きい。しかも取りつけ部分の高水位は八から九メートル。したがって、取りつけ部分と太平洋の出口部分水位の落差は最大で九メートル以下という、こういうものですね。しかも大変長い。こういう状況で水を流すのです。  それで、問題は、この放水路が美々川を通る場合のウトナイ湖の水位の変化あるいは湿原への大きな影響、これは大変大きいと思うのですが、この辺についてはどう考えていますか。
  143. 萩原兼脩

    説明員(萩原兼脩君) 特に西ルートについてのお話だと思います。私ども、現在開発局におきまして三ルートを並べましていろいろ御説明その他しておるわけでございますが、確かに西ルートにつきましては、自然環境あるいは社会環境への影響が大分あるのではないかという判断をいたしております。
  144. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この間見てまいりまして、美々川、ウトナイ湖、これは本当に保全しなければならない自然環境だと思うのです。大変このルートは影響が大きいのですが、特にウトナイ湖に直結するこのルートというのは環境への影響という面からではまさに論外だと思うのです。大体これがルートに入ること自身が問題だと思うんですね。環境庁として、こういうものを大体認められるのか、この点どうですか。
  145. 山崎圭

    政府委員山崎圭君) 先生指摘のように、ウトナイ湖でございますが、これはガンとかカモとかハクチョウとか、そういう鳥類の生息にとりまして大変大事な集団渡来地であると認識しております。そのために、私ども、五十七年の三月でございますが、ウトナイ湖とその周辺部約五百十ヘクタールでございましたか、従来道設でありました鳥獣保護区を国設に格上げいたしまして、それで全域をまた特別保護地区というふうに指定しております。そういうことを見ましても、このウトナイ湖につきましては大変大事なことだと思っております。  ただ、今お話の千歳川の太平洋放水路計画でございますか、これにつきましては私ども関係の省庁から詳細な計画は承知しておりません。伺ってもおりません。そういうことで、今現在この段階でどうだということはちょっと直接にはお答えしかねるのでございますけれども、一般論と申しますれば、このような大事な地域において鳥獣の保護あるいはその生息環境保全、こういう立場に立ちますのでありまするから、そういうものに重大な影響がある、こういうことであれば当然ながらこういう計画は避けていただきたい、これが私ども立場でございます。
  146. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この問題は基本的には石狩川の治水計画の基本に関する問題なんです。私が党の北海道委員会では、これに対する抜本対策、石狩川本流をもっと対処せよという政策を提言しておりますが、それをやっておりますと時間がなくなってしまうし、この場では省略をしたいと思うのです。  やはりそちらの方の抜本的な再検討、見直しが必要だと思うのですが、問題をウトナイ湖の問題に絞って聞いてまいりますと、この一帯の保全については、昭和四十七年当時、道の生活環境部が美々川学術自然保護地域に指定する計画があったわけであります。また、昭和五十二年以降は、道が美々川流域自然環境保全地区に指定するために調査を実施して、現在その報告書ができ上がっておりまして、あと指定するだけの状況になっている。ところが、五十七年以降、この太平洋放水路計画が浮上しているためにこれはストップされている、こういう状況であります。  そこで環境庁にお伺いしますが、自然保護局長が当時の北海道知事との間に、昭和四十八年十二月七日付で、この地域の自然保護方針の大筋の了解文書を取り交わしておると聞いております。その内容はどういうものか、それは現時点においても環境庁の方針と理解してよろしいか、これについてお答えいただきたいと思います。
  147. 山崎圭

    政府委員山崎圭君) ただいまお尋ねの点につきましては、例の苫小牧の東部開発、東部大規模工業基地に関連しての問題でございまして、ウトナイ湖あるいはその周辺の湿地帯、あるいはまた美々川も含めて自然環境保全されるように、例えば鳥獣保護区の特別保護地区等を設定する、こういう方針につきまして、北海道と私どもその内容を確認し合い、了解し合ったもの、こういう性質のものでございまして、その後十年経過いたしますが、先ほど申しましたように、ウトナイ湖につきましては鳥獣保護区特別保護地区として設定をしているところであります。  美々川それ自身については、今先生の御指摘のような経過があったわけでありますが、特段、その取り交わした、確認し合ったものを現在十年の間に変えたという事実はございません。
  148. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その確認の中で、「ウトナイ湖、ポロト沼及びその周辺の湿地帯(美々川流域を含む)については、将来にわたって自然環境保全されるよう鳥獣保護区の特別保護地区等を設定する方針で臨む」と。この今引用されている中身、「ウトナイ湖、ポロト沼及びその周辺の湿地帯」ということは、具体的に美々川、それからパンケ、ペンケナイ川の湿地帯やミズナラ、コナラ林あるいはハンノキ林を含む、こう理解してよろしいのでしょうか。
  149. 山崎圭

    政府委員山崎圭君) 何と申しますか、先ほども申しましたように、苫東の開発に当たりまして、その周辺を含めた自然環境保全が大事である、こういうことで、北海道と私どもの間で基本的な、あるいは全般的なといいますか、そういう方針について確認し合ったわけでありまして、具体的に、今御指摘のペンケナイとかあるいはハンケナイ、あるいは今お挙げになりました林、そういったものを具体的な地点まで両者が確認し合った、あるいは示したということはないのでございます。
  150. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 しかし、あの状況からいけば、今指摘したようなのは当然含まれると理解すべきなのではないでしょうか、本当に保護するとなれば。
  151. 山崎圭

    政府委員山崎圭君) でございますから、ウトナイ湖とかいう具体的な地名、あるいは美々川流域というような具体的な地名は挙がっております。しかし、美々川に流れ込むペンケとかパンケナイとかいう川まで含めるかどうか、そこまでお互いが確認し合っていこうということではないということでございます。
  152. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それは今後のいろんな話の中で含まれるかもしれぬし、含まれないかもしれない、こういうことですか。
  153. 山崎圭

    政府委員山崎圭君) いろいろ地元の御了解も得なければならぬという手続的なことも含めまして、具体的な地点、範囲、そういうものについては今後の話になる、こういうふうに考えております。
  154. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それから、先ほどの環境庁と道との確認の中で「鳥獣保護国の特別保護地区等を設定する方針」というぐあいになっていますが、この場合、「等」の中には自然環境保全地区の指定というケースを含むのでしょうか。
  155. 山崎圭

    政府委員山崎圭君) 当時、関係者がその「等」についてどの程度の内容をお互い頭に置いて考えておったか、これは必ずしも定かでないところがあります。  しかし、今申しましたように、代表的な事例は鳥獣保護区である、こういうことから見ますと、あと、例えば自然公園にするとかあるいは自然環境保全地域にするとか、それも道のものであるとか国のものであるとか、いろんなバラエティーはあると思います。しかし、その中の一つとしては、道の条例に基づきます自然環境保全地域の指定というのも一つの考え方であった、そうは思っております。
  156. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そうだとしますと、冒頭に申し上げたとおり、千歳川の放水路計画で、源流地域も含めて自然が本当に危機的な状況にあるわけであります。  そこで、道が、自然環境保全地域としてウトナイ、美々川流域のうち、区域総面積は四百六ヘクタールになりますか、うち、特別地区二百七十三ヘクタールを指定する計画環境庁として積極的に援助して、道を指導、激励して、早急にこれを指定にこぎつけるようにすべきじゃないかと思うのですが、その点のお考え。  そして、時間が来ましたので、最後に大臣、こういう大切な自然を守っていく、直接湖沼法の対象じゃありませんけれども、本来湖沼法もその辺を大きくは包括することだと思いますので、そういう自然の湖沼を守っていく、その辺についての大臣の所見を聞きたいと思うのです。
  157. 山崎圭

    政府委員山崎圭君) 道がそういう計画に基づいて道の条例によって美々川流域を指定していきたいという今までの経過もございましたし、また、道としましては、全道的な自然環境保全を推進するということで、そういう姿で動いていただくということは大変結構なことである、そのように考えております。  そういうことでございますので、御質問の趣旨も十分体しまして十分道とも連絡をとってまいりたい、こういうふうに思っております。
  158. 上田稔

    国務大臣上田稔君) お答え申し上げます。  ウトナイ湖を千歳川の太平洋放水路が通るのかどうかということについては、実は全然まだ聞いておらないのでございます。  したがいまして、私も一般論で申し上げますけれども、ウトナイ湖はガンだとかカモだとかハクチョウだとか、そういう鳥類の生息地でございますので、これを保護区にさせていただいております。したがいまして、そういうところは避けていただきたいというのが私どもの考え方でございまして、長官といたしましてもそのとおりでございます。
  159. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時六分散会      —————・—————