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1984-04-26 第101回国会 参議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十六日(木曜日)    午前十一時五分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月二十四日     辞任         補欠選任      久保田真苗君     和田 静夫君  四月二十五日     辞任         補欠選任      水谷  力君     中西 一郎君      和田 静夫君     久保田真苗君      立木  洋君     安武 洋子君  四月二十六日     辞任         補欠選任      中西 一郎君     竹山  裕君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         後藤 正夫君     理 事                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 松前 達郎君     委 員                 大鷹 淑子君                 嶋崎  均君                 竹山  裕君                 中山 太郎君                 夏目 忠雄君                 原 文兵衛君                 平井 卓志君                 久保田真苗君                 八百板 正君                 黒柳  明君                 和田 教美君                 安武 洋子君                 関  嘉彦君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        外務大臣官房長  枝村 純郎君        外務大臣官房審        議官       山下新太郎君        外務大臣官房外        務参事官     有馬 龍夫君        外務大臣官房外        務参事官     斉藤 邦彦君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省中近東ア        フリカ局長    波多野敬雄君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    国立国会図書館側        館     長  荒尾 正浩君        総 務 部 長  三塚 俊武君        連 絡 部 長  田邊由太郎君    説明員        警察庁警備局公        安第三課長    鏡山 昭典君        防衛庁防衛局調        査第一課長    松村 龍二君        防衛施設庁施設        部施設取得第二        課長       小澤 健二君        外務大臣官房領        事移住部外務参        事官       大鷹 市郎君        外務省国際連合        局審議官     遠藤 哲也君        林野庁林政部林        産課長      三澤  毅君        林野庁指導部研        究普及課長    塚本 隆久君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○千九百八十三年の国際熱帯木材協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付  ) ○出版物国際交換に関する条約締結について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○国家間における公の出版物及び政府文書の交  換に関する条約締結について承認を求めるの  件(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十五日、水谷力君及び立木洋君が委員辞任され、その補欠として中西一郎君及び安武洋子君が選任されました。  また、本日、中西一郎君が委員辞任され、その補欠として竹山裕君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 千九百八十三年の国際熱帯木材協定締結について承認を求めるの件、出版物国際交換に関する条約締結について承認を求めるの件、国家間における公の出版物及び政府文書交換に関する条約締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 八百板正

    八百板正君 出版物国際交換の件についてお尋ねをいたします。  この条約は、中身としては一八八六年、明治十九年にブラッセルで始まって、日本がまた一九五八年にユネスコ総会でこの条約に賛成した。なぜ二十年も三十年も合意した条約批准しないで今まで見送ったか。交換仕事は支障なく国会図書館や民間でやられてきたから批准の必要がなかったとの先般のお答えでありましたが、これではおくれた理由にはならないんでありまして、やっていればなおのこと早く批准すべきではなかったかと思う。与党、野党の間で対立するような案件でもありませんし、国際関係でも、西側サイドのものはときによるとけんかしても通すぐらいの勢いでやってきているのに、こういう全国際的な、あるいは文化的なものになりまするというと、あるいは金に関係の薄いものになりまするというと気乗り薄ということなのか、これはお答えは聞かぬでもいいんですが。  そこで、こういうふうに合意をしても批准はしないでずっとこう引っ張ってきていると、こういう案件が国際的に外務省関係で幾つぐらいあるんでしょうか。幾つあるかだけひとつ聞かしていただきたい。
  5. 斉藤邦彦

    政府委員斉藤邦彦君) 現在存在しております多数国間条約我が国がまだ締結していない条約の中には、例えば地域的な条約我が国締結し得ないものもございますし、あるいは条約成立後の事態の推移によって我が国締結する意味を失っているものもございます。したがいまして、ただいまの御質問に対しまして正確な数字お答えすることは非常に難しいんでございますけれども、理論的に我が国締結し得る未締結の多数国間条約の数といたしましては、大体百数十件程度と考えていただいてよろしいかと思います。
  6. 八百板正

    八百板正君 賛成、合意という段階に行ったものはやはり早く批准を済ませるというふうにするのが本当じゃないかと思うんです。この点は一つ意見希望として述べておきます。  それから、IFLA、国際図書館連盟東京総会が再来年に開かれる。外国から千人ぐらい、国内から五百人ぐらいの規模と聞きますが、この国際大会格好をつけるために何か紋付羽織はかまをくっつけたような感じがするんであります。それなりに結構だと思うんですけれども、数えてきますると、この総会は、ブラッセル条約の発案が一八八六年ですから、ちょうど百年の国際会議ということになります。記念すべき歴史的な国際的、文化的行事であると、こう言ってよろしいと思います。したがって、外務省、文部省、国会図書館は張り切って取り組むべきものだと私は思うんでありますが、これについての御用意、考えなどありましたら国会図書館外務省から聞かしていたたきたい。
  7. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 先生今御指摘のとおり、再来年に開かれます東京大会、ちょうどブラッセル条約ができましてから百年日の大会でございまして、これは図書館の分野での国際協力拡大する意味で非常にいい機会であると思っております。したがいまして、外務省といたしましても、目下この大会日本事務局を務めておられます日本図書館協会というのがございますが、そことの間では密接な協力を今とっておりまして、外務省としましてできる限りの御協力をしてまいりたいと、こういうふうに思っております。  協力の方法といたしましては、例えば在外公館を通じての関係図書館あるいは図書館団体とのコンタクトとか、あるいは御要請に応じて大会の何と申しましょうか、プロトコルというか、そういった設営等々についてもできる限り外務省として御協力申し上げたいと、こういうふうに思っております。
  8. 八百板正

    八百板正君 この日本海外協力重点は、この面でもアジア諸国との関係拡大すべきものだと思いますが、しかしアジア諸国の中ではインドネシアしか加盟していないと。重点をかけたところから、向こうの方から乗ってこないというのではうまくないわけでありまして、途上国を目標にしながら外務省は、この国際協力の面からも、文化交流の面からもどんな見解を持っておるか、これもちょっと聞かしていただきたい。
  9. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 今先生指摘のとおり、アジアでこの両条約に入っております国はインドネシアだけでございます。しかしながら、アジアは何といっても我が近隣諸国でございますし、アジア近隣諸国との間での図書交換をもう一層進めたいということは私どもの念願でございますし、したがいまして、この条約日本が加入した暁には、この条約の加入を契機としまして一層アジア諸国との図書交流というものを働きかけていきたいと。これは、日本のこの条約中央交換当局になる予定の国会図書館とも十分に協力をとりながらアジア関係諸国に働きかけて、図書交換を一層拡充、拡大していきたいと、こういうふうに思っております。
  10. 八百板正

    八百板正君 国際会議があるんだから、やっぱり一つのチャンスですから入ってもらいたい、入りそうだというふうなところは大いにオルグして、工作してひとつ努力すべきだと思います。これは希望として述べておきます。  図書館は、今まで出版交換をやって六百六万円の予算とかとおととい聞きましたが、これは主として郵送料であると。これで足りないときには図書購入費から流用すると述べております。流用という言葉はおっしゃらなかったようでありますが、国際条約によって遂行するこの第四条の任務というものは、付随的な片手間の仕事ではないと思うんです。予算も横の方から持ってきて使うというふうな筋のものではなくて、一般の図書購入費が削られたら基本の方の購入費が減るんですから、やはり付随的な、ついでにやるというような格好の金の使い方は私はうまくないと思うんです。これはどうでしょうか、国会図書館の方に伺いたい。
  11. 三塚俊武

    国立国会図書館参事三塚俊武君) ただいま先生の御指摘のように、国際交換に要する費用については図書購入費の中に計上しておりますが、この図書購入費の方で、この条約締結されることによりまして出版物国際交換がさらに活発になるということが予想されますが、今後そのような推移を見ながら、財政当局相談の上これに対処してまいりたいと思います。
  12. 八百板正

    八百板正君 この条約の第四条の2の定めによって、これは読み上げるまでもないのですが、「締約国は、国の交換機関又は中央交換当局に対し、交換すべき資料を入手するための必要な権限及び交換任務を遂行するための十分な資力を与える。」と、こう規定してあります。「十分な資力を与える。」と、「十分」というのがくっついているんですね。ですから、これはひとつ国の独立予算として、国の責任として独立予算交換機関に与える義務があるんじゃないかと思うんです。国会図書館も、予算請求なんかでもそういう条約に基づく独立した立場で、予算請求権限なども発揮すべきものだと私は思うのですが、これは出す方の大蔵省も来てもらうといいんだけれども、きょうはお呼びしておいでを願っておりませんから、ひとつ政府を代表するという意味大臣なり外務省なりにお答えを願いたいと思います。
  13. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 先生今御指摘の第四条の2項でございますけれども、これはこの条約が発効いたしまして、その条約に基づきます図書交換の実態を見ながら国会図書館とも御連絡をとりまして、本件につきましては前向きに検討してまいりたいと、こういうふうに思っております。
  14. 八百板正

    八百板正君 やっぱり項目はきちんと独立して挙げるべきものだと思うのですが、これは図書館の方の御意見はどうですか、今までと違った基礎の上に立って予算請求権限が発生したとこう考えて、これはどうですか。
  15. 三塚俊武

    国立国会図書館参事三塚俊武君) 先ほど申し上げましたように、国際交換に要する費用というのは当館図書購入予算の中に計上してございまして、その中に交換に要する通信、運搬費等も含めまして、現在のところ今後これがどのくらい増加していくかということを一応見守りながら、財政当局相談の上善処したいと思っております。
  16. 八百板正

    八百板正君 ちょっと考え方が少し濁っているんですがね、この図書購入費というものではないんです。これは国際的条約によって発生する仕事ですから、単なる図書購入費というようなものじゃないんです。ここのところはあなたの方は専門だから、ひとつよく研究してください。  それから国会図書館は、国会構成の中で参議院、衆議院弾劾裁判所、それから裁判官訴追委員会国立国会図書館と、こういうふうに並列した五つの機関として存在することは今さら言うまでもないんですが、そういう意味で館長は国務大臣と同等の処遇を規定されておるわけです。立法に関しては、立法機能の頭脳的な協力立場があると思うんですが、本の出し入れや国民の閲覧に便宜を図るというようなことももちろんですけれども、やはりこの条約によって委託されて、国際的協力について積極的に協力活動をするという任務を持つことになると、今までもやっておったけれども、明確にそういう任務が課せられるものと私は思うんですが、これは図書館長はいかがお考えですか。
  17. 荒尾正浩

    国立国会図書館長荒尾正浩君) 本条約締結契機といたしまして、図書館人的交流とか資料交換とか図書館サービス提供等を通じまして、今後一層国際協力活動を推進いたしまして、国際理解文化交流に寄与したいと願っております。  当館国際協力業務は従来から各国図書館との間で活発に行われてまいりましたが、今後はさらに発展途上国とりわけアジア諸国との間におきましても、本条約の基準に沿って資料交換活動を推進するなど国際協力拡大を図ってまいる所存でございます。
  18. 八百板正

    八百板正君 国際協力役割をさらに担っていただくという立場で、アメリカの議会図書館世界一の量、質、活動がすぐれていると言われておりますし、あるいは大英国図書館も整った歴史の上に立っていると言われておりますが、比べて何か特色というようなものについて図書館の方からひとつ簡単にお願いします。
  19. 田邊由太郎

    国立国会図書館参事田邊由太郎君) 米国の議会図書館は、約二千万冊の図書を含めまして七千八百万点を超える資料を持つと言われております。五千二百人の職員、二億一千五百万ドル、約五百億円になりますが、我が館の約六倍を超える規模で組織されております。それで同館は、先生先ほどおっしゃられましたとおり、議会に対する充実した調査サービス機能を持っております。それからまた、機械化による業務管理ということに大きな特色を持っております。  それから、イギリスの英国図書館は、一千二百万冊の図書を含んだ一千五百万点の資料と、二千人を超える職員、それから四千五百万ポンド、約百五十億円になりますが、その予算を持って国立国会図書館の二倍くらいの規模活動をいたしております。同館特色としましては、科学技術図書館というものを独立して持っているということ、それから東洋資料をたくさん持っているということ、それから貸出局というものをもちまして、国内を初め世界各国からの貸し出し、複写業務を処理しているという点で世界的に大変有名な機関でございます。  大体そのような状況でございます。
  20. 八百板正

    八百板正君 図書館の方にお尋ねいたしますが、米英のすぐれた図書館を我が方と見比べながら、条約批准機会任務も新たにはっきりすることでございますから、今後の発展策国会図書館の展望、将来像、増築も進んでいることですから国際会議までに具体的にやれるもの、あんなこと、こんなことというようなものをひとつ現実に立てておられますか、何かやってもらいたいと思うのですが、何かございますか。
  21. 田邊由太郎

    国立国会図書館参事田邊由太郎君) 我が館といたしましては、やはり国際交換業務によりまして受け入れている資料が全受け入れ資料の四〇%ほど現在占めておりまして、これは日本国内のほかの機関では入手することのできない資料が多々ございます。それで、ますますこの国際交換業務を通じまして、国内機関で入手することのできない資料というものを充実させて、日本国民に対するサービス、もちろん国会を含めまして全国民に対するサービス充実さしていきたいと、このように考えております。
  22. 八百板正

    八百板正君 この交換に当たって、等量交換ということを言われておりますが、等量といっても同じ量というのはなかなかはかりがたいと思うのですが、細かい点はともかくとして、出版文化を通じての日本国際的協力、こういう任務日本には大いにあると思うのです。そういう任務の一翼を担う、分担すると、こういう立場から考えれば、交換だから等量ということになるんでしょうが、やはり協力という点に重点を置いて、途上国に対してはそういう等量にこだわらないで半ば贈呈、供与的協力意味を加えて積極的に送付すべきものだと、こういうふうに考えますが、図書館はこの辺はどうお考えでしょうか。
  23. 三塚俊武

    国立国会図書館参事三塚俊武君) 先生指摘のとおり、アジア諸国など発展途上国との国際協力の観点からは、等量交換にこだわらずできる限り送付すべきであるというふうに考えますが、一方若干の問題もございます。  その一つには交換資料の言語の問題がございます。当館交換のために提供する資料は主として日本語で書かれた政府出版物でありますが、発展途上国図書館の中には、日本語資料を受け入れても整理して利用に供することができないところもあるのが現状でございます。今後はこのようなことを考えまして、英文等による資料刊行等も十分考慮する必要があるかと存じております。  次に、出版物価格の問題がございます。我が国出版物価格発展途上国のそれとはかなり開きがございます。等価交換の場合、先方から数倍の出版物を受領することもございます。これに対しまして、国際交流の趣旨を配慮いたしまして当方から送付する冊数をふやして調整をしてきたこともございます。今後もこのような配慮は続けていかなければならないかと存じております。
  24. 八百板正

    八百板正君 実際上、送ってもそれが活用されないというふうな問題が当然に伴ってくるわけですから、この諸学、国と国との語学をお互いに勉強し合うというような、図書館だけでは担い切れないたくさんの問題も伴っていくものだと思います。  しかし、最後にお尋ねしておきたいんですが、この国際協力任務が非常に大きくなった日本として、我が国が行うべきそういう任務一つとして出版物国際交換というものを位置づける、事務充実国会図書館中心にやってもらう、そういう位置づけをするということはやはり政府責任であり、また国会責任があるというふうに思うんですが、出版物国際交換位置づけというものに対して、これは外務大臣、一言御見解をいただきたいと思います。
  25. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この条約批准契機にいたしまして、これからもひとつ文化交流について積極的にこれを進めるべく努力をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  26. 八百板正

    八百板正君 よく言われまするように、国際的役割日本は大きくなったと言っても武力とかそういうような面ではおのずから限りがあるし、できない。ほかの面でお金を余計出せとか、あるいはほかの協力をしてほしいという、こういう立場日本に多くなっておるわけでありますから、そういう意味出版文化を通じての協力、これに伴う文化財の協力というふうな点はもうちょっと国際協力の大きな面だという、そういう理解をひとつ願いたいと思います。何か今大臣の話を聞いていると、何となく声が小さいからひとつこれは希望しておきます。  次に、熱帯木材の方を伺います。  私は大づかみに申しますが、日本世界のこの種の木材輸入の半分を買っておるというこれは数字が出ております。半分です。全く驚くべきことですね、世界の中の半分を日本が買っているんだから。よきにつけあしきにつけ半分の責任日本にあると、こういうことになります。  そこで手前の方ですね、我が国林業林野、山の話を、きょう林野庁からおいでいただいていると思うのでひとつ聞かしてもらいたいと思います。  山と言っても、「山高きが故に貴からず、樹有るを以て貴し」という言葉がございます。これは私の幼少のころ、ちょんまげのおじいちゃんから聞かされた言葉ですが、これは実語教寺小屋時代の教科書のだしか第一ページに書いてある言葉です。ほんの小さいときの話だから頭に残っておりますが、森林、樹木を中心に簡潔にひとつ、どんな状況でどんな問題があるか聞かしていただきたい。
  27. 塚本隆久

    説明員塚本隆久君) 我が国森林林業現状についてでございますが、まず木材需要の低迷や林業に必要とする諸経費の増高等によりまして林業生産活動が停滞いたしておること、また製材業を初めとします関連木材産業が長い間不況状態にあること、そして国有林野事業につきましてもその経営が悪化いたしておるといったことで、大変厳しい状態にあるわけでございます。このような中で林業活力を与えその活性化を図るということで、林野庁といたしましては各種の林業施策を推進いたしておるところでございます。  具体的には造林の推進や林道の整備といった林業生産基盤充実林業の担い手の確保、治山事業等国土保全対策充実木材需要拡大関連木材産業体制整備、そして国有林野事業経営改善、こういった各般の施策を実施いたしておるところでございますが、さらにはこれらを支える林業技術、例えば機械に関する技術でございますとか、あるいは病虫害や環境保全に関する技術といった面やら、それに関する試験研究につきましても積極的にこれに取り組んでおるところでございます。
  28. 八百板正

    八百板正君 大事なことは、日本林業というか、山に対して活力がなくなっているという、活力を与えるという言葉をお使いになりましたが、ここが肝心なところですね、現在の日本の山の問題は。早く言えば、外材を外国から買った方が安いからどんどん買ってくる、それで世界一の木材輸入国世界じゅうの半分も日本が買ってしまったと、こういうことになっているんですね。したがって、日本の山は引き合わないから手をかけない、ほったらかしだと。しかし、日本自然条件アジアモンスーンの湿気の多い、雨量の多い、適当な気候で自然繁茂すると、こういうことでほったらかしだけれどもとにかく幾らか伸びている。しかし、活力を与えるためには山を経営的に成り立つようにしなくちゃいけないわけでありまするが、外国から安いのをどんどん買ってきましたから成り立たないと、こういうことになったんで、この点で日本の農業をある意味では解体的に持っていったと。小麦も大豆もかつて日本ではあり余るぐらいであったものが、全部輸入依存というようなのと同じ一つのタイプになっておるわけだと思うんです。  それからまた、この協定の中で国際熱帯木林機関の設立、本部及び構成というようなものがございます。それからこの十条に票の配分付表A生産国付表B消費国側表決権の票の配分というのがありますが、これを見まするというと、日本が千のうちの三百三十票なんですね。これもなるほどなと驚いたんですが、欧州共同体の合計が二百七十七票です。第一位が三百三十票で日本。第二位が欧州共同体の二百七十七。三位がアメリカで七十九。  この票の配分にあらわれておるように、大変な日本関係ですね。口は悪いけれども山荒らしの張本人は日本だと、こういうことになるんですね。そして荒らされた相手方は、一番いろいろよい環境をつくりたいと心配しておりますアジアの国々で、例えばちょっと数字を見ただけでも、輸出のマレーシア五二%、インドネシアニニ%というような数字が出ておりますね。そして、もう丸太では売らぬと言われて、そう山を荒らされちゃ困るという国の批判が出ております。あるいは、日本国と漁業協定をするというと、海の物をかっさらっていかれるだけで自国の足しにならぬということで、漁業の権利金とかあるいは寄港義務とかというようなことに事寄せていやだと言われて、インドネシアなんかからも断られておる。ルックイーストとかジャパン・アズ・ナンバーワンなんて日本に目を向けて、日本に見習えなんと言っておるマレーシアにしたって、日本の経済進出には根こそぎにさらわれるだけでというような批判が出ております。日本に学ぶ中進国の悩みがまざまざと出ております。  一つ注文なんですが、この第一章の第一条の(h)のところに、「生態学的均衡の維持」という言葉を使っております。これをひとつ大事にしていただきたいと思うんですね、この条約の中で。  最後に一言だけ質問というか意見を申し述べておきます。この協定は、商品を確保するという立場を基本にしていますが、日本日本自身の山を荒らしたことについて日本自身に目を向けて、日本国内の風土的な条件とかあるいは日本の外貨の余裕とか先進国の国際的役割というふうな点を考えますというと、やっぱり高度の次元に立って、日本が加害者的立場を方向修正をしてしかるべきときに立っておる、こういうふうに私は思うんです。国会の方でもって大局を見失なってはいけないと思うんです。日本には軌道修正をするいわゆる余力があるんです。それをしないと、国際的な世界の共存とか日本の自立もやがて大きな破綻を招くことになりはしないかと、とがめが我が身に来る。  外務大臣というよりは、あわせて日本の政治のあすを考える者として、ひとつ安倍晋太郎さんの御見解をここで一言伺っておきたい、あすを考える政治家として。答えにくかったら後で答えてもらってもいいですよ。
  29. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 御意見を拝聴しております。  森林資源が、山が非常に大事であるという八百板委員の御意見はもっともでありまして、私も農林大臣をやった経験がございますが、やはり日本における山の重要性というものは人一倍強く感じておるわけでございます。  我が国は一面においては森林生産国でもあります。一面においては世界で最も大きな消費国でもあるわけでございまして、我々はそうした面において、消費国という立場はやはり踏まえて対応していかなきゃならぬ。しかし、消費する場合も外国の木材についての消費でありますが、やはり外国の山の荒廃が非常に進んでおります。そして、それは日本責任でもあるというふうなことを一部で言われておりますが、私は必ずしもそういうことではないと思っております。しかしやはりそうした外国森林資源の確保ということも、日本は消費国の一つとして考えていかなきゃならない。国際協力、経済協力、そういう面で対応していかなきゃならぬと思います。  また、国内における山の確保、森林資源の確保、これは大変重大な政策でございまして、我が国としては一貫して山を守るという基本政策に取り組んでこれを推進していかなきゃならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。
  30. 久保田真苗

    久保田真苗君 私は、本題に入ります前にけさの朝日新聞の記事についてお伺いしたいんですが、この朝日新聞の記事は、アメリカの民間研究機関専門家が朝日新聞に対して情報を出しているんですが、この中で、三沢の米軍基地にAUWショップと呼ばれる核貯蔵庫があるということを言っているんですけれども、外務省では、この三沢基地その他の米軍施設、区域の中にAUWと呼ばれる施設があるのかどうか御存じでしょうか。
  31. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 今御指摘のけさの朝日に書かれております施設でございますけれども、私ども、ちょっと各基地の詳細につきましては承知していない次第でございます。
  32. 久保田真苗

    久保田真苗君 調査中とおっしゃると、調査をしておられるわけですか。
  33. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 今申し上げましたのは、私ども詳細を承知していないと申し上げた次第でございます。
  34. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうしますと、それはあるともないともわからない、わからないということですね。
  35. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 現時点におきましては、おっしゃるとおり私ども承知していない次第でございますが、通常でございますと、米軍の施設、区域内の状況等について一番把握しているのは防衛施設庁ではないかと思うんでございますが、できましたら施設庁の方にお聞きいただければと思います。
  36. 久保田真苗

    久保田真苗君 それでは施設庁に伺いますが、施設庁は今までにAUWショップと言われる施設を建設したことがありますか。
  37. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) ございませんです。
  38. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういう計画はありますか。
  39. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) まだ承知しておりません。
  40. 久保田真苗

    久保田真苗君 承知していないということですね。  それでは、特に堅固な倉庫、建物などを三沢基地の中に建設したことはないんですか。
  41. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) ございません。
  42. 久保田真苗

    久保田真苗君 この三沢基地内の施設を建てているのは、これは防衛施設庁が日本予算をもって建てているのか、それともそうでないアメリカの建設によって建てているのか、その点はどうですか。
  43. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) 私ども現在計画いたしておりますのは、五十九年度に隊舎、住宅、消音装置、それから管理棟、倉庫というものを計画しておるものでございまして、今までに今先生のお話のようなものを工事したことはございませんです。
  44. 久保田真苗

    久保田真苗君 建てたことはないわけですね。
  45. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) はい。
  46. 久保田真苗

    久保田真苗君 それでは外務大臣にお伺いしたいんですが、大臣はこの委員会で再三非核三原則を守るという御発言をなさっております。大変くどいようですが、非核三原則を誠実に守っていかれるというふうに信じてよろしいのですね。
  47. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 非核三原則につきましては、これはまさに国是とも言うべきものであるというふうに存じております。したがって、我が政府としましては、この非核三原則を忠実に遵守するということで今日まで来ておりますし、今後ともその方針は変わらないものであります。
  48. 久保田真苗

    久保田真苗君 それでは、仮に事前協議があった場合も、核施設、核基地の建設についてはノーと答えていただくと信じていいわけですね。
  49. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 事前協議がありまして、核のいわゆる持ち込みについての要請があった場合においては、我が政府としましてはこれに対してすべてノー、こういうことを決定いたしております。事前協議の核持ち込みの場合にこれに対して否定をするというのが政府の終始一貫変わらざる見解であります。
  50. 久保田真苗

    久保田真苗君 ノーと答えていただくことはわかりました。しかし国民は、非核三原則のうち特に持ち込ませずの原則につきましては非常に強い疑惑を持っておりまして、先ほどの外務省お答えでは、このAUWショップと言われる施設についてはイエス、ノーのどちらでもなくわからないんだと、こうおっしゃっております。それならば、日米の定期協議では外務省日本を代表しておられますので、こういうものについての疑問に答えるべく、アメリカにこの点を確認していただくと大変ありがたいんですが、この点はどうでしょうか。
  51. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 御指摘のけさの朝日新聞にかかわる報道でございますが、ここで言われておりますアーキンという人は、今までに御承知かと思いますけれども、赤旗等のインタビューにおきまして安保体制の危険性といったようなことを種々議論されていることは御承知のとおりだと思うんでございます。実はけさの朝日に出ております内容も、そこで議論されておりますことと同じような趣旨だと私ども理解しておりますが、政府としまして、アーキンという人は一私人にとどまるわけでございますので、その発言の一つ一つにつきまして照会とかコメントするということは差し控えたいと、こう考えている次第でございます。
  52. 久保田真苗

    久保田真苗君 私はその方の名前もまだ言っておりません。また、この方が言われているこの事実について調査をお願いしたいとも言っていないんですね。ただ、一般的に基地の中に、いわゆるAUWショップと言われるような核貯蔵庫の存在の事実あるいはそういうものが建設されたことがあるのかどうか、こういう点を日米協議の際に御確認いただけると大変ありがたいと思うんですが、一般論としてですよ。御確認いただけないでしょうか。
  53. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 今の御質問にございましたAUWというのは、記事によりますとたしかアドバンスト・アンダーウォーター・ウエポンズでございますかの略だそうでございますが、そういうものがあるかどうか私どもちょっと先ほど申し上げましたように知らないわけでございますが、念のために一体どういうものなのか可能な範囲で調べてみたいと思います。
  54. 久保田真苗

    久保田真苗君 それでは、希望としてどうぞお調べになって、できるだけ早い機会にこの疑問を解くようにお願いしておきたいと思います。  次に、国際熱帯木材協定についてお伺いします。  この協定は、所要の批准数を待ってことしの十月発効を目標としているということなんですけれども、発効後第一回の理事会で国際熱帯木材機関の本部の所在地を決める、こういうことになっていますね。現在、日本を含む先進六カ国及び生産国であるインドネシアが立候補しているということです。  それで、この本部の候補についてなんですが、日本を含めて見通しといいますか、あるいは日本に寄せられる期待といいますか、その点をお聞かせいただきたいと思いますが。
  55. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 先生指摘のとおり、本部の誘致の問題につきましては協定発効後の理事会ということになっております。現在のところまだ協定批准した国はない状況でございまして、それぞれの国、ただいま先生指摘の七カ国に本部を誘致したいという意向があるということは私ども承知しておりますが、それらの国々がどのくらいの支持を得ているとか、あるいは具体的にどういうふうな方向で準備が進められているとかについてはまだ私ども承知しておりませんし、はっきりした傾向はまだ出ているということでもないのではないかというふうに考えられます。
  56. 久保田真苗

    久保田真苗君 事務局長のほかに行政職員専門職員をどのくらいの規模を予定しているのか、これはおわかりですか。
  57. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 事務局のサイズ等についての具体的な議論はまだないというふうに承知しております。
  58. 久保田真苗

    久保田真苗君 次の理事会で、ことしじゅうぐらいにこういう話が持ち上がってきますと、常識としましては既に候補者の名前などが挙がったり、ぼつぼつと折衝も始まるというようなことが予測されるわけなんです。それで、日本はこの面では非常に技術もあり経験もあるということがございますので、機関の実績が上がる上からいってもすぐれた人材を早い時期に物色して、日本が非常に関係の深いこの機関に貢献してはどうかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  59. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 私どもとしては、日本職員の参加を含めまして、この協定成立後この機関が成立した場合には、日本が自主的に大きな役割が果たし得るようにできるだけの準備と努力をやってまいりたい、かように考えております。
  60. 久保田真苗

    久保田真苗君 まだそういう選考は進めていないわけですか。
  61. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) まだ具体的な人選等については進めておりません。
  62. 久保田真苗

    久保田真苗君 それではぜひそういうことを早目にお願いしたいということを希望しておきます。  次に、日本熱帯木材輸入は、今、八百板委員からもお話をされましたけれどもけた外れに多いんですね。相当量の国産材もありながら、欧州全体の二〇%程度と比べてもけた外れに多い。その理由はどういうことだというふうに把握しておられますか。
  63. 三澤毅

    説明員(三澤毅君) 我が国の需要量は五十八年でおおむね九千万立方前後と、このように考えられております。つまり、その形態は住宅に使われるもの、それからパルプチップとなって紙等に消費されるもの、その他の使用と、こういうようなことでございますが、いずれにしても相当量の需要があるわけでございます。国内における生産、供給はそのうちのおおむね三五%前後と、こういうような状況でございまして、これは主として資源的な状況等から来ているわけでございます。したがいまして、当分の間、なお相当量を海外に依存せざるを得ない、このような資源状況にあるわけでございます。
  64. 久保田真苗

    久保田真苗君 最近、割りばしの問題があっちこっちでやかましくなってきておるんですけれども、中には、森林破壊に手をかさないようにはし箱自参でレストランなんかにお入りになる方もいらっしゃるとか、そういうことをよく聞きますけれども、割りばしの日本の木材消費量に占める地位につきまして、林野庁がいらっしゃいましたらお伺いしたいんですけれども、一体割りばしは年に何ぜんぐらい使い捨てられるものか、また、日本の木材消費量のどのくらいのパーセントを実際占めているのか、いかがでしょうか。
  65. 三澤毅

    説明員(三澤毅君) 我が国で生産する割りばし、これは国産の松あるいは杉、ヒノキあるいは北海道にございますシナノキあるいはカバそういったものでつくられております。そのうち松、シナノキ、カバこういったものでつくられるのは大衆用品でございまして、あと杉、ヒノキというのはやや高級なはし、こういうふうになります。さらにこのほかに竹のはしが割りばしとして使われる、こういうようなことになっております。  しかし、先生お尋ねの生産量について、これはややマイナープロダクトという意味もございまして、正確な統計量は出ておりません。したがって、その把握というのは非常に困難でございますけれども、私ども、業界からの聞き取り等によりまして、昭和五十七年において国内の生産量はおおむね二百三十万ケースと、このように推定しております。なお、一ケースというのは五千ぜんのことでございます。相当の量なんです。しかし、おはしの数としては多いんでございますけれども、これを材木として考えてみますと、この二百三十万ケースというのが約十七万立方と、こういうふうに推定されております。したがいまして、昭和五十七年が約九千万立方の木材需要ということでございますので、それからいたしますとおおむね〇・二%と、このような数字になろうかと思っております。
  66. 久保田真苗

    久保田真苗君 もちろん、こういう関係には生産者とか加工業者等の問題がいろいろございますし、私は割りばしを使わない方がいいなどと今言うつもりはありませんけれども、全体として地球資源が有限であるし、特に木々については育成するまでに何年も何十年もかかるということを思いますとき、やはり実に莫大な、恐らく百億本を超える数ではないかと思われますが、こういうものをリサイクルして例えばパルプ用材にするなどという、政府としてのどこかの官庁でそういう御計画はあるんでございましょうか。
  67. 三澤毅

    説明員(三澤毅君) 私がお答えするべき立場にはないと思うんでございますけれども、今先生おっしゃるとおり、資源を有効に使うということについてはこれはもちろんそれは正しいことだと思っております。  ただ、割りばしについて私ども森林資源という面からちょっと御説明させていただきますと、やはり今一千万ヘクタールの人口林をつくってまいりましたけれども、その間におきまして間伐とかあるいは製材に向かないもの等々、いろいろやっぱり山からの材の供給というものはあるわけでございます。そういう意味で、確かに割りばしに使われたものは使い捨てにされてしまっているという現状でございますけれども、そういった材がいろいろ有効に使われているという点では、まず一次的に割りばしに使われるという意味で有効的に使われる面もあるわけでございます。そういった材の有効利用というのが、山における資源をつくる過程におけるリサイクル、つまり山になりわいとしてその地域に人が定住し、仕事を得て、そして山づくりに従事する、そういうことについては大変貴重な意味を持っていると思っております。そこで、使われた材、割りばし、これがリサイクルされることは大変歓迎すべきことだと思いますけれども、先ほど私が御説明申し上げましたように、十七万立方というのが全国に散らばっている状況でございますので、量的に見ますと、なかなか技術的、経済的に難しい面もあろうかと、このように思っております。
  68. 久保田真苗

    久保田真苗君 今後の問題として、一次リサイクルからさらに進んで二次リサイクルというふうに進んでいけたら大変いいと思っておりますので、ひとつ林野庁の方でもこういう点をお心にとめておいていただければ幸いだと思います。  なぜこんなことを申しますかといいますと、世界の木材資源があり余っているなら別ですけれども、いただいた資料で拝見しますと、少なくとも熱帯林が毎年一千百三十万ヘクタールずつ減少している、アメリカ国務省の推計ではもっと多そうだと。熱帯雨林は全部で十二億ヘクタールだということですからこれ以外の熱帯林もあるでしょうけれども、一応これで単純計算しますと、世界の熱帯雨林がこのスピードではげていきますと七、八十年から百年ぐらいで全部なくなる、単純計算では全部なくなるということになります。これに対して熱帯造林の方は年平均百十万ヘクタール程度ですから一割しか造林が行われていないというようなまことにゆゆしい事態ではないか、こう思うわけです。もちろん、これは日本の輸入とか日本の伐採が全責任を負うわけじゃありませんけれども、日本がけた外れの熱帯木材消費を行っている点から見ましても、他国以上に関心を持ってよろしいことじゃないか、こう思うわけでございます。  そこで、今回のこの協定につきましても特に一条の(f)、(h)ですね。このあたりは非常に大事なことで、ぜひ今後協定関係のことをお進めになる場合に考えていただきたいと思うんですが、(f)は、産業用熱帯木材の造林及び森林経営、これについて援助していくということ、それから(h)の方は、熱帯林やその遺伝資源の持続的利用、保全、それから関連地域の生態系維持の問題、こういうことになっております。でございますから、この条約批准され発効されました暁には、ひとつ外務省の方でこういう点にぜひお力を入れていただきたいと思うんですが、大臣はどのようにごらんになりますでしょうか。
  69. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるように、日本は非常に大きな消費国でありますし輸入をしております。それだけに、やはり国際的にも森林資源を日本が破壊するということを言われないように、森林資源を守っていくという努力はしていかなきゃならぬと私は思います。これはいわば日本の国際責任一つであろうと、こういうふうに思うわけで、したがってそういう立場で熱帯林のある諸国の、もちろん開発途上国中心ですけれども、そういう国々に対する経済協力等を行いまして、造林とかあるいは森林経営活動に対する支援はこれまでも行ってきておりますが、今後ともさらに積極的に行うべきであろう、こういうふうに考えております。
  70. 久保田真苗

    久保田真苗君 もう一つ目を引くのは、同じ一条の(e)なんですね。これは、いただいた統計と照らし合わせますと実に驚くべき日本の原材料の丸太としての輸入が多く、その反面に、途上国で一次加工を施された製材としての輸入が極端に少ないんでございますね。これはやはり同じ資料の中にあります、東南アジア諸国が丸太の輸出を禁止しあるいは制限する措置をとっている、この事情と照らし合わせますと、恐らくこの丸太禁輸措置というのは日本に向けられてしているんじゃないか、そういう感じを受けますが、御所見はいかがでしょうか。
  71. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 先生指摘のとおり、日本熱帯木材の輸入国でございます。したがって、その生産国が、木材、丸太の輸出をできるだけ制限して付加価値をつけて製材した形、あるいは合板等の加工をした形で輸出したいという希望は、すなわち日本に対する希望ということになるかと思いますが、現在のところ、東南アジア諸国の処置というところから見ますと、インドネシアを初めとしまして次第に付加価値をつけた形での輸出にするような制度を導入しつつある、こういうことでございます。
  72. 久保田真苗

    久保田真苗君 これについては、この条項を心から支持されるお立場にあるわけですね。つまり、途上国における加工度の向上を図るということです。
  73. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 日本も丸太の輸入を必要とするという事情もございますが、他方また輸出国の立場からすると、できるだけ加工度の高いものを輸出したい、こういう希望だろうと思うんです。そもそもこの条約自体が、消費国と生産国、輸出国との間でできるだけ双方にとって有利な形、双方にとって利益のある形の熱帯木材の貿易の状況をつくろうということでございますので、日本としてはそのような生産国希望を十分考えに入れ、また、もちろん日本の事情もございますので、その間の利害関係を調整しつつ協力しながら考えていく、こういうふうなことになろうかと思います。
  74. 久保田真苗

    久保田真苗君 それでは、残った時間を私は外務公務員法の七条の問題に絞って伺いたいと思います。  今、国会に国籍法の一部改正案が上程されておりますけれども、これに伴って所要の改正を外務公務員法の関係でもお考え中と思います。あるいは政令の改正で済まずお考えなのかもしれませんけれども、私は、法七条そのものについてこの際疑問を呈しておきたいんです。と申しますのは、やはりこれも時代の流れなものですから、うるさいかもしれませんが、ひとつちょっと耳を傾けていただきたいと思います。  この外務公務員法の七条と申しますのは、御案内のとおり配偶者の問題なんですが、外国籍を有する配偶者を持つ者は外務公務員となることができないと、こうなっておりまして、そのために、国際結婚をした外務公務員は「政令で定める場合を除く外、当然失職する。」と、こうなっているわけですね。その政令の方ですけれども、施行令一条でもって一応一年の猶予期間を持たせているということなんです。  それで、男女平等の建前から言いますと現行法では、日本人の妻となった外国人はすぐに帰化ができますけれども、日本人の夫となった外国人には所要の年数が要るものですから、これではにっちもさっちもいかなくて、女子の外務公務員が万一国際結婚しますと当然に失職すると、ひどいことになっておるわけですね。これは当然お直しになると思います。  それで、私が今申し上げたいのは、この七条そのものが、国際結婚をした場合相手を帰化させないと、あるいは相手に自分の国籍を失わせないとその外務公務員は失職する、こういうことになっているんですね。このこと自体が、日本がこれから国際国家日本という看板を掲げて一生懸命やっていく上からは非常に時代おくれの法律じゃないかと、こう思うんです。  そこでまず伺いたいのは、諸外国で、この外務公務員が国際結婚した場合の配偶者の国籍の扱いはどうなっているのか、この点について例を聞かしていただきたいんです。
  75. 枝村純郎

    政府委員(枝村純郎君) まず、サミット国と申しますか、そういう主要国について申し上げますと、アメリカとかイギリスなども何らかの内規その他で制限を設けておったわけでございます。これは七〇年代の後半に廃止されております。現在サミット主要国の中でそういう制限を維持しておりますのはフランスでございます。  他方、広くさらに目をほかの国々にも広げてみますと、かなり厳しい制限のあるところが多いわけでございまして、外務公務員の外国人との婚姻を禁止しているそういう国としては、例えばインドでありますとか、パキスタンでありますとか、エジプトでありますとかいうような国もあるわけでございます。そのほか、外務公務員の外国人との婚姻を許可制のもとに置いている国というのも、いろいろ欧州、中南米、アジアの諸国にあるわけでございまして、こういったことで何らかの配偶者の国籍について制約といいますか一種の要請をしているというのは、国際的に見ても必ずしもそう異例のことではない、むしろ通常の部類に属することじゃないかというのが私どもの観念でございます。
  76. 久保田真苗

    久保田真苗君 サミットの国ではほとんどが自由で、そしてフランスについて言えば、私の伺ったところでは、これは自国籍を失わしめるというようなことではなくて、結婚について外務大臣の許可が要るというふうに伺っておりますが、そうに違いありませんか。
  77. 枝村純郎

    政府委員(枝村純郎君) 詳しく申し上げますと、日本の場合は憲法で「婚姻は、両性の合意のみに基いて」ということになっておりますのでこういうことは考えられないわけでございますけれども、外務公務員という特殊の立場にあるということでございまして、フランスの場合、婚姻についてすべて外務大臣の許可を必要とするということでございます。外国人との婚姻については特に委員会の審査を経ると、特別の委員会がございます。そういう特別の決定を必要としておる。それでその際に、外国人配偶者がフランス国籍を取得する意図がある、そういうことを約束する証明書を出させるということでございまして、これは現在私どもの持っております法制とそう違わないというふうに考えられます。
  78. 久保田真苗

    久保田真苗君 いろいろ事情があるとは思いますけれども、一方この当事者にとってみますと、自国籍を離脱するということはこれは大変なことなんですね。特に私が言いたいのは、外務公務員は現在ほとんど男性が圧倒的なものですからその配偶者は勢い女性ということになりまして、ダイレクトではないけれども、間接的には非常に女性が不利になっている問題だと思うんです。つまり、職業活動、資格、免許、それから財産の保有といったような面でいろんな基本的な人権が制約されるわけですね。ですから、何らかの理由があるとしてもそれは人権との調和において絶対に最小限度にとどめなきゃならない性質のものじゃないかと、こう思うわけです。  そこで、今、国際結婚していらっしゃる外務公務員は数でどのくらいいらっしゃるんでしょうか。
  79. 枝村純郎

    政府委員(枝村純郎君) 国際結婚と申しまして、かつて外国籍を保有しておった人と結婚しておる、これは現在の職員の中で百名に及んでおると思います。最近でも大体年間五、六件ぐらいの平均でそういうケースがあるようでございまして、今日までのところ、女性の外交官が外国籍を持っている人と結婚しようとしたという例はございませんが、男性の外務公務員が外国籍の女性と婚姻したというケースについて申し上げますとそういうことでございます。
  80. 久保田真苗

    久保田真苗君 今の法律のもとでは女性の公務員がそうしたいと思ってもできませんですよね、それは失業を意味するわけですから。ですから、そういう意味ではそれだけは直していただくのは間違いないと思っておりますが、よろしゅうございますね。
  81. 枝村純郎

    政府委員(枝村純郎君) 先生指摘のような問題が女性の外務公務員についてあったわけでございまして、今度の国籍法の改正の機会にその点は外務公務員法の施行令にあります猶予期間を手直しする、実質的に現在与えられている程度の猶予、そういったものが実質的に維持できるような形にはしたいということで鋭意検討しております。
  82. 久保田真苗

    久保田真苗君 つまり、男子も女子も同じに扱うと、こういうことですね。
  83. 枝村純郎

    政府委員(枝村純郎君) そのとおりでございます。
  84. 久保田真苗

    久保田真苗君 今おっしゃった百人の数の中には恐らく一次的に国際会議に出席する方たちは含まれないのだと思うんです。そのことも念頭に置かないといけないと思うんです。  つまり、こんな例があるんですね。二年ほど前のことなんですが、国際障害者年のときに国連総会第三委員会の代表代理で出席された女性の専門家があるんです。この方は民間の大学の先生でございますけれども、普通同じ方が二年続けて出るのが非常に効果的だということで、私どもも二年続けてお出になることを当然と思っておりましたところ、翌年は任命されなかった。その理由は、その前にアメリカ人と結婚したからだと、こういうことなんでございます。私はこれは一例として申し上げているだけですけれども、せっかくの専門家を、専門も経験も活用できないで大損だったんじゃないかなと、こう思いますね。  それで、このような方にまでそれを適用するということが国としてもいいことなのか、それからそんな必要があるのか、そういうことを非常に強く疑問に思います。それというのも外務公務員の範囲がやたらに広いからなんでございますね。特命全権大公使、特派大使、政府代表、全権委員、そのほか代表、代理、顧問及び随員と、こうなっております。この政府代表や代表代理、顧問、随員の中にはいわゆる外交官じゃない他省庁の方たちもいますし、もちろん教育機関や研究機関、民間の方たちもたくさん活躍しておられるわけでして、それをしもこうしなければいけないのかどうかということを非常に疑問に思うわけですね。それはやはり専門とかその土地での土地カンとかそういうことを活用する上から、日本の外交にとって、あるいは国際的寄与にとって非常に損失だと思うんですが、この点について外務大臣はどういうふうにお考えになりますでしょうか。やはりこういう方たちが国際結婚をされた場合もできるだけ活躍してもらうことが望ましいのじゃないかと私は考えるんですが、いかがなものでしょうか。コメントがあればいただきたいと思います。
  85. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 外務公務員法第二条第一項第六号にあるとおり、政府代表等の代理、顧問及び随員も外務公務員に含まれ、第七条の適用を受けることとなる、おっしゃるとおりでございます。代表代理、顧問もしくは随員といえども、日本国の国益を代表して外国との折衝に当たるものでありますし、その配偶者が外国籍であった場合、例えば外国の種々の工作の対象となりやすくなる、いろいろな不都合が生ずることが考えられないわけではございません。そういう意味から、やはり原則の問題としては第七条のごとき規定があることが必要ではないかと、こういうふうに判断をしておるわけであります。
  86. 久保田真苗

    久保田真苗君 私が今申し上げているのはまず第七条への疑問ですけれども、それは一応ともかくとして、国益あるいは人権の問題についての最小限度の、何というか制約を最小限度にするために、今私が申し上げていることは施行令の改正でできることだと思います。そういたしますと、この際、七条を見直していただければいただきたいし、また施行令改正をどうせなさるのであれば、そういった差し支えのない範囲というものを考えていただいて、配偶者の問題で、その配偶者が一緒にどこかへ行くというわけでもない、そういった国際会議出席者の資格だけでも配偶者の外国籍を欠格要件から外したらどうかと思うんです。今すぐにこの問題についてお返事をと言っても私は無理だと思いますので、かなり細かい話になりますので、ひとつこの際十分お考えになってみていただいて、サミットの先進国あたりとも一応均衡のとれるような対策がとれないものかどうか、お返事は結構ですけれども、ぜひ考えてみていただきたいということを御要望申し上げます。  それでは、時間が過ぎましたので、どうもありがとうございました。
  87. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時三分開会
  88. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  89. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣、前回も私レーガン訪中について、朝鮮半島のことを中心にお伺いしたんですが、あと数時間で北京到着、そして当然世界と周辺諸国が相当レーガンあるいは中国首脳との対話というものを注目する会議がこれから始まるわけですけれども、事前に、どんなことが話し合われるかと各マスコミを通じていろんなテーマが出ておりましたが、ロサンゼルス・タイムズには大きく、外相も御存じのように、原子力協定まで結ばれるかと、こんな大げさなことじゃないにしても、原子炉の売却が行われるんではなかろうかと、数十億ドルとこんなことも書いてありました。活字を一々取り上げてその真偽のほどを聞くということもどうかと思いますが、さらには、前からアメリカから中国に対する武器の輸出と、こんなことも言われておりました。今度いずれにせよレーガンあるいは中国、いろんなやっぱり思惑があっての会談が間もなく行われるわけでありますので、アメリカは相当力を入れている、中国も積極的である、これはもう間違いありません。ですから、そういうようなことを含めていろんなテーマがある中で、今の核の問題、これはいわゆる米中間の話し合いの問題ですけれども、これは両国といい仲の日本に対するソ連のいろんなリアクションというものは当然これは出てくると思いますし、ただ単にこれを米中間の問題とは看過できないんではなかろうかと、こう思います。まして、武器の問題についてさらに突っ込んで話し合いが行われるというと、直ちにタスはいろいろレーガン訪中についてクレームをつけておりますが、具体的にさらにアジア周辺に緊張が高まったと。だから防衛力増強というソ連側の口実を引き出すためのものにもなりかねないと。こんなことで、我が国も米中の問題だからと看過できない面があるかと思うんですが、その二つに絞って外務大臣はどのようにお考えでしょうか。
  90. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) レーガン大統領と中国の首脳との会談が間もなく行われるわけですが、内容について、どういうことになるのかこれから見ないとわからぬわけですが、もちろん米中二国間の問題、それから国際情勢についての両国の考え方をめぐってのいろいろの議論が行われると思います。  二国間については、私は、この中国と我々の話し合い、あるいはまたアメリカとのいろいろと意見交換もしました中で米中関係、双方ともやはり改善をしてこれを発展さしたいという期待は両国において強いようですからこの方向に進んでいく、両国も友好関係を確認し合う、こういうことになってくると思いますが、その中で中国が重要な期待を持っておるのはやはり私はアメリカの高度技術の中国への移転であろうと思います。これはこれまでシュルツ国務長官が訪中し、あるいはまたボルドリッジ商務長官が訪中をいたしまして、そういう経過を見ましても中国がアメリカの高度技術に大変大きな経済の近代化を目指しておるだけに期待をかけております。そしてアメリカも高度技術については積極的に中国にこれを送ろうということも考えておりますから、その辺のところが相当私は焦点になる可能性はあると思います。どの程度までいくか、どの程度までの高度技術についての協力関係が成り立つか、あるいはまた、おっしゃるように武器の問題も出てくるかもしれない。ワインバーガーが訪中をしたり、あるいは中国の参謀総長の訪米ということも考えられるわけですからそういうこともあり得ると思うわけでございます。  あるいは、原子力についてはむしろ平和利用という形のアメリカからの中国への輸出であるとか、また原子力の平和協定締結ということもこれは日中間でもこれから検討するということになっておりますが、米中間でもそういうことはあり得るんじゃないかと、こういうふうに考えております。  国際問題については米ソの関係、あるいはまた中ソの問題、あるいはまたカンボジア問題、朝鮮半島の問題、その辺のところが大きな課題になるんじゃないだろうか、こういうふうに推測をいたしております。
  91. 黒柳明

    ○黒柳明君 またテーマが変わりますけれども、ちょっと二、三条約の前に聞きたいんでくるくる変わりますが、一昨昨日のパリの企業爆破、ソニーあるいはもう一社についてはこれは全く迷惑な話だと思います。しかしながら、テレビのコメントですと、現地の日航支店長なんかはこんなことがあるんじゃないかと。これはさしたる根拠もないんだと思うんですけれども、こんなことも感じていたと、こんなようなコメントもついておりましたし、警察庁に来ていただいて若干質問するんですが、やっぱり企業あるいは邦人の生命、財産の安全を守る、こんなことも今すぐこれは着手するという必要もあるのかないのか、そこらあたり、外務省の現地公館からの報告あるいはその対応等はいかがでしょうか。
  92. 大鷹市郎

    説明員大鷹市郎君) 本件に関しましては、まず事実関係ではフランスの警察当局によりますと、二十二日の朝六時ごろ、パリ郊外にある日系企業二社で爆弾が破裂しまして、建物の一部に損害が出たほか一名が軽傷を負ったということであります。それで、同二十二日の十三時三十分ごろに、フランスの通信社AFP社に対して電話で、アナーキストグループの代表と称する匿名男性から犯行の声明がありまして、さらに二十四日午前十一時ごろ、AFP社に対して本件に関する犯行声明文が届けられ、その中で、日本で死刑を宣告されている我々の仲間、大森勝久の解放のために行動していると述べております。  本件につきましては、目下フランスの警察当局が鋭意捜査に当たっておりますので、事件の背景等につきましてはこの捜査結果を待ちたいと考えております。
  93. 黒柳明

    ○黒柳明君 警察庁の方においでいただいたんですが、アナーキストの国内外と、こう言いたいんですが、一応国外での動向というのはどんなことでしょうか。
  94. 鏡山昭典

    説明員(鏡山昭典君) アナーキストという御質問でございますけれども、一般的に私どもアナーキストという人員というものは把握しておりませんけれども、虞犯性の高いのが国内に大体千人前後ではないかと思います。そのうち外にそれではどのぐらい行っているんだと、こういうことになりますと、具体的な数字は残念ながら把握しておらないというのが実情でございます。
  95. 黒柳明

    ○黒柳明君 このパリの事件については当面どういう処置を、あるいは手を打たれているんですか。
  96. 鏡山昭典

    説明員(鏡山昭典君) 今回発生いたしました事件といいますのは、先ほど外務省の方からも御返事がございましたけれども、実は昭和五十一年の三月二日に発生いたしました北海道の道庁爆破事件というのがございますけれども、これの被告人で、昨年三月二十九日に札幌地方裁判所で死刑判決が出まして、現在控訴中の大森勝久という被告の釈放を要求した事件というふうに伝えられておるわけでございます。そういう意味で、警察といたしましてはフランス当局の捜査に強い関心を持っております。そして、犯人や事件の背景等を中心に関連情報の入手に努めておるところでございます。  以上でございます。
  97. 黒柳明

    ○黒柳明君 きのうの夕刊に、同日朝帰国した、匿名で三十八歳の方も出ていましたけれど、それで事情聴取するんではなかろうかなんて。これは先ほどのあれと同じ新聞情報ですけれども、そんなことはあるんでしょうか。ひとつ最後に。
  98. 鏡山昭典

    説明員(鏡山昭典君) 新聞で報道されました人物と見られる人が帰国したということについては我々は承知しております。しかし、御指摘の人物と今回の事件との関係については全く白紙の状態でございます。ただ、同氏が平素から大森被告支援活動に取り組んでおられるということ、あるいは今回の事件のさなかにフランス、スペインを訪れたというように報道されておることから、警察としましては、その間の動向について事情を今後ともきわめてまいりたいと、このように考えております。
  99. 黒柳明

    ○黒柳明君 また変わってすみません。  先ほども質問がありましたけさの朝日新聞の三沢、私も何回も行ったことがありまして、アドバンスト・ウエポン・ショップというのがあるんですが、それから、アドバンスト・アンダーウォーター・ウエポンズ・ショップというのもあったかどうか、私は、けさの新聞の今なものですから、資料等をひっくり返す暇もありません。それから、嘉手納もこれは返還前から二十回ぐらい行ったことがあります。そこにもあるんです。ただ、そのときに私が聞いたのは、当然核であるなんというようなことは言いません、向こう側が。ですけれども、そういうところがあることは間違いないんですよ。だから、先ほどそういうところがあるかどうか事実関係はわかりませんと、それから外務省の方が、それでは日米の協議会がなんかでというようなこともありましたけれども、一私人の発言でありまして、私も全面的にそれに信憑性を持つというつもりじゃありませんけれども、やっぱり天下の公器である朝日新聞がそれだけの事実を指摘したわけでありますから、ですからそれについてはさっきの日米の何とか委員会でということじゃなくて防衛庁の方から一回問い合わせて、それでその事実、それについては当然核がある、核の貯蔵庫だなんという返事が返ってくるとは私は思いませんけれども、私も今まであったものがそういう核が貯蔵されるものだという意識はそんなになかったんです。ですけれども、やっぱりそういう可能性があるという疑惑の指摘でありますから、一回アメリカに通じてお問い合わせいただけますか。これは外務省マターになるね、また。そうなると、また山下さんだな。
  100. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) お名指しいただきましたので私から御答弁申し上げます。  けさ方、久保田先生から御質問を同じような趣旨でいただいたわけでございますが、まさに黒柳先生指摘のとおり、アーキンという一私人の発言でございまして、それなりに私ども注意深く拝見したわけでございますが、けさ申し上げましたように、AUWといったような施設が果たして存在しているかどうか私どもつかんでいないわけでございます。それで、けさ方申し上げましたとおり調査をしてみたいと、こう考えております。  ただ、いずれにいたしましても、まさにおっしゃるとおりにそういうものが核の貯蔵庫だということは考えられない次第でございまして、御承知のとおりに、核兵器等を日本に持ち込む場合におきましては事前協議という制度があるわけでございます。  以上です。
  101. 黒柳明

    ○黒柳明君 あれですか、けさの新聞のコメントには核基地は事前協議の対象と。これは核基地となればね。だけれども、核を貯蔵する施設なんというのは、かつてメースBが起きた。メースBの時代と今と全く違いますけれどもね。ただ、違うというのは兵器の質的な発展も違いますから、だからメースBを貯蔵した格納庫以上に今は非常にやっぱり平易なもので貯蔵できる時代にもなっているんじゃないかと思うんですけれども、そういう格納庫を設置することについての事前協議なんというものは当然ないわけでしょう、可能性だけの場合には。これに核を入れるんだぞと、こんなことは言う必要もないんですしね。ですけれども、現にF16だってP3Cだって核を積める機種であることはこれは間違いないんであって、そのための、有事のためには日本の自衛隊だって核に対しては源をたたき、しかも核に対しではあらゆる訓練を、教育をするという姿勢があるわけですから、まして超大国のアメリカが、核攻撃をできる能力がある飛行機を持ちながら、その核兵器を、核弾頭を持たない、持ち込まないと。これはもう当然です。そのときは事前協議をやると。これも当然です。それをネグるということは私は一〇〇%信じない、そういう前提ですけれども、それを貯蔵するものを置く、これについては事前協議も何も必要ないんじゃないでしょうかな。
  102. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 黒柳委員指摘になりましたように、御承知のとおりこの事前協議の日米間の合意につきましては、装備における重要な変更というのは何を言うかということが藤山・マッカーサー口頭了解で明らかにされているわけでございます。その内容として言われておりますのは、核弾頭及び中長距離ミサイル並びにそれらの基地の建設ということでございまして、それらの基地の建設というのは、中長距離ミサイルの発射基地のような核専用の基地をつくるということを言うということなわけでございます。  そこで、したがってその貯蔵施設というようなものが、一般的に考えてそういう核専用の基地であるというふうに考えることは非常に困難であろうというふうに考えております。ここで言っております核専用の中長距離ミサイルの発射基地というのは、一つのそういう基地の形態というものを考えておるわけでございますので、何でも入れられるような貯蔵庫でどういう目的に使われるかわからないというような場合に、それが事前協議の対象になることはないであろうという委員の御指摘はそのとおりでございます。
  103. 黒柳明

    ○黒柳明君 しかも、それは何のために使うなんて言う必要もないんですし、アメリカの秘密事項に属する場合もありますでしょうから。ただ、そういうことも含めまして、私は、きょうのを踏まえて調べればまた私なりのコメントができるんですが、今まで何回も行った、嘉手納にもそれこそ何十回も行った。そのときに私が見たのはアドバンスト・ウエポンです。アドバンスト・アンダーウォーターがあったかどうかというのは記憶がないんです。今もあるかないか調べたんですけれども記憶がない。ですから、アドバンスト・ウエポンがあってそのときいろいろ協議したんですけれど、それは当然向こうは核だなんて言いやしません。ただ、P3Cですから、当然海軍ですから、アンダーウォーターがつかなきゃと、こういうふうに私は思って、それじゃそのときのあれがあるかなと思ったんですけれども、短い間で、それは記憶にもありませんし、なかった。  ただ、三沢がいろんなものを建設のときに私も行ったんです。行ったときには、いろんな施設を日本の建築業者がやっていまして、あのでっかいアンテナもやっていました。と同時に、アメリカの業者も入っていたことは間違いないんです。それは何を建設しているか、そこまで私はタッチしませんでした。ですから、あるいはそんなところで、防衛施設庁のいわゆる予算の中以外でそういうものもあるのかなと。残念ながら私断定できなくて、いつも歯切れが悪くて恐縮でございますが。しかし午前中にも、調べるという約束がありましたですから。  それから、しかもその貯蔵庫なんかつくる場合においては事前協議の対象なんかにする必要はないんだし、それは核を入れるかどうかだってわかりませんし、可能性を含めての貯蔵庫ということはこれは十二分にあるんじゃなかろうか、私はそんなことも考えますので、ひとつまたこれは山下さんの同じようなあれになるかと思いますけど、繰り返しになりますが。  それから、これはけさ朝日と出ましたが、ちょっと前に読売新聞が、宗谷海峡についての監視施設をつくっている、こんなことで、私の記憶では五十八年からこの予算がついていた、これじゃないかなというような感じがするんですが、ちょっとその後取り紛れて調べもお尋ねもしなかったんですが、防衛庁の方ですかな、これは。これはどういうものですかね。
  104. 松村龍二

    説明員(松村龍二君) 御説明申し上げます。  防衛庁では、沿岸監視能力の向上を図るため、昭和五十八年度より陸上自衛隊第三〇一沿岸監視隊、これは稚内に所在いたしますが、これにレーダー波監視装置の導入を計画し、六十年度に運用を開始する予定をしております。
  105. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは今までのとは相当能力的に違うものですか、この監視施設ができると。
  106. 松村龍二

    説明員(松村龍二君) 従来の沿岸監視は望遠鏡及びレーダーで観測しておったわけでございますが、その能力をさらに向上させようというものでございます。
  107. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、だから向上ですけれども、その向上の度合というのは相当違うものですか。
  108. 松村龍二

    説明員(松村龍二君) 今お答え申し上げましたように、艦船等の識別能力の向上を図るものでございますけれども、詳細につきましては、事柄の性格上申し上げられないことで御承知いただきたいと思います。
  109. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、新聞に極秘なんて出るとみんなああっと思っちゃうんですよ。そういうものが先行するとなかなか防衛論議というのはコンセンサスができないという一つのあれになっちゃうんで、向上はどのくらいかと言ったらそれは言えませんだなんて、言えない面もあるかと思いますけれども、もうちょっと何か色気出して答弁したらどうですか、木で鼻をくくったみたいな答弁じゃなくて。
  110. 松村龍二

    説明員(松村龍二君) 一般に情報収集手段につきましては公表しないということで対応させていただきたいと思っておりまして、本事業は、従来の沿岸監視能力の向上を図るためのものにすぎないということでございます。
  111. 黒柳明

    ○黒柳明君 条約のことですけれども、出版物のものです。私、たびたび海外に行きますと、これは情文の関係だと思うんですけれども、NHKの紅白歌合戦、あのフィルムが引っ張りだこである、こういうことをどこへ行っても聞くんですね。それからもう一つは、当然、中心都市とローカルになるとこれは対応が違うと思うんですが、外務省文書の非常に古いのが配布されている、こういうこともまた他方でよく聞くんです。これと直接に関係はないですが、我が国外務省在外公館に配布する文書、あるいは広報関係、そういうものについての対応が、どうしても聞くあれとしては喜ばれるというのは非常に少なくて、時期的に遅く配布される、こういうことをよく聞きます。ここらあたりについてはどうですか。
  112. 斉藤邦彦

    政府委員斉藤邦彦君) 私がお答えするのが必ずしも適当かどうか自信がございませんが、この問題は先日たしか本委員会でも質疑があったと記憶ししておりますが、外務省在外公館に配布しております資料は大部分が船便で送られておりますので、どうしても時間がかかってしまうという事情がございますので、これを改善するにはやはり予算関係がございますので、早急な改善というのはなかなか困難だろうと思いますけれども、ただ御指摘いただきました点につきましては、従来とも外務省当局は問題意識は持っておりまして、可能な範囲内で改善を図りたいと考えていると承知しております。
  113. 黒柳明

    ○黒柳明君 この前そういう答弁がありました。外務大臣、よくそういう問題を聞くんです。ですから、予算関係があってこれはどうしようもないでしょうと思うんですけれども、強い意識の中に入れていただいて一回実情を調べていただきたい。私たちのちっぽけな野党の財源不足な公明党だって船便なんて使ったことはないです。私は国際局長ですけれども、まず航空便ですよ。天下の外務省が、これは量的にも各国に配布するのはいろんなものがあると思うんですけれども、やっぱり政府国民の税金でとカバーするわけですが、今どき船便で対応するという公文書が主体であるというのは、どうも私たちがやっている国際関係での仕事の中では考えられない、こういう面があります。いろいろ予算もあるし、いろんな面があるかと思うんですけれども、外務大臣が平和外交を進めておりますので、こういう小さいところも意識の中に入れていただきまして、至急改善の方向に向かっていただければ、こういう中からこういう条約についての効果があらわれる可能性もあるんじゃないか、こう思うんですけれどもどうでしょうか、余り小さ過ぎますでしょうか、質問が。
  114. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全く情けない話でして、今お話を聞きましても恥ずかしいような感じがするんですが、日本の外交を積極的に展開する、あるいはまた日本の啓蒙宣伝なんていうのは非常に大事だということを常に言っているわけです。そういう中で今のような状況では大変お粗末過ぎる。確かに予算面等はありますけれども、多少の予算なら、大事な仕事ですからそれなりにまたこれから何とか確保できるんじゃないかと思います。また、全部船便ということじゃなくて、やはりポイント、ポイントにはもっと飛行便とかなんとかいうことで配布するとか、そういう知恵も出せないことはないと思いますが、大事な問題ですからよくひとつ検討をさせていただきまして、知恵を出して、なおまた予算関係も皆様方にお願いをして御協力をいただいて確保してまいりたい、こういうふうに思います。
  115. 和田教美

    和田教美君 ESCAP総会に出席した民主カンボジア連合政府のキュー・サムファン副大統領だとか、あるいはベトナムのハ・バン・ラウ外務次官と外務大臣は接触をされて、さらに二十四日には外務次官がラウ外務次官と話し合って、カンボジア問題についての日本の独自的な和平努力といいますか、その初期段階が一段落したと思うんで、それに関連して少し質問をしたいんですが、この一連の会談で、秋の国連総会外務大臣と向こうのベトナムの外務大臣との会談を安倍さんはオファーされたわけだけれども、それは固まったと見ていいんですか、その辺はどうでしょうか。
  116. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本は、カンボジア問題につきましては日本としての外交方針を持っておるわけでございます。今それを変えるという考え方はないんですが、しかし一面においてはやはり対話外交というものを積極的に進めて、何とかやはりインドシナ半島の平和回復に日本としても貢献をしてまいりたいと、こういうふうに思っております。そういう中で、やはりベトナムとの間については外交関係もあることですから、これは外務大臣レベルで一度はやはり会ってお互いに率直な意見交換をする、同時にまたインドシナ半島の平和回復に向かって何らか模索できるとするならば、それについてひとつ話し合いの中で私自身が模索してみたいと、そういうふうに思って実はラウ次官とパーティーの席上で会ったときにグェン・コ・タク外相とも会ってみたいと。これは国連総会には去年も見えまして、私は会う時間がなかったものですから今度は会ってみたいということを言ったわけで、ベトナム側も非常に乗り気でございます。ですから、これがすぐ成果があるとかないとかいうことじゃなくて、やっぱり会うことに私は一つの意義があるんじゃないかと、会うことによって何か次の段階へまた進む可能性も出てくるんじゃないかと、その成果が生まれなくても私は会うということが大事なことじゃないかと、そういうふうに思って何とかこれは実現をしたいと、こういうふうに思っております。
  117. 和田教美

    和田教美君 そうするとまだ決まったというわけではないわけですね。
  118. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まだ決まった、決定したというわけではありません。
  119. 和田教美

    和田教美君 外務次官が二十四日にラウ外務次官と話し合われた内容が新聞なんかにも報道されておりますけれども、その前に、実はベトナムの外務大臣が安倍外務大臣のオファーの後で現地で西側の記者団と会見をした記事が出ておりましたけれども、その中に、安倍さんと会談することは検討しているけれども、しかし会談するなら実りのあるものにしなきゃいかぬから、カンボジア問題について日本政府が従来の姿勢を転換していくことが前提だというふうなことをしゃべったという記事が出ておりました。この日本政府が従来の態度を転換することが前提だという意味は一体どういうふうに考えたらいいのか。つまりベトナムは、カンボジア紛争の問題は一応切り離して日越の正常化を図りたいと、そういう意思なのか、その辺のところはどうお考えでしょうか。
  120. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはまだ外交の正式なルートを通じて何も我々聞いておらないわけでして、私は、ベトナムの外務大臣と会うとき、そう条件をつけて会うとか会わないとかという必要はないと思います。やはり、同じアジアの民族として平和をお互いに求めておる、そういう国同士として、お互いの立場はあるわけですけれども、しかし会うということはそれなりに私は意味があることじゃないかということで、会うとしてもそうした条件を前提として会うというふうなことは私自身は何も考えておりませんし、これは恐らくベトナム側も、条件をつけなきゃ会えないということで決まったというふうには私もまだ理解をしておりません。
  121. 和田教美

    和田教美君 外務次官がラウ外務次官と会ったというその記事の中に、いわゆるカンボジア問題解決の五項目といいますか、五条件といいますか、その問題を話し合ったという記事が出ておりましたけれども、この五項目というのは一体どういうことであって、そしてこれはベトナムが提案したものなのか、あるいはマレーシアが提案してベトナムその他が大体同意していると、そういう内容のものであるのか、その辺を答えていただきたいと思います。
  122. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 御質問の五項目提案とは、先月、タク・ベトナム外相が豪州を訪問いたしました際に明らかにしたものでございまして、この提案におきまして、ベトナムは東南アジアにおける平和と安定に向けての第一歩としてカンボジアに関連する諸問題につき地域協議を行う用意があるといたしまして、一、ベトナム軍の撤退。二、ポル・ポト及びその同調者の排除、タイ・カンボジア国境の両側への安全地帯の設置。三、中国・ベトナム、中国・ラオス、タイ・ラオス各国境の安全保障。四、ポル・ポト等を排除して、自由選挙によるカンボジアの民族自決。五、これらすべての点についての国際的監視及び保障の五項目を挙げている、こういうことでございます。
  123. 和田教美

    和田教美君 そうすると、今のお話を聞いていると、結局ベトナム側の提案の五項目というもののポイントは、ポル・ポト派を排除してくれれば、排除する形で総選挙をやるというふうなことであればカンボジアからベトナム軍が全面撤兵してもいいと、こういうふうにも受けとれるわけなんですけれども、その辺のところが一番のまた問題点だというふうに思うわけで、いわゆる反越三派連合軍ですね。この中での最大勢力はもちろんポル・ポト派なんですけれども、その辺の点についてはいろいろな報道があるんだけれども、ASEANの各国も大体それでもいいというふうなニュアンスなんでしょうか。
  124. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) この五項目の内容自体はベトナムの従来からの提案とほぼ同じでございまして、ベトナム側のカンボジアに関連する諸問題を、問題解決への第一歩としてまず取り上げる姿勢を示してきたのではないかと見る向きもございました。そして我が方としても注目していたのでございますけれども、タク外相帰国直後に乾季攻勢が開始されたこともございまして、我が方といたしましては、引き続きベトナムの真意を探っていく必要があるということで見守っているというところでございます。
  125. 和田教美

    和田教美君 いや、だからそういう提案が出ていることは事実なんだから、周辺諸国、特にASEAN各国ですね、タイなんかは非常に消極的だと、そういう提案には。しかし、同調しそうなところもあるというふうな報道もあるわけですが、その辺はどういうふうに分析されておるかということを聞いておるわけです。
  126. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) ASEANはASEANとして消極な姿勢を示しております。
  127. 和田教美

    和田教美君 全体に。
  128. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) はい。
  129. 和田教美

    和田教美君 そうすると、結局五項目という提案というものをベースとして、一つの和平への問題を探っていくということは実際問題として難しいというふうに判断をしていいのかどうかですね。それと日本政府の基本的な態度は、八一年七月の国連主催のカンボジア会議で採択された宣言、これが基本でしょう。つまり、外国軍隊の撤退とカンボジア人民による自由な民族自決を尊重した紛争解決というか、自由選挙といいますか、そういうことだと思うんですけれども、その原則は日本政府としてはあくまでも守っていくと、そうして何か手探りをしたいと、こういうことですか。
  130. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私はヘイドン豪州外相とも会談をしました。カンボジア問題について意見交換をしたんですが、彼はやはりタク外相の五項目提案というものを評価しておったわけでありますが、しかしその後のカンボジアの状況を見ますと、いわゆるベトナム乾季大攻勢が始まっておりをすから、したがって、一方ではそういう五項目を提示しながら、一方では軍事的な攻勢をかけておるということで、ベトナムの真意がわからないじゃないかということを私も言った次第でして、それについてはヘイドン外相もいささか当惑をしているというふうな感じを私は持ったわけです。しかし、依然としてやはり豪州は、ヘイドン外相を中心にして何とかひとつインドシナ半島の和平回復に向かって努力を傾注したいという意欲はなかなか強いものがあったように思います。そういう中で、日本はカンボジア問題に対する基本的な考え方というのは現在持っておりますし、これを変えるという考えはないわけです。いわゆるカンボジアからベトナムが撤退をするまではベトナムに対する経済協力はしない、こういう基本方針はこれを変えることはありませんし、それから、カンボジアにおいて自主独立を目指して戦っておる民主カンボジア勢力ですね、三派、これを支援していくという姿勢も変えてはいないわけでございますが、そういう基本的な状況、基本的な考え方はそうですが、しかし我々とベトナムとは依然として外交関係を持っているわけですし、そうした関係等も、さらに外相会談というようなことによって対話を進めればもっと広範な立場で包括的な平和解決に向かって何らかの感触を得られるかもしれないし、また日本としても平和に向かって努力する日本の姿をはっきりとベトナムにも伝えなきゃならない、そういうふうに思っておるわけです。
  131. 和田教美

    和田教美君 とにかくこういう紛争解決、特にベトナムやカンボジア問題なんかについての紛争解決をめぐって日本外務省がいわば独自外交を展開するということ自体は非常に結構なことで、私も評価するわけであって、今お話を聞いているとなかなか条件をめぐっては非常に難航が予想されるし、現実のカンボジア情勢というのは、今お話のあったように戦闘が激化しているというふうな状態ですね。そしてお互いに戦闘で決着をつけるんだというようなことも言っているわけなんで、なかなか難しいだろうと思いますけれども、今後もくじけずにひとつ努力をしていただきたいと思います。  次に、西山欧亜局長が二十九日からソ連に行かれていよいよ日ソ対話のスケジュール、人的交流のスケジュールというふうなことも話し合うということになったわけでございますけれども、その前に、日ソをめぐる状況というのは非常に今冬の時代、どん底の時代だというふうに思うんです。現にサケ・マスの日ソ漁業交渉が今行われておるわけですけれども、案の足とにかくソ連の提案は非常に厳しくて難航しているというふうに伝えられておるわけですけれども、この日ソ漁業交渉の現状について、水産庁の方からだれかいらっしゃっていますか。
  132. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私から言いましょう。  サケ・マス交渉は例年に比べて大幅に開始がおくれまして四月二十日開始となったわけです。四月二十一日は日ソ双方の提案が行われましたが、割り当て量について、日本側が四万五千トンを提示したのに対してソ連側は三万五千トンを提示するなど日ソ双方の主張には大きな隔たりがありましたために、四月二十四日に水産庁長官が訪ソし局面を打開することとなりました。  昨日来、水産庁長官とブイストロフソ連漁業省次官との間でトップ会談が開かれております。昨日、水産庁長官から、総クォータ四万二千五百トン、漁業協力費四十億円とする旨の新提案を行ったがソ連側の同意するところとならず、本日再度現実的な妥協点を見出すべく協議をすることとなっております。いずれにいたしましても、交渉団は目下妥結に向けて最大限の努力を傾注しているところでありまして、最終的な見通しを述べることは難しい段階にあるわけでございますが、何とか妥結をしたい、こういうことで努力を傾けております。
  133. 和田教美

    和田教美君 そこで、話をもとに戻しまして欧亜局長のソ連行きですね。人的交流についてのスケジュール、話し合いというのは既に新聞に報道されておるようなことでございますか、こちらの腹案は。その辺のところをちょっと。
  134. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) 先生指摘のとおりでございます。おおむねの考え方は新聞で報道されているようなことでございます。
  135. 和田教美

    和田教美君 もうちょっと具体的に言ってください。
  136. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) 具体的に申し上げますと、まず租税条約についての交渉をできるだけ早い段階に行いたい。  それから、国連に関する日ソの意見交換、これを行うこととしたい。  それから、国連総会機会に、大臣がグロムイコ外相との間で外相会談を開催することにいたしたい。  それから、九月には日本の映画祭をモスクワ、レニングラード、ナホトカ等で開催するというようなことを取り決めてまいりたい。  それからさらに、最近大きな問題になっております中東に関して日ソの意見交換機会を、これもしかるべき機会に設けたい。  大体このようなことでございます。
  137. 和田教美

    和田教美君 ソ連については、アフガニスタンの事件が起こって以来制裁措置をやっているわけですね。それで、制裁措置の一番ポイントは、一つは公的人事交流の抑制、二つ目は、新規プロジェクトの信用供与の見送りというふうなことだと思うんですけれども、公的な人事交流の抑制というのは、こういうスケジュールが進んでいけば、何といいますか、事実上解除に近い状態になっていくというふうに僕は思うんですけれども、問題は、経済協力の問題ですね。新規プロジェクトの信用供与、これは継続しているものもあるけれども、かなりストップしておりますね、話し合いが。その辺はどうなるんですか。これはやっぱりアフガンの問題が解決しなければだめだという態度なんですか。
  138. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) 基本的に申しますと、アフガニスタンの状況が抜本的に改善が見られているわけではございませんので、私どもが従来から申し上げておりますような対ソ措置というものは、これは継続していくわけでございます。しかしながらその際、その措置なるものは、あくまでも公的の信用供与というものはケース・バイ・ケースに検討していくということでございまして、したがいまして、それを一切やめるとか、新規のものであるから供与しないとか、そういうことを意味するものではございません。
  139. 和田教美

    和田教美君 そうすると現在具体的に話があって、これはどうもできそうだというようなものがございますか。
  140. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) 私どもが見ております限りでは、むしろ問題は、日本の業界サイドで大きな関心を示すようなプロジェクトがソ連側からオファーされていないというところに問題がございまして、公的信用供与の段階に至る以前にむしろ問題があるかに私どもは見ております。
  141. 和田教美

    和田教美君 それからもう一つ、秋の国連総会でグロムイコ外相と安倍外相との会談の問題も申し入れるというお話がさっきもございましたけれども、これまた新聞報道なんだけども、今度総理と安倍外務大臣がインドに行ったときに、ガンジー首相にその仲介を申し入れるなんて、何かちょっと仲介を外国に申し入れるというのもおかしな話ですけれども、そういう考え方があるんですか。
  142. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、私は全くそういう考えは持っておりません。  日本にグロムイコ外相が来られることはこれは順番ですから、時節柄当然我々はそれを要請しておりますし、いずれそのうちには来ると思います。それからまた、国連総会での会談の問題は、これは先ほども言いましたように日ソ間で話がつく問題で、何もインドまで煩わしてわざわざグロムイコ外相を連れてくる必要はないと思っております。
  143. 和田教美

    和田教美君 次にもう一つ、軍縮の問題についてお尋ねしたいんですけれども、日本政府外務省が非常に力を入れておりました核実験の全面禁止についての作業部会ですね、ジュネーブの軍縮会議で。これが、今度の会期では作業部会をつくること自体が結局だめになっちゃいましたね。もしその作業部会ができれば、日本の代表部の今井大使が議長になるということになっていたので我我も非常に期待をしておったんですけれども、それもだめになっちゃった。  それから、これは直接日本関係はないけれども、日本が通常兵器のレベルにおける最重要課題にしておった化学兵器の禁止の問題ですね。この問題についてもアメリカのブッシュ副大統領がわざわざジュネーブまで乗り込んで提案した化学兵器禁止への総括的な提案ですね、それもソ連が峻拒したというふうなことがあって、日本が眼目にしていたこの問題も進展が全くないというふうに八方ふさがりの状態になっていると思うんですけれども、日本外務省として、一体こういう状況をどういうふうに考えておられるかお聞かせ願いたい。
  144. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 今先生おっしゃるとおり、残念ながらまだそういう状況でございますけれども、やはり軍縮の中での核軍縮、その中でもまず第一に着手すべきは核実験の全面禁止、それから他方、通常軍縮ではやはり先生のおっしゃったように化学兵器の禁止ということで、日本としましてはそういう目的に向かって粘り強くやっていく以外に私は方法がないんじゃないかということで、今後とも最全力を挙げていきたいと思っております。
  145. 和田教美

    和田教美君 粘り強くは結構なんですけれども、アメリカのブッシュ副大統領の提案の化学兵器禁止の包括的な条約案の内容を見ますと、これは僕は別にソ連の肩を持つわけではないけれども、とてもソ連がのめないというふうな条項が入っているように私は思うんだな。それはどういうことかというと、検証の問題は、非常に厳密に考えて疑惑の持たれるようなすべての政府・軍施設に対して現地査察を行い得ると、こういう条項が入っているように僕は読んでいるわけなんですけれども、これはソ連にしてみれば、ソ連は国営だから全部施設は国営でそれは国家の所有だということになる。そうすると、ソ連の方はそういうことで疑いが持たれると、どんどん査察が入っていかなきゃならない。アメリカは要するに資本主義だから、そういう工場はみんな民営だから入らなくてもいいというふうに受け取ったら、これは非常に公正でないというふうにソ連が受け取るのも一理はあるんじゃないかというふうに思うんですけれども、その辺はどう判断しますか。
  146. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) アメリカのブッシュ副大統領の御提案につきましては、今後化学兵器の作業部会、これがあるわけでございますから、ここでもって議論の対象になっていき、これはどういうふうなところで米ソあるいは関係諸国合意に達するかという議論が行われるものだと期待しております。
  147. 和田教美

    和田教美君 日本はそういう観点からこのアメリカの提案というものを支持しているわけですね。しかし、こういうふうに核実験全面禁止の問題にしてもこの化学兵器の問題にしても、米ソがとにかくにらみ合って全く進展がないという状況の中で、軍縮の問題を非常に重視している日本政府が、ただこの化学兵器の問題についてはアメリカの態度を支持するというだけでいいのかどうか。これは僕は非常に疑問だというふうに思うんですよね。と申しますのも、この間の軍縮会議で今井大使が、要するにこの検証の問題だとか、一方、ソ連は包括的な条約づくりなんていうことを非常に強調しているわけですね、そういうことでにらみ合っているわけだけれども、余り一方的に偏った議論をするんじゃなくて、今井さんの発言によれば、中庸の道をもっととってほしいということを提言をしておりましたけれども、私も全く同感であって、そういうにらみ合いの中で片一方を支持するというだけじゃなくて、もっと中庸の道に益するような提案を、日本政府としてこの辺で積極的に考えていくべき時期に来ているんではないかというふうに私は思うんですが、その辺の見解はいかがでございますか。
  148. 遠藤哲也

    説明員遠藤哲也君) 実は、化学兵器につきましては、これは大分前でございますけれども、一九七三年か四年だったと思いますけれども、日本一つのたたき台を出した経緯があるわけでございます。その後十年ぐらいの間、検証問題であるとか、あるいは化学兵器の範囲、定義の問題であるとかかなり実質的な進展というか討議は行われてまいりまして、今先生おっしゃいましたように、それから今井大使のこの間の演説にもありますように、結局関係国のどこら辺で合意できるのかという道の探り合いというか探ることを、先生おっしゃいましたように日本としては今後ともこれは積極的にやっていかなくちゃいかぬと思っております。
  149. 和田教美

    和田教美君 最後に一つ外務大臣にお聞きしたいんですけれども、国会の長期延長という腹構えで自民党が出てきておられる、そういうことで、総理のサミットの後のヨーロッパ訪問も取りやめになった。それから、夏に大洋州に行くという計画も取りやめになったと、こういうことです。これは恐らくことしの秋の総裁公選をにらんで、要するに余り外遊ばかりしておって国会が騒がれちゃ大変だ、それはマイナスになるという判断からだろうと思うんですけれども、それは総理の判断としてこれはいいと思うんですけれども、問題は外務大臣の外交日程、例えば中南米あるいはまた中東というふうな計画もあったようですが、それも要するにおつき合いをして一緒にストップされちゃったような報道があります。これは総理大臣が行かないからおれも行かないのだというのは、どうも何かちょっと私には解せないんですけれども、その辺はどうお考えですか。
  150. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 別に総理大臣と連動しているわけではございませんでして、私はまた私自身なりに外務大臣としての職責を全うするために、行かなければならぬところは行がしていただきたいということであります。まだしかし具体的な計画はつくっていない、こういうことです。
  151. 和田教美

    和田教美君 中東なんかは、与党の中の根回し、それから野党との話し合いもしていかれるべきだと私は思うんですよ。そういうことをやれば、野党だって別にそんなに何が何でも反対だというような頑固な人はいないわけであって、ただどうも外務省のスケジュールのつくり方を見ていると、内部だけでとにかく進めちゃって、それで野党とは事前に余り話もしない、決まってから持ってくるというふうなこともあって、その辺のスケジュールの決め方、外遊日程あるいは外交日程の決め方というものについてももう少し工夫があってしかるべきだと、こう思います。その辺は私の希望ですが、お答えをいただいて私の質問を終わります。
  152. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ありがとうございました。決めるときは早目に御相談申し上げますから、よろしくひとつお願いいたします。
  153. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 本日の議題になっております国際熱帯木材協定、あるいは出版物国際交換条約、それから国家間の公の出版物交換条約、これについては別に依存ございません。  ただ、出版物国際交換条約でありますとか、国家間の公の出版物交換条約が採択されてから二十数年間批准されなかった。それについては奇異の感を持つわけであります。しかし、この問題は既に八百板委員から午前中に取り上げられましたのでここでは繰り返しませんけれども、私の考え方を述べておきますと、これは必ずしも批准しなくても、二国間条約があればそれで間に合っているからというふうな政府の今までのお考えというのは、どうもやはり文化交流の重要性というのを今まで軽視されてきたことの一つのあらわれではないかというふうに思います。やはりこういう国際条約に加入することによりまして、国際的な舞台で文化交流の重要性を強調していく。そのためにはやはりこういう条約を早く批准すべきであったというふうに考えます。  また、この二つの条約はいずれも国連、ユネスコに関連している条約ですけれども、現在の国連であるとか、あるいはユネスコにいろんな問題があることは私も承知しておりますけれども、問題があればあるほどそれを是正するためにやはりこういう国際協力、これに関連したところの国際条約なんかを早く批准することによってそれを血していく、そういう姿勢を望みたい。今後そういう姿勢をとっていただきたいという希望を述べておきます。  私、きょう質問しようと思うのは、カレントな国際情勢についての問題で二つほど質問したいと思うのですけれども、一つは、ロンドンにあるリビア大使館、リビアでは人民代表部とかといっているそうですけれども、実質的には大使館だと思いますが、その大使館からデモ隊に対して発砲事件があって、そのためにイギリスの警官が死んだというふうなことが報道されておりますが、これは新聞の報道ですけれども、やはり大使館の二階から発砲されたということはこれは事実じゃないかというふうに私は考えております。普通には全く理解できない、大使館の二階から銃を発砲して人を傷つけるなんというふうなことは全く理解できないことなんです。やはりどうも本国におけるカダフィ政権と何らかのつながりがあったように想像されるんですけれども、一体このカダフィ政権というのは、もしやったとすればどういう動機からやったのか、どうも我々に理解できないんですけれども、外務省としてどういうふうにこの事件を理解しておられるか、まずそのことをお聞きしたいと思います。
  154. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 先生ただいま御指摘のように、状況証拠から見ます限りこの事件はリビア側に非があるように思えますけれども、リビア側は事件の責任を否定しておりまして、今のところリビアサイドから、どのような動機でこの事件をやったかということはリビアが否定しているために必ずしも明らかにはし得ないところだと思います。
  155. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 確かにリビア側の動機を理解することは非常に難しいと思うのですが、例えば北朝鮮のラングーンなんかにおける事件というのはこれは私は非常にけしからぬ問題だと思いますけれども、それなりに理解しようと思えば理解できるわけです。しかし、このカダフィ政権というのは、いわゆるマルクス・レーニン主義の共産主義の政権とも違いますし、あるいはイランなんかのファンダメンタリストと同じように解釈していい政権なのかどうか、今度の大使館発砲事件以前にも、各国に暗殺者を送り込んだりなんかしたというふうな報道があるのですけれども、どうも国際常識を無視した国のように思うのですが、どういう性格の政権であるというふうに理解しておられますか。
  156. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 一九七七年の三月に人民主権確立宣言なるものを行いまして、いわゆる直接民主制に移行いたしました。イスラム教を基礎に置きまして社会主義的あわせて民族主義的な民主国家の建設を目的とすると申しておりまして、イスラム教の教典でございますコーランが国の基本法であるということになっております。  外交政策といたしましては、イスラム社会の連帯とアラブの統合を旨といたしまして、イスラム諸国を中心といたします第三世界への経済援助、それとあわせましてパレスチナ人民の権利の回復、この二つを目的として掲げております。  以上は、リビア政府が公表している政策でございますけれども、現実には割合にフレキシブルと申しますか融通性を持った運用をやっているように私個人的には感じを受けます。反共を唱えながらもソ連との関係は相当深く、それから欧米諸国を帝国主義であると言って激しく非難しながらも、経済関係はアメリカを含めて極めて密接な取引関係に立っているということで、一概に教条主義的な政府であると決めつけるわけにもいかないと思いますけれども、一応公にされている範囲から見ますと、極めて特異な政治社会体制をとっている政権であると言わなければならないと思います。
  157. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ただいま言われたように、いわゆる口で言っていることと心で考えていることとがどうも一致しないようなのでなおさら理解に苦しむわけなんですけれども、パレスチナ解放戦線なんかとの関係はどうなんですか。PLOとか過激派の連中との関係は。
  158. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 公にされたところでは必ずしも明確でございません。パレスチナ解放戦線の資金ソースが必ずしも明確になっておりませんけれども、俗に言われているところでは相当の財政援助を得ていると言われております。
  159. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 イギリス人としては、警官を殺されておきながらどうすることもできない。結局外交官の撤去を求める以外に手がないというのもイギリス人としては非常に悔しいだろうと同情するのですけれども、こういう事件に関連して、新聞の報道によりますとウィーン条約、外交官特権を定めたウィーン条約の見直しをする声が西ヨーロッパ諸国において起こっているというふうな報道がありましたけれども、そういう動きがあるのですか。
  160. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) いわゆる公電ベースでもって私どもが承知しています限りでは、そういうところまではまだいっていないと思います。しかしながら、この委員会開催の直前に入りました外電によりますと、そういうことをイギリスの内務大臣が二十五日午後の下院で申しておりまして、英政府は、外交特権を定めた一九六一年ウィーン条約の改定について検討を始める意向を明らかにしたと言ったようでございます。しかしながら、その詳細につきましてはまだ私もよく承知いたしておりません。
  161. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 イギリス政府がそういうふうな考え方をとるというのは理解できないわけではない、理解できることですけれども、やはりこのウィーンの外交官特権条約というのは長い間の国際関係、外交関係の積み重ねでできた条約だと思うのであって、それをやはり軽々に改定するというようなことになりますと、これまた逆に損害の方が非常に多いんではないかということを私おそれているのですけれども、外務省としては、もしそういう申し出がほかの政府からあった場合に、それに対する対応策を今から研究しておられますか。
  162. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) ただいま欧亜局長から答弁申し上げましたように、一部報道でそういう動きが見られまして、実は先ほど、イギリスの内務大臣議会でそういうことを検討することを明らかにしたということを外電で承知している段階でございますので、厳密な意味で検討を開始したということではございませんけれども、基本的な考え方としては次のようにまとめることができるかと思います。  まず、今度の事件で、リビアの人民事務所からの発砲事件に関連して外交特権の乱用という問題が生じたことは日本政府としては遺憾なことであるというふうに考えております。しかしながら、今、関委員も御指摘になりましたように、この外交特権免除の問題というのは非常に長い歴史のもとで国際慣行が成熟してでき上がってきたものでございまして、それゆえにこの一九六一年のウィーン条約というものも非常に長い時間をかけて確立した国際慣行というものを成文化するのが適当である、こういう考え方ででき上がっているものでございまして、特に派遣国の主権と接受国の主権とがそこで接触し合うというのがまさに外交関係の特権免除の問題ということでございますので、この問題については慎重な取り扱いが必要である。たまたま具体的な事件が起きたからといって、それに適応するような形で直ちに反応することが本当にいいのかどうかという点は、十分に慎重に検討しなければならないという基本的な考え方を持っております。
  163. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私もその考え方に賛成です。慎重にやっていただきたいと思います。  それから、リビアの事件と直接の関係はないんですけれども、アナーキストグループがパリあたりで日本の商社に爆弾を投じたりなんかというふうなことがありましたけれども、この問題は先ほど取り上げられたようですから質問はいたしませんけれども、やはり在外公館の安全、それから在留邦人の安全、これは結局はそれぞれの国の警察、政府に頼む以外に方法はないんですけれども、十分注意していただきたいということを希望しておきます。  次の問題は、現在レーガン大統領が中国を訪問しておりますけれども、恐らくその話し合われる議題の一つは朝鮮半島問題ではないかというふうに考えられるんですけれども、その話の内容について、もちろん詳しいことはわかるはずはないんですけれども、外務省としてはどういうふうな話し合いが行われるというふうな情報を得ておられますか。
  164. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) それぞれの従来からの考え方を朝鮮半島の情勢について確認し合うということが基本的目的であるというふうに承知しております。
  165. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 中国の方の立場とアメリカの方の立場とは違うわけですね。両方とも朝鮮半島の平和、安全を希望していることは事実ですけれども、中国の方の考え方とそれからアメリカの方の考え方とは違うわけですけれども、恐らくやはり中国の方としては三者会談、アメリカを加えた韓国と北朝鮮との三者会談ということを主張するだろうと思います。また、日本でもそういう動きを支持する声があるように思うんですけれども、やはりこういう問題は、韓国及び北朝鮮の当事者が直接に話し合うべき問題であって、外部のそれ以外の国はその雰囲気をつくる助産婦の役目をするのが正当ではないかというふうに考えております。  殊に韓国としては、あのラングーン事件で多くの高官を失い、まかり間違えば大統領が殺されたかもしれないそういう事件があったわけですから、これは昔であれば、私は戦争になっても少しもおかしくないような事件じゃないかと思うんです。韓国の人たちがそれに対して非常に憤慨している、その気持ちは十分理解する必要があると思うんです。したがって、私は両当事国が話し合うことが必要だと思いますけれども、なかなか現在においてはそういう気持ちになれない、やはり何らかのはっきりしたけじめをあのラングーン事件につけるのでなければ、韓国の人たちが話し合いに応ずる気持ちになれないのは私は十分理解できることじゃないかというふうに思うので、そういうクーリングオフ、冷却期間というのをやはり持つべきじゃないかというふうに考えております。  それで、日本及びアメリカ、あるいは中国としてなし得ることは、先ほど申したように、これ以上北朝鮮と韓国の間が悪化しないように配慮して話し合いの雰囲気を徐々につくっていくということが必要ではないかと思いますけれども、外務省のお考えあるいは外務大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  166. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにラングーン事件は南北問題に非常に深刻な影響をもたらしたことは事実でありまして、その後南北関係が非常に緊張したと。そして、韓国として南北対話を進めるに当たりましても、やはりこのラングーン事件問題について北側が誠意のある態度を示さない限りは素直に話し合いには乗れないと、こういう姿勢で一貫をしております。その後スポーツ等を通じまして南北間の対話等も行われたわけでございますが、この対話も、今申し上げましたようにラングーン問題、ラングーン事件という点で、入り口で進展せずに終わっておるという状況でございます。それはそれなりにビルマが正式に発表したことでありますし、韓国の立場というのも我々は理解できるわけでございますが、反面、やはり南北の緊張が緩和することを心から期待をしておりますし、そのためのいろいろな動きも始まっておるわけでございますので、日本としましても、そうした緊張緩和に向かってのいろいろな動きが出てくる、そして環境がだんだんと進んでくるということを期待もし、そのための努力はしなきゃならぬと、こういうふうに考えておるわけであります。
  167. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その問題は、先ほど申しましたような私の希望を述べるにとどめておきたいと思います。  もう一つ、韓国の全大統領の訪日の問題ですね。これは、中曽根首相が向こうを訪問した、したがって順番から言えば今度は向こうから来る順番じゃないかと思いますし、前から全大統領の訪日ということはしばしば言われておりましたし、この委員会でも前に取り上げられたこともあるんですけれども、その実現の可能性、何か話し合いでも行われておりますでしょうか。
  168. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 中曽根総理から全斗煥大統領の訪日は正式に招請をしておりますが、そして訪日の時期については外交チャンネルで打ち合わせるということになっておりますが、まだ具体的にいつということで打ち合わせが行われているというところまでいっておりません。
  169. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 それはまだ機運が熟していないということですか。それとも何か障害があるということでございますか。
  170. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本側としましては、招待した側ですからいつでもおいでをいただきたいという立場でありますが、したがって、時期について判断をされるのは全斗煥大統領であろうと、こういうふうに思っております。全斗煥大統領が来たいということになれば、これは打ち合わせの上で時日は決めなければなりませんけれども、日本側としてもそれに対して受け入れをしなきゃならぬ責任もあると思います。その辺は外交チャンネルで打ち合わせたらいいんじゃないか、そういうふうに思います。いずれにしても、全斗煥大統領の判断にゆだねておるわけです。
  171. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 できるだけ全斗煥大統領の訪日が早く実現することを希望しておきます。  そのほか質問要項を考えていたんですけれども、ほかの人が既に質問をされました。ダブリますので私はこれで質問を終わります。まだ随分時間が余っておりますけれども、これで終わります。
  172. 安武洋子

    安武洋子君 国際熱帯木材協定の件でお伺いをいたします。  昨年の国連環境計画の事務局長報告、これを見ますと、世界の多くの場所で重要な森林とか生態系が失われつつある。幾つかの国では数十年のうちに国内の樹林をすべて失いかねない状況に直面していると警鐘を鳴らしております。  今月の初めに行われました日米欧委員会の報告でも、二〇〇〇年までに発展途上国に存在する森林の四割が住民による燃料のための伐採とそれから農耕地の拡大によって消失するかもしれない、こう述べております。この報告は住民にだけ責任を負わせている点で問題があると思いますけれども、いずれにいたしましても大事な警鐘であることには変わりありません。  大臣にお伺いいたしますが、東南アジアなどから大量の木材を輸入しております当事国といたしまして、今日のこういう警鐘の鳴らされている事態についてどう考えておられるのか。また、この条約発効後、我が国はどのように行動していくのか。また、具体的な特別な対応策を持っているのか、あるいは今後持つ予定があるのか。こういう点をお伺いいたします。
  173. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 熱帯木材の乱伐、先ほどお話がありました乱伐については、焼き畑農耕、放牧及び薪炭材の採取といった現地に住む人人の生活に密着した木材の伐採が大きな原因となっております。我が国のような大きな消費国が行う輸入が必ずしも主要な原因にはなっていないものである、こういうふうに承知いたしておるわけでございます。  しかしながら、アジア・太平洋地域を中心とする熱帯木材資源が急速に減少していることは事実でありますし、その枯渇化は単にこれら生産国のみならず広く人類全体にとってもゆゆしい問題でございますので、我が国としても多国間及び二国間の協力を通じて乱伐の防止、造林等について今後とも応分の協力を行っていかなきゃならぬと考えております。
  174. 安武洋子

    安武洋子君 具体的な特別な対応策、それから今後条約が発効した後で何をなさろうとしているのか、そういう点はいかがでしょうか。
  175. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 国際協力には二国間を通ずるもの、それから国際機関を通ずるものとございますが、国際機関を通ずるものについては環境計画等の国連関係機関協力がございます。また、この条約が発効した場合は、国際熱帯木材協定に基づく協力というものがあり得るかと思います。それから二国間協定については、二国間の問題につきましては、国際協力事業団等を通ずる技術協力等において各国に対する要望に応じた協力を行っているという形でございます。  熱帯木材協定が発効した後の問題でございますが、現在は候補の計画として挙げられているものがございますが、これは発効後理事会等の議論を通じて決定されていくものである、かように考えております。
  176. 安武洋子

    安武洋子君 熱帯木材の代表的なラワンでございますけれども、これは百七十年から二百年ぐらい生育がかかるというふうに聞いております。このラワンはまだ生態もわからないというふうなことで、造林の対策も講じられておりません。林野庁の山口課長さんの論文を拝見したんですが、日本では研究されていないと。私見だが、無償援助の金などを利用して研究所を持ったらどうかという気がしていると、こういうふうに述べておられます。こういうふうな面でも、予算あるいは研究者の面でも大いに私は援助をしていくべきであろうというふうに思うわけです。  それで、熱帯木材協定日本が援助を惜しまないということは大変結構なことですけれども、この熱帯木材の輸入で多大の利潤を上げております大商社とかあるいは大手製紙業者等にも企業としての国際的、社会的な責任を私は果たさせるべきだというふうに思うわけです。  昭和四十八年に経団連等五団体が、「発展途上国に対する投資行動の指針」と、これを出しております。大変不十分さを持っておりますけれども、長期的な観点に立って受け入れ胴の発展に寄与するというふうなことも申しておりますので、世界的に失われつつある森林とか生態系、これは守るという観点、これはしっかりと踏まえさせて企業活動を行うように十分に指導をすべきではないか、私はこういうふうに思いますので、御答弁をお願いいたします。
  177. 三澤毅

    説明員(三澤毅君) 先ほど御説明がありましたように、熱帯木材の伐採以外にもいろいろな原因で森林が失われていくという事実、これはあるわけでございまして、私ども今先生お話のとおりそういったことがあってはならないと考えておりますが、そういった場合に商社等の活動、こういうものについてもおのずから節制ある態度で臨むのが適当、こういうふうに考えているところでございます。  ただ、今まで商社等の活動でやってきた伐採、それから搬出、現地の法人がそういった伐採、搬出したものを商社が買う、こういう形で現在進んできておりまして、また、かって他の地域で見られたように、要するに商社が自分のところで開発してそれを輸入する、こういう形態については今ほとんど見られなくなっている、こういう状態でございます。しかしながら、私どもそういった批判を受けるということはぐあいの悪いことでございますから、そのように商社等を指導していきたい、こう思っております。
  178. 安武洋子

    安武洋子君 それでは、けさの報道に関連して御質問を申し上げます。  けさの朝日新聞の報道によりますと、私がかねて追及をしてまいりました問題とも関係がございますが、先にまず一問お伺いいたしておきます。  けさの報道に関連しまして、AUWショップと呼ばれる核貯蔵庫そのものが三沢にあるというふうな報道がございます。このようなものが我が国にあること自体私は許されないことだと、我が国にこのようなものはつくれないと、こういうふうに思いますけれども、大臣の御所見をお伺いいたします。大臣いかがですか。
  179. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) けさの報道に出ておりましたアドバンスト・アンダーウォーター・ウエポンズというものが三沢に存在しているかどうか、けさほど来御答弁申し上げておりますように私ども知らないわけでございますが、そういうものがあった場合に、それが地位協定上あるいは安保条約上認められるかということが御質問の趣旨かと思いますけれども、そもそも核兵器あるいは核弾頭等を日本に持ってくることは、事前協議の対象になることは先ほど来御説明申し上げているとおりであるわけでございます。したがいまして、核弾頭なり何なりを貯蔵するための、そのためのみの弾薬庫をつくるということはちょっと考えられませんので、これは、もし報道が事実であるといたしますと、要するに通常の弾頭を置くものではなかろうかと、こう思われるわけでございます。そうだといたしますと、これをつくっていけないということは協定上あるいは条約上ないわけでございまして、せっかくの御指摘でございますが、条約上認められないということはないと、こう申し上げるほかない次第でございます。
  180. 安武洋子

    安武洋子君 私の聞いていることにちゃんと答えてくださいよ。私は、核貯蔵庫そのものが三沢にあるという報道がありますけれども、こういうものがもしあるとすれば、我が国にあること自体こういうものは許されないでしょうと、我が国にはこのようなものはつくれないでしょうと、そうお伺いしていますので、大臣の御答弁をお願いいたします。今のは通常の弾頭に置きかえられた。そんなことはだれも聞いていません。
  181. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは先ほどから答弁しておりますように、そしてまた今さら申し上げる必要もないぐらいですが、核貯蔵庫ということになれば核を専用に貯蔵するということになるんですから、そういうことは、今の日本の非核三原則あるいは事前協議、そういう条項からして到底あり得ることではございません。
  182. 安武洋子

    安武洋子君 ということは、つくれないしあってはならないと、こういうふうに確認してよろしゅうございますね。
  183. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、核専用の貯蔵庫ということならば核専用ですから、核を入れなきゃ意味のないことでしょうから、核を持ち込むということは非核三原則に反するわけですし、事前協議の対象になるわけですから、そういうことはあり得ないということです。
  184. 安武洋子

    安武洋子君 それでは、調査してもしあれば、大臣は直ちに撤去を求めると、こういうことをなさいますね。
  185. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは初めから日本としてははっきりした方針を打ち出しておるわけですし、アメリカもそれを十分理解し、日米安保条約は守られているわけですから、調査するまでもないと思っております。
  186. 安武洋子

    安武洋子君 こういう報道があるわけですからね。やっぱり調査をしていただかなければだめだと思うんです。私はこういう際ですから大臣に求めたいわけですけれども、非核三原則については先日来大臣と私は論議をさせていただきましたけれども、P3CとかF16用の核というのは、これは有事の際でも我が国には持ち込めないということをやはりアメリカにきっちり伝えるべきだと、こういうふうに思いますけれども、いかがですか。
  187. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、アメリカとの間には安保条約、その関連規定によりましていわゆる事前協議というものがありますし、事前協議については藤山・マッカーサー口頭了解あるいはまた岸・ハーター交換公文といったもので取り決められておるわけでございますし、我々はこの条約そして関連規定をお互いに遵守するという義務もありますし、日米間の信頼関係はずっと今日まで続いて守られてきておると確信をいたしておりますので、今さらこれをアメリカに申し入れる必要はないと、これはアメリカもちゃんと日本の非核三原則の存在を知っておりますし、そして安保条約、その関連規定を守るということをはっきりと我々には申しておるわけでございます。お互いのこれは義務でございますから、今さら聞く必要はないと、こういうふうに思います。
  188. 安武洋子

    安武洋子君 大臣は何度申し上げてもテープレコーダーみたいに同じお答えをずっと繰り返されているわけですが、しかしけさのこういうふうな報道もありますように、核戦争が起きた場合に備えての緊急作戦計画を持っておって、基地の中に核兵器を貯蔵するための施設があると、こういうふうな報道がされますとやはり国民は不安を持つわけです。だから、国民との信頼関係を十分大事にしていただくという意味で、私はこの際だから、このP3CとかF16とか、こういう核は有事の際でもだめなんですよと。だから、先ほど大臣が言われたように、核専用のそういう貯蔵庫、こういうふうなものは日本に無意味なんだというふうなことをおっしゃったわけですから、そういう点を、有事の際でもだめですよということをアメリカに伝えるべきだと、こう思いますが、いかがでしょうか。
  189. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどから申し上げておりますように、日米関係にはかたい信頼関係がありますし、安保条約、その関連規定をお互いに守る義務がありますし、事前協議条項というものが厳として存在している以上は、そして核の持ち込みの場合はこの事前協議の対象になるわけですから、今お話しになったような事実はないということです。
  190. 安武洋子

    安武洋子君 いや、今言ったような事実があるかないかということは、これは私はやはり調査をしてきちっとやっていただかなければならない。先ほど大臣も、調査をしてもしそういうことがあれば撤去を求めるんだと、こうおっしゃってくださったわけですから、私はさらにそれにつけ加えて、非核三原則があるけれども、この際だからP3C、F16、こういう核は有事でもだめだよということを、国民との信頼を大切にするならおっしゃるべきでないかと。アメリカとの信頼、アメリカとの信頼と、こうおっしゃっていますけれども、国民との信頼というのは、こういう記事が出れば成り立たないわけです。ですから、国民との信頼を何よりも政治家として、大臣として一番大事になさるべきではないかと、こう思うんですが、いかがですか。
  191. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 核専用の貯蔵庫などあるはずはないですから、これは調査するまでもないということですね、第一は。  それから、今のF16の三沢基地への配備について日本政府から申し入れよと、こういう点については、実は昨年私はマンスフィールド大使を招致いたしまして、F16の三沢配置、それからさらにエンタープライズの寄港をめぐりまして国民の関心が非常に高くなっておる階段でございましたから、マンスフィールド大使に、日本のこの非核三原則についての基本的な立場、さらに日米間にある日米安保条約、それに関連する関連規定、さらにそれにあるところの事前協議の条項等について日本立場を明快に大使に伝えた。これに対してアメリカ側から、日米の信頼関係はこれを維持していかなきゃならないと、安保条約、その関連規定は遵守いたしますと、日本立場については十分我々はわかっておりますと、こういう回答が返ってきておりますから、既にこの点については、三沢の基地の問題も含めて一般的に私は大使に申し入れをしております。
  192. 安武洋子

    安武洋子君 アメリカとの信頼関係ばかりおっしゃって、調べもしないでそういうものはないんだと、こういうふうに放言なさるということは、やはり国民はいよいよ全くもって大臣を信頼しないと、こういうことになるということを申し上げておきます。  その次に、私がこれはかねてから横田にジャイアント・トーク・ステーションがあるということを繰り返し追及してまいりました。きょうの記事の中にも、「嘉手納基地には横田基地とともに「ジャイアント・トーク・ステーション」と呼ばれるB52への指令を与えるための通信部隊が駐留しており、いずれも、ハワイの米太平洋軍司令部、米ネブラスカ州・オマハの米戦略空軍司令部と直結している。横田基地の「ジャイアント・トーク・ステーション」の送受信所は所沢と大和田(新座、清瀬市)にある。」と、こういう記事があります。これは間違いございませんか。
  193. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 御指摘ございましたジャイアント・トーク・ステーションでございますが、これが横田に存在しておりますことは今おっしゃるとおりでございます。
  194. 安武洋子

    安武洋子君 いや、私が今記事を読み上げたのは、嘉手納と横田にジャイアント・トーク・ステーションが存在をしていると。これはB52への指令を与えるための通信部隊が駐留しているということと、それからこれはオマハの米戦略空軍司令部と直結をしていて、横田基地のジャイアント・トーク・ステーションの送受信所は所沢と大和田だと、これだけ書いてあることに間違いないかと、こう確認をしておりますが。
  195. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 横田に所在しておりますジャイアント・トーク・ステーションがどこに直結しておるか私は詳細つまびらかにいたしておりませんが、ジャイアント・トーク・ステーションは、御承知かと存じますけれども、米国国家指揮当局、ナショナル・コマンド・オーソリティーズというものに対しまして、一般的な指揮、統制、通信面での支援を与えるという任務がございます。それに加えまして、アメリカの戦略空軍の司令官に対しまして指揮、統制、通信のための世界規模での送受信網を提供している、そういう機能もあわせ持っているというふうに理解いたしております。
  196. 安武洋子

    安武洋子君 確認します。戦略空軍への指揮、統制、これも含んでいるということで間違いございませんね。
  197. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) そのとおりでございます。
  198. 安武洋子

    安武洋子君 これは戦略空軍ということになりますと、今のアメリカの核戦略の三本柱の一つ、これは御存じのようにICBMとそれからSLBM、それからB52戦略核爆撃機、この三つになっております。ということになれば、これはB52戦略核爆撃機に対して核爆撃の最終命令を伝えると、こういうことも含まれますね。
  199. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 戦略空軍の任務でございますけれども、確かに御指摘のとおり核攻撃任務というものもございますが、実はそれに限られておりませんで、偵察の任務、宇宙監視、あるいは警戒任務等も行いますが、さらに通常任務の分野におきましても、爆撃あるいは海軍を支援するための海上監視ないしは偵察、機雷敷設等の任務も行っているものでございます。
  200. 安武洋子

    安武洋子君 核攻撃任務もその中にありますでしよう。
  201. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 先ほども申し上げたかと思いますが、核攻撃の任務もその中に含まれています。
  202. 安武洋子

    安武洋子君 今それを確認させていただきました。  そこで、この核攻撃任務、私はここに「カデナ・ファルコン」、アメリカの嘉手納の空軍基地新聞を持ってきております。これの中の記載は、嘉手納のジャイアント・トーク・ステーションが今年度のジャイアント・トーク賞をさらったというふうな記事の中に、このジャイアント・トークというのは「SAC司令官の、SAC部隊にたいする指揮、統制の手段におけるきわめて重要な環である。その任務を果たすため」云々ということがありまして、そして「SAC機の乗員と、これらの航空機を統制する別の指揮機関とのあいだの、メッセージを中継している。」ということで、この別の機関、これは大統領直轄の米国国家指揮当局、こういう記事があるわけなんです。ということになればこれは大変重要な指令であって、やはりこれは核爆撃の最終攻撃命令を出すということも含まれる、大変なことであろうというふうに思います。  私は大臣にお伺いいたしとうございますが、こういうことを行うということになれば、日本は直ちに報復を受けて日本は核の戦場になってしまう、核の戦場にさらされてしまうというふうなことなんですが、こういう重要な基地があるということを大臣は許しておかれるわけですか。
  203. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもう許すも許さないもありません。日本の場合は非核三原則を遵守しておりますし、アメリカもそれを十分知っておりますから核の持ち込みは日本に対してはないと、あり得ないということですから。
  204. 安武洋子

    安武洋子君 だれも核をじかに持ち込んでいるとは申しておりません。ここのB52核戦略爆撃機に対して核攻撃の最終指令を大統領直結で与えるという基地が横田の、この所沢と大和田にあるということを私は申し上げております。こういうことがあれば、何か有事になれば首都は一瞬にして核の戦場、核の廃墟となってしまう、そういうことを大臣としては容認をされるんですかと、大変なことじゃありませんかと。私は直ちに撤去を求めるべきだと、こう思いますが、いかがですか。
  205. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) ちょっと御説明させていただきたいのでございますが、ジャイアント・トーク・ステーションは、先ほど来申し上げましたとおりに、一般的な国家指揮当局に対する指揮と統制あるいは通信面での支援をやる、さらにまた戦略空軍の司令官に対しましても指揮、通信、統制等のために通信網を提供しているという施設であるわけでございますが、私どもといたしましては、この施設の一般的な先ほど申しました指揮、統制、通信機能の中に、戦略の任務を有する航空機との指揮、統制、通信機能がたとえ含まれるといたしましても、問題はアメリカがその有効な核抑止力を確保するという観点からこのような機能をやっているわけでございまして、そういう機能を持つことの必要性というものを十分理解している次第でございます。
  206. 安武洋子

    安武洋子君 何が核抑止力ですか。日本はアメリカが有事ということになれば、ここの横田から、首都圏からこの米戦略核爆撃機に対して最終的な核攻撃命令を下すわけです。そうすれば直ちに報復を受けるというのはけさのこの報道の中にも言われておりますし、だれが考えたってそういうことになる。  日本を核の戦場にしてしまってもいい、こういう通信施設をこのまま日本に居続けさせてもよい、大臣はそのようにお考えでございましょうか、大臣の御所見をお伺いいたします。
  207. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 御質問の、いわゆるジャイアント・トーク・ステーションに関することだと思いますが、先ほどから説明をいたしましたように、この施設は世界じゅうに十四カ所あるというふうに聞いておりますし、日本には横田及び嘉手納飛行場内に設置されていると承知をしておるわけです。しかし、このジャイアント・トーク・ステーションは、米国の国家指揮当局に対して一般的な指揮、統制、通信面での支援を与える……
  208. 安武洋子

    安武洋子君 大臣、それはもう済んじゃって、やっぱり核攻撃命令もやるんだと言っているんだから、それをそのままでいいんですかって聞いているのです。
  209. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、これはこういう一般的な指揮、統制、通信面での支援を与える、こういうことになっているわけです。ですから日本の場合は、少なくとも非核三原則がありますし、そして安保条約ということで米軍が駐留はもちろんしておりますから、それはそれなりに日本の平和と安全を守るための抑止力としての存在ですから、そういう意味での通信施設等が存在をするということは、全体的に見て日米安保条約の効果的運用、日本の平和と安全、そのための抑止力ということであろうと、こういうふうに考えています。
  210. 安武洋子

    安武洋子君 大臣ね、よく聞いておいていただかないといけない。一般的な通信綱、それはやりましょう。しかし、最終的な核攻撃命令を下すような通信基地が日本にある、首都圏にあるというふうなことは、これは直ちに報復爆撃を受けていくということになるということを私は申し上げているわけです。それは今の私の質問の中でお認めになっているからこそ、それで今までも何度も追及してきてそのことが明らかになっているということですから、私はこんなものを容認なさっていいんですか、日本を核の戦場にしていいんですか、報復攻撃を受けますよと。日本外務大臣として一体どうお考えになるんでしょうか。
  211. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) どうも質問の趣旨がよくわからないんですがね。私は、日米安保条約によって日本に米軍が駐留している、そしてそのことは日本のいわゆる平和と安全を守るために日米間で取り決められたことであるし、そしてそれは同時に抑止力、戦争の抑止力ということにつながるわけで、日本の場合はそうした日本に駐留しておる米軍の抑止力、さらにまたアメリカ自身の持っておる力による抑止力というものによって日本の平和というものは守られておる。ですから、そういう中でいろんな基地があるということはそれはそれなりに安保条約の枠組みの中では許されておるわけですから、問題は、日本には非核三原則というものがあって、核の基地だとか核の持ち込みだとかそういうことはこれは日本のいわゆる国是とも言うべき考え方からこれを許さない、こういうことで日米間には強い信頼とそうして合意があるということですから御心配は要らない、こういうふうに思います。
  212. 安武洋子

    安武洋子君 私はとんでもないことだということを強く申し上げます。私は先ほどからの論議の中で、ここがB52、これはアメリカの核戦略の三本柱の一つですよ、核爆撃攻撃機、これに対して大統領の直轄命令を伝えるその通信機能だと、こういうことで核最終命令を伝えていくということは日本を核戦場に巻き込むんだと、こう理路整然と私は申し上げている。それに対して私は大臣の御答弁というのは全く気に食わないわけです。でも大変時間がないので急ぎますけれども、ついでにお聞きしておきます。  ここのジャイアント・トーク・ステーションの規模、これは何人ぐらいで運用してどのような運用を通常やっているんでしょうか。  それからついでにもう一つ、今ジャイアント・トーク関連で、所沢、大和田、大規模な改修工事が行われておりますけれども、どういうふうなプログラムでどういうふうに行われているんでしょうか、ちょっと早急に答えてください。
  213. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 大和田及び所沢の通信施設でございますが、現在いわゆるスコープ・シグナルⅢという改修計画がございまして、それがまた続行中と理解いたしております。その詳細については、申しわけございませんが手元に資料を持っていない次第でございます。  それから横田でございますが、全面積が七百万平米でございますが、これは横田の飛行場それ自体の面積でございます。ジャイアント・トーク・ステーションがこのうちどの程度のものを占めておりますか、ちょっと詳細を承知していない次第でございます。
  214. 安武洋子

    安武洋子君 おわかりにならないのは後で資料で出していただけますか、今手元にないとおっしゃったのも。
  215. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 可能な限り調べたいと思います。
  216. 安武洋子

    安武洋子君 ちょっと議題を変えます。  私は、先ほどのは必ず撤去していただきたいということを強く申し添えておきますけれども、今度はちょっと日朝の民間漁業協定協定延長についてお伺いしたいんです。日本と朝鮮民主主義人民共和国との交渉で、中国が仲介するということで外務省が検討中というふうなことを聞いておりますけれども、この結論が出たのかどうかということと、それから北側との民間漁業協定が期限切れで宙に浮きまして、大臣は中国の胡総書記との会談の中で、胡総書記の親切な発言には日本もそれなりに応じていくためのいろんな検討をしていると、こう言われてきているわけです。民間の漁業協定もこれが切れましたので、私も随分陳情を受けますけれども、漁民が操業上大変大きな痛手を受けております。まさに人道上の問題ではなかろうかというふうに思うわけですので、中国に協定締結の促進の仲介を頼むべきではなかろうか、こう思いますが、大臣の御所見はいかがでございましょう。
  217. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 漁業協定が切れまして今日に至っておるということは、私もやはり日本の漁業者の立場考えますと非常に残念に思っております。ただ、これは民間の協定ですから、政府としては今北朝鮮との間に向らの外交関係がないわけですから手の下しようがないということでありまして、民間同士の話し合いによってこの協定が延長されることを念願しておるわけです。しかし、今そういう中で政府としても何らか努力すべきだと、それは中国を介して民間漁業協定についての延長について話し合ったらどうかということですが、我々としては、日本と北朝鮮との間に外交関係もありませんし、したがってこうした協定について日本政府がこれに取り組むと、そしてそのために中国に依頼をするということは今日の状態からできませんし、またそれをする考えはありません。  それで、我々が今検討しているのは、人道的な面で中国を介して北朝鮮に対して日本がいろいろと要請をするということについて何ができるかという点で今検討を進めておると、こういう状況です。
  218. 安武洋子

    安武洋子君 私は、この漁業協定が切れたために漁民がどれほど操業上大きな痛手を受けているかということを考えていただきたいわけなんです。これは本当にまさに人道上の問題ですので、何ができるかということの中の検討課題の一つに入れていただいて、早急にこの協定が延長できるように努力をしていただきたい、その御答弁を承って、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
  219. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 民間漁業協定が延長されるように日本と北朝鮮との民間の関係者の間で鋭意努力が続けられて、そしてこの延長が行われるような成果が生まれることを政府としては心から期待をしております。ただ、残念ながら政府は北朝鮮と外交関係がないんですから、そういう意味で北朝鮮との間に話を進めることはできない。
  220. 安武洋子

    安武洋子君 中国に頼めと言っているんです。
  221. 秦豊

    ○秦豊君 まず、出版物国際交換の問題ですけれども、当然二つの条約を踏まえて質問します。  これは、国としての交換業務を主として担当するのは言うまでもなく国立国会図書館の機能だと、役割だと思います。そこで図書館長には、特にこれからの出版物国際交換に当たる基本的な心構えと言ってはやや精神的に過ぎようかと思うが、当委員会でも、例えば発展途上国との交換については特に留意してほしいとかさまざまな注文がついておりますね。そういうものを踏まえて基本的なお考え方、抱負を特に伺っておきたいと思います。
  222. 荒尾正浩

    国立国会図書館長荒尾正浩君) 図書館界では早くから国際的な交流が進められておりまして、私ども国立国会図書館でも既に昭和二十四年から出版物国際交換業務を実施して現在に至っております。ただいま審議されておりますこの二つの条約締結されますと、出版物国際交換に対する我が国の積極的な姿勢が表明されることになりまして、交換業務がさらに進展することが予想されます。特に、アジア諸国との交換が非常にやりやすくなるものと存じます。  現在、世界各国で刊行される出版物には商業ベースに乗らないものが多々ありますが、その入手は通常の手段では容易ではございません。どうしても相互の寄贈あるいは交換によらざるを得ない状況でございます。公の出版物、学術出版物、特に科学技術関係の文献にはこの傾向が特に顕著でございます。この二つの条約締結されて国立国会図書館が国の交換機関としての任務を果たすこととなりました暁には、私どもといたしましては気持ちを新たにいたしまして出版物国際交換業務の進展に努めまして、さらに一層図書館資料充実を図るとともに、出版物交換を通じて我が国における文化交流の一端を担ってまいる所存でございます。
  223. 秦豊

    ○秦豊君 外務省、レーガン大統領の北京訪問に続いて今度は大きな外交日程が待っているわけであって、ソビエトのアルヒポフ第一副首相が北京を訪問します。つまり、東西のバランスが巧みに北京を接点として現出されるというなかなか強靱な外交が現実に展開されるわけです。  一方では、五月初旬に胡耀邦氏がピョンヤンに入る。さらに、五月早々にはシュルツ国務長官の韓国訪問、それが終わったかと思ったらワインバーガー国防長官が訪中を経て日本を挟み訪韓と、つまり一連の対アジア外交というのが濃密に展開されるわけですね。  そこで、まず外務省見解を伺っておきたいのは、アルヒポフ第一副首相の中国訪問というと、これはかつてない高いランクの交流と、公式な訪問となるわけであって、しかもレーガン直後とい意味合いが相当濃密に込められると思うんですね。だから、アルヒポフ氏の中国訪問に込められている外交的なねらい、効果、意味合い等についてどういうふうに見ていらっしゃいますか。
  224. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) これも先生御存じのことでございますが、現在中国の指導部が何よりも重視しております政策のイの一番は、中国の国民経済の規模を今世紀末までにどんなことがあっても四倍に達したい、そのためには経済建設中心、そのためには対外的にはいわゆる対外開放政策ということで、したがいまして対外的な緊張、例えば対米あるいは対ソあるいは朝鮮半島情勢の問題をめぐりましても、何としても中国をめぐる極東アジアの緊張緩和を何よりも欲する、こういう基調がまずございます。その関連におきましてレーガン大統領を受け入れ、それから一方先生指摘のように、まさにこれまで次官レベルと言いましても正確に言いますと次官補レベルでございますが、それをひとつの第一副首相というレベルまで高めたということは、やはり基本的には中国が、アメリカのみならずソ連との関係も漸次次第次第に原則は貫きつつも雰囲気をよくしていこう、こういう考えのあらわれであろうと思います。
  225. 秦豊

    ○秦豊君 モスクワとしても、当然ワシントン、東京をにらみながらその辺の波及効果、副次効果をねらっていると私は考えますが、いかがですか。
  226. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) これはソ連を担当します欧亜局長が答弁すべきと思いますが、私が手を挙げて委員長の御指名をいただきましたので申し上げますが、私はソ連も基本的には中国との風係を好転させたいという気持ちは基本としてあると思います。
  227. 秦豊

    ○秦豊君 続いて、胡耀邦氏がピョンヤンに入る、これもタイミングからして相当意味合いが濃いと思いますが、それについてもいかがですか。
  228. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 当然、胡耀邦総書記が北朝鮮を訪問されることはタイミングからいいまして米中首脳会談の直後でございます。それから対ソ関係についても、今のようなことで次第次第に友好のための雰囲気づくりをやっているという背景でピョンヤンに訪問するわけでございますから、そういったアジア、特に極東の緊張緩和、なかんずく朝鮮半島をめぐる緊張緩和をどのようにして達成していくかということが一つの議論の大きな柱になろうかと考えております。
  229. 秦豊

    ○秦豊君 欧亜局長ね、さっき橋本さんがつい手を挙げて答弁されて大変結構なんですけれども、欧亜局にも補強をしておいてもらいたい、アルヒポフのこと。
  230. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) アルヒポフ第一副首相は経歴上主として経済分野を担当しております。現在アリエフ、グロムイコと並んで三人の第一副首相の一人なんでございますけれども、現在今フランスにおりまして、それでフランスと例の天然ガスの供与問題その他経済の問題を話し合っているというふうに承知いたしております。したがいまして、先ほどアジア局長からも御説明申し上げましたように、中国に行きましても、やはり経済関係の問題について話し合いを行うのではないかというふうに考えられます。
  231. 秦豊

    ○秦豊君 安倍大臣にも以下申し上げることをちょっとお聞きとめいただきたいんですが、最近金大中氏が、南北朝鮮を含む会談は年内に恐らく実現するだろうということを述べ、アメリカサイドでは、レアード元アメリカ国防長官が最近中国を訪れた後で、中国は今は北側の三者会談を支持しているけれども、八四年中には中国を含めた四者会談の線に歩み寄るだろうということを公式な場で述べているんですね。  そこで、これは私の観測ですけれども、結局今度の一連の外交日程、北京を焦点にしたものが終わりますと、アメリカは韓国に対して、中国は北朝鮮に対して、例えば条件つきの三者会談をコーディネートすると。条件とは、韓国が同等の資格で参加をすることの保証、それから北京での開催を条件にする、三番目には、懸案の駐韓米軍撤退を大前提ないし前提とはしない、四番目には、南北対話の同時進行と、これは勝手に私が観測しているんで当てずっぽうと言われるかもしれません、外交専門家から。この四つは、やや必須な、エッセンシャルな条件だろうと思うからインプットしたんですが、こういうふうな条件で中国はピョンヤンを、それからワシントンはソウルをという動きが私はだんだん顕在化するんじゃないかと思うんだが、これを安倍大臣はどういうふうに見ていらっしゃいますか。
  232. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) なかなか含蓄のある御発想だと思いますが、そういうことになるかどうか、今の南北関係から見まして、必ずしもそう容易に三者会談とか四者会談が開かれる状況になるかどうか私もちょっと予測ができませんけれども、しかし南北をめぐっての周辺の諸国の動きは非常に急をきわめておることは事実ですし、胡耀邦総書記がピョンヤンに行く、また金日成主席も今度はモスクワに飛ぶというような報道もありますし、南北でスポーツの会談も行われる余地もまだ残っておりますから、これからどういう方向になるか我々も注目してみたいと思っています。いずれにしても緊張緩和が進むということはとにかく大変好ましいことであると考えています。
  233. 秦豊

    ○秦豊君 僕がたまたま挙げたように見える四つの条件というのは、いろんなことを考えて見たら結局そこしかないという絞り方、そこに収れんされるのではないかと思いますので、大臣、重ねて恐縮ですけれども、あり得べき外交展開の方向として、収れんされていく方向としてはあながち否定できない方向ではないかという印象はお持ちになりませんか。
  234. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 韓国と北朝鮮との間のスポーツ交流等で交わされた対話とか、さらにまた三者会談についてのコメントとかいろいろなものを総合して見ますと、例えば韓国としては、何としてもビルマ事件について北朝鮮の誠意ある態度というのがやはり話に入る大前提だという受けとめ方でありますし、あるいはまた三者会談を行うにしても、要するに在韓米軍の撤兵を一つの前提とした三者会談とか、そういうものは到底これは韓国もアメリカも認められないことである、最終的な出口としての話し合いになるかどうかその辺は別としまして、入り口からそういうことを言われてもこれは到底応ずることはできないというようなことも言っておりますから、全体的に見まして、行われるとしても今おっしゃるようないろんな問題というものを慎重に配慮して、そういう中でやはり行われなければならないんじゃないかと。お互いに乗ってくるような条件というものがなければ、やはりそれはそれぞれの立場がありますから、空気としては醸成されてもなかなか会談には乗りにくい、こういうことじゃないかと思います。
  235. 秦豊

    ○秦豊君 これは北米局にちょっと伺ってから質問をさらに進めたいと思いますが、今、マイケル・H・アマコスト氏はなおフィリピン大使だと思いますが、近くアメリカ国務省の大幅な人事異動があるのではないかと。例えばナンバースリーの地位を占めているローレンス・イーグルバーガー次官が退いてその後にアマコスト氏が仮に入るなら入ると。そうするとその次には、日韓とか中国あるいはオセアニアを含めた地域を担当する国務次官補代理がウイリアム・ブラウン氏一人であったものが二人にふえて、在日経験のある公使をされた例のシャーマンさん、あの人が仮に入る、日本部次長も女性外交官が充当されるというふうな一連のものがあり、さらに先日イーグルバーガー次官が、アメリカ外交の重心は明らかに大西洋ではなくて太平洋を向いているという演説をされた、これはかなり重要な演説だと思うんです。そういうものを裏づける外交的な体制と布陣がアメリカ国務省の体制の中に、陣容の中にやはり裏づけられているということは、やはり今度のレーガン訪中を嚆矢としてアジア外交の再構築にかけるアメリカ側の熱意は必ずしもムード的ではないと、本腰だという印象を私は受けざるを得ないんですよね。そこでこれからはアマコスト氏の動きというものを相当見詰めていく必要が日本外交にもあると。  その意味合いを具体的に言えば、例えば某月某日、北京においてアマコスト氏と金泳南北朝鮮外相が公式か非公式かは別として会談をすることだってあり得なくはなく、そういうステップを踏めば、今安倍外務大臣に私が申し上げた四つの条件の周辺が整備されて、やはり道が前に向かって開けていくという可能性も私は否定できないと思うんです。そういう観測について、可能性について外務省としてはどういうふうに認識されますか。
  236. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) フィリピン駐在のアマコスト大使に関するお話でございますが、確かにおっしゃるとおりに四月末をもちましてイーグルバーガー現次官がやめることになっておりまして、その後任にアマコスト大使が就任すると、こういう予定と私ども伺っております。  同大使は御承知のとおり東アジアの経験が非常に深いわけでございまして、日本とも従来から関係があったわけでございますから、アマコスト大使が国務次官に就任することは私どもとして非常に喜ばしいことではないかと、こう思います。ただ、それがアメリカの今後の政策をどの方向に持っていくのかということを今この時点で直ちに結びつけて予測することは差し控えたいと、こう思う次第でございます。
  237. 秦豊

    ○秦豊君 外交官としては当然予測は職能の中に入りませんからね。当然それはいいんですが、私が申し上げましたようにこれは一種のメルクマールになる、ポイントになると。もし実現するとすれば必ずアマコスト氏を使うと思います。それに対応するのは金泳南氏しかいない。公算としてはかなり濃密であろうと私は思いますが、それ以上答弁は必要ありません。  大臣、新しいデータを調べてみると、台湾関係法が一方に厳存しながら米中関係というのはかなり裏側では濃いんですね。  例えば、貿易が今年度は恐らく六十億ドルを超えるだろうと。日本が百億ドルですからね。それから、高度技術の中で衛星受信ステーションであるとか衛星追跡ステーション、それに伴ったエレクトロニクスの附属施設、それから今までの数倍のキャパシティーを持った高性能コンピューターの輸出も認めるというわけで、かなり進んでいると。それから一方では、ニクソンとかオキシデンタルが南方中国の海底油田の一千億バレルという埋蔵量と推定される油田の掘削権を既に手にした。これにはアメリカ政府が相当かかわっているわけですよね。政府がバックアップしたから実ったんだから、ほかの競争相手をけ落として。それぐらい進んでいると。だから、建前とか名目とか台湾関係法なんというのを超えて、やはりとるべきものはお互いにとっているんですよね。失っていないんですよ、別に。この関係を僕は外交的には成熟した関係、いや成熟しつつある関係というふうに定義したいと思うんですが。だからこれからの米中関係というのは、ジグザグはたまにあるかもしれないが、方向ははっきりしていると思いますが、今後の米中関係の前途については、深まり方については安倍大臣、どう見ていらっしゃいますか。
  238. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今度のレーガン大統領の中国訪問というのは、今後の米中関係の改善の上には大きな貢献をなすんじゃないかという判断をいたしております。  私が前回呉学謙外交部長と会った際に、呉学謙部長は、米中間の最大の障害は台湾問題であるとしながらも、中国政府は米中関係の安定的発展を望んでおり、双方が上海コミュニケ、外交関係樹立に関するコミュニケ、台湾への武器売却に関するコミュニケの原則を守れば関係発展に大きな障害はない旨、ただし米国が口で言ったことを実際に行動をもって守れるかどうかについては若干懸念しておるということの指摘がありました。全体的に言いますと、米側の態度を見守っておると、こういうふうな姿勢でありまして、ですからそういう中で、今回の米中会談で今申し上げましたような中国の基本的な米国に対する考え方を前提としてどこまで突っ込んだ話し合いができるかと。特に高度技術等については相当中国も期待をしておるわけでありますし、あるいはまた原子力の平和利用、それに伴うところの原子力協定とかいろいろな問題が具体的に煮詰められていくんじゃないだろうかと、こういうふうに思っておりますし、全体的に見れば先ほどアジア局長が言いましたように、ソ連の方も今度大型のミッションを組んで経済関係が一歩前進するでしょうし、米中関係も今回のレーガン訪中で相当進むのじゃないだろうかと、こういうふうに考えております。
  239. 秦豊

    ○秦豊君 高度技術のお話が今大臣からあったんですけれども、そのとおりだと思います。  それからもう一つ、既に国防関係者が事前に二回アメリカを訪れていまして、俗に僕たちの用語で言うと買い物リストを提出済みです。それについては相当一つ一つをコンファームしていますから、今度はワシントンから北京にこたえる番です。それには対戦車ミサイルもあれば早期警戒システムもある。それから、伝えられているように、国境監視のみならず滞空早期警戒のAWACSのこともある。まとめて返事があると思うんですよね。軍事技術移転というか軍事技術輸出というか、これについてもかなり進むと私どもは見ていますが、大臣のお持ちの感触はいかがですか。
  240. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 先生指摘のとおりに、高度技術の米国から中国への移転につきましては民間のものだけではなくて、つまり民用のものだけではなくて、軍事技術の面についても含まれるということは御指摘のとおりでございます。ただこれは、先生の御指摘あるいは御見解は御見解として確かに承りましたが、私ども、ちょっと公式の立場で余り細部にわたりますと、正直に申しましてこれはアメリカ政府からも中国政府からも両方から説明を受けておりますが、今ちょうど米中双方で話しているところでございますので、これはせっかく秘密裏に教えてくれたことでございますので、まことに恐縮でございますが、ちょっと論評はこの席では難しいかと存じます。
  241. 秦豊

    ○秦豊君 わかりました。それは外交慣例を尊重します。  安倍大臣、さっきも御自身が述べられましたように、安倍大臣と呉学謙氏との会談の中で台湾関係法、つまり第三条の(a)ですね、自衛のため必要な武器及びというものを踏まえた台湾への武器輸出、これについての不満は明らかに述べられたわけでしょう。
  242. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、前回の会談ではたしかそういうこともあったかと思いますが、今回の中曽根総理と一緒に参りました会談では直接的な不満といったような発言はなかったと思います。
  243. 秦豊

    ○秦豊君 それでは、前回は明らかな対米不満というものがやや公然と述べられ、同時に日本外交に何か役割を期待されましたか、アメリカヘの説得めいた役割は安倍大臣に託されましたか、その問題について。
  244. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今回はほとんどそうした日本に対する……
  245. 秦豊

    ○秦豊君 前回を含めて。
  246. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 台湾問題は、やっぱり前回とはちょっと空気が違っておったように思いますが、台湾問題に対して日本に直接役割を果たしてほしいといった要請はなかったように思います。
  247. 秦豊

    ○秦豊君 ちょっとテーマを変えたいと思いますが、PKO、つまり国連の平和維持活動についてのことを少し質問したいと思います。これは、既に私が去る二月七日に質問主意書という形式をかりて政府の答弁を求めております。御存じのとおりです。従来の財政面における協力に加えて、現行法令下で可能な要員の派遣、資材、機材の協力等を検討していくという答弁書を確かにいただきました。  そこで具体的に伺いたいんですけれども、これはせっかく斎藤さんたちの諮問機関の答申もあったわけですからそれで伺うんですけれども、今の法令のもとにおきましても、例えば具体的に医療活動とか運輸とか通信活動への参加は既にして可能じゃありませんか。いかがでしょう。
  248. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 国連の平和維持機能へ積極的に参加すべきという建前で、答弁書にも申し上げましたとおり、要員、機材についても検討いたしてまいりたいと思いますが、先生から今特定の御指摘がございましたものの現状についてちょっと申し上げますと、現在、現実に派遣されております国連の平和維持軍、そこで行われております医療、運輸、通信と、こういうものはそこに派遣されております部隊の一部として行われております。したがいまして、そういう形での参加については種々問題があろうと、このように考えております。
  249. 秦豊

    ○秦豊君 だから、我々野党の一部から見ておりましても、何も警察活動とか通信活動や運輸までを自衛隊の海外派兵に類するなんという教条的なことは言いませんよ。むしろ、日本の国連外交への貢献を具現化する意味合いでは、日本の姿勢がよく見えないんだ、分担金は多いけれどという批判に対する有力な反証としても、行うべきは行ってよろしいというのが私の前提なんですよ。だから伺っているんですけれども、やはり例えば警察活動とか、申し上げた医療活動、運輸活動へのサポート、例えばこれはトラックを日産とかトヨタ、日野ですか、どこでもいいから、何でもいいから寄贈させてそれを使う手もあるんだし、そういうことについて余り慎重過ぎる必要は僕はないと思うんですがね。局長、いかがですか。
  250. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 私どもといたしまして現在検討いたしておりますのは、先生今御指摘ございましたような例えば輸送の機械器具でございますが、これは私ども日本が一番協力できる可能性があると思いますのは、ナミビアの独立が実現いたします場合に、その民生部門についての国連の平和維持機能の一環としての国連の役割というものがございます。その民生部門の要員につきましては、主として選挙管理の部分でございますと我が国として協力できると思いますし、またそれの国連でのトラックとか車両でございますとか発電機の供給、こういうものは我が国としてできる分野でございますので、そういう面ではナミビアの独立が達成されます場合にはぜひ積極的に検討してまいりたいと、このように考えております。
  251. 秦豊

    ○秦豊君 局長、一応ナミビア関連どまりですか。あるいはこれから次の検討作業としては何を考えていらっしゃいますか、PKO。
  252. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 現在国連が実施いたしております平和維持活動、これはいわゆる平和維持軍というのが三つと監視団が二つでございまして、このものについては種々問題があろうかとも思います。したがいまして、我が国が素直に検討できるのは、先ほど申し上げましたようなナミビアの場合ではないかと考えております。
  253. 秦豊

    ○秦豊君 問題が変わりますけれども、今度欧亜局からモスクワに派遣されますね。そのときにやはりいろんな打診というか、テーブルに着いて安倍さんとグロムイコ氏の話までをずっと一連お出しになるわけですがね、こういうことは不可能かどうか。つまり、CDEですね、欧州軍縮会議に絡んで既に東西間には信頼醸成措置、CBMというものが不十分であっても七五年の署名以来行われている。例えば、二万五千人を超える規模の重要な軍事演習は相互通告、その他規模は小さくても、これは通告した方がよいと思われる軍事演習の相互通告、それから、内容も演習名称、目的、参加国、兵員数、地域その他とかなり具体的に通告ということをやっているし、それからオブザーバーも交換をしつつある。こういうことが一般的にあるし、主な軍隊の移動についても通告し合っているわけですね。もちろんこれは法律じゃないですから、そういう意味の強制力はないかもしれない。しかし、このことがやはり不信に基づく緊張激化へのややガス抜き的な弱い機能を果たしているのではないかと私は思うんですよね。そういう同じ知恵が、枠組みが、北東アジアでは、例えば日米韓対ソ朝というフレームで、急には実現しなくてもそういうことを外交場裏で話し合いをしてみてはどうだろうかと私は思うんですよね。その場合には我が国の固有の領土、北方領土周辺での演習なんというのは頻度も多いですし、たちまちやることはたくさんあると思うんです、日本海、その他。こういうことを具体的に考えてみてはどうかと発想していますが、いかがですか。
  254. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) 先生指摘のとおり、ヨーロッパではそういう信頼醸成措置の議論が続いておりますけれども、私どもそれを極東に当てはめるに当たりましては、やはり極東と欧州の歴史的、地理的、政治的、軍事的、さまざまな要素の違いを考えなければならないと存じます。と申しますのは、ヨーロッパの場合には御承知のように、この信頼醸成措置というものは一九七五年に採択されました欧州安全保障協力会議の最終文書という傘の下に行われているわけでございますが、この最終文書は何も信頼醸成措置だけを含むのではなくて、それと並んで人権の問題、あるいは人と情報の交流という大きな柱の一つとして行われているわけでございます。したがいまして、今の極東でもってそういうことがあわせ行われ得るかどうかということが第一の問題かと存じます。  それからさらに、この七五年の最終文書の前提といいますか、その後の措置の前提条件というのは領土保全であり、領土の不可侵というものに立っているわけでございます。ところが、まさしく先生指摘のとおり、我が国は北方領土という問題を抱えておりまして、北方領土を現に占拠され続けたまま、しかもそこにソ連の軍備が進められているというふうな状況のもとでは、まずその前提条件が成立しないという問題がございまして、先生のお気持ちは十分にわかるのでございますけれども、実際にこれを考えるということは非常に難しいのではないかというふうに考えます。
  255. 秦豊

    ○秦豊君 安倍外務大臣、確かに局長の常識としては、外交常識はそのとおりだと私も思いますよ。しかし、例えば政治的な、あるいは外交展開上の判断として大きな戦略的な視野に立った場合、あるいは政略というか、大臣としてはそれははるかな道程であっても、その辺から積み上げるステップの一つだと。あながち非現実だと切って捨てないで、努力を試みるに値する対象、方向とはお考えになりませんか。
  256. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) やはり我々としまして、例えばこの北方領土の問題でソ連がテーブルに着くということにでもなれば、確かに一つの方向として検討する必要も出てくるかと思いますが、今の日ソ間のソ連の態度では、信頼醸成措置としてのその基盤というものが何もないということですから、私はそういう意味では日ソ外相会談を繰り返して、そのことによって少なくともテーブルに着いて領土問題を論議するというところまで両国の関係をひとつ深めていきたいと、こういうふうに思っております。
  257. 秦豊

    ○秦豊君 最後の質問にいたします。  去る三月十一日に馬祖島近海で起きた「とよふじ5」の事件ですけれども、時間が切迫いたしまして答弁側に恐縮ですけれども、経緯は全部省いてください。今どういう調査が残っているのかを知りたいのと、それから例えば砲弾の破片等を委嘱調査をしているとか、何が残っておるのかこれを知りたいのと、調査は大体いつごろまでに終わるのかをこの席で明らかにしていただきたい。  それで、外務省には、「とよふじ5」については既に先週新華社が公式な論評の中で、これは明らかに台北のしわざというか、犯行という言葉は使っていなかったが行為であると公式に新華社が言っていますね。それで、どう認識していらっしゃるのか。台湾とはこういう関係だけれども、一体外務省としてはどうされるのかをまとめて伺って終わりたいと思います。
  258. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 物的証拠と申しますか、「とよふじ5」が母港である名古屋に帰りまして、そこで大きな穴があいたわけですけれども、その穴のあき方、あるいは砲弾の破片が相当収集されておりますので、それを現在海上保安庁が中心になりまして種々調査をいたしております。その調査が完了するのにあとなお時間がかかるというふうに報告を受けております。その調査、つまり物的証拠によるところの調査が完了しました晩に、そこから先、外交上の措置をどうするかということを関係者と相談したいと思っております。  それから、末尾の部分でございますが、先生御承知のとおり中国側はいろいろ調査をした、調査したけれども、絶対に中国は撃ってないと、一言で言えばそういうことでございます。  それから、一方台湾側は、従来あの地域において警告のために射撃をすることはありますと、しかし、無辜の商船については絶対に撃つなという命令をしてありますと。それから、実際に船長が証言している被弾の時間と我々が警告のために撃った時間とは食い違うと、したがって台湾の当局としても自分たちが撃ったのではないと思うと、こういうことで現在のところとどまっているというのが現状でございます。
  259. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 以上で三件に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、千九百八十三年の国際熱帯木材協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  260. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、出版物国際交換に関する条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  261. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、国家間における公の出版物及び政府文書交換に関する条約の結納について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  262. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、三件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  263. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十三分散会