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1984-06-27 第101回国会 参議院 科学技術特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十七日(水曜日)    午後一時三十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高木健太郎君     理 事                 古賀雷四郎君                 林  寛子君                 本岡 昭次君                 塩出 啓典君     委 員                 江島  淳君                 長田 裕二君                 亀井 久興君                 後藤 正夫君                 志村 哲良君                 成相 善十君                 福田 宏一君                 藤井 孝男君                 安田 隆明君                 小野  明君                 松前 達郎君                 伏見 康治君                 佐藤 昭夫君                 山田  勇君                 野末 陳平君    発議者          本岡 昭次君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       岩動 道行君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      安田 佳三君        科学技術庁原子        力局長      中村 守孝君        科学技術庁原子        力安全局長    辻  栄一君        運輸省船舶局長  神津 信男君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    参考人        日本原子力研究        所理事長     藤波 恒雄君        日本原子力船研        究開発事業団理        事長       井上啓次郎君        日本原子力船研        究開発事業団理        事        野澤 俊彌君        日本原子力船研        究開発事業団企        画部長      小川 健兒君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告参考人出席要求に関する件 ○日本原子力研究所法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○日本原子力船研究開発事業団解散に関する法  律案本岡昭次君外二名発議)     —————————————
  2. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  日本原子力研究所法の一部を改正する法律案議題とし、派遣委員報告を聴取いたします。林寛子君。
  3. 林寛子

    林寛子君 現在本委員会審議中の日本原子力研究所法の一部を改正する法律案審査に資するため、去る二十二日現地調査を行いました。参加委員高木委員長古賀理事小野委員佐藤委員及び私の五名でございます。視察箇所は茨城県那珂町にある日本原子力研究所核融合センター東海村の東海研究所、それに動燃事業団東海事業所でございます。  なお、この機会に、現場研究者等から改正法案による原子力船開発事業団日本原子力研究所への統合に関して意見を聴取いたしました。以下、現場意見中心にその概要を御報告いたします。  意見聴取をしたのは、原研理事長天野昇君、東海研究所所長能沢正雄君、それに若手研究者のリーダーということで東海研究所原子炉工学部次長松浦祥次郎君と、同じく研究炉管理部次長佐藤一男君の四名であります。  まず、天野理事長からは、「自分は原研発足以来、研究者としてその大半をこの東海研究所で過ごしてきました。政府原子力委員会が原船事業団統合先原研と選定されたのは、第一に、長期的観点から原子力船開発研究を着実に進めるためには幅広い技術基盤を持つ原研の蓄積された能力を活用するのが適当であること、第二に、原研はこれまで原船事業団に協力してきた実績があること、第三に、JPDR最初動力試験炉)の建設、運営や軽水炉燃料材料等研究実績があり、舶用炉研究に適しており、特に安全性研究成果を上げていることなどによるものと理解している。これまでに原研は世界的にも評価される成果を上げて成長してきたが、この努力統合問題を契機として一般からも認められたことを若い研究者誇りに考えている。  「むつ」の今までの経緯で、多少厄介なものという感じを持つ者がいるのは否めないが、むしろ今後長期にわたる舶用炉研究開発者として選ばれたことを誇りにしてよいと思っている。その取り扱い決定いかんにかかわらず、原研には総合的な研究機関としての幅広い技術基盤があり、与えられた課題に取り組み、解決する手法、体質を備えているので期待に十分こたえ得るものと考えている。」旨の発言がありました。  次に、能沢東海研究所所長から、「大阪大学では菊池先生のもとでサイクロトロン建設に携わり、三十五年に原研に来ました。原子力船開発については、原研組織としては安全性試験研究センター原子炉工学部燃料工学部が主に関係するが、基礎研究部門では物理部原子炉化学部ども支援できる。四十八年には原子力委員会の要請で組織を整備し、現在は安全性試験研究センターが世界的にも安全性研究中心となっている。またATR、FBR、多目的高温ガス炉核融合など、原研成果は世界的に高く評価されていると考えている。過去においては技術的に困難な課題に直面したこともあったが、いずれも克服してきたので、今後とも問題解決方向を見出すためにはこれらの経験が役立ち、舶用炉開発に自信を持って取り組めるのではないかと考えている。」旨の発言がありました。  次に、松浦原子炉工学部次長からは、「京都大学原子核工学を修め、原研では軽水炉炉物理研究軽水臨界実験装置で「むつ」に関係する研究も行ってきました。棚用炉熱機関としての原子炉の特色が際立って利用される分野である。日本造船海運国家であり、開発途上国からの追い上げに対応するためにも高度な技術を保有する必要がある。舶用炉研究開発は高度の技術的挑戦である。しかもリードタイムは長くなる。したがって、現実の必要と開発のテンポにミスマッチがないよう長期的観点から対処する必要がある。今までの軽水炉ではスケールメリットを追求する技術体系だが、舶用炉はその逆で、孤立したものとしての開発が必要である。これは海洋開発、フローティングプラントヘの応用が可能であ る。原研炉心設計燃料設計炉計測炉制御等技術的蓄積があり、これらの活用が可能であり、このベースの上に原研に新たな開拓分野が来るという感じである。組織が縦糸なら研究者つながりは横糸である。こうしたつながりを十分活用できるのが原研の強みである。」旨の発言がありました。  次に、佐藤研究炉管理部次長からは、「東大では大山先生のもとで学び、原研の新卒第一期生として入所し、原子炉関係安全解析中心に従事してきました。「むつ」を手がけることになれば、これまで蓄積してきた技術基盤として納得がいくまで調べ、検討した上で仕事をしたい。研究者技術者として、やりたいこともやれないでうまくいかなかったというようなことにはなりたくない。悔いのない方向で進めたい。「むつ」の去就がいずれになるにせよ、この希望は変わらない。原研基礎から応用までバランスのとれた基盤を持っている。日常多くの困難にぶつかることがあるが、そういう場合でも所内を見るとエキスパートがいる。そこと相談して解決していくことが可能である。すべての面で百点は無理かもしれないが、合格点はとれると思っている。このためには力を十分に発揮できることが必要なので、我々が思う存分に腕を振るうことができるよう御支援をお願いしたい。」旨の発言がありました。  次いで質疑に入りましたが、私ども委員質問に対して、四君からさらに次のような発言がありました。  一、舶用炉研究陸上でもできる部分もあるが、動く船に伴う問題、すなわち動揺等の問題がある。部分的には陸上実験できるかもしれないが、最終的には実証的なものを行わねばならない。  二、研究計画に対する若い研究員による下からの意見及びアイデアについては、企画室が取りまとめ、それを理事会決定している。したがって、研究管理上の問題はない。統合問題については、部長会議においてその都度説明を行っており、部長から各部に伝達されている。これに対する意見は逆のコースをたどって集約されている。  三、研究開発プロジェクトチェックについては、大学の先生をメンバーとした委員会チェック、批判をしてもらっている。研究開発は着手するのは容易だが途中で中止するのは難しい。中止の事例としては、均質炉プロジェクトについて所内チェック・アンド・レビューにより中止したことがある。ほかにJPDRを中断した例があり、適切に行われている。  四、「むつ」の炉は旧式だから新しく設計した方がよいのではないかという懸念はあると思う。我我の発想は、どうすれば役に立つのか、まず舶用炉研究開発の展望を明らかにし、その上で今の「むつ」に計器等を追加する必要があるかもしれない。役に立つデータを出すのがプロの仕事だと考えている。研究者の処遇については、当研究所としても深い関心を持って改善を考えている。  五、現場からの要望としては、結局、変な制約を受けず、技術的良心が拘束されないような状況を希望する。  以上が現場研究者等からの意見聴取概要でございます。  次に、施設等視察について申し上げます。  最初原研核融合センターですが、ここでは昭和五十二年以来臨界プラズマ試験を目的とする大型トカマク装置JT60を建設中で、六十年の春に完成の予定となっております。説明によりますと、このJT60は臨界プラズマ条件、これはプラズマ温度約一億度、閉じ込め時間約一秒間の達成と、核融合炉規模の超高温プラズマ制御技術確立をねらう総合的トカマク実験装置で、従来のトカマク装置に比べてその規模ははるかに大がかりな装置になっております。現在、世界では日本のほかに米国、欧州連合及びソ連と、四つの大型トカマク装置があるだけで、それぞれ独自の工夫を凝らして激しい競争を行っている状況で、我が国のJT60はこれらのトップを行くものと考えているとのことでした。人類究極のエネルギーとしての核融合研究は、まだまだこの先長いリードタイムと精力的な研究を必要とされているが、さらに一層の努力を続けていきたいとの決意の表明がありました。  次に、原研東海研究所は、昭和三十二年に設置され、現在三基の研究用原子炉JRR2、3、4号機を初め、日本最初原子力発電に成功した動力試験炉JPDR原子炉安全性研究炉NSRRのほか、各種の原子力関係試験研究施設があります。私たちは、これらのうち初めに原子炉安全性研究炉を見ましたが、これは燃料安全性研究するための研究用原子炉で、燃料破損実験のためのパルス運転ができる点に大きな特徴があります。続いて、廃棄物安全試験施設で高レベル放射性廃棄物ガラス固化装置を見ました。原子力研究開発は何よりもまずその安全性確立の上に成り立っていくものであるだけに、これらの研究に携わる方々の一層の活躍を期待するものであります。  最後に、動燃事業団東海事業所で再処理工場視察しました。再処理工場は、運び込まれた使用済み燃料をまず一定期間冷却貯蔵してから、一定の工程を経て再使用可能のウランとプルトニウムを回収する仕組みになっております。この工場は、五十六年一月に本格運転を開始して、これまでに約二百トンの使用済み燃料を再処理しましたが、五十七年四月に放射能漏れ事故を起こして運転をストップし、その後も溶解槽にピンホールが生じたため停止したままになっております。私たちは青く澄み切った水中に冷却貯蔵中の使用済み燃料棒を見ましたが、動燃ではこの再処理施設を順調に動かすことが当面第一の目標であり、鋭意努力中で、本年じゅうに工事を完了、来年の早い時期から動かすよう工場全体、各所で修復工事を実施しているとの説明がありました。再処理は、原子力発電の発展の前提条件となる核燃料サイクル確立のかなめであるだけに、関係者の格段の努力を期待するところであります。  以上で報告を終わりますが、最後に、今回の調査に当たり種々御協力を賜りました関係者方々に心から感謝の意を表する次第であります。  以上です。
  4. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) これをもって派遣委員報告は終了いたしました。     —————————————
  5. 高木健太郎

  6. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、本日の委員会日本原子力研究所理事長藤波恒雄君、日本原子力船研究開発事業団理事長井上啓次郎君、同理事野澤俊彌君及び同企画部長小川健兒君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 小野明

    小野明君 この法律案提案理由のところを見ますと、「原子力船開発のために必要な研究は、「むつ」の取り扱いに関する検討結果の如何にかかわらず、どのような方法にせよ進めていく必要があると考えており、いずれにいたしましても、日本原子力船研究開発事業団日本原子力研究所統合することが適当であると判断いたしております。」と、こういうふうに書かれているわけであります。  そこで、「どのような方法にせよ進めていく必要がある」、この考え方に私は非常に疑問を持っ ておるのであります。そこでまず、「むつ」が廃船になるのかあるいはそのまま残されていくのか、そういった方針が決まらないままにこれを進めていく、一体これはどういった方針あるいは手順で今後おやりになろうとするのか、まず長官にお伺いをいたしたいと思います。
  10. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 私の提案理由説明を御引用で御質問でございますが、まず私が申し上げたいのは、日本原子力平和利用、これは日本の地政学的な実情、そして資源のない国、海運国家であること、貿易国家であること、さらに造船国家として日本国家が今日までの繁栄を築いてきたこと等々を考えました場合には、私ども原子力平和利用はあくまでもこれは日本の大事な政策一環として推進をしてまいりたいと考えておるわけであります。そういう中におきまして、私どもは、特に原子力船開発研究というものはそういう状態の中においてぜひ必要である、こういう観点から長年にわたってこの方針をとって進めてまいったところでございます。  そういう中で、原子力船むつ」というものによって舶用炉研究開発を行うということで進めてまいったのでございまするが、放射線漏れ事故等いろいろな問題が生じ、そしてまた各方面からもいろいろな御意見が出てまいりました。  そこで、改めてこの問題について検討するということで、五十九年度の予算編成はその方針のもとに編成をされ、国会の御承認をいただいたわけでございます。今、国会において原子力船むつ」のあり方についてのいろいろな貴重な御意見、御議論をちょうだいをいたしておるわけでございますが、私ども政府与党関係におきましても、党において検討委員会が設けられて着々とその検討が現在進められている段階でございます。その結論はいずれ来年度の概算要求が出されるのに間に合うような時期に結論が党としては出されると思いますが、私どもはそのような結論あるいはまた国会での御審議を十分に拝聴いたしまして、適切な対処をいたしてまいりたいと考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、結論がどうありましょうとも、先ほど申したように、日本の基本的な政策として原子力平和利用、そして舶用原子炉研究開発というものは欠かすことのできない一環であると考えております。そういう観点から私どもは、この原研との統合につきましても引き続き、結論がどうあろうと、舶用原子炉研究開発は必要である、そして現在は「むつ」はそのまま存在をいたしておりますので、そのような現状においての統合をまずお願いをしてまいりたい、こう考えておるわけでございまして、基本的には舶用炉研究開発は進めてまいるという基本方針を持っているところでございます。
  11. 小野明

    小野明君 大臣、私がお尋ねしておりますのは、「むつ」を廃止するか存続するかということはまだ決まっていないんですね。いかがですか。
  12. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 決まっていないと申しまするか、私ども政府としては原子力船むつ」によって従来とも研究開発を進めるという基本姿勢を持っているわけでございます。ただ、各方面の御議論がありますのでその結論によっては従来の方針が変更になるかもしれない、ということは私どももその結論を承った上で対処をする、こういうことでございます。原子力委員会におきましても、原子力船むつ」による研究開発は進めるべきである、こういう重要な決定をいただいておりますので、私どもはこの方針は変わっていないわけでございます。
  13. 小野明

    小野明君 長官舶用炉開発あるいは平和利用という観点でおっしゃるわけですが、結局それは、舶用炉という以上は現在「むつ」というものによって開発をされるわけですね。ところが、「むつ」の存廃という問題は、長官のお話によりますと決まっているような決まっていないような御答弁で非常にあいまいなんです。存廃は決まっていない、こういうふうに御答弁くださればわかるんですが、一体どうなんですか。存廃は決まっていないんでしょう。
  14. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) その存廃結論は、国会の御審議、そしてまた我々政府与党の立場においての検討の結果によるという意味においては最終的な結論が出てないということは申せますけれども、しかし基本的には原子力委員会決定というものは私どもは重く考えている次第であります。
  15. 小野明

    小野明君 今の大臣の御答弁でもちょっと歯切れが悪いんですが、まあ存廃は決まっていないが原子力委員会決定は生かされていく、こういうふうに今私は受け取ったわけです。そのとおりですね。存廃は決まっていないが原子力委員会が出した結論に従ってこの仕事は進めていくんだと、こういう御答弁ですか。
  16. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) なかなか言葉のニュアンスが難しいんですが、私ども原子力委員会決定は変わっていない、このことは重く考えていかなければいけないということは御理解いただきたいと思います。
  17. 小野明

    小野明君 私がお尋ねしたいのは、原子力委員会決定もよくわかっているんです。ただ、舶用炉研究開発という以上は「むつ」がなければできないですね。だから、「むつ」に関する存廃というのは決まっていない現状ですねと、これに御答弁をいただけばいいわけです。
  18. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 若干私の方から事務的な御説明をさせていただきますと、舶用炉研究開発は「むつ」の取り扱いいかんにかかわらずということにつきましては、原子力船開発の進め方といたしましては、「むつ」を実験船として活用していくということが従来から我々がとっている方針でございますが、それと同時に、次の将来の舶用炉、さらに経済的な信頼性の高い舶用炉開発するということにつきましては、現在も別途設計評価研究等を進めておるわけでございます。  そういう形であるいは将来そういうものを陸上でいろいろ試験しながら進めていくという道もございますし、「むつ」の実験ができればそれの成果というものが取り入れられて、陸と海との両々相まっての研究開発が進められていくということでございまして、「むつ」がなければ全く舶用炉開発がゼロということでは必ずしもないわけでございます。もちろん舶用炉開発を進めていく上におきましては、陸上試験だけでなくて、海上における試験データというものが究極においては必要でございますので、両々相まって進められるというのが私どもとしても望ましい姿と考えておるわけでございます。
  19. 小野明

    小野明君 舶用炉開発を進めていかれるということはよくわかっている。私がお尋ねしたいのは、長官、「むつ」のほかにまた新しい原子力船でもつくるというのなら、これはまた話は別だけれども、現在ある「むつ」というのは存廃は決まっていませんねという、こういう簡単な質問なんですよ。それに対して長官ひとつどうですか。これは皆さんもわかっているんじゃないですか。私も決まっていない現状というふうに理解している。国民皆さんも同じだろうと思いますが、こういう極めてはっきりした質問に答えられないというのは、大臣どういうことでしょうか。
  20. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 現在、政府におきましても各般の御意見を聴取して検討を進めておるところでございますので、そういう意味で、今後「むつ」の将来計画をどうするかということも含めましてまだその結論が出ていないということでございます。ただ、原子力委員会決定というものは現在も生きておりますし、我々の検討に当たっては原子力委員会決定というものも、これは法律に基づきまして内閣総理大臣尊重義務というものもございますので、そういう意味でこういう原子力委員会決定を踏まえながら検討をしておるということでございまして、今後の取り扱いについての結論は、そういう意味でまだ出ていないということでございます。
  21. 小野明

    小野明君 私は、大臣、「むつ」の存廃が決まっていないということは、舶用炉開発あるいは平和利用云々、いろいろおっしゃいますが、結局、原子力船開発に対する国の戦略が明確でない、 このように受け取らざるを得ないわけです。国の原子力船開発に対する戦略が決まらないのにこういった法案が出されておる、これは非常に私は国民を惑わすものである、こう言わざるを得ないと思うんです。この点について大臣はどういう御所見をお持ちでしょうか。
  22. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 先ほど申したように、日本の場合には、原子力平和利用の重要な一環として、原子力船というものは研究開発をしておく必要がある、そしてそのための舶用炉研究開発中心である。その場合の方法論として、ただいまある原子力船むつ」をさらに続けて使ってやっていくのか、あるいは別の方法でやるのか、そういったようなところをただいま各方面の御議論によって最終的な結論を出したいということでございまして、私どもはあくまでも基本的には原子力船のための舶用炉研究開発は続けるべきものである、やるべきものである、こう考えておるわけであります。
  23. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) ちょっと補足させていただきますが、先生の御質問趣旨というのは、この現在御審議をお願いしている法案が、「むつ」の取り扱いもはっきりしないうちに法案審議するのはいかがかという趣旨に解せられますが、その点で申しますと、今回、原子力研究所原子力船研究開発事業団統合するという形で法案の御審議をお願いしておりますのは、昭和五十五年に現在の日本原子力船研究開発事業団法改正をいたしました際に、その法律の中で「行政の各般にわたりその簡素化及び効率化を進める見地から、昭和六十年三月三十一日までに」「他の原子力関係機関統合するものとし、」と、こう法律で定められておりまして、行政府といたしましては、この法律案に定められた期限までに統合を円滑に進めるべく諸般の準備を進めてまいり、この法案の御審議をお願いしておるわけでございまして、当然統合するとなりますと諸般の準備もございますので、来年の三月末日が統合の時期ではございますが、それまでの準備期間も考慮いたしまして現在法案の御審議をお願いしておるわけでございます。  原子力船むつ」の取り扱いにつきましては、先ほど来お話ございますように、各般議論が寄せられておりますことで種々検討をいたしておるわけでございますが、この「むつ」がどうなりましょうとも、「むつ」自身を今後どうするかということでの取り扱い上の問題もございますし、それから今後の「むつ」以外の次の世代の舶用炉についての研究開発、これは現在、原子力船開発基本計画に基づきまして、「むつ」以外のものといたしましては、信頼性、経済性のすぐれた小型、高性能の舶用炉設計評価研究というものを実施しております。それはその後、その成果を踏まえて具体的にその先の研究開発計画を決めるという形になっておりますので、こちらの方の研究開発計画というものが、まだ五年先、十年先というものまで明らかにされてはおりませんけれども、一応そういう形での舶用炉研究開発もございます。そういったものをすべてこの新しい統合法人にしていただくという趣旨でございます。
  24. 小野明

    小野明君 局長はいろいろ言っておるが、大臣は、この原子力船開発というのはちゃんと決まっておる、これは国の戦略である、こうおっしゃったと思いますね。しかし、この原子力船開発ということは、現在ある「むつ」をどうするか、これが決まらないでは原子力船開発に対する戦略は決まらない、こう言われても私はいたし方がないんではないか。存廃は決まっていないと、大臣は明確にはおっしゃらなかったが、局長はそういうふうに話があったと、私はこう理解をしておりますがね。  そこで、「むつ」そのものについて少し尋ねてみたいんですが、廃船にした場合、解体その他の費用を見てみると大体どれくらいの経費と見込まれますか。
  25. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 解体の時期によるわけでございますが、先生の御趣旨が、今「むつ」をそのまま実験しないで解体したらどうなるか、こういうことでございますれば、その点につきましては、現在「むつ」の原子炉は出力を極めてわずかな程度上げただけでその後運転いたしておりませんので、放射能の量等は非常にわずかでございます。そういう意味で、燃料取り扱い等につきましては技術的にはかなり容易に可能なわけでございますが、ただ、やはり原子炉として運転をしたということで放射性の廃棄物等もございますし、そういう意味ではこの廃炉の取り扱いにつきましては原子炉等規制法による厳重な規制のもとに行わなければならないということで、それに必要な設備等がどの程度かかるかということが問題になるわけでございます。  それから、さらに具体的には、その解体をするところの場所をどうするかという問題がございまして、私どもでは、従来の経緯にかんがみまして、やはり新しい関根浜の港、これは港の形をどうするかという問題は残りますが、いずれにいたしましても現在ある大湊ではそういうことができないということを考えますと、港の建設費、あるいはその原子炉を解体するためには大きなクレーンが必要でございますし、後の廃棄物処理施設等あるいは保管施設等ございますので、相当な額になろうかと思います。そういう意味で今余り具体的な数字を申し上げるのほかえっていろいろ、何といいますか、まだ私ども正確にはじいておるわけでもございませんので、ちょっと誤解を招きかねませんので——かなりな額になるものと考えられるわけでございます。
  26. 小野明

    小野明君 存廃はまだ決まっていないんですよね。存廃は決まっていない。とすれば、廃船になった場合の経費はいかんと、あるいは「むつ」をこれからそのまま生かして、存続をして出力上昇試験あるいは運航試験、これまでやらなきゃ意味はないんでしょうが、存続するとすれば費用はどれくらい、こういう計算というのはあってしかるべきじゃないか。これまでも「むつ」は六百億円ぐらい食っておるわけだな。だから当然、廃船になった場合、両方を科学技術庁としては予測をしておくべきだ。その費用を言うのはいかがかというのは、それこそそういう答弁をするのは私はいかがかと思う。きちっと見通しをひとつ言ってもらいたい。
  27. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 数字を、そういう意味で今いろいろ検討を進めている段階でございますので、余り決まったような形での数字をちょっと申し上げることができかねるという……
  28. 小野明

    小野明君 概数でいいよ。
  29. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) いろいろ数字につきましては試算がございますが、何分にもまだ陸上施設にどの程度のものが、規制当局との関係におきましても、陸上施設をかなり簡易化するというような形でございますれば経費も少なくて済むでございましょうし、そこら辺のこともございますので、ちょっと今、概数でもとこう申されましても、やはり数字を申し上げますと私どもで何かもう確定したかのようなことにもなりますので、ちょっと御遠慮させて、控えさせていただきたいと思います。
  30. 小野明

    小野明君 これは今の答弁では承知できませんね。存廃決まらぬとすれば、廃船にして解体すれば幾らぐらいかかる、存続すれば幾らぐらいかかる、この答弁のない間は質問進みませんね。きちっと答弁してもらいたい。
  31. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 先生からのたっての御質問にお答えできないというのは残念なのでございますが、検討中でございまして、そのおよその数字も今ちょっと申し上げられないんですが、少なくとも港の建設費というものが考えられるわけでございまして、現在、港湾の建設につきましては、「むつ」を運航するという前提のもとでございますが、一応の計算として港をつくるだけで約三百億を超える数字が出ておりますので、これをある程度、何といいますか、廃船ということに限定することによって港をある程度小さくすることが可能かどうか、可能としてもその程度によりまして金額がそう大幅に、例えば百億で済むとか、そういう形にはならないと思いますので、全体とし てはかなりな数字になる、そういうぐあいに考えられるわけでございます。
  32. 小野明

    小野明君 それは港湾建設があった場合、ない場合、そういう仮定の上で計算できるじゃないですか。それから「むつ」を廃船にしない場合は今後そういう運航試験、洋上試験にいくまではどれぐらいの経費が試算できると。  委員長、この二つは答弁してもらわなきゃ質問は前へいきません。
  33. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 原子力船むつ」を実験運航するということにつきましての数字につきましては、これはまだ政府としまして、全体計画をどこまでやるかという問題もございますので、オーソライズしておるわけではございませんが、事業団で試算しました数字がございます。  これは実際に港で出力上昇試験を行って十分船舶としての機能が備わっているということが確認されました後に、いわば波の上で実際に運航してみて原子炉がどういうビヘービアをするかということを実験をするわけでございまして、その二年間の実験を行いまして、さらに今度は炉心を取りかえて新しい炉心にいたしましてその後四年ほど実験航海をするというような、全体約十三年にわたる計画がございます。これでいきますと、ごく大ざっぱな計算でございますが、千億ちょっとの数字になるということでございまして、その実験計画につきましては今後十分に念査いたしまして、経費の切り詰めその他を図って、御納得のいただけるような範囲での研究開発の進め方、そういうものを検討しておるところでございます。
  34. 小野明

    小野明君 私の質問に答えていないじゃないですか。  廃船にした場合は幾ら、それから今後「むつ」を存続して満足できる上昇試験あるいは運航試験、これに至るまでの費用概算、これを的確に出してもらいたい。
  35. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  36. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) 速記を起こしてください。
  37. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 原子力船むつ」の実験航海をするにつきましては、先ほど申し上げましたような計画でやるといたしますと、一応の試算として千四十億という数字が出ておるわけでございますが、現在はさらにこの計画自体をいろいろ練り直しておりまして、一千億というのは非常に大きいということもございますし、十分に念査をして計画そのものも見直しをしておりますので、経費がどこまで減らせるか、それを今検討しておるところでございます。  それから、廃炉につきましては、先ほど申しましたように、陸上施設がどうなるかということもございまして明確な数字がなかなか申し上げられないんですが、港の建設費が現在三百四十億ほどが試算されております。これをある程度、もう実験航海しないという前提で改めて見直しましたときにも、この港の規模を若干縮小するというようなことが考え得るかと思いますが、それがどの程度になるかということではそう大幅な変更は期待できないんじゃないかということがございます。  それから、直接的な廃船費用につきましては、先ほどの千四十億円という試算の中では七十億円がこの廃炉のための直接経費ということになります。それで、そのほか陸上の附帯施設もございますので若干それよりもふえるだろうと、そういうような状況にございます。
  38. 小野明

    小野明君 そうしますと、廃船にした場合は港の建設が三百四十億、完全につくり上げてもそのぐらいと。そうすると、それに廃炉にする作業、そういうようなものがあって、これは七十億を若干上回る程度と。「むつ」を存続した場合にはほぼ一・千四十億、こういう数字になるわけですか。
  39. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 存続した場合の千四十億円というのは、いわば十三年間にわたるプロジェクトを実行するとしたら、いろんなケースをやはり考えなけりゃいけませんので、そういう意味で、どっちかというと一番幅の広いところをとりますとそういうことでございまして、具体的に計画をさらに詰めまして、「むつ」の運航で効率的に必要なデータを確保するということで今計画の見直しをしておりますので、千四十億から下の方にどの程度切り込めるか、検討をしておるところでございます。  それから、解体の方につきましては、現在の港湾の三百四十億円、これを廃炉にするということであれば、これは港の計画自身を少し規模を縮小するということでこれを減らすことが可能だと思います。ただ、大幅な減少ということはなかなかに難しいのではないかという点と、それからそういう意味で今どこまで小さくできるかということの詰めまで詰め切っておりませんので、数字がちょっと申し上げられないと。  それから、直接の廃船費につきましては、七十億円にさらにそれまでのいろいろな附帯的な経費、陸上施設費、そういうものを品さなければなりませんので、いわばその七十億といいますか、数十億にプラスアルファという形で、ちょっと今明確に、それは百億とかそんな数字じゃもちろんないわけでございますが、その程度のちょっとぼやっとした感じで大変申しわけないんですが、それ以上に正確な数字を現在ちょっと詰め切っておりませんので……。
  40. 小野明

    小野明君 「むつ」を存続した場合に、今千四十億という数字が出されたわけですが、これはもちろん運航試験が済めば当然廃船にしなきゃいけませんね。その廃船にする費用も含まれていますか、この千四十億の中には。
  41. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) その中には廃船の費用も含めてございます。それは直接的な経費が、先ほどちょっと申しました七十億円という数字が入っておるわけでございますが、実際それはもういろいろ陸上附帯施設が運航のためにできておりますので、そういう意味で経費が少なくなっておりますが、そういう陸上施設が全然ないところで廃船をするということになればそういう陸上附帯施設が必要になりますので、七十億円よりもふえるということでございます。
  42. 小野明

    小野明君 長官、今の数字をお聞きになって、廃船にすれば四百億あるいはそれ以下で済むであろうと。あるいは存続をすれば、これは廃船処分に至るまでといえば、全く順調にいってこれですが、そういかない場合も当然想定がされるわけであります。そうしますと、約二・五倍以上のお金がかかるわけです。行革その他云々、非常に経費節減が言われる中でこういった数字が出された現在、長官の御見解は、なおかつこれは「むつ」を存続してやるべきだ、こういう御所見であるかどうか、ひとつこの際承っておきたいと思います。
  43. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) まず、基本的なことを申しますと、原子力船むつ」による舶用炉研究開発は、ただいま各方面の御議論もございますので、それを踏まえて結論をちょうだいし、政府としての適切な対応をする、こういうことでございます。  その場合に、従来の考え方で原子力船研究開発事業団が、先ほど局長が御説明申し上げましたように、幅の広い一番望ましい姿で実験研究を完結して廃炉にするという場合には、まあ一応千四十億円という数字が事業団としてははじき出されておる。しかし、これは科学技術庁として承認をしている数字ではございません。それがまず一つあります。  したがって、これがもし継続して、またこの法案が通過をいたしまして、日本原子力研究所原子力船むつ」による舶用炉研究開発を続けるということになる場合には、いろいろな御議論検討の結果、千四十億円で済むかどうかと。私どもはそういう場合でも、従来の経緯にもかんがみ、そして国費を投入することでございまするから、できるだけ最小限度の費用で最大の効果を上げるような方法を考えていただかなければならないと、こう考えているわけでございます。それが大きな検討課題になっているわけでございますので、具体的な数字はまだ申し上げる段階ではないということでございます。  また、原子力船むつ」による研究開発はこれを中止するという場合には、それを関根浜の港に移していくということ自体は、これは地元とのお約束もございますのでやらざるを得ません。その場合の港の規模についてどうするかは、これからも最小限度のものにとどめるための努力はしなければならないと思います。また、廃船という場合でも、それをそのままそこにつないでおくという方法もありましょうし、あるいは炉を抜いてその船をそのまま置いておくのか、あるいはどこかに買ってもらうのか、あるいは炉を積んだままどこかに売ってしまうことができるのか、いろいろな場合が考えられると思いますので、この辺もさらに子細に検討しないといけない。したがって、この点についてもただいま具体的な数字をお示しすることができない、検討中である、こういうことであろうと思います。  そういう中において私どもは、舶用炉研究開発はどうしても進めてまいりたいという基本的な方向でさらに各方面の御検討をいただきたいと思っておるわけであります。
  44. 小野明

    小野明君 大臣の御答弁を聞いておりますと、一番大事なところをはぐらかした御答弁のように聞こえていたし方がないわけであります。  この際一番大事なのは、科学技術庁としては承認をされていない数字だと、こうおっしゃるが、原子力局長が協議をなさって、廃船にすればほぼ港の建設を含めても四百億、存続すれば一千四十億と、こういう数字が現実に国権の最高機関である国会答弁があったわけです。この厳たる事実を長官も御認識をいただかなければいかぬと思う。  一番大事な問題は、「むつ」を残すのか残さないのか、これに結論が出ていないままにこの法案審議を行う、これに私は非常に大きな矛盾を感ずるわけです。この原船事業団統合期日は来年の三月末になっていますね。ですから、急ぐことはないわけですよ。来年の三月の末ですから、一番大事な「むつ」を残すか残さないか、この結論が出てこの法案審議をしても十分間に合う。  ところが、「むつ」を残すのか残さないかという肝心な問題について、自民党内の検討委員会にお任せになっておる、こういうようなことですが、もちろんこういうところだけで結論出すのじゃなくて、国会あるいは国民各層の意見を聞きながら結論を出してもらわなきやならぬと思いますが、科学技術庁の最高責任者、政府の責任者として「むつ」の存廃について御見解あってしかるべきだと私は思うんです。この点について大臣、いかがでしょうか。
  45. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 再三申し上げておりますように、私ども原子力平和利用の重大な一環として、原子力船むつ」による舶用炉研究開発を重要なものとして今日まで進めてまいってきております。しかし、これについては各方面からの御議論があることも御承知のとおりでございます。したがいまして、来年度の予算要求の段階までに政府としての結論をさらに出したい、適切な対応をしたい、こういうことでございまするので、それまで私どもは各方面の御意見を十分に聞きながら検討を続けてまいりたいと思ってます。  一方、この統合法案につきましては、原子力船開発事業団法律ができたときに、昭和六十年の三月三十一日までに他の機関と統合するという法律国会で議決をされて成立をいたしております。私ども政府としては、その法律を忠実に実行していかなければなりません。しかも、これは行政改革の一環として極めて大きな分野でもございます。かつまた、この統合によって、従来の研究開発の能力につきましては、先般当委員会で現地までわざわざおいでをいただいて各方面の御意見をお聞きになった、その結果におきましても日本原子力研究所というものが十分に従来の路線を成果あるものとしてやっていただけると、こういう効果もございまするので、私どもはこの統合法案は「むつ」の存廃いかんにかかわらず成立をさせていただいて、日本原子力平和利用一環をぜひ果たさせていただきたいと考えておるわけであります。
  46. 小野明

    小野明君 来年の三月三十一日といいますとかなり日数もございます。ですから、「むつ」の存廃、私どもはこれは「むつ」を廃船にすべきだ、こういう方針を持っておるわけです。これはもう御承知のとおりです。ですから大臣も、科学技術庁の最高責任者として「むつ」の存廃について一つの決断、見識をお持ちになってしかるべきではないのか、私はこう思うんです。存廃が決まった上でこの法案というものが審議をされて初めて私はこの法案審議が生きてくると思います。金についてもこれだけ莫大な差がある。そうすれば、いかがすべきかというのは、検討委員会、自民党の中に逃げ込むのじゃなくて、大臣の御見識というものをこの際私は伺っておるんですが、いかがでしょうか。
  47. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 政府与党という関係は御理解いただけると思います。と同時に、私は原子力委員長でございます。そうして、その原子力委員会決定は本年度の予算編成の段階におきましても否定をされておりません。そのまま存在をいたしております。このことで御理解をいただきたいと思います。
  48. 小野明

    小野明君 そういうあいまいなややこしい表現でなくて、「むつ」の存廃について大臣の御所見がいただきたい。端的にひとつお答えいただけませんか。
  49. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 繰り返して申しますが、私ども政府与党、政権政党でもございます。と同時に、原子力委員会という重要な機関がございます。それらを踏まえて私は最終的な判断を下してまいりたいと思っておりますので、それまでお待ちをいただきたいと思います。
  50. 小野明

    小野明君 自民党が政権政党であることは百も承知しております。そうすると大臣は、自民党だけで、この国会議論等は聞くことなく、政権政党がこの存廃については決めるんだから、私はその一員だから、それでおまえたち承知せよと。どうも言葉じりをとるようで恐縮なんだが、大臣、そういう思い上がったお考えですか。
  51. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) もうたびたび私は国会の御審議を十分に踏まえてということは申し上げておりますが、先ほどはそれを省いちゃったんですが、つけ加えますとそういうことでございますから、誤解のないようにお願いしたいと思います。
  52. 小野明

    小野明君 いつまでたってもこういうことでは前に進みませんからね。満足できる御答弁がいただけませんで私は不満であります。それを申し上げて、次に進みたいと思います。  次に、放射線漏れ事故の責任、この問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  「むつ」が放射線漏れの事故を起こしましたのがちょうど十年ほど前、四十九年九月。この出力上昇試験の際の放射線漏れ事故、この責任はメーカーにあるのか。このメーカーというのは、船体は石播ですか、炉部分は三菱原子力工業ですか、この責任は、メーカーあるいは原船事業団いずれにあるとお考えになっておられますか。また、この責任の所在の追及、あるいはメーカーに対して損害賠償請求等を行ったのかどうか。これは長官に、お尋ねをいたします。  さらにもう一つ、この責任の問題について原船事業団理事長に、きょう御出席と思いますので、どのようにお考えになっておられるかお尋ねいたします。
  53. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) お答えいたします。  まず、放射線漏れ事故の責任の所在でございますが、放射線漏れの原因につきましては、種々専門家において検討いたしました結果、それは主として高速中性子が遮へいの間隙を伝わって漏れ出るいわゆるストリーミング現象というものによるものであるということが判明いたしております。このようなストリーミング現象の取り扱いにつきましては、「むつ」の設計当時に我が国におきましても遮へい設計の実例が少のうございまして、そういう意味で「むつ」の遮へい設計に当たりまして計算に乗りにくい複雑な形状をした遮へい材の遮 へい能力等について判断力が足らなかったということがその原因になっておるわけでございます。  で、この責任につきましては、メーカーの三菱原子力工業がその遮へいの設計、製作の担当者でありましたことでもあり、したがいましてその設計に起因して生じた放射線漏れということにつきましては三菱にも責任があるわけでございますが、一方、事業団におきましても、契約に当たりましてその設計仕様書のたぐいをほとんどメーカー主導という形で、事業団自体による責任ある検討を加えなかったということもございますし、また実際の遮へい工事につきましては分割発注という形態をとったということで、発注者であります事業団が総合的性能保証を十分考慮する必要があったという点もございます。こういった点で、一概に設計を請け負った三菱の責任というわけではなく、事業団にも一端の責任があると、そういうぐあいに私ども理解しておるわけでございます。  それから、損害賠償の請求につきましては、当時いろいろ議論もあったようでございますが、既にいわゆる瑕疵担保期間は過ぎておりましたこともございまして、契約上、損害賠償が請求できるか否かという点につきましてもいろいろな疑問がございまして、先ほどのように責任のあり方につきましても三菱の方にだけ責任を転嫁すると言い得る状況にもなかったというようなことから、それからその後、この改修につきましてはメーカー側の積極的な有形無形の協力を得たと、そういうようなことを総合的に勘案しまして損害賠償請求を行わなかったのではないかというぐあいに考えております。
  54. 井上啓次郎

    参考人井上啓次郎君) ただいまの責任問題につきましては、原子力局長が御答弁したとおりでございまして、当事業団といたしましては、放射線漏れ、これは非常に残念な、不幸な出来事で、実務機関の事業団といたしましては非常に反省しているところでございます。  なお、現段階で申し上げれば、今、先ほど局長が申し上げたとおり、その当時遮へい設計というものに対しまして十分な経験者といいましょうかエキスパートがいなかったという反省はございます。その後、ずっと育ってはおりますけれども、その当時の技術水準としましては予測しがたい問題と言える点もございまして、ただいまのような意味では事業団にも責任はございますし、メーカーにも責任があるということでございます。今後こういうことのないように我々としては十分配慮していきたいと、こう思っております。
  55. 小野明

    小野明君 局長、そうするとあれですか、この放射線漏れ事故の責任というのはメーカーに対しては追及ができない、責任はメーカーと原船事業団両方にあるからと。また損害賠償請求ということもできないと、そういうあいまいな契約をなさっておったんですか。  それから、事業団の理事長にお尋ねをしたいんですが、こういった事故というのは予測ができれば事故じゃないんだ、これはね。予測ができない放射線漏れというのが起こった。そうすると、これは瑕疵担保なり賠償請求——発注者は事業団でしょう。メーカーに対して当然行えるような契約になっているはずですね。この点を局長と理事長
  56. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 先ほど申し上げましたように、責任問題、どちらが責任かということにつきましては、三菱にも責任がございますが、事業団側にも責任があるということを申し上げたわけでございますが、損害賠償の件につきましては、一つは契約の段階におきまして、当然のことながら一般の契約と同じように瑕疵担保期間というものを設定いたしておりまして、その期間内に瑕疵が発生した場合にはその瑕疵の修復をさせるということができるということになっておったわけでございますが、「むつ」の出力上昇試験が延びまして、「むつ」を受け入れてから日にちがたちまして、この間においてその瑕疵担保期間が切れてしまったということが大きな理由でございます。
  57. 井上啓次郎

    参考人井上啓次郎君) 契約上の問題につきましては、これは事業団といたしましては瑕疵担保ということでかなり細かいところまで契約事項に入っております。しかし、この出力上昇試験が大変地元の関係で遅れました。その関係で、瑕疵担保期間というものがいわゆる切れだというのが事実でございます。事業団といたしましては、切れる手前に瑕疵担保の期間の延長も行っておりますけれども、最終的な瑕疵担保の期間が切れまして、今先生が御指摘のような結果になったわけでございまして、これも我々としては反省をしているところでございます。
  58. 小野明

    小野明君 この問題は今後の問題にも波及をしますから、この辺の契約あるいは賠償請求あるいは責任の所在というのは、ひとつ極めて明確にしておいていただきたいと思いますが、大臣いかがですか。
  59. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 今後十分に配慮してまいりたいと思います。
  60. 小野明

    小野明君 私が申し上げましたのは、今彼に「むつ」が存続と、こういうことになって今後の実験——佐世保で遮へい改修、安全総点検補修工事、こういうものが行われておりますね。その場合、瑕疵が見つかった場合、その他「むつ」に欠陥が生じた場合、あった場合、原子力研究所はこの原船事業団の地位を承継するようになっております。来年この法案が成立すれば、三月末以降原子力研究所がそれらの責任を続いて行わざるを得ないことに相なるわけです。そこで、原研理事長としてのこれらの問題についての御所見を承っておきたいと思います。
  61. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) お答え申し上げます。  今先生お話のとおり、原研統合された暁におきましては、従来原船団が持っておりますいろんな権利義務はそのまま承継されるということは当然かと思いますが、今も話題に出ておりますような契約上の問題等につきまして、懸案事項であるとか、あるいはもし解釈上の不明確な点等がまだ残っているとすれば、それらの問題は統合までにきっちりと処置をつけてから引き継ぎを受けたいものだと思っておる次第でございます。
  62. 小野明

    小野明君 極めて明確な原研理事長の御答弁だったと思います。そのとおりにやってもらいたい。  ただ、改修後の瑕疵担保の期限は、船体部がきょうじゃないですか。六月二十七日、きょうでしょう、瑕疵担保期間が。原子炉部分が二十九日、もう一回審議される二十九日に切れることになっておるようですね。そうすると、今何は理事長が張り切っても期限が切れるようになっておる。延長について三菱とか石川島と交渉中のようですが、これは一体どうなっていきますか。
  63. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 瑕疵担保期間の延長につきまして、現在三菱と石川島両社に事業団において交渉しておるところでございますが、一応両方とも岡一の解決方法をとろうということで、三菱の期限が六月の二十九日でございますので、石播につきましてもそれまで延長いたしておりまして、現在最後の詰めをやっておるところでございます。
  64. 小野明

    小野明君 特に原子炉部分が二十九日切れる、この延長をやっていると。見通しは一体どうなのか。延長交渉をやっているということだけでは答弁にならぬじゃないですか。
  65. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) メーカー側も延長する期間その他については幾らにするかということについていろいろ意見もあるところでございますが、少なくとも現在まだ「むつ」の取り扱いにつきまして、今後いろいろ国会の御審議も経て最終的に決まっていくわけでございますので、そういうことで出力上昇試験がいつ時点に行われるかということにつきまして、今の段階で明確にし得ない状況もございますので、そういった状態が明らかになった段階で十分またこの瑕疵担保の問題について検討できるといいますか、検討をするということも踏まえまして、残余の期間延長するということにつきましては基本的に了解に達しております。
  66. 小野明

    小野明君 局長、あなたこの前一緒に、今さっき林先生がお読みになった報告、あなたも一緒に 行ったでしょう。あのとき原研の責任者にいつごろまで出力上昇試験ができますかと、そしたら技術の責任者が大体一年半もあればできると思いますという答弁があった。それをあなたは聞いておるはずですね。お聞きになったはずだな。それをお聞きになって今のような答弁をされるというのは、あの視察は何のために行ったのか。昼飯だけ食べに行ったんじゃないんだ。  そういう延長というものが確定されないうちに、あるいは新定係港の建設もまだいかぬ、出力上昇試験の見通しも立たない、しかも瑕疵担保の延長もできない、こういうままでこの法案を採択するというのは、私は非常に不安があります、不満があります。国費の大変なこれは乱費になると私は思うんです。しかも賠償責任も問えない、請求もしなかった。こういう前例がありますから、大変私は粗雑な仕事をこういうメーカー側となあなあでやってもらっちゃ困る。きちんとしたひとつ見通しを立てて、原研にはしっかりした技術者もおるんだから、そういうことでひとつ国民から疑惑の目でもって見られないように私は仕事を進めてもらいたい。なおいろいろ質問したいことがたくさんありますけれども、時間が来たようですから、私の質問は以上で終わりたいと思います。  最後に、世論調査でこの安全性という問題に国民の七〇%が不安を持っているということが報道されているわけです、総理府の世論調査で。この問題でさきの委員会答弁大臣は、それは世論調査のやり方によるんだ、こういうような御答弁がありまして、私は非常に不満を持っているんです。この安全性に対する国民の懸念というのは、この七〇%というものが明確にあらわしていると思うんです。ですから、この安全性に対する不安というものを除去するように、科学技術庁はひとつ姿勢を正して原子力行政やってもらいたいと思います。最後大臣答弁を求めて、私の質問を終わりたいと思います。
  67. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 原子力平和利用は、何と申しましても安全性が大前提であることは申すまでもございません。今月までもあらゆる分野でこのような安全性の追求をしながら、原子力発電等も極めて順調な運転がなされているわけでございますが、この上とも私ども安全性ということを大前提としながらあらゆる原子力の利用を図っていかなければなりません。一  また、先般の世論調査で七〇%が不安を感じると。これにつきましては、その中身を分析して説明をしていくときに初めてああそうかというような分もかなりあったと思うのでございます。したがいまして私は、分析をして説明しないとわからないようなアンケートというものはもう一遍検討して、出た数字がはっとそのままでわかるようなアンケートの仕方というものはあるのかないのか、そういう点での検討をしてみようかということを申し上げたわけでありまして、七〇%という数字がとにもかくにも出たということは、私どもは厳粛に考えて、そして原子力安全性にはさらに力を入れて国民の理解を求めていかなければならないと考えております。
  68. 小野明

    小野明君 終わります。
  69. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この日本原子力研究所法案は私たちは賛成でございます。というのは、今までの日本原子力船事業団というものが研究所から一歩実用化に踏み出した、そういう立場にあったわけでありますが、世界の情勢から見て原子力船の実用化の時代もやや遠のいておる、そしてむしろ現段階においては長い将来に備えて基礎研究的なことをもっと積み上げていくべきではないか、そういう意味日本原子力研究所の方に移してそしてやっていただきたい、こういう意味でこの統合には賛成でございます。  しかし、今ある原子力船むつ」をどうするのか。今、小野委員質問に対する答弁がございましたように、こういう財政窮迫の中で、六百億のお金を使い、なおかつ一千億以上のお金が必要である。これもどうも御答弁からいうと、確信のない、スタートしてみるともっともっと膨れ上がる可能性もあるような感じのする計画であります。しかし、退くとしてもまた四百億要る。空港が二つぐらいできる金額でございます。科学技術は将来への長い投資ですから、余り目先のことを考えてはいけないという面もあるわけですけれども、しかし、いろいろ研究しなければならない分野はたくさんあるわけでありまして、そういう中でいずれを選ぶべきが最も効率的で効果的であるのか。未来のことはわからないにしても、科学技術庁としては、衆知を集めて本当に後世の批判にこたえる判断を下していただかなければならないんではないかと思います。  そういう意味で、特に原子力船の問題で、私は果たして原子力船時代が来るのかどうかという、あるいは来るとすればいつごろ来るのかという、このあたりが一番大事じゃないかと思うんですね。その意味原子力船と在来船との比較、そういう点については今まで、昭和五十四年十二月の原子力委員会原子力船研究開発専門部会報告書、さらには五十七年九月の日本原子力産業会議原子力船懇談会報告書等にいろいろ分析がされておるわけでありますが、現時点で見て、在来船と原子力船との現在の比較、将来の見通しについてはどのようにお考えでございますか。
  70. 神津信男

    政府委員(神津信男君) ただいま先生御指摘ございましたように、原子力船の実用化という点は、いろいろと不確定要素といいますか、そういうものがございまして、明確にするのにはいろいろ問題がございます。しかしながら、やはり実用化という点につきましては、石油の価格と舶用プラントの価格というものが大きくこれを左右する要素であるというふうに考えておりまして、石油価格は、最近一時的な価格の緩みなどはございますが、中長期的に見ますとやはり高騰傾向にあるという面がございますし、また今後そういう傾向の中で、舶用プラントのコストの低減というものを技術開発によって推進をしていけば必ず実用化の時代が来る。その時期につきましては、ただいま先生いろいろ御指摘ございました専門家の検討によりまして、二十一世紀の初頭には原子力船の実用化の時代が来る経済環境が整うという御判断をいただいておりますし、私どもも今そのように考えております。  現在の段階で原子力船と在来船を比べたらどうだというお話もございますが、現在の価格を前提にして考えてみますと、船の建造価格そのものは原子力船の方がやや割高になっておるのは確かでございますが、例えば船の運航期間というのは十五年程度があるわけでございまして、この間の運航期間を通しましての運航経費などを見てみますと、かなり、一応これは試算でございますが、現状でもある船種によっては原子力船の方が経済性があるというような試算も行われるわけでございまして、それらの点を踏まえまして、二十一世紀の初頭には、いろいろな環境が整えば原子力船の実用化の時代が来るというふうに私どもは考えています。
  71. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今ソ連が砕氷船で実用化しているように聞いているわけですが、アメリカのサバンナ、西ドイツのオット・ハーン、こういうものは一応実験を終えたわけですけれども、なかなか第二船というか実用化への動きが余りない、そういう点ほどのようにお考えですか。
  72. 神津信男

    政府委員(神津信男君) ただいま御指摘ございました西独のオット・ハーンあるいはアメリカのサバンナなどの建造が行われました時代は、かなり世界経済が高度成長する、したがいまして船舶も大型化あるいは高速化するという傾向がございまして、そういうものを前提にして、かなり早い時期に実は原子力船の実用化時代が来るのではないかという予想がされていたわけでございます。御存じのように、その後世界経済が非常に安定成長に変わったというようなことから、やや超大型化あるいは高速化の傾向にブレーキがかかっておるわけでございまして、そういう経済環境の変化によりましてアメリカ、ドイツなどでもその後原子力船開発が足踏みをしておる状態であるというふうに私は考えております。  現在、原子力船が実用化する一番有望な船種と 考えられておりますのは砕氷タンカーでございまして、御存じのように現在、石油資源をいろいろ世界的に開発しようということで北極圏の資源開発が非常に盛んになっておりまして、各国いろいろ北極圏の石油資源の開発をやっておりますが、これが実際に資源が開発可能になりました場合には、これの輸送手段として砕氷タンカーというのが考えられておるわけでございます。  この砕氷タンカーの場合には、通常のタンカーに比べましてかなり高出力の馬力が要求されるわけでございまして、北極圏からの石油の輸送というのが実用化する、これは中近東からの石油の輸入にいろいろ問題が出てきたというような場合、あるいは中近東の石油が枯渇したというような場合にはさらに本格化すると思いますけれども、そういう事態に北極圏の石油が有効利用される場合にはこの砕氷タンカーをつくる必要がある、その場合には原子力船というものがかなり有望であるというように考えられておるところでございます。
  73. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 どうも経済の成長が非常にダウンしてきた。しかし私は、原子力船が実用化するかということは、むしろ在来船との比較の問題じゃないかと思うんですね。しかも、砕氷タンカーといってもそう何杯も要るわけじゃないでしょうし、そういう話を聞くと、原子力船の実用化はどうなるのかという、何となく後ろ向きの考えが出てくるんですけれどもね。  大体、いろいろ日本原子力船をつくろうという動きが出たのがたしか昭和三十年ごろと聞いております。それで、この日本原子力船事業団の法律ができたのは昭和三十八年、ちょうど二十年余り前で、その当時の会議録を見ておりますと、井工事業団理事長は科学技術庁の局長としてこの委員会にも御出席をしていただいておるわけです。  その当時の会議録を見ますと、亡くなりました我が党の牛田委員がやっぱり原子力船の経済性はどうなのかという質問をしているんですね。それに対してその当時の島村さんという原子力局長の答弁は、「伝えられるところによりますと」と、余りはっきりした資料はなかったんですね。「まあタンカーだとすれば、少なくとも六万トン以上のものだというふうにいわれております。そういうような意味からも、大きくすれば、あるいは高速にするということによって、あるいは経済性が在来船と相当程度問題になり得るような現象は、そう遠くない将来にあると、こう考えておりますので、私どもといたしましては、この船をつくり上げるころには、民間というものが続いて第二船、第三船ということに乗り出してくるであろうことも期待しておるわけでございます。」と、こういうように言っておるんですね。  昭和三十八年と今とどうかと考えれば、その当時の油の値段が幾らかはよく覚えておりませんが、いずれにしても油ショックの前ですから、一ドルとか二ドルいってなかったのじゃないかと思うんですが、今は油は多少下がったにしても二十八、九ドル、三十ドル、油の値段はそれこそ十何倍、二十倍もその当時から上がってきているわけですね。ところが、依然として原子力船の実用化は進まないというこのあたりがどうなのか。もちろん油の値段が上がるにつれて燃料のウランが上がるかもしれない、船の建造費も上がるかもしれない。そういうことになると、結局原子力船時代というものは来るとしてもずっと先じゃないか。三十八年よりも全然前進しでないような気がするんですが、その点はどうなんでしょうか。運輸省はどう考えますか。
  74. 神津信男

    政府委員(神津信男君) ただいま先生御指摘ございましたように、三十八年の時点では、かなり原子力船の実用化は早いのではないかという見通しございまして、これには、ちょっと先ほども申し上げましたけれども、非常に高度成長に伴いましていろいろの超高速化であるとか超大型化であるとか、そういう船がどんどん必要になって出てくる、そうしますと油の消費量もふえますし、そういう環境の中におきましてはかなり油の高騰もさらに進むのではないかという予測のもとで原子力船の実用化の時期を考えていたと思います。事実、オイルショックの前の高度成長期には、タンカーにおきましても五十万トンのタンカーであるとか、コンテナ船においても三十ノット台のコンテナ船というのがかなり建造されたわけでございまして、そういう傾向の中で、高馬力化の傾向がございますので、原子力船の経済性が非常に早い時期に実現すると考えられていたわけでございます。  その後現在では、先ほど申し上げました、安定成長に伴いまして超大型タンカーの建造もほとんど足踏みといいますか、現実にはほとんどつくられていないというような状況、それからコンテナ船におきましてもスピードダウンをしておるというような状況の中で、経済性が石油との関係において思ったほど有利になっていないという状況はあると思っております。  しかし、さらに今後世界経済が安定成長とはいえだんだん成長していく、それと一方において化石燃料は有限であるという状況を考えますと、時期は遅くはなっておりますが、化石燃料の有限に伴う価格の高騰、あるいはさらに一段と進めば枯渇というような問題も考えるとすれば、やはりそういうエネルギー源の一つとしてこの原子力というものが大きく取り上げられる時代が必ずやってまいりまして、実用化の時期が必ず来るのではないかというふうに私どもは考えております。
  75. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今局長言われましたけれども、エネルギーの需給ということから当然石油も有限でございますから、石油にかわるべき代替エネルギーというものは日本の国として当然考えていかなくちゃいけないと思うんですけれども、もし原子力船を実用化した場合に我が国のエネルギー消費量、石油の消費量にどの程度の影響を与えるのか。私が聞いているのは大体油の消費量の一割が船だと、それは漁船まで入るわけだからね。しかし、原子力船が実用化しても漁船まではとてもいかない、ある程度の大きさの船ということになりますとね。かなり大きな方しか実用化してもならないと思うんですけれども、そのあたりの感じはどうでございますか。どの程度のエネルギー節約になるんですか。
  76. 神津信男

    政府委員(神津信男君) ちょっと実は手持ちの資料が古うございまして恐縮でございますが、昭和五十六年度において船舶の石油消費量は先生御指摘、御指摘といいますか、いわゆる全部の外航船、内航船、漁船等を加えまして二千四百万キロリットルでございまして、石油消費量全体が約二億一千万キロリットルでございましたので、その一一・四%、したがいましてほぼ一割前後という数字かと思います。それで、おっしゃるように船は全部原子力船になるということではございません。とりあえず、例えば三万馬力以上の船が原子力船になった場合はどうなるかといいますと、全体の消費量の約三%の節約になる。したがいまして、この三%と一一%の間が原子力船の実用化の進みぐあいによって石油の節約になるというふうに考えております。
  77. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは科学技術庁長官にお尋ねをいたしますが、原子力船時代が果たして来るかどうかという、このあたりの判断というのは非常に僕は難しい判断であって、原子力委員会原子力関係者だけが決めるべき問題でもないんじゃないかと思うんですけれどもね。私は原子力船時代は今のような状態では来ないんじゃないかと思うんですよね。もっと船が動くにしても港が要る、その補償にどこへ行ってもたくさん金がかかるというようなことも一つのコストアップになるし、そういう意味のやはり住民のコンセンサスをつくっていかなくちゃいかぬと思いますしね。  それともう一つは、やっぱり船のコストを安くして在来船に太刀打ちできる、そういう技術をつくっていかなければならない。日本は海運王国ですから、世界のそういう将来に備えて、よその国がやらなくても日本の国はある程度そういう技術をつけるということが必要ではないかと思うんですけれども、そういう意味ではもうちょっと造船業界とか海運業界あたりももっと真剣に取り組んで もらってもいいんじゃないかなと思うんです。取り組んでいるのかしれませんが、私ども感じでは何か造船業界や海運業界は不熱心で、科学技術庁ばかり一生懸命やっておる。  本来は、いろんな企業でも、この間もある電子産業の工場に行きましたけれども、やっぱりそれぞれ将来に備えていろんな研究投資をしているわけでありまして、だから私は、実用化を本当に迎えるには、エネルギーの危機の時代に本当に役立つ原子力船をつくるには、もっとそういう住民のコンセンサスを得るというような問題とか、さらにはコストを下げるとか、もっともっと解決していかなきゃならぬ問題が非常に多いんじゃないかと思うんです。今のように座して待っておったんではもう原子力船時代は余り来ないような気がするんですけれども、そういう点はお考えどうでしょうか。
  78. 神津信男

    政府委員(神津信男君) 海運、造船業界の話が出ましたので、ちょっと先に私からお答えをさせていただきます。  海運、造船業界が非常に不熱心だというおしかりをいただきまして、いろいろ私も反省はしておりますが、この海運、造船業界も当初からこの計画には非常に協力は惜しまずやっておるところでございまして、現在海運、造船業界から三十四名の者が事業団に出向して船の乗り組みを初めいろいろの仕事をしております。また出資金、寄附金におきましても二十億円を海運、造船業界から出しておりまして、民間の出資の全体の八〇%は海運、造船業界が協力をしておる。そのほか船の運航関係その他でいろいろ技術協力をしておるわけでございます。  ただ、御指摘のように、最近非常に海運、造船業界は不況でございまして、実は目先の経営問題といいますか、それに非常に熱心といいますか、取り組んでいるところでございまして、その光といいますか、非常に将来ビジョンというものに欠けるところがあるのは事実でございます。この点は私も非常に残念だと思っておりまして、当面のことでなく、さらに将来の問題につきましてしっかりしたビジョンを持つように常々指導はしておるところでございますが、現在は目下の目先の不況に追われておるというのが実情でございまして、やや協力の程度が悪いというおしかりをいただいておる点につきましては私も大いに反省をいたし、今後こういう将来問題にさらに真剣に取り組むような指導はしてまいりたいと思っております。
  79. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 運輸省の船舶局長から専門的な立場でいろいろ申し上げたことは私どもも十分に理解ができるわけでございます。  今御質問のありましたように、原子力船時代は来るのかという非常に大きな問題を提起されたわけでございますが、この原子力船むつ」による研究開発を進めようとした当時は、ある程度定量的に今世紀中には何隻か原子力船をつくる必要があるだろうと、こういう一つの見通しがあってスタートいたしたものと理解をいたしております。しかし、その後時代の変遷によってなかなか定量的なことが言えない時代に入ってまいりました。しかし、先ほど運輸省の方からも御答弁申し上げましたように、定性的には私は必要な時代が来ると。しかも具体的に二十一世紀の初頭ということまで申されたわけでございますが、私もそのように理解をいたしております。  特に、先般伏見委員からもお話がございましたけれども、山縣先生という船舶の権威の方の潜水船として考えることも必要ではないかと、こういうお話もあったわけであります。これは潜水艦ではなくて潜水船として、それが船の運航能力を非常に効率化させると、こういう大変貴重なお話があったわけでございますが、そういうようなことも念頭に置きつつ、さらに私は長距離輸送というものが日本の経済にとっては大変大事なものであると。ヨーロッパやアメリカはその多くの資源を割に近いところから運ぶような地政的な状態にありますが、日本の場合には大変遠くから長距離輸送を大量にしなければならない。この点は私は欧米と基本的な事情が違うのではないか。したがって、私が聞いたところによりますと、例えばドイツのオット・ハーン、これは極東航路を一つの目標としてやった、そして日本にも寄港をしたいということを考えていたけれどもその実現ができなかった。こういうようなことから原子力船の実用化については中止をしたと申しまするか見送った、こういうようなことを言っておったという話も聞くわけでございます。  一方また、先ほど船舶局長も申し上げましたように砕氷能力のある船、これはこれからの北極の活用あるいは南極の活用ということを考えた場合には、私は極めて大きな期待が舶用原子炉に持たれるのではないかと考えるわけでございます。  先般私は、運輸省の船舶技術研究所視察をさしていただきました。そうしてこの研究所においては砕氷船をつくるための大きな新しい施設を、世界に例のない施設を持っております。それは北極からの油のことも念頭に置いての話であったと思います。ああいうところで普通の舶用機関で一時間に三ノットぐらいで進んでいくと、せっかく積んだ油を全部燃やしてしまって、帰ってきたときには空っぽになってしまう、こういうようなおかしな現象もないではないということも専門家から伺ったわけでございます。  となりますと、航続力の非常にある舶用原子炉の船というものは、私はそういう面からも、日本のエネルギー政策観点からも極めて大事な一つのポイントではないか。そういうようなことを考えますと、リードタイムはございまするけれども、私どもは今のうちにやはり原子力船研究開発というものはやっておくことが大事なことではないか、このように考えているわけでございまして、現在在来船と比較してどうの、そして原子力船時代は来るのか、こういうことになりますと今直ちにお答えはできませんけれども、そういう将来展望を考えた場合には、私は舶用炉研究開発というものはぜひ続けていくことが必要である、こう考えているわけでございます。  そのような意味におきまして、今回の法案統合につきましても、日本原研というすばらしい研究成果を上げておりますところで、先生がおっしゃったように基礎研究にも重点を置きながらやっていくということは大変大事であり、またこの統合についての御理解をお示しをいただきましたことに対しては心から感謝を申し上げ、御審議をお進めいただければ幸いであると思うのであります。
  80. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 科学技術というのは、未来に一つの夢というかロマンというかそういうものもなくちゃいかぬわけで、そういう意味では潜水船というのは、前回の委員会で伏見先生からもお話がありましたように、確かに潜水船であれば酸素が要らない原子力、しかも陸上を走るよりも海を走った方が抵抗が少ないというのであれば、こういうあたりは非常にいいんじゃないでしょうかね。これをひとつ僕はぜひ、ただ物語ではなしに、やはり運輸省として潜水艇建造計画をつくって、そして将来こうすれば必ず運賃も安くなるし、日本造船界にとっても必要なことなんだと。あるいは砕氷タンカーなども、地球は狭いんですからそうなると北極や南極を大いに人類が活用する、そうなってくるとやはり行き来するのには原子力船でなければならないということになれば、そういうビジョンを示してもらわなければいけませんよ。  いまさっきの小野委員への答弁では「むつ」のこれから先の計画だってはっきりしないわけでしょう。それがどうも原子力局長が答弁しても科学技術庁は認可していない。原子力事業団と科学技術庁がばらばらみたいな感じでもいけませんし、そのあたりは本当に一体になって国民を説得し得る、そういうものを出さなくちゃいけないと思うんです。もう「むつ」の問題で出てくる話といったらごたごたごたごた、やれ土地がどうのこうのというこんな話ばかりしたんでは、「むつ」と聞いたらもうむっとするような、そういう悪いイメージになっちゃうんですね。これは本当に僕は反省していただきたいと思うんです。  そういう意味で、ぜひ潜水船とか砕氷タンカーというものをもうちょっとよく研究していただいて、本当にこういう点でいいものであればそういう計画を、「むつ」の次の計画を出すとか、そういうものがなければ国民の世論は僕は得られないと思うんです。もう「むつ」は廃船にせざるを得ないんじゃないかと思うんです、そういう点で合意が得られないならば。そういう意味ではひとつ早急に、もうちょっと具体的にこれは科学技術庁なり運輸省で検討すべきじゃないですか。その場限りの答弁じゃ僕はいかぬと思うんです、五年、十年、五十年後に会議録が残るんですから。そういう意味でこれは前向きに御検討いただきたいと思うんですが、その点はどうでしょうか。
  81. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 大変心強い励ましのお言葉をいただいてありがとうございます。  私もただいま申したように、北極海の活用、あるいは南極時代がやがてやってくる。そして南極観測船も「しらせ」という船をつくって、もうよその船に助けられなくても厚い氷を割って進むことができるような船をつくっていただきましたけれども、しかしこれも油を使っております。そういう点でも私は次の南極観測船、これは原子力船でやっていくくらいの考え方を持ちながら、そして今私ども課題とされている原子力船舶用炉研究開発はぜひ速やかに行って、そういう新しい時代に備えたいとかように考えておるわけであります。  潜水船につきましても同様でございまして、私どもは夢でなくて、現実の将来を展望しながらこのような原子力船開発原子力平和利用という方向に向かって進んでまいりたいと考えておりますので、この上ともよろしく御指導と御鞭撻をお願いしたいと思います。
  82. 神津信男

    政府委員(神津信男君) 今科学技術庁長官からお話のありましたとおり、また先生の御指摘のとおり、将来の原子力船のあるべきビジョンにつきまして、運輸省といたしましても、先ほど長官からお話ございました船舶技術研究所技術など活用いたしましてビジョンをつくってまいりたいと思っております。
  83. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 特に私は科学技術庁にお願いしたいことは、科学的にひとつ物事を、これは伏見先生もこの前言われたわけですけれども、科学的に考えれば結論は一つしかないと思うんですよ。もちろん統計というか確率的に言えばいろいろあるでしょうけれどもね。しかし、ある仮定に立ては結論は一つしかないわけですから、本当に科学技術庁としてやっぱりこれしかないという、そういう判断を僕は示していかなくちゃいけないと思うんですよね。政治的な判断によって科学技術庁が支配されるんではなくて、科学技術庁がやはり科学的なものに基づいた判断を示していく。もちろんそれを実行するかしないかということは、予算の面とか政治的には判断していかなくちゃいけないと思うんですが、その点を特に要望しておきたいと思います。  そこで、原子力船むつ」の問題ですが、私の聞いている範囲ではオット・ハーン、サバンナ等は百億とか二百億の単位で実験航海が終了しておる。それに比べて「むつ」の場合は既に今日まで六百億かかったわけでありますが、さらに一千億、こういう余りにも金額の違いが大きいんですけれども、これは例えば船の建造費、原子炉の問題あるいは母港の建設費その他と、いろいろあると思うんですが、どういう点で違いがあるんでしょうか。
  84. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) オット・ハーン、サバンナに比べまして確かに金額的には「むつ」の開発に要した経費が多額に上っておりますが、現在五十八年度の数字、これはまだ決算が完全には済んでおりませんが、推定額を加えますと約五百七十億円という数字になっておるわけでございますが、伝えられるところによりますれば、サバンナで約三百八十億円、オット・ハーンで百七十億円、これは一部欠落している数字もございますので、これがすべてであるかということにつきましては明確ではございませんが、そういう数字も報ぜられているというところから見ますと多額になっていると。  どういった点が大きいかということでございますが、現在までにかかりました約五百七十億の内訳を見ますと、「むつ」の建造費が約七十三億でございまして、船価そのものはオット・ハーンとかサバンナとかということに比べまして、トン数その他いろいろ差異もございますが、特段高いということではないわけでございますが、放射線漏れの事故、トラブルを起こしまして、それの改修のために要しました費用、それからその後安全総点検その他で修理したということで、この金額が約百二十五億円かかっておりますので、この百二十五億円というのが相当に大きな額になっております。  それから、港湾の建設関係につきまして約九十七億ということで、関根浜の関係建設等・いわばオット・ハーンにしろサバンナにしろ特定の港を建設したということはございませんので、ほかの港を流用したということで、ここら辺の経費がかかっている。それから放射線漏れを起こしまして、既に事業団ができた三十八年から二十年という長い年月がたっているということで、一般管理経費等も百五十一億円に達しておるというようなところで、まあ期間が長くなっておりますのでいわゆる物価のレベルアップ等もございまして、今申し上げましたようなところが非常に大きく金額的にもかさんでおるというところでございます。
  85. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、これからもし廃船にした場合は幾らかかるか、それから「むつ」の研究を続けた場合幾らかかるか、しかもどういう研究をやるのか。もちろん研究をやった方がいいでしょうけれども、やるには金がかかるわけですから、そうすると、どういう研究をするのにこれだけの金がかかると。それを比較をするというか、科学技術庁の予算の中では宇宙開発とか、この間NASAの長官も来て宇宙基地計画に参加を要請されておるとか、あるいは衛星も打ち上げなくちゃいかぬと、いろいろお金を使うところはたくさんあると思います。けれども、そういう中で最も効率的な道を考えるためには、やっぱり「むつ」のもし実験を続けるならばこれだけのお金がかかりますと、お金を使った結果こういうデータが得られました、こういうデータはこういう意味で非常に必要なんですと、そういうことを国民の前に明示しないとそれこそさっぱりわからない。その中で  「むつ」が論争されているというのは私は非常によくないんじゃないかと思うんですね。  だから、科学技術庁として、自民党がどうあろうとも、一つの案をつくったらどうなんですか。千四十億だって科学技術庁認めていない。今の段階に至るまでそういうことでは僕はそういう姿勢で果たしていいのかどうか。こういう実験をぜひやりたい、この実験をやればこういうデータが得られるんです、しかしこれだけ金がかかりますと、そういう案を科学技術庁長官の責任のもとにはっきり明示すべきじゃないでしょうか。あるいは明示する方向検討を重ねているのかどうか、その点はどうなんでしょうか。
  86. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 先ほど小野委員にもお答え申し上げましたように、ただいま検討段階でございます。しかし私は、手をこまぬいているわけではございません。十分にいろいろなケースを考えて、それにはどれだけの経費でやっていけるのか、詳細な検討は事務当局に申しつけてございます。しかし、これはまだ皆様方の前に申し上げるようなそういう数字まではできておりません。最大限の効果を上げ最小限度の費用でやるためにはどういうふうな方法があるのか、これは子細に事業団そしてまた科学技術庁の事務当局にもよく検討するように申しつけておりますので、いましばらくこの点については検討をお待ちをいただきたいと思います。
  87. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今さっき局長の方から「むつ」の計画で途中で燃料棒を取りかえてやると、これはどういう燃料棒に取りかえる案なんですか。これは原子力船事業団の計画ですから、原船事業団の方からお答えいただいても結構なんですが。
  88. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 計画では、今ステンレスのものを使っておりますが、それをジルカロイにかえるということを一応計画しております。
  89. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 例えば、燃料棒は最近丸型から非常に熱の伝導率のいい角型というんですか、キャラメル型とか、そういう方向に変わりつつあると言われているわけですが、古いタイプの燃料棒では価値あるデータは得られないんじゃないか。そういう新しいものをやるべきではないか。  それともう一つは、やっぱりやる以上はデータを得なきゃ意味がないじゃないか。そのためには計装燃料というのですか、燃料のあらゆる部分に温度計とかいろいろつけて、そして実験の結果いろんなデータが得られるという、そういうのでなければ余り意味がないんじゃないか、当然もしやるとすれば。そういうような点も含めて、これはどうなんでしょうか。
  90. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 今の先生の御指摘でございますと、原子炉そのものをかなり絶対的に直さなければいけないということになろうかと思います。「むつ」につきましてそこまでのことをむしろするということでなくて、「むつ」は海上での振動、動揺に対する原子炉各部の性能を設計して予想したものとの対比において比較し、そこから陸上での試験あるいは設計のときに考えた要件とどの程度ずれがあるかということを確認し、そのデータを今度は陸上での試験あるいは設計等に反映しようとする趣旨でございまして、個別の部分についての技術開発を目指しているわけではございません。  そういう意味からむしろ原理的に単純な形のものの方がいろいろなそういう比較的なデータが取りやすい。今後の新しい将来に向けての技術開発、どういう燃料棒がいいかというようなことにつきましては、陸上でのいろいろな試験でやっていける部分がかなりあるわけでございます。そういう意味での一つは「むつ」の使い方があろうかと思うわけでございまして、「むつ」を全くすっかり新しい形に改造するということではまた多額なお金もかかるわけで、その「むつ」から得られるデータというものはそこまでのことを考えているわけではないわけでございます。  ただ、計装燃料の点につきましては、十分に各部のデータが同時に計測できて相互の関係が比較できるようなという意味で、炉の中はちょっといじり出しますと大きな改造ということにもなりますので、そういう形でなく計測装置等につきましての充実ということは、今後実験を進める場合は当然考えていかなければならない問題と承知しております。
  91. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) ただいまの局長のお答えに事業団側から少しく補足いたしたいと思います。  まず、キャラメル燃料、板状燃料というお話がございましたけれども、これはそもそもフランスで開発されました全く従来と考え方の違った独特な燃料でございますが、現時点ではフランスにおきましても研究炉において使用されている段階でございまして、実用という面での段階までにはまだ達しておりません。  キャラメル燃料の特徴と申しますのは、丸棒燃料燃料要素が円筒状のペレットであるのに対し、大体、燃料要素一つの大きさが二センチ掛ける二センチ、厚さ四ミリという、言うならばキャラメルのちょっと薄いタイプの燃料を一個一個被覆体に包みまして、それを板状に成形されたものでございます。  したがいまして、燃料の特性といたしましては、大変薄くできておりますので熱伝導がよく、中心温度が高くなりません。また一個一個包まれているということもございまして、核分裂生成物が一個一個の中にまずは第一次的に閉じ込められる、さらには板状の中に閉じ込められるということで、丸棒燃料に比べますと核分裂生成物質の閉じ込めに壁が一つ多くなっているということが言えるかと思います。そういう意味で、いろいろな安全性という面から見ますと有望な燃料ということが言えるかと思いますが、ただ、今申しましたような構造でございますので製作には大変手間がかかるということで、現状ではまだ実用化の段階には至っていないということかと思います。  それから計装燃料について少しく補足したいと思います。  計装燃料と申しますのは、できますれば運転中の燃料の変形であるとか曲がりであるとか、あるいは燃料中心温度とか、そういったような高級なデータをとるというのが計装燃料の主目的でございます。実験炉で使います場合には現時点ではまだそこまで行っておりませんで、研究炉の中で燃料の細部にわたります挙動を研究する場合にはそういう方向が逐次開発されつつあるというのが現状でございます。「むつ」を運転した場合の得られるデータと申しますのは、計装燃料ではなくて炉内計装ということで、原子炉の中の流量なりあるいは温度分布というものが測定できるようになっておりますので、ほかの運転データと総合的に解析の上、先ほど局長のお話がございましたような動揺であるとか、あるいは負荷変動といったようなものに対する挙動というものが解明できるというふうに我々は考えております。
  92. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 長官にお願いいたしますが、この間、私たちむつへ参りましてむつの市長にもお会いしたんですが、むつ市長は五者協定の当事者ですけれども実験計画等については何も知らされておりません。市長はやっぱり一千億じゃとてもできないんじゃないんですか、こういうようなお話でした。  私は、もし「むつ」の実験を続けるのであるならば、これは仮定の問題でございますが、私たちはこの法案には賛成でありますが、「むつ」をどうするかということはまだ結論が今出ていないわけですけれども、もし研究を続ける場合は、やはり一つは研究内容というものをはっきり示して、そして地元のやっぱり協力、了解をちゃんととってもらいたいと思うんですね。それとどれだけ金がかかるということをはっきり明示してもらいたいと思うんですね。スタートはしたけれども、ずるずるずるずるまた「むつ」のようなことを繰り返してはいけないんじゃないか。この二点をぜひお願いしたいと思うわけであります。  昭和三十八年にこの「むつ」ができた最初計画ではたしか六十億ですか、全部の計画が。昭和三十八年では全体が六十億で、船が三十五億、附帯設備等も加えて四十五億、それに運転とかそういう点で全体では六十億でつくると。もちろん実際はおくれちゃったからそれがもうどんどん六百億にもふくれている。こういうようなことになってはいけない。そういう点から、もし進めるのであるならば今の二点、これをはっきり僕はさすべきではないか。そういうものもはっきりさせないでスタートするというようなことは絶対許せないと思うんですけれども、その点はどうでしょう、お約束していただけますでしょうか。
  93. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 大事な点でございます。  私は就任直後、ことしの一月の六日に青森に参りまして、地元のいわゆる五者協定の関係者とお話をいたしました。そのときには、まず関根浜にお約束によって着工するということ、それから関根浜に港ができて「むつ」が移されて、後どのようにして研究開発実験を行うか、そして廃炉まで、廃船までやると、こういう基本的な方向について関根浜を定係港としてやってまいりたいということを申し上げまして、そういう基本路線について御了解を地元の方にもちょうだいをいたしました。むつの市長ももちろんその席におって了解をいただいたわけでございます。と同時に、この具体的な進め方についてお話を事業団の方からも申すように準備をいたしておったんでございますが、御案内のように、直ちに予算編成の時期に入りまして今日のような状態になってしまいました。したがって、ただいまのところは具体的にどうこうするということを申し上げるのはいささか時期尚早ではないかと、こちらも控えているところでございます。  また一方、大湊の港に停泊中にそのまま寝かし ておくことはやはり国民皆さんに対しても問題があるのではないかということで、この点につきましてもお話をいたしたんでございますが、これは関根浜への約束による港の着工が済んだ後で、着工した後において政府から相談があればその協議には応じましょうというような話もできておったわけでございます。しかし、今各方面の御議論国会の御意見、御議論、そしてまた私ども自体の検討とその結果を見まして、研究開発を続行するならば、改めてどのような方法で具体的にやるかということは申し上げなければならない、御理解もいただかなければならないと考えております。  と同時に、先ほども経費の点について明示せよと、こういうお話がございましたが、検討中ということを申し上げました。具体的には事務当局に検討は命じておるわけでございますが、このただいま御審議をいただいております法案原研統合ということが国会で成立をいたしまするならば、いろいろ統合のための諸準備が要ります。と同時に、原研自体で自分のものとしての検討もやっていただいて、そしてより完全な試験研究実験というものをお互いに研究していかなければいけない、検討しなければならない、こういうことになりますので、法案が通る前からそのようなことを原研にお願いするということは差し控えなければなりませんので、法案が通過をいたしましたならば、直ちに政府と事業団と原研とでこのような研究開発方法についても、したがってそれに関連する経費等についても具体的な御相談ができるようにしてまいりたいと、こう考えておるわけでございます。
  94. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、先ほど廃船の場合は、港が三百四十億、その他廃炉は七十億で、四百十億というお金がかかるというお話ですが、前回の委員会で伏見委員への答弁では、今の「むつ」の燃料等は非常に放射能の強さは弱い、極端に言えば手をさわっても大丈夫だと、まあそういう答弁はなかったんですが、そういう内容じゃなかったかと思うんですけれどもね。そうであるならば、廃船にするということは実態的にはどこの造船所でもできるんじゃないか。したがって、港三百四十億必要であるというのは、五者協定による地元との約束のためにこの港が必要、約束を果たさなければならないために廃船の場合でもこれが必要であると、そのように理解していいわけですか。
  95. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 廃船するためにも港が要るということにつきましては、これは既に放射線漏れを起こしました後長いこと大湊にありまして、既に放射能も低減し安全であるという状況の中で佐世保に修理のため回航したわけでございますが、その際にもやはり原子炉のふたはあけてくれるなと、冷態停止状態というか、そういう状態を確保するんだという前提でないと佐世保の港にははいれない、修理もできないという状況であったわけでございます。その際も十分に安全性その他については御説明をしつつもそういう結果に相なっておるわけでございます。  さらに、その「むつ」を再び大湊に回航するに当たりましても、安全性ということがいわば地元側から強く述べられ、その安全性につきるる御説明を申し上げたわけでございますけれども、やはり大湊受け入れに当たっては冷態停止状態を保持するんだと、そういうことでやっと仮の港として受け入れられ、いずれは関根浜というか、ほかの新しい港に移すという前提のもとに大湊に入ったという状況にあるわけでございます。  私ども技術的にいろいろ御説明をいたしましても、いわば「むつ」の持つイメージと申しましょうか、そういったものに対する不安というものはながなが解消できないわけでございまして、そういう意味でほかに廃船のための港を探すということは過去の経緯からいっても極めて難しいわけであります。  そういうことで、今年度の予算編成の段階においても、廃船の場合にも関根浜の港を建設する必要があると。これはもちろん、先生御指摘のように、五者協定というお約束がございますから、いつまでも大湊におられるわけではございません。徹底的に、廃船のためなら何か可能性があるかもしれないからということであっちこっち探すということ、これはまあ我々の過去の経緯からいうと極めて難しいということでございますが、そういう探すということもまさにそういう意味で当てのないことになるわけでございまして、お約束としては、一刻も早く大湊から新しい港へ回航するというお約束もございます。この二つの面から、どうしても関根浜に港を建設し、そこへ「むつ」を回航するということにいたしておる次第でございます。
  96. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 だから、ただいまの御答弁は、科学的に考えれば何ら心配ない、どこへ持っていったからといって何ら心配ないけれども、そういう世論というか、「むつ」に対するイメージ、そういう住民感情があるためにできないという、こういう御答弁ですね。だから三百四十億の港もつくらなくちゃいかぬ。これはもちろん五者協定の約束もあるわけですけれどもね。  私は、これは長官にお聞きしたいんですけれども、結局そういうようなことをいままでやってきたんですよ。むしろ科学技術庁は、国民のそういう世論をつくるというか科学的な姿勢を貫かずに、声が大きい方に妥協してきたわけですよ。それで「むつ」の研究を続け、そのために金がたくさんかかっちゃったわけですね。けれども、「むつ」というのは何のためかといえば、やっぱり実用化するためじゃないかと思うんですね。実用化していくためには、今言ったように、住民の理解と協力がなければできない。  サバンナやオット・ハーンが安い経費でできたのは、安全性はどうかわかりませんけれども、特別な港をつくるんじゃなしに一般の港でやったからでしょう。ところが日本では、私は今まで日本がやってきたのはいけないということじゃありませんけれども、必要以上に科学的な考え方を曲げてまでそれに妥協して金で解決してきたんでは、原子力船なんというものはもう絶対これは採算には合いませんよ。やっぱり原子力船が実用化するには、そういう世論をつくるという、それがバックになるんですから、原子力船廃船を三百四十億お金をつけなければできないようなら、原子力船が世界で実用化されても日本で実用化されるのは大分先じゃないでしょうかね。  そういう意味で、科学技術庁としては、もっと国民の世論に訴えるというか、安全なものは安全なんですから、堂々と論陣を張って主張してもらわないと僕はいけないんじゃないかと思うんですけれどもね。ただ、「むつ」の実験のように、ああいう実験は安全だ安全だと言ったって、実験というのはときどき漏れることがあるんですから、ああいうものを余り最初から安全だ安全だと言うとまたああいうことになるわけですけれどもね。しかし、今の原子力船むつ」の燃料棒が安全であるという、そういうことはもう大体調べればすぐわかるわけでしょう。そういう世論をつくるという、そういう方向でもっと歯切れのいい科学的な答弁をしてもらわないと、科学技術庁そのものの発言が何となく政治的な発言で、奥歯に物の挟まった発言では、これはますます国民の理解が得られないんじゃないかと思うんですが、その点はどうでしょうか。
  97. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 私ども原子力政策を進める上で一番大事なのはやはり安全性であり、その安全性国民方々、地元の方々によく理解をしていただくことであろうと思います。それがキーポイントであろうと思っております。  問題は、日本の場合には広島、長崎の原爆を受けたという世界にも例のない被爆国でございます。そのようなことから、原子力の利用という場合に、それがややもすれば原爆に、結びつくような、そういう風土的な感情的なものがいまだにあるのではないでしょうか。私は、その点が日本原子力平和利用において一番大きな特異性であるというふうに思います。しかし、もちろん安全性ということが第一でございますので、これにつきましては全力を挙げて今日までも政府としても 努力をいたしてまいりました。不十分だったかもしれませんが、全力を挙げました。と同時に、民間の方々にもお願いもいたしてまいりました。  そういう中で特に不幸なことが、四十九年の「むつ」が出港するときのあの異様な状態、そして出港した直後にレントゲン写真を一枚撮るよりも少ないくらいの放射線漏れが出て、しかしこれが大変大きな問題になってしまいました。科学的には問題はなかったんであります。また、そのような対応をいたしたつもりでございますが、しかし報道の面におきまして、これがまるで原子爆弾が生まれたような恐ろしいような、そういう事故にイメージができ上がってしまったことはまことに残念でございます。私どもも反省しなければなりません。と同時に、私は、国民的な立場から、報道の立場からもこのふうなことがもっと正確に冷静に伝えられているならば今日のような事態はあるいは避けることができたかもしれません。  しかし、今過去のことを申しても仕方ありません。私どもは、遮へい工事ということもやりました。そして安全性の点検も終わっております。したがって、これからもこのようなことを十分に、地元の方はもちろんのこと、国民皆さん方にもよくわかるようにさらに努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。そのようにして私どもは、この不幸な過去というものを十分に払拭をして、国民の理解のもとに、そしてまたいろいろな影響力のある方々にも御理解をちょうだいをして、そのような国民的なコンセンサスのもとに原子力船研究開発をぜひ進めるように努力をしてまいりたいと考えております。
  98. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、やっぱり安全なものは安全なわけですし、それを金で解決するようなことを余りやるというとまずいんじゃないか。それが通らないようであればもう原子力船実用化はできないわけですからね、そういう理解を得られないときには。そういうときには五十年でも百年でも待つ、それぐらいにいかないと本末転倒になっちゃうんじゃないか。そういう点を私の意見として申し上げたいと思います。  あと、法案の問題につきまして、第三十八条で総理大臣と運輸大臣が共管になっておる問題でありますが、前回の委員会で伏見委員の質問に対しまして、原子力船むつ」が、原子力船関係してくるから運輸大臣が共管である、そういうようなお話がございました。私は、そういうことになりますと、日本原子力研究所はいろいろな軽水炉研究等もされておるわけですから、そうすると、炉の問題については通産大臣も共管にしなければならない、こういう論理になるんじゃないか。だから、やはり主管大臣は総理大臣、総理大臣のもとに科学技術庁長官が移管を受ける、こういう形に一本化した方がいいのではないか。これについては運輸省とそれから日本原子力研究所理事長から御意見を承りたいと思います。
  99. 神津信男

    政府委員(神津信男君) 舶用原子炉は、小型軽量で経済性にすぐれている必要があるわけでございまして、これを開発するためには、原子力の知見と船舶の知見の両方が必要であるというふうに考えております。特に舶用原子炉は、陸上と比べましても、海洋という極めて厳しい環境下で使用されるというために、船舶特有の動揺、振動、それから急激な負荷変動、それから狭隘な船舶内での重量、寸法の制限、船舶の復原性に及ぼす影響、あるいは塩分雰囲気の中での耐腐食対策など、海運造船に関する技術、知見が非常に必要でございまして、こういう技術、知見を十分入れながら研究開発を行っていく必要があると。また、私どももそういう見地からこれに協力をしていく必要があるということから共管になっておるわけでございます。  一般的に申しましても、物を開発する場合には当然エンドユーザーといいますか、そういうものの知見を最初から加えながら開発することが、研究開発の手戻りというような必要もございませんで、非常に効率的な研究開発が行われるということであると私どもも思っておりまして、そういう見地からも最初から両者が一緒に研究開発を進める必要があるというふうに私どもは考えております。
  100. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) 我々の立場から申し上げますれば、いろいろな監督系統が複雑になることは決して望んでいるわけではございませんけれども、ただいま運輸省の局長からお話がございましたような趣旨から、従来でも原子力船開発事業団は共管にあったわけであります。ただ、今度共管になるのは、法律上も原子力船開発に関連する部門だけを限って共管になるということに理解をいたしておりまして、その限りにおきまして、従来原子力船開発事業団が科技庁と運輸省の方でよく協調、調整がとられた形で指導監督がなされておるということを聞いておりますので、引き続きそのようなことで、いたずらに複雑になることにならないように運営される、運用していただくということを実は期待をしておるわけでございます。
  101. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先般、当委員会日本原子力研究所へも視察をいたしまして、林委員から冒頭にその報告がございました。私は参加できなかったわけですが、今のお話を聞きますと、非常に日本原子力研究所研究者皆さん原子力船舶用炉研究について大変意欲を燃やしているというか、そういうような感じを受けたわけですが、反対意見はないのかどうか。反対意見というか、統合することについて心配する意見とか、そういう意見所内にはないのかどうか。その点はどうでしょうか。
  102. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) これだけの重大なる問題でありますので、いろいろと統合になった場合の問題点を議論したり、あるいは心配している点がないわけではございません。まあ、私自身も考えまして一番心配する問題点の一つとしては、例えば「むつ」の関連の仕事への対応の負担が、原研が従来やっておりますもろもろの重要な研究活動に大きな支障を与えるようなことになっては大変である、こういうことがあるわけでございまして、当然これらにつきましてはそういうことのないように、いろんな予算上とかあるいは組織編成上等について私も篤と意を用いなければならないと思っておりますし、そういうことができるように実は政府当局にもお願いをしておる。これは政府当局だけでなくて、実は国会先生方にもひとつお願いをしなきゃならぬと考えておるところでございます。
  103. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 原子力船のみならず原子炉平和利用という点で、アメリカなんかは非常にうまくいっていない。稼働率が悪くてコストが高いために中止が相次いでおる。そういう中で日本は、稼働率も非常によくなっていますし、もちろん廃棄物処理とかいろいろな問題は残されておるわけですけれども、そういう点で安全性においても心配のない、世界に誇る原子力平和利用技術をぜひ確立していただきたい。  同時に、舶用炉についても、もっと実用化にたえるものをつくるように努力していただきたい。今までのようなことの延長線ではとてもとても僕は原子力船の実用化はこないし、もっとコストを下げるような面も、あるいはもっと抜本的な改革も必要じゃないかと思うんですけれども、そういう点をひとつぜひ努力していただきたい。このことを理事長に要望したいわけですけれども、御決意を承りたいと思います。
  104. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) 御激励をいただきましてありがとうございます。  先般来申し上げておりますように、我々の研究所は、この二十八年間の間、鋭意研究開発努力してまいりまして、もろもろの研究成果を上げ、特に軽水炉の問題につきましては、JPDR動力試験炉の設置、運転から始まりまして、特に安全性研究等につきましては非常に有意義な成果を積み重ねてまいってきております。そういう関係の人材等も非常に豊富になってまいってきておりますので、統合の暁にはこれらの知見を十分反映をいたしまして、できる限りのお役に立つようなやり方で努力してまいりたいと、こう考えております。
  105. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは最後に、今申しましたよ うに、これは長官にお願いしたいわけですが、今までは総理大臣、科学技術庁と、こういった一本だったわけです。今度運輸省というのが入ってくるわけです。そういうことのために日本原子力研究所研究の伝統が非常に混乱したりしないように、また予算等の面でも十分配慮をして、さらにひとつこの合併を契機に日本原子力研究所研究がさらに前進をしていくように十分努力をしていただきたい。そのことをお願いをして、長官のお考えをお聞きして質問を終わります。
  106. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 今回の法案につきましては、いろいろと慎重な検討をいたした結果、原研と事業団との統合が最も適切であるという結論に達して法案をお願いしておるわけでございますが、もともと原研と事業団とはまあ兄弟分でございます。そして相互に研究実験等についても情報交換は十分に行われてまいりましたけれども、今回の統合によってさらにお互いが相乗効果をもって効率を上げ、そして国民の期待にこたえるということをしていかなければならないと思っております。  そしてまた、統合によって運輸大臣が共菅大臣になっておるわけでございますが、これは統合という結果がそういうことになっておりますので、従来の原研の本来の試験研究というものは純粋にそのまま継続され、またこれが維持されなければならないわけでございまして、この点につきましては所管大臣としては十分に意を用い、また原研理事長を初め職員の皆さんもそういう考え方でお進みをいただき、また統合された暁には、事業団の皆さん方も十分にこれを踏まえて、仲よくそして効率を上げて国民の期待にこたえる成果を上げてもらうようにお願いもし、努力も私もしてまいりたいと思っております。
  107. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 きょうも法案に先立って、いわゆる「むつ」に関する問題で幾つかお尋ねをしたいと思いますが、まず、青森県の関根浜港建設のためにその隣接の大畑漁港につくられた作業基地の問題について質問をいたします。  前回のこの委員会で当局は、大畑漁港の外側に作業基地としての岸壁を事業団が六億円をかけてつくったと答えていますけれども、これはいつ決めて、いってき上がったのか。事業団、どうですか。    〔委員長退席、理事林寛子君着席〕
  108. 小川健兒

    参考人小川健兒君) お答え申し上げます。  五十八年の四月に青森県と協定を結びまして、五十八年の十二月に完成しております。
  109. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 しかしその岸壁は、防波堤が不備のため、特に秋から冬にかけて強い北東の風が吹きつけ、四メートルから五メートルの波が押し寄せるときには岸壁上の作業や作業船の停泊は特に難しい、また夏でもやませが吹けば使えない、こういう話を私は五月の現地調査に参ったその中で聞いてきています。したがって、この二月、三月の関根浜港建設のいわゆる捨て石作業、このときにはこの岸壁は使用せず、従来の中央岸壁を代用の作業基地として使ったということでありますが、科技庁、この事実は御存じですか。
  110. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 承知いたしております。
  111. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ということでありますが、一方、この中央岸壁の使用について今年度も事業団の方から県に対して占用許可願、こういうものが出ておりますね。この占用許可使用料は一年間幾らですか。
  112. 小川健兒

    参考人小川健兒君) お答え申し上げます。  今年度の港湾建設工事の作業のために二港建から占用願を出したということは聞いておりません。
  113. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 事業団がこの第二港湾建設局青森工事事務所、そこに委託をしていますね。で、形としてはそこから占用使用願というのが出てるんじゃないですか。
  114. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 今年度の工事のために青森県に対して占用願を出したということは聞いておりません。
  115. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 これは先日の青森県議会の中でも、県当局がその話は御説明になっているわけですよ。全くそういう事実はないというんですか。
  116. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 二月に、昨年度でございますが、二月に基礎捨て石工事を行いましたが、そのための占用願は第二港湾建設局から県の方に出ていると聞いております。
  117. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこでその使用料、どういう基準になっていますか。
  118. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 失礼しました。請負業者から使用願を県の方に出しているということでございます。訂正いたします。
  119. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それで、その使用料の基準はどうなっていますか。    〔理事林寛子君退席、委員長着席〕
  120. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 事業団といたしましては、使用料の基準については承知しておりません。
  121. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 お金の出どころは事業団になるんですから、そんな無責任なことを言わぬといてくださいよ。これは県議会でもちゃんと説明が出ているわけでして、一日約二百円、四百七十平方メートルの岸壁でありますが、それが一日に使用料約二百円、一年間三百六十五日で七万三千円、こういう報告が県議会でやられておるじゃないですか。このお金は事業団から出るわけでしょう、これは行く行く。私の言っている数字は間違いですか。
  122. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 第二港湾建設局から年間を通じての占用使用願を出しているとは聞いておりません。
  123. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 使用の基準はどうなっているかと聞いてるんです。一年間もし使うとしたら幾らになるかというんですよ。
  124. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 先生の今御指摘の大畑漁港の中央埠頭の使用料のことかと思いますけれども、その使用料の基準については承知しておりません。
  125. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 なぜそんなに事実を隠そうとするんですかね、県議会でも公然たる話になっている問題を。とにかく一日約二百円、一年間使うとすれば。しかし、それはさっき私が言ったように、冬はもちろん夏の風の強いときでも使えないということでその中央岸壁を使わざるを得ない、こういうことになっているわけですけれども、一年間使うとすれば七万円ぐらいという話が公然と県議会の場では出ているわけですね。  で、ここで問題は、一年間七万三千円、その程度のお金を出せば中央岸壁を使える、事が足りる。にもかかわらず、なぜ六億円もかけて一年のかなりの部分使えないような岸壁をつくるのか、ここにまた新しい公費のむだがあるじゃないか、こういう問題として私は提起をしているわけです。  県議会ではこういう説明になっていますよ。この六億円を青森県は五十八年度予算の雑収入に組み込んで、県の単費事業である大畑漁港整備事業の第七次計画の漁港施設費として計上したと。いわばこのおかげで、県の財政難のためなかなか難しかった第七次計画建設も進んで、県が二億四千万、大畑町六千万の合わせて三億円の地元負担がゼロになったというのでありますが、先日の県議会でこのことが問題になって、県当局は、この六億円について事業団による負担金的性格を持つものだと説明をしておる。  このように、作業基地のための建設だと言いながら、実際は大畑漁港整備計画の一部を負担をするという、そういう形をとった地元協力金、こういう形に実際はなっているんじゃないか、地元協力投資という形になっているんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、科技庁どうですか。
  126. 小川健兒

    参考人小川健兒君) まず最初に、大畑作業基地を建設した目的を申し上げますと、この作業基地は、港湾施設の建設のためのブロック、ケーソン、そういったものの建設資材の製作、それから仮置き、それから積み出しの作業基地として整備したわけでございます。しかしながら、この作業基地は、石材とかブロック等すべての資材を対象 にすると能力が不足いたしますので、ブロックなどの製作、仮置き、積み出し、これを目的とした使用を第一義的に考えてつくったわけでございます。  先ほど先生御指摘の二月の着工時、これは基礎捨て石工事でございますけれども、石材の採取地とか運搬方法につきましては、これは工事の請負者の判断に任されておりまして、請負業者の申し出に応じてその作業基地があいているときは積み出しに使用することもありますが、石材の仮置きとか積み出しに限りますと、作業基地以外の施設を使用することが多くなるということでございます。  それからもう一つ、冬期に利用できないという御指摘がございましたけれども、これは現地の波浪条件についての懸念かと思われますが、これにつきまして少し御説明させていただきますと……
  127. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いや、もうそんな長い説明はいいです。私の聞いていることだけ答えてもらいたい。
  128. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 冬期に使用できないという御指摘がありましたので、それだけちょっとお答えを……
  129. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 大体質問をしたのは科技庁に聞いたんですよ、事業団に聞いたんじゃないから。短い時間だから、余りくだくだ、やめてください。
  130. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 関根浜付近の月別の波の状況につきましては、実測によりますと、海工作業の可能な日数、これは作業時間帯の平均波高が一メートル以下の日数でございます。これは四月−十月で大体力〇%前後あります。それから十一月から三月の冬期でございますが、これは五二%から七三%、最も海象の厳しい月が一月でございますが、これが五二%でございます。したがって、冬期は稼働率が減少いたしますけれども、この時期は波向きと申しまして波の方向でございますが、これは北西から北北西でございます。したがって、大畑の作業基地の前面は最も静穏なところになっておりまして、関根浜で工事ができる日は十分に使用できるというふうに考えております。
  131. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私、冒頭に指摘をしたように、そして局長もその事実は知っていますというふうにおっしゃったがごとく、この捨て石作業なんかをやるときに、新しくつくった岸壁、これが使えないで従来の中央岸壁を使って作業が行われたと、こういう形になっているがごとく、やっぱりこの防波堤が不備で十分用を足し得ない、こういうことになっておるのは明瞭じゃないですか。何も波の説明を聞いておるわけじゃないんです。そういう上で見たときに、やっぱりここでまた公費のむだが起こっているんじゃないですかという、この問題を提起をしているわけです。  前回もこの関根浜の用地買収をめぐる裏金という形での国費の乱費の問題、国土庁も確認をされたごとく、政府管轄の事業団の中では今まで例がないという異例の、名目はいろいろな名目をつけながら、事実上買収費をかさ上げをしてお金が出されるという形がやられていた。また今、大畑漁港の建設をめぐるここの問題で国費のむだが起こっているじゃないかと。事業団、いろいろおっしゃっているけれども理事長ひとつ事実を正確に、こういう内容なんですということを、きょう私が提起している問題との関係で、そんなに詳しいことを求めているわけじゃございませんので、そのことについてもう一遍よく振り返って調べていただいて、次回のこの委員会までに御報告願えませんか。
  132. 井上啓次郎

    参考人井上啓次郎君) 御指摘のような形で実行いたします。
  133. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 もう一つむだがあるんじゃないかという問題であります。  御存じのように、長崎県の佐世保で「むつ」の修理をやったあの段階で、「むつ」に係る風評によって魚価が低落をする、それに対処をするためにということで二十億円の基金がつくられて、それが事業団から農水省を通して支出をされたというわけでありますけれども、「むつ」が出港して二年になんなんとするこういう段階で、依然としてこれがそのままになっているという、これは一体いかがなものか、こういう立場での質問になるわけであります。  昭和五十三年十月十六日、形としては農水省事務次官通達という形での「原子力船むつ」関連魚価安定対策事業実施要領」、こういうものをいただいております。この中の第3の3の(4)項、この中に書いておりますように、「長崎県知事は、農林水産大臣原子力船むつ」による佐世保港の使用が終了することにより風評による魚介類の価格が低落するおそれがなくなったと認定した場合において、基金に残額があるときは、当該残額のうち国庫補助金に相当する額を返還するものとする。」と。すなわち、魚の価格が低落するおそれがなくなったと、こういうふうに判断されたその段階では、基金に残っているときはこれをひとつ返しましょうと、こういう確認であります。  それが、いよいよ修理を終わって佐世保を出港をする、昭和五十七年九月六日出港ですけれども、その十日ほど前、八月二十五日に通達の書き直し、訂正がやられるわけですね。昭和五十七年八月二十五日、これも同じく農水次官依命通達、実施要領一部改正ということで、「原子力船むつ」による佐世保港の使用が終了することにより」を、もう終了してしまっているからというので、「原子力船むつ」に係る風評による魚介類の価格が低落するおそれがなくなった」とき返すと、こういうふうに訂正をされるわけです。どうしてこういうふうに変えたのですか。当然、これは形は農水省事務次官通達ということですけれども、科学技術庁の意見基礎になってこういう方向に進んだことと思うんですけれども、どうですか。
  134. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 先生御指摘の五十七年八月二十五日付での変更についての御説明をさせていただきます。  原子力船むつ」を佐世保港におきまして修理をしていただくにつきましては、長崎県知事、佐世保市長等、地元の方々の非常な御協力によって「むつ」を受け入れていただいたわけでございまして、そのときにやはり問題になりましたのが魚民の方々の受け入れに伴う不安でございまして、それのために魚価安定基金というものができたわけでございますが、この修理につきましてはいろいろな事情がございまして、当初お約束した三年という期限内でこの修理を完了することができず、期間を延長せざるを得なくなったわけでございます。当初、約三年間ということでやってもらうんだということで、地元としては一日も早く修理を終えてまたほかの港へ行ってほしいと、こういうことがありました次第でございますので、この期間を延長することにつきましては地元の方々の非常に御協力をお願いしなければできない問題であるわけでございます。  それで、この延長のお話し合いの過程におきまして、この魚価安定基金につきましても延長といいますか、佐世保の港を「むつ」が出ていったらすぐになくするということでなく対応を考えてほしいと、こういう強い要望があったわけでございます。当庁といたしましては、修理期間の延長につきましての地元の御協力に対してやはり誠意を持っておこたえすべきであるという立場に立ちまして、この「むつ」の佐世保出航後におきましても経過措置としてしばらくは基金を残しておくことが必要であると、こういう判断のもとに、農水省にも御相談申し上げ、このような変更を行ったわけでございます。
  135. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 今の説明で、修理期間を延長せざるを得なくなったという、このことはこの通達の書きかえの直接理由ではないですね。というのは、通達の書きかえは佐世保を修理が終わって出ていくこの段階で書きかえをやっているわけですから。やっぱり理由といえば、そういう地元からの強い要望があったと、かねがね御協力をいただいた、言うならその謝礼のようなものだと、こういうことでしょう。  そこで、ただこの文面を、古い通達、それから 書きかえられた新しい通達というか実施要領、どっちを見たって「魚介類の価格が低落するおそれがなくなったと認定した場合において、基金に残額があるときは、当該残額のうち国庫補助金に相当する額を返還するものとする。」と。だから、もうあれから二年になんなんとするというこういう時期に、この二十億がそのまま残っているということは、なお魚価低落のおそれありという、今もそういう判断なんですか。
  136. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 風評による魚の価格の低落、いわゆる風評というのは極めて微妙な問題でございまして、そういう意味で「むつ」が佐世保港におりましたという事実はあるわけでございますので、それで現在また「むつ」は大湊におりますが、そういうことでこの風評による魚の価格が低落のおそれがなくなったという認定をどういう時期に、どういう条件のもとで行うかということを、長崎県の方とも寄り寄り御相談を申し上げておるところでございまして、基本的に私どももこれは返還していただくべき性格のもので、お返しいただく時期、これがまさに「風評による魚介類の価格が低落するおそれがなくなったと認定した場合」と、こういうことでございますので、その時期につきまして今長崎県といろいろお話し合いをしておるところでございます。
  137. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 念のために聞きますけれども、もう二十億使ってしまってなくなっておる、だから返しようがないと、こういうことではないでしょうね。
  138. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 二十億円は積み立て基金、基金ということでございますので、これが消費的なお金に使われているということではございません。
  139. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そうすると、科技庁としても行く行くは、ある段階では返してもらうべきものと、こういうふうに認識をしておると。問題は、どういう状況のもとでもうそういうおそれはなくなったと判断をするか、そこらの基準というかメルクマールについて長崎県側とも地元側とも目下協議中なんだと、こういうことだというんですけれども、今までの段階はおそれありと、こういう判断だからまた返すべき時期じゃないと、こういうことだったんですね。  そうすると、今までの段階では魚価低落のおそれありというふうに判断をするに足るような何か客観的資料は出し得るんですか。例えば、長崎県の魚価の値段が修理を始めてからずっとこういう状況になっていますというものは出し得るんですかね。
  140. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 現在まで風評によって魚価が低落したということはございません。
  141. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 低落をしたということはございませんと。そうなると、この扱いはもう極めて不透明ですね。  大臣、少なくとも科学技術庁も当然その議論の中には加わって、形は農水省事務次官通達による実施要領ということでありますけれども、ここにはっきりとそういうおそれがなくなったときには返還するものとすると、こういうふうに書いているんですから、したがって、今はどういう状況と認識をするか、どういう姿になったら一体これをいつ返すのかと、こういう問題について、もう佐世保を出て二年間たっているんですから、ぼつぼつはっきりしてもらうべき時期じゃないかというふうに私は思うんですよ。大臣、どうでしょうか。
  142. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) その前にちょっと。  「むつ」が入りましてからの風評で魚価が低落したということはないわけでございますが、長崎県においてなぜこういう風評による魚価安定基金が持たれたかということにつきましては、長崎は次前に来園の原子力潜水艦ソードフィッシュ号事件とか第三水俣病とか、そういったことで風評によって魚価が低落したという過去に苦い経験を持っておるものですから、この「むつ」の問題について神経質になっておるわけでございます。  で、先生は、まさにそろそろこの風評がなくなったという認定をすべきではないかという御意見がございまして、我々もそういうことで、何といいますか、長崎県と具体的な話し合いに入っておるということでございます。ただ、まだ佐世保で「むつ」が修理され、冷態停止の状態でございますので、これからまたいろいろな点検も行っていくような状況にもございますし、そういう状況の中で「むつ」が佐世保にあったという事実はいまだに残っておるわけでございますので、そこら辺との関連におきまして、地元の方々も納得し得る形で、了解し得る形でこの認定をしたいと。一方的に認定をするということにつきましては、過去におきます地元の御協力等々の経緯にも関連いたしましていかがかと思いますので、お話し合いを続けてまいりたいと思っておるわけでございます。
  143. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 念のために申しますけれども、私は今性急にこの二十億をすぐ直ちに引き揚げよとか、そんなことを言っているものではない。ただ、少なくとも政府の公式文書でこういうふうに書いている以上、これはどういう形でどういう段階へ来たときに返還させるものとするということになるのか、そこの考え方をはっきりしてもらいたい。そうしないと、結局、返してもらう建前だと言いつつ永久にあそこに置かれておるということじゃないかというふうな疑念が発生せざるを得ない。だから、そこの考え方をはっきりしてもらいたいというふうに言っておりますので、ぜひこの点は長官、ひとつ督励をしていただいて、必要な協議なり必要な作業なり、そういうものを進めていただきたいというふうに思いますが、長官から。
  144. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) この魚価安定基金の設定された経緯、そしてまたその間のお話し合い等から考えまして、そろそろこのような返還の話し合いをやってもよろしい時期がやってきているのではないかと、このように私も認識をいたしておりますので、事務当局に十分に話し合いをするように命じておるところでございますので、いましばらく関係者の話し合いをさしていきたいと思っております。
  145. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それでは、あと残っている時間、法案の問題についての質問でありますが、この委員会でも既に先日来同僚委員からも議論が出ていますように、政府原案で言う統合の暁、原子力研究所における従来の業務の運営の基準、すなわち原子力委員会原子力安全委員会の議決を経て内閣総理大臣が定める基本計画に基づいて行うものだというこの規定と、一方、原子力船研究開発事業団、この場合には、基本法の精神にのっとり原子力船開発及び研究を行うという、こういう規定の仕方が今度の改正案に引き継がれて、言うならば新しい原子力研究所の業務運営の基準が二元化をすると、こういう形になっておる。このことは、ひいては原子力研究所の変質になっていくおそれなしとしない。こういう議論がいろいろ出てきたと思うんですけれども、私もそういう危惧を感ずるわけです。  それで、政府説明としては、いや原船事業団というのが時限立法的性格で発足をしたので云々とか、いろいろ説明されていますけれども、この今回の新法、改正案の規定に当たって、いわば第二十四条第一項に一本化をして何かぐあいが悪いことがあるんですか。
  146. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 業務運営の基準を二本立てにいたしましたことにつきましては、内閣総理大臣及び運輸大臣が共同して監督を船の部分については行うわけでございますが、その場合に、内閣総理大臣が専管の部分とそれから運輸大臣と共管の部分、こういったものを仕分けをするということがいわば行政を進めていく上での責任を明確にするという意味からも必要なわけでございますので、そういうことで共管部分と専管部分との基準を区分する、そういう必要性もございまして二本立てにしたということでございます。
  147. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 まだそれでもちょっと納得できませんが、この法案でも、三十八条でしたか、科学技術庁長官への総理大臣からの委任、これを定めておる。その内容の是非はともかく、共管と言い ながら、こういう大臣への委任規定もできるわけですからね、そういう形で。しかし、根本のところは、第二十四条第一項にうたうような原子力船開発のための研究という業務、これについても原子力委員会、安全委員会の議決を経て総理大臣が定める計画に基づいてやっていくんだという、これに一本化をすることがなぜ不可能なのか、法技術的に。私はそうじゃないだろうと思う。
  148. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) お答えいたします。  基本計画、この運営の基準というのは相当複雑多岐にわたるものでございますので、先ほどの大臣の権限の委任があるじゃないかということでございますが、これは総理府の中にございます各庁につきましては内閣総理大臣仕事を実質上各庁の長官が行うという形で、これは極めて明快に業務の移管ができるわけでございますが、この業務運営の基準が、非常に複雑なものを区分けするということは非常に難しい話でございますので、はっきり基準のところで区分しておくということがすべてを明確にするという意味で必要なことと考えておるわけでございます。
  149. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 納得できませんけれども、ちょっと時間がありませんし、ほかの問題へ移ります。  役員の欠格条項、兼職禁止、その問題もありますけれども、この委員会でまだ出ていない問題かと思うんですが、三十二条で政府の補助金支出規定、これを削除していますね。一体なぜこういうことをするのか。削ったからといって実態は変わりませんというふうに、事前のレクの段階ではそういう御説明でしたけれども、これが削られるということによって、昨今の臨調行革が背景になって新しい原子力研究所への政府の補助金が削減される、そういう方向に向いてくるんじゃないかという、そういう不安が出ているわけです。ですから、この規定のゆえにそういう予算を、補助金を削るというものでは断じてないというふうにこの席上で明言できますか。
  150. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 補助金規定、三十二条に関することでございますが、原研法ができました当時、昭和三十一年でしたか、原子力研究所は我が国の原子力開発中心的機関として設立されまして、その当初におきましてはまさしく原子力開発の緒についた段階ということで、政府の財政的な援助姿勢というものを明確にするということから法律上の補助金規定が設けられたというぐあいに理解しておるわけでございます。  しかしながら、原子力研究所もそういう意味では拡大してまいったわけでございますが、その後、単純に補助金の交付を目的とする規定は設けないということを、法律の中に設定しないということを政府方針として昭和三十八年九月十三日の閣議決定において決めたわけでございますが、このことによりまして、新しくできる、あるいは法律改正をするというような段階では、こういう補助金の規定につきまして削除をしてくるということで、従来からほかの法律についても行われておるわけでございます。  そういう意味で今回この規定を廃止したわけでございますが、財政当局とも当然この法律案審議の段階において協議しておるわけでございまして、従来からの補助対象に何ら影響を与えるものではない、この規定が削除されたからといって、予算が、補助がなくなったり、そのゆえをもって減少したりして、日本原子力研究所の業務の遂行に何ら支障を与えるようなことはないということで削除をしたものでございます。  ちなみに、現在の日本原子力船研究開発事業団法においては、国の法律的な補助規定はないわけでございまして、これまで予算的にも補助金につきまして十分な予算が計上され、業務の遂行が円滑に行われてきた、こういうぐあいに理解いたしております。
  151. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 あと一つ。  先日私も原子力研究所を訪問をいたしまして、さっきも紹介ありましたように、何人かの研究者の方からいろいろ御意見を承ったわけでありますが、言われていますように、とにかくこの統合、勇んでそれを引き受けてやろうというふうに私は聞き取らなかったんです。その言葉と、やっぱり胸のうちに何を考えておられるのかというのをよくつかみ取らぬといかぬということ。現に原研統合の対象として選択をされたということについて誇りを持ってますという、これは科学者、研究者としてのそういう日常の研究についての一つの自負と、それと同時に、無理やり原子力船事業団と統合をしなくても、舶用炉研究原子力研究所でやってくれというんだったら受けて立つ気はありますと、こういう気持ちもそこに秘められているわけでありますから、私はそういうふうに受け取ったということであります。  質問をしたいのはこういうことです。研究者の代表の方が、もしも原研原子力船開発のための研究を引き受けるということになっても、今までのデータをうのみにするのじゃなくて、自分の目と手でとことん納得ができるまで確かめをやりたい、それが科学者としての気持ちだ、ひとつそういうことがとことんやれるように保証をしてほしいと。これは政府なり国会なり原研理事長を初めとする理事者の方なり、ここに対してのそういう科学者としての痛切な叫びだと思うんです。こういう点について、本当に科学者が納得できるまでとことん確かめるべき点は確かめるという、この研究所運営の基本精神といいますか、この点については当然のこととして、大臣、その気持ちをしっかり受けとめ、そういう立場に立って今後やってもらうというふうに確認をしていいんでしょうね。
  152. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 日本原子力研究所の伝統的な高い見識と、そしてその成果を十分に踏まえて今後とも統合成果を上げていただきたいと思っておりますので、十分に所管大臣としてこの点については、新しい姿の中で原子力研究所の方にも認識をしていただいて進めてまいりたいと思っております。
  153. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回は六月二十九日午後一時開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時十四分散会