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1984-04-18 第101回国会 参議院 科学技術特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十八日(水曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――    委員異動  四月十三日     辞任         補欠選任      柳澤 鋳造君     山田  勇君  四月十六日     辞任         補欠選任      小野  明君     稲村 稔夫君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         高木健太郎君     理 事                 古賀雷四郎君                 林  寛子君                 本岡 昭次君                 塩出 啓典君     委 員                 江島  淳君                 長田 裕二君                 亀井 久興君                 後藤 正夫君                 成相 善十君                 福田 宏一君                 安田 隆明君                 稲村 稔夫君                 松前 達郎君                 伏見 康治君                 佐藤 昭夫君                 山田  勇君                 野末 陳平君    国務大臣        国 務 大 臣          (科学技術庁長官岩動 道行君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      安田 佳三君        科学技術庁計画        局長       赤羽 信久君        科学技術庁研究        調整局長     福島 公夫君        科学技術庁振興        局長       村野啓一郎君        科学技術庁原子        力局長      中村 守孝君        科学技術庁原子        力安全局長    辻  栄一君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    説明員        人事院事務総局        給与局次長    藤野 典三君        外務省経済局国        際科学技術博覧        会室長      鹿野 軍勝君        資源エネルギー        庁公益事業部開        発課長      渡辺 光夫君        資源エネルギー        庁公益事業部原          子力発電課長   高沢 信行君        資源エネルギー        庁公益事業部原        子力発電安全審        査課長      末廣 恵雄君        建設省計画局総        務課長      浪岡 洋一君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (科学技術振興のための基本施策に関する件)     ―――――――――――――
  2. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。  去る四月十三日、柳澤錬造君が委員辞任され、その補欠として山田勇君が選任されました。  また、四月十六日、小野明君が委員辞任され、その補欠として稲村稔夫君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) 科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、科学技術振興のための基本施策に関する件を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 私は科学技術素人でございますので、きょうは御教示を賜るという意味も含めましてひとつ質疑をさしていただきたいと思います。  日ごろから科学技術に対して格別の御努力をいただいていることをこの席をかりまして感謝を申し上げます。  先般、科学技術庁長官所信表明がございました。それに関連しまして若干の質疑をさしていただきます。  所信表明の中に、これは文言的なことですが、原子力船むつ」の問題に関しまして「政府自民党内において検討を行うこととしております。」ということが書いてありますが、これはひとつ、こういう文句は所信表明の中には入れていただきたくないという希望を申し上げておきます。やはり政府がこの問題を行政的にやっておられますので、与党ではございますけれども、そういうことをひとつ御注意申し上げておきたいということでよろしくお願いします。答えは要りません。  まず第一に、今後、科学技術の進展は、我が国が二十一世紀を迎えるに当たって非常に重要なことでございまして、これがいかに発展していくかということが、今後の日本の運命を決めるといったような事態も考えられるものでございます。その中で科学技術庁任務も非常に多いわけでございまして、ただいま懸命に努力されておりますが、各省庁はみずから所掌の範囲内でそれぞれの試験研究機関を持っておられ、そこでやっておられる。そういうものと科学技術庁役割を果たすために科学技術振興調整費というものも考えられているんでしょうけれども、私はもっと科学技術庁各省研究機関をまとめて、科学技術のいろんな問題につきましてヒヤリングをやりながら進めていただきたいと心から念じておるものでございますが、この点についてはどうやっておられましょうか、ひとつお伺いを申し上げます。
  5. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) 御指摘のとおり、科学技術行政あるいは研究開発、各省庁がそれぞれの行政目的に応じまして熱心にやっておられるところでございます。ただ、縦割りということがございまして、科学技術のことでございますから、各省庁目的という縦の目的のほかに、科学技術水準が横の連絡によって上がっていくということもございますし、また基本的な科学技術については共通問題も出てくる、そういうことの調整科学技術庁はしなければならないのではないか。そういう意味におきまして、科学技術が進歩し、境界領域が発達し、また財政も困難である今日、科学技術庁役割はますます高まって、それだけの責任を我々感じていかなければならないのではないかと承知しております。  内容的に申し上げますと、関係行政機関、各省庁のやります科学技術事務総合調整するという任務が第一にございます。具体的には、各省庁研究開発予算見積もり方針調整する。具体的に申しますと、各省庁研究開発を聞きまして、足りないところは補い、重複は整理をしというような形で、大蔵省に対して見積もり方針調整する意見を出すということをやっております。  それから、科学技術庁みずからといたしましては、共通的な基盤的な技術研究、例えば金属とか無機材料とかといったものをみずからやりますし、それから各省庁枠組みを超えた大型の原子力、宇宙、そういったものもみずからこれは総合してやっているわけでございます。  また、私ども事務局をしております科学技術会議におきまして、さらに広い立場から政府科学技術行政方針を立てていただいている、そういう枠組みでございます。  やはり各省庁の持ちます力を、大学や民間も含めまして、発揮させるというための総合調整機能をますます充実さしていきたいと考えておる次第でございます。
  6. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 実はこの前からサンケイ新聞に、むだ遣いが多いのではないかということが出ております。これはどういうことか知りませんけれども、よく私も調査いたしておりませんが、予算が少なければ少ないほどやはりそれぞれの試験研究機関と十分調整して、そして予算を効率的に使うということが大事ではないかというふうに思うんですが、そういう意味で今後そういう役割をやっていただけるかどうか、またやっていただかなければならないと思いますので、ひとつその辺の決意のほどを聞いておきたいと思います。
  7. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) むだ遣いということも研究の場合非常に判定が難しゅうございますが、やはりこれから財政を立て直すというときにおきまして考えていかなければなりませんのは、例えば重複研究を全部排除してしまうというのは必ずしもよくない。と申しますのは、それぞれ出発点が違う、観点が違う、あるいは専門立場が違うというようなことも生かさなければならないわけでございます。ただしその場合に、研究すべきポイントをどこに置くかということをきちっと焦点を合わせてやるということも大事でございます。それから同じ目的に対しまして研究方法計画、手段、そういったものをより有効に安く上がる方法がないだろうか、そういうことを詰めることも大事でございます。  こういうのは一例を申し上げたわけでございますが、そういった角度で少ないお金でもできるだけ多くの効果を上げる、しかも競争原理も刺激として重要でございますからそれも失わせない、そういった考え方が重要でございまして、これは私ども各省に当たりますときもそうでございますし、科学技術会議も新しい方針を立てるに当たりまして十分検討し、近く答申になるはずでございます。
  8. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 特に私は最近官庁の、私も官庁に長らくおりましたけれども縄張り争いというものは激しいものでございまして、パーキンソンの法則でだんだん大きくなるばかりだということもございます。したがいまして、自分の権限をふやすことは非常に熱心であるというふうに考えますが、いささかもそういうことがあってはならないであろう。特に、科学技術が総合的な技術である限りにおきましては、各方面にわたる問題が多いわけですね。そういう中で調整をうまくやっていくということが非常に大事ではないかというふうに考えておりますので、念のために私はそういうことを申し上げて、それらの予算縄張り争いによってつくられないようにひとつぜひ御留意を、調整お願いしたいというふうに考えております。  先ほど話がありましたが、重複する予算で回り道があったりあるいは直線でいったり、いろいろする問題があると思います。これはお互いの競争意識の問題も起きてきてかえって研究が弾むのではないかと思いますので、決してそれを否定するものではないということをひとつ御理解を賜っておきたいと思います。お答えは要りません。  それから、具体的な問題で、ことし調整費がどのくらいついているか、それから今後調整費をどう使おうとしているのか、そういった問題についてひとつ教えていただきたいと思います。
  9. 福島公夫

    政府委員福島公夫君) お答えいたします。  本年度は六十三億円つけていただいております。昨年度が六十一億五千万円でございますので、一億五千万円ふやしていただいております。  御高承のとおり、振興調整費使い方というのは、科学技術会議の方で基本的な方針というものを立てでございます。その基本方針、例えば先端的、基礎的な研究推進とか、複数機関協力を要する研究開発推進、あるいは産学官有機的連携強化等、こういうようなもの、あるいは国際協力もやりなさいというような基本的な方針が立っているわけでございますが、各年度ごとに、科学技術振興調整費運用考え方及び具体的運用についてということも科学技術会議の方で決めていただいております。五十九年度につきましては、現在科学技術会議の方でその具体的運用についてということを検討している最中でございます。五月に入りますとこれができてくるというふうに考えておりますが、私ども事務局科学技術会議先生方と相談しながら進めているところは、昨年来重点的に取り組んでおりますライフサイエンスあるいは材料科学技術極限科学技術というようなものは引き続き重点項目として続けたいと思いますが、特にがん研究について重点的に取り上げていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  10. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 調整費扱い方については、科学技術会議がある程度方針を定めて、それに従ってやっておられるというお話でございますが、私は調整費役割は非常に重要な役割を果たしていくだろうという気がいたしますし、したがいまして調整費使い方というのは、一省に偏るとかいうことなく、その重点項目についてひとつできるだけ調整をしていただくということにお願いをいたしておきたいと思います。今、がん対策につきましてお話がありましたが、全く同感でございますので、そういった重点項目について積極的な調整費使い方とか、いろんな問題をひとつ推進していただきたいというふうにお願いをいたしておきます。  ところで、私、日本学術会議の問題とも若干関連いたしまして、これも選挙法が変わりましたし、これから体制が整えられると思いますが、まだ実際は整っていないと思いますが、科学技術会議日本学術会議との関連につきましてはどういうことなのでしょうか、いろいろその内容につきましてお伺いをいたしたいと思います。
  11. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) 設置目的が違っておりまして、日本学術会議は、我が国科学者意見、これを内外に対して代表する機関というのが一番主な趣旨でございます。それに対しまして科学技術会議は、大学におきます研究も含めまして、関係行政機関施策総合調整任務とする、これは内閣総理大臣諮問機関でございます。機関としては全くそれぞれ独立した機関でございますけれども、普通、諮問機関同士は直接つながらないのが一般でございますが、本件だけはちょっと異なっておりまして、日本学術会議への諮問とか、それからその勧告に関する重要事項につきまして、関係行政機関施策総合調整の必要があるときは、内閣総理大臣が改めて科学技術会議諮問いたしまして、科学技術会議意見を聞いた上で学術会議考え方を扱うという形が出ております。  それからもう一つ科学技術会議の決められました議員のうち一名は学術会議の会長が入られるということになっております。これも法定されております。それで、具体的には連絡部会というのを両方で設けまして、これは正規の諮問ではございませんけれども勧告等がありましたときに具体的な説明をし合い、議論をし合いまして、科学技術会議の総合的な調整の中に取り込んでいくという形をとっております。
  12. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 これはこのくらいにしまして、その次に流動研究システムというのがあるんですが、これも内容は書いてあるとおりでございますが、こういった、例えば創造科学技術推進制度というのが実際にどういうぐあいに行われてきたか、その点につきまして、テーマを教えていただきながらひとつ御報告を願いたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
  13. 村野啓一郎

    政府委員村野啓一郎君) 御指摘創造科学技術推進制度でございますが、これは、従来我が国研究がいわば後追い型と申しますか、欧米でやりましたものを後を追う形で行われてきたわけでございます。それからまた、研究者がある特定研究所の中で流動しない、その中で固定化してしまうというようなことがありまして、そういったことが原因で日本科学技術創造性が余りないというようなことが言われてきたわけでございます。  そこで、五十六年度から創造科学技術推進制度という制度を取り入れまして、これは、ある立派な学者の方にプロジェクトリーダーになっていただき、その方にスタッフの選定なりあるいは研究計画なりをすっかりお任せいたしまして、この方々が若い優秀な科学技術者を集めまして、特定プロジェクトにつきましての研究をいたしまして、五年間に、一応五年間という期間を限りまして、その間に新しい次の時代の科学技術の芽になるものを開発する、こういった研究制度を取り入れているわけでございます。五十六年度には四プロジェクト、以後一プロジェクトずつ加えまして、現在六プロジェクトが進行しております。  それで、最初の四プロジェクトにつきましては、既に二年を過ぎておるわけでございますが、昨年その中間報告を、報告会をいたしましたところ、大変評判を呼びまして、大勢の方々がその報告を聞きに来られたということもございまして、今後立派な成果が上がるということを期待しておるわけでございます。今後もこういった制度を進めてまいりまして、この流動研究システムを使いましての創造科学技術推進をやってまいりたい、こういうわけでございます。
  14. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 私、そのテーマがどういうものがあるかをちょっと教えていただきたいんですよ。私は、これから先非常に有用な科学技術の進歩の段階を期するわけですから、そういうものがどういうぐあいに中間報告でも、また研究成果がどうなったかといったことを検証しながら新しい技術が生まれてくるし、科学技術が生まれてくるというぐあいに理解しておりますので、そういう意味テーマはどういうことをやっておられるか、ひとつ参考のために教えていただきたい。
  15. 村野啓一郎

    政府委員村野啓一郎君) 五十六年度に発足いたしました四プロジェクトは、一つは超微粒子と申しまして、金属を非常に細かい粒子にいたしまして、そういたしますと金属の性質が一変するというようなことで、いわゆる超微粒子プロジェクトというのを現在進行中でございます。それから、特殊構造物質というグループがございまして、これは、例えば金属の表面に特定の気体の原子を打ち込むというようなことによりまして、全く新しい機能を持つような金属なり素材を開発する、そういったことをやってございます。それから、ファインポリマーと申しまして、高分子でございますけれども、例えば電気を通すというような新しい物質を開発する。さらに、完全結晶と申しまして、結晶体の非常に大きな完全な結晶、つまり來雑物のない、極めてファインな結晶をつくって、これが例えばエレクトロニクスその他で新しい素材となる、素子となるというような研究をしてございます。  さらに、以上四つは大体物理系研究でございますけれども生物系研究といたしましては、一つはバイオホロニクスという新しいシステム研究、それからこれは五十八年度に発足いたしましたが、生物情報伝達ということで、生物の例えば頭脳の中の情報伝達システム、そういったものを解明をいたしまして新しい科学技術の芽を探そうと、こういうことをやっておるわけでございます。
  16. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 ありがとうございました。大変立派な研究をやっておられるようでございますので、一層成果の上がることを期待をいたしております。  がん問題につきましては、大臣所信表明で非常に強くそれの推進についてお話がございましたので、一層ひとつこの問題につきましては御努力をいただきたいと思います。  そこで、がん対策については科学技術会議でも方針を出されておりますし、また政府でも対がん十カ年計画を出されている。そういった中で余り食い違いはないと思いますが、そういった対策のもとにこの問題が進められることは非常に結構なことでございまして、ひとつこれらの中身につきまして、それからまた大臣決意につきまして、再度お伺いしておきます。
  17. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 今お話のありましたがん対策は、人類のためにも大変大事な分野でございますので、現内閣におきましても最重点項目としての取り組みをやっていることは御案内のとおりでございます。そしてまた、十カ年計画を立てて、まずがん本態究明、そして早期の発見、診断、そして治療、これもやはり厚生省の所管事項分野もございまするし、あるいは文部省の大学研究機関等分野もございまするし、また当庁といたしましては、理化学研究所でありまするとか、あるいは放射線医学総合研究所でありまするとか、そういうところで基本的な共通的な問題を解明するということで取り組んでおります。特にまた治療につきましても、放射線医学総合研究所では、例えば子宮がん等につきましてはかなりの治癒の例が出てきておりまして、相当自信のある対策が具体的にも成果を上げてきております。しかし、本態究明、そしてまた大変難しい病気でございまするのでなお一層努力をして、特に科学技術庁におきましては、共通的な基盤的な研究を中心としてこれからも進めてまいりたいと思っております。詳細についてはまだ政府委員の方から御答弁を申し上げます。
  18. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 ひとつせっかく人命のことにも関しますので、ぜひひとつこの問題の推進に格段の御努力を強くお願いしたいと思います。これ以上は質問はいたしません。  そこでその次に、原子力の問題と関連しまして、今回問題になりました原子力船の問題、「むつ」に関連した問題でございますが、この原子力船という問題はいわゆる舶用炉設置を要するわけですが、将来性とか利用可能性といったような問題についてはどういうふうにお考えですか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  19. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 原子力船につきましては、化石燃料であります石油石炭等によります在来船では困難と見込まれているような商船高速化あるいは長期運航といったような特有な性格もございますし、こういった面では、海上輸送の需要の出方によりまして、在来船ではなかなか達成できないものを原子力船ならば達成できるという可能性もあるわけでございますが、一般的に申しまして、現在のところ経済性の点で当面は在来商船に太刀打ちできないという状況にございますが、昨年十一月原子力委員会原子力船懇談会でまとめた報告書にもございますように、原子力船実用化時期につきましては今すぐ確たる見通しを得るということは容易ではございませんが、中長期的には石油需給が逼迫化する傾向にあるということもございますし、それから、舶用炉プラントコスト低減化の余地というものが今後十分あるわけでございますので、こういった努力と相まちまして、二十一世紀には原子力船実用化のための経済環境が整うのではないか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  20. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 私も、原子力船必要性は、海洋国日本としては必要になるのではないかというふうにおぼろげながら見通しが立てられるのではないかと思います。しかし、今回の「むつ」問題につきましては、いろいろと社会経済あるいは政治、いろんな面に関連するところが多いのでございまして、その辺の取り扱い問題につきましては、非常に慎重を要するというふうに私は理解をいたしております。  そこで、科学技術に伴う一つの問題としては、やはり若干のそごはあっても将来の必要なものに ついてはやっぱり推進していくべきであろうということを考えておりますが、特にきのうの読売新聞ですか、下北の核燃料サイクル基地をつくるということは「通産、科技庁が了承へ」ということが出ております。「きょう首相にも要請」と。従来からいろいろと言われてきたところでございますが、「むつ関連としまして関根浜港をつくったと、また、ただいまお話ししましたように、下北半島の核燃料サイクル基地がいろいろと提案されているということになりますと、まあむだ遣いは若干あるかにしても、関根浜港の多目的利用ということは考えられるのではないかなというぐあいにおぼろげながら素人で見ておるわけですが、そういった点どうでしょうか。
  21. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 関根浜港につきましては、御案内のように、いわゆる五者協定によりまして現在大湊に仮停泊しております「むつ」を、いつまでも見通しのないままその港に泊めておくということではなくて、お約束に従って新しい港、すなわち関根浜港へ回送するという必要があるわけでございますので、そういう意味でこの港の建設にも着手しておるわけでございます。この港は、その意味におきましても「むつ」をいわゆる停泊させる港ということで現在計画を進めておるわけでございます。一方、核燃料サイクルの諸施設について青森県下に設置をしたいという電気事業者サイドの意向がだんだんと煮詰まってまいりまして、本日たしか社長会でその点が検討されておると承知しておりますが、この再処理、濃縮及び低レベル廃棄物の長期貯蔵施設、こういったものの建設とこの関根浜港の建設というものは特に関連づけて考えられているものではございません。  関根浜港の多用途利用につきましては、この青森県の下北地方の全体の経済が発展していけばいろいろな資材の流通も多くなるだろうし、そういう意味での流通港湾ということとしての考え方もひとつ将来出てこようかと思います。青森県当局は下北地域開発基本構想というものを五十八年九月に決めておりまして、長期的には関根浜新定係港について流通港湾としての一般的な利用の検討を行うということの見解を示しております。当庁といたしましても、この関根浜港、今すぐというわけじゃございませんが、長期的にはこういった県当局とも十分連絡しながらこの多用途利用について考えてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  22. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 ぜひそういった方向でひとつ問題を解決していって、むだ遣いをできるだけ少なくするようなことに御努力を願いたいと私は思います。  最近のサンケイ新聞にも我々の同僚の、同僚というか先輩議員の方がいろいろ言っておりますが、研究開発段階におきまして評価を行ってやったらどうだというような御意見があり、この前の科学技術特別委員会でもそういう提案があったように記憶をいたしております。研究評価は時々刻々行われているでしょうけれども、小さいものは別としまして、非常に大きな課題を投げかけられている問題につきましては研究評価を十分やって、ひとつ新しい発展方向にするようにした方が間違いがなくていいのではないかという気がいたすわけでございますが、さて、そういった研究評価制度の問題につきまして、いろいろと新聞等でもありますが、その点についてどういうふうにお考えになっているか、それらの問題を今後どうするつもりなのか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  23. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) 御指摘のように、研究開発を有効に行いますには評価が非常に重要なわけでございます。特に基礎研究の間は、先ほども申し上げましたように、余り細かくつつくというのも自由な発想を妨げるかもしれませんけれども、お金が大きくなります応用段階、開発段階に向かいますに従いましてよく考えなければいけない。その際考えます要素としましては、技術的な可能性がどれだけあるのか、可能性が小さければ基礎研究をもっと充実するというステップが必要なわけでございます。それから、社会や経済への影響がどうなるか、これは公害等マイナス面も含めて、あるいは人間性と矛盾しないかというようなことも含めました影響の評価、それから使います資金、人材等を最低にするにはどうしたらいいか、こういった評価が必要なわけでございます。  現在、我が国では別の機関で評価をするという形はとられておりませんで、例えば原子力委員会、宇宙開発委員会、こういったプロジェクト計画し管理する機関が自分自身で評価を行いまして、それを財政面とか科学技術の総合的な面から横から意見と言っていくという形がとられているわけでございます。外国にありますような第三者機関を設けるのがいいかどうかという問題がございますが、やはりコンセンサスを得つつみんなで納得して一番いい道を見つけていくという我が国のまた一つのよい点でもございますので、そういった面を生かしながら評価制度をさらに充実させるのはどうしたらいいか。科学技術会議としまして現在研究調整費の評価というのを一つ委員会を設けてやっておりまして、この実例を踏まえながら将来一般論も検討していこうという段階に来ておりまして、その結論を待ちましてさらに制度の充実に着手したいと考えております。
  24. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 評価制度につきましては、問題の大きさによって当然仕分けされるべきであって、私は大きな政治課題あるいは経済課題となるような問題につきましては何らかの措置が必要ではないかということを考えておる一人でございます。したがいまして、この辺につきましては科学技術庁で十分研究をしていただきまして、そういった問題によりよい科学研究開発ができますようにひとつ御努力を願いたいと思っております。科学技術庁は常々評価を行いながら次のをたんたんと進めておられますので、この点についてはもう余り私は心配はしないんですけれども、やっぱり非常に社会的に問題であるというような問題については、ひとつこういうことを考えていかなければならないのではないかというふうに考えますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。いろいろ申し上げたいことはございますが、時間の関係もございますのではしょらせていただきます。  この前、放送衛星が打ち上げられまして成功したことを心からお祝いを申し上げます。私、残念ながら行けなかったんですが、途中何か放送アンテナの一つが壊れてという御報告を受けましたので、ちょっと心配をいたしておるところですが、予備があってそれを使ってやるというようなお話がございましたので、まあ何とかやっていけるかなという感じがいたしております。  今後、宇宙開発というのは残された大きな課題でございますし、また空間利用の大きな問題もございますので、そういう意味では非常に大事だ。しかも、五年後ぐらいには二トン衛星を打ち上げたいというお話を承っております。  そこで、衛星を打ち上げるというのは莫大な金が要るわけですね。その間におきまして大変な労力と人材が必要である。そういう意味で、できれば多目的に使えるような方向でひとつ今後検討をしてもらう必要があるのではないか。今通信衛星とか放送衛星とか、単一目的が非常に多いわけでございます。また、衛星も小さかったからそういう段階であったろうかと思いますが、今後大きな衛星を打ち上げるならば、そういった問題に積極的に取り組んでいただきまして、衛星の利用価値を高めるようにひとつぜひお願いをいたしたいと思いますが、御見解を承りたいと思います。
  25. 福島公夫

    政府委員福島公夫君) お答えいたします。  アメリカあたりで初期の開発の段階におきましては、二つの目的をあわせたような衛星というものをつくられたようでございます。ただ、現在ではほとんどの場合みんな単一目的ということで衛星がつくられております。と申しますのは、衛星が利用目的によりまして、例えば衛星の軌道とか姿勢制御の精度の問題、あるいはいろいろの要求条件というものが異なるために、違ったミッションのものを重ねるということは非常に難しい問題でございます。私ども、宇宙におけるいろいろな条件というものを勉強しようとするために、技術試験衛星というようなものをつくっておりますが、これはそういうことを踏まえていろいろなものを集めてやってきております。今後打ち上げようとしております技術試験衛星V号につきましても、いろんな目的をできるだけ数多く効率的に使おうということでやっております。  ただ、今日ではむしろ、通信衛星にしましても放送衛星にしましても、できるだけ大きな衛星にして、キャパシティーを上げて経済性というものを高めようという方向で世界は走っているわけでございます。ただ、先生のおっしゃるように効率的なものということを考えた場合に、大きな衛星を打ち上げることのできるロケットを用いまして、例えば二つの衛星を同時に打ち上げるというようなことは今後考えられるのではないかと思っております。しかし、いわゆる衛星だけを考えますと、割合かえって単一目的のためのものをつくる方が効率的ということで現在進んでおるわけでございます。
  26. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 単純にそういうことを考えたらどうかということを申し上げたわけですが、いろいろそういったお話のようなことがあるとすれば、どうか衛星を効率的に使う方向でひとつ御検討を願いたいと思います。  実は時間もありませんが、科学技術を振興していくためには、研究者の養成が非常に大事だと思うんですね。これは教育すべてを通じてやっていかなきゃいかぬ問題でございますので、非常に幅広い養成が必要であろうと思いますし、またベースの問題には、国民に対する科学技術に関する啓蒙といいますか、どういった意味か、そういったことについて興味を持たせるということも非常に大事なことであろうというふうに考えるわけです。そういった点につきまして、皆さん方がどういうふうに今後研究者の養成を図っていこうとされているのか。流動研究システムとかいろんなものをやって具体的には進んでおるようですが、幅広いベースを持つということが今後科学技術の振興に大いに役に立つという意味で、ひとつ今後それらにつきまして格段の御努力をいただきたいと思いますが、この点についてどういうふうにお考えになっておりますか。  それをお答え願うと同時に、各省にも大学にも試験研究機関がたくさんあるわけでございますが、私は、研究開発の奨励の観点からいろんな方策を考えてもしかるべきではないかというふうに考えるわけでございます。今科学技術の新しい発明、発見とかいろんなことにつきましては、科学技術庁でも表彰をやっておられる、各省でもやっておられるというふうに聞いておりますが、そういった点につきましてもっとひとつ積極的な問題を取り上げていただきたいと思います。  また、先ほどの問題に関して、研究者の養成のためにも、研究職という職はございますが、どうもいろいろ話聞いてみますと、給与号俸が低くて、本一冊もなかなか買えないといったようなお話を諸先生から承るわけでございまして、こういった点についてもひとつ今後の配慮をどうされるか、お聞きしたいと思います。
  27. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) まず私から、研究者の養成の問題、お答え申し上げます。  御指摘のとおり、全く研究開発は人でございまして、この人を我が国のそれぞれの段階に応じていかに養成するかということが一番基本でございまして、科学技術会議を含めまして、昭和三十年代にはやはり量的な不足を補うように教育機関の充実、それから新しい分野に対応するような専門に重心を移すこと、そういったことの意見を出しまして、現在では量的には相当の充足がされていると考えております。ただし、問題としまして、やはり次々に新しく開発され広がっていきます新しい分野に対する人材の即応とか、それから昨今言われております創造性豊かな人材を特に若いときからそっちの方に才能を伸ばしていく手段とか、それからさらに社会で教育する方法、これはやはり研究一つの経験とか勘とかを養うということが大事なことでございますから、そういったことについての社会的なシステムと申しますか、そういったことを考えていかなければいけないということが指摘されておりまして、科学技術会議でも議論しておりますし、またそれを今後の教育審議会にも反映できたらと考えておるわけでございます。  最後に御指摘ありました研究職でございますが、国家公務員、国立研究所につきましては、研究者研究職という特殊な位置づけでございます。これはライン的な処遇ではなくて、研究能力、研究成果に応じまして格付をしていく、したがいましてそれに応じた給与、処遇等も別途決められているというわけでございます。ただ、大学の教員に比べまして若手の方の処遇がちょっと悪いということで、かねてから人事院に毎年改善を要望してまいりまして、少しずつではございますがかなえられているところでございます。そういった研究職におきまして、本を買う金がどれだけ見られているかということははっきりはしないんですが、やはりそういう特殊な職業に基づいた優遇をするという基本的な立場は人事院においてもとられております。今後もさらにその努力を進めていきたいと思っております。
  28. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 人事院から今のお答えをお伺いしたい、簡単でいいですから。
  29. 藤野典三

    説明員(藤野典三君) 先生御指摘のように、研究職につきましては研究職俸給表を適用しておりまして、現在給与上の処遇につきまして、極めて大ざっぱに言いまして三つの点において優遇措置を講じておりまして、一つ研究職ということで特別の俸給表をつくりまして、毎年の給与改定の際に有利な改定を行っておることでございます。それから二番目につきましては、いわゆる部長とか課長とか室長とかという役職にこだわりませず、いわゆる研究業績なり研究内容研究能力等に基づきまして上位の等級への昇格の道を開いておる点でございます。それから三番目には、研究職二等級以上の職員につきましてはいわゆる俸給の特別調整額、一般的に申し上げますと、管理のポストにある職と同じような手当をほぼ全員に適用しているという形の現在は処遇をしておりますが、先生の御指摘のように、今後研究職の処遇につきましては、御趣旨に沿いまして十分な配慮をしていきたいと考えております。
  30. 古賀雷四郎

    古賀雷四郎君 どうかよろしくひとつお願いを申し上げます。  大体時間が参りましたので、あと一つだけ。  科学万博が筑波で行われるようになりまして、本当に御苦労様でございます。どうやら諸準備がだんだんと整いつつありますので、ひとつ成功を祈るのみでございます。  そこで、これは「人間・居住・環境と科学技術」という表題でございますが、これから大きな課題となる問題でございますので、この成功を祈るとともに、私は、先ほどの研究基盤と申しますか、科学技術の国民の認識を非常に広めてもらうということで、低学年向きのパンフレットをつくるとか、あるいは高学年向きのものをやるとか、一般国民向けのものをその際配るようにして、科学技術に対する認識を深めていただくということで、そういった機会を利用して、二千万人近く集まるということでございますので、そういったことが御理解をいただけるなら、ひとつぜひ実行していただきますようにお願いをして、私の質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。答弁は結構です。
  31. 松前達郎

    ○松前達郎君 きょうは、この前に続きまして宇宙開発問題と、それからさらに現在ESCAPの総会が行われておりますから、ESCAPの総会に関連した問題その他お伺いしたいと思うんですけれども、その前にスリーマイルアイランドの原子力発電所の事故に関して、これは恐らく今まで起きました原子力発電の事故の中では最も大きな事故だったと私は思うんですけれども、今回アメリカのDOEと我が国の間で、スリーマイルアイランド二号炉に関連しまして研究開発という内容で、調査その他あるんでしょうが、協力をするということが言われておるんですが、その金額が千八百万ドル、約四十億円というわけですね。これらについての内容は一体どういうものなのか、その点を一つ伺いいたしたいと思います。
  32. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) お答えいたします。  スリーマイルアイランドの復旧計画とそれからRアンドD計画の両方がございますが、全体といたしまして原子炉の安全性の確保の観点、それから廃棄物処理、プラントの内部の環境の整備、それから原子炉を開放いたしまして中から燃料を取り出していろいろ調べるというようないろいろなことがございますが、この全体計画のうち復旧作業につきましては、ある意味で当然のこととは思いますが、スリーマイルアイランドの所有者でございますゼネラル・パブリック・ユーティリティーズが実施をいたします。で、RアンドD計画の部分につきましてアメリカのエネルギー省が実施をするわけでございますが、このDOEの行います分野のRアンドDに我が国協力をする、こういうことでございまして、計画全体の費用は十億三千四百万ドルが予定されております。このうちRアンドD計画の費用は約一億九千万ドルと見込まれておりまして、このうちDOE、アメリカのエネルギー省が負担する金額が一億五千九百万ドルということで、日本は千八百万ドル、それに西ドイツが千八百万ドルを負担するという予定と聞いております。
  33. 松前達郎

    ○松前達郎君 費用はそれで日本が負担する、西ドイツと全く同じ金額ということを伺ったわけですが、その内容、RアンドDの計画というその内容について、大体その骨子があって、その計画に基づいてこの費用分担というものが決められたんではないかと思うんですね。その内容を簡単でいいですからお知らせいただきたいんです。
  34. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) RアンドD計画内容は、事故の解析評価を行うということも一つでございますが、事故によりまして汚染しております発電所の中の除染、それから廃棄物処理処分の技術の最適化のために必要な資料を取得するということでございまして、その放射線と環境の関係とかもろもろのデータを取得するほか、炉心につきましても実際にふたをあけて内部の状況を調べもろもろの機器の検査を行う、それから現地の実際の施設の状況についてのデータを取得する、こういうことのように承知しております。さらに廃棄物につきましても、実際のTMI、スリーマイルアイランドサイトにおきます液体廃棄物の汚染しました部分をどうやって除染をするか、そこで出た廃棄物の輸送というようなものについてもRアンドDは行いますし、アイダホ国立工学研究所におきまして搬入されます樹脂の処理処分に関するRアンドDを行うというようなこともございます。  大体以上のような内容でございます。
  35. 松前達郎

    ○松前達郎君 その計画に参加するのが、報道によりますと電力会社、それから会社で言いますと東芝、日立、三菱あるいは日本原子力発電、原研、原子力工学センター、こういったような企業が参加をする、こういうふうに言われておるんですけれども、この政府関係機関と企業との両方でこれをやっていく、そういった場合、費用の分担というのは一体どういうふうになっているんですか。全部政府が出すんですか。
  36. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) この計画への日本側の参加につきましては、資金は民間が分担いたしまして、政府機関としては原子力研究所が参加いたしますが、これにつきましては研究員を派遣していわば研究員の頭脳を提供する、こういう形で参加することにいたしております。
  37. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、お金の部分はとにかく企業が分担をする、それから研究員だけ出そう、こういうことで理解していいと思うんですが、それでは政府としてやるのは結局原研の研究員が行って調査をするということなんでしょうけれども、その結果、これについては公開しますかしませんか。
  38. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 取得されましたデータにつきましてどういう形で発表するかということにつきましては、この民間とアメリカとの間の関係で、具体的にまだちょっと承知しておりません。
  39. 松前達郎

    ○松前達郎君 これは原子力開発は、基本法の中にもあるんですけれども、公開というものが原則になっていますから、アメリカ側との打ち合わせ等、これも必要ですからそれを十分やっていただいて、安全性の問題というのはもうとにかく相当議論をされてきたわけなんで、ぜひ必要な分は公開できるように努力していただきたいと思うんです。また同時に、事故モデルとしては非常に貴重なモデルであると思うんですね。  それから、さらに今後廃炉問題が出て来ますね、日本の場合は。またそれが大々的な時期には入ってきませんけれども、もう近いうちに廃炉問題が出てくるから、廃炉の問題との関連もあるでしょうから、そういった面をぜひとも十分検討していただきたい、そしてその結果については公開ということでひとつやっていただきたいと、これは要望ですけれどもしておきたいと思います。  また同時に、安全性の問題についても、例えば原子炉のシミュレーションの中で、ぐあいが悪くなったときの安全性を確認するためのシミュレーションというのが実際のモデルで行われていないんですね、今まで。恐らく計算だけだと思うんです。随分前にこの委員会で議論したことがあるんですが、そのシミュレーションモデルについても、事故が何回も起きて、事故というかそういったような、それに類したものが起こったときのシミュレーションモデルを一つ決めておいて、それを計算でもって安全性を論議していくというやり方が、一つのモデルだけでやった場合にはそのモデルが常に基礎になりますから、何回やっても同じことですね。ですからそういう意味で、新しいその安全性に関するシミュレーションの基本データというものがぜひともこれから出てくるように私は希望しているんですけれども、その点も要望でございます。  それでは次に移りますが、ESCAPの総会に関連してです。  中曽根総理もこのESCAPの総会での演説で技術移転、テクノロジートランスファーの問題を取り上げているんですね。やはりESCAPというのは我々の身近の国々なんで、この点もやはり重要な問題だろうとは思うんですけれども、「開発のための技術」というのが主要なテーマだということになっておりますから、恐らく科学技術庁としましてもこれに何らかの形で関与をしているはずなんですが、ESCAPの総会について科学技術庁はどう対応されていますか。
  40. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) ESCAPの総会、御指摘のように、我が国政府としましては非常に前向きに対処するという方向を打ち出しまして、各省庁が全面的に当たっているわけでございます。科学技術庁といたしましても代表代理を派遣しておるところでございます。  ただ、「開発のための技術」というテーマが今度つきましたし、今までの事業を見ましても、すぐに役立つ技術を希望するという場面が多うございまして、そこで、通産省とか農林省とかの既に成熟しました技術を紹介し、あるいはそれに協力するという場面が多うございまして、残念ながら私ども科学技術庁としまして対応する場面が必ずしも多くなかったという状況がございます。  ただ、天然資源委員会、これは科学技術庁が窓口になるという割り当てがございますし、それから台風委員会、ここには専門家を派遣する、そういった対応はしてまいっております。
  41. 松前達郎

    ○松前達郎君 科学技術庁として、そのESCAPの主要テーマである開発技術関係の問題、「開発のための技術」という、これに対応する分野は非常に少ないと今おっしゃったんですが、それは範囲としては非常に狭いかもしれませんが、例えば食糧資源の問題一つを考えても、将来人口爆発が予測される中で食糧をどう確保するか、これは何も日本だけの問題じゃなくて、全世界共通の課題だろうと思うんですね。それにテクノロジーをどう導入していくか。例えば農業計画に合わせるテクノロジー、こういうものは恐らく科学技術庁は、例えば宇宙開発を担当しているわけですから、そういう面からの関連があるんじゃないかと思うんですね。  実は、私も三月にタイ国に行きまして、アジア農業シンポジウムというのをやってきたんですけれども、そのときにESCAPが支援をして共催をしたわけですね。この中で人工衛星を使った計画に対する基礎データ、農業計画の基礎データを出そうという、そういう各国とも非常に強い意欲を持っていたわけです。これは中国も含めてですね。そういうふうなことを痛感してきたわけなんです。  さてそこで、リモートセンシングというテクノロジーですが、これに関してちょっと質問させていただきますけれども我が国のリモートセンシングに関して、大きく見てみますと一定の政策がどうもないような感じを私自身持っているんですけれども、その点、科学技術庁としてはどういう政策を持っておられるか。私は一定の政策はないと感じているので、もしかありましたらひとつお答えいただきたいと思います。
  42. 福島公夫

    政府委員福島公夫君) お答えいたします。  リモートセンシングにつきましては、まだ利用技術を開発している段階ということでございまして、ユーザー各位と共同しまして、いかにリモートセンシングの技術が有効に使えるのかいろいろと勉強中ということでございますので、あるいは外から見るとリモートセンシングに対して一つの筋の通った政策はないんではないかと、こういうふうに思われても無理はないというふうに感じておりますが、私どもとしましては、御高承のとおり、昭和五十四年でございましたか、ランドサットを打ち上げられて以来、私どもの方はこれを利用していろいろな分野において実際にどのように利用できるかという研究を進めてきたわけでございます。リモートセンシング技術というのは、海洋観測あるいは農林水産、その資源管理、土地利用調査、地下資源探査、水資源管理、環境保全、これはもう非常に広範囲にわたって使えるのではないかというふうに期待もされておりますし、我々もそう信じ込んでいろいろと研究しているわけでございます。  我々としましては、二つの研究の道を進めているということでございます。一つは、我が国としても自主的にリモートセンシング活動が行えるような衛星開発技術というものをやっていくということが一つでございますし、もう一つは、その衛星から送られてきた信号というものを、情報というものを利用して、先ほど申し上げましたいろんな広範囲にわたっての利用ができる技術を確立していく、そういう二つの方法を探っているわけでございます。  それのやり方としましては、衛星の開発という方は宇宙開発事業団が中心となりまして、考えられるユーザーともども、どういったニーズにこたえたらいいかというような意味でのセンサーの開発あるいはミッション機器の研究開発というようなことに進んでおりますし、もう一つの方は、これは現在ランドサットを使っておるわけでございますけれども、ここから得たデータというものを受信しまして利用機関の方に使いやすいような形で提供していく、それでまた、その提供を受けた機関がそれぞれの分野でどういうふうに加工して使っていくかという研究開発を進めているということでございます。  ただこの問題は、私ども衛星を開発していく場合でも、先生先ほどESCAPのお話もございましたとおり、国際協力というものにも非常になじみやすいものでございますので、ユーザーのニーズというものを調べるときに、単に国内のユーザーだけではなく諸外国の要望というものもできるだけ踏まえて、そういったものに合うセンサーの開発というものをやっていこうというふうに進めているわけでございます。  いずれにしましても、まだこのリモートセンシング技術につきましては完成された技術ではございません。これからどんどん研究開発を進めることによって、今までの同じデータから思いもかけないような活用方法というものが今後どんどん出てくるのではなかろうか、我々はそういう期待のもとに地道な研究開発を進めているということでございます。  なお参考までに、人工衛星につきましては、資源探査を主目的に各種調査を行うことを目的としております地球資源衛星一号というのがこの五十九年度から研究に着手しましたし、それから六十一年度に打ち上げられることになっておりますいわゆるMOS1という海洋観測衛星、これの開発も進んでおる次第でございます。
  43. 松前達郎

    ○松前達郎君 リモートセンシングの技術がまだ完成されてないと言うんですけれども、ある程度成果は出ているんだと思うんですね。例えば、マリあたりの資源探査、ウラニウム資源、ウラニウムの鉱石、こういうものもある程度利用されて成果を出しているはずですし、それから例えば海洋汚染の問題等も、これも一番簡単にわかる問題ですね。例えば黒潮を調査すれば、温度が何度かの差で出てきますから、そういうものもすぐ使えるんだし、あるいは水の含有量、こういうものを調査することによって災害対策、例えば台風とかそういうものにおける河川の堤防の決壊とか、そういう問題も予測できますから、少し積極的に前向きに取り上げていかないと、でき上がってから使う、そういうふうにはおっしゃってないんですが、そういうふうな考え方がもしかあるとすれば、これはうまくないんじゃないかと思うんですね。やっぱり積極的に前向きに、これは全く衛星の平和利用の部分ですから、考えていった方がいいような気がしてならないんです。しかも、NASAが今ランドサット五号を打ち上げて――今たしか五号だと思うんですね、現在回っているのは。その計画が、NASAあるいはノアとも今後の計画がどうもないみたいですね。新しくまたそれに引き続いてやるという計画が。そうなりますと、ランドサットを使ってやるリモートセンシングというものがそこで途絶えてしまう、そういう可能性があるんですね。フランスあたりですとSPOTを持っているわけですね。これは比較的商業性の高い衛星なんですけれども、こういったようなSPOTで代用していくか、あるいは自分の国で、日本が独自にNASAのランドサットに近いようなものを打ち上げていくのかどうか、そういったような将来の計画に対して何か対策をお持ちでしょうか。
  44. 福島公夫

    政府委員福島公夫君) お答えいたします。  確かに、NASA及びノアの方では今後の計画というものがないというふうに聞いております。これは、アメリカにおきましては宇宙活動の商業化ということが、今レーガン大統領の方針もございまして打ち出されております。そのために、いわゆるNASAやノアが今まで持っていた計画というものをここで中止しているというふうに聞いております。これにつきましてはやはりアメリカでも議論が起こっておりまして、特にアメリカの議会におきまして多方面にわたる議論がなされておるということでございますので、我々としても非常に関心深くこれの推移を見守っているところでございます。  また、先生御指摘のフランスの地球観測衛星SPOTでございますけれども、これにつきましては一号機が予定より大分おくれまして、来年の夏ごろでございますか上がるというふうに聞いております。これにつきましてフランス側では、海外でどうやって受信させるか、あるいはその衛星データの配付についてどうするかという方針がまだ決まってないということでございますので、私どもとしては早くこの方針を教えてもらって、それによって今後その利用等についての検討を進めていきたいと考えております。  ただ、確かにリモートセンシング技術、先ほど先生おっしゃられましたように、かなりのものに利用はされておりますが、一度とったデータだけではやはり完全にこれを利用するというわけにもいきませんので、続けてこのデータがとれるというところが地球資源探査衛星としても有効なことではないかと思われますので、ランドサットがもしなくなってしまうということになると我々としてはそのデータの得ところがなくなる。それから、SPOTにつきましても、これ商業衛星でございますので、どういう条件をつけられるかわからないという問題もございますので、本来的にいえば、一日も早く日本自身がやはり資源探査衛星を打ち上げなければいかぬということであったわけでございますけれども、幸いに現在上がっているランドサットが寿命が一年から三年と言われておりますので、六十一年ぐらいまでは回っているんじゃなかろうかと考えております。それで、私どものMOS1は六十一年の夏に上がることになっております。うまくそうつながると非常によろしいとは思っておりますけれども、ただ全部日本だけが衛星上げてというわけにもいかないと思いますので、この辺こそ本当に国際的ないろいろな連絡が必要なんじゃないかと考えております。
  45. 松前達郎

    ○松前達郎君 リモートセンシングに関しては、国際協力というのが、これは衛星から見る範囲というのは非常に広いわけで、全地球的に広がっているわけですから、国際協力というものは当然やらなければ話にならないので、その点十分頭に置いていただいて、今後その国際協力推進できるようにひとつ御努力いただきたいと思います。  それから、もう一つは日中協力の問題で、中国の科学技術委員会の主任、これは方毅という人ですか、日中協力、しかも宇宙開発で協力したい、そういう希望を述べておられるのを新聞で読んだわけなんですが、その中に、特に原子力分野での交流、協力の範囲を広げていくということ、それから原子力発電技術とその安全性、あるいはウランの探鉱開発などを含めて国際的な日中間の交流、協力を進めたい、こういう希望を抱いておられるように見えるわけです。もちろん宇宙開発もその一つなんですけれども、これらの日中間の技術協力といいますか、こういうことについて、科学技術庁の方では今後どういうふうに進めていこうとお考えになっておられるか、それを最後にお伺いして、私の質問を終わります。
  46. 福島公夫

    政府委員福島公夫君) お答えいたします。  方毅先生は原子力委員会等の招聘で来られまして、原子力問題を主として話されたというふうに我々聞いておりますが、新聞に載ったようないわゆる宇宙分野について日中の協力というものを具体的に提案を受けたことはございません。そういうお話はまだ私どもは聞いておりません。しかしながら、先生御指摘のように、宇宙開発、特にリモートセンシング関係でございますか、こういったものは非常に国際協力というものが一番やりやすい形のものであるし、またやらなければ意味がないということもございますので、中国の方から具体的な提案というものがありましたら、その段階におきまして検討を進めさしていただきたいと考えております。
  47. 松前達郎

    ○松前達郎君 終わります。
  48. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、新潟県の東北電力の巻原発につきまして、ちょっと地元でいろいろと問題が起こってきておりますので、その点について政府の御見解を伺いたい、このように思うわけであります。  先輩議員であります委員の大変貴重な持ち時間を回していただきまして、私がこうして御質問申し上げますのも、実は新潟日報で知事が地元にとっては大変重大な発言をされました。それは、東北電力が計画をしております巻原発の建設予定地につきまして、まだ買収に応じないそういう民有地あるいは寺等が、墓地等があるわけでありますけれども、そのために東北電力は、安全審査に提出をしておりました土地利用計画を再検討するために、見直すために、一時三年ばかり先に建設の計画を延ばしたというような経過があって、これに対して直接関係者ではない知事が、そういう未買収地については強制収用をというような形で土地収用法の適用をできるように法の改正を国に対しても要望をしているんだと、こんなことを発言をしたわけであります。そのために地元では関係者の中でも非常に重大な関心事になってきておりますので、この際政府の、原子力発電ばかりでございませんが、要するに原子力施設建設と関係住民との関係と申しましょうか、それについての考え方を改めて明らかにしていただきたい、こんなふうに考えたからでございます。  そこで、通産省、科学技術庁にお伺いをする前に、建設省に一点お伺いしておきたいと思うのでございますが、土地収用法における事業認定申請書というのは、これは民間企業、電力事業の場合、通産大臣の事業認可書がつけられていなければこれは申請手続にならないと思うわけでございますが、その点はいかがでございましょうか。
  49. 浪岡洋一

    説明員(浪岡洋一君) 土地収用法の第十八条によりますれば、事業認定申請書には事業施行に関する行政機関の許認可があったことを証明する書類または行政機関意見書を添付しなければならないこととされております。したがいまして、それらの書類がなければ事業認定を行うことはできないものでございます。
  50. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、現在の法律では、その書類がなければ申請書が出てきても返されるということになるわけですね。あるいは、こうした知事の発言からいきますと、多分ここのところを改正をしろと、こういうことではないかと思うのでありますが、その認可、通産大臣なら通産大臣の認可を省略をしてという法の改正というもの、これは可能性がありますか。
  51. 浪岡洋一

    説明員(浪岡洋一君) 事業認定に関する行政機関の許認可は、事業認定の要件であります起業者の事業施行能力を判断するために必要な資料でございますので、現在御指摘のように法律を改正することは考えておりません。
  52. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ありがとうございました。  そこで、通産省にお伺いしたいのでありますが、原発計画、原発の建設を計画するに当たりまして、その用地獲得の段階でこうした土地収用法の適用など、いわば強制的手段によってその目的達成を図ろうと、こういう考え方がもしあるとしたら、それに対してはどのようにお考えになりますか。
  53. 渡辺光夫

    説明員(渡辺光夫君) 発電所の立地に当たりまして、土地の権利者を初めといたしましていろいろな方々との利害の調整と申しますか、そういうことが必要でございますし、その上にさらに立地の問題に関しまして、地域住民の皆様方の御理解と御協力を得ながら進めるというのが私どもの基本的な考えでございます。したがいまして、発電所の立地に当たりまして関係土地所有者等の問題ができるだけ円満に解決するというように期待しておりますし、現実に電気事業者に対しましても、関係者との十分な話し合いを進めながら問題を円滑に進めるようにという指導をいたしておりますので、今、先生お話しのような強制的に収用するというようなことはできるだけ避けていきたいという考えております。
  54. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 この東北電力の計画というのは極めてずさんだと思うわけでありまして、例えば電調審にかける前につくり上げられた立地計画の中でいきまして、炉心の約三百メーター程度のところにまだ納得できない地主の土地がある、こんなことでありますし、そのほかにまだ民有地ございます。特にお寺が二つもありまして、そのお寺の墓地、言ってみれば先祖伝来の墓地がなくなるということに対してもやっぱり大変大きな抵抗もあるわけでありまして、その辺のところが実は今地元の巻町とお寺とでその土地の問題ではかなり裁判ざたになっている部分などもございまして、こうした言ってみれば地域住民の気持ちといいましょうか、そういった立場というものを十分に踏まえないで、しかもそうしたことをあらかじめ話し合いをしないままに言ってみれば立地計画を立てて、とにかく何とか通りさえすればいいと、極端に言ってしまえば。そんな計画を立てて進めてきた東北電力に、私は大変なずさんさがあると思うんでありまして一安全審査のところまで来て急に今度そういうことが表に出てまいりまして、それでしばらく待ってくれと、こんな形になっているわけでありますけれども、こうした東北電力のずさんさということに対しましてどのようにお考えになっておりますか。
  55. 渡辺光夫

    説明員(渡辺光夫君) ただいま御指摘ございました東北電力の巻原子力発電所計画につきましては、予定されております立地予定敷地内の一部に未買収の土地があるということは私どもも承知いたしております。また、その未買収地の一部につきまして、現実に民事上の争いも行われているという事実も承知いたしております。  それで、現在の発電所の建設の実態を申し上げますと、相当のリードタイムが必要になっているという実情にございますので、それぞれの段階で将来の需要を想定しながらいろんな計画をつくっておるわけでございますが、私ども現在、毎年電力の施設計画というものを事業者から聴取いたしておりますが、その計画期間というのが十年ということになっております。そういたしますと、相当先の状況も一応想定しながら計画をつくるわけでございますが、その間に需要の状況も変わってくるとか、あるいは地元とのお話し合いの進展の状況も変わってくるとか、いろんなことが起こり得るわけでございますので、施設計画そのものは毎年見直しをするということにいたしておりますので、そういう見直しを通じまして各年度計画がそれぞれ長期的に見て適正なものになるようにという指導をしているわけでございます。  御指摘の巻の発電所につきましても、政府の方で基本計画という形で電源の計画を決定いたしましたのが五十六年の十一月の電源開発調整審議会の御審議を得た段階でございますので、そのころから見ますと計画が大分後おくれになっておるというのは事実でございますが、今申しましたように、その後、長期の需給見通しも下方に修正されてきているということもございますし、それからこの地点そのものにつきましては、先ほど申しました土地所有者との話し合いの進展が、当初予想したようには進んでいないというような事情もございます。そういうことで、今年度の施設計画で着工及び運転開始の期限を三年後送りにしたものでございますが、これはそういった長期の問題を毎年総合的に見直しをしていくという計画のあり方の中では、むしろ実態に合わせて調整をしていくという方が適切ではないかというふうに考えております。
  56. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それで、今の計画の見直しについては毎年ということでありますから、そうすると、例えば来年改めて提出をされるとそこでまた検討すると、こういうことになるわけですか。
  57. 渡辺光夫

    説明員(渡辺光夫君) 今申しましたように、施設計画そのものは毎年見直しをするという方式でございますので、ことし一年間の動きを見た上でもう一度来年の時点で改めて考えるというのが一般原則でございます。
  58. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうしますと、現在の土地状況、これは私はすぐ簡単にはなかなか進展はしないだろうと思いますけれども、そういう中で、例えば土地利用計画の中で一番問題になりますものの一つに、炉心部と三百メートルといったら本当に目と鼻の先ですが、そういうところにある未買収地、これが解決できないという形の中で、炉心の位置を変更した立地計画をつくって提起をされるというようなことが仮にあれば、私は今度、その炉心の位置を動かしたことによってまた新しい問題が出てくると思うわけであります。そういう中で、一応それでも検討されて安全審査という段階にそういう場合になるんでありましょうか。それとも、こうした今の地主との交渉、それを妥結をするということの指導の方に重点を置かれるのでしょうか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  59. 末廣恵雄

    説明員(末廣恵雄君) 巻原子力発電所につきましては、昨年九月に東北電力から土地利用の見直しという申し出がございまして、私ども現在安全審査をとめているわけでございますが、今後その土地利用の見直しの具体的内容というのが東北電力から出てまいりました時点で、安全審査の中で十分その計画の安全性についてはチェックするということになろうかと思います。
  60. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、一応計画が提出をされれば、現在のそれぞれの地主との間のあれがうまく調整されていなくても、今のままの状態で推移していても安全審査はするということになりますか。
  61. 末廣恵雄

    説明員(末廣恵雄君) 原子炉等規制法に基づきます原子炉の設置許可申請と申しますのは、これは発電所の施設の計画を示したものでございまして、その計画について私どもは審査をするということになります。したがいまして、何か一定の土地を将来取得するという前提で設置許可の申請がなされますと、私どもとしましては、その計画に基づいて審査を行いまして許可を行うということになります。したがいまして、安全審査におきましては、土地の取得の有無ということは直接法律上は審査の対象にはなっておりません。しかしながら、原子力発電所の建設というのは、やはり地元の方々の十分な理解を得て行われるべきであるという観点で、私ども従来から原子力行政をやってきておりますので、そういった意味からしまして、土地の取得の見込み等につきましては、そういった諸般の事情も十分念頭に置きまして審査を進めていくというふうに考えております。
  62. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それでは、ただいまのお答えでは、提出をされれば一応審査をする、そういうことになるけれども、言ってみれば巻の場合は今までの経過がいろいろとありますから、そうすると、例えば土地の取得が確実にできるかどうか、その辺のところも念頭に置きながら指導をしながら対応していく、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますね。
  63. 末廣恵雄

    説明員(末廣恵雄君) 法律的には審査の対象とはなりませんが、実態面におきましては、そういった状況も十分念頭に置きながら審査を進めていきたいというふうに考えております。
  64. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 次に、科学技術庁長官にお伺いをしたいのでありますが、原発計画、商業用はもちろんそうでありますが、実験用、研究用、そういった原発あるいは原子力施設の計画を進めていきますに当たって、電調審で審議をいたします。その前に、公開ヒアリングの義務づけなどがあるわけでありますけれども、こうしたことは、言ってみればその政策面における一つの柱として住民の同意を得るというところにあるというふうに思うわけでありますが、その運用にいろいろと問題があるというような議論が今までの経過の中にもありますけれども、その運用の問題は別にいたしましても、基本的にはそういう政策の基本の柱の一つだと、こんなふうになっていると思うんですけれども、その辺はいかがでございましょうか。
  65. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 原子力発電所の立地に当たりましては、私どもは何と申しましても地元の方々の御理解と御協力というものが一番大事なものである、かように認識をいたしております。したがいまして、いろいろな手順を踏んで私どもも公開ヒアリングを持つとかやっているわけでございますが、何といいましても事業者が直接地元住民の方とよくお話しするということが一番大事でございます。私どもは、そのような成り行きを見ながら、そしてサポートしながら、円満に立地が進むというふうに進めてまいりたい、かように考えておるわけでございまして、そういうふうなことから第一次公開ヒアリングというものは大変重要なものであり、そしてこれは地元の住民の方の御理解をいただく、こういう趣旨で聞かしていただいているものでございますので、仮にこのような原発立地に反対の御意向があるという方々も積極的に参加をして、そして十分に意見を交換してもらって、そういう中に御理解を深めていくということが望ましいものと考えております。
  66. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の長官の御答弁で、政府の政策の基本に住民の理解を得ること、これが置かれているということをお伺いをいたしまして、安堵したわけであります。  そこで、直接の当事者ではない知事がこんな発言をしたということは、これまた別の問題にもなるわけでありますけれども、それから東北電力が極めてずさんな、言ってみれば非常識とも言えるような状況の中で建設計画を進めてきたというようなこと、こんなことにつきましては、実は私は公開ヒアリングの今までのあり方だとかその他の経緯の中で、これは巻の原発に限ったことではございませんで、そうした原発関係の今までの経緯の中で、地方自治体の長やあるいは事業者である電力会社が、これは少しくらい無理があっても政府が何とかバックアップしてくれるのじゃないだろうか、そんな甘えの精神構造がこうした関係の中にでき上がってきているのではないだろうか、そのことも心配をされるのですけれども、その辺はどう御判断になっておられましょうか。
  67. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 先ほど来のお話で、東北電力の計画しております巻の原子力発電所につきましては、当初の計画が大幅におくれていることは私どもといたしましては大変残念なことだと思います。東北電力自体も大変な努力をして今日までやってきたと思いますが、いまだに土地所有者の一部の方の御理解をいただいてないということは、今後の進め方に大きな問題が残っているわけでございますが、電力サイドにおきましても、土地の利用についてその一部の計画の見直しをするということも、先ほど通産省の方からもお話があったように、それを今真剣に検討しているというふうに私も聞いておるわけでございまして、そのような土地の利用計画が一部変更になるということになった場合には、それならば安全の方はどうなるのかということとも関連してまいりますので、ただいま慎重にこれを見守っているということでございますが、せっかくここまで来た話でもございまするし、また起業者の方も一生懸命努力をいたしておりますので、その成果を期待をいたしたいと思っておるところでございます。
  68. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 先ほど先輩の松前委員からの質問の中にもありましたように、アメリカでもスリーマイルアイランドの事故以来いろいろと問題があって、そうした中で完成間近な発電所を、計画をやめるというようなことが起こったりしながら、原発についてはやっぱり見直しをするというのが、私は今原発先進国の一つの傾向になりつつあるのではないだろうか、こんなふうにも思うわけでございますが、我が国におきましても、こうした原発の推進計画というものについては、それらのことを勘案しながら少し検討を改めてみるべきではないだろうか。今までの行き方で行きますと、長官は、東北電力も一生懸命努力をしてこられた、こういうふうに言っておられますけれども、やっぱり最後は何とか政府のあれで乗り切ることができるのではないだろうかと、そういう甘えの精神構造があったからこそ、こうした十分な根回しのできない部分を残したままで安全審査にまで持ち込んでいこう、こんなことになったんではないかと思う。そういう観点からも、ぜひとも私は、原発推進計画というものは改めて検討をしていただくことが必要ではないか、こんなふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  69. 高沢信行

    説明員(高沢信行君) 今、先生御指摘の問題、今後の中長期的な電力需給がどうなるかということと非常に深く絡んだ問題だと考えております。  昨年十一月の電気事業審議会需給部会の中間報告におきましては、今後の電力需要につきまして、引き続き着実に増大すると見込んでいるわけでございます。電力の安定供給の確保のため、電源の脱石油化、多様化が非常に重要ということで、その中でも原子力発電は石油代替エネルギーの中核として今後とも推進していく必要がある。その理由といたしまして、実は燃料を一度装荷いたしますと一年間取りかえずに済むということは、これは一定期間の備蓄を行っているのと同じ効果を一持っている。それから、原子力発電は、先生御承知のとおり、大変燃料費のウエートが小さいわけでございまして、そういった意味から経済性にもすぐれている。それから、燃料費のウエートが小さいということは、燃料価格の変動に対して長期的に見て安定性を持っているということでございます。それからまた、核燃料サイクルの確立と相まって準国産エネルギーとして利用することもできますし、そういった意味でも安定的な供給源として期待できる。そういったもろもろの利点を原子力発電は持っているわけでございまして、今後とも石油代替電源の中核として安全性の確保に万全を期しながら推進していくというのが私ども考え方でございます。
  70. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 その最後の点につきましては、まだいろいろと見解の違い、争点があるところでありますから、ここですぐ白黒決着つけるような議論はなかなかできないわけでありますが、最後に、先ほどの建設省の御答弁を伺っておりまして、ぜひ両省庁に伺っておかなきゃならぬと思ったわけでありますが、それは、現在の土地収用法上は、例えば原発でいけば通産大臣の事業認可がなければこれはどうにもならないと、こういう形のようであります。そうすると、これは特別に例えば電力については除外をするとか、原子力関係のあれには除外をするとか、そういう特別の立法が別につくられなければならぬというような、例えば君知事発言をそのままもしやろうとすればそういったことになるということになるわけでありますが、こうした土地収用法に絡まることで特別な立法をするお考えはあるかどうか、これを通産省並びに科学技術庁にお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  71. 高沢信行

    説明員(高沢信行君) 原子力発電の立地の推進のためには、やはり地元の理解協力ということがその大前提と考えておりまして、基本的には地権者との話し合いによりまして円満に解決することが大事だということで、これまでも東北電力をその方向で指導してきたところでございます。今御指摘のような点については、通産省としては考えておりません。
  72. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 土地収用法というものは、いわば伝家の宝刀でございますから、伝家の宝刀は抜かないのがむしろ意義があるので、そういう意味で話し合いがまず大事であると、そういう認識でございます。
  73. 伏見康治

    ○伏見康治君 私は、議員生活まだ一年生でございまして、基本的なことをまだよくわからないところがございますので、科学技術会議を中心にして少し基本的なことをお伺いしておきたいと思っているわけでございます。  まず、科学技術会議とか科学技術庁とかいうところに参りましていろいろな議論を始めますと、科学技術という言葉の意味がときどき不鮮明になります。ある方は科学・技術のことであるとおっしゃる方もありますし、科学的技術のことであるとおっしゃる方もありますし、いろいろ概念がおっしゃる方によって変わっていることがございますので、何も辞書をつくるわけでありませんので正確な定義は要らないんですけれども科学技術庁長官としては、どういうふうに科学技術という言葉を理解されておるかという点を教えていただきたいと思うのでございます。
  74. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 大先生からの御質問でございますが、むしろ私の方が教えていただきたいと思うのでございますが、私は科学技術という一つの単語になっているような印象がとかくあると思いますが、やはりサイエンス・アンド・テクノロジーと、こういう気持ちで科学技術理解した方が、むしろこれからの日本の科学と技術の発展のためにもよろしいのではないだろうか、こういうふうに私は素人なりに考えておりますが、むしろ先生から教えていただきたいと思います。
  75. 伏見康治

    ○伏見康治君 多分英語では科学技術庁のことはサイエンス・アンド・テクノロジー・エージェンシーですか、ですから多分長官の言われたとおりだろうと思うのでございますが、ただ実際問題として、取り扱っておられることが基礎的な学問というよりは応用的と申しますか、技術的な面に重点があるように考えられますので、今長官が言われましたように、絶えず基礎的なところを涵養するというか、そこを培養するというか、そういうことをお忘れないように願いたいというのが私の発言の趣旨なんでございます。  もう一つ伺いたいことは、応用に関連している、つまり開発という要素の入っている研究というものは、非常に多額のお金を使うのが普通でございます。これは私は、文部省の学術審議会である先生に言われて気がついたんですが、普通ビッグサイエンスという言葉がございまして、それを日本 語に訳すときには巨大科学と訳すわけです。そのある大学の教授のおっしゃるのには、ビッグサイエンス、巨大科学という言葉は非常に悪い印象を与えてはなはだ困る、つまり学問的に巨大であって非常に価値が高いから巨大科学と言うのだというような印象を与えて困る、実際は単にお金をたくさん使う科学という意味であろう、巨大科学と言うのをやめて巨費科学と言えと、そういうお話がございました。それで、多くの方々はやはり大きなお金というものにはとらわれがちでございまして、私はそういうことがあってはいけないと思いますので、私自身戒めるつもりで、それ以後ビッグサイエンスのことをいつも巨費科学と言うことにしているわけでございます。その先生の言われるのは、本当に価値のある科学というものは、巨費科学ではなくして零細科学の方から出てくることが多いのだということを非常に強調されておりましたが、私はそれに非常に賛成なんでございまして、そして科学技術庁がその巨費科学をお取り扱いになる場面が多いだろうということは十分想像がつくのですが、それはそれでしっかりやっていただいて結構なんですが、同時に零細科学の方のこともお忘れないようにしていただきたいと思うのですが、その点長官のお考えいかがでしょう。
  76. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) まさに最近は、先生も御専門のプラズマなんていうものは大変金のかかる、それはむしろまだサイエンスの分野であろうかと思いますが、こういう非常に極細微の世界に入っていくためには大変なお金のかかる施設が必要であり、そこから一つの理論なり何かが解明されていく、こういう意味で巨費科学もまた私は必要である。と同時に、おっしゃいますように、それぞれの分野でそれぞれの繊細な科学の勉強、研究、これもまた大変大事なことでございますので、両方あわせて私どもは対応していくのが筋ではないだろうかと考えております。
  77. 伏見康治

    ○伏見康治君 まことにいいお考えで、私はその線でぜひ長官が進めていただくようにお願いいたしたいと思うのでございます。  それで、言葉の問題はそこで終わりまして、科学技術会議を中心にして長官に、科学技術庁科学技術会議のお世話をされておられるわけでございますから、それについていろいろ伺いたいと思うんですが、二月十日の本会議でも御質問申し上げたときの言葉を繰り返しますと、新聞記者の間では科学技術会議はしばしばホッチキス委員会と言われているということを申し上げたわけでございます。科学技術会議としての独自の活動というよりは、いわゆる調整的な御活動が大部分であるというのが事実であると思うのでございますが、何か予算の上でもそういう費目の予算が大部分を占めているということでございますが、この調整をする上におきましても科学技術会議独自の働きというものがもっとあるべきだと思うのでございます。一まず、科学技術会議に関しまして臨調が一定の何か批判的なことを言っているはずだと思うのでありますが、それはどんなことを言われておりますでしょうか。
  78. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) 臨調答申の趣旨だけで申し上げますと、やはり政府科学技術政策を総合的な立場から、高い立場から審議をする機関という位置づけを与えておられます。  そして、その具体策としまして、学識経験議員、これは閣僚議員以外の議員を指しておりますが、その方とそれ以外の方で構成される運営委員会、これは仮称で言っておられますが、を設置して、科学技術に関する長期的総合的な研究目標を立てるとか重要研究推進方策の基本を立てる等、こういった重要事項の適時的確な決定に資することと、身軽に動けるような適時的確性を要求するということを言っておられます。  それから次に、研究開発の効率的な推進を図るために、多額の資金を要する国の重要政策と密接な関係を持つ総合的な分野につきましては、専門部会を活用しまして総合的な立場から具体的な方向づけをしなさい。それからあと、事務局の強化というようなことを言っておられるわけでございます。
  79. 伏見康治

    ○伏見康治君 私もそういう臨調の批判というものはなかなか的を射ている発言だと思うのでございますが、そのいわば勧告を受けて、その後何か科学技術会議としてのやり方に昔と違ったところが出てきたんでしょうか、どうでしょうか。
  80. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) まず、臨調が運営委員会と御指摘いただきました件につきましては、学識経験議員以外、さらに産官学から六名の委員お願いいたしまして、政策委員会と名づけまして、ここで日常十分な審議を尽くして機動的に対処するという方針を出しております。昨年の三月に設置されまして現在活動しておりますが、当面はいわゆる十一号諮問に対する答申の取りまとめにかかっておるところでございます。これが終わりましたら、さらに個別政策課題に取り組むことになろうかと思われます。  それから、科学技術会議の定める方針に沿いまして重要研究業務の総合的推進調整をするために、これは精神論だけ言ってもなかなか各省調整がうまくいかないということで、科学技術振興調整費を拡充いたしまして、これを一つの道具として具体的調整を行っているわけでございます。  それから、専門部会の活用ということにつきましては、既に防災とかエネルギー科学技術につきまして答申がございますが、ライフサイエンスにつきましても、その先導的基盤的技術についてという諮問がなされまして、近く答申が行われる予定でございます。  そのほか、事務局を担当いたします科学技術庁計画局、それから文部省、両方の強化を図っておるところでございます。具体的には各省からの併任の専門調査官を派遣していただきまして効果を上げておるところでございます。
  81. 伏見康治

    ○伏見康治君 お答えをいただきましたけれども、私が特に質問したいのは、臨調の勧告のある前とどれだけ新しく変わったか、それはどういう方針で変わったかというところを伺いたいわけなんです。
  82. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) ただいまの政策委員設置、これは形の上でも明白に変わった点でございます。ただいま申し上げましたように、たまたま十一号諮問という長期計画諮問がございまして、これにまず当たっているわけでございますが、今後政策委員会は、既に並行的に進めてはおりますが、制度問題、公務員の問題、それからさらに将来は、教育とか科学技術と人間との関係の問題とか、そういった多くの課題を掲げまして、これに政策委員会が具体的に当たっていく。必要に応じまして小委員会を設けて、既に活動を始めた小委員会もございますけれども、掘り下げた検討を行う。一番積極的に違って活動しているのはこの面かと思われます。
  83. 伏見康治

    ○伏見康治君 いろいろ動き出しているということ、殊に十一号諮問に答えるという形で従来なかった活動要素を入れようとしているというふうに私は了解いたしたいと思いますが、多分その中にいろいろ入ってくることであろうと思いますが、もう少し内容的なお話を二、三思いつくままに伺ってみたいと思うわけであります。  昔と申しますか、今から五、六年ぐらい前まではいわゆる高度成長の時代でございまして、国のお金も潤沢におありになったようでございます。したがって、多くの大きな研究開発プロジェクトというのが割合に気安に取り上げられてきたというのが実際の形であったのではないかと私は思います。余り十分先のところまで考えずに、割合に気軽にスタートさせてしまった。それが近ごろ急に財政難が厳しくなってまいりまして、それぞれの研究開発プロジェクトを本当に維持できるかどうかさえそろそろ怪しくなってきた。ましていわんや、新しいプロジェクトを打ち出すといったようなことが非常に困難な状態になってきたと私は考えます。  それで、昔と今後とは科学技術会議役割が相当実は変わるべきであろうと私は思うわけですね。よく言われますように、研究者というものは自由であるということを最も大事な要件と考えて、自由であって初めて伸び伸びとした研究ができると考えておりますので、余り政治家とかあるいはお役所が指図をしない、研究者の思いどおりにやらせるというのが基本的な態度であろうと思うのですが、これだけ予算が切迫してまいりますと、そうさせてあげたいけれどもさせてあげられないというのが実情ではないかと思います。  そういう事情を背景にいたしまして考えますと、今後は科学技術会議といたしましては、昔だったら当然取り上げるべきものでも涙をのんでこれは捨てると申しますか待っていただく、非常に厳選されたプロジェクトだけを取り上げるという態度をとらざるを得ないと思うんです。そのためには一定の基準というものを持っていなければできないはずだと思うんですが、そういうものを今おつくりになりつつあるかどうかということを伺いたいわけです。
  84. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) まさに御指摘のとおり、高度成長時代には有用性がどうかという判断でプロジェクトが扱われてきたという面が確かにあったのではないかと思われます。そういう意味では科学技術会議が、こう言ってはなんですが、序列をつけて、いいものまで抑え込むというようなことは控えるべきだという見方もされていたことも事実かと思われます。今や財政難ということになりますと、限られた資源、お金の面とか人材その他、資源をいかに有効に使うかという判断が大事なわけでございます。  このたび作業をしております十一号の諮問におきましても、情勢の変化、科学技術が新しい内容を持ってきたということ、国際的な情勢が特に我が国にとって相当変わっているということ、そういったことを認識いたしまして、それに基づく新しい科学技術政策のあり方というのを基本的に検討しているわけでございます。  基本的には、そういったガイドラインを出すことによりまして、各省庁がやはり自分で限られた予算の中で最も効率よくそれぞれの目的を果たす計画を立てていくというのが基本ではございますけれども、重要性の判断ということを示すような内容を十一号では特に盛り込みたいと努力しているわけでございます。プロジェクトを選ぶための、何といいますか、チェックリストというような形では出てまいりませんけれども考え方として重要性、あるいは同じ重要性の中でも方法論的により有効なもの、あるいは基礎を固めずにすぐ開発に進んでしまうというようなことがあってはならないというような基本的な考え方は出てまいる予定でございます。
  85. 伏見康治

    ○伏見康治君 「むつ」の事件というものは、どなたが見ても一つの失敗した例であると思うんですが、そういう失敗が二度と出てこないためのいろいろな準備というものが必要であろうと思うのでございます。  それで特に申し上げるわけなのですが、「むつ」が出発した時点からいろいろとまずいことがあったのではないかと想像するんですが、私の見るところでは、「むつ」の一番最初の目的は、海洋探査船でしたか何でしたか、教えていただきたいと思いますが、それが何か大蔵省との折衝の段階でもっともうけるような船にしなければいけないということで、そして今のような輸送船といったような形に途中でなってしまったというふうに聞いているんですが、そういうことであったのでしょうか。
  86. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 海洋調査船として当初「むつ」の計画がなされたわけでございますが、船価が当初たしか三十八億円という予定でスタートしまして、結局引き合いが調いませんで、とてもこの値段ではできないということになりまして、船価が大幅にふえるという状況になったわけでございます。それでその際に、船価をそのように大幅に上げないでも同じ目的を達成するために、船種を変えるということも一つの案ではないかということで、いろいろ検討をしたわけでございます。既に西ドイツでは、当時オット・ハーンがいわば貨物船という形で、安い船価でできて運航していたということもございます。目的は、原子力船のいわばデモンストレーションをする、実船をつくって実際に航海してみて、いろいろな経験なりデータを得るということに目的があったわけでございますので、そういう趣旨で検討をした結果、貨物船ということで、船価もたしか当時五十六億円ぐらいに抑制できるということで、そのように決まったと記憶しております。
  87. 伏見康治

    ○伏見康治君 その細かいいきさつは別といたしまして、きょう私が申し上げたい点は、大蔵省との折衝の段階で大蔵省からの言い分に従ってその計画が変更されるということは、それがもちろん非常に納得されるものであればいいのかもしれませんけれども、実際上はとかくそうではなくして、要するにお金さえ取ればいいんだという考え方があって、お金を出す方のいわば意向を迎えるという態度で予算をお取りになる、そういう傾向があってそういうふうになってしまったんではなかろうかと私は考えたくなるんですが、事実はそうでないかもしれませんけれども、あり得ることだと私は想像いたします。  私は、大蔵省の方々がお金を大事にするという建前からいろいろなことを言われるのは、それはそれで大変いいことだと思うんですが、それを言われたときの、元来プロポーズなすった方が簡単に引き下がってきて、右へ行くところを左に変えるといったような安易な立場で、予算さえ取ればいいというようなことで折衝されるというのは間違いだと思うんですね。それをやりますと、大蔵省のいわば、何というんでしょうか、割合にお若い方々の判断で科学技術政策が実は大幅に振り回されているというようなことになりかねないわけで、非常な危険性をはらんでいると思いますので、私は、そういうような問題が起こった場合には、科学技術会議がちゃんとした判断をして、この線が科学技術的な判断として正しいものであるからこれで予算をつけてやってくれという、そういう助言をしてあげるというようなのが、僕は科学技術会議一つの重大な役割ではないかと思うんですけれども、こういう考え方はどうですか。
  88. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) 具体的な予算折衝のお話でございますが、確かに御指摘のような面もかってあったかと思われますし、また一面では、そういう話だけが大きく伝わってしまって、何か大蔵省に非常にのべつ筋を曲げられているというような伝説もできているような感じもいたします。いろいろあるかと思われます。確かに、そういうことがあってはいけないということがありまして、科学技術会議が、個別の折衝の場でどうこう言う体質にはないわけでございますけれども、長期計画、今度も十一号諮問がそうでございますが、こういうものを立てる、あるいはライフサイエンス計画のように個別の部門の計画を立てるということは、それが具体論としては各省個別の細かいことでございますけれども、基本はいつも科学技術会議基本方針にのっとっている、あるいはそれに外れている、そういう判断を提供するものとして重要な意味を持っている。現実に予算折衝の場面でも、科学技術会議がどう言っている、どう言ってないということは、常に筋論を立てるときの議論の軸になるわけでございます。    〔委員長退席、理事林寛子君着席〕 それだけにまた、関係各省も非常に関心を持って、こういった答申にはたくさんの意見を出してくる。それを総合的に筋を通すというのが会議の性格なわけでございます。そういった作用を通して機能していると考えております。
  89. 伏見康治

    ○伏見康治君 いろんなプロジェクトを判断するときに、日本のお役所では、もちろんお役所の中でいろいろな会議を重ねられて検討をなさっているということはよく承知しておりますが、アメリカの場合と比較いたしますと、プロジェクトを取り上げる際のソフト的な判断、そのために相当のお金をまず使っておられる。これはある意味では当然な話で、例えば一千億円のプロジェクトがあったとすれば、それをスタートすべきかどうかというときに、数億円ぐらいの、〇・何%程度のもので、それがフィージブルであるかどうかということをまず十分に研究するということは、何か当然であるような感じがいたします。  私は、先ほど長官に指摘されましたように、ここにやってまいります前は核融合という研究に参加しておりましたんですが、核融合というのは、初め考えたときはそれほどお金がかからないと思っておったんですが、だんだん進むに従って巨大な予算を要求するようになって、私自身驚いているわけなんですけれども、さすがのアメリカでも、だんだん巨額になってくるので、それをどうするかということは大問題に実はなったわけです。それで、いろいろなプロジェクトが出てくるのを審査するために、私の聞いた一例では、学者十五、六人ぐらいの、方々大学の先生や研究所方々を集めた相当大きな諮問委員会をおつくりになって、それに一年間に百万ドルぐらいの予算をつけて、方々研究所を見せたり議論を戦わせたりする、そうして次の世代の機会に何をつくるのが一番いいかという議論をさせているわけですが、    〔理事林寛子君退席、委員長着席〕 何かそういう意味プロジェクトを決めるときのお金の使い方日本では少な過ぎるのではないか、そういう感じがいたしますのですが、例えば科学技術会議ではそういう方面の何か御議論はありますでしょうか。
  90. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) 全く御指摘のとおりでございまして、我が国では今までの導入技術中心型ということもあったかもしれませんが、ハードの方は積算でお金が取れても、ソフト、調査だけという面ではなかなかそれは通らない。通らないと申しますのは、大蔵省というだけでなくて、社会全般に通らなかったという風潮があったことは全く御指摘のとおりだと思います。  これに対しまして、科学技術会議あるいは科学技術庁としましてそういうものを充実するような努力、これは昔から行ってきたわけでございます。プロジェクトの判断というのとはちょっと性格が違いますけれども研究調整費の中でいわゆるソフト的な調査を行うお金というのを、例えば五十八年度でございますと約二億円近く使わせていただいております。まあお金があっても、そういう政策の基本データをそろえる、あるいは基本的な考え方を整理するという作業でございますから、お金をどれだけ有効に使うかということ、難しい問題ございますけれども、やはり我が国で初めてそういうソフトの面のお金がはっきり計上されるようになったという進歩がございまして、これを有効に使ってやっていきたいと思うわけでございます。  御指摘のような官庁の中でよく検討がされているということも、我々役所の組織は一種のシンクタンクの機能を持っておるということも自負しておるわけでございますが、やはり限られた時間と人数では基礎的なデータ、基礎的な資料というものを集めるには限度がございます。お金をもって専門的な機関にそういうものを依頼をしまして、それを総合的に判断するのが我々ではないか、そういう方向へ進んでいきたいと考えておるところでございます。
  91. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 先ほど来、科学技術会議についていろいろな御意見や御批判もちょうだいしているわけでございますが、私どもは何といいましても、科学技術が今日のように非常に細分化され、そしてまた一方において巨大化の分野も分担しなければならないとなりますと、財政的にも非常な困難な時代でもございますから、どうしてもその総合調整能力というものが科学技術研究開発分野において必要になってくるだろうと思います。したがって、むだのないお金の使い方ということになってくると思いますが、古賀委員からもその点についての御指摘もありました。むだのないということは最も大事なことでございますが、一方において、研究開発分野においても競争というものもまた適度にないとひとりよがりになってしまったり、あぐらをかいてゆっくりやってしまうというようなことであってもこれも困るので、適当な競争というものはやはり私は必要ではないだろうか。したがって、その辺のことをどうやって調整していくかということは大変難しいことではございますが、大局的な見地から、やはり科学技術については科学技術会議というものが中心になってやっていくのが今日の日本の基本ではないだろうか。まあ言葉はいかがかと思いますが、総参謀本部というような気持ちで、私どもの役所は科学技術会議を補佐して、そして日本の行く道を確かなものにするということが必要ではないだろうか。そういう中で総合調整能力を持つためには、やはりある程度のお金がないとできない。色男力と金はなかりけりで、今のようにもう毎日毎日科学技術のことが新聞の記事に載ってないような日はないくらいに、日本はもちろんのこと、世界的にも科学技術というものが非常に大きな注目を浴び、またそれによって初めて二十一世紀へ向かっての国民あるいは人類の繁栄と平和が保てる、こういう大きなかぎを握っておる科学技術でございます。したがいまして、私どもは、その調整能力ということが一つ日本の今後の科学技術を進める大きな原動力になる、そういう意味科学技術調整費というものを特に計上して、これを年々わずかではございますがふやしてきておりますが、さらにこれは大きな飛躍をさせたいと私も考えております。  そういう中で、評価の問題も各方面からいろいろな御意見がにわかに起こってきておりますが、当然のことだと思います。したがって、その評価は、どういう組織がいいのか、これは、その必要性は皆さんわかっておりますし、またそれなりに今日までやってはきておりますけれども、それでは不十分じゃないかというのが皆さんの御認識だろうと思います。したがいまして、これについては私どもも真剣に取り組んでいかなければならない。その場合にはどういうことがいいのかということも、我々も考えますけれども、さらに科学技術会議でもそのような立派な方が入っておられますので、そしてまた文部大臣も入ってるということで、特に大学等の研究者あるいは研究機関というものとの連携がうまくいかないとこれまたいけませんので、そういうような観点からも評価の問題も十分に考えてもらいたいということで、内々そのような作業も進めてまいっているところでございますので、今後ともこの委員会の諸先生のいろいろな御意見は十分に拝聴して進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  92. 伏見康治

    ○伏見康治君 長官から大変力強い、心強い心づもりをお聞かせいただきまして、まことにありがたかったと思っております。  評価ということをちゃんとしていかなきゃならないことは確かでございますが、一番初めに長官が言われたように、競争ということも極めて大事でございますので、いろんな違った場所ではやりのテーマを追っかけるといったようなことを一概に余り否定しない方がいいだろうと私は思うんです。例えば、組みかえDNAのお話がはやり始めますと、どこの省の研究所も皆競って同じテーマを、あるいは似たようなテーマをお取り上げになる。うっかりするとそれをむだな重複だとお考えになる方々があり得ると思うんですけれども、私はそういう際にはむしろ大いに競争をさせるべきだと思いますですね。それはある程度やればおのずから勝負がついてきて、意気阻喪した人は自然にやめていくんだろうと私は思います。  まあそういうことを、いろいろ細かいことを申し上げるともう実は時間が余りなくなりましたのですが、先ほど赤羽さんは、私がこれから質問しようと思っていたことを先取りされて答えられてしまったんですが、その調整費というものをハードだけでなくてできるだけソフトの方にも使いたいという、その一つのあらわれが、これは私が学術会議の会長として科学技術会議に参加していたときに始まったことなんだと思いますが、フォーラムというのをお始めになりました。それで、私はその第一回にだけ参加させていただいて、これはまだいろいろ改良すべき点はあるけれども、これは大いにやるべきことだというふうに感じたものですから、その後の成り行きといったようなことについて非常に関心が深いんですが、あれはどういう成果を上げているかといったようなところ、あるいはどういう方針でこれからやっていくかといったような点を聞かせていただきたいと思います。
  93. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) ついこの間第三回目が行われまして、三つの分野専門家によりまして、これは産官学各方面から第一線の研究者、大体四十歳前後の方でございますけれども、来ていただいて、その専門分野別の討論も行いますし、それから異分野間交流と称しまして、違う分野の者同士が集まってあるテーマを設定して議論を行う、さらに共通的な問題、政策とかそういった共通な問題についての議論も行うという場面を展開したわけでございます。  出席された方は、初めての経験で、こういう違う世の中があったか、あるいは自分と違う分野、しかし関連のある分野のことは全く自分は知らなかったけれども、聞いてみたら大いに勉強しなきゃいけないということもわかったと、いろんなアンケートもありまして感想が寄せられております。もう九割以上が、非常に役に立った、もっとやってほしいという意見でございました。  さらにいい方法があるかということもございますけれども、三年たちましてひとつ見直してよりいい方向を見つけたいと考えておるわけでございます。その一つは、やはり来られる方は第一線の方で、その方には非常に役に立つということはよろしいんですが、そんなに役に立つのならもっと大勢の方にこの雰囲気なり内容を伝える方法がないだろうか。それで、従来は議事録として速記録のようなものをリポートに出しておったわけでございますが、これではまた読みにくい、といって概要だけになりますと味のないものになってしまう、これをいかに読みやすくしかもポイントが失われてない報告書というものをつくるか、こういう御検討をひとつ執行委員会の方で検討していただくことをお願いいたしまして、ことしはトライアルにまず第一回目のをつくっていただきまして、それをもとにしまして来年の会議のあり方、それからそういう取りまとめのあり方、今後検討を進めていきたいと考えておる段階でございます。
  94. 伏見康治

    ○伏見康治君 先ほど古賀さんが触れたことではありますけれども流動研究システムによる創造科学何とかという新技術開発事業団がやっておられる仕事、非常に私としては興味があるんですが、それのその後の進展の状況もひとつお聞きしたいような感じですが、先ほど古賀さんが既に聞かれたので、テーマとかそれを主宰しておられる先生方とかいうお話よりも、既にこんな成果が上がったといったような例が何かあったら教えていただきたいと思うんです。
  95. 村野啓一郎

    政府委員村野啓一郎君) 御指摘の、いわゆる創造科学技術推進制度と言っていますが、五十六年度から新技術開発事業団の事業の一つとして始まっているわけでございまして、現在六つのプロジェクトが進行中でございます。そのうち、四つが大体物理系テーマでございますし、あと二つが生物系テーマでございまして、それぞれ今進行中でございます。  実は、五十九年度予算でもう一テーマ、これは生物系でございますけれども、それを入れるということで今進めておるわけでございます。これは高耐性微生物と申しまして、非常に極限的な条件の中でも、高温高圧の中でも生きている生物があるわけでございまして、そういった極限的な条件の中での生物機能、これを解明していろいろ薬品をつくったりそういったシステムを開発したりすることに使おうということで、これは今後のプロジェクトでございます。  従来の六つのプロジェクトの状況を申し上げますと、先発いたしました四つにつきましては既に三年目に入っております。これは、五十六年度から始まりまして五年間で終わる。実は政府プロジェクトは五年という一応終期を設けまして、五年たった段階で一応終わりまして、必要があればさらにまた別途のプロジェクトにして進めるというシステムでございますけれども、そのうちの既に半分を過ぎているわけでございます。昨年、その四つのプロジェクトにつきまして公開の報告会をいたしましたところ、大変評判を呼びまして、大勢の方々、特に外国の方々も含めましてそれを聞きに来られたことがございます。  それから、あといわゆる特許出願でございますが、これが実は百十ぐらい現在その六つのプロジェクトについて行われておりますし、また学術論文として発表いたしましたものがやはり百十件ぐらいございまして、予期以上と申していいかわかりませんけれども、予期したような効果をおさめているわけでございます。また、後数年後に第一次のプロジェクトの期間が来るわけでございますけれども、相当の成果をおさめるものと期待しているわけでございます。あと二つにつきましては、今始まったばかりでございますけれども、それぞれしかるべき結果を生むというふうに考えておるわけでございます。  具体的にどういうものができ、あるいはその機能が得られたかということにつきましては、まだ途中でございますのではっきり申し上げられないわけでございますけれども、有望な芽が出ているということでございます。
  96. 伏見康治

    ○伏見康治君 あれは多分、パテントを取ったような場合には、その半分は当人に行って、半分は事業団に行くといったように伺っておりますが、いい研究をなさればなさるほどパテントを取るために成果は急には公表できないということがあって、私たちのところへはなかなか立派な素人わかりする話を聞かせていただけないと思うんですが、それでも何か具体的な話ありますか。
  97. 村野啓一郎

    政府委員村野啓一郎君) 途中でございますので、まだそこまではっきり我々としてもつかんでおらないわけでございますが、例えば一つプロジェクトの中で超微粒子というのがございまして、金属にしましてもその他の物質でも、非常に細かいところまで分割した場合に非常に特別な機能が出てくるというわけでございます。それで、実はニッケルの超微粒子というのを例にとりますと、これによりまして一つの化学反応の特別な触媒になるということが発見されております。  そのほか、同じく超微粒子でございますけれども、超格子膜という超微粒子を使いました膜によりますと、超電導の現象でも非常に特別な今まで考えられておらなかったような現象が出てくるということが一応発見されているわけでございます。  今のは一例でございますけれども、先発グループにつきましてはそれぞれこのような成果が出ているように聞いております。
  98. 伏見康治

    ○伏見康治君 この創造科学云々というやり方は極めてユニークなやり方で、しかも研究者の心理状態をよく考えた上でのプロジェクトでございますので、私はその成果を非常に期待しておりますので、今後大いにやっていただきたいと思うんですが、ただ予算的にちょっと心配なこと、まあ全般的に予算が圧迫されているような感じもいたしますが、一番心配なのは、最初四件取って、その後は一件ずつしか取ってないわけですね。そうすると、五年先になると一どきにどさっとなくなっちゃうわけですね。これは一つの仕事を続けていく上においてはそういう大きな変動があるのは非常によろしくないと思うんですが、それをもう少し何とかする工夫はないんでしょうか。
  99. 村野啓一郎

    政府委員村野啓一郎君) 御指摘のように、このプロジェクトは初年度は四つでございます。五十六年度四つスタートいたしまして、あと五十七、五十八、さらに五十九と一つずつやっておるわけでございますが、特に一つの課題に限定しなくちゃならないというわけではございませんので、余り一度に始めまして、何といいますか、アブハチ取らずになってもいけませんので、厳選をいたしましてやっておるというのが実情でございます。決して先細りにするつもりはございませんので、そのほか今新しいプロジェクトにつきまして検討いたしておりまして、将来先細りにならないような形でこの課題に加えたいと思っているわけでございます。
  100. 伏見康治

    ○伏見康治君 またちょっともとに戻って、科学技術会議そのもので取り上げるべきテーマについて、心配な話を一つ申し上げたいんですが、国立の研究所がございまして、そこにおられる研究者方々がだんだんお年をとってこられて、平均年齢が大変高くなっているといったようなことをお伺いするんですが、その研究所方々の年齢構成といいますか、そういうものはどういうふうになっているでしょうか。例えば、それを普通のお役人との対比において考えたらどうなるか。
  101. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) よく言われることでございますけれども、現在、年齢にしますと四十歳前後と、それから五十歳強のところと、二つのピークのある年齢分布になっております。これは採用がそのときに行われたとか、世間の経済情勢とか、それから国家予算の定員との関係とか、いろんなことが影響してこういう形になってしまったわけでございます。途中でやめる方がだんだん少ない、これは分野によりますけれども、ということがありまして、十年前と比べましてもピークがそのまま平行移動しているという状況にございます。したがいまして、平均年齢でこれを見てまいりますと、十年前に三十九・四歳でございましたが、現在四十二・九歳、全く平行ではございませんけれども、それだけ老齢化しておる。一般公務員と比べますと、年によって違いますが、二、三歳の差が研究職の方に多うございます。ただし、研究職の方は学歴が高くて入るということもありますので、それを勘案しますと同じぐらいかなという感じもいたすわけでございます。
  102. 伏見康治

    ○伏見康治君 研究者にとっては若さというものが非常に重要な要素であるということは、皆さんお認めくださると思うんですが、私が音やっておりました理論物理の分野なんというのは、二十代に仕事をしなかったらもう永久に仕事ができないと言われているくらいでございまして、若さというものが非常に物を言うところでございます。ですから、普通のお役人の年齢構成に比較して研究所の方が若いのが本来あるべき姿であって、そちらの方が年をとっているというのは、非常にぐあいの悪いことではないかと思うんですね。  それで、お役所の方々事務系統の方と研究者というものとが何か交流する手段をお考えになって、年齢構成を少しでも若返らせるように何か工夫をしていただきたいと思うんです。  それで、こういうことを申し上げておきたいと思うんですが、研究者としての能力があるかどうかということは、いわゆる学業成績ではもう全然判断ができません。私は大学教授を長らくやっておりまして、学生相手にそれを痛感しているわけですが、もちろん成績のいい方はそれなりにちゃんと使える場所があるわけですけれども、創造的能力といったような点から言うと、学校の成績のいい方がいいというふうにはならないわけで、むしろ逆である場合が多いわけです。それでは成績の悪いのを揺ればいいかというと、そういうわけじゃないということは明らかなことでございまして、つまり潜在的に能力を持った方がいるのを見つけますためには、やっぱりそこでしばらく働いてもらって仕事ぶりを見ているほかに方法はないと思うんですね。  そういう意味で、研究所で新しく人を採った場合には、しばらくお使いになって、そしてこれが将来伸びるかどうかという判断を所長さんにしていただいて、それが望みがないというときには、甚だ申しわけないようですが、事務系統の方へ回していただく。その方が御当人としてはるかに能力を発揮できると思うわけですね。例えばそういうようなことをお考えになって、研究所の年齢構成をできるだけ若返らせるようにひとつ努力をしていただきたいと思うんですが、無理ですか。
  103. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) 確かに、年齢構成が高くなったことが国立研究機関の問題、これは定員がふえないということも関係しておるわけでございますけれども我が国全体が年功序列、終身雇用型、特に官庁はそういう形になっておりまして、その中にこういう研究という若いときに張り切らなきゃいけない仕事というのをどういうふうにかみ合わせるか。既にいわゆる自由業と言われる形になっている仕事は、そういう年功序列体系から外れて別の動きになりつつあるわけでございますけれども研究というのは、特に国立研究機関の場合、そういう体系をどういうふうにとったらいいのか、なかなか難しい問題でございまして、のべつ議論はされるのでございますけれども、なかなかはっきりした結論が出ないということがございます。  研究なり学問としての経験を積んだ形でそれが有効に生かせるような仕事、例えば情報処理とか教育とか、そういったものとのつながりにおけるいろんな形の、何といいますか、生涯計画というようなものが立てられるべきではないかという議論もございまして、今後国立研究機関あるいは大学の活性化を図るというテーマがございまして、その中の一つの課題として検討しなければならないと考えておるところでございます。  私自身担当でございませんので、正確なことは申し上げられないのでございますが、事務系、行政系といいますか、それと研究者の交流というのは、実は省庁によって、あるいは科学技術庁におきましても一部行われております。ただ、まだ経験が少ないせいもございますけれども、成功例というのもございますが、一方でなかなか、何といいますか、その個人個人の考え方が分かれるときにかなり決まってしまったせいか、成功例は必ずしも多くないという状況でございまして、御指摘のような点を踏まえながらさらに検討していかなければならないのではないかと考えております。
  104. 伏見康治

    ○伏見康治君 話をまた変えます。  中曽根総理が就任早々ぐらいに、がん研究をちゃんとやるべきだというかけ声をかけられまして、それで何かいろいろと手当てをなすっているというふうに伺っておりますが、一般的なお話を聞いていると時間がなくなりますので、その中で私自身が関心を持っている点がどうなっているかということを伺いたいと思うんです。  私は物理屋なものですから、いわゆる近ごろはやりの生物学の方のことは余りよく知らないんですが、物理屋で加速器をしょっちゅう相手にしているものですから、その加速器でつくった放射線というものをがん組織に当ててそれをやっつけるというお話にはいささか興味があるわけなんですが、従来、例えばコバルトのガンマ線を当てるとか、あるいは電子線を当てるとかいうお話のほかに、近ごろは高LET、要するに線の単位長当たりのイオン化の数が非常に多いという、そういう線を使った方が有効であると。これは常識で考えてもそうなわけですが、そういうものとしては重イオン、もっとチャージの大きな粒子をぶち込むとか、あるいは湯川秀樹先生がその存在を予言されたので極めて有名なパイ中間子というものを使うのがいいというふうに言われているわけでございまして、その方面の放射線によるがん治療という面で、将来そういうものが有望視されている。そういうものに対してどういう手を打っておられるかというところを伺いたいと思います。
  105. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 放射線によるがん治療につきましては、既に確立されております療法は別といたしまして、今後より治療効果の高い、先生おっしゃいましたもろもろの放射線を活用していくことを現在研究中でございまして、たとえば速中性子線及び陽子線につきましては、現在、放射線医学総合研究所等におきまして臨床研究を続けておるところでございます。さらに、こういったものよりも体の深部にありますがんにつきまして治療効果の高いものといたしましては、重粒子線とか先生御指摘のパイ中間子線というものを利用するということが非常に期待をされておるわけでございまして、この点につきましては、五十八年の七月に科学技術会議が策定しました「がん研究推進の基本方策に関する意見」においても指摘されておるわけでございます。こういった新しい粒子線による治療研究につきましては、原子力委員会においても、既に現行の原子力開発利用長期計画を検討する段階におきまして、速中性子線、陽子線、重粒子線、パイ中間子線につきまして、どういう取り扱いで今後研究開発を進めていくかについて議論しました。その結果、これらはいずれも相当、パイ中間子線にしろ重粒子線にしろ、非常に施設に費用のかかる、まあ先ほど先生のおっしゃいました巨費科学とまではいきませんが、かなりかかるものでございますので、そういう意味で、その検討の段階では、速中性子線、陽子線、さらには重粒子線、パイ中間子線という順番で実用化に向けて研究開発を進めていくことがよろしいのではないか、こういうことになっておるわけでございます。  それで、既にパイ中間子線につきましては、これを発生する装置の開発がまず必要でございますので、これらにつきましては、従来科学技術庁では、原子力平和利用研究委託費とか新技術開発事業団の調査関係の経費等を使いまして、それらの発生装置については、エレメントでございますが、研究を進めてきておるわけでございます。これを実際のものとして組み立てるにはかなり大がかりなことになるわけでございますが、この大型加速器の開発、さらにはこれを利用した医学への利用ということになりますと、専門家も非常に広範な分野専門家を必要とするということで、今後この研究開発の進め方及び体制をどうしていくかということについては、十分に検討をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  106. 伏見康治

    ○伏見康治君 この際、長官に聞いておいていただきたいことがあるんですが、私が大阪大学に参りましたときに、私は助手として行ったのですが、そのときに助教授で湯川秀樹先生がおられまして、そして有名なノーベル賞をもらわれた論文を大阪大学の講義室で聞いて、非常に感激したことを覚えているわけです。それだけに、湯川先生が戦後になって、原子核物理学というものが広島、長崎の惨劇を生んだということに対して非常な罪の意識を持って、自分たちがかかわってきた学問がそういう悪いことに使われた、これを何とか少してもいい方に使うようにしようではないかという志を立てられたことは御存じだろうと思うんですが、その湯川先生の後輩として考えますというと、その先生のいわば発見したパイ中間子が病気の治療に役立つといったようなことがあったとすると、非常に湯川さんの霊を慰められるのではないかという感じがいたしまして、そういう点もお考えくだすって、日本のいわば生んだものですから、それで日本がん患者が助かるとなれば非常に……。  最後に一つだけ、また別のテーマで、国際協力についてちょっと申しておきたいことがありますが、近ごろ飛行機も頻繁に動くようになりまして、学問の中での国際協力も非常に頻繁に行われるようになったと思うのでございますが、一番大きな阻害になりますのは、どういうふうに説明したらいいんでしょうか、端的に言ってしまえば二超大国の間の仲の悪いということがいろいろと問題になりまして、そのお相伴で日本もいろいろと変なことが起こっているのじゃないかと思うんです。  例えば、最近私は、ソ連のウクライナのキエフからある理論物理学者を呼ぶという私のお弟子さんの計画が、途中で挫折したという話を聞かされたのですが、ビザが出なくてだめになったというお話なんですが、外務省の方々が、その先端技術についての何か漏えいといったようなことを心配されてそういうことをなさるということ自身を非難するつもりはないのですけれども、しかし、個々のケースについてそのおそれがあるのかないのかという判断は、外務省のお役人には実は判断できないはずだと思うんですね。そういうことはやっぱり科学技術者の仲間に聞かなければ、果たしてそれが先端技術の漏えいにつながるものであるかどうかという判断のちゃんとしたことはできないと思うので、その点非常に心もとなく思うわけです。少なくとも私がかかわった場合にはそういうおそれがほとんどないとしか言えない大なものですから、そういう意味の心配をせざるを得ないわけなんですが、その辺のところも、科学技術会議として外務省に対してもう少し合理的な措置がとれないものであるかどうか、助言をしていただくということができないだろうかどうかということをお伺いしたい。これを最後にいたします。
  107. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 最初にちょっと、湯川先生のお話が出ましたので、私も大変感銘深く伺いました。  昔話をして大変恐縮でございますが、私がちょうど大蔵省の文部省担当の主計官をしていた当時に、湯川先生のノーベル賞というすばらしい朗報を聞きまして、これはもう予算でけちけちしているときではないということで、私も一生懸命何か湯川先生のノーベル賞を記念してということで研究所みたいなのを御協力申し上げた記憶がございます。  ただいまお話しのように、平和のためにこの原子核を活用する、これは本当に大事なことでございまして、いまおっしゃいましたようなパイ中間子を活用してがん治療という、人類で最も恐るべき、憎むべき病気に立ち向かっていくということは大変大事なことでございますので、一生懸命努力をして、そして湯川先生のノーベル賞にお報いをするように努力したいと思っております。  さて、ただいま国際協力についてのお話がございましたが、私ども今日、いろいろな分野で国際的な分担をしていかなければならない。そういうことで、例えばサミットにおいても十八の項目についてお互いに分担してやっていくというようなこともやっております。こういうようなサミットは、本来経済を主としたサミットでございますけれども、その経済の活力ということから科学の方に目を向けたということでございますが、私は経済の面からだけ科学技術を見るのではなくて、やはり人類の平和と繁栄、こういう観点からむしろ科学技術というものに目を向けていただきたい。それがひいては経済の活力にもなっていき、そしてまた、国際的な協力も必要になっていく。そういうように見方を少し変えて、そういうサイドからむしろ科学技術というものを見ていく。そうしてまた、ライフサイエンスというものが発展をしていく場合には、人間の尊重ということが必要になってきて、この間の箱根会議というようなものは、中曽根総理の大変な卓見がそこに生かされて。きておると思います。  そういうようなことで、私どもは国際的に科学技術というものの日本の位置づけと、そして協力の姿というものはさらに進めていかなければならないと思います。例えば、宇宙基地計画といったようなプロジェクト、これはもう先ごろの宇宙開発政策大綱においては、日本が独自でやるということはなかなかできない、そういう分野はむしろ国際協力でやっていこう。スペースシャトルへ人を乗せるということもそうでございまして、そういうような壮大なプロジェクトについては国際協力ということになりましょう。あるいはまたがん研究についても、日本だけはまだ立ちおくれている面もございます。アメリカの方が進んでいる分もございますから、そういうことで協力が必要になってくる。あるいは最近は酸性雨の問題等も出てきておるわけでございます。あるいはまた、地球の砂漠化といったような問題、あらゆる分野で、このように国際協力の中で、科学技術を人類の平和と繁栄のために生かしていくという時代になったと思います。  そういう中で、外務省はわからないということは私は申しません。外務省にも科学技術のわかる人をちゃんとつけてやっておりますし、あるいはサミットのいろいろな準備会議では私ども専門の次官とかあるいは局長が参加をしておぜん立てをする、こういうようなことで、単なる外交官だけでこのような分野を進めるという態勢ではなく、一生懸命一緒になってやっておるわけでございますから、その点は私どもは万全の態勢を組んで進めてまいるということでございますので、今後ともよろしく御指導をお願いしたいと思います。
  108. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 本日もまず「むつ」問題について幾つかお尋ねをいたしたいと思いますが、まず、いわゆる関根浜の問題ですが、この関根浜の新母港の建設に二月着工をしているわけですけれども、五十八年度とういう工事を行ったのか、工事の期間、内容、投じた金額、御説明をいただきたい。
  109. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 関根浜新港につきましては、本年二月に工事を始めたわけでございますが、これは「むつ」を係船いたします埠頭のいわば東側の護岸に当たる部分で、それの一部の基礎築造工事でございまして、具体的に行われたものは捨て石の工事でございます。工事費は二千四百万円程度でございまして、工期は、二月二十二日に始めたわけでございますが、三月二十四日までかかっております。それから工事内容は、先ほど申し上げました捨て石作業でございまして、捨て石の総量は約二子四百立米ということでございます。
  110. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 今説明のあったようなことでありますが、五十八年度予算での新定係港関係費というのは、たしか七十六億二子八百万円ということであったと思うのですけれども、このうち、諸般の事情あり五十八年度使ったのは今のお話の二千四百万だと、こういうことになりますと、残りの会計処理はどういうことになりますか。繰り越すんですか、繰り越し使用になるんですか。
  111. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 五十八年度でこの港の工事そのものに直接かかりますお金は四十三億程度でございまして、このうち既に一部ケーソンをつくるというような工事にもう着手いたしておりまして、それらの工事費を除きました約三十億円ほどは五十九年度に繰り越しております。
  112. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうしますと、内容をもう少しただしたい点はあるんですけれども、とにかく残約三十億、これが五十九年度に繰り越す。そうしますと、五十九年度予算としての新港関係建設費四十五億、これに合算になると。そうしますと四十五億、四十五億ということで説明をされているわけですけれども、実際は七十五億、こういうことになるということですね。  そこで、問題の関根浜、果たして大丈夫かという問題でありますが、私もよく知っていますけれども、あんなところに八千二百重量トンの大きな船を接岸できるような港が一体つくれるのかということが、いろいろ今日までも議論になってきました。関根浜はいわば海の難所で有名なところで、津軽海峡が東に大きく口をあけている。北海道の襟裳岬と尻屋崎の間は百八十キロも開いている。この海域は、一番多い東の強いうねりや高波がもろに入ってくる地域だということで問題になってきておったわけです。でありますから、冒頭説明のありました約二千立米のこの捨て石、これをまず工事の始まりとしてやったということでありますが、これが強い流れでどこかに流れてしまったと、こういうことも私は耳にするわけでありますけれども、この点について科技庁はどういう把握になっていますか。
  113. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 先ほど先生、五十九年度予算四十五億というお話がございましたが、あれは最終予算折衝段階において追加された金額でございまして、予算としては五十一億円という数字になっております。
  114. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 繰り越しとは別ですね。
  115. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) はい。  それから、海象に関することでございますが、この関根浜地区はちょうど津軽海峡の中でもなめらかに海岸線が、何といいますか、内側に湾曲しているところでございまして、波浪は日本海沿岸や太平洋沿岸に比べまして相当小さいということは確認されておるところでございます。この具体的な例といたしましては、例えば関根浜に来るうねりというのは、むつ小川原あたりに比べますと三分の一から五分の一というようなデータも出ております。そういうようなことでございまして、今、先生の御指摘の捨て石をしたものが流されたというようなことは、私どもそういう話は聞いておりません。漂砂現象というものも、比較的ここは少ないというふうに聞いております。
  116. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 この捨て石が流れたということは聞いてないということでありますけれども、しかし私は、まんざらそういうことが起こっても不思議でない、非常に流れが強い地域だということは、随分いろんな形で報告が出ている問題ですね。  そこで、この関根浜問題の経過を少し振り返ってみますと、昭和五十五年当時、政府は、長崎の佐世保に入っておった「むつ」の新母港をどうするか、こういう作業をやったのですけれども、候補地として約六十地点上った。それで、その選定のための十五項目ほどの条件に基づいて、それが大体五つに絞られてきた。しかし、その段階では、関根浜という名前は、「関」の一字も出ていなかった。それで、大湊が最適だと、大体こういう話になっておったのでありますけれども、これが急速関根浜という方向へ方向転換が進んだ。そして、五十六年五月のいわゆる関根浜新母港決定という五者共同声明になっていくというわけであります。こういう経緯をもう一遍振り返ってみますと、果たして新母港として関根浜が適当かどうか、一番肝心の安全性の問題は大丈夫かということが、どうしても最後までつきまとうわけでありますけれども、この点について、まず科技庁の見解はどうですか。
  117. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 新しい母港を探すべく全国各地の調査をしたわけでございますが、基本的には、青森県の大湊港から外へ出るに当たっては、青森県以外の地点というものが中心に探されたと思われまして、そういう意味関根浜とかその他青森県の地点が具体的に挙がってはいなかったのだろうと思いますが、いずれにいたしましても、大湊の再母港化をお願いするという段階におきまして、地元の方々と御相談した結果、関根浜に港をつくるということになったわけでございます。  ここの地点としていかがであるかという御指摘でございますが、この点につきましては、先ほど申しましたように、気象、海象というものがいわば青森県のほかの地点に比べまして特に厳しいという条件ではございませんで、先ほど申しましたように、日本海沿岸あるいは太平洋の沿岸に比しましても波浪は比較的小さいわけでございますし、ちょうどあの下北半島の関根浜よりも西の方に突き出た大間には民間のフェリーの基地もあるわけでございまして、そこではフェリーの入港、停泊というものが支障なく行われているということがございます。  関根浜につきましては、原子力船研究開発事業団が五十六年の九月から気象、海象、地質、地盤といったものにつきまして具体的に現地の調査を行いまして、五十七年の三月に、港湾を建設するということは技術的に十分可能であるという結論に達したわけでございます。防波堤等の外郭施設をつくることによりまして、港の中の静穏度というものも十分必要な静穏度を保てるということでもございまして、特にこの地点がとりわけ安全上問題であるというぐあいには私ども考えておりません。
  118. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 関根浜の名前が全然出ていなかった段階から急速名前が浮上をしてくる時期、五十六年の二月ごろの段階でありますけれども、この二月の五日に原船事業団が東京で青森県政記者団との会見を行っております。  この会見で事業団がどういうことを語ったのか、幹部が。当時の模様が新聞にも報道されているわけでありますけれども、当時事業団の理事であり、「むつ」の初代船長であって、大湊にも数年間勤務して、この地元青森の事情にも非常に詳しい専門家の折原洋氏、この折原さんが、外洋母港などは論外で常識外だ、こういう発言をしている。今局長は、気象、海象、いずれの面で見ても適切な条件を備えている、こういうふうに言われているんですけれども、むしろ逆のことを、「むつ」の初代船長を務め、当時長いことそこに勤めておった当の本人が、例えば、冬の期間烈風と濃霧で視界が非常に悪くなる、潮流も激しい、津波や台風などの対策も考慮しなければならないなど危険が多く、実験船「むつ」には不適当だと、こういう発言をしておるのであります。  そこで岩動長官、お尋ねをいたしますが、長官はとにかく八月に向けてああいう形での協議はやられていくわけですけれども、今日までのところ、「むつ」を残すことは必要だ、そういう前提で研究開発を継続をしていくべしと、こういう立場で今日までというか、一月の段階まできておられたかと思うんですけれども、例えば「むつ」初代船長に代表されるような、関根浜新港については果たして大丈夫か、むしろ不適当だ、こういう発言なんかがあったということを重々御承知で今日までの考え方、「むつ」問題の方針を進めてこられたのでしょうか。長官、どうでしょうか。
  119. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 関根浜に決まるまでにはいろいろな経過があって、またその間にいろいろな方の御意見もあったことは承知をいたしておりますが、先ほど担当の局長から申し上げましたように、いろいろな観点から、また地元のお考え等も勘案しまして、まずこれならば大丈夫であるということで関根浜に決定を見た次第であります。
  120. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は長官に、一つの例でお尋ねしているんです、折原さんのそういう発言があったと。これは読売新聞の報道であります。それにも載っておりますけれども、そういうことも御承知で長官の考え方を決めてこられましたかという、この点を聞いているんですが、どうですか。
  121. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 先ほども申しましたように、経過の過程においてはいろいろな御意見もあったということは私も聞いております。
  122. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それならば局長、どうです。
  123. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 折原船長がどういう観点からそのように言われたか、私だだいまつぶさに承知しておりませんが、その段階におきましては具体的な関根浜に関する調査データ等に基づいての御発言とは思われないわけでございます。それから、いわゆる内海的なところの港と比較されれば、基本的には外洋では波が荒い、いろいろな悪条件があるだろうということは考えられるところだと思いますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましてはその後現地における実地調査をいたしまして、そういうことで特に港を建設するのに不適当なところであるということではないわけでございます。先ほど霧のお話も出ておりましたが、霧が非常に多いところじゃないかということでございますが、移動性の霧というのがあるようでございますが、しかし、これは局所的な短期的なものでございまして、終日霧に閉ざされるということも少ない。現実に大間-函館間のフェリーとか、青函連絡船の視界不良による欠航とか、そういうようなことも年間わずかな日数でございますし、そういったいろいろな実際の調査に基づいて、関根浜を建設するのは不適当だというようなことではなくて、十分港を建設できるものであるという結論を得たと承知しております。
  124. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は、この読売新聞を一つの証拠だけにしてこのことを申し上げているのではなくて、現に今も言いました二月五日の青森県政記者団との会見の模様が、二月の六日の読売新聞、そして二月の十日から四日間だったと思いますが、この連続ルポという形でのこの中にもそういった発言が紹介されておる。それだけじゃない。岩波新書という本がございますけれども、田尻さんという、これはかなり名前をよく知られている、東京都の公害局長ですかをなさっておった方ですが、雑誌「世界」、これにも田尻さんの論文があるが、それとさらに他のいろいろな地域の開発問題とあわせての「海と乱開発」という岩波新書のこの本の中にも、そのことが詳しく引用されておる。こういう状況でありまして、本当に一体大丈夫なのかというふうに私は思う。局長お話でも、歯牙にもかけなかったというふうに私さっきの答弁受け取りますし、そうなりますと、本当にこのことを事実の資料として長官の判断にちゃんと事務局の方は供したのかということも私は疑わしいと思うんです。  そこで、これはそういう関根浜の安全性にかかわる一つの重大な問題でありますけれども、とにかく今日まで行政のメンツといいますか、その場その場の惰性と、それから何か事が起こったら金で処理をする、こういう悪循環の集積が今日の「むつ」問題というこういう形になってきていると思うんですけれども、それの明確な反省もないまま関根浜着工ということも進められている。八月に向けてのひとつ検討をやっていくんだということでありますけれども、こういうことの繰り返しにならないように、ぜひ長官が知性と勇断を持ってこの問題に対処をしていただくということを、重ねて強く要望をしておきたいわけでありますけれども、こういう角度から前回の四月九日の委員会での質問でもちょっと触れたことでありますけれども、重ねて確かめておきたい問題が二つほどあります。  一つは、八月まで検討をやる、廃船にするか残すのか、これの検討をやる、こう言いながら、しかし片一方、今国会に対して、五月末を会期とするこの国会で、原子力研究所に事業団を統合するというこの法案をごり押しに通そうとしている。本当を言えば、前回もこの説明を聞きますと、とにかく法律で六十年三月までに統合しなくちゃならぬということになっていますのでということですけれども、しかし考えてみれば、「むつ」が廃船になれば原子力船研究開発方針の土台が変わるわけですね。前提が変わる。ですから、当然「むつ」の扱いをどうするかという結論が出た暁にどういうふうな法案にすべきか、これが事の筋じゃない一が。しかし、その時間がないからと、準備のための。しかしこれは、そんなことを政府や与党の側が言えた義理ではないと思うんです。というのは、そういう論法で、時間がありませんから国会でひとつ決着をつけてくれと、こういうやり方をやってくるというのは、むしろ国会の審議権のじゅうりんも甚だしいということで、私は本当の議論の筋としては、政府の出方の筋道としては、八月の結論が出た段階でもう一遍法案の内容もよく吟味をして提出をする、当面は今出しておるこの法案は白紙に戻す、こういうことをされてしかるべきじゃないかというふうに思うんですが、長官どうでしょう。
  125. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 原子力船むつ」の事業団を日本原子力研究所に統合するということは、御指摘のように、この原子力船研究開発事業団法の改正のときに、行政の簡素化という趣旨から何らかの他の機関に統合するということで、その期限を六十年三月三十一日ということに国会で御決議をいただいて、そしてその法案が成立して今日に至っているわけでございます。したがいまして、私どもはその法律の誠実な実行をしていくことがやはり大事であり、特に行革という大問題を私どもは進めているわけでございますので、その一環としてこの法律を忠実に守るということは大変大事な姿勢であると思います。  そういう中において、原子力船むつ」の今後のあり方については各方面の御議論をちょうだいして、来年の六十年度予算編成に間に合わせるように、八月いっぱいには何らかの結論を出そうということになっているわけでございます。これが継続あるいは廃船ということになるかまだ結論は出ておりませんが、いずれにいたしましてもこの原子力船むつ」の処置はだれかがやらなければいけない、そして行政簡素化の中でやらなければいけないということで、私どもはいろいろな知識経験を持っている原子力研究所にこれを統合するということが最も適当であり、また結論がどう出ようとも、やはり後々廃船ということになってもいろいろなまだやらなければならないことがございます。したがって、そのようなことをやるところが原子力船事業団よりはむしろ整理統合した中でやっていくことの方がそういう場合でも必要であると、こういう認識から法案を提出いたしているのでございます。
  126. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 あともう一言。  同じく前回、政府が異常なまでにこの「むつ」に固執をされるというのは、このことを通しての原子力船技術を将来軍事目的に使おうという、そういう考えがあるんじゃないかという不安を国民は持っている、絶対に軍事目的には使わないというふうに確約をできるかとお尋ねをしたら、長官は、平和利用と御理解願いたいと、こういう御答弁であったと思うんです。ちょっと時間の制約でそれ以上聞けなかったんですが、もう一つ突っ込んでお尋ねをしますけれども、それは現在総理の中曽根氏がかつて防衛庁長官の時期、一九七〇年、国会の正式答弁で、原子力推進による船舶が一般化するときまでは原子力潜水艦の推進力などに使うことはないと、こういう答弁がなされておる。これは逆に言えば、原子力船が一般化すれば潜水艦や軍艦に推進力として使うこともあると、こういうふうにもとれる発言と解されるわけでありますので、そこで重ねて長官にきょうもう一遍お尋ねをしておきたいんですけれども、「むつ」を残して研究開発を継続しようというふうに強調をされるのは、その技術を将来潜水艦や軍艦に使うということも目的一つに考えているのでは決してない、文字どおり平和利用一筋に考えていると、こういうふうに理解をしてよろしいんでしょうか。
  127. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 簡単に申せばそのとおりだと申し上げるわけでございますが、御承知のように原子力基本法で、原子力研究、開発、利用は平和利用に限るということになっておりますし、また仮に今後法案で日本原子力研究所に統合されましても、原子力船むつ」の開発を進めるのか、あるいは別の方法舶用炉研究を進めるということにもなろうかと思いますが、いずれにいたしましても、すべてこの基本法に基づいて私どもは対応していくということでございます。
  128. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 終わります。
  129. 山田勇

    山田勇君 まず、長官にお尋ねをいたします。  科学技術振興に関する基本的な方針を明確にするため、国としては、科学技術の主要分野別の基本計画の策定、必要な財政措置等研究投資の適正な配分、研究者の確保、研究体制の整備、国際協力、安全性の確保などのあり方を示す科学技術振興法というようなものの制定に努めるべきだと私は考えますが、まず、長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  130. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 今、山田委員がおっしゃったように、科学技術の進め方についての基本計画の策定でありますとか、財政措置、研究者の確保、研究体制の整備、国際協力、こういうことは大変大事なそれぞれの分野であると認識をいたしております。一方、このような今日の科学技術の進展は目覚ましいものがございます。そして、非常に広い分野にわたっております。したがって、国家的にも社会的にも、そのニーズに効果的な対応をしなければならないわけでございますが、かつて私どもも、ただいま御提案のようなお話に基づいた基本法というものを考えて、国会に提案をいたしたことがございます。残念ながら、これは国会で審議未了になっております。いろいろな御意見があったためでございますけれども、私どもは、その提案をした精神を生かして、そして総合的な科学技術の政策をつくるということに重点を置いて、科学技術会議というものを十分に活用をしていく、そしてそこで基本的な方向を決めて、その前にはもちろん関係省庁意見も聞き、要望も聞き、そしてそれを総合調整して基本政策をつくり、そのもとで、私どもを初め関係の省庁が整然とその中で科学技術政策を進める、研究開発を進める、こういう体制を今日まで続けてきているところでございます。また、その総合調整機能を発揮するためには、科学技術振興調整費というようなものも特に予算に計上して、そのような姿勢をさらに確かなものにするということで進めてきているところでございます。
  131. 山田勇

    山田勇君 確かに、こういう科学技術振興法、これは私らが考えた言葉で言っているんですが、先ほど来、伏見先生の御意見質疑などを聞いておりましても、国際交流の問題にしても、一つの何かイデオロギー的な問題があると外務省の方でストップがかかってしまうというような問題、それから頭脳流出なんということは、前回の委員会でも私申しましたが、これは日本科学技術庁としての一つの恥でありまして、立派な頭脳が海外へ行って研究成果上げて、それを逆輸入してくるというようなことは、大変困った問題でありまして、そういうソフトの部門に対する非常なこれからの御努力をぜひいただきたいと思います。科学の国際交流、人的な交流にしても、私は、愛とスポーツは国境がないというんですが、ここにもう一つ加えたいのは、愛とスポーツと科学というものには国境はないというふうな形の中で、ひとつ十分御研究をしていただきたいと思います。  次に、原子力船むつ」に関連して質問をいたします。  昭和三十年十二月九日、日本原子力船調査会が発足し、三十三年八月には日本原子力船研究協会が発足、いずれも造船界、海運界が中心となって推進したと、科学技術庁原子力局監修の「原子力ポケットフック」に書かれていますが、当時の造船界、海運界、または世論は、この原子力船に対してどのような動向を示しておられたのでしょうか。
  132. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 「むつ」開発の当初と申しますと、昭和三十六年に原子力開発利用長期計画で、原子力委員会で初めてこの「むつ」問題を公式に計画の中に取り上げたわけでございますが、当時は国際的にも非常に原子力船に対する期待が大きく、昭和五十年代にも実用化が進展するものではないかというような期待が持たれておりました。そういうようなことから、我が国も造船田並びに海運国としてやはりこの原子力船問題に取り組んでいかなければならないということで、業界も積極的に取り組むという態度であったわけでございます。
  133. 山田勇

    山田勇君 最近の造船海運界の原子力船に対する期待はどうなっておりますか。
  134. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 原子力船につきましては、既に外国でも、アメリカのサバンナあるいはオット・ハーンというものが、実験航海等を終えてその任務を果たした後、既にほかの用途に使われておるわけでございますが、それぞれその国におきましては、次の新しい舶用炉というものの設計等について研究をしておるわけでございますが、ただ全般的に見まして、やはり原子力船経済性という面から、当初考えられておりましたような、割合早い時期に原子力船実用化するということの可能性が少なくなりまして、現在では、原子力委員会等での検討でも、二十一世紀になるかな、こういう見通しをしておるような状況でございます。しかも加えて、造船業界なかなかの不況でもございますので、そんなことから当時ほどの業界の熱意がないということは、ある意味で仕方がないところかもしれませんが、しかし基本的にはこの業界におきましても、将来原子力船がやはり必要となるものであって、その基盤的な技術についてはやはりきちっと確立しておくべきであるということで認識しておりまして、私どもの、例えば昨年の原子力委員会におきます原子力船懇談会等においてもそういう態度でございます。いろいろ今後の「むつ」の実験航海その他、舶用炉の開発等については、そういう意味からもこういった関係方面の専門家が協力をしてくれているという状況にございます。
  135. 山田勇

    山田勇君 今さほどでなくても、将来としては原子力船の今の日本技術も確保しておく、将来性があるというふうなことだと思います。  現在、世界で原子力船は何隻建造されておりますか、
  136. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 現在までに、平和目的原子力船としましては五隻が建造されております。アメリカのサバンナ号、それから西ドイツのオット・ハーン号、それからソ連では三隻の砕氷船が既に建造され、運航しておるわけでございます。さらに、ソ連におきましては、砕氷船、それからはしけ運搬船及びコンテナ船、この三隻の原子力船を現在建造中である、そういうぐあいに聞いております。
  137. 山田勇

    山田勇君 ソ連のこの三隻は現在も就航しているようですが、米国のサバンナ号は、一九六二年五月完成以来、アメリカ国内初め欧州各国の港に入港、一九六七年には韓国、中華民国、フィリピン等、極東に就航した後、一九七〇年七月、ガルベストンに係留していると承知をしておりますが、その後の動静はどうなっているか、わかっている範囲内で結構ですから、説明をしてください。
  138. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) サバンナ号につきましては、燃料を取り外しまして、原子炉については密閉をいたしまして、その部分に人が立ち入らないようなふうにしまして、船自身はいわゆる博物館という形でいろいろなものの展示に使っているというぐあいに承知しております。
  139. 山田勇

    山田勇君 西ドイツのオット・ハーン号は一九六八年に完成され、実験航海、商業運航を経て一九七九年に運航を停止していますが、その後の状況、運行停止の理由がわかっていれば説明をしてほしいんです。
  140. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) オット・ハーンにつきましては、実験目的を終了いたしましたところから、燃料も取り外し、さらに船の放射能を帯びた部分のものも解体をいたしまして、一般の貨物船に改造して、現在貨物船として就航中であるというぐあいに聞いております。
  141. 山田勇

    山田勇君 科学技術庁としては、民間で採算の合わない分野研究開発を手がけることが多いと思うんですが、原子力船の場合も、現在では民間では採算が合わないが、長期的な観点から我が国の将来を考えるとき、原子力船に関する技術を保有しておくことは重要であります。日本原子力研究所は、その総合的な能力を原子力船技術にも十分に活用できるという判断のようですが、一方廃船論も根強くあるわけです。その廃船論の大きな理由の一つに、これまで六百億もかけ、さらに関根浜新港開設などに六百億円ほどかかるという金の問題でありますが、財政難の中で、「むつ」に巨額の投資を続ければ他の科学技術予算が圧迫されるということもうなずけます。科学技術庁は、ほかの多くの官庁の中でも最も科学的、合理的に政策を立てるべきだと思うんですが、「むつ」問題について国民のだれもが納得のできる方針を示していただきたいと思いますが、それについて、長官でも局長でも結構でございます。
  142. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 大変貴重な御意見を承りました。  私どもは、「むつ」により研究開発日本の将来にとって極めて大事な原子力の平和利用の一環という認識で進めてまいったところでございますが、各方面からいろいろな御議論が出てまいりました。その結果、予算編成の段階で、ことしの夏までに改めて再検討していこうということになったわけでございます。  いずれにいたしましても、日本の将来を考えたときには、原子力による舶用炉研究開発は絶対に必要であると、こういう認識を持っているわけでございます。そういう中において、「むつ」によるかあるいは別の方法によるかという問題があるわけでございますが、いずれにいたしましても、過去のいろいろな経過等におきまして、それぞれの場面において最善を尽くして、最小限度の費用で対応してまいったと思っております。しかし、厳しい御意見もございます。会計検査院の御指摘もございます。そういうものを踏まえまして、そして今後継続するというような結論が出るにいたしましても、その場合には、六百億とか一千億とかといったような声があるわけでございますが、私どもはそれをそのとおりに受けとめているわけでもございません。十分に再検討する、またしていかなければいけないと、こう考えておりまして、国民の御期待に沿うように、そして貴重な予算を国民の税金をいただいて対応するわけでございますから、十分に各方面の御意見を体して、適切な対処をしてまいりたいと考えております。
  143. 山田勇

    山田勇君 長官、この原子力船についても、結果的には失敗という言葉を使われていますが、僕は決して失敗ではなかったと思うんです。新しい分野に挑戦する場合においては、そのプロセスに向かって、失敗を目的として予算をつけそして研究開発する人はだれもおりません。しかし、結果的にはいろんな意味での採算性だとか、技術的なまだ未熟な点があったとか、そういう点において結果的には失敗という言葉は使われるかもわかりませんが、私は、前の委員会でも申し上げましたとおり、宇宙開発に関するロケット発射に対する失敗で国民の御批判はないわけです。これは新しい二十一世紀へ向かう、いわゆる新しいロケット開発というものに対するやはり国民の納得というものがあると思うんですね。ですから、あれも巨額な予算を使って打ち上げるのですが、たまには失敗もありましょう。しかし、それに対して予算むだ遣いだとかそういう批判が新聞論調にもないんですよ、わりかたね。当時一、二度あったことがあるんですが、それは失敗してもやむを得ない、そういうロケットという高度な技術の中での失敗もあるだろうという国民の理解、コンセンサスが得られると思うんです。だから、原子力船むつ」についても、私が申し上げたように、国民の納得のいく結論というものを出していけば、今まで巨額な予算を投じたものも決してそれはむだではなかったということになろうかと思います。まあこれはどちらにしても八月に、長官がおっしゃるとおりどちらかに決断を迫られている問題だと思うわけです。  そこで、あえて追いうちをかけるようですが、これは仮定の問題ですから、お答えがもしできにくかったらしなくても結構ですが、これだけの関根浜新港に予算をとって今工事に着工しているが、しかし八月の結論で廃船という形になった場合、この関根浜新港は今後どう対応していくのか。そういうようなものも当然考えておかなければ、ただ係留するために、廃船になった、係留をするというだけではないと思うんで、これは青森県全体の経済の活性化等々にもつながる問題として港をつくるという大きな意義はあるんですが、しかしこれは、原子力船むつ」のためにという大きな大義名分があります。そういう中で、もし原子力船むつ」が廃船という形になった場合の関根浜新港に対して、今後青森県なりいわゆる科学技術庁が持っているビジョンというものを国民の中にきちっと示しておけば、特に今申し上げました失敗というような言葉がぬぐい去られるのではないかというふうに思うんですが、これは仮定の問題で、八月までに持ち起さなければいけない問題で、お答えにくければ答弁はいただかなくても結構ですが、長官の御意見などお聞かせいただければ幸いです。
  144. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 関根浜に港をつくることになりましたことは、たとえ「むつ」を廃船にするというような事態になりましたときにも、それではどこでその「むつ」を廃船するかという問題もございますし、かたがた現在大湊に仮泊してございますが、これはあくまでも地元とのお話し合いで新しい港ができるまでの間入れていていただいて、しかもそれは、そのとき一番問題になりましたのが、見通しもなくいつまでもずるずると大湊にいられるということでは困るんだ、そういうことだったら絶対大湊に入れない、こういう地元の方の強い御意見があったことを、まげて新しい港をつくるまでであるからということで、その間ならばいいということで御理解をいただいたという経緯がございます。ですから、新しい港をつくらないままいりまでも大湊にいるということはできませんし、かたがたそれからほかに港をつくるということにつきましては、過去におけるいろいろな経緯にも見られますように、ほかの地点を見出すということは難しいということから、いずれにいたしましても、関根浜の港をつくるということは必要であるということで決断をしていただいたわけでございます。  その関根浜の港の使い方につきましては、いろいろな多用途利用についても当然今後検討していかなければならないことでございまして、すぐこの港ができて「むつ」を回航して、その後のことといたしましても、数年先以降の話になるわけでございますが、この点につきましては、青森県でも下北開発基本構想というような計画をお持ちでございまして、その中で関根浜利用についても考えていこうという方針が示されております。そういうことで、地元の方とも十分緊密な連絡をとりまして、将来の関根浜の港の活用の仕方については検討してまいりたい、こう考えておる次第でご ざいます。
  145. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 港については、今局長が申し上げたとおりでございます。  そこで、先生のおっしゃる国民の納得のいく対応ということが大変大事な点であろうと思います。やはりいずれの結論を出すにしても、国民の納得のいく結論でなければなりません。そういう意味で、今後とも結論を出すに当たっては国会での御審議、あるいは各党のお考え、あるいはまた各界のお考え、そしてまた専門家の御意見、こういったようなものをくまなく承り、吸収して、そして適切な対応をする、それによって国民の納得をいただく、こういうふうに私どもは考えておりますので、この上ともよろしく御指導をお願いしたいと思います。
  146. 山田勇

    山田勇君 宇宙開発につきましてお尋ねをいたします。  宇宙開発に八百五十八億一千二百万の予算が計上されておりますが、これは実用衛星というのでしょうか、海洋観測とか気象、通信、放送などいろんな名称の衛星を見てみますと、日常生活にも密接な関係の深いものがあることも十分理解できるのでありますが、アメリカのスペースシャトルのように、既に何回も地球と宇宙を往復しておりまして、将来は一般人も宇宙へ旅行という時代もそんなに遠くないようですが、我が国の宇宙衛星の打ち上げの現状と将来の計画について、概要をお聞かせください。
  147. 福島公夫

    政府委員福島公夫君) お答えいたします。  まず、今後の人工衛星及びロケットの打ち上げの計画をざっと御説明申し上げたいと思います。  現在、静止軌道に三百五十キロの衛星を打ち上げる能力を持ちますNHロケットというのが主体でやっておりますが、これが本年の夏には静止気象衛星三号、それから六十年の夏には放送衛星の二号b、これはつい先日上げましたaと同じもの、予備機でございます。それから六十一年の夏には海洋観測衛星一号、これがMOS1というものでございます。それからさらに大型の、五百五十キログラムの衛星を静止軌道に乗せられるHIロケットというのを今開発しておりますけれども、これにつきましては六十年の冬期といいますか、六十一年の一-二月期でございますけれども、ここで最初の二段式の試験ロケットを打ち上げます。それで実際にこれに衛星をつけますのは六十二年の夏でございまして、これが技術試験衛星V型というものを打ち上げます。それで、それから後がHIロケットによる実用衛星の打ち上げシリーズに入るわけでございます。で、六十二年度の後半、つまり六十三年の一-二月期でございますが、ここで通信衛星の三号、いわゆるCS3というもののaを打ち上げます。それから半年後、六十三年の夏でございますけれども、これがその予備機になります通信衛星三号のb、それからさらに六カ月後、六十四年の一-二月になりますけれども、放送衛星の三号のaというのを打ち上げることになっております。それでそれからしばらく、ちょっと一年間計画が飛びまして、六十五年の夏にその予備機になります放送衛星三号bを打ち上げるということになっております。現在までは、まだ実利用分野におきましてはここまでしか計画ができておりません。  それで、本年度から開発研究に着手します地球資源衛星一号につきましては、まだ正確には決まっておりませんが、私どもは六十五年度の冬期ぐらいには打ち上げたいと考えているわけでございます。そのほかに科学の分野の衛星がございますが、これが本年度、来年の一-二月でございますが、M3型、M3SⅡ型ロケットの試作機を打ち上げまして、今度はそれを用いまして、来年の夏にはハレーすい星を観測する第十号科学衛星、それから六十二年の一-二月にエックス線の天体等を観測します第十一号、それから六十四年の一-二月にはオーロラの発光現象等を調べます第十二号科学衛星、ここまで計画が決まっております。もちろんそのほかに、アメリカのスペースシャトルを使いましていわゆる第一次材料実験、これは初めて日本人宇宙飛行士が誕生するという件でございますが、これが六十三年の一-二月期に打ち上げたいと、こういうことになっております。  それから、先ほどちょっと先生の方からスペースシャトルのような再使用型ロケットのお話が出たわけでございますが、これは我が国の場合、宇宙開発に投入できる資金と人材というものが、こういった財政事情もございまして、非常に制約を受けております。ということで、効率的な自主技術開発というものを進めなくちゃならないという意味で、ただいま御説明申し上げましたロケットあるいは衛星については、苦しいながらも自主開発を続けていって、このスケジュールをキープしていきたいと考えておりますが、有人宇宙活動のようなもの、これはさらに巨額な費用が要りますし、それから現在の日本技術をある意味では超える部分もございます。こういったものにつきましては、幸いアメリカの方からスペースシャトルの実用化あるいは宇宙基地計画の提唱というようなものがございますので、これに乗りましてといいましょうか、必要な技術というものを取得していこうと、こういうふうに考えているわけでございます。
  148. 山田勇

    山田勇君 私は、この質疑通告をしたときに、参りました方とお話を申し上げていました。その方も大変自信を持って、ぜひ先生方にこの夏上がるロケットは御見学をいただきたいというふうに熱心な勧誘を受けたわけですが、これはまた委員会の我々委員でぜひ見学をしてみたいと思います。  その中で、これは余談ですが、私は科学博を一つの契機としまして種子島から日本の新しい文化、いわゆる新しい経済というのは種子島から僕は発展していくだろうと。種子島に鉄砲が来て、それが堺へ行って、堺から大阪経済の発展があったように、我々が驚くべき発展といいますか、種子島から日本の新しい文化、経済が生まれると僕は確信をしております。だれも今まだ種子島に目を向けてない、ある意味では向けてない。だから僕は、ロケットの発射の瞬間とか、そういうのは広く国民の皆さんに見れるか――いろいろな質問をしたいんですが、時間がないのでやめますが、これはやりますと隅田川の花火なんておかしくって見れませんよ。(笑声)これは神秘的で感動がありますよ。だから、そのためには民間プロジェクトの中でやっぱり種子島の開発もしていかなきゃいけない。ロッジもつくってやる。そういうようなことで国が大いにもっとPRをして、民間の方にもノーハウを流してあげる。そして、ロケット発射日を大きく科学技術庁の方から発表して、みんなでロケット発射を見に行こうというようなツアーができるような形の中、そうしますと、五億三千六百万もこれは毎年続けるかどうか、漁業補償にしたって当然島民が納得のいく経済の活性化というのはあの種子島の中に出てくる。そうすると、予算むだ遣いではないんでしょうが、そういう助成金の一つも島民が納得をしていくと私は思います。ですから私は、個人的な意見ですが、種子島へぜひ土地を買いに行きたいなと思っているぐらいでございます。(笑声)そのくらい種子島というのはこれから大きく開発をしていくだろうと確信をいたしております。今後皆さん方のロケットに対する大きな研究開発成果が上がることを期待をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  149. 野末陳平

    ○野末陳平君 まず長官に、今、山田委員がいみじくも言いましたけれども、愛とスポーツと科学技術に国境はないなんて、なかなか名言ですが、長官はこれについてどう思われますか、御所見を。
  150. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) まさにおっしゃるとおりで、愛とスポーツ、しかしそのスポーツでも最近は何かやっぱりややこしいことが起こっているようでございまして、大変乱遺憾に思っております。もちろん科学技術、国境がない世界人類の地球をつくっていかなければならないと思っております。まあ戦争中でも科学技術の情報なんかは、飛んでいって研究者が話し合いをしているといったような過去のこともございますので、今後とも国際的な交流ということは積極的に進めていくの が本来の世界人類のための科学技術であろうと認識をいたしております。
  151. 野末陳平

    ○野末陳平君 そこで、迫ってまいりました筑波の科学万博ですが、今のところ外国からの参加申し込みがどのくらいあるのかなと、ちょっと気になりまして、これはどのくらい招請をしたか、それも含めてお答えをいただきたい。
  152. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) まさに万国博覧会でございまして、世界じゅうの国の参加ということが重要なわけでございます。五十六年の九月に閣議決定がございまして、百六十一力国、五十四国際機関に招請状を出したわけでございます。それ以降、日本政府代表等が関係国に参りまして招請活動を行ってきた一方、各国の方々、要人がお見えになるときにもいろいろ御協力お願いしたわけでございます。  昨年の十月、東京におきまして第一回の参加国政府代表会議というのを開催いたしまして、これには五十七カ国、十二機関が出席していただいたわけでございます。最近ではブラジルに担当大臣岩動大臣からの手紙を出す等、方々へまた書簡を重ねて出したり、こういった活動を続けておるわけでございます。  現在までに一部取り消された国もございますが、二十六カ国、九国際機関、三月にトルコが決まりましたけれども、これを加えましてこれだけになっております。主要国と言ってはいけないんですけれども、大きな展示を出していただける国は大体出そろいました。まだ未定の国も参加の意向を示されつつございます。問題は、小さい国といいますか、経済的余力も少ないという国に対しまして、今後こちらも協力しながら、しかも科学技術という難しい最先端のものを持ち合わせないという理由で参加を渋っておられる国がございますが、それぞれの持ち味を生かした参加をしていただきたいということで勧奨を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  153. 野末陳平

    ○野末陳平君 そのうち、アジアの近隣諸国の参加申し込みは、具体的にどことどこになっていますか。
  154. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) アジア諸国は九カ国でございまして、国名を申し上げますと、インドネシア、スリランカ、タイ、韓国、中国、ネパール、パキスタン、マレーシア、民主カンボジアでございます。
  155. 野末陳平

    ○野末陳平君 これはもちろん、アジア諸国からの参加は多いほどいいわけでして、当然その国のお客さんも日本に来ていただけると、その方が当然意義があって盛り上がるわけですね。  外国からのお客さんは、今度の科学万博にどのくらい見込んでおるか、それはいかがでしょうか。その内訳というか、アジアから、そしてまた全体から、その辺のこともちょっと。
  156. 赤羽信久

    政府委員赤羽信久君) 科学博の入場者数、これはいろんな作業がございましたけれども、総合的な結果としまして全部で約二千万人来場者を予定しているわけでございます。そのうち、外国からおいでになる方が約百万人と想定しております。この中でアジアからというのは特に数字をまだ出してはおりません。
  157. 野末陳平

    ○野末陳平君 これは日本で行うお祭りですから、できるだけアジアから観光客が来てほしいわけですが、さて長官、これは私はもうかねて予算委員会でも言ったんですが、やはり今お聞きしますと、アジアから九カ国、ネパール、パキスタンも民主カンボジアも押して参加してくれるということになりましたけれども、問題は台湾の参加ですね。これはやはり台湾政府は希望しているわけですから、どうしても参加させてあげたいという気持ちがありますが、長官はこの間、関係機関で慎重に検討中というようなことを予算委員会でお答えになりましたが、その後経過はどうなっていますか。
  158. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) まず、難しく申せば科学万博は人類の科学技術とのかかわり合いで大変大事な催してございますので、できるだけ多くの国から参加してもらうということが望ましいわけで、私どももそういう意味で国交のある国にはもちろん積極的にやってきたわけでございます。  それで、今、先生の御指摘の台湾でございますが、これは随分いろいろ検討いたしました。私は、もうできる限り何か考える方法ないかということで、外務省初め、あるいは交流協会にも何か亜東関係協会の方から要望があったということでございますので、いろいろ知恵を出して検討していただくことでお願いをしておりました。しかし、今のところまだ参加招請をするということについては結論が出てない、むしろ否定的な結論しか出そうもないということでございます。これはやっぱり万博のその条約自体がそのような建前になっておりますので、したがって、愛とスポーツに国境なし、科学にも国境なしに、もうすべての参加の希望者には入っていただきたいわけでございますが、もともとのその条約自体が非常にきちんとでき過ぎているものですから、でき過ぎていると言うと語弊があるかもしれませんが、そういう体制の中で、今台湾を考えるということについては、非常にその条約上困難があるということでございますが、これはいずれ外務省でも慎重に検討して、そして結論をお出しになるということになろうかと思いますが、一生懸命努力をしてまいったが、結論は必ずしも御期待に沿うように出ないかもしれないという状況でございます。
  159. 野末陳平

    ○野末陳平君 私は特別な意図があって言っているわけじゃなくて、やはりこういうイベントに対しては、その条約もかなりもう古いわけですから、国際情勢もかなり変わっている、そういうことを踏まえて、やはり何か超法規的な知恵を出さないといけないと、こう思っているわけです。  外務省に聞きますけれども、建前はもう閣議決定もあることだし、万博条約もあるのはわかっていますが、これは全く知恵を出さないというのはやはりちょっとまずいと思うんですがね。国交の問題でなくて、ここまで深い民間のつながりがある台湾をほうっておくのはいかがかと思うんですが、どうですか、外務省。
  160. 鹿野軍勝

    説明員(鹿野軍勝君) お答え申し上げます。  直接のお答えにはならないかと思いますけれども、台湾の参加問題につきましては、先生も御存じのとおり、先般の予算委員会におきまして外務大臣がお答えした趣旨のとおりでございます。繰り返しになると思いますが、政府が去る五十六年の九月に閣議決定で、「外国政府等の国際科学技術博覧会への出展参加に関し、政府は、国際博覧会に関する条約第十一条の規定に基づき、我が国と国交のある外国政府我が国が加盟している国際機関等に対して招請を行うものとする。」という決定をいたしておるわけでございます。したがいまして、台湾には招請状は送っていない、以上のような次第でございます。
  161. 野末陳平

    ○野末陳平君 だから、日本の外交は建前が多くて現実についていけないということがよくあるんですけれども、国際情勢はもう変化していますから、中国と韓国がああいうことになってみたり、あるいはオリンピックに南北朝鮮が統一チームをとか、もうとにかくいろいろなことが時代の流れに応じて考えられていいわけだと思うんですよ。  そこで長官、もうこれで話し合う、検討の余地がないと言われると非常に困るんですが、まだ時間もあるのでぎりぎりまで粘ってほしいと思うんですが、これは例えば先ほどの外国からのお客を百万人考えていると言うけれども、ここには台湾から来る観光客が半分ぐらいないとこういうふうな数字にならないんですよね、本来は。ということは、三年前の神戸のポートピアでもそうですけれども、あのときは外国からは二十万人だったかと思いますが、このうちの半分以上が台湾からなんですよね。ですから、ここは成功のための非常に大事なお客さんでもある。  そこで、長官あるいは当局の方で御存じかどうか。台湾の方では、日本がこの科学万博参加を拒絶するということになりますと、つまり参加できなければ、期間中は日本への旅券を発行しないというようなことだってできるわけですね。事実、今やいわゆる募集中止、これは聞くところによれば、万博観光の募集を中止するという動きすらあるようなんですが、こういう台湾側の動きに対しても、主催者側である科学技術庁あるいは外務省、この辺に配慮があるんでしょうかね。
  162. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 台湾と日本の関係は、国交はございませんが、実務関係で非常に濃密な関係を維持してきております。したがって、お互いに人の行き来というものはほとんど自由に行われる。そういう中で今度の科学万博が開かれるわけでございますので、私どもは形式的には台湾という地域での、あるいは中華民国という形での万博への御参加は、まだ結論は出ておりませんが、仮にできないとしても、実務的には大変深い交流があるわけでございますから、できるだけ多くの方においでをいただいて、その出展をするかしないかということを超えて、日本の催す科学技術の博覧会というものは世界人類のためであるという将来展望に基づいて、ぜひ多くの方においでをいただきたいので、どうかその辺は中華民国、台湾におかれても十分な御理解もいただいていくことにならざるを得ないのではないか。今まだ結論的に申すわけではございませんが、実務関係から見て、人の交流ということはこのことによって阻害されないようにぜひ考えていかなければならないと、かように考えております。
  163. 野末陳平

    ○野末陳平君 私は、むしろ濃密な実務関係がこれによって損なわれたら困る、いけないと思っているんで、ただ万博の成功、不成功の一要因として考えているわけじゃないんですね。ですから、観光客が台湾側から出てこないことによるロスも大きいけれども、しかしそれ以上に、ここまで濃密な民間における実務関係、これを維持していくことが非常に必要だと思っていますからね。だから、あえて長官にもっと粘ってもらいたいというか、知恵を出してもらいたいとお願いしているわけなんですね。  御存じだと思いますが、もう今や民間ベースでは、デパートなども台湾から来る観光客が大事ですから、場内アナウンスはもうあのとおりですね。それから、これは言ったら切りがありませんけれども、ホテルなども、それだけでもっているホテルが幾らもあるとなると、これまた当てが外れちゃう。もういろんなところに影響も出てくるので、この実務関係は日本にも相当なるマイナスになってくる。こういうことを考えますと、今や中国は一つですから、政府として台湾をほかの国と同等に扱うことはできないまでも、それではそこで何かできないかということは考えてあげないとまずいだろうと、こういうふうに思っているわけなんですよ。  そこで、まだ悲観的な見通ししかどうも長官はお答えになりませんけれども、これから残された時間の間にひとつ何か、科学技術に国境なく、そして積極的に人類のために国際的交流が必要だというのであれば、何かここで知恵を出してほしいと、外務省のような建前だけで終わらしてはやはりまずいと、こういうふうに考えるんですが、重ねて、くどいようですけれどもね。
  164. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 私自身、個人としてはもう先生のおっしゃるとおりで、何とかしてあげたい、してあげなければいけないという気持ちは先生にも劣らない気持ちでございますが、これは個人の立場でございまして、政府の閣僚の一員とすれば、やはりそこには建前というものも尊重しなければなりませんので、貴重な御意見として、今後ともどうすればうまくいくのか、そして台湾との関係において実務関係が損なわれないように、最善の努力は私個人としてもやってまいりたいと思っております。
  165. 野末陳平

    ○野末陳平君 最後に、私の考えですが、もう言い尽くしましたけれども、やはりこういう場合に国交のない台湾を招請しようなんということを言いますと、いかにもこれはおかしく聞こえると思いますが、それは逆でして、日本の場合はちょっと建前にこだわり過ぎているという気がむしろするんです。そんなわけでして、この科学技術のイベントを政治事情で左右するのは本来好ましくないので、ひとつ今の長官の個人的な方の、個人の見解の方ができるだけ力を持つようにこれはお願いしておくということにして、質問を終わります。
  166. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時六分散会