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1984-07-25 第101回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月二十五日(水曜日)    午後二時開会     —————————————    委員異動  七月二十四日     辞任         補欠選任      井上  計君     伊藤 郁男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         板垣  正君     理 事                 岩崎 純三君                 岩本 政光君                 鈴木 和美君                 中野  明君                 市川 正一君     委 員                 伊江 朝雄君                 大鷹 淑子君                 大浜 方栄君                 岡田  広君                 沖  外夫君                 志村 愛子君                 松尾 官平君                 青木 薪次君                目黒今朝次郎君                 伊藤 郁男君                 喜屋武眞榮君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        北方対策本部審        議官       本多 秀司君        沖縄開発政務次        官        大城 眞順君        沖縄開発庁総務        局長       関  通彰君        外務大臣官房審        議官       都甲 岳洋君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        外務省北米局長  栗山 尚一君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省中近東ア        フリカ局長    波多野敬雄君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省情報調査        局長       岡崎 久彦君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        防衛庁防衛局調        査第二課長    太田 洋次君        防衛庁教育訓練        局訓練課長    上田 秀明君        外務大臣官房外        務参事官     瀬木 博基君     —————————————   本日の会議に付した案件沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する  調査  (北方領土返還促進に関する件)  (日ソサケ・マス漁業交渉の問題に関する件)  (北方領土への墓参に関する件)  (北方領土隣接地域に対する振興基金設立に  関する件)  (沖縄米軍海兵隊と自衛隊との共同訓練に関  する件)  (沖縄名護市内におけるダンプ被弾事故に関  する件)     —————————————
  2. 板垣正

    委員長板垣正君) ただいまから沖縄及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、井上計君が委員を辞任され、その補欠として伊藤郁男君が選任されました。     —————————————
  3. 板垣正

    委員長板垣正君) 沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 鈴木和美

    鈴木和美君 私はまず、四月二十七日の当委員会におきましてお尋ねを申し上げたところでございますが、西山さんからそれなりのお答えをいただいておりますが、きょうは外務大臣がせっかく御出席でございますので、この機会に基本的な問題と存じますが、幾つかお尋ねをしてまいりたいと思います。  まずその一つは、最近の日ソ関係につきまして外務大臣としてどのような現状認識をお持ちであるのか伺いたいと存じます。
  5. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 最近の日ソ関係はやはり厳しい東西関係というものを反映いたしまして、また北方領土問題が依然として解決をしていない、こういうことで、さらに極東あるいはまた北方領土におけるソ連軍事力増強、そういうこともありまして、非常に厳しい局面にあると考えております。政府としては、日ソ関係が厳しい状況にあればあるだけに対話を閉ざしてはならない、こういうことで本年二月、アンドロポフ書記長葬儀の際、私は出席いたしまして、グロムイコ外相ともお目にかかりまして、とにかくいろいろ対立はあるけれども対話は続けていこう、こういうことで、厳しい中でも対話はやはり続いておるという現状でございます。
  6. 鈴木和美

    鈴木和美君 事務的にひとつお伺いしておきますが、現在、ソ連アフガニスタンヘの軍事介入に関しまして制裁措置がとられたわけでありますが、その中身と、ポーランド問題に関する措置、この中身とを事務的にお答えいただきたいと思います。
  7. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) アフガン関連措置につきましては、今まで公に申し上げている点は次のとおりでございますので、その点を繰り返して申し上げたいと思います。  第一番目に、ソ連に対する公的信用供与につきましてはこれをケースバイケースで慎重に検討の上対処するというのが第一でございます。  第二といたしまして、公的な人物交流につきましてもケースバイケースで慎重に検討の上対処するということ。  それから、これはもう過去の問題になりましたけれどもモスクワオリンピック不参加。  それから第四番目といたしまして、ココムにおける高度技術対ソ輸出規制につき、西側諸国と協力するということ。この四つの措置アフガン問題に関連する措置として政府がとってまいった措置でございます。
  8. 鈴木和美

    鈴木和美君 ポーランドはどうですか。
  9. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 失礼いたしました。  ポーランドにつきましては次のような措置をとってまいりました。  第一番目のグループといたしましては、科学技術協力委員会開催には当面応じないということ。これはソ連に対する措置でございます。日ソ貿易年次協議開催には当面応じないということ。在日通商代表部等の拡充については当面検討しないということ。それから、ソ連の買い付け ミッションというものを置いておりますけれども、その本邦在留期間の延長については慎重にこれを検討するということ。これが第一次のグループ措置でございます。  その次に第二番目といたしまして、政府としては、他の西側諸国のとる措置を損なうようなことのないように配慮をするということが第二番目でございます。  第三番目に、国連等種々国際機関においても他の西側諸国と協調しつつ適切な行動をとっていくというのが第三番目でございます。  それから第四番目として、アフガン関連でとってまいりました先ほど申し上げましたような措置は維持をするということ、これが第四番目でございます。
  10. 鈴木和美

    鈴木和美君 今お尋ねしましたように、私の理解ではアフガニスタン軍事介入の問題についてとられました、つまり公的人事交流抑制、それから二つ目には新規プロジェクト信用供与の見送り、その次に高度科学技術製品輸出規制強化、こういう問題はまだ完全に解消したというようには理解していないのでありますが、このまま制裁措置は続いているというように理解してよろしゅうございますか。
  11. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) アフガン関連措置につきましては、アフガンをめぐる情勢について基本的な変化がないという状況でございますので、基本的な枠組みそのものについてはこれを変更しておらないという現状でございます。  対ポーランド関連措置につきましては、ポーランド情勢、種々展開を見せておりますので、それに応じて実務的に処理できる点につきましては処理をするという局面もございますので、現状についてこのまま維持されていくという状況ではないというふうに申し上げられると思います。
  12. 鈴木和美

    鈴木和美君 そういう状態の中で、大臣お尋ねしたいんですが、先般大臣記者会見で述べられておったようですが、国際政治における日本重要性政策ソ連人たちに広く正確に知らせる必要がある。そういう意味で、対話拡大強化に着手する方向を示した、こういうふうに新聞に報道されているわけでありますが、この真意と中身というんでしょうか、それについての見解お尋ねしたいと思います。
  13. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほど申し上げましたように、日ソ関係というのは、何としても隣同士であります。領土問題はもちろん大きな対立案件としてありますし、またソ連軍備増強というものも非常に日本に対しては圧力となっておりますが、しかし、厳しい関係にあればあるほど我々としては対話はやはり進めていかなきゃならぬというのが私の基本的な対ソ姿勢であります。  確かに、アフガニスタンに対する措置として、アフガニスタンに対するソ連侵入というのは終わっておりませんし、そういう意味ではその枠組みを変えるということは困難ですけれども、しかし世界情勢というのは移っておりますし、そして世界情勢も決していい方向へ行っているとは決して言えない状況にありますから、そういう中でやはり日本もそういう基本的な枠組みというものはありながらも、ソ連との間のできるだけ道を開いていくということに何とか努めてまいる必要がある、私はそういうふうに思って地道ないろんな政府間の対話だとか、あるいはまた今回はソ連最高会議のメンバーが日本訪問するということで日本の国会にもその点をお伝えするとか、この秋には国連グロムイコ外相とも再び会うというふうなことも一応設定をいたしました。何か厳しい中に一つ枠組みはありますけれども、それを突破する努力をやっぱり続けてみたい、こういうふうに考えております。  ポーランドは、最近大量に政治犯も釈放されるというふうな非常な緩和政策をとっておりますから、これは評価できるのではないかと私は考えております。
  14. 鈴木和美

    鈴木和美君 先般も私ここで述べたのですが、対話拡大していくということについては私は基本的に賛成なんです。ただ、事実上の問題としてはっきりしておかなきゃいかぬのは、片方アフガンの問題について公的な人事交流というものを制限している措置はまだ解消していないわけでしょう。そういう日本政府というか、態度がありながら、片方対話拡大するということに関してはどうも一致しないわけですね。この点はどういうふうに論理的にも実態的にも一致させて進むのかということは政府として明らかにすべきことだと思いますが、どうでしょう。
  15. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アフガン事件との関連で実施しておる公的人物交流については、ケースバイケースで慎重に対応するとの方針でございますが、この右の方針は、あくまでも具体的案件ごと我が国の国益とかあるいはいろんな情勢、そういうものを考えながら慎重に対応するというものであって、必ずしも人的交流自体を全体として一律に抑制する、一律に抑制するという基準をもって抑制するということではないわけですから、今の私が申し上げましたような観点から、これはやはりケースバイケース、そして対話という方向一つアフガンに対する情勢が変わらないとしても、対話方向へむしろウエートを移すという形でこの問題にも対応をしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけです。
  16. 鈴木和美

    鈴木和美君 私の理解が間違いでございましょうか、事務当局お尋ねしますが、私のいろんな調べたところによると、アフガン問題に関しては公的人事交流は制限をする、他方ケースバイケースという言葉が使われているのは、新規プロジェクト信用供与などについてケースバイケースというふうに私は聞いておるんですが、人事交流の面もケースバイケースという扱いでございましょうか。
  17. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) そのとおりでございます。先生の御承知のように、先ほどから大臣もお触れになりましたように、例えば最高会議代表団の訪日というものが近く予想されておりますし、それから農水大臣が近くモスクワに行かれるというような形で、実務関係処理する必要上のものにつきましては、私ども今までこれをケースバイケースで慎重に検討の中におきましても、実務的に処理してきているという状況はございます。  ただ、友好訪問を目的とするようなものについては、これは慎重に考えるべきであるというような判断が下される場合もあるわけでございまして、そういう意味で、公的人物交流におきましての慎重な対応という処理ぶりそのものについてはこれを変えていないというふうに考えております。
  18. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一度大臣お尋ねしますが、今のお話を聞いている限りにおいては、アフガンのこの措置というものは、ケースバイケースとはおっしゃるんですが、どういうケースの場合はいい、どういうケースの場合は悪いというような、そういう基準というのがあるんですか。私が聞いている限りにおいては、人事を、この問題はもう何となく自然解消してしまったみたいな印象を持つんですが、どういうふうにこれは考えておけばいいんでしょうか。
  19. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 御承知のように、アフガンの問題につきましては、基本的な枠組みにつきまして、これはやはり西側が一致してソ連対外関係における抑制を求めるということでとっておる措置でございますので、これを基本的に解除するということは考えておらないわけでございまして、西側の一員からの立場といたしましては、ソ連に対する反省を求めるということにおきましては、今でもその立場を共通にしているわけでございます。私どもはそれはそれなりに効果を持っているというふうに考えております。  ただ、その中におきまして、情勢変化に応じまして、物事の性格によりましては、それを実務的に処理していくということをやっておりますので、ケースバイケースというものにつきまして具体的な基準があるかという御指摘でございますけれども、まさにケースバイケースというのは、そのような基準を設けずに、そのときの事態 あるいは訪問実態あるいは信用供与等実態に即して判断していくというのがケースバイケースでございますので、そういう意味では基準というものは特に設けておらないという次第でございます。
  20. 鈴木和美

    鈴木和美君 この機会西側対ソ政策というんでしょうか、大臣が先般ロンドンのサミットに随行なされて行かれた際に、西側のいろんな首脳とお話をされたと思うんです。そういう空気をできれば大臣から教えていただけませんか。
  21. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 西側といいますか、自由国家群としましては、やはりソ連アフガニスタンに対する侵入事件、そしてその後、西側がこれに対する抗議批判を込めたいろいろの措置を講じたにもかかわらず事態が改善されない、ソ連軍の撤兵はなされていないということに対しましては、非常な不満、批判は依然として持っておるわけで、この点は日本も同じでございますが、しかし、状況がこうしていつまでも膠着状況になった中で、同時にまた、東西関係あるいは米ソ関係というものがさらに核軍縮等をめぐってますます悪化をするこういうことになることはやはり世界の平和のために決して好ましくない。そういうことで、何とかソ連との核軍縮等につきましても、核軍縮の再開が行われるようにソ連テーブルに引っ張り出さなきゃならない、こういうことで意見が一致しておるわけでありますし、また、アメリカ大統領選挙等があってなかなかこれが大統領選挙が終わるまでは困難だとしても、対話というものをこのような状況のままで崩してしまえば、これはやはり世界平和のためによくないことだと。ですから、例えばフランスのミッテラン大統領もみずからモスクワに出かけていく、こういうことで絶えずソ連との対話というものは続けていこうということがいわば西側空気であったように思うわけでございまして、日本としましてもやはりそうした厳しい空気、特に日ソ関係であります。それからまた、アフガニスタンに対するソ連事態というものが変わっておらないわけでございますし、それに対する批判抗議姿勢は崩していないわけですけれども、しかし、これでもっていつまでも状況を膠着し後退させるというわけにいかないので、やはり何らかそれはそれとして、一つ基本姿勢基本姿勢として保ちながらも、日ソ間の何とか対話の道をあけていきたいということで、むしろ対話に重点を置いた形でいろいろ努力をしていっておるわけでございます。  私は、今の世界情勢あるいは極東情勢から見ますと、こうした日本姿勢というものはやはり必要ではないかということを感じておるわけでございます。
  22. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一つ、今度は別な角度から、外務委員会じゃございませんので、ここは北方領土についてどうしても中心的な課題にならざるを得ないと思うんです。したがいまして、ただいままでお聞きしてまいりましたのは、対ソとの関係という一般的なものでございますが、領土問題に関して大臣としてはどういう見解をお持ちになって、これの実現のためにどのような努力をなされるというような発想、構想があるのかお尋ねしたいと思います。
  23. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 北方領土返還につきまして我が国がこれまでもソ連側と粘り強く交渉を行っておりますが、ソ連側は依然として領土問題は存在せずと、こういうかたくなな姿勢を崩していないことは極めて遺憾でございます。私もこれまで領土問題につきましては、ソ連カピッツァ次官、あるいはまたグロムイコ外相と直接やり合ったわけでございますが、残念ながらソ連姿勢は一歩も変わらないという状況でございます。  しかし、政府としましては、本問題解決のためには、今後とも息長くソ連側との対話を重ねることが重要であると考えております。また、ソ連側に対してこの問題の解決日ソ関係を真の相互理解のもとに発展させるためには不可欠であるとの認識をあらゆる機会に与え、北方領土問題を解決して平和条約を締結するよう引き続き呼びかけていく所存であります。  私も実はこれまでのソ連とのいろいろな交渉等を通じてみまして、これは容易でない、しかし、この問題は日本は譲るわけにいかない、やはり腰を据えて毅然として粘り強く交渉を続けていかなければならない、こういうふうにかたく信ずるものであります。
  24. 鈴木和美

    鈴木和美君 私どもも、新聞やそれから関係者などの話から総合いたしまして、領土問題が非常に厳しいという状況にあることは重々承知しているわけでありますが、大臣としてもう一度お尋ねしますが、なぜ領土問題が対話の中で進まないのであろう。ソ連側言い分というのがあるわけでしょう。そういうものに対して、ソ連側言い分というものがどういうものであるかということについて、もう一度的確な状況を聞かせていただきたいと思うんです。
  25. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ソ連側としては、私に対して具体的にどういう理由でということは言いません。それはいろいろと今までの、カイロ宣言とか、ヤルタ協定とか、ポツダム宣言あるいはサンフランシスコ平和条約等の一連の国際取り決めにより日ソ間の領土問題は解決済みだということだろうと思います。思いますけれども、そういうことは一言も触れておりませんが、いずれにしても彼らが言っているのは、もはや領土問題については決着済みだということを先般もカピッツァ次官が私に強調するわけでございます。あるいはまたグロムイコ外相は、これはソ連政府で既に最高機関決定済みだということを私に言っておるわけでございますが、日本もこれに対しましては、この条約上あるいはまた事実上日本領土はあくまでも固有領土であるという主張をその際しておるわけでございますし、特に決着済みというのはおかしいので、かつての鳩山・フルシチョフ会談、あるいはまた田中・ブレジネフ会談、そういう中でこれが継続案件であった、留保されていたという日ソ間の合意があるじゃないかということを私は強く主張して今日に至っておりますが、全くこれは平行線のまま今日に至っておるというのが現状で、極めてその点は残念至極でございます。
  26. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は先般の委員会のときにも申し上げたんですが、対話姿勢というものはそれなりに基本的に賛成でございますが、北方領土の問題に関する見方というのはどうでしょう、その条約上の問題であるとか、それから固有領土であるとかいうようなことに関しては互いに公式のところで触れないまでも、それはそれなりにみんな言い分を持っているわけでありますね。しかし一番大きい問題なのは、領土問題をテーブルに着いて話し合う——話し合えない状況ですな。これに対して、私は一番問題じゃないかということを先般指摘したんです。それは日本もまたそうでありましょうが、例えば米ソ軍事拡大の問題が大変な脅威として軍拡の道を進んでいる。日本安保条約との関係におきまして、好むと好まざるとにかかわらず、結果としてまた脅威論というようなものをソ連側が感ずるというような状況にあるようなことで、軍事という問題を解決せずして、この領土問題の話し合いというもののつまりテーブルに着けるのか、また話が進むのか、そういうことは私はないんじゃないかと思うんですがね。その辺のところの基本的な考え方について、大臣のもう一回見解を聞かしていただきたいと思うんです。
  27. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにおっしゃるように、この日ソ間をめぐるいろいろの厳しい情勢というものが大きく緩和をするということは、この領土問題を話し合う空気をつくる上においても必要であろうと私は思います。がしかし、これが非常に静かになったからといって、それじゃ果たしてソ連領土問題についてテーブルに着くかどうかということになりますと、これはなかなか私たちも判断できない。ソ連としてもテーブルに着けないいろいろのやはり他国との関係の問題もあるんじゃないかとも思うわけでありまして、その辺のところがはっきりした見通しをつけるわけに はいきませんけれども、またソ連はそういうことを片りんだにも我々には言っておりません。言っておりませんが、しかし日本としましては今後とも領土問題を避けて通るわけにいきませんから、これを進める場合において日ソ間の状況日ソ間を取り巻く環境というものがよくなることが必要である。それがやはり一歩でも領土問題を論ずる、あるいは領土返還方向につながっていくのじゃないか。そういう道を求めて努力はしなければならぬ、こういうふうに思います。しかし、これで決着がつくという考えというものはちょっと甘いといいますか、そこまではなかなか思いをいたす私は自信は持っていないわけであります。
  28. 鈴木和美

    鈴木和美君 今の中曽根政府の基本的な姿勢としては、どういうことになるんでしょう。その日ソの冷却した関係回復ということを考えるときに、領土問題というものがまず第一の課題として、そのことを常に考えながら、いつでもそのことを中心にしてやるような日ソ関係回復を望むのか。それは長いいろいろな問題があるから、それはそれとして日ソ経済協力の問題であるとか、そういうような路線を選択するのか。一緒なのか。その辺はどういうような基本的姿勢に立たれているんでしょうか。
  29. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはやはり領土というものをソ連と話し合う場合に一日たりとも忘れることはできないわけであって、領土問題は領土問題として、あくまでも日ソ間の最大の交渉案件としてこれからも粘り強く進めていかなければならぬと思いますが、しかし、同時に、領土問題は先ほどから申し上げましたように解決するにしても、日ソ間の関係をやはりよくするということは必要じゃないか。領土問題の交渉を進める上においても必要じゃないかと私は思います。したがって、日ソ間のそういう意味での対話をこれから拡大をしていく。そして政府間のパイプを広げ、あるいはまた民間の交流を進め、あるいはまた議会間の、国会間の交流等も進めていくということが私は全体の問題を考える場合にも、また領土問題を考える場合においても、必要ではないだろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。
  30. 鈴木和美

    鈴木和美君 五十八年の十二月九日の毎日新聞ですが、この新聞ソ連政府機関紙イズベスチアの第一副編集長ニコライ・エフィーモフさん、この方が日本の記者団との会見におきまして、日ソの正常化を阻んでいる要因というのは何かということの記者団の問いに対しまして三つのことを答えているんですが、その一つ日本政府対ソ制裁という措置がある。二つ目ソ連脅威を宣伝し過ぎている。三つ目は米軍の多数の軍事基地が日本にある。そういうような三つの条件がある限り、北方領土問題は話にならぬ、こういうのがソ連国民の大きな考え方であるし、大体コンセンサスと見て間違いはないんじゃないかというようなことをこの編集長は述べているんですが、こういう見方に対して、外務大臣としてどういう見解をおとりになりましょうか。
  31. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) その三つが仮に解決したとしても、果たしてそれでソ連領土を返してくれるとか、あるいはテーブルに着くというふうにはちょっと甘くは考えられないと私は思います。  例えば、かつてソ連は、沖縄をアメリカが手放して日本返還するならば、北方領土問題については考えよう、返還も含めて考えようというようなことをソ連からニュースとして流された時代もあったわけで、我々はそれを真剣に考えた思い出もございますが、沖縄が返った時点において、北方領土は依然としてソ連の手に残ってしまった、こういうことでございますし、日ソ関係が好転をする、あるいは米ソ関係が好転をするということで、非常に環境が平静な状況になったとしても、それじゃ果たして完全に返してくれるかどうかということになると、なかなかちょっとそう甘く考えることはできないと思うわけでございますが、しかし日本としては望みを捨てるわけのものではありませんし、やはり今の日ソ関係をよくしていけば、それなりに何かの話し合いのパイプといいますか領土問題についてのテーブルというものが生まれ出てくる可能性はある、そういうものに向かって、日本は望みを失わずにやっていかなきゃならない、腰を据えてやっていかなければならない、私はそういうふうに思っております。
  32. 鈴木和美

    鈴木和美君 軍事問題が解消したからといって、領土問題だからそう簡単に解決がつくとは思われないというお答えのようですが、それならば、話を進めるに当たって、軍事問題というものが非常に障害になっているというようにはお考えになりませんか。
  33. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ソ連と話を進めるに当たって、ソ連領土問題と軍事問題とを絡めて日本に対して厳しい態度で出ているというふうには私はとっておりません。領土問題は解決済みだという姿勢で、もうこれについてはあなた方が何を言っても決着済みだという姿勢で、今の極東におけるむしろアメリカの非常な軍事的な増強というものに、そして日米の軍事協力、そういうものに攻撃を加えておる、こういうことでありまして、日本がそうした日米の軍事体制、協力体制というものについて反省するとか、あるいはまたソ連からすれば、先ほどお話しのように、非常に包囲網ができていると思っているとソ連は我々に言っているわけですが、日本から言わせるとそれは逆なんですけれども、そういう状況が変われば領土問題を論じてもいいというふうな発言とか気配というものは全くない。領土問題はもう決着済みだ、もう話し合いの余地はないんだということから出発しているわけでございますから、この点について関連をして論議を進めるということは今の時点では全くあり得ないというふうに私は思っております。
  34. 鈴木和美

    鈴木和美君 どうも私とそこは見解が違いますからこれ以上述べませんが、グロムイコ外相日本を訪れるということが可能な条件というものはどんな状態なんでしょうか。今、どうもおいでになれないというのには何か理由があるんでしょう。だから、おいでになれるような条件というのは、どういう客観条件ができればおいでになれるというように日本政府は考えておられるんですか。
  35. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは日ソのいわば定期外相会議というものが一応設定されているわけで、それに基づいて日本の外相もしばしばソ連訪問しておりますし、またグロムイコ外相もかつて日本訪問したことがあるわけで、今度はグロムイコ外相日本訪問の番ですから、したがって日ソ間には正式な外交も存在しているわけですから、グロムイコ外相にぜひとも日本訪問していただきたいということは私も申し入れたわけでございます。これに対してグロムイコさんは、決して日本訪問しないとは言いませんし、その気持ちは十分持っているんじゃないか。ただ、今の状況日本訪問しても、具体的に何か日ソ間で会談の成果が上がるかというと、それは期待できない、だから、何らかやはり成果が上がるという見通しがなければ訪問しても意味がないというのが、これがグロムイコ氏の判断のようでございます。しかし、グロムイコ外相日本訪問することに意義があるので、私はグロムイコ氏が必ずしも否定していないんですから、今後とも努力は重ねていこうと思いますし、日本も正式な外交関係を結んでおりますし、領土問題とかアフガニスタンの問題とかいろいろあったとしても、やはりグロムイコ外相が来るときはこれを歓迎して、そして正々堂々と論議をするという態勢を日本としてもつくる必要があるんじゃないか、そういうふうな感じも持っているわけであります。
  36. 鈴木和美

    鈴木和美君 先般のときに西山さんはそういう事実はないというお答えだったんですが、読売新聞を見ますと、グロムイコさんをお呼びするのに、どうも日本独自ではなかなか呼びかけが難しいということで、インドのガンジーさんに何かあっせんをお願いしたというような報道があったんですが、そんな事実はあるんでしょうか。
  37. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 二国間の問題ですから、そんは恥ずかしいことは一切しておりません。 もう私自身がグロムイコさんにも呼びかけておりますし、グロムイコさんも日本訪問というものを決して否定しておるわけではないわけであります。何とかこれは情勢をつくるように我々としてもひとつ今後とも努めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  38. 鈴木和美

    鈴木和美君 それでは防衛庁にちょっとお尋ね申し上げますが、北方領土におけるソ連軍軍事施設の状況など、ミグ23の配置及び水晶島の軍事施設などについて防衛庁がつかんでおる情報、情勢があれば、可能な範囲でお教えいただきたいと思うんです。
  39. 太田洋次

    説明員(太田洋次君) お答えします。  北方領土には、地上部隊としまして現在全体で一個師団規模に達しておると見ております。お尋ねの航空部隊につきましては、ミグ23の点でございますが、最近の背景から申し上げますと、一九八三年の五月ごろ、それまで配備されておりましたミグ21、これが撤収しまして、同じく一九八三年の八月ごろ、新しい形のミグ23という航空機が、二十数機程度でございますが、飛来いたしました。これが現在一九八四年の四月ごろにはその数がだんだんふえてまいりまして、ミグ23が約四十機程度にふえておるという状況でございます。  それから第二点、水晶島についてお尋ねでございますが、水晶島につきましては、去年八月にソ連の艦船数隻が水晶島の大崎という付近に接岸しまして、木材等の陸揚げが行われました。それから、ことし五月に至りまして、ソ連の艦船が、同じく水晶島の帆前崎というところがございますが、ここに接近しまして、やはりクレーン等が陸揚げされ、そのほか天幕やプレハブの施設が建設されたということを認めております。その後、ことしの六月に至りまして、私どもはここに新しい建物が建設されたということを確認いたしております。この建物は一階建てで、一部が二階建ての構造になっております。この建物につきましてはその目的等ははっきりいたしませんが、推測いたしますと、海上を監視します監視レーダーもしくは対空レーダー、そういう軍事施設の可能性があるのではないかということで注目して見守っておるところでございます。
  40. 鈴木和美

    鈴木和美君 防衛庁としては、そのミグ23が択捉のところに四十機態勢がとられたという情報をおつかみになったということを、これはソ連としてはどういう戦略、立場で四十機態勢が強化されたというようにつかんでいるのか、その辺も聞かしていただけませんか。
  41. 太田洋次

    説明員(太田洋次君) これは、ソ連軍につきましては、極東方面に近年逐次増強されております地上部隊、それから航空部隊、それから艦艇もそうでござます、そういう全体的なソ連極東方面における軍事力増強の一環であろうというふうに見ております。
  42. 鈴木和美

    鈴木和美君 今あなたに説明していただいたものは五十八年の防衛白書に書かれているよりもっと最近のものというように理解していいんですか。
  43. 太田洋次

    説明員(太田洋次君) ミグ23の、約四十機程度にふえたという点については新しい情報でございます。
  44. 鈴木和美

    鈴木和美君 それでは逆に、今度は三沢のアメリカ軍のF16、この配置を中心にした状況について教えていただけませんか。
  45. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) この件につきましては、従来から政府の方から御説明申し上げておりますとおりに、アメリカ側は一九八五年以降おおむね八八年までの四年間の期間内にF16の二飛行隊約四、五十機というものを三沢に配備する計画を持っておると、こういうふうに承知しております。
  46. 鈴木和美

    鈴木和美君 それから、これもちょっと教えていただきたいんですが、これは五十九年七月九日の朝日の新聞でございますが、アメリカの下院の公聴会の記録に、アメリカ国防省が配備計画を持っておった核トマホークの問題でございますが、八三年度から実施の可能性、戦艦を含め八隻に、また九二年度までは百四十八隻にトマホークが搭載されるというような記事が出ているのでありますが、この事実関係について教えていただきたい。
  47. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 御指摘の新聞報道はアメリカの国防省が下院の軍事委員会の公聴会に出しました資料でございますが、私どもの方で確認いたしましたところによりますと、この新聞に載っております表はアメリカの国防省が現在持っております各種艦船への核弾頭付トマホーク装備能力を付与する艦艇のクラス及びその隻数を年次別に表示したものである、こういうことでございまして、従来からも申し上げておるところでございますが、アメリカ側の説明は、こういうトマホークの装備能力というものと現実の個々の艦船へのトマホークの搭載という問題とは一応別個の問題であると、こういうふうなことでございます。
  48. 鈴木和美

    鈴木和美君 防衛庁にもう一つお尋ねしますが、今お聞きをしてまいりましたように、米ソ軍事力というものが互いに軍拡の方向をたどっているわけでございますが、先ほどお聞きを申し上げましたミグ23の四十機態勢というものは、この新聞報道で見る限りは三沢に対するF16の対抗として配置された、これが新聞の大体の論調になっているわけでありますね。そういうような事実と受け取ってよいかどうかお尋ねしたいと思います。
  49. 太田洋次

    説明員(太田洋次君) お答えします。  先ほど最近のミグ21、23の配備の経緯について御説明しましたとおり、ミグ23、現在配備されておるものでございますけれども、これは一九八三年、去年の八月以降配備されて、これが現在既に四十機に達しておるということでございます。三沢の問題は、来年度以降F16が配備されるというふうになっておりますので、その点については先生のおっしゃる考えと若干違う認識をしております。  先ほどちょっと四十機に達しておるという点につきまして新しい情報と申し上げましたが、これは去年の白書の時点以降に起こったという意味で新しいと申し上げました。
  50. 鈴木和美

    鈴木和美君 大臣、今私が幾つかの事例を取り上げて質問したわけですが、時間の関係上これ以上は進めませんが、私が感じていることは、やはりこの北方領土返還ということは、日本日本なりの主張というものを持っていますし、我々は全千島に対して全島返還と、多少政府の考え方の四島というのとは基本的に違いはありますけれども、そういう主張は主張としてあるんですが、やはり対話拡大ということは、絶対的にこれは手段というか必要ですね。しかし、その対話が何の対話をするかということがポイントなんであって、ただ会ってやあやあだけでは、これは意味ないんでありまして、そういうことを考えたときに、やはり北方領土返還というのは、被爆の国である日本がもう少し積極的に軍縮の方向をとりながら、軍拡の道をある程度阻止していくようなリードをとる、そういう姿勢というんでしょうか、そういうものを見せながら北方領土の問題に私は取り組まないと、結果としてただ返還しろ返還しろというような口だけの問題に終わりはせぬか、そういう心配をしているんでございますが、いかがでございましょうか。
  51. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本はもちろん戦争で負けたわけでありますし、さらにまた原爆を受けた世界の初めての国であります。その後、日本の国の外交はあくまでも平和外交、さらに日本の防衛についてもあくまでも専守防衛という方針を貫いておるわけです。  私はグロムイコさんにも言ったわけでありますが、日本はとにかくソ連にとっては何らの脅威ではないではないか。日本は専守防衛で爆撃機も持たないし、航空母艦も持たないし、戦艦も持っていない。だから、ソ連に対して何らの脅威ではないはずだし、また、日米安保条約を結んでおるけれども、それはあくまでも日本の防衛ということで、何ら日本は他国に対する侵略、攻撃というものは考えていない。さらにまた、日本は非核三原則を貫くという態勢をとっておる、したがってそ うした日本の平和国家としての意図を十分認識していただけば、ソ連日本に対していろいろと批判、攻撃をしておることがやはり事実誤認である、間違いであるということが理解できるんじゃないかということを私は強く主張した次第でございます。もちろん、ソ連としても私のそうした主張を認めたわけではございませんけれども、しかしこうした日本の偽らざる事実の姿というものをソ連に対して粘り強く知らしめるということが必要であって、そうすることによって日本の真の世界平和に対する意図が明らかになるということになれば、またソ連対応というものもおのずから改まってくる可能性も私はあるのじゃないかと思うわけであります。  なお、グロムイコさんにも話したのですが、ソ連は超大国家であるし、日本も今世界の中で非常に大きな力を持ってきている。ですから、日本ソ連が話し合うということは、ただ二国間の問題ではなくてアジアの平和と安定あるいは世界の平和と安定に大きく資するところがあるのではないか、お互いに大きな問題、対立点を抱えておるけれども、やはりもっと広い見地から話し合うということが、あるいはまた情報を交換し合うということが、アジアあるいは世界の平和にプラスになるという見地からもやる必要があるということを言いました。この点はグロムイコさんもある程度の共感をもって私の発言をのみ込んだのではないか、こんなふうな感じを持っておるわけでございます。いずれにいたしましても、基本的には領土問題で対立しておりますが、そしてまた軍事的にソ連の軍備が強化されておりますし、アメリカの太平洋における戦略もそれなり対応がなされておるわけでございますが、しかし、我々としてはこの日ソ間の対話というものをやはり何とか進めながら、そしてそのことによって領土問題を話し合う道をつくり上げていきたい、この努力は今後とも続けていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  52. 鈴木和美

    鈴木和美君 領土問題に関する私の最後の主張ですから答弁は要りませんけれども、私の感じとしてはアメリカが悪いの、ソ連が悪いの、どっちがどうのというふうなことを幾らここで議論してみても、結果としては日本領土返還させなきゃならぬことなんですから、現実に日本の非核三原則があるなしにかかわらず、現にトマホークの問題ではございませんが、アメリカの戦略に組み込まれているというような事実から見れば、やはり日本日本の主張を正しく貫いて、現状凍結の中で軍縮の道をとりながら、そのところから突破口をもって領土問題にしっかり取り組んでもらいたいと私は思います。  さて、きょうの質問の最後ですが、これは水産庁なのか外務省なのかわかりませんけれども、今度のサケ・マスの問題に絡んでの漁業協定が一方的に破棄されるというような問題が出ておりますが、本件に関しての内容と、これからの展望はどういうふうに考えておけばいいのか教えていただきたいと思います。
  53. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) お答え申し上げます。  御承知のように、日ソサケ・マスにつきましては、これは一九七八年に締結されました日ソ漁業協力協定というものに基づいて毎年行われてきたわけでございます。ことしのサケ・マスの交渉の際に、ソ連側から国連海洋法条約も署名されたことであるし、それから経済水域に関する新たな幹部会令もソ連側で発布されたということもあり、新しい情勢を踏まえて現在の漁業協力協定を見直したいということを言ってまいりまして、五月の二十八日から六月一日までモスクワにおいて第一回協議、それから今月の十六日から二十日までの間に第二回の協議が行われた次第でございます。この間におきまして、六月二十六日にソ連側からこの協定を破棄してまいりましたので、この協定自体はことしの末をもちまして効力を失うということになるわけでございます。ただ、日ソ双方とも従来の協力の枠組みそのものは何とかして新しい協定の中に生かしていきたいという意図を持っておりますので、今回二回の協議を通じまして相互の理解がかなり進んだということもございまして、第三回目の協議のときに日ソ間の漁業協力の問題に含めましてサケ・マスの大枠につきましてもこれは新しい協定の中に盛り込むことによって続けていきたいということを考えております。多分八月の下旬になると思いますけれども、第三回協議、そして条約締結交渉という形で物事は前向きに進展するものと私どもは予想しております。
  54. 鈴木和美

    鈴木和美君 時間がありませんから結論的にお尋ねしますと、第三回以降交渉は進展をする、そういうふうに楽観的に見ておってよろしいのですか。
  55. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) お互いの立場の、ソ連側の主張の中にも基本的な問題がございますので、その点をどう処理するかということで若干いろいろな議論はあると思います。ですから楽観をしていいというほどは申し上げられないと思いますけれども日ソ双方におきましてこの協定が不可欠であるということについては認識は一致しておりますので、私どもとしてはこの協定を締結するという方向にいくというふうに思っております。そういう意味交渉自体はそう楽ではないとは思いますけれども進展するというふうに考えていただいて結構でございます。
  56. 鈴木和美

    鈴木和美君 最後ですが、前回の委員会でちょっとお尋ねしたときに、サケ・マスの台湾サケのことなんですが、日本政府として台湾にそれなりの申し入れというか抗議というか、それを行ったかという私の質問に対して、草野さんとおっしゃいましたでしょうか、それは行いましたというようにお答えになったんですが、外交関係のない台湾との関係でございまして、日本のどこが台湾のどこにやったのか、その事実をきちっと教えていただけませんか。
  57. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 先生御指摘のとおり、我が国と台湾との間には外交関係がございませんので、政府といたしましては台湾との間の物事の処理に当たりまして、民間窓口団体であります交流協会を通じまして台湾側に対して御指摘の北洋サケ・マス漁獲の規制及び同加工品の対日輸入抑制を求めてきております。現に、本年六月二十二日から施行いたしました台湾を原産地または船積み地とするサケ・マスを輸入貿易管理令に基づいて事前承認制の対象とするという処置をとりましたが、この処置についても、このルートを通じまして台湾側に通報いたしたところでございます。
  58. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一度お尋ねしますが、日本のどこが台湾のどこにやったのかと尋ねたのですが、台湾の方はわかりました。財団法人交流協会ですから、それはそれである程度わかった。こちらの方はどこがやったんです。
  59. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 交流協会から台湾の亜東協会に対し、このような内容を伝えた、こういうことでございます。
  60. 鈴木和美

    鈴木和美君 台湾の亜東関係協会というのですか、時間がありませんから私の部屋でも結構ですから、ぜひ後からちょっと教えていただけませんか。私は、本日時間があれば、あと北海道の漁業問題を取り上げようと思ったのですが、時間がございませんので関係者をお呼びしておいて質問をしないで申しわけありませんが勘弁していただきたいと思います。以上をもって私の質問を終まります。
  61. 岩本政光

    ○岩本政光君 私は質問を二つに分けましてさせていただきたいと思います。  その一つは、日ソの基本的な関係と、その取り組み方についてでございます。それからもう一つ北方領土関係について質問させていただく次第でございます。  それで、質問を申し上げる前にひとつ感謝を申し上げたいと思いますが、私は与党でございますが、この与党の私に対しまして質問の機会をいただきまして、委員長、理事の皆さん方にお礼を申し上げます。また、あわせましてこの機会に安倍外務大臣におかれましては二度目の外務大臣を担当されておりますが、大変精力的に海外にも出向かれまして各国から大きな信頼と期待を獲得されておられまして、その姿につきまして高く評価を さしていただきまして、この席をかりまして敬意を申し上げる次第でございます。  さて、私が質問するに当たりまして、実は今鈴木委員からも質問があったんでありますが、外交は非常に難しいものですから国民にわかりづらいわけであります。したがって、できるだけ明快に率直な答弁をひとつしていただきたい、これが私のお願いでございます。したがいまして、私は与党の立場でありますので、ちょっと先に私がなぜ質問に立ったかという理由、その立場お話をさしていただきたいので、お聞きを願いたいと思います。  私は、この外交というものは今日的ないわゆる非常に短期なものを解決しなければならないこと、それからまた、中期的な展望に立ちまして処理をしていかなければならない問題もございます。さらにまた、百年スパンといいますか、長期、超長期にわたって事を進めていかなければならないものもございます。こういうことですから、国民の立場から見ると非常に外交は難しい、なかなかわからない。どんなになって考えたらいいんだろう。ところが一方では、今こそ非常にしっかりとした外交というものをやっていかなければならない責任、あるいは日本にはその使命が私はきていると思うわけであります。それでは、そのしっかりとした外交は何だということになりますと、これは私の考えでありますけれども政府と国民がコンセンサスを一つにしまして、そして外交を進めていかなければならぬ、したがって、国民にしっかりとした認識を与えなければいけないんではないか、理解を与えなければならないんではないか。外務大臣は将来の日本を背負って立つ立派なお仕事をされているわけでありますので、特に私はそのことを期待をしたいわけであります。  それからもう一つ、与党の立場でありますが、政府は最近高齢化社会が来たとか、あるいは成熟化社会が来たと言いながら、それに足しましてといいますか、国際社会だ、こうも言っているわけでありますので、どうかそういう意味におきましてこの難しい状態をわかりやすく説明をしていただきたい、これが私の願いでありますので、その点をひとつぜひ御理解をいただきまして、そして御説明をいただきたいと思います。  二つ目に私は、先ほどお話がありましたんですが、日ソ関係の問題で、安倍外務大臣はアンドロポフ書記長の告別式に参列をされました。先ごろもグロムイコ外相とも会談をされました。私は、去年の米ソ関係を見ておりますと、米ソ関係はある意味では新長期穀物協定の締結などを結びまして大変危機回避の方に向こうとしていながら、一方では大韓航空機の事件などが出まして、非常に悪い状態、決定的な対立状態、均衡拡大の状態に進んでいるというふうにも去年は考えておりました。したがって、そのことでグロムイコ会談に私は大きな実は期待を持っておりましたんですが、最近のソ連のチェルネンコ新政権は非常に私にとりましては悪いイメージではね返ってきております。それはどういうことかと言いますと、たくさんあるのでありますが、一つの例を挙げますが、つい最近の新聞紙上におきまして、ソ連の新書記長チェルネンコは日米韓国の軍事協定のことを殊のほか大きく取り上げておりますし、これと連動させまして、北方領土返還の要求は軍国主義の復活だと、言葉をかえてまた報復主義というような表現で我が国を厳しく批判しているというふうな報道を見ました。また、朝鮮民主主義人民共和国に対しまして、日本軍事主義的な傾向の増進は非常に危険だ、こう指摘したということも報じられております。また御承知のとおり、最近のオリンピックの問題を見ましても大変なことだなと考えるわけでありますが、先ほども話がありましたが、私は日本という国はもう軍国主義なんというそんなことを言われては大変腹立たしいといいますか、そんな問題ではなくて、我が国こそは自由と民主主義を基調としたこの政治体制、これはもう世界に冠たる民主主義だと。私はこの国会をどうしても大事に取り組んでいただきたい、こう思うわけでございます。  こんな二つの理由から、鈴木委員からも御質問がありましたが、日ソ現状基本的姿勢、そしてまた将来についての展望を御説明いただきたいんですが、ひとつここでお願いがあるんです。先ほど黙って聞いておりましたんですけれど、あれでは私わからないんです。それで日中関係につきましては、平和五原則とか、あるいは日中の四原則とか、いろいろな原則がありまして非常にわかりよく私たち理解をしているつもりでございます。したがって、そういうようなことで一遍ここで大臣に整理をしていただいて、日ソ関係はどんな現状にあるのか、どんな形になっているのか、ひとつ御説明をいただきたいと、こう思う次第でございます。
  62. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ただいまは我が国のいわゆる外交の本質から、さらに日ソ現状をいかに見るかという広範な御質問でございますが、私も、今おっしゃいますように、やはり日本の外交というのはもっとわかりやすいものでなきゃならぬと思いますし、そして本当に国民に理解されるものでなければならぬと思います。特に最近日本が非常に国際社会の中で大きな発言権も持ち、またそれだけの国際的責任も持ってきたことは非常にはっきりしておりますし、それがまた国際国家だと言われるゆえんであろうと思います。同時にまた、やはり日本の外交はただ単に政府がやっておるということじゃなくて、本当にもっと国民各界各層でこの外交というのは広く進められる、いわば国民外交ということがこれからは必要になってくるということを私は痛感をいたします。外交はやはりある意味においては内政の延長でもあろうと思うわけで、例えば先ほどお話がありました漁業問題にしても、この解決いかんがやはり国民生活にそのまま結びついておりますし、農業の問題にしても、外交によって日本の農業というのが大きく変わっていくというふうな、非常に外交問題はそういう意味でも内政問題を延長したとも言える面も非常に強いわけでございます。領土問題についても特にそういうことがはっきり言えるわけで、日本としてもそういう意味での、政府だけじゃなくて、日本人全体が領土問題というようなものを理解をしていただく態勢というものをつくり上げることが必要であるし、それは政府だけでできるわけじゃありませんし、特に各界各層の協力を得て進めていかなきゃならぬと、こういうふうに思います。  そうした中で日ソ関係はどうかということでありますが、私も実は外務大臣になりまして一年九カ月でいろいろの各国との外交を進めてまいりましたが、一番難しいのは率直に言いまして日ソ関係であります。そしてまた、日ソ関係というのは一番難しいと同時に一番冷え込んでおるわけでございまして、これは何といいましても日ソ間に根本的に存在している領土問題というのがあるわけで、これが日ソ関係の改善を大きく隔てておることは、これはもう間違いのない事実でございまして、この問題を解決すれば、これは一挙に私は日ソ関係平和条約も結べるし、一挙に関係がよくなっていくのじゃないかと思うわけでございます。私はソ連の要人にも言っておるわけでありますが、日本は体制の違う中国とはこんなに仲よくすばらしい関係を持っている。だから、日ソ関係だって体制は違ってもそういう関係には十分なり得るという我々は期待も持っているし、そうでなきゃならぬと思うけれども、それを妨げておるのはやはりこの領土問題であるので、この領土問題を何とかテーブルにつけて、そして話をしようじゃないか、それが日ソ関係改善の根本的な解決ですよということを主張をいたしておるわけです。これはやはり領土問題が大きく立ちはだかっているというのが日ソ関係をこれほど冷たくしておるということの第一、最も大きな原因だと思います。さらに先ほどからお話しのように、特にソ連の最近における極東における非常な軍事的な増強というものも大変日ソ関係に暗い影を落としております。また、昨年の九月のあの大韓航空機撃墜事件は、多少は明るさも出てこようとした日ソ関係に全く鉄槌を下した、鉄槌のような影響を与 えたということでございまして、まあ今の状況は、そうした意味でこの日ソ関係が非常に悪い。そして同時に東西関係、それから米ソ関係もまた悪いわけです。東西関係米ソ関係がよければ日ソ関係にもいい影響が多少とも出てくるわけですが、肝心の世界情勢の中の東西、米ソというのが悪いということが、非常に厳しい日ソ関係、冷たい日ソ関係をさらに厳しいものにしておるということも言えると私は思っております。  しかし、まあ我々としては、あくまでも日ソというのは隣同士でありますし、領土問題は、こういうふうに日ソ間に大きく立ちはだかっておりますけれども領土問題があるからといって、日ソ間で外交関係があるわけでありまして、何もかも全部だめだというわけにはまいらないと私は思っております。領土問題を少しでも前進させるためにも、日ソ関係というものをよくしていく、これはもう幅は非常に狭いとしても、その道を広げていくという努力をしていく必要が私はあるんじゃないか。ですから、非常にわかりにくいような話ですけれども、しかし領土問題を解決するためには、これは日ソ関係対話を進め、関係の改善をする努力をしていくということが、領土問題に何かの一つの足がかりをつけるゆえんにも私はなっていくんじゃないか、こういうことで、実は努力を重ねておるわけでございます。それで努力がすぐ報われるとは思いません。しかし、やはりこれは重ねることによっていつかは報われる可能性はある。その素地をつくっていくために今いろいろと頑張っておるわけでございまして、私が申し上げたようなことを、またグロムイコ外相とも国連で会って、率直に話をして、何とか日ソ関係改善、そしてグロムイコ外相日本に来れるようなそういう状況を少なくとも一日も早くつくり上げたい、こういうふうに念願をいたしております。
  63. 岩本政光

    ○岩本政光君 時間がありませんので、なかなかわかりづらいんですが、次に進ましていただきます。  次は、北方領土関係についての質問であります。  外務省は、四月に札幌におきまして、一日外務省を開催されました。大変好評でございまして、大臣ほか局長さんも大変たくさん行かれまして、国際化時代に私は非常にふさわしかったと思うわけであります。また一方、国民世論も、署名は三千五百万人を突破しておりますし、あるいはまた県民会議も四十二を超えたということで、非常に盛り上がりが出ております。先ほどお話がありましたように、日ソ間におきましての領土問題は存在しない、これは最近のソ連の態度だということをおっしゃいました。私は、大変時間がありませんものですから、広い話は別といたしまして、少し絞ってこの一日外務省で、未消化で、すっかり説明していかなかったことや、あるいは返答は後でするよと言ってお話して帰ったことや、あるいはまた、その後の変化があったことがあるものですから、少しここでお答えをいただくと非常にありがたいと思いまして質問さしていただきます。  一つは、対話の問題なんですが、外務省の皆さん方は、民間レベルで親善の交流をしていきたいし、またしなければならぬと、具体的にこの話をちょっと聞きたいんです。あのときに、いろんなチャンネルで対話を継続していきたい、こういうお話がされたものですから、いろいろなチャンネルというのは何なんだろう、こういうような話が非常に起こっておりますものですから、これらについての御説明をいただきたいと思います。  それで、時間がありませんのでもう一つ続けて、国際世論の喚起の問題につきましてお話がやはりそのときに出たと思います。このことにつきまして、政府はどんなふうに取り組んできたのかということについて余り明確でなかったものですから、これはやっぱりちょっと説明を加えていただきたい。国連への派遣使節団が行っているんですが、これは北海道とか東北とか、そういう限られた人たちの方が行っていますが、もっと大きく、先ほど私も言いましたように、全国ベースでやっていって、国際世論という問題についてもう少しやってみてはどうか。私は、この国際世論の喚起ということで一番大事なことは、先ほど大臣触れておられないんですが、もうやり切れない、じれったい、一歩も前進していないんではないかという中では、思い切って国際司法裁判所へも提訴を堂々としてみたらどうなんだろうと、こういうことをちょっと御提案を申し上げたいのでありますが、この辺の考え方につきまして、ひとつよろしかったら御説明をしていただきたいと思います。
  64. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) お答え申し上げます。  あらゆるチャンネルを通じて交渉というよりも、対話を続けるということだろうと思います。御承知のように、交渉ということになりますと、外交一元化の見地から、当然のことながら外務省が責任を持ってこれに当たるわけでございますので、対話ということになりますと、あらゆるレベルでソ連との間に誤解をなくすために、あるいは相互理解を深めるために対話を進めるということは、重要だろうと思います。そういう意味であらゆるチャンネルと申し上げたので、これは政府レベルにおきましても、事務レベル協議であるとかあるいは交渉の場を通じて、あるいは国連問題、中東問題を通じての協議というようなものがいろいろ行われることが、広い分野での意見交換の場を提供するという意味で有益だと思っております。  それから、国会の方におきましても、議員団の交流という形で対話を続けていただくということも、その一つだろうと思います。それから、さらに経済界におきましても、秋には経済問題についての話し合いを東京で行うということを考えておられるようです。日ソ円卓会議という民間の対話の場面もございますし、こういう場面を通じて広く意見交換を行うことが、先ほどの先生御指摘のような、日本の軍国主義というようなあらぬ誤解を解く上からも、有益だろうというふうに考えておる次第でございます。  それから国連代表団を送るのにつきまして、全国的な規模でやったらどうかという御指摘でございますけれども、確かに現在まで北方領土復帰期成同盟を中心として三回ほど国連代表団を送っておりますけれども、国際社会に広く領土問題を理解させるためにこういう使節団派遣ということは、それなりに非常に効果があると思いますので、先生御指摘のように幅広い使節団が構成されるということであれば、それは非常に有益だろうと私どもも考えております。  それから第三番目に、先生が国際司法裁判所の件について御指摘になりましたけれども、御承知のように、国際司法裁判所につきましては、これは事前に国際司法裁判所規程に従って裁判の強制管轄権を受諾しているという国につきましては、自動的に裁判所に持っていけるわけでございますけれどもソ連の場合には、残念ながら、この規程に従っての管轄権を受諾しておりません。そういう場合には、改めて合意をつくる必要があるわけでございます。国際司法裁判所に持っていくという合意をつくる必要があるわけでございますけれどもソ連側は現在までのところそれに応じるという姿勢は示しておりませんし、その姿勢は今後とも示さないと思います。  ソ連は主権の問題については国際司法裁判所には任せないということを言っておりますので、そういう可能性は多分ないだろうと思います。やはりこれは、二国間の対話を通じて粘り強く話を進めていくという以外にないだろう、そういう意味では、二国間の問題としてこれを処理していく必要があるだろうというふうに考えております。そのためにも、対話ということを通じて相互理解を深めていくということになろうかと存じます。
  65. 岩本政光

    ○岩本政光君 時間がありませんので、大臣、私は答弁は要らないんですが、やはり外交姿勢が少し弱いのではないかという気持ちをちょっと感ずるものですから、どうかその辺は、相手の立場もありますが、こちらはそうするぞというようなことを、正々堂々とひとつ考えたらいい。そういう時期に来ているのではないか。特に、私はその弱さの中に、先ほどもちょっと議論がありましたが、 国民といいますか、この議会の中でもそうなんですが、やっぱり国民と外交とが一緒に、ソ連については一体になっていないということが考えられますので、いつかの時点にこのガイドライン等設けられまして、こういう動きをするんだということを私はされるといいんではないかと思いますが、この点は御返答は結構でございますけれども、次の質問に入るために要望だけはひとつさしていただきたいと思います。  それで、次の質問に入らさしていただきたいと思いますが、大変はしょって申しわけありません。あの札幌の一日外務省の中で、北方墓参を実現したいんだという要望が非常に強くありまして、大臣は事務レベルで既に提案もしておりますという話がありましたんですが、その後の経過についてどんなふうに進んでいるかということをちょっと御説明をいただきたいのと、それから、そのときに中曽根総理に北方領土を視察してくれというこれまた強い要望が出ておりました。まあ鈴木総理が行かれまして、ぜひ地元では慣例化して総理大臣に来てほしいと、物すごく声が高いわけで、帰ったら話をするというお話がありましたんですが、その辺は新総務庁の立場もあるかもしれませんが、その後の経過につきましてひとつ御説明をいただければ、ぜひお願いをしたいと思います。
  66. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) 墓参の問題につきましては日ソ間で種々協議をいたしました結果、樺太につきましては七月二十三日より墓参団が現在訪ソ中でございます。しかしながらソ連本土の墓参実施地域及び北方領土につきましては、ソ連側が人道的側面に十分配慮することなく引き続き否定的な態度をとっているわけでございます。関係者の皆様のお気持ちを思いますと非常に残念と言わざるを得ない状況にございます。  特に北方領土につきましては、ソ連側が昭和五十年までは身分証明書による墓参という方式を認めていたわけなんでございますけれども、この年これを突如撤回いたしまして、墓参参加者に我が国の有効な旅券とソ連の入国査証を要求してきたために同年の北方地域墓参は実施されておりません。その後毎年同地域が外国人立入禁止区域であるというような理由で実現が阻まれて今日に至っている次第でございます。我々もあらゆる機会に、これは人道的な問題であるからこの点は特別の考慮をしてほしいということをソ連側に申しておりますけれども、残念ながら現在までそういう状況でございます。
  67. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 北海道の皆さんが北方領土視察をぜひとも中曽根総理にしてもらいたいという強い要望につきましては、これは中曽根総理も十分承知をいたしております。また中曽根総理としても視察したいという気持ちは持っておる、こういうふうに見ておるわけでありますが、いつの時点で視察するかということは今後の総理大臣の日程等で判断せざるを得ないのじゃないか。私はそういう機会はあると思いますし、そういうことを期待しておるわけであります。
  68. 岩本政光

    ○岩本政光君 続きまして、これは少し先の話になるんですが、感触だけがわかれば非常にありがたいんですが、またそのときに、北海道で二年後ということになるんでしょうか、日本でのサミットの問題で、北海道で開催していただけないだろうか。これは各地からもあるんですが、大変強い要望があったと思います。先のことですから今お答えできるとは思いませんが、北海道が一つの適地の候補かどうかということで大臣の感触がありましたらちょっと御返答いただきたいと思うんですが、いかがでございますか。
  69. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 北海道は知事さんからもそういう御要望を承りました。国会議員の皆さんからもそういう要望も出ておる、市民の諸階層、団体等から出ておるわけでありますが、これは北海道だけではありませんで、その他京都であるとか広島とかいろいろな都市からも出ております。来年がボンでその次が日本ですから、そのとき果たしてどこでするかはそのときの内閣が判断をするわけでございまして、いろいろと検討は進めると思います。もちろん北海道もご要望があるわけですから、そういうものも踏まえた検討は進めると思いますけれども、最終的にはやはりそのときの政府の判断になる、こういうふうに思いますので、今から何とも言えるような状況ではないということであります。
  70. 岩本政光

    ○岩本政光君 御心中を聞かさしていただきましてありがとうございました。私から強くそういう意向があるということは要望をひとつさしていただきたいと思います。  質問の最後になりますが、きょうは私はここで質問に立たしていただきました以上、私も北海道出身でありますので、新総務庁になりましょうか、来ておられましたら、北方領土問題等の解決促進のための特別措置ということで、例の隣接地域の振興資金の問題につきましてちょっと要望といいますか、ぜひお願いだけはさしていただきたいと思うわけであります。  これはもう非常に強い要望が何度も何度も出ておりまして、やっと始まったばかりですが、最初北海道の道民の方々、そして特に根室地域の皆さん方は非常に大きな期待を抱いておりました。今も抱いているんですが、なるべく近い機会にかなりの効果の上がるような基金を造成していただきたい。ところが少しずつ何といいますか、期待よりは余り進んでいないような気がいたしますものですから、この機会に新総務庁といたしましてもその道民の皆さん方の御期待に沿えるようにぜひ全力でひとつこれの対応努力をしていただきたいとお願いをし、もし何らかの御説明をいただければこの上のない喜びでございます。
  71. 本多秀司

    政府委員(本多秀司君) お答えいたします。  ただいま先生御質問の北方領土隣接地域振興等基金の早期造成に関しましては、地元におきまして非常に強い希望と申しますか、期待があるということについては私ども承知いたしております。  この基金の根拠法でございます北方特別措置法の立法の趣旨等を踏まえまして、また財政状況など諸般の事情を勘案しながら、従来どおりできる限りの努力をしてまいりたいと思います。
  72. 岩本政光

    ○岩本政光君 どうもありがとうございました。結構でございます。
  73. 中野明

    ○中野明君 外務大臣に引き続いて北方領土の問題についてお尋ねをいたします。  先ほど来議論を聞いておりますが、外務大臣も所信の表明をされた中でも当委員会北方領土の問題については述べておられます。そして結論として歴代の内閣も粘り強く働きかける、こういうことで粘り強く働きかけるのみで、具体的に現状打開にどのような作業をされようとしているのか、またなさるのか、その辺が非常に私ども歯がゆい思いがするわけでありまして、これは当然我が国のことでございますので、先方が変わってくれればというような考え方でおったんでは百年河清を待ってありまして、やはりこちらが変わるかあるいは変えていこうという具体的な作業がなければならぬと思うんですが、そういうことについてどういうふうな具体的な作業を今までもしてこられたのか、これからまたさらにどういう作業をしようとしているのか、その辺をお答えいただきたい。
  74. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この領土問題というのはそう簡単に解決できる問題ではないと思います。特に北方四島の問題は基本的に日ソ間で考え方が違うわけですね。とにかくソ連はこれは解決済みだと既に言っておる。日本テーブルについてぜひとも論議しよう、そしてあくまでも固有領土だという主張は譲るわけにはいかないわけでございます。これだけの天と地の拝格があるわけですから、これを近づけるということは容易じゃないと思いますけれども、しかしもう日本としてもそれじゃ妥協する道があるかというとそれはない。日本はあくまでも頑張り通していかなきゃならない、日本民族の悲願であると私は思っておりますから、あくまでも粘り強く、時間は仮にたったとしてもソ連テーブルにつかせるような努力を重ねていく。その努力というのはやはり二国間の交渉以外にないわけですから、外務大臣交渉あるいはまたそれ以外のパイプでの交渉、そして またこれは政府間だけの交渉でなくて民間レベル、あるいは議会のレベル、そういう面での交渉というのが非常に大事であろうと思います。そういうものを粘り強くやっていく以外に私はないと思いますし、同時にまたやはり国際世論も大事だと私は思います。そういう意味では、北方四島が日本固有領土であるという国際的な評価といいますか、国際的な理解を得るためのこれからもいろいろと努力は重ねていかなきゃならない、こういうふうに思っておるわけでございます。相当腰を据えた、道の長い目標でございますが、やはりこれは日本国民として毅然として、そして粘り強くやっていく以外には私はない、こういうふうに存じておるわけであります。
  75. 中野明

    ○中野明君 基本的に粘り強く努力される方向は私もそのとおりだと思っておりますが、今、大臣もちょっとお答えになりましたように、所信の中にもありますが、まず国民の統一された世論の力、これも大事でしょうし、今お述べになりました国際世論の盛り上がり、これもやはり側面からとっていく解決の作業の一つだろう、こう思っております。御承知のように、最近中国の外交専門誌で「ソ連東欧問題」に掲載されました「日本北方領土に対するソ連政策変遷」、こういう論文が出ておりますが、日本北方領土返還要求を支持する、こういうような記事も出ておりますし、外務省にも新たに国際報道課というのが設けられて、仕事の内容は、各国の特派員あるいは外国から訪ねてくる報道関係者に対して情報を与え、種々の取材に便宜を与えるということを重点に置かれているようですが、東京に駐在する各国の特派員だけでも数百名おられるようですし、積極的にPR効果というものをこういう人たちを通じてやるということも非常に大きい働きをするんではないか、このように私は思いますし、先日も当委員会で我が党の藤原委員がたびたび指摘しておりますように、大臣もお聞きになっているとおり、世界地図一つにしましても各国でいろいろ北方領土の書き方がまちまちで、そういうことも努力して、側面から国際世論の喚起ということをおっしゃっておりましたが、今の国際報道課を通じてのやはりそういう努力というものも必要じゃないかと思うんですが、外務省はそういう点どう考えておりますか。
  76. 瀬木博基

    説明員(瀬木博基君) ただいま先生御指摘のとおり、諸外国の報道機関を通じまして我が国立場を正しく伝えるということは、我々外務省といたしても大変大切な仕事だと存じております。北方領土の問題につきましても、外国の報道機関を通じるまたは私どもの在外公館を通じる等をいたしまして、これまでもかなりの働きかけをいたしてまいりましたけれども、これからもさらに推進してまいりたいと思っております。
  77. 中野明

    ○中野明君 ぜひこれはあらゆる機会を通じて努力をしてもらいたいと思いますし、もう一つ、サイマル出版会ですか、ここから出された「ソ連立場」という本の中では、ソ連の人はわずか二、三の小さな島の問題でなぜ譲歩しないかとかいうような、わずかな小さな島というそういう認識、これが大体国際世論の認識ではないかというふうに受け取られがちなんですが、どうかそういう点でよほどしっかりPRをしていかないとなかなか容易なものじゃない、このように私たちも感じておるわけです。  それからもう一つ、国内の世論を喚起する上で、大変な盛り上がりを見せておるわけですが、その割に中身といいますか、認識がまだ一歩という気がいたしますが、今、根室に北方資料館が設置されまして、各種文献、資料を展示して、これらの資料等を通じて北方領土返還に対する国民世論を高めるのにそれなりの効果を上げていると思いますが、根室だけではやはり訪れる人、一部の人に限られております。ですから、国際世論を高めたりあるいは国民世論を高める上から、こういう北方領土の資料等展示コーナーをやはり大都市あるいは国際的に人の出入りの多い国際空港とかそういうところを活用して、そして北方資料館的な施設を設けてPRをしていくという努力も私は必要じゃないかと思うんです。ただ、各県にいろいろ県民会議というものができましても、それはただ会議ができたというだけで、まだまだ認識は薄いんじゃないか、そういう気がしておりますので、そういう点についてどういうふうな御認識をお持ちになっているか、今私が申し上げた点についてお答えいただきたい。
  78. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) 北方領土につきまして、まさしく先生御指摘のとおり我々といたしましても今後一層啓発の努力を続けていかなければならないと思っております。そういう意味におきまして、先生のおっしゃったことは今後積極的に検討してまいりたいと存じます。  具体的に北方資料館の問題でございますが、この資料館は、根室の市長さんのお話によりますと、今や年間ほぼ五十万の人が訪れておられるということでございまして、まさしく北方資料館があの場所にあるということのゆえに多くの人の関心を集めているという面もあるのではないかと思うわけでございます。したがいまして、それはそれとして大きな意義があるのではないかと思っておりますけれども、そういう資料館を各地に設けるかどうかということはまたいろいろ予算の問題等々のこともございますので、検討させていただきたいと存じますが、同じような精神から北方領土問題対策協会あるいは北方領土復帰期成同盟等が既に全国的規模において各種の大会あるいは講演会、研修会、展示会等々を行っておりまして、そういう事業は毎年強化されているところでございます。
  79. 中野明

    ○中野明君 それではもう一点、これはソ連との対話ということが問題になってきておるわけでありますが、新聞報道によりますと、七月十日に高島駐ソ大使が日本へ帰国に当たってグロムイコ外相と話をされたそうですが、この会談の中で、日本はある時点から対ソ関係を悪くする方向に転換したのではないか、だから今わしは行く時期じゃないというふうに、訪日を要請したときにグロムイコ外相がそう述べておったというんですが、外務大臣としてはこの状況はどういうふうに御報告を受けておられますか。
  80. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 高島大使が退任をされるに当たりまして、グロムイコさんと会ったその会談の内容については私も聞いております。グロムイコさんの話は、今お話がありましたように、日ソ関係が悪い、特に最近の日ソ関係にはいろいろ非常に憂慮すべき問題がある、こういう趣旨でありまして、したがって日本訪問等につきましても慎重にならざるを得ないというふうな趣旨であったように承っておるわけでございますが、しかし全体的に見まして日ソ関係に対する認識としては相当厳しいものがありますけれども、私は日ソ関係のパイプをふさぐとか、ふさがなきゃならぬとか、そういう状況になっているというふうなグロムイコさんの判断ではもちろんありませんし、私と国連の総会での会談等も向こう側から喜んでお目にかかりたいということでもございますし、その他いろいろな今パイプを通じての、チャンネルを通じての対話が進んでおります。例えば民間では安西さんが委員長になった経済委員会ソ連の貿易の担当者を呼ぶとか、あるいはまた山村農水大臣ソ連訪問するとか、また最近では日ソ外務省間で中東問題について話し合うとか、いろいろそうしたパイプが一応動いておるわけでございますし、ソ連最高会議の議員さんを国会に招聘するという話も進んでおります。ですから、決していい状況ではありませんけれども、しかし動いてないわけではないんで、この動きをいろんな面でやはり進めていくということが必要じゃないだろうかと私は思っております。そうぱっとした動きにはならぬと思いますけれども、辛抱強くこれこそまたやっていかなきゃならないことであろう、こういうふうに思っております。
  81. 中野明

    ○中野明君 いや、今、外務大臣がおっしゃっているように、そういういろいろの動き、これがとまってしまったらこれはもう大ごとです。ただ、私が心配しておりますのは、今回はグロムイコさんが日本へ来る番になっているわけです。それで、 国連とかあるいは外務大臣なりほかの人が向こうに行って、ついでなら会いましょう、ですけれども、わざわざ日本へ行くのは御免です、その理由は、ある時期から日本対ソ政策が悪い方向に転換している、こういうようなニュアンスで物を述べているというので、そういう点についてどうお感じになっているんですかということを、御心境をお聞きしたいんです。
  82. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いろいろと理屈はつけられるわけでありますが、私は、日ソ定期外相会議ですから、いろいろと状況日ソ間では動いておったとしても、いい場合もあるし悪い場合もあったとしても、お互いに外相同士のパイプというのはつないでいかなきゃならぬし、こちらが行くとき、そして今度は向こうが来る番ということで、やっぱり交互にやっていくのが外交の常識ですから、何か今それだからといって日ソ間で決定的な問題が起こっているわけじゃないんですから、やはり我々としては今までの約束どおりグロムイコさんに来てもらいたい。グロムイコさんの方は、今はそうした状況にはないとか、あるいはまた来ても成果がないとか、そういうことを言っておられますけれども、しかし来るということに私は意義があるんじゃないかと。グロムイコさんが来ることによって、今度私も正式にモスクワ訪問できるわけですから、そうすることがまた日ソ間の対話を広げていくことになるわけですから、我々としてもできるだけの、おいでになればおいでになるだけのお迎えをする態勢というものをつくらなきゃならぬと思います。これは努力しなきゃならぬと思いますが、やはりぜひともおいでをいただきたい。そしてこれを阻む決定的な理由というのは私はないんじゃないか、こういうふうに思っております。
  83. 中野明

    ○中野明君 ですから、定期の外相会議ですから、今、大臣おっしゃっているように、肩をそんなに張らないでおいでになったらいいんじゃないかという気がするんですけれども、来るのを断る理由に、暗にどうも中曽根内閣の対ソ政策が気に食わぬから行かぬというようなニュアンスで物を言うということは何かおもしろくないなと、そういう感じを受けているわけです。ですから、その辺をあらゆる機会にやはり理解をさして、そして定期的に、外務大臣同士は別にどこで会うても気楽に話ができるとおっしゃっているんですから、まあ定期なんですから、肩の凝らない立場で来たり行ったりできるようにする努力を重ねていかなければならぬな、こう思うわけでして、その点はさらに御努力をお願いしたいと思います。  それから、北方問題に関してはもう一点だけ。先ほど鈴木委員の方からも御指摘ありまして、御答弁を聞いておりますと非常に楽観的な御答弁なんですが、日ソサケ・マス交渉の問題は例年になく難航して、ことしは恒例の五月一日には出られない、そして五月五日に前年よりも二千五百トンも減らして、協力費は前年度並み、四十二億五千万ですか、こういうような、環境はますます厳しくなっておりますが、その中でソ連が六月二十六日に日ソ漁業協力協定を今年度限りで失効させると一方的に通告をしてきたわけですが、この状況について先ほどお話では、まあ余り心配要りませんよと、八月には何とかできるでしょうということを述べておられるんですが、この日ソ漁業協力協定の失効の理由をソ連としては、海洋法条約の調印に伴う最高会議幹部会令の公布というものを踏まえたと言っているんですが、この幹部会令というのはどういうことが規定されているんですか、ちょっと説明してください。
  84. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) この幹部会令は、海洋法を今回採択されたということに伴って漁業協力の仕組みを変えたい、そういう内容を含んでいるものでございます。
  85. 中野明

    ○中野明君 それで、どうなんでしょう。先ほどのお答えでは、八月ごろには何とかというようなことになるんですが、この幹部会令の規定に従ってソ連が各種の開発を推進するということになりますと、北方領土の問題に対してかなりの影響がこれまた心配されるというふうに私どもは懸念するんですが、政府はどういうふうに考えていますか。
  86. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) その問題は、具体的にどういうところからいわゆる線引きを行うかという問題になりまして初めて問題が出てくるわけでございますが、そのためには、従来の例によりますと、大臣会議令というものがございまして、それによって行われるというふうに了解しております。で、我々が承知しておる限りでは、まだそういうものが出たという確実な情報がございませんので、現在の段階についてはまだ北方領土にどういう影響が及ぶかということについてはコメントを差し控えさせていただきたいと存じます。
  87. 中野明

    ○中野明君 ただ単にサケ・マス交渉というだけじゃなしに、今度そういうふうに向こうが一方的に廃棄を通告してきて、さあこれから新しくまた交渉し直すということになっていろいろの問題が出てくるんで、先ほどのお答えを聞いていると何か、心配要りませんよというような答えですから、そんな甘い考え方で、取り組んでおると大変なことになってくるんじゃないかということで、一応懸念を表明しておきます。  それから、大臣にもう一つだけ。これは近く、九月には韓国の大統領がおいでになるわけですが、南北朝鮮の平和ということ、これはなかなか大変な問題でして、我が国にとりましてもアジアの平和にとっても大変なことなんですが、この朝鮮半島の南北問題打開のために我が国としても無関心でいられないわけですが、南北対立状況解決するために我が国として一体何ができるのか、また何をしようとされておるのか、この大統領訪日を前にして外務大臣の御見解があればお話をしていただきたい。
  88. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるように、九月には全斗煥韓国大統領が国賓として日本訪問されるわけでございます。これは日韓関係をさらに発展させるためには大きな意義があると私どもは考えておりまして、何としても成功さしたい、こういうふうに思います。同時に私どもは、朝鮮半島の緊張緩和はこれはアジアの平和と安定のためにも極めて大事なことであって、そのためにやはり日本も隣国として協力をすべき点はしていかなければならない、こういうふうに考えて今日までも努力をしてきておるわけでございますが、日本の基本的な考え方は、やはりこの南北両当事者が話し合って、そして緊張緩和、さらに民族統一の理想へと向かっていただくことが最も正しい方向ではないか、こういうのが日本の基本的な考え方でございます。いろいろと接触はあるようでございますが、必ずしも成功していない。そういう中で、北朝鮮からの三者会談であるとか、あるいはまた、これに対してアメリカからの中国も含めた四者会談であるとか、いろいろな話し合いの構想が飛び交わっておるわけであります。私は、やはり昨年のラングーン事件以来大変に緊張が高まっておる、そして心配したわけですが、こうした緊張がやや緩和をしている。そしてそうした構想が出ているということは、それなりにやはり緊張の緩和が続いておるということで評価をしておりますし、そういう中で、この事態をさらに進めていくための努力日本もやらなければならぬし、また中国も進めております。日本と中国ともその問題について話し合っておるわけでありますし、またアメリカとも話し合っておるわけでございます。具体的にそれでは確実にどういうふうに進んでいくかということになりますと、なかなかこれは申し上げるような段階に来ておりませんけれども、全体としてはそうした緊張緩和のいろいろな動きが出ておるということは大変結構であろうと思います。また、北朝鮮の方も、金日成主席がソ連訪問した、あるいは東欧諸国を訪問した中での発言等も我々調べてみますと、日本に対しては非常に弾力的な姿勢対応しておるというふうな感じも持っておるわけでございます。その点についてはこれからの、まあ目先でどうだということではありませんとしても、中長期にわたってはいろいろと緊張緩和、そうしてまた南北平和統一への道が開けてくる可能性というものもないわけ ではない、開けてくる可能性というものが出てくるんじゃないかという、私は多少楽観になるかもしれませんが、気持ちも持っておるわけであります。
  89. 中野明

    ○中野明君 韓国の大統領が初めて訪日されるというんですから、やはり何か一つの南北の打開の糸口がそういう中から見つかってくることを私どもも大きな期待を持っておるわけでして、外務大臣として、また政府として、それなり我が国でできるだけの努力はなさっていただきたい、強く要望しておきます。  それで、時間も余りありませんので、最後に沖縄の問題を一点だけお尋ねしたいと思います。  きのうの新聞によりますと、在沖縄米海兵隊と陸上自衛隊との間で共同実動訓練を近く実施する計画がある、このように報道されているんですが、これは事実なんですか。
  90. 上田秀明

    説明員(上田秀明君) お答えいたします。  陸上自衛隊と米地上部隊との共同訓練は、実は昭和五十六年度に米海兵隊との通信訓練をもって皮切りとしたわけでございますが、その後、陸上自衛隊は米陸軍との指揮所訓練あるいは実動訓練を重ねてきたわけでございますが、本年度におきましては、海兵隊との基礎的な機能別訓練を二回程度実施したいという計画でございます。
  91. 中野明

    ○中野明君 これは、新聞の報じるところによりますと、海兵隊は約二万二千人ですか、沖縄におるようですが、日本有事を想定しての即応能力の向上というのがねらいだと言われておるそうですが、なぜこの時期にこういうことを言い出すんだろうか。ただでさえ沖縄というところは基地の問題で、日本の基地の大半が沖縄にあって、そして米軍の訓練のために、訓練をやるたびに住民に被害が及んで、実弾訓練をしてもとんでもないところへ弾が飛んできたりして、一体何を訓練しているんだろうか。しかも、協定をしてあんなとんでもないところへ弾が飛んでくるというのは、私は、協定に違反して、協定にない違う兵器を使っているんじゃないかというような気もするぐらいおかしな事件も起こっていますし、県民感情としても、非常にそういうことについて、大変な反発と反感が出ております。しかも、御案内のように、八月十五日、それからその前、八月六日は広島に原爆が落ちたということで、今日本国じゅう、世界じゅうの目が、やはり核軍縮、そして平和ということについて真剣にその方向を向いているこういうやさきに、初めて、アメリカの海兵隊というのはこれは大変な力を持った軍隊であるということも聞いておりますけれども、それが沖縄で、しかも陸上自衛隊と合同訓練をするということを発表するというのは、もう神経を逆なでするのもおびただしいと私は思うんですが、こういう点はどういうふうに理解しておられますか。こんなのは、安保条約がありますから、海兵隊だけが訓練するとかやるというのは、これはそこまで文句を言うわけにはいかぬでしょうけれども、なぜ好んでこういう時期に有事を想定してというようなことでやらなきゃならぬかという、非常に私は割り切れない気持ちでおるんですが、ひとつ、どう考えておられますか。
  92. 上田秀明

    説明員(上田秀明君) 海兵隊との実動訓練、先ほど申し上げましたような基礎的な機能別訓練、その中には、通信訓練でございますとか、野砲の訓練とか、積雪地におきます訓練とか、そういう機能に着目した共同訓練を行っていこうという計画でございますが、時期とか場所とか参加の規模等につきまして日下部内で検討をし、米側と調整して詰めている段階でございます。場所につきましては、陸上自衛隊の適当な演習場で、このような訓練を行えるような場所で行っていくことになるわけでございますので、沖縄には陸上自衛隊の適当な演習場はございませんので、海兵隊との共同訓練を行う場所といたしましては、沖縄以外のしかるべき陸上自衛隊の演習場で行うということになろうかと思います。海兵隊との共同訓練でございますけれども、まさに先生御指摘のとおり、沖縄におります米海兵隊は、我が国に駐留しております数少ない米地上部隊、地上の実力部隊でございますので、米陸軍との共同訓練の際には輸送等の関係からいろいろ実施が困難であります装備等を利用しての訓練ができるというメリットがございますので、陸上自衛隊の方といたしましては、先ほどから申し上げておりますような、そういった機能に着目して共同訓練を積み上げていきたい、こういう考えでございます。
  93. 中野明

    ○中野明君 アメリカと沖縄共同訓練というのは、まあ日本の本土でやったら一体どうなるかということで、沖縄だから構わぬのかというような、そういううがった見方も出てきますし、この際は、共同訓練というのはやはり御遠慮なさった方でいいと私は思いますし、もう一つは、これまたこちらのことですが、けさでしたかきのうでしたか、テレビをちょっとつけておりましたら、いわゆる厚木基地の訓練の中止という問題について防衛庁に申し入れているけれども何の音さたもない。そして、もう訴訟問題にしなきゃならぬというようなことで、御案内のように、今暑くて不快指数の高いときに夜の十時ごろまでがんがん訓練をやられたらこれはもうたまらぬということで、市役所の職員も十時過ぎまで残業をしてその苦情処理に追われている。そういうような地域の住民の人たちに多大の迷惑を及ぼすような訓練というものをやはり自粛してもらうようなことは、安保条約があるといっても話し合いはできないものか。何か、向こうはもう住民の被害とか迷惑とかいうことは一切考えないで自分の好き勝手なことをするということは私は問題だと思うんですが、その辺も含めて、沖縄で自衛隊と海兵隊の共同訓練というのは、恐らく沖縄の現地の人はもう全員反対だろうと私は思います。そういうことを含めて何とかならぬのかということをお返事いただきたいです。
  94. 上田秀明

    説明員(上田秀明君) 海兵隊との共同訓練の場所につきましては、先ほど御説明いたしましたように、陸上自衛隊のしかるべき演習場ということになりますので、沖縄では陸上自衛隊のそういう訓練ができるような演習場がございませんので、沖縄以外の地になるという見込みでございます。  海兵隊との共同訓練そのものにつきましては、先ほど御説明したとおり、海兵隊が我が国に駐留する数少ない地上実力部隊ということで、戦術戦法の習得、米との連携要領、調整要領の演練に極めて有益であるというふうに考えて、これを逐次機能別な訓練を積み重ねていきたいという考えでございます。
  95. 中野明

    ○中野明君 厚木基地のこともお答えなかったですが、大臣もお聞きになっていると思いますが、安保条約はあります。ですから、条約の範囲内でいろいろそれはやれるんでしょう。しかしながら、著しく、住民が訴訟を起こさなきゃならぬというような、そういうところまで訓練をして、それを、安保条約がございますからしょうがございません、では私は済まないと思います。そういう点について、この厚木基地の問題を含めて、大臣どうお考えになっているか。今後アメリカと交渉して時間ももっと短縮できる余地がないのか。その辺はどうなんでしょう。お返事いただいて終わりたいと思いますが。
  96. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まあ確かに厚木基地の艦載機の夜間離発着訓練につきましては、いろいろと市長その他からも陳情も受けていますし、市民の皆さんのことを思いますと、非常に何といいますか、私もよく理解ができますし、つらい思いをするわけでございますが、しかし、なかなか今すぐそれじゃ解決できるかというと、右左に解決できないという状況にあることも事実であります。しかし、政府としてはできるだけこれは解決をしていかなきゃならぬ。御承知のように、施設庁を中心としまして、関東地方及びその周辺地域を対象として、既存の飛行場について所定の着陸訓練が可能かどうかの調査であるとか、あるいは陸上飛行場の新設について適地の選定のための調査、浮体滑走路について技術的、経済的及び社会的見地から実現を検討するための資料の収集等を行って、鋭意検討をしているところでございます。まだ具体的な結論は得ていないわけでございますが、私は政府の一員として、これはもういつま でも置いておくわけにはいなかい。それで施設庁だけがやったってなかなかできるものでないんですから、早く政府全体として取り組んでこれが解決を急がなければならないということは強く感じております。そういう意味で、各方面にもそういうことは言っておることでございます。
  97. 市川正一

    ○市川正一君 膨大な米軍基地の真つただ中にある沖縄県民は、核問題について特別に重大な関心と危惧を持っております。そこで、きょうは核問題に絞ってこの際外務大臣からお伺いしたいと思います。  七月五日に公表されましたアメリカの下院の歳出委員会軍事委員会の公聴会記録によりますと、既に一九八三年度、これは八二年の十月から八三年の九月でありますが、この年度において戦艦一隻が核付トマホークを装備していることになっています。ところが、八三年度にはアメリカの戦艦はニュージャージー一隻しかありません。したがって、戦艦ニュージャージーは少なくとも核トマホーク装備可能艦になっていると見てよいと思うんですが、いかがでしょう。
  98. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 御指摘の新聞報道、あるいはその基礎になっております、アメリカの議会に提出いたしました国防省の資料によりますると、この御指摘の表は、今国防省が考えております核弾頭付トマホークの装備能力を付与する艦船の数をクラス別、それから年次別に示したものでございまして、これと現実のトマホークの搭載というものとは一応別個のものであると、そういうたぐいの資料であるというふうに私ども承知しております。
  99. 市川正一

    ○市川正一君 これについては、七月九日の本院の決算委員会での安武洋子議員の質問に対して北米局長は、照会する、調査する、こう答えておられる。調査した結果が今のとおりなのかということを確かめておきたいんですが。
  100. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) そのとおりでござます。御指摘の私からの答弁のときに安武委員に、念のためにこの点は照会中であるということを御答弁申し上げた記憶がございますが、アメリカ側に確認いたしましたところ、先ほど私が申し上げたような性質の数字である、こういう確認を得ております。
  101. 市川正一

    ○市川正一君 そうしますと、先ほど鈴木理事の質問に対する答弁も、あなたは、装備能力と現実の搭載とは別個の問題だ、こう答えられた。今も安武議員の質問に対する照会をお答えになって、少なくとも装備可能の艦船である、こう認定された、こう見ていいですね。
  102. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) いずれにしましても、御承知のように、先般国防省の発表によりましても、一部の水上艦艇については核弾頭付トマホークの運用が可能になったということをアメリカの国防省が発表しておりますし、ニュージャージーにつきまして、私具体的には承知いたしておりませんが、一応この表によれば、アメリカ側の計画としてはそういうことが考えられておると、こういうことだろうと思います。
  103. 市川正一

    ○市川正一君 私は、今その核装備がなされているかということを聞いているんじゃなしに、少なくともそういう装備能力はあるんだと、あなたさっき言ったじゃないですか鈴木理事に対して。そうでしようということを言っているんであって、そうだと言っていただけばいいんですよ。外務大臣はうんとおっしゃっているんだから、そうだと言えばいいんです。私は二十分しか時間がないんですよ。
  104. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私どもが具体的に承知しておりますのは、戦艦のニュージャージーにつきましては、これは明確に申し上げますが、通常弾頭のトマホークの装備能力というものは八三年の三月から付与されておるということを承知しております。私が申し上げましたのは、あくまでもこの表についての性格を申し上げたことでございまして、したがってニュージャージーにつきまして核弾頭付トマホークの装備能力がこの表のとおりに既に付与されているかどうかということについては私は承知しておりません。
  105. 市川正一

    ○市川正一君 外務大臣、私は単純な論理の問題として、八三年度には戦艦は一隻しかなかった。その戦艦というのはニュージャージーだ。それが核を搭載しているということを僕は聞いているんじゃないですよ。そういう能力が付与されたということを彼は言ったんだから、そういうことに論理的にはなるでしょう。大臣、そうでしょう。北米局長にはもういい、時間がもったいないから。大臣、論理的にはそういうことになるでしょう。
  106. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 技術的な問題でございますので、私から御答弁させていただきたいと思います。
  107. 市川正一

    ○市川正一君 論理の問題ですよ。
  108. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) この表に上がっております一隻の戦艦がニュージャージーであるということは、これは明瞭だろうと思います。今、現役に就役している戦艦としてはニュージャージーしかないわけですから。この表で言う戦艦一隻というのがニュージャージーである、これははっきりしておると思います。アメリカが一応議会に提出しました資料としてこういう計画であるということも、これは議会に提出された資料として確認されておりますから、それもそのとおりだろうと思います。私が確認できないと申し上げましたのは、その一隻の戦艦ニュージャージーについて、この表のとおりに、既に核弾頭付トマホークを装備する能力が付与されているかどうかという点につきましては私どもはこれは確認しておりません。
  109. 市川正一

    ○市川正一君 だから、照会しなさいということを安武議員が言ったんじゃないですか。あなたは約束してそれを照会してないんだ。  そこで前へ進みますけれども政府は、一九七四年十二月二十五日の参議院内閣委員会における外務省から表明された統一見解でありますが、ポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国軍艦の領海通過を原則的に許可しない、こういう見解は明確にされておりますが、これは間違いございませんね。
  110. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) そのとおりでございます。
  111. 市川正一

    ○市川正一君 そうしますと、先ほど公表されたアメリカの下院の歳出委員会の公聴会記録によると、少なくとも戦艦ニュージャージーは核トマホーク積載可能艦ということになっているんですよ。あなたはそれはその最後の詰めばしていないと言うけれども、論理的にはそうなんです。とすれば、そういう疑いは少なくとも持ち得るわけですから、そういう戦艦ニュージャージーがポラリス潜水艦のように常時核積載艦なのか、もしくは随時核積載艦なのかをアメリカに問い合わせることは、今確認いたしました政府の統一見解、これを貫徹するためにも当然とるべき措置であると思うんですが、外務大臣いかがでしょう。
  112. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはニュージャージーが核積載可能戦艦であったとしても、核を積んでいるか積んでいないかというのは別問題ですね。それで、この点についてアメリカに問い合わせたって、アメリカは核の有無は明らかにしないということを天下に声明しているわけですから、返事が返ってくるはずはありません。
  113. 市川正一

    ○市川正一君 私があえて一九七四年十二月の統一見解をお聞きしたのは、こういういわばポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国艦船の領海通過は許可しないということになってるんですから、じゃそれを、例えばニュージャージーが常時積んでいるのか、それともそうでなしに、いわば随時なのかということは聞いておかないとこれはぐあいが悪いんじゃないですか。
  114. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、その必要はないと思いますね。アメリカは核を積んでいる場合はアメリカとしては領海通過にしてもあるいはまた寄港にしても日本に対して事前協議を求めてくる義務があるわけですから、核を積んでいる場合は求めてくるわけですから、何もアメリカに聞く必要はない、こういうことです。
  115. 市川正一

    ○市川正一君 そうすると、仮に常時積んでいるとすればこれは日本としては認められないわけですね、そうでしょう。常時積んでいるのかどうか ということを問い合わせぬとそれはわからぬじゃないですか。  そこで伺うのですけれども先ほど指摘しましたアメリカの下院の歳出委員会の資料によりますと、ことしの五月に横須賀に寄港したロサンゼルス型の攻撃型の原潜サンフランシスコですね、これも核トマホーク積載の可能性があります。政府はこの問題についてどういう情報を得ていらっしゃるんですか。
  116. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) アメリカが公表しておりますトマホークの配備計画によれば、ロサンゼルス型の攻撃型潜水艦も艦のクラスとして配備の対象になっておるということは承知しておりますが、それ以上にロサンゼルス級に属します個々の潜水艦のどれに何を積むかというようなことについてはアメリカは発表しておりませんし、私ども承知しておりません。
  117. 市川正一

    ○市川正一君 そうすると、去年戦艦ニュージャージーは日本寄港を予定しておりました。しかし、結局来ませんでした。ことし再び寄港が日程に上るという情報はあります。今、原潜のサンフランシスコ、これは配備の対象になると、こう局長はおっしゃった。また、戦艦ニュージャージーについては先ほどやりとりしたとおりです。そうしますと、核トマホーク積載可能艦ですね、これはもう天下公知です、局長も今認めた。それを日本人港が日程に上った際には核の有無をアメリカに確認すべきではないんでしょうか、外務大臣
  118. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカはやはり核積載能力を持っているかどうかというのは関係ないわけですね、核を積んでおるかどうかが問題なんですから。核を積んでおればこれはもう安保条約によりまして事前協議の対象になるわけですから、核を積んでいる場合は必ずアメリカは日本に事前協議を求めてくるわけですから、もう日本がこれに対して確かめるという必要はない、アメリカの安保条約上の義務ですから。
  119. 市川正一

    ○市川正一君 そうしますと、これは衆議院における外務の論戦のいわばひとつのピークになってくるんですが、そうすると安保条約四条の随時協議の際に、個々の艦船の核の有無をアメリカに問い合わせるということは、これはできますね。
  120. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、四条の随時協議の場合は話し合うということはありますけれども、しかし個々の艦船の場合についてはこれをすることは考えてもおりませんし、またこれは一般的な場合のみに限るということでございます。また、個々の艦船の場合は事前協議という問題で整理されるわけですから必要はない、こういうことでございます。
  121. 市川正一

    ○市川正一君 個々の艦船というのは事前協議の六条のことを言っておるわけでしょう。私が聞いているのは四条のことを聞いているんですよ。する気があるかないかという話じゃなしに、安倍外務大臣として聞くことができるのかどうか、できるんでしょうねといって聞いているんです、第四条で。外務大臣、あんたがやるんだから。
  122. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 条約の解釈の問題だから。
  123. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 安保条約の仕組みの問題でございますので私から御答弁したいと思います。  以前、他の委員会でも御説明いたしましたように、安保条約の第六条の実施に関する交換公文の規定によりまして、あそこに掲げております三つのことについては、アメリカがそういうことを実行したいという希望を持っておりますときには、我が方に対してそれを申し出る義務があるわけです。したがいまして、その種の問題は、この交換公文のもとにおける協議の主題となることが合意されているわけでございますから、その手続によるのが安保条約の建前である、こういうことでございます。第四条の、両締約国がこの条約の実施その他のことに関連しまして随時協議をすることができると申しますのは、一般的に条約の運用に関連して、あるいは実施に関連して協議をするということがあるわけでございますけれども、今御指摘の問題につきましては、すなわち条約第六条の実施に関する交換公文の対象になっている事柄につきましては、この交換公文の規定そのものによって事前協議の主題とする、アメリカ側からそれを申し出る、こういう仕組みになっておりますから、その手続による、こういうことになります。
  124. 市川正一

    ○市川正一君 私は、第四条の随時協議という場合に、じゃ、日本の側から個々の艦船、先ほどニュージャージーのことを言いました。これが核を積んでいるのか積んでいないのかということを聞くことはできるのですかできないのですかということを聞いているんです。
  125. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ですから、何回も答えておりますように、個々の艦船の場合は、事前協議制度というのがあるんですから、アメリカはその事前協議制度で事前協議にかけなきゃならぬという、個々の艦船の場合は義務があるわけですから、それによればいいわけで、第四条によってこの問題に対応するという筋合いのものじゃない。第六条の事前協議制度によってこれは進められるべきものである、こういうことです。
  126. 市川正一

    ○市川正一君 やりとりを、六条と四条をうまくあなた方政府側は使い分けているんですよ。この問題をめぐる議論で最近のものを整理してみると、アメリカから事前協議がない以上、核の持ち込みはあり得ない、そのほおかぶり一点張りで今まできた。ところが、それなら日本側から事前協議を提起できないのはおかしいじゃないか、こういう議論が出たんですね。そうしたら、政府側は、いや、そうじゃなくて、随時協議でちゃんと三回もやっておる、こう外務大臣おっしゃったじゃないですか。ところが、この随時協議を三回もやったというのは、結局、非核三原則というのがありますよということをアピールしただけのことじゃないですか。これはおかしいんですよ。議論としては、日本の側からも問題は提起できないのかということに対して、いや、そんなことはありません、私どもはやっていますと。やっていますというのは、四条による随時協議で三回やった。その三回というのは、非核三原則がありますよということのアピールだけじゃないですか。  そうじゃなしに、今国民が一番問題にしているのは、どうして日本の方から、例えばその戦艦ニュージャージーが核を積んでいるのか積んでいないのかということを、アメリカに対して、主権国家として確かめられないのかという問題なんですよ。そこのところをひとつはっきりしてほしいんです。  繰り返して言いますけれども、私は、主権国家として個々の艦船の核の有無をアメリカに問い合わせをすることぐらいは当然できる、こういう立場で毅然として外務大臣頑張っていただきたいと思うんですが、そういう立場でないんですか。
  127. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもう極めて毅然として対処しておるわけでありまして、核の持ち込みにつきましては、日米安保条約あるいは関連規定によりまして、事前協議を経なきゃ持ち込みはできない、これは日米間で条約を結んでいるんですから、条約というのは、お互いに守り合ってこそ初めて意味があるわけで、日米間ともに遵守するということを言い合っておるわけでございます、誓い合っておるわけでございます。そうした信頼感の上に成り立っておる。それから、アメリカも、日本に非核三原則があるということはこれは理解をしているわけなんですね。ですから、そういう意味で、アメリカが核を持ち込むという場合には安保条約を守って、事前協議制度に従って協議の申し入れをしなきゃならぬ義務があるわけですから、義務ですから、日米安保条約というお互いの信頼性の立場でアメリカはこの義務を守っておる。義務を守らなきゃ条約というのは生きて動いていかないわけですから、義務を守っておる。その義務を守っている以上は核の持ち込みというのはあり得ないということであります。  同時にまた、この第四条は、これは一般的な立場での話し合い、協議をするということであって、一々の艦船についてやるということを私は言っているわけじゃないんです。これはあくまでも事前 協議制度でもって処理される事柄である、こういうふうに言っているわけですから、極めて整然としております、毅然としておる、こういうふうに思っております。
  128. 板垣正

    委員長板垣正君) 市川君、時間です。
  129. 市川正一

    ○市川正一君 はい、最後です、最後に一問だけ。  その整然たるものは詭弁の論理としてなんであって、私、最後に伺いたいのは、外務大臣も御承知のように、シュルツアメリカ国務長官が十七日の記者会見で、ニュージーランドの労働党のアメリカ核艦船拒否政策について、次のように語っております。
  130. 板垣正

    委員長板垣正君) 市川委員、簡単にやってください。
  131. 市川正一

    ○市川正一君 はい。  「核艦船や原子力推進船の比率が増えており、相互防衛のため、これらの艦船を派遣出来ないとしたら、同盟とはいったい何なのか」、こう述べておるんですね。ところが、日本政府が核艦船の日本寄港は拒否するということはもう先刻承知です。しかしながら、こういうことに対して何ら不満も言わぬということは、アメリカは、日本には核艦船は寄港させる意図はないと考えている、こういうふうに外相はお考えなのか。これは論理的にもつじつまが合わぬのですよ。ひとつこの点の御見解を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  132. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ニュージーランドが保守党、国民党が労働党へかわりまして、核政策がどういうふうに変更するのか。これは、労働党は綱領としては核積載艦の入港は認めないということを言っていますが、政権をとった今日において、果たしてその立場を貫くかどうかというのは、いわゆるANZUS条約との関係でこれから労働党政権が決めることになるわけでございますが、このANZUS条約とそれから安保条約とは違うわけで、ANZUS条約には事前協議制度というのはないわけですから、日米安保条約には事前協議制度というものがあるわけで、これはアメリカも承知の上で日米安保条約は結ばれたわけですから、おのずからそこには、核の艦船の入港というものについては、日米間の安保条約によればこれは事前協議の対象になって、その場合は日本はノーであるということはこれは内外に明らかにしておるわけで、ANZUS条約にはその事前協議がないわけですから、これはお互いの条約の義務としてこの艦船の入港というものを拒否することはできない、こういうことであろうと私は思っております。そういうふうに解釈をしております。
  133. 市川正一

    ○市川正一君 終わります。
  134. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 私はイラン・イラク戦争に関連をいたしまして若干質問をしたいと思うのですが、この三月から今日まで、あのペルシャ湾内におきまして十九隻のタンカーが攻撃を受けているわけです。幸いにして、日本の純粋な船籍を持つ日本船は被害を受けておりませんが、七月五日には、御承知のようにリベリア船籍のジャパンラインの用船ですけれども、船員は二十六人全部が日本人、これが攻撃を受けたわけです。しかも、あそこは危険水域ではないと目されるところで攻撃を受けている、こういう事態も発生をしているわけでございます。あのホルムズ海峡は一日に日本船が十二、三隻、そして多いときには三十隻も通っているわけです。だから、船員の数にすれば平均して三百名、多いときには千名近く毎日あそこを通航しているわけですから、日本の産業の生命線とも言うべきところなんですが、したがって、こういう船員のもちろん生命の安全ということも含めまして、特にイラン・イラクに太いパイプを持たれておる外務大臣に、この問題について、さらに一層安全性を確保するための御努力をお願いしたいということなんですが、この点についてまずお伺いをしておきたい。
  135. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私もイラン・イラクの戦争拡大防止のために努力をしてまいりました。それなりの成果も上がっておると思うわけでございますが、しかし戦争は依然として続いております。特に残念なのは、今御指摘がございましたように、日本の船がイランとおぼしき飛行機によって爆撃をされた。これは船上に大きな日の丸を描いておって、日本の船籍であるということがはっきりしておる。それにもかかわらず爆撃をされたということは、これほどイラン、イラクに対して友好的な姿勢を取り続けてきた私としましても非常なショックでありまして、早速イランに対しても強く抗議を申し入れたわけでございます。イランとしてはこれを調査するということでございましたが、こういうようなことがもしこれからも続くということになると、これは日本とイランとの関係にも大きなひびが入ることになるわけでございます。イランも日本に対して大きな期待を持っているだけに、この点については慎重に今後は対処していただけるものと、こういうふうに期待をいたしておるわけでございます。
  136. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 その点ひとつ外交努力をさらに積極的にお願いをしておきたいと思います。  そこで、こういう無差別とも言うべきタンカー攻撃が行われるというようにイラン・イラク戦争はなってきたわけですが、もうことしの九月にはこの戦争も四年目を迎えるわけですね。そこで、長期消耗戦とも言うべきイラン・イラク戦争は今後一体どのようになるのか。政府としてどのような見通しを持っておられるのか。その点の、感触で結構ですがお伺いをしておきたい。
  137. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 情報が入り乱れておりまして、はっきりした見通しをなかなかここで申し上げる段階ではないわけでございます。やはりイラクのカーグ島近辺に対する爆撃は依然として続いております。陸上におきましては、デクエヤル国連事務総長のあっせんによりまして、一時戦闘が停止をされておる、こういう状況にありますけれど、しかし、イランの大軍が国境に集結している、こういう情報もあるわけでございます。また、イラクもイラクなりに攻撃の準備をしておる、こういう情報等もありまして、なかなか見通しは困難ではございますけれど、しかし、各国とも相当イラン・イラク戦争の拡大防止に対しては、努力といいますか、イラン、イラク両国に対する圧力をかけております。日本もそうでありますし、また、ドイツでも今度外相もイランを訪問いたしまして、いろいろの努力を重ねておりますから、私としては、こうした危険な状況にありますが、これが拡大をされないということに期待をかけております。そういう方向に進むことを祈っておるわけでございまして、それなりにまたこれからも日本も最大の外交努力は傾けてまいる考えであります。
  138. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 このイラン・イラク紛争の解決のために、日本の果たす役割は非常に大きいと思うんです。特に長期消耗戦になった原因というのは、やはり両国に対する各国の武器供給だと思うんです。それはもう外務大臣も十分に御承知のところでございまして、そこで、私はこの秋の国連総会に大いに期待をかけているわけですが、外務大臣国連総会に出席するに当たりまして、デクエヤル事務総長に対して、各国が武器を供給するのをやめるように調整工作を続けるように、外務大臣から積極的な働きかけをやる、こういうことも報道をされておるわけでございまして、非常に期待をしているわけですが、その国連総会に前後してやっぱり先進諸国の外務大臣クラスの会合も開かれると思うんですが、そういう場も通じてどのようにこの問題についてさらに努力をされていくのか。しかし、簡単に武器の供給をやめろと言っても、それはソ連もいれば、フランスもおれば、アメリカがどう出るか、さまざま非常に難しい問題がたくさんあると思うんです。あると思いますけれども、何としても長期消耗戦になった四年を迎えるこのイラン・イラク戦争、これの終結に向けて一つのきっかけをつくる意味で、やはり日本外務大臣としての大変重要な役割を私は背負っておられると思うんですが、その辺についての考え方をお伺いしておきたい。
  139. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今おっしゃるように、イラン・イラク戦争が四年も続いております。この間に日本もいろいろ努力もしてまいりまし た。あるいはペルシャ湾の航行安全措置についても提案もしてきたわけでございますが、残念ながら戦争は依然として続いておる。そして、背景にはおっしゃるように両国に対して武器をどんどん各国から供給しているというところに戦争が続いており、あるいは拡大する余地が残されておる。ですから、やはり武器の根を断つということは、それは戦争を終結せしめる最もいい方法につながっていくと私は思います。しかし、言うはやすくして行うはかたしといいますか、現実問題としては今おっしゃるようになかなか、それではフランスがイラクに対する武器供与をやめるかあるいはソ連がやめるか、あるいはまた北朝鮮がイランに対して武器を供与している、これをやめるかということになるとそう簡単にはいかないと思いますが、しかしこれほど世界の世論も盛り上がっておりますし、そしてこれ以上拡大をしても世界で得る国はもうほとんどないわけですから、こういう状況の中で、日本が両国に対して一切武器を供与していない、そして両国に対しても経済的にいろいろと深いつながりを持っておる、そして日本がこれまで戦争の拡大防止にはいわば自由国家の中では一番先頭に立って走ってきた、努力してきたという立場から、日本としては国連あるいはまた関係各国に対して呼びかけるのは、これはもう当然じゃないか。すぐそれじゃ実るかといいますと、それぞれ各国の利害関係というものがあるでしょうから、それはそれなりに成果が上がるかどうかというのは予測できませんけれど、しかしこれは日本のある意味においては義務じゃないか、責任じゃないかと私は思っておりまして、国連当局にもあるいは関係当局にも日本立場を訴えてみたい、こういうふうに思っております。
  140. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 ひとつその点せっかくの御努力をお願いしておきたいと思います。  そこで、次の問題ですけれども、この七月十二日からインドネシアでASEANの拡大外相会議が開かれて、そこで安倍外務大臣としても日本からカンボジア問題に関しまして新たな提案を行っているわけですが、しかしこの提案ですね、余り実現性がないのではないかという批判もありましたし、けさあたりの新聞報道によりますと、ベトナム、これは恐らく正式な見解だと思うんですが、あの提案は平和を日本が金で買うような、まあこれは共産国家一流の私は非難だとは思いますけれども、そういうような反応も返ってきておる。こういうことなんですが、そこでこのことにつきまして外務大臣としては、新たなカンボジア問題に対する新提案にさまざまな反応がある現在、どのような印象といいますか、感想を持っておられますか、その点をお伺いしたい。
  141. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) カンボジア問題につきましては日本もやはり平和的な解決に何らか貢献をしなきゃならぬ、こういうことで具体的に三つの提案をいたしたわけでございます。これはASEAN外相の昨年のアピールが解決のためのどちらかというと非常に現実的な提案というふうに私は判断しましたし、それからまたベトナムもこれを拒否していない、こういうことでこの提案を実行するのが一番いいのじゃないか、提案を実行するために日本が協力をして、具体的にどういう協力をしていく、こういう立場での提案でして、私たちとしてはこれは相当な日本としての決意も持った提案であったわけでございます。ASEAN諸国は非常にこれを評価し、あるいはまたアメリカその他の参加した域外の諸国もこれを支持してくれたわけでございます。同時に、慎重を期しましてベトナムと中国に対しても提案の内容を説明いたしたわけでございまして、その評価がまだ政府間のレベルでは出てきておりません。しかし、ベトナムの新聞等ではこれに対して拒否するという報道等が出ておるので残念に思っておりますが、いずれ政府間のレベルで反応も出てくるんじゃないか、もう少し見守ってまいりたいと思うわけでございます。まあ、なかなかそう簡単にこれがいけるとは思いませんけれども日本が平和に対して積極的にアプローチするということは私は大事なことであろう、こういうふうに思っておりますし、私もやはりこうして提案をした以上は、ASEAN諸国ともつながりを持っておりますが、ベトナムとも日本は外交関係を持っておるわけですから、ベトナムとの話し合いも、これは大使館、日本の大使とベトナムの政府という話し合いだけじゃなくて、外相間にでもそういう話し合いの場というものをどこかで持ちたい、こういう考え方も実は持っておるわけであります。
  142. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 そこで具体的にお伺いをしたいんですが、一方でカンボジアの反ベトナム三派連合、これを日本としては支援しながら、一方でベトナムの撤兵を前提とした和平提案を行うというところに私は矛盾があるのではないかと。これは非常に難しい問題ですけれども、あると思うんです。そこで外務大臣としては一体どのような状況になればベトナムがカンボジアから撤兵すると考えられておるのか、その点のお考えがありましたらお伺いをしたいと思います。
  143. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもうみんな、その辺をいろいろと考え、そしていろいろと提案をしている。ASEANの外相のアピールもそういうことを一つの目標にして出されたわけでございますが、なかなかこれははっきりした結論というものが今出されるわけではない。ベトナムとASEAN側と、あるいはカンボジア三派との間の合意といいますか、コンセンサスがどこで得られるかということについてはちょっと見通しができない。見通しができないから依然として解決がつかないわけでございますが、いずれにしても基本的にはベトナム軍が撤兵をするということが私はきわめて大事であって、カンボジアにやはり自主独立政権が生まれるというのが大前提にならなきゃならぬ。そういう中でベトナムの撤兵というのが、ベトナムがどういう関与の形で撤兵するか、新しい自主独立政府の中に今のベトナム政府がどういう形で関与するかとか、そう辺のところはこれからいろいろの問題として残された交渉課題ではないだろうか、こういうふうに思っております。
  144. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 私はこの明確な見通しが余りはっきりしない段階に具体的な提案をするのは慎重にやらなきゃならぬという考えを持っておるんですが、現状におきましては、日本としてはこのカンボジア問題に対する方針としてはやはり三派連合に対する支援を強化し、そしてASEAN諸国の方針を支持すること、これ以外にはないと私は考えておるわけですが、そういう見解だけを披露しておきたいと思います。  あと時間がありませんので、もう一点だけ最後にお伺いをいたしますが、今回のこのASEANの拡大外相会議におきまして太平洋協力の問題こういうものが出ましたですが、この太平洋協力問題に対するASEAN諸国の認識はどのようなものであったのか、その辺のところを外務大臣からお伺いをいたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  145. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) カンボジア問題、ちょっと申し添えておきますが、日本姿勢もやはりASEANの外交政策を支持する、そして三派を支援していく、そしてカンボジアに自主独立政権ができることを心から期待をして、そのための努力をする、ベトナムの軍隊の撤兵を強く望むという、この基本の考えというものは、これは変わっていないということでございます。しかし、そういう中で何らか包括的な和平というものに向かっての努力をしなければならぬし、その道に対してやはり柔軟に、そういう基本は基本として努力をしていくことも日本の役割の一つであろう、こういうふうに思っておるということをつけ加えさせていただきます。  それから太平洋協力については、これはいろいろと各国で、日本でもそうですが、民間とか政府の団体でやはり新しい太平洋の時代だということで構想等が打ち上げられておりますが、そういう中で今回はインドネシアのモフタルという外相が、これは外相会議の議長でありました、そのモフタル議長が、二十一世紀に向かって自分たちとしてはこれからの世界はどうしても太平洋、アジ ア地域が中心となる可能性がある、そこで、そうした新しい太平洋の時代に対してお互いにやはり考え方というものを持ち、協力できるものがあれば協力する必要があるのじゃないか、こういう発想で実は議題として取り上げられたわけで、これに対して各国とも賛成をし、各国がそれぞれ太平洋の将来ということについて自分の国の見解を述べたわけでございます。これはしかし、述べましたけれど、ただ拡大外相会議に参加している国だけが太平洋の国ではありませんし、その他の国々も大きく皆関心を持っておるわけですから、ここで制度とか組織をつくって太平洋問題を扱うということにはなかなかいかない。そこで、お互いにこれからもこの太平洋の将来については、継続的に話し合いを進め議論を述べるということは今後ともやっていこうじゃないか、大事な問題だから。同時にまた、今のこの拡大外相会議の中でもしできることがあれば、お互いに完全なコンセンサスができたら協力し合おうじゃないかということで、実は人づくりだけがこれは参加した国々のコンセンサスとして、これから具体的に協力案件として、協力プロジェクトとして進めようということに相なったわけでございます。  私はやはり、これからの将来というものを考え、世界の将来、アジア、太平洋の将来というものを考えるときに、拡大外相会議でこうした問題を取り上げ、そして積極的に議論を進めていくということは大変いいことではないだろうか、こういうふうに思っておりまして、日本も積極的にこの議論に参加をし、今後ともこの問題に対しては日本の考えをどんどんひとつ述べてまいりたい、こういうふうに思っております。
  146. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 ちょっと要望だけ。  太平洋協力問題は、韓国もあるし中国もあるわけですから、その辺のところも十分に念頭に置きながらひとつやっていただきたい、このことを要望して終わります。
  147. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 短い時間でありますので端的に申し上げます。  喜屋武、沖縄からの告発をいたします。  外務大臣大臣が目と心を世界に向けて、世界平和に奔走しておられることを大変うれしく思います。その心を内にも向けてほしいということなんです。沖縄は陸も、海も、空も軍事優先の様相を呈しつつあることをまさかおわかりでないはずはないと私は信じております。信じておるがゆえに沖縄の基地の態様について見直す時期に来ておると思いますが、いかがでしょう。
  148. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、沖縄現状について、地元の政治家としての喜屋武さんの率直な御見解を聞いたわけでございますが、沖縄が確かにアメリカの軍事基地として大きな役割を果たしておることは、これはもう事実でございます。政府としましては、安保条約というものによって日本の平和と安全が保たれておるわけでございます。その意味において、この沖縄における米軍の存在というものが我が国の平和と安全、あるいはまた極東の平和と安全に寄与しておるという立場でございます。それはそれなりに我々としては米軍の存在というものを評価するわけでございますが、同時に、沖縄県における米軍施設・区域の密度が特に高く、その辺についていろいろと問題が起こっておる。また、その整理統合等についてかねてから現地で強い要望があるということも十分知っておるわけでございまして、現地の要望であるとか民生の安定、開発計画等には十分に配慮をするとともに、日米安保条約の目的達成との調和を図りながら、米側との協議を通じその整理統合の推進に努めてきたところでございまして、沖縄県民の理解、協力は引き続いてお願いを申し上げたい、こういうふうに存じております。
  149. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 戦後もう三十九年、復帰後十三年、いっどこで沖縄の基地に関する問題を尋ねても、はね返ってくる日本政府の声は同じなんです。皆さん、中曽根総理を初め、沖縄に基地を強化することは抑止力に役立つんだ、そうして今も大臣おっしゃった、日米安保の対応からと。また、施設庁長官はきょう見えておらないが、地位協定によって提供する義務があるから提供しておるんだと、大体この三つなんです、はね返ってくる声は。それから一歩も出ないというところに沖縄の百十四万県民の苦しみがあるんです。  次に私が大臣に尋ねたいことは、その前提を裏づける具体的な事実を通して申し上げるんです。去る五月十八日の名護市キャンプ・シュワブにおけるダンプ被弾事件は御存じかと思います。名護市長を中心に、名護市のあらゆる団体の長が集まって市民大会を開いた。そして、決議を持って市長を先頭に二十一名、政府抗議要請に来たことも御存じかと思います。  そこで、次のことを私は言いたいんです。六月一日に在日米軍司令部参謀長補佐の陸軍大佐フランク・L・デェイさんに横田基地で二時間にわたってひざ詰め談判をいたしました。その答えがこういうことなんです。あの被弾が、跳弾があって名護市民は生命の脅威を感じて抗議をしたから演習はストップさした。名護市民の要望は、危ない演習はすぐやめよ、そしてその演習場は直ちに撤去せよ、この二つでした。そこで、その大佐が私におっしゃるのに、演習をストップさせることは我々の権限でできます。あの場所が狭い場所で演習に適しないということはいろんな角度からも立証されておるんです。けれども、その場所を移すとか移さぬとかいうことについては私たちの権限ではありません。だから、ミスター喜屋武にコメントすることはできないと言ったんです。日本政府が提供したからそれを使っておるだけである、こうはっきり私に答えたんです。このことは何を意味するかということなんです。アメリカははっきりそう言っていますよ、沖縄における基地は日本政府が提供したから我々は使っておるだけであると。  そこで聞きたいことは、どういう配慮から日本政府はアメリカにあの基地を提供したのであるか、どのような配慮をしてあの基地を提供したのであるか、そのことを聞きたい。
  150. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 御承知のように、安保条約及び地位協定に基づきまして米軍のいわゆる基地、施設・区域というものを提供しておるわけでございますけれども、個々の具体的な施設・区域の提供につきましては、これは委員よく御承知のとおりに、日米地位協定に基づきます日米合同委員会の場においての日米両政府間の合意に基づいて提供されておるわけでございまして、個々の施設・区域の提供に当たりましては、やはり一方におきまして安保条約に基づいて日本に駐留しております米軍にとっての軍事的な必要性というものも考慮しつつ、他方におきましてその施設・区域というものが地元の住民の方々あるいは一般的な現地の社会経済事情というものに及ぼします影響、それから施設・区域の提供に伴って生じます政府の財政負担、そういうものを一件ごとに考慮いたしまして提供合意を行っておる、こういうことでございます。
  151. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そこでお聞きしたい。  沖縄の問題は必ず合同委員会テーブルにのせなければ事は運びませんね、日米安保の合同委員会に。そこで、そのテーブルにのせた場合の日本政府姿勢が重大であると思います。アメリカペースで提供するのか、日本政府が本当に国民の、そしてわけても沖縄県民の立場をいろいろの角度から検討して提供したのであるか、そこに問題があると思うんです。県民無視の形で提供すれば、向こうとしては提供されたから使っただけであるとはっきり言うわけなんですよ。どうですか、その点は、合同委員会における政府姿勢。これは外務大臣にもお聞きしたい。
  152. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 基地の提供につきましては、合同委員会でやはり日米合意をしなければならないわけです。それが大前提ですから、その場合に日本日本立場、アメリカはアメリカの要請というのがあって、そういうものがお互いに話し合った結果、合意に達して提供、こういうことになるわけで、日本がそうした提供をする場合に、いろいろな日本側の事情、沖縄の事情あるいは沖縄の民生、沖縄県民の立場、感情というも のも背景にあって話し合いが行われる、そして話し合いが合意される、こういうふうに私は認識をしております。
  153. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 合意を得てとおっしゃるんだが、それならば、沖縄県民の生命の脅威、現にある事実があらわれておるんですよ、そういうことも無視して合意をしたということなんですか。
  154. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、そういうことはもちろん沖縄県民を危殆に陥れるとか、危険に陥れるとか、そういうことじゃなくて、やはり前提としては沖縄県民の安全とかあるいは民生の安定とか、そういうことも十分ある程度前提として、ただしかし、安保条約というもの、地位協定というものによって基地を提供するということになっておりますから、これはしなきゃならぬ、しかし、その背景には日本としてはそういうこともいろいろと判断をし、慎重に検討して合意に達したもの、それは個々のケースにおいて合意に達するものというふうに考えております。
  155. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、観念論で責めておるのではありません。事実は何よりの真実なんですよ。起こってきたところの、もう時間がありませんから一つ一つ言いませんが、事件が起こったたびごとに被害者は総立ち、県議会も与野党含めて総立ちをしておるし、今度もそうであった。ところが、それにこたえる日本政府の誠意を疑う、姿勢を疑う。言葉は鋭いかもしれませんが、喜屋武に言わしむればアメリカに対しては極めて積極的で、国民に対しては、わけても切なる沖縄県民に対して極めて消極的である。そして、アメリカの要求に対しては極めて忠実にパイプ役を果たしておるが、国民、わけても県民の切実な要望に対してはすれ違い、こういうことなんです。一体どこの政府なのか、どこに顔を向けるべきであるのか。そういう合意は私は非常に怪しい合意であると言いたいわけなんです。本当に日本政府に国民を幸せにする、生命、財産、人権を守る義務が憲法に基づいてあるはずなんです。ならば、いかなることがあってもそれを侵してはいけないはずであるのに、安保がどうの、地位協定がどうの、抑止力にどうのと、とんでもないよそごとみたいな発言がぽんぽん出るところに告発せざるを得ないという憤りを持つんです。大臣、いかがですか。
  156. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) その安保条約がどうの、地位協定がどうのというのは、これは沖縄において日本が基地をアメリカに提供する、やはりその大義名分というのがあるということでありまして、施設等を提供する場合に当たっては、日米合同委員会で具体的なケースを取り上げてやるわけですから、そのときは地元のいわゆる民生の問題とか、あるいは地元の考え方というものに日本側としては最大限の配慮をしてやっておる、こういうふうに私は判断しております。
  157. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もっとその身になってくださいよ。その身になって、よそごとと思わないでいただきたい。一つの事件が起こりますと騒ぎます。これが処理されないうちに、また次の新しい事件がこうして連鎖反応的に起こる。これが沖縄実態ではありませんか、問題処理も終わらぬうちにまた次の危険が起こっておるという。今のキャンプ・シュワブの問題を通しても、一年に三回も四回も起こっております。これで国民を、あるいは県民を守るという、その身になって考えてもらわぬといけませんね。もっともっと本当に積極的に立ち上がってもらわなければいけない。  それじゃ一つ聞きますが、あの名護の事件の直後に、五月三十一日に日米合同委員会を持っておられますね。そこではどういうことが話し合われたんですか。
  158. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 御指摘の五月三十一日の合同委員会におきまして、アメリカ側によりまして十分な安全対策というものが講ぜられて、その内容について日米双方においてそれが確認されるまでキャンプ・シュワブにおける射撃訓練というものは再開してもらっては困るということを我が方から申し入れて、米側もそれを了承したというのが五月三十一日の合同委員会の経緯でございます。  それで、もしょろしければそれ以後のことについて申し上げたいと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。
  159. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もっとはっきり言ってください。
  160. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) そういう申し入れに基づきまして、その後米側において種々事故の再発防止につきまして検討をいたしまして、その結果、米側から一連の具体的な事故の再発防止につきましてこういう措置をとったということを言ってまいりました。  その内容を具体的に申し上げますと、主として三つございまして、一つは、射撃訓練をする場合に、その射角の制御装置をつけるということを米軍として義務づけるということが第一点でございまして、それから第二に、射撃訓練をやります場合の着弾地の中心座標というものを設定するとともに、その着弾地の範囲を明示するようにだいだい色の標識というものをそこへつくりまして、撃つ方からそれを視認できるようにするという措置が第二、それから第三に、射撃訓練を行います場合に機関銃を常に一回に一丁しか使用しないということが第三点でございます。  これらの点につきまして、防衛施設庁も含めまして米側の措置につきまして種々確認いたしました結果、アメリカ側としては誠意を持って事故の再発防止措置を講じたという認識を私どもも持ちましたので、改めてアメリカ側に対しまして、そういう措置措置として結構であるけれども、射撃訓練の際に確保しなければならない安全という問題については十分米軍の内部にその趣旨を徹底するようにということを改めて申し入れまして、米側も日本側の申し入れの趣旨を受けまして米軍の内部においてそのような指示を徹底する措置をとった、こういうふうに承知しております。
  161. 板垣正

    委員長板垣正君) 喜屋武君、時間ですので終わってください。
  162. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一点聞きますが、名護市民は、我々は標的ではないと叫んでおります。我々は標的ではないと。そしてまた、演習に安全はあり得ない。なぜかというと、最初の事件が起こった場合に、二度と再び過ちは起こしません、安全を守りますと言って、それから今度のようなのが五度でしょう。こういう事実を受けて幾ら何と言おうが信ずるはずはないんです。白々しくてむなしさを感じておるというのが沖縄県民の、そして名護市民の正直な心です。  そこで、もし今度これでも過ちがあったら場所を検討しなければいけないと長官も言っておられるようだが、事実か。
  163. 板垣正

    委員長板垣正君) 喜屋武委員、時間ですので終わってください。
  164. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 今回の米側の措置につきましては、先ほど申し上げましたように、米側としても当初から事件の発生そのものについては極めて遺憾であるという意思表示をしておりますし、今回の再発防止措置につきましては十分誠意ある措置をとったというふうに私どもも判断しておりますけれども、もちろんこの種の事故というものが今後とも頻発するというような場合には、キャンプ・シュワブそのものがそのような射撃訓練の目的として本当に適したものであるかどうかということについても、それは検討しなければならないであろうということは、先般外務大臣も御答弁申し上げているとおりでございますが、今回の措置につきましては、私ども、施設庁とも十分協議いたしましたが、これだけの措置が講じられれば今回のような遺憾な事態というものは再発しないだろうという心証は持っておる次第でございます。
  165. 板垣正

    委員長板垣正君) 喜屋武君の質問は終わります。
  166. 田英夫

    ○田英夫君 十三年前に沖縄返還をされて以来、いわゆる核抜き返還ということでありましたけれども、依然として沖縄に核があるのではないかという疑惑が日本国民の間に去らない。沖縄だけではありません、いわゆる非核三原則というものが政府のたびたびのお答えでも堅持されてい る、この御努力には敬意を表しますが、にもかかわらず核が持ち込まれているんじゃないだろうかという疑惑が国民の頭から去らない。これは一体何だろうかということを私どもも政治の立場から考えなければいけないと思うわけですね。  そこで、一つの具体的な方法として、大臣もこの前お答えになったようでありますが、安保条約の第四条の随時協議という制度を発動して重大な一つの問題が、例えばニュージャージーのような問題が出てきたときには随時協議をするというようなことをお考えになっているのかどうか確認をしておきたいと思うんです。
  167. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに核持ち込みにつきましては、政府としてははっきりしておる。これはもう事前協議があって日米間で安保条約が守られておる、そういう立場に立てば、事前協議なしに核の持ち込みはあり得ないということはしばしば申しておるとおりでありますが、おっしゃるように国民の一部でなかなか納得ができない、野党の皆さんでもどうもこれに対しては我々としては認め得ない、核はあるんじゃないか、こういう疑惑があることは事実ですね。これはやはり率直に我々としても認めなきゃならぬと思うわけであります。  しかし、政府立場からすれば、これはもう極めて明快であって、アメリカ側がその安保条約の事前協議条項というものを無視して持ち込むということはない。ですから、沖縄沖縄返還の際の約束どおり核というものも撤去されましたし、まあその当時あったかどうかはっきりしておりませんが、しかしあったとすればそれは撤去されましたし、あるいはまたその後持ち込みということはないということであります。  しかし、トマホークの装備というようなことになっていろいろとまたその疑問が出てくる。あるいは国会で大きな問題として提起される、こういうことになりますと、日米の信頼関係にもひびが入ることになりますから、私はやはり日米の信頼関係が大事だと思いますし、それを確保するためにはそうした事態が起こるということになればやはり事前協議条項は第六条によってきっちりしておりますが、四条の随時協議条項によって、日米間で個々の問題ではなくて一般的な話し合いをして、そしてこの安保条約をお互いに守り合う。あるいはまた我が国の非核三原則にも理解を示す、こういうことをお互いに確認し合うことは国民の疑問を解くためにも必要じゃないだろうか、こういう認識で申し上げておるわけであります。
  168. 田英夫

    ○田英夫君 今がその時期だとはお思いになりませんか。
  169. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今アメリカのそうした艦船が入ってくるというふうな、別に非公式あるいは公式的にも通知を受けておるわけでもありませんし、私はここでそういうことをする必要はないんじゃないかと。例えばということで今申し上げたんですが、ニュージャージーみたいな場合は、これは先ほどから問題がありましたけれども、要するに能力と実際に核を積み込んでおるかどうかは別として、世間が非常に大きな注目をするでしょうから、そういう場合には、これはやはり考えてみる必要があるかなと、こういうふうには思いますけれども、今それをやろうという考え方は持っておらないわけです。
  170. 田英夫

    ○田英夫君 日本に核を持ち込む場合は事前協議の対象になる。この根拠はいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解、第六条に伴って口頭了解と、こういうことで、だから大丈夫だということになっているわけですが、国民感情としてはなかなか信じがたい、これが現実だろうと思います。そういう中で一体どうしたらいいかということを、けんか腰でなくて与野党、政府一体になって考えなくちゃいけない時期が来ているように思えてならないんですが、ずばりお聞きして、口頭了解といういわば平つたい言葉で言えば口約束ですが、国家間の口約束というのはどの程度権威があるかわかりませんけれども、要するに平つたく言えば口約束という形になっているところによさがあるのだというような気もしないではないんです。つまりもっとはっきり言えば、それだけ疑惑があるなら、日本とアメリカの間できちんと日本には核を持ち込まないという条約を結んでしまえばこれが最も明快なんですね。そうではなくて安保条約がある。そして事前協議という制度がある。それに伴って口頭了解というものがあるけれども、そういうやり方ではなくて、きちんと条約を結んだらどうか。核持ち込みはしないという条約を結んだらどうかという考え方が一方でできると思います。この点については大臣はどうお考えですか。
  171. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、一般的に今の制度で十分じゃないか、こういうふうに思っております。特に、口頭了解、口約束だと言われますが、これは昭和五十年三月、米側によりまして再確認もされておるわけですから、日米間のやはり口頭了解といえども、はっきりした約束事になっておる、こういう理解でありますし、さらに事前協議制度というのが日米安保条約によってきっちりと制度として存在しておるわけです。そして、アメリカは核の持ち込みについては、事前協議を経なければならないという義務が課せられておるわけですから、私は今の全体的な仕組みから見まして、改めて今おっしゃるような条約というようなものをつくるまでもない、今の制度で十分クリアされている、こういうふうに認識しているわけです。
  172. 田英夫

    ○田英夫君 確かに、ここにもその日頭了解がまた文書になっているんですから、大臣の言われるような意味もよくわかるんですけれども、国民の疑惑という点もこれまた事実なんですね。  時間がありませんから、この議論はまた別の機会に譲りますけれども、きょうも午後、いわゆる国際軍縮促進議員連盟というこの役員、三木会長を中心にストックホルム国際平和研究所のベルナステッド理事長と核軍縮の問題についていろいろ話し合ったんですが、その中でやはり一つの問題提起として出てきているのは、従来の核軍縮ということについての国際条約、例えば部分的核実験停止条約とか、あるいは核拡散防止条約、まあ大きくは二つあると思いますが、いずれも米ソ主導型の条約ということが言えるんじゃないだろうか。一方は、地下実験だけに限るということは追随する後続の核保有国が水爆を持てないように制限をされてしまうという、大きなねらいはそこにあったのではないかとまあ見られるわけですね。これは米ソの核優位を保持するためということではないかと。それから、核拡散防止条約は文字どおり米ソの核優位を保持して、新しく核を持つ国がないようにしようというねらいであると。これに対して唯一の被爆国でもある日本、そして非核三原則を持っている以上は永遠に日本は核を持つことはない、非核国家であるという立場から、その非核国家の先頭に立って、核保有国に対して非核保有国には核を使わないという国際条約を、核保有国と非核保有国の間のこうした条約日本が提唱して結ぶということは一つの考え方として成り立つのじゃないだろうか、こういう気が私はするわけです。現に、中国の胡耀邦総書記あるいはソ連のチェルネンコ書記長、いずれも自分の国の側から非核保有国に対して核攻撃をすることはない、こういう意味の発言をことしに入ってからしております。現に中国は、先月開かれました日中民間人会議に私も出ましたが、中国戦略研究所の核問題の専門家が中国の核政策の重要な柱の一つとして、中国側から非核国家に核攻撃をすることはないということを発言をしておりました。となれば、問題はアメリカであるということは明らかでありますけれども、アメリカは、従来の姿勢は、その保証をするつもりはないということをまあ言っているようでありますけれども、こうした核保有国が非核保有国には核攻撃はしないという国際条約がもしできるとすれば、これは核軍縮あるいは世界の緊張緩和という意味で非常に大きな前進になるのではないか。唯一の被爆国の日本がそうしたことを提起していくということはいかがなものかというふうに思いますが、御意見を伺いたいと思います。
  173. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 核の問題はなかなか やはり難しい問題で、核保有国が攻撃しないといっても、これは実効性がなければ意味がないというふうに思います。確かにそれぞれの国が核で先制攻撃はしないということを言っておりますが、しかし、果たしてそういう実効性を確保できるかどうか。私はそれ以前に、そうした核を持っている国々がお互いに核軍縮を積極的に行って、最終的にやはり廃絶という方向に持っていくのが正しいことじゃないかと思うわけであります。  まあ軍縮会議等を見ますと、確かに今田さんがおっしゃっているような提案等も行われましていろいろ議論をされているようでございますが、なかなか結論に達していない。それは核軍縮等についての実効性といいますか、そういうものがやはりいろいろ議論として残って、そのために具体的な結論に達しないというふうに私は理解をしておるわけでございます。  まあなかなか、理想としてはわかるような気もするわけですけれども、現実問題としてはむしろ私は核を保有している国々の核軍縮というものがまず行われて、それがやはり実効性を持って段階的に行われて、そして最終的に核廃絶という方向へ向くのが当然望ましい姿ではないか、そのために日本努力をしていかなきゃならぬ。日本もまずその一段階として核実験禁止の提案をいたしておりまして、これは今までは、ただ核実験の全面禁止という理想論だけを言っておりましたが、今度は二段階に分けて、実効的な方法も加えた日本の提案をいたしておる次第であります。
  174. 田英夫

    ○田英夫君 核軍縮をどう進めたらいいかというのは、本当に今世界の政治の最大の焦点でありますし、また政治に携わる者の共通の問題でありますから、具体的にどうしたらいいかというところでなかなかいい案がない、これは私の一つの問題提起として申したわけですけれども。  次に、一つ朝鮮の問題ですけれども、北朝鮮が日朝友好議員連盟の招請した代表団の派遣を断ってきたということが報道されております。私も日朝議連の役員の一人として招請をした側でありますので、大変残念に思うわけでありますが、北朝鮮側は、報道によりますと、日本当局が代表団の人選を、人選というか人間をえり好みしているというような意味の報道がありますけれども、この点についての外務大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  175. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日朝議員連盟におかれまして、今、日朝間の大きな問題になっております、そして非常に深刻な影響を与えております民間漁業協定の中断、これを何とか再開したいということで努力されておることに対しては私も敬意を表しておるわけであります。そういう立場から北朝鮮の代表団日本に入れようということで招待状も出された、こういうふうに理解をしております。  私もやはり日朝の漁業協定、民間漁業協定が何とか解決をされて、非常に困っておる漁民の漁業再開ができることを願っておる一人でございますが、残念ながら政府はこれには介入する立場にはないわけでございます。まあ、そういう中にあって北朝鮮が議員連盟の要請に応じられない、それは政府の入国に対するいろいろコントロールに問題がある、こういうことであるというふうに報道で聞いておるわけでございますが、まあ日本政府としましては、いわゆる日朝関係、北朝鮮からの入国につきましては、やはりケースバイケースで判断をするという姿勢をずっと貫いてきておるわけでございまして、どういう形で具体的に北朝鮮から申請があるか、その申請を待って判断をするということは、これはもう変わっていないわけでございます。  同時にまた、今、日本と北朝鮮の間では、昨年のラングーン事件に引き続いての措置が依然として残っておるというのが実態でございます。したがって、大変日朝間は難しい段階にあるわけですが、私は確かに今の方向というものを変えるということは政府としても基本的に困難でございますが、やはり何か朝鮮半島の情勢緩和というものが起こって、日朝関係でもっと暖かい風が吹いてくる、民間の交流等がもっと積極的に行われて、政府としてもそういうものに対していろいろと便宜というか、何らかの対応ができるようになることを期待はいたしておりますが、残念ながら今そういう状況にないということであります。
  176. 田英夫

    ○田英夫君 もう時間がありませんが、大臣に申し上げるまでもなく、金日成主席のモスクワでの言動とか、あるいは中国に行った北朝鮮の代表団が経済特区について非常に大きな関心を示していたという事実、あるいは私自身も大分前ですが金日成主席に会ったときに、日本を含めたいわゆる西側との貿易ということについて非常に関心を持ち、同時にその準備をしてこなかったということについての反省を述べていたというようないろんなことを考えますと、今こそやはり大臣の言われたようにいいチャンスじゃないかという気がするんですが、そのきっかけが実は今度の代表団の入国問題にあるような気がしてならないわけでありまして、そこで、予想されるところでは、向こうから来る代表団の団長になるであろう人物というようなところに想定をすると、なかなか困難があるというところで非常に私どもも困惑をするわけです。今大臣のおっしゃったのは、政府姿勢としてはわかりますけれども、しかしやはり鶏と卵みたいになって政府があれじゃ困るんだというようなことになりますと糸口が開けない、こういうことになるおそれが非常に強いということをこの際申し上げておきたいと思います。  終わります。
  177. 板垣正

    委員長板垣正君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十三分散会