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1984-03-12 第101回国会 衆議院 予算委員会第六分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月十二日(月曜日)     午前九時開議  出席分科員    主査 伊藤宗一郎君       熊川 次男君    田中 龍夫君       井上 一成君    安倍 基雄君       木下敬之助君    滝沢 幸助君       瀬崎 博義君    津川 武一君    兼務 井上 普方君 兼務 兒玉 末男君    兼務 沢田  広君 兼務 関  晴正君    兼務 広瀬 秀吉君 兼務 新井 彬之君    兼務 草川 昭三君 兼務 坂口  力君    兼務 森本 晃司君 兼務 青山  丘君    兼務 小川  泰君  出席国務大臣         通商産業大臣                小此木彦三郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         通商産業大臣官         房長      福川 伸次君         通商産業大臣官         房審議官    棚橋 祐治君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業大臣官         房会計課長   山本 雅司君         通商産業省通商         政策局長    柴田 益男君         通商産業省貿易         局長      杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    石井 賢吾君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君         工業技術院長  川田 裕郎君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁長官官房審議          官       松田  泰君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君         資源エネルギー         庁公益事業部長 小川 邦夫君         特許庁長官   若杉 和夫君         中小企業庁長官 中澤 忠義君         中小企業庁指導         部長      粟屋  忠君  分科員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部景          品表示監視課長 鈴木  満君         環境庁大気保全         局大気規制課長 加藤 三郎君         環境庁水質保全         局企画課長   三本木健治君         国土庁水資源局         水資源政策課長 矢口 慶治君         大蔵省主計局主         計官      中平 幸典君         大蔵省証券局企         業財務課長   中島 公明君         厚生省環境衛生         局企画課長   岡光 序治君         厚生省環境衛生         局指導課長   瀬田 公和君         農林水産省構造         改善局農政部農          政課長     海野 研一君         林野庁林政部木         材需給対策室長 渡辺 好明君         通商産業大臣官         房審議官    井上 宣時君         労働省労働基準         局安全衛生部安          全課長     加来 利一君         建設省計画局地         域計画官    光岡  毅君         建設省住宅局住         宅精算課長   中田  亨君         自治省税務局固         定資産税課長  鶴岡 啓一君         参  考  人         (石油公団総裁)和田 敏信君         参  考  人         (石油公団理事)松村 克之君     ————————————— 分科員の異動 三月十二日  辞任         補欠選任   井上 一成君     上田 卓三君   木下敬之助君     安倍 基雄君   瀬崎 博義君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   上田 卓三君     河野  正君   安倍 基雄君     滝沢 幸助君   辻  第一君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   河野  正君     森中 守義君   滝沢 幸助君     木下敬之助君   津川武一君      瀬崎 博義君 同日  辞任         補欠選任   森中 守義君     井上 一成君   木下敬之助君     滝沢 幸助君   瀬崎 博義君     小沢 和秋君 同日  辞任         補欠選任   滝沢 幸助君     木下敬之助君   小沢 和秋君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     瀬崎 博義君 同日  第一分科員坂口力君、小川泰君、第二分科員沢  田広君、関晴正君、青山丘君、第三分科員井上  普方君、広瀬秀吉君、森本晃司君、第四分科員  兒玉末男君、草川昭三君及び第五分科員新井彬  之君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算  (通商産業省所管)      ————◇—————
  2. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算及び昭和五十九年度政府関係機関予算中、通商産業省所管について、前回に引き続き質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  3. 沢田広

    沢田分科員 おはようございます。それぞれ関係者、朝早くから御苦労さまでございます。早朝でありますが、さえたところで、また大臣のさえた回答をお願いいたします。  最初、通告はありませんけれども大臣、今円高が続いておるわけでありますが、二百二十円、二百十八円ぐらいいくかもしれぬというようないろいろうわさはありますけれども、要するに円高石油等備蓄というものは非常に容易になった情勢にある。ですから、今日政府が持っておる備蓄期間、いわゆる石油安保という言葉もありますけれども、大体どの程度備蓄政府としては将来、というか向こう一年ぐらいの先を展望しているのか、あるいは来年あたりはどのくらい、将来的にはどのような考え方通産省はおられるのか。もし何だったら、次にいってからでも、後でも結構ですが。
  4. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 石油備蓄、もちろん国家目標としての三千万キロリットルという旗を掲げた以上、これを容易に引きおろすことができないということは、我が国の資源の少なさ等を考えれば、これは私ども考え方として基本的なものでございます。しからば幾日備蓄するかということになれば、これは民間、国家備蓄合わせて現在百二十日強はあるわけでございますが、一方においてIEAを中心とした基準、そして国際的な協力ということを推進していくためには、やはり百七十日前後ということが目標であると考えます。
  5. 沢田広

    沢田分科員 実は、山中さんが大臣になっておられたときに、去年ですか円高によって非常に利益を得た、石油業界あるいは電力等においては特にその面は強い、だから一般消費者還元すべきであるという提案をいたしました。山中通産大臣はそのときに、還元すると、こう言って、その後かわられまして、その後やめる、こういうことになって、今日の段階では、大臣も答弁としては今のところ還元はやめるというか留保する、こういう話をされておりました。ただ私は、お金で返すという方法と施設で返すという方法があると思うのです。しかし、これを全然返さないという発想も、これもおかしいと思うのですね。ですから、たとえばケーブルですね。電柱をなくして地下にしていく、ガス、水道を含めてケーブル化をする、都市美観もよくなるし、いわゆる大気の汚染を防止する上にも役立つし、街路樹もさらに大きく伸ばすことも可能である。いろいろな意味においてケーブル化が、これからの日本一つの大きな投資というか、一つ都市形態をなす基本になるのじゃないかというふうに思っている一人なんです。ですから、国民還元するという道の一つとしては、台風になればあっちで切れた、電話線が切れたと大騒ぎしなくても済みますし、そういう意味においての還元方式というものもあるのだということを含めまして、やはり円高による利益国民土地基盤あるいは生活基盤、そういうものに還元をしていくということもあるのじゃないかというふうに思うのであります。大臣、その点全然だめだ、問答無用だというのではなしに、形を変えて、料金を据え置くということも一つでしょうけれども、それはバランスをとる中で、そういうものへの投資というものも考えていくべきではないか、こういうふうに思うのでありますが、いかがでしょう。
  6. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 御質問の趣旨は二つあると思うのでございますが、まず第一の価格を下げるというような問題につきましては、幅がどのぐらいになるか、あるいは期間がどのぐらいになるかということは容易に判断が下せませんけれども、現在程度円高あるいは現在のような十日ないし二週間ぐらいの期間等を考えれば、まだまだいろいろな意味でそのような手段をとるということは早いのではないかという考え方でございます。  二番目の委員のおっしゃることは、まことに日本じゅう都市共同溝ですか、そういうものによって都市美観あるいはいろいろな意味の災害を防ぐことは本当によろしいことでございまして、もしもこのような状態がもっと大幅な問題となり、期間も長いというようなことになれば、そういう事業に着手するいいチャンスかとも思いますけれども、一面非常に難しいところもあることは御承知のとおりでございます。
  7. 沢田広

    沢田分科員 本論に入りますが、実は大沢商会倒産というのは、私にとってみると異常な現象だというふうに見えるのであります。私自身大蔵に長かったせいもありますけれども常識外倒産である。その一つの特徴は、メーンバンクを持っていないから倒産をしたという言い方がされております。それからもう一つ、私は見ると、まだ相当やる気ならばやれる、あるいは肉を落とし手を切るというようなことになれば可能性はあるんだろうと思うのです。一千百億の負債だというのですが、総資産総額は常識的に言えば八百二十二億と、これは前年度の指標で言われておる。大体この程度の借金の割合というのは通常の企業ならば普通状態としてあり得るわけですね。ですから、大沢商会のこの倒産意味するものは、通産大臣景気は回復したと言いながら回復してない一面を持っておるというのか、言うならメーンバンクを持たない日本資本主義社会形態というものが、要すれば紋次郎じゃないがあっちこっちふらふらして生命保険か何かの借り入ればかりでやっておるという、しにせ一つの宿命的な末路を象徴するのか、内容を分析しますと非常に中身が深い、こういうふうに判断をするわけで、マミヤも含めて関係者の心痛は大変なものだと思うのであります。しかも、合計すると四十一ぐらいの企業関係するようでありますから、その対策について、まず今言った今回の原因というものはどういうふうに見ているのか。  それから私の言う、これは大蔵にも来ていただいておりますけれども、やや見込み倒産という可能性もあるような気もするのであります。そういうことに対する通産行政としてのあり方、もちろん通産省と御相談されてのことだろうと思うのでありますが、言うなら私腹を肥やして自分だけは安穏に逃れながら、若干のえさはまいておいて、ハゲタカに寄ってたかって食べさせながら自分だけは別にという、そういう人ではないだろうと思いますけれども、形としてはどうもそんな格好になる、嘆かわしい、こういうふうに思うのでありますが、ひとつそれぞれの立場からお答えをいただきたいと思います。
  8. 志賀学

    志賀(学)政府委員 ただいま先生からいろいろお話がございました。先生十分御案内でございますけれども大沢商会と申しますのは一部上場会社でございまして、二月二十九日午前、会社更生法に基づきます会社更生の申し立てを行いまして、事実上の倒産に至ったわけでございます。私ども承知しているところでは、負債総額は六百二億円、うち金融負債が四百七十四億円、一般負債が百二十二億円というふうに承知をいたしております。  大沢商会がなぜ倒産に至ったかという点でございますけれども、私どもが一応承知しておりますのは、大沢商会は従来からいろいろな有名ブランド商品などの輸出入を行ってきたわけでございまして、そういったブランド志向の変化への対応がおくれたということ、それからプロ用大判カメラ海外への展開を過大に行った、こういったことから経営状況が悪化したというふうに理解をいたしております。  先生お尋ねの、日本経済が全般的にまだ不況から脱していない、そういう影響なのか、あるいはメーンバンクを持たない、そういったことから来ているものなのかということでございますけれども、恐らく、私その辺の事情をどう考えているかということにつきまして明確なことはお答えいたしかねますけれども、いずれにいたしましても、何がしか経営者としての経営考え方、方針といったようなものも当然のことながら必ず影響はしているというふうに存じております。  いずれにいたしましても、通産省といたしましては、大沢商会倒産、その余波によりますマミヤ光機倒産ということにつきまして、その原因はどこにあれ、関連中小企業に対します連鎖倒産、これは何としてでも防いでいかなければいけない、その辺にポイントを合わせまして、現在中小企業庁中心にいたしまして対応を検討しておる、こういう段階でございます。
  9. 沢田広

  10. 中島公明

    中島説明員 お答え申し上げます。  先生承知のとおり、私ども証券局の方では、有価証券報告書つまり企業財務内容開示制度というものを所掌しております。具体的に申し上げますと、上場会社その他一定の会社から企業財務内容について開示を求めまして、投資判断のための材料を提供してもらう、そういう制度を所掌しておるわけでございまして、私ども行政立場と申しますのは、そういった観点から企業財務内容が適切に表示されているかどうか、そういう事務を所掌しているわけでございます。  ただいまの御質問は、倒産見込み倒産ではないかというお尋ねでございますけれども、私ども行政立場はそういうことでございまして、現在企業財務内容が適正に表示されているかどうかといったような点につきましては、担当の公認会計士の方に、適切に過去の財務内容開示されているかどうかといったような点を過去の監査内容を十分念査するようにということで指示しておりますけれども企業倒産そのものを私ども行政立場として取り扱っているわけではございませんし、倒産に至った事情とか背景といったものを調査する立場にも直接にはございませんので、ただいまの御質問には私ども立場からちょっとお答えいたしかねますので、御了承いただきたいと思います。
  11. 沢田広

    沢田分科員 常識的にこの程度の、例えば五十八年六月決算で三億円黒字がある。連結決算をして十三億円の赤字がある。五十八年六月のときには六百九十億くらいの短期の借財を持っておった。五十八年六月の段階においてはこういう状況になっておる。さっきの数字、千百億の中身短期関連子会社連結決算でいきますから四百億を加えて物を言っているわけでありますが、この八百三十二億ぐらいの総資産を持っている中で、事実上十三億、五十八年六月段階において十三億くらいの赤字であったものが、ここへ来て急になったというのには、これは異常な現象だと私は思う。それはあるいは倒産するために金を借りてしまって倒産したということを言っては失礼ですが、そういうことも考えられなくはない。だから見込み倒産だと私は言ったので、やろうと思えばここで努力すれば再起する可能性はあったのじゃないか。それで相当の資産もまだ残っている段階で、海外の宝石だとか時計だとか十三社あるそうでありますけれども、その分のしわ寄せを受けた。マミヤにしても二十一億なんですね。総資産は百四十九億で、大沢商会が三〇%の株を持って、富士銀行、都民銀行という、バンクはそういう形になっている。あとは生命保険だとか何かが持っておる。  これは通産大臣にも、もう一つ別立場で聞くのですが、私も生命保険会社関係企業の株をどの程度保有しているかというのを全部調べてみたのです。大蔵で後でやろうと思って調べてみた。これは極めて保有高が高い。千百社の中を大体調べてみたのでありますが、いわゆる生命保険の持っておる株の保有高というものは極めて高い。では、それがどういう役割を果たすのだろうかということを若干考えてみるのでありますが、そういうようなことを見ると、こういうときには何にも役に立たない。自分の財産ですから、さっささっさと持っていってしまう。そういう形で、結果的には一種の資本主義社会の新しい、いわゆる株の公開制度というものを持ちながら、一般大衆投資家というものに支えられていく、そういう基盤というものが極めて薄いという、持ちつ持たれつといいますか、もたれ合いといいますか、そういう構造的なものを持っているのでありまして、これはどうしてもこの倒産説得性に欠けるというふうに私は思う。大沢さんも思い切って自分の私財をなげうってでも会社を立て直すというような気概というのか、疲れちゃったのか、くたびれちゃったのか、嫌になっちゃったのかわかりませんけれども、どうも途中で投げ出したといった印象の方が強いのであります。  きょうはここで回答をこれ以上求めることは困難だと思うのでありますが、そういう点の疑問を晴らしていくという努力通産省の方では関係各省と相談をしながら、社会的に与える影響は大きいのでありますし、従業員は不安に駆られているわけでありますから、そういう立場で正しい評価というものをやはりしてもらう。私の言っていることが間違いであるかどうか、そのことは別問題であります。私もこれを押しつけようなんという気持ちはありません。しかしその真実は、やはりこういうものをはやらしてはいかぬということが一つあると思うのですね、行政として。こういうものが一つあることによって、従業員も不安になるし、あるいはメーンバンクを持たないいわゆるしにせの哀れさというものも一つ出てくるし、そういうようないろいろな被害、弊害を同時に発生させる。  時間がありませんから、そういうことを注意しながらひとつ通産行政としては扱ってもらいたい。一般行政扱い方として、もう少し手の打ち方があったのではないかという気がするのですよ。これは後で大沢さんの資産その他も調べてみますけれども、大体今までの倒産された会社社長さんはその後極めて優雅ですよ。第二会社をつくって、資産を持ちながら極めて優雅にやっている。路頭に迷った者は従業員だけであった。これはいろんな会社倒産の結果をごらんになっていただけばわかるのであります。そういうことをしてはいかぬ。そういうものをつくらしてはいかぬ。やはり最大限の努力をする。痛みは従業員社長もお互いに分け合う。行革じゃありませんけれども、そういう気構えがやはり必要なんじゃないかというふうに思うのであります。通産行政として扱っておられる立場から、ひとつ内容をもう少し明確化する。私は、偽装倒産とまではいきませんけれども見かけ倒産、こういう表現を使ったのでありますが、ややそのにおいが強い、そういうふうな気がするわけでありまして、十分に監査とその指導をやっていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  12. 志賀学

    志賀(学)政府委員 ただいま先生から、経営者としてのモラルの問題をおっしゃられました。私どもといたしましても、経営者として当然守るべきモラルというものはあるというふうに思っております。ただ、いずれにいたしましても、今回の大沢商会倒産計画倒産であるかどうかということにつきましては、これはなかなかいろいろな見方があり得ると思っているわけでございまして、にわかには判断いたしかねるというふうに思います。いずれにいたしましても、関係当局判断というものにもゆだねていかなければならないのではないかというふうに思います。いずれにいたしましても、ともあれ先ほども申し上げましたように、中小企業に対する連鎖倒産の波及というものは防いでいくということを当面の第一のポイントとして施策をやってまいりたいというふうに思っております。
  13. 沢田広

    沢田分科員 大臣にだけあと要望しておきますが、こういうのが一つ出ますと、関係でも四十幾つになりますね、十、二十、三十、四十一ぐらいの会社になって、それがこうなりますと、それで退職金ももらえないでやめていく従業員が出ますと、一年も一年半も闘いが続くわけですね。その闘いが続くということは、世の中の景気の足を引っ張っていくという、物すごいまた逆効果をもたらすのですよ。だから政府が主張している方向とは逆行していく原因一つつくるし、非常に目立つ。どの企業もこういう不安感を、今度は一般国民は持っていく。景気がいいなと思うと、五十八年六月まではやっていたのが、ぱかっと半年もたたないうちに、八百三十億の総資産がありながら千百億で倒産してしまう。危なっかしくて株なんか買えないし、危なっかしくて見ていられなくなる。だから大臣が、幾ら景気がよくなった、景気がよくなった、こう言ったって、これはほんまはそうじゃないな、こういうふうに国民は察するだろうと思うのです。十分そういう点の功罪を、こういうマイナス面をよくお考えの上で対応にひとつ万全を期していただきたい。これはお願いしておきます。
  14. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 私自身、こういう商売ではかなり苦労した方でございますし、そういう例は幾らでも知っております。しかし、その大沢商会の場合、数字の裏にある事情も簡単に予測することはできませんし、また、その予測に基づいて私がこの場でとやこう言うわけはございません。問題は、大沢商会の下請として入っていた中小企業業者、あるいは大沢商会一辺倒で入っていた中小企業業者、そういうものをどうやって助けてあげるかということが我々の中心的な考え方でございまして、この面におきましては、中小企業を救うためにも対策努力してまいりたいと思います。
  15. 沢田広

    沢田分科員 割賦販売法の問題、審議会の答申が出たようでありますが、簡単に結論を言いますと、裁判所の差し押さえ命令でも給料の二五%を超えることはならぬというのが現行法なんであります。これから、これだけカードががんがんふえて、幾らでも売らんかなという形で割賦販売がされる。しまいには、この間の警察官じゃないけれども給料四十万円もらっていて、持って帰るのは九万円だとかということで、サラ金でどんどん借りたという話もあるくらい。しかも、この割賦販売の金利も高過ぎる。延滞金ということになりますか、そういうものも極めて高過ぎる。  提案として考えられるのは、一般国民にそういうことを法律なり行政指導で縛るのが、法律で縛ることがいいことかどうかわかりませんけれども、いわゆる身のほどを知って買わなければいかぬということなんであります。要すれば、自分給料を上回るような品物を割賦販売で買って、給料を今度サラ金で借りて割賦販売料金を払うということは、売らんかなという——景気を大切に、通産省としての気持ちはわかるけれども、それはやはり角を矯めて牛を殺すことになる。だから、ある一定の限界というものを行政指導の中に求めていく必要があるのじゃないか。どうしても求められないというならば、サラ金と同じように法規制をさらに厳しくしていかなければならぬ、こういうような必要性が生まれてくるわけであります。  先般、「借金地獄 より陰湿に サラ金規制法四カ月」ということで、「信販悪用や「解決屋」」こういうような新聞記事も出ておりましたが、そういうような形において、これからつくられる法律の中で、いわゆる借り過ぎ、あるいは借りた格好にしてその金だけ使っていくとか、あるいはサラ金の返済に充てるとか、しかしまた利息制限法がありますから、一方では大変高い金利をそれまで目いっぱい延滞金につけておる、こういう業者もいる。というようなことで、サラ金と似たり寄ったりにだんだんなりかけてきている。こういうことは望ましいことではない。信販という信販は信用の「信」じゃなくて甚だしく心配する「心販」になってしまうのであって、そういうことをやったのでは通産行政も泣くようなことになるのだろうと思うのであります。  そういう意味において、時間がありませんが、これからつくる法律かもしれませんけれども、現在からひとつこれの、若干サラ金業者まがいの業者の悪質なものを是正するような方向で対処をしてもらいたい、こういうふうに思うのでありますが、いかがですか。
  16. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 先生御指摘のように、最近、割賦販売は大きく伸びております。割賦販売法、これは昭和三十六年に制定いたしまして、四十七年に大幅改正をいたしておりますけれども、最近その伸びが大きいだけに、消費者トラブルがいろいろ起きていることも事実でございます。  通産省では、先ほど先生御指摘のように、産業構造審議会消費経済部会におきまして審議をしていただきました。先月その答申を得たところでございます。その答申に基づきまして、消費者保護を一段と図るために、現在割賦販売法の改正を進めているところでございます。  その内容につきましては現在いろいろ検討中でございまして、法制局等とも折衝をしているところでございますけれども、お説のような過剰与信の防止、借り手が借り過ぎないように貸し手の方も考えるというようなことにつきましても何らかの対応を行うべく検討対象としているところでございます。割賦販売が大きく伸びて国民生活の中でも大きな地位を占めているアメリカにおきましても、こういった消費者保護というものを法律等々によって行うという基盤、そういった基盤ができ上がることによって大きく伸びている。こういう実績が外国でもございますので、私ども消費者保護ということを中心にして、これから割賦販売というものについて対処をいたしていく所存でございます。
  17. 沢田広

    沢田分科員 もう時間がありませんから、今言ったような消費者保護の中身として、そういう悪用のない規制措置を省令の中に入れるか、細かい点は省令で結構ですが、そういうことで規制ができること。それから国民に、中には悪いのもいますけれども、悪い者を相手にして法律をつくるという意味じゃありませんけれども、いわゆる正常な割賦販売というものが定着するような方向で、つぶれていくような方向じゃなくて定着するような方向で整理をしていく。だから今言ったように、差し押さえだって二五%で切っているのですから、半分以上にわたるような、毎月給料が半分減ってしまうような異常な販売をするようなことは十分避けていくという配慮が必要だということをぜひひとつ中へ含めていただくことをお願いして、私の質問は一分前ぐらいでありますけれども終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  18. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、広瀬秀吉君。
  19. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 きょうは、最初、ムーンライト計画の仕事が、最末端の下請、孫請というようなところに、その作業が回されて、それを集中的に仕事をした個人業者が健康を害して仕事ができなくなった。この仕事をやっているとおまえさんは命の保証がないぞ、住居も全部引き払って仕事をやめなさい、そういう医者の診断を受けざるを得ないという。それにもかかわらず、そういう診断をされて、今何も仕事ができなくなって、そして引っ越しもして、無職の状態に陥って生活にも事を欠く、しかも健康はどんどん害されて、今もなお非常に複雑な健康被害を多面的に受けている、そういう状況がありまして、こういう場合に、一体そういう人たちはどういう方法によって救われる可能性があるのだろうかという、非常に個別の問題ではあるけれども、ほかにもこういう例がかなりあるのじゃなかろうか。そうでなくても、非常に力の弱い零細個人企業というようなものが、親企業なり、この場合にはムーンライト計画は国家的プロジェクトである、その末端の仕事をする者がそういうことになって果たしていいんだろうか、それに対する救済措置は一体何があるんだろうか、こういう非常に深刻な疑問と問題点をひっ提げて質問をしたいと思うのであります。  ムーンライト計画というのはどういう計画であるか、これを時間がありませんから簡潔に、そしてその開発、これはまあ省エネの関係でできた計画だと聞いておるのですが、その技術開発というような問題で十四社ばかりが技術開発の組合をつくっておられる、そこに三菱重工が入っておられるかどうか。そして三菱重工はその仕事を三菱製鋼に出しているのかどうか。その事実関係をお伺いしたい。まずそこから入りたいと思います。
  20. 川田裕郎

    ○川田政府委員 お答え申し上げます。  まず、ただいま御質問のムーンライト計画でございますけれども、これは先生お話しのとおり、我が国の省エネルギー技術を開発するということで進めておるものでございます。特に、ただいま先生御指摘になりました点は、高効率ガスタービン関係一つの研究プロジェクトに入っておりまして、ただいま御指摘のように、この関係の技術開発の一部を担当しております中に三菱重工が入っております。  以上でございます。
  21. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 三菱重工からその仕事の一部分が三菱製鋼という会社に委託されるか、あるいは下請であるのか、その辺のところはわかりませんが、そういう関係というものを調べていただいておると思うのですが、その点明らかにしてくださ
  22. 川田裕郎

    ○川田政府委員 お答え申し上げます。  三菱重工から、先ほど申し上げました高効率ガスタービン関係のタービンの翼がございますが、それの鋳物の関係の一部を三菱製鋼に外注をいたしておるということでございます。
  23. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 それだけ確認しておけばいいのであります。  それで、その三菱製鋼は、ここで今私が問題にしているのは、具体的に名前を率直に出せば、今市という市が栃木県にあるわけでありますが、日光のすぐ手前であります。そこに個人事業として大武組というのが、責任者は大武攻というのですが、そういう業者が、奥さんと一緒に二人で金属研磨の仕事をやっていた。前には鉄骨組み立て等をやっておった業者でありますが、それだけではなかなか経営がうまくいかぬというので、そういう金属研磨の方もやるようになった。労災の方は、これは特例加入、事業主であっても労災保険に入れる、そういう特例加入をしておった。こういうことなんですが、五十五年の十月ないし十一月ぐらいから、最初は堀江工業という宇都宮にある三菱製鋼の下請会社、そこを通じて、そこが一応名目的に下請をするということで、そこへおりてきたものは全部大武組に行く、こういうことでありまして、ここにその検修報告書というのが、ずっと一連のものが全部つづってあるわけであります。  これは五十六年の六月から五十七年の八月に至る一年ちょっとのあれがつづってあるのです。ここにこう真ん中を折ってあるのですが、これぐらいですから大体六割ぐらいはこのところで仕事をしておった。今、技術院の川田院長がおっしゃられたような三菱製鋼から来たこのプロジェクトの中の、多分、超高温耐熱部品の研究開発ということがあるのですが、そのガスタービンの静翼ゲート、こう製品の上では言っているようですが、それを、私ここに折り込みをしてみたのですが、これだけやっているわけですね。そのほかにも何か三菱製鋼の戦車のキャタピラを研磨したり、ばり取りをやったりというようないろいろなことをやっているようですが、これが主力と言ってもいいくらいの仕事量であったということなんですね。  それで非常に集中的に、朝持ってきて夜には納品せよというような例が多い。あるいは翌日納品せよ、こういうのが非常に多かったということなんです。その仕事が始まった十一月から十二月に非常に集中したというようなことで、一月から二月にかけて発病して、もうどうにも仕事ができないということで、その間はほとんど休止の状況で休んでいた。一月、二月休んで、三月からまたこの仕事が始まった。そして一年半ぐらいたったら、もうどうにもならなくなって、廃業せざるを得ない。医者のところへ行きましたら、まず宇都宮の国立病院に行って診断を受けたら、珪肺労災病院に行きなさい、栃木県に珪肺労災病院があるわけです。金属粉じんというようなことで、じん肺かもしれぬということで、そちらに行った。そうしたら、もう今の仕事を続けていると、おまえさん。仕事が危ないよ、今の保証はできないよ、こう言われた。それで個人事業ですから、二階建ての工場兼住宅、下がずっと工場になっておる。そして階段があって二階へ上がると、二階には子供が二人、お嬢さんが二人いるのですが、そのまま住まいになっている。こういう状況だということで、仕事ができなくなってしまう。そして仕事ができなくなれば、もう何の保証もないわけです。それで労災にも特例加入で入っておったんだから、労災何とか適用してもらえぬかと言ったけれども、これはなかなか因果関係というか、職業によって引き起こされた病気であるかどうかという証明が的確になされていない。まあじん肺であるという認定は行われたけれども、じん肺には御承知のように一等から四等まである、その間に三等級のところはイ、ロと分かれておるというようなことで、一等級だから、これはまだ療養の給付も何もないという。こういう状況で何の補償もない。たまたま国民健康保険に入っているから国民健康保険で自己負担分の三割を払いながらあっちこっちで診療をしてもらったけれども、まだそういう労災補償の適用ということにもなっていないということ。その後、家も放棄しないと、非常にもう家じゅうが金属粉で埋まっているようなところに住んでいちゃいかぬと医者からも厳重に注意されたものですから、恐ろしくてとても住めないということで、最近宇都宮の方に居を移しまして、何とか借りて住まいをしておる、そういう状況なんですね。これに対して労災適用の可能性というものはさらにまた追求すべき一つの問題だと思うのです。  もう一つは、やはり企業責任ということで、きょう中小企業庁からも来ておられると思うのですが、親企業がそういう有害物質を含んでおるかどうか、これは私も素人でありますが、いろんなところの分析なども金属粉から分析したものがございます。そういう中には、これはもう積極的に放射能があったりなんかということで明確に有害物質であると指定されているものはなかなかないようでありますが、クロムであるとかマンガンであるとか、その他ストロンチウムであるとかコバルトであるとかというような、素人が考えても、おなかの中に入って体内に入って有害だというものに指定されてないにしても、いいことはない、少なくともいいはずはないというものを多量に吸い込んでいる、そういうようなところからいろんな症状が出ておるとするならば、そういうものを何にも注意をしないで出す企業責任というのは一体どうなのかということが一つであります。その辺のところは、何か親企業としての責任の問題というようなものについて通産省としてどういうお考えに立っておられるのか、まずお聞きしたい。
  24. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 親企業と下請の関係は非常に重要な関係でございますので、通産省といたしましても、下請中小企業振興法という法律がございますけれども、その振興法に基づきまして振興基準というものを定めております。その中におきまして、安全公害問題につきましては、下請事業者及び親事業者は、事業の運営に当たり、公害の防止及び安全衛生の確保に十分配慮するという基準を決めておりまして、親企業も下請企業に対して要請がある場合には技術の指導等々をすることになっておりますし、下請企業者としては、下請企業自身が安全公害、安全衛生問題につきましても十分配慮するというふうな基準が定められておるわけでございますけれども中小企業庁といたしましても、安全衛生問題の重要性にかんがみまして、下請振興協会等を通じまして十分この趣旨が親企業者あるいは下請企業者に徹底するようにしてまいりたいと思っております。
  25. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 そういう点で、明確に下請の際に、最初この堀江工業という中間を通してきたけれども、それは名ばかりであって、直接その本人、大武君が三菱製鋼に出向いてその品物を自分の工場に持ってきて、書類で会計の整理をするというような場合には一応堀江工業という名目になるけれども、その間でもそういう状態で仕事をやっておった。  そういう関係にあることを承知しながら、この金属を研磨する際にはもっと防じんマスクをつけてやりなさいとか、そういうようなこと、これは企業主あるいは事業主の責任である。それだけ強調されれば、それもまたやむを得ないことかもしれないけれども、やはりそういう仕事を出すという場合に、こういう点注意をしてくれというようなことが本来親企業としては要請されてしかるべきなんです。そういうものを何もしなかった。それで、この静翼ゲート研磨の場合なんかでも、あるいはこれは非常に高い金属なんだから注意してやってくれということは言うようですけれども、それ以外の注意を受けたことはないという、そういうことがそのまま許されていいのかどうか。そして、その結果がそういうことになった。その仕事のほかの仕事をやっていないんですから、その仕事の結果こういうことになったということは、少なくとも客観的に常識的には証明がつくわけなんですが、医師が直接その金属の構成物質が有害物質を含んでいるかどうかという専門的な立場になると、因果関係を立証するということは今の医師もなかなかよう診断書を書けないという難しさがある。そういう面があるのですけれども、一応親企業として下請企業に対して、下請振興法の精神というものは、これはやはりもっと強くあってしかるべきだ。そういう点で、いわゆる義務懈怠とまでは言わないにしても、親企業の姿勢として望ましいことではなかったと思うのですが、そういう点について親企業がどの程度の責任を負うべきものなのかどうか、その辺のところを端的にひとつ……。
  26. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 先生御指摘の本件の具体的な内容については私、十分承知しておりません。しかし、一般的な親企業と下請企業者との関係という問題につきましては、先ほど触れました振興基準の中におきましても、「親事業者は、下請事業者の要請に応じ、下請事業者の設備の近代化」等々ありますけれども、これらの問題につきまして「指導を実施する等の協力を行なうものとする。」という規定がございまして、親事業者は親事業者としての立場から、下請事業者が要請する場合には必要な協力を行うということが定められております。したがいまして、親事業者としては、それぞれの立場からその技術問題等につきましても下請事業者に協力するということが決められているわけでございます。
  27. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 そういう場合に、今のお答えはお答えとしてお聞きいたしておきますが、親企業のところに大武組が行って、こういう場合に何とかしてくれませんか、何とかしてくださいということを言いましたら、あなたがその因果関係を証明すればそれはしないでもないよということを言われた。どうやって証明するか。ここにいろんなところの、島津製作所とかあるいは県の公害研究所であるとか、あるいはその他の関東労災病院あたりでも分析法が、金属粉がみんなドラム缶に入れてとってあるものですから、それを全部検査してもらったところによると、いろんな我々から見れば有害物質と思われるそういうものも含んでいる。分析法がみんなここにあるわけですけれども、これを専門家が見たら、これを多量に少なくとも一年以上、二年近くも吸っておったらそういうことになるだろうというようなことができるはずだろうと思うのだが、そういうものを一体どこが見て判定をして、これは一年以上もこれで、もちろん若干の、粉じんを余り吸ってはいかぬというのでタオルでやっておったけれども、そのうち、どうもおかしいからというので、ちゃんと防じんマスクもつけたというのだけれども、それでも居も同じですからね、仕事をやっているときだけじゃなくて、ずっとそこに二十四時間いるわけですから。そういう点も、一体そういう事業場が、ある程度疑いのある物質を含んでいる、そういう重要な仕事を父ちゃん母ちゃん差し向かいで二人でやっているようなところが、安全性の確保できる工場であろうか、作業場であろうかというようなこと。そういう力のないところだから工賃も言うとおりにやってくれるだろうというようなことだけでやっておるとしか思われない。そういう点では弱みにつけ込んでというか、そういうことすら疑わしめるような形でそういう仕事をずっとさせている。ほかには、これは余りやっていないようです。自分の宇都宮の三菱製鋼の工場では少しづつ大事にやらせているようですね。自分のところの直属の労働者にはほんの少しやらせる。集中的に大量的に処理をする、研磨をするというのは、その下請に持っていく。ほかにもやってない。特にムーンライト計画の部分については、ここに集中して発注しているのですね。ですから、ほかにそういう症状が出ておる人がありますかというと、その証明もなかなかつかない。一つだけその仕事の一部をやったというのがあったのだけれども、それもおかしくなって今通院中であるということは一つは立証されるのだけれども、その辺の立証というのは非常に難しい。そこらのところで企業責任をもっと考えて指導していかなければ零細企業は救われない点があるのじゃないかと私は思うわけです。それは後で答えてください。  それから、工業技術院の方にお伺いをするわけです。ムーンライト計画は国家的な仕事、プロジェクトである。それで、先ほど言ったような関係で、三菱製鋼まで行くということまでは確認をされたわけですが、それから先が今私が問題にしていることなんです。この間課長を呼んで聞きましたら、大変遠い末端まではどうも手が届きかねますという率直な御意見があったのだけれども、なるほど実態はそうであろう。しかし、非常に重要な国家プロジェクトの末端まで、どういう形でそういう重要な仕事が、そしてまた金属の素材の中にも多量に吸い込めば有害であろうと思われるような重金属などが含まれるというような場合に、国の責任も少しは感じてもらわなければならぬのじゃないか、こういう面を常識的に私ども思うわけです。  このことは技術院長と同時に通産大臣の御意見もひとつ伺って、こういう場合に国も幾らかそういう意味ではかんでいる。三菱重工までのところ、その下ぐらいのところまではまあまあわかるけれども、それから先は知ったこっちゃないという態度は、これは国の態度としてはおかしいのじゃないかと思うので、三人のお答えをいただきたい。
  28. 川田裕郎

    ○川田政府委員 ただいま先生御指摘の点でございますが、私どもといたしましては、末端の企業までの管理をするというのは、非常に数が多うございますし、事実上困難でございますが、しかし、それぞれの段階におきまして、労働安全、衛生に関する諸規定等を通じて十分に配慮が行われているというように承知いたしております。
  29. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 労働環境その他の問題は、それぞれの所管の法律によって監督、規制されておると思いますけれども、下請事業者の場合には応々にして非常に力が弱い。資本力あるいは技術力が弱い環境にございますので、下請事業者の技術指導あるいは設備の面等につきまして、下請振興協会という全国的に各府県に協会がございますけれども、そういう協会の技術面の指導あるいは相談事業というような形を通じまして、下請事業者の設備改善、環境の保全という問題につきまして、中小企業庁としても今後さらに力を尽くしていきたいと思っております。
  30. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 先ほども中小企業庁長官が答弁いたしましたように、このような問題につきましては下請中小企業振興法に基づく振興基準等も述べたわけでございますが、これによってあらゆる機会をとらえてこれを周知徹底させていくということも、数多い中では一番大きな方法でございましょう。しかし、広瀬委員のおっしゃるような非常にお気の毒な下請中小企業者、しかもおっしゃるような大変ひどい公害を伴うようなことでもございますし、これも調査することが必要でございますけれども、何らかの手段で救えないものか、私としては十分考えてまいりたいと存じます。
  31. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 まだ二、三分あるようですから。今大臣から、そういう気の毒な状況に対してもう一度考え直していただくという趣旨の御発言がありました。結構だと思うのですが、本人から私のところに、震える手で書いてくるのだろうと思うのですが、いろいろな症状があって、こういう症状が今起きて、とても仕事にたえないのだということを綿々と書いてくる。医者の診断書等もみんなそろえて、国立病院の場合あるいは珪肺労災病院の場合、自治医大の場合など、皆ずっとこうあるのです。これは医師としても、その因果関係についてなかなか断定的に有害物質だという特定ができないような、苦衷に満ちた、お互い病院同士の院長の所管でそちらへ紹介する、こういう点を特にやってくれというようなことがあっても、それがなかなかそのとおりいかないというような苦労をする面があるようです。その中に、本人の愁訴、そういうものでいろいろやっているということが医者の言葉の中にも出てくるのです。私のところへもこれだけの、これだけじゃない、ほかにもまだ二、三あるのですけれども、こんなに寄せられている。  今の国の制度の中で、親企業と零細下請企業の間でこういう苦しみに陥った者に対して、労災もまだ適用してもらえない。そしてまた国の事業だということで、これは高い物だからオシャカにしないように本当に気をつけてやってくれよという注意以外に何の注意もなしに、そういうものを集中的に問題が起きても大した騒ぎにならないようなところということでこのところを選んだのじゃないかという疑いすら本人も持っているし、私も客観的にそういう状態になった後における対応を見てみますと、そういうところに押しつけておいて後は知らぬ顔をする、こういう企業の、しかも相当な大企業のあり方、親企業のあり方が続く限り、こういう末端の気の毒な者が救われないのではないかという気がするわけです。工業技術院の方も、国家プロジェクトでそういう超高温のガスタービン等、耐熱ガスタービンの製作などについて、その金属素材の中にどういう有害物質があるかというような点ももう一遍調べ直していただく。それが長期的に、あるいは累積的に吸入された場合にどうなるかというような問題等については、企業の責任も含めて、中小企業とよく相談をしながら、何かもう一つ一歩踏み出した対策を講じていただけないか、こう思うのですが、大臣、もう一度お願いしたいと思います。
  32. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 先ほども申し上げましたように、そのような親企業対下請の関係の中で非常に気の毒な現象が出ている。広瀬委員のおっしゃるような、極端な場合と言えば極端な場合でございますけれども、そのようなことは役所側としてはある程度調査しなければ済まされぬことだと思います。そういうようなことによりまして、広瀬委員のおっしゃるようなことばかりでなく、いろいろなところにそのような現象があるかもしれません。そういうことに当たりましては私としては十分考えてみたいと思います。
  33. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 よろしくお願いします。また後で商工委員会なりで残った分はやらせていただくつもりでおりますから、今の大臣の御言葉を了といたしまして、本日はこれで終わらせていただきます。
  34. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これにて広瀬秀吉君の質疑は終了いたしました。  次に、新井彬之君。
  35. 新井彬之

    新井分科員 初めに、五十八年の五月十六日に法の制定を見ました高度技術工業集積地域開発促進法、いわゆるテクノポリス法案と言われておる法案についての審議の経過につきましては議事録等で拝見をさせていただきまして、いろいろな問題点あるいはまた今後非常に期待されていること、両面からのことを議事録によって知っておるわけでございますが、現時点におきまして、この法案が通った後どのような期待を、当時は山中大臣でございましたので、現大臣といたしましてどのような期待をされておるか、まずそれを先にお伺いしたいと思います。
  36. 石井賢吾

    ○石井政府委員 テクノポリス構想と申しますのは、二十一世紀に向けまして、先端産業技術を中核といたしましてそれを地場産業が活用し、またそれを担う先端技術産業を導入いたしまして、双方の絡み合いを大学ないし研究機関が支援をいたしまして、そういった地域の産業の自立発展を進めていく、それを支える快適な居住空間を設けていこうということで二十一世紀に向けての地域都市開発構想でございますが、ただいま先生御指摘のように、財政的にも公共投資の伸び悩み等いろいろ地域への所得移転の限界が参っておりますから、産業の誘致によりまして地域の所得をふやさなければいかぬという時代に入ってきておりますので、私は、法制定当時以上にこれへの期待というものが非常に大きくなっているのではないかというふうに考えておるところでございます。     〔主査退席、熊川主査代理着席〕
  37. 新井彬之

    新井分科員 兵庫県と姫路市、それから西播磨テクノポリス建設促進協議会、こういうように兵庫県におきましてもあるいは姫路市におきましても、各市町村におきましても、西播磨テクノポリス建設の推進については通産省にもたびたびお願いに伺っておるところでございます。  その要旨は、   西播磨テクノポリスを高度技術工業集積地域開発促進法に基づき、早期に承認されるとともに、これを積極的に推進されるよう配慮されたい。 趣旨といたしましては、   西播磨テクノポリスは、西播磨地域はもとより広く近畿圏の二十一世紀へ向けての新たなる飛躍を図るため重要かつ不可欠のプロジェクトであり、技術立国日本を支える拠点づくりに貢献するものである。   現在、県及び母都市姫路市をはじめとする関係市町が一体となり幹線道路等基盤施設の整備に取り組んでいるところであり、これら諸事業に対する特別の配慮をされるとともに、昭和五十九年度には高度技術工業集積地域開発促進法に基づく開発計画の承認申請を提出することとしているので、早期の承認が得られるよう特段のご支援を賜りたい。  特徴といたしましては、   一、交通条件に恵まれた広大な土地(二千二百ヘクタール)を既に確保し、テクノポリス90構想の理念を確実に実現できる。   二、我が国の二大メガロポリスの一つである京阪神大都市圏に近接し、その巨大都市の高次機能を最大限に利用できる。   三、歴史的に見て大地震、台風などの災害が少なく、温暖な気候に恵まれ、交通利便等地理的条件もよく、先端企業の導入にすぐれた位置を占めている。   概要としましては、人口四万人、従業者数二 万一千八百人、土地利用計画は、産業地区二百四十四ヘクタール、学術研究地区七十六ヘク タール、居住地区三百六十一ヘクタール、レクリエーション地区百九十ヘクタール、その他六十九ヘクタール、合計九百四十ヘクタール。   母都市は姫路市で、高次の教育・研究機能、文化機能、商業・事務機能、情報機能、医療・福祉機能等を充実し、テクノポリスを育成、強化する。   その他として、副母都市(相生市、龍野市、赤穂市)及びテクノポリス区(新宮町、上部町、三日月町)の日常生活機能を充実し、テクノポリスの機能の充実と圏域全体の高度化を図る。 こういうような概要でございまして、大体昭和六十年度に認可を受けた後造成工事に着手をし、昭和六十五年度概成、第一工区完成、企業等立地、昭和七十五年度熟成、全工区完成、四万人定住、こういうことで、兵庫県としては今、地元の市町村あるいは母都市である姫路市あるいは兵庫県一体となって全力を挙げてやっているところでございます。  この法案の審議経過からいきましても、非常に大事だと思われますのは地元の熱意と努力、そしてまたそれに対する通産省を初めといたします関係省庁の指導、そういうものが相まって立派なこういうテクノポリスができ上がるのではないか、こういうぐあいに思うわけでございまして、そういう意味におきましては、これは長年かかることでございます、二十一世紀を目指してということでございますので、三年や五年でできるものではありません。やはり毎年毎年その地元の市町村、県、そういうのが力を入れましてやっていくことによって、これは実現ができるのではないか。こういう意味におきましては、地元といたしましてもこれの指定をしていただくことを非常に望んでおるわけでございまして、通産省としては、何カ所でもその計画が出てきて、その計画が法律に合っておるならば認可をしよう、こういう方向だと思いますが、今後とも認可するまでにもいろいろと御指導賜って、そういう熱意を実りあるものにしてあげていただきたい、こういうぐあいにお願いをするわけでございます。その点についてお答えを聞いておきたいと思います。
  38. 石井賢吾

    ○石井政府委員 西播磨のテクノポリス構想に関しましては、先生承知のように、五十六年に基本構想が策定され、五十七年に開発構想が策定されまして、その段階におきましていろいろ我々の方から課題を指摘してきたわけでございます。  その課題をどうこなして開発計画に取りまとめるかというのが現在兵庫県において進められている作業と承知しておりまして、私どもとしましては、この開発計画が出てまいりました場合には、法律上の規定に照らしまして適正かどうか、その点をチェックをいたして承認、不承認を決めさせていただきたいと思っておるわけでございますが、これまで二年間御苦労をいただいておるわけですし、さらに開発計画への取りまとめにつきまして今相当慎重なあるいは熱心な討議が進められておりますので、私どもの方も企画官等を派遣いたしましてその協議会等へ参加させていただいております。そういう形で、県、市と綿密な連絡をとりながら、よりよい計画をつくるという方向で現在作業を進めておるところでございます。  ただ、先生承知のように幾つか問題がございます。非常に広大な地域でございますし、これから開発しようとする地域、それから既存集積地域との距離が非常に離れておりますが、その関係を一体どうするのか、あるいは兵庫県でいろいろニュータウン計画が進められておりますが、やはり既存集積地域と開発地域の距離が離れておりますと基盤整備のための投資が必要でございますが、そういったものはその他のニュータウン構想の建設等との関連で果たして効率的に進め得るのかどうか、それから各市町村の役割りをどう見ておられるのか、こういったところが基本的な問題点ではないかと思うのですが、こういった点を中心にして、私どもの企画官が参りまして一緒に県、市と作業をしているのが実情でございますので、先生御指摘のように、今後とも私ども一緒に考えさせていただきたいというふうに思っております。
  39. 新井彬之

    新井分科員 大変にありがたい御答弁でございます。兵庫県も広うございまして、確かに太平洋ベルト地帯、一時は非常に重化学工業が発展をいたしましてよかったわけでございますが、時代とともに今鉄鋼初め重化学工業は非常に構造不況、大変な不況でございます。そういう中で市町村も、特に今までも過疎地域になりかねないような現状であったわけでございますが、どうしても不況になりますとますます過疎になってしまう、日本国全体の面積から見ましても三十七万平方キロというような狭い国土、その中で住居地域、山林を除いた地域というのはますます小さな地域でございますが、その中でなお過密過疎があるというようなことで非常に大変な問題を抱えておるわけでございます。  これは何も兵庫県だけではなくて、日本国全体に言えることではございますが、過密と過疎、そしてまた不況産業が定着しているところというのは非常に大変な地域である、問題になっている。そういう中で、その地域の発展なり新しくいろいろ考えますときにどうしても付加価値の高い、それからまた今後どんどん発展する業種というものが、それは何もテクノに限らずどこでも来なければその地域の発展はとまってしまう。そういうことで、短い目ではなくて長い目で見たときに、これからの二十年、三十年先を見たときにそこが生き返っているということが想定されるわけでございます。  したがいまして、確かにほかの地域、いろいろ条件のいいところもございましょうけれども、そういう条件というのは、やはり地域が協力的で一切文句言わなくてお願いしたいというのが一番大事な問題ではないか。比較的便利ではあってもいろいろ問題が出るようなところもございますし、都市づくり、町づくり、それは人間の努力でできているところは多々あろうかと思います。そういうことで、町もそして町にお住まいの住民の方も全力でやっている。農業基盤の整備で補助事業なんかあるわけでございますが、もしもテクノが来たら道路が要るだろうということで、優先的に道路提供いたしますと言って、別に町に言われたわけでも何でもないのに、地元の方がいつでもやってください、提供する、こういうようなことも言われているわけでございます。そういう熱意と真心が、少々無理なことがあっても逆にそれが成功につながるのではないか、こういうぐあいに思うわけでございまして、地元の住民の皆様方を代表して私の方からもよろしくお願いをしておきたいと思うわけでございます。  それから次に、地域フロンティア技術開発事業の採択についてでございますが、兵庫県では、全国生産額の八〇%を占める代表的な地場産業であるケミカルシューズ産業の活性化を図るため、先端技術を導入してファッションシューズの自動化、省力化生産システムの開発を推進することとしております。ついては、この事業を地域フロンティア技術開発事業として採択されるよう特段の配慮をお願いいたします。  事業内容としましては、中核技術研究開発。県立工業試験場が中心となりまして、姫路工業大学、神戸大学、組合と連携してケミカルシューズの設計、デザインの自動化、省力化、CADシステム、製造工程の自動化、CAMシステム、新素材開発等を行う。二番目に応用技術研究開発。日本ケミカルシューズ工業組合が中心となりまして、先ほども申しました研究の実用化の技術開発を行う。三番目は研究開発支援機器の設置。コンピューター、レーザー加工機等を工業試験場に設置する。  こういうことで、今県も予算を組みまして、そして何とか採択をしていただきたいということで、再々にわたって通産省にお願いをしておるわけでございますが、これらについての御見解をひとつお伺いしておきたいと思います。
  40. 粟屋忠

    ○粟屋政府委員 お尋ねの地域フロンティア技術開発事業につきましては、現在、五十九年度の新規分につきまして、これは兵庫県を含めまして十五府県から要望が提出されておるところでございます。  兵庫県につきましては、先生御指摘のとおり、ファッションシューズの自動化、省力化生産システム開発というテーマで要望が出されておるところでございますが、通産省といたしましては、二月の初句から中旬にかけまして各県からのヒアリングを実施いたしまして、現在これらの内容について審査中でございますが、今後、計画の熟度でございますとか地域の中小企業に対する波及効果等を勘案いたしまして、予算の成立後に速やかに決定する方針でございます。
  41. 新井彬之

    新井分科員 兵庫県は、御承知のように地場産業としましては、今も申しましたようにケミカルシューズ産業、これに非常に力を入れておりまして、やはり何かを各県の基盤としてそして活性化を図らなければいけない。ところが、あとの重化学工業というものは、先ほども申しましたように非常に不況でございます。そういう中で、今後新しい技術で何かを持って立っていかなければいけないということになりますと、兵庫県としても、この採択というものは今後の兵庫県の発展、経済の発展という意味においては本当に力を入れておるところでございまして、そういうところもひとつよろしく御配慮を賜りたい、このように思うわけでございます。  それから、姫路市の市長さん初め商工会議所の会頭からも、通産省にも新日鉄にもお願いに行った問題でございますが、新日鉄は、御承知のように第三次合理化ということで大形形鋼をずっと休止しておるわけでございます。高炉が四つのうち三つがとまっておりまして、あと一つ残っている。この高炉も古くなるので六十二年に新しくやりかえなければいけない。これがもし高炉が休止するようなことがありますと、従業員とか下請合わせて約八百人に影響する。これは、その地域の商店街初めいろいろなことに波及をいたしまして大変大きな問題になるわけでございます。何といいましても、姫路市におきましては新日鉄が今まで大変な貢献をされてまいったわけでございまして、そういう新日鉄の火がどんどん消えるということは姫路にとりましては大きな問題である、こういうことで新日鉄本社にも市長あるいは商工会議所の会頭初め代表者が、何とかひとつ新日鉄の火を消さないでいただきたい、それから通産省の方にも何とかそういう経済の活性化のためにお願いをしたい、こういうことで参っておったかと思います。  新日鉄は、今新プロセス構想ということで今後どうするかということを検討されておるようでございまして、これは自由主義経済の中でございますから、こうしろああしろということは到底言えない問題ではございますけれども、姫路市の今後を考えますときに、新日鉄が健全で発展する方向にあるのかあるいは閉鎖をされる方向にあるのかは、今後の市の計画といたしましても大変な基礎的な条件になってくるわけでございます。  そういう意味におきまして、そういうことは別に命令したりそしてまた言えるようなことではございませんが、とにかく今後のこの新プロセス構想については、何とか早くこういう構想でやるんだということで姫路市にも教えていただいて、今後市がなるたけ早くそういう今後の土地発展のために計画が立てられるようにお願いをしたい、こういう申し入れをしておるわけでございますが、通産省といたしましても、何とか側面からそういう問題についても、一つの市の大きな問題でございますので御援助を賜りたい、こういうことでお願いしたいと思いますが、それについての御所見を伺っておきたいと思います。
  42. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 所管原局でございます基礎産業局が来ておりませんけれども、私、中小企業庁立場といたしましても、鉄鋼業あるいは造船業、不況に当面しておるような企業あるいは業種につきまして、中小企業に対する影響も多いわけでございまして、こういう構造不況業種につきましては、つとに関係法令を整備いたしまして対応しておりますけれども、本件につきましても十分関係原局と連絡をとりまして対処してまいりたいと思います。
  43. 新井彬之

    新井分科員 市といたしましても、今の自由主義経済のもとで自由におやりになっておるわけでございますから言いようがないわけでございます。企業ともいつも協力をしながら、打ち合わせをしながら市も発展する、企業も発展していただきたい、こういうことでございますが、こういう不況の時代に入ってまいりますと、そういうことにはなかなかこたえられないという現状になるわけでございまして、そういう意味におきましては、通産省にそれこそいろいろな問題で御相談をさしていただいて、そしてまたその中で生きる道を探すというのが、これはやはり市の態度でございます。そういうことで、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。  それから、造船不況対策に関する要望書というのがありまして、   最近の造船業界は、新造船、修繕船とも受注はきわめて低調で、依然低操業が続いており、関連下請企業等においては、今後とも厳しい状態が続くことが予想されております。   このような事態のなかで、造船関係都市においては、国、県等のご指導とご協力のもとに多くの不況対策を講じているところでありますが、低迷する地域経済活動に一層の活力を与えるために、国におかれましても昭和五九年度予算編成にあたり次のことについて格段のご配慮を賜りますよう要望申しあげます。  一つは造船需要の拡大による関連企業の工事量の確保ということでございますが、   官公庁船等の建造促進 造船業及び関連企業の工事量の確保のため、海上保安庁巡視船艇、防衛庁艦艇、漁業実習船等、官公庁船の建造を促進されたい。   二番目には海洋構造物の建造促進 造船業の需要拡大を図るため、造船技術を活用できる石油海上備蓄等海洋鉄鋼構造物の建造促進を図られたい。  二番目に金融対策でございますが、   造船関連下請企業に対する特別融資制度の創設 造船関連下請企業経営の安定を図るため、造船関連下請企業に対し、長期低利の特別融資制度を創設されたい。 こういうような要望が出ておるわけでございますが、相生市等を見ましても、まさに石川島播磨重工の景気動向に市そのものがかかっている、こういう現状であるわけでございます。そういう中で、非常に造船業界は不況でございますので、その下請関連の方々も大変に困っている。  先ほども御答弁がありましたように、各県下下請企業振興協会に相談をしまして、今後どうしたらいいかというようなことがあるわけでございますが、相談をしましても、不況が原因で来ている問題については、なかなか解決ができない。また、通商産業省といたしましても、とにかく融資等については非常に御努力をいただいて、その枠も非常にふやしていただいているわけでございますが、やはり銀行が貸すようなところでないとなかなか貸せないというのが実態であるわけでございます。そういう中で、これは運輸省に該当するのではないかと思いますが、中小企業を守る立場から、官公庁船等の建設の促進という面につきましても、何とか通産省の方からもお口添えをしていただくのが当然ではないか、このように思いますが、いかがでございますか。
  44. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 構造不況業種としての造船業に関連いたします中小企業対策につきましては、五十三年以降いわゆる企業城下町法に基づきまして関連地域を政令指定いたしまして、緊急融資あるいは広域的な取引あっせんを行っております。相生市につきましても、相当な件数あるいは金額の緊急融資が行われ、あるいは取引のあっせんも行われているというふうに承知しております。五十八年六月、昨年六月以降この法律改正をいたしまして緊急融資、取引あっせんの以外に、新商品の開発でございますとかあるいは新規需要の開拓という事業につきましても、施策の内容を充実しておるところでございます。  先生御指摘の官公庁船等につきましては、今後私ども関係省庁と連絡をとってまいりたいと思います。
  45. 新井彬之

    新井分科員 確かにもう一生懸命通産省がやっていただいているのはよくわかるところでございます。また、下請企業振興協会の相談事項もわりかた多数に上っておるわけでございますが、何らかの形で解決をされているというような実態もある程度把握しているわけでございますが、不況そのものが解決をされないと、やはりこういう問題もなかなか解決をされない、こういうことになろうかと思うわけでございます。  そういうことで、貸し付けも大事でございますが、基本的に今後とも造船業界が一体どうあるべきかというような基本的なことも踏まえて指導もされておられますけれども、それでもなおかつそういうような問題がふえる傾向にあるというのは、やはりもう一歩また考えていただかなければならぬじゃないか、このように思うわけでございます。   そういうことで、それを要望いたしまして、もう時間でございますので、これで質問を終わらせていただきたいと思います。
  46. 熊川次男

    ○熊川主査代理 これにて新井彬之君の質疑は終了いたしました。  次に、井上普方君。
  47. 井上普方

    井上(普)分科員 きょうは、石油問題についてお伺いいたしたいと思います。  第二次石油ショック以来原油の値段がえらい上がりましたけれども、その後おいおい落ちついてきて、あるいは供給過剰のために下がってきたというような様子が見受けられるのでありますけれども、昨今になりましてイラン・イラク戦争が激化したということで、ホルムズ海峡の封鎖とかあるいはカーグ島の攻撃というようなことで一喜一憂をいたしておるのが実情じゃないかと思うのです。でございますので、今世界の石油価格それ自体がどういうように動きつつあるか、あるいは需給関係について通産省はどういうような見通しを持っておられるのか、ひとつお伺いいたしたいと思います。
  48. 豊島格

    ○豊島政府委員 先生承知のように、石油需要でございますが、一九七九年をピークとしまして自由世界の石油需要はどんどん減ってきたということでございまして、その結果需給が非常に緩和したということで、昨年の三月、OPECが結成以来初めて原油価格を五ドル引き下げた。  最近どうかということでございますが、全般的にはOPECの生産能力に対して非常に生産制限をしておるわけですが、相当余力があるということでこざいまして、どちらかというと緩和基調ということでございます。ただ、十二月の初めにOPECの総会が開かれましたときは価格もこれで相当下の方へ行くんじゃないかということが言われていたわけですが、その後アメリカの寒波とかあるいはヨーロッパ、日本の寒波というようなこともございまして、そんなことで今のところちょっと落ち着いておるということでございます。  それから今後、景気がことしは回復するということでございますが、それによってどのくらいふえるかというと大して大きなふえはしないということでございまして、当面の問題といたしましては三、四月以降の不需要期にOPECの生産制限がどのようにいくかということが一つの決め手になるかと思いますが、石油の価格が下がっても余り量はふえないということになりますと、何とかしてOPECとしてはこの需要に合わせた生産制限をするんじゃないか。九日、つい最近でございますが、監視委員会というのが行われまして、そこでも現在の価格は維持するということを言われております。  それから中東情勢、先生御指摘のようでございまして、ここのところどうなるかわからないということですが、一般的にはホルムズ海峡の封鎖等につきましてはイラン自身も相当打撃を受けるので、よほどのことがない限り起こらないだろう。イランとしては、石油の輸出ができなくなるという致命的なことをイラクの攻撃によって受けなければしないということを言っておりますが、何が起こるかわからないということにおいては十分注意していかなくちゃいけないというふうに考えております。  それから、中長期的にどうなるかということでございますが、OPECの生産余力があるということで、当面はそんなにタイトにはならないだろうということでございますが、一九八〇年代の後半から九〇年代に入りますと、発展途上国の需要も相当ふえるということもございまして、だんだんタイトになる。その結果IEA等の報告等によっても、九〇年代には四百万バレルないしは八百万バレルも不足することもあり得るということを言っておりますし、大体非常に窮屈になる、それに伴って価格も相当上がるのではないかというのが一般的な見方でございます。
  49. 井上普方

    井上(普)分科員 それに対して、日本はどういうような対策を講じているのですか。
  50. 豊島格

    ○豊島政府委員 現在石油需給というのは緩んでおるという現状でございますが、日本のエネルギー供給構造はいまだに六〇%以上の石油依存度でございまして、これは欧米諸国が大体四〇%今ないしはそれを切るというようなところに比べまして非常に脆弱でございまして、しかも中東依存度が高いということでございます。したがいまして、日本としては、そういう石油需給緩和の中にありますが、やはり省エネルギーそれから代替エネルギーの開発、導入ということは今後とも緩めずやっていかなくちゃいけないということで、そういう方向で最大の努力をしておるということでございます。
  51. 井上普方

    井上(普)分科員 今お話を聞きますと、石油需給が緩んでおるし、そういうような状況の中でのお話なんだが、聞いておりますと、石油需給に対して日本が積極的にどうしようというような意図が全然見受けられないように思う。  例えて言いますと、省エネルギーのこともやりあるいは代替エネルギーの開発をやる、こうは申しますけれども、対外的には一体どうするのだ。あなたの見通しによると、中長期的には発展途上国の需要が非常に伸びてきて四百万バレルから八百万バレルくらい不足するだろうというようなこともおっしゃるし、しかし、イラン、イラク、あのアラブ諸国の間に何が起こるかわからぬと思う。そこに大体大きく依存しておる日本の石油事情なんだから、これをほかに、日本の石油戦略からいくと、輸入先を大きくするというような努力がなされてないように思う。今こそ日本は、石油供給の安定のためにはさらに石油輸入国を大きくしていくという必要があるんじゃなかろうかと私は思う。そういうような努力がなされてないように思われるのですが、どうでございますか。
  52. 豊島格

    ○豊島政府委員 非常にはしょって申しましたので大変申しわけなかったのですが、何といいましても現在六二%、それから六十五年でも五〇%を超えるというぐらいの石油依存度でございますから、その石油の安定供給の確保ということは当面の最大の問題であることは先生のおっしゃるとおりでございます。  そのためには、一つは、やはり中東というのは非常に不安定な供給先であるということでございまして、これをできるだけ多角化していくということが必要だと思います。第一次石油ショックの起こる前にはたしか最高八五%を中東に依存していたわけですが、現在、インドネシア、東南アジアあるいは中国あるいは中南米に依存することで、大体七〇%が中東の依存度になっております。したがって、これをさらに多角化して中東依存度を減らすということでございまして、その輸入先の多角化について努力しておりまして、その一つとしては、多角化するといいましても中東に一番たくさん油があるわけでございますから、日本としてはある程度その他の地域のところで開発を進めるということでございまして、例えばインドネシアにおいてもやっておりますし、それからさらに中国におきましても渤海湾あるいは南海ということで中国と協力し、あるいはその他の国と協力して開発を進めておる。それからもう一つは、それ以外のところでいろいろ開発を進めるということ。  もう一つは、やはり既存のソースであってもそれ以外のところから買うということで、かつてメキシコからもDDということでやったわけですが、例えば現在アラスカ、これは輸出が禁止されておりますけれども、このアラスカ原油等も輸出が向こうが解禁されるならば、日本のエネルギーソース、石油ソースの多角化ということで非常に役立つわけですから、我々としては最大の関心を持って、これが解除されれば輸入することを非常に期待し、民間等の調査団をアメリカに出す方針にしてその具体化について進めておるということでございます。  そのほか、中東依存度が高いということもありまして、もちろんでございますが石油の供給断絶、途絶に対応するための備蓄ということを一生懸命やっておる、こういうことでございます。
  53. 井上普方

    井上(普)分科員 いまのお話を承っておりまして、石油の供給国を多国化するということは、これはもうやらなければいかぬ。しかし、それがはしょって言ったから抜かしておったというようなことでは、日本対策としては一番大事なことじゃないですか。それくらいの認識では私は将来が危ぶまれると思う。ましていわんや、中国の渤海湾であるとかあるいはインドネシアの開発といっても、実際問題とすればこれは量は知れているでしょう。日本の需要の二%ないし三%もあれば御の字じゃありませんか、今以上にですよ。あるいはまた中国の開発も協力しなければいかぬけれども、これも私は大したことなかろうと思う。それから中南米の開発にいたしましても、例の債務問題があってなかなかこれは行く末暗いと思います。この問題は後で聞きますけれども。  とするならば、やはり当面アラスカの油を日本に輸入する。アメリカが国内法で輸出を禁じておるということに対して私らは矛盾を感じておるのです。このアラスカの石油を日本に輸出させるような努力をなさらなければならないと思います。これがまた対米黒字の解消にも大きく役立つ、私はこう思う。通産省はどんな御努力をこのアラスカ石油の日本輸出についてやられておるのですか。国全体としてどういうような努力をされておるのか、ひとつお伺いしたいのです。
  54. 豊島格

    ○豊島政府委員 アラスカ原油につきましては、かねてより非常に関心を示し、かつても、その輸入ができれば日米貿易摩擦といいますか貿易アンバランスの解消に非常に役立つ、それから日本の石油ソースの多角化にも役立つということをかねがね表明しておったところでございますが、昨年一月のレーガン・中曽根会談におきまして、日米のエネルギーに関するワーキンググループというのができまして、その検討過程を通じまして、我々としてはアメリカ側に、その解除ということが非常に日本にとっても多角化にプラスであるということは表明しております。  それから、そのほか大臣等が行かれましたときにも、その関心は表明しておりますし、それからさらに、先ほどちょっと触れましたが、昨年十月には永山石連会長にアメリカに行っていただきまして、続いて調査団がアラスカ州とワシントンに行きまして、日本側としても条件が整えば買える、関心がある、例えば当面五万バレルぐらい、将来はともかくとしてそこからでも検討する用意があるということで日本側の意向を表明し、向こうとしてもそれに対して非常に高く評価されておるというところでございます。ただ、何分にもアメリカ国内の政治問題といいますかそういう問題でございまして、行政府がいいと言っても議会の問題があってなかなか現実的に実現してないというのが現状でございます。
  55. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 井上委員おっしゃるように、石油の安定供給といいますことは我が国の第一番の基本方針でございます。安定供給をするためには、中東だけに依存しないで多角的な供給を求めるということもやらなければならず、むしろこのことは日本の悲願とも言うべきことでございましょう。  今言われましたアラスカ石油の難しい問題、もちろんこれは日本にとりましても何とか持ってきたい、アメリカの方でも何とか輸出したいという気持ちが重々あるわけでございます。しかしながら、基本的にこれはあくまでも民間の自主的なやり方によって日本に輸入するということが第一でありますけれども、しかし多角的な安定供給ということを考える我が国政府の場合には、何としてもこれを輸入したいわけでございます。しかしながら、今エネルギー庁の長官が言われましたように、国内法で禁止されておるというような大きな制約があるわけでございます。国内法で制約されている以外に、アラスカの原油を東海岸の方に持ってくる場合、アメリカ国内にこのアラスカ石油の供給地があるとするならば、それはそれなりにアメリカの船で持っていくというような現在行われている事実もあるとすれば、そこに専用の船がある。とすれば、その専用の船が、日本に油が供給された場合に仕事を失うというような事情もあり、海員組合の反対というようなアメリカ国内での事情もあるわけでございます。  したがって、我が方としては何としてもこれを輸入したい、アメリカの方でも輸出したいという気持ちがあるけれども、第一に国内法でこれが禁止されているということは、事実上輸出禁止ということにもなるわけでございます。したがいまして、昨年レーガン大統領が来日されたときに、中曽根総理との話の中にも出たことでございましょう。その中でのワーキンググループが日米通商摩擦解消のためにもこの油をどうやって持っていったらいいかということを法改正等も含めて今検討いたしておるわけでございまして、かような意味で、通産省立場は油の多角的供給ということを常に真剣に考えていることを御理解願いたいのでございます。
  56. 井上普方

    井上(普)分科員 石油の安定供給が日本の悲願である、こう申されます。まさに私はそのとおりだろうと思う。しかし私は、その努力が不足しているのじゃないだろうかという気がしてならない。  そうすると、アラスカ原油を輸出するというのは、言い出してから五、六年になる。しかし、それはアメリカの国内法で禁じられている。これも私は存じています。しかし、アメリカの日本に対する態度を見てごらんなさい。日本の国内法というのは踏みにじって、ともかく進もうとするあの強引き。私はいつも言うのだが、アメリカは日本を占領国のごとく考えながら政治をやっているのじゃないだろうかという気がしてならない。ドイツのシュミットはレーガン大統領に対しまして、レーガンだったかな、いつまでも占領国と思ってくれたら困るということをばっちり言ったそうです。どうも日本の政治家あるいは総理あたりがもう少し対米外交にしっかりした態度を持たなければならぬと私は常々考えている。  考えてごらんなさい。アメリカの国務次官補のごときが日本に来て、日本の貿易アンバランスを直すために日本の商習慣それ自体を変えろというようなことさえ平気で言うような国務省相手じゃありませんか。我々はアラスカ石油を輸入することによって、こちらは安定供給の一つの糧にもなるし、あるいはまた貿易アンバランスを解消する道でもある。今大臣から、レーガン大統領に対して昨年の十一月に来られたときに中曽根さんはおっしゃったそうでありますけれども、あの去年の十一月は、レーガン大統領は中曽根内閣の選挙応援に来たようなものだと私は思っているのだ。来てもらった手前、余り大したこともよう言ってないと思う。  アメリカの貿易アンバランスなんと言ってやかましくここ四、五年言っているけれども日本とアメリカとが貿易をやり始めてから百三十年になる。百三十年の間、戦争中を除いて、ほとんどともかく日本は対米の貿易は赤字だった。ここ五、六年の間に日本の貿易が黒字になったからといってがたがた言って、しかも日本の国内法自体を踏みにじり、日本の社会習慣それ自体も変えろなんという思い上がったような言い方をしていることに対して、私は憤りを感じておる。もちろんアメリカと日本という国は、これは将来とも友好関係を最も保たなければならない国ではある。国ではあるけれども、余りにも思い上がって、もう国民の間では、アメリカの要求に対して、このごろ、ああまたアメリカが無理難題を言っているわぐらいしか感じぬようになってきた。これは日本とアメリカとの友好関係の上において非常に憂うべき事態だと思います。それでまた今度のアメリカの大統領選挙でも、御存じのように日本をたたけばいいわというのが一貫している。  アメリカの日本外交というものを見てみると、これは対幕府のときにもそうでありました。日本の外交がふにゃふにゃするものだから、あるいは要領を得ないようなことをぐちゃぐちゃ言って、そしてその場をごまかそうとする役人特有の性格を持ってきた。だからハリスが来た当時からも、日本外交、当時は幕府の役人というのはそれは優秀な連中がそろっておったと私は思う、しかし外交についてははっきりしたことを言わない。言いたいことを言わない。そこに日本外交のいら立たしさがあって、恫喝すればともかく解決するのだという姿勢がアメリカのみならず欧州にもみなぎってずっと続いてきている。英国の公使のパークスのものあるいはまたサトーの日記なんか読んでみましても、恫喝すれば日本は言うことを聞くのだという考え方は昔からある。それは日本の役人は幕政当時から非常に優秀だったと私は思う。しかしその決断というものが、いつも決断する時期が非常に遅かった。そして言いたいことはよう言わなかった。  そこに問題があるのでございまして、どうもアラスカ原油に対しましても、もう少し明確にアメリカに対して、こんな不都合なことがあるか、あなたのところは赤字だけれども、アラスカ原油を日本に輸出すれば、あなたの国は赤字なんか解消するではないか、何を言っているんだというぐらいの、ともかく気力を持って対米交渉をしていただかなければならない。選挙の応援に来てもらっただけなんだから、大したことをよう言っていないんだ。  通産大臣、あなたもこの間アメリカへ行って外交をやられた、通商関係でやられたそうですが、そのときの様子はどうだったのですか。もう少しはっきりアメリカに物を申したらどうですか。どうでございますか。
  57. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 井上委員通産省がばかにアメリカに対して弱腰であるというようなおっしゃり方でございますが、外交の問題は外交の問題として、日米通商経済問題で私どもが弱腰であるということはいささかもないと思うのでございます。ブッシュ副大統領以下アメリカの政府高官に会いましたときにも、私は、お互いに言いたいことを言い合おうではないかということによって、かなりの成果を上げたことは事実でございます。自由にして濶達な議論を繰り返したわけでございますが、不幸にして私は英語はしゃべれないから余り自由ではございませんけれども、しかし、そういう中でも濶達な議論を繰り返したことは事実でございます。  アメリカ側が、直接の窓口でない問題である農産物の問題等々を掲げて私にいろいろなことを言った。しかし私の方では、やはり自由貿易主義というものをどうしてもお互いに維持推進していかなければならない、保護主義の台頭が起きたならば、これはゆゆしいことであるということを言って、お互いに合意を得たわけでございますが、そういう合意の中にも、やはり具体的な細かい問題になればアメリカ側においてもいろいろあり、日本側においてもいろいろございます。アメリカ側の言うことを聞きながらも、私は、例えば工作機械の問題の提訴のことなど、あるいは鉄鋼の問題、さらには州で行われているユニタリータックスの問題等々に日本側では非常に懸念しているよ、あるいはこのような税制というものはどうしても廃止してもらわなければ困るよというような、一つ一つの和やかな中にも激しいやりとりというものが、結果としては今日、もう私が帰ってきて三カ月になりますけれども、やはりそれが一つ一つ具体的に何らかの形で生きていることは事実でございます。  あるいは、対ヨーロッパ、対ECとの話し合いの中でも、EC側のハフェルカンプ副委員長が、日本はもっともっと製品輸入を拡大してもらわなければ困るというようなことを言う中に、例えば製品輸入の目標というものを数字を掲げて日本側がすべきであるというようなことを言っていることに対しても、我々は我々の意見を強く言う、そういうことを強く言うことによって向こうがそれを納得するというようなことでもって、やはり経済問題というものは日本とアメリカの間に、和やかな中にも激しいやりとりが必要だと思うのでございます。  井上委員おっしゃるとおりに、アラスカ石油の問題も、日本側が余りにも弱腰ではないか、向こうの一方的な言い分を聞いているではないかということでございますが、しかし、これは決してアメリカ側の肩を持つわけではございませんけれども、アメリカ側にも議員筋に、何とか日本にこのアラスカの油というものは輸出したいということを強く働きかけ日本に来る人もあるわけです。あるいは、ワシントンにおいて私に直接会ってこれはどうだということを示すわけでございます。そういう人たちは、むしろ国内法の制約の中で何とかいい方法はないものかということに頭をめぐらせるような人もいるわけでございまして、いずれにいたしましても、井上委員の御意見は御意見として、今後いかにしてこれを多角的に供給していくか、アラスカ原油などというものはまさにその最大のものであるということを考えまして、御意見の具体的な成果が上がるように努力してまいる所存でございます。
  58. 井上普方

    井上(普)分科員 もう時間も大分ないようでございますが、いずれにいたしましても、小此木大臣、あなたが在任中、まあことしの十一月か十二月か知らぬけれども、この間にひとつアラスカ原油だけは解決しなさいよ。大体アメリカというのは得手勝手なんだ。話は余談にそれますけれども、私はこう思っている。  アメリカの外交を見てみますと、近隣外交、カナダ等の関係は非常に悪い。あるいはメキシコあるいは対中米外交というもの、これまた失敗している。南米においてもしかり。中国の外交政策においても今まで全部失敗してきた。まだがたがたやっている。あるいは東南アジア外交においても、ベトナムを初めとする政策というのは大きな失敗をしてきた。欧州においてもしかりです。ただ成功している唯一の例はと言えば、戦後の対日外交だけはアメリカ側から見れば成功している。ほかにありますか、アメリカが外交政策として成功しておる国は。ありやしない。  こういうようなことを考えますと、われわれはやはり言うべきことを言わずにアメリカの言いなりになってきたから、こうなってきておると私は思う。しかしアメリカとの外交も、私は、これは友好関係を保たなければいかぬというのは重要性を痛切に感じている。しかしながらこのごろ、アメリカの国務次官補が去年の春日本へ来て、日本の商習慣を変えろなんというようなことを平気で言うような国務次官補もおるのです。ここらあたりはやはりしっかりしなければ大変なことになる。というのは、日米外交がさらにぎくしゃくしたものになってくる。言うべきことをはっきり言うということをやらなければならない。たちまちの問題として、貿易赤字を解消するのは、もうここ四、五年言われておるアラスカ原油を日本に輸入してごらんなさい。たちまちとは言わぬけれども赤字のほとんどは解消するのじゃございませんか。こういうような問題があるのだから、さらに御努力通産大臣にお願いいたしたい。あなたの在任中にこれが解決することを私は強く期待いたしまして、大臣の政治手腕が発揮できるのはこのこと以外にないな、こう思っていますので、ひとつせっかくの御努力をお願いいたしたい、このように思います。  もう時間がございませんので申し上げますが、このごろまたカントリーリスクの問題が大きく出てきておる。今カントリーリスク、これが大きく出てきているのですね。輸出保険は一体どれくらい今このカントリーリスクの国々に対してあるのですか、ひとつお伺いしたいのです。
  59. 杉山弘

    ○杉山政府委員 確かに、先生おっしゃいますように最近債務累積国の数が非常にふえてまいりまして、国際的な債務繰り延べを要求する国が増加をしております。そのため輸出保険の支払いというものも、ここ数年でございますが、かなり急ピッチで増加をいたしております。  現在までのところでございますと、今まで手元にありました準備のためのお金を取り崩して保険金の支払いに応じてきておりますが、私どもの見込みによりますと、五十九年度に入りますとお金が不足をして、現在のままですと保険金の支払いができなくなるような事態が想定されますので、来年度におきましては資金運用部から必要な資金の借り入れをするということで、そのために必要な輸出保険特別会計法の改正等も今国会にお願いをしているような実情にございます。
  60. 井上普方

    井上(普)分科員 債務国問題は私は大変大事だと思う。今ももう少し、去年一年支払った額ぐらい言ったらどうだい。そんなことさえも言わずに、去年も支払いましてなくなったのでとか言って、時間がたてばいいなぐらいのことしかあなた方考えていないのかもしらぬが、もう少し肝心なところは答弁しなさいよ。——もういいよ、あんた。  そこで、私はこの間人口問題でインドヘ行った。大臣、インドヘ行ったらシュミットがやってきた。うちの福田さんも行っていたわけだ。福田さんは七、八分の演説だ。ところが、シュミットの演説というのは、これは一時間にわたってやった。一時間二十分くらいやったかな。実にともかく言いたいことをずばずば言っている。産油国なんという国は、今あなた方はそれだけ債務を持っているじゃないか、その債務を持っておる国が軍備にこれだけ金を使ってはこれはたまらぬよ、幾らしても赤字はとまらないよ、せめて軍備を三分の一ぐらいは削ってごらんなさい、軍備に使っている金が今全世界で八千億ドルある、その三分の一ぐらいはあなた方発展途上国が持っているんだ、先進国に金をくれくれ言う前に軍縮をやったらどうだ、そうすることによって債務が少なくなるではありませんか、もう発展途上国は先進国に金をくれくれ言うのはおよしなさい、そして債務を解消しなければ、世界経済はともかく破局を来しますよという演説をぶっていました。  これに対しては、発展途上国の諸国は苦い顔をしていました。しかし、来ておる連中は、それは一つ方法だと。世界の経済情勢を余り理解してない者にじゅんじゅんとして説いたあのシュミットの姿、私はさすがだなと思いますと同時に、世界的な視野に立っての発言だと実は感服して帰った次第であります。こういうことが日本の政治家では言えない、言う習慣がない。ここに何といいますか、日本人、我々政治に携わる者として、大いに啓発させられたことを一言申し上げる次第であります。どうか優秀なる大臣、せっかくの御努力をひとつやっていただきますようお願いいたしまして、質問を終わります。
  61. 熊川次男

    ○熊川主査代理 これにて井上普方君の質疑は終了いたしました。  次に、安倍基雄君。
  62. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 民社党の安倍基雄でございます。  さて、皆さん御承知のように、二十一世紀に向けて日本は情報化社会ということに進んでおります。情報化産業の育成というのは非常に大事である。それと関連いたしまして、各地区における経済の活性化のためにいわゆるテクノポリスの問題が起こっております。この点につきまして、私は、非常にいいことである、通産省のヒット政策であると考えております。  現在におけるテクノポリスの指定状況をまずお聞きしたいと思います。
  63. 石井賢吾

    ○石井政府委員 テクノポリスの開発計画の承認申請が昨年十一月に出てまいりまして、本年二月十日にそれぞれの地域につきまして解決さるべき課題というものを示したわけでございますが、この課題につきまして既に九地域から回答を寄せられております。これを検討しました段階におきましては、主務四省庁といたしまして関係各省協議の上、協議さえ調えばこの九地域については承認して差し支えなかろうということで、主務省庁としては意見が一致しておる段階でございまして、現在最終段階関係各省と協議をしておる状況にございます。
  64. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 一部報道されたところによりますと、何か指定が五月雨式になるというような報道もございます。実は私は、浜松が選挙区でございますけれども、各地区それぞれが一生懸命やっているということでございますので、この指定が余り五月雨式になりますと、各地区のおれは後順位であるかとか先順位であるかという問題が起こると思います。この点について大臣の政治的判断、どう考えていらっしゃいますか。
  65. 石井賢吾

    ○石井政府委員 先ほど申し上げました課題に対します回答が、その課題の関係省庁との実質的な協議を終えましてから、正式に課題への回答が寄せられるわけでございます。したがいまして、課題の性格といいますか難易度といいますか、そういったことによりまして課題への回答時期が各地域ごとに異なるわけでございます。私どもとしましては、事務的にできるだけ早期承認という方針で対処いたしますので、課題の回答が終わり、その回答に関連いたしまして開発計画の修文ないし附属資料の訂正等が整えば、直ちに関係各省と協議をするという段取りで進めております。したがいまして、一遍にやれというお話かと思いますが、最後に残るところまですべてをリザーブしなくちゃいかぬということでもないんではないかというふうに思っておりまして、私どもは協議が調い次第、逐次承認をしてまいろうというふうに思っておるわけでございます。  ただ、ただいま先生御指摘のように、どこが一番だ、どこが二番だとかあるいはびりだというような議論、まあ我々からいたしますと、意味のない議論ではないかというふうに考えるわけでございますが、各地域においてこれに重きを置いているという御意見もございますので、実は私ども各県の東京事務所の方に、私どもとしては先ほど申し上げましたように、各省協議さえ調えば、主務四省庁としては承認する予定を決めましたということについて御通告をいたしまして、承認の年月日はさしたる意味がないということを各県にお示しをしたわけでございます。
  66. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 大臣の御意見を承りたいと思いますが、事務的にはそうかと思いますけれども、やはり各地区、私いろいろほかの地区も知り合いがございますけれども、できるだけ一括して指定するということの方がいろいろな面でいいと私は思いますが、大臣、いかがでございましょう。
  67. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 役所の立場としては、日時が多少食い違うということによって、おれが先だ、われは後だというようなことを言われることは、むしろ当惑することでございましょう。しかし、率直に言って、我々政治家お互いの立場からいけば、やはりおれが先だ、われが後だということはいろいろな意味で非常に困難も伴い、またいろいろな人たちの、俗な言葉で言えば、受けがよくなったり受けが悪くなったりというようなことはあり得ることでございます。そういうことを私は大臣立場として、と同時に選挙を経てくる政治家の立場としてよく理解できますので、その点は十分私としては考えていきたいと思っております。
  68. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 では次に、テクノポリスの建設につきましてはそれなりの公共投資が必要じゃないかと考えております。これはなかなか財政も大変でございますけれども、特に通産省のいわばこれからの非常に大事な政策という意味合いにおきまして、この点について建設省と十分話し合っていただいていると思いますけれども、これにつきましての通産省及び建設省の御意見を承りたいと思います。
  69. 石井賢吾

    ○石井政府委員 テクノポリスは、先生承知のように、基幹的なインフラが整備されているか、あるいは整備されようという既に計画がある地域につきまして、これを十分に活用しながら、高度産業技術を育成し、快適な居住環境を形成していくという計画でございまして、これまでの地域開発方式と異なりまして、大規模な公共投資というものをそれ自身は予定はしてないわけでございます。しかしながら、既存のインフラを活用すると同時に、最小限のインフラの整備はどうしても必要でございます。そういった面につきましては着実な整備が図られるように、私どももその支援をしていきたいと思っておるわけでございます。
  70. 光岡毅

    ○光岡説明員 建設省でございますが、先ほど立地公害局長からお話のあったように、大規模な公共投資はこの際そんなに重要なものではないわけでございます。しかしながら、工業開発を中心とした地域整備の具体的な推進に当たりましては、施設整備が行われる必要がございますが、それは従来の計画、制度、そういった枠内で十分効率的な実施を図ることをやればうまくいくと考えておりますし、事実先生の浜松の公共投資に関しましても、非常に多額の投資を現在も行っておりますし、それをうまく振り回すことによって十分可能なものになると考えております。
  71. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 そうしますと、公共投資の重点配分を考えておるということでございますね。
  72. 光岡毅

    ○光岡説明員 この地域に対していかにこの施策がうまくいくかという観点から、効率的に投資を配分していきたいという考えでございます。     〔熊川主査代理退席、主査着席〕
  73. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 また、テクノポリスの場合には、周辺の農村地区との調和が非常に大切でございます。農村地区にいわゆる下請企業を持ってくるというようなときに、従来の考え方は、例えば農地の場合いろいろ既に投資があるとか農業投資があるとかということで、それを転用するのが非常に難しいというようなことも聞いております。テクノポリスの場合には特別な配慮があるとは聞いておりますけれども、この点について、農林省の方にどのようにスムーズに転用を認めるかということについてお話を承りたいと思います。
  74. 海野研一

    ○海野説明員 お答えいたします。  テクノポリスの建設につきましては、農林省といたしましても、農村地域におきます安定的な就業機会の増大という面でも、農林水産業や関連産業へ高度な技術が入ってくるという面でも、積極的にこれに取り組んでいるわけでございます。したがいまして、具体的に工場とか住宅とかの用地の立地に当たりましては、農村地域工業導入促進法の場合と同様に必要な土地利用調整を行いまして、転用許可基準も緩和されたものを適用し、さらに農地転用の許可手続も簡易な手続という特例措置を講じております。また、農振法により農用地区域から工場予定地をあらかじめ除外しておくということもできるような特例措置を講じておりまして、これらの特例の適切な運用によりましてテクノポリス建設の円滑な推進に寄与してまいりたいと考えております。
  75. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 農業も大切でございますけれども、テクノポリス計画の重要性にかんがみ、この問題がスムーズに行われるよう希望いたします。  その次でございますけれども、従来テクノポリスといいますと、そちらの方に目が向く、その反面、いわば既存の産業、いわゆる経済学で言うバック・ウォッシュ・エフェクトと申しますか、船が先に進んでいくと後のものは逆に後ろへ押し流されるというような懸念もございます。プラス面と同時にマイナス面もございます。こういった既存産業、例えば繊維産業とか機械産業、自動車産業、自動車産業はまだ比較的いい産業でございますけれども、こういったものに対してどういう対策を用意されておりますか。
  76. 石井賢吾

    ○石井政府委員 テクノポリス計画は、先生承知のように、単に先端技術産業を導入するだけではございませんで、地域産業といいますか地場産業の先端技術利用による高度化ないしその発展を期待いたし、かつその促進を図ろうという枠組みでございます。その意味で、テクノポリス地域におきます既存企業が極力高度産業技術を利用する、あるいはその技術利用を開発し、あるいは研究し、それの企業化に取り組んでいくことを期待いたしておるわけでございまして、まず既存産業がそういう枠組みを積極的に十分に活用して拡大をし、発展をしていくことを期待いたしておるわけでございます。  確かに、先生の御指摘のように、ではすべての既存産業がその利用あるいは活用を図り得るのかという問題がございましょうが、地域全体として雇用機会が増加し、所得が増加すれば需要も増加するという形において関連産業も稗益してまいるわけでございまして、地域全体の所得向上につながるような形で、既存産業もその過程で振興されていくと私どもは考えているわけでございます。
  77. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 テクノポリス問題につきましてはこの程度にいたしまして、次に、円高の問題が最近問題となっておりますが、これからの円高の見通しについて、大臣、どう考えていらっしやいますか。
  78. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 円高の見通しということになりますれば、私、主務的な立場にあるわけでございませんので、差し控えるべきであると思いますけれども、現在の円高程度では、日本の産業貿易あるいは中小企業関係は、適応に対してそれほどの困難をしている状況ではないと判断いたしております。
  79. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 私、かつて役人をしていましたころに円高問題が随分大きな問題になりまして、造船業がばたばたと倒れた時期を経験しております。その当時、自動車産業などはどんどんとそれに適応していったわけでございますけれども、最近の状況を聞きますと、自動車の方もいい、そのかわりにそう安くないという形で競争していると聞いています。ほかの産業、繊維産業あるいは機械産業、今大臣は大丈夫とおっしゃいましたけれども、その点について当局の方々はどう考えていらっしゃるか。
  80. 杉山弘

    ○杉山政府委員 全般的にはただいま大臣からお答え申し上げたようなことでございますが、自動車産業につきましては、御案内のように、国際的にも品質、価格面での競争力が非常に強くなってきております。現状程度円高ということになりますれば、特に大きな影響は生じないと思われます。  機械産業につきましては、例えば工作機械でございますが、これは御案内のように、最近はアメリカの景気回復に伴います国内需要の好調を背景に伸びてきておりますし、それから電子機器のたぐいにつきましても、アメリカ国内での強い消費需要に支えられて伸びてきております。こういったところにつきましても、自動車と同様、最近時点までは国際的な面で見て品質、価格面の競争力がついてきておりますので、現状程度円高でありましたら特に問題はないと思います。  繊維産業につきましては、むしろ輸入品との競合が心配ではございますが、そういう意味で手放しの楽観は許されませんが、これも今御質問の中にもございましたように、一時は二百円を割るような円高局面も経験いたしておりまして、そういう経験を生かしてその後合理化、近代化に努力をしておりますので、これも楽観は許しませんけれども、格別大きな打撃というようなことを心配をしなくてもよろしいのではないかと判断いたしております。
  81. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 私は、正月にある人に講演を頼まれたときには、自慢じゃないけれども、恐らく後半円高になるだろうということを予言したわけです。と申しますのは、アメリカの景気が上昇していけば、どうしても基礎収支が悪くなる、基礎収支が悪くなれば、高金利などいろいろな反対の要素があっても、どうしても円高になるよということを言ったわけです。  これからの状況でございますけれども、恐らくアメリカの景気上昇は続く、基礎収支が悪くなっていけばこれ以上の円高もあり得るかと思います。この点について、通産省はこの程度円高ならいいとおっしゃるけれども、たしかこの前の円高のときには、どの辺まで耐えられるかということを随分計算したわけでございますけれども、そういった一つポイントをそれぞれ考えていらっしゃいますか。
  82. 杉山弘

    ○杉山政府委員 まず、今後の円高がどこまで進むかという点につきましては、今の段階で、将来どの程度とうなるということを私ども申し上げることができる状況にはないと思います。最近時点での二百二十円台ということにつきましては、かねがね一般的には二百二十円台程度円高ならば、我が国の産業についてそう大きな打撃はないと言われてきております。先ほども御答弁の中で申し上げましたように、五十年代の初めには二百円を割るような、しかもかなり急速にそこまで円高になったという局面も経験をいたしておりますので、全体的にいいますと、先ほど御答弁申し上げましたようなことで、大きな影響を受けなくて済むのではないかというふうに考えております。
  83. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 次は、今の問題に関連いたしまして自動車産業。御承知のように輸出規制がある。これはどのくらい続くかという問題もございますが、一方においていわゆる税金の引き上げがある。ダブルパンチということでございますが、今のところ自動車産業はいいだろうという感じがございますけれども、造船業もかつての輸出の花形からいつの間にかダウンしてしまった。特に最近懸念されますのは、国内競争が非常に激化してきている。私どもの浜松で、二輪車のホンダ、ヤマハの過当競争によってその企業全体が非常にダウンした。また、下請が随分苦しんでいるという状況がございまして、それがあるいは自動車に波及するかもしれない。特に、販売店などは軒並み赤字でございます。こういったことを踏まえまして、自動車業界そして販売業界を含めたものに対してどう考えていらっしゃるか、当局者の方々の御意見とともに大臣の御意見を承りたいと思います。
  84. 志賀学

    志賀(学)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように自動車産業、これは二輪車を含めてでございますけれども、自動車産業をめぐります環境は大変厳しいものがございます。いずれにしても通産省といたしましては、この自動車産業というものは非常に広いすそ野を持っている産業でございますから、国民経済上大変重要な産業であるという認識のもとに、最近のこの状況対応していかなければいけないというふうに思っております。  まず国際的な面で申し上げますと、いろいろな国において保護主義的な動きがございます。それに対する対応というものを考えていかなければいけない。また国内的にいいましても、マーケットが成熟段階に入ってきておると思うわけでございます。こういった新しい事態を迎えまして、それに対する対応というものを考えていかなければいけないというふうに思っております。  そこで、若干具体的に申し上げますと、現在私どもといたしまして対外政策といたしましては、まず節度のある輸出による健全な発展を心がけていかなければいけないということで、そういう立場に立って業界を指導しておる。それからまた同時に、長い目で見ますと海外投資、いわゆる産業協力でございますけれども、産業協力を推進していかなければいけない。そういう形によりまして、国際的に調和のとれた日本の自動車産業の発展を考えていくことが必要だろうというふうに思っておりまして、そういう面におきましても業界に対し、いろいろ指導をしておる状況でございます。  それから国内対策について申しますと、まず取引慣行の改善の問題がございます。これは具体的に申しますと、トラックについて既に取引慣行の改善について具体的に指導をいたしております。  さらに、長期的な立場に立ちまして、成熟いたしました国内マーケットの状況対応した新しい流通のあり方というものを考えていかなければいけない。そういう立場に立ちまして、ディーラー、メーカー両方入っていただきまして流通委員会というものを組織しております。その流通委員会におきましてディーラー、メーカーから御意見を聞きながら、長期的な立場に立って新しい流通のあり方というものを現在検討しておるという状況でございます。  それから、やや当面の問題になりますけれども、例えばトラックの車体製造業あるいは二輪車を含めます自動車部品製造業などにつきましては、かなり不況が深刻でございます。そういった不況業種につきましては、中小企業信用保険法あるいは雇用保険法等に基づきます不況業種の指定ということをやっておりまして、そういう面から当面の対策を講じているというのが現状でございます。
  85. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 ちょっと話題が変わりますけれども、それとも関連するのですが、最近ロボットの導入が非常に進んでおる、日本はロボットを使うことじゃ本当に第一だというぐらいになってきた。輸出もそれで伸びている。ただこの問題は、日本がどんどんと経済成長が大きく、輸出も阻害されないという形で、いわゆる分けるべきパイが大きくなっているうちはいいということでございますけれども、それが鈍化した場合、失業問題と非常にかかわり合ってくる。これは恐らく通産省も労働省と話し合っていると思われますけれども、通産がどんどん合理化していくと、必ずしわ寄せが雇用問題に最終的にはかかわってくるのじゃないか。これについて長期的な考え方を持っておられるかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  86. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 ロボットあるいはOA機器の発展は、技術革新の重要な一環でございます。これは、経済成長あるいは経済の活性化ということに寄与すると思われますけれども、他方また、単純繰り返し作業から労働者を解放するとか、あるいは労働時間の短縮あるいは労働災害の防止といった労働福祉の面からも非常に重要だと思います。  今先生御指摘のロボット、OA機器の普及による雇用への影響につきましては一概に言えませんけれども、これまでのところは新たな職域が拡大する、あるいは企業内における能力開発あるいは円滑な配置転換等が進められておりまして、解雇の発生というような事態には至っていないのが現状でございます。  通産省といたしましては、ロボット、OA機器の導入が雇用初め経済全体に与える影響というものを従来あるいは現在調査中でございます。また、労働省との間では従来から随時意見交換を行ってきておりますけれども、今後ともますます緊密な連絡をとっていきたいと思います。例えば、労働省に雇用問題政策会議というのがございますが、ここでやはりこういったロボットあるいはOA機器、マイクロエレクトロニクスを中心にした技術革新が雇用にどう影響を与えるかという審議を行っておりますが、ここにおります機械情報産業局長もそれに出席をいたしておるわけでございます。また、私どもも、ロボット産業動向調査委員会というものがございますけれども、労働省の担当の方、産業安全研究所長にメンバーになっていただいておりまして、密接に連絡をとりながら調査、対処をいたしておるところでございます。
  87. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 自動車産業及びロボットの導入についての大臣の御意見を承りたいと思います。
  88. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 自動車産業につきましてもロボットにつきましても、政府委員が言ったことと大体同趣旨のものになりますが、自動車産業というものが、国際的に見れば保護主義が台頭していく中で、これからどうやってやっていくか、もちろん保護主義そのものは何としても我々は排除して、自由貿易主義というものを維持推進していかなければなりません。しかし、そういう国際的な環境の中で一つの時代、一つの環境が変わったということが言い得ると思うのです。国際的な中にもそのような環境が変わったということになれば、国内的にも流通その他の段階ですべてが、端的な表現でいけば行き渡ったという状態の中で、今後どうやって生き延びていくかということは、やはり一つの時代が変わったということで自動車関連産業そのものが対処していかなければならないし、我々としても、それなりの考え方に立っていろいろと施策を推進していかなければならないと思います。  ロボットの問題も、ロボットそのものが脚光を浴びた時代からかなり年限がたったわけでございまして、そういう意味では、自動車関連産業には長期、短期の問題等がございますけれども、同じような状態であるということが理論づけられると私は考えます。
  89. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 もう時間もございませんから簡単にいたしますけれども、今、前の質問者が輸出保険の話をちょっとされました。  これはカントリーリスクがある国につきまして、いろいろ面倒を見なくちゃいかぬという気持ちはわかりますけれども、この収支の行く末を見ますと非常に支払いがふえておる。これが将来、第二の国鉄みたいになったら大変だという気持ちがございます。いろいろ一時的な問題である、一時的に運用部から借りるんだというようなぐあいには聞いておりますけれども、本当に国民の税金が、最後にむだ遣いにならないようにと思いますが、この点ちょっと御説明願いたいと思います。
  90. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ただいま御指摘のように、輸出保険の、債務累積国に対する債務の支払い繰り延べのための保険金の支払いというものがふえてきておりまして、来年度は運用部からお金を借りませんと保険金の支払いができなくなるような状態でございます。  こういった点につきましては、私どもといたしましては、債務累積国の著増という最近の時点の世界経済の特徴に伴う一時的な問題というふうに考えております。こういった債務累積国に対する国際的な救済措置というものが別途考えられる必要があると思いますが、私ども保険会計をお預かりする立場から考えますと、国際的な約束に基づきます債務の繰り延べでございますので、これは採来必ず返ってくるものというふうに考え、また、そう期待をいたしております。  これまでも、数はそれほど多くはございませんが、こういった事例がございました。そういった問題につきましては、相当程度良好な回収が得られております。万一、将来返ってこない場合どうなるかというお尋ねがあるいはあるかもしれませんが、その場合につきましては、私ども、保険会計は法律上やはり収支相償の原則に立って運営するというふうに書かれておりますので、そういう場合には保険料の引き上げ等を含めて、抜本的な収支改善のための方策を検討すべきである、かように考えております。
  91. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 もう時間もございませんので最後の質問でございますけれども、情報産業の関連で、通産省はVANの問題あるいはソフトウエアの問題についてどういう考えを持っているかを御説明を承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  92. 志賀学

    志賀(学)政府委員 まず、これから日本の社会が情報化を進めていくに際しまして、ソフトウエアの権利の保護あるいは流通の促進あるいはユーザー保護、そういった問題というのは大変重要な問題だと思っております。そういう観点から、この権利の保護、流通の促進、ユーザー保護、あわせまして、そういった多角的な目的のもとに一つのコンピュータープログラムにつきましての法律的な制度をつくるのが適当ではないかというふうに考えておるわけでございまして、現在、通産省におきまして検討をいたしておるところでございます。  なお、先生御案内のように、文部省におきましては、著作権法の一部改正によって権利の保護を図ったらどうか、こういう考え方のもとに作業をやっておられます。いずれにいたしましても、通産省、文部省ともに、よりよくコンピュータープログラムの権利を守っていくことが必要であるというところは共通認識でございまして、そういった共通認識のもとに立ちまして、現在文部省ともいろいろ協議をいたしているところでございます。  それから次に、VANの問題でございますけれども、現在、郵政省におきまして電気通信事業法案を検討中でございます。その電気通信事業法案の中に、VANも取り入れて規制をしていくという考え方を郵政省の方ではとられているわけでございます。  ただ、このVANを含めまして情報処理の問題、情報処理の分野というのは、これから民間の活力が最も発揮されるべき分野であり、技術革新も非常にテンポが速く行われているわけでございまして、私どもといたしましては、そういった民間の活力が自由に発揮できるように、そういう立場に立ってこの法案を考えていくことが必要ではないか、そういうことで郵政省の方にもお話をしているところでございます。
  93. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 大臣のお考えも同じでございますね。
  94. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 同じでございまして、関係省庁との調整という問題が残されておりますけれども通産省考え方をはっきりと示していく方針でございます。
  95. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 質問を終わります。
  96. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これにて安倍基雄君の質疑は終了いたしました。  次に兒玉末男君。
  97. 兒玉末男

    兒玉分科員 通産省にお伺いしたいのでございますが、現在、日本の農業に関することで、オレンジ、牛肉の自由化の問題でアメリカから大変強い要請が起きているわけでございます。  これは、現在の対米関係経済摩擦の一環として農産物が取り上げられているわけでございますが、通産省の発表しました二月分の貿易収支を見ますと、全体で二十一億八千二百万ドルというふうに発表されております。その中で、対米関係が輸出超過二十一億四千百万ドル、こういう数字が出ておりますが、この数字に間違いございませんか。
  98. 杉山弘

    ○杉山政府委員 先生御指摘のとおりであろうかと思います。
  99. 兒玉末男

    兒玉分科員 その輸出超過をもたらした要因といいますか、現実的な取引はどういうものが輸出超過の要因になっているのか、それを簡単にお聞きしたい。
  100. 杉山弘

    ○杉山政府委員 日本からのアメリカへの輸出につきましては、主力は機械製品でございます。自動車、最近ではVTR、電子レンジといったような家庭用の電子機器、それとあと工作機械等の設備資本財といったものもございまして、全般的に機械類が対米輸出の増加の主な要因になっているというふうに理解をいたしております。
  101. 兒玉末男

    兒玉分科員 いろいろな統計によりますと、アメリカから日本に輸出される農産物関係でございますが、大体アメリカの総輸出の四〇%以上を農畜産物関係で占めている、こういうことが言われておりますが、これはどのように理解されていますか。
  102. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ちょっと手元に数字がございませんので、至急に調べまして申し上げます。
  103. 兒玉末男

    兒玉分科員 お願いします。  それで、現在、今月末までに結論を出す農産物で、特に牛肉が約一万トン、それからオレンジが一万五千トンというのが、アメリカからの輸入の上積みの要求でございますが、これに応じなければガットに提訴する、こういうことで非常に強気でございますけれども、アメリカ自身もかなりの輸入制限をやっておって、日本側だけにそういう無理難題を押しつけてガット提訴ということを言っていますが、それを貿易局長としてはどのように御判断されるか、伺いたい。
  104. 杉山弘

    ○杉山政府委員 この点につきましては、農林水産省が主体となって対米交渉に当たっていることは先生御存じのとおりでございまして、私ども政府部内におきましては農林水産省と全く同じ立場でございまして、やはり日本の農業の存立と両立し得る範囲内においてということが大きな前提となっているというふうに理解をいたしております。
  105. 兒玉末男

    兒玉分科員 アメリカは日本の工業製品をたくさん買って、日本はもうかっているのだから農産物を買うのは当たり前ではないか、これは恐らく大統領選挙を絡めた政治的な色彩が大変強いんじゃないかと私は思っていますが、それは別として、仮に日本側が譲歩して一万トンの牛肉と一万五千トンのオレンジの輸入枠拡大を認める、これは仮定の問題でございますが、そうなった場合に貿易収支の面でどの程度の金額が、いわゆる収支の均衡を幾らか緩和するような役目を果たすのか、これについて御説明をいただきたいと思います。
  106. 杉山弘

    ○杉山政府委員 先生お尋ねのような、今回の交渉によってどれだけ枠がふえた場合にどうなるかという問題につきましては、交渉中のことでございますのでそれを前提にしてのお答えは無理でございますが、仮に私ども持っております数字で、五十八年の牛肉、オレンジの輸入数量、価格がございまして、それの平均単価を出しまして、今お話のございましたように、牛肉が一万トンふえたらどうなるか、オレンジについて一万五千トンふえたらどうなるか、これは計算上の問題でございますから極めて簡単に出てまいります。その結果につきましてお答えを申し上げますと、今私が申し上げましたような前提で試算いたしますと、牛肉につきましては約四千万ドル、オレンジにつきましては一千万ドル、合計で約五千万ドル、日本側の通関輸入額がふえるということでございます。
  107. 兒玉末男

    兒玉分科員 この数字から類推しますならば、仮に一万トン、一万五千トンの上乗せをしても、二十一億五千万ドルという輸出超過の数字と比較するならば、さしてアメリカが強硬に言うような収支のバランスを好転させるような数字じゃないじゃないかというふうに思うのですが、御見解を聞かせてください。
  108. 杉山弘

    ○杉山政府委員 数字的に申しますと今先生おっしゃったようなことかと思いますが、私ども理解しておりますところでは、こういった牛肉、オレンジの輸入枠の拡大、ないしはアメリカが言っておりますような自由化といった問題につきましては、日米間の貿易摩擦のいわば象徴的な問題として取り上げられ、アメリカ側は強くこの点に固執をしているというふうに承知をいたしております。
  109. 兒玉末男

    兒玉分科員 これは、中身は農林省の関係でございますのでこの程度にしておきますが、実は十日の当分科会で同僚小川君が指摘をしましたオレンジの輸入割り当てで、その中に適格性を欠く商社が入っているというようなことが指摘されております。これに関連して、恐らく牛肉の場合も幾つかの商社に通産省、農林省が協議して割り当てをするのじゃないかと思うのですが、現在適正な割り当てを受ける商社というのがオレンジの場合何社あるのか、また牛肉は何社あるのか、それについて数字がわかっておればお知らせいただきたい。
  110. 杉山弘

    ○杉山政府委員 オレンジの場合につきましては、小川先生の御質問の中でお答えしておりましたように、全体としては百二十一社、割り当てを直接受けておりますのがそのうち九十六社でございます。  ただ、その中に私どもが割り当ての基本的な原則といたしております、自己の名前と自己の損益計算に基づいてやっていないものについて割り当てをした事実があるのではないかという御指摘がありまして、一部につきましては、まことに遺憾でございますが、私どももそれを認めざるを得ないということでございまして、その前もお話し申し上げましたように、今後はこういうことのないように厳重に割り当での際にチェックをするということをお答えいたしておりますが、このとおりにやってまいりたいと思います。  それから、牛肉につきましては割り当ての対象は三つございまして、一つは畜産振興事業団、これは先生御案内の政府機関でございます。それから二番目は需要者団体に対する需要者割り当てということでやっておりまして、二つほどの組合に対して割り当てをいたしております。それから三番目は、輸入商社に対する割り当てでございますが、私ども現在三十六の輸入商社につきまして割り当てをいたしております。
  111. 兒玉末男

    兒玉分科員 牛肉の場合三つの機構を言われましたが、割り当ての比率はどういうふうになっておるのですか。
  112. 杉山弘

    ○杉山政府委員 輸入割り当ての数字の問題につきましては、原則として外に申し上げていないということでございますので、詳しい数字は御勘弁いただきたいと思いますが、牛肉につきましては、畜産振興事業団がほぼ一元的に輸入をしておるということでございますので、大部分が畜産振興事業団に対する割り当てということになっておりまして、残余が需要業者、商社に対する割り当てになっておるということだけお答えさせていただきたいと思います。
  113. 兒玉末男

    兒玉分科員 先ほどの議員も円高の問題を話しておられましたが、現在オレンジそれから牛肉類の既存の輸入実績というものがございますが、輸入差益といいますか、向こうから仕入れる価格と今度は国内で販売する価格、若干の上乗せをして販売されると思うのですが、その輸入の差益というものは、今円高で二百二十三円ですが、今までの統計では大体トータルでどの程度になっておるのか、教えていただきたいと思います。
  114. 杉山弘

    ○杉山政府委員 先生お尋ねの輸入業者の差益はどのぐらいになるかという点でございますが、今手元にございますところでは、輸入業者の差益ということには厳密にはなりませんが、輸入のCIF価格を前提といたしまして、それに対する輸入諸掛かり、関税等を足す。それから一方では、国内の卸売価格との間から卸売の利益といったものがどれぐらいあるかということを計算してみると、ごく概略でございますが、キログラム当たり百六十円ぐらいというふうに考えます。この中には卸業者の手数料等も入っておりますので、そういう意味では、輸入業者が百六十円程度をそのまま差益として手にするということではないと思いますけれども、卸売業者の手数料がどの程度かということについては、今急なお尋ねでございますので、ちょっと即答はいたしかねます。  以上でございます。
  115. 兒玉末男

    兒玉分科員 今のは牛肉でございますか。(杉山政府委員「はい」と呼ぶ)それではオレンジ関係を含めて、通告してございませんでしたので、後ほど資料を届けていただきたいと思います。
  116. 杉山弘

    ○杉山政府委員 公表できます範囲内で御説明させていただきます。
  117. 兒玉末男

    兒玉分科員 通産省にお伺いしたいわけですが、昨年の十二月、全日本ゴム産業労働組合連合会、ゴム労連から私のところにも、オーツタイヤというものがございまして、自動車タイヤチューブに対する物品課税反対の要望書が参っておるわけです。私もずっと中身を見てみましたが、これは大変国民生活に影響が大きいということで、実は大蔵大臣も同期でございますので、その旨を強く要望したわけでございますが、今日までの経過と今後の対応について、これは基礎産業局でございますね、御説明をいただきたいと存じます。
  118. 井上宣時

    井上説明員 補修用タイヤに対する物品税の課税問題でございますが、昨年、一〇%の課税というお話がございました。自民党の中等でいろいろ御検討いただきまして、最終的には課税はしないということになったわけでございますが、私どもといたしましては、補修用タイヤに対する物品税の課税というのは非常に問題があるという認識でございます。その問題というのは、先生御指摘のように、国民生活に対して非常に大きな影響を与えるということがございますが、特にこのタイヤの業界、メーカーの中で下位のメーカーが中心になって補修用タイヤをつくっている。そういたしますと、担税力の面で問題がございます。あるいは、その補修用タイヤを実際に販売しております販売業者というのは大変零細業者でございます。そういった意味で、担税力の面でもいろいろ問題があるわけでございます。  さらに、税金が実際にかかって転嫁されますと、消費者の方がどうしても補修用タイヤの交換をちゅうちょするというふうな事態も起こりかねませんので、交通安全上の問題もあるというふうなことでございまして、私ども、こういった問題には非常に慎重に対応する必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  119. 兒玉末男

    兒玉分科員 現在、タイヤ類は国内の生産と外国からの輸入ということも言われているのですが、生産と輸入の関係は大体どういうふうな状況になっているのか、お伺いしたいと思います。
  120. 井上宣時

    井上説明員 五十七年の数字でございますが、出荷額が全体で八千百十一億円ということでございますが、それに対しまして輸入額というのは二百五十億円でございます。  なお、八千億円の出荷額の中には輸出も入っておりますが、輸出が三千二百二十八億円ということでございます。
  121. 兒玉末男

    兒玉分科員 確認しますが、生産高が八千百十一億ということですね。輸入が二百五十億、そのうちに輸出が三千二百二十八億ということでございますね。
  122. 井上宣時

    井上説明員 出荷額の中で……。
  123. 兒玉末男

    兒玉分科員 もしこれに政府の考えておるような物品税の課税がなされるとすれば、具体的にどういうような影響を受けると思われるのか、お伺いしたいと思います。
  124. 井上宣時

    井上説明員 物品税の対象として取り上げるということになりましたのは乗用車の関係の補修用でございますが、税金がかかるとすれば百十億程度ということでございます。
  125. 兒玉末男

    兒玉分科員 これは自転車のタイヤ等は全然関係ないのかどうか。
  126. 井上宣時

    井上説明員 入っておりません。
  127. 兒玉末男

    兒玉分科員 今の日本経済情勢、財政情勢から見ても、また自動車関係もかなり多くの税金負担を強いられているわけでございます。自動車連盟からもかなり厳しい反対運動が展開されておりまするが、その中で、タイヤの占める比重というのは非常に高いと思うのですね。ですから、恐らくまた来年度も予算編成の時期に、こういう問題が提起される可能性が強いんじゃないかというふうに考えますが、これについての対応はどのようにお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  128. 井上宣時

    井上説明員 私どもとしては、この課税については慎重に考慮する必要があるという基本的な考え方でございますので、昨年同様の対応をいたしたいと考えております。
  129. 兒玉末男

    兒玉分科員 通産大臣にお伺いいたします。  さっきのオレンジ、牛肉の問題、それから今の国民生活に影響の非常に大きいタイヤ、チューブ等の物品税課税の問題、こういう問題と同時に、自動車連盟の方も恐らく通産大臣の方には同様な要望をしてあると思うのですが、これら諸課税が国民生活に与える影響が非常に大きいし、同時にまた農産物の問題は、工業製品の輸出超過によってそのしわ寄せが農産物の輸入増加、こういう受ける側としては全く理解のできない立場にあるわけでございますが、通産省を所管する大臣として、こういう問題についての御所見を承りたいと思います。
  130. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 第一の問題は、先般小川委員から、オレンジの割り当ての問題についていろいろの御質疑、御意見がございましたけれども、牛肉におきましても事割り当ての問題に関しましては、厳正な調査の上、これを行う所存でございます。  二番目の問題、物品税でございますが、毎年財政厳しい折にこの問題が出てくることはやむを得ないし、また財政当局がこれを出してくるということも当然でございましょう。しかし、国民生活の影響その他を別な意味の大局的なところから判断いたしますれば、これは非常に影響の大きい問題でございますので、我々は我々の立場で考えて適切な処置もしなければならないことは言うまでもございません。  三番目の問題につきましては、もちろん委員の趣旨を生かして、我々考えていかなければならないことと判断いたしております。
  131. 兒玉末男

    兒玉分科員 これは質問を通告してなかったわけでございますが、今ドライバーの間で——二千五百万両のうちの六〇%が勤労者階級、比較的中以下の所得者が持っている。それで、売り渡しするときに車検期間が途中でなくなる。その際に、重量税について車検期間の残の期間については払い戻ししろ、こういう要望が非常に強いわけです。これは、通産省の所管というよりも大蔵省でございますけれども、自動車の販売関係その他製造関係を管理する通産省としてはどういうような御見解をお持ちなのか。なかなか難しい問題かと思いますけれども、御見解を承りたいと思います。
  132. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 大蔵あるいは運輸省関係の所管の問題かとも存じますので、ちょっと私ども判断では申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
  133. 兒玉末男

    兒玉分科員 終わります。
  134. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これにて児玉末男君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ————◇—————     午後零時三十分開議
  135. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業省所管について質疑を続行いたします。草川昭三君。
  136. 草川昭三

    草川分科員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。  まず最初に、ジェトロ関係のことにつきましてお伺いをいたします。今日のように輸入促進のための事業展開で、大規模インポートフェアの開催をジェトロが計画をされてみえると思うのでありますが、五十九年度の予算ではアメリカを対象に事業概要を決めておられますけれども、たまたまこれに呼応いたしまして、私どもの地元でございます名古屋で、商工会議所あるいは県、市が中心になりまして、輸入博覧会の計画があるわけでございます。このことについてはすでに承知をなすっておみえになると思いますけれども、これまで他の地域においてこのような計画の名乗りはないので、ほぼ名古屋でジェトロの大規模インポートフェアの開催も行われるのではないかと思うのでございますが、その点についてまずお伺いをいたします。
  137. 杉山弘

    ○杉山政府委員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘のございましたように、ジェトロといたしましては、昭和五十九年度から製品輸入促進のために大規模インポートフェアを実施するということで、一億三千万円余りの予算要求をいたしております。本件につきましては、先生ただいま御指摘のように、名古屋におきましてワールド・インポート・フェア・ナゴヤ85ということで、外国製品の展示、それから生活技術の交流を目的としたフェアの開催計画が、来年の三月から四月にかけて名古屋港の金城埠頭において開催をしたいという御計画がございました。その一環として、先ほど御説明いたしましたジェトロの大規模インポートフェアをぜひ名古屋で開催をしたいという極めて強い地元の御要望を私ども十分承知をいたしております。現在までのところ、この問題につきましては、国内の他の地域から名古屋のようにぜひにというお誘いはございません。そういう意味で、地元名古屋から非常に強いお誘いをいただいておりますことを私どもとしましても非常に心強く思っております。ただ、本件についてどうするかにつきましては、現在まだ予算が審議中のことでもございますので、正式決定ということまでにはまだ時間がかかるということで御了解をいただきたいと存じます。
  138. 草川昭三

    草川分科員 もう一点お伺いをいたしますが、このジェトロの場合は、今回出品の対象者としてアメリカということになっておるわけでございますが、米国側の方の希望というのですか対応はどのようになっておるのか、お伺いします。
  139. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、予算案が衆議院において審議をされている段階にございますので、ジェトロといたしましては、まだ公式にアメリカ側と交渉をするという立場にございませんけれども、いろいろな情報をとるべく、今ジェトロとしては準備をいたしている段階でございます。私どもの計画といたしましては、来年度はアメリカについて実施をし、その次の年度に予算がとれれば、これについてはまだ他の国、例えばヨーロッパの国を対象に開きたいということを考えているわけでございますが、一部には、そういう国を特定しないで全体として出品を求めたらどうか、こういうような意見もございますので、その辺も含めまして現在検討中ということでございます。
  140. 草川昭三

    草川分科員 せっかくの計画でございますから、ひとつこれが成功するように、ぜひ私どももお願いをしたい、こう思うわけでございます。  それからもう一つ通産省にお伺いをします。昭和五十九年度の予算要求の中で、ファインセラミックスの試験研究、調査研究というので予算がついておりますし、同じくファインセラミックスの標準化に関する調査研究ということで千三百万の予算がついておるわけでございますが、これが具体的にどのような構想で規模で進んでいくのか、これまた私どもも中部地域を想定したこのセンターの受け入れについても非常な関心があるところでございますのでお伺いをしたい、こう思います。
  141. 黒田真

    ○黒田政府委員 お答えいたします。  ファインセラミックスにつきましては、新しい材料ということで各方面から非常な期待を集めておるところでございまして、今後産業としてこれが発展していくというためには、新しい素材でございますので、その素材の特徴を統一的にあらわすような一種の規格づくりと申しましょうか、あるいはそのつくられた規格に基づいて第三者機関が検査をするというようなことが必要になってくるだろうということで、試験センターを設けるべきだ、ファインセラミックス産業の発展のためにはその前提条件として統一的な試験センターを設けようという話が従来からあるわけでございます。特に、従来から窯業の中心地でございます中部地域において、ぜひ自分たちのところでそれをつくりたいという御要望があることも十分承知しております。そういうような背景を踏まえまして、私どもといたしましても、そういった試験センターとなるべき機関設立の必要性があるだろうということで、現在御審議をいただいております五十九年度予算案の中に、ファインセラミックス試験センター調査研究に関する予算ということでお願いをしております。  しからばその規模なり構想はどういうことかということでございますが、私どもといたしましては、この予算が成立いたしました暁には、このお金を使いまして試験センターの組織、業務内容、その他ほかの機関とどういうつながりを持つのが適当かどうか、あるいは規模は最終的にどうするのか、あるいは段階的にどうするのか、また具体的に設置の場所はどこがいいかというような、あらゆることを含めました具体的な構想づくりを、実はこの予算を利用して詰めていきたい。五十九年度を通じて詰めてまいりまして、そしてその結果を受けて六十年度から具体的にそれが実現に入る、こういうような段取りで考えたらどうだろうかというふうに考えているわけでございます。  もう一つ御指摘の、その標準化のための予算というものは、そもそもそういう仕事が必要だということで、これは工業技術院の方でございますけれども、従来からそういう研究をしておるということでございますので、もしこの試験センターが活動に入れば、当然そういった業務に関して大きなかかわり合いを持ってくる、こういうことになろうかと思っております。
  142. 草川昭三

    草川分科員 現在のような状況でございますから、余り立ち入った先走った質問もいかがかとは思うのでございますけれども、予算が成立し、本年度中のいつごろになると、例えば場所の設定等、まあ想定でございますけれども、非常に地元は熱意が強いわけでございますので、愛知県になるのか岐阜県になるのか、さまざまな問題があると思うのですが、いつごろになれば煮詰まるのでしょうか、その点についての意見を聞きたいと思います。
  143. 黒田真

    ○黒田政府委員 なかなかお答えしにくい要素もいろいろあるかと思いますが、私どもといたしましては、五十九年度中に腹案をつくり上げて、六十年度に入ってからできるだけ早く詳細設計あるいはもう具体的な建設に着手するというふうな緊急性があるように思っております。したがいまして、場所等の問題は相当重要な要素になろうかと思いますので、いつということをいまの段階でなかなか申し上げにくい点はございますけれども、できるだけ早い段階で絞り込まれるべきもののように私は考える次第でございます。
  144. 草川昭三

    草川分科員 では、この点についてはこれで終わりまして、小型ボイラーの問題についてお伺いをしたいと思います。  実は、私はこの質問に当たりまして、昨年の十月六日の科学技術委員会で同様の問題を提起をしておるわけでございますが、問題の趣旨は当然のことながら大気汚染防止法とボイラーとの関係というのがあるわけでございまして、この大気汚染防止法の規制を逃れることを目的とする小型ボイラーの多缶設置の問題を取り上げました。いわゆる一つのボイラーで蒸気を発生させるためにはそれなりの燃料を消費するわけでございますが、その重油の消費に当たりまして、排煙問題で大気汚染防止法という法律に抵触をするわけでございます。そこでこの大気汚染防止法の規制から逃れるために、小さなボイラーを一カ所に集中してたくさん設置をすれば、一つのボイラーに対して規制の基準というのがあるわけでありますから、その規制から逃れることができるというので、一つのボイラーをたくさんのボイラーに振り分けをしてやろうということになりまして、最近非常にこの小型ボイラーの多缶設置ということが話題になって、産業界にも混乱を招いているわけでございます。例えば、ここに私は新聞、これは経済新聞でございますが、「今日から多缶派」もうこれが一つの大きなスローガンになっておるわけでございまして、昔のように一つのボイラーを使ってちゃだめですよ、小さなボイラーをたくさん並べることによって大気汚染防止法を逃れることができますよという、こういうことになっておるわけであります。  そこで私、科学技術の委員会でも問題提起をいたしまして、通産省、これはまあボイラーメーカーの監督をする所管のお役所、あるいは大気汚染防止法というのは環境庁、それからこのボイラーには当然のことながらメンテナンスというのですか、維持管理をするためにボイラー技士というのが労働省の方から義務づけをされておるわけでございますから、労働省にもどのような対応を立てられるのか、いろいろとお伺いをしたことがあるわけであります。  そこでまず、この私の質問に当たりまして、大気汚染防止法の関係で環境庁に質問をするわけでございますが、今このボイラーは伝熱面積で大気汚染防止法の規制が行われておると思うのでございますが、その点はどうなっておるのかお伺いをしたいと思います。
  145. 加藤三郎

    ○加藤説明員 先生お尋ねのボイラーが大気汚染防止法上どういう規模について規制がなされるかという点でございますが、大気汚染防止法上、伝熱面積十平米以上のものについて規制がかかってございます。
  146. 草川昭三

    草川分科員 同じボイラーというよりも、かまのことでございますけれども、例えば石油の精製の用に供する触媒の再生塔だとか、石油ガス洗浄装置に附属する硫黄回収装置のうちの燃焼炉だとか、その他いろいろな炉があるわけでございますが、その炉の方は一時間当たりの重油換算の油の量によって規制をされておるのではないでしょうか。その点についてどうですか。
  147. 加藤三郎

    ○加藤説明員 確かに大気汚染防止法上のばい煙発生施設では、先生御指摘のように、例えば重油換算、そういった油の使用量、燃料使用量というものを一つの指標にして規制を行っているという事実はございます。しかしボイラーにつきましては、先ほど申しましたように、伝熱面積で規制をいたしているわけでございます。
  148. 草川昭三

    草川分科員 それで今のガスの発生炉だとか加熱炉だとか焼成炉だとか、溶融炉、乾燥炉、いろいろなのがありますけれども、大体こちらの方は重油換算で一時間五十リッター以上が大気汚染防止法の対象になる、こう理解してよろしゅうございますか。これはそれぞれのあれによって違うと思いますけれども
  149. 加藤三郎

    ○加藤説明員 規模によりまた施設によって違ってまいりますが、そういうものもございます。
  150. 草川昭三

    草川分科員 いま御答弁がありましたように、ボイラーだけ十平米以上という一つの規制になっておるわけです。そこで最近九・九という、九・九平米以下の伝熱面積のボイラーが非常にたくさん売られているわけですが、通産省はどのようにこの点を把握しておみえになりますか。
  151. 志賀学

    志賀(学)政府委員 九・九平米という、そういう分類に基づくデータはちょっと持ち合わせておりませんけれども、ただ、多缶設置ボイラーに当たります貫流ボイラーの生産状況で見ますと、かなり大気汚染防止法がかかりません貫流ボイラーの生産が伸びているのではないかというふうに推測できると思います。
  152. 草川昭三

    草川分科員 ですから、通産省としても、かなり伸びておるだろうという程度の把握をしておみえになるわけです。  これは労働省はどうでしょう。ボイラー技士の問題に関係するわけですが、このような点についてどの程度理解をしておみえになるのか。あるいは九・九ということになると、当然のことながらこれは届け出が要らなくなるわけでありますし、それから集じん装置等もこれは不要ということになるわけでございますが、ボイラーの安全性評価について労働省はこの件についてどう対応をしておみえになりますか。
  153. 加来利一

    ○加来説明員 労働省といたしましては、先日の委員会でもお答えしたのでございますけれども、こういった小さいボイラーにつきましては数字としての把握は現在のところやっておりませんので、遺憾ながらよくわからないのですが、多数の設置がなされつつあるということは承知しているわけでございます。  その点につきましては、確かにボイラー技士の選任その他については伝熱面積を中心として現在規制をしておりますので、その部分について選任の必要がない、こういうことになっていることも事実でございます。  それらの点につきまして、さらにはボイラーが新たな技術革新の中で新しい進歩も遂げてきておりますので、それらの点もあわせて踏まえまして、ボイラーの安全性評価につきましては労働省に先生方の委員会を設けましてやってきておったわけでございますけれども、その委員会の御報告が出まして、これは技術的な面からのみの御報告でございますので、それをさらに深めるという意味で現在検討を続けているところでございます。
  154. 草川昭三

    草川分科員 ことしになって二月ですか、ボイラーの安全対策委員会というのは関係団体、あるいは昨年の十月に安全性評価の研究会を学識経験者を集めてやっておみえになりますが、私も現場で働いていた経験から、今日の技術革新ということを十分承知をしておりまして、昔の基準で必ずしもボイラーの技士が要るとかメンテが必要だとは言いません。小型ボイラーがそれぞれ立派に伸びていくことについて反対をする気持ちは全然ございませんけれども、私の主張というのは、例えばクリーニング屋さんだとか町のちょっとしたいろいろなボイラーを必要とする企業が小さな小型ボイラーを使うということは非常にいいことですから、それはどんどん伸びたっていいわけです。ところが、私が言いたいのは、大企業が、あるいは大きな施設が、大気汚染防止法の例えば汚染負荷量賦課金というのがございますけれども、そういう費用を免れるためにボイラーの多缶設置で大気汚染防止法を逃れようとする風潮が最近非常に強くなってきておるということを憂うわけですから、少なくとも通産省はまず実態の把握をする必要があると私は思うのです。  同時に労働省の方もそれに合わせて、本当に災害がないのかどうか。今は無届けでいいわけですから、災害が発生しようとしまいとつかみようがないわけです。だから労働省も、少なくともボイラーの多缶設置という現状だけはつかんでいきませんと、何せ届け出の必要がないわけですから、十平米以下、九・九でいくわけですから、これはつかみようがないのでございますから、明らかにこの法を逃れるためのあり方ということについてはいま少し私は考えを変える必要があると思うのですが、その点まず通産省からお伺いしましょうか、どういうように考えておられますか。
  155. 志賀学

    志賀(学)政府委員 昨年の十月に、先生からこの多缶設置の問題について御質問をいただきました。特にそのときに先生から御指摘がございましたのは、大気汚染防止法に抵触しない、規定の外にあるということをセールスポイントにして販売活動をするというようなことは大変論外ではないか、こういうような御趣旨の御質問でございました。それに対しまして私どもの方から、そのような宣伝活動を自粛するように指導するということを申し上げたわけでございますけれども、この点について申し上げますと、昨年の十月三十一日付で、文書によりまして、小型貫流ボイラーの多缶設置に関しまして、日本産業機械工業会、日本ボイラー・圧力容器工業組合、全国貫流ボイラー製造協会、この三団体に対しまして、そのような宣伝活動を自粛するように指導をいたしました。これらの関係団体からはこの指導に従う旨の回答を得ております。私どもといたしまして、この問題についてさらに要すればこの指導を行いますとともに、実情の把握に努めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  156. 草川昭三

    草川分科員 今、十月三十一日にそのような指導をされたというのですが、私が今持っておる日本経済新聞の広告でございますが、これは一月二十三日なんですよ。一月二十二日に、これは細かい字で書いてありますが、今言ったように「今日から多缶派」と言って、相変わらず多缶派の宣伝をしておるわけです。内容を見ていきますと、それなりのいろいろな理屈がありますけれども、例えば、これはガスの方ではございますけれども、こういう文章もあるんですね。「小、よく大を制す」こう言うわけですよ。小よく大を制するわけですから、小型のボイラーがでかいボイラーを圧する、能力で圧するのではなくて多缶設置で逃れるという意味を「小、よく大を制す」、こう言っておるわけです。それから多缶設置十平米未満であれば、例のC重油に必要な汚染賦課金がかかりません、こう書いてあるわけですよ。だから汚染賦課金がかからないというのは、これはまた後ほど環境庁にお伺いをいたしますけれども、こういう宣伝をしておることがいいかどうかということは少しまた後で通産省にお伺いいたしますが、汚染負荷量の賦課金というものは、やはり十平米以下の場合の多缶設置は払わなくていいものかどうか。一カ所で少なくとも十とか二十とかあると思うのでございますけれども、あれば少なくとも汚染負荷量賦課金は払わなければいけないと思うのですが、その点どうお考えになられますか。
  157. 加藤三郎

    ○加藤説明員 公害健康被害補償法につきましては、私ども大気保全局直接担当いたしておりませんのでつまびらかにいたしませんが、ただ、私も知っておりますことは、少なくともばい煙発生施設でなければ賦課金の対象にはならないというふうに承知をいたしております。
  158. 草川昭三

    草川分科員 ですから私が申し上げたいのは、だからこういう宣伝をすると思うんですよ。しかし、少なくとも貫流ボイラーと炉筒煙管ボイラーと炉筒ボイラー等を比較をしてまいりますと、例えば今問題になっている十平米以下の場合は、九・七二平米で売るわけですけれども、蒸気の発生量は一トン二百六十と仮定をいたします。炉筒ボイラーの方も同じく一トンといたしますと、重油の消費量は実は小型の方はB重油で一時間当たり九十九・七キログラム消費をするわけです。炉筒の方は一時間当たり七十四・六、油の使い方が少ないわけです。ところが、こちらの方は伝熱面積が十二平米ということですから、当然かかるわけでございまして、ボイラーマンは要ります。片一方は伝熱面積が九・七二という売り込みだけのために、ボイラーマンは要りません。同時に定期検査も要らないわけです。片一方は定期検査が要るわけです。それから大気汚染防止法に基づく届け出が片一方は要るわけですし、片一方は届け出が要らないわけです。ですから、多缶設置ということで大気汚染防止法を逃れていくわけであります。この点は、通産省としてはそのような宣伝をしてはだめだと言っておられますけれども、一月二十三日付のこの宣伝等では明らかに小型貫流ボイラーのため定期検査が不要であるというような言い方がされておりますし、それから一つのモデルとして十一基のボイラーを一カ所に集中設置させたのはもくろみどおり成功したというような体験発表がここに出ておるわけですし、七名もボイラーマンが要らなくなりました、人件費もこのため二千五百万浮いてしまいました、非常にいいことずくめの宣伝というのが現実に日本の一流の新聞に載っておるわけであります。ですから通産省、この通達がなめられておるのではないかということが一つでございますし、少しこの実態を本当に調査をしてもらいたいということ、通産省にもう一度指導の徹底化ということを申し上げておきたいと思うのですが、その点はどういう御答弁になるのでしょうか。
  159. 志賀学

    志賀(学)政府委員 ただいま先生から、一月にそういうものが出ておるという御指摘がございまして、私も大変残念であるというふうに思います。さらにこの指導の徹底を期してまいりたいというふうに存じます。
  160. 草川昭三

    草川分科員 では今度は環境庁の方へお伺いしますが、基本的に問題は何かといいますと、先ほど言いましたようにこの大気汚染防止法の施行規則にございますところの伝熱面積十平方メートル以上であるというのが一番ひっかかるところだと思うのです。これをほかの炉のように一時間当たりの重油換算なり何らかの方法で変えれば、これはもう問題ないことでございますから、あとは技術革新でどのような対応をとられようと自由だと思うのでございますけれども、まずここを変えることが必要だと思うのです。これは前回も繰り返し言っておることでございますが、一体いつごろこのことについて取り組むのか、あるいはこれを直そうとするのかお伺いをしたい、こういうふうに思います。
  161. 加藤三郎

    ○加藤説明員 昨年の十月に先生お尋ねがありましたときにも私ども申し上げましたように、環境庁としてはこの問題に重大な関心を持って、既に内部的に検討を開始いたしております。今先生具体的に、例えば重油換算といったものを使うべきでないか、こういう御意見もございましたが、私どもそういう点も踏まえまして、そういう点も一つの案といたしまして、そのほかの方法もあわせ考えまして、できるだけ早急にこの問題に取り組んでまいりたいと思っております。
  162. 草川昭三

    草川分科員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、通産省もぜひ実態をつかんでいただき、またこれはフォローをしていただいて報告を求めたいと思いますし、こういう近代工業国家でございますから、法規制を逃れるようなことを宣伝しながらやるということは邪道だと思うので、そういうことのないように、また労働省の方も雇用の面からも真剣な対応を立てていただきたい。環境庁の方も今の答弁をさらに一層具体化するようにしていただきたいことを申し上げまして、私の質問を終わりたい、こう思います。どうもありがとうございました。
  163. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これにて草川昭三君の質疑は終了いたしました。  次に、関晴正君。
  164. 関晴正

    ○関分科員 公正取引委員長お見えになっておられますか。
  165. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 はい、来ておられます。
  166. 関晴正

    ○関分科員 さきに公正取引委員会がお出しになられました談合にかかわるガイドライン、このことについて伺っておきたいと思うわけであります。  このガイドラインは、談合をしろと言わんばかりのガイドラインと受け取られる向きも相当にあるわけであります。公正取引委員会というのは談合してはならないんだということを取り締まる機関だと私は思っておるのですが、これだと取り締まりが容易でなくなっちゃうんじゃないだろうか。  先般、建設委員会におきまして、あなたの方の担当の方からいろいろお話は伺いました。その際いろいろ申し上げておきましたけれども、何せ責任者でもありませんのでいろいろ問うても問題がうまく答えられません。公正取引委員会の最高の責任者であるあなたは、このガイドラインによって公正取引がうまくなされるもの、談合は余計に行われなくなったものなり、こうお考えになってこれをお出しになったのか。それとも自民党の強い要請、権力の要請によって、このままでは自分の地位も危なくなるなというところから、これで逃げていかなければならないと思ってこうした内容のものにせざるを得なかったのか。権力に、とにかく威張り散らしておる自民党の諸君が何と言おうと、公正取引委員会の任務というものは国民に忠実であるべき存在機関なんだ。そういう点からいくならば、私は談合の道を開くことを容易にするようなガイドラインじゃなくて、談合の道は閉ざす、断ち切る、そういう内容のものにしておかなければならないんじゃないだろうか。このままでは、自民党はもう法律が悪いならば法律まで直すんだといって迫ったと聞くわけなんでありまして、そういう点において、政府とそれからあなたの方と、それから自民党と、それぞれの諸君がやっとまとめ上げたものなり、こう、また言っているわけであります。結論から言うならば、あなたはこれによって取引の公正が余計に期せられる、こうお思いになっておるか、むしろ談合を取り締まるのに容易でなくなったものなり、こう思っておられるのか、どこに向けてこのガイドラインの存在価値というものを認識されておられるのか、そういう点について、ひとつ責任者としての御答弁をいただきたいと思います。
  167. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 二月二十一日に公表いたしました「公共工事に係る建設業における事業者団体の諸活動に関する独占禁止法上の指針」でございますが、これは、経緯は既に建設委員会等で私ども事務局から申し上げておりますので御承知だと思います。建設業の、非常に中小企業が多くてなかなか法の遵守につきましても法令の御認識が十分いかない。そういう点から、法をよく御存じないために法の違反が起こってまいるということでは大変残念だというふうに思います。  それから第二に、独占禁止法は、よく委員承知のように、事後規制ということを本来の建前にしておりまして、違反がありましたら、それを調査をいたしまして排除勧告をいたすわけでございます。そういう法体系をとっておりますけれども、より積極的に各事業者または事業者団体が法の趣旨をよく理解していただいて、自発的に法に従って、独占禁止法に従って事業活動を営んでいただくことができるようにするのがまた大事なことだと思います。そういう意味で五十四年ぐらいから各般のガイドラインを出してまいりまして、なるべく広い範囲の方々に、独占禁止法上具体的にどういうことがいけないので、どういうことは許されるのだというようなことを、いろいろな局面でお示しをしてまいりました。  五十四年の八月に出しました「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」、これは十項目、六十三の細かい項目に分けて、事業者団体がやっていい悪いという行為を一々書いてあるわけでございます。内容はよく御承知だと思います。それの中に、最低入札価格または構成事業者別の入札価格等を決定すること、それから「受注の配分又は受注予定者若しくは受注予定者の選定方法の決定を行うこと。」「入札、見積合わせ等への参加を制限すること。」それは原則として違反になるということがはっきり書いてございまして、先ほどお尋ねがございましたが、今回の二月二十一日の独占禁止法上の指針も何らそれを変更しておりません。  そういう意味で、いわゆる談合、入札予定者を決定するまたは最低入札価格を決定する。そういう意味の談合が違法であることは、このガイドラインが出る前であろうと現在であろうと同じであります。もちろん、私どもの仕事は独占禁止法、下請法、景表法というものを忠実に施行してまいることであるわけでございますから、その職責を今後とも十分守ってまいりたいと思います。  ただ、ここで繰り返しになりますけれども申し上げておきたいと思いますのは、非常に広い範囲で、比較的業態の小さい方もまざっておられますから、そういう方々が御自分の業態の言葉、自分の業態でなさるところのいろいろな事業活動、そういうものに即して御理解いただけるようなものを、やはり五十万、雇用でいいますと五百万というような方々が法を知らずに動かれるということでは問題でございます。そこで、そこを周知願いたいというお願いを込めて発表したわけでございまして、これによって一般の理解が進み、公共工事の入札受注に関連して、より適法な活動ができるようになっていただくものと私どもは確信をいたしております。そのように今後とも指導を続けていきたいと思います。  ただ、申し上げるまでもないことでございますけれども、今後いわゆる入札談合というようなことがありました場合には、それはもちろん厳正に対処してまいることは申し上げるまでもないわけであります。
  168. 関晴正

    ○関分科員 私の聞いていることでお答えのないところ、いわゆる自民党が法律の改正までせざるを得ないといって迫られた、そういうことについて、あなた方の方ではこれを受けて、そうしてここまででぎりぎりだ、これ以上はとても、そうおっしゃっても無理だ、こうなったのか、それとも、自民党はそんなことは何もお話にならなくて、あなた方の方で自主的にこれをお決めになったのか。この間の委員会でも、自民党はどう直せ、どうしてくれと言うたかと言ってもちっとも答えてくれない。しかし、既にいろいろなデータの中にも、建設業者の場合は談合とは言わぬけれども、そういうようなことを認めてもらわなければ困るんだ、認めてくれなければ法律改正でもしてもらわなければ困るんだ、こう言っておられるわけです。そういうようなことについて公正取引委員会としては、そんなばかなことはない、こう言ってけ飛ばしたのか、そうおっしゃるけれども、しかしここが限度でございますと言って、妥協の産物でここまできたのか、そういう公正取引委員会のガイドラインが談合によって生まれたものなんじゃないだろうかという気がしてならないのであります。談合を取り締まるものが談合したんじゃないか、この辺ひとつきちんとわかるようにお答えできたらしてください。ここに疑点があるわけです。
  169. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 一昨年になりますか、地方の建設業団体に係る独占禁止法違反事件の後、いわゆる建設入札談合問題につきまして相当社会的にいろいろな意見が出たことはよく承知しております。そういう意見を踏まえまして、私、先ほどもお答え申し上げましたように、事業者団体または事業者の家族の方々に具体的にわかりよい形で指針をお示しすることが何より大事だということを考えて、この作業をやったわけでございます。その間、例えば建設業、建設省、これは発注官庁の代表という意味で建設省、また建設業者の監督官庁という意味での建設省、それから地方公共団体、それからさらには公共企業体、学識経験者、それから建設業団体、そういう所々方々から御意見を伺いまして、発注手続につきましても私ども詳細に勉強いたしたわけでございますし、それから発注の実態についてもよく勉強をして要望も聞くというようなことはしたわけでございますが、それはすべて私が冒頭申し上げました趣旨に即して、公正取引委員会事務局として、また公正取引委員会として必要な知識を網羅するためにやったわけであります。  独占禁止法につきまして改正した方がいいのではないか、緩和するような改正が必要であるという御意見がしばしばございます。これは昔から今まであるわけでございますけれども国民経済の健全な運営、国民生活の発展のために、独占禁止法によって効率の高い経済を維持していくことが何よりも大事だ、これが私どもの信念でございます。もちろんいろんな御意見のあることは当然あるわけでございますけれども、そういう意見に対しましては常にそういうふうに申し上げてきておりますので、私、今回公表いたしました建設ガイドラインを決めてまいります過程でいろいろな御意見を伺ったことは事実でありますが、それはあくまでも建設業における発注手続上の実態や要望を伺う、それによってわかりよい、守りやすいガイドラインをつくるということにあるわけで、守りやすいという言葉を使いましたので、あるいは誤解をいただくといけませんので一言つけ加えさせていただきますと、それはかつて五十四年八月の一般ガイドラインで、これはあまねく事業者団体に対して、やっていい行為と悪い行為、場合によっては違反になる行為というものを六十三項目示したわけでありますが、それを踏まえてそれの延長線上につくったわけでありますから、事業者団体が行う行為の独占禁止法上の評価としては同じ考え方で貫いてきておるわけでございます。
  170. 関晴正

    ○関分科員 過ぎる言葉で表現しておる部面があるかと思います。だがしかし、公正取引委員会が唯一の国民の期待と信頼にこたえる公正な取引についての厳正な監督機関なんです。私は、この監督機関のおしまいの言葉が実は感心してないのです。  それは、「競争入札において、一定のルールを定める等により受注予定者又は入札価格を決定したりするようなこととならない限り、独占禁止法に違反することとはならない。」非常によく言っているようですけれども、この表現は、逆に言えば一定のルールを定めさえしなければ何をしてもいいんだという論理につながるわけですよ。とめているようで、とめていない。これは非常に重要な表現だと私は思うのです。どうしてこういうことにしたんだろうか。むしろ、ならないというよりはなる、こういうことをすると、これはみんな違反ですよ、こういかなきゃならないものをここで逃がしているんじゃないだろうか、こう思います。  でも時間がありませんからこれ以上論争はしません。ガイドラインのまたガイドラインを出さねばならなくなるようなものではないだろうかと私は見ているわけです。そういう点について、あなた方が談合を見逃す、わからないようにちょうどよくやっておけなんというような姿勢でこうしたものを出すはずはないとは思いながら、思いながら、ここには相当の癒着を感ずることだけは申し上げておかなきゃならない。ひとつ、そうも言われている状態でありますから、これが出されてそうして緩んだなんというようなことにはならないのだということについて、十分機能を発揮してこの後も臨んでいただくことだけを希望申し上げておきます。公取の方はよろしゅうございます。  次、石油公団総裁、お見えになっていますか。
  171. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 見えておられます。
  172. 関晴正

    ○関分科員 総裁、ひとつお座りください。私はきょう、石油公団の不祥事件があるものだから、ぜひ総裁に出てもらわなきゃならない、こう思いまして求めておったのだけれども、なかなか総裁が出られない、こう言うのですね。国会が重要な予算の審議をしている中に出てほしいというのに、何だかんだと理屈をつけて出まい出まいとするなんという姿勢は適当ではない。呼ばれたなら、呼ばれなくても迷惑をかけたときなら出かけてきて、いや、いい機会を与えてくれました、こうあるべきではないかと思う。  そういう点において、まず任命権者であるところの通産大臣、それから任命を受けて総裁についているところの総裁、このお二人からそれぞれ国会が呼んでも来ないなんというような態度でいいのかどうか、呼ばれたらいつでも参りますという姿勢でなきゃならないと私は思うのだが、そういう点をひとつ先にお答えをいただければと思います。
  173. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 おっしゃるとおりと承知しておりますけれども、外交案件か何かございまして、それでちょっと出席が不可能であったようでございますので、御了承願いたいと思います。
  174. 関晴正

    ○関分科員 答えにならないな、通産大臣。もう少しきちんとやれよ。
  175. 和田敏信

    ○和田参考人 国会の御審議、国政最高の機関であるということはよく承知しております。  先般お呼びいただきました際には、ちょうど中国との交渉事がございまして欠席をしたのでございますが、本日はフランスのトタールの副社長が、たしか二時半だったと思いますが参りまして、これは各所におきまして石油公団と協力して作業を実施しておりますところの非常に国際的な有名な機関でございまして、できるだけ時間をずらせまして、そして国会の御審議のお求めに応じまして伺わなければならないということは重々よく承知しております。従来とも最善の努力をいたしたのでございますが、たまたまうまくミートいたしませんで欠席をいたしましたが、今後御指摘のようにお話の筋がある際には、喜んでというわけじゃございませんけれども、全力を尽くして参りたいと思います。  ただ、非常に多岐にわたる殊に技術的な問題に関しましては必ずしも、私が全責任をとるものではございますが、先生のような御専門の方々の御質問に対してはその問題に関して十分にお答え得るかどうか疑問の節もありますので、担当の理事をして答弁をせしめることはお許しいただきたいと思います。
  176. 関晴正

    ○関分科員 大臣の答弁に時間をかければまた時間がなくなるが、とにかく大臣が任命しているんですからね。大臣が任命しているのはまた大臣の用足しに協力しているわけなんだから、国会において出てほしいというならば何をおいても出てくる、そういうふうにしておくものだ、私はこう思う。この間、実はあの備蓄タンクの問題でいろいろ不祥事があったものだから、責任者に出てもらおう、中国の方との御相談で出られません。きょうは今度は、またその備蓄タンクの油漏れがあった事件ですよ、今度はフランスとの外交日程があるので出られません。これだというと、石油公団の総裁というのはしょっちゅう外国人との交際ばかりして、国民の審議機関には出てこなくてもいいような認識でおるのじゃないだろうかとも思いますので、これはやっぱり認識を改めてもらいたい。望んでおきます。  そこで申し上げたいことは、あのむつ小川原につくられた備蓄タンクには不正建築物、不等沈下というようなものが見られて、しかも基準を超えるようなタンクまで発生して、何のために多額の金をかけてつくったのかと思われるような実態が出てきているわけです。しかし、きょうはそのうちの、十二月の二十三日から言うなれば非常ベルが鳴って、そうして異常な状態を示すようなことがあったにもかかわらず、その翌日に今度は異常な噴出があった、油漏れがあった。その油漏れがあったにもかかわらず、それをだれにも知らせない。知らせないこと三日間ですよ。二十四日、二十五日、二十六日。しかも、ただの油漏れじゃありませんよ。量にして四十七キロというんでしょう。ドラム缶にするなら二百二十本以上でしょう。それほどの量が出て、そうして三日も隠しておいて知らぬふりをしているというのは一体これは何だ。これほどの迷惑をかけていながら総裁が出てもこないなんという格好は一体何です。何にも悪いことをしたと思っていないんでしょう、あなた。迷惑をかけたという気があれば当然出てくるべきでしょう。何で三日間も隠したんです。また、どうしてこういう事故が発生をしたんです。  わざわざ十二月の十六日には加温作業というものをした。十六日に加温作業をして、一週間たった二十三日に、夜中に異常を示すベルが鳴った。そうして翌日に漏れが発生した。何のために発生したかも、どこに発生したかも知らないままになっている。もっとも十二月の二十四日と言えばクリスマスの晩でもあるものだから、人手も不足になっていたかもしれませんよ。そこまでは問おうとは思いません。だが、あれは近代技術の最高で、不安だとか危険だとかというものは与えませんよと言ってつくったものでしょう。油漏れがあったならば、どこかで油漏れを示すようなベルが鳴る。あるはずですよ。鳴っていても、次の日に、こうしたものが発生してもわからないというんだ。例を言うならば、泥棒がいますよと知らせていっても、隠れている泥棒を見つけられないまま大変なものを盗まれたと言うのと異ならないでしょう、この表現において。何と間抜けなものだろうなと言わざるを得ない。青森県のむつ小川原は、少しぐらい油漏れがあったって広いところだからいいと思ってやっているかもしれませんよ。人を人だと思ってない構えがあるから、そんなことになっているんじゃないの。一体何です、こんなこと。そういうような迷惑をかけておいても、むつ小川原開発に手伝いしているんだからいいだろうなんという、たかをくくった気持ちでお座りになっているとするならば総裁、これは総裁として不適当ですよ。  しかも、あなたの方の理事、隣に座っている理事が、二十六日の日に私のところにあいさつに来ているんですよ。関先生、当選おめでとうございます。私はあなたに、おめでとうございますと言われるほどのこともないんだよ。あなた、ちゃんとやるよ、こう言ったよ。その日に油漏れのことが出てきているわけですよ。御当人承知の上で、私のところへ何にも油漏れがあって御迷惑しましたという話をしない。関先生当選おめでとうございます。言おうと思ったけれども人がおって言わないで帰ったと言うんですが、人がおろうと何がおろうと、迷惑したと思えばこんなのは言わなければならぬ。私はうちへ帰ってテレビで知ったんですよ。きょうは特に理事が、総裁でなくても何とか私で答弁しますと言った。あなた今、私にしかられる人なんだよ。しかられる人が、自分自分をしかるなんというばかげたやりとりはないんだ。おまえさんより偉い人を出してもらうしかないんだ。こう言ってあなたをかばうわけですよ。いい忠臣ですよ、あなたにとっては。でもこれは、国民行政からいけばちっともありがたくない。何でこうした事故が発生したのか。それになぜこんなことを隠しておいたのか。十六日の日に加温作業をしていながら、前の二十三日の夜中にベルが鳴って示していながら、どうして二十四日に大量の油漏れがあっても知らなかったのか。これじゃおちおち夜も眠れぬじゃないですか。この問題について総裁から、それからまた担当理事からひとつお答えください。
  177. 和田敏信

    ○和田参考人 むつ小川原基地は大量の原油を備蓄する基地でございますので、かねてからその安全確保を図るよう全力を尽くしてきたところでございますが、今回御指摘のような操作のミスによって事故が発生したことを極めて遺憾に思っております。  公団といたしましては、会社から事故発生の通報を受けました後に、直ちに操業体制の総点検を指示いたしますとともに、同社の中核会社である東亜燃料工業に対しまして点検を要請し、作業管理の改善等所要の措置を講じてきたところでございます。その結果、事故処理は一月中に終了いたしまして、関係当局の御了解のもとに先般オイルインを実施したところでございます。  事故後、当公団の担当理事が地元の県、町、村その他関係当局を往訪いたしまして、公団として極めて遺憾であるという意を表明いたしますとともに、安全問題につきましてはさらに会社に強い要請を重ねていきたい旨表明をいたしております。また、国情会社社長さんも数回にわたり地元当局を訪問されまして、極めて遺憾であったという意向を表明されますとともに、事故の対応について報告を行ってきた旨を承知いたしております。  先生御当選なされた日の前後に今回の事故があったわけでございまして、私ども雪の深いところにおきまして起きました事故に関しまして、直ちにその事故の質なり幅なりあるいはその将来の影響等に関しまして、会社側におきまして現場におきましてその探求に努めだということを承知しておりますが、何と申しましても、安全の問題に関しましては会社自体が事故が生じました際に全力を挙げてその時点における調査をするという気持ちはありがたいのでございますが、同時にそのために消防その他関係当局への通報がおくれるということは、やはり最大の将来の損失を生じかねないところでございますので、将来とも、会社の御調査はもとよりのことでございますが、何がありましても、細かいことだと仮に当初思われるような問題でございましても、何か事故があれば即刻関係当局方面へとりあえず何をおいても通報するようにということを一つの最大の眼目として今後会社の方へ御要請を続けていきたい、このように考えております。
  178. 関晴正

    ○関分科員 あと時間がありませんから、長々とした技術論の答弁は、この次また他の委員会でやりますから。  総裁はこの問題で御迷惑をかけたと思っているんですか、思ってないんだか、そこだけひとつ言ってください。
  179. 和田敏信

    ○和田参考人 我々としては、最大の努力をいたしましたにもかかわらず、このような事故が発生いたしまして地元の方々に対して大きな不安感を与えたということは心から遺憾至極に存じておりまして、何とかしてその御懸念を一日も早く我々の関係者一同の努力によって払拭させていただきたいというふうに考えておるものでございます。
  180. 関晴正

    ○関分科員 その言葉が欲しかったわけでありますから、そのためにはもっと早くさっさと出かけてきて、すべきおわびはしてもらいたかったと思うのです。十分気をつけていただきたいと思います。  あと三分ぐらいしかありませんから、これは通産大臣あるいは核燃料関係の方にお願いしたいと思います。  青森県のむつ小川原の地域、あるいはまた東通村、あるいはまた関根浜の新定係港、それらの地点一帯をめぐりまして核燃料サイクルの基地を構想されていると聞きます。また政府と電力会社とむつ小川原開発株式会社の三者の間でも、このことの話が進められているとも聞きます。これは重要な問題でもありますし、私どもの青森県を原子力県にしてはならない、そういう不安な危険な県にしてはならないとの立場も我々はまた持っておるわけであります。  この際、そういう廃棄物の処理場、再処理工場、ウランの濃縮工場の三点セットとしてこの地帯を考えておるのかどうか、それともそういうことは全く考えていないと理解していいのか、この点についてひとつ通産大臣あるいは担当の方からお答えをいただければと思います。
  181. 豊島格

    ○豊島政府委員 商業段階の核燃料サイクルの設備、施設の立地につきましては、第一義的には関連業者が決定する、民間サイドで決定するという問題でございます。  それで、関係事業者におきましては、従来から核燃料サイクル施設の立地問題に関して全国を対象として幾つかの候補地点をいろいろと検討しておるわけでございますが、その中に下北半島は確かにその一つとしてやっておるということは聞いております。しかしながら、現段階で同地区への立地はまだ正式には決まってないというふうに聞いておりますが、我々としましては、関係事業者が今後どういうふうに進めていくかというところを注視しておるところでございまして、そういう意味で、役所が直接決めておるわけじゃないということでございますが、私どもとしましては、立候補地点が絞られる段階に至りました際には、地元と関係業者が十分話し合いをして、協力が得られるよう業界を指導していきたいと考えております。
  182. 関晴正

    ○関分科員 時間がありませんのでどうにもならぬけれども、一点セットでもいいのか、三点セットでもならないのか、このセット論についてはどう考えていますか。
  183. 豊島格

    ○豊島政府委員 どういう考え方で進むかにつきましては事業者が決めるべき問題でございまして、その辺の地域地域の特性を利用して三つ一緒の方がいいという場合にはそうでございますし、しかし、あらゆる地点で必ず三つを一緒に進めなくちゃいけないということはないかと思いますが、その地域地域で、場合によっては三本一緒の方がいいということもあり得るし、そうではないという、その辺は今後の検討の問題だと存じます。
  184. 関晴正

    ○関分科員 時間がありませんので、あとの委員会でまたやります。  終わります。
  185. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これにて関晴正君の質疑は終了いたしました。  次に、津川武一君。
  186. 津川武一

    津川分科員 政府は、日本経済運営を重化学工業、機械産業中心に運営してきまして、軽工業がどちらかといえば軽視されてきております。また工業の問題でいえば、地域を大都市に集中し、太平洋沿岸ベルト地帯に集まっております。沖縄や北海道、東北や過疎地帯はそういう工業化からはどちらかというと軽視されております。  そこで、通産大臣にお伺いします。重化学工業も機械工業も、国民生活を豊かにし外貨を稼いでくるので、私たちもそれはそれなりに評価し推進したいと思っていますが、同時に、重化学工業と軽工業が並んで発展できないのか、太平洋沿岸ベルトだけに工業が集中化するのでなく、地域的にも均衡のとれた形で分散させなければならない、こんな気持ちなのでございます。そこで、この二つの点で通産大臣の所見を伺わせていただきます。     〔主査退席、熊川主査代理着席〕
  187. 石井賢吾

    ○石井政府委員 ただいま先生の御指摘の第一点でございます工業の再配置といいますか工業の地方分散に関しまして、これまで工業再配置促進法を四十七年に制定いたしまして、これに基づきまして工業再配置計画を設定いたしました。これは六十年度を目標年度といたしまして進めておるところでございますが、現段階におきます進捗状況でございますが、中間的に二つの目標を定めております。  一つは移転促進地域、首都圏、中部圏、近畿圏の移転促進地域におきます工場面積を三割減しようということが第一、これは昭和四十九年に比較いたしてということでございます。第二が誘導地域という工業を誘導すべき地域を特定いたし、二十七道県等に設定いたしてございますが、その誘導地域に新規立地の工場の七〇%を立地させようというのが第二の中間目標になっております。  この目標の達成状況は今どうかといいますと、例えば東京都二十三区の場合で例を申しますと、既に工場面積は二九・二%減っております。首都圏、中部圏及び近畿圏の全体で約二二%強面積は減っておるのでございます。それから第二の、誘導地域に七割の工場立地を目指そうという点に関しまして申し上げますと、これまでのところ新規立地の約六八%強が誘導地域に立地されております。  ところが第三の、言うならば最後の目標でございますが、工業出荷額の太平洋ベルト地域あるいは誘導地域等との構成比を大幅に誘導地域にシフトさせようというのが最終目標でございまして、これが言うならば地域の雇用機会と結びつく指数でございますが、遺憾ながらこの数値がほとんど改善されていないというのが実情でございます。それはなぜかと申しますと、過去に年間の工場立地面積が全体で約六千三百ヘクタールぐらいございました。ところが、二度のオイルショックを経過しました至近時点におきましては、その三分の一の二千ヘクタール強程度でございまして、したがって追加する値が小さいものですから、全体のシェアを大幅に改善させるという効果が乏しかったということではないかと思うわけでございます。したがいまして、我々、六十年度で計画の年度が一応切れますので、五十九年度におきましてこれの見直しと新規計画をどう盛り込んでいくべきか、さらに現在の産業構造に即応した工業の地方分散をどう進めていくべきか、こういった点について改めて計画をつくり直す時点におきまして十分検討していきたいと思っております。  それから第二の、基幹産業、重化学工業化と軽工業という御指摘でございますが、先ほど申し上げましたように、二度のオイルショックを経まして素材型産業の新規立地というのはほとんど見るべきものがございません。今後のウエートは加工型産業にシフトしてまいりますし、通産省の政策ビジョンにおきましても、いわば知識集約型の産業構造へのシフトを目指すことにいたしておるわけでございます。したがいまして、そういった基本的な産業構造を念頭に置きまして、工業の地方分散ということもそれに即応して進めなくちゃいかぬというふうに思っております。
  188. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 第二点につきまして補足させていただきますと、今立地公害局長が申し上げましたように加工組立産業のウエートが高まっておりますけれども通産省の産業政策は、経済動向やいろいろな産業構造の変化に応じまして必ずしも軽工業、重化学工業という分類にこだわっているわけではございません。現在の基礎素材産業対策の繊維産業ですとか紙パルプ産業のようなものを含んでございます。また、先端技術の産業でございますけれども——産業というよりは、いろいろな産業がそれぞれの先端分野を持っている。例えば繊維産業で申しますとファッション性が高いあるいは炭素繊維のようなものもございますし、窯業でございますとファインセラミックス、こういうようなものも従来で言いますと軽工業に属しておりますが、現在ではこれは先端部分に属している、こういうふうな考え方をいたしております。
  189. 津川武一

    津川分科員 今言われたように、工場の地方への分散、私たちも公害のないものは思い切って地方へ移した方がいいと思うのですが、今お答えありました誘導地域、それから第三の問題——誘導地域に行っているのはどこへ行っているかというと埼玉、茨城、千葉の一部、そして沖縄、鹿児島、北海道、青森、東北には見るべきものがないのです。せっかく法律をつくった、だがそれは行われない。そこで沖縄や鹿児島や北海道や青森の知事など十二の道県知事が皆さんのところへ何をお願いしたかというと、特別誘導地域を相当お願いした。それでも進まない。これはやはり国の重化学工業、軍事工業、機械工業、こういうものが一つの重点になっていることと、口では言っているが、依然として太平洋沿岸ベルト地域が地域として中心になっているからなのでございます。  したがって、これらの十二道県知事は何と言っているか。誘導地域には援助しなくてもいいから特別誘導地域だけを分散すれば分散が行われる、こういうことなのです。幸い六十年に計画改定をする時期がありますので、この点をきちんと踏まえてやる必要が出てきたのでございますが、この点で再度の答弁をお願いします。
  190. 石井賢吾

    ○石井政府委員 遠隔十二道県でございますが、その他の地域を特別誘導地域に指定いたしまして、例えば工業再配置補助金の場合であれば五割増の補助金を出すというのが現在の仕組みでございます。御指摘のように十分効果が上がってないじゃないかということでございますが、例えば先ほどの工場立地面積でいきますと、特別誘導地域が約一九%強、約五分の一の立地状況になっておりまして、先ほど誘導地域全体で六八%強と申し上げましたが、そのうちの約三分の一弱というのが現状でございます。そういう意味では、特別誘導地域の立地の進め方というのは、誘導地域全般より低いということは確かに御指摘のとおりでございまして、この辺につきまして、五十九年度におきます検討過程においてどう対応すべきか、先生の御指摘の点を含めて検討させていただきたいというふうに思っております。
  191. 津川武一

    津川分科員 通産大臣、こんな状況なんで、六十年に計画を変えるときに思い切ってそういう十二道県に再配置するということを検討して施策を進めていただきたいと思う次第でございます。そしてせっかく来ても、茨城や埼玉にはいい工場が来ている。遠いところへ行かないのは移転費が大変、経営の中にも問題がありますが、ここは質問を繰り返さないで、通産大臣にそれを強く要求して進んでいきます。  その次は農村地域工業導入。この導入は製造業なのだ、しかも農村人口の吸収ということが主眼になっておる、これも私は賛成なのです。全国でも導入しておりますが、弘前市の例を言うと、導入のために工場団地を十二万平米つくった。現在一つ会社だけ入って、まだ三万か四万平米しか使ってない、あと八万平米ぐらい残っている。団地を造成したための借入金が十七億円にもなって、この利息払いで苦しい地方財政が混乱しているわけです。これはこういう制限があるから入れないのです。  そこで、これを思い切ってこの法の運用を改めるなり法改正するなりして、第三次産業でもいい、地場資源産業でもよろしい、こういう点でやるようになれば問題はかなりまた進んでいくのでございますが、農村地域工業導入促進法、通産省でもいいです、農水省でもいいです、ひとつお答え願いたいと思います。
  192. 石井賢吾

    ○石井政府委員 農村におきます工業導入につきまして、先生御指摘のように、いわば農業の集約化といいますか構造改善を進めるということとの関連におきまして、雇用効果の大きい製造業を農村に導入しようということでスタートしたわけでございます。そのためには特定の業種及び規模を想定いたしまして、例えばただいまのお話は弘前市のお話かと思いますが、市の方が言うならば導入のための実施計画を策定いたしておるわけでございます。それはもう特定の業種及び規模まで想定した計画になっておりますので、今工業以外のものを入れるということになりますと、おっしゃるように法律改正をしない限りは、むしろ導入計画そのものを変更するかあるいは導入計画を廃止するか、それしか方法がないのではないかと思います。  私どもとしましては、計画的な農村への他産業導入を図っていく場合に、何はともあれ一番雇用吸収力の高い製造業を第一義としてこの推進を図ろうということで現在の法律がつくられた経緯からいたしまして、できるだけこれが実効が上がるように持っていきたいというのがただいまのところの考え方でございます。したがいまして、先生御指摘の農工団地につきましては、私の承知している限り十八ヘクタール中十二ヘクタールが埋まっておる。(津川分科員「逆です」と呼ぶ)逆でございますか。そういうふうに聞いておるのでございますが、全国的におきましても、五割に満たない導入状況だという実情にございます。そういう意味におきましては、二度のオイルショックを経て産業構造その他が変わってまいっておりますので、大きなそういった経済変動を受けて、過去に設定されました農工団地計画が適切なのかどうか、それを見直した上で計画の変更ないし廃止をせざるを得ないのではなかろうかと思っております。  ただ、これは農工団地が農業構造改善事業と裏腹でございますので、農振地域の解除あるいは農地転用というものが相当シビアな条件で農工団地のために特別に設定された経緯もあるようでございまして、それとの兼ね合いで、それでは計画の対象地域外とするあるいは計画を廃止するとしても、直ちにそれが他の産業、要するに流通業、サービス業に使えるかとなりますと、またおのずから制約がそちらの面で出てくることもあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、私どもとしましては、今のところ、やはり雇用吸収力の一番高い製造業を促進するという気持ちで今後とも進めていきたいというふうに思っております。
  193. 津川武一

    津川分科員 いや、びっくりしました。廃止という言葉が出たので私もどきっとしました。廃止などはやめてくださいよ。今は工業導入を進めていく。その上であれを高めていく。第三次でも使うと一遍に解決です。あそこらに行っても、私も国会議員になってくると責任があるのか、おまえらが悪いからここはあいているんだ、草ぼうぼうになっておるんだ、こう言われる。見ておれないんだよ。したがって、そういう点での計画変更、これは通産省だけの所管でないので農水省とも相談しなければならないが、ひとつしかるべき形で、法の改正が一番いいのじゃないかと思っていますが、運用でできるものならば生かして進めていただきたいと思うわけであります。  もう一つ進めていきます。  先ほど基礎素材産業、地場資源産業と言いますが、津軽というところはすばらしい地場資源を持っておる。それは森林なんです。国有林でいいますと、秋田の津軽との県境、奥羽山脈のふもとから西海岸に出るところまで、ここはすばらしい森林地帯なんです。林野庁で、営林署も深浦、その隣の鯵ヶ沢、その境をともにしておる弘前、弘前と境を共通にしておる大鰐、大鰐につながっておる碇ヶ関、五つの営林署があるのです。それから八甲田山ろくの国有林野を控えて黒石と青森の営林署がある。津軽半島、ここには南の方から金木、その隣町の中里、その隣村の市浦、これがすばらしい資源なんです。この資源の利用が必ずしもうまいこといっていないわけです。  この間も全国の森林組合連合会に行ったら、先生何とかならないか、この資源一つにはパルプ、これが外材のパルプにやられてしまった。建築資材、これが外材にやられてしまっている。すぐまた通産省の所管に戻しますけれども、この点でまずパルプ産業、これは外国のものを抑えていければすばらしいのじゃないかと思うのですが、このパルプの材料は、日本にはしこたまあるんです。今松くい虫で年間二百万立米、これがパルプに利用されているのは十二万立米、どうにも間伐できないでいるものが二百万ヘクタール、こういう材積もうんとここで上がっているんです。思い切ってパルプをこの点で育ててみることが、今この詰まっておる地方の経済を打ち立てる一つの、これはパルプ資源をどう使うか、外材との関係通産省に、そしてここにある建築資材、日本の物をもう少し使えないか。いろんな制限もあるだけに、建設省、思い切って防災の心配のない地域の材木を利用すると、あそこの経済ががっと活気を帯びてくるのです。通産省と建設省にお尋ねします。
  194. 黒田真

    ○黒田政府委員 パルプ産業に関連いたしまして、現在構造改善努力等が進められておるわけでございますが、なかなか厳しい状況下にございますために、産業の原材料対策といたしましては、例えば古紙をできるだけ使うというようなことで努力をしております。しかしながら木材との関連で申しますと、四十年代に確かに外国産チップというようなものの使用が急速に伸びてまいりまして、パルプ産業の使用いたします国内材の比率は五十四年に五四%にまで落ちた。ということは、四六%輸入材に依存するというところまでいっております。しかし、近年若干この比率がまた逆の方向に動いておりまして、五十七年度におきましては国内材が六割、輸入材が四割というようなところになっておると思います。  これは、従来も林野庁の方からパルプ産業界に対して、間伐材あるいは松くい虫のそういう虫害を受けた材木を利用してほしいということはたびたび要請もございます。いろいろ林野庁も努力をしておられるところでございまして、私どもといたしましても、そういった林野庁の御努力を側面的に協力をさせていただいておるというところでございます。  それでは建設関係の方は建設省に……。
  195. 津川武一

    津川分科員 委員長、時間がなくなりましたので、建設省せっかく勉強して来ていただいたのだけれども、林野庁と建設省ごめんなさい。皆さんどうぞお引き取りになってください。済みません。肝心なことがこれで時間がなくなってしまうんです。後でまた林野庁には所属委員会でお願いします。  そこで、その資源のヒバでございます。すばらしいものがある。あそこにはブナ、ナラ、かなり常緑樹も濶葉樹もすばらしいものがあるんですが、これが思うように使われてない。飛騨の高山、熊本の八代、私両方とも見たけれども、ここはそういう点でこの木材を資源とした木材木工、木芸品、精密家具、仏壇、あらゆるものがつくられておる。日本一の営林署の数があって、日本一の国有林野の面積があって、津軽にそれがないのは何かという問題なんです。私、国会に当選させていただいて、ことし十二年目になりますが、いつもあの地域を歩くときに、鳥取やあちらの木材地帯を歩くたびごとに、この木材資源を本格的に一つのコンビナート的団地として使う道がないかなと思って、その第一の条件は乾燥施設なんです。これがなければ木材はどうにもならない。もう一つは技術の問題なんです。三つ目は金融の問題なんです。  そこで、この乾燥施設、幸い弘前には、岩木山東北山ろくの熱源開発として木材工芸施設をやるか、ここで出た熱で木工業をやる、それにエネルギーとして提供するということになって、ここには乾燥施設もつくると書いてある。ちょうどいい機会なんです。したがって、思い切ってあの地域の木材をそういう産業の中心にするように、これは熱源開発が中心になっておりますが、そうでなく、熱源開発はそれに付随する格好で、ここでブナ、ヒバ、ナラなどというものを精密木工業に育てる意味において乾燥施設を、その意味においてここに熱源をつくる。せっかく地元で計画して、皆さんが賛成しているこの事業のかなめに木工芸、精密木工機械を入れてやった方が、あそこに重化学工業だけでなく、すばらしい木工団地ができ上がっていくと思うのでございます。  時間がないので全部しゃべってしまいますが、これが一つの構想。この構想をやっぱり打ち立てていただきたい。あそこにテクノポリスの問題が出ましたけれども、これは地域のいろいろな状況からいってできない相談なんです。こういうできるものに決定的な検討を加えていただきたい。  もう一つは技術の問題。工業試験場もある、林業試験場もあるが、こういう精密木工業をつくるときの技術をそれらの試験場にも貸すと同時に、弘前大学に木工関係の軽工業の、したがってまた私、軽工業に返ってきます。私、六、七年ほど前文部省の大学局とじっくり話しましたが、高度経済成長の過程の中で、建築、重化学工業の工学部は全国の大学に大体完成して、今余っている。足りないものは軽工業に対する工学部で、しかし今弘前大学に工学部をつくれと言っても無理だから、東北大学の工学部の軽工業の一つのブランチを弘前につくっていくのなら問題の解決ができるんじゃないか。ここまで少しずつ煮詰まっておるわけであります。  そこで通産大臣に、こういう形での軽工業、地場資源の木材、木工関係のものを、今弘前に計画されているものを思い切って中心をそこに置いて、乾燥施設と技術開発のことを考えてみる、そういう時期になっているんじゃないかと思います。関連の役所とも協議されながら進んでいただければと思って質問に立ったわけでございますが、通産省からひとつまず答えをいただきます。
  196. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 地場産業振興の重要性はもう改めて申すまでもございません。  青森の場合、弘前地域の場合におきましては、ただいま先生御指摘のような木材資源を活用して津軽塗と家具あるいは建具の製造業を振興するという計画が、地場産業ビジョンとして立てられております。ただいま御指摘の施設の設置等につきましては、中小企業者が事業協同組合をつくりまして、共同施設のような形で木材乾燥施設を導入するというような計画が出てまいりますれば、そのような計画を前提といたしまして、たとえば高度化融資制度の活用をするということも一つ可能性のある計画かと思います。いずれにいたしましても、計画が具体化いたしました時点で検討いたしたいと思います。また技術の点等につきましては、地場産業の振興にはその地場の技術が重要でございますので、中小企業政策の一環としてもいろいろ支援してまいりたいと思います。
  197. 津川武一

    津川分科員 これで終わりますが、もう一つは、あそこでブナコ、ブナ材を乾燥させて、曲げたりこうやって、ブナコが非常にいいものができまして、外国にもかなり有名になりまして輸出もできたんですが、資金融資の面やいろいろな問題があって、今なかなか伸び悩んでおります。そういう木材の輸出産業もあの地域につくり得るということもありますので、ここいらもあわせ検討して、地域に産業を地域の資材を使ってづくっていく、産業を興す、これが日本の今の経済日本経営を安定させる重要な課題だと思いますので、一層の御検討をお願いして、私の質問を終わらせていただきます。
  198. 熊川次男

    ○熊川主査代理 これにて津川武一君の質疑は終了いたしました。  次に、滝沢幸助君。
  199. 滝沢幸助

    滝沢分科員 電源三法等につき、少しく意見を述べながら質問申し上げたいのであります。  大臣、どうもご苦労さま。私の申し上げることは、戦後いわゆる電源開発に地域を挙げて協力をしました例の只見川水系の電源地帯の住民の総意であります。どうぞひとつそのお気持ちでお聞き取りを願いたいと存じます。  さて、いささか私見を加えながら申し上げさせていただきますけれども、明治十六年に我が国におきまして初めて東京電燈株式会社会社の設立認可を受けまして、十九年には事業を開始しているわけでありますが、以来一世紀に及びますところの電力の歴史というものは、これは近代日本の文明史でもある、私はこういうふうに思うわけであります。今、世界的、人類的な意味での反省と方向の転換が叫ばれているこのときでありますが、この、いわば電源開発の歴史というのでありましょうか、これを私はここに反省し回顧しまして、次に来るべき時代の方向またその手法というものを、これは国民的な合意特に政治と行政のラウンド、そして経済企業との立場、そして国民特に開発されまする電源開発地域住民との、この三つの立場の合意を取りつけまして、その上で電力消費者、大衆との間に意識の共通なものを求めること、これは非常に大事なことである、これなくしては将来に憂いを残すものがあろう、こう思いますが、大臣、御所見はいかがですか。
  200. 豊島格

    ○豊島政府委員 先生今おっしゃいましたように、電気事業の歴史というのは非常に長いわけですが、そういう過去のいろいろな体験、それから実績を踏まえてやっていくということは、そのとおりであろうかと思います。ただ、電源構成等につきましては、御承知のように自然的条件もいろいろございまして、だんだん時代とともに変わっていく、それから新しい技術開発ということもございまして、また新しい電源も考えられていくということでございます。その中において電力が非常に大事であるということはそのとおりでございまして、過去のあれを十分考えてやっていくということはそのとおりではないかと思います。
  201. 滝沢幸助

    滝沢分科員 大臣、同じ御意見ですか。
  202. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 大体さようでございます。
  203. 滝沢幸助

    滝沢分科員 そこで私は、日本の電源開発といいますか電気事業の歴史というものを大体五つぐらいに区切って反省してみるときに、多々学ぶものがあると思うのです。  第一期、これは先ほど申し上げました、電気が日本に入ってきましてから大正時代を通りまして昭和十五年に至ります期間、私は、これを草創期とも言ってもよろしいだろう、こう思うわけであります。その当時、電気はいわば新しい時代の夜明けでございまして、これが企業化への試みという段階でもあったでありましょう。ゆえにこそ国民は、あこがれと恐れとを持ちまして、そしてこれは全面的に協力の体制ができてきたことは御存じのとおりであります。しかもこのときの電気の使命は、ともしびとして、明かりとしての立場でございました。  しかし、昭和十五年に日本発送電つまりは国策会社ということでこれが国家管理的な性格を持つものに統制されまして以来は、いわゆる第二期と私はこれを申し上げている。これは戦争期でありまして、統制が厳しくされ、したがって電気事業は独占でございました。これは戦時体制の中に組み込まれたわけでありまして、総動員法がやがては発令され、そして戦力としての電気事業ということになってくるわけであります。欲しがりません勝つまでは、こういうことで、戦争に協力するという名において電気事業に協力を惜しまなかったわけであります。ところが、しかしこれは功罪相半ばするものがございまして、確かにこれは電気を全国にあまねく普及さして、いわゆる電灯のない家は全国にないという状況をつくることもできたのでありますけれども、一面、軍需工場もこれによって発達してまいりました。しかし、国民の権利をいわば戦時体制の名において、国家総動員法の名において埋没させ、消滅をさせていった一つの罪の部面も、今になってはやはりこれは指摘されていいことだと思うのであります。  ところが、終戦という時期になりますると、これは天地がひっくり返ったわけでありますから、抑制されておりました国民の権利意識はにわかに発芽するわけであります。そしていわゆる戦後の、これは占領軍の強制的な助言、アメリカの例の調査団等によりまする調査結果の助言によりまして九電力制に改組されていくわけであります。これはしかし、一面から言うなれば、占領政策の名において、国民の意識の発芽は先ほど申し上げましたとおりありましても、現実には国民の権利はなきに等しく、これはいわば占領軍の至上命令というものがかつての戦時中の天皇のみ心というもの以上の力を持った時代でありますから、これは一つの特徴でございましょう。そこの中で日本はしゃにむに経済開発といいますか高度成長経済の道をたどるわけであります。  そこで、ここの中で都市優先の開発が当然なされ、そして工業優先の開発がなされ、電力はそのことを推進する決定的な役割を持ったわけであります。天竜川そしてまた私の住もうております只見川等の、あの階段式のダムが示しまするとおり、これは水力発電の時代でもあったでありましょう。これによってこそいわゆる高度成長経済はなし遂げられたわけでありますが、しかし反面、反省しますならば、これは乱開発を全国にいたしたことは否定できません。また、経済至上主義でございまするから、心の面、これがまた置き去りにされているわけであります。そして、一面から言うなれば労使激突の時代でもありました。これは、いろいろと思わしからざる事件等も起こしながら、とにかく日本経済の大きな発展の両翼としての労使双方の立場が厳しく激突をした時代でございます。  また、その結果開発は促進されましても、一面から言うならば人口の都市流出、つまりは発電地域等をも含めての農山村の人口の過疎という現象がやってまいりましたことも皮肉な現象でございました。そしてまた、さらには水害がおびただしく発生しました。これはしかし、当然のことながらこれらの反省の上に立っていわゆる四十年代に向けての数々の提言がされ、また試行錯誤がされるわけでありますが、そこの中で、特に電源開発地帯の住民の意識が高まりまして、これが組織化されたりないしは裁判ざたにまでなって、いわゆる企業と地域住民との間のトラブルが生じてきた。これもいわばこの戦後期の四十年代における一つの特徴かな、このように思うわけであります。  そこで、ここに私は、日本の電源開発史上画期的な一つの変化、革命的と言ってもいいほどの変化のときがやってくる、こう見ているわけであります。これは私は第四期、言うなれば原子力発電の時代と言ってもいいでありましょう。同時に、昭和四十九年に日の目を見ましたあの電源三法、こういうものによって、一つこれは大きな変化のとき、戦後も遠くなりにけりという時代であったな、私はこういうふうに見てきたわけでありますが、当然これは企業と地権者との相克に対しましての、これは企業と地権者それに行政が一枚加わっての妥協の産物と申し上げでもよろしい、こういうふうに思います。そしてまた、実は地方公共団体の協力、これを求めないことにはもはや電源の開発はできぬ。電源の開発ができなければ日本経済は伸びることができない。こういうジレンマの中で生み出されたものでもありましょう。これは地権者の意識を、いわば企業に対する批判の意識を緩和する措置としてなされたあめ玉政策でもあったわけでありますけれども、しかし結果としてこれは大変に益することがあったことは私も否定するものではありません。しかし、この原子力時代というものは、ややもすれば水力軽視の傾向がないでもなかったわけです。そこで、この電源三法を水力の発電地域にもひとつ適用せよというようなことでなされていることは御存じのとおりで、これを多とするものであります。  しかし、同時にまたこのことは、原子力、水力も含めて、ただ単に発電所を開発して電気を起こせばいいというのではなくて、地域の開発を促進することと両々相まってしなければならぬ時代への突入でもあるわけでありまして、ここにおいてこの電源三法が工場導入の呼び水となり、あるいはまた公共事業の足らざる点を補完する立場を持ってきたのでありますから、この電源三法の足らざる点を今我々がつぶさに反省をし協議をしてこれを改善していくこと、これがつまりこれからの時代に対する一つの宿命である、こういうふうに思うわけであります。ここにおきまして、今の時点における電源開発、これは水力、火力も含めてでありますけれども、反省いたすならば、この法律が時限立法的な性格を持っているものでありまして、しょせんは終わりがあるということ。しかし、そこに住民は永遠に住まなくてはならぬということの差異であろうと思うわけであります。  もう一つは固定資産税等の税率の低下といいますか、償却資産でありまするから税が低落していく傾向、これが当初地域市町村等が余り深く考えなかった一つの落とし穴であったのではないか、こういうふうに反省をいたしているわけであります。さらにもう一つは、現実においてその後の経済の変遷のいたすところではありますが、企業、工業の導入というものはうたわれるべくして実際にはほとんど成功しなかったという、このことであります。さらには人口の流出は、依然としてこれは食いとめることができなくて、過疎地はどんどん過疎をふやしていった、こういうことでございます。  もう一つは、洪水は依然としてやはり絶えない。このことについての反省もここでしなくてはなりません。しかもその原因一つでもありますけれども、堆砂といいますか、ダムが埋まっていく。このことは否定しがたい事実として、これを私たちは見逃してはいけない、こういうふうに今存じまして、この機会に政府の所見をただし、また企業の御協力もひとつ再確認していただきまして、来るべき時期、言うなれば私はこれは第五期、六十年代を志向する電源開発の将来、こういうものをひとつ模索してまいりたい、こういう気持ちで今この質問を申し上げようという決心をしたことでございます。  私は、この来るべき時期というものは、これは調和と共存の時代でなくてはならない。これは労使もそのとおりです。都会と山村もそのとおりです。企業と住民もそのとおりであります。もちろんそこに政治、行政が賢明な介入をしてくれなくてはいかぬわけでありますが、総じて調和と共存の時代、これは核の時代であると言われるこのときに人類的宿命だ、私はこう思うわけであります。  こういうときに私たちが望んでおりますのは、この三法の期限の延長であり、もしくはまた情報の公開であり、あるいはまた地域住民がこれにどのようにして参画をすることができるか。そしてそれは国際協力にまで発展する路線であるかどうか、こういうことだと思うのであります。仮に電気料金は今のところ十兆五千億前後と承っておりますけれども、こういうものに対してこの電気の電気税、これがどのように絡み合ってくるか、ここら辺の操作によりましても随分と地域を益することもできよう。また送電のロス六%と言われておりますけれども、これは自然の放電があり、また投資の面のロスもあるわけであります。およそ物価におきまして、産地直売という話もありますけれども、どこでも同じ値段で買えるものは新聞ぐらいでありましょう。大抵は生産地は安いわけでありますから、発電地域に安い電力を提供する、こういうことも考えられなくてはならぬ、私はこういうふうに思うわけであります。  聞くところによりますと、ダムの寿命は大体百年。これは長野県の泰阜ダムなどで既に完全に埋まってしまった例もあるわけでありまして、ここに私は心配しますのは、後で荒廃した土地が残る、そのときにいわゆる再開発といいますか環境の整備、これはどのようにされていくものであろうか。こういう心配を今からすることは決して早くはない、こういうふうに一つは思うわけであります。これをひとつ承りたい。  質問に入りまして、初めの質問であります。ダムが完全に埋まることは予想される、その後でどうなるか、こういうことであります。
  204. 松田泰

    ○松田政府委員 先生御指摘にございましたように、現在、ダムには堆砂というものがあるわけでございますが、全体的に申し上げますと、日本の水力地点の現状は大体すべてといいますか、ほとんどのダムにおきまして貯水容量の数%以下という状況にございます。ただしごく一部、例えば天竜川、御指摘にありました泰阜もそうですが、天竜川水系等におきましては非常に堆砂が多いという状況にございます。したがいまして、ダムの設計につきましてはあらかじめ百年程度の堆砂の量を想定いたしておりますので、ダムの安全そのものには問題はないと思いますが、むしろ貯水池の中のダムの堆砂状況によっては水位が上がってくるというようなことで、いろいろな原因で洪水等の原因になる可能性があるわけでございます。したがいまして、通産省としましても堆砂の状況は定期報告としてつかんでおりますし、また堆砂の多いダムにつきましてはそれの排除といいますか、それの対策についても個別地点ごとに対策は考えておりますし、建設省等と相談いたしましていろいろな対策は講じていく所存でございます。
  205. 滝沢幸助

    滝沢分科員 ところが、おっしゃるよりも速いテンポで埋まっていくわけです。只見川の上田ダムにおきましては年間十四万立方メートル、田子倉ダムにおきましては同じく十四万立方メートル、本名ダムが少し少なくて、これは岩山だからですが十万立方メートル、奥只見のごときは実に六十万立方メートル、これは実は予想以上の急テンポに埋まっていくわけであります。これは、国有林と私有林をも含めてでありますけれども、乱伐の影響であります。さらには建設工事等開発工事のいわゆる乱開発の影響でもございます。ところが、今おっしゃるように、この情報はちゃんとあなたの方に的確に持っていらっしゃる、こう言うのであります。けれども、これが秘密主義なんですよ。  実は、全国の開発市町村協議会が五十年から五十四年にいろいろの調査をしてまいっております。その中で、例えば建設省の阿賀野川の管理事務所のごときは、この会の代表が数次にわたって懇願しても、この情報は頑として公開しなかった、こういうことは反省をされなければなりません。この点、今後のいわゆる情報公開のシステム、これは行政もです、そして会社企業もですが、これをして地域の市町村また住民のないしは地権者の協力をいただかないことには、これは大変なことですよ。どうなんですか。
  206. 松田泰

    ○松田政府委員 私どもが電気事業法の法律に基づきまして定期報告で堆砂状況をとっております。この情報につきましては、もちろん法律でとっておるものでございまして、特にこれを秘密にしなくてはいけないということではないと考えておりますので、いろいろな御要請があれば、これはお見せすることができるというふうに考えております。
  207. 滝沢幸助

    滝沢分科員 それでは、そうなれば、この五十年−五十四年当時に、この阿賀野川河川事務所が公開しなかったのはどういうことなのか。これはまあしかし建設省、僕の方と関係なしと、こうおっしゃるかもしれませんけれども、そうならば、その法律によって得たる情報を法律によって公開するように法律を改正されるお考えはないのかどうか、それが一つです。  時間がございませんから続いて質問させていただきますけれども、電源三法というものは、これは本当は原子力のために最初つくった。水力の方にも、これは気の毒というようなことで来た経路もありまして、水力に弱いんです。そこで、現在の水力発電所周辺の地域に対する交付金の年限を延長するないしはその使途を拡大するというような手段は講じられるのかどうか、これをあわせお伺いします。
  208. 豊島格

    ○豊島政府委員 水力発電につきましては、特に発電施設周辺地域交付金というのを五十六年度から設けておるわけですが、原則七年ということでございます。しかし、地域の水力開発にいろいろな意味で協力していただく場合には、さらに八年間延長して十五年までということでいたしておるわけでございますが、この制度、先ほど申しましたように、つくりましてからまだ三年目ということで、特に現段階で延長するかどうか、これはもう少し見てからといいますか、まだ始まったばかりの制度でございますので、今のところこれをさらに延長するということは考えておりません。  ただ、交付金の有効利用のために使途拡大をしないか、こういうことでございますが、これにつきましては、五十九年度におきましても、農林水産業にかかわる種苗施設、生産施設それから養殖施設等使途を追加して制度の充実を図っていくということを考えておりますが、いずれにしましても、今後とも関係各省とも相談して、有効利用ということについてはいろいろとまた考えてまいりたいと思います。
  209. 滝沢幸助

    滝沢分科員 情報公開はどうですか。
  210. 豊島格

    ○豊島政府委員 情報公開につきましては、現在の制度として我々としては非公開にしておるわけではないわけでございまして、それでは法律事項として公開すべきであるかどうか、そういう法律改正が要るかどうか、私今のこの段階で十分お答えできないのですが、いずれにしても事実上公開できるわけですから、御要請があればやっていくということでよろしいのではないか。ただ、法律で公開することを義務づけるかどうかというのはどういう法律的な意味があるかというのは、ちょっと私勉強不足でございますが、いずれにしても公開はできるということを先ほど審議官が申し上げておるので、それで実態的には問題ではないのではないかと思います。
  211. 滝沢幸助

    滝沢分科員 実態的に教えてくれないから申し上げているわけですよ。ですから、報告の義務があるならば公開の義務を政府が持ったらどうですか。
  212. 豊島格

    ○豊島政府委員 私どもとしては、今先生の御指摘のような事態が起こらないように十分指導していきたいというふうに考えております。法律改正の問題につきましては、いろいろ法律上の問題があるとも思いますし、そこの点については今どうすべきか、できるとかできないとか、そういうことはちょっと今の段階で申し上げかねると思いますが、事実、問題がないように指導はいたしていきます。
  213. 滝沢幸助

    滝沢分科員 次に、電源開発の場所、発電所周辺は電気税を徴収するわけでありますけれども、しかし周辺地域に電気を安く提供するためにも、税制の面ではこれは一つ考慮されるべきではないか。先ほどの私のお伺いし方もいけなかったかもしれませんけれども、電気料金に地域格差をつけよ、生産地を安くせよということについてもまだ御意見の御発表はありませんけれども、それをも含めてひとつおっしゃっていただきたい、こう思います。
  214. 豊島格

    ○豊島政府委員 電気税の問題につきましては、私どもとしてはできるだけ軽減ということでいろいろと今日までやっておったわけですし、毎年税制改正のたびに廃止という意見も業界あたりも出しておるわけでございますが、いずれにしましても地方財政と深いかかわりがあるわけでございまして、これはむしろ自治省の問題とお考えいただきたいと思います。  それから、電気料金につきましては原価主義ということをやっておるわけですが、これは電力会社の供給区域ごとに統一的にやっておるわけでございまして、これを細切れにして電源の発生の地域について料金を決められないかという御意見であろうかと思いますが、現実問題としまして、発電所というのはそこの発電所からだけ出る電気で賄うという場合は非常に少ないわけで、系統的に全国的に運用されているわけでございまして、仮に安い発電所があると、その近辺だけ安いといってもなかなかそうは技術的にも難しいということでございますし、また料金の安定ということからいいましてもなかなか難しいというふうにお考えいただきたいと思います。
  215. 滝沢幸助

    滝沢分科員 今のお答えにつきましては異論もありますので、後の機会に議論をさせていただきたいと思います。  ダム用地は実は雑種地となっておりまして、これは大変税金が安いのですよ。これはしかし一番金をもうけるための財産でありますから、雑種地というのはおかしいのじゃないですか。こういう点で、これは自治省かもしれませんな、どうかひとつ。     〔熊川主査代理退席、主査着席〕
  216. 鶴岡啓一

    ○鶴岡説明員 ダム用地の固定資産税の評価についてお答え申し上げます。  土地の評価は、先生御案内のように地目ごとに認定をして評価を行うという方法をとっておりまして、ダムの敷地につきましては雑種地となります。その場合の評価額は、土地の位置、利用状況等を考慮して、付近の土地の評価額と均衡をとりながら定めるということになっておりますので、どうしてもダムの所在地の周辺の山林なりその他の雑種地との評価の均衡をとって評価を定めるということになっておりますので、なかなか、例えば先生のおっしゃっている意味の、ダムの敷地それだけを何か特別な別の評価方法で評価をするというのは非常に難しいということでございます。
  217. 滝沢幸助

    滝沢分科員 私は、雑種地であるのがつまりはおかしい、こう申し上げているわけであります。このことも、しかし長い議論になることと思いますから、今後の課題として承っておきます。  最後に、企業並びに政府は、地域の文化の向上のため、そしてもう一つは切実な課題として、失敗に帰しております企業の導入につきましてどのような方策を持っていらっしゃるか、承って最後にしたいと思います。
  218. 小川邦夫

    小川政府委員 地域文化振興あるいは地域への企業導入等の諸措置でございますが、一つは電源三法の交付金の交付対象に、教育文化施設というものを対象にすることにしております。ただ、具体的にどういったものを選ぶかということは、その地域地域のニーズに応じて選択していくという形になっておりまして、幾つか図書館とかあるいは歴史民俗館等々といったものも地域によってはできつつあることは、御案内のとおりでございます。そういったものを地域ニーズに合わせながら、引き続き交付対象としてこの交付金を活用していきたい。  それから、企業導入につきまして一つの問題点になっておること、これまた御指摘のとおりでございます。従来から、立地促進対策交付金の交付対象といたしましても、産業振興施設というものを対象にすることにいたし、その産業振興施設の中でもできるだけメニューを広げることで企業導入に役立つようにする。もう一つは、電力移出県等交付金というものを新設いたしまして、この交付金は県の事業としてでございますが、企業導入になるべく集中的に使うということで活用されておる。五十八年度予算につきましても、交付金対象の産業振興に資するもののメニューをさらにふやすという努力もしておりまして、こういった努力はまさに御指摘のような視点を踏まえて引き続き続けてまいりたい、かように考えております。
  219. 滝沢幸助

    滝沢分科員 終わります。
  220. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これにて滝沢幸助君の質疑は終了いたしました。  次に、森本晃司君。
  221. 森本晃司

    森本分科員 まず初めに、伝統的工芸品産業の振興に関する法律すなわち伝産法は、昭和四十九年議員立法として制定されたわけでございますが、間もなくこの法律が十年目を迎えようとしておるところでございます。  沖縄伝統工芸晶振興に端を発しましたわが国の伝統的工芸品産業の振興は、今までほとんど顧みられることがなかったわけでございますが、こういった新しい法律の制定と同時に、伝統産業に新しい息吹を吹き込み、また日本の風土と歴史の中で育ってまいりました伝統的工芸品の本物だけが持つよさというものが今改めて見直され、そして生活に潤いを与えるようになってき、また地域の産業発展に大きく貢献したものが数多くあると思われるわけでございますが、一方では、産業の近代化に伴いまして、後継者の育成の問題あるいは機械化、量産による問題等々で、こういった伝統的工芸品産業が今数々の問題をはらんでいると思われるわけでございます。  そこで、ちょうど施行十年目に当たります本年、今まで持っておりました数々の問題の中で、こういった法律が施行されてこれからよいものは残していかなければならないと思いますし、また、この十年を機会に改めるべきものは改めて、さらにそういったものを振興していくための法律でなければならないと私は思うわけでございます。  まず大臣に、この法律が制定されて今日まで十年間、どのような成果を見たのかということをお尋ね申し上げたいと思います。
  222. 黒田真

    ○黒田政府委員 先生御指摘ございましたように、昭和四十九年に国会におきまして全党の一致した御賛成で成立をいたしましたこの伝統的工芸品産業の振興に関する法律は、ことしでちょうど十年を迎えるわけでございますが、現在までのところ百四十四品目を指定しております。そして、それぞれの指定されました品目についてその産地では、振興計画というようなものを策定することになっておりまして、先生が御指摘ございましたような幾つかの問題点、後継者難あるいは技術、技法の問題等々について、計画を策定しておるわけでございます。  私ども十年を経た今日の評価でございますけれども、こういった振興計画、あるいはそれに対します国の若干の支援措置ということによりまして、従来とかくばらばらであり、あるいは消えかかっていたような産地にまで一つのまとまりが出てきたということは、明らかに言えるように思います。そして、その振興計画を通じて、後継者を育成するという事業、あるいは伝統的な技術、技法を保存し継承する事業、あるいは原材料確保事業、需要の開拓というような各種の振興策をそれぞれの産地が今日まで努力をしてきたところでございまして、この十年間、伝統的工芸品というものを新しく見直し、新しく再活性化をするという観点から、この法律及び法律に基づきまして私どもお世話させていただきました行政の成果というものは、実に大きなものがあったというふうに私どもも考えているところでございます。
  223. 森本晃司

    森本分科員 今お話しいただきました中で振興計画という問題が出ておりますが、実際に産地の方へ行って、特にまだ指定を受けていない地域に行っていろいろ意見を伺いますと、振興計画をつくるのが大変なんだ、特に職人さんが非常に多い産業でもございますので、皆さんそういった事務的な面で振興計画書をつくるのに非常に悩んでおられるようでございまして、こういった事業をさらに進めていくには、振興計画を簡単に皆さんが書いていけるような、また相談に乗っていくような手を講じていかないと、その手続上の問題で申請をしていないんだという声もよく伺うわけでございます。  そういった点と、もう一つは、この振興計画は五年ないし八年ということでございますが、ちょうどもう十年間たってまいりまして、既に早いところではその振興計画を受け実施したのが一応終わっているというところも多々ございます。こういった既に終わった地域が再び問題を抱えましたときに、もう一度振興計画を起こしていき助成を受けることができるのか、あるいはまた、間もなく終わろうとしている地域が引き続いてその問題解決のための振興計画をすることができるのかどうか、この辺をお尋ね申し上げたいと思います。
  224. 黒田真

    ○黒田政府委員 確かに、産地の組織がしっかりしておりますところは振興計画等を作成することができやすいところもございますが、他方、産地として組織がしっかりしていないというようなところもございまして、御指摘のようになかなか産地だけで自主的に計画をつくることがむずかしいという例は間々見受けるわけでございます。こういう場合におきましては、それぞれの事情の特別の状況もございますので、地方公共団体、特に県の御協力を得まして、私どもも、伝統産業振興協会というような協会等もございますので御相談に応じながら、計画づくりが基本でございますので、御支援申し上げるということで従来もやってまいりましたし、今後ともそういう面での力は尽くしていきたいと思っております。  それからお尋ねの第二点でございますが、五年ないし八年ということで今までつくった振興計画の期限が切れた後どうなるかということでございます。この点につきましては、この期間にいろいろな課題に取り組むということで来たわけでございますが、そういった努力にもかかわりませずなお問題が残されており、それに産地としてはまた新たな気持ちで取り組んでいこうということでございますれば、これらについて新しい振興計画、一応五年ぐらいのことをめどにしたらどうかと考えておりますが、そういう振興計画をつくるという道は開いているということでございますので、今後、既に振興計画が終了したところ、あるいは終了しようとしておるところが新たな取り組みをされた場合には、これを認定していくというつもりでおります。
  225. 森本晃司

    森本分科員 終わって一年二年たっているところも、もう一度振興計画を起こすことができるわけでございますね。同時に、そういった振興計画をさらに起こしていくときに、先ほども申し上げましたように、先般こういう問題についてはここまでやったじゃないかという形じゃなしに、新たな気持ちで起こしているというふうな角度で、これからも御指導をしていただきたいと思います。  なお同時に、振興計画が継続できるということは産地ではよく知られていない。先般そういうことを申し上げますと、ああそれはできるのですかということもございます。これは、いっそういう通達を出し、そういう指導をしていらっしゃるか、お尋ね申し上げたいと思うのです。
  226. 黒田真

    ○黒田政府委員 私どもといたしましては、当初五年ないし八年でスタートいたしました振興計画が、所期の成果を上げていないからこれを単に延長したいというようなことではいけないのであって、一応第一次の振興計画は所定の期間で終了はする。しかし先ほど申しましたように、課題がすべて解決できているとは限らないわけでございますから、そういった残された課題に新たな気持ちで取り組むという場合については、これを新たなる振興計画として認めていく、こういう考え方で対処したいというふうに考えております。  こういった私ども考え方につきましては、大体一年ほど前に決めまして、各産地には流しておるはずでございますけれども、あるいは周知徹底が不十分ということであれば、改めてその辺は徹底させたいと思っております。
  227. 森本晃司

    森本分科員 一たび終わりましたところ、あるいは終わりそうな物品については、積極的にむしろ通産省の方から、一品ずつ指導あるいは意見を聞いてあげるというふうに持っていってあげたらどうかと思います。昨日、あと二年のうちに終わる産地で伺いましたら、これから先ほどうしようかと今考えておるところでございますといって、もうぎりぎりになるまで恐らく考えられないのがこういった産地の特徴ではないかと思いますので、むしろ積極的にそういったところの意見を聞いていく方向に持っていっていただければと思うわけでございます。  次に、伝産法が施行されるに当たりまして、衆議院の商工委員会で附帯決議が行われております。その一項に、「伝統的工芸品類似の外国製品の輸入及び販売に対しては、伝統的工芸品産業の存立がおびやかされることのないよう十分対処すること。」こういうのが附帯事項でついておりますし、また同趣旨の附帯決議が参議院の商工委員会でも行われております。こういった附帯決議がついておりますけれども、「おびやかされることのないよう十分対処する」というのはなされているのかどうか、その辺はいかがでございましょう。
  228. 黒田真

    ○黒田政府委員 そのような附帯決議のありますことは、十分承知いたしております。これについては一部に、類似の外国品を排除できないかという形で問題が提起される場合がございます。率直に申しまして、なかなか難しい問題をはらむ場合が多いわけでございます。  私どもそういう点で考えておりますのは、伝統的工芸品として指定されました品目につきましては伝統証紙というものを張りつけることで、みずからこれがこの法律に基づく指定をされた素性の正しいものであるということを積極的に展開していただいて、他の類似品との差を際立たせていただくということが根本ではないだろうか。他方、特に外国品につきましては、万一外国品が原産地を偽るような表示がございますれば、これは当然のことでございますけれども法律的に取り締まるという制度があるわけでございまして、どちらかといいますと自分たちの指定された品目が、みずから自分は指定産品であるということを積極的に言っていただき、かつ、国民の皆さん方に、本当にその産地で伝統的な手法により生産された筋道のいい、血統の正しい伝統的工芸品については、その証紙が張ってあるんだということをできるだけ知っていただくという形で、まがいものとの差を際立たせていただくということではないかと考えておるわけでございます。
  229. 森本晃司

    森本分科員 私の選挙区でございます奈良県で、伝統的工芸品の指定を受けている品目の一つに高山茶せんがございます。ここは今まで日本の市場の九〇%を生産しておりまして、歴史と伝統を誇ってきたわけでございますが、今この高山茶せんの産地へ行きますと、業者の方が口を開けば出てくることは、韓国産の製品に脅かされているんだということで、今シェアが九〇%から七〇%くらいにまで落ち込んできているのが事実でございます。また、こういったものは使ってみないとなかなかわからない、表を見ただけではなかなかわからないというところがございます。先ほどお答えいただきましたように、伝統マークを確かに高山製品ではケースの中に入れてやっているわけでございますけれども、この伝統マークというのは一般的にはまだまだ知られていないものでございまして、それが果たして由緒ある伝統マークなのかということはわからないわけです。  この辺のPRも大事なことはさることながら、高山の人たち、韓国産が日本の国に入ってくるときに一つおっしゃっていることは、この茶せんというのは韓国でつくられても韓国で消費されることはないわけで、すべて日本の国へ入ってくるわけでございまして、したがって、率直な意見としては輸入制限ができないのかということで、これは外国との貿易の問題でございますので簡単にはいかない問題かもわかりませんが、地元の人が望んでいることは、輸入制限ができないかどうか、まずそこからスタートいたします。輸入制限ができないならば、せめて日本の国に入ってきたときに、これは韓国製なら韓国製である、あるいは外国製なら外国製であるというマークがつけられないものなのか。よくシャツ等にはそういった表示がなされておりますので、地元の皆さんは、日本に輸入された段階でそういうものをつけてもらうことができないかという意見、希望でございます。それがまた伝統産業を守っていくんだということでございます。  同時に、非常に不安に感じていらっしゃるのは、どれだけの数がどんなルートで日本の国に入ってきているかということがわからないわけです。一説には二万本であるという説もございますし、あるいは五万から七万という説もございますし、どれだけの数が入ってきているかわからないという不安感、ルートとか数がわかってきたならば、またそれへの対応もできてくるわけでございますが、その辺が今地元の皆さんに非常に不安を与えているわけでございます。地元は何もしないかというと、そうではございません。今、生駒市と連携しまして一生懸命竹林公園をつくって、そこで観光客もあわせてやっていこう、それから七カ条というものをつくって高山製品のよさを示していこう、あるいはその名を高めていこうということを一生懸命やっているわけでございますが、政府として何とかできないのかという意見が圧倒的に強いわけでございます。この点についてお尋ね申し上げます。
  230. 黒田真

    ○黒田政府委員 伝統証紙というものが由緒正しい指定品目にだけ張られているという事実について、まだ国民各層の理解が不十分であるかもしれないという点は、私どもも問題意識は持っているわけでございまして、あらゆる機会を通じてこの普及には努めていきたいというふうに考えております。  それから、外国から輸入されるものについて、外国産であることを表示させることができないだろうか、原産地の表示強制という議論は、課題としては随分長いこと問題ではございます。他の商品の場合にも、そういう例、そういう要望はあるわけでございますが、なかなか厄介な問題がございまして、結局虚偽表示を取り締まるということについては、これはぴしっとできるわけでございますけれども、反対に外国品であることの表示を義務づけるということは難しい。したがって、それに対する対抗手段は、日本品について日本品であること、国産品であることを積極的に表示して、むしろそういうことで消費者の選択の一助にするというようなことにならざるを得ないというのが実情だろうと思います。  それから、数量なり流通経路というものがよくわからないために非常に不安が拡大しておるという点は、私ども理解できるわけでございますが、なかなか単品といたしましては特別なものでございまして、日本に輸入される段階で茶せんが何個入ったかということを確認することは、税関段階でも率直に申し上げて非常に難しいようにも思われます。しかしながら、私どもといたしましては、このように外国から輸入されますものがどういう経路をたどって、おおよそどのくらい入っておるだろうかということについて、どの範囲までわかりますか、できるだけ調査を進めまして、そういうことがわからないことに伴う不安というものはできるだけ解消し、調査の結果いろいろなことがわかってくればまた必要な手を打たしていただきたい、かように考えております。
  231. 森本晃司

    森本分科員 きょう一番最初におっしゃっていただきましたように、百四十四品目、ございますが、その指定を受けていない工芸品の中で、これは非常に優秀であるというのに、あるいは本当に日本のふるさととして残していかなければならないというものの中でも、指定を受けていないものが随分あります。私も、一つ一ついろいろな角度から見てみましたが、なぜこれが入っていないのだろうかと思われるものがたくさんございまして、現地へ行っていろいろ話を聞いてみますと、一つは組合が結成されていないと指定を受けることができないということもございますし、組合をつくるには、協会まではつくれるのだけれども、組合つくるまでに至らない、非常に難しい。  当然自分たちの伝統産業を守ろうというのだから、産地内でまとめるのが当たり前のことと思われるかもしれませんけれども一つ一つの伝統的産業でございますので流派があるといった問題で組合結成に至らない、したがって申請できないという品目が相当多数あるように私は思われるわけです。伝統的工芸品振興の上で、ポンプの誘い水のように、指定を受けた品目だけではなしにもう少しそういったところにも手を差し伸べていき、啓蒙していくということが大事なことではないかと思います。  せんだっても青山の伝産振興館を見てまいりましたけれども、当然入っているだろうと思われるようなものが入っていないのがたくさんございます。そういった指定品目以外に、こういった点をどう振興していくのか。例えば伝統工芸師という人がございますが、こういった人たちには指定品目以外まで枠を広げているのか、それから小規模産地についてはどういう手を差し伸べているのか、私は、そういう中からまた組合結成の息吹も沸き上がってくると思います。その点について、ひとつお答えいただきたいと思います。
  232. 黒田真

    ○黒田政府委員 御指摘のように、産地によりましてはなかなか一本にまとまらないというようなことから、当然だれが見ても伝統工芸品であると思われるようなものについて指定を受けるに至っていない事例があることは、私も承知しております。こういう場合に、どういうふうにしていくのかということはなかなか厄介でございますが、すでに百四十四という指定がございまして、大体どういう効果が出てくるか、あるいはどういう条件が整えば指定してもらえるかということについては、関心のある方々には相当徹底しておるように思います。しかしながら、確かにまだ啓蒙普及等の点で私ども努力すべき点があるように思いますし、また、地方公共団体、府県あるいは市町村の方々とも十分御相談をしながら、そういった障害を一つずつ乗り越えていく必要があろうかと思っております。  それから伝統工芸師というのは、現在指定産地の団体でございますところの伝統的工芸品産業振興協会というものでそういう資格を付与することになっておりまして、これを指定産地以外に拡大するということについては、直ちに考えることは難しいようにも思います。  しかし、先生御指摘のように、この法律に基づきます指定はある条件を要求しておりますが、その条件に満たないような小規模の産地につきましては、実際に地方公共団体がいわば国に準じて指定をするというようなことで、これを応援する体制をつくっておる場合も多いようでございますし、また、協会といたしましても、伝統的工芸品産業に対する功労者というようなときには、こういった小規模産地の方々も含めて功労に対して顕彰をするというようなことで、ある程度仲間の中には入れさせていただいておりますが、法律的な指定の要件等もございますから、そこは一応けじめをつけながら、そのにじみ出した分については、しかるべく現在府県ベース等々で対処させていただいて、全体がやはり日本の伝統的工芸品産業というものをつくり上げているわけですから、私どももできるだけ可能な応援はさせていただく、かように考えております。
  233. 森本晃司

    森本分科員 この百四十四品目につきましては、むしろそういった申請する機能等々を持っておるところ、またそういったところの人たちの努力によってできてきたわけでございますが、十年間たって百四十四品目でございます。これから先、残っているところも大事で、そういうところにも先を当てなければならない。また、指定されていないで組合等つくれないところに、日本のいい品物が随分あるのじゃないかと思います。こういったところへさらに力を加えていただきたい、このように思うわけでございます。  時間が余りございませんのでそれぐらいにさせていただきまして、最後に、せんだって私、伝統振興協会へ寄せていただきました。あの中の展示場は非常に見事に展示されておりまして、極端に申し上げますと、その中に入っていっただけで心が安らぐような思いでございまして、そこにいらっしゃる職員の皆さん方もこういったものに非常に一生懸命に取り組んでくださっておりましたが、いま伝産品で何が問題になっておるかといいますと、やはり需要がないというところが一つは大きなネックになっておるのじゃないかと思います。こういった展示場等々を、今東京に一カ所でございますが、これは予算の伴うことでございますが、むしろもう少し拡大し、東京だけに限らず消費地に、もう少し小規模でも結構でございますが、その産地の物だけではなくして全国的なものを集めて展示し、啓蒙していっていただくのが非常にいいかと思います。せんだって、青山のそのところで私が非常に学んだ点だと思いますので、申し上げておきたいと思います。お答えは、ちょっと時間がございませんので結構でございます。  最後にもう一つ、いよいよ伝統法が施行されて十年の行事が、本年京都等々で行われます。こういった十周年を機会に大いに、先ほどの伝産の証紙一つにしてもPRをしていかなければならないのではないだろうか。私の友人にあの伝産のマークを見せて、一体何のマークかわかるか、相当数多くの人に聞きました。ほとんどわかりません。これが現状でございます。そういった意味から、この十年を機会に大いに啓蒙運動を行っていただきたい。そのことがその産地に携わっている人たちを力づけていく、また目覚めたものになっていくのではないかと私は思います。  例えて申しますと、非常に安易な例かもわかりませんが、国鉄がいろいろと列車の中あるいは駅にディスカバー・ジャパンとかやっております。それぞれの産地を奨励するような、ああいうところから、国鉄との関係もございますので一挙にはまいりませんが、そういうところに一緒に伝産のマークをつけて、そこの産地にはこうこうこういうものがありますよとか、あるいはそれぞれ各県の観光協会が出すいろんなポスターが相当はんらんしていると思います。そのポスターの中に月間の伝産マークをつけていただくとか、それからたばこの中にもそういう月間のものを印刷して販売するとか、そういった啓蒙が非常に大事ではないかと私は思います。ちょうど十年目に当たりましたので、大いにそういったことをやっていただきたいとお願い申し上げる次第でございますが、お答えだけいただきまして終わらせていただきます。
  234. 黒田真

    ○黒田政府委員 法律制定十周年を記念いたしまして、私ども通商産業省といたしましても省議決定で、これから今年十一月を初めに毎年十一月を伝統的工芸品月間ということで、少し派手にと申しますか、この伝統的工芸品のよさを国民の方々に御理解いただこう。国民の方でも、手づくりの味、本物の味に対する非常な要求が出てきておりますので、その辺は私どもの、あるいはこの業界の努力によります啓蒙普及がうまくいきますならば、そしてその中には御指摘のように国鉄とタイアップする、あるいは専売公社にお願いをする、郵政省にもお願いをしながら、ひとつできるだけこの法律の趣旨が生かされますように、私どもといたしましても努力をするつもりでございますが、先生方におかれましても、またひとつよろしくお願いしたいと思っております。
  235. 森本晃司

    森本分科員 質問を終わります。
  236. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これにて森本晃司君の質疑は終了いたしました。  次に、青山丘君。
  237. 青山丘

    青山分科員 私は、中小旅館業の定義について質問いたしたいと思います。  近年、産業構造の第三次産業化が進展する中で、旅館業はレジャー産業として、社会の公器的使命を果たしてまいりましたが、今や社会経済の高度化に伴い、ビジネス宿泊、観光旅行、それに冠婚葬祭など、国民経済的需要はますます高まってきております。まず、その現状についてお伺いいたしたい。  特に、その使命の大半を担うともいうべき中小旅館業につきまして、政府はどのように認識をしておられるのか、また、それらの中小旅館業に対してはどのような政策が講じられているのか、お尋ねをいたします。
  238. 瀬田公和

    ○瀬田説明員 先生の今のお話のように、週休二日制の普及でございますとか労働時間の短縮とか、そういった国民生活の変化に対応いたしまして、旅行というものが国民の生活に密着し、旅館の果たす役割がだんだん大きくなってきているということは、先生御指摘のとおりでございます。  旅館の施設数の推移を見ますと、五十七年末で約十一万六千の旅館がございます。五十年度以降約四%程度の伸びという形になっております。  内容を見ますと、旅館業法では旅館とホテルというふうに大別をしておりますけれども、ホテル営業が約二倍以上の伸びを示しておりまして、伝統的な中小旅館の伸びが停滞しているのに反比例いたしまして、ホテルとかペンションとかビジネスホテル、そういった種類のものがほとんど二倍以上の伸びを示しているということが特徴的だろうというふうに考えております。  それから、現在旅館業についてどんな施策をというお話でございますけれども、さっきお話ししましたように、中小旅館というものは伝統的な中小零細規模のものが非常に多いということにかんがみまして、特に経営の健全化を図る、そのことによって旅館業法の目的としております衛生水準の向上を図るということが特に大切になってきている、そういう現状でございます。  このため、一つには各都道府県に環境衛生業指導センターというものを設立いたしまして、経営指導体制についての指導を充実強化していくということをやっておりますし、それから一つは旅館業の振興指針というものをつくりまして、旅館業の振興を図るということにしております。振興指針の内容は、一つには各地域ごとに旅館の振興計画をつくっていただきまして、それに基づきまして、例えば環境衛生金融公庫によります融資に特例措置を講ずるとか税制上の優遇措置をお願いするとか、このほかいろいろと施策を講じたということが内容になっております。
  239. 青山丘

    青山分科員 さてそこで、現在旅館業はサービス業の範疇の中に入っているわけですが、そもそも総論的にサービス業というのは一体何なのかということなんです。  例えば、旅館業は資本の集約型装置産業、こういうふうに言われておりまして、御承知のようにもちろん旅行、宿泊その他の式典に使われ、結婚式に使われている、あるいは会議、宴会、会食、いろいろな形で使われておりまして、事務的な人員の確保の問題あるいは設備、装置、これを相当整備していかなければいけない。資本が相当集約されている装置産業とも言われているわけです。喫茶店などと同じ資本金一千万円以下、従業員五十人以下のサービス業としての定義でとらえられているわけです。  これは一つの例えで、こう言う方がいました。ネズミと猫は余り仲よくありませんけれども、ネズミとか猫を馬や牛と一緒に飼っているようなものだ、そういう意味で少し認識が足りない、こういうことを言った人がありますが、なかなかうまい例えだと私は思ったのですよ。  問題は、このような範囲で定義しているために、この上限を超える中小旅館業にあっては、中小企業対策の特典が受けられないで困っているのです。それからまた、大資本は大資本の方で設備の整った施設を用意してくる、大企業がどんどん進出してくる。近代化装備の旅館に圧迫をされてきて、中小旅館の経営が非常に苦しい状況に今立たされているわけです。そうした実態をどう把握しておられるのか。  さらに、産業分類におきましても、旅館はサービス業に分類されております。この際、非常に多岐にわたるサービスの形態から、その分類を再検討すべきだと私は考えるのですが、いかがでしょうか。
  240. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 私からは、中小企業基本法の体系におきます中小企業の範囲につきましてお答え申し上げます。  確かに、サービス業の中で旅館業は扱われておりまして、五十五年の秋以降行われました中小企業の定義改定の小委員会の場におきましても、旅館業のような総じて企業規模の大きな業種につきましては、現行の定義が必ずしもふさわしくないのではないかという御意見が出たことも事実でございます。ただ、この業態の分析を見ますと、旅館業につきましては、現在の定義によりましても約九八%の企業数が中小企業としてカバーされておりまして、企業数で見る限り非常に広いカバレージがとられておるという事実がございます。  またもう一つは、これも中小企業政策審議会の場におきまして出た議論でございますけれども、定義を引き上げますと中小企業政策の密度と申しますか、対象が薄まってしまいまして、必ずしも真に零細な中小旅館業あるいは中小企業に対する施策の効果が薄まるのではないかという議論、あるいは先ほど御指摘の分野調整あるいは大企業からの進出の規制をするという場合におきましても、従来保護されておった分野が保護されなくなるという問題が生ずる等々の議論も一方で出ておりまして、この定義改定小委員会の場におきましても、必ずしも範囲を改定すべきであるという結論が出ておりません。私どもといたしましては、業態の実態あるいは各界の御意見、議論をさらに踏まえまして、慎重に検討していく必要がある、かように考えております。
  241. 瀬田公和

    ○瀬田説明員 先生御指摘のように、環境衛生金融公庫の貸付対象となる事業所の規模というのは、現在資本金または出資金が三千万円以下の会社、または常時使用する従業員数が五十人以下の会社または個人ということになっておりまして、これは事業所統計調査報告その他の報告によって見ますと、一応資本金が三千万円以下の旅館が大体八九%を占めているわけです。また、従業員規模五十人以下の企業が九七・八%を占めておりまして、このどちらかの条件を満たせば公庫から融資を受けられるということになっておりますので、さっき通産省から御説明ございましたように、大体九八%の旅館が融資の対象になっているという状況でございます。この点を変えるかどうかという議論は、確かに先生おっしゃるようにあるのでございますけれども、これ以上に引き上げていくということはなかなか現在では難しいのじゃないだろうかというふうに考えております。
  242. 青山丘

    青山分科員 制度を利用しようと思いますと、その制度に適合する企業規模で維持していかないと制度が利用できません。ところが、需要の方はどんどんと拡大してきておりますし、装置も新しく変えていかなければいけない、人員も本当なら確保していかなければいけない、しかし国の制度がこうなっているので、その範囲でやっていかないと融資も受けられない、そういう面もあるわけです。  したがって、現状がこうなっているというのと中小旅館経営者が本当はこうしてほしいという気持ちと、そこには相当なギャップもあります。どんどんと近代化されてきておりますし、多岐にわたる需要の変化に対応しようと思いますと、今私が申し上げたような現状における中小企業基本法のサービス業としての旅館業では資本金一千万円以下。現実に、一千万円以下の資本金の旅館業でいわゆる民間需要、ニーズに十分こたえられるかというと、実態はそうではないのです。そういう点では実態に即した検討をぜひしていただきたい。それは後でちょっと触れます。  そこで、今環境衛生金融公庫の話が出ましたが、これは旅館業の定義を政令で資本金三千万円以下としておりますが、こちらの方は三千万円以下としております。その理由をひとつぜひ説明していただきたい。  それから、公庫の融資実績から見て、旅館業をサービス業としてとらえていた場合と、資本金三千万円以下としてとらえた場合とではどの程度違ってきているのか、お聞かせいただきたい。  それから、中小企業の定義改定については今話が出ましたが、中小企業政策審議会の中の定義改定小委員会で検討されていると聞いておりますが、その進捗状況はどうでしょうか。特に、旅館業についてはどのような議論がなされているのでしょうか。
  243. 岡光序治

    岡光説明員 まず第一点の、環境衛生金融公庫が貸し付けをする場合の旅館業の貸付対象が一千万から三千万に引き上げられたわけでありますが、この理由は何かということについてお答えを申し上げます。  先生御指摘のとおり、旅館業につきましては設備に依存する場合が高こうございますので、そういった設備装備率が高いということに着目をして資本金についてひとつ見なければいかぬだろう、こう考えたわけです。  実は、この制度が発足したのは昭和四十一年でございますが、その当時資本金一千万未満のものが八九%の比率を占めていた。ところが五十三年には、これが七八%に下がったわけです。カバー率が大分低くなったということで、それではそのカバー率を考えてもう一つ上のランクの三千万というところに線を引いてみたらどうか。これは、ちょうど五十三年に事業所統計がございますが、そのときの状況では九一%ということになっております。相当のカバー率になるのではないか。  先ほども御説明がありましたように、貸付対象は資本金規模があるいは従業員規模が、このいずれかで考えておりまして、資本金についてはそのような整理をすべきではないかということで、五十七年にこのような整理をしたわけでございます。  それから第二点の融資実績から見てどうなのか、こういうお話でございますが、私ども、環境衛生金融公庫の融資実績状況につきまして、実は資本金規模または従業員規模別のデータを現在のところ持ち合わせておりません。したがいまして推測でございますが、五十六年に行われております事業所統計から一千万未満のところと三千万未満のところと二つで線を引いて考えてみたわけでございます。そうしますと、一千万未満のウエートが七五%、それから三千万未満のウエートが八九%でございます。これが先ほど改正をいたしました、要するに五十七年の際にデータに使いました、三年ごとに事業所統計を行っておりますので、五十三年のデータで見ましても、実は一千万未満のものが七八%それから三千万未満が九一%ということで、少し資本金が高い方にシフトしているわけでございますが、こういった状況から考えても、三千万に広げたことによって、相当融資対象がふえたとは言えないのではないだろうか、こう思っておるところでございます。
  244. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 私からは中政審におきます定義改定小委員会の審議経過等を御報告いたしますと、五十五年の十月からこの中政審の小委員会が発足しておるわけでございますけれども、五十六年の十二月に経過報告という形で同小委員会のとりあえずの結論が出ております。その中で、旅館業に関します問題点等を申し上げますと、旅館業等が属しておりますサービス業につきましては、その業態が多様でありますために、定義の細分化などの是非、このような問題を検討する必要があるというような指摘がこの小委員会の場で行われたことは事実でございます。  しかし一方におきまして、同報告書の中におきましても、中小企業の範囲拡大により施策の効果が薄められるという問題がある、あるいは分野調整問題等の規制、調整問題において、その対象が変わることにより、従来保護されていたものが保護されなくなるなどという問題も指摘されておりまして、同報告書によりますと、結論といたしましては、中小企業の定義改定については資本金規模の見直し及びサービス業分離の必要性があるという考えもあるが、同時にこのような困難な問題を生じているので、今後ともこれにかかわる検討課題について一層詳細な調査分析を行い、その結果をもとに各界の議論を踏まえて鋭意検討を進め、できるだけ早く結論を出すこととするという経過報告が出ておるわけでございます。  その後、庁内におきましても実態の分析、各界の御意見等を伺っておるわけでございますけれども、必ずしもこの各種の業種、業態におきまして定義改正に対するコンセンサスというものがまだ出ておりません。したがいまして、私どもといたしましては慎重にこの問題に取り組む必要があるわけでございますけれども、いついつまでに結論を出す、あるいは出せるという状況にないということを御報告いたしたいと思います。
  245. 青山丘

    青山分科員 制度が十分に一〇〇%利用していただくというわけにはいかない、九割方利用していただければ、これはもう非常にいい制度なんだ、こういうことなんだろうと思うのですね。ただ、まだ最近の資本金階級別施設数の構成比が、これは五十六年ですら三年ぐらい前になるわけですか、これで見ますと約九〇%、三千万円未満で見ていただけると、以前は九一・四%あったものが最近は八九・四%、約九〇%。それで、全体の構成比で見できますと、やはり一億円を超えるものはうんと少なくなってきますね。三%ぐらいです。九七%は一億円未満なんです。もっとも、三千万円未満が九〇%ぐらいだという見方が支配的な考え方、受けとめ方のようですが、もっと幅広くこの実情を理解していただき、より幅広く、より有効に制度が活用していただけるためには、私は、この中小旅館業に対しての一つ基準は一億円までじゃないかというふうな考え方を持ちます。  そこで、我が国における中小企業の範囲について、大まかな業種別で資本金規模、従業員規模の量的基準で画一的に定義しているのが実情であります。しかし、細かい業種別の伸縮性を保つためには、質的基準で定義すべきであろうと思います。アメリカは質的基準でやっているようですね。この方が現実的ではないか。中小企業の実態に即して、しばしばその上限が引き上げられてはきましたが、現行の基準昭和四十八年以来据え置かれたままです。全般的な範囲の引き上げにつきましては、各種調整措置、例えば分野調整法等との関係から賛否両論あると思いますが、サービス業に限らず例えば製造業について見ても、豆腐製造業が資本金一億円以下、従業員三百人以下という範囲に置かれているわけで、何となく実態にそぐわないような気がするのです。特に私は偏見を持って言っているわけじゃなくて、実態にそぐわないような気がするのです。そのために、その業種の実態に応じた中小企業の範囲の策定というものが急務だと思いますが、いかがでしょうか。  旅館業の実態では、資本金、従業員のそれぞれから見て、どの範囲が中小と考えられるのでしょうか。  それから、業種別に範囲を決めることが困難とするならば、とりあえず中小旅館業の範囲を製造業と同様にすべきだと私は思います。資本金一億円以下、従業員三百人以下の範囲に引き上げていただきたい。中小旅館業の自助努力を政策面からぜひ支援していただきたい。そうして、中小旅館業の経営の安定と向上を図っていただくことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
  246. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 御指摘のように我が国の場合には、施策の明確化を図るという観点から、中小企業基本法以下の関係法令におきまして、製造業、卸売業、サービス業といった大きな業種分類によりまして、中小企業の範囲を決めております。  一つの御意見としては、業種の実態に応じ、あるいは施策の目的別に、この定義をよりきめ細かく決めるべきではないかという御意見あるいは有力な提言が過去におきましてもなされておることは事実でございますけれども、またこれを行います場合には、施策の内容が非常にわかりにくくなるという点が一方のデメリットとしてございます。  私どもといたしましては、仮に施策の目的別に業態の定義をきめ細かく決める場合には、相当総合的な検討の結果を踏まえて行わなければいけない、あるいは中小企業の保護対象の変更が加わってくるということで、非常に慎重な検討が必要であるというふうに考えておりますし、現在の経済の実態が非常に変化しておる時代におきましては、例えばサービス業の中でも対事業所サービス業というような新しい業態も出てきておりまして、これは非常に大きな資本を要するというような問題も出てきております。サービス業の中で旅館だけを取り上げて、この際、とりあえず定義改正をしたらという御意見でございますけれども、やはり仮にそのようなステップを踏み出す場合には、総合的な検討結果を踏まえて行わないと思わぬデメリットが出るということも事実でございまして、真剣にかつ慎重に今後検討を続けてまいりたいと思っております。
  247. 青山丘

    青山分科員 質問を終わります。
  248. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これにて青山丘君の質疑は終了いたしました。  次に坂口君。
  249. 坂口力

    坂口分科員 きょうは地下水の問題と地盤沈下の問題をひとつ御質問させていただきたいと思います。本来ならば国土庁もしくは環境庁の中で御質問を申し上げた方があるいはよろしかったのではないかというふうに思いますけれども、今までの経緯を見てみますると、この地下水問題並びに地盤沈下の問題につきましては、いわゆる企業の保護の立場からお考えになる通産省立場と、それから環境そのものを論じますところの環境庁の意見、あるいはまた国土庁の意見等々、それぞれやはり微妙な差がございまして、そしてこの問題がなかなか一本化できずに今日を迎えたと申しますか、法案作成というところまではなかなか進まなかったわけでございます。昭和五十五年でございましたか、予算委員会で私、この問題をやらせていただきまして、そして大平内閣のときに、関係省庁の間でひとつ協議機関をつくっていただいて、そして何とか前進をさせてもらいたいという御提案を申し上げまして、その質問を御了解をいただいたというふうに考えております。以来、漏れ承るところによりますと、かなり各省庁間でこの問題もお詰めをいただいているように聞いているわけでございますが、きょうは、その辺のところもお聞きをしながら、もう少し議論を深めさせていただきたいというふうに思っております。  まず最初に、環境庁の方、お越しをいただいておりますので、地盤沈下の現状につきまして、簡単で結構でございますので、ひとつ御答弁をお願いを申し上げます。
  250. 三本木健治

    ○三本木説明員 お答え申し上げます。  環境庁におきまして毎年取りまとめを行っております全国的な調査の結果によりますと、昭和五十七年度までの間に地盤沈下が水準測量等によって認められました地域は、三十六都道府県、六土地域に及んでおります。  最近の地盤沈下の状況といたしましては、かつてのように、全国的に著しい沈下を示すようなものは見られなくなってきておりますが、昭和五十七年度におきましては、横浜市におきまして地下掘削工事に伴う年間二十六・三センチメートルの沈下という特異なケースがありますほか、年間五センチメートル以上のものといたしましては、札幌市、佐賀平野、関東平野北部、これは特に埼玉県方面でございます。それから諏訪市がございます。それから、年間四センチメートル以上といたしましては、仙台、塩釜方面、九十九里平野などがございます。また、年間三センチ以上といたしましては、秋田県金浦町、千葉県成田市、新潟県豊栄市、また濃尾平野の一部と考えております長島町がございます。このように、依然として地盤沈下が継続しております地域もございますので、ゆるがせにできない問題と私どもは考えております。
  251. 坂口力

    坂口分科員 ありがとうございました。  濃尾平野を初め、各地域で差はございますが、まだまだ地盤沈下が進行しているところがございます。今お読みいただいたように、一時ほどではなくなっておりますけれども、しかしなおかつ続いておるところがございますし、それから地下水と関係のない地盤沈下もあるわけでございますが、きょうはその問題はちょっと横に置かせていただきまして、特に地下水とかかわりのありますところの地盤沈下、これが大部分でございますので、この問題について質問をさせていただきたいと思います。  それで、今環境庁の方から、この五十七年度におきますところの状況が報告されたわけでございますが、こうした状況を踏まえて、六省庁、詳しくは九省庁だそうでございますけれども、いろいろと御協議をいただいておる。その取りまとめをやっていただいておりますのが国土庁の方でございますので、引き続きまして国土庁の方から先にひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  252. 矢口慶治

    ○矢口説明員 水資源局が省庁連絡会議の庶務をいたしておりますので、そうした立場で御答弁させていただきます。  地盤沈下の防止等に関します対策につきましては、昭和五十六年十一月に関係閣僚会議の随時開催が閣議了解されまして、この関係閣僚会議において、関係省庁連絡会議及び地域部会の設置並びに対策要綱の策定について決定を見たところでございます。  対策要綱のねらいにつきましては、地盤沈下とこれに伴う特に被害の著しい地域につきまして、地域の実情に応じた総合的な対策を推進することとされております。  その対策要綱の内容につきましては、削減目標、代替水の供給あるいは災害の防止または復旧その他の事項について検討をいたしまして、地域の実情に応じて盛り込んでいくというようなこととされております。  また要綱を策定します地域につきましては、さしあたり濃尾平野及び筑紫平野とされておりまして、また関東平野北部につきましては当面実態把握と資料の整備を進めることとされております。  対策要綱の検討状況につきましては、要綱によります関係省庁連絡会議及び地域部会を適宜開催いたしますとともに、随時学識経験者の御意見を聞き、また事務的な関係者による打ち合わせを重ねてきておるところでございます。できるだけ早く対策要綱を取りまとめたいという考えで、努力をいたしておるところでございます。
  253. 坂口力

    坂口分科員 そういたしますと、現在の進行状態からいきますと対策要綱を決定するまでにはまだかなり時間がかかるということでございますが、もしそれならば、今一番行き詰まっていると申しますか、今一番ネックになっているところは一体どこなのかということを、もう少しひとつ補足していただきたいと思います。
  254. 矢口慶治

    ○矢口説明員 対策要綱の策定につきましては、目下鋭意策定作業を進めておるというところでございます。できるだけ早い機会に取りまとめを行いたいということで、やっておるわけでございます。  内容につきましては、地下水採取にかかる目標量をどう決めていくのか、そしてまた、それと関連づけながら総合的な代替水の供給事業その他をどう進めていったらいいのか、その辺を具体的に詰めていかなくてはいけないということで、今やっておるところでございます。
  255. 坂口力

    坂口分科員 大体どのくらい、見通しは。
  256. 矢口慶治

    ○矢口説明員 時期につきましては、私どもできるだけ早くこれはまとめなくてはいけないということで、従来からの国会等におきます議論も踏まえまして鋭意努力をしているという現状でございます。ただ、具体的な時期につきましてはまだコンセンサスを得ていないということでございまして、この点につきましては御指摘も踏まえて早急に取りまとめができるよう努力したいということでございます。
  257. 坂口力

    坂口分科員 大臣、今お聞きをいただいたような現状並びに各省庁間のお話し合いの進度状況でございます。通産省側は通産省側として、今まで通産省立場からいろいろと御努力をいただいてきたことも存じ上げているわけでございますが、しかし、どういたしましても、それぞれの省庁間の意見の一致を見ないところがございまして、要綱策定というところまでなかなかいきにくい面があることもまた事実でございます。建設省はまた建設省でいろいろの御意見もあるというようなことでございます。それだけになかなか難航を続けていた問題でございますけれども、しかし、先ほど報告がありましたように、地盤沈下は三十六都道府県に及び、中には年間に四センチ以上もというようなところもあり、そこにお住まいの住民の皆さん方は大変な不安な日々を送っておみえになるところも多いわけであります。中には町の中で村の中で大半、八割近くが地盤沈下地域というような町村も実はございまして、そうしたところに住む人たちは特に台風時期等になりますと非常な心配をされるわけでございます。特に濃尾平野及び周辺におきましても、伊勢湾台風がございまして以後、それからもう百五十センチ以上沈下しているところがございまして、伊勢湾台風の後、堤防の改修をやっていただきましたが、その改修をやっていただいた分が全部すっぽり落ち込んでしまいまして、またそれ以前の方が高かったというところも中にはあるわけでございます。鋭意また最近その改修をやっていただいているところでございますけれども、そういう状況でもございまして、いろいろの各省庁の違いはあろうかと思いますが、通産省の方もぜひひとつ御協力をいただいて、そして何とか対策要綱、まあ法律まで早く進みたいわけですが、一足飛びになかなか法律とまでいかないものですから、対策要綱の取りまとめまではひとつ早急に合意を図っていただきたい、こういうふうに思っているわけでございますが、その辺大枠の話をちょっと先にお伺いしたいと思います。
  258. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 地盤沈下等対策要綱づくりにおきましては、国土庁が事務局としてあることでもありますけれども通産省といたしましては、各省庁と協議して十分早期に策定できるように努力いたします。
  259. 坂口力

    坂口分科員 事務局の方、ございますか。
  260. 石井賢吾

    ○石井政府委員 通産省としましては、工業用水あるいは工業用途に使用いたします地下水のくみ上げに起因いたします地盤沈下対策といたしまして、これまで工業用水法の適正な運用によりまして、地下水のくみ上げの規制、それから工業用水道事業を促進いたしまして代替水源を確保するといったような事業の促進、並びに地下水利用の適正化調査というようなものをいたしまして、その調査に基づきまして地下水利用の指導を行ってきて、地盤沈下対策に協力してきているわけでございます。  ただいま大臣からお話し申し上げましたように、工業用水の側面からいたしまして、当省として協力できる面につきましては、現在の要綱づくりにおいて全面的に協力するという方針で、その早期策定について協力してまいるという所存でございます。
  261. 坂口力

    坂口分科員 今お話を伺いますと、そう大きなネックはないような気もするわけでございますが、現実問題はなかなかその要綱の煮詰め等の段階になりますと進みにくいというのが今までの実情であったようでございます。しかし、もうこれ以上ちょっとこの問題ほっておけない状況にまいりまして、いよいよ一応決着をつけていただかなければならない。国土庁の方で取りまとめをいただいておりますけれども、しかし、いつまでもこの取りまとめの作業を待ち続けているというわけにもまいりません。けじめをつけていただくときを迎えているというふうに思っているわけでございます。それぞれの省庁からの御意見はあろうかと思いますけれども、ひとつそこを乗り越えて、せめて要綱づくりの段階まで到着をしていただく。そこまで到着いたしまして、その暁におきまして、それが地盤沈下防止法という形になりますのか、それともまた法律は各省庁それぞれ別々の法律で、総合的に見てその目標がかなえられるようになるのか、そこは別にいたしまして、法律づくりというところの方に進んでもらわなければならないというふうに思っておるわけでございますが、当面、この対策要綱をぜひひとつ御協力をいただきたいと思うわけでございます。  国土庁の方にもう一度戻りますが、先ほど省庁連絡会議の御報告を受けましたけれども、その中で余りはっきりおっしゃいませんでしたが、現在連絡会議の中で一番ネックになっているところというのは、今通産省の方からお話しになりました工業用水の代替用水がどうなるかということに絞られてくるのではないかと思うのですが、代替用水の方はこの数年間がない各地域とも進めていただいて、そして工業用水等もかなり広がってまいっておりますので、もうこの問題も以前ほどネックにはならなくなってきているのではないかとこっちは想像するわけでございますけれども、その点いかがでございますか。
  262. 石井賢吾

    ○石井政府委員 対策要綱を策定すべき地点といたしまして三地点ございますのは先生承知のとおりでございますが、工業用水の比重の大きい地域は濃尾平野でございます。この濃尾平野につきましては、できるだけ早期に、既に四日市及び楠町、それから愛知県名古屋市と、これだけの地域指定を行っておりますが、それに加えまして、尾張地域を指定地域として追加しようということで現在作業を進めております。これは来年になりますと工業用水道、通水が可能になりますので、その通水の時期を待ちまして規制を現実にかけていくという段取りで現在鋭意準備を進めておるわけでございます。  その他の地域につきましては、基本的に工業用水がその地盤沈下対策において大きな比重を占める、あるいはその代替水源確保が問題だというような実情であるとは聞いておりません。
  263. 坂口力

    坂口分科員 そういたしますと、各地域による格差はありますけれども、濃尾平野を中心といたしました、今尾張の方も加えるというお話でございますが、こちらの方については、来年その工業用水の完成を待って、それに合わせて、それと時を同じくして一応対策要綱ができ上がる、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  264. 矢口慶治

    ○矢口説明員 対策要綱の時期につきましては、先ほどお答え申し上げたとおりでございまして、まだその時期をいつにするかということについてはコンセンサスを得られておらない段階でございます。通産省におきまして工業用水関係の協議が行われておるということも私ども承知しておりますので、それらの手続の進行の中で今後詰めていきたい、そういうふうに考えているところでございます。
  265. 坂口力

    坂口分科員 取りまとめ役、大分慎重でございますが、それでは通産省の方は、大体先ほど申しましたようなお考えで、来年完成を待って時を同じくしてということで御異議ございませんか。
  266. 石井賢吾

    ○石井政府委員 工業用水にかかわる部分に関しまして、濃尾平野につきましては、今お話しのように通水時期を迎えれば、転換命令等を経て規制を実施することについていささかも問題はございません。
  267. 坂口力

    坂口分科員 それではもう一度環境庁の方に返りますが、今国土庁並びに通産省からそれぞれの立場で御答弁いただきましたが、環境庁といたしましては最初この問題を手がけて、そして法案づくりまで一度入っていただいた経緯があるわけであります。しかし、最終段階でそれがなかなか煮詰まりませんで、これが流れたという経緯がございます。こうした状況を踏まえて、今すぐというわけにまいりませんでしょうけれども一つの将来展望としてこれを一本に法律化をしていくという考え方は現在の環境庁にはございませんか。
  268. 三本木健治

    ○三本木説明員 お答えを申し上げます。  地盤沈下防止のための総合法制の経緯につきましては、先生ただいま御指摘のありましたとおりの状況でございます。私どもといたしましては、五十五年以降の内閣官房の調整を受けまして対策要綱を作成するという段階にございますので、この点に関しまして私どもが長年行っております調査検討の結果をもって全面的に協力をしてまいりたいという姿勢でございまして、総合法制につきましてはさらに引き続き検討、努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  269. 坂口力

    坂口分科員 それでは最後に大臣に一言お伺いをして終わりにしたいと思いますが、いま各省庁から発言をいただいたとおりでございまして、大詰めを迎えているようでございます。したがいまして、先ほど申しましたように各地域におきます地盤沈下地域の住民の不安というのはわれわれの想像を絶するものがあるわけでございますので、ぜひひとつ促進方をお願い申し上げたいと思います。中には、小さな地域でございますけれども伊勢湾台風で百八十名からの死者を出したような地域がございまして、そうした地域も、現在その当時の堤防の高さ以下になっているというようなところもあるわけでございます。今堤防の改修をやっていただいておりますので直ってはきておりますが、しかし、例えば年間に二百メートルずつ堤防の改修をいたしますと、そうすると一目見てこれが何年分とわかるようにだんだんまた上が段階的になってきている。直したところの古い方がまた地盤沈下をいたしまして、これが何年分の直したところだということを言わなくても、沈下の程度の差が段がつきますので、印をしなくてもわかるというような状態にもなってきているわけでございますので、ひとつ早急にお願いを申し上げたいと思います。  最後に大臣の御決意をお聞きいたしまして、終わりにしたいと思います。
  270. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 御指摘の御議論一つ一つを伺っておりますと、地盤沈下によって国民の皆様方の中にはわれわれの想像以上の大きな被害あるいは不安にかられている方々が非常に多いと思います。先ほど申し上げましたように国土庁事務局としてこの対策要綱づくりに専念いたしているわけでございますが、もちろんそれぞれの言い分、それぞれの立場もございましょう。しかしながら時期的に、これも委員の御指摘のようにある意味において大詰めを迎えていることかもしれません。各省庁協議の上、早期策定に十分対処してまいりたいと存じます。
  271. 坂口力

    坂口分科員 ありがとうございました。
  272. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これにて坂口力君の質疑は終了いたしました。  次に、小川泰君。
  273. 小川泰

    小川(泰)分科員 私は、きょうは三つぐらい問題を絞ってお伺いしたいと思います。  一つ目の問題はコンピューターのソフトウエアの保護の問題についてでございますが、これはもう御承知のとおりで、最近大変情報化社会を迎えまして、この問題が各所で検討されておるようでございます。そういう観点からこのコンピューターのソフトウエアの保護という問題について、単純な権利の保護という立場もおありでしょうが、産業界の発展とかあるいは利用の促進、こういった見地からももうひときわ検討すべきだと思いますけれども通産省当局のこれに関する考え方を冒頭にお聞かせいただきたいと思います。
  274. 志賀学

    志賀(学)政府委員 私どもコンピュータープログラムというものにつきまして、これは技術先端的ないわば工場製品というようなものであると基本的に認識をいたしておりまして、そういう意味経済財である、文化財ではないという認識を持っております。  そこで、そういう性格を持つコンピュータープログラムにつきまして現状を申し上げますと、社会的な利用というのは非常に急速に伸びてまいっております。そういう意味から申しまして、コンピュータープログラムの権利を保護することによりまして開発を促進していかなければいけない。権利の保護が明確でございませんと、せっかく多額の開発投資をしてもだれかにすぐまねられてしまうということになってまいりますと、投資をする、開発をする人がいなくなってまいります。そういう意味合いから、権利を保護することによって開発を促進していかなければいけないというふうに思っております。  同時に、今先生の御指摘もございましたように、単純にそういう権利の保護だけではなくて、流通の促進なりあるいは情報化が進んでまいりますと、今までコンピュータープログラムになじみが薄かった中小企業の方たちも使うようになってまいります。そういった方たちに対しまして、いわばユーザー保護と申しましょうか、そういうような配慮も必要になってぐるというふうに思っておりまして、したがいまして通産省といたしましては、権利の保護と流通の促進、ユーザーの保護、そういったいろいろな多面的な目的を持つ一つのコンピュータープログラムに関します法律的な枠組みというものをつくっていくことがこの際必要ではないかというふうに思っているわけでございます。
  275. 小川泰

    小川(泰)分科員 もちろん今のお答えの裏側には、大変努力しておる、とりわけ民間の産業界の御意見等も吸収された上の開陳と踏まえますが、そのように理解していいかどうか、これが一つであります。  それからもう一つ。どうも国際的に見た場合に、ソフトウエアの保護という問題についての事例が幾つかずっと流れております。そういう観点から見ますと、今のような考え方がそのまま国際的なコンセンサスになり得るのかどうかということがちょっと気がかりなものですから、その二点について端的にお答えいただくとありがたいな、こう思います。
  276. 志賀学

    志賀(学)政府委員 まず、産業界、関係業界の意見を十分反映させたか、こういう御質問でございますけれども、これについて申し上げますと、私ども実は昨年一年かけまして、産業構造審議会の中にございます情報産業部会で検討いただいたわけでございます。実はこの産業部会の中にさらに小委員会をつくってやったわけでございますけれども、そういった小委員会のメンバーとして、当然のことながら関係業界の方に御参加いただきまして検討してまいっているわけでございます。  同時に、その答申に基づいて現在いろいろ検討を進めているわけでございますけれども、既にことしの二月末までに、例えば社団法人ソフトウエア産業振興協会という団体がございますけれども、そういった団体を初め十六の業界団体から、この通産省考え方に沿ったコンピュータープログラムについての法律を早く制定してほしい、こういう御要望が参っているわけでございます。  それから国際的な問題でございますが、実は著作権につきます国際的な条約が確かにあるわけでございますけれども、その条約との関係あるいはアメリカ等におきます動向等から見てどんなものだろうか、こういう御意見があるわけでございます。私たち実は国際的な著作権条約に関して外務省とも意見交換をしているわけでございますが、国際的な著作権条約の対象としてコンピュータープログラムが当然その対象になるのだというような国際的なコンセンサスはないという回答を外務省の意見としていただいているわけでございます。  他方、アメリカでは著作権法でもって法的な保護をやっているではないか、こういう問題が実はございます。ただ、アメリカにおいては確かに著作権法に従ってコンピュータープログラムの保護を行っているわけでありますけれども、アメリカの著作権法と日本の著作権法は大変性格が違うものであると我々は思っております。具体的に申し上げますと、日本の著作権法の場合には著作者人格権というものを大変重要な権利として位置づけております。著作物と申しますのはいわば著作者の人格の反映というような立場に立って、この著作者人格権というものを譲渡不能の非常に強い権利として位置づけているわけでございますけれども、アメリカの著作権法の場合には著作者人格権というようなものはございません。また、目的の規定というのが日本の著作権法にはございまして、文化の振興を目的にしているわけでございますけれども、アメリカの著作権法には目的というような規定はございません。したがいまして、総じて申しますと、アメリカの著作権法というのは日本の著作権法に比べてかなりビジネスライクな法律であると存ずるわけでございます。したがって、アメリカの著作権法のそういう性格をベースにしてアメリカではそういうことをやっているというふうに思っているわけでございます。
  277. 小川泰

    小川(泰)分科員 ちょっとそこら辺が心配の種なんですが、私は、この道あの道いろいろ登る道があって目的達成ができるのだろうと思いますので、その辺は、国際環境の中でできるだけなじむようなすべをとりながら、前段言われたような目的達成にひとつ努力していただきたい、こういう希望意見を実は持っております。  そう考えてまいりますと、できるだけ早くこれに関する保護を中心にした立法の準備が必要ではないかなと思いますので、大体この法案の国会提出のめどと申しますか、必要とするならばされるはずですが、その辺の見通しをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  278. 志賀学

    志賀(学)政府委員 私、先ほどちょっと申し落としましたけれども、私どもといたしましても、いずれにしても、先生の御指摘もございましたように、国際的に問題のない調和のとれた法律にすることはコンピュータープログラムの性格からいって必要であるというふうに思っているわけでございます。そういう意味合いにおきまして、国際的な意見のすり合わせということは重要であるというふうに思っております。  そこで私ども現在、実はアメリカともいろいろ意見交換をやっているわけでございます。アメリカからは御案内のように、権利の期間の問題あるいは裁定制度の問題等につきまして意見が参っております。そういった点についてアメリカ側と現在意見調整中でございます。  同時に、国内的には文部省の文化庁におかれて著作権法の一部改正という形でやったらどうかということで作業をお進めになっておられます。文部省と私どもとの間においてかなり意見が違うわけでありますけれども、ただ、コンピュータープログラムの重要性ということについては認識を一にしておりますし、そういう重要性に基づいて、よりよくコンピュータープログラムを守っていかなければいけないということについても共通の認識がございます。そういった点を踏まえながら、そういった共通認識の上に立ちながら意見調整を進めてまいりたいと思っておりまして、私どもとしては、でき得れば今国会にお出ししたいということで現在作業を鋭意やっておる、こういう状況でございます。
  279. 小川泰

    小川(泰)分科員 先端技術に関係する質問ばかりきょうは三つ申し上げるのですが、次に、ぐっと内容を変えまして、最近先端技術という言葉が大変多く聞かれるような状況でございまして、政府としましてもこの先端技術産業の将来の市場規模がどの程度になるという見通しを持たれていらっしゃるか、これもひとつ伺っておきたいと思いますし、さらに産業構造も変わってまいりますので、産業全体の活性化に与える波及効果とでも申しましょうか、そういうものをどんなふうにおつかみいただいておるのか、この辺をまず先に伺いたいと思います。
  280. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 今後我が国の産業構造は、技術革新を原動力といたしまして知識集約化、高付加価値化していく、かように八〇年代の通産ビジョンも方向づけをいたしております。特にマイクロエレクトロニクス、新素材、バイオテクノロジー、航空宇宙など、先端技術分野における最近の技術進歩には非常に著しいものがございますから、これら産業のウエートあるいは先生おっしゃる将来の市場規模、これは大きく拡大していくものと思います。  それから、いわゆる先端技術産業という、内容は必ずしも明らかな定義はございませんけれども、こういった発展が技術革新、設備投資、それから新しい製品市場を拡大する、あるいは関連産業の発展を通じまして経済全体に極めて大きな波及効果をもたらすと思います。  先端技術産業と先ほど例示をいたしました以外にも、あらゆる産業分野の中で先端技術製品と申しますか、そういう先端的な部分がございます。例えば繊維産業一つとりましても炭素繊維という先端部分がございます。窯業一つとりましてもニューセラミックスがございます。いろいろな分野で波及が起こってきまして、全体として経済効果は非常に大きいものと思いますけれども、さてここで具体的な数字で一九九〇年にどのくらいの規模になるかということに関しまして、いろいろな見解なり、技術進歩が急速なものですから、ただいまの状況で具体的な数字を出してみることは非常に困難でございます。しかし、先生御指摘のようにこの先端技術産業あるいは先端技術製品が我が国経済にとって非常に重要な地位を占めていくだろうということは間違いないと思っております。
  281. 小川泰

    小川(泰)分科員 これからの産業だけになかなか難しかろうと思いますが、この種のものは実態把握が大変大事だと思いますので、大いに御努力をいただいて示唆をいただけるとありがたいな、こんな気持ちで今質問申し上げたところでございます。  さらに、これは小此木大臣もそうなんですが、私なんかの日常生活している神奈川県というところはとりわけ先端技術の大変な集約地帯でございまして、いろいろな希望あるいは意見等を持っております。とりわけ、たしか私の記憶なんですが、横浜の市議会あたりでは、市自体が利子補給ぐらいのことを考えてひとつ応援してやろうかというふうな動きもございますので、そういう動きの認識と、国としてもそういうものに対して何か後ろ盾といいますか、プッシュをしてやっていいんではないかな、こんなふうに思っておりますので、その辺の考え方をちょっと一言お願い申し上げたいと思います。
  282. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 各地区におきます先端技術振興、非常に重要でございます。また、特に中小企業におきます先端技術あるいはそれを利用いたしました新製品開発という問題は非常に重要でございまして、中小企業施策の中でも技術対策につきましては力を入れております。  横浜市におきまして、このような動向から、五十九年度に新たに先端技術産業等振興助成事業というものを行うことは私ども承知しております。国といたしましては、従来からの中小企業施策の中での技術向上施策に力を入れておりますけれども、新たに府県に対する支援といたしまして、五十九年度からは公設試験研究機関におきましての先端的試験研究設備あるいは機器を設置する場合にこれを助成するということとしております。また、そのほかにも先端技術振興貸し付けあるいは技術開発補助金の中で先端技術関連の施設に対しましては特段の助成をするという制度も新たに導入することとしております。
  283. 小川泰

    小川(泰)分科員 さらに、ことしの政府の予算案の中にも、とりわけ中型といいますか中堅といいますか、いわゆるベンチャービジネスと言われるものの振興策も盛り込まれておるというふうに承知をいたしておりますが、これらの振興策全体について法制化ということをお考えなのか、考えているとすればどの辺のことをめどになさっていらっしゃるか、端的にひとつ御質問申し上げたいと思います。
  284. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 ベンチャービジネス振興策につきましては、昨年の十月から諮問機関といたしましてのベンチャービジネス研究会を設置いたしまして、現在鋭意施策の内容等につきまして検討しております。この結論のめどといたしましては六月ごろを予定しております。法制化の問題を取り上げるかどうかにつきましては、この研究会の結論を待って検討したい、かように考えております。
  285. 小川泰

    小川(泰)分科員 もう一つ、これにかかわりまして、技術の進み方というのは大変早いものですから、一方設備投資をする、それをほっておきますと、どんどん前へ進んでいきますので取りかえなければならぬということになりますと、いわゆる法定耐用年数というのがございまして、先に投資したものは陳腐化してしまって次へ移っていく、こういうことがどんどん進んでいくだろうと私は思いますので、そういうものに対する見直しをなさるかどうかなということをちょっと伺いたいと思います。
  286. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 我が国の減価償却資産の法定耐用年数、これは費用の期間配分という観点から、一つ資産の物理的寿命、もう一つ経済的陳腐化、こういう二つの要素が客観的に定める要素でございます。当省といたしましても、従来から現実の設備の使用期間とそれから法定耐用年数との乖離、これにつきましてはその実態を把握した上で所要の対応を行ってきております。また、このほかに、政策的に投資を促進するために租税特別措置法というものがございます。その中で、特別償却制度というのがございますけれども、御指摘の技術革新等我が国経済社会環境の変化というものに適切に対応した民間設備投資を促進する、こういう観点から、現在御審議をお願いしております五十九年度の諸措置につきまして、エネルギー利用効率化等投資促進税制、エネルギー代替と申しますかの税制、あるいは中小企業新技術体化投資促進税制、俗に言う中小企業メカトロ税制というものでございます。それにテクノポリス促進税制、この三つの創設をお願いいたしております。これらの投資減税というものは三〇%の特別償却制度を選択できることになっておりますので、実質的に耐用年数を短縮するという効果がございます。
  287. 小川泰

    小川(泰)分科員 これは実態に合わせていろいろ意見の交換をすれば、その認識の差によってどうにでもなってまいると思いますが、どんどん速度が早いものですから、できるだけ有機的に対応なさるように一層の努力をお願い申し上げたいと思います。  今、冒頭に申し上げましたコンピューター関係のソフトウエアとかあるいは新しい先端技術であるとか、さらにはベンチャービジネスであるとかと、最近次々といろいろなものが出てくるのであります。私どもの印象でございますが、何か日本がすぐれて諸外国の先を先端技術という格好で行っておるかのような印象を持ち、しかも、それに大変なウエートをかけようやというふうな風潮も見られないこともないと思うのですが、私はそれはそれなりの価値があるのだと思いますけれども、さてそこで、この先端技術というものが、この日本という我が国の力が本当にそういう見方をしていいのかどうかということに、私はちょっと見方を異にしているのです。  もっと申し上げますならば、ICが足りるとか足りないとか、いろいろ産業上の問題でやっておりますが、よくよく考えてみますならば、アメリカのNASAのように宇宙技術というふうなべらぼうな技術に向かって、すそ野の広い、しかも大変な力量をぶち込んでああいうものができ上がっていくという総合技術力といいますか、そういった観点から見まするならば、はて今の日本の先端技術産業が大変立派だ、それ行け、どうだというふうなことだけで一体済むのだろうかどうだろうか、この辺の認識をぜひこの際、大臣なりなんなりからお聞かせいただけると今後の問題のためにいいな、こう思いますので、認識の度合いというものをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  288. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 国際的に日本の研究開発というものをいろいろ比較してみますると、金額におきましてはアメリカに次いで日本は第二位でございます。それからGNPの中に占めるRアンドDの割合、これが各国でいろいろございますけれども、今から五年ぐらい前ですと、日本のデータは一・七%程度で、アメリカ、ドイツに比べまして相当低い水準でございました。しかし、昨今は民間あるいは政府も相当頑張りまして、GNP中に占める割合が二・二%から二・三%とほぼアメリカなり欧米の水準になってきております。その間、政府と民間の比率もございますけれども日本の技術の従来までの特色は、先生御指摘のような技術を産業化するという面にやや特色があったように思います。それに比べましてヨーロッパとかアメリカは基礎的な科学あるいは基礎的な技術というものにややウエートを置いていたのではないか。したがいまして、私どもといたしましては、むしろヨーロッパを中心にした産業界を活性化するという意味では、先般来いろいろ大臣あるいは関係局長申し上げております産業協力という格好で、日本の産業化という技術の応用のやり方を伝達すると同時に、ヨーロッパ、アメリカが得意とする基礎科学、基礎技術というものにつきまして日本はこれからまた一層力を注いで努力していく必要があろうかと思っております。
  289. 小川泰

    小川(泰)分科員 私は、あえて再度この問題を取り上げるのですが、こういう国際的な不況とか日本も高度成長から少し安定期に入ったとか、いろいろな問題が今先を見通しながら進められる時代になりますると、産業化の方にどうしてもウエートが走っていって、それがややもすると先頭を走っておるかのごとき錯覚を起こす可能性を持っておるのではないか、もしそうであるとするならばこれは大事なことでございまして、同時に底力といいますか、そういうものにも、通産省だけということでもございませんでしょうし、関係箇所とその辺は十分連携をとりながら思い切って将来に備えていかなければいけないのではないか、私はこういう考えを持っておりますので、ぜひひとつお聞き取りおいて御研究いただきたいと思います。  もう時間がございませんので、一つだけお伺いをさせていただきたいと思います。特に今度の五十九年度予算案をめぐりまして、いろいろな論議がされたことは御存じだと思いますが、とらえ方の差とでも申しましょうか、私どもが考えております投資減税というものは、極めて有効に使われますならば、その波及性というものが大変大きく出てくるのではないか、こういう考え方を実は持っております。たまたまこれは私の目に入ったところで、産業政策局長の私的諮問機関でございますか、あの研究会から中間の報告が去年出ておるのを読ませていただきました。まことに見事な研究で数値が並べられております。結論からいえば、大体四、五千億の減税をばっとやれば自然増収でその見返りぐらい返ってくるぞ、こういうような答申のように見受けました。でありますならば、当然こういうときこそ思い切ってそういう措置をとることによって、経済にも、あるいはそういう業界にも活が入って活性化されて、結果として政府の方の収入もよく入ってくる、こういうことになるんだがな、こう思っておりますが、せっかくのそういう報告書もおありなので、そんな考え方を思い切ってお持ちになるかどうか、ちょっとお伺い申し上げたいと思います。
  290. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 ただいま先生御指摘のように、先ほど私申し上げました三つの投資減税、御検討をお願いいたしておるわけでございますが、この投資減税をやれば一体どのくらい設備投資が実際に増加されるであろうか、これはちょっと一定の仮定のもとでの試算でございますけれども、私どもこの先ほどの三つの投資促進税制によって四千五百億円の投資増が見込まれていると思います。この規模というものは全体の民間設備投資、これは五十九年度の経済見通しの中の数字でございますけれども、五十八年度が四十兆四千億円でございますから、これに比べまして一・一%に当たります。これを含めまして全体六・一になる。ほっておきますと五%のわけでございますけれども、これが一・一。これが回り回りましてGNP全体をまた引き上げる、こういう計算も可能であります。  それから第二の御質問でございますけれども、設備投資減税が非常に大きく経済効果を持っているというのは、先ほどの設備投資研究会でも報告されております。いろいろ計算の仕方がございまして、公共投資と比較してみるとか所得減税とかいろいろございますけれども、設備投資というものが非常に大きく乗数効果というものを持っていることは間違いないと思います。ただ、現在お願いをいたしております規模というものは、民間活力というものから引き出すというものでございますので、こういった手段を活用いたしまして、今後とも内需を中心とする景気の持続的拡大というものを図っていきたいと存じておる次第でございます。
  291. 小川泰

    小川(泰)分科員 最後に一つ、これは大臣質問じゃありませんが、ぜひひとつお願いを申し上げておきたいと思うのです。こういう経済環境になってまいりますと、一時、ちょうど今から十年前、一九七三年にいわゆるオイルショックというものを日本が受けまして、それ以来国際的にも日本経済にも相当な波及を及ぼしたことは事実でございます。ところが、昨今見てますと、少し油の市況も緩み、省エネも徹底する、こんなことになってきますと、ちょっと気を緩めますと備蓄がどうだとか、ちょっと多過ぎるんじゃないかとか、金がかかり過ぎるとかいろいろ出てくるわけですが、私の気持ちとしては、こういういわゆる静かなときこそ、かつて何回か出されましたエネ庁の所管であるエネルギーの中長期の見通し、こういったような問題についても少しじっくりとこの辺で腰を落ち着けて研究をお続けいただいて、一つの示唆をこういうときこそ出すべきだ、こう思っておりますので、これは意見としてお聞き取りいただけば結構だと思います。  以上で私は終わります。
  292. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 小川委員のおっしゃること、まことに達見だと思います。  このように需給関係が緩んでまいりまして、国際的に油があたかも余っているような現象がございまして、ややもしますと国会の議論の中にも、小川委員の指摘されるような逆な議論が多いのでございます。逆な議論も逆な議論として傾聴に値しますけれども、しかし責任ある油の所管である我が通産省といたしましては、国民の皆さんに安心感を持っていただく、あるいは国家経済を安定させるということが重大な責務でございまして、このような観点から委員御指摘の御議論を踏まえて政策を展開してまいりたいと存じます。
  293. 小川泰

    小川(泰)分科員 期待しております。どうもありがとうございました。
  294. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これにて小川泰君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬崎博義君。
  295. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 まず新聞販売正常化問題についてお尋ねをいたします。  去る二月一日に、公取委は東京都町田市及び横浜市磯子区内の新聞販売店に立入調査を行い、一、古紙回収実施の有無、二、古紙回収は増紙のための拡張にかわるものではないか、三、古紙と交換に渡すロールはどこから読者に提供されているか、四、販売店は古紙回収にどれだけの労力を提供しているのか、五、回収日を知らせるチラシの印刷代、折り込み代はだれが負担しているのか、六、発行本社の古紙回収に関する指導の有無について事情を聞いているようであります。その目的また調査の結果はどうであったのか。
  296. 鈴木満

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  公正取引委員会は、ただいま御指摘のような行為が景品表示法上問題になるかどうかについて現在予備調査をしておる段階でございまして、先ほど御指摘のように立入検査をしたわけでもございませんし、正式に景品表示法違反として本格的な調査をしている段階ではございません。
  297. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 しかし、景表法違反の予備調査であることは今おっしゃったですね。  実は、先日古紙回収業者が私どものところに来られまして、新聞発行本社が資源再生の美名に隠れて新たな拡販競争の手段として古紙回収に乗り出している、大変自分たちの営業や生活を圧迫されて困っているのだ、こういう訴えがあったわけです。  その訴えでは、一カ月分の古新聞で従来の古紙回収相場ではトイレットペーパー二個が限度であった。ところが大手新聞二社の系列、一つは関東古紙回収協議会、一つは関東古紙回収審議会、この系列の回収人はトイレットペーパーを回ないし七個渡す、あるいは洗剤を渡している。この点については今おっしゃった予備調査で確認がされたのかどうか、また今私が言ったことが事実であるとすれば、景表法には触れてくるんじゃないでしょうか。
  298. 鈴木満

    ○鈴木説明員 現在調査中でございますので具体的なことは申し上げられませんけれども、古紙回収というものを新聞販売店ではなくて古紙回収業者が実際行っていることは事実でございます。ただ、それが今申されました回ないし七ロールというようなことについては承知しておりませんで、いろいろなケースがあり得ると思います。  それから第二点の回ないし七ロールが事実であるとすれば景品表示法違反になるのではないかという御質問に対しましては、それは新聞販売店が新聞購読者に対して景品として提供しているかどうか、その点が確認されませんと何とも言えないと思います。
  299. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 まさにその点なんですよ。一見、読者の立場から見ますと同じ古新聞を売ってトイレットペーパーがたくさんもらえるのだからいいように見えるのですが、事はそう単純じゃないんですよ。といいますのは、今言いました二つの大手新聞の系列の回収というのは、第一に、自分の社の新聞に限ってしか回収しない。二つ目に、事前に回収日時を知らせるチラシを白紙販売店に無料で折り込ませている。三つ目は、回収の際には新聞販売店の配達員を案内に立てている。それから四つ目、新聞系列の回収組織には一般の回収人は参加できないようになっている。こういう点では極めて特殊な形態をとっているわけですね。  だから、大手二社が今やっているのだけれども、もしこれが広がり出すと、大手が皆これを系列化したら一体どうなるか。あるいはまた、その系列から漏れた回収人の場合は、もし自分でチラシを入れたりいろいろしていくと、とてもじゃないがトイレットペーパーを四つも五つも渡せないわけですから、当然競争から脱落するわけですね。こうなってくると、圧倒的多数の古紙回収人の生活の道が断たれることになるのではないか。また、そうなってくると、景表法のみならず独禁法の例えば不公正取引等にも該当してくるのではないかというふうに私考えるのですが、どうですか。
  300. 鈴木満

    ○鈴木説明員 ただいま御指摘の行為が景品表示法違反になるかどうかは直ちにはお答えできないと思います。それからまた独占禁止法違反に当たるかどうかというのは、私担当外でございますので、直接お答えをすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  301. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 公取を代表して来ておるのだろう。予告してあるはずです。じゃ、だれが答えるんだ。それともこの場で答えなければ後どうする。
  302. 鈴木満

    ○鈴木説明員 独占禁止法違反の疑いというか該当するかどうかということについては、この場では意見を差し控えさせていただきたいと思います。
  303. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 担当課長が来てないのだから、あなたをこれ以上責めるのもどうかと思うが、しかし今私が指摘したような事実が公取によってもほぼ確認されているのだから、そういう点もよく伝えた上、別途また回答はいただきたいと思います。  次に、これは通産省の方に伺いますが、特定の発行本社によるこうした拡張のための古紙回収のやり方は、従来の回収業者だけではなく、今日古紙回収によって貴重な運営資金を生み出している老人会とか子供会、自治会も脅威を感じて大反対されているわけなんですよ。老人会や子供会は資金集めの一環としてよく古紙回収をやっているわけなんですが、せっかくいろいろなものを集めても、持っていった先がその特定の発行本社の系列下にある回収人や回収業者だと、その中から特定紙だけより出してしか持っていかない。あとは持っていかないわけですね。だから全部が資金化できない。その一方で、この老人会や子供会のお得意先をその特定系列の回収人が皆先回りして引き揚げていくわけですから、残った古紙というのは一部の雑誌とか週刊誌とか、数少ないものにしかなってこないわけですね。  そういう点でも、非常に重大な脅威をこれまでやってきた老人会、自治会等も感じていらっしゃる。そもそも、地域の自治会や子供会の活動とこの古紙回収のタイアップを指導したのは通産省ではなかったかと思うんですよ。その通産省がこういう発行本社による既存の回収ルートの撹乱に対して黙って見ているというのは、ちょっとこれは私は無責任だと思うのです。いかがですか。
  304. 黒田真

    ○黒田政府委員 ただいま先生御指摘のような問題があることについては私ども承知しておるわけでございまして、実情につきましては従来からも調査をし、引き続きいろいろ状況把握に努めておるところでございますが、私どもの理解いたしますところでは、関係の方々のお話し合いがある程度行われつつあるというふうにも聞いておりますので、できることであればそういった当事者で問題が解決するということが基本的には望ましいということで、その話し合いの動向を見守っているところでございます。
  305. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 関係者とは一体だれとだれなのかをはっきりしていただきたいことと、それから、そもそもこの自治会や老人会による集団回収システムづくりに力を入れてきたのは、あるいはまたそういうことを促進する機関として通産省がいろいろ指導してつくらせたのが財団法人古紙再生促進センターだと思うのですよ。これに対しては、通産省は設立以来十年間で総額五億六千三百七十七万円の補助金まで出しておるわけでしょう。国民の税金をそこに出しておる。しかも当センターの定款を見ますと、古紙の回収利用に関する調査ということもうたっているわけですね。だから、まさにこういう大手紙が古紙回収を販売拡張の手段に使ってきた、こういう事態が生まれてたときにはこういうセンターがみずから調査して、そして適切な対策を打たなければならぬというふうに思うのです。しかし、古紙回収業者や回収人の方々の御意見を伺うと、むしろ逆にこのセンターが特定紙のそういう新たなルートづくりに加担している感がある。第一、役員にはその特定紙の新たな回収ルートに携わっている人も入っているわけですね。こういう点でもこのセンターに対しての行政指導もきちっとせにゃいかぬと思うのですが、どうですか。
  306. 黒田真

    ○黒田政府委員 この古紙回収センターというものが、我が国の製紙業におきます重要な原材料としての古紙を安定的に集めてこようということで、今御指摘ございましたような古紙回収に関する調査事業あるいはその他古紙回収の面での円滑な促進のために活動しておるわけでございます。直ちにこのセンターが特定ルートを支援しているというふうには私どもまだ把握はしておりませんが、今後とも、この回収業者の方々と関係の方々のお話し合いが進んでおるということでありますので、ひとつそのお話し合いを私どもとしては見守っていきたい、かように考える次第でございます。
  307. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 あなたに一つはっきり聞いておくけれども、大手の発行本社が古紙回収を新聞拡張販売の手段に使うことについては、これを是と思っているのですか、非と思っているのですか。
  308. 黒田真

    ○黒田政府委員 これが拡販の手段になっているかどうかについて、必ずしも私どもまだ正確な認識を得ていないということだと思います。
  309. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 認識は得ていないが、拡販の手段にすることはどうなのですか。あなたはいいことだと思っているのか、是と思っているのか、非と思っているのかと聞いているのです。
  310. 黒田真

    ○黒田政府委員 直ちに価値判断を私が今ここで下すことについては差し控えさせていただきたいと思います。
  311. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 それじゃ通産大臣に伺いますが、従来の古紙回収のシステムとかルートが今言いました二つの大手新聞社の新たな回収システムによってだんだん破壊されていっているわけなんです。そうしますと、こういう弊害が出てくるのですよ。  といいますのは、読者の側から見ますと、特定の大手紙の古紙回収だけが引き揚げられる。その部分だけについて見ますと、これは三倍ぐらいの交換のちり紙ももらえるわけだから、得に見えるのです。ところが、その特定の大手紙しか持っていかないわけですから、わずかなまた別の古紙が、週刊誌とか雑誌とかほかの新聞は残りますね。そんなものを集めていっても金にならぬから、その部分の古紙回収は今度見捨てられてくるわけなんです。この部分では読者もマイナスになるわけですね。ですから、全体として見れば、こういう大手紙が自分のところの古紙だけを集めるルートづくりというのは決して大局的に読者の利益になってないと私は思う。  もう一つは、そういう形で拡張販売の手段になっているわけですから、特定の大手紙だけはなかなか回収率よく集められると思うのだけれども、それ以外の古紙については全体として見捨てられていくということになると、これは資源再生の観点からも私たちは浪費になると思うのですね。ですから、こういう現在大手二紙が自分とこの紙だけを有利に回収することによって読者の固定化を図る、拡大を図る、こういうやり方は正しくないと思うのです、いかがでしょうか。特に大臣のひざ元の神奈川県がひどいのです。
  312. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 新聞の拡販競争にもいろいろな手段があると思うのです。いろいろな手段があって、どれが行き過ぎであるか、どれが悪いか、どれがいいかという判断は非常にこれは難しいと思うのです。ですから、その一つ一つの具体的な問題になれば、これは法の適用によってこれを改善せなければならない。とすれば、景表法の適用によってこれを改善することが至当だと思うのです。とすれば、通産省といたしましては、その法令の所掌の官庁に今後協力していくということになると思います。
  313. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 かつて田中六助氏が通産大臣のときは、やはり自分が新聞社出身だっただけに、もう少しはっきりした回答があったのですけれども、残念ですな。  言いたいことは、新聞社系列の回収は、当然のことながらその部分だけとれば、販売店に案内させるんだし事前にチラシをちゃんと販売店に入れさしておくんだし、効率よいに決まっているわけなんですね。だけれども、その結果がその系列から漏れた古紙の回収率は落ちてくるし、またその部分は読者にとっても事実上マイナスになる。その上、販売店にしてみれば全然千問にならぬこのチラシの折り込みもやらなければいけない、そういう負担とか、あるいは販売労働者が報酬なしに古紙回収の案内を務めなければならぬという点では、新たなまた負担を販売店、販売労働者にかけるということになっているので、そういう点は少し、公取は公取で我々も追及しますが、通産は通産の立場で、古紙回収ということについては補助金まで出してやっているわけですから、そういう回収のあるべき姿から見て、こういう特定紙の系列化がいいのかどうか、これはやはり行政の問題としてはっきり考えていただきたいと思いますね。それは強く要望しておきまして、次の問題に入りたいと思います。  それは、カナダ・ドーム社のLNG輸入問題についてであります。  石油公団が中心となって、北極石油を通しカナダのドーム社に四億カナダ・ドル、日本円にして七百七十億円を石油探鉱資金として融資して事実上焦げつきになっている問題は既に国会でも追及されてきているのですが、そのほかにもドーム社をめぐって新たなプロジェクトの準備が進んでいるわけですね。それは、中部電力、大阪瓦斯、九州電力、中国電力、東邦瓦斯五社が日商岩井を通してドーム社からLNGを輸入するプロジェクトを進めていることなんです。  このプロジェクトに関して、カナダのNEB、国家エネルギー委員会というのですかが昨年一月に発表したドーム社の申請内容によりますと、一九八一年の基準価格はCIF価格で六・五八五米ドル・パー・MMBTUであって、「ドーム社はまた、契約で定められた公式にしたがえば、LNG販売価格が一九八一年に日本が他の国から輸入していたしNGの輸入価格と同じか、あるいはそれ以上になるということも、資料を用いて示している」とも記載されているわけであります。昨年十月二十日のNEB公聴会でも、審問に立ったファレル弁護士も「ドーム社のCIF価格は他の国から日本に入ってくるしNGの価格より高いようだ」と発言しているわけです。  通産省は、こうした事実を承知しているのかどうか、まず伺います。
  314. 豊島格

    ○豊島政府委員 八一年八月の基準時点で百万BTU当たり六・五八五ドルということに計算によるとなるということは存じ上げております。  それから、その後の価格がどうなるかということでございますが、これは価格の立て方が違いまして、ほかの国から輸入しておりますLNGにつきましては大体原油スライドでございますが、カナダからのものは、半分はアメリカ向けの天然ガス、半分は原油価格、まあアラビアン・ライトのミナスという特殊な原油でございますが、いずれにしても原油価格ということでございまして、その動向いかんによってはいろいろとなろうかと思います。必ずしも常に高いということにはならないかと存じます。
  315. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 いやいや、公聴会においてこういうことが言われている事実を知っているかと言うのです。
  316. 豊島格

    ○豊島政府委員 ドームがそのように説明したということは知っております。
  317. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 ドームの方はそういう説明を一応している。  今度、日本側の企業です。一九八二年の八月のNEBの公聴会では、中部電力の岡田氏がこう言っているのです。MITI——日本のMITIです。   MITIはそれぞれの企業がむすんだ契約の内容をもとに検討をすすめて、これでよしと判断したときにだけ、料金改訂の認可を出すのです。   新たな契約の締結はMITIの判断にゆだねることになっています。契約をむすぶ双方の企業とMITIは、価格について十分意見を交換しなければなりません。そうすれば、改定料金が決まったときに、取得原価が除外されていたりはしないのです。   すでに今回の契約においてはそういうことは終わっていて、みなさんはMITIから通知を受けとっているわけですが、そうすることによって、今回のLNG販売協定をむすぶことに対して反対意見がないことを認めたことになっているということなのです。 さらに同社の栗木取締役もこれを追認する発言をしていますね。今回の計画については、この前から何度か日本側が融資制度を通して融資してきて——というのは七百七十億円のことでしょうね。それが受け入れられてきました、今回の計画にとってMITIの援助は不可欠です、ですから、契約の中で非常に重要な取引価格を定めているばかりか、段階的に取引を拡大していく方式も定めてあるということについて、MITIは十分説明を受けていまして、MITIの了解も得られています、こう栗木取締役は発言をしているわけです。  これが事実であれば、価格が高くとも通産省が了解し、電力料金の認可のときにコストに織り込むことになるから構わないということになるでしょう。公益事業たる電力会社がこういう姿勢をとっていることも問題だが、証言どおりとすれば、通産省がこれを既に認めているあるいは認めているかのような発言をしているということになって、電力料金の値上げにあらかじめ通産省が手をかしているということになるんじゃないかと思うのですね。いかがです。
  318. 豊島格

    ○豊島政府委員 この契約につきまして説明は受けておりますが、この価格で料金に織り込むということは言っておりません。  それからさらに、中部電力の栗木常務でございますか、既にいろいろと金融の問題等々について通産省から了解を得ているというようなことが言われていた、向こうの議事録に載っているということは事実でございますが、これにつきまして、我々として電力会社を呼びまして、そういうことは事実に反するではないかということを申しましたところ、先方では、一部通訳上の問題から真意が伝わってないという弁明があったわけでございますが、そういうことでは今後両国間で誤解が出るんじゃないか、日加両国の間でも非常に問題ではないかということでございまして、直ちに、そういうことは事実に反するということを、在京カナダ大使館の担当者を呼びまして、私どもの事実関係を伝えたという次第でございます。
  319. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 それじゃ、そういう通産省が与えてもいない了解がさも与えられているかのような発言を外国の政府機関で公式にやっているわけでしょう。では、その取り消しについてもきちっとこういう政府間の手続を経て訂正すべきだと思うのですが、そういうことはするのですか、しないのですか。
  320. 豊島格

    ○豊島政府委員 公聴会における発言ということで、また公聴会があっていろいろそういう問題が出たらどうかということでございますが、まあ往々にして、先ほどドーム社の話も出ましたけれども、このプロジェクトを何とか実現させようということで、ややドーム社あたりが聞こえのいいことを言ったのかもわかりませんが、私どもとしては、そういう通訳の問題とか向こうがどう受け取るかという問題につきましては、政府として、誤解を招かないように正式なルートといいますか、カナダ大使館に十分はっきり伝えてありますので、一応それで誤解は解けておる、このように考えておるわけでございます。
  321. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 そうしますと、NEBの公聴会で中部電力の栗木常務や岡田氏が言ったこの証言については、特に通産省にかかわる部分については通産省は完全に否定している、そんなことは全然言ってない、こういうふうに明言するわけですね。
  322. 豊島格

    ○豊島政府委員 具体的に私ども議事録でしか知りませんのですが、少なくとも、例えば契約、約束している価格を織り込む問題を了解しておるとかあるいは融資の問題あるいは保証の問題等について日本政府通産省が了解しているということはございません。これからの問題であるということでございます。
  323. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 さらに昨年十月のNEB公聴会では、例の一〇〇%テーク・オア・ペイ方式についても議論が集中しているわけですね。日本のエネルギー需給見通しの下方修正や原油価格の低下などに関連して、日本は契約の再検討を求めることはないかと再三カナダ側は問いただしているわけですよ。これに対して日商岩井の清水LNG部長は、LNGが使い切れないような場合とか他のエネルギー資源価格より高くなったとしても契約の再検討は起こらないし、通産省はそのような要求はしないだろうと述べているわけですね。  一部、この訳文をそのまま読み上げてみますと、「こちら(カナダ)の生産業者さんが日本へいらして、(日本の)エネルギー計画の全責任を負っているエネルギー庁長官とお会いになっています。長官はそのとき、すでに結んでいる契約はすべて尊重する、とはっきり申し上げました。」さらに同公聴会では、ドーム社のフォーグス副社長もこれを裏づけるように、「私は八月に東京で通産省との会合が開かれた際に、ほかの天然ガス生産業者七社の代表と一緒に出席いたしました。すでに結んだ契約と新しい契約との区別について、清水さんのおっしゃったことに間違いありません」と証言しているわけですね。  さて、もしこれが事実だとすると、これはまた重大な問題ですね。特に、通産省の場合は五十八年八月に「長期エネルギー需給見通しとエネルギー政策の総点検について」というものを出して、「天然ガス(LNG)資源開発における基本的な課題は、石油と熱量等価で硬直的にスライドする価格決定方式の見直しと供給条件における硬直性(テイク・オア・ペイ条項)の緩和である。」こうも明言しているわけですね。だから、こういう通産省の基本方針と全く異なることを通産省は日商岩井側には言っているということになるのであって、これはまさに背任行為にも等しいことになるし、極端に言えば売国的な行為、こう言われても仕方がないことになる。これはいいかげんなことで放置できる問題ではないと思いますね。どうします。
  324. 豊島格

    ○豊島政府委員 先生御指摘のように、LNGについては、無公害燃料として非常に大事だけれども、価格の問題が原油スライドであることあるいは取引条件がテーク・オア・ペイ条項があって非常に硬直的であるという不便さがあるということで、これにつきましては、今後この点の改善をしなければ、LNGの需要といいますか輸入は余り伸びないだろうということが一つ。それから当然のこととして、そういうのは緩和すべきではないかという方針が出ていることは事実でございます。  それで、カナダとの関係についてどうかということでございますが、その方針は、当然のことながら通産省の政策でございます。しかし、この契約につきましては、従来民間で結んだ契約というのもありまして、相手方の当事者もあるわけでございますから、それは交渉しなければいけないものですが、政府として、既に結ばれた契約について、どうしてもそれを緩和しなければ既契約について認めないということはなかなか強制はできない。テーク・オア・ペイ条項の緩和あるいは価格がもう少し弾力的になるということが役所の方針であることは変わらない、しかし、それを強制まですることはなかなかむずかしい、こういうのが我々の考え方でございます。
  325. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 ということは、せんじ詰めれば、結局は既に結んだ契約は尊重するとあなた方が明言をしたことと同じことを言っているんじゃないですか。
  326. 豊島格

    ○豊島政府委員 契約につきましては事前に役所の許可が要るとか承認が要るということではございません。したがって、LNGの契約につきましては、合理的ないろいろな水準を考えて従来行われているわけでございまして、ドームの契約についてもその中での判断で当時行われたものと思われるわけでございますが、その場合、私契約につきまして国の許可とかそういうことでこれを認めないとか、そういうようなことはなかなか難しい問題ではないか。しかし、政策の方向としてはそういうことで進めるのが我々の方針でございますので、日本の当事者としてはそういうことで努力をしてもらうということは常に言っておりますし、既契約についてもそういう努力が一部なされ、一部実現しておるわけでございます。しかし、それがなければどうこうと強制するところまではこの問題についてはなかなか難しいということは事実でございます。方針は、弾力化するということの必要性は確かに貫いていきたいと思っております。
  327. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 結局、そういう通産省のあいまいな態度が、日商岩井などをしてもう既に通産省の了解は完全に得ている、こういうことを言わせる要因になっているんだと思いますね。  時間がないので最後ですが、このプロジェクトには液化プラント建設計画が含まれているわけですね。NEBが発表したドーム社の申請によりますと、日本からこのプラント等に約二十億ドルを融資することになっているわけでしょう。八二年八月の公聴会では、日商岩井の清水部長は「今回の融資計画は政府も支援している。」こういうふうに明言していますね。昨年十月の公聴会でも、輸銀がそのための準備をしていることも示唆するような発言まで出ていますね。また、カナダNEBが発表しているドーム社の事業申請では、融資額二十億ドルのうちプラント建設への融資は十五億七千八百十万ドルとされ、同じ文書でプラント建設の予想経費は八億七千万ドルであり、七億一千六百万ドルから十億二千四百万ドルの範囲におさまる確率が九五%と述べているわけです。しかも、プラントの三〇%はドームの所有になる契約。こうしますと、二十億ドルという融資はそもそも非常に過大という感じがする。同時に、日本側にとっては決して有利な融資内容ではない。しかも引き取るものは高くなりそうだ。  この日商岩井の融資計画に輸銀融資が行われる場合、輸銀が石油公団の債務保証を求めていると言われるのですが、その場合、公団法によって通産省の承認を求めてくることになるのですね。そうなると、既に石油探鉱七百七十億円の焦げつきが発生して回収見込みがまだ立っておらぬ。その上にこういう非常に不利な、日本国民にとって必ずしも利益になるとは思えないプラントヘの融資、屋上屋を重ねる形の輸銀融資について通産省が承認を与えるつもりでいるのかどうか、この点が一つ。  それから、その後大臣に、今お聞きのように、LNGの輸入については非常に疑惑が多いですね。一体通産省がどういう形で関与しているのか、どういう形でこの計画に事実上の事前承認を与えているのか、いないのか、こういう点もはっきりして、しかも国家間の信用にかかわる問題ですから、通産省の言ってないことを平気で商社が外国でしゃべる、電力会社がしゃべる、こんなことを許していていいわけじゃないので、そういう点について大臣に今後の対処する考えもきっちり聞いて終わりたいと思います。
  328. 豊島格

    ○豊島政府委員 日商岩井の特定の人の名前が出たわけですが、通産省としては、二十億ドル輸銀融資それから公団の債務保証という問題については何らコミットをいたしておりません。したがって、そういうことを了解済みであるということに対しては事実無根であると言っておりますし、カナダからこの問題について政府の要人が来た場合においても、そういうことは一切あれしていない。ただ、そのプロジェクトが実際問題として具体化してちゃんとやっていけるかどうか、それからその価格等もエネルギー情勢から見て妥当かどうかということを具体的になった時点で判断をして、それで必要であれば必要な既存の助成措置を制度的な範囲内でやっていくことになろうかと思います。今の段階ではカナダのNEBですか、政府の輸出許可が出ただけで、あとの、例えばガス価格は幾らでいいとかそういうことは一切まだ決まっておらないわけですから、そういうことは言えないということでございまして、そういう具体化した段階で考えていくということかと存じます。  それから、金額も非常に多いということですが……(瀬崎分科員「勝手に言わしておいていいのか」と呼ぶ)勝手に言っている者については常に注意しておりまして、カナダ側にはたまたま……(瀬崎分科員「いつまででも言っていいのか、そんな、通産省弱腰じゃだめじゃないか」と呼ぶ)私は強腰でございまして、再度の注意を促したいと思います。
  329. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 LNG輸入に関する事前の承認制はないわけでございますが、それは疑惑が生ずるということがあるとすれば、厳正な指導を今後やっていきたいと思います。
  330. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これにて瀬崎博義君の質疑は終了いたしました。  次に、井上一成君。
  331. 井上一成

    井上(一)分科員 私は、通産省の職務権限、いろいろあると思うわけでありますけれども、とりわけ民間企業の保護育成をすることも任務の一つだと思っています。対米武器技術供与について、通産省が武器輸出三原則を盾に大変に渋ってきた。武器技術といっても、我が国の場合はそのほとんどが民間企業が持っている先端技術であり、それぞれ莫大な費用と時間をかけて開発研究を行ったものでありますから、個々の企業の貴重な財産だから、国内産業保護の立場から通産省が渋ったその理由は、私なりによく理解をしているつもりです。ところが、御承知のように昨年の十一月八日、日米武器技術供与に関する交換公文が締結をされてしまったわけです。  このことについて、順次お尋ねをしていくわけでありますけれども経済摩擦が火を噴いている中で、私は、今後日本の最先端技術をめぐって日米間で熾烈な闘いが繰り広げられていくであろう、そう思っています。アメリカが日本に対して通商摩擦の、市場開放を要求している、しかし本当のねらいはどこにあるのだろう、軍事技術に転用できる最先端技術の取得にある、私はそう思わざるを得ない、こういうことなのです。残念ながらこの交換公文で、アメリカはもう既に所期の目的を遂げて、我が国はもう敗れてしまったことが明らかになったというような意見を私は耳にするわけです。これに対して、まず通産省の御所見を承っておきたいと思います。
  332. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ただいま御指摘のございました対米武器技術供与に関します両国の交換公文の締結でございますが、これにつきましては先生御案内のとおり、いわゆる武器技術の対米供与につきまして、これまでの武器輸出三原則の例外として、安保条約の効果的運用を図るためという特別の場合に三原則の例外として供与する、そのための枠組みをつくるということで交換公文を取り交わしたわけでございます。  申し上げるまでもないこととは存じますが、いわゆる武器専用技術以外の汎用技術の問題につきましては、従来からも原則的に法的な規制は、ココム等の規制を除きますとなかったわけでございます。その限りでは自由にやれたわけでございますので、特に今回の交換公文の取り交わしによりまして、汎用技術の対米供与の問題につきまして何ら新しい道が開かれたということではないというふうに私ども理解しております。
  333. 井上一成

    井上(一)分科員 そういうお答えになろうと私も思っていたのです。だから、通産省は何をぼやぼやしてるねんということを申し上げたいわけです。安保条約の効果的運用や、これは外務省の答弁なんだよ。本当にそんなことで済まされる問題だろうかということだね。  八一年の六月ハワイ会談以来、日米安保体制下における軍事技術交流というにしきの御旗のもとに我が国の先端技術をどう取り込んでいこうか、これがアメリカの戦術ではないだろうか、単に武器技術というものでなく、八一年のハワイ会談から去年の十一月の交換公文を交わすまで、アメリカはあらゆる手段を講じてきた、ひょっとしたらFBIもCIAも絡んで、いわゆる官民一体となって多角的に日本に挑戦してきたと見るべきではないだろうか、私はこういうふうに思うのです。通産省は本当に、この交換公文は民間企業の最先端技術までねらったものではない、そういうふうに気楽に受けとめていらっしゃるのかどうか、ここの点を私は聞きたいのです。
  334. 杉山弘

    ○杉山政府委員 繰り返し御答弁を申し上げるようなことになるかと存じますが、この交換公文の取り決め自身といいますものは、いわゆる専用技術の対米供与に道を開く、こういうための枠組みをつくったものでございます。むしろ汎用技術の供与の問題につきましては、これは国会でも重ね重ね御質問がございました。その都度私どもは、関係当事者の自発的な発意とその合意に基づいて供与が実施されるものである、その過程において通産省の方が民間企業の意に反するような形で提供が行われるようなことはいたしませんということは、大臣からも強く御答弁を申し上げておるところでございます。
  335. 井上一成

    井上(一)分科員 大臣、今お答えがあったわけなんですね。政府が武器技術の供与に応ずると言っても民間企業がノーと言えばできないのだ、これは繰り返して答弁をなさってきたところです。本当に民間企業がノーと言えば、幾らアメリカが欲しくても、要求をしたとしても、それはできないのだと明快単純に終わらせることができるのだと大臣は思っていらっしゃるのでしょうか。いかがですか、大臣
  336. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 結論から言えば私は思っておりますが、こういう席で平べったい話になって恐縮でございますが、おととしの暮れに私は自民党の国対委員長になったときに、なって二、三日してすぐ、実はこの問題を今度の国会で何とかしなければならないよということを言われたわけでございます。しかるべき筋からその説明を聞きまして、これはまた大変なことが持ち上がってきたなということで、私としてはいささか勉強をしたわけでございますが、今、日米安保体制の効果的運用を図るというのは外務省の言うことだというおっしゃり方もありました。それはまさに外務省の言い方だけでなしに、我々通産も防衛も、同じような考え方でこれを進めてまいったわけであります。  しかし、次第次第に先端技術というものが、アメリカにとってどういうふうな形でもってとられてしまうと言うとおかしなことでございますが、そういうことの一つの心配がございましたけれども、勉強するうちに、民間の自主的な判断による、民間の商業的な見地に立っての判断によるということが行れれば安心だという考えを持ち、事実そのような方向に私は行くと信じているわけでございます。
  337. 井上一成

    井上(一)分科員 私は、ここに交換公文の日本語版を持っているわけです。大臣、お持ちですね。  開いた二ページ目です。「この関連で、日本政府は、武器技術以外の防衛分野における技術の日本国からアメリカ合衆国に対する供与が、従来から、また、現在においても、原則として制限を課されていないことを確認し、関係当事者の発意に基づきかつ相互間の同意により実施される防衛分野における技術のアメリカ合衆国に対する供与を歓迎します。そのような供与は促進されることとなりましょう。」こういうことがあるんです。  「この関連で」というこのくだりですが、なぜこのような文章を交換公文の中に書き入れたのか、どうも私はわからないんです。人によれば、この文章を交換公文の中に書き入れたことで、米側と外務省は大成功だ、通産省を取り込んだんだという意見を言われる方もいらっしゃいます。この交換公文全体からいえば、私は関係のない文章だと思うんですよ。今言うように、汎用品断れるんだ、ノーだ。しかし、ここの落とし穴、まあ落とし穴というのは表現が適切であるかどうか、この交換公文の中に書き込んだ、これは外務省とアメリカは大成功だ、通産省を取り込んだ、そういうような意見を持っていらっしゃる、先ほど申し上げましたように。ひとつこれはどういう意味なのか、どういう意味があるのか、通産の御見解をどう受けとめていらっしゃるのか。大したことはないんや、念のために書いといたんや、こういうことなのか、いや私が指摘するように、ここが問題なんだとおっしゃられるのか、所見を聞いておきたい。大臣
  338. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 確かにこれは、「歓迎します。」ということになれば、問題とすれば確かに問題になりましょう。しかし、通産を取り込んだとか取り込まれたという議論になれば、これは我々の名誉に関することですから、とすれば、そのような文言がありましょうとも、やはり通産がしっかりすればそれで済むことでございますから、先ほど私がしばしば申し上げておるように、民間の判断、民間の商業サイドに立った判断というものを尊重いたしますし、そのようなことに対して無理なことは決していたしません。
  339. 井上一成

    井上(一)分科員 何か補足することがあれば、したっていいですよ。
  340. 杉山弘

    ○杉山政府委員 基本的には大臣から申し上げたようなことでございますし、交換公文の解釈の問題につきましては、有権的には外務省からお答えすべきでございますが、せっかく通産省の考えをということでございますので、私どもの理解を申し述べさせていただきます。  日本の技術水準が向上をいたしましたので、むしろ日米間で防衛分野における技術の交流を促進することが必要だ、こういう基本的な認識に立ちまして、三原則等の例外といたしまして武器技術の対米供与に踏み切り、そのために官房長官談話というものも出しているのは、先生御存じのとおりでございます。ここで書きましたのは、そういう趣旨を交換公文の中で改めて述べたということと私どもは理解をいたしております。
  341. 井上一成

    井上(一)分科員 私はこの文章は、この交換公文の中で大変な意味を持っている、持ってしまった、こういうふうに思っております。  これから一つ一つ聞いていきます。  この交換公文には、「防衛分野における技術」という箇所が幾つも出てくるわけなんです。それで、その今私が読み上げました二ページ目中ほどの「この関連で」という一番下に「防衛分野における技術」、「この関連で、日本政府は、武器技術以外の防衛分野における技術の日本国からアメリカ合衆国に対する供与」、この「防衛分野における技術」とは一体何を指すのですか。何を指すと通産省は受けとめていらっしゃるのですか。
  342. 杉山弘

    ○杉山政府委員 「防衛分野における技術」と申しますのは、防衛分野において使用される技術一般を指すわけでございまして、従来議論になっております武器技術またはそれ以外の武器に使われるかもしれない汎用技術という二つの区分があるといたしますと、それを合わせたものというふうに理解をいたしております。
  343. 井上一成

    井上(一)分科員 武器技術、いわゆるさきの「武器技術」は武器技術で、「武器技術以外の防衛分野における技術」というのは汎用技術だ、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  344. 杉山弘

    ○杉山政府委員 先生おっしゃったこともこういうことだと思いますが、「武器技術」というのは、いわば武器専用技術でございます。この範囲は、交換公文におきまして輸出貿易管理令等引きまして具体的に定義をいたしております。それ以外の「防衛分野における技術」ということになりますと、汎用技術を指すということになると思います。
  345. 井上一成

    井上(一)分科員 ここで言う汎用技術、この多くは民間企業のものであると私は考えるわけなんですが、そこはどうなんでしょうか。多くは民間企業であるということ、そう私は考えている。
  346. 杉山弘

    ○杉山政府委員 実際に調査をしたわけではございませんが、常識的に考えますと、その多くの部分は民間企業が保有すると考えられます。
  347. 井上一成

    井上(一)分科員 続いて今度は後から二行目、「関係当事者の発意に基づきかつ相互間の同意により実施される防衛分野における技術」、これは一体何を指すのですか。今言った、さきの「武器技術以外の防衛分野における技術」は汎用技術、後の、ずっと読まれたらわかると思うのですが「防衛分野における技術」、これは何を指すのですか。
  348. 杉山弘

    ○杉山政府委員 後に出てまいります「防衛分野における技術」と申しますのは広い意味でございまして、防衛分野において使用される技術は、専用技術、汎用技術両方ここには含まれるわけであります。
  349. 井上一成

    井上(一)分科員 そうなんです。私もそう理解するのです。最初の「防衛分野における技術」というのは汎用技術である、後に出てくる「防衛分野における技術」というのは武器技術と汎用技術だ、こういうこと。それは違うわけですね。そこまで意見が同じです。  そうであるなら、民間企業の汎用技術を許容すること、いわゆる「分野における技術」をちょっと置きかえるわけですね。後から一行目の「防衛分野における技術」というのを武器技術と汎用技術、「アメリカ合衆国に対する供与を歓迎します。」と書いているわけでしょう。さらに「そのような供与は促進されることとなりましょう。」これは交換公文ですから、国家間が約束したわけでしょう。そういうふうなことになりませんか。あなた方、嫌だ、ノーだ、民間がノーだと言えばできっこないんですよと答弁しているわけ。ずっとそういう答弁をしてきたわけ、安保条約の効果的運用といって。交換公文にはわざわざ「防衛分野における技術」という言葉を書いて、僕は本当はこの原文を欲しいわけなんだけれども、あえてここで「供与を歓迎します。」「供与は促進されることとなりましょう。」こんな重大なことを国家間で取り決めをしているのですよ。どう通産は受けとめているのですか。通産大臣、ここは大変なことなんですよ、ノーなんて言えないのですよ。供与することを歓迎をし、促進をするんだ、そういうことを言っているのです。
  350. 杉山弘

    ○杉山政府委員 今先生がお読みになりましたパラグラフの中におきましては、「関係当事者の発意に基づきかつ相互間の同意により実施される防衛分野における技術のアメリカ合衆国に対する供与を歓迎します。」こう書いておりますので、いわば両当事者が自発的に相談をし、その結果同意ができました防衛分野における技術のアメリカ合衆国に対する供与を歓迎する、これは先ほど私御答弁申し上げました、官房長官談話の趣旨をも反映したものであるというふうに理解をしているわけであります。
  351. 井上一成

    井上(一)分科員 後でまたそのことは質問します。  私は、この関連云々というこのくだりの条項を持ち出してきて、アメリカ側が通産省に対し、民間企業の汎用技術を何とかしろと言ってきた、あるいは言ってくるかもわからない、しかしその場合、民間企業を保護するんだという観点から通産省はどう対応するのだろうか、こういうふうに思うのです。どう理解していいのでしょうか。
  352. 杉山弘

    ○杉山政府委員 繰り返し御答弁申し上げるようなことになると思いますが、やはり関係当事者の発意に基づいて、かつ相互の間の合意ができたものについて、政府としては対米供与を歓迎するということを言っております。したがいまして、それまでの過程におきましては、企業のいわば商業的な判断、自主的な判断というものが尊重されるべきであるというふうに考えておりますし、その点につきましては、先ほども申し上げましたように、大臣からも国会の御答弁におきまして、関係企業の意に反するような形での供与が行われないように通産省としては努力をいたしますということは、申し上げてあるわけでございます。
  353. 井上一成

    井上(一)分科員 あなた方が言われていることにも私は少しの理解は持ちます。ところが今度は四ページ目にも、「この了解の実施に関して相互間の協議を必要とするすべての事項に関する」、すべてですよ。汎用も入ってきますね、すべての事項に関しては。「日本政府とアメリカ合衆国政府との間の協議機関として武器技術共同委員会(以下「JMTC」という。)を設置する。」このJMTCで「防衛分野における技術に関する事項について討議することができる。」こういうことですね。  あなたが言わんとしていることは、そういう場面もあるんだということを、民間企業の汎用技術は勝手に商取引でやってくれたらいいんだという、今まではそういう、言葉は別として、ニュアンスの答弁を繰り返されているのですよ、ずっと外務省サイドで。アメリカ側が民間企業に断られた汎用技術、これはこの交換公文からいけば、JMTCに持ち出した場合、門前払いができないんですよ。外務省は、それは企業がノーと言えばそれはそれでいいんだというようなことを言っているけれども、これを隠しているんだね。隠しているというか、この説明が十分でない。それで、門前払いができないから、今あなたがおっしゃるようにその討議をするんだと。  私は本来、何が武器技術か、何が汎用技術かを識別する仕事、そういう仕事は通産省の領分だと思っていたわけです、私自身は。今もそう思っているんですよ。今も私は、それは通産省の領分だと思っていますよ。ところが、この交換公文によれば、対米関係の武器技術の識別を外務省と防衛庁とともにすることになっている。それはさっき言ったように、武器技術共同委員会は「日本国側委員部は次の者で構成する。」後の方で書いていますね、防衛庁の代表、外務省の代表、通商産業省の代表、それからアメリカ側の代表と。  一体通産省は、あなた方の本来やるべき領域の仕事を外務省や防衛庁にいつから委任をしたのですか。この十一月から委任をしたのですか。そういう通産省本来の仕事の一部を防衛庁や外務省に渡して、それでいいのですか。通産省の本来の仕事を放棄したことになる、私はそういう見方をしているし、この交換公文というものは通産省は何と受けとめているんだ、こんなことが許されるのだろうかというのが私の考え方であり、外務省はいつもこのようにして、日本の外務省として日本の国益を本当に守っているのだろうかということを、私は大いに疑問を持ち出したのですよ。特にごく最近。こんなことでいいのだろうか。  御承知のように、日米合同委員会でのいろいろな取り決めを含めて、通産大臣承知でしょう、予算委員会で私は指摘をしてきたわけです。そんなことを考えると、こんなことで通産省本当にいいのかと。まあ、私が通産大臣でもありません。がしかし、通産大臣、しっかりしてもらわなければ困る。あなた、もうしばらくしたらやめんねん、そやからこの間だけまあまあ無難に切り抜けりゃそんでええねんと、私は、それでは同じ政治家として、私はまだうんと後輩ですが、しかし大臣、ここはひとつしっかり、何とかこの問題をきっちりしてほしいというのが私の質問の趣旨なんです。大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  354. 杉山弘

    ○杉山政府委員 大臣の御答弁の前に私から若干、技術的な問題でございますので、お答えをさせていただきたいと思います。  先生おっしゃいますように武器技術の解釈の問題、特に輸出に当たりましては、外国為替及び外国貿易管理法に基づきまして許可を与える権限を持っておりますのは通産省でございます。したがいまして、その限りにおきましては、輸出貿易管理令で掲げられております武器、それの製造、設計、仕様に関する武器技術、これにつきましては外国為替管理令で許可をいたします。  したがって、そういう観点での武器技術とは何であるかという判断は、確かに私どもが専管的に判断をすべき問題でございますが、ここでJMTCで、日本側で外務省、防衛庁も加えましたのは、武器技術であればそれを何でも対米供与するというわけではございませんで、安保条約の効果的な運用に資するかどうかということが一つの大きな基準としてかかってくるわけでございます。その基準を踏まえて、日本側が独自に自主的な判断をするということになっております。こういう点につきましては、通産省だけではなくて、外務省及び防衛庁の従来の条約上の問題に関する知見、防衛問題に関する知見といったものも総合的に判断する必要があるということで、こういう三者構成になったというふうに私どもは理解をいたしております。
  355. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 井上委員のおっしゃるように、簡単に私がやめるかやめないか、恐らく今までやっていた二倍や三倍は通産大臣を務める期間を持っていることと思います。そういう中で、単に通産省の名誉を守るとかというようなけちなことではなしに、国益という広い見地に立ってこの問題を、私は通産大臣立場で処理してまいりますし、意見も言ってまいりたいと思います。
  356. 井上一成

    井上(一)分科員 本当にけちな考えじゃないのですよ。私はむしろ国益を思うからこの問題を指摘をしておるのですよ、大臣。あなたの受けとめ方は、私の指摘をしていることを十分わかってない。失敬だけれども、ほかの人の方がよくわかっている。これは後でよくお聞きをいただいて、私は国益を思うから日本の国益のためにこれは指摘しているのですよ。
  357. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 そういうことじゃなしに、通産省の名誉というようなけちな考え方ではなしに国益という広い見地に立って処していこう、こういうことを私は申し上げたのであります。
  358. 井上一成

    井上(一)分科員 通産省の名誉です。通産省がしっかりと国益を守っていくというのは通産省なりの名誉なんです。仕事なんです。領域だ。だから国益を考えるなら通産省はもっとしっかりせい。  私は、もうちょっと具体的な話をしましょう、大臣。アメリカ側が例えば日本企業の最先端技術を武器技術供与の名で打診しているものの中に、これは報道ですが、日本電気の電波吸収フェライトとか音声認識装置あるいは三菱電機の赤外線探知機能付固定操像素子、日立製作所の炭化銅繊維(CUC)というのがあると伝えられているわけです。これらは当然汎用技術の範疇に入ると思うわけです。これはいかがですか。
  359. 志賀学

    志賀(学)政府委員 ただいま先生からお話がございました技術につきまして私、必ずしもつまびらかにしておりませんけれども、私の感じとしては汎用技術であるというふうに理解をしております。
  360. 井上一成

    井上(一)分科員 ところが、もしこれがさっき指摘をした武器技術共同委員会JMTCで武器技術という識別をされた場合、この識別もこの委員会でやるわけなんですよね、この構成された「JMTCは、特に、供与されるべき武器技術を識別するに当たっての協議機関として機能する。」これはどうだ、これは汎用技術だというそれも、この委員会で識別までするのですよ。もしこれらがJMTCで武器技術という識別をされた場合、その技術はアメリカに提供するわけですね。そしてそれを促進するということになっているのだから、提供するわけです。そうすると、他の国々例えばフランスだとか西ドイツだとかそういう国には武器輸出三原則により輸出できないことになる、こういうことになるのです。例えば日立にしろ、三菱にしろ、どこにしろ、せっかくの開発された先端技術が汎用品としてでもこのJMTCの中で識別されてそうなってしまったら、今度武器輸出三原則の枠の中で西ドイツにもフランスにもどこへも輸出できない、こんな格好になってしまうのではないか。これはちょっと問題になるのではないか。それこそ我が国の優秀な頭脳がアメリカでとまってしまうわけでしょう。どうなんです。
  361. 杉山弘

    ○杉山政府委員 先ほど先生が具体的に挙げられました技術、これは機械情報産業局長の方から汎用技術と思う、こう御答弁申し上げたわけでございます。JMTCで議論をし、この交換公文に従って対米供与をいたしますのはいわゆる武器専用技術でございますので、汎用技術につきましてはこの交換公文に基づく枠組みによって供与をされるわけではないのは先生十分御存じだと思います。  それで、仮に具体的な技術が出まして、それがいわゆる武器専用技術である、武器技術であるというふうに認定され、また我が国の国益の観点からそれを対米供与することが必要である、こういう判断になります場合でも、やはりそれを持っております企業日本側の当事者の一人といたしましてこれに同意を与える、アメリカ向けに供与することに同意を与えるということがあって初めて供与が可能になるわけでございますので、武器専用技術でありましてもすべて日本側の所有者の同意なくして供与されるというものではないということだけ申し上げておきたいと思います。
  362. 井上一成

    井上(一)分科員 よくこの交換公文を読んでいらっしゃると思いますが、四ページの真ん中2の(1)に「この了解の実施に関して相互間の協議を必要とする」、日米間の「協議を必要とするすべての事項に関する」ですよ。あなた何を言っているんですか。さっきの後段の防衛分野における技術、それから前段の防衛分野における技術、これは違うわけです。いわゆる協議をする対象になるすべての事項に関する協議機関としてJMTCがあるわけです、汎用品も含めて。そうでしょう。だから、これは原文を取り寄せて本当にじっくりと勉強なさったと私は思いますけれども、このことは非常に大事である。もうアメリカにがんじがらめにされている。日本の国益を守るために私はあえてきょうは、武器輸出については当初私が国会で初めて指摘をしたわけです。技術供与に発展をしていった。さらに汎用品。そして交換公文ができて、去年の十一月、恐らく選挙前で国会はみんなお互いに十分な落ちつきを持てない時期に、ぱっと交換公文を交わしてしもうた。よう読んできっちり見たら、もう案の定、日本のすべてをアメリカに提供してしまう。  大臣、余り時間もありませんけれども昭和二十三年七月に戦前からあった秘密特許制度は廃止されたわけです。これは技術促進のためによくないという弊害もあった。しかし、軍事産業保護のため秘密特許制度もあった方がよいんだという意見もきょうこのごろちらほら出てきているわけなんです。大臣はそういうような意見に対してどうお考えでしょうか。
  363. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 そのような軍事機密に対して秘密を守った方がよろしいという議論が出ることも当然でございましょう。しかし、そのような秘密を守った方がよろしいという議論が今の日本で通るか通らないか、そこに大きな問題があろうと思いますので、この場でにわかに委員質問に対してはっきりとした答えは残念ながら私にはできません。
  364. 井上一成

    井上(一)分科員 大臣、秘密特許という制度があった方がよいなんて必ずしも私は思いません。私はですよ。大臣もそういう立場をとりながら明快な回答を避けられたわけです。  そこで、御承知のようにMDA制度を持っておって、アメリカ側に渡った技術は条約上秘密にしなければならないわけです。これは条約で決まっているわけです。そうであるなら、このことは形を変えた秘密特許制度が復活している、これはMDA制度という一つのフィルターを通して秘密特許制度が形を変えて復活していると見るべきではないだろうかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  365. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 これは先生承知のように、日米軍事援助技術協定に基づきまして向こうから技術援助が日本側に与えられた場合に、それを秘密特許にしてほしいという申し出があった場合に、日本側で秘密特許に準じた扱いをいたしましょうという約束でございますので、もともとアメリカ側で秘密特許になっているものと思います。その関係日本に、いわゆる秘密特許的な、準じた扱いをしようということでございますから、日本側のものはそれに入らないということになると思います。
  366. 井上一成

    井上(一)分科員 もう一問それじゃ聞いておきます。  現在何ら働きのない、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日米協定があるわけですね。実態は働いてない、まあ有名無実だ。こういう秘密特許制度とほぼ同様の規定が設けられている関係上、既に日米間では秘密特許制度があると言っても間違いではないのではないか、私はこういうふうに思うのですが、この点についてはいかがですか。
  367. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 先生承知のように、アメリカ側からの軍事技術援助に基づくものについて、アメリカの秘密特許に準じた扱いをこちらがアメリカ側の出願についてしましょうということでございますけれども、これの細目については全然詰めてございません。したがって、趣旨は趣旨として、現実にワーカブルになっていないというのが現状でございます。
  368. 井上一成

    井上(一)分科員 それじゃここで専門的に聞いておきます。MDAで輸出した技術を特許出願はできるのでしょうか。
  369. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 MDAで日本側が対米供与したわけでございますか。それは秘密特許扱いにする必要はないと思います。
  370. 井上一成

    井上(一)分科員 よろしゅうございますね、その答弁で。それでいいんですね。我が国とMDA制度を通してアメリカに渡った、米国に渡った技術は条約上秘密にしなければならない、たまたまきょう私はその条約を持ち合わせておりませんのでね、私の認識はそうなんです。だけれども、今、出願が可能であるということです。これは、それじゃ全く筒抜けのMDA制度の中での秘密は守れないことになるわけです。当然そうしたらMDAで輸出した技術を特許法に基づく出願の公開だとか、出願の公告というものはできるんですね。
  371. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 日本側が与えた技術につきましては、日本側で出願をし公開することは自由でございます。趣旨は、アメリカ側から与えられた軍事技術に関連するものだけ秘密特許に準ずるという扱いになっております。
  372. 井上一成

    井上(一)分科員 そうしますと、すべて我が国、日本側の先端技術、それは我が国が独自に特許出願もできるし、そしてそのことはあくまでも秘密でない、こういうことの趣旨でございますね。
  373. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 さようでございます。
  374. 井上一成

    井上(一)分科員 そのことはまた、特許問題については時間を改めて質疑を加えます。  私は、ここで申し上げたいのは、アメリカの今のレーガンの戦略というのですか、そういうものを突き詰めていくと、国防と経済は一体だ、こういう高度な安全保障政策で貫かれているのではないだろうか、こういうふうに思っているわけです。最近の日本企業の最先端技術の追い上げに対して、アメリカはむしろ大変な脅威を感じており、日米先端技術戦争が一層深刻なものとなってくる、こういうふうに私は思っています。そして、そうなればなるほど国益、我が国の先端技術を守るということは国益に通ずることでもありますから、そういう意味で、ぜひ我が国の技術を保護するための最大の努力を通産なり特許庁は願いたい。  ただ毎回毎回、今も少し話があったわけですけれども、外務省が始終言うものだから、通産も時たままねて言っているのでしょうか、本当にその気で答弁しているのか、安保条約の効果的運用ということで安易に技術は提供すべきでない、私はこういうふうに思うわけなんです。しかし、この交換公文というものが非常に大きな、大変重要な意味を持つ交換公文になってしまったということを、きょうは大きく指摘したわけです。  先ほどから、例えばアメリカから日本にライセンス生産に際しては、ブラックボックスという形で技術を秘密にしている。これはアメリカ側だけの一方通行であり、そういう認識だというお答えがあったわけです。私は、二十一世紀に生き残るためにも、日本国民の知恵から生まれたいわゆる先端技術を大切にすべきであり、民間企業保護の立場通産省がしっかりしてくれなければいけませんよ、こういうことを終始申し上げていきたい。そういう立場に立って今質問を続けてきたわけです。  出願の問題については一定のお答えがあったわけですけれども、どうもこの交換公文に対する深い解釈というのですか、それはまだまだ通産当局は十分に理解できていないんではないだろうか。非常に大変な問題です、これは。私はそういう受けとめ方をしている。きょう、あすの問題ではないと思うのですよ。ここ一年、二年の間の問題ではないと思います。しかし十年、二十年、恐らく二十一世紀に入れば、この交換公文あるいはこういうような仕組みが我が国の二十一世紀を暗くしてしまいます。本当に民間の英知というものが守り切れない、私はそう思うのです。  大臣、まあ大臣からお答えを願いたいと言ったって、これは通り一遍な答弁になってしまうかもわかりません。大臣も国益国益と云々されるし、ひとつこの交換公文を十分レクチャーをお受けになられて、私もこれからこの問題については勉強したいと思います。そして、私の趣旨は、通産省の果たしてくれる役割、そしてそれが国益を守ることであり、その果たす役割が十分であれば、誇り得る、プライドが持てる立派な通産省としての仕事をやっていることになる、私はこう思っているのです。ちゃちな、けちな考え方質問しているのじゃないのですよ。そういう意味で、ひとつ大臣、締めくくりと言えば何だけれども、本当に二十一世紀に生き残るためにも、ひとつ大いなる努力奮闘を私は期待したい、こういうふうに思うのです。日本の頭脳を安易な形でアメリカに売ってしまうということはとられてしまう、とられてしまうことを憂えています、こういうことでございます。
  375. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 大変御激励をいただきまして、まことにありがとうございます。ひとつ褒められるように努力いたしましょう。
  376. 井上一成

    井上(一)分科員 それじゃ、もう時間がありませんが、もう一点だけ……。  今まだ審議の中に入っておりませんけれども、電気通信事業法案が今国会に提出すべく準備をされているわけなんです。これはいろいろな重大な問題をはらんでいる、こういうふうに思うわけです。そういう意味で、これも郵政の問題だとかあるいは通産の問題だとか、そんな省庁間の縄張り根性で私は議論をしたくありませんし、これは誤解を受けるといけませんので、私自身も今後この問題については十分な勉強をしなけりゃいけないし、いろいろと皆さんからも質疑を通してただしていかなきゃいけない、こういうふうに思うわけです。だから、次元の低い形でこれをとらえて議論をしたくない。今日の情報処理の分野における新しい規制の導入というのでしょうかね、実際あらゆる面で極めて問題がある。そんなことはないでしょうけれども、これは通産の問題でないんだ、郵政の問題なんだというような考え方大臣いらっしゃったら大変なことになりますし、さっき指摘したように、外務省と防衛庁に引きずり回されてしまって、交換公文を一字一句ずっとかみしめていくと、よくよく気がついてみたらすべて通産はお手上げた、私が言っているのはそういうことなのですよ。これもまたぞろそういうことになってしまったら大変なことでございますので、この法案に対する通産大臣の取り組み、決意、そういうものをひとつ聞かしていただきたい、こう思います。
  377. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 まことに一難去って一難来るようなことでございますけれども、この問題に関して郵政側と調整すべきことがあることは事実でございます。しかし、通産省といたしましては、あくまでも民間の創意と工夫を生かす、自由な立場を確保するという考え方は決して失っておりませんので、この立場を主張しながら他省との調整を図っていく所存でございます。
  378. 井上一成

    井上(一)分科員 通産行政ということで、実はきょうはドーム石油についても、これは私が一番早く、効率の悪い投資であった、むだ遣いであったということを指摘をしたので、その問題にも触れたかったわけでありますけれども、時間が参りましたし、またそのことはあすの総括で聞かしていただくということで、きょうはこれで私の質問を終えますが、ひとつ通産大臣、しっかりと頑張っていただきたいということを最後につけ加えておきます。  どうもありがとうございました。
  379. 伊藤宗一郎

    ○伊藤主査 これにて井上一成君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして通商産業省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の特段の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後五時五十五分散会