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1984-03-10 第101回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和五十九年三月五日(月曜日)委員 会において、設置することに決した。 三月九日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       相沢 英之君    中村正三郎君       松永  光君    稲葉 誠一君       岡田 利春君    渡辺  朗君       松本 善明君 三月九日  相沢英之君が委員長指名で、主査選任され  た。 ————————————————————— 昭和五十九年三月十日(土曜日)     午前九時開議  出席分科員    主査 相沢 英之君       中村正三郎君    松永  光君       稲葉 誠一君    岡田 利春君       永井 孝信君    渡辺 嘉藏君       米沢  隆君    松本 善明君       三浦  久君    兼務 川俣健二郎君 兼務 小林  進君    兼務 兒玉 末男君 兼務 島田 琢郎君    兼務 松沢 俊昭君 兼務 日笠 勝之君    兼務平石磨作太郎君 兼務 薮仲 義彦君    兼務 伊藤 英成君 兼務 塚本 三郎君    兼務 藤木 洋子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵大臣官房会         計課長     渡邊 敬之君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省証券局長 佐藤  徹君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         国税庁次長   岸田 俊輔君         国税庁税部長 渡辺 幸則君         国税庁間税部長 山本 昭市君         国税庁徴収部長 兼松  達君         国税庁調査査察         部長      冨尾 一郎君  分科員外出席者         警察庁警務局人         事課長     城内 康光君         警察庁刑事局保         安部経済調査官 清島 傳生君         防衛庁経理局会         計課長     源氏田重義君         防衛庁経理局監         査課長     渡邉 正身君         防衛庁装備局航         空機課長    廣中 佑見君         防衛施設庁施設         部施設取得第二         課長      小澤 健二君         国土庁長官官房         震災対策課長  清水 一郎君         国土庁地方振興         局総務課長   桝原 勝美君         外務省北米局北         米第二課長   七尾 清彦君         大蔵省主計局主         計官      藤井  威君         大蔵省銀行局保         険部長     加茂 文治君         国税庁国税不服         審判所次長   四元 俊明君         文部省管理局教         育施設部助成課         長       逸見 博昌君         厚生省医務局指         導助成課長   柳沢健一郎君         厚生省社会局施         設課長     近藤純五郎君         林野庁指導部治         山課長     今村 清光君         運輸省航空局飛         行場部計画課長 井上 春夫君         建設省河川局防         災課長     狩野  昇君         建設省道路局企         画課長     鈴木 道雄君         建設省道路局国         道第一課長   杉山 好信君         建設省住宅局住         宅建設課長   高橋  徹君         自治省税務局企         画課長     丸山 高満君         消防庁震災対策         指導室長    金子 皓治君         会計検査院事務         総局第二局防衛         検査第一課長  沢井  泰君     ————————————— 分科員の異動 三月十日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     渡辺 嘉藏君   岡田 利春君     竹村 泰子君   渡辺  朗君     米沢  隆君   松本 善明君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   竹村 泰子君     岡田 利春君   渡辺 嘉藏君     岩垂寿喜男君   米沢  隆君     小渕 正義君   三浦  久君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     関  晴正君   小渕 正義君     安倍 基雄君   野間 友一君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   関  晴正君     永井 孝信君   安倍 基雄君     渡辺  朗君   藤田 スミ君     中島 武敏君 同日  辞任         補欠選任   永井 孝信君     関  晴正君   中島 武敏君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   関  晴正君     稲葉 誠一君   三浦  久君     佐藤 祐弘君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 祐弘君     中島 武敏君 同日  辞任         補欠選任   中島 武敏君     佐藤 祐弘君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 祐弘君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   藤田 スミ君     松本 善明君 同日  第一分科員小林進君、兒玉末男君、日笠勝之君  、藤木洋子君、第三分科員平石磨作太郎君、薮  仲義彦君、第四分科員川俣健二郎君、第五分科  員島田琢郎君、伊藤英成君、塚本三郎君及び第  分六科員松沢俊昭君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算  (大蔵省所管)      ————◇—————
  2. 相沢英之

    相沢主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました。何とぞよろしくお願いを申し上げます。  本分科会は、法務省、外務省及び大蔵省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省所管事項説明は、各省審査冒頭に聴取いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算及び昭和五十九年度政府関係機関予算大蔵省所管について、政府から説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 昭和五十九年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算につきまして御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、五十兆六千二百七十二億千四百万円となっております。  このうち主な事項につきまして申し上げますと、租税及び印紙収入は三十四兆五千九百六十億円、専売納付金は一兆二百十六億八千百万円、雑収入は二兆二千二百二十四億千九百万円、公債金は十二兆六千八百億円となっております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、十兆三千八百二十八億二百万円となっております。  このうち主な事項につきまして申し上げますと、国債費は九兆千五百五十億七千三百万円、政府出資は二千百十億円、予備費は三千五百億円となっております。  次に、当省所管の各特別会計歳入歳出予算につきまして申し上げます。  造幣局特別会計におきましては、歳入歳出とも二百七億千三百万円となっております。  このほか、印刷局等の各特別会計歳入歳出予算につきましては、予算書等によりましてごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関収入支出予算につきまして申し上げます。  日本専売公社におきましては、収入二兆九千四十三億八千九百万円、支出二兆九千三百九十九億三千三百万円、差し引き三百五十五億四千四百万円の支出超過となっております。  なお、専売納付金は、臨時国庫納付金三百億円を含め、一兆百五十五億三千四百万円を見込んでおります。  このほか、国民金融公庫等の各政府関係機関収入支出予算につきましては、予算書等によりましてごらんいただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきたいと存じますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。
  4. 相沢英之

    相沢主査 この際、お諮りいたします。  ただいま竹下大蔵大臣から申し出がありましたとおり、大蔵省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 相沢英之

    相沢主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔参照〕    昭和五十九年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算に関する説明  昭和五十九年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算につきまして御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、五十兆六千二百七十二億千四百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、二千四百七十六億千百万円の増加となっております。  以下、歳入予算額のうち主な事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、租税及印紙収入は、三十四兆五千九百六十億円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、二兆二千八百十億円の増加となっております。  この予算額は、現行法による租税及び印紙収入見込額三十四兆五千三百十億円に、昭和五十九年度に予定されている所得税減税並びに法人税酒税物品税及び石油税税率引上げ等税制改正による増収見込額六百五十億円を加えたものであります。  次に、各税目別に主なものを御説明申し上げます。  まず、所得税につきましては、所得税減税等による減収見込額八千六百億円を差し引いて、十三兆九千八百五十億円を計上いたしました。  法人税につきましては、税率引上げ等による増収見込額五千三百億円を加えて、十兆九千九百八十億円を計上いたしました。  酒税につきましては、税率引上げによる増収見込額三千二百億円を加えて、二兆二千三百七十億円を計上いたしました。  石油税につきましては、税率引上げ等による増収見込額六百七十億円を加えて、三千七百三十億円を計上いたしました。  物品税につきましては、税率引上げ等による増収見込額三百五十億円を加えて、一兆四千五百五十億円を計上いたしました。  以上申し述べました税目のほか、相続税八千七百五十億円、揮発油税一兆六千百七十億円、関税六千六百八十億円、印紙収入一兆三千三百九十億円及びその他の各税目を加え、租税及印紙収入合計額は、三十四兆五千九百六十億円となっております。  第二に、専売納付金は、一兆二百十六億八千百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、三百三十九億二百万円の増加となっております。  この納付金は、日本専売公社納付金一兆百五十五億三千四百万円、アルコール専売事業特別会計納付金六十一億四千七百万円を見込んだものであります。  第三に、雑収入は、二兆二千二百二十四億千九百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、一兆四千百八十三億四千百万円の減少となっております。  この収入のうち主なものは、日本銀行納付金一兆二千九十四億円、日本中央競馬会納付金千六百四十六億八千四百万円、日本電信電話公社臨時納付金二千億円、特別会計受入金二千四百七億五千万円、補助貨幣回収準備資金受入千六百六十三億六千万円等を見込んだものであります。  最後に、公債金は、十二兆六千八百億円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、六千六百五十億円の減少となっております。  この公債金のうち、六兆二千二百五十億円は、建設公債発行によることとし、残余の六兆四千五百五十億円は、特例公債発行によることと致しております。  なお、別途、特例公債発行日本電信電話公社及び日本専売公社からの臨時国庫納付金受入れ等のため「昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律」(案)を提出し、御審議をお願いいたしております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、十兆三千八百三十八億二百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、一兆二千七百二十四億五千万円の減少となっております。  これは、決算調整資金へ繰入が二兆二千五百二十四億九千三百万円減少いたしましたが、他方、国債費が九千六百二十六億千三百万円増加いたしましたこと等によるものであります。  以下、歳出予算額のうち主な事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、第一に、国債費につきましては、九兆千五百五十億七千三百万円を計上いたしておりますが、この経費は、一般会計の負担に属する国債の償還、国債及び借入金の利子等の支払並びにこれらの事務の取扱いに必要な経費財源を、国債整理基金特別会計へ繰り入れるためのものであります。  なお、先ほど申し述べました「昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律」(案)に基づき、昭和五十九年度において、前年度首国債総額の百分の一・六に相当する額及び割引国債に係る発行価格差減額年割額に相当する額の繰入れは行わないことと致しております。  第二に、公務員宿舎施設費につきましては、二百五十一億四千万円を計上いたしておりますが、この経費は、国家公務員に貸与する宿舎施設整備に必要なものであります。  第三に、政府出資につきましては、中小企業信用保険公庫等機関に対し、一般会計から出資するため必要な経費として、二千百十億円を計上いたしておりますが、その内訳は、中小企業信用保険公庫五百十億円、海外経済協力基金千六百億円であります。  第四に、経済協力費につきましては、五百三十七億二千六百万円を計上いたしておりますが、この経費は、発展途上国に対する食糧増産援助等に必要なものであります。  最後に、予備費につきましては、予見し難い予算の不足に充てるため、三千五百億円を計上いたしております。  次に、当省所管特別会計のうち主な会計につきまして、その歳入歳出予算概要を御説明申し上げます。  まず、造幣局特別会計におきましては、歳入歳出とも二百七億千三百万円となっております。  次に、印刷局特別会計におきましては、歳入七百五十六億四千二百万円、歳出六百八十四億四千百万円、差引き七十二億百万円の歳入超過となっております。  以上申し述べました各特別会計のほか、資金運用部国債整理基金外国為替資金産業投資、地震再保険及び特定国有財産整備の各特別会計歳入歳出予算につきましては、予算書等によりまして御覧いただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関収入支出予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、日本専売公社におきましては、収入二兆九千四十三億八千九百万円、支出二兆九千三百九十九億三千三百万円、差引き三百五十五億四千四百万円の支出超過となっております。  なお、専売納付金は、先ほど申し述べました「昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律」(案)に基づく臨時国庫納付金三百億円を含め、一兆百五十五億三千四百万円を見込んでおります。  また、日本専売公社事業のうち、たばこ事業につきましては、昭和五十九年度の製造たばこ国内販売数量を三千百六十二億本と見込んでおります。  このほか、国民金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫中小企業金融公庫北海道東北開発公庫公営企業金融公庫中小企業信用保険公庫医療金融公庫、環境衛生金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、日本開発銀行及び日本輸出入銀行の各政府関係機関収入支出予算につきましては、予算書等によりまして御覧いただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。     —————————————
  6. 相沢英之

    相沢主査 以上をもちまして大蔵省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  7. 相沢英之

    相沢主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  8. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 先日、三月二日ですか、竹下大蔵大臣一般質問ドルと円の話をいたしました。その後、私が質問を終えたあたりから円が高くなってまいりました。それぐらい先の見通しがなかなかつきにくいという最近の円やドル動き、それにつれまして、それを引っ張ってきたと言われておりますドイツマルク、こういう世界的な動きというのは、大変興味があるというだけではなくて、政治、経済に大変大きくかかわってくる。二日の私と大臣とのお話のときには、アメリカ大統領選挙、これはいやでも応でも過熱していくわけでありますが、そうしたアメリカ選挙によってドルや円がかなり振り回されるというような兆しも見える。したがって、相当確かな見通しを持ってやりませんと、我が国経済がようやく少し曙光が見えてきた、こう言われているときでありますから、これは我が国経済にとっても、また財政の上でも大変重要な段階を迎えているのではないか、こんな趣旨のことを私はお話をしたと思います。  私が見通しました円高への傾向、あのときは円高というよりもドルがかなり下落するあるいは暴落するのではないか、こういうことを私は仮説として立てましたが、その後一週間近くたちました。一週間たったわけでありますが、昨日もこの問題はほかの委員からもお話の中に出ておりました。ここでもう一遍大蔵大臣の所見を伺っておきたい、こう思うのであります。
  9. 竹下登

    竹下国務大臣 島田さんはあの当時、言ってみればヨーロッパ等で言われておりますドル暴落という場合のことを仮説というお言葉でおっしゃいましたが、そういう前提で御議論をなさいました。御議論の私と島田さんとのすれ違いは余りなくて、傾向としては今日同じような方向を歩いておるような気がしております。  あのときも申し上げましたが、ことしの二月以降、それまでの行き過ぎておりましたドル高マルク安、そういうヨーロッパ通貨との関係を修正する動きから、ドイツマルクが大幅に上昇した。円はマルクに対してもそうなると割安感というものが生ずる。それが今この契機となりまして、きのうのところで二百二十三円七十五銭、ニューヨークが二百二十四円六十銭だそうでございますが、そういう動きになったわけであります。したがって、全体的に見ると、私はいわゆるドル急落の始まりであるという認識では依然としてないわけでございます。基本的に申しますと、円が徐々に円高方向に向かって、円高基調というものが定着されていくことは、我が国経済にとってお説のとおり好ましいことだ。だから、円高定着を依然として期待をしておるという考え方であります。
  10. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 しかし、私は、確かに中曽根・レーガン会談におきますプレスリマークスでは、大統領は依然レーガンによって引き継がれるというふうな前提に立っておるという印象を強く持ちまして、私はレーガン経済政策というもので見通した場合に一体どういう方向をたどるのか、それからこの間ハートが突然躍り出てきた感じアメリカで大きな話題をさらっておりましたから、仮にハートにかけるとすればどういう点を考えていけばいいのか。私は、あのときには、レーガン一辺倒でいきますと手痛い目に遭うのじゃないですかということを申し上げて、大統領選挙というのが、冒頭で申し上げましたように、経済財政に非常に大きく影響を及ぼしてくる、それがひとりアメリカだけではなくて、すぐ、同じ時間で我が国にも影響を及ぼしてくる、こういうことでありますから、この辺のところは大変興味を持って見るということだけでは済まない大事なファクターになるのではないですかというようなことを申し上げたわけであります。  あの当時と依然見方としては大きく変わった見方はしていない。ただ、もう少し円が強くなるという意味のことをおっしゃっておりますが、大臣としてはどの辺のところがドルと円との均衡あるレートだとお考えになっているのか、その辺を一遍お聞かせ願いたい。
  11. 竹下登

    竹下国務大臣 これはまさに昭和四十六年一たんフロートしましてから今日までいろいろな推移をたどっておるわけでありますが、そのときどきの経済情勢、なかんずく物価、国際収支あるいは金利差等々に影響されるわけでございますので、一概に何ぼだと言うことは非常に難しい問題でございます。また、野党第一党の島田さんと大蔵大臣の私で、およそこの辺だろうということを言いますと、私は大した人間じゃなくても、確かに円というものの国際的に占める力からいいますと、それは投機筋を刺激する発言にもなりかねないくらい、我が国の立場はそれだけ大きいウエートを持っているわけでありますけれども、私自身は、今までにいろいろなことを聞かれた場合、アジア開発銀行の際に一体おまえどれくらいが適正だと思っているかと言われたときに、言いようがなくて、私が昭和五十四年、一九七九年の大蔵大臣のときに二百四十二円で就任して、やめるときが二百十九円二十銭だったと言いましたら、それじゃ二百十九円くらいだと思っているのか、こう言いますし、なかなか微妙な問題でございますけれども、私自身は、現在のファンダメンタルズからいえばなお円高基調への定着が期待されると言う以上に、数値をもって申し上げるというわけにはまいらない問題なのかな、こういう感じを持っておるところであります。  それから、今御意見にございましたハートさんとのいわゆる政策の相違という問題については、基本的には余りないようでございますが、時間があれば、我が方も詳細な情報をとったわけじゃございません、新聞程度でございますけれども、吉田博士がちゃんと用意してまいりましたので、あるいは発言させていただく機会を与えていただければと思います。
  12. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 後段の話はそれじや後ほどお聞かせいただくことにして、今の大臣の御見解に対して、私、考え方を述べてみたいと思っております。  私は、この間も申し上げて、時間がないものだから途中で打ち切りみたいな格好になってしまったのですが、一つは、ここ二、三年、お正月一つ見通しを立てておりますものの、一年の間に果たしてその見通しどおり動いていっているのだろうかということに興味を持ちまして、その軌跡をたどってみましたら、お正月見通したのはその年に余り当たっていない、そういう結果になっているようですね。例えば五十六年、これは対ドル円レートの見通しを、専門家が集まっていろいろ議論して立てておりますが、一月六日に円レートは百九十八円七十銭、ところがこの年はこのとおりいかないので、平均でもう少し円が弱くなりました。それから、五十七年にも一月四日に二百十七円七十銭ということでレートを見通した。五十五年以前ですと、お正月に立てたそういう見通しがそんなに大きく狂わぬで一年間いったのが、五十六年から狂ってきていまして、五十七年もこのとおりにはいかなかった。それから、昨年は二百二十七円二十銭を一月十一日に立てておりますけれども、これも見事に裏切られたといいますか、このとおりいかなくて、かなり円安の状況が生まれてきた、こういうことであります。  五十九年は、一月のレートは大体二百三十円台でありますから、円としては大臣の期待にかなり反するような状況であった。ところが、先ほど私が申し上げました、先週二日にお話をしましたときからきょうまでのこの一週間に十円、円が強くなっている。一週間に十円というのは、一日当たり一円二十銭近くも上がったということでありますから、これは大変な円の動きだ。その分だけドルが急速に弱まったと言ってもいいのではないか、こう思っているわけです。  ですから、この三年間、こんなことを頭に置きながらやりませんとその年の取引は大きく狂ってしまうということでは、三年もやってきますと、専門家の間では、これは危なくて、五十九年もうっかりすると一月に見通したのが大幅に狂うということを頭に置きながらやらないと手ひどい目に遭うぞというような感じで、今度の動きなんかにも対応しているのではないかと私は思うのですが、その対応がまた裏目に出てまいりますと、えらい混乱を起こすことになると思います。  ただ、もう一つ大きく作用していると思われますのが、秘密文書と言われておりますがOECDのレポートです。これの中で、アメリカは経常収支の赤字の急激な増大からやがてドルの急落を招くと予告いたしましたね。秘密文書といっても、こういうのはいつまでも秘密にしておける性質のものではありませんから、私なんかの目に入るわけです。特に、ことしの春から早速ドルの急落が始まって、来年の前半までにドルの実効為替レートは約一五%も下がると予告しておりますね。円とドイツマルクはその分だけ上がることになるわけでありますけれども、これはOECDのレポートの予告どおりになっていくのではないかという予感がするのです。  ですから、前段の、お正月に専門家が集まっていろいろ見通しをして、その年の動きをある程度予見しながらその方向に誘導する、その作用も持ってきたわけでありますけれども、最近はそれが全然当てにならなくなってしまった。それに追い打ちをかけるといいますか、OECDのレポートはそういう意味ではさらにこれを促進させていく力と働きを持っているのではないか。こう見ますと、どうやら一九八四年というのは容易ならぬ年であり、それにまた、重ねて選挙の話をしますけれども、選挙がなだらかに、余り大きな変動もなしに、レーガンの考えているような方向に行くかと思ったら、どうもそうもいきそうにない。こうなりますと、大変な年になるのではないかということをこの間も申し上げたのでありますが、私と大臣とでは考え方、見解が大分違っておりまして、それで大丈夫なのかというような気持ちを一週間持ち続けてまいりましたが、どうですか、大丈夫ですか。
  13. 竹下登

    竹下国務大臣 私と島田さんと、恐らく心配していることは余り変わらないと思います。が、特に見解を異にしたという感じがあるとすれば、政府当局者でございますから、選挙の結果を予測するということはやはり差し控えるべきじゃないかという点が若干違っておったんじゃないか。  ただ、政策的にはそう大きな差異はございませんけれども、いわゆる暴落説、今おっしゃいました十円違ったではないか、これは暴落の始まりじゃないか、若干今戻しておりますが、暴落の始まりではないという見解に立っておりますが、四・数%になるわけでございますから、五%弱というところでございますよね、議論しましたときからというと。乱高下であるかどうかという議論になりますと、一日にどすっと二%ぐらい動きますと、感じとしては乱という感じがいたします。それがある程度時間がたつと、また五%程度でも余り乱という感じが印象としては受けなくなるわけであります。  確かにこの一週間で五%弱というのは、私は注目をするものであるという認識は持っておりますけれども、いろいろな客観情勢から考えてみますと、やはり今日までの体験上の動きから見れば、ドルにはいわば避難港的な役割も今日までずっとやっておりますし、そしてきのう、おととい以来アメリカの金利問題も、どっちかといえば、いろいろな思惑は別として上昇という状態にありますだけに、これが暴落のきっかけになるという心配はないではないかというふうに私どもは見ております。
  14. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 そういう今のお話の延長線上に私が考えております一つの具体的な例を申し上げますと、当たり前のことでありますけれども、円が高くなれば輸入がふえる、こういうことは避けられないと思いますね。  そこで、今非常に話題の中心になっております牛肉とかオレンジとかの輸入問題。今牛肉、オレンジばかりがやたらと強く目に映ってくるのでありますけれども、しかし正直言いますと、高くなってきて大変困りますのは、もっと深刻に考えておかなければならない、えさの問題があると思うのです。これは量も多いし金額も大変多い。ですから、これが一円上がるか下がるかというのは、国内の畜産酪農家に大変大きな影響を与える。  ちなみに、大臣御承知のことを申し上げて恐縮ですけれども、昨年の我が国会計年度で、えさ用の穀物として入れてまいりましたのは、千六百二十一万トンというのが数量的に発表になっております。これを当時のレート、いろいろありますけれども、上がったり下がったり多少しましたが、大体五千四百三十億円、円にいたしまして買っているわけですね。ですから、これが十円も違ってまいりますと大変な金額になりますから、それはもろに畜産農家のえさ代になっていくわけであります。そういう点でいいますと、牛肉の問題、オレンジの問題にいたしましても、両方合わせまして千二百十億ぐらいでありますから大したことはないではないかという議論が、一面輸入の促進とか枠拡大とかという問題とつながって議論されてくるわけであります。しかし、その問題は別として、金額の差からいいますと、千二百億対五千四百億というのは、これは容易ならぬ量的にも金額的にも大きな違いであります。これは同じように農家に被害になってあらわれるわけでありますけれども、及ぼす被害の大きさということになりますと、大変これは深刻になる。ですから、必ずしも円高をそのまま喜べないという側面も、こういうところにはあることになるわけであります。  そういう点でいいますと、財政とか経済政策を進めていく上で一定の目安というものを持っていていただけませんと、非常に大きな被害を受けることになりかねません。ですから、そういう点で大臣、あなたが物を言いますと世界のドルや円を動かしていくという力はあることは私は当然認めますから、用心深く、かなり口が重くなるのは当たり前のことでありますけれども、しかし一定の、ことし単年度の見通しぐらいのところはほのめかしておいていただきませんと、国民にとっては心構えとか気構えとかいうものが大変違ってくるわけで、それで私は何回もこの間からそんなことをお話しして大臣考え方を少しでも聞かしてもらおう、こう思ってきたのでありますが、それはちょっと無理なのかもしれません。  ところで、この間やはり一般質問で、こうした円の回復といいますか、世界的にも経済がやや回復基調にあるということはそういう点では言えるのでしょう、ドルが弱くなったという前提に立つとか立たぬとかは別として、世界経済がやや経常収支のバランスを取り戻す方向に動いていく兆しが少しでも出てきたとすれば世界経済の回復と見ていいのかもしれません、そういう前提に立ってのお話だったと思います。  私の質問ではないのでありますが、経済企画庁長官の河本さんは、五年ぶりに世界経済は回復してきた、これはしばらく続くだろう。それは、円がどうなるのかドルがどうなるのかということまで細かにはおっしゃいませんでしたが、ややニュアンスとしては私が持っておるような考え方をお持ちになった上で、それを前提にしてしばらく続くとおっしゃったのではないか、こう思います。そうしますと、日本の経済というものもそれにつれて一定の方向性が見えてくるのではないか、むしろこの際積極的に成長率の高目のところをねらった政策をやることがいいんではないか、そうすることが対外の貿易摩擦や財政再建を解決していくチャンスではないかという意味のことをおっしゃいました。このときの大蔵大臣お話とは大変対照的に私は聞きました。  改めて、きょうは経企庁長官がいらっしゃらないので、当時の河本さんの御発言についてあなたはどう考えますかということを聞くのはちょっと酷なのかもしれませんけれども、当日、一緒にお立ちになって前後して答弁をなされましたときに私は印象としてそのように感じましたので、この際同じ中曽根内閣の大事な経済閣僚でございますから、この河本長官の御発言についての印象をお聞かせいただければありがたいと思います。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 円相場が上昇して円高傾向定着していけば、一般的に言って政策運営の幅が広がるということは私は事実だと思っております。河本さんもこういう点を指摘されたというふうに思うわけであります。あのとき特に河本さんは、財政と金融の弾力的運用ということを、物価の安定とともに絶えず経済運営に気をつけていなければいかぬという前提の上に立って、なかんずく金融面の弾力的対応に対するウエートの方が余計かかっておったというふうな印象を私は持っております。  一般論からいいますと、円高傾向になって輸出がやや減少して輸入がふえてくる、こういうことになりますと、貿易収支の問題は今よりは少なくとも対米関係においてはいい方向へいくでございましょう。そうして、どうしてもいわゆる貿易によっての稼ぎというものよりも内需の方にこれがシフトしていくという傾向にはなるわけでございます。ただ、そういう考え方からいきますと、成長率をどう見るかということになりますと、実質は別といたしまして、名目では必ずしもプラスの方向には働かないわけでございます。ですから、いわゆる高目の成長をここで、経済運営の中で意図していくという要因の大きな要素には、為替レートの問題は金融に対する要素ほどには影響が少ないというふうに見るべきであると思います。ですから、金融の問題についての弾力的な運用に対する一つの要件は整いつつあるということは私も言えると思います。  そうなると、いわば短期金利、長期金利等の実勢等から言えば、どっちかと言えばいい方向へいっておりますが、マル公の問題ということになりますと、これはまさに日銀の専管事項でもございますし、それから私ども、今度は政治家として時々思いますのは、いわゆるマル公をいじることによって為替レートがまた円安をよしんば一時的なりといえども起こした場合、日本が輸出奨励のために円安を誘導しておるのではないか、こういうようなあらぬ誤解がせっかく鎮静し、打ち消されてきておるときに、そういう状態が出ることも避けなければならぬし、その辺がまさに慎重で、しかも対応するときには弾力的にやられるだろうという要因の一つじゃないかなというふうに思っております。
  16. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 しかし私は、現在既に実質金利が長期物で六%を超えると言われているそうでありますから、これは経済成長率より高いわけですね。そうしますと、このままでいきますと当然調整を図らなければいけない、ことしじゅうにそういう時期に突き当たるのではないか。それは日銀総裁の専権事項だから私の及ぶところではないというおっしゃりようでありますけれども、大蔵大臣、どうもそうは言っていられなくなるのではないか。もう時間が一分しかなくなったから答弁をいただく時間はなくなりましたけれども、私はそのように思います。まだこれから幾度か機会を得て、大蔵大臣とはこうした経済財政にかかわりますいろいろなお話を聞かしてもらいながら、私どもの考え方も述べさしてもらう機会があると思います。次の機会に譲りたいと思います。  先ほど、せっかく大統領選挙の分析をなさった博士がいらっしゃるというのに、発言の機会をなくしてしまいましたが、何か一言ございますか。
  17. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 ただいま大統領選挙の分析とおっしゃいましたけれども、政策の分析ということでございましたらお答えさしていただきますが、先ほど大臣も申し上げましたとおり、まだ新聞等の報道の域を出ておりませんので、私どもが聞いて理解している範囲で申し上げさせていただきます。  一般的に申しまして、ハート候補の考え方は、強いてレーガン政権の政策と比較させていただきますと、レーガン政策は中流、下層大衆に目を向けていないという言い方をしているようでございます。それから古い制度、古い思想から脱皮が必要である。それから利益グループだけを相手にして、ワシントンだけを舞台とする狭い政治のあり方の打破ということで、広い層の支持を求めておられるというふうに考えられます。  経済政策でございますけれども、着実な経済成長ということで、投資促進と金融政策の緩和によって持続的経済成長を達成していくということでございます。  それから財政政策につきましては、国防支出の削減それから高所得層と企業への増税。これは、増税の方につきましても、歳出削減と増税によって財政を均衡させていくスピードを高めたいということで、財政赤字削減策を言っております。  時間がございませんので、増税には割合詳しいことを言っておりますけれども、ここでは省かせていただきますが、そのほかに、職業訓練とか教育とか研究開発部門への財政投資を増加して経済の効率化を図って経済成長率を高める。  対外政策でございますけれども、ここら辺は保護主義に走るべきでなく、貿易を拡大し、国際競争を促進するということで、たとえばローカルコンテント法案に反対するというようなこと、ここら辺はレーガン政権と似ておるのではないかなという印象を持っております。  その他エネルギー政策では、自国資源の活用を促進して中東への依存を断ち、エネルギー自立を図るというようなことでございますが、ただいまのところまだ新聞報道の域を出ておりませんので、その点を前提といたしまして御了承をいただきたいと思います。
  18. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 どうも御親切にありがとうございました。終わります。
  19. 相沢英之

    相沢主査 これにて島田琢郎君の質疑は終了いたしました。  次に、渡辺嘉藏君。
  20. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 渡辺嘉藏ですが、大蔵大臣並びにその他政府関係の方に質問をいたしたいと思います。  私は、昭和二十四年に中小企業等協同組合法ができましてから、その法律の中で決められております企業組合、協同組合、その他の設立運営実務に携わって今日まで三十有余年中小企業とともに生きてきたわけですが、その中にはいろいろな成功例もありますが、失敗例も多く身につけて、そして今日の制度、法等の改正においてぜひお願いをしたいとともに、あるべき姿にしなければならぬのじゃないか、こういう観点から、まず企業組合の問題について御質問いたしたいと思います。  まず、現在の企業組合は、分散型の形態と集中統一型の形態とあるわけですが、現在大蔵省では、分散型がどの程度あって集中型等がどの程度あるか、これはどの程度捕捉していらっしゃいますか。
  21. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、分散型、集中型ということでちょっと私ども国税庁でただいま計数を持っておりませんが、企業組合全体といたしまして現在の数が二千二百四十一でございます。
  22. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 中央会の私どもの調査によりますと、中小企業団体中央会に加盟いたしておりまする企業組合が約千二百三十七組合ある、今こういうふうに捕捉いたしております。その中で事業所の数は全部合わせて六千五百三ございます。中央会の調査です。それに対して分散型の事業所が五千六百九あると私どもは捕捉しております。この分散型の企業組合がこのように多くある実情について、大蔵省としてはこういう形態についてどういうふうにお考えでございますか。
  23. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 税制上は、企業組合といったものは、先生御承知のとおり、一般の法人税の扱いをいたしておるわけでありまして、その中で集中型、分散型といった形によりましては、特段の扱いの差は設けていないわけでございます。
  24. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 私が聞いておるのは、分散型の企業組合がこういうふうに多い実情について、なぜこうなっただろうかということを聞いておるわけですが、これについては時間がありませんので多く触れませんが、私の経験によりますと、これは中小企業というより零細企業、これの生きていかんがためのやむにやまれぬ知恵から生まれたのではないか、こういうふうに考えておるわけですね。これはどういうことかというと、今日の倒産の実情をごらんいただきましても、中小企業の倒産、小売、製造業、建設業、こういう下請企業の倒産が多いということですね。これがもう今目下請工賃が上がらない。これで五年なり六年上がっておらぬわけです。そういう苦しい中から、やむなく相互扶助で、企業組合は、それぞれの事業所が地域にあるがままの姿で共同しないと、大きなスケールで一カ所に集めますと、かえって巨大なるがためにもたれ合いだとかデメリットが多く出ちゃってプラスにならないということが、これが大きな理由で、やむなくそれぞれの地域に点在して、そこでお客さんをつかんで従来の家族労働も含めて生きていくことが必要だ。しかし、協同組織はどうしても欲しい。協同組織で相互扶助をやらなければ、一人親方や一本立ちではやっていけないという必然性から、やむにやまれずに分散型がこのように九割以上を占めておる。私は、実態からそういうふうに認識しておるわけです。  ところが、しからばここで、企業組合は協同組合法の中で、根拠法として設立されたことは御案内のとおりですが、そこで、企業組合は協同組合とは違う、だから税法上は普通法人扱いをするんだ、こういうことで今日まで推移しておるわけです。これについて大蔵省の方では、この企業組合のそういう位置を協同組合の一種と思われるのか、全然別のものなんだというふうにお考えなのか、どうなんですか。
  25. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 これは大正年間からこういう小組合的な企業があるわけでございますが、そのころから一貫して、これは普通の法人として扱わしていただいてきておるわけでございます。もう十分先生御承知のことと思いますけれども、企業組合といったものは、組合ということで弱者の相互扶助という思想はそこにはあるわけでございますけれども、一般の事業協同組合等につきましては、それぞれの事業者の、一部の金融とか、いろいろな面での福利厚生施設とか、そういった面での附帯的な部分につきまして共同で施設する、そういった点から協同組合といったものがあるかと思われますけれども、企業組合の場合におきましては、それぞれの事業そのものを共同して、団結してと申しますか、共同しておやりになる。それはまさに、その事業そのものを一緒になってやっておられるということからいたしますと、どうもそこに事業協同組合の方とはおのずから性格的に差異があるということから、一貫して他方につきましては一般の法人並み、他方につきましては組合課税グループというふうに分けさしていただいてきておるというのが現状でございます。
  26. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 そうすると、協同組合は福利その他、その部分を共同しておる、企業組合は企業組合自身が営業主体だ、こういうことを絶えず大蔵省言っていらっしゃるわけです。協同組合でも協同組合自身が営業行為を行うことは御存じのとおりですね。  協同組合法によれば、これは中小企業庁そのものが監修しておつくりになった解説書でも、協同組合の事業の中に「共同施設」という項目があって、これについては共同販売等についても組合としては積極的に行うべき事業である、こういうようにうたっておるわけですね。ということは、共同販売ということは、組合自身が営業行為として員内、員外を含めて販売行為をやってそこで利益を上げる。だから、その上げる利益と、企業組合が行います、その組合単位でそれぞれの分散の事業所で上げた利益を集約して上げた利益と本質的に変わらぬと僕は思うのですが、この点、協同組合と企業組合とそれでも違うとおっしゃる理由がわからないのですけれどもね。
  27. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 やはり協同組合の場合におきましては、その取り出した部分につきまして、それが事業の形態をなしておる場合もあろうかと思うわけでございます。今御指摘の販売の場合でございますとか、金融となりますとこれは信用金庫とか、そうなっておるわけでございますが、そういう共同部分を集めて行っておる。それは事業かもしれませんが、一方の事業者にとっては、それは本体の事業ではなくて、やはり一部を皆さんで共同しておやりになっている、それは組合員の方の本体の事業に対しては補完的な部分であるという性格は、やはり残るのではないかと思うわけでございます。
  28. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 いや、今実態は福利が一分で共同販売が九分の組合だって幾らでもあるのですよ、協同組合自身で。そういう実態は大蔵省だって御存じのとおりだと思うのですがね。画一的に協同組合だからどう、こういうとらえ方は僕はおかしい。  では今度お聞きしますが、協業組合がありますね。昭和四十二年にできました協業組合、この協業組合は企業組合との違いがあるでしょう。これはどういうふうに受け取ってみえますか。
  29. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 協業組合の場合におきましても、行います事業といたしましては、やはり協業の対象となる事業は全部できるということでございますので、これは企業組合のグループ、それから一方の事業協同組合グループとは違うのじゃないか。  それから、今のお話に関連しまして、協業組合におきましてはやはり競業避止義務でございますね、本来の自分の、その協業組合なら協業組合の事業と同じ事業をやってはいけないとか、そういう競業避止義務があるということは、やはり本体の事業であるという認識がその性格の根源にあるのではなかろうかと私ども思うわけでございます。
  30. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 それなら、本体のそういう事業ということならば、協業組合は企業組合と違いまして、企業組合のような人的結合を重視した従事比率等は決めてないわけですね。株の所有も一人当たり五〇%まで認めておるわけですね。企業組合はそういうことは認めませんね。これは御案内のとおりです。ということは、企業組合は、より人的な、あるいはまた従来の事業所の活動単位というものをある程度重視して協同組合に近い人的結合を図っておる。それから協業組合は、全く統合して、そして株式会社に近い形態を、議決権、出資比率その他で持っておる。このことはおわかりだと思うのです。  そういうことから考えますと、企業組合の場合に、御承知のとおり第九条の十一で従事比率を決めておるわけですが、しからば、これの決めた理由、これは何ですか。
  31. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 組合そのものの問題につきましては、私ども先生のようには専門的な分野にあるわけではございませんので、そのあたりの立法趣旨等につきましては必ずしも不案内ではございますが、企業組合につきましては、やはりその企業そのものを共同して、その企業自体を共同して行うという意味からいたしまして、その従事比率に規定があるのではなかろうか、この場での私個人の推測でございますので、正確かどうかわかりませんが、そんな感じがするわけでございます。
  32. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 ちょっと意味がかみ合わないのですけれども、しからば現在のようなこういう分散型で、大蔵省の主税局等から出ました通達等に基づいて、今分散型の企業組合が活動単位として事業所でやって、それを統合して今やっておりますね。こういう形態で今やっておるわけですが、これはこれでいいわけですね。
  33. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 企業組合につきましては、委員よく御承知のとおり、私どもで通達を大分前でございますが出しまして、いわゆる九原則なるものを立てておるわけでございます。  それからまた、御承知のとおり、これは裁判にまでなりまして、たしか昭和三十年だと記憶いたしておりますが、京都地裁から御判決をいただいておるわけでございます。その趣旨は、そういう場合におきまして、実質的に所得が果たして企業組合に帰属するのか、あるいは企業組合を構成する個人に帰属するかという問題でございまして、結論から申しますと、個人の方に帰属するという御判断をいただいておるわけでございます。  私どもといたしましては、従来からそういう線に従いまして、またその後、御承知のとおり法人税法の行為計算否認の中に一つの規定が設けられまして、三以上の支店を有する事業所であるとか、また所長さんが従来事業をやっていた方であるとか、いろいろな条件を置きまして、そういうものにつきましては行為計算否認の規定を適用すもということになっておるわけでございます。そういう線でやっておるわけでございます。
  34. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 京都の場合は私どもも知っておりますが、私は、あれは別な見方をしております。しかし、その後の京都のいろいろな企業組合の運営の形から見て、あるいはまた、私ども岐阜、東京、大阪その他各地にあるわけですが、これは今の通達その他の範囲内で中小企業の相互扶助機関として運営されておる。これは大蔵省もお認めいただいておるわけですね。  そこで、この特別法人扱いの問題ですが、ここへまた話を戻しますが、これは現在の企業組合の実態、分散した事業所が活動単位となって、それを企業組合に所得を帰属させて一括して統合した運営をしておる、こういう中で行われておるわけですが、この法律が制定されますときに、商工委員会では、企業組合につきましても、中小企業者が一番望むところで大きな魅力があるんだ、この企業組合に対して特別法人扱いの恩恵に、この法律制定のときにはあずかっておらないが、これについてはぜひそのような希望が達せられることを望むという趣旨の説明で修正案が上程されておるわけですね。そしてその修正案が可決されておるわけですが、こういういきさつの経過から見て、大蔵省としてはその後これについてはどういうふうに対処されましたか。
  35. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 そうした法制定時から現在まで、毎年の税制改正におきましても、正直申し上げましてそういう御要望があり、政府部内でも関係省庁との間で毎年議論をいたしておって、しかし結論としては現在の扱いをお願いをいたしておるということで、関係者からは随時そうした御要望なり御要請があることは現在も確かでございます。
  36. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 あの当時の商工大臣自身が大蔵省に対して、この企業組合の受ける所得は、協同組合法によりますと二十三条の二で「企業組合の組合員の所得に対する課税」という特例の一カ条を設けまして、そして組合から受ける所得は給与所得その他とする、こういうことを規定したのは、この協同組合法の中にわざわざこれを挿入した理由は何ですか。普通はそれはないのですがね。
  37. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 企業組合、協業組合といたしましては、そこは事業そのものをやっておられる、没入してやっておられるとすれば、それは一般の組合員の事業に携わって働いておられる場合の給与というのとは本質的に差異があるのじゃないか。企業活動そのものを共同してやって、その結果である利潤の分配に当たるわけでございまして、これは農事生産法人とかそういった場合と同じように税制上は解釈させていただいておるわけでございます。
  38. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 時間がありませんので多く申し上げられませんけれども、わざわざこういうふうに規定して、そして協同組合の一種だけれども企業組合の組合員が受ける所得は給与としてみなしますよ、そしてこれが株式会社のように物によって支配される、資本によって支配されることのないように、人的な運営によってやりなさいよ。これは協同組合の一種だと思うのですね。とすれば、そこで上がる所得、利益というものは労働の対価であるよ、こういうことを考えておると思うのです。ですから、協同組合には事業利用分量配当、企業組合には従事分量配当と規定しておるのも、労働の対価という趣旨が通っておる。ですから、政府部内でも、これは絶えず特別法人としての税率扱いが妥当ではないかという要求があるというふうに今おっしゃいましたが、大蔵省内部においてもぜひひとつ御検討いただいて、今日の中小企業の相互扶助として生きる一つの大事な方策として、そして今日のように中小企業その他が多く倒産あるいは危機に直面しておる中で、相互扶助で守らせながら、そして中小企業の税制上救済の手をむしろ伸べてやるべきだと思うのですが、どうですか。
  39. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 確かに先生のお話のように、議決権とか出資限度とかそういった点にいろいろの特別の規定がございまして、一般の法人と違う面もございますけれども、そこに出てまいります所得なり分配、まあ先生のお話からすれば分配ではないかもしれませんけれども、その配分、そこらにつきましては、税制上は私ども従来の考え方でいかざるを得ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  40. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 これは、特に従事分量配当等は当然労働の対価として損金扱いされるべきだ、私はこう考えております。しかし、時間がありませんので、この点につきましてはまた後日申し上げるといたしまして、もう一つだけお伺いいたします。  今度、予算修正その他でパートの問題が論議の対象になりまして一定の結論が出たわけですが、そこで、この特典が青色申告専従者には、この場合には、今日では九十万と想定いたしますが、御承知のとおりですから省略しますが、一般法人から同族法人を含めて、その配偶者、扶養家族の給与が九十万以下の場合には、これは配偶者控除なり扶養家族控除の対象になるわけですね。ところが青色専従者は、大蔵省の積極的な指導、推進等を含めて、みんなが協力して青色申告をやって、正確な記帳、正確な申告、正確な納税をやっているわけです。ところが、この青色申告の専従者、給与だと言いながら、いろいろな法律で給与だと言いながら、この場合にだけ、九十万以下でも配偶者並びに扶養家族の控除の対象にしませんよ、こういうふうにしていらっしゃるわけですが、私は、こういうことは、この青色申告を勧めていらっしゃる、そして青色申告の実態、同族法人の実態、各種法人の実態から見ておかしいんじゃないか、こう思うのですが、この点ひとつ御答弁いただきたい。
  41. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 先ほどの問題に引き続きまして難しい問題を先生御提起でございますが、この点につきましても、青色専従者控除と申しますか、個人事業課税の課税のあり方に関連して、戦後引き続きまして議論がされておるところでございます。  個人事業課税につきましては、資産所得の場合と同じように、原則は合算させていただくということで、同族、同じ世帯の中で事業をしておられれば、それは御主人のも奥さんのも合算というのが大原則。ただし、そこは給与の形をとって分割すればそれは分割できるという方法が別途あるということでございます。そうしますと、事業の所得を分割いたしました際には、税制上は、人的控除の段階でも分割をさせていただくというその線は一貫させていただく。一回分割して、また終わりの方へいつて一体に見て、御主人からまた扶養控除なり配偶者控除を引くというのは、それはどうも趣旨が一貫しない。一回分割を選択されたら、そこは税制上は分割で、それぞれでひとつ課税単位として御選択を願いたい。そういうことで一貫してお願いをいたしておるわけでございます。
  42. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 そうしたら、同族法人の場合には、やはりやっておる中身においてはそれほど大差はないのです。妙な言い方をしますが、それほど大差はないのです。お父さんが社長で奥さんが専務で、こういう場合もある。あるいはまた奥さんが従業員、それで給与をもらう。そういう場合には、今度の場合でいきますと、九十万以下ですと配偶者控除の対象にしていらっしゃいますが、同族法人の奥さんがもらう所得、これも私は給与所得だと思う。それから青色専従者の御主人からもらう所得も、これも労働の対価として、扶養家族の分与でなくて、扶養家族として扶養の分を分与したからその分を控除するという考え方でなくて、その企業、青色申告の企業に労働を提供して、そしてその企業に携わったから給与として渡したんだ。その給与と給与には食い違いがないはずです。実質的に差はない。どうですか。
  43. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 おっしゃるとおりでございますが、同族会社として会社をつくっておられます場合には、会社が一つございまして、そこから御主人も給料を受ける、それから奥さんも給料を受ける。それは別の会社へ同時に夫婦で勤めても同じでございますが、この場合は個人企業として一つ事業体、それを御主人と奥さんでどういうふうに分割課税するかというのでございますので、税制上は、そこはやはり差はあると私どもは考えるわけでございます。
  44. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 時間がありませんのでこれ以上申し上げませんけれども、所得税法の基本に、その他税法すべてそうですが、実質課税の原則というのがありまして、実態が同じなら同じ扱いをしなければいけないと私は思うのです。実質課税の原則は、おたくら御承知のとおりなんです。今度の場合だけ、実質は同じようだけれども、法人だからどうとか、法人という形態から支給されるからどうとか、労働の対価としての給与なら私は同じだと思うのです。そういうような意味で、この点は再度よく検討されまして、実質課税の原則から見て、同じように青色申告の方も、九十万以下の給与所得である場合には当然配偶者控除の対象にすべきである、こう考えるのですが、いかがですか。
  45. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 これは、資産所得の場合にも合算はございまして、実質課税ということの御指摘でございますけれども、実質課税の場合、税制上はやはり最大限形式でもって、余り税務当局が実質差をとらえてやりますと、税制と申しますか、法の安定性を害しますので、やはり極力それは形式的な区分に従って課税させていただく。あと、そこらにつきまして明確な規定がないような場合は実質課税の原則を用いてということもございますけれども、やはり所得税でお願いするか法人税でお願いするかといった点を初めとして、税制としては、形式がございましたらそれによってまずは課税させていただくのが本筋ではないかと思いますので、この点は議論が従来からもあるところではございますけれども、現時点といたしまして、私どもそういうふうにお願いをせざるを得ないわけでございます。
  46. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 時間がありませんので終わりますが、御答弁をせっかくいただいたのですが、甚だ合点ができませんので、この問題また後でやりますが、ぜひひとつ私の意のあるところもお酌みいただいて御検討の材料にしていただきたい。  以上で終わります。
  47. 相沢英之

    相沢主査 これにて渡辺嘉藏君の質疑は終了いたしました。  次に、日笠勝之君。
  48. 日笠勝之

    日笠分科員 中曽根首相は、「増税なき財政再建」を堅持すると今国会でもたびたび表明されているところでございますが、しかし現実は財政再建なき増税ではないか、また公約違反ではないかという怨嗟の声が聞こえてくるのは私一人でないと思うのであります。  本日は、中でも大衆課税の最たるものでございます酒税の改正について、議論の出尽くした感もありますが、大蔵大臣並びに関係各部局の方に若干の質問をいたしたいと思います。時間もございませんので、ひとつテンポの速い御答弁をお願いしたいと思います。  御存じのとおり、酒税は、所得税また法人税に次いで国税収入の三番目に位置し、間接税では断然トップの座を占める大きな財源でございます。今回の改正案では、酒税は二兆二千三百七十億円、国税収入の六・一%を見込んでおるわけであります。  そこで、まず初めに、酒税は、昭和五十年度以来今回で四回目の引き上げとなる予定でございますが、間接税の中で、この十年間、四回も値上げになるようなものはほかにございますでしょうか。
  49. 大山綱明

    ○大山政府委員 後ほど調べて正確にお答えいたしますが、恐らくないと思います。酒税だけだと思います。
  50. 日笠勝之

    日笠分科員 結局、財源が厳しくなれば一番取りやすいものから取っていくというふうに一般大衆の方は考えており、ささやかな楽しみを削ろうとするのではないかと思わざるを得ない、このように思います。  さて、昭和五十年以来この十年間、消費者物価は、私の試算によりますと、約一・五倍となる見込みでありますが、ビールの小売価格は、昭和五十年、大瓶一本百八十円でございました。今回は三百十円の見込みで、一・七倍、酒税全体も、昭和五十年度、九千百四十億円で、今度の見込み額は二兆二千三百七十億円で、約二・三倍のふえ方となっております。酒類全体がプライスリーダーと言っても過言ではない、このように思う節もありますが、少し引き上げし過ぎるのではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。
  51. 大山綱明

    ○大山政府委員 酒税は原則従量税でございますものですから、価格が上昇するにつれまして負担率が下がるというような特性を持っております。そこで、今回も値上げ後の負担率の下落を埋め、それに若干上乗せするような負担をお願いするわけでございますが、どうしても財政事情ということと非常に密接な関連がございまして、昭和三十七年度に酒税につきましては大減税をいたしました。それ以降、高度成長期でございましたものですから、必ずしも負担水準が低くなるというのに合わせた負担水準の上昇をお願いしてまいらなかったわけでございます。昭和五十年代に入りまして、御案内のような財政事情から四回にわたる増税をお願いしているわけでございますが、昭和三十年代の負担水準あるいはオイルショック前の負担水準に比べますればなお若干低いような負担水準である、財政事情と非常に密接な関連があってこのような負担をお願いしているということでございます。
  52. 日笠勝之

    日笠分科員 次に、酒税の中でもビールでございますが、昭和五十七年度は酒税全体のうち五四%の税額を占めております。今回の酒税全体の増加見込み額三千二百億円のうちビールは千八百六十億円、これまた五八%以上となる予定であります。一昔前は冬はお酒で夏はビールというパターンでありましたけれども、ライフスタイルの変化といいましょうか、オールシーズン、男女別なくビールは愛飲されている大衆酒とも言うべきものであります。このビールの先進国の税率は、御案内のように、アメリカは一〇%、西ドイツ、フランス一七%、イギリス三二%と聞いておりますが、日本では今回の引き上げをされますと四八・九%、五〇%近い税率負担となるわけであります。他国と比較しても容認できかねるものであると思うわけでありますが、在日外国人も、日本のビールは味はいいが値段もいいというふうに私も聞いておりますが、大蔵大臣、このビールの税率は客観的、総合的に見て高いと思いますか、適正と思いますか、安いと思いますか、御意見を伺います。
  53. 竹下登

    竹下国務大臣 これは今おっしゃいましたように、外国の例で御意見をお述べになっておりましたが、その上若干の付加価値税、小売税などがついたにしても高こうございますね、そういう限りにおいては日本が。私も今度の改正の際、しかし従来来た税率というのは大体国民全体の中へなじんできたものではなかろうか、それで致酔性と同時に止渇性といいますか、そういうことからすると、これはおまえ、外国に比べて高いと思うか安いと思うかと言われれば、それは高いと思いますと私は答えざるを得ませんが、まあ国民の容認していただける範囲のものではなかろうか、こういう感じでございます。
  54. 日笠勝之

    日笠分科員 さて、昨年十一月の酒税に関する税制調査会の答申は、税負担格差の縮小を述べておりますし、また、本年一月の昭和五十九年の税制改正に対する答申も、同じく「税負担割合の低い酒類ほど従量税率引上げ率を大きくしていくことを基本方針とし、」とあります。確かに果実酒類であるとかしょうちゅうは答申どおりではないかと思いますが、以前から高負担率のウイスキーの一級、二級、またスピリッツ、今回は高い増加率となっております。また一方、低負担率の清酒の二級、合成酒の増加率は相変わらず低いものとなっております。答申から見てまことに整合性に欠けるのではないか、このように思いますが、この点いかがでしょう。
  55. 大山綱明

    ○大山政府委員 御指摘の今回の引き上げ率でございますが、税調答申の線に沿いまして私ども案をつくらしていただいたつもりでございますが、その中で具体的に清酒の二級についてのお話がございました。それから合成清酒についてのお話もございましたが、これらにつきましては、特に清酒につきましては、この紋別というのがいわば中小企業の製品であるか大企業の製品であるかという業務の分野と非常に密接なつながりがあるというのが第一点、それからもう一つは、清酒全体について言えることでございますけれども、原料を米に、食糧管理のもとにある米に依存している、こういった事情、そういった点を勘案いたしまして、清酒それから合成清酒につきましては必ずしも税調の答申に従った形になっておらないというのは御指摘のとおりでございます。しかしながら、ウイスキーにつきましては、特、一、二級、それらにつきましては、低負担のものについて若干余分の負担をお願いするといったことをお願いしておりまして、この点につきましては税調答申に従ったものになっておる、こう考えております。
  56. 日笠勝之

    日笠分科員 先日ある新聞紙上でございますけれども、今回の酒税増税で最も頭を痛めているのはいわゆる町の飲み屋さんではないか。この町の飲み屋さんと言えば、いわゆるサラリーマンが一日の疲れをいやす格好の場であります。最近この業界も大変不況であると言われております。こうした中で酒類の税金が上がればさらに客離れも加速するのではないかと心配をしている。メーカーも一軒一軒回り、経営相談に乗り、酒の値段は上げないで料理の方を上げて採算にのせたらどうかなどという対策に余念がないことを取り上げておりました。このように、酒税が上がればどうしても数量が落ち込むのではないか、またもう一点は、購入するランク、質が一ランク下がるのではないか、このようにも考えられるわけであります。  つまり昭和五十年度、同じく五十三年度、五十六年度と過去三回の引き上げのときは当初予算よりそれぞれ決算では百七十億円、七十四億円、一千六百六十一億円と下回り、見込みが狂っておるわけであります。今回も二兆二千三百七十億円と見込まれておられるようでありますが、恐らく、長引く不況また大幅酒税引き上げ等でこの見込みを下回るのではないか、過去の三回の実例から見てもそのように思うわけでございますが、この点どうお考えでしょうか。
  57. 大山綱明

    ○大山政府委員 私ども税収見積もりをいたします際には、過去の経験にも十分に照らしまして慎重な見積もりをしているところでございます。したがいまして、五十九年度の税収につきましては自信を持ってと申しますか、かたいところであろうと存じておりますが、例えば具体的な事情として、五十六年度の場合に御指摘のような減収、税収見積もりの誤りがあったのは事実でございますが、酒の消費は、所得水準の状況とか、あるいはビールの場合には天候のかげんとか、そういったことによりましてかなり左右される面がございます。五十六年度の場合には第二次オイルショック後の不況、そのために残業手当なども少なくなった、そうしますとどうしても酒の消費が減るといったことが原因でございます。こういった点も私ども見通せる限り十分にいろいろなデータを集めまして本年度の見通し、税収の見積もりをいたしたところでございまして、かたいものだと私どもは確信をいたしているところでございます。
  58. 日笠勝之

    日笠分科員 はしょって、あらゆる観点からの質問のお答えをいただきましたけれども、結論といたしまして、私は今回の酒税の引き上げ改正案につきましては、答申も言っております不均衡の是正も見られない面もあります、また全体の整合性にも欠ける面もあります、また増税、増収の見込みの過去三年間の例をとりまして果たしてどうかという懸念もあります、まして何よりも十年間に四回も値上げをする、取りやすいところから取る、こういう考え、また物価上昇よりも酒税増加の方が高いという点、以上のような観点から、増税して国の栄えたためしはない、このように昔から言われておりますが、増税路線の先兵でありますこの酒税改正案、一考は考えられないのでありましょうか。大蔵大臣、どうでしょうか。
  59. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはり政府としての立場から申し上げますならば、現状において最善最良のものと信じた予算編成をし、それに伴う歳入、その財源としてここに求めたわけでございますので、やはりこれはこういったび重なる問答の中で理解を深めて御理解をいただくという以外には申し上げる方法もございません。
  60. 日笠勝之

    日笠分科員 では次に、観点を変えてお聞きいたしたいと思います。  いわゆる酒類小売店の商品棚卸しについてお尋ねをいたしたいと思います。  これは酒税法第四十七条四項に「申告義務」として「税務署長は、酒税の取締上必要があると認めるときは、酒類の販売業者に対し、その購入若しくは販売をした酒類又は所持する酒類の数量について、報告を求めることができる。」こういうふうにございます。「取締上必要」とありますが、これはどういう意味と考えたらいいでしょうか。
  61. 山本昭市

    ○山本(昭)政府委員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、酒税法は、酒税の保全を図るために、酒類の製造に加えまして販売につきましても免許制度をとっているわけでございます。そして、この免許業者であります酒類の販売業者に対しましては、四十六条の「記帳義務」に加えまして、ただいま先生お読みになられました四十七条を根拠にいたしまして各小売店から報告をお願いしているわけでございます。  この酒税の保全のために必要がある場合というのはいかなる場合かというお尋ねでございますが、この趣旨は、酒税は蔵出しの課税でございます。製造業者課税ではございますけれども、これが最終的に消費者に転嫁をされる必要がございます。その場合におきまして流通過程をたどるわけでございますが、流通業界の販売業の方々に対しましては、いわば間接的な徴収義務者というような役割をお願い申し上げているわけでございます。そういった観点からいたしまして、私どもといたしましては、酒税の円滑な確保を図るために製造から小売に至る各段階におきまして酒類の流通状況といいますものを的確に把握する必要がございます。かつ、これを合理的に把握させていただきたい、このことが「酒税の取締上必要がある」ということでございまして、月々恒例の報告という形をとりながら必要があるとはいかがなものであろうか、こういう御趣旨のお尋ねだと思いますけれども、そういった基本的な考えがございますものですから、やはり月々の報告というものが必要があるというふうに解釈させていただいております。
  62. 日笠勝之

    日笠分科員 お手元にいっているかと思いますが、報告書、毎月小売店より税務署に提出するわけでございますが、これはいわゆる税務署単位でこれを集めまして、その税務署管轄内のいわゆる売り上げの動向、需給調整というものを行っておる、このようにお聞きしておりますが、それでよろしいでしょうか。
  63. 山本昭市

    ○山本(昭)政府委員 ただいまおっしゃいました点につきましてもその一つの資料といたしておりますが、この報告書の作成をお願い申し上げております趣旨は、先ほど申し上げました考え方のもとにおきまして、さらに酒類の需給動向と申しますのが月々あるいは経済情勢、季節の変化によりまして変化をいたしますものですから、そういった観点で毎月の報告をお願いする必要がありますこと。それから酒税の納税申告が、これは製造者の方の申告でございますが、これは月々になっておるわけでございまして、そういったこととも合わせる必要がある。それからまた、先ほどお尋ねの税務署管内の需給調整ということでございますけれども、いろいろ新規免許の話が多うございまして、その新規免許に対しまして、消費者の便宜を考えながら適切な免許を行いますためには、当該税務署管内の需給動向といいますものがどういう状況になっているかということを常にフレッシュな形で把握する必要があるということもございます。いろいろそういう事情もございまして、ただいまお示しの報告書をお出しいただいているわけでございます。
  64. 日笠勝之

    日笠分科員 管轄内の動向であれば、これは卸屋さんもやっておるわけでありますので、そこでも掌握できるかと思いますし、その管轄内の売り上げというものがまた御存じのように、東京の小売屋さんが熱海や伊豆の方までお酒を持っていっている例もありますし、かつては東北の方のあるメーカーさんの通信販売というものも問題になりましたように、管轄内の動向というものがこういう報告書では、多角経営の時代でもありますし広域の商売をやっておられる方も多くなりましたので、つかみかねる面もあると思います。私、どうしてこれを申し上げるかと申しますと、この棚卸しの実情をまず当局の方に知っていただきたいと思うわけであります。  お手元に資料がございます。この一枚の報告書、毎月税務署に報告するわけでありますが、これをつくるために、反対側にございます資料、こういう補助簿が要るわけでございます。  例えば上に「酒類」とあります。大蔵大臣、御存じですね。例えば出雲誉、一級、一・八リットル、こうなりますと、これを全部書いていきます。それだけじゃございません。今度は二級、特級、容器によって違います。四斗だる、一斗だる、一・八リットル、一合、ワンカップ、このように今は酒類というものは一つのメーカーでも大変多様性に富んでいるわけであります。私何店かのお店に聞きますと、普通の店でも今二百から三百種類ぐらいのお酒がある。そうしますと、これが三百枚、もっと大きい店ですと四百枚、五百枚と要るわけであります。それをもとにこの報告書に転記をして報告されるわけです。この間の労力たるや大変なものがあります。中には小売店は、もうこれは大変だから専門に買っている卸屋さんに、セールスにお願いをする。また、郡部のおじいちゃん、おばあちゃんでやっているような零細な小売店におきましては、これが苦痛で新しい商品なんかは買えない。こういうふうな消費者ニーズにも対応できかねる障害にもなるのではないか。こういう零細商店が棚卸しのためにどれだけの苦労をしておられるか、こういうふうなことから考えていただきましても、先ほど言いましたことも含めましてこれを何とか緩和できないだろうか。例えば年に一遍とか二遍とか、こういうふうな方向にはできないだろうか。これを言いますと小売店の方はすぐ、小売免許をもらっているのでこれを怠ると免許を取り消されるのではないか、また税務署からちょっと痛い目に遭うのではないか、こういうおそれを抱いている方も非常に多うございます。これは罰則のない報告義務でございます。その点絡み合わせまして今後の対応、いかがでございましょうか。
  65. 山本昭市

    ○山本(昭)政府委員 この報告書によりまして酒販店の方々に、特に零細な方につきましては大変御苦労をおかけしているというふうに思うわけでございます。ただ、右側に書いてございます補助簿と申しますのは、私どもは左側の一枚の紙をお出しいただくということで、小売業界の組合におかれまして、こういうものがあった方がよろしいのではないかというような見地からこのようなものを組合の方でお勧めしているようでございまして、その結果左側の一枚紙が出る。この一枚紙は、月末の棚卸しをいたしますが、月中の仕入れを引きますとつくれるという簡単なものではございます。ただ、いずれにしましても大変事情にお詳しい先生のお尋ねでございますので、実はこの御質問は初めてでございました、小売中央会の方にも確認をいたしましたが、そちらからも参っておりませんが、ただいまの日笠先生の御指摘を契機にいたしまして十分に実情把握につきまして勉強させていただきたいと思っております。
  66. 日笠勝之

    日笠分科員 零細な商店の方も多い昨今でございますので、ひとつ善処のほどをお願い申し上げたいと思います。——最後に、今後の日本はニューメディア、高度情報通信時代を迎えておりますが、その中で特にCATV、こういうものを通してのホームショッピング、また既成の広告、チラシであるとか新聞広告、こういうものを含めた通信販売というものは非常に多様化しておるわけでございますが、小売免許というのは御存じのように入り口は非常に厳しいわけでございます。御存じのとおりでございます。しかし、一たん免許をおろしましたら後は、野放しとは言いませんけれども、小売店の皆さんの営業方法によってもういかようにでもできる。先ほど言いました東北のある業者の例もございます。いわゆる入り口は難しくて後は、大学じゃございませんが出るのは易しいというような感じでございます。そこで心配される隆路があるわけでございます。過去の例もございますけれども、仮定の問題でございますけれども、今後そういう新しい時代を迎えてお考えをお聞きしたいわけでございます。  今後、資金の豊かな業者の方がCATV等を通じまして、チャンネルを買いまして専門に自分のところのお酒のPRをする。そうしますと、先ほど言いました需給調整であるとか、その税務署管轄内の動向を見るというこの報告書も、東京で宣伝したものが九州や北海道だって売ることができるという小売免許でございまして、この報告書の方もそういう意味で先ほど言いましたように意義が薄れてきているのじゃないか。また、お聞きしたいのは、今後こういうふうな通信販売、新しい時代を迎えての対応をいかようにお考えであるか。免許は厳しい、しかし取った後は全国区でございますからどこでも売れる。そうなると、先ほど言った免許をおろす基準の厳しさというもの、これはどうなるのか、その辺もあわせてお聞きしたいと思います。
  67. 山本昭市

    ○山本(昭)政府委員 これから流通革命と申しますか、いろいろな形の商取引というものが出てまいると思います。現在の通達の扱いでございますが、この受注行為、酒類販売代金の受領、酒類の引き渡し行為といいますものが免許場で行われております限りこれはなかなか規制できないというのが残念ながら現状でございまして、こういった点につきましては現時点では御理解いただきたいと思うわけでございます。  なおまた、先生お尋ねの、そういう広域な商圏に対しまして資本力をもって通信販売あるいは広報を展開していくというような事例、これ調べてみましたけれども、現時点ではまだそうないようでございます。先般の東北の事例につきまして、あのような無免許の場合には厳しく処置をとりましたし、今後ともとっていくはずでございますが、将来の問題といたしまして、先生おっしゃいますとおり確かにそういう問題があろうかと思います。したがいまして、今後さらに、この流通業界の取引の形態、こういう進展が予想されますので、これが一般の小売酒販店の経営にどのような影響を与えるかということにつきましては十分に勉強してまいりまして、必要があらばまた行政措置をとらせていただくというふうに考えております。
  68. 日笠勝之

    日笠分科員 これで質問を終わりますけれども、どうかひとつ棚卸しの件につきましては前向きのお考えをよろしくお願いして終わりたいと思います。  以上でございます。
  69. 相沢英之

    相沢主査 これにて日笠勝之君の質疑は終了いたしました。  次に、小林進君。
  70. 小林進

    小林(進)分科員 限られた時間でございますから駆け足で質問いたしますが、五十五年、五十六年、五十七年、五十八年ができていれば五十八年も含めて、その中の総企業の総配当金、それから総交際費の総額、それから広告料の総額、なおあわせて使途不明金と称するものの総額、これだけをひとつ資料としてお示しをいただきたいと思うのでございます。
  71. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 お尋ねの点につきましては、必ずしも一つの統計で全部出ておりませんが、まず私どもの法人企業統計の数字を申し上げたいと思います。  まずお尋ねの企業の配当金でございますが、五十四年度は二兆九百十四億円、それから五十五年度は二兆三千七百三十四億円、五十六年度二兆五千三十五億円、それから五十七年度が二兆四千百二十九億円でございます。五十八年度の数字はまだ出ておりません。  それから交際費につきましては、これは別の統計になりますけれども、国税庁のやっております会社標本調査結果報告の数字でございますが、五十四年度二兆九千六十一億円、それから五十五年度が三兆一千百五十二億円、五十六年度三兆三千六十一億円、五十七年度三兆四千八百三十五億円となっております。  それから広告宣伝費でございますが、これはまた別の統計になりまして、電通広告年鑑というものの数字でございますが、五十四年度が二兆一千百三十三億円、五十五年度二兆二千七百八十三億円、五十六年度二兆四千六百五十七億円、五十七年度が二兆六千二百七十二億円、こうなっております。
  72. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 使途不明金のことにつきましては、国税庁の調査査察部の方からお答えいたします。  私どもが毎年行っております税務調査の中で、つまり税務調査を行った企業の中で使途不明金を把握したものを申し上げますと、昭和五十四事務年度、これは五十四年七月から五十五年六月までの一年間の数字でございますが、これが総額で三百二十一億円、それから五十五事務年度は三百二十四億円、五十六事務年度三百八十七億円、五十七事務年度四百二十八億円でございます。  なお、私どものこの数字は、資本金一億円以上で国税局の調査部で所管しておる法人の数字でございます。
  73. 小林進

    小林(進)分科員 今の御報告がありましたとおり、大体配当金と交際費と広告費を三つに分けてお聞きいたしますと、私は総括的に言って、これは古い、今おっしゃった数字の五十四年度の数字を基準にして言えば、配当金が二兆一千億円、それから交際費が二兆九千億円、それから広告費が二兆一千億円、これが大体五十七年までこういう比率で進んでおるようでありますが、本来企業というものは、企業の利益というものは、いわゆる株主にその利益を還元するという目的のために企業活動というものが行われていると私は思うのです。企業の目的は、株主の利益のために社長以下執行部が努力をして利益の追求をしていくというのが原則でございましょう。にもかかわらず、上げたその果実を、今おっしゃるとおり、これは配当金よりは交際費の方が多いのです。みんな毎年多い。五十四年度で言わせれば、ともかく交際費の方が株主に対する配当金よりも八千億円も多い。広告料に至っても、これはほとんど配当金と同額だ。  私は今も言うように、くどいようだが、目的は株主に奉仕をする。株主のかわりの代表として企業活動をやっているのだから、その中における目的は、株主に対する配当金が目的なのであって、株主にいかに利益を還元するかというその手段として交際費があり、あるいは広告費があるわけです。いわゆる交際費や広告費というものは、いかにして株主に利益を多額に還元するかという手段だ。ところが、手段の方が目的よりもうんと多いというのは、こういう変則な企業のあり方は一体日本以外にどこにありますか。世界にこういう例がありますか。私の調査ではこういう変則な例はありません。これは日本だけです。どうですか、大蔵大臣。どうお考えになりますか。これはおかしいじゃないですか。これがいわゆる日本の逆立ちの企業なんだ。いかに株主というものが軽視をされているか。全くこういう逆のことが平然と行われていることは、これは不思議じゃありませんか。大臣、ちょっと休んでいてもいいですが——君はだれだ。
  74. 相沢英之

    相沢主査 証券局長です。
  75. 小林進

    小林(進)分科員 証券局長、ひとつしゃべってみろ。
  76. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 確かに、先生御指摘のように、企業のいろいろな活動の目的は利益を上げて株主にその利益を還元するということが大きな目的だと思います。ただ、株式配当金それから交際費あるいは広告宣伝費、これは企業の経理の上の性格で申しますと、交際費とか広告宣伝費は企業活動を行うための経費でございまして、そういった活動の結果生じてくる利益あるいは配当金と、一つのものとして比べるのがいいのか悪いのかちょっと私よくわかりませんけれども、性格が基本的に違います数字でございますので端的な比較はできないのではないかと思いますが、外国の数字は、私どもちょっと今手元に持っておりませんのでよくわかりません。
  77. 小林進

    小林(進)分科員 こういうことで議論をしていると私に与えられた時間がなくなりますから、残念ながら問題だけ提起しておきますよ。あなたの答弁なんか答弁になっていないのです。ただ時間稼ぎにしゃべっているだけだ。そんなことでは問題にならぬ。  アメリカなんかでもそのとおりです。交際費なんというものは、アメリカの企業も非常にやかましく言って、事実上交際費なんというものは効果がないと言う。企業の商品の売り込みや利益を上げるためにおいて、アメリカでは交際費なんというのは利益はない、それよりはいい商品をつくって割安に売った方がむしろ株主に対する配当金も上がるし企業の利益も上がる。ところが日本は、企業自体の利益、株主に奉仕するために価値のないものが一番企業の中で多額を占めているなんということは私は正常な形じゃないと思う。監督官庁として何を考えているのだ、高給をはんでいて。それからいいますと、使途不明金というのは一体何だ。君、こっちを向いているか。使途不明金というのは一体何だ。
  78. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 国税庁といたしましては、大企業を中心にして重点的な法人税の調査をいたしておりますが、その中で、法人としてどうしても使途を明らかにしないという経費がございます。私ども、従来これは損金に算入をしないということで所得に加算をして課税するという方針で臨んでおりますが、この金額があることは残念ながら事実でございます。
  79. 小林進

    小林(進)分科員 問題はそれなんだ。君は一億円以上の企業だけ調べても、使途不明金が驚くなかれ五十七年四百二十八億円もあるという。それが、課税の対象にするからということを言い逃れにして、どこへ金を使ったか言わない。全部秘密にしている。一体そんなことが監督官庁として許されていいの。企業の中には株主に奉仕をし、株主のために利益を還元しなければならない重大な責任がある執行部、それが使途不明金ですと言って、この点は、国税庁には税金を払っていますから、あとはこれにさわらぬでくれなどということを公々然として、それを許しておいていいのですか。そんなことがまかり通っていていいのですか。局長、いいならいいと言えよ。
  80. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 私どもとしては、税務調査におきまして使途不明金の解明には全力を挙げておりまして、使途不明金としての使い方その他については厳重なチェックをしておりますが、私どもの調査は実は任意調査ということで、納税者から説明がない限りは私どもの方で強制的に、例えば査察のような形で調査するわけにまいりません。全力を挙げて解明しておりますし、先ほど申し上げましたように一部……
  81. 小林進

    小林(進)分科員 そんな全力だとか全総力なんという言葉を聞くために聞きにきたのじゃない。そんな抽象論を聞きにきたのじゃない。具体的になぜやらぬのかということなんだ。やらなかったら、責任をとって腹を切るかということです。その返事さえ聞けばいいんです。全力を尽くしたと言って、そんなことは責任をとることにならない。今のことは了承できません。ただ、私は限られた時間ですから、問題だけ提起しておきます。これはまた改めてやる材料づくりなんであります。  次に申し上げますけれども、国税庁の発表は五十七年度の交際費なんだ。交際費が三兆五千億円だと言う。これは一日当たり九十五億円ずつが交際費に使われているんだ。ところが、その五十七年における企業の実態はどうかと言えば、総企業のうちの五割、半分以上が赤字だと言うんだ。赤字で、国家に対して法人税一つ払わない、赤字でございますと言って株主にも配当もしなければ、税金も払わないその企業が、ちゃんと三兆五千億円の交際費を使っていると言う。赤字経営と交際費は一体どういう関係になっているんだ。こういうような形態を大蔵省は黙って見ているの。これは矛盾じゃありませんか。会社が赤字になって、配当金も株主の利益も還元しないが、交際費だけは一生懸命やりますというその営業のやり方は、それでいいんですか。監督官庁としてすっきりとひとつ聞きますよ。——だれだ。
  82. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 国税庁の直税部長でございます。(小林(進)分科員「長官を持ってこい。部長なんかより、長官はいないのか」と呼ぶ)恐れ入ります。  私の方から答弁を申し上げさせていただきますと、この交際費でございますが、御承知のとおり、大企業に対しましては交際費は全額損金算入を否認いたしておるわけでございます。もとより、委員御指摘のように、単に損金算入の否認ということでは不十分という御指摘も万々わかるわけでございますが、私どもは与えられました現在の税法の中の枠内ということでございますと、これが最大の限度でございます。そういうことでございまして、全体の交際費、ただいま三兆五千億円との御指摘がございましたが、その中で、四二%強というものは否認になっておるわけでございます。この否認になっておりますもののほとんどは大企業分でございます。
  83. 小林進

    小林(進)分科員 君の説明に納得したわけじゃないのだ。ないのだけれども、議論をしていると時間がないから……。  主査、あなたで、なんだけれども、立法府というのは言論の府なんだよ。言論の府というのは、言葉でもって論じ合うのが言論の府なんだ。時間で我々の発言を抑えるというのは一体何事だ。それは不言論の応じゃないか。そういうようなことは主査としてもちゃんと考えて運用するようにしなければ。我々は議論をやりつつするところにこの立法府の値打ちがあるにもかかわらず、みんな我々の発言を時間で抑えてしまう。けれども、あなたに言ったって、これはやむを得ない。もとをただせば、あなたも大蔵官僚だから、しょうがないけれども、改めなければならぬ、我々全部で改めなければならぬが、だめです。  それで、私もこんなことを言っているとだんだん時間がなくなるが、いずれにしても、この形態は本質的に改めなければいかぬ。みんな、イギリスでもアメリカでも、こういうばかなことはやっておりません。やりません。こんな非常な矛盾はやめる。  次は、交際費の中に占めている政治献金はどれくらいになっておりますか。
  84. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 大変恐縮でございますが、この全体の交際費の中に占めます政治献金というものにつきまして、私どもただいま計数を持っておらないわけでございます。
  85. 小林進

    小林(進)分科員 今、注文しておきます。今の交際費の中に政治献金が幾ら入っているか、使途不明金の中に一体政治献金が幾らあるか。君、努力しますではだめだ。きちっとやって、後で文書でひとつ報告してもらいたい。
  86. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 使途不明金の中に、先ほど申し上げましたが、私どもとしては使途を判明するように努力いたしました結果、五十七年分四百二十八億円の中には判明いたしましたものが八十七億円ございます。これは内訳を申しますと、リベート、手数料と目されるものが二十一億円、交際費が二十一億円、その他が四十五億円ほどございまして、先生御指摘の政治献金等についてはその他の中に入っておるものと私ども想像しておりますが、詳細な数字は持っておりません。
  87. 小林進

    小林(進)分科員 ひとつ今の問題は注文をつけておきます。今の交際費天国と配当金の矛盾の問題、これはどうしても手直しをしてもらわなくてはなりません。これだけ申し上げておきます。  交際費と政治献金の問題も今注文をつけておきましたから後でもっと正確に文章で出していただきますよ。  次は、法人の献金と組合の献金について、これは大蔵大臣に聞きたい。  選挙のたびに企業は政治献金をやります。主として保守党にやります。それから、組合の方は総評とか同盟とか、これは大体革新と称する我々とか中間政党の方へ政治献金をやります。これといわゆる企業の政治献金、選挙陣中見舞い、選挙献金と言ってもよろしいが政治献金、これは私は性格は全く違うと思いますが、大臣どうでしょうか。政治献金は一つだというふうにお考えになるかどうか、御意向を承っておきたい。  時間がありませんから、私はちょっと一つまた問題提起をしましょう。  私は企業が政党や政治家に献金するお金は、今も言うように株主の利益だと思っている。いずれにしても重役個人の金ではないと私は思います。社長だとか会長だとか、その人の金じゃない。個人に所属した金じゃない。会社の金です。それを彼らは執行部と称して献金している。残念ながら最高裁では、それは営業方式として合法だというふうな判決も出ているようであります。  一方の、総評とか同盟とか組合の諸君が我々革新にやってくる献金は、個人が自分たちの労働を売ってもらった俸給、賃金の中から彼らは自分の生活費を割いて我々に献金をしている。これは個人の金です。企業の献金は個人の金ではありません。こういう一つの差があると思いますが、これはどうですか。大蔵大臣、ひとつ御見解を承りたい。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 今おっしゃった限りにおいては私もそのとおりだと思いますが、今理屈を言っておりますのは、要するに企業というものがこれまた株主、すなわち株主がたまたま法人であっても、もう一つその法人をまた構成するのが個人であるという意味においては、個人のいわば利益追求の集合体という意味においては性格が一致するから、いずれの角度からもそれを禁止するということは今好ましくない、こういうことを言っておるわけでしてね。だが、いわばそこまで集積されていく過程については、いきなり個人のサラリーの中から出して積み立てたものと個人の集合体である企業がやったものと、その企業そのものはまた金融機関が株主であったりするわけですから、それの距離が少し余計あるというだけです。
  89. 小林進

    小林(進)分科員 私はどうも大蔵大臣の御説明には納得できないのですよ。組合の個人が集合体であろうと団体であろうと、原資は彼らが労働を売った一つの金であることは間違いない。だからこれに匹敵するものといえば、やはり重役なり社長なりが自分の俸給、給料を割いて、もらった金の中から、一たん自分に帰属したものの中から政党へ献金すれば、それは同じ性格のものであると私は思いますけれども、またみずからに帰属しないその企業の金を政治献金をするというのは、私は全く性格は異なると思いますが、この問題もやっておりますともう私に与えられた時間はないが、これも了承できないのです。しかし、最高裁の判決もありますから全部を否定するわけじゃないけれども、今も言うように、配当金の総額を割いてまでそういう交際費に使ったり政治献金に使っているというのは、重役、社長、会長としては少し行き過ぎではないか。こういうような行き過ぎが日本の企業の中に公々然と行われている。そっちの方にメスを入れないで、しがない我々庶民が、ともかく表で働いて疲れて帰って、明日の活動のために一杯飲もうかというそういう必要経費の酒まで国が赤字だからといって税金をかける、大蔵大臣、その考えが間違いだと言うんだ。もしやるのなら、なぜこっちの方へもう少しシビアな監督を主管官庁としてやらないのか。私はここで申し上げておきますが、これはこれで終わったわけじゃありません。これは楽しみにして、ずっとやるのですから、どうぞ。  あと、いま一つ申し上げたいのは徴税なんです。時間がないから続けて言いますが、国税は国税庁の官吏、お役人が徴税をおやりになる。それから地方税はその地方、都道府県、市町村でおやりになる。その中央の徴税官、徴税の役人と、地方税をやっている役人の数は大体どれくらいですか。
  90. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 国税でございますが、大体五万三千人でございます。地方税の方は、私は直接担当しておりませんが、約八万というふうに聞いております。
  91. 丸山高満

    ○丸山説明員 地方税の担当職員数でございますが、正確には八万六千人余りでございます。
  92. 小林進

    小林(進)分科員 出す側からすれば国税も地方税も懐は一つだ。それで五万だの八万だのという徴税官を置いて、税金を二つも三つもに分けてやる必要があるか。これは私は民主主義とは関係ないと思う。これこそいわゆるむだな行政であるというふうに私は考えるが、この問題はどうですか。むだじゃないですか。
  93. 丸山高満

    ○丸山説明員 現在我が国には約三千三百余りの都道府県及び市町村がございますけれども、いずれも国とは財政を全然別にいたしておりますので、地方税は国税とは別に徴収させていただきたいと考えております。
  94. 小林進

    小林(進)分科員 別にしておるが、出す方からすれば実に小面倒くさい。同じことを二度も三度も追っかけられて、そして陵から金を出している。これは後で田川君のところへ行って細かく自治大臣に話をするつもりでありますから、これは国税の大蔵省の方でも考えてもらわなくてはいけない。  その徴税コストを言うと、これはちょっと資料が古いけれども、国が一口に対して一円三十八銭、今はもっとかかっているかもしれない。地方の方は三円九銭、二倍半も徴税の費用がかかっている。こういうことをそんなに何人も置く必要はないじゃないか。大体昔は、これは国税に付加税という形でかがって戦前はやっていた。ここら辺から行政の合理化をやるべきじゃないか。そういうところを土光臨調なんか何も言わない。こういうことを何もやらない。やるのならこういうところをやればよろしい。私はこれも了承できません。組織が違う、形態が違う、三千何ぼも地方庁があります、そんなことは理屈になりませんよ。何にも理屈にならぬ。もし、住民にサービスするなら、サービスの観点からも、こういうのはやはり行政整理をきちっとやるべきです。  それから、時間も来たから申し上げますが、これは話がちょっと矛盾する質問でありますけれども、今滞納というのは一体どれぐらいありますか。
  95. 兼松達

    ○兼松政府委員 お答え申し上げます。  最近における租税滞納の状況でございますが、昭和五十七年度末現在の滞納の現在高でございますが、件数で申しますと二百十一万件、税額で六千二百四億円、こういう状況でございます。これを前年同期と比較いたしますと、件数では十二万件、五・七%、税額で申しますと四百十一億円、七・一%、それぞれ増加いたしております。
  96. 小林進

    小林(進)分科員 減っているのかと思ったら、十二万件も、四百十一億もふえているんだという。国家財政は赤字でどうにもならないといって、物品税をつくったり何税をつくったりして痛めつけながら、払うべきお金を毎年増額させているというのは一体どういうことなんだ。その欠陥は一体どこにあるのです。また最善の努力をしていますと言うのではだめだ。こういう滞納が年々ふえているという理由は一体どこにある。
  97. 兼松達

    ○兼松政府委員 滞納が増加している原因等でございますけれども、いろいろな面で考えられておりますが、社会情勢あるいは経済情勢等の影響もございます。しかし、一面におきましては、私どもは滞納の整理そのものだけではなくて、むしろ滞納発生の未然防止といいますか、発生しないようにするということも非常に大事であるというように考えておりまして、その面でも、いろいろな面で事務を推進しているところでございます。
  98. 小林進

    小林(進)分科員 最後に、大蔵大臣、これはだれかの本で読んだのだけれども、アメリカで徴税官を一人ふやすと、五千万といったか……(「日本で五千万円」と呼ぶ者あり)そうか、日本で五千万円か。ドルじゃなかった、五千万円、その費用は一人の徴税費に対して十倍の能率を上げることができる。だれかが滞納しておるとかあるいは脱税などの問題も含めて本当にひとつ公正にやりたいのなら、徴税官だけは人員をふやしてもっとシビアにきちっとやったらどうかというふうな説が日本にもあるというのだが、これに対して大蔵大臣、どうお考えになる。税金もNHKの聴視料も同じだけれども、払わなければ払わないで済む、そういうことができるなら、私も払いたくないのですよ。払いたくないが、そこはやはり国民には納税義務というか、きちっとしたものをやらせるという一つのシビアな姿勢が必要だと思いますが、承っておいて私の質問を終わることにいたします。
  99. 竹下登

    竹下国務大臣 国税庁の定員の推移を最近十年間で見ても五百二十八人の純増、五年間で見て四十三人の純増。この問題、毎年、私は三回でございますが、どなたも最終的に一番頭の痛いところで、行政改革、人員削減、まず隗より始めよ大蔵省、こうなりますね。しかし一方、これだけは与野党を通じて、もっとふやせ、一人五千万。この一人五千万というのは必ずしも正確な数字じゃございませんが、一般的にそう言われる。したがって一生懸命そういう環境の中で努力する。結論として出てきた。最終的にはふやしました、何ぼだ、一けた、こういうことになるわけですが、その矛盾の積み重ね。しかしそういう御支援が、いかに一方削減の方の隗より始めよであっても、今のような御声援が私どもとしてもどなたが大蔵大臣になられようと一番ありがたいことだと思います。
  100. 小林進

    小林(進)分科員 これで終わります。
  101. 相沢英之

    相沢主査 これにて小林進君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤英成君。
  102. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 自動車損害賠償問題についてでありますが、昭和四十五年をピークにいたしまして、交通事故死が五十一年から五〇%台に減少し、国及び民間を挙げての積極的な努力が実を結んできておりますけれども、五十七年から再び増加傾向を示しており、昨年はついに交通事故死者数が九千五百二十人、負傷者数六十五万三千六百二十人というふうになりました。これは五十一年、五十二年ごろの状況に逆戻りをしたといったまことに厳しい情勢となっているわけであります。そこで、このような多数の交通事故死傷者に対する自動車損害賠償についてお尋ねしたいと思います。  まず、自動車の運行による事故が起こった場合、被害者に対する損害賠償はどういうふうになされているかをお伺いいたします。
  103. 加茂文治

    ○加茂説明員 自動車事故によります損害賠償責任をカバーする保険といたしましては、自賠法によりまして付保が強制され、被害者保護の観点から基本保障を担保する自賠責保険と、この上乗せとして加害者の賠償資力を保障する任意の自動車保険がございます。現在の自賠責保険保険金限度額は死亡、後遺障害二千万円、障害百二十万円となっておりまして、一件当たりの保険金支払い額は五十七年度においては約千六百九十万円となっておりますが、任意保険を含めました一件当たりの支払い額は約二千五百万円でございます。任意保険の加入率は、五十七年度の対人賠償保険で六〇二二%となっておりまして、平均保険金額は約七千四百万円となっております。  以上でございます。
  104. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 五十八年度の予算において自賠責特会から累積運用益の約二分の一、二千五百六十億円が一般会計へ繰り入れを行っておりまして、自動車ユーザーから自動車保険行政に対して大変な不信感を招いているというふうに思います。運用益の使途について自動車損害賠償責任保険審議会の答申で何回も——自賠責保険の収支改善のための財源に充てるほか、救急医療体制の整備及び交通事故防止対策等に活用すべきというふうに思いますけれども、運用益の使途についてどのような考えを持っているかをお伺いいたします。
  105. 加茂文治

    ○加茂説明員 現在、自賠責保険の滞留資金に係る運用益につきましては、ただいま先生御指摘のように、自賠責保険審議会の答申に沿いまして将来の自賠責保険の収支改善のための財源として留保するほか、救急医療体制の整備及び交通事故防止対策等への寄附を通じて効率的な活用を図っておるところでございます。近年自賠責保険の収支は悪化してきておりますので、将来の収支改善のための財源として留保するということを基本として制限的に支出の縮減を図っておるところでございまして、今後ともこの方針に沿って運用してまいりたい、このように考えております。
  106. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今もう既に一般会計に繰り入れられている部分については、趣旨に沿って返すことになっているわけでありますけれども、これも必ずちゃんとやっていただきたいと思います。それから今後も一般会計繰り入れということは、その趣旨からしてもやめていただきたい。あくまで審議会の答申の趣旨に沿って、収支改善の方にちゃんと使うという形にやっていただきたいと思います。  それから次に、自賠責保険においては純保険料の六割が再保険料として政府に納入をされ、その運用益については明らかにされているわけでありますけれども、保険会社手持ち分の四割部分の運用益については全くベールに包まれているというふうに思います。自賠責保険が最初の御説明どおり強制保険だという制度の趣旨を踏まえれば、六割部分と同じように明らかにすべきであると思います。今ここで、その四割部分の運用益の発生状況がどうなっているか、その次にその運用益の使途、それから運用利回りの決め方並びにその利回りが現在どういうふうになっているか、こういうことについてお伺いいたします。
  107. 加茂文治

    ○加茂説明員 昭和五十七年度の自賠責保険の運用益の発生状況等について御説明いたします。  運用資金の平残が五千四百二十七億円でございます。これに対します運用利回りが六・〇一%ということでございまして、その結果運用益の発生額は三百二十六億円でございます。これから税金等の控除額が約百六十二億円ございまして、差額といたしまして当年度の積立額は百六十四億円でございます。五十七年度の当年度の拠出額はこの中から五十四億円支出しておるということでございまして、以上の結果、運用益の積立金残高は昭和五十七年度末で約七百十六億円となっております。  五十八年度の運用益の使途につきましては、承認ベースで申し上げますと、まず救急医療体制の整備に三十一億円、交通事故防止対策に十五億円、三番目に被害者救済関連で七億円、合計五十三億円を支出することになっております。  次に運用利回りでございますが、この運用利回りにつきましては損害保険会社全社に係る運用資産利回りの加重平均による利回りとなっておりまして、昭和五十七年度の利回りは六・〇一%となっております。
  108. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今の利回りが加重平均で決められる、加重平均した結果は六・〇一%、こういうふうに言われました。大手と中小との間に差があるのか、どっちがどうかはわかりませんが、どのくらいの状況になっているのでしょうか。
  109. 加茂文治

    ○加茂説明員 運用利回りにつきましては全社の加重平均が六%でございますから、御指摘のように、それより高い利回りで運用している会社もあるのは事実でございます。平均以上の運用利回りの会社につきましては、全社ベースでの平均運用利回りで理論計算をしておりますので、実質的に利益となる反面、運用効率の悪い会社につきましては持ち出しとなるわけでございます。しかしながら、毎年そのような状況が続くわけではないということ、それから各社の運用実績をそのまま反映するとすれば、各社の資産運用効率化のインセンティブを損なうことになるということも考え合わせまして現行の制度がとられておるわけでございます。しかしながら、全社平均の運用利回りで計算しておりますので、全体としましてはノーロス・ノープロフィットの原則が貫かれているというふうに考えております。
  110. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今、運用益の発生状況から始まりましてそれぞれの利回りの問題につきましてお伺いしましたけれども、その資料を後で結構ですからいただきたいと思います。お願いをいたします。
  111. 加茂文治

    ○加茂説明員 後ほど調製いたしましてお届けいたします。
  112. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 先日の新聞にも昭和六十年度には自賠責の保険料を三〇%アップするような、あるいはしたいような報道がされていたように思います。先ほどもちょっと触れましたけれども、今その運用益を一般会計に繰り入れをしているわけです。そういうような自動車ユーザーの声を無視したやり方が現実にやられているというふうに私は思うのですが、その上に保険料の大幅値上げをすることは許されない話だろう、私はこう思うのです。今、一般会計に繰り入れをされたりしている状況であるというふうに判断すれば、今やることは、むしろ運用益を財源として保険料の引き下げをすることの方がやるべきことではないか、こういうふうに思うのですが、そのお考えをお聞きいたします。
  113. 加茂文治

    ○加茂説明員 自賠責の特会から一般会計に繰り入れました運用益につきましては、自賠責特会の貸借対照表上の資産の部にも一般会計繰入金と計上され、将来繰り戻しを予定されているものでございます。  一方、財確特別法可決に際しまして、「自動車損害賠償責任再保険特別会計に滞留している運用益について、保険契約者の利益のために活用するための具体的方策の検討を速やかに進めること。」という衆参両院での附帯決議がなされておりまして、現在運輸省におきまして具体的な方策を検討中であると聞いております。この活国策の検討に当たりましては、支払い限度額への充当あるいは保険料率の引き上げ幅の抑制等、真に保険契約者の利益のために活用できるよう運輸省とも相談しながら検討してまいりたいというふうに考えております。
  114. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今のは、まだすぐ近いうちに。保険料率を上げるという格好に必ずしも動いていないという意味なんでしょうか。     〔主査退席、中村(正三郎主査代理着席〕
  115. 加茂文治

    ○加茂説明員 自賠責保険の単年度収支は昭和五十三年度以降赤字に転じておりまして、この赤字幅は拡大をしてきておるわけでございます。したがいまして、早晩料率調整が必要になるものと考えられておりますが、一方、支払い限度額の引き上げ要請があること、あるいは先ほど申し上げました運用益について具体的な活国策を求められておることも勘案しながら慎重に検討してまいりたい、このように考えております。
  116. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 自賠責保険料の算出に当たりましては、黒字計上になっておると思うのですが、農協の自賠責共済分を除いて計算がされているわけですね。このことについては前から指摘されている問題でありますけれども、自賠責保険に農協の共済分を含めた保険料率の検証をすべきというふうに思うのです。そういうふうになっていないと思うのですが、その理由をお伺いいたします。
  117. 加茂文治

    ○加茂説明員 御承知のように、自賠責の制度は、その大宗を占めます損害保険会社の自賠責保険と、それから四十一年から販売が開始されました農業協同組合の自賠責共済から成り立っております。両者の収入保険料、共済掛金のシェアは、五十七年度におきましては自賠責保険が約九三%、自賠責共済が残りの七%となっております。このように、自賠責保険は自賠責制度の中心になっておるということでございますので、当局といたしましては、自賠責保険の収支の動向を常に監視しておく必要があるというように考えております。  しかしながら、今後自賠責保険保険料率を引き上げなければならなくなり、具体的に引き上げ幅を検討する際には、御指摘の自賠責共済の収支も参考にしてまいりたい、このように考えております。
  118. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 農協共済分というのは、シェアとしては今七%くらいという話がありましたけれども、シェアの推移というのはどんなふうになっているかわかりますか。
  119. 加茂文治

    ○加茂説明員 今手元に資料がございませんが、御指摘のように農協分が若干ふえてきているように承知しております。
  120. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今のお話ですと、農協共済分の問題についてもこれから含めて検討をしていきたいという趣旨だというふうに思いますけれども、ちょっと聞くところによりますと、かつて大蔵省と運輸省、それから農林省の間で、農協の自賠責共済分についての何か覚書があるようなことを聞いたことがあるのですが、そういうものはあるのでしょうか。
  121. 加茂文治

    ○加茂説明員 四十四年の十月におきまして大蔵、農林、運輸三事務次官の覚書がございます。
  122. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 その覚書は後からいただきたいと思うのですが、それもお願いをいたします。
  123. 加茂文治

    ○加茂説明員 後ほど一緒にお持ちしたいと思います。
  124. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 先ほどの農協共済分についてもうちょっとお聞きしたいのですが、現在農協の共済分については黒字であるということなんですが、なぜ農協共済の方は黒字になっていて民間の方は単年度で赤字になっているのか。どういうふうにこの要因を分析をされておりますか、お伺いをいたします。
  125. 加茂文治

    ○加茂説明員 御指摘のように、自賠責の共済の収支が自賠責保険の収支よりもいいわけでございますが、これは保険と共済の契約者の居住地域等の相違、また契約車種構成の相違等によるものと考えられます。すなわち、農協が主として営業している農村地域は、都市部に比して自動車保険あるいは共済の事故率が一般的に低いと考えられておること、また車種別に見た場合に、営業用車の収支が特に悪化しておるのが現状でございますが、これらの営業用車のほとんどが損保の自賠責保険を利用しておること等の要因があるために、損保の自賠責保険契約全体は農協の自賠責共済よりも収支が悪くなっておる、このように考えております。
  126. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今のお話に関連して、これもちょっと新聞に出ていたと思うのですが、これは損保業界で保険料率について地域別料率制度を導入することを検討中であるというようなお話もちょっと伺ったことがあります。保険料率の区分を、要するに危険の実態に応じて合理的かつ妥当に細分化した料率体系にするということは、私も否定するものではないわけであります。イギリスにおいては、保険契約者の特性を計量化して、それに応じて料率を算定するポイントシステムという制度が定着しているというふうにも聞いております。イギリスの例でもわかりますけれども、細分化した料率設計を行うに当たっては、たくさんの要素によって保険契約者の特性を計量化し、料率設計に反映させなければいかぬ。  例えば地域別だけで見るといたしますと、その導入を考えるとしますと、地域の線引き単位によって保険料率の公平化をどういうふうにやるんだとか、あるいは保険契約者の差別化という問題も起こるかもしれない、あるいは保険契約者の移動、流出に伴う代理店の存立というような問題等もあるわけなんです。そういう意味で契約者の理解と納得を得る必要があるわけですが、いろいろたくさんの問題が生じるというふうに思うのです。また一方では、積み立て自動車保険の問題についてもいろいろな問題があるんではないかというふうに考えるのです。したがって、こうした問題は慎重に検討をしていくべき問題であろう、こういうふうに思うのですが、大蔵省当局の指導方針はどういうふうになっているか、お伺いいたします。
  127. 加茂文治

    ○加茂説明員 地域別料率の問題でございますが、御指摘の問題は、任意の自動車保険に関するものであると思われますが、現行の料率は御高承のとおり、対人賠償責任保険について例外的に沖縄県とその他の都道府県を別料率にしておりますが、その他については車種別に事故率を算出し、全国一律の料率を適用しております。  この理由は、一つは、自動車はその運行範囲が限定されていないので、登録地以外で事故を生ずる場合も多く、地域ごとの危険度を把握しにくい。また、地域的な差異を設けると、料率の低い地区に登録をし、他の地区で運行に供するようなことが行われやすい。また、地域的な区分として、例えば県別の区分をとりますと、県境等の特殊地域が問題となり、必然的にさらに細分化する圧力が働き、保険の成立基礎を危うくするおそれがあるというようなことで、全国一律の料率でやっておるわけでございます。  しかしながら、この問題につきましては、実際に事故の発生状況が地域的に大きく異なること等から、負担の公平についての要請を勘案し、地域料率とすべきであるという意見もございますので、以上のことを総合勘案しながら、今後慎重に検討してまいりたい、このように考えております。
  128. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 これは、先ほどのお答えの中にも含まれていたことでありますけれども、地域性ということもあるでしょうし、あるいは車種でも営業車もあるし自家用車もあるでしょうし、あるいは二輪車もあるでしょうし、そういういろいろな要素があると思うのですが、一つだけとれば大変なある意味での問題を引き起こしたりとかということがあるので、そういう意味から先ほどちょっとイギリスの例をあれしたのですが、幾つかの要素を加味するというようなやり方がそのためにされてきたのだと思うのですね。そういう意味から、慎重に、それと同時に負担の公平さあるいは合理性ということを含めてやるべきじゃないか、こういうふうに思います。ぜひまたお願いをいたします。     〔中村(正三郎主査代理退席、主査着席〕  それから、時間がなくなりましたので、これは大臣に感想という形で結構でありますけれども、簡単で結構ですがお願いしたいのは、実はきょうは時間が少なくて十分な討議はできなかったのですけれども、いわゆる自賠責特会についても保険審議会の答申にある点では違反をして一般会計に流用をしている。そして、そういうことがあって、片一方の方でまた料率を上げるんだというような形なんで、ユーザーから見ますと、大変な不信感を抱くやり方が現実に私はされているのだと思うのですね。また同時に、民間の自賠責保険の問題についても、例えば収支の状況あるいは運用益の状況とか、そういうものが一般公開をされていないということであると思うのです。そういうときに、現実の事故の発生のされ方あるいは危険の程度に応じたいわゆる負担の公平さというかあるいは合理的かつ妥当な保険料率になっていないというふうに印象を受けるわけですね。そういう意味で、特にこれが強制保険であるという観点からしますと、どれだけ実態がオープンにされていて、そしてその上で合理的に決定をされていかなければいけないかという意味において、ユーザーから見ると、現状は大変な不信感を抱く状況になっているのではないかというふうに私は思うのです。  そういう意味で、ほかの委員会も通してこの問題について私ども取り組んでいきたい、こういうふうに思っているわけですが、現状について大臣の感想というのを、これは簡単で結構ですけれども、お願いをいたしまして、質問を終えます。
  129. 竹下登

    竹下国務大臣 感想とおっしゃいましたので非常にインディメードな感じで申し上げますと、私は大学の卒業が実は保険でございます。それで、保険というものにやむを得ず興味を持っておったわけです。ところが、自賠責というものはその成り立ちの場合、私はいいことだと思いました。それから余り勉強しないでおりました。ところが、五十八年度予算編成に当たって一般会計に運用益をお借りしよう、そのときに久しぶりにもう一遍戻って勉強したような感じがいたしました。自賠責の場合、特にユーザー側に対する信頼でもって初めて成り立っていく、任意部分は別として、なかんずく強制保険は。そうすると、お借りするものに対しても、それは結果としていろいろ自動車損害が起こらないような道路とかあるいは交通標識とかいろいろなところに、金に色はついておりませんけれども、使われるとして、やっと自分なりの良心の苛責をぬぐい去ったような感じがしたのです。したがって、できるだけユーザー側から見てなるほどなと思う理解に対する努力は、業界はもとよりですけれども、これは運輸省、我々、絶えずそういう心構えで対応すべきじゃないかなと思う。たまたまこの五十八年、また竹下大蔵大臣召し上げたなんと言われたときだったものですから特にそういう思いで、反省と私の素直な感想といたさせていただきます。
  130. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 どうもありがとうございました。
  131. 相沢英之

    相沢主査 これにて伊藤英成君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  132. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 私はテーマは一つ、どぶろく。肩の凝らない問題ですが、肩の凝らないという割には、戦前からの議事録を読んでみると、クモの巣を払って見にいくと割合に出るのですね。うちのおやじなども昭和十四年ごろやっている。やはり酒税が上がったときに出るのですな。  大臣、伺いたいのですが、立派な造り酒屋の若だんなに聞くのもどうかと思うのだが、大臣はどぶろくをお飲みになったことがありますか。
  133. 竹下登

    竹下国務大臣 私は終戦後は田舎の青年団長をしておりまして、毎日飲んでおったような感じで、毎日法を犯しておったような感じがいたしております。
  134. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 私もかつてはごちそうになったのですが、特に上澄みと言って下にもろみがたまったもの、うまいと言ったら不謹慎というか、大臣も毎日法を犯しておったという告白ですが、したがって皆さんもこの問題はメモを読み上げる質疑応答じゃなくて、ざっくばらんに肩の凝らない審議をしようじゃありませんか。  どぶろくの本がかなり出ておるのですが、図書館などで借りてきた中で、長山幹丸、これは私の地元秋田で学校の先生などをやっておられる、もう校長先生でございますが、この先生の「どぶろく物語」を開いてみると、「濁酒を造ることなかれ」というおふれが警察署と税務署の連名で大正六年八月に出た。「酒税法第二十二条 免許ヲ受ケスシテ酒類ヲ製造シタルモノハ三十円以上五千円以下ノ罰金ニ処シ価仍其ノ製造ニ係ル酒類及其ノ容器々具器械ヲ没収ス」。そして、「右の如く政府の免許を受けないで酒を造ることは法律で禁ぜられて居ります。」二つ目、「日本国民たる以上は誰人も必ず国の法律は守らねばなりません、勝手に酒を造って飲む人は此の法律を破るのであります」。三つ目、「或は自分の米で自分が造って飲むのに何も悪いことはあるまいと思ふ人もあるかも知れませんが、之れは自分の金銭をやりとりする賭博をするのや、自分の腹の胎児をおろすのと同様に悪いことであります」云々とずっと書いてございますが、どぶろくはなぜできないのだろうか。それから、自家醸造が禁止されたのはいつごろだろうか、どぶろくそのものについて何か知識をいただけませんか、まず最初に御答弁をいただきたい。
  135. 大山綱明

    ○大山政府委員 どぶろくの無免許の製造が禁止されたのはいつごろからか、それはなぜかというお尋ねでございますが、端的にどぶろくを無免許で製造するということができなくなりましたのは明治三十二年ごろからのようでございます。それまでにも長い歴史があるようでございまして、明治の初めころは、一定の製造石数に限るという制限は置かれていたようではございますけれども、自家用の醸造というものについては割合にリベラルな態度でございました。しかし、近代的な税制ができ、お酒に対してかなり高い税負担をお願いするというような状況になりまして、それが非常に国家財政にとっても重要な歳入源になってきた、そういう明治の後半以降清酒につきましてもどぶろくなどにつきましても、これを無免許で製造するということを禁じたわけでございます。  この理由は、割合に自由にさせておりました結果、自家醸造をする者がかなり多くなってまいりまして、このことが酒税収入に大きな影響を及ぼすようになったということと、一定の限度を限ってつくらせていたという時代もあったのでございますけれども、しかし一定の限度を画しましてもそれを厳格に執行いたしますにはかなり手間がかかる、そういった検査、取り締まりの面でも放置をするのは問題があるというようなところから、明治三十二年に自家醸造を禁止いたした次第でございます。酒税収入確保する、それからみんなが同じ税負担をしていただく、こういった趣旨からでございます。
  136. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 予算委員会でもビール税を初めとして酒税の引き上げに対する論議が出ましたが、この問題をとがめる審議をしようとする時間もございませんが、税金を上げた途端に非常にふえるという統計も出ております。  そこで、局長、後でいいですから、長年の年代別にどぶろくで検挙された件数というものを出していただけませんか。今もあると思うけれども、その時間がありませんからいいです。  この本に出ておるのですが、私の方で長年の検挙件数をずっと見ると、税金を上げた際にぐっと上がっているということが出ておるのが非常に不思議なのです。税金が上がった途端にずっとふえるというのは、ちょうど国鉄の運賃が上がった途端にがらがらとか、タクシーが上がった途端に乗る客が少ないとか、消費者米価が上がった途端にパンの方に移るとか、こういうものと同じようにどぶろくの件数も非常に多いというのを感じるのですが、その辺の問題意識は……。局長でも何でもいいですが、件数はいいです、時間がないから。
  137. 山本昭市

    ○山本(昭)政府委員 件数を用意してまいりましたので、お許しいただければ申し上げたいと思いますが……(川俣分科員余り時間がないけれども」と呼ぶ)ごく簡単に申し上げますと、密造件数は現時点ではほとんどございません。非常に遵法精神が徹底してまいりましたこと、それから酒税法上密造はできないという知識が国税庁の努力によって普及してまいりまして、例えば五十七年におきましては十二件、五十五、六年は十六件でございます。これが昭和二十八年ごろには一万四千件余りでございまして、ですから先ほど冒頭大臣おっしゃいましたが、それはやはりいささか事情が違った時期の話だと、私、担当の者としてはこの際ちょっと申し上げさせていただきたいと思います。
  138. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 僕が聞こうとしたのはそういう件数のあれよりも問題意識、酒税との関係があるかということを質問したつもりだが、せっかく資料をお持ちですから後でいただきたいと思うのでございます。  東北六県の数字を申し上げますと、私のところで持っているのは、明治三十二年が千百六十六件、それから明治の終わりの四十四年は五千八百十二件、それから大正に入って大正の終わりのころ、大臣がお生まれになったころは千百件ぐらいに落ちついて、それからずっと千件台が続いて昭和十年、いよいよ戦争に入るころになったら三千百九十七件、それから戦争が終わって昭和二十五年ごろ、これは大臣が血気盛ん、青年団長は毎日法を犯しておったころかな、一万百九十五件。戦後の混乱期、物が不足のときずっと上がってきておりまして、今件数が非常に落ちております。全然数字にならないくらいに落ちています。  これは検挙件数——検挙件数というよりも捜すというのか何というのか、私らは酒狩りと言うのですけれども、お回りに来る件数が少なくなったのじゃないかなという感じがするので、それは非常に問題が出てくるだろうと思いますので——これは調べるということを督促しているわけじゃございませんが、勢いそうならざるを得ないよ。だとすれば、酒税が減ってくるからどぶろくを取り締まるということだけではなくて、大蔵省としてはそれしかないだろうが、酒の受け付けはどこだと思うと言ったら農林省じゃないかと言う国民が割合におるところを見ると、自分の米を使って自分でつくって何が悪いか。じゃ、赤ちゃんをおろす場合お医者さんに認可を受ければおろせるのだ、したがってつくらせる法律が全然ない方がおかしいじゃないか。いや、ある程度多量の生産をする場合はすぐ許すよ、こういうことでやはり正式に酒税法に基づくことでなければだめだ。それではどぶろくをつくるという免許があるのだろうか。  こういうことをいろいろと考えている中に、近来騒がせた千葉県のおじいちゃんの話に相なるわけでございます。「酒税法に挑む七十四歳の執念」本人は一切酒はたしなまない、飲まない。この人なのです。やがてこうつくって、何だったらひとつ、窓口、国税局長にも御招待を出して大パーティーと相なった。もちろん行かない。行くわけない。行かないかわりに次の日になったらどっさり警察が入ってきた、こういうことからこの問題は取り上げられた。局長、これを読みましてどう思われましたか。これからどうするおつもりですか。  時間がありませんからついでに聞いていきますと、この七十四歳のおじいちゃん、前田俊彦さんは成田空港近くで一生懸命、執念でたるのあれをつくっているわけですね。これは検挙して罰則を加えて起訴されたのかどうか、一体どうなんだろうか、週刊誌物になっただけにこれは非常に関心がある。これをほっておくなということを言うんじゃない。やはりこれは司法関係にゆだねなければならぬだろうが、しかし、それにしても大蔵省当局は黙っているわけにはいかぬだろうから、その辺少しメモを読まないで聞かしてくれませんか。
  139. 山本昭市

    ○山本(昭)政府委員 税務執行の関係でございますので、国税庁から御答弁いたしたいと存じます。  ただいまお尋ねの成田のどぶろく密造事犯でございますが、ただいまその取り締まりが司法当局で及んでいないのではないかというお尋ねでございましたが、これにつきましては既に先般一月三十一日に千葉地方検察庁は酒税法違反で起訴をいたしております。その後、ただいまお尋ねの週刊誌の写真に出ましたような情景におきまして再度とぶろくの密造を行いましたので、これにつきましては国税犯則取締法によりまして強制調査をいたしまして、犯則の事実を確認いたしております。その部分につきましては、現在処分を検討中であります。したがいまして、司法当局におきます起訴が行われたということをこの際ひとつ御報告申し上げさせていただきたいと思います。
  140. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 やはり役人の答弁なんだな。どぶろくをつくる人はないと思っていますか、なくなったと思っていますか、その数字のとおり。あんた一体どう思いますか。
  141. 山本昭市

    ○山本(昭)政府委員 先ほど申し上げました数字は確かに検挙の件数でございまして、それでは一〇〇%密造者を検挙しているかというような御疑問があろうかと思いますが、私どもといたしまして、日常の広報活動その他によりまして、昭和二十年代、終戦直後のあの状況と比べますと、密造事犯というのはかなり減ってきているというふうに認識しております。  また、法治国家でございまして、法律違反があります場合には、そういう情報をキャッチいたしました場合には、適正なる措置をとることにいたしておりまして、その辺の努力はいささかも怠っていないわけでございます。
  142. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 そうすると、言葉じりをとらえるわけじゃないが、法治国家になったという国民的な意識が高まって件数が少なくなったと思いますか。
  143. 山本昭市

    ○山本(昭)政府委員 最近におきます国民生活の向上、生活の落ちつきその他の状況変化がございまして、そういう意味では、終戦直後と比べますと国民のその辺に対する遵法精神といいますものは向上してまいったというふうに考えております。
  144. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 いろいろと論議がある。それよりも、マントと旅人ではないが、何となくどぶろくに対する衛生上の意識が高まってきたんだから。いろいろな場面があったんだ、戦争中とか戦後の混乱期は。検挙されるから暗いところでつくる、トイレのそばでつくる、ネズミが落っこったってわからない、それを夜中に行って持ってくる、いろいろなことがあったんだけれども、今やそういう生活のゆとり、意識も高まってきた、社会も明るくなってきたから、そういうことはないんだ、そういう意識で質問している。  今は、苦しくて、経済的に困って、それてしょうがないから隠れてもつくるというものではなくて、衛生上も、明るく、しかも千葉県の前田さんじゃないけれども、大っぴらにつくって招待状まで出すという世の中の観点に立って——とぶろくと言うが、これは非常に大変なんですよ、この論議をすると。ブドウ酒、ワインから全部をやると、どこから法律違反でどこの部分が法律違反でない。今奥さん方には果実酒というのが非常にはやっているのだが、あれだって綿密に言うとすれすれの品物があるわけで、そういうことを考えると、もう少し税務署は、税を取り立てるということからの密造酒検挙ということから歴史的に変わってきたんだから、もう少し考え方を変えてどぶろくという見方を直してみたらどうかという問題の投げ方です。余りよく説明できないんですけれども、その辺どうですかね、大臣でなくても……。
  145. 大山綱明

    ○大山政府委員 私は、お父上がかつて御質問をなさいました議事録なども拝読をさせていただいたわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、かなり高い税負担を酒税につきましてはいただいておる、そういったことから免許なくしてはつくってはいけないという制度が導入されてきた、そういう経緯もございますし、また現実に、現段階におきましてもかなり高い負担をお酒については負うていただいておる。それで明治の初めころのようにかなり自由につくることを許すということになりますと、やはり国家財政的にもいろいろ問題があるのではないか。それから、汚いところでつくるというような場合も予想されますが、そういったことになりますと、国民の保健衛生とかいったような観点からも等閑視はできないのではないかというような感じを持つ次第でございます。  そういったことで、お言葉ではございますけれども、今ここで自家醸造についてはある程度自由につくらしてもいいではないかという御意見につきましては、にわかには賛成しがたいところでございます。
  146. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 大臣、一言伺いたいんですけれども、どぶろくを許すことを前向きで検討するという答弁にはならないことは私は承知しておるんだが、酒税の方から追う追い詰め方ではなくて、今お話があったように、暗いところでつくらなくなるわけですね。暗いところでつくるというのはやられるからです、検挙されるからです。悪い意識、認識があるからです。それよりも保健衛生的にも困りますよ、大変ですよ、何ぼうまくてもこういうのが入っておって、それよりも清酒の方はこういう栄養分が入っておって、大変にこの酒はうまいですよ。別に島根の大臣のところの酒を宣伝するわけじゃないが、何かそういうような考え方を、二十一世紀に向かって、ぎゅうぎゅう取り締まらなくてもいい世の中になったんだから、こっちは件数は大分減ったと言っているのだから。だから、そういう世の中になったんだから——それとも泥棒がなくならないようにどぶろくもなくならないのだ、何ぼゆとりあったって、どぶろくというのは暗いところでつくるという意識でやっちゃうんで困るんだということなのか、その辺を、何か肩の凝らない懇談会じゃないが検討してもいいのではないかなという時代に入ったんじゃないかという意味で質問しておるわけなんで、大臣、その辺何か……。それで終わります。
  147. 竹下登

    竹下国務大臣 私は出雲ですから、子供のころ知られていたのは八岐大蛇を須佐之男命が退治されたとき、あれを読んでみますと、口で、こう米をかんで発酵さして、酒で酔っぱらわして、それから征伐した。それで、きのう聞きましたが、財政物資になったのは足利時代でございます。その後、ずっときて、私も子供のころに酒狩りという言葉を覚えております。密造酒の摘発に来たということを酒狩りに来たと言うのです。それから、私のところの祖母が、私はささやかな酒造業者ですから、大きなつえみたいなものを持ってきて土間をどんどんとたたく、それは何かというと、酒屋が地下室でいわば免許を与えられておる以上の酒をつくっているのじゃないか、そういう意味でどんどんと——ああいう酒屋になっちゃいかぬぞと、こういう話を聞いたことがあるのです。  それから、だんだん成長するに及んで、ちょうど兵隊から帰ったころ、青年運動して歩くと、どこでもそのころ、昭和二十二年くらいですが、若い衆もどぶろくをつくっておったという感じがして、あのころはほかに楽しみがなかったから、行くたびに一杯飲んでいけと、こういうような状態でした。それで、法を犯しておったんだなと、あのころの話でございます。  それで、私なりに今度は若干の勉強をしましたら、結局、地主と小作というものが発生した理由に酒がまつわるというのです。大酒飲みがおると、必ず自分のところでどぶろくをつくって、それでアル中になって、したがって上納米もできない、あるいはお医者にもかかるというので、それが自作が小作に転落する一つの要因だった、封建制という別の問題はありますが。それだから、やはり今言っておった保健衛生の立場というものも非常に強調されるようになった。  それから、今度は戦後を見ますと、酒税が全体の租税収入の二〇%程度の率を占めておった。だから、ますます財政物資としての価値になったわけですね。そして今、経済成長しておりますから、それはよほど奇を好む人というか、変わり者と言っては悪いですが、仮にやるとしてもそういう人しかつくらぬようになってしまったという状態だと思うのです。それから全体からして節酒するとか、いわば知識水準も高くなった。だから、本当に風雅を好むとか、そういう特別な人以外は、実際問題として、それのコスト計算をしてみれば相当なことになるわけですから、本当はつくっている人というのは、物好きという言葉を使うと失礼ですが、ほとんどおらぬだろうと実際思います。  それで、ほかの国は、しかし自分のうちでつくるビール何ガロンとか決めて、それはいいと言っているのじゃないかと、ブドウ酒もそうですね。しかし最近は、今度は変わって大蔵大臣になってからの論理じゃないですが、そういう国がとうとう日本に追い越された。やはり財政物資であり、そして保健衛生が考えられておったから、ある程度税負担もあったから、やたらと飲まない自制心をつくる一つの環境になって、それで世界で一番長生きするようにもなったし、高校進学率も世界一だし。酒が高いからなんもかんも世界一になったという論理にいきなり結びつけるのはいかがかと思いますが、そういう論理も成り立つのかな、こういうような心境でございます。  農業政策としての中では、これも子供のときに聞いておりましたが、農家の人が米を持ってきて、ある種の委託醸造ですね、米を一升持ってきて一升もらって帰るのでしたか、そうして安い金を払っておりましたね。そういうことが農業政策の時代ではあったかもしらぬ。しかし今はそれほど、生活保護費自体も、これは別な意味において矛盾を感ずる話ですが、百八十万超しますと、川俣さんや我々の田舎で見れば、生産者米価百俵と生活保護費が一緒になったわけですから、大体、川俣、竹下の大正生まれの風雅な議論という程度のものではないかな。これは心境を素直に申し述べます。一
  148. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 大変ありがとうございました。  非常にうまいんだな。技術もよくなったのか、私、中澄みをこっそりもらってきて、部長局長を呼んで、大臣に隠れて一遍飲ませるから、本当にうまいのだ。これは優雅な論議よりも、割合にこれから農業とのかかわり合いで出てくるのではないかな。酒税の高さにびっくりして質問したので、どうもありがとうございました。
  149. 相沢英之

    相沢主査 これにて川俣健二郎君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後零時三十二分開議
  150. 相沢英之

    相沢主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  大蔵省所管について質疑を続行いたします。三浦久君。
  151. 三浦久

    三浦(久)分科員 私は、大蔵省に防衛費の後年度負担問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  五十九年度の防衛費の政府予算案は、歳出が二兆九千三百四十六億円であります。そして後年度負担の新規分が一兆一千五百九十九億円、後年度負担の既定分が九千八百八十二億円ございますから、後年度負担は全部で二兆一千四百八十一億円になります。これは初めて二兆円をオーバーしたわけですね。後年度負担を入れれば、防衛費は全体で五兆八百二十七億円という巨額に達しております。その中でも特に注目をしなければなりませんのは、最近の後年度負担の伸び方が大変大きくなっているということだと思うのです。  そこでお尋ねいたしますけれども、最近五カ年間の防衛費の平均伸び率は六・九九%ですが、それに対して後年度負担分は一九・二%の伸び率を示しています。そのとおりでしょうか。
  152. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 平均の伸び率はちょっと手元に持っておりませんけれども、五十五年度以来の伸び率を申し上げますと、歳出予算の伸び率は五十五年度が六・五%、五十六年度が七・六%、五十七年度が七・八%、五十八年度が六・五%で、五十九年度が六・五五%でございます。それから後年度負担額の伸び率は、五十五年度が三八・三%、五十六年度は六・一%、五十七年度は二九・六%、五十八年度は一三・一%、五十九年度は八・八%となっております。
  153. 三浦久

    三浦(久)分科員 平均伸び率を計算してないというのですけれども、これは単純に計算すれば出るわけで、間違いがないと思います。  私が言った伸び率で計算をしてみますと、三年後の六十二年度には防衛費は三兆五千九百四十億円になります。そして後年度負担は同じ六十二年度には三兆六千三百八十億円。ですから後年度負担の方が多くなるのですよね。そういう計算をされていますか。
  154. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 後年度負担が幾らになるかとか、歳出予算が幾らになるかという予測というものは我々としてはいたしておりません。防衛庁といたしましては、ともかく「防衛計画の大綱」の水準をできるだけ早く達成するというのが政府の基本方針でございますので、それに到達すべく、特に取得に長期間を要する艦船とか航空機につきましては、国庫債務負担行為とか継続費とかというものをいただきまして後年度負担をいただくことにしておりますが、各年度の予算をいただくときに具体的にどうするかというのは、大綱でもうたっていますとおり、そのときどきにおきます経済財政事情とか、国の他の諸施策との調和を図るということになっておりますので、結局各年度年度におきまして、その予算編成過程を通じまして後年度負担が決定されるということでございまして、今幾らくらいになるかということを申し上げることはできないわけでございます。
  155. 三浦久

    三浦(久)分科員 何か答弁を避けようとしていますが、計算すればそうなるのです。五年間の防衛費と後年度負担の伸び率をそのまま適用して計算すれば、私が今言ったようになることは間違いがないですよ。何せ後年度負担が雪だるま式にふえているということは、あなた数字でおっしゃってはいないけれども事実であります。これは毎年巨額の金を投じて兵器を購入しているということ、また、わずか頭金だけ払ってあとは全部後年度負担にしているということから出てきていると思うのです。  P3Cについてちょっとお尋ねします。  P3Cの第一次発注は五十三年度でしたね。そのとき初年度支払いの額は幾らか、それは一機当たり平均価格の何%に当たるのかということですね。同じ質問で第五次発注の五十九年度。ちょっと教えてください。
  156. 廣中佑見

    ○廣中説明員 お答えいたします。  五十三年度は八機調達をいたしました。総額は五百九十八億九千五百万円でございます。そのときの初年度支払い額は十二億五千五百万円でございます。総額に占める初年度支払い額は二・一%になります。  次に五十九年度でございますが、五十九年度もやはり八機を調達いたしました。総額は九百三億三千八百万円でございます。この場合の初年度支払い額は二億九千三百万円でございます。総額に占めます初年度支払い額の率は〇・三%になります。
  157. 三浦久

    三浦(久)分科員 今の答弁を聞いておっても、五十三年度に比べて五十九年度は初年度支払い額がうんと少なくなっていますね。ですから、後年度負担がどんどんふえるようにふえるようにやっておるわけですよ。  それで、ちょっと大蔵省にお尋ねしたいのですけれども、こういう債務負担行為をやる場合に、初年度の支払い額はおおよそ購入価格の何%くらいが妥当なのだという基準があるのかないのか、メーカーがうんと言えば幾ら少なくてもいいものなのか、それをちょっとお尋ねしたいと思います。
  158. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 後年度負担を生じますものは、御存じのように国庫債務負担行為と継続費がございますが、いずれにつきましても、後年度負担額をやる場合に、当該年度にどれだけという基準を設定することはしておりません。
  159. 三浦久

    三浦(久)分科員 そうすると、幾らでもいいということですね。
  160. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 そのおのおのの経費の性格によりまして違ってくるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、一つの基準でやるということは考えられない、こういうことでございます。
  161. 三浦久

    三浦(久)分科員 しかし、同じP3Cを購入する場合でも、五十三年度は初年度支払い額が二・一%だった。五十九年度は〇・三%なんですね。同じ機材を買う場合でもこんなに違ってきているので、何かそこに一つ基準みたいなものがないと……。後年度負担をいたずらにふやしていいわけではありません、例外的な措置ですから。そこで何らかの歯どめがあるのかないのかということでちょっとお尋ねしたわけですが、ないということであれば次に質問をさせていただきます。  防衛費の後年度負担は正面装備と後方経費に利用されております。五十九年度の正面装備の後年度負担額並びに同じ五十九年度の後方経費の後年度負担額、おのおの幾らくらいになっておりますか。
  162. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 五十九年度の後年度負担額、正面分が一兆六千六十四億円でございまして、後方分が五千四百十八億円でございます。
  163. 三浦久

    三浦(久)分科員 それでは、後方経費の後年度負担、これは継続費がありませんから国庫債務負担行為ということになると思いますけれども、その問題についてお尋ねいたします。  まず、大蔵省に。一般的なことですが、国庫債務負担行為というのはどういう予算の執行の場合に認められるのか。これはおたくの方で五十七年三月十七日付で文書を出しておられますね。ちょっとそれを教えていただけますか。
  164. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 国庫債務負担行為と、それから先ほど申し上げました継続費がございます。それで、国庫債務負担行為は財政法十五条、それから継続費の場合は十四条の二に規定されております。いずれにつきましても、事業の完成に二年以上を要するものにつきまして、後年度の国庫負担となるべき契約を締結する権限を付与するわけでございます。  しからば、国庫債務負担行為と継続費とどう違うかというお話が次にあるかと思いますけれども……(三浦(久)分科員「それはいいです」と呼ぶ)よろしゅうございますか。
  165. 三浦久

    三浦(久)分科員 そうすると、いずれにしても初年度では事業が完成しないという場合にだけ認められるということでしょう。  ちょっと防衛庁にお尋ねしたいのですけれども、P3CとかF15などの航空機の修理、これは予算上は装備品等整備というのに含まれていますね。これは後年度負担の対象になっておりますね。P3CとかF15の修理に二年ないし三年なんですよね、予算書を見ると。何でこんなにかかるのだろうか。つくるのだってそのくらいでできるんじゃないか。修理といえば、部品を発注して部品を購入して、それで修理するということだと思うのですけれども、それが二年ないし三年ということになっておるのですよ。どうしてこんなに長い時間がかかるのかをお尋ねしたいというふうに思います。
  166. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 例えば航空機修理でございますけれども、航空機修理自体にいたしましても、例えば定期検査をする場合に年度をまたがってやるというものもあるわけでございます。例えば分解修理をいたしますと、その修理に六カ月ぐらい要する、そういう場合もございます。そうすると、十二月ぐらいに発注しても翌年の六月ぐらいになるとか、そういうふうなこともあるわけでございます。  それから、他方、部品を購入いたします場合に、例えば補用エンジンと申しますか予備のエンジンを調達するのも、この航空機修理の中に入っております。これは製造するのに相当の年月を要しますので、二年とか三年くらいかかるわけでございます。  それから、そのほかの構成いたします電子部品にいたしましても、最近非常に高度化しておりますので、これも製造にかなりの年月を要するということで、後年度負担というか、国庫債務負担行為をいただいておるわけでございます。
  167. 三浦久

    三浦(久)分科員 そうすると、その修理に二年も三年もかかって、あなたたちが言う有事に間に合うのですかね。修理している間は飛ばないのでしょう。何かしっくりこないのですよね。例えばP3CでもF15でも、何も今新しく発注しているというものじゃありませんよね。これは閣議了解事項で、五十七年七月にはF15が百五十五機ですか、それからP3Cも七十五機を整備するというふうになっておりますでしょう。それで、ライセンス生産で生産しているのでしょう。初年度にはどういう部品が要って、次の年には大体どのくらいの部品が要るなんということは大体わかっているはずですね。ですから、新たに特注だからとか、そういうことで二年も三年もかかるというような性格のものじゃなくて、当時部品の交換とか、そういうふうなものは見通しが立っているはずですよね。ですから、どうしてそんなに二年も三年もの後年度負担でやらなければならないのかということがわからないのですよ。一年間で調達できるものというのはないのですか。航空機の修理の部品というのはみんな二年も三年もかかるのですか。何かちょっと理解できないのです。
  168. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 一年間で調達できるような単純な部品もございます。ただ、主な部品と申しますか、値段の張るものは、やはりその製造に長期間を要するわけでございます。先ほど申し上げましたような電子部品であるとか、それから維持エンジンであるとか、そのほか主な、高度に発達した航空機の部品と申しますのは、その製造に相当長期間を要するわけでございます。  それで、その見通しが立つだろうという御指摘でございますが、確かに見通しが立っておりますので、二年とか三年とか先に要るものを部品として調達するわけでございます。
  169. 三浦久

    三浦(久)分科員 そうすると、今飛行機が、P3Cが故障したという場合には、部品はストックされてあるのですか。それで修理はすぐできるのですか。どうなっているのですか。
  170. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 やはりある程度の故障率を見まして、それに必要な部品というものは在庫で持っております。それで、その在庫を回転させながらやっているわけでございますが、その在庫を管理しておきませんと、在庫となっています部品がだんだん消耗してまいります。ですから、それの見通しを立てまして、二年とか三年とかの期間を置きましてやるということにしております。
  171. 三浦久

    三浦(久)分科員 そうすると、一つの部隊が持っているP3CならP3Cを全部修理するのに二年、三年かかるというのじゃなくて、一つの飛行機、一機単位で修繕するのに、注文してからでき上がるまで二年ないし三年かかる、こういう話ですか。
  172. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 ちょっとそこはずれがあると思うのです。我々がやっておりますのは、部品は部品で部隊でも持っておりますし、それから補給処でも持っております。それからあるいは、大修理をお願いするような工場でも置いております。そういうところに置いておりますものを使って、できるだけ早く航空機は修理して飛ばすようにしておるわけでございます。
  173. 三浦久

    三浦(久)分科員 そうすると、在庫がないものだったら二年か三年かかるということになるわけですね、修理するのに。
  174. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 在庫で持っております。その部品が摩耗してくるとか、それから壊れた部品は取りかえるわけでございます。そうすると、新しい部品がそこの機体には入るわけでございますが、取り出しました部品を修理しておきませんと、それはまた使えないということもありまして、またその修理にある程度年度をまたがるような修理も出てくる、そういうことでございます。
  175. 三浦久

    三浦(久)分科員 大体わかりましたけれども、一年間で、発注して年度内に買えるものもあると言いましたね。どの程度あるのですか、全体の修理費の。
  176. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 申しわけございませんが、今ちょっと手元で数字を持っておりませんので、また後ほど……。
  177. 三浦久

    三浦(久)分科員 予算書を見ると、航空機修理で五十九年度の支出が三億七千万、それで六十年度以降支出が九百三十四億円ですよ。そうすると、これは〇・四%。いや間違いないです。わずか三億七千万円ぐらいしか年度内に購入できないのですか。こんな少ない額しか購入できないの。もっとあるんじゃないかと思いますがね。
  178. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 ちょっと正確な数字を持っておりませんので申しわけないのですが、今先生御指摘いただきましたのは、国庫債務負担行為予算におきます当年度支払い分と申しますか、その前金分だと思うのです。それ以外にも当年度予算自体で買うものにつきましては、歳出予算の方に計上してございます。
  179. 三浦久

    三浦(久)分科員 それは幾ら計上されていますか。
  180. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 五十九年度の航空機修理費、装備品等整備諸費の歳出予算の中での航空機修理費の額でございますが、これは約千二百五十一億ございます。ただし、このうちで歳出化がございますので、その歳出化を差し引いたものが当年度の歳出予算の修理費ということになります。
  181. 三浦久

    三浦(久)分科員 だってこの千二百五十一億円というのは、国庫債務負担行為を前にやっておって、今年度いわゆる既定分として支払うものは入っているのでしょう。
  182. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 それは含まれております。
  183. 三浦久

    三浦(久)分科員 ですから、今年度部品を購入できるというようなものについて幾ら予算化しているのかということをはっきりさせてもらわないといけないけれども、時間がないから先に行きます。また後でゆっくり……。  こういう問題もあるのですよ、後年度負担の問題で。いわゆる思いやり予算と言われている問題ですが、アメリカ軍の隊舎とか家族の住宅、こういうものを建てる場合にも国庫債務負担行為が利用されているわけです。例えば沖縄のキャンプ・シールズに建てられている一戸建ての住宅ですが、これも五十八年度からの二年間の国庫債務負担行為になっているわけですね。その一戸建ての米軍用住宅の床面積というのは百平米ですよ。百平米の米軍用の住宅が五十八年、五十九年の二年間の国庫債務負担行為になっているのですが、これなんかどうしてこういうことになるのですか。単年度でできるのじゃないですか。
  184. 小澤健二

    ○小澤説明員 お答えいたします。  キャンプ・シールズの一戸の住宅でございますが、これは非常にまれな例だとは思いますが、電気、水道、給水、これはユーティリティーと申しておりますが、この関係が非常に容量不足したりまたは老朽化したものについては更新しておるわけでございます。これと同時にあわせて発注いたしたい、そしてこれを完成さすということで、たまたま後年度の方にお願いしたというのが事実でございます。
  185. 三浦久

    三浦(久)分科員 だって単年度でできるのでしょう。それを何もこんな百平米の米軍用の住宅をつくるのに、後年度負担を利用する手はないと思うのですよ。  私、建設省にもいろいろ聞いてみたのです。建設省がきょうお見えになっていらっしゃるのでちょっとお尋ねしますけれども、五十八年度、五十九年度の公営住宅建設事業で、一、二階のいわゆる低層住宅に国庫債務負担行為を利用した例がありますか。どうでしょうか。
  186. 高橋徹

    ○高橋説明員 お答え申し上げます。  五十八年度と五十九年度の公営住宅予算の戸数計画では、低層住宅はすべて本年度歳出予算によることとしておりまして、予算上国庫債務負担行為による計画はございません。
  187. 三浦久

    三浦(久)分科員 ないのですよ。そうでしょう。防衛施設庁だけが何でそういうことをやるのかということ、会計の原則をルーズに崩しているのではないかと私は思うのです。  それから、例えばこういうのもあるのですよ。これは五十九年度の問題ですけれども、横田にやはり高級将校用の住宅、これは二百平米のを建てますね。これも二年間の国庫債務負担行為なんですよ。これはどうしてなんですか。
  188. 小澤健二

    ○小澤説明員 今先生御指摘の沖縄におけるキャンプ・シールズの件につきましては、これはほかのところにおよそ百戸の一団地をなした住宅を建てておりまして、たまたま一カ所建物が一棟離れておったので、これをあわせてやらせていただいたという結果でございます。  それから、横田につきましては、先ほども申し上げましたように、横田の電気、給水、それから給気などのシステムが老朽化しておりますので、今これを更新する工事を考えております。これにあわせてこの将官宿舎、一戸でございますが、今度建てる予定にしておりますが、それで五十九年度に予算計上していただいて、後年度にやらせていただくということにしているのは事実でございます。
  189. 三浦久

    三浦(久)分科員 話を聞いておってもよくわからないですね。よそのものと一緒にやるからということですか。
  190. 小澤健二

    ○小澤説明員 この場合はですね。
  191. 三浦久

    三浦(久)分科員 そうしたら、それだからといって、何もこんな二百平米の住宅や百平米の住宅を建てるのに後年度負担を利用することはないじゃないですかね。建設省だってどこだってそういうことはいっぱいありますよ。そんなことやってない。やっているのは防衛庁ないしは防衛施設庁だけなんですよね。  会計検査院お見えになっていらっしゃいますが、こういう問題はどういうふうにお考えでしょうか。例えば運輸省なんかの港湾建設を見ましても、何年にもわたるものであっても、できるだけ単年度ごとに予算を組んでやっているのですよね。こういうルーズな国庫債務負担行為の利用の仕方は、もうちょっとシビアにしてもらわないと困ると私は思うのですけれども、会計検査院、どういう御見解でしょうか。
  192. 沢井泰

    ○沢井会計検査院説明員 お答えいたします。  ただいま防衛施設庁から答弁がありましたように、キャンプ・シールズの場合には三百戸といったような大きな団地でこうしたような住宅をつくっております。ほかの場合にも計画的に行われまして、一件の工事につきましては一棟で四戸建てとかというような形でつくられておりまして、工期あるいはその発注時期等から見まして、工事が翌年度にわたるものが相当多いものと思われます。したがいまして、国庫債務負担行為として契約するのもやむを得ないものではないかと思われます。  ただいま御指摘のような点につきましては、今後の住宅の建設等につきまして、私どもは十分に検査してまいりたいと思っております。
  193. 三浦久

    三浦(久)分科員 国庫債務負担行為というのは単年度主義の例外なんだということですよね。そのことをもっと厳しく考えなければいけないのじゃないですか。今のようにルーズに後年度負担をどんどんふやしていくと、それは何か理屈をつければ幾らでもできるでしょう。例えば十二月に発注するから年度にまたがるのですなんて、そんな言い方をすれば、何だって後年度負担になってしまうのですよ。だけれども、そういうことは例外中の例外としてしか認めない、それは財政の健全化という観点からそうなっているわけでしょう。ですから、今会計検査院や施設庁がおっしゃるような理由で後年度負担をどんどんふやして、結局は防衛予算を小さく見せかけようというやり方というのは、私はよくないやり方じゃないかというふうに思っております。  時間がありませんので、またの機会にこの後年度負担の問題は細かく追及していきたいというふうに思いますけれども、こういうルーズな国庫債務負担行為がどんどん後年度の軍事費を増大させていく。そしてまた、国債費増加をしておりますね。こういうものと相まって財政の硬直化というものの大きな原因になっているというふうに考えます。  そういう意味で大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども、この債務負担行為というのは単年度主義の例外なんだという立場で、もう少し厳しく私は指導していただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  194. 竹下登

    竹下国務大臣 御意見として十分承らせていただきます。
  195. 三浦久

    三浦(久)分科員 終わります。
  196. 相沢英之

    相沢主査 これにて三浦久君の質疑は終了いたしました。  次に、薮仲義彦君。
  197. 薮仲義彦

    薮仲分科員 私は、公明党の建設の部会長として大蔵大臣に問題を災害に絞って、財政当局の大臣としてのお考えを何点かお伺いさせていただきたいと思います。  まず最初に、大蔵大臣の災害に対する御決意のほどを伺いたいわけでございますが、これは総理が先般行われました衆議院の本会議の代表質問の答弁の中でこのように答えております。   災害対策についてでございますが、我が国は、自然的条件から多くの生命財産を災害で失っております。国土を損壊し、あるいは国民の  生命財産を守る、こういうようなことを予防するということは非常に基本的な国家の責務であると思います。政府といたしましても、これらの対策の強化を図るために、昭和五十九年度において国土庁に防災局を設置するなど防災行政体制の充実強化を図ってまいります。そのほか治山治水事業、国土保全事業の推進、地震予知を初めとする防災に関する科学技術の研究の推進、警戒避難体制の整備、災害時における迅速かつ的確な応急対策の実施、これら等を目途に災害対策に万全を尽くしてまいりたいと思います。これが中曽根総理の災害に対する御決意でございますが、中曽根内閣の閣僚の一人として、特に財政を預かる大蔵大臣のお考え、これは非常に重要でございますので、大蔵大臣の災害に対する御決意を最初に承っておきたいのでございます。
  198. 竹下登

    竹下国務大臣 これは総理が藤尾政調会長の代表質問に対してお答えになったのと同じ心境でございます。いささか私事にわたりますが、今年度の中で私の選挙区であります島根県が災害集中地帯でございましたが、そういうことにのみ刺激されたというわけではなくて、災害のない国土というものは私どもの子孫のためにもこれは残さなければならぬ、政治家としての使命だと理解しております。
  199. 薮仲義彦

    薮仲分科員 大蔵大臣の非常に心強い御答弁を伺って私も意を強うするわけでございますが、私は本年に限っての災害の中で、特に大臣も御承知のように、本年は五九豪雪と言われるように、日本海側はもちろんのこと、太平洋側まで全国的な規模で降雪に見舞われました。私は、五六豪雪のときも新潟を初め石川、富山、福井まで行ってまいりましたし、本年度も新潟、富山、石川と回ってまいりました。やはり本年度の豪雪というものは非常に異常である。これは大臣が先刻御承知のように、五六豪雪はある一定期間に、短期間に相当多くの雪が降った。期間は非常に短かったわけでありますが、本年度の雪の降り方は、非常に長期にわたって降り続いておった。そこで、除排雪費用が増高するということが問題になりました。  これは昨日の閣議で、幹線市町村道に対しての除雪費は助成するという形になりました。当然、各市町村は普通交付税によって除排雪費用を計上しております。また、特交による配分も今後なされるでありましょう。でも、それだけでは手当てできないという実態が現在起きつつある中にこのような決定をしたということは、雪の中で苦しんでいらっしゃる皆さんにとっては非常な朗報であろうと私は思うわけでございます。  これはもうちょっと具体的にお伺いしたいわけで、その前に、建設省お見えだと思うのでございますが、本年度の豪雪に対してどういう認識を持っておられるか、また昨日の閣議の決定に従って早急に対応をとられると思いますけれども、五二あるいは五六豪雪のときに、それぞれ二十億あるいは四十億という予備費の取り崩しが行われました。それに準ずるような形で建設省は財政当局と折衝なさると思うのでございますが、まだまだ精査しない段階だと思いますが、建設省の現状に対する認識をお伺いしたいのです。
  200. 鈴木道雄

    ○鈴木説明員 市町村道の除雪に対しましては、ただいま先生がお話しのように、普通交付税で通常賄われていたわけでございますが、五一あるいは五六豪雪のように異常な豪雪のときには、臨時特例の措置ということで、幹線市町村道に対する除雪費の補助という措置が行われております。  今回の豪雪につきましても、五六豪雪に匹敵するような豪雪ということでございまして、今御指摘のように、昨日の閣議でそういったことが了承されております。私どもといたしましては、現在その幹線市町村道の除雪の補助の対象になる市町村がどこにあるか、あるいは除雪費がどの程度になるかということについて、できるだけ早く結論を出すように作業を行っているところでございます。  なお、補助の採択条件とか補助率等につきましては、五十六年のときの例に倣っていきたいと考えております。
  201. 薮仲義彦

    薮仲分科員 これは認識を正確にしていただくために、私は雪の降り方等についてお伺いしておくのですが、建設省が直轄の国道として除排雪をやっていらっしゃる国道があるわけでございますけれども、我々の聞いている範囲では、当初予算に四十六億余り組んでいらっしゃる。直轄国道も大体この範囲内で終わるのか、それともこれを上回るような雪が降ったのか。これは市町村道においても同じように予算を上回っているのじゃないかという一つの例としてお伺いしたいのですが、直轄の国道は最終見込み大体どの程度の除排雪費用がかかりそうですか。
  202. 杉山好信

    ○杉山説明員 お答え申し上げます。  直轄国道の内地におきます五十八年度除雪費当初予算額は、先生ただいまおっしゃいましたように、四十六億五千万を計上いたしておりまして、このたびの豪雪によりまして、最終見込み額はまだ確定はしておりませんけれども、六十数億円で、当初予算の四割増し程度になるのではないかと見込んでおる段階でございます。  以上でございます。
  203. 薮仲義彦

    薮仲分科員 私は、災害委員会で所掌の国土庁長官にも申し上げたのです。大臣は、御自分の出身県が今度の豪雪に見舞われて、ややもすればじくじたる心境もおありかという感じがしました。私は、災害に対してはそういう感覚は一切おやめなさい。総理の発言にもあり、ただいま大臣もおっしゃられたように、災害だけは待ったなしですし、復旧というものはその被害に遭われた人にとっては何よりも重要な課題でございますので、この除雪費用の助成ということについては非常に多くの国民が期待していらっしゃいますので、大臣も、実態が精査された段階では、不安のない除雪費用が各地方団体に交付されますように御尽力いただきたいと思うわけでございますが、その点いかがでございますか。
  204. 竹下登

    竹下国務大臣 今お話がございましたとおり、稻村国土庁長官から昨日、お願いしたいといういわゆる正式発言がありまして、私も、今おっしゃったように承知しましたと言わないで黙っておりました。が、黙っておるということは了承されたということでございます。それで、私の感じからすると、今鋭意、建設省からもお答えがございましたように、私どもの主計とで詰めておる。だから、可能な限り最も近い閣議で、その予備費使用の件について私の方から閣議請議ができるようにしたいものだと思っております。
  205. 薮仲義彦

    薮仲分科員 その点どうかよろしくお願いをいたしまして、私は次の問題に移らせていただきたいと思うのでございます。  これはやはり災害でございますけれども、大規模地震特別措置法が昭和五十二年に施行されたわけでございますけれども、五十四年には地震防災対策強化地域が指定されて、六県百七十市町村にわたって強化地域として指定されました。五百九十万余りの方々が指定された地域内に住んでいらっしゃるわけです。その方々は、地震というものはいつ来るんだろう、そういう不安の中で生活をしていくという、またある意味ではそれに立ち向かって、この国土を保全するためにそこで頑張っておられるわけでございます。災害というものは忘れたころにやってくるわけでございます。地震というものはいつ発生するかわからない、こういう状態の中にあるわけでございます。  そこで何点か具体的にお伺いしたいわけでございます。  特に大規模地震特別措置法につきましては、議員立法ではございますけれども、いわゆる財特法、緊急に整備すべき事業というものを内閣総理大臣が承認をして、それをおおむね五カ年で達成しなさいという法律が成立しているわけでございます、昭和五十五年に。これで着実に本年まで事業が進んでまいったわけでございますが、いよいよ五十九年度が最終年度になるわけでございます。これによって果たして当初内閣総理大臣が承認した事業というものが円滑に、しかも当初の目的を達成しておるかどうか、改めて私はここで確認をさせていただきたい、こう考えておるわけでございます。  私は、冒頭大蔵大臣財政特例法に対するお考えをお聞きしたいのでございますが、被害に遭われるといいますか、いつ地震が起きるかわからないところにおられる県民にとりましては、この財政特例法によりましておおむね五カ年で緊急に措置すべき事業というものは、一部のものには補助率のアップ等も含めまして積極的に対策を講じましょう、こういう事柄になっておるわけで、非常に期待されておるわけでございます。しかし、それはお金を伴っての事業であり、大蔵大臣の考えというものは五百九十万の国民にとって非常に影響が大きいわけでございますので、大規模地震特別措置法、そしてまた財特法に対して大臣はどういうお考えで取り組まれていらっしゃるのか、その辺お伺いしたいのですが……。
  206. 竹下登

    竹下国務大臣 御指摘のとおりでございまして、この法律に基づきます事業計画は五十九年度が最終年度でございます。そういうことで、今各関係省庁においてこの計画の推進方について今日まで鋭意努力してこられたというふうに承知しております。したがって、それの結果によって、延長という問題も含めて仮に議論されるといたしますならば、私はその段階でありませんと——今のところは関係省庁で鋭意努力しておられる状態を見守っております。  延長問題ということになりますと、現段階で財政当局からの意見はいま少し静観しておるべきではないかな。おっしゃる意味はすべて理解できますが、立場からすればそうお答えすべきだろう。その辺御了解をいただけるものと思います。
  207. 薮仲義彦

    薮仲分科員 大臣の言うことはよくわかりますので、具体的にちょっと大臣に御理解いただくために、進捗状況を私も確認をさせていただきたいと思うのでございますが、国土庁に二点お伺いしたい。  あなたの御発言は非常に重要です、県民にとっては影響が大きいですから。地震はいつ来ても不思議でない、またいつ来るかわからない、我々はこういう現在の地震に対する基本的な認識に立って、それならばいつ来てもいいように対策を講じようということで頑張っておるわけでございますが、国土庁は地震の所掌官庁として、東海大地震の逼迫性といいますか、いつあっても不思議がない地震に対してどういう認識をしているか、これが一つ。  それから、全体としてこの法案を所管している主務官庁として、全体的な進捗状況、五十八年度末、そして五十九年度までに大体どの程度進捗できるか、おおむねのところ、見通しで結構ですからお示しいただきたいと思います。
  208. 清水一郎

    ○清水説明員 第一点でございますけれども、マグニチュード八程度の海洋型の大規模な地震の発生につきましては、これまで再来周期あるいは地殻のひずみの蓄積状況、こういったものから、その発生場所につきましてはある程度推定がつくようになっておるわけでございます。御質問のいわゆる東海地震、駿河トラフ沿いに発生するものでございますけれども、これにつきましては、安政の地震以来百二十年余が既にたっておる、あるいは地殻のひずみの蓄積状況等から見まして、大規模地震の発生する可能性は非常に大きいというふうに考えられておるわけでございます。今、いつ発生するかということはわからないわけでございますが、いつ発生してもおかしくないというふうに言われておるわけでございまして、このために東海地域を中心にいたしまして、海底地震計あるいは地殻ひずみ計等七十幾つかの観測機器を整備いたしまして、気象庁にテレメーターし、二十四時間監視をしておる、こういう状況にあるわけでございます。  それから、第二点目の五十八年度末までの全体の進捗見込み、それから五カ年計画終了時点までの見込みはどうかという点でございます。この事業は、トータル四千百八十億円余の大きな事業でございますが、これまでのところ、五十八年度末の進捗率は、見込みでございますけれども、六二%程度になろうかと思っております。五十九年度末の数字につきましては、現在予算案の審議中でございますし、格付等もされておりませんので、ここで幾らというふうに申し上げることはできないわけでございますけれども、これまで四年度間の進捗状況等を勘案しますと、これは私どもの推定でございますけれども、八〇%程度になるのではないか、このように考えておる次第でございます。
  209. 薮仲義彦

    薮仲分科員 それでは、きょうは関係省庁お見えだと思うのでございますが、緊急整備事業計画が、いまおっしゃられたような形で、避難地に始まって急傾斜地や地すべり防止対策地域に至るまで何項目があるわけでございます。この中で各県が鋭意事業を推進しているわけでございますが、各省の進捗状況を参考までにきょうここでお伺いしたいし、逆にいまのお答えにもあるように、まだ予算が通ってない段階で、格付も行われていないのに、どの程度かということもいかがかと思われますので、推計で結構ですし、あるいは一〇〇%達成できないのかどうか、その辺のところで結構でございますから、建設省、消防庁、厚生省、文部省、林野庁、この順番でこの事業に対する今日まで四年間の進捗状況、そして大体全部事業が達成できるのかどうか、その辺を含めて順次お答えいただきたいと思います。
  210. 狩野昇

    ○狩野説明員 お答えいたします。  地震対策緊急整備事業計画は、昭和五十五年から五十九年度まででございます。建設省所管分は千八百億円程度となっております。  この事業の進捗状況でございますが、昭和五十八年度末まででおおむね六五%という状況になっております。  今後の見通しでございますが、計画発足以来事業の推進に格段の配慮を行ってきておりますが、いま申し上げましたように、五十八年度末の六五%という状況がございまして、昭和五十九年度を最終年度とする計画の達成は困難となっているというぐあいに判断しております。
  211. 金子皓治

    ○金子説明員 お答えいたします。  消防庁で担当しております地震対策緊急整備事業につきましては、二つございまして、消防用施設と通信施設でございます。消防用施設につきましては、まだ五十八年度の決算見込み等が出ておりませんが、推計では六六・五%の実績になるのではないかと私ども考えております。また、通信施設につきましては六〇・四%になるであろうと考えております。  なお、五十九年度につきましては、私ども鋭意施設の計画的な整備を図るよう努力いたしますが、七二%前後で終わるのではないかと考えております。
  212. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 厚生省の関係でございますが、社会福祉施設の関係は四八%でございまして、五割弱でございます。それから、公的医療機関につきましては六五%でございます。事業の性格上非常に重要でございますので、私ども関係県に強く指導したところでございます。  五十九年度においてもやりたいと思っておりますけれども、ある程度の残事業量は残ると思っております。この残事業量につきましては、事業の性格上早急に措置する必要があると考えております。
  213. 今村清光

    ○今村説明員 地震対策緊急整備事業といたしまして林野庁が整備いたしております治山事業の実施状況でございますけれども、五カ年計画が約百九十六億円でございますが、昭和五十五年度から五十八年度までの実施予定額約百三十三億円でございまして、進捗率おおむね六八%となる見込みでございます。  五十九年度事業見通しでございますが、現在予算案を御審議いただいておるところでございますけれども、実施箇所もまだ未定でございます。そういうことで確実なことは申せないわけでございますけれども、おおむね前年度と同じくらいというふうに推定をして計算をいたしますと、八十数%ぐらいになるのじゃないだろうかというふうなことで考えております。
  214. 逸見博昌

    ○逸見説明員 公立小中学校校舎の地震対策緊急整備事業でございますが、緊急性にかんがみまして、私ども関係市町村から要望のありました事業を優先的に採択いたしております。その結果、全体計画に対しまして五十八年度末で五九%という状況でございます。  昭和五十九年度におきましても、対前年度と同額の予算を計上しておるところでございますが、市町村の計画どおり補助できるようにしたい。その結果、恐らく七〇%強の到達度になると考えております。
  215. 薮仲義彦

    薮仲分科員 大臣、今お聞き及びのとおり、大体これから予算が執行されるわけでございまして、必ずしも明確な数字ではございませんが、五カ年終わって全体としては七〇%から八〇%という数字で皆さん出ているわけでございます。  私はここで、時間があれば幾つかの問題点を指摘したいと思っておったのですが、時間がございませんから、最後大臣に何点か問題点を提起しながらお考えをお伺いしたいわけでございます。  今、最後に文部省が御答弁なさいました、要望があれば全部やりますよというようなこと。あるいは病院につきましても、非常におくれている部分がございます。厚生省の関係しております病院についてもおくれているわけです。この中で、病院の事業を始めようという計画が五十九年、本年において計画を立てておりますという病院が静岡県だけでも六カ所ほど、ここに資料として挙がってきております。あるいは学校も七〇%台ということでございますが、なぜこういうふうにおくれてくるかというと、もう大臣は先刻御承知のように、耐震診断結果というものをなさなければなりません。それによってどうしても事業が当初の五十五年からスタートできなかった。二年おくれでスタートした。これは、いかに関係省庁あるいは地元が努力をいたしましても、耐震の診断というものがきちんとでき上がらなければ事業にかかれないという制度上の問題でおくれているのであろうと私は認識しておるところでございますし、また、海岸などの堤防、特に建設省の関係で、これは余りおくれられると非常に困るわけでございますが、この中でおくれておりますのは避難地で、避難地は現在、私が地元の静岡から取り寄せただけでも計画の二六%でございますから、特に津波の危険ということで、避難地を用意しろということになったときでも、具体的には用地の手当てで非常に困惑をしているんじゃなかろうか。あるいは海岸堤防につきましても、ここに資料がちょっと来ておるのですが、なぜおくれているんだというふうにいいますと、例えば文化財保護の関係であるとか、文化庁がそこが名所古跡として非常に大事であると言うと工事がなかなか進んでおらない、こういうようなことで海岸堤防がおくれているという実態にございます。  また、林野庁の事業でも、我々がいつも感ずることは、現在全体で予防治山の方は六四%。この治山というのは地震においては非常に重要でございますけれども、これもやはりはかばかしい進捗を示しておりません。これらの関係省庁の一つ一つを見てまいりますと、私は、事業自体はそれぞれ懸命に努力をなさってきているとは思うのでございますが、制度上あるいは諸般の事情から思うに任せず、非常に進捗の度合いがおくれているものもございます。  しかし、法律自体は五十九年度で、時限立法でございますので打ち切られるわけでございます。これは当然、災害の特別委員会で、その時点で、先ほど大臣がいみじくも申されたように、この事態でありますと延長がどうだということが論議される可能性は多分にあろうかと私は思うのでございますけれども、災害の委員会でやはり延長ということが重要な議題として審議されて、延長やむなしというような事態になったとき、大臣は、その災害対策特別委員会の決定といいますか、そういう動き、こういうものに対しては十分尊重して対処してくださると思うわけでございますけれども、今各省庁から御報告がありましたように、総理が緊急に五カ年間承認なさった事業の進捗がおくれておる、こういう事態も勘案なさいまして、延長については十分御配慮いただきたいと思う次第でございますが、大臣のお考えを聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  216. 竹下登

    竹下国務大臣 ちょうど五十五年度予算編成のときに私大蔵大臣でございます。で、静岡の知事さんがお見えになりまして、個々の問題どうするか、僕にいきなり話ししたって実際問題わからないじゃないかなどという議論をしながら、そうして一方で議員立法の進みぐあいとの整合性を保ちながら、あのときから五年間というものいろいろ案じておりました。  今日、問題の中にはいわゆる地域問題、土地の問題でございますとか、それから個別な問題として今御指摘なさいました文化庁の問題でございますとか等々あろうかと思います。したがって、国土庁で今せっかく関係各省と可能な限りの事業の推進をやろうということで調整していただいておるわけでございますが、仮定のことでお答えにくうはございますものの、一般論として申し上げるならば、国権の最高機関たる国会、なかんずく議員立法、その育ちがそこで結論が出るという問題について、これは尊重をするのは当然のことではなかろうかというふうに私は理解しております。
  217. 薮仲義彦

    薮仲分科員 よろしくお願いします。  以上で終わります。
  218. 相沢英之

    相沢主査 これにて薮仲義彦君の質疑は終了いたしました。  次に、永井孝信君。
  219. 永井孝信

    永井分科員 大蔵省に自賠責の問題についてひとつ問題点を若干御質問してみたいと思うわけであります。  御承知のように、最近の自動車の普及率は非常に目覚ましいものがございまして、自動車の保有台数は大体四千四百万台近くになっているというふうに私どもは承知しているわけであります。そして、自動車の運行が非常に激しくなってきました関係から、交通事故で不幸にして命を落とされる方の数もぐんとふえてまいりました。一年間に一万人近い人が死亡しているわけでありますが、この人たちは当然自賠責の保険によって一定の救済措置を受けておりますし、あるいは任意保険などでも救済措置を受けているわけでありますが、この自賠責の保険金の支払い限度額が、最近の賃金や物価の動向などを勘案しました場合に、かなり低位に置かれているのではないか、このように私は思うわけです。現在の保険金支払い限度額は、御承知のように、死亡の場合二千万円でありまして、傷害の場合は百二十万円でありますが、これは昭和五十三年七月以来五年余りにわたって据え置かれたままになっているわけですね。そういう二千万円という死亡の場合の給付金というものは現状になかなかマッチしていない。そういう状況から、各損保会社などが行っている任意保険も一億円時代に突入したというふうに私は自分なりに判断しているわけでありますが、五十八年度予算においても、自賠責の給付金が据え置かれたままで、自賠責特会から累積運用益の約二分の一に相当する二千五百六十億円というものが一般会計に繰り入れをされたわけですね。かなりこれは当時問題になりました。ユーザーの側からすれば、自賠責の支払い限度額を据え置いたままで運用益を約二分の一も一般会計に繰り入れをした、このことに対する不信感というものはかなり強いものがあったと思うのであります。私自身もその保険を掛けている一人でありますからそう思うわけでありますが、この支払い限度額を現状の社会状況に照らして引き上げることができないか、引き上げる意思を持っておられないか、こういうことについてまず冒頭にお伺いしてみたいと思うわけであります。  なお、引き上げの場合は当然自動車損害賠償責任保険審議会に諮られることになるわけでありますから、そういう立場から大蔵大臣としてひとつ基本的な態度をお伺いしたい、こう思うわけです。
  220. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御指摘のありましたとおり、五十三年七月に改定されたものでありまして、まさに五年余を経過していることもあります。したがって、今永井さんおっしゃいましたと同じように、まさに引き上げるという、引き上げを求める声が高まりつつあるということは私どもも承知しております。やはり保険金限度額の改定ということになりますと、もう一方では他の国家補償制度とのバランスを勘案するということが一つございます。それから、もう一方には、最近自賠責保険が収支の赤字が拡大基調にあることからいたしまして、保険金限度額の引き上げが今度は保険料に与える影響というものがいま一つございます。したがって、これらを総合的に勘案しながら今後真剣に、まさに真剣に検討してまいりたいというふうにこの点は考えております。  それから、五十八年度予算一般会計で繰り入れしていただいておる、当然将来繰り戻すということ、なかんずく衆参両院で附帯決議もついておるというような問題等も私どもとしてはそれなりには認識をいたしておるつもりでございます。
  221. 永井孝信

    永井分科員 大臣の御答弁を聞いておりますと、簡単に言えば、実情は十分理解ができる、引き上げの希望が強いことも十分わかる、しかし、保険収支の関係もあって保険料に、料率にはね返ってくる、こういうふうな御答弁でありますが、しかし限度額の引き上げというものと保険料率の引き上げというものが必ずセットしなければいけない、こういうことは必ずしもその理由づけとして納得できるものではないと私は思っているのです。  それは、簡単に申し上げますと、この前、九十八国会でも、私、交通安全対策特別委員会でこの問題に集中的な質問をしたことがあるのですが、例えば自動車保険、自賠責の関係を受け持っておる損保協会ですね、損保協会の方と農協共済と二つ自賠責を扱っているわけでありますが、農協共済の方は毎年黒字になっている。損保協会の方は毎年赤字になっている。昭和五十六年度の統計で見ますと、単年度で言えば損保協会の方は八百二十九億円の赤字を出している、こういう数字になっているわけですね。一方農協共済の方は単年度で、規模も小さいのでありますが、十一億円の黒字を出している。だから、今大臣が言われましたように、支払い限度額の引き上げというものは十分に必要だという理解はあっても、保険料率にはね返るというが、じゃ、片方の農協共済は黒で損保協会が赤になる、一体これはどう理解すればいいのか。  例えば、ついでのことに次の質問をあわせて行っていきたいと思うのでありますが、この保険料の料率算定の場合、大蔵省が算定委員会に対して諮問をするとき、あるいは算定委員会が作業するときに、その基礎となる資料というのは、農協共済のいわゆる黒字になっている側はその基礎資料としては対象として出していないのですね。常に赤字の方の損保協会の分だけが対象にされて保険料率のことが云々されている。この点はどのように理解すればいいのですか。
  222. 加茂文治

    ○加茂説明員 御承知のように、自賠責制度はその大宗を占めます損害保険会社の自賠責保険と、それから四十一年から販売が開始されております農業協同組合の自賠責共済から成り立っておるわけでございますが、両者の収入保険料、共済掛金のシェアは、五十七年度におきましては自賠責保険が約九三%、自賠責共済が残りの七%となっておるわけでございます。御指摘のように自賠責保険の収支が自賠責共済の収支に比して悪化をしておるわけでございますが、これは保険と共済の契約者の居住地域等の相違、契約者構成の相違等によるものと考えておるわけでございます。すなわち、農協が主として営業しております農村地域は都市部に比して自動車保険あるいは共済の事故率が一般的に低いと考えられておること、また、車種別に見ました場合に営業用車の収支が特に悪化をしておるのが現状でございますが、これらの営業用車のほとんどが損保の自賠責保険を利用しておる、そのような要因がございますために、損保の自賠責保険契約全体で見ますと、農協の自賠責共済よりも収支が悪化しておるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、自賠責保険保険料は自賠責制度の中で九割以上を占めておるものでございまして、制度の中心となっておるわけでございますから、当局といたしましては自賠責保険の収支の動向を常に監視しておく必要があるというふうに考えております。しかしながら、今後自賠貴保険保険料率を引き上げなければならなくなり、具体的に引き上げ幅を検討する際には、御指摘の自賠責共済の収支も参考にしてまいりたいと考えております。
  223. 永井孝信

    永井分科員 そこで、この現在の自賠責の保険収支の状況を踏まえて、保険料率、保険金支払い限度額の引き上げ及び累積運用費の使途まで対象にして昭和六十年度以降の自賠責保険のあり方というものについて近く自動車損害賠償責任保険審議会に諮問することがあるやに聞いているのですけれども、仄聞しているのですけれども、そういう事実はございますか。
  224. 加茂文治

    ○加茂説明員 先ほど御説明いたしましたように、自賠責保険の収支は悪化しておりまして、単年度で見ますと昭和五十三年度から赤字に転じておりまして、この赤字幅は拡大傾向にございます。この理由は、自賠責の保険料が昭和四十四年十一月の改定以来、十四年余ほぼ据え置かれていること、またこの間の保険金支払い限度額は三回にわたって引き上げられておりまして、五百万円から二千万円になっておるということでございます。また支払い基準、いわゆる査定単価でございますが、これもほぼ隔年ごとに引き上げられてきたということ、それからさらに、最近におきまして交通事故が昭和五十二年をボトムとして再び上昇傾向に転じておるというような事情がございます。  本年におきます自賠責保険の収支予測は、現在検証中でございますが、このような状況を反映いたしまして、昨年度の予測を上回る収支悪化が見込まれておるわけでございます。一方、財確特別法の可決に際しまして、自賠責特会に滞留している運用益については保険契約者の利益のために活用するための具体策の検討を速やかに進めることという衆参両院の附帯決議もございまして、現在運輸省におきまして具体的な活用方策を検討中でございます。そのような状況を踏まえまして、近く自賠責審議会を開催いたしたい、このように考えておるわけでございます。
  225. 永井孝信

    永井分科員 大蔵大臣にこの関連からひとつ、念を押すと言えば悪いのですが、御回答いただきたいのですが、最前、私が申し上げましたように、昨年は運用益の二分の一相当分を一般会計に繰り入れたわけですね。これがこれからの自動車保険のあり方についてかなり国民各層から反発を受けていくことになっている、また強くなっていくと思うのですね。そうすると、今言われたようにこれから審議会に諮問をするという計画は存在するのですけれども、その一般会計への運用益を繰り入れることは今後はあってはならないと思うのでありますが、それはしないと言えるか、約束はできるかどうか、一言言っていただけませんか。
  226. 竹下登

    竹下国務大臣 あの当時も申し上げて、私自身大蔵大臣でございましたから、いわばこの問題について、保険制度が何らの比較的抵抗なくして成り立つのは、ユーザーに対しての理解がきちんと求められたときのみである、したがってこの制度は言ってみれば国費を特別会計の別にあるところのものを借りるのじゃなくしてユーザーのものを借りるというような議論がたびたびございまして、そうして私どもとしてお答えの中には、しかし一般会計へ入れていただければ、直接金に色がついておるわけではないけれども、自動車事故等が少なくなるようないろいろな施策にも現実の問題として使われることでもこれあり、いろいろなお答えをしたわけでございますが、基本的に、私は、この情勢の大変な変化があって、そういうことは予測をそう容易にするわけにはいきませんけれども、例えば事故が大変少なくなってかなりのものが運用対象になり得るという状態が、およそ考えられないと思いますけれども、そういうまれなる場合ということを念頭に置けば、未来永劫絶対いたしませんとかお願いできる問題ではございませんとかまでは言えないにしても、やるべきことではないという認識はございます。
  227. 永井孝信

    永井分科員 そこで、これから審議にかける段階で私は具体的なことをちょっと聞いてみたいと思うわけでありますが、今説明があったように、自賠責の収支は赤字が累積してきている、赤字が単年度ごとにふえてきている。確かに、損保協会の方から出されている資料を見ますと、昭和五十三年度から赤字に転落をしたという数字が出ているわけですね。  そこで、私は、疑って悪いのですけれども、本当にそういうことになっているんだろうかという気がしてならぬわけですよ。ユーザーの方がたくさんここにもいらっしゃるわけですから。それは、例えば保険関係でいいますと純保険料と付加保険料がありますね。この付加保険料の中には契約手数料も入っていれば査定費用もちゃんと織り込まれているわけですね。この純保険料のうち六〇%分は再保険料として国の方にお渡ししているというのか納めているというのか、そういう形になっている。あとの四〇%がそれぞれの保険を扱っている損保の会社の運用に任されているわけですね。その四〇%の分について大蔵省は六%の利潤を、今、平均六・〇一%の利潤というものを認めている。その六・〇一%の認められた利潤を会社としては十分に運用できるようにということから対応していくのでありますけれども、現実は、六%を超えた利潤を上げるためにも活用されていると見るのが妥当だと私は思うのですね、会社でありますから。これは、強制保険の性格上からいって、当然その分は公表すべきだと私は思うのです。一般の人の貯金とか一般の保険と違うのですから、強制保険でありますから、税金みたいなものでありますからね。  そうすると、果たして六・〇一というそういう認められた数字、パーセントで利潤を求めるということだけに終わっているのかどうなのかというと、そこにもっともっと大きな利潤を求めると見て間違いないと私は思うのですね。自動車損害賠償保障法の第二十五条にはこのように書いているのですね。「保険料率の算定につき営利の目的の介入があるときは、これらの処分をしてはならない。」これはいわゆるノーロス・ノープロフィットでありまして、保険会社に損失を与えない一方で利潤も与えないということだというように私は理解をしているのでありますが、しかしその分についてはベールに包まれたままである。そして大蔵省の方に報告されているものでいきますと、例えば損保会社の運用益については五十七年度で言えば百六十四億円のいわば利益を上げている。五十七年度末で累積運用益の残高というのは七百十六億円に上っているわけですね。これだけの運用益を片方損保会社では持っているわけでありますから、単に今言われたように赤字がずっと続いてきたから料率の改定が必要として迫られてくるということにならぬと思うのでありますが、この辺の関係について、時間の関係もありますからひとつ簡潔に答弁してください。
  228. 加茂文治

    ○加茂説明員 御指摘のように、自賠責保険は六割を国に再保険をしておりますので、その滞留資金から生じる運用益につきましては損保会社分と自賠責特会分があるわけでございます。損保分の運用益につきましては、元受け保険会社各社の運用資産の平均利回りで運用しておりまして、御指摘のように五十七年度においては六・〇一%で運用されておるわけでございます。損保会社の運用資産につきましては、自賠責の保険を含めまして各種の損害保険を販売する上で必要な物的施設、例えば全国に店舗を展開するというようなことで必要な不動産等が入っておるというのが現状でございますが、そういう中で現在運用してまいっておりますが、先ほど先生御指摘のように、この自賠責の保険はまさにノーロス・ノープロフィットの原則でやっておるわけでございます。したがいまして、そういう関係から、自賠責の運用益につきましても別途経理をいたしておりまして、その残高が今七百十六億ということでございます。したがって、これは自賠責のために使うということになっておるわけでございます。
  229. 永井孝信

    永井分科員 今答弁をいただいたわけでありますが、この質問冒頭に返ってみますと、運用益が一般会計に繰り入れられたこと、そうして、任意保険が一億円時代に突入していること、そう考えていきますと、今言ったような損保会社の運用益については、もっとやっぱり責任上明らかにできるような方策を講じることとあわせて、支払い限度額の引き上げというものは思い切ってやるべきだ。その際、支払い限度額の引き上げと保険料率の引き上げをセットすべきでない、私はそういうことを強く考えるわけでありますが、今後の対応について一言大蔵省としての見解をお聞きしておきたいと思います。
  230. 加茂文治

    ○加茂説明員 先ほどから出ておりますが、自賠責の支払い限度額につきましては、五十三年の引き上げ以来据え置かれておりまして、この点については、そういう限度額引き上げを求める要請が強いということは十分承知をしておるわけでございます。  一方、自賠責保険の単年度収支は、先ほど申しましたように、五十三年以降赤字に転じており、しかもその赤字幅が拡大してきておる。したがって、こういう状態が続けば早晩料率調整が必要になるものと考えておるわけでございます。  限度額引き上げと料率引き上げをセットにすることについて具体的に検討しているわけではございませんが、このような情勢でございますので、限度額を上げれば必然的に料率引き上げをしなければならなくなるというような関係がございまして、そこらあたり、運用益の活用方法も含めまして、総合的に検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  231. 永井孝信

    永井分科員 その辺のところは、単純にセットするということではなくて、あくまでもユーザーの立場に立ってこれからの検討を進める態度として持ってもらいたいということを、時間の関係もありますから、強く要望しておきたいと思います。  次に、自衛隊の車両について、関連してちょっとお伺いするわけでありますが、自衛隊で使用する自動車はいわゆる自賠責の適用になっていないわけですね。もし事故が起きれば国家賠償法によって処理をする、こういうことになってくるのですが、この自衛隊の自動車による死傷事故というものもかなり存在をするわけですね。死亡事故は、五十八年度は二件で終わっているわけでありますが、五十七年度は六件も出ている。こういうことを考えてみますと、今のモータリゼーションが発達した中では、やはりこれは大変な問題だと思うのであります。しかし、自衛隊の車両が事故を起こしたときに、過失相殺が厳し過ぎるということがよく私どもに問題点として提起されてくるわけです。せんだっても鹿児島でそういう問題が起きましてかなり新聞をにぎわしたことがありました。したがって、自賠責は適用しないのですけれども、国家賠償という形をとる場合に、やっぱり被害者の立場に立って対応すべきではないかと思うのですね。この関係については防衛庁の方からお答えいただきたいと思うのですが、自衛隊に対して国民の不信感が増幅していかないようにするためにも、自賠法に基づいた理解が同等にできるようなそういう措置をとってもらいたいと思うのでありますが、防衛庁の方からお見えになっている課長ですか、ひとついかがでございますか。
  232. 渡邉正身

    ○渡邉説明員 お答えいたします。  防衛庁といたしましては、損害賠償を行うに当たりましては、事故と相当因果関係のある範囲で、通常生ずべき損害について適正な賠償を行うように努めているところでございます。被害者に過失がある場合は、その程度に応じて損害賠償額についてしんしゃくすることにしておりますけれども、賠償額には限度額は設けておりません。  なお、政府の補償事業の損害てん補基準においても、過失による減額については防衛庁と同様であるというふうにこの点は承知しております。
  233. 永井孝信

    永井分科員 この過失相殺の分についても適切に行われているというふうにお答えをしていらっしゃるのですが、しかし一般の自動車の場合は、自賠責を適用する場合もあるいは任意保険を適用する場合においても、あくまでも被害者の立場を優先するということが貫かれているわけですね。その割合は別にしても、もちろん過失が双方にあるのでありましょうけれども、それでもなお、例えば死亡事故が起きた場合には、加害者が被害者を救済するという立場は厳然として貫かれている。ところが、この自衛隊の場合はその辺のところが非常に厳しくて、せんだっての鹿児島の事件では、新聞に報道されましたように、過失相殺が厳し過ぎるために思ったような賠償金がもらえない、こういうケースも出てくるわけですね。  そこで、時間がありませんからお伺いするのでありますが、例えば損保協会にしてもあるいは農協共済にしてもあるいは民間の生協の共済にしてもそうでありますが、これらについては支払い基準というものは全部公表されているのですが、自衛隊の場合はその支払い基準が明示されていない。その支払い基準というものをなぜ明示しないのか。明示できないとするならば、それは一体何の理由なのかということをお伺いしたいと思います。
  234. 渡邉正身

    ○渡邉説明員 お答えいたします。  防衛庁の賠償基準は、防衛庁が責めを負う場合の損害賠償を実施するに当たりまして、業務処理の円滑化、さらに、陸上自衛隊とか海上自衛隊あるいは航空自衛隊、もろもろの部隊があるわけでございますが、そういう部隊等の賠償実施機関相互の均衡を図り、公正を期し、統一的な処理を行う必要から、その処理手続であるとか賠償の範囲であるとか積算の基準、そういうものを内部規則として定めておるものでございまして、従来から公表は差し控えさせていただいておるところでございます。
  235. 永井孝信

    永井分科員 そこのところが問題なんですね。表現が悪かったら勘弁してもらいたいのですが、昔の軍の機密ということと同じような思想を持っているのではないか。自衛隊のことについてはいかなることでも国民には明らかにしない、こういう思想がこの自動車の問題についても貫かれているのではないかと私は思うのですよ。他の問題と違って、事故を起こした場合には、こういう基準に基づいてこのように処理をしますということを国民に向けて明らかにすることはむしろ当然の責務ではないかと思うのですね。なぜそれができないのか。そこまでなぜべールに包まなくてはいけないのか。そこのところが自衛隊に対する国民の不信感のもとにもなってくると私は思うのですよ。もう一回答えてください。その理由を明示する用意があるかどうか。
  236. 渡邉正身

    ○渡邉説明員 お答えいたします。  自賠責保険の支払い基準が公にされている理由は、私どもはちょっと承知しておりませんけれども、防衛庁の賠償基準というのは非常に適用範囲が広うございまして、単に自動車だけではなくて、航空機とか艦船とか武器、そういうような、自衛隊の訓練等によって生ずるすべての事故に及ぶもの、これをすべて包含しているわけでございます。したがって、これらのすべての適用範囲をカバーするために、自賠基準に準じているほか、それぞれ裁判例とか物価の上昇とかそういうものを考慮して算定しているわけでございます。こういうことで非常にその種類が多種にわたるということでございまして、事故の原因とか責任の有無、その程度が異なるばかりではなくて、被害の内容その他についてもいろいろ相違があるということで、画一的な処理が非常にしにくい。したがって、一見、類似の事案につきましても、これを比較して損害賠償額に差異が生ずるというような場合があるわけでございます。その意味で、本基準を公にするということは基準を設けた目的に反し、かえって円滑な処理を妨げ、公平かつ妥当な解決が困難になるおそれがありますので、個々の被害者に対しては必要に応じて当該事案の処理基準を説明することはありますけれども、一般的な公表は従来から差し控えさせていただいているところでございます。
  237. 永井孝信

    永井分科員 時間がありませんので多くを言うことはできないわけでありますが、私は、演習をするときとか武器の問題どうこうという問題を言っているのじゃないのです。一般道路を自衛隊の自動車も走るわけだから、自衛隊の自動車が今走っている台数は三万九千台に上っているのですよ。三万九千台もの自動車が日常一般道路を走って、市民の暮らしの中でいわば毎日のように接触があるわけですから、一般の車両とそこに区別があってはならない、他の問題は別にしたって自動車の事故に関する問題くらいは公表すべきだ、私はそのことを強く申し上げて、時間がありませんのでここで回答を求めるわけにいきませんけれども、自衛隊がもっと国民の中に信頼を持たれようとするのであれば、社会常識上対応できるものは対応していただきたいということを強く申し上げて、残念ですが、これで終わります。
  238. 相沢英之

    相沢主査 これにて永井孝信君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  239. 米沢隆

    米沢分科員 私は、いわゆるネズミ講税金取り戻し訴訟とアメリカにおける合算課税、この二点についてお尋ねいたしたいと思います。  去る二月二十七日にネズミ講で全国を騒がせました天下一家の会・第一相互経済研究所と破産管財人が熊本西税務署を相手取って起こしておりましたいわゆるネズミ講税金取り戻し訴訟の判決が言い渡されました。判決の中で裁判長は、第一相研は法人としての要件を満たしておらず、すなわち課税となる人格なき社団とは認められない、その代表としての内村会長には当事者能力がないということで、国の課税処分に誤認があったとして一部課税の取り消しを認めたと伝えられております。このように第一相研は人格なき社団法人ではないとの判断が示されたことによりまして、第一相研への法人課税や贈与税課税も不当だったことになり、改めて管財人が法人、贈与両税の取り消しを請求すればその払い戻しを受ける可能性があるということでございます。国税庁としてはこの判決をどのように受けとめておられるのか、事実関係はどのようなものであったのか、あわせて御答弁をいただきたいと思います。
  240. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員御指摘のネズミ諸関係の訴訟でございますが、実は訴訟が二つございまして、一つは譲渡所得税関係の課税処分取り消し請求事件でございます。これは内村健一氏からいわゆる第一相研に対しまして出資をいたしました際の譲渡所得税にかかわるものでございます。これにつきましては全部取り消しの判決をいただいたわけでございます。  それから、もう一つございますのは、同じく第一相研に資産が移転をいたしまして、しかる後にネズミ講の事業が第一相研で行われたというふうに私どもは認定をいたしまして、したがいまして、ただいま御指摘のございましたように、これに対しまして法人税の更正処分をいたしたわけでございます。この法人税の処分にかかわります取り消し請求事件、それからそれに附帯いたしますところの贈与税の課税処分取り消し請求事件がございます。この事件につきましては、第一相研は人格なき社団ということで訴訟の当事者能力がないという御判断をいただきまして、これにつきましては訴えの却下という判決をいただいたわけでございます。  私どもといたしましては、判決の内容を詳細に検討いたしまして、また法務当局とも十分協議を重ねまして、これはやはり控訴いたしまして高等裁判所の御判断を仰ぐべきだという結論に達しまして、本日控訴いたしたわけでございます。  私どもといたしましては、三十九年の最高裁の判決によりまして、人格なき社団の存立の要件が明らかにされておるわけでございますので、この要件を第一相研は満たしておると考えまして、実質的に人格なき社団であると認定をいたして法人税の課税処分をいたしたわけでございますし、その判断は現在でも正当であると考えているわけでございます。そういうことで、改めて、本件の規模並びに重要性にかんがみまして高裁の御判断を仰ぐことにしたわけでございます。
  241. 米沢隆

    米沢分科員 きょう控訴されたそうでございますが、最大の争点はやはり人格なき社団であったかどうかという判断にあると思います。いただいた資料を読みましても、人格なき社団として成立し、内村健一と別人格を有するに至ったか否かの判断が争点である、こういうふうに書かれておりますが、これを読む限りにおいてどうも国税庁の主張の方が弱いような感じがするのですが、勝つ見込みはあるのですか。
  242. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 御指摘のように、人格なき社団として成立しておらないという地裁の御判断でございますが、先ほども申し上げましたとおり、三十九年の最高裁の判決におきましては一般に「団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定している」ということが人格なき社団の存立要件でございます。私どもは、こういう要件を満たしておると考えておるわけでございまして、改めて高裁の判断をお願いしているわけでございます。  訴訟の帰趨はもとより裁判所で御判断なさることでございますが、私どもとしてはこの点を今一遍高等裁判所において御判断をお願いしたいと思っているわけでございます。
  243. 米沢隆

    米沢分科員 この件に関しては熊本国税不服審判所にも管財人の方から審査請求がなされていると聞いておりますが、この判決によって審判所はどういうような手続を今度はとられるのですか。
  244. 四元俊明

    ○四元説明員 お答え申し上げます。  ネズミ講関係法人税関係あるいは所得税関係あるいは徴収処分につきまして百件を超える審査請求が熊本国税不服審判所の方に係属いたしております。ちょうど長年刑事裁判の方が進行いたしておりまして、その間資料の収集等ができかねるということでやむを得ず調査・審理の保留が行われてまいっておりまして、昨年六月末刑事裁判の決着に伴いまして、調査・審理の再開をいたしておりまして、現在熊本不服審判所の合議体において審理中の段階でございます。
  245. 米沢隆

    米沢分科員 第一次判決があってもなくても、それとは関係なしに審判所は審理を続けていくというシステムになっておるのですか。
  246. 四元俊明

    ○四元説明員 合議体の判断になりますから、私どもで本件につきましてどういうような展開になるかということをこの段階で申し上げられないのをお許しいただきたいわけでございますが、一般的に申し上げますと、建前といたしますと、裁判の結果が確定いたしまして、その事実関係法律関係の判断が最終決着がつきましたときは、これは当然私どもより上位のものでございますのでその確定判決に拘束されるという立場にございます。まだ一審段階、あるいはその他のいろいろな段階があるわけでございますが、一般的に申し上げまして、そうした点も審査請求人の主張を追加していただくことによって参考にしていくというのが一般的やり方でございます。
  247. 米沢隆

    米沢分科員 今破産管財人の方から審判所に審査請求がなされて、その審査請求の中身によれば、これは概算でありますが、国、県、市が徴収した各種の税金は金利分を含めると約百五十七億円にも達するというように言われております。もしこの判決が確定判決だとしたならば、そして管財人が法人税、贈与税等についてまた返還請求を起こして、それも今のような人格なき社団法人ではないと認定された場合に、国税庁として返還する総額はどれぐらいになりますか。
  248. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 先ほど申し上げました二つの訴訟のそれぞれにつきまして額が異なるわけでございますが、まず最初に、譲渡所得税関係の課税処分取り消し訴訟につきましては、仮に全部取り消しの判決が確定した場合の還付税額は本税、加算税を含めまして合計で五千二十六万円程度でございます。これを管財人の方にお返しすることになるわけでございます。  それからもう一つ法人税、贈与税の課税処分取り消し訴訟でございますが、これは御承知のとおり却下の判決でございますので、この判決自体が確定をいたしましても直ちに税金を返還しなければいけないという意味合いではございません。しかしながら、仮にこの判決につきまして税金を返すという事態になるといたしますと、法人税分の更正処分に係りますものが十四億一千七百七万円でございます。それから贈与税分の決定処分、これは無申告でございますので決定処分をいたしておりますが、その額が十二億三千二百九万円でございます。
  249. 米沢隆

    米沢分科員 本件にいいます課税処分に事実誤認があったかどうかの問題も国税庁としては大変重要な問題でありますが、もしここで国が控訴せずに判決が確定するとしますと、今おっしゃいましたようにトータルで大体二十七億程度の金が管財人に入る、こういうことになるわけです。そういう意味で、別の意味からいいますと、例のネズミ講によって被害を受けた皆さんの被害者救済の道がこの金で何とか開けるのではないかという希望に沿えるか否かというその部分もかかわって、まさに重要な問題だと私は考えるわけでございます。  ちょうど初めて代議士になったころ、物価対策特別委員会に籍を置いておりまして、このネズミ講の規制立法にかかわったこともあります関係で、私は重大な関心を持たざるを得ないのでございますが、控訴によって十二分勝訴するという判断があるならばそれなりの御判断でございましょうが、控訴してただいたずらに時間だけが経過して、結果的にはここで出ておるような判決に終わるとするならば、その分だけ被害者救済の道が遠くなるわけでございまして、できれば早急に被害者救済の道をつくるためにも控訴というものはいかがなものだろうか、あるいはまた早期に矛をおさめる手段はないものだろうかということを考えておるのですが、いかがなものでしょうか。
  250. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 被害者救済というお考え、確かに被害者の方々に対しましては、私どもといたしましても一般的に同情すべきものがあるであろうと考えておるわけでございます。しかしながら、この課税処分に関係いたします限りは、第一相研にしろ内村健一氏個人にしろ、いずれにしても、いずれかにつきまして所得が発生しておったわけでございます。国といたしましてはその所得に対して課税をいたさなければいけない、こういう立場でございます。そこで、従来は内村健一氏個人に対して課税をいたしたわけでございますし、この課税処分は確定しておるわけでございますが、これが第一相研の方に事業が移されまして、今度は私どもは第一相研の所得ということで認定をして課税をいたしてきたわけでございます。仮に内村健一氏の個人の所得ということになりましても、私どもとしては既にこれに課税するすべがございません。除斥期間を経過いたしておるわけでございます。それから、今おっしゃいましたように総体の金額としても相当なものでございます。私どもといたしましては、地裁の御判断に対しまして、さらに事実認定その他で争うべき点があると認めておりまして、この点につきまして再度高裁の御判断を仰ぎたいと思っておるわけでございます。  勝訴の見込みあるいは個々の弁論の仕方ないしは攻撃、防御方法等につきましては、本日控訴したばかりでございますが、やはり係属中の裁判ということになりますので詳細は控えさせていただきたいと存じますが、そのようなことで今一度高裁の御判断をお願いしたいと存じておるわけでございます。
  251. 米沢隆

    米沢分科員 きょう控訴されて、これからの手続ですから先は読めない部分もあるかもしれませんが、ただ引き延ばすというよりも、でき得れば早期結審に至るように国税当局としても努力を賜りたいということをまずお願いしておきたいと思います。  次は、アメリカにおける合算課税の問題でございます。  御案内のとおり、アメリカに進出しました日本企業が今悲鳴を上げていると言われる問題に、一部アメリカの州政府が採用しております合算課税、ユニタリータックス適用の問題がおります。このユニタリータックス方式の外国企業への適用は、二重課税防止を定めました租税条約の趣旨や国際慣行にも反し、日本の対米投資や、ひいては日本の税収にも最終的には影響を持つ今日の重大な問題であると思います。したがって、これが是正のために政府の最大限の努力が望まれるところであります。  さて、最近アメリカ政府と一部州政府にはこれが改善の動きがあるやに伝えられておりますが、しかし前途多難だという向きも多いわけでございます。そこで、この際、この問題に関する政府の方針並びに若干のコメントをいただきたいわけであります。  まず第一に、このユニタリータックスの問題について従来日本の政府としてどのような対応をしてきたのか、その経緯と今後の方針について伺いたいと思います。
  252. 大山綱明

    ○大山政府委員 ユニタリータックスの問題につきましては、先生御指摘のとおりでございまして、私どもも同感でございます。そういったような立場から同課税方式を廃止してもらえるように何らかの措置を米政府においてもとってほしいということをかねがねいろいろなルートを通じまして申してまいったわけでございます。いろいろなルートでいろいろなことをやっておりますが、最近のことを申し上げますと、先日、日米の投資委員会というのが日本で開かれました。それから、大蔵省と向こうの財務次官の会合も過日、二月の下旬にございました。そういったようなルート、それから外交チャネル、いろいろなルートを通じて同ユニタリー課税方式の廃止を要望しているところでございます。向こうの反応は必ずしも、どういう状態になっているということをはっきり申してくれていない状況ではございますけれども、三月の下旬には、アメリカ政府におきますところのユニタリータックス課税問題を検討する作業部会の結論を出す、ここまでは私どもも答えを聞いておるところでございます。
  253. 米沢隆

    米沢分科員 外務省の方来ておられますか。——そこで、今日本だけではなくて、この問題は英国などEC諸国からも強い反対があるそうでございまして、アメリカ政府は、今おっしゃいましたように、昨年九月に合算課税問題の検討グループ、いわゆる作業部会を設置してこの問題を検討されておると聞いておりますし、近く勧告をする方針だと言われますが、その見通しと改善勧告内容が一体どのようなものになるか。現在の段階で、推測の域を脱しないかもしれませんが、できる範囲内で、わかる範囲内で、一体どういうような内容になりそうなのか、お聞かせいただきたい。
  254. 七尾清彦

    ○七尾説明員 御指摘のとおり昨年の九月二十二日に発足いたしました作業部会で検討を進めておるようです。当初二月の終わりに結論を出そうということでございましたが、さらに一カ月、今御答弁にありましたようにおくれておるという現状でございまして、大体の情報から推察いたしますに、やはり州の課税権の問題でございますので、できるだけ州政府の自主的な動きによってこの問題について善後策を講ずるという方向で動いておるようでございますけれども、その先、技術的諸点につきましてはなおきちんと推測するほどの材料は残念ながらまだ集まっておりません。
  255. 米沢隆

    米沢分科員 昨年十一月にレーガン大統領が訪日なさった際に、中曽根総理大臣の方もこの問題の改善方を求められたというふうに新聞報道がありました。その際レーガンさんの御回答は、今おっしゃったように、連邦政府は州の税制に直接介入できない、すべきでない、こういうようなことだったというふうに言われておりますが、今おっしゃったような勧告の内容のいかんを問わず、当初二月二十四日に勧告すると言われたものが三月にずれ込んでおる。かなり検討も進めば進むほど難しい段階に入っておるのではないか、こう考えるわけでございます。特に大統領選がことし十一月にありますので、言われるところレーガンさんがいろいろ世話にならなければいけませんので、勧告がどういうことになるかわかりませんが、州政府に対してどこまで踏み込めるかあるいはかなり圧力をかけて是正のために動いてくれるかどうか大変疑問ではないかというような声があるのですが、そのあたりの見通しはどうなんでしょうか。
  256. 竹下登

    竹下国務大臣 中曽根・レーガン会談でも、その事実は、こちらから主張した事実はございます。それから、私どもと、レーガンさんじゃなくリーガンさんの方との共同新聞発表という形でそれを首脳が確認したことになっておりますから、それに基づいていわゆる円ドル・アドホックグループの会合が二月末行われた、その際の向こうからの関心事項、それから我が方の関心事項の最も優先的なものにそのことが入っております。それで、今度二十二日、二十二日にまた第二回会合がございますので、私どもも今の結論を出すのが少しおくれたということに対しては、若干といいますか、悲観をしておるという事実は、心境を述べればまさにそのとおりであります。  しかしながら、いろいろな状況の中では、私どももその主張がかなりプラスに働いておるという面もいろいろな情報の中にございますので、さらに今度の二十二、二十三、このアドホックグループの会合におきましてもこの点についての意見交換と認識をより深めてみたい。これは単に大蔵省だけでなく、今外務省からもお答えいただきましたが、あらゆる場面で主張されておるところであり、通産省からも主張されておるところでございますし、私の方からワシントンの大使館へ行っております内海公使はミスター・ユニタリータックスというような感じすら出て、今精いっぱい努力しておるさなかでございます。  たまたま、今米沢分科員の御指摘の選挙との関係で、私が観測を述べるわけにはまいりませんけれども、言ってみれば、現大統領のいわゆる地盤とでも申しましょうか、なかんずくカリフォルニア州等の問題が一番大きな課題になっておりますので、そうした御主張の向きをする人も、これは関係者というよりも町の声としてあることは私も承知しておりますので、これは執拗に交渉を進めてみるという基本方針でこれからも対応していきたいというふうに思っております。
  257. 米沢隆

    米沢分科員 この問題の解決は、今おっしゃいましたようにこれから先の問題が多分に多いわけでございますが、いろいろと努力をされても全廃というところまでには非常に難しいだろうと思うし、もしそこまでいったとしてもかなりの時間が経過するであろう、こういうふうな見通しを持たざるを得ないわけでありますが、そうなった場合に、政府としては継続的に撤廃を求めていくという姿勢はわかりますが、どうしても撤廃できないという部分が出てきたというときに、一体政府として何か対抗措置みたいなものは考えられないものかどうか、大臣に見解を伺っておきたい。
  258. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、この問題は、なかんずくワシントンにおける話し合いはもとよりでございますけれども、個々の適用されておる州の政治関係者に対して我が方が主張した場合、いわゆる理論的にだれしもそれが当然の措置であるという人は全くいらっしゃらない、ただ、日本もそうだといえばそうでございますけれども、いわゆる財政赤字というものが州においてもそれなりにきついので、財源という面になると最終的にその主張が表立った声にならないという状態でございますので、今私どもは対抗措置とかそういうことをもってこれに対応していくよりも、この事柄そのものは理解を相手方にさすための十分な背景があるわけでございますから、そういう努力をいま一押しも二押しもやってみるべきものであるというような認識でございます。
  259. 米沢隆

    米沢分科員 国税庁の方にお聞きしたいのでありますが、いわゆる日本に在籍する多国籍企業、そのものに対する課税のあり方等について今どういうようなやり方をやっておるのか、まあ国内法をそのまま適用するということでありますが、念入りに実調率等を上げていただいておるのかどうか。  それからまた、現行法を改正して、管理支配地基準を採用することによって何とか日本にとって有利な方法が講じられるのではないかなどという話があるのですが、そこらの是非について国税庁当局の御見解を伺っておきたい。
  260. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えいたします。  おっしゃる多国籍企業ということは、私どもにとりましては、外国に本店のある法人が日本に支店等を設けた場合の課税というふうに私ども理解しておりますが、その場合におきましても、海外取引ということは私どもの調査の際の最重点事項でございまして、国際的な取引に着目して不正はないかどうかということで調査官を必要に応じて派遣する、外国の税務当局との間の情報交換を緊密にする等々の手段を講じて、私どもとしては今後とも海外取引を中心にして重点的な調査を行っていきたいというふうに考えております。
  261. 大山綱明

    ○大山政府委員 管理支配地主義を導入してはどうかという御質問でございますが、法人に対してどういうような課税の仕方をするかという場合に、本店所在地主義、これを今日本がとっております。それから、先生御指摘の管理支配地主義、イギリスなどはこのシステムでございますが、どちらの方がいいのか、結局はそう大きな違いのあることではない。実体のない会社が本店だけを別のところに移しているとかいった場合のマージナルな部分についての課税の適正が、こういう方式をとることによって可能になるという改善の余地はあるのだろうと存じますが、むしろ国税庁からお答え申し上げることかと思いますが、管理支配地主義ということをとりますと、執行面で非常にややこしいことになる、なかなか適正な執行ができない、むしろそれよりは、法人の本店所在地主義の方がその点ではベターである。また、どちらの方式をとりますにいたしましても、実際に事業を動かしているところでの、そこから発生する所得について国内法を適用して課税するという点におきましては、いずれの方式をとりますにつきましても同様に課税ができるという現行の建前でもございますので、あえてこれを管理支配地主義に変えたからといって大きな改善が何かもたらされるというものではなかろうと存じます。
  262. 米沢隆

    米沢分科員 終わります。ありがとうございました。
  263. 相沢英之

    相沢主査 これにて米沢隆君の質疑は終了いたしました。  次に、松沢俊昭君。
  264. 松沢俊昭

    松沢分科員 私は、二つの点を御質問したいと思います。  もう言うまでもございませんけれども、国民の税金に関しますところの関心というのは非常に高まっている。それは、一つにはやはり重税感、それからもう一つは不公平という関心、この二つだと思うのであります。  そこで、この国会におきましても減税問題でいろいろと与野党間におけるところの話し合いというのがございまして、サラリーマンに関するところの税金の問題につきましては、五十五万の所得から控除するそのものが今度五十七万ということで話し合いがついた、こういうことが言われております。それはまあ当然だと私は思っております。私は、パートに対するところの課税、それから内職に対するところの課税、それからずっと前から通達が出ておりますところの大工だとか左官だとかとびだとか、こういう人たちに対するところの特別な措置、これは三者とも非常に零細な所得者、こういうことになりますから、当然のことながら、これに対しますところの特別な対策というのを立てていく必要があると思うのでありまするが、パートの面が非常に今回の国会でも表に出ておりまして、そして五十五万というのを今度は五十七万というぐあいに引き上げが行われたわけでありまするが、内職の場合、これは一向に改善がなされていないのじゃないか、こう思うわけなんであります。  私の町というのが糸へんの町なんでありまして、内職、パート、要するに区別がなかなかつかぬというところの状態の人たちがたくさんおられるわけなんです。Aというところの工場から内職の仕事を持ってきて、そしてボタンをつけるとかあるいはまた襟をつけるとか、こういうことをやっておられても、そこのAというところの工場は雇用関係があるように便宜を図ってくれる。仕事は確かに家庭でやっているわけです。内職と同じわけです。ところが、Bというところの工場から仕事を持ってきておられる人は、そういうことをやってくれない。こういう状態というのがたくさんあるわけなんであります。  そうしますと、Aというところの工場の場合の内職をやっておられるのはパートの取り扱いが行われるわけでありますから、したがって、今度話し合いで決まったところの五十七万の控除とそれから三十三万の控除と合わせますと九十万、こういうことに控除というのはなりますね。そうすると、仮に三百万の所得をおやじが持ってきても、これはおやじの扶養控除を受けられるし、それからそのパートの所得に対しては、八十万ぐらいあれば税金はかからぬ、こういうことになりますね。  一方の場合におきましては、これは九十八国会のこの場で議論があったようでございますけれども、内職の場合においては、概算的経費といたしまして三割ぐらいは認めるというような御答弁があったようでございまするけれども、そういうことになったといたしましても、それでは、例えばこの場合、ちょっと計算してみましたのです。五十五万が五十七万というふうにならない、五十五万の時点で計算したわけでありますけれども、夫の給与の収入金額というのが三百万であった場合、パートとしての取り扱いを受けた場合は、仮に八十八万の所得があるといたしますと、おやじとそれから奥さんの税金を合わせますと四万二千五百二十五円ということになる。同じく、やはり三百万あって、そして妻の収入というのが八十八万という場合、同じであります、パートと同じ収入、所得ということになるわけでありますが、そういう場合におきましては、これが十一万七百三十円、こういうぐあいに非常に大きな税金の開きというのが出てくるわけであります。     〔主査退席、中村(正三郎主査代理着席〕 仕事の内容というのはほとんど変わりがない。ただ形式的にそういう違いがあることによって、結果的におきましてはこのような大きな差が出てくる。こういうのは、税金を取る面においてはやはり大変不公平な取り方なんじゃないか、こんなぐあいに私は考えるわけであります。  それから大工、左官、とび職などの場合におきましても、一つの通達が出ておりますから、これはパートの収入が奥さんの場合八十八万あったといたしましても、税金は給与所得のだんなさんを持っている人と同じようにして、同じところの税額にしかならぬわけなんであります。だから、要するに同じ零細な所得者の中でも、内職というのは大変不公平な税が取り上げられている、こういう結果が出ておりますが、これにつきましてどのようにお考えになっているのか、まずお伺いしたいと思います。
  265. 竹下登

    竹下国務大臣 それでは、まずこの間の党対党の話し合いがございましたので、最初だけ私がお答えしておきます。  パート収入は給与所得でございますために、給与所得者の必要経費の概算控除という性格を持っております給与所得控除の適用がある。そこで、そもそもこのパートと内職の問題について、この前いろいろ、率直に申しまして議論をいたしました。そうなると、労働政策上の問題でもあるではないか、あるいはある人によっては、パート労働法という法律をつくって定義から明らかにしていかなければ実際問題できぬじゃないか。しかし、国会であれだけいろいろ議論がありますので、税調にも正確にそのことをお伝えして、税調では今は二つの控除の組み合わせしか方法はないだろうということになったわけです。それをさらに二万円上積みをするという約束がなされた、実態はそうなっております。  その折衝の段階におきましても、やはりパート労働者と内職ともう一つは婦人外交員、それらのあり方について持ち寄ってひとつ検討会をつくって、それはそれとしてやるとしても、その検討会でひとつ結論を出そうじゃないか、こういうような話し合いもなされたというふうに聞いておりますので、この問題につきましては、今具体的におっしゃいましたように、自宅で働いておる人でも支払い明細書がちゃんと出ておるというような人は、いわゆる我々の概念上のパートと同じような適用を受けておりますし、そういう問題がございますので、これらは今後まさに党対党の間におかれても、また政府部内においても引き続き議論をする問題でございます。  具体的な問題につきましていろいろ今まで議論もされておりますので、事務当局からお答えをさせます。
  266. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 ただいま大臣からお話のございましたことで、特につけ加える点はないわけでございます。私ども、内職につきましては一般的に請負と申しますか、民法上の概念でございますが、事業所得の形態をとっておるものというふうに理解をいたしておりまして、そういう点から課税をいたしておるわけでございます。  事業所得であるか給与所得であるかということは、所得税法上非常に根本的なことでございますので、みだりに執行当局だけではなかなか変えられないわけでございます。しかしながら、そうは申しましても今御指摘になりましたように、やはり社会実態の同じようなパートの方あるいは内職の方につきまして課税の似通ったような待遇ということは常に念頭に置いておるところでございます。  したがいまして、ただいまお話のございましたように、一般的に支払いの明細書とか源泉徴収票とか、そういうものをお出しいただけるときは給与所得として扱っておるわけでございますし、またそうではございません場合でも極力経費を見るということで対処をいたしておるわけでございます。三〇%とおっしゃいましたが、これは一つのめどでございます。実際上無理のないような課税の方式をいたしておりまして、実際私ども税務署の方から聞きましても、特に今のところ重大な問題が出ておるというふうには聞いておらないわけでございます。
  267. 松沢俊昭

    松沢分科員 大臣の方からも答弁がありましたように、これは実態からすると同じような状態の働きということになるわけでありますから、この前の速記録を見ますと三分の一程度の概算的経費、こういうことでありますけれども、そういう配慮というのが仮にできるとするならば、今でも、今度改正になりますと九十万程度控除されるわけですね、だから、仮に法律を直すのは今の時点で非常に難しいということになったとしても、取り扱いとしては、これは同じような働きをやって所得というものを得ているわけでありますから、九十万くらいのところまで考えていただくということはできるのではないですか。どうですか。
  268. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 ただいま申し上げましたとおり、経費の認定に当たりましては、できるだけそういう方々についての経費を認定をいたしまして、例えば領収証等がございませんでも、こういう経費がかかったとおっしゃっていただければそれは考慮するというような格好で、実際上無理のないような取り扱いにいたしておるわけでございます。今度の改正は、もちろん私ども承知しておるわけでございますが、そういった暁におきましても、このような無理のない扱いということは続けてまいりたいと思っておるわけでございます。
  269. 松沢俊昭

    松沢分科員 もう時間がありませんからいいですけれども、内職の経費なんてものは幾ら経費の明細書を出せなんで言ったって出ないです、率直に申し上げますけれども。内職なんてそう経費などかかるものじゃないです。だから内職と言うんです。経費がかかるとなればそれは事業所得、こうなると思うのです。要するに、普通の事業とは違うわけだから、やはりパート並みの配慮をしても差し支えないじゃないかというのが私の言い分なんであります。大臣、もう一回お答え願いたいと思います。
  270. 竹下登

    竹下国務大臣 今度の話し合いの中で一番この議論を私自身も完全に心の中で消化できないから、各党の方々にも難しい点は金額よりもむしろこの議論が根底にあるということで対応してきたわけです。まあ今も、地域によってA社とB社との扱いが違う、そのとおりだと思うのですよ。したがって、やはりもう少し勉強さしていただきませんと、結論は今度は労働政策の方へも行くような気がするのです。労働政策でこの間ある関係者の方と話してみますと、これをやっていればまた三年ぐらいかからへんかというような議論もありますし、だから、このパートがこれだけ政治の課題として今度出てきますと、今まさに御議論なすっておる問題が、今までもありましたけれども、余計顕在化するだろう。  したがって、税務当局としては実態に即応して可能な限りの措置をしつつも、一方議論として進めなければならぬのは、まさにパート、内職、婦人外交員、そういう問題の位置づけを整理しなければいかぬな、おとといまでその議論に突入しておりましたので非常によくわかる議論でございます。私の方がむしろ今おっしゃったような立場での主張をしておっただけによくわかりますから、御趣旨は十分踏まえて対応をいたします。基本的にそういう問題があるということは百も承知で御議論のことだと思いますが、私どももこれから勉強さしてもらわなければいかぬと思っております。     〔中村(正三郎主査代理退席、主査着席〕
  271. 松沢俊昭

    松沢分科員 ぜひ趣旨に沿ってやっていただきたいと思います。  それからもう一つの問題は、今度所得税法の改正案が出ておりますので、いわゆる事業所得やあるいはまた不動産所得、こういうものにつきましては、帳簿、書類、そういうものをちゃんと保存するところの義務、記帳の義務、もっとも金額三百万円以上ということですが、そういう改正案でございます。私は、農業所得者に限っての注文を一つ申し上げたいと思うわけなんでありますが、今まで農業所得の場合におきましては、いわゆる課税標準、これでやってまいりましたね。それが、最近徴税強化ということだと思いますけれども、収入金課税、こういう方法に変わってまいりまして、もちろんまだ面積標準というのは残っておりますが、だんだんと徴税が強化されてくる、そういう傾向だと私は見ているわけなんであります。  ただ、今度この改正をやった場合、農家の場合は米の値段だとかそんなものはもうわかり切った話でありますし、それから作柄の報告も農林省の統計情報部で出しておりますし、あるいはまた野菜だとかそういうところの相場などというのも毎日卸売市場の相場が出ておるわけでございますし、あるいはまた化学肥料の値段なども大体決まっているということであるわけでありますから、これはどうしてもそういう帳簿をつけてもらわぬと、義務づけなければ困るというようなことはないような感じが私はするわけなんであります。また農業団体といたしましても、農家の場合においては帳簿を記載するということになれていないわけなんだからということで、何とかそういうものは、それは税金ごまかして払わないということではないけれども、今までどおりでいいんじゃないですか、そういう要望書も政府に出ているはずであります。したがって、何でこういうことを農業の場合においてやらなければならぬのかというのが私はわからぬわけなんであります。  いろいろと説明を聞いておりますと、農業所得がいわゆるトーゴーサンピンだとかクロヨンだとか、いろいろな批判がある、したがって、そういう感情的摩擦を解消する上においてもいいじゃないか、そういう趣旨の説明も聞いております。しかし、脱税というのは、どこのしゃばでもやっている人はやっておりますし、やらぬ人はやっておらぬわけなのであります。この前も新聞を見ますと、千葉県の花などを栽培しておられる人たちが大変な脱税をやったなどといって大々的に出ておりますけれども、そういうのは別に農民だけではないわけでありまして、ほかの職種の場合にもたくさん脱税はあるわけであります。  だから、一つ出して、そして全部悪人にするなどというのはもってのほかなのでありまして、やはり農業の所得というものはそれほど税金を納めるほどに至っていないというのが現状であり、そしてまた、現在の農家所得の中に占める農業所得は二割でありまして、あとの八割は農外所得によって生活をしている、こういう状態になっているわけであります。農外所得の分はちゃんと源泉徴収されて税金は払っておるわけなんであります。だから、いろいろと言われていることは私は本当は納得できないわけなんであります。そういうのに乗って、そして徴税強化をやる、そういう立場でこういう義務づけをやるということはやはり間違っているんじゃないか、こう私は思いますが、この点につきまして、大臣、一体どうお考えになりますか。
  272. 竹下登

    竹下国務大臣 非常に政治的な御発言でございますから私に御指名だと思います。納税者自身による税額計算というものが申告納税制度のまさに自主的納付を内容とするという意味において基本だと思います。したがって、税額計算を納税者自身が自主的に行うというその基礎になるものは、やはり記録であり、そして帳簿ではないか。私は、トーゴーサンとかクロヨンとか、そういう言葉も知っております。しかし、実態はそうないと思っております。が、皆無ではないとも思います。  しかし、そういう角度よりも、やはりこの申告納税制度そのものの基礎となることに対する同じ国民としての、訓練というと少し表現が失礼に当たるかもしれませんが、そういうものとして受けとめていただけないものだろうか。したがって、これをやりますときにも、やはり罰則はない方がいいだろうとか、そういう議論は私もいたしました。
  273. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 若干技術的な面から二点ばかり補足させていただきます。  今回、記帳をお願いするこの制度を考えました際にも、どの程度の範囲の方々にお願いするかということで、まず一つは金額として所得ベースで三百万というふうに区切ったわけでございます。この三百万という金額を農業の場合に当てはめますと、白色の農業の方は大体十六万人ぐらいでございますが、三百万で切ると一万二千人で、上から七%ぐらいの方でございますから、まず経営の規模からいけばかなり大規模な方々であろうと思われるわけでございます。その場合でも七%でございます。  もう一点、先生も今御指摘ございました農外所得の扱いでございますが、この三百万は、御指摘のような点がございますので、あくまで農業による所得で三百万ととらえているわけでございます。今のお話でございますと農外が八割、半分といたしましても——私どもの持っている先ほど申し上げた統計は全部の所得の合計所得金額でございますので、例えば半々といたしますと、農業がその半分でございますから、まだ半分ぐらいに減ります。あくまでこの三百万は農業だけのものでやってまいるという方針でございますので、そういたしますと、先ほどの一万二千人、七%という数字も非常に限られた数字になるのではないか。そういう方々であればお願いできるのではないか、またぜひお願いを申し上げたいというあたりから考えているわけでございます。
  274. 松沢俊昭

    松沢分科員 もう時間がありませんから私の見解を述べたいと思います。  今お話しのように、三百万円以上の事業所得、いわゆる農業所得というものを対象にしてやっているんだということでありますが、これもわかります。そう言うのであれば、青色申告制度というのがあるわけですから、要するに青色申告の場合においては帳簿だとか証拠書類だとか、そういうものをちゃんと保存して、そして計算をして出していくわけでありますから、法律に義務づけるのであるならばそれは青色申告の指導を広げていかれた方がいいのではないか。青色申告はそういうふうにしてやって、その場合においては恩典があるわけなんです。この場合はあくまで白色なんでしょう。こうすることによって青色の恩典を与えるということではないのでしょう。そうすると、青色と白色の区分けがつきにくくなる。青色申告の存在理由がなくなってくるじゃないか。だから、青色というものを広げていく、こういう考え方の方がいいじゃないか、こう思うわけなんでありますが、どうですか。
  275. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 本来の考え方としては先生のおっしゃるとおりだと思いますが、二十年、三十年来やってまいりましても、青色の普及率というのは現時点で若干頭打ちなわけでございます。それから、今回お願いをしようと思っております帳簿等につきましては、青色に至らないかなり簡易なものでございますので、青色帳簿までのものをお願いをするのであればいろいろまたその背景となる制度も考える必要があるわけでございますが、今回はまずぎりぎり簡易のものからお願いしようというものでございますので、青色といろいろな面で全く同じ扱いにするというところまでは今回は至っていなかったということでございます。
  276. 松沢俊昭

    松沢分科員 時間が参りましたから、そういうことも十分考えながら対処していただきたいということを要望いたしまして、終わります。
  277. 相沢英之

    相沢主査 これにて松沢俊昭君の質疑は終了いたしました。  平石磨作太郎君。
  278. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 私は、大蔵の分科会でこうして質問を申し上げますが、アバウトな質問になろうかと思うわけです。私の開かんとするところは、過疎地域等の振興について、こういうことでお伺いを申し上げるわけでございます。  まず国土庁にお伺いをいたしますが、国土の均衡ある発展を図る、これは政治のイロハであろう。そして、そういった均衡のある国土の発展を図るという一つ考え方のもとに、それぞれの省庁において行政がなされておるわけであります。  日本は高度成長し、世界の経済大国にまで上がってまいりました。これも大変結構なことであって、今日までのそれぞれの行政の大きな成果であるというように評価をするわけでございますが、そういう中でやはりひずみが出てきた。一方は過疎となり一方では過密となってきた。したがって、予算の効率的な執行という意味から、人口が多くなる、過密である、そしてそこにはいろいろな産業もあるということで必然的にそこに予算が投資されていく。こうなりますと、ますます過密を進め、過疎を促進させてしまうという結果に相なっておるのではないか。  そういたしますと、国土庁はそれぞれの計画を持って今日まで来ましたが、私の地元である高知県の西南地域——高知県は今申し上げましたような地域に部類するわけでございまして、その中でも特に西南地域である中村、幡多郡というところでございますが、ここは三全総におきまして課題地域としての指定を受けておるわけです。それ以来、五十二年から課題地域としての予算、補助をいただきながら各般にわたる調査が行われてきたわけです。その調査は広域市町村圏だとかあるいは県といったような地域において取り組んではおるのでありますが、その各般の中に空港に関することがあるのかどうか、お答えを賜りたいのです。
  279. 桝原勝美

    ○桝原説明員 平石委員の御質問でございますが、ただいま御質問になりました西南空港につきましては、御質問にもありました四国西南地域の総合開発計画というものが県レベルの計画としてございますが、その中に重点開発事業一つとして位置づけられているところでございます。
  280. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 今御答弁いただきましたように、この西南地域の総合開発につきましては、高知県におきましては建設省、農水省、国土庁あるいは運輸省といった七つの省庁にわたって約三億円の補助をいただいて、各般にわたる調査を進めてきたわけです。したがって、二年、三年といろいろ整備に関する調査が行われておりますが、そういう中で高知県が後進性から脱却する最も大切なことは、陸海空にわたるところの交通輸送網が整備されなければ後進性からの脱却はできません。したがって、西南開発に当たっては、特に鉄道につきましては、新しいあの法律のもとで進捗しておりました鉄道建設が現在ストップして、これが仮にできないということに相なりますと、その地域はまさに明治時代に逆戻りする形に相なるわけでありまして、当然地元の要望、願いとしては、これからの近代化という形、スピード化という形からは、どうしても地方ローカル空港が欲しいということが出てまいるわけでございます。  そういう中で、国の方は空港にも新たに取り組んでおられるようですが、新たに取り組んでおられる空港整備としては、運輸省の方で関西新空港も具体的な法案が今国会に提案された。それから成田の空港は、いろいろ問題はありつつも運航が開始されたといったような形で、中央におけるところの空港整備は着々と日の目を見つつあるわけでございます。今、四次の整備計画が運輸省の中でだんだんと進められておると思いますが、これの進捗状況についてお知らせをいただきたいと思うわけです。
  281. 井上春夫

    ○井上説明員 現在実施中の第四次空港整備五カ年計画は、昭和五十六年度を初年度とし、六十年度を目標年度とする五カ年計画でございまして、総計画投資額は、調整費九百億を含めまして一兆七千百億という形になっております。  五十九年度は計画年度の第四年度を迎えるわけでございますけれども、その進捗状況は、五十九年度政府予算原案を含めまして四年間累計で約八千五百三十一億円ということに相なっておりまして、全体の進捗率は、調整費九百億を除く一兆六千二百億に対しまして五二・七%とかなり低い値にとどまっておるわけでございます。しかしながら、空港周辺の環境対策事業でございますとかあるいは非常に各地で要望の強い一般空港、ローカル空港の整備等につきましては、進捗率はそれぞれ八〇・三%あるいは七三・九%という形になっておりまして、おおむね順調に進んでおると言える状況にあるわけでございます。
  282. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 そこで、ほぼ順調に進んでいる、そして大体五二%くらいというお話がございましたが、それは中央における整備に重点が置かれておるのか。例えば関西新空港にしろ、あるいは羽田の拡張にしろ、そういったものに主に力を入れておられるのかどうなのか、内容について触れていただきたいと思います。
  283. 井上春夫

    ○井上説明員 一兆六千二百億のうちで、空港の整備に充てようと考えております額は九千三百億でございます。このうち成田関係事業費として約三千億、それから今先生のお話の中にございました関西新空港及び羽田空港の拡張計画に約三千億、そして一般のローカル空港の整備に約三千億、そういうふうな割合になっておるわけでございます。  全体としての進捗率は、先ほど申し上げましたように五〇%強で、かなり低い値となっておるわけでございますけれども、全体として低い値になっておりますのは、成田の二期計画及び関西新空港、それから羽田の拡張という大規模プロジェクトのおくれによるものでございまして、地方空港の整備につきましては、先ほど申し上げましたとおりかなりいい進捗になっておるというのが現状でございます。
  284. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 大体中央を主体的に考えながら地方、ローカルについても三千億程度のものが準備されておる、こういうお話でございます。  ところで、地方空港につきましては、従来、一県一空港、こういう形のものが計画されて、それが施行されてきておると思うのですが、高知の空港につきましても、過日大変なお世話をいただきまして、十二月十六日から新空港が開設を見たわけです。そうなりますと、先ほど私から申し上げております。そういった中での高知県の県域において、幡多地域、西南地域において一つのローカル空港というものが今の国土庁の計画の中に入っておる、こういうことを国土庁から御答弁をいただいたわけです。  そこで、そういった面にまで地域のそういった要請があり、かつ必要だなという判断をせられるのかどうなのか、これらについてはまだ時期尚早であるというようなお考えを持っておられるのかどうなのか、ひとつお話をいただきたいと思うわけです。
  285. 井上春夫

    ○井上説明員 地方空港につきましては、先ほど申し上げましたように、第四次の五カ年計画の中でかなり順調な事業の進捗を見ておるわけでございます。しかし、全国的に見ますと、まだ未整備の空港は数多く残されておるわけでございますし、また空港がなくて航空交通サービスを受けがたいという、いわゆる空港の空白地帯も幾つか残されておるというのもまた事実でございます。したがいまして、運輸省といたしましては、今後予算的には大変厳しい状況にはあるわけでございますけれども、緊急性の高いものについては可能な範囲内でこれからもできるだけ着実に整備を進めていきたい、こんなふうに考えておるわけでございます。  具体的には、第四次空港整備五カ年計画が六十年度をもって終了いたしますので、第五次の五カ年計画が六十一年度をスタートとして計画されることになると考えられます。その策定作業に今から取りかかるわけでございまして、その策定作業の中で全国各地の要望を十分聞き、また需要の動向等も十分見きわめ、また空港整備特別会計の収支見通しも十分検討いたしまして具体の計画を詰めていきたい、かように考えておる次第でございます。
  286. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 この六十年までの第四次、これで今答弁にございましたことがどれくらい仕上がって、六十一年からまた第五次のものが始まるのだ、こういうことが予定されておるようなんです。したがって、この四次について相当積み残しが出るというような場合に、第五次が先へ延びるのかどうなのか、ここらあたりはどういうことに相なるのか、一言。
  287. 井上春夫

    ○井上説明員 第五次の五カ年計画の具体的な策定作業に当たりましては、第四次の中で積み残したものも含めまして、もう一度各空港の整備の必要性等をよく見直しまして、いわば振り出しに返って、現状を踏まえた上で一番現状に合ったような形の事業採択をしていきたい、こんなように考えております。
  288. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 もう一言お聞きしておきたいのですが、国土庁のつくっておる利用計画といいますか国土計画、これはいろいろな絵柄があるわけですが、私が今質問をしております西南地域の中に、空港というものが絵柄に入っておるわけですね。これは御承知ですかどうですか、政府の中のことですから。
  289. 桝原勝美

    ○桝原説明員 ちょっと誤解があるんじゃないかと思いますが、先ほど申し上げましたのは、高知県の策定しております計画に入っておるわけでございまして、国レベルのものには現段階では入っておりません。
  290. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 今の御答弁でわかりました。  そこで、国土庁にお伺いをするわけです。国土庁はそういう国土の均衡ある計画を立てていただくわけですが、これの施行については政府部内においていろいろと連絡調整を図りながら、しかも、今財政的なこういう不如意の時期でございますので、重点的に取り上げていくんではなかろうかというような気がするわけです。  したがって、私は、今運輸省が考えておられる第五次の計画、そして第四次については運輸省の計画の中には、政府の計画の中にはまだ上がってないというようなお言葉を国土庁から聞いたわけです。そこで、国土庁がこれからまた次の第四次の全総計画を今策定中だとお伺いをしておるわけですが、この第四次総合計画の中に西南地域の課題地域といったものが織り込まれる予定なのかどうなのか、これをお聞かせいただきたい。
  291. 桝原勝美

    ○桝原説明員 高知県の西南地域につきましては、平石委員もっとに御指摘のとおり、四国地域における最大の課題地域であることは御案内のとおりであります。  現在、西南空港につきましては、高知県におかれましても来年度さらに引き続き気象条件でありますとか候補地の選定とか、さらに煮詰めへの段階に入っておられるようでありますが、陸海空総合的に考えながら、あくまでも県の意向を重点に置きながら、その段階におきましてはもちろん重要事項として、四全総の中におきましても重要なる課題として受けとめるべき事項であろうと考えております。
  292. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 第四次にも引き続き計画の中に織り込んでまいりたいという御答弁を賜りました。  参考までに申し上げておきたいのですが、この問題につきましては昭和四十七年ごろからこの議が出てきたわけです。したがって、そのときはいろいろと計画を模索しながらこういった計画が徐々に実りつつあったわけですが、途中で中だるみもありましたけれども、五十二年十月から県もこれに本腰を入れてきました。五十二年からこれらの国土庁のお世話をいただいて調査に入りました関係もあって、積極的に調査が進展をしてまいりました。コンサルタントにお願いをしたりいろいろして、昨年の二月にはいわゆる計画完成は済んだわけですが、そういったことで県の第一ステップとしての調査は終わり、いよいよ今度第二ステップとしてのものが今回五十九年の県予算の中に経常費として計上されて、これから風向、風速、気象調査等の調査が具体化されてくるわけです。したがって、そういうもの等をも十分踏まえていただいて、次の全総に十分反映をしていただきたい。  それから、お願いなんでございますが、そういう県段階における、地方段階における計画が、今回、五十八年の十一月にこういう課題地域を持っておる知事さん等十六県が全国地域空港システム促進協議会を発足させております。このように全国的な一つのチームにもなり、そして地域それぞれの要望が大体煮詰まってくるという中において、まだまだ政府レベルの中の計画ではありませんが、次の整備計画、運輸省の整備計画と国土庁のいわゆる四全総の中で連携をとっていただきたいと思うわけです。ひとつ国土庁と運輸省、それぞれお答えをいただきたい。
  293. 桝原勝美

    ○桝原説明員 御要請のとおり、県の状況も踏まえながら適切に対応してまいりたいと考えております。
  294. 井上春夫

    ○井上説明員 西南空港の構想につきましては、実はまだ県からは具体の説明を受けておりませんで、内容について十分承知していないわけでございますけれども、運輸省といたしましては、県から説明があればその段階で十分検討いたしまして所要の判断をしたい。第五次五カ年計画の策定に当たりましては国土庁とも十分協議しながら遺漏のないようにやっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  295. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 そこで、大変遅くなりましたが、大蔵省にお伺いをし、最後大臣にお伺いを申し上げたい。  今だんだんと運輸省、国土庁のお話をお聞きいただいたと思います。したがって、これらの計画を進めていくにつきましては、問題はお金です。そういうお金も、私が前段申し上げましたように、財政の効率的運用ということだけで判断をせられて、過密の地域にお金が投入されていく、これも私は否定はいたしません。これは必要だからこそ、道路整備にしましても下水道の整備にしましても、当然のこととしてそれだけの経費がかかるわけですが、これが効率的な運用だというような投資効率のために、こういった地域が、いわゆる辺地における過疎地域が見捨てられていくというようなことが、予算執行の上において、予算配分の上において、あるいは事業計画の事業の分配においてあらわれてはならぬと思うわけです。したがって、十分なことをしてほしいとは思いますが、これは難しい相談ですけれども、公平という観点から考えたときには、私はその面について大蔵省の御判断を賜りたい、こう思うわけですが、ひとつその点のお言葉をいただきたいわけです。
  296. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる国土の均衡ある開発、これは私は政治の大眼目であると思っております。ある意味において、いろいろな見方があるでございましょうが、所得の均衡というような考え方からいきますと、ちょうど昭和五年の統計がありまして、それから見ると、東京を一〇〇とした場合の九分の一というようなのが、当時は福島県、それから千葉県、茨城県、案外東京の周辺が悪いんだなと思ったのですが、それが今や、仮に県民所得一人当たりとしますと、沖縄、それから鹿児島、その後が青森でございますとか私の島根でございますとか平石先生の高知でございますとか、あの辺のグループがおるわけです。それとて一応一〇〇対五〇程度でございますので、所得というものから見た場合には、なるほど世界の先進国の中ではその平準化が一番進んだと言える見方があることは確かです。  しかし、当時の人口動態から見ますと決してそういうことではない。人口になりますと、もう一つは明治二十三年というのが統計にありまして、これは平素よく演説なんかで出かけますので勉強しただけの話でございますけれども、当時は日本で一番が新潟で百七十万、東京が二番で百六十八万、それからおたくや我々が六十万から七十万の間でございます。だから、言ってみればある意味において米のあるところに人がおったのかな、そういう状態のところが今だんだん過疎化して、したがってこれをどうしていくかというのが、終局的には政治の目標はそこにあるのじゃないか。  そこで、現実的なことで申しますと、我々がどこへ出かけましても、平石先生もそうでございましょう、陳情の八割が公共事業で、どちらかといいますとその半分が道路だ、こういうようなことをよく言うのでございますが、そういうことから考えてみますと、今度は国税の還付倍率というのが一つありまして、その県で収納される国税の幾らがその県へ返っておるか。東京がたしか九%ぐらいで、先生の方が恐らく三十三倍ぐらい、私どもが四十倍ぐらいでしたからおおよそそのグループだと思います。  そういうことと、一人当たり公共事業費を見ますとそれなりの数字は出ておる。しかし、それが私はまだ決め手にまでは至っていないと思います。なかんずく土地の価格の上昇等から見ますと、我々お互い過疎地帯の方へそういう投資をした場合はもとより景気浮揚にも即効性がございますし、それから全体の均衡ある発展はむしろその意味においては今がチャンスかという感じがいたします。  したがって、私の場合、立場上申し上げますならば、公共事業等施行対策連絡会議の議長は大蔵大臣でございますので、そういう角度からも、例えば今度は景気等も勘案してみると、北海道、沖縄、奄美、離島というのは重点配分をするように、既にそういう計画を指示しておるわけでありますが、さらにその中へもう一つ地域性を今度は織り込んでいって、国税還付倍率から言えば、あるいは一人当たり公共事業費等から言えば、むちゃとは申されぬでございましょうが、少々傾斜がかかり過ぎているのじゃないかというぐらいな気持ちで対応してちょうど均衡ある国土の発展ということになるのじゃないかな、そういう構えでこれからも対応していかなければならぬ、やはり何よりもお互いのところに夢がなくなるようなことはしてはいかぬな、こう思っております。
  297. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 大臣から御丁重な御答弁いただきました。全く同感でございます。したがって、北海道とか沖縄とか奄美、こういったところは特別法がありまして、それぞれ予算の流れるパイプがあるわけです。ところが、大臣のおところや私のところなんかは、いわゆる国内におけるそういった地域については格別の法律はありません。したがって、傾斜配分をするなり、経常的な経費としては傾斜配分をいただきたいし、さらに私はこういうところはこういうプロジェクトをつくって、仕事をつくって、そして民間資金も導入する、関西空港の方式のような、そういう英知を考えながら地域にプロジェクトをつくっていくということが均衡ある発展に資していくのじゃなかろうかというような気がいたしますので、このことを大臣にお願いをして終わらせてもらいます。どうもありがとうございました。
  298. 相沢英之

    相沢主査 これにて平石磨作太郎君の質疑は終了いたしました。  次に、兒玉末男君。
  299. 兒玉末男

    兒玉分科員 大蔵省関係について、円の国際化さらには資本市場の自由化など、アメリカからのいわゆる金融開国など強い要望が来ておりますが、この問題と、それから自動車関係関連課税の問題、それから農畜産物の農業所得の申告期でございますが、課税の態様なり標準価格の査定など、三つの問題を中心に御質問したいと存じます。大臣の御返事は最後にまとめて御回答いただければ幸いでございます。  まず最初に、私九州の宮崎でございますが、現在起きておる問題として、三月の申告期を控えて、特に私の県は畜産、なかんずく養豚業が非常に盛んでございます。この前、国税庁の方もお呼びしていろいろとお聞きしたわけでございますが、同じ国税庁の管轄である福岡国税局と熊本国税局で、豚の一頭当たりの価格の標準に三千円も差がある、こういうことで養豚代表かうも強い要請があり、どのようにしてこのような格差ができているのかという問題が一点。  もう一つは、南九州でも特に私の日南方面は早掘りカンショの産地でございまして、いわゆる南九州畑作振興法によりまして、農地整備に伴い生産性を高めるためのこういう作物の奨励がなされておるわけでございまするが、最近は農家各戸を税務署が呼び出していろいろな角度から事情聴取をしておりまするが、やはり農業経営者というのは、一般の商業と違って、綿密な帳簿記載なり減価償却なり、そういう会計面の取り扱いには非常に疎いわけでございますが、今、芋生産農民が戦々恐々としている。これには国税庁としては一定の基準を示しながら、出荷団体の代表である農協、経済連等、そういう機関との綿密な連携をとりながら対応することが極めて大事ではなかろうか。この二点について国税庁の御見解を承りたいと存じます。
  300. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 ただいま二つのお尋ねがございました。  一つは、養豚の所得標準の件でございます。確かにお尋ねのように、福岡国税局と熊本国税局では養豚関係の所得標準を異にしておりまして、片方は一頭五千円、片方は一頭八千円、三千円の差があることは委員御指摘のとおりでございます。  農業所得標準につきましては、大体におきまして経営実態の等しいような地域を選定いたしまして、その地域の中で標準的な農家の収入支出を調べまして、それに私ども、農林省の統計とか農業団体からの御意見を聴取いたしまして、客観的、合理的な標準をつくっておるところでございます。したがいまして、経営実態が違うような地域におきましては、所得標準というのもおのずから違ってくるわけでございます。  一般論としてそういうことを申し上げまして、福岡と熊本の場合になぜ差があるかということでございますが、これはそれぞれその地域におきまして、今のような手続で標準を算定いたしたわけでございます。そこで、熊本局の方を見ますと、養豚農家の規模が福岡国税局のそれよりもかなり大きいわけでございますし、また農業経営の合理化といった点が図られております。これが経費の面から有利に働いてくるわけでございます。また、養豚農家数が多いために、市場の整備も図られておるわけでございます。最後に、出荷をいたします豚の品質でございますが、そこにも格差がございます。したがって、販売単価が一般的に高いということでございます。そういう点を勘案いたしまして標準を決めておるわけでございまして、これが三千円の差になっておるということでございます。  それから次に、宮崎県の早掘りカンショでございますが、これにつきましても、今申し上げましたような手続を経まして農業所得標準を算定いたしておるわけでございます。そこで、この点につきましては、地方公共団体、農業協同組合と緊密な連絡をとりまして、その御意見を承りましてつくっておるわけでございますが、最近調査をいたしました結果によりますと、面積基準での収入に従来よりもやや差があるということが判明いたしました。そこで、農業協同組合と地元の税務署が話し合いをいたしまして、この際従来の面積基準課税から収入金課税の方へ移行しようではないかという話し合いになりまして、その話し合いの結果、農業協同組合側の了解も得まして、収入金課税に移行しつつあるところでございます。  収入金課税も一つの標準課税の方法でございますが、これにつきましては、いろいろ資料を集めませんと課税の適正を期し得ないわけでございます。そういうことで農家の方々にも御迷惑をおかけいたしまして、いろいろ資料をお伺いしているというようなことはあるかと思うわけでございますが、基本的には以上のようなことでお願いをいたしておるわけでございます。
  301. 兒玉末男

    兒玉分科員 ただいまの御答弁はかなり抽象的でございますが、最近は養豚農家にしても、どうして収益性を高めるかということと同時に、採算のとれる畜産経営ということで、飼料購入の依存する度合いをできるだけ低くするとか、飼料の自給自足という問題、また品質の改良、これは種豚による影響が大きいわけでございますが、そういうようなみずからの経営努力、同時にまた輸送体系でもできるだけコストを廉価にするとか、農家自体も大変な努力をしているわけです。同時にまた、養豚組合等を形成しながら、養豚経営についての相互の学習会等を開きながら一層の努力をしているわけです。そういう点等を十分勘案していただかなければ、農林省等の統計だけでこれを一律に律することは問題があるのじゃなかろうか。同時に、今日国鉄の貨物駅の廃止によって輸送面のコスト格差はほとんどない。問題は品質、それから市場に出す——中豚、成豚と言いますが、そのような養豚農家の頭脳的な経営対策、そういう大変な努力によって生ずる成果について、ただ額面だけで格差をつけていいのかどうか。  当然これは収益性があり課税対象でございますが、その辺の各戸農家あるいは組合等の経営努力というもの等を勘案した課税対応でなければ、畜産農家の経営の意欲を失うのではないかということ等も含めた中で、問題の最終的課税の決定に当たりましては、経営農家の意向というものにも十分に対応して決定を出すべきではなかろうかと存じますが、今申し上げたことについての御見解を承りたいと思います。
  302. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 御指摘のように、出荷体制の整備あるいは経営方法の改善等につきまして、九州一円の養豚関係の農家、そのほか全国各地そうでございますが、大変な御努力を払っておられるということを私どもも承知しておるわけでございます。こういう点につきましては、私どもが所得標準をつくりますときにも、細大漏らさず一つの要素として勘案をしていきたいと思うわけでございますが、私どもの農業担当者にもいろいろ数の制限もございますし、私どものやっておる調査が万全のものだとは必ずしも考えておりません。したがって、今御指摘のような要素につきましては、おっしゃいましたように農業団体側と緊密な連絡をとりまして、そちらの御意見も拝聴いたしまして、農家の方々の本当の経営の実態を反映するような所得標準をつくることに今後も努めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  303. 兒玉末男

    兒玉分科員 さらに、早掘りカンショというのは、御承知のとおり台風の常襲地帯という特異な状況のもとで、もちろん国、県の多くの助成を得ながら、現在の早掘りカンショ地帯はかなりの収益性を上げていることは間違いありません。問題は、いわゆる病虫害の駆除とかあるいは土壌管理とか、また生産から販売までの過程でも、非常に他の商品と違いまして、かなりの手間のかかる仕事であります。そういう面から、今部長の言われたような面積制から収益制に転換されたようでございますが、それについてもやはり必要経費といいますか、そういう面については十分な配慮をしていただくべきである。もちろん、これはなかなか計算の基礎というのが多種多様でございまして、そういう点からもなかなか困難があるわけでございますが、生産農民それから農協団体等の御意見を十分お聞きした上で、最終的な査定に至るように格段の御配慮をいただきたい。  また、畜産関係についても、そのような収益性を上げるためには、子供を研修会に派遣するとか、あるいはまた伝染病の予防とか、多面的な努力をしているわけでございますので、やはりこれはなかなか帳簿上に記載できない、目に見えない一つの実質的な負担があることも十分ひとつ御配慮いただき、それぞれ御研究の専門の方もございますが、一円でも多く税金を取り上げるということではなくて、再生産への基盤がより確固たるものとなって、農民が決まった方針に従って、よりよい経営と同時に収益に対する応分の課税には積極的に対応できる、このことが税制の基本でなければいけない。この点を特に御要望申し上げますので、その辺の御配慮についてひとつもう一遍御回答いただきたい。
  304. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 今おっしゃいましたように、農家の方、いろいろ経費がかかるわけでございます。先ほど申し上げましたように、早掘りカンショの場合、収入金課税に移行いたしておりますが、そのことは、こういう経費につきましていろいろ実態に即した測定をすることが必要であるということはもちろん存じておるわけでございます。御指摘になりましたような費用、これは一般的には所得標準の計算上、種苗費、それから農薬費とか肥料費、こういうものは標準経費の中に入ってくるわけでございますが、そのほかに標準外経費というものもございます。これは、地域地域の実態に応じまして、農業団体の方々ともいろいるお話し合いをいたしまして、どういうものが標準外経費であるのか、実情に即した査定をいたしましてこれを認めておるわけでございます。そういうような点も全体として勘案いたしまして、今後とも適正な課税標準をつくってまいりたいと思うわけでございます。
  305. 兒玉末男

    兒玉分科員 次に、自動車関係税についてお伺いしたいと存じますが、現在日本自動車連盟等から数多くの御要望が出ておるわけでございまして、現在でも道路財源対策としてかなりの自動車関係税が徴収されておるわけでございますが、さらにまた大蔵省が新しい年度でも、数多くの自動車関係税の課税強化、あるいは税収の財源を図るためのいろいろな課税を検討されておるために、かなりの強い要望が出ておるわけでございます。これは、先般問題点について指摘してございますので、それらの点についてひとつ大蔵省の見解を承りたいと存じます。
  306. 大山綱明

    ○大山政府委員 五十九年度の税制改正でお願いをいたしておりますのは、物品税におきます自動車の税率の引き上げでございます。〇・五%ないし一%の引き上げをお願いいたしております。これは、課税物品におきますところの税負担のバランスを考慮してお願いいたしているものでございます。それから、地方税では自動車税の引き上げ等がございます。これは私どもの所管ではございませんので、詳細は省略させていただきますが、自動車に対する課税、いろいろな税が御指摘のようにございますが、例えば道路を建設するためのものであるとか、保有について負担を求めるとか、消費に対して負担を求めるとか、自動車重量税なんかの場合ですと権利創設税とか、それぞれいろいろな税の性格を持っておりまして、総合的な税負担という点は忘れてはならない点であると思いますけれども、それぞれ多様な課税の目的に応じて御負担をお願いしておるところでございます。
  307. 兒玉末男

    兒玉分科員 それから、自賠法による損害保険保険料、自動車保険保険料等についても、他の生命保険とか火災保険、そういうものは所得税の控除対象になっておりますが、この点は全然なってない。  それから、車検の有効期間を残して登録を抹消した場合に、自動車重量税等は前納でございますので、当然その残期間だけはこれを還付する、これが最も至当ではないかという強い要請も出ているわけですが、この二点についてはどういうような御見解をお持ちか、お伺いしたいと思います。
  308. 大山綱明

    ○大山政府委員 二点の御要望についてはかねて承っているところでございますが、第一点の自賠責保険料、これを所得控除の対象とすべきではないかという点につきましては、所得税の課税におきましては、こういった家事上の経費というものにつきましてはこれは所得の処分である、課税後の所得からお払いいただく所得の処分である、こういう考え方で、私どもお引きをするという立場に立ってないわけでございます。ただいま御指摘の、それでは火災保険等々があるではないかという御指摘でございますが、これはいわば特別の措置でございまして、例えば火災保険の場合でございますと、家といいますのは人間が生活していく場合の最低の必要なものでございます。家が焼けます、そうしますと、その日から生活に困るということから皆さん火災保険をお掛けになる。そういったものについての支出は特別の控除をしようというのが損害保険料控除のシステムでございまして、これと自賠責、自動車を買うというのは個人の選択、自由でございまして、そういったものとはおのずから性格が違うのではないかと私どもは考えておる次第でございます。  第二点の、自動車重量税におきますところのいわゆる廃車還付の点でございますけれども、先ほどちょっと触れましたが、自動車諸税はそれぞれその性格がございます。私ども、この自動車重量税は権利創設税というような言葉で呼んでおりますが、単なる保有税ではない、家を登記いたしますときに登記料、登録免許税がかかりますが、そういったような性格のもの、いわば自動車が道の上を走る権利を取得する、そういった税だという税の性格論を持っております。こういった性格づけからいたしますと、使わなかったから期間に応じて返すというものではない。初めの段階で、登録をしていただきました段階でお払いいただいたものは、その後お返しするというのはその性格論からいってなじまない、こういうようなお答えをかねてから申し上げておるところでございます。
  309. 兒玉末男

    兒玉分科員 自動車に対する一般的な見方というのが、大蔵省としては、車はぜいたく品だというふうな基本的な発想があるのではないか。現在では自家用乗用車約二千五百万台と言われておりますが、その六〇%はそんなにぜいたくのできる階層でなくして低所得者層であり、今日の社会情勢に応ずる状況としては決してぜいたくでなくして、必要最小限のものではないか。生活必需品なのではないか。生活上欠くことのできない要素ではないか。そういう点から申し上げますならば、ただいまの御答弁はどうも時勢に対応しないような御答弁ではないか。  また、重量税なり自動車税なりいろいろ広範な課税がありますが、それらについても非常に大ざっぱなぐあいで課税がされておる。イギリスなりフランスなり西ドイツなり、こういう諸外国のこのような課税に比しても、日本が非常に高いということが統計でも出ているのですから、そういうふうな立場からひとつ再度御検討をしていただきたいと思いますが、いかがでございましょう。
  310. 大山綱明

    ○大山政府委員 私ども、総合的な税負担の水準が国際的に見てどうであろうかということは、常々念頭に置いて議論しているところでございます。ただいま総合的な税負担の国際的な観点というお話が出ましたが、確かにアメリカのような国では日本よりもずっと低いということがございますが、日本の総体としての自動車に対する課税の水準は、例えばイギリスでございますとかフランスでございますとかに比べますると、まだ低い状態であると思います。そういったことを彼此勘案いたしまして負担をお願いいたしているところでございます。庶民まで含めての足になっているではないかという御指摘もございました。普及していることは確かに事実でございますけれども、それはやはり国民生活が随分向上したということのあかしたと思います。そして一方においていろいろな支出の必要性がございますが、それをどういうふうに配分をして御負担をいただいたらいいのかといった場合に、やはり自動車をお持ちの方からある程度御負担をいただく、もちろん総合的な負担を考えなくちゃいけないと思いますけれども、私どもそういったことをいろいろ考えながら、ぎりぎりのところでお願いをいたしておるつもりでございます。
  311. 兒玉末男

    兒玉分科員 これはまた今後論議をいたすことにしたいと思っています。  最後に、現在アメリカが日本に対して農産物の自由化を含めて、円の国際化、金融・資本市場の自由化という厳しい金融開国の要求が出てきていることが新聞でも報道されております。これは、アメリカの金利政策を含めて、日本のいわゆる円相場あるいは国内における金利の引き下げ、またこれから円に対するアメリカのいろいろな経済操作によって、日本経済に与える影響が極めて大きいと思うのでございます。近くパリで蔵相代理会議も開かれるようでございますが、このアメリカからのいわゆる円の国際化、資本市場自由化、開国主義に対して、大蔵省としてはどういうふうな対応をされようとしているのか。また、一般に報道されているように変動相場制、固定相場制等の基本的な問題にもこれから関連するのじゃないかと存じますが、これについて大蔵省の見解を承りたいと存じます。
  312. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる金融開放というお言葉でございますが、私ども考えてみると、国際的に見てGNPがアメリカの半分よりはちょっと少ないわけでございますけれども、人口は半分でございますし、そうして世界第二位ということになれば、円の持つ地位というものが、これはまさに国際化していく、外から求められるものではなく、自然的にそうなるべきものではないかという感じがいたします。したがって、去年の日米首脳会談の際の私とリーガン財務長官との共同新聞発表を契機に、先月の二十三、二十四の両日いわゆる実務者会談が行われたわけであります。したがって、今度また間もなく第二回会合を行うわけでございますけれども、我が国としては、基本的には我が国の自主的な立場から引き続き前向きに取り組んでいく課題であると思います。  ただ、一つ一つ比べてみますと、例えばの話でございますが、銀行の数が、相互銀行以上で計算すると、ちょうど日本は百五十七あります。百五十七というのは国際連合加盟国の数と一緒ですと言ったら、この間安倍外務大臣が、また一つ入ったから百五十八になった、こう言っておりましたが、アメリカは一万四千五百あるわけです。したがって、どちらかといえば日本の場合はすべて預金者保護、投資家保護、被保険者保護、それからアメリカの場合は、どちらかといえばすべて自己責任主義、あそこへ預けておったおまえの選択が悪かったのじゃないかとか、あるいは経営が悪いから倒産したんではないか。日本は、銀行は倒れるものだと思っている人は一人もいないぐらいですから、したがってアメリカの三倍ぐらい貯蓄性向も強いということになれば、本当にある意味においては、アメリカの方が日本の方をまねた方がいいじゃないかというような面もそれは確かにございます。そういうことを勘案しながら、やはりお互い国際化の傾向は否定するわけにはいかぬ。しかし、あくまでも主体的にこれに対応していかなきゃならぬというのが基本的な考え方であろうと思います。  そこで、じゃ自由化した場合、国際化した場合、為替レートにはどういう関係があるかというと、これはある意味においては円高に結びつく要素もあれば、円安に結びつく要素もある。だが、中期的に見ますと、やはり双方の経済の基礎的な条件を反映して、日本のためにも国際的にもいいことだというふうになると私は思います。  そこで、今度は、具体的にお話のありました変動相場制の問題でありますが、変動相場制というのは、昭和四十六年に一度固定相場が変動相場制になってからいろいろ経過を経て、今日までの体験から見ると、ほかにかわるべき制度が、よりいい制度は今見当たらない。だから、やはり変動相場制の中で双方が、例えば、余りにも為替相場の乱高下があれば介入するとか、協調介入するとかというようなことで対応していくというのが、我々先進国の通貨担当者の会議のおおむねのコンセンサスだというふうに思っております。だから、最近の円相場の推移というのは、総じて言えば、日本のいろいろな基礎的条件を反映して、さらに円高基調定着していくことを期待しておるというような立場であると思います。
  313. 兒玉末男

    兒玉分科員 時間が来ましたので一言だけ。  これは大臣の御所見をお伺いしますが、先ほども申し上げたように、九州南部の農業生産農民がこの課税問題で生産意欲を失うことのないように、再生産への希望が持てるような対応をひとつお願いしたいと思うのですが、最後大臣の御所見を承って私の質問を終わります。
  314. 竹下登

    竹下国務大臣 これはまさに国税当局者が、今兒玉さんの意見を謹んで拝聴しておったわけでございますから、その趣旨を絶えず念頭に置きながら対応するものであろうというふうに私も期待いたしております。
  315. 相沢英之

    相沢主査 これにて兒玉末男君の質疑は終了いたしました。  次に、藤木洋子君。
  316. 藤木洋子

    藤木分科員 質問させていただきます。  昨年の十一月一日にサラ金二法が施行されまして四カ月がたちました。今日もなおサラ金がもとで離婚、蒸発、無理心中、そして自殺、強盗、または殺人に至るというケースが後を絶たず、サラ金悲劇と犯罪のニュースのない日が少ないくらいでございます。何がそうさせているのか。私ども政治家はこのことから一刻も目を離さず、病根を断ち切るまで追求していかねばならないと考えています。  そこで、この間諸官庁がどのように業界を監督し指導してきたのか、お伺いしたいと思います。  サラ金の三悪は、高金利、過剰貸し付け、そして仮借なき取り立てと言われてきました。もっとも、サラ金二法は、第一に常識外の暴利を公認し、第二番目には利息制限法と最高裁判例の適用を除外し、そして三つ目に返済能力を無視した過剰貸し付けや暴力的な取り立ての禁止についても極めて抽象的な規定しか設けておらず、サラ金悲劇を減少させ得るものではありませんけれども、しかしまた、それだけに、サラ金二法違反に対する取り締まりは徹底して行われなければならない、このように考えております。  そこで、大蔵省当局はどのように監督指導を行ってこられたか、実際にサラ金二法違反で業務停止命令やあるいは登録の取り消しを行ったという行政処分がありましたら、ぜひその例をお示しいただきたいと思います。
  317. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 昨年の十一月一日に施行になったわけでございますが、それ以降私どもといたしましては、この法律の規定に沿いまして着実に行政を進めておるところでございます。  まず第一点は登録の方でございますが、これはこの三月三日現在までで登録申請が約二万一千件ございました。そのうち既に登録済みが約一万七千件ございます。これは、都道府県をまたがります分につきましては財務局所管ということになります。それから、都道府県の中だけに限った業者につきましては、都道府県の受け付けということに相なっているわけでございます。いずれにいたしましても、合計で一万七千件が既に登録済みでございます。  それから第二番目には、都道府県あるいは財務局あるいは警察等との間で十分な意思の疎通を図りまして、政府挙げてこの対策を講じておるというところでございます。三者の協議会といいますか、連絡を密にいたしております具体的なやり方は、とりあえず各府県に貸金業関係の連絡会を設置いたしておるわけでございまして、これは財務局と都道府県、それから警察のそれぞれの部長でございますが、これで原則として月一回は定例的な会合を持ちまして、いろいろとそれぞれ所管の行政につきましての意思の疎通を図るということをいたしておるわけでございます。  それから、具体的にはもう一つは検査でございますが、これは都道府県と財務局によりまして立入検査が今開始されているところでございまして、既に約二千社につきまして検査を実施いたしたところでございます。  なお、検査の結果によりまして直ちに取り消しが行われているとか、それから業務停止が行われるというような処分の例は、今のところ私ども直接所管のところではございませんし、都道府県所管につきましても現在はっきりそういう処分が行われたという例は聞いておりませんが、行政処分をすることを前提にいたしました聴聞会が開かれているケースは数件あるやに聞いております。
  318. 藤木洋子

    藤木分科員 ただいまの御回答ですと、業務停止処分あるいはそういった処分については出ていないようでございますが、全くそれに該当する業者がいないということであれば、これは幸いだというふうに思います。  さて、ここに警察庁がお出しになった、これは多分新聞広告でお出しになったものかと思いますけれども、「サラ金二法施行 悪質な取り立て行為が規制されました 高金利、強引な取り立てなどの被害は、最寄りの警察へ。」という、これは宣伝物ですね。この広報を流してこられたわけです。実際には貸金業法第二十一条取り立て行為の規制違反で検挙もしくは警告した例があるかどうか、この点について警察庁にお答えをいただきたいと思います。
  319. 清島傳生

    ○清島説明員 お答えいたします。  サラ金二法施行後は、業者の自粛傾向というものも見られるやに思われますが、警察といたしましては、高金利あるいは無登録貸金業事犯とともに、御指摘の二十一条の取り立て規制に違反する事犯について重点的に取り締まりを推進してきたところでございます。  取り締まり状況でございますが、サラ金を利用した者の困り事相談などを受けまして、必要な警告を行うとともに、法施行後報告のあった本年一月末までの取り立てをめぐる不法事犯のうち、二十一条に違反するものにつきましては八件、十四人を検挙しております。  なお、従前より取り立てをめぐる不法行為につきましては、刑法なりあるいは暴力行為等の処罰に関する法律を適用して厳しく取り締まってきたところでありますが、法施行後の昨年十一月一カ月間の捜査結果について調査してみますと、取り立てをめぐる不法行為で十九件、二十五名を検挙いたしております。
  320. 藤木洋子

    藤木分科員 今もあるひどい取り立ての幾つかの実例を挙げてみたいと思います。  一つは、大阪のサラ金業者ローンズ南海の場合です。既に離婚いたしまして現在行方不明になっている夫の借金返済、これを追って子供三人と暮らしているもとの奥さんのところへ押しかけ、玄関のドアに張り紙をし、さらに骸骨のマークを書いたりしたはがきで、ここに持ってきておりますが、「ドロボー、出てきて銭つけろ、このままでは済まさない、家の家財道具全部持っていくぞ」二通出ているわけです。こういった督促状を二度にわたって送りつけられております。  また、いま一つは電報による反復、継続的督促です。ここに電報の束を私持ってきておりますけれども、これは東京新橋の日東リース社から同一人物にあてて送られてきた電報ばかりでございます。「支払いどうした、このままで年を越す気か、とにかく連絡せよ、正月まで仕事させる気か」といった内容の電報を十二月の二十七日には二通、一月の十四日には実に三通にわたって送りつけてきているという事実です。  それから深夜に及ぶ訪問、職場への電話督促、これはもう枚挙にいとまがございません。  さきのローンズ南海の例は文書によって告発がなされておりますけれども、今もってナシのつぶてです。深夜訪問でも、尼崎西警察署の場合ですが、夜九時におらなかったら十一時に行くのは当たり前、こういった調子で、貸金業法二十一条違反は見逃されております。このようなことでサラ金悲劇を根絶することができるでしょうか。  サラ金苦に追い込まれた現職警官でさえ、ついに一千万円銀行強盗を試み、ひんしゅくを買っておりますが、警察庁は、この警官が一体なぜこうした事態に追い込まれなければならなかったか、なぜかと考えていられるか。そしてこの事態にどのような対応をしてこられたのか。さらには、今後こうした不祥事を招かないためにも、サラ金悲劇根絶を目指して厳正な法の施行に当たる決意を国民の前に表明していただきたいと思います。
  321. 城内康光

    ○城内説明員 お答えいたします。  今回の警察官による不祥事案につきましては、まことに遺憾であります。  兵庫県警察におきましては、昨年の不祥事案を契機に規律刷新特別委員会を発足させて、職業倫理の確立、監察体制の強化、身上把握の徹底等を柱に努力しているさなかに、しかも幹部警察官によって再びこのような不祥事案が発生いたしましたことは、今までとってきた施策が一人一人の職員にまで行き渡っていなかったものと深く反省しているところであります。兵庫県警察といたしましては、改めて職員管理のあり方等について検討を加え、再びこの種事案が発生することのないよう、万全の措置を講じてまいることにしております。  警察庁といたしましても、事件発生後直ちに、昨年発出されております警察職員の規律の振粛についての次長通達をさらに徹底するよう、各都道府県警察に対して強く指示するとともに、士気高揚推進委員会を開いて対策を検討したところであります。  今後かかる事案が生じないよう、今回の事件を単に兵庫県警のみの問題として考えることなく、全国警察の問題として厳しく受けとめて十分に手を尽くし、組織の生命ともいうべき厳正な規律のもと、国民の信頼回復に努めてまいる所存であります。
  322. 藤木洋子

    藤木分科員 みずからの襟を正し、そしてサラ金業界の横暴、こういったことを許さないために、法の厳正な施行のために全力を挙げていただきたいということを要望しておきます。  さて、行政としては、国民への啓蒙や広報活動を強化し、身近な相談窓口を数多く設けることが今強く求められていると思います。サラ金二法の施行に当たって、大蔵省自身も広報活動には一定の力を入れてこられたわけですが、自治体といたしましても、大阪ではポスター、京都では市民向け新聞、また兵庫県ではリーフレットを出してきたり、あるいは出そうとしておられるというふうに伺っておりますが、しかし、サラ金業界の広告や宣伝に比べますと、まだまだ足りないのではないでしょうか。ちなみに、業界大手の武富士は、過去一年間に既に六十億円近い広告宣伝費をかけております。決して安心なローンではないということを国民によくわかるように、大蔵省は都道府県の啓蒙活動を督励し、必要な援助をしていただきたいと思います。     〔主査退席、中村(正三郎主査代理着席〕  また、急増している相談に対応することも急を要します。身近な相談窓口を数多く、休日、夜間も開くなど、きめ細かい体制が必要ですし、その構成も、行政、弁護士、被害を克服して立ち直った人、地域の相談員などが協力し合って、地域にサラ金相談センターのようなものができたらどんなによかろうかと思います。現状では本当にわずかの人しか援助できないのではないかと胸が痛みますが、この点もあわせて御検討いただきたいと思います。  引き続き質問をさせていただきますが、後でまとめて御答弁をいただきたいと思います。  サラ金利用者に対して、サラ金業者が生命保険の加入を融資の条件としている問題についてでございます。例えば、武富士は千代田生命との間に団体信用生命保険の契約を結びまして、サラ金利用者に生命保険を掛けております。これを世間では、命を担保のサラ金だという声が高いのですが、大蔵省当局はどういう御見解が、お伺いをしたいと思います。
  323. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 都道府県に対します広告の指導でございますが、先ほど申し上げましたような連絡協議会等を通じまして、できるだけ国民の皆さんにわかりやすい啓蒙的なPRということをしていくべきだということをいろいろ相談いたしているわけでございます。国といたしましても、総理府であるとかあるいは経済企画庁がそのための予算を持っておるわけでございまして、いろいろ消費者保護のための啓蒙活動をテレビ等を通じまして行っているところでございます。  都道府県につきましては、それぞれ独立の公共団体でございまして、それぞれの自主性にお任せするよりほかないのでございますけれども、私ども国といたしましても、国がやっておりますような広報活動の例も伝えまして、できるだけの協力をお願いしたい、こういうふうに思っているところでございます。  それから、いろいろな相談所を設けるべきだというふうな御提案でございますが、特に私ども期待いたしておりますのは、貸金業協会というのが今度法律によってつくられる。これは現在ございます庶民金融業協会を改組するわけでございますけれども、そういう法律に基づきます協会が都道府県にできるわけでございまして、その協会におきましても、このようなことを担当いたします苦情解決委員会といいますか、苦情処理委員会みたいなものを設けまして、強力な活動を展開してもらいたいというように期待いたしております。また、都道府県、財務局自体も担当の窓口を置きまして、いろいろその業者の方からの法令解釈等に対する相談を受けたり、あるいは利用者側からの苦情等も受け付けておるわけでございまして、既に私どもの財務局、都道府県含めまして、法施行後に一万五千件くらいの照会なり苦情の受け付けがあったというふうなことも、計数としては出ておるわけでございます。  なお、団体保険につきましては、保険部長が来ておりますので。
  324. 加茂文治

    ○加茂説明員 保険関係でございますので、私の方から答弁させていただきます。  団体信用生命保険は、信用供与機関の債権確保と同時に、債務者の相続人の経済的な負担の軽減を目的とするものでございます。したがって、生命保険会社のサラ金との団体信用保険につきましても、債務が相続人等に及ぶことを回避することを目的とするものであるということを御理解いただきたいと思います。いずれにいたしましても、生命保険会社に対しましては、サラ金との団体信用生命保険契約の締結に当たっては、引き続き慎重に対処するよう指導してまいりたいと思っております。
  325. 藤木洋子

    藤木分科員 生命保険で保証させることを常識のようにお答えになられましたけれども、それでは国民はたまったものじゃございません。連帯保証人だとかあるいは物件という担保ではなくて、本人の命を担保にすることで、際限のない借金を可能にしているんじゃありませんか。サラ金業者をこれ以上のさばらせるようなことをやってもらっちゃ困る、言語道断だということを申し上げておきたいと思います。  サラ金の急成長と過剰貸し付けの裏に、金融機関の豊富な資金の供給があったということは、今ではもう世間の周知するところとなりました。大蔵省資料によりましても、直接間接合わせまして、昨年九月末現在で融資額は何と一兆円を超えています。日本長期信用銀行を含むいわゆる三長銀は、直接融資七億円であるのに対して、間接融資は二百九十七億円と、圧倒的に間接融資を重視してまいりました。  さて、間接融資という方法がとられているのはなぜか。私どもは常々疑問を感じておりましたが、サラ金への融資がまだまだ後ろめたいということなのでしょうか。それだけではないというふうに思います。この疑問を解きますために、私どもの調査の中で明らかになった事実を申し上げて、大蔵省当局による厳格な調査を要求いたします。  日本長期信用銀行と言えば、長期信用銀行法に基づいて運営をされている政府系の銀行ですね。ここがサラ金大手の武富士に融資するルートは、日本ランディックを経由する九億円の流れと、日本ランディツクから平河町エンタープライズの二社を経由する三十一億円の流れの二本あることがわかりました。図に示しておりますけれども、資本金百万円の平河町エンタープライズ会社は、資金を三十億円も動かしているわけですけれども、電話もなければ事務所もない。すべて日本ランディックの社員がこのエンタープライズの社長や社の役員を兼ねている全くの幽霊会社でした。  大臣、このことはおかしいとはお思いになりませんか。いかがでしょうか。
  326. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 長期信用銀行につきましての今のお詳しい話、事実は私ども存じておりませんけれども、確かに間接融資というのがございます。間接融資をします場合には、サラ金業者の関係会社を通じて融資する場合が一つございます。もう一つは、銀行の子会社であるとかあるいは取引先を通じて迂回的に融資する場合があるんじゃないかと見られるわけでございますが、サラ金業者の関係会社を通じるものにつきましては、既にその実態を調査いたしておりまして、先ほど先生御指摘のとおりでございまして、長期信用銀行の場合には、約三百億円近いサラ金業者の関係会社を通ずる融資があるわけでございます。ただ、銀行の子会社であるとか取引先の場合には、いろいろな複数の金融機関から融資を受けている資金もあるわけでございますし、また、自己資金もあるわけでございまして、そういうものを一体といたしまして当該会社の融資活動を行っているということでございまして、私どもが調査いたします場合に、それがどれだけサラ金の方へ、例えば長期信用銀行から流れたお金がさらにサラ金の方へ流れているかという点につきましては、なかなか把握できないというふうな状況でございまして、その点については御理解いただきたいと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、そういうような取引先とかあるいは金融機関の子会社を通じて実際金融機関から流れたお金が、直接といいますか、間接ではございますけれども、仮にそのお金が直接にサラ金の方に行っているというケースがあるようでありますれば、これはまた自粛を求めなければいけない点でございますので、私どもといたしましても十分な配慮をしてまいりたいと思っております。  なお、日本長期信用銀行は、長期信用銀行法に基づいた銀行ではございますが、政府関係機関ではございませんで、完全な民間の株式会社でございます。
  327. 藤木洋子

    藤木分科員 もう少し説明申し上げますと、一方、日本ランディック社というのは、社長、代表取締役以下主要役員は日本長期信用銀行からの天下りになっております。こうなりますと、平河町エンタープライズ社、これは日本長期信用銀行の指図もしくはその了解のもとに、ある役目を持って介在しているということが濃厚ではないでしょうか。それは、利ざやを稼ぐという役目を持たせているのではないかという点です。この幽霊会社の実態について、監督官庁である大蔵省当局の調査を強く求めるものでございます。  続きまして、大手サラ金の武富士の新社長に大蔵官房審議官まで務めた人物がこの二月に就任し、今度また、サラ金団体である全金連の専務理事に、大蔵省役人生活二十二年、福岡国税局不服審判所長を最後に退官した人物がつくという最近のニュースに、私たちは少なからず驚かされております。サラ金業者の意図は、サラ金のイメージダウンを対外的に繕うことにあるのでしょう。サラ金業界の大事に大蔵当局が相談にあずかったという事実はありませんでしょうか。サラ金二法が施行されて、行政側の業界への監視、監督、指導が求められているこの時期にもかかわらず、行政と業界の癒着がこうした形で水面下で進むのでは、サラ金二法の実効はますます期待できません。大蔵大臣から、この癒着を正し、サラ金悲劇絶滅に向けてどう取り組む御決意かを改めてお伺いをさせていただき、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  328. 竹下登

    竹下国務大臣 去年の十一月に、議員立法で貸金業規制法ができて、それが施行されたわけであります。貸金業の健全化が図られるということを我々も期待をしておるところでございます。その一環として、金融、経理等の豊富な知識、経験を有する大蔵省に在職した者が、請われて就職するケースがあるものというふうに私は思います。  最初、私も、新聞にショッキングな取り扱いで出ておりましたときには、あれっというような感じがしたことは事実であります。しかし、ある意味においては、公務員としての長年にわたる知識や経験が退職後の職場において活用されて、本人にとってもまた受け入れ先にとっても望ましいと考えられることは、サラ金業ということでなく、一般論として間々存在するわけでありますが、それと貸金業の健全化というものが図られる今日、請われて行くということに対しては、これは私は許容される範囲のものではないかというような感じがその後いたしてまいりました。が、大蔵省に在職した者が就職することによって、例えば行政がゆがめられるとかいうようなことがあったらこれは一番いけないことでございますので、そういう面につきましては、常に厳正、公正な行政をこちらとしては行うとともに、そのような第二の人生とでも申しますか、それを請われでそういう場所に求められた、言ってみれば先輩職員に対しても、そういう厳正な態度というものを期待していかなければならぬ課題だというふうに私は理解をいたしております。
  329. 藤木洋子

    藤木分科員 ただいま大臣から、請われて就職するケースもあり得る、本人にとっても受け入れ側にとっても望ましいことではないかというふうにお話がありましたが、御本人と受け入れ側の問題ではなくて、サラ金の横暴を許しているそういう業界に天下りをしていくということ。これは退職者でありますから、直接大蔵省から出ていったというわけではないでしょうけれども、そういった今までの経験がサラ金悲劇を生むことに拍車をかけるようなことになるのではないかという疑いを持たれても仕方がないのではないかと思います。こういった具体的な事実、私先ほどの間接融資の件に関してもお話し申しましたけれども、大蔵当局でぜひともこれに対して徹底的な調査を加えていただきたい。銀行局長はなかなかわかりにくいとおっしゃいましたけれども、わかりにくければわからなくてもいいという問題ではないということを最後に申し述べて、質問を終わらせていただきたいと思います。
  330. 中村正三郎

    ○中村(正三郎主査代理 これにて藤木洋子君の質疑は終了いたしました。  次に、塚本三郎君。
  331. 塚本三郎

    塚本分科員 大蔵大臣にお尋ねいたします。  余り一般世間では聞きなれた言葉ではありませんが、睡眠預金ということを専門の立場から聞くことがございます。これはどういうふうな意味に解釈してみえるか、まずお伺いしたいと思います。
  332. 竹下登

    竹下国務大臣 詳しくは事務当局から正確にお答えした方が適切かと思いますが、預金者本人が死んでしまってそのままになっておる、金融機関に眠っておる預金というような、私は極めて常識的な理解でございますけれども、そういうものではないかなと思います。
  333. 塚本三郎

    塚本分科員 生きておっても、通帳を紛失してしまったり、あるいはまた確認がとれないままにそのままになってしまっておるというものもそれに含まれるべきではないか。現にそういうことを聞いたことがありますが、局長どうでしょう。大臣にちょっとそういう細かい点まで聞くのは無理かと思いますが。
  334. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 一般に銀行では、預金につきまして最終の取引のありましたときから一定期間動きのないものにつきましては、銀行の行内的には別口で管理するという内規をもって処理いたしているわけでございますが、この別口管理にかりました口座にある預金を一般に睡眠口座というふうに俗称で呼んでいるわけでございます。
  335. 塚本三郎

    塚本分科員 その一定期間とは何か政府から指示でも、あるいは法的根拠に基づいておるのか。その判断はどういうところでやっていますか。
  336. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 これは各銀行が個々に対応しているようでございまして、大体二年ぐらい動きがなくなりますと整理口座の方に処理いたします。特に口座の数が非常に多いものでございますから、最近はコンピューターの処理が非常に多くなりまして、コンピューターの容量等がございまして、やはり動きのないものにつきましては別口に移してコンピューターの容量を広くしていくというふうなことでございまして、二年というような程度で移すかどうかにつきましては各銀行が個別に対応しているということでございます。
  337. 塚本三郎

    塚本分科員 最終的にそれはどういうふうな処置の仕方になっていますか。
  338. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 一応時効期間が経過いたします、これは一般の銀行でございますと五年でございます。それから、信用金庫みたいな株式会社でないところは十年、ただ預けた側が株式会社でございますとこれは五年にまたなってしまうのでございますけれども、その時効期間が経過したものにつきましては、預金者との関係では依然として債務として続くわけでございますけれども、銀行の経理上は雑益に計上いたしまして、そして経理しておるというふうな状況でございます。
  339. 塚本三郎

    塚本分科員 雑益として処理するというのは大蔵省からの指示ですか、あるいはまた何か根拠はあるのですか。
  340. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 特別に大蔵省からの指示ではございません。
  341. 塚本三郎

    塚本分科員 これは預かったものでしょう。預かったものを相手が取りに来ないからといって利益として処理するなんというようなことが預かる業者としてできるのですか。
  342. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 依然として預金者との関係では債務は存在いたしております。また預金者が雑益計上後に出てまいるというふうなことになりますと、それは特別その時効を援用することなく預金者に対しましては債務の履行をするということでございます。
  343. 塚本三郎

    塚本分科員 それは当たり前のことですけれども、例えば時効後処理をするというんだったら預かったものが、預り主がいないからとか、まあいるかいないかわからない、大臣は死亡したとおっしゃったけれども、死亡でない人もおるんですよ。だからこれを銀行の利益として処理するなんというようなことはとんでもないことじゃないでしょうか。質屋さんならばいわゆる融資との相殺において処置をするということで質流れということの処置ができますけれども、預かる業をしておる者が、途中で消えてしまった、あるいは忘れてしまった、通帳が紛失してしまった、もっとひどいのになると銀行が預かっておって、そして預かった方は、銀行が全部束になっているからわからないなんというようなことができてきて、そして相手方は確認のしようもないということでそのまま利益ならば、これはとんでもないことになってくると思いますので、この処理というものが法的根拠なしに銀行の利益なんというようなことは、これは大臣法律的にはともかく、私たちが考えると、常識としておかしいのじゃないかと思いますが、いかがでしょう、大臣
  344. 竹下登

    竹下国務大臣 雑益と言えば、一方雑損ということでございますから、私も感覚的には同じような感覚を持ちますが、あり得るのかなと、今問答を聞きながらそういう印象を持っておると言うにとどめておきます。
  345. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 民法上は、時効が完成いたしますとその法的取得が行われても問題はないわけでございます。例えば遺失物などにおきましても六カ月たちますとその拾得者が所有権を取得するということになりまして、一応の法的な安定性をそれによって確保するということではなかろうかと思います。
  346. 塚本三郎

    塚本分科員 それならば、遺失物ならば一度警察に届ける、そういうことをしなければいけないと思うのです。そうじゃないでしょうか。そして拾得物のうちまず一割もらって、そして一定の期間が過ぎたならば本人の方へ全額戻ってくる、こういうことでなければおかしいじゃないか。預かった方がそのまま自分のものにするというのは、この預金金額が莫大な金額になっておる。大臣、私がこれを聞くのは、あなたが随分税収のために苦労してみえるけれども、世上においては何千億、あるいは兆という金額にもなるかと専門筋はうわさしております。そのときにそのままそれが利益だと簡単に片づけていいような金額ではないということだから私はこのことを指摘するんです。  ですから、それでは銀行局長、お尋ねしますけれども、期限が切れたときに預金者に対して銀行から、あなたにはこういうものがありますがいかがしましょうかという通知はしておるんでしょうね。
  347. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 定期預金につきましては必ず通知をいたしているようでございます。
  348. 塚本三郎

    塚本分科員 定期預金について通知をするのは、切れましたよ、続いて更新してほしいという自分たちのいわゆる商行為のために、あなた切れますがどうしますか、続いてできるなら解約にするよりも再び定期預金に組ましてくださいというお願いのためにやることであって、実はそうでないものについては銀行は通知しない。しめしめというようなそんな小汚い気持ちはないかもしれませんけれども、そのままになると思います。では、定期でないものについてはどうしておりますか。
  349. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 確かめたわけではございませんが、通知はいたしていないのではなかろうかと思いますが、確かめておりません。ただ、普通預金の場合には出し入れが非常に自由な預金でございまして、定期預金の場合には期日が来ればそこで一つの契約関係のけじめがあるわけでございます。そういう違いはあろうかと思います。
  350. 塚本三郎

    塚本分科員 大臣、お聞きになったように、出し入れが自由であるから、一定の期間、例えば五年間なければ、あなた、こういうふうになっておりますが、いかがでしょうかと言って通知をして、相手方の結果を見るなりという形で処置をするというのが方法ではないかと思うのですが、通知しておりませんということで、時間的に見てそのまま没収になってくるというやり方は、いかにも銀行としてわがままなやり方ではないかというふうに判断されるが、いかがでしょう。
  351. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 没収はしてはいないのでございまして、あくまでも債務は債務として負っているわけでございます。経理上、益に計算して法人税を納めるということでございまする。
  352. 塚本三郎

    塚本分科員 それがおかしいのですよ。それがおかしいんじゃありませんか。没収という言い方は権力的な意味が含まれる。利益で計上するというのは、利益にするならけじめをつける。  私がなぜこういうことを言うかというと、ある事件がありまして、そして問題が起こって、十何年たってからあなたの預金通帳は実はこれだけありましたといってぴょこんと返ってきてこういうことがわかったから、私は聞くのです、そういう相談に私があずかったものだから。  もっと言うならば、あなたのところは各銀行に対して、預金通帳を預かってはなりませんということになっている。ところが、預かっている銀行がたくさんあるのです。それは預かられても、一枚ならいいのですよ。預金としてあるいは担保として、全部ずっと、がさっと担保の証券やその他と一緒に預金通帳まで持っていくような、今は少ないと思いますが、以前にはそういうのが随分あった。私は予算委員会におきましても歩積み両建て等再三取り上げて、そしてそういう問題、強制預金に等しいようなやり方は大蔵当局の強い指示のもとにだんだんと解消されておりますけれども、なおそういう預金を担保にして貸し付けをするというような銀行があるがために、預けた通帳がそのまま銀行の金庫の中にたくさん眠ってしまっておる。そのうちに借りた方は忘れてしまっておるというような形から睡眠預金というものがたくさん出てきておる。我々にとってはわからなくなってしまったと言って、いわゆる借りておる人が預金者、こういうのがそのまま利益に計上されてしまったらどういうことになるんだ。だから必ず一つ一つ、それは利益に計上するということについて問題があるが、その一つ前に、必ずその前には預金者に確認の連絡をすべきだと私は思いますが、この点、大臣、常識としてどうでしょうか。恐らく今までは一つ議論になりませんから、それは局長に言ってもいろいろなことをおっしゃるでしょうけれども……。
  353. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり本来、民法上からいえば五年たてば時効ですね。だから少なくとも時効前に注意を喚起するとかいうような、私は法律はわかりませんが、親切はあってもいいじゃないかな、そういう感じはいたします。
  354. 塚本三郎

    塚本分科員 それは親切じゃないと思うのだ。利益に計上するというのだったら、預かったものだからけじめをつけなければという気がするのですよ。なぜ言うかというと、郵政省の方は、郵便貯金は十年たったら必ず相手に通知をするのですよ。そうして通知のないものは、それは必ずきちっとしておいて、そして亡くなったものとみなして国庫に納入しているのです。郵便貯金は自分で利益にしていないのです。これは大蔵大臣、お調べいただいたらわかります。郵政省は通知をしておいてきちっとやっておる。銀行だけが、あなたのところだけがそんな形。利益に計上することは後の問題として、きちっとけじめをつけるべきだと思います。局長、そういう経験はないと思いますけれども、そうすることが常識的に必要じゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  355. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 その前に、先ほどいろいろと例をお挙げになられました。もしもそれが本当であるとすれば非常にけしからぬ話でございますが、ただ、銀行では顧客管理にはかなりの労力を使っておりまして、顧客の情報管理システムというものをかなり充実いたしまして、管理方法も厳正に定めてやっているわけでございますので、先ほどのようなケースは私どもは起こり得ないと思うのでございますけれども、もし本当にございましたら、私どもに具体的にお知らせいただきたいと思います。  それから、通知預金等に関しましての通知でございます。これは銀行といたしましては、例えば百円とか二百円という小口の口座が非常に多いと思いますので、この辺につきましては、きょうのお話等もございますので、もし費用負担との関係でできるものにつきましては、あるいはそういう方法はないかどうか検討してみたい、こう思っております。
  356. 塚本三郎

    塚本分科員 今局長の方から、それはけしからぬ話だとおっしゃったので、今こういう舞台で個々の問題を申し上げることはいかがかと思いますので、私は後刻、こういう銀行にこういうことがあったというふうに個別の問題として御連絡を申し上げます。  しかし、いずれにいたしましてもこれは必ず通知をすべきだというふうに思いますし、利益に計上する前には、これは国庫に返さなければ、必ず、本年度はこれだけの睡眠預金があります、これは利益に計上したいと思いますという何らかの——私は、法律で国に取り上げるべきだ、そして国がその後のことについては処置すべきが正しいと思いますけれども、今直ちにそれに必要な法律をつくるということについては時間が必要ですが、とりあえずは預かったものの相手がどうなっているかという確認だけはきちっとすべきだということと、そして一たんは大蔵省ぐらいにはこの数字は連絡をして、きちっと掌握すべきだというふうに私は思いますが、これは大臣、いかがでしょう。
  357. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 今御提案の点につきまして、具体的に案ができるかどうか検討させていただきます。
  358. 塚本三郎

    塚本分科員 大臣、その点いかがでしょうか。
  359. 竹下登

    竹下国務大臣 局長が答えたように、やはり勉強してみることだなと思います。
  360. 塚本三郎

    塚本分科員 私がかつて銀行局にお聞きをいたしましたとき、都市銀行だけで、サンプルでしかできないとおっしゃったが、表面的にサンプルでやって約四百億、そして資料を見ますと、相銀、信金が約百億ずつぐらい、サンプル的にとっても六百億という金額がさっと出てきたのです。私はこれはもう少しきちっと、というのは、ある税務の特捜が支店を調べて私に報告をしてくれた。そのいわゆる税務当局から査察を入れて銀行を調べてみると、大蔵省の調査と比べてみると、はるかにそれを上回っておるのです。先生、一けたは違いますよ、こういうように現に査察をした人から私は聞いたのです。そうすると、六百億ということは一けた違うと六千億。気の遠くなるような金が金融機関の中に、しかも預金者は生きておるかもしれない。  今のように通帳を預かっておる、けしからぬ行為だと言うけれども、現に私が予算委員会で二、三度続けて歩積み両建ての問題をいたしましたが、ごっそり持っていかれてしまって、その社長は私に言うのです。その金を使わせてくれれば何でもなかった、使わせてくれないために私はある土地を売り払って資金に充てた、あの土地さえ持っておったら今は二けた高くなっておるから大金持ちになっておったのに、こう言って、その金融機関を憎しみ抜いておる社長が私に語ってくれたケースがあるのです。恐らく銀行のトップは知らないと思いますが、支店クラスになるとそういうことが間々行われておる。あるいは中小企業の社長たちが私たちに、先生、大きな声で言えないけれどもそんなことは常識ですよと言って金融機関に対する憎しみというものを私に訴えるわけです。その後で、私の場合は十七年目です、別の点で責め立てられたから仕方なしに、ありませんありませんと言っておったからさらにといって追及したところ、この通帳がありましたと言って持ってきたわけです。都市銀行であり得るんです。まして相銀などならあるいは信金などならば事務的に、いわゆる上の本店がつかんでいなくても町においてこういうことが行われるということがあり得ると思うのです。ですから、この点は大臣、勉強なさるとおっしゃったからまた来年私は聞いてみようと思いますから、十分に検討していただきたい。  例えば、ひとつここで、銀行局長、勉強のためにも一度調査してくれませんか。私は名古屋ですが、伊勢湾台風で五千人が亡くなりました。一族郎党全部被害に遭ったところも決して少なくありません。この預金はどうなっているのでしょうか。もう一家全滅という家がいっぱい、たくさんあるのです。とにかく二カ月間ひさしまでの水につかっていたのですからね。ですから、こういう預金などどうなっておるのか、一度この預金者の金の問題など見ていただきたい。私は少なからざる金だと思いますが、局長、どうでしょう。
  361. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 そういうケースにつきまして私ども詳しくは今は把握いたしておりませんけれども、きょう、今の御提案の点につきましては銀行とも連絡いたしまして調査してみたいと思います。
  362. 塚本三郎

    塚本分科員 大蔵大臣、考えてみますと、そういうことが余りにも多過ぎると私は思うのです。  もっと言いますと、預金者にも都合があるのです。家族には知られてまずいような預金というのもあるんです、中小企業オーナーにおいては。それを窓口の例えば女性の受付の人に預けておく。聞いてみると、以前は机の中へ預金通帳を入れておいた。大蔵省からの注意やいろいろなことがありますので今度はそれを預かって我が家に持ち帰っておるというケースもしばしばある。ところが何かの事故でもってころっと亡くなってしまうと家族にわからないままその預金通帳はそのままになってしまう、こういうケースも一再ならずあるわけなんです。  私は大蔵省から聞いた。その預金の額を聞いてみると一万円未満ばかりなのです。だから二十五万口座とかという報告がたしかあったはずなんです。それは極めて金額が少ない金額だから、私たちも事業一つ行事をやるごとに、パーティーなど、そうですね、自分で預かるよりも、ここへ振り込んでくださいと言いますると、一万円未満ですとそのままにしておいて、また、こんがらかるとややこしいから別の口座でやる。そうすると、万以下の金額でしたらそのままという形になってくる。すると、それは睡眠口座に入ってしまう。恐らくこういうものは把握できるのですが、個人がころっと事故などで亡くなった場合の預金はこれは莫大なものだ。しかも通知することについての問題がある。あれば家族に内緒であったものでもどこかに通知ができるけれども、それをなさっておらないというとこういうことができるのじゃないでしょうか。ですからこれは、預金者に対してはきちっと通知をする。そしてそれをどう処置するかは次の問題だというふうに私は判断するのですが、いかがでしょう。もう一度念を押します。
  363. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 日本の民法におきましても、法的な安定性を保つということで、一応時効の完成したものにつきましては、平穏かつ公然にそれを占有していたものというものにつきましては所有権の取得を実は認めておるわけでございます。ただ、預金者との関係で配慮すべき点がやはり金融機関の仕事の場合には多々あろうかと思いますので、きょうのいろいろなケース、御提案になられましたので、金融界の方ともきょうのお話を通じまして議論をしてみたいと思います。
  364. 塚本三郎

    塚本分科員 それからもう一つ。一般の金銭債権とは違うのだから、郵便貯金でも十年なんですから、ですから、これは時効というものも——もしそれならば、一定期間だけは大蔵省の方に通知をして、大蔵省がプールをしておいてやるというのが本当じゃないか。拾ったもの、拾得物については必ずお巡りさんへ預けるのだから、銀行は預かることが業なんだから、自分が握ったままで時効にかかったというようなやり方は、個人におけるところのそれの場合にはきちっと証文があるのだけれども、いまの話で、個人の預金通帳さえも預かってしまったりなどするような今までの、これはよくないことだけれども現実にあり得ることなんだから、だからこれは一定の期間というものをやはりちょっと長くするか、長くすることが悪ければ、五年で時効が完成するならば、きちっとそのことについて相手たる預金者に通知をし、返事がありませんでした分については、この分だけは国として預かっておいていただいて、そしてある程度の期間が来たら、すなわち五年なら五年それからたったならば本人たる銀行へ持っていくということにすべきではないか。貸し金を業とする者は、預かったものについては、本来ならば郵政省の郵便貯金と同じように国庫に帰属すべきだというのが私の考え方なんです。これは大ざっぱな、大体常識として判断をすべきだと思いますが、その点大臣はいかがでしょう。
  365. 竹下登

    竹下国務大臣 預かったものが時効が成立し、なおその相手が通知しても、言ってみればお亡くなりになったりしておるような場合は、私は一つの方法として考え得ることかなという感じがいたします、相続権者そのものもいないわけですから。だから、仮名の場合どうなるかわかりませんが、いまおっしゃったような問題を全部整理して、それでこれは早急に検討を開始いたします。
  366. 塚本三郎

    塚本分科員 そうでしょう。相続権者がいない場合は、私は相続ということは別に言おうと思っておったのですけれども、相続権者がいないと断定すること自身もわからないことなんですよ。本来ならば相続権者にということが次に出てくる問題だと思うのですよ。だから法的な根拠なしにそれを勝手に、いわゆる没収という言い方は言い過ぎかもしれませんが、利益として計上していく。利息なんてなくていいよ、その金だけで楽にやっていかれるよ、こう言って、いわゆる預金者は平気でそういうことが言われておるのですよ。特に、しかも支店で勝手にそういうことの始末等をしておることも風聞として出てきておるのです。担当者が、あそこの会社はこの人の担当、あそこの会社はこの人の担当、ころっと亡くなってしまうと、ひどいのになると、秘密で預けておきますと判ごまで預けてきている。こうなると、その人のものは受付の窓口のその事務員さんの処理に任せておいてもわからない、こんなことまでささやかれてくるわけなんです。例外だとおっしゃるかもしれませんけれども、伊勢湾台風のような五千人も一挙に亡くなった災害時などを見てみるとこうなってくる。もっと言うならば、保険自身の受け取りだって、本人が受け取りになっておった場合どうするのかという、保険金の問題も同じような問題が出てくると思いますが、大臣いかがでしょう。
  367. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに御指摘の点を整理して、これは検討させていただきます。
  368. 塚本三郎

    塚本分科員 私は、この問題は、金額が何百億だけじゃなくて何千億という金額になると想定されるわけですよ。だから厳重に一度、単なる内緒のサンプルだけじゃなしに、各行ごとに一度支店のサンプルぐらいはきちっとつくってみて、そうして根本的にその処置をしていただくことが必要かと思います。国庫財政の厳しいこういう状態の中で行われていることでございますから、ぜひぜひそのことを強く希望申し上げ、時間になりましたので、大臣から最後の決意のほどだけ伺って終わりにしたいと思います。
  369. 竹下登

    竹下国務大臣 貴重な提案、ありがとうございます。それを受けとめまして、早急に各方面と連絡をとってまずは検討を開始してみたい、そのように考えます。
  370. 中村正三郎

    ○中村(正三郎主査代理 これにて塚本三郎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、大蔵省所管についての質疑は終了いたしました。  次回は、来る十二日月曜日午前九時から開会し、外務省所管及び法務省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時一分散会