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1984-03-09 第101回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月九日(金曜日)委員長の指名で 、次のとおり分科員及び主査を選任した。  第一分科会皇室費、国会、裁判所、会計検査  院、内閣及び総理府所管経済企画庁環境  庁、国土庁を除く)並びに他の分科会所管以  外の事項)    主査 上村千一郎君       倉成  正君    与謝野 馨君       大出  俊君    武藤 山治君       有島 重武君    大内 啓伍君       工藤  晃君  第二分科会(法務省、外務省及び大蔵省所管)    主査 相沢 英之君       中村正三郎君    松永  光君       稲葉 誠一君    岡田 利春君       渡辺  朗君    松本 善明君  第三分科会文部省及び自治省所管)    主査 石原慎太郎君       奥田 幹生君    海部 俊樹君       湯山  勇君    池田 克也君  第四分科会厚生省及び労働省所管)    主査 大村 襄治君       小杉  隆君    橋本龍太郎君       川俣健二郎君    矢山 有作君       草川 昭三君  第五分科会総理府環境庁)及び農林水産省  所管)    主査 武藤 嘉文君       小渕 恵三君    谷垣 禎一君       島田 琢郎君    斉藤  節君       小平  忠君  第六分科会総理府経済企画庁)及び通商産  業省所管)    主査 伊藤宗一郎君       熊川 次男君    田中 龍夫君       井上 一成君    木下敬之助君       瀬崎 博義君  第七分科会運輸省及び郵政省所管)    主査 原田昇左右君       中西 啓介君    原田  憲君       三塚  博君    上田  哲君       二見 伸明君  第八分科会総理府国土庁)及び建設省所  管)    主査 村田敬次郎君       亀井 静香君    高鳥  修君       山下 徳夫君    清水  勇君       武田 一夫君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十九年三月九日(金曜日)     午後零時四十一分開議 出席委員  委員長 倉成  正君   理事 小渕 恵三君  理事 原田昇左右君   理事 松永  光君  理事 三塚  博君   理事 山下 徳夫君  理事 岡田 利春君   理事 川俣健二郎君  理事 二見 伸明君   理事 大内 啓伍君      相沢 英之君     伊藤宗一郎君      石原慎太郎君     宇野 宗佑君      上村千一郎君     大村 襄治君      奥野 誠亮君     海部 俊樹君      金子 一平君     小杉  隆君      砂田 重民君     田中 龍夫君      高鳥  修君     谷垣 禎一君      玉置 和郎君     橋本龍太郎君      原田  憲君     三原 朝雄君      武藤 嘉文君     村田敬次郎君      村山 達雄君     山口 敏夫君      与謝野 馨君     井上 一成君      稲葉 誠一君     上田  哲君      小川 国彦君     大出  俊君      島田 琢郎君     清水  勇君      武藤 山治君     矢山 有作君      湯山  勇君     貝沼 次郎君      草川 昭三君     斉藤  節君      神田  厚君     木下敬之助君      小平  忠君     渡辺  朗君      工藤  晃君     瀬崎 博義君      津川 武一君     中川利三郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 森  喜朗君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         農林水産大臣  山村新治郎君         通商産業大臣 小此木彦三郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     田川 誠一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官)稻村佐近四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長 岩動 道行君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      波多 秀夫君         行政管理庁行政         監察局長    竹村  晟君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁次長 小谷  久君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         科学技術庁研究         調整局長    福島 公夫君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         環境庁水質保全         局長      佐竹 五六君         国土庁長官官房         長       石川  周君         国土庁地方振興         局長      川俣 芳郎君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   波多野敬雄君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵大臣官房審         議官      行天 豊雄君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省関税局長 垂水 公正君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         国税庁直税部長 渡辺 幸則君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省体育局長 古村 澄一君         厚生大臣官房審         議官      新田 進治君         厚生省公衆衛生         局長      大池 眞澄君         厚生省公衆衛生         局老人保健部長 水田  努君         厚生省環境衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省医務局長 吉崎 正義君         厚生省薬務局長 正木  馨君         厚生省児童家庭         局長      吉原 健二君         厚生省援護局長 入江  慧君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         食糧庁長官   松浦  昭君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業省通商         政策局長    柴田 益男君         通商産業省貿易         局長      杉山  弘君         工業技術院長  川田 裕郎君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       松田  泰君         中小企業庁長官 中澤 忠義君         運輸省航空局長 山本  長君         郵政省電波監理         局長      鴨 光一郎君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         消防庁長官   砂子田 隆君  委員外出席者         大蔵省銀行局保         険部長     加茂 文治君         参  考  人 前川 春雄君         (日本銀行総裁)         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 三月六日  辞任         補欠選任   経塚 幸夫君     津川 武一君 同月八日  辞任         補欠選任   工藤  晃君     中川利三郎君 同月九日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     与謝野 馨君   奥野 誠亮君     中村正三郎君   金子 一平君     奥田 幹生君   砂田 重民君     谷垣 禎一君   玉置 和郎君     熊川 次男君   三原 朝雄君     中西 啓介君   村山 達雄君     亀井 静香君   山口 敏夫君     小杉  隆君   武藤 山治君     小川 国彦君   大久保直彦君     貝沼 次郎君   正木 良明君     池田 克也君   矢野 絢也君     武田 一夫君   小平  忠君     神田  厚君   津川 武一君     松本 善明君   中川利三郎君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     武藤 山治君   貝沼 次郎君     有島 重武君   神田  厚君     小平  忠君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田哲君。
  3. 上田哲

    上田(哲)委員 空転再開に当たりまして、政府与党側の御答弁には私どもはなお大きく不満を持っておりますけれども審議再開に応ずる立場をとりますので、そのことを含んで質疑を続けていきたいと思います。  まず、にわかな円高問題でありますが、日銀総裁、御苦労さまでございます。まず、日銀総裁に伺いたいのでありますが、このところの急激な円高動き、シカゴの投機筋動き等々さまざまな話題を呼んでおりますけれども、それがきっかけ一つであるとしても、この本当の背景は何であろうか。つまり、西ドイツ・マルク動きに応じて、置かれていた円が再評価されているのだとかさまざまな見方もこざいますから、そうした面でこの背景をどのようにお考えになるかということと、それから、この流れの中では決して一時的なものだというふうには考えられない要素もあるわけでありますから、今後の動きをどのようにお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  4. 前川春雄

    前川参考人 円相場につきましては、かねがねもう少し円高になることが望ましいし、また、なる筋合いだろうというふうに思っておりました。日本経済のいわゆるファンダメンタルズと申しますか、基礎的条件である物価が安定しておる、あるいは国際収支が黒字である、あるいは経済成長が外国に比べて非常にいいというようなことから、円はもう少し円高になる筋合いだろうというふうに思っておりました。なかなかそういうふうになりませんでしたのは、一つは、アメリカ金利が高いということがあったというふうに思っております。  ところが、先週の金曜日ぐらいから一転いたしまして、今お話しのような円高が急速に進んでおるわけでございます。きっかけは、ヨーロッパ通貨が戻してまいりまして、ヨーロッパ通貨回復につれまして円が割安である、割安感が出てきたということが一つきっかけになっております。しかし、基本的には、先ほど申し上げました日本経済基礎的条件認識されてきたということであろうというふうに思います。  この先、そういうことであればさらに円高になるかどうかというところでございますが、二つの要素がございます。一つは、今の申し上げている日本経済基礎的条件、もう一つは、アメリカ高金利がなかなかおさまらない、そのために資本の流出が続く、そのことは逆に円安要因になる。この両方の要素がどういうふうに働くかということにかかってくるというふうに思います。最近はやや、米ドルが今のように強い状態がいつまでも続くことはないだろうという見方が少しずつ広がってきておりますので、アメリカ高金利はなかなかおさまりませんけれどもドルが若干修正安を続けるという動きが目立ってきておるわけでございます。変動相場制でございますので、とかく相場が行き過ぎる傾向がございますので、今のような状態が果たして続くかどうか、何分市場のことでございますので、特に私ども立場からどういうふうになるかということをなかなか申し上げにくいわけでございます。私どもといたしましては、円高方向定着していくことが一番望ましいというふうに考えております。
  5. 上田哲

    上田(哲)委員 大蔵大臣はこの円高背景と今後の見通しをどのようにお考えでありましょうか。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 今の日銀総裁からお答えになったことでおおむね尽きるわけでございます。  ちょうどきょう、お昼が二百二十三円三十五銭というところで引けたところでございますが、この問題につきましては、いろいろな角度から言われております問題の一つとして、今おっしゃったとおりの、ドイツ・マルクを初めとする欧州通貨が一時ずっと急騰いたしまして、それに残されておったのが戻した、その御見解とは一緒の見解を私は持っております。これによって、今度は別の角度から米国経済あるいはドルの信認が低落するじゃないか、これは私は、今おっしゃったような共通の認識からすれば、にわかにそれにつながるものではないというふうに考えております。  それで、おおむね日銀総裁あるいは大蔵通貨当局上田委員との認識はほとんど相違がないじゃないか、こういう理解であります。
  7. 上田哲

    上田(哲)委員 大臣の感覚、見識で見ると、少なくとも一過性ではない。そうなりますと、経企庁などの調査では、企業はおおむね二百十円から二百二十円ぐらいで計算を立てている、したがって、国際競争力は十分である、なお余力ありというような見方を含めて考えていいのでありましょうか。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 円とドル関係は、幾つか要素があると思うのです。今お二人もお述べになったとおりだと思います。  ただしかし、まだ円高になりまして数日のことでもありますから、もう少し様子を見ませんと、どのように定着するのか、今ここで断言することは難しいと思います。しかし、仮に円高方向定着するということになりますと、日本経済政策も非常にやりやすくなる、そういう一面が出てくる、このように期待をいたしております。
  9. 上田哲

    上田(哲)委員 非常にやりやすくなるというところが大事でありまして、日本の今後の経済政策基本内需拡大に置く、しかし財政が弱いから金融政策でこれをドライブしていかなければならないという立場だったが円安だったからそれができないということであったとすれば、このあたりで、やりやすくなったというお言葉がそこで具体的に生きてくると思うのですけれども産業活力のてこ入れのために公定歩合を含めて金利水準を下げる理由というのが出てきたのじゃないか。経企庁長官、いかがですか。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府のことしの経済連営基本方針は、この委員会でもたびたび申し上げましたが、一つは、財政政策金融政策機動的運営でございますが、円高傾向定着をいたしますと金融政策を機動的に運営できる一つ条件が整った、こういうことは言えると思います。それからもう一つ言えますことは、やはり貿易収支改善にある程度役に立つであろう、このように思います。今保護貿易的な傾向がややもすると出てきておりますので、それを抑えて自由貿易体制を維持するということが当面の急務でございますが、その面からもある程度政策がやりやすくなる、このように思っております。     〔委員長退席原田(昇)委員長代理着席
  11. 上田哲

    上田(哲)委員 ある程度やりやすくなったということは、公定歩合を含めて金利水準を下げる要素が出てきたというふうに受け取ってよろしいですか。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは私が申し上げる立場にはございませんで、そこに大蔵大臣日銀総裁とお二人おられますから、お二人からお聞きになればいいと思うのですけれども、私が申し上げましたのは、金融政策を機動的に運営できる一つ条件、ほかにも条件があると思うのですが、その一つ条件が、もし円高傾向定着すれば整った、こういうことになるであろうということを申し上げまして、自余の問題はお二人からお聞きいただきたいと思います。
  13. 上田哲

    上田(哲)委員 くどいようですけれども、その条件がややかたくなってきたというふうに受け取っていいのでしょうか。
  14. 河本敏夫

    河本国務大臣 円高傾向定着をすれば金融政策を機動的に運営できる一つ条件が整った、このように思います。
  15. 上田哲

    上田(哲)委員 かけ合ってもしようがないのですが、非常に大きい条件だったと思っているわけです。  日銀総裁、伺いますけれども、六日に出された日銀短観では、回復のすそ野が広がってきたということが一口で言えば言えるわけですが、しかし、非製造部門というのはやはりいろいろ問題があるし、つまり偏りが指摘されている。総裁は三日前の記者会見で、金利問題、公定歩合問題については非常に慎重な発言をされておりますけれども、しかし、今の両大臣等々の見解を含めて、一遇性でないとすれば金利にさわってみる可能性というものはやはりかなり芽生えつつあるというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  16. 前川春雄

    前川参考人 金融政策なかんずく金利政策を今まで考えてまいりまする上におきまして、物価が安定しておること並びに円相場が、対外的に円通貨価値が、対外的な意味為替が安定する、円高方向に安定するということが条件であるというふうに考えておりました。そういう意味では、もし円高方向定着するということになれば、そういう金融政策考えるのの一つ要素、今お話し要素が満たされるということになるわけでございます。ただ、金利政策を遂行してまいりまする上におきまして、今の世界海外金利水準、こういうものもやはり考えてまいらなければいけない。今、日本金利水準世界先進国の中では最も低い水準になっておるわけでございます。そういう意味から申しまして、海外金利水準が今のままである中で日本金利水準をさらに考えていくという場合には、それが招来するいろいろな影響ということもやはり考えなければいけない。また、国内の面から申しますれば、物価為替円高ということが一つの大きな要素ではございますけれども、やはり金利政策考えてまいりまする上におきましては、国内における資金の移動状況、つまり預金金利というものをどういうふうに考えるか。今のように金融資産、いろいろ高利回りの金融資産というのがたくさんあり、金利選好というものが高まっているときに、それとの関連をどういうふうに考えるか、そういうこともあわせて考えなければいけませんので、今お話のございましたように、一つ要素であるということはそのとおりでございまするけれども、その他の要素ということもあわせて、よく私は申しますけれども、総合的な判断をせざるを得ないというふうに考えております。(上田(哲)委員「大きい要素」と呼ぶ)一つ要素
  17. 上田哲

    上田(哲)委員 一過性ではない、そしてその上に立って、総裁の数日前の御発言よりは少しニュアンスが変わってきたというふうに私は受け取りたいと思っております。  そうなってまいりますと、大蔵大臣国債金利ですが、先ほど三月新発債条件発行価格五十銭上げということになったようでありますが、こういう状況が続くとすれば、これもひとつさらに考えていい条件ができてきたのではないか。いかがですか、四月新発債に向かって。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほど来金利の問題について総裁と問答が行われておりましたが、私も同じような関心を持って見ておりますと、六・五〇〇が六・四三七五とか六・三七五〇とか、条件移動がまだ非溝に小さい段階でございます。したがって、短期金利にも必ずしもこういう条件がもう熟したとまでは言えないかもしらぬな、だから、もう少し相場観が安定するとでも申しますか、そういうところまでその問題も待ってみなければならぬのかなと。  一方、今御指摘なさった国債市況、これはかなり急騰を受けて急速に好転したと言えるかもしれません。したがって、御指摘のとおり三月発行国債はまさに応募者利回りの引き下げという条件で合意ができたわけですね。ですから、四月債等国債市況に好影響を与える一つ要因は整っておるが、米国金利の動向、内外の金融経済のさまざまな要因影響を受けながら全体が決まってまいりますから、今もう、哲ちゃん――失礼しました。上田委員、もう交渉が大変有利になりましたというところまでは断言できるとは言えないじゃないかなと、まあ素直な感じです。
  19. 上田哲

    上田(哲)委員 愛称で呼んでいただいたので、どうも緊迫感が緩んでまいりますけれども、三月発行債についてはまさに円高影響してこうなった、この傾向が続くなら、当然やはりその方向を見ていくことになるのだなというふうに受け取っていいわけですか。
  20. 竹下登

    竹下国務大臣 これからのまた市場実勢動きますから。が、方向としてはおっしゃった認識の上に立っていいのじゃないかと思います。
  21. 上田哲

    上田(哲)委員 もう一つ、今月の二十三、二十四ですか、また円ドル委員会がありますけれども、こういう背景を受けて、やや強気に転じて交渉態度が生まれてき得るのではないか、こう思うのですが丁いかがでしょうか。
  22. 竹下登

    竹下国務大臣 円ドル委員会、二十二、二十三。が、この前も必ずしもレート問題でぎしぎしした議論にはならなかった。やはり両国の長い関係の中で、やや長期的に基本的な問題を論議しようやということになりますので、今の情勢自体がときどき評論家の方々が、一つの問題もう済んで大蔵省が楽になっているのじゃないか、そういう問題とは、やはりもう少し基本的な議論の問題になっておるというふうに理解しております。
  23. 上田哲

    上田(哲)委員 日銀総裁、結構でございます。  問題を次に移しますが、厚生大臣、中国残留日本人孤児の問題。二日前に半数がはっきりしないで帰られた。これはもう日本国民がだれもがやはり胸を痛めている問題だ。これはひとつ、関連の各大臣もおられるけれども、腹を固めていただきたいわけであります。  厚生省からいただいている資料によりますと、調査依頼があったものが千五百二十七人、これまでの身元が判明している方が七百三十三人、いろいろ差し引いてあと六百九十三人がこちらに来たいということですね。  これが、私は二つ問題があると思うのですが、一つは、この方々をすぐ来ていただくということ、もう一つは、それ以外のはっきり依頼もされていない方々がいらっしゃる、この二つの問題があると思うのです。  第一の問題は、五十九年度予算に八千万円の予算だ。これは百八十人だ。このペースでいくと四年半かかるわけですね。時間との勝負になっているわけですから、これは幾らかドライブをかけるという方針をお持ちになっているようですからそのことは結構なんですが、どうせなら、これは中途半端に少しずつスピードを二倍に上げるなどというのではなくて、一気にやるべきだ。百八十人で八千万というのであれば、三億から四億あったらこの一年間にできるわけですよ。ヒューマニズム、熱情の政策だというので、これは一気にやるべきだということを私はぜひここで腹をくくってもらいたい。これは、私は国会で質問している以上、泣いて帰った方々の残影がまだ残っているわけだから、これでなまはんかな答弁をされたくないわけですよ、日本立場からして。熱血漢の厚生大臣が、ここでとにかく三億か四億でこの一年間にこの第一の問題は進められるわけだから、これはひとつ、これについての金額をいろいろ言う意見は日本じゅうどこにもないだろうということですから、ここは二回、三回じゃなくて一発で、本当に日本のヒューマニズム――ヒューマニズムなんてものじゃない、もう本当の涙ですな。三億、四億ですよ、これだけの数は一気にやる、この第一の問題をすっきり答弁していただきたいと思います。
  24. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 中国残留孤児の皆さんの問題で大変積極的な御意見を賜りまして、大変ありがとうございました。  実は、今回五十人の訪日がありまして、私も二度ほど現場に参りまして、援護局の職員やボランティアの皆さん方が一生懸命肉親捜しに協力しておる姿を目の当たりに拝見しておりましていろいろ考えさせられましたが、特にやはり戦後三十九年というこの歳月の長さということ、これが非常に困難をきわめておりまして、これは一厚生省だけでどんなに一生懸命やっても解決する問題ではありません。特に報道関係の皆さん方、先生は大先輩でございますけれども、また、国民の幅広い皆さんの御協力によってのみこれは進むことができることを痛感いたしました。  御指摘の予算の問題ですが、これはお話しのとおり、予算がとれなかったために来年百八十人しか呼ぶことができないというようなことであれば、これは皆さん方の御協力を得て予算は増額させていただくので、今お話しのように、これほど戦後日本の残された大きな問題として解決を一日も早く迫られている問題が、一億、二億の予算がとれた、とれないの問題でおくれるようなことがあったら、これは私の責めであり、また大蔵大臣の責めでありますけれども、現実問題としては中国側の、受け入れ側の皆さんの御協力があるものですから、いまのところ百八十人がやれる限界の手いっぱいということで、私も、これは何で一遍にやってしまわないんだ。歳月が一年でも二年でもおくれればおくれるほどこれは難しくなるわけですから、ところが、中国側の受け入れ態勢というものもありますので、いまの状態ではなかなか一気に全部やるというようなところにいきませんけれども、今度総理が訪中されましてこの問題についても中国側と篤と話をしていただくことになりますので、そういうことで中国側の受け入れにまたさらに明るい展望が出てくれば、もちろん予算がないためにこの仕事が進まないというようなことはないように今後努力してみる覚悟でございます。
  25. 上田哲

    上田(哲)委員 できれば一年でやりたいと……。
  26. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 そういうことでございます。
  27. 上田哲

    上田(哲)委員 そこで、総理が訪中される。これはいろいろな問題があるからいつになるかはっきりしないところはありますけれども、それはおいておいて、官房長官、総理が行かれるので、厚生大臣も、とにかくやれるなら、金の問題じゃない、一気に一年、半年ででもやりたい、こういうことですから、総理が訪中された際には二つの問題、一つはこれまでの養父母に対して心からのお礼を言ってもらいたいこと、これは当然のことですね。もう一つは口上書の問題だと思いますけれども、中国との間でぜひこの問題を解決していただいて、できるなら、いま厚生大臣の言われるような、いますぐ全部やりたい、この六百九十三人についてはすぐやりたいということについて御努力をいただくことを、総理のかわりとして内閣を代表してひとつお約束をいただきたい。
  28. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 お話しのように、従来養父母の方々を中心にして大変な御苦労の中で、懐の中に温めるようにしてかわいがってきてくださった、そのことについて真心込めて感謝の意を表さなきゃいかぬということは当然のことでございまして、その誠をあらわすことが第一であるというふうに考えております。  それから、今お話しの一挙に解決をするということにつきましては、従来長い時間をかけて厚生省を中心にして政府としてもいろいろな対応をいたしてきておりますので、国会の御了承を得てから決めることにはなりますけれども、中国へ出かけるということになりましたならば、事前に厚生省とよく相談をいたしまして、ただいま厚生大臣がお答えをいたしました線で総理としても態度を表明するようにいたしたい、このように考えております。
  29. 上田哲

    上田(哲)委員 大変結構です。それにつけてもう一つ。  さっき申しましたこの六百九十三名以外の、当時十三歳未満の、あるいはもうすでに名前の消されている人々も含めて三千四百人、厚生省でもリストを挙げているようです。ここまで来ているわけですから、そしてこれまでの経過はあるとおっしゃるが、五十人来て二十五人しかという問題は、やはり曲がり角ですからね、急がなきゃならぬという急ぎの時期だと思うのです。したがって、第二の問題であるこの六百九十三人以外の方々のために予備調査をするということ。それから、日本に来てから何日かかかって聞き取り調査というのでは間に合わないわけですな。あした帰るんだ、あと一日だと言われると、テレビを見ていてもみんなつらいわけですよ。だからそれを、向こうへ行っていろいろな予備調査をする、データをこっちへ送ってくる、公開するというような形がスムーズにとれることが望ましいと思うのですね。そういう問題も一気に解決するために、精力的に中国側に、これは総理の口から日本国民を代表して言っていただくということをもう一遍御確認をいただきたい。
  30. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、従来いろいろと御心配をかけてきた養父母に対する感謝の念をまずささげること、これが第一のことかと思うのでございます。その残っておられる方々についてどうするかということにつきましては、これはちょっと打ち合わせをいたしておりませんが、厚生省として長い間いろいろこの問題に携わってまいりまして、いろいろな考え方、方針もあろうかと思いますので、厚生大臣からお答えをすることをお許しいただきたいと思います。厚生大臣からお答えをいたします線で、総理としても、中国に参りましたときにそのような方向で努力するということにさせていただきます。
  31. 上田哲

    上田(哲)委員 よくわかります。厚生大臣、今そういうことですから、ぜひひとつ六百九十二名の方々の可及的速やかな、できればこの一年以内でやる、それから調査をそれ以外の方のところにも広げる、それから、かの地へ行ってそうした調査の方法をとる、この三点について中国側に、総理からしっかり発言をしていただくということについてよろしくお願いいたしたい。
  32. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 これは先ほども、単に厚生省の行政のみならず、報道関係の皆さんやあるいは国民の皆さんの幅広い協力なくしては進めない仕事であると申し上げたのは、今の上田委員の御指摘のような問題は、国民の皆さん方がこれに非常に大きな関心を持っていただくことが前提になるわけであります。  それから、五十人おいでをいただいて二十五人しか肉親を求められなかったということでありますが、これはもう親と子という神聖な結びつきでありますから、ただ数合わせのために間違ったりしたらなお以上大変なことになりますので、私が見た範囲では、精いっぱいに今回は努力してこの数字だったろうと思います。そういう大変難しい問題を含んでおりますが、その中でもやはり中国側の皆さん方の協力が前提になるものですから、その御協力がなくては厚生省だけで気をもんでもこれはできない問題でありますから、先ほど官房長宮からお話がありましたように、まず三十九年間の育ての親である中国の養父母の皆さんへの感謝を前提のもとに、総理が積極的に頑張ってくださるものと思います。
  33. 上田哲

    上田(哲)委員 よくわからない。いいですか、六百九十三人についてはもうこれからいったら四年半かかるのだから、そうではなくて可及的速やかに、ただドライブをあと半分にするというのじゃなくて、できるだけ早くというのは、もっとそういう意味のスピードをかけてやるという処置を講じたい、それから、そうでない依頼をしていないけれども潜在しているであろう人々についての調査というものを進めたい、ついては、向こうへ行って具体的な予備調査をしてPRをするということについては、こちらの国だけのことではできないから、その三つの点について腹を固めて、代表した総理に、中国側に御協力をいただくということについてそれでいいかと。厚生大臣がそれでいいと言うなら総理はそのようにして言うんだと言っておるのだから、ぐるぐるしないで、あなたも熱情の政治家でしょう、ヒューマニズムをちゃんと出して――この話がここでぐずぐずすることは、孤児の皆さん方に対してあるいは中国に対して好ましくないと私は思うのです、熱情を明らかにすべきだから。ひとつぐるぐる回らないで、はっきりそのとおりやるのだ、そうしてもらいたいのだということをここで言ってください。
  34. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 入江援護局長
  35. 上田哲

    上田(哲)委員 ちょっと待ってくれ。大臣に対してた。質問者の自由じゃないですか。
  36. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 上田委員から御注意をいただいたように、決してこれはぐずぐずしているわけではございませんで、行政としての最大限の努力を進めておるわけであります。問題は、今の肉親捜しの問題にしましても調査の問題にしても、非常にいろいろな制約、また中国側との外交上の問題などがあるので、単に予算が足りないとか足りなくないとかいうことではなくて、現在では、来年は百八十人が精いっぱいということで計画しておったわけでありますけれども、今度総理の訪中によって中両側の幅広い御理解と御協力を得られることになれば、それはまた変わってまいると思います。
  37. 上田哲

    上田(哲)委員 そうそう、それでいいんだ。だから、そういうことについて、日本政府を代表して総理が訪中されるときに、そのことを、中国側の御協力を得たいということを誠心誠意述べていってもらいたいということを言っているのです。決して難しい話、官僚が出てくるような細かいことを言っているのじゃないわけですから、私の言ったことを了承していただいたと思う。  官房長官、ぜひひとつそういうことを、いつになるかわかりませんが、総理訪中の際には、誠心誠意中国側に伝えていただきたいということを御確認いただきたいのです。
  38. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 この問題については、長い従来の時間の中で、両国にわたっていろいろな事情の中で、その困難を乗り越えて努力が重ねられてきておるということを経緯として私ども考えておるわけでございます。それだけに、向こうに参りまして誠心誠意、養父母の方々に対しあるいは中国側に対し感謝の念をあらわさなければいかぬ、このことは再三申し上げておるとおりでございます。  今後の問題につきましては、今、厚生大臣がお答えをいたしましたような線で、総理としても努力をするようにいたしたいと存じます。
  39. 上田哲

    上田(哲)委員 これは何も、一生懸命になって防御的な答弁をしようとか攻勢的な質問をしようとかという問題ではない。ここでそういう議論になることを私は恐れるのですよ。これはまさにみんなでやらなければならないことだから、厚生大臣は、これはどこまでくらいならできるだろうなどという行政的な判断に立つのではなくて、政治家の判断として、これは今国民の共通の悲しみといいましょうか、そうした問題を解決するようにしていただきたいということを念を押しておきます。  関連する意味で、外務大臣大蔵大臣から、財政的にも外交的にも最大の努力をするということを一言ずつお承りしたいと思います。
  40. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 中国側との話し合いにつきましては、外務省としても、今官房長官が申しましたような線で努力をいたします。
  41. 竹下登

    竹下国務大臣 財政当局としても考え方は同じであります。
  42. 上田哲

    上田(哲)委員 ぜひひとつ頑張っていただきたいということを切に希望をいたしておきます。  二、三の問題で確認をしておきたいのでありますが、外務大臣、今アメリカで大変注目を集めております民主党の大統領指名レース、外務省ではいろいろな情勢調査をされておられるようでありますが、モンデール優勢というような状況が変わったというふうに分析されておられますか。
  43. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 外務省外務省として確かに大統領選挙に注目していろいろと調査、分析、情報の収集等をやっておるわけでありますが、今のところはハート氏が非常に急上昇しているということは今までの選挙の結果から明らかでありますし、その勢いは今後続くだろう、こういうふうに見ておりますけれども、いわゆるスーパーチューズデーというのですか、十三日の結果を見ないと、民主党の中でだれが候補者になれるかという判断はなかなかつきかねる、十三日を注目して見ているというところです。
  44. 上田哲

    上田(哲)委員 仮設の問題では答えにくいかもしれませんけれども、ハート急上昇、これはだれが見ても一つの数字でありますけれども、そうした状況になった場合に、あるいはこれは大統領選挙そのものの問題を、先を見なければならぬかもしれませんけれども、日米関係についてはどういうふうな御関心をお持ちでありますか。
  45. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはアメリカの選挙でありますから、そしてまた今選挙の最中でありますから、結果が出てみないとわからないわけでありますが、しかしこれは、民主党は民主党の政策、それからレーガン大統領はレーガン大統領の政策があるわけですし、ハート氏の候補者としての、これまでの上院議員としての対日問題に対するいろいろの政治家としての実績等はもちろん分析しておるわけですが、これが果たして今後どうなるかは、これから結果を見ないとちょっと何とも言えないわけです。
  46. 上田哲

    上田(哲)委員 大変楽しそうにお話してありますから、私どもは若いアメリカに期待を持って、日本の政治の改革も連動することをひとつ期待しておきます。  そこで、これは二月十四日のこの委員会での総理の答弁でございますが、先ごろレギュラスの問題等々二十年前の核の問題が議論されましたのも、今日トマホーク等々の実戦装備の問題、ニュージャージーの入港というような問題が、具体的な日程となって指向されているというところが大きな関連にあるからだろうと思います。そこで、本委員会の議論でありますからひとつ確認をしておきたいのでありますが、本委員会二月十四日の質疑の中で総理大臣が、  夏ごろにニュージャージーが入ってくるという新聞情報がございます。ニュージャージーはトマホークを装備するであろうと伝えられております。しかし、トマホーク装備の場合には核・非核両用のものがあり得る、そういうことにも報ぜられております。ニュージャージーが仮に将来入ってくるというような場合には、その辺につきましてはよく確認をいたしたい。そして、非核であるということで我々は入港を認める、そういうことにいたしたいと思います。と答弁されております。これはこれまでとは違う。つまり、事前協議制があるから、向こうから言ってこないのだから核はないのだという論理とは違って、核があるかないかをこちらから確認をして、ないとなれば入港させるのだという、今までとは違った非常に踏み込んだ答弁であります。外務大臣は、これまでと違って、どういうふうにニュージャージーの核・非核を確認されるのでありますか。
  47. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ニュージャージーが日本に入ってくる、入港するということにつきましては我々何も聞いておりません。その段階になればもちろんアメリカから事前に通告があるということだろうと思います。現在のところは全くありません。  それから、核の問題につきましては、日本政府としましては今までの考え方と全く違ったところはないわけでありまして、もしアメリカから核を持って入港するというときには事前協議があるだろうし、その場合は日本は終始一貫ノーであるということは明らかでございます。また、日米間においてはこれまで何回か一般的な意味において話し合いをいたしております。そしてその結果として、アメリカも日米安保条約、そしてその関連規定を遵守していく、日米間の信頼関係を守っていく、それで日本の非核三原則があるということは十分承知しているし、日本に核に対する非常に深い感情が国民間にあるということも承知しておって、そういう中で、そういう立場で、安保条約の関連規定等は必ずこれを守っていくのだということを終始一貫アメリカとしても言い続けてきておるわけでございますから、我々はそういう立場でこれからも対処してまいる考えてあります。
  48. 上田哲

    上田(哲)委員 そうすると、今までは、核があるかないかというのは向こう側から事前協議の申し入れがあるかないかによって判断する、こうなっていましたね。そのこととは変わらないということですか。
  49. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今まで我々が終始一貫申してきた基本的な考え方と変わりません。
  50. 上田哲

    上田(哲)委員 これは、そうすると全然違ってきますね。総理の答弁はそうじゃないのです。ニュージャージーが「入ってくるというような場合には、その辺につきましてはよく確認をいたしたい。そして、非核であるということで我々は入港を認める、」非核であるということをこっちから、核であるか非核であるかを確認して、非核であるならば入港を認めるというのです。事前協議があるかないかということとこれはどう考えたって違うのです。これは全然違いますよ。
  51. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は、これは総理大臣が一般的な意味において言ったのであろう、答弁をしたのであろうというふうに判断をいたしております。したがって、今私が申し上げましたように、事前協議というのがあるわけですから、アメリカはそれを守るということもこれまで何回か公言をしておるわけですから、そういうことで、もし核を持って入るというときにはもちろん日本に対してこれを通告してくる、それに対して日本はあくまでもノーであるということは、これはこれまでどおりでございます。
  52. 上田哲

    上田(哲)委員 これは全然違いますよ。これは一般的なことを言っていないのです。ニュージャージーが入ってくる場合はと、はっきり言っておるのですよ。ニュージャージーが入ってくる場合は、ちゃんと相手に聞くという意味のことを言っているのです。向こうが何も言ってこなければいいのだというのとは違うということを言っているのですから、これは総理大臣が言ったことと外務大臣が言ったことと全然違うことになってしまうのです。これは日本語として全然通らないですよ。
  53. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 二月十五日の、ちょうど私はあの際……(上田(哲)委員「二月十四日です」と呼ぶ)二月十四日ですか。――二月十四日の衆議院予算委員会における総理の答弁は、今私が申し上げましたような政府考え方を明確にした上で、なお最初のトマホーク積載艦であるニュージャージーの本邦寄港については、既にこれまで種々国内的に議論が行われていることにもかんがみまして、念には念を入れるという観点から、かつ、全くの特例として、仮に将来同艦が我が国に寄港する場合には、その時点において米側に対し改めて我が国の関心を伝え、我が国としては、当該寄港に当たり、安保条約及びその関連取り決めに従って厳格に対応する所存であるということを明確にしたい、こういう趣旨を述べたものである、こういうふうに理解をしております。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  54. 上田哲

    上田(哲)委員 それはだめだな。十四日と十五日二つあるのですよ。十五日は後からもう一遍聞こうと思ったんだけれども、十五日にも答えているのです。  アメリカ側に対して、日本にはこういうような国民世論もあるし、いろいろ騒がれている状態でもある、我々の非核三原則というものを堅持している我が方の態度を向こうにも話して、そして核兵器がないということを確かめたい、と言っている。向こうが言ってくるか言ってこないかだけを待つとは言っていないのですよ。こっちから聞くと言っているのです、ニュージャージーについては。ところが外務大臣は、こっちから聞かないと言う。これは全然違うじゃないですか、はっきりしてください。
  55. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先般、去年でしたか、エンタープライズが入港する、あるいはまた三沢の基地のF16の配備というときに、私からアメリカのマンスフィールド大使を呼びまして、そしてこれは既に国会でも明らかにしておりますが、事前協議の問題につきまして念を押し、さらに同時に、こうしたエンタープライズの入港……(上田(哲)委員「ニュージャージーの話をしてください、時間がなくなっちゃう」と呼ぶ)いや、ちょっと聞いてください。そこでそういう問題があって、結局今の安保条約の取り決めというものを遵守するということをアメリカから確認をした、こういうことがあるわけでございます。したがって今のこのニュージャージーの問題につきましても、まだ何らそういう気配も何もないわけでありますが、そうした段階になって、念には念を押すという立場に立つ必要があるならば、一般的な意味におきまして、これまでの安保条約、その関連取り決めを遵守するという意味において、日米間で話をするということもあり得ると思います。
  56. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりました。ようやくそれで総理とくっついた。つまりニュージャージー、私はほかのことを聞いていないですからね、ニュージャージーのことを言っているのですから。ニュージャージーについては、核が載っているかどうかということを相手に聞くということになりましたね。それならそれで結構です。――違うのですか。
  57. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今私が言っているのは、核があるとかないとかいうことを、アメリカは核の有無を明らかにしないということを言っているわけですから、核の有無について我々がアメリカにその説明を求める、核がないということを明らかにして入るということではなくて、我々が今まで述べておりますように、少なくとも安保条約、その関連取り決めの中におきましては、日米間は信頼関係ができておるわけですから、事前協議というのがあるわけですし、核を持っておる場合には入ってこないというのが我々の信念でありますし、アメリカも確認しているわけですから、それで私は十分ではないかと思います。
  58. 上田哲

    上田(哲)委員 外務大臣が十分と思うかどうかのことを聞いているのじゃないのです。総理大臣が、ニュ一ジャージーについては、向こうが入ってくるときには核があるかどうかをこっちから聞くと言っているのですよ。外務大臣は聞く必要がないと言うのですね。これは、せっかく動き出した国会をとめる気持ちは全然ないけれども、これで時間がずっとつぶれると困るのですよ。これはとにかくはっきりしてくれなければ、時間がもったいないです。(発言する者あり)
  59. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私の答弁は今までどおりと変わりませんが、申し上げれば、結局ニュージャージーがこれから入ってくるかこないかというのはわかりませんけれども、万一入ってくるというふうなことになりました場合においては、国会でもこれだけの問題になったわけでございますから、これはやはり、例えば私がアメリカの大使を呼んで、日本側の非核三原則の立場を改めて強調をする、そして日米安保条約、そしてその関連取り決め、さらに事前協議条項があるということを私からアメリカに対して日本立場を明快にして、そしてこれに対して、これまでアメリカも言ってきておりますが、事前協議はこれを守るのだ、日米安保条約の信頼関係はこれを守っていくのだということをアメリカからはっきりと、一般的な意味で回答として取りつける、こういうことはやらなければならないことになる情勢も生まれる、こういうふうに思います。
  60. 上田哲

    上田(哲)委員 それでいいです。アメリカの大使館へちゃんと聞く。場合もあるなんというのじゃないですよ。これはちゃんと聞くと言っているのだから、場合もあるじゃなくて、確実に聞くということをはっきりしてください。
  61. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ですから、せっかく総理もそういう答弁をしたわけでありますし、そういう事態があるかないかというのはわからぬわけですけれども、そういう問題になったときは、それは私から大使を呼んで、そしてこれまで、例えばエンタープライズの際もそうであったように、日本立場を明確にしておくということはやらなければならないと思います。
  62. 上田哲

    上田(哲)委員 では、場合もあるじゃなくて、必ずやるということが確認された。  そこで聞きたいのです。エンタープライズの場合とニュージャージーの場合は違うのです。これまでアメリカは、核の有無についてはこれを明らかにしないというのが政策なんです。だから、今までは聞かないと言っていたのを聞くというのは結構だけれども、聞いても向こうが言わない。エンタープライズでもそうなっているわけです。今度は、はっきりあるかないかを確かめて、なければ入れるというのだから、向こうがあるかないかを言わないと答えたらどうなるのですか。
  63. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカ側はこれまでもしばしば、日本の園田外務大臣とマンスフィールド大使、私とマンスフィールド大使の間の話し合いの際も、核の有無についてはこれを明らかにしないというのがアメリカ立場であるということを言ってきております。しかし、事前協議条項は守るのだ、そしてまた、日米安保条約は信義を持ってこれを貫くのだということを言い続けてきておるわけであります。
  64. 上田哲

    上田(哲)委員 それじゃ答弁にならないですよ。今度は違うのです。ニュージャージーについては、トマホークのこともあるのだから、向こうにはっきり聞いて、ないと言ったら入れる、あると言ったら入れないと言っているわけですよ。あるかないかと聞くまではわかった。ところが、聞いたけれども、向こうが依然としてアメリカの従来の政策をとって、ある、ないは言えないと言ったら、この国民に約束をしたことは貫徹されないでしょう。アメリカは必ず今までの政策を変えて、日本に向かってあるかないかをはっきりさせるということの保証がなければ、これはうそになるのですよ。これはどうしますか。抽象論じゃなくて答えてください。
  65. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いや、アメリカは、核についてはその有無は言わないというのがアメリカ政策ですから、これまでもこれは言ってきておりませんし、今後もこれを言うはずはない、私はそういうふうに思います。
  66. 上田哲

    上田(哲)委員 それじゃ、これは全然うそになるじゃないですか。その場合には、この文脈で言うなら、あるかないか確かめて、なかったら入れるというのだから、あるかないかがはっきりしない場合には入れられないということになるじゃないですか。では、入れませんか。
  67. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もしアメリカ側が核を持っておるということになれば、これは事前協議の対象になるわけですから、アメリカが入港の許可を求める、日本はそれに対してノーと言うことは明らかであります。
  68. 上田哲

    上田(哲)委員 だから、言わないと言うのでしょう。それを言わないのだったら、あるかないかを確かめることができなければ――論理的にそうでしょう。ない場合にだけ入れると言っているのだから、あるかないかわからぬというときは、ない場合にならないのだから、日本政府としてはニュージャージーの入港を拒否するということにならなければ、総理大臣の国会に約束をしたことがうそになると思うのです。これは明確なことですよ。それを守りますか。
  69. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカもしばしば、安保条約、その関連取り決めは守るのだ、事前協議は守るのだということを言い続けてきておるわけです。そして、日本が事前協議で、核の入港についてはいかなる場合においてもノーだと言うことは、アメリカは知っているわけです。ですから、ニュージャージーがもし核を持っておれば入港するはずがない、そういうことはないというのが日本政府の確固たる方針です。
  70. 上田哲

    上田(哲)委員 これは、時間が使われてしまってどうしようもないから後に譲りますよ。  一つだけ最後に、ぐるぐる回さないで答えてくたさい、安倍さん、将来の総裁候補なんだから。  では、ここまでトマホークの問題が来ているのだから、アメリカに対して、あるかないかは日本政府は今まで聞かなかった、今度はあなたがアメリカに向かって聞くというのだ。アメリカ政府日本政府が正式に聞いた場合には、あるかないかについてははっきり言え、こういうことをアメリカに要求しますか。
  71. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私が言いましたのは、ニュージャージーが仮に入るというときは、総括においても相当大きな問題になったわけですから、国民も非常な関心を持っているわけですから、これはやはり国民の関心を踏まえて、私がアメリカの大使を呼んで、ニュージャージーが入ってくる、しかし日本には非核三原則というものが、今さら言うまでもなくあるんです、そしてこれに対してまた日米間には安保条約もあるんです、その関連取り決めもありまして、それには事前協議というのがあって、核が入ってくる場合には、日本の場合いかなる場合もノーですよということを、確認する必要もないのですが、改めて日本としてははっきりと申し上げますよ、ということを言うわけですから、そしてそれに対してアメリカが返事をする、こういうことになるわけです。
  72. 上田哲

    上田(哲)委員 委員長、これは僕はここでぐるぐる回しをするのは嫌だし、時間がもったいないから、ちょっとお取り計らいをいただきたい。これはやっぱり論理的に矛盾するでしょう。だから総理から、とにかく国民に向かって約束をして、ニュージャージーに関しては向こうへ言う、初め言わないと言ったけれども、言うということになった。言ったら、向こうの政策が変わらなければ、あるかないかを言わないというのじゃ、この日本国会というものは総理の発言というものを保証する道がないわけですよ。だから、その場合には、アメリカに対して核の有無についてはしっかり明らかにしてもらいたい、例えばニュージャージーについては。このことを少なくともアメリカには要求するというようなことがないと、国会の議論というのは浮いてしまうことになりますね。これは当然私は論理的にそうなると思います。きょうここでぐるぐる回すことはしませんから、総括の際に総理がおいでになったときに、このことについての答弁をぴしっとしていただくというふうにお取り計らいをしていただけませんか。
  73. 倉成正

    倉成委員長 総括の際に、総理によく真意を確かめてください。
  74. 上田哲

    上田(哲)委員 だから、総理にそのことをお答えいただくということを譲っていただけますか。
  75. 倉成正

    倉成委員長 上田君の御趣旨を総理に伝えて、総理から答えていただきます。(「それは委員長の言い方がおかしいよ」と呼ぶ者あり)総括の際に、総括の中で上田……(発言する者あり)  ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  76. 倉成正

    倉成委員長 速記を始めてください。  社会党の総括の時間の範囲内で、総括の質問の中でこの点はお答えをするということをしたいと思います。  上田哲君。
  77. 上田哲

    上田(哲)委員 それでは、もう一つ防衛庁長官に伺います。  五九中業は間もなく長官指示が出るわけですね。これは時間を大事にするから、簡単に言いますから簡単に答えてください。この五九中業は、目標というのを大綱の達成に置くのか、それを超えるところに置くのか。
  78. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 五九中業につきましては、まだ長官指示をいつ出すということを決めておりません。これはこの予算委員会でもたびたび申し上げたところでございます。
  79. 上田哲

    上田(哲)委員 そんなことは議論になりませんよ。これから指示を出されるのだから、指示を出されるあなたのお気持ちとしては、この五九中業は目標を大綱を達成する水準に置くのか、それを超える水準も含むのか。
  80. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今、御案内のとおり「防衛計画の大綱」の水準に一日も早く到達する、そういうことを目標としておりますので、それを達成するように頑張る、こういうことでございます。
  81. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、五九中業は大綱を目指すものだというふうに理解していいのですか。
  82. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 ただいまのところ、そういうことでございます。
  83. 上田哲

    上田(哲)委員 ただいまでないというときは、どういうときですか。
  84. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 それは御案内のとおりに、これから経済情勢、財政的な問題、いろいろございますね、そういう客観的なものとのつり合いの中でいろいろ考えることもあり得る、こういうことでございます。
  85. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、五九中業の中では大綱を超えることもあり得るということになりますね。
  86. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 いや、そういうようなことでなしに、ただいまのところでは、「防衛計画の大綱」水準に到達することを最大の目的として努力をする、それ以上のことは今考えていない。
  87. 上田哲

    上田(哲)委員 五九中業のことを聞いているのですからね。いいですか、舞台は五九中業、目標は大綱のことを聞いているのです。五九中業であろうが何中業であろうが、大綱を超えるかどうかということは日本政府政策の大転換なんですよ。だから、場合によってはと言ったらあなた、大変なことになるのですよ。いいですか。そのことを踏まえて答えてください。五九中業、あるいは五九中業でなくてもいいですけれども、五九中業で大綱を超えることがあるのですか。
  88. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 したがいまして、今そういうことは考えていないということでございます。
  89. 上田哲

    上田(哲)委員 はい、わかりました。  五九中業では大綱を超えることはない。そうすると、五九中業ではシーレーン一千海里は含まないことになりますね。
  90. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 ですから、先ほど来申し上げているとおり、五九中業でどういうふうな作業をするかということについてはまだ考えていないということでございますので、今の段階でシーレーンとの関連を申し上げるわけにはまいらぬ……
  91. 上田哲

    上田(哲)委員 そんな素人みたいなことじゃないですよ。作業のことなんか聞いてない。目標のことを聞いているのです。大綱を超えるか超えないかというのは大変な政策問題なんですからね。あなたは明確に答えられたのだ、五九中業じゃ大綱を超えないと。超えないのだったら、シーレーン一千海里というのはやらないのだなと聞いているのですよ。
  92. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 だから、私ただいま申し上げたとおり、今のところ考えていない、そういうことを申し上げたわけでございます。
  93. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりました。  そうすると、五九中業では大綱を達成するのであって大綱以上のことは考えない、今は五九中業では一千海里シーレーンを含まないということになりますね。
  94. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 私は、一千海里のことについて答えていないのですよ。五九中業については今は考えていない、「防衛計画の大綱」水準を超えるということを今の段階では考えていない、それだけを申し上げているのでありまして、シーレーンの……
  95. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、シーレーンのことを聞いているのです、今度は。いいですか。大綱を超えなければシーレーンはできないのですよ。大綱を超えなければ、大綱ではシーレーン一千海里はできないのですよ。だから、大綱水準を超えないと言うのだったら、五九中業ではシーレーン一千海里問題はやらないのだなというふうに言っているのです。
  96. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今、シーレーン一千海里ができるとかできないとかというお話でございますが、いわゆるシーレーンというのは一体何だ、そのことから確定をして話をしないとこれは進まないと思うのです。シーレーンというのが、私の考えているシーレーンと上田さんの考えておられるシーレーンと一致したところで論議を重ねないといかぬと思います。詳細のことにつきましては政府委員から答弁をさせます。
  97. 上田哲

    上田(哲)委員 だから、そこが問題なんです。シーレーンというのが茫漠としてわからぬとおっしゃるのだが、これはわかっているのです。シーレーン防衛というのは、共同研究も行われているが、八一年夏にハワイ会談でアメリカ側から提示された艦艇幾ら、飛行機幾らという数字なんですよ。それと大綱とは違うのです。これは常識なんです。だから、大綱水準であるのか、ハワイ会談で出されたシーレーン水準であるのか、どっちかということは非常にはっきりしているのです。だから、その意味で、大綱水準に五九中業を持っていくのだということは、ハワイ会談水準には持っていくのじゃないんだなということになるではないかと。おわかりになりますか。
  98. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 ハワイ会議の問題が出ましたので、具体的な数字等がございますので……(上田(哲)委員「いや、数字を聞いているのじゃないのです。どっちをとるんだと言っているのです」と呼ぶ)どっちをとるかと言ったって、シーレーンというものに対する我々の考え方とそれから上田さんの考えておることと一致させなければなりません。我々の考えているシーレーンというのはどういうものかということで、政府の方から答弁をさせます。
  99. 上田哲

    上田(哲)委員 いいです。要りません。
  100. 倉成正

    倉成委員長 はっきりしなくていいですか。
  101. 上田哲

    上田(哲)委員 この議論をここでやっていると時間がもったいないのでほかの場合に譲りますから、確認だけしておきます。  五九中業は大綱を目指すのだということは、はっきりおっしゃいましたね。大綱を超えるんだということではないわけですね、五九中業は。そうすると、その中にシーレーンを含むのか含まないのかということは、具体的には、今もってずっと政府が明らかにされていない八一年ハワイ会談米側要求の水準は何かということを明らかにしていただかないと、議論ができないのです。  だから、もう一遍言いますよ。五九中業は大綱を目指すのであって、それ以上は目指さない、これは確認された。いいですね。そしてその議論が、その上をどこまでいくか、いかないか、大綱水準であるのか、その上の水準であるのかということをはっきりさせるためには、ハワイ会談で出された米側要求の線というものを明らかにしていただかなければならない。明らかにしていただきたいと思いますが、いかがですか。この二点です。最後の方だけでいいです。
  102. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 たびたび申し上げているとおり、今のところ、ただいま「防衛計画の大綱」水準に到達することを目標としておるので、考えていないということが一つです。  それからもう一つ、シーレーンの内容、ハワイ会談の内容等につきましては、どういうものがアメリカ側から出たのか、我が方がそれに対して認識をしているのか、どのように受け取っているか、そこら辺を合わせませんと論議の対象にはならぬのではないか、こう考えております。
  103. 上田哲

    上田(哲)委員 その話をしているとぐるぐる回りになって時間が浪費されますから、先に行きます。  文部大臣、さきに、五日に、中野区教育委員会に対して、地方自治法二百四十五条四項に基づくということで、教育委員会の準公選の廃止の勧告をなされた。これは、政府立場はそうでありましょうけれども、現実に中野区側は、区議会の総意によって制定された区民投票条例というものを持っているわけです。こういう立場からすれば、大阪府高槻市にもそういう動きがありまして、これは廃止を命令することはできないという立場もあり、民主主義という立場からすれば、もはやこのことをお認めになってはいかがですか。
  104. 森喜朗

    ○森国務大臣 教育委員の選任に当たりましては、法治主義のルールに基づいて教育長が選任をするわけでございますから、形はいろいろ工夫はしてあるようでありますが、投票ということを参考にいたす限りは、やはりそこに選任の制約がおのずと働いてくるわけでございますから、これはやはり文部省といたしましては、ルールどおり守っていただきたい、法に違反をしておる、こういうことについての姿勢は貫いていかなければならぬと考えております。
  105. 上田哲

    上田(哲)委員 中野区その他はこれを遂行するでありましょうし、この場合は制裁規定があるわけではないと思うのですが、その場合には何かお考えがありますか。
  106. 森喜朗

    ○森国務大臣 私どもとしては、中野区がそのシステムをおとりになってからも再三、東京都を通じまして、教育委員会を通じまして善処方、改善のお願いをいたしておるところでございます。今後ともこの姿勢は貫いていきたい、こう思っております。
  107. 上田哲

    上田(哲)委員 私はこの後、母子保健の問題についてぜひ議論をしていきたいと思うのであります。  厚生大臣、結論的に私は母子保健法というものを、母と子供を大事にするための母子保健法というものを、抜本的に改正をしてもらうべきだ、こういう主張を持っていきたいわけでありまして、時間がだんだん詰まってまいりましたから大変はしょって申し上げるのだが、老人保健法が一年たった。老人保健法が一年たって見てみますと、いろいろ細かいことを申し上げたいけれども、市町村に担当を移したものだから、市町村ではなかなか問題がスムーズにいかない。例えば医師会との協定の問題でありますとか、あるいは健診車の数が足りないとか、さまざまな問題があります。そうした問題の中で一番の問題は、やはり保健婦の数が足りない。特に保健所というのは道府県の問題でありますから、これが非常に苦労している。特に、今でも三百町村では保健婦がいないという状態のままになっておりまして、非常に老人保健に向かって力が注がれた分が、実は母子保健の方にマイナスにはね返っているわけです。  私が調べたところでは、例えば桐生では乳児期の二回の健診、一年半の一回、三歳の一回の健診等、回数を減らしたい、市当局がこういうことを言い出して、結果的にははねつけられてできなかったという例があるし、あるいは柏市でも、老人保健課を新設して保健婦がそっちへ行ったものだから半数が減ってしまって、大変困っているというふうな例もあります。あるいは松戸市なんというのは、四十六万の人口に四十六人も保健婦がいて日本一だったのだけれども、これが非常に手狭になってきて、巡回健診は一五%の水準に落ちてしまったというようなことがあるわけです。老人保健の問題はきょうはもう議論ができないけれども、母子保健の側面から見ると、これは非常に落ち込んでいる、被害を受けているといいましょうか、こういう問題は憂慮すべきであって、ぜひこちらに手を加えなければならない、手厚くしなければならない、こういう事態になっていると思うのですが、基礎認識を伺いたいと思います。
  108. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 おかげさまで老人保健法は順調に進んでおりますが、そのために母子福祉の施策の方がおくれをとっておるというようなことはないと承知をいたしております。ただ、御指摘の保健婦がまだ未設置の市町村はございますので、これらは今後充実に努力をしてまいりたいと思います。  なお、詳細必要でございましたら政府委員から報告させます。
  109. 上田哲

    上田(哲)委員 先を急ぎます。  そこで、具体的な問題を提起しますからこれをひとつ聞いていただいて、ぜひこういう面を改善していくための母子保健法の改正に努力をしていただきたいのです。  第一は、乳幼児健康診査の問題ですね。これが今、母子保健法によりますと、乳児健診が二回、一歳半の健診が一回、三歳児健診が一同、それから就学前の健診と学校へ入った児童生徒の健康診断、こういうふうにあるわけですね。これはいいのですが、実施主体がばらばらなんです。  まず、乳児健診というのは医療機関に委託をするのですね。そして一歳半というのは市町村なんです。三歳児は保健所なんです。ここまではとにかく母子保健法でいいわけです。ところが、そこから先は学校保健法になるわけです。この実施主体がばらばらなので記録もばらばらであって、一人の子供の健康保全のためには大変困るわけですね。だから、これを一本化してもらうということが必要になってまいります。例えば、この中で十二条によって義務づけになっているのは三歳児だけなんです。あとは勧奨ということになっているのです。勧奨になっているために、名前を出してはいけないけれども、例えば埼玉県なんというのはまだ全くやってないのですよ。埼玉県は先進県なんだけれども、全然やれてない。これはぜひ一本化した実施主体をつくっていくという方向でなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  110. 吉原健二

    ○吉原政府委員 母子保健の健診の主体でございますけれども、今、先生から御指摘ございましたように、母子保健法では健診の主体は原則として都道府県ということになっておるわけでございます。ただ、実際に健診を行います場合には、場合によっては医師会に委託する場合もございますし、保健所がやる場合もある、いろいろあるわけでございますけれども、これからの方向といたしましては、私はやはり、御指摘がございましたように、原則として実施主体は市町村を考えていく、ただ実際にやる場合には、やはり地域のいろいろな医療機関なり医師会等の御協力を得ながらやっていく、そういう方向で充実をしていくというふうに考えているわけでございます。
  111. 上田哲

    上田(哲)委員 どんどん時間がたってしまうので、僕が問題点だけずっと指摘しますから、大臣に聞いておいてもらって、これはぜひ改善した方がいいに決まっているわけですから。  例えば母子健康手帳です。この母子健康手帳は妊娠したらもらえるわけですが、学校へ入るところでぽつんと切れるわけですよ。これをぜひ義務教育までは、例えばこれを二冊にしてもいいし、足してもいいわけだけれども、これは局長告示でできるわけですね。そういう問題を一本化するということが子供の将来のためにも、それから全体的な疫学調査のためにも非常に有効になってくる、これはもう御異論はないと思うのですね。ぜひこの際踏み切っていただいて――例えばこれは研究班がありまして、愛育病院の高橋悦二郎先生がやっているわけですけれども厚生省の母子衛生課と文部省の学校保健課が今協力しているはずです。ここは一本ぐっとやればできるわけですから、これはぜひやっていただきたいということがあります。  それから、あわせてどんどん言いますけれども、母子健康センターというものが今全国に六百六十三ある。市町村立の保健センターというのが四百六十七あります。この母子健康センターというのは助産施設であったものが、今はもうほとんど意味を持たないわけです。これをひとつ地域の、双方合わせた健康増進のための拠点にするという行政指導がなされるべきではないかということがあります。  さらに、母子保健推進員というボランタリーがあります。このボランタリーも今六万六千人いるわけですね。これが制度上確立されていないから、ボランタリーに金を出せと言っているのじゃない、しかし、こういう人々を活用していくということを母子保健法の中ではっきり確認をしていくということが大変必要なときに来ているのじゃないか。  今、母親の問題も、これは時間がないから十分に申し上げられないので一方的に演説をしますけれども、十五歳から六十四歳までの労働人口と六十五歳以上の老齢人口の比率というのが三十年前は十二対一だった。現在は七対一だ。三十年後は三対一になるわけですね。三人で一人ということになる。しかも、この中には子育てという面が抜けているわけですから、子育てのための丈夫な母親のことを考えると、乳児保育を今以上にふやすよりも、育児休業制度をしっかりつくっていかなければならない。今は学校の先生とか看護婦さんなど一部の職種にしかないけれども、これを全職種に拡大し、復職の保障と手当をつけて、こういう制度を期間一年というふうにしていかないと、母体を守る体制は崩れていくだろうと思うのです。  今いろいろ申し上げたけれども、こういう問題を全部含めて、例えば産婦ホームをつくるとか――これは松戸なんかでつくろうとしたのだけれども、医師会の反対でつぶれたりした事態もあります。母と子の健康というものをこういう面で考えていくということになると、これまでのところ、厚生省あるいは関係省庁の間でもいろいろ御議論がなされて、これはぜひ進めた方がよかろうということになってきていたけれども、問題は厚生省自身の中で、あるいは文部省も含めて、その方向がいけないということはあるはずがない。あるはずがないが、この際もうはっきり区切りを切って進めてもらうというところに来ているのじゃないか。老人保健法もあそこまでいって、いろいろな問題もありましょうけれども、それとの対比においてももっと前進的な意味で、優生保護法との関係なんということではなくて、母子保健法のこうした意味での改正というものを、項目をいっぱい挙げると切りがないけれども、三歳児健診だけが義務になっているものをぐっと広げるとか、あるいは市町村を単位とする要員の確保、特に保健婦、健診サービスの拠点の確保、あるいはボランタリーの活動の制度化というようなところを重点にしながら、先ほどの健康手帳等々全部含めて、私はずばりとお伺いしたいのだけれども昭和六十年に向かって改正の努力をするということをひとつ御確認いただいたらどうかと思うのです。
  112. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 母子の健康、福祉、大変大事な問題でございます。また、今御指摘の問題は、いずれもこれから検討していかなければならない大事な問題でありますので、先輩の厚生大臣もこの問題に心を大変傾けてまいられたようでもございますので、六十年度をめどにして、これを前向きで進めていくように検討してまいりたいと思います。
  113. 上田哲

    上田(哲)委員 大変結構です。できれば拍手をしてあげたいぐらいの気持ちでありますから、ぜひ頑張っていただくと同時に、関係大臣でありますから文部大臣からも、同様趣旨の御決意をひとつ承りたい。
  114. 森喜朗

    ○森国務大臣 上田さん御指摘の母子健康手帳を学校保健に一貫してつなげていく、健康管理の上において就学前の子供の健康と児童生徒とをつなげるということでありますから、極めて望ましい方向だと思います。やらないと言うのではないのです。ただ問題は、プライバシーの問題が若干入ってくるわけですね。特にお母様の妊娠から出産に至るまででありますから、この辺の問題をやはり十分踏まえてみなければならぬと思いますが、基本的には賛成でございますので、厚生省とも十分詰めて、実現できるような方向で努力したいと思います。
  115. 上田哲

    上田(哲)委員 大蔵大臣財政的に六十年度から母子保健法の前進的な改革のために努力することをぜひお約束いただきたい。
  116. 竹下登

    竹下国務大臣 必ずしも私は内容を詳しく承知しておりませんが、その時点で十分誠意を持って協議をしたいと思います。
  117. 上田哲

    上田(哲)委員 当面の母子保健についての二、三の問題についてぜひ御見解を承っておきたい。  この五十九年度予算に神経芽細胞種マススクリーニングというのが八百万円ついたのです。これは結構なことです。私はこれを大変評価するのでありますが、これは小児がんで死ぬ子供の死亡原因の三番目、白血病、脳腫瘍、その次が神経芽細胞になるわけで、これを生まれて半年の子供百五十万人に、全部尿をろ紙にとってずっとマススクリーニングするわけですよ。こうしますと、これで、これまでやってきた数年前から二十人発見されているのですが、半年で発見されれば、そのうち死んだ子は一人しかいない、救えるのです。二万人に一人これが出てくるのです。この怖い病気を今回こういう予算がついてスクリーニングするということは大変結構なことなのだが、問題は実行できるかどうか。これはさっき申し上げた母子保健法の中の勧奨ではなくて、はっきりやらせることにする乳幼児健診、六カ月ね、三年しか義務がないから。乳幼児の健診のところに、おしっこをろ紙にかけるということを全部やらせれば二万人に一人の子供の命が救われるのですよ。ぜひそういうことで努力をするということはよろしいですね。
  118. 吉原健二

    ○吉原政府委員 当面予算措置で始めたいと考えておりますけれども、六十年度に向けての法制化の法律改正の検討の中で、おっしゃった事項についても前向きに検討させていただきたいと思います。
  119. 上田哲

    上田(哲)委員 六十年度までにまた見つからないと困るから、これは一日も早くやるというような役人答弁では困るのですよ。大臣、うんと言えばいいのだから、危ないことはないのだからこれは、ニュージャージーとは違うのだから。  はしかの問題。今はしかが非常にふえておるわけです。はしかが、ここのところ去年の三倍です。今のところ、この二カ月間に一万九千六百二十一人、これは一昨年、昨年の二倍からそれ以上になっているのです。この問題は何かというと、地域的には岡山、福岡、大分など西日本で、これから東日本へ来ているのだが、これは元来は母子免疫が終わってから、十二カ月の子供から七十二カ月の子供に予防接種をすれば、この予防接種を一回すれば一生いいのですよ。一生いいのだけれども局長告示というのが、十二カ月からでなくて十八カ月からという局長告示が出ちゃっているのです。だから、その半年のところがかかっているのですよ。これは大変なことなんです。五十二年から予防接種になったものだから、五十三年の前の子供が今小学校に入りましたね。今あるのは、この二万人ふえているのはどこが多いかというと、地域別にはこれは書いてあるけれども、年齢別には書いてないが、年齢別に調べてみると、今小学校に入った子供に免疫がないのです。それから、生まれて一年半になる前の、半年の子供がかかっているのですよ。だから、当然法律では十二カ月ないし七十二カ月なのを、局長告示で十八カ月になっているわけだ。こういう告示を、十二カ月からでもいいということになれば、この子供たちがはしかにかからずに済むのですよ。今大流行の兆しがあるのだから、こういう意味のない告示は直ちに訂正されて、生まれた赤ん坊が母子免疫を失ったころの十二カ月から法律どおりやるという形にしていただくのが焦眉の急ではないか。いかがでしょうか。
  120. 大池眞澄

    ○大池政府委員 御指摘の点につきましては、政令の上におきましては、十二カ月から七十二カ月というふうに実施時期は幅は広く定まっておるわけでございます。ただ、これを医学的な観点から、母子間で移行される免疫のぐあい、それから接種の効果のあらわれぐあい等々医学的な議論の中で、ただいまお話にございました十八カ月から三十六カ月の間が望ましいという局長通知が出ておるわけでございます。  なお、地域の患者の流行状況または全国的にも二、三年周期でその流行の消長がございますが、そういったような実情を勘案してただいまの幅の中で行うというようなことは課長通知でさらに指導しておりますので、この点、先生の御指摘の趣旨を踏まえてよく検討したいと思います。
  121. 上田哲

    上田(哲)委員 それはよかった。そういうようにしてくださいよ、大臣。それはするよと今いいことを言ったから、いいことだと言ってくださいよ。
  122. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 母子保健について大変上田委員の御造詣の深い御意見、十分に政策に尊重されるように努力をしてまいります。
  123. 上田哲

    上田(哲)委員 これは大変大事なことなんです。はしかなんというのは予防注射一回打ったら一生かからないのですよ。それを局長告示が半年削ったものだから今この大流行が起きているわけだから……。  例えばお医者さんからこういう手紙が来るんだ。私のところには待合室に、特別にやってあげますよというので十八カ月じゃなくて十二カ月から注射をする、そしていろいろなお金のことがあるから、申請するときは半年たってからやるようにしてます、これはどうも局長告示に反するかもしれないが、そうするのが医者の良心です、こういう手紙が来るわけです。これは今の課長告示でも何とでもなるというわけですから、ぜひこうしてやることが善政ですな。今ここでぱちっと、珍しいな、こういうことは。こういうことをさっとやってくれたということはひとつ褒めましょう、いろいろさっきから厳しいことを言いましたから。  そこで、ついでにもう一つばかりあります。問題、ポリオ。ポリオが、我が国は生ワクチン一斉投与、私自身の思い出にもなるわけですが、成果が上がりましてポリオが根絶された唯一の国なわけです。急性灰白髄炎、ポリオメリディス、これがないわけですよ。これがないのですが、天然痘と違って、世界じゅうがなくなってというのじゃなくて、日本だけがなくなっているから、野性ウイルスに弱いわけです。三年前に長野でも一人出たということがあるわけです。これを守らなければならない。ところが、最近のデータによりますと、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型というのがある中で、ある型が弱くなっているのです。ある型が弱くなっているので、これは今までの予防接種が三カ月から一年半までの子供に二回ということになっている、これでいきますと、率直に言って、ワクチンⅡ型の抗体が五〇%まで下がっていると言われています。これが非常に危ないのです。だから、また野性ウイルスが入ってきてしまったら大変なことになるから、この抗体を七、八〇%以上に上げなければならぬ、そのためには、この三カ月と一年半の間に二回やるということになっているものを、三回やることによってこの問題は克服されるわけですね。だから、それを小学校に入学するくらいまでの間に幅を広げて三回の接種にするということによって、日本世界でたった一つポリオ、小児麻痺のない国という確保ができるわけです。こういう指導をなさるということが必要だと思うのですが、いかがでしょうか。
  124. 大池眞澄

    ○大池政府委員 ポリオにつきましては、先生よく御案内のとおり、昭和三十七年以降予防接種の普及によりまして極めて劇的に減少の一途をたどりまして、五十年代に入りましてからは発生が全国の届け出てもゼロないしは一人、ないしは二人というような、極めて少数の発生という成果をおさめているわけでございます。現在二回法でこれだけの成果をおさめておるという実情がございます。諸外国では、先ほどお話にございましたように、まだ何万という発生の地域もございます。したがって、そういうことも勘案しながら現在二回法をとっているところでございますし、世界保健機関、WHOにおきましても、専門家会議の結論としましては二回法を採用しているところでございます。  なお、国内でも三回法の方がベターだというような御意見も少数ありますけれども、そういった点を踏まえて慎重に検討したいと思います。
  125. 上田哲

    上田(哲)委員 ちょっとよくわからなかったのですが、三回法の可能性を検討するということですね。
  126. 大池眞澄

    ○大池政府委員 かねて論議としては二回法、三回法の検討もあるわけでございますけれども、そういう論議があることは承知しておるということをお答えしたわけでございまして、新たに三回法を取り上げて検討するということではございません。
  127. 上田哲

    上田(哲)委員 ちょっと待って、時間がない。  つまり、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型の、特にⅡ型についての抗体が五〇%までに落ちているという事実は御了知の上、やはりそれは何らかの措置を講じなければならぬというふうにお考えなわけでしょ一つ
  128. 大池眞澄

    ○大池政府委員 お答えいたします。  専門家の討議の場を随時持っておりますので、そういった際の論議の一端として当然そういったことも論議されることを期待しております。
  129. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、そういう形でこの抗体の低下というものを補うために三回法を含めて急いで検討してもらうべきだと私は思うわけですが、それでいいわけですね。
  130. 大池眞澄

    ○大池政府委員 慎重に検討させていただきます。
  131. 上田哲

    上田(哲)委員 慎重と言わないで、積極的にまじめにやってくださいよ。(発言する者あり)子供のためじゃないか、何が悪いんだ。
  132. 大池眞澄

    ○大池政府委員 現在の発生状況等を勘案しながら専門家の意見を尊重してまいりたいと思います。
  133. 上田哲

    上田(哲)委員 小児麻痺をはやらさないようにするんだから、反対してやじを飛ばすことは何も――子供に小児麻痺をはやらした方がいいという意見がどこかにあるのでしょうか。そんなことは別に、積極的に前向きにやることはいいことじゃないですか、ねえ厚生大臣。厚生大臣とは意見が一致するようだから……。  もう時間が迫ってまいりました。一つにします。  中学生の貧血問題、これが今非常に問題なんです。思春期に鉄欠乏性の貧血というのが非常に起きる。これは、日本医大の小児科が荒川区で調査した調査、これで何と中学生の三%です。それから、弘前大学の小児科が農村部でやったら、これが三%から四%になった。この三%から四%という数字は、学校でやっている検尿とか学童の心臓検診で異常が発見される数値の十倍なんですね。これは立ちくらみとかなんとか、そういうのと違いますよ。鉄分がない貧血というのが多いわけで、これが情緒不安定とかそうした問題につながっていくわけです。これはいろいろ原因や対策というのが考えられなければならないと思うのだけれども、今の子供の骨が弱いとか、いろいろなことがあります。学校教育では、文部大臣、鉄棒で落っこちて骨を折ったというと、学校が今やったことは、これは学校の名前言ったってしようがないのですけれども、鉄棒をなくしてしまったわけだ。鉄棒から落ちて骨を折るというので鉄棒をなくしてしまうというのでは、これは教育にはならぬでしょうね。だから、そういうことではなくて、もっと根源的な、力の強い体の丈夫な子供をつくっていくということを考えていかなくてはならない。こういうことからすると、この中学生の鉄欠乏性貧血というのは、非常に将来に向かって問題があるわけでありますから、こういう問題については、ひとつ毎年一度ぐらい中学生貧血スクリーニングを、学童心臓検診とか学校検尿とあわせて進めていただくというふうなことを検討していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  134. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 これは、今の子供が、食生活がよくて体格がよくなったと言われておる反面、今上田委員御指摘のように、非常に何かひ弱い子供になっておるということを私も心配しております。私の子供のころはイワシの頭や骨をぼりぼり食ったものですが、今の子供は何かイワシの骨を食えないというようなこともございまして、これは私は素人でございますが、今、上田委員御指摘の問題、大変大事なことのようでありますので、文部大臣とよく相談したいと思います。
  135. 森喜朗

    ○森国務大臣 学校におきます骨折は確かに微増傾向です。ただ、骨が弱くなっておるとか、そういう数字も必ずしも出ていないのです。もう少し考えてみると、敏捷性とか転び方がどうもうまくないといいますか、遊びにも原因があるのじゃないかと思います。これからは、遊ばせることあるいは体操、これをどうやってやっていくか、こういうことは文部省の大事な指導のポイントだろう、こう考えております。  それからもう一つ、貧血の問題も、今直接の調査はいたしておりませんが、日本学校保健会において「貧血と脳貧血――その予防と指導」というパンフレットを今作成をいたしておりますので、これでひとつ趣旨をよく徹底をさせていきたいと思います。立ちくらみの問題もありますが、やはり血が薄くなっているということは原因として考えておかなければならぬ、それには食事の改善といいますか、そうしたことも指導していこう、こう考えております。
  136. 上田哲

    上田(哲)委員 時間の範囲で急いでいろいろ母子保健の問題を考えたわけですが、かなり前向きな、しかも即時的な御見解が出たことを私は評価をいたします。ついては、こうした問題がなかなか大きい問題となりがたくて、将来の子供の問題、母親の問題ということの重大性を知りつつ、政策、施策としてはおくれていくことになります。  そういう面で大蔵大臣、最後にお伺いしたいわけでありますが、例えばマススクリーニングの問題、八百万円なんということは、大きな款項目節の中で言えば非常に見えにくいところだと私は思うのですけれども、こうした問題の前向きな措置を積極的に、優先順位をつけてでもやっていただくという財政政策が、こういう非常に財政逼迫の中でも特に重視されなければならないと思います。そういう立場で母子保健についての六十年度への抜本改正というような意見も出ましたし、それとあわせて、ひとつ財政的に大いにドライブをかけるという御決意を承りたいと思います。
  137. 竹下登

    竹下国務大臣 社会保障政策そのものに対する基本的な考え方の中で、今のような御趣旨を踏まえ、厚生大臣からお答えがあっておりましたが、私もそれに理解を示す立場で対応すべきであると考えております。〇上田(哲)委員 ありがとうございました。終わります。
  138. 倉成正

    倉成委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  139. 倉成正

    倉成委員長 この際、御報告いたします。  去る五日、分科会設置の際、分科員の配置及び主査の選任につきましては委員長に御一任願っておりましたが、分科員の配置につきましては公報をもって御通知いたします。  次に、分科会主査は次のとおり指名いたします。         第一分科会主査 上村千一郎君         第二分科会主査 相沢 英之君         第三分科会主査 石原慎太郎君         第四分科会主査 大村 襄治君         第五分科会主査 武藤 嘉文君         第六分科会主査 伊藤宗一郎君         第七分科会主査 原田昇左右君         第八分科会主査 村田敬次郎君以上であります。  この際、暫時休憩いたします。     午後二時十六分休憩      ――――◇―――――     午後三時二十九分開講
  140. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。貝沼次郎君。
  141. 貝沼次郎

    貝沼委員 大蔵大臣の出席の時間の予定もあるようでございますので、初めに、大蔵大臣に対する質問をいたしたいと思います。  午前中も質疑が行われておりましたが、今、円高の問題が大きく報道されております。そこで、大臣に単刀直入にお尋ねしたいと思いますが、現在のこの円高という現象は当然起こるべくして起こったという判断に立つでしょうか、それともこれは予想外であったというふうに判断されますか、この点をお尋ねいたします。
  142. 竹下登

    竹下国務大臣 その後変わりまして、二時三十分、二百二十三円七十銭、これは参考のために。私はある種の必然性があった、予想外ではないというふうに認識しております。
  143. 貝沼次郎

    貝沼委員 予想外ではないという判断でございますが、それならば今後の推移でありますが、どういうふうに推移すると見通されるのか、この点についてお尋ねいたしたいと思います。
  144. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに通貨当局者そのものでございますから、私がへんてこりんな予見を申し上げたりいたしますと、幾ら私のような者でも国際投機の対象になるおそれがございます。したがいまして、それなりには慎重にお答えしなければなりませんが、総合して言えることは、なお円高基調が定着することを期待しておる、これがお答えの限界ではなかろうかと思います。
  145. 貝沼次郎

    貝沼委員 私も大体定着するのではないかと思っておりますが、一部日銀あたりでもドルの暴落説あり、急落説あり、暴落と急落とどう違うのかはっきりわかりませんけれども、そしてまた、それに伴いまして日銀ではドルが急落をすれば日本経済の実質成長において大きく影響を受けるという試算もこれまた出ておりまして、私ども国民の目から見ますと、この円高という問題、あるいはドルが安くなっているのかもしれませんが、この問題は非常に国民生活に関係が深そうだという関心を持っておるわけでございます。  そこで、こういう問題が、これから定着していくといたしますと、やはり影響が出てくると思いますので、その影響に対して政府は、金融政策としては何かをある時期に考えるような一つの決意を持っておるのかどうか。  あるいはまた、この点につきまして通産大臣にも一言お尋ねしておきたいと思いますが、中小零細企業の輸出の面でかなり影響が出ると非常に心配しておる声があるわけでありますが、こういう中小企業の輸出に対して何らかの配慮をしようとする姿勢があるのかどうか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  146. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、私の方から申し上げますと、経過的に申し上げますと、とにかく円は対ドルでずっと安定しておって、一時大変弱くなっておりました欧州通貨が急上昇をいたしまして、それで今度は円がそれを追っかけ戻しをした、こういうような感じでございます。したがって、米国経済そのものに対する信認が崩れたというふうには考えておりません。  そういう状態がどういうふうな形でいわゆる金融市場へあらわれてくるか、こういうことになりますと、いわゆる公定歩合の問題になりますと、これは日本銀行のまさに専権事項でございます。諸般のことを勘案しながら慎重、適切、弾力的に対応されるでありましょう。が、私どもとして考えてみますと、言ってみれば市場金利というものは今のところまだ大きな動きは出ておりませんけれども、一般論として申し上げるならば、下降傾向をたどるでございましょう。そういうことを考えてみますと、全体の金融に対しては環境はいい方向にさらに向かう。現在も金融自身は緩んでおるというお互い認識でございましょうけれども、一層その環境はいい方向に向かう、一般論としてそう言えるのではないかと思います。
  147. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 私どもは、今後の経済運営をいかにすべきかという中に常に機動的な金融政策ということを言ってきたわけでございます。このたびの円高という現象は機動的な金融政策を拡大する余地はできたということでございますが、今程度の円高ではまだまだその動向を見きわめる必要があると思うのでございます。それは、通産省におきまして輸出関連の産地にヒアリングを行ったところでございますが、この程度の円高ではまだまだ適合できるというような判断でございます。
  148. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、具体的に申し上げますと、私は、この円高によって相当影響を受けるであろうと思われるのは電力会社だと思うわけであります。電力料金は既に昭和五十五年四月に決定されまして、このときの査定の前提になった条件は、円レート二百四十二円、原油価格を三十二ドル強というふうにやったわけであります。その時期から見ると約一ドル二十円程度高くなっておる。いろいろな報道によりますと、大体一円の円高で年間百二十億円の燃料費が軽減されると言われておりますから、二十円の円高ですと単純計算で二千四百億円のコスト低下、こういうものがもたらされる。昨年の原油価格の値下がりに続いて今度円高という、この二つの問題でかなりの利益が電力業界にはあるように考えられます。したがって、今後こういうような円高差益あるいは値下げによる利益、この両方を合わせた利益をどのようにして国民に還元をなさるのかという議論があると思います。  いろいろな説がございまして、ある人は単純に電気料金の値下げをしろというのもあれば、そうではない、これはエネルギー開発のためにいろいろと工夫をして積み立てておくべきであるというような意見もあるようであります。あるいは設備投資にもっと回すべきであるというような意見もあるようで、いろいろ出ておりますけれども、この辺を含めて政府は今後どういうふうにこの問題を考えていこうとするのか、これを通産大臣に承っておきたいと思います。
  149. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 電気、ガス料金につきましては、原油価格の値下げといった要因がある一方、資本費等のコスト増要因や、中東情勢の行方等の不確定要因もあるわけでございます。さらには為替レートにつきましても、今後の円相場の動向というものを十分に見きわめる必要があると思います。  いずれにいたしましても、電気、ガス料金のような公共料金の取り扱いにつきましては、料金の長期安定ということを念頭に置いて慎重に対処すべきものと考えます。
  150. 貝沼次郎

    貝沼委員 今の答弁は非常に抽象的でよくわかりませんが、要するに何らかの方法を講じて、考えるということでございますか。
  151. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 公共料金の安定というものは、何よりも国民生活というものを安定させなければならない、そのために長期安定ということが必要であり、慎重に対処するということでございます。
  152. 貝沼次郎

    貝沼委員 私の聞いていることとちょっと違うわけでありますが、こういうような電力業界の利益を国民にどういう形で還元をするように考えておられるのか、何らかの研究をしようとされるのか、その点を伺いたいと思っているわけです。
  153. 豊島格

    ○豊島政府委員 先ほど幾つかの考え方があるという御指摘でございますが、私どもとしましては、昨年も五ドルの原油引き下げがあったわけでございますが、これに対しては電気料金の長期安定的な見地から、できるだけ長く今の料金をもたせるということで、その利益をそれに充てるといいますか、そういうことを考えておるわけでございまして、新しい事態が今後どうなるか、為替もまたこのところ少し高くなっただけで今後どうなるかわかりませんが、先ほど大臣がお答え申しておりますように、料金の長期安定ということが基本でございます。したがいまして、その出た利益がどのくらいになるかわかりませんが、それは社外流出でむだな経費に使われないようにちゃんととっておくということになろうかと思います。  なお、別途景気施策として、設備投資の繰り上げ発注とか、あるいは積み増しということをいたしましたけれども、これは利益がそのままそこへ出るということではなくて、金が資産に変わるわけでございますが、そういう面で、景気回復に協力するということを去年もしたわけでございます。これはその上がった利益をそちらに回したということではなくて、別の形における協力ということでございまして、そういう意味からいえば、長期安定のためにその利益が外へ流出することのないようにしていくということかと存じます。
  154. 貝沼次郎

    貝沼委員 おっしゃることはわかるのですが、具体的に何か検討されておりますかということを聞いております。
  155. 豊島格

    ○豊島政府委員 どのくらい利益が出るかは今後の問題でございますが、五十八年度に関しましては既に影響がほとんどないわけでございますから、特別に今回の為替の高くなったことによってどうこうということはないかと思いますが、五十九年度以降どうなるかということを考えると、これはこれからの問題でございます。そういう長期安定のためにどうしたらいいか、結局は内部留保の充実に充てる、社外流出しないということかと存じます。そういうことで従来からもいたしておりますが、そういう方法について今時にどうこうということではございませんが、かねてより長期安定に役立つのにどうしたらいいかということは常々考えておるところでございます。
  156. 貝沼次郎

    貝沼委員 これ以上聞いても何も出ませんので、大体これで終わりにしたいと思いますが、とにかく国民の率直な感情としては、相当もうけておるはずだからそれは何とか国民の生活が向上するために回してもらいたい、こういう感情があることを私は申し上げたいわけでございます。  それから次に、エネルギー問題につきまして御質問をしたいと存じます。  まず初めに、去年の三月でしたか、五ドルの値下がりがありましてからずっと大体同じような値段できておるわけでありますが、去年の三月ごろの五ドルの値下がりというものは、これは突発的に起こったという判断が、それともこれは当然安くなるべくして安くなったものであるという判断なのか、この辺を承っておきたいと思います。
  157. 豊島格

    ○豊島政府委員 先生の御指摘の、どちらかと言えば安くなるべくしてなったということかと存じます。と申しますのは、石油価格は一九七三年の第一次、それから七八、九年の第二次ということで大幅の値上げをしました。したがいまして、その石油の消費というのは七九年をピークといたしましてどんどん減ってきた。五千二百万バレル自由世界であったのですが、それが毎年四、五%ずつ下がって、八二年には四千五百万バレルくらいに減ったということでございます。これは結局石油価格が高くなった、それから供給も不安定ということでございますので、消費国が率先して省エネルギーを推進する、それから代替エネルギーを導入するということでこれだけ減ったわけです。もちろん景気も余りよくなかったのですが、そういう効果が多かった。  それからもう一つは、OPEC以外の国が、石油価格も相当上がりましたのでどんどん増産できるようになったということで、その結果OPECの生産というものがその消費の減少以上に減ってしまったということでございます。したがって、OPECとしては結局石油収入を得るためにどうしても余分につくる、そこで需給が非常に緩和したということで、八二年の初めあたりからスポット価格は大いに下回っていた。それが年を明けてさらに下がるのじゃないかということもございまして、石油会社等もまた買い控えをする、メジャーとか。そういうことが重なってきたわけですが、そういう全体的な流れの中で五ドル引き下げに踏み切らざるを得なかった、こういうことでございます。
  158. 貝沼次郎

    貝沼委員 それじゃ、もう一点だけ確認しておきますが、今の原油の価格は高いと思いますか、安いと思いますか、適当だと思いますか。
  159. 豊島格

    ○豊島政府委員 大変難しい御質問でございますが、エネルギー価格というのは低い方がいいということからすれば、考え方によっては高いという議論もできるかと思います。ただし、今後の石油の需給がどうなるかということを考えますときに、一時的に非常に大きな乱高下をするということは好ましくないということでございますので、そういう乱高下が起こって、例えば代替エネルギーが一時的に開発がストップした、また高くなればやるというような混乱を招かないという意味では、ある程度安定した価格が続くということも必要な面、これは生産者だけでなくて、消費者にとってもずっと低いまま推移すればいいわけですが、またすぐ高くなるようであれば、乱高下を避けるためには一定の水準が必要かという見方もできるかと思います。
  160. 貝沼次郎

    貝沼委員 それはこちらの希望でしょう。あなたのおっしゃったのは、そうなればよろしいなということですね。現実の原油の値段というものを客観的に眺めて、これはまだまだ高い、いやそうではない、これは適当である、いや安くなっておるのだ、この判断はこれからエネルギー問題を論じていく重大なポイントになるわけですね。この見通しがつかないようでは、エネルギーの需給見通しは立たないわけですよ。そうでしょう。さっき原油の価格は下がるべくして下がったのだ、そんなのだったら石油税なんか今大慌てして一・二%上げなくたっていいのですよ。従価税にして、必ずふえるものだという発想のもとにあれができておって、そして急に下がったものですから、収入が足りなくなって大騒ぎして一・二%上げているわけですから、こういうのは見通しがなかったという如実な証拠なんです。したがって、現在政府というものは一体原油の価格というものをどういうふうにして判断して見ておるのかということは、これから需給見通しを検討する上において大事だから私は質問しておるわけです。答えてください。
  161. 豊島格

    ○豊島政府委員 ちょっと問題の御質問の趣旨を十分わきまえないでお答えして申しわけなかったのですが、現在世界景気というものは大体回復基調にあるということでございます。しかし、原油に対する需要が非常に急激にふえるかということは、そうではないわけでございまして、一方、OPECにつきましては相当な供給余力があるということですから、全体的な流れとしては弱含みということでございます。もちろん中東情勢その他もございますので、そういうことによる変動要因といいますか、攪乱要因がございますが、どっちかというと弱含み、ただし値段が下がりましてもそんなに需要がふえないということは、逆に言うと、OPEC寺としてはまあ生産制限を強くして何とか今の値段を維持したいという気持ちもあると思いますので、そう一挙に崩れるかどうかはわからないと思います。大体、サウジそれから湾岸の穏健派は八五年末までは今の価格でいくのではないかという見方をしております。  その後どうなるかということがもう一つ問題でございますが、中長期的には発展途上国を中心とした石油需要は伸びていくということでございます。  一方、石油の供給はOPECを初めとしてそれほどふえないということでございますから、九〇年代になり次第に逼迫化していく、それに伴って価格も上がっていくというのがIEAその他関係調査機関あるいは石油メジャー等の見通しでございまして、九〇年代になると次第に逼迫化する、したがって価格も上がっていくということだと思います。もちろん、価格の上がりは八五年以降は上がるという見込みですが、特に九〇年になれば実質的にも相当上がるということかと思います。     〔委員長退席山下(徳)委員長代理着席
  162. 貝沼次郎

    貝沼委員 答弁が質問と合わないのですね。高く見ているのか安く見ているのかという質問に対して、だれかの説をただそうなるんじゃないか、ああなるんじゃないか。それではエネルギーの需給見通しは幾らつくったって、だれかの説が変わるたびに変わっていくのですね。ですから、エネルギー需給見通しというのは何回も変わっています。ついこの間も変わりましたね。そして思うように合わないわけですよ。私はやはり見通しの問題だと思うのです、相手のあることですから。  そこで、今回の原油の値下がりの問題にいたしましても、例えばネットバック価値というのがありますね。原油でつくったいろいろな石油製品がさまざまな値段で売られていく。それは需給の関係で値段がつくわけですから、これを総合してみると、本来原油一バレルというのはこれだけの値段であるべきであったということが計算されますね。そしてそれはネットバック価値としてずっとプロットされてきて、それに連動してスポット価格というものは常に動いているわけです。ところが公定価格の方は決めたまますっといって、この差が外れてくるとばたんと下がったり、行き過ぎるとまた上がったり、そうして常にそういうネットバック価値のところに近づこう近づこうとしてきておるわけです。  そういうようなことを例えばロッテルダム市場のネットバックというものを見てみると、今回の原油の値下げというのは本当に理論的に起こるべくして起こっておるわけですよ。そういう背景にあるものは何なのかという議論につきましては、先ほどあなたがおっしゃったように、例えば原油が高ければそれを使う人がいなくなるわけですから、代替エネルギーの開発が進んでいくとか新エネルギーの開発が進むとか、あるいは今まで採算に合わなかった鉱区が採算が合ってくるからそこから石油を送ることができるとか、石炭エネルギーが採算に合ってくるとかいうふうにして、今まで使えないと思われたエネルギーがどんどん採算ベースに合ってきて、そして石油離れが起こってくる。したがって、石油産油国としては幾ら高く売ろうったって売れないわけですし、しかも、それによってできた製品を今度はさらに高く産油国は輸入しなくてはならぬわけですから、そういうところからばたんと値段が下がってくる。これは当たり前のことなのです。  ところが、今までどうも政府はそういうようなことをやっていないような気が私はするのです。何もネットバックだけがいいというわけではありません。いろいろな面から検討はされておるでしょうけれども、今までエネルギー需給の見通しとかあるいは石特会計の状況などを見ると、この見通しが非常に甘かったのじゃないか。もっと腰を据えてこの見通しの研究をすべきではないか、こういうふうに私は思うわけでありますが、いかがですか。
  163. 豊島格

    ○豊島政府委員 これまで見通しが正しくなかったというお話でございますが、いずれにいたしましても、石油価格が五ドル下がるというのは、第一次石油ショックあるいは第二次石油ショック、特に第二次石油ショックの直後には余り考えられなかったことでございます。そこはやはりエネルギーについてもある程度の経済原則が働いたということ、価格が非常に大事だということがはっきりしたということでございまして、口幅ったい言い方でございますが、予測が非常に難しい問題であったということは事実でございます。  それからまた、省エネとか代エネがこのようなスピードで進むかどうかということも、当時の石油ショックのときにはなかなかわからない問題があったかと思いますが、経験値としては我々は現在はよくわかってきておるわけでございます。したがいまして、今後エネルギーの需要を見通す場合において、やはり予測でございますので相当な幅のある議論がと思いますが、その中でいろいろなデータを取り入れてなるべく正確な予想をするということで、昨年の四月以来通産大臣の諮問機関でございます総合エネルギー調査会でいろいろと御検討をいただいて、今日の改定のエネルギー需給見通しができたわけです。それには石油ショック後のいろいろな価格面あるいは需要構造の変化の要因、それから今後のOPECその他の石油の需給の要因等々も可能な限り勉強をして採択しておるということでございまして、そういう限り、我々としては常に新しい問題をとらえ、データをもとにしてなるべく正確なものをつくっていく、それで判断を誤らないようにするということについては最善を尽くしておるところでございまして、今後ともそういたしたいと思っております。
  164. 貝沼次郎

    貝沼委員 先ほどの答弁では、大体八五年くらいまでは変わらないだろうというような内容だったと思いますが、私はもうちょっと下がるのじゃないかと思いますよ。いろいろな説がありますね。例えばIEAの説が一つございます。それからまたその下がり方も、そう物すごく下がるわけではない、せいぜいほんのちょっと下がるのじゃないか。もちろんGSPで二十六ないし二十七ドルという説もありますけれども、スポット価格では二十ドルくらいまでひょっとすると下がるかもわからないという極端な議論もあるわけです。こういうようなことを考えると、もうちょっと下がるのじゃないかという見通しです。そうするとこれから先の話が少し変わってくるわけでありますから、本当にそんなことはありませんと通産省は言い切るのか、それとも、いやそれくらいの幅は一応考えて対処していかなければなりませんという考えなのか、その辺はいかがですか。
  165. 豊島格

    ○豊島政府委員 OPECの生産供給余力というのは相当あるわけでございまして、最高三千二百万バレルであるということですが、現在上限としておるのは千七百五十万バレルということですから、結局つくる余力はあるわけですが、つくれば下がるということにはなろうかと思います。現実に基準価格を若干下回るという状況で、現在アラビアン・ライト二十九ドルGSPのところ二十八ドル五十から七十とか、そういうところで若干下風っております。  そこで、問題のかぎを握るのは、そういう下がる状況をOPECがどう考え、どうマネージしていくかということでございまして、結局生産を需要に合わせて制限すれば価格は維持できるわけでございます。この前五ドル下げたけれども生産はむしろそれほどふえない、価格弾力性は余りその限りではないということでございますので、OPECとしては何とか現在の価格を維持したいということを強く希望しておるのだろうと思います。したがって、生産制限をどう続けていくかということが問題でございまして、特にサウジがその場合生産の需給調整に対してはスイングプロデューサーといいますか調節弁を果たしておりまして、その態度いかんだと思います。したがって、OPECがそういう生産制限を本当に守れるかどうかということで、それが守れないようであれば下がるし、それがギャップが非常に大きくなれば相当下がるということも考えられないわけではないのですが、恐らくOPECとしては何とかこれを維持しようという努力をすると思いますので、余り急激な値下がりというのはそう期待できないのではないかと思います。しかし、これだけは相手のあることでございますので、その辺は断言することは差し控えたいと思います。
  166. 貝沼次郎

    貝沼委員 かなり幅を持って見ておるということが大体うかがえます。私も大体そういうふうに見ておるわけでございます。いろいろな理由がありますけれども、ただ、どんどん安くすれば売れるというものでもありませんし、それから、価格が下がっても需要もふえるわけではありませんし、産油国が余りもうけがないと、これはそこの政権の問題までも影響してくる可能性が出てくるわけでありますからそれぐらいの幅を持って予測はしなくちゃならぬだろうと思っています。  そこで、少しはしょりまして、セキュリティー、安全保障の立場から句点がお尋ねしたいと思います。  我が国のエネルギーは、去年でありますが大体六二%は石油に依存、これはもう有名な話であります。それから、石油の九九・八%は輸入に頼っておる。そのうち六六%、全輸入量の六〇%ですか、エネルギー供給量の四〇%はホルムズ海峡を通っておるわけでございます。したがって、安全保障の立場からホルムズ海峡付近の状況につきましては非常に関心のあるところでございます。  こういうようなところから外務省にお尋ねしたいと思いますが、ホルムズ海峡の緊迫の度合いをどういうふうに見ておるか、これをお尋ねしたいと思います。
  167. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 ただいまのところホルムズ海峡を通ずるタンカーの運航、船舶の運航は順調であると承知しております。  イランは、イランの石油輸出が決定的な打撃を受けない限りホルムズ海峡を封鎖するつもりはないということを我々にも伝えてきております。
  168. 貝沼次郎

    貝沼委員 今の答弁は、当分海峡封鎖の可能性はないという判断でございますか。
  169. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 可能性がないというわけではございません。イランとしては、みずからのペルシャ湾を通ずる石油輸出が決定的な、致命的な打撃を受ける場合にはホルムズ海峡封鎖ということはあり得る。逆に言えば、決定的、致命的な打撃を受けなければホルムズ海峡は封鎖しないというふうに申しております。
  170. 貝沼次郎

    貝沼委員 外務省から発行している「世界動きという本には、現段階ではその可能性は小さいと判断される、こう書いてありますが、この小さいということは、まずまずないだろう、こういうことですか。
  171. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 イランのペルシャ湾を通ずる原油輸出が決定的、致命的な打撃を受ける可能性があるかどうかということが問題になるわけでございますけれども、それはイラクがカーグ島を攻撃するかどうか、そして攻撃して致命的な打撃を与え得るかどうかということにかかっているわけでございます。イラクとしましては、世界が、国際世論がペルシャ湾における紛争のエスカレーションを回避したいと願っているわけでございますから、カーグ島を大攻撃する場合には相当な決断をしなければならないだろうということが第一でございます。  第二に、カーグ島の防衛体制が非常にかたいようでございますから、イラクが攻撃しようとした場合にも果たして決定的な打撃を与え得るかどうか、この点も第二の疑問点として残る次第でございます。
  172. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、外務省としては、この海峡がもし封鎖された場合、日本の石油の備蓄は大丈夫かどうか、こういう試算をされましたね。外務省だと二百十五日はもつとか、あるいは七百十六日はもつとか、大変勇ましいいろいろな数字が出ておるわけでございます。ところが通産省の方は、非常に少ない百二十二日分の備蓄だから、そんなにもたない、こういうわけで、同じ政府でありますが随分と違うわけですね。我々国民から見ると、どっちを信用していいのかさっぱりわからない。したがって、これはどういうことなんでしょうね、両方から、外務省と通産省から御答弁いただきます。
  173. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 それは、こういう表現はどうかと思いますが、一口で言って、立場立場というものがあると思うのでございます。  油に関しては、私どもといたしまして国家経済というものを守っていかなければならない、あるいは国民生活を安定させていかなけれぱならないということが最大の務めでございます。そのためには、原油の安定供給あるいは多角的な供給ということに努めなければならないと存じます。そして、そのためには備蓄を進めなければならない。さらに三番目には、IEAを中心とした国際協力というものをしていかなければならない、それが私ども立場でございます。
  174. 貝沼次郎

    貝沼委員 私がお尋ねしたのは、通産省は、これは全部の計算で百二十二日なんですね。ですから、この海峡が封鎖されたときは、どれぐらいもつという計算になりますか。外務省は全部計算したのが発表されておるわけですね、それをお聞きしたい。
  175. 豊島格

    ○豊島政府委員 いろいろな前提条件がありまして、外務省でも恐らくいろいろな仮定を立ててやっておられると思います。私どももいろいろと研究はしておるわけでございますが、簡単に言いますと、備蓄は現在大体百二十日ぐらいあるということでございます。そのうちで四十五日というのはランニングストックといいますか、生産に必要あるいは流通のために必要なものもございますので、大体取り崩せるものは七十五日分と計算されると思います。それで、ホルムズ海峡の依存度は大体六五%ということでございますので、単にその七十五日分の備蓄を全部ホルムズ海峡がとまった分だけ崩しても、六五%で割りますと百十五日、七十五日を取り崩して百二十日ぐらいはもつかということになっています。  ただ、仮にホルムズ海峡が閉鎖されても、ほかの国で余力があるということになれば、当然のことながらそういう増産というのがある程度時間的経緯をもって出てくるであろうということでございますから、そうすればそれだけふえる。それから、事態の推移いかんによっては節約ということもある程度していくということでございまして、特にIEAのスキームを発動することになりますと、ある程度の節約をした後ということに制度上もなるわけでございます。そういう節約をどのくらいするかということでございますが、現在のところ、いろいろな節約のための法制等々もできて、前回の石油危機にかんがみ法制的にも整備されておるわけでございますが、実際問題として相当省エネルギーというのも進んでおるわけでございますし、そういうことで、事態の推移いかんによってどのような節約をするかということは臨機応変にやっていかなければいけない。したがって、そういういろいろな手段をまぜ合わせ、どのくらい封鎖が続くかによって方法も異なるわけでございまして、かなり続いてもなるべくそれに応じてもたせ、影響を少なくするということを図るべきですが、一概にそれを全部捨象しまして何日間もつという数字はなかなか出ないわけで、その中身としては、このくらいのことをやると何日と、そういう一つの関数と言ってはおかしいのですが、そういうことで、単純に何日もつというようなお答えはなかなかできないということじゃないかと思います。
  176. 貝沼次郎

    貝沼委員 それじゃ、率直にお尋ねいたしますが、外務省の計算は信じてよろしい、こういうふうに受け取ってよろしいですか。
  177. 豊島格

    ○豊島政府委員 外務省がおつくりになったわけですから特にコメントを申し上げるのもいかがかと思いますが、一定の前提を、いろいろな前提を置くということになると幾らでもいろいろな計算ができるわけでございますので、その計算自身の根拠をどうするかということによって異なるわけでございます。これはどうなっているかわかりませんが、例えば百二十日分持っている、今六千万、七千万ぐらいですか持っている国家備蓄と民間備蓄を全部からからに仮に取り外すというようなことであれば、そこは若干実行がどうかという問題もあろうかと思います。それから、非常にきつい節約というのをやると、その影響がどうかということもございまして、一つの計算でございますので、前提条件を置けばいろいろな計算ができるということは言えると思います。
  178. 貝沼次郎

    貝沼委員 長官は、外務省の試算、ごらんになりましたか、お答えください。
  179. 豊島格

    ○豊島政府委員 一応、どういう計算をされ、どういう日にちかというのは存じ上げております。
  180. 貝沼次郎

    貝沼委員 大体認めておるようでございますから次の問題に参りますが、外務省の計算ほど大変頼りになる備蓄量があるのであれば、私は、備蓄の問題はこの財政困難のときに物すごい勢いで急いでやることは果たしてどうかな、こう思うのですね。それで、備蓄が必要でないなんて私は言っていませんよ。備蓄は必要です。これはやらなければなりません。だけれども、今大騒ぎして、石油税一・二%の増税をやってまでも大騒ぎしてやらなければならぬような状況ではないのではないか、こういうふうに私考えるわけでありますが、いかがですか。
  181. 豊島格

    ○豊島政府委員 先ほど一定の前提条件を置けばいろいろな計算ができる、こう申し上げたわけですが、私が伺っているところでは、備蓄というのを、現在あるものを全部、ランニングストックを含めて全部取り崩してしまうということになりますと、実際物が動かないわけで、そういうことは不可能なわけですから、大体四十五日分ぐらいは製品も含めていろいろな形で残さなければならない、そういうことで、ひとつそういうことは現実的ではない、あえて言えば、もし計算がそうであれば、そういうことも言えると思います。  それから、例えば一〇%の節約をするというようなことも出ておりますが、先ほど私が申しましたように、制度的には、いよいよ困ったときにはいろいろな緊急事態に応じて法制的にも整備しておるわけですが、現在の経済状態を見て、一〇%の節約というのはいかに大きいものかということはおわかりかと思います。特にそういう一〇%本当に切るとなると、なかなか切り得ないものがありますから、産業とかそういう経済活動をしているところで大口は例えば一五とか二〇とか切らなければいけない、こういうことになると思います。そうしますと、確かにもつはもつけれども、もし仮にそういう石油を一〇%も一五%も、場合によっては二〇%も切らなければいけないというような事態が起きますと、これは相当な経済的な混乱も考えられるわけで、そういうことも考えますと、やはり備蓄というのは、十分今の備蓄を最大限活用して、事態にどう対処するかということは当然必要でございますけれども、それだけでなくて、やはりある程度経済安全保障ということから見ると、それにふさわしい備蓄をやはり持たなければいけない。そういうことからいいますと、IEA諸国の平均の備蓄量は大体現在百七十六日、百八十日弱でございますか、そのぐらいあるので、日本はそれに対して石油依存度が非常に高い、中東依存度も高いというとき、まだ百二十日ぐらいということになりますと、それだけ弱いわけでございまして、特に日本は石油の消費それから輸入は自由世界二位でございまして、そういうところが石油の供給体制について不安定である、備蓄が不十分であるということは、そういう国際的責務を果たすという意味からいっても不十分であるということが言えるわけで、計算によってはいろいろなもつもたせ方があるわけですが、今申し上げましたように、少なくとも今進めておる三千万キロリットルの国家備蓄はどうしても必要であるというのが我々の考えでございます。
  182. 貝沼次郎

    貝沼委員 いろいろ説明をされましたが、先ほど私が申し上げましたように、備蓄が必要でないなどと私は言っておりません。必要です。必要だけれども、今財政困難であるということと、それから石特会計だってもう随分落ち込んでしまって今大騒ぎしているわけでしょう。しかも総合エネルギー調査会需給部会の報告を見ましても、「備蓄については、厳しい財政状況に照らせば、相対的にコストの高いタンカー備蓄の陸揚げの促進、民間の原油タンク余剰能力の有効利用、国家備蓄基地の完成時期の延期等の弾力的な運用等を着実に実施に移すべきである。」これで洋上備蓄から陸上にやるとか、そういう手は打っておるようですけれども、もう少しスローダウンしてもいいのじゃないか、こういうのが私の考え方でございます。  特に、例えば今何日分という計算をされましたけれども、三千万キロリットルという話も出ましたけれども、これとても、五十三年のときの見通しで、一日百万キロリットルとして三十日分として三千万キロリットル。ところが現在一日の消費量は五十四・一五万キロリットルですから、これを三十日分としてもたかだか千六百二十万キロリットル、こういうわけでしょう。ですから、そういうようなことを計算いたしますと、そう無理な数字には今なってないわけですよ。そういうようなこと。  それからもう一つは、石油公団などに予算が組まれておりますけれども、この予算がどういうふうな使われ方をしておるのかということを調べてみると、びっくりしたのは不用額が余りにも多いということですね。不用額、余ったという金ですよ、使わなかったという金ですよ。五十二年度からずっと見てみますと、一般勘定も何億円、例えば五十三年度を見ると、一般勘定で三億八千九百九十四万円の不用額です。ところが石油備蓄の方は百十三億四百二十四万円、こういう数字でしょう。五十四年度でも六億九千九百六十八万円の不用額、そして石油備蓄は二百五億五千百四万円。五十五年度は石油備蓄の方だけ見ますと、備蓄勘定では二百四億三千二百九十二万円。あるいは五十六年度は、いきさつはわかりますよ、いろいろな事情があったことは私知っておりますけれども、五十六年度は二億八千万円。それから五十七年度は一般勘定で十二億八千百六十九万円、そうして石油備蓄勘定の方は二百二十億四千二百九十八万円。こういうふうに毎年毎年何百億という不用額が出るのにどうして大騒ぎして一・二%も上げてがたがたしなければならないのか、私は不思議でなりません。これは余ったお金ですよ、使えなかったお金ですよ。私はそういう面から考えたら、幾らお金をつけたといっても備蓄というのはそう簡単にできない、したがって、ただ金をつければいいというものじゃない、もっと根本的な対策が必要なのではないのか、これを言いたいのでありますが、いかがですか。
  183. 豊島格

    ○豊島政府委員 御質問が二つかと思いますが、一つは、備蓄については当時一日百万キロリットルを使うということで国家備蓄三十日分、したがって三千万キロリッターじゃないか、それが現在非常に消費も減っておって、それでいくともっと少なくていいじゃないか、したがって今さらそう急ぐ必要ないのじゃないか、こういうお話でございます。先ほど来申し上げておりますが、日本のエネルギー供給構造の脆弱等あるいは石油の中東依存度ということを考えますとき、せめて西欧並みといいますか、IEA並みの水準ということで、当時IEAの平均が百二十日あったということででございますので、これに対して民間備蓄九十日プラス三十日ということで三千万キロリッターを考えたわけでございます。しかし、その後石油備蓄に対する認識、重要性というのはだんだん高まりまして、IEA等におきましても、昨年の閣僚会議でも備蓄はさらに強化すべしということを言われております。アメリカ等も特にそう言っておりますが、いずれにしましても、現在の西欧並みというのは大体百六十七日ですか、まあ百七十日くらいでございまして、そういう水準に比べて日本の百二十日は非常に低いわけでございまして、仮に三千万キロリッターを五十三日分といたしましても百四十三日ということでヨーロッパより少ない。しかもIEA方式というのは大体一割ダウンでございますので、三千万キロリットルを積みましてもIEA方式でいくと百二十八日くらいになるというわけでございまして、決してそういう意味からいうと十分ではないわけでございまして、当時と情勢も変わっておるということでございます。  それから第二の点でございまして、相当残しておるじゃないか、特に備蓄の建設関係で相当、先ほどおっしゃったような数字、私手元にございませんが、ある程度不用に立てたということがあろうかと思います。と申しますのは、先生もおっしゃいましたように、事情もあろうかということでこざいますが、いずれにしましても備蓄基地の建設につきましては、地元との問題が非常に難航いたしましてなかなか進められなかった、一方では早く国家備蓄基地をつくれという要請もいろいろあったわけでございますが、そういうことで地元との関係、立地がなかなか思うように進まなかったということが原因でございます。  しかし、いずれにしましても今回石油税を一・二%オンして新しく対象拡充をお願いするに当たりましては最大限の節約等も行いまして、また備蓄基地の建設につきましても実情に合わせてある程度スローダウンさせるということもいたしまして、それでもなおかつ足らない分をお願いしている、こういうことでございまして、決してむだな金、あるいはもう少し節約できるところがあるのじゃないかという御指摘でございますが、そこは精いっぱい努カし重点化あるいは節約をした、こういうふうに考えておりますのでよろしくお願いします。
  184. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、使われていないお金はそういうふうに工事が進まなかったりいろいろなことがあることは私はよく知っているのです。知っているのだけれども、それほど、お金を余してまで悠々とやっているほど日本財政は豊かではないのです。そのときに合わしてやるべきだということを私は言っているのです。備蓄が悪いなんて私は何も言ってない。  それからもう一つは、私は公団のバランスシートを見た、そうしたら五十九年度のだけが公団備蓄石油損失というのがあるんだね。損失、どこかに行ってしまった分ですよ、石油が。計算したらなかった。五十七年度で計算すると、十六億ですね。それから、五十八年度が十億ですか、五十九年度の見込みでもかなりありますね。石油を移動したり何かして、計算すると、蒸発したとかなんとかでなくなっている分だということのようですけれども、これはほかの償却とかあるいはほかの雑損失とは違うのですよ。なぜか五十九年度だけが公団備蓄石油損失、こうはっきり計上されているのです。ほかの年度はどういうわけかこれがない。恐らくそれを計算しなかったのでしょう。そして、五十九年度になって陸に揚げてみたり何かしたら予定されるほどなかった、それで損失として上がっていると私は思うのですけれども、こういうようなことばかりやっていたんじゃ金幾らかけたって予定どおりの備蓄はできませんよ。これはどうなるのですか。
  185. 豊島格

    ○豊島政府委員 最後におっしゃいました五十九年度についての云々ということでございますが、これは積みかえのときの評価損が出たというふうに理解しておりますが、今詳しいこと私手元にございませんのでわかりません。  それから、今先生がおっしゃいましたこんなことでということでございますが、我々としてはその辺は、石油税の拡充をお願いするに当たりましては徹底的に、過去どうこうということはともかくとして、徹底的に節約するところは節約して、重点化するところは重点化しておりますので、その点は今後の実績で十分御理解いただけるのじゃないか、このように考えております。
  186. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうふうに、船から積んでみたら足りないのがわかったのですよ。船で持ってきて置いてあるときはだれもはかった人はいないですね。何年かたってみてから、移してみたらこれだけ足りなかった、それで損失として上がっているのですよ。こんなことじゃちょっと私はおかしいと思うのですよ。揮発性のものですから蒸発することはあるのです。だけれども、蒸発を許しておったら揮発性のものは備蓄にならないのです。よろしいですか、その辺もっとちゃんとしてもらいたいと思いますね。答弁を求めます。
  187. 豊島格

    ○豊島政府委員 備蓄するに当たりましては、非常に大切な財産でございますので、揮発しないようないろいろな手を打つということは、技術的にも備蓄タンクにつきましては十分の手が打たれている、また打たなければならないと私ども考えておるわけですが、たまたま若干結果的に出るということについては、今後できるだけ少なくするという努力を技術的にも管理上もやっていくということかと思いますが、出てしまったものにつきましては、それなりの処理をせざるを得なかったということかと思いますが、詳しくはまた調べてまいります。
  188. 貝沼次郎

    貝沼委員 出てしまったものはしようがないじゃないのですよ、本当は。ひとつ今度はきちんとやってください。私は備蓄賛成なんです。だから大事にしなくちゃいかぬということを言っているのです。こういうことが出てくると、備蓄の理論は成り立たなくなるのですよ。  それから、財源問題ですけれども、先ほどから何回も言っておりますが、石油税、特にLNG、LPGですね、一・二%アップ。これは大蔵省ですよ。私はこれは反対なんです。それで、いろいろ資料を見てみましたら、自民党さんも商工部会の方は大反対なさっておりましたですね。みんな反対ですよ。そしてこれははっきり言って備蓄がねらいですよ。そこで備蓄の話を今私はやったわけでありますけれども、とにかく何もこれをやらなくても済むという議論、これはもう皆さんたくさんやったでしょうから私はくどくど申しません。ただはっきり言えることは、石特会計の破綻です、はっきり言って。そうしてさらに、この一・二%をLNGやLPGにかけるということは、これは一つは新税ですよ。範囲を広げたのじゃないですよ、新税、したがって、新税は増税、増税は公約違反ですよ。いかがですか、大蔵省。
  189. 大山綱明

    ○大山政府委員 ただいまのお尋ね、範囲の拡大は新税ではないかという御議論でございますけれども、私どもこれを検討いたしますに当たりまして、やはり石油税の趣旨、これは便益性の高い有限な資源である、こういう点に着目して、石油ないしは石油製品に対して税金をかけていく、こういう趣旨、その枠内、いわば今度新規に課税いたしましたものも、LNG、LPGともにやはり石油の一連のものとして出てくるものである、石油に随伴して出てくるものであるという意味におきまして、いわば石油と広い意味では言えるものである、こういうふうに考えてよいのではないか。そうしますと、新しい税であるという今の御指摘でございますけれども、それは必ずしもそうお考えいただくのはいかがか、こんな判断から新税ではないと考えたわけであります。  あわせまして、当初は石油に税金をかけ、それが石油対策ということで使われていたわけでございますが、この会計、石油に対する対策とあわせて石油代替エネルギー対策にも使用されるようになっております。そういうところからいきますと、特定財源としては、やはり石油代替エネルギー対策にもお金が使われるということでありますれば、石油代替エネルギーに対しても相応の負担をしていただくというのは御理解がいただけるのではないか、こんなふうに考えておる次第でございます。
  190. 貝沼次郎

    貝沼委員 それは御理解いただけないのです。大蔵省の答弁で僕はそういうのを聞くとは夢にも思わなかった。大蔵省そんな答弁したことはないですね、私前に大蔵委員会なんかにもおりましたけれども。その論理からいくと、物品税とかけておいて、一つそれだけ決めておいたら何でもかけれるということです。石油に関係するといったって、みんなこれは石油に関係ないものはほとんどないですよ。じゃ、何でもできるじゃありませんか。そうならないから、物品税だって一つ一つ国会にかけて議論するわけでしょう。ですから、これは明らかに新しく出てきたのです。だれが見たって今までかかってない。いや新しくかけたのじゃないといったら、なんでこの前からこれは入ってないのですか。そんなへ理屈はだめです。これは新しく税金をかけたのですということなら、はっきりかけたんですと言ったらいいのです。それてどうしても必要なら理解を求めたらいいのです、ただ公約違反だけのことじゃありませんか。そうでしょう。そうじゃありませんか。やはり新税ですよ、これは。  それから、これを言うと、またあなた同じことを答弁するから、私は時間がないからあなたの答弁を求めませんけれども、これは新税です。しかも、国民所得に対してパーセントがどうとかこうとかとまた理屈をこねるんですね。だけど、国民所得から見たって、五十八年度補正後と五十九年度予算を見ると、国民所得に対する国税の比率あるいは国税、地方税両方合わしたって〇・三%負担率は上がっておるのです。七千百億ばかり上がっておるのです。したがって、これも増税でないと言い切ることは、それはへ理屈以外の何物でもない、こう思います。いかがですか。
  191. 大山綱明

    ○大山政府委員 国民所得に対します負担率が〇・三%今回五十九年度におきまして上昇いたしてお力ますことは事実でございます。「増税なき財政再建」につきましての臨調の答申の考え方は、租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置をとらない、こういうふうな記述がございまして、この〇・三%は実はほとんどすべて自然増収によっての負担率の上昇でございます。したがいまして、今〇・三上がったから、これが増税ではないかという点につきましては、臨調の答申の御趣旨を体しますと、自然増収はそうではないというとてろから「増税なき財政再建」には反しないと私ども考え、御答弁をかねてより申し上げておるところでございます。
  192. 貝沼次郎

    貝沼委員 ですから、これは自然増収じゃないのです。新しくつくったのが加わって何で自然増収ですか。そんなんだったら全部自然増収になる。何つくったって自然増収。それは自然に入ってくるという意味なら自然に入ってくるよ、法律つくるのだから入ってきますよ、お金は。だけれども、こういうのは自然増収という言葉は当てはまらないでしょう。そんなへ理屈言っちゃいけません。  それからもう一つは、LNGとLPGは代替エネルギーとして、需給見通しを見ましても力を入れておる項目ですよ、日本の国としては。エネルギーとして期待しておるのです。ところが、その期待しておるものに対してわざわざ税金をかけるというやり方は矛盾しているのです、一つは。  もう一つは、先ほどからセキュリティーの話をしておりますけれども、LNGあるいはLPGを輸入しておる国、我が国が買っておる国ですね。この国に対して、ここに税金をかけましたよということは、また新しい国際摩擦をつくる要因になるのです。こういうことを考えると、これはまことに悪い税金です、この二つについては。私はそういうふうに考えるわけであります。  しかし、大蔵省にこれを答弁させても同じ理屈を述べますから、通産省は、こういうことでまことに結構だという判断でございますか、どうですか。
  193. 豊島格

    ○豊島政府委員 エネルギー財源の有力な一つの財源としまして石油税があったわけでございまして、これは従来石油のみにかけておったわけでございます。しかし、御承知のように、石油の需要はどんどん減ってきて、今後も大体横ばいでいくだろうということでございますし、石油はそういう状況の中で、今後エネルギー財源を石油にだけ依存するということはなかなか難しい現実でございまして、むしろ広く消費者一般に負担していただくということが望ましいのじゃないかということでございます。  そういう意味で、石油以外のLNG、LPGについても今度はお願いしたわけでございますが、LNGにつきまして、確かに代替エネルギーとして推進しているじゃないかということでございますが、一・二%ということでございまして、割と低い率ということが一つございます。それから、LNGにつきましては、五ドル引き下げ石油とスライドして大体下がっておるということで、そういう意味からいうと、コスト的にも下がった一部を、ごく一部を負担していただく、こういうことになるわけでございます。  それからもう一つは、代替エネルギーであるということは十分考えておるわけでございまして、石油につきまして、従来三・五とございましたその上に一・二税率を上げていただくわけですが、LNGにつきましては、新しくかけるに当たりまして二・二%ということで、石油との格差三・五%は維持しておるというてとで、代替エネルギーとしての扱いをしておるわけでございます。  それから、産ガス国との関係で非常に緊張が高まるといいますか、非難を受けるのではないかという御指摘でございました。もちろん産ガス国としても税金がない方がいいという議論はあろうかと思いますが、LNGの世界的な需要を見ますと、日本が大体七五%、貿易の七五%は日本へ来ておるということで、非常に産ガス国は日本を期待しているわけですが、それだけに、どちらかというと現在においては供給過剰ということでございまして、そういう意味からいいますと、特に大きな問題にはならないというふうに我々は理解しております。
  194. 貝沼次郎

    貝沼委員 答弁短くやってくださいね。  それで、今の答弁は、これから何年かたつとあなたは大変な答弁をしたということがわかります。そう簡単じゃありませんよ。日本はエネルギーのある国じゃないのですから。頭を下げても資源は確保しなくちゃならない国ですよ。そういうことから私は心配しておるわけです。  そこで、輸入の多角化という問題もありますが、時間がありませんのでそれは飛ばしまして、代替エネルギーに対するコスト面での影響が出てくるのですね。殊に原子力がかなり期待されておるわけでありますけれども、原子力とても今はまだ炉が新しいから、そう古くないですから問題ありませんが、これは今度やがて廃炉しなければなりませんね。デコミッショニシグと言われる廃炉、壊すこと、それから今度は廃棄物の最終処理、処分、こういったこと、それから建設費の見方も従来どおりではだめなんじゃないかという考えもありまして、いろいろと単価の見直しが迫られておる現状だと思うのです。  そういうことを考えますと、だんだんこれから一キロワット当たりの単価が高くなって大変なんじゃないか、こういうことになってまいります。そういうことも勘案した上で、代替エネルギーの開発は非常に難しくなってきますよ。そうして、さらに、ウランの濃縮の問題について、先般、通産大臣アメリカに参りましていろいろとお話しになったことを新聞で伺いました。三〇%をアメリカ以外のウランを入れて濃縮してよろしい、こういう話があったということですね。このことは、恐らくアメリカが、七〇%日本に輸出するウランさえ持っておれば日本市場を確保することができるということと、あるいは核不拡散の立場からも七〇%のウランにひもをつけておけば日本の核不拡散は確保できる、こういうような立場からの意図ではないかと私は思っておりますけれども、この辺について大臣はどのようにお考えですか。
  195. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 先般ホーデル・エネルギー長官と会ったときに、そのことをはっきり長官から確約したわけでございますが、七〇%のウランにひもをつけていけばそれでよろしいというような考え方じゃなしに、三〇%は将来国産のものを使えるという認識のもとに我々はホーデル長官と話したつもりでございます。
  196. 貝沼次郎

    貝沼委員 三〇%国産といいますけれども、原子炉はどんどんふえていくわけでしょう、大変な量ですよ。したがって、よその国から買ってこなければいかぬ。なかんずくヨーロッパです。買ってくる。ヨーロッパ市場が今大分強くなってきていますので、それをある程度認めないと、日本がヨーロッパからどんと購入した場合アメリカが困るから七〇%は確保しておこうというのが私は本音だと思うのですよ。したがって、ヨーロッパから購入したウランを日本が濃縮するなら濃縮するわけですが、そういう場合に、アメリカとの原子力協定にある事前同意権というものはどういうふうになるのですか。〇豊島政府委員 今先生の御質問の趣旨は、アメリカから買った濃縮ウランについてはアメリカとの日米原子力協定があるわけでございますが、ヨーロッパから買ったものについてはアメリカとの原子力協定では制約されてい危いということでございます。それが御質問の趣旨でございましょうか。そのとおりでございます。
  197. 貝沼次郎

    貝沼委員 私が言ったのは、アメリカから買ったのは、もちろんアメリカ日本の原子力協定で全部事前に相談しないと再処理までやれないわけですね。ところが、三〇%はよろしいと言っているわけです。ところが、核不拡散の関係がありますから。それについてアメリカは何にも言いませんでしたかということを聞いておるのです。
  198. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 それについては、その時点でアメリカは言及いたしませんでした。
  199. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、実はその問題が残ると思っております。  それから、時間がありませんから簡単にお尋ねしますが、日本の場合、今ウランの濃縮は原型プラントが決定しておりまして、次に商業用濃縮ウラン工場の建設が問題になってきておるわけであります。これに対しては事業計画の問題がまだはっきりしていないようですけれども、この事業計画の方向性、報道では、六十年代半ばまでに建設するとか、あるいは年間三千トンであるとか、総工費は三千億円とか、六十五年運転開始とか、七十五年云々といういろいろな説が出ております。特にこの議論には、場所の問題も出ておりまして、その場所も、下北半島があればあるいは岡山県人形峠という話もあり、この辺のところが今話が大変活発になってきておるわけでございます。ところが、事業家の社長さんなどがおっしゃっておることには、我が国の原発による需要量や我が国土の特徴、長いという特徴から、単数立地でなくても複数立地でもいいのではないかというような話も出ておるわけでございます。私は岡山県でありますから、これは非常に関心がございます。したがいまして、現在この話はどの程度まで進んでおるのかということを伺っておきたいと思います。
  200. 豊島格

    ○豊島政府委員 商業ウラン濃縮プラントにつきましては、基本的に植民間の問題ででございまして、それを当事者が決めるわけでございますが、現在のところ、立地地点につきましては複数の地点を検討中ということでございまして、先ほどおっしゃったようなところも候補かと存じます。
  201. 貝沼次郎

    貝沼委員 この点について科学技術庁は御意見ありませんか。
  202. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  商業用の濃縮ウランのプラントにつきましては、今通産省の方からもお答えございましたように、民間の電気事業者を中心にいろいろ検討がなされておる段階でございまして、立地の問題についても幾つかの地点について事業者の方で検討中と聞いております。それ以上の具体的な話は私どもも承知しておりません。
  203. 貝沼次郎

    貝沼委員 では、科学技術庁に一点だけお尋ねしておきますが、私が今具体的に述べたようなことはある程度検討されておるというふうに受け取ってよろしいですか。
  204. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  公式に具体的な地点についてどういう状況にあるというところまで私どもは承知いたしておりません。
  205. 貝沼次郎

    貝沼委員 では、次に、通告してありますので簡単にお尋ねいたしますが、救急医療の問題、お願いします。  これは、内閣総理大臣官房交通安全対策室で、こういう立派な本がございまして、各国の救急医療の体制をまとめてございます。  これを見てもわかるわけでありますが、各国ともヘリコプターによる救急医療ということをやっております。ただ、日本の場合、ヘリコプターが非常に高いこと、こういうようなところから余りやっておりません。私は、ぜひこれを進めたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  自治大臣いらっしゃいますけれども、かつて新自由クラブもこれについては大変熱心に議論されておったようでありますので、この点お伺いしたいと思いますが、今無医地区において、たとえ診療所があっても、例えば頭を打って行った場合に、そのお医者さんが内科である場合には病院がないのと同じであります。あるいは救急病院に運ばれても、脳外科医がいない場合は翌朝まで置かれるとか、たらい回しされるとか、有名な話でございます。したがいまして、結論だけ申し上げますと、現在自治医大でやっておるように、あらゆるいろいろな関係の愚者が来ても対処できるような、そういう救急医というものを養成する必要があると思います。自治医大の卒業生は大変喜ばれておるようでございます。そういう観点から今、岡山県では、川崎医大附属病院あたりでは病院の中に救急科というのがありまして、そうして、例えば内科、外科、産婦人科、いろいろな科の訓練を受けた医師が座っておるわけです。何が来ても翌朝までは大丈夫、こういう体制をとっております。  こういうようなところから、一つは、厚生省にお願いしたいのは、病院に救急科というものを設置する方向で何らかのことが考えられないか。それからもう一つは、医師の国家試験に合格しないけれども大変力のある人がおります。こういう人を何か資格を与えて救急員という立場考えることはできないのかどうか。  それから、文部省の方にお尋ねしたいのは、大学の医学部の講座の中に救急医学講座、こういうものを設置するように御指導できないものか、この点を一つ伺いたい。  それから、自治大臣には、何といってもこれをやるのは地方自治体であります。したがいまして、ある程度国からの力を入れてやらないとなかなかできません。そこで、自治省としてこれに対して力強く取り組む方向で検討願いたい、こう思うわけでありますが、いかがでございますか。順次お答え願いたいと思います。
  206. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 救急医療の問題でございますが、これはいわば医療の原点でございますから、お話のございました、たらい回しなどがないように計画的に整備を進めておるところでございますが、そこで、救急科の問題につきましては二つの意味があると思います。  一つは広告をいたしまして患者の便宜を図るということでございますが、この点につきましては、昭和三十九年から救急告示病院、救急診療所の制度ができておりまして、救急科というものを設置いたします場合にはそれとの関係をどうしたらいいか、そういう検討をする必要があろうかと存じます。  それから、標榜診療科名につきまして、もう一つ専門制の問題がございます。医学的な面から一つの専門領域として成り立つかどうか、こういう判断が基本として従来あるわけでございますけれども、お話にもございましたが、幾つかの既存の診療科にまたがる問題をどう考えていったらいいか。似た問題として、これから充実していく必要があると思われますプライマリーケアにつきましても同じような課題があるわけでございますが、今後の重要な課題として検討してまいりたいと考えております。  それからもう一つ、国家試験の件について御指摘がございましたが、やはり救急は大事な分野でございますから、医療の一定の分野について国家試験に合格しておらない者を充てるというのはいかがかと考えております。
  207. 森喜朗

    ○森国務大臣 貝沼先生の御指摘の救急医学の講座の件でございますが、現在多くの大学では大体救急医学の講座実習を実施はいたしております。授業科目として独立していない場合でも、内科学あるいは外科学そしてまた整形外科等の授業科目の中には、救急関係の講義実習を随時行っているようであります。先生も今お話しになりましたように、川崎医科大学あるいは香川医科大学、新設の国立でありますが、こうしたところでは、麻酔救急医学というように二つ一緒にしてやっているようなところもございます。授業としてはかなりの大学が、東大を初めとして国公私立すべて授業科目としては持っているようでございます。  文部省といたしましては、医学の教育課程にかかわる基準につきましては弾力化を図っておりまして、各大学で必要と認める教育、研究体制をとることは可能にはなっておりますが、新たに講座ということになってまいりますと、予算上の問題もいろいろございます。教授を初めその先生方の配置という問題も出てまいります。そういう中で、やはり大学間でいろいろと御検討いただくことが一番いいのかと思いますが、文部省といたしましては、こうした社会的要請にこたえまして、医学教育の専門的な分野にはできるだけ配慮を加えていきたい、このように思っております。
  208. 田川誠一

    ○田川国務大臣 救急医療にヘリコプターをもっと利用しろというお話、まことに時宜に適したお話でございまして、私どももできれば全国的にどんどんこういうものを設置したいと思っております。何分、要員の確保とか管理体制、その他予算の問題で難しい問題が随分ございます。当面はどうしても大都市中心にヘリコプターを配置するようなことになっておりますけれども、僻地とか離島とかあるいは交通が非常に不便なところには、現在は自衛隊の協力もお願いするというような、関係団体の御協力を得ながらやっているわけでございます。御指摘のように大事なことでございますから、今後も今貝沼委員おっしゃったようなことを踏まえて、できるだけヘリコプターの活用ができるように努力をしてまいりたいと思っております。
  209. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、時間があと二、三分ありますから、大蔵省の方にちょっとお尋ねしておきます。  ヘリコプターを買うためにはお金が必要です。今、救急車を自賠責の民間部門の運用益の方からいろいろと寄附をしてもらったり何かしていますね。かなりあの金もあるようですので、その辺を検討することができないかどうか、これをお尋ねしておきたいと思います。
  210. 加茂文治

    ○加茂説明員 お答え申し上げます。  自賠責の損害保険会社分の運用益につきましては、保険収支改善のための資金として留保しておるほか、先生御指摘のように、救急医療体制の整備あるいは交通事故防止対策等に支出をしてきておるところでございます。しかしながら、近年におきまして自賠責保険の収支が悪化をしてきておりまして、そのような関係から、運用益の支出につきましては制限的に運用いたしておりまして、支出を縮減しているのが現状でございます。したがいまして、御指摘の救急用ヘリコプターの購入という新規の御要望には応じることは困難であると考えております。
  211. 貝沼次郎

    貝沼委員 自治大臣、そういうふうに大変困難な部分は私もよくわかっておるわけです。わかっておりますが、これからもヘリコプターでなかったならば、山間僻地だけでなく大都会でも、例えば高速道路でどかんとやった場合は、幾らピコピコ鳴らしてみたって走る場所がないわけですね。したがって、ヘリコプターが必要になってくるし、そういう面では高速道路も、外国によっては中央分離帯が動く場所があるわけですね。もっとも外国はこれを滑走路に使うという発想がありますからそういうこともできるのですけれども日本の場合はある程度間隔があっても、そういう少し動かせるような部分を建設省と相談して考えるとか、そうしてぶつかった場合はそこから全部Uターンさせて救急車が入れるようにするとか、こういうようなことを、ヘリコプターとあわせてひとつ御検討願えれば幸いだと思うわけでございます。  きょうはダイオキシンの質問もする予定でございまして、御出席をいただいて大変恐縮でございました。時間がありませんので、以上で終わりたいと思います。
  212. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 以上で貝沼君の質疑は終了いたしました。  次に、神田原君。
  213. 神田厚

    神田委員 まず最初に、農林水産大臣に、農産物の自由化、枠拡大の問題につきまして御質問を申し上げます。  先ほどの報道によりますと、ブロック通商代表は、日本が大幅にこの問題について譲歩をしなければ、アメリカとしては報復措置をとるというように極めて強い調子で意見を表明しているようでありますが、今後の交渉の経緯と、これについての考え方をお聞かせをいただきたいと思います。
  214. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 お答えいたします。  私といたしましては、日米農産物交渉に際しましては、日本農業を守るという立場を堅持してまいります。ただいま塚田総務審議官を渡米させておるところでございますが、私もニュースで今先生おっしゃったようなことをお伺いしましたが、しかし、少なくとも基本の姿勢といたしまして、無理な要求があった場合には、三月いっぱいに何とか決着はつけたいとは思いますが、そうかといって、この時期にとらわれまして無理な要求をのむというようなことはしないつもりでございます。
  215. 神田厚

    神田委員 アメリカ側が三月いっぱいの決着を大変望んでいるという状況の中で、どういう環境が整った場合において農林水産大臣は訪米をすることになるのか、その辺はいかがですか。
  216. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 私といたしましては、今渡米させております塚田総務審議官、これらの報告を得まして、私が渡米いたしまして決着がつくという見通しがつきますれば、渡米することはやぶさかでございません。
  217. 神田厚

    神田委員 そうしますと、アメリカが望んでおりますところの三月いっぱいの決着には拘泥しないということでありますが、そういうことで果たして交渉がうまくいきますか。
  218. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 金子農林水産大臣のお約束もございますので、できますれば三月いっぱいにこの決着をつけたいとは思っております。最大限の努力をいたします。
  219. 神田厚

    神田委員 ところで、伝えられるところによりますと、アメリカ側がかなり大幅な譲歩を要求をしているということでありますが、この点につきましては、農林水産大臣としてはどういうふうな考え方でこれに対応していくのか、その辺はいかがでありますか。
  220. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 私といたしましては、農産物の輸入というものは、やはり国内の農産物の需給動向、これを見た上で、日本の農業が健全な発展をしていくというのと調和のとれた形で、農産物というものは輸入すべきであるというぐあいに考えております。一昨年四月の農林水産委員会の決議、そして今年一月の農林水産委員会からの申し入れ、これらの趣旨を踏まえまして、日本農業が着実に発展するということを念頭に置いて交渉に当たってまいります。
  221. 神田厚

    神田委員 三月いっぱいの決着が無理だということならば、農林水産大臣としての心づもりでは大体どのくらいまでにこれを解決をしたい、こういうふうにお考えてありますか。
  222. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 私といたしましては、現在、先ほど申しましたように塚田総務審議官を渡米さしていろいろ交渉をさしておる最中でございます。これらの報告を踏まえまして、私としてはまだ三月いっぱい決着というのを捨てておるわけではございません。何とか三月いっぱいに決着させたい、そういうぐあいに思っております。
  223. 神田厚

    神田委員 それではちょっと、牛肉の問題でお聞きをしたいのでありますが、牛肉の消費の伸びというのは現在どういうふうになっており、あるいは将来、近時点におきましてどういうふうな伸びの予測ができますか。
  224. 石川弘

    石川(弘)政府委員 牛肉の伸びについての御質問でございますが、畜産物は一般的に農産物の中では需要量の伸びが大きかったわけでございますが、最近時点になりまして国民の栄養水準がほぼ限界に来ているとかいろいろございまして、私ども長期的には安定的な伸びを期待しておりますが、かつてのような大きな伸びは期待できない状態でございます。  ここ数年の傾向を見ましても伸び率は若干下がっておりますが、ただ、これは一律に伸びていくということではございませんで、やはりある程度国内における景気動向その他によって左右されておりますので、私どもは、一般論としましては、六十五年の見通しの線上である程度伸びを期待をいたしておりますが、これは中長期的な問題でございまして、短期的にはやはりその年その年の需給動向を見て判断すべきものと考えております。
  225. 神田厚

    神田委員 結局、伸びがそれほど期待ができないという中で、新聞報道では一年間に約二万トンの牛肉の輸入をアメリカは迫っている、こういうふうに言われております。四年間の協定でありますから八万トンの牛肉の増加ということになりますが、そうなりました場合、仮に二万トンという数字が一体どういうふうな意味を持つかということにつきまして、これは日本の牛に換算しますと何頭分に当たりますか。
  226. 石川弘

    石川(弘)政府委員 増加量で毎年二万トンということでございますと、普通日本の牛肉で申しますと、大体一頭から二百五十キロぐらいでございますから、一トンといいますのがまず四頭分でございます。したがいまして、毎年二万トンということになりますとそれの四倍でございまして、八万頭分が増加分ということでございます。
  227. 神田厚

    神田委員 一年八万頭ですね。四年間の契約ということになりますと、三十二万頭ですね。日本の畜産農家の平均飼養の頭数は七頭平均でありますから、こういうことになりますと、約五万戸近い畜産農家に壊滅的な打撃を与えるということになります。牛肉の消費が飛躍的に伸びれば、これはある程度こういうふうな形ではない結果になりますけれども、現時点で農林水産省が六十五年見通しにおきまして予測をしておりますところの問題、さらには現在の消費の動向から見ると、仮にアメリカのそういう要求を受け入れたということになりますれば、五万戸近い畜産農家が大変な打撃を受ける。この点につきまして、農林水産大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  228. 石川弘

    石川(弘)政府委員 今御指摘の二万トン増加ということになりますと、毎年二万トンずつ継ぎ足してまいりますと、これは四年で八万トンではございませんで、増加分だけで言うと二十万トン分でございます。  私ども、牛肉は価格安定制度を設けておりますので、その数量がそのまま国内の生産者のどれだけの経営に直接影響を与えるかということは判断しにくいわけでございますが、私どもは昨年の酪農及び肉用牛の振興に関する方針の中で基本的な方針を定めておりまして、国内の合理的な肉用牛生産を助長しながら足らざるものを安定的に入れていくという考え方でございますので、先生御指摘のような数量というのは、私どものそういう需給操作の範囲から考えますと到底入らないような大き省でございますが、ただこれは短期的に見ますといろいろと需給変動がございますので、そういう量が直ちに国内の生産に直接何万戸に値するということはなかなか算定しがたいと思っております。
  229. 神田厚

    神田委員 いずれにしろ、相当大きな影響力があることは間違いないことでありまして、したがって、そういう国内畜産農家をきちんと守るという基本的な姿勢のもとで交渉をなさっていただけるのかどうか、農林水産大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  230. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 私の交渉に当たる基本姿勢といたしましては、本院の農林水産委員会の決議、申し入れ、これは農産物輸入に関して、これによって我が風農業者が犠牲にならないように、我が国農業が着実に発展していくということを念頭において交渉に当たってまいります。
  231. 神田厚

    神田委員 続いて、輸入食品の安全性の問題で御質問を申し上げたいと思います。  御案内のように、今日本は大変な食品の輸入国でございまして、年間二千万トン以上三十四万件に及ぶ、月数にしますと約五カ月分食品を輸入している、こういう状況でありますが、しかしながら、食品輸入の検査体制を含めまして、極めて安全性の問題で大きな問題提起がされております。この問題につきまして、二、三農林水産省並びに厚生省に質問をしたいと思っております。  まず最初に、輸入食品の問題で、いわゆる輸入の、特に農産物に限りましてお話を申し上げますと、日本テレビが過日、「知られざる世界」でしたでしょうか、食糧シリーズで放映をしました中に奇形猿の問題が取り上げられております。「奇形猿は警告する」という副題でありましたが、淡路島のモンキーセンターに奇形猿が多発をしている、そのえさが米国産の輸入小麦である、こういうことでありまして、一部の学者によります調査によりましては、この奇形発生は小麦のせいであるということも言われております。そういう中で、輸入の農産物に関しますところの安全性の問題についてはどういう行政的な措置がとられておるのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  232. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 農産物を含めまして輸入食品の安全の問題でございますが、主要な海港、空港におきまして、食品衛生監視員を配置をいたしまして実施をいたしておるわけでございます。今後とも、監視体制の一層の強化に努めてまいりたいと思っております。
  233. 神田厚

    神田委員 検査の内容的な問題につきましては、後ほど詳しく質問をしたいと思いますが、まず具体的な問題につきまして、かんきつの薫蒸剤でありますEDBがアメリカで使用禁止になっている。これは発がん性が認められた関係でありますが、この問題につきましては、国会におきましても論議があったというふうに聞いております。既に新聞報道では、昨年の十月に、この問題についてアメリカ環境保護局が発がん性を認めてEDBを使用禁止にした、こういうふうに言っておりますが、厚生省におきましては、やっと今月に入りまして、この残留基準を設定をすることに取り組むというような話になっているようでありますが、この辺のところはどういう経緯でありますか。
  234. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 EDBにつきましては、従来輸入かんきつ類につきまして、消費者が食べる時点で痕跡以下になるような、そういうレベルの暫定的な規制値を設定いたしたわけでございます。輸入穀類につきましても同じような考え方で、消費者が直接食べる際に最終食品に残留しない、そういうレベルのガイドラインを設定するという方向で現在検討をいたしておるわけでございます。
  235. 神田厚

    神田委員 ですから、既に発がん性があるということがはっきりしている問題について、いつまでにどういうふうな基準をつくって、それをどういうふうに規制をするのか、この問題についてはどうでありますか。
  236. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 EDBは、米国で発がん性があるということでございますが、御承知のように大変揮発性のものでございますので、最終消費者の口に入らないようにすることは可能なわけでございます。現在、実は穀類につきましては、残留実態の調査を鋭意進めておりまして、その結果が出ました段階でできるだけ早くガイドラインの設定をいたしたいと考えておるわけでございます。
  237. 神田厚

    神田委員 その結果はいつごろ出るのですか。どういうふうな時間的な、いろいろな追試や何かの問題があるのでしょうが、その点はいかがですか。
  238. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 いまの時点で何日ということはちょっと申し上げにくいのでございますが、おおむね数カ月というふうな単位でお考えいただいて結構だと思います。
  239. 神田厚

    神田委員 さらにこの薬品問題では、OPPナトリウム、TBZ等々これらの毒性問題、発がん性問題で厚生省は追試をしているというふうに聞いておりますが、この結果はどういうふうになっておりますか。
  240. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 OPPにつきましては、昭和五十五年に東京都衛研におきまして発がん性があるのではないかという報告がございました。その時点で、厚生省で専門家会議に評価を依頼いたしましたところ、東京都衛研の実験方法に若干問題があり、さらに追試験を行う必要があるということでございましたので、五十五年八月以来追試験を実施をいたしてまいりました。昨年の末になりましてその追試験の結果がまとまりまして、現在その結果を食品衛生調査会において評価をお願いをいたしておるところでございます。  また、OPPにつきましては、国際的に大変広く使われておりまして、FAO、WHOの残留農薬専門家委員会日本の今申し上げました結果報告書を提供いたしまして、その委員会で国際的に再評価をしてもらいたいということを頼んでおります。このFAO、WHO委員会の結果をも参考にいたしまして、食品衛生調査会で結論を出していただきたいということでお願いを申し上げております。  それから、もう一つのTBZでございますが、指定に際しましてラット、犬等で長期慢性毒性試験を行われたわけでございますが、TBZにつきましては、いずれについても発がん性は認められないという報告を受けております。
  241. 神田厚

    神田委員 OPPの問題は指摘をされて、五十五年から既にもう三年、四年を過ぎておるわけでありますが、なお食品衛生調査会での結論を待つということであります。これは、一体どのくらいの時期にこの結論がまとまる予定でありますか。
  242. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先ほど申し上げましたFAO、WHOの専門家会議での結論というのは、まだしばらくかかるということを聞いております。具体的に私どもの方ていつ結論が出るかという、これも今ここでなかなか御答弁申し上げにくいわけでございますが、このOPPについての食品衛生調査会、次回を一、二カ月後、今月末から来月末ぐらいまでの間に食品衛生調査会を開いて、そこでもう一遍十分検討していただこうという予定にいたしております。
  243. 神田厚

    神田委員 いずれにしましても、健康に関する極めて大事な問題であるわけでありますが、どうもこういう問題についての対応が非常に遅い。その間にやはりその毒性がどんどんと体内に吸収をされていく、汚染されていくという状況を見ますと、私は、もう少しこの問題について真剣に取り組んでもらわなければならないと思うのでありますが、厚生大臣、どうでありますか。
  244. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 輸入食品について、これは安全性の確保が第一ということで、海空港等監視員等を充実させて、今政府委員から答弁したように努めておるのでありますが、何しろ専門的な問題でありますから、これは食品衛生調査会という専門家の集まりで有害であるかどうか、これを御検討願うわけでありますが、今御指摘のような点、十分包容いたしまして、今後スピーディーにこの調査会で調査を進めていただいて、御心配のないように努めてまいりたいと思います。
  245. 神田厚

    神田委員 特に、ニホンザルに奇形が多いという、そういう事例の中で、具体的に輸入小麦の飼料が問題だというふうなことも指摘をされておりますから、この点について厚生省調査をするおつもりはありませんか。
  246. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 猿で奇形が出たというお話でございますが、どういう状況にあるのか、それはよく関係省庁とも相談しながら実情を把握したいと思いますけれども、そういうことで私どもこれからも十分進めてまいりたいと思っております。よろしく。
  247. 神田厚

    神田委員 調査を進めるということですね。
  248. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 今お話しの猿に奇形が出たという問題につきましては、実情を把握したいということでございます。
  249. 神田厚

    神田委員 それではもう一点。  輸入牛肉で、日本で使用禁止をされております抗生物質がこの輸入牛肉に使われている、飼料添加物として用いられているという問題が出ております。モネンシンナトリウムというものでありますが、これについてはどういうふうに現在なっておりますか。
  250. 石川弘

    石川(弘)政府委員 実は、昨年三月にアメリカのニューヨーク・タイムズに、米国産の食肉に五百から六百種類の有害化学物質が残留されている可能性があるという報道が出まして、私どもその内容につきまして米国大使館等を通じまして情報を得たわけでございますが、この記述自身は、実は向こうからそういうことを調査した事実がないということを否定してまいっておるわけでございます。  それから、モネンシンナトリウムの御質問でございますが、それは向こうでは使われておるということは事実でございます。私どもといたしましては、食肉のいわば残留という問題につきましては厚生省とも連絡をとっておりますが、今までのところ、それによって汚染の事実というものが私どもの方で問題になったことはございませんけれども、今後もよく情報を交換していきたいと思っております。
  251. 神田厚

    神田委員 食品添加物としてそれが使われて、発がん性があるという具体的な指摘があるわけでありますから、私はこの問題については、もう少し真剣に取り組んでいただきたいということを要望したいと思っております。  さらに、問題は今検査体制の問題だと言われましたけれども、検査の体制が極めて不備であります。人も設備も不足をしている、こういうことで検査に限界があるということが指摘をされております。ちょうど四十七年当時にこの食品衛生の問題が、衆議院の社会労働委員会と参議院の社会労働委員会におきまして取り上げられまして、そこに食品添加物の問題に関連しまして附帯決議が国会決議として付されているわけであります。  この附帯決議は、それぞれ、衆議院の社会労働委員会における附帯決議につきましては、昭和四十七年の六月十六日に  食品添加物については、常時その安全性を点検し、極力その使用を制限する方向で措置すること。さらに、参議院の社会労働委員会における附帯決議につきましては、四十七年四月二十五日に  食品添加物の安全性については、その時点における最高の科学的水準により常時点検を強化するとともに、食品添加物の使用は極力制限する方向で措置することとし、とりわけ諸外国で有害であることが実証された場合には、既に使用を認めたものについても、すみやかに、その使用を禁止する等必要な措置を講ずること。それからさらに、検査員の充実ということにつきましても同時に附帯決議、国会決議がされております。  これらを含めまして、私は、現時点におきまして厚生省のとっております態度は、この国会決議を尊重する立場にない、こういうふうに判断をしておりますが、ひとつもう一度この国会決議を御確認をいただきまして、これらの問題について前向きな取り組みを要求をしたいと思います。厚生大臣
  252. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 輸入食品の水際における監視の重要性にかんがみ、従来から食品衛生監視員の増員はもとより、分析機器等の整備拡充に努めてきております。昭和五十七年十月一日から検疫所の組織を改正し、従来の十六の海空港に加えて、新たに三海空港で輸入食品監視業務を実施することとするとともに、食品衛生監視員十名をふやし、監視体制の強化を図ってまいりました。この結果、輸入食品衛生監視員数は、昭和四十七年の三十七名から現在の六十一名に増加しております。今後とも、検査機器の整備、輸入食品に関する統計情報業務のコンピューター化、食品衛生監視員の技術研修の実施等により、輸入食品監視の強化に努めてまいりたいと思います。もとより国会決議を尊重して、これから一生懸命頑張ってまいります。
  253. 神田厚

    神田委員 先ほど指摘しましたように年間二千万トン、三十四万件をわずか六十一名でチェックをしている、厚生省大変努力をしていただいているようでありますが、これではなお不十分であります。したがって、私どもは、行革に対しましてはこれを強力に推進をしていかなければならないという立場をとっておりますが、この問題につきましては、最終的には国民の健康と命の問題に関する問題でありますから、この検査員、検査体制の強化を改めて強く要望しておきたい、こういうふうに思っています。  それでは最後に、農林省に米の需給問題に関連をいたしまして、米の需給計画が大変逼迫をしてきている、そのためについに農林省は五十三年度の超古米を放出をし、これによって需給のやりくりをしているわけでありますが、この五十三年の超古米、一体どの程度消費をするおつもりでありますか、その点をお聞かせください。
  254. 松浦昭

    ○松浦政府委員 五十三年産米につきましては、需要に応じまして五十九米穀年度につきましてもこれを売却していくという計画でございまして、今のところ需給の操作上十万トンから十五万トン、それよりも需要が多ければややこれよりも多くなるケースがあると思いますが、その程度の売却を見込んでおります。
  255. 神田厚

    神田委員 国民の中にはこの五十三年産米について、一体これは食べて大丈夫なんだろうかという安全性について疑問を持つ向きがあります。過日の質問に対しまして食糧庁長官は、安全だというふうなことで、安全性に問題ないというようなことで答弁がありましたが、厚生省はこの問題についてどういうふうにお考えてありますか。
  256. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先生御承知のように、備蓄をしております米につきましては、薫蒸剤として臭化メチルでございますとか酸化エチレンでございますとか、そういったものが使われるわけでございますが、これらはいずれも揮発性が大変高うございます。そこで、これらの薫蒸剤の有効成分につきましては、通常の使用の方法では比較的短時日に消失をするということでございますので、その安全性については問題ないと考えております。
  257. 神田厚

    神田委員 私は、その安全性に問題がないということについては、問題がないということについての調査をすべきである、そういう調査をした上で安全性に問題がないということについて結論を出すならともかく、それを検査をしないで、従来決められたものであり、さらに薫蒸に際しても揮発性が高いから大丈夫だという、そういう観念的なことでなくて、具体的に何カ所かにわたってこれを調査をして、検査をして、それによって安全であるかどうかを確認をして、そして国民の皆さん方にそれを伝えるということがやはり行政の親切ではないかと思いますが、その点はどうでありますか。
  258. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先ほども申し上げましたように、薫蒸いたしました場合に比較的短時日のうちで消失するわけでございますから、普通のやり方だと全く心配ないと思っておるわけでございますが、実態調査という点につきましては農水省とも御相談をして検討をしてまいりたいと思っております。
  259. 神田厚

    神田委員 ぜひとも前向きにそのことについて調査をすることを要望します。  それでは、さらに厚生大臣に残留孤児の問題で、これは総理にも質問をして、総理も訪中の際にこれらの関係者に対しまして感謝を申し上げると同時に、なおさらにその促進についてお願いをしたいということでの答弁をいただいたのでありますが、私は、これは時間がずれればずれるほどやはり困難になると思うのです。ですから、できるだけ早い時期にその対象となる人についてこれをしなければならないし。当然そうしてほしいという希望を持っております。本日、新聞報道によりますと、厚生省もこれらの問題について前向きに検討するということで方針を出しておられるようでありますが、一年おくれればおくれるだけやはり関係者がいなくなったり、そういう悪い状況がふえるわけでありますから、ひとつそういう点につきまして前向きにお取り組みをいただくようにお願いをいたしまして、御答弁をいただきたいと思います。
  260. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 中国残留孤児の皆さんの問題、これは御指摘のとおりであります。今、御承知のように、五十名の調査を、肉親捜しを終わって御帰国を願ったのでありますけれども、この調査等を見ておりましても、三十八年間の歳月の長さというものをため息をつく思いで困難にぶつかっておるのでありますから、一日も早くこれは完了させるために努力していかなければならないことは当然であります。ただ、相手国のあることであるものですから、今回も厚生省では事前調査、あるいはこれから来年百八十名を実施する場合も職員を中国に派遣してビデオの撮影であるとか面接調査とかあるいは写真撮影とか、そういうものもやりたいのでありますが、これらの問題もすべて中国側の御協力なしにはこれはできない問題でありますので、これらを総理の訪中に期待いたしまして、今後厚生省としても取り入れるべき具体的な策はすべてこれに投入して取り入れるということで努力をしてまいりたいと思います。
  261. 神田厚

    神田委員 それでは、科学技術庁の長官に、原子力船「むつ」の問題でなお質問をしたいと思います。  原子力委員会が、昭和五十九年一月二十四日に「今後の原子力船研究開発のあり方について」という報告書をつくったわけであります。そして、この報告書を取りまとめたのは科学技術庁の長官でありまして、この報告書の骨子は、どうしてもこれから先の原子力船の研究開発には「むつ」の研究成果が必要だという基本姿勢が貫かれているわけでありますが、自由民主党と政府との間で原子力船「むつ」の問題が八月に決着をするというような形で問題の先延ばしがされているわけであります。科学技術庁長官といたしましては、この原子力委員会がつくりました「今後の原子力船研究開発のあり方について」という報告書、これをどういうふうに受けとめてお考えになっておりますか。
  262. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず、私どもは、原子力の平和利用の中の重要な一環として、日本の地政学的な立場から考えましても、舶用原子炉の研究開発は極めて重要な分野であるという認識に立っております。そのようなことから従来「むつ」による舶用炉の研究開発を進めてまいったところでございます。しかしながら、最近に至りまして各方面からいろいろな御議論も出てまいりましたので、ただいま仰せられましたように、党の中におきましていろいろと今後検討委員会を設けて、「むつ」による舶用炉の研究のあり方を決定することになっております。  その間、原子力委員会におきましては、この「むつ」による舶用炉の研究開発は必要である、進めるべきである、こういう決定をなさったわけでございます。このことは極めて重要な決定でございまして、私どもは予算の編成の段階におきまして、そのようなことも十分に踏まえつつ今度の八月末までに結論を出したい、こういうことで、ただいま考えているところでございます。原子力委員会の決定を踏まえつつ、さらに広く各方面の御意見、そしてまた党の検討委員会の御決定等も十分に踏まえて今後対処してまいりたい、かように考えているところでございます。
  263. 神田厚

    神田委員 この問題につきましては、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法の中で、内閣総理大臣は、原子力委員会からこういうふうな形で報告を受けたときには、それを十分尊重しなければならない、尊重義務規定という大事な一項があるわけでありまして、過日の質問に対しましても、中曽根総理は十二分にこれを尊重するということを言明をしておるわけであります。したがいまして、当該所管官庁の責任者といたしまして、長官は、今後の自民党と政府との折衝の中におきまして、この原子力船の研究開発のあり方について原子力委員会が報告を出した方向で最大限の努力をすべきであると思いますが、いかがでありますか。
  264. 岩動道行

    岩動国務大臣 仰せのとおりでございますが、まず予算編成の段階において原子力船「むつ」のあり方については今後検討することになったわけでございますが、しかし、それは原子力委員会の決定を否定したもの、これをノーと、こういったような決定ではないわけでございます。この点は御理解をいただきたいと思います。したがいまして、先ほども申しましたように、原子力委員会の決定というものを十分に踏まえつつ、今後広く各方面の御意見を聞いて対処してまいりたい、かように考えているところでございます。
  265. 神田厚

    神田委員 さらにもう一点お伺いいたしますが、新定係港の建設問題であります。この問題でも、この報告書におきましては、「今後の「むつ」の出力上昇試験、実験航海、最終的な廃船に至るまでの内容等、同港において計画されている「むつ」の全体的活動を具体的に早期に地元関係者に説明し、将来、原子力船の定係港としての機能が十分に発揮できるよう、基本的な理解と合意を得ておく」必要がある、こういうふうに書かれております。  このことは、要するに現在まだこの新定係港につきましてもこういう形で地元との話し合いあるいはその「むつ」が完全にそういう実験ができる態勢になってない、こういうことについての指摘だと思うのでありますが、この点につきましてはどういうふうになさるおつもりでありますか。
  266. 岩動道行

    岩動国務大臣 関根浜の港につきましては、従来政府を含めたいわゆる地元との五者協定というものがございまして、それに基づいて私どもは、「むつ」のあり方がどうあろうともこの港は必要である、こういうことで着工をいたしておりますが、その全体計画につきましては今後、先ほど申したような検討の結果、そしてまた地元のいろいろな御意見、そしてまた他用途の見通し等を十分に勘案してそのあり方を決めてまいらなければならないと考えてお力ます。
  267. 神田厚

    神田委員 つまり、現在のままこの新定係港の建設が中途半端な形で進むということは、結局はまた地元との関係その他でやはりうまく事柄が進捗しないおそれがあるというふうに心配をするわけでありまして、そういう意味におきまして、ひとつこの報告書に書いてあるようなことについての問題につきまして十二分に努力をしていただきたい、こういうふうに考えているところであります。  私は、やはり原子力船「むつ」の問題は原子力平和利用の象徴的な問題でありますから、この問題につきましてあやふやな形で科学技術庁がこれを処置をしますれば、原子力の平和利用は十年も二十年も後退をする、こういうことを恐れております。したがって、私は、この問題につきましては科学技術庁の長官が勇断を持って科学技術庁としての主張を貫くように要望したいと思っております。いかがでありますか。
  268. 岩動道行

    岩動国務大臣 貴重な御意見は今後の検討に参考にさせていただいて対処してまいりたいと思います。
  269. 神田厚

    神田委員 それでは外務大臣に、ちょっとお待ちをいただきましたが、いろいろお聞きをしたいと思っております。  まず最初に、外務大臣の今後の外交日程はどんなふうになっておりますか、お聞かせをいただきたいと思います。
  270. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 一応はっきり決まっておりますのは、サミットが六月にあります。その前に、五月にOECDの閣僚会議があります。あるいはまた、七月にはASEANの拡大外相会議、さらに九月には国連総会、そういうところが大体一応毎年の外交日程としてことしも我々考えておる日程であります。
  271. 神田厚

    神田委員 公式日程は大体そんなふうなことかと思うのですが、その間に外務大臣のお考えとして、日本の外交を展開する上でどういうところに外遊をお考えてありますか。
  272. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まああとはそうした日程の延長で、これまで外交的にも日本の外務大臣がなかなか行けなかったような、そして大事な国々等をピックアップしてできれば訪問もしたい、こういうふうに考えておりますが、まだ今、外務省でいろいろ事務的に検討さしておるわけでございます。私は、その中では中東で、できればエジプト、シリアあるいはまたサウジアラビア、そういったところは何とか、中東は非常に大事な地域ですから訪問したいものだ、こういうふうにも考えておるわけであります。
  273. 神田厚

    神田委員 中東の問題が出ましたが、その前に、日ソの事務レベル協議が十二、十三日の両日モスクワで開催される、こういうことが報道されておりますが、この日ソの問題につきましては基本的にはどういう態度でお臨みになるおつもりでありますか。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕
  274. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日ソ事務レベル会議では、一応二国間、同時にまた国際問題について全般的に論議をする、こういうことになっております。  二国間の問題としましては領土問題が最大の問題であります。また、グロムイコ外相の訪日要請をいたしております。そうした日ソのいわゆる外相会談を今後どういうふうに設定をするかといった問題、また経済の交流、文化の交流、人的交流、そういった問題についても話し合いをしなければならない。あるいはまた、最近のソ連の非常な激しい極東への軍事力増強問題も触れなければならない問題であろうと思います。  さらに国際情勢としましては、米ソをめぐるところの核軍縮問題あるいはまた中東問題、さらにまた朝鮮半島の問題、アジアの問題等について広範な議論をいたすようにいたしております。
  275. 神田厚

    神田委員 二国間問題で領土問題等に対しまして言及するということでありますが、北方領土返還は国民の願いであります、念願であります。こういう中で、この北方領土の返還等の問題につきましてはひとつ活発な論議をしていただきたいと思うのでありますが、この問題もあるいはグロムイコ外相の訪日もなかなか難しい問題だ、状況がなかなか機が熟してないという形で向こうが乗ってこないような関係もありますが、新たな提案なり話し方というのはあるのでありますか。
  276. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 領土問題については日本基本的な主張を繰り返して、ソ連のこれに対する新しい対応を求めていきたい、こういうふうに思います。少なくとも領土問題についてテーブルに着いて議論する、そういうところまで何とかソ連を引き出したいというのが私たちの念願でございます。ソ連は領土問題はもう解決しているというふうな基本的な姿勢をとっておりますのでなかなか困難ですが、しかし、これはどうしても我々としては引くに引けない日本外交、特に対ソ外交の最大の外交課題でございます。  それから、グロムイコ外相の訪日につきましては、これまで日ソの定期外相会談というものが行われ始めてから日本の外務大臣は何回か行っておりますが、ソ連の外務大臣はわずか三度しか来てない、こういうふうなことでありまして、どうしても今回はソ連の外務大臣日本に来る番ですから、我々はそれを重ね重ねソ連に要求をして、そしてぜひともグロムイコ外相の訪日を実現をさせたい、こういうふうに思うわけです。
  277. 神田厚

    神田委員 国際情勢をめぐる意見交換の問題では朝鮮半島、中東情勢にお触れになるということでありますが、どういう形になりますか。
  278. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 朝鮮半島で御承知のように対話の動きがございます。北朝鮮がいわゆる三者会談を提唱しておりまして、これを中国も支持しております。同時にまた、これに対してアメリカがいわゆる四者会談といったことを言っております。そういう中で我が国も、朝鮮半島の緊張緩和は最も大事なことであるということで、この環境づくりのためには努力を続けておる、今後とも続けたい、そして我が国としての基本的な立場は、いわゆるこの両当事国がまず話し合いを始めることだということを明らかにしております。そういう中で、また御承知のように、我が国とソ連も含めた六者会談というふうな構想もあるわけですから、そうした今日朝鮮半島をめぐってのいろいろと対話の動き、構想、そういうものについてソ連の考え方をただすということが大事なことではないだろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。(神田委員「中東情勢」と呼ぶ)  中東情勢につきましては、御承知のような、レバノンがああいうふうな状況になっておるわけであります。また、イラン・イラク戦争が相当苛烈になってきておるわけでございます。さらにまたパレスチナの問題もございます。こうした中東の和平をめぐって、ソ連の考え方あるいはまた日本のこれに対する考え方、そういうものをお互いに論じ合って、いかにして中東の和平を確立していくかということについての意見交換をしなければならない、こういうふうに考えております。
  279. 神田厚

    神田委員 外務大臣は、イラン・イラク戦争につきまして、何とか和平問題に貢献をしたいということを何度か言っておられますが、その一つの方法として、両国外務大臣、外相の訪日を要請をするというようなことでの意見の表明があったように記憶しております。現在、このイラン・イラク戦争の状況と、さらにそれらの両当事国の外交首脳が訪日をする可能性等についてはどういうふうにお考えになりますか。
  280. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本は、イラン・イラク戦争に対して調停とか仲介の立場ではありませんが、しかし、戦争の拡大を防ぐためにこれまであらゆる努力を続けております。  そういう中で、平和的環境をつくる、あるいはまたイラン、イラクと日本との間の二国間の関係をさらに安定発展させたものにしたいということで、イラン、イラク両国から外務大臣の訪日を強く要請をしてきております。今その戦争がなかなか厳しいものになっておるわけでございますが、私は、そういう中でこそ訪日が大事じゃないかということで非常に強く求めておりまして、今の日本、イラクの関係日本、イランの関係から、我々は両国外相とも十分我々の要請に耳を傾けておるものである、最終的にはまだ決まっておりませんが、イラン、イラクの外相の訪日はぜひとも実現をさせたい、そしてまた可能性はある、こういうふうに踏んでおるわけであります。
  281. 神田厚

    神田委員 イラン・イラク戦争が激化しております中で、やはりそういう意味での日本の外交というものは大変重要な役割を持つことになるわけでありまして、外務大臣が訪日の可能性が大いにあるということでありますれば、私どもはそういう形でひとつさらに御努力をお願いをしたい、こういうふうに考えております。  さて、このイラン・イラク戦争の問題等につきまして、各国がそれぞれイラン、イラクに武器の供与をしておりますね。この武器供与がやはりこの戦争を長引かせ、さらに戦争を一層激しくしているという状況でもありますが、これらについては外務省はどういうふうな見解をお持ちでありますか。
  282. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 イラン、イラクに対する武器供与につきましては、詳細は我々も承知しておるわけではございませんが、しかし、少なくともイラクに対しましては、フランスであるとかあるいはまたソ連だとか、そういう国々が相当膨大な武器の供与をいたしておることは、これは明らかでありますし、またイランにつきましては、我々が聞いておる範囲におきましては、かつてのシャーの時代のアメリカの兵器を中心にして部品の確保を世界のいろいろの市場から図っておる、同時にまた北朝鮮等が相当援助をいたしておる、こういうふうに聞いておるわけであります。
  283. 神田厚

    神田委員 これらの問題について、外務省としてはどんなふうな考え方をお持ちですか。
  284. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 我々は、やはり中東の和平が進むためには、どうしてもそうした戦争の兵器等が他の地域から流れ込むということを防がれることが一番いいのじゃないか、それが戦争を拡大しない方法につながるわけでありまして、日本の場合は御承知のように武器輸出三原則を持っておるわけでございますが、しかし、今の世界状況では、なかなか世界の各国とも、そういうふうな理想というものが通用できない状況、情勢にあるわけでございます。甚だ残念でございまして、日本としても、そういう中で日本の外交というものを通じまして、平和外交を訴えて、そして平和環境をつくるための努力を続けていかなければならない、そういうふうに思います。
  285. 神田厚

    神田委員 さらに、イラン・イラク戦争の長期化によりまして、日本と中東の貿易関係がかなり厳しくなってきている情勢があるというように聞いておりまして、特に戦争経済の中での両国との貿易関係におきましては、それぞれ支払い条件が厳しくなったり等々の問題があって、日本のそういう企業も大変苦労しているというような話も聞いておりますが、これらの問題については日本国として、外務省としてはどういうふうな認識を持って、どういう対応をなさっておりますか。
  286. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 イラン、イラクとも今日本は貿易は相当活発に行っておるわけでありますが、しかし、御承知のようにイランの場合は革命がありまして、革命後新しい政権ができたという中で、やはりいろいろな条件の変化があって、日本の企業等が相当被害を受けだというような例もありまして、これらにつきましては、外務省として間に入りまして、イラン政府に対して善処方を求め、これはぼつぼつ解決をいたしております。  また、イラクにおきましても、戦争が拡大をして、そしてイラクのいわゆる経済財政が非常に困窮をする、そういう中で支払い等がうまくいかない、滞る、こういうふうなことになりまして、日本の企業等にも相当な打撃があったわけでございますが、これもまた、外務省もいろいろと向こうの政府ともかけ合いまして、その結果として、現金にかわりまして油で支払うとか、あるいはまた支払い条件を改定するとかいうことで、将来にわたって債権の確保をするとか、そういうことでいろいろと今話し合いも進めております。  解決したところもありますが、なかなか両国とも戦争を続けておるだけに、また革命も続いておる、こういうことで問題が起こっておることは事実であります。しかし、全体的には、貿易の額の方は減るのではなくて、むしろ増加をしておるという状況にあります。
  287. 神田厚

    神田委員 それでは、二月七日ですか、総合安全保障関係閣僚会議、これが開かれたわけでありますが、これは第二次中曽根内閣になって初めてだということでございます。この席上で、いろいろと外務大臣の方から情勢報告があったというふうに聞いておりますが、その基本的な問題等につきまして、簡単で結構ですが、お聞かせをいただきたいと思います。
  288. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今おっしゃるように、二月七日に第十回の総合安全保障関係閣僚会議が開かれまして、これは今お話しのように第二次中曽根内閣になりまして初めてでございますが、その会議で私から最近の東西関係、御承知のように今核軍縮交渉が中断しておる、こういう状況で米ソが大変厳しい状況に入っているという説明。さらにまた、中東情勢、イラン・イラクの紛争が三年半以上も続くという中でエスカレートする可能性があるので、これらに対して十分注意をしていかなきゃならぬ。特に日本はエスカレーションを防ぐためのあらゆる努力をしなければならない、こういう説明。さらにまた、レバノンの情勢が非常に悪化をしつつあるということに対しまして、この状況等に我々としては十分注目をしなきゃならない。同時にまた、朝鮮半島の問題につきましても、先ほど申し上げましたようないろいろな朝鮮半島をめぐるところの対話の動きというものがあって、日本としてもこの対話の動きがさらに具体化して、そうしてこの朝鮮半島の緊張緩和が進むためにあらゆる外交努力を惜しんではならない、こういう説明。さらにまた、中米、カリブ情勢につきまして、御承知のようなエルサルバドルあるいはニカラグア等についての状況の説明等を私がいたしました。  こうした説明を中心にいたしまして、いろいろと閣僚間で議論をし合った、こういうことであります。
  289. 神田厚

    神田委員 その席上で、SS20の極東配備について外務大臣の方から報告があったというふうに聞いておりますが、SS20の極東配備は現在どういうふうになっているのか、その点につきまして。
  290. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 SS20の極東配備につきましては、これまで百八基配備されておったということであるけれども、その後のソ連の増強が目立ってきておって、最近では、確認できただけでも百三十五基が配備され終わった。同時にまた、今の建設の続いておる情勢から、百四十四基まで配備をされるものと思われる、こういう説明をいたした次第でございます。
  291. 神田厚

    神田委員 現在百三十五基で、百四十四基に増強されるということでありますが、これはいつごろまでにこの百四十四基というのが完成するのでありますか。さらには、その後も増強される可能性はあるのかどうか、その点はいかがですか。
  292. 古川清

    ○古川政府委員 お答え申し上げます。  現在、百三十五までは確認をしておるわけでございますけれども、さらにこの九基の増設につきましては、現在のところいつごろまでに完成されるのかというふうなことは、実は私ども正確には把握しておりません。
  293. 神田厚

    神田委員 その後の問題も含めまして、SS20の極東配備というのはその後も増強される見通しなのかどうか、その辺はいかがでありますか。
  294. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先ほど申し上げましたように、今百三十五基あるのが大体百四十四基程度までは拡大をされる可能性がある、そういう方向で建設が進められておる、こういうふうに私は聞いております。
  295. 神田厚

    神田委員 アメリカ日本との軍事情報交換でアメリカの方から示された資料によりますと、極東に百四十四基配備されているこのSS20がさらに三基地増設中であるということが言われており、しかもその配備の状況が中国の東北国境にまで及んでいて、そういうことになりますれば、かなり東に配備がされることになりまして、そのことから、射程距離等の問題を考えますればフィリピンあたりまで、あるいは場合によりますればアメリカにまでその弾道が届くというような情勢も考えられるということでの情報交換があったというふうに聞いておりますが、この点についてはどうでありますか。
  296. 古川清

    ○古川政府委員 私ども、かような情報交換はいたしておりませんので、そのようなデータをアメリカからもらったということはございません。
  297. 神田厚

    神田委員 それでは、防衛庁の方との関係かもしれませんので後でお聞きをしたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、こういう形でSS20の極東配備が増強されているという問題につきまして、外務省といたしましては、核の脅威という問題についてどういうふうにお考えでございますか。
  298. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 我々は、やはりそうしたソ連の中距離核兵器が極東方面に配備されるということにつきましては、日本としても非常に注目をせざるを得ないわけでございまして、私たちはやはり日本の平和と安全を守っていくために、あるいはまたアジアの平和と安全というものが確保されるためには、ソ連のそうした核兵器が撤去されるということが最も望ましいというふうに考えております。そういう立場で、この米ソのINF交渉におきましてはゼロオプションというものを日本は支持して、これを主張してまいってきておるわけであります。
  299. 神田厚

    神田委員 それでは、武器技術供与問題で、昨年二月の予算委員会におきまして、我が党の大内議員が対米武器技術供与に当たっての歯どめ措置について質問をいたしました。政府から、武器技術供与に踏み切った趣旨を踏まえ慎重に対処する、こういう答弁を得たわけであります。  ところで、昨年十一月に締結されました交換公文には、第一といたしまして、国連憲章と矛盾しない使用、第二といたしまして、同意なしに他用途への転用を禁止する、第三といたしまして、同意なしに第三国への移転を禁止するなどが盛り込まれております。  ところで、アメリカから他用途への転用や他政府への移転を要請された場合はどういうふうに対応なさるおつもりでありますか。
  300. 北村汎

    ○北村政府委員 お答え申し上げます。  我が国がアメリカに供与いたします武器技術というものをアメリカが第三国に移転するような場合には、これはただいま委員が御指摘になりましたように、MDAの枠の中で、条約上の義務として、供与国である我が国の事前の同意を得なければならないということになっておりまして、今回取り決めました交換公文の中においても、そういうことを繰り返して述べておるわけでございます。  そこで、将来アメリカがそういうような要請をしてきた場合日本はどういうふうに対応するのかという御質問でありますが、それに対しましては、武器技術というものをアメリカに供与すると方針を決めたそもそもの趣旨、すなわちアメリカの防衛能力の向上に寄与することによって安保体制の効果的な運用を図るというこの趣旨と、それから武器輸出三原則というものを踏まえて、政府としては慎重に検討をいたすことになると思います。
  301. 神田厚

    神田委員 慎重という言葉ですが、大体、この基準というのはしっかりした基準を示してもらわなければならないわけでありますが、それはどういうことになりますか。
  302. 北村汎

    ○北村政府委員 基準と申しますのは、先ほど御答弁いたしましたように、一つは、そもそもその武器技術をアメリカに出す決定をした際の日本政府考え方、すなわちその武器技術を出すことによって日米安保体制の効果的な運用を図るというその趣旨と、それから武器輸出三原則というものがあるわけでございますから、その方も踏まえて、そして個々のケースに従って慎重に検討をするということでございます。
  303. 神田厚

    神田委員 そうしますと、すべてノーということではなくて、ケース・バイ・ケースでイエスという場合もある、こういうことですか。つまり、第三国や他政府への移転というのは極めて重要な問題でありますが、そういうケースもある、イエスのケースもあるということですね。
  304. 北村汎

    ○北村政府委員 技術の問題というのは非常に複雑で、千差万別でございます。ですから、そういう要請がありました場合にも、その個々の具体的なケースに従ってアメリカ側の要請の背景あるいは事情、そういうものもよく聞いた上で政府として慎重に検討するということでございます。
  305. 神田厚

    神田委員 北米局長の答弁を聞いたのではちょっとまだはっきりしない面があるのですが、外務大臣はどういうふうにお考えてありますか。
  306. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今局長が答弁しましたように、武器技術をアメリカに供与する場合におきましては、あくまでも安保条約の効果的運用、さらにもう一つは、これはアメリカの防衛力の向上という立場も踏まえて供与するわけでございます。したがって、第三国への供与の場合におきましても、そうした観点、そしてまた今局長が言いましたように、いわゆる日本には武器技術三原則があるわけですから、そういうものも十分踏まえて、これはもう慎重に判断をして決めなければならない。武器技術の場合は大変千差万別といいますか、非常に複雑な面もあるわけですから、そういう面を十分勘案しながら自主的に判断をしていく、決める、こういうことであります。
  307. 神田厚

    神田委員 そうしますと、すべてノーということでなくて、イエスという場合もある、こういうことでありますか。
  308. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはまだ全くアメリカからもどういう武器技術を欲しいという具体的な要請も何もないわけでございますから、したがって、今ここで判断の仕方がないわけですが、我々の基準はあくまでも今申し上げましたような基準というものに基づいてこの供与は決めていくということでございます。
  309. 神田厚

    神田委員 同じく予算委員会におきまして、供与する技術を可能な限り国会等でも公表すべきである、こういう大内委員の質問に対しまして、総理から検討したいというような答弁がありました。そういうことから、交換公文に規定する細目取り決めというのはマル秘扱いにするのかどうか。さらにもう一点は、項目についてだけでも国会等で公表するというような考え方は持っておられるかどうか、その点はいかがでありますか。
  310. 北村汎

    ○北村政府委員 まだアメリカから具体的な武器技術の供与の要請はございませんので、今後そういう要請があった場合には、それを自主的に判断して、そして供与するという我が政府の決定がありました際には、当局間で実施細目取り決めというものが結ばれることになると思います。その実施細目取り決めにつきましては、防衛、安全保障上の考慮等から、その取り決め自体は基本的に公表し得る性格のものではないと考えられますけれども、対米武器技術供与がどのように行われているかということにつきましては、アメリカ側とも協議をいたしました上、可能な範囲内で公表し得るように検討してまいりたいと考えております。
  311. 神田厚

    神田委員 これは極めて大事な問題でありまして、総理もこの問題についてはよく検討したいというふうな答弁もありますし、私は、やはり少なくとも細目取り決め等々の問題につきまして、これは大変重要な問題でありますから、あるいは全部公表するということについては問題があるかもしれませんが、項目程度、そしてどういうことが現在そういう対象になっているのかということについての国会に対する報告、公表等はすべきであるというふうに考えておりますが、いかがでありますか。
  312. 北村汎

    ○北村政府委員 私ども先ほど答弁いたしましたように、対米武器技術供与がどのように行われているかということにつきまして、可能な範囲内で公表し得るようにアメリカ側と協議をしてまいりたいと思っております。したがいまして、今委員がおっしゃいましたような考えアメリカ側とできるだけ協議をして、可能な範囲で公表をし、その範囲内で国会等の御質問に答えていけるようにいたしたいと思っております。
  313. 神田厚

    神田委員 それでは、外務省関係を終わりまして、防衛庁、大変お待ちいただきました。  先ほど軍事情報の交換問題で、SS20が中国東北国境に強化配備されているという問題について外務省に質問をしたんでありますが、これは防衛庁の方の関係でこういう情報を得たということでありますか。
  314. 古川清

    ○古川政府委員 先ほどの答弁の繰り返しになりますけれども、私どもかような情報を持ち合わせておりません。
  315. 神田厚

    神田委員 それでは、なお調査をいたしまして、後日また質問をしたいと思っております。  ところで、SS20の極東の配備状況は、現在、先ほど外務大臣の方から答弁があったように百三十五から百四十四に増加中だということであります。私どもの調べましたところでは、「核戦争爆心地」という「ザ・ウォー・アトラス 目で見る世界の軍事力」という雑誌に、具体的に日本の核攻撃の目標が都市二十三カ所、軍事施設が二十八カ所、エネルギー関係が十六カ所、計六十七カ所核攻撃の対象になっているという雑誌の情報がありまして、これは前統幕議長であります栗栖さんもこのことについて言及をしておりますが、この資料はどういうふうに信憑性といいますか、防衛庁としてはどんなふうに受けとめておりますか。
  316. 古川清

    ○古川政府委員 お答え申し上げます。  私どもも、先生御指摘の資料、「ウイル」増刊号でございますけれども、これはどうもイギリスだろうと思いますが、公刊された「ウォー・アトラス」、戦争地図というものの翻訳でございまして、その中で、さらにスウェーデンの「アンビオ」という環境問題専門の雑誌があるようでございまして、その「アンビオ」からさらに引用しておるのが「核戦争爆心地 グラウンド・ゼロ」という表でございますけれども、これが一体どのような資料に基づいてこういった地図を作成したのか、私ども原本の「アンビオ」を持っておりませんので確たることは申し上げられないという感じがいたします。
  317. 神田厚

    神田委員 なお、そういうことでありますれば、ひとつこの資料について調査を、防衛庁といたしましても大変大事な問題でもありますから、ひとつ調査をしていただけたらと思うのですが、いかがでありますか。
  318. 古川清

    ○古川政府委員 それでは、必要な調査をして、またお答えをしたいと思います。
  319. 神田厚

    神田委員 時間もありませんので、あと五九中業の関係で、一つは大綱の枠の問題があるのですが、これはもう時間がありませんので、具体的な問題で、報道されていることについて質問をしたいと思います。  一つは、航空自衛隊が五九中業におきまして空中給油機の導入を検討している、こういうふうなことが言われております。このことにつきまして、航空自衛隊は空中給油機の必要性を認めているのかどうか、さらに、空中給油機の導入のために検討を開始しているのかどうか、その点をお聞かせをいただきたいのです。
  320. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 五九中業につきましては、現在まだ何ら作業に着手をしていない状態でございまして、したがいまして、具体的な個別の問題について検討に入っているということはございません。したがって、御指摘のように、現在空中給油機の保有の問題を五九中業のテーマとして検討しているかということでございますと、現在はそういう段階でございませんというふうにお答えをいたしたいと思います。
  321. 神田厚

    神田委員 それでは、五九中業との関係でなくて、この関係とは切り離した形で、将来にわたって空中給油機の導入が必要だというふうなお考えはどうでしょうか、研究対象になっておりますか。
  322. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 現在、防衛庁といたしまして、空中給油機を持つという計画は持っておりません。  ただ、既に御説明申し上げたように、将来の問題として申し上げますれば、航空技術の進歩ということから、低空侵入能力でありますとかあるいは高高度高速侵入能力というものが最近非常に発達をしてきているという状況でございまして、そういった状況を踏まえて考えてみますと、将来の問題としては、空中警戒待機の態勢を増強するということの必要性が出てくるという事態は予想されないわけではないわけでございまして、そういったような場合に空中給油機というものが有効な手段になり得るということはあろうかと思っておるわけでございます。ただ、これは将来そういうことを否定はいたしませんということでございまして、現在の時点で空中給油機の保有の計画を持っているわけではございません。
  323. 神田厚

    神田委員 それでは、この問題はまた後日質問さしていただきます。  続いて、防衛庁の陸上幕僚監部が、やはり五九中業に関連をいたしまして、現在開発中の国産対艦巡航ミサイルSSM1の調達を六十三年ごろから開始をしたい、さらにそれを北千歳と美唄に配備する方針を固めている、こういうふうなことが報道されておりますが、国産巡航ミサイルSSM1の問題につきまして御答弁いただきたいのです。
  324. 冨田泉

    ○冨田(泉)政府委員 ただいまお尋ねのSSM1は、五十七年度から防衛庁において開発中でございまして、その後の、開発後の諸計画につきましては、現在のところ未定の状態でございます。
  325. 神田厚

    神田委員 この問題は、五十七年度から防衛庁の技術研究本部と三菱重工を中心に開発が進んでいる、実験もかなり、推進系統の部分試験等は順調に進んでいる、こういうふうなことで報告といいますか報道されておりますが、これにっきまして、実戦配備は現在のところ考えないということですか、それとも将来にわたってこのSSM1の巡航ミサイルの北海道における実戦配備の計画をお持ちですか、どうですか。
  326. 冨田泉

    ○冨田(泉)政府委員 ただいまのお尋ねにつきましては、報道はいろいろな条件つきでなされておると思いますが、我々の計画は、防衛庁におきます計画は、六十二年度に開発を終了したいということで計画をしておりまして、開発の結果を見ませんと、その後の配備あるいは調達の数量等につきましても、今のところまだ定めかねておるというのが実情でございまして、目下鋭意技術的な諸要素につきましての研究開発をやっておるという状態でございます。
  327. 神田厚

    神田委員 そうしますと、開発完了六十二年、正式の装備化と調達着手を六十三年というふうに見込んでいるということは、こういう形で国産巡航ミサイル等の実戦配備が必要だという認識には立っておるのかどうか、その辺はいかがでありますか。
  328. 冨田泉

    ○冨田(泉)政府委員 御承知のように、我が国の沿岸防衛をいたしますための有効な装備になり得るという前提で研究開発をしておるものでございまして、そのための諸研究要素につきましての研究開発をしておるわけでございます。
  329. 神田厚

    神田委員 防衛庁長官にお尋ねいたします。  今参事官の方からはそういうような答弁でありました。防衛庁長官といたしましては、この問題につきましては、やはりこういう形での研究開発が必要であり、さらに六十三年をめどに開発を完了いたしまして実戦配備を検討するということについて、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  330. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 六十三年云々は別といたしまして、必要性を認めて今検討をしておるということでございます。
  331. 神田厚

    神田委員 それでは最後に、アメリカの国防報告によりますと、シーレーン防衛、これは八〇年代に達成をしろということでの要求があるようでありますが、この問題につきまして長官はどういうふうにお考えてありますか。
  332. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 シーレーンにつきましては、我々の考えているシーレーン防衛とアメリカ側が考えているシーレーン防衛につきましでは、日米の共同研究の中で、こういうことでいこうじゃないかということでお互いに確認をしておるわけでございます。ただ、国防報告の中で、シーレーンにつきまして非常に強い要請といいますか、そういうものがございます。これはアメリカとしてそういうものを持っておるということは十分に私どもも承知しております。ただ、シーレーンは我が国が自主的に自衛の範囲内でやる、そして足らざるところはアメリカの支援を得る、そういうことでございますので、我が国の独自の見地に立ちましてやってまいりたい、こう考えております。
  333. 神田厚

    神田委員 終わります。
  334. 倉成正

    倉成委員長 これにて神岡君の質疑は終了いたしました。  次に、津川武一君。
  335. 津川武一

    津川委員 私は、農業問題の基本について若干質問申し上げます。私との関連で、中川利三郎委員が稻村国土庁長官の資産問題で関連質問いたします。  そこで、農業の基本問題ですが、中曽根総理は施政演説に対する質問への答弁で、予算委員会の答弁で何回か、農業は国の基、生命産業である、農村は民族の苗代であるなどと言ってまいりました。私もそれはそれなりにいいと思いますが、しかし、摩訶不思議なことに、農業を守るとも、新しい成長をかち取るとも言ってないのです。この点、うまく逃げられたのじゃないかと思っているわけであります。その中曽根総理の内閣で、農林水産業の予算がびっくりするほど削られております。牛肉、オレンジの自由化などで、総理は、農協の代表の前で、国益のためだから農民は少し我慢してくれとの意味も言っております。これでは農業の後退だと思います。  そこで官房長官に、官房長官としてこの点とのように考えるのか、内閣として日本の農業をどう育てていくのか、伺わしていただきます。
  336. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 施政方針演説の中におきましても、あるいはまた予算委員会におきます審議で各党の御質問に対しましても、総理は、農業を重視していく、農業政策を重視していくという姿勢を明らかにしてきておるところでございます。  先生の今の御指摘は、農業をさらに振興していくとかあるいは農業を守るとかいったような言葉なり姿勢なりというのが非常に希薄ではないかという御指摘でございましたけれども、これは農業を守り大切に伸ばしていく、こういう施策としては、そういう気持ちを込めて農業重視を打ち出しておるところでございます。  農業の役割につきましては、これは釈迦に説法でございますけれども、食糧の安定供給を図ることを初めといたしまして、健全な地域社会を形成をしていくという意味合いから考えましても、あるいは国土や自然環境を保護していくという意味での農業の役割ということを考えてみましても、非常に大きな意味合いがあるわけでございます。中曽根内閣といたしましては、農業を大切に守り、そして農業政策を積極的に展開をしていくということを内外に明らかにしながら、かつ実行して進んでまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  337. 津川武一

    津川委員 重視って、いいことですが、重視して、大事であれば後退させるということもあり得る、問題が重要だから。そこで、重視して新しい農業を発展させる、こうはっきり中曽根総理の言明をとっていいですか。もう一度。
  338. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 予算委員会におきまして総理からもお答えもしておりますし、また、山村農林水産大臣からもいろいろ御答弁申し上げてきておりますが、農業を守って進む、こういう姿勢を明らかにしておるところでございます。そのことは念頭に置いて努力を重ねてまいりたいと存じます。
  339. 津川武一

    津川委員 河本経済企画庁長官にお尋ねします。  皆さんの社会経済発展の「展望と指針」というのが出ていますが、その中で、日本経済を、一、行財政の改革、二、新しい成長のかち取り、三、民間活力の重視、四、国際協力の推進とうたっています。新しい成長という点では全く同感です。そしてこの指針の中で、農業のことになりますと、生産性の向上と世界経済活性化への貢献とうたっております。現実に今アメリカからの牛肉、オレンジの自由化や粋拡大の圧力を目前にして、世界経済活性化への貢献ということは多少気になりますが、まあそれはいいでしょう。  そこで質問ですが、この国の経済全体を、新しい成長をかち取ると言っている。農業についても新しい成長をかち取る、こう考えてよろしゅうございますか。
  340. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年発表いたしました「一九八〇年代の展望と指針」には、農業についての部分がございます。その基本的な考え方は、今官房長官が要約してお述べになったとおりでございますが、いろいろ書いてあるのですが、要するに日本農業の生産性を高めて外国との競争力を高めていこう、できるだけ強くしていこう、こういう趣旨が一番大事な点であると理解をしております。
  341. 津川武一

    津川委員 その経済全体の運営の中における新しい発展を農業でもやる、こういうふうにぜびやる必要があると主張して、問題を移していきます。  「展望と指針」では、我が国は戦後急速な産業化を通じて重化学工業、機械産業、これにリードされた成長を続けてきたと指摘しています。そしてその結果、日本は重化学工業化し、農業は縮小し、食糧自給率は低下、こういう状態を招いております。農業縮小と言いたくなければ、工業と農業の著しいアンバランスと言ってもいいてしょう。このアンバランスをどうするかです。  例えばイギリス。有数の工業国として大量の農産物輸入国であった。そういかう経済政策を転換して、工業化を進める過程の中で農産物の増産に力を入れて、今食糧の自給率六〇%を超しちゃった。西ドイツも同じ。高度成長、工業化の過程の中で農産物の自給率を八〇%まで高めている。それは、イギリスや西ドイツではやればやれる。工業化、高度経済成長は必ず農業の縮小、食糧の自給率の低下を伴うものではない。あなたが運営しておる日本経済がその道を歩んでいるわけです。  そこで、経済運営の超ベテランの専門家であるあなたに、この点での国の経済運営をこの際なのではっきりと改めて、工業化と経済の一定の成長と、農業の成長、自給率の向上ということをこの場から助言していただければ、国民がどれほど安心するかわかりません。もう一度答えていただきたいのです。
  342. 河本敏夫

    河本国務大臣 農業問題の基本的な考え方、先ほど申し上げたとおりでございますが、これをまた一面がち述べておりますのを分析してみますと、一つは自給力を高める、こういうことを言っております。それから、どうしても自給できないものは安定した輸入先を確保する、食糧の輸入、農産物の輸入を安定的に輸入できるようにするということ、さらに、必要とあらば備蓄を強化していく。農業問題は食糧問題でもありますから、そういう幅広い観点から考えていかなければならない。その第一に食糧の自給率の向上、こういうことを考えております。
  343. 津川武一

    津川委員 きょうは、河本さんに質問してよかったと思います。政府のどの文書を見ても、自給力を高めると書いてある。今の河本さんは、初めに自給力と言ったが、最後に、言葉が漏れたのか本当なのか、自給率の向上ということをうたってくれまして、これは非常にありがたいと思っております。答えをもう一回要求すると、ここいら訂正されると困りますので、このまま続けていきます。    〔委員長退席松永委員長代理着席〕  そこで、竹下大蔵大臣に。  現在の日本の農業は、後継者がいなくなっている、減ってきている。中核農家も農耕地も耕地の利用率も減ってきている。五十七年度の農業所得も前年比でダウンしている。食糧自給率も減っている。それに勢いをつけるかのように、あなたが編成したことしの、五十九年度の予算、農林水産業、びっくりするほどと言ったらびっくりしてみんな笑っていましたが、びっくりするほど減っているんです。昭和四十八年度には一二・三%あった。五十二年度は九・四%、五十五年度は八・六%、五十七年度八・〇%、そして五十九年度は、最高の四十八年の半分の六・八%。たったこれだけの期間に率を半分に減らしている。実額で言うと千四百七十億円、前年比四・一%のダウンなんです。どの省よりも多い削減になっています。これでは私は農業を守れませんと思います。農業は後退すると思います。予算編成した大蔵大臣の率直なお気持ち、これでいいか、来年度の予算編成に対するお気持ちをあわせて聞かせていただきます。
  344. 竹下登

    竹下国務大臣 この日本農業という問題については、私も農村出身でございますし、大体津川委員と民度も同じようなところでございます。したがって、それなりの理解はあるつもりでございますが、基本的な問題は、今ヨーロッパの先進工業国等との比較もございましたが、例えばアメリカの総面積で二十六分の一、農用地面積で恐らく六十分の一くらいだと思います。そうすると、国民が半分、人口が半分でございますから、一人当たり農角地面積が大体三十分の一、それからヨーロッパの諸国は、面積対比はそう日本よりも大変に広いというわけじゃございませんが、いわゆる農用地面積、平地面積は、これは日本よりまたはるかに向こうの方が有利な環境にございます。したがって、自給率という言葉を今あえてお使いになりましたが、私はそれなりの高くし得る環境そのものがあったというふうに理解しております。したがって、日本農業というものについては、そういう宿命的な狭隘な平地面積なり農用地面積の中でどういうふうに食糧安全保障、自給率の向上等々総合して位置づけしていくかというところが、戦後の長い歴史であったと思います、農業に対する。  で、この農業人口が減っていくというのは、それがいわば合理化経営に移行されれば人的には減っていくというのは、一つの趨勢だと思うのでございますが、後継者さえいなくなったという状態は、私も許すべからざると、表現はおかしいのですが、そうあってはならない課題だと思っております。したがって、今度の予算編成に当たりましても、財政当局の立場で申し上げますならば、もとより聖域を設けることなく各種施策の調和をとりながらこれを編成したわけでありますが、あるいは山村農林水産大臣からお答えがあったかもしれませんけれども、いろいろな意味におけるいわば重点的なアクセントのついた予算としては、私は自己評価しておるわけではございませんが、各種施策のバランスの中に農業人口の方々等からも理解がしていただけるものではないか、単純に農業予算の総予算の一般歳出の中に占めるシェアのみでこれを議論するのはいかがなものであろうか、こういう感じがいたしております。
  345. 津川武一

    津川委員 論争するつもりはなくて来たのですが、やはりもう少ししゃべらなければならなくなりました。  日本の農業が後退したのは、高度経済成長ですよ。高度経済成長前は、日本も同じだった、工業と農業が。高度経済成長になってから農業ががたぴしになったのだ。その第一の理由は、高度経済成長で農村から労働者をかき集めた。労働力の不足なんだ。第二番目は、合理化と称して、必要がないのにどんどん機械をぶち込んだ。だから、今農協の倉庫に行ってごらん、使わない農機具がいっぱいある。この費用なんだ、問題は。もう一つは、土地が狭いと言ったけれども、そういうことじゃない。土地が大企業のいろんなもの、それからああいういろんなものに買われて、土地の値段がうんと上がったからなんだ。ここいらをしなければならないということを、論争するつもりはなかったのだけれども、もう少ししゃべってみたわけです。  その次、貿易の自由化の問題で質問させていただきますが、今晩ここに来る前に、日本経済新聞の夕刊、先ほど神田さんもちょっと触れていましたけれども、「ワシントン八日時事 ブロック米通商代表部代表は八日、全米製造業者協会の産業会議で講演したあと記者団に対し、牛肉。オレンジの輸入枠拡大問題で、今月末までに日米間で合意が得られなければ、米国は「明確で理解できる何らかの措置」をとると述べた。」「牛肉、オレンジをめぐる日米交渉は三月末までの決着を目標に、現在農水省の塚田総務審議官が当地を訪問、公式協議再開のメドをつけるために米側と接触を行っている。ブロック代表の発言はこれらの協議に圧力をかけ、三月末決着をあくまで迫る姿勢を示したものである。」これがアメリカの態度なんです。  これに対して日本は、今までアメリカが何回かこう言ってきた、これに対して、私はけんかしろと言っているのじゃない、お互いに平等だから何らかの日本の態度表明が必要なのに、ほとんどやっていない。そうして出てくるのは、向こうから言われて具体的に来たから国際協力。これも必要だけれども、これは圧迫してくるアメリカの態度なんです。  もう一つは、自動車をどんどん売って、売ったお金で農産物を買ってくるという日本の企業の姿勢、それがいつでもアメリカから圧力がかかったときに、日本政府の態度をとるときに自分からは一度も対等に物を言っていない、こういうことなんです。  具体的にきょうこういうふうになりましたので、山村さん、何らかの日本の態度の表明が必要かと思いますが、いかがです。
  346. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 農産物の担当大臣といたしましても、今月末で何とか決着をつけたいということで努力しております。  ただいまの、いろいろな圧力というようなことがございましたが、これは我が国に対しましての公式なことでございませんので、私の方は公式なこととして塚田総務審議官を向こうへやっております。当の塚田総務審議官がいろいろ交渉の場づくりということをやってくれていると思います。これを待って、私は対処していきたいというぐあいに考えております。
  347. 津川武一

    津川委員 塚田審議官が行っているんだね。ブロックと塚田と比べたらどっちが強いかというのです。この塚田審議官をやっているときに、ブロックはこういうことなんです、私的であろうが公的であろうが。そこで私は、日本も山村農水大臣の私的な談話でもいい、やっぱり日本の態度を表明するもの、安倍外務大臣でもいい、どちらでもやるべきと思いますが、いかがです。
  348. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 安倍外務大臣からは、せんだってもわざわざ渡米していただきまして日本立場をよく説明をしていただきました。そして、担当大臣としての私の立場は、我が国農業を守るという立場を堅持してまいります。特に、農林水産委員会で一昨年、昭和五十七年の四月、決議をいただきました。また本年一月、申し入れもいただきました。この趣旨は、農産物輸入に関しては農業者を犠牲にしないように、私は、その趣旨を踏まえまして、我が国農業が適切に発展していくということを念頭に置いて交渉に当たっていくつもりでございます。
  349. 津川武一

    津川委員 農水大臣の答弁、やっぱり納得しない。弱腰だ。ここのところはやっぱり一発がませなければならないと思います。そういう態度を重ねて要求して、時間がなくなりますので進めていきます。  こういう状態に対して、全国農業協同組合中央会は、十四日、反対の大会を開きます。その全国農協中央会の岩持氏はこう言っております。「たとえ、輸入自由化要求が一時的に棚上げされたとしても、結果が輸入枠拡大を示唆するならば、事は誠に重大であり、強い憤りを覚える」「今ここで、もし米国の一方的かつ強圧的な要求に屈し、譲歩するようなことがあれば、米国の圧力は今後際限なく拡大してくることは間違いありません。そして、日本の農民がこれまで営々と築いてきた日本の農業は崩壊すること必至であります。」こう、悲痛な叫びを上げている。  消費者も黙っていません。昨年の消費者全国大会で、アメリカの食糧の自由化押しつけに反対し、主要農産物の自給率を高める、このことを決議しております。総理府のやった国民世論調査で、できるだけ自給自足やれというのが七二%、安ければ輸入してもよろしいというのが一八%。農業者だけでない。消費者もなんです。これは、今国民のコンセンサス、世論、合意。  そこで農水大臣、これ以上自由化はさせないでしょうね。これが一つ。もう一つは、農業を守る立場と言ったから、全国農民の一致した要求となっている輸入枠は拡大させないでしょうね。はっきり答えてください。
  350. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 ちょうどこの五十七年四月の農林水産委員会の決議で、米国等からの牛肉、かんきつ完全自由化の要請を軽々に受け入れることは、我が国農業漁業に壊滅的な打撃を与えることは必至であるということの認識を示され、また農業者、漁業者が犠牲になることがないよう対処すべきであるというこの決議でございます。農林水産省といたしましても、このような決議の趣旨を体して日米交渉に当たってまいる決意でございます。  ただいま先生言われましたいわゆる生産者としての立場ということでございますが、これにつきましても、私は、この生産者のお気持ちも農林水産委員会の決議と基本的には一致しておるものと思います。私は、この農林水産委員会の決議を踏まえて交渉に当たってまいります。  輸入枠の問題につきましては、これは国内の需給動向、これを見た上で適切に対処してまいりたいと思います。
  351. 津川武一

    津川委員 後でもう一回、自由化どうするかということも論議になるかもわかりませんが、進めます。  そこで、日本の農業に被害を与えないようにということでありましたが、今度は具体的な問題であります。  日米交渉の焦点の一つ、オレンジなどのかんきつ問題、オレンジ、ジュースが輸入枠を拡大されたり自由化されたりすると、日本のミカン、中晩柑、リンゴその他の果物にどういう影響があるか。農水省、答えていただきます。
  352. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 果物の場合には、国産の果物も大変多種多様でございまして、物によりまして消費が停滞しているものもございますし、また若干ながら伸びているものもあるわけでございます。総体として申し上げますならば、国産果実全体で一時六百五十万トン程度の生産、消費がございましたが、近年はやや減少ぎみ、こういう状況でございます。どうしてそういう傾向が起こっているのかと申しますと、これは消費の多様化という一語に尽きるのではないかと思います。  ちなみに、減っております果物を調べてまいりますと、日本の果物の中では一番消費の多い温州ミカン、一時三百五、六十万トンの生産がございましたが、最近では三百万トン以下に抑えましてもなお値段が弱い。それから、一時百万トンを超えましたバナナのようなものは、昨今では七十万トン前後、こういう水準まで落ちてきて。おります。いずれの果物も、値段も安うございますし、味もいい。にもかかわらず消費が減退をいたしておりますのは、やはり消費者の多様化を求める、こういう気持ちの中において減少しておるわけでございます。  そのように多種多様でございますので、オレンジ等の輸入枠の増大というものがどこの分野にどれだけ影響が出てくるのかということについては、なかなか的確に把握しかねるという問題がございます。ただ、御承知のように、日本のかんきつ全体といたしまして、温州ミカンの面積の縮小ということを今やっている大変厳しい状況にあるわけでございますから、私どもといたしましても、大幅な枠の拡大とかあるいは自由化ということにつきましては極力回避したい、こういう気持ちでアメリカ側にも日本の実情をよく伝えまして対処いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  353. 津川武一

    津川委員 先ほどの大きな議論したら時間が大分なくなってしまいましたが、きのう、おとといの朝、私、神田の果物市場に行ってみました。今小島局長も言うように、六百五十万トンもあった果物が六百万トンに減っているのです。消費が二割減っている。ところが、外国の果物は依然として百二十万トン入ってきている。リンゴも二割減っている。きのう、リンゴのスターキング、競り何ぼ入るかと思って見ておったんです。経費が千三百円かかっている、輸送費だけで。それが千二百円でも買い手がつかない、こんな状況なんです。そういう状況を前にしてもう少しお伺いしようと思っていましたが、きょうは農水省よりも、主として経済企画庁長官だとか外務大臣だとか大蔵大臣に聞きたいと思っていますので、はしょってしまいます。  先ほど牛肉のことも問題になりましたが、牛肉の場合も枠拡大は深刻なものです。牛肉の自給率は、一九七〇年九〇%、七五年八一%、八一年七六%。ここへ入ってくる、ここのところが問題なわけなんでございます。  そこで、これも大蔵当局に聞こうと思っていたんですが、時間がなくなりますので省きますが、今度の日米貿易の収支決算、これは日本農業新聞、「元凶は工業品」、農業はこのアンバランスを解消するために恐ろしく奮闘して輸入している。工業製品が恐ろしく出てきて、結局百八十二億ドル、ここのところに榎本の問題が出てきているわけであります。ここのところが問題なんです。そしてアメリカは、自分では日本に牛肉の輸出を押し込んでおきながら、食肉輸入法で自分の国での輸入は抑えている、こういうわがままも出てきている。このとき、小此木通産大臣アメリカに行って、そうして帰ってきた閣議後の記者会見で、日米通商摩擦解決のポイントは農産物の問題だと述べてきておるのです。この立場はまさに、自動車をうんと輸出して、かわりにツケを農業に回して農産物を買ってくる、この態度なんです。農民の側から、どうしても小此木さんに抗議をして、小此木さんの真意を聞いてくれというわけであります。通産大臣
  354. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 津川委員のおっしゃったことはまことに曲がった解釈であると思います。  帰国後の記者会見で、農業問題がポイントであるというようなことは確かに申し上げました。それは、日米農産物の問題が非常に重要だなということは言ったのでございますが、当然そこにはそれなりの背景があるわけでございます。  ブッシュ副大統領以下数人のアメリカ政府高官と会いましたときに、いろいろな問題を言った後で必ず農産物の問題が入る、しかもそれがかなり時間をかけて入るわけでございます。私は率直に言って、農産物の担当の窓口ではございますけれども、一番大きな窓口ではございません。したがいまして、そういう意味で、だれしもその小さな窓口の私に言うものですから、帰国後の記者会見でもって農産物は大事な問題だなと言ったわけでございまして、いずれにいたしましても、円満な話し合いによってこれが解決されることを願ってもおりますし、それに協力するつもりでもおります。
  355. 津川武一

    津川委員 通産大臣、よくわかりました。あなたのために私は、小此木通産大臣も農業を大事だと言っているということをまたその人にしゃべっておきますから。  小此木さん、御苦労さまでした。どうぞお帰りになっていただいて結構です。  官房長官が大分先を急いでおるようですが、そこで順序を少し変えます。  もう一つは、私、大変困ったことは、中曽根総理が選挙演説に青森に来たんです。そのときの演説では、お国のために共産党を、お国のために津川武一だけは国会に送ってよこすなと言うんです。(発言する者あり)まさにという言葉も出ておるようですが、そこいらが本音だったんでしょう。ところが、全中の代表と会ったとき、お国のためにあなたたちは耐え得るものは耐えてくれ、日本の農業と農民が耐え得る限度のものはお国のために我慢してくれ。この言葉なんです、怖いのは。これはまさに強い者の立場、これは重化学工業ですよ、軍事工業ですよ。弱い者というのをこんな形にしているのに、これは内閣総理大臣のためにも好ましくないので、ここいらやはりひとつ弁明してください。
  356. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 選挙中に中曽根総理がいろいろな演説をいたしたかと思いますが、自由民主党の総裁でございますので、自由民主党の公認、推薦の候補を応援するために総裁としての演説を恐らく行ったものだろう、こう思いますが、選挙になりますと、それぞれ政党間で演説で争い合うわけでございますので、どうぞその点は御了承をいただきたいと思うのでございます。  ただその際に、お国のためにという表現があった。そのお国のためにということをさらに引用されまして、全中の会長と会いました際に、お国のために辛抱すべきことは辛抱をしてもらいたいという表現があったということについてでございますが、お国というのは日本の国、その日本の国というのは国民のすべてから成っておるこの日本の国ということであろうと思うのでございます。  総理大臣としての頭の中にありますものは、全国民、すべての国民が幸せであるように、そういう国をつくっていくようにさらに努力をしていく、国の利害関係、国民にとっての利害関係でどれだけでも国益を増進していくようにということを考えて政治に当たっておりますので、そういう意味でお国という表現になっておるかと思うのでございますが、それはしかし、決して上から下を見た言葉でもありませんし、ましてや先生が今御指摘をいただきましたように、それが何といいますか、工業の利益を代表するとかあるいは軍事産業の意味合いを持ったものであるというようなふうにおとりいただくのは、どうも随分早計な御理解ではないかというふうに思うのでございまして、日本の国を、本当に国民の幸せを考えながら政治に当たっていくということを中心にいたしましてこのお国という言葉を使っておるものだ、こういうふうに思うのでございます。  ただ、その日本立場考えましたときに、いろいろな各国との貿易摩擦などが起こってまいります。これらを調整をして進んでいくということは、日本経済を維持し、発展をさせていくためにどうしてもとらなければならぬ作業でございまして、鋭意その調整をしていこう、こういうふうに申しておるわけでございまして、しかしそのために何かこう犠牲になってくれというふうに言っておる意味ではなくて、日本の国の立場というものを、国際社会の中で生きていくという立場をお互いに十分理解をし合って、そこで深い理解のもとによく話し合って進んでいこうということを、そんな言葉で表現したのではないかと思うのでございまして、少し言葉の使い方に不適切なところがございましたら、ぜひお許しをいただきたいと思いますが、真意はそういうところにあるというふうに御理解をいただきたいと思うのでございます。
  357. 津川武一

    津川委員 私も官房長官から何か少し言い過ぎだなと言われたけれども、そうじゃないんです。もう少し詳しくしゃべりましょうか。中曽根総理は、国益のために少々のことは我慢しなさいと言う、三百万の組織の農家の代表に。だから問題になる。したがって、このことを強く指摘して、これ以上論争しません。総理に伝えておいてください。  それで官房長宮、御苦労さんでした。どうぞ。  外務大臣にお尋ねします。  こういう事情のもとにあなたも一国の代表としてアメリカに使いに行った。どなたと会って何をおっしゃってきたのか。小此木さんは、どなたと会っても必ずオレンジや牛肉の話が出てくると言う。あなたの今までの言明では、オレンジがどうだった、牛肉がどうだった、自由化がどうだった、枠拡大がどうだったということは一言も話してない。そして、堀の深さをはかりに行ってきた、行ってみたら意外に深かった。これで納得しません、消費者も生産者も。これから総理大臣になる人でしょう。もう少し国民に、行ってきてしゃべったことぐらいはお話しなさらなければ。いかがでございますか。
  358. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私がアメリカを訪問しましてレーガン大統領、ブッシュ副大統領を初めシュルツ国務長官、さらにブロック通商代表等とお目にかかりましたことにつきましての内容については、既に本委員会においてもその粗筋は述べております。  私は交渉に行ったわけではございませんが、日米間の懸案問題についていろいろと論議をいたしました。その中でこの農産物の問題も、先ほど小此木通産大臣が言っておりましたように、アメリカは非常に重要視しておるといいますか、象徴的に考えておることは、これはもう事実であります。そして、この農産物、オレンジ、牛肉等の問題について論議をいたしました。     〔松永委員長代理退席、委員長着席〕  アメリカ側としては主として日本の譲歩を強く迫ったわけでございますが、私は、日本ばかりが一方的に譲歩してこの問題は解決できない、やはりアメリカもこの問題に対して解決しようと思うならば、アメリカも懐を広げて譲歩してもらいたい、それでなければこの問題の円満な解決はできないということを強く主張いたしまして、その結果、アメリカ側も全体としては弾力的に対応しようという空気になった、こういうふうに私は考えております。その後今日まで、農林大臣を中心として日米間の努力が続けられておる、こういうふうに私は理解をいたしております。
  359. 津川武一

    津川委員 どうして具体的にお話しになられたことを国民に報告しないのです。あなたは相当なことを話してきたと思うのです。帰ってきた後の記者会見で、道筋がついた、しゃにむにやる以外はない、地雷を踏むような感じでやる、ルビコン川を渡ってしまったと言う。簡単に言えることじゃないのです。自由化のことがどうだと言うのです。やるのか、やらないのか、延ばすのか、どのくらいの枠拡大が、それがあなたに提示されて、あなたはそれに答えなければこんなことは言えない。後でこれは記者会見でいろいろなことを言っていました。体裁のいいことを言っているけれども、ここに言葉というのは本質が出てくるものなんです。どんなことを話されたか聞かせていただかなければどうにもならないですな。いかがです。
  360. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は、これも何回も言っておりますが、数字を挙げて農産物の問題等で論議は全然してないのです。ただ、私も農林大臣をやっておりますから、問題の核心については十分承知しておるつもりです。ですから、例えばブロック代表との間でいろいろと話をしている間に、これは大変大きな開きがある。そしてブロックさんが日本の譲歩だけを求めている。アメリカから言わせれば、アメリカは自由化というアメリカにとっては大義名分の旗をおろしているわけですから、横に置いているわけですから、そして枠の問題で日本と話し合いをしよう、こういうことですから、アメリカにとっては日本に対して大変な譲歩をしたという感じを持っております。  そういう中で、日本はちっとも譲ってこない。一月二十日決裂したままで何ら譲ってこない。だから、日本が譲ってこなければアメリカはやりようがない。そうなれば、先ほど演説しておりますが、何らかの明確な態度をとらざるを得ないというのがアメリカの感じです。しかし、我々としては何とかこれを決着したい。それにはやはりアメリカに譲ってもらわなきゃならぬ。日本だけが譲ったってこれは決着できないわけですから、私はそれを強く主張いたしまして、こういう問題で日米全体でいろいろな問題が悪くなってくるということは好ましいことではありませんし、そしてこの問題で日米間にまた新しい争いが起こるということも賢明なことではないわけですから、それにはやはりアメリカ側にも譲ってもらいたいということで主張いたしまして、アメリカにもそういう弾力的な空気が、私が帰るときには見えたわけですね。  ですから私は、筋道はついたんだ、あとは日本アメリカが話し合いをして、そしてお互いに譲り合うという中でこの問題を決着しなければならぬ、これはもう農林大臣立場において決められるべき筋合いのものであることは当然のことでありますが、ただ私は、アメリカ側にもそうした弾力的に事に臨もうという空気が出たことは、一つの解決への道筋が出たのではないかということを言っておるわけでありますから、相当具体的に私は説明をいたしておるわけであります。
  361. 津川武一

    津川委員 外務大臣が、子供の使いでもないし、もっと何か話しているのだけれども、そのことを、話したことを話さないということを指摘し、同僚議員に頼んで外務委員会でもう少し詰めてもらうことにして問題を進めます。  外務大臣、どうぞお帰りになって結構です。  経済企画庁長官にお願いしますが、先ほども話しましたけれども先進国の食糧の自給率、これを何としても上げていかなきゃならぬ。イギリスは七〇年にカロリーべースで四九%だったのが、今は六〇%、こういうふうになっているわけです。  先ほど話していただいたのでいいのですが、この海外依存、あなたたちの運営しておる日本経済の運営は、重化学工業と機械工業を重点的に扱って、紡績などの軽工業などというものをどちらかというと軽視している。これが一つ。エネルギーと食糧を極端に外国に依存する政策をとってきている。今牛肉、オレンジの自由化が迫ったときに、これから抜け出して日本経済、農業というものを再建させていくという、ここをもう一つ伺ってから帰っていただきます。どうぞひとつよろしく。
  362. 河本敏夫

    河本国務大臣 私の方は中期的な展望に立ちまして、昨年、これからの数年間の見通し等について発表したわけでございまして、その趣旨は繰り返し先ほど申し上げたとおりでございます。  農業問題は食糧問題でもありますので、国の安全保障ともつながりがございます。そういう観点から先ほど申し上げましたような政策を強力に進めていく、こういう考えでございます。
  363. 津川武一

    津川委員 河本さん、どうぞ。  そこで、問題をはしょりまして、今農民の上に押しかぶさってくる農民、農業の借金対策を中心に伺ってみます。  この間、岩手県の葛巻で農用地開発公団が起こした酪農家を見てまいりました。塚森というところですが、私が行って会った人は、入植前には農協の購買未収がわずか六十万円、それから四年間に千七百万円にふくれ上がってしまった。五十八年度だけでも五百万円の購買未収金。ところが、公団にお金を払わなければならないために毎月四十万円積み立てて、一方で農協への借金を購買未収にしてふやしている、七・一二%の借金を返すために九%、一〇%の農協の借金に変えているのです。なぜこうなったかというと、公団のお金は滞納すると一四%のペナルティーが出る。こういう状態に農民の借金が追い込まれております。  その次、私は根室地域に行ってみましたが、岩手県の葛巻は少し機械が合わないために大型の機械に変えなければできなかったり、農地に問題があったりして、肥料だとか土地造成のために計画外のお金を使ってこうなっている。ところが根室、これは皆さんの言いなりに、計画を立てたとおりに進んだのです。農民もそのつもりでやったのです。行ってみたらすばらしい草地がある。二十数メートルのサイロが立っている。すばらしい畜舎ができている。牛がいっぱいいる。機械も倉庫もある。どこか外国にでも行っているみたいな光景なんです。  ところが、ここで入った農家、西川さんのところへ行ってみました。草地は、入植前には二十ヘクタール、現在五十二ヘクタール。牛舎、二十五頭分のものが現在九十頭分。家畜が四十頭が百三頭にふえている。乳の生産が百六十トンあったのが三百三十四トンにふえている。収入も千三百六十万から三千百三十万にふえている。皆さんの計画どおり。私は、いいなと思いました。多少問題があるけれども日本の農業の将来がここにあるんだという一つの希望を持って見てきたのです。  ところが、この人の借金、何と六千七百万円。土地取得資金千八百万、近代化資金八百万、住宅資金五百九十万、肥育畜舎九百十万、自創資金四百十万、開拓資金二百九十五万、農家経済資金三百万、農協プロパー一千万円、それでも足りなくて負債整理資金から千七百六十万円。利息、一年に三百五十四万、元金四百六十六万、合わせて八百二十万。公団から借りたお金が五十九年、ことしから利子を払わなければならぬ、三百五十万。六十一年から元金を払わなければならぬ、百五十五万。千三百万。生活費を削ってもどうにも借金が払えないのです。こういう状態のところが至るところにあるわけなんです。これにはいろいろな問題があるかもわからぬ。  そこで、中春別という農協へ行ってみた。組合員の借金で困っておる。肉牛農家の負債十億円で、焦げついて組合長が辞職している。二百三十人の組合員のうち百四十六人が負債整理資金でやっている。この中の四十六人が重点指導で破産するばかりになっている、四十六戸。負債総額はこの四十六戸で四十九億円、資産総額は二十九億、資産全部売り払っても借金が返済できない。そこで、町長も農協の組合長も開拓協議会の会長も、何とかこの借金を返していけるように、これで離農しないように、せっかく国が育ててくれた、ここで落とさないために利子を少なくしてください。償還期間を長くしてください。  そこで、竹下さん、この公団のお金、財投資金なんです。つぶすわけにいかないんだ、庶民のこれは。したがって、この岩手県の葛巻の公団の場合も、公団のお金は一四%のペナルティーがあるから高い利息に走る。これではますます悪くなる。どうしても救済するとなってくると、ここで私は利子補給する必要があると思う。青森県で農家負債状況、百万円以上滞納した人を調べてみた。何とか利子補給でいけそうな人は八割、どうしてもだめらしい人は二割なんです。先ほど話した西川さんは九つの借金がある、これを総合して何とか借金対策を立てていく必要がある、そこで県は利子補給した。竹下さん、この公団のお金は大事にしなければならぬ、農家を守らなければならない、ここで利子補給をしてください。これが一つ。  そこで、こうなると土地を失うから、防ぐ方法は自創資金。自創資金の最高限度、特例で八百五十万。この特例限度のものをそういう形の農家に全面適用していただく。この自創資金八百五十万の限度でも、西川さんだと六千七百万だ。そこで負債整理資金を使っておるが、全国の農家のために八百五十万限度の自創資金を稲作でも果物でも野菜でも適用していただくということ。北海道に行ってみたら負債整理資金が非常によく働いている。これも畜産だけではなくほかの方に考えていく。結局、日本の農業を守るとすれば、竹下さんに総合的な負債対策の対策なり資金なり道を開いていただかなければならぬ。  そこで、具体的な問題として、公団のお金に対しては県がすでに利子補給しているから、国が利子補給する必要があると思いますし、この負債整理のために農地を売るような場面が出たら、自創資金を全面発動して特枠の八百五十万はとりあえずやっていく。それでも足りないので、いろいろなものを総合整理する対策を立てる必要があると思いますが、農水省、山村さんに聞こうと思ったけれども、聞く機会が幾らでもありますので、ここはひとつ農水省も代表し農民も代表して竹下さんにお伺いする次第でございます。
  364. 森実孝郎

    森実政府委員 非常に具体的な事務的な話でございますので、具体的にひとつ私から先に答えさせていただきます。
  365. 津川武一

    津川委員 局長ね、後でゆっくり聞くから。きょうは大蔵大臣に聞くのが任務だから。見解が違うところがあるかもわからぬけれども委員長、そういうふうにお願いします。そうじゃないと時間がなくなって。
  366. 倉成正

    倉成委員長 わかりました。それでは、大蔵大臣竹下登君。
  367. 竹下登

    竹下国務大臣 竹下さん、竹下さんと言っていただきますが、本来はやはり、なかんずく個別問題を例としての具体的な問題でございますので、農水省からお答えになるのが適当である、基本的にはそう思います。しかし、せっかくのありがたい御指名でございますので。  御案内のように、農用地造成等をこの農用地開発公団が、五十九年度予算額で二百七十七億円でございますか、それから根室区域の公団事業は五十八年度中に完了が予定されておる。五十九年度以降、入植農民の事業負担金の返済が開始される。三年間の据置期間中は利払いのみ。それで、既に入植された農民の方々のうち、大多数の入植者の方につきましては経営内容は年々改善が見られておるところから、今後の返済は十分可能な状態であって、一部の入植者について返済に問題が生じているとしても、これは経営安定に至るまでの言ってみれば過渡的な性格のものである。したがって、この問題に対して別途自作農維持資金等の農家経営安定施策や公団事業負担金の徴収上の運用により十分対処し得るものであるというふうに、私どもは個別問題としては承っております。  利子補給利子補給とおっしゃいました。それは、税というものはもちろん受益者も国民でありますし、負担するのも国民であります。したがって、いわゆる税の持つ資源の再配分、あるいは富の再配分とも言うかもしれません。そういうことに対して政策上の効果を生むものではございますけれども、不足したものは国民の税でこれを利子補給等に入れていくということは基本的には避けて通るべきものだ、自立自助というものがより大切なことであるという考え方に立っております。したがって、この個別問題につきまして、私は別に相談を受けたわけでもございませんけれども、利子補給の措置を行うという考え方は今は持っておりません。
  368. 津川武一

    津川委員 竹下大蔵大臣が個別に答えていただいて、原稿を読みましたが、かなり認識が違うのです。中春別の農協に行くと、二百三十人の組合員の中で負債整理資金でやらなければならぬ人が百四十六人、この中で濃密指導しなければならぬのは、生活費を削らせて、冠婚葬祭の費用を削らせて、農民にしりをたたいて牛の乳を探らせて、牛を参らせるということをしなければ払えなくなっている現状というもの、ここのところに対する――私も現地に行くときは、農水省からよくいっていると聞いたんです。なるほど規模ではよくいっている。行ってみたら破産寸前なんです。この認識は絶対に譲るわけにいかないと私は思う。  そこで、山村大臣にお伺いします。  竹下大蔵大臣は、自創資金の全面適用と言ってもいい。ところが、これは特例が一番多くて八百五十万。農家がその土地を売らなければならなくなった場合、個々の具体的な例になりますけれども、それぞれに適用して、特例だから八百五十万をやめて百五十万だとか五百万でとめる、そういうことをしないで、八百五十万いくとかなりの人が救われる、この点、いかがでございます。
  369. 森実孝郎

    森実政府委員 ちょっとお答え申し上げます。  先ほどからお話がございました数字は一つの例だろうと私、思います。  具体的に根室の例をとりましても、例えば組合員に対する借金が、先生が先ほどおっしゃったように、最高の方は六千三百万というふうな例もございますが、三百万とか五、六百万という経営もあるわけでございまして、やはり個々の経営の格差というものが、あれだけ大きな経営になってくるとどうしても起こってくるという事実は受けとめていかざるを得ないと思います。  それからもう一つは、やはり酪農経営でございますから、入植が安定するまでに一定の期間が要るという事情がございまして、それだけに、入植年次が古い者がトータルとして経営が安定している。新しい者は経営が苦しいという現実があるわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、やはり経営診断をしっかりやって、営農指導を強化することを基本に置いて、その中で具体的な資金繰りの相談に乗っていく、個々の経営の問題として片づけていくということが必要だろうと思います。その場合、いろいろ手法はあるわけでございますが、一つは今お話がございました自創資金の再建整理資金を活用する問題、もう一つは酪農の負債整理資金を活用する問題、それからもう一つは、実は公団の償還金等についても何らかの手法を使って、技術的に経営の苦しいごく例外的な方には、例外的、一時的に延期する手法、そういった各種の手法を組み合わして、個々の経営の診断の問題として処理していく必要があるだろうと思います。  そういう意味で、自創資金の限度を一律に上げた特認ですべて画一的に適用するというふうな処理ではなくて、ひとつ具体的な経営問題として相談さしていただきたいと思います。
  370. 津川武一

    津川委員 大蔵大臣からも構造改善局長からも、私は特別ひどい例を挙げたというふうに言われたけれども、あの西川さんが六千七百万の借金。いいですか、これは中春別の農協の特別指導する人たちの借金です。読んでみます。先ほど西川さんのは六千七百万円。一億二千六百十二万円、一口。一億四千九百十四万円、一億五千三百八十八万円、一億八千三百十六万円、一億五千五百七十二万円、一億四千六百二十万円、一億六千六十七万円、一億四千二十三万円、一億四千九百二十九万円、一億五千三十五万円、こういう例がずらっと並んでいるんです。何でこれが個別なんです。農協がこれつくって、特別対策しなければならない。そこで大蔵大臣、やっぱりじっくり考えていただかなければならぬ。  私は今度現地に入ってみて、農業というものは利子を稼がせる、こういうことなんです。機械の下になって利息の下になるのが、今の高度経済成長下のあれであった。この投資したときには、田中角榮の日本列島改造論、高度経済成長、お金は借りなさい、インフレで返すときはただ同様になるという、この勢いを農民の中にくっつけてやったのが、ここに出てきたわけです。したがって、構造改善局長の個別の例というのは、私は少し遠慮して六千七百万の話をしていたんです。一億円以上の話がこんなにたくさんある。このことを指摘し、大蔵大臣に格別な借金に対する配慮を、何らかの気持ちを表明していただきます。
  371. 竹下登

    竹下国務大臣 私は担当ではございませんし、したがって、今個別ではないとおっしゃいますが、個々のケースそのものは個別の問題でございます。が、このいわゆる農政全般の中で、利子補給とか融資制度とか、それの果たす役割は私なりにも認識をいたしております。
  372. 津川武一

    津川委員 もう一つ質問しようと思ったのは、こんな点で借金で困っている青森県の鰺ケ沢の東部開発、これは六百億くらいつぎ込んでいる。農民の皆さんには計画を教えないで、同意書をとっている。それから事業計画書はある。経営計画はない。何を植えて採算とれるか、一つもない。そして借金がある。新しく土地買うよりも、この方でやった方がうんと高くなる。そこで局長にもその人たちが直接話しましたけれども、この同意とりを中止して、一たん白紙に返して、それらの人たちと政府がじっくり話して、賛成を得られたらやる、賛成得られなかったらあきらめる、こういうことでなければならないと思いますが、大臣、ひとつ答えていただきたい。
  373. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 ひとつ担当の局長と個々にじっくり話し合ってやっていただきたいと思います。
  374. 津川武一

    津川委員 きょうは、本当は日本の農民を代表して、大蔵大臣とだけやりたかったのです。したがって、大蔵大臣もう少し我慢してください。農林大臣、もし忙しかったらどうぞ。  そこで、税金ですが、昭和五十年度の農家経済調査によれば、全国平均一戸当たり農業所得は九十五万一千円で、前年比一・七%ダウン。国税庁は五十七年度所得税の確定申告の結果を発表したが、国税庁が取り立てた税金が三千七百十八億円、前年比で二六%増となっている。これは国税庁が言っているように、収入金課税方式というものをとったからこれだけふえた。収入金課税というのはこんなに残酷なんです。  そこで、収入金課税というのは、納税だから自主申告だ。それを、所得も経費もあらかじめ決めてやる、これは自主申告の権利の否定になりませんか。これが一つ。  それから、同じ基準で、あらかじめ決めたもので税金を、率と所得を決める。私のところでリンゴ、百年の老木のところがある。これは台風にやられて、豪雪にやられて、腐乱病にやられて、障害の木になっている。至るところにあいている。これが今単収百箱。同じ畑でも、三十年、四十年の壮年木だと、葉がいっぱい茂って、下の方がなる。これは二百箱上がる。経費は同じなんです、肥料も農薬も。だから、あらかじめ決めた所得率で掛けるということは、状況に合わない。これこそ具体的な個別なものでなければならない。この所得率、発表してない。発表すべきだと思います。これが二つ目の質問。  三つ。弘前の税務署は、リンゴに対して所得率発表しました。ふじでは経費率三四%、デリ系では四一%。これはいい方だ。隣にある黒石税務署、五所川原税務署は、この所得率は署員の教科書、教材であるから発表できないという。この所得率の発表をしていただく。これが質問。  その次、群馬県の嬬恋。五十七年度のキャベツで収入金課税方式をやって、税務署は七〇%の仮経費。そこで十アール当たり三万五千円の経費の負担。これを聞いて、農協も農民も、地方自治体も、村長も、村議会もびっくりした。村議会の全員協議会を開いて、農協と税務署交渉をやったんです。そうしたら、税務署は三万五千円の経費を五万円に直した。直し得るんです。これはどこでもそういうふうに生産者と、生産者の団体と協議して、経費率、経費の基準、これを明らかにすべきだと思いますが、この点、お答え願います。
  375. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 農業標準課税についてのお尋ねでございます。  まずその前に、農業所得についてのお尋ねがございました。確かに農林省で御調査になりました結果によりますると、農業所得は減退をいたしておるわけでございます。また、私どもの取りました税金というものはかなりふえておるわけでございます。しかし、これは実は統計上の問題がございまして、私どもの方は、農業を主とする方につぎまして、その方々の農業所得とそれから農外所得を合わせたところで税金をいただきまして、それで算定をいたしておるわけでございます。一方、農林省のおつくりになりました統計の方は、これは農業所得だけについてのものでございます。そこに範囲の差があるわけでございます。また、私どもの統計の方は課税統計でございますので、したがいまして、当然に基礎控除、配偶者控除、扶養控除、そういう諸控除を差し引きましてなおかつ所得のある方についてだけの統計でございます。したがいまして、所得のこれに達しない方は、私どもの統計に入ってこないわけでございます。その点に差があることをひとつ御了解をいただきたいと思います。  それから第二の問題でございますが、農業所得標準と申しますのは、かなり長い間農業団体、農家の方々と話し合ってやっておるわけでございますが、これはあくまでも所得算定のための一つの目安でございます。私ども課税庁といたしましては、あくまでも個々別に収入、経費、そういうものを記帳していただきまして、委員御指摘のように個別の事情に即しましてそれぞれの納税者の方の所得を算定していただくことが最もいいわけでございます。そういうことで、農業、農家の方々にも青色申告をなさいまして、そういう個別計算をいたしていただいている方々もあるわけでございます。  しかしながら、大多数の農家の方々は、これはお仕事の都合、そういうことがございまして、なかなか収入、経費を一々おつけになるというところまでいっていないわけでございます。そういうところで、私どもは、課税の便宜と申しますか、納税者側の便宜でもございますし、私どもの便宜でもございますが、農業所得標準というものを、サンプルの基準調査というようなものをもとにいたしまして、また市町村とか農業団体とかと御相談を申し上げながらつくっておるわけでございます。このような農業所得標準は、今申し上げましたようにあくまで目安でございますから、私ども、農家の方々にこれでどうしても納税してくださいということを強制はいたしておらないわけでございます。そういう標準でどうしても御満足にならないという方々は、これは個別に収入なり経費なりから所得を算定していただきまして御申告をいただければ、それでよろしいわけでございます。  最後に個別の例でございますが、リンゴの弘前署あるいは黒石署の例でございます。ちょっと今具体的に私、資料を持ち合わせませんので、突然のお尋ねでございますので、これはよく調べてみたいと思うわけでございます。  嬬恋の件でございますが、これは私どもの知る限りでは、一応税務署の方で基準を調査をいたしまして、その後で農業団体とお話をしたわけでございますが、台風とか作況とかそういう点で私どものつくりました調査と若干違うというようなお感じを漏らされたわけでございます。そういうようなお感じ、これは実際に農業の実態に追っておられる農業団体からのお言葉でございますので、私ども尊重いたしまして、その趣旨に基づきまして若干の調整をいたしたということでございます。
  376. 津川武一

    津川委員 大蔵大臣、基準率も基準も公表できるのですよ。それを大蔵大臣から国税庁なりどこかへ指示していただければ事は極めて簡単で、嬬恋でそれは出たのです。それを突っ張っているところに、行政の中に問題があるわけです。  時間が来ましたのでこれで終わりますが、最後に、嬬恋で五十七年度はたんともうかった。五十七年はもうかったけれども、その前の年と後の年は恐ろしい損になった。それで、三年平均してでもとてもだめなんで、これに価格変動の激しいこういうのに対して変動所得、こういう税制を認める必要があると思いますが、これは大蔵大臣、答えられるのだったら答えて、だめなら国税庁長官でも結構です。それで私、質問を終わりますから。
  377. 竹下登

    竹下国務大臣 嬬恋の問題は、これは本院の予算委員会の自由民主党小渕理事の出身地であります中之条税務署の管轄下にございます。福田赳夫先生、中曽根総理、山口鶴男さん、大体そういう選挙基盤でございます。私も何度か訪れたわけでございますが、今の価格の問題は、これは難しい問題でございます。詳しくは事務当局からお答えしても結構でございますが。
  378. 倉成正

    倉成委員長 変動所得、よろしゅうございますか。
  379. 津川武一

    津川委員 いいです。わかりました。
  380. 倉成正

    倉成委員長 この際、中川利三郎君より関連質疑の申し出があります。津川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中川利三郎君。
  381. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 三月五日の決算委員会で、私は、閣僚の資産公開問題に絡んで、稻村国土庁長官の地元石川県羽咋市にある自宅、事務所所在の土地の例を挙げて、その資産形成の過程に重大な政治的道義的疑惑があることを質問いたしました。  簡単にその内容を申しますと、今度の資産公開の中で事業用資産として非公開とされたその土地は、羽咋温泉稻村センター社長稻村佐近四郎氏が政治生命をかけて福祉の整備を図るという信頼と約束を基本前提として、昭和四十五年八月、当時の羽咋市長との間で売買契約書を取り交わし、払い下げを受けたものでありますが、しかし、福祉施設の整備拡充どころか、その後その土地の一部が二度にわたって切り売りされ、残った現在の土地も稻村長官が事実上のオーナーである稻村建設に吸収され、肝心の福祉施設は影も形もなくなり、そのかわり長官の自宅、事務所の土地となっている点をただしたものでございます。  しかし、長官はこの私の質問に対しまして、論証抜きに大分間違っていると言うだけでなくて、六日閣議後の中曽根総理に対する釈明の中でも、中川氏の指摘は大部分が間違いだと言ったことが報道されております。  そこでお伺いするのでありますが、長官はこのことについては、市長と会ったこともなければ聞いたこともない、こう言っていますが、つまり、市長と会ったことも福祉整備の拡充がその前提の約束であったこともなかったというのでありまして、ただ単に正式なルールに従ってやっただけだと答弁していらっしゃいます。  そこで、問題の整理をいたしまして、まず市長と会ったのか会わないのか、このことについてでありますが、その真偽について取材を受けました当時の市長西橋義一氏の談話が、私の質問翌日の六日付で地元の北国新聞や北陸中日新聞なんかに大きく出ておりますが、その中で当時の羽咋市長であった西橋義一、今の市商工会会長の話として、北国新聞の例を引きますと、「約束したのは事実」  膨大な市有地を無条件で払い下げることなどあるはずがない。水掛け論になるかもしれないが、私が国会議員会館で稻村代議士と会った際〝約束した以上、政治生命をかけてやる〟と大きな声で言われたのを覚えている。  市は二万坪を年三万円で貸していたわけで、市の貴重な財産を放置の状態にできないので、一万坪の方は稻村先生を信じて売却、他の一万坪は返してもらった。当時の市議会には稻村先生の部下の市議会議員もいた。私の答弁に事実関係の違いがあれば抗議されたはずだが、そんなことはない。こうおっしゃっているわけであります。  そこで、私の聞きたいことは、あなたは市長とそのことで会ったことはないとおっしゃっておる。市長は、会っただけではなくて、あなたが大声で議員会館でそのことを約束したと言っています。こうなりますと、問題は非常に重大でありまして、まさにどちらかがうそをついているということになるのでありますが、重ねてあなたにお聞きいたしますが、あなたは本当に会ったことがないのかどうか、この点についてまずお聞きいたします。
  382. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 お答えをいたします。  私が国会議員になる以前の昭和三十五年二月十八日、御指摘の土地の賃貸借契約が羽咋市との間に結ばれ、当時は道一つない山林でありましたが、営業に供するため、道路もつけ、整地もし、その地にてヘルスセンターを開業したのであります。  先刻御承知とは存じますが……(中川(利)委員「会ったのかないのか、時間がないですよ」と呼ぶ)これから入っていきますから。建物の所有者を目的とする借地については、最低でも二十年借地が継続するという定めがあるので、私も当然最低二十年、三十年は借りられるものと思っておりましたが、昭和四十五年近くになったころ……(中川(利)委員「私、時間がないですよ。あなた、それをずっと言って、私の持ち時間全部とるのですか。委員長、注意してください」と呼ぶ)市当局より一方的に、市として一部を使用したい、たしかその折は、青年の家関係の施設をつくりたいので一部賃貸契約を解除、返還してほしい……
  383. 倉成正

    倉成委員長 緒論を急いでください。
  384. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 また、残余の部分については買い取ってほしいという御要望があったと記憶いたしております。(中川(利)委員「冗談じゃないですよ。私、質問時間がないですよ。そんなことはわかっています。市長と会ったか会わないか、そこだけ答えてください」と呼ぶ)これから市長と会ったか会わぬかが出てくるわけです。  当時の私は、建物があったので最低でも二十年、三十年、私の使用建造物は鉄骨づくりでありましたから、三十年は借地のままで、安い賃料で使用できるのでそのままでよかったわけでありますが……(中川(利)委員「市長と会ったかどうかと聞いているのですよ。あなた、時間を稼ぐというのですか。私はみんな資料を持っています」と呼ぶ)昭和三十五年の賃貸契約発生時とは違い……
  385. 倉成正

    倉成委員長 稻村君、結論を急いでください。
  386. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 国会議員にもさせていただいたことであるし、市当局からの公共のためという申し入れでありましたから、私と申しますか、会社としては、苦しい財政下ではありましたが……(中川(利)委員「そんなことを聞いているんじゃないですよ。わかっています、それは。注意してくださいよ。ひきょうだよ、君」と呼ぶ)
  387. 倉成正

    倉成委員長 稻村君、結論を急いでください。
  388. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 すべて市当局の御要望どおり六割弱を返還し、四割強を市議会で決定いただきました価格で、条件で買わせていただいたのであります。
  389. 倉成正

    倉成委員長 稻村君、結論を急いでください。
  390. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 次に、中川委員のお言葉をおかりしますと、当時の市長が、口約束で福祉に供する云々、でありますが、実は政争じみた話なのでこのような場で申し上げるのは不本意ではありますが……(中川(利)委員「冗談じゃないよ。そんなことは聞いてないよ、事実関係を聞いているんですよ」と呼ぶ)より御理解いただくため申し上げますと……
  391. 倉成正

    倉成委員長 稻村君、質問に答えてください。
  392. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 地元の市とはいえ、不徳のいたすところ、当時の市議会議員の構成が、稻村派は多くても四分の一、約四名だったと思いますが……(中川(利)委員「何ですか、これは。私に質問させないつもりなのか、君は」と呼ぶ)このような、私から言うならば、大多数の野党の議会で稻村に売ることを決定し、その売買契約の「その他」の項第六にて、「契約に定めのない事項については双方で協議して決定する」と定め、その十日後の八月十日、その定めによる双方の合意事項も、口約束であるとかあるいはまた道義的責任というような抽象的なものではなく、必要事項は堂々と別添覚書として交換され、全く正常な取引がなされたのであります。(中川(利)委員「今そのことを聞くのですよ」と呼ぶ)  もし万一、中川議員の言われるように、元市長が公共用地、市有財産を口約束であるとか道義的責任においてなどというようないいかげんなことで市有財産を処分されたとするならば、為政者として、首長として、余りにもルーズさを責めらるべき元市長ではないでしょうか。幸いにして正常な取引として別添の覚書まで付して契約されていることに、私は、元市長は立派に職責を全うされたと考えております。  ただ、そのような正常な形の取引で、まして先ほど申し上げましたような情勢下の議会で決定されたものが、約二年半経過した四十七年の九月同じ市議会で、中川委員のお言葉どおりとするならば、なぜ売買に禁止条項をつけなかったのかということが論じられたのか、理解に苦しむものであります。(中川(利)委員「私が証明するんだ、それを」と呼ぶ)  私は、政治家として、やっていいことと悪いこととの分別はあるつもりであります。会社が市の申し出を受けて土地を取得いたしました後は……
  393. 倉成正

    倉成委員長 稻村君、結論を急いでください。
  394. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 ヘルスセンターの不振、ボーリンクブーム、そうして衰退などの社会的要因によって会社は運営されております。  ただ、最後に再度申し上げたいのは、土地の取得に関しては、法律の定めるところにより長期間安い賃借料で借りられるところ、市側がその定めを破ってまでその返還、買い入れを申し出られ、当時は既に国会議員をさせていただいておりましたので、市当局はもちろんでありますが、市民、住民各位の御支援をいただいている公人稻村でありますから、突然の市当局の一方的な言い分であっても……(中川(利)委員「それを証明します、私が今」と呼ぶ)私は議員として道義的責任を感ずるから、何一つ異論を唱えることなく市当局に応じたのであります。その点をくれぐれも誤解なきようお願いしたいのであります。
  395. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今長官の答弁中、再三私は御注意し、また委員長から御注意したにかかわらず、質問の箇所には全く答えないで一般的にそういう経過をお述べになっていることについて、その分の時間については改めて御配慮いただきたいと思います。  そこで、長官、あなたにお伺いしますが、市長と会ったかどうか、このことを聞いているのですから、それに答えてください。
  396. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 このことについては会っておりません。
  397. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あのね、あなた、そうすると市長がうそをついたということですね。しかしあなたは、四十七年の十月三十日――あなたは羽咋温泉のこの条件に違ったということで、稻村佐近四郎代議士に対する「道義的責任の遂行要望決議」というものがあなたの地元の市議会から決議されているわけでありますね。その内容は、そういう約束に違反したからだと、こういうことが理由になっているわけでありますけれども、あなたが今ああいう説明をしたわけでありますから、私が若干証明いたします。  ここにこういう文書がございます。「賃借地払下げの件申請」――その前に、私もう一つの文書を持っていますから。  「羽総第一〇一五号昭和四十七年十月三十日 株式会社羽咋ヘルスセンター取締役社長稻村建男殿」、これはあなたの息子さんだと思いますが、羽咋市長西橋義一から「ヘルスセンター用敷地のことについて」、こういう文面で、公文書であります。  昭和四十五年八月一日締結の土地売買契約書に基づき市有地二万九千三百六平方メートルを貴社(当時羽咋温泉稻村センター株式会社)へ払下げた趣旨は、過去の貢献度を勘案するとともに、「将来この敷地にヘルスセンター施設を整備拡充する」「他へ転売しない」という当時の貴社社長稻村佐近四郎殿の口約を前提としたものでありました。  このことを想起され、充分に道義的な配慮をされるよう、念のため申入れます。これは十分な注意を喚起したものですね。約束を守れということです。  さらに私、もう一つ申し上げます。あなたは自分の方から申し入れたことはないと、こう言っていますが、これは昭和四十五年五月三十日付「賃借地払下げの件申請」「羽咋市長西橋義一殿」、そうしてあなたの名前です。こう言っています。「標記の件誠に恐縮に存じますが羽咋市羽咋町上壱番地他約二万坪の賃借地の契約更改年でありますが当社としては大手観光事業との協約に方り従来の借地権では営業竝新規事業の着手等大変困難な事情竝」云々ということがあって、ぜひそういう意味で払い下げしてほしいという、これは公文書です、あなたの方から出した。  さらに、私はいろんな資料を持っておりまして、あなた自身は、市役所から事業計画書を出しなさい、その福祉拡充計画の計画書を出しなさいと催促された公文書も私は持っていますよ。こういう一連の公文書がすべて架空であり、すべてでたらめだということになりますな、そうしますと。  いま一回あなたの本当の答弁を――私はあなたを、個人はだれでも間違いがありますから責めているわけじゃありませんけれども、そういうふうにしらを切るようなことでありましたならば、私どもは絶対これは容認することはできないと思うのですね。まさに政治的道義的責任の追及をあなたは今受けでいるわけでありますので、この点率直に、私はその他の資料も全部持っておりますので、ひとつ釈明いただきたいと思います。(「時間ですから簡単にいきましょう」と呼ぶ者あり)
  398. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 中川さん、これは二万坪、約二万坪ですね、その中でどうしても市として、青年の家を誘致をいたしました、そういう関係から公的に住宅を建てたい。そこで本人が来れないから総務委員長の某氏が私のところへ参りまして、何とかして稻村さん、この土地の返還を道路から向こうをしてもらえないか……(中川(利)委員「わかっていますよ」と呼ぶ)わかっておられるでしょう。そのとおりなんです。そこで私は、そういうことはすべきではない。私はそういうことをしたくない。再三おいでになりまして、何とかしてそれはしてもらいたい。しかしながら、そのときは私も国会議員でありますから、できるだけやはり住民の、市民のことをも考え、この際はやはり皆さんのおっしゃるとおりにそれではお返しをいたしましょう、そのかわりに四割はぜひあなたのところでひとつ買い取ってもらえないか。私の方は財政事情、借地権でもいいんですから。しかしながら、いろんな角度からこれはやむを得ず、それではその四割強を、借地権全体を持っておって、しかも六割強返還をして四割を取得するというわけでありますから、不満ではありましたものの、先ほど来申し上げましたように国会議員という立場もございますから、私はあえて、一方的な要求でございましたけれども受けざるを得ないということで、正々堂々と議会のルールにのっとってこれは契約されたものであって、何らやましいところはないというふうに私は考えております。
  399. 倉成正

    倉成委員長 中川君、時間が参りました。
  400. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 はい、わかりました。  市長は会っている、彼は大声でこう言ったということを証明しているが、それはなかった。福祉整備の約束についても、私が今……
  401. 倉成正

    倉成委員長 中川君、結論を急いでください。
  402. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 はい、わかりました。  その条件お話ししたのにそれもなかった、あらゆるものが皆なかったということになりまして、こういうことでは、私、後日に改めて時間をとってもう一回ひとつやらなければならないということを申し上げまして、私の持ち時間終わらしていただきます。
  403. 倉成正

    倉成委員長 これにて津川君、中川君の質疑は終了いたしました。  次に、小川国彦君の保留分の質疑を許します。小川国彦君。
  404. 小川国彦

    小川(国)委員 私は先日、オレンジの輸入割り当て制度に関しまして、この割り当てを受けている百二十一社の実態というものが、正体不明の会社、ダミーの会社、こういうものが非常に多く、この輸入割り当てが非常に利権化している。しかもその割り当てのみがひとり歩きしているという状況にかんがみまして、通産大臣に対し、この百二十一社の実態を調査して報告をされたい、こういう旨を要請し、同時に、それら企業の、実体のない企業について、正体不明の企業やダミーの企業について、大蔵大臣に対しましてその税務の実態調査もあわせて要請をしたわけであります。  委員長においては、これを理事会において協議をし、関係者の回答を求むる、こういう御返事をいただいておるわけでありますが、この点についてきょうの段階でどのような御回答がいただけるか、御答弁をいただきたいと思います。
  405. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 先日小川委員よりいろいろな質問がございまして、政府委員がそれに答弁したわけでございますが、小川委員の挙げた四社について、非常にふらちな会社があったわけでございます。例えばオレンジの会社だと思って電話したら魚屋さんであったとか、その二階に間借りしていたのがオレンジを営む会社であったとか、あるいは幽霊のような会社があって、とてもこのようなずさんなことをやっていたのではけしからぬではないかというような質問があったわけでございます。そこで最終的に私が、そのようなことが真実であるか否かということを現実に調査いたしましょう、そこでその四社について通産省といたしまして、至急その日のうちに調査いたしたわけでございますが、まずその事実関係につきまして政府委員よりはっきりと答弁いたさせます。(小川(国)委員委員長、今のように長く答弁にならないようにひとつ」と呼ぶ)
  406. 倉成正

    倉成委員長 簡潔に要領よく答えてください。
  407. 杉山弘

    ○杉山政府委員 御答弁申し上げます。  ただいま大臣からお話ございましたように、前回先生から具体的な社名を挙げて四社について、極めて存在が怪しい、こういう御指摘がございました。その調査の結果につきまして、現時点での経過を御報告いたします。  最初に御指摘のありましたウラセでございますが、私ども職員が実際に報告された住所に参りましたところ、確かに先生御指摘の魚屋さんはございましたが、それはウラセの代表取締役浦瀬寛一氏所有のビルでございまして、その商店街に面している部分を魚屋さんに貸している、こういうことでございまして、会社はちゃんとその所有のピルの中にございましたし、常勤の役員、専従の職員もございました。また、私ども聞いておりますところでは、毎年税務申告もきちんとやっておるということでございます。  それから、三成商事につきましてでございますが、やはり報告されております住所に参りましたところ、独立の事務所を持っておりました。ここも常勤の役員と専従の職員がおりました。税務申告もきちんと毎年やっているということでございます。  それから、東京第一通商でございますが、これは私どもに報告をしてもらっておりました住所には実際に事務所がございませんで、連絡要員がおりました。最近は事務所を転居をしたということでございまして、それを私どもへの報告を怠っていたということでございました。それで、これは独立ではございませんが、他の企業と共同をいたしまして、事務所を賃借をいたしております。  それから、四番目のスマル貿易でございますが、私どもに報告されておりました住所に実際に参りましたところ、これはそこには事務所がございませんでしたが、別の場所にあることを確謹をいたしております。ここも常勤の役員と専従の職員がおります。税務申告もしているということを聞いております。  以上総合いたしますと、四社につきましては、一部報告をされております住所には事務所はございませんでしたけれども、実際に事務所を持ち営業をしているという事実を確認をいたしております。  以上、御報告を申し上げます。
  408. 倉成正

    倉成委員長 小川君、時間が参りました。締めくくってください。
  409. 小川国彦

    小川(国)委員 はい。  今御答弁がありましたウラセについて、専従の役員、職員がいらっしゃるということですが、これは名前をおっしゃらなかった。おたくの方の職員の方が私のところへおいでになってこのことを申されましたが、私は、ではその専従の職員に給料を払っている事実、源泉徴収票で給料を払っている事実は確認できるかと言ったら、確認できないのですね。この専従の職員というのは奥さんなんですね。私ども調査に行ったときは、奥さんは業務にはタッチしていない、知らない、こういうふうにおっしゃっているのですが、ですからこれも事実と食い違う。  それから、あなたの方で専従の役職員という表現でしているのですが、役職員のいないところ、それから連総員を置いていたというのも、これも第一通商ですか、事務所を賃借しているというのですが、現時点では事務所はないのですよね。これも事実と食い違う。  それから、スマル貿易と子会社の場合ですね。これは役員が監査役を除いて全部同一なんです。まさにダミーの実態がこれは明らかになっている。ですから、こういう事実は私はあすの分科会で通産大臣にさらにただしたい。  ただ、ここではっきりしておいてもらいたいのは、あなた方の実態調査は、割り当てをしている会社の登記の登記簿謄本をとっていたか。それから、代表者の役員及び役員氏名は確認していたか……
  410. 倉成正

    倉成委員長 小川君、結論を急いでください。
  411. 小川国彦

    小川(国)委員 会社の所在地、電話番号、オレンジ担当職員の氏名、社員数、年間割り当てオレンジの取引枠、販売先別、オレンジ以外の果実の輸入額、数量、当該企業の最近五年間の決算報告書、こういうぐらいのものが把握していなければ、業者の実態を把握しているということにならなかったと思うのですが、登記簿謄本一つ、決算書一つ、販売先の確認、これは一切なされていなかったと私は確認しているのですが……
  412. 倉成正

    倉成委員長 小川君、時間をお守りください。小川君、小川君、時間をお守りください。
  413. 小川国彦

    小川(国)委員 この点だけひとつ大臣から答弁していただきたい。
  414. 倉成正

    倉成委員長 これにて小川君の質疑は終了いたしました。
  415. 小川国彦

    小川(国)委員 委員長、答弁だけはひとつ、それをとっていたかどうかだけなんですから。とっていたかいないかだけの話を答弁してもらえば、あとスマートにいきますから、それだけは一言。
  416. 倉成正

    倉成委員長 それじゃ一言、答弁。
  417. 杉山弘

    ○杉山政府委員 短時日でございますので完全にはとっておりませんが、一部のものについては登記簿謄本もとっております。
  418. 倉成正

    倉成委員長 これにて小用君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、一般質疑は終了いたしました、  明十日からは分科会の審査に入ります。  本日は、これにて散会いたします。     牛後八時十三分散会