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1984-03-02 第101回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員  委員長 倉成  正君   理事 小渕 恵三君  理事 原田昇左右君   理事 松永  光君  理事 三塚  博君   理事 山下 徳夫君  理事 岡田 利春君   理事 川俣健二郎君  理事 二見 伸明君   理事 大内 啓伍君      相沢 英之君     甘利  明君      伊藤宗一郎君     上村千一郎君      大村 襄治君     海部 俊樹君      金子 一平君     砂田 重民君      田中 龍夫君     高鳥  修君      玉置 和郎君     中川 昭一君      橋本龍太郎君     原田 一憲君      平林 鴻三君     三原 朝雄君      武藤 嘉文君     村田敬次郎君      村山 達雄君     井上 一成君      稲葉 誠一君     上田  哲君      大出  俊君     島田 琢郎君      清水  勇君     武藤 山治君      矢山 有作君     湯山  勇君      大久保直彦君     長田 武士君      草川 昭三君     斉藤  節君      武田 一夫君     木下敬之助君      小平  忠君     渡辺  朗君      工藤  晃君     瀬崎 博義君      田中美智子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 森  喜朗君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         農林水産大臣  山村新治郎君         通商産業大臣 小此木彦三郎君         運 輸 大 臣 細田 吉藏君         郵 政 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 坂本三十次君         建 設 大 臣 水野  清君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     田川 誠一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官)稻村佐近四郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         公正取引委員会         事務局長    妹尾  明君         警察庁長官官房         長       太田 壽郎君         行政管理庁行政         管理局長    門田 英郎君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁調整         局審議官    丸茂 明則君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         科学技術庁計画         局長      赤羽 信久君         科学技術庁研究         調整局長    福島 公夫君         国土庁長官官房         審議官     田中  暁君         国土庁長官官房         会計課長    安達 五郎君         国土庁計画・調         整局長     小谷善四郎君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省社会教育         局長      宮野 禮一君         文部省管理局長 阿部 充夫君         文化庁次長   加戸 守行君         厚生大臣官房審         議官         兼内閣審議官  古賀 章介君         厚生省社会局長 持永 和見君         厚生省児童家庭         局長      吉原 健二君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         農林水産技術会         議事務局長   関谷 俊作君         食糧庁長官   松浦  昭君         林野庁長官   秋山 智英君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業省通商         政策局長    柴田 益男君         通商産業省立地         公害局長    石井 賢吾君         通商産業省機械         情報産業局次長 児玉 幸治君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         特許庁長官   若杉 和夫君         特許庁特許技監 齋田 信明君         中小企業庁次長 篠島 義明君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         運輸省自動車局         長       角田 達郎君         気象庁長官   末廣 重二君         郵政大臣官房長 奥山 雄材君         郵政省電気通信         政策局長    小山 森也君         労働省労働基準         局長      望月 三郎君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省計画局長 台   健君         建設省河川局長 井上 章平君         建設省道路局長 沓掛 哲男君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君         消防庁長官   砂子田 隆君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       仁杉  巖君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         参  考  人         (日本銀行総裁)前川 春雄君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     中川 昭一君   奥野 誠亮君     平林 鴻三君   山口 敏夫君     甘利  明君   大久保直彦君     長田 武士君   矢野 絢也君     武田 一夫君 同日  辞任         補欠選任   甘利  明君     山口 敏夫君   中川 昭一君     石原慎太郎君   平林 鴻三君     奥野 誠亮君   長田 武士君     大久保直彦君   武田 一夫君     矢野 絢也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、これを順次許します。長田武士君。
  3. 長田武士

    長田委員 まず初めに、郵政大臣お尋ねをいたします。  高度情報化社会が急速に進みつつありますが、こうした時代の流れに対応する新しい秩序づくりを急ぐ必要があろうかと考えております。政府においても法体系整備等を図ろうとされておることは、私も承知をいたしております。そこで、高度情報化社会への具体的対応をどのように進めるかという視点に立ちまして何点か御質問を申し上げたい、このように考えております。  高度情報化社会に向けての制度改革の目玉は、電電公社改革問題であります。私は、この制度改革について三つの柱があるのではないかと考えます。まずその第一は、電報電話事業及びデータ通信回線サービス事業をどうするかという問題、それから第二は、データ通信サービス事業をどうするか、第三には、研究部門をどうするかという点ではなかろうかと思います。ただいま日本電信電話株式会社法案が準備中ということでありますが、今挙げた柱についてどのように考えておられるのか、郵政大臣お尋ねをいたします。
  4. 奥田敬和

    奥田国務大臣 今御指摘のように、電電改革法案目下骨子が固まったという段階で、大体この中旬までには法案の要綱を作成ができるのじゃないかと、めどにしております。そして、下旬には何とか成案化にこぎつけたいと目下努力中でございます。  このような電気通信事業法案、仮称でございますけれども日本電信電話株式会社法案、これらをなぜこういう形に持っていくかということは、御存じのように、新しい高度情報化社会に備えて民営化によって競争原理導入して、今まで以上に効率化活性化を図って、国民の多数のメディアの要望にこたえようということが目的でございます。  今ちょうど御指摘になりました電報事業あるいは電信回線の基幹的な事業、これに関しては当然新会社もそれを受け継ぐことになるわけでございます。もちろん、考えてみますと、どんな地域にも公平、あまねく電信サービスをするという基幹的なサービスは、これは当然新会社も受け継いでいかなければならないわけでございます。  また、委員指摘のように、第三の点ということで御指摘になりましたけれども技術維持日本電電公社が今日まで多年にわたって進めてまいりましたこの技術水準というものは、まさに世界に誇るべき水準だと思います。これらの分野は今競争原理導入の新会社によってもなかなか達成されることではありませんから、これらの維持も当然でございます。  今二番目に御指摘になったデータサービス分野については、いろいろ問題点がございます。検討課題として今私たちも苦慮しているのはこの分野の面でございます。しかしながら、現実の面をとらえますと、既に今電電公社がやっておる、例えばCAFISというような、クレジットの不特定多数の、もう既にシステムになっておりますけれども、こういった一種VANですけれども、それとか、銀行のオンラインシステム、全銀協の、こういった形をどういう形で経営をさしていったらいいだろうか。とりあえず民営化ということで新会社が発足するわけでございますけれども、しかし、現実的対応として既にこの分野にも九千人、一万人近い、技術職員を含めて働いている現状等々を考えて、今後の研究課題としてこのデータ処理の面については電電とも話し合いを行っておるというところでございます。
  5. 長田武士

    長田委員 そこで、電電公社経営形態についてでありますが、私は先ほどの第一については新しい特殊会社によって一元的に行う、これは当然だろうと考えます。第二につきましては、特殊会社と分離をいたしまして民間会社としての独立をさせる、そして民間情報処理業者同一条件下に置くことが当然であろうと考えております。第三については特殊会社に置くべきだろうと考えます。  こうした考え方については、郵政大臣、それから真藤総裁、あわせてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  6. 奥田敬和

    奥田国務大臣 確かにデータ通信サービスについては、方向としては委員の御指摘のとおりだと思うのです。民間と競い合わせて、しかも公正な条件のもとでやっていくということ、そういった御指摘方向だと思うのですけれども、私はそれらについては方向としては賛成でございます。しかし、先ほどもちょっと触れましたけれども現実的な処理の問題として、今直ちにこれを分離させてやるということになると、やはり一万人近い職員のこの分野における非常な不安動揺を与えてもいけませんし、今直ちにそういった方向検討でいくのがいいのかどうか、この点については公社総裁等とも御相談申し上げておるという段階でございます。
  7. 真藤恒

    真藤説明員 お答え申し上げます。  今の全国的規模データサービスということにつきましては、今大臣から御答弁がありました考えとほとんど同じ考え考えております。
  8. 長田武士

    長田委員 真藤総裁にもう一度お尋ねをいたします。  あなたは民間から登用されまして、今まで各般にわたりまして成果を上げてこられたわけであります。そこで、去る二月十六日に郵政省から公表されました日本電信電話株式会社法案、この骨子についてどのように評価されておるのか。また、特に先ほど挙げた第二の柱ですね、データ通信サービス事業、これについてどういうふうに考えていらっしゃるか、あわせて御答弁をいただきたいと思います。
  9. 真藤恒

    真藤説明員 データ通信の方から先にお答えいたしますが、大きなものはいま申し上げましたが、普通のデータ通信一般民間企業競争する立場になりますので、競争条件というものを郵政の指導をいただきながらきちっと整備してスタートする、それから先のことにつきましては、いま大臣が御答弁なさったような線で漸次より公正な競争条件を整備できるような形に編成がえをしていく必要があると思っております。  それから、全体の骨子の問題でございますが、現在のところおおむね郵政の御意向と私ども考え方は、一部を除きましてほとんど一致した考えをしております。
  10. 長田武士

    長田委員 電電公社改革によって、公社の独占でありました電気通信分野民間の参入が認められる方向になったわけであります。それに伴いまして、電気通信事業法が提出されることになり、その骨子も公表されております。  そこで、骨子を見てまいりますと、電気通信事業通信回線を提供する第一種電気通信事業者と、通信回線の提供を受ける第二種の電気通信事業者に区分されておりますね。前者は許可制です。後者については、大規模のものは許可制にする、そのほかのものはいわゆる届け出制である、こういうふうになっております。私は、第一種電気通信事業許可制については、その性格から見て妥当であろうと考えます。しかし、第二種電気通信事業者については、高度情報化社会の発展と相まってVAN事業情報処理サービスとは不可分でありますから、その分野にまで許可制とかあるいは届け出を課するということはちょっと疑問だなという感じが実はしております。この点については、郵政大臣どうですか。
  11. 奥田敬和

    奥田国務大臣 委員も、高度情報化社会においては多種多様、多彩なメディアサービスが行われる、それについては民間の活発な競争自由濶達にやらせればいいじゃないかという基本的なお考え方であろうと思います。  第一種に関してはお互いに意見の相違がないわけですから、回線許可制をとるということに関しては委員も御賛成のようですから、第二種の分野ですけれども、これは違いというのは、回線を持たない、要するに独自に自分で回線を持たない……(長田委員「借りるんだよ」と呼ぶ)そうです。はっきり言って、それだけが違いでございます。あと、ただ、他人の情報なり通信を媒介して料金を取るということにおいては一種も二種も一緒なわけでございます。しかし、二種に関してはほとんど、完全自由という言葉が当てはまるとは思いませんけれども、まさに自由です。ということは届け出制だけです。現在でももう二十システム近くが届け出で既にサービスをやっておるわけですけれども、何ら支障はございません。届け出だけです。  ただ、今委員の御指摘になったのは、恐らく超大型VAN、不特定多数が全国ネット回線でやるというような不特定多数、超大型VANに関してだと思うのです。これはどうしても影響するところも大きいですし、ある程度の許可制をしこうと思っております。しかし、これらも今の段階で言うと、超大型VANに関しては、全国的なネットを有するような形は、予想でございますけれども、そんなに数多く、大体五指に足らないくらいの数しか恐らく将来においても出ないのじゃなかろうか。  ただ、二種に関しては、はっきり言うと通信であれ情報であれ、のぞきができるシステムですから、やはり通信秘密に関する保護あるいは産業的な企業の機密、そういうものに対するプライバシーも守っていかなければいかぬ等々のこともありますから、最小限行政上の担保措置が必要だと思っておるわけです。特に、どこにそういうことをやっておる業者がおるかという実情把握もできないような形で、自由濶達という形だけでやっていく面においては、非常にまだ日本のこの分野における脆弱性指摘されるという面からいって、最小限担保措置としてぜひ届け出という形に関しては御理解を賜りたいと思うわけであります。
  12. 長田武士

    長田委員 私が申し上げましたのは、現在自由になっておりますね、それに対して届け出制とか許可制とかということになりますと、情報処理事業に新たな事業規制がしかれるという意味で懸念したわけなんです。  次に、通産大臣お尋ねをいたします。  電気通信事業法案に対して次のような問題点通産省として挙げておりますね。それは、第一に、第二種電気通信事業者に対する規制は、情報処理事業に対する新たな事業規制導入であり、民間活力をそぐものである。第二に、通信業である第一種事業者に対する規制通信事業の規律は十分に保たれるものである。第三に、通信利用者に対し事業者規制導入する必要はない。第四には、新たな通信利用者に対する事業規制臨調答申に反するものである、などとなっておるわけであります。そこで通産大臣、この第二種電気通信事業者に対する通産大臣のお考え、これについてひとつお答えをいただきたいと思います。
  13. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 まず申し上げておかなければならないことは、この御指摘法案について、これは部内でいま調整中であるということでございます。ただ、通産省といたしましてはこれについて民間事業者活力と創意を生かすという基本方針でございまして、このVANなどの情報サービスについては完全に自由な基盤を確保するということが基本的な考え方でございます。
  14. 長田武士

    長田委員 郵政省規制の理由に、今、郵政大臣秘密の保持を挙げていますね。私はこの点については重要だと考えております。高度情報化社会の進展という広い角度から考えますと、たとえばイギリスでは、現在、通信回線利用自由化を進めている一方で、広くデータ保護一般についてのデータ保護法案が提出されておるようであります。そこで、我が国においても、こういう方向高度情報化社会における秘密保護等考えていかなくてはいけないかなという感じも私はいたしております。この点について通産大臣から御答弁をいただきたいと思っております。  また、行政管理庁からも、高度情報化社会におけるプライバシー保護についてどう考え、その具体策をどう講じるのか、この点についてお尋ねをいたします。
  15. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 コンピューター等安全対策というものは、非常に重要であると認識いたしておる次第でございます。このため、通産省といたしましては、従来から安全対策実施事業所認定制度を行ってきているということはよく御存じのところでございますけれども、さらに昨年の十二月の産構審におきましてコンピューターセキュリティー対策というものの報告を得たわけでございますが、これを踏まえまして今後適切な対策を講じていくということにいたして乗ります。
  16. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 お答えを申し上げます。  プライバシー保護の問題は国民権利擁護という観点から極めて重要であるということだけは、これは申し上げるまでもありません。そこで、臨時行政調査会答申もございますし、それを受けての閣議決定も二度ばかりいたしております。そういう線に沿って、行管庁においては各省庁の局長クラス連絡会議をつくるとか、あるいはまた、加藤一郎先生を座長とした研究会報告等を受けまして、プライバシー保護をどう進めていくかということを現在検討中でございます。もちろん、このプライバシー保護の問題は、一方、知る権利という情報公開の問題との関連もございますから、私は、双方とも極めて重要な問題で、慎重に取り扱わなければならぬと考えておるわけでございます。  御質問は、たまたま今の電電改革に関連しての御質問だと思いますが、電電改革についても御案内のような答申が出ております。先ほど来郵政大臣がおっしゃったようなことでございます。今のままではやはりぐあいが悪い、もう少し民間経営手法を入れるとか、そして同時に民営・分割にしていくとか、いろいろな答申が出ておりますから、その線に沿っておやりになっているのですが、現在の段階主管官庁である郵政省でいろいろ御検討しておるさなかで、まだ私どものところなり通産省にもそういった正式の立法作業についての御相談はない段階でございますから、御相談があった段階で、これは御案内のようにインフラについてはそう余り意見はないと私は思うけれども通信回線の問題とデータ処理の問題と二つが相関連しているところ、ここが厄介な問題ですから、平たく言えばVANの問題になるのじゃないかと思いますけれども、これらについてはもう少し政府部内において調整をして、そしてお約束どおりに今月の下旬までには法律案として国会に提案をさせていただきたい。したがって、今日の段階新聞等郵政意見は出ておりますけれども、そのままそういうことになるのかどうか、もう少し調整をさせていただきたい、かように考えております。
  17. 長田武士

    長田委員 VAN事業については、外資規制の問題についても郵政省通産省とは大きな食い違いがあるようであります。郵政大臣通産大臣からそれぞれ、この外資規制の問題についての御見解をひとつお答えをいただきたいと思っております。
  18. 奥田敬和

    奥田国務大臣 外資規制は最低限にしようという方向でやっておるわけでございます。今、外資規制云々の問題が起きるのは超大型VANに関する限りでございます。外国の企業我が国通信を完全に支配することを避ける最低の措置、緩やかな規制というものは最小限必要だろうと思っております。このことは、国の神経的な機能を有しておる通信分野我が国独立性自立性が損なわれないようにするといった面を配慮したものでございます。したがって、我が国としての主体的判断の余地を残せるように、一定の枠を設けることが必要ではなかろうかと思っておるわけです。  しかし、これは全くオンリーワン、たった一つで独占的なネットを形成して影響するところ大であるというときにだけある程度規制をしなければいかぬのじゃないか。しかし、ワン・オブ・セム、幾つかの競争原理が作用しておるような形になった場合においては、これらに関しての外資規制というものは全くなくしてもいいのではなかろうかというくらい、柔軟な対応措置でおるということでございます。したがって、この問題が、この外資規制をめぐって日米間の摩擦の問題になるということは、私たちはその点においては最大の配慮も考えておるところでございます。
  19. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 先ほども申し上げましたけれども民間活力と創意を生かす基盤をつくるという観点から、通産省といたしましては今部内で調整中でございます。外資の参入問題もこの中で十分検討していくということになると思います。
  20. 長田武士

    長田委員 この問題の最後に、ソフトウエアの保護について通産大臣と文部大臣お尋ねをいたします。  初めに文部大臣お尋ねをいたします。  ソフトウエア保護がアメリカでは著作権法の中で行われております。あるいは我が国の裁判所が、ソフトウエアの不正使用や無断複製についての民事裁判では著作権法を援用したということはあるようであります。しかし、保護立法の例を見てまいりますと、我が国を含めまして大半の国がまだ模索している段階だと聞いておるわけであります。したがいまして、じっくり研究してみる余地はありますが、私はソフトウエアがコンピューターの利用技術であるという点から言いますと、小説や音楽あるいは絵画などと同様に見ることは、ソフトウエアが現に産業の分野では独立企業として活躍している実態から見てまいりますと、どうも違和感が出てくるのじゃないか、このように考えるわけであります。その点については文部大臣、どうでしょうか。
  21. 森喜朗

    ○森国務大臣 お答えをいたします。  プログラムは、コンピューターに特定の機能を果たさせることができるために一連の命令をするものであります。先生御存じだと思いますので大変失礼でありますが、著作権法の第二条を読ませていただきますと、「(定義)」では、「この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」こういうふうに定義づけられております。したがいまして、今申し上げましたように、プログラムは人間の精神活動の直接的表現である。したがって、ここにもありますように学術的思想、創作的表現である。そういう意味で、私どもはプログラムは著作物であるという判断をいたしておりまして、この第二条にあります「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」中では学術の中に属するものである、こういうふうに判断をいたしております。  それで、最近では判決がございました三つの裁判、これも著作物であることも肯定いたしておりますし、昭和四十八年の著作権審議会第二小委員会の報告もこれに倣っております。それからアメリカや西ドイツ、フランス等の先進諸国も著作物としてこれを保護いたしておるわけでございます。したがいまして、プログラムの特性に見合った措置を講ずべきだという意見もございます。著作権審議会第六小委員会の報告をことしの一月に受けておりますので、その報告に沿った法改正をただいま検討いたしておるところでございます。
  22. 長田武士

    長田委員 通産大臣お尋ねをいたします。  ソフトウエアの権利を適切に保護していくことは、ソフトウエアの健全な発展を進める上で私は重要であろうと思います。しかしながら、通産省考えについては、アメリカから再三懸念が表明されておると伝えておるわけであります。  そこで、大臣はソフトウエア保護のあり方についてどのような点が重要とお考えであるか、この点についてお尋ねをいたします。
  23. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 長田委員十分御理解いただいていると思いますが、このことは我が国の産業経済活動に極めて密接な関係もあることでございますし、今後の情報化社会の進展につれて非常に重要なものになってくるわけでございます。  そこで、現在、昨年十二月の産構審の答申を踏まえて立法作業を進めているところでございますが、アメリカとも相互理解を十分深めていかなければならないという観点から、今さらに意見の交換を行っている最中でございます。
  24. 長田武士

    長田委員 今のソフトウエアの権利保護について、郵政大臣どういうお考えですか。
  25. 奥田敬和

    奥田国務大臣 ソフト保護はもう新しいメディア時代に絶対必要欠かすことのない権利保護だと思っております。しかし、これが通産省と文部省の間で目下調整されておる段階ですから、郵政大臣としては今見解を申すことは差し控えさせていただきたいと思っております。
  26. 長田武士

    長田委員 以上、私は項目を絞りましてVANについてお尋ねをいたしました。通信回線自由化をめぐる問題にせよ、あるいはソフトウエアの保護の問題につきましても、活発に論議が行われることは結構なことでありますけれども国民から見れば、どうも郵政と通産と縄張り争いをやっているんじゃないかな、そういう感じで目に映るのですね。そういう点で、私は、高度情報化社会を健全に発展させるためには民間活力を最大限に利用したらどうか、そして、対外経済関係に十分配慮しながら政府としてこの問題に前向きに取り組むべきである、そのように考えております。どうかひとつしっかりやっていただきたいと思っております。  それから、通産大臣、もう委員会の方へ行かれるようでありますから、一問だけお答えをいただきたいのであります。  大沢商会、中堅カメラメーカーのマミヤ光機がきのう事実上不渡りを出したようですね。倒産をいたしました。この二社は上場企業でありますし、取引先中小下請企業に与える影響というのは、私は非常に大きいように感じます。この倒産による影響をどのように見ておられるのか、お尋ねをいたします。  第二番目には、大沢商会、マミヤ光機の倒産において最も心配されておりますのは関連中小企業、下請企業等であるわけでありますが、通産省は連鎖倒産防止対策に全力を挙げるべきであります。どのような対策を講じるつもりなのか。不安に陥っておりますいわゆる下請企業等々のためにも、迅速かつ通産省としても前向きな手を打たなくてはならぬであろう、このように考えておりますが、この二点についてお尋ねをいたします。
  27. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 大沢商会の倒産につきましては、関連の中小企業の関係が四百九十七社もある、要するに、五十万以上の債権を有する中小企業者が五百近くある、東京都だけでも三百三十八社もあるという大変なものでございます。その他上場企業の倒産等も起きているわけでございますが、現在通産省といたしましては、二月二十九日の午後、既に大沢商会から東京通産局がヒアリングを行っておりますし、今後の対応といたしましては、例えば、倒産関連特例保証の迅速な適用であるとか、あるいは中小企業三機関の中小企業倒産対策貸付制度の積極的活用、さらには、倒産防止特別相談室及び中小企業体質強化資金制度の積極的な活用等を行ってまいる方針でございます。
  28. 長田武士

    長田委員 それでは、通産大臣、行管庁長官、それから真藤総裁、退席して結構であります。  次に、日本育英会の奨学金の問題について若干お尋ねいたします。  五十九年度予算では、日本育英会の奨学金に利子がつくという制度が二万人に限りまして導入されます。しかし、これは既に臨調答申に盛り込まれたもので、これを受けた形で、昨年六月二十八日、文部大臣の私的諮問機関であります育英奨学事業に関する調査研究会から、「今後における育英奨学事業の在り方について」という報告書も提出をされておるわけであります。  この報告書の中には、「育英奨学事業の量的拡充を図ろうとする場合、国の財政事情を」考慮する、中略、「一般会計以外からの資金の調達方法を考える必要がある。」中略、この場合、比較的低利であること等も考慮いたしまして、「財政投融資資金の活用についても検討すべきである。」とうたっております。     〔委員長退席、小渕(恵)委員長代理着席〕  教育の機会均等の確保という観点から、育英事業の量的拡充を図るために有利子奨学金の制度を認める答申を行ったわけであります。しかも、これは奨学金政策の大転換を意味することから、その意義は極めて大きいのであります。  我が国の公的育英制度は、日本育英会が昭和十八年から始めまして、既に四十年を経過いたしております。そして、五十八年度の末では奨学金の貸与総額は約九千六百四十億円であります。五十八年度単年度だけの貸与ですと約一千百億円、同年度で現に貸与を行っておる学生数は約四十万人、同年度に新たに貸与を行った学生は十二万七千人であります。しかし、この程度の奨学金制度では、欧米先進国に比べてまいりますと、はるかに格差がございます。  欧米では、大学生はできるだけ国で面倒を見ようという方針でございますし、例えばイギリスでは、大学はすべて私立てありますけれども、授業料は地方教育局が支払っておるわけであります。また、フランスや西ドイツの国立大学や州立大学でも授業料は徴収していないわけであります。しかも、その上に生活費の奨学金制度がありまして、それは貸与もありますが、主に給与として支給されております。イギリスではほぼ大学生全員が、西ドイツでは大体四割程度、さらにアメリカでも主として給与で支給されておりますし、大学生のほぼ半数がこの恩恵を受けておるわけであります。  このようにそれぞれの国情の違いはあるわけでありますが、我が国では、先ほど貸与を行っている学生数は約四十万人と申し上げましたけれども、これは大学生だけで見てまいりますと、一般貸与それから特別貸与合わせますと約二十四万人強であります。国公それから私立全体の大学生数は百八十二万人でございますから、大体一三%であります。このように我が国と欧米とを比べてまいりますと、非常に格差が激しいわけですね。  なお、大学生の数においては、西欧では同年齢人口の大体二割程度としておるそうでありますが、大学の門を広く開放しておりますアメリカと比べますと、やはりその格差というものが非常に目立ちます。  そこで、質問に移りたいのでありますけれども研究会報告では、育英事業の量的拡充を図るために有利子奨学金制度を導入するとしておりますが、量的拡充は図られたのかどうか。また、欧米並みに拡充を図るつもりがあるのかどうか、あわせて御答弁をいただきたいと思います。
  29. 森喜朗

    ○森国務大臣 育英奨学事業につきましては、今長田さんからお述べをいただきましたとおりでございます。従来は、政府の貸付金、一般会計からのものでございます。さらに卒業奨学生の返還金、これによってこの事業を行って、年々拡大はしてまいりました。しかし、御承知のように、高等教育を受けられる機会が非常に多くなってまいりましたし、奨学事業を充実しろというのもまた多くの国民の期待でもあるわけでございます。  そういう中で、量的拡大をしていくということになれば、どうしても今の財政状況を勘案しなければならないということ、また、今日の国民の経済力というものもやはり次第次第に上昇しておるということも考えますと、そういう中で改めていわゆる財投資金を投入して、それによって量的な拡大をしていくということで、改めて有利子制度を創設をいたしたわけであります。この結果、五十九年度におきましては、貸与人員は約一万一千人ふえておりますし、額におきましても六十五億増額をいたしておるということでございますので、育英事業の量的な拡大は、もちろん完全だとは申し上げられませんが、着々とその方向に向けて今努力をしつつあるというところでございます。
  30. 長田武士

    長田委員 五十九年度予算では、資金運用部から六十五億円の借り入れをしたわけでありますが、財投も含めまして九百二十七億二千万円、五十八年度予算では九百三億五千六百万円でありますから、五十九年度はわずか二十三億円しかふえてないのですね。これでは制度の拡充といったほどのものではないのじゃないかと私は思うのです。  ところで、話は変わりますが、有利子貸与と無利子貸与とは、二万人を予定しているようでありますけれども、どういう区分けをするのでしょうか。あるいは父兄の所得であるとか、あるいは学業の成績であるとか、そういうふうにして今貸与しておりますけれども、そういう線引き、ここらをどうするのか、この点、具体的な案を持っているのでしょうか。
  31. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 お答えいたします。  お尋ねは有利子貸与と無利子貸与の区分をどう考えておるのかというお尋ねでございますが、奨学生については、主として学業成績と家計収入の基準によって選考することになるわけでございます。具体的には、ただいま今国会で日本育英会法の改正をお願いしているわけでございまして、その法律の趣旨に沿いましてその法律が成立後正式には検討されることになるわけでございますが、ただいまのところ考えております具体的な点を申し上げますと、家計収入の限度額につきましては、給与所得世帯を例にとりますと、大学の無利子貸与につきましては、国公立大学で現行の四百七十二万から五百六十五万に引き上げる、私立大学では現行の五百二万から五百九十七万にそれぞれ改定をするというぐあいに考えております。なお、有利子貸与にありましては、さらにこれを百万円程度上回るところを給与所得世帯の収入の限度額というぐあいに考えておるわけでございます。  また、学業成績の基準でございますが、大学の場合には現行の一般貸与が高等学校の成績で平均三・二以上、特別貸与が平均三・五以上となっているわけでございまして、これらを考慮しながら無利子貸与、有利子貸与の基準と考えたい、かように考えております。
  32. 長田武士

    長田委員 日本育英会の奨学金を受けるためには、従来から父兄の所得基準がありまして、一定の所得以上の父兄の子弟は奨学金を受けることはできない、今局長がおっしゃったとおりであります。研究会報告でも指摘しておりますとおりに、所得の捕捉率が、トーゴーサンとかクロヨンとか言われるように、もともと課税の所得の問題があるわけであります。給与所得者の子弟とそれ以外の子弟では、奨学金の受給資格、これに私は不公平があるのではないかと思うのですね。そこで、五十九年度においてはこうした点を配慮した改正がなされるのかどうか、この点はどうでしょうか。
  33. 森喜朗

    ○森国務大臣 基準につきましては今大学局長からお話を申し上げたとおりでございます。したがいまして、給与世帯とその他の世帯との均衡というのはやはりこれは改善をしていかなければならぬと思っております。したがいまして、その点を考慮いたしまして、昭和五十七年度に児童手当に対しましてのいわゆる給与所得者との改正がございましたから、その点の例を勘案もいたしてみまして、五十九年度から一定額の給与所得控除を行いたいということで、具体的には現行百六十七万、これに五十万円の所得控除を増額をいたしまして二百十七万円、そういう調整をしていきたい、こう思っております。
  34. 長田武士

    長田委員 それから、現在在学中の学生全体のうちのサラリーマン世帯に属する学生の割合と、それから奨学金を受けている学生のうちサラリーマン世帯に属する学生の割合はそれぞれ何%くらいになっておりますか。
  35. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 大学生全体につきまして家庭の職業別構成を見てみますと、給与所得世帯が六八%、商業、農業等の個人業種世帯が三二%という構成でございます。  なお、育英会の奨学生の場合は、給与所得世帯が六四%、商業、農業等の個人業種世帯が三六%ということになっておりまして、大学生全体の場合に比べますと、給与所得世帯の割合が若干低くなっているというのが現状でございます。
  36. 長田武士

    長田委員 今御説明ありましたとおり、サラリーマン世帯の奨学生の割合は、学生全体のサラリーマン世帯に属する学生の割合よりも少ないわけであります。つまり、奨学金を受ける機会がサラリーマン世帯に不利になっておるというのもこの数字を見ていただければ一目瞭然であります。  次に、文部大臣のところに資料行ってますか。——行ってますね。その資料をひとつ見ていただきたいと思います。  この表は、総理府統計局が五年ごとに行っております調査で、ことしも行われるはずでありますがまだ発表しておりませんので、したがいまして、古いようでありますけれども、五十四年の調査のものを使ったわけであります。この調査の中から、高校生や大学生のいる勤労世帯の家計がどのようになっているかということが一目瞭然であります。ごらんのように大学生を抱えている勤労世帯の家計はすべてマイナスであります。可処分所得よりも消費支出の方が多いために、金融資産は減っているのがこれで明らかであります。平均消費性向が一〇〇を超えているわけであります。これらの学生を抱えておりますところの世帯主は、ここに年齢のところがございますけれども、四十歳台後半から五十歳台前半でありますが、消費支出だけでマイナスなのは住宅ローンがあることから貯蓄がマイナスになるわけであります。そうして、大学生のいる世帯の年間収入を見ていただきたいのでありますが、すべて五百四十万以上となっております。日本育英会が五十四年に定めました父兄の所得基準、最高額五百二十三万円、もう既にこれは突破いたしております。したがいまして、奨学金を受けたくても受けられないというのがこの表を見ていただければその実態であります。  大臣、国のサービスや福祉の関係で所得基準を設けているものは奨学金だけでは実はないのですね。数多くあります。ホームヘルパーであるとか、あるいは寝たきり老人の短期保養事業、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホームなど、すべて所得によって有料になったり無料になったり、あるいは所得によって料金の段階が設けられておるわけであります。こうしたことから、サラリーマン世帯の人たちからは、車を二台持っているような人が無料で寝たきりの老人を面倒見てもらっておるのに、うちの老人は施設にも入れない、そういうような話を私はよく耳にいたします。  児童手当も先ほど大臣がおっしゃったとおりです。年収三百九十一万九千円以上の所得がありますと児童手当が出ないということでは、サラリーマンとそうでない人では不公平が出てまいります。そこで、五十七年六月から三百九十一万九千円を超えても、五百七十万円までの人であれば、特例給付ということでサラリーマンだけは別に考えるということになったわけであります。こうした制度が国によって初めて認められたわけでありますが、これは国がクロヨンの存在を公式に認めた処置であろうと私は考えます。  ですから、大臣、どうかひとつ、児童手当に続いて奨学金についても、サラリーマンが不当な差別をされない、そういう措置をぜひ講じていただきたい。この点について大臣の率直な御見解をお尋ねをいたします。
  37. 森喜朗

    ○森国務大臣 先ほども申し上げましたように、高等教育を受ける機会がだんだん増加もしてまいりますし、それから、いわゆる国公立と私立との差も出てまいりますし、また、今おっしゃったように、家庭の給与所得、その他の所得についてのバランスもございますので、そういうこともいろいろ考えまして、もうちょっと奨学事業を大きくしていこうということで、今度の新しい有利子貸与制というものを導入したわけであります。ことしがスタートになるわけでありますが、この国会でも法案をお願いをして、将来ともにこれをさらに伸ばしていきたい。同時に、この新しい財投からの導入による有利子貸与制もふやしてまいりますと同時に今まで年次逐次奨学事業というものは発展をしてまいりました。その奨学生の返還金というものもこれから次第次第にふえてまいりますので、その辺のことも加味しながら、長田先生御心配のように、できるだけみんなが高等教育あるいはまた高等学校教育を受けられるように、政府としても最善の努力を払っていきたい、このように考えております。
  38. 長田武士

    長田委員 これも大臣にお願いしたいわけでありますが、この資料は行っていますか、物価指数の。行ってませんか。では、これをちょっとごらんになってください。  今大臣に資料をお渡し申し上げましたが、奨学金の貸与の状況を見てまいりますと、例えば大学生を例に見ますと、国公立大学の学生は全体の二五%近くの数——その資料は、この次に質問しますから。学生全体の二五%、つまり四人に一人が奨学金を国公立の学生は実は受けております。ところが、私立大学の学生は十人に一人しか奨学金を受けていないというのが実態なんですね。これも私は大変不公平な話であろうと考えます。そしてまた、お手元に差し上げました総理府統計局から出されました五十四年の全国消費実態調査によるものでありますが、私立大学の学生を抱えている世帯の教育費や教育関係費は、国立大学の学生に比べて非常に高いのですね。私は、こうした実態というものを十分配慮していただいて奨学金制度の貸与配分、これを考えていただきたいということであります。これもやはり官民格差といいますか、こういう点が明らかであります。  授業料に対しましては、ことし国立大学が引き上げられます。しかし、私立大学と比べますとまだ半分です。国立大学の学生の父兄が私立の父兄よりも所得が少ないということはどうもないようなんですね。ある調査によりますと、東大の学生の父兄の所得は六百万円を超えているということでありますから、ぜひとも私立大学の学生に不当な差別をしないようにしていただきたい。この点について大臣いかがでしょう。
  39. 森喜朗

    ○森国務大臣 先ほども申し上げましたように、高等教育の機会というのは年々増大をいたしておりまして、どちらかといいますと、私学の学生がふえておるということは事実でありまして、従来の奨学事業の枠の中ではなかなか、私学がふえてまいりますことについての対応がおくれたことは、これは率直な実態でございます。  したがいまして、こうした状況をできるだけ緩和していきたいといいましょうか、解消していきたいということに考えまして、今度の無利子貸与制度については貸与人員を九千人減員することになっておりますけれども、新しい有利子貸与制度の中では、国公立の場合は五千人、私立の場合は一万五千人というふうにして、バランスをできるだけ私立にウエートを置いてやっております。いずれこれが学年進行、完成してまいりますと、六十四年度あたりでは私立大学の貸与人員については四万四千人増加させるということになってまいります。このようにして、私学の皆さんの負担というのは大変大きいわけでございますので、十分改善をしていきたいと思っておりますし、私自身も私学の出身でありますから、できるだけ私学を大事にしていきたい、こう思っております。     〔小渕(恵)委員長代理退席、委員長着席〕
  40. 長田武士

    長田委員 文部大臣に参考のために申し上げたいのでありますが、今資料をお渡ししました消費者物価指数の十大品目の中に、教育費は五十八年十二月の指数では一二一・一とワーストナンバーワンであります。総合指数が十二月で一一〇・三%ですから、いかに教育費の上昇が激しいかということはその表を見ていただければおわかりのとおりであります。しかも、教育費は昭和四十八年度から五十三年度まで六年間二けた上昇を続けております。その後一けたになったわけでありますが、依然として上昇を続けております。  今申し上げましたとおり、教育費は物価指数中ワーストナンバーワン、この数字はたしかそのとおりでございまして、いかに学生を抱える家庭というものが、その占める比重というのが大きいかというのは、その表を見ていただければおわかりのとおりであります。どうかひとつその点を十分配慮していただければと思っております。  もう一度文部大臣にぜひお願いしたいことがございます。間もなく春が参りまして、転勤シーズンを迎えます。父親の転勤に伴いまして家族も一緒に移るというのが正常な姿でありますが、子供の学校の関係から単身赴任することも非常に多くなってきておるというのが実態であります。  先日もこうした問題で行政管理庁行政監察結果を報告し、いろいろ指摘したわけでありますが、中学生までの義務教育の子供ならすぐに転校の手続がとれる、高校になりますとなかなかそうはいかない、難しい面も出てきているようであります。  例えば、公立高校については、一、二年生の三学期は受け入れないとか、三年生の二学期は受け入れない、あるいは一年生の一学期の期首には受け入れないとする高校が非常に多いようであります。そのために、単身赴任で別世帯を強いられ、大変な費用が余計にかかるという、サラリーマン世帯にとっては大きな負担となっておる現状でございます。この問題は、せめて一学期、二学期、三学期と、各学期末ごとに転入学の手続ができるように、そういうような制度ができれば解決できるのではないか、私はこのように考えております。  そこで、大臣に、ぜひともそういったことができるような何らかの処置をひとつ講じていただきたい、こう考えますが、大臣、いかがでしょうか。
  41. 森喜朗

    ○森国務大臣 長田先生御指摘のとおりでございまして、日本の産業の発展に伴いまして、確かにこうした教育上にも大変不均衡な状態になっておりますし、あるいはまた、国鉄では、春には単身赴任用の特別列車を仕立てるなんという、これはやはり日本の経済の状況で必ずしも正常な社会の状況ではないというふうに、教育上もやはりこれはゆゆしいことだと私は考えております。こんなこともやはり考えて、日本の教育全般もこの際一度見直してみなければならぬというようなことが、この予算委員会でもいろいろと議論の出たところでございます。  転勤者のための高校転学手続につきましては、従来も都道府県を指導してまいりましたが、先生御指摘のとおり、必ずしもすべてがうまくいっているという状況でもございません。たまたま昨日、一日に、初等中等教育局長の通知でさらに各都道府県教育委員会、そしてまた各都道府県知事に対しまして、「保護者の転勤に伴う高等学校生徒の転入学の許可等の取り扱いについて」ということで、四項目にわたりまして、先生今御指摘のようなことも含みながら改善をするように指導を強めてまいりたい。きのうその通知をいたしたばかりでございます。  時間が限られておりますから、中身はもし必要でございましたら、事務当局からでも御説明申し上げますが、文部省としても積極的にその改善をしていきたいと考えております。
  42. 長田武士

    長田委員 以上、文部大臣終わりましたので、退席して結構であります。  厚生大臣、長い間お待たせをいたしました。先ほど文部大臣に、奨学金を受ける場合の父兄の所得制限に関する問題について質問を申し上げました。その質問と同趣旨でありますけれども、厚生省関係の福祉施設を見てまいりましても、所得によって無料になったり有料になったり、あるいは有料でも料金が所得によって段階がある現状であります。今国会で問題となっております児童扶養手当についても、例えば別れた夫の所得によって支給されるか否かを決めようとしておるわけですね。福祉年金もそうですが、例えば老齢福祉年金は、二人世帯の場合は二百四十八万円以上の収入がありますともらえない。六人世帯では六百万円以上八百七十六万円未満の場合は月額二万五千百円を二万三千三百円に減らすというふうになっていますね。ホームヘルパーにいたしましても、五十七年十月からは、所得要件の撤廃はしたものの、所得によって一時間五百八十円を払いあるいはその半分とか無料になったりするわけであります。また、老人ホームなども所得によって料金はばらばらであります。児童手当については、五十七年六月、先ほども申し上げましたけれども、サラリーマンに対しましては特別配慮がなされております。  徴税の面で不公平があることは、先日来新聞等でも取り上げられておるとおりで、厳然たる事実であります。ですから、せめて国や地方公共団体の行うサービスの面で二重の不公平が起こらないような配慮をぜひしていただきたい、このように、私は考えております。サラリーマンとそうでない、クロヨンの関係、その点をどうかひとつ配慮していただきたい。厚生大臣、どうかひとつ勇気ある答弁をやってください。
  43. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 児童手当についてお褒めをちょうだいしたのでありますけれども、これは行政改革の際に行われた所得制限の強化によって大幅にサラリーマン受給者が減少するということが予想されましたので、その激変を緩和する臨時応急の処置として、全額事業主負担によっていまお褒めをいただいたような処置をとったわけであります。したがって、これを国庫負担によるところのその他の手当にそのまますぐに横並びに適用させるということには、これはいろいろな問題があるかと思います。しかし、今お話しのように実態に即して弾力的処置をとっていくというのも、政治にとって極めて大事な問題であります。御指摘の問題は大変貴重な御意見でございますので、重ねてこれを検討してまいりたいと思います。
  44. 長田武士

    長田委員 厚生大臣、もう結構です。  次に、河本長官お尋ねいたします。  今回の減税について、見返り増税をするならば減税をやめるべきである、増税によって減税をするのは経済的に意味がない、こう言われたそうであります。そうして自民党や大蔵大臣に六十年度にも大型減税を実施するよう申し入れた。私たち、河本長官の高い見識に非常に敬意を表するわけであります。  そこで、話は変わりますが、八三年のアメリカの景気回復は予想を超えるものであります。すなわち、八二年のマイナス一・九%から八三年には三・三%の成長をなし遂げまして、八四年度は恐らく五%程度の成長が続くだろうと実は言われております。その原動力となったものは、個人消費とどうも住宅建設が進んでおる状況のようであります。このように個人消費や住宅建設が回復したのは、レーガン大統領の大減税がその主な原因ではなかろうかと言われております。当初大統領は、減税によって貯蓄をふやして、それが企業の設備投資となってあらわれる、こういうことを期待しておったようでありますけれども、ねらいは違っても景気は確実に回復をしておるようであります。レーガン大統領の減税は、その後に増税もやりましたけれども、差し引きしますとやはり大幅な減税をやっていますね。例えば、八四年度の減税額は五百四十億ドル、これは私の計算によりますと、アメリカの同年度のGNPと換算しますと、割ってまいりますと、一・四八%に当たります。さらに、歳出予算に対しまして、これは六・三二%に当たります。このような大規模のいわゆる減税でありました。  これを我が国に当てはめてまいりますと、私、計算してみるのでありますが、二百九十六兆でございますから、この一・四八%というのは約四兆四千億円、歳出予算が五十兆六千二百七十二億円、これの六・三二%でありますから、約三兆二千億円という規模に当たるわけであります。  そこで、景気回復のためには、景気回復に役立つ減税というならばやはりこのくらいの規模の減税を実行しないとその効果はなかろう、このように私たちは考えておるのでありますけれども長官の御意見をひとつお伺いしたいと思っております。
  45. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 景気浮揚に本当に役立つ減税ということになりますと、今の経済の規模は約三百兆という大きさでございますから、相当大規模な減税が必要であると思います。五十九年度の増減税は、いろいろな経過がございますので、私はああいう内容で万やむを得ない、こう思っておりますが、しかしできるだけ早く税体系を抜本的に見直すというその過程におきまして、もう一回減税問題を検討してもらいたいということをしばしば申し上げておりますが、大蔵大臣あるいは自由民主党の政策責任者に提案をいたしまして、今検討していただいておるというのが現状でございます。
  46. 長田武士

    長田委員 長官、きのう野党四党が予算の修正の提案をいたしました。これは五項目からなる減税を中心といたしました対策が盛り込まれております。この減税については四千三百億円の上積みを要求しておりますけれども、河本長官、この点については御意見はどうでしょうか。
  47. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 四千三百億の減税を増加するということは、景気回復という観点から見ますと、私は余り意味がないのではないか、こう思います。
  48. 長田武士

    長田委員 やはり、もうちょっと大規模がいいという意味ですね。
  49. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 景気回復という観点からいえば、けたが一つ違っておる、こういう感じがいたします。
  50. 長田武士

    長田委員 私も同感であります。  次に、経済摩擦と為替レートの問題について長官お尋ねをいたします。一九八〇年ないし八一年ごろからドルは非常に高くなってきましたね。円に対してはもちろん、特にヨーロッパ通貨に対して非常に高くなってきておるわけであります。アメリカの国際収支の大幅な赤字は、こうしたドル高によってアメリカ製品が国際競争力を失っていく、こういう図式だろうと私は考えております。そのほか南米あたりの超過債務国がアメリカからの輸入を抑えておる、そしてアメリカの国際収支が赤字を大きくしておる、これも原因のようであります。このドル高の背景にはアメリカの高金利が原因であるというのが通説のようであります。そしてこの高金利の背景にはアメリカの大幅な財政赤字があるというのも通説ではないかと思います。先日発表されましたアメリカの予算教書によりますと二千億ドルにも近い財政赤字、これは当分続くであろうという見方をしておるようであります。  そこで、河本長官は以前から、こうしたアメリカの高金利を諸悪の根源である、このように言われて、私も質問したときに随分言われましたけれども、アメリカのこの高金利がいつごろまで続くのか。経企庁長官、見通しとしてはどうですか。
  51. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これは今、日銀総裁がお見えでございますから、日銀総裁からお聞きになれば正確な答弁がいただけるのではないかと思いますが、私に対する御質問でございますから若干申し上げますと、私は今のアメリカの物価水準から見ますと、アメリカの金利はもっともっと下がってしかるべきだ、このように思います。しかし財政赤字が御指摘のように大変大きい、そういうことから金利が高い水準にある、こういうことでございまして、しばらくの間一進一退という状態が続くのではないか、こう思っております。私どもの期待するような大幅な金利の低下ということは急には来ないのではないか、残念ながらそういうような展望を持っております。
  52. 長田武士

    長田委員 日銀総裁、お考えをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  53. 前川春雄

    ○前川参考人 今、河本長官からお話がありましたとおりだというふうに思います。  大副な財政赤字が続くということに対しましては、アメリカの議会筋にも、このまま放置しておくことは適当でないという認識も生まれつつあるようでございます。ただ、何さま選挙を控えておるわけでございますから、これからの動き、動向がどういうふうになりますか、なかなか予断を許さないわけでございますけれども、もし財政赤字を放任するべきでないということから何らかの手が打たれるということならば、金利に対してもいい影響があるであろうということは当然予想されるわけでございます。ただ、そこまでの認識にアメリカ側の議会筋が同意するかどうか、この辺は何分非常に政治絡みのことでございますから何とも申し上げられないわけでございますが、そういう段階にあるというふうに思っております。
  54. 長田武士

    長田委員 昨年暮れあたりから、ヨーロッパを中心にいたしまして、ドルの急落が近いのじゃないかという予測とも願望ともつかない、そういう声が高まっておるわけであります。アメリカの経常収支の大赤字と昨今の景気のスローダウン、この兆しは確かにドル高修正を示唆しているようにも思われますが、去る二月十五日に開かれました日本とECとの高級事務レベル協議の場でEC側からもドルが急落するおそれがある、だから日本は早く黒字減らしを急いだ方がいいのじゃないかというような話もあったようであります。また、二月十七日の日経新聞によりますと、我が国の外為市場がドルの急落説におびえておるということも報道されております。さらにことしに入りましてから、円相場が一ドル二百三十三円ぐらいに日本も安定していますね、余り変動していない。これはドルの下落する前兆ではなかろうかという説も実はあります。最近、マグマ理論というのを耳にいたします。つまり、経常収支が大副な赤字なのにドルが高いということは不自然だから、経常赤字が拡大するにつれてドルの下落圧力が地下のマグマのように蓄積されて、それがやがて大暴落となって爆発するというような意味のようであります。  ところで、この数日来ドルの動きを見てまいりますと、ニューヨーク市場でもヨーロッパ市場でもドルの急落が目立つということが伝えられておるわけであります。ただ、日本の円に対しては二百三十三円ぐらいで落ちついておりまして、余り動きがないようでありますが、ヨーロッパ通貨がいち早くドル離れあるいは金利離れを起こしておるというような様子でありますが、日本円がこれに続くようなことがあればドルの一層の急落が起こるかもしれない、このように考えられるわけであります。昨年までは、日本からもヨーロッパからも大量に資本がアメリカに流れ込んでおりました。もともと資本移動というものは市場心理によって瞬時に変わる、そういう傾向が非常に強いわけでありますから、このうわさというのは非常に不気味であろうと私は考えます。  河本長官及び日銀総裁、お立場上この問題については発言しにくいとは思いますけれども、どうかひとつ所感をお述べいただきたい、このように考えております。
  55. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ヨーロッパを震源地にしまして、今お話しのドルの急落説あるいは暴落説がここしばらく出ておりますが、現在世界情勢を見ますと、安定した投資先としましてはアメリカ以外はそんなに大きな資金量を受け入れる国がないということもございますし、それから最近のヨーロッパ通貨に対するドルの低下は、ヨーロッパの経済が今急速に回復の方向に行っておる、そういうこともございますし、それから過去、ここしばらくの間、ヨーロッパ通貨が特にドルに対して弱含みであった、非常に下落しておった、こういうこともありまして、その修正の傾向であろう、このように思います。  為替問題については軽々なことは言えませんけれども、ドルの暴落説というようなことはまず今のところはないのではないか、このように日本としては判断してしかるべきではなかろうか、私はこう思っております。
  56. 前川春雄

    ○前川参考人 これまた、河本長官のおっしゃるとおりであろうというふうに思います。  ドル高が非常に続いておるということの背景には、今お話がございましたような高金利があるわけでございます。ただ一方、非常に大幅な国際収支の経常勘定の赤字が出ておる。これだけ大きな赤字が出ていると、なかなかそのドルがいつまでも強い状態ではないのじゃないかという一般的な見方がヨーロッパを中心に広がりつつあるわけでございます。時あたかも、ヨーロッパ通貨が今戻しつつあるということがドル安によるのか、あるいは今もお話がございましたヨーロッパ通貨が行き過ぎた下落を示しておりましたものの行き過ぎの修正であると見るべきか、この辺のところはいろいろ意見も分かれておりますが、恐らく両方であろうかというふうに思います。世界経済の全体の交易状況等から見まして、今のドル高が若干修正されるということは望ましいことであろうというふうに思いますが、その修正が急激に起こりますと、世界の貿易にも非常に悪影響がある、あるいはアメリカにとっても物価が上昇するということがございますので、この急激なドルの暴落が起こるということは決して望ましいことではないというふうに思います。  現状で判断いたします限り、アメリカの経済は着実な回復を示しております。また、物価もかなり落ちついてきておるという状況にございますので、そういう経済的な状況から申しますれば、ドルが暴落するということは今の段階ではなかなか考えにくい、また、暴落することは望ましいことではないというふうに考えております。
  57. 長田武士

    長田委員 それでは、日銀総裁にもう一度お尋ねしたいのでありますけれども、金利の問題であります。  我が国の公定歩合は、昨年十月の二十二日に一年十カ月ぶりで引き下げられたわけであります。五十五年春以来不況で、金利を下げたくても為替レートの問題等でなかなかそれが実行できなかったというのが実情だろうと思います。  しかし、私、まだ金利の値下げの部分は不十分であろうというふうに考えております。中小企業の倒産は、件数でも昨年新記録でありましたし、ことし一月もまた新記録を生みました。また、消費者物価が二%に下がりまして、卸売物価は前年比ではマイナスという時代に入っております。実質金利が高くて、企業はお金を借りても設備投資になかなか回らないというのが実態だろうと考えます。住宅建設にしてもやはり同じであります。ですから、こうした状況では内需の振興というのはなかなかうまくいかないのじゃないか、そういうことを私は感ずるわけであります。また、今申し上げましたとおり、アメリカの高金利が我が国の金融政策でどうも障害になっておるということも事実であります。  しかしながら、財政が赤字で公共事業もふやせない、こういう時期に、金利の引き下げによって重要政策としていかない限り民間活力はなかなか出てこないであろう、そういう感を私は強く持っております。そういう意味で、現状において金利の引き下げの余地はあるのかどうか、また考えられているのかどうか、この点についてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  58. 前川春雄

    ○前川参考人 公定歩合につきましては、現在、私ども具体的な検討をしておるわけではございませんので、一般論としてお答え申し上げたいと思います。  今お話がございましたように、物価が安定しておる、あるいは円相場も昨年の十月ごろから安定した状態にある、したがって、そういう点から考えて公定歩合を引き下げたらいいであろうというような議論があることは承知しております。また、その二つの点だけを考えますれば、公定歩合を引き下げる余地があるということは言えるのではないかというふうに思います。  ただ、一方、今の日本の金利水準自体をとって考えますると、これは世界の公定歩合の金利水準から申しますると一番低い、最低ではございませんけれども、最低から二番目ぐらいのところで、最も低い部類に入っておるわけでございます。しかも、国内では私ども金融政策上、金融緩和政策をとっておりまするが、その緩和状況というのはかなり浸透しておる。最近のマネーサプライの状況から申しましても、金融緩和が浸透しておるということは十分あらわれておるというふうに思っております。  また、為替の問題。円相場はこのところ安定した推移をたどっておりまするが、先ほどもお話がございましたように為替市場には極めて不安定な要素がいろいろあるわけでございまして、そういう点から申しますると、ここでもう相場自身が完全に安定したというふうにもなかなか言い切れない。  そういういろいろの点をあわせ考えまして、毎々申し上げておるわけでございまするけれども、景気の状況、物価、為替等を総合的な判断をした上で決断をすべきものであろうというふうに考えております。また、私ども自身も今申し上げたような観点から対応してまいりたいというふうに考えております。
  59. 長田武士

    長田委員 長官と総裁、もうお引き取りいただいて結構でございます。  時間が少々残っておりますので、最後に下請代金支払遅延等防止法についてお尋ねをいたします。  この法律は、親企業が優越的な立場を利用いたしまして下請企業を圧迫することから下請企業の利益を保護するために設けられたものであることは御承知のとおりであります。この下請法は昭和三十一年に公布されたわけでありますが、それ以来今日まで、法律が規制の対象としてるのは製造委託それから修理委託の二つであります。この点に関しまして昭和四十年の下請法の改正の際の衆議院商工委員会の附帯決議では、「下請取引の範囲の拡張については、」「運搬、土建等も、その実態に即して適用するよう速やかに検討すること。」としております。また、昭和四十八年の中小企業基本法の改正の際にも附帯決議で、下請取引の範囲の拡張について、規制対象から除外される下請関係についても「十分対処すること。」と、その必要性をうたっておるわけであります。  そこで、こうした規制対象の範囲拡大に対して公正取引委員会はどのように現在まで対処してこられたのか、まずお尋ねをいたします。
  60. 妹尾明

    ○妹尾政府委員 お答えいたします。  先生御案内のとおり、昭和四十年に下請法改正の際に衆議院の商工委員会におきまして御案内のような附帯決議がなされたわけでございますが、それを受けまして、私どもの方では、建設業につきましては、昭和四十三年から四十五年にかけまして三回にわたりまして一般的な調査を行い、実態の把握に努めたところでございます。その後、昭和四十六年に建設業法が改正されまして、各都道府県に建設業の下請取引に関する紛争を処理する審査会が設けられておりまして行政指導がなされているわけですが、特に悪質のものにつきましては、建設省なり都道府県から私どもの方に対しまして独禁法に基づく措置をとるよう要請される手続が設けられております。私どもの方もこれを受けまして、四十七年の四月に「建設業の下請取引に関する不公正な取引方法の認定基準」を作成、公表をいたしまして、これに対応いたしてまいったわけでございます。なお、その後五十四年に、その後の状況をフォローする趣旨で一般的な調査もいたしております。  それから、運輸業につきましても、これは四十五年から五十年にかけまして、四つの業種につきましてやはり同様の一般的な調査を実施いたしまして実態の把握に努めたわけでございますが、当時の状況におきましては、大手の業者が中小の運送業者を下請取引として利用する、こういう形は余り一般的には認められなかったようでございます。  ただ、御案内のように独占禁止法には、取引上優越的な地位にある業者がその地位を利用して取引相手に不当に不利益な条件で取引をするたぐいの行為につきましては不公正な取引方法として禁止されておりますので、これに該当するような問題がありました場合にはしかるべく適切な措置をいたすようにしてきておるところでございます。
  61. 長田武士

    長田委員 運輸省、来ていますか。  附帯決議では、運輸については規制対象に加えるべきだとしておるわけでありますが、去る二月十七日の当委員会でも我が党の同僚議員が下請運輸業者の置かれた厳しい状況を取り上げております。それによりますと、中小の運輸業者は荷主から運輸省の認可運賃の七〇%しか支払いを受けていないということであります。中でも、荷主が自分の会社の運輸部門を独立させ子会社をつくり、荷主と子会社の間の運賃は正常なのに、子会社の下請運輸業には認可運賃の約七〇%程度しか支払っていないというのが実情であります。また、スーパー等の物資の輸送を下請的に行っている中小運輸業者も厳しい条件下にあるものがふえておると言われております。さらに、大手荷主が中小運輸業者に特別に輸送のための改造車をつくらせながら仕事をほとんど出さなかったりあるいはキャンセルをするといった例も実はあるわけであります。  そこで運輸省にお聞きしたいのでありますけれども、荷主が新しく子会社をつくり、下請運輸業者に許可料金を下回る額を支払ったり、あるいは大手の運輸業者が中小の下請運輸業者に対しまして厳しい取引条件を押しつける等々の問題、こういう問題が事実上あるわけでありますけれども、現行の道路運送法では規制できるのかどうか、この点をお尋ねいたします。
  62. 角田達郎

    ○角田政府委員 先生の御質問、二点あると思いますが、第一点の運輸省が認可をしております認可運賃が、いわゆる物流子会社、道路運送法でいいますと自動車運送取扱事業者になりますが、これに及ぶのかどうかという問題が一点だと思います。  この問題につきましては、先般の当委員会におきましても答弁いたしましたように、本当の荷主から物流子会社、法律上の自動車運送取扱事業者が受け取る運賃はこれは認可運賃でなければなりません。ただし、そこから実際に物を運ぶトラック業者に取扱事業者が運送を依頼しますときに支払う運賃、これには認可運賃は法律上働かない、こういう建前になっております。  それからもう一点、そういう物流子会社とかなんとかということではなくて、大手の荷主がトラック事業者に認可運賃を払わないで非常に安い運賃でしか仕事を委託しない、確かにこういうような場合がございます。  先ほど先生おっしゃいましたように、私どもが調査しました運賃の収受の状況、これは五十七年くらいに調査したわけでございますが、大体七十数%程度の収受率でございまして、非常に遺憾に思っておるわけでございます。この点につきましては、私どもとしては荷主の団体あるいは荷主の所管官庁にいろいろと御依頼申し上げ、私どもが認可しておる運賃をできるだけ支払っていただくようにというお願いをしておりますし、いろいろな荷主懇談会等も各地で設けまして運賃についての御理解を深めておる、こういう状況でございます。
  63. 長田武士

    長田委員 最後に、公取にお尋ねをいたします。  先ほど、昭和四十六年に運輸業に対する下請実態調査を行ったというお話でありましたが、それは二当事者間の委託、それから受託関係について調査したものなのですね。したがいまして、今日のように荷主が子会社をつくりまして、そしてその子会社と下請中小運輸業者という新しい関係、この実態調査はやってないのですね。こういう関係まできちっと調査しませんと、この実態は明らかにならないと私は思っておるのです。  先ほど申し上げましたとおり、二月十七日、我が党の同僚議員の、運輸業に関する優越的地位の乱用に関する質問に対しまして、公取委員長は、個別的問題なのでと言いながらも、一般論としては問題があるようだと答弁されておるわけであります。  そこで、こうした運輸業における下請実態は独禁法または下請法で前向きに検討する考えはないのかどうか、この点についてお尋ねをしまして、終わりたいと思っております。
  64. 倉成正

    倉成委員長 公正取引委員会妹尾事務局長。簡単にお答え願います。
  65. 妹尾明

    ○妹尾政府委員 先ほど御案内申し上げましたように、取引上優越した地位にある業者が、その地位を利用して取引の相手方に対して不当に不利益な条件で取引をするようなことは、独占禁止法上、不公正な取引方法に当たるわけでございまして、運輸業におきましてもそういう問題を生じないよう今後十分実情を注視いたしてまいりたい、こういうふうに思います。
  66. 長田武士

    長田委員 終わります。
  67. 倉成正

    倉成委員長 これにて長田君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  68. 川俣健二郎

    ○川俣委員 全国的に豪雪に苦しめられておるわけです。したがって、ほんの短時間ですから、各大臣はそれぞれの委員会が開かれておるので恐縮でございますが、あらゆる官庁に影響する代物でございまして、何とか二十分くらいおつき合い願いたいと思っておるのです。  その前に、けさの一斉に報道されておる「現職警部補が銀行強盗」、これも随分このごろショッキングな事件ばかり起きるのですが、さきには自衛官が射撃訓練中に的の方から回れ右して上官の方に撃ったというショッキングな事件。それから、けさでしたか、シンナーを吸っている子供が警察の車を盗んで、突っ走って逃げ回って、自殺した。  ところが、現職警部補が銀行強盗。これはたまたまかもしれませんが、兵庫県は昨年も遊技機賭博の取り締まりをめぐる汚職事件で世を騒がせたのでございます。非常にショッキングであるだけに、国家公安委員長なりあるいは警察庁当局に見解なり所見を伺って、本論に入りたいと思います。これは一問でございますので、どうか……。
  69. 太田壽郎

    ○太田政府委員 警察官が銀行強盗事件の被疑者として逮捕されるという不祥事案を引き起こしまして、まことに遺憾に存じておるところでございます。  事案の概要は、兵庫県警察本部自動車警ら隊の警部補、永田公志が、三月一日午後二時四十三分ごろでございますが、大阪市南区所在の泉州銀行の難波支店に客を装いまして侵入いたしまして、同銀行の預金課長のわき腹に模造けん銃を突きつけて脅迫し、現金一千万円を強奪して逃走いたしましたが、約百五十メートル離れた道路上において取り押さえられたという事案でございます。  犯行の動機等については目下取り調べ中でございますが、住宅ローンの返済等に窮しこれを企てたというような供述もいたしております。今後さらに背景、動機等を早急に糾明して所要の措置を講ずるよう、対策に力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。  ただいまお話がございましたように兵庫県警におきましては、昨年、遊技機賭博の取り締まりをめぐりましての汚職事件並びに虚偽公文書作成事件を契機にいたしまして、規律刷新特別委員会というものを発足させまして、監察体制、職業倫理の充実、身上把握の徹底というようなことについていろいろ手を尽くしてきたところでございます。しかしながら、今このような事件の再発を見たということで、改めてこの種の問題につきまして、単に兵庫県警のみならず、全国警察の問題としてこの種の事故防止対策というものを徹底してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  70. 田川誠一

    ○田川国務大臣 犯罪を取り締まるべき立場の者がこうした犯罪を犯し、しかも警察の中級幹部であるということでありまして、全く言語道断でございます。国家公安委員長といたしましても大変残念なことであると思います。けさ、警察庁長官に対しまして、今後厳しく警察官の生活指導などをやっていくように、また、責任体制を明確にしていくように、私から申しておきました。今、官房長が言われましたように、犯罪の動機や詳しい事情を聞いた後に、警察官に対する指導について万全を期していくつもりでございます。一般の警察官に対してこれほど大きなショックを与えた事件は最近ちょっとないと思いますが、こういう事件が起こったために警察官の士気が低下しないように配慮をしてやっていきたいと思っております。
  71. 川俣健二郎

    ○川俣委員 せっかく張り切って、期待されて登壇した田川大臣ですが、次々とこういうようにショッキングな、しかも警察当局、現職、かなりの上役、こういうことでありますので、何とか十分に対策考えられるよう期待します。     〔委員長退席、小渕(恵)委員長代理着席〕  そこで、通告の豪雪の問題です。この東京都にも何年かぶりでこういう雪が降ったわけですが、しかしながら、もう忘れたように東京では春の兆しである。ところが、まだきのうあたりは東海道新幹線——東海道新幹線というのは雪に弱いんだね。鈴鹿峠でひっかかっておったり、あるいは雪国の秋田ではアーケードをつぶす。四、五十メーター鉄骨のアーケードがきのう崩壊した、こういうことで高校生四人が重軽傷というのが報道されておるわけです。  時間がないのですけれども、消防庁ですか、簡単に被害状況を報告してみてくれませんか。
  72. 砂子田隆

    ○砂子田政府委員 今冬の豪雪による被害状況についてお答えを申し上げます。  今冬の降雪では、十一月以降断続的に降り続く雪によりまして日本海側を中心として二十数県にわたって被害を生じております。昨日、三月一日の午後五時現在で各都道府県からの被害報告を取りまとめてみますと、人的被害は死者六十六人、負傷者三百八十三人に上りまして、住家被害は全壊二十五棟、半壊四十六棟、一部破損千三百四十六棟、床上床下浸水四百二十六棟となっております。このため、延べ六県百九十五の市町村で災害対策本部を設置し、雪害対策に取り組んでいるところでございます。
  73. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この問題は、災害対策特別委員会はもちろんでしょうが、参議院の補正予算の委員会でも、それぞれの委員会等でやっておられると聞いておりまして、今回は時間がございませんので、一つ一つ具体的に確認していきたいと思います。  とりわけ、住民と自治体は今非常に苦しんでおるわけですが、まずその前に所管大臣国土庁長官にちょっと確認しておきたいのです。あなたは参議院の予算委員会でこういうように言っておられるのです。幸いにして、三八は多少時間がたっておりますから例にはならないが、五六のときの例をこれは下るというわけにはいかぬだろう、私も雪の国に育ちまして、いろんな雪の状態についてはだれよりもだれよりも私はそれに鍛えられてきたというように考えておりますから、五六の例を下回ることはないという、大変なかたい決意をお持ちであるし、また私も党の責任者としていろいろと申し入れた際に、そのような意思ととったわけですが、今そのような雪が消えちゃったからもう忘れたじゃ済まされないので、そういう気持ちであるということを確認していいでしょうか。その議論をちょっと……。
  74. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 この被害状況ですが、降雪量だけで決めるというわけにもいかないのではないかと私は思います。しかし、今冬の雪は、御承知のように長い期間降り積もってきた。特に量においても五六を上回っておる。特に寒いというか全く冷寒ということでございまして、下の方が凍りついておるとか、いろいろな関係から諸情勢を判断した場合に、一番身近な五六の問題というときから見れば条件は悪いのではないか、調査の結果、私はそういう判断をいたしております。そういう意味から、五六を上回るとは申し上げませんが、五六を下回るというようなことは、災害地の感情からいって、これはしてはならぬ、こういうことをきょうまで申し述べてきたわけであります。  以上であります。
  75. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、五六豪雪を下回ることはあり得ない、あってはいけない、こういうかたい決意のようですが、問題は先立つものはで、財政当局に伺いたいわけです。政府も早速豪雪地帯を視察されたそうでございますが、うちの方も党として新潟、富山二班に分かれて視察してきた、その結果の報告を受けますと、異口同音に言われることをちょっと申し上げますと、これは財政当局に質問する項目でございます。  従来のような特別交付税の交付だけでは、いろんな災害も続いたことでございまして、したがって今回予備費の支出による完全補てん、これを非常に叫んでおるということですが、それが一つ。  それから市町村の除排雪、これは大変に金がかかることでございまして、五六の場合は二分の一補助という特別措置をとってくれましたが、これもよろしいかということでございます。その辺をひとつどうか財政面から見たお話を伺いたいと思います。
  76. 竹下登

    ○竹下国務大臣 川俣さん御指摘のとおりでございますが、財政当局としては現在各省庁で行っておられます豪雪状況等に関する調査の結果を見た上で検討するという、正確に言えばそういうお答えになります。  しかし、今御指摘になりましたように、仮に五十一年の道路除雪費の追加の例を見ますと、国県道は財源は流用、市町村道は財源は一般会計予備費、補助率二分の一臨時措置、それから五十五年度の分は国県道にも財源は流用のほかに一般会計予備費、市町村道も一般会計予備費、こういうふうに支出された先例がもとよりございますので、私も御要望の趣旨を踏まえて、それを底意に置いて対応していきたいというふうに考えております。
  77. 川俣健二郎

    ○川俣委員 では、調査結果後、また確認の質問をしたいと思います。  建設省に三つばかり伺いたいと思います。  一つは、現在の公共土木施設災害国庫負担法、いわゆるこの法律で、雪寒道路として市町村道が対象になるように、今対象になっていませんが、将来制度化というものを考えられないのか、これが一つ。  それから、道路に非常に附属物があるわけですね、ガードレールほか、これも大変な傷みなんですよ、雪が消えてみると。これも対象に考えられないか。  それから三つ目は、国道、県道そのものは、これは僻地、寒村にかかわらず、割合に除排雪はうまくいっていると私の目には映る。ところが、それと並行する歩道は、除排雪するとブルドーザーで全部寄せられますから、遠慮会釈なく山に積まれて非常に通勤通学の足手まといになる。こういうことから、長年小さなブルで試験的にやっておるのだが、この試験的の段階をぼつぼつ本格的に全国的に豪雪地帯にやってみたらどうか、やらなければならないなという時期に来たと思うのです。本道の方が立派になるだけに歩道の方が雪がいっぱいだ、こういうところなんでございますので、その辺をどうか……。
  78. 水野清

    水野国務大臣 川俣先生の最初の御質問は、市町村道に対する除雪費の補助を何か制度化しろ、こういう御趣旨でございますか。そういう意味で御答弁申し上げますと、市町村道の除雪というのは御承知のとおり建設省では今やっておりませんが、降雪の状況とか幹線道路の交通の確保などによって臨機応変にやっていくしか方法がない、こういうふうに思っております。あらかじめ除雪路線を決めて補助するという制度はやや難しい。できれば市町村の自主的な判断に任せまして、あるいは積雪の状況とかいろんなことを考慮に入れて、弾力的に機動的にやっていきたい。ただ、除雪機械の補助とか、その稼働に要する費用とか、こういうものに対してはやっておりますし、また交付税、これは自治省の所管でございますが、特交などでやっていきたい、かように思っております。  それからガードレールのお話でございますが、ガードレール等の道路附属物が道路本体とともに被災した場合は、自然災害の場合は国庫負担法の対象となっております。御承知のとおりであります。ただ、五六災害の雪害に際しましては特例として採択した例もございますので、今後被災の実態が判明次第に同様な措置が講ぜられるようにやっていきたい、かように思っております。  それから、歩道の除雪の問題でございますが、積雪寒冷地域の冬の間の歩行者の安全な通行を確保するために、五十二年度から歩道除雪の試験的施行を実施しております。五十九年度は二百五十キロを延長しまして、二千五百キロの歩道除雪を実施するところまで予算化をしております。徐々にこれから延ばしていく、なるべく御趣旨に沿って延ばしていきたい、かように思っておるわけでございます。
  79. 川俣健二郎

    ○川俣委員 メモを読み上げるだけじゃなくて、もう少し血の通った検討をしようじゃございませんか。事務当局はちょっと検討はしておるので、いわゆる国庫負担法の対象にすべきかどうかという検討をしておるということは知っているものだから、したがって、これは検討段階であるということかどうか事務当局に聞きたいのが一つ。  それから、さっきの歩道のブルは、これはだんだんにじゃ困るのですよ。なぜかというと、国道の本道の方はどんどん雪かきがうまくいっているわけです。雪かきがうまくいくほど、雪というのはどこに行くかといったら歩道に上がるわけです。だから、本来から言えば本道、車の走る本道の方の雪かきと並行して歩道の方も除雪しなければならないのが、この地域住民の便利なわけですな。わかりますか、その辺どうです、事務当局。
  80. 沓掛哲男

    ○沓掛政府委員 お答えいたします。  最初の市町村道の除雪費を異常な豪雪の際において国庫負担法に組み入れられないかどうかということについては……(川俣委員「対象にね」と呼ぶ)対象に組み入れられないかどうかということについては、現在そういう検討はいたしておりません。今、大臣が申されたとおり、臨時特例的な措置として豪雪時には対応していきたいというふうに考えております。  それから、歩道除雪についてでございますが、積雪地域における歩道は約一万四千五百キロございます。この一七%に当たる二千五百キロメートルについて現在試験的な除雪を実施しておるわけでございますが、歩道は我が国の場合非常に狭いものも多く、障害物等もございますので、この円滑な除雪をするための機械の開発その他の手法等についてこれから勉強を通じながら前向きに対処していきたいということで、現在試験的施行を実施しているところでございます。
  81. 川俣健二郎

    ○川俣委員 局長さんはどちらの御出身かわからぬけれども、前向きでだんだんにと言ったって、まだ一七%なんだからね。これからおいおい、だんだんでは、もう質問したって時間あれだから、もう一遍言っておきますよ。車道は、本道の方は建設省が機械をたくさん買ってあげるものだから、その辺の土建屋さんも冬、余り仕事がないものだからどんどんやってくれるわけだ。それがはかどればはかどるほど歩道の方が犠牲になるということがわからないといかぬのですよ。その辺なんです。まあいいです。  それで問題は、検討している間にも苦しんでおる雪国のことを思うと、雪おろしがまた大変なんですね。雪をおろして、そのおろした雪を町部だと車で運ぶ、運んで遠い川へ捨てる、これが大変なものなんです。一回でも三万円から五万円、ちょっと大きな家だと七万円から十万近く。ことしあたりは五回から七回、八回おろす。そうなると、いかんせんサラリーマンは自分の仕事を休む。この休むというところから、ぼつぼつ豪雪休暇という言葉が労働省あたりから出てきてもいいのじゃないかなというような感じがいたします。その辺を通じて労働省の方から伺いたいのが一つ。  それから、五六の際に大蔵省が非常に考えていただきまして、長年のいわゆる所得控除、雑損控除というくくり方で五万円の足切り。これは五万円の足切りじゃどうにもならないのじゃないかというので、雪国の代議士方を全部ヒルトンに集めて、いまキャピトルですか、あそこへ集めて、ちょうど福田一前衆議院議長が会長なものですから、かなりだあっと雪国の大方が集まった。今度は実現するぞ、所得控除で日の目を見るぞということでしたが、どうもさっぱりである。ぼつぼつこの辺は財政当局は考えていただきたいな、こういうように思います。  それから、時間がございませんので、これも五六に並んでやるかどうか、中小企業対策。  それから、二つ目は文部省で、学校の崩壊したようなのがないかどうか。あればどうするか。  それから、今度は農林省ですが、このように非常にことしの雪はなかなか消えないというか解けないというか、国会のところに雪があることを皆さんはまだ御存じないと思うのですが、あそこに雪がある、残雪がある。あんなものじゃない。これで当然野良仕事にかなり支障を来すと思う。そこで、いろんな農作業に少なからぬ支障を来すので、何らがこの辺でそれに対する新しい対策がないか。  それからもう一つは雪崩、これは特に国有林が主だろうけれども、その問題。  それから、そのついでに、来ていただいておるので科学技術庁に伺いたいのです。三十八年にたしか研究センターで雪の克服というか活用というか利用というか、そういったものの研究をして、もう二十年になるのですが、その二十年の研究の成果をちょっと披瀝していただけませんか。こういうところで終わりたいと思います。
  82. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 私も雪国の出でありまするから、本当に豪雪のときは大変でございます。しかし、そこは地域ぐるみ、町ぐるみあるいは会社ぐるみ、もうそうなりますと非常事態でございますから、一生懸命に皆全力を尽くしておるのが実情でありまするけれども、サラリーマンはそれはうちがつぶれるようになったのでは仕事ができないのは当たり前でありますから、まあ会社としてもサラリーマンに対してはやっぱり雪おろしのときなどの休暇は好意的に認めておる、また、それが当然のことだろうと思っております。ただ、豪雪有給休暇という制度ということになりまするとなかなか難しい点もございまして、そこも優秀な日本の労使関係の中でひとつ円満に配慮をしていただきたいな、こう思っております。サラリーマンのところだけは事業主に強制をする、こういうのもちょっと無理があるのではないか。しかし……(川俣委員「公務員、出稼ぎ」と呼ぶ)いろいろありますが、その点はひとつ労使関係できめの細かい配慮をしていただきたい、こう思っております。
  83. 森喜朗

    ○森国務大臣 公立学校施設の被害状況でございますが、発生件数は全国十四府県で七十二校ございます。被害総額は大体四億円程度でございます。被害の内容の主なものは、屋内運動場、体育館の全壊が三校ございます。そのほかには、軒先の折損あるいは屋根がわらが崩れましたもの、こういうのが六十九校でございます。  復旧状況につきましては、三月上旬から調査を始めておりますが、川俣先生の御郷里の秋田県男鹿市立脇本第一小学校、選挙区じゃないようでありますが、こちらの方は大変だということで、先生の御心配もありますし、きょう文部省から現地に調査に行っております。被害額が承りましたところ約一億二百万円ほどでございますので、今回の被害全体の大体ほとんどはこの秋田県の脇本第一小学校の屋内体育館ということでありますので、文部省といたしましても県を通じまして最善の措置をしていきたい、こう考えております。
  84. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 豪雪のときには融雪の遅延という問題が出てまいるわけでございます。その結果農作業がおくれる、こういう問題がございまして、そのときどきに問題になるわけでございますが、基本的な解決方法といたしましては、共同育苗施設の設置というのが最も有効な手段ではないかと考えております。共同育苗施設によりまして、健全な苗を大量に生産できる、こういうメリットもございますし、また、除雪を特定の地域に限ってやればいいというメリットもあるわけでございます。その意味でかねてからこの設置を進めてまいりましたが、まだ全国的に見ればカバレージが低いという状況でございますので、今後ともこの設置促進に努めてまいりたい、かように考えております。
  85. 岩動道行

    岩動国務大臣 私は川俣先生の隣の岩手でございますから、雪については観念的にもまた肌でもよくわかる一人でございます。  さて、積雪特に豪雪地帯におきましては、やはり輸送とか交通とか、さらに商工関係からただいまのような農業あるいは林業等いろいろな分野において大きな経済的、社会的な機能を維持していかなければなりませんし、あるいはまた生活環境の確保を図るという意味で極めて大事な雪害対策の研究を認識いたしておるわけでございます。このために、科学技術庁といたしましては、科学技術会議答申を五十六年の七月に受けまして、防災に関する研究開発基本計画というものをつくりまして、そしてただいま御指摘のありました国立防災科学技術センターで日常生活に関連の深い雪害防止に重点を置いて研究を推進しております。また、科学技術振興調整費を活用して、関係省庁と連携をして雪崩の予知技術の風発等総合的な雪害対策技術の研究を進めております。  そこで、具体的にはどのような成果かという御質問でございますが、まず一つは雪の大量輸送技術、これは山形県において研究をいたしまして、ことしは福井の駅で実際にこれを行って大変成果を上げて喜ばれている一つでございます。あるいはまた、屋根の雪の処理等につきましてもいろいろな技術の開発を進めております。特にこれまで得られた主なものは、水と雪の混合物をパイプラインで強制的に輸送する技術の開発、これは先ほど申した国鉄の福井駅でやっているものでございます。また、農業用トラクターを利用した除雪車の開発も、これは実用化の試験中でございます。あるいはまた、赤外線を利用した積雪深測定装置の開発、これは新潟県内等で国道十七号線沿いに四十七カ所設置をいたしております。また、斜面に積雪した雪の滑動つまり滑る動きをとらえる装置の開発、これも新潟県内に八台を設置して雪崩の研究に活用しております。  このようにして私どもは基礎的な研究をいたしておりますが、何分まだ研究を始めましてから日にちが浅いものでございますから十分な成果を上げておりませんが、これからもこのような事態を十分に認識をして進めてまいりたいと考えております。
  86. 川俣健二郎

    ○川俣委員 何分時間が浅いと言うけれども、センターが発足したのは二十年前なんですからな。その辺をもう少し充実するように期待します。  郵政大臣、運輸大臣もお出ましいただいたのですが、時間がありませんので、一つだけ皆さんがおそろいのところで聞きたいのですが、問題は、災害は国土庁に一括皆さん機構的には集まっている形ですが、しかし国土庁には金は一文もない。全部国土庁国土庁と言っているのですが、お金はない。色男みたいなものだ。金と力がない。ところが、このごろ日本列島は非常に災害が多い。五六豪雪というさっきの話、それから私が災害委員長をやったときに長崎、熊本の集中豪雨、それから山陰地方の集中豪雨、日本海の中部地震。これなんか、気象庁は、男鹿半島、あの出べそ、男鹿半島の沖には一切地震がない、何百年前の大昔の地震であって、したがって、あの一帯には、岩動さんのあたりでも、一帯には地震観測器がなかった。地震がないんだと、秋田県には。どうです、あの日本海沖地震。こういうことを考えますと、やっぱり、のど元過ぎればというんだけれども、これは熱さじゃない、寒さですが、国土庁に防災局という、こういうところで、ちょっと、せっかく行政管理庁長官、実力大臣がお座りになっておるので、ひとつこういう行革時に防災局をつくってやった、こういうところは非常にいろいろの御見解があったと思うのですが、この辺を少し聞かしていただけませんか。それで終わります。
  87. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 昔から地震、雷、火事、おやじという言葉がございますように、日本の国は災害の常襲国でございます。ところが、それに対応する行政の組織ですが、もちろんほとんど政府の各省庁すべてが関係をしてくる、こういうような状況でございますから、やはりそれらについては施策の統一性あるいは総合性を考えなければならない。いま一つは、緊急事態が発生した場合の総理大臣に対する補佐の機関、これをつくらなければならぬということで、行革審からも御答申があり、総理も、政府としては毎年毎年災害対策に全力を挙げておるけれども、相も変わらず数百人の死者が出るとかあるいは数千億の被害が出ている、これは抜本的に政府として対応していかなければならぬじゃないかという大変強い御意思がございましたので、この際、御案内のように国土庁は総合調整の機関でございますから、やはり防災局をつくるのが適切であろうということで、昨年の暮れの予算編成の際からいろいろ政府・与党の中で協議をした結果、ことしの予算の編成前に設置をするということを決めたわけでございます。  もちろん防災局を国土庁に一つつくったからといって直ちに防災体制がそれで完全になるということは私は考えておりません。しかし、国民の生命と財産を守らなければならぬという政治の基本に立って、これは取っかかりになる、したがって、これから先、やはり災害の実態に対応して予算なり人員なりこういったものは全力を挙げて取り組まなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  88. 川俣健二郎

    ○川俣委員 委員長、この問題については私も意見があるのですけれども、時間があれですから災害問題は終わります。皆さんどうぞお引き取りください。  厚生、農水、労働、それから、通産が今度を外していますので、特許庁はいますか。  植物特許という大変聞きなれない項目ですが、これは日本にはないんだから聞きなれないのは当然で、日本にはないんだけれども昭和五十三年でしたか、私は種苗法をつくる際にお手伝いしたものですから、ついに来たかなと思ってあえてこの辺で質問をするわけであります。  特許庁というのは御案内のように通産大臣の管轄でございますが、通産大臣は特許庁に足を運ぶことはあるまい、もうないと思う。今の大臣もないと思う、まだ浅いだけに。しかも、通産大臣の組織でありながら、通産大臣の認可、決裁というのはまずない。したがって、あえて判こを押すとなれば人事異動か給料のこと程度で、まずない。どうやらこの辺で特許庁はひとり歩きし出したのじゃないかなということも感じてあえて予算委員会で取り上げたのは、あらましはこうだ。  これは新聞報道されておるので皆さんもお読みになったと思うのでございますが、これは朝日さんですか、皆さん書いてございます。日本新薬株式会社、これがヨモギを育成した。このヨモギというのは、回虫駆除剤サントニン含有率、駆除する分が非常に高いので、おなかの虫を駆除する効き目は非常に抜群である、こういうところからこの問題は惹起した問題である。これに特許をかける。ところが、相手は植物ですからこれは種苗法で足りるではないかと思うでしょうが、そこが株式会社、これは四百億の年商だ。一部上場、大手なんだ。これが特許をかけてくれということでやってきた。特許庁はびっくりした。びっくりしたんだが、何回も通われている間に、特許庁はびっくりしたのがだんだんに食指を動かしたんじゃないかと思うのですが、好きになったというか情が移ってきたというか。したがって、日本の国には植物という、物に特許を与えるというのはない。特許庁はたしか百年になるはずだが、ない。ただ、そのつくり方、そういうものにはたまに出てくることがあるが、これは国際法的にもない。そこで、一体どうなっているんだろうか。どうやらこの背景というのは、このような大手企業が、いわゆる生物工学、バイオテクノロジーを活用して、新しい育種技術、いわゆる種を育てる技術によって、種苗産業、こういうものに。手を出し始めた。種を全部特許で押さえようと、ササニシキもコシヒカリもみんなおまんま食べているものに全部特許をかける。そうしますと、一般通念で言いますと、今の農産物、食糧植物にはなぜ特許を与えていかないかというと、まずその種を買ってきて植えて、植えた農家がそれを来年の春植えるということが自由であるところに種苗法でやった方がなじむ。ところが、特許庁でこれを押さえられると、何ぼ種を毎年取っても、それは使えない。常に特許で取られた権利保護するという意味で押さえられる。  ここで私は、時間がありませんから、いろいろと御説明をしたいのでございますが、どうやらこの弁駁書というものをつくるまでにはいろいろとやっているようですが、ちょっと皆さんにわかりやすく種苗法の担当の農林省に伺います。これは担当でもよろしゅうございますから。もしも種に特許法で植物新品種の特許が認められることとすると、一体どうなんだろうか。種苗法で品種登録が行われた場合と特許が行われた場合とどう違うのだろうか。私がさっき言ったことは間違いないのか。例えば農産物の新品種が特許になると、農家が毎年収穫したものは一部を翌年の種として残し翌年の春それをまいて栽培するといういわゆる自家採種ができるかできないかということにつながるというように思うんだが、その辺はどうですか。私のひとり合点だろうかどうだろうか、農林省。
  89. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 特許法の解釈については特許庁からお答えがあろうと思いますが、種苗法に基づきます品種登録制度におきましては、品種登録が行われた場合に、第三者がその品種の種苗を有償譲渡するということにつきましては、登録を持っている人の許諾が要る、こういう法制に相なっておるわけでございます。  特許法上の扱いは特許庁からお答えがあろうと思います。
  90. 川俣健二郎

    ○川俣委員 諸外国の例、たしか日本は国際条約に入っておりますね。これは大丈夫ですね。種苗法で入っていますね。
  91. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 俗称UPOV条約、日本語で言いますと植物新品種保護条約という条約がございまして、一昨年日本も加入いたしております。
  92. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうなると、国際的にも非常に混乱すると思う。一つの国が種苗法でいくのか特許法でいくのかというのが一つ。それから、もしも特許法に種というのがゆだねられる、権利保護をされると、さっきのような嫌みが出てくる。こういうことを考えると大変なことになるのだが、法制局長官、これはどうしても今特許庁の手で進められようとしておるのだが、これを手続を経た——通産大臣はさっき言ったように特許庁のことはほとんどわからない、書類は回ってこない仕組みになっておるのだから。そうなると、これは日本ではちょっと大事な問題じゃないかな。どうでしょう。
  93. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  ただいま川俣委員の御指摘になりました点、二つに分けて問題を考えることができると思います。一つは、先ほど小島局長の言われました植物の新品種の保護に関する国際条約の規定との関係で果たして違反が起こるのかどうかという問題がございます。それからもう一つは、条約を離れまして、国内法の処理として、果たして法律制度として適当かどうかという問題があろうかと思うのでございます。  そこで、まず条約との兼ね合いでございますが、条約に日本が加盟いたしますときにいろいろと関係者の間で協議が行われまして、その結果、この条約に定める育成者の権利を担保するものは種苗法のみである、特許法は別の目的でいわゆる工業所有権という面での保護を与えるものであって、これは別個のものである、したがって、この条約に規定するいわゆる二つの方式がある場合には一つの方式に限るという川俣委員案内の規定がございます。これとの関係では違反の問題は生じないというような結論になりまして、そこでその点はいわば問題は解消したということで処理がされていると聞いております。  それから、国内法の問題といたしましては、いわゆる工業所有権の保護政策と農業政策との兼ね合いとしてそれをどのような政策のもとで処理するかという問題がございますが、これにつきましては、五十三年の種苗法の改正以来いろいろといきさつはあったように聞いておりますけれども、関係の通産と農林の御当局におかれまして協議がなお進められておるというふうに伺っております。
  94. 川俣健二郎

    ○川俣委員 無理な解釈もあるようだが、国際法的には必ずしも抵触しないというけれども現実困るのは農家だ。ここまでしゃべって特許庁にしゃべらせないというわけにはいかないから、最後にしゃべってもらおうと思っているけれども、農家を何でこのようにいじめるのだろうか、ほどほどにしろということなんだ。いいですか。食糧難のときに、何ですか。家捜しまでして強権発動。消費者を守ってきたじゃないですか。ちょっと余ってきたなと思ったら生産調整、減反だ、出稼ぎだ、さっきのように豪雪に苦しんでおる。おまけに、運輸大臣はいなくなったけれども、一物一価主義を外して一キロの国鉄の単価が今度は地域の方は違うんだよ。そこまでいじめられて、さらに今度は政治はどうしても弱くなる。定員是正すれば田舎の方は減るんだから。そうでしょう。それに加えて今度は種を毎年金で買わなければならないなんという、こういうことはどうなんですか。特許庁、どうです。
  95. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 お答えいたします。  農家をいじめる気は毛頭ございません。ただ、特許法というものがありまして、国際的にもやっております。したがいまして、その法律の目的、要件に照らして処理をするものは処理をしております。  現実に、ヨモギの案件につきましては、いまペンディング中でございます。それで我々の方は審査官が査定をするという立場になっていますけれども、現在異議の申し出がありましてまだペンディング中、こういう状況でございます。  なお、この件に即して具体的に言いますと、私も素人でございますけれども、サントニン、回虫の薬のヨモギの収穫でございます。直接農家にどの程度影響があるのか、私は現実論としてはそう大きくないと思います。  それから第二に自己採種の問題でございます。これはこれでいいとしてほかのものがどうなるのか、めったにないケースでございますけれども、仮にあった場合にということでございます。確かに、特許法上は自己採種まで権利が及ぶというのが素直であると私は思います。ただ問題は、じゃ具体的にどうなるかというと、種を買ってそして始まるわけでございます。種は開発した人から買わざるを得ないわけでございます。そうすると、種を買った場合に、普通、何も文言がなければ、当然それをまく権利、育てる権利、できたものを売る権利、さらに翌年に種をとっておいてまた同じことを繰り返すということは了解しておるという前提があるというふうに私は思っております。したがいまして、よほどへそ曲がりなのがいて、種を売るときに文章か何かでこれはこういうことをしてはいかぬよということになると、やや問題ができてくることはあり得ると思います。しかし、現実論として、普通種子の販売という段階でそういうことは起こり得ないのではないか、こういうふうに考えております。ちょっと舌足らずでございますが、そんな状況でございます。
  96. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは総括締めくくりという問題もあるから、これからいろいろと論議してもらって返事してもらいたいのだが、あなたはヨモギと今の農家との関係なんというそんな考え方じゃまずだめ。それからずっといって種まで将来意地悪くとこう言うけれども、それだったら特許を取った意味がない。特許というのはあくまでも最後まで保護しなければだめ。そうでしょう。したがって、日本の場合も国際的にも植物には特許はなじまないということで日本は五十三年に種苗法というのをつくったんだよ。そういうことの論議ならかなりやりますけれども、時間がありませんので次にやりますから、予算委員会が終わるまでに私のところへ持ってきてください、あなたの考え方がちゃんと理論に合っているのなら。あなたの考え方なら何で種苗法でできないのか。特許を取らせたってそう来年の種まで意地悪くしないんだと言うのなら種苗法でいいわけだよ。特許を与えた以上は守ってやらなければだめなんだよ。これが特許なんでしょう。何を言うのですか。(「答弁」と呼ぶ者あり)要らない。  それから、今回、制度改善というのが五十九年度予算の特徴でございます。その制度改善というのはいろいろとあるのですけれども、よくまあ厚生大臣は抱えさせられたと言った方がいい、これは十本あるんだから。私は厚生省の方のこの国会の日程を見ると、十本のうち二、三本土がるかな、こう思うのでございます。それは無理ですよ、社労が週に二回なんだから。社が一日、労が一日なんだから、厚生省一日、労働省一日なんだから、十本抱えさせられて、どうも大車輪で処理しなければできないという気持ちはわかる。気持ちはわかるが足がついていかない。これは慌てる。慌てると、どうもこれは国会の提出そのものから慌てているのじゃないのかなというように思うのでございます。例えば医療保険だってそうでしょう。せんだっての、私はそこでずっと聞いておったのですが、二割負担の問題。したがって、うちの方の岡田さんが、もしも答申がこの予算と違った結論が出たら問答無用にするのか、予算の方を是正するのか、こう聞くのは当然なんです。  したがって、私は誤解してもらっては困るけれども、法律が後か予算が後かという論議をするつもりはない、今予算委員会なんだから。そうじゃなくて、法律というのは政府の意思決定ができ上がって予算にするわけですから、法案を意思決定するもとの答申がまだ出ない段階の予算化は無理だ。今後ひとつぜひ、厚生大臣はこれから質問しようとする年金、特に鉱山の年金ですから、鉱山政策なんかベテランのベテランですから、その辺もあって非常に僕は質問しやすいのですが……。  それからさらに私が伺いたいのは、審議会に根回しをして答申をもらった。二十二、二十三日、社保審と制度審の答申をもらった。ところが社保審は両論併記だ。だから政府の案が、両論なんだから片っ方の論に賛成というのが含まれておるのだから出そう、こういうことかと思うのです。  さらに、私はここで聞いていますと、児童扶養手当、これはばかに周りが騒ぐなと思って、選挙が終わって頭を冷やしてよく聞いてみたら、その一つは、妻子を置いて出ていった夫の収入、これはわかりはせぬのだから、家庭裁判にかけて取れないから苦しんでいる妻子なんだ。それが、別れるときの年収が六百万円以上の場合には残された妻子に児童扶養手当を支給しないんだ。これは漫画だよ。だけれども、総括質問で、もしわからなかった場合は支給の対象として検討しますねということで、そうたということなんですが、どうも慌てている嫌いがある。  そこで、私は今聞こうとしているのは、その制度改善の中の年金の中で第三種と通告しておるのは、これは鉱山、特に坑内に入る大方の年金制度をどのようにするかという改正なんです。これは四十数年になりますよ、よく見ると。鉱山で栄えた日本の国ですから、鉱山で近代資本というのが出てきたわけですから、こういうことで鉱業法それからけい航法それから労働基準法にも坑内の労働者を守るという法律事項がかなりたくさん入っている。そうなんです。労働省、その辺どうですか。
  97. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 御指摘がございましたように、いろいろけい肺であるとか、じん肺であるとか、あるいはまた坑内労働についての各種の規制があるわけでございます。
  98. 川俣健二郎

    ○川俣委員 鉱業政策、地下資源開発、これは厚生大臣は篤と知っておる。これは片や例えば銅なんかはロンドンの例のLMEで五分ぐらいで建て値を決められて、その建て値が日本の値段になる、こういう宿命的な産業であり、掘ってしまえばだんだんに奥に入っていかなければならない、坑内条件が悪くなる。そして地下資源に働く者というのは、この間のように有明鉱の大事故等々を考えると、なかなか坑内に入る、地下資源に入る労働者がいない。それで非常に経営的にも苦しんでいる面がある。これはそれぞれの委員会で政府の方からそれぞれ答弁されておる議事録がたくさんあるのでございますが、それを一々読むと大変でございますので一つだけ読んでみます。ちょうど加藤さんが労働省職業安定局失業対策部長のころです。  これは石炭ですが、加藤説明員が、「現在、石炭鉱業の置かれております労働条件は、他の産業に比べましてなかなか厳しい事情にあるわけでございます。」「災害の発生状況について見ましても、たとえば全産業での災害の発生の度数率というもので見ましても、約七倍くらいの災害の発生率になっておる。」さらに「そういう強度率で見ましても全産業平均に比べまして約十二倍、こんなような数字が出ております。」「疾病率が全産業で〇・六に対しまして鉱業は一三」——地下資源に働く者の疾病率というのは「一三というような形で、労働時間の面あるいはまた災害、あるいは衛生といったような面を見ましてもなかなか厳しい状況にあるわけでございますが、そういう意味で、御指摘のように労働力を確保していくという面で、他の産業に比べましてよほどの努力がないと」なかなか難しい。こういうように労働当局も言っておるし、通産省の方としてもいろいろと折衝した結果こういうことになっておる。  こういうようにして地下産業に働く労働力というもの、国内資源を確保するわけですから、こういうようなことを考えますと、何としてでも坑内で働く労働力確保のためにも特別措置をやってこなければならなかったのだ、こういうことを歴史的にも教えている。一方、国内の地下資源を開発しなければならないということもみんな叫んでおる。これは労働者の視点だけではなくて経営の視点、国内資源という国家政策の視点、三本がそういう考え方ているのに、厚生大臣に座って十本抱えられた大臣が、まあ迷惑な話だろうが今度はこの坑内で働いた第三種年金を、今までは六年働いている場合には八年と計算するという三分の四倍、この措置をばっさり切ろうという考え方は余りにも角を矯めて牛を殺すというか、そういうようなものに少し慌て過ぎるんじゃないだろうかな、こういうように思っておるのでございます。  したがって、厚生大臣は鉱業政策には明るい人だが、年金だけでやっている担当者、ちょっとそのいきさつを説明してごらんなさいよ。これは大臣答弁させるのは酷だよ。
  99. 古賀章介

    ○古賀政府委員 今度の年金改正と申しますのは、そのねらいは、公平で安定した制度を二十一世紀に向けて確立をするということでございます。こうしたことから、各種の特例の見直しが一つの大きな課題となっておるわけでございます。  私どもは五十六年の十一月から社会保険審議会におきまして御審議を願っておりましたところ、昨年の七月に意見書をまとめていただいたわけでございます。その意見書におきましても各種特例の見直しということがうたわれておるわけでございます。こういう各種特例の見直しの一環として今度の、第三種の幾つもあります特例の中のうち三分の四倍というものを将来に向かって廃止をする、こういう案をつくったわけでございます。
  100. 川俣健二郎

    ○川俣委員 君たちは何でも困るとすぐに二十一世紀に向かっちゃうのだな。だれのまねだ、それは。二十一世紀の話なんかしなくたっていいよ、あなた、今労働力を確保するのに困っているのだから。  それから、どういう審議会の結論を得たのですか。で、だれが入っているのだ、その鉱山に詳しい人は。
  101. 古賀章介

    ○古賀政府委員 社会保険審議会は労、使、公益の三者構成でございまして、労働側代表といたしましては総評、同盟、中立労連それぞれの代表の方が入っておられますので、労働側代表は三名でございます。  その意見書につきましては、「第三種被保険者の取扱いについては、再検討すべき時期に来ているものと考えられる。少なくとも期間計算については、他の被保険者との均衡上からも問題があり、所要の経過措置にも配慮しながら見直すべきである。」というのが昨年七月の意見書の結論でございます。
  102. 川俣健二郎

    ○川俣委員 労働側が三人入っていると答えればそれで済むと思うのかい。鉱山の実態に詳しい人が入っておったかと言うのだよ。
  103. 古賀章介

    ○古賀政府委員 労働側三名は今申し上げた方々でございますけれども、それはそれぞれの労働団体から御推薦を受けて厚生大臣が任命するということでございます。現在の三名の労働代表の方々は、特に鉱山といいますか、山の関係に詳しいという方ではないというふうに思います。
  104. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうだろう。これはどうしてこうなったかといったら恐らくこうだと思うのだ、おれが想像するのに。いろいろ論議したと思うが、これは審議内容は公表しないことになっているので持ってこいとは言わないが、今や鉱山といえど坑内は非常に環境もよくなった、なるほどよくなった。何百メーターの下で銅鉱石を掘っているのなんかは交通信号があるのだ、赤、青の信号があるのだから。交通整理をしている人がいて、電車ではあっと動ける。昔のようにホッパー、テミ——ホッパー、テミというのは鉱山用語なんだけれども、そういったものを使うわけじゃない、機械化されておる。ふんどし一丁、裸ということもあり得ない。ところが、そういった者がたとえけがをしたって労働災害法、安全衛生法で守られるが、坑内に入ってどうしても法律で救済できないのは太陽だ。これは太陽なんです。いや、二交代あるじゃないか、三交代あるじゃないかと言ったって、一カ月を通じてまず二十日は坑内で働く人なんだ。体に太陽というものを受けないのだから。したがって、過去の経営者がやっぱりということでこの三分の四倍という年金制度で守り、坑内の残業時間は二時間以上やってはいけない。だから、労使交渉で決まっている妥結の額も坑内のベースは違うんだ。女子はもちろん入ってはいけない。労働基準法でいろいろと保護して、坑内の労働力を守るという日本の法律を、あなた、一介の人が年金改善だからそれ、というのでやるという考え方なら、どうかなと思うのですよ。これは大臣、どうです。バランスだと言ったって、例えば軍人恩給一つを取り上げてみましょうか。戦時加算が二倍か三倍でしょう。何でこんなところばかりやるんだって言うのだ。そうでしょう。大臣は一番鉱業政策を知っておられる。どうです、これは。
  105. 古賀章介

    ○古賀政府委員 今、先生、軍人恩給の例をお引きになりましたけれども、御承知のように恩給は、さきの大戦中に戦地におきまして戦務に服した場合等におきましてその期間について一定の加算を行う仕組みでございますが、終戦とともにこの制度は廃止されておるわけでございます。このような戦時加算は過去の期間に関するものでございます。したがって、これをもって将来にわたっても厚生年金保険の坑内員の三分の四倍の特例措置を存続するということには必ずしもつながらないのではないかというふうに考えます。
  106. 川俣健二郎

    ○川俣委員 あなたは随分、おれと似たのかどうか知らぬけれども、言葉じりを取り上げるなよ。バランスということだけの反論だったらそういう反論もあったじゃないかと言うんだよ、バランスということだけなら。僕がもっと根本的に欲しいのは、国内産業、地下資源というものを守ろうという国家政策に戻るということと、あなたは思いませんか、一生の間に三分の二以上は太陽のない生活なんだよ。坑内から上がってくればおてんとうさまは西に、裏側に行っているんだから。それがわかるか、その気持ち。
  107. 古賀章介

    ○古賀政府委員 その先生のお気持ちはよくわかります。
  108. 川俣健二郎

    ○川俣委員 あなたの気持ちがわかるのなら、こういうばっさりやるようなことをしないと思うのですよ。何とかならないかね、これは。何とかならないかな。おれの言うことは無理だろうか。  通産大臣にちょっと観点を変えて聞いてみましょうか。やっぱりあなたが元なんだ、本当は。元も子もなくなる元があなただ。そうだろう。通産行政だろう。通産行政、地下資源の開発、国内資源を確保しようとしておるのに、子供の方がむしばむところなんだ。あなた、どうです。元親、ひとつ発言どうです。
  109. 豊島格

    ○豊島政府委員 国内資源が非常に乏しい中で非鉄金属につきましてもある程度の自国産の資源を持っておるわけですが、この確保というものが経営面から、先ほど先生おっしゃいましたように非常に困難になっているということもありますし、同時に労働力確保という点で人集めがなかなかできない、したがって非常に老齢化していくということで、そういう点からも国内地下資源といいますか、国産資源を非常に大事にしていかなくてはいけないという観点からは何らかの対策が要るということは、川俣先生の認識と同じでございます。
  110. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ほら見なさい。大臣がぐずぐずして立たないにしても、担当長官がそうおっしゃるのだから。これはやっぱり守ってやらないといかぬのだよということを言わんばかりだと私は感ずる。  これはどういうわけで——これはちょっと、担当者だれなんだ。担当者、ちょっと出てこいや。テレビにはよく出るけれども、担当者出てこい。どうなんだ、これは。毎朝、あんた、いい顔してテレビに、奥さん方に評判いいんだけれども、この問題だけはおかしいようぬぼれるなよ、あんた。大概にしろよ。ちょっとあんた、担当者、答弁しろよ。
  111. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今、川俣委員からのおしかりをちょうだいしておるのでありますけれども、私も川俣委員と一緒に、国内の地下資源の開発の重要性あるいは非鉄金属の重要性等で経済政策の立場から御指導をちょうだいした経験も持っておりますが、今回の年金改革は、国民すべてが官民格差とかそういうものをなくして将来平等な給付を受ける年金制度というものが建前になっております。昨年の七月、今お話がありましたように、社会保険審議会の意見を十分に踏まえて、いわゆる特例の見直しというものが行われ、その見直しの中に川俣委員指摘の問題も入っておったわけでありますけれども、しかし、その中でやはり坑内で働く人たちの特殊性というようなものを配慮いたしまして、今までの坑内夫の皆さん方は施行日まで加入期間を従来どおり三分の四倍で計算する経過措置をとるということも今の委員指摘のような問題を十分考慮して考え、また支給年齢についても、労働者の中だけでも労働者は全部平等でなければならないとか、いろいろな議論がありました。しかし、これは従来どおり坑内夫の特殊性を尊重して五十五歳ということにしておりますので、川俣委員からまだまだ不十分というおしかりでありますが、川俣委員の強い御意見等も尊重して、将来の二十一世紀の年金を確保するために、また、これは国民すべてが平等の給付を受けなければならないという将来方向の中で可能な限りこの坑内夫の立場を尊重した経過措置をとり、また支給年齢は五十五歳ということになっておりますので、おしかりはまことにごもっともでございますけれども御理解を賜るようにお願いしたいと思います。
  112. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私も十本抱えさせられた厚生大臣に少し応援しようかなと思っているのだけれども、これじゃ上がるのは一本か二本だね。  大臣、格差是正というのが非常に先になっているようだけれども、この場合は平等にした方がむしろ不平等になると思うよ、将来は平等にしていくわけだから、その方がむしろ坑内労働者に格差が出てくると思いますよ。五十五歳のことを入れ知恵しなくてもいい。私はそう思うな。どうです皆さん、だれか反論あったらどの大臣でもいいですから……。私は何としてでもこの四十年の歴史という重みは——今一生懸命にまじめに取り組んでおる渡部厚生大臣を利用して、悪用してと言っては悪いけれども、事務当局が妙なことを入れ知恵してこの四十年の歴史を覆してみなさい、かなり禍根を残すよ。人生の大半が太陽に当たらない労働者なんだよ。そういうのをばっさりやるという考え方でなく、これから担当委員会もあるだろうけれども、篤と認識して、対話と協調でしょうが、今度の内閣は。この対話と協調という気持ちがなくて、法案をつくってしまったからもう一字一句一切だめだという考え方であれば、それはそれなりでよろしいでしょう、そういう対話と協調もあると思うので。余り二十一世紀ばかり考えないで、何とかその辺、あなたのもう少したい御発言があれば、私、やめますけれども大臣、どうです。
  113. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 おしかりを受ける部分とお褒めをちょうだいしてもいい部分があるのですが、お褒めをいただいていい方には川俣委員、余り強く御指摘がないのでありますが、支給年齢五十五歳というのは、これはまた別な方でおしかりを受けなければならないのですけれども、この年金改革案では、今五十五歳の婦人の支給年限を将来六十歳にするというような改正等もある中で、坑内夫の皆さんの立場を尊重して、これは五十五歳にとめおくということにしておるのもぜひ評価をしていただきたいと思います。
  114. 川俣健二郎

    ○川俣委員 その反論なら幾らでもある。それは今ある制度を続けるというだけであって、今の厚生省の諸君が上げたということじゃありませんからね。  ところで、審議官、あなたは坑内に入ったことがありますか。
  115. 古賀章介

    ○古賀政府委員 坑内そのものに入ったことはございません。
  116. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうです、大臣、やはり大臣が就任されるのが遅かったとは思うけれども、あなたのように坑内を知り尽くしている人じゃないのだ。坑内状況を知らない人方が坑内で働く人方を——坑内というのは時々働くのじゃないんだから。坑内労働というのは物の本に書いてない、継続性の知識なんだ。なれから教わった技術しかないんだ。だから、我々は恐る恐る入るでしょう。こういうようなのが坑内の、四十年の重みのある年金制度をばっさりやるという、心臓も心臓だがね、これは少し、前向きか後ろ向きか知らぬけれども検討するぐらいは答えてくださいよ、大臣。あなたは、し直すとまで言えないだろう、後ろに事務当局がいるから。どうです。
  117. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 私も情にもろい方ですから、大先輩の川俣委員からそういう温かいお話をちょうだいすると、検討すると申し上げたいのでありますが、またそれでは大臣が勤まらなくなってしまいますので、ひとつ……。  私ども、年金制度については随分長い期間いろいろの審議会等の意見をちょうだいし、練りに練って政府案として出しておりますので、また、国会は国会でございますから、国会で十分に御審議を賜りたいと思います。
  118. 川俣健二郎

    ○川俣委員 政府としては案を出しておるやさきですからまだ審議に入っていませんけれども、どうやら与党席もかなりうなずきの感じを受けるのでございますので、これは国会として決定するものですから、さらに審議を続けていきたいと思います。  ありがとうございました。
  119. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員長代理 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  120. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中美智子君。
  121. 田中美智子

    田中(美)委員 男女平等のことについて質問申し上げます。  来年は昭和六十年で、国連婦人の十年の最終年になります。政府はこのときまでに婦人差別撤廃条約を批准するということを言っておられますけれども、まず外務大臣にお伺いいたしますが、差別撤廃条約は批准するのか、いつ批准する予定でいるのか、お聞きいたします。
  122. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 婦人差別撤廃条約については、昭和五十五年六月、署名に先立ち内閣総理大臣を長とする婦人問題企画推進本部におきまして、国内行動計画後半期における重点課題として、批准のため国内法制等諸条件の整備に努めるものとする旨の申し合わせがあり、現在同条約批准に向けて鋭意準備を進めておるところであります。できる限り昭和六十年までに批准したいと考えております。
  123. 田中美智子

    田中(美)委員 では、来年には必ず批准できるようなきちっとした整備をしていただくように、外務省の方からも十分の御指示を願いたいと思うのです。今おっしゃられましたように、五十五年に署名をしたということですが、きのう婦少審がありました。そこで使用者代表がこういうことを言っている。そもそも婦人差別撤廃条約に日本政府が署名したこと自体が問題だ、こんなことを財界の代表に言わせる、もちろん安倍大臣が言わせたわけではないけれども、こんなことを言わせていていいのか、大臣の御覚悟をちはっとお聞きしたいと思います。
  124. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 政府としては、今申し上げましたように六十年批准に向かっていろいろと準備を整えております。外務省としましても、ぜひとも六十年までにはこの批准をしたいということで、関係各省とも調整を鋭意進めておるところであります。
  125. 田中美智子

    田中(美)委員 今の大臣の回答は私の質問にきちっと答えていらっしゃらないので、批准するということはお聞きしました。しかし、財界がこの期に及んでも、署名したことすら日本政府を責めるというような、こういうことを絶対させてはならない。この財界の圧力に対して、絶対に外務大臣が屈することなく批准を必ずしていただきたいというふうに思います。  今世界では、この条約は五十四カ国が批准しているのはもう御存じだと思うわけです。世界で経済大国第二位と言われております日本がまだ批准していないということは、日本は経済大国ではあるけれども、婦人問題では後進国だ、こういうことが欧米で言われているわけですので、こういうことにならないように、立派な整備をきちっとした上で、差別撤廃条約を一日も早く批准するようにしていただきたいと思うのです。  そのときに、今一番問題になっておりますのは男女雇用平等法、これは仮称ですのでどういう名前になるかわかりませんが、平等法をつくるということがその整備の重大な問題になっている。これが今焦点になっているわけです。これをつくるときにいいものをつくらなければならない、いいかげんなものをつくったのではまたつくり直さなければならないということが起きる。おくればせながらも日本が世界の婦人運動に大きく貢献するような、さすが日本が立派なものをつくった、そして批准をしたと言われるようにしていただきたいというふうに思います。  それで、外国では、いろいろありますけれども、いいかげんなものであったためにもう一度つくり直すというようなことも聞いておりますが、フランスの場合つくり直したとか、スウェーデンの場合つくり直したとかと聞いておりますけれども大臣はこの事情を御存じでしょうか。
  126. 山田中正

    山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘のございましたフランスの場合でございますが、昭和五十八年に労働法典改正を行っております。私ども承知いたしていますところでは、フランスでは、男女の雇用の広い分野での平等を図るために法制の社会的な機運がございまして、それで八三年に、五十八年でございますが、法典改正ができたということでございまして、その法典をまた改正する動きがあるということは、私ども承知いたしておりません。  それからスウェーデンにつきましては、昭和五十五年に労働生活平等法が施行されております。一部改正があったようでございますが、その内容につきまして現在調査中でございます。先ほど申しました昭和五十五年にこの法典が施行されましたのは、その前から労働委員会等でいろんな法案の審議が行われておったのに加えまして、スウェーデンが条約を批准するのが一つの契機であったというふうに承知いたしております。
  127. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣、今のお話を伺いましても、多少認識が足らないのではないかというふうに思います。これはどういうことかといいますと、フランスでは初めから男女同一賃金法というのがあったわけですが、七五年に、これは国際婦人年の年です、その三年前に、国際婦人年の、七五年にやるというところから、もうその前から準備をしているわけなんですね。そして七五年に刑法典を改正しております。ところが、これは実効性がない。なぜかといいますと、正当な理由がない場合には差別をしてはいけない、こうなっている。こういう留保条件があった。こういうものがあるからこれは実効あるものにならないというので、これを取り払うということで八三年に刑法典と労働法典をきちっと厳しく罰則をつけて、そしてこの条約を批准している。いいかげんなものをつくったらやはり実効がないというので、厳しい罰則をつけている。こういうフランスの批准に向けての準備、こういうものがあったわけですね。ですから、日本もいいかげんなものをつくれば結局またそうなるんだ。だから、そうした先輩に学んで初めからきちっとしたものをつくってほしい、きちっとした罰則あるものをつくってほしいと思います。  それからスウェーデンの場合は、八〇年に向けまして実施予定の雇用平等法をつくっていた。これは国会を通ったわけですけれども、いろいろの国民意見やいろいろ研究した結果、これは制裁規定が弱い、罰則が弱いということで、つくった法案を廃案にして、そして新しい法律をつくって罰則を厳しくした、そして批准をするということになっているわけです。  ですから、こういうことに対しての今の御答弁は、そういう経過、なぜそうなったか、これが一番大事な問題です。この点がまだ十分に外務省も研究が足らないのではないかと思いますので、日本がきちっとした罰則のある平等法をつくるように、大臣としても条約を十分にお読みになって、さらに研究をしていただきたいと思います。  それから、もう一つ大臣にお聞きしたいのですけれども、差別撤廃条約の二条の(b)項ですけれども、肝心のところをちょっと読んでみますと、「婦人に対するすべての差別を禁止する適当な立法その他の措置(適当な場合には制裁を含む。)をとること。」というのがあるわけです。この差別制裁というものの解釈の仕方ですけれども、これに対して外務省が緩やかなものでもいいというような意見を述べているということを聞いていますが、外務省がこういうことをするということは、責任官庁の足を引っ張っていることではないかと思うのですけれども、こういうことについては大臣の命令でやられたのですか、お答え願いたい。
  128. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは条約の解釈の問題ですから、条約局長から答弁させます。
  129. 山田中正

    山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  この条約の、差別を撤廃する場合の差別というものはどういうものであるか、それからそれを撤廃する措置、それがどういうものであるかということにつきまして、外務省として関係各省といろいろ意見の交換、協議をいたしておりますが、今御指摘の二条(b)項につきまして、一般的に緩やかなものでもいいというようなことを私どもの方から申し上げたつもりはございません。  ただ、この条約全体が言っておりますように、それぞれの国内事情に応じて最も適当な立法その他の措置をとる必要がある、それから、この条の審議の過程で、ここに言っております制裁については民事罰でもよいという審議経過がある、そういうことを関係省に御説明したことはございます。
  130. 田中美智子

    田中(美)委員 そういう民事でもいいとか何でもいいとかというようなことは、外務省が言う必要ないじゃないですか。どんな罰則をつけたって批准はできるのですから、外務省は批准できることをしたらいいじゃないですか。それを、弱いものでいいというようなことを外務省が言うということは、けしからぬことだというふうに思います。その点だけは日本の外務省に対して、私は世界の婦人に対して大変恥ずかしい、日本の外務省がこういうことを言っているのだということになりますので、こういう足を引っ張るような発言は絶対にしないでいただきたいというふうに思います。  その次に、労働大臣お尋ねいたします。  この罰則の問題ですけれども、刑事罰とか民事の問題とか、それから社会的な制裁というのもありますけれども、こういう罰則すべてについて立法措置考えるという態度で臨んでいられるかどうか、労働大臣、お願いいたします。
  131. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 今婦人少年審議会で、公益委員が出しましたたたき台で一生懸命に審議を進めておるようであります。何かきのうあたりのお話でも、労使なかなか厳しくて、歩み寄りが簡単ではないというような程度の報告も聞いております。  公益委員の一応のたたき台は御承知のことだろうと思いますが、しかし、それは、まあ私とすれば、相当の見識を持って出されたものである、これはやはり理想と現実上両方踏まえてできるだけの知恵を絞られたものである、こう思っておりますが、たたき台でありますから、これから労使双方からやはり非常に厳しい意見やら貴重な意見やらいろいろ出ると思いますよ。まずそれがまとまってから私ども法案にしたい。企業に対してどの程度の義務づけをするか。例えば努力規定でいくとか、いや、それでは足りないからもっと強行規定をかけなければいかぬとか、その中でももっと厳しいのは罰則をつけるのか、これは今の段階で私が申し上げるのはやはりまだ少し早いように思いますので、審議の経過を見て、そして答申を受け取って、ひとつできるだけの理想と現実を踏まえた責任のある案をつくりたい、こう思っております。
  132. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま委員から、外務省が雇用平等法の足を引っ張るとかあるいは弱くでもいいとか、そういう御発言がございましたが、誤解があるといけませんから御説明申し上げますが、そういうことは一切ありません。外務省として条約の審議の内容等について各省に説明するということは、これは外務省の責任であろうと思います。そういうことをしたまでであるということをはっきりと申し上げておく次第です。
  133. 田中美智子

    田中(美)委員 今の外務大臣お答えは、私、大変不満です。といいますのは、内部に矛盾があるじゃないですか。民事でいいんだとかなんとかということを言っていることは事実じゃないですか。そんな余分なことを言う必要はないじゃないですか。民事だけでやろうとはこの条約には書いてないんですよね。罰則もやらなければならないわけですからね。そんな中で、矛盾があるからといって、それを糊塗するようなことをそちらが言うのはおかしいですよ。
  134. 倉成正

    倉成委員長 山田国連局長。しっかり答えてください。
  135. 田中美智子

    田中(美)委員 いや、結構です。もう聞いたことですから、もう結構です。
  136. 倉成正

    倉成委員長 委員長は許可しました。
  137. 山田中正

    山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  大臣から申しましたとおりでございまして、私ども日本の場合に民事のみでいいとかいうふうなことを申し上げたことはございません。ただ、条約が作成されたときにいろいろ審議の過程がございます。その中での議論で、そういうことを考える国がある場合に、ここに書いてあることは民事罰でもこの条件を満たすという議論がありましたと、それを御紹介しただけでございます。
  138. 田中美智子

    田中(美)委員 私が要求していることですので、議長、一々余り介入しないでいただきたい、今はっきりと言っているわけですから。
  139. 倉成正

    倉成委員長 委員長でございます。
  140. 田中美智子

    田中(美)委員 はい。それではもっと公平にきちっとやっていただきたいと思います。  労働大臣に今のお話を伺いますが、この条約について、雇用平等法をつくるということについてはもう大分前からやっているわけですね。いよいよ法案が出る直前になっても、まだ婦少審の陰に隠れて大臣がはっきりと物が言えないということでは、大臣としてはちょっと見識が弱いのじゃないですか。やはり自分としての意見をはっきり言っていただきたいと思うのですね。  ですから、私が言っていますのは、今はたたき台なんですから、このたたき台がいいとか悪いとか今言っているんじゃないんですね。これに対して心配があるから、大臣の決意はどうか。具体的なところで、どういう罰則をつけ、どういう制裁をつけよということを要求しているんじゃないんですね。罰則にはいろいろあるじゃないか。刑事罰もあれば、民事もあれば、社会的制裁もあるだろう。社会的制裁というのは、例えば身体障害者雇用促進法、それから職安法、こういうものの中に、もし差別をしている場合には、企業を公表するとか、求人の不受理をするとか、紹介の停止とか、公共融資の停止とか、補助金の停止とか、こういうふうないろいろな制裁措置というものがあるだろう。だから、こういうものをすべて勘案してやってほしい、こういう覚悟でやってほしい、この覚悟を聞いているんですね。婦少審があるから、それがあるまでは大臣は一切物が言えない、この期に及んで、それは私は逃げているとしか思えません。こういうあらゆる制裁があるじゃないか、これを駆使するような覚悟でやってほしいということを言っているのです。簡単にお答え願いたい。
  141. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 私にも見識は、それは持たなければいけません。しかし、私がこの人ならばと思ってお願いをした婦人少年審議会の諸先生方にも見識はあるわけであります。そこで、物の順序といたしまして、まず私がお願いした諸先生方に、そのいろいろな具体的な、あなたのおっしゃる項目別のいろいろな義務付けもあれば角度もあれば、やはりすべてを総合して、一応はその御見識をちょうだいして、その直後に私が担当大臣として結論を下したい、こう思っております。
  142. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、今私が申し上げました制裁措置すべてについて、大臣としては諮問しているのだからというふうにお受けいたしました。  それでは、次は文部大臣にお伺いしたいと思うのです。  二十日に婦少審の公益委員の御意見が出されております。これをたたき台と今申したいと思いますけれども、このたたき台では、今労働基準法の女子保護規定、特に深夜、それから休日出勤、残業、こういうものを原則として廃止するというような御意見が出ておりました。この問題は非常に重大な問題に発展するのではないかと私は思っています。この女子保護規定というのは、もともと労基法の中で設定されるときに母性保護考えてつくられたものです。しかし現在、男性の長時間不規則労働というものが進む中で、母性保護の役割を果たしておりますが、それと同時に、父親が家庭にいないという状態の中での家庭を守るという意味で、家庭を維持していく、家庭の崩壊を食いとめていく、こういう意味で、この女子保護規定というものが大きな役割をしているという今日的意義というものが出てきているように思うのです。初めのねらいだけでなく、こういうものが出てきたというふうに思うのです。  それで、文部大臣にこれに関しての質問をしたいと思います。  ことしの一月十一日ですが、非常にショッキングな妻子四人心中事件というのが起きました。これは東芝の東北支社の情報システム営業部長の妻と子の心中事件です。これは単身赴任で、妻子は埼玉県にいるということで心中事件を起こしたわけですが、この問題に対して、近所の方がこの家庭をどう見ているかということで、近所の人たちに奥さんがこういうことを話していたというのですね。うちの主人は会社と結婚したんだ、主人は子供のおむつをかえたことなど一度もない、子供はお父さんのことは何も知らないから、学校で父親についての作文とか話とか全くしないのだということを言っていたというのですね。近所から見て、単身赴任だからそうなっただけでなくて、仙台に転勤する前も、埼玉にいらしたときにも土日はお勤めのようだった、いつもうちにいなかったということを、近所の人たちがこの事件の後言っているわけです。  私が言っていますことは、事実かどうかはわかりません。新聞などの報道から言っているわけです。それで会社の同僚の方が、この方は、夫ですね、東京に出張しても、自分の家がすぐそばにあるわけですが、仕事の後はマージャンをつき合い、自宅には寄らないでそのまま仙台に帰っていたというようなことを言っています。それから、営業が東北六県を担当しているということで出張も多く、接待ゴルフなど月に四、五回はあるのが普通で、家庭が遠のくのは当たり前だった、こういうことを言っているのです。この御本人の夫の方は、私が余りに仕事をとり過ぎたからこういうことになりましたと、お通夜の晩に泣き伏していた、こういうことを言っています。  私が非常にショックに思いましたのは遺言なんですね。この奥さんの遺言が、女なんてつまらない、男としてだけ生きるなら一人で生きなさい、家庭は必要ない、こういう遺言書を残してこういう事件を起こされたわけです。ですから、家族は要らないということでこういう道を選んだわけですけれども、こういうふうに男性自体が今夜中も日曜も休みも関係なく働かされている状態、いるべきときに家庭の中に父親がいないという状態、これは文部大臣としてはどのようにお考えになりますか、簡単にお答えください。
  143. 森喜朗

    ○森国務大臣 お答えをいたします。  大変大事な問題の御指摘でございますが、今の心申された事件というのは、新聞でも私は読みました。大変痛ましい事件だと思います。午前中にもちょっと他の議員の方との質疑の中で申し上げたことですが、日本の経済成長に伴って、やはり働きずくめというのは、企業や社会だけでなくて、日本人というのはやはりまじめな勤労といいますか、働くことに大変な意義を感じている皆さんも多いわけであります。そういう中で家庭が崩壊するという原因は、政治家としても大変大事な問題だというふうに私は感じますが、文部省としてどうするかということになると、大変難しい問題だろうと思います。  ただ、青少年非行の原因というのは、先生も前から御専門ですからよくお調べだと思いますが、文部省でも、第一、やはり地域社会に対する連帯意識というものがだんだん欠けていくということ、もう一つは、やはりマスコミの及ぼす影響、それからもう一つは、社会環境の急激な変化、こういうものがございます。  五十八年の犯罪白書というのをちょっと見てみましたら、数字だけからいいますと、これは日本の全体的なことからいいますと、両親がいらっしゃる家庭の保護少年は七五・七%、圧倒的に多いのですね。片親だけのところが一六・八%というような数字になっておりますので、両親がおられても、逆に言えば過保護のところは案外むしろこういう犯罪を起こしているケースも非常に多い。それから、両親もいらっしゃいますけれども、どちらかといいますと放任主義というのがあります。ここに海部先生がいらっしゃってちょっと引用するのは申しわけないのですが、海部さんが文部大臣のときにどこかに書いておられたのを私は読んで記憶しているのですが、政治家というのは家庭も顧みないし、子供と話することも全然というか、一カ月に一遍あるかないかのことがあっても、やはりお父さんが一生懸命にがんばっているのだということを、母親が子供によくいろいろな話をして聞かせることもとても大事なことだ。また、これは逆の場合もあり得るだろうというふうに思います。ですから、片親だからどうということは、必ずしもそう断定を下すということは、とても難しいことですけれども、しかし、いわゆる片親といいますか、片親と言うことはよくないのだそうでありますが、欠損家庭というふうに言っておりますが、こういう家庭では、やはり家庭教育上確かに問題があることは事実だと思います。  したがって、文部省としては、家庭教育をどうするのかということになりますと、やはり家庭は親の子供に対する私的教育でありますから、したがって、その家庭を形成するお父さんやお母さんに対する社会教育という一環で物を考えていかなければならぬ。そういうふうに考えますと、親の家庭教育に関する学習機会の整備だとか、家庭に学習情報を直接提供するような方向、たとえばはがきの通信とかテレビの放送とか、それから家庭教育指導者養成とか、あるいはいろいろな相談事業、巡回事業とか、電話でいろいろ相談する事業というようなことを五十九年度からやっていこうというようなことで、とても家庭の教育というのは大事なことだというふうなことは、文部省として受けとめております。  しかし、いずれにしましても、家庭というのは、お父さん、お母さん、みんなで健全によく話し合って、そして大人の一挙手一投足、話し方というのは子供に大きな影響を及ぼすのだという、この一番大事な家庭における哲学というものは皆さんがしっかり守っていただきたいな、先生のお話の中で大変痛ましいことであるなと思いつつも、家庭教育というのは、まず大人の自覚がとっても大事だというふうに感想として申し上げておきたいと思います。
  144. 田中美智子

    田中(美)委員 森大臣は大変お若いので、もう少しきちっとした観点をお伺いしたい、もう少し頭の回転が速いことを期待しておりましたけれども、私は子供の非行全体を言っているのではないのです。また、父親や母親のどちらかがいないという家庭のことを言っているのではないのですね。両親がそろっているにもかかわらず、父親が働きバチになっているために家庭に帰ってこれない。そういう中で妻が非常に欲求不満になって、夫婦自体がうまくいってない。そういう中での子供というのが問題ではないかというのに絞って言っているのですが、全体のことを言われていますので、ま、それで結構です。  もう一つ申しますけれども、先ほど話しましたのは、エリート社員がこんな状態になっているというのはもう一般的のようですけれども一般の労働者もそうなっているのですね。例えばトヨタですが、ここでは昼勤というので朝八時から夕方五時まで、夜勤は九時から六時までというのが原則になって、二交代制になっています。ですから、夜の九時から朝の六時まで働くことがしょっちゅうあるわけですね。その上に、これだけではなくて、ほとんど毎日、昼も夜も残業が二時間、三時間というふうにあるわけです。ですから、胃が悪い人たちが圧倒的に多くなっているわけです。  その健康の問題もありますけれども、まず家庭の中が、社宅が六畳一間に台所一つという小さな家です。ここにしょっちゅうお父さんが昼間、朝帰りしてくるわけです。そうしますと、子供がやかましいうるさいというので、子供を外におっぽり出す。夜寝るべきときにいないわけですから、夫婦生活も昼間ということで非常にやりにくい、雨の日などは親も子も困り果てる、こういうことを労働者は訴えている。ですから、親の見識とか教育技術の問題ではなくて、父親が家庭にいないということ、いるべき時間にいない、こういう働かせ方をされているということが、子供の非行にも非常に大きな影響があるのではないか。  それで、時間がありませんのでちょっとお話を進めていきますけれども、警察庁からいただきました新しい資料によりますと、非行は、簡単に言いますと、この五年間に約一・五倍にふえています月それから、それが出てくる基盤としての家庭ですけれども、夫婦の話し合いがなくうまくいかなくなる、ある一定の時間を経て離婚になっていく、これが急激にふえているわけです。これは非常なふえ方をしていることはもう御存じだと思いますけれども、その中で非常に特徴的なことは、これはつい二、三日前に最高裁からの資料をいただいて見たわけですけれども、妻の方から夫に三くだり半を出す、妻の方から逃げていく。こんな夫とではもう家庭生活は楽しくない、ちょうどこの心中事件の奥さんは死という道を選んだわけですけれども、離婚という道を妻が選ぶ、これが七三%になっているということです。これはいろいろなケースがあると思いますけれども、やはり家庭に夫が帰ってくるべきときに帰ってこられない、こういうことがある。  それから、もう一つの話は、私の身近な人の話なんですけれども、あるPTAに行ったところが、お母さんが圧倒的に多かったけれども、先生と初め教育技術の話ばかりずっとしていたわけです。今森大臣が言われたようなことを話していたわけですね。ところが、そこにいたお父さんが、父親が家庭に帰ってきていない、いないのではなくて、帰ってきていないということが問題ではないかという話をちょっと出したところが、一遍にその話になった。つい最近の話ですよ。そして、そのPTAで、父親がどうやって夜きちんと家庭に帰ってくるようにしようかということで、お父さんたちが集まりを持つことになったという話を聞いております。  ということは、いかに父親が働きバチになって家庭に帰れなくなっているか。まさに非行の問題も、まず父親を家庭に帰さないことには、いろいろな教育技術のこともいいですけれども、これはやはり文部省としても努力をしていただきたいということを要求して、次の質問に移りたいと思います。  さて、その次ですが、かつてはこうした非行の子供が出てくる家庭というものについていろいろ問題になるとき、男性の競輪、競馬、ばくち、女遊び、こういうふうなことで父親が帰ってこない、こういう問題が子供の非行の温床になるのではないかというふうに考えられていたわけです。ところが、今日的な特徴というのは、父親が不規則、長時間労働でうちに帰ってこれないということがその問題ではないか、こういうことを言っておるわけです。  文部大臣に聞きましても、文部大臣としてはそれは文部省としても困るんだということでしたので、労働大臣にお聞きしますが、どうやって父親を家庭に帰すのか、その点で一言簡単にお答えください。
  145. 倉成正

    倉成委員長 労働大臣。頭の回転を速くして答えてください。
  146. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 まあ、一言で言えと言われれば、これは労働行政技術論ではないでしょう。そういうことになれば、これはやはりだんなさんももう少し家庭を大事にした方がいいし、そういうふうに誘導する奥さんにも御努力をいただきたい。男女両方でひとつ立派な家庭をつくるようにお願いしたい、こう思います。
  147. 田中美智子

    田中(美)委員 また回転が悪いのか、はぐらかしているのかわかりませんが、私は、父親が幾ら家庭に帰りたくても、会社に縛られて帰れないという状態をどうするかと聞いているのです。  次の質問に行きますが、これは労働基準法研究会報告です。これには、女子が職場において能力を有効に発揮することは、男子と同じ基盤に立って就業することだということが書いてあるわけですね。「男子と同じ基盤にたって」ということが書いてあるわけです。  それから、これは一月十七日の読売新聞です。これに大臣、御自分の顔が出ておりますのでごらんください。一間一答のような形での新聞報道ですけれども、いわゆる妊娠、出産に関する母性保護は残す、しかし、それ以外、ということは、休日、深夜、それから残業ですね。「それ以外は、男女平等という以上、あれこれ保護規定を残してはフェアでない。条件と待遇のバランスが大事だ。」こういうふうに大臣が言っておられるのですね。これは新聞報道ですが、これについて、大臣は今でもそのようにお考えですか。
  148. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 そのとおりです。
  149. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣、今でも、男子が長時間、不規則労働をしていることによって、それだけでも家庭が崩壊しているのですよ。それなのに女性も全部これに右に倣えさせれば、家庭は崩壊するじゃないですか。あなたも政治家でしょう。男、女の問題じゃないのですよ。日本の最も大事な社会的基盤である家庭が崩壊していくのですよ。それをほっておいて、子供の非行だとかなんとかと言って、そんな問題以前の問題です。家庭が崩壊するのですよ。  ですから、男をどんどん働きバチにしておいて、それに女性も右へ倣えさせれば男女平等という、こういう考え方は間違っているのです。あなた自身が古い考え方に立っているから、こういうことを新聞に報道されても恥ずかしいとも思わないということは、私は非常に問題だと思うのですよ。だから、今の時点に立っても、婦少審の陰に隠れではっきりした一言を言えないのですよ。もうちょっと見識を持っていただきたいと思います。
  150. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 家庭の問題は、私は、基本的にはやはり御主人と奥様の協力以外にはないと思いますね。  それから、日本の男性は会社に就職しておって、そして家庭を顧みない。確かに上の方へ行きますれば、そういう傾向は強いです。うちの労働省でも夜遅くまでやっておりますわ。余り遅くまでだんなさんを縛っておくということは、家庭にとっていいことではありません。  しかし、労働省といたしましてもいろいろな、週休二日制を普及するとか有給休暇をもっととりなさいとか、それから、ずっと惰性に流れた時間外勤務というものはもっと考え直して、短時間のうちに能率を上げなさいとか、いろいろ指導をいたしております。それはだんだんと実効を上げていかなければならぬことだと私は思っておりますが、それはそれとして、先ほど申し上げたのは、やはり男女の機会均等法、平等法というべきものをつくるときには、先ほど申し上げましたような労働基準法の母性保護規定、これは置いておかなければいかぬけれども、それ以外は実情に応じてきめ細かく配慮をしながら見直していくべきだ、こう申したわけであります。
  151. 田中美智子

    田中(美)委員 きめ細かくとおっしゃいましたけれども、きめ細かくのお手並みを拝見したいと思います。  労働省にお伺いします。日本の労働者の年間総実労働時間は二千百四十一時間、西独は千七百七時間、フランスは千七百六十八時間、イギリスは千八百八十八時間、アメリカは千八百九十三時間、これは間違いないでしょうか、簡単に言ってください。
  152. 望月三郎

    ○望月政府委員 今私どもの一九八二年の資料で比べておりますが、日本は二千百三十六時間、アメリカは千八百五十一時間、西ドイツは千六百八十二時間、イギリスは千八百八十八時間、フランスが千七百七時間でございます。
  153. 田中美智子

    田中(美)委員 大体私の調べた時間と一緒です。この五カ国で見ますと、二千時間を超えているのは日本だけです。西独、フランスと比べますと、日本は西独の十五カ月、フランスの十四・六カ月、一年がですよ。簡単に言えば、西独、フランスより二・五カ月から三カ月も日本の労働者は長い時間を働いているということ、これは数字ではっきりと出ていると思います。  それからもう一つの資料ですが、これはコンピューターで働いている労働者の実態を電算機関連労働組合協議会というところが出しておりますけれども、これを見ますと、三六協定で五十時間前後というふうに決めているにもかかわらず、百二十時間も働いている。三六協定を超えているのですね。それから、最高の残業時間、三六協定を超えた人が三一%以上いる。最高が二百時間も働いている人がいるというようなことが出ています。これは花形産業でしょうけれども、こういう企業が今非常にふえているということも事実ですね。  今、大臣がきめ細かくやられるというふうに言われたわけですけれども、こういう状態を全く放置したまま、ますます男が深夜も、残業も、休日も出て働くという状態をきめ細かくどころか全く放置したまま、そしてそれに女性をも右へ倣えさせようということでは、家庭が崩壊するということはもう火を見るよりも明らかではないか。その前にもちろん労働者の健康が害されるということ、まして母体が破壊されるということは言をまたないことだというふうに思います。そういう意味で、大臣に、労働時間をいかに短くしていくか、こういう努力をきめ細かくやっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。その点を一言、御決意をお願いします。簡単でいいですから。
  154. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 先ほども申し上げましたように、労働省としては、労働時間を短縮できるように基本的に努めてまいる所存であります。
  155. 田中美智子

    田中(美)委員 では通産大臣、大変お急ぎのようですので御協力いたしまして、一言簡単にお聞きしたいと思います。  通産大臣は今入ってこられましたので、前の話を聞いてないとお答えにくいかと思いますけれども、女子保護規定を取り払って、残業、休日、夜間まで女性が今度働くようになるということになりますと、これは大変なことになるというふうに思うのですね。それで、今話し合っておりましたこうした男子労働者の長時間、不規則労働というものが、国際的には現在でも非常に批判を受けています。日本の労働者はけものや昆虫扱いされているのではないか、こう私は思うのですね。それは、例えばエコノミックアニマルだとか働きバチだとか、こういうふうにけもの、昆虫に例えられている。この言葉は一時期の流行語ではなくて、世界の人たちが、特に先進国の人たちが日本の労働者を言うときの定着した形容詞になっているわけです。ですから、こういう状態を放置していいのかということで、この男子の長時間労働、それに女子をも合わせていくということになりますと、ますます経済摩擦を激化させるのではないか。このことについてだけ御質問して、どうぞ商工委員会にお帰りください。
  156. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 我が国の労働者の賃金がヨーロッパ並みである、そしてまた労働時間が欧米よりも長いということは事実であります。しかしながら、それは直接通商摩擦の原因ではございませんで、通商摩擦の原因というのは、むしろ技術のよさ、設備の近代化、そういうようなことが国際競争力として各国よりも非常に高いというところにあると私ども考えております。
  157. 田中美智子

    田中(美)委員 それは、人間ということを考えない、こんなことしていたら、ソーシャルダンピングのそしりを日本はますます受けるというふうに思います。日本が国際社会で引けをとらないように、私は努力をしていただきたいと思います。通産大臣は予算委員会を非常に無視したような形で、私に短時間にしてほしいという強い要求があったことも不満ですけれども、仕方がなく、今後こういうことがないようにしていただきたいというふうに思います。  次に移ります。  労働大臣、今ILO条約、主要条約でも百を超すほどたくさんの条約がありますが、その中で労働時間に関係する条約は一本も批准していない。そうですか。
  158. 望月三郎

    ○望月政府委員 さようでございます。
  159. 田中美智子

    田中(美)委員 例えばILO条約を見ますと、百何号がだあっと並んでいますね。ILO第一号条約、一九一九年ですので約六十数年前のです。これさえも日本は批准していません。これは一体どういうことですか。大臣は今も、きめ細かく時短に努力をなさるとおっしゃったでしょう。きめ細かい配慮をすると言っているのに、六十年前のこのILO一号条約というのは御存じだと思いますが、労働時間を。一日に八時間、週四十八時間恒制限する条約なんです。週四十八時間さえ守れないんですね。これは一時間ちょっと、残業ぐらいがあるだけですね。ここが守れない。なぜ守れないのか。それは三六協定でこれ以上にがあんと働かせるから、この条約を批准できないのですね。それも、先ほど言いましたように、三六協定で五十時間と決めていても、今百時間、二百時間と働かしているのです。  森大臣もよく聞いていてほしいと思うのですよ。こんな状態を放置していて、夫と妻が仲よくするとしても、いつ仲よくするのですか。それこそキスする暇もないじゃないですか。そんな状態にしておいて、夫婦の見識の問題の前の問題なんですよ。そういうことから基本的に考えながら、あなただって政治家じゃないですか、文部のことだけ、教育技術の問題だけ考えていればいいということではないのですよ。  今ここに持ってまいりましたのは、外務省が出しました第一回国際労働会議報告書というのがあります。これで、一号条約が出たときに日本が批准しないという、そういうことで日本傭主代表委員武藤山治という人が国際舞台で陳述しているのですね。これを読んでみますと、日本の労働行政の基本が大変よくわかるのですね。六十何年前ですよ、はっきり言っておきますけれども。「日本ノ労働状態ヲ急激ニ変スルトキハ」、これは労働時間を短くするということですよ。「不良ノ結果ヲ生スヘシ何トナレ八日本職エノ能率ハ低ク又欧米職エソ如ク自ラ修養シ且運動遊戯スル等ノ習慣乏シキヲ以テ時間短縮二体テ得タル時間ヲ利用スルコト能ハス却テ悪結果ヲ来スノ因トナルヘシ」、こう書いてある。  日本武藤山治が国際舞台でもって、このILO一号条約は批准できないと言ったんですね。日本の労働者は、教養をつけるような修養をすることはしないし、もし時間があいたらその時間は余りいいことに使わないから、かえって長時間労働させた方がいいと言っている。労働大臣、まさにこの時代と全く変わってないじゃないですか。そうでしょう。何で、ILO条約を一本も批准していない、そうしていて、ようぬけぬけときめ細かくやるなどということが言えますか。
  160. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 今委員が言われた六十年前のお話、六十年前はあるいはそうであったかもしれません。しかし、今日は、六十年後でございまするから、日本の勤労者というものも非常に質も高くなっておりまするし、それから労使関係は、私の見たところでは世界的にもうまくいっている方だと思っております。六十年前と今ではさま変わりでありまして、私は労働大臣として各国の勤労者の質とかあるいはまた労使関係を見ましたときに、日本は立派な方に入るだろう、こう思っております。ただルックイーストとかルックウエストとかと、おだてられておるわけではありません。私はそう思っております。  ただ、このILO条約に入っていない、何か日本もそうでありまするが、アメリカもイギリスもそのようでありますが、日本の場合は、基本的には条件は満たしておるけれども日本国有の外国にない終身雇用制とか、いろいろ日本独特の制度がございまして、そして失業者を出さない、社員を非常に大切にしまして、不景気でもすぐ首を切らない、我慢をして会社が抱えておる、しかし、そのかわり景気のよくなりかけたときには、今までの余剰に抱えておった社員の皆さんに取り返してもらおうと思って、余計働いてもらうというようなこともあるようであります。基本的にはILO条約の線は守っておるが、固有の終身雇用制に発するそういう労働慣行というような点について細かい点では違うので、いまだ批准をしていないと私は聞いております。  細かいことは政府委員から答弁いたします。
  161. 田中美智子

    田中(美)委員 政府委員答弁、結構です。  大臣の認識は、すべて御存じでも、今のままでいいというお考え。私の言っていますのは、労働時間がこんなに長くなっているじゃないかということを言っている。これを放置していれば、日本は総病人になりますよ、男は全部総病人ですよ。そうなってしまいますよ。それで健康保険だ何だと言っていられません、その前の問題ですから。満たしているなんて、これは大うそです。満たしてないから批准できないんです。日本の特殊事情も何もあったものじゃない。  それでは、大臣もう一つお答え願いたいと思うのですけれども昭和五十四年に第四次雇用対策基本計画というのを閣議決定していますね。これを見ますと、六十年までに日本の年間実総労働時間を欧米並みにする、こう書いてあるんですね。これはいいことですね。欧米並みというのは、さっき言いましたように、二千時間を超えているのは日本しかないのですから、みんな大体千七百台か千八百台。千八百台にするといっても、六十年というのは来年ですよ。こういうことを言っているんですね。これはいいことですね。いいことだと思う。こういうふうにやってほしいと思う。この計画どおりにやってほしいと思うのです。しかし、こういうときに女子の残業、休日、深夜、こういうものをやれば、さらに日本の労働時間は二千時間をはるかに超えてしまう方向に行くんです。  こうした政府の最高方針と矛盾したことを今度は男女雇用平等法の方でやろう。同じ労働省の中で、片一方では時短に努力するんだ、国会ではきめ細かくやるんだ、こう言いながら、男女雇用平等法の中で、これはまだたたき台ですから大臣を責めているわけじゃないですけれども、残業、休日、こういうものの規制を廃止する。これは平等の観点から廃止するんだ、こう大臣さっきおっしゃいましたけれども、こういうことになれば労働時間は延びるに決まっているんですね。同じ労働省の中で矛盾したことをしておるじゃないかということなんですね。ですから、こんな矛盾したことを同じ労働省の中でやる、こんなことはけしからぬと思うのです。こういうことにならぬように、時短でいくなら時短をがあっとやっていく。そして、本当に欧米並みにしてから、女性を平等にする、それに右へ倣えするかどうかということは考えるべきである。時間はどんどん延ばしておいて、それに女をくっつけていく、こんなばかな理屈はないと思うのです。大臣、一言お答えください。
  162. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 時間短縮は男も女もありません。その方向に向かって努力をするということであります。  ただ、男女雇用平等法におきましては、これは今までの日本はなるほどある程度亭主関白で、そういう時代もあったんですから、ここでひとつその姿勢を変えていこう、こういうことで相努めていこうということで、結果的にはそう矛盾はないように思います。
  163. 田中美智子

    田中(美)委員 回転がお悪いんだと思いますけれども、絶対に、女性を夜中に働かしていくというようなことをすれば時間が延びるということだけは明らかですので、明らかに労働省の中に矛盾があるということを強く申し上げて、次の質問にいたします。  大臣、フクロウパートを御存じですか。フクロウパート、ちょっと難しい言葉です。フクロウというのは夜中の鳥のフクロウです。御存じない。うなずいていらっしゃる。これは今盛んに労働者の中で言われているんですね。フクロウパートというのは、夜中に働くパート労働者のことです。今度のたたき台では、これから女子保護規定を取っ払う、こう言っているのですね。  そうしますと、どうなるかというと、女性を夜中に二、三時間だけパートで働かす、こういうフクロウパートが出てくるということ、こういうことが可能だということなんですね。これは男もあるのですけれども、女性が非常に多いのですね。これは現在労基法違反でしょう、夜中に働かせるということは。それを労働省はきちっと取り締まっていないのですよね。だから、どんどんフクロウパートがふえているのです。これは取り締まっていない。それはわからぬのですよ、女の名前で登録しないのですから。男の名前に変えちゃうのですね。田中美智子なら田中美智男というふうにして出しているわけですね。こういうことをして女性を夜中に働かしておるのですね。こういうことがどんどん今広がっている。急激に広がっているのですね。そうしておきながら、このパートを夜中に働くことを可能にする、こんなことをしたら夜間専用細切れ労働者が大量に出てくるのです。  これは家庭の崩壊もあれば、健康破壊もあれば、男子労働者にも影響が出てくる。労働の観点から見て大変な問題になる。こういうことが絶対に起きないように十分に御注意をいただきたいということを、時間がありませんので、この夜間専用細切れ労働者を大量につくらないように大臣に厳重に忠告申し上げておきます。そして次の質問に行きます。法案をつくるとき十分ここに気をつけていただきたいと思います。婦人少年局長もいらっしゃるようですけれども、この点は絶対にこういうことにならないようにしていただきたいと思います。  次に、法制局にお聞きいたしますが、いろいろの差別問題について今まで裁判などでやっておりましたけれども、ここで勝利した判例というのがたくさん出ておりますけれども、勝利するときに、労基法四条は賃金差別しかありませんので、結局、差別があった場合には民法九十条違反、公序良俗違反ということで、労働者の裁判が勝利した判例というのがたくさんあるわけですね。もしこれが努力規定、どれというふうに言いません、いろいろありますけれども、努力規定になった場合、裁判で争っていたときに争点が移るのではないか。移らないまでも、九十条違反ということになりますと、そこに差別が少ないか多いかという問題より、差別があるかないかということが裁判の争点になるのですね。ところが、努力規定の平等法ができた場合、もしできたとしたらば、結局争点は、企業が努力したか努力しないかということもその争点の中に一つ加味されるのではないか、こういう心配をするのですけれども、いかがでしょうか。
  164. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問にありましたいわゆる努力規定のことでございますが、努力規定といえども、それが法規範であります以上は、その義務主体である者は、その規定の定めるところに従って努力を尽くさなければならないことは、これは言うまでもないところでございます。現に幾つかの法律にこの努力規定が設けられておりまして、それぞれがそれなりの機能を果たしていることは、委員御承知のとおりでございます。  ところで、このいわゆる努力規定のあることが、民法九十条の公序良俗違反が問題となっている裁判におきまして何らかの影響を持つのかどうかという御質問でございますが、何分にも裁判所の判断に関する問題でありますし、また努力規定につきましては、そのようなことも含めて、先ほど労働大臣も言われましたように、婦人少年問題審議会におきまして慎重な審議が行われるのではないかと推察いたしておりまして、この席で具体的な内容を承知しないままで私が先走って御意見を申し述べることは差し控えたい、こう思いますので、御了承をお願いしたいと思います。
  165. 田中美智子

    田中(美)委員 これはあなたが結局言えないということで、まあ言えないのだと思います。これは実際の裁判の場合とか、今法案が出てこない、一般論として聞いているのですよ。問題は、差別の実態があるかないかということで争うと同時に、その中に企業が努力したかしないかということも加味する可能性があるかと聞いているのです。これは法制上聞いているのですよ。あるかないかだけちょっとお答えください。
  166. 茂串俊

    ○茂串政府委員 一般論としては大変にお答えしにくい問題であることはもう委員御承知のとおりでございまして、その意味で、この席で一般論といえども私から可能性ありなしということにつきまして御意見を申し上げることは差し控えたいと思いますので、重ねて御了承をお願い申し上げたいと思います。
  167. 田中美智子

    田中(美)委員 なぜ言えないのですか。なぜですか。これは法制上のことを言っているのです。政治的なことじゃないのですよ。大事なところだから言っているのです。企業が努力したか努力しないかということが入るじゃないですか。当たり前じゃないですか。そうすれば、現在よりも悪い法律になるということが物によっては起きるじゃないかと言っているのですね。ですから、努力規定にしては絶対にならないと言っているのです。  努力規定なんかにしたら今より悪くなる。今より悪くなる法律をつくろうなどとは、大臣にしたって婦人少年局長にしたって思っていないでしょう。よもや今よりは悪いものにしようなんて思っていないと国民は思っているのですよ。ですけれども、期せずしてなるかもしれない、ひょっとしたらなるかもしれないという心配をしているのですね。やはり法制局はなるということをわかっているからなかなか言えないのですよ。自分のところでは言いたくないから、言えない言えないという気持ちはよくわかります。それで、こういう心配をするについては、相当幅広く物を考えていただきたいと思うのですよ。  それで、お聞きしますが、炭鉱で災害があったときに看護婦を入れるということが、このたたき台の中では簡単に看護婦も入れることができるようになるんだというふうに書いておられますので、私は心配しますのは、これは見解の相違ではなくて認識不足ではないかというふうに思いますので、ちょっと御質問するわけです。  救護隊というのは、特殊の訓練を受けた人が入ることになっている。これは鉱山保安法や石炭鉱山保安規則でこういうふうになっている。ですから、例えば三井有明炭鉱で救護隊の訓練を受けた人は、夕張炭鉱では役に立たないというようなものだ。非常に自然条件が違い、厳しい条件があるわけなんです。だからこの救護隊というものがつくられていると思うのですね。それなのに、簡単に看護婦を入れたらいいんだというふうにもし軽く考えているとするならば、これは大変な問題ではないかと思います。  こういうところから、私は、今法制局に伺ったように、これは努力規定でもいいんだというような簡単な、努力すればうまくいくんだ、こういうふうなことで法律がつくられますと、せっかく今までから取ったものさえも後退するのではないか。後退しないまでも、裁判では大変やりにくくなるのではないか、こういうことを心配しているわけです。こういう認識不足が起きないように十分に注意を払っていただきたいと思います。これは大臣に強く要求いたします。よもや今より後退した平等法をつくるというお気持ちはないでしょうね。一言でお答えください。
  168. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 男女平等が今法律にないのです。それをあるようにするのですから、進歩だと思っております。
  169. 田中美智子

    田中(美)委員 次に、育児休業の問題について質問いたします。  ここに持ってきていますのは、日経連の大槻文平会長ですかの名前で、労働大臣のところにこうした決議文のようなものが渡されております。これは昭和五十六年九月十八日、育児休業制度をつくるな、私から言わせればこういう圧力が労働大臣にかかっている。かけた、私はこういうふうに思うのです。  この労働省の「労働経済の分析」というのを見ますと、この中にこういうことがあります。「女性が結婚後も職業をもって働くために必要なこと」ということで、育児休業制度が普及していればもっと婦人が働きたい。大臣が今努力すると言われたように、もっと女子が男子と平等になって働けるようにしていくには育児休業制度が要るということを言っているのが未婚者では約四〇%、それから既婚労働者も三八・三ですから、これも三九%ぐらいあります。それから既婚無職、この人が四八・三%、育児休業があれば非常に女性が働けるということを言っている。こういう統計はたくさん出ております。非常にたくさんの人たちが育児休業制度を欲しているわけですね。ところが、財界は労働省にこういうふうに圧力をかけてきている。これをつくるな。  その理由は何かといいますと、幾つかあるのですけれども、ここにこういうことが書いてあります。「民間についてもここの制度を取り入れると、「社会保険料本人負担分を雇用保険または企業が負担することになれば、企業の支出増という結果になる。」だから結局、育児休業制度をつくったら金がかかるからだめだよ、財界が労働大臣にこういう圧力をかけておるのですね。  一体幾ら金がかかるかということで、今お手元にこの資料をお渡しいたしましたので、後でゆっくり計算していただきたいのですが、一応私が計算をしてみました。労働者一人当たり一カ月十円の負担を企業が行えば、全産業で、女子だけでなく男子労働者を含めて育児休業制度を実現できるというのが私の見解です。  なぜこうなるか。労働者一人に対して企業がたった十円出せば、全労働者に、女子だけでなくて男子にまでできるんだという計算をしてみた。たった十円で済むものを、金がかかるからやめろと大臣に言っていれば、大臣が唯々諾々とそれに従ってもらっては困るので、いかに安い金でできるかということを大臣にお伝えしたいと思うのです。  ここに使いました数字は、すべて労働省が衆議院の予算委員会に提出した資料の数字を使ってみました。これでいきますと、女予の雇用労働者が千四百八十六万人いる。そのうち子供を産む人が二・七%、この子供を産む人の中で、子供を産んでも働き続ける人が六三・三%、育児休業制度がある中でこの制度を使う人は二九・三%、こういうことで計算しましたのが最初にあります数式です。  そうすると、大体年間約七万四千人の婦人が、子供を産んで育児休暇を制度があればとる人と推定できるわけですね。この人たちが一人七カ月育児休業をとった場合に、五十九年度、今出ておりますこの予算の中に、特定職種育児休業利用助成給付金というものを政府は雇用保険から出すようになっています。これは一人一カ月五千六百円出すという予算ベースとして報告されております。そうしますと、七万四千人が五千六百円かかるわけですね。五千六百円に七万四千人、これはちょっと反対になっていますが、掛ける。そして七カ月これをとるとしますと、約二十九億というお金があれば、全産業の男女労働者に育児休業制度を適用することができる。  そうしますと、今雇用保険に入っている労働者の数でこの二十九億何がしのお金を割りますと、約百二十円近くで、これを一カ月にしますと、十二で割りました。そうすると九・四円です。わずか十円ですね。自分の雇っている労働者一人当たりについて十円出せば、全産業に育児休業制度をつくることができるではないかという私の計算です。  ですから、千人雇っている企業があれば、月一万円出せば十分に全産業にできる、それも女だけじゃない、男にもできるんだということです。ぜひこのことは考えていただきたい。直ちに育児休業制度を全産業に広げていただきたい。これはもう本当に婦人の大きな願いなんです。ですから労働大臣、ここでしっかりと育児休業制度をつくっていただたいと思うのです。政府は一銭も腹を痛めずにできるんですよ。今大急ぎで言いましたので十分納得いかないかもわかりませんが、後でこの計算をもう一度よくごらんになりまして、育児休業制度を全産業に普及していただきたい。国の予算は一銭も使わずにできるというやり方、よろしいでしょうか。
  170. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 今お聞きしましたら、なかなか結構なような案でありまするが、しかし、よく勉強させてください。
  171. 田中美智子

    田中(美)委員 では、結構であるなら勉強いたしまして、納得いたしましたらぜひ全産業にこれを広げていただきたいと思います。ちなみに、嫌味を言うつもりはございませんけれども企業の交際費というのは一カ月九億円ですよ。一カ月一人の労働者に十円出させるということくらいは労働大臣の腹一つでできることではないか、その点を強く要求をしておきます。  さて、次に参ります。  二月の二十九日、ついこの間、二、三日前、NHKの「ニュースワイド」を見ておりましたら、この男女雇用平等法についての世論調査が報道されました。大急ぎでメモをしたわけですが、これは、差別されていると思うかと婦人に聞いているわけです。そうすると、四九%されていると思う。されないというのが三〇%なんですね。これを見ますと、十七年前にやはりNHKがやっているんですけれども、それよりか差別されているというのは非常にふえていますし、されていないというのが減っているんですね。こういうのを見ても、これは一つの世論調査ではありますけれども、いかに婦人の意識が高まっているかということです。差別の実態がさらに悪くなっているかとかよくなっているかとかいうことよりも、今までは差別でないかもしれない、何となく思っていたことが、意識が向上することによって、ひどい、こういうふうに思っているということの結果が出ている、私は端的に出ていると思います。  それからその次に、差別があると答えている中で二十代が圧倒的に多いんですね。六二%の人が二十代。年とともに婦人の差別があるというのは減っているということを見ましても、いかに若い人ほど意識が高まっているかということは、私は言えると思います。特に募集採用、このときに挫折感が大変大きいというふうに思うんです。この募集採用のときに、先ほど時間がなくてあれしたんですけれども、この募集採用のところですけれども、ここを努力規定にするということをたたき台では言っているわけですけれども、これを努力規定にするということは、局長も来ていらっしゃるし、大臣もいられるわけですが、募集採用のところで差別をされたら、入り口のところで差別されるということですから、こんなところを努力規定にしたら、今の差別を容認することですね。ボタンで言えば、大臣のそのチョッキのボタン、一番最初のボタンをかけ違えたら最後までおかしいんですよ。そうでしょう。それと同じことです。この募集採用のところですね。ここでの挫折感がいかに多いかということが、このNHKの世論調査にも非常にはっきり出ているんじゃないか。六二%の若い女性が差別があると答えているんですね。  それからまた、非常に端的に出ているんですけれども、一体差別の目立つところはどこか、差別の根源はどこかというこの調査に対して、八一%の婦人が職場に差別があると答えているのですね。ということは、いかにこれを取り除くための男女雇用平等法が必要かということが、この調査を見ても私は大変はっきりしているというふうに思うのです。そういう意味で、実効ある男女雇用平等法ができない限り、絵にかいたもちのようなものをつくったり、またボタンのかけ違いのようなこういう平等法をつくったのでは、この婦人の声にこたえることはできないというふうに思うのです。ですから、もう一度はっきり要求いたしますけれども、罰則、制裁、これは必ずきっちりとつけていただきたいということです。  それから、女子保護規定はすべて堅持していただきたい。それともう一つは、女子の保護規定を男子にさえ拡大する必要があるのじゃないか。この三つの観点を十分に踏まえて私は男女平等法案をつくっていただきたい、雇用平等法の名に値しないようなものは絶対につくっていただきたくないというふうに思います。  先ほどちょっと間違いましたので、訂正させていただきます。  企業の交際費九億円と言いましたけれども、一日九億円です。一カ月二百七十億になるわけです。一日九億円使っているのですね。今私が要求しているのは、一カ月十円出してくれればとさっき育児休暇のところで言ったこと、これはちょっと数字を間違いましたので、訂正させていただきます。  雇用平等法の名に値しないもの、こういうものはつくらないで、本当に実効ある、婦人の声にこたえるものをつくっていただきたいと思います。  さて、この平等法の問題というのは、非常に私は特徴があると思うのですね、社会の反応に。婦人が非常に注目しているということだけではありません。日本の婦人が注目しているだけではなく、世界の婦人も、日本は働きバチの国、女性問題の後進国というようなことを言われているということで、今度日本が雇用平等法をつくるそうだがどんなものができるのか、お手並みを拝見したいという形で見ているわけですから、世界の婦人運動に貢献するような、こういう男女雇用平等法をつくる必要があると思うのです。  もう一つ大きな特徴は、財界がこれほど表に出てきたことはないのです。普通の法案でしたら、大臣局長にかみつくのですよ。そうじゃないのですね、どっちかというと。大臣局長もっとしっかりせい、それこそ首かけて頑張ってくれ、日本の女性史に残るものなんだ、世界の歴史に、人類の歴史に残るほど大きな問題なんだ、こういうものがいま日本でやられようとしているんだ、この認識は、大臣よりも財界の方が私は敏感なのではないかとさえ思います。まさに、日本の労働省、日本の自民党政府と婦人が対決しているのじゃないのですね、財界が表に出てきている。  さっきの育児休暇の問題一つにしても、昨年の九月、雇用平等法をつくるなどいう声明を出そうとした日経連、これは婦人の抗議に遭って声明を出すということはとめました。しかし、きのうの婦少審では、署名したことさえ間違っているなどというようなことを財界が言っている。これほど財界が表に出てきたことは、本当にほかのものはないと思うのです。そういう意味では、私は、行政や立法府が財界に屈してはならないと思うのですよ。もっと世界に広く目を向けて、財界に絶対屈服することなく、私は労働大臣、また担当の婦人少年局長の御決意を聞きたいと思います。まず局長から御決意をお願いします。
  172. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先生今お話に出ておりました、昨年の秋に財界の方から反対声明を出すという行動がされましたときに、私は財界の代表の方々に、これは世界の趨勢である、歴史の目指しているところありますのでぜひ御理解をいただきたい、こういうことに財界が御反対をなさるということは、我が国の地位から申しましても、国際的な地位から申しましても決してプラスにはならない、大きなマイナスではございませんでしょうかということをるる御説明をいたしました。そのとき、声明をお出しになるということについては、中でいろいろ御議論があって思いとどまられたというふうに理解をいたしております。
  173. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 委員のお話の中に、財界が今ごろ昭和五十五年にわが国政府が署名したのがおかしいなんていう話がありましたのも、私は直接聞いていないのですけれども、そんなことを言う方がおかしいんで、余り気にとめられない方がいいと思います。  それから、私どもは確かにやはり大きな日本の社会の、雇用関係についてもあるいは男女関係というか分業論になりましょうけれども、大きな転換期になる、私はそう思っております。非常に歴史的な意義はある、こう思っております。だから、それは特定の不当な支配に服することなく、財界であろうと何界であろうと同じであります。  いま審議会が、非常に公平な皆さんが一生懸命知恵を絞っておいでになりますが、御承知のとおり、右がこう言えば左がこう言う、大変な議論が沸騰しておりますので、ひとつなるべくやはり私どもはコンセンサスをまとめて、そして日本の国としても来年の批准に合わせたいし、それからまた、日本の国がここまで来たというのは、資源のない国がここまで来たのですから、やはり勤労の質というものが大変よかったからだと思いますよ。だけれども、これは男の方はなるほど相当昔から開発をして訓練をしてきたのであります。それに比べると女性の方は、男女平等、共学が始まったのはこの戦争の後であります、はっきり言って。だから、ちょっとやはりまだ女性能力の開発という点は一般的におくれておる。そこを掘り起こすということは、日本の国家国民のために非常に有意義なことである。ただ外国のまねをするというだけじゃなしに、日本の国としてもやった方が将来立派な業績が残るのではないか、そう思って、私は私なりに一生懸命やっていきたい。不当な支配に服することなくということは、これは当然のことであります。
  174. 田中美智子

    田中(美)委員 局長お答えが多少弱いので私は心配いたしますが、声明を出すのはいかぬといったことだけでは困るのであって、もっとすべてのことについて、きのうの婦少審でも、署名さえいかぬなどというようなことはこれはけしからぬことだということで、はっきり物を言っていただきたいと思います。まさに財界と女性ががっちりと組んでいるという感じですね。そのときに、自民党政府が財界に味方していくようなことが絶対にないように、その疑いが非常に濃厚ですので、強く要求をしておきたいと思います。  あと一分ありますので、けさの朝日新聞の投書欄に「差別見ぬふり雇用法の試案」ということが出ておりましたので、一言これを読み上げまして私の質問を終わりたいと思います。  これは小金井の岡部玲子さんという学生の投書です。   男女雇用平等法案を審議している婦人少年問題審議会委員の皆様。  いよいよ今年の四月、国会にかけられるそうですね。法が成立すればアジアでは第一号。就職差別で苦闘している女子学生、職場の差別に屈辱を感じる女子社員、正社員として再就職できない主婦、みんなその行方に注目しているはずです。  婦人労働部会の「試案」を読んで驚いてしまいました。失礼ながら本当に平等法を作る気があるのでしょうか。募集採用差別は企業努力、行政指導、労使の自主的解決!あーあ、女子学生への差別がどんなに徹底的か、見て見ないふりですか。また外国から総スカンを食って、経済摩擦再燃ですよ。他の国では企業がそれなりの犠牲を払っているのです。  おまけに母性保護以外は保護を撤廃するそうですね。育児や家事に男性を参加させるための時間短縮はどうなったのですか。これも企業が損をするからダメですか。「女工哀史はごめん」という声が全国的に上がる日も間近ですね。平等法なんてほしくないとみんなが言い出しますよ。もう一度じっくり婦人差別撤廃条約を研究してください。条約の精神を踏みにじる法を作らないでほしいのです。こういうこと、非常に私は婦人の声を大きくしていると思います。  雇用平等法をつくらないでもいいなどと言う婦人は一人もいません。できるだけいいものを、世界に恥ずかしくない男女雇用平等法案をぜひつくることを大臣とまた担当の局長に強く要求いたしまして、私の質問を終わります。
  175. 倉成正

    倉成委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  次に、島田琢郎君。
  176. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 限られた時間ですから、非常に端的な質問になると思いますが、きょう対応いただく大臣はそれぞれみんな専門家の方ばかりですから、ひとつ正確にお答えをいただけると思いますし、私のところにも、予算委員会の質疑を聞いていると大変難しい、もう少し易しく、だれにでもわかるようにできないか、こういうお話も時々聞かされるのであります。そういう点では、やはり経済問題なんというものをやりますとどうしても難しくなりがちなんでありますが、きょうはぜひわかりやすく御説明いただきたい、こう思っています。  まず最初に、大変ドルが先行き下落をするのではないか、暴落するのではないかという極端な意見もあるようであります。それを裏書きするように、きょうの日経新聞によりますと、欧州、特に西ドイツにおきましてはマルクが回復をしている。ということは、ドルが安くなっているということになるわけであります。ヨーロッパばかりではありませんで、国際的にもドルが下落をする、あるいはまた、ドルがまだまだ力を持っているという説、二つあると思います。しかし、我が国の経済を担当されている立場で、大蔵大臣なり経済企画庁長官、どのようにこうした動きに対して見解を持っておられるか、まず最初にそこを聞いておきたいと思います。
  177. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今島田さん御指摘なさったように、二つの意見がある、それは事実でございます。きょうの前場を見ますと、二百三十三円二十五銭で引けております。それからDM、ドイツ・マルクは、御案内のようにかなり弱くなっておったのが反騰してきておるという状態でございます。  この問題は、米国の経済だけではなく、日本、ヨーロッパの経済状況、国際政治状況等が絡み合っておりまして、確たる見通しを申し上げるというのは、これはだれしも責任ある立場があれば申し上げにくい問題であるというふうに思いますが、私どもは、米国の適切な経済運営によって、今後ドルに対する信認が急激に崩れることはないではなかろうかと考えております。  今御指摘になりましたドル急落の可能性というのを見ますと、要するに、米国の経常収支赤字が一九八三年が四百億ドルを超える巨額な金額に達すると見込まれておって、一九八四年にかけてさらに拡大する。だから、やはりこの経常収支の赤字というのは大きな要因の一つだ、こういうこと。それからもう一つは、財政赤字等によりまして、金利高とそれからもう一つは避難港としての米国への資本流入などが主因となってドル高が継続しておるけれども、そのことはまたアメリカのいわゆる企業の国際競争力を大変弱めることになるから、ますます経常収支の赤字幅がふえていく。だから、要するにドルが安くなる、こういう見方。  それから、ドル信認説というのはこれの逆のことでございますけれども、景気の順調な回復が見込まれておる。財政赤字はある。あることはあるけれども、米ドルの金利は大きいからそう金利が下がらないだろう、高どまりだろう、だから信認してしかるべきだということ。それから、米国の景気回復を背景に米国への株式投資等が続く。それとなお避難港としての米国への資本流入が今後も見込まれるのだということ。それから三番目には、インフレ対策を重視した慎重な金融政策の運営が行われておるから、とにもかくにも米国のインフレは鎮静化しておる、だから大丈夫だ。どういう二つの意見があることを申し上げておきます。
  178. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 大蔵大臣のお述べになったとおりだと思いますが、結論的に言いますと、私はさしあたってドルが暴落をする、こういうことはまずあり得ないのではないかと思っております。
  179. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 大蔵大臣、二つの説があるということをお話しになりながら、あなたのお考えはついにお述べにならなかったのでありますが、あなたはどう考えていらっしゃるのですか。
  180. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ちょうど終わり値が二百三十三円二十六銭というのが今入ってまいりました。これは前場だけ申し上げましたので、つけ加えておきます。  私自身は、今経済企画庁長官もお答えになりましたように、アメリカの適切な経済運営によって大変な激変をすることはないであろうというふうに見ております。
  181. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 お考えはある程度ニュアンスでわかりましたけれども、たまたまレーガンの経済政策というのが一番判定の基礎として据えておかなければならない大事な点でありまして、そこからドルが強いのか弱いのかという議論が出てきているわけであります。同時にまた、もう一つことしはアメリカの大統領選挙があるということもありますから、そういう点で言いますと、ことし一年に限定してみて、今のようなお考えは変わらない、こういうふうに御判断になっておりますか。
  182. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今大統領選挙というお話もございましたが、私自身、いわゆる為替レートの問題というのは、そういう問題とは別の次元における経済のファンダメンタルズによって、市場の実勢の中で決まるものでございますので、大きな変動があるとは思っておりません。
  183. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうでしょうか。中曽根・レーガン会談でプレスリマークスが行われまして、その場合だけではないのでありますが、何回も確認されているのは、世界の平和と安定に向けての日米協力ということが強く言われております。しかも、レーガン大統領は、日本に対しましては防衛努力の分担、それから農産物の市場開放、こういう点を強く迫っているわけであります。  そこで大蔵大臣、今度の大統領選挙を予測される場合、あなたは民主党におかけになるのか、共和党におかけになるのか、どっちですか。
  184. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私が自由民主党選挙制度調査会長のときにはそういう議論をよくいたしましたが、ただいまは政府の要路の要人の一人でございますので、差し控えさせていただきたい。
  185. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 しかし私は、今比喩で申し上げたのではないのですね。これはレーガンが再選されるか、あるいはモンデールになるのかハートになるのか、この間のニューハンプシャーの選挙結果では、今大変先を見通すことは難しくなりました、反対党の方は。しかし、どっちにかけるかというのがこれは大変大事なことだと思うのです。政府要路としてという、えらいまた胸を張ったお話がございましたが、しかし私は、大蔵大臣とよくお話をしていますと、大変話の経過は愉快でおもしろいと思っているのです。その範囲でお答えになるとしたら、あなたは、個人的に竹下登という立場で、今のアメリカの大統領選挙の行方をどういうふうに占っていらっしゃいますか。よくあなたは、そういう占いみたいなお話を私どもにも聞かしてくれているのですね。どうですか。
  186. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この問題は非常にお答えしにくい問題でございますし、私どもとしては、今政府として要するにいろいろな国際約束というものは米国を代表する政府とやっております。したがって、あくまでも今度の選挙の結果がどうなるかという予測は、政府要路という言葉は別といたしまして、今やはりしにくい立場にあるのじゃなかろうか。いわゆるアメリカの、ある意味においては評論家的に内政干渉にもなり得ることでございますから、申し上げるべきではなかろうというふうに考えます。
  187. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 先ほどお述べになりました為替の問題にしても、経常収支の問題にいたしましても、アメリカのいわゆる経済政策、つまりレーガンの経済政策、高金利政策にしてもですね、それをあなたは、今後もそういう方向でドルはいくであろう、こういうふうにお話をされたということは、レーガンの再選をあり得る、こういう前提に立ってお話をされたというふうに私は聞こえたのです。いかがですか。
  188. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いや、高金利が続くであろうという見方があると、私も慎重に構えまして、第三者の評論等に基づいての表現の仕方を使わせていただいておるわけでありますが、一般論として申し上げますならば、大体今度の教書を読んでみますと、八四年には、本当は私どもが御提示しておりますいわゆる仮定計算と同じようなものからいたしますと五億ドルの黒字にアメリカもなっておる理屈でございますが、実際は千八百億ドルの赤字、こういうことでございますので、財政赤字というものがこれだけの比重を占めておる限りにおいては、それは金利というものが大変に下がっていくという状態には必ずしもないかもしらぬというふうには一般論としては思いますが、今いわゆる選挙というものを意識して評論するというのは、やはり控えるべきだと思います。
  189. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 それでは河本経企庁長官お尋ねしますが、きのう我が党の稲葉さんの質問で、大臣はこうお答えになっています。五年ぶりに回復した世界経済はしばらく続くという判断である、この際、日本経済も高目の成長率を続ける政策をとっていくべきではないかという意味のお話をされました。あなたは、今後しばらく続くという根拠をどこに置いて、世界経済が回復していく、そしてそれがそういう回復基調でずっと進んでいく、こういう判断をお示しになったのか、根拠というのは何なのか、お聞かせ願いたい。
  190. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まずその一つは、ようやく五年ぶりに第二次石油危機の混乱から世界経済が調整を終えて立ち直ってきた、今こういう段階だと思うのです。そこで、第三次石油危機でも起こればこれはまた大混乱に陥ってしまいますけれども、そういうことがなければ、これも二説あるのですけれども、いろいろアメリカの経済に問題ありというようなことから、アメリカ経済は一年ぐらいたつと悪くなる可能性もある、こういうことを言われる向きもございますが、そうはならぬのじゃないかと私自身は思っておるのです。第三次石油危機が起こればこれは大変なことになりまして、大混乱に陥りますけれども、そうでなければしばらく続く可能性の方が強い、こういう感じを持っております。
  191. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうすると、あなたは世界経済の回復に貢献をしたのはどこだとお考えになっておりますか。
  192. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これはやはり、アメリカの経済が昨年の春以降急速に回復をいたしまして、それが世界全体にだんだんといい影響を及ぼしておる。これが私は、ヨーロッパがよくなり、アジア全体も一部を除きましてよくなりつつある背景だと、こう思っております。
  193. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうすると、あなたはレーガンの再選をあり得るという立場でお考えになって世界経済の方向を見ていらっしゃる、こういうことですか。
  194. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 選挙のことは、十一月ですからまだ随分時間もありますし、どんな急変が起こるかもわかりませんから、今は軽々に選挙の見通しを申し上げる段階ではありませんが、ただしかし、私は、一たん経済が力を回復いたしますと、やはりその基調はしばらくの間は続くのではないかと、こう思っておるのです。ちょっとした政策の変更がありましても、そんなに急速に経済の基調が変わるものではない、こう思っております。
  195. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 なかなかお二人とも政府要路でありますから口はかたくて、心の内をお明かしになりません。  私はなぜこんなにしつこく食い下がるかといいますと、やはりレーガンの経済政策というものは、ここは我が国の経済財政政策に大変影響というよりは、それはロンとヤスの仲と言われるぐらいでありますから、これは大変きつい間柄になっているという前提で今の自民党の経済財政運営が行われている、こういうことで、アメリカの大統領がだれになるのか、また、選挙の年というのは想像し得ないいろんな要因がそこに派生をしてくる、そういうことが今までの経験でもございますから、したがって、今、五十九年度の大事な予算を私ども考える場合に、その選挙戦の真っただ中に入っていくアメリカの動きというのは大変大きな影響を持ってくるのだろう、こういうふうに我々自身も予測をしているものですから、したがって、その選挙戦の行方というのは世界の経済にも大きな影響を及ぼしていく、こう考えられますので、私は大事なお二方、要路でございますから、ぜひお考えをお聞かせ願いたい、こう考えたのですが、少し話題を変えてみます。  さて、それじゃ仮説としてドルの下落、暴落はあり得るということを私は考えていますが、この仮説もお二人の頭の中では成り立たぬ、こうおっしゃいますか。
  196. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、例えば私どもが就任しております。その期間によりましても、前回私が就任した当時が二百四十二円、やめるときは二百十九円二十銭でございましたか、それから昭和五十一年百八十数円のときもこれはございました。だから、いわゆるそういう市場の実勢の中で、いろんなファンダメンタルズで決まるものでございますから、どの程度の範囲を下落と言うのかということになりますと、これはなかなか難しい問題でございますが、大変に経済を混乱に陥れるような急激な変化はない、こういうふうに理解をしております。
  197. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 河本長官、どうですか。
  198. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ここ五、六年の円ドル関係を見ておりますと、大体百円幅ぐらいで動いた実績がございます。しかし、その中間が大体二百二、三十円でないか、このように思っております。何か特別の大事件でも起これば別でありますが、そうでなければ、そんなにドルが急速に暴落をする、そういうことはないのではないか、こう思っております。
  199. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私は、今仮説と申し上げましたが、そうではなくて、十分ドルの暴落はあり得るのではないかというふうに考えられます。少し私の考えを述べてみたいと思います。後にまたコメントをいただきます。  アメリカ経済が回復基調にあるというのは、これは私も認めたいと思います。それは実質GNPよりも国内の実質総需要、こういうものが非常に回復している。GNPというのは、正しく言えば国内総需要に経常海外余剰を加えたものを言うというのだそうでありますが、そういう点で言えば、アメリカの現状というのは、確かにおっしゃるように経済の回復がかなり大きく出てまいりまして、需要が供給を大きく先行しているという状態にあるということは、これは認めていいことだろうと思っています。しかし、こうした金融と財政の両面から需要刺激を行ったそのやり方というのは、やがて行き詰まるところに来るのではないかというふうに私は思うのです。  金融というのは、確かにレーガンがとっております量的な面でございますが、これはマネーサプライの拡大を行う、あるいはまた、財政面の質的な面で言いますれば、とてつもない大型の減税をやったというふうに報道されているわけであります。しかし、そういう点を総体的に表現すれば、アメリカは買い手であって、そしてちょうど日本は、日米関係の立場で言えばこれは売り手、こういう感じになっています。ドルは高金利のゆえをもってどんどん流入をしていったわけであります。同時に、対外純資産というのが千七百億ドルほど一九八二年にあるわけでありますが、アメリカは、大体第二次大戦以降すっと常に債権の立場に立つ、債権国と言われていた国であります。  ところが、レーガンが大統領に就任してから強いアメリカというのを打ち出しまして、その姿勢の中には、経常収支の赤字なんというのは物の数でないといったような調子の、強硬な経済政策が打ち出されてきた。そして軍事力の拡大を図りながら、強いアメリカ、こういうものを目指していく、こういうことでありますが、しかし、わずか二年か三年、三年ぐらいの間でしょうね、極めて短い時間に対外資産をほとんど使い果たしてしまう。こういう異常なやり方を見ておりまして、私は、ドルがこのまま安穏にいけるかどうかという点に大変危惧を持ちます。  ですから、こうしたレーガンの姿勢というのは、大統領選挙で相手方がどういう打ち出し方をするかによって、レーガンもまたその政策なり公約なりを変えていくということは十分あるかもしれませんけれども、今の状態で、お二人が確かに言っておられるように、アメリカの経済政策は余り大きく変わっていかないだろう、そして、そのことによってドルは一定の強さを維持していくだろう、こういうふうに見ておるようでありますけれども、私はそうは思っていない。必ずしも私はレーガンにすべてかけておりませんで、あるいは何かが起こるのではないか、昨年の総選挙で自民党が大敗北をしたと同じような結果だって十分予測しておいていい話ではないか、こう思っております。  そういたしますと、このレーガンの経済政策というものがやがて破綻を見る、こういう局面を迎えてまいりますと、それは相対的にドルの力が落ちてくるということにもなりかねない。そして、先ほど冒頭で申し上げましたように、早くもECにおきましてはそういう動きが大変あって、ドルから英ポンドやスイス・フランなどに余剰の部分では切りかえる。投資家の間にそういう動きが出ている。これは私は、それを予告しているような感じに思えてなりません。  確かにアメリカの今の経済をめぐる動きは、必ずしも動きを停止しているのではなくて、停止しているというのは、一定の方向に、皆さんが、あなた方が見ているような方向で正常に動いていくのではなくて、その底の方では何か物騒な経済の動きというものをはらんで動いていっているのではないか、こういうふうに私は思っているのです。ですから、お二人のような考え方我が国の経済政策というものをお進めになっていくとすれば、私はやはり余りにも一方的過ぎる、こんな感じがするのですけれども、私のような考え方に立っての検討というのは全く政府部内ではなされていない、こういうことでございますか。
  200. 竹下登

    ○竹下国務大臣 やはり私は、財政の立場から申し上げますと、なかんずく通貨当局者としては、対ドル問題というようなものには絶えず関心を持ちます。しかし、そのことは、あらゆる場合の経済政策というものあるいは向こうの財政政策というものに対する関心は絶えず持っておりますが、それを選挙そのものに結びつけていろいろな勉強をしておるというわけのものではないというふうに思います。それで、事実島田さんの従来からの議論からすれば、今の二百三十円台というのも率直に言って少し円安に過ぎるじゃないか、こういいう気持ち、私も表現こそ通貨当局者でございますから慎重にやっておりますものの、我が国のファンダメンタルズからすればもっと円高基調が進むのを期待しておるという表現はいつでもしておるわけでございます。したがって、我々も、もちろんぶれがございますが、今の二百三十三円というものを固定的に考えておるわけではなく、時に島田委員のおっしゃる、より円高基調が定着することを期待しておるという姿勢に立って対応しておるということであります。
  201. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 福田赳夫さんが「世界」という雑誌にちょっと対談でお述べになっているのを見ますと、福田さんも表現はかなり用心をされてお話をしているようでありますけれども、やや私の考え方に近いお考えをこの対談の中で示しておられますね。レーガンの政策に対して非常に危惧の念を持っている、こういうことをおっしゃっているわけでございます。このままこの防衛費あるいは米ソの軍拡競争に際限なくのめり込んでいくという状態が続いていけば、ドル必ずしも安心はできない、だからことしの我が国の政策というのは大変重要な意味を持っているということを言っておられます。  私は、おっしゃっていること全部賛成するわけではございませんけれども、しかし、事この経済政策、ドルを中心にした物の考え方、ドルの考え方、見方、そこが狂ってまいりますと、これからの財政あるいはそのほか金融すべて含めまして大変なそごを来すのではないか、こんなふうに思います。  残念ながら余りきょうは時間がなくて、私はかつて大蔵委員会で竹下現大蔵大臣が大蔵大臣のときにもいささか農業経済という点で触れたことがございますが、あのときも余り時間がなくて十分のお話をし合うことができませんでして、きょうもちょっとやはり時間が足りない、こういう感じてお話を十分お聞きすることができないのは残念であります。  ところで私は、こうした経済政策の一側面を持っております大事な農産物の問題というのは、いよいよ大事な局面に差しかかってきたなという感じを強く持っているのであります。ですから、このレーガンの経済政策というものを抜きにして農産物の問題というのは考えられぬというところまで来てしまっている。  この状況をどうやって打開すればいいのかという点で、もう少し時間が許されれば我が国の農業をめぐります経済の状況、農家経済というものがどのような状況に相なっているのかという点について、実は農林大臣からもお考えを聞きたいと思っていたのでありますが、一言であなたのお考えをお聞きするとすれば、農林大臣我が国の農家経済、確かに八四年度の農業白書、今作成中だと聞いておりますけれども、表面的には農家経済は波風が余り高くなくて終わりそうな見通してございますけれども、私は、その中でも一番心配していますのは、やはりアメリカからの穀物の問題などが、昨年の熱波、寒波の異常な状態で生産されましたアメリカの穀物の値段の動きというのが、やはり少なからざる影響をもたらしてくるであろう。特に北海道は、昨年は未曾有の冷害を受けまして、その後遺症は必ずしもいえていないばかりか、畜産、酪農のところにはこれから影響が出てくるだろう、こう思います。  国内経済をしっかり守るという立場で、特にあなたは前回の総括質問のときにも何度も宣言をされて、私はこちらの方におって、もう少し具体的なお話を聞かしてほしい、こういういら立ちともどかしさを覚えました。頑張りますと、決意大臣だと僕は言いましたけれども、決意だけは確かにお聞きしましたけれども、その決意で本当にこの大事なときを乗り切れるかどうか。いよいよもう胸突き八丁のところに到達してきたというふうに私は日米の農産物問題の現状を受けとめております。  最初に、まず私がお聞きをした我が国の農家、本当にあなたがおっしゃるように守り抜けるかどうかという点について、これは決意だけじゃ困るので、改めて、一体どういう状況にあるからどういうふうにするのだという点について、ひとつきょうはお聞かせをいただきたい。もう三月に入りましたから。
  202. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生御存じのとおり、五十八年度の農家経済、これは冷害等の米の問題もございました。四年続きの不作というようなこともございました。農業所得の面では回復しており、四月から十二月の間で前年同月期に比べて四・七%の増加ということになっておるような状況でございます。しかし、農外所得については賃金の鈍化等から低い伸びとなっており、このため農家総所得は農業所得の伸びをやや下回っておるというような状況が、今の状況だと思います。
  203. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 約束でございますから、経済企画庁長官、ここで退席いただいて結構でございます。  ところで、きょうの農業新聞によりますと、大変大見出しで「「三月末」に向けて緊迫 農産物交渉 来週から事務調整」云々、こういう日程が既に政府部内では固まっているのですか。
  204. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 島田先生お尋ねの件は、恐らく来週私どもの総務審議官をアメリカに出張させることを指しておられるのだと思いますが、そうであれば、おっしゃるとおりでございます。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕
  205. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうすると、山村農水大臣は三月の二十九日にお出かけになる、こういうことですね。
  206. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 来週農林水産省の事務局を向こうへ差し向けますが、私が行くというのはまだ決まっておりません。
  207. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 だって、今佐野さんは新聞発表のとおりだと言ったじゃないですか。このとおりですねと聞いたら、そのとおりですと言ったじゃないですか。新聞には三月二十九日に行くと書いてあるじゃないですか。
  208. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 失礼いたしました。  お答えいたします。  現在のところ決まっております日程は、来週総務審議官を出張させるということだけでございます。
  209. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 まあ島田琢郎の質問だから、適当に答えてやれというのだったら、許さぬですぞ。僕は、だから聞いておるんですからね。そうしたら、そのとおりですと言っているんだ。そうしたら大臣が違うと言う。この間もこんなことが何回かございました。——いや、いいです。時間がもったいないですからこれでいいですけれども。  ところで、官房長官がまだ見えていないものですから、ちょっと外務大臣、この間のやりとりの続きですから、あなたにお聞きいたします。本当は対外経済閣僚会議の座長さんに聞こうと思ったのですが、この件については政府部内はどういう統一的なお考えを持って、来週六日からの対米折衝に当たるのですか。対外経済閣僚会議の中で御相談になっているのでしょうから、そういうものがあってこういうスケジュールが決められていくのでしょうから。
  210. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 対外経済閣僚会議としては、河本長官がおられませんから私が説明をするのはどうかと思いますが、まだ何ら動きはございません。河本長官がどういうふうに考えておられるかですね。ただ、農産物の問題につきましては、三月三十一日が、一応切れるわけですから、めどにということで一応政府の統一的な考え方にはなっております。めどに交渉を決着するように努力をする、こういうことで、今農林省当局を中心にやっておられるということです。
  211. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 今、三月三十一日のいわゆるタイムリミットのお話がございました。この協定が切れない年度内にやる、こういうお考えですか。
  212. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 三月末を目指して全力を挙げております。
  213. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 それだけはっきりと、三月末を目指してというお話ですから、そうすると、さっき私はもう三月に入りましたねと念を押しましたのは、もう幾ばくもない。そうしたら、もう相当手のうちが固まっている、こういう理解がされるのですが、間違いないですね。それでいいんですね。
  214. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 この前に外務大臣に訪米いただいた折に、かなりの開きがあるということでございましたが、現在もまだそんなに固まっておるという段階ではございません。
  215. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 だから決意だけ述べられちゃ困ると言っているわけです。三月末に決めたいと思う、それだけの決意をお述べになっているのなら、きちんと何かなければそれだけの決意が出てこないはずじゃないですか。だから大臣、決意大臣だなんて言われないように、きょうはもうこの間の続きですから、具体的な話が出てこないと私は納得できません。それじゃ、どの辺までいっているのですか。
  216. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 今月末を目指して何とか解決しようということで、総務審議官を来週早々向こうへ向けるということでございます。
  217. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 今月末今月末と決意だけ聞かされておりまして、どうも私は納得できないのですけれども、例えば、あなたの決意に反して三月末に日米協定が成立しなかった、この点についてのお考え、ありますか。
  218. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 だめであってということは考えませんで、できると思って今やっている最中でございます。
  219. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 しかし、日豪協定はどうなっていますか。
  220. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 日豪の方は、オーストラリアの方はアメリカと比べるとより穏健と申しますか、現実的でございまして、ちょうどオーストラリアの方も、実は長期的には牛肉の輸入の自由化を希望するものの、現在日本側が自由化できない理由はよく理解できるので、当面枠の拡大を要求するというような姿勢できております。
  221. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 僕が聞いたのはそういうことじゃなくて、もう時間がないから私の方で説明しちゃいますけれども、つまり、昨年の三月三十一日でこの協定は切れているのです。この一年間無協定のまま日豪のいわゆる農産物の問題は処理されてきたんです。メリット、デメリット、どっちがありましたか。
  222. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  日豪間の牛肉に関する取り決めは先生御指摘のような状態になっておりますので、本年度行われました牛肉の輸入につきましては、日豪間の数量の取り決めなしに行われたわけでございます。それで、取り決めなしに行われましたが、私どもといたしましては、我が国の需給事情及び牛肉の価格安定制度の健全な運営を図るという見地から見て、適正な数量を輸入して滞りなく輸入が行われております。
  223. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 滞りなく行われている。大臣は、まあアメリカと違ってオーストラリアは物わかりがいいから、こう言われました。しかし、量的にははるかにオーストラリア、大洋州が多いわけですね。アメリカとどうしても協定を結ばなければならないという理由は、それで消えるんじゃないですか。
  224. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 日本とアメリカの農産物の話し合いということで決めておりますことは、いわゆるアメリカ議会内での対日強硬派に対する抑止力にもなっているというようなことも聞いておりますし、またアメリカ側からは、大使も二遍ですか、私のところにおいでになりまして、何とか三月いっぱいで話をひとつ決めてもらいたいということを言っておりますので、できれば、前大臣も三月いっぱいで決めるというようなお約束もあるようでございますし、私はそっちの方に全力投球をやってみたいと思います。
  225. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 いや、私の聞いているのは、そういうアメリカからの要求、その辺は百も承知していますよ。一年以上にわたって、もう二年近くにもなって、一向に攻撃の火の手はおさまらないばかりか、ますますしつこさを帯びている。私が聞いているのは、アメリカとどうしても協定を結ばなければならないという不都合はないんでないですか、そこなんです。
  226. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 前大臣のお約束もございますし、それとまた対米関係というものも考えた場合に、向こう側にそれほど強い要請があるわけですから、できる限りのことはするのが、やはり農林水産大臣として私は役目じゃないかと思います。
  227. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 その場合、日本の農業に支障があるとしたら、どうしますか。
  228. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 この交渉に当たりましては、前前から申し上げておりますように、衆議院の農林水産委員会の決議五十七年の四月、そして本年一月の農林水産委員会からの申し入れ、この趣旨を踏まえまして、農業者が犠牲にならないように、日本の農業というものが着実に発展していくということを念頭に置いて交渉に当たっております。
  229. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 では、生産者を中心にした農民の側からは、どういう要求が大臣のところに来ていますか。
  230. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 自由化絶対反対、枠拡大も反対であると申しております。
  231. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうでしょう。そうすると、協定がない状態で不都合がありますかと問いたら、不都合ないと答えた、日豪の場合。むしろ、私はその方が農民の皆さんを守ることになるとしたら、選択としてこっちを選ばざるを得ないのじゃないですか、大臣は今まで決意というのを述べられているのだから。ところが、さっきはアメリカの要請だ、前大臣の引き継ぎだ、あの発言の中には、単なる、あなたは前大臣からの引き継ぎみたいな責任感と、アメリカからこう言われているからという、何か対米追従の姿勢の方が強くさっきの答弁の中では出てきていて、農家のことを忘れているんじゃないですか。
  232. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 私の場合は日本農林水産大臣でございますので、日本農業を守るという立場を堅持してまいりたいと思います。
  233. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうしたら、協定が切れて、牛肉の輸入の状態は別に協定に縛られないでも正常に昨年一年間、日豪間においては行われてきた、あなたの部下の局長がそうおっしゃっている。また農家の側も、これ以上枠拡大は一キロたりともだめですよという要請が強くある。その農家の要求、農家を大事にするという考え方に立つとしたら、私は場合によって、向こうが一キロでも多く輸入拡大を迫ったら、それは毅然としてはねのけていくというのがあなたの今までの決意であり、そしてまた、きょうまでお述べになっている私に対する答弁の趣旨からいっても、それは絶対にのむことができない一線だと私は考えるのです。びた一文もふやさないという決意でおられるのですね。
  234. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、私の交渉に当たる態度は、衆議院の農林水産委員会の決議、申し入れ、この趣旨にのっとりまして、そして日本の農業者を犠牲にしない、我が国農業が着実に発展していくということを念頭、に置いて交渉に当たります。
  235. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 やっぱり決意大臣だ。ですから、決意は私は評価をしていますよ。その決意がなければそれは何もできませんから。その決意は立派であります。その決意を押し通してもらいたい。農家の側に立ってきちっとやっていただく、こういうことですね。間違いありませんね。  それで、最後に一つだけ聞いておきます。三月三十一日にあなたは決めたいと思うが、決まらなくてもいいという気持ちで行きますね。
  236. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 できるだけ決めたいという気持ちで参ります。
  237. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 それじゃ、この件はやめます。  次に、これもこの間の積み残し分で、きょうまた三塚さんとけんかを始めたいと思います。この間は大変不規則発言がございまして、私も初めての質問なものですから、三塚委員に大分——それで、きょうはその続きをひとつ確かめてまいりますが、先般の政府側、国鉄総裁の答弁というのは私は大変納得しがたいばかりか、特に国鉄総裁の姿勢については……
  238. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  239. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 それじゃ、速記始めてください。
  240. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 ところで、私は本当に腹が立っているのでありますが、国鉄総裁は私の質問の後、新聞記者とお話しになっているようでありますが、その記事に間違いがないとすれば、私は改めて抗議を申し込みたい。  あなたはこう言っている。この間も国会で再建の自信があるかと聞かれたが、そんなことは言われたって答えようがない、第一、二十兆円も借金があるんだし、おれ一人が幾らばためいたって、これは解決できる話ではない。  あなたは望まれて国鉄再建のために乗り込んでこられた総裁ではないか。この言葉のニュアンスから私は大変不愉快に思う。責任感のかけらもないのではないかと私は感ずる。この記者会見でお述べになった真意は何なのか。場合によっては私は許せないと思うんです。
  241. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 ただいま先生から御指摘がございました話は、新聞記者との話の中でしたものでございますが、私の真意を申し上げますと、今の状態のままで国鉄を再建していくといっても、大臣もこの前お答えになっておりますが、二十兆余りの累積債務があるという状態の中で、国鉄の力だけでこれを簡単に解決するという方法がない。ですから、今政府のいろいろ御努力もございますし、また再建委員会で長期債務あるいは国鉄のあり方というようなものについていろいろ御議論になっている、その中において新しい解決方法が見出せるであろうということを考えております。  私といたしましては、この前も先生にお答えいたしましたが、現在の国鉄を自助努力でできる範囲内においてはできるだけのことをするというつもりでおりますが、二十兆というような債務等の処理に関しては、私どもの、私というより国鉄だけの努力ではどうにもならない、政府並びに再建委員会等のいろいろな御議論を踏まえた御提案等を踏まえていかないと再建できないということを表現したものでございます。私といたしまして、決して国鉄の運営に対して全く責任を持たないというような意味で申したわけではございません。
  242. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 議事録がきのうでき上がってきました。私は、この間のあなたに対する質問の中でも本当は勘弁できないところがあったんです。というのは、助成金の問題をお話ししましたね。ところがあなたは、総裁あなたは、この助成金についてどう考えますかと聞いたら、十分いただいていますと言った。本当かと言っていろいろ尋ねてみたら、いただいてなかったわけであります。同じ席で私にそういうでたらめな答弁をするというのは、私はそれだけでも総裁として責任を持っているのかどうかと思って、実はあのとき腹が立ったのでありますが、残念ながら三塚委員のやじに気押されまして私の方が……(「いや、やじじゃない、もみ消したんだよ」と呼ぶ者あり)もみ消されてしまった。私は本当は納得できないんですよ。  そういうことを一つ申し上げても、私はあなたが本当に責任ある総裁という、その地位に対して自覚をされているのかどうかに大変疑いを持っていました。だから、きょうは本当はこれを予算委員会から運輸委員会の方へでも回して、そこでやっていただくということになるのが本当だったのでありますが、私は、あえてきょうはほかの質問をこの国鉄問題にまた変えて、もとに戻してもう一遍あなたとお話しせんければいかぬ、こんな状態では国鉄の再建はできない、私はそう思っている。心配になるからでございます。  そこで、経営改善計画を策定して推進してきているわけでありますけれども、五十九年度の国鉄予算を見ますと、一兆七千百三十八億の赤字を見込んでおりますね。昨年よりさらに収支が悪化している。改善計画はきょうまでどこの部分が実施され、どこの部分が実施されていないのかという問題は、これは明らかにしておかなければならぬと思うのです。まずそこからお聞きをしたい。
  243. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 総額で申し上げますと、昨年度が七千三十億、今年度が六千四百八十八億という数字で、五百四十二億の減少でございます。
  244. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 では、再建計画の中身について少し聞きます。  六十年に三十五万人ということになっていますね。これはどうなっていますか。まずそこからお聞きしましょう。
  245. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 六十年度当初に三十五万人ということでございますが、その後鋭意努力いたしました結果、五十八年度末三十四万五千という数字になっております。
  246. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 関連しまして、一般人件費というのはどういうふうになっていますか。それからついでに物件費、これは幾らですか。さらに、工事費は五十九年度予算でどうなっていますか。
  247. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 人件費は二兆五千四十三億ということで、昨年より二百八十八億の減ということになっております。それから、物件費につきましては八千九百五億、昨年より五百五億減ということでございまして、経営費全体でまいりますと七百九十三億の減ということになっております。工事経費につきましては、昨年が七千六十億、今年が五千六百六十四億、千三百九十六億の減ということになっております。
  248. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 それから、ついでにもう一つ聞きます。収支の試算で言いますと、六十年に経営収支が均衡する、それは幹線部分で百億の黒字、地交線は二千三百億の赤字、特定人件費で七千七百億の赤字、こうなっていますが、間違いないですか。
  249. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 御指摘のとおりでございます。
  250. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 これで六十年の収支改善は予定どおり進みますか。
  251. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 ただいま試算の最中でございまして、変更しなければならない点もございますが、今の見込みを申し上げますと、三つのカテゴリーになっております第一の幹線につきましては多少の赤がふえるかと思いますが、大体このくらいの線でいくのではないか。地交線につきましては、実はこれは第一次、第二次の地交線の廃止がもっと早いスピードで進むという前提に立っておりましたので、この数字よりふえるのではないかというふうに見ております。特定人件費等については大体この程度かと思っております。
  252. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうすると、改めて聞きますが、経営改善計画の目標値というのは、いずれも達成されつつあると考えていいですか。
  253. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 国鉄の努力をいたします範囲内では大体達成の目標に向かっておると思いますが、今申し上げましたように、地交線あるいは特定人件費等でちょっとそごが出てきているという程度でございます。
  254. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 大体達成されつつあるというふうな言い方をしていますけれども、これは今の点が大変重要でありまして、その原因は何だと考えていますか。
  255. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 先ほども答弁いたしましたけれども特定地交線につきましては、第一次、第二次の地交線廃止という作業を進めているわけでございますが、第一次が必ずしもまだ予定より進んでいないということと、第二次はまだ知事さんの御意見が余り出ていないというような状況で、それのおくれているのが非常に大きく響いているというふうに理解しております。
  256. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 この間も私は触れたのでありますが、それは合理化はどんどん進んでいる、それから貨物も二月に切り捨てを行った、そういう側面だけはどんどん進んでいくわけですね。この間も私は、ある構造部分に属して省庁が負担をしなければならない割引のところの未払いを取り上げました。しかし全体では、政府自身が相当責任を持たなければならない大事な国鉄に対する助成の点は、全く予定どおり行われていない。先ほどの予算で示されたとおり、割り振り表で申し上げましたとおりです。そういう片手落ちなやり方で一体国鉄再建が進むのかどうか、大臣、改めてこの点について聞きたいと思うのです。  ついでに、もう一遍、私がこの間取り上げた問題をここに提起いたします。利子の支払い、それから借金払い、特定年金、特定退職金の問題や地交線の助成の問題、それから上越・東北新幹線の負担、こういったものを合わせますと幾らになるのか、改めてここで聞きます。
  257. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 五十九年度の予算におきまして、特定年金損失相当額が三千二百八十八億、それから東北・上越新幹線資本費相当額が三千六百四十六億という数字になっております。
  258. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私が申し上げました地交線の負担額を除いて幾らになるのですか。
  259. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 地交線を除いてとおっしゃいましたが、その補助額は、五十九年度において八百五十七億という数字になっております。
  260. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 何を言っている。それは何か勘違いしているんじゃないの。私の質問をよく聞いていて下さい。
  261. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 私が申しました数字八百五十七億というのは、地方交通線特別交付金でございます。そして、これは損益勘定の中に入っております。
  262. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 トータルして幾らになりますか。
  263. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 補助金のトータルは六千四百八十八億ということになります。
  264. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そんな額ですか。
  265. 永光洋一

    ○永光政府委員 この前の御質問との関連性から申しまして、しかも数字的に申しますと、実績が出ておりますのは五十七年の実績が出ておりますので、五十七年度の実績でお答えさせていただきます。五十七年度の実績では五千三百二十三億の赤字が地方交通線に出ておりまして、そして地方交通線の運営費補助をもらっておりますものですから、四千七十三億というのが助成後の赤字ということになります。
  266. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私が質問していることにお答えにならぬで地交線の話になりましたが、その前にもう一遍聞きますよ。先ほど私が聞いたのは利子の支払い分、それから特定債務の分もありますね、それから特定年金、特定退職金、そして上越・東北新幹線の資本費、これは年賦償還ということでありますが、それらをトータルすると幾らになるかと聞いたのです。
  267. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 五十九年度で利子の支払い並びに諸経費が一兆一千百六十五億でございます。それから特定年金損失相当額が、先ほどお答えいたしましたが三千二百八十八億、東北・上越新幹線資本費相当額が三千六百四十六億、こういう数字になります。
  268. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 トータルをお答えにならなかったのですが、棚上げ分の二兆五千億の利子助成分が三千四百五十七億でありますから、これは除きまして、地交線の先ほどお話にあった部分を除いても、トータルしますと約一兆九千億、こういう数字になりますね。(仁杉説明員「はい」と呼ぶ)  さて、そこで大臣、この処理についてどうお考えになっていますか。
  269. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  今いろいろ数字の質疑応答がございましたが、おっしゃるように非常に大きな累積債務を抱えておる、大変な利息の支払いをしておる。政府に見てもらえと今まで委員会等で決議があったものも、これは額は小さい方ですけれども完全にやれていない、いろいろな点がございます。ローカル線についても、特別措置法で決まった、また経営改善計画で考えておる速度でいっておらない、こういうことでございまして、国有鉄道はまさに全身に病気が蔓延しておるという格好でございます。なかなか簡単に、一朝一夕にこれが解決するということには非常に困難な問題がございます。これはどうしてこうなったかということは申し上げてもよろしいのですけれども、短くいたします。  そこで、であればこそ前国会におきまして、臨調の答申を受けまして、国有鉄道に関してだけ、国家行政組織法第八条の第三条機関に近い国鉄再建監理委員会というものが設けられたわけでございます。本来から言えば、こういうものを設けなくても、国有鉄道と運輸省なりあるいは大蔵省その他政府でこれはやるべきことなんでございましょう。ところが、問題がなかなか複雑多岐にわたっておって、それらが相互に関連をしておる。そこで基本的な問題について考え直さなければならない、こういうことでこの再建監理委員会ができたようなわけでございまして、この再建監理委員会におきまして、基本的な問題と、それから当面すぐやれるような問題というものを今いろいろ御検討願っておるところでございます。  しかしながら、先ほどの新聞記事ではありませんけれども、国鉄総裁や運輸大臣がお任せしますということではいけない。これは絶対いけない。監理委員会は監理委員会士していろいろ知恵を出していただいて、根本的な点、また当面緊急やらなければならぬ点をお考えいただく。しかしながら、専門である、当面の責任者である運輸省なり、また特に国有鉄道総裁以下、これは挙げて監理委員会に御協力というか、御協力というよりも一緒になって方法を考えていかなければならない、このように実は考えておる次第でございます。  あと非常に広範多岐にわたりますし、全体の国有鉄道の再建についてどう考えるかということになりますと相当な時間を要しまするので、個々にお尋ねがあればお答えをいたすことにいたしたいと思います。
  270. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 しかし、私が先ほど申し上げたように、国鉄が責任を持たないで政府が持たなければならないという明確になっている数字が一兆九千億、これは差し迫っているじゃありませんか。そのために国鉄監理委員会までつくられているんじゃないですか。それは基本的な問題もおやりになるでしょうけれども、当面これをどうするか。これは単年度の問題です。しかも、先ほど総裁が言われましたように、五十九年度の予算はばっさばさじゃないですか。これでは国鉄の再建は百年たったって実現しないじゃないですか。かわって片方の手ではどんどん合理化を進めていく、骨身を切っていく、こんな矛盾した話はないじゃないですか。  これは私はこの間もお話をしました。地交線だってそうじゃないですか。借金が四千七十億あるという。本来なら二分の一が地交線の赤字部分負担、それが政府の方針になっているはずであります。それを大幅に切って、先ほど私の聞かぬこともお話しになりましたが、一千億を切るような助成金しかもらっていない。こんな話はないじゃないですか。いろいろ細々とございましてと長々そんな答えだけ聞いたって、国鉄の再建は絶対できませんよ。
  271. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、このままほっておけば五十九年度末二十二兆円という累積債務ということになっておりますが、それがもっともっと大きくなるばかりでございまして、小さくなるめどは立ちません。であればこそ、根本的な問題をどうするかということについて結論を得たい、こう思っておるわけでございます。今年度の予算、五十九年度の予算については、今のいわゆるゼロシーリングというか一〇%削減のシーリングの中で、政府一般会計から出せるものについては極力出してもらうということをいたしたわけでございますが、五十九年度の今出しておる予算のような状態で続けていったらとても再建はできない。ですから根本的に考え方を変えなければいかぬ。そういう点で、政府としては重大な責任を感じておるわけでございます。しかし、非常に難しい問題であることも御理解をいただきたいと思いますが、いつまでもほっておけば雪だるまのように大きくなります。サラ金状態のような格好になっておるわけでございますから、これはほっておけないということなのでございます。  それから、その根本的な問題が出るまで緊急の合理化その他についてはやめろ、まあそこまでもおっしゃいませんけれども、一方だけやって、貨物を切ったりいろいろ合理化をやっておるが、そういう緊急的なことだけやってもだめじゃないか、おっしゃるとおりだと思います。また、地方交通線もそうですね。これはやはり並行してやらなくてはいかぬ。したがって、根本的な問題を、我々としては一日も早く今度の再建監理委員会で出していただく、また私どもも再建監理委員会と協力して根本の問題をぜひ解決しなければならぬ、こう思っておるわけでございます。  で、一言で申しますと、なぜこのような状態になっておるかということでございますが、国有鉄道のインフラが借金でやられておる。例えば東北・上越新幹線を借金でやっておる。これを開業すると途端に三千六百億の赤字が出る。しかしながら、赤字が出るからといってそれじゃやめるかというわけにはまいらないものなので、帳簿上は三千六百億出るわけで、それを解決しなければならない。これは、私は決して政府の責任でないとは言わないのでございまして、政府の責任なので解決しなければならない問題だ、かように思っております。
  272. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうすると、先ほど私が言いました、お認めになった一兆九千億というのは、これはいずれも緊急に解決しなければならない問題ばかりです、新幹線の今の話を含めて。その部分は切り離して早急に政府が責任を持つ、こういうことでなくてはいけないと思うのですが、そのとおりでしょうね。
  273. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 非常に大きな金額でございまして、長い間国有鉄道についてやった仕事、言うならば公共事業費的なものを借金でやってきておるわけでございますから、そこに問題の根本があるわけでございます。したがって既に五兆幾らのものは棚上げをしておりますが、一般会計がゆとりがあって棚上げても簡単にできるような時代ならばすぐできるかもしれませんが、一般会計の事情も、これまた国鉄をさらに大きくしたような格好だとも言われるぐらいなのでございまして、公債がどんどんたまる一方と言われておるような状況でございますので、国有鉄道に対してすぐ即効薬になるような薬はなかなかないので実は困っております。といって、ほっておけばだんだん病気は悪くなります、重くなりますので急いでやらなければならぬ、かように思っておるわけでございます。
  274. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 ところで、官房長官に私はこの間注文をつけました。早速やるとお答えになりました。官房長官としてはどういう指示をされましたか。
  275. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 二月二十日の委員会で御質疑をいただきましたので、その日のうちに関係部局に指示をいたしまして、公共負担の問題について閣議了解もあり、またその後、国鉄再建監理委員会の緊急提言の中にも含まれておる項目である、速やかにこれを解決するための検討を進めてもらいたいという指示をいたしたところでございます。その後、二十三日にももう一回念を押して指示をいたしております。一日も早くこの問題の解決に当たるように、さらに努力をいたしてまいりたいと存じておる次第でございます。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  276. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私は期限を切るべきだと主張いたしましたが、きょう改めて官房長官の誠意をそんたくするというのは悪いのでありますけれども、とかくこっちから聞いてこっちになにして、またこの種のものは六年もほうってこられたという経緯があるだけに、私はそういう怠慢は許されないと思っておりますので、あなたがおとりになった責任ある行動はどの時点までおやりになったかというのを改めて公式の場で私はお聞きしたわけです。ぜひひとつ、これは早急に解決されるようにお願いをしたいと思います。  ところで大臣、国鉄から格差運賃の申請がありましたね。これはどう考えるのですか。
  277. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  国有鉄道の公共性から、これは全国画一運賃がいいということでずっと今までやってきたものでございます。私なども個人的にはその説をずっととってきておったものでございます。しかしながら、近時の状況は国鉄が非常な競争にさらされておるということから、五十五年に本院を通過いたしました日本国有鉄道経営再建促進特別措置法十三条では、差別運賃を設ける方向考えろ、こういうことでございますし、また、第二臨調でもやはり差別運賃を設けるべきである、また、八月二日に監理委員会から勧告がございましたものでもそうなっておるのでございます。  というのは、大都市においては、私鉄との間に国鉄が倍ぐらい場所によっては高い。それからローカルでは、地方の私鉄の方が国鉄の倍ぐらい高い。こういったような競争的観点から、差別をつけるべきであると法律並びにそういう委員会あるいは臨調等からございまするので、今度初めて三段制にして、差別運賃を今検討しておるところでございます。国鉄からの申請を受けて、今運輸審議会にかけておるところでございます。
  278. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 あなたに答弁を求めると何ぼでもしゃべってしまうので、時間が幾らあっても足りません。あなたは臨調答申にしても監理委員会の問題にしても、都合のいいところだけはぱっぱっとおやりになる、こういう印象に私は聞こえます。事実、そのようなものを証明する一つの考え方としてこの差別運賃が出されてきた。地方切り捨てではないですか。  そもそも国鉄運賃緩和法によりますと、国鉄運賃の値上げというのは、物価が大きく値上がりしたり変動した、あるいは人件費やそのほかの物件費が大幅に上がって大変経営に支障を来す、こういうふうな幾つかの要因がなければ上げられないことになっておるのであります。最近のように、物価は落ちついたと政府はおっしゃっている。ベアだってずっと抑え込んできて、それほど上がってはいません。特に仲裁裁定は、国鉄に対しては厳しい査定を下しているではないですか。何の理由をもってこれを上げなければいけないのですか。あなた、長くお答えになると時間がないから簡単に。
  279. 倉成正

    倉成委員長 運輸大臣、簡潔に願います。
  280. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 前年度は運賃値上げをストップいたしました。仲裁裁定は、国家公務員の給与と違いまして、額においては完全実施をいたしております。それから物騰もわずかではありますがございます。しかしながら、値上げをしなくて済むものならば本当はもっと抑えたいというところでございますが、最小限度どうしても、本年度の予算を組むのに千八百億ばかり運賃のアップによらなければいかぬということになったわけでございます。
  281. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 千八百億足りないというのなら、さっき僕が官房長官に言ったけれども、文部省と厚生省から五十六年と五十七年のたった二カ年間でも、もらわなければならない金が千三百億もあるのですよ。そこをさっさともらったらいいじゃないですか。そっちをほっておいて、弱い国民の方から懐へ手を突っ込んで取るというような、こんなひきょう千万な話はないじゃありませんか。私は断固としてそれは認めるわけにいきません。  しかも、こうした問題が出てまいりましたら全国各地から、ごらんのとおり地方新聞が一斉に反対のキャンペーンをしいています。これら地方紙はまさに地域の皆さんの声を代弁している新聞はかりであります。こうした地方の声を無視してでもあなたは申請どおり許可をするという考えですか。
  282. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  運賃改正につきましては、国民の皆さんは賛成ということはほとんどないのでございまして、大体反対でございます。特に今度の場合はローカルに高くするわけでございますので、地方から非常に強い反対があることは承知をいたしております。しかし、できるだけその差を少なくするように私たちとしては十分考えております。
  283. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 こんな差別が許されていいことはありません。私は農林関係に長くおりましたけれども政府がお決めになっている米の値段にしたって、牛乳の値段にしたって、一物一価が原則ですよ。弱いところの人に負担をかけるという、こういうやり方で国鉄の再建ができるわけがありません。  時間が来ましたから私はこれでやめますが、しかしあなた、先ほどみんな反対している。中曽根内閣は国民が納得をするまで対話を続けて、納得の上に立って物事を進めると、何度も予算委員会でおっしゃっている。本会議でもそのように演説をふっている。あなたは中曽根内閣の異端者になるのですか。
  284. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 今申し上げましたように、地方の私鉄と国鉄との運賃の差と、それから都市における私鉄対国鉄の差と逆になっておるわけでございます。そういう点がありますので、地方の私鉄ほど上げたらもっともっと上げなければいかぬことになるわけですが、そういうことはいかぬので、最小限度の格差で御辛抱いただく。また格差については、本院を通っております、国家の意思として決まっております法律に実はうたわれておるような方向でございますので、私としてはやむを得ない措置だと考えております。
  285. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 もらうものをもらえば、五十億ぽっちのものは十分おつりが来るはずであります。そんな弱い方にだけしわ寄せをするようなやり方は私は断固として認められませんが、時間が来ましたから、残念ながらこの続きは、今度はあなたの本番の運輸委員会で我が党議員から強くこの点を指摘しながら論議が続けられていくものと思います。  きょうはこれで終わります。
  286. 倉成正

    倉成委員長 これにて島田君の質疑は終了いたしました。  次に、武田一夫君。
  287. 武田一夫

    武田委員 私は、大臣の都合があるということでございますので、最初に国土庁長官通産大臣お尋ねを申し上げて、二十分間しか時間がないということでございますので、簡潔な御答弁をお願いを申し上げます。  四全総、いわゆる第四次全国総合開発計画の問題でございますが、三全総が七年目にして計画変更した、これはどういうわけか、まず一つ。  それで、国土審議会の調査部会の報告書がまとまって、六十一年度から七十五年のいわゆる西暦二〇〇〇年、この十五年間の期間のいわゆる四全総のたたき台とするということでございますが、そのたたき台とする基本的な構想となるものは、今どういうものを考えておるか、その点、まず最初に長官お尋ねしたいと思います。
  288. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 三全総の組み直しの問題でありますが、この間は、大変に経済情勢あるいはまた社会の変化というものは大きく変わってまいったわけであります。そういう意味から、将来に向けて、二十一世紀に向けて、やはりビジョンづくりということではこの辺で三全総を基礎として四全総をつくり上げていくということで、四全総の着手をいたしたところであります。
  289. 武田一夫

    武田委員 三全総が十年間の期間の計画だった。聞くところによると、人口の見通しが大幅に狂った、こういうことが要するに四全総へ入る一つのきっかけになった、こういうことですが、それは間違いないわけですか、長官
  290. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 大きく間違ったというんじゃなく、大きく社会の変化があったということでございます。もちろん、経済の流れの問題にいたしましても、あるいは高齢化社会の問題にいたしましても、あるいはまた技術その他のいろんな問題からして、この辺で新しい日本の国土にビジョンをつくり上げていくというには、やはりこの辺で四全総に取り組むという必要がある、こういうような形から四全総の策定に入っておるというわけであります。
  291. 小谷善四郎

    ○小谷(善)政府委員 先ほど大臣がお話ししたとおりでございますが、さらに情勢変化ということでつけ加えさせていただきますと、一つは、人口の伸びが鈍化し、高齢化が急進展しているということは、先生御指摘のとおりでございますが、そのほかに、過密過疎問題、過密過疎の現象の態様もかなり変わってきているとか、あるいは経済成長が鈍化し、一方では産業構造がかなり大きく変わってきているとか、あるいは定住志向がかなり高まってきているとか等々いろいろな情勢変化があるということから三全総のフォローアップ作業をしたわけでございまして、人口問題だけではございません。
  292. 武田一夫

    武田委員 そうしますと、今度四全総の中身ですね、私、心配するのは。  今、定住圏構想に従ってモデル定住圏が進んでいるわけです。既に七年間ですね、五十二年からですから。ところが、ちょっと伺ったところが、各県に大体一つくらいずつその事業をやっているわけですから、七年もたったらどういう姿がその地域で浮かび上がるくらいのことはつかんでおかなくてはいかぬと私は思うわけですが、聞いたところが、つかんでないんですな。どうするんだと言ったら、今やっていますというんですよ。私も国土審議会の委員を六年やってきましたけれども、どうも最近、ここ二、三年の傾向を見ていますと、自助努力、地域の皆さん方の努力でやりなさいという声が非常に強い。それで、その進行状況もつかまずに今日まで来たということを考えると、私はこれは非常に問題でないかと思うわけです。  過疎過密の解消とともに国土の均衡ある発展、定住構想をしかとして、それで東北、北海道、特にそういう地域、まあ私は宮城県ですから東北のことに一つ触れますと、沖縄に次いで県民所得が低い。こういうような地域からの人の都会への流入が非常にふえて、それでこの定住圏構想が進んできて少しずつそれが鈍化したけれども、そういうような状況の中で遅々として一つの形が浮かび上がってこないし、最近は財政的な問題が非常に厳しいものですから、そういう点の制約もある。  こうなりますと、今まで企業の張りつけとか誘致とかというものもやっていただいたんだけれども、思うように進まない。それじゃ地場産業の問題はどうかというと、これも思うようにいかない。いろいろ確かめてみれば、情報も東北は情報力が非常に弱い。全国が一〇〇とすれば四〇か五〇くらいのそういう力しかない。経済力も六、七〇しかない。こういうような状況の中で本気になってこの定住圏構想を進めるとするならば、やっぱり七年もたったならば、その姿くらいはきちっと主管官庁である国土庁あたりがつかんでおくべきだと思うわけです。  それがないと、今いろんな状況変化があったということですが、そういう状況を、しっかと現地の事業等々の進みぐあいも調べずに、把握せずに、変更変更、こういうことで行かれますと、私はまた四全総も途中で挫折してしまうんじゃないか、こういうふうに思うのです。長官、こういう点で、私はしかとそのフォローアップをやっぱり国はすべきと思うのですが、どうですか。
  293. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 定住圏構想は全く御指摘のとおりだと私も受けとめております。そんな意味で、そうかといって何もなかったのかといいますと、できるだけその県において、県の態勢にもよると私は思いますが、定住圏を指定したというところにおいては公共事業等々の申請等があれば優先的にやっているというこの程度のことであって、補助対象も他の地域とは何ら変わってない。ただし、明るい環境をつくり出そう、そして住みやすい環境をつくり出そう、そして過疎と過密の解消ということで指定されたものであって、四全総の中にこれを繰り入れていくという場合においては、やはり多少いろいろな財源等々の問題をここで考えませんと、全く今仰せのとおりであるというふうに私も受けとめておるわけであります。
  294. 武田一夫

    武田委員 最近、国土庁の内部で、人口の伸び率が見通しよりも非常に低い、今後の見通しからいうとこれも続くであろうということで、これからは人口の増加分は首都圏で十分吸収できるのではないか、もう今さらそんな方に力を入れる必要がないのではないかというようなニュアンスの声が聞こえるとか、あるいは、どちらかといえば東京圏への流入超過が依然として続いている、そうすると東京をふるさととする方々が多くなってくるんだから、東京中心のてこ入れの方がいいんじゃないかというような声がしまして、どうも最初考えていた地方に対するてこ入れが非常に薄くなるような、そういう雰囲気もあるんだと伺っているのですが、そういうことはございませんか。
  295. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 どこにそういう声が出ているのか知りませんが、やはり国土庁としては、そういう声が出れば出るほど、国土の均衡ある発展を考えていかなければならぬと思います。そういう意味で、だんだん都会に流出をしてくる人口も、いろいろな施策が少しずつ浸透してきたのか、鈍化をしておる、こういうわけであります。国土庁で新規採択事業を幾つか採択をされましたが、そういう意味から、やはり都会の人たちも過疎地域に対して大変愛着を持つ、また過疎地域の人たちも自信を持つ、こういうふうな形から住みやすい環境づくりと申しますか、過疎過密、こういった問題の解消に今後も全力を挙げていかなければならぬ、こういう考え方におるわけであります。
  296. 武田一夫

    武田委員 そうしますと、三全総にある定住圏構想の継続は考えていくし、いわゆる過疎過密の解消による均衡ある国土の発展という基本方針を入れた上でのその他重要な方向性は、これからの課題として十分検討に入れていくというふうに伺っておきます。  そこで、通産大臣においでいただきましたのでお尋ねいたしますが、人口の定住化を高める上で重要なのは、働き場所、安定した雇用の場所があるということ、これは当然必要な条件でございますけれども、最近、五十四年、五十五年、五十六年と、こう見ていますと、工業化の足踏みがありまして、人口が徐々に、例えば五十四年だと二万人、五十五年は二万二千人、五十六年二万四千人と、やはりまた都会の方に行っているという傾向があるわけです。  私たちは、やはり地元においても地場産業を開発し、独自に一生懸命頑張ろうという空気がどんどん強くなっておりますけれども、何せ考えてみますと、東北、北海道、特に東北などは、秋田、青森、岩手等を見ますと、特に経済力、民間活力が非常に弱い。ですから、国が言うような自助努力とか自主的な努力ということだけでは、まだまだ全国並みの所得水準まで持っていくには大変な隔たりがあるわけです。  こうなりますと、私はいつも言っているのですが、予算の張りつけの問題等も考えまして、全国一律等ということでなくて、特にそういう企業誘致とか工場誘致のために懸命に頑張っていながら思うようにいかないこの足踏みをしている地域に対するてこ入れを、やはり国として力をかしてやってほしいな、こういうふうに思うわけでございますけれども、この点、いかがでございますか。
  297. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 武田委員のおっしゃることは工業や企業の地方分散ということであると思いますけれども企業、工業の地方分散というものは、全国的な適正配置というものを実現することにおいて極めて重要なことであると私は考えます。今後とも、各種の政策手段を通じて企業や工業の地方分散を行いまして、国土の均衡ある発展というものを期していかなければならぬと私ども考えております。  詳細につきましては、政府委員より答弁させたいと思います。
  298. 石井賢吾

    ○石井政府委員 補足して説明をさせていただきますと、現在通産省は、五十二年に策定いたしまして六十年度を目標といたしました工業再配置計画を推進しておるところでございます。これにつきまして、先ほど過疎地域についての工業分散の成果が上がってないという御指摘を受けたのでございますが、私どもも結果としてはそうであろうと思いますが、実は、この計画におきまして三つの中間目標を設定いたしました。  要するに、移転促進地域、これは首都圏、中部圏、近畿圏でございますが、この移転促進地域におきます工場面積を三割減少させる、それから、新規立地を誘導地域に七割誘導するというような計画を立てまして、これにつきましてはほぼそれに沿った形で実現しているのでございます。ところが、その結果としての工業出荷額の地域移動が有意な変化を遂げていないというところが、今先生の御指摘の十分な成果が上がってないという御指摘につながるのだと思いますが、できるだけこういうものを、なぜ工業出荷額の移動に結びつかなかったか、これは今年度いっぱいかけましてフォローアップ作業をいたしました。それでさらに五十九年度に、六十年度で目標自体が参りますので、見直し作業を進めていきたい、こういうふうに思っております。
  299. 武田一夫

    武田委員 時間が来たようですけれども、あと一つだけ。  今話がありましたけれども、一つの例を申し上げますと、宮城県の北部に今度いわゆる仙台北部中核工業団地というのが、二月の十六日、事業の正式採択があったわけです。ところが、これはこの計画ができてから実に十五年目なんですね。いろいろな事情があったかもわからぬけれども、非常に採択に感謝して地元は張り切っているのですが、十五年もかかるなどというようなことは、考えてみますとこれはやはり地域にとっては大変大きな問題だと思うわけですので、これからの四全総の作成の中で行われる事業についての、やはり時間的な速効性があるような御配慮はひとつお願いしたいな、こういうふうに思うのでございますが、通産大臣、ひとつ。
  300. 石井賢吾

    ○石井政府委員 先生の御指摘の中核工業団地、仙北の中核工業団地かと承知いたしますが、これにつきましては、従来東北開発株式会社がこれを開発するということで進んできたわけでございますが、将来へ向かっての民営化という方向で、五十六年度に至りまして地域整備公団がこれを引き継ぐという形になりまして、地域整備公団が実は中核工業団地の推進母体でございます。遅きに失するというおしかりがございますが、ただいまのような経緯で五十六年度、それから今年度にようやく事業採択へ進んだということでございます。
  301. 武田一夫

    武田委員 それでは、お約束の時間ですのでこの辺で終わらせていただきます。  次に、林野庁にお願いします。林野庁長官、来ていると思うのですが、林業問題についてちょっと質問します。  最初に私は、木材というもののよさというものが割と正確に知られていない、あるいは誤解されている面がある、こういうふうに思うわけですので、長官から木材の特質、よさというものをひとつPRをしてもらいたい。どうですか。
  302. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えします。  木材は、古来から我が国では、木造住宅を初めとしまして生活関連の器具に大変使われ、親しまれてきたものでございますが、最近、特に一部都会の方々において、木材に対する理解が必ずしも正確にされてないという面があるように思います。その例を申し上げますと、地震に弱いとかあるいは火災に弱いとか、長もちしないとかあるいは居住性が悪いとか、建築費が高くつくというふうなことが実は言われておるわけでございますが、私ども日本住宅・木材技術センターにおきましていろいろとこういう問題について取り組んでまいっておるところでございま丈が、例えば地震につきまして申し上げますと、地震の被害は御承知のとおり建物の重さに比例すると言われているわけでございますが、同じ強度の住宅でございますと、鉄筋コンクリートよりは軽い木材の方が被害が少ないわけでございまして、こういう例は過去の災害地でよく出てまいっておるところでございます。  それから、火災の問題につきましては、木材の燃える速度でございますが、これは三十分に大体十八ミリ程度であるというふうな実験データが実は出ておるわけでございまして、案外一般の方々の認識よりも遅いというふうに記録が出ております。そこで、それ以上の厚みや太さがございますと、火災の場合には中まで燃えることなくしんば残ったままで壊れないというふうな特性もございまして、こういう面については、私どもさらに一般にも理解を求めていかなきゃならぬと思っています。  そういうふうな誤解が多々ありますが、特に日本のような湿度の高いところにおきましては、居住性という面では、むしろ湿度を吸収する木材というものをさらに一層皆さんに理解をするように、努力していかなきゃならない、かように考えておるところでございます。
  303. 武田一夫

    武田委員 いろいろと木材の持つ特性というものを長官から話があったわけでありますが、やはり今問題になっているのは、そういう木材をいろいろな分野で使って国産材を大いに利用していくという、そういう方向をしっかと進めていくことが必要だ、私はそう思うわけです。  そこで文部大臣、私は学校の教員を六年ばかりやって、時々学校へ行きますと、コンクリートの校舎というのはやはりいろいろと問題がある。例えばけがが多い。それから、コンクリートはゴミを吸いませんけれども、木はゴミも吸う。それに、やはり木というのは人間的なぬくもりがある、温かみもある。そういういろいろな要素から、木造というものの利用をやはり学校の中に取り入れれば、冷たいコンクリートよりは子供の心の中に溶け込む、そういう力が随分大きいんじゃないか、そういう声を聞くし、私もそうだと思う。特に体育館とかああいうところは、今長官が言われたように、すごく丈夫な、また火事に強いものもあるし、最近は間伐材を合板にしたそういうすごい木材も出ている。こう考えると、もっとそういう分野に、これは幼稚園とかも同じだと思うんですが、利用していくのが、子供の教育の面だけでなくて、日本の林野の救済にも御協力することになるんじゃないかと思うわけでございますが、いかがでしょうか。(「健康も確保される」と呼ぶ者あり)それで健康もそのとおり、それはもちろん。大臣の御答弁をいただきたい。
  304. 森喜朗

    ○森国務大臣 武田さん御指摘のとおり、私もどちらかというと、合成樹脂よりも木でつくったふろへ入ると、何となく本当におふろに入っているという感じになりますし、木材である方が住居も、国会へ入りましてもやはり木の建物というのは風格もありますから、非常にその方がいいと私は個人的に考えます。  ただ、今おっしゃったように、学校の建物がコンクリートだからけがが多いかどうかということについては、必ずしも相関関係があるかどうか、これははっきりはいたしておりません。むしろ最近の子供たちは倒れ方とか転ぶことも余り上手ではないとよく言われますし、また、むしろ体格がいいけれども体力がないとか言いますから、そういう面でのけがとの問題もやはり関係があるかというふうに考えます。  ただ、端的に先生がおっしゃいましたように、学校建物については、我々は防災の観点から不燃化、堅牢化ということに学校の建物にとってはより重点を置いていかなければならぬ、こんなふうにも考えております。学校はやはり安全であるということ、それからもう一つ、環境からもやはり安全でなければならない、そういうふうに考えますと、非常に難しいところだと思っております。  しかし、木材は火災に弱い、腐りやすい一面もあるわけでありますが、逆にまた、今武田さん御指摘のように、感触がやわらかいということや吸湿性があるということではとってもいい面があります。要は、これまた地域の実情にもよるんじゃないかなという感じもいたしますので、構造的には、基本的な一番重要なところは鉄筋コンクリートを用いていくが、できるだけ日本の一番大事な山林に育った木を利用していくことも、これまた教育的効果の面からいっても大事だ。要は、いろいろ申し上げましたが、適材適所というのが一番基本的にはよろしいんではないかなというふうにも考えております。私自身は、木が三つついた名前でありますから、木を大事にするということはとてもすばらしいことだと思っております。
  305. 武田一夫

    武田委員 くしくも大臣は、木というのはどれほどいろいろな面で大事だかというのは、自分自身でもおわかりだと思うのです。  例えば、部分的に廊下を木にしてみるとか腰板だけでも木にしてみるとか、そういう一つの知恵といいますか、気配りが大事じゃないか、私はそう思うわけです。そこにやはり一つの教育的な、家をつくるにも学校をつくるにもこういうふうな気配りをしながら、皆さん方の健康や生活環境に十分役立つようなそういう仕事をしているんだというようなことを教えるのも、教育の一つの大きな観点にいくんじゃないか。理論的な話ばかりでなくて、身近なところにあるもの、なぜ先生、このコンクリの中に木をこうやっているのですかと、子供は質問するはずです。床が今まではコンクリだったところに、学校だけは板が張ってありますけれども、先生これは、というような素朴な疑問が出てくる。そういう生活の中で子供を教育するというところに私は教育の本当の大事な行き方があると思うだけに、こうした一つの日本のよき素材を生かしていくという、そういう御検討をひとつお願いしたい、こういうふうに思うわけであります。  そこで、ひとつ文部省、昨年我が党の参議院議員の鶴岡議員だったと思うのですが、質問したとき、面積が二千平米以下のものは、これは要するに、耐火建築物または簡易耐火性築物でなければ補助金は出さない、こういう答弁をしているわけですが、これは今もそういうことになっているわけですか。これはどうでしょうか。
  306. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 恐縮でございますが、ただいま突然のお尋ねでございますので、後ほど調べまして先生に御報告をさせていただきたいと存じます。
  307. 武田一夫

    武田委員 実は昨年の答弁では、補助金は出しません、こういうことなんですよ。けれども、このくらいのものは大いに奨励をしながらやはり補助金を出して、木材による建築物として大いにつくっていった方が私はいいのではないかという気がするものですから、これは確認しておきたいと思うわけです。  そこで、林野庁にもう一回戻りますけれども長官、林野庁の赤字の解消の問題です。  このところ、国有林の特別会計における経営収支というのは非常に悪くなって、悪化の一途をたどっているわけでありますけれども、五十八年度末の累積債務は九千五百億を超えているんじゃないか、もう一兆円を超えるのも時間の問題だ、こういうふうに私は思うのですが、林野庁としましてはこの五十九年度末の累積債務額をどのくらいと考えられていますか、その点、ひとつお答えいただきたいと思います。
  308. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えします。  ただいま五十八年度中でございますので正確な数字は申し上げられませんが、九千億円を超える数字に累積の借入金は相なると思います。
  309. 武田一夫

    武田委員 国鉄、健保、米、それにこの林野、国有林ですね。こうなるといわゆる四K赤字、こういうことが言われるようになっておるわけですから、やはりこうした経営収支の赤字の原因というものをしっかと分析しながら手を打たなければならない、これは当然のことだと思うのですが、その原因はどこにあるというふうに分析をしていますか、その点、お答えいただきたいと思います。
  310. 秋山智英

    ○秋山政府委員 収入と支出とに分けまして申し上げますと、まず収入面でございますが、自己収入は、御承知のとおり大宗を占めますのは林産物の販売でございますが、最近、森林資源の構造上の問題あるいは自然保護その他の関係から伐採量を縮減せざるを得ない、こういう面が一つあるわけでございます。それから、木材価格は御承知のとおり自由市場の中で形成されてくるわけでございまして、先ほど申し上げました木造住宅等の減少等もございまして価格も低迷している、こういうことが挙げられると思います。  また、支出の面でございますが、戦後の伐採量が三十六年から四十年ぐらいにかけまして大変増加したわけでございますが、その拡大した要員規模は伐採量の減少に対応して縮減に努めておるわけでございますが、まだ現在調整中でございます。それから事業運営につきましても、さらに私ども能率を上げていかなければならぬという面もございまして、現在、人件費を初めといたしますところの諸経費が非常に大きくなっているということであります。  それからもう一つは、現在造林あるいは林道というふうなものにつきましての投資の資金でございますが、自己資金が非常に減少してまいりましたので借入金によってこれを賄うというような形をとっておりまして、これの支払い利子が増高している、こういうことが挙げられます。
  311. 武田一夫

    武田委員 長官、そうすると今いろいろな話があったのですが、こういう赤字解消のために、私たちは昨年農林水産委員会やあるいは参議院の予算委員会で、要するに販売体制等々林野庁として体質改善すべきだ、そういうことを申し上げました。  今まではどちらかというと山元の話だけであって、消費者のニーズに従った販売とかあるいは加工とか、あるいはまた造材というようなことを、これは一応やっていたと思うのですが、なかなか思うようにいかなかった。そういうことをよく整理しましてもっと細かに手を打っていけば、同じ木であっても、今出しているよりはかなり高く売れる。本来その値段なんだけれども、扱い方とか販売のルートとか研究不足のために価値以下にさばいているために、要するに正常な収益を上げられなかった、この分の取り返しがつくのじゃないかというようなことで努力したらどうだという話をしたのですが、その後どうですか。そういうことをやってみましたか。もしやってみたとしたら、それはいい方向に向いているかどうか、その点、ひとつお聞かせ願いたい。
  312. 秋山智英

    ○秋山政府委員 御指摘のように、これからの販売に当たりましては、私ども、自己収入をできるだけ増大するということが経営改善を進める上におきまして大変大事でございますし、ニーズに合った生産、販売を実施するということは非常に大切に考えておるわけでございまして、本年度から国有林材の需要開発、販路の維持拡大ということを目的といたしまして、購入希望者と長期の協定を結びまして、ニーズに合った木材を安定的に計画的に供給するという方法を取り入れております。  そのほかに、さらに収入を上げるという面から、材質の低下する梅雨期の生産は避ける。それから、昨年の秋からヒノキの価格が下落した関係もございまして、その場合には人工林のヒノキ材の伐採量を調整する。さらには、これからの事業と申しますのは広域に対応していくことが必要でございますので、これもやっておりますが、効果はなかなか定量的にはあらわれておりませんが、この新しい販売方法につきまして問い合わせが非常に来ているとか、あるいは人工林のヒノキの入札の応札数が不況にもかかわらず若干ふえてきているというのがそういう成果であるというふうに理解しております。
  313. 武田一夫

    武田委員 こういう不況の時期になりますと、やはり供給サイドよりは需要サイドの方を大事にしなければいけませんからね。林野庁としては全国的な組織があるわけです。国有林のたくさんある地域も少ない地域もいろいろありますけれども、その連携を密にしながら、ひとつ全国的に持っている情報を交換しながら販売体制におけるてこ入れをする、そしてまたニーズに合った木材を提供する、こういういろいろ努力をしなくてはいけない。  そこで、私はさっき正常な方法で売れば相当な金額が入ってくるのに、それをあたら価値を落として販売しているということを申し上げましたが、例えば、これは東大の村尾先生が現地をずっと回りながら、調べながら出しているデータがあるわけです。例えば同じ材木であっても、在来の青森ヒバの土台角、造形ぬきという一つの例をとりますと、今までは八万円から五万円くらいだったんですね。それを材木の種類を三種類くらい考えまして、ここを見ますと全部でこれは六種類ですね。東濃ヒノキ、青森ヒノキ、秋田杉と三つの対象があるのですが、例えば青森ヒノキの十・五センチのもの、これは八万円だったものが十四万円、それから秋田の杉の場合は五万円が十万円で売れる。しかも売る場所は西日本、これは福岡の周辺だそうですが、その先に売ればこんなに倍に売れるというわけです、現実には。あるいはもっと、四面節のない、いわゆる無節ですね、これは青森ヒノキの場合は八万円が六十五万円で売れるというのです。秋田杉は五万円が四十万円で売れるというのですね。こういう一つのデータがある。  こうなりますと、もともとそういうつくり方をして売りさえすれば、それが正常の価格で、しかもいい杉だ、ヒノキだと買ってもらえるわけです、現地では。それがいろいろと勉強不足だったのかどうかわかりませんが、そういうふうに値段を非常に低く売っていた。ですから、言葉なんかをとらえて言うのは申しわけないですが、処分とか払い下げとかという言葉がありますわね。やはりこういう中に一山何ぼ、山ですからね、そういうような非常に荒っぽい販売というか、扱い方をした。やはり木は、本当に気遣いをしてきめ細かにやれば、こういうふうな一つの方向に持っていけるのではないか、ここで増収というものがあるのではないか。  それからもう一つ、これは気がついてやっているところもあるわけです。ですから私は、長官初め幹部の皆さん方率先して——今もう一つ例を挙げますと、(資料を示す)長官、ちょっと遠くて見えないと思うの。ですが、一本の木も、要するに切り方によって、長さによってまた値段が随分違う。これもやはり一番安い切り方でもってやっていた。これなども少し長さを考えればずっと高く売れる。  それから木の扱い方も、例えば作業員の皆さん方の指導教育というのが必要だと思うのですが、丸太を、とびですかでひっかけて持ってくる際も、普通節のある部分にぶち込んで運ぶとか、そういうふうなことをやることによって木の中にまで食い込むことはないんだけれども、それをいわゆる木の肉に食い込むようにぶち込んで運んでおるとか、あるいはフォークリフトのようなものをその材木にばんと当てて、その先っぽの鉄が食い込んでしまって木の価値をなくするとか、そういうことなども考えますと、やはりもう少しそういうようなところに手を打っていく。木を大事にしていく。木は大事な品物、商品である、そういうような指導教育といいますか、これはやはり長官以下、こういう緊急事態の赤字の中ですから、飛び込んでいって、いろいろと困難もあるでしょうけれども、木を大事にするという観点から取り組むことによってこうした赤字の解消をやるべきだと思うのです。  安易に、赤字だからといって国から金をもらって解消するなどと言う前に、そういう努力をして、このくらい変わった、このくらい収入がふえたんだ、しかしながら、それでも足らないからお願いすると言われれば、国民も、そのくらいの努力をしながら赤字があるのなら、それは勘弁しましょうという、そういう気になるんじゃないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  314. 秋山智英

    ○秋山政府委員 木材の販売方式につきましていろいろと御意見をちょうだいしたわけでございますが、二、三点、最近新たに取り入れている方向について御説明申し上げたいと存じます。  まず、市場開拓でございますが、青森ヒバ、これは青森ヒノキというふうに私どもは呼んでおるわけでございますが、従来東北地方中心の市場でございましたが、これを東京、中京、それから大阪、福岡まで市場を伸ばしまして、特にヒバがシロアリに非常に強い、土台に非常にいいというようなこともございまして、九州の方でも相当これの需要がございますので、そういう意味での需要拡大、全国組織での需要拡大ということで現在取り組んでやっております。  それから、秋田杉の例が出てまいりましたが、従来確かに一部におきまして三・五メーターの玉切りでございましたが、私どもはやはり需要に見合った形で五メーター材、十メーター材と、いろいろな切り方をしながら高く売るというようなことで今教育中でございますので、これにつきましては、今後ともさらに販売方針、作業基準等を現場の職員まで徹底してまいりたいと思っております。  なお、先ほど御指摘いただきました採材方式と同時に、とびの使い方等につきましても、現場におきまして木の両口を押さえるような形の方法をとらせるとか、あるいはさらに材を保護した形で運搬する方法について今徹底して教育をしておりますので、もうしばらく猶予をいただきたいと思います。
  315. 武田一夫

    武田委員 聞きますと、いろいろ苦労しながら努力をしている方々もいるんだそうですが、なかなか阻害要因もあるということでございますけれども、その阻害要因をまず一つ一つ解決しながら、今後の経営の赤字解消に努力をしていただきたいし、していくべきだと思うのでありますが、今後いつごろまでにどれくらいのめどでその赤字を解消していくという、一つの目標なりそういうものをきちっとしておかなくてはいかぬのじゃないかと思うのです。ですから、いろいろと我が党で試算しますと、我々が言ったいろいろなやり方、販売の方法とかそういう木の寸法をどうするとかというようなことに気を使いながらやっていけば、五百億円程度の増収は可能じゃないかなというふうに考えているわけでして、これは我々の試算ですから、そういう点の目標、計画をやはり明確にしておいてほしいなと思うのですが、この点、いかがでしょうか。
  316. 秋山智英

    ○秋山政府委員 国有林野事業経営改善を図る上におきまして、やはり極力借金を早くお返しする、内容をより一層健全化するためには、収入面ではやはり販売の合理化ということが極めて重要でございまして、先ほど触れましたように、私ども販売問題につきましては、今度販売対策の部屋をつくって、全国組織で、非常に種類の多い、多種多様の材を国有林は持っておりますので、これらの特性を生かしまして積極的な販売事業を展開してまいりたいと考えております。  特に、私ども現在考えておりますのは、やはり国有林材によりますモデル住宅をつくりまして、木材のよさをPRしながら、広域的な販売あるいは長期協定に基づく予約的な販売、さらには流通関係、建築関係の方と連携をとりながら販売を進めるというふうな方法をこれから積極的に取り組んでまいりまして、着実に経営改善の成果を上げてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  317. 武田一夫

    武田委員 農林水産大臣が来ましたので、お尋ねをしたいと思います。  あっちこっちかけ持ちで大変ですが、最初に、大臣、これをお読みになりましたか、大臣に就任してから。(資料を示す)
  318. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 まだ読んでおりません。
  319. 武田一夫

    武田委員 だめですな。  山村大臣は、私は農林水産については全く素人だとみずから言っておるわけですが、今一番大事なのは、私は農業問題だと思うのです。教育も大事、わかります。防衛大事。だけれども、国の安全保障の中で、食い物がなかったら、人間、腹がくっちくなかったら——これは仙台弁で腹いっぱいになることをくっちくなると言うのですが、これは一番重大問題だと私は思うわけです。そのときに「八〇年代の農政の基本方向」、これに沿って日本農政を進めていこうということで答申が出されてきたわけでありますから、農林省の幹部の皆さん方も、ちゃんとこういうものは、最初に基本的なものは勉強していただけるようにしておかないと、全部原稿を読みながらやっていますよね、お気の毒ですが。やはりそういう配慮をしてあげないといけないと思うのですよ。まあ読んでください。
  320. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 この現物は初めてでございますが、これについては農林水産省の幹部の皆さんからよくレクチャーを受けております。
  321. 武田一夫

    武田委員 それじゃ、レクチャーを受けているそうですから、お尋ねいたします。  私は、中曽根総理の施政方針演説、三回お聞きしました。その以前には大平総理、福田、鈴木総理等の施政方針演説もお聞きいたしました。いずれもさきの総理大臣の皆さん方は農業の重要性を非常に強調されまして、紙面の中に占める数量も大変なものでございましたが、私も整理しまして、中曽根総理の話の中でどれくらい農業問題に触れているかと見たら、全く原稿用紙一枚にもならぬ。言葉が少ないからどうということじゃないですが、やはり自分が心に大事だ、これは物すごく大事だと思うものは言葉に出てくる。それが出てこないし、しかもずっと流れを見ていますと、防衛費がどんどん突出する中、あるいは安全保障の一つと言われるエネルギー等はまあまあであるけれども、農林予算はどんどん少なくなってきている等々を考えますと、どうも日本の農業に対する心遣いというのがおありになるのかな。  また、こんなことを言うとおかしいかわからぬけれども、私は今度の内閣をずっと見ました、どういう経歴の方か。通産大臣あるいは通産省関係の方、多いですな、その閣僚の配置。世間に行きますと、地元に帰りますと、農業を理解しているのは何人いるんですか先生、こう聞かれます。我我が経歴を見ましたら、みんな通産省、商工じゃないですか、これも一つの具体的なあらわれじゃないんですかと聞かれるわけでございますが、大臣日本の農業というものが、二十一世紀に向かって、総理が言うように安全で安定で安心なものかどうか、なれるものかどうか、その点についての御見解をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  322. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 実は、私も農業には関係ございまして、今の米の集荷業者の一人でございました。大臣になりましたもので、女房を社長にして私はやめましたけれども、しかし、全然通産とは関係ございません。  二十一世紀に向けて我が国農業をどうするか、また防衛、エネルギー予算と比べると何だか余り少ないじゃないかというようなことを言われました。私は、やはり何といいましても、二十一世紀へ向かっては、中長期的に見ると食糧事情というの楽観を許さないということでございます。そういうことで、来年度の予算につきましても、何しろ国民の主食たる米、これを安定供給しなければならないというところで、この農林水産予算というのは重要な予算であるということでございまして、私としてははなはだ残念でございまして、やむを得ないとは思っておりますが、御存じのとおり二年間連続削減ということでございます。しかし、内容では農林水産行政をめぐる諸情勢に対応する質的充実を配慮して、重点的かつ効率的に配分してありますので、その点、御安心いただけるんじゃないかと思います。
  323. 武田一夫

    武田委員 大臣、中国の言葉に、一年の計は穀物、物を植えるにあり、十年の計は木を植えるにあり、百年の計は人を植えるにありという言葉があるのを御存じですか。この穀物をつくる農業というのが回の発展の原点だ、私はそういうふうに思う。ですから、国づくりの、国の発展、繁栄のためには農業と教育というのは非常に重要な問題だと私は思っている一人です。そういう教育、これは後で、文部大臣も来ておりますのでお尋ねいたしますが、後継者を見てもおわかりのとおり、農地を見てもおわかりのとおり、大変な状況です。  そこで、私はその二つの点に絞って、果たして二十一世紀は日本の農業が安心できる、また安定的に食糧が供給できる、そして農家の皆さん方も安心して生活ができ、一億の国民が安心して食糧を手に入れることができるかどうかということが心配なものですから、土地、人についてまずお尋ねします。  その前に、よく政府は自給力の向上、我々は自給率の向上と言うのですが、自給力という表現を使いますね。それで、その中身として、いま言った優秀な担い手、土地あるいは技術、水とかというものがいわゆる潜在的生産能力である、こう言っていますね。この自給力というような言葉が出て四、五年ぐらいになると思うのですが、どうですか、この四、五年間にこうした中身のものがいわゆる強化される方向で来ていますかどうか、数字的なものを通して具体的にひとつ当局から説明してもらいましょう。
  324. 角道謙一

    角道政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま御指摘のように、自給力と申しますのは、土地あるいは水あるいは担い手等、そういう生産の資材を総合的にとらえたものでございます。  土地につきましては、近年大体五百五十万ヘクタール、若干の減少はございますけれども、おおむねその程度の推移をたどっておりまして、私ども、第三次土地改良長期計画というものを基盤にいたしまして五百五十万ヘクタールというものを今後とも維持をしてまいりたいというふうに考えております。  人間につきましては、生産性の向上等もございますし、残念ながら農業就業者につきましてはやはり減少の方向にございますが、これは反面、土地生産力、技術の向上等もございまして、生産量としてはおおむね国民の必要なものを維持するに足るようなものになっております。これはやはり一方におきましては生産性の向上と技術の進歩というものもございます。そういうことにつきましても私ども十分の配慮はしたいと思っておりますが、ただ、農業後継者等につきましては、将来を考えた場合、高齢社会に向かってまいりますので、御指摘の点はございますので、私ども今後とも農業改良資金あるいは改良普及員等によります後継者の確保というものに努めたいと考えているわけでございます。  水につきましては、土地改良長期計画というものによりまして現在の五百五十万ヘクタール、水田につきましては現在大体三百万ヘクタールを若干欠けますけれども、この米その他の水資源に依存します作物につきまして必要な水量というものは確保することで、私ども昨年来第三次土地改良長期計画というものによりましてこれを維持しているわけでございます。
  325. 武田一夫

    武田委員 それでは、一つ土地の問題で数字を挙げてちょっとお尋ねしましょう。  昭和三十五年に六百七万ヘクタールあった農地、五十五年には五百四十六万ヘクタールと、二十年間で約六十万ヘクタール減っています。明治以来昭和三十五年までの間に開墾などで増加した面積約八十六万ヘクタール、これから比べますと、まことにこの二十年間での土地の減少というのは重大な問題です。しかも、最近のいろんな事例を見ましても、平均して三、四万くらいの土地はつぶれていっている。造成をしても差し引き一万くらいは減っているわけです。土地というのは短い時間に獲得できるわけにまいりません。長い時間かかる。そういうことになりますと、土地が減っていくということでまず最初に日本の農業にとっては陰りが見えてきている、私はそう思う。  そこで、基盤整備の問題、土地改良長期計画、この問題で尋ねますけれども、第二次土地改良計画の投資実績と進捗状況を見ますと、面積ベースの実績、昭和四十八年から五十七年、圃場整備約百二十万ヘクタール、実績五十九万一千ヘクタール、十年間の進捗率四九・三%、半分以下、畑地総合整備、これは約六十万ヘクタールに対して十万、一六・六%、これは問題外、農地造成七十万ヘクタールについて二十九万六千、四二・三%、これも半分以下、農地造成、そのうち三十万、これが十万八千ヘクタールで三六%、草地造成約四十万、十八万八千ヘクタールの四七%、いずれも五〇%以下、進捗率は非常に遅い。計画がぐんと落ちている。  このころは、まだそれでも予算を一〇〇%近く消化していた。それじゃ第三次どうか、全く予算の伸びなし。前年度九千億ちょっとありました、五十八年。五十九年が八千九百十九億。減っている。これはどういうことでしょうか。今まである程度金がついて、それでもこの程度の進捗率しかない。しかも基盤整備、第三期のいわゆる減反、水田利用再編の最後の締めくくりであるそういう大事なときに、予算が大変厳しいと言いながら、肝心かなめのところにこういう状況では、自給率の向上等々あるいは政府が言う自給力の向上、これはかけ声だけに終わるのではないかと私は心配しますので、その点、どういうことになっているのか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  326. 倉成正

    倉成委員長 森実構造改善局長。問題を整理して的確に答えてください。
  327. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  まず、御指摘がございました長期計画の達成状況の問題でございますが、長期計画自体は金額ベースで表示されたものでございます。その意味におきましては、第二次の土地改良長期計画はおおむね全額達成したことになるわけでございます。しかし、その間において賃金、物価等の大幅な上昇がございまして、いわば背景になる事業量という意味から申しますと、まさに御指摘のような点であったわけでございます。  五十八年から発足いたしました第三次の土地改良長期計画は、この現実、事実を押さえまして、整備率を水田等については七割なら七割という目標を決めまして計画を策定しているわけでございます。昨年が初年度、ことしが二年度でございまして、今後これから土地改良の予算をどうやって確保していくかということが課題であることは言うまでもございませんが、今後私どもとしても事業の確保ということ、並びに反面においては事業の効率的実施ということ、そういう面において努力をしていく必要があると痛感しております。
  328. 武田一夫

    武田委員 第三次改良計画は五十八年から六十七年まで、三十二兆八千億、約五百五十万ヘクタールという一つの目標がある。これはどうですか。この計画どおりこれをやるとすれば、毎年一一%ぐらいの伸びの予算がつかないととても不可能だと私は思うのですが、この点の心配はないですか。
  329. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  五十八年、五十九年の予算が、前年は据え置き、ことしは若干でございますけれども減額されていますから、これを起点として考えると、御指摘のように一〇%を超える伸び率でなければ十分な消化ができないという問題はあろうかと思います。国の公共事業、公共投資計画の一環として土地改良長期計画も決められているわけでございまして、やはり国の経済事情その他によって必要があれば修正するという留保をつけて三十二兆八千億という枠を決めた経過はございますが、私どもといたしましては、何とかこの三十二兆八千億を十年かけて消化できるように努力をしたいと思っているわけでございます。  なお、第二次の場合と比較いたしまして、事業の単価自体はかなり安定的に推移しておりますので、そういう意味においては、実質量においてはそう大きな懸隔はないものと思っております。
  330. 武田一夫

    武田委員 私が非常に心配なのはその中で一つ造成の件ですが、十年間で四十七万ヘクタールの畑ですな、造成するという計画があるわけです。そうすると、単年度を見ても四万七千やらなくちゃいけない。これはちょっと数が大き過ぎるんじゃないかという気がしますね。というのは、今まで五十五年からちょっと見ましただけでも、五十五年が三万一千八百、五十六年が二万五千、五十七年が二万二千ですよ。大体こんなものでないかと思うのですよ。時間がたてば単価も上がってきますよ。予算が少ないでその倍の四万七千とは、これは平均的に見てもちょっと無理な計画を無理してつくったんじゃないか、そういう心配をしますね。  それから、この四十七万ヘクタールというのをやらぬと、自給率の問題でこれまた困るわけです、六十五年の見通しからいうと。ところが、残念ながら土地がつぶれている、壊廃面積が非常に多い。五十三年からちょっと言ってみますと、五万七千、五十四年が五万、五十五年が四万五千、五十六年が四万三千、五十七年が三万九千、そして五十八年が三万七千三百。そうしますと、造成はしたけれども差し引き一万四、五千から七千しか農地はふえていかぬということ、これを考えますと、土地の確保というのは非常に難しいんじゃないかと私は思うのです。  それからもう一つ、土壌の生産力可能性等級別面積というのがあります。これは一等級から四等級、すなわちいいもの、子供で言えば「いい子、悪い子、普通の子」ですわ。その中で一等級、わずか三千五百五十ヘクタールですよ。ところが四等級、不良、不良というのはどういうものかというと、耕地として利用するのはもう極めて困難な土地、使い物にならぬもの、何と十万七千九百五十四ヘクタールある。こういうものを差っ引きしたらどうなりますか。  しかも、最近心配なのがもう一つある。耕地利用率がまた余り高まっていない。昭和三十五年には耕地の利用率が一三三・九%あった。年々下がっている。そして、五十五年は一〇三%、五十六年は一〇二・九%、こういう一つのデータを見ますと、果たして肝心かなめの土地が二十一世紀という未来に輝やける、次代の農業への一つの大事な要素として安心なのかと私は疑問を持たざるを得ないが、この点についてやはりもう少しきちっと見直しして、その自給率を高めるだけの土地面積なんですから、それにふさわしい予算的なものをしかと、遠慮をしないでやはり大蔵大臣に取ってもらえるだけの迫力がなかったら、説得力がなかったらだめですよ。どうですか、その点、大臣
  331. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘がございました幾つかの点について、簡単に説明させていただきます。  壊廃につきましては、その中心は転用でございます。農地の転用は、大体五十四、五年を境にいたしまして減少する傾向にございまして、農地の転用面積自体は、先生も御案内のように減ってきている。その意味では壊廃面積は総量としてはかなり落ち着いて、減少しながら平準化しつつあるという状況でございます。  一方、農用地の造成でございますが、これにつきましては、大体この四、五年は三万ヘクタール台の造成が確保できている状況にきております。そういう意味で、トータルの需給関係は私どもそう大きく変わらないのではないだろうかと見ているわけでございます。ただ、土地のグレードとか、造成目標という点になりますとなかなか難しい点もございます。一つは、何といっても十一万方キロの利用可能地を農業と非農業で配分して利用している現実があるわけでございまして、やはり低平地から土地がつぶれて、中山間部等の傾斜地等の草地造成等によって、これを主力にして農用地の造成が進められている現実がありまして、グレードというもので表現いたしますと、いわば交換価値で表現されたものでございますから、そういう意味ではまさに御指摘のようになるだろうと思います。  農用地の造成の問題というのは、いろいろ議論もございますが、私ども、やはり農業生産基盤を確保し、我が国の農業の自給力をつける上で出発点の部分だろうと思います。そういう意味におきまして、一方においては転用の規制なりあるいは壊廃の問題に十分なチェックを行いながら、他方においては効率的な事業の実施を通じて造成には努力してまいりたいと思っているわけでございます。
  332. 武田一夫

    武田委員 そのほかに、例えば遊休農地が十万ヘクタールぐらいもあるというような諸条件考えますと、やはりその基盤である農地の確保、このためには国の一大事業として取り組んでほしいし、そうしなければ農家の皆さん方も大変だし、我が国民も大変な事態に当面するのじゃないか、そう私は思うので、農林大臣、この点はしかと予算の面でも確保する。それと目標を達成する。今回はもうやむを得ないとしても、十年ですから、この目標をきちっとやるだけの、後で挽回する等等の、やはりそういうしかとした決意を全閣僚に植えつけるだけの努力を、我々もやりますけれども、してほしいと私は思うのですが、どうですか。
  333. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 本年度は予算は終わったわけでございますが、来年度はどうも私の方もここにいられるかどうかわかりませんけれども、その場合は農林水産部会というのが自民党の中にもありますし、それらの一員といたしまして全力投球でやってまいります。
  334. 竹下登

    ○竹下国務大臣 委員は言ってみれば農本主義的な立場、私も若いころ石黒先生の農本主義に一時、一時期と申しますか傾倒して、その影響を今日まで受けておるのではないかという感じがいたしております。  今の問題につきましては、今構造改善局長、また重ねて農林水産大臣からもお考え方が披瀝されました。予算編成時においてそのときの経済、財政状態を見ながら、私としても今委員の御指摘考え方を踏まえながら対応すべきものであるというふうに感じております。
  335. 武田一夫

    武田委員 では、ひとつお願いを申し上げまして、時間の関係で最後に、人の、担い手の問題についてお尋ねをしたいと思います。  これも大変なことになるなと私は思いますね。一つの例を挙げながらひとつ質問したいと思うのですが、農業構造の展望を見ますと、基幹的農業従事者は昭和五十五年が四百十三万人、そのうち六十歳以上が何と二八%、それが六十五年の試算では二百七十万人の農業従事者、四三%が六十歳以上、これは予測されているデータ。  最近のいろんなデータを見ますと、次代を背負う青年農業者というものがどうかというと、これが非常に減っている。一つは、新規学卒者の就業状況、これを見てみるとわかる。昭和四十年に就農率だけで言いますと二・四%、それが五十六年の段階では二・四%。私の宮城県の例でも大体似ています。宮城県の場合、三十八年が一一%、五八年は〇・五%です。全国平均よりも少ない。農業県です。一昨年、五十七年の例をとると七千二百、そのうちの男子がわずか六千三百人、こういう状況です。  ところで、百万戸近い中核農家を育てるのだというのが今の農政の中心でございますから、それに一応乗って話をしますと、百万近くの中核農家のその人は大丈夫かという問題です。この点は大丈夫ですか。  中核農家というのは、私は二つあると思う。いわゆる中核農家で、年間百五十日間農業に従事する五十九歳以下十九歳までの成年ですな。これは男です。それから、年齢は同じでも百日から百五十日くらいの農業従事をするといういわゆる準中核農家みたいなもの、これを合わせると百万になるわけですから、私はこの二つのものを言っている。この方は男子ですからね。いいですか。六十五年に最低百万人確保できなくちゃならないのですよ、この農政審の方向でいけば。一家に最低一人としても百万人、どうですか、これは可能性があると思いますか。
  336. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  中核農家の数が減少しているということは、一方におきまして私ども、農業の生産性の向上を図る観点から、利用権の集積を通じまして規模拡大を図っていくということを現在の農政の最重点に据えているわけでございます。したがいまして、規模は拡大をしていく、片っ方では、農業生産あるいは農業食糧に対します需要というものも、人口増以外には将来そう大きくは考えられない、現在、一人当たり大体二千五百キロカロリーというようなところで足踏みをしておりまして、日本人の食生活から見ましても、おおむねそれは妥当であるというふうに考えておりますので、そういう観点からしますと、一方におきまして現在の生産性向上を図り、規模の拡大を図るという観点から見れば、中核農家の減少ということも、裏腹の関係でやむを得ないと考えております。  また私ども、この中核農家につきましては、確かに一方におきましては高齢化の問題もございますが、農業技術につきましても、それに従いまして容易にできるような平準的な技術水準というものが一方には進んでいっておるわけでございますので、現在考えておりますような七十万戸というものを、私どもとしては達成しなければならない目標だというふうに考えております。
  337. 武田一夫

    武田委員 一歩下がって、それでは七十万の必要中核農家が果たして確保できるかという問題ですが、私が計算しますと、農林水産省はどういう試算でいくのかわかりませんが、今二十九歳未満、三十から三十九とずっと年代別のそういう農業従事者の推移の数字を見てみますと、昭和五十五年四百十二万八千人、そのうち男子が二百三万六千人いる。それから、六十五年にはこれが二百七十万四千人、さて男子は幾つになるか、これはちょっと数は出ていませんが、ただ五十五年の数字から推測すると、二十九歳未満二十六万七千、三十から三十九が五十万四千、そしていわゆる五十九歳まで全部計算しますと、五十九歳以下の男子農業従事者数は約百三十二万、これは四四・三%。そうすると、全体の中に占めるいわゆる基幹中核農家の人間として確保できる男性は四四・三%なんです。私は、この四四・三%をそのまま推移していったとしても六十八万五千程度が精いっぱい、とても七十万というものは不可能でないか。人数の中で女性がふえていくという可能性はないと思う。ですから、いずれにしましても最後に文部大臣にもお尋ねするのですが、大体この後継者のそうした傾向から見ると、これは無理のような気がしてしょうがない。これは間違いなくいくという一つの確信のあるデータでもお持ちなのかどうか、ひとつ聞かしていただきたい。簡単に、時間がないから。
  338. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの数字につきましては、農政審議会におきまして専門委員が一定の推計に基づいて行いましたものによりましても、大体七十万戸というような目標ができております。  これは算式につきましては、各年齢階層別に五十五年の実数を押さえまして、これが最近五カ年間、五十年から五十五年の離職率、離農率、増減率を前提にいたしまして、それから年齢階層別に五カ年ごとに離退職を考えていくといういわゆるコーホート方式というものによりまして推計をしましたところで、六十五年におきましては、十五歳を超える者が約二百七十万人、そのうち約五七%が六十歳未満で、中核農家の担い手という意味では、一応七十万戸という推計も出ております。
  339. 武田一夫

    武田委員 今答弁あったのですが、私は非常に心配であります。  そこで、時間も来ましたので文部大臣お尋ねしますが、農業高校の問題。  最近、農業高校にもいろいろな専科が出まして、園芸とかあるいは造園とかいろいろあるのですが、肝心の農業科に入る定員が満たない地域が多い。私の地域でもすそのところは〇・八とか、よくてたまたま一になるという場合もある。いわゆる定員とんとん。そして毎年のように落ち込んできている。しかしながら、農業高校に行きますと先生方は大変な意気込みでして、非常な農政の混沌とした中で、懸命に子供たちを教育しています。すばらしい教育をしている。土とともに泥だらけになってやっている。しかもそういう方々がさっき話したように農業につくのは微々たるもの。入ってくる子供の成績は非常に悪い。私の行ったある学校では、大体入ってきた人間の六割、七割というのは、中学校時代三年生あたりになると先生から相手にされない子供だった。一番悪いのが農業高校、こういう感じです。しかし、これからの農業を考えるときに、例えば複合経営というものを一つとっても、いろいろな科学的な物理的なそういう勉強、園芸にしたって畜産にしたって、中にはコンピューターなんかも入っている時代ですから、優秀な農業者を高校に必要とするわけです。  こういうふうに考えますと、やはり農業高校に課せられた一つの大きな課題も、日本の農業をよくするか悪くするかという一つの課題になっているのじゃないか、こういうことを考えますときに、森文部大臣、かつて明治時代にも有名な同じ大臣がおりましたし、私は大臣に期待するところ大でございますので、農業高校の教育のあり方、今後どういうふうにしていけば日本のそうした苦境といいますか、大変な事態を乗り越えられるとお考えか、また、対策がございましたらお聞かせいただきたい。それが一つ。  それからもう一つ、農家の子供が農家を嫌って出て行く反面、普通高校や普通の都会の人間の中で、おれは農業で一生涯やっていきたいという子供がかなりふえているのも事実だそうであります。ありがたいことです。現に大学を出てみずから飛んで農業に入るという方もいる。いわゆる新規参入といいますか、こういう方々が出てきて停滞した農業に活力を与える、これも必要じゃないか。となれば農業問題、食糧問題というものは、普通高校であろうと、そして義務教育である小中校の中にも、かなりの部分にその重要性を訴える、そういう中身のあるものを教育のカリキュラムの一つの中に植え込んでいくのが、文部省として農業を支えていく一つの力になると私は思うのでございますが、その点に対する御見解をお聞きいたしまして、時間でございますので、質問を終わります。
  340. 森喜朗

    ○森国務大臣 武田さんの農業に対する御見識、大変感動深く拝聴いたしました。  高等学校の職業教育につきましては、後継者育成確保というその観点を十分に配慮しながら、職業教育が適切に行われるように改善充実をしてきたところであります。特に農業後継者の養成確保は、これは今先生もお話になっておりましたように、農業は国の基本でありますから、その国の基本を支える後継者を養成するという観点に立ちますと、教育の中では最も重視しなければならぬ、このように考えております。このため、これまで三十九年から全寮制自営者養成農業高等学校の整備の促進をやっております。また、先般、高等学校のいわゆる教育課程、学習指導要領を改訂をいたしました。その際にも、産業の発展を図る意欲、そして実戦力を一層育てる、こういう農業教育を進めるように配慮をいたしたところでございます。基本的には、今議論もございましたいろいろな事柄はあると思いますが、やはり農業が魅力があるものだというふうにしていかなければならぬというのが基本だろうと思っております。  今御指摘のように、確かに充足率から見ましても、農業高校に入る方々が少ないという点も事実でありますけれども、これは、全般的にやはり農業人口そのものが減少して、既に一割をたしか割っておるという、五十五年から九・七%ですか、そういうようなところにもやはりあるかと思います。しかし、第二の、今武田さん御指摘がありましたように、やはり単に農業教育という観点だけではなくて、日本の初等中等教育、いや、むしろ幼児教育から、やはり自然の中に生を受けて、物を大切にし、また日本の国土の中で育っていく者、この基本は一体何なのかというようなこと、こんなことを、先ほどお話がございました山や川やあるいは森や木や、それと同じように、食糧も含めて人間の最も大切なものをやはり教科書等の中でも、あるいはまた先生の教育の中でも、十分にそのことを踏まえながら、初等教育段階でも十分に子供たちにその認識を深めるような、そういう指導をしていくことがより大切だというふうに考えております。
  341. 倉成正

    倉成委員長 先ほどの武田君の質問の中で、阿部管理局長から補足答弁がございます。
  342. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 先ほどのお尋ねに関連をいたしまして、御報告をさせていただきます。  公立の小中学校の校舎建築につきましては、新築、増築、改築、いずれの場合についても国庫補助の制度が確立をしておるわけでございまして、そういう意味で、木造だからだめだとか、そういう仕組みではないわけでございます。  先ほどの先生のお尋ねは、恐らく、これは私の想像でございますけれども昭和五十八年度から新しく措置をすることになりました大規模改修のための経費についてであろうかと思うわけでございますが、この大規模改修経費は、鉄筋の建物等の場合に、私ども、通常六十年の耐用年数で考えているわけでございますが、十五年に一回あるいは二十年に一回という程度で大規模な改修を行いますと、寿命をもたせることが十分できる、良好な状態で教育ができるというようなことがございますので、そういうことを奨励する意味で、五十八年度から新たに措置をいたしたものでございます。これにつきましては、そういった事柄の性格上、木造は対象になっておらない、あるいは金額にいたしましても、二千万以下の少額のものは対象にしていないというようなことでございます。ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  343. 武田一夫

    武田委員 それでは終わります。どうもありがとうございました。
  344. 倉成正

    倉成委員長 これにて武田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十四分散会