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1984-02-22 第101回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年二月二十二日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 倉成  正君    理事 小渕 恵三君 理事 原田昇左右君    理事 松永  光君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 岡田 利春君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原慎太郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    砂田 重民君       田中 龍夫君    高鳥  修君       玉置 和郎君    中馬 弘毅君       橋本龍太郎君    原田  憲君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       村田敬次郎君    村山 達雄君       井上 一成君    稲葉 誠一君       上田  哲君    大出  俊君       加藤 万吉君    島田 琢郎君       清水  勇君    武藤 山治君       矢山 有作君    湯山  勇君       草川 昭三君    駒谷  明君       斉藤  節君    日笠 勝之君       正木 良明君    伊藤 英成君       木下敬之助君    小平  忠君       浦井  洋君    工藤  晃君       瀬崎 博義君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 住  栄作君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 森  喜朗君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         農林水産大臣  山村新治郎君         通商産業大臣 小此木彦三郎君         運 輸 大 臣 細田 吉藏君         郵 政 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 坂本三十次君         建 設 大 臣 水野  清君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     田川 誠一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      中西 一郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官)稻村佐近四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         内閣参事官   中村  徹君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         総理府人事局長 藤井 良二君         行政管理庁長官         官房審議官   佐々木晴夫君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁次長 小谷  久君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         国土庁長官官房         長       石川  周君         国土庁長官官房         会計課長    安達 五郎君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省条約局長 小和田 恒君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         厚生省公衆衛生         局老人保健部長 水田  努君         厚生省医務局長 吉崎 正義君         厚生省社会局長 持永 和見君         厚生省児童家庭         局長      吉原 健二君         厚生省保険局長 吉村  仁君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省計画局長 台   健君         自治省財政局長 石原 信雄君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   武藤 山治君     加藤 万吉君   大久保直彦君     日笠 勝之君   矢野 絢也君     駒谷  明君   渡辺  朗君     伊藤 英成君   田中美智子君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   加藤 万吉君     武藤 山治君   駒谷  明君     矢野 絢也君   日笠 勝之君     大久保直彦君   伊藤 英成君     渡辺  朗君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十八年度特別会計補正予算(特第1号)      ————◇—————
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度一般会計補正予算(第1号)及び昭和五十八年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浦井洋君。
  3. 浦井洋

    浦井委員 補正予算案審議なので、人勧問題から質問をしたいと思います。  藤井人事院総裁、来ておられますか。——まず最初に、人事院総裁二つほどお尋ねをしたいのであります。  五十七年度人勧凍結をされる、それから五十八年度は六・四七の勧告政府によって二%に引き下げられる、こういうたび重なる異例の措置について人事院総裁はどうお考えかということが第一点であります。特に五十八年度人勧については、政府俸給表を勝手につくり変えるというようなことをして、いわば人事院は土足で座敷に上がられたというような格好になっておるわけで、まさに人事院存在理由が問われておると私は思うわけであります。だから、この政府の一連の人勧に対してとった措置について、人事院総裁の率直な御意見を聞かしていただきたい。これが第一点。  それから第二点は、これは当然のことでありますが、公務員給与というのは義務費でありますから、政府の他の政策的経費に優先して支払われるべきものだというふうに私は考えるわけでありますが、政府財政的事情理由にして人勧無視をしておるわけであります。この点についてどう考えるか、これが第二点であります。以上。
  4. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 お答えいたします。  第一の点でありますが、この点は当委員会その他において、私、先生方の御質問に対して繰り返し御答弁を申し上げておるところでございまして、給与に関する人勧制度というのは、これは憲法上認められた労働基本権制約に対する代償機能という非常に重い意味を持っておる制度でございますので、これはやはり完全に認めて実施していただかなければ困るという建前を従来から堅持をしておるものであります。  この点については、従来、政府並びに国会においてもよく御理解をいただきまして、四十五年以来は定着した制度としてきておったわけであります。それが今御指摘になりましたように、ここ数年、いろいろな事情もあることは私自身政府一員でありますから承知をしておりますけれども、それとこれとは別問題で、私の立場としては、やはり人勧制度というものはどうしても尊重していただかなければならぬという立場に立っております。  そういう意味から、一昨年の凍結あるいは昨年の抑制ということは、大変遺憾千万であるというふうに考えておるのでありますが、ただ一言余計なことかもしれませんが申し上げておきますと、我々の方の勧告内閣のみならず国会に対しても実は行っておるわけでありまして、その点は、私は国会先生方にも繰り返しよろしくその点の御配慮をお願いをいたしたいということを申し述べておったのもそのつもりでございます。したがって、これは政府だけの責任と言うわけにはまいらない問題であって、全体としてこういうふうになったこと自体が遺憾であるという意見を私は持っておるということも申し上げさせていただきたいと思います。  それから、人件費というのは、これはお説のように義務費でございます。義務費でございますから、やはりこれは何としても優先的に予算上の配分においても措置をしていただかなければならぬということでございますが、それは確定した人件費でございまして、人勧をどのように受け入れるかどうかということによって決まった経費というものは、これは既定経費として義務費になるわけのものであろうというふうに考えておりまして、要は、やはり人勧というものの重要性から見て、これをどのように取り扱っていただくか。我々の立場としては、完全実施ということをぜひともお願いをいたしたいという基本線を堅持してまいっておる次第でございます。
  5. 浦井洋

    浦井委員 総理にお伺いをしたいのですが、今も藤井総裁が真情を吐露されたわけでありますけれども、人勧制度というのは公務員労働基本権制約をする代償措置である、だから、その勧告無視されるということは、公務員労働者労働基本権を侵害するものである、これは当たり前のことであります。それと、これも藤井総裁が言われたように、政府財政事情実施できないと言っておるわけでありますけれども、公務員給与義務費であり、他の投資的経費に優先する、これもはっきりしておる。だから私は、総理にひとつこうしなさいということを申し上げたいのでありますが、まずこの投資的経費一つである軍事費を削って、そして公務員給与に回したらどうですか、このことを私はお尋ねをしたいと思う。  例えば、いろいろなデータがありますけれども、今国民世論というのは、一つ申し上げますと、この総選挙の前に読売新聞が世論調査を行いました。軍事費は削ってよろしいということに賛成をされておられる方が国民の中で五一・五%以上おられる。この国会、当委員会でも議論をされましたように、今やまさに軍事費というのはGNP比一%を超えようとしておる、巨額の軍事費になってきておる。だから政府の方は、そういう一%を超えようとしておるのを一%以内に見せようと四苦八苦しておる、こういうような状態であります。だから、思い切ってここで軍事費、あるいはさらにそれにつけ加えるならば大企業への過剰な補助金、これを削ったらどうですか。そして、総理は今度は五十九年度の人勧を完全に実施する、これはぜひしなければならぬ。総理の前向きの決意をひとつお伺いをしたいと思う。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 人事院勧告に関する取り扱いにつきまして、藤井総裁があのように言明なさることは、総裁としての立場として理解できるところであります。  政府といたしましても、最大限尊重してその趣旨に沿うように努力したいところでございましたが、いろいろ財政上その他諸般の事由がございまして、その趣旨に必ずしも合致できなかったことを甚だ遺憾に存ずる次第であります。五十九年度におきましても最大限努力して、その御趣旨に沿うようにこれからも努めてまいるつもりでございます。  防衛費を削れというお話でございましたが、防衛費も非常に重要な経費でございまして、御趣旨には沿いかねます。
  7. 浦井洋

    浦井委員 総理の最大限尊重するということは、今までの実績からいいますと、これは実際は凍結であり値切りであるということであります。だから、本当に尊重するということであれば、少なくとも五十九年度は完全に実施するしかないというふうに私は確信をいたします。また、防衛費も重要な経費である、これはおかしいですね。やはり投資的経費であることは間違いないわけですし、それに優先をして公務員給与は支払われなければならぬ、人事院総裁もそう言われておるわけでありますけれども、私はこれはぜひやっていただきたいと思います。  もう一つ申し上げておきますと、これは今度は朝日新聞でありますけれども、昨年の五月の十六日に、アトランチック国際問題研究所調査という国際的な調査の結果が出ております。ここで「軍事費を削減し、この財源を社会福祉衛生、教育に使う」という政策賛成の方は幾らあるか、国際的に調査をいたしますと、日本でも五八%の方がこれに賛成をしておられるわけです。まさにこの方向というのはナショナルコンセンサスであります。だから総理は、国民の支持を受けておるのだからということで遠慮なしに防衛費軍事費を削って、そして少なくとも公務員給与の方に回して、そして五十九年度の人勧は完全に実施をする、このことをもう一度私要望しますから、もう一度お答えいただきたい。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛費は、日本独立を保障し、国民の生命、財産、文化を守る大事な経費でもございます。憲法の存立を保障する基礎的な行為でもあり、かつ平和維持のためのまた非常に大きなファクターでもございます。そういう意味におきまして防衛費をやはり軽視するわけにはまいりません。社会保障費防衛費との割合を見ますと、今社会保障費三に対して防衛費は一の割合でございまして、それほど高額であるとは国際的には申されないのであります。
  9. 浦井洋

    浦井委員 これは総理、やはり考え方の基本にかかわる問題でありまして、私は重ねて要求をしておきたいと思うのです。  そこで、もう一度人事院総裁にお伺いしたいのですけれども、五十七年の五月三十一日、臨調第二部会報告一つが出ておる。「公務員給与在り方等について」、その一部を読み上げますと、「公務員給与は、人事院勧告等を受けた政府及び国会が、国政全般との関連において、財政事情を考慮し、責任をもって決定すべきものである。」このように書かれておる。この書き方は、これはもう明らかに、その前に人勧尊重ということを言っておりますけれども、そういう建前はとっておるけれども、人勧よりも財政事情を優先させるという、これは言葉をかえて言えば人勧軽視の勧めではないかと私は思うのであります。  そして、さらにもう一つ言うならば、昭和五十八年、去年の一月十四日にやはり臨調第二部会報告公務員制在り方について」というところで、これは有名な文書でありますけれども、「なお仮に今後、人事院勧告制度が継続的に機能し得ないこととなれば、公務員給与在り方についての抜本的な検討にまで及ばざるを得ない。その際には、権威ある審議機関を設置し、一定期間内に答申を求める等の措置を考えなければならない。」これはまさに人勧解体論であり、人事院不要論であります。この二つの事項について、ひとつ人事院総裁の御意見を承りたいのであります。  これは蛇足でありますけれども、総裁は既に辞意を表明され、それが内閣によって受理をされて、きょうにも国会同意が、衆議院の同意が少なくとも得られるかもしれないというようなところでありまして、微妙な段階であります。だから、人事院総裁国会での答弁というのはあるいはこれが最後になるかもわかりません。長年苦労されてきたわけでありますけれども、そういう時期であるということで、今後の人事院あり方について考えておられることをひとつ腹蔵なく率直にお話しを願いたいと思うのであります。
  10. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 二点の御質問でございますのでお答えをいたします。  第一点は臨調の五十七年の基本答申の問題、そこで触れらましたのは公務員給与に関する問題点でございまして、その中の第三点、一、二、三、四と四つ原則がございますことは御承知のとおりでありますが、第三点について、勧告を取り扱う、これを決定する原則というものに触れておるわけであります。この四つ原則は、それ自体としてはしかるべき方向を示したものであるとして、私自身はこれは評価をいたしております。すなわち、第一の人勧制度尊重、しかも人勧に当たってはやはり官民比較原則とするということ、第三は、今触れられた点、第四は総人件費の問題ということで、それ自体は、目途としておりますところ、あるいは指示しておりますところは正しい方向ではないかというふうに評価はいたしております。ただ、それを具体的にどのように適用していくかという問題はおのずから別問題であります。  したがいまして、私は、第三の点につきましても、これは、人事院というものはなるほど独立機関中立機関ではございますけれども、これはやはり厳として政府機関一員でございますから、それ自体として法律の提案権というものは持っておりません、これはすべて内閣お願いをいたして、内閣から必要があれば法案を御提案願うという格好になるわけであります、その場合に、法案を提出される場合に、人勧制度趣旨にのっとって人事院勧告尊重する、完全実施の線でやっていただくことが当然であるということが我々の主張であります。そういう建前になっておりますので、これは、どういうふうに取り扱うかは、時の情勢に従って内閣国会がいろいろな状況を勘案して決定をなさるということ自体についてはとかくのことを私として申し上げるつもりはございません。以上でございます。  第二点でございますが、この点につきましては、実は基本原則は今申し上げましたように決まっております。それに対して、最終答申を出すという段階関係部会がいろいろ論議をされました結果、最近の情勢で、いろいろ人勧取り扱いというものが抑制あるいは凍結というような方法が出てまいっておりましたので、それらの情勢を踏まえて、もしもこれが長年にわたって継続するというようなことであれば、すなわち人勧機能しないということが長く続くということがあればこれは大変な問題だから、その時点でいろいろ考えなければならぬじゃないかというようなことでそういう議論があったのではないかと私は推測しております。しかしこれは私は直接に聞いておりませんからわかりません。ただ、いろいろ論議があった末、最終答申では、これはやはりかえって物議を醸すというようなことで削除されました。したがってもとに戻っているわけです。四原則に戻っているわけでございますので、私は、それがゆえに、人事院制度否定し、人勧制度否定するというような趣旨とは理解をいたしておりません。
  11. 浦井洋

    浦井委員 最終答申人事院解体部分が省かれた、だからそれはないものだというふうに人事院総裁は言われたわけでありますけれども、しかし、その前の段階の第二部会報告の中にははっきりと書かれておる。このことは消すことのできない事実であります。  そこで、総理にお伺いをしたいのでありますけれども、この私が読みました臨調第二部会報告二つ、この報告を取りまとめたのが第二部会第一分科会主査を務めておられた内海倫氏そのものであります。しかもその内海倫氏を、今度は藤井氏の後任ということで、今内閣から国会同意を求める案件が来ておる、こういう経緯であります。私ども共産党は、人事院制度についてはこれまで一定批判を持っておりましたけれども、しかし、最終答申には省かれておっても、この第二部会報告というのはもう余りにもひどい、まさに人事院変質解体を図るものである、このように私は思うわけでありますが、人事院形骸化が問題になっておる今の時点で、なぜわざわざ、こういう報告を取りまとめた人を人事院総裁に任命をされようとしておるのか、私は総理の真意と意図をお聞きしたいと思う。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内海君は、臨時行政調査会の第二部会給与関係主査でおやりになったことは事実でありますが、主査というものはその関係専門委員意見を取りまとめる役目でございまして、自分意見というものは余り出さないものであります。皆さんの意見を、多数の赴くところに従って筆をとったということがその結果に出てきております。しかし彼自体は、人事院勧告尊重人事院制度尊重という点については非常にかたい見識を持っておりました。そして、最終的に臨時行政調査会答申として我々のところへ報告が来る場合には、その部分は変更されまして今あるような形になっておるわけでございます。したがって、そのような杞憂はないと確信しておる次第でございます。
  13. 浦井洋

    浦井委員 総理はしきりに否定をされるわけでありますけれども、主査である、主査は余り自分意見は述べないものだというふうに言われますけれども、やはり権限を持っておるわけで、これはぐあいが悪いということであれば、この報告書を取りまとめられる際にやはりそこは勇敢に削除をするというようなことがあってしかるべきだと思う。やはりそこには人事院軽視するという、今のあり方について異常なほどの批判を持っておられるということを私はまた聞いておるわけであります。  だから、それをまとめて言いますと、総理人勧尊重する尊重すると言われながら、無視をしたり軽視をしたりしてきておられる。そして、臨調の中では内海さんがこれまた、総理は今は否定をされましたけれども、実際には総理に呼応して、人事院はその機能を果たさないから解体しろというような報告をつくり上げられる。お二人で共同して人事院を崩壊させようとしておるのではないか、このように私は危惧をするわけであります。その内海さんが今度は人事院総裁として送り込まれてくる。今度は文字どおり、人事院の中で内部から変質解体を図ろう、このように思われても仕方がないではありませんか。  総理は、今内海君と言われました。非常にお親しいということを聞いておるわけでありますが、これは参考のために聞いておきたいのですが、どういう間柄でございますか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、内務省に一緒に入りまして、それから、二年現役の主計科士官として海軍で一緒でおりました。その後、彼は警察におりましたが、交通及び刑事関係をやっておりまして、労働関係にはタッチはしておらなかったのであります。その後、防衛庁の事務次官になり、国防会議事務局長をやって退官をした。その後は、彼は非常に文化性みやびやかなところがありまして、裏千家の淡交会の理事としてお茶の湯の普及、あるいは交通災害の防止、あるいは道路関係仕事、そういうような仕事をして非常に円熟してきた、なかなか見識のある人であると思っております。
  15. 浦井洋

    浦井委員 非常にごじっこんのように思えるわけであります。  そこでまた一つ問題が出てくる。  総理は古い言葉がお好きだそうでありますけれども、中国のことわざに「瓜田にくつを入れず、李下に冠を正さず」こういう言葉がある。やはりこういう微妙な時期に、こういうような経緯を持っておる人物をあえて人事院総裁に持ってくるというのは、側近人事だ、このように言われても仕方がないではありませんか。しかもその人物というのは、総理は違うと言われておりますけれども、私はやはり、本来中立、公平であるべき人事院総裁にはふさわしくない人物だというふうに思っております。だから、こういうことは絶対にやめるべきだ。私は、もう一度総理にこの点についての御意見をお伺いしておきたいと思う。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 瓜田に云々ということを言われましたが、「野に遺賢なからしむ」というのも政治の要請であります。私はじっと見ておりまして、ともかく非常に折り目、筋目を正しくする人物であります。臨時行政調査会の参与としての言動等を見ましても、自分公務員であったせいもありましょう、公務員立場の擁護、またいろいろな施策が公務員全体にどういう反応を及ぼすか、その忠誠度や勤務に対してどういう反応を及ぼすか、そういう点を非常に強調して、公務員の士気を落としてはいけないということを終始言っておったのを見まして、私は適任である、そう思ったわけです。
  17. 浦井洋

    浦井委員 「野に遺賢なからしむ」、こういう、もうはっきり言いまして公務員制度の反動的な再編をたくらむ人物でありますから、これは野におってもらったらいいわけですよ。だから私は、再度こういう人事はやめるべきだということを強く総理に要求をしておいて、次に、健康保険の問題に移りたいと思います。  総理は、この間、総選挙の最中、具体的には十二月七日、私の選挙区である神戸にいらっしゃいました。そしてこのように演説をされました。「問題の医療保険の問題は厚生省の案にこだわらず、この選挙で皆さんの声をよく聞いて、みんなの納得する合理的な案を幅広く検討しようということになりました。」こう言われた。そこで、それでは選挙後、どういう形でみんなの声を聞いて、幅広く検討されましたか。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 選挙が終わりまして、当選された議員あるいは落選された方々等が皆意見を言いました。特に当選された議員は、今回の予算編成に当たりましては、それぞれの部会あるいは政調会等におきまして、みんな自分たちの主張あるいは選挙における反応、国民世論の動向等を述べ合って、随分もみにもんで、そして今日提出いたしました形に落ちついたのでございます。  つまり国民世論やらその他全般を考え、また国家財政の前途等も考え、またこの制度の世代間の不公平を除こう、安定的に維持して若い人たちのときにも医療保険に心配なからしめておこう、そういう諸般の考慮をして今のようなところに落ちついた次第なのであります。
  19. 浦井洋

    浦井委員 党内外の意見を広く聞いてもみにもんで今のような案に落ちついた、こういうふうに言われるわけでありますけれども、私はやはりそういうような格好でみんなが納得するような合理的な案になっておらぬと思うわけであります。  簡単に申し上げますと、被保険者本人の八割給付を一時九割給付にする。しかし、六十一年には八割給付にするということでありますから、これは表面ごまかしておるかもわからぬですけれども、基本的に変わっておらぬわけです。それから、確かに入院時の給食材料費の給付外であるとかビタミン剤等の給付除外、これはなくなりました。しかし、その後つけ加わったものがあって、例えばこれは後で議論をしますけれども、特別食をつくらしてそれを差額徴収する方向であるとか、審査をより厳しくするというような方向であるとか、要するに公的な社会保険の給付範囲を狭めるという点では全く変わらぬと思うわけであります。  現に金目の計算でいきますと、五十九年度予算概算要求の段階では国庫支出減が六千二百八十七億円であったのが、政府案では六千二百七十六億円で、支出減が、たったの十一億円減っているだけであります。何も変わっておらぬ。これは内閣の長としてまさに選挙公約違反ではございませんか。総理、どう思われます。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 片一方におきましては財政再建あるいは臨時行政調査会答申尊重、行政改革の推進ということも党では言っておるわけでございまして、そちらの方の考えもまた考慮に入れなければなりません。また、乱診乱療によって医療費のむだ遣いが必ずしもないとは言えないと強く指摘されているところもございました。そして、特に大事な点は、世代間の不公平を除いてこの制度を安定的に長期にわたって維持していかなければならぬという至上命令であります。  そういう諸般の点を政治家として判断をして、そして随分もみにもんで今のような形に落ちついたということでありまして、厚生大臣から具体的には御答弁申し上げます。
  21. 浦井洋

    浦井委員 私は政治家としての判断ということであればやはり総理見識を疑わざるを得ないわけであります。  厚生大臣にそれではお尋ねいたしますが、公的諮問機関の審議状況を調べてみますと、こういうことになっていますね。社会保険審議会には一月二十五日に諮問をされて、そして三回の審議を経て、きょう、二月の二十二日答申が出される。一方の社会保障制度審議会は同じ一月の二十五日に諮問をされて、六回審議をされて、あす、二月の二十三日答申が出される。これは後で申し上げますけれども、これだけの大改正、私は大改悪だと言いたいのですけれども、制度改正ですよね、これを一カ月足らずの間で三回と六回、合計九回でありますけれども、これだけの審議でやってしまう。しかも、きょうあす答申が出る。まさに急げ急げであります。こういうやり方は果たして国民の納得が得られると思われますか。  それから、きょうも朝のニュースで言っておりましたけれども、きょう答申の出る予定の社会保険審議会でも、そういう報道機関、いろんな報道を総合してみますと、本人の給付率の改定については意見が分かれておる。被保険者側の委員と医療機関の公益委員とは反対しておる。それから、療養費支給制度については、これまた医療の側の公益委員は反対しておる。それから、退職者医療制度については、八割給付や九割給付をつけるのであれば反対だということで、被保険者の代表も反対しておる。こういうふうに意見が分かれておる。だからどうも両論併記にならざるを得ないだろう、こういう報道がけさもあります。  だから私は厚生大臣にお尋ねするのですが、こういうような分かれた意見、もう真っ向から反対の意見があります。こういう審議会の意見を、これから案を作成して国会に提出するそうでありますけれども、本当に尊重するのかどうか。尊重するというのならば、これはまともに尊重するということであればもう一遍案をつくり変えなければならぬ。しかし、逆に尊重しないということであれば、これはもう明らかに審議会無視。そして、何か形式だけ審議会にかけて、セレモニーをやって答申を得るというようなことになってしまうと私は思うわけなんです。ひとつこの辺の問題について厚生大臣の御意見を承っておきたい。
  22. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今御指摘の二つの審議会、これは昨年の夏の概算要求のときから数度にわたって懇談会の形で内容を審議し、いろいろ御審議を懇談会の形で願っております。これは予算の伴わない内容のものではこちらが責任を持って諮問もできないわけであって、正式に諮問をするのは、これは予算編成ができ上がって、われわれが自信を持てる内容になって諮問をするというのが今日までのいろいろの省においても慣例になっております。  また、今の答申尊重するかというお話でありますが、もちろん諮問をいたすのでありますからその答申尊重させていただくのは当然でありますが、その内容等については、これは私はまだ答申を受け取っておりませんので、それまで差し控えさせていただきたいと思います。
  23. 浦井洋

    浦井委員 この間もこの問題でこの予算委員会が一時中断をしたそうでありますけれども、私はやはりこういう形式自身が、慣行になっておること自身がおかしいと思うわけであります。このことについて余り深くはもう触れませんけれども、審議会の意見を本当に尊重するならやはりつくり変えなければいかぬですよ。懇談会はその前からずっとやってきておる、実質的にはもう審議してもらっておるのだ、予算編成が済んでから正式に決めるのだというようなやり方は私はだめだと思う。だから、そういう点でこれはもう審議会の意見を十分に尊重して、思い切って案のつくり変えを要求しておきたいと思います。  そこで、少し健康保険の今度の改正案について各論的に聞きますけれども、一つは、やはり今まで政府は高度技術医療はできるだけ保険に取り入れていって、だれでも保険で十分に医療が受けられるというふうな方向で進んでおられる。それから、差額ベッド、私立の大学病院なんかは非常にこれがひどいですけれども、こういう差額ベッドはなくしていくというような方向で指導をしてこられた、この辺は大体厚生大臣わかりますね。  それが今度は、今度の改悪案では百八十度大転換しようとしておる。現在の歯科診療のように、良質の医療を受けようとすると多額の金が必要だという格好になってきておるわけなんです。そうすると、その人の支払い能力によって受ける医療の内容が異なってくる。これは大変なことなんです。医学、医療の近代的な原則というのは、大臣も御承知だと思いますけれども、いつでもどこでもだれでもよい医療が受けられるということが大原則でなければならぬが、これが今度の社会保険制度の改悪によってこういう大原則までも破壊されてしまう、このように私は言わざるを得ないわけであります。  それで、具体的に例えばこういうことがある。今度は大学附属病院などを保険医療機関から取り除いて新しく特定承認医療機関をつくる、こういうことになっておるわけです。そうなりますと、直観的に考えるのは、保険医療機関でないということなのです。将来そこでは社会保険を使えないかもしらぬ。そういう意味では今の健保法の法体系というのは現物給付があるいは一方では療養費払いかということになっておると、これは総理もよく聞いておいていただきたいのですけれども、大学附属病院では下手をすると、将来は大学病院で受診したら全部そのときお金を払って後で払い戻してもらうというような療養費払いになるかもしれぬというような、こういう危惧をたくさんの人が持っておられるわけなのです。これについてはどうですか。一つ。  それから、もう時間があれですから、もう一つ申し上げておきますと、特定のサービスであるとか治療材料というのは、これは一般の保険医療機関の問題でありますけれども、当面、歯科材料であるとかあるいは部屋代を考えておるそうでありますけれども、これも明らかに今横行しておる差額徴収、これを公認することになる。しかも伝えられておる報道によると、将来は給食であるとかあるいは看護であるとか、こういうことも差額徴収、特定のサービスあるいは治療材料に含めるかもわからぬというようなことを言われておる。こうなると、しまいには患者の方から医者を指定をして、わしはこの病院でこの医者にかかりたいのだ、お金を出すから、というようなことになりかねぬわけであります。この二点についてひとつ厚生大臣から疑問を解いていただきたいと思います。
  24. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今回の改正しようとしておる療養費制度は、むしろ先生の御心配とは反対で、新しい高度医療技術がどんどん出てまいりますし、それから患者もいろいろ多様化したニーズを持つようになります。その患者の意思をできるだけ尊重して、やはり患者によっては自分で自己負担をしても高度の医療技術を受けたい、あるいはベッドは一人ベッドに入りたいという人があるわけですから、そういうものはできるだけ尊重しなければなりませんし、今までも行われてきたわけでありますけれども、今度はそういう方々でも保険の対象となる部分は全部保険の対象となるようにして、保険の対象にならないものを今度は制度的に不明朗な形でなくすっきりとできるように患者の便宜を図っていくということで、改悪ということでなくて私はお褒めをいただいてよろしいものだと思いますし、また先生御心配のように、この制度が行われることによってこれからどんどん新しく出てくる新医療技術、そういうものが公的保険制度に入っていかない、そういう心配はありません。これは公的医療範囲が狭められるというようなお疑いはお持ちいただかなくて結構でありまして、私どもはできるだけやはり保険対象にこれからなっていく、そういう新しい医療もどんどん保険の対象で受けられる方向で進めてまいりますので、御安心を願って御賛成をちょうだいしたいと思います。
  25. 浦井洋

    浦井委員 差額徴収の話が抜けてます。いやもういいです。またこれは細かいのは社会労働委員会で審議をしますけれども。  総理に一言申し上げたいのですけれども、私が大臣の前に発言した中に、給食も特定サービスに入ってしまうというようなことになると、例えばこういうことが起こる。私は医者でありますけれども、若い骨折の患者さんなんかが入ってきます。そうすると、これはカロリーをたくさんとらなければいかぬから、病院のどんぶり御飯は嫌だからもう毎日のようにビフテキ食わせあるいはエビのケチャップ煮食わせというような格好になる。で、早う治りたい。そうすると、病院の方は選択制ですから、そういう需要にこたえてメニューでもつくって、あなたはお金を二千円払うからこれでいきますかというような、病院かレストランかわからぬような状態が起こってくるわけなんです。医療というのはやはり同じようにまくらを並べておられる人を平等に扱わなければいかぬですよ。それがそういう平等性が損なわれるし、逆に言えば治療効果が落ちてくる、これは大変な改悪の芽をはらんでおる。厚生大臣は、御心配は無用でありまして逆によいんでありますと言う、私は逆の逆は真なりと言いたいわけでありまして、こういう点をぜひ十分に心得ていただいて厚生大臣を指導していただきたいと思うわけであります。  それから次の問題は、きょう出される社会保険審議会の答申の中にもあるそうでありますけれども、五人未満の事業所の健保適用をどうするかという問題、これは年金の適用を横目ににらみながら拡大を図っていくというような答申が出るようでありますけれども、これをどうするのか、今度の改正案に盛り込むのかどうか。しかし、盛り込むとすれば、やはり対象になるのは零細企業が大部分でありますから、だから負担を十分に考慮をしてあげる、決して零細企業に強権的にならないようにするというような配慮が必要だと思うのでありますが、そういう意図が、前の方の意図ですね、あるのか、あるいはそういう配慮はどうなのか、この点。
  26. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 これはまだ決定しておるものではありませんけれども、御指摘のように、やはり五人未満の零細商工業者の皆さんもこれは被用者保険であるべきであるという原則方向に向かって、適用拡大に向かって進めてまいりたいと思います。
  27. 浦井洋

    浦井委員 健康保険の最後の問題で、これは一番大きな問題でありますが、まずその前に厚生大臣にお尋ねしたいのですが、九割給付がもし行われた場合に、国民がそれによって負担増になる金額というのをお知らせ願いたい。これは満年度でどれくらいになるかという、それから被保険者一人当たり年間どれくらいの負担増になるかという……。
  28. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答え申し上げます。  今度の被用者保険の本人給付を九割にすることによる負担増だけを取り出してみますと、全体として約二千六百億円の患者負担増になります。ただし、それによって保険料がマイナス四千二百億円に相なります。  それから、被用者保険の被保険者一人当たりにこれを換算いたしますと、患者負担は満年度で七千五百円に相当いたします。
  29. 浦井洋

    浦井委員 今保険局長からお話がありました。二千六百億円の国民の負担増になる、一世帯当たりでほぼ年間七千五百円の負担増になる、こういうことであります。これは大変なことなんです。金目の計算をすればそういうふうに考えられても、私は実際にはもっとひどい負担になると思う。総理もよく聞いておっていただきたいのですけれども、戦争中、具体的には昭和十八年に東条内閣のときに、かつて二割相当の一部負担が課せられたことがあったわけなんです。しかし、給付率をこういうふうに減らして一部負担をつけて原則十割給付を取り崩すというのは、私は健康保険制度始まって以来の大改悪だ、このように言わざるを得ないわけであります。  例えば、一つ簡単なメルクマールを申し上げてみますと、政管健保の大体最近の平均標準報酬というのは十八万九千二百二十二円、これをわかりやすいように平均して二十万円といたします。そうすると、この一人の勤労者が胃潰瘍程度の、かなり重病であります、これで手術をするために入院するというようなことになりますと、政管健保の場合中小企業でありますから、傷病手当金は六割の十二万円、そして今度は高額療養費制度が適用になりますから、自己負担分五万四千円を十二万円から差し引くと残りは六万六千円ということなんです。多分この二十万円ぐらいの標準報酬の方は家族を抱えておられる。そうすると生活保護以下の生活に転落をする。ここに被保険者本人の給付を十割にしておくという重大な意味があるわけなんです。家族の負担をふやすというのと本人の負担をふやすというのとは質的に違う、このことが総理はよくわかっておられないのではないか。だからこそ、何のかんのとありながらも、健康保険制度発足以来ずっと十割給付というのは守られてきたわけなんです。このことを総理は認識をされておられるのか、私はこのことをちょっとお尋ねをしておきたいと思う。非常に大変なことなんです。そのおうちの主人の病気だけでなしに、おうち全体の生活を破壊するかもしらぬ、こういうような改悪であるわけです。これはぜひやめてもらわなければいかぬと思いますが、どうですか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、若干の負担増になることはよく承知しております。そういう点につきましては心も痛めておるところであります。  数字にわたることでございますから、厚生大臣から御答弁申し上げます。
  31. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今御指摘のような御心配、それぞれございますけれども、保現行の制度の中でも、農家の実際働いておられる方、また先ほど御指摘のあった零細な商工業でその中心になって働いておられる方、そういう方は三割負担になっておるわけであります。そういうことから、これはもちろん一割でも負担をお願いするのはこちらも心苦しい、それは全額の方がいいに決まっておりますけれども、この委員会の中でも再三にわたって議論がありましたように、これは国民負担という点になりますと、今のような十割給付をそのまま続けて保険料率を将来上げるということになれば、やはりこれは国民の負担がふえることには間違いないので、今回の制度改革は、将来の公的年金制度、このためには相当の国民の負担も覚悟しなければならないので、せめて医療保険の分はこれから保険料率は上げないように、できるだけ現行にとどめておきたい、そういう中で負担と給付の両面にわたるところの公平化を図り、また、医療の適正化、これはもう国民の皆さんから私どもが強く求められておるところでありますけれども、そういう今の医療費の問題に対する期待にこたえてこの適正化を推進し、また何よりも大事なことは、国民の皆さん方が健康を守るということに対して、やはり一割負担することによって、これは不注意で病気をして病院に行ったりしたるお金がかかるから、できるだけ健康管理をして自分の健康を守っていくということに対する強い関心を持つとか、そういう総合的に考えていただければ、一割負担をお願いすることは、これは大変恐縮でありますが、そのことが広い意味国民全体の公平化、そして二十一世紀の我々の健康を守る医療保険制度が揺るぎないものになるということで御了解をちょうだいいたしたいと思います。
  32. 浦井洋

    浦井委員 厚生大臣、大分官僚に教えてもらった言葉が板についてきたようでありますけれども、これは根本的に間違っておるわけなんですよ。高齢化社会を迎えて医療技術も技術革新が起こっておる。金が要るのは当たり前なんですよ。もちろん医療の中にむだがないとは私も言いませんよ。しかし、その本当のむだを摘出する努力をせんといて、さあ大変な事態になるぞ、大変な事態になるぞとオオカミ少年みたいに言って、それであなたは、将来に悔いを残すような、しもうたと思うような、そういう制度改悪をやろうとしておられる。国保は三割自己負担してもらっているから、これが悪いわけなんですよ。これを早うに十割に上げる努力をしていったらいいわけなんです、一つずつ反論はいたしませんけれども。だから、もう一遍虚心に返ってよく医療保険制度を勉強しておってもらいたい、これから社会労働委員会も始まりますから。  それで総理は、一割自己負担、非常に心を痛めておる。心を痛めておられるなら私は政治家としてやめておくべきだと思う、心を痛めておると言われるなら。やはり社会保障や社会福祉の面で健康保険のこういうような改悪、あるいは今度は六十一年度からの年金の抜本改革なるものが出てまいりますけれども、こういうようなパイを同じようにして、配分の原則も変えずに負担と給付のバランスをとるんだということになれば、負担は重くなるし給付は下がるのは決まっておるわけなんです。そういう発想ではなしに、私は、もう一週社会保障や社会福祉について総理はよく考えていただいて、具体的に一つ問題を提起しますから。私は、健保の改悪やら年金の改悪をやらぬでも日本の国の総理としてやるべきことは、国民に喜ばれてやるべきことが何ぼでもあるんだ、その一つは何かという問題に移りたいと思います。  それは、今も話が出ましたように高齢化社会を迎えてのお年寄りの対策であります。これは総理も御存じでありましょうけれども、老人福祉法の基本理念の項で「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛され、かつ、健全で安らかな生活を保障されるものとする。」このように言われておる。総理は、こういう老人福祉法の基本理念を踏まえて、高齢化社会を迎えてお年寄りを一体どう遇しようとされておるのか、基本的なところをひとつお伺いしておきたいと思う。
  33. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 高齢化社会を迎えまして、いわゆる六十五歳以上の御老人のいろいろな問題についてこれからも準備をしていかなければならぬと思っております。その中には、やはり就職という生きがいの問題もございますし、あるいは年金という問題もございますし、あるいは医療という問題もございましょう。そういうさまざまな問題について、大体人生八十年になってきたようですから、人生五十年と比べると非常に大きな社会変革が訪れるわけで、そういうものに対する設計変更を徐々に準備していかなければならぬ、そう思っております。
  34. 浦井洋

    浦井委員 やはりそうですね。老人福祉法の基本理念の「敬愛され、かつ、保健全で安らかな生活を保障されるものとする。」という辺も、これももちろんそうですね。
  35. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう理念に基づいて、今言ったような具体的問題についていろいろ検討していく必要があると思います。
  36. 浦井洋

    浦井委員 設計変更の方に重点を移しておられるような御意見で、私は完全には同意できかねるわけであります。  厚生大臣にお尋ねします。  これは当たり前の話でありますが、病院というのは、病気になると入院をする、それで病気が治ると退院するというところですよね。ところが、お年寄りが死なれるまで預かりますという病院があるのを御存じですか。ホスピスではないのですよ。しかも無料で預かるという病院があるわけなんですよ。これは一部の人は終末病院と言っておるわけなんです。これはまだ一般的に広がっておりませんけれども、そういうものの実態を御存じですか。
  37. 水田努

    ○水田政府委員 老人保健法をつくりまして、特に御老人の方、急性、亜急性を過ぎた安定期のいわゆる慢性疾患の患者の方の医療と介護の特性に見合った十分な医療を行うために、老人保健法は老人特例許可病院という制度をつくり、そういう形で十分必要な医療を確保するように努めているところでございますが、ただいま先生の御指摘のような、いわゆる終末病院という名の病院は承知いたしておりません。
  38. 浦井洋

    浦井委員 それがあるんですよね。私、ここ二カ月ほどの間にいろいろ調査に歩いてまいりました。その結果わかった実態のごく一端をちょっと申し上げてみますと、総理もよく聞いておっていただきたいと思うのですが、そういう一部の人たちが称しておる終末病院というところでは、できるだけ人手を減らしておるわけです。だから、医者の回診も余りないし、点滴も余りしない。おむつを一日に三回か四回かえる、これだけだ。そうすると、これはもう御承知のように、おむつをかえる回数が減ると必ず床ずれができて、それが潰瘍になって感染をして死亡する、こういうことになる。今言われておるぼけ老人、痴呆老人については、抑制帯と称しておるのですが、ここに太いゴムバンドをはめまして、そしてお年寄りがベッドから離れられぬようにしておる。こういう状態も私は見てまいりました。看護婦さんを呼ぶナースコールも切っておく。ごちゃごちゃ呼ばれたらかなわぬというようなことで、こういう扱いをしておる病院がやはりあるわけなんです。  これは一月の二十三日の朝日新聞に出ておりますけれども、その病院の専任の老人集めの職員はこう言っておるわけです。「弱っているといっても、すぐ死なれては困る。ほどよく生き延びてくれそうな老人を見つけるのが難しい」、こういう言い方をしておるわけであります。だから、私直接聞いたのでありますけれども、お年寄りの中でもこういう病院がわかっておりますから、ここへ入れられたらかなわぬというふうに嫌がってはおるのですけれども、しかし、といって家庭で寝たきりでおるだけのスペースもないし、また、社会にそのお年寄りにもう一遍元気になってもらうほどのそういう介護力もないということで、泣く泣くその病院に行かれる。あの病院に入ったら生きて退院はできぬ、今まで何のために生きてきたのかわからぬ、できればぽっくり病で死にたい、こういうふうに言われておるのが今の終末病院の実態であります。  まさにこれはうば捨て山病院ですよね。だから、総理はこれから設計変更だけしていくのだと言われておりますけれども、こういう格好のものを生むような設計変更をされたのでは困ると思う。しかも今老人保健部長言いましたけれども、こういうところの病院が、老人保健法が実施されて以後、特に家族から、あの病院は最後までお年寄りを引き受けてくれる、お金もかからぬということで歓迎されて、結構需要があるわけであります。こういう状態が果たして総理、許されてよいのでありましょうか。長年社会に貢献されてきたお年寄りが敬愛されて安心して暮らしていけるようなそういう社会であればこんな現象は起こらぬと思う。ところがそういう状態が現にあるわけなんです。これはもう早速調べていただきたいと思う。総理、どうですか。
  39. 水田努

    ○水田政府委員 老人保健法をつくりました際に衆議院や参議院の附帯決議におきまして、老人の心身の特性に見合った医療費の体系や医療機関の整備というものを要請されまして、私どもは、できるだけ先生の御指摘にあるような形にならないように、家庭や地域社会に帰れるような形で診療報酬も設定し、またそういう体制のつくり方に我々は努力をいたしておるところでございまして、残念ながらそういう病院があるとするならば、やはり私どもがこの制度を創設してつくりました特例許可病院になるように積極的に指導をしてまいりたい、このように考えております。
  40. 浦井洋

    浦井委員 老人保健部長はいみじくも言われたわけなんで、私申し上げますけれども、老人保健法によって老人病院をつくって、そしてそれを特例許可病院と許可外病院にして、それで特例許可病院というのは老人医療をやるんだという建前の意図ではやられたわけであります。ところが、いまだにその下にある終末病院というのは残っておる。むしろますます一般の家庭人からお年寄りを預けるところとして歓迎されておる。  それで特例許可病院ではどうなっておるか。これは厚生大臣もよく聞いていただきたいと思うのですけれども、そこでは非常に大きな変化が起こってきておるわけなんです。  一つは、介護に点数がついてないわけなんです。特例許可病院をつくったときに特掲診療料というのをつくられた。介護人を雇ってその人にやらしなさいというふうになったのですけれども、介護に点数がついておらぬわけなんです。と同時に、今までそういう老人をたくさん集めて、何とかお年寄りの皆さん方の要望、家族の要望にこたえてきた病院に対して、診療報酬支払基金であるとかあるいは各県の国保連合会から猛烈な査定減点というのが起こってきた、そういう状態でありますから、これはもう時間がないから詳しく申し上げませんけれども、ここに私、ある病院の数字、これだけ申し上げます。  ある神戸の病院では、一昨年は査定率というのは二、三%であったけれども、去年一月から十一月までの査定率というのは五・八%、その病院の実額で言えば四千八百七十一万円が削られておる、こういう状態が起こってきておる。そうすると、特例許可病院のようなところ、そのクラスの老人病院ではお世話料がどんどん上がってくる。少し細かい話になりますけれども、例えばある病院では四万円から八万円に、三万五千円から六万円にというような格好でお世話料がどんどん上がってきておる。今、大体平均の勤労者のお年寄りに対して出せる金額というのは五万円が限度だと言われておる。五万円以上のお世話料を取られる病院はむしろ敬遠される。特例許可病院をつくったけれども、お年寄りに敬遠されて、私が先ほど申し上げたような終末病院にお年寄りを持った家族が集中をして、そこにお年寄りを預ける、こういう現象が起こってきておる。変な表現でありますけれども、そこではお年寄りが沈殿をして、そしてどんどん、ただいまこの瞬間にも亡くなっておられるかもわからぬ、こういう実態になっておるのだ。しかも総理、この原因は、歴代の自民党政府が家庭の介護力をなくすような、そういう方向で施策をとってきた、あるいはそういうお年寄りが安心して入れるような特養ホームという制度があります。こういう特養ホームをつくることが非常に少なかった。つくっても遠いところにつくっておる。  私、特養ホームが東京都かのどこにあるかということを地図で調べてみたのです。この赤いのが特養ホームの所在地であります。総理、これを見てみてもおわかりになりますように、東京都の区部、二十三区内には非常に少ない。千代田区や中央区や港区の辺は特養ホーム一つもない。ところが、少し三多摩の方に参りまして、八王子であるとかあるいは総理の日の出町ですか、そういうところへ行くとたくさんある。そうすると、お年寄りというのはその古いところに長年住んで離れたがらぬわけです。行ってしまうと家族も面会に来ない。まさにこれがうば捨て山になる。老人病院も、これは青い丸で書いてありますけれども、ほぼそういう傾向になっておるわけだ。  こういうようにお年寄りに対しては、国の施策が根本的には原因になって、悪い方に悪い方に回っていっておる。そしてお年寄りは結局家族からもあるいは自治体からも国からも遺棄をされて、そして先ほど読みましたように、朝日新聞に書いてありますように、それをもっけの幸いにしてそういうお年寄りをかき集めて、ずっと死なしてもらえるような病院が非常に繁栄をきわめておる、こういう現状であります。  もう時間が来たようでありますから私やめますけれども、こういう現状を早く改めなければだめではないかということを私は最後に厚生大臣と総理にお伺いをして、質問を終わりたいと思う。
  41. 倉成正

    倉成委員長 厚生大臣。簡潔に願います。
  42. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今いろいろ御指摘いただきましたが、私はまだ残念ながら、今浦井委員御指摘のような病院、自分の周囲にはありませんので承知しておりませんでしたが、これから勉強しようと思いますが、全体的な方向としてはやはり長期化し、あるいは慢性化している老人の方が快適に療養できるような病院をふやすように、また特老なんかも非常に今関心が強くなって、できるだけつくるように、またことしは予算が非常に厳しいときでありましたけれども、老人保健事業については二〇%をはるかにオーバーする思い切った、突出した予算をつけていただいたり、あるいは家庭で、やはり自分のうちで幸せに送れるのが一番いいのですから、ヘルパー事業なんかはどんどんどんどん増員をして、やはり老人の方々が健康で豊かに、また病気になっても幸せに快適な条件で暮らせるように政府が一生懸命努力しておる、そういうまたいい方向に進んでおるのもお認めいただいて、ただ部分的に悪いものだけ取り上げて御指摘を受ける、しかしそれも大事なことでありますから、これから私も勉強して、浦井委員の御指摘のような病院がないようにこれから努力をしてまいりたいと思います。
  43. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 厚生大臣が答弁したとおりです。
  44. 浦井洋

    浦井委員 終わります。
  45. 倉成正

    倉成委員長 これにて浦井君の質疑は終了いたしました。  次に、加藤万吉君。
  46. 加藤万吉

    加藤(万)委員 最初に、自治大臣に質問をしたいと思うのです。  五十九年度の国税三税に対する地方交付税の交付税額でありますが、三二%、八兆七千百四億であります。ところが、五十九年度の交付税総額、実際に都道府県、地方団体に交付される金額は、八兆五千二百二十七億円であります。これは実は交付税法始まって以来と私は思うのですが、国税三税の三二%に対して三一・三%であります。私も長いこと地方行政をやらしていただきましたが、いまだかつて三二%という国税三税に対する率を削減をしたことはありません。減額したことはございません。     〔委員長退席、三塚委員長代理着席〕  私は、本年度大変地方財政が豊かというならば、これは話が別でありますが、大臣御案内のように、一兆五千百億円の財源不足、いうところの法の六条三の二項に該当する状況下にあります。そこで、今度自治大臣と大蔵大臣とで覚書を結びまして、今年度から交付税に対する取り扱いが大変変わりました。これは、私は従来の制度の見直しというのか、あるいは従来の制度の根幹にかかわる問題というのか、極めて重要なことだろうと実は思うのです。結果として今言ったように三一・三%に交付税額が下がったわけです。  そこで、大臣にお聞きをしますが、一体交付税というのは、交付税額というのは地方の固有財源でございましょうか、これが第一点であります。もし固有財源であり、同時にまたその固有財源が国税三税の三二%を切るということを承知の上で覚書を結ばれたとしたならば、大変これは大臣として問題の起きる問題ではないかと私は思うのですが、この点についてまず自治大臣にお聞きをしたいと思います。
  47. 田川誠一

    ○田川国務大臣 最初の御質問の地方交付税は固有の地方財源であるかどうかということは、加藤さんもよく御承知のように、我々から見ますと地方の固有の一般財源である、使途を別に指定されたものではございませんで、明らかに固有の財源であるというふうに従来から思っておりますし、これまでも、たしか福田さんが大蔵大臣のときであったかと思いますけれども、このようなことを国会で明言をしておられるわけでございます。  今回の三二%の額が、正確に計算をしますと額が減ったということでございますけれども、私どもは、この三二%というものが基本的にこれが三一%になったとか三〇%になったとかというふうに考えているのではございませんで、たまたま借入金の利子の負担というものがあって計算上若干額が減ったわけでございまして、総額が減ったということは加藤さん御指摘のとおりでございます。しかし、五十九年度におきましては、交付税特別会計における借入金の元金償還の繰り延べや特例加算による増額、こうしたもので交付税の総額の確保を図っておりますので地方財政の運営には支障がないもの、このように考えておるわけでございます。
  48. 加藤万吉

    加藤(万)委員 去年も利子負担はあったのですよ。今年度も国の方の利子負担は国債への振りかえですよね。公債へ振りかえですよ。一般財源から支出していませんよね。今年度、大臣、大蔵大臣との覚書の中で、今言ったような地方交付税に対する取り扱いの変化、それによって借入金の利子負担は地方で持ちなさい、しかも交付税から差し引きます、こういうことになったわけですよ。  大臣、今までこれは交付税特会の借り入れだったのですね。交付税特会の借り入れですから二分の一ずつの利子負担はしましたけれども、そのうちの借入財源ですからさらに二分の一、四分の一ですよ、地方の負担額は、実際は。それで、しかも交付税特会の借り入れでありますから、交付税額には響かなかったわけです。大臣が今度その覚書を結ばれたことによって、実は三二%という、まあ交付税法上金科玉条ともいうべきその大台を割ったわけですよ。これは大変な問題ですよ。私は、まあその財源を確保しましたから問題はありません、こうおっしゃいましたけれども、地方自治体が固有の財源として把握をする最も目安になるパーセンテージですから、そこを切り込んだということは、大変な責任、重大な責任を犯してしまったのではないか、私は実はこう思っておるわけであります。  今度の補正予算でも実は扱いがそうでありますが、今度の補正で、地方交付税の減少、これは穴埋めをいたしましたけれども、八百三十二億ですね。自然減収が三百五十二億、政策減税からくる減収が四百八十億。先ほど大臣、地方交付税は固有の財源だ、こうおっしゃいました。五十七年度の地方交付税の精算額、これが今度は出まして、固有の財源ですから、本来ですと五十九年度の予算に加算されておったのです。今度は五十八年度の歳入、今言った政策減税からくる減収分に引き当てたのですよ。国が行った減税に基づく、政策減税からくる欠陥分に、固有の財源を充てるというのはおかしいじゃないですか。私は、恐らく、専門的に言えばこれはいろいろ話がありますから言いませんけれども、五十九年度で財対臨時で五百億を取ったからと、こういうお話が出るかもしれませんけれども、しかし本来、この政策減税からくる落ち込みは、一般会計で処理をすべきですよ。五十七年度の精算分で処理をすべきではないと私は思う。  事ほどさように、実は田川大臣になられてから、従来のいわばガイドラインといいましょうか、あるいは従来あったものに対して、極めて地方財政、地方自治体に切り込む財政措置がとられているのですね。私、大変遺憾に思うのですが、いま一度この面についての御意見を聞きたいと思います。
  49. 田川誠一

    ○田川国務大臣 地方交付税の三二%に対する考え方は、重ねて申し上げますけれども、一向変わっておりません。堅持をしております。  今御指摘の補正交付税の減額に対する御指摘でございますけれども、私ども、年度途中の国税の政策減税に伴う地方交付税減少分は全額国庫負担である、今加藤さんおっしゃったこの考え方は、地方財政立場から見ると変わってはおりません。このことははっきり申し上げます。ただ、五十八年度においては五十七年度の決算に伴う精算分がございますし、これによりまして自然減少分を埋めてもなお増収が見込まれます。そういうところから今回の政策減税による減収分の一部をこれで補てんをすることにしたのでございまして、今の国、地方の厳しい財政状況、特に国の財政も非常に厳しいですから、そういうことを考えて私どもがとった措置というものは妥当なものである、このように考えております。
  50. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私は、地方の側から見れば、地方財源の保障措置としての三二%、それは今までそれぞれの各政党とも大変策祝をし、また大臣が所属される新自由クラブでも、私ども所属する地方行政委員会政府提案に対する修正案まで出されたのですね。それは地方交付税の三二%というのは一般会計を通すな、いわば国税収納金整理資金特別会計から直接地方に配付をすべきであって、一般財源に繰り込むから、いや、前の借金はどうだ、借金の利子がどうだという話になってしまう。したがって、三二%の財源確保という問題に対する切り込みがそこで起きる。結果として、ですから法の改正をして、法の改正というか、一般会計から出すのではなくして直接やるべきだという提案があったのです。提起があったのですよ。これはわが党ももちろんそうでありますし、恐らく新自由クラブの代表であった田川代表はそういう見解だと思うのですね。  それが今回、大臣になられた途端にこういうことになるのですね。一般会計からないしは交付税特別会計をやめることによって、特別措置をとることによって三二%を切るという状況になってきたわけです。これは大変重大な責任といいましょうか、あるいは従来田川代表としてお述べになっておったこと、あるいは新自由クラブの地方に対する財源確保の政策としておとりになった措置とは随分違う。このことだけは私、申し上げておきたいと思う。  後でまた御意見があればお伺いします。  そこで、大蔵大臣に今度はお聞きをしますが、今度の地方交付税の見直しといいましょうかあるいは改正といいましょうか、今大臣は、今度は制度の改革を各所で五十九年度予算の中では行った、こう言っておられますが、今自治大臣と結ばれました措置制度の改正でございましょうか。
  51. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この特例措置は、今回の地方財政対策の改革によりまして、五十年度以来の地方財源措置である交付税特会におきます新たな借入金措置や、それから臨時地方特例交付金にかわる新しい方式として、当分の間、やはり制度化されたものである、こういうふうに理解しております。
  52. 加藤万吉

    加藤(万)委員 そうすると、制度の改革というふうに見ていいのですか。
  53. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そのように認識をしております。
  54. 加藤万吉

    加藤(万)委員 制度の改革というのは今度の五十九年度予算の中でいろいろありますけれども、例えば財源の移譲であるとかあるいは税率の変更であるとか税目の設定であるとか、私はそういうことが制度の改正だと思うのですね。今度自治大臣と大蔵大臣と結ばれたものは、従来の交付税法附則第五条の二分の一の国庫負担制度をやめる、そして特例措置を設けた。この特例措置というのは、従来いわば、いわゆる三税に対する三二%の交付税にいろいろなものが風鈴のような形でついていましたけれども、それを一本化したにすぎないのじゃないですか。したがって、私は制度の改正ではないと思うのですね。今までの、従来の地方財政に対する、地方交付税に対する財政あり方の見直しにすぎないのではないか、こう思うのですが、さらに、制度改正ならば単年度ごとに何億円、何百億円、何千億円特別措置としてつけますというのではおかしいですよ。  例えば二分の一の国庫負担のルールができましたのは附則条項でできたわけですが、これは二分の一国庫負担をするという制度がずっと続いたわけですね。私どもは、そのときにも、三二%をもっと引き上げて三六%、いわゆる第六条条項に照らして交付税率を上げるべきであって、二分の一負担の制度をとるべきでない、しかし、国の方で制度だ、こうおっしゃるものですから、その制度に基づいて今日まで交付税に対する国の二分の一負担をしておったわけなんです。今度の場合は単年度ごとでしょう。今年度は幾らやります。加算額もあれば減額のときもあるのでしょう。こういうものを制度の改革と言えましょうか。いま一遍御意見を聞きたいと思う。
  55. 竹下登

    ○竹下国務大臣 やはり地方行財政制度の改正ということになろう。  今加藤さん御指摘になりましたとおり、各年度の地方財政対策において各年度の地方財源措置として決められ、その結果各年度の特例措置額が法定されるという意味においては、法律上の取り扱いは御指摘のとおりであります。
  56. 加藤万吉

    加藤(万)委員 自治大臣、どうですか。今大蔵大臣がおっしゃいましたように、毎年度ごと額の設定をして、初めて特例措置が生きるのですよね。今年度の場合でも、御案内のように千七百何がしでありますね。これは従来の、いわば財対臨時であるとか利差臨時であるとか、あるいは地方への臨時特例交付金の積み重ねですよ。  もしあるとすれば、三百億円現ナマで出しましょう、ただしこれも六十六年から償還します、償還に応じなければならないというお金ですよね。私は、特別会計からの借り入れがなくなった、それはいいですよ。しかし、今度は一般財源から三百億円借りたわけでしょう。もし財源不足類がもっとどんどんどんどんふえていって、今言いましたような風鈴のような交付金で額がおさまらないといったときには、一般財源からまた借り入れがふえるのじゃないですか。  これはまた後で話をしますけれども、昭和六十五年度までの中期財政計画が出ていますけれども、それを見たって、地方の財政も国の財政もそう豊かになるとは思えませんよ。とすれば、何のことはない、交付税特別会計で借り入れをしておったその額を一般会計からの借り入れにかえたというだけであって、私は制度の改革ではないと思う。しかも、時には減額ということがあるとすれば、まさにそれは三二%という税率そのものに対して変動交付税率的な要素を持つのじゃないですか。どうでしょうか。
  57. 田川誠一

    ○田川国務大臣 交付税が変動制になるというようなことには、毛頭私は思っておりませんし、今回の見直しにもそういう考え方で臨んでいるのでございます。  それから、制度の改革、見直し、どっちか、これは表現の違いでありまして、私どもは改革という言葉は使いませんで、見直しである、こういうふうに見ております。
  58. 加藤万吉

    加藤(万)委員 これはどうなんですか。大蔵大臣は制度の改革と言い、自治大臣は見直し、こう言っているのですよ。総理、これはどっちが正しいのですか、後で総理に聞きますが。  実は、五十八年度の予算の概要説明のときにもこういう言葉が出たのです。というのは、財源不足額を決めるときに、地方が借りている特別会計の借入金の利子分は財源不足額か不足類でないかという話が出たのですよ。自治省はこれは不足額ではない、いわば政府の取り決めの中でできた二分の一借金の額の返済であるから、最終的には地方団体がお金は返さなければいけませんけれども、財源不足額はその借金を除いた額だというのが自治省から出た資料なんですよ。ところが、大蔵省の資料はそれを含めて財源不足額だ、こう言っていたのですよ。私ども困りますよ、審議する側からいくと。  今度の場合でも、自治大臣は見直しだ、大蔵大臣は制度の改革だ、こうおっしゃられるのですが、どちらが本当なのでしょうか。これはもう総理に聞かなくちゃわかりません。
  59. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、富士山を山梨県側と静岡県側で見た話だと思います。(「そんなのは答弁にならぬぞ」と呼び、その他発言する者あり)実体は同じものなのであって、自治省側は自治省側の見解でそういうふうにとらえて、大蔵省側は大蔵省側の見解でそういうふうにとらえて表現しておる、そういう問題だろうと思います。
  60. 加藤万吉

    加藤(万)委員 それは富士山を駿河湾から見るか神奈川県の田川大臣の方から見るか、その差しゃないですよ。委任事務でもそうでしょう。私はよく言うのですが、この前の行革特別委員会でも言ったのです、機関委任事務ということと団体委任事務とは違いますよと。いわゆるある仕事をこれは県に全部移譲しますよということと、国が本来やるべきことだけれどもその部分を地方が手伝ってくださいということとは内容的に違うのですよ。制度の改革である以上は法律にきちっと決めて、そしてそれがややルール化されて長期間続く。単年度変更されるようなものが制度の改革というわけにはまいらないと私は思うのです。いま一遍総理から、今言ったような面から見て一体制度の改革として我々はこれを扱うべきか、見直しとして扱うべきか、御答弁をいただきたいと思うのです。
  61. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今回の地方財政対策、いわば地方交付税交付金の特例措置は、やはり今回地方財政対策の改革に基づきますところの新しい方式として制度化したものである、厳密に言えばそういうことになるのかな。しかしながら、そのことは制度の改革であるか見直しであるかということにつきましては、これは私は、ある意味においては見直しと改革との定義づけに対する地方行政の立場からの加藤先生の御指摘、元来、地方行政委員会というのは非常に仲よしクラブでございまして、各党とも大体そういう考え方に基づいていろいろな議論がなされており、そこで大蔵省、財政当局は財政当局としての立場からそれぞれいつも見解を申し述べる、したがって、この予算委員会に対応する場合、まずはいつも最初大臣折衝を何回か重ねて、最終的には地方財政、国家財政、言ってみれば公経済、まさに公の経済の車の両輪である、こういう感覚からそこに歩み寄りを生じて、毎年の措置としてこの提案をし、議論をしていただく、こういうことになっておるわけであります。したがって、その問題につきましても必ず年一回地方行政委員会へ私どもが呼び出され、それぞれの立場から議論をされ、それぞれの立場からお答えをして、そうした積み上げが今日両省の協議の結果として出ておるというふうに御理解を賜りたいと思います。
  62. 加藤万吉

    加藤(万)委員 自治大臣、私はやはり見直したと思うのですね。結局、地方へ国の赤字財政をどのように転嫁をするか、今度の場合、その巧妙な手法として実は使われた。したがって、私は田川大臣は大変尊敬する一人ですけれども、結果的には三一・三%という額になってしまった。結局、本来ならば三五前後、地方交付税額として受け取ったのは一番低いときでも三四・五くらいですから、三二%を切ったことはないのです。それが結果的に三一・三%に落ち込んだというのは、大蔵省の地方への巧妙な赤字財政転嫁、今言いましたように借金の利子などは国だって国債に振りかえたのですから、地方で持つ金を、幾らですか、三千六百何億ですかを足してみますと、交付税額に今度は地方が負担をしなければならない金利分、これを足してみますと八兆八千八百六十五億ですよ。いいじゃないですか、六十五年以降に元金を延ばすことを今度決めようとしているのですから。そうしますと、地方への交付税は三五・三%なんです。いわゆる三二%を上回るのです。そういう措置をとるべきだったのですよ。  私は、もし制度の改正の面で言うなら、大事なことは児童扶養手当だと思うのですね。恐らく大臣は、自治省の方から、お役人さんからは五千万円程度ですというお話を聞いていると思うのです。しかし、この児童扶養手当は、本来大蔵省がねらっておりましたのは、総体の額の二〇%ですね。地方団体の負担。そして、それは三百二十億ですよ。大臣、しかもこの合意文書は、一月十九日の先ほどの覚書の後ですよ。自治大臣と厚生大臣と大蔵大臣が合意されたのは一月二十四日ですよ、覚書を交換されたのは。逆じゃないですか。  本来、これは制度の改革ですよ。児童扶養手当は、御案内のように生活保護費が地方団体二〇%負担だから、同様に児童扶養手当も、こういうのが大蔵省の提案。それに対して、多年、いやそれは障害福祉年金であるとか母子年金であるとかという、国が一〇〇%支出している全体の政策との関連性を見て、これは相当長期間にわたって自治、大蔵あるいは厚生各省と話し合いが煮詰まらなかった問題です。     〔三塚委員長代理退席、委員長着席〕今度はいろいろな制限をつけたから、五千万円ですから、どうぞひとつ地方団体で持ってください。しかし、本当のねらいは二〇%、三百二十億円、これを、ぎりぎりの予算最終末になって大臣は覚書で合意文書を結ばれたのです。これは制度の改革ですよ。逆ですよ。そういうものを先に結ばれた結果として交付税をどうするのか、その取り扱いをどうするのかという一月十九日の大蔵、自治両大臣の覚書があってしかるべきだ、私はこう思うのです。  自治省が行おう、ないしは自治大臣が行おうとしているものに対して、私は、尊敬する田川先生のことですから手落ちはないとは思いましたけれども、細かにやってみるとそういうものが出てくる。さて、それの原因は何だろうか。どうも率直に言って、閣僚の中でも異色の閣僚として今日いらっしゃる。したがって、政策的にこれのバックアップがない。あるいは厚生省、大蔵省という各省間においても、そういう政策的な政治的なあるいは財政的なバックアップの条件がないのではなかろうか。そんなことを、疑っては悪いのですけれども、何となしに感ずるわけですね。  私は地方行政を七年間、今度は八年目に入るわけですが、この間、大臣が六人おかわりになりましたよ。大臣といろいろ約束しましても、その大臣の約束が、今までは自由民主党から出られた閣僚ですから、それなりに自民党という中でその政策も生きてまいりましたし、継続性も持ってきたわけです。今度、田川大臣が、どういう形になるかわかりませんけれども、もし閣僚を去るということになったようなときに、私どもと今まで約束しておったことが、政府としてどういう手形として我々に出されていくのだろうかと、大変不安に思うんですよ。いろいろ議論しました結果として大臣の合意を得た、そのことが国の政策として、いわゆる中曽根内閣の意思として我々に受けとめられ得るのかどうか、率直に言って大変不安を持ちます。議論に対する討論をする、かみ合う基礎的条件を欠くことになりはしないか、こう思うのです。  これは総理総理から答弁してもらわないといけないと思うのですが、今言いました経過を見ましてもわかりますように、田川自治大臣のいわゆる地方行政に対する基本的な理念の問題と、率直に言って自民党の今日までのあり方と私は少し差があったと思うのです。もしそういうこととして自民党の側が、ないしは各閣僚間で、ないしは各省間で田川自治大臣に対する消極的な姿勢があるとするならば、野党として我々は合意をしたものに対する将来的な展望をとることはできない。どうお考えですか、総理としての御見解を聞きたいと思います。
  63. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中曽根内閣の閣僚の政策は、一貫して今後も継続していくべきものであります。所属が変わっているからといって、それが断片的なものになるということはございません。  今回の予算は非常に厳しい予算でございますから、あらゆる閣僚に犠牲の負担をお願いしてできておる。農林省においてもしかり、あるいは厚生省におきましてもしかり、あるいは自治省におきましてもしかり、みんなで担いでいこう、そういうことで分担し合ってお願いをしておるところでありまして、これは一貫して継続していくものであります。
  64. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず最初に、仲よしクラブという言葉を使いましたのを、これは国務大臣としての公式答弁としては適切でございませんので、これはまず取り消しをさせていただきます。  そこで、今総理からもお答えがございましたとおり、私どもも、地方財政の問題につきましては、田川自治大臣と数回にわたる大臣折衝をいたしまして、その間、今総理からも厚生省という言葉がございましたように、厚生大臣をも交え、その結果が今日御審議をいただいておることでございますので、田川自治大臣の地方行政に対する物の考え方と何回も積み上げの上に合意を見たもので、絶えず相互尊重しながら、最終的には内閣一体の責任でもろもろのものを解決する、こういう立場を貫いております。
  65. 田川誠一

    ○田川国務大臣 加藤さんが大変地方の立場に立って御発言をしていただくことを、私どもは大変感謝しております。御要望の線に沿ってこれからもやってまいります。  ただ、私の立場から申し上げますと、今回の地方交付税をめぐる地方財政のある程度の見直しというのは、私自身が決断したことでございまして、決して他からどうこう、こういうことは毛頭ございません。私もかつて一時期、地方自治を別の立場から担当したこともございますし、国会議員になりましてからも、細谷さんがいらっしゃいますけれども、御一緒に地方行政を担当したこともございます。私は、最近の地方財政を見ますと、やはり借入金というものに対して非常に麻痺した考え方に立った傾向もなきにしもあらずでございまして、そうした意味から、私は、ここでひとつ借金財政というものにある程度のピリオドを打たないと、地方財政そのものの基盤にまで悪い影響を及ぼしてくるという考えに立っていたわけでございます。私が就任をした当時、もう既に大蔵省との間にこうした見直しの問題が話に出ていたようでございまして、私は、報告を聞いてから、これは結構なことじゃないかと、私自身の発意でこれを推進したような次第でございます。  それから、前にも加藤さんが言われました特会の直入の問題でございますけれども、これは私ども新自由クラブと加藤さんのお考えが全く同じであり、かつて私どもの同僚が御一緒にやったということも、意見を申し述べだということも聞いております。また、地方制度調査会の答申にもあのようなことが書かれておるわけでございまして、理想としてはこういうふうにやっていった方がいいと私自身も思います。ただ、現実を見ますと、地方交付税の配付の問題、時期の問題などもございまして、今すぐこれを実現に移すということはなかなか困難でございますので、検討をさせていただく、こういうようなことでございます。  以上、申し上げます。
  66. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大臣が中曽根内閣にお入りになったときに、山口さんが六十年度の先取りをした、こういうことですから、今のことも含めて地方財政計画に対してひとつぜひ検討、研究をしていただきたいと思うのです。  最後に、もう時間がありませんから、これは大蔵大臣と自治大臣両方に御答弁をいただきたいと思いますが、六十五年度までの国の中期試算が出ました。私は、この際、国の中期試算と同時に、地方の中期試算をつくるべきではないか。いわゆる特会の国との負担の区分も明確になりましたし、さらに地方が自前の財源調達、同時にまた自前の再建構想というものを考える上に、どうしても地方財政の中期試算をこの際つくるべきではないか。でなければ、先ほどの児童扶養手当ではございませんが、国のしわ寄せがどんどん地方におっかぶさってきてしまって、地方はその命令だけあるいはその支配の中でしか自前の財政再建計画を立てることはできない、こういうことになりますから。しかも、これはうわさの程度でしょうけれども、基準財政収入額を、今七〇ないしは八〇%ですが、それをもっと引き上げて、地方は豊かなんだからよこせ、単独事業その他についても補助金を小さくするとか、いろいろなことが考えられ、先ほどちょっと言葉の端に出ましたが、変動交付税率などということもうわさをされるという時期でありますから、地方の中期財政試算をつくるべきではないか。  その場合に、国と同じように、国でも本予算委員会でも議論がありましたが、増税をしなければ難しいのではないかという大蔵大臣の答弁があった、こう私ども聞いております。とすれば、地方にもそういう自前の税財源を確保する必要性というものがあるのではないかと実は思うのです。例えば、一時ありました例の大型消費税に基づいて地方の消費税もつくったらどうか。あるいは大型消費税に一定の税率を掛けて地方に配分をする。今地方団体では例のみなし課税の問題等も出ておりますが、そういう問題を含めて中期的な試算、同時に地方財政の再建のために新しい税目といいましょうか、増収を得るような方法論というものをお考えになっているかどうか。これは大蔵大臣にお聞きしたい、こう思うのです。
  67. 田川誠一

    ○田川国務大臣 加藤さんがおっしゃられました中期的な試算を今後やられたらどうかというお話でございますが、私どももこれは大変有意義なことではないかというふうに思っております。ただ、御承知のように地方団体は三千三百もございますし、そういう団体から積み上げていろいろと計算をしていくということは非常に難しいことでもございますし、技術的な困難な問題が幾つかございます。  たしか、御存じだと思いますけれども、昭和四十五年ごろでございましたか、自治省が地方財政の長期ビジョンですか、たしか四十五年から五年間ぐらいのビジョンを立てたことも私、記憶しておりますが、いま申し上げましたような困難な問題も幾つかございますけれども、こういうことは大変有意義なことでございますし、検討してまいりたい、このように考えております。
  68. 竹下登

    ○竹下国務大臣 中期展望を行うことが基本的に有意義なことである、こういう自治大臣の御認識でございます。私もそのとおりだと思います。これは自治省と十分協議をさせていただく課題だと思っております。  それから、いわゆる地方の独自財源についての御意見でございますが、そういう御意見があったことは、当然のこととして政府税調の方へもお伝えすることになります。したがって、そこでまた広範な国税、地方税のあり方等についての御議論の際の参考になるであろう、このように考えます。
  69. 加藤万吉

    加藤(万)委員 最後に、総理お願いしますが、いまやりとりをやっておわかりのように、自治大臣と大蔵大臣との間、あるいは私どもと自治大臣と合意したもの、そういうものが政府の政治政策財政政策の中に生きていきますように、特に地方も中央も待ったなしという、いわゆる地方の部分を相当重視して財政なり政策提起をしていただくように私からお願いいたしまして、終わりたいと思います。
  70. 倉成正

    倉成委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。  この際、上田哲君の残余の質疑を許します。上田哲君。
  71. 上田哲

    上田(哲)委員 昨日は、日付の勘違いなどがありまして失礼をいたしました。  ところで、私が主張いたしますのは、あのシーレーン防衛が対米公約ではない、たり得ないということをはっきりさせたいのでありますが、これについては政府の発言がこれまではっきりしていないのであります。例えば昨日読み上げられました議事録ですが、実はそのもう少し後にこういう宮澤発言があるのであります。「これがわが国政府の方針であることは間違いないわけでございますから、アメリカ側としてそれを前提に物を考えてくれて差し支えないことで、これは十分米国も知っておることでございますから、特にこれが約束であるないということをその際に申す必要はなかろうと存じております。」公約であるとは言っていませんが、ないとも言い切れぬと言っているわけでありまして、ここのところは政府のこれまでの姿勢というものが非常にはっきりしていないと言わざるを得ません。  それをどういうふうに人々が理解をしているかと言えば、ちょうど例えばその日の新聞は、「シーレーン防衛構想 対米公約も同然」、こんなに大きい見出しで出ているのであります。新聞の活字に責任を負えと言うのではありませんが、当時の受け取りはどうであったかといえば、こういう答弁が出てきた背景というのは、その記事を読みますと、「これは航路帯防衛構想が公的な重みを持つものであることを強調することによって、米側が事実上「公約」と受けとるのもやむを得ない、との見方を示したものだ。」これが当時の新聞のこんなに大きい記事であります。これはつまり、当時の状況からして政府ははっきり公約ということは言い切れないけれども、そういうふうに受け取られるということが当たり前だという認識を社会全体が持っていたということを示していると思います。  ここにかぶさってアメリカ側からのたび重なる公約を守れという発言が来ているわけでありまして、ここで昨日の総理答弁以下で、日本政府としてはこのシーレーン防衛を公約としているのではないということがはっきりしたわけであります。私はこれを重視したいと思うのです。アメリカで八一年五月に交わされましたあの日米共同声明、特に八項をどう読んでみても、一千海里だ、周辺数百海里だ、シーレーンだという言葉は出てこない。後から駆けつけたプレスクラブで質問を受けて答えだというのが、その後何の外交的手続も経ないで対米公約にはならぬと私は思うのです。しかし、こうした答弁やあるいは新聞報道等々を含めて、日本の社会世論としては、シーレーン防衛は対米公約だという認識は、私は一般だろうと思うのであります。  しかも、今私がこれを強調しなければならぬと思うのは、まさにこのシーレーン問題は山場にかかっておりまして、シーレーン共同研究というものが始まっておりますが、これがドネリー在日司令官からは、八四年四月までにこれを決着せよということは申し入れられております。また、八四年四月から膨大な日本の五九中業の策定が始まるのです。これは日本の護衛艦に全部ミサイルをつけようというほどの大きな増強計画でありまして、この時期に当たってこのシーレーン防衛が対米公約であるかないかということは、非常に大きな意味を持ってまいります。  そこで、総理にお伺いをいたしたいのです。  こういう状況でありますし、これまで大変あいまいであったし、社会認識としては対米公約だと思われていたと考える状況の中で、今日この重要な時期を前に、はっきり対米公約でないということがきのう明らかになったわけでありますが、ところがアメリカ側は、例えばワインバーガーさんを初めとして政府要路がしきりに公約としての実行を迫ってきている。こういう状況で、特に八四年四月が大きな山場になるわけですから、ここでアメリカ側に対して、日本政府としていろいろな形を通じてでも、総理、はっきりこれは対米公約ではないのだということを宣明される必要があると思いますが、いかがでございますか。
  72. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今さら言う必要はないと思います。なぜならば、この問題に関する日本政府の考え方ははっきりしておりまして、参議院の議事録を見ましても、宮澤官房長官は公約などとは全然言っていないのであります。また、私自体もきのう御答弁申し上げましたように、一国の総理大臣がワシントンのナショナル・プレス・クラブのような半公的と造言えるような場所で、世界注視の中で言った言葉は、それなりの重みを持ち、やはり日本政府自体としては責任を感じなければならない、そういう重みを持つ一音葉である、そういうことを申し上げたのであります。そういう限度のものである、外交的意味における公約などではもちろんない、そういうふうに御理解願いたいと思います。新聞やテレビは時々走り過ぎるもので、それは一つのいい例であると思っております。
  73. 上田哲

    上田(哲)委員 アメリカ側からは、非常に強い公約としての実行要請があるわけです。こういうものがあるとすれば、アメリカ側の誤解だというふうにお考えになりますか。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカ側は、日本総理大臣がそういうプレスクラブのような場所で言えば、相応の責任を感ずるであろうという推測のもとにそれは言っておる。アメリカ側は、国内的にいろいろそういうような表現で言う必要があるいは対議会対策等においてあるのかもしれない。それはアメリカ側が内部で自由におっしゃっていることであって、日本政府の認識としては、はっきり今申し上げたようなことなのであります。
  75. 上田哲

    上田(哲)委員 それならそれで結構であります。しかし、新聞は書き過ぎだというようなことをおっしゃったけれども、国内世論の大勢は、シーレーン防衛は対米公約であるということになっておりますから、アメリカに対してのあり方はどうあれ、日本国会の最高責任者として、ここで国民に向かって、シーレーン防衛は対米公約でないということをもう一遍御確認をいただきたいと思います。
  76. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、日本国会の最高責任者ではないのです。日本内閣の最高責任者ではある。(上田(哲)委員国会に向かって言ってください」と呼ぶ)  それから第二に、対米公約ではないということは、もうあなたの質問が始まったときからはっきり言っておるのでありまして、ただし、ナショナル・プレス・クラブのような場所で言った言葉については日本政府責任を十分感じて言っておる、そういう限度のものである。また、国内におきまして、これが対米公約であるという認識が国民一般の中にあるとは考えておりません。
  77. 上田哲

    上田(哲)委員 行政府の最高責任者として国会に向かってその発言をされたということを受けとめておきます。  もう一つ、この予算審議の中で、総理は我が党に対して、GNP一%を守ってまいりますとおっしゃったのであります。私どもはそれを重く受けとめたのでありますが、総理は、他の方面に対しては、一%にかわる別な基準を策定することがいいのではないか、こういうふうに言われております。これは私は矛盾であると思います。私もそれを承服することはできない。恐らく将来に向かってということがあるのでありましょうから、将来に向かってということであればそのことはそのこととしても、五十九年度予算を審議しているこの場の責任あり方として、あえて限定いたしますけれども、五十九年度中にGNP一%が突破されるという見通しが明らかになる場合においては、これを守りますと言われた立場での最高の責任総理はおとりになるのでありましょうか。
  78. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一%に関する歯どめとかめどという質問は、たしか民社党の代表の方から御質問がありまして、もうそういうことを勉強したらどうだ、盛んにそういう御質問があって、それが適切であるというような趣旨の御発言もあったわけです。それで私は、せっかくそういうような御発言がある以上は、将来の課題としてそういうことは考えても結構であると思います、しかしそれは将来の課題です、そういう点につきましては与野党間におきましていろいろ知恵を出し合っていただけばありがたいと思います、そういう趣旨のことを申し上げたのでございます。  また、一%に関する発言は、先般ここで改めて申し上げたとおりでございます。
  79. 上田哲

    上田(哲)委員 ですから、そうであれば、将来に向かってのことはあえて私はここで問いません。しかし、双方が、行政府国会責任を負わなければならない立場で言えば、最小限の責任範囲は五十九年度予算であります。将来のことはあえて今問いませんが、守りますと言われた総理責任は、当然五十九年度予算については完遂されなければならない。したがって、限定をしていくのですが、五十九年度予算中にGNP一%を超える、これは人勧問題等々とは関係ありません、主要装備その他の問題から見て私たちは非常にその危惧を持つのですが、五十九年度予算中にGNP一%を超えるということが明らかになった段階で、責任をおとりになるかどうかということを伺っておくのです。
  80. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはあの議論の際にもいろいろ議論があったところでございまして、申し上げましたように、昭和五十一年に三木内閣が決めましたあの政府の決定の方針はそれを守ってまいります、そう申し上げたので、そういう方針を今後とも一生懸命努力してまいりたいと思います。(上田(哲)委員責任をおとりにならぬですか」と呼ぶ)責任云々という問題は、守っていくという決意を表明して、努力して一生懸命やるということなわけでございます。
  81. 倉成正

    倉成委員長 上田君、時間が参りました。
  82. 上田哲

    上田(哲)委員 当然責任をとるべきだと思います。ただいま総理のお言葉は、最大の努力をする、努力の成果が得られなかった場合には、政治の、国会の常識として、最高の責任をおとりになるのだという意思表示をされたものとして受け取っておきます。  終わります。
  83. 倉成正

    倉成委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  昨日、井上委員が提起されました問題につきましては、理事会の協議に基づき、後日に譲ります。  以上をもちまして、両案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  84. 倉成正

    倉成委員長 これより両案を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。松永光君。
  85. 松永光

    ○松永委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和五十八年度補正予算二件について、賛成の討論を行います。  我が国経済は、再度にわたる石油ショックの影響を受け、数年にわたる不況下で苦しんでまいりました。このため経済活動は停滞し、税収の大幅落ち込み等財政の上にも重大な悪影響を与えてきております。しかしながら、一億二千万の国民生活を安定させるためには、政府の施策としてもろもろの歳出が必要であることは言をまちません。その結果、多くの公債残高を見るに至り、財政の対応力を回復するためには赤字公債からの脱却が緊要の課題となっております。  かかる観点に立って、昭和五十八年度の当初予算は、特例公債依存体質からの早期脱却を前提に、前年にも増して一段と厳しいマイナス五%シーリングを設定し、経費の徹底した節減合理化により、その規模を抑制することを基本方針として編成されました。  しかしながら、予算成立後にさまざまな事情変更が生じた結果、特に緊要となった事項につきまして所要の措置を講ぜざるを得なくなりました。  すなわち、与野党の合意に基づく所得税減税、原油価格の引き下げによる石油税の減収、予想外の災害に基づく災害復旧費の追加、給与改善費及び義務的経費の追加等が要因であり、既定経費の節減、予備費の減額、雑収入の増収及び公債の増加を行うなどの補正を行うことで、その規模は、差し引き歳入歳出とも四千五百九十八億円の追加となっております。  私が補正予算賛成する第一点は、まず、災害復旧費等公共事業の追加であります。  本年の災害は、台風、火山爆発、フェーン現象による山火事、日本海中部地震とその種類が多岐にわたるのが特徴でありました。  政府は、昨年決定した総合経済対策における公共投資推進の一環として、特に災害の復旧につき四千四百五十億円を計上いたしました。これは建設公債を財源といたしておりますが、被害地の方々の生活の安定のため、まことに時宜を得た措置であると思います。特に、五十八年度の復旧につきましては、災害を受けられた方々の生活基盤の早期回復の観点から、災害の復旧進度を、史上最大の規模と言われた去年の七〇%よりもさらに高め、初年度に七五%の復旧費を支出して早急なる災害の復旧を行うことといたしております。これにより必ずや被災地の復旧が早まり、地方経済にも相当の活力が与えられるものと期待しているところであります。  第二点は、所得税、住民税減税の実行であります。  国の財政が極めて厳しいにもかかわらず、政府は、与野党の合意に基づき所得税減税を実施いたしました。規模は所得税、住民税合わせて一兆数千億円にも上り、初年度の五十八年度は所得税一千五百億円、住民税六百億円となっておりますが、これは公党間における公約を着実に実行しようという我が党及び政府の信義を重んずる姿勢のあらわれとして賛意を表する次第であります。  政府としては、税収の少ないことと歳入の苦しさを理由国民へのサービス、国民生活への寄与を怠るわけにはまいりません。一方、歳入措置について見ますると、まず災害復旧は、その性質上、建設公債を発行することといたしておりますが、それ以外に必要となったものにつきましては一切公債の追加発行は行わず、既定経費の節減、予備費の減額、税外収入の増加等の措置で賄おうとしておるところであり、財政の現状からしてもまことに時宜に適した措置と考えております。  殊に、今回既定経費約二千億円の節減を行ったことにつきましては、厳しい財政事情のもとで財政再建に取り組む政府の姿勢を示すものとして、高く評価されるところであります。  幸いにして、我が国経済は、世界景気の回復、原油価格の引き下げ、在庫調整の終了、物価の安定等を背景として輸出や生産が増加するなど、景気は緩やかながら着実に回復してきましたので、明年度以降の税収も明るさが出てくるものと期待しております。  このように景気回復が本格化したのは、民間経済の賢明な対応姿勢に負うところ大でありますが、同時に、政府・自民党が景気の動向に対し細心の注意を払い、適切な諸施策を打ち出し、対応してきたからにほかなりません。  この際、一言今回の豪雪について政府に要望しておきたいと存じます。  ことしの異常豪雪は、断続的な降雪により、人的被害を初め交通網の寸断等地域住民の生活に深刻な影響を与えております。  豪雪地帯の地方自治体は、その深刻な財政事情にかんがみ、一、豪雪地帯に対する特別交付税、二、道路除排雪費、市町村道の除排雪などについて、五十二、五十六年度豪雪並みの対策を政府にとってもらいたいということでありますので、政府の早急な対応を望む次第であります。  以上申し上げました理由により、本補正予算賛成の意を表し、討論を終わります。(拍手)
  86. 倉成正

    倉成委員長 清水勇君。
  87. 清水勇

    ○清水委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました昭和五十八年度補正予算二案に対し、反対の討論を行います。補正予算二案に反対する理由は、以下四点にわたって申し上げますが、この二案は軍事費を突出させたままとし、国民生活を圧迫し、財政再建を後退させる国民犠牲の行革路線に基づいた補正案だからであります。  反対理由の第一は、政府は約束した本格減税を行わず、五十八年度一千五百億円の所得減税でお茶を濁し、国民の期待を裏切ったことであります。  独身者千円そこそこ、標準世帯で四、五千円の減税では、景気浮揚に役立たないことは言うまでもありません。  経過は明白のように、自民党は昨年二月二十六日、与野党幹事長・書記長会談において、景気浮揚に役立つ相当規模の大幅減税を五十八年度中に実施することを約束すると誓約し、加えて、政府に決断させる自信があるとまで裏書きしたのであります。したがって、国民が一兆円以上の減税に期待したのは当然であって、これを平然と裏切る自民党の背信は、与党として厳しく責任を問われなければなりません。  同時に、この与野党合意につき、三月一日、衆議院議長は「与野党合意の趣旨にのっとり、これの実現のため、政府は最大限努力することを確認すること。」との見解を表明したのでありますが、この議長見解を無視した政府の態度は、国権の最高機関である国会の権威を冒涜するものと言わなければなりません。かかる五十八年度本格減税の不実施は、公党間の信義にもとり、議会制民主主義に背反するもので、到底容認することができないのであります。  反対の第二の理由は、人事院勧告完全実施しなかったことであります。  政府は、五十八年度においては人勧尊重し、実施すると約束しながら、六・四七%の勧告を値切って二%だけの実施を強行しましたが、これは憲法及び労働基準法の精神に違反する不当不法な行為であります。言うまでもなく、賃金は使用者の恣意によって決められるものでなく、労使間の契約によって決定されるものであり、それを担保するのが労働基本権であります。政府がこの代償措置たる人事院制度を守れぬのなら、必然的に労働基本権が回復されなければならぬ性質のものであります。  年金据え置き、民間賃上げ抑制に連動する人勧に対する不当措置を含む補正予算案に反対せざるを得ないのは当然であります。  第三の理由は、補正予算二案が年金、福祉の引き上げに必要な経費を計上していないことであります。  五十八年度当初予算編成に際し、我が党は、厚生年金、国民年金等の物価スライド、老齢福祉年金の月額三万円への引き上げなど、最低限の社会保障の確保を政府に要求し、また予算組み替え動議を提出いたしました。しかし政府は、この切実な要求を拒否したのであります。  五十八年度消費者物価は、政府実績見込みでも二%の上昇ですから、年金、福祉は実質二%の切り下げを意味するものでありまして、私は、このような弱者切り捨てをもたらす補正予算には、何としても賛成することはできません。  第四の反対理由は、補正予算二案が経済の回復をおくらせ、財政再建を後退させている点であります。  補正により公債金収入は四千四百五十億円ふえ、公債依存度は二七・一%と、〇・六ポイントふえています。振り返って、近年、補正予算における国債発行の追加が行われていますが、これは財政上の原則を損なうもので、改められなければなりません。  以上述べたごとく、補正予算基本的性格は、当初予算と同様に国民犠牲の行革路線に基づくものと断ぜざるを得ません。  私は、以上の理由から補正予算二案に反対を表明し、討論を終わります。(拍手)
  88. 倉成正

    倉成委員長 斉藤節君。
  89. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題になりました昭和五十八年度一般会計補正予算案及び同特別会計補正予算案に対し、反対の討論を行うものであります。  以下、本補正予算案に反対する主な理由を申し上げます。  その第一の理由は、本補正予算案には景気浮揚に有効な具体策が盛り込まれていないことであります。  我が国の経済は、徐々に景気に明るさが見え始めていることは確かでありますが、それは多くが外国への輸出に支えられたものであり、国内の需要、いわゆる内需の低迷は依然として続いております。内需の低迷は、失業と倒産に拍車をかけることになり、また税収の伸び悩みをももたらし、財政再建をさらに困難に陥れているのであります。中曽根総理は、昨年一月の施政方針演説で内需主導の景気回復を公約されました。残念ながら、この公約は看板倒れに終わっていると言わざるを得ません。  目下の課題は、消費を拡大し、内需を活性化させ、本格的な景気回復を実現し、我が国の経済を安定成長の軌道に乗せることであります。本来であれば、総理の公約を果たすためにも、本補正予算案において、我々がかねて主張してきたように所得税、住民税の大幅減税、一般公共事業の追加措置などを講ずるべきであります。  積極的な景気対策を欠く本補正予算案は、到底認めることはできません。  反対する第二の理由は、五十八年中に大幅減税を実施するという与野党合意を政府・自民党が一方的に踏みにじり、所得税のみのわずか一千五百億円のミニ減税にとめてしまったことであります。  五十三年以来、本格的な減税が見送られてきた結果、家計は大個な実質増税を迫られ、年々苦しい状況に追いこまれていることは、多くを言うまでもありません。  中曽根総理は、五十九年度は大幅減税を実施すると胸を張っております。しかし、五十八年中に大幅減税を行うという与野党間の合意はどうなったのでありましょうか。与野党間の合意を踏みにじるという暴挙は、議会制民主主義の否定にもつながりかねないのであります。しかも、五十九年度における減税は、我々の要求額を大幅に下回る上、減税財源として、事もあろうに酒税、物品税の引き上げなど大幅増税を強行しようとしているのであります。  大幅減税の速やかな実施を願う国民の声を聞き入れることなく、国民生活に実質増税を押しつけ続けてきた政府責任は、まことに重大であります。実質増税が個人消費の停滞を余儀なくし、景気回復をおくらせてきたことも、同時に追及されなければならないのであります。  本補正予算案に反対する第三の理由は、人事院勧告無視し、国家公務員給与引き上げを大幅に抑制していることであります。  言うまでもなく、人事院勧告は、国家公務員労働基本権制約に伴う代償措置であり、人事院勧告の大幅抑制は、人事院勧告制度そのものの形骸化にも通ずるものと言わざるを得ないのであります。  私が重視するのは、人事院勧告の大幅抑制は、国家公務員の生活水準を低下させるだけではなく、地方公務員、年金、恩給生活者にも影響を及ぼすことであります。私は、一方では公務員の実質削減を図る努力をしながら、あくまでも人事院勧告制度完全実施を要求するものであります。  以上申し上げ、私の反対討論を終わります。(拍手)
  90. 倉成正

  91. 木下敬之助

    木下委員 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和五十八年度補正予算二案に対し、反対の討論を行うものであります。  我が国経済はようやく景気回復の方向に向かいつつあるとはいうものの、中小企業を中心とする企業倒産は、昨年は前年比一一・八%増の一万九千百五十五件と過去最高を記録し、また失業率も二・六%と過去最悪であり、実質賃金の伸び悩みとともに国民生活に大きな不安を与えております。さらに、内需の冷え込みの影響は国内面だけにとどまらず、経常収支の大幅黒字は対外経済摩擦を激化させてまいりました。その一方で財政破綻はますます進行し、「増税なき財政再建」は今や空文と化し、「財政再建なき増税」に変質しつつあります。こうした景気回復の立ちおくれ、雇用不安、対外摩擦、財政破綻はいわば一連の悪循環であり、その主たる原因が、金がないから何もしないという政府の縮小均衡型経済運営にあることは明らかであります。  我々は、昨年来政府に対し、こうした縮小均衡型経済運営をやめ、一方において一兆四千億円の所得減税の実行、下期三兆円規模の公共事業の追加なと思い切った積極経済政策を実行し、それによって大幅な自然増収を確保するとともに、他方において抜本的な行政改革を進め、それによって「増税なき財政再建」を達成するという拡大均衡型経済運営への転換を強く要求してまいりました。これしか景気回復と「増税なき財政再建」を真に実現する道がないからであります。しかし、政府はこうした我々の主張に耳をかさず、大蔵省主導による帳じり合わせ優先の縮小均衡型経済運営に終始し、その結果、五十八年度は三%台の低成長にとどまったことは極めて遺憾と言わざるを得ません。この補正予算案もこの縮小均衡型路線から一歩も出ておりません。  その第一は、減税は景気浮揚に役立ち得る大幅な規模とするという与野党間の合意がなされたにもかかわらず、年内減税はわずか千五百億円にとどまったことであります。  我々は、公党間の信義からしても、このような暴挙を断じて容認できないことを、ここで改めて申し述べておきたいと思います。  第二は、公共事業の思い切った追加がなされなかったことであります。  我々は、景気回復に弾みをつけるため三兆円規模の追加が必要であると考えますが、政府は事業費ベースで一兆八千八百億円にとどまり、しかも、その半分は国庫債務負担行為や地方単独事業で、見せかけの、実効性の乏しいものであり、極めて不十分、不徹底な措置と言わざるを得ません。  第三は、人事院勧告無視し、これを一方的に抑制、カットしている点であります。  すなわち、平均六・四七%の引き上げを求めた人事院勧告を大幅に削り込み、平均二%の引き上げにとどめたことであります。これは五十七年度における人勧凍結に続く暴挙であり、労働基本権制約の代償として設けられている人事院勧告制度のまさに根底を揺るがすものと言わざるを得ません。また、人事院勧告の大幅な削り込みは、これと連動する多くの人々にもしわ寄せがされております。年金、恩給生活者などがそれであり、その影響はまさに甚大であります。  むしろ、今ほかにやるべきことがたくさんあります。一つは、公務員の定員削減を初め補助金の整理合理化、特殊法人の統廃合、地方出先機関の整理など行財政改革を徹底することであります。もう一つは、租税特別措置を初めとする既存の税体系における制度上、執行上の不公正の是正を行うことであります。これらが極めて不徹底であり、抜本的なメスが入っていないのであります。  本補正予算案には、特に以上述べましたような重大な欠陥があると言わなければなりません。  我々は、政府が、この際一日も早く縮小均衡型経済運営から拡大均衡型経済運営に転換し、日本経済の潜在的成長力を引き出し、景気回復の本格化と「増税なき財政再建」達成への道を選択されんことを強く要求し、私の反対討論を終わります。(拍手)
  92. 倉成正

    倉成委員長 瀬崎博義君。
  93. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、政府提出の昭和五十八年度補正予算案に対し、反対の討論を行います。  今国民が切実に求めているものは、中曽根内閣が推進している軍備拡大、大企業奉仕、国民犠牲の政治を根本的に転換し、長引く不況と低福祉に苦しむ国民生活の擁護を基本に据えて政治を実行することであります。ところが、政府の補正予算案は、総選挙で明確に示された国民の審判に背を向け、一層軍備拡大、国民犠牲を推し進めようとするものであり、絶対に容認できないのであります。  第一の問題は、当初予算で異常突出させた軍事費をさらに六十八億円も増額したことであります。  これにより軍事費はGNPの〇・九八八%にまではね上がります。これは、人件費を突破口にしながら、政府自身が歯どめとしてきたGNP比一%の枠をなし崩しに外していこうとする政府のねらいを示すものであります。中曽根内閣の日米運命共同体路線のもとでのこのような軍事費の拡大が、日本をアメリカの核戦争計画の最前線に組み込む危険な道を一層推し進めるものであることは明白であります。  反対の第二の理由は、国民に対する公約をかなぐり捨てて所得減税を大幅に値切っていることであります。  補正予算案に計上された年度内減税額はわずかに千五百億円にすぎず、およそ景気浮揚に役立つ相当規模の減税などと言えるものでないことは余りにも明白であります。しかも、この減税は、事実上低所得者には税負担を重くする五十九年度の本格的な税制改悪と一体のものであり、まさに国民を欺くものと言わなければなりません。ましてや、大蔵大臣が検討を表明している大型間接税導入などは絶対に許されないことを、あわせて明確に表明しておきます。  反対の第三の理由は、本補正予算案によって、現状でも深刻な危機に画面している国民生活に一層の圧迫が加えられることであります。  五十七年度の人事院勧告が完全凍結されたことにより、公務員のみならず、勤労国民全般に多大な影響をもたらしましたが、五十八年度補正予算案では、人勧六・四七%に対し、わずかに二%の実施分しか盛り込まれておりません。これでは、実質的には二年連続の人勧凍結と言っても過言ではないのであります。もともと当初予算においてわずか一%分の給与引き上げ分しか計上しないでおきながら、補正の段階財政が苦しいなどと言うのは全く筋の通らない話であります。しかも、この人勧の大幅な値切りは、労働基本権代償措置として設けられたこの制度経緯から見て二重の憲法違反であり、断じて認めることはできません。  重大なことは、こうした人勧凍結や値切りが、年金、恩給など社会保障や福祉全般にはね返ってきている点であります。これに加えて、本補正予算案は、社会福祉施設整備費を三十億円も減額するなど福祉切り捨てに拍車をかけているのであります。  また、本補正予算案は、中小企業倒産が史上最高を記録しているのに中小企業対策費を削減したり、食糧の自給体制を守るために努力している農民を日米貿易摩擦解消の犠牲にしつつ、なお畜産振興費や農蚕園芸費を大幅カットしたり、中曽根首相みずからが教育の重視、教育改革を叫ぶ一方で、私学助成、国立大学運営費を大幅に減らしています。徹頭徹尾、国民の声に逆行する補正予算案であると断ぜざるを得ません。  私は、以上申し述べた理由から、政府提出の昭和五十八年度補正予算案に対し、強く反対の意を表明して討論を終わります。(拍手)
  94. 倉成正

    倉成委員長 これにて討論は終局いたしました。
  95. 倉成正

    倉成委員長 これより採決に入ります。  昭和五十八年度一般会計補正予算(第1号)及び昭和五十八年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して採決いたします。  右両案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  96. 倉成正

    倉成委員長 起立多数。よって、両案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 倉成正

    倉成委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————    〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  98. 倉成正

    倉成委員長 明二十三日午前十時より昭和五十九年度総予算について公聴会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十三分散会