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1984-02-21 第101回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年二月二十一日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 倉成  正君    理事 小渕 恵三君 理事 原田昇左右君    理事 松永  光君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 岡田 利春君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原慎太郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    砂田 重民君       田中 龍夫君    高鳥  修君       玉置 和郎君    中馬 弘毅君       橋本龍太郎君    原田  憲君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       村田敬次郎君    村山 達雄君       井上 一成君    稲葉 誠一君       上田  哲君    大出  俊君       島田 琢郎君    清水  勇君       武藤 山治君    矢山 有作君       湯山  勇君    遠藤 和良君       近江巳記夫君    草川 昭三君       斉藤  節君    木下敬之助君       小平  忠君    中野 寛成君       工藤  晃君    瀬崎 博義君       田中美智子君    野間 友一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 住  栄作君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 森  喜朗君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         農林水産大臣  山村新治郎君         通商産業大臣 小此木彦三郎君         運 輸 大 臣 細田 吉藏君         郵 政 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 坂本三十次君         建 設 大 臣 水野  清君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     田川 誠一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      中西 一郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官)稻村佐近四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         内閣総理大臣官         房地域改善対策         室長      佐藤 良正君         青少年対策本部         次長      瀧澤 博三君         警察庁刑事局保         安部長     鈴木 良一君         行政管理庁長官         官房総務審議官 古橋源六郎君         行政管理庁長官         官房審議官   佐々木晴夫君         行政管理庁行政         監察局長    竹村  晟君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         防衛施設庁労務         部長      大内 雄二君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         防衛企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         科学技術庁研究         調整局長    福島 公夫君         環境庁企画調整         局長      正田 泰央君         環境庁水質保全         局長      佐竹 五六君         国土庁長官官房         長       石川  周君         国土庁長官官房         会計課長    安達 五郎君         国土庁大都市圏         整備局長    杉岡  浩君         法務省入国管理         局長      田中 常雄君         外務大臣官房審         議官      都甲 岳洋君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 垂水 公正君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      齋藤 尚夫君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省学術国際         局長      大崎  仁君         文部省社会教育         局長      宮野 禮一君         文部省管理局長 阿部 充夫君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生大臣官房審         議官         兼内閣審議官  古賀 章介君         厚生大臣官房審         議官      新田 進治君         厚生省公衆衛生         局長      大池 眞澄君         厚生省環境衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省薬務局長 正木  馨君         厚生省社会局長 持永 和見君         厚生省援護局長 入江  慧君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業省通商         政策局長    柴田 益男君         通商産業省立地         公害局長    石井 賢吾君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君         資源エネルギー         庁公益事業部長 小川 邦夫君         中小企業庁長官 中澤 忠義君         運輸大臣官房総         務審議官    西村 康雄君         運輸省航空局長 山本  長君         郵政省電波監理         局長      鴨 光一郎君         労働省労働基準         局長      望月 三郎君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省計画局長 台   健君         建設省住宅局長 松谷蒼一郎君         自治大臣官房審         議官      津田  正君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    中島 忠能君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     近江巳記夫君   矢野 絢也君     遠藤 和良君   小平  忠君     中野 寛成君   梅田  勝君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   遠藤 和良君     矢野 絢也君   近江巳記夫君     大久保直彦君   中野 寛成君     小平  忠君   野間 友一君     田中美智子君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十八年度特別会計補正予算(特第1号)      ————◇—————
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十八年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田哲君。
  3. 上田哲

    上田(哲)委員 きょうは、日米関係に絞ってお尋ねをいたしたいと思います。  最初に申し上げますけれども、私は、日本にとってアメリカが最も大切な友好を深めなければならない国である、こういう立場で論議を進めていきたいと思っております。そういう意味で、経済軍事、ぬきんでたこの二つの面について御見解をただしたいと思うのであります。  まず当面の問題が日米経済摩擦、これは何としても解消しなければならないわけでありますが、総理は、この日米経済摩擦解消のポイントは何であって、どのようにしてこれを解消されていくおつもりであるか、お伺いしたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日米間におきましては、たしか六百億ドルに上ると思いますが、膨大な交易の往来があり、しかも社会的慣習やあるいは商売のやり方等も違う文化圏に属しておりまして、また資本主義発達段階も違って、日本が追いついてきたという状況等、そういういろんな条件がありますために、貿易摩擦が起こり得ることは当然であると思います。  問題は、この貿易摩擦をいかに解消するかという点にあると思います。アメリカ、ECのようなほとんど同質文化、同程度の国の間でもあれだけの貿易摩擦があるのでありますから、日米間にあるのは当然のことであると思います。それをいかに解消するかという問題が問題だろうと今申し上げたとおりであります。  原因がどこにあるかと言えば、一つ日本輸出力が非常に強くてアメリカ市場を物によっては相当席巻しておるところもあります。また、一面において日本市場アメリカに比べて閉鎖性を持っておるがゆえにこれは不平等ではないかという非難がアメリカ側にもあります。そういうようないろんな原因がありますために、貿易摩擦は浜の真砂の尽きざるがごとくに尽きない。これは、やはり両国がこれだけの経済的なエネルギーを持っておる間はずっと続いていくものであろうと私は思いますが、問題は、これを解決する方法を知っている、そして時間をかけてもこれを解決する意志を持っておる、それが大事なことであります。そういう線で今後も進んでまいりたいと思っております。
  5. 上田哲

    上田(哲)委員 摩擦が起きるのは当然である、私はその認識は正しいと思います。  そういう意味では、この経済摩擦の実質は何か。一つは八三年二百十六億ドルに上る膨大な対米黒字、そしてこの一年間にはまた三百億ドルを超えるであろうこの問題と、それからそれに連なるアメリカにおける失業の問題であると思うわけであります。大統領選を控えて、そういう意味での対日要求といいましょうか、攻勢が一段と激しくなっているわけですね。私はこうした場合に、今意志方法とおっしゃいましたけれども、その根本に二国間均衡をのみ目指すということは間違いであろうと思うわけであります。加工立国でありますし、日本アメリカに対して輸出を図っていかなければならないのはこれはまたアメリカもよく了知しておるところであります。単に二国間の均衡のみを図るということになれば、これは保護貿易保護主義を助長させることになり、世界全体の経済を萎縮させるということになるのは、もう当然歴史の教えるところでありますから、その意味では、日本としては例えば底開発国中進国等々に膨大に累積する債務を、例えば低金利等々の助力を行ってそことアメリカとの関係を刺激していく。さまざまなやり方があるだろうと思うのでありますね。そういう意味で、非常に大きな二百億ドル、三百億ドルという黒字が問題の数字ではありますけれども、これを二国間のみに着目した均衡を図るという考えであってはならないのじゃないか、私はこう思いますが、いかがでしょうか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのお考えには同感でございまして、貿易関係というものはグローバルベースで多国間の均衡と申しますか、そういうことで当然考うべきであります。それと同時に、単に貿易ベースだけではなくして、目に見えない部分あるいは資本収支、いわゆる総合収支基礎収支、そういう部面でもまた見る必要があると思います。日本などはいろいろ輸出超過を言われておりますが、約四百万人の人たち観光その他で外国へ行っております。四百万人がお土産を一人十万か二十万は買うと思うのですが、これを仮に二十万としても、四百万といえば相当な金になる、八千億ですか。ともかくそれぐらいの膨大な金になるわけです。そういう意味で、単に貿易量、物の往来だけでなくして人間の往来プラスマイナス考えてみる必要がある、こう思います。
  7. 上田哲

    上田(哲)委員 二国間の均衡のみに着目すべきではないという御同感を得て結構でありますし、また資本収支等を含めた全体的な立場、まあ観光立国になるかどうかわかりませんが、そういう問題を多元的にとらえてみるということが必要でありましょうし、現に八一年以来アメリカ貿易赤字全体に占める日本の割合というのはずっと減っているわけですね。八一年が全体が三百九十七億ドルに対して百八十億ドル、これは四五・三%、以下四四・四、三一・二、二七・二と八四年の見通しを含めて下がっているわけですから、そういう意味では非難される面のみではないし、また第二のレーガノミックスというものを提案されたアメリカ政府経済失政しりふきを全部日本が引き受けるという必要はないだろう。ただしかし、そうだといっても、こういう形がそのままでいいはずはないからそこで努力をしなければならぬということになると、やはり問題は、原因は何か。その原因ドルが他国の通貨に対して、当然円に対しても強過ぎる、高過ぎるということだろうと思います。  ドル実勢以上に高くなっているということになりますと、日本からの問題はこのレートを変えていく、円安を高めていく、こういう関係になっていくわけですが、通貨の価値は一般的にその国の経済ファンダメンタルズで決まるわけです。今の数字に対して、ではどれくらいが適正かというところが問題になるわけであります。これはどこから聞きましょうか、大蔵大臣、どれぐらいが適正値だとお考えになりますか。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり通貨当局者我が国の対ドルレートは幾らが適正だと言うことは、今フロートしておる今日、確定した数値を申し上げることは、これは影響が大きいからそれこそある意味においては適正ではないかもしらぬ。ただ、今、上田委員指摘のように、我が国経済全体のファンダメンタルズは良好でありますから、今日円に対してドルが高過ぎるという表現は私は差し支えないことだというふうに思っております。(上田(哲)委員「十円ぐらい」と呼ぶ)十円か二十円かというようなことになりますと非常に微妙な問題でございますので、公式の場の議論の中で数値を申し上げることは、世界、いわゆる先進国通貨がフロートしておるときに非常に混乱を招くかもしらぬ。それだけ日本の円が市場に大きなウエートを占めておるということにもなろうかと思います。
  9. 上田哲

    上田(哲)委員 聞き方を変えますけれども、十円か二十円ぐらい、二百円から二百二十円ぐらい、経企庁長官、いかがですか。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 日本経済の基礎的な条件から考えまして、円が実力より弱く評価されておるということはわかりますが、数字を挙げて議論するのはこれは適当ではない、こう思います。
  11. 上田哲

    上田(哲)委員 そういう高過ぎることの背景にあるのが金利の高さということになるわけで、アメリカ金利が高いから世界じゅうの金が、余剰資金アメリカに殺到する、ところが、アメリカではこれを財政欠陥に、財政赤字の補てんに埋めるということで、ちっとも金利が下がらない、その奥に、また大軍事予算赤字がある、こういうことになっていくだろうと思います。こういうことだとすると、このもてはやされる強いアメリカというけれども、その軍事偏重アメリカ政策の中で、こうしたレベル以上の、実勢以上のドル高を招く高金利というのが、金がどんどん入るにもかかわらず改善されない。これはやはりさっき総理の言われる巨視的な立場で言うなら、やはり、レートを改善していくためには、その根底にあるアメリカの膨大な軍事予算といいますか軍事赤字、こうした問題についてやはり努力を求める、低くしてもらう’いろいろな首脳会談等々の機会があるわけでありますけれども、そうしたことはこれまで御努力になりましたでしょうか。また、今後はいかがでありましょうか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 去年の夏に行われましたウィリアムズバーグのサミットにおきましても、各国財政赤字を解消するように努力する、そういう申し合わせもいたしまして、日本といたしましても、その約束に従って努力しておるところであります。  アメリカにおきましても、同様にいろいろ努力しておるようでございますけれども、議会と政府の間に若干の意見の食い違いもあるようでありまして、レーガン大統領は超党派で、今度千億ドル赤字解消に努めることをやろうではないかというプロポーザルをしておる状態であります。やはりその次に、レーガン大統領日本へ参りましたときに、私もアメリカ高金利指摘いたしまして、過去一年ぐらいの間にアメリカTBレート変化日本円ドル変化の表を見せまして、そして、こういうふうにTBレートが上がればこっちの円も安くなる、このとおりパラレルで動いておる、原因TBレートにありますよと、そういうような実証性を持った語までしまして、シュルツ長官及びレーガン大統領に話をしたところであります。日本大蔵省国金局あるいは外務省の諸君がアメリカ側事務協議をやっておりますが、その都度話しておることは、そういう類の話もしておるわけであります。
  13. 上田哲

    上田(哲)委員 それがアメリカの膨大な軍事予算のもたらすものであるという御認識、そして、それに対して強くアメリカにさらに発言をしていこうというお気持ちをお持ちですか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中身については我々は申しません、これは内政干渉になりますから。それはおのおのが決めることですから、一般的に約束した財政赤字を解消することに各国努めようという、そういう一般的約束について、我々は各国に対して、お互い守ろう、そういうことで言っている次第でございます。
  15. 上田哲

    上田(哲)委員 具体的に聞きますけれども、今月の二十三、二十四日にこうした問題を話し合うための日米円ドル特別委員会が開かれます。これは去年の九月に安倍外務大臣が訪米したときに、シュルツ国務長官から提起されたということでありますし、去年の十一月、レーガン大統領が来日されて、この設置が決まった。何遍も申しましたように、今のドル高為替レートをつくっているのがアメリカ高金利なんですから、あたかもそれが日本の責任であるような形にされて設置されるというのは大変ふさわしくないように思うわけです。この円ドル委員会に臨まれる姿勢大蔵大臣、どのように受けとめになっていらっしゃいますか。
  16. 竹下登

    竹下国務大臣 御指摘のありますように、私どもとしては、まさにその機会を得るたびごとに、いわゆるドル高の基本的な原因は、アメリカ高金利にあるという主張を繰り返しておるところであります。したがって、最近、教書がそれぞれ発表されたのを見てみますと、今年度ぐらいにはアメリカも本来は、最初黒字になる予定であった、言ってみれば、大変な減税をして、その減税をしたものが貯蓄に回って、それが設備投資を刺激して、そして政府歳出はうんと縮小することによって安い政府をつくろう、ところが、国会歳出圧力が強くて、結局、膨大な赤字を今日ますます累積するような形になったではないか。むしろ、国会に対するレーガン政権姿勢というようなものが書かれてあります。そして一方、フェルドスタイン経済諮問委員長は、今日の貿易問題については、対日の問題は八分の一ぐらいの影響だろう、そして、なかんずく円安日本政府が作為的に操作しておるというような指摘は全く当たらない、こういうような主張公聴会でされておるわけでございますので、逐次、我々の主張も、そして米国内の議論というものも、高金利に起因するという主張が定着しつつあるのじゃないかという感じが私はしております。  したがって、円ドル問題に対する基本的な考え方は、そういう主張をしますと同時に、やはり今度の円ドルの、大場財務官とスプリンケルさんとでまずはやるわけでございますけれども、基本的にはそういう基礎的な考え方を持ちながら、過般、レーガン大統領が訪日された折に、私とリーガン財務長官共同新聞発表をいたしましたそれぞれの項目について、その後どういうふうにこれが進んだかと、国会で今度もお願いする法律がこのように何本ございますと、そういうふうな進みぐあい、また相手の対応の仕方、それらを議論をし合いまして、そうするとまた、それらをさらにフォローしていくための議論も詰まっていくだろう、こういうふうに考えております。
  17. 上田哲

    上田(哲)委員 アメリカのねらいは、為替レートの是正ということは表看板だけれども、金融部門での市場進出ということになると私は思います。  そこで、具体的に中曽根ボンドをお伺いしたいのですけれども、レーガン大統領来日の際に日本アメリカ約束させられた八項目の中に、国債などの公共債を海外市場ドル建てで発行する体制を整備する、こういうことになっていますね。このための関連法案が今国会に出るわけですが、法案は出るけれども、実際に中曽根ボンドが発行できますか。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 中曽根ボンドの発行について、大蔵省で最初議論をしましたときには、いろいろな過去からの問題、あるいは開発途上国が、日本のようないいお客さんが向こうでボンドを発行した場合、開発途上国に対する金融を狭める結果になるじゃないかとか、いろいろな議論をしました。それらを総合して、やはりこれは発行することのできる法律改正をお願いしよう、こういうことになったわけですね。  さて、これをどういう形で発行していくか、その時期等につきましては、やはり金利ですね、一番問題は。そういうところを慎重に考えて対応しなければならぬ。ただ、政府保証債の発行については、おおむね第一号とでも申しますか、そういうものは進みつつあるという状態でございます。
  19. 上田哲

    上田(哲)委員 ちょっと話が甘いと思うのです。法律は出すけれども、中曽根ボンドは出ないでしょう。アメリカがこれだけの高金利で、この高いところへ出るということは、これはつまり日本の国債費を高めるわけですね。これは何とか国内で消費できるのであれば、わざわざ向こうへ持っていくということは日本の財政負担を余計ふやすわけですね。これは大蔵大臣、私は出せないと思うのです。それは多少のメリットが資本収支の上であるということはわかりますよ。わかりますが、これはちょっと余り何でもそろばんに合わぬのじゃないか。結論としては出せないだろうと私は思うのだが、ずばりこれを言っていただきたいのです。法案は出すけれども、中曽根ボンドは出せない。少なくとも出せる可能性もあるというふうにおっしゃいますか。
  20. 竹下登

    竹下国務大臣 現時点の双方の金利差等からすれば、今の上田委員の御主張は私は肯定すべきだと思います。が、これにつきましては、将来の動きといつでも出せ得るという体制の整備、このことがまず必要ではないか。したがって法律をお願いする、こういうことであります。
  21. 上田哲

    上田(哲)委員 まあ出せないということ、当面は出せないということでいいわけですな。例えばサウジアラビアがやっているような、既発国債のアメリカ通貨当局への直接売却というような道を考えていらっしゃるのならそれは別ですけれども、そういうこともないでしょう。となれば、当面は出さぬ、出せぬということでいいですね。
  22. 倉成正

    倉成委員長 酒井国際金融局長
  23. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、それは大臣でいいんですよ。
  24. 倉成正

    倉成委員長 いえ、ちょっと専門的に少し……
  25. 上田哲

    上田(哲)委員 いいの、いいの、時間がもったいないから一言でいいんだ——いや、そんな細かいことは要らないから。要らないから。質問者の自由なんだ。
  26. 倉成正

    倉成委員長 いえ、指名しました。要りませんか、専門的な……
  27. 上田哲

    上田(哲)委員 要りません。大臣から一言。
  28. 倉成正

    倉成委員長 それでは大臣。
  29. 竹下登

    竹下国務大臣 非常に慎重に対応しなければならぬ問題だということでお答えにいたしたいと思います。
  30. 上田哲

    上田(哲)委員 じゃ、それ以上のことは言いますまい。非常に慎重に、当分出せないだろうという認識を得ておきます。  もう一つ、今度の円ドル委員会の論議の一つは野村・モルガンですね。これは二月の八日、九日に開かれた日米投資委員会でも、アメリカ側が早急にゴーゴーをしてくれ、こういうことになっていますし、それから去年の六月に、大蔵大臣のところに野村証券の田渕社長とモルガン銀行のプレストン会長が直接面談して、何とかしてくれ、こう言っていますね。しかし、これは昭和二十九年以来日本の信託分離という大方針があるし、それから都銀の中でもぜひやらせてくれとか、どんどん声も出ている。大蔵省は全部これをけってきた。つまり非常に狭い、これくらいの幅でやっているところへアメリカから大きな資本が入ってくる。こういう形では日本の信託業界に大混乱が起きる。多分、倒産も起きる。こういう状況では、当然これは断らなければならないですね。そうなりますか。
  31. 竹下登

    竹下国務大臣 この野村・モルガン問題と俗に言われておりますが、確かに、今、去年の六月ということでございましたか、田渕社長ではございませんでしたが野村の方とモルガンの方がお見えになりまして、こういう構想について我々としては今勉強しておるという意味のお話でございまして、それをもってそういうことを申請したというふうにはとる必要はない、こういうことでありました。  そうしてこの間の日米の投資委員会におきましても、アジェンダには入っていないが、すなわち項目には入っていないが関心事項である。そういう信託への、個別には野村・モルガンとはやはりおっしゃいません、こういう問題は関心事項である。それで、我が方もそれはテークノートしておきましょう、ですが、やはり個別問題でございますから、財務省から我が方の大蔵省へこの問題が提起されたという状態にはまだないということでございます。  したがってこの問題は、今御指摘がありましたように、自由化、国際化の中で、個別問題は別として慎重に検討してかからなければならぬ問題だというふうに思っております。
  32. 上田哲

    上田(哲)委員 これは十兆円を超えると言われる我が国の企業年金市場アメリカが第二のオイルマネーと言われる年金資金の運用を図ってきた、こういうことなわけですから、これはもう到底受けるわけにはいかぬだろう、日本業界を考えれば。結論が出ると思うのですよ。少なくとも四月から金融制度調査会で議論をして六月のサミットまでには結論を出さなきゃならぬでしょう。そうですね。これが一つ。  そうであれば、例えば部分的に一任勘定を認めるとか、あるいは認可時期を明示するなんということでもやるのですか。これは二つ目。  そんなことでもないならば、最低限六月までいってもこれはもうだめだ、少なくとも六月までにその方向で結論を出す、これをはっきりしなきゃいかぬのじゃないですか。混乱が起きますよ。
  33. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる個別問題としてこれを今取り扱ってはいないわけですね。アメリカの銀行が証券会社と共同で日本に信託会社を設立するというような構想ということで取り扱っておるわけでございますが、私ども、総理から御指示があって自由化、国際化の問題で今勉強しております問題というのは、どのようにしてソフトランディングの中で自主的かつ積極的にそうした問題を解決していくかということでございますので、個別問題としてこれを取り上げて、それをいついつまでに結論を出さなきゃいかぬという問題としてはとらまえておりません。ただ、サミット等がございますならば、私どもがリーガンさんとお話し合いするのも恐らく四月、五月になるでございましよう。そういう時期に我が国の国際化、自由化に向かっての今日までの勉強の経過とか、そういうことについての議論はお互いしなきゃならぬことだというふうに認識をいたしております。
  34. 上田哲

    上田(哲)委員 どうもちょっと歯切れがよくないのですが、結論は見えたと私は理解をしておきます。  金融自由化というのは時の流れなんだから、そのこと自体はどうというわけではない。しかし、例えば今のお話で言うと、個別の問題を云々とおっしゃるけれども、野村・モルガンの後は大和証券とシティコープ、山一証券とケミカルバンク、日興証券とバンク・オブ・アメリカなどどんどん来るわけですから、これは個別問題がどうのこうのじゃなくて全体問題としてやはり明確な方針を出さなきゃならぬ。これは四月、六月ということをいまおっしゃったから、そういう方向で非常にはっきりした線が出るだろう。つまり否定的な線として出るだろうということを申し上げておきます。理解しておきます。  これはやはり、私は一つか二つの例を取り上げたのですが、どうもはっきりしていいことが何となくしにくいというアメリカへの引け目みたいな、弱腰みたいなものがあるということを、竹下さん、これは私は率直に思いますよ。だからこういうことじゃ、——売るものは売る、買うものは買う、資本取引はしっかりやることはやる、金利の問題もびしっと言う。総理も、言いにくい、個別的に言えない、内容的には言えないとおっしゃったが、やはり軍事費の大赤字というのは問題なんだから、そのこともやはり、それは戦争戦略なんといった話じゃなくて経済問題としてもやはり指摘しなければならないテーマではある。この辺がやはり、アメリカに向かってしっかり言う方がいいと私は思うのですよ。  企業はそれぞれ努力はしていますよ、通産大臣うなずいていらっしゃるが。例えば七六年段階でどしゃ降り輸出というので大変な非難を浴びたテレビ。そしてまたその後の大きな問題になった自動車。これは、例えばテレビはもうその後大手八社がみんなアメリカへ行って現地生産を始めた。それで一時七六年のときは二百九十五万台の輸出が今は現地生産で三百十万台から三百三十万台。それで日本からの輸出は六十万前後というところまで来ていますね。これが具体的にアメリカのテレビ業界の失業の吸収に役立っているということにもなっているようですね。自動車も今五つばかり、最近のトヨタ、GMの合弁も含めて、ECにもありますけれども主としてアメリカに向かっての現地生産の方向にある。これはいろいろな見方があると思うのですよ、長期的に言えば。今日こういう状況、民間のテレビや自動車の企業がこういう形で進出している。これは総理、先ほどの経済摩擦の解消という側面からとらえてどういうふうに評価されますか。
  35. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり原則的には国際化、自由化の方向に進むべきであるだろうと思っております。  かつて、自由化、国際化に関連して、燕の金属食器等がもうつぶれてしまうじゃないかと騒がれたときがありましたが、関係業界が非常に苦労されて、努力されて堂々と輸出力を盛り返したという例もございますし、そういうような企業努力という面もやらなきゃいかぬと思うのです。今おっしゃった部門の金融あるいは資本の自由化の問題についても、日本だけが自分の垣根の中で自分の業界だけの偸安の夢をいつまでもむさぼっていいというものではない。今までの過去の経験から照らしてみて、銀行と証券の間にかなり相互乗り入れをやったりして、それが新しい商品をどんどん生み出して非常にエネルギーを強くさせたという面もあるし、お客のニーズにこたえてみんな自己防衛上あらゆる新しい営業方策をつくり出して、業界が活発化し、お客さんはそれで非常に便利になったとか得をするというチャンスが生まれてきているわけですから。それは国際的にも言えることであって、そういう意味において、まず金利の自由化の方向へ促進する、それから今の垣根の問題についてもこれを解決していく方向に持っていく。ただ、一挙にやってはいけないのであって、それに対する防護政策なり対内政策も整えつつ、しかもそういう方向に進めて、段階的に順を追って日本を国際化していくということが大事なのであって、何でも尊王攘夷で垣根の中さえ守っていればいいという問題ではないと思います。
  36. 上田哲

    上田(哲)委員 テレビ、自動車の動きというのはどう評価されますか。
  37. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ここはまた日本アメリカの知恵のあるところでありまして、集中豪雨的輸出についてクレームが起こると、それでは話をしよう、そういうことで独禁法にひっかからないように注意しつつ両国間で話し合いをして、そして自主自律的に、また各会社が自律的にいろいろ調節をとっていく、そういう形で経済摩擦をおさめてきていると思います。需要が増すにつれて自動的にそれらはまた新しい分野へどんどん伸びていく、そういう形で行われ、そういう情勢のもとに今度は資本進出を行う。ですから、トヨタが出てくるとか、あるいはヨーロッパの場合は日産がイギリスヘ出ていくとか、そういうふうに事態は常に改善する方向へ積極政策を持って伸びていっていますね。私は、こういう現象が両国の資本主義が円熟化しつつある、そういう証拠だろうと思います。
  38. 上田哲

    上田(哲)委員 つまり、いいことであるということですね。
  39. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのような自主自律の積極政策というのは、独禁法というものにかからないように注意しつつ行うことは適当なことであると思います。
  40. 上田哲

    上田(哲)委員 いろいろ問題があるんですけれども、私は現状の問題、経済摩擦の解消という側面において言うなら、これはやはり一つの薬だったというふうに評価していいと思うのです。ところが、その薬の効き目がやはり大変限界的である。テレビなんかは今トラスチックに申し上げたような数字だけれども、やはり自動車というのはテレビと違ってけたが違う、投資規模からいっても。それから、生産台数からいっても現地生産がそう大きくはなれないという問題がある。そういうことで、それは日本の国内企業の問題とか労働市場の問題とかというものは当然ありますから、これは別問題としておいておきますけれども、いずれにしても、どんなにいいことだとしても一定の限界を置かざるを得ないということがあるわけで、ここに大きな、過剰な期待は持てないだろうということは一つあると思うのです。  特に最近十年間を見ていると、対米向けのこうした企業の、あるいは現地生産の制限とか追い出しみたいなものが大変目立ってきたのですね。  例えば新日鉄がアメリカのコングロマリットのアレゲニー・インターナショナルの子会社、超合金、スーパーアロイのメーカーのスペシャル・メタルズ、これをアレゲニー社の申し入れで買収することに決めて、去年の四月に契約したのだけれども、アメリカの国防総省から待ったがかかって、この買収交渉を断念したという例がありますね。  京セラの例もある。京セラのアメリカ現地法人であるデクセル・インコーポレーテッドというのが電界効果トランジスタを生産していたのだが、これに対してアメリカ国防総省から、日本人の役員を全部退任させろ、そして京セラの保有する株式の売却を命じて、京セラは去年の二月、この現地法人から撤退した。  これはなぜかというと、新日鉄の場合はこの超合金が油井管やボイラーのチューブなどで航空機の部品に欠かせないものだったということである。あるいは京セラの場合は、これも当初は民間用だったのだけれども、最近は新鋭戦闘機のレーダー発振器など、これをアメリカの航空宇宙産業に納入するようになったからだ。こういうふうになってくると、一生懸命知恵があって努力しているからそれもいいことだと言っていても、どうも先が細ってくる、追い出されてさえくる。こういう例が、はっきり理由が明示されないまま、かなりふえてきているわけですね。そういう点をどうお考えになりますか。
  41. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま先生の御指摘のような国家安全保障上の問題、例に挙がったとおりでございます。これはアメリカ側の国家安全保障上の問題として、役員あるいは施設が外国人あるいは外国資本によって支配されているようなものにつきましては、これを政府調達という面で規制をしているものでございます。そのほか、各州、一部州で行われておりますユニタリータックスという問題がございます。合算課税の問題でございますけれども、こういったような我が国の対米投資の阻害要因になるようなことのないように、米側に常に述べているところでございます。先般、小此木通産大臣訪米の際に、ブロック通商代表にも申し入れているところでございます。
  42. 上田哲

    上田(哲)委員 総理、個々の問題はそういう傾向があるとすると、政治の考え方ですが、国防総省がこういう待ったをかけるというのは、軍事的に少しでも価値のあるものについては技術流田に非常に神経質になる、そういうものは日本企業には手を触れさせないようにする、ところが、日本の方からは武器技術供与ということで包括協定。細目協定は公表もしないという形で取られっ放しという感じがするわけですよ。これはフェアでないんじゃないか。  さっきの金融問題についてもそうなんですけれども、どうも貿易の不均衡というよりも、交渉の不均衡、交渉体制の条件の不均衡ということがあるように私は思う。これは今まで例を絞ってみましたけれども、牛肉、オレンジにしたって、牛肉、オレンジを仮に全部門戸を開放したら、じゃ経済摩擦はなくなるかといえば、とてもじゃないが、三百億ドルのうち十億ドルぐらいしかないわけだから、象徴的といえばそうかもしれないけれども、これはちょっといじめ過ぎるじゃないか。あるいはさっきの金融・資本の自由化だけじゃなくて、紙、合板、ワイン、ウイスキー、それから通信衛星、石炭、石油、こういう問題全部、アメリカ日本に突きつけている問題というのはどうも対等でない、フェアでない。日米貿易交渉の中で、セキュリティーという言葉が出たらもうそれで声が上がらないというのが政府部内でも出ている意見なんですね。この辺の不均衡さというのは、総理、どういうふうにお考えになり、またどういう改善の道があるとお考えでしょうか。1いや、これは総理言ってくださいよ、これはもう大方針だから。
  43. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカはいろいろの国際競争に、日本と対比してやはり相当おくれをとっている。技術の競争、高度技術の面でもそうですし、貿易も、今の量から見ましてもインバランスが非常に拡大をしている。そのために失業も出ておる。こういうことで、アメリカとしては日本との関係において相当コンプレックスを持って、そしてそれがまた、日本市場をある意味においては閉鎖しておるということにもつながっておるという反発にもつながって、農産物の問題とかいうものを象徴的にも取り上げておるのじゃないかと思います。  軍事技術の面については、これは今不公平だと言われますが、これはむしろアメリカ日本との立場からいえば、日本の方がアメリカからこれまで軍事技術の提供を受けて武器の提供を受けているわけですから、そういう面において、今までが一方通行であったからそれを相互通行にしようという意味で、いわばある一面においては日米安保体制の中で公平さを保つ措置をとった、こういうことだろうと思っております。
  44. 上田哲

    上田(哲)委員 いまの最後の言葉が重要なんです、日米安保体制の中での云々と。私は、経済経済軍事軍事、こういう分離ができない限り、その引け目、弱腰というのは変わらないと思いますよ。今の発言は非常に重大なんです。そういうふうに総理考えですか。つまり、ここには経済軍事のリンケージというものがアメリカ議会筋、業界からも非常に強くこの十年、十五年来ているわけです。アメリカの武器の技術をもらっていたんだというのは、カーキ色の軍隊、MPがいっぱいいたころの話ですよ。今は逆なんだ。向こうが買ってくれというのは農産物、こっちが売るのは先端技術なんですから、そういう問題ではよだれが出るくらい向こうから汎用技術としての軍事技術を、括弧をつけて欲しいと言ってきているわけだし、レーガンの来る前の晩には急いでやったというぐらいのことがあるわけでしょう。これはもうちょっと胸を張らなければいかぬですよ。胸を張れないということの根底に軍事経済のリンケージがあるというところが問題なんですよ。そのリンケージの奥に安保ただ乗り論があるのですよ。だから、これは外務大臣ではなくて、今の外務大臣は安保体制の中で経済考えられなければならないとおっしゃっているから、総理、そこで最高責任者としての御見解を承りたいのだが、総理は安保ただ乗り論をどうお考えですか。
  45. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本はただ乗りなどをしているとは毛頭思いません。安保条約をつくるときから日本の施設等はアメリカに利用させております。これだけでも非常に大きな力を実は持っておるわけでありまして、極東における日本列島の防衛上の価値あるいは日本が民主主義国家としてこれだけ繁栄しているという厳然たる事実というようなものは日米提携の一つの大きな誇るべき成果であると同時に、日本自体の大きな力、日本民族自体の大きな力のいたすところでありまして、そういう意味におきましては、しかし安全保障上、政治上、文化上、経済上総合的な大きな交流が太平洋を挟んで日米間には行われておるのであって、何らかの牽連関係は全体として包括的な中にはあり得ると私は思います。思いますけれども、この包括的な大きな交流関係というものを大事にしていくということが世界の平和と文化のために非常に大きな力をなしておるので、そういう大局的見地に立って我々は今後とも日米の親善、緊密化を図っていきたいと考えております。
  46. 上田哲

    上田(哲)委員 総理が安保ただ乗り論には立たぬとおっしゃるのは結構です。その安保ただ乗り論というのは、元来軍事に使わなければならなかったはずの金を産業の育成に使ったから国際競争力が出てきてアメリカがひどい目に遭っているんだ、こういうことなんですね。安保ただ乗り論をとらないというのは、やはりそういうことを否定されているわけですね。
  47. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我々からすればそうであります。
  48. 上田哲

    上田(哲)委員 結構ですよ。それは結構です。そうだとすると、さっき外務大臣が言われたが、日米経済交渉ということは安保体制の枠内であるということではない、こういうことになりますか。
  49. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外務大臣が言ったのは、安保体制の枠内で日米経済交流が行われている、全部がそういう意味で言ったのではもちろんないのです。ただ、安保体制という大きな体制が日米間の一つの基礎的事実にはある。」その基礎的事実の上に乗っかって、そして日米間の諸般の安全性あるいは経済の交流というものが行われておる。なぜならば、平和なくして経済の交流も行われ得ないからであります。そういう意味においては、牽連関係は十分あり得ると思っております。しかし、だからといって経済の交流自体が安保のおかげであるとか安保の枠内で行われておるということは、全然これは事実に相違している、そう思っています。平和を維持しているという大きな恩恵を受けているのはやはり安全保障体制のおかげである、そういうふうに考えていいと思います。
  50. 倉成正

    倉成委員長 外務大臣、補足してください。
  51. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今総理もおっしゃったように、私が安保の問題と言ったのは、軍事技術に絡んで言ったわけです。その前の経済経済問題としてお話ししましたけれども、軍事技術の交流については安保体制という枠の中でのいわゆる相互交流ということが行われている、こういうことを言っているわけです。
  52. 上田哲

    上田(哲)委員 総理は、安保体制の粋の中に日米経済関係は包み込まれてしまうのではないということをお考えになるわけですね。
  53. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 当然のことです。しかし、軍事技術、防衛技術については巻き込まれるものも出てきておると思います。
  54. 上田哲

    上田(哲)委員 安保ただ乗り論をとらないとおっしゃるから、ぜひひとつそのことはアメリカに向かって大いに発言をしていただきたいと思います。いかがでしょう。
  55. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、言われたときにはいつもそういうふうに反撃しておるのであります。
  56. 上田哲

    上田(哲)委員 どうしてもそれが私たちにはそう受け取れないわけでありまして、どうしてもそこにはリンケージというものがあると思います。経済軍事のリンケージという、アメリカから、特に議会筋や業界筋からのこれほど強い問題についてひとつ毅然たる態度をとっていただきたいと思うが、そういう意味での私どもの疑念は、軍事問題の中でひとつ話を発展さしてみたいと思うのであります。  そこで、これまで長い防衛論争が続いておりましたし、この一週間この委員会で行われたさまざまな議論なんですが、日米軍事関係の中にどうしてもすっきりしないもやがかかっております。日本アメリカが、首脳会談あるいは共同声明等々が重ねられる中で非常に重大な時期に来ているということが認識されるわけでありますから、そういう重大な時期にひとつ日米関係、さっきの経済問題、これもすっきりしなければなりません。背骨を伸ばさなければなりません。弱腰であってはなりません。しかし、その奥にどうも切り離せない軍事問題もあるのではないか等々の懸念を吹き払うためにも、ひとつこの点ははっきり原点の問題としてお尋ねをしたいことがたくさんあります。  かつて総理は、日本総理大臣は防衛庁長官を経験した者でなければならぬということを言われたことがあります。防衛庁長官を経験された総理大臣は初めてでありますから、そういう面では殊さら抱負経論が深いだろうという立場で、ぜひ御意見を承りたいことを数々持ちます。  総理日本アメリカ軍事同盟国ですか。
  57. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛上の同盟関係にある国であります。
  58. 上田哲

    上田(哲)委員 それは軍事同盟国ですか。
  59. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我々は防衛上の同盟関係にある、そういうふうに表現しています。日米安全保障条約というものは防衛のためにある、そういう意味においてやっていますから、国際的にはミリタリーという言葉は軍事的、そういうふうに使われますから、国際的には軍事同盟と言われている、そういうこともあり得ると思います。
  60. 上田哲

    上田(哲)委員 言葉としてあいまいな言葉というのはよくないと思うのですね。八一年五月の共同声明では「アライアンス」という言葉が出ているわけです。これは同盟と訳すべきか同盟関係と訳すべきか、何か言葉遣いだけではいかぬと思うのですね。この際、こういうキャリアをお持ちの総理なんだから、そういう意味で、では同盟関係とおっしゃるものは、日本アメリカは同盟国なのかというのに対してイエスかノーか、どういうふうにお答えになるのか。
  61. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 コミュニケ等においてアライズと書いてあれば同盟国と訳しますし、アライドリレーションズ、そう書いてあれば同盟関係、そういうふうに訳すのが正確だろうと思います。日米関係は私は広義の同盟関係にある、そう考えております。
  62. 上田哲

    上田(哲)委員 言葉にこだわるつもりはないのですが、同盟関係と同盟国というのはどう違うのですか。
  63. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この正確な定義というものはないと思います。ただ、政治的にあるいは国民の皆さんに誤解を与えないようにという意味において使い分けをしておると思います。つまり、日本アメリカ関係は、アメリカとイギリスの関係とは違うわけです。アメリカとイギリスあるいはアメリカとNATO諸国との関係あるいはアメリカと韓国あるいはアメリカとオーストラリア、ニュージーランド等の関係は、いわゆる昔の言葉で言うと攻守同盟というようなことで、集団的自衛権の範囲内で、片一方がやられれば片一方もそれに応じて連動して動いている、そういう形になっております。しかし、日米安全保障関係は、日本がやられた場合にはアメリカ日本を助ける、しかし、アメリカがやられた場合は日本アメリカを助ける義務はない、そういう条約上の権利義務関係になっておる。そういう特異な関係です。だがしかし、じゃ日本アメリカの防衛に貢献してないのかといえば、そうではない。日本列島におけるアメリカの施設群というものは、これはアメリカの防衛にも非常に役立っている。そういう面もあると思うのですでありますから、これは片務条約ではない。よくこれは片務条約ではないかという言葉があります。私も昔、マッカーサーに占領されていたころ、吉田内閣を攻撃するときにはそういうような言葉を使ったこともあります。これはどなたかがここでもおっしゃったように、田川さんがおっしゃったのか、政党の差というか、間隔を印象的に言うためにはかなり鮮明な言葉を印象的に使う、そういうことをおっしゃいましたが、私もそういうことをやったことがあります。しかし、日本も基地の提供という点において相当な貢献を大きくしているので、ある意味においては片務ではない、アメリカにも相当な恩恵を与えている、そういう面もあります。あるいは安保条約をお読みになれば、事前協議条項というものがあって、四条、五条、六条等を見れば、日本もいざというときには協議の上でアメリカに対する相当な協力もなし得る、基地という面から見ましても。そういうような非常に大きな貢献もしておるのであって、これは片務条約ではない、私はそう言っておるのであります。
  64. 上田哲

    上田(哲)委員 私は言葉や解釈にこだわることではないのですけれども、やはりはっきりしておかなければならない。いつの間にか言葉がひとり歩きするといけないから伺うのですが、例えば東大の坂本義和教授が言うのは、同盟という場合は特殊な限定がない限り軍事同盟ということだと。それから第二に、同盟というときには通常相互的な関係を指すのであって、これは総理が今片務的でないと言われた、それはそういう意味だと思います。非対称であったこれまでの八一年以前の関係というものをシンメトリーな関係にしたということであろう、こういうふうに言われていますね。同感ですか。
  65. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 坂本君の言うことを必ずしも私は全部賛成はしない。思想の原点が違っております。しかし、今おっしゃった範囲内において、安保条約は双務的な、非対称性ではない、対称性を持っている要素もあるという点においては同感であります。
  66. 上田哲

    上田(哲)委員 総理が言われる同盟関係というのと同鯉国というのとは同じものですね。
  67. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が申し上げましたのは、今言ったNATOあるいはイギリスとアメリカとの関係とは違うけれども、しかし、日本独特の形でアメリカとの相互安全保障体系を持っておる。相互という言葉が書いてあります。相互安全保障体系を持っておる。そういう意味においては、一種の防衛上の同盟関係にあると考えていいと思います。
  68. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、くどいようですが、その同盟関係というのと同盟国というのと同じことですね。
  69. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはそのときのフレーズの調子であって、その文章がどういうふうに響かれるかということであって、関係という言葉を必要とする場合には関係とも書くでしょうし、必要としない場合には関係という言葉を入れないが、しかし、日本アメリカとは今申し上げたように独特の同盟国である、そう申して差し支えないと思います。
  70. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりました。非常によくわかりました。同盟国である、軍事同盟国であると。  あわせて、そうなると、日本がこれまで結んだ他国との軍事同盟というのは、三回に及ぶ日英同盟と日独伊三国同盟です。この違いはどこにありますか。
  71. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは外交史の問題になりますから、外務省の専門官から答弁させていただきたいと思います。
  72. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、それはいいです。総理と——防衛庁長官もやり、この問題について一番見識のある方がお役人なんかに任せたのでは、政治の議論になりませんよ。
  73. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外務省のある有能なる公務員が本を書いたことがあります。危機管理等に関する本であります。また外交政策に関する著書でもありますが、それを読んでみると、過去の経験から見ると、日本がアングロサクソンと提携してきたときは常に成功し、平和を維持し、そして日本は繁栄してきた。しかし、アングロサクソン以外の国と同盟関係に入ったときは非常に不幸なことであった。これは日独伊三国同盟を意味するのでしょう。日英同盟と日独伊三国同盟の差をそういうような地政治学的な、あるいは国の性格からしてそういうふうに定義づけておる。私はこの点にも多少同感な点がありまして……(上田(哲)委員「日独伊と日英じゃなくて、今、日米安保とこの二つとの違いです」と呼ぶ)ここで申し上げるのです。  つまり、アングロサクソン、アメリカはいろんな人種が入っていますけれども、アングロサクソンと言っていいでしょう。そういう意味において、日英、日米、これは成功の部類に入る。しかし、日独伊、これは失敗の部類に入る。これが将来どういうふうに展開していくか、われわれの努力ですけれども、いままでの過去の外交史の経験から考えてみると、これはやはり傾聴すべき言葉であって、恐らく吉田元首相もそういう考えを持っていたのではないかと思います。
  74. 上田哲

    上田(哲)委員 私は成功か失敗かを聞いているのじゃなくて、一つはっきりしたのは、文脈の流れでどっちを使ってもいいのだというから、同盟関係でも軍事同盟でもよろしい、だからそれは同じものだということで、それはいい。したがって、今度、そうなると、そういう関係を我々の国が持ったのは、これまで三回に及ぶ日英同盟と日独伊三国同盟があったから、それと今回の日米安保条約というのとはどういうふうに違うのか違わないのかということを伺ったわけです。
  75. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはやはり、あの当時のヒトラーやムソリー二氏と日本の軍部を中心にする体質の問題もあったと思います。それからやはり持たざる国という共通面もあって、そこヘナショナリズムあるいは非常にウルトラナショナリズムというものとが結合してああいう不幸な事件を起こしてしまったという面もあると思います。  しかし、英国とか米国の場合は、あれはみんな海洋国家でありまして、アメリカは大きな大陸ではあるけれども、あれは海洋国家だと私は思います。貿易でやっぱりやっております。そういう意味で、海洋国家と大陸国家というのを、私、自分の本でも書いて分析しておりますが、大体、海洋国家というものは貿易で生きていくものですから、平和を非常に欲する。戦争になれば貿易がストップして干上がってしまう。そういう意味において、割合に平和を欲する。そうして非常に開放的である。したがって民主主義的である。そして、それは主として海軍が強くなる。それが海洋国家である。  ところが、大陸国家の場合は割合に自給自足ができる。したがって、アウタルキーという傾向を持つと、どうしても陸軍が強くなってきます。そしてアウタルキー、陸軍というものが結びつくというと、全体主義、独裁主義という傾向に入ってくる。そういう傾向にある方向と海洋国家である日本とが提携した、そこに日本の悲劇が生まれたという面がなきにしもあらずであると私は見ておった。そういうことを本に書いたことがあります。
  76. 上田哲

    上田(哲)委員 私は、日英同盟や日独伊三国同盟と日米安保条約とは全く違うものだというふうに思っていたんですが、じゃ、重なり合う共通の部分もかなりあるわけですね。
  77. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは非常に違います。さっき申し上げたように、日米安保条約は世界にも独特の防衛関係の安全保障を維持していくというものであります。
  78. 上田哲

    上田(哲)委員 そうなりますと、例えば国際法辞典とか新法律学辞典等読みますと、同盟というのには三つのタイプがある。防御同盟、攻撃同盟、攻守同盟。日米安保はどれですか。
  79. 倉成正

    倉成委員長 小和田条約局長
  80. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、総理ですよ、こういうのは。
  81. 倉成正

    倉成委員長 権威者がおりますから、どうぞ聞いてください。
  82. 上田哲

    上田(哲)委員 委員長、勝手にやってもらちゃ困るな。せっかくこれを総理とやり合っているのだからね。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 条約の解釈の問題でありますから、条約局長から答弁させます。
  84. 小和田恒

    ○小和田政府委員 条約の比較の問題でございますので、一言御説明申し上げます。  日米安保体制というものと過去の、例えば日英同盟とを比較いたしまして、基本的に違う点は二つあると思います。  一つは、御承知のとおり、日米安保体制というものは……
  85. 上田哲

    上田(哲)委員 そこは聞いてないの。攻守同盟云々のその三つの分類のどれに入るかと聞いている。
  86. 小和田恒

    ○小和田政府委員 そのどれに入るかということについて、一言でお答えするのは若干困難でございますので、ちょっと御説明したいのですが、日米安全保障条約というのは、御承知のとおり、国連憲章の枠内において締結されたものでございますので、戦前の、国連憲章ができる前のいわゆる攻守同盟、攻撃同盟、防御同盟というようなものとは基本的に質を異にするものであるということが一点目であります。  もう一点は、先ほど総理から御説明がありましたように、攻守あるいは攻撃というような形において、相手国の一方が攻撃を受けたときに、それに対する援助義務あるいは武力をもって参加するというような双務的な考え方というものは、日米安保体制には全然入っておりませんので、日本が攻撃されたときにアメリカがそれに対して共同対処をするという形の条約である、この二点で基本的に違っておるわけでございます。
  87. 上田哲

    上田(哲)委員 全然わからないよ。だからまあどれにも入らないで特殊なものだ、しかも双務的になっているんだ。日独伊三国同盟にも日英同盟にも重なる部分もある。非常にユニークなものになってきて、よくわからないけれども、総理がいろいろ言われた中で、双務的で例を見ないユニークな軍事同盟であるということになりますね。  私は、抽象的な議論をしてもしょうがないと思うから、ひとつ窓を開きますけれども、これまでと違うのは、やっぱり武器技術供与というのが入ってきたということですね。これはウェスト国防次官補なんかでも、将来の兵器システムの研究、開発、設計、生産、製造など相互に協力していくことになるんだということを言っておるわけだし、アメリカなんかはNATO諸国と、例えば一本のねじの規格まで統一した百五十くらいの協定を持っているわけですね。やっぱりそういう方向をこれからたどっていく要素があるわけですか。
  88. 木下博生

    木下政府委員 アメリカはNATOの一国でございますから、NATOのヨーロッパ諸国との間で、できるだけ兵器の標準化を進めるための話し合いをやっているようでございます。  我が国の場合には、日米安保体制にもございますし、それから過去において導入しました武器、兵器がアメリカのものが多いというようなことがありまして、日本アメリカとの場合には、そういう意味でいわゆるインターオペラビリティーという見地からは、従来からも既に相当進んでいた面がございます。
  89. 上田哲

    上田(哲)委員 よくわからないけれども、つまりNATOはたくさん国があってアメリカ一つだから百五十も要るけれども、日本はそうはいかない。しかしやっぱりねじ一本に至るまで、ねじまでと言わなくても、そういう兵器のシステム等々は同じ規格を図っていくような方向をとるのかとらないのか。イエスかノーかでいいんですよ。
  90. 木下博生

    木下政府委員 政策として、防衛庁の保有します武器について、ねじ一本までアメリカと合わしていくような政策で進めているということはございませんが、過去において多数の兵器をアメリカから導入しておりますので、そういう部分については同じような、標準的なものを使っているわけでございます。
  91. 上田哲

    上田(哲)委員 やっぱりその方向をとるわけですね。  話を大きくすれば、アメリカ上院が八二年の十二月二十一日の本会議で、「効果的な通常自衛力を一九九〇年までに完全に展開する上で必要なレベルまで毎年の防衛支出を直ちに増額すべきである」という決議を全会一致で可決しているわけですね。こういうものに拘束されるのですか、総理
  92. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の防衛、日本の装備というものは、日本の主権のもとに独自に行っていくべきものであります。ただ、安全保障体制を日米間で持っておりますから、より効率的にいくというためにはいろいろな調整も考えていい、そういうことであります。
  93. 上田哲

    上田(哲)委員 日本軍事費、日本の予算ですから、それは日本国会が決めるのが独立国であって、これをほかの国の本会議が満場一致で決める、つまりこれはシーレーンのことを言っているわけですから、それを決めるということは、私は全く関係ないことだというのでなければならないのだが、今のお答えはすっきりしないのですが、それと調整する云々ということになると、これはその奥にその同盟関係というものがしっかり一つ具体的に浮かび上がってきますね。
  94. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 最初に申し上げたところが重要で、日本の主権のもとに独自に日本が決めていく問題ですとはっきり申し上げた。  ただ、安全保障条約というものを結んでおる関係で、これを効率的に運用するということは、日本の独自の防衛力を増していく点に非常に効き目がある、そういう場合があります。そういう意味において、これを調整して、より効率的に運用するということも心がけることは、賢明なる政策であると思います。
  95. 上田哲

    上田(哲)委員 仮に第三のA回ならA国、B国でもいいんですよ、それがあって、その国の議会が満場一致でそれを決めたとなれば、これは内政干渉ですね。アメリカからの決定は内政干渉にならないのはどういうわけですか。
  96. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 人の国の政府やあるいは国会のお決めになることは主権の発動であって御自由でありますが、それをどういうふうに受け取るかということは、日本政府が独自に考えればいいことであります。
  97. 上田哲

    上田(哲)委員 主性の及ぶ範囲は自国の範囲でありまして、他国の、しかも予算あるいは国会の議決事項まで満場一致で決めるというのは、私は常識において内政干渉であると怒らなければ、総理大臣の立場がないと思うのですが、いかがですか。
  98. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やっぱり国会というものは国民を対象にしていろいろ行動しておるものでありまして、国民の税金をいただいていろいろあんばいをするということになれば、税金が有効に使えるように、また外国との関係においても余り過重負担にならないように議員さんがお考えになるのは当たり前のことでありますから、そういう決議が行われることは十分考えられることであります。それはやっぱり国会活動の一つでありましょう。ただ、それを日本がどういうふうに判断するかということは、日本国会日本政府が独自に判断すればいいということであります。
  99. 上田哲

    上田(哲)委員 どうもその場合の独自性というものはどういうものか、独立性というものはどういうものかというのが、ちょっと私はわからなくなってきたのです。  そこで、もう少し具体的に突っ込んでお尋ねをいたしますが、どうも日本の国防政策、防衛政策軍事政策というものについては、殊さらアメリカ側から余計間こえてくる、日本国会で我々が議論するときには余りはっきりしないけれども、どうも英語で聞こえてくる、こういう傾向がありますね。例えば、昨年の十一月、レーガン大統領が来日されたのだけれども、お帰りになった明くる日の十三日にソウルからラジオ放送が行われて、防衛面で軍事的分担強化の約束を中曽根首相から取りつけたというのが流れたわけですね。これは外電からキャリーされて、私ども、ああそういうものかと思ったわけであります。  八五年度版のアメリカ国防報告が出てみたら、いろいろこう書いてあるわけです。「日本の中曽根総理大臣が、日本の領土と周辺海空域及び一千マイルまでのシーレーンを防衛するという日本の意思を再確認した。」と、わざわざ「再」と書いてあったり、これはどうも総理の意向や何かをはっきり国民あるいは国会が理解するにはアメリカ側の文書を見る方が早いというような傾向があるとすれば、非常に残念なことだと思うのですが、そういうふうにはお考えになりませんか。
  100. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一番正確なことは、日本国会議論を聞くことが一番正確であります。
  101. 上田哲

    上田(哲)委員 そのとおりであります。そのとおりでありますから、このシーレーン問題などという、アメリカの本会議で何を決めようが、どんな国防報告が出されようが、それは一つの資料として私たちは受け取らしていただくということでなければなりません。ここで総理が言われることが我々にとっては一番責任のある発言でなければなりません。言葉遣いもそうであります。だから、私は、同盟国というような言葉についても、どうなのかということをちゃんと明らかにしていただかなければ、国民に向かって我々は話ができぬと思うのですが、そういう中では総理、国防報告で英語で書いてあるやつを翻訳して、これでいいのかと言ったら、当たらずといえども遠からずというのは困りますな。これは日本語で、日本国会できちっと言っていただかなければならないのであります。そういう意味でひとつ日本語ではっきりしていただきたいのです。  今の、「日本の中曽根総理大臣が、日本の領土と周辺海空域及び一千マイルまでのシーレーンを防衛するという日本の意思を再確認した。」これは外務省が翻訳した言葉ですけれども、これでも「日本の意思」というところがヒズ・ネーションズ・インテンションとなっているわけです。日本の意思には違いないのだけれども、ほかの翻訳によれば、「国家の意思」あるいは「国の政策」とかいろいろな言い方が出ております。このヒズ・ネーションズ・インテンションというのは、総理日本語で何と責任を持って言われますか。
  102. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、「かの国民の意図である」。インテンションという言葉はむしろ意図という表現がいいのではないかと思います。
  103. 上田哲

    上田(哲)委員 ネーションというのは国民ですか。私は国民じゃないと思うのですが。これは「国家の」じゃないですか。「国の」という意味じゃないですか。国の基本の意思という意味じゃないですか。このネーションは国民の方ではなくて因の方じゃないですか。間違いじゃありませんか。
  104. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その前後の文脈をよくもう一回調べないとわかりませんが、場合によっては「国」と訳してもいい場合があると思います。
  105. 上田哲

    上田(哲)委員 これは字引きを引けば簡単なことかもしれないけれども、この場合のネーションは国民じゃなくて国ですよ。わからなかったらこれを見てください。それははっきりしてもらわないと困る、あなたが総理大臣なんだから。主語がプライムミニスター中曽根で、ヒズ・ネーションズ・インテンションとなるのだから、これは国民だということになると、「国民」はあなたの国民ということになってしまうのです。これは違うのですよ。国の意思でなければならない。意思のところは「意思」でいいです。意志のところは意思でいいけれども、そこのところはどうですか。どっちでもいいみたいなことでは困ります。
  106. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その辺は外務省条約局から言葉の解釈をさせたいと思います。
  107. 上田哲

    上田(哲)委員 いやいや、それはだめだ。総理大臣がアメリカ意志を再確認してきたと言われるのに、これをとにかく外務省に聞くなんという話じゃ、総理大臣という立場じゃないじゃないですか。
  108. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカ側のステートメントというのは、アメリカ側が自分で考えて、そして自分の主権の範囲内で言っていることでありますが、日本側の考え方というものは、私の言うのが正確な考え方であります。その場合のアメリカ側の英語と、向こうが表現した英語というものをどういうふうに訳したらいいかという問題になるのであって、その言っていること自体がまず本当に正確であるかどうか、正確に訳しておるかどうか、そういう問題でありますから、それは条約局の係官からやらしていただくのが正しいと思います。
  109. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、いいんです。それはいいんです、おっしゃるとおりですから。私はアメリカ国防報告の英語の解釈なんかここでやるつもりは全くないですよ。あなたが何を約束し、あなたが何を再確認したか、今後どうするかということをここで言っていただけばいいのであって、アメリカなんかちっとも関係ありません。
  110. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は鈴木前総理のお考えを受けまして、まずレーガン・鈴木コミュニケはこれを守るということもはっきり言っております。  それから、シーレーンの問題については、ここでいつも御答弁申し上げているように、我々はシーレーンという言葉をややもすると「航路帯」と訳し過ぎるのですね。そうじゃなくて一般に「海上防備活動」、そういうふうに訳すのが正しいのでありまして、その中には哨戒もあるし、護送もあるし、あるいは沿岸防衛、港湾の防衛あるいは海峡防衛も入るわけです。その総合的、複合的効果として防衛を考えているわけですね。その中の一つとして、もし将来航路帯を設けるという場合には大体千海里の範囲内で設ける、そういうふうに意図を持っておる、それは努力目標である、その努力目標を実現していくためには、アメリカ側とどういうふうにこれを具体的にやっていくか協議していく、そういうことをはっきり申し述べております。
  111. 上田哲

    上田(哲)委員 話がちょっと飛びましたけれども、航路帯という言葉が適当でないとおっしゃるのは大変結構です。それはよく整理されてきたと思いますから。私はそのことは承認をして、そこからまた次の議論をします。今話を戻しますがね。あなたの言葉でしっかり、アメリカとどういう約束をし、あなたの決意として、いかなる主権の発動を考えるかということを日本語でしっかり、日本国会としては聞いておきたい。  そこで、さっきの言葉は、国策ですか、国家政策ですか、どういう言葉ですか。
  112. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 かの国民の意図と申し上げたのですね。インテンション……。
  113. 上田哲

    上田(哲)委員 ちょっと総理、国民とおっしゃるのは、これは間違っていると後であなたが困るから、これを見てくださいよ。
  114. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ですから、その訳をどういうふうにするか、外務省条約局で訳したなら「国家」ということに。なるでしょう。しかし、外務省条約局がそれをオーソライズしているかどう……
  115. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、この訳はどうでもいいんですよ。どうでもいいから。ここに書かれてある、アメリカ国防報告が言っている、中曽根総理大臣がこの一千海里シーレーン云々を再確認をした、それをネーションズ・インテンションとして再確認したというふうに言われているという事実行為があるわけでしょう。その事実行為を、あなたは日本国民に対しては国家意思あるいは国策、国の政策、どういう言葉で確認をしたというふうに言われるのかということを聞いているのです。
  116. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そうでしたら、我が国の防衛政策の意図、目標、そういう意味で今の言葉は解釈して結構であります。
  117. 上田哲

    上田(哲)委員 でも国策という言葉が出ていますからね、この間。当たらずといえども遠からずと言われたものだから、国策という言葉をあなたは承認されたということになって流れているのです。そうじゃなくて、今の言葉に統一されるわけですね。  そうすると、もう一つ、ほかの部分のところに、例えば「国家的分業下で」という言葉があるということに報道もされているわけです。その国家的分業、これは訳はどうでもいいんですよ。訳はどうでもいいんですが、私の見る限り、「国家的分業下での」という言葉は、直訳であるけれども、ほかにはない。外務省の訳では「役割分担上」と、こうなっている。これは「国家的分業下」での確認。誠実に実行すると言われているわけですが、そういうことになるのですか。言葉をはっきりしてください。
  118. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはそのとおりで、私はそのときもお答え申し上げましたが、日本は盾であり、アメリカは、やりである、そういうような役割分担を防衛上においては、概括的に、一言で言えばやっておる、そういうことを申し上げたわけであります。
  119. 上田哲

    上田(哲)委員 言葉にこだわっているのです。役割分担上なんですか、国家的分業上なんですか、どっちですか。
  120. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国家的分業というような言葉は私は使いませんね。いつも役割分担という言葉は使っております。
  121. 上田哲

    上田(哲)委員 向こうの言葉はどうでもいいのですけれども、参考に言うとアンダー・ナショナル・ディビジョン・オブ・レーバーと、こうなっているわけですね。だから、直訳すれば分業上という言葉が出てくるのでしょうけれども、一般には分業上というふうに流布されたわけです、数日前。そうではなくて、総理大臣としては役割分担という言葉をお使いになるわけですか。
  122. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はいつも役割分担という言葉をこの国会で使っております。
  123. 上田哲

    上田(哲)委員 そこで、さっき言われたので一千海里、周辺数百海里、これは公約ですか。いつから公約になったのかというのがよくわからないのですよ。これは公約なんですね。
  124. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、正式にそういう表現が出たのは、鈴木元総理がワシントンへ行かれてナショナル・プレス・クラブで講演をして、外人記者の質問があって、そのときに我々の意図を表明した、それからずっと続いてきていると思います。
  125. 上田哲

    上田(哲)委員 つまり公約なんですね。
  126. 倉成正

    倉成委員長 北米局長
  127. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、総理大臣に聞いたのだから、途中から出ないでくれよ。
  128. 倉成正

    倉成委員長 事実関係を北米局長にいたさせます。簡単に……。
  129. 北村汎

    ○北村政府委員 事実関係でございますので、答弁させていただきますが、公約ではございません。これはもちろん総理の御発言でございますから、それだけの重みを持つのは当然のことでございますけれども、これはあくまでも日本政策の説明を総理がされたということであって、それを公約というふうには解釈しておりません。
  130. 上田哲

    上田(哲)委員 総理外務省と違ってきたじゃないですか。公約だとおっしゃったんだ。じゃ、総理は公約ではないと訂正をされるわけですか。
  131. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、日本の意図であり、我々の目標である、そういうふうに申し上げたとおりです。
  132. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、言葉にこだわりますけれども、さっき公約か、いつから公約になったかと言ったら、八一年五月のあの日米共同声明以来、鈴木総理云々のところからずっと公約になったんだ、こうおっしゃったんです。ところが、公約ではないと言われるわけですね。
  133. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのところは私が言葉を短くして言った結果で、失礼いたしました。つまり、いきさつを説明して、鈴木元総理がナショナル・プレス・クラブで講演したときからそういう言葉が出てきたのですというのは、シーレーンの話を指し示したものでありまして、公約云々に対して答えた言葉ではないので、公約云々かという御質問があれば、それは我々の目標であり、そして意図であります。だから、我々の一方的な意図であり努力目標である。外国と約束して正式に決めた公約とは違います。アグリーメントではない。そういうことは今北米局長がお答えしたとおりであります。
  134. 上田哲

    上田(哲)委員 これは非常に重大な問題でして、これは国務副長官のステッセル、ドネリー在日司令官、それからワインバーガー、そのほかすべてみんな公約という言葉を使っているし、それから宮澤官房長官も公約でありますという国会答弁をしているわけです。これを公約でないという新しい解釈が出てきた。これでいいんですか。
  135. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほども御答弁いたしましたように、これは鈴木総理がナショナル・プレス・クラブで発言された言葉でございます、政府政策の説明であり、意図を表明されたわけですけれども、それは決して国際的に日本がこういうことをいたしますということを約束した、そういう意味での公約というものではございません。
  136. 上田哲

    上田(哲)委員 これは重大なことになってきましたよ。公約かどうかということは、八二年三月四日ドネリー在日司令官が日米協会で、三月二十六日ワインバーガー国防長官日本記者クラブで、四月六日宮澤官房長官が参議院安保委で、四月八日ドネリー在日司令官が経団連会館での講演で、六月二十日ステッセル国務副長官がASEANのシンガポール記者会見で、こういうところで全部公約だと言うのを受けて宮澤さんが統一見解としてそういうふうにおっしゃっている。そして特に、去年の十二月十二日、我が国の総選挙のさなかにワシントン記者クラブでワインバーガー国防長官が、これは日本の二人の首相がみずから設定したもので、日本の憲法にかない、世界情勢に必要なものであり、特に日本自身が言い出した公約であると言っています。  私どもは、今日まで十分いろんな長い間の経過がありましたけれども、これは公約だというふうに理解をしてまいりました。こういうことが公約でないと今はっきり、ほかに言われたか言われないかどうでもいいんですよ、最高主権の場である国会ではっきり公約でないということになったとすると、これはやはりアメリカに向って大きな問題になってまいります。これは私は日本の外交の基本にかかわる問題だから、こんなことを言葉のやりとりでやっていてはいけないと思うのです。政府がしっかり統一見解をまとめてください。それまでちょっと待ちましょう。
  137. 北村汎

    ○北村政府委員 このシーレーンに関する鈴木総理の発言は、あくまでも日本が自主的に憲法の枠の中でやる、整備する、こういう発言でございました。もちろん総理の御発言でございますから、それなりの重みは非常にあるわけでございますけれども、しかしそれは国際法上のそういう約束であるとかアグリーメントとか、そういうものではございません。
  138. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 上田さん、よく聞いてください。日本総理大臣がナショナル・プレス・クラブのような公の、世界的にも聞こえる場所で申し上げたことというのは、日本総理大臣の言葉として響いて、重さを持っておるわけであります。その場所で言ったことはやはり言ったという事実としてそのまま受け取らなければならぬ問題であって、日本はこうする、こういう意図を持っておると言ったら、それはそのようなものとして外国がみんな信用していいことです。しかし、そういう意味においては、日本はそれを言ったらそれは守るであろう、つまりその意図あるいはその目標というものを実現していくために守るであろう、実行していくであろう、努力するであろう、それはもう当然外国から期待されるべきことであって、それは覚悟の上で言っていることであり、そのとおりであると思いますけれども、外国の政府に対して外務大臣同士でこれを約束するとかというアグリーメントとか、そういうような性格のものではない。しかし、総理大臣がそういう外国の大きなナショナル・プレス・クラブで言ったということは、それなりの大きな重みと重要性を持っておる、そのように解釈して差し支えありません。
  139. 上田哲

    上田(哲)委員 私は疑念を持っていたんですよ。これはどう読んでみても、八一年五月八日の共同声明の第八項になるんですが、この第八項の中には役割分担ということは書いてあるけれども、シーレーンという言葉も何もない。一千海里だの何だのというのは全然どこにもないんです。公表されている映りはどこにもない。二回目の会談を終わって、あれは三十分のやつが一時間半になって記者クラブを得たしておいて、びっくり仰天して急いであたふたと駆けつけたナショナル・プレス・クラブで鈴木総理が自分でやったステートメントではなくて、記者団の質問に答えて、あれは庭先だから、第七艦隊がペルシャ湾、インド洋にどんどん行ってもらうために、安心してスイングしてもらうために、うちは周辺数百海里、一千海里のシーレーンを断固守るよと言った。質問に答えて言ったんです。これが公約になってしまうというのは、どうも外交慣習上私はおかしいなと思っていたんですよ。思っていたんだが、ずっと公約だ、公約だという話が出てきて、日本も公約だと言っているじゃないですか。こういうことになってきた経過の中で、全世界注視の中で、その公約だという話がここで否定されたということになると、これは言葉のあやだ、理解だということじゃなくて、重大なディプロマティックビヘービアの問題になりますよ。この問題は私はいいかげんにしてはいけないと思うのです。  しかも、どうもおかしいと思っていろいろ調べてみるんだが、ある種の情報によりますと十その五月八日の日に鈴木総理が、表に出ている話じゃなくて、ワインバーガーさんと会って、そこでこの一千海里云々の問題を約束されたという話もある。それがあるのなら話は別なんだ、秘密協定がどうか知らないけれども。その事実も調べてください。そのことをあわせてひとつはっきりしたことを言っていただかないと、これはちょっと議論は進められないんじゃないか。
  140. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいま委員が五月八日、すなわち共同声明が発表された日に鈴木総理がワインバーガー国防長官にそういう話をされたというような事実があるかという御質問でございますが、そういう事実はございません。(上田(哲)委員「とすれば、じゃ、ますますこれはもう公約じゃないんですな」と呼ぶ)
  141. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、そういう日本総理大臣がナショナル・プレス・クラブのような世界にすぐ通ずる、いわば公的に近い場所でステートメントとして質問に答えて言ったことは、それなりの責任、日本自体の約束を守るという意味におきましては、責任の伴う重さのある言葉である、そう私は考えております。だといって、それがアメリカ政府に対してそれを約束した公約という、アグリーメントという、そういう性格のものではない。しかし日本は、そう言った以上は、そのもとに努力もし、実現に向かって今後とも積極的にあらゆる努力をしていくべきものである、そう考えて差し支えないと思います。
  142. 上田哲

    上田(哲)委員 宮澤官房長官が公約でありますということを言っているわけですよ、この議事録があるので、これはやっぱりはっきりしてください。  だから、参議院の安全保障特別委員会で、八二年の四月の六日にまとめているわけですよ。
  143. 北村汎

    ○北村政府委員 今その議事録を取り寄せております。その上で、その文脈その他、そのときの意味を御説明いたしたいと思います。(「それじゃ休憩だ」と呼ぶ者あり)
  144. 倉成正

    倉成委員長 上田君、申し上げますが、先ほどディプロマティックビヘービアとか、なかなか難解な言葉が出てきて、委員長よくわかりませんので、なるべく日本語でひとつ御説明いただきたいと思います。  したがいまして、今の事実関係、よく調査いたしますから、時間がもったいないですから、どうぞ。(「いや、だめだよ」と呼ぶ者あり)お続けください。上田君、どうぞ。事実関係はあれいたしますから。(「事実関係が決まらなければ続けられないんだよ」「休憩」と呼ぶ者あり)  ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  145. 倉成正

    倉成委員長 速記始め。  それでは再開いたします。  政府側、速記録について答弁をしてください。何月何日ということをはっきり言ってください。
  146. 北村汎

    ○北村政府委員 お答え申し上げます。  昭和五十七年四月十六日に開かれました安全保障特別委員会におきまして、素姓委員の御質問に対し、宮澤大臣がこういうふうに答えられておられます。お読みいたします。   昨年五月にワシントンのナショナル・プレスクラブにおきまして記者団の質問がございまして、それに対して鈴木総理がいまのようなことを答弁をされたわけでございます。これは無論政府の方針として総理大臣が答えられたものでございますし、今日もなおこれはわが国の政府の方針でございます。  公約云々ということにつきまして議論になりましたのは、このような問題はわが国が当然のことながら自分の政策として独自に決定をすべき性質のものであって、よそから頼まれてするとか、あるいは人に約束をして云々という性格のものでございませんので、公約というようなことは適当なことではない、こういうふうに申しておるわけでございますけれども、これが日本政府の方針であるということについては少しも違いはございません。  以上でございます。
  147. 上田哲

    上田(哲)委員 これだけではなくて、政府の答弁というのが公約を認めたという経緯はいろいろあるわけでありますが、これは後でひとつ議論をさしていただくとして保留にして、その分を先に進めます。  私は、国の方針ですからはっきりしなければならない、対外的に。そこで総理が公約ではないとおっしゃる立場であれば、まさに宮澤前官房長官の言われるように、政府の方針としてはシーレーンを政策としてとる、こういうことになりますね。
  148. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そうです。政府の意図であり、政策であり、努力目標であります。
  149. 倉成正

    倉成委員長 ちょっと上田委員に申し上げますが、先ほど上田委員が御質問になったのは五十七年の四月十六日の速記録でございますか。それとも何か違うことを根拠にしておられるか、あればひとつお示しください。
  150. 上田哲

    上田(哲)委員 速記録が自分の手元にありませんので、精査いたします。
  151. 倉成正

    倉成委員長 それでは、上田委員の根拠とされる日にち、どういうものを根拠として御発言になっておるかということを、ひとつせっかくの機会ですからお示しください。
  152. 上田哲

    上田(哲)委員 それでは、時間をこれから急ぎます。  そうなりますと、政府としてはシーレーンを政策目標として設定するということになりますね。このシーレーンの政策目標、つまり整備計画というものと「防衛計画の大綱」との間にはずれがございますね。
  153. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  委員が御指摘の問題について必ずしも具体的なポイントが明確でない点もございますが、私が理解した限りで申し上げますと、いわゆる「防衛計画の大綱」におきましては、限定、小規模な侵略について独力で排除というふうなことがあって、それとの関連でシーレーンの防衛の問題が食い違いがあるのではないかという御指摘かと思います。  私の理解をいたしておりますことは、「防衛計画の大綱」におきましても、直接侵略の事態が発生した場合の対応の仕方が書いてございまして、そこには限定的かつ小規模な侵略については……
  154. 上田哲

    上田(哲)委員 それはいいです、もう。ちょっと時間がない。  時間がなくなったので、二つの問題に絞ってお伺いしたい。  明らかに「防衛計画の大綱」というものによって示されている装備充実計画とシーレーン、日本政策としておとりになるというそのシーレーンとの間には差があるわけであります。現にそれにもかかわらず「防衛計画の大綱」を実現していくためには五十八年、五十九年の二年、この予算計上分を含めてこの二年間で正面装備で二七%、このままいくと七%ないし九%伸び率赤なければこの「防衛計画の大綱」は実現しないわけであります。ところが政府は、その上のシーレーン計画を政策目標にされるということになりますと、政府が提出されておる財政試算によると、六十五年までに赤字国債をゼロにするという例の形でいきますと、年率一〇%以上の防衛費を計上しないと「大綱」の線まで到底いかないということになります。  総理にお伺いしたいのですが、「防衛計画の大綱」が、今のままでいくと一〇%以上の伸び率を持たないと達成できない。その上、その上にあるシーレーンに向かっては、私の試算、細かく申し上げられませんけれども、私の試算で申し上げると、少なくともパトリオットの導入とかミサイルを含む弾薬備蓄を除いても護衛艦、潜水艦、迎撃戦闘機、支援戦闘機、対潜哨戒機、早期警戒機、輸送機だけでも二兆九千億以上の上積みが必要になってまいりますから、まさにこれ以上の、言うなれば六十五年度で蔵出総額の一八%を超えるような軍事防衛予算を組まなければならないということになります。これは「防衛計画の大綱」のレベル、そしてシーレーンのレベルともどもに極めて不可能なことだと思うのですが、総理、いかがでしょうか。
  155. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 まず第一点は、現在私どもが進めておりますシーレーン防衛を目的といたしました防衛力整備と申しますのは、もちろん「大綱」で示されております防衛力の規模、その範囲内の問題でございます。その規模と申しますのは、護衛艦で言えば約六十隻、作戦用航空機でございますれは約二百二十機ということを基本にしておるわけでございます。この正面装備の充実ということは陸海空合わせての話でございますが、五兆三千億円ぐらいの期間中の新規契約を予定したいと思っておるわけでございまして、それに対して、御指摘のように五十八年、五十九年の両年度で進捗率が約二七%ということであることは事実でございますけれども、今後六十年度以降の一層の努力によりましてできる限りこの目標を達成するための努力をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、もう一つ歳出の伸び率の問題でございますが、先生お示しになりました数字は、昨年の時点におきまして、五十八年度予算をベースにいたしまして、当初に五十七年に五六中業を作成をいたしましたときに大まかな試算として参考に公表いたしました五六中業期間中の所要経費十六兆四千億ないし十五兆六千億というものをベースにいたしまして、それの五十九年度以降の残伸率を単純に試算すればそうではないかという数字が出たことがございます。しかしながら、これはもともと……(上田(哲)委員「簡単に言ってください」と呼ぶ)この数字というものは極めて大まかな試算でございまして、これは積み上げたものではございません。参考の数字にすぎません。  そこで、六十年度以降の防衛費の規模というものは、それは毎年度の経済、財政事情を勘案し、それから他の諸施策との調和に配慮しながら「防衛計画の大綱」の早期達成を基本としつつ毎年度において決められるべきものでございまして、現在のところ、どのくらいの伸び率が必要であるかということがはっきりと申し上げられる段階ではございません。
  156. 上田哲

    上田(哲)委員 総理、時間がなくなってくるので、ひとつずばり伺いたいのですが、総理もかつて八千トン級のヘリ空母を持ってシーレーンをやるのだということを言われたことがあります。これは防衛庁長官時代です。その当時の輸送船団の感覚のシーレーンとは違うと思うのですよ。さっきも航路帯ではないのだと言われた、これは私は認識は到達したと思うのですけれども、時間がないから、項目は三つですから総理からお答えいただきたいのだが、そういう時期のシーレーン概念ではないのですから、今の日本軍事力をどんなに整備していっても一千海里の防衛というのはできないだろうと思います。できるのだという線を目途としておられるか。それが何であるかということはともかくとして、そういう線を目途としておられるか。  それから、石油を守るのだとおっしゃるが、かつて総理はマラッカ海峡防衛論も言われた。マラッカ海峡防衛論は、言われたということはどうでもいいが、マラッカ海峡防衛論というのは不可能でありますね。だとすれば、一千海里でもって石油を守るのだという言い方が通るのかどうか。  第三に、これは防空能力を期待されているわけです。この防空能力というのを整備することが一体できるのか。この三点でシーレーン防衛なるものの虚構があると私は思うのですけれども、これをどのようにお考えですか。
  157. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、マラッカ海峡防衛論なんて言ったことは私はないと思います。それから、八千トン級のヘリ空母をシーレーンのために持つということも言ったことはないと思います。  そこで、シーレーンの問題につきましては、これはもし侵略があった場合に、我々が航路帯を設ける必要がある、そういう場合には航路帯を設けて努力をするし、その場合は一千海里までである。つまり、グアムまでは届かぬし、バシー海峡までも届かぬ。そういう意味でそれは表明してあるわけであります。しかし、「防衛計画の大綱」におきましても海上護衛活動、海上防衛活動というものは当然あるわけでありまして、ですから、船団の護衛という問題も、侵略が行われた場合それは近海においてはあり得ることであります。ですから、護衛艦があり護衛隊群というものがあるわけであります。それをどの程度延ばすかという問題については、これは一千海里というような長さになれば当然アメリカとの共同作戦も必要になってくる。したがって、もしそういうものを設ける場合にどういう態様でこれをやったらいいかということを今日米で検討している、また、せんとしておる最中であると思います。そういうことで我我が今努力しているということを御認識願いたいと思うのであります。
  158. 上田哲

    上田(哲)委員 もう一つ、例の空中給油問題です。空中給油問題は、私自身が七三年の四月十日の参議院予算委員会で当時の田中首相から政策としてはっきり確認をした事項でありまして、これは空中給油訓練を行わない、空中給油装置を持たない、空中給油機を持たない、この三点が確認されているわけであります。これは当時、足が長くなるということが憲法違反であるという論議もありました。しかし、政府側がその五年後の七八年三月四日に統一見解を出されて、そういう問題ではなくて周囲の状況が変わってきたので空中給油の必要が出てきた、こういう方針の転換をされたわけであります。私はその七三年当時から指摘していたのでありますが、これはCAP態勢を必要とするからだ。つまり、コンバット・エア・パトロール、これは原語ですからしょうがないのですが、CAP、そのCAP態勢だということであります。CAP態勢というのはそれ自体が有事の体制でありまして、簡単に言うならば、例えば第七艦隊の空母は必ずCAP態勢を持っております。フォークランドの場合にもインビンシブルにCAP態勢を備えました。ベトナム戦争でも米空軍がそのようにいたしました。こういうCAP態勢というのは、空中待機ではなくて戦闘空中警戒態勢であります。こういうものは明らかに今度のシーレーンの一千海里に向けての体制になってくるのであって、このことは単に足が長くなるのが憲法違反かどうかという問題ではなくて、あのときからCAP態勢をしこうとしていた防衛庁の感覚がここに出てきたと思うので、硫黄島に海難救助のような形で延ばしておかないと搭乗員が危なくなるというような性質のものとは違うのであります。まさにそのCAP態勢を有事のシーレーン体制としてしこうとするために出てくるのでありますから、私はこうした変更というのは許されないと思うのです。  しかし、そういうにもかかわらず、あえてやるとおっしゃるのであれば、少なくとも七三年四月十日の政府の見解、三つの政策というものを変更するということであり、CAP態勢をしくということでなければならないことになります。そういうことでお進めになるのでしょうか。
  159. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 CAP態勢と申しますのは……(上田(哲)委員「やるのかどうかを言っているのですよ。やるのかどうかを」と呼ぶ)これは日本の有事の場合を考えますと、航空技術の進歩が大変著しいものでございますから、低高度進入でございますとかあるいは高高度の高速進入というような進入能力が従来に比べますと非常に高くなっているという事情があると思います。したがいまして、私どもといたしましては、将来の問題としてそういう可能性は否定できないというふうには考えております。  で、その場合に、空中給油機能が活用できれば空中警戒待機の時間が延ばせるという意味で低高度進入に対する対処が速やかにできること、それから、あるいは高高度に対して待機したりということがありますので、これは現在はそういう計画を持っておりません、ただ、将来の可能性としてそれは否定するわけではございません。
  160. 上田哲

    上田(哲)委員 結論的に、これはもう田中総理のあれだったんだから、総理からひとつ結論的に伺っておきたいのです。政策変更をするのですか。政策変更はしないだろうと私は思うのです。今防衛局長が言われたように、五九中業になっても一機二百億もするようなこういう空中パトロール態勢、戦闘空中パトロール態勢というものは今とらない、とれないということになっていた方針でありますから、こういう空中給油機は購入しない、つくらない、持たないということになるでしょう、そういうことが一つ。  それから、政策を変更しないのであれば、それを持ってはならぬということになっているのですから、その研究ということも禁止される中に含まれてしかるべきだ、こう二点思います。いかがでしょうか。——これは総理じゃなきゃ困る、これは総理ですよ。
  161. 倉成正

    倉成委員長 防衛局長。簡潔に願います。
  162. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまの田中総理大臣の四十八年の御答弁に関しましては、五十二年の十一月に当時の三原防衛庁長官が、そういった空中給油の問題について将来の可能性はあるということをお答えになった経緯がございます。  それからさらに、先ほどもちょっとお触れになりましたが、五十七年の……
  163. 上田哲

    上田(哲)委員 それはいいのですよ。ちょっと済まないけれども、それは要らないの。だから、僕が聞いていることは、いいですか、政策変更しても空中給油機を持つのか。持たないだろうということが一つと、それから、禁じられているのであれば、研究を含めて将来に向かっての可能性というのはおかしいじゃないか。この二つだけですよ。
  164. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまの点は、五十七年の三月九日に政府がお示ししました見解の中でも、将来の可能性として空中給油というものがあり得るということを申し上げているわけでございまして、そういう前提に立って将来の問題としてこれは否定はできないということでございます。
  165. 上田哲

    上田(哲)委員 総理、簡単に言ってください。空中給油機は持たない。その前提に田中総理の決定した政策というものを政策変更しないだろうということが前提になりますね、第一。そうであれば、五九中業を含めて空中給油機は持たない。そして、そのための研究体制ということもやはり含まれるべきではないかと私は思うのですが、この三点。
  166. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前の政府の答弁に明らかにしておりますように、将来の可能性は否定しておりません。現内閣も将来の可能性は否定をしておりません。しかし、今は持ちません。(上田(哲)委員「五九中業を含めて」と呼ぶ)いつという時間を限定することは申し上げませんけれども、今は持たないけれども、将来持つ可能性はある、それは否定しない。
  167. 上田哲

    上田(哲)委員 若干の問題がありますので、後に精査いたしまして、持ち時間を後ほど使わしていただきたいと思います。
  168. 倉成正

    倉成委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  169. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上一成君。
  170. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、五十八年度の補正審議に当たって、まず経済見通しの実績というのですか、今日時点における内需、外需の比率、そういう点について外需の寄与度が当初よりも倍増している、そういう要因は一体何であったのか、あるいはそのことが五十九年度の経済見通しにどうはね返っていくのか、この点についてまず聞いておきたいと思います。
  171. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十八年度の経済は、当初よりも外需の寄与度が若干大きくなりました。大体今のところは内需が二・二%、外需が一・二、合わせて三・四%成長だ、このように想定をしておりますが、五十九年度は内需の寄与度が相当高まりまして、外需の寄与度は相対的に下がる、このように見ております。内需が三・六、外需が〇・五、こういう見通してございますが、五十八年度の外需が高まりましたのは、これはアメリカ経済の回復を契機といたしまして、我が国の貿易が予想以上に伸びた、こういう背景がございます。
  172. 井上一成

    ○井上(一)委員 反面、国内環境が非常に安定をしてきているというそういう中で、一体一人当たりの雇用者所得の見通しはどうなのか、この点について聞いておきたいと思います。
  173. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十八年度の一人当たりの雇用者所得は、当初見通しよりも若干下がる見通してありますが、五十九年度は一人当たりの雇用者所得は四・七%、このように想定しております。
  174. 井上一成

    ○井上(一)委員 国民としては、物価安定に大きな期待があるわけであります。とりわけ公共料金が、五十八年度ではまあ大方落ちついていた状況であった、にもかかわらず、五十九年度に向けて値上げが相次いでいるというそういう状況の中にあって、企業によってそれぞれの事情は若干違いがあろうと思いますけれども、国際経済情勢、具体的には原油の値下がり等によって高利益を上げている企業もあるわけであります。こういう企業に対しては、公共料金の引き下げ、さらには長期安定、据え置き、そういう行政指導を当然とってしかるべきだ、私はこういうふうに考えるわけでありますが、通産当局の考えをここで聞いておきたいと思います。
  175. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 井上委員おっしゃるとおり、公共料金、電気料金であるとかガス料金であるとかが長期的な安定を行っていることが国民生活の安定をもいたすことになるわけでございまして、できる限り長く安定させるということを、それぞれの会社等に私どもは指導していく所存でございます。
  176. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに私は、中曽根総理に財政改革について、あなたは、過去財政再建という言葉がしばしば出てきたそういう中にあって、財政改革ということをおっしゃられているわけです。私は、再建よりもむしろ改革だ、そのことにはもっともだと思うのですが、何か財政問題については、一般会計の赤字国債の六十五年めどの脱却を中心的な議論に据えられがちである。むしろ第二の予算と言われる財政投融資資金の運用の十分な把握がここで必要になっているんではないだろうか。そこにメスを入れるというのでしょうか、そこに洗い直しの視点を当てることが財政改革の大きな中心ではなかろうか、こういうふうに思うのです。総理の見解を聞いておきたいと思います。
  177. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 財投資金を点検して効率化していくということは、おっしゃるとおり財政改革の一つの要目であり、それは、臨時行政調査会の答申の中にもその点は触れていたと思います。
  178. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、むしろその財投資金の実情というものは非常に不良状況、不良債権なりあるいは通常一般的に判断をすれば非常に不良状況である、こういうふうな認識に立つわけであります。まあ事実上はモラトリアムのそういう状況にあるんじゃないだろうか。むしろそういうことを把握しているのは大蔵のごく限られた一部の人たちで、この一般予算の倍以上ある百二十兆円以上の資金が運用されている、そういうところにもやっぱり若干の問題があるんじゃないだろうか、こういうふうに思っているんです。ぜひこの点については実態の見直し、現況の実態をひとつ後刻私は御報告を当委員会に実はお願いをしたいと思うのですが、委員長、ぜひお計らいをいただきたいと思います。
  179. 倉成正

    倉成委員長 具体的な資料について項目等お示しいただけば、政府に提出させます。
  180. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに私は、国債の借りかえ、このことは何を意味するのか。まさに国際経済の動向を大きく左右したというドルの位置づけ、さらには開発途上国のいわゆる借入金の繰り延べのそういう問題、何か相似たものがある。国際的には、私はドル要因と、まあメキシコだからよかったものの、これはアメリカの援助があったからよかったものの、これが他の国であれば大きなパニックが起こっている。そういう状況で、国際的にはまさにそういう途上国の債務繰り延べ、国内的には国債のこの借りかえ問題は同じような位置づけというのでしょうか、同じような線上に置かれるべきだ、こういうふうに私は思うのですが、大臣、いかがでしょう。
  181. 竹下登

    竹下国務大臣 好ましい姿でないという意味においては、やむを得ざる措置であったと私どもも申しておりますとおり、そういうとらえ方からすれば、井上委員のおっしゃっているのも一つの見識だと私は思いますが、おのずから、債務累積国のいわゆる繰り延べ、それに伴うリスケジュール等とは、性格の違いはありますが、感覚的な御指摘は、私も否定いたしません。
  182. 井上一成

    ○井上(一)委員 感覚的には一緒だ、言葉はかえても実態は変わりないと思うので、こういう点については今後の財政運営に当たって十分な配慮を希望します。  それから反面、言い続けられてきた行政改革の問題、このことも中曽根総理に、私はむだのない行政、国民のための効果ある行政を推進していく、そしてそのことによって国民からの政治に対する、行政に対する信頼を深めていく、片方、増税によらない、財政改革による健全な財政運営が当然望む方向であろうと思います。  しかし、今指摘をしたように、一般会計でない、一般予算でない特別会計の中で幾多の問題点があります。私は決算の中で数多く指摘をしてまいりました。その具体的な一つの例としては、石油公団のむだ遣い。今回、石油税の引き上げが審議されるわけであります。あるいは五十九年度にはそれを見込んだ予算が組まれているわけでありますけれども、カナダのドーム石油に対する七百七十億円の融資、これはまさにむだ銭であったと私は指摘をし、昨年の十月、そのことについては一定の当局から見解、スリムになるんだという見解が表明されたわけであります。しかし、この焦げつきであるカナダ・ドルで四億ドルですから日本円にして七百七十億円ですね、これが二〇三〇年、まだ五十年近く焦げついたままで七百七十億円の金がそこにつき込まれているという、こういうめちゃくちゃな今の特別会計、そういうことについて私は大きな反省をしなければいけないと思う。  まあ、これは通産当局に聞いておきましょう。今後どういうような対応をしていくのか。さらには、これ以上もうこれだけの破産に追い込まれているドームにさらに追加資金、そういうことはめっさしないとは思いますけれども、そういうことも開発資金、後発の開発資金については出すのか出さないのか、あるいはこのドーム石油をどう位置づけているか、どう認識してどう対応するのか、このことについてお答えをいただきたいと思います。
  183. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 申し上げるまでもなく、石油の探鉱開発というものはきわめてリスクが大きいものでございます。しかしながら、我が国エネルギー資源の乏しい状況を考えますと、石油の安定供給確保ということについては、時によってはそのリスクに挑戦せざるを得ぬような我が国の宿命もあるわけでございます。と同時に、ホルムズ海峡の制約というものを考えてみますと、もっともっと自由で多角的な石油の供給源を確保するということも、我が国の悲願でもあるわけでございます。  このような状況の中で、ドーム社との交渉時期がちょうど第二次石油ショックの直後あったわけでございますが、そのような状況の中でこれを採択したということは、やむを得ぬ事情もあったわけでございます。その後、ドーム社の超積極的経営によりまして経営破綻が生じた。それでは、どうしてこのようなところとパートナーを組んだかということにつきましては、その当時としてはいろいろと綿密な科学調査もしたでございましょうし、あるいは経済調査もしたわけでございますが、しかし、現状は甚だ満足な状態でないということにつきまして、私たちは非常に残念なことと存じております。  北極石油につきましては、探鉱資金として既に貸し付けを行った四億カナダ・ドルの回収のために、会社自体は残す必要があるわけでございます。しかしながら、生産開始のめどのつかない現状においては、これは債権整理会社と申しますか、債権管理会社的なものとして残さざるを得ないわけでございまして、このため、当省といたしましては、石油公団及び会社を指導しまして、同社の大幅縮小を実施中でございます。  さらに、新しい開発資金の供与につきましては、ドーム社の経営が完全に立ち直り、今後の探鉱成果、油の値段の推移等あらゆる角度から見まして、プロジェクトの再建の可能性に確信が得られるなどの状況変化のない限り、新しい開発資金の供与を行わないように指導していく方針でございます。
  184. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに、開発資金としてのいわゆる一〇%ないし二五%を日本側は供与するというオプションがあるわけなんです。これについてはどうするのですか。
  185. 豊島格

    ○豊島政府委員 ただいま大臣御説明申し上げましたように、現在のところ、探鉱は続けておるわけですけれども、開発のめどが立っておらない、それからドーム社自身も経営的に苦しいといいますか、再建の途上にあるということでございまして、したがって、ドーム社がしっかり立ち直る、それから、開発のめどがついて十分引き合うような油が持ってこられるというような見通しが確実に立たない限りは、もうこれ以上金を貸すということは意味がないわけでございますから、そういうことで、開発資金は、そういう事情の変化ないしは非常に確実に油が開発できてやれるということでもない限りは貸さない、出させない、そういう指導方針をとっております。
  186. 井上一成

    ○井上(一)委員 石油公団も含めて、これはもうだめだと言っているのです。だからあなた方は、可能性なんというのはここにはないわけなんです。  総理にお伺いをしたいと思うのです。今お聞きのように、非常にむだだと私は思うのですよ。しかし、一定のリスクには挑戦しなければいけないけれども、やはり見きわめというものが大事である。だから、事実上これは撤収しているわけなんです。全部つぶしてしまったら債権が取れぬから、だからそういう事情はよくわかるわけです。しかし、こういうことはきっちりと早く、二〇三〇年まで待つのではなく、素早い対応がまさに行政改革、財政改革である、僕はこう思うのです。総理、どうですか。
  187. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 第一義的には、財投資金というものを丁重に、かつ慎重に、効率的に使うということ、第二義的には、それらの資金が出ております諸般の公私の企業等につきましては、経理その他を厳格にして、同じように効率的に使うように督励するということが必要であると思います。  具体的なケースにつきましては、経営の状況とか、当該政府との国際関係とか、諸般の問題があると思いますので、各省の判断に任じて見守っていきたいと思っております。
  188. 井上一成

    ○井上(一)委員 この問題はずっと続く問題ですから、またやります。ドームゲートと言われるくらいこの問題は非常に大きな要因をその中にはらんでいると思います。  さて総理、空港整備法では、第一種空港は運輸大臣、すなわち国が設置及び管理することになっているわけです。なぜ国が設置、管理するかと言えば、いわゆる公共性と安全性を担保するためである。公共交通の基本施設は国が責任を持って設置、管理をしていくという、そういう理念に当然かなっていると私は思うのです。  ところが、関西新空港は、今回予定されているところでは、資金的な需要関係も含めて、民間会社によって設置、管理をしようとしている。これは空港整備法の法律を変えてどうの云々ということよりも、空港整備法の精神に反しているのではないだろうか。民間法人でどのように公共性、安全性を担保していけるのか、そのことが大事ではないだろうか。だから、建設の可否を論ずるのではなくして、空港整備法の精神ということから考えれば、やはり国が責任を持って設置、管理していくべきではないだろうか、こういうふうに思うのですが。
  189. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 時代が非常に変わってまいりまして、臨調答申もいただいて、民間活力をさらに高揚してこれを国が利用する、そういう政策を内閣も打ち出しておりまして、今までの既成概念にとらわれないような新しいやり方を今やり始めているところであります。  関西新空港もそのジャンルの中に入るものでございまして、そういう意味におきましては、新しい例を今開きつつあると思います。しかし、その場合でも、やはり出資金の大部分あるいは借入金の大部分等々につきまして国が相当な負担をしておりまして、それに民間のバイタリティー、地元の活力というものを使わしていただく、そういう組み合わせでやっておるのでありまして、今の時代を考えてみましたら、こういう新しい方向に国のナショナルプロジェクトも次第に移行していく時代に入ったのではないかと思います。
  190. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ、現大阪空港の存廃についてはどのようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか、総理
  191. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 まず、私からお答えをさせていただきます。  関西新空港の第一期工事の完成を、ただいまのところ昭和六十七年度と考えております。この完成の時期、この後に、現在の関西国際空港をどうするかということを、それまでに十分いろいろな角度から検討して決定をいたすということにいたしておりまして、いまだ決定をしておらないというのが現状でございます。
  192. 井上一成

    ○井上(一)委員 次は総理にお答えをいただきたいと思います。  大阪空港の騒音訴訟は、御承知のように夜間の一定の制限をつけて、それを前提として和解が成立したわけです。今後国が空港周辺の環境整備にもっと力を入れて推進をしていくならば、現空港の存続も可能になるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけですけれども、総理の御見解を。
  193. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国全体の需要あるいは関西地方全体の需要を見ますと、とても今の伊丹ではさばき切れない情勢になっておりまして、やはり二十四時間使用できる大型国際空港の建設は、関西のためにも国のためにも必要ではないかと考えております。
  194. 井上一成

    ○井上(一)委員 現空港の問題について、存続も可能ではないだろうかということを中曽根総理にお考えを聞かせてほしいと言っております。——運輸大臣はいいです。
  195. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 私から先に答えさせていただきます。  現在の大阪空港につきましては、御案内のように最近騒音公害等の和解の勧告が出たばかりでございます。したがって、おっしゃるようなことは十分考えられることだと思います。そういうことも全部あわせまして、先ほど申し上げたように最終的に決定をする、かように考えておるわけでございます。
  196. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 運輸大臣が御答弁申し上げたとおりであります。
  197. 井上一成

    ○井上(一)委員 ここで運輸大臣に聞きましょう。  アメリカ空軍の軍事演習のために我が国の空の安全が非常に脅かされている、このことは私が再三申し上げてきたし、また指摘をしてきたわけであります。     〔委員長退席、小渕(恵)委員長代理着席〕  ところで、昨年の十一月三十日、我が国の民間機の航空交通は大きく乱れたわけでありますね、これは運輸省は既に御承知だと思いますけれども。多くの民間機が大幅に遅延をしたりあるいは大変な迂回をしなければならない、そういうような状況が続いたわけですけれども、このことは何が原因であって、何が要因であって、またそのときの状況は、混乱した状況、民間機に及ぼした影響はどういう状態であったか、このことを大臣から、運輸省から報告を求めます。
  198. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答え申し上げます。  今御質問にございました昨年十一月三十日に実施されました沖縄周辺空域での米軍の行いました演習の規模は、非常に大規模なものでございました。  そこで、要請としましては、アルトラブ方式というものを向こうからは一応要求してまいったわけでございます。この方式は、御案内と思いますけれども、一定の時間……(井上(一)委員「そんなことを聞いておらへん。大混乱を起こした民間機はどんな状況だったのだ」と呼ぶ)これはそうなるのでございます、次からだんだんに。アルトラブ方式というものをとってくれということは、ある時間、一定の空路を米軍のために専用であげろ、あけてくれぬか、こういう要請があったわけであります。しかしながら、これをやりますと非常な大きな混乱を及ぼすわけでございます。したがってこれを断りました。そして一般の管制をする、そして、空の安全を守るために通常の管制に先方の演習機も従っていただくということにいたしたわけでございます。  しかしながら、これをやりましても影響は一応ございまして、ある程度の影響はございましたが、事故が起こっては大変でございます。そこで迂回空路を用いたりいろいろいたしたものはございまして、遅延等が一部ございましたが、あらかじめ航空会社、それから客の方にも徹底をさせておりましたために、非常に大きな混乱はなかったように承知しております。影響はある程度受けたことは、もうこれは間違いございません。
  199. 井上一成

    ○井上(一)委員 影響があった、演習のためだった、こういうことです。  防衛庁、この米軍の演習はどれぐらいの規模だと把握していますか。
  200. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問の演習は米軍の演習でございまして、防衛庁との共同演習でございませんので、私どもの方は演習の内容等余り詳細に承知しておりません。
  201. 井上一成

    ○井上(一)委員 それでは運輸大臣、演習をやるから、あなたが言わはるアルトラブ、空域を一時的に留保しよう、そういう申し入れを断ったのだ、もちろんその中身は断るだけの理由があったと思うのですね。それはどういう原因でアルトラブをお断りになったのですか。
  202. 山本長

    ○山本(長)政府委員 大臣から御説明しましたように、アルトラブというのを通常措置いたしますけれども、この十一月三十日の場合には、航空機の移動の規模が相当に大きかったということもございまして、専門用語でございますが、アルトラブという方式よりはむしろ運輸省の管制に従っていただく、こういう方式をもってやる方が、安全確保という面からも、また民間の航空機のフローの混乱というものを最小隈にとどめるという観点から望ましい、こういう判断をいたしまして、さようにいたしたものでございます。
  203. 井上一成

    ○井上(一)委員 アルトラブを断ったということは、民間機に大きな影響を及ぼすから断ったんでしょう。
  204. 山本長

    ○山本(長)政府委員 アルトラブという方式もありますけれども、この際はそういった管制に従っていただく。アルトラブというのは、あるところをブロックいたしまして、時間帯をブロックいたしまして、その経路あるいは高度あるいは時間についてはブロックして自由に使わせるということでございますけれども、今回の場合は——今回といいますか、昨年の十一月の場合は管制に従った方がお互いに円滑にフローを保持し得る、こういうことでございます。これは、そのときそのときの情勢によって判断をすべきことだと考えます。
  205. 井上一成

    ○井上(一)委員 正直に答えた方がいいよ、後困るから。アルトラブを断ったことは事実だ。民間機に大きな影響を及ぼすから断ったわけでしょう。そうしたら、米軍は何と言ってきたんですか。断って、はい、そうですかと言ったんじゃない。  そうして、アルトラブはいつ米軍から事前に通告を受けたんですか。ここでアルトラブという英語で言ったってわからないから、その空はアメリカがブロックするということなんだね。いわゆる専門用語ではやめとこう。その空は日本の空ではない、米軍が独占して使うという、その空がアルトラブなんだ。そういう申し込みをしてくるのがアルトラブなんだ。アルトラブは、では一年に何件日本は要求されたんですか、そして何件アメリカに提供したんですか。
  206. 山本長

    ○山本(長)政府委員 お答え申し上げます。  御質問二つあったと思いますが、米軍からアルトラブの要求等についての御質問でございますが、この米軍の演習に関しましてアルトラブ方式でもって管制上認めてもらいたい、こういう申し入れがございました。正確に何日前ということはあれでございますが、約二十日ぐらい前であったというふうに記憶をいたします。アルトラブ方式をとるべきか、先ほど申し上げました方式をとるべきかについていろいろ議論もございまして、そして調整をいたしました結果、先ほど申し上げましたようなアルトラブでない方式をとった、こういうことでございます。  それから第二番目の御質問でございますが、アルトラブの件数等でございますけれども、これは日米合同委員会の申し合わせによりまして、米軍の行動に関する問題につきましては了解がない限り公表しない、こういう約束になっておりますので、差し控えさしていただきたいと思います。
  207. 井上一成

    ○井上(一)委員 アルトラブで断って、アメリカから調整が入って、そこで通常飛行のいわゆるノータムが出されたわけなんです。いわゆる航空情報というやつですね。  では、どういう航空情報を受け取ったんですか。
  208. 山本長

    ○山本(長)政府委員 航空情報は、私たち航空当局から発したものでございます。米軍との調整の結果、通常の管制の中で実施するということになりますと、それによって生ずる規制というものを徹底させるためにノータム、飛行情報を発するものでございます。  この飛行情報につきましては……
  209. 井上一成

    ○井上(一)委員 それはいいです。  通常の飛行情報を我が方が出した。いわゆる本省との話し合いをそこで持ったわけでしょう、米軍と。米軍と持ったんでしょう。
  210. 山本長

    ○山本(長)政府委員 米軍からアルトラブ方式の申し入れを受け、実際の実施は、先ほど申し上げましたようにアルトラブでない方式になったというその過程においていろいろな議論があって、その結果管制方式に従ってやる、こういうことになった次第でございます。
  211. 井上一成

    ○井上(一)委員 このような民間機に大きな影響を及ぼす、そういう大演習に対して、アメリカ我が国との空の、いわゆる空域における使用権の問題での取り決めがあるでしょう。そういう取り決めはどうなんですか。
  212. 山本長

    ○山本(長)政府委員 お答え申し上げます。  基本は日米の行政協定が根拠でございますけれども、それを受けまして、合同委員会におきまして日米が合意いたしました航空交通管制に関する合意というのがございます。これに基づいて、空域の留保についてお互いが調整し合って実施する、こういうふうになっておるわけでございます。
  213. 井上一成

    ○井上(一)委員 ここでちょっと確認をしておきます。  アルトラブを断ったということは、民間機に大きな影響を及ぼすから、与えるからアルトラブを断ったんでしょう。さっきからそういう答弁なんですけれども、念のために聞いておきます、もう一度。そうでしょう。そうでなければアルトラブを受けるのでしょう。アルトラブを断ったというのは、民間機に多大の影響を及ぼすから。よく考えて答弁しなさい。時間を与えますよ。
  214. 山本長

    ○山本(長)政府委員 航空交通の安全という面とフローの円滑化を確保するという観点から、二つの方式がありますけれども、アルトラブ方式よりは、先生がおっしゃるようにアルトラブは混乱があるからこっちになったということよりは、両者を比較いたしまして、むしろ日本の管制に従っていただいた方が混乱が少ない、こういうことでございます。
  215. 井上一成

    ○井上(一)委員 混乱が少ないとかそういうことじゃなく、そういう表現であなた方がごまかすのでなく、民間機に大なり小なり影響があるということでしょう。混乱が少ない、アルトラブよりも混乱は少ないかもわからぬ。しかし、混乱があるから、民間機に影響を及ぼすからアルトラブを断ったのでしょう。
  216. 山本長

    ○山本(長)政府委員 先生のおっしゃるような表現でいいのかもしれませんが、むしろ……(井上(一)委員「それははっきりしましょう」と呼ぶ)むしろ部隊の移動の規模という観点から見て、アルトラブ方式よりはそれをとった方が円滑だ、こういうことでございます。
  217. 井上一成

    ○井上(一)委員 去年、私はいろいろとこの問題で質問をしておるわけですけれども、「多数の民間航空機に影響の出るような要請があった場合、私どもとしては」、いわゆる運輸省ですね、「その空域なり時間なり高度なりについての注文をつけるということは当然あり得るというふうに考えております。」ということをおっしゃっておるのです。今度は注文をつけたのでしょうか。あるいは一定の空域と時間を設定したのでしょうか。
  218. 山本長

    ○山本(長)政府委員 お答え申し上げます。  実際に実施いたしました管制方式は、影響のある航空路の飛行について、通常民間航空機が使用いたします高度につきましては民間機に確保するという措置をとりまして、それ以外の低い高度、高い高度をもってその部隊の移動に使う、こういうふうな方法をとりました。また経路につきましては、その時間によりまして、予定の経路ではなく迂回の経路をとってもらう、こういう措置をとりました。
  219. 井上一成

    ○井上(一)委員 高度を制限したりあるいは迂回の航路をとらざるを得ないということは、これは民間機に影響を及ぼしたのです。それは素直に、民間機に影響を及ぼしたと言った方がここはいいのですよ。余りそのことを深く追及しようとは私は思っていません。  じゃあ、今言われた日米合同委員会での航空交通管制に対する協定は、どんなものなのでしょうか。恐らく昭和五十年六月、参議院運輸委員会に提出資料として出された、これはここにあるわけなんです。これはいわば米軍に便宜を図ったわけなんですね。そういうことでしょう。要約されたどこの項目に今回の軍事演習は当たるのか、聞いておきたいと思います。
  220. 山本長

    ○山本(長)政府委員 ただいま御質問の中にありました航空交通管制に関する合意の中の第七条と第八条でございます。  七条に、「日本政府は、次の各号に掲げる航空機について、合衆国政府の要請があったときは、航空交通管制承認に関し、便宜を図るものとする。」その中に、「あらかじめ計画され、その飛行計画について関係の航空交通管制機関と調整された戦術的演習に参加する航空機」、こういうことになっております。
  221. 井上一成

    ○井上(一)委員 この合意書は国会に提出されましたか。
  222. 北村汎

    ○北村政府委員 国会に提出をいたしましたのは、その概要でございます。
  223. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、非常にけしからぬと思う。何がけしからぬか。それじゃ、今運輸省から説明のあったいわゆる第七条のBの項、これは国会に出した、参議院に出された、五十年六月に外務省が出した項目のどこにあるのですか。
  224. 北村汎

    ○北村政府委員 昭和五十年六月に「航空交通管制」ということで、日米合同委員会の概要を国会に御提出いたしました。その中の第五項にございますように、そこを読みますと、「米国政府は、軍用機の行動のため空域の一時的留保を必要とする時は、日本側が所要の調整をなしうるよう、十分な時間的余裕をもって、その要請を日本側当局に対して行う。」ここでございます。
  225. 井上一成

    ○井上(一)委員 いや、局長、上がらなくていいんだ。間違っておるのだ、あなたの言ったのは。今あなたの言ったのはアルトラブ、一時的留保、そしてさっき私が質問したのは、七条はどこかと聞いているのだ。あなたはそれをもうまごついているのだよ。  これは委員長、私は全文をここに提出をしていただきたい。  念のために外務省局長、答弁したかったらいいですよ。七条はどこだと言ったら、あなたは違うところを言っておるのだよ。
  226. 北村汎

    ○北村政府委員 これは概要の四項に相当いたします。「日本政府は、米国政府の要請に応じ、防空任務に従事する航空機に対しては、航空交通管制上の便宜を図る。」ということでございます。
  227. 井上一成

    ○井上(一)委員 A項もB項もないわけだ。A項もB項も避けてあるし、第七条が四番目に出てくるわけだ。  これは委員長、ぜひ全文をここに御提出をいただきたい。出してください。
  228. 北村汎

    ○北村政府委員 これまでも再三国会で申し上げておりますとおり、合同委員会の関連文書というものは、日米間の合意によりまして不公表扱いとされております。その全文を公表することはできないわけでございます。しかし、国民の生活と密接な関係のある事項につきましては、必要に応じて、米側の了解を取りつけました上でその概要を公表するということでございます。
  229. 井上一成

    ○井上(一)委員 きょう初めて運輸省の方からその七条が披露されたわけなんです。今まではずっと国会の中で、五十年以降、今北米局長が言われるようにこの半ペラの要約、要旨と言うけれども、これはでたらめなんですよ。間違いなんです。本文を出せば大変なことになる。大変なことになるから、こういうもので国会をごまかして、国民をごまかそうとしているわけです。私は、やはり正直に、きっちりと国民に知ってもらって、国会の中で報告をして、そこで真摯な討論を、審議をすることが国会の役割だ、こういうように思うのです。  そういうことで、それじゃ出せる分を出してくださいよ。出しなさいよ。
  230. 北村汎

    ○北村政府委員 答弁を繰り返すことになって恐縮でございますけれども、その合意全文を公表することは、米側との合意によりましてできないわけでございます。概要は既に公表いたしております。
  231. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ、私が今問題とする七条は全文出せますか、あるいは国民の生活に非常にかかわりがある五条は出せますか。じゃ私も、五条と七条だけ出してください、それを対象に審議をしたいと思う、質問を続けたいと思うのです。
  232. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員長代理 政府側、答弁を求めます。
  233. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほども申し上げましたように、この合同委員会での合意は、米側と協議の上で不公表ということになっておるわけでございまして、私どもがこれを公表するという一方的な決定はできないわけでございます。
  234. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ、委員長、私は五条と七条を持っております。本文をということであれば、外務省の要約された参議院に出した書類、文面ですね、さらに、私が承知している前文の項目と五条と七条について、持っているのです。総理にも外務大臣にもすべて、もし委員長のお許しがいただけるようであれば、これはお配りをしてよろしい、こういうことでございます。いかがですか。
  235. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員長代理 はい、結構です。どうぞ。委員長はこれを許します。
  236. 井上一成

    ○井上(一)委員 七条については、既に運輸省の政府委員から読み上げられたわけであります。そのとおりでございます。  それで、お尋ねをいたします。この要請があった、いわゆる米軍から要請があって「交通管制承認に関し、便宜を図るものとする。」B項に属するということですが、これは「便宜を図るものとする。」というこの「便宜を図る」というのはどういう意味ですか。去年、私の質問で、「日米合同委員会の合意でございまして、便宜を図るという以上のものは書いてございません。」こういうふうに政府委員は答弁をしています。さらに、便宜を図るということは、これはもちろん優先的という意味でもございません、こういうふうな答弁がありますので、先に議事録を読み上げて、それからどうぞ、どんなお考えでも結構ですからお答えをください。
  237. 山本長

    ○山本(長)政府委員 この言葉のとおりだと思います。便宜を図るという言葉のとおりだと思います。
  238. 井上一成

    ○井上(一)委員 それでは、ここでもう一度。では、便宜を図るということは優先権を与えるということとは違う、異なる、できなければ断ることもできるんだ、こういう意味に私は理解をしていますし、それが通常だと思うのですが、そのとおりでしょうか。
  239. 山本長

    ○山本(長)政府委員 特別の優先権を持つというほどの意味ではないと思います。
  240. 井上一成

    ○井上(一)委員 では、外務省に聞きましょう。この「便宜を図る」というその英語は何と言うのでしょうか。あるいはその合意書の原文、英文ですね。英文はどのように表現をされているでしょうか。
  241. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほども申し上げましたように、アメリカとの合意によりまして合同委員会での関連文書を公表することはできませんので、それは申し上げられません。
  242. 井上一成

    ○井上(一)委員 それでは、どんな「便宜を図る」という英語を使っているのか、その他の英語を使っているのか、そこを聞きましょう、公表できないというのなら、外務省
  243. 北村汎

    ○北村政府委員 先生のせっかくのあれでございますけれども、アメリカとの間のこれははっきりとした合意でございますので、私どもが公表した以上のことは公表できないわけでございます。
  244. 井上一成

    ○井上(一)委員 僕は、原文の英語をここで——ではそこだけしゃべりなさい、全文を見せなくともいいから、「便宜を図る」という箇所だけの英語をここでしゃべってくれ、こういうことを言っているのですよ。それも読めないのですか。読めないということは何かあるのでしょう。
  245. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員長代理 速記をとめて。     〔速記中止〕
  246. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員長代理 速記を起こして。
  247. 北村汎

    ○北村政府委員 この「便宜を図る」というところだけの文章、特に御要請がございますので、英語のそこの部分だけを申しますと、「プロパイド プリフェレンシャル ハンドリング」ということでございます。
  248. 井上一成

    ○井上(一)委員 それはどういう日本語で、それでは意訳してください。それではそれを日本語で訳してください。辞書がありますよ。
  249. 北村汎

    ○北村政府委員 ここは「便宜を図る」というふうに訳しております。
  250. 井上一成

    ○井上(一)委員 僕は、全くもって、日本外務省というのはこんなにでたらめなのかと思いますよ。優秀な官僚であり、優秀な外交マンだと、僕は北村局長、あなたを本当に立派だと評価しておるのですよ。そんな苦しい答弁しちゃだめだよ。これは「優先的な取り扱いをやる」、こういうことだ、あなた。だから、そんなことで外交の国際舞台で立てぬですよ。中学生だってそんなことで——では、文部大臣、そんなテストがあって、そういう訳をしたらマルをしますか、これ。ばかなこと言いなさんなよ。「便宜を図る」なんて、どの辞書にあるのですか。余りにも、ばかにしたらだめだよ、君、国会を。何と考えているのだ。「便宜を図る」というのと「優先的に取り扱う」というのでは、もう根本的に意味が違う。それをあなた、第一線の外交官が何を言っているのですか。そんな英語しか訳せないのですか。
  251. 北村汎

    ○北村政府委員 当時の記録を見まして、このところは、その前は最優先権を与えるというような規定があったわけでございます。それを今の「プロパイド プリフェレンシャル ハンドリング」というところに変えましたので、そういう観点で前と比較しますと、これは「便宜を図る」ということの概要でございます。  そこで、その「便宜を図る」というのは、要撃機等以外の航空機の安全に支障のない限り、すなわち航空交通の安全を確保しつつ要請に係る要撃機等の任務を尊重し、かつ当該要請の内容をも勘案して状況に即した適切な措置をとるということを「便宜を図る」ということの意味であると承知いたしております。
  252. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、五条と七条の——それでは、五条はいいですから、七条の原文を出してください。
  253. 北村汎

    ○北村政府委員 答弁を繰り返すことになりますけれども、米側との合意がございますので、これは出すことはできないわけでございます。
  254. 井上一成

    ○井上(一)委員 全く僕は、先ほどから言うように、この問題は、やはり日本の空の安全を私たちは守っていきたい。ほかに他意はないわけなのです。そして、アメリカのその軍事大演習のために日本の空が非常に危険な状況にある。それは、誤った両国の認識の中での合意がもし大きなネックになるなら、変えていかなければいけない、それを。そういうことがやはり私のこの質問の趣旨だ。そういうためにも、やはり事実関係を明確にし、そして、その中で議論をしていかなければいけない。どうしても出せないというのは、これはおかしいと思いますし、七条、むしろ五条と、この両条については原文を、委員長の方からもう一度政府当局に提出を求めていただきたいと思います。
  255. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員長代理 速記をとめて。     〔速記中止〕
  256. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員長代理 速記を起こして。  外務大臣。
  257. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 北米局長が答弁をいたしましたとおり、御趣旨の点についてはわかりますが、相手のあることでありますし、約束事でございますから、それは公表はいたしかねます。
  258. 井上一成

    ○井上(一)委員 もう既に日本文では出されたわけなんです。それでは私は、これはアメリカに、非常に問題なんだ、今、国会で問題になっているんだからと言って、これはアメリカへ電話ででも問い合わせたらいかがですか。大使館あるでしょう、今日本に。私はやはりこれは非常に大事な問題だと思うのです。大事な問題だから、余り時間をとめてとかあるいは問題をということじゃなく、やはり本質を、お互いに真実を知った中で、過ちであれば、あるいはこれが日本の民間機の安全を阻害しているなら、私は即刻改めてほしいと総理にお願いをしようと思っている。  あなた方が今便宜を図るだと言えば、まだ本当は優先権があって、優先的なそういう仕組みがあるということを私はもっともっと、やはりこの後質問しなければいけない、どうしても便宜だということで開き直るならば。でも、これは優先権だとお認めになるなら、私はまた質問の角度が変わってくるわけです。これはひとつぜひ原文を出して、私たちに明らかにしてもらいたい、こういうふうに思います。
  259. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員長代理 ただいまの井上委員の質問に対して、政府側、答弁することありますか。——それでは、ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕     〔小渕(恵)委員長代理退席、委員長着席〕
  260. 倉成正

    倉成委員長 速記を始めてください。  この際、二十分間休憩いたします。     午後二時二十分休憩      ————◇—————     午後三時二十三分開議
  261. 倉成正

    倉成委員長 これより再開いたします。  先ほどの井上委員質疑された問題に関し、外務大臣の発言を求めます。安倍外務大臣
  262. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 昭和五十年の航空交通管制に関する合意については、日米間で不公表扱いとされております。したがって、本合意第七条を公表すべしという御要望につきましては、米側の意向を照会し、その結果を御報告いたします。
  263. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ、私はその報告を待って質問を続けます。残余は留保いたします。
  264. 倉成正

    倉成委員長 井上委員質疑は保留することといたします。  次に、近江巳記夫君。
  265. 近江巳記夫

    ○近江委員 公明党を代表いたしまして、総理並びに関係大臣に御質問をしたいと思っております。  米ソ間の緊張が続いておるわけでございますが、非常に軍拡競争も行われております。こうした中で、日本を取り巻く国際情勢というものも依然として厳しいわけでございます。こういうときに当たりまして、我が国といたしまして今後平和外交を積極的に進めていかなければならない、このように思うわけでございます。総理も、かねてそうした主張をされておられるわけでございまして、こういう点から質問をしてまいりたいと思います。  総理は、軍縮に取り組むことを年頭に当たりましても非常に強調をされておるわけでございますが、こういうことは決して言葉だけに終わらしてはならない、このように思うわけでございます。そこで総理に、日本政府として軍縮に取り組むということを、具体的にどういうような方針を考えていらっしゃるか、まずお伺いしたいと思っております。
  266. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、ことしは軍縮の年である、特に核軍縮の年であるとお正月元日から申し上げましたが、今でもそのように確信しております。  具体的には、核の部分と非核の部分と、こうございますが、核の部分については、米ソを中心にする軍縮問題でありまして、INFあるいはSTARTの問題であると思います。相手のソ連の方は、最近政権交代をいたしまして、これに対してどういうふうな態度で出るか、我々は非常に深い関心を持って見守っておるところでございますが、この両者の間でしかるべき的確な方法をもって妥協を行いつつ、ともかくテーブルの両わきに両方が座って、そして話し合いを始めて、そしてしかるべき合意を形成するように、ともかく全力を尽くしてもらいたい、これは全世界の強い要望である、そういう趣旨のことを我々も強く、あらゆる機会をとらえてやっていきたいと思っております。  それから、通常兵器の軍縮につきましては、これはジュネーブにおける軍縮会議等におきましてやっていることでございますが、この点につきましても、信頼醸成措置であるとかあるいは情報の交換、交流であるとか、そういういろいろな方法を通じまして、徐々に緊張を緩和させつつ軍縮の方向に向かうように持っていってまいりたいと思います。特に中近東あるいはイラン・イラク戦争というものが軍縮を進める上にやはり非常に精神的な、心理的な障害をなしているだろうと思います。そういう面からも、できるだけ早期に中近東問題あるいはイラン・イラク戦争を緊張緩和あるいはこれが平和の方向に向かうように、順次我々も努力してまいりたいと思っておるところでございます。
  267. 近江巳記夫

    ○近江委員 去る二月一日に発表されましたアメリカの八五年度の国防報告によりますと、弾道ミサイル防衛システム、BMD、これの研究開発費が十七億ドル組み込まれておるわけでございます。それからまた衛星破壊兵器、これの開発も認められておるわけでございます。さらに、レーザー光線などの宇宙兵器がスピードと守備範囲が広いということから非常に有効だろう、こういう見方をしておりまして、アメリカの国防報告は宇宙への軍拡を目指しておるということ、これを言わざるを得ないと思うのです。こうしたアメリカの方針というものは、ソ連との宇宙軍拡競争に拍車をかけるのじゃないか、このように思うわけでございます。  総理といたしまして、米国のこうした宇宙軍拡方針をどのように考えておられるのか。軍縮に取り組みたい、こうした決意を総理は今表明されたわけでございますけれども、ひとつ率直な御意見をお伺いしたいと思っております。
  268. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 恐らく、我々が得ている情報等によりますと、ソ連側がそういう部面に対する研究をかなり進めておる。衛星キラー衛星であるとか、あるいは弾道弾をつぶす特別の光線あるいはエネルギーの検討であるとか、よくそういう情報も我々聞いたこともございます。そういう意味からも、対抗上そういうような研究をするという姿勢を示し、あるいはそういう研究をやろうという意思が表明されつつあるのではないかと思います。ある意味におきましては、これはアメリカ国民に対するある一種のゼスチャーであるとも考えられます。しかし、やはり宇宙というものが戦争の主舞台に次第に転移しているということは非常に好ましくない状況でございまして、むしろ今の諸般の問題を収れんしていく方向に私たちは積極的に努力していきたいと思っております。これはしかしある程度相対的なものでありまして、両方がそういう方向に世界の世論を体して進むようにやらぬと、これは片手落ちのことになり、またそれが事実上できなくなる可能性もございます。そういう意味におきまして、そういうような意思を持っておる、あるいはそういう可能性のある両方に対しまして、我々は警告を発するとか、あるいは軍縮に協力するようにこれからも努力していくべきであると考えております。
  269. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理も御承知のように、昨年の十二月十五日の国連総会におきまして、宇宙における軍備競争の防止に関する決議案、この表決が行われておるわけでございます。これを見ますと、賛成が百四十七、反対一の大差で決議しておるわけでございます。当然我が国政府もこれに賛成しておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、アメリカの国防報告に見るいわゆる宇宙軍拡の方針、これは明確に国連の決議にも反しておる、このように思うわけでございます。総理も今後そうした点に努力をしたいとおっしゃっておるわけでございますが、レーガン大統領にこの宇宙の軍拡をやめるように申し入れというものをすべきじゃないか、このように思うわけでございますが、どういうようにお考えになっていらっしゃるかお聞きしたいと思います。
  270. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 軍縮を実現していくために非常に大事なことは、それが実際行われるという検証可能な方法を確立して、両方が安心できるシステムをつくるところであると思うのであります。そういうような安心できる検証可能なシステムをつくり上げていくという面に我々は今後とも地道な努力をしてまいりたいと思っております。しかし、一方において、米ソの宇宙に対する関心と、それから政策の進行ぐあいがどの程度進行しているか等々の事案関係等もよく調べた上で、そういう対策について研究してまいりたいと思っております。
  271. 近江巳記夫

    ○近江委員 日本の対米武器技術供与の拡大が一層強まってきておるわけでございますが、そういう点におきまして我が国アメリカの宇宙軍拡に協力しかねない、こういう点が非常に懸念されるわけでございます。こういう点につきまして何らかの歯どめという問題を考えなければいけないと思うのです。我が国といたしまして、今後宇宙軍拡に協力しない、こういう明確な方針を確立されておるのかどうか、お聞きしたいと思います。
  272. 岩動道行

    岩動国務大臣 私どもの宇宙開発に関する基本的な姿勢は、まず、法律において、平和的な利用ということにございます。また、国会におきましてもそのような御決議もございますので、その線に沿って、あくまでも私どもは世界人類の平和的な宇宙の利用ということに徹してまいる考えでございます。
  273. 近江巳記夫

    ○近江委員 国会の決議にも沿ってということをおっしゃっておるわけでございますが、昨日の同僚委員の発言に対しまして、この技術供与は構わないんだ、こういう答弁をなさっていらっしゃるわけでございます。御承知のように、昭和四十四年五月九日の衆議院の本会議で、宇宙の開発及び利用は平和の目的に限る、こういう内容の国会決議をしておるわけでございますが、昨日も問題になっておりましたこの点につきまして、この国会決議というものについてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、これをひとつもう一度科学技術庁長官、外務大臣からお伺いしたいと思います。
  274. 岩動道行

    岩動国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、私どもは日本の宇宙開発事業団を中心として宇宙技術の開発研究を行っているわけでございますが、これはあくまでも我が国の平和利用、こういうことに徹してまいるつもりでございます。
  275. 近江巳記夫

    ○近江委員 我が国の平和利用にあくまでも徹するということをおっしゃっているわけですが、アメリカの方としては、その技術供与で受けたいわゆる技術を軍事転用していくわけでしょう。これは言葉だけで守るとおっしゃっても、現実にそれが軍事に転用されていく、こういう現実があるわけですよ。そういうような答弁では納得できないと思うのですね。どういう歯どめをかけられるのですか。
  276. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今現在までは米国から我が国に対しまして武器技術の供与についての具体的な要請はありません。また、我が国のいかなる技術が米国防政策におけるところの宇宙研究に用いられ得るか承知もしていないわけでありますが、いずれにいたしましても、対米供与する武器技術につきましては、我が国の総合的な国益の観点から、具体的事例に即して我が国が自主的に判断して慎重に決定をする考えであります。  なお、御指摘がございました私の昨日の答弁も踏まえてのことだろうと思いますが、この対米武器技術供与につきましては、米国の防衛能力の向上に寄与することによりまして日米安保体制の効果的運用に資するという観点から行われた政府の決定でありまして、政府としましては、米国の国防政策は宇宙に関するものを含め抑止を旨とする防衛的なものであるとの認識を有しております。仮に米国の国防政策に関連して供与の要請があった場合には、上記の観点を踏まえまして、具体的な事例に即して慎重に決定していくというのが我が国の基本的な方針でございます。
  277. 近江巳記夫

    ○近江委員 昨年、国会におきましても武器輸出の三原則の問題から発しましていろいろと論議がされまして、決議もなされた。それに基づいて十一月八日に日米におきまして交換書簡が出ておるわけでございますね。こうした重要な取り決めにつきましては国会の承認というものが私は必要だと思うのですね。この問題については、いわゆる条約にするとか、また国会の承認するという問題につきましては国内法をまた新たに立法するとか、あるいは予算がつくとか、あるいはまた政治的に非常に重要な事項、こういうことについては承認事項ということになっておるわけですけれども、武器技術供与につきましていわゆる書簡でそういうことを結んでおる。こういうような重要なことをそういう形で国会の承認を求めないというような態度、これは非常に私は問題だと思うのですね。これだけ問題になった大きなことでございますので、この点につきまして外務大臣としてはどういう見解をお持ちでございますか。
  278. 北村汎

    ○北村政府委員 昨年十一月に交換いたしました取り決め、武器技術の供与についての取り決めは、これはMDA協定の枠の中で行われているものでございます。MDA協定は、これは国会の御承認を得ております。そこで、本件取り決めは、すでに国会の承認を経た国内法、これは外国為替及び外国貿易管理法、そういう国内法の範囲内で実施し得る内容、それを取り決めたものでございますので、いわゆる法律事項であるとかあるいは財政事項を含む国際的な約束ではございませんので、行政取り決めとして憲法第七十三条第二号に言う外交関係の処理の一環として政府、行政府限りで締結したものでございます。
  279. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは先ほど申し上げましたように、非常に政治的に重要な問題なんですね。あれだけ武器技術の供与につきまして大きな問題になったわけでございまして、それを受けてのいわゆる日米の協定である、これは非常に私は問題であると思いますし、これは当然外務委員会等でも大きな問題になるんじゃないか、私はこのように考えております。こういう重要な取り決めにつきまして国会の承認を求めないということは非常に遺憾に思います。もう二度外務大臣と総理からお伺いしたいと思います。
  280. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この武器技術の対米供与につきましては、一昨々年の十一月に政府としてその方針を決定をいたしました。そしてその後、昨年の国会におきましては、種々のこれに関する論議があったことは御承知のとおりであります。なお、国会の決議等をめぐりましての御論議もありまして、これに対して政府の統一方針も発表してまいりました。そういうことで、政府のいわゆる決定事項、そしてそれもいわゆるMDA協定に基づく枠内における決定である、こういうことで、その後、日米間の交渉を進めまして、今回の取り決めになったわけでございますので、先ほど局長が申し上げましたように、改めて国会の御承認を得る必要はない、こういうふうに判断をいたしておるわけであります。
  281. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理からもう一度お伺いしますけれども、これは先ほど何回も申し上げておりますように、いわゆるこれだけ政治的に問題になったことでしょう。それは政府が今後国会承認を得なければならないという事項の中で、政治的に非常に重要な問題というものについては国会の承認を得るということがやはり明確になっているわけですよ。政治的にこれは軽いことなんですか。そういう判断をなさっているのですか。もう一度外務大臣。
  282. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは国会の決議等もありまして、我々としては、さらにまた武器輸出三原則等も持っておりまして、そういう中で、日米に関していわゆる安保条約の効果的運用という建前を貫き、さらにまたMDAの趣旨にのっとって武器技術については相互交流を行うべきだ、こういう判断のもとで政府が決定をしたわけであります。その限りにおいては政府は責任を持った重要な決定をいたしておるわけであります。
  283. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 昨年、通常国会におきまして大いに論議されたこの問題につきましては、政府といたしましても非常に注意深く慎重に行わなければならぬと思っております。そういうところから、既存の条約及び法令の範囲内におきまして、その枠組み、取り決めを今つくりまして、いよいよこれを実行するという段取りになりますと、これはケース・バイ・ケースにつきまして、我々の方はその使途その他につきましても注意深くチェックもし、我々の考え方に沿ってこれらのことが円満に行われるように用心深くやってまいりたいと思う次第であります。
  284. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは結論というものは出ないわけでございますので、当然これは所管が外務委員会ということになろうかと思いますので、また同僚議員にもこの旨を申し伝えまして、もう一度よく所管委員会で検討してもらいたい、このように思っております。  では、次に進みます。  宇宙の問題でございますが、来月米国から宇宙基地の建設協力につきまして担当者が来日する、こういうことを聞いておるわけでございますが、アメリカの宇宙基地計画に日本が参加する、この是非については非常に多くの問題が指摘されておるわけでございます。将来アメリカは有人の宇宙基地というものを軍事基地といいますか軍事転用といいますか、そういう構想もあるのじゃないか、いろいろと言われておるわけでございます。そうしたものに日本が今後協力するということにつきましては、平和憲法の立場からいきましても非常に国民としても皆大きな疑念を持っておるわけでございます。しかも、費用にいたしましても、伝えられるところ一五%、三千億円。今のいわゆる宇宙開発の予算も大体年間約一千億と聞いておるわけでございますけれども、そういう点からいきますと、これは巨額の費用ということになってくるわけでございます。根本的には軍事転用という、そういう心配が非常にあるわけでございます。そういう点、今後日本がこれに乗るか乗らないかという、根本的に今後いろいろと検討されると思うのですけれども、こういう心配があるという計画なんですね。それに対して今後我が国政府としてはどういうようにお考えになり、対処をされていくのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  285. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今般、米国政府が宇宙基地計画の推進を決定をしまして、我が国に対しましても、レーガン大統領より中曽根総理に書簡が届けられまして、米国政府として正式に参加の呼びかけを行ってきております。これを受けまして、我が国の同計画への参加については、同計画が当面、宇宙分野における大型国際協力プロジェクトであり、日米協力関係上も有意義であるので、大統領特使として三月十一日から十三日訪日する予定のベッグズNASA長官の話を聞いた上で、宇宙開発委員会を中心として検討が行われていくこととなるわけであります。  今、軍事目的にこの計画が利用されるのではないかというお話でございますが、米国内では、現段階において国家安全保障上は宇宙基地の建設の必要性はないと考えられております。その結果、宇宙基地はNASA、いわゆる米国航空宇宙局の民生設備として、プロジェクトとして建設されることになっておるわけであります。
  286. 近江巳記夫

    ○近江委員 軍事転用しないという、こういう保証が明確になっておるかどうかということなんですね、問題は。これは非常にやはり大きな疑いがあるのですよ。これはもう諸外国のそうしたマスコミ等も、将来軍事転用のおそれがあるということを盛んに指摘しているのですね。そういうところに我が国として乗っかっていく、これはやはり軍事転用をしないという歯どめということが非常に私は大事になってくると思うのです。この歯どめということに対して我が国としてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  287. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカから協力を求められておりますが、先ほど申し上げましたように、NASAのベッグズ長官日本にやってまいりますので、その長官との意見交換を十分行いまして、今のようなお話等も踏まえまして詰めてまいりたいと思いますが、基本的には、先ほど申し上げましたように、NASAで行うものであって、安全保障上のいわゆる軍事利用ということは全く考えてないということを米国は言っておるわけでございます。
  288. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、その歯どめの保証というものを明確にやはりその点は先方に対してなさるわけですか。どういうようにその辺の歯どめをなさるのですか。もう一度お聞きします。
  289. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはベッグズ長官の来日を待ちまして、日米間で十分話し合う予定にいたしております。
  290. 近江巳記夫

    ○近江委員 この話に乗るか乗らないかは、結論は先のことになるわけでございますが、もしもそれに協力するという立場におきましては、この軍事転用への歯どめ措置というものを明確にきちっと交わさなければいけない、このように考えておりますが、どうですか。
  291. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 おっしゃるとおり、これからの長い先のプロジェクトでありますが、十分アメリカ側と詰めてまいらなければならぬ。やはり日本立場というものがありますし、日本の基本的な政策、それから憲法というものがあるわけですから、そういうものを踏まえて、これからの問題に対処してまいる考えであります。
  292. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは何回も同じことを往復しておるのですよ。だから、歯どめの保証措置というものを明確にきちっと要求するんですねということを言っておるのですよ。もう一度答えてください。
  293. 岩動道行

    岩動国務大臣 外務大臣が今申し上げたとおりでございますが、特に、私にあてたベッグズ長官の書簡にも、米国の大統領はあくまでも宇宙の平和的探査と利用ということを基本としてこれを行っていく、こういうことでございますので、私どもはそれを信頼し、また、そういう範囲内において自主的にこの問題に対応してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  294. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃ、今後話の推移の中で、決定に至るまでの段階におきまして、明確にこの歯どめ措置というものをきちっとつけるように、これを強く要求いたします。そうしていただけますね、くどいようですけれども。
  295. 岩動道行

    岩動国務大臣 十分に心得てやってまいります。
  296. 近江巳記夫

    ○近江委員 科学技術庁長官おっしゃいましたように、宇宙開発事業団の発足のときにも平和目的に限るということは明確にいたしておりますし、今そういう措置については明確にするという答弁がありました。そういうことで次に進みたいと思います。  この宇宙の軍拡を阻止するために宇宙への兵器の配備禁止条約、これが世界的にも非常に問題になってきておるわけでございますが、これは私は非常に緊急を要する問題ではないかと思います。政府といたしましてはこれを積極的に推進をしなければいけない、このように思います。  そこで、総理に、これを今後積極的に推進なさるかどうか、お伺いしたいと思います。
  297. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 従来の我が国の国策の線に沿いまして慎重にまた推進してまいりたいと思っております。
  298. 近江巳記夫

    ○近江委員 この軍縮を進めるということは口先だけで終わってはならない。これは総理も非常に強い決意を持っていらっしゃるわけでございますが、じゃ具体的に私は一つ提案してみたいと思うのですが、第三回目の国連軍縮特別総会、これは八八年までに開こうということが決定されておるように私聞いておるわけでございますが、これだけ今この核問題あるいは軍縮問題がもう非常に大きな問題でございまして、米ソのそうした冷却いたしました関係も見ておりますると、この軍縮特別総会、これは早急にやはり開催をして、また、我が国としての立場を明確にして、そして各国に核の廃絶、軍縮というものを訴えていかなければいけない、私はこのように思うわけでございます。  そこで、総理も非常に強い決意を持っていらっしゃるわけでございますので、我が国として早くこの特別総会の開催を要求し、またそうした行動をとってもらいたい、このように思うわけですが、総理の決意をお伺いしたいと思います。
  299. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一般的には全く同感でございます。具体的にいつごろどういうふうに開くかという個々的な問題になりますと、これは関係各国の動向を注視しつつ、外務省で見てよく検討してもらいたいと思っております。
  300. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは当然のことでありまして、これを早急に開催できるように我が国総理として推進していかれるかどうかということをお伺いしておるわけでございます。
  301. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我が国の従来の軍縮に対する熱意というものを見せる一つの場でもありますし、実質的に進展させる一つのチャンスでもございますから、できるだけ努力したいと思っております。
  302. 近江巳記夫

    ○近江委員 我が国をめぐる緊張緩和という点につきまして、次にお伺いしたいと思っております。  総理は、過日の本委員会におきまして、ソ連の新書記長誕生を機会に日ソの善隣友好関係を前進させるということを述べておられるわけでございますが、この日ソ関係の改善のためには、それなりの環境づくりというものが非常に必要であろうか、このように思います。三月には、高級事務レベル会議が開催されることになっておるわけでございますが、これは対話という面では非常に結構であると思います。それで、政府としてこの日ソ関係改善に何らかの具体的な方策を考えておられるのかどうか、この点につきまして、総理、外務大臣にお伺いしたいと思います。
  303. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先般、故アンドロポフ書記長の葬儀に臨みまして、その際、グロムイコ外相と日ソ間の問題につきまして会談をしてまいりました。そして、同時にまた、日ソの対話を進めるということにつきましても一応の合意を見たわけでございます。  その結果として、御承知のような来月の十二、十二日に高級事務レベル会談を開くことになったわけでございまして、この高級事務レベル会談で、日ソ両国間の問題だけでなくて、広く国際情勢全般にわたって徹底的な議論をして、そして、これによって何らかの日ソの対話が前進する一つの道を開いていきたい、こういうふうに思っておりますし、あるいはまた、昨年、永野、ミッションがソ連を訪問いたしまして、ことしはソ連から経済ミッションが日本を訪れることになっております。そういう経済団体の交流も、これも行われることを我々は期待もしておりますし、さらに、人的交流、議会間の交流等もいろいろ計画されておるというふうに聞いておりますから、そういう面でいろいろと対話が進むことを我々は期待をしておりますが、ただしかし、日ソ間においては領土問題という大きな障害が横たわっておりまして、我々はやはり北方四島返還を実現して、そのことによって日ソの平和条約を結ぶ、それによって初めて真の日ソの友好が図っていける、こういうふうに確信をいたしておるわけでございますが、残念ながら、まだ領土問題についてはソ連とは基本的な意見が違うわけでございます。この領土問題等につきまして、我々は粘り強くソ連と交渉して、何としても同じテーブルで領土問題を論議し、そして、この北方四島が日本に返るまで努力を傾注していかなければならぬ、そのことによってのみ真の日ソの友好が実現できる、こういうふうに我々は確信をいたしておるわけでございます。
  304. 近江巳記夫

    ○近江委員 西欧諸国におきましては、ソ連の外相等が訪問もしておるわけでございますね。そういう隣国のそうした交渉というもの、相互の訪問ということ、こういうこともしばしばやっておるわけでございます。我が国といたしましても、やはり隣国としてそういう点につきましては、そこの環境がまだ熟していないというような答弁も大臣としてはされているわけでございますけれども、グロムイコ外相の訪日による日ソ外相会談の開催、これは非常に厳しいようなことをおっしゃっておるわけでございますが、西欧諸国においてはそういうように隣国との往来が行われておる、こういうことを踏まえて、その見通しにつきましてお伺いしたいと思います。
  305. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日ソの間にはいわゆる日ソの外相の定期協議というようなものが約束をされまして、そして日本からは外務大臣が何回かソ連を訪問しましたが、残念ながらソ連の外務大臣の訪日は極めて少ないわけでございまして、そして前回に園旧外相が訪問されまして、今回はグロムイコ外相の訪日の番になっておるわけですから、私は、今度の外相会談におきましても、この次はソ連の番だ、ソ連の外相の日本訪問の番だ、ぜひともひとつおいでいただきたいということを強く求めたわけですが、グロムイコ外相は、まだ時期が熟していない、こういうことで非常に消極的な態度でございました。しかし、我々は何としてもグロムイコ外相が日本を訪問されることが日ソの対話を進める上においても極めて大事であると思いますし、そしてまたこれは当然日本を訪問すべきである、こういうふうに考えまして、今後ともグロムイコ外相の訪日を強く求めてまいる考えであります。
  306. 近江巳記夫

    ○近江委員 やはりそういう環境づくりということが大事だと思うのですね。そういう点におきまして、アメリカの場合、対ソ経済制裁措置、この旗を振っているわけですね。ところが、片一方では穀物につきましては五〇%いわゆる増枠を決めているわけですね。また、西側諸国におきましても対ソ経済制裁に非常に批判的である。こういう状況は総理も外務大臣もよく御承知のとおりでございます。その環境づくりという点におきまして、政府として対ソ経済制裁措置の再検討というものを考えるべき時期に来ておるのではないか、私はこのように思うのですが、この点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  307. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは、ソ連が御承知のようにアフガニスタンに侵入をいたしました。その結果、西側が一体となって対ソ経済措置を講じてソ連の反省を求めたわけでございます。そして、その措置は今日まで続いております。一部解除されておりますが、基本的には続いておるわけでございます。私どもは、この基本的ないわゆる対ソ措置がとられたときの状況が基本的には変化していない、こういうふうに思っておりますし、ソ連がアフガニスタンからの撤兵というものを実行することを心から期待もいたしておるわけでございますから、そうした情勢はまだ続いておりますが、しかしいろいろと時代が動いておりますし、世界情勢も動いております、ソ連にも新政権が生まれたわけでございますので、今後の東西関係あるいはまた米ソ関係、そういうものを見きわめながら、西側でも相談をしてこれらの問題には対処していかなければならないということであろう、こういうふうに思うわけであります。
  308. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうした状況の変化、そういう中で再検討する、こういうことでございますね。もう一度お伺いします。
  309. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは日本だけが再検討するとかしないとかいう問題でなくて、アメリカそして日本、さらに西側全体としてのとってきた措置でございますから、そうした西側の枠組みの中でこれらの問題についても、新しいソ連の政権ができたわけでございますし、これに対する対応というものはおのずから検討をされるであろう、こういうふうに思うわけでございます。再検討してすぐどうなるとか緩和するとか、今直ちにそういうことが言える段階ではございません。
  310. 近江巳記夫

    ○近江委員 今、外務大臣からは状況の変化というものを十分注意しつつ再検討に着手したい、こういう御答弁があったわけです。やはりこうした周辺の諸国の環境改善ということは非常に重要な問題でございますし、総理としても、そういう善隣友好のことにつきましては非常に強い意欲を持っていらっしゃるわけでございますし、同じ質問で恐縮でございますが、今後再検討して、いい環境づくりを目指す、こういう強い決意に立たれるかどうか、お伺いしたいと思います。
  311. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この経済措置は西側の諸国と協調して実行しておるものでございますから、これが緩和ないし解除の問題もやはり西側諸国と協調して話し合っていくべき問題であると思います。ソ連における新政権の誕生を機に、どういうふうな政策に出てくるであろうか、また、軍縮その他を進めるためにどういうことが必要であるであろうか等々もよく考えながら、環境をよくしていく方向に西側諸国と協力してまいりたいと思っております。
  312. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に、我が国周辺の朝鮮半島の問題でございますが、朝鮮半島の両当事者間におきまして三者会談の呼びかけや、また当事者間の話し合いの呼びかけなど、ことしになりまして話し合い路線といいますか、この緊張緩和の機運が非常に高まってきておるように思うわけでございます。今日の朝鮮半島のこうした動向につきまして、まず外務大臣としてはどのように見ていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  313. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私どもは朝鮮半島の緊張緩和が進むことを心から念願をしておるわけであります。そういう中で、残念ながら十月にラングーン事件が起こりまして一挙に南北の緊張が高まったということで、我々は非常に憂慮もいたした次第でございますが、しかし、その後、北朝鮮から三者会談についての提案が行われ、あるいはまたアメリカからも四者会談の提案がなされ、同時にまた韓国も南北の対話を呼びかける、こういうふうなことで朝鮮半島の緊張緩和をめぐるところの努力がいろいろとなされておるわけでございまして、これは南北の緊張緩和、朝鮮半島の緊張緩和を進める上におきましては非常に歓迎すべき情勢であろう、こういうふうに私は思っております。しかし、日本としましては、これは何といいましても当事国であるところの南北が、韓国と北朝鮮が話し合ってこの朝鮮半島の問題を決めていくということが基本ではないか、こういうふうに考えております。  もちろん、日本も隣国の立場にありまして、そうした南北の緊張緩和、さらにまた南北対談、そういうものが進むためにはできるだけの環境整備についての努力は行っていかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  314. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう機運が高まってきておるわけでございますけれども、しかし、これまで当事者間の話し合いというのはなかなかうまくいってないのですね。そういうことで、この緊張緩和のための話し合いとして中国を含めた四者会談、さらには、これに日本、ソ連も加えた六者会談という話も出ておるようでございますが、政府としては朝鮮半島の緊張緩和のための話し合いに、もしも状況が許されるならば参加する意思があるのかどうか、この点につきましてお伺いしたいと思います。
  315. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 とにかく、南北といいますか朝鮮半島の緊張緩和が進むための努力、環境づくりに対して、日本はできるだけのことをしなければならないし、また今日までもしてきておるわけでございます。私は、今新聞等でも出ておりますが、中国と韓国との間でスポーツ選手の交流等が行われるというふうなこと等も緊張緩和には大変大きな要素であろう、こういうふうにも喜んでおるわけでございますが、日本の基本的な立場は、先ほど申し上げましたように、やはり南北が、韓国と北朝鮮が、両当事国が話し合いをする、話を進めるということが最もこの問題を解決する早道である、こういうふうに日本政府としては基本的に考えております。そういう方向で今後とも見守ってまいりたいと思っております。
  316. 近江巳記夫

    ○近江委員 もしもその六者会談の呼びかけというものがあった場合には、参加されるわけですか。
  317. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今のところ、三者会談、それから四者会談というのが出ております。あるいは六者会談という声も出てないわけではございませんけれども、果たして緊張緩和のためのそういう会談が具体的に開かれるかどうかということになりますと、今後の情勢を見なければわかりませんし、日本はそういう中でどういう役割を果たしていくか。日本はやはり隣国でございますから、緊張緩和のためのできるだけの役割、努力はしなければならぬと思いますが、日本立場もあるわけでございます。そういうものを踏まえながら、そういう事態になればなったで判断をしていかなければならぬというふうに思っております。
  318. 近江巳記夫

    ○近江委員 この三月、総理は中国を訪問される予定になっておる、このように聞いておるわけでございます。また、総理レーガン大統領とも非常に緊密な、じっこんの間柄ということも聞いておるわけでございますが、この朝鮮半島の緊張緩和をめぐる問題で中国あるいはまた米国と総理は話し合うつもりがあるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  319. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 朝鮮半島の緊張緩和に役立つことでありますならば、喜んで話し合いをいたしたいと思っております。
  320. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この朝鮮問題に関しましてもう一点だけお伺いしますが、韓国の全斗煥大統領の訪日を招請するというようなことも伝えられておるわけでございますが、総理も外交日程としてそういうことも予定されておられるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  321. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 韓国の全斗煥大統領に対しましては、私の方から、日本を御訪問くださるように御招待申し上げております。しかし、向こうから、まだいつおいでになるというような具体的な話はございません。ですから、外務省の間においてそういう具体的な話をしていることもございません。
  322. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理がこの三月に中国へ行かれる。ここで、中国残留孤児の問題につきまして国民が非常に強い関心を今持っておるわけでございますが、今回もこの二十五日に五十人の孤児が身元調査、身元捜しをすることになっておるわけでございます。  お聞きしますと、この調査依頼があったものは千五百二十三人、これまで身元の判明している方が七百六名、このうち訪日調査によるものが百三十五名、このほか現在調査中で身元の判明していない方が八百十七名残されておる。またこのほかにも残留孤児というものは多数残されておるのではないか、このように言われておるわけです。これは本人があくまで希望を申し出た数だけの把握である、こういう報告を受けておるわけでございますが、こうしたことが報道されるたびに国民は非常にもらい泣きをしておるわけでございまして、戦後四十年近くたった今日、この状況を考えますと、近親者も非常に老齢化してきておりますし、養父母にいたしましてもそうでございます。そういう点、これを急がなければならぬと思うのですね。政府のこの計画では年間百八十人、これもこなし切れないというような状況なんですね。現実に向こうに八百何十名という人が待っておるわけですね。年間百八十人もこなせないという状況、私はこれは非常に痛ましいと思うのです。これはやはり両国に難しい問題も横たわっておると思うのでございますけれども、そういう高齢化等の問題を考えますと、これはやはりもっと短縮をして、両国政府が真剣になってそれをすべきだ、このように思うわけでございます。この点に関しましてどのようにお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  323. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、残留孤児という名前、私は前から余りいい言葉でないと思っておるのです。孤児の孤の字は、漢学者等の話によりますと、一人でほったらかされたというような印象を与えるそうでございます。中国側の響きを考えてみますと、決してほったらかされたのではないので、ほったらかしたのは日本人がほったらかしたのであります。そういう意味で、残留孤児という名前は余り適当ではない。向こうにおっては、肉親同様にかわいがられもし、また一家の柱石にもなってきておる方々でもあるんだ、だから、むしろ残留同胞とかあるいは残留子弟とか、そういう表現の方が適当ではないか、そう思っております。これは私がそういう感じを持っておることで、もしそういうふうに世の中が表現の仕方を変えてくれれば外交的にもいいのじゃないか、そういう気がしております。  それから、八百何人残っておるということはまことに痛ましいことでありまして、できるだけこれは促進していきたいと思いますが、一面、中国内部のことも考えてみますと、本当に今まで養い養われてきた間柄の人が裂かれていく、一家の支柱を失うという面も相手方の家庭には起きてくるわけでございまして、そういう面に対するこちらからのおもんぱかりもまた十分行う必要もあるし、しかるべき手当ても必要であるだろうと私は思います。そういう点において、厚生省においても検討しておるところでございますが、そういうこともあわせて考えていかぬといかぬ。  今の八百何人等に対する、具体的にはどういう処理があるか、厚生大臣から御答弁申し上げます。
  324. 入江慧

    ○入江政府委員 今お話しありましたように、現在身元が判明しておりません孤児は八百十八名おります。私どもとしましては、今お話しのありました訪日調査のほかに、厚生省が持っております資料に基づきます個別調査、あるいは報道機関の御協力を得て行います一般公開調査、そのほか、昨年の三月から孤児の顔写真とかあるいは肉親捜しの手がかりとなります資料を掲載した冊子を全国の都道府県、市町村の窓口に置きまして、それでいろいろと調査をやっておるわけでございます。  ただ、今お話しのありましたように、この問題は、孤児の育った環境あるいはこちらにおります年とった親族、そういうことを考えますと、一刻も早くやらなければならないということでございまして、当面、五十九年度におきましては、予定しております百八十名の訪日調査に全力を挙げますとともに、広報活動の強化とか、あるいはいろいろと知恵を絞りまして、中国側の協力も得まして、調査の効率を上げていくということに努力してまいりたいと考えております。
  325. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、調査の効率を上げて、総理も非常に心情的に急がなければならないというお気持ちに立っていらっしゃるわけですが、厚生省当局としてこれは全力を挙げて期日を詰めていかれるかどうか、それをひとつ厚生大臣からお伺いしたいと思います。
  326. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 中国残留同胞の皆さん方に大変思いやりの深い御心配をちょうだいしております。戦後三十八年、確かに年齢とかそういうことを考えますと、これは一日もおくれてならない問題でありますので、今援護局長からお話がありましたが、厚生省としては人道上の立場から、まず肉親捜し、また、帰ってこられた皆さん方が祖国で定着して楽しく生きていけるように定着センターをつくりましたし、これらの問題にこれから全力を投じて頑張っていくことを申し上げさせていただきます。
  327. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に厚生大臣の決意があったわけでございますけれども、八百十七名ですね、総理、今回百八十名を目指すとおっしゃっているわけですけれども、できていないんですよ。このペースでいきますと四年から五年かかるわけでしょう。だけれども、効率的な調査を厚生当局は精力的にやるということをおっしゃっているわけでございますし、総理のやはり私は人道的な熱意といいますか、それが非常に大事だと思います。これを大幅に短縮をすべきだと思うのです。総理の重ねてのひとつ御決意をお伺いしたいと思います。
  328. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中国政府の御了解をいただいて、できるだけ早く終了するように努力して。まいりたいと思います。
  329. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、ひとつ一層の努力をしていただくことを強く要請いたします。  次に、経済問題に入りたいと思います。いろいろ経済の問題、あらゆる角度からお伺いしたいと思っておりますが、時間の関係もございますので全部はできないと思いますが、何点かお伺いしたいと思います。  まず貿易、対外経済関係についてお伺いしたいと思います。  この一月三十一日、大蔵省発表の五十八年度の国際収支速報によりますると、経常収支の黒字が二百十億二千四百万ドル、貿易収支の黒字が三百十六億四千九百万ドル、ともにこれ史上最高を記録した、こういうことが報道されておるわけでございます。こういうような数値というものにつきましては、OECD全体の経常収支が一九八三年で二百四十億二千五百万ドル赤字、こういうようなことを考えてまいりますと、極めて大きな黒字幅でございます。これを背景として貿易摩擦というものが激化しておるということにつきましてはもう御承知のとおりでございます。我が国の経常収支、貿易収支の黒字幅につきましては、一つは、構造的なものであるのか、一時的なものであるのかという問題であります。その要因に対する見方というものがいろいろあると思われるのでございますが、どのようにごらんになっていらっしゃるか、まず第一点にお伺いしたいと思います。経企庁長官
  330. 河本敏夫

    河本国務大臣 大幅な黒字が続いておりますが、三、四年前には赤字になっておったときもございますので、私どもは構造的というよりも世界経済変化が背景にある、このように考えております。
  331. 近江巳記夫

    ○近江委員 経常収支と貿易摩擦との関係につきましては、過去におきまして経常収支の黒字がGNP比一%を超えると激化する、こういう分析があるわけでございます。経常収支、貿易収支の黒字幅につきまして望ましい水準といいますか、その辺につきましてどういうようにお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  332. 河本敏夫

    河本国務大臣 具体的に望ましい幅ということは政府の方で統一見解がございませんが、余り大きな黒字幅が出ますと理屈抜きにいろいろな貿易摩擦が激化いたしますので、やはりその点は十分気をつけなければならぬ、こう思っております。
  333. 近江巳記夫

    ○近江委員 だから、経企庁長官としては、水準というものにつきましてはどの程度をお考えなんですか。
  334. 河本敏夫

    河本国務大臣 さしあたって五十九年度といたしましては、貿易の黒字幅が三百四十億ドル、それから経常収支の黒字幅が二百三十億ドルと想定をしておりまして、これは大体五十八年とほぼ同じ水準でございます。ただしかし、民間のいろいろな調査機関等を見ますと、貿易収支、経常収支ともこれよりもはるかに大きな黒字幅の数字等も出ておりまして、この点は流動的であろう、このように思います。
  335. 近江巳記夫

    ○近江委員 状況は流動的である、しかし五十九年度におきましては政府見通しよりもはるかに大きくなるという、そういう見通しというものは、いま長官もおっしゃったようにどこの研究機関もそのことを指摘しているわけですね。そういう状態は好ましいのですか。
  336. 河本敏夫

    河本国務大臣 貿易関係だけは、例えばアメリカの景気が非常によくなる、そうして非常に輸入量が激増する、そういうことも考えられますので、政府といたしましてどの水準で抑えようといたしましてもなかなかそれは難しい場合が往々にしてあろう、こう思うのです。ただしかし、余り大きな数字になりますと、さっきも申し上げましたように、もう理屈を通り越しまして感情的に両国の関係が悪化をする、こういうこともございますので、そういうことのないように、黒字幅が余り大きくならないように、同時にあわせて個々の具体的な問題についての懸案の諸問題がございますが、そういう問題も急いで解決をしていく、あわせて国内の市場開放体制あるいは黒字幅を減すためのいろいろな対策、こういうことも並行して進めていかなければならぬ、このように思います。
  337. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、この黒字幅を減らすといういわゆる対策、これは経済政策ということになってくるわけでございますが、経企庁長官も今年度は非常に大幅になるだろう、政府見通しもなるだろう、いみじくもそういう話をされているわけですね。そうすると、これは政府の見通しで出しているわけですから、そういうような雰囲気の中にありますと、これはますます国際摩擦を引き起こすことになるわけでしょう。ですから、五十九年度予算、これを見ましてもいわゆる政府の牽引力というものはもうゼロである。この補正予算におきましても本当に災害対策だけの、公共事業にしましてもそういう手当てでございますし、我々野党として年内大幅減税主張してきたわけですね。あるいは給与の問題にいたしましても抑えにかかるというようなこともございましたし、五十八年度もそうしたことで内需喚起につながるそういう政策というものは見送られてきた。今年度予算を見ましてもやはりそういうことが言えるわけですね。そうすると、やはりこれ以上黒字幅が出るとまずいということをおっしゃっているわけですから。ところが、見通しとしてはこれからまだ出るだろうと長官おっしゃっておるわけですよ。どうすればいいのですか。お考えをひとつ率直にお伺いをしたいと思います。
  338. 河本敏夫

    河本国務大臣 現時点では、大体ここ数カ月間の動きを見ておりますと、これが横並びで推移いたしますと大体先ほど申し上げました政府見通しにおさまるであろう、このように思うのです。しかし、世界経済が非常に激しく動いておりまして、第二次石油危機から五年ぶりで世界経済全体に明るい展望が開けてきておりますので、それじゃ今発表した政府黒字幅は絶対動かないかと言われますと、世界経済の動きいかんでは若干動く可能性もないわけではない。例えば昭和五十三年などは、当初見通しはマイナスでしたけれども、最終的には百数十億ドル黒字になる、昨年も大体黒字幅が三倍になる、こういうことでございまして、やはり経済全体の動きによりまして多少は変わってくるのではないか、こう思います。ただしかし、余り大きくなりますとこれはいろいろな問題が起こりますので、やはりいろいろな対策が必要かと思います。ただ、根本的には私は、二国間の黒字幅ということよりもグローバルな形でこの貿易黒字というものは考えていかなければならぬ、こう思っております。  今のお話は、そういう動きの中にあって一体対策をどうするのかということでございますが、対策は、まず市場の開放、それからもう一つはやはり内需の拡大、さらには円ドルの問題、こういう幾つかの課題があろうと思います。一つだけではございませんで、たくさんの対策を並行して進めていくということが必要だ、このように思います。
  339. 近江巳記夫

    ○近江委員 この特に大きな日米間の差でございますが、日米間の貿易構造というものは相対的にいきますと、我が国から工業製品の輸出、米国からの天然原材料、食料品の輸入、こういうパターンになっておるのじゃないか、このように思うのですけれども、最近は省エネルギー、省資源のそういう進展、さらにまた先端技術産業の発展によって両者間のこの貿易構造というものは一層際立って不均衡を生ずる形になっておるのじゃないかと思うのですけれども、この点についてはどのようにお考えですか。これは経企庁長官と通産大臣と両方に。
  340. 河本敏夫

    河本国務大臣 何昨しろ日米間の貿易というものは非常に大きな数字になっております。そういうことでありますので、過去十数年の動きを見ておりましても、絶えず問題が次から次へ出てきておりますが、しかしその都度日本が誠意を持って解決に当たってまいりました。そこで、現在の個別問題、全体の黒字問題、市場開放、いろいろ問題があるのですけれども、誠意を持って今懸命に日本としての対策をまとめようということで政府努力しておるところでございます。
  341. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 米国との間には、ただいまことしが非常に重要な年である。例えば、ことしは選挙の年であるというようなことによりまして保護主義的な圧力が非常に高まっているわけでございます。と同時に、対日貿易赤字幅が非常に増大いたしまして、この面でもって対日感情が悪化しているというような言い方を政府高官が押しなべて言うわけでございます。しかしながら、そのようなことによって保護主義的な圧力が高まるということは、自由主義貿易体制を推進しなければならない双方の立場から大変ゆゆしきことでもございますし、このようなあり方というものは、せっかく米国を中心として経済が回復基調にあるときに大変問題になるわけでございまして、我々としては自由主義貿易体制というものを維持推進しようという話し方を常にいたしているわけでございます。
  342. 近江巳記夫

    ○近江委員 先般提出されました米国政府の予算教書を見ますと、一九八四年の経済成長率は実質五・三と、わが国の五十九年度の四・一をこれは大きく上回っておるわけですね。しかも、我が国の場合「一九八〇年代経済社会の展望と指針」におきまして平均四%程度の経済成長ということがここに出ておるわけでございますが、アメリカ経済成長というものが一九八四年ペースでいくとしますと、貿易摩擦の問題というのはますます拡大されると思うのです。この点についてはどのように考えていらっしゃいますか。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕
  343. 河本敏夫

    河本国務大臣 この点は、先ほども申し上げましたように、五年ぶりで世界経済が相当上方に向かっておりまして、アメリカの輸入も非常に拡大されるであろう、こういう見通しも一方で出ております。アメリカの一九八三年の貿易赤字は七百億ドルでありましたが、一九八四年は一千億ドルになる、このように言われております。そういうことになりますと、どこか黒字の国が当然出てくるはずでございまして、日本の貿易黒字もあるいは若干一九八三年よりもふえるのではないか、こういう可能性もございます。そこで、先ほど申し上げましたような幾つかの対策というものを並行して進めてまいりませんと保護貿易的な傾向等も出てまいりますので、その点は十分注意しなければならぬ、こう思っております。
  344. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど、今後のとるべき対策というものをお話しになったわけでございますが、それでは内需喚起というものをひとつ考えていきますと、政府寄与度というものはゼロですね。そうしますと、あと個人消費にしろ、民間設備にしろ、住宅にしろ、いろいろ主な項目を見てまいりましても、本当にそれだけ引っ張る力があるのですか。しかも、今回は非常に民間依存という、それに期待をかけていらっしゃるわけですね。しかも、これだけ国際経済の環境というものが非常に動いておるわけですよ。民間依存のそういう中で、本当に長官がおっしゃるような形でこれはいくのですか。
  345. 河本敏夫

    河本国務大臣 御指摘のように財政の力が非常に弱くなっておりまして、五十九年度予算は経済成長に対しまして寄与率はゼロである。ゼロであるということでありますが、とにかく下支えはしておるということは事実でございます。しかし、財政がそれだけの働きしかできないということは私どもも大変心配をいたしておりまして、そこでことしの経済運営の基本的な対策といたしまして、予算編成の際に政府部内で確認をいたしましたことが若干ございますが、それを申し上げますと、まず経済運営の基本路線としては、物価の安定に全力を挙げよう。それから、こういうときには金融政策がある程度機動的に運営できますと非常に効果があるのですけれども、金融政策が機動的に運営できるためには、現在それを阻害しておる内外の幾つかの条件がございますので、それを排除するように力を尽くしていこう。それから第三には、財政を今後引き続いて機動的に運営をする、こういう点について注意をしていこう。それから同時に、対外経済摩擦について政府を挙げて努力をしていこう、こういうことについて当面の経済運営の基本路線として政府として決定をいたしておるところでございます。
  346. 近江巳記夫

    ○近江委員 財政を機動的に運営をしていく。五十九年度予算におきましてはこの寄与度がゼロなんですね。ということは、いわゆる補正予算等も、本予算を検討しておるときの補正予算、非常に答えにくいかもしれませんけれども、財政を機動的に運用していくということをおっしゃっておるわけですから、もしもこの内外の情勢を勘案して、これは手を打たなければならない、こういうときには補正予算で追加措置をとられるわけですか。
  347. 河本敏夫

    河本国務大臣 財政を機動的に運営をしていくということの背景は、やはりこういう経済の激動期でございますから、様子を見ながら善処しよう、こういう趣旨だと私は理解をいたしております。  もう少し具体的に言いますと、経済の情勢が政府の想定あるいはそれ以上に順調に伸びていきますと、財政の出番はないと私は思いますけれども、時と場合によれば財政が昨年のように出動する、こういう可能性がないわけではないと思うのです。しかし、その反対の場合もあると私は思います。例えば昭和五十四年、景気が予想以上に回復をいたしまして、そのときには公共事業などは、予算の計画どおりこれを執行いたしますと過熱状態になるおそれが出てきた、そこで公共事業は後ろ倒しにする、繰り延べをする、そういうことをしたこともございます。したがって、財政を機動的に運営をするという意味は、経済情勢の変化に応じて万遺漏なき政策を進めていこう、こういう趣旨だと考えております。
  348. 近江巳記夫

    ○近江委員 だから、その万遺漏なき政策を進めるということにつきまして、いろいろと想定されることについてお伺いしているわけなんですよ。そういう抽象論では困るのですね。もう少し、やはり経済河本企画庁長官ですから、お互い国民は経済運営については心配しているわけですから、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  349. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま言ったことでおわかりいただけると思うのですけれども、とにかく政府部内で関係者が寄りまして、大蔵大臣を中心として財政の機動的な運営をことしも心がけていこう、こういうことを決めたわけでありますから、機動的運営という意味は私が先ほど申し上げたとおりでございます。
  350. 近江巳記夫

    ○近江委員 対米輸出品目で伸び率の高いものといたしまして、一九八三年四月から九月までの対前年同期比で、建設鋼材、機械が二一七%、事務用機器が一九五%、自動車部品が一九三%、VTRが一七五%、半導体電子部品が一六三%というのが非常に際立っておるわけでございますが、昨年の十月に通産省は輸出秩序委員会を設けているわけでございます。この輸出急増品目の監視を行っておられるようでございますけれども、指定十八品目でも輸出の伸びのテンポが衰えていない、こういうふうに聞いておるわけでございますが、この辺の事情につきまして御説明いただきたいと思います。
  351. 柴田益男

    ○柴田政府委員 ただいま先生からお述べになりました対米の主要輸出品目の動向は、ほぼそのとおりでございます。昨年の一−十二月の数字が私のところにございますが、二〇%以上伸びている品目が十品目以上ございます。これにつきましては、いま先生御指摘がありましたように、輸出監視委員会におきましてその動向を注視しているわけでございまして、基本的方針といたしましては、集中豪雨的な輸出は抑制するということで運用しているところでございます。
  352. 近江巳記夫

    ○近江委員 日米間の自動車のように二国間の自主規制の措置が講じられておるわけでございますが、これは二国間の任意な貿易調整措置であるわけですが、OECDなどにおきましては、保護主義的な傾向を助長する、好ましくない、こういう批判をしておるわけでございます。政府としては、やむを得ない措置として容認しているのか。こういうような手法に対して基本的にどのようにお考えになっていらっしゃるか、まず、これを一点お伺いしたいと思います。  それからまた、日米間の自動車問題のように、三年間の合意がさらに上積みをして延長される、こういうような措置の本質ですね、他国へのこういう影響等を考えますと、非常に問題が多いと思うのです。政府としては、こうした措置についてどのようにお考えであるのか、お伺いしたいと思います。
  353. 柴田益男

    ○柴田政府委員 基本的な方針といたしましては、秩序ある輸出を心がけるということでやっておるわけでございまして、相手国の産業に急激な打撃を与えないような形で輸出を進めてまいりたいということが基本方針でございます。
  354. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは政府委員ばかり答弁しておるわけでございますが、通産大臣、経企庁長官、ひとつお伺いしたいと思います。
  355. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 総じて近江委員のおっしゃることは、日米貿易摩擦の解消はどういうふうにすべきかということを問われていると思うのでございますけれども、何と申しましてもこの貿易摩擦原因というものが、きょう生まれたものがあす解消され、あす結ばれたものがあさって貿易摩擦の重大問題となってくるというようなことで、非常に難しい問題でございます。したがいまして、国内にいろいろな問題を蔵しながらも、基本的には自由貿易体制をどういうふうに推進していくかというお互いの合意が胸の底に強くなければならず、また不断の話し合いというものによって不信感を払拭することが一番大事なことだと思うのでございます。今いろいろ挙げられた問題につきましても、きょうの問題があすの問題となり、あすの問題があさっての問題となるようなことによりまして、我々はこの解消のために不断の努力が必要であると考えておる次第でございます。
  356. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理にお伺いしますが、こういう大きな日米間のギャップ、こういう深刻な貿易摩擦というものにつきまして、総理はどのようにお考えでございますか。
  357. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この委員会で前から申し上げておりますように、六百億ドルに及ぶ日米の双方の膨大な交易量の交流、融通でございますから、双方の社会慣習の相違とか経済発展段階の方向の食い違いとか、そういうあらゆる面で貿易摩擦の起こる可能性は否定できない。問題は、起こることよりも起こったことに対する解決の方法を知っているということであると思います。今後とも日米間で協調、緊密な相談を行いながら、一面において、こちらの輸出に対する自粛自制措置、独禁法にかからないようにこれを適切に行うということ、それから当方における資本並びに金融及びマーケットの自由化を促進していく、そういうさまざまな組み合わせでこの問題を解決してまいりたいと思っております。
  358. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは根本的には、やはり内需喚起をやる。これは先ほど経企庁長官もお答えになっていらっしゃるわけでございますが、今年度予算を見ましても、何回も申し上げておりますが、政府の果たすべき役割というものはゼロに等しい、こういうことでございまして、非常にそういう点を危惧するわけでございます。経企庁長官はお答えになっていらっしゃるのですけれども、内需喚起につきまして総理としては、これだけ貿易摩擦の問題が大きな問題になってきているわけですから、一つ一つの品目につきましてその都度日米間で協議をする、これは小手先のことでありまして、やはり根本的には内需喚起をするしかないと思うのですね。そういう点につきまして総理の具体的なお考えをお聞きしたいと思います。
  359. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 基本的には、やはり円を強めに持っていくということと内需喚起が基本線だろうと思います。内需喚起につきましては昨年十月の二十一日でしたか経済対策をとりまして、いまもその補正予算をお願いしておるわけでございます。こういうようにして内需喚起をさらに力強くやっていきたいと思いますし、また、金融の弾力化ということを経企庁長官もおっしゃっておりますが、金融制度の弾力化を適切に行っていく等々の組み合わせによりまして、内需を次第に喚起していく。さらに民間活力の強化、利用ということも言い出しまして、梅田やあるいは錦糸町やあるいは新宿、西戸山等において公有地の積極的開発にも乗り出しておるところでございまして、これらの総合的な政策を逆用して内需喚起に努めてまいりたいと思っております。
  360. 近江巳記夫

    ○近江委員 ECとの間におきましても同じ問題が起きてきておるわけでございます。  安倍外務大臣にお聞きしますけれども、新たな多角的貿易交渉の提唱を行って、五十九年度経済運営の基本的態度として我が国のそういう準備を整えたい、こういうことをおっしゃっておるということを聞いておるわけでございますが、その意図、また海外の反響、今後の見通し等につきましてお伺いしたいと思っております。
  361. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはレーガン大統領が訪日をされました際に中曽根総理から、今後の世界貿易特に自由貿易体制をこれから確立していくためにも新しいラウンド、いわゆる多角的ラウンドの交渉に入る必要があるのじゃないか、こういうことを提唱されまして、レーガン大統領も、そのとおりだ、アメリカはこれを支持する、こういうふうに答えられたわけでございます。その後このニューラウンドの問題は、我が国としても積極的にヨーロッパの諸国、さらにまた第三国といいますか開発途上国等にもいろいろと説明をし、今理解、協力を求めておるわけでございますが、ヨーロッパ、ECの国々においても、これは通産大臣からもハフェルカンプ副委員長にも相談をされた、会談をされたというふうに承っておりますが、いろいろと多少の複雑な対応があるようでございますけれども、しかしドイツ等はこれに賛成もいたしておりますし、その他のヨーロッパの諸国等もこのニューラウンドを支持する動きもあるわけでございます。開発途上国等についても、日本が積極的に自由貿易体制の堅持という立場からこれを進めていけば賛成を得られる可能性も十分ある、私はこういうふうに思っております。これはロンドン・サミット等でも恐らく議題の一つになるのじゃないだろうか、こういうふうに私は思うわけでございますが、自由貿易体制を今後とも確立するためには、こうした東京ラウンドにかわる新しいラウンドが必要じゃないか、こういうふうに考えておりまして、日本としても提唱者であるだけに、これから精力的にひとつ取り組んでまいりたいと考えております。
  362. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう余り時間もないわけでございますが、いずれにしましても経済摩擦の問題につきましては、これは本当に政府として真剣に取り組まなければならない問題でございます。総理以下関係大臣におきましては、真剣な取り組みを強く要請いたしておきます。  最後に労働大臣に、もう時間がありませんから一点だけお伺いしますが、男女雇用平等法案の早期制定ということにつきましては、国民が非常に注目いたしております。その点につきまして先日も発表が行われたわけでございますが、そういう審議会のそうしたことも踏まえまして、これはいつごろ提出されるのか、そのめどについてお伺いしたいと思います。これが最後の質問です。
  363. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 近江委員も御承知のとおり、我が国経済、社会における婦人労働者の役割というものはどんどん大きくなってまいりまして、全雇用労働者の三分の一を超すという勢いとなってまいりました。それからまた、国際的な約束でございまする婦人差別撤廃条約の批准の国内条件の整備の一環としても、これまた国内法の整備が必要になってきておると私は思っております。そこで、相当長い間婦人少年審議会におきまして審議を進めてきておるところでございまするが、きのう公益委員の案も出されました。それは、今まで労使の見解が相当隔たっておったわけでありまするけれども、これを何とかまとめたいというお気持ちでありましょうから、公益委員の案が出まして、そして、これをたたき台にして早急に案をまとめていこうということでございます。  そういうようなことで、労働省といたしましては、これはこの審議会の結論をできるだけ早くおまとめをいただきまして、その結論が出次第法案をつくって今国会に提出をいたしたい、こう思っております。
  364. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  365. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 この際、二見伸明君より関連質疑の申し出があります。近江君の持ち時間の範囲内でこれを許します。二見伸明君。
  366. 二見伸明

    ○二見委員 最初に、環境アセスメントについてお尋ねをしたいと思います。  環境庁長官にお尋ねいたしますけれども、環境影響評価法案は、昭和五十六年の第九十四国会に提出されてから五十八年の第百国会まで約三年間を費やしながら、昨年の暮れの解散によって廃案となってしまいました。一億二千万人に及ばんとする日本人がこの狭い日本の国土の中でこれからもさらに豊かな生活を営んでいくためには、やはり開発というのは今後とも進められざるを得ないだろうと私は思います。そして、そうした経済活動が私たち個人個人の生活に質量ともに豊かさをもたらす、そのためには環境を保全するということ、公害を防止するということ、これは私はもう絶対的な不可欠な要件だという認識を持っております。したがいまして、公害を発生する可能性のある事業を始めようとするときには、公害を防止し自然環境を保全するために環境への影響を事前に予測して、住民と納得ずくでそうした開発行為を行っていく、経済活動を行っていくということは、今では私は当然の考え方だ、不思議でも何でもない当たり前の考え方だというふうに思っております。  そうして、そのためのシステムというかルールづくりがまさにアセス制度であり、アセス法だと思います。前国会では解散によって廃案になってしまったわけでありますけれども、当然今国会には一番早い時期に法案が出てくるものだと思っておりますけれども、長官はこの法案を提出されるのか、またその時期はいつか、お答えをいただきたいと思います。実はこの法案と一緒に湖沼法が心中してしまったですね。湖沼法も一緒にだめになりましたですね、ですから、湖沼法案は今国会にはどういうことになるのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  367. 上田哲

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま先生からいろいろと環境につきまして御意見を拝聴いたしました。私も、環境問題というのは非常に地味な、ちょっと言葉がなんでございますが、国から予算をいただいてそうして大きなプロジェクトを完成していく、こういう華やかなものに比べると非常に地味な仕事でございますけれども、お話しのとおり非常に国民生活にとって重要な問題であると思うのでございます。したがいまして、中曽根内閣もこの問題には大いに取っ組んで、そうしてその解決を図っていきたい、こういうふうに考えていただいておりまして、環境庁長官、大いにしりをたたかれておるところでございます。  さて、ただいま先生からお話がございました環境アセスメント、環境影響評価法案に対しまして、これをどうするのかということが御質問にございましたけれども、この法案は、お話しのとおり前国会で流れました。しかし、これは非常に重要な法案でございますし、また、国民の関心がだんだんと環境評価ということに対して伸びてきておりまして、実は非常に広がってきております。それがために、いろいろな大きなプロジェクトをやります場合におきまして、また大きな事業をやります場合におきまして、各事業者、国の省でございますとか府県であるとかあるいは大きな市、こういう方々が事業をおやりになるときには、必ずこの環境影響評価ということをやらなければいけないように今なってきておりまして、これが全国的に大変行われております。省におきましては通達で、それからまた府県あるいは市におきましては条例であるとかあるいはまた要綱、こういうものをお出しをいただいて、そしてそれによって環境評価をやっていただいております。  しかし、そのやり方を見てみますと非常に変化がございますので、これはやはり何とか国の方で決めていくというようにしていかなければならないのではなかろうか、こういうことを踏まえまして、私はこの国会にぜひとも再び環境アセスメント法案を出させていただきたい、今各方面に、各省にいろいろと交渉をしておるところでございます。この点をひとつどうぞよろしくお願いいたします。
  368. 二見伸明

    ○二見委員 この法案は、五十六年に提出された法案というのはもう中身も十分議論されておりますので、きょうは中身の議論をする気は毛頭ありませんけれども、提出するまでに大変問題というか、いろいろ議論のあった法案であります。提出するまでに、まず与党の自民党内の合意を取りつけるのでも大変だった法案であります。ところが、政府案として提出された後もまことに不思議な法案で、政府が提出したにもかかわらず、そして野党がこれを何度か成立させようと努力したにもかかわらず、与党の一部の反対でもって継続審議になり、そして前国会では解散による廃案ということになった。  私は、環境行政というのは非常に地味だし、環境アセスメントという制度は、今長官おっしゃるように非常に大事な制度だと思います。各省庁で通達でやっているからいいじゃないかという議論もなかったわけじゃないけれども、むしろもうこの段階では環境アセスメント法を成立させて、そうした制度というものを全国ネットで綱をかけてしまった方が物事がスムーズに行くし、トラブルも少ないんじゃないかという考え方を持っております。  だが、今、長官は各省庁にお願いをしていると言うけれども、アセスメントをめぐる環境というのは、若干なりとも好転しているのかどうか。もしこれが私の記憶違いだったら申しわけないのだけれども、総理府か何かで世論調査をされたときに、国民の関心がこの環境影響評価、アセスメントには非常に高かったという総理府の統計を私は見た記憶があります。そして、それは当然ほとんどの国民は、この制度ができることを期待をしているんだと思うのです。  今までは、自民党の中の一部の方によって法案の審議が引き延ばされ、結果として廃案になってしまったけれども、恐らくこの大きな日本の屋台骨を背負っている政権政党である自民党の中に、すべてがすべて反対だとは思わない、良識ある議員はたくさんいるはずだし、あるいはまだ余りよくわかってなくて反対されている方もいるんだろうと思うのです。それは話をすればわかる話なんです。事実、こういうものだということが納得できれば、余り反対は出てこないのじゃないかと思いますけれども、この法案に対する環境というのは今までと比べて好転していますか、変わりませんか。
  369. 上田哲

    上田国務大臣 お答えを申し上げます。  先ほどちょっと申し上げましたが、環境影響評価ということにつきましては漸次国民の間にも浸透をしてまいりまして、今ではもうほとんどの方方が、これをやらないといけない、こういうふうに思っていただいております。また、先ほど、党の議員がそういうことがないのかというお話がございましたが、これもやはり国民と同じようなことになってまいりまして、だんだんと浸透をしておりますので、それは賛成をしていただけると私は確信をしております。  それから、先ほどちょっと湖沼法につきまして答弁漏れをいたしまして失礼をいたしましたが、湖沼法につきましては、これも先生のお話のとおり、非常に急いでやらなければいけない問題になってきております。人間の飲み水という問題が、この湖沼からとっておるのが非常に多いのでございますけれども、そのもとになる、原水になる湖沼の水質が悪くなってきておるということが起こってきております。  先日も手賀沼へ行ったのでございますけれども、その手賀沼の水質はもう非常に悪くなってきておりまして、冬でも緑の色をまだ呈しておる、残っておるというのが実態でございます。また、琵琶湖あたりでは六月ごろに赤潮が起こりまして、そして、関西方面の水源になっております琵琶湖からの上水道の水はカビ臭いというような現象が起こっております。したがいまして、早くこの湖沼法を成立させまして、そういう問題を解決していきたいと念願をいたしております。  以上です。
  370. 二見伸明

    ○二見委員 このアセス法については、もう今までのいきさつを申し上げる必要もないと思うのですが、例えば昨年の通常国会では、四月一日に二階堂幹事長ら党四役と後藤田官房長官が、この法案は早期に成立させるべきだということで合意確認をされて、そのために反対意見を持っていらっしゃる自民党の議員のところをいろいろと説得に回ったという話も聞いておりますし、新聞でもそうしたことを見ております。ところが一方財界では、四月十八日に花村経団連副会長が二階堂幹事長にアセスの法制化はしないでくれという強力な反対の申し入れがあった。この法案を審議する環境委員会でも、与党の中からいろいろな反対意見が出されてきて、結局はこの国会では継続になってしまった。  このときに野党は、いろいろ自分たちの考えているものを百点とすれば、百点満点ではないけれども、こういう制度ができることは一歩前進だから成立させようじゃないかということで、むしろ野党が審議促進に回った。それを政権政党である自民党の方でブレーキをかけた。その結果、継続になり、前国会では解散による廃案になってしまった。これは、この法案をめぐって非常に重要な教訓だと私は思います。  環境庁長官は、非常に党内の状況はよくなっているのじゃないかと言う。それは悪くなったとは言えませんから、そう言うに決まっておりますけれども。いいですか、長官、これだけは覚悟してもらいたい。今度の国会でもし提出できないということになったならば、今後の環境行政というのは一体どういうことになるのか、どういう影響が出るのか。都合の悪い法案はつぶせという発想がまかり通ったならば、日本の環境行政というのは台なしになってしまう。そのくらいの、これは環境行政の根っこにかかわる問題なんだ。長官、もう一度はっきり決意を表明してもらいたいと思います。
  371. 上田哲

    上田国務大臣 この法案につきましては、環境庁長官、これはもう懸命になって説得に当たります。  なお、内容につきましては、前回も提出をせていただいておりますので、各省は御賛成をいただけるものと確信をいたしております。
  372. 二見伸明

    ○二見委員 私は、その懸命に説得に当たりますというところにおかしいなと思うのです。この間の政府案よりももっと別のことをやれ、たとえば電源開発を入れろというのならば、もう一度議論しても構わない。政府提出までどういう手続をするのだか、私の聞いているところによりますと、まず自民党の政調で議論をし、それから閣議に持ち込むということを聞いております。前回政府案は、既に自民党の中で合意のできているものだ。改めて説得しなければならぬというところに、私はこの法案の不思議さがある感じがいたします。いいですか、くどいようだけれども、この法案が提出できるかどうか、成立てきるかどうかというのは、まず第一義的には環境庁長官の、それこそ、これがもし提出できなければ辞表を出すぞ、腹を切るぞ、いいですか、辞表を懐に入れて臨むぐらいの決意がなかったならば、この法案は出ませんよ。どうなんですか、一体。
  373. 上田哲

    上田国務大臣 ただいまこのアセスメント法案につきまして、手続が相当かかるのじゃないかというお話がございました。これは確かにかかるのでございます。と申しますのは、前国会において廃案になりましたので、今度出しますときは、新規のやはり法案として各省の御了解を得、また法制局に審査をいただきまして、そうして与党の政調の方にかけまして、総務会にかけて党議をまとめていただいて、そうして内閣総理大臣の御了解を得て出す、こういうことになりますので、その手続が要るわけでございます。したがって、時日が少しかかりますけれども、しかし、前回においてこの法案を出しておったということは、その当時におきましてもう全部が御了解をいただいておったということでございますので、その点を考えますと、これは必ず提出をさせていただきたい。環境庁長官として決意いたしております。
  374. 二見伸明

    ○二見委員 私はこの問題、やはり総理にお伺いをしたいと思います。  わが党の立場からいきますと、政府案というのは正直言って百点満点でありません。それは、電源開発をこの対象事業から除外したということに対して不満は持っております。だけれども、このアセス制度というのは、私は環境行政にとって非常に画期的な制度だと思いますし、だから、今大事なことはまずこの制度をつくることだ、そうしてそれを定着させていくことが何よりも大事なことだと私は認識しております。  しかし、先ほど申し上げましたように、この法案はいろいろなことがあった。もう私よりも総理の方がよく御存じのはずであります。ですから、この法案を提出する、そうして成立させる。そのために、私は今こそ総理大臣の強い指導力が必要だと思うのです。実はこの間、この委員会で総理は、武藤山治さんへの答弁で、私は声が大きく荒荒しく見られるが、根は優しく文化性は豊かだ。私は、この言葉に期待をしているのです。  私は、この問題、昭和五十五年、大平さんが総理大臣だったときにやはりここで質問をいたしました。そのときに大平総理は、五十五年の通常国会のときに出すと答弁されました。ところが、五月の半ばに衆議院が解散をしたことによって、しかもダブル選挙の真っ最中に大平総理がお亡くなりになられたということで、そういうことになりました。しかし、大平総理の後を継がれた鈴木内閣が五十六年にこの法案を提出されたわけです。それは、いろいろその間紆余曲折があったことは私十分承知しておりますけれども、由がりなりにも出てきた。もし、今国会にアセス法案が提出されないということになると、大平内閣、鈴木内閣の環境に対する考え方と中曽根内閣の考え方が違うことになるのじゃないか。  だから総理がみずから、党内の一部にいろんな異論があるだろうと思う、それを総裁として、私はそのいろんな異論に対して説得もしてもらいたい。財界の一部には不安もあるだろうし、危惧もあるだろうと思う。そうしたことは、総理は財界といろいろお会いになる機会も多いことだろうと思う、そういう場面を積極的に利用しながら解きほぐしてもらいたい。そして、私はこの法案を今国会に一日も早く出すということに、まず指導力を発揮していただきたいと思うのです。私は、日本の環境行政が二十一世紀、総理の好きなお言葉が二十一世紀だけれども、二十一世紀の日本が緑豊かな、そして経済力も豊かなそうした国、そうした国土をつくるためにも、この制度をまず出発させてもらいたい。そのために、今国会総理の指導力を私は心から期待をしているのです。御答弁をお願いします。
  375. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 環境行政は非常に大事であると思います。とにかく党内の調整を急いでやりたいと思っております。
  376. 二見伸明

    ○二見委員 実は総理、私は党内の調整を急いでやることはわかるのです。ただ、廃案になった政府案と別のものを出せと言うのならば、それはむずかしいかもしれない。しかし、そうじゃない。私たちも無理なことを申し上げているわけじゃない。電源開発を入れろとか、こうしろああしろと、余分なものをつけ加えると私は申し上げているのじゃない。あの廃案になったのと同じでいいからまず出そうじゃないか、まず制度をつくろうじゃないか。党内いろいろ議論がある、私もそれも伺って聞いております。だから、私は総理の指導力をお願いするのです。何とか提出へ向けて総理として全力を挙げて頑張ろう、そういう決意を私はどうしても聞きたいわけです。もう一度お願いします。
  377. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、党内の調整を急ぎたいと思っております。
  378. 二見伸明

    ○二見委員 私は、本当にくどいことを申し上げて嫌なんだけれども、党内の調整を急ぐという御答弁は、提出する方向に向けて党内の調整を総理がおやりいただけるというふうに理解してよろしいですか。
  379. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろん、提出する方向に向けて努力してみたいと思います。
  380. 二見伸明

    ○二見委員 私は、提出する方向で総理が全力の努力を傾注されることを心から期待もしておりますし、これからの御努力を心からお願いをしたいと思います。  次いで、湖沼法案について一点だけお尋ねをしたいと思います。  提出される予定だそうでございますけれども、実は私のところに霞ヶ浦という、地元のものを出すのはまずいのかもしれないけれども、例えば霞ヶ浦はアオコの発生が物すごいわけです。夏になると大変なものだ。水道の水はまずくて飲めないし、養殖のコイは死んじゃうし、霞ヶ浦だけを例にとるまでもなく、湖の汚れはひどいです。茨城県では、五十六年に霞ヶ浦富栄養化防止条例というのをつくって、工場排水の規制や含燐洗剤の禁止を行っているわけです。それでも、水質汚濁の状況というのは環境基準値、CODを約三倍も上回っているという大変なありさまであります。ですから、湖沼法案を一日も早く成立させてもらいたいわけでありますけれども、さらに富栄養化を防止するということになると、湖沼法案でもって富栄養化が防止できるというものでもないだろうと思う。私は、湖沼の富栄養化防止対策というのを環境庁は今後どう進めていくのか、これは湖沼法案と直接関係はないかもしれないけれども、お願いしたいと思います。
  381. 上田哲

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  今、霞ヶ浦を例にとって先生から御質問がございました。この霞ヶ浦の富栄養化の一番の原因は、やはり生活雑排水が入るということと、もう一つは畜産関係のいろいろな廃液が入ってくる、こういうことが一番大きな問題でございます。この問題をやはり早く解決をしなければならないということでございますので、下水道の整備を早くやっていただくということが一番であろうと思うのでございます。  その下水道の問題でございますけれども、今の燐であるとかあるいはまた窒素、これが富栄養化の大きな原因だと今言われ、そういうふうに私どもも信じておりますが、これを取り除くということがなかなか難しいというかやりにくいというか、そういう状態にあるのであります。これを、下水道の二次処理というものでございますが、活性汚泥法という今までやっておりますやり方でいくと、なかなかその二つのものが取り除けないのが実態でございます。これはやはりどうしても、早く取り除くようにするような方法考えなければいけない。こういう点で今、懸命になって研究をしていただいておるのでございますが、第三次処理というやり方もありますけれども、これは非常に金がかかりますので、実際上なかなかこれは困難であるということでございます。この点をひとつ十分私ども、検討をしたいと思っております。  それともう一つは、霞ヶ浦は今言いましたような、結局言いますと畜産関係のふん尿であるとか、あるいはまた人間といいますか、住民の方々のふん尿の処理ということも、これも大きな原因になっておりますので、そういうものに対して処理を特別に考えるということも一つの手ではないかということで、私は今それを調査してもらうようにしておりますが、そういうようなことで、富栄養化を早くとめたいと考えております。  私も河川を扱っておったものでございますから、霞ヶ浦の水問題については非常に心配をいたしております。早くこれをいい水にしていきたいと念願をしております。頑張ります。
  382. 二見伸明

    ○二見委員 長官、もう一点お尋ねしますけれども、いわゆる燐と窒素ですね、これは水質汚濁防止法の中で排出規制をきちんとする必要があるのじゃないでしょうか。中公審の答申を待つということになるかもしれませんけれども、この点はどうでしょう。
  383. 上田哲

    上田国務大臣 ちょっとこれは専門的になりますので……。
  384. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 御質問の点でございますが、施設の整備と規制、車の両輪でございまして、まず第一義的には大臣からお答えいたしましたように、施設の整備が中心でございます。それとあわせまして、やはり従来規制の対象になってなかった窒素、燐についてもある程度の規制をやっていくことは必要だというふうに私どもは考えまして、一昨年十二月に環境基準を策定いたしまして、あわせて、それを受けまして水濁法に基づく排水規制につきまして中央公害審議会に諮問しているところでございます。現在、事務的に詰めている段階でございまして、一日も早く結論を得まして、湖沼の水質改善に努力してまいりたいというふうに考えております。
  385. 二見伸明

    ○二見委員 教育問題について、総理の御意見を若干伺いたいと思います。  教育臨調でございますが、総理大変お嫌いですけれども、ちょっとほかに言葉がありませんので教育臨調という言葉を使わせていただきますけれども、いわゆる教育臨調ですね。これは、昨年の選挙中あるいはその前から総理は教育改革は非常に大事だという御発言があって、私の承知している範囲では、たしかこれを中教審で行うというように総理は発言されていたように記憶しております。それが、年が明けましてから、突如内閣の直属機関として教育改革を行うというふうに変化したわけですね。この問題でここで大分議論がありましたときに、総理は、いや、これは各省にまたがるものだから内閣直属にするのだというふうに御答弁されておりましたけれども、それは各省にまたがるのは別にことしに入ってからわかったわけじゃなくて、去年でもそれはわかっていたわけであります。ですから、我々は、いきなり中教審じゃない内閣直属のすごい審議会か何かでもってやるということになると、これは制度改革以上の、何か教育理念そのものも抜本的に見直すというような大変な改革をやるのかなというふうに、実は恐れおののいたわけであります。  というのは、私も総理のこの本を読ましてもらいました。その中に、総理の「新しい保守の論理」の中に「文部省の教育方針にしても、中央教育審議会の審議基準にしても、約三十年前、占領軍によって指導された外来種の教育理念や制度の上を走りながら小刻みの改善を行っているにすぎない。」と、まことに明快に批判というか一刀両断されているわけであります。私たちは、教育の荒廃を憂えるということ、だから今教育制度の改革が必要なんだということについては、私も同じ意見なんです。だけれども、なおかつそこにもう一歩総理の提言に足を踏み込んでいけない、戸惑いを禁じ得ない。それは、総理は制度改革に名をかりて、何か教育をとんでもない方向に引っ張っていっちゃうんじゃないかというおそれというか不安感があるので、教育制度の改革はやらなきゃならぬと思いながら一歩引いてしまう。これが率直な私の感想であります。  総理は、矢野書記長に、教育基本法は変えないという御答弁をされました。また、教育臨調ですね、申しわけありませんけれども、教育臨調で論議するものは中教審の答申をベースにすると、ずっと答弁されてこられました。そうすると、こういうふうに理解してよろしいのでしょうか。この新しくできる審議会といいますか、これは六・三・三・四とか中高一貫とか幼保一元化とか、いわゆる教育制度にかかわる問題でありますね、これに限定して諮問というか議論することになるのでしょうか。それとも、それはそれでやるけれども、それ以外の何かもあわせておやりになるのか。その点はいかがでしょうか。  それから総理の私的諮問機関の中に文化と教育に関する懇談会でしょうか、何か三月に答申が出るそうですけれども、その答申もあわせて審議会で議論するということになるのでしょうか、どうでしょうか。
  386. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず申し上げたいと思いますことは、教育改革は大事業でありまして、拙速を避けなければならない。それから国民の各方面の御意見を十分お聞きして、そして普遍性を持った改革を行わなければならない、そう思っております。  そこで、私は前に申し上げたのは、中教審を中心にしてという言葉を使ったと思うのであります。それで、それは頭は文部省を中心にするという意味があったと思います。中教審を中心にして考えていた。ところが、いろいろ考えてみまして、これを実行する、いただいた答案を今度は実施しなければならない。四十六年でも四十九年でもかなり内容のいい立派なものができておるけれども、実行できなかった。どこに原因があるだろう。そういう点も考えてみますと、やはり総理直属の審議機関にして、そして内閣全体を挙げて力を入れてやるという新しいやり方に持っていかなきゃ、また同じことを繰り返す危険がある。そういうことから内閣という考えが浮かんできた。  もう一つは、国民的レベルでこれだけ教育問題に熱が出てきたときは今までないと思います。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕そういう意味において、ますます国民的レベルでこの問題を議論していただいて、各方面の御意見をおさめて納得できるような改革にしていきたい、そういう意味において内閣レベルという総理府の機関にしたいということがある。  もう一つ大事な点は、野党との党首会談をやりました。そのときに公明党、民社党の委員長の方々は、国民的なレベルですぞ野の広い考えで、国民の広場で今度はやるべきである、そういうお考えを明確に示されました。私はそれに共感を覚えまして、そういう点でも、これは今までの中教審と違うものにした方がいい。しかし、四十六年、四十九年の答申等を見ますとかなりいいものもありますし、専門家の議論というものは、また教育問題等については尊重しなければならぬ、非常に大事な要素だと思っております。大体教育問題はみんな多少ずつ経験してきていることですから、一億一千万が総評論家になり得るものである。またそういう大事な問題でもあります。そういうことで文部省でやってきた——中教審というのは文部大臣の諮問機関でしたから、どうしても実行が鈍ったわけですね。しかし、内容自体については極めて勉強された深いものもあるわけですから、その今までの中教審の蓄積というものを尊重して、一面においてはそのベースの上に立つ。  それからもう一つは、私が個人的につくった文化と教育の懇談会に結論を三月ごろ出していただき、これが大きな方向を示すという意味があります。中教審の今までの答申と、この三月に期待されている私に対する意見の表明というものとを適切に考えながら法案というものをつくっていこう。それで、今度そういう新しい法案がこのときに国会に出ることによって、さらにまた国民的な議論がここで起こるであろう、それでますます教育というものは切磋琢磨していいものになるだろう。そういう国民的な論議がこれでまたわき出る、それは非常にいいことなんだ、そういう期待も込めて以上のようなことを申し上げておるわけであります。
  387. 二見伸明

    ○二見委員 確かに教育は一億総評論家でありまして、ですから、総理がおっしゃるように拙速は避けなければなりません。それこそ幅広い各界の合意を得なければできるものではありません。  それで、ちょっとお尋ねしますけれども、審議会というものは中教審よりももっとすそ野が広いということになると、メンバーの数なんかも中教審よりも多いんだ、しかも構成されるものもある特定の分野に限定されるのじゃなくて、それこそ、日教組の話も出ましたけれども、そうしたかなり広範囲のところから集めてこようというのが総理の大体の構想でございますか。
  388. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 法案もまだ出さないうちに人選やら何かのことを申すのは越権であります。そういう意味において、法案ができるまではできるだけそういうことは慎みたいと思いますが、ただいま申し上げましたような非常に国民的な視野に立った、そして国民的なすそ野の上に立った普遍性を持ったこと、またある意味においては教育は専門家が必要でございますから、専門家も網羅した、そういうていの機関をつくったらどうであろうか、そういうふうに考えております。
  389. 二見伸明

    ○二見委員 いわゆる審議会で二年か三年かかって一つの答えが出てくる、これは実行するために審議会をつくるのだという総理の御答弁です。そうすると、私たちが心配するのは、教育問題というのは、一つやるにしろ賛否両論というのが必ず出てくる。それを答申が出た、それ、これがにしきの御旗だというので一気にやってしまう、極端な言葉で言えば、反対意見は圧殺して強行するというようなことになれば、それは教育の改革どころかかえっていろんな混乱を巻き起こしてしまうだろうと私は思います。ですから、それは避けなければならないだろうと思うし、それをにしきの御旗にして強行するということは不可能なのが教育改革だと私は思います。その点について総理はどうお考えになっているのかということと、また、一つ実行するにしても、国会という場があります。国民各層の意見を集約できるというか、反映する場が、私は国会だと思います。国会で、与野党で合意できるものから順次実行していくという慎重な手順を踏むのかどうか、まだ法案もできてないのにとおっしゃいますけれども、大体、別に法案の中身の話じゃありませんから、そこら辺についての総理のお考えはいかがでしょうか。
  390. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府の公権力をもってこれを強行しようなんという、そんな大それた考えはありません。それは教育には似つかわしくないと思うのであります。しかし、中教審の答申を見ると、ともかくあれだけの大きな仕事をやってまとまったですね。だから、新しい審議機関をつくった場合に、相当まとまれるものをおつくりいただけるのではないかと思うのです。なぜなれば、目に見えている臨床的な問題で余りにもひどいものももう既にある。しかし、六・三・三・四制をどういうふうにするかという大きな体系の問題になると、それはいろいろ議論もあると思いますが、いろいろ議論を煮詰めていただいて、そしてどこへ収れんしていくか、それでつくっていただくことは必ずしも不可能ではない。中教審の例を見まして、私はそう思います。  そういうていのものをおつくりいただいて、それを我々がいただいて、今度は政府として政府・与党で検討いたします。そして今度はそれを法案化する、あるいは予算化する、そういう形になっていくと思います。その過程におきまして、でき得べくんばその機関の設置法のときから野党の皆さんと協調して設置法をつくりたいと思っております。それで、設置法を提案するとき、いろいろな議論が出るでしょう。そのときの政府の答弁というものは、守らなければならぬ答弁がなりやるだろうと思います。そういうことで、国民的な基盤を形成しつつ教育というものを築き上げていこう、そういう考えがあるわけであります。したがいまして、権力を乱用して強行しょうなんという考えは毛頭ございません。しかし、急を要するものもあります。偏差値の問題とか入学試験の問題とか青少年の精神的環境を保護する問題であるとか、そういうような問題については中間答申をいただいて、できるものから実行したらいいのではないか、そう思います。
  391. 二見伸明

    ○二見委員 法案も出てないのにこの問題でいろいろ議論するのは、あるいは総理としてもしんどいかもしれませんけれども、こうした中教審とは違った内閣直属の機関が総理の構想でできるということになると、やはり私はあらゆる角度からこれはどういう方向になるのかということを知らなければなりません。知らなければ、例えばこの設置法案が出てきて我々賛否を論ずる場合でも論じようがない。そういう意味合いでもって、また若干あるいはお耳ざわりのことがあったらお許しいただきたいけれども、お尋ねをしたいと思います。  矢野質問でもこれは申しておりましたけれども、昭和三十一年に臨時教育制度審議会を設置しようとしたときの最大のねらいは、今の教育基本法では忠とか孝とかというのは教えることができないから、基本法を改正して忠や孝を教えることができるんだというのが当時の答弁でした。ところが、矢野質問に対して総理は、いや、基本法を改正する必要はない——まだ議事録ができておりませんので、私の固さ間違いだったらば御訂正もいただきたいし、言葉足らずであったらば御説もいただきたいのだけれども、忠や孝は教えることができるのだというのが中曽根内閣の解釈だというふうに御答弁されたように私は聞いておりますけれども、その点はそれで間違いございませんか。
  392. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 矢野質問の際は、矢野さんは忠というものを、背の国家主義における忠とは必ずしも指定しては言われなかったのです。つまりロイヤリティーという言葉も使いました。それから孝という場合は、親に孝、そういうような意味でありましょう。それで、清瀬文部大臣が昭和三十一年に、教育基本法を変えなければいけない、その理由として、忠や孝がこの中へ入ってない、そういうことを例に引かれたわけです。しかし私は、教育基本法を読んでみまして、そして責任であるとかいろんな文章を読んでみれば、私は、矢野さんがおっしゃるような意味の、要するに意味するところは基本的徳目ですね、それは入っておる、そう思っておるのです。ですから、十分私、そのときの言葉は、その本にも書いてありますけれども、人間として生きる基本の型という表現を使っているわけです。人間として生きる基本の型というものは、これは恐らく仏教でもキリスト教でも回教でも神道でも大体同じものを言っているでしょう。うそを言ってはいかぬとか人を殺してはいけないとか、礼儀は守れとか幼い子供を大事にしろとか、そういう人間として生きる徳目は普遍性がありますね。だから、そういうような普遍性のある人間として生きる基本の型というものをよく教え込む必要がある、私はそう思っておる。さもなければオオカミ少年と同じになってしまう、そういうような感じで矢野さんには御答弁申し上げたわけです。
  393. 二見伸明

    ○二見委員 忠という言葉になりますと、すぐ私も、戦争を経験しておりますので、忠君愛国の忠を思い浮かべるわけでありますけれども、それはそれといたしまして、もう一つお尋ねをしたいのですが、やはりこの「新しい保守の論理」の中では、「〔本には現代にふさわしい一大精神文化研究所が必要である」とお述べになられておりまして、そしてしかも総理は、この精神文化研究所は第三セクター方式の自由闊達、民主的な研究所だ、こう言われておるわけです。ただ私は非常に心配することは、総理が私という立場、私人という立場でこういう研究所をおつくりになることは私は一向に差し支えないと思います。ただ、もしこうした一大精神文化研究所というようなものを、公的な性格を持ったものでこういうものをつくるということになると、やはり国民を一つの価値観に誘導し、統一していくおそれが出てくるのじゃないか、そういうおそれが実はあるわけです。  例えば愛国心という問題がある。私はここで愛国心の議論はしませんけれども、私も愛国心があると思っているし、愛国者だと思っている。国を愛せなかったら政治家になんかなれませんから。総理も同じように愛国心の塊みたいな存在だと私は思います。ただ、その愛国心に対して、愛国心とはこういうものだと例えばこういう研究所で一方的に定義づけて、それを上から教え込むということになると、やはりこれは総理はこの中で超国家主義、偏狭な民族主義は排斥しなければならぬと明確に仰せられている、しかし、それが結局そうではなくて、一つの方向にこうぐうっと行ってしまう。私はこれが大変怖い。戦争中はストライクとは言えなかったんでしょう。いい球一本とかと、こう言ったわけでしょう。英語を使えば敵性語だと言った。それが当たり前だと思ったくらい、日本人というのはある面ではこういう狭いところがある。  そうなりますと、私は、総理はこれはどういうお気持ちで言われたのかわからないのだけれども、そういう一つの方向に誘導されたんでは怖いな。価値観というのは多様であっていいし、ただおっしゃるように、人間としての生き方とか基本的なものはそれは当たり前のこととして、それ以外のいろんな価値観があっていいと思うんです。それを一つの方向に引っ張っていってしまうようなことになれば、それは、その社会というのは永続する社会じゃないだろうと私は思います。そういう意味で、総理がお述べになっている一大精神文化研究所というものについて、まさかこういうことは審議会の中で総理としては議論されるのかどうかわかりませんけれども、そこら辺はどうでしょうか。
  394. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、それを第三セクターでつくった方がいいと言ったのは、国立とかそういうものには向かない、そういう意味で言ったのです。民間を主にして国が補助してやってもいいじゃないか、そういう考えがあったからです。  それで、なぜそういうことを言ったかといいますと、それはある一つの思想を押しつけようと思って言うのではなくして、日本には日本の精神文明とか文化的ベースというのがありますね。キリスト教文明のアメリカやあるいはイスラム文明のエジプトと違う、インドのヒンズー文明と違う、日本には日本のそういう精神的土壌がありますね。その精神的土壌というものを自分たちでもっとよくきわめて分析して、キリスト教文明のアメリカやあるいは回教文明とどう違うか、それはどういうふうに発展していったらいいだろうか、そういう文明史形成という面から基礎的な研究をもっとやる必要があるだろう。科学はどんどんこういうふうに発達して、そうして精神文明の方は進まないで跛行しておる。そういう意味でおくれていると思われる精神文明の方をもっときわめるという必要性を私は非常に感じておるのです。  この間、仙台の小学校へ行ったら、コンピューターを使っていました。我々の時代には考えられないような時代で、ロボットが出るとか宇宙通信が出るとか、非常に大きな激動が予想されておる。そういうときに社会や国家や世界を支えていく人間の精神的な文明、文化の基礎学というものが非常に脆弱だろうと私は思っておる。それをやはり強めていく必要がある。さもないと科学とか物質に偏重した非常に跛行した文明に行く危険性がある。現に今大勢の人たちが飢えていると思うのです。私も飢えている一人であります。  私自体はしかし、先日武藤さんのお話の中に、あれは河合栄治郎さんの影響だと思いますが、「トーマス・ヒル・グリーンの思想体系」を読んだとおっしゃった。私も読んでいるんです。私自体も大体あれに帰依している人間で、その本の中にも書いてあるはずです。武藤さんがそれをおっしゃったのを聞いて、これは同門だなと実は思った。本当にそうです。私が東大にいるころ河合さんが追い出された話も聞いておりまして、非常に義憤を感じた一人であります。土方成美一派というのが盛んに河合さんや私の恩師の矢部さんを攻撃したりしておりました。  そういうようなことで、私の思想の基礎にあるのは、トーマス・ヒル・グリーンとかあるいはカントとかドイツ理想主義というものが根底にあります。それはやはり自分が青春時代につくった自分の精神の支柱ですから、裏切るわけにはいかぬ。これを裏切ったら中曽根康弘というのはなくなってしまうのですから。そういう意味でそういう本もできておるわけであります。  戦後の日本を見るというと、今まであった皇国史観というものはアウト。私は皇国史観というものは偏狭なものだと思っています。それから太平洋戦争史観というのが次に出てきた。これは大体東京裁判が中心になって出てきた一つの思想であり、あるいはマルキシズムの史観というものがソ連の方からだあっと日本に入ってきたでしょう。皇国史観はアウトになり、マッカーサーやそのほかの太平洋戦争史観というものは文明の名において裁くというような形で入ってきておる。一方においてはマルキシズムが入ってきておる。日本人は精神的には裸の中で寒風に吹きさらされておったようなのが昭和二十一年から三十年ごろまでの情勢じゃないかと思いますよ。そういう中にあって、いかに現代を正しく生きていくかという精神的糧が欲しい。偏狭なものでない、そして日本の土壌に根差した、長く続くものが欲しい。そういうことを考えて、そういう精神文化研究の必要を訴えたわけなのであります。
  395. 二見伸明

    ○二見委員 中曽根教授の文明論を拝聴さしていただいた感じがいたしますが、私も総理のおっしゃること、全くわからないわけじゃないのだけれども、ただ、精神ということになると、個人個人全く自由ですし、それまで縛り、一定の方向に向けられるということになると大変気持ち悪いし、私自身それは非常にいかぬことだと思いますし、そういうことは絶対にやってもらいたくないという気持ちで申し上げているわけであります。  もう時間もありませんので、簡単に要点だけ申し上げますけれども、実は総理のこの新しい保守論の教育論ですね。教育論の中で大変共鳴している点が一、二あるんです。  一つは国際主義のところで、「まず日本全国の公私立の高校に、必ず一人以上の外国人教師を雇ったらどうか。」私これ賛成なんです。例えば私も中学、高校、大学と十年間英語とおつき合いをして、しゃべるのだめですね。まずしゃべるのからしてだめならば、国際性は身につきません。やはり私は、これは絶対必要だと思う。これは別に臨調にかけなくても済む話なんだから。総理の方から文部大臣に検討を命じて、ただこれはお金の、予算の問題もあるし、学校側の受け入れの問題もあるから、一遍にあしたからというわけにいかぬのだろうけれども、これはぜひとも実現する方向でやっていただきたいと私は思うのです。これが一点です。  それからもう一つは「大都会の市や区といった自治体は、過疎の山村、漁村などと契約して、臨時分校を作り、夏の三カ月、冬の一カ月はそこで教育するという、一部で実験的に試みられていることを、体系化し、制度化してゆくことはどうであろうか。」私もこれ賛成なんです。まさに、特に大都会の子供たちにとっては、貴重なる少年期に山村でもってそうした原体験を積むということは、これからの人生に最もプラスになると思う。学校の勉強で、算数や理科ではわからない、すばらしいものが吸収できると思う。これを体系化し、制度化するということは私は本気になって考えてもらいたいと思うのです。大変私はこれは賛成です。  それから総理は、これに対しては「特別立法によって、国や地方自治体がこれを補助し、奨励しなくてはならない。」という提案までされておりますけれども、これは特別立法でやるのか、あるいはそうじゃなくてできるのか、それは私は詳しいことはわかりませんけれども、この二つの提案は、私は野党だから本当は与党の総裁の提案をいいと褒めるのはまずいのかもしれないけれども、それは抜きにして、この二つの提案は私はすばらしいと思います。ぜひとも実現していただきたいと思いますし、それについて具体的にどうされるのかお伺いをして、終わりたいと思います。
  396. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の粗末な著書をよくお読みいただきまして、まことにありがとうございます。  今の二つの点は私はぜひ実行したいと思っておるところです。高校にまず外人教師を入れよということは、私、この本を書いてから我々の仲間に相当言いまして、文部省の方にもそれを言いまして、最近各県に一人は大体外人教師が来て、巡回してやっていますね。この程度ではいけない、もっとやりなさい、そういうことで高校にはもう外人教師を一人は必ず入れるようにしよう。そうすれば外国人というものと初めてつき合ってみてどういう人間かということがわかるということは非常に国際性もつく。それからまた、その外国人が引退しても、あるいは夏休みに自分の国に帰るという場合には、必ず自分の、ミズーリ州へ来なさい、そう言って交流が行われるのです。それがまた非常に大事なことなんです。そういうわけで、日本人が群馬県の山田舎であっても国際性を持ってミズーリ州の家庭とつき合いが始まるということがどれぐらい貴重かわからないと思うのです。そんなものは多少の、百億や二百億の金にかえられないものが蓄積としてできてくる、こう思っておるからです。  もう一つは、今の子供の一番不幸なことはアスファルトと、あるいは事によればじゅうたんの上しか知らないということなんですね。それで我我、子供のころを反省して一番大事なのは原体験です。つまり原っぱというものが非常に大事である。それにも書いてありますけれども。原っぱで石けりするとか、鬼ごっこするとかあるいは管の中へ隠れておるとか、あるいはそこで稲光を見ておっかながって家へ逃げるとか、カエルを見つけるとか、犬を追っかけるとか、そういう原体験というものは人間の成長にとって非常に重要なんです、あのころの。ところが今の子供たちには、そういう原体験を経験するチャンスがないです、アスファルトかじゅうたん、テレビですから。ですから人間と自然、自然の中に生きる人間というものが本物の人間であるとするならば、非常に欠けているものがあるわけです、特に都会の子供は。だからその欠陥人間になるのを防ぐためには、私の群馬県あたりにはそういう国有林もうんとあるし、過疎の村もうんとあります。既にやっているところもある。品川区と私の方の利根郡の片品村で契約してやっているのがある。そういうふうにして、全国の過疎の村と契約して分校を建てて、年三カ月はそこでやらなければいけないと強制したらいいと思っております、三カ月は。そういうふうにして、山の中であるいは吹雪に遭ったり、あるいは蛇に追っかけられたりという経験をぜひさせなければいけない。そういう意味でやった。それは私の群馬県でも、肉のために牛を飼っていますね、そうすると、今の濃厚飼料を食わせるために、弱っちまうのです。そうすると、夏の間は私の方の嬬恋村という浅間のふもとのところへ、みんなトラックで持ってきて放牧する。夏の間じゅうは牛は野方図に野原に動き回っておって、そしてたくましくなって、そして秋になると、お百姓がとりにくるわけです。またトラックに乗っけて自分のうちへ持っていく、そういうことで、牛ですらも放牧によって牛らしくなってくる。いわんや人間をやだ。そういう意味で放牧教育なんですよ。放牧教育が絶対必要だ。今、東京や大阪の子供たちは濃厚飼料でやられているようなものでしょう。そういう意味で放牧教育というものが絶対必要だという信念を持っていますから、そういうことを書いたわけで、御賛成いただいて本当にありがとうございますが、金にかえられない大事なものがある。というのは、戦争中疎開した子供たちが、学童疎開で山形県へ行ったり、どこかへ行った人がみんなそういう感銘を受けておるわけです。そういう戦争中の教育の、疎開の結果というものも考えてみまして、人間の、八十で死ぬあるいは九十で死ぬまでの間に、そのときというのはいかに貴重であったかということを反省しまして申し上げている次第であります。ぜひやりたいと思いますので、御協力をお願いいたします。
  397. 二見伸明

    ○二見委員 以上で終わります。
  398. 倉成正

    倉成委員長 これにて近江君、二見君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  399. 中野寛成

    中野(寛)委員 ただいま高速な総理の教育論を聞きながら、私もまず教育の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  とりわけ教育改革について突っ込んでいろいろとお尋ねをしたいと思いますが、その前に、まず現象面や各論について幾つかのお尋ねをさせていただきたいと思います。  そこで、実は写真を撮ってまいりました。委員長、これを総理に見ていただきたいと思います。それは新宿歌舞伎町のいわゆるセックス産業真っ盛りの看板、広告類でございます。極端に言えば、その中を子供たちが歩いて学校へ通うわけであります。こういうことが果たして現在そのまま野放しに許されていていいのかどうか。総理の先ほどの高遜な教育論を聞きながら、逆に、都会の子供たちはこれを見、そしてこの中で育っていく、何とも皮肉な現状があると思います。こういう事態について総理のまず御感想をお聞きしたいと思います。
  400. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点はこの前、三塚委員からもお話がございまして、三塚委員は少年少女の雑誌をお見せいただいた。私は帰って見まして非常に驚きました。こういうような間違った悪い環境から青少年を守らなければならないと非常に痛感しております。それで、与野党で話し合いでもできたら、ああいう子供たちの精神的環境を守ってやる何らかの合意を成立さして、守る目的を実践できないものかな、そういうふうに感じておるところであります。
  401. 中野寛成

    中野(寛)委員 その合意の問題なんですが、それはまた後で触れたいと思います。  しかしながら、だれが考えてもできることがたくさんあります。これもまた大変次元の低いお尋ねをして申しわけありませんが、クイズのつもりでお答えいただいても結構でございます。例えばキャバレーだとかナイトクラブだとか、いわゆるお酒を飲みに行く場所があります。こういうところは、そこに出入りするのに年齢制限があります。今はやりのトルコぶろとかノーパン喫茶だとか、いろいろ言われておりますが、そういうところは年齢制限があると総理はお考えでしょうか。ほかの方がお答えになられて正解をお出しになっても、これは意味がないのでありまして、どうぞ総理が常識的にお考えいただいてお答えをいただきたいと思います。
  402. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あるべきであると思いますが、その看板を見ると、どうもなさそうですね。
  403. 中野寛成

    中野(寛)委員 クラブとかキャバレーとか、そういうところは十八歳未満は入れないのですね。しかし、それよりもっとひどい、まさにセックス産業のるつぼの中にあると思われる今申し上げたトルコぶろ等は、年齢制限ないのですね。これが実態なんです。そういうのはだれが考えたっておかしいと思うはずなんです。それが今全く規制がされていないわけです。こういう中で、昭和五十五年以来ここ四年間、少年非行というのは戦後最悪の記録を更新し続けているわけです。少年等を食い物にする犯罪の被害も、また三年連続戦後最高を記録しているわけであります。こういう状態の中で、青少年を取り巻く有害環境問題、これを一日も早くなくしていかなければいけない。  そこで、少し警察庁と文部大臣の方に質問の方向を変えさせていただきたいと思いますが、こういう悪影響を青少年に与えた事例、そしてまた青少年が犠牲になった事例を、時間の関係もありますから、警察の方から顕著な事例を若干御報告いただきたいと思います。
  404. 鈴木良一

    ○鈴木(良)政府委員 少年を取り巻く有害環境が少年非行に及ぼす悪影響の状況でございますけれども、昨年におきましても数多くの事例がございます。二、三例を挙げてみますと、例えばディスコにたむろしていた家出少女等が、暴力団に誘惑されまして関係を結ばれた上で、スナックに売春婦として人身売買された事例、あるいは恐喝や暴行を繰り返していた中学生や無職少年が、喫茶店やゲームセンターなどで知り合いまして、そこをたまり場として放浪者の殺傷を繰り返していた事例、あるいはまたポルノ雑誌に刺激されました中学生が、通行中の女性をねらいまして強姦致傷、強制わいせつ等を繰り返した事例などが発生しております。
  405. 中野寛成

    中野(寛)委員 こういうふうに、まさに犠牲者は青少年です。それはやがて日本そのものが犠牲になると思います。総理のお好きな精神文明論的に言えば、日本そのものが犠牲になっていくことになると思います。こういうセックス産業とかポルノ雑誌、これを私はすべて規制しろとは申し上げません。大人の楽しみまで奪おうとは思いません。しかしながら、青少年の健全育成という見地から申し上げれば、少なくともこのセックス産業関係の施設には少年を立ち入らせないというけじめが必要でしょう。ゲームセンターなどを青少年の、いわゆる不良少年のたまり場にさせない、また有害な雑誌を子供の目に触れさせない、少年に悪影響を及ぼすような看板や広告はさせない。もう一つ申し上げれば、テレビの番組、新聞、映画その他もまたこういうけじめが必要だろうと思います。  こういう有害な環境から少年たちを隔離する配慮というものをしなければならないということを先ほど総理はおっしゃった。しかし、現実にはますますそれはエスカレートするばかりであります。文部省としてはこういうことについてどういう御判断とどういう対応をされているのか。それから、これらを警察として取り締まるすべは現在ないのか。このことについてお尋ねをします。
  406. 森喜朗

    ○森国務大臣 中野さんの御指摘になりました点、私も同世代として大変頭を痛めております。単に価値観が多様化した、世の中が変わったということだけでは片づけられない。子供たちをそういう環境から守ってあげるようにすることがやはり大人の責任であるし、とりわけ政治家の務めだ、こう考えております。  さっき雑誌のお話が出ましたけれども、昨年総理府が中心になって、有害図書などの規制といいましょうか、対応策を講じたそうでありますが、この種の雑誌は、出てからちょっとおかしいなという判断ができる。そのときにはもう既に売り切れているわけですね。で、注意をする。その次の週か次に出てくる月刊はおとなしいものになってしまうのです。そこが結局イタチごっこみたいな形になっております。  先般、三塚議員から提案があって、何かこう法的に規制ができないだろうか、こういうお話もございました。田川国家公安委員長、また総理からも、必要なら立法措置を含め検討したらどうかという意見が出ましたが、もう既にきのうのある新聞の社説には、自由を守り、子供たちも守る方法はないでもありませんが、出版社やテレビ社の自粛しかない、それは言論、出版の自由を奪うことになる、やっぱりこういう評論が出てくるわけです。そうすると、それを法律的に規制していくということは非常に難しくなってきます。  いつもですと、中野さんがさっき写真出しましたが、政府からこういうものを出してはよくないんだと思いますが、あえて出させていただきます。ちょっとこれをごらんください。これは、この間総理にもちょっと見ていただきましたが、政府ですから会社の名前は言いません。ただ、三塚さんがこの間具体的な名前を一社言いました。仄聞したところによりますと、その社長が激怒をして編集長を呼んで、その本は廃刊しろというふうに命ぜられたそうです。たまたま三塚議員が名前を出された出版社です。  ところが、この本の後ろの方を見てください。これはセックスの描写じゃありませんが、不良少女に対してカツアゲ講座、万引き必勝法、アンパントリップ学というのが図解入りで出ているのです。これはもうセックスなんてもんじゃないですね。悪いことをする方法がちゃんと図解で写真入りで出ているわけです。  ですから、こういうものもどういう形で規制をするかということは非常に難しいことでありまして、先ほど申し上げましたように、環境をどうやって守っていくか、これは文部省、総理府あるいはまた警察庁、私はできれば内閣挙げて、こうした環境をどのような形で、いわゆる自由というもの、出版あるいは報道の自由というものに抵触させないでどうやって守っていくかということを、国民的な合意の中で一つの大きな運動を政府自体が盛り上げていく、そういう大変大事な時期に来ておるというふうに私はあえて申し上げて、文部省といたしましては、とにかく関係省庁と相談をしながらそのことに打ちかっていく、あるいは家庭と社会と学校とのブリッジ、この相互関係の協力を維持していく、そういう地域社会というものを形成していくしか現在のところは道がない、私はこう考えております。
  407. 鈴木良一

    ○鈴木(良)政府委員 現行法で取り締まることができないかというお尋ねでございますけれども、少年に有害な業務につかせる行為を規制する法律といたしましては、風俗営業等取締法、児童福祉法、労働基準法等がございます。警察といたしましては、これらの法律の違反につきましては鋭意取り締まりを続けておるところでございますけれども、先ほどお話のございましたような営業につきましては、取り締まりが大変困難であるという状況にございます。例えば風俗営業等取締法につきましては、先ほどお話のありましたようなバー、ギャバレー等につきましては対象となっておりますけれども、先ほど御指摘のノーパン喫茶、のぞき部屋等につきましては対象になっておりません。それからまた、児童福祉法や労働基準法でございますけれども、これは御指摘の営業には適用できますが、やはり児童に対する支配性あるいは雇用関係の存在という厳格な条件を満たすことが必要でございます。しかしながら、最近のこれらの有害施設で働いている子供たちは、こういう法律で規制されているような形で従事していないということがあるわけでございます。  それからまた、立ち入りの問題でございますけれども、御指摘のように風俗営業等取締法はバー、キャバレー等の立ち入りにつきましては規定がございますけれども、御指摘のような営業につきましては規制が全くございません。そのほか、一部の県の青少年保護育成条例等につきましては、トルコぶろ等への青少年の立ち入りを規制しているところもございますけれども、大部分の県では何ら規制されていないというのが現状でございます。
  408. 中野寛成

    中野(寛)委員 結局、今のこの問答、質疑を聞きながら、与野党を問わずしっかりやれというやじが、やじというか不規則発言が出ているわけですね。これは大変ありがたい応援でございまして、これについては恐らくだれも異論がないと思うのです。しかしながら、先ほど文部大臣もお答えの中に触れられましたように、こういう問題を取り上げると、表現の自由だとかいろいろなものの自由の関係で、憲法に違反するとかいうような論議が一部出てくるわけです。そうすると、どうしても結局政府の方がちゅうちょしてしまう。それが今までの現状ではなかったのかと思うのです。しかしながら、例えば私は、この性表現にしたって、ある意味ではもっと自由にしたらいい、しかし、その見せる範囲はきちっとけじめをつけて制限をしていく、そういうけじめが必要だと思う。確かに表現の自由はあります。芸術的表現、大いにやったらいいです。そして、それを大人の中で理解できるものとして公開されることもいいでしょう。しかしながら、少なくとも子供の教育的見地から、その発表の方法、営業の方法等について規制をされるのは、これは当然、公共の福祉その他の考えからいって、むしろ本来の国民の自由を守るために必要なのではないだろうか、こう思うのであります。勇気を持ってお進めをいただきたいと思いますが、内閣総理大臣、それから国家公安委員長、御所見をお伺いしたいと思います。
  409. 田川誠一

    ○田川国務大臣 少年を取り巻く有害環境の浄化につきましては、今後さらに関係の機関や団体、地域の住民等とも連絡を深め、総合的に取り組んでまいりますとともに、風俗営業法の改正につきましては今鋭意取り組んでいるところでございまして、御指摘の点についてもできるだけ取り締まりの面でひとつ成果を上げていきたいと思っております。  ただ、私はこうした法の面だけで解決できる問題ではないと思います。先ほど来のお話のように、やはり大人もこれに協力していかなければならぬ。大人がしっかり倫理を守っていかなければなかなかこうしたことを撲滅していくことは不可能だと思いますし、また総理も前におっしゃられましたけれども、言論、出版の自由の問題もございますし、そうしたことを考えますと、あらゆる人がこういうことを法によらずして協力をしていくということも必要ではないか、このように思っております。
  410. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題につきましては、与野党の協議の問題にしていただければありがたいと思っております。それで、与野党で具体的にこれをどう取り扱うか合意が形成できれば、そういう方向に従って必要な措置をとる。ある法律の一部を改正する必要が出てくる場合はそれの改正をやったらいいし、精神汚染で、足りない、立法を要する部分がもしあるとすれば、それは立法したらいいし、行政措置で済むものでしたら行政措置でやればいいし、PTAや地域団体あるいは国民的な、社会的な努力でやるべきものについては、そういう方向でまた新しい措置を内閣として協力を要請するとか、いろいろなことがあり得ると思いますので、そういう点で与野党で大体お話しを願って方向を決めていただけば、非常にありがたいと思う次第です。
  411. 中野寛成

    中野(寛)委員 そういう機会をぜひ、これは与党から呼びかけていただいても政府から呼びかけてもいいわけですから、少なくともきょうここに御臨席の皆様方は一致した見解であると思います。先ほど公安委員長からの御答弁の最後に、やはり大人が気をつけなければ、おっしゃるとおりなんです。今日までいろいろな市民運動も起こったのです。お母さんたちも心配して、いろいろな各自治体における条例もつくったのです。しかしながら、警察庁の統計にもあらわれているように、ますますその中身はエスカレートするばかりなんです。結局、親も心配するが、お手上げ。その中でそれをバックアップする、その気持ちをバックアップするやはり制度的なものや政治的なものが、どうしても残念ながらこれに対しては必要なんです。その方向へ向かって御努力をいただきたい、こう思うのです。そのリード役を公安委員長がおとりになるのか文部大臣がおとりになるのか、むしろ教育的見地からいえば文部大臣の方がいいのでしょうけれども、総理府総務長官でも結構でございますが、ぜひともそれをやっていただくこと、積極的に呼びかけていただくというお約束を一言だけちょうだいできれば結構でございます。
  412. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは内閣が先へ出るよりも、自民党の政調会が各党の政調会と御相談する、それが適当であると思います。そのように処理したいと思います。
  413. 中野寛成

    中野(寛)委員 自民党総裁としての総理の御答弁だろうと思いますから、それを受けて私どももまたともに頑張りたい、こう思います。  さて、総理府の世界青年意識調査というのが先日発表されました。新聞の見出しは「「愛国心」低い日本の青年」、こういうことになっております。総務長官、この意識調査のねらいと、そしてこの出た結果についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  414. 中西一郎

    ○中西国務大臣 お話の、まずこの世界青年意識調査、これは各国の青年と日本の青年の意識がどういうふうに違っておるかということを知りたいということで始まりました。その結果を見ますと、日本の場合、利己主義が強いとかあるいは公共心が希薄であるというような報告に相なります。これは、いろいろな日本経済発展、今お話がございましたような社会のいろいろな複雑な価値観、また風俗の乱れ、いろいろなことが重なってきている、そういうことを総合的に判断する材料になれば幸いである、実はかように考えておるところでございます。家庭あるいは学校、職場、人生観、いろいろな問題が絡み合っておりまして、お読みだったと思いますので詳しく申し上げませんけれども、ある意味では文明の危機というのは我々の眼前にあるのではないかというような感じもいたさないではございません。先ほど来のお話と一脈通ずるところがございまして、大勢の人で真剣に取り組んで対応策を考えたい、かように思っております。
  415. 中野寛成

    中野(寛)委員 大勢の人で真剣に対応策を考えたいということでございますが、結局、単に意識を調査されただけなのか。総理府として何らかの目的があってやはりそういう調査がなされたと思います。出た結果については何らかの方針が示されるべきであろうと思います。むしろ今後の、この出た結果についてよかったのか悪かったのか、そして、もし悪かったならばどこが悪かったのか、その対策をどう講じるのかをお聞きしたいと思います。
  416. 中西一郎

    ○中西国務大臣 お話でございますが、ともかく現状について憂うべき状態があるかもしれない、大勢の人がそういう何といいますか気配を感じている。そういうことを踏まえての調査でございます。  出てきた結果については、これは先ほど申し上げましたように、できるだけ大勢の方に見ていただいて、いろいろな御判断をしていただくという材料であるとお考えいただきたいと思います。現段階でこれの結果を見て総理府としてすぐ何に取りかかるかということについては、まだ十分な結論を得ておりません。青少年対策本部の各省連絡会議というのもございまして、先般来警察庁の話も大分聞きました。先ほどの広告の話とか出版物あるいはその他もろもろの風俗営業に関することまで聞かしていただきまして、対応策を講じなければならない。この意識調査についても同様、真剣に精査した上で皆さん方と一緒にいい結論を出したいものだ、かように思っておるところでございます。
  417. 中野寛成

    中野(寛)委員 文部大臣、この意識調査、御存じですか。
  418. 森喜朗

    ○森国務大臣 承知いたしておりますし、大変関心を持って見ております。同時に、文部省の職員にも、この問題どういうふうに受けとめたかまとめてみるように指示をいたしております。  大体皆さんの意見を聞いてみても、これは各国日本の比較の問題になっておりますから、どれがよくてどれが悪いのかということはなかなか判断はできません。ただ、はっきり言えることは、国家や社会に役立とうという意識は低いということ。それから、家庭や学校、職場への満足度も低い。これがやはり一番の特徴であろうというふうに考えました。  私は、余計なことかもしれませんが、私たちがまたこう言うと、精神修養とか修身の問題を持ち出すのではないか、こういうふうにまたおしかりをいただきますが、私はその日の翌日出ました各日刊新聞の見出しだけ全部ここにまとめてみたのです。朝日新聞、「仕事派も社会型も減る 趣味に生きがい日本の若者」、読売は、「「無気力」だが強い「豊かさ」志向」、サンケイは、「「愛国心」低い日本の青年」、毎日、「殻にこもる日本青年」、東京新聞、「日本のヤングは漂流世代」、日経、「日本ヤングは自己中心」、大体文部省が見たのとそう変わってないというふうに私は判断をいたしております。  やはり一番大事なことは、総理もこの教育の新しい改革に申し上げておりますように、二十一世紀に向けて日本の国がどのような役割をこれから果たしていかなければならぬのか、国際社会に向かって日本人がどのように理解をされていくのか、これが私たち現存の政治家の一番大事な仕事だ、私はこう思うのです。そういう意味で、二十一世紀にどのような価値を持つ子供たち、二十一世紀を支えていく今の若者たちがどのような価値観を持ってくれるか、こういうことをやはり教育の体験を通して考えていかなければならぬ大事な時期が来ておる、そういう意味で、いろいろと御意見はございますけれども、中教審の議論を踏まえあるいは文化懇の意見を取り入れながら、新しい日本の方向づけという視点、国際社会全体での角度、そういう目で教育というものを見直していかなければならぬ、私は、そのことが大変この調査で参考になったと思っております。
  419. 中野寛成

    中野(寛)委員 今総理はこれをごらんになっておられないかもしれませんけれども、文部大臣の御答弁をお聞きになりながら、どういう御感想をお持ちになりましたでしょうか。
  420. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、新聞でそれを拝見した程度でございますけれども、しかし、そう悲観したものでもない。新聞に書いてあるように日本独特の面も多少ありますけれども、それはある程度考えられることでもある、そう今の青少年に悲観したものでもない、私の感じた直観はそういうところでありました。
  421. 中野寛成

    中野(寛)委員 私が総理の御答弁として想像したものとは若干ニュアンスの違う御答弁でございました。例えばサンケイ新聞の「「愛国心」低い日本の青年」、むしろこっちの方の印象で総理が御答弁になるのではないかというふうに実は想像をいたしておりました。しかし、ある意味では、私は逆に総理の今の御答弁をお聞きして安心もいたしました。そのなぜ安心したかは、また後ほど申し上げたいと思います。  さて、今度は学校の現場のことについて若干お尋ねをしたいと思います。  主任制度が実施に移されて久しいわけであります。この主任制度の実施状況と主任手当の行方について、その実態をお伺いしたいと思います。
  422. 高石邦男

    ○高石政府委員 お答え申し上げます。  主任制度は、四十七都道府県全部制度としては一応発足しているわけでございます。それから、主任手当もそれぞれの府県で支給されております。ただ問題は、支給された主任手当が、一たん給与として全部先生方に渡るわけでございますが、その後、組合の指令によって一定の金額をプールするというような状況が今日続いているわけでございます。推計いたしますと約百億余り、二〇%程度の金がプールされているというふうに推計されるわけでございます。
  423. 中野寛成

    中野(寛)委員 これが当初の目的どおりに、本当に手当としてその主任の先生の財布の中に入るのであるならば、それはそれで一つの目的が達成されていると思います。しかし、結局、組合の意図によってプールをされる、またある県においてはそれが教育会館の建設資金の一部に流用される、こういうふうなことも私ども聞いているわけであります。そういうふうな状態であるならば、これだけ財政再建で厳しい折から、いっそやめたらどうだという議論にもなりかねません。しかし、八〇%は本来の目的どおりに使われているということでありますが、それがやはり一〇〇%になってこそ本来の意味があると思います。  これは私は、決して主任を中間管理職にしろとかなんとかという、そっちの方の論議で申し上げているのではありません。国会でみんなが了承をし、そして国民の税金でそういう費用が賄われているときに、本来の趣旨と違う使われ方をしていることが二〇%もあるとするならB、それはやはり問題だと思います。もちろん、一たん受け取って拠出するのですから、これは個人の自由だと言ってしまえばそれまでかもしれません。しかし、そのことに不満を抱き、そして我々に何とかしてくれという要望を漏らされるいわゆる拠出している先生方がいらっしゃることも事実であります。今後の対応をどうお考えでしょうか。
  424. 高石邦男

    ○高石政府委員 お答えいたします。  組合の指令でこういう形に闘争の一環として利用されているわけですが、そのこと自体は、主任の果たすべき役割、それが学校内で非常に重要であるということで、いわば実質上主任制度を骨抜きにするというような気持ちが組合の運動の中にあらわれているわけでございます。したがいまして、我々としては、もっと平静な状態で、安定した状態で主任制度が一日も早く学校の中に定着し、その主任が校長、教頭、一般教職員を含めて一体となって学校の教育に当たるという体制をしくことが極めて重要であろうと思います。したがいまして、そういう面で本来の主任制度に立ち返って、それぞれの主任がその立場を自覚してそういう運動に参加しないようにということを、いろいろな機会を通じて指導しております。現に各都道府県の教育委員会に対しても、積極的にこの対策について指導をしていくようにという通知も出しているところでございます。最大の努力を傾けていきたいと思います。
  425. 中野寛成

    中野(寛)委員 この問題は、その実施に至るまでの経過、その中でいろんな闘争が展開をされ、そして現状のようになっている。教育の問題は、いかに対決ではなくてお互いの納得によって実行に移されなければならないか。それがなければ、せっかく教育を前向きに考えて施策を実行に移しても、逆にマイナスになるということの一つの事例ではないかとさえ私は思うのであります。そのことを申し上げて次の質問に移りますが、これは申し上げっ放してはなくて、後々の質問に今申し上げたことが継続することを御認識をいただきたいと思います。  さて、大阪府下では、公立高校の進学について学区制が設けられております。四つなり五つの市が、または区が一つの学区として、第一学区、第二学区と指定をされております。その範囲の中で高校進学の選択が行われるようになっているわけであります。しかしながら、教職員組合の指導によって、実はそのことが別の方向へゆがめられてしまっております。というのは、地元学校への集中受験運動というのが行われるわけであります。ですから、四つか五つの市が固まって一つのブロックを、学区を構成しているんだけれども、その中で子供たちが自由に選べるのではなくて、進学指導の中でどこそこの範囲にしなさいと制約を受けるわけであります。結局それがその希望に沿わない、自分の希望で学校を選びたいとすれば内申書にどう書かれるだろうかという心配を、父兄とともに子供はしているのが現実であります。どうしても自分の希望する学校に行くならば、それに似通った私学を選ばざるを得ないということで、一つの重要な教育の問題として父兄から提起をされております。こういうことや、また五段階相対評価をやめて、生徒指導要録にオール三を記入した中学校があったことも、文部大臣、御存じかもしれません。  こういうふうな実態を踏まえて、実はその市では、「私たちの手で教育委員をえらぼう」という市民の会ができました。このメンバーを見ますと、私の勝手な想定で恐縮ですけれども、思想的には実は右も左もいます。教育の荒廃を見るに見かねて、または教育委員会が、例えば教職員組合のコントロールのもとに本来の中立性を失っているように市民の目に映っているというふうなことも含めて、実はこういう運動が起こってくる。これはある意味では教育行政に対する不信からです。こういう事態が生まれつつあること、そして、これに対して実は極めて文部省や県教委も無力であるように見えるわけであります。こういう事態についてどうお考えでしょうか。
  426. 森喜朗

    ○森国務大臣 中野さん御指摘の幾つかの事例、私どもも承知をいたしております。具体的にこの中学校あるいは市の名前、自治体の名前は、後ほど局長から申し上げた方がいいかと思いますが、大変残念なことでありますけれども、日教組一九八三年度運動方針書というものを見てみますと、「押しつけの各種官製研修に対してはその実態を明らかにし、中止または廃止要求を基本としてたたかいます。」あるいは「自主・民主・公開」を要求するというふうに、国の方が責任を持って進めていくという教育に対して、自主的に組合で進めていこうという運動、その一環として行われているということであるならば、大変これは困ったことだと言わざるを得ません。  しかし、この国会でもいつも議論に出ることでありますが、教育は教育委員会に指導をお願いしているわけでありますし、文部省としては指導助言をしていくというこの姿勢を貫いていかなければなりません。関係の自治体に対しましては文部省からいろいろな形で指導をいたしておりますが、今御指摘をいただいたような点が幾つか出てきておるということを憂慮いたしておるわけでございます。  この間この国会、この場所で、総理と各党の皆さんとの意見の中で、日教組に対するいろいろな評価すべきところなどの意見も交わされたところでございますけれども、確かに非行あるいは家庭内あるいは校内暴力、受験等々そうした問題に大変関心を持って、日教組のテーマとしてやってくださるということはとてもありがたいことでありますし、それだけは評価をしていかなければなりませんが、基本的なこうした運動の進め方に、国の教育を進めていくやり方に反対をしていくのだ、そういう事例として今言ったオール三であるとか、今中野さんがおっしゃったような指摘の問題が出てくるとするならば、やはり私どもはこの事態を看過できない、このように思っております。  具体的な措置や事例については、事務当局から御説明させてもよろしいかと思います。
  427. 高石邦男

    ○高石政府委員 高槻市において教育委員の準公選の動きがあることについて、我々は非常に心配をしております。先生御存じのとおりに、教育委員は公選制から任命制に変えられまして、法律上は「地方公共団体の長が、議会の同意を得て、任命する。」と明確に規定してあるわけでございます。地方公共団体の組織とかいろいろな規定については、地方公共団体は本来法令に反するような措置を講じないという前提での法律体系をつくっているわけでございます。しかし、地方公共団体、議会を含めてそれに反するような条例をつくるとか、そういう取り扱いをされるという事態になると、なかなか制度上の決め手がないというので、非常に苦しいわけでございます。  そこで、我々といたしましては、こういう事態をできるだけ、それぞれの地域における住民運動として行われておりますので、住民の方々に現行制度を正しく理解していただきまして、そういうことが事前に防止されるようにということで、府の教育委員会を通じて文部省の見解も明らかにしているところでございます。  なお、この問題についてはこれからいろいろな形での推移が出てくると思いますので、それに行政として対応できる最大のことは対応していきたいと思っております。
  428. 中野寛成

    中野(寛)委員 私は現象面として申し上げましたが、準公選制に対する文部省の御見解は、今日まで一貫して今の御答弁で変わっていないと思います。ただ、そういう運動がなぜ起こってくるのかという原因を究明することは、もっと必要だと思います。少なくとも父兄、市民の教育の現状に対する不信、不満がこういうことを生んでいるということ、そのことをやはり忘れてはならない、私はこのように思います。そのことも申し上げながら、もう一つ次の御質問をお尋ねしたいと思います。  私は、社会教育、とりわけ善意の大人たちが子供たちの社会教育について献身的にボランティアとしてやっていく、そういう傾向が大変顕著になってきたこと、そのことを大変喜んでいる者であります。しかしながら、それを制度的にそういう人たちを養成するために、またはそういう行事が行われている中で起こった事故に対する補償等がないがために、これらの問題は実は多くの苦難を抱えていると言わなければなりません。ある意味では自分の子供のことだけを考えがちになる、そういう世相の中で、私は、広く子供たちのことを考えてくれる人たちがふえてきたことを大変喜んでいるわけです。  しかしながら、昨年の四月に、三重県の津市四ツ葉子ども会のハイキング中に発生した水死事故、これについて損害賠償請求事件の判決が下されました。そしてまた、民事だけではなくて刑事上も有罪の判決が下されております。このことについては、私は大変残念なことだと思います。このリーダーの皆さんに対する注意、そしてまた、どうしても防ぎ切れなかった事故があったとすれば、その後の制度的措置、これらのことがなされませんと、せっかくの民間の活力を大いに活用してなんというようなことをスローガンで言っても、それは言っただけのことに終わってしまうと思います。このことについて、社会教育の今後のあり方の一つの事例として取り上げさせていただきました。  このことは文部大臣と、それから官房長官も決して無関係ではないだろうと思いますので、もし何かございましたらコメントをいただきたいと思います。
  429. 森喜朗

    ○森国務大臣 中野さん御指摘のボランティア活動は、社会教育活動の振興にとって大変大事なものでございますし、その指導者はほとんどボランティアでやってくださるわけで、その役割は大変、国にとっても社会教育活動にとっても欠くことのできない要素でございます。  文部省としましては、従来、指導者対象の研修会の実施でありますとか、あるいは都道府県が実施する指導者研修に対する補助、あるいは事故防止、安全管理の指導、保険制度の活用の指導などをいたしておるわけでありますが、補償制度につきましては、各青少年団体、地方公共団体が必ずしもまだ一致をいたしておりません。したがって、それぞれの実情、それぞれの団体の事情に応じて保険制度を設けているようなところもございますので、統一的な補償制度を今設けることは、現時点においてはまだ現実的ではないのではないかと考えておりますが、それぞれのボーイスカウトあるいはガールスカウト、子供会、まあ子供会の会長は官房長官がやっていらっしゃいますが、そうした皆さんともお話しをいただきながら、現時点では自主的にやっていただくように指導をいたしておるところであります。
  430. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 青少年団体の活動はボランティアによって支えられていることは、先生御指摘のとおりでございます。今日、教育の改革が叫ばれて、特に学校教育中心でいろいろな問題が論ぜられておりますが、実際の学校教育というのは、今社会教育で非常に大きな役割を果たしていただいておる教育活動から一回学校を見直してみるというようなことも非常に大事なぐらいに、社会教育、特に青少年団体の活動というのは非常に大きな意味を持って活動していただいておるわけであります。その中で、ボランティアが事故などを起こしたことによっていろいろ責任を追及される、あるいは現実にいろいろな刑に服さなければいかぬというような事態の起こることは、非常に残念なことでございます。  今、文部大臣から御答弁がございましたように、それぞれの団体によっていろいろな保険制度に入ることを勧めていただいておるようでありまして、それを一律に何かまとめるというのは非常にむずかしいと思いますけれども、実際に事故が起こった場合に、ボランティアがそういった負担をしなくても済むような形に持っていくことは、社会教育活動を振興していく上で非常に大事なことではないか、こんなふうに思うのでございます。さらに、文部大臣の御答弁にもありましたように、文教行政の中で一層の御指導をひとつお願いをして、それぞれのボランティアが力いっぱいに活動ができるような形を整えていくように、私も私の立場努力をしてまいりたい、こんなふうに考えております。
  431. 中野寛成

    中野(寛)委員 学校安全会法のあの補償金額を、文部大臣、それから官房長官、それぞれ文教委員をされておられた当時に一緒に論議をし、そしてその充実を図ったことを思い起こしております。私は、本当は報酬を受けないでボランティアでやる方々にこそ、万一のときの補償というものは、やはりもっと手厚く保障されなければならないと思います。また、そういう人たちを養成するということのための制度、機関、機会、そういうものはもっと充実されなければいけないと思います。これが大変おくれているということをぜひ御認識をいただきたい、こういうふうに思います。  そこで、やっと本論に入りたいと思います。あとは総理にお尋ねをしたいと思います。いわゆる教育臨調の問題であります。  今、実はセックス産業から始まりまして、主任制度その他いろいろな問題についてお尋ねをいたしました。しかしながらその都度、例えば最初の例のセックス産業の問題でもそうですが、結局、各党で相談をしてという御答弁が返ってまいります。私は、それはそれで、これが実行に移されることを望みます。そして、それが全員が一致をしてこの方法が進展していくことを望みます。そしてまたそのほかの、例えば主任制度、そして教育委員の準公選制、何かにつけて教育は対決の場になりがちであります。それを何とかして克服したい、そして全国民の教育に対するコンセンサスをまとめ上げたい、その願いが先般来の教育改革に対する総理の御提言だろう、そうなったのだろうと思います。ゆえに、私はその御提言を評価いたします。  しかし、残念ながら今各界において聞かれるのは、危惧の念または疑心暗鬼、そういうものが続いているわけです。これは私は、やはり残念ながら、例えば憲法改正論等々述べられた総理の今日までの御発言の歴史、行動の歴史等々がそういう誤解を生んでいるのではないかというふうに思わざるを得ないのです。私はそういう意味で、大変率直な立場総理がこの問題をお考えになっておられるであろうことを実は信じたいと思います。  先ほど、総理府が行った世界青年意識調査についての総理の御答弁に安心したと申し上げたのは、即座にそれが日本の青年が愛国心が低いことを心配しているという答弁につながらなかったことを、実は安心したと申し上げました。むしろ私は、このいわゆる教育臨調と言われている構想——別に臨調でなくて結構です。これに対して、総理が本当に教育の公正な発展を望んでそのことを提言されていることを、これから折に触れて、やはり繰り返し、くどくても主張しなければならない、それが総理の運命だろうと思います。  さてそこで、この機関は、一つは法律が提案されるわけでありますけれども、その場合に、行革臨調と違っている部分と似ている部分があるのですね。これは言うならば、政治が教育をコントロールするようなことがあってはならない。むしろもう第三者機関としてのそれを設置したからには、その決定を忠実に実行に移していく、その覚悟を持ってそこへお任せをする、このことをやはり政府が明言をしてかからなければならぬと思います。そして、それを設置するには、やはり設置するまでは与野党間の十分な話し合いと納得が必要だろうと思います。そして、それができ、構成メンバーが決まったらそこへ任せる、決まったことは一〇〇%そのまま実行します、都合のいいところだけをとるようなことはいたしません、この約束が必要だろうと思います。  すなわち、政治から教育に対して、その基本理念、方法論を含めて論議する、その機関が独立をすることが必要なわけですね。そのことが国民が望んでいることであるし、また国民のコンセンサスをまとめることにつながるわけですね。そういうものとするという総理の断言、その基本方針を国民みんなが望んでいると思います。いかがでございましょうか。
  432. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は全く同感でありまして、これは教育基本法にもありますように、政治的中立性の確保ということは非常に重要であると思っています。したがいまして、そういう新しい機関を制定する場合の設置法の中にも、そういう点を配慮したらいいのではないかと思っております。
  433. 中野寛成

    中野(寛)委員 そうすると、その設置法ができるまでの過程ですけれども、これは十分な与野党の協議を行う、そして納得の上で提案をする、そして対決法案とならないように努力をする。これは対決法案になったら、もうその時点でこの教育改革は失敗ですよ。これが対決法案になったら、その時点でこの教育改革のねらいは失敗だと考えた方がいいと思います。だからそのようにならないように努力をする、このことが大事だと思いますね。  いわゆる権力を持っておられる、いわゆる行政権を持っておられる総理初め内閣の皆さんは、権力者として謙虚な権力者であっていただきたいと思いますし、もちろん、それを受けとめる我々野党は自信を持たなければならぬと逆に思っております。常にだまされるのではないかという疑心暗鬼、いつも犠牲になる、強行採決で負けるという気持ちではなくて、やっぱり自信を持たなければいけないだろうと思うのです。結局、自民党の謙虚さと我々の自信、正しい自信とが教育改革を実現させる基本だろうと思います。  そういう意味で、総理に、十分な協議の機会を設け、その納得の上でこの法律を提出するということのお約束をいただけるか、こういうことであります。
  434. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのようにいたしたいとお約束をいたします。  ただ、対決法案という名前をどういうふうな定義で言うのか。私は、共産党の皆さんはどういうお立場をおとりになるか、今までの例から見ると反対の場合が多いですね。今度の場合どうなるかわかりませんが、そういう場合でも対決法案と言い得るのかどうか、その辺は定義の問題でありますけれども、大部分の有力政党が賛成して同じ方向に行けるということ、それが一番望ましいのではないかと思っています。
  435. 中野寛成

    中野(寛)委員 総理、私は総理の御答弁のお気持ち、わからないでもないです。わからないでもないですが、しかし、今そのことを、あえて共産党という名前に触れなくてもいいのではありませんか。精いっぱい努力をするということでいいのではないでしょうか。このことについては別に深く申し上げません。私が共産党の名誉を守らなければいけない立場でありませんので、これ以上は申し上げません。しかしながら、でき得る限り総理が最大限の努力をされること、そのことをお約束されたと受けとめて、次の質問に移りたいと思います。  中教審がいろいろな答申をされました。実は、四十六年の中教審の答申とその措置状況、この表をつくってみたわけですね。ところが、例えば先導的試行をやるべきだ。しかし、そう簡単にいかないかもしれないから、せめて希望するすべての五歳児を就園させることを第一の目標としてやりなさいとか、随分親切、懇切丁寧に、これができなければ次のことをせめてやりなさいとか、例えば高等教育の多様化であるとか、ところが、これも残念ながら手がついてないのですね。ずっと数え上げてみますと、この赤で書いてあるところはできなかったというのを書いているのですよ。たくさんあるのですね。なぜできなかったのか。これはやはり大切な問題だと思います。  できなかった一つの大きな理由は、やはり国民のコンセンサスをまとめ得なかったということが一つあります。もう一つは、財政的にできなかったということもあります。ゆえに、財政上の問題が教育改革にはどうしても伴ってまいります。そして、これは各省庁が協力しなければできないことであります。こういうことについてどうお考えでしょうか。
  436. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 四十六年及び四十九年の中教審の答申が、なかなか立派なものがあったのがなぜできなかったか。おっしゃるとおりの理由があったと思います。  大事な点は、やはり一つはコンセンサス、それから国民の強い支援というものが今日ほどあの当時はなかった。それから財政上の理由もあったでありましょう。今日の時点におきましては、国民の非常に力強い支援と、それからこのままではどうしてもいけないという考え方が各党の間にもございまして、私はあのとき以上にコンセンサスはできつつあり、それを背景にして政府も思い切ってやれるのではないかという気がしております。
  437. 中野寛成

    中野(寛)委員 その国民的な支援なんですけれど、今回の場合は、その機関が答申を出すことが目的ではないと思いますね。最後の一つのプロセスとしてそれはあると思います。一番大きな問題は、もちろん教育を改革することが目的ではあるのだけれども、今総理がおっしゃった国民のコンセンサスをつくり上げるということですね。そのためには、この機関はある意味では常にその審議経過等を国民にやはり広く知らしめ、そしてまた国民の意見をどんどん上げてもらう、それを吸収し、またそれを論議の対象にして大いに議論を深めていく、そして国民みんなが納得をする形に持っていく、その一つのよすがでなければならぬと思うのですね。そういう運営がなされる、そういうものだというふうにお考えでしょうか。あと何をテーマとするかとか人選をどうするかとか、それはまた今後の機会に論議をしたいと思います。このいわゆる教育臨調については、そのことだけをきょうは最後にお聞きしておきたいと思います。
  438. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は非常に大事な点であると思います。もしその新機関ができた場合には、それはあらゆる手段を用いて国民の意見をお聞きする、じかに把握する、そういう努力をすべきであると思います。情勢によっては参考人として現場の皆さんにかわりばんこおいでいただいて御意見を聞くということもありましょうし、あるいはアンケートによる調査方式というものもございましょうし、あるいは全国の主要地点で公聴会形式で直接お聞きするという場合もありましょうし、父兄やPTAの御意見も十分承るという場合もありましょうし、そういうように国民のコンセンサスを形成するためにまず意見を聞く、そして実態を把握する、そういうことが非常に大事ではないか。その仕事がまず初期の大部分の仕事になりはせぬかというぐらいにすら考えておるところです。
  439. 中野寛成

    中野(寛)委員 教育の問題については以上で終わらせていただいて、次に移りたいと思います。ただ、今総理がお答えになられたことをぜひとも忠実にお守りをいただきたい。そして、何としても教育が中心になって対決が続いていくようなことからだけは一日も早く脱却できるように、そのことが、いわゆる教育、国民の知恵と能力によってこれからも我々の生活や未来を支えていかなければならない宿命がある日本人として大切だと思いますから、そのことを御要望申し上げておきたいと思います。  次に、地方財政についてお伺いをいたします。  地方財政計画が実はきょう発表されました。ことしの国の財政規模が五十兆六千二百七十二億円、五十兆円、そして地方が四十八兆円、およそ肩を並べているわけであります。しかしながら、その厳しさは、またともに大変厳しい状態に追い込まれていると思います。こういうときに小手先だけの対策を講じておりますと、これまた大変なことになっていくと思うのですね。  いろいろな措置がとられておりますが、時間の都合で簡単にお尋ねしたいと思いますが、まず第一点は地方交付税特別会計。地方交付税についてはきょう地行委で一つの法案が提案されて採決されたようですが、この特別会計の借入金の返済方法も、最初、元金は国と地方が半分ずつ負担する、しかし、利子は国と地方の両者が協議して決めるけれども、まずこれは国で見ますよということでスタートしたのですね。ところが、だんだんこれが半分になってきて、後は地方で見ろと変わってきた。  おまけに、この地方交付税について私いろいろ調べてみますと、地方交付税の制度というのはどうして生まれたんだろうかと、最近ちょっと疑問に思うことがあるのですよ。というのは、本来ならば税源が豊かで交付税の不交付団体であるべきはずの大都市、そのほとんどすべてが昭和三十九年以降交付団体になっているんですね。私は本当はここで、この交付団体と不交付団体は大体どのくらいの比率を想定されたんだろうかとむしろ聞きたいくらいなんですよ。本当はせめて三分の一くらいの自治体が、都市ならばほとんどの主要都市が不交付団体であって、むしろそういう主要都市は自主財源が制度的に保障されて、自主的に運営されるのが本当の地方自治なんではないでしょうか。  ところが、全部交付団体なんですよ。交付団体で、そしていろいろコントロールされるわけですよ。そして、いろんな財政問題、地方財政問題が論議される。こういうことで困っているんですというと、それじゃ、大体全国の自治体がその問題で困っているようですから、それは交付税で見ましょうという答えが返ってくるんですよ。交付税で見ましょうという答えが役所の皆さんではしょっちゅう使っている言葉ですよ。こんな失礼な話があるものかと私は思うのですね。交付税で見ましょうと言うが、交付税というのはもともと地方自治体のものじゃありませんか。そして、総額決まっているんでしょう。見ましょうということは、国の一般財源から金を出して初めて見ましょうと言えるんだと思うんですね。その算出基準のの中に入れましょうというだけのことでしょう。実にこの言葉は間違っていると思うのですね。  だから、地方交付税のあり方についてどういうふうにお考えであるのか。これを本当は見直さなければいけないんではないか。そして、もっと都市の場合は自主財源をふやしていく、この方向にしていかなければ本当の地方自治というのはでき上がっていかないんではないだろうか、こう思うのです。例えば、租税の配分状況で言いますと、国税二、そして地方税が一。しかし実際の仕事段階になると、実質配分は国が一で地方が三ですね。ならば、それはそれで最初からそうなるように、極端な論議をいたしますが、地方交付税そのものを今考え直すときに来ているんではないでしょうか、自治省。
  440. 石原信雄

    石原政府委員 お答えいたします。  地方交付税制度のあり方に関連いたしまして、不交付団体が少な過ぎる、大部分の地方自治体、特に大都市等が交付税の交付団体になっているのは、交付税制度の本来の想定からしておかしいじゃないかという御指摘であろうかと思います。  確かに、地方交付税制度が発足した昭和二十九年度当時におきましては、指定都市の中で交付団体は京都市だけであったと思います。しかし、その後の推移で、都市の税源、特に固定資産税などの伸び率、全体の財源の伸び率が低かったというような事情で、今日では指定都市のすべてが交付団体になっているという現状、これは交付税制度スタート当時の想定とはかなり食い違ってきているということは言えると思います。  地方自治の理想からしますと、相当数の団体が交付税に頼らずに自前で財政運営ができるようにすることが望ましい、このように思います。しかしながら、そのためには地方税源の総量をふやさなければいけない。しかし、現実にかなりの税源偏在があります。そうした中で現状以上に相当多数の都市が交付税に頼らずにやれるためには、租税負担全体の問題どこれは関連してくるという事情もありまして、私どもは、理想としてはもっと不交付団体が多い、交付税に頼らなくてやっていける団体が多いことは望ましいと思いますけれども、租税総量、租税負担全体との兼ね合いでなかなかこれが実現できないでいる、その点で苦慮しているというのが実情でございます。今後、税収の選択などでこの問題は検討されるべきものではないかと考えております。
  441. 中野寛成

    中野(寛)委員 きょうは各論を一つ一つあげつらう時間はありませんから、基本的なことだけ申し上げます。  国税三税の三二%が地方交付税、しかし、例えばそれを二〇%にして、一二%に当たる部分を地方の自主財源として転換してしまう。これは暴論かもしれません。しかしながら、私は、本来主要な都市が独自の財源に基づいて住民サービスをしていく、自主財源を持ちながら自主的に自治を守って運営をしていく、しかしその分は国に頼るということではない、そういう方向にこの地方自治のあり方、地方財政のあり方というものを本当は変えていかなければいけないのではないでしょうか。何か現実と飛び離れた議論かもしれませんけれども、しかし私は、方向づけは今そういう方向に持っていく必要があるんではないだろうか、こういうふうに思うのであります。そしてその方向についての、これはやるとしたって長期にわたるでしょう、そういう検討をむしろ私はやるべきではないかと思いますが、自治大臣または大蔵大臣、お答えいただきたい。
  442. 田川誠一

    ○田川国務大臣 有力な意見として承っておきます。  ただ、私どもはいまの地方財政を見まして、抜本的に今ここで地方財源を急速にふやしていく、自主財源をふやしていくということは、なかなか困難な情勢でございます。そうした意味で、今の中野委員の御意見は御意見として承っておきます。
  443. 中野寛成

    中野(寛)委員 今自治大臣にお尋ねしてもそのくらいの答弁がなという感じはいたしますけれども、しかし、本当はいつまでたっても自治体が中央に対しておんぶにだっこですよ。そして陳情政治が繰り返されるのですよ。そしてやはり国が荷物を背負い込むのですよ。もっと身軽になったらどうですか。そしてもっと自治体に力も責任も持たしたらどうなんですかね。  さて、そのことをやろうとすると、どうしても国が地方に対して信頼感を持っていないということが私は基本にあるような気がしてならない。それが基本の気持ちではないでしょうか。例えば必置規制、必置義務の問題、これを特別地方機関の問題に触れながらひとつお聞きをしたいと思います。  これはこういう立派なパンフレットがあります。これは行管庁が五十五年五月にお出しになった。この中に具体的にずっと指摘されております。大変立派な指摘がなされております。都道府県関係から、市町村関係から、その職員、行政機関または施設等々具体的に書いておられます。これにはことし改めてメスを入れるようでございますけれども、行管長官にお聞きしたいと思います。  これ、いろいろな指示がなされておりますが、本当に今日まで行管庁の指摘に基づいて各省庁は努力をなさった形跡があるのでしょうか。全く皆無ではありませんよ。あるのはあるのですよ。必置規制の廃止状況、ここに手元にあります。十四機関、十二名称かな、ありますけれども、行管庁が五十五年に指摘した、それで努力を要請した内容に比べますと、余りにも少な過ぎますね。どうお考えでしょうか。
  444. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 御指摘の行管庁のあれは、五十四年に、ちょうど第二臨調ができるもちろん前なんですけれども、やはり特別地方機関の設置とその運営を監察しようということで、行政監察をやったのです。当時百八十一くらい特別地方機関があったと思いますけれども、そのうち七十幾つを監察をやって、それについて各省に改善方の御意見を申し上げて、検討してもらいたいということを申し上げた。その結果、十七の機関、十三廃止で四機関が統合とかあるいは緩和をするといったことをやったわけです。しかし、私はそれで十分とは思っておりません。  しかしながら、やはり今の仕組みが、国の施策というものの多くは、さっきおっしゃったように三分の二ですか、これは地方団体を通じてやっているわけですよ。そのやり方として機関委任事務あるいはまた団体委任というようなやり方で仕事が進められておりますから、中央の省庁としては、自分の施策がうまくいくようにしてもらいたいという当然の強い願望がありますね。したがって、こういった指摘を受けてもこれはどうしても廃止するわけにいかぬのだといったようなお考えになるのも、これまた私は理解ができます。  しかしながら、理解ができるからといって、それでは今の現状がいいのかと言えば、必置機関でありながら置いていない県がたくさんあります。同時にまた、全然動いていないのもある。したがって、そういう事情がありますので、今度の臨調答申もこれあり、前回の政府の方針の実施状況を見るという、それを踏まえながら、新しくひとつ今日どうしたって行政改革をやらなければならない。余りにも中央の政府が地方に関与が多過ぎる、はしの上げおろしまでいろいろ指図する、これでは地方が行政改革をやろうとしたってできないんですよ。そこで、いま一度監察をやろう、新年度早々に私は行管庁としては監察をさしていただくつもりでおります。それを取りまとめまして、第二臨調から指摘をせられておりますし、政府としても一月の閣議決定で、五十九年中に特別地方機関の改革について具体的な方針を取りまとめようということになっておりますので、行政改革の重要な柱の一環としてやらせていただきたい、かように考えております。
  445. 中野寛成

    中野(寛)委員 この五十九年中に方針をお出しになるということですが、もう既に本当は方針は出ていたと思うのです。しかし、それが実行が伴わなかった、それが現状ではないかと思います。文字どおり、戦後の混乱期の過渡的な措置としてこの特別地方機関というものは設けられたはずです。だから、今日、本当は原則としてこれを廃止するどい」うことでなければならぬはずです。しかし、極めて重要な役割を果たしているものも皆無ではありませんから、すべてを廃止しろとは言いませんが、原則としてこのようなやり方は、むしろもう地方へ全く任せてしまうのかどうするのか。その事務配分をきちっと区分けをして、この特別地方機関というふうな考え方は廃止すべきではないか、そういうふうに思うのですが、そういう基本的な方針で長官はお臨みになるつもりなんですか。
  446. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 お気持ちはわかるのですけれども、中野さん、それは無理ですよ。それは、特別地方機関という中身をよくごらんになっていただければ、わかるはずでございます。  ただ、私が言いたいのは、ちっとも働いていない審議会があったり、いろいろなものがあるわけですよ。ちっとも働かぬし、同時にもうなくしたっていいと思うものも率直に言ってありますから、そういうものの整理はぜひ各省の御協力を願いたい、こう思いますが、原則廃止というのは、それはちょっと逆じゃないですかね、今の国全体の仕組みから見まして。そうじゃなくて、原則はやはり置かなければなりません。しかしながら、余りにも関与がひど過ぎる、しかも活動してない、時世は変わっておるといったようなものは絶対にもう廃止をしていただく、こういう方針でお願いをしたいな、こういうふうに思っております。
  447. 中野寛成

    中野(寛)委員 私の論議が少々せっかち過ぎたかもわかりませんけれども、長官のおっしゃっている意味はよくわかります。ひとつぜひ、行管庁のねらいが実現すること、そしてそれが立派な成果をおさめることを私どもも強く望みたいと思います。  地方自治についてたくさんあるのですが、もう一つだけ申し上げます。  地方公務員の給与のことですけれども、東京都の給与問題が大きく取り上げられました。私はそれでちょっと数字を見てみたのです。歳出の中に占める人件費が、東京都は五十八年度ですが三六・九%、残念ながら、自治大臣が出ておられる神奈川県は五〇・四%で日本一でございまして、私の大阪も四六・七%と決して低くはない。そういう中で、全歳出の中に占める人件費の比率が東京都が三六・九%というのは、これは立派なものだと思うのですよ。人件費はそれだけで、ほかは事業に回すわけですから。もちろん借金を返すお金もその中にありますけれどもね。私はラスパイレス指数も確かに一つの比較対照の素材だと思いますが、しかし本当は、もし少数精鋭で立派な業績を上げている自治体があるとするならば、その少数精鋭の職員により高い給料が支払われても、これは当然ですね。別に東京のベアを認めるという意味ではないですよ。しかし、東京のベアについていろいろ起債の制限その他やられたようですけれども、本当はちょっと行き過ぎではないか。東京も確かに努力してもらわなければいけません。いけませんが、あそこまでやらなくても、むしみ東京都に任せるべきことだったのではないか。  あわせてこの機会に、人件費が財政規模の中でどれだけ占めているかということをもっと重視する風潮をつくった方がいいのではないか、こういうふうに思いますが、一言だけお考えをお聞きしたいと思います。
  448. 石原信雄

    石原政府委員 ただいま東京都のベアに関連いたしまして、東京都の人件費率が三六%台で、神奈川県とか大坂府と比べて著しく低いという御指摘がございました。数字はそのとおりでありますが、ただ、御案内のように、東京都と他の都道府県を比較する場合に、東京都の場合には、二十三区の区域について都市の行う投資的事業、都市計画ですとか公園とか下水とか、こういった投資的事業を行っておりますので、むしろ指定都市の人件費率と近い性格を持っております。これに対して大阪府でありますとか神奈川県の場合には、指定都市が投資的事業を相当部分行っておりまして、都道府県はいわば教職員と警察官の人件費を支払っている部分が非常に多い。そういった意味で人件費率は非常に高くなってまいります。そういう意味で、東京都は都道府県の中ではやや特殊な地位にございまして、東京都の今の人件費率が他の都道府県に比べて非常に低いかというと、必ずしもそうは言えないのじゃないか。  もちろん、現在東京都自身がいろいろな合理化努力をしておられることについて私どもも高く評価をしております。しかしながら、都の財政実態、今の財政指数、いろいろ見ますと、単にラスパイレス指数だけでなくて、例えば財政運営上最も重要なポイントになります経常収支比率でありますとか公債費比率、こういった面は他の都道府県より非常に高くなっておりまして、財政体質としては私どもはもっともっと合理化をしなければならない状態にあるものと思っております。そういう意味で今回のベアの問題も考える必要があるのではないか、このように考えております。
  449. 中野寛成

    中野(寛)委員 ただ、その場合に、例えばこの措置の仕方、起債の制限筆、財政余裕論の中から出ているのですが、しかし私は、本当に財政余裕論だけでそういう制裁措置をとることは、はて、いいのだろうか。言うならば行政指導ですね。  私は逆に、行政指導というのは、本来は日本特有というか、日本政府また日本の役所が得意な手法ではあるのだけれども、それはそれで非常に大きな効果を発揮するときもありますけれども、こういう重要な問題については行政指導ではだめだと思う。行政指導というのは、これこそ考え方を変えれば中央集権的手法ですよ、まさに強権的なやり方なんだから。むしろ本当の民主的なやり方というのは、この給与の問題にしたって、例えば地方公務員給与適正化法とか、そういうふうな法律で決めるべきものなんじゃないですか。  それは、自治体で独自にやるならいいですよ。しかし、自治体の人事担当の方へアンケートをとってみますと、いやいや、うちの市長は市職労の推薦を受けていてそう簡単にいかぬのだということで、市長さんは市長さんの立場でなかなか現実はできぬことが多いのですよ。むしろ私は、国民の代表であるこの立法機関において民主的に法律で決めて方向づけをしていく、それを出すのが本来ではないでしょうか。行政指導でやっていくという手法は、一見民主的のように見えて、これは逆だ、こういうふうに思うのですね。時間がありませんので、簡単にひとつお願いします。
  450. 田川誠一

    ○田川国務大臣 東京都に対する起債の制限というのですか、そういう処置をとろうといたしましたのは、やはり今東京都が抱えている問題はたくさんあるわけです。例えば東京都の公営企業を見ましても、料金をどんどんどんどん上げていらっしゃるでしょう。そういう都民に対して負担をかける前に、まだやるべきことが、内部経費を節約するというようなことがたくさんあるわけです。ですから、そういうことを抜きにして、都民のサービスを抜きにして職員の給与を相当多く、国家公務員の二倍程度引き上げたというところに、私どもはそれを見逃すことができないわけでございます。  今、起債の問題にしても……(中野(寛)委員「東京都のことは結構です。この法律のことについてお伺いしたい」と呼ぶ)ちょっと待ってください。起債の問題にしても、起債とか交付税とかというのは地方団体の共有の資金であり、財源なんですよ。それはよく御承知のとおり。そして、地方の各自治体もみんな一生懸命行政改革を汗水流してやっているわけです。そういう中に、それと東京都を同一視してやるというのは、やはり不公平じゃないでしょうか。  今中野さんがおっしゃった、民社党でおつくりになっているそういうような法律のことも、私もちょっと法律案見さしていただきました。そういう内容のことは、現在指導しているわけですよ。指導しているわけですけれども、今の地方自治制度で、では指導してどれだけ言うことを聞いてくれるかというと、なかなかそれは難しいですよね。ですから東京都の場合は富裕団体、財政が豊かだというふうに見ざるを得なくなるわけです。決してこれは制裁ではない。むしろ私は、法律で制度化するよりも、そのときそのときに応じて弾力性を持ってやった方が、今の地方自治の本旨からいって適当ではないか、こういうふうに思っているわけでございます。
  451. 中野寛成

    中野(寛)委員 指導をしていると言いますが、私はそれが中央集権的だと申し上げたのです。指導という言葉も、ある意味では中央集権的用語かもしれません。むしろ私は、国民を代表する国会がこれに対する意思表示をすべきではないか、こういうことを申し上げたわけで、これは少々水かけ論になるかもしれませんから、今後なお一層論議を詰めていきたいと思います。  さて、在日韓国人のことについてお尋ねをしたいと思います。  指紋押捺の問題が、これは法務大臣、今大きくクローズアップされているわけであります、外国人登録法に基づいて。ところが、これは国連人権委員会等でも、この指紋強制は明らかに差別だということが指摘をされております。また安倍外務大臣も、昨年八月の日韓定期閣僚会議で韓国の李外相に改善を求められたことに対して、建設的な話し合いを続けたいとお約束になった、こう聞いております。また、全国の約二百を超す自治体も、これをやめるべきだという決議をしておりますし、そして、この事務を扱っております自治体でつくっている外国人登録事務協議会全国連合会も、この指紋制度の廃止を法務省に求める決議をいたしております。そしてまた百七十九万、約二百万人の国民の署名も寄せられているわけでございます。  もう国際社会の中でも、先進国は特定のとき以外は余りこれをやっていない。そろそろおやめになってもいいのではないか。しかし、一挙にはやめられないでしょう。過渡的な措置として、例えば協定永住者約三十五万人いらっしゃいますけれども、これは協定永住者ですよ、特別な理由があるから協定永住者になったのですね。もともと日本人扱いをされたんですね。日本人として処遇された。こういう方々はまず廃止してもいいのではないでしょうか。とにかく、五年ごとに更新するたびに、これはことしの暮れから来年にかけて大変ですよ、三十万人から四十万人、これはつくり直すんでしょう。そこでまた押させるんでしょう。これでは私は、日本がまだ人権問題ではおくれているという印象を国際社会に与えると思うのですね。この問題について、私は、むしろ諸外国との友好の立場からも考え直すべきではないか、こういうふうに思います。  それからもう一つ、厚生省にお聞きしたいと思いますが、今日まで私は、国民年金の適用について、約七年間毎年言い続けてきた。五十七年にこれは三十五歳までの人が適用されるようになりました。ところが、一番苦労した一世の皆さんが適用除外だったのですね。何とかこれを適用にしていただきたいということで今日まで長い間やってきましたが、厚生省は長い間やらぬといって頑張ってきました、これはいろいろ問題があると言って。しかし、もうそろそろその道を開くべきではないだろうか、こう思うのですね。  この二つについてお伺いをしたいと思いますが、あわせまして、ちょっと仄聞いたしますと、国民年金の件につきましては前向きに考えていただいているようですが、その場合に、もしやるのならばいつから適用されるのかも、あわせて御答弁願いたいと思います。
  452. 住栄作

    ○住国務大臣 中野委員御承知のように、我が国の外国人登録制度に指紋制度が取り入れられて実施されたのは昭和三十年からでございます。それ以前は、写真で同一人性の判定をやっておりました。その結果、二重登録その他不正登録が頻発いたしまして、不正な外国人登録証が流通した。大変混乱をいたしました。そういうようなことから指紋制度を取り入れたわけでございます。  そういうようなことでずっとやっておるわけでございますが、それ以来、二重登録とか不正な登録証が流通するというようなことがなくなってまいりました。外国人登録制度の信頼性が非常に高まったことも事実でございます。昭和五十五年、五十七年、外国人登録法の改正もやったのでございますけれども、このときも随分その点が議論された。まあしかし、再入国する外国人が登録証明書を持って外国へ出るとか、あるいはまた確認期間が三年から五年に延びた、こういうようなこともございまして、国会の審議、いろいろ御議論があったようでございますが、指紋制度が残っておる、こういうのが従来の経過でございます。  私どもも、登録制度の信頼性をどう確保するか、本当に指紋が要るのかどうなのか、写真だけで足りるのかどうか、こういうことにつきまして、今中野委員もおっしゃいましたけれども、諸外国の制度も調査しております。先進国でも採用している国がかなりあることも事実でございます。しかし、今御提案の、全廃したらどうだとか見直したらどうだとか、こういうことでございますが、これはやはりもう少し慎重に検討させていただきたい。やはり、信頼性をどう確保できるか、こういうことにかかっておりますので、御提案は御提案として承っておきますが、少し研究をさせていただきたい、こういうように考えております。
  453. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 御心配をちょうだいしておりました、難民条約によって五十七年一月一日から国民年金の適用を原則的には受けることになっておったのですけれども、実質的には三十五歳の年齢を超えておって、六十歳まで二十五年かかるものですから、老齢年金に結びつかなかった皆さん方の問題、大変重要な問題であります。  今回、厚生省が出そうとしておる年金改革法案は、これは無年金者をなくするというのが大きな目的でありますから、この法案が通りますと、五十七年前の期間も資格期間として取り扱われるということで、皆さん方に老齢年金に加入していただくということになりますので、法案が出ましたら、ぜひ通過するようにお願いをいたしたいと思います。
  454. 中野寛成

    中野(寛)委員 私は本当に、昨年まで厚生省はどうしても首を縦に振らない方向であったわけでありますが、そこまで前向きに決断をされたということについて敬意を表したいと思います。しかしながら、まだあと具体的な問題は残っておりますから、それはまたこれから論議をしてまいりたいと思います。  時間がありませんので、最後に、この問題について一つだけ総理にお尋ねしたいと思います。  総理になられて真っ先に韓国に行かれました。日韓関係のことについて、私は、そのことが大きな役割を果たし、今日、日韓関係は今までにない友好な状態にあると思います。しかしながら、在日韓国人約七十万人の皆さん方、その方々が日本の国内でいかにして安心して生活をできるか。日本国民と同じように差別されないで生活をできるか。彼らがまた韓国へ帰ったときに、そのことを自分たちの身内や友達、いろいろな人たちに話をする、そのことが言うなれば国民の間の真の親善友好につながっていくと思うのです。  そういう中で、例えば指紋というふうな問題は、これは彼ら、とりわけ青少年、十六歳で指紋をまず押されるわけです。そういう多感なときに押される、こういうことはやはり決していいことではありません。これがまた、人間の心を傷つけているわけです。そういう問題について前向きに検討される、そういう指示をしていかれる、そのことが大切なんではないだろうか、私はこのように思います。総理の前向きの御見解を期待をし、質問を終わりたいと思います。
  455. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 在日韓国人の皆様方の接遇に関しましては、私たちも本当に温かい気持ちで、韓国人の方々が日本にいてよかったと思われるようにしなければいかぬと思っております。今のいろいろな問題につきましては、国際的な関連もあり、またほかの諸国民との関係というものもあるとは思いますが、しかし、日本におられる韓国人の方々に対しまする我々の誠意と申しますか、そういうものをよく考えて、ひとつまた検討を続けていきたいと思います。
  456. 中野寛成

    中野(寛)委員 終わります。
  457. 倉成正

    倉成委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十七分散会