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1984-02-16 第101回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年二月十六日(木曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 倉成  正君    理事 小渕 恵三君 理事 原田昇左右君    理事 松永  光君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 岡田 利春君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    石原慎太郎君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       澁谷 直藏君    砂田 重民君       田中 龍夫君    高鳥  修君       玉置 和郎君    中馬 弘毅君       野呂 昭彦君    橋本龍太郎君       原田  憲君    平林 鴻三君       松田 九郎君    三原 朝雄君       武藤 嘉文君    村田敬次郎君       村山 達雄君    山岡 謙蔵君       井上 一成君    稲葉 誠一君       上田  哲君    大出  俊君       後藤  茂君    島田 琢郎君       清水  勇君    武藤 山治君       矢山 有作君    湯山  勇君       遠藤 和良君    草川 昭三君       斉藤  節君    正木 良明君       木下敬之助君    小平  忠君       渡辺  朗君    岡崎万寿秀君       工藤  晃君    瀬崎 博義君       津川 武一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 住  栄作君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 森  喜朗君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         農林水産大臣  山村新治郎君         通商産業大臣 小此木彦三郎君         運 輸 大 臣 細田 吉藏君         郵 政 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 坂本三十次君         建 設 大 臣 水野  清君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     田川 誠一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      中西 一郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官)稻村佐近四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長 河本 敏夫君         官)      栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         総理府人事局長 藤井 良二君         行政管理庁長官         官房総務審議官 古橋源六郎君         行政管理庁行政         管理局長    門田 英郎君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁衛生局長 島田  晋君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁次長 小谷  久君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         防衛施設庁労務         局長      大内 雄二君         防衛企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         環境庁自然保護         局長      山崎  圭君         国土庁長官官房         長       石川  周君         国土庁長官官房         会計課長    安達 五郎君         国土庁大都市圏         整備局長    杉岡  浩君         国土庁地方振興         局長      川俣 芳郎君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       小野 博義君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 垂水 公正君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         大蔵省証券局長 佐藤  徹君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         国税庁次長   岸田 俊輔君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      齋藤 尚夫君         文部省初等中等         教育課長    高石 邦男君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業省通商         政策局長    柴田 益男君         通商産業省貿易         局長      杉山  弘君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君         運輸大臣官房総         務審議官    西村 康雄君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         運輸省航空局長 山本  長君         労働省労政局長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      望月 三郎君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房総 吉田 公二君         務審議官    赤松 良子君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省計画局長 台   健君         建設省道路局長 沓掛 哲男君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十六日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     平林 鴻三君   上村千一郎君     松田 九郎君   海部 俊樹君     野呂 昭彦君   金子 一平君     山岡 謙蔵君   武藤 山治君     後藤  茂君   大久保直彦君     遠藤 和良君   不破 哲三君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   野呂 昭彦君     海部 俊樹君   平林 鴻三君     石原慎太郎君   松田 九郎君     上村千一郎君   山岡 謙蔵君     金子 一平君   後藤  茂君     武藤 山治君   遠藤 和良君     大久保直彦君   津川 武一君     岡崎万寿秀君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大田俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 いろいろ承りたいことがございますが、まず、我が党の田邊書記長質問にお答えになった中で、私自身納得いたしかねる点もございますから、二、三承っておきたいことがございます。  この新聞記事によりますというと、北村外務省北米局長さんの答弁なんでしょうな、「米政府から①レギュラスⅡ型ミサイルは現実には潜水艦実戦配備されなかった②事典記述誤り――との回答があったことを明らかにした。」こういうふうに新聞が述べておりますが、ここのところ、ちょっと私もわかりかねるわけでございますので、アメリカ側回答というのを少し詳しく御説明をいただきたいわけでございます。
  4. 北村汎

    北村政府委員 お答え申し上げます。  アメリカ海軍軍艦事典に、昭和三十四年から昭和三十九年の間にグラウラーあるいはグレイバックという潜水艦が核ミサイルレギュラスⅡを搭載しておって、その最後の巡航の地点として横須賀に入港したというような記載がございましたので、私どもといたしましては、安保条約上、いかなる核の持ち込みもこれは事前協議の対象であり、事前協議なくしては米国我が国核兵器を持ち込むことはあり得ない、こういうふうに考えておりまして、報道されたこの時点において、政府といたしまして、核問題が我が国においては国民の重大な関心事であるということ、また、政府といたしましては、アメリカ側資料を私どもは勝手に解釈することもできませんので、そこで、念には念を入れるという観点から、アメリカ政府にこの事典記述について照会をいたしたわけでございます。  その結果、アメリカ政府としては次のような説明をいたしてまいりました。第一点は、米国通常型潜水艦であるグレイバック及びグラウラー核搭載能力を有していた、しかしながら、本件記述は、これらの艦船横須賀寄港中に核兵器を実際に搭載していたということを意味しない、これが第一点でございます。それから第二点として、本件海軍事典記載は誤っておって、米海軍としては、本件海軍事典の改訂を検討中である。すなわち、グレイバック及びグラウラー通常の展開の一環として横須賀に寄港したことはあるが、海軍事典に言及されているレギュラスⅡ型ミサイルは、潜水艦においては実用段階には至らなかった。第三点として、米国政府安保条約及びその関連取り決めに基づく米国義務を誠実に遵守してきている。この三つの点を回答してまいりました。
  5. 大出俊

    大出委員 それはいつ照会されて、いつ回答があったのですか。どういう手続で照会なさったのですか。
  6. 北村汎

    北村政府委員 私ども、こういう記載があることを知りまして、昨年の十二月二十六日にアメリカ側照会をいたしました。それで、昨年の十二月二十九日に我が方の在米大使館に対して国防省の方から第一回目の回答がございました。それは、先ほど申し上げましたように、この二つ潜水艦核搭載能力は有していた、しかしながら、この記述は、この艦船横須賀寄港中に核兵器を実際に搭載していたということを意味しない、そして安保条約及び関連取り決めに基づく米国義務を誠実に遵守してきている、こういう回答がありまして、さらに一月の二十六日に今度は在京米大使館から、事実関係補足するということで、さっき申し上げましたように、アメリカ海軍事典記述のうち、レギュラスⅡ型ミサイルというものが潜水艦においては実用段階には至らなかった、こういう事実関係補足説明があった次第でございます。
  7. 大出俊

    大出委員 そうすると、昨年の十二月に照会して、十二月に一遍回答があって、また今度は一月になって補足というのでつけ加えて回答があったと、随分念が入っていますね。  ここで承っておきたいのですが、この時期は時期的に非常に難しい時期でございましてね、軍艦事典三巻に書いてあります時期は、フルシチョフさんの時代ですけれども、非常に難しい時代でございましたが、この種のことがあって一つも不思議のない時代なんですけれども日本側にも資料がないわけじゃないので、日本側資料もあるんだから、アメリカ側の言ってきたことを、そうすると、日本側資料に照らしてどうだったのかと、こういう御検討をなさったのですか。どうも、ともかく言ってきたんだからそうなんだというので、うのみにしたのですか。どうですか、ここのところは。
  8. 北村汎

    北村政府委員 このグレイバックあるいはグラウラーという潜水艦が当時寄港したというようなことは、国会でも議論されたことはございます。また新聞でもそういうあれがございますけれどもレギュラスⅡ型を積んでいたとかそういうようなことは私どもとしては承知しておりませんし、また、そういうことはあり得ないということで考えております。
  9. 大出俊

    大出委員 あなた方は、次々に下の方が上になってかわっていかれますから、だから忘れてしまうのでしようけれども、私もいつの間にか本院に二十一年も御厄介かけていますので、昔のことを知らぬわけじゃないのですよ。このレギュラスⅡ型というものに対しては大変に大きな関心を実は私ども持っておった時代なんです。これは何も私どもだけじゃないのですよ。防衛庁皆さんだってこれは当時大変に大きな関心を持って、懸命にお調べになった時代がある。私もまたそうなんですがね。だから、当時の人に聞いてみたらわかるのですよ。当時はそんなアメリカの言うことをあっさりうのみにしなければならぬような不勉強な防衛庁でもなければ外務省でもなかった。いいでしょう、二回にわたって回答があった、御丁寧に補足まであった、補足は、実用段階に至らなかった、こういうわけでありますから、それはそれで承っておきましょう。  そこで、この海軍事典に書いてありますものを調べてみました。これはここにございますけれども海軍事典にありますものをこのまま申し上げたってしようがないわけでございますが、新聞皆さんが訳してお書きになっておられますからそちらの方を使って申し上げてみたいのでありますけれども、こう書いてあるのですね。これはアメリカ海軍軍艦事典の三巻になるわけでありますけれどもグラウラーについては、「この任務は一九六〇年三月十二日から五月十七日まで続いたが、核弾頭を備えた艦対地ミサイル・レギュラスⅡを完全搭載してハワイを出発した」、これが前段です。後段は、「そうした抑止任務作戦パトロールは、一九六〇年五月から六三年十二月にかけ九回行われ、そのうち四回目は一九六二年四月二十四日に日本横須賀港で完了し、米海軍最新式で最も有効な武器を誇示した」、これはアメリカ公的文書でございます海軍軍艦事典第三巻の百六十七ページから百六十九ページにこの記述がございます。これは民間の一私人が書いたのじゃない。アメリカ海軍省の諸君が書いた。編集した。公的な文書でございます。四回目のグラウラーの入港の時期というのは、安保条約の改定後の三十七年ですね。  今のはグラウラーですが、さらにグレイバックについては、「艦対地誘導ミサイル・レギュラスⅡを積載した最初潜水艦」なんですね。グレイバックの方に先に搭載している。グラウラーが後なんです。これははっきりしている。一九六四年まで九回の作戦任務について、その一回目は五九年の九月二十一日から十一月十二日までなんですね。やはり日本のこの横須賀に来たように書いてありますが、「戦争となれば千カイリ(千八百キロ)の内陸部に直ちに報復できるミサイルを完全搭載し、太平洋を秘密裏パトロールし、日本横須賀港で完了した。他の二回のパトロールも同様だった」、こう書いてある。  さて、そこで総理に承りたいのですけれども、今読み上げましたが、第三巻にある中身でありますけれども、この記述を素直に読めば横須賀で終わったことになる。作戦任務でございますから、作戦命令解除横須賀へ着いて解除になるわけでありますから。通例すべてそうであります。したがって、レギュラスⅡ型ミサイルを積んで横須賀に入ってきた、そこで作戦任務が終わった、こう読まざるを得ない。となると、これは、この記事のとおりなら、明確に岸・ハーター交換公文藤山マッカーサー口頭了解違反になると私は思うのでありますが、総理、いかがでございますか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その問題につきましては、御質問、御疑念がありましたから、日本政府からアメリカ政府に対して正式に照会をいたしまして、正式の回答がございまして、ただいま北米局長が御答弁申し上げたような次第でございまして、アメリカ政府の言明を我々は信用いたしたいと思っております。
  11. 大出俊

    大出委員 私、今申し上げたのは、この記述のとおりであるとすると――これは間違っているというのですが、間違っているといったって、三年前に終わっちゃっている。八巻までできているわけでありまして、終わっている。だからこの記述は残っている。だから、この記述のとおり素直に言うと、これは岸・ハーター交換公文藤山マッカーサー口頭了解違反になると考えなければならぬと思うのでありますが、それはそうなりませんか、この記述どおりなら。記述があるのだから。軍艦事典にちゃんと書いてあるのだから。いかがでございますか。この点だけ。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その記述は間違った記述であるということでありますから、違反にはならないと思います。
  13. 大出俊

    大出委員 間違った記述アメリカ海軍省なんというのが間違った記述をそんなに簡単にしては困るのです。えらい迷惑な話で。そうでしょう。しようがありませんな。なかなか総理用心深くて、そこをおっしゃらぬ。間違いでないという、つまりここに書いてあるとおりである、ここのところ、先ほど私、念を押しましたが、日本側にも当時いろいろな騒ぎがあったわけでありますから、新聞にも出たのでありますから、それなりの資料記述がある。にもかかわらず、そこを全然お忘れになっている。これは大変外務省不勉強過ぎるし、防衛庁も不勉強過ぎる、私はこう思っておるのでありますが、この記事誤りでなくて本当だとなるというと、アメリカ側の今まで核持ち込みに関しておっしゃっていたことが全部これはおかしいということになる、こう思っている。  そこで、時間がたちますから私の方から、これは皆さんが知らないとおっしゃるのだから申し上げざるを得ないのでありますが、私ここに当時の記述を持っておりまして、レギュラスⅡ型ミサイルというものは実戦配備をしなかったというのだけれども、実は実戦配備をされている。時あたかもフルシチョフ時代キューバ危機に至るという大変な問題があった時期でありまして、アメリカ側アメリカ軍部あるいは議会の実は当時大変大きな議論がございました。そこらも全部ここにございますけれども、今のお話は全く虚偽であります。したがって、これを申し上げてどういうふうに責任をお持ちいただけるのかという点をはっきりさせていただきたいのでありますが、確かに一九五八年にレギュラスⅡ型ミサイルの建造は中止をいたしております。そこまで読めばアメリカの言い分が当面は成り立つ。ところが、その後にもう一つ実は日本にも追加の情報が入っておりまして、そこまで読むとまるっきりでたらめだということになる。したがって、少し長いのですけれども、そこまで読みましょう。  この記述を読みますと、「グレイバック」、グレイバックが先なのです。あなたはさっきグラウラーが先のようにおっしゃいましたけれどもグレイバックの方が先で、グレイバックにとりあえずレギュラスⅡ型を配備したのですけれども、  グレイバック及びグローラーは、在来型のディーゼル、電池式推進艦であるが、レギュラス塔戦艦として建造された特異な艦で、 特殊な艦をつくったわけです。  レギュラス用としては旧式艦二隻を改造して既に使用中ではあるが、 これはレギュラスⅠであります。レギュラスⅠというのは、当初四百キロでありますが、最後に九百キロぐらいになっておりますが、  既に使用中ではあるが、この新船の性能は、かかる改造艦とは比較にならないものである。既にレギュラス発射に成功し、 もうレギュラスをここで発射している。この新しい艦がですね。こういう記述もございます。  艦隊に編入されている。 実戦配備についている。これはレギュラスⅠ型じゃない。Ⅱ型を載せるためにつくった船ですから、だから一番最初グレイバックに積んでいるわけであります。   元来この両艦は、雷撃を主任務とする攻撃潜水艦として計画されたものであり、その着工の直後に、これを誘導弾発射艦とする 誘導ミサイル発射艦、これはソビエトが先にこれをつくったものですから対抗上やったのでありますが、  これを誘導弾発射艦とすることとなり、工事を一時中止して、急速設計換えを打つたものであった。既にある程度の工事ができていたため、 十分な船型とすることができず、船体前方に設けたレギュラス格納筒は、 これはレギュラスのⅡ型の格納筒、  かなりに上方に凸出し船型上、非常な無理を我慢している。レギュラス潜水艦第三船ハリバット ハリバットにもレギュラスⅡ型は積まれているわけでありますが、  ハリバットは、最近進水したが、 でき上がった。第三艦であります。前に改造艦レギュラスⅠが二つ、二艦ありまして、そこにレギュラスⅡ型の建設が始まりまして、グレイバックグラウラー、そして、グレイバックグラウラーがこれまた改造艦でございましたので無理があるというので、ハリバット、第三艦をつくったのですが、  本艦は最初からレギュラス用として設計された原子力推進艦であるため、性能誘導弾搭載法ではグレイバックより遙かに進歩したもので、艦の前部のレギュラス格納筒は、グレイバックの二個に対して、さらに大きいものを一個とし、 余計につけたわけですね。  艦首の高さを十分に低くすることに成功した。本艦は水中性能が勝っていることは勿論、浮上時の艦の被探知面積が小さいという利益がある。ハリバット格納筒レギュラス二発を収容するもので、格納筒自体の大きさは、第一次大戦当時の潜水艦の大きさに相当する 格納筒だけがそんなに大きいというわけですね。  一九五八年度計画では、さらにレギュラス発射艦 Ⅱ専用の発射艦  パーミット、ポーラック、プランジャーの三隻が、次いで昨一九五九年度 一九五八年七月に成立した予算についてここで述べているのですが、   一九五九年度予算に、同型艦一隻が含まれた。これらの艦は原子力推進であるのはもちろんであるが、レギュラス搭載数を増して四個とし、その一個ずつを容れる格納筒四基を、二基ずつ前部と艦橋両側部に設け、その中央に発射台二基を装備する計画で、従って船型も大きく、排水量四千百七十五トンに達した。 これがアメリカの今回答してきているもの、この次が回答の中身なんでしょうけれども、   しかるに最近レギュラスの生産が中止され、以後これに応ずる艦の建造は行わず、従ってごれらの諸艦も、普通の対艦船攻撃用として建造することに変更された。 ここまでならば、あなたの言うことがある程度なるほどということにもなる。ところが、実はそうじゃない。  この後に、ちょっと聞いてください。これ、プリントですが、真ん中を省略して最後だけ先に読んで、後から、皆さんの御回答をいただいてから、もう一遍質問しましょう。   なお、レギュラスⅡの実験艦として、LST艦を改造したキング・カウンティーが昨年役務についた。 この姉妹艦がサン・ホアキン・カウンティというジョンソン国務次官補が岩国沖につないであったと言われるLSTなんですが、  レギュラスⅡの実験艦として、LST艦を改造したキング・カウンティーが昨年役務についた。艦の前部に潜水艦に装備したのと全く同様の格納筒発射装置を設け、訓練と実験を行うもので、ハリバットに対する準備のためと思われる。 ここまで準備したのですね。  レギュラスⅠ及び、それを改良し、射程を千マイル以上とした超音速のレギュラスⅡは、最近その生産を中止した旨発表された。従来開発された各種のミサイルの中、最も成功したのがレギュラスであり、特にそのⅡ型については、米国海軍は深く満足し、既にグレイ・バック以下の数艦によって、その有効な使用が可能となつた。 積んでいる。  しかし既に約二百個の整備を終ったので、これを訓練実戦両方に使用すれば当分十分あるとみて、以後はポラリスミサイルの開発と生産に全力を注ぐためこうなっている。  いいですか。まだ資料ございますけれども、なぜレギュラスで満足をしたか。ソビエトのキューバ危機に至る大変な時期なんです、これは。ソビエトのミサイル潜水艦は、英国の今ジェーン年鑑等をつくっているあそこで見つけて撮影しまして、大変なことになった時期でありまして、アメリカ議会は沸いてしまった。そしてレギュラスⅡ型というのを、Ⅰ型からⅡ型に直ちにやれというんでやらして、慌ててレギュラスⅡ型をつくった。だから、ここに私今申し上げたキング・カウンティというのはLSTですけれども、これを、レギュラスⅡ型をつくるために、Ⅱ型をハリバットに積む、あるいはグレイバックに積むようなことで実験艦としてつくっている。これは歴史的にアメリカはLSTを使っているのです、常に。これがジョンソン国務次官補の言っている岩国沖のサン・ホアキン・カウンティと言われるLSTです。  ですから、あなたは、実戦配備されなかった。冗談じゃない。グレイバック以下の数艦によってその有効な使用が可能となっている。積んでいる、ちゃんと。グレイバックが先の艦。あなた方、アメリカ側がそういうふうに答えてきたからというので、そうでございます、実戦配備になっていないという今の回答だから岸・ハーター交換公文違反云々についてはお答えができない。何ですか、一体、それは。ちゃんと記録にあるじゃないですか。冗談じゃないですよ。はっきり答えてください、こんな重大な問題を。日本国民全体が、非核三原則の上に、国是なんだから、しかもそれは岸・ハーター交換公文以来なんだから、藤山・マッカーサー口頭了解、イントロダクションでもめているでしょう。ライシャワー発言も、だから、あるでしょう。こういう問題を、二回にわたって追加補足回答などと言って、実戦配備に至らなかった、中止した。二百発できているじゃないですか。アメリカ海軍は深く満足をしているじゃないですか。そういういいかげんなでたらめを言ってこれだけの問題を二十何年ごまかすのですか。はっきりしてください。そんなことで審議できるか。うそばかり言って。まるっきりうそじゃないですか。
  14. 北村汎

    北村政府委員 ただいま委員からいろいろ資料に基づいて御指摘がございましたが、私どもアメリカ政府から公式の回答を得ておりまして、それによれば、先ほど申し上げましたように、レギュラスⅡ型ミサイル潜水艦において実用段階には至らなかったという回答でございますので、私どもはやはりこのアメリカ側回答を信じるという立場をとるわけでございます。(「海軍年鑑は公式の文書だろう。何だ」と呼ぶ者あり)
  15. 大出俊

    大出委員 海軍年鑑は、今後ろからお話があるとおり、公式な事典でございます。年鑑でございます。しかも、これも根拠のある資料を私は使っております。この出所は後から申し上げますが、あなた方いろいろ勘ぐりますから、お話を承ってからこの記述を申し上げますが、それで決着をいたします。そこで、まだ申し上げることがあるから、もう少し話をさせていただきます。  これはどういうことかといいますと、時の情勢、ここに、これは非常に思い出しますとぞっとするようなことなのでありますが、これからトマホークが入ってくる、日本周辺は全くの核の海になってしまうわけでありますけれども、当時の状況をちょっと申し上げますと、   ソ連のミサイル分野の進歩が、一昨年来、米国に与えた脅威は大きい。一九五八会計年度計画では米海軍当局は、ポラリスの開発の段階と睨合せて、 つまり、ポラリスの開発が間に合わない。間に合わないのでレギュラスをとにかくこしらえてソビエトに対抗する、そして作戦任務につかせる、こういうことなんです。  ポラリス発射潜水艦の設計と建造準備が間に合わず、これを次年度以後に実行する予定であつたが、議会はその追加予算でまず三隻を、次いでさらに二隻、合計五隻のポラリス発射艦の緊急建造を海軍に強要した。 議会筋が米海軍につくれと言った。話は逆なんだ。  通例いかなる国においても、その建艦計画たる、軍事当局の立案が、予算上の制約から、縮小に縮小を重ね、 日本でもそうでございましょう。概算要求するが削られていくでしょう、日本の防衛費も。ところが、これは逆なんだ。  縮小に縮小を重ね、さらに議会においてこれが大幅に削られるのが普通であるが、ひとり最近の米国においてのみ軍当局が、追加建造を強要され、これの実行に極度の努力を払うという事態をみる。   かくてポラリス潜水艦の設計は、戦時の緊急そのままの異状な努力で最短期日間に完了し、既に昨春来、逐次キールがおかれるに至った。何れも特急工事であり明年度内の完成を目標としている。これらのポラリス発射用原子力潜水艦は、排水量実に五千六百トンに達し、前記トライトンよりさらに大きい。 従来の最大潜水艦であった我が伊400型が三千五百三十トンであったので、これと比較をするといかにこの潜水艦が大きいかわかるだろう、こうなっている。  これらの艦は、つまり、当初計画よりおくれまして、ソビエトに対抗できない。そこで、レギュラスⅡ型というものに注目をして、これを先につくらせた。とりあえずそれを実戦配備につけておいてソビエトに対抗する。そういうことで議会はポラリスをつくれということを逆に軍に、これは強要という言葉はいいかどうかわかりませんが、そういう状態になった。これが当時の事情なんです。  さて、そこでもう一つ、しからば一体当時はどういうソビエトとの関係になっていたか。今思い出すのでありますが、ここにございます。長いですから、幾つか抜かしていただいてお聞きいただきたいのでありますが、「曳航型」、ソビエトの潜水艦でありますが、   戦争末期にドイツがV2号格納筒潜水艦で曳航して敵地に近づき、水上でこれを発射する計画をし、 これは東ドイツとの境のノルトハウゼンというところの地下工場で、第二次大戦末期にソビエトがこの工場を占領いたしましたから、ここでV2型というのを押収をした。これがソビエトのミサイルの原型でありますが、  ソ連がその格納筒の実物を入手したことからこれを開発していることが想像され、W型潜水艦が射程六百哩程度のミサイル発射筒三個を曳航して随所に行動しこれを発射できるという情報が伝えられた。 それで、   米国レギュラス式のバード型ミサイル潜水艦の甲板上に設けた格納庫に搭載し、浮上してこれを発射する方式をソ連も採用しているというニュースが数年来散見され、 そこで、   フルシチョフ首相その人と推定されるソ連高官がソ連は射程六百五十哩のミサイルを積んだ潜水艦を保有すると語った とフランスのコンパなる、これは仏紙ということにしておきますが、フランスの新聞でありますが伝え、  またソ連海軍機関紙「赤色艦隊」はソ連新型潜水艦が北氷洋の氷原下を潜ってハドソン湾に侵入し米国の内陸七、八百哩にある戦略基地を原爆ミサイルで壊滅できると述べている。これを裏書きするごとく一九五九年五月米軍がアイスランド沖で写真撮影に成功したソ連大型潜水艦は、Z型の艦橋構造物を後方に延長して大型弾道ミサイルを垂直に格納する構造になっており、米国のポラリスのごとく水中から発射できるものと推定されている。ただし射程は五百哩程度で搭載数も僅か二発らしい。しかしとに角、ソ連が米国に先んじて改造型とはいえ弾道ミサイル発射潜水艦を洋上に行動させている事実は注目に値する。 という当時の事情。  もう一つだけ申し上げます。  ここでマリノフスキー元帥が五七年十一月の十日、これは五七年にさっきの潜水艦が、グレイバックグラウラーができているわけでありますけれども、  マリノフスキー元帥は五七年十一月十日「……ソ連海軍は海戦に必要なすべての現代兵器によつて武装されている。海軍は自国の海岸国境を防衛するだけでなく、洋上において敵の海上兵力を撃滅する能力を持っており、更に進んで他の大陸に在る目標に対し強力なる打撃を与え得る……」と発表しており、これらの所論により前記の敵海上交通路の破壊と海上兵力の撃破更に敵の工業中心地、軍事基地、港湾等に対する戦略攻撃というソ連海軍戦略思想の重点が明瞭にうかがわれるのである。   ブラジミルスキー海軍大将は「核弾頭ミサイル装備潜水艦は敵の工業中心地、基地、港湾に有力な奇襲攻撃を行い得る」と述べ、五七年パーヴロウィチ海軍少将は「……誘導ミサイル搭載潜水艦で敵の産業、政治中心地を攻撃するため、水中より発射する必要がある。……また潜水艦に曳航されたミサイル発射器の発展に努めねばならぬ。」 こういうふうに当時ソビエト側が、対立しているさなかでありますが、次々にこれを打ち上げているのですね。  これがアメリカ議会で大変な騒ぎになりまして、ともかくレギュラスⅡ型を成功させて実戦配備につけておく、そうしてポラリスを昼夜兼行でつくらして追いつく、こういう計画が立てられておる、さっき読み上げましたように。だから、レギュラスⅡ型の実験に成功した。したがって、Ⅱ型の成功については、特にそのⅡ型については米国海軍は深く満足して、既にグレイバック以下の数艦によって、グレイバックグラウラーですよ、その後のハリバットですよ、配備をしちゃったんだ。使用が可能と既にもうなっちゃってる。そして二百個の生産を終わったので、二百個のレギュラスⅡ型ができたので、これを実戦と訓練と両方に使用しても当分の間は大丈夫だ。だから、議会は予算つけるから、ポラリスを早くつくれ、こういうことになった。はっきりしているでしょう。当たり前じゃないですか。アメリカがここで言っているように、誇示したくなるのは無理もないです、ソビエト側はどんどん打ち上げているわけだから。「この任務は一九六〇年三月十二日から五月十七日まで続いたが、核弾頭を備えた艦対地ミサイル・レギュラスⅡを完全搭載してハワイを出発した。そうした抑止任務作戦パトロール」、これは軍の作戦なんだから、作戦というのは港へ着かなきゃ終わらないんだから、「パトロールは、一九六〇年五月から六三年十二月にかけて九回行われ、そのうち四回目は一九六二年四月二十四日に日本横須賀港で完了した」、横須賀へ着いて作戦任務解除という。当たり前じゃないですか。  だから、海軍年鑑第三巻に百六十七ページから百六十九ページに明確に書いてある。公式文書ですよ。そんないいかげんなことを言われて、そうでございますかなんてばかな話はありますか、これだけの問題を。はっきりしてくださいよ。わかっていて、あなた、ごまかすのじゃない。答えてください。こんなふざけた答弁、何ですか一体。黙って引き下がれると思っていますか、これ。ここに明確な資料があるのに。
  16. 北村汎

    北村政府委員 ただいま委員から、いろいろな当時の国際情勢であるとかあるいは当時の米国の国防面での事情の御説明がございました。  いろいろな事情があったんだろうと思いますけれども、この海軍事典記述に関しまして、これはアメリカ側文書でありますから、私どもが勝手に解釈するわけにいかないし、この事典自体には、グレイバックあるいはグラウラーレギュラスⅡを積載して横須賀に入ったという、そういう記述こそございませんけれども、しかし、いろいろ今先生が御指摘になりました文章などを読みますと、そういうような事態が想定されないでもないということで、私どもはそういうことはあり得ないという認識から、アメリカ政府に正式に、政府から政府に対してこの回答を求めたわけでございます。そこで、政府から政府に対して正式の回答を得ましたのが、先ほどから御説明しておりますように、レギュラスⅡ型ミサイルというのは潜水艦においては実用段階には至らなかったということでございますので、私どもとしてはそれを信頼しておるわけでございます。
  17. 大出俊

    大出委員 あなた方は自分のところの政府は信用しないのですか。私が今取り上げたこの文書は、防衛庁の諸君がつくったんですよ。防衛庁のスタッフがこんなにいっぱいいて編集したんですよ。松尾一夫、友田潤一郎、中村亮一、高橋儀一、片岡長冬、中村成雄、沢田信一、斎藤弥之助、来栖大児郎、小野沢輝三、天満経昌、小林典夫、川俣健二郎じゃないんだな、川俣瑞男さんというのかね、奥山二郎、早川精、薄田浩、沢木正男、中村茂義、住田正二、徳田寿徳、福島実、立花正三郎、田中光次、大池金二、薄津芳、内藤裕夫、高井音吉、村田博、大森頼雄、岡部長衡、野崎芳雄、岡太直、生亀元、これみんな防衛庁の方だ。黒崎明、花田耕太郎、原中祐光、渋川侃二、熊谷実、明石勇、川上陽平、景山久、池辺実、岡田寛、青木地、鈴木辰三郎、蝦名徳雄、荒井澄幸、以上防衛庁。書いてある、ちゃんと。  実はこれも公刊の文書です。当時まだ防衛庁監修と言われた時代の防衛年鑑です。第五巻目です。三十年に第一巻ができまして、三十四年、このときは皆さん、僕らにもみんな方々に招待を出して、五周年記念をやろうという。スタッフまで全部ここに書いてある。しかもこれは、だから恐らく皆さん見間違ったんだと思う。前だけ読んだと思うのですね。離れているんですよ、この二つ記事は。いいですか、前段で読んだのと後で読んだのと離れている。なぜ離れたかというと、そこまでわかっている。「ミサイル時代」――ミサイル時代になったんですよ、アメリカも当時大騒ぎをしたんだから、ソビエトが進んだんで。核ミサイル時代。「ミサイル時代に対処する各国の国防体制改編を、解明することに務めました。」特にこの五周年記念の本は「海外篇"米国海軍の新艦艇"は、本号締切ギリギリまでの最新情報を収録したものであります。」責任を負っているんですよ。  当時は防衛庁監修の時代ですよ。これは防衛年鑑、さんざっぱら後でそれが騒ぎになって、いろんな問題が中にあって、本当のことが書いてあるものだから、それで監修をやめて離したわけですけれども、第五巻目です、これは。今延々と続いているけれども、私どもは当時読みふけったものですよ、こういう本がなかったから。大変に中身はいいんですよ、正確で。だから随分質問なんかに使った時代です。だから防衛庁の方々が、これ、四十七人執筆者がおられる。そしてこの方々が相談して載せておいでになる。そうでしょう。  だから、それを自分の方の防衛庁のとった情報というものを信用しないで、アメリカが言ってきたからというので、そうでございますか、そんなふざけた話はないじゃないですか。いいですか。ぎりぎりまで待ってとった情報を後ろにつけたわけですよ。アメリカ議会で大騒ぎになったんだから。だから、あなた方が前だけ見ると中止になっているのだ。アメリカが言うとおりとは何だ。後の方に、そうじゃないとちゃんと書いてある。実戦配備しているじゃないですか。そんないいかげんなことで、そうでございますかなんと言うのでは信用できぬじゃないですか、外務省。自分の国の防衛庁がしっかり情報をとって書いているのに。だめだ、こんなものは。そんないいかげんなことで質問できますか。はっきりしてくれ。
  18. 北村汎

    北村政府委員 レギュラスⅡという兵器は、これはアメリカの兵器でございますので、私どもといたしましては、アメリカ政府がこの兵器について私ども説明をしておるところを信じるということが私どもの立場でございます。また、今の資料について、私、外務省としてコメントすることは差し控えたいと思います。
  19. 大出俊

    大出委員 もう一言、言いましょう。  とにかく実戦配備してない、追加補足回答してきたという。それで何にもほかに情報を、資料を持っていない。アメリカが言ったのを、そのとおりでございます――私に反論する資料でもあればまた別だ。何の資料も持たないで、岸・ハーター交換公文以来の国民的課題を、しかも新聞が各紙みんな書いた、この問題は。国会に出てくるのはもう初めからわかっているじゃないですか。何も持っていない。そういう不勉強なふざけた話、それでここで論議しようといっても、そんなことはしようがないじゃないですか。国民は一体どう考えればいいのですか、この問題は。新聞があれだけ書いていて、しかも公刊事典である海軍軍艦事典に明確に記載されているというのに、否定のしようがないでしょう。これもアメリカがやったと言うなら、この軍艦事典だってアメリカがやったんでしょう。あなた方、資料もなくて否定できないでしょう、これも。  そういう口先でごまかされて、今まで二十何年過ぎてしまった。サブロックだって積みおろしてくる。冗談じゃない。二百何十隻も潜水艦入っているんだ。だめだ。はっきりしてください、これは。アメリカでも何でももう一遍問い合わせてください、待っているから。十日でも二十日でも待っているからやってください。大出というのがこの資料を持ってきたのだがどうなんだと問い合わせてください。
  20. 倉成正

    倉成委員長 防衛庁、防衛年鑑第五巻についての、内容の記述についての大出君の質問です。防衛庁、ひとつ答えてください。
  21. 古川清

    ○古川政府委員 ただいま御質問のございました防衛年鑑につきましては、今手元にございませんので、今取りに行っておりますので、追って御報告申し上げますけれども、実は私ども資料によりますと、当時レギュラスⅠというものとレギュラスⅡというものがございました。確かにこのレギュラスⅡというものはマッハ二を出すということでございますけれども、このジェーン年鑑によりますと、諸元もはっきりしておりません。これは実戦配備につく以前にキャンセルされたというふうな記載があるようでございます。したがいまして、これはレギュラスⅡが恐らく当時のポラリスができるまでのつなぎとしての兵器だったと私は思いますけれども、かなり対外向けのものではなかったか。したがいまして、このレギュラスⅡはその後どうなったかということは何も出ていない。記載がないわけでございます。後のレギュラスⅡは、このジェーン年鑑によりますと、その後の運命は、ドローン、標的機として用途を変更されたというふうな記述がございます。
  22. 大出俊

    大出委員 そんなことはもう百もわかっている。それもはっきりわかっている。二百発できて、そしてまさにこの海軍年鑑が書いているとおり。今のトマホークだってそうじゃないですか。ニュージャージーに積んであるのは非核なんだけれども、これは欠陥トマホークなんです。欠陥トマホークであることはベッシーさん認めているでしょう。認めているけれども、とりあえず積んで示威行動をやったんです、ニュージャージーは。そうでしょう。同じですよ。二百発つくった。そして後でこのポラリスができて要らなくなってしまった。要らなくなった処理までここにちゃんと書いてありますよ。あなたに言われることもない。ちゃんと全部ここに調べてある。要らなくなって、これは確かにおっしゃるとおり標的に使った。だから、二百発できて実戦配備したところまでは間違いない。だから海軍軍艦事典、何も間違ってない。それだけのこと。つなぎだと先ほど私、言ったじゃないですか。
  23. 北村汎

    北村政府委員 先ほどから何度も申し上げておりますように、アメリカ政府は、私どもから正式に政府から政府へというチャネルを通じて照会を求めたものに対して、第一点は、核能力を持つということと実際に核を搭載するということとは別問題である、事実このグレイバック及びグラウラーが核を積んで横須賀に入ったということはないということと、それから二番目には、レギュラスⅡについては潜水艦には実用段階に至らなかった、その点を誤っていたから改訂を検討中であるということ、第三点は、いずれにしてもアメリカ政府というのは条約上の事前協議義務というものを誠実に遵守しております、この三点を外交チャネルを通じて正式に日本政府に対して回答してまいったわけでございますから、これはアメリカ政府自身の持っておる兵器についてアメリカ政府が有権的な解釈をし、有権的な回答をしてまいったということで、これに対して私どもは真実を述べておると信じておるわけでございます。
  24. 大出俊

    大出委員 いいですか。このレギュラスの後始末はここに書いてあるのですよ。一九五八年十二月予算的理由、要するにポラリスをつくるということになったものですから。そこで、残ったのは、現在まで生産されたものはKD2-A1、目標機として使用されているとはっきりしている。そんなことはわかっている。アメリカ政府アメリカ政府がと、ここで今十遍ぐらい言ったけれどもアメリカ政府が言うなら、何でもかんでもそうですかと言うのですか。日本国民どっち向いてもいいのですか。そんなわけにいかないじゃないですか。防衛年鑑にこれだけの記述があるのだから、私はそれを信用しているのだから、アメリカ政府が言ったってそんなものは信用しない。もう一遍、ひとつアメリカ政府に問い合わせてください。こんな大きな問題を、岸・ハーター交換公文違反だ。
  25. 古川清

    ○古川政府委員 お答えを申し上げます。  御質問の、防衛年鑑に対して防衛庁がいかなる責任を持っているかでございますけれども、出版は朝雲新聞というところがやっておりまして、防衛庁がそれに公式に監修の責任があったかどうか今調査中でございますので、追って御説明申し上げます。(発言する者あり)
  26. 倉成正

    倉成委員長 防衛庁古川参事官、発言を許しました。
  27. 古川清

    ○古川政府委員 ただいま調査の結果が入りましたので……。現在は朝雲出版というものに変わっておりますけれども、先生御質問の当時の防衛年鑑につきましては、これは民間団体でございます防衛年鑑刊行会というものが発行しておるものでございます。(発言する者あり)
  28. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答え申し上げます。  官房長でございますが、今の御指摘の防衛年鑑なるものを大至急取り寄せてみました。  ただいま古川参事官がお答えいたしましたように、手元にございますのは一九六〇年版、先生御指摘の一年後のようでございますが、これによりますと、ただいま申し上げましたように民間団体である防衛年鑑刊行会、昭和三十五年二月二十二日版のがございますが、編集責任者は伊藤斌さんという方でございまして、鎌倉印刷というところでつくったものでございます。そして、ここには「この年鑑は昭和三十年創刊され、六号は第六号に当ります。軍事専門家、新聞人、公務員等約七十人の知識人が執筆しています。」こういうことで、防衛庁の直接作成をした公刊の文書ではございません。
  29. 大出俊

    大出委員 四十七名も防衛庁の方が入って編集会をつくって、これが防衛年鑑刊行会ですけれども、だから公務員と書いてあるでしょう。それで当時はつまり防衛庁の監修、こういうふうになっていまして、国会でも、議事録が残っていますが、何遍も問題になった。それで最後は朝雲新聞に変えたのです。だから防衛庁は、この年鑑ができれば、年鑑ができましたと言ってちゃんと一々届けに来ていた時代でしょう。だから、防衛庁の責任でこれは編集しているんだ。優秀な人がみんな並んでいるじゃないですか、さっき名前を挙げましたが。だから、私はここに明確に書いてあるものを否定のしようがないんで、アメリカが何と言おうと、日本の側で議会で問題になっているんだから、ここにあるものを信用する以外にないじゃないですか。だから、アメリカがそういうことを言うのは間違いだからちゃんと話をつけていただきたい、こう申し上げている。そうでなければ質問のしようがないじゃないですか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大出さんがせっかく御熱心に資料をお調べになりまして今お述べになりましたことにつきましては、日本側の刊行会の刊行した資料ではございますけれども、国会でそういう御質問が提起されました以上は、やはりその正確性あるいはその資料がどういう事由によって書かれているか等の周辺の事情も調べてお答えする義務があると思います。そういう意味におきまして、防衛当局をしてその辺の事情をよく調べさしてお答え申し上げたいと思います。時間が多少かかると思います。関係者にただしたりいろいろすることもあり得ると思います。そういう点で時間をいただきたいと思います。
  31. 倉成正

    倉成委員長 大出君、ただいま総理大臣から、防衛年鑑の内容についてはよく精査してまた御報告するというお話でございました。政府としてはアメリカ照会をして、その公式の返事をもとにしてここで答弁をしておるわけです。したがって、大出議員が大変御勉強になっていろいろ問題を提起されたわけでございますが、その決着はしばらくお待ちをいただいて、そして他の質問を続行していただければ幸いと思います。よろしくお願いします。  ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  32. 倉成正

    倉成委員長 それじゃ、速記を始めてください。  会議を続行します。  ただいま理事間で協議の結果、本問題に関する部分を保留いたしまして質疑を続行願いたいと存じます。大田俊君。
  33. 大出俊

    大出委員 実は、軍艦事典に絡んで核の問題がまだ大分あるのでありますが、軍艦事典が一々間違っていたというのじゃ、軍艦事典を引用のしようがないので、アメリカ海軍省が公式に出している事典が間違いだというのじゃ、あとの質問をしても、これは間違ったということになるとやりようがありませんから、その部分だけ、大分あるのですけれども保留をさせていただきまして、理事会、理事皆さんの御意向のようでございますから、別な問題に入らせていただきます。  昨年、中曽根さんと私、ここでやりとりをいたしました武器技術にかかわる問題でございますが、具体的な問題もありますが、時間がなくなってまいりましたから、とりあえず表街道の幾つかの問題を承っておきたいのであります。時間が残れば残ったようにあとの問題とあわせて保留をさせていただこう、こう思います。  十一月の八日だったと思いますけれども、包括取り決めがつくられております。どうもちょっと気になるのは、中曽根さんがアメリカにおいでになるときにぼかぼかっと、安保条約の効率的な運用というようなことで外された。今度はレーガンさんが来る前の日にぼかぼかっと、この包括取り決めができる。何かお土産みたいな感じがいたしまして、余りいい気持ちがいたしません。いたしませんが、この中身についてでございますけれども、英文のものをいただいておりませんが、出していただけますか。
  34. 北村汎

    北村政府委員 提出させていただきます。
  35. 大出俊

    大出委員 この日本側書簡の一枚目をあけた、まあリコピーだからこうなっているのかもしれませんが、「この関連で、日本政府は、武器技術以外の防衛分野における技術の日本国からアメリカ合衆国に対する供与が、従来から、また、現在においても、原則として制限を課されていないことを確認し、関係当事者の発意に基づきかつ相互間の同意により実施される防衛分野における技術のアメリカ合衆国に対する供与を歓迎します。」こうなっていも。  まずもって、この「武器技術以外の防衛分野における技術」というのは何ですか。それから、「従来から、また、現在においても、原則として制限を課されていないこと」――ずばり武器だというのを、貿管令その他もあるわけでございまして、輸出はできない。全く制限がないわけではないと私は思っておりますが、これは一体どういう意味ですか。「原則として制限」、まあ「原則として」と入っているからという逃げ方かもしれませんけれども、「従来から、」「原則として制限を課されていない」、そうではない、こう私は考えておりますが、ここのところはどうですか。  それから、民間技術でございましょう、いずれにしても、汎用性のあるものであっても何でも。それをアメリカ合衆国に供与することを「歓迎します。」この「歓迎します。」もちょっとわからぬのですけれども、こんなに日本の先端技術を歓迎しますからというのでアメリカにどんどんやっちゃっていいものかと、それが実は前回の国会でも大変問題になっているわけでございまして、「歓迎します。」と書いてしまったということについては、ほかの解説を見ますと、民間企業に対する大きなこれは圧力になる、渡さざるを得なくなる。これは旧来の政府の方針とまるっきり違う。いかにアメリカに押されたからといってこういう手はなかろうと思う。  以上、御答弁願います。
  36. 北村汎

    北村政府委員 まず第一の御質問でございますが、防衛関連技術と申しますのは、これは非常に広い意味で防衛に関連する技術全体を称するわけでございますが、武器技術と申しますのは、これは日本独特と言っていいか、日本が武器輸出三原則というものを持っておりますので、その原則を基礎にして特別に、武器をつくるため専用の技術という意味で武器技術という言葉が、ございます。そういう概念がございます。そこで、それ以外のものというのはいわゆる汎用技術でございます。  それから、二番目に御質問になりました「原則として制限を課されていない」云々、この「原則として」とは何かという御質問でございます。これは、武器技術以外の防衛分野における技術の対外提供というのは、武器輸出三原則に従った外為法の運用上、制限を課されてきておりません。ただし我が国は、このような技術のうち一定のものにつきましては、武器輸出三原則等とは別個に、ココム規制の観点から、外国為替及び外国貿易管理法、外国為替管理令並びに貿易関係貿易外取引等の管理に関する省令に基づきまして、その対外提供取引を規制の対象としておりますために、対米供与に当たっても、制度上は通産大臣の許可を受けなければならないということになっております。かかる点を踏まえまして「原則として」という文言を挿入したわけでございます。  それから第三点の「歓迎」の云々でございますが、これは、去年の一月十四日に官房長官談話を出しまして、政府は、防衛関連技術の対米供与といいますか、防衛関連技術を日米間で相互に交流させるということは、これは日米安保体制の効果的な運用に資するものであるということを決定いたしまして、その旨の発表をいたしたわけでございます。それを受けまして、これからは武器技術を含め防衛関連技術が日米間で交流されていくことになるという、そういう見通しを述べたものでございまして、決してこれは、我が国が必ずどんなものでもアメリカから言われれば出さなければならないというような、そういう義務を負ったものではございません。
  37. 大出俊

    大出委員 そんなことを言ったって、一月の十四日ですか、政府が答弁書を出していますね。五十八年一月十四日、対米武器技術供与についての内閣官房長官談話ですか、これは。それからこれを受けて、軍事技術の対米提供に関する質問主意書に対して五十八年一月十四日に答弁書を出していますが、これを見ますと、「民間企業に対しその保有する技術の対米供与を義務付けることは、考えていない。」そういうふうに政府は答弁いたしています。だがしかし、この交換公文、この包括取り決めで「歓迎します。」と言い切っちゃったんじゃ、これはアメリカ側にすれば、民間企業に対して政府は歓迎しているじゃないか、出してくれ、こうなるでしょう。間接的強要じゃないですか。何でこんな「歓迎します。」なんてここに入れちゃったんですか。もう一遍答えてください。
  38. 北村汎

    北村政府委員 先ほども御答弁いたしましたように、防衛分野における技術の米国との相互交流というものを図ることが日米安保体制の効果的な運用を確保する上で極めて重要になっているという政府の認識は、一月十四日の官房長官談話で既に明らかにしたところでございますが、この本件取り決めにおいてはこういう認識をさらに敷衍して、その前文で「関係当事者の発意に基づきかつ相互間の同意により実施される防衛分野における技術の米国に対する供与」、これは歓迎するということを言っておるわけでございまして、先ほども申し上げましたように、「そのような供与は促進されることとなろう。」という見通しを述べたわけでございまして、民間の技術で、その技術を持っておる民間の会社がそういう技術を出すことは嫌だというようなことであれば、これは当然出さないわけでございますから、決してこれは何が何でも出すというようなことを約束したわけではございません。
  39. 大出俊

    大出委員 行政指導だ何だという格好で間接的強要というようなことは一切しないですか。しませんな。もう一遍答えてください。
  40. 北村汎

    北村政府委員 具体的な防衛関連技術の提供、我が方からいえば武器技術の提供になるわけでございますが、これは今回締結をいたしました取り決めに基づきまして日米武器技術共同委員会というものをつくって、そこで、日本側におきまして関係の省庁の代表者が出るその委員会において、十分個別的に自主的にどれが日本の国益に合致するかということから判断をしてその提供を決定するわけでございますので、決してそういうような行政指導によってどうこうするというようなことではございません。
  41. 大出俊

    大出委員 まあとりあえずは念を押しておきますが。  そこで、今お話に出ました共同委員会、その共同委員会というのは三省から人が出てやるのだろうと思うのでありますけれども、この共同委員会は、包括取り決めでございますから、これは提供する技術を一つ一つ検討するというんじゃないんですね。JMTCというのは、包括取り決めに基づいて何となく包括で、一つ一つ決めていくんじゃない。しかも、これはいかなる技術をどういうふうに渡したかというようなことは一切発表しないんですか、何にも。いかがでございます。
  42. 北村汎

    北村政府委員 この日米武器技術共同委員会というものは、これは今回の取り決めによって設立されたものでございますが、この役目と申しますか、果たすべき役割は、個々の技術が対米提供の話に上がってまいりました場合に、それをこの場においていろんな観点から、特にこれは日米安保体制を運用する上において効果的であるかどうかというような国益の観点から判断をいたしまして、個別的に審査をして決めるわけでございます。決して包括的に全部野方図に通す、そういうことではございません。
  43. 大出俊

    大出委員 公表するんですか、しないんですか。時間がない。すぐ答えてよ。
  44. 北村汎

    北村政府委員 そうして、その委員会におきまして供与を仮に決定いたしますと、今度はそれに基づきましていろいろ手続がありまして、結局最後には通産大臣の御承認を得てその技術が出ていくわけでございますが、そのときには実施細目取り決めというものを結んでいくわけでございます。この実施細目取り決めというのは、内容的に言いまして、防衛、安全保障上の考慮からその実施細目取り決め自体を公表するというわけにはなかなかまいらないものかと思いますけれども、しかし、どういう武器技術供与がどういうふうに行われたか、これはやはり明らかにしていく必要があると思いますので、それがどの程度明らかにできるかについて、これからアメリカ側と協議をいたしていくつもりでございます。
  45. 大出俊

    大出委員 どうなんですか、これは。公表しないということになったのじゃないですか、アメリカとの間では。公表しないということになっているのじゃないですか。
  46. 北村汎

    北村政府委員 アメリカとの間では、この問題についてはまだ結論を出しておりませんし、先ほども申し上げましたように、実施細目取り決め自体は、これはいろいろ安全保障上の問題、そういうものがございますから、取り決め全部を公表するということはできないものかと思いますけれども、どういう供与がどの程度とういうふうに行われたかということについてできるだけ明らかにするようなことでアメリカ側と協議をしていくつもりでございます。
  47. 大出俊

    大出委員 できるだけ一体何を明らかにするというのですか。実施細目取り決めは公表しない。できるだけ何を明らかにするのですか。実施細目取り決めがわからなきゃ何にもわからぬじゃないですか。MDAに基づくいわゆる実施細目取り決めに類するものは今まで一切出てこなかったわけだから、わからぬ。何にもわからなかった。同じじゃないですか。何にもわからぬじゃないですか。何を公表するのですか。そんないいかげんなことではだめじゃないか。
  48. 北村汎

    北村政府委員 実施細目取り決めの締結あるいはその方式などにつきましては、これからアメリカ側と協議の上決定するわけでございますが、先ほどから御説明しておりますように、どういう技術がどういうふうに提供されるか、いわばこれは実施細目取り決めの内容でございましょう。そういうものにつきましてどの程度明らかにしていけるかについてアメリカ側と協議をし、その結果、明らかにできるものを明らかにしていく、こういうことでございます。
  49. 大出俊

    大出委員 つまり、何にも明らかにならぬことになる。国会で三原則まで決議していて、国会決議になっていて、何にも国会には報告しないのですか。原則として公表しないとなっているじゃないですか。どうなっているのです、これは。国会に何にも言わないのですか。全くやみの中。
  50. 北村汎

    北村政府委員 どういう技術をどういうふうにアメリカ側に提供したかということは、これはある程度今までも実施細目取り決めの概要は公表したことはございます。そういうことにも基づきまして、今アメリカ側と詰めておる段階でございますので、もちろんその結果、国会に御報告するということもあり得ると思います。
  51. 大出俊

    大出委員 これは、実は試作品までは提供するという答弁が、前国会で総理からありますね。これは非常に危険、かつまた大変問題があると思っておりますのは、経団連の防衛生産委員会の委員長さんがここにいろいろおっしゃっております。  これを読んでいきますと、国会で決めている武器輸出、技術を含みますが禁止三原則というのがある。ここに武器技術輸出という小さな穴があいた。大きな壁があってやらなかったけれども、今度は穴があいた。この穴をだんだん大きくしていかなければいかぬ。つまり、原則的に言うと、もうからない商売はしたくない。もうからない武器技術輸出をしたくない。技術だけでは金にならぬというわけですよ。ここで例を挙げて言っておる。  これは別な機会に少し細かく承りたいと思っておるのですけれども、日米伊の三国共同開発をした旅客機、ボーイングでつくったので、676でございますかな、767ですかな、この旅客機について、守屋さんとおっしゃるのですか、この方が言っているのは、これは共同開発をやったんだが、一体どういうことになるかというと、旅客機のB767我々は金の手当てをやった。共同開発で金を出した。しかし、ただ出したのじゃない。日本の技術を持っていったわけでしょうけれども、これは将来日本が担当する部位を、要するに部品ですな、担当するいろいろな部品を五百機分あるいは千機分とれると思ったから、技術提携をして共同開発に参加したんだ、こう言うのですね。そのあたりを頭に入れて考えれば、今度の問題がどういう形で進むかはおぼろげながらわかってくれるでしょうと、こう言う。  すると、民間の生産委員長さんなどの方の考え方からすれば、単なる技術が行ったのでは金にならない。小さな穴だ。今度は実施取り決めができるから、それは公表されない。これを活用して穴を広げようというわけですね。それで例を挙げたのがB767。このB767いうのは、五百機か千機分日本の担当した部品の部分で相当もうかるというわけですね、言っているのは。これを見事にやってのけているのですね。  これは文章ですからそのまま読みますが、最近日商岩井の海部軍団の暗躍が活発になった。日本航空のDC8の後継機種選定、これは一時欧州のエアバス・インダストリー、代理店ニチメンですが、ここに決まりかかって優勢だと考えられていた。ところが、昨年秋になってからこれが逆転をいたしまして、この逆転劇は、一般に日米共同開発のB767を推す通産省の強力な後押しがあったからだと、こう言われている。あわせて日商岩井の、海部さん自身じゃないようでありますけれども、彼の関係の方々が昔のノーハウを持ってきてやったのでしょうが、ここでは、この種のことが次々行われるということは黒い霧を誘発すると注意をしていますが、つまり、見事にこの共同開発は日本側のメリットがあるわけであります。  おまけにこの生産委員長さんの言うことによると、アメリカ日本に技術提供をした。アメリカはちっとも損をしてはいないというのです。F15の技術提供をした。そんなことを言ったって、その部品というのは、使っている間は後から後からアメリカから輸入しなければいかぬ。日本は技術提供を受けたんだ、ありがたがっていることはない。部品はどんどん後から買わなければならぬ。その部品の価格は年々どんどん上がって高くなっちゃう。高くなっちゃうから防衛庁の方では困っちゃっている。米国はじゃんじゃん売るわけで、しかもこの部品が年々高価になる。それで防衛庁は困っているんだ。  この種のことになると、これは共同開発、試作品どころじゃない、一つ間違うと。  今の附ですか、これはまた何かの機会に、いろいろなことが私の耳に入っておりますけれども、申し上げたいことがたくさんありますけれども、今時間がありませんからやめます、今例を挙げたのだが。  公表しない。結果的にとんでもないことになっている。公表しないのだから、これはわからないのだから。これは私は非常に危険だと思うのだが、総理、いかがでございますか。
  52. 木下博生

    木下政府委員 ただいま大出先生御質問の点につきましては、国防省と私どもが協議します場で日本の武器技術供与についての内容を説明いたしましたときに、日本としては、民間企業に対して供与を義務づけることは全くできないということが一点でございまして、その点をはっきり確認しております。  それから、確かにおっしゃいますように、アメリカから日本が技術供与を受けますときには、技術に対してライセンス料を出すと同時に部品を買っておりますので、それでアメリカ側の企業は雇用面で潤うという点はございます。その点につきましては、日本の防衛生産委員会としてはそういうことを言っておられるのは私ども聞いておりますが、その点につきましてもアメリカ側に対しまして、日本から提供できるのは技術だけに限られる、もちろん試作品は入っておりますけれども技術だけに限られるので、したがいまして、その民間企業がもしアメリカに技術を供与することになったときには、どうしてもその技術開発に見合う十分なライセンス料といいますか、そういうものをもらわないと民間企業はうんと言わないだろうということを説明しておりまして、その点についてもアメリカの国防省は了解いたしております。
  53. 大出俊

    大出委員 さて、ここでもう一つ承っておきたいのですが、アメリカからミッションが来で、民間企業を既に歩いていますね。米国防総省防衛技術審議会国際産業協力部会のミッション、団長はカリー元国防次官。日本電気だとか三菱電機、三菱重工業、石川島播磨など、共同開発に当たって日本の技術を導入したい、これは共同開発と言っているようですね。音声登録の装置だとか撮像処理技術だとか電波吸収体、これはフェライトなどを含むのでしょうけれども、あるいはその他の機器。防衛庁は、これは見えない機体にする、支援戦闘機T2改ですか、これを見えない機体にしようなんていう計画で進んでいるようですが、これはもう長官に答えていただく必要はない。また、セントラルコンピューターをF15の場合にアメリカがよこさないというので共同開発するとか、いろいろありますけれども、いろいろなことが絡んでくると思うのです。  こういうミッションが来ていろいろやっていく、これも一つの方式で、日本政府の側も承知なんですか。アメリカが先に来て各企業と当たる、当たってその上でJMTCに持ち出す、こういうシステムになっているんですか。ここのところはいかがですか。
  54. 木下博生

    木下政府委員 昨年の七月に、アメリカのワシントンで国防省と防衛庁との技術面の定期協議がございましたが、その定期協議の場でアメリカの国防省から、ディフェンス・サイエンス・ボード、防衛技術審議会と訳していいかと思いますが、その人たちが秋に日本にやってきたいがどうかというようなことがありましたので、その旨は来たら便宜供与してやろうということで、十月の終わりから十一月の初めにやってきたわけでございます。  来ました人たちは、今先生の御指摘になりましたような人たちでございますが、目的は日米の武器技術供与、日本アメリカに供与したことに関連いたしまして、具体的に今後どういうふうに進めていったらいいのかということでございまして、具体的な技術を、これを欲しいあれを欲しいというような買い物に来たというものではないと承知いたしております。
  55. 大出俊

    大出委員 ちょっと待ってくださいよ。これは民間企業を一々訪ねて歩いて、共同開発なんていうようなことで、この技術はあるいはこの製品はと、ずっとやりとりをして歩いているわけですけれども、これは具体的買い物の前段じゃないのですか。その意図がなくて出てきて、企業を歩いているのですか。そんなことは通用しないんじゃないですか。
  56. 木下博生

    木下政府委員 民間企業及び経団連等を回っておりますけれども、そこで話し合いました内容は一応簡単に聞いておりますが、その企業がそれぞれ具体的にどういうようなものをアメリカに供与するかどうかというような具体的な話ではなくて、むしろその企業がそれぞれどういう分野で研究開発を進めているかというような点、あるいは具体的にそういうような話が将来起こってきた場合に、その条件等を日本側はどういうふうに考えているかという点の調査をしていったというふうに了解しております。
  57. 大出俊

    大出委員 米国関心を示した日本の武器技術は、電波吸収フェライトが日本電気、忍者飛行機なんてここに書いてありますがね。それから音声認識装置、これは戦闘機の搭載武器制御システム。フェライトというのは電波を吸収するから、したがってレーダーに映りにくい、だから欲しい。それからIRCCDですか、これはミサイルなどの追尾ですね。それからCUC、炭化銅繊維が日立製作所。先ほどのIR何とかというのは三菱。超LSI論争を私はここでやったことがありますけれども、確かに日本の方が進んでいる、ずばり武器に欲しい、こういうわけであります。  ここには具体的に出ていますけれども、あなたは聞いていると言ったのだが、一体どんな話になっているのですか。もうちょっと詳しく答えてください。
  58. 木下博生

    木下政府委員 確かにその審議会のメンバーが参りました後に、新聞にそのような記事が出ておりました。民間企業を回りましたときには、ある程度どういう分野でその企業が研究しているかという話はしたようでございますが、具体的なところよりもむしろ民間企業が強調したのは、先ほどちょっと御説明申し上げましたけれども日本側としては、アメリカ側からもらうライセンスも最近高くなっているから、日本側の企業がライセンス、技術を供与するときには十分な代償が要るのだとか、それから、出せるか出せないかは、その企業にとってメリットがあるかどうかということで決めざるを得ないというような、基本的な考え方をそれぞれ示しだということが中心のようでございます。
  59. 大出俊

    大出委員 それはあなた方との話はそうでしょうが、企業に行って企業との間というのは、その企業の持っている技術はわかっているのだから、だから新聞皆さんがこの方々に接触してこういう中身をとって書いているというのは、うそじゃないんでしょう。はっきりしておいてくださいよ。
  60. 木下博生

    木下政府委員 確かに、おっしゃいましたような分野の技術につきまして一般的な関心を持っているというふうなことは聞いております。ただ、それによりまして、そういう個々の企業の個々の具体的な技術について、日本から技術を欲しいというような具体的な話が進んでいるとは聞いておりません。私どもとしては、業界の人たちが具体的にどういうふうにやっているかという点は、情報収集しておりますけれども、今までのところまだ具体的に進んだ話は何もないというふうに聞いております。
  61. 大出俊

    大出委員 この問題はいろいろ具体的な単品についてもございますけれども、後ほどまた同僚委員から御質問申し上げる予定もございますから、この点は残り時間を使わしていただきましたので、この辺にいたします。  もう一点、厚木飛行場でタッチ・アンド・ゴーなどという形の着艦訓練、発着両方でございましょうが、やっているわけであります。ミッドウェーならミッドウェーの艦載機ですね。これはもう皆さんに申し上げるまでもなく、昔私が随分長いこと何回も何回も質問してきているところでありますが、この代替施設を三宅島という話がございますし、二百キロ以内というので周辺の幾つかの問題はあるのでございましょうが、これは一体どこに移そうと考えておいでになるのですか。それで、米軍はどう言っているのですか。
  62. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず、米軍の要望でございますが、関東及びその周辺で提供してほしいということでございます。その周辺というのはどの辺までかということでございますが、百ノーチカルマイル以内ということでございますから、大体百八十キロ前後のところに欲しいということを米側は要望しております。  我が方は現在どういうふうな状況かと申しますと、五十八年度以来三つのアイテムで調査しておりますが、第一には、既存の飛行場、今申し上げました空域の中の既存の飛行場で適地はないか。第二は、その空域の中で新しい飛行場を設けることができないか。第三には、海上の浮体構造物、浮体飛行場といいますか、そういうようなものについて資料の収集をいたしたいというような、三つのアイテムで現在進めておりますけれども、具体的にこの案でというような煮詰まった段階には至っておりません。
  63. 大出俊

    大出委員 その既存の自衛隊基地というと、どんなところを考えておられるのですか。  それから、新しいところというと、まあ三宅島はありますけれども、具体的にはどんなところを考えているのですか。三宅島の選挙はどうなったのですか。
  64. 塩田章

    ○塩田政府委員 今申し上げました範囲の既存の飛行場といいますと、西の方から申しますと、自衛隊の浜松飛行場が約二百キロぐらいでございますが浜松、それから静岡県の静浜、それに関東地方に参りまして横田、入間あるいは百里、下総、木更津、館山といったような基地がごさいます。これらは、いずれも今申し上げた範囲の中にある既存の飛行場ということになります。  それから、新設の飛行場としてどこがあるかという点でございますが、これは今申し上げた区域の中で、実は具体的に場所を決めてここでどうかというようなところまで煮詰まった案はございません。  最後に、御指摘ございました三宅島につきましては、御承知のように、去年の暮れに村議会から、官民共用の飛行場の誘致をいたしたい、その場合の官というのは米軍の訓練基地を含んだ意味であるという意味の意見書の提出がございましたけれども、その後、ことしの一月になりまして反対の議決をなさいまして、それをこちらに一月二十六日に出してきた、こういう段階にとどまっております。(大出委員「選挙はどうしましたか」と呼ぶ)  村会議員の選挙が二月十日にございまして、定員が十六名から十四名に減っておりますけれども、私どもが承知しておる限りでは、いわゆる賛成を唱えた人が一人、反対を表明している方が十三人というふうに承知しております。
  65. 大出俊

    大出委員 そうなると、これは今お挙げになったいずれも、ちょっと、それこそ数年先を見通してもやりようがないでしょう。三宅島といったって、三宅島ひっくり返ってしまって、選挙をやって反対、こんなところに飛行場、着艦訓練基地をつくることは反対という人が十三人当選して、賛成という人が一人しか当選しない。ひっくり返っちゃった。そうすると、これは任期が四年あるのだから、これはとりあえずできない。その先になって考えたら、七年たつか十年たつかわからぬ。これは防衛庁が候補に挙げて三宅島なんといったのがだめだからほかへといったって、浜松だって静浜だって横田だって入間だって百里だって木更津だって、みんなだめ。そうでしょう、厚木の騒音わかっているのだから。我々神奈川の方から見れば、これはまことに迷惑な話、皆さんの方の今のやり方というのは。  念のために承りたいのだが、向こう十年間見通して、どこかにできそうですか。
  66. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど申し上げましたような段階でございまして、十年間とおっしゃいましたけれども、今私が申し上げられますことは、できるだけ早い時期に解決ができますようにベストを尽くしたいと考えておるということのみでございます。
  67. 大出俊

    大出委員 さて、そこでもう一つはっきり承っておきたいのですが、DFSなるプロジェクト、ここに私が持っておりますのは、造船工業会の極秘という判がぽかんと押してある資料、こんなに大変なものですが極秘、これを見ますと、洋上滑走路というものに対して、これはしかし相当いろいろな入り組んだやりとりになっているんですね。これは金のことなんかもここに書いてありますが、相当な費用がかかる。もっとも、関西新空港の方式でしょうからね、DFSというのは。  そこで、これを見ると、軍艦の上でアメリカの第七艦隊のジェームズ・R・ホッグ海軍中将、C・S・ミッチェル海軍中佐、G・A・ハリソン海軍中佐、この方々と日本造船工業会の方々が、当時、これは石川さん、私よく知らないのですけれども、ここに書いてあるから言うんですが、石川外務政務次官の米大使館に対する杉村彰彦氏の紹介並びに第七艦隊首脳との会談手配依頼により今回の第七艦隊との会談が実現に至ったものであり、非公式ではあるが、日本政府の要望に沿ったものであるということをこの紹介者は言っておるという形で、艦上で行われているんですね、旗艦の艦上で。こういうようなことが続いている。つまり、政務次官をおやりになっている方というのは公職でございますから、そうすると、つまり日本政府の要望に沿ったものである。この辺は一体どう解釈すればいいのですか。
  68. 塩田章

    ○塩田政府委員 私の方も、いま御指摘になりましたアメリカの七艦隊の司令官以下と造船工業会の関係の方あるいはDFSの関係の方がお会いになりました後の懇談要旨というものを入手いたしておりますけれども、それに御指摘のような記述日本政府の要望に沿ったものであるという趣旨の記述がございますけれども、私どもとしましては、この会談をなされることももちろん知らなかったわけでございますが、日本政府としてこういう会談をあっせんをする、あるいは海洋の構造物について米側の何らかのコメントを求めるというようなことを、こういった方々に依頼した覚えは全くございません。
  69. 大出俊

    大出委員 これはどういうことになるのですか。第七艦隊旗艦ブルーリッジ号の士官談話室並びに第七艦隊司令官室、ここで、あっせん者は時の外務政務次官石川さんという方。  これは一体幾らかかるのですか、やるとすると。鉄の箱みたいなものをこしらえて、引っ張ってきて並べて、航空母艦のできそこないみたいなものを海の上につくるんでしょうな。アンカーで引っ張っておくわけでしょう。そこで着艦訓練をやろう、こういうわけでしょう。そうすると、ここにある資料によれば千二百億というんだが、これは千メートルぐらいの滑走路を予定しているのですが、私の長い防衛問題の経験で言うと、千メートルじゃとてもこれは発着艦訓練はできない。どんなことをしても、条件を付しても千八百なければできない。これはFRW、つまりフローティング・ランウェーとでも言うのでしょうが、バリアネットなんかつくっても、千八百メートルはなければできない。そうすると、今千二百億というけれども、これは千八百から、本当にやろうとすれば二千四百要るでしょう。そうすると、千八百億から二千四百億ぐらいかかるのじゃないですかね。これはべらぼうなことなんですね。  しかも、このDFSという方式は、つまりフローティングスペースを使おう、海を使って倉庫でも何でも建設しよう。造船工業会にすれば、今船が不況でございますから、国際的にこれが成功するとすれば大変な用途が出てくる。緊褌一番という考え方ですよ、読んでみるとこの中身というのは。だから、どんなことをしてもやろう、こういうのです。すると、いろんなことが片っ方で耳に入ってくる。そういう意味で、大変に心配な面も実は逆にある。ほかが向こう十年間、見通したってとてもできそうもないということになると、これが急浮上するという危険、そういう可能性だってなくはない。ここに、新聞記事ですが、「米艦載機の夜間発着訓練 「海上滑走路」が急浮上工期短く、伸展可能」、「自民」というのは嫌だけれども、これは何かの間違いでしょうけれども、「自民・米軍ひそかに検討」、伊豆沖だ、相模湾だ、これは一年もあればできる。  今私が申し上げたのは、一体どのくらいかかって、どういう形で、どこにつくろうとしているのか。そして急速に浮上というのだが、石川さんの名前もここに出ておりますから、あるいはこの記事は全くうそじゃないんでしょうけれども、そこらのところはどうなっているのですか。べらぼうな金だが、これは。
  70. 塩田章

    ○塩田政府委員 いろいろ数字もお挙げになりましたけれども、私どもも、これを仮につくるとしても、どれだけかかるものか見当がつきません。と申しますのは、私ども自身がこのフローティングを検討しておるわけではございませんのでわかりませんが、今お話しのように、造船工業会側は約一千メートルのもので千二百億というようなことを言っておることは承知しております。だけれども、これはいわゆるどんがらだけの話でございますから、仮にそれを倍にして倍かかるとしても、そのほかに飛行場としてのいろいろな機能あるいは訓練施設としてのいろいろな機能がさらに加わる必要がある。あるいはまた、こんな膨大なものでございますから、ランニングコストを考えますと、これまたいろいろ大変なことになるだろうというような感じはありますけれども、私ども自身が計算をしたわけではございませんので、金額を具体的に申し上げるということはできません。  それから、今から考えても十年ぐらいできそうもないからこの問題が急浮上するんではないか、どういう形でどこにというようなことを考えているのかというお尋ねでございますが、今申し上げたような段階でございまして、私どもこの問題にまだ取り組んでおりませんので、具体的にどういう形とかあるいはどこにとかというようなことは、一切まだ検討しておる段階ではございません。最初に申し上げましたけれども、単に浮体構造物につきまして資料の収集はいたしております。資料の収集はいたしておりますけれども、調査検討に入っているという段階ではございません。
  71. 大出俊

    大出委員 これを見ますと、ワシントンタイムズなどが日米防衛首脳協議終了直後の八月二十三日付の紙面で、米国防総省筋の話として、この問題で日米が合意に達した模様だという記事が載っているというのですがね。これはどうなんですか、載っているのですか。今私が申し上げた新聞報道は五十九年一月二十三日です。おまけにこれは、谷川長官は、政府として民間資金の活用が好ましい状況にあるからこの第三セクターが歓迎できる、また、米海軍使用は限られた期間にすぎないから、米軍だけでなく防衛庁としての総合利用や他の用途との兼用も考えられると表明したと伝えられている。これはどういうことかというと、何千億かかかりますから、千メートルで千二百億というのだから、二千メートルつくれば二千四百億かかる、その上にいろいろな施設が要る、だから三千億ぐらいかかる。だから、一つには造船、鉄鋼、海洋土木、損保などの業界が政府などの公的機関と共同で設立する第三セクターが洋上滑走路を建造し、防衛庁はこれをリースして米軍に提供する方法、政府支出は大幅に抑えられる、そして不況をきわめる造船業界や鉄鋼業界というのは大変に大きな仕事になる、谷川さんはだからそう言った、こういうふうなことまで載っているのですが、一体ここのところはどうなんですか。まあ正面から聞いたら、そんなことはないと言うだろうけれども
  72. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のワシントンタイムズの記事は昨年の八月二十三日の記事で、御指摘のような趣旨のことが載っております。しかし、その点につきましては、谷川長官がワシントンから帰られる途中の記者会見でこれを否定しておられまして、「「浮き滑走路案自体は案の一つとしてあるが、日米両国が非公式にでも合意に達しているという事実はない。目下、いろいろと検討中だ」と語った。」と、こういう報道が翌々日の新聞に報道されております。私どもも、長官自身から承りましたところでは、そういう発言をした覚えはないということで承っております。
  73. 大出俊

    大出委員 塩田防衛施設庁長官が去年の九月物を言っている。始まるとき五十七年。五十七年の一月の十八日からなんです、これ。行動が起こっているのですね。そして二月、六月、七月、大和市長、遠藤さんという市長さんですね。この方が基地対策協議会というようなことの上に立って、騒音問題解決のために海上浮体訓練施設をつくれと陳情を開始したというところから始まりまして、塩田長官が記者会見で、五十七年九月三日、訓練基地としての厚木の移転施設についてFRWの新設を含めて検討を開始する。これは調査費が幾らついているのですかね。それから、その後、伊藤防衛庁長官米国ワインバーガー国防長官との日米防衛首脳会談で、洋上滑走路の新設を含めた代替訓練場の提供について努力する旨約束をした。これが五十七年の九月の三十日。十月に伊藤防衛庁長官が、海上浮体訓練施設の設置を要望、厚木の方から要望が来た、この厚木基地対策協議会に、調査費一千万円の確保に努力をすると答えた。それから、渡辺大蔵大臣に、冨士経済企画、これは大手七社でつくっているわけですけれども、この杉村代表から渡辺大蔵大臣に話が行った。大蔵大臣は、業界の協調が前提であるという指摘をされた。米国のマンスフィールド駐日大使に対して、渡辺大蔵大臣あての要望書と一緒に持っていって大使にも側面的支援を依頼したというところから始まりまして、谷川長官も何回か登場するわけでありますが、これを見ると、やはり防衛庁の案であることに間違いない。そのことも含めた調査費がついていることも間違いないのだと思うのでありますが、いかがでありますか。
  74. 塩田章

    ○塩田政府委員 これは、私が施設庁に参りましたのは五十七年の七月だったと思いますが、その直後ごろに地元の大和市長さんが見えまして、大和市としては、厚木をどこかへ持っていけと言ってもよそに受け入れてくれるところはないだろう、やはり海上に持っていくよりないのじゃないかというような趣旨から、何らかの海上浮体構造物というのは考えられないでしょうかという御陳情がありました。それ以来、私どもとしては、先ほどちょっと申し上げましたが、五十八年度の予算要求に当たりまして約一千万円の要求をいたしましたが、その際に三つのアイテムを掲げて、その第三のアイテムの中に浮体構造物というものを取り上げた。その場合に、浮体構造物というのは余りにも世界じゅう実例もございませんし、めどもありませんので、資料の収集ということでやってみたいということで取り上げたわけです。  そういう意味では、防衛庁の案の一つだと言われても、それはもう私どもはそのとおりだと思いますが、具体的な案という意味ではございませんで、その後、今御指摘の伊藤前々長官のお話とかいろいろございましたけれども、すべてそういう意味で、防衛庁の三つのアイテムの中の一つであるという意味で御発言なさっておるというふうに御理解賜りたいと思います。
  75. 大出俊

    大出委員 十二時で終わりたいと思っておりますので、最後に両大臣に承っておきたいのですが、先ほどの武器技術輸出に絡む包括取り決め、これから実施細目と、こう流れていくわけでありますが、国会決議から安保の効率的運用というのでお外しになった。その長い論争が前国会で衆参を通じて行われている。ほとんど私、読んでおりますけれども、試作品までである、共回生産はこれは行わないという枠などもございます。それから、あくまでもこれは民間の企業というものを強制する筋合いのものではない、企業の自主性、この上に立ってやるのだ、こういうこと。  だが、業界の方を眺めてみると、巨大な武器輸出禁止、技術を含む三原則という壁があった。ここに穴をあけた。我々は日本でこしらえたいろいろな取り決めで日本を縛っている。穴があいた。だから、この縛ったやつを今度緩めていかなければいかぬ。そして、技術だけじゃもうからない。さっきのボーイング767じゃありませんけれども、五百機か千機の部品、後から売れればうんともうかる。そうすると、相当な分を日本が引き受けているのだから、これは共同開発ですね。そういうふうに流れていって、いつの問にか戦後日本一つの枠である専守防衛であるとか非核三原則であるとか、あるいは一%であるとかあるいは武器輸出禁止、死の商人にはならないという枠組み、ここらをせっかく私は守るべきだと思っているので、そういう意味でさっきの、実際の取り決めは全く発表しない、そういうようなことでは困る、国会でこれだけ議論したのですから。そうならぬように、そして、これが共同開発につながっていくようなことに断じてならぬようにひとつお願いをしなければいかぬ、こういうふうに思うのですが、ここのところを、外務大臣いないので、通産大臣の方はどうですか。具体的に企業とかいろいろなことになりますが、先に答えてくれますか。
  76. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 私どもとしては、当然去年の三月八日の統一見解に従いますし、また、武器技術供与に関しましては民間の自主的な判断を十分尊重する、こういう立場でございます。
  77. 大出俊

    大出委員 では最後ですが、さっきの浮体滑走路でございますけれども、何しろべらぼうな金でありまして、一つ間違うとこれは非常に難しい問題を併発しかねないという気さえするほどに難しい問題でございます。これについて、これはアイテムの一つに入っておる、こうおっしゃるわけでありますが、そこのところはよほど慎重に、ガラス張りで物をお進めいただくならやっていただかぬと、しかもこれは一つ間違うと、どうも一つの基地がぽかり海の上にできてしまうということにもなるわけでありまして、そういう意味で航空母艦のてっぺんだけみたいなものができることになる。これは、いろいろな角度からたくさんの意見があるところであります。したがいまして、今やるならプロジェクトみたいなことを、ちょっと長官防衛庁独自にとこう言いましたが、そこらを含めて慎重な対処をと思っておりますが、栗原長官に一言お答えいただきたい。
  78. 倉成正

    倉成委員長 簡潔に答弁願います。
  79. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 御意見十分に踏まえて対処したいと思います。
  80. 大出俊

    大出委員 では、終わります。
  81. 倉成正

    倉成委員長 これにて大出君の質疑は、保留分を除いて終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開講
  82. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正木良明君。
  83. 正木良明

    ○正木委員 最初に、我が国並びに政府を代表して故アンドロポフ書記長の国葬に参加された安倍外務大臣がお帰りになりました。本当に御苦労さまでございました。  そこで、今回この国葬を機といたしまして一年三カ月ぶりにグロムイコ外相との会談が持たれたわけでございますが、これに関連して若干外務大臣にお伺いをしたいと思います。  まず第一に、ソ連のチェルネンコ新執行部の内外政策というものはどういうものであるという感触を得られたかどうか、特に国際緊張の緩和、米ソ関係の改善などに期待が持てるのかどうか、こういう点について外務大臣の率直な御感触をお伺いしたいと思います。
  84. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先般院のお許しを得まして、アンドロポフ・ソ連書記長の葬儀に参列をいたしました。葬儀が終わりまして十五日にクレムリンの宮殿におきまして、グロムイコ外相と約四十分間にわたりまして会談を行ったわけでございます。  まず私から、今御指摘がございましたように、チェルネンコ新指導部がこれから東西のいわゆる緊張緩和、さらに米ソ対話へ向かって積極的な姿勢で対応していかれることを日本としては心から期待する、こういうことを申したわけでございます。これに対しましてグロムイコ外相は、今大事なことはやはり東西の緊張の緩和であるし、あるいはまた米ソの対話である、これははっきりしておるけれども、しかし真剣にこれに対応してもらわなければならないのはむしろ西側である、西側にボールは渡っておるんだ、だからむしろ西側がこの緊張緩和あるいはまた米ソの核軍縮の推進に向かって行動を示してもらいたい、真剣に示してもらいたいということを申しておりました。  全体的に見ますと、チェルネンコ新指導体制としては、これまでのソ連の大きな枠組みは変わりない、私はこういうふうに思いますけれども、現在のこの東西間の状況あるいは米ソの行き詰まった状況を何とか打開しなければならない、そういうふうに考えておるのではないか、しかしむしろその動きは西側からやってもらわなければならない、自分の方はやれることはやってきたんだ、こういうふうに受けとめたわけでございます。ちょうど政権が変わったばかりでございますから、今後の両陣営の動きによっては新しい展開もあり得るのじゃないか、私はこういうふうに判断をいたしておるわけであります。
  85. 正木良明

    ○正木委員 願わくは、この会談をきっかけとして、非常に冷却化した日ソ間の関係の改善ということを、また日ソ間の対話の促進ということを考えてもらいたいと私は思うのです。しかし、大韓航空機の撃墜事件やその他ソ連に対して我々は決して必ずしも好意的に考えられない問題点というのはたくさんあると私は思うのでありますが、しかし考えてみますと、中曽根総理が何回も繰り返されたように、我が国は西側の一員です。これは好むと好まざるとにかかわらず西側の一員であるということは否定し切れないものでございますし、そう考えてくると、西側の一員としての我が国が、同時にまた確固たる西側の一員であるヨーロッパ諸国の状況を見ても、やはり表面ではまたある部分では対ソ強硬路線をとる場合もあるけれども、しかし同時に、ソ連や東欧諸国との関係においては、政治的にも経済的にも大きなパイプを持っておるわけですね。これは私ども我が国の置かれた立場の平和と安全保障という立場からいっても、いまの世界の国際緊張の基本的な問題は米ソの対立というところにあるわけでありますから、それを何とか解きほぐしていくという役割を日本も担っていかなければならぬし、ソ連との間にやはりある種のパイプというものは持っていかなければならぬ立場にあるのじゃないかというふうに私は考えておるわけでございます。そういう点では、これをいわゆる関係改善のきっかけとなさるのかどうか、外務大臣。
  86. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は、グロムイコ外相との会談におきまして、今日日本の対外関係の中で最も冷え込んでおるのが日ソの関係だ、特にKAL事件、大韓航空機撃墜事件以来冷え込んでしまっておる、まことにこれは残念である。何といってもソ連は日本の隣国であるし、やはり真の友好関係というものを我々は結んでいかなければならないと思っておる。そのためには対話が必要である。しかし、もちろん日ソ間には御承知のような領土問題という日ソ両国で基本的に考え方が違う問題点もあるし、あるいはまたソ連の最近の極東における軍事力増強等については我々としては十分納得ができない。そういう考え方の相違はあるけれども、しかしソ連は今日世界の中で超大国であると同時に、日本もまた世界の中では非常に大きな発言権を持つようになった国家として、隣国同士がやはり問題点は問題点として、さらに国際情勢等についてお互いに話し合いをするということは、今ほど大事なときはないのじゃないかということを強調いたしたわけでございます。  これに対してグロムイコ外相は、今度は自分が日本に行く番になっておるけれども、残念ながらいまの日ソの関係から見ると基本的な条件は熟していない、こういうふうに思う。しかし日ソの対話は必要である。領土問題等についてはソ連の考え方ははっきりしておる。あなたは日本の立場を言われたけれども、ソ連の立場ははっきりしておる。しかし日ソの対話は必要である。特に国際情勢等についての話し合いという点についてはこれは私も十分理解はできる、こういう返事でございました。その結果として、日ソの高級事務レベルの会談を三月の十二日、十三日にやろうじゃないかということについて合意を見たわけでございます。  そういうことで、これまでの日ソのいわゆる外相会談というのは、非常にとげとげしい雰囲気の中で始まり、そしてそういう状況の中で終わったわけでございますが、今回は、もちろんああしたアンドロポフ書記長の葬儀ということの雰囲気もあったのでしょうけれども、しかし今回は、私の判断では、今までにない、やはりどちらかというと温かい空気の中で行われたのじゃないか、こういう感じを率直に受けました。一緒に参りました大使その他もそういうふうなこと空言っておったわけでございます。そしてまた同時に、ソ連も日ソのいわゆる対話ということに対しては前向きの姿勢で対応しておる、こういう感じを持ったわけでございます。したがって日本としては、主張しなければならない点は毅然として主張しながら、やはりいろいろな問題につきまして今後とも対話の面というものを広げてまいる必要があるのじゃないか、これがやはり両国だけでなくてアジアのためにまた世界の平和と安定のためにも必要であるということを痛感したような次第であります。
  87. 正木良明

    ○正木委員 そこで、あなたと一緒に行かれた特派員の報道によれば、今回の会談でソ連側が、いわゆるグロムイコ外務大臣が、中曽根内閣というのは歴代内閣に比べて対ソ姿勢が非友好的だというような発言があるように報道されております。  そういう点について、総理にお伺いするのですけれども総理も、平和を求めるという意味からいえば、今の冷却した日ソ関係を改善すべきだというふうにお考えになっていると思うけれども、これに対して、この取り組む姿勢といいますか、これを総理の所信として伺っておきたいと思うのです。
  88. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、日ソ関係がさらに友好関係に発展するように努力をしたいと思っておりますし、今後も努力してまいりたいと思っておるのであります。隣同士の隣国であり、お互いどちらかと言えば世界でも影響力を持っておる国々同士でありますから、この二つ関係が平和友好裏に推移するということは世界に対しても非常にいい影響を持ってまいりますし、両国民も非常に喜ぶことであるだろうと思っております。  ただ遺憾ながら領土問題という大きな問題がございまして、この問題に関しては日本国民全体の決意をやはり我々は秘めて交渉に当たらなければならぬ立場にもあります。その上に、アフガニスタンの問題であるとか、あるいは大韓航空機の事件であるとか、あるいは最近におけるソ連軍の極東における顕著な増強ぶりというような問題については、非常に憂慮を持っておる次第でもあります。  しかしながら、それはそれとしても、できるだけあらゆる機会をとらえてお互いがさらに解決の道を見出すべく努力し合うということは必要なのでありまして、前から申し上げているように、事態が困難であればあるほど、また相手が手ごわい相手であればあるだけ、ざらに我々は対話を継続し、根強く努力し合わなければならない、そういうことをかねがね申し上げておる次第でございます。  私は、ことしの正月元日のテレビで国民の皆様方にも申し上げましたが、この昭和五十九年という年は軍縮の年、核軍縮の年であろうと申し上げました。そして注目すべきことは、一つはアンドロポフ氏の健康であり、もう一つアメリカ大統領選挙の推移であると、こう大胆にも申し上げたわけであります。  アメリカ大統領選挙の推移というものは、一つはソ連を見つつやることでありますが、共和党、民主党の両方は何を主張し合うであろうか、そういう点考えてみると、やはり時代の推移から見て軍縮あるいは核軍縮という問題が選挙戦のテーマに上がってくる可能性があるであろうと予測しておったことが発言の一つの端緒でもあります。それからアンドロポフ氏の健康がどうなるかということは、ソ連の対内及び対外政策に非常に大きな影響を持つと考えておったわけであります。今回不幸にしてアンドロポフ氏が御逝去になりまして、新政権ができましたが、この新政権ができるということは、ある意味においては対外あるいは対内政策が変化する一つの端緒にもなり得ることであると思います。そういう変化は急激には出ないでしょう。出ないでしょうけれども、今までの世界の歴史の通例を見ればそういうものが一つの端緒になることはしばしば見かけたところであります。  そういう意味におきまして、東西関係が冷えており、また日ソ関係も冷えておるというこの現状を、ソ連における新政権の誕生ということを機会に、お互いで努力し合って、そして平和関係をさらに力強く前進させ、あるいは善隣友好関係をさらに力強く前進させ合う努力をすべきときである、私はそう考えておるわけであります。そういう考えを込めまして、チェルネンコ氏が書記長に就任されましたときに、新聞社側からの要請もあってコメントを出しました。  そのコメントは次のような文章を申し上げたわけであります。「チェルネンコ新書記長の御就任に際し、日本政府、及び日本国民を代表して、心からお祝いを申し上げます。 我が国は、ソ連との間に安定した平和共存と、友好協力関係を維持発展させることを外交の基本課題の一つとしています。 ソ連における新政権の誕生を機に現在世界が当面する最も重要な問題である平和の維持及び軍縮、特に核軍縮が、米国及びソ連の着実な努力により進展し、各国の協力と相まって、全世界の各地で速やかに緊張を緩和し明るい希望をつくり出し、全人類の繁栄と文化の創造融合の基礎となるよう、我々は心から願っております。日ソ両国の関係については、この新しい機会に私は、アジアの平和を確保し両国間の諸懸案を解決し、長期の友好安定への道を開くよう心がけるべきであると信じております。新書記長の御健康と御成功を心から祈念いたします。」  こういうコメントを出しましたのは、今申し上げた趣旨から出した次第なのでございます。
  89. 正木良明

    ○正木委員 確かに、おっしゃったとおり、政策変更であるとか関係改善のきっかけというのは政権が交代したというときが一つのチャンスであるかもわかりません。せっかく総理もそういう決意で臨んでおられるならば、やはり今、世界の緊張緩和の根本にある米ソ対立をますます激化されるように、ただアメリカ側にだけ日本がついているということではなくて、いろいろの懸案はあるけれども、それを乗り越えて関係改善のために御努力をお願いしたいというふうに思います。  それでは、経済財政問題に入ります。  この五十九年度予算を拝見いたしまして非常に考えたことは、我々公明党とそれから政府・自民党との経済財政政策の違いというものは、一口に言いまして、例えば財政再建の問題があります、行財政改革の問題があります、それからいよいよ高齢社会へ突入するという非常に重要な時期でもあります、これらの当面するもろもろの課題に対して、要するに経済を拡大型でいくのか縮小型でいくのかということの違いが非常に鮮明であるというふうに私は思うのです。  例えば実質経済成長率からいいますと、政府は四・一%の経済見通しをお立てになっている、しかし我々は五%前後の成長をぜひ実現していかなきゃならぬのではないかというふうに考えている。それと、もう一つは、そのために内需拡大型でいくのか、外需、要するに輸出依存型でいくのかということの違いがあるわけでございます。したがって、この点が非常に重要なこれからの経済財政運営のかなめになる点だと私は思うのでございますが、そういう点について、これは河本さんですかな、どうお考えになりますか。
  90. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ことしの経済の特徴を申し上げますと、ようやく五年ぶりで第二次石油危機の混乱の調整が終わりまして、経済は大勢としてはようやく上向いておるというのが一つの特徴であろうと思います。しかし、先般も企画庁で全国十カ所の経済動向の調査をいたしましたが、大勢としてはいい方向に行っているのですが、大変ばらつきがあるということであります。地域でのばらつき、業種でのばらつきがある。それから世界経済は、これも五年ぶりで上方に向かっておる、こういうのが一つの特徴であろうと思います。ただ、財政の力が大変弱っておりますので、そこで御案内のように五十九年度の予算は経済成長に対しては中立、別の言葉で言いますと成長に及ぼす影響はゼロである、こういうことであります。ただ、また、世界経済も日本経済も激しく動いておりますので、こういうときには財政政策、金融政策を機動的に運営するということが非常に大事だと思いますので、政府と自由民主党でもこの基本方針で五十九年度の経済政策を進めていこう、こういうことを決めております。  そこで、ただいまの見通しは、先般発表いたしました政府の見通しどおりに、過去三年の三%台の成長から抜け出しまして若干上方に行くであろう、こう思っておりますが、その動向を見つつ、先ほど申し上げました財政と金融の機動的な運営で対処をしていこう、こういう考え方でございます。
  91. 正木良明

    ○正木委員 実はそれが問題なのでありまして、経済に対しては中立型だと言うけれども、恐らく閣内で違った意見言えないから長官そういうふうにおっしゃったのだろうと思うけれども、同時に、おっしゃった中には成長に対して寄与率はゼロだと言う。財政再建のためにはどうしても、租税負担率等の問題もございますが、やはり実質経済成長率というものを高いものにしていく努力というものを財政の中でもまた金融の運営の中でもやっていかなきゃならぬと私は思っているのです。同時に、それを内需拡大という形でやらなければ、どう考えても、今経済摩擦という問題が非常に大きな問題として取り上げられておりますね、経常収支二百三十億ドルの黒字なんというのは、これは大変なことでございます。  しかし、昭和五十九年度予算案を通じての経済運営、財政運営の面から考えてまいりますと、経済見通しでは四・一%の実質経済成長率ですね。ところが、日本アメリカの国力の差というものは、国民所得で見ますと、アメリカ我が国の大体二・五倍です。OECDの予測では、八四年の経済成長はアメリカは約五%、日本が約四%です。もしこのとおりであるというならば、経済原則からいったって、これは当然、許容能力の大きい方が高い成長をするのでありますから、小さい方からどんどん物が流れていく、これは必至であります。ということになれば、輸出の拡大というものはますます大きくなって、摩擦が激化すると見なければならぬと私は思うのです。本当はむしろアメリカの経済成長よりも日本の経済成長の方が高いというところへ持ってこなければならないとは思うのだけれども、少なくともアメリカの実質経済成長率くらいまでは日本の経済成長というものを伸ばしていかない限りこの貿易摩擦は解消できない、こういうふうに思うのですが、どうでしょうか。
  92. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ことしの政府の見通しでは、ことしといいますと五十九年度という意味でありますが、貿易の黒字が三百四十億ドル、経常収支の黒字が二百三十億ドルと想定しておりまして、これは五十八年度と同じ数字であります。一方、アメリカ政府の発表を見ますと、一九八三年のアメリカの貿易赤字は七百億ドルだけれども一九八四年は一千億ドルにふえる、三百億赤字がふえる、こう言っております。その背景は今御指摘になったような背景があるからだ、このように思います。  そこで、貿易摩擦の問題を根本的に解決いたしますためには、この巨額の黒字幅を一体どうするのかという問題が一つございます。それからもう一つは、個々の問題についての解決をどうするかということがございますが、やはり貿易の黒字、経常収支の黒字も余り巨額になりますと理屈抜きにいろいろなトラブルが発生をいたしますので、この点は十分考慮しなければならぬと思います。  ではその場合に何が必要かといいますと、やはり我が国の国内の購買力がある程度強くならないとそれは解決をしない。それからもう一つは、為替レートが適正な水準に維持される、こういうことでなかろうかと思っております。
  93. 正木良明

    ○正木委員 もちろん為替レートの問題があるのですが、きょうの新聞によるとドルが大暴落するであろうなんということが報道されているわけです。それはやはり何といったって日本の経常収支の大きな黒字というのが一つの大きな問題になっているからであります。  大和証券の経済研究所が過去五年間の実績を調べた、それで計算したところによると、我が国の対米輸出の所得弾性値というのは三・四だそうです。要するにアメリカの経済が一%伸びれば日本の対米輸出が三・四%伸びる。逆に原材料の多いアメリカの弾性値は一・五でありまして、日本の経済成長が一%で向こうは一・五%の伸びということになる。それくらい日本の輸出力というのは大きいものがある。弾性値が大きい。何らの手も打たないで、経済に中立的であり、かつ成長に対してゼロしか寄与できない、ゼロの寄与なんというのは要するに寄与しないということですが、こういうふうな予算でいいのか、財政運営でいいのかどうか、私はこれを非常に心配をいたしておりますし、このことは直接に財政再建というものに非常に大きな問題を投げかけていると思わざるを得ないのであります。どうでしょうか。もっと拡大しなければいかぬのじゃないですか。
  94. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今度の政府見通しの中で、民間側から出されました疑問は幾つかあるのですけれども、その一つは、今お話しのような世界の流れから見まして、日本の貿易の黒字あるいは経常収支の黒字が果たしてそれでおさまるのかどうか、そういう疑問が出されております。民間研究者のを一、二挙げますと、多いところは経常収支の黒字が三百五十億あるいはそれを超えるというところもございまして、政府見通しと相当大きな開きがございます。しかし、ただいまのところ政府は、現在の貿易の動向から見て大体こんなものであろう、このように判断をして数日前この数字を発表したわけでございます。  ただ、アメリカ側の貿易赤字が非常に大きくなるということを言われておりますし、アメリカの景気動向から見てそういうこともあり得谷可能性が大変強いと思いますので、この黒字幅が一体どうなるかという問題はこれからの非常に大きな課題でございますが、しかし、これを抜本的に解決するということのためには、先ほど申し上げました二つのこと、内需の拡大、国内の購買力の問題と為替レートの問題、これがやはりその前提条件になる、こういうことだと思います。
  95. 正木良明

    ○正木委員 今、為替レートで、きょう新聞に報道されているようにドルが大暴落するというようなことになりましたら、恐らく輸出は減ってくるでしょう。やはり大和証券の経済研究所の調査によると、価格が一%上がると日本の輸出は一・九%減るそうです、過去五年間の統計によると。そうすると、現在一ドル二百二十三円が二百十円、約一〇%上がったということになると約二〇%近い輸出の減になる。だから、為替レートが上がるということは輸出が減るということになるから、それはある意味では貿易摩擦の問題がこの為替レートの問題ではある程度適量なものになっていくかもわかりませんね。しかし、果たしてそれがそうなるかどうかということは、これはなかなか予測がつきがたいことであります。いずれにせよ今回の五十九年度予算は、そういう意味では極めて景気に対しては大きな刺激の力を持たない予算になっているわけです。  大体、閣内非協力の発言は恐らく長官としてできないでありましょうから、拡大論者の長官に聞いたのだから縮小論者の大蔵大臣、どうですか。
  96. 竹下登

    ○竹下国務大臣 縮小論者であるかどうか、ただその問題は別といたしまして、言ってみれば景気に対しての刺激を与えるという要素はない、財政が景気に対しては中立的な役割以上のものを果たしていない、そのとおりであります。ただ、足を引っ張る役割もまた果たしていないわけであります。  むしろ今日私ども考えますのは、そういうふうにアメリカの景気の回復を初めとして、ドルの問題は後ほど触れますが、世界的にいささか明るみが出て、それに対して日本経済も緩やかながら回復基調の波に乗ったというようなときこそ、むしろ財政面は財政改革の方ヘウエートを置くべきではないか、こういう考え方が基本的にございます。  それから今の為替レートの問題、河本長官と正木委員との間で一問一答があっておりましたが、ドルの大暴落というようなことを論ずる、これは新聞とか雑誌等でございますけれども、そういう議論はございます。これはアメリカ側から見れば四百億ドル近い赤字になるではないか、そういうようなことになれば、当然のこととして、アメリカ側から見て輸出はますます伸び悩む。さすれば、それがますます拡大しやしないか。さらに、緊急避難的に高金利に支えられておったところの外貨の流入というものも少なくなるのではないか。そうすると、すべての要素からしてドルが弱くなっていくのじゃないかという悲観説が一つと、いや、そうじゃないのだ、やはりドルに対する信認の度合いは今日強い、これは一アメリカ日本のみならず、ヨーロッパ等全体の通貨の情勢からして弱くなる要素というものはさほどないではないかとか、さらに、金利問題については、これは我々にとっては決して好ましいことではありませんが、ある程度この高金利状態が続くから、依然として資本の流入はアメリカ側は期待できるのではないか、したがって、いわゆるドルの信認度というものは高いのだ、こういう議論と両方あるわけでございます。  私どもといたしましては、為替レートについて一時にどうこう論評できませんけれども、今日ドルの大暴落のおそれはないであろうという期待のもとにこれに対応していくということであります。
  97. 正木良明

    ○正木委員 いや、実は私の質問の趣旨は、今あなたと為替相場の見通しを議論しようとしておるのではなくて、そういうふうな状況の中では、要するに輸出依存型というものにならざるを得ないという状況になる。だから、よほど内需拡大のための政策というものがこの財政政策の中に用意されていなければ、結果的には貿易摩擦はますます大きくなりますよ、大変なことになってしまいますよということを申し上げているわけです。なぜかならば、要するに、この問題は財政再建と非常に大きな関係があるからであります。  今度あなたの方は三つ資料をお出しになりましたね。「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」「財政の中期展望」及び「中期的な財政事情の仮定計算例」こういうものをお出しになった。非常に時間が制限されておりますから、私の方から全部言ってしまいますが、「八〇年代経済社会の展望と指針」で六十五年度に赤字国債の発行から脱却するということを公約なさっておる。そのことにのっとってこの「中期的な財政事情の仮定計算例」というものをお出しになりましたね。  これは本当はしゃべってもらえばいいのだけれども、こっちの方で言ってしまいますが、要するにこの中のいろいろな要素、名目成長率六・五%、租税弾性値一・一、これによって税収を計算した。二番目は、赤字国債は六十年度以降毎年度一兆八百億円ずつ均等に減額する。三番目には、一般歳出の伸びは、五%の場合、三%の場合、ゼロ%の場合の三つの例をお出しになった。その上で、赤字国債の借りかえを実施する場合と借りかえをしない場合とに分けて試算の例が出されておるわけであります。しかし、これを拝見いたしまして、この六つのケースで政府の公約どおり六十五年度に赤字国債の発行をゼロとできるのは、赤字国債の借りかえを行い、かつ一般歳出の伸びを六十年度以降六年間もゼロとする場合だけに限られているのです。総理、こういうことは机上の計算としては成り立ったとしても、一般歳出をゼロに抑えてしまう、こうしない限り六十五年度いわゆる新発債の赤字債のゼロということはあり得ない、こういうふうにおっしゃっているわけですが、これは余りにも機械的、机上の空論的計算例でありまして、これで果たして六十五年度脱却できますか、どうですか。
  98. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今お出しいたしました中期展望なり仮定計算なりについての御質問でございますが、この中期展望なり仮定計算なりをこうしてお出しするに至ったのも、ここで何回も問答して、工夫をし、お互いの議論の中でようやくこういうものを出すことができるようになったと私は思うのです。したがって、これはもちろん等率、等差あるいはそういう仮定計算に基づくものでございますが、これらのものがいかにしたら脱却できるかという、お互いが問答するまた基礎になればそれが幸いなことではないか。したがって、やはり六十五年、これらの中期展望から示されたこの赤字公債脱却を努力目標とするという方針で厳しく対応していかなければならぬ課題であるというふうに考えております。
  99. 正木良明

    ○正木委員 要するに、できもせぬような計算例を出したとしか言えないわけですよね。総理、あなたも御存じだと思うけれども、念のため申し上げますと、歴代内閣全部、この公約は破れてるのです。三木内閣は昭和五十一年二月に、五十五年度に赤字国債脱却を目標とすると言った。これはだめだったですね。福田内閣は五十三年一月に、五十七年度に赤字国債脱却を目標とする、これはだめだった。大平内閣は昭和五十四年の一月に、五十九年度に赤字国債脱却を目標とすると言って、だめだった。それを受けて五十六年一月、鈴木内閣は五十九年度に赤字国債脱却を公約した。これもパアです。いよいよ中曽根内閣は昭和五十八年の八月に、六十五年度に赤字国債を脱却すると言っているけれども、あなたのところの内閣の大蔵省が計算した中でも、ゼロ%ですよ、一般歳出をゼロ%に抑えるんですよ、それでしか六十五年赤字国債脱却できないのです。こんなこと信用できますか。それは議論の種として出しましたと大蔵大臣言うけれども、議論にも何もならないじゃないですか。もっと具体的に、予想される要素というものがこの中に入ってこなければならぬと私は思うのですが、いかがですか。
  100. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この表は大蔵省が、中期的な財政的見通しを仮に試算をすればこういう幾つかのケースがあります、そういう意味で、中立的な性格のものとしてお示ししたのだろうと思います。中立的性格のものとしてお示しをした、それにどう味をつけるかということは、そのときの経済情勢あるいは政権の性格等によって変化していく。そういう一つの基礎になる、試みの数字という意味で出したものであるだろうと思います。  六十五年赤字公債脱却を目指すというのは、そういうかんぬきを設定しませんと、財政がどうしても野方図になりやすい。冗費の節約もおろそかになりやすい。また、政府自体の心構えにおいてもルーズな気持ちが生まれやすい。そういうような気持ちから大蔵省は、また我々がそういうみずから自分を律するため、また国民の皆様にもそれをお示ししたいというところからそういうような目標設定をしたわけで、それを実現するために全力を注いでいくつもりでございます。これはあくまで努力目標でございまして、今から七年間あるわけでございますけれども、この中に一体世界景気がどういうふうに変動していくであろうか、また国内の物価や雇用の情勢がどういうふうに推移していくであろうか、そういうものを、生きたものを今度は一つずつとらえながら、どういうふうに味をつけた政策を運用していくかということを、我々自体が政権の責任としてやっていくべきものであると思っています。  ただ、私は臨時行政調査会の答申を尊重してまいりますという基本原則を遵守してまいりたい。それを考えておりまするから、できるだけ歳出カットを行って、そしてその歳出カットというものを基準にしつつ、歳出歳入構造の見直しの上に立ってできるだけ冗費を省いて、そして赤字公債を減らしていく方向に持っていこう、そういう基準点がございます。世界景気というものがどうなるかということは捨象されて入っておりません。また、日本の景気をどういうふうにするかということもこの数字の中には入っておりません。しかし、五十九年度予算に関しましては、これは臨調路線に忠実に沿いまして今のような一般行政経費というものを昨年度程度にとどめる、あるいは三百三十八億減らすというところまで強行いたしまして、そして今の減税要求にもこたえ、そのほかの諸般の政策をやったということでございます。  いろいろこの経済政策の運営については御議論があると思います。三木内閣以来今までの歴代内閣が目標を掲げてできなかったということは甚だ遺憾でございますが、やはり石油ショックの後遺症に基づきまして世界経済全体が大きな不況の中へ入り込んでしまって、赤字公債を減らそう減らそうという目標を歴代内閣は立てましたけれども、しかし雇用を維持して景気をある程度維持して、そして社会福祉の路線を水準を下げないように努力していくというためには、やはり赤字公債あるいは公債政策に頼らざるを得ぬということで、自然に公債が百兆を超すところまで来てしまった。私が政権についたときには、もはやこれ以上公債に頼るということはもう多大の負担を後世の子孫たちに残すという形になるので、これは申しわけないことになる。臨調もそれを指摘している。そういう意味におきまして、まあ運命的と申しますか、そういうような路線をとらざるを得ない。しかしこの八カ年計画は、いわゆるリボルビングシステムとかローリングシステムという仕方をとっておりまするので、世界景気の状態や国内の雇用情勢等を深甚の注意をもって見守りながら、生きた経済に対応していきたい。当面は民間活力の増大という面に力点を置いていきたいと考えておるところであります。
  101. 正木良明

    ○正木委員 いや、私の言っていることには余り具体的なお答えになっていませんね。要するに、そんなものなら出さぬでもええということです、これは。何の資料にも参考にもならぬということにならざるを得ないわけですよ。だから具体的に聞いているのですよ。  それじゃ総理、国債を借りかえて名目成長率六・五%、租税弾性値一・一、これで昭和六十五年に一般歳出をゼロにした場合だけ何とか赤字国債から脱却できる、しかし、一般歳出ゼロにできますか。これからの高齢社会を迎えるというような問題があり、この後また税の問題をやりますけれども、この税の問題から言ったって、地方交付税はふえてくるであろうし、国債費がふえてくる。これも借りかえやるのでしょう。そういう予算の膨張要因というものがあって、それで一般歳出をゼロにする、まあこの一般歳出というものが予算全体の中から、要するに国債費とそれから地方交付税を引いた後のものだというふうに仮に言ったって、物すごく福祉や教育なんというものが大きく削られなければゼロにはできないですよ。  そこで具体的に聞きますが、もしゼロにできなかったら――今出された資料の上で考えれば、これからの景気がどうなっていくか、世界の景気がどうなるか、日本の景気はどういうふうにしていくかというようなことを、いろいろと変わってくるでありましょうから、変わってくることを議論できないわけでありますから、この資料によらざるを得ないのだが、もし歳出ゼロにできなければ、これはもうあと増税しかないですよね。ないしは一兆八百億円減額するというあの赤字国債の減額分を断念しなければいかぬですね。これはどちらかです。どうします。
  102. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そこが今度まさに中期展望なりあるいは仮定計算をお示しして、それを参考としながら、幅広い角度からこういう国会の議論を通じながら検討すべき問題でありまして、具体的にはいまおっしゃった、なるほど高齢化社会がますます進んでまいるときに、実際ゼロでできるのか。しかし、昨年お出ししました見通しからして見れば、およそ二兆円程度いわば歳出削減、昨年の仮定計算からすれば落ちることもできたわけでありますから、なおこれが努力をしなきゃならぬわけであります。したがって、最終的には、これは歳出と歳入両面を通じてどのような組み合わせをしていくかということがやはりお互いの問答の間で出てくるであろうし、そこで国民がどれを選択するかということをやはり政治家として判断をしていかなければならぬ課題ではなかろうかというふうに考えます。
  103. 正木良明

    ○正木委員 だから、こういう窮屈なものを示して、大型間接税というものになるのかどうかわからないけれども、そういう増税路線というものを国民に納得させるためにこれを出したのではないかというふうにしか私は思えない。したがって我々としては、先ほどちょっと触れましたように、少なくとも実質経済成長率は五%ぐらい、それで名目成長率は七・五%ぐらいまで引き上げるというような財政政策というものをとってもらいたい。河本長官は四兆とか五兆とかというでっかいことをおっしゃっているが、これは多々ますます弁ずで多い方がいいわけでありますが、少なくとも我々は、現段階においては一兆四千億円の減税をやる、そうして公共事業の追加をやる、それを誘い水にしながら民間活力をどんどん引き出していくというような景気刺激の政策並びに予算というものが用意されておって、もし仮に私たちが言う七・五%というこれでやってまいりますと、例えば租税弾性値を一・一としましょう。この一・一も低いよ。少なくとも実質経済成長率が五%になるというような状況の中で租税弾性値が一・一でおさまるわけがないと思う。やっぱり一・二か一・三ぐらいになってくるだろうと思います、経済情勢からいっても。しかしまあ、一・一と勘定しても、昭和六十五年、歳出は、大蔵省のお出しになったこの試算をそのまま踏襲して、一般歳出を五%伸ばすということで、政府のこの試算では昭和六十五年度の要調整額が九兆九千億円になっているけれども、我々の案だとこれを六兆四千億円に縮小することができます。一般歳出を三%にするという場合においては、政府が言っておる五兆一千億円から我々が言う一兆七千億円に縮小することができるということであります。  したがって、やはりここで問題になってくるのは、どうしてもこの昭和五十九年度のように、経済成長には寄与率ゼロであるというような予算では、こういうことはできなくなってくる。要するに、財政再建はもう不可能である。私は、問題なのは、歴代内閣がこういうことを目標にしますということを国民の前に約束しながら、どんな政治責任も全くとってないということです。やっぱりだめでしたと。しかも外部要因に全部転嫁しているのです。石油ショックがありました、世界同時不況です。渡辺大蔵大臣に至っては、物価が安過ぎますと言ったことがあるのですから。物価が安過ぎますなんということは大蔵大臣の言うべき言葉じゃありませんよ。物価が安いということは、物価の上昇率が低いから名目成長率が余り伸びなかったのですということを言いたかったのだろうと思うけれども、それは理解しますよ。理解しますが、物価が上がらなかったから税収が上がらなかったのです、名目成長率が上がらなかったのですとまで言わなければならぬような釈明をして、何ら政治責任をとらずに、だめでした、だめでした、だめでしたで、今度また六十五年度赤字国債脱却なんということはだめなことわかりながら、あなたは、これからの経済の景況の推移によってそれが可能であるように努力をいたしますという言い方をしていることで、我々は全く信用はできぬ、こういうふうに考えざるを得ないのでございます。したがって、この点については、明確に盛り込むべきものは予想されるものがたくさんあるわけですよ。  例えば、大蔵大臣、どうするのですか。法人税、大企業、資本金一億円以上は一・三%、そして一億円以下、中小企業については一%税率アップしましたね。これは二年の時限でしょう。五十九、六十じゃありませんか。これをもとに戻すのですか、六十一年度から。そういう財界との約束ですか。この法人税の税率アップというものがもとへ戻るということになってくれば税収が減ってくるじゃないですか。どうなんです。
  104. 竹下登

    ○竹下国務大臣 かつての措置の際も二年としたことがございます。したがって今度も、いろいろ議論をした結果、やはり二年間ということにしたわけであります。別に財界との約束があったわけでもございませんが、したがって、この問題は二年、その年次が来た段階において、諸般の情勢を見ながら検討をしなければならぬ課題だというふうに考えます。
  105. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、その時点が来たときには、今これ、租税特別措置法でやりますね、そうすると、この二年が来たときには延長ということが一つ考えられるな。もう一つは法人税法の本則繰り入れということも考えられますね。それか、全く引き下げるか、大体どの方向ですか。
  106. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いみじくも三つのことが考えられると思います。
  107. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、この試算から言えば、二年の時限にはしてあるけれども、二年たったらそのまま延長するか、ないしは本則へ入れて上げるということだな。法人税の税率アップをするということですな。こんな窮屈な財政で下げるなんということはとっても考えられませんよ。それは大型間接税でも導入したら引き下げられるかわからぬ。かわるべき要するに税財源が見つけられればそうするかもわかりませんけれどもね。そういうことを全部予想しながらつくっているのだから、具体的なものをある程度出そうと思えば出せるのにもかかわらず、いつでも逃げられる体制での試算を出して、そうして国民の皆さん方、議論してください、これならば税金をふやさなければしようがないじゃありませんかと。そのためには間接税しかありません。それを今一生懸命、大型間接税の導入ということがあると、あの大平内閣のときの選挙のような国民の反発を受けるから、今地ならしとして、直間比率の見直し、直間比率の見直しと、こういう地ならしを今おやりになっているのだとしか思えないのです。総理、やりませんか、大型間接税の導入というのを、この六十五年までに。
  108. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前からいろいろその点は御議論があったところでございまして、衆議院のだしか決議もあったと思いますが、いわゆる一般消費税というようなタイプの大型間接税をやる考えはありません。
  109. 正木良明

    ○正木委員 大型間接税とおっしゃいましたね、一般消費税ではなくてね。(「いわゆる一般消費税」と呼ぶ者あり)いわゆる……、EC型の付加価値税ならやるということですか。
  110. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今申し上げましたように、本院で御決議になりましたようないわゆる一般消費税タイプの大型間接税をやる意思はありません。
  111. 正木良明

    ○正木委員 このタイプが今後また大議論になるでしょう。  そこで、総理、あなた公約しましたな。歳出は絶対抑制をいたしますと約束しましたね。総理は、赤字国債発行額の削減、十項目を公約なさっているのですが、歳出規模を前年度並みに抑制する、これはそうなってませんよ。赤字国債は五千二百五十億円にとどめましたね。一兆円やらなかったです。歳出全体では、五十八年度に比べて増額は二千四百七十六億円、伸び率〇・五%に抑制しました、こう言っているのです。実はこれはからくりがあるのです。昭和五十八年度の歳出の中には、昭和五十六年度の決算で不足して国債整理基金特別会計から借り入れた分を返済する資金の二兆二千五百二十四億円が含まれているのです。したがって、実質規模は四十八兆一千二百七十二億円であります。これを基礎にすると、五十九年度の歳出規模の実質増額は二兆五千億円で伸び率も五・二%になるのです。歳出規模を前年並みの〇・五に抑えたと言えますか。
  112. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今おっしゃった問題は、それは確かに五十八年度はそれがございました。しかしながら、今年度はまた、例えて申しますならば、六十年の三月三十一日に参りますいわゆる定年制の施行からする今年度に集中して歳出化しなければならなかった退職金、こういうような事情もございますので、それらをすべて総合して抑えたということに御判断いただければいいのではないかというふうに私は考えます。
  113. 正木良明

    ○正木委員 もうちょっと詳しく話してくださいよ。退職手当金が集中したから、その分が昭和五十九年度の予算に入っているから、それと差し引きすれば見合いになる、こういうことですか。退職金というのは、当たり前だ、やめたら払わなければいかぬ。
  114. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いや、退職金の問題は、たまたま定年制が六十年三月三十一日に施行されますので、それによって一挙に集中した退職金等が出るところの新たなる歳出要素もあった、だから去年のは去年としての繰り戻しの歳出要素もあったという意味で、それが金額がとんとんになるという意味で申し上げたわけではございません。したがって、詳細にわたっては主計局長からお答えをさせます。
  115. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 一般会計歳出総額が〇・五%増でございますが、昨年度は決算不足補てん金が二兆二千五百億余りございますので、その分の当然減があるじゃないかというお話でございますが、それはそのとおりでございます。しかし、ことしの財政事情を見ますと国債費が九千六百億余りふえる、それから地方交付税は一兆五千七百億余りふえるという要素がございます。したがいまして、一般歳出につきまして、結論的に申しますと三百億余り前年度より減らすというような歳出抑制のぎりぎりの努力をいたしまして、結果的にこうなったということでございます。
  116. 正木良明

    ○正木委員 前年並みに抑えるというのは、既に発行した国債の利子だとか償還なんて入っているし、税の見通しにおいてその三二%分は地方交付税で出ていくというようなことは当たり前の話なんだから、いいですか、あれがふえていますから――本質的に問題が違うのですよ。そんなことを言ったら、これから先どうなるのですか。あなた、要するに地方交付税と国債費を除く一般歳出の問題もお触れになりましたが、これは確かに三百三十八億円減っていますよ。伸び率もマイナス〇・一%になっている。しかし、これだってからくりじゃありませんか。五十八年度までは一般歳出に含まれていた臨時地方交付金一千四百六十億円、これを地方交付税交付金の特別加算に組み込んで一般歳出から除外している。また、資金運用部借入金の利子負担も五十八年度までは一般歳出の地方財政関係費に入れていたものを、五十九年度からは三千八百九十二億円のうち二千六十三億円を国債費に振りかえて一般歳出から除いているじゃありませんか。からくりじゃないですか、違いますか。
  117. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 いまおっしゃいました話のうちで前段は、臨時交付金は昨年もほとんど出しておりませんので、それは何かの間違いかと思います。ただ、交付税特別会計で負担しております利子負担の二分の一を、昨年は一般歳出の中で掲記しておりました。ことしは交付税特別会計が五十年以来続けてまいりましたやり方を改めて、つまり国の段階で借金をいたしまして地方交付税として配分するやり方を改めました。したがいまして今後は原則として借金をしないということにいたしましたので、今までの借金十一兆五千億ございますが、このうち国が負担する分、五兆八千億程度ございます。これは一般会計が直接資金運用部に払う、そういうふうに経理を変えたわけでございまして、別にやりくりということではございません。非常に大きな制度改正、体質を改善する意味での制度改正のあらわれかと思います。
  118. 正木良明

    ○正木委員 当然ですよ。制度改正しなければ、そうあっちへ持っていったりこっちへ持っていったり予算ができるわけないじゃないですか。そういうことも含めて前年度並みに抑えるのです。地方交付税と国債費を除いた一般歳出においては〇・一%減額しましたと国民に公言している。それはしかし内容は違いますよ、やりくりしているじゃありませんか。からくりという言葉が悪いならやりくりにしますけれども、しかし私たちにはからくりとしか思えないな。だから、そういう形でこの試算だって今後どういうふうに変わってくるかわからぬ。余り時間がありませんから次へ進みますけれどもね。  また、えらいこと考えましたね、大蔵大臣。財政民主主義を破壊するために大蔵大臣になったみたいな感じですね。この赤字国債の借りかえ問題、銭がないからしようがないと言うけれども、今まで歴代内閣がやってきたことは全部こういうやり方ですよ。大平内閣のときに税収年度の変更をやりましたね。これも財政民主主義の破壊ですよ。法人税の税収の所属年度の変更をやりましたね。国債整理基金の繰り入れの中止をやりましたね。今度借りかえですよ。どんどん便宜的にあなた方はそういうことをなさっていく。こういうことを予想したから大平大蔵大臣時代、これは三木内閣のときかな、昭和五十年十月二十二日、大平さんとこのことをやり合ったのですよ、赤字債を出すこと。覚えていませんか。赤字債といわゆる四条債、建設債と言われるものとの違いは何か、それは借りかえをしないことです。いまこの借りかえ問題で国民の中で大変ですよ。証券会社の電話は鳴りっ放しだそうです。私の持っている国債はまた買い戻されるのかというのでこの借りかえ問題、大変なことになっているそうだ。  これは別として、このときに僕は言ったのです。幼稚な考え方というふうに専門家から見れば言われるかわからぬが、だれが考えても建設債の方は橋が残る、道路が残る、公園が残る、子孫に対してそのサービスを与えることができるから、六十年間子孫にそのツケが回ってもこれは何とかお許しをいただけるでしょう。だから、六十年で返しましょう。しかし、これはいわばそれ以外のものでありますから、何にも形に残らないものでありますから、この赤字債については十年で返します、借りかえは絶対いたしません。そこで、僕は大蔵大臣に言った。わかりました。一・六を六十倍したら約一〇〇%近くなるから、一・六%ずつの繰り入れ結構でしょう。しかし、十年で返すなら十分の一ずつ整理基金へためていかなければ返せなくなりますよ。大平さんの答えがここにはっきり出ていますよ。これは議事録ですからアーウーは入ってないけれども。要するに、赤字国債を返すためにまた赤字国債を発行するということになったら困りますので、できるだけ国債は発行を減らしていきたいと思いますから、これは繰り入れを一・六にしてください、こう言うてはるわけです。大体要約すればそういうことですよ、長々とおっしゃってはおりますが。  私はそんなに人間が悪いつもりはありませんけれども、こういう事態になってくると、もうそのときから十年来て返せぬようになったらまた借りかえたらいいわと考えていたのかなと思いますよ。人間の悪いやつならもっと深刻に考えるかわからぬ。いずれにせよ、これは大問題ですよ。どんなおつもりです、大蔵大臣。
  119. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは確かに正木さんと当時の大平大蔵大臣との一問一答があります。したがって、その方針、すなわちこの建設国債と赤字国債、四条債と特例債の差については厳然としてその借りかえをしないという規定を、毎年発行額をお許しいただくと一緒にそういう規定を設けて慎んできたわけです。しかしながら、あのようにして経済成長率がどかっと落ちてきた。そして五十九年度赤字国債の脱却というのは、残念ながらこれは断念せざるを得なくなった。その時点から私もこの国会における議論等でも大変注意をしまして、結論からすれば、負担増を求めるか、歳出を削減をするか、あるいはその償還のための財源を借換債に求めるか、三つの選択しかございません。しかし、その選択は、やはり財政制度審議会の小委員会等の意見を聞きながら、国会での議論等を通じて結論を出しますと、こういうふうに私なりに答弁を整理して申し上げておったわけであります。  そこで、財政制度審議会の小委員会の意見、そして国会の方では借りかえをせよとはおっしゃいませんでしたが、借りかえしかないではないか、こういう御指摘もあった。あれこれを勘案して、いわゆる努力義務を設けながら、この際借りかえを検討せざるを得ないということを先般の財政演説におきましても、また法律案としても提出をする、こういう事情に至ったわけであります。
  120. 正木良明

    ○正木委員 国会で借りかえをした方がいいなんという意見があったというと、これは国民が誤解をしますからね。私は言いませんよ。国会の中の自民党でしょう。違いますか。どうです。
  121. 竹下登

    ○竹下国務大臣 正木さんが借りかえがいいのじゃないかとおっしゃったことは全くありません。こんなことをしておったら借りかえでもするしかないではないか、こういうような指摘があったというふうに申し上げたわけであります。
  122. 正木良明

    ○正木委員 いやあ大したもんだ。そこで、私は、借りかえ、あの法律案は反対しますよ。反対の前提で物を言うのだけれども。  いままで発行したやつ、全部六十年償還に法律はなっていますね。これはちょっとむちゃじゃないですか。特例債を発行するときには、その年度その年度の特例債を出すという法律案を毎年改めて出しているじゃないですか。本年度償還の国債については借りかえさしていただけませんかと毎年だしたらどうです。それこそ、さっき総理がおっしゃったように、緊張する場面が毎年来た方がよろしい。
  123. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いまの議論は、精神的にはこれは私も同じ印象を受けたことがございます。部内の協議をする際にも、あのようにして我々がこの特例債を発行するたびに、なぜ一年ずつ発行してしかもその都度借りかえ禁止規定をつけるか、車ほどさようにこれは慎むべきものであるから、みずからに厳しく言い聞かせるという意味においても一年一年やるべきだ、こういう主張をお互いの質疑応答の中にもしたことがございます。  したがって、今度も私は、その方がいわゆる政治姿勢としてよくはないかという考えも持ちました。しかしながらい法体系自身の問題からも議論してみますと、事実この五十九年度発行分に借りかえ禁止規定をつけるというのはいかにも非常識だ。そうすると、これには借りかえ禁止規定をつけないとすれば、さようしからば今までの借りかえ禁止規定のついたものとの法制上の整合性がどうなるか、こういうような議論もございました。事実、借りかえの来るのが、過去の累積した借りかえ禁止規定のついたものの借りかえ時期が来るわけでございますから、やはりこの際努力規定を設けて、そして毎年それを予算編成の際に努力し、そして国会の場でこの議論を繰り返しながら、みずからに対して厳しく言い聞かせるという姿勢を持ち続ければ趣旨に沿うことになりはしないか、こういうことで最終的には判断をしたわけであります。
  124. 正木良明

    ○正木委員 私は、なおかつ十年にしてもいいと思っているのですよ、十年ごとに。借換債というのは十年債で借りかえるのでしょう。十年債のものについては十年債で借りかえるわけでしょう。そのたびにやるわけだ、法律を出して。それくらいの、要するにみずからを縛るだけのものを用意しておかないと、もう建設債と赤字債とのけじめが全くなくなるというような、法律が一本出てきただけでそうなってしまうということは非常に私は遺憾だと思うのです。どうでしょうか。  これはあなた、財政審だってそう言っているじゃないですか。このとおりしなさいとか、こうしなさいとか言ってないじゃないですか。「いずれにせよ、特例公債の具体的な償還方法については大量償還の始まる六十年度を目処に、幅広い角度からの議論を行い、なお検討を進めていくことが適当と考える。」こう言っているのです。六十年年賦と言うのですかな、六十年の償還にしてよろしい、そこまでまだ言ってないですよ。できるだけそういうことのないように財政努力を積み重ねながら、みずからに節度をつけていくような方法があるならば、それに従っていくべきではないかというふうに私は思うのですが、どうですか。
  125. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 今国会に五十九年度の特例債の授権をいただく法律を出しているわけでございます。その中で従来のように借りかえ禁止規定を置くかどうかということでございますが、先ほど来御議論いただいておりますように、借りかえを、六十年から始まる借りかえでございますけれども、借りかえを考えざるを得ない状況になっているということを政府は申し上げているわけでございますから、禁止規定を置くというわけにいかない。しかし、財政規律から申しまして、建設債と同じというわけにはもちろんいかない。そこで、努力規定を置くことを提案しているわけでございます。なるべくその借換債を発行しないという趣旨でございます。  五十九年の発行債につきましてそういう規定を置きますならば、今度それ以前の分についてどうかという、禁止規定がございますからこれをどうするかという問題に直ちになるわけでございまして、すぐ来る、もう六十年、六十一年に償還期が参ります公債について何も触れないで、五十九年に発行するもの、これは十年債でございますれば六十九年という先の話でございます、それについて努力規定に変えて、それより手前に来る、財政状況が当然厳しいわけでございますが、そういうときに償還期が来るものについて昔の禁止規定のままで置いておいていいかどうかというと、いかにも不自然でございますので、いろいろ財政審でも議論しましたし、法制局とも議論いたしましたが、ただいま御提案申し上げている姿が最善ではないかということで御理解いただきたいと思います。
  126. 正木良明

    ○正木委員 最善じゃないのですよ、それは。ですから、六十年に償還期の来る国債についてはこれを借りかえにするんだという法律を別に出せばいいのですよ。それで毎年議論すればいいのです。そうすべきです。特例債の性格というのはそういうものなんです。これは意見として申し上げておきます。  余り時間がありませんからぱっぱっと言ってまいりますが、要するに法人税の税率アップをしましたね。特に、資本金一億円以下は一%上げた、これは、中小企業に与える打撃というのは大きいと私は思いますよ。同じ法人税を増税ないしは増収されるということになるならば、ほかのことでやった方がよかったのじゃありませんか。  例えば退職手当引当金の問題は、これは前々から税調でも議論になっている問題で、一時党の税調も最初の案の中にはこれが入っていた、いつの間にか消えてしまいましたけれども。今回〇%が損金です。一わゆる非課税分です。退職手当引当金の四〇%ということは、そこの企業の四割の人たちが一斉にやめても払えるだけの引当金、こういう意味なんです。それはだから免税にしましょう、こういうことなんです。そんな状態なんて考えられますか。四〇%の人員が一斉にやめるというような企業はもう倒産ですよ。そのときに会社の方ではちゃんと別にこれを積み立ててあるわけでも何でもない、全部運用しているのですから。こんな金が残っているわけがありませんから、結果的にはそこの勤労者は退職金をもらえない。今までの例は全部そうです。  しかも、この退職給与引当金の利用は、資本金一億円以下の中小企業はわずか一七・三%、資本金百億円以上の企業が四一・九%もある。これを是正するということがどうなんでしょうか。党の税調では、現在の四〇%を三五%、五%引き下げるという案があったようです。私は、一〇%ぐらい引き下げてもいい、三〇%ぐらいにしてもいいと思っている。これだったら、やはり三千億くらい出てきますよ、増収。これはどういう都合で引っ込めたのですか。税調のことはわからぬと言えばそうだろうけれども、大体いきさつはわかるでしよう。
  127. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 退職給与引当金の問題につきましては、正木委員が御指摘のとおり、税制調査会の中でも毎年議論をいただいております。ただ、私ども考えておりますのは、この退職給与引当金の制度そのものについては各種の議論がございまして、現在の税制上の考え方は、これはいわゆる政策税制ではございませんで、やはり企業の所得を計算する上でのいわゆる企業会計の原則に従って、当期の原価に繰り入れるべき額を税法上あるいは税制上いかに評価するかという考え方でございます。  今の法人税法の考え方は、企業は退職金につきましては労働協約なり何なり労働組合との間で契約を結びまして確定債務を負っているものでございますから、当然ある部分は毎期毎期の原価を構成すべきものでございますが、これは一〇〇%積み立てておく必要はない。その考え方は、要するに一定の年の利回り率で割り引きまして、そういう確定債務に見合うべき額を現価に換算した場合に当期幾らに繰り入れるべきかという計算をしているわけでございます。  五十五年度に限度額を五割から四割に下げましたのは、高度成長期から安定成長期にかけまして、企業の従業員の平均在職年数が長くなる傾向がある、ということは結局、割り引かれる期間が長くなるわけでございますから、理論計算をするとそれが五割が四割でいいという結論に達したわけでございますが、最近また、定年制の延長等の状況がございまして、これが長くなる傾向がある。したがいまして、今後とも従来の考え方に沿って、企業の雇用の実態に即しながらこの繰入限度額というのは絶えず見直さなければならないということでございます。     〔委員長退席、松永委員長代理着席〕  非常に細かく言いますと、現在の四〇%の累積限度があるいは若干引き下げ得るという余地がないわけではございませんけれども、五十五年度に改正したばかりでございますので、いましばらく雇用の実態を見るということで、税制調査会の最終結論も、引き続きこれは検討する、来年度以降検討するということで、本年度の問題といたしましては、先ほど大臣も申し上げましたように、二年間の暫定的措置といたしまして法人税率の引き上げの措置を講じるという選択をとったわけでございます。
  128. 正木良明

    ○正木委員 まだまだたくさんやりたいことありますけれども、これはぜひやっておかねばならぬ問題ですので、ちょっと関西新空港の問題に移ります。  関西新空港問題については、事業主体となる特殊法人関西国際空港株式会社の設立が決まりました。関西新空港がようやく着工への入口にたどり着いたということになります。運輸省が新空港の基本調査を開始してから十六年、航空審議会が泉州沖候補地の答申を出してから十年の歳月が流れたわけであります。この間、さまざまな障害を乗り越えての政府の認知であるだけに、私といたしましては地元として非常に感慨深いものがございます。  海に囲まれた我が国にとっては、国際空港の果たすべき役割は大きく、また、我が国には二十四時間機能する国際空港は一つもなくて、諸外国から空も鎖国だというふうに国際非難が高まっていただけに、関西新空港の意義は極めて大きいと思います。  そこで、六十七年度目標の開港に向けて着実にその建設を進めていかなければならぬわけでありますが、そこで質問です。そのためには、六十年度以降の予算措置をどうするかが課題となるであろうと思うわけであります。公共事業全体の見直しを行ってでも早期完成を目指して予算確保が必要であると思いますが、まず最初にこの点を伺いたいと思います。総理、大蔵大臣、運輸大臣、お願いします。
  129. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 関西新空港の建設につきましては、現在の我が国の大型国際航空の稠密状況にかんがみまして、至急を要する課題であると考えております。しかし、これにつきましては、関係方面の御熱意や地元の御協力なくしてできるものではございませんし、また行政改革を実施中の今日でございますから、今までの公団方式によるパターンを追うことも、これは考えさせられるべきことでありました。そういう諸般の点を考えまして、最近は関西方面及び財界方面でも積極的な御熱意と推進力が生まれてまいり、また地元の府県、市町村におきましても、そういう機運がとみに醸成されてまいりました。この機をとらえまして政府といたしましても、できるだけ地元の御期待に沿うべく、よく調整を行って関西新空港着工へ前進してまいりたいと思っております。  そのために、ことしはまず建設母体をつくる必要がある、そういうことで関西新空港建設の株式会社をつくりまして、その株式会社方式により、いわゆる第三セクター方式によりまして、新しい試みとして建設の方面へたくましく前進してまいりたいと思っております。それに必要な経費を計上いたしました。地元の皆様方の御協力を切にお願い申し上げる次第であります。
  130. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 日本の国際空港が非常に不足しておりますことは、もうおっしゃるとおりでございます。現在でも大変おくれておる、たくさんな国々から日本に空路を開設したいと言ってきても受けることができない、こういう状態でございます。  したがって、六十七年、第一期分でございますから、第一期分の竣工を六十七年開港ということでもくろんでおるわけでございますけれども、これはもうなるべく早くやらなければならぬ。それには金がかかるわけであります。御案内のように、ただいまの計画では、大体一兆円第一期工事分がかかるという計算でございますが、そのうちの千二百億円を出資、八千八百億円を借入金、こういうことになっておるのでございますけれども、ただいま総理からもお話がございましたように、私どもは新しい試みとして民間活力を大いに使いたい、こう考えております。その反面、財政非常に窮屈の中でございますけれども、やはり政府あるいは地方公共団体、こういう方面も全力を挙げてこの財源の確保ということには努めなければならない。両々相まって、計画どおりないしはもう計画を早めるぐらいのつもりでこれをやらなくちゃいかぬ、かように思っておる次第でございます。
  131. 竹下登

    ○竹下国務大臣 六十年度以降につきましては、着工までの諸手続の進みぐあいでございますとか建設工事の進みぐあい等を踏まえまして、これは運輸省から国の出資等の概算要求がなされてきますので、具体的に申し上げますならば、その段階で新空港の効率的な建設、運営を進めるという立場に立って予算の調整作業を行う、こういうことになろうかと思います。
  132. 正木良明

    ○正木委員 空港整備法によりますと、国際空港というのは第一種空港ですね。これは国が設置する義務があるんだが、これがいろいろ変遷を経てきているわけです。例えば国際空港の中でも、羽田空港は全額いわゆる国の直轄事業、成田空港は公団方式、そして今度の関西新空港については第三セクター、特殊法人ということになっていますね。これに対する反対論というのはやはり地元にあるわけです。国がやるべきではないかという考え方が非常に強い。しかし私は、これしか方法がなければこれでやるよりほかに道がないと思うし、総理も民間活力というものを活用していくための一つのモデルケースとしてお考えになっているようで、それはそれなりに私もやむを得ないと思っているわけですが、こういう第一種空港、国際空港の整備方式というのは、今後もできるかもわかりませんが、やはりこんな方式で進んでいかれますか。
  133. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  ただいま御質問にもございましたように、第一種空港は国がつくるというのが原則だと思います。しかし、新東京国際空港については公団方式ということで法律を改正いたしまして、公団を入れたわけでございます。そこで今回も、基本的な部分は公団でやったらどうかということについても考え、また八月の概算要求の段階では、そのようなことで運輸省として考えておったのでございますが、公団新設ということについて行政改革といったようなことからいろいろ問題がありますことと、さらに、新しい方式による株式会社方式がよりベターではないかというようなことも考えられまして、これは地元にもいろいろな御意見があることもよく承知しておりますし、また正木先生も御存じだと思いますが、随分いろいろと経緯がございます。議論をいたしました結果この新方式でやってまいろう、こういうことに決意をして、地元の地方公共団体並びに関係の民間の方でも御賛成をいただいた、こういうことでございます。  私は、今後一種空港をどうするかということについては、今確たるものが決まっておるわけではございませんが、できますならばこの新関西空港を成功させまして、そういう方式でやっていくことが一番いいんだというようにしたいものだ、かように考えておる次第でございます。
  134. 正木良明

    ○正木委員 そこで、民間活力の活用ということですね。これは、総理は盛んにおっしゃる。その中でシンボル的なのは戸山ハイツの問題と今度の新空港ということになりますね。これは、そういうモデルケースになるものであるというふうに解釈してよろしいですか。
  135. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう意気込みで今一生懸命やっているところでございます。
  136. 正木良明

    ○正木委員 そこで、運輸大臣、大事なことは採算性の問題なんです。資金計画だとか採算性という問題についてはまだまだ不透明な点が多いわけでありますけれども、新会社の採算ということについてどう見通しをお持ちになっていますか。
  137. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  会社はこれから発足させるわけでございますが、空港本来の事業だけをやっておったのでは、これは相当大きな出資金がなければ、借金が非常にたくさんあった場合にはなかなか収支が成り立たない。といって、空港の使用料だけをべらぼうに高くするというようなことも、これは国際慣例上もできませんし、でございますから、附帯的な仕事、いわば金のもうかる仕事、営利になる仕事をこの会社がどのようにやっていくかということが非常に大きなキーポイントであろうと思います。  したがって私は、会社ができましてから、これからお建てになるという場合に、最大限度にその営利性、企業性というものをお考えをいただくということだと思います。それで、そうやった結果、どういうものが出せるか、その次第によって出資金の割合とかそういうものが逆に今度は決定されてまいる。できるだけそういういろいろな企業を、それこそ自由濶達に民間活力を活用してお考えをいただく、こういうことでございますので、これは大変金のかかる仕事でございますから非常に困難とは思いますけれども、非常に絶望的なものであってどうにもこれは見通しが立たないものであるというふうには決して考えておりません。明るい希望を持って努力をしてまいりたい。そして、どうしても足りないところは出資金というようなものがどうして出せるかというような形になろうかと思っておるものでございまして、まだ確たる計画というものは、したがって今は立っておるわけではございません。
  138. 正木良明

    ○正木委員 そこで、総理に確認しておきたいのですが、先ほど申し上げたように、この国際空港は第一種空港でありまして、国際空港は国がやらなければいかぬものなんですが、この国際空港の整備は第一義的には国に責任がある。まずそれを確認しておきましょう。総理
  139. 松永光

    ○松永委員長代理 運輸大臣。(正木委員「いやちょっと、権威のあるものにしたいから総理」と呼ぶ)指名しましたからどうぞ。
  140. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 総理から私に答えよということでございますので……。  私は先ほど申し上げましたが、建前は、第一種空港は国がつくるべきであるという建前をとっておるということには間違いございません。しかし、例外は法律の認めるところで、法律で決めるということにいたしておるわけでございます。
  141. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 運輸大臣の御答弁のとおりです。
  142. 正木良明

    ○正木委員 そういうことになりますと、これはむしろ国が、地方自治体であるとか民間に対して協力を求めるという立場に立たれるわけです。それで、この第三セクター方式によるところの空港整備ということが行われるわけなんです。そのためには、やはり採算上の問題がございますので、空港の建設や運営に対して国が特別かつ積極的に税制や財政上の助成措置というものをとってもらわなければならぬだろうと私は思うのですが、その点、総理、大蔵大臣。
  143. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、私からお答えをいたします。  今の正木委員の御主張を要約すれば、通常であれば国の出資金によって設置、運営さるべき第一種空港について、株式会社の場合は、これは基本的な資産の取得資金も含め借入金に頼らざるを得ない、そうなれば支払い利子負担等が当然大きくなってくる、こういうことになろうかと思います。  私どもといたしましては、まずはこの特殊会社設置法案、これは今運輸省で検討されておると思います。したがって、特別の事情にかんがみまして、税制面において特殊会社の財務体質を健全化して関西新空港の建設と運営が円滑に進むよう何らかの工夫ができないか、現行税制との整合性の中でこれは十分検討しなければならぬ課題である、こういうふうに考えております。
  144. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国際空港の建設は、第一義的には国がやるべきものであるという基本的観念は持っております。ただ、現在の財政需要あるいは成田空港建設のいろいろな経験等々も考えてみまして、現在に合ったような新しい方式はあり得ないものか。行革をやっている最中であり、民間活力の活用という強い御示唆もございました。そういう諸般の変化を踏まえまして、今度は株式会社方式でやるということを決めました。しかし、やはり国がある程度主体性を持ってやらないと、これはなかなか進み得ないものであるということはよく承知しております。しかしながら、事業の効率性とか経営の巧緻、そういうような点を見ると、役人の仕事というものには一定の限界があるということを我々はよく心得ております。そういう面から、民間の経営手腕あるいは地元に対する調整力、地元の御協力、そういうものを得るためにこういう方式もまた考えた面もございます。  民間側とすれば、金を出しても配当金がそう容易に返ってこないようなほとんど無利子の出資なんというものはなかなか民間はやれるものではない、そろばんに合わぬことだ、そういう御議論もあると思います。ありますけれども、また一面におきましては、その地方におきましては、長期的に見ればかなり潤ってくることも出てくることでありましょうし、新しい事業も出てくることでもございます。そういう面から見まして、地元にもやはりこれはある程度の御協力も願い、また経営手腕の御発揮も願いたいという考えに立って新方式をやったのでございます。  それを具体的にどうするかということは、新しい法律をつくる際にどういう権限やらどういう資産構成、運用をやるかということになります。現在運輸省におきまして、逐次民間の活力を生かすように、許認可事務をできるだけ少なくするように、人事そのほかに対する政府統制をできるだけ緩和するように、あるいは国が必要最小限の協力はやるべきときはやらなければならぬ、そういうような諸般の面において運輸省中心に今各省と折衝しておる最中でございまして、いずれ法律を御提案申し上げますので、いろいろ御審議願いたいと思います。
  145. 正木良明

    ○正木委員 法律の作成段階であるというならば、なお私の意見としてお願いを申し上げておきます。  こういうことなんです。関西新空港は陸岸から五キロ離れた海上に人工島をつくりまして、そこへ飛行場をつくるのです。したがって、騒音問題とかなんとかという問題から内陸部と違って相当有利な立場に立つので、二十四時間開港の空港ということになるわけです。     〔松永委員長代理退席、小渕(恵)委員長代理着席〕 ところが、埋め立てですから、これは土地です。この上に立つ建物とかなんとかは全部償却資産、減価償却の対象になる。土地は償却資産の対象にならぬです。強いて言うならば、その護岸だけが償却資産になる。そうすると、特殊法人といえども株式会社でありますから、法人税ががばっとかかってくるんです。地方税としての固定資産税ががばっとかかってくるんです。仮に、今運輸大臣がおっしゃったように採算がとれたとして、利益が上がったとしても、その中からもう五〇%近い税金が引かれた後だと、これは八千八百億円も借金をするわけですから、それの償還ができなくなってくるんです。  だからこの問題については、私は先ほど確認したのは、第一義的には国に責任がおありになるのですかということを確認した。それを確認していただいた。そして同時に、これがあなたのおっしゃっている民間活力を利用するという面においてはシンボル的なものであるというふうに言われた。だから、これでつまずきますと、民間活力を活用するという問題、これから所々方々でいろいろな形で行われるでありましょうけれども、大変な失敗例になってしまう。結局はもう採算がとれなくなってしまって、こういう危ないものには手を出せないというふうに民間の方が考えてしまうということになると大変なことになってしまうと私は思いますのでね。  同時に、国の直轄方式と公団方式と、それからもう一つ今度の第三セクターという方式がある。公団方式ならば税の減免があるわけです。ところが第三セクターの株式会社、特殊法人ということになってくると、それが今ないので、これを何らか公団に準じるような形で特例的な措置を考えていただきたいというのがお願いなんです。これをやりませんと、この関西国際新空港はうまくいかなくなるし、民間団体やまた地方自治体が出資をするということに二の足を踏むということになりかねない問題であるというので、この点に御配慮を十分にいただきたいというのが私のお願いなんです。大蔵大臣も頼みますね、税金の問題ですから。
  146. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 関西国際空港株式会社は通常の民間会社ではないので、法律による特殊法人という考え方でございます。したがって、今おっしゃったようないろんな点を特例的なものを考えていかなければ成り立たないというふうに私ども考えております。どういう項目をどういうふうに入れるかという点を今、実は研究をいたしておる次第でございまして、いずれにいたしましても、この会社法という法律を出す、特殊会社で今考えておりますので、おっしゃっておるような点、その他いろんな点があると思いますが、十分考えていかなければならないと私どもとしては考えておるのでございます。  なお、政府の中におきましては関西空港閣僚会議がございますので、関係各省の御協力をお願いをして、成り立っていくように、できれば配当ができるように持っていく、そういうふうにいたしたいというふうに考えております。
  147. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ですから、通常であれば国の出資金によって設置、運営さるべき第一種空港をこのような形でやるという特殊事情、そこには今御説明なすったいわゆる借入金依存とかそういう問題が出てくる。したがって、税制面においてはやはり可能な限りの工夫をこれにはしなければならぬ、こういう考え方であります。
  148. 正木良明

    ○正木委員 時間がありませんから、これまたいずれ運輸委員会等で重ねてやりたいと思いますけれども、自治大臣にお伺いしておきたいのですが、地方公共団体がこれに対して出資をする場合、財源措置について国はどのような対応を行う考えかということです。要するに、起債を認めるのかどうか、どの程度認めようとしているのかということです。
  149. 田川誠一

    ○田川国務大臣 今度のような空港の場合、やはり地方にも出資の面で負担もございますし、それから反面、地方もそれ相当の利益も享受するわけでございます。そういう意味で、この地方公共団体に対する財源措置というのは、要求がございますれば地方債などでこれは考えなければならない、こういうふうに思っております。  それから税制上の措置は、これは国税と一緒に地方税は考えていかなければならぬ。まだ今、これから協議をしつつある段階でございます。
  150. 正木良明

    ○正木委員 たくさんまだお聞きしたいことがあるのですが、はしょりまして、一つは、ある種の監督権限は国にありまして、そして会社がある。やはり地域の住民にとりましては、いろいろな苦情があるだろうと思うのです、その都度その都度。これを受けてもらうところ、それをきちんとしてもらわなければならぬわけなんですね。これは会社へ持っていっても、国から監督を受けているから国の方へ行ってくださいとか、国の方へ行けば会社の方へ行ってくれというふうにたらい回しされるおそれがあって、非常に地元では危惧をしているわけなんで、できればその法律作成のときに、地元で各自治体からの代表であるとか地元の代表であるとかということで、そういう苦情を処理できるような協議会みたいな機関をつくってもらいたいという要望があるわけなんです。こういう点、運輸大臣、どうでしょうか。
  151. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 空港そのものも大きなプロジェクトでございますし、アクセスの問題もあるわけで、これまた大きな問題であろうかと思うのでございます。そういった意味で、地元の一般住民の皆さん方の御協力がなければこれはできない。私ども、新東京国際空港で大分懲りておるわけでございますが、こういったことがないように、今お話しいただきました、御質問いただきましたのも一つの方法でございますし、何らかの形でこういうものが一苦情をどこへ持っていっていいかわからないとかいうことでないように、地元の皆さんによくおわかりをいただくように何かの方法を考えたい、かように存じておる次第でございます。     〔小渕(恵)委員長代理退席、委員長着席〕
  152. 正木良明

    ○正木委員 それから、地域整備の問題についていろいろと御質問をしたかったのですが、地域整備の問題は建設大臣にも御関係の深い問題だと思いますし、国土庁にも御関係の深い問題だと思いますが、これはひとつよろしくお願いしたいと思うのです。  総理、私も今の空港問題に関心を持ってずっと調べましたが、世界じゅう、空港ができたからその地元がよくなったという例はほとんどありませんな。鉄道の駅ができますと、その付近はうんとよくなる。例えば東海道新幹線の新大阪駅というのがあります。あんなものは野っ原の上にぽつんと建ったんだ。こんなところに駅をつくってどうするんだと我々は言っておったが、今やもうビルが林立して大変ないんしんぶりですよ。国際空港羽田、何十年たっているかわからぬけれども、今でもあそこは草ぼうぼうですよ。だから、いかに空港をつくったからといって、それだけであの地域がよくなるとは限らないので、地域整備をどれだけやっていくかということの方がむしろ付近の住民にとっては最も大きな関心のある問題なんです。したがって湾岸道路の問題、近畿自動車道の問題、それから連絡橋の問題も、今これは自動車だけにしようとしているけれども、あれは南海線を何か利用するようでありますけれども、それは鉄道と併用橋に、海上五キロの空港へ連絡する橋、鉄道も入れるようにしておいてもらった方がいい。そのほか、いろいろな施設をやはり地域整備の中でつくってもらうということでなければならぬのです。  そうでなければ、この空港ができた地元以外は全部通過都市なんです。今でもそう言っている。それは、空港ができればこの南大阪に金が降ってくるような話をしているけれども、実際は金が降ってくるんじゃなくて排気ガスが降ってくるだけだと言っている人が随分たくさんいるわけですから、これはやはり地域整備という問題をここで考えて、いろいろ細かいことはまた別なチャンスに要望をいたします。恐らく原田憲さんも応援してくれるだろうと思いますけれども、この点についてはまだ別の機会にいろいろと細かい点を御質問申し上げたいと思います。何とか、総理がお考えになっていらっしゃるいわゆる民間活力を活用してというシンボル的なこの関西新空港については、ひとつせっかくのお骨折りを賜りますようにお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  153. 倉成正

    倉成委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  武藤山治君。
  154. 武藤山治

    武藤(山)委員 私は、日本社会党を代表して中曽根総理大臣と初めてここで政治の論争ができることを大変光栄に思っております。民主政治はディスカッションの政治でありますから、大いに議論を通じて日本のために世界のためにいささかなりとも貢献をしたい、そんな気持ちでいまここに立ったわけであります。  まず最初に、政治とは何か、総理大臣の考えている政治とは何かという認識をまず先に伺いたいのであります。
  155. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一言で申し上げることは非常にむずかしいのでございますが、一言で申し上げろとお命じくださるならば、私は、政治とは終局的に文化に奉仕する諸般の統合調整作用である、そう思っております。
  156. 武藤山治

    武藤(山)委員 政治とは何かということについて、いろんな学者や過去の哲学者や思想家がいろんなことを申し上げておりますが、私は、やはり政治というのは国民統合の力、国民包摂の力、これが政治だと思うのですね。いかに国民を統合するか。したがって、その統合が間違ったときには国民に大変な迷惑と犠牲をかけると思うのですね。ですから、最高権力の座にある総理大臣の役目というのは大変重要である、こう考えるのでありますが、私のその見解に対してはいかがでしょうか。
  157. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 確かに国民をまとめていく力であると思いますが、単に抽象的にまとめていくというだけではなくして、やはり人類文明というものとの関連があると思うのです。価値に関係した部分があると思うのです。そういう意味において、私は文化に奉仕する、そういうところが政治は最終目的と考えるべきである。これは私、年来考え、私の著書にもこのことを明記しておるところでございます。
  158. 武藤山治

    武藤(山)委員 しからば、総理の考える文化とは何ぞや。
  159. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは非常にむずかしいことでございますが、やはり人間が持っておる生命力といいますか、この生命力の発揚、創造による人間固有の価値の実現、これが文化ではないかと思います。
  160. 武藤山治

    武藤(山)委員 その価値を実現するためには、政治の形態が必要であります。政治の真の目的は、しからば何ですか。
  161. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政治の形態にはギリシャの昔からいろいろなことが言われて、哲人政治であるとかあるいは独裁政治であるとかあるいは民主主義政治であるとか言われておりまして、そのときそのとき人間が選んできておりますが、私は、現代文明のもとにおいてやはり最善のものと考えられるのは民主主義形態による政治である、端的に言えば議会政治を中心にした政治である、このように思っております。
  162. 武藤山治

    武藤(山)委員 そこまでは私と意見が一致いたします。やはり議会を通じて民衆の意見というものを吸い上げ、民衆の利益を擁護するのが政治の目的である。政治は法をつくる力である、法をつくる力ではあるが、その法は力で何をつくってもいいという力であってはならないと私は思うのであります。最近の中曽根総理の姿勢は、政治は力なり、力は正義なりという発想が非常に強く感じられるのであります。政治は力で、法をつくる力ではあるが、ただ単に数で、力で法秩序をつくってはならぬのであります。その力の背景には理念がなければなりません。理念は正しい理念でなければなりませんと私は考えるのであります。中曽根首相の政治に対する理念とはいかなるものであるか、御説明を願いたい。
  163. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点も一致しておると思うのです。私は、施政方針演説のときから「たくましい文化と福祉の国」をつくろう、そういうことを申しておるのでございまして、たくましいということと文化と福祉ということを我々の理念として持っておるわけなんでございます。力をなぜ必要とするかと言えば、その「たくましい文化と福祉の国」をつくるために、ある意味における力が必要である、実行力が必要である、そういう意味において力というものを考えておるわけであります。
  164. 武藤山治

    武藤(山)委員 理念が福祉と文化に奉仕することである。しかし、実際のあなたのやろうとしている五十九年度予算、あるいはあなたの言外に漏らす数々の言辞は、その方向に進んでおらぬのであります。  後で具体的にその数々は指摘いたしますが、今までの総理大臣、私は、池田総理以降、佐藤、田中、三木、福田、大平、鈴木各総理大臣と論争をしてまいりました。中曽根先輩が八人目の論争を挑む総理大臣であります。  これらの総理の哲学というか、キャッチフレーズというか、そういうものを今ちょっとここにメモしてみたのでありますが、池田総理は、殖産興業、所得倍増、国民の生活に最重点を置こうと考えた。佐藤総理は、寛容と忍耐、米軍占領から沖縄を復帰させようという大きな仕事を目指した。田中総理は、決断と実行、列島改造、日中国交回復を彼の大きな目玉に据えた。三木総理は、アメリカで若き日を送った彼は、アメリカ型近代政治、政治の近代化、合理化というところに大変な情熱を注いだ総理であると思います。福田総理は、経済の専門家として、負の遺産であったインフレーションをいかに処理するかに腐心をし、経済の番人福田赳夫とみずから言いました。大平首相は、中庸の政治、連帯と協調、こういう発想で政治をやったと思うのであります。鈴木総理は、私のルーツは平和である、平和憲法は擁護せねばならない、平和憲法は試してみる価値のある憲法であるという思想を堅持した総理大臣だと思います。  私のこの指摘は、ある程度間違った点もあるいはあるかもしれない。歴代八人の総理大臣のこの哲学、さて現在の総理大臣はいかなる基本的な理念を持って国の最高権力を行使しようとしているのか。いろいろ考えてみると、小さな政府、大きな軍備、これも中曽根政治のねらいかな。あるいは、これからいろいろ具体的に論じようとする中身を見ると、どうも改憲志向、国家主義的思想に彩られた思想によって政治を引っ張っていくんじゃないか。国粋主義とまではいかないが、民主主義に反する国家主義的な思想が中曽根政治の特質じゃないのかなと見えて仕方ないのであります。反論いたしますか。
  165. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今のような歴代内閣の標語で、もう一つ私の場合を申し上げれば、やはり二十一世紀に向かっての準備をやる内閣である、そういうことをおつけ加え願いたいと思います。戦後政治の総決算ということも言ってまいりました。戦後政治の総決算という考えはもちろん持っておるわけでありますが、それは別の表現で言えば、二十一世紀に向かっての準備をやる政治である、そういうふうに御認識願いたいと思うのであります。  私は、こういうふうに体も大きいし声もでかいものですから、ややもすれば野蛮的な荒々しい人間のように思われるかもしれませんが、根は優しい文化性の豊かな人間である、そう自分では思っておりますし、また、政治自体というものは、ある意味においては、トップリーダーになりますと個性の発揮であるとも思っておるのです。蒸留水というものは味もそっけもないもので、人工的ミネラルウオーターも本当はうまくない。やはり富士の白雪みたいな天然のわき出る清水のミネラルを多分に含んだものが、水としては極上の水である。それと同じように、政治も個性を無視して政治はない。池田さんには池田さんの個性があり、吉田さんには吉田さんの個性がございました。それを善なる方向へ活用して、その個性を一〇〇%発揮して、仕事が終わったらさっさとやめていく、これが私の理想としておるところであります。
  166. 武藤山治

    武藤(山)委員 私が指摘した改憲志向、国家主義、小さな政府、大きな軍備、これを肯定しましたね。そういうことなんでしょう。(「肯定なんかするもんか」と呼ぶ者あり)いや、それにつけ加えてとさっき言いましたから。私の意見に意見があるかと言ったら、今のことは否定しないじゃないですか。
  167. 倉成正

    倉成委員長 中曽根総理、もう一度答弁してください。
  168. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 つけ加えてと申しましたのは、政治というものは終局的には文化に奉仕するものでありますと申し上げた。そのほか今いろいろ歴代総理のモットー、標語、目標等お話しになりましたから、今、私が申し上げた文化に奉仕する、そして「たくましい文化と福祉の国」をつくるということにつけ加えてあえて申し上げたわけでございます。そういう意味で申し上げたのであります。
  169. 武藤山治

    武藤(山)委員 私は、政治というものは、科学に仕え、哲学を謙虚に具現するものが政治だと考える。したがって、この論争をすると、文化がいいのか科学に仕えるのが本筋なのか、また大論争になって時間がなくなりますからやめますが、私が一番心配するのは、例えば「権力の思想」という書物を読んでみたら東条英機論が載っておった。その中に、「彼には、軍事的知識に関するもの以外は、世界をその内面から衝き動かしている哲学・思想・信仰に関する柔軟な理解力が欠如していた」、勝つことだけを軍事力のみによって生き抜こうとする発想が東条英機の失敗を招いた。  この文章を読んではっと感じたのは、戦後の総理大臣で軍人宰相は中曽根さん一人なんです。初めてなんです。海軍少佐と聞いていますから、軍人内閣総理大臣と言っていいのでしょうか、それとも、内務官僚を経験し、警視庁にもおり、香川県の県警本部にもいたようでありますから、警察畑出身の総理大臣と規定していいのか、どちらでしようか。
  170. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、海軍には従軍しましたが、それは二年現役の主計士官として行ったのでありまして、いわゆる職業軍人ではございません。国の非常緊急の際に、一般の国民の皆さんと同じように軍務に奉仕したものでございます。武人と言うには値しないものであるだろうと思います。  私の「康弘」という名前は、弘法大師の「弘」と家康の「康」をつけたのが「康弘」という名前だと、私はつけた人から聞きました。
  171. 武藤山治

    武藤(山)委員 田川自治大臣、あなたは十一月二十一日の新聞報道によりますと、中曽根氏は「だれが、どう言おうと軍備拡張論者です。『力の対決』でこそ平和は維持できるという考え方。そういうこわさが、あの人にはある。」こういう演説をぶったのが新聞に出ていますね。今でもそう思っていますか。
  172. 田川誠一

    ○田川国務大臣 一時そういうふうに思ったこともあることは事実でございまして、しかし、昨今の中曽根総理の発言、姿勢を見ますと、そういうあれはないというふうに見ております。
  173. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは、中曽根内閣の連帯責任の立場に立つ大臣になったからそういう見方に変わったのか、中曽根さん自身がそういう方向に変わりつつあると感じているのか、どちらにウェートがあるのですか。
  174. 田川誠一

    ○田川国務大臣 これまでもしばしば申し上げましたように、政党が違っておれば、やはり政党の存在意義を鮮明にするためには、政党と政党との違いをはっきり言わなければならない。そうすれば、他の政党に対する批判を申し上げなければならない。これは何も自民党ばかりではなくて、御見に対しても厳しく批判をしてきたつもりでございます。そういうことでありますから、政党の党首についても全く同様でございます。
  175. 武藤山治

    武藤(山)委員 もう一つ。これは総理、ごらんになりましたか。週刊新潮に「「皇太子が中曽根政治に危惧」というレポートの「皇室事情」」というのが出ていますね。この週刊新潮を読んだかどうか、全然見でないかどうか。
  176. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 読みました。読みましたけれども、その記事を読んで、皇太子が私をそういうふうにごらんになっているとは思っておりません。
  177. 武藤山治

    武藤(山)委員 皇太子自身がそう思っているかどうか、それも確認する法はありません。しかし、これが大衆の前に何十万部と売られているという事実を軽視してはなりません。勝手であってもこういうことが報道されれば、国民にいろんな誤解を生むことは確かですよ。  その一部分をちょっと読んでみますと、「中曽根首相の背後に軍靴の響きを感じとっているのではないかと推察し、それゆえの危惧表明であったと納得する。」そして、「皇太子は「わが国皇室の伝統は武ではない。学問である」と明快に対応する。」こう書いているのです。ですから、国民の一般が中曽根総理のタカ派的な、不沈空母だの、三海峡封鎖だの、海上路確保だの、ぽんぽんと出てくる言葉の中からこういうことを感じるのは、皇太子ひとりではないと思うのですよ。やはり国民の多くの者がそういう危惧を持っているのですね。田川先生もそういうことで、十一月の段階では、軍拡論者で怖い、こう期せずして言ったんだろうと思うのです。  私は、悔い改めれば人間というのは許されると思うのです。したがって、みずからが心の中に持っていた物の見方や考え方に反省をし、ちゅうちょなく正しい方向にかじを変えるというのは、神でない人間は許されると思うのであります。ですから、こういう危惧が起こらない政治を中曽根総理にやってもらいたい、これが私の本問題を取り上げた趣旨なのであります。いかがでございましようか。
  178. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その週刊誌の記事のその後出た週刊誌を読みますと、それを情報らしく漏らしたという方が、その後その記事は必ずしも正確でないような、どっちかといえば訂正を意味しているような記事が次の号か次の号に出ておりました。私は、恐らく皇太子はそんなことは言われなかったのを、不用意にだれかが事おかしくやりたいというような意味もあって書いたのではないかと思っております。皇室をそういう政治の中に巻き込むおそれのあるようなことは、我々は慎重にしなければならぬと思っておるのでして、私は、その点は非常に注意深く慎重なる態度をとらなければいけない、(「適当な論議じゃないよ」と呼ぶ者あり)そう思っておるので、今の武藤さんの御質問もそういう御配慮のもとになされたとは思いますが、お互いにそういう点は注意していきたいと思っております。
  179. 武藤山治

    武藤(山)委員 後ろの方で「適当でないよ」というような、寛容でないやじがあります。私は、民主主義の最大に重要なことは、異論に対する寛容であり、相対主義的態度だと思うのです。これが崩壊したときに民主政治はつぶれるのであります。この程度の言論をそういう発想で封殺しようという発想自体が、ファシズムに通ずる危険な発想なのであります。自由民主党の諸君の中にはそういう危険な思想があるのですよ。全部ではないが、ほんのわずかでもあるのですよ。そういう人たちをいかに総理は総裁としてコントロールし、取捨選択をするか、それが私は総理大臣や総裁としての大きな任務一つだと思うのであります。  そういう意味で、私は今の自由というもの、それを育て、本当に自由な人間が生存をしていくために、イギリスのコールが言ったような、各人の自由な行動が各人の自由を傷つけない自由なる社会、それは万人の人格の完成を目指す以外にないというトーマス・ヒル・グリーンの思想体系、私の哲学の根本をなしているのはトーマス・ヒル・グリーンとコールであります。イギリス型の思想なのであります。でありますから、そういう自由というものに対して本気で真剣に政治家は常に探求をしなければいけないというのが、私の思想の根底なのであります。でありますから、そういう意味でぜひひとつ今のいろいろな不安や心配というものを除去するように、総理に心がけていただきたいという希望であります。  そこで、一年間しかまだ総理大臣をやっていない総理に、あれもこれもすべてうまくいったかいかぬかと責め立てるのは酷だと思います。まだ短い一年でありますから、いろんなことをやりたいけれどもやれないという問題や障害があると思うのであります。しかし、自民党の政権は今大体二年で交代であります。福田さんも、三木さんも、田中さんも、鈴木さんも大体二年で交代であります。そういたしますと中曽根さん、ことし一年しかあと残らない。そこで、この一年間で自分がなすべき、なしたいと思うことをなし遂げようという焦りもあると思うのであります。そういうことを知りながら、この一年間の中曽根政治を振り返ってみて、何が特色であるか。私は、三つの問題点を中曽根政治を見ながら感じているのであります。  一つは、民主主義の崩壊の一歩に中曽根政治が続くこととなるのではないか。民主主義の危機を感ずるのであります。第二は、福祉国家論の崩壊を意味するような気がしてなりません。せっかく築いた福祉国家という発想が、じりじりと後退をする政治ではないのか。第三は、恒久平和主義が放棄される政治になるのではないか。この三点であります。この私の中曽根政治の特色三点について、総理はいかような感想をお持ちですか。
  180. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今のお話を聞きまして私の方からの感想を申し上げますと、言論の自由でありますからお許し願いたいと思いますが、非常に教条主義的な、定型的な独断に満ちた御判定ではないか、そういうふうに思っております。よく左翼ジャーナリズムが私を決めつけるときの決まり文句は大体そうです。つまり、平和を破壊するものである、民主主義を破壊するものである、福祉を破壊するものである。破壊主義者みたいに言っておるのです。  私は、今新しい建設を目指して、二十一世紀に向かって古い日本と決別しつつ、新しい創造的なみずみずしい日本をつくっていこう、そういう考えに立って諸般の改革を断行しております。古い日本と決別するためには、行政改革のような厳しいこともやって、政治に機動力、対応力を回復しなければならない、あるいは財政改革という厳しいことも国民にお願いをして、同じような二十一世紀に向かって十分機動力、対応力のある財政力を回復しなければならぬと思うのであります。  平和の問題につきましても、日本は今までのように、ややもすればエコノミックアニマルと言われて、世界に向かっても何となしに指くわえて見ているだけで、蚊帳の外に置かれていた。にもかかわらず、国際連合やその他に対する拠出金ではアメリカに次ぐ大金を出しておる。この大金を出しておるのが何ら有効に使われていないではないかという不満が国民の中にありました。それだけの経済力というものあるいは国際的な資金供給力、これをばねにして日本の政治的発言権を回復して、我々の子供たちが世界に生きている喜びを感じさせたい、そういう考えを持ちまして、国際国家日本という面に今前進し始めておる。  平和の問題にいたしましても、SS20という具体的な問題につきまして、アジアの犠牲において解決させない、そういう大きな決意を持ってウィリアムズバーグでも発言もし、戦争を起こさせない、そして核軍縮を有効に実践させる国際的仕組みをつくって安心のいけるようにしよう。平和や軍縮は演説だけでできるものではない、そういうことを前から申し上げておりますが、そういう国際的仕組みをつくっていく、安心のいける保障を具体的につくっていく、そういうことで今まで努力してきておることも申し上げたとおりでございます。  そうして、今教育に手を染め始めまして、二十一世紀を目指した創造的な日本及び日本の子供たちをつくっていこう、今のようなぎしぎしした試験にばかり追われている子供たちに、心のゆとりと生きる喜びを回復させよう、そういう教育の改革に今前進し始めておるところでございます。  そういうような過去への決別と二十一世紀に向かっての準備を今やっているときでありますから、静態的な時代における総理大臣とは違います。でありますから、一方のまだ御理解願えない国民の皆様には、一体どこへ連れていかれるのかという御心配があるかもしれません。しかし、それは今申し上げたように、施政方針や今武藤さんに対する御返事ではっきり申し上げているように明確に私は申し上げ、申し上げたことは実行してきておるつもりでございます。  力ということを仰せになりましたけれども、やはり我々が持っておる政治価値、理想というものを実行しなければ、これは政治には何もならぬのでありまして、実行して結果を残すところに政治家固有の仕事があるわけであります。そういう意味において、実行するためには力と推進力が要るわけであります。その力と推進力を獲得するためにいろいろなことをやるということは、政治家が当然やるべきことでありまして、演説だけして何にもしないでのんべんだらりとしておったら、これは税金泥棒と言われるでありましょう。そういう面から見ても、積極的に努力しているということをぜひ御認識を願いたい。こいねがわくは、武藤さんのようなこういう達人が、生きた目で人間をあらゆる表面から、三百六十度の角度からつかまえていただくようにお願い申し上げる次第であります。
  181. 武藤山治

    武藤(山)委員 私の指摘を、左翼教条主義はそう言うと言いますが、私が言っているのじゃないんだよ。これは日経の首相施政演説もそのとおり、朝日新聞も「首相演説に四つの疑念」、各新聞の社説が、今私が取り上げているようなことをみんな言っているのですよ。では、新聞はみんな左翼教条主義なんですか。私は、そういうことを言うと新聞が怒ると思いますよ。(中曽根内閣総理大臣「あるものはそうです」と呼ぶ)あるものはそうですか。  いずれにしても、しからば具体的に聞きましょう。なぜ私が民主主義の危機を感ずるか。それは一つは武器技術輸出問題の取り扱いであります。レーガン大統領にお会いになったときに、国会の議論もしない、国会に相談もしない。立法府は武器輸出禁止の原則をかなり議論をして決めておる。技術は武器でないと言い逃れするかもしれない。しかし、武器の一つの部類に入ることは、あの論争から見ていれば当然であります。これは立法府軽視じゃないかというのが私の一つの疑念であります。なぜ立法府にかけて、もっと十分武器技術輸出については論争をしないのか。  人事院勧告の実施をしないということは、法秩序無視であります。人事院制度というのは法律でできているのであります。これは立法府の意思として決めた制度なのであります。それを行政府の一長官である総理大臣が、そういうことをみっちり立法府と相談をして物事を決めない政治は、三権分立の政治なんでしょうか。民主主義というのは三権分立の政治の基本を失わないということが民主政治なんです。私が民主主義の危機を感ずるというのはそういうことなんです。  教育臨調の問題も、今は臨調という言葉は取り消しているようでありますが、行政府の長なら何を決めても、何をやってもいいというこの発想は、司法、行政、立法、三権分立の政治の根幹にかかわる態度なのであります。そういう意味で私は民主主義の危機を感じている、こう言ったのであります。  秦の始皇帝は、朕は国家なりと言いました。総理大臣は国家だというような思い上がった発想が少しでも見えるということは、日本の政治の将来が危ういのであります。そういう意味で、私は民主主義をしっかり守る政治をやってもらいたい、具体的にそう思ったから言っているのであります。これは教条主義でしょうか。
  182. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 朕は国家なりと言ったのは、私の知識では、秦の始皇帝じゃなくてルイ十四世であります。フランス語でレタ・セ・モア、そういうふうに私は記憶しております。(武藤(山)委員「いや、秦の始皇帝も言っています。中国の人物中国史に載っておるよ」と呼ぶ)レタ・セ・モアという言葉を使っておったと思います。  それから、武器技術の問題はこの国会でも随分いろいろ御議論がありました。政府は、安保条約の有効的活用という解釈におきましてあのような措置をとったのでございまして、これは国会の決議に違反しているとは考えていない。国会における多数は我々を支持していた、そのように考えております。  それから、そのほか幾つかの点をお挙げになりましたが、人事院勧告につきましては、国家公務員法というのは昭和二十二年であったと思いますが、私はあれを最初に審議した一人であるのです。マッカーサー司令部へ行っていろいろ草案をつくるのを相談して、ウイリアムズからいろいろ忠告を受けて、そしてあのとき受田新吉君も一緒にやりましたが、何々したり何々したりという言葉を入れたのは、初めて法律にそういう言葉を入れたのは、私と受田君が相談して入れたのであります。そういうことで国家公務員法、つまり今の人事院制度の基礎をつくったときに私も関与しておりましてよく知っておるのでございますが、あの中には、勧告は尊重する、しかし、最終的にはこれは財政事情やその他を全部考えて国会及び政府が決める、そういうふうに書かれておるのでございます。その国家公務員法を我々は忠実に解釈しつつ、必要やむを得ざる措置としてああいう措置をとったのでございます。それは当時総務長官からもいろいろ申し上げたとおりでございます。すべて法治国家のもとに、この法及び今までの国会の慣習等もよく遵守して私は政治をやってきていると思うのでございまして、それに違反したり、背馳しているようなことはやっておらない。  ただ、意見が違うことはあります。政策の違うこともあります。それを実行するためには多数決で、国会で表決で決めていただいたということもあります。しかし、それは議会主義の当然のことなのでございまして、それすら否定して、それを力であるというふうに言われるならば、これは多数決原理に反することになりはしないか、そう思うのでございます。
  183. 武藤山治

    武藤(山)委員 私は、多数決原理に反する、そんなことを一つも言っていないんですよ。あなたの政治のやり方は民主主義の原理原則を踏み外す危険があるから、民主主義が崩壊する一歩を感じる、こう言っているわけなんですね。  しかし、あなたはいろいろ合弁解したからその論争をしませんが、もう一つ、福祉国家が危ないと言ったのは、最近の福祉に対する予算の削減状況を見てどうですか。まず老人の負担を先にふやす。そのうちには、今度は医療一割本人負担をやる。国保補助は、千四百億円市町村の負担にことしから回す。さらに、児童扶養手当は府県にことしから回そう。そして、育英資金も利息を取ろう。何と弁解しようと、これは福祉国家を目指してきた、いままで積み上げてきた福祉というものが瓦解をしていく一歩一歩じゃありませんか。これを福祉国家論が崩壊していくという過程だと見でなぜ間違いなんでしょう。私はそう思うのですね。しかし、あなたに答弁させるとまた時間なくなるから、その次のことも中身を言っておかぬといけませんから。  恒久平和主義の放棄ということも、私はしみじみ感ずるのであります。抑止と均衡という理論は、恒久平和の思想とは相入れない発想なのであります。そういう点を国民はやはりひしひしと感じているんじゃないでしょうか。そして特に危険なのは、そういうものに反対をし、総理がやろうとしていることに反対をする空気というものは、これは国家に反するものである、国賊である、戦前そういう空気がばあっと出た。河合栄治郎先生などもそれで大変苦しんで、あのすばらしい自由主義の体系をつくるときも、ついに監獄に入れられた経験もある。ああいう相手に対する寛容さがなくなったときの政治の怖さというものをひしひしと感ずるのであります。  時間がありませんから、次に、総理はことしの元旦に、今の軍縮論はセンチメンタルな感情論が先行して、冷静な科学的知識に基づく具体的、現実的組み立てというものが非常に弱い、そういう面を補強していきたい、こう元旦の年頭記者会見で言っておりますね。  私は、抑止論とは何かということを私なりにいろいろ勉強してみると、核戦争で勝てることを前提として核のおどしを操る外交政策、核戦争によって勝てるということを前提にして、相手を核のおどしを操って外交政策をやる、これが抑止論のまず基本の第一だと思うのですね。相手をおどしていくのですから、相手が恐怖を持つようなことをやらなければならない。相互の恐怖心を助長して軍拡競争にならざるを得ない。軍拡競争を永続化させる論理ですね、抑止と均衡の考え方は。そういうことが本当に戦争を防止するためになるのだろうか、中曽根さんの抑止と均衡の理論を聞かしてください。
  184. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 正月のたしか記者会見、テレビにおきまして、そういうような類のことを申したことは事実であります。それは私は、日本のいわゆる軍縮論というものを見ておりますと、世界における軍縮論と非常に性格が違っている面がある。これはヨーロッパへ行って軍縮をやっておる日本の外交官から私のところへ私信をよこしてくれたその中にも、そういうことを指摘しておりました。  要するに、欧米における軍縮論というものは、的確なおのおのの核兵器性能あるいは相手の意図、それの影響、すべてのものを組み立てて、科学やら心理学まで総合的に組み立てて、そして現実的な議論で軍縮論というのは進められておるのです。しかし、日本における軍縮論は、SS20が何千キロ飛ぶとかどの程度の爆発力を持っているとか、そういうようなところをあんまり勉強しないで、非常に感情的に、核は怖い、「ザ・デー・アフター」というような印象で軍縮論が展開されておる。それが無益とは言いません。それは一般的な世論をつくっていく上に大きな意味を持っておりすが、少なくとも専門家と言われる人たちの軍縮論というものは、もっと突っ込んだ科学的知識を基礎とした軍縮論でなければ、国際的に通用しないということを申し上げておるのであります。  そういう意味で、軍縮論というものは、一面において一般にアピールするようなやり方と同時に、もっと専門的な、兵器の性能やら体系全体を論じた具体的な軍縮論というものが必要である。その中でみんなが安心できる的確な措置というものが一つの決め手になるのでありまして、そういう意味において、保障措置、現認措置というようなものまで論及して、それを具体的にどうしてつくり上げていくかというところまでいかなければ具体的軍縮論とは言えない。ああすればいい、こうしてほしいということは、みんな願っていることなんです。だれでも願っていることなんです。問題は、それを起こさせないために何が大事であるかと言えば、安心のいける措置をお互いがどうして認め合うかということなのでありまして、それにはお互いが現場を見詰め合う、現場を検証し合う、そして縮小均衡に持っていく。均衡論が拡大ばかりというふうにおっしゃいましたけれども、必ずしもそうでもないのであって、縮小均衡へ持っていくのが軍縮論の我々の趣旨なのでございます。
  185. 武藤山治

    武藤(山)委員 軍縮論が科学的知識に基づいていないということは、大変この軍縮運動をやっている人に対する侮辱だと思うのですね。今はもう核の新戦略だとか、豊田利幸先生や湯川先生の弟子たちが次から次へ、岩波新書でも、核と軍縮の問題の書物はいっぱい出ていますよ。僕らも全部そういうものを少しずつ読んで、核の恐ろしさというのを身につけたつもりでおります。  では総理、どのくらい核知識があるのですか。一メガトンの核爆弾は長崎、広島の何倍で、何キロトンの破壊力があるのですか。
  186. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 数学の試験みたいなことでありますから答弁は差し控えさしていただきますけれども、しかし問題は、広島、長崎に落ちたのは、あれはたしか二十キロトンでしょう。一メガトンと言えばその千倍、千キロですわね。ですから、掛ければ幾らと出てくると思います。
  187. 武藤山治

    武藤(山)委員 科学、科学とあなたがおっしゃるから、きょうは今SS20のデータとメガトンの怖さを数字であなたに知ってもらいたいと思うのです。  一メガトンというのは八十倍ですよ、広島、長崎の爆弾の。あれは十二・五キロトンですから。今五十メガトン爆弾ができちゃったんです。五十メガトンというと四千倍です、一発で広島、長崎の。もし抑止によって戦争が防げるとするなら、こんなに核爆弾をつくる必要はない、今の五分の一か十分の一の核爆弾があれば地球、人類全部殺せるのですから。それをお互いが軍拡競争をするからこんなに核爆弾どんどんふえてしまって、今アメリカ、ソ連両国はどんどんふやして六千六百五十六メガトン。これを広島型原爆に換算をすると五十三万二千四百八十倍、五十三万倍の爆弾ができた。それをアメリカと両方が同程度持ってしまっているのですよ、力の均衡だ、バランス・オブ・パワーだということで。  それと危険なことは、この核爆弾というものは数量によって計算できない。バランス・オブ・パワーというのは、数量によって同じだということを常に考える発想なんですね。したがって抑止と均衡による恒久平和などというものは絶対できない。それよりも、いかにしてこの核軍拡を和らげるか。アメリカかソ連か、どっちかのしり馬に乗るんじゃないのです。日本の平和憲法の精神を世界に広めるという立場が、日本国民の期待している政治なんじゃないでしょうか。しかし、中曽根さんの頭の中には、そんなこと言ったって、日本はヤルタ協定で、第二次世界大戦でアメリカが占領した地域なんだ、ヤルタ体制でがんじがらめでアメリカの言うことを聞かないわけにいかないのだ。あのときにルーズベルトとスターリンとチャーチルは、ソ連の占領した地域はソ連の支配下、そういうことを承認をしてしまった。アメリカの占領地域はアメリカの金庫の中にばちっと入れられた。このヤルタ体制は今でも生きていると見るか、あるいはもうこれは死んだものと見るのか、それによってまた日本の政治の進路、総理大臣のやれる範囲、いろいろなものが私はそこから分かれてくると思うのであります。総理は、ヤルタ体制はいまだ生きていると見るのか、死に物になったと考えるのか。
  188. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本政府及び私は、ヤルタ体制とかヤルタ協定とかというものは否定しております。承認しておりません。我々は関係もしないで、やみ取引かどうかは知りませんが、そんなものを、決められたものに我々は拘束される必要はないと考えております。
  189. 武藤山治

    武藤(山)委員 しかし、アメリカはヤルタ協定を承認しておりますね。そこのところ、北方領土問題は、しからば認めていないという立場でアメリカに対してはどういう説明を、あのヤルタ体制は、ルーズベルトとスターリンで決めたことは無効ですよ、こう言うのか。ソ連側は、ヤルタ体制によって占領した地域は我が方の支配ですよという主張、今でも解決済みと言うのはそれでしょう。  そうなると、日本の軍備の問題も平和秩序の確立の問題も、このヤルタ体制で縛られていると私は見ているのです。アメリカの支配したこの日本というものは縛られていると見ているのです。総理は、縛られていない、おれは認めない、こう言うのですね。ちょうど社会党が、目をつぶっていれば自衛隊がなくなると思った一時があるように、目をつぶってもヤルタ体制はあるのですよ。生きているのですよ、総理。したがって、それをどう薄めるかがこれからの日本の政治の大きな課題だと思うのです。これを国際の舞台で、ヤルタ体制というものは不当なものであり、領土拡張主義の約束であるから無効だということを国際的に認めさせない限り、これはいけないと私は思うが、法制局長官はそれをどう思うかね。
  190. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、アメリカであろうがソ連であろうが、どの国に対してもヤルタ体制などは承認していない。我々にはあれは無効である、そういうふうに考えておる。合法であるなどとは思っておりません。
  191. 武藤山治

    武藤(山)委員 合法でなくて、力でそうされておるという問題ですね、北方四島。では、北方四島は、認めていないからということでどうやって返還できるのですか、どうやったら返還できると思いますか。
  192. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 たゆみなく粘り強く交渉して、平和裏に解決しようと努力しておるのは、ごらんのとおりです。
  193. 武藤山治

    武藤(山)委員 いずれにしても、いまの中曽根総理の抑止論という発想は、大変危険な発想であって、アメリカの顔を立て、アメリカにおつき合いをするという発想が強過ぎるために、独自の世界人類のために貢献する平和論が出てこない。主権国家は、余り主権にしがみついていることによって人類の不幸を招く危険がある。いまのアメリカとソ連はそういう姿勢をとっている。アメリカの秩序なりアメリカの体制が世界を支配するまでは、真の平和は来ないと考えている。ソ連はソ連で、ソ連の共産主義が世界を支配しない限り、真の平和は来ないと考えている。とするならば、人類は不幸ですね。人類は四十七億いるのですよ、アメリカ、ソ連の地球じゃないのですよ。そこのところを、日本の政治は、人類のための地球を、地球は人類の共有財産だという発想に立って、もっと全体の安全保障、例えばパルメ委員会が共通の安全保障ということを言い出して、この間がなりの国の政治家が集まって、ヨーロッパで軍縮会議をやりました。その中の決定された幾つかの項目に、私は大変共感を覚えたのであります。  その一つは、核戦争に勝利者はない、共滅の戦争だ、この共滅は米ソが共滅するだけではない、人類共滅の戦争だ、地球を破壊する戦争になる、この認識では一致をいたしました。したがって、抑止論にかわるものは人類共通の安全保障論しかない、こういう結論をこの間のヨーロッパにおける軍縮会議は決めております。そして、その人類全体の平和を実現するために、住民大衆の政治的意思表明をもっともっと重要視しようではないか、一人一人の人間が平和の心を持つ運動を全世界に広めようではないかということが第三項ですね。そして第四番目には、地球規模における平和は南北間の所得格差の縮小ということが不可欠である、腹いっぱい食えなければ紛争は絶えない、そういうようなことをなくしていこうではないか、そういう大きな人類史的、地球的規模における軍縮こそ人類を救う道であるということを決めたのであります。  日本は平和憲法を持つ。しかも、世界でも名立たる経済大国日本は、そういう立場から世界人類に貢献をすべきじゃないのか。そういう発想こそ、私は今日本の政治家が追求せねばならぬ大きな課題だと考える。総理は、依然として核の均衡と抑止論をとり続けるのですか。
  194. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が前に書きました「新しい保守の論理」という本をお読みいただきますと、私は、終局的目的は人類武装、民族非武装である、そういうことを書いております。また、この国会でも言ったことがあると思います。人類武装、民族非武装、それが理想である、そういう方向に我々は全力を振るって近づけたい、営々として努力していきたい、そう思っておるのです。  しかし、現実の問題を見ますると、甚だ残念なことでありますけれども、今世界が、日本の周りにおきましても、自由世界と共産圏に割れてきておる。我々は、共産主義の生活や思想には賛成できません。そして自由民主主義を信奉して、市場経済、こういうものを中心にして、そして一番人権と自由を尊重した政治と社会を築こうと考えておるものであります。そういう意味において、アメリカやイギリスやフランスのような、自由主義を信奉し、かつ今申し上げたような考えに一致している国々と提携していくということは、これは自然交流が盛んになるのは当たり前のことであります。  日本は戦争に負けて、瓦れきの中から立ち上がって今日まで来たわけでございますが、追いつくためには、何か対象目標がなければ、具体的追いつきはできない。そして追い越す、そういう努力を営々と三十八年かかってみんなやってきたわけです。その対象にあったのは、ソ連でもなければインドでもない。やはりアメリカやイギリスやフランスのような、自由主義、民主主義、人権、そして平和を考えておる国々を中心に頭に置いて、それに北欧のスウェーデンやデンマーク等も頭に置いて、あるいはスイスもある意味においては頭に置いて、みんな営々として努力してきて、今日の自由主義、民主主義あるいは人権、福祉というものを考える日本が出てきておると思うのです。市民社会の岩盤が厳然とでき上がったと私は申し上げましたが、非常にすばらしい、日本の二千年の歴史の中でも特筆すべき時代がこの三十八年の時代であろうと後で指摘されるであろうと私は言ったことがあります。そう思っております。  そういうようなことは、やはり先進国というものを頭に置いて、負けまい、そして追いついて追い越して、もっといいものにしようという努力の焦点があったからできたのであって、それはアメリカやイギリスやフランスやドイツやそのほかの国であったわけです。ですから、そういう国々と提携しつつ日本はこれだけ現実的に発展したのであって、そういう具体的目標がなかったら、ここまで来れなかったのではないかと思っております。今後も、我々はそれらと肩を並べましたが、それ以上の新しい未知の世界へ今日本は踏み出している、そして日本独特の東洋文明、東洋的精神的価値を持った国をつくり上げようと思って、今挑戦しているというのが現実です。  そういう理念と現実を見詰めつつ平和を維持していくという点から見ますと、現実の社会は、先進国の間におきましては、やはり遺憾ながら片っ方ではNATOとワルシャワ条約、あるいはこちらの方におきましては日米関係あるいはソ連、そういう構図が残念ながらできておる。そうしてその中で、いかに戦争を起こさせないかという仕組みを営々と考えていままで戦争を起こさせなかったわけであります。  幾つかの危機がありました。あるいはキューバ事件のときのケネディの問題であるとか、あるいはポーランドのこの間の事件であるとか、あわやというようなことが幾つもあっても、人類の良心、自覚がそれを起こさせなかったのであります。それはやはりそういう仕組みがあるからであります。ホットラインもその一つでありましょう。そういう現実的仕組みをさらに強化しつつ、戦争を起こさせない方向に具体的に進んでいくというのが私の考えで、その基礎にあるのは、やはり抑止と均衡というものによって残念ながら平和が維持されている、これはもう冷厳に見詰めたらそう考えざるを得ないから、やむを得ず冷厳に見詰めつつそれに対応しておる。しかし、これを拡大することはよくない、これを縮小均衡に持っていこうでありますから、ゼロオプションであるとかあるいは軍縮、削減であるとかということを我々は常に考えて主張もしておるという状態なんです。  しかし最近、遺憾ながら極東におけるソ連軍の増強というものはかなり顕著に行われておりまして、潜在的な脅威というものを我々は感ぜざるを得ない。潜在的な脅威というものをできるだけ減殺していくようにお互いが努力して、ぜひとも、より平和な地域にアジアの地域も持っていきたいと考えておる次第です。
  195. 武藤山治

    武藤(山)委員 結局中曽根首相の考え方は、アメリカとソ連の行司役になろうなどという発想は毛頭ない、もうアメリカ陣営にどっぷり浸って、アメリカとソ連の核拡大競争にけちをつけず協力をしていく、こういう姿勢なんですね、評価してみると。私たちはそういう……(「そんなことは総理は言っていないよ」と呼ぶ者あり)いや、そういう評価をしているので、総理が言っていると言っておらぬ。  いずれにいたしましても、私は、核の抑止力は平和と安定のためにはならない、長期的な平和の基礎をつくるためには、この発想を変えることが正しいと考える。抑止力への依存ではなくて、信頼醸成措置をいかにつくるか、米ソ両国の信頼関係を一歩一歩どう築くか。できるならオーストラリアのシドニーあたりペソ連の代表とアメリカの代表を招待して、中曽根総理が調停役になって、日本で嫌だというならそう、日本でよろしいと言えば広島か長崎で、世界人類のための平和会議を、米ソ両首脳を呼んで、中曽根先生が行司役をやったらいかがでしょうか。日本民族はそれを望んでいると思うのですよ。いかがでしょうか。
  196. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 武藤さんのお考えは、拝察するに、いわゆる非同盟中立的発想の上に立っていると私は思うのです。私は、非同盟中立的発想の上には立たないのであります。ですから、そういう基本的な立場が違うと思います。ですから、アメリカとソ連の間に行司役になろうとは考えておりません。前から申し上げておりますように、日本はその間に仲介をするというような立場ではない。我々は日米間に、日米安全保障条約という独立を維持するための基本的条約関係を結んでおるわけであります。そして、アメリカの核の抑止力のもとで平和を営んでおるものでもあります。甚だ遺憾ながら、現在は世界の構図はそういう状態になっておるわけであります。そういう状態のもとにあって、両方の間に中間的な等距離のような関係にありつつ仲介者になるという立場は、これは私は矛盾してくるだろうと思います。  しかし、だからといって我々は、アメリカに一辺倒でくっついて、盲従しているというものでもありません。我々には日本の哲学があり、日本の憲法があり、日本国民の意思というものがあります。その日本国民の意思と日本民族の願いというものに立って政府というものは存在しているのでありまして、その間にあって日本の経済的繁栄を維持し、太平洋を中心にする六百億ドルの大きな貿易量によって日本はこれだけの繁栄を維持している、また、世界における日本の貢献、繁栄というものも、それは自由世界というものを中心にして、相協力しつつ主として日本は発展してきたという面もあります。  その間におって共産圏との交流も次第に広げてきて、日本と中国との間は、体制の相違にかかわらず、今や模範的な平和共存関係に入ろうとしておる。非常に貴重な関係だろうと思っておる。共産主義、資本主義の異なる体制を持ちつつも、日中両国の間はこのように友情を持って二十一世紀まで進もうというのは、これは世界における一つのモデルであるとも私は思います。非常に大事なことであると思っておる。こういう関係にほかの国との関係も、できたら持っていきたいと思っておるのであります。そういう立場は、しかし、日米安保条約の基礎の上に立つ日米提携を基礎にして行われておる、中国がそれを認めつつこれが行われておるということも、ぜひお考え願いたいと思います。
  197. 武藤山治

    武藤(山)委員 中曽根先輩が永久に総理をやるわけじゃありませんから、私の危惧は、今ごく近視眼的な、ミクロな政治を眺めている論争ですから。しかし、歴史は悠久であります。人類は悠久に生きねばならぬのであります。その生きる力を一人一人の国民が本当に希望する方向に指導する政治は、長く政権の座につけるに違いない。しかし、国民が危惧をし、不安を感ずる政治は、神の裁きを受けるに違いない。東洋では神と言わぬ。天の裁きを受けるかもしれないということだけ私は感じるのであります。  あなたと議論しておりますと次の議題に入れませんから軍縮論はやめますが、我々は科学的にいろいろなことを考えるがゆえに、湯川秀樹博士あるいは多くの世界の科学者が言うように、核は絶対悪だ、そういう思想を持たない限り人類は救われないぞということは、私はやがて歴史が証明すると思うのであります。特に、民主党の大統領候補モンデール、私は、ひょっとするとレーガンが負けてモンデール内閣になると思うのであります。大統領になると思うのです。そのときに、彼の外交政策、「民主党の外交政策」をちょっと読んでみると、核を一方的に廃棄するという方向を示しているのであります。そうしなければ、共産主義国家とアメリカとの間の平和共存というものはなかなか難しい。私は、したがって、レーガンとだけロン、ヤスと言って仲よくいつまでもレーガンの世界戦略にくみしていくということは、日本の将来にとって賢明ではない。やはりモンデールのような進歩的な考えを持った大統領があるいはできるかもしれない。できたときに、日本の政治のかじを変えなければならぬのであります。そういうことも頭に置いて、やはりもっと慎重な姿勢が望ましいと思うのであります。  さて、次は財政問題に入ってまいりますが、財政再建という意味は、どういう青写真を頭に描いて財政再建という言葉を総理はいつもお使いになっているのでしょうか。――いやいや、それは数字を聞いているんじゃないのだから。財政再建ということを総理はどう考えているかという本当の常識論です。
  198. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 財政再建という言葉は、私はもう使わないんです。鈴木前総理のときにお使いになりました。私は財政改革という言葉を使っておるのであります。  財政改革の基礎には、昨年八月でありましたか発表いたしました中期的な経済指針と展望という、あの経済政策が基本にありまして、あの経済政策の基本の上に立って財政的構築を行わんとしておる。いろいろなことが書いてあり、いろいろなことを言ってまいりましたが、その一つの目標として、六十五年に赤字公債依存から脱却するということを一つの目標に掲げて、そして努力をしておるということであります。
  199. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、昭和六十五年に赤字公債発行がゼロになることが財政再建かどうか。総理は再建という言葉は使わない、財政改革であると言うのでありますが、今常識的には、皆財政再建、財政再建という言葉を使っておる。総理だけは、おれは別だ、こう言うのです。この発想が、総理はオールマイティーだという発想に通ずる大変危険な発想なんですね。物の発想が素直でないのですね。おれだけは正しいんだ、オールマイティーなんだ、こういう発想の精神がどうも片隅にあるのですね。  しかし、それは批評になりますからやめますが、大蔵大臣、六十五年に赤字公債がゼロになったときが財政再建なのか、真の財政再建とは、どういうことまでを解決したら真の財政再建と考えるのか。大蔵大臣の私見で結構ですから。
  200. 竹下登

    ○竹下国務大臣 財政改革、こういうことは、要するに今総理は、当面、六十五年度に赤字公債から脱却するということを努力目標とする。だが、私は私なりに、わかりやすく言えば、財政改革とは、すなわち財政が経済に対して対応力をつけることを財政改革、こういうふうに申し上げております。
  201. 武藤山治

    武藤(山)委員 ということは、赤字公債はもちろんなくなるが、建設公債の方も国の借金であることは変わりないのであるから、建設公債もある程度減額できるような情勢、それが経済の調整機能を果たし得る、財政が経済支援に発動できる状態、そんな状態を頭に描いていいんでしょうか。
  202. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、日本社会党のこの考え方も、大体第一期をいわば赤字公債からの脱却、そして第二期を建設国債も含めた公債依存度の低下、そういうことがすなわち経済に対する刺激効果、対応力というものが出てくる。ただ、年限に多少の違いがあるということと、借りかえ問題がちょっと違う、あとは大体似ているな、こういうふうに考えております。
  203. 武藤山治

    武藤(山)委員 資料を三部用意しましたので、事務局を通じて総理と大蔵大臣と企画庁長官にお配りしていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  204. 倉成正

    倉成委員長 どうぞ。後で委員長にお忘れなく。
  205. 武藤山治

    武藤(山)委員 はい。委員長の分はないのでありますが、では河本さん遠慮してください、委員長に。
  206. 倉成正

    倉成委員長 どうぞ、結構です。
  207. 武藤山治

    武藤(山)委員 財政再建という言葉を使って、いろいろ財政の苦しさ、借金が百二十二、三兆円になってしまう、さらに地方財政の借金が五十兆を超えた、合わせて百七十兆円を超えた借金ですね。一年間の利息だけで恐らく地方自治体のを含めますと十二、三兆円。これは大変な事態であることは間違いありません。だれも否定できません。この借金を六十年間で返そうというわけであります。大変だ、大変だと言っているだけでは名案は浮かんでこないので、実はコンピューターをはじいて四つのケースを一応試算をしてみたわけであります。  一つは、国債の借りかえをしないで、増税もしないで-これ実体臨調の意見でしょうね、国債はふやすな、そして増税はするな。この増税なしの案でいきますと、国債依存度は六十四年度までは二八%前後で推移する。六十五年度からは減少する。そして、七十二年度には依存率が一〇%に下がる。特例公債のピークは六十四年度になります。そのときの特例公債発行額は十兆七千億円。そのときの公債発行合計額は二十・六兆。それでいきますと、昭和七十二年に赤字公債がゼロ、こういうことになります。「増税なき財政再建」という言葉をもし数字であらわすと、こういう答えになるのですね。昭和七十二年。したがって、六十五年にはとても無理な相談だという答えが明瞭であります。  第二のケースで、来年一兆円税収増を図る、これでいきますと、六十年度から公債発行が減り始めて、そうして昭和七十年度に赤字公債がゼロになる。来年一兆円増収策を図れば、七十年には赤字公債ゼロにできますよ。  これが一案、二案であります。  我々がこれを計算する基礎は、経済成長率名目六%、税の弾性値十年間は一・一、十年先は一、税収の伸びは六・六という計算になります。大体大蔵省の試算と幾らも基礎は違わない数字ではじいてみたわけであります。こういう計算をして二〇二〇年まで計算をしてみたわけであります。そうすると、二〇二〇年には国債の総合計は五百二十五兆三千六百億円になる。しかし、そのときの国債残高のGNPに対する割合は現在よりも低い、五十九年度予算よりも低い、こういうことになります。そして国債依存度は、予算に対して一〇%程度の国債依存度になる財政になることが可能である。それがその表の一であります。でありますから、「増税なき財政再建」という土光臨調の号令を六十五年度に実現できると総理はお考えになりますか。
  208. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その線に向かってもちろん努力をしておりますが、「増税なき財政再建」というのは、五十九年度予算についてこれを守ってまいりますと、私は言明しておるわけであります。
  209. 武藤山治

    武藤(山)委員 こういう計算をやってみますと、竹下大蔵大臣、ある程度心配のない財政――これは年々一般歳出が五%ふえるという前提ですからね。五%ずつふやすという前提でやっておるわけです、一般歳出は。それは、税の伸びが六・六になりますから、一般歳出を伸ばしてもこういう枠内におさまるのですね、計算してみると。そうすると、大蔵省としては国債依存度でいくのか、いわゆるGNP比のパーセントで適切な規模、許容範囲を見るか、一般歳出に対する国債の割合で一応見るか。財政健全化の一つの目安としてどちらの数字を大蔵省としては尊重しようかと考えるか。それによっては余り驚くに足りないのですね、経済成長が六%から六・五、政府の見通すようにいければ。その間にゼロ成長がぱたっと一回あったら大変なことが起こりますが、大蔵省の試算はずっとそのまま経済は六・五でいくと見ていますから。我々の方は六と見ています。それで、こういう数値になるのですが、財政再建のめどを本当に六十五年でやり通すという決意なのか。これは、もう専門家から見たらとても無理だ、そういうことは大増税をしない限りどうにもにっちもさっちもつかぬという答えが出てしまうんだ。大蔵大臣としてはどうお感じですか、目下。
  210. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この武藤委員の御提出になりましたものも、まあ言ってみれば仮定計算であります。私どもも仮定計算を出しておるわけでありますが、仮定計算というのは、言ってみればお一人お一人の考え方に基づいて何種類でもできるわけです。が、これも一応六%あるいは六・六名目成長率をお考えになっておりますから、これはそれなりの、私どもが六・五として仮定計算したものと同じ程度の、権威があるという言葉はちょっと適当ではないかもしれませんが、参考になる資料だというふうにまず前提を置いて考えますと、結局、私ども今六十五年度の問題を申し上げておりますのは、一つは、先ほど総理からお答えがござました、いわゆる「経済社会の展望と指針」というものにおいて指摘されたものを、その中の一部である財政の上に投影して考えて、努力目標として掲げておるわけであります。  したがって、やはり私は、この努力目標が従来といささか変わって、どちらかといえば自由民主党が少し緩やかな案を出して、日本社会党さんの方がもっと厳しくやれ、これは最近はちょっとその傾向が攻守所を変えたような感じもいたしますけれども、やはり今、私どもの今日までの経過からすれば、その努力目標というものを前提に置いて、歳出歳入あらゆる努力を払って、そしてお互いの問答の中で、されば、いわゆる「増税なき財政再建」という言葉もお使いになりましたが、歳出削減あるいは歳入あるいはその両者の組み合わせというものを議論をしていくべきものではないかな、こういうふうに考えております。
  211. 武藤山治

    武藤(山)委員 自民党より社会党の方が少し緩やかな再建案ではないかという感じを述べられました。  なぜそういう感じを持つに至ったかというと、もはや国債が百二十三兆、経済にビルトインされちゃった、いや応なしに。好むと好まざるとにかかわらず、経済の中にこれだけの額のものがはめ込まれちゃっているわけですね。この事実は否定できない。この中からどう財政を再建するかという論争をする以外に、それはもう論争になりませんから。そのときに、我々側は権力を持っていない。自民党は権力を持っておる。自民党の思うことは何でもできる。何でもできる場合にやられそうなのは何かといえば、軍備は伸ばしても社会福祉や教育はばたばた切られるという心配、これが我々野党に強いのであります。  現にそうなんであります。結局、各省庁に一括一〇%概算要求を切ってこいとやられれば、補助金のうんと出ている厚生省なんていうのは、一番先にやり玉にやられるのは当たり前であります。どうしても福祉が切り下げられる。教育予算がばりばりと切られるわけであります。それを防ぐためにどうしたらいいかという苦悩の策であります、この案は。したがって、前提は、教育や社会保障の一般歳出を減らさないという前提でこれは計算しておるわけであります。皆さんの方は権力を持っていますから、多数決で何でも決められるわけですから。こういうことを歯どめをかけなければ、私たちの考える方向に一歩でも近づいてもらえないわけであります、残念ながら。  野党というのは、言うなれば、俗論を言えば、不満の表明、要求の表明で終わってしまうのであります。相手が相互主義で、寛容で、お互い語し合った答えを一緒にやっていこうやという総理大臣ならば、対話で実りが出るのでありますが、残念ながら――大平さんのときには私たちは、こんな状況のときに減税を要求するのは我々として心苦しい、労働四団体の皆さんの要求はわかるが我慢してくれと、私は四団体の政策担当者に説得をいたしました。そのかわり、減税でなくて雇用をふやすために予算を出してもらおうじゃないか。その当時の労働大臣は、ここにいる防衛庁長官です。栗原さん。雇用増進のために雇用者十万人を救う案を労働省としてのんでくれ、そのかわり減税という要求を私はおろさせる。栗原さん誠実な人ですから、大平さんの対話路線のもとであの十万人雇用創出が実現したのです。正式には十万九千人であります。さらに大平さんは、四十人学級制度、これを日本の教育の効果を上げるために踏み切りましょう。十二月三十日、予算の最後の夜中に、大平総理は四十人学級制度を踏み切ったのであります。決断をしたのであります。私は、そういう野党と与党の心の通じ合う政治こそ本当の議会政治であり、民主政治だと思うのであります。  そういう意味で、実はこういう試算を総理の前に提示してみて、教育や社会保障が削られない範囲内において財政再建というものはできないものなのか、その点はいかがでございましょうか。
  212. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 本年度予算におきましても、できるだけそういう配慮はしたつもりでございます。しかし、財政事情というものはもう予想以上に厳しい状況にございまして、武藤さん御指摘のように、国債費だけでもことしは九兆千億円、地方に対する交付金がたしか八兆八千億円、十八兆、約十九兆近くというものが、もうほとんど天引き的に取られてしまう。そういう中で財政をやりくりしなければならぬということを考えてみまして、しかも一般行政費はマイナスを立てるという苦しいやり方でやりまして、その範囲内でいろいろ各方面に御苦労をおかけし、御迷惑もおかけしておるわけであります。  その中でも、社会福祉関係あるいは教育関係というものは最大限の配慮はしつつありまして、この程度ならば我慢していただける、また、これを行うことが乱診乱療を防ぐ道にもなる、これは老人医療の制度のやり方を見まして、そういう経験も積みまして、実際的な案としてお願いをしているという状況なのでございまして、実際は、それでも今防衛費と社会保障費との比率は一対三です。フランスあたりは一対一だったと記憶しております。(武藤(山)委員「そんなこと聞いてないのですよ、総理、今私が聞いているのは。余計なこと言い過ぎるよ。時間をみんなあなたが食ってしまうんだよ」と呼ぶ)そういう面から見れば、日本の防衛費と社会福祉との比重というものは、世界でもまだまだ社会福祉費というものは非常に多く取ってあると言えるのではないかと思っております。
  213. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理は自分だけ言いたいことをさんざんとってしまって、時間がどんどんなくなってしまうのですね。もっと簡単に答えられるはずですよ、今私が聞いた話なんというのは。さっきの哲学論争と違うのですから、あの感覚で時間をとられては困るのですよ、もっと具体的な数字の話をやっているのですから。  そこで大蔵大臣、もう既に予算案を提案しておりますから修正ということをなかなか渋るわけでありますが、私は特に、きょうですか、正木さんからも指摘がありました。また他の委員からも、パートタイマーに対する減税措置をもうちょっと考えでいいのではないか、こういう提起に対して、またよく詰めてないのでありますが、いまパートタイマーに行って働いている人は、四百万人ぐらいおると言われております。この人たちは、現在七十九万円以上、月六万ちょっと稼ぎますと配偶者控除から外されてしまう。そこで、七十九万円以下に、各企業はパートの人の希望でそれ以上賃金を上げない。また、もらう方もそれで我慢する。  それを、今度の税制改正で八十八万円になるわけでありますが、八十八万というのも、月幾らですか、平均では、十二カ月では七万になりませんか、一カ月六万七、八千円。せめて月十万円までぐらい免税にしていいのじゃないか。というのは、もう生活水準が高くなり、物が何でも豊富にあり、買いたい物もある、隣近所の生活水準に追いついていきたい、共稼ぎしなければその水準が維持できない、そういう家庭がいっぱいふえちゃったのですね。これはもう教育にも全部それが影響しているわけですよ。子供を託児所へ預けっ放しで、子供をおぶわなくなってしまった若いお母さん、そこに親子の対話がなくなり、血の通ったぬくもりが、背中におんぶして母と子の背中を伝わる温かみがある情愛が人間に薄くなってきている。これは、経済が高度に進むとそういうことはやむを得ないのかもしれない。  アメリカの教育の荒廃も大変なようですね。この間、レーガン大統領がアメリカの中学校校長を集めた演説の中でおもしろいことを言っておるのでありますが、アメリカでは先生が生徒にテストや宿題を出す権威を失ってしまった。中等教育の現場では、毎月二百万人以上の生徒が校内暴力の犠牲になっている。一九八二年のボストンの高校の調べでは、男子生徒の場合、三人に一人が学校に武器を持ってきている。ミシガン州の八三年の調査によると、先生の五人に一人が生徒に殴られている。レーガン大統領がそういう演説をぶったのですね、この校長会議で。そして日本の例を挙げて、日本はいいぞ、いいぞと、こう言っているのですよ。日本の例を挙げたが、少し思い違いの点もあるだろうが、日本では数学、生物、物理などが小学校六年生から始まると説明し、さらに、ソ連では代数と幾何の基礎概念を小学校から始めるぞ、アメリカよ、しっかりしろ、こういう演説をぶっているのですよ、レーガンは。日本では今教育荒廃で大変な騒ぎをしている。アメリカにまねしたらこうなる。これは高度文明社会、生活水準の高い社会、そして競争の激しい社会で疎外されていく子供たち、そういう現象がアメリカでも出ている。  パートタイマーの問題どこれとを絡ませて、今いろいろなことを私は感じたのでありますが、そういう家庭を持ちながら一生懸命働かなければならない今の庶民大衆の生活実態を考えたとき、私は、月八万円ぐらいの免税は当然ではないのか、こう思うのであります。感じとして、できるできないは、まず感じとして、総理、どうでしょうか。
  214. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは感じとして、今のソフトな話しかけでいけば、だれもなるほどなと思うんじゃないかと、感じとしてはそう思うわけであります。ただ、感じだけで政治をやるわけにはまいりませんので、したがって、今の問題につきましては、今武藤委員おっしゃったその感じ、そのことが現在のいわゆる高度文明社会の中における婦人の労働、地位、なかんずくそれがパートという形で今日あらわれておる問題について、感じとしては非常にわかりやすい話です。  そこで、それらの問題はいつも整理して税制調査会に報告をする。そうすると、税制調査会でいろいろな議論がございますが、今年のちょうだいした中期答申では、給与所得控除と配偶者控除の適用限度額の組み合わせという現行制度の枠内で対処していくことが適当ではないか。事実、これを議論しておりますと、言ってみればいわゆる常勤の奥さん方、そしてその他の納税者となぜ区別してパート主婦だけを特別扱いしなければならないかという議論が出てくる。そしてまた、パートとは何ぞや、こういう議論が出てくるわけであります。したがって、これに対してまた、パート収入が一定金額を超える場合の問題として、課税問題のほかの議論が必ず出てまいりますのは、夫に対する扶養手当が支給されなくなるではないかという問題が出ます。それから、パート稼得者のいわゆる医療保険料の適用で被扶養者ではなくなる、本人になっていくという問題も出てくるわけであります。いろいろ議論をいたしますと、やはり私どもとしては、今日の時点は今のことでやるしかその方法はないではないか。そうして、考えてみますと、これも五十六年までは配偶者控除の額までは認められていなかった。それが五十六年から認められるようになり、そしてそれが上げられたことに対して同じような適用をするという措置というものは、やはりかなりの改善が図られた措置であるというふうに御理解をいただくべきではないかというふうに考えております。
  215. 武藤山治

    武藤(山)委員 これはパートタイマーの人たちだけじゃなくて、独身者にも及ぶんですね、どうしてもいろいろこう考えてみると。二つの案が考えられるのですね。もし減税、月七万以上無税。総理、今独身者は月六万円月給を取ると、もう賞与で国税取られるんですよ。月六万円ですよ。どの程度のものが一カ月買えますかね。下宿代払って、洋服着て、御飯食べて六万円。それで賞与含めて十四カ月か十三カ月、十五カ月の仮に計算をしたら、五万五千円ぐらいからかかるんですね。だから私は、独身貴族とかなんとかいうけれども、独身の税金、決して安くないと思うんですね、月六万五千円ぐらいでもう税金がかるというのは。そのことを考えると、月七万円、すなわちパートを百万ぐらいまで持っていってやってもいいんじやないか。  この前、約二兆円大減税を田中内閣のときにやりましたが、あのときは、田中総理と私の大蔵委員会の一問一答の論議から、総理がやりますと約束をした決断がついにあの大減税になったんですね。結局は総理大臣の決断なんですよ。ですから、独身者の諸君と、若者と、婦人のパートの四百万の人たちに――これは減税財源要らないんですよ。減税財源要らない。ゼロでいいんですよ。今までかかっていないやつですからね。今度、私の言う二案のうち一案でいったら、減税財源なしでできるんですよ。ほんの一億ぐらいかな。そのくらいなことを総理、決断してみたらどうでしょうか。  というのは、二つの方法を今ちょっと提案をしてみたいのでありますが、一つは、今独身者で税金を納めている金額は八十七億円、人数にして七十二万人程度。独身の納税者七十二万、そして八十七億円。この人たちを百万円まで全部無税にするとこの八十七億円が減税になってしまいますから、大蔵省はこれなかなか抵抗して、とにかく減税措置が起こることにはうんと言わないのですね。そこでこういう方法を――今の方法は、五十五万円の最低保証額、給与所得控除最低保証額五十五万ですね、それに基礎控除の三十三万プラスして八十八万まで免税と、こうなっているわけですが、この最低控除保証額五十五万円を六十七万円にすればいいわけですね。百万円以下の人は六十七万円まで最低保証を認めてやる。そうすれば、パートタイマーの奥さんは百万円まで税金がからない。独身者もそれで救ってもいい。救わない方法なら、特別をつくれば独身者を除く方法も考えられる。  もう一つの方法は、だんなさんの方が三十三万円の配偶者控除を認められなくなるというので、みんなこの限界で我慢しておるわけですね。したがって、八十八万円を超えたパートの人たちには、基礎控除を差額だけ引いていく。例えば百万円パートで金をもらっている人は、八十八万円ですから、その間十二万円ですか、そうすると三十三万から十二万は基礎控除から引いてしまう、そういう仕組みにすれば、これは独身者に全く関係なしの減税になる。いわゆるパートの四百万人の人だけが減税の恩恵を受ける。したがって、今までの収入が減るという考え方がほとんどこれは要らない。これなら私は、大蔵大臣と総理大臣が決断をして、この案ならできるんじゃないのかな、こう提案をするのですが、いかがでしょうか。
  216. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今の問題につきましての数字に基づく問題につきましては、まず独身の問題から申し上げますと、さはさりながら、これは大蔵大臣として必ずしも適切な表現ではないと思いますが、今日までよく言われた言葉として、独身貴族に熟年こじき、あるいは独身天国、熟年地獄、こういう言葉も確かに今日まで使われてきた。それがいろいろな国会の議論を通じて、今度の減税案に示されるごとく、子持ちの中堅所得者、こういうことに重点を置かれたところの制度になりました。そこで、いわゆる最低給与所得控除の問題になりますと、その問題は全部に影響するわけでございますから、今のおっしゃいました数字に基づいて直ちに私は数字の上で反論する今余裕を持っておりません。これば一緒に聞いておりました主税局長からお答えすると思います。  それから、二番目のパートタイマーの問題というのは、パートタイマー四百万とかいろいろなことが言われておりますが、これも足かな調査ではないけれども昭和五十七年の十月の調査においても、全体の五六・二%が八十万以上の年間収入を得ておったということ、それから勤続年数別の分布を見ると、勤続年数の短いパートタイマーの場合は、当時この七十九万までの収入の者が半数以上を占めておるが、勤続年数が二年以上になると過半数が八十万円以上、今でいけば恐らく九十万円以上ということになるでしょう。そういうことからして、今日の状態で、税制がそのようなことであるから労働供給を阻害しておるという実態にはない、こういう調査もあるわけでございますが、いずれにしても、やはり基本的には、一体パートタイマーとはというところから私は議論していかないことには、今の扶養控除というものは、全く所得のない人に対する控除額を、所得のある人もそこまではいいということでございますだけに、やはり議論は多方面に及ぶ問題ではないか。だから、今は現行の施策の中で行う限度いっぱいの措置としてお考えいただかなければならないではないかというふうに考えます。
  217. 武藤山治

    武藤(山)委員 どうも今の説明は、大蔵大臣はよくわかっておるのかどうか。私は、独身者の六万円ぐらいの月給が、もう十二月の賞与には国税がかかるんだ、これはちょっと重いんじゃないかということを言っているわけですね。だから、独身者でも月給七万五千円までぐらいは税金がからないようにしていいんじゃないか。年収百万、そういうことをまず前提に言ったわけですね、独身者に及ぶ場合。それでも八十七億円しか減税効果は出ないんですよ。わずか八十七億なんですよ。だから、独身者を含めたパートまで減税をするというのが一つの案だ。それじゃ、大蔵省がたとえ幾らでも減税で財源を食われるのじゃだめだと言った場合には、パートタイマーだけしか及ばない減税の仕方もあるですよ、こういうことを言っているわけ。二つの案を言っているわけ。だから、せめてパートタイマーだけでも百万まで免税にすることぐらいは決断していいのではないか、決断の問題だ、こう迫っているのです。もう理屈の問題じゃないのです、大蔵大臣。
  218. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そのパートタイマーの問題は、何度か申し上げますように、さてパートとはというところからやはり議論を積み上げていかなきゃならぬ問題だと思います。  そうしていま一つは、所得税の問題、これはしょせんは課税最低限の問題等につながることになるわけでありますが、そうなると、仮に国税と地方税、所得税と住民税といたしました場合は、どちらかといえば、所得税は応能主義とでも申しますか、能力に応ずる、あるいは住民税は応益主義とでも申しますか、古い人はこれを負担分任、こう申しておりますが、そういうことを考えた場合に、いわゆる納税者の数が少なくなるということがいいことなのか。この問題はやはりいま一つの問題として、住民なら住民意識、国民なら国民意識という問題において考えなければならない課題ではないかというふうに、これは常日ごろ私が考えておることを申し上げておきます。
  219. 武藤山治

    武藤(山)委員 これは、竹下大蔵大臣は財政自体の財布を握っている人ですから、ああさようですかとはなかなか言いにくい性格の問題であります。これはやはり政治決断の問題であります。福田さんのときも、三千億円減税論争は、今のようにやって、大蔵省は嫌だ嫌だと言ったんですが、福田さんが決断して三千億戻し減税をやったんですね。  ですから、この問題も、ひとつ総理、自民党総裁という立場で、各党間の政策担当者間の話の題材にしてひとつ検討してみる、そういう題材にすることについては、総理、決断できないでしょうか。
  220. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 パートの問題は、私も実は選挙前に、何とかならないかなと、そういう気がしまして、関係者を呼んでいろいろ勉強もやってみた次第です。それで、武藤さんがおっしゃるように、百万ぐらいどうかなと私も目の予算用で感じまして、いろいろ聞いてみました。  結局、今までの話を総合してみて、その後私も気がついたことでございますが、なるほどパートだけを見ているというとぜひそうしてあげたい。片方では年収四、五百万の子持ちの世帯に対して今度は重点的に減税をやるということがあるけれども、片方ではパートのことも頭にあったわけです。ところが、結局全体の公平論というものから見まして、ちょっとそれは無理だ。というのは、だんな様が働いている、奥様もまたパートでどこかへ行って働いている、そういう方々は、いろいろな面で収入を多くしようというので、そうやっていらっしゃる方が多いと思いますが、パートじゃなくて、そのことが専業で、それで親を養ったり子供を学校に出したりしていらっしゃる方がある。そういう方に対して同じことをやってあげなければ、さもなければパートだけ優遇するというのでは不公平じゃないかという議論が必ず出る。そっちが主業で、もうそれ以外ほかに道がないということで専業でやっていらっしゃる方まで広げるというと、相当な金額の減税にならざるを得ぬ。そっちもはじかしてみたら、かなりの額になるわけです。それがひっかかってきまして、実は残念ながらできなかったという経緯があるのです。  ですから、そういう面があったということを武藤さんに御報告申し上げまして、もし政調の関係者同士でお話し合う機会がありましたら、お話し合っていただいても結構であると思います。
  221. 武藤山治

    武藤(山)委員 与党の政策担当者と野党の政策担当者の話し合いをしていただいて結構だ、これは前向きの答弁で評価をいたします。早速、党の機関に報告をして、しかるべきお互いの話し合いをひとつ話し合っていただきたいと思います。これはありがとうございました。  その次に、経済見通しの問題でありますが、これは河本企画庁長官になりますか。昭和五十六年、五十七年というのは大変不況の年であった。その不況の年でも実質三・三、三・五という成長を遂げたですね。今度は、ことしは景気はいい。ややよくなった。論者によっては、ややよりかなりよくなるという論者もいます。河本長官は、ことしはまだ景気はよくならない、来年本格的景気になると「エコノミスト」では言っているのですけれども、しかし、大方の民間の機関の調査なんか見ても、ことしはかなりいいという感じでみんな受けとめていますね。にもかかわらず、あの当時は世界各国の先進国はマイナス成長あるいは一%成長、アメリカはマイナス一・九ぐらいだったですね、去年、もうおととしですか。そのときでも日本は三・三から三・五の成長があったのですから、今度これだけ世界経済が明るくなったにもかかわらず、わずか〇・七しか伸びない。四・一%の成長というのはわずか〇・七しか伸びない。そんなものなんだろうか。経済実態はそんなもので推移するのだろうか。経済の番人企画庁長官、いかがですか。
  222. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 成長についての基本的な考え方を申し上げますと、昨年政府が発表いたしました「展望と指針」、これでは八年間平均で四%成長ということを言っております。この作業の土台になりましたのは、一昨年つくりました「西暦二〇〇〇年までの長期展望」という資料がございまして、これでは一九八○年代から一九九〇年代は四%程度の成長が可能である、こういう資料をもとにいたしまして昨年の「展望と指針」というものができたわけでございます。毎年見直すことにはなっておりますけれども、平均四%成長を達成するということではございません。状態のいいときには五%、あるいはそれ以上の成長になるときもありましょう。また情勢の悪いときには、今御指摘がございましたように三%成長あるいはそれ以下のときもあると思います。平均して大体そういう成長であろうというのが政府の基本的な展望でございます。  そこで、さてことしはどうかというお話でございますが、ようやく五年ぶりに第二次石油危機からの調整が終わろうとしておるわけでございまして、民間の力も相当伸びる可能性もございますので、一応四・一%成長と見ておりますけれども、しかし、今御指摘のように、五十九年度は五十八年度に比べてげたが相当高いではないか、つまり発射台が相当高いではないか、したがって、それじゃ中身は五十八年度と同じような中身にしかならぬではないか、こういう御意見もございます。あるいは経常収支、少し低いではないか、もうちょっと経常収支の黒字が多いのではないか、だからもうちょっと成長も高いのではないか、こういういろいろな御意見があるのですけれども、一応民間中心の成長でございますので、一応こういう見通しを立てたわけでございます。そこで、もう少し様子を見ながら財政政策と金融政策を機動的に運用していく、こういうことを基本方針にいたしまして、先般の予算編成では政府と自由民主党との間で意見の一致をしたわけでございます。
  223. 武藤山治

    武藤(山)委員 企画庁が経済成長の見通しを毎年立てて、見通しと実績の乖離というのは大変甚だしいものなんですね。かなりいい線にいっている年もありますけれども昭和五十一年ごろの名目成長率でいった場合に、見通し一三が実績一二・二、その翌年は一二・七が一〇・九、五十三年は一二が九・五、五十四年は九・五が七・四、五十五年が九・四が八・五、五十六年度が九・一が五・七、五十七年度は八・四が五、そして五十八年の五・六、五十九年の五・九、まだ実績出ておりませんからわかりませんけれども、これでこう見ていくと、少し伸び率が低く抑えられているんじゃないのか、あつものに懲りて、いままでちょっと高目高目に見過ぎだから、ことしはちょっと低いところに持っていき過ぎたんじゃないだろうか、こういう感じがしますね。  それとも、アメリカの景気が後半まずくなる、アメリカは御承知のように一九八四会計年度で公債発行千八百三十七億ドル、八五年の実質支出ベースの軍事予算二千六百四十四億ドル、この軍事費のために国債発行千八百二十七億ドルという赤字財政ですね。このためにまたクラウディングアウトが起こるんじゃないか、アメリカは。年の後半からかなり高金利になるんじゃないか。高金利になれば、インフレ再燃への方向に進む心配が出てくる。その際に、外国資本は逃避し、ドル安になる。ドルの暴落が起こり得るという見通しも一つ成り立つんですね。私はそう見ているのですが、そういうことを見込んで名目五・九、実質四・一という、前年、その前の年と比較してはやや低い数字だなと感じる数字にしたのではないのかな、そんな憶測を私はしているのでありますが、その辺は長官、いかがなんでしょうか。
  224. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 確かに、三、四年ぶりでようやく情勢が回復しつつあるときに、平均の成長率とは一体どういうわけだ、こういう疑問を出される向きも相当多いのです。ただしかし、ことしの成長、五十九年度の成長は民間主体の成長でございまして、政府の財政は、残念ながら成長に対しては中立である、成長に寄与するところはゼロである、残念ながらこういう内容になっておりますので、一応そういう見通しにいたしております。しかし、おっしゃるように、なおそれを超えて高い成長になる可能性も、私は十分あると今考えております。  ただ、御指摘のアメリカの経済の見通しにつきましては、先般アメリカ政府はああいう見通しを出しておりますが、逆に一部には、ああはならぬ、こういう見通しをされる向きもあります。それはアメリカの財政赤字の幅が大きいということと、貿易赤字の幅が相当大きい、それが足を引っ張るのではないかということから、やや悲観的な見通しをされる向きもございますけれども、しかし、今世界で安定した投資を受け入れられる国はアメリカしかありませんし、そういうことで資本の流入がしばらくの間は続くのではないかと思われます。それからまた、アメリカの貿易も相当大きな赤字が予想されておりますけれどもアメリカは貿易外の収入というものも相当大きな金額になっておりますので、私どもは一応アメリカ政府の発表を信用いたしまして、アメリカの経済は当分強調が、いい状態が続くのではないか、こういうように判断をいたしています。
  225. 武藤山治

    武藤(山)委員 政府は、内需拡大で民間が景気を支える、こういう民間主導の内需拡大という期待で経済成長がもたらされるという発想でありますが、一人当たり雇用者所得の伸びは、五十九年度は何%ぐらいになるんですか。
  226. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 雇用者全体の伸びは六・七%と想定しておりますが、一人当たりの伸びは四・七と想定しております。
  227. 武藤山治

    武藤(山)委員 雇用者所得の伸びは、百六十九兆円で伸びは六・八%増、一人当たりの雇用者所得の伸びは前年より四・八%増と私は聞いていたのでありますが、今四・七、まあいいでしょう、四・八と四・七なら。だといたしますと、ことしの一人当たり雇用者所得は四・七や八じゃ追っつかないでしょう。この数字、整合性ある経済成長を支える数字になるためには、五十八年度が一人当たり雇用者所得三・六だったわけですね。それを今度四・八と見ると、一・二%去年よりも雇用者所得が多くなる、伸びる。そうなりますと、春闘はどのくらいなパーセントにならねばならないかというのが、逆算が出てきますね。去年の春闘が大体四・五%だとすると、ことしの賃上げ水準は何%ぐらいふえなければ、政府のこの見通しは達成できないか。何%ぐらいになれば、この数字に整合する雇用者所得の伸びとなりますか。
  228. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 お答えいたします。  先ほどの一人当たりの雇用者所得の数は、大臣がおっしゃった数字が正しい数字でございます。  一人当たりの雇用者所得はそうでございますが、春闘のベースにつきましては、政府として特に計算しているわけではございません。マクロといたしまして計算をいたしておりまして、五十八年度は一人当たり雇用者所得が三・五%程度、それから五十九年度が四・七%程度という計算にいたしているわけでございます。五十八年度の消費支出、五十九年度の消費支出というのは大体それと見合った形で伸びが計算されておる。大筋で申しましてそういう形になっておるわけでございます。  主として一人当たり雇用者所得が伸びます理由として考えておりますのは、二つございまして、一つは時間外手当、生産がどんどんふえてまいりますので、時間外手当が最近非常に増加しております。そういうことで所得がふえるであろう、それから企業の収益も相当回復してきておる、そういうことからボーナスもふえるであろう、そういうようなマクロ的なことを考えまして計算をいたしたものでございます。
  229. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういう計算をして、雇用の増、さらに残業手当の増、それを差し引いて、いままでの春闘の相場をずっと勘案をしてみると、去年は三・六の伸びで四・五の春闘相場、したがって、ことし四・七の伸びと言えば、春闘の相場が五・六%から五・七%賃上げが行われないとこの個人消費の数字にならない。ところが、資本家団体は、四%以下、中には定期昇給と、こう言うんだね。これでこの経済見通しが実現するはずがない。いわんやまた人勧凍結だ何だとなったら、なおさらこの見通しは全部狂っちゃう。こういう経済見通しが狂えばまた税収が狂ってくる。ですから、経済の全体の整合性というものをやはり考えた発言なり指導なりをしないと、ことしのこの経済見通しは達成されないと、こう私は危惧を抱くのであります。この点について、これからの経済運営に対する総理大臣の見解を聞いて、持ち時間が終わりますので、質問を終わりたいと思います。
  230. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 五十九年度予算に立てました経済見積もりの諸係数は、ぜひこれを実現すべく努力していくところでございます。  今の賃金係数との問題は、恐らく、今調整局長からお話がありましたように、総合的に考えて、時間外手当の増であるとかあるいは官民を通ずる一般的な賃金の増高傾向等々を勘案してできた数字であると思います。春闘という、四月における賃金値上げというものを特に限定して考慮した数字ではないと思っております。しかし、一般的に見て、ことしは景気の上昇に伴いまして、しかるべき措置が恐らく行われるであろうと予想しておる次第であります。
  231. 倉成正

    倉成委員長 これにて武藤君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十七日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時一分散会