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1984-02-15 第101回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年二月十五日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 倉成  正君    理事 小渕 恵三君 理事 原田昇左右君    理事 松永  光君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 岡田 利春君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    石原慎太郎君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       澁谷 直藏君    砂田 重民君       田中 龍夫君    高鳥  修君       玉置 和郎君    中馬 弘毅君       橋本龍太郎君    原田  憲君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       村田敬次郎君    村山 達雄君       井上 一成君    稲葉 誠一君       上田  哲君    大出  俊君       島田 琢郎君    清水  勇君       武藤 山治君    矢山 有作君       湯山  勇君    大久保直彦君       草川 昭三君    斉藤  節君       正木 良明君    矢野 絢也君       岡田 正勝君    木下敬之助君       小平  忠君    塚本 三郎君       渡辺  朗君    工藤  晃君       瀬崎 博義君    中川利三郎君       不破 哲三君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 住  栄作君         外務大臣臨時代         理         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 森  喜朗君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         農林水産大臣  山村新治郎君         通商産業大臣 小此木彦三郎君         運 輸 大 臣 細田 吉藏君         郵 政 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 坂本三十次君         建 設 大 臣 水野  清君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     田川 誠一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         長)      中西 一郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官稲村佐近四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         内閣参事官   中村  徹君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         警察庁長官   三井  脩君         行政管理庁長官 佐々木晴夫君         官房審議官         行政管理庁行政         管理局長    門田 英郎君         行政管理庁行政         監査局長    竹村  晟君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         防衛施設庁労務         部長      大内 雄二君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁国民         生活局長    及川 昭伍君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         科学技術庁計画         局長      赤羽 信久君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         科学技術庁原子         力安全局長   辻  栄一君         環境庁水質保全         局長      佐竹 五六君         国土庁長官官房         長       石川  周君         国土庁長官官房         審議官     田中  暁君         国土庁長官官房         会計課長    安達 五郎君         国土庁土地局長 永田 良雄君         国土庁大都市圏         整備局長    杉岡  浩君         国土庁地方振興         局長      川俣 芳郎君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 筧  榮一君         法務省入国管理         局長      田中 常雄君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       小野 博義君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         大蔵省理財局次         長       志賀 正典君         国税庁次長   岸田 俊輔君         国税庁税部長 渡辺 幸則君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      齋藤 尚夫君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省学術国際         局長      大崎  仁君         文部省管理局長 阿部 充夫君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生省公衆衛生         局老人保健部長 水田  努君         厚生省医務局長 吉崎 正義君         厚生省社会局長 持永 和見習         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         通商産業大臣官         房審議官    棚橋 祐治君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業省立地         公害局長    石井 賢吾君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君         中小企業庁長官 中澤 忠義君         運輸省港湾局長 小野寺駿一君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         郵政大臣官房長 奥山 雄材君         郵政省電気通信         政策局長    小山 森也君         郵政省電波監理         局長      鴨 光一郎君         労働省労働基準         局長      望月 三郎君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房総         務審議官    吉田 公二君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省計画局長 台   健君         建設省都市局長 松原 青美君         建設省道路局長 沓掛 哲男君         建設省住宅局長 松谷蒼一郎君         自治大臣官房審         議官      田井 順之君         自治省行政局選         挙部長     岩田  脩君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       仁杉  巖君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月十五日  辞任         補欠選任   小平  忠君     塚本 三郎君   藤木 洋子君     中川利三郎君 同日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     岡田 正勝君   中川利三郎君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   岡田 正勝君     小平  忠君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢野絢也君
  3. 矢野絢也

    矢野委員 私は、公明党国民会議を代表いたしまして、総理を初め関係閣僚に御質問いたします。  衆議院選挙の結果、大変失礼な言い方でございますけれども自民党さんに厳しい結果が出たわけでございます。今国民が求めておられることは、自民党政府もこの国民の厳粛な審判、批判というものをどう受けとめられるのか、そしてそれをどうみずからの改革に生かされるか、どう国政の改革に生かしていかれるか、これがやはり選挙の結果から見る自民党さんの正しい受けとめ方であると私は思います。  とは申しましても、私ども野党、決して手放しでのぼせ上がったり、うぬぼれたりあるいははしゃいだり、さような気持ちは毛頭持っておりません。むしろ、そうなってはならないとみずから戒めておるところでございます。この国会においては、昨年は三回の選挙がありましたから、今内外に大切な問題があるわけですけれども、昨年は選挙選挙で十分な論議ができなかった。ですから、私ども公明党といたしましては、内外重要課題について腰を据えた、じっくりとした論議を深めていきたい、そして与党、野党立場の違いがございましても、国民の願いというものを少しずつでもいいから着実に実現をしていきたい、このような気持ちでおるわけでございまして、決して野党が勝ったなどというようなはしゃいだ気持ちは持っておりません。謙虚に、そして建設的に具体的な提案を総理に申し上げながら、野党みずからも自己鍛錬をしていくのだという気持ちで御質問をしていきたいと思っております。  そこで、総理に最初にお願いしておきたいことは、私どもそういう気持ちでおるわけでございますから、これは政党政党が違うわけですから、政策が違うのは当たり前だと思うのですよ。私は、政策が違うからといって、ここで大きな声を張り上げたりあるいは国会をストップさせたり、いと思いますけれども、嫌な問題から争点をそらすもくろみがあるとしても、まあないと思いますけれども、あえてそれは承知の上でこの問題を真っ正面から取り上げて、かみ合った議論をしていきたいと私は思います。  とともに、総理所信表明演説でも新しい機関の設置ということも言っておられるわけでございまして、かなり大胆な改革をお考えになっておるようだ。公明党は実は総理教育改革についての意欲は一面において評価しておりますが、反面においては、失礼だけれども、時たま不沈空母だとか運命共同体だとか、しばしば物騒なことをおっしゃる総理が妙に肩に力を入れられると、何を考えているのかわからぬという実は心配もあるわけなんですよ。ですから、総理のお考えに協力していいものやら悪いものやら、教育改革公明党は熱心であることはこれは言うまでもありませんけれども総理のお考えに協力していいものやら悪いものやら、実は迷っておるというのが率直な気持ちなんです。この質問を通じまして、総理のお考え国民が願っていることとそう違わない、我が党が願っておることとそう違わないということがはっきりいたしますれば、全面的に協力を惜しむものではございません。しかし、方向がおかしいぞというようなことになりますと、これはまた考え直さなければいかぬ。(「全然おかしい」と呼ぶ者あり)全然おかしいかどうか、これから聞くんだ。そういうわけですから、えらい前置きが長くなりましたけれども、そんなつもりでひとつ御答弁をお願いしたい。  具体論に入りますけれども、今日のいろいろな教育矛盾点問題点がありますけれども、戦後の教育行政歴史というものは、いろいろな役者というのがあったわけですけれども、大ざっぱに言えば片や文部省、片や日教組、この対立歴史であったと言ってもそう言い過ぎではないような気がするわけです。  これにはいい面と悪い面とあったような気がするのです。いい面と言えば、例えば教員定数増の問題あるいは待遇改善、あるいは学校施設の拡充、あるいはいうところの民主的な教育を守っていく、まあこれにはいろいろな批判点もあるかもわかりませんが、こういったことにおける日教組の貢献は私は決して否定はいたしません。反面、この日教組文部省対立学校現場にまで持ち込まれて、数多くのひずみ、ゆがみがあったこともこれは事実です。そのひずみ、ゆがみというものが、極論するならば、青少年非行の、あるいは校内暴力に代表される教育荒廃の大きな原因一つである、これがすべてだとは言いませんけれども一つであると私は思います。  しかも、まことにこれは奇妙なことには、文部省がいろいろ勉強しておられること、あるいは日教組がいろいろな教育研修会議論をしておられること、違う点もありますけれども共通している点がたくさんあるわけです。言っていることは同じことじゃないかということもあるわけです。なぜ、これは手を組んで、学校現場改善学校改革の前進のためになさらないのか。私は、実はこの辺がいつも不思議に思うわけでございます。  そこで、総理は、国民合意というものがこの教育改革には何といったって必要だとおっしゃっているわけですね。私もそう思います。片っ方の文部省は、学校の中で管理が十分でないから校内暴力とかいろいろな問題が起こる、落ちこぼれも起こる、これは日教組が悪いからだと言わんばかりの口調でおっしゃる。日教組は、文部省管理の強化、いろいろな行政の押しつけをしてくる、規則だ規律だ、面倒くさいことばかり言ってくる、こういうことを言うから子供が伸び伸びと育たないのだ、教育も伸び伸びとできないのだ、だから荒廃の元凶はこういう文部省管理主義にあるのだということも言っておる。本当にこれは、私は、教育改革根本教育現場におけるこの対立をどのように解消していくか。学制の見直したとか共通一次の見直し——後から聞きます、こういうことも大事でございますが、この現場の問題が解決しない限り、何をなさっても私はうまくいかないと思います。  そこで、この教育改革に当たって総理は、日教組をどういう位置づけをなさろうとしておるのか、どういう役割を期待なさっておるのか。総理の言う新しい機関においてどういう位置づけを、例えば参加を求めるおつもりなのか、このことについてまずお答えをいただきたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず冒頭、矢野さんから今国会に臨みます公明党の姿勢についてお話をいただきました。建設的に対話を深めていく、そういうお考えは前に竹入委員長から党首会談のときにもお話を承りまして、今ここで再びお話を承りまして非常に感銘をいたしたところでございます。私たちも誠意を持ってそのお言葉に沿う方針で御答弁申し上げたいと思う次第でございます。  教育の問題につきましては、私はまず根本的なことを申し上げてみたいと思います。それはきのうもちょっと申し上げましたが、やはり憲法を守り、教育基本法のもとにこれを実行していくということで、憲法教育基本法に触れるという考えはありません。そのもとに行っていくということがまず基本でございます。  そこで、この原因等いろいろ考えてみますと、これは一つは世界的な風潮という面もございますし、我が国特有の戦後の状況、特に高度経済成長によって社会が非常に高密激動社会になってきた、物すごい勢いで経済社会が動いておるところに、静かな環境でやるべき教育というものが追いついていけない、また、政治教育行政あるいはこれに携わる者たちが順調に適応できないという面もあって、必ずしもそれは先生の責任あるいは父兄責任のみとは言えない問題もあると思うのです。そういう非常に深い、一種の戦後の文明病から来ているという面もよくわきまえつつ、しかも、今起きているいろいろな諸般の現象、特に子供たち父兄が困っておる問題、社会として胸を痛めなければならぬ問題につきましては、やはりほうっておくわけにはいかぬのでありますから、いつか、だれかが始めなければならぬ問題である、そういう認識を持っておりまして、大変僭越ではございますけれども、このときにもうスタートしなければいけないという気持ち改革論を申し上げておる、そういう基本的考え方でございます。  そこで、具体的な御質問で、日教組学校との関係の御質問がありましたが、私は、戦後三十八年を経まして、日教組のいろいろな態度にも、あるいは学校あるいは文部省側態度にも幾多の変遷があったと思います。第一、日教組組織率自体が最近は非常に落ちてきておる。それは教師の中における日教組認識という問題に変化がありつつあるし、日教組自体時代に適応するような努力を精力的におやりになってきたという事実もあると思います。教研集会等におけるまじめな論議等も見てみますと、そういう面があると思います。ですから、昔の観念のみで、昔の姿を頭に置いて物を処してはいけない。それは、日教組についても、文部省についても、あるいは自民党についても、政治全般についても言える問題ではないかと思います。現時点に立って、そしていろいろな過去の経験等を踏まえつつ、よりよきものへ前進していくという形で教育関係者全体の合意が成立するということが一番望ましいやり方であると思いまして、そういう面について、私は努力してみたいと思っております。  したがいまして、現場教師の声というものを教育改革に反映させるということが非常に重要なことであると思っております。そういう点については、新しい機関をつくる場合にも、これは考慮すべき大切な要素でもある、そう考えております。今、だれをどういうふうに入れるかというところまでは、法律も提出しない今日、申し上げるのは越権でございます。また、それは文部省の方に検討をお願いする問題でありますけれども、私は申し上げませんが、やはり現場教師の声を反映させるということは大事である、そういうふうに思っております。  ただ、教育現場荒廃ということが言われます、やはり一つの哲学的な、あるいは心情における差が根本にあるのですね。日教組について我々がかつて強く批判したのは、教師倫理綱領というのがありますが、あの戦後、非常に、革命的な、動乱的な時代につくられた教師倫理綱領というものは、教師労働者であって、そして階級闘争の先頭に立つ、学校というものもそういう場所にするような印象を与えるものであった。それが非常に父兄心配を買ったゆえんであります。自民党も非常にその部分を重要視して、指摘した部分でございます。  一方において、日教組の方は、政府あるいは文部省というものを、これを反動集団である、こういうふうに考えてきておられる。しかし、戦後三十数年の経過をたどってみれば、自民党政権がそう反動集団であるとは私は思わない。むしろ、いろいろな諸般改革をやって、時代先導的な役割をかなり果たしてきたがゆえに、国民政権をいわゆる保守陣営にこの三十数年ゆだねてきたのであって、時代の先導的な役割を果たさなかったなら、これだけの経済的な繁栄も日本にはもたらされなかったろうと思うのであります。どっちかといえば、自民党経営的感覚が非常にあると思うのです。そういう経営的感覚というものは、常に改善していく、あるいはイノベーションをやっていく、そうでなければ経営者としては成り立たない、国家についても、そういう意識が自民党にはかなりあると私は思っております。  そういう面で、日教組政府あるいは自民党との関係というものにも、基本的な乖離がスタートにございましたね。それが不幸なことだった。しかし、それを直そうという努力をお互いがし合ってきていると思うのです。文部大臣日教組委員長の会見というのは何回か行われております。それは、やはりそういう共通点を見出そうという努力であろうと思うのです。そういう努力はこの教育改革を機に、私は、強めこそすれ弱めるべき問題ではない、そのように考えております。
  5. 矢野絢也

    矢野委員 少なくとも、今後の新しい機関においては検討の問題だろうけれども、頭から排除するというお考えではなさそうだ、こう受けとめました。  これは私の意見ですけれども学校現場におきましては、校長あるいは教頭といった立場の方方は、下からは教員さんから突き上げを受ける、そしてまた教育委員会に行くと、おまえ何ぼやぼやしているんだとしかられる。板挟みになって大変苦労している校長さんが多いわけですよ。校長試験というのがあって、一定の資格を得て校長さんになられる。しかし、どうも見ておりますと、任期が二年ぐらいで転々と学校をかわられるというケースが多いわけです。これでは本当に腰を据えた改革はできないと思いますよ。いろいろな事情もあるのでしょうけれども、やはりそういう校長さんが教師と一体になって学校現場改革するんだ、そのための時間的な配慮というものも必要だろう。あるいは教育委員会も、そういったことについて十分の配慮をして、私は何も教育委員会校長をバックアップせいとは言いませんけれども、先生方と協調し合いながら現場改善ができる、そういった配慮も今後必要ではなかろうか。あるいは若手からも校長を抜てきしていくというような配慮も必要ではなかろうか。これは意見として申し上げておきたいと思っております。  そこで、今一番父兄が頭を痛めておりますのは、共通一次が終わり、そしてこれから二次試験があるということなんですけれども、私は、この共通一次というのはできるだけ学生が、五教科七科目、幅広い分野の学問を身につける、特殊な科目だけに集中して勉強することを避けるために幅広く学習をしてもらう、またその能力をテストするという意味では、この共通一次というものを頭から否定することはできない、その本来の趣旨から考えれば。しかし、総理も言っておられた、私も実際やりましたけれども、だめですな、あれ。総理は東京大学、三塚さんは早稲田大学で、きのうは東大と早稲田の和やかなエール交換があったようでございますけれども、確かに本来の目的から見れば悪いことではないけれども、この共通一次が全国共通であるがゆえに出てくる弊害——難問奇問も多い、難しい問題も多いということもさることながら、これは別にしまして、全国共通であるがゆえに出てくる弊害というのがあるんです。  私も、三、四年前、我が家庭において大学進学問題がありまして、私もいろいろな本を買ってきて読みました。つまり、共通一次が終わりますと、明くる日生徒は学校に行きます。先生は当然、自分のところの生徒がどの点数であったか、だから自己採点をしてもらう。自分で採点する。おれは何点だった。しかも、学校がなさることについては問題ないのです。進学指導に当たって先生はそれを知る必要がある。ところがそのデータが、いわゆる受験産業の手を通じまして、極端に言えばすべて受験産業がそれをセットいたしまして、その結果が、第一志望はどこ、第二志望はどこ、それで、この人は何点というようなことまで全部コンピューターで集約されて、例えばこういう雑誌で発表されるわけなんですよ。そして自分はこれを見ますと、ああおれは七百何点だった、東大は無理だ、どこそこも無理だ。ほんまにこれは親切と言えば親切、便利と言えば便利。  しかし、これによって出てくる結果はどういうことかといいますと、その前に、この業者は各学校と話し合いをしまして、校内テストを業者がやっておる。これは文部大臣、伺いたいのですけれども、再三、校内テストはやるな、受験競争を過熱させるからやめなさいと通達を出しておられる。通達を出しながら、一方では共通一次制度があるから先生も学生も、自分の成績は自分の校内において何点か、何番目かということよりも、全国的におれは何番かということを知らなくちゃならぬ。でなければ自分の進路が決められない。そのためには校内テストも必要。共通一次の明くる日には自己採点をして、それを業者がコンピューターで、これによれば三十数万人の受験者のうち二十万人が自己採点の結果を出しているわけです。それを全部コンピューターに入れて、おまえさんは何点だよ、この大学は無理だよ。念が入っているんだ、これまた、しかも、おまえさんが第一志望でこういうことを言っておるけれども、これは無理だ、第二志望でこういうことを言っておる、これも無理だ、こちらの方へ行きなさい。これは進学指導を全部業者がやっておる。まあ業者だけがやっておると言えば言い過ぎです。学校の先生は、子供がかわいいからこういうデータも活用せざるを得ないわけです。一方でこういう業者による学校教育への介入をやめなさいと言いながら、共通一次の結果、全国共通であるがゆえに業者のこういうコンピューター作業に依存をせざるを得なくなってきておる。その結果、総理、生徒は、あいつは人柄がいい、友情に厚い、創意工夫がある、根性のあるやつだ、優しいやつだということは関係ないのです。共通一次で何点取ったか、これだけがその生徒の全人格を規定してしまうことになる。  総理共通一次の改善が必要だと言っておられるわけでありますけれども、本当にこれは必要です。私どもの場合は、進学適性検査と申しまして、そういうのがあった。それは大学を受ける資格があるかどうかを決めてもらうだけの試験でありまして——あなた東大だけれども、八百六十点ですか、これ親切に書いてあるわ。これによって大学のランクづけ、大学の学部のランクづけもなされておるのです。本来もっと特色のある教育をなさるべきところが、一方では生徒のランクづけ、輪切り、一方では大学、学部のランクづけ、本来の共通一次の基礎的な学問を身につけさせようという趣旨がもはやだめになってきておる。  嫌みを言うわけじゃありませんけれども、この共通一次が実施されてから、五十四年ですか、この受験産業の高度成長ぶりは恐るべきものがあるのですよ。まるで共通一次は受験産業を育てるための制度だったのかと疑いたくなるぐらい。全体で二十二兆産業だというんだね、受験産業は。大変なGNPに対する比率だ。とともに、この受験産業で、いわゆる御三家とかあるいはビッグフォアとか、これは学校法人だから申告所得というのは出てないのです、出てないのだが、出ているところを申し上げると、ある会社では、共通一次が発足した五十四年、申告所得は八億六千万、五十八年には三十八億四千万、五年間で四・四六倍の成長ですよ。もう一つの会社は、十二億だったのが五十五億、四・三六倍の成長。御三家とかビッグフォアになると百億円以上の申告所得に本来はなるはずだけれども、これは学校法人だということでそういう申告がされていません。これ税金取ったら、竹下さん、大分税金が本当は入るんだけれども、これはまた別の問題だ。そういうことをおれは言いたいわけじゃない。共通一次でもたらしたのは受験産業をもうけさせただけであるとまで私は言いたいが、これについての御所見を承りたい。  もう一つ、嫌みのついでだ。この受験産業から自民党さんは政治献金を受けておられる。それはおかしな関係だなんて私は決めつけるつもりはないけれども、数千万円の献金がある。私どもの狭い範囲の調査でも、国民政治協会ですか、ここに来ておりますね。こういうことも自粛されるということも含めて御答弁願いたいと思うのです。  校内管理体制の問題は、御答弁は必要ございません。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今の教育上の臨床的課題として、我々が今改革する急務の一つとして考えているのは、今、矢野さんがおっしゃった共通一次の問題や偏差値の問題で、要するに人間の取り扱いの問題なのであります。コンピューターで、数字だけで物をはじき飛ばして人間というものを評価して、それでおしまいにするという考え方は非常に危険な考え方になってきておる。それが今おっしゃったように、業者によっても行われている。そういうやり方をこのまま放置していいかどうか。それはまさにおっしゃったように、我々も非常に重大関心を持ってこれは改革しなければならぬポイントだ、そう思っておるわけであります。  その方向は、おっしゃったように、人間にはいろいろな能力があるのであるから、そういう人間全体として把握した、温かみとか、あるいはみんなに対する信頼感とか、あるいはスポーツが強いとか、そういういろんな面を総合的に把握して、この子がどういうことに向いているかということを親切に考えて進学を面倒見てあげるというやり方がいいので、単にその瞬間の成績によって、そして人生にチャレンジするチャンスを失わさせる、あるいは絶望感に陥らさせるということは非常に大きな間違いではないかと思うのであります。やはり子供によっては、ふだんの成績は悪いけれども、状況によっては一発屋みたいに当たる子供もいますし、非常に頭がよくても試験になるとおじてしまって、そしてよう書けないという子供もおります。しかし、そういう子供は能力がないかと言えばそうではない。そういういろんな面があるわけでございますから、やはり総合的にその人間が把握されるようなやり方に改革すべきではないかと、私は年来そう思っておりました。  最近、総理大臣官邸に中学生や高校生から非常に手紙が来ます。これは官邸の人に聞いてみると、今まで例がないと言っている。しかし、その手紙は何であるかと言えば、みんな試験の問題が多いのです。私はほとんど全部目を通しておりますけれども、試験の問題が多い。選挙中でも、我我が地方を演説に回りますと、街頭演説をやりましても室内演説でも、高校生や中学生がかなり来ておる。それで試験問題に関するところを言うと、みんな耳をしんと澄ませて聞いております。お母さん方もそれを聞きに来ている。この状況を私つぶさに見まして、これはもう全国民的な関心事になってきておる、そうしていたいけな中学生や高校生がそれで心を痛めておる、母親はもう幼稚園に入るときから高校の試験の問題を心配してやり始める、こういう状況が現に日本にあるということを見まして、この病患を治さなければいけないと決心したのが私の最近の大きな動機でもございます。  そういう意味におきまして、皆様方の御議論をよく拝聴いたしまして、適正な改革をしていきたい、そう念願しておるところでございます。  今の受験産業とかあるいはそのほかの問題につきましては、文部大臣の方から御答弁いたします。
  7. 矢野絢也

    矢野委員 校内テストを実施しておる県、あるいは校外だけれども業者のテストをやっておる県、これもあわせてお答えいただきたい。
  8. 森喜朗

    ○森国務大臣 今、矢野先生から御指摘をいただきました数字は、ちょっと今調べさせております。  たくさんの私に対する御質問をちょうだいいたしたようでありますが、三つぐらいにまとめて、長くなるかもしれませんがお許しをいただきたいと思います。  共通一次の試験を実施するに至ったのは、やはり一時各大学が自主的に試験をやっておりましたけれども、きのうも私は三塚さんとの議論でも申し上げたように、学者、教育者というのは学問だけを追求して真理の探求をしていく、これは当然のことだと思うのです。したがって、試験がだんだん難しくなってきて、去年出したものよりももっと難しいものにしていこう、どうしてもそうなっていくと思うのです、学問を追求していけば。そのことが難問奇問という時代をつくり上げていき、出した大学の先生方さえも解けないというような問題が当時横行しておったと思うのです。そのために高等学校教育から中学教育までがみんなおかしくなってしまった。難問奇問みたいなそういう難しい問題で、入れてあげるというよりもできるだけ払いのけるのだという、こういう試験制度はやはりよくないのじゃないかということで、当時国立大学協会を中心にして何とかいい方法をということで生み出したのがこの共通一次であったわけです。  ですから、本来からいえば、共通一次は高等学校でこの程度の学問を勉強しておれば大体この程度でいいのですよと、この程度の到達度を見る試験、この試験で大学に入るそれだけの力というものを見たら、第二次では各大学で個性に応じていろんな角度で選んでください。当時私は党の文教政策関係をしておりましたので、私どもから国大協にこうしなさい、ああしなさいと言う立場ではなかったけれども、党という立場で言えば、でき得れば二次試験はもう勉強の試験をしないで、できるだけ高等学校時代の生徒会の活動であるとか、クラブ活動でやったこととか、あるいはボランティアをどのようにやったとか、あるいは論文であるとか、せめては面接だけでやってもらうとか、こういう形でやっていただければ、高等学校時代の学生生活というものは、ある程度到達度を見る共通一次テストのレベル程度の勉強でいけば、もうちょっと楽しい学園生活、もっと汗をかくような、そういう学園生活を送れるのではないか、私どもはそういう期待を実は持ったわけでございます。  ところが、やはり大学の先生方というのは、それだけで人物をはかるというのはなかなか物理的に大変だと言うのですね。大体一時的に三十何万人も受けるものですから、どうしてもそういうやり方は好まない。この前も総理に国立大学の学長さんたちとお会いしていただいたのですが、やはり学問を追求していくことなんだから、レベルを下げなさい、五教科七科目ある科目を少なくできないのですかと言うと、それも一つ考え方だけれども、それを少なくしたら日本の学術はおくれていきますよ、学問がどんどん下がっていくことに文部大臣として責任感じませんかとまで言われると、大分私も迷ってしまうのですね。しかし現実にはそのためにいまおっしゃったようないろんな社会的な弊害が出る、教育産業あるいは塾、そのために社会的な病理みたいな副作用が出てくることを政治としては何としても救いたい、そのことがやはり国民の大変大きな課題だと私は思っております。  したがって、一次試験そのものは私は悪だとは思わない。これを全部やめてしまえば、また各大学が個々の試験をやれば、また同じように難しい問題にどんどん進んでしまうのではないかというふうに考えますので、でき得ればこの一次試験の科目をできるだけ少なくできないだろうか、あるいはこれをメニューといいますかアラカルトというか、大学によっては好きな科目を三科目ぐらいとれるような形にできないだろうか、こんなことをいまお願いをしております。もう一つは、二次試験の中でいろいろ工夫を試みていただきたい、このこともお願いをいたしております。  それから受験産業については、これは日本人というのは経済を追求していくということについては大変な頭を使う民族でありますから、お金もうけをするなとはなかなか我々としては言えないわけでありますが、人間の一番痛いところをついてそれで金もうけをするというのは、私はやはりよくないと思うのです。  ただ問題は、高等学校の先生方が全国にたくさんある私立、公立あるいは国立大学の知識というものをなかなか得にくい。むしろ親が大変そのことを期待される。親の期待と子供の能力と、そして大学というものとの間の板挟みになって、結局先生方が何かに頼らざるを得ないということになってくる。そのことがこういう業者テストに依存しなければならぬということになるのだと思いますが、これは先ほど先生から御指摘いただきましたように、過去二回通達をいたしておりまして、かなり実効が上がってきております。もちろんなかなかということがあるかもしれませんが、とにかく授業中にやってはいかぬ、あるいは課外でやるときにお金の援助を求めてはいかぬとか、それから業者テストに依存するなという通達は出しておりまして、かなり数字的に効果は上がってきておりますが、もちろん先生がおっしゃるようにまだ満足したものではございません。後で数字は事務当局で調べさせておきたいと思います。やはり私は、そういうお父さんやお母さんの気持ちをどうやってかなえてあげるかという先生方の悩みというのはやはり一番大変なことだろうと、こう思う。  私も、自分の友人の息子さんが、私は石川県でありますが、岡山県のある大学を受ける。どうしてそんなところへ行くの、何か親戚でもあるのか、こう言ったら、上から偏差値の点数を下げていって横へ引っ張っていったらその大学のところにひっかかったから行くのだと言う。打っちゃいかぬとは言わないが、何かかわいそうな気がする。それによって岡山へやらされる。何も岡山が悪いというのではないのですよ。何かそういうことで私は大変矛盾を確かに感じたわけでございます。  そこで、基本的にはやはり学校教育制度が、親がそういうふうに求めてくるということ、子供に対する親のいろんな期待感、そんなものがやはり学歴社会というものの中にあるのじゃないだろうか、そういうことを私は——これは先生の方からいただいたといいますか、公明党さんからいただいた「生命が躍動する教育を」というのをいろいろ読ませていただいておるのですが、この中にも御指摘のとおり学校側の教育改善、両親の見識というのが書いてございます。両親の見識を文部省が求めるということはこれは大変失礼なことかもしれませんが、やはり先生が親の期待と子供との間の板挟みになっているという現実がございますから、基本的には教育制度全般を変えるということと、もう一つは学歴社会というこの弊害を直すというところに今度の教育改革の意義があるわけでありまして、私は、世の中の進展に従って、六・三・三制で今日まで来たけれども、この行き方が本当に正しかったのか、今の世の中の進歩や社会の背景から考えてみると、やはりみんなでもう一遍考えてみる、そういう時代が来ておるのではないだろうか。そういうふうに考えますと、この業者テストそのものについては文部省としてはこれからも厳しく指導してまいりますけれども、こういう社会的な病理全体を改善していくにはやはり教育の大きな改革をしなければこの問題はなかなか救いようがない、こんなふうに私は考えております。
  9. 矢野絢也

    矢野委員 総論ですから御答弁も長くなるのはやむを得ないと思いますけれども、これから各論に入りますので、それこそ共通一次ではありませんが、マル・ペケ式でお答えをいただければ時間の節約にもなります。  私はいろいろ申し上げましたが、日教組の中にもまじめに考えていらっしゃる方はたくさんおるのですよね。あるいは校長さんの中でもまじめな人がたくさんおる。進学指導に当たっている人も一生懸命やっておる。みんな善意でやっておる。ところが、私先ほど申し上げたのは、共通一次を一方でやりながら一方で業者テストはだめですよという、ブレーキとアクセルを一緒に踏むような愚かな文部行政のあり方に深刻な反省がなければ、幾ら大臣、ああですよ、こうですよ、本当に悩んでおります、心配しておりますと言ったって、こういうのは極めて技術的な問題なんですよ。ここで幾ら真情を吐露されても、私から言えば私の貴重な時間のむだ遣いをされている。私は受験生みたいな気持ちで、時間がない、ないという気持ちになってくる。冗談じゃないというのです。ですから、これから簡単にお答えいただきたい。  総理、これは私の個人的な気持ちでありますけれども社会に対して責任感を持つ、これは佐藤総理がお使いになりましたけれども愛国心、いろんな意味があるでしょうけれども、言葉そのものとして、愛国心とか社会に対して責任感を持つということは私個人としては大事なことだと思っております。あるいは親を大切にする、長幼の序というものも重んじる、私はこれも個人的には大事なことだと思っておるのです。総理はこれをどう思われますか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私も非常に大事だと思います。
  11. 矢野絢也

    矢野委員 こういったことはこれからの総理教育改革の中で、総理は人間形成に資するためとか、情操教育が必要だ、道徳教育も充実しなければならない、あるいは、これは記者会見ですが、教育荒廃原因日本的なエチケット、倫理、精神的な土壌が等閑視されておる、無視されておる、これからの教育国家、民族の土壌に根差したものでなければならないともこの記者会見で言っておる。あるいは仏教的、儒教的な思考も教育に取り入れる必要があるという御発言もあったやに伺っております。また施政方針演説でも、知育のみに偏せず、道徳性や社会性が不可欠だ、あるいは教育理念の改革も目指さなければならない、こう述べていらっしゃるわけですよ。  そこで、簡単に言えば社会に対する責任感、こういう言い方もあるし、もっと昔風に言えば忠義の忠という言い方、親を大切にしましょう、こういう言い方もある。昔風に言えば孝行の孝、どちらの言い方でもいいですよ。これは今の教育に取り入れられておるとお考えですか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 取り入れられてないとは言いませんが、私は、小学校あるいは中学校の初期の段階においてまだそれが非常に希薄であり、不足しているという気がいたしております。外国の例等も見ますと、小学校等におきましては、ほとんどそういう基本的な情操とかあるいは人間として生きていく基本を教えているように思います。特に、日本の場合におきましても小学校というようなものは余り詰め込み主義ではなくして、むしろ人間として生きていく基本の型を教える、易しく教える、そういうことが大事じゃないか。  オオカミ少年の話がインドにありましたが、オオカミに連れ去られた少女をまた人間の社会に戻したけれども、結局その大事なときにオオカミと一緒に過ごした少女は人間的なものにはなり得なかった、そういう話も聞きました。やはり、幾つになりますか、学者のお話も聞いて、ゼロ歳から七歳ぐらいまでの間に人間として生きていく基本の型を教えなければ、人間として立っていくという道はなかなかつかみ得ない。その一番大事などきに人間として生きていく基本の型を徹底的に教える、易しく教えていく、それが著しく欠如していると思っております。
  13. 矢野絢也

    矢野委員 これは教育基本法第一条でございますが、簡単に言えば人格の完成、平和と真理、正義、個人の価値、勤労、責任、自主、こういった徳目といいましょうか、教育の目的がうたわれておるわけでございますが、これは法制局長官、私も親孝行は大事だ、社会に対する責任感、昔風に言えば忠とか孝、私はそこまでは言わないにしても、常識的な意味でのそういう社会責任感とか愛国心あるいは親孝行、これが必要だということは総理とそんなに違わないと思うのです。それが今の教育に著しく欠如しておるとおっしゃっておるわけですけれども、この第一条の教育の目的から見て、欠如をしているのは、この第一条の属的に今申し上げたその二つの概念が含まれておらないからと長官はお考えでしょうか、含まれておるけれども教育がサボっておるとお考えでしょうか。
  14. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  ただいま矢野委員がお読み上げになりましたように、第一条の目的には、教育は、人格の完成を目指す、それから平和的な国家社会の形成者を育成さす、そうして「真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」ということで、本来国民として身につけるべき徳目と申しますか、言葉はいろいろ使い方はあるかと思いますけれども、そういった国民にとって大事なこと、これはすべてここにうたわれているのではないかというふうに考えております。
  15. 矢野絢也

    矢野委員 だから、親孝行とか愛国心というのは——この第一条によって教科書の検定あるいは学習指導要領もつくられてくるんですよ。ですから、そんな抽象的なことではだめなんです。愛国心とか親孝行というものは、この第一条の目的から教えてもいいということになるのか、どうなんでしょうか。
  16. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  親孝行、愛国心、これは昔から言い古されていることでございますけれども、いわゆる近代的な、新憲法のもとにおいて、いわば個人主義あるいは民主主義の精神に徹した上で、それで愛国心を持つ、または親に孝行する、これはいいことではないかと思います。
  17. 矢野絢也

    矢野委員 いいとか悪いとかじゃない、許されておるかどうかです。
  18. 茂串俊

    ○茂串政府委員 当然許されると思います。
  19. 矢野絢也

    矢野委員 ところが長官、そのあなたのお考え、私はあなたを責めるつもりはないのだけれども……。  総理、どうでしょう。今と同じお考えでしょうか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 教育基本法第一条、今、矢野さんお読みになりましたが、私はこの中で、「人格の完成」とか、あるいは「社会の形成者としてことか、あるいは「責任を重んじことか、あるいは「自主的精神に充ちた」云々とか、そういうような言葉から見ますと、今のような親孝行とかあるいは忠誠心、社会に対するロイヤリティー、そういうようなものは教育基本法の精神から見ても教えてしかるべきである、もちろん憲法教育基本法の原則のもとにと私前から申し上げておるとおりであります。
  21. 矢野絢也

    矢野委員 これは非常に微妙かつデリケートな問題を含んでいるのです。たとえば昭和三十一年でしたか、臨時教育制度審議会を設置しようという動きがございましたね。結果これは実現しなかったわけですけれども、当時の鳩山総理あるいは清瀬文部大臣でしたか、なぜ中教審があるにもかかわらず臨時教育制度審議会をつくるんだ、屋上屋を重ねることではないかという質問に対して、いや中教審ではできないことがあるのです。それは何だ、それは、この臨時教育制度審議会の目的は、愛国心とか親孝行ということが教育基本法第一条では教えられないことになっておるから、そのことも含めて改正を検討しなくちゃならぬ。これは総理文部大臣も、その当時——これは議事録、山ほどありますわ。なぜ屋上屋を重ねるものをつくるんだという、その必要性について、忠とか孝が教えられないから教育基本法の改正もやらなくちゃならないんだ、だから屋上屋にはならないんだというのが三十一年のときの御答弁だったのです。その根底には、この八つの徳目、第一条にある徳目では忠と孝は教えてはならないということになっておるから困っているんだという文部大臣総理大臣の答弁だったのです。  ですからこれは、いまの御答弁を聞くと、随分総理も、当時は副幹事長か何かしていらっしゃった、重要な役職だったと思うのだけれども、随分モダンになられたなと。私が聞きたいのはそこなんですよ。言葉だけそういう言葉でやりながら、つまり第一条によって忠も孝も教えられるんですという解釈の変更をやりながら、結果的には忠と孝をこの新しい制度で押し込む。そして世論の成り行きによっては教育基本法の改正もやむを得ない、こういうことになるのではないかと危惧するから私は伺っておるわけでありまして、これは総理、どうなんでしょう。もう第一条で——忠とか孝とか古いからやめておきましょう。私もそんな言葉余り好きじゃない。この新しい憲法のもとにおける社会に対する責任感、親を大切にしましょう、こういったことは第一条によって教え得るんだ、イエスかノーで結構です。またこれは後で日教組対立が出てきますよ、おかしな答弁をしたら。教えられないと日教組は言っているのですから。また、学習指導要領でもそれは禁じていると私は理解しておるのですよ。どうなんですか、これは。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は最初に、人間として生きる基本の型を特に小学生あるいは中学の初期においては教える必要があると申し上げました。人間として生きる基本の型という中には、社会に対する責任感あるいは特に……(矢野委員「要点だけひとつお願いいたします」と呼ぶ)社会という関係とか人間という言葉の原点から見れば、相手の存在というものがあって初めて自分の存在もあり得るので、自己抑制という問題は非常に大事な徳目であるだろうと思うのです。いわゆる突っ張りであるとかいろんな問題が現在起きているには、そういう自己抑制というものを小さいときに余り教えない、あれくれと言えばすぐ買ってやる、そういうような風潮からも来ているということも言われております。やはり人間として生きていく一番大事な徳目の中には、人に奉仕するという面と同時に、また自分が欲望を満足するように積極的に活動するという面と同時に、やはり自己抑制という面が非常に大事だ。ブレーキのない自動車はない。ブレーキのない自動車は欠陥自動車で禁止されている。それと同じことでありまして、そういう意味の基本的型を教えていくということは当然教育基本法第一条に含まれていると考えております。
  23. 矢野絢也

    矢野委員 委員長、これは重大な政府教育基本法第一条の解釈についての変更なんです。三十一年の議事録を私は全部拝見いたしました。愛国心とか親孝行は第一条の目的では教えられないのだとはっきり当時の政府は言い切っているのです。また、それに基づいて学習指導要領がつくられているのだから、教科書にもそんなことは入れられないんだとはっきり言っているのです。総理は——総理って今の総理の中曽根さんは、忠と孝という言葉は別としましても、愛国心とか親を大切にするということは欠如しておるからこの教育に必要だ、これを加えなくてはならないとおっしゃっているのです。その加え方が三十一年の時点では、第一条を改正しなければ加えることができないと御答弁があった。今は、変えなくてもそれは加えることができるんだと御答弁があったのです。これはいままでの政府解釈の重大な変更でございますから、ここのところは、委員長、今のような、言葉を弾力的に、文学的に拡大して、第一条は変えなくても忠、孝は教えてもいいのだと、露骨にはおっしゃっていませんが、おっしゃっているわけでしょう。これじゃ、非常にこの教育改革根本のところがあいまいになったまま、何となくムードだけができて——私は嫌みを言うわけではないけれども、嫌みを言わぬと言って言ってるばっかりだけれども、これは行政改革の臨調だって立派な業績を残されたことに敬意を表します。しかし反面、私なりに行革の臨調には不満も持っておるのです。これができることによって、そこのけそこのけ臨調がまかり通る、これを批判する者はそれこそ非国民だと言われんばかりのムードができた。ただ、ありがたいことに、臨調の言われたことはそう間違ったことじゃなかった。だから、私たち行政改革の臨調については御協力を惜しまないという立場でやってきたのです。しかし、この教育の新しい機関というものがもしもこのような基本的な問題をあいまいにして、そして新しい機関の権威において文句を許さぬぞというような風潮ができたならば、それこそ総理の言う国民合意も各党各派の御賛同も得られないと私は思うのですよ。ですから委員長、この問題については明確にしていただかなければ、そんな言葉の遊戯じゃ私は納得しません。  まだもう一つあるのです。第十条の問題もあるのです。総理が新しい機関をつくる、文部省にせっかく中教審という立派なものがありながら、内閣直属のものをおつくりになる。これは第十条第一項で言うところの不当な介入に当たりはせぬかという問題が一つあるのです。中教審なら従来二十七回、二十八回と諮問もあり、四十六年には画期的とも言える御答申があった。それなのにそういうものをおつくりになる。これは第十条との絡みにおいて不当な介入に当たりはしないかという危惧を私は持っておる。これは後ほど聞きます。  というわけですから、この第一条に関しての御答弁は納得できません。はっきりさしてもらいたい。もう同じことを繰り返されたのでは、私、困るのです。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 鳩山内閣あるいは清瀬文部大臣の当時におきましていろいろな言動があったということはそういうことなんだと思います。(矢野委員「言動じゃないんです、答弁ですよ」と呼ぶ)もちろん答弁もあったと思います。しかし、中曽根内閣におきましては、私が申し上げていることが教育基本法の解釈であり、私たちの確信でございます。したがいまして、この精神、この解釈によりまして私たちは実行していくつもりでございます。  それから、なぜ中教審と別の——矢野さん、聞いてください、矢野さん。中教審と別のそういう機関を設けるかという点につきましては、中教審は中教審としての非常な機能を果たしてまいりました。(矢野委員「それは後で聞きます」と呼ぶ)今、一つの区切りに来ているわけです。そうして、しかも、四十六年のかなり浩瀚な、そして立派な内容があるものを必ずしもできなかったという面、あなた方がおっしゃるようなパイロットスクールというような面もあの中には入っておると思いますが、そういうようなものができなかったといういろんな面を考えてみますと、これは内閣全体で、総がかりでやらなければなかなかできにくい問題で、特に現代のような時代にはそうなってきたし、各省関係にいろいろ影響する問題も出てきているんです、幼保の問題でも。(矢野委員  「それはわかっています、そんなことを聞いているのじゃない」と呼ぶ)そういう意味において、内閣総がかりで実行していく、勉強もしていただく、そういう意味であります。
  25. 矢野絢也

    矢野委員 委員長、私は第一条に絡みまして、かつて政府は、言葉が適当であるかないか別としまして、簡単に言えば忠と孝だ、これは第一条の規定から見て教えられない、だから臨時教育制度審議会をつくるんだ、一番大きな理由だったわけです。その根底には、この第一条にはそれを教えてはならないのだという解釈があったわけです。今の御答弁は、今は第一条でそれが教えられる、重大なこれは食い違いなんです。ここのところをはっきりしてもらわなきゃ、次の質問できないですよ。
  26. 倉成正

    倉成委員長 政府側に申し上げます。  ただいまの矢野君の質問は、教育基本法第一条に関する三十一年の政府答弁とただいまの答弁とは食い違っている、したがって、それはどういう説明をするかということについての御質問だったと思います。  必ずしも明確でありませんので、もう一度政府側の答弁を求めます。
  27. 矢野絢也

    矢野委員 同じことを言われては困るのです。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、私は人間として生きる基本の型という表現を用いまして、いま矢野さん自体も必ずしも忠と孝という昔の概念にはとらわれないお考えのようであります。私は、人間として生きていくについて、これは中教審におきましてもいろいろ議論されておられるところでもあります、そういうような基本的型、徳目というようなものにつきましては、第一条におきまして十分教えられると考えておるのであります。その辺のいきさつにつきましては、文部大臣から御答弁申し上げます。
  29. 高石邦男

    ○高石政府委員 お答えいたします。  清瀬国務大臣が国会で御指摘のような質疑に対してお答えしていることは事実であります。ただ、この解釈は、教育基本法に言葉として愛国心とか親孝行であるとか、そういう具体的な言葉が入ってない、したがって、より明確に、言葉としても補ってはっきりさした方がいいじゃないかということであって、本質的に教育基本法の現在の条文の中からその親孝行であるとか国を愛するということを教えてはならないとか教えるべきではない、そういうような内容になってないということが先ほどの大臣のお答えだと思います。
  30. 矢野絢也

    矢野委員 それは違います。それはあなたも議事録をよく御存じだと思いますけれども、今のこの八つの徳目では教えられないと言っているのですよ。ここには何ぼでもありますよ、そういうことは。
  31. 高石邦男

    ○高石政府委員 真理、正義、個人の価値、勤労、責任、これを重んずること、自主精神を養うこと、この八つを挙げておりますという、言葉として八つ挙げているということを大臣は答弁しているわけでございます。しかし、これは基本法にそういう言葉としてのものがないので、もっと明確にしていくべきではないか、こういうような考え方が、当時あったのではないかと思います。しかしこれは、基本法の条文そのものが愛国心であるとか親孝行であるとかそういうことを教えてはならないとかいうことを言っているのではないということで、言葉として入っていないということを指摘していることは事実でございます。
  32. 矢野絢也

    矢野委員 これでいろいろなことを言っているんだよ。戦後の総決算だと言っているんだからね。まあい。いや。  私はこの問題で目くじらを立てているようでございますけれども、私は親孝行は必要だということを前々から何遍も繰り返して申し上げているのですよ。要は、総理がここでそういったことの教育は欠けておるから、さらに今後強めなくちゃならぬ、強めるというか必要だとおっしゃっているんですね。これは私、賛成なんですよ。そして一方では、教育基本法は変えませんと先ほど私の質問に対してお答えになりましたね。変えないんですね、間違いないですね。そうすると変えない、しかし、いま欠けておる、孝行ということが。それはこの一条で決してやれないわけではないのだ、やれるのだというふうにお述べになっているわけです。しかし、それに異を唱えているつもりはないんですよ。やってもらいたいのですから、親孝行の教育は。ですから、もうここでこじらすのはやめましょう。教育基本法は変えません、そして社会に対する責任感、特に親孝行、これはこの第一条を変えない中できちっとやっていくんですということ、そしてそういうことも新しい機関に諮問されるのかどうか、諮問するのかしないのか、このことだけ簡潔にお答えください、次の問題に行きたいから。
  33. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 教育基本法を変えないで、それを前提としてと申し上げましたとおりでございまして、この教育基本法のもとに立って教育改革をいろいろお考え願いたい、そう思っています。
  34. 矢野絢也

    矢野委員 先ほど私は臨調のことを皮肉たらしく申し上げたことは、そのことをはっきりしておかなければ、妙なムードをつくられて、妙な方向に持っていかれたら困る、しかしながら、やはり親孝行とか社会責任感というものは必要だろうと、老婆心ながらそれでよろしいのですかということを申し上げておるわけなんです。  そこで、もう一遍法制局長官に伺いたいのですけれども教育政治的中立という問題なんですね。  特に、第十条には「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」これは第一項。そして第二項では「教育」という言葉じゃなくて「教育行政はこということで、その条件その他を整備しなくちゃならない。第一項では「教育」、これは不当な介入を受けてはならない。第二項では「教育行政はことわざわざ言葉を変えて第十条は成り立っているわけですけれども、御存じの学力テストの最高裁の判決があったわけでございます。これによりますと、簡単に言いますと、不当な支配、介入、不当な支配に服してはならないというこの不当な支配とはどのようなものを言うのであろうか。それについては昭和五十一年の五月二十一日の学力テストに関する最高裁判決がまさにそれについての解明を行っている。御承知のとおりです。それは論理的には、教育行政が行う行政でも不当な支配に当たる場合があり得ることを否定できず、教育が自主的に行われることをゆがめるような支配と認められる限り、その主体のいかんを問うところではないと解しなければならない。これはもう御承知のとおりなんです。つまり、文部省的な論理でいくと、ちゃんと国会で成立した法律に基づいて、その法律によって行政をコントロールすることは不当な支配にはならないという立場をとっておられる。法律があれば、その法律によって教育をいろいろ変えていくことは不当な支配にならないのです、合法的な法律だから。しかし、これはそうじゃないのですよ。自主的な教育の、何というのでしょうか、教育が自主的に行われることをゆがめるような支配と認められる限りは、その主体のいかんを問うところではない。場合によっては法律に基づいて行う教育行政といえども不当な支配になる場合がある、こういう判決をお出しになっておるわけでございます。  そこで、最高裁の判決ですね。総理御みずからが音頭をとられて教育改革をなさるという場合、従来文部省では中教審という立派な機関があって、先ほども言うたとおりでありますが、二十七回、二十八回と諮問に答え、まさに総理が言っておる各省各局にまたがる問題まで含めて、例えば六・三・三・四制の問題、幼児教育の問題、入試のあり方、あらゆる問題にわたって中教審は答申をしておられるのです。  本論に入る前にまず文部大臣に伺いたいのだけれども、中教審の上に別にものをつくるのではなしに、大事なことは、中教審が答申したことをやらなかったことに最大の問題がある、そうでしょう、文部大臣。ここで総理御みずからが何かおつくりになってやる。その前に文部省自身が中教審の建設的な、しかも包括的な問題についての御提言、答申、やらなかったじゃありませんか。自分がサボっておいたことを棚に上げて、今度新しい機関をつくる。それは各省間にまたがる問題があるからつくるのです——各省間にまたがる問題だって中教審はちゃんと答申していますよ。自分のやらなかったことを棚に上げて、今度は総理の権威にすがってやりましょうということになりますと、まさに私が言う不当な支配になりはせぬかという懸念が現実のものになりかねない。  まず文部大臣、中教審のメンバーに何か不足でもあるのですか。もう一つ、中教審のなさってきた仕事に何か文句でもあるのですか。さらにもう一つ、なぜ中教審の答申を文部省はやらなかったのですか。国民合意がないというのを答弁しておられた。あなたの言うことも先に言っておきますよ。あのときは、できなかったというのはコンセンサスがなかった。いまだって必ずしもあるとは限りませんよ、この問題について。
  35. 森喜朗

    ○森国務大臣 中教審の数々の答申は、すばらしいものでございました。またメンバーの皆様方も、それぞれのお立場で立派な考え方を述べて、おまとめをいただいております。  いま御指摘がありましたように、中教審の過去の答申については、いろいろな角度で国会議論をしたり、法律で改めたりして、改善できるものはかなり進んでおります。おしかりをいただくかもしれませんが、先導的試行あるいは幼稚園の設置義務というようなところは、確かに当時としては国民的な合意がなかなか成り立たなかった。具体的に言えば、小学校長会などは若干首をかしげていらっしゃる、あるいは反対の向きもございました。したがって、総理の権限、内閣の権限でやろうというのではなくて、先ほどから、また前からも申し上げておりますように、できるだけ多くの国民的な議論を踏まえた方がより国民的な合意を得られるのではないだろうか。そういう角度で、この際、中教審がだめだからということではなくて、中教審の議論をしていただいたもののベースの上に立って、その上に立って新しい審議の視点あるいは検討の角度というものはもう少し幅広く、多くの皆さんの意見を聞いた方がより国民的な合意を得るようになるのではないか、そういう方向で今度の新しい機関をぜひお願いをしたい、こういうことでございます。
  36. 矢野絢也

    矢野委員 法制局長官、不当な支配についての御意見をお聞かせください。
  37. 茂串俊

    ○茂串政府委員 不当な支配につきましては、先ほど矢野委員も御指摘になりましたように、昭和五十一年の五月二十一日のいわゆる学テ最高裁判決におきまして、るる最高裁としての意見を述べられておるところでございます。  それによりますと、先ほどもちょっとお触れになりましたが、要旨を読み上げますと、不当な支配とは、教育国民の信託にこたえて専ら教育本来の目的に従って行われることをゆがめるような支配を指すというふうに述べられております。  そこで、先ほどもお話がございましたように、このいわゆる学テ判決におきましては、確かに論理的には、教育行政機関が行う行政でも不当な支配に当たる場合があり得ることは否定できないと言っておりますけれども、これに続けまして、「憲法に適合する有効な他の法律の命ずるところをそのまま執行する教育行政機関の行為がここにいう「不当な支配」となりえないことは明らかである」ということも論述しておるわけでございます。したがいまして、いわばここにありますように、憲法並びにそのもとの法律の命ずるところに忠実に従って、そうして行政機関行政を執行していくということになりますれば、不当な支配という問題は起こってこないのではないか、このように考えております。
  38. 矢野絢也

    矢野委員 長官、「国民の信託にこたえて」というところの後のくだりをもう一遍繰り返してください。今お答えになりましたね。
  39. 茂串俊

    ○茂串政府委員 御指摘のありましたくだりでございますが、教育国民から信託されたものである、「したがって教育は、右の信託にこたえて国民全体に対して直接責任を負うように行われるべく、その間において不当な支配によってゆがめられることがあってはならないとして、教育が専ら教育本来の目的に従って行われるべきことを示したものと考えられる。」、このようになっております。
  40. 矢野絢也

    矢野委員 教育国民の信託にこたえて右の意味において自主的に行われることをゆがめるような不当な支配であって、そのような支配と認められる限り、その主体のいかんは問うところでないと解しなければならないという私の意見は間違っていますか。そういう表現はございませんか。
  41. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいまお読み上げになりましたような言葉がここには載っております。
  42. 矢野絢也

    矢野委員 大事なところを外して——右の意味で自主的に教育が行われる、これをゆがめるような不当な支配であって、そのような支配と認められる限り、つまり教育改革が自主的でない、それをゆがめるような支配は主体のいかんを問わない。これは不当な介入になる、支配になる。大事なところを長官飛ばしちゃったらだめなんですよ、あなたほどの専門家が。  そこで、この自主的という言葉、これと総理の言われる、総理に直結する機関があれこれなさる、これが自主的を損なわないようにうまいこといくというのは相当難しいですよ。言葉の上では簡単。国民合意を形成する、どうとかこうとかと。むしろ、中教審はそれなりの歴史とそれなりの実績をお持ちである。その意味では、中教審が答申されていることは、ある意味では自主性という意味に私はそう矛盾しないと思う。メンバーを見れば、教育現場の方々もたくさんいらっしゃる。このメンバーを私はたくさん存じ上げております。尊敬できる方がたくさんおる。これは本当に立派な方です。ですから、実績があるということと、現場の人であるということと、それなりに国民がなじんでおるということ、この中教審にさらにもう一努力願ってよいものをつくっていくということが、つまり教育の自主性を損なわない改革につながって、不当な支配にならない。それを無視しちゃって——無視とは言わぬけれども、まあいわばこれは無視だ。それで総理が御自分の諮問機関をおつくりになるというのは、自主的な教育のあり方についての大げさに言えば挑戦になる。挑戦にならなくても自主性をゆがめることになるし、いきさつ、伝統というものを考えれば、それを軽く見ることになる。下手をすると第十条違反という問題も起こりかねない。自主性を損なうと不当な支配になる、こうあるのですよ。  この自主性との関係で、どちらがよろしいのでしょうか。あなた自身が本当に考えてもらわなくちゃ、御自分は張り切って進め、進め、ただ進めで、後で考えたらとんでもない落とし穴にはまっておったということになりかねないから、私はこれは声が大きくて申しわけないのだけれども、老婆心ながらいろいろと申し上げておるわけでございまして、第一条の問題も、あなたが教育基本法第一条を変えないとおっしゃったから、私はそれで納得したのです。第十条の問題も、これまた三十一年に戻すのだけれども、臨時教育制度審議会を設置する、中教審の上につくるという二つ目の目的は、文部大臣の権限を強化したいという目的が、あの三十一年の臨時教育制度審議会にあったことは御承知のとおりです。第一番目の目的は、基本法第一条では忠と孝が教えられない、こんなことでは民族の伝統が破壊される、だから第一条を変えるんだ、第二の目的は、文部大臣の権限を強化したい。これはもう明確に鳩山総理も清瀬文部大臣も再三どころじゃない、何十回となく答弁している。これはむしろある意味では、中曽根さん、あなたよりも論理的にはこちらの方が整合性があるんですよ。私は反対だけれども、こういう三十一年当時のは。なぜ屋上屋を重ねるか。それはできないことがある。一つは今申し上げた忠と孝なんだ。二番目は文部大臣の権限強化のために、屋上屋と言われようが、何と言われようが、内閣直属のものをつくらねばならないんです、それでなければ占領政策の是正ができないんです、こう三十一年当時は繰り返して答弁しておられる。私はそういう立場には賛成じゃないけれども、なるほどそういうことなら屋上屋というものも政府立場としてはそれな力の必然性があるなど、賛成じゃないけれども理屈はわかる。そういう整合性のある論理もお持ちでないんです。  総理が、各省各局にまたがる問題を処理しなくてはならぬから、ただそれだけなら放送大学だって文部省だけじゃないんですね。郵政省にもまたがる、通産省にもまたがる、各省各局にまたがる問題を、放送大学をつくったじゃありませんか。為替の問題は経済関係閣僚会議が行われるじゃありませんか。そんな調子でいくのなら、大事なことがあれば何でも臨調。臨調と言うとあなたが嫌がるから新しい機関。安全保障の問題、これも兵器の国産という問題が将来出た場合、防衛庁だけの問題じゃだめです。通産省の御参加もいただかなくちゃならぬ。基地の問題は自治省に御相談しなくちゃならぬ。定員の問題は労働省との関係もある。その場合は安全保障臨調をおつくりになるのですか。福祉の問題は厚生省だけの問題ではない。通産省との関係もある。あらゆる省庁に関係がある。その場合は福祉臨調をおつくりになるのですか。これでは一体何のために大臣がおるのですか。大事な問題があれば新しいものをつくる。ここにいらっしゃる方は大事でない問題をやるのですか。どうでもいい問題だけをやるのが大臣ですか。むしろ私はこの教育の不当な支配、この第十条の規定から考えても、非常に危険な要素がある。しかも三十一年のあのときの論理とは、中曽根さん、矛盾しておる。あのときの方がまだむしろはっきりしておった。各省各局の問題、それなら先ほど申し上げたように大事な問題は全部そういうものをつくるのですかということになってくる。ですから、張り切ってくださるのは結構なんですよ。本当に総理教育改革は私も大事だと思っておりますから。ただ、そういうものをつくれば何でも解決するみたいな発想はこの際おやめになって、さっきから言っておりますように、中教審で繰り返し大事な問題について御提言があったわけなんだから、まずそれをまじめにやる、一生懸命やる。竹入委員長も代表質問で提言をいたしましたけれども。そして現行制度で改善できるものは改善しましょう。それで難しいものは、大変言いにくいことですけれども、現行制度の弾力的運用によってさらに改善もしていきましょう。その結果、いろいろなテストケースを経てやっぱりこれは変えた方がいいという実験を経た上で、第三番目の制度、法律の改正をおやりなさるというのがこの教育問題については正しい手法だと、代表質問でも申し上げておるわけです。ところが、いきなりまず初めに教育臨調ありきみたいなことでね。  まあ、あれこれ質問やら意見ともつかぬことを長々と申し上げましたけれども、気の向いたことだけ答弁してください。納得するかしないかは私が判断しますから。でなければ、私どもはこの構想には賛成しませんよ。
  43. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府といたしましては、教育に対するこの教育基本法にあるような不当な支配をやろうとは毛頭思っておりません。(矢野委員「自主性との関連はどうなりますか」と呼ぶ)むしろ、今文部大臣がお答えいたしましたように、中教審は非常な御苦労をいただいて、内容的にも充実した御答申をいただいていると思っております。特に四十六年の答申はかなり網羅的な答申であったと思います。しかし、今日的時点に立ちまして教育の実態及び国民の御要望等を伺ってみますと、やはりここで四十六年の答申等中教審が今までおやりになったことを現代的視点に立ってもう一回見直し、国民の皆様方のお考えも承り、そしてより適正なものをやっていく、中教審の自主性を決して無視するものでもございません。しかし、中教審といえども全能者ではないのでありまして、中教審自体のつくられたものがそれですべてを尽くした、百点満点の百点のものであるということでもないと思うのです。やはり今日時点に立って考うべき点もあるでしょうし、また足らざる点もあるだろうと思うのです。そういうような点はもう一回ここで見直してみる時期に来ておる。  そういう点と、もう一つは、中教審が四十六年にあれだけのものをおつくりになりましたけれども、まあこう申すと変ですけれども、今日ほどそれほど国民的関心を呼び起こしたとは思えない。というのは、今日はともかくこれだけ教育問題に対して国民的関心が熾烈に燃え上がってきておる。あの四十六年の状態と今日の状態は非常に違っております。そういう時代の変化及び問題が詰まってきておるという点、そういうような点も考えてみまして、政府は新たなる見地に立って、国民の御要望にもおこたえし、政府としての責任も果たしていきたい。そして、この新しい機関をつくる法律案をつくる際に当たりましては、もちろん今の教育基本法その他に背馳しないように十分注意して法律案もつくってまいりたいと思っております。
  44. 森喜朗

    ○森国務大臣 教育の自主性ということについてお尋ねでござい属すが、いわゆる不当な支配を排除しなければならないという意味でこれは教育の自主性の尊重だろうと思います。その不当な支配というのはやはり国民全体の意思を代表するものと言えない社会的な勢力、こういうことになってまいりますから、憲法に適合し、教育基本法にのっとった有効な法律に基づいたもの、これが正しい教育考え方であるということであれば、これは教育の自主性を損なうものではないと私は考えております。  それからもう一つは、また長くなると言っておしかりをいただきますが、答弁するのは初体験でございますので、うまく言い回しができませんが、もう一つは、何回も申し上げましたが、中教審の御議論をいただいたもの、これを今日的視点と今総理は申し上げました。もう一つ今お願いをする新しい機関は、これから二十一世紀へ向けて日本教育というのはどういうような形がいいのだろうか。先生方からも御指摘いただきました本も読んでみますと、随分いろいろな角度から示唆に富む御見解がまとめられております。こういう問題も取り入れてやってまいりますと、どうしても、中教審だけの議論になりますと、中教審に参加していただいた先生方の御意見も個人的に聞いてみますと、やはり各界の代表のお集まりになってしまいます。そうしますと、そこのところでなかなか前へ進まないという問題が出てまいります。  さっきの共通一次のような問題も、簡単に、こんなものはやめよう、これを改善しろ、こう言っても、大学の先生方の使命感というものは大変強いものがございますから、やはり高等教育機関全体のあり方をどうするかという角度を考えざるを得ないと私は思うのです。そういうことも考えるということになれば、二十一世紀という言葉がいいかどうかわかりませんが、十年、二十年先の大学のあり方というのはどうあるべきだろうか、私立大学と国立、公立はどうあるべきだろうか、こんなことも検討するということになると、新しい機関でやっていくということが、やはりよりよい国民合意を得るようなものができ上がっていくのではないか、こういう期待を私は持っております。
  45. 矢野絢也

    矢野委員 中教審が答申されたことと新しい機関が答申されたことと、将来、万が一食い違ったら、どうされますか。
  46. 森喜朗

    ○森国務大臣 これは議論を積み重ねてまいりますし、当然、先ほど申し上げたように、中教審の御答申をいただいたものをベースにまずスタートしてみたいということであります。議論の中でありますから、当然、食い違ったものが出てくるのかもしれません。これはやはり合意を得なければ前へ進められるはずがございません。私はそのように考えております。
  47. 矢野絢也

    矢野委員 今まで中教審の答申を実施されなかった責任はどうお考えになりますか。
  48. 森喜朗

    ○森国務大臣 御議論をいただきました御答申は、先ほど申し上げたように、私もかなり克明に調べてみましたが、量的に言えば差しさわりがあるかもしれませんが、八、九割はいろいろな形で改善をしております。  細かに申し上げたらまたおしかりをいただきますから、私の意見として申し上げます。  残されたことは、先ほど申し上げたように、やはり国民合意というのはなかなかすぐ得られない。教育というのはできるだけ多くの皆さんの合意を得なければ、結果というものはなかなか先まで出てこないわけですから、簡単にすぐ制度を変えてしまうということは、子供たちにとっても、また日本の将来にとっても、非常に大きな問題になってまいりますから、そういう意味で、残されたものについてそれなりに今学問的研究という課題で文部省の中でやっております。ただ、外に向けて、制度をこう改善したというものはございませんけれども、例えば先導的試行の問題にいたしましても、いわゆる幼稚園の義務設置にいたしましても、文部省の中ではいろいろと研究課題として一生懸命努力はいたしております。
  49. 矢野絢也

    矢野委員 教育問題、一時間半かかっちゃったわけでございますが、私は、自分の質問のすべてをこの問題に注ぎ込んでもいいぐらい大事な問題だと実は思っておるのです。ただしかし、財政経済その他いろいろな問題もございますので、残念ながらこの問題はこれで終わりますけれども、本当に総理、この一月、二月になると、各御家庭では子供さんが勉強しておる、親は声も出せないのです。勉強の邪魔になる。本当に声も出せない。私も経験しました。そして一生懸命勉強して、偏差値だ、共通一次などという非人間的な数字の輪切りで、おまえはこの程度の人間だというランクづけがされておる。そして全部が全部通るというわけではないのです。挫折する人が多い。  これは提言ですけれども、例えば外国では、入るのは易しくて卒業するのが難しいということもあるわけですよね。日本は、入るのは難しいのだけれども、入ったら、五月病と申しまして、試験が終わって合格したら、やれやれということでもう無気力になってしまう。勉強しない。本当にそうです。これが本当の大学教育なのかという気持ちもいたします。  ですから、声を荒げたりして私も大変恐縮いたしておりますけれども、しかし、私はこの問題で教育改革をするなという論点から申し上げているのではない。やってほしいのです。本当にやってほしい。ただ、国民の間にも労働組合の間にも一部の政党の間にも、中曽根さん何やらかすかわからぬという心配がある。私もその心配を持っておる。教育基本法は変えませんとおっしゃった。第十条も、これは尊重するとおっしゃった。私はそれは非常にいいことだと思います。ただ、何で各省間にまたがる問題を、そういうものをつくらなければならぬのかということは、いささか説得性に欠けておる。中教審の答申をろくすっぽやりもしないで、八割やった、そんなのうそだ。そんなことだめだ。一つ一つやりましょうか。材料があるから、やってもいいですよ。全然やっておらぬ。  ですから、まずやることをやる。だから、まず改革の視点をお互いが検討するということが大事だと思うのですね。私もその立場で申し上げておる。それから二番目には、コンセンサスづくりをしていく。そして、机上の空論ではなくて、できるところから、さまざまなテストケース、パイロットスクールだとか、いろんなテストをやってみる、現行制度の中で。そして、その結果どうであったかという評価をみんなでまた知恵を出し合ってする。この一番から四番までの具体的な手順を踏んで初めて必要な措置、制度改革あるいは法律改革というものが問題になると思うのですよ。竹入委員長が代表質問でこの手順を御指摘申し上げた。御答弁なかった。  ですから、私は、重ねて教育問題については改革の必要性を強く強調しながらも、その手法、発想についてはぜひ慎重であっていただきたい。せめて公明党が納得できるような——うちが反対に回ったら、ちょっとややこしゅうなりますよ、総理、本当に。決めかねておるのです。ぜひそういう視点でお考えいただきたいことを最後に御要望申し上げます。  それから、次の問題にいきます。  教育問題、あれこれやりましたが、やはり教育の根底は、政治不信ということも一つの大きな要素なんです。ある学校現場で、君、そういうことをしちゃだめじゃないかと先生が注意しますと、学生いわく、何で私が謝らなければいかぬのや、例の人謝らぬじゃないですか、あれだけのことをしておいて。自民党も謝らぬじゃありませんか、中曽根さんは開き直っているじゃありませんか、こういうふうに生徒が言うんだ、最近の学生さんなかなか頭がいいから。そうすると、先生、もう二の句が継げない。まさか、それもそうだななんて言うわけにもいかぬし。それはそれ、これはこれで、おまえはちゃんとしなさいなんて、非常に難しいことを言わなければならぬ。そういう意味で、教育問題を論ずる総理たるものは、政治倫理についてもみんなが納得する毅然たる姿勢をお示しなさることが、教育を論ずるまず必要不可欠の資格であると私は申し上げておる。  そこで、いわゆる田中問題、けじめをつけられるように私は期待しておるわけでございますが、どうお考えですか。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この点につきましては、本委員会におきましても申し上げましたように、選挙を通じまして非常に厳しい御批判を受けた。その反省の上に立ちまして、諸般の手続やら、また諸般改革を実行し、実行しつつあるところでございます。それらの積み上げの上におきまして、ぜひ御批判、御評価を願いたい、そう思っておる次第でございます。
  51. 矢野絢也

    矢野委員 田中角榮代議士は選挙の結果で、いわゆる野党が言う辞職勧告決議案などという問題はあれでもう済んだんだ、決着済みなんだ、こういうお考えですか。
  52. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題は、与野党でどういうふうな対策が今後とられていくか、決議案が出るのか出ないのか、あるいはそれに対して各党がどういう対応を示されるのか、そういうような具体的な問題が出てきた場合に考うべき問題であります。一般的な我々の政治倫理に関する考え方は、今議会におきまして今までいろいろ申し上げてきたとおりでございます。
  53. 矢野絢也

    矢野委員 要するに、国民の厳粛な審判を重んずる立場から、二十二万票おとりになったんだからいわゆるこの問題の決着はついたのだ、そんな御答弁がありましたけれども、今でもそういうお考えですか。
  54. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題は一般論として申し上げたのでございまして、前臨時国会におきまして田中決議案というものが出まして、いろいろ御論議を呼びました。それに対して、我々は我我の見解を申し述べてきました。そして次に選挙という事実があって、選挙というものは、民主政治、議会政治におきましては、国民政治問題等に対する最終、最高の審判であると私は考えている、そういうふうな考えを申し上げたわけであります。
  55. 矢野絢也

    矢野委員 具体的に他の野党の諸君からも提案がありましたけれども、例えば、第一審で禁錮刑、実刑の判決があった政治家については議員の資格を自動的に喪失するとか、そこまでいかなくても登院を御遠慮願うとかというようなルール、あるいは必要があれば国会法の改正、こういったことはお考えじゃございませんか。イエスかノーで結構でございます。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点につきましては、今我が党におきまして政治倫理調査会を設けておりまして、新自由クラブとの先般来のいきさつもあり、検討を加えております。また、野党の皆様方が国会に設けられました政治倫理協議会におきましていろいろ御提案が出てまいりますれば、それに対して我が党の考え方も申し上げ、対応していかなければならないと思っております。
  57. 矢野絢也

    矢野委員 いわゆる資産の公開、閣僚についてなさったわけでございますが、口の悪い人は、あれは一種の政治ショーであって実体的には余り意味がないことなんだ、それは基準があいまいであるとか、いろいろな批判があるわけですね。しかし、まあしないよりした方がましだという程度の評価はあると思います。まあ閣僚、竹下さんなんかこれで留任しておられるわけだが、あなたの場合、次も留任すれば今度の資産公開と次留任したときの資産公開、それはするかせぬか知りませんよ、というふうに、閣僚をずっと長くしておられればその継続性という意味で資産公開というのは意味を持ってくると思いますよ。そうでしょう。総理もそう言っておられるわけです、継続性が必要だと。ところが、しばしば閣僚は、縁起でもないことを言って申しわけないのだけれども、そんなに三年も四年も首がつながっているとは思えない、失礼ですけれども。短い期間で交代される。今まで閣僚でなかった方がまた資産公開なさる。それも意味がないとは言いません。しかし、やはりそういう継続性、政治活動を通じてその政治家の資産がふえたのか減ったのかどうなったのだということを見るためには継続性が必要だ。  そういう意味から見れば、もちろん閣僚の責任は大きいわけですから、閣僚の資産公開なさることはそれ自体悪いとは言いませんけれども、全議員を対象にした資産公開、その中から閣僚になられればよりシビアな基準ということ。特に公明党は、政治家がお金を持っている、財産を持っているからけしからぬのぞき趣味的な立場で申し上げているわけではないのです。先祖代々遺産を相続された方もあるでしょう。事業をなさっている方も、公正な事業で資産をつくり上げた人もあるかもわかりません。あるかもわかりませんなんて言ったらしかられる。そうでしょう、恐らく。要は政治活動、政治家としての活動で資産の増減がどうなったかということが大事なのですから、一定規模以上の資産の増減については、例えば毎年とかあるいは選挙の立候補のときとかという形で全議員あるいは全候補者について、さらに必要があれば高級官僚の諸君も、えらいとばっちりで悪いけれども、この際一緒につき合ってもらって、まあ財産があるかないか知りませんけれどもね、というくらいの全議員というものを対象にした一定の基準による資産公開ということ、これはどうでしょうか。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府はとりあえず閣僚の資産公開をやりましたが、これでは万全なものとは思っておりませんし、欠陥もあるだろうと思います。それらにつきましては、いろいろ実際やってみた経験にかんがみまして、直すべきものは直してまいりたいと思います。  この範囲を広げる、全議員にまで広げるという問題は、それは国会全体の問題でございますので、自民党単独でどうということを申し上げるわけにまいりませんが、わが党におきましても、これは政治倫理委員会におきまして検討していただこう、また、検討しつつあるところでございます。
  59. 矢野絢也

    矢野委員 私が申し上げたいことは、各党各派あるいは議会でとおっしゃる、それは確かにそうだと思うのですよ。ただ、国民の審判を厳粛に受けとめると総理は何遍も言っておられるわけです。失礼だけれども自民党、敗北されたわけですから、本当にこの審判を厳粛に受けとめるのは自民党であり、総裁である中曽根さんなんですよ。私どもも、国民批判というものを、与党、野党という立場を超えて、お互いそれこそ自重自戒していかなくてはならぬと思っておりますよ。ですから、各党各派という言葉で逃げないで、一番国民の審判を厳粛に受けとめなくてはならぬ当事者はあなたなんです、総裁として。だから、あなたの御意見はどうですかと、この実刑の判決を受けた方、資産公開法、これはひとつ前向きに進めるなら進めると、簡潔にお答えを願いたい。各党各派ということはもう聞き飽きましたから……。
  60. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内閣の問題は総理大臣の直接の責任の問題でございますが、議員の問題は、これは党の問題でございまして、総理大臣として御答弁しにくい問題でございます。ただ、自民党総裁という立場から見ますれば、これは党内、いろいろな皆さんはいろいろなお考えを持っているようでございますから、そこで、今検討していただく、そういうことでございます。
  61. 矢野絢也

    矢野委員 前向きでやると理解してよろしゅうございますか。
  62. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 矢野さんが今おっしゃった御議論はなかなか筋の通った御議論であると思います。そういう点におきましては重大なる関心を持って検討を進めていってもらいたいと思っております。
  63. 矢野絢也

    矢野委員 田川自治大臣、定数是正の問題、これはどうしてもあなたもおやりになりたいという気持ちのようですね。自民党で一対三にするとか一対何ぼにするというような御議論があるようです。確かにどう考えても、十何万票とっても落選する、その何分の一の方が当選する。まあそれぞれのそのお方にとってはそれなりの苦労がおありですから、一概に少ない票数で当選するから楽だなんて、そんな失礼なことは言いませんけれども、有権者の立場から見れば、一票の重みというものが余りにも違い過ぎる。ですから、これはやはり一対何ぼくらいでおやりになりたいということなのか。  この定数是正の問題と、それから、先ほど私、総理に資産公開の問題と実刑判決を受けた方の扱いの問題でお尋ねをしました。私、この席で、いままで中道仲間として仲よくしてきたわけだから、それは、自民党と一緒になって、連立が吸収が、いろいろなことが言われてますけれども、そんな失礼なことを申し上げるつもりはないのです。中曽根さんがそれの結果随分安心した気持ちになったことは事実だとしても、それは別の問題。私は、新自由クラブさんがそれだけの決意をされて連立をお決めになったとするなら、やはりそれなりの決意というものがおありだろう、また、そのお約束、政策協定が実現することは、私、それは拍手します、日本政治がよくなることだと思いますから。新自由クラブが手柄を立てたとか、そんなけちな意味じゃなしに、それはいいことだと私は思いますから。ですから、定数是正の問題と、実刑判決を受けられた方の扱いの問題、資産公開法の問題について、時間も中途半端になってきましたから、簡潔にお願い申し上げたいと思います。
  64. 田川誠一

    ○田川国務大臣 矢野さんが今までおっしゃられた御意見というのは私どもとほとんど同じでございまして、やはり今のような時期に政治家が国民の皆さんから信頼を失ったらこれは大変だ、すべてが政治に対する信頼の回復にかかっている、そういう意味からは、もう政治家にかけられた疑いというのはできるだけ晴らしていかなければならぬというのが私ども気持ちでございまして、今度の連立も、せっかくの自民党お話ですから、こういう点はひとつやっていってもらえるかというようなお話をして連立に応じたというのがこれは実際の話なんです。  資産公開も、総理がおっしゃられたように、決して十分じゃない。十分じゃないけれども、継続性という含みを持たしてそしてやっていこうということで公開に踏み切った。閣僚の皆さんの中にも意見がおありだったけれども、皆さんも、この際はやっていこうという気持ちでおやりになったわけです。ですから、私は継続しておやりになるというふうに思っております。
  65. 矢野絢也

    矢野委員 全議員はどうですか。
  66. 田川誠一

    ○田川国務大臣 それから全議員も、これもやられた方がいい。閣僚の中に現に、やるなら全議員おやりになったらどうかとおっしゃる方、たくさんいるのですよ。全議員でやるにはやはり各党がその気になっていただかなければこれはなかなかできないのです。政府がやろうと言ったってできないのです。だから、私ども新自由クラブは、近く党大会があります。党大会を契機にして全員やろう、そして三月三十一日の政治資金規正法の届け出までに全員やろうというのです。ですから、公明党でもやっていただければ、こうやって各党、各党でやっていけば、自然にできるのですよ。(矢野委員「資産公開法という法律ですね」と呼ぶ)最後はそうですけれども、やはり各党がその気になっておやりにならなければなかなかできないのですね。ですから、そういう意味で、ひとつぜひやっていただいたらいいと私は思います。しかし、逃げ口上しゃありませんけれども、各党も、立法府の問題ですから、だから各党がその気になっておやりにならなければなかなか難しいと思う。  それから、一癖有罪の問題は、たびたび申し上げましたように、私どもはもう具体的に、中曽根総理大臣と私と、中曽根総裁と新自由クラブの代表とで書いたもので合意したわけです。これは何とか制度化できるものならしていきたい、問題はあるけれども制度化していきたいということで合意をしたわけでございまして、私どもも全く同感でございます。ぜひやらなければならぬ。  それから一票の重みの問題は、これは最高裁で違憲状態ということでもう言われているのですから、これに手をつけないで何で国会議員が堂々と世の中を歩けるかと私は思うのです、私も一員でございますだけに。そういう意味で、中曽根総理も大変前向きでやっていらっしゃいますから、何とかして次の選挙までにはこれはやっていかなければならぬ。ただ、その比重をどの程度でとどめていくかということは、これは政党によってちょっと考え方が違うと思うのですよ。ですから……(矢野委員「あなたはどうお考えですか」と呼ぶ)私は、ある程度の幅は持たせなければいかぬ。しかし、今私が一対二とか一対一・五がいいとかということを申し上げますと、かえってまとまるものがまとまらなくなりますから。申し上げたいのはもうここまで出ているのですけれども。ただ、地域ということを考えていかなければならぬ。数だけでやられたら東京都が国会議員の一割を占めてしまうのです。ですから、地域性ということも十分考えてやっていただく、こういうことでございます。
  67. 矢野絢也

    矢野委員 田川自治大臣、私の尊敬する友人の一人でございますから、ぜひ政策協定でお約束なさっていることはこの国会中に明確なめどがつくように御努力をしていただきたい。やってしまったことを、私もここまで批判がましい言葉があるのですけれども、まあやめておきましょう。むしろお約束を前向きに実現されることが日本政治をよくすることだから、このことについては不退転の決意でやっていただきたい。御要望を申し上げておきます。  それから、時間もありませんが、これも簡単に申し上げます。  きょうの新聞に、例の華僑の抗争事件に関する横浜地裁の検察側の論告求刑の内容について、中国政府から外務省にいろいろな抗議が来ておる。私は、事件の中身とか、これが論告求刑がいいとか、そんなことを言うつもりはないのです。ただその中に、つまり日本政府がとっておられる外交方針、つまり二つの中国の立場はとらない、一つの中国である、そしてその一つの中国は中華人民共和国であるという政府立場、これは明確になっておる、ところが、論告求刑にはいわゆる中共とか台湾とかいう言葉が使われておるので適切でないというわけで抗議が来ておる、こういう紙面を拝見いたしました。  私、これは政治倫理の問題と絡むので非常に微妙な問題だと思うのですよ。論告求刑に対して——二つの中国か一つの中国かというのは、これは政策的、政治的判断ですね。であるから、この論告求刑をおつくりになった当事者は、片一方が相手を中共と言い、片一方が相手を台湾と言う、その相手の呼称、Aさんと言う、Bさんと言うからAさん、Bさんと書いたのだという理用があるのだろうと思うのですよ。しかし、検察のおつくりになる論告求刑、やはりこれは政府の一員であるという面もございますね。だから、何でもかんでも論告求刑の表現が適切でないから変えろなんということを私が言うと、これは非常に危険なことになるわけですよ、はっきり言いまして。これは法務大臣に指揮権発動をやれみたいな話にすぐつながるから私も抑制をきかした立場で、そういうことであってはならないが、しかし、なるほど言われてみれば、この二つの中国、一つの中国の問題についての中国側の抗議というか申し越しというのは、政策的次元においてはもっともなことである。これはどういうふうになさるか、御回答、御答弁をお願いしたい。
  68. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 外務大臣の臨時代理としてお答えをいたします。  今、先生から御指摘がございましたそのことに関しまして、中国の外交部から口頭で申し立てがございました。この事件に関しまして中国が非常に関心を持って従来も見守ってきておったところでございまして、その論告書の中の部分に不適切な表現があるということでの指摘があったところでございます。  したがいまして、外務省といたしましては、政府部内、具体的には法務省にそのことを伝えまして、この問題に正しく対処するようにお願いをしたところでございます。  それ以上のことは、よろしかったら法務大臣からお聞きを願えたらと思います。
  69. 住栄作

    ○住国務大臣 外務大臣からお話ございましたように、外務省からそういう旨の申し入れが中国からあったと、こういう連絡を受けました。法務省としまして、そういう連絡があったという事実を検察当局に伝えました。現在係属中の事件でございますので、司法権との関係もございますし、そういう検察運営上の機微に触れますので、単なる連絡、こういうことであるわけでございます。  ただ、さらに申し上げますと、やっぱり中共系というような言葉というものは不適切である、これはもう間違いのない事実でございます。まあ不幸中の幸いというかどうか、事実関係を申し上げますと、横浜地検におきまして幹部の異動が先般行われて、新たに着任した幹部が係属中の事件について詳細に検討する、これは当然のことでございますが、その過程において、すでにその幹部が問題意識を持っておる、こういうことでございますので、適切な対応はしてくれるのじゃないかと思っております。
  70. 矢野絢也

    矢野委員 これは非常に、デリケートな問題でございまして、悪い中曽根さん、よい矢野さんと、例えば失礼だけれども、そういうような呼び名で言った場合、それをそのまま使うことがいいのか悪いのかということと同じことになるわけですから。だからといって、法務当局が政策的判断を押しつけるということもむずかしい。慎重に、これは総理、外交問題に発展しますと厄介でございますし、政府の方針ははっきりしているはずでございますから、善処をお願いしておいて、午前中の質問を終わらせていただきます。
  71. 倉成正

    倉成委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  72. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢野絢也君
  73. 矢野絢也

    矢野委員 午前中は、教育問題、政治倫理の問題等でお尋ねをいたしました。  これから財政の問題、主として減税、増税の問題でお尋ねをしたいと思います。  まず、総理、臨調答申を守り、増税を行わない、こういうお約束があったわけでございます。しかし、予算を拝見しますと、減税は来年度九千三百二十億円、平年度で減税は八千三百六十億円。しかし、増税は九千九百七十億円、年度で申し上げると減税額を六百五十億円上回っておる。平年度にしましても増税は九千九百三十億でございますから、減税額を一千五百七十億円上回っておる、こういう結果ですが、これでもやはり臨調答申を守り、増税を行わないという総理の公約が守られておると、今でもそうお考えでございますか。簡潔に御答弁を願います。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調答申の中に「増税なき財政再建」という定義がございまして、矢野さんも十分御承知のとおりでございます。つまり、GNPに対する租税負担率を上げない、その範囲内におけるいろいろなでこぼこ調整の可能性を認めておりまして、そういう考えが頭に、ありまして以上のような措置をとった次第でございます。
  75. 矢野絢也

    矢野委員 まず、この増税は、一昨年来減税に関して与野党の幹事長、書記長でお話し合いをしてまいりましたが、私ども、この減税の財源として増税はしないと何遍も申し上げまして、当時の二階堂幹事長もそれはそうだと、こういうお約束があったわけですから、このこと自体、公党間の約束の信義にもとることである、こうまことに憤りにたえないわけでございます。  そこで、今総理は、確かに一面では増税はあるけれども、租税負担率は上がってないんだ、租税負担率が上がらない限りは増税ということにはならないんだという、でこぼこをならすという意味の御答弁がありました。しかし、それもやはりおかしいのじゃないかと私は申し上げたいのですよ、大蔵大臣。  「税制改正の要綱」など政府資料によりますと、五十九年度予算ベースで租税負担率は二四・二%になっておる、これはそのとおりですね。それで、この数字は五十八年度の当初予算のベースの二三・七%を上回っておりますよ。補正予算ベースの二三・九%よりも〇・三%租税負担率が上がっておるのです。つまり、租税負担率を上げないという総理の公約は、この五十九年度予算においてもう既に破られておる。五十九年度の租税負担率が〇・三%現実に上がっておる。これは、国民所得と比べますと、その金額を計算するとちょうど七千百十九億円に当たるのです、この〇・三という租税負担率のアップが。この七千百十九億円、これは今回おやりになる法人税の税率アップ四千三百億円、酒税の増税額三千二百億円、合計七千五百億円と見合っているわけです。つまり、租税負担率を上げないという総理の公約をあくまでも守るというお立場ならば、〇・三%上がっているわけですから、七千百十九億円ふえておる、その分ちょうど増税が七千五百億円あるわけですから、増税をおやめになったら総理の公約の臨調答申どおり租税負担率を上げないでやりましたということになるわけです。大蔵大臣、いかがですか。
  76. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、確かに今総理からもお答えがございましたが、「全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらないこということが一応定義づけられておる。御指摘のとおり、補正後で二三・九になりまして、そうして二四・二でございますから、租税負担率が前年と比べて上昇しておるということは、これは事実であります。これは、ほとんどがいわば税の自然増収によるものでありまして、いわゆる新たなる税制上の措置というものではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  77. 矢野絢也

    矢野委員 それは、御理解いただきたいと言ったって理解できないのですよ。それは、自然増収は一面において見込まれているかもしれませんが、〇・三%租税負担率が上がったために、ちょうど今回おやりになる増税と同じ金額だけ上がっておる。だから、増税をおやめになれば租税負担率は前年並みということなんですよ。それを、そう御理解いただきたい、それは理解せいと言うのが無理でございまして、総理、増税をおやめになって租税負担率を前年並みにして臨調答申の租税負担率を上げない、あるいは今総理がお答えになった租税負担率を上げない、でこぼこの修正であるという今のお言葉どおりにするためには、増税をやめるか、あるいはその公約をもうここの席で破棄されるか、二つに一つしかない。どちらですか。
  78. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調答申をつくりました経緯も、私、知っております。それから、それに対する臨調側の説明を瀬島委員が参議院におきましておやりになりましたが、その内容等も勘案いたしますと、自然増収というものは負担率の上昇の中に入れない、そういう解釈であったと私記憶しておりまして、今のように申し上げた次第でございます。
  79. 矢野絢也

    矢野委員 それはまさに詭弁でして、自然増収であろうが増税であろうが、国民の税負担がふえておるということについては変わりがない。その国民の税負担と国民所得の比率を租税負担率というんですよ。自然増収の分は、租税負担率の計算のときにその分だけ税負担の金額から引くのだ、そんなばかな定義を、総理、こんなところでおっしゃったら、国民が笑いますよ、聞いている人が。そうでしょう。租税負担率というのは、政府がいかなるお立場でお取りになろうとも、国民は取られていることには変わりがないのです。目的税であろうが酒税の税率の手直しであろうが、どんな形であろうが税負担がふえておる。(「収入もふえておるよ」と呼ぶ者あり)ちょっとお待ちなさい。その国民所得に対する税負担、これを租税負担率というのです。これが現実に〇・三%、補正ベースで比べても上がっておる。これは臨調答申を無視しておる。これはお認めになりますか。さっきみたいな自然増収は租税負担率の計算のときの税負担の金額には含まないんだなんて、そんなばかな話をこの席でなさるなんて、まさにこれはナンセンスです。ですから、二つに一つしかない。公約を守る、租税負担率を上げないと言うのなら増税をおやめなさった方がいいんです、ちょうどその金額だけ見合っておるわけですから。あくまでも増税をやると言うのなら、公約をもう取り消しなさい。
  80. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは御案内のように、租税負担率は今おっしゃったように国民所得を分母として国税、地方税を足したものを分子として出てくる、こういう性格のものであります。したがって、租税負担率は景気動向等に大きく左右されることがあることと、それから、本来、租税負担の水準というものは、いわゆる必要な公共支出の水準に対応して定まってくるものでございますので、あらかじめ租税負担率というものをリジッドに固定する考え方そのものに対しての議論も確かにございます。したがって、臨調でも言われておるのは、租税負担率を大きく変更するような新たなる税制上の措置をとるな、こういう御趣旨でございますので、今日までの例年の租税負担率の問題を見てみましても、そのことはあらかじめリジッドに定量的に定める性格のものではもともとないというふうに御理解をいただかなければならぬのかな、租税負担率そのものにつきましては。ことしの場合は、これは御案内のように仮定計算等で、これは矢野委員の御主張で毎年毎年議論した話でございますけれども、いわゆる名目成長率に弾性値の一・一を、十年間の平均を掛けますが、一応、予算審議をお願いするに当たっては、ある種の積み上げ方式というものをやっております。しかしながら、将来を投影した場合に、仮に一・一という仮定計算でもってやりますれば、当然これは幾らかずつ租税負担率は上昇していくということになりますので、したがって、今おっしゃった租税負担率がこれだけ上がったから、したがってこれは「増税なき財政再建」あるいは臨調のおっしゃる租税負担が大きく変わることのないように新たなる措置は慎むことということに対する公約違反だ、違反するものだという御指摘は、理解の仕方によって必ずしも当たらないじゃないか、こういうふうに思います。
  81. 矢野絢也

    矢野委員 酒税とか法人税とかをお上げになったということは、これは新たな税制措置ではないと言いたい口ぶりですね。そうすると、既存の税制度の中でパーセンテージを上げることは何ら臨調答申に反しないということになるわけでして、新しい税目、税制を設けない以上は、それによって租税負担率が上がっても臨調答申の趣旨には反しないという、それではまさに歯どめなき増税路線ということになってしまうのですよ。これは、総理、私の申し上げている趣旨は百も御理解いただいていると思うのですよ。ここでやり合いする時間ももったいない。ただ、租税負担率は変えないというかなりの大見えを切っていらっしゃることが、でこぼこの修正、でこが大きくてぼこが少ない、そのため上がっておるということだけは、これは国民の前に明確にしておく必要がある。そういう意味では公約違反である。明確にしておきたい。  しかも、さらにこの「増税なき財政再建」に反する租税負担率の上昇というのはまことに巧妙に仕組まれておりまして、五十九年度においても〇・三%上がる。ところが、六十年度以降はもっと上がる仕組みになっておるのです。租税負担率はさらに、六十年度は上がってしまうことになります。つまり、税収の伸び率、租税弾性値が所得税、法人税、酒税、この三つの税金の中で所得税が最も弾性値が高い。安定しておる。マイナスはない。五十四年は所得税は二・三一、五十五年は二・○八、五十六年は二・一一、弾性値も所得税が非常に高い。したがって、この傾向が続くと六十年度には所得税は自分の力で減税分を取り戻します。七千億か八千億か、ことし減税したしたとおっしゃいますけれども、所得税の弾性値の安定性、高さから見れば、六十年度には自力でこの減税分を金額の上からいえば挽回できるわけです。回収できるわけです。残るのは、増税というものだけが残ってそれが上乗せされる。  ですから、おせっかいな話だけれども、私、五十四年度決算から五十八年度の補正予算ベースまでの国民所得、所得税、法人税、酒税の金額を、伸び率の推移、そういった観点からその増加額と伸び率とを単純に年平均で計算した。そうすると、国民所得は年平均八兆八千五百七十五億円、伸び率は五%です。所得税は八千五百四十六億円、伸び率は九・二%。法人税は四千二百二十二億、伸び率五・七%。酒税は七百九十八億、五・五%の伸び。こういう五十四年度から五十八年度までの五年間の実績を、単純に当てはめるということも飛躍があるかもわかりませんが、そう趨勢が変わると思いません。ですから、五十九年度予算をベースにして今後の国民所得、所得税、法人税、酒税の各項目に当てはめますと、六十年度の租税負担率に及ぼす影響、これを試算しますと、三税の合計の伸び率が七・二%、国民所得の伸び率が五%、これは平均をそのまま当てはめて。したがって、租税負担率を、三税の増額によりこの負担率が上がらないようにするためには、三税の伸び率も国民所得の伸び率と同じく五%に抑える必要がある。意味わかりますね、大蔵大臣、私の言っておること。でなければ、このまま租税負担率を押し上げていくという構造がビルトインされてしまって、六十年度はますます負担率が上がっていくことになってしまう、新たな増税を考えなくても。  したがって、この七・二%の三税の伸び率を仮に国民所得の伸び率と同じ五%に抑える、租税負担率を変えない、こういう観点で計算しますと、その金額五千九百九十億円取り過ぎということになるのですよ。ですから、このままほっておきますと、国民所得の二百四十九兆二千億円、六十年度の試算ですね、これに対していまの税額を計算しますと、六十年度は、租税負担率をまた〇・二四%、このままでも押し上げることになるのですよ。ことしは〇・三%押し上げ、来年は、所得税の弾性値が高いという観点から自力で減税を取り戻して、〇・二四%アップさせる。こういうような、租税負担率は変えないのですという、臨調答申に対して一見えらい恭順の意を表したような総理の御答弁も、実態面からはそれを裏切っておるということを指摘せざるを得ないわけでございます。  そこで、竹入委員長が代表質問で申し上げたとおり、増税をやめなさい、どうしてもやめぬというなら減税をもっとふやしなさい、そして、今六十年度の展望を申し上げましたが、六十年度も租税負担率の上昇が当然予想されるわけでございますから、来年度六十年度も減税をやりなさいと言うのは、決して私たちの思いつき的、人気取り的発言ではないわけなんですよ。総理の公約を実現するためにはそれしかないでしょうということを数字の上から申し上げておるし、また、臨調を大切にされる総理のお立場からもそれはあってしかるべき姿だと私は思いますが、大蔵大臣から、私の数字についてもし間違いがあれば御指摘を願いたい。そのとおりならそのとおりと答えていただきたい。そして、総理の御所見を伺いたいと思います。
  82. 竹下登

    ○竹下国務大臣 正確に数字を照合する準備ができておりませんが、正確であると思いますので、まずそれを前提に……(矢野委員「正確です」と呼ぶ)はい、お答えしようと思っておりますが、当然のこととして、それは、たとえば直間比率の議論をする場合も、直接税がそのままの状態であって、今御指摘のように直接税の弾性値は高いわけです。間接税は低いわけでございます。したがって、本当に直間比率をということになれば、間接税をうんと余計にしないと、将来の弾性値を掛けた予測をするならばますますそれに近づく。それと同じ議論で、経済成長率というものが存在して、そこに、たとえ仮定の平均値の一・一といたしましても、それは確かに租税負担率というのは年々上がってくるという姿になります。したがって、この租税負担率というのは、基本的にさかのぼればそれをあらかじめリジッドに前提として置くべきものでなく、臨調の御指摘というものは租税負担率が新たなる税制上の措置によってゆがまないようなことに気をつけなさいよというお諭しがあったというふうに私は理解をいたしておるところであります。  したがって、この租税負担率というものが大きく変化しないようなことは考えてはいかなければなりませんけれども国民所得の伸び率とそうして税率を計算してみますと、最終的には、国民の所得ということはいわば可処分所得でもって一つ議論すべきではないか、こういうこともあろうかと思うのでございます。したがいまして、いまの御指摘が、すべて矢野さんの理論を積み重ねていけば、租税負担率をリジッドなものとして考えたら、御指摘の理論はそれなりに通る論理だと私は思います。だから、そういうことは絶えず念頭に置かなければならぬ課題だと思いますが、現実の対応といたしましては、租税負担率そのものがあらかじめ固定的に置かれるべきでないという前提からやはり見詰めていかなければならないではなかろうか、こういうふうに考えております。
  83. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、総理、今の大蔵大臣の答弁をお認めになるかどうかだけお答えいただくとともに、仮にことしの暮れあるいは来年初めにやはり租税負担率が上がりましたということが国民所得もはっきりしてわかったときには、租税負担率を上げないというあなたの公約を実現するためにそれに見合った減税を来年は考慮する、この点について、二点だけお答えください。
  84. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 租税負担率を上げる上げないといういまの御議論は、矢野さんの側からする御議論からすれば通っている御議論であると思います。確かに絶対値は上がっておるわけですから。しかし、臨調答申の解釈の点におきましていろいろないきさつがございまして、臨調側は歳出カットをやれ、しかしそれでも足らぬだろう。こちらもある程度財政計画を出したわけです。それによりますと、国債費が相当出てくる。国債償還に関する費用及び地方財政に対する交付金等々の数字もじっとにらんで、それである程度臨調側は国家財政全般の運用も考えていただいて、直間比率の変更というようなことまでもある程度頭に置きつつああいう答申をつくっていただいたのだと我々は解釈しておるわけであります。  そこで、来年の話でございますが、来年の予算編成というものがどういう情勢を呈するかは、ことしの経済の推移等を見て、一体ごとしどの程度自然増収というものが本当に出てくるのか出ないのか、そういう推移、それから来年における景気の状況そのほか財政需要等を見て考えるべき問題で、今ここで明言申し上げることは差し控えたいと思います。
  85. 矢野絢也

    矢野委員 この議論、果てしがございません。とにかく総理は、租税負担率は上げません、上がらないですよといかにも公正さを装っていらっしゃるが、現実に上がっておるという事実だけを指摘しておきます。  それから、総理は、一兆円減税で働く女性に配慮するのだ、そこでパートタイマーの方々についても減税をやりました、まあ実際おやりになっておるわけで、そのこと自体は評価しますよ。しかし、働く婦人、パートタイマーを大事にするから七十九万円の金額を八十八万円に上げたとは、ちょっとそれは余り偉そうに言えないです。働く婦人を大事にする立場から七十九万が八十八万になったのとは違うのですよ。  と申しますのは、今度の減税によってパートタイマーの非課税限度額が八十八万に引き上げられたのだけれども、減税によって給与所得控除の最低控除額が、現在は五十万だったのが五十五万になったのです。五万ふえたのですね。給与所得控除の最低控除額が五万円ふえた。基礎控除が二十九万円から三十三万円に四万円ふえた。片一方で五万、片一方で四万で、九万ふえたわけです。したがって、七十九万の今までのパートタイマーの非課税限度額がプラス九万円で八十八万になるのは当たり前のことでございまして、働く婦人の立場を考慮して七十九万円を八十八万にしましたなんて、これはちょっと、総理、悪乗りも甚だしいわけですよ。働く婦人を考慮して七十九万が八十八万になったのとは違う、当たり前のことでなっただけのことなのです、これは。  ですから、いかにも働く婦人の味方をなさっているような御発言ですけれども、そこまでおっしゃるなら、もう一息この非課税の限度額をお上げになる、こういうお考えはございませんか。でなければ、あなたの言っていることはいかにも悪乗りした発言になりますよ。何も働く婦人を優遇して七十九万が八十八万円になったのと違うのです。全般の減税の措置の中で基礎控除が上がったから八十八万になったのであって、当たり前のことではありませんか。どうですか。
  86. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今の御主張でございますが、これはずっと長い間ここで議論された問題であります。したがって、いわゆるパート問題というのは、まずパート主婦の厳密な定義が非常に難しい、制度をこれ以上複雑にすることとなるという問題が一つございます。したがって、常勤主婦その他の納税者と区別してなぜパート主婦だけを特別扱いにするか、こういう議論もあるわけです。そういう議論を含めて、したがって、いわゆる控除対象配偶者等の所得制限額と給与所得控除というものにおいてこの制度を位置づけした。したがって、それが上がれば当然上がるのであって、だから当たり前じゃないか、こういう議論でございますが、いろいろ議論をいたしてみますと、この制度につきましては、これは税調等の議論も踏まえて、当面は給与所得控除と配偶者控除額の適用限度額の組み合わせという現行制度の枠内で対処していくことが適当である、そういうふうにこの中期谷中でも言われて、各般の議論をいたしましたが、やはりこれが一番至当な考え方ではないか。したがって、婦人の立場考えとは別に、機械的に上がったのじゃないか、しかし、仮にこの問題をもっと根本にさかのぼって据え置いたとしたら、そういうことから見ればこれは婦人の立場を優遇した、こういう議論になると思うのであります。
  87. 矢野絢也

    矢野委員 本当に女性差別も甚だしい御答弁だと思うのですよ。  またややこしいことを言いますよ。よく聞いてくださいよ。  ですから、このパートタイマーの減税については、政府の改正案の給与所得控除率四〇%の適用対象収入範囲、わかりますね、大蔵大臣。この適用対象収入範囲が百五十万円から百六十五万に拡大されたわけですね、四〇%。その控除額も六十万円から六十六万円に上がったわけです。この給与所得控除の最初の段階である給与所得控除率の四〇%、それから給与所得控除の最低控除額現在五十万円との関係は、そもそも低所得層を配慮するという立場からこういう措置がとられてきておるわけですね。ですから、この際このパートタイマーに本当に配慮されるというのであれば、給与所得控除率四〇%の適用対象による控除額六十六万円、先ほどのパートに適用される方々の控除額は五十五万なんですよ。わかりますね、この意味、大蔵大臣。それを本当に低所得層に考慮するという観点から、この四〇%の適用対象による控除額六十六万円、その差約十一万円あるわけですけれども、十一万円を全部かさ上げせいと言うとあなた方もしんどい、こう思うでしょう。本当はそこまでやってもらいたい、十一万円上げてほしいと言いたいところだけれども、竹下式アバウトな折衷案でその半分、もう五万円加える、これは低所得層を大事にするという観点から決して矛盾した私の提案ではないと思っていますよ、婦人を大事にするという立場から。ですから、給与所得控除の最低控除額を五十五万からもう五万加えて六十万円に引き上げたら、パートタイマーの非課税限度額は八十八万にもう五万円加えて九十三万、そうすると総理も胸を張って婦人を大事にしましたと言えるんですよ。本当は百万と言いたいところだけれども、それはまた来年の話だ。どうです、私の言っていることは決して間違ってないと思うのだけれども、大蔵大臣。決してむちゃなことを言ってないでしょう。あなた方の税体系からいっても可能なんです。
  88. 竹下登

    ○竹下国務大臣 決してむちゃなことをおっしゃっていると私は申し上げるつもりもございませんが、いわゆるパート問題については、現行制度の枠内で対処していくことが適当であるという中期答申の考え方に沿いながら、今日の厳しい財政事情ということを考えたならば、いわば政策意図といたしますならば、控除対象配偶者等の所得限度額を二十九万から三十三万に引き上げたわけですから、これが今日の時点においては限度、精いっぱいの努力の所産ではないか、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  89. 矢野絢也

    矢野委員 だめだね。総理、景気対策が非常に重要だということは、もう同じ考えだ。河本さんも恐らく同じ考えだと思うのだけれども。  一つの具体例でまず申し上げたいのだけれども、先ほど教育問題もいろいろ議論しましたが、家庭の団らんという立場から、サラリーマンや国民の皆さん方、自分の家をお持ちになる。遠い所に狭くてというわけだけれども、狭いながらも楽しい我が家ということで、苦労をなさって自宅をお持ちになる。ところが、それが随分高いために、随分長期にわたってローンに苦しむということがあるわけですね。このため奥さんがパートに行かなくちゃならぬ。だからパートの減税もやってくださいということをさっきから言っているわけだけれども。その問題は別にしまして、本当に政府行政がその気になれば分譲住宅を、極端な例、具体例を申し上げますけれども、あと五百万円安くすることが、行政努力でできるのです。  一つの例を申し上げましょう。東京郊外のある団地で、三年六カ月の事前協議期間を一年間短縮することによって、二百平方メートルの宅地原価二千四百二十六万円、これが二千三百四万円、つまり百二十二万円が金利負担が軽減されることによって安くなる。それから公共公益施設の整備、関係法でいろいろ決められておりますね。これをもとに見直して、本来負担すべき国や地方自治体が負担する。さらに都市計画法第三十二条に基づく事前協議期間を一年間短縮する、先ほど申し上げました。それで申し上げますと、具体的な数字、これは私が勝手に言うのではない、都市開発協会が発刊している会報に出ている。まず「施設の水準を見直し、土地を有効に使う」、決して法律を無視したやり方で見直すわけじゃない。法律を守るという立場で見直しただけで、二百平方メートル当たりで三百五十六万円減額できるんです。決して公共施設をやめると言っているわけではないのです。法律どおりちゃんとやった上です。それから国庫補助、これを法律どおりにきちっとなさったら、それだけで二百六十万円浮いてくる。それだけで六百十六万。金利負担が、先ほど申し上げた一年短縮するだけで百二十二万。すると二百平方メートルの宅地で七百三十八万円軽減される。七百三十八万円といいますと、自己資金、それから住宅金融公庫の安い利息のお金、そして市中銀行から借りる。この市中銀行から借りる分が、予算よりオーバーした部分になるわけですから、大体二十年払いでやりますと、大ざっぱに言いますと、七百万円とすると千五百万円一生余計に払っていかなくてはならぬ。行政が怠慢なために住宅の、特に宅地のコストが、今のケースで言えば七百万上がっておる。そのため、お買い求めなさる方が、ローンでいくと大体倍、千四、五百万の負担を負わされておる。これは月に計算しますと、六万から七万の負担増になっているわけです。おわかりになりますね、年払いのローンで、いろんな計算がありますけれども。ですから、宅地を下げるということも大事なことですけれども行政が本来やるべきことをやり、そしてこの事前協議の期間も短縮するという努力をすれば、それだけ負担が安くなる。ちゃちな減税なんと言うとしかられますけれども、減税も大事ですけれども、こういったことの方がもっと大事ではないか。  具体例を申し上げますと、民間デベロッパーの方々が土地を買う、お金を払う。早いこと許可してもらわなければ、金利との競争ですよ。業者が金利負担するのは勝手だと言ってしまえばそれまでです。全部これは購入者に転嫁される。ところがお役所へ行きますと、十五課も二十課も課長さんが、どんどんあっちこっちから集まってくる。だれかおらない。何々課長欠席だからきょうはできない、延期。延期となると三カ月も四カ月も延期になっちゃう。そしてお役人さんは、本来自治体や国が負担すべきことを負担しないで、その開発の周りの——これはいろんな地域がある。何かあのデベロッパーに言うことはありませんか、これやってほしい、わかりました、言いましょう、もっとあるでしょうというような調子で点数稼ぎをやっておる。もちろん、やらないよりやった方が、それは近隣がよくなることは結構なことです。しかし、すべてそれが購入者の負担にかぶさってきておる。その結果、生涯賃金というのは大体今一億五千万とか六千万、将来は二億円になる。仮に二億円としましても、千五百万円の負担というのは大変な負担です。その負担を補うために、婦人はパートに行かなくちゃならぬ。子供はひとりぽっちだ。だから寂しい、非行にも走る。こういうことにもなるのです。  ですから、たとえばこの三十二条の事前協議を、十分やってもらったらいいのですよ、生命と環境を守る、健康を守るという意味で、業者の乱開発を許してはならない、私はそう思う。しかし、そうではない、全く役人の怠慢によって必要以上にこれを延ばしておる。それはお役人さんは痛くもかゆくもないのですよ、三カ月延ばそうが一年延ばそうが。痛いのは業者である。こういうやり方を、行政改革という立場からもおやりになるべきと僕は思うのですよ。行政改革というのは、税金のむだ遣いを省く、現代のニーズに合ったように行政のしなやかさを取り戻す。それも大事ですけれども、民間活力を活用し、かつ国民の負担を軽減するために、まことにくだらぬ行政の壁がある。この壁に向かって積極的に挑戦するのが新しい行政改革だと私は思う。総理、どうですか。
  90. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 矢野さんの御指摘になったようなことは、私もあるのではないかと思います。御指摘の点は、我々はさらに検討を加え、督促をいたしてみたいと思っております。  ただ、都市計画の認可とかそういう手続の問題は、大体市町村の問題が多いわけです。あるいは東京都では区の権限に属していることが多うございます。したがいまして、これは地方自治体の仕事が多いので、中央政府としては指導し助言し督促する、そういうことなのであって、やはり第一義的には、自治体の皆さんが、そういう住宅を求めている人たち気持ちになって真剣になっていただくということも大事ではないかと思っています。しかし、建設省といたしましても監督し、指導助言する立場にもございますから、そういう点につきましては大いに改良してまいりたいと思っております。
  91. 矢野絢也

    矢野委員 確かに自治体のお仕事であることは私も承知しておるのですよ。ところが自治体は財政的に苦しいという面もある。あるいはまた余りあちこちから突き上げされて困らされるのも嫌だから、要するにいじめるなら民間デベロッパーが一番いじめやすい。デベロッパーの方も、もう土地買ってしまってこれは時間との競争だから、早いこと許可してもらいたい。何でもはいはいと言っているのが一番いい、こういうことになっているのですよね。  ですから、今言うたように都市計画法、例えばの案ですけれども、地元の自治体の同意を必要とする、この同意は私は必要だと思います。この同意も、例えば一年以内にイエスかノーの結論を出す、このような改正を、これは自治体だとおっしゃるが、こうなると国の問題だ。それでだめなら、だめの理由を明確に付すというような、例えば一年以内に生命、健康、環境、これはもうここではちゃんと建設省の法律や基準で決まっているのですよ。そういう基準に従っておれば一年以内にイエスを出しなさい、基準に沿わなければ一年以内に理由を付してだめと返事を出しなさい、こういう法律の改正をお考えなすった方がいいのじゃないでしょうか、総理
  92. 水野清

    ○水野国務大臣 ただいまの都市計画法三十二条の事前協議のお話でございますが、矢野先生のお話のように、民間の開発業者がいろんな規制によりまして非常に苦しんでいるという実情は私どももよく承知をしております。そのことについては昭和五十七年の七月と十月に、地方自治体に対しまして建設省の方から指示をしております。しかし、なおかつ、先生のお話があったように、地方自治体がいま非常な財政難であるということもあろうと思いますが、非常にその許認可に対して怠慢であるという事実も、私自身が建設大臣になる前からも——御承知のように千葉県でございます。そういう開発事業が非常に多い。そして非常に開発業者が苦しんでいる。みんな土地価格にはね返ってくる。例えば学校をつくれ、消防自動車を買え、それがみんな土地単価になる……(矢野委員「それを改正されるお気持ちはありますか、例えば一年以内に」と呼ぶ)その問題につきましては、私は簡単に申し上げられませんが、ともかく御指示のとおり大変重大な問題で、宅地供給に大きな支障を来していることも事実であります。検討させていただきたいと思っております。
  93. 矢野絢也

    矢野委員 総理、私、民間活力の活用という面からもそういうことが必要でしょうと、それから、教育問題との関連でも申し上げましたけれども、団らんを求めて新しい住まいを求めたが、結果、ローンに追われて家庭が破壊されるという悲劇を数多く聞いているわけなんです。これからの問題としているのは、今まで買った人はその恩典に浴さないかということになりますけれども、私は、今までの方に対しても利子補給という問題もあるでしょう。あるいはそういった方々も、これからの買いかえという問題もあると思うのですよ。それから、民間デベロッパーをかばうという意味でなしに、購入者の負担を軽くしてあげる。今申し上げたとおり、五百万、七百万減ることによってその倍も負担が違ってくる。月々にすると五万、七万という負担が違ってくる。このことの方がよっぽど大事だということを申し上げて、この行政の壁というものを、はっきり言えば怠慢というものを、住宅の高値の大きな原因になっているわけですから、これはぜひ御検討いただきたい。もう返事は要りません、恐らく同感だろうと思いますから。要は、やっていただきたいということです。  それから、民間活力をもっと活発にするためには、地方自治体やあるいは国、国鉄の持っている遊休地、低利用地の払い下げ、こういった問題がございます。私どもの調査によると、遊休地や低利用地の行政財産、人口十万人以上の都市に限定しても三百五十四件、三百六十四ヘクタール。この中に目黒区の三田、海上保安庁の土地とか、これは千六百六十二平方メートル、たくさんあるわけですね。これについてのリスト、資料を、予算委員長、今でなくて結構でございます、本委員会に提出していただきたい。  それから大蔵省、東京都内に五千平方メートル以上の土地、三十数カ所から四十カ所あると私は承知しておる。公務員住宅が中心だそうですけれども、これも、東京都内にある五千平方メートル以上の公務員住宅等の用途に供せられておる土地についての資料を御提出願いたい。私の同僚議員が後ほど質問をさせていただくことになっております。  それから、東京都内における国有農地、五十九ヘクタール、賃貸人数が千五十五人。東京都の二十三区内でも十一・五ヘクタールの貸付国有農地。私、東京都内を一生懸命見ましたけれども、そんな農地ありませんわ。東京都内、例えば江戸川区では二・三ヘクタール農地がある。これまど高なっておるのやということになるのですね、国有農地。家が建っておるのです、家が。国有農地だから非常に安い家賃というか地代でお貸しになっているのですね。家が建っちゃっているのです。それが一概に悪いとは言いませんが、こういったこともきちっとけじめをおつけなさることが、公平の原則からも必要かと思います。ですから、払い下げなら払い下げる等々の措置が必要でございますから、これについての資料も御提出いただきたい。委員長、お願いいたします。よろしゅうございますか。
  94. 倉成正

    倉成委員長 矢野委員に申し上げますが、書面でひとつちょうだいすれば、政府にその資料を作成してもらいます。
  95. 矢野絢也

    矢野委員 ありがとうございます。  そこで、総理、新宿区の西戸山住宅地区の、総理の大変お力を入れておられる計画ですけれども、どうなんでしょう、いろいろ調べてみますと、どう言ったらいいのでしょうか、随意契約で土地を払い下げることが望ましい、でないとどこへ行っちゃうかわからぬ、公開入札にすると。しかし、随意契約になると都市計画事業でやっていかなくちゃならぬ。これは発議者は東京者とか新宿区ということになる。審議会というものも開かなくちゃならぬ。ところが、そうしょっちゅう審議会を開いていただくわけじゃない。民間の方六十数社ですか、五十数社が集まって一つの会社をつくられた。随意契約でその土地を適正な価格で入手したいが、都市計画事業でやるといわゆる事業の主体者に民間がなれないわけですね、これ、総理。私はそうせいと言うわけじゃないけれども、今るる申し上げたとおり、せっかくの民間活力の活用という視点からこのことをお考えなさるならば、大蔵省は怒るかしれませんけれども総理から諮問があった、あと、活力の活用になろうがどうなろうが大蔵省は知ったことじゃないと言うと、あの辺で怒っていますけれどもね。要は、質問に対して答えさえ出しておけば、あとはおれの知ったことじゃねえという感じもちょいと感ずるわけです。  お役所というのはきちょうめんでなくちゃならぬから、それもわかるのですけれども、ここはひとつやはり民間活力の活用という視点、それと、いろいろなところで国有地の払い下げというのは利権とか汚職の原因になっておる。これは防がなくちゃならぬ。これは受け皿がしっかりし、公共性を持っていなくちゃこういうことはできませんね。この辺のバランスをお考えいただいて、しかも、この西戸山だけじゃない、今大蔵省に私は三十数カ所あるはずだと申し上げているわけです。同時多発的にこういうプロジェクトをお進めなさることが大切じゃないかと思いますが、もう時間もありませんので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  96. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 矢野委員の御指摘の点には私も全く同感でございます。民間活力を活発に動かすようにして景気浮揚にも役立たせ、住宅対策を推進するというのが政府の本来の方針でございまして、その一番の一つの例として新宿西戸山の問題を取り上げたわけであります。  あの場所は去年の夏ごろから手がけたのでございますが、幸いに民間の非常な御協力をいただきまして、暮れには株式会社も発足し、今新宿区におきまして手続に従って審議している最中でございます。大蔵省も非常にまじめに熱心にこの問題についてはやってくれまして、これはたしか理財局の仕事であったと思いますが、理財局の次長が都議会あるいは区役所の方にも何回も参りましていろいろお願いもし、今までの役所にないようないろいろな下働きもやっておりまして、ともかくこれはモデルになるからこれを成功させて、そして、今おっしゃったように、全国同時多発にこういう方式があり得る、やれるということで、模範を示して推進しよう、そういう考えに立っておるのでございます。  今、矢野委員が御請求になりました東京都内あるいは三大都市におけるそういう可能な土地につきましても今調査を進めておりまして、同時多発的にやれるように今いろいろ努力しておるところでございます。
  97. 矢野絢也

    矢野委員 予算にも限界があるわけですからね。景気対策、公共事業もふやしてもらいたい、減税もやってもらいたい、いろいろ私ども要求をしておるわけです。とともに、予算に限度がある以上は、そのような知恵を働かせながら民間活力を活発にし、かつ、購入者には安くて快適な住宅が提供できる、これこそまさに行政改革の真骨頂じゃないかということを申し上げたいから御質問したわけでございます。  それから福祉の問題、渡部さん。  今の傾向といたしまして、国も自治体も、福祉と言えば予算をふやす、施設をつくる、大事なことなんです、これ。しかし、予算をふやし、施設をつくったらそれでよしという傾向なきにしもあらずなんです。本当に福祉を必要とする人の立場、例えば寝たきりのお年寄り、ひとりっきりのお年寄りにとっては、福祉も施設も大事だけれども、例えばホームヘルパーがどうなっておるかという、いわばハードに対するソフト面、こういう福祉のあり方を今後研究する必要があると思います。  そういう意味で、このホームヘルパーにつきましては非常に気の毒な話がたくさんあるのです。行った人の方が先に病気になって倒れちゃったとか、食事をする時間もないとか寝る時間もないとかというようないろいろなケースを聞いております。そういう看護等に当たる職員の資格がまず明確でないわけです。社会的評価も何となく低いのです。そして職種の専門性、施設間の異動というものが非常にむずかしいわけです。そして小規模施設が多いために、中での人事的ないろいろなトラブルもあるわけです。年齢構成もだんだん高齢化してきておるという問題もあります。ですから、職員の身分、資格、制度の法制化、またそれに対するきちっとした保障、さらに今後、そういった高齢化社会に対応するためには民間の方々のボランティア、積極的な参加を求めるということも必要であろうかと思います。そういうボランティアについての厚生省の一貫したこれからの方針というものが必要だと思うのです。予算もふやしてほしいのです。施設もつくってほしいのです。しかし、これからの高齢化社会には、そういう福祉の供給のサービスの質的向上ということをお考えいただきたい。簡単にひとつお答えください。
  98. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 矢野先生の大変貴重な意見でございまして、私も厚生大臣に就任しまして、物と心の調和ある福祉ということで、今御指摘のようなホームヘルパーの増員あるいは勤務時間の縮小、またボランティア活動を積極的に推進する、これらの問題を進めるように督促してまいりましたが、まだまだ十分と考えられませんので、いわゆるソフトの面での心のこもった福祉の増進にこれから努力をしてまいりたいと思います。
  99. 矢野絢也

    矢野委員 私どもは厚生省の応援部隊のつもりでおるわけでございますので……。  特別養護老人ホームの設置というのも、地域によって格差が非常に激しいのです。入所を希望される方も受け入れられてないという状況でございます。一方、これはありがたいことと言うべきでしょうか、現在病院のベッドは全国で百四十万ベッドあるわけです。そして利用率は八四%なんですよ、ベッドは。これはもちろん地域によって格差もあるわけなんです。いいところはもう満杯、あいているところはあいている、こういうこともあるのでしょう。しかし、いずれにしてもそこまで。百四十万ベッド、人口一方に対する病床、ベッド数は百三十、平均入院日数は四十日。これもお年寄り、大体よくなってきて家へ帰りたいけれども、今まで年寄り部屋であったのが、おじいちゃん、おばあちゃん病院へ行っちゃった、あと子供部屋、勉強部屋になっちゃって、帰るにも帰る場所がないという、本当にかわいそうな実情があるわけです。これは住宅問題とも関係がある。  ですから私は、特別養護老人ホームの増設も必要だ。とともに、病院のベッド、それとの中間的な考え方というものが今後あっていいのではないか。さらにまた、こういうことを言うとしかられるかもわかりませんが、医療行為は看護婦さんはできないということになっておりますけれども、特別の、それも中二階的な資格を付与して、お年寄りのお世話をする看護婦さんに一定の資格を与えて、そういう専門職ということもお考えいただいたらどうか。そうすれば、お年寄りも随分とよくなるんじゃないかと思うのですけれども、大臣簡単に。
  100. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 ただいまの医療機関と福祉機関の間に第三、中間機関的なものがあってよいでないか、またそこで働く人たちを必要とするものではないか、大変貴重な御意見であります。ただ、医療の面と福祉の面と法制上の問題、また、これは費用負担の問題、それらの解決しなければならない問題等もございますので、これは大変貴重な御意見で、これを実現する方向で前向きの姿勢で取り組んでまいりたいと思います。
  101. 矢野絢也

    矢野委員 時間もございません。  人間ドックでいろいろな検診が行われておる、国からのいろいろな補助もあって検診も行われておる。これもやはりこういうふうにコンピューターが発達しているわけですから、プライバシーということは守らなくてはなりませんけれども、こういう一度受けた検診なり人間ドックのデータを、いかなる場合にでも医師が必要とすれば何遍も使えるように、これはあっちで受けた人間ドックのデータをこっちでは使えないみたいなことがあるわけですから、これもひとつこれからの保健という立場から御研究をいただきたい。  そこで、これから文句を言おうと思っているのだけれども時間がなくなったのですが、とにかく医療保険一割自己負担、この医療保険という問題は財政的見地から抜本的な改革考えるというのは非常に危険な面があると思うのですよ。大蔵省は金が要って、おまえのところは削れ、削ります、じゃ二割負担にします、それじゃまずい、一割——財政的見地から、長年の伝統のある医療保険制度を悪くされるということは厳に慎んでもらわなくてはならぬ。国民の負担は増大するということと、あわせてそういう発想がよくないということをまず申し上げておきたい。  とともに、これによって助かるのは二百九十三億円ですね。厚生大臣、この一割負担、大した金額じゃない。恐らくそれだけではない、これによって乱診乱療を防ぐことができるというふうにおっしゃると思うのですよ。そういう面があるかもわかりません。それなら乱診乱療を防ぐ、患者が自分の治療に何ほお医者さんが使ったかわかるために一割自己負担するのだと言うのなら一%でもいいんですよ、これは考えてみれば。簡単に言えば。私はそれにも反対です。自己負担はやはりすべきではないということを申し上げておきたい。しかし、仮に乱診乱療を防ぐのなら、別に一〇%にこだわることはない。一〇%だってわずか三百億円足らずしか浮かない。乱診乱療を防ぐなら一%でいい。  とともにもう一つは、お医者さんは診察してカルテ書いて、今まで本人はそのまま帰ってたんですよ。これがお金を一割もらわなくちゃならぬ、大変な事務ですよ。本当にお医者さん、医療よりも——サラリーマンでしょう、本人は。忙しい人を相手にお金をもらわなくちゃ取りはぐれになる。こういう矛盾したやり方は、この際、根本的に考え直していただきたいということを強く要望しておきたい。我が党の政策によれば、これを九割、一割自己負担になさるというのであれば、国民健康保険その他も全部、本人も家族も含めて九割、こういうふうにしていただきたい。それならまだ話がわかるということを申し上げておきたいと思います。時間がありませんから、簡単にお答え願いたい。
  102. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 矢野先生の御意見に初めてお言葉をお返しするようになりますけれども、今回の保険制度の改正、患者一部負担という考え方は、単に財政上だけの問題でありませんで、患者に自分のかかった医療費を知っていただく、また制度間の格差是正、これは今でも国保の皆さん、農家やあるいは零細な商工業の皆さん方は三〇%自己負担しているわけです。あるいは被保険者の家族の方も二割負担しているわけですから、そういう制度間の格差をなくするとか、あるいは給付と負担の公平を図るとか、いわゆる総理がいつも言っている二十一世紀に揺るぎなき医療保険の基盤をつくるための今回の保険制度の基本哲学でもございますので、これは御理解をいただきたいと思いますし、支払い等の窓口混乱等については、現在でも三〇%負担の皆さんあるいは二〇%負担の皆さん、約七〇%以上の患者が一都支払いをしておるわけでありますから、これもぜひ御理解を賜りたいと思います。
  103. 矢野絢也

    矢野委員 私は福祉の問題、今後野党から予算の修正のお願いをするつもりでおりますので、今後さらに同僚議員のこの問題についての突っ込んだ議論を期待しておるわけでございまして、とにかく福祉の切り捨てには反対。  最後に御質問して終わりたいと思いますが、簡単にお答えいただいて結構です。  日米の農作物の交渉について、外務大臣、打開の道筋はついた、もう決断と実行だ、それで突破するしかないと非常な決意を述べておられますが、外務大臣はいらっしゃらないわけだからあなたでもいいのだけれども農林水産大臣にお答えいただきたい。日本の農業を守るという立場からこれはやはり本当にその場しのぎじゃ困る。  それからもう一つ、雪害対策で。雪害で被害を受けられた方に心からのお見舞いを申し上げたいと存じますが、さらに、より一層の力を入れていただきたい。これについてのお考えと御決意を承り、これを最後の質問にいたしまして、終わらしていただきたいと思います。御答弁をお願いいたします。
  104. 倉成正

    倉成委員長 農林大臣。時間がありませんので、順々と簡潔に願います。
  105. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 日米農産物交渉につきまして、農林水産大臣といたしましては、わが国農業を守るという立場を堅持してまいります。特に一昨年四月、農林水産委員会からの御決議、そしてまた本年一月の申し入れ、この趣旨を踏まえまして、農業者が犠牲にならないように今後のわが国農業を着実に発展させるということを念頭に置いてやってまいります。
  106. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 この前も調査団として現地を調査してまいりました。よく陳情等々承っておりまして、万遺漏なきを期したいと思っております。
  107. 矢野絢也

    矢野委員 どうもありがとうございました。ひとつしっかり頑張っていただきますことを心からお願い申し上げます。委員長、どうもありがとうございました。
  108. 倉成正

    倉成委員長 これにて矢野君の質疑は終了いたしました。  次に、塚本三郎君。
  109. 塚本三郎

    塚本委員 私は、民社党を代表いたしまして、今当面いたしております重要問題を多種にわたりまして御質問を申し上げたいと存じます。できるだけ簡略に質問をいたしますし、項目が多うございますので、できるだけ簡略にお答えをいただきたいと思います。  総理、けさの新聞をごらんいただいたと思います。こういう見出しで「小3坊や誘拐、殺害」、各新聞は一斉にこの驚くべき誘拐、殺人事件を取り上げております。私も、きょうお会いした人は異口同音に、坊や、知らない人がいても決してついてはいきなさるな、こういうふうに注意をして職場に出てきた、こういうふうに語っておりました。ほとんどの家庭がけさは一様に戦慄をする思いでこの新聞の記事を読まれたであろうと思います。  治安については世界一と言われる日本の国においても、なおかつこの種の事件が頻発をしております。すでに戦後百二十二件。そして新聞の報道では、殺害は二十四件と報道されております。しかし、こういうものをどうしたら防ぐことができるのか。やはり誘拐はお金をとる手段としては決して目的を達せられるものではない、決して成功しないのだということを、そういう悪い人たちあるいは悪い人にそういう気持ちをきちっと起こさせるようにしていかなければいけない、かように思います。恐らく総理もこの記事を読まれて心を痛められたであろうと思います。御所信をまず伺いたいと思います。
  110. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 けさ新聞を拝見しまして、非常に胸を痛め、また亡くなられた方、御遺族には心から御冥福をお祈りした次第でございます。  政府といたしましても、最近こういう事件が頻頻と起こりまして、非常に責任を痛感しておる次第でございます。恐らく、今塚本さんおっしゃったように、各家庭でそういう会話がけさあったのではないかと私も想像いたします。警察当局等ともよく相談をいたしまして、こういうような不幸な事件を起こさないように全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  111. 塚本三郎

    塚本委員 これが逮捕の端緒は、電話の逆探知によってその犯人らしき男を逮捕し、そして自白によって発覚をしたということが報道されております。何よりも、この誘拐で金品を奪う手段は、今のところすべて電話だと言われております。さするならば、逆探知をすることがこの逮捕、そしてまた逆探知されておるのだから逮捕されるんだよ、この犯人への犯意を抑止するためにはこれが有効でなければならないと思っております。  しかし、憲法には御承知のとおり、個人の秘密の厳守が規定されております。公衆電気通信法においても、この秘密は守らなければならないと規定されております。当然の条項だと思います。しかし、それがあったのでは警察は直ちに出動することができない。いや、今は相当無理をなさっている。調査いたしますると、法制局長官の見解によって、行政的な裁量権でこれが行われておるやに伺っております。ですから、警察としましては全力を挙げて御努力いただいておることに敬意を表しますけれど、しかし、これをもっと詰めてまいりますると、逆探知をしようといたしますると、本人に対するいわゆる了承がなければならない。当然だと思います。  電電公社の協力についても、直ちにぴっと先までいき得るかどうか。都内の場合におきましては、それはすぐいくでしょう。でも、幾つかの中継を経なければならないとするならば、あるいは田舎から都内へという形になると、直ちにその連係がとりにくい。まして、電電公社にも労働組合があります。そこに警察等の探知が入れば相当にいろいろな問題が出てくる。一刻を争う問題のときに、こういう問題でもしその捜査に支障を来したとするならば、これは重大な問題だと思います。  一体、逆探知を申し入れてから実際にそれができるまでの間に、いままでの例としてはどれぐらいの時間でこれが実際に効果的な配置ができたのか、警察庁長官からお答えいただきたいと思います。
  112. 三井脩

    ○三井政府委員 この種事件の捜査に電話の逆探知が不可欠の重要性を持っておるわけでございます。御説のように、事件が起こりますと、早速御本人の了承を得、電電公社に逆探の依頼をしております。極めて迅速に、技術的に可能な限り迅速にやっていただいております。  今回の場合も、第三回目の電話からは、かっちり逆探知ができております。
  113. 塚本三郎

    塚本委員 長官、第三回目といいますると、大体その依頼があってからどれぐらいの時間でしょうか。
  114. 三井脩

    ○三井政府委員 今回の場合は、約二時間でございます。
  115. 塚本三郎

    塚本委員 総理、この問題はやはり国民の生活の中に突然飛び込んでまいります。そして、どこの家庭でも起こり得る。しかも、知らない人でなくして、子供のスポーツの関係の、親としての仲間であった。こういう事案等を見ますと、今そういう金品要求の手段は電話なんだ。そうすると、これをいわゆる使えないようにしなければいけない。することは即逮捕されるのだということになるなら文書。文書なら、もはやこれは筆跡等でほとんどわかりますし、時間等の関係もございます。  したがって、生命の危険があるときは、例外として逆探知が即座にでき、電電公社も直ちにこれに応ずるように何らかの形で、いわゆる再発防止に役立ち得るような立法措置は考えられないものであろうか。例外の措置として、こういう場合だけさっとできる。さすれば、もはや犯人もそういう手段はあきらめざるを得なくなってくる。このことが、いわゆる専守防衛ではありませんけれど、こういうものをきちっと防止するために必要だという感じがいたしますが、その点、警察庁の長官から先に答えていただきましょうか。どうお考えでしょうか。
  116. 三井脩

    ○三井政府委員 法的な解釈の問題につきましては、先ほど御指摘のように、法制局の見解もいただいておりますが、人命にかかわる事態でありまして緊急を要する場合に、いわば緊急避難的な意味において逆探してもいい、こういう解釈をいただいておりますので、そしてまた、同じようにその解釈に従って電電公社も協力していただいておりますので、私たちはただいまのところ、これの運用によって十分にやっていける。問題は、事実上の問題としてどのように敏速に要員を配置したりその態勢をつくるかということでございまして、法律的には今のところ、格別大変差し迫って解決しなければいかぬ問題というのは感じておらない次第でございます。
  117. 塚本三郎

    塚本委員 それで不足がなければ結構だと思います。  特に聞いてみますと、機械の新しいところはいいけれど、古いところはいろいろと中継が三カ所も四カ所もかかってしまうというようなこと等で、そういうところに警察が入り込む等について、いわゆる現場の労働組合との関係等で支障ができてくるというような声も聞かないわけではありません。そういうこと等があれば大変だということでございますから、この点はひとつ速やかに瞬時を置かずに逆探知ができるように総理の方から配慮していただきたい。その決意のほどだけ伺って、どうしてもそれがむずかしいような、特別の緊急避難的な法的措置——しかし、法制局長官のそういう見解で、全然必要ないんだとおっしゃれば、それは結構なことですから、いずれにおいても再びこのようなことがこの事件を最後にして起こらないように、あるいはまた起こそうとする心を起こさせないような、そういう姿勢を示していただきたいと思います。総理の御決意のほどをいま一度伺いたいと思います。
  118. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 塚本さん御指摘のように、こういう痛ましい事件が起きないようにまず努力いたしたいと思います。それには、今おっしゃったような電話の逆探知等の方法によって犯罪が成功しないという確率を非常に高めることが大事でありましょうし、もし、そういうような不幸な事件が万一起きた場合には、刑事犯罪でございまして、子供の生命に影響する、緊急を要する事態でございますから、当然これは緊急避難の措置に当たる。したがいまして、あらゆる機関の御協力を得て迅速な措置をとれるようにすべきであり、してしかるべきである、そのように考える次第でございます。
  119. 塚本三郎

    塚本委員 次に、政治倫理の問題に対しまして、所見を述べながら御質問をいたします。  去る十月十二日の田中総理の有罪判決をめぐりまして、国会は辞職勧告決議案の採決に持ち込まれましたが、それがなされずに混乱をして、与党自民党は賛成もなさらないし、反対もできない、そういう形でついに解散に逃げ込んでしまわれたことは御承知のとおりであります。したがいまして、その選挙政治倫理が問われる選挙でございました。したがって、マスコミは常にこの問題を中心にして報道なさったようであります。結果は自民党の敗北となり、党公認は三十六名減の二百五十名になりました。国民は与党自民党に冷厳な結果を与えられたものと信じております。選挙の結果を踏まえた今次国会の出発は、当然政治倫理の確立から出直せとの国民の意思と受けとめられてしかるべきだと思います。その点、総理、間違いございませんか。
  120. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのように考えまして、諸般政策も講じ、また行動もとっておるつもりであります。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕
  121. 塚本三郎

    塚本委員 中曽根総理は、当初、神妙な態度で、謙虚に反省し、野党の皆さんとよく相談をしてと繰り返し発言をしておいでになりました。与党が謙虚な態度で相談を持ちかけられれば、野党の私たちも私心を捨て、国家のために広い心で協力を申し上げることが当然の責務と心得、これからの国会は本当に生きた国会らしい国会たらしめようと実は私は希望を持ってこの国会を待ち望んでおったわけでございます。  ところが、いつしか無所属九名を吸収し、国会召集当日の朝、突然新自由クラブを合併して一つの会派として届け出、十七名を包含して多数会派になってしまいました。召集の当日でした。国民の冷厳な選挙結果を覆し、全く国民の前に説明なさる暇もなく組閣し、各委員会の多数派工作をなし遂げられました。何が何だか、私たちはキツネにだまされたような心境でございました。私は前幹事長にお会いした時、まあ敵ながらあっぱれだと、万感の皮肉を込めて申し上げたことでございます。  このやり方は、田中角榮さんの事件と比べて、その質においては全く異なりますけれど、政治倫理とか社会道徳に背を向けたという点ではもっと悪いではないか、こういう意見の声も相当聞こえてまいります。総理はこれをどうお受けとめになりますか。
  122. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 議会政治の運用の一つのやり方をやったと、そう思っております。単独政権国会を処理し、あるいは法案を成立させるという場合には単独政権でもいいでしょうし、しかしまた、単独政権を持っておっても、相手方が協力していただいてさらに大きな政治力を形成する必要があるという場合に、内外の情勢がそういう必要が出てきた場合には、たとえ単独政権といえども協力するということもあり得るでありましょうし、また、選挙の結果を踏まえまして、政局の安定と国際信用を維持していくということが不可欠の情勢である、そういう場合にはそのような必要な措置をとって、考えの合う者同士で政局の安定及び国際信用の保持という面を追求していくということも一つのやり方であります。  田川代表がよく申しますように、西欧におきましては日常茶飯事に行われておることであり、特にドイツにおきましては、キリスト教民主同盟と自由党、あるいは社会民主党と自由党、連立内閣でずっと過去二十年近くも政権を維持してきている、こういう例も見ますれば、これは議会政治運用の一つの型を行った、そのようにお考えいただければありがたいと思います。
  123. 塚本三郎

    塚本委員 総理は、一つのあり方を行ったと淡淡とおっしゃいました。ならば、お伺いいたします。  無所属の議員を九名お誘いになりました。最初の時は八名で、一人はどうしても嫌だ、こう報道されておりました。報道が間違いならば訂正させていただきます。ところが、いつしかその一人も入ってしまわれました。いよいよ中曽根内閣が出発をすることになりました。そういたしますと、その一人は、世間では一番お金になると言われておる政務次官にお約束がなされておったようであります。内定しておられた、政務次官と内定された議員さんが実は押し出されてしまいました。開き直ったら、今度は総理がわび証文を出されて、この次は一番希望するポストを上げるから我慢してくれ、しかも、そのことによって内部の後援会がおさまらなければ外に公表してもいい、了解を得たから発表するんです、こういう新聞報道がなされております。前代未聞だと思います。  自民党に誘い込むために国家のポストをえさに、と言うと卑劣な表現になりますけれども、そのどたばた劇まで党内において新聞発表し、総理がわび証文まで書かなきゃならぬ。もっと上手におやりになれなかったか、一つの大事におけるないしょごとなら、それで予算狂うこともあるでしょう。明らかにそういうようなやり方が一つのパターンだと淡々とおっしゃっていいのですか。こういうやり方が政治道徳に背を向けるやり方だと私たちは申し上げたいんです。この件はどうなんでしょう。
  124. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 必要やむを得ざる事情によって行われたことで、余り感心することではありません。将来は戒めていくべきことであると思います。
  125. 塚本三郎

    塚本委員 御反省いただければ、いい政治になるとするならお聞きしておきましょう。  田川先生、一昨日の本委員会で、社会党代表の御質問に対して自治大臣の田川さんは、統一会派を組まれたことに対して、一夜漬けの政策協定ではない、選挙の前の十一月、臨時国会の終末に自民党と既によく話し合ってきたと、既にその時点で会派統一への準備をしてこられたかの説明をしておられましたが、それは田川さんの言い逃れだと私は思います。  私は、田川さんが、既にその時点で新自由クラブと自民党とが統一会派を組まれたとするなら、新自由クラブの諸君は二重大格者だと非難をしなければなりません。私は、皆様方と長く中道の仲間としておつき合いしてまいりました。十一月の時点とおっしゃるけれど、十二月のあの十八日の投票まで、選挙運動のときに一緒にやっていこうじゃありませんか、ある議員さんのごときは御夫婦で私の部屋にまでおいでになって、民社党と行動を一緒にやってまいります、自民党から誘われても、行動は反するようにしていくようなことは断じていたしません、御夫婦でそんなお約束までいただいた先生もおいでになります。  ですからこそ私どもは、民社党だけではない、同盟の仲間も、時に私は公明党さんにもお願いをして、中道の共同の推薦をしてあげようじゃありませんか、そう申し上げて、八人の先生方の中で二、三の先生方については、相当に私たちはそれを信用申し上げて御協力を申し上げた。何だこれは、応援をしてくださったところの地方や労働組合からの非難というものが私どもには絶えません。ですから、そのときに、田川先生おっしゃるがごとく、そんな状態になっておったとは私は思いません。  ですから、急にこういうふうになっちゃったんだ、素直にそういうことをおっしゃった方が私は新自由クラブらしいと思いますが、いかがでしょう。
  126. 田川誠一

    ○田川国務大臣 選挙の前に統一会派とか連立とかというような話をしていたなんということは、私は申し上げません。私がここで選挙の前から話があったというのは、選挙が終わって自民党との間に政策合意ができたその内容が、既に選挙の前の臨時国会の終幕に、審議拒否をした野党の中でただ一つ我々が参加をしたその理由の中に、政策合意をやった内容が含まれているということを申し上げたのでございまして、もしお聞き違え、あるいは私の言葉の足りなかった点があれば申し上げます。  統一会派、連立の話が出ましたのは選挙が終わってからでございます。これは当然でありまして、たびたび申し上げますように、たくさんの政党があって、最大多数の政党が過半数を取れなくなれば、よその政党に協力を求めてくる、一党で政権を担当することがなかなか困難になるから当然のことでありまして、私どもはその話し合いに応じた、そこから私ども自民党との話が出たわけでございまして、決して一夜漬けではない、こういうことでございます。
  127. 塚本三郎

    塚本委員 私たち民社党は、連合政権を組まれたことを非難しておるわけでは決してありません。第一党が過半数を割れば、野党政権を渡すか、あるいはまた近い政党と連立政権を組むことは、これはあり得る当然の一つのパターンだと私は思います。したがいまして、伯仲時代における連合政権一つのあり方として、私は当然あり得べき手段だと思っております。しかしそれならば、いわゆる与野党のバランスを逆転させたというところに一番大きな問題があるのです。自民党よ謙虚になりなさい、野党の意見に謙虚に耳を傾けなさい、このいわゆる国民の冷厳な御審判を受けとめられるということが一番大切なことだと思うわけでございます。  したがって、選挙の直後からとおっしゃるけれども、堂々と国民の前に、実は選挙のときには全然違った中身の問題も幾つかお互いに戦われました。むしろ新自由クラブさんは、民社党と最も近い政策をもって戦いました。したがいまして、そういう関係ならば、私たちが非難しておりますること等を十分解決なさって、話し合いをして、国民に理解を求めて、自民党はこういうところは取り下げます、こういうところは改める、だから連合政権でいわゆる協力をして、支えてやっていきましょうということが大切ではなかったかと思うのであります。しかし、それでも今までの大自民党さんのやり方からすると、大体は、お約束なさってもその中身については実行が極めて乏しかったという実情がありますので、そのお約束を誠実に実行されるかどうかを見守るのが本当ではないか、それが連合というものだと思います。  だからそれならば、会派は別にして、そしてきちっと連立政権をなさることを、私は本当の連立政権だと思うのでございます。約束がきちっと詰められて、そしてその約束が実行される限りにおいては共同歩調で少数与党を助けていく、政局の安定のためにはこういう激動する政局の中だからぜひとも必要だ、総理のおっしゃること、私は全くそのとおりだと思います。それを詰めずにおいて、しかも会派を一つにしたんでしょう。会派一つということは、一党と国会の中では何ら変わるところはありません。一つの会派で、一つの内閣でどうして連合と表現してみえるのでございましょうか。総理、いかがです。
  128. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政策協力、政治協力の態様はいろいろあると思うのです。今日のような統一会派を形成するという場合もあれば、あるいは、かつて西尾さん、芦田さん、片山さんでおやりになったような、別々の形で連立をお組みになるというやり方もあれば、あるいは閣外協力という形で、閣内には入らないが、重要国策で話の合った部分については共同で推進、実行していくというやり方もあるし、さまざまなやり方があると思うのであります。  今回のやり方は、やはり政策を中心にいたしまして両党の中枢部が話し合いをしまして、そして完全に一致したというその原点に立って協力関係が生まれた、そういう一つの形が出現した、こういうことで御了承をいただきたいと思っております。
  129. 塚本三郎

    塚本委員 ならばお伺いいたしますけれども、私どもは昨年、減税の問題で竹下大蔵大臣と随分析衝申し上げたと思います。二階堂幹事長も、私どもとの間において、この一兆四千億という野党共通の要求に対しまして、増税とは関係ない、増税はさせません、こういう折衝を、いや去年じゃない、おととしから、二年間繰り返し、新自由クラブ山口幹事長も同席をして、一度として彼を外したことなく折衝してまいりました。この一番大事なものを詰めずにおいて、詰めた詰めたとおっしゃるけれども、詰めてないのですよ。新自由クラブ、増税賛成とおっしゃるなら、まさか昨年暮れの総選挙において民社党は御推薦申し上げるつもりでは決してありませんでした。恥ずかしくて、私は公明党さんにも共同でとお願いできる立場ではございませんでした。  だから、この統一会派なるものは、私は、これからやるとおっしゃるならば、別々の会派で、連合で、実行できなければおれたちはもうそのとき手を切るよ、手を切れるようにしておいて実行を見定めるというのが連立なんです。今度の場合連立じゃないでしょう。一つの会派なんでしょう。二百五十九プラス八じゃないんです。二百五十九でございましたら本委員会も半々でございますから、委員長さんが自民党からお出になったら逆転、マイナスですから、極論を申し上げさせていただきまするならば、一円たりとも増税は許さない、こういう野党の意見が通ったかもしれません。健保におけるところの負担金一割の問題、こんな問題も十分私たちと御相談の上でなければ上程はできなかったと思います。それを今日易々としてこれが出されたということは、連立の前にやはり多数派工作でこのようになさって、中身は慌てて実は後回しになさったとしか私たちは推量できません。  私は、そういう意味で、このやり方というものは政治倫理にもとるのではないかということを申し上げるのであって、連立は私は一つのパターンだけじゃない、野党として政権をとることができないならば、政府みずからはこの激動する国際政局の中ではやはり安定せしめることが必要だということは思っておるのです。思っておれば思っておるほど、連立ということは買収だ、吸収だ、合併だ、こういうふうに世間様のさがないいわゆる口の端にのせられることは、日本の政局にとってよくない。だから、もう少ししっかりと明らかにしていただけなかったか。  今回の問題は、予算委員会の逆転を防ぐために、いわゆる一つの会派にして割り当てを、委員長をおとりになっても逆転しないような多数派工作のためじゃなかったか。もし本当に連立ならば、二百五十九とプラス八で別々で、採決のときにそのようにおとりになる、こういうことで、自治大臣はそこにお座りになってそれは当然のことだと思うのです。重要な委員会全部、自民党員としての扱いでもって実は多数を占めてしまって、そういう状態にしたんでしょう。そのこと一つのために実はいわゆるこういう形がなされて、言葉では連立だとこういうふうな状態をおっしゃるんです。私はそういうふうに思いますけれども総理、いかがでしょうか。
  130. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新自由クラブの皆さんと自由民主党の考え方というのは非常に似ている場が多いのであります。特に、行政改革の問題や教育の問題やあるいは財政政策等につきましては非常に似ておりますし、特にまた、新自由クラブが今まで強調してこられたことは、国際信用や政局の安定という点をお考えいただいてきたようです。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕  でありまするから、今まで予算案の審議等につきましても、ほかの野党の皆さんが反対なすった場合でも新自由クラブは賛成していただいて、より強い力で予算を支持していただいた、これがしばしばございました。あるいは、去年の十一月の臨時国会におきましても、非常に国会が不正常な状態になったときに、新自由クラブは、審議を速やかに再開すべし、そういう議論を持たれまして、そして、その究極の状態を打開するために自由民主党と政策協定を結んで、本会議へ出席されてあの国会を打開していただいたことは、皆さんも御存じのとおりであります。そういうような、政局が非常に難しい事態になった場合に、常に国家本位に考えて政局を安定させ、民主政治を運行させるという非常に大事な役目を新自由クラブはおやりいただいたと思っております。  今回の解散選挙後の事態に対しましても、内外非常に日本を注目しておった状態であります。特に外交関係政策の継続性あるいは予算の通過、これが日本の景気に非常に影響を持ってまいります。そういう意味において、内外の信用と政局安定というものは日本の運命に関する重大問題であると新自由クラブの皆さんもお考えいただいて、それで我々と協調して今の目的に向かい、かつ、我々が政治倫理の問題について非常に大きな反省を行って改革を行うということも明言をいたしまして、そしてその面におきましても評価をしていただいて、今のような結束をするという形になった。  これが統一会派でいくか、あるいは統一会派を行わずにいわゆる片山・芦田連立みたいな形でいくか、あるいは閣外協力でいくか、これはもうそのときの政治情勢等によって両党の首脳部が判断をして決める態様であって、いかなる形をとるかということはその場その場で決めるべきことであって、非難すべきことではない。こういうような形が今後仮に、新自由クラブ、自民党の間だけでなくして、ほかの各会派との間に行われることも私はあり得ると思うし、国民が歓迎すれば勇敢にやっていただいた方が国家国民のためになるのではないかと私は考えます。
  131. 塚本三郎

    塚本委員 私ども、新自由クラブさんとは今なおどの党よりも最も近いという気持ちを持っておる一面があることは率直に認めて、だからこそ親しくやってまいりました。だから、その面だけとらえておっしゃればまさにそのとおりです。しかし、自民党さんとの間においては極めて大きな距離があるのにかかわらず、こういう形になった。  私は、今回の予算案を見たときに、二年間私は新自由クラブさんと一緒に、減税の実行のためにみんな力を合わせて、社会党さんも公明党さんもやってまいりました。そして、それも少ない、しかも予期しなかった、何度も念を押しておいた減税を上回る増税案が出てきておるのにかかわらず、近いところだけで行かれた、いや、行かれたというよりも、あえて総理がそういう道を強力に推し進められたそのやり方は、政治倫理に背を向けたやり方だ。  私たち民社党は、御無礼がありまするけれども、いかなる政党よりも国家国民のために忠誠であり、政府自民党が背負っておいでになりますけれども国民のものでございますから、政権を担当していなければ、しておる人以上にこの国のために政府を助けてあげなければいけない、こんな自負心を持っておるんです。だからこそ、私は、開票のその日のうちに、少数与党結構じゃありませんか、謙虚でおやりになるならば民社党はあらゆる面で協力をさせていただきましょうと、NHKを通じて申し上げたはずです。  それは私たちが、今回佐々木委員長が本会議で提起いたしましたように、まずそう言っても、この経緯を見ますと、なかなか自民党さんは謙虚にやっていただけない。しかし、にもかかわらず、教育の問題や行政改革の問題やあるいは安全保障の問題は一党一派の問題じゃないから、私の方から国家のために呼びかけをいたしておりますることは、国民も御承知いただいておると思います。だからこそ総理も、間髪を入れず素直な御返事をいただいたと思っております。  そのやりとりから見ると、今回のやり方は私どもは極めて遺憾であった。だからといって、増税は全部予算から切るなんというようなことは、今ここで私は田川先生に申し上げても無理なことだというふうに思いますから、時間の都合でこれ以上突っ込みませんけれども、連合の必要性をこういう段階では認めつつも、そしてそのやり方が一つの方法であることを承知しつつも、この行き方はいかにも国民に疑惑を招いたというふうに、私は総理にそのことを申し上げておきます。  さて、次は資産公開であります。  過日公表されました。やらないよりはいいという意見があります。でも、やってみますると、中には随分価格が低い。総理、この間レーガン大統領がおいでになった日の出山荘も値段が出ておりましたが、私にある人が言いました。安いなあれ、あの値段なら、おれ三倍か五倍でも買うかどうだなんて、冷やかすんですよ。もちろん、お売りになるということを前提にしてお出しになったわけではありませんけれども、新聞では二十分の一になるようないわゆる計算の発表までなされております。庶民の常識からいたしまするとそうであります。さすれば、やっぱ政治家はうそつきだな、こういうことを思わせた一面もあることを私は残念に思っております。  御承知のとおり、大臣皆様方が貧乏でなければならないとはだれも思っていないんです。資産のおありになることを決して私は、一、二の例外を除いては非難されるべきものじゃないと思います。大臣ともおなりになれば、それだけの手腕力量、社会的の声望も高まっておる方ばかりであります。ならば宗教的な表現になるかもしれませんけれども、その人物にふさわしいだけの財は備わってくると私も信じております。財のあることや資産のあることを非難する国民は余りないと思います。問題は、権力の座について、それからの在任期間中に権力でよこしまな財産を取得するかもしれないということを払拭することが、この資産公開にとって最も大切なことではございませんか。  さすれば、わざわざ小出しに十分の一あるいは新聞の表現のごとく二十分の一で、時には名義まで移して少なく公表するなどのことをなさらずに、堂々とあるがままにお出しになって、その上で、次までにどれだけどう変わったか、これが資産公開の本当の意味であろうし、国民が注目をなさるのもこのことではないでしょうか。その出発においてこういうことをなされたということは、やらないよりはいいという考え方もありますけれども、私は政治家の一人として、いかにも政治家はやっぱうそつきだな、こう思わせたことを残念に思います。総理、このことに対しての所信はいかがでしょう。
  132. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 資産公開を行うということは、選挙中も私は申し上げまして、それを今回実行したわけでございます。その中身ややり方についてはいろいろ御批判もあると思いますが、ともかくやってみて、いろんな御議論も拝聴して、そして改良すべき点があれば改良していきたい。  私の考えは、やはり政治権力とかあるいは公権力、その地位についた者がその地位や権力を利用して自分の財産をふやした、そういうことを言われないような措置をやることが中心でありまして、したがいまして、大臣とかそういう地位についた以後の財産の変動をずっと見ていくということが大事ではないか。ですから、毎年その増減について申告すると申しますか、公表するということが大事ではないかと個人的に考えていると申し上げたところです。  私の資産について言及がありましたが、日の出の農場というのは、昭和三十七年であったと思います、オリンピックの前の年に買ったのです。私の全資産の中で山林の部分がかなりありますが、その大部分は群馬県の室田というところの山で、私の父の遺産で私のところに来たものでありますが、それはほとんど全部が保安林なのでありまして、私の個人で手がつけられない保安林になっておるところです。そういうわけですから価格も非常に安い。  それで、日の出山荘やそのほか全般につきまして、この不動産をどういうふうに評価するかという点では、内閣及び法制局で相当研究してもらったのです。ところが、時価という形になると非常に変動する。一体だれが時価を決めるんだ。国土庁がやっておる地価公示の価格というのがありますが、あれでもそれほど当てにならないという批判がかなりあります。そういういろいろな点を考慮した結果、一番法的に安定しているのはやはり固定資産税の課税標準価額である、これならば毎年、たしか五年ごとに直していきますし、時価はあれのどれぐらいに当たるかという予想も一般の人は持っておるわけです。そういうわけで、一番法的に安定しているのは固定資産税の課税標準価額でありますから、それで出した、そういうことなのでございます。
  133. 塚本三郎

    塚本委員 そうだろうとは思いますけれども、庶民感覚からいいますると、先ほど新聞で出たような二十分の一、それがそういうことならばやむを得ないのですけれども、それならばやはり何か注釈を加えておかないと、わざわざ隠したように受け取ってしまうのです。ですから、その点は御配慮いただかないと、恐らくこれから大臣さんだけじゃない、議員の問題も出てまいります。やっぱり政治家全体がうそつきだなという感情だけは、我々は自信とプライドを持って政治活動をいたしておるのですから、そのとき世間様から誤解を招くことのないように御配慮をいただきたいと思います。  次は、田中決議の問題であります。  私たちが、有罪判決になるまでは、裁判の前だから影響を与えてはいけないということでしばらく、野党は相談をして、いわゆる早く採決をしなさいと言うことを実は控えておりました。判決が出たから採決をしなさいと言ったけれども、これが自民党においては上げもなさらず下げもなさらず、ついに解散という手段に訴えられてしまいました。そのことは、自民党は間違っておるよということで、ボールが自民党に投げかけられたと言うべきではありませんか。だから今度は、国会から言われるまでもなく、自民党としてこの決議案をどう処理するのかということをきちっとお決めになって野党に御相談なさるべきではないか。なさらなければ、我々はもう一度決議案を出さざるを得なくなってくるでしょう。  決議案を出せばまた同じようなことを繰り返す、この愚かさをあえて避けたい、これが恐らく各野党気持ちではないか。共産党さんは出すと決めておられますけれども、我々はびびっているんじゃないのです。前国会で解決ができなかった、その自民党態度にじれったさを持っておる。しかし、また一年の間に同じようなことをして国会を混乱せしめることの愚かさは避けたいということが野党、私たちの心底にあるから、ボールは自民党間違いだよと選挙の結果で投げかけられたと思うので、自民党みずからがどう対処なさるのかということによって、それがなされなければ再び持ち出さざるを得ないかな、こんな気持ちになっておるのです。  もしきちっとなさらなければ、再び野党の中でそういうことが出てきたときに、いや、うちはもうと言ったら、ああ、何かおかしいなとなっちゃうのです。ですけれども、あえて私たちは、再び同じような混乱の愚かさを避けたい、だからそういうときには自民党できちっと、自民党の問題ですから御処置なさって、そして自民党はこういう姿勢だと言えば相談に応ずる、こういう形にするのが正しいと思いますが、総理と総裁の立場からお答えいただきたい。
  134. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あの決議案は野党がお出しになった決議案で、自民党が出した決議案ではないし、自民党は自分からああいう決議案を出すということはやっておらないわけです。したがいまして、ああいう決議案をめぐって選挙に入って、我々は大きな批判を受けたということも率直に認める次第であります。  しかし、選挙という問題がここに入ってまいりますと、民主政治、議会政治においては、主権者である国民の判断、審判というものが最終、最高の審判、判断であると考えざるを得ないのではないか、そういう考え方も合理性があるようにも思います。  したがいまして、以上のような点を考えて、党の政治倫理調査会を結成しまして、ここで今鋭意勉強してもらっておる。そのほか、一審有罪判決が出た場合の議員の身分をどうするかというような問題等々諸般の問題も出てきておりまして、ともにこれらを研究していただいておるという情勢です。
  135. 塚本三郎

    塚本委員 この問題を詰めていきますとまた時間がかかりますから、これからの党と国会の場におきまして話し合いを進めてまいりますので、世間様からまた逃げたなということをなさらないように、これは党の総裁として御指導いただくように強く希望いたしておきます。  次は、議員定数の是正の問題であります。  田川自治大臣、強く是正すべきだと積極的な御発言をいただいております。この点は私は高く評価させていただきます。そして、総理もそれにこたえて、まあ執行猶予というようないわゆる表現をお使いになって、一刻も早く、できればこの国会でというような底意を持って御発言いただきました。是正に当たりましては、新自由クラブさんは大変ないわゆる現実的なシビアな考え方をお持ちのようであります。私たち民社党も、現行定数を超えないということを原則にして、できれば五百名を割るような削減の案を考えてみたらどうだ。  私たちはここで、行政改革につきまして再三論述いたしております。行政府に向かって民社党は、現在の定員から五カ年計画で一〇%削減しなさい、こう主張いたしております。議員が多いがいいか、少ないがいいかということについては議論はあります。しかし、今やその議論を離れて、私たち議員も多過ぎるという意見が国民の中に充満しておることを私たちは知っております。ならば、行政府に向かって削減せよと言う限りは、我ら国会議員もまた、この際は、議論はありましょうけれども、削減をする方向で是正をしていくべきではないか。少なくとも田川さんの御発言を素直に受けとめるならば、やはり是正をひとつ五百名を切るべきではないか、私はそんな気持ちになっております。  そしてその場合、やはりこれは政治家の命運にかかわることでありますから、大きな変動を来すことはこれは無理だと思います。したがって、昭和二十年代から三十数年にわたって行ってまいりました中選挙区制、すなわち三名から五名というこの枠は崩さないようにして、そして是正を図るべきではないかというふうに考えますが、田川大臣の御見解を伺いたい。
  136. 田川誠一

    ○田川国務大臣 議員定数の是正について、総定数を動かさない、むしろ減らすべきではないか、こういう御意見につきましては、私も個人的には大体考え方は同様でございます。しかし、この問題は、御指摘のように各党また各国会議員の政治生命に関する問題でございますから、私が今どの程度がいいかということを申し上げるというのは、せっかく定数の是正を推進するような雰囲気に今なっておりますから、ここで私が余り具体的なことを申し上げない方がむしろまとまりやすいのではないかと思います。  ただ、新自由クラブ代表として言わしていただければ、民社党と考え方はほとんど同じと言ってもいいくらいの考え方でございます。
  137. 塚本三郎

    塚本委員 大臣、そういうことが出てくるから、いわゆる連合とおっしゃるなら別の会派でなさるべきではなかったか。おれの案をのまなければ嫌だよと言えば、中曽根内閣は改造に踏み切らざるを得なくなってくる。そうするなら渋々でものんでくださる。増税も撤回してくださる。それが、同一会派になったためにいまの大臣のような発言になることを私はいかにも悲しく思います。だからこそ私は、そういう意味で、いわゆる連合は結構ですけれども、同一会派になったというときにはそういうことが出ざるを得ない、これは人間として同じ会派の中におれば、二百六十六分の八ですよと言われたらおしまいじゃありませんか、ということじゃありませんか。
  138. 田川誠一

    ○田川国務大臣 私は今具体的なことを申し上げなかったのは、各党の意見がまだなかなかまとまってない段階に、公職選挙法の担当の主管大臣が、これがいいということを申し上げると、まとまろうとしておるのがまとまらなくなってしまうということを申し上げたのです。  それから、共同会派共同会派とおっしゃいますけれども塚本さんも御承知のように、あなたの方からも私の方に共同会派いかがですかと、さんざん勧誘されたじゃありませんか。まあ余り具体的なことを申し上げるといけませんから、その程度にしておきます。  まだまだたくさんあるのですよ。やはり政治は動きで、現実的に自分の政策をどうやってやっていくか、こういうことが政治家としてやらなければならぬ務めなんです。ですから、私どもが少し早く連立したからといって、そうむきになってやられてはちょっと困るのです。
  139. 塚本三郎

    塚本委員 増税賛成で共同会派なんか呼びかけるつもりはありません。増税反対ということで足並みがそろえば、最も大事なところでそろっておったから、だからこそ申し上げたことですが、急にそれが変わっていって自民党さんと同じだとおっしゃるならば、もはやこれ以上論及を私はとめます。  さて、行政改革でございますけれども、今度三千九百五十三名という国家公務員の定員削減をなさったことは、今までとしては画期的なことであったと思います。しかし皆さん、今の国家財政やあるいは国民から政府に期待する行政改革は、もっと大きかったと思うのです。民社党は少なくとも、約九十万人の国家公務員のうちで年々四%ずつはおやめになるのだから、補充二%ずつになさったらいかがでしょうか、さすれば五年間で一〇%、一割切ることができます。さすれば八万大切ることができるのですよ。ならば一万五千人ないし一万七千人は、生首を切るというのは変な言い方ですけれども、よく一部の労働組合から非難がありますが、そんなことは考えておりません。自然退職のいわゆる補充を半分にしなさいという提案をいたしておるのです。臨調だってそれに近い答申をなさっておいでになるのでしょう。それが半分以下という状態で大だんびらを切っておいでになる。これじゃ少な過ぎはしませんかということです。長官、どうでしょう。
  140. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 塚本さんからは昨年も同じような御意見を承っております。確かに一つの御見解だな、こう私は思うわけでございます。  制度、仕組みが違いますから、一律に多い、少ないということは言えませんけれども、人口千人当たりの公務員の数、これはやはり日本が一番少ないことは事実なんです。しかしながら、国民の側から見れば、これは多過ぎる。殊に国家公務員が約九十万、地方公務員が約三百二十二万五千名、公社公団、特殊法人等入れれば五百万を超えているわけですから、国民のこの声にやはり謙虚に耳を傾けて、政府としては対応しなければならぬということはよくわかっております。そこで、第二臨調等でも、この定員をどの程度削減できるかということは真剣に討論なさったようです。御説のように一〇%削減できないのかということでいろいろ調査の結果、やはりこの際は五年間で五%、したがって四万五千名、それの削減をしなさい、こういうことの御答申をいただいたわけでございますから、政府としては、それに従って削減をいたしておるわけでございます。  しかし同時に、やはり要整理部門のほかに、増加をしてあげなければどうにもならない、例えば学校あるいは病院、こういった数が一番多いと思いますけれども、そういうようなことがございますから、塚本さんのところの御提言も十分検討いたしました。しかしながら、一律削減一〇%、それを今度は二分の一補充ということになれば、おっしゃるとおりなるんですが、要整理部門と要増加部門、これがあるものですから、一律削減という手法の問題ですね、手法が果たしてそれでいいんだろうかな、どちらがうまくいくか。一律削減やったことあるんですよ。しかし、いろいろな欠陥が出まして、そこで臨調の御答申も、今政府がやらんとしているような削減、増加の方針でやりなさい、こういったことでございますので、政府としては精いっぱいの努力をしておる、こういうことでございますので、御不満な点はよくわかりますけれども政府の精いっぱいの努力だということはひとつぜひ御理解を賜りたい、かように思うわけでございます。
  141. 塚本三郎

    塚本委員 今長官おっしゃったように、民社党は、毎年行政改革に対しましては、第二臨調与党と自負いたしまして、熱心にこれらの問題を提起いたしております。これはもう大蔵大臣御苦労なさって、一生懸命税収を探してみえる、あるいはまた、出すことをどうして削ろうかということで苦労してみえる。しかし問題は、どこの企業でもそうですけれども、最近の言葉で言えば、いわゆる政府がもっとスリム、そして納税者にこたえなければ、増税を求めてもあるいは御遠慮願う。補金をカットしてくださいと言っても、使う方の政府みずからが、納めてくださる民間と同じような姿勢をとりなさいということを私は前提にして言っておるんです。国家財政が豊かなときには、一言たりとも民社党はこういう問題は提起した覚えはございません。国家がこんな大変な状態になっておるから、どの代表も必ず財政の問題で大蔵大臣にぎゅんぎゅんと迫っておる。ならば、使う方の政府みずからが納税者の立場にお立ちください、こういう立場議論をしております。  例えば繊維産業は、昭和五十一年には八十二万人台、それが五十五年になりますると、五年間で六十九万人台になり十三万人台のいわゆる減で、わずか五年間で一六%を削減いたしております。生産量は変わっておりませんよ。繊維産業です。造船も二十二万人が五年間にわずか十三万人、九万人を削って四〇%以上の削減をして生き残るために血を吐くような思いをしておるんです。鉄鋼でも四十七万人台が四十二万人、これも約一〇%を今削って、そして生き残りに懸命の努力をしている。そういう企業に四二%の法人税率、また一・三%の税をかけていくんでしょう。こうせざるを得ないとするならば、どうして五年間に一〇%を切りなさいということが無理でしょうか。臨調もそれを命じておるのを、五%に勘弁してください、こういうような形だと実は御了承いただいたと長官おっしゃった。これは無理なんですよ。  人間を減らすときには仕事を減らさなければならないのです。ところが、各省はこうして仕事を一生懸命抱えて放さないのですから、仕事を切りなさいと言っているのです。ならば人員は楽に切ることができるのです。民間は、お役人が一々関所をつくって困っているのですよ。臨調に参加なさった私の友だちが言っております。塚本さん、びっくりした。どうしてですか。出てくるところの意見を聞いてみると、各省の課長さんは課があって局なきがごとき発言、局長さんは局があって省なきが発言、そうして、大臣さんとは言わなかったけれども、省の代表は省あって国家なき発言ばかり。この縦のラインだけですべてをやっておるのです。だから仕事など放すはずないじゃありませんか。こういう状態に陥っておる。このすさまじいいわゆる自己保全といいますか、これにはあきれたといって、ある知識人が私に語っておりました。上からばっさりと許可認可、これを削らなければ人員の削減なんかできません。  ところが、昨年、一万四十五という許可認可に対して三十八か九削っただけで総理は行革三味、こういう御発言をなさっておいでになりますが、許可認可をばっさりと、三十八、三十九と言わず、せめて一千ぐらいお切りになったらいかがでしょうか。それでなければ長官のところで作業ができないと私は思います。いかがでしょう、総理
  142. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 この人員の問題は、実は中曽根総理長官時代に、この際一割ぐらいできるんじゃないかということで検討に入ったことは事実でございます。しかしながら、いろいろな御事情を臨調に聞いていただいて、臨調御自身も、五%やむを得ないなということになったのです。  それは、今お話しの民間から比べれば確かになまぬるい。しかし、これはみんなそれぞれの立場で、行政サービスを落としては相ならぬという責任感のあらわれであるということも認めていただかぬことには、なかなか議論にならないということではないでしょうか。といいますのは、今ふえておる面はどこがふえているのだということなんですね。ふえている面が学校なんです。それから医者、看護婦でしょう。それから税務の関係がありますね。登記所の関係がありますね。こういったような、本当に、どうしても最小限のサービスを確保しなければならぬという要請がある部門がふえておるわけですから、そこらもぜひお考えを願いませんと、なかなか一律にばっさりというわけにはいかぬのであります。精いっぱいやりますから、この上ともの御支援をお願いいたします。
  143. 塚本三郎

    塚本委員 わかりました。私たちも、税務はもう少しふやした方がいいんじゃないかという意見にも耳を傾けております。あるいはまた、学校や病院などについては、ふやすべきところはふやしなさい。しかし、それにしても、一〇%を五%にしたとしてみましても、約四千人ですから四、五の二万人しか減りませんよ。五%の半分しか減りませんよ。これは今年は三千九百で、その次は倍ずつずっとやっていきますか。それでないと五%になりませんよ。いかにも言葉だけに終わりますから、この点、ことしはこれで勘弁してください、しかし、うんと許可認可等削るところは削る、ふやさなければならないところはふやしてみて五%ならいたし方ありません。しかし、五%だけは必ず実行いたしますとお約束できますか。
  144. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 五%五年間で削減しろというのは至上命令でございますから、断行させていただくつもりでございます。殊に六十年は御案内の定年の延期の時期が来るわけでございますから、こういった際は、公務員の定員削減の大きな機会である、かように考えておりますから、努力いたしたいと思います。
  145. 塚本三郎

    塚本委員 長官、五%は至上命令とおっしゃったから、勇気ある発言だと申し上げておきます。ただ、またごまかしが出ましたね。中央の国家公務員と地方出先機関と一緒で九十万人の五%ですよ。数字のごまかしをされたら困るのですから。ようございますか。また地方出先機関とこう切ってしまって、中央で五%などということになったら、これはそれのまた四〇%になりますから、そうすると二%ということになるのですから。だから、私どもの言っているのは、中央地方を通じて国家公務員の五%を削減しなさいよということですから、その点は間違いなくひとつ考えていただいて。  私は、中央の諸君は随分努力をしておってくださるし、もう八時になってもほとんど電気が明々とついて、随分御努力いただいております。この点は、優秀な日本国家公務員であることも認めております。しかし、地方の出先機関にもっと手を入れるべきではないか。臨調もそのことを主張いたしております。  民社党、私はこの席から毎年のごとく、地方の国の出先機関に対するいわゆる改廃を提議いたしてまいりました。どうでしょうか。もう全国が四十七都道府県は即時通話です。あれができたのは、御記憶の方もあると思いますが、昭和十二年、日支事変のときに、中央の指示命令が届かない、戦時体制にそぐわないということで地方に出先機関をつくったのです。私は名古屋でありますけれども、夜行で一晩かからなければ着かなかった、電話も半日かからなければ通話ができなかった、そういう時代のことですから、戦時体制即応のためにこしらえたのが地方の出先機関なんです。  もう日本じゅうどこへでも、飛行機と新幹線と列車を使えば日帰りはできる体制になり、電話は都内でかけてもあるいは沖縄からかけても、どこでかけたかわからないぐらい明確に連絡がとれる時代になったのです。こんな優秀な皆様方がいて、四十七都道府県におけるところのだれが、どんな活動で、どういう動きになっているか、見事にキャッチしておるのです。現業部門を抜いてはもうこれは大胆にカットしていただかないと、住民サービスはないのですよ。これが住民サービスの阻害になっておることが多過ぎる。中二階だと私は何度も表現しておるのです。これを切ってくだされば一挙に半分になるのです。ですから、順次これを整理なさることが一番大事ですよ。  私は、きょうは一つだけ農政局につきまして、まあ農民の皆様方は、何かここで発言すると利害が絡みまするから相当神経質でありますが、農業代表の皆さん方に聞いてみると、ああ農政局、あれは切ってもらった方がいいよ、こう言うのです。食糧事務所、あんなのは切ってもらった方がいいよと言うのです。そして、農業団体に任せてくださったらいかがでしょうかと言うのです。仕事がふえていいようでございます。大体、陳情に行ったってなかなかはかどらないのです。最後には全部農林省まで行かなければならない。そうかといって、地方の局を通じないと何か薄気味悪くなる。(「御機嫌が悪い」と呼ぶ者あり)御機嫌が悪いという発言がありますが、そのとおりなんです。だから、住民サービスのために逆行なんです。  農林大臣、いかがでしょうか。農民の立場から考えて真っ先に、一番国家財政の金をいただいておる農林省としては、せめてこの部分から御協力をいただく。これは一挙両得に思いますが、いかがでしょう、地方の農政局。
  146. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生の御質問は、地方農政局を切ったらどうだということでございますが、先生御存じのとおり、日本の場合は農業というのが各地域によって大きく異なっております。そこで、今各地域の実態に即したきめの細かい農政を円滑に進める必要があるということで、全国七カ所の農政局があるわけでございますが、現在では大幅にこの補助金等の交付、許認可等の業務の委譲を行いまして、当該地域における農業、この施策の実施に当たっておるところでございまして、農林水産省といたしますと、農政の重要な役割を果たしておるということを認識しておりますので、今のところ廃止することは考えておりませんが、先生の貴重な御意見は頭へこびりつけておきます。
  147. 塚本三郎

    塚本委員 しかし、その大部分は農業団体にお任せした方が能率も上がるし、農民も喜んでいるのです。まして指導とかなんとかおっしゃるけれども、先生方御承知のとおり、農政局なんかおいでになったことないでしょう。そのまま農林省へ直接おれのところへ来いと言ってみんな自分で引っ張って、農林省の役人さん直接呼んで解決してみえるのがほとんどなんです。だから、もうこういう問題は、できたのが昭和十二年ですよ、今とは違うし、これだけ優秀な人材をそろえ、これだけ優秀な通信、交通機関の中ですから、だから無理なところでどうこうせよと言っているのじゃない、むしろ住民サービスのために切ってあげてくださいということですから、もう少しこれから大臣御勉強いただいて、これは残してやる、そのかわりこれとこれは農協に任せるとか、こういうふうにひとつ、あなた、そういう点は大胆に発想のできる人ですから、そういうふうにしていただくことを御期待を申し上げます。  それから次に、行政改革で、私は国鉄の改革につきまして、もう数年来毎年ここで議論してまいりました。四十五万人あるいは四十二万人の国鉄を三十五万人体制の計画ができました。私は、一部の人から、いや、三十五万人なんてとんでもないことだと言われたとき、いや、民鉄は全部で二十万人でこれくらいの規模をやっているのです、三十万人台を切って二十万人台にならなければ国鉄は生き残れませんよ、非情に私は申し上げました。私は随分新幹線を利用させていただきますので、乗るときもちょっとばかり遠慮しいしい。でも、国鉄で育った私にしてみると、国鉄を立派に立ち直らせることが政治家としての私の一つの務めであると思って、あえて言いにくいことも提言してまいりました。  そういたしましたら、六十年を目指して三十五万人体制との計画を大きく割り込んで、既にその目標を突破して、やがては三十万人を切ることができるという内部事情になってまいったことを私は喜んでおります。政府が法律案を強く主張してお通しになり、国鉄当局も大変なやる気になってまいりました。もう最近、私は駅を通りましても、駅員さんから、おはようございます、向こうから声をかけてくださるところも出てまいりました。私がここで随分非難を申し上げ、そして言いにくいことも申し上げたことが、いい結果となってあらわれてまいったことを喜んでおります。  しかし、なおなおこれから合理化を進めていかなければなりませんので、これから国鉄が生き残るために必要な問題として、私は幾つかの問題を提起いたしました。合理化に対しましての改善計画はどうなっているのか、あるいは特に職場におけるところの規律の問題、一々何をするにしても現場長さんが組合と相談をして、そして組合の許可がなければ運営できないような人民管理的な職場運営、こんなことで経営が成り立つはずはありません。まず、これらの問題等につきまして総裁から、その後の進展状態をお伺いしたいと思います。
  148. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 お答えいたします。  要員の合理化の進展でございますが、今先生がお話しになりましたように、昭和五十八年度末で三十四万五千人ということになりまして、計画年次より一年早く五千人を切るというような進展を示しております。今後の見込みにつきましては、なお合理化等に努めまして、六十年あるいは六十五年ぐらいのときには三十万を切るような方向で今検討を進めております。そういうことでございますので、今後いろいろ問題があるかと思いますが、またいろいろ御指導を願いたいと思うわけそございます。  それから、職場規律の問題でございますが、私も着任後まだ日が浅いのでございますが、現場等を見ます限りにおきまして、二年ほど前に非常に御非難を受けたような状態からは、今先生も御指摘いただきましたように非常に改善されてきていると思っております。しかし、実際にフロントサービス等はよくなっておりますが、まだ裏方等の職場におきましては、必ずしも規律が全く改善されたという状況ではございません。そこで、さらに三月に総点検をいたしますが、その結果等も含めまして、さらにこの規律の是正というものを進めてまいり、国民の負託にこたえるような国鉄にしてまいりたいと思って、今後も努力を重ねていく覚悟でございます。
  149. 塚本三郎

    塚本委員 総裁、上上たらざれば下下たらずということがありますが、やはり経営者の経営姿勢だと思います。私は、四、五年前ここで前総裁においでいただきまして、この現場協議制を撤廃しなさい、そうしなければ人民管理の国鉄じゃありませんか、これでは経営がよくなるはずはありません、私はそのことを強く申し上げたのですけれども、返事なさらなかった。そして、やっと昨年それを廃止なさった。時間との戦いですと前総裁は私におっしゃった。何をおっしゃるんだ。四年前に私が提起したときに三年間捨てておいて、今ごろになって時間との戦いです、これが今までの国鉄経営の実態でございました。本当に国鉄が生き残ることができるかどうかは、経営者のあなたの姿勢にかかっておると申し上げておきます。  もう一つのがんは、いわゆる本社採用によって地方に局長部長等を派遣する。その諸君は常に本社ばかり見ておって、現地における職員に顔を向けていない。このことが職場を統一し、規律することができないから、現場長さんたちはノイローゼになってしまって、職場を混乱させるか、まじめにしようとするならば自殺に追い込まれて、四十数名が自殺しているんでしょう。これは、総務部長なり局長が、本社へいつ転任になるかということばかりを考えておる、このいわゆる本社採用の方法が間違っておった、このことも私は四年前に指摘をしておいたのです。その後どうなっていますか。
  150. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今先生から御指摘がございました本社採用学士の運用につきましては、お説のとおり私も考えております。それで、特に現場におきます管理局長以下の在任期間を長くするということにつきまして、いろいろ事情がございまして三月には多少はいたしますが、できるだけそういう方向で持ってまいりたいというふうに思い、その管理局長、総務部長あるいは各部長現場を十分管理できると申しますか、お世話できるような体制をつくってまいりたいというふうに考えております。  なお、今までの幹部要員の採用方式につきましては、先日、新聞等でごらんいただいたかと思いますが、今度は今までのように少数、今まで大体事務三十、技術五十ぐらいでございますか、これを大幅に広げまして二百名ぐらい採用いたし、さらに学園の大学課程の人たちを百名ぐらい入れました二百五十ないし三百ぐらいの中を基幹といたしまして運用してまいりたい。しかも、それはなるべく地方別な特色を持つような採用の仕方をしていきたいというような考えをいたしておりまして、その中で、まだ先の問題でございますのではっきりはいたしておりませんが、その中から簡抜する方法をとってまいりたいというような改善を具体的に考え、来年度の採用から実行してまいりたいということで処理をいたしてまいります。
  151. 塚本三郎

    塚本委員 国鉄は優秀な人材がたくさんおります。現地におきましても、こんな混乱した国鉄でありますけれども、国鉄のためにはということでもって、当局以上に、この列車ダイヤを守るために鉄道労働組合の諸君などは懸命の努力をしております。そのとき、職場の規律の乱れから妨害されたとき、現場長が守ってあげなければならないのが、現場長が逃げて回っている、あるいは混乱の味方に立っていい格好をしようとする。このことが再建をおくらした最も大きな原因であります。それは、局長あるいは部長といって本社採用で派遣された諸君が事なかれ主義でもって、いわゆる混乱を起こさせない、収入やあるいは列車ダイヤよりも、いわゆる人事問題等で混乱を起こさせなければエスカレーター式に昇級できるという、この幹部採用の姿がこうなってきた大きな原因であります。その点を十分御勘案いただきまして、きちっとした体制をおとりいただきたい。  最後に、今国鉄は大変な借金を抱えておりますけれども、言う方に言わせるならば、これは後で取り上げますけれども、膨大な用地を持ってみえる。もう一部はそれを売りつつありますけれども、これは積極的に、特に東京都内あるいは大阪等膨大な、駅周辺には、特に貨物の駅の廃止によりまして浮いております。これらを効果的に売り払うことによって、あるいは先ほど、後から論及いたしますけれども、ここで出されたようないわゆる公用地を民間と力を合わせて活用することによって、実は財政の建て直しにも十分寄与できると思っておりますので、積極的にこの土地の利用と売却について前向きで、ちょっとずつ政府の助成の足りないところだけを売ることによってしりぬぐいするという今までのやり方ではなく、大胆にこの借金を減らし、前向きに経営が立つように努力をしていただきたいと御注文申し上げますが、決意のほどだけ承っておきます。
  152. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 先生の御趣旨はよくわかりますので、今後土地の売却あるいは活用等につきまして、いま事務当局に命じていろいろやっておりますが、さらに深度化を進めて御期待にこたえるように努力をいたしたいと思います。
  153. 塚本三郎

    塚本委員 総裁、もう結構です。  次に、電電公社に移ります。  やっと電電公社も分割・民営化の答申にこたえて法案を出されるという方向が示されておりますが、これは今国会に法律案が出ますか。
  154. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 今国会に法案を提出すべく、成案化を今急いでおる段階でございます。
  155. 塚本三郎

    塚本委員 その際、分割・民営というのはどこまで詰まっておりますか。
  156. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 法案の骨子が今ほぼ固まりかけておる段階でございますけれども、方向としては民営化の方針で、もちろん競争原理の導入も含めてという形になって進めておるわけでございます。
  157. 塚本三郎

    塚本委員 分割はどうですか。
  158. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 いわゆる分割の問題に関しましては、将来、今後の問題としていろいろな面から検討して、慎重に結論を出したいということでございます。
  159. 塚本三郎

    塚本委員 この際、新会社になった場合は、あくまでも会社ですから、公労法の適用ではなく、労働三法の適用として、争議権から賃金の決定から、そういう問題は民間会社と同様にして、政府はくちばしを入れないというふうに受けとめてようございますか。
  160. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 新会社は、できるだけ政府の関与を行わないという方向でやっております。もちろん、労働三法に基づく形の新会社になると思います。ただし、当面、発足は全額政府出資の形でございますし、電力等々の前例もございますから、その点をよく検討した上で御相談申し上げたいということでございます。
  161. 塚本三郎

    塚本委員 結構です。そういう形でできるだけ、せっかく民営化するならば、民間活力を生かすというところに臨調の精神がございますから、事業計画等についても、資金やそういうようないわゆる収支計画等にはくちばしを入れなさるな。しかし、独占的な仕事であるから、サービスや料金等は政府が事業計画の中で手を入れなければならぬと思います。しかし、収支計画や資金計画等事業の運営としては電力とよく似たような形で、ともかく自由に経営をなさることが民営化への改革の精神だと思いますが、そういうふうだから、一々そういう資金という銭このことには余り、料金はきちっとして政府がくちばしを入れますが、収支計画等にくちばしを入れたら、政府の予算案と同じことで、何がために会社にしたんだということになりますよ。その点だけはきちっとしておいていただきたいと思いますが、ようございますか。
  162. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 当然新しい会社経営に当たっては、創意と効率化、合理化ということを重点にやって、還元するところは国民に対するサービスの還元でございますから、そういった意味で、料金その他に関しては当然許認可事項として残さなければいけませんけれども、先生の今言われた御趣旨の目的を体して成案化に努力したいと思っております。
  163. 塚本三郎

    塚本委員 それでは次に専売。  「開放経済体制に即応するため、たばこの輸入自由化を図る。」という方針を政府は決めておりますが、これは自由化したら、国産のたばこはまともに競争できますか、大蔵大臣。
  164. 竹下登

    ○竹下国務大臣 「たばこ専売制度及び日本専売公社の改革について」というところで、今御指摘のように、「開放経済体制に即応するため、たばこの輸入自由化を図る。このため、一定の条件の下で、事業者は、外国たばこを自由に国内に輸入し、卸売り販売が行える制度とする。」こういうのが一つございます、その他は別といたしまして。したがって私どもは、やはり国内たばこのいわゆる競争力の問題でございますが、先般も輸出会社を一応つくりました。したがって、この競争力の問題につきましては、当然製造独占を受け持つ新しい法人の、言ってみれば経営の合理化とかそれからいわゆる質の向上とかいろいろな問題がつきまとうわけでございますが、それについては競争力を十分具備するように、これに対しては強力な指導——指導と申しましても、先ほどの政府が関与するという意味ではございませんけれども、いろいろな角度から競争力に耐え得る指導を強力に行い、またそういう体制がとれることに対して期待をしております。
  165. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵大臣、これは会社と言わずに新法人と言っておりますが、どういう形にするつもりですか。
  166. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今、新法人と申しておるわけでございます。したがって、先ほど郵政大臣からもお答えがありましたが、今国会に我々も法律案を提出するという建前で今やっておるわけでございます。だんだん法律作成のための時間も迫ってまいりましたので、言ってみれば、まずは労働三法の適用を受けるということ、それから製造独占をさせるということ、その他専売納付金が消費税になったりするわけでございますが、そうして主務大臣の行政行為というものは、今おっしゃいましたように、極力縮めていくとか要員の合理化をやるとか、こういう考え方でございます。  したがって、今、新法人と申しておりますのは、言ってみれば、労働三法の適用を受けるというところはおおむねの今合意ができておりますが、一つはネーミングの問題と、それから全額出資の特殊法人でございますが、それを最終的にどのような形で詰めていくかということで、まさに最終段階の折衝をしておるという段階でございます。
  167. 塚本三郎

    塚本委員 この問題は、葉たばこの全量買い入れ制という農家保護の至上命令を政府は背負わされておると思います。ここに大変な大きな問題があって、これがためになかなか会社とは言い切れないという政府の悩みがあり、国会においても実はこの問題で各党ともに割り切れないような状態のままになっておることは私も承知いたしております。  まあ理想を言いますと、農家保護は、いわゆるこの葉たばこを買い入れるということは、今までのシステムは残念ながらというか必要で、これは守っていってあげなければいけない、こういうことに各党も一致しておるのではないかと思います。しかし、製造販売等の問題は、これはすかっと原料と製造販売と区別するわけにいきませんか。これも分割・民営にして、ピース株式会社とかセブンスター株式会社というように、いわゆるビールでもお酒でも半分は税金ですから、たばこもこういうような形にして競争をなさったら、国民立場から見ると——そうして別個農家保護のために葉たばこ全量買い入れ制、それは別の形でやっていくということにしないと、自由化してみたら両方これがいわゆる荷になって動きがとれなくなってしまうのじゃありませんか。葉たばこは農業問題だから、我が国においてはそういうわけにまいりませんよという形できちっとするわけにまいりませんか。それなら、いまの大臣のような苦しい、ちょっとわかったようなわからないような答弁をせずに済むのじゃないか。これは素人の考え方ですが、いかがです。
  168. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今おっしゃいましたとおり、いわゆる「国産葉タバコの買い付けについては、全量買い取り制度を維持するとともに新法人内に葉タバコの購入価格及び耕作面積を審議するための公正な機関を設置する。」こういうことで大方の合意が得られておるというふうに私は理解しております。  そこで、今、塚本書記長の御提案の製造販売を分割してという問題でありますが、一つには、余りにもたばこのいわゆる大企業と申しますか、特にアメリカが中心でございますが、それにそうした分割したピース株式会社なりそういうものが競争に耐え得るかというと、全体の独占形態の中でしか今対応するだけの力はないだろう、率直に私はそう思います。したがって、製造を分割するという考えはないわけです。しかし、一方で自由化しておるわけでございますから、それに対する対応力というものは、よほど節減合理化を初めとして技術的にも大変な努力を払っていかなければならぬ課題だというふうに思っております。  いみじくもおっしゃったいわゆる新法人というものを、今、大蔵大臣はきちんと、これは株式会社でございますというふうに割り切っていないじゃないか。もとより特殊法人であるわけでございますが、そうして全部を政府が持って出発することになろうと思いますが、その法人の性格づけにつきまして、いましばしの時間をちょうだいしたい、こういうことであります。
  169. 塚本三郎

    塚本委員 国が手厚い保護をすれば、そのときはいいようですけれども、実際にはそのことがその業界の体質をみんな弱めてきておって、もっともっとつぎ込まなければならないような形になってきている、それが農業問題のあらゆる部面に問題を大きくしてきておるのじゃないかという一面がございます。ですから、こういう点は、余りかわいいからといってひとり立ちできないようなかわいがり方をしてしまうと、最後に悔やんでしまわなければならないようなことができてまいることを私は御注意を申し上げておきたい。  それからもう一つ、塩の問題ですが、ついでに専売ですから申し上げておきます。  塩は御承知のとおり、質、価格等において欧米に比べても決して負けておりません。専売であるのにかかわらず、塩がなぜ日本の国が欧米に比べて質、価格等において勝っておるのか。それは製造も輸送も民間会社がやっておるということなんです。専売公社にやらせたら、これもひどいものになっておったと言いたいところなんです。製造は民間会社がやっている、輸送も全部民間会社がやっている、割り当てと販売だけが専売公社だから、だから立派にできておるということなんです。だから、これは新しい法人でもこの制度は手をつけられないように守ってあげていただきたい。  むしろ、だからこそ、たばこ等もそういう意味で製造等は民間のような形にしなさいということを言うのは、このことなんです。同じ専売公社の中で原材料が何にもない、よその岩塩ががばがばと出てくる国と競争したって勝ち得るのでしょう。そういう状態は民間会社がやっているということなんです。民間会社が全部運送しておるのです。だからこそ世界一の質、世界一の価格の塩が供給されておる。同じ専売公社でもこんな違いがあるのは、お役人様に製造業までさせることは無理だということが根底にあるから、私はそういう意味で、国鉄も電電公社も専売公社も民営化を主張する根源はここにあるというふうに申し上げておきますので、大蔵大臣から一言だけその御答弁をいただきたい。
  170. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる第二臨調全体を貫く思想としても、民間活力というものが、今日もたらされたいろいろな活性化の問題が、公社公団等々に対する改正案の一番背景にある考え方ではないかというふうに私も理解しております。
  171. 塚本三郎

    塚本委員 強くその趣旨に沿うように御努力いただきたいと思います。  さて、安全保障の問題について御質問いたします。  防衛費に対する議論で、一%論が中心となっておるようであります。国民総所得に占める政府の防衛費の割合を一%以内と、政府が当面みずからの戒めるべき目途として、三木内閣当時設定され、歴代内閣がこれを堅持してこられたことは、一つの見識として民社党は評価いたします。しかし、それは御承知のごとく、日本を取り巻く国際緊張や軍事情勢と密接にかかわっている問題であり、かつ、条約の相手国たるアメリカと相互の関連も決して軽視できない関係にあると思います。まして、GNPそのものの推移も決定的な影響を与えずにはおきません。これがうんと高くなれば、よほど大きくても問題ないわけです。これが下がっておるところに、今の一番大きな問題が提起されておることも一つの事実です。よって、一%を少しでも上回れば悪で、少しでも下がれば善だと言いかねないような風潮は、安全保障の面から見ると、これは危険ではないかというふうに私は思います。  一%は、政府みずからが課した自粛の歯どめにほかなりません。よって、もし国際関係の緊迫に比し、GNPが逆に下がる場合は、一%を超える場合も時として来ると予見されます。それが今日の状態ではないか。政府はその場合に新たなる次の歯どめをどうつけるかということも一つ期待されております。今私がどうせよという問題ではありませんけれども、こういうようにいわゆる国際緊張が高まって、政府としては一億の安全のためには必要だと思っておるが、GNPは伸びなかった、こういう場合には一%以外に何か別に考えてみえますか、総理
  172. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先般ここで言明申し上げましたように、昭和五十一年に決めました三木内閣の閣議決定の方針を守ってまいりたいと思います。
  173. 塚本三郎

    塚本委員 これは何の答えかわからないのです。私は、守れと言っているのじゃないし、守らなくていいと言っているのじゃないのです。好むと好まざるとにかかわらず——一%が国家を守る歯どめじゃないのですから、防衛におけるところのお金の面での一つの歯どめとしてなんでしょう。そのときに、一%を守りますじゃない、守れなくなったときに、次のことを考えがあるかということを聞いているのです。ないならないとおっしゃられればいい。どうでしょう。
  174. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府といたしましては、そういう事態が出てきた場合に即応して物を考えたい。今日におきましては、ただいま御答弁申し上げたとおりでございます。  ただ、塚本さんが今お述べになりましたお考えは、実に緊張して聞いていた次第でございます。
  175. 塚本三郎

    塚本委員 まあ今の総理のは、きのうまでの御議論からするならそういうふうに答えざるを得ないだろうという、国会の中における中曽根総理大臣の立場というものを御同情申し上げつつ、私は御質問申し上げてみたい。  ことしの予算案は、各項目別に検討するとき、明らかに対外援助費と防衛費の伸びが突出していることは、明らかに数字がこれを示しておるわけです。ことしだけ見たら、これと対外援助と二つだけが突出しております。とりわけ他の野党の諸君は、この点に対して大きな危惧の念を持っておられることは事実であります。  私が心配することは、安全保障というのは、一番大事なことは、みんなが心を一つにしてこの国を守ろうじゃないかということが大事だと思うのです。そのときに、一%でもってこちらから向こうとこちらとが世論が分かれてしまうことが、一番安全保障にとって危険だというふうに私は心配をいたしております。最も大きな反発を招いておるところの防衛費の突出ということも、そのことが私が一番心配いたしておるところで、世論がこういうふうに話し合いできちっとできないものであろうかということを私は一番危惧して、そしてお互いにコンセンサスを図るために、教育の問題だけではなく、安全保障についても与野党政策協議の場を設けたらいかがかというふうに委員長は提起を申し上げたつもりでございます。  正面装備にこれだけの金をつぎ込まれて、そして突出だと言われるならば、国際情勢は、日本のいわゆる周辺はこういうふうに危険ですよ、我々としてはこれだけのことはやらざるを得ませんという防衛に対する政府の説明というのが——何かしら防衛というとできるだけ逃げてかかろうとする。こんなにたくさんのお金をお使いになるならば、それだけの信念があっておやりになっておることと私は信じます。ならば、やはりそういう情勢というものを的確につかんで国民に、いや、国民隅々までというわけにいきませんけれども、我ら国会議員にはなるほどと納得できるように——多くの問題、防衛白書一つだけどっかんと送り届けてくださって、これを見ろといったって無理なんです。ですから、もう少しそういうようなことをおやりになる必要があるんじゃありませんか。  とりわけ今度の予算編成においては、五%ちょっとでもってあとはお金がありませんと、大蔵省は最後まで拒み続けておられたはずなんです。最後に総理の裁断で一挙に六・五五%、どっかんと超えてしまったわけです。しかも、アメリカとの関連であるというような報道がなされております。これは一体、報道から見ると、一億国民のためになけなしの金を取ってきて、そうしてアメリカのためにやらざるを得ないのですよというふうに受け取れるような報道になっておる。これはいかにもまずい。私のところへも、もうきのうから、質問なさるのですか、一%だけは守ってくださいよ、アメリカのために我々の福祉が削られたらたまりませんから、こんな電話がたくさん来るのです。これは私どもにとって極めてよくないことだと思います。だれが何と言おうとも危ないということならば、政府政治生命をかけておやりになるべきだ、逃げて回るというような態度はいけない。  大体、大蔵当局にそんなことを言わせて、これ以上は出せませんと。普通ならちょっとずつ上抜けなんですけれども、防衛だけは後からどっかんと。こういう形の手法なんというのは、だれが見たってアメリカのための申しわけじゃありませんか。正面装備の道具ぞろえだけやっているんじゃないかというふうに論ぜられることも、私はやむを得ないような気がするのです。総理、この手法はよくないと思いますが、いかがでしょう。
  176. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛はアメリカのためにやっているものでは断じてありません。日本の防衛のためにやっておるのでありまして、そのために、憲法の範囲内で必要最小限の防衛力を整備しよう、必要なる防衛力はやはり整備しなければならぬ、そういう考えに立ってぎりぎりの努力を今しておるわけであります。  それで、最後に六・五五がどっかんと来た、そういう表現をなさいましたが、必ずしもそういうことではございません。これは予算の調整というものは、予算編成、概算要求から始まって最終閣議決定に至るまでの間、連綿として政府内部におきましては続いておるのでございまして、それを一番総括しておるのは総理大臣の役目であります。そういう観点から私は、日本の防衛を真に憂え、そしてその具体的方策としては、「防衛計画の大綱」の水準にできるだけ早く近づこう、そういう考えを持って経費の方も見詰め、そしてそのためにああいう裁断を行ったということなのでありまして、アメリカに対する義理とかアメリカの顔を見てああいうことを決めだということでは断じてありません。
  177. 塚本三郎

    塚本委員 結構です。そうしていただかないと困るんです。  それではお尋ねいたしますけれども、「防衛計画大綱」は、一%を守ることによっても達成できるという信念はおありですね。それを達成するために中期の業務見積もりがたくさん出ておりますが、一%を厳守することによって達成できるという自信はおありですか。
  178. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 達成すべく一生懸命汗を流して努力していきたいと思っております。
  179. 塚本三郎

    塚本委員 そういうふうな答弁でいきますとおかしくなる。達成できるように努力するけれども、まず数字を見ても難しい。それなら「防衛計画大綱」と中期業務見積もりを訂正して、お金と周囲の事情から、いまのところこういうふうにするんです、一%を守るためにこうやっていくんです、それでもまずはやむを得ぬです、こういうような形でいくか。あいまいのままにこう言って、そうしてやるということになると、いかにもやっぱり防衛だけはまだ一人前じゃないなということになってくるんです。だから、これを達成するためには一%を超えなければなりませんとか、あるいは一%を厳守いたしますから、「防衛計画大綱」は立ててみて、それに基づくところの武器の調達等の中期業務見積もりは八割にカットしなければなりませんとか、堂々と国民の目の前でおやりになることが私は必要だと思うんです。その手法がないものだから、何が何だかわからないうちに来てしまって、という形になってくるのではないでしょうか。  それでは、一%を厳守するという。国防会議は、今度の予算におきましてはどういう議論がなされましたか。
  180. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 御案内のとおり、一%を超えるということになりますと国防会議に出る、議決の問題について討議をすることになりますが、今回は一%以内でございますから、その議論はございませんでした。
  181. 塚本三郎

    塚本委員 きのうの社会党書記長からの御質問のときに、一%はこれは超えざるを得ないであろうというような、いわゆる計算上から御質問をなさって、それで超えるということになれば困ったことになる、そうかといって公務員の自衛隊の給与を抑えるわけにはいかない、こういう問題のときには、恐らく年内に、八月と総理もおっしゃったが、出てくるのだから、このときに既に国防会議できちっと議論をなさるのが本当の意味のシビリアンコントロールじゃございませんか。歯どめは一%じゃない。予算のときに一々きちっと議論するのが国防会議であり、シビリアンコントロールだと私は思うんです。国民は一%が一切のシビリアンコントロールだというふうに勘違いしているのですよ。国防会議こそがまさにシビリアンコントロールの最大の歯どめなんだから、こんな重大な数字にあらわれた問題で議論なされるのだったら、きちっと国防会議の席上で議論をなさることが必要じゃありませんか。  一体、昨年は国防会議は何回開いたのですか。
  182. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 国防会議は、ここ最近の例で申しますと、大体年二、三回。そのほかに議員懇談会が一回開催されているのが例でございますが、昨年の場合は、五十八年九月二十一日に一回開催されております。それは、五十九年度の概算要求の中で国防会議に付議すべき事項について報告をしたわけでございますが、通常でございますと、十二月末に、概算閣議の前に五十九年度予算におきます防衛力整備の中での主要な事項についての御審議がございますので、そこでもう一回あるべきでございましたが、年越し編成になりました関係で、それは一月にずれ込んで、一月の二十五日に開催をされている、こういう状況でございます。  なお、昨年は、国防会議のほかに議員懇談会が一回開催されておりまして、そこでは白書の御報告をさせていただいております。
  183. 塚本三郎

    塚本委員 予算のために、とにかくこれだけのお金を出しますよ、白書を出しますよ、このために国防会議を開いただけで、防衛に対する重要な、一番大切な国防会議が実は議論されていないところに私たちは一番の危惧の念を持っております。ようございますか。ここなんですよ。一切武器の調達だけで承認を求める、これが国防会議だというなら、大蔵大臣の下に置けばいいことなんです。統幕議長まで出てきていただいて、そして国際情勢等議論していただかなければなりませんが、統幕議長は一度でも国防会議で発言なさったことがあるのですか。長官、いかがです。
  184. 倉成正

    倉成委員長 防衛局長
  185. 塚本三郎

    塚本委員 長官に聞いているんだよ。
  186. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 私が長官になりましてからの国防会議では、統幕議長の発言は聞いておりません。それ以前の問題につきましては、政府委員から発言させます。
  187. 塚本三郎

    塚本委員 わかりました。聞いておるんです。そばに座らせておくだけで、一度も発言させたことはないんです。ですから、防衛というのが、防衛の一番中心でやっておられる方の意見も入ってないんです。大蔵大臣の下請機関になっておるだけなのが国防会議なんです。だからこそ、国防会議よりもお金における一%の議論の方が中心になってしまうんです。そこに日本の安全保障のゆがんだ姿が出てきておるというふうに私は心配をいたしております。  総理は、このたびの施政方針演説において、防衛問題について「必要最小限の質の高い防衛力の整備を図り、日米安全保障体制を維持し、その円滑、効果的な運用によって現在の国際環境における我が国の安全保障を実現していかなければなりません。」と、防衛努力の必要を力説せられました。  昨年一月における通常国会冒頭、「日米安全保障体制を堅持し、自衛のための必要な限度において、質の高い防衛力の整備を図っていく必要があります。もとより、我が国の防衛力の整備は、憲法の許す範囲で、みずからを守る必要性の限度において自主的判断のもとに行うものであります。」と述べておられます。  この二つの所信表明でおわかりのように、防衛政策は、第一に、日米安保体制を堅持する、第二に、自衛のため質の高い防衛力を整備する、第三に、我が国の防衛力整備は、必要性の限度において自主的判断で行うことなどを基本としていると理解しております。  さらに、昨年の国会での答弁などから、首相は、我が国の防衛政策の具体的な課題として、シーレーン防衛や有事における三海峡封鎖などを提起しておられます。  このような防衛政策についての基本的な所信を聞かされ、そして国民はこのたびの五十九年度の予算において防衛費の取り扱いを見ていると、先ほど申し上げたような、実は、だれのための、何のための防衛費の増加なのかということに私たちは疑念を抱いておりまするのは、アメリカの防衛要請に応じたということで数字のつじつま合わせに努力をしているやに私たちには見受けられて仕方がありません。質の高いところの防衛とおっしゃるなら、戦車や航空機の数量は随分そろってまいりました。しかし総理、これを動かすのは人間でしょう。自衛官であります。自衛隊を質と量の両面から充実することが精強な自衛隊をつくることだが、総理の防衛政策は、アメリカの対日要求につじつまを合わせることばかりに急で、自衛隊の実質的な整備から手を抜いておるという声がありますが、いかがでしょう。
  188. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうことはございません。やはり三自衛隊の均斉ある総合的な防衛力の発揮ということが、われわれの考えの中心でございます。  今回の予算の作成につきましても、最終的に私が判断をして、特に強調した一つの点は、訓練の強化維持であります。いかに装備を充実さしても、パイロットの飛行訓練時間が少なくなるとか、あるいは自衛艦の洋上訓練時間が少なくなるとか、あるいはそれに継戦能力が減っていくとか、そういうことであっては防衛力にはならないわけです。防衛力というのは、塚本さんもっとに御承知のように、持っておる装備、それに掛ける要員、訓練です。したがって、装備ばかり考えても、要員と訓練を考えないで防衛力は成立しないわけです。その後の方の訓練が、最近は経費節約等のためで減らされてきておることを私、心配しておりまして、今回はそういう点についても充実するように特に指示もし、また経費も補充させるようにしたわけであります。
  189. 塚本三郎

    塚本委員 お気づきになっておるのです。お気づきになっておるけれども、実際には長官、そうなってないのです。  現在、陸上自衛隊の充足率は、八六・三三%しか自衛隊はいないのですよ。これは五十九年度の防衛予算案に示されている数字で、百人の定員のところは八十六人しかいないんですよ。いずれ財政事情が好転をするであろう、そのときまで我慢せいと大蔵省から言われておるわけです。十八万に対して実際の隊員は十五万四千。それは、まだそれならば実際の平均からいくならば八六%おるじゃないかと言えば、そうじゃないのですよね。陸上は八六%しか定員がいないのですよ。しかしながら、指揮命令系統、師団司令部や部隊本部の中枢部門には一〇〇%充足させなければなりませんから、これを持ってきてしまいますると、実際においてはどうなってくるかといいますと、五八%ですよ。充足率は、部隊は五八%ですよ。長官、御存じですか。  その結果、普通科中隊では五八%と低い充足率、六割台に届かないんですよ。訓練をする場合において、例えば小銃小隊が三班三十六人、ところが十九人しかおりませんよ。これが実態なんですよ。総理はそういう理想はおっしゃるのですけれども、チーム訓練ができないんですよ。  戦車中隊のごときはいわゆる七〇%台だが、同じような問題が起こっておるのです。四両編成で行くんですけれども総理、四両編成で行くところ、十六人、四人ずつ乗っているのですよ。ところが、十一人だとどういうことになりますか。十一人です。二台は動きますけれども、三台目は、操縦する人と命令する人はおるのですよ、弾を込める人がないから動かないのですよ。あとの一台は車庫に眠っておるのですよ。総理、今戦車は千台ちょっとあるように伺っておりますが、実際には五百しか動かないのですよ。これはまだ六十台ことしも御注文の予算が出てきておりますけれども、実際には半分しか動かないのですよ。総理のおっしゃったとおりになってないのですよ。どうなんですか。長官ですか。
  190. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 自衛官の充足率については不足しておるということは承知をしております。その具体的な内容につきましては、後ほど政府委員から必要ならば説明させますが、私が申し上げたい、あるいは総理が申し上げましたのは、昭和五十九年度の予算編成に当たりまして、財政事情が非常に厳しい、厳しいけれども正面装備に対応して後方支援をしっかりやらにゃいかぬじゃないか、特にこれは訓練だ、教育訓練だ、油だ、修繕費だ、そこら辺が削られようとしておりましたから、これはいかぬ、私も就任早々でございますけれども、それでは訓練のない自衛隊などというものはナンセンスである、そういう意味でそこに重点を置いたわけでございまして、甚だ残念ながら人員の充足まではまいらなかったというのが実態でございます。
  191. 塚本三郎

    塚本委員 総理、お聞きのように、訓練とおっしゃるけれども、訓練の乗員がいないのです。今のように四両一個小隊で、一個中隊というのですか、これで動こうとしても、二両だけは、きちっと操縦する人も命令する人も撃つ人も弾を込める人も、四人そろって二両は行くんです。三両目になると、撃つ人はいても次の弾を込める人がいないから動かないんです。あとの一両は一人も乗ってないから、何しているかということになれば、ときどきそれを、いわゆるさびないようにしているだけです。  こういう状態のときに、充足率はわずかに半分ですよ、そのときに新たに六十両を買うということをなさるならば、これを有効に動かせるような人員を確保しなければ、訓練にならないじゃありませんか。だから、数をそろえてやることも大切だと思いますけれども、そろえた数を能率よく使うための訓練が大事だとおっしゃったら、訓練できる人をまず確保することが大事じゃありませんか。  そのときに大蔵省から、おまえはこの点は充足がかつて少なかったからこれで遠慮しておけ。大蔵省の一主計官によって人員査定が抑えられているという状態でしょう。そうして金におけるところの一%議論だから、質の高いものにはなっていないじゃないか、そういう状態。この率で言いますると、一千両を超えるところの戦車があってなお、ことしは六十両発注の予算が組まれております。だが、現実には五百両ないし六百両しか動かなくて、訓練要員もそういう実情でありますよ。これが質の高い防衛力とか、今総理がおっしゃるような中身にはなっておらないということです。どうお考えですか。
  192. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今の点は非常に重要な点でございますから、今のおっしゃいました自衛隊の実態について、政府委員から詳細に説明させます。これは国民の皆さんにもお聞きいただく必要があると思います。
  193. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま御指摘のございました充足率の問題でございますが、全体としての陸上自衛隊の充足率が予算上八六・三三%になっておるということは御指摘のとおりでございます。その結果、部隊の編成の内容からいいまして、司令部等の、あるいは支援部門の欠くべからざる部門に人員をある程度確保するというようなことをいたします結果、部隊の、実動部隊の方で充足率がやや低くなるという傾向にあることは、それは事実だと思います。  ただ、私ども基本的な考え方といたしましては、この充足率につきましては、募集上の問題であるとか、あるいは財政的な面の考慮もございますけれども、要するに、有事における初動を満たし、かつ、教育訓練に支障を生じない最低限のことができるということをめどにいたしまして、従来から八六%程度のものを確保してきたという経緯がございます。  ただいま御指摘のございました戦車部隊の問題でございますが、これは四両のものが動くのが二両ないしは三両ということではございませんで、一つの戦車に配置をいたします人員が多少減る。四人であれば三人とか、そういうような形で訓練をいたしておるのが実情でございまして、戦車そのものはできる限り活用して訓練に励んでおるというのが実情でございますので、その辺はひとつ御理解を賜りたいと思います。
  194. 倉成正

    倉成委員長 ちょっと政府委員に申し上げますが、塚本委員質問は、千両の戦車があるけれども五百両しか動いていない、そういうことですから、そのことについて端的にお答えください。
  195. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま申し上げましたように、戦車につきましては、現在保有しております約千両の戦車、これを全部使いまして教育訓練を行っておるということが実情でございます。ただ、その戦車一両当たりの配置人員が、定数に比べますと若干減って訓練が行われておるということでございます。
  196. 塚本三郎

    塚本委員 総理、お聞きのとおりなんです。それは千両全部動かす必要はないでしょう。古いやつは置いといて、新しいやつから動かして、それで訓練すればいいんでしょう。でも、四人必要のところを、動かす人があれば動くことはできます。指揮する人があればそれでいいんです。撃つ人があればそれでいいんです。でも撃つときには、一発撃ったら次にまた補充する弾を込める人がいなければならないです。こういうふうに四人になっているのを二人で動かしたり三人で動かして、本当は、きちっと言うなら五百両ちょっとしか動かないやつを、古いのだけは置いといて、新しいので二人で動かしたり三人で動かして、こうして千両をやっておる、こういう状態なんです。  それも運転が仕事であり、指揮することが必要であり、撃つことが必要であるから、別々にしてもいいのですけれども総理おっしゃったような訓練という中身から見ると、各国の訓練と比べてみると、そういうふうにきちっと、そして自衛隊が規定したところの規則に従っていわゆる訓練をしようとすると、半分しか動かないという実情になるんですよ。事実、やるときには、全部そろって動くときには半分しか動くことができない、こういう実情になっておるのです。それでなおかつ、新しい戦車を六十両予算でできておるのです。これは正面装備に力を入れて、そのかわり中身だけは実はおくれておるという実態だから、総理のおっしゃることとは随分中身が不安であり、心配じゃございませんか、こういうことを申し上げておるのですよ。  海上自衛隊だって同じなんですよ。新しく今度は十二隻ができて、千二百名の増員の要求がなされておりまするけれども、充足ができていないことは御承知のとおりです。結局のところ、必要な部署に配置するところの近代的な自衛艦ができながら、三門あるところの砲を二門しか撃つことのできないような人員配置にしてみたり、あるいはまた、二十四時間体制の訓練をいわゆる三交代なり旧交代なりしているのは、無理な状態にそれを繰り返さざるを得ない状態でやってきておるのです。だから、決められたそういう人員の中ならば、やはり正面装備に力を入れ過ぎて、質の高いという質が追いついていかなくて、装備だけずらっとできてきておるという状態になっているのです。海上自衛隊、どうでしょう、違いますか、長官
  197. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま御指摘のございました海上自衛隊及び航空自衛隊もそうでございますが、充足率は九六%ということで措置をしておるわけでございます。したがいまして、ほぼその定数に近いものではございますが、この一、二年定員の増加というものを抑制をしておるという関係で、運用面における工夫というものが必要になっておるということは事実でございます。しかしながら、現在の自衛隊の実態といたしましては、この定数を極力効率的に配置いたしまして、訓練の練度に低下を来さないように、これは末端におきまして十分工夫をして実行をいたしておるのが実情でございます。
  198. 塚本三郎

    塚本委員 戦車も、そしてまた今の護衛艦も同じような状態になっているのです。だから、定員を三分の一削って、十二隻できたところのその新しい護衛艦を遊ばせるわけにいかないから、お互いにそれを削って、そういう形になってきているから、予定の状態になっておりませんよということを申し上げるのです。ですから、実際のそういう防衛が質が高いとおっしゃるならば、正面装備を、私は今けちつけるつもりはないのですけれども、もっともっと現実に今できたそれを最高度に発揮させる手法がとれないものか、そういう意味で、アメリカに対して正面装備の数だけそろえておるとしか見られないから、私はこういう表現を使って嫌みを申し上げるのです。だから、それができるなら結構、できないとするなら、できたものを隊員を充足させ、そして質の高い、練度の高いところの隊員にしておいて、それを一〇〇%効果的に活用することが本当の防衛じゃありませんが。私はそういう意味で意見を申し上げているのです。今度は総理、お答えいただきたい。
  199. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 塚本さんのおっしゃるとおりだろうと思います。先ほども申し上げましたように、単に兵器を並べただけでは防衛にはならぬのでありまして、それを活用する人的能力、この結合で初めて防衛というものは成立する、私もそういう考えに立って、両方とも充実させていきたいと考えておる次第です。
  200. 塚本三郎

    塚本委員 航空機の訓練につきましても、総理お触れになりました。最近は硫黄島まで行って訓練をなさる。それは騒音公害があり、さらにまた、雫石事件等、民間航空が随分頻繁になりましたから、それにおける空中接触の危険性もあるということだから、訓練に力を入れようという総理の御見解が強く働いただろうと思います。南方洋上ならば自由に訓練できる、そういう意味で硫黄島を目指して訓練に出かけられる。結構です、  しかし、行くのに対しても、八百キロという遠くまで行くんです。ファントムは千二百キロですから、これは片道しかないんですよ。途中でスコールやそういうものがあったときには一体どうするのでしょうか。あるいはまた、編隊で何機か、六機を中心にしていくようでございますけれども、先の飛行機が中で事故を起こしたら、それを取っ払うまで上で旋回しておらなければなりません。戻ってくる時間はないのですよ。F15ならば、なお戻ってきても、二千数百キロですから、十分にあります。ファントムはないのですよ。滑走路は一本しかないのですよ。練度とおっしゃるけれども、この問題、どう解決するのだ。南方特有のスコールが来て、二時間も三時間もこうしておったら、海の中しか入れなくなっちゃうのですよ。もう少しそういう点、人命を大事にし、飛行機を大事にするためにどういう手段をとるのか。長官、どうでしょう。
  201. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 極めて戦術的な、専門的な問題でございますので、これは政府委員の方から発言させていただきたいと思います。
  202. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま御指摘のございました洋上におきます訓練の場合でございますが、これは本土から飛び立っていく途中におきまして、ある危険点を設定しておきまして、そこから先に非常な困難が予想されるような場合には、その地点からあらかじめ引き返してしまうというような措置を講ずることにいたしておりますので、万々そういう危険なことはないというふうに私ども考えておる次第でございます。
  203. 塚本三郎

    塚本委員 総理、こういう御答弁しかできないのです。しかも、これが現実の日本の質の高い、そして総理が願っておいでになる訓練状況なんですね。国内じゃできない状態、まま子扱いされて、こうして硫黄島まで行こうとして、途中から引き返せないから、行ってしまったら戻ってこれないから、地点地点でそれを確かめながら行く、そういう状態でしょう。これで質の高い防衛といってたくさんの飛行機をおつくりになって、本当に隊員の命を守り、そして彼らは命を張って一億を守る防衛の姿でしょうか。  現地に行ってみたらどうなるか。先のやつが一つ過って突っ込み過ぎ、タイヤが落ちてばらばらになっておったら、もう旅客機と違って危ないのですから。スピードがあるのですから。取り下げる、片づける作業、滑走路一本ですよ、これ。せめてそのときに、かつて104でしたか、この国会でもって、給油装置をつけるということで足が長くなれば攻撃になるからといってここで取り消されたけれども、こういうことのために、空中給油の装置を訓練のためにはつけてあげたならば、何でもないことじゃありませんか。  日本航空がDC10型はもう使わずに外国へ売却しているから、これを内装して空中給油のタンクにして、向こうに一機置いておいたならば、そしてその装備は岐阜県にあるのでしょう、あのときに外したものは山積みにされているのだから。そうして空中給油してあければ十二分に向こうで訓練をして、そして出るときにまた危険ならばそれを待機させておけはいいじゃありませんか。どうしてそれくらい、いわゆる総理のおっしゃるならば処置がとってあげられないのでしょうか。本当に質の高いというのは、そういうことを言うのが防衛における問題点じゃないでしょうか。私は非難するのではなく、金を使わずに、せっかく無理をして大騒動してつくられた装備ならば、十二分に活用なさるようにお考えをなさる。そのことは決して攻撃用ではないということぐらいは十分国会だって合意はできると思いますから、給油装置は今あるんだからそれをおつけになって、そうしてきちっと空中給油ができるような方法を講じられることが必要だと私は信じます。総理、いかがでしょう。
  204. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 航空自衛隊の保有いたします戦闘機におきます空中給油装置の問題につきましては、御承知のように、過去のいろいろな経緯がございます。  現在の防衛庁の状況を申し上げますと、F15につきましてはその装置はございますが、F4につきましてはこれはもう外して、御指摘のように、またこれは保管をしているのが現状でございます。  防衛庁の現在の方針といたしましては、この空中給油装置を使って空中給油の訓練をしようという計画は持っておりません。それは、現状におきまして、それを使用しないでともかくもできる限りの練度の向上を図っていくということで対応をしていく状況であるというふうに判断をしているからでございまして、将来の問題としてはこれはまた別にあるかと思いますが、現在の時点ではそういった状況でございます。
  205. 塚本三郎

    塚本委員 事務当局はこんな答えしかできないのです。それ以上はできないのです。それじゃ、長官、どうですか。
  206. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今いろいろと御指摘をいただきまして、先ほども申しましたとおり、充足率が不足している、そのためにいろいろと不都合があり、かつ、もう隊員が創意工夫を凝らして真剣にやっているという実態であると私、思っております。  その意味合いでは、きょうの御指摘というのは大変、国民の皆さん方もこれを聞かれておって——塚本先生のおっしゃっているとおりかどうか、これは私、みずからまだ研究しておりませんから何とも申し上げられませんが、一応の御見識として国民の皆さんにお話を申し上げる。総理を初め私どももそれなりの答弁をしてまいってきたわけでございます。これが納得いく、いかないは別といたしまして、私は、防衛というものは最終的には国民の皆さんによく理解をしてもらう、自分の国は自分で守るんだ、そのためにはどうあるべきかと、そういうことをよく理解してもらう、その上にいろいろと施策が進むと思いますので、私ども塚本書記長のこの御提言に対しまして、深く頭の中に入れまして努力をしてまいりたい、こう考えます。
  207. 塚本三郎

    塚本委員 私、無理に言っているわけじゃないのです。しかし、もう少しきちっと現実を踏まえてみますと、そういうことの方がいわゆる防衛にとってはもっと大切ではないでしょうかという意味で、そしてもう少し真剣に、あのときは攻撃用ということでだめでしたけれども、既にそれがF15はついているのでしょう、今お話のとおり。それなら訓練くらいつけて、そしてやってみて、彼らに対する、いわゆる堂々とそういう訓練をさせることが必要じゃないでしょうか。いけなければ、F15も足を短くしなさいという議論になっちゃうのでしょう。ですから、やはりそういうもので訓練をさせるということならば、給油装置をつける。訓練だけなら、そんなに非難を受けるはずはない。  しかし、そういう問題は長官でさえもこの限度の御答弁しかできないのです。だから私は、きちっとした安全保障という立場では総理責任を持っている、これほどに総理がほかに比べて一番真剣に取り組んでおいでになると思うので、総理がずばっと、政治なんです、これは。具体的なそれは今私の言ったとおりなんですから、政治の舞台で解決をするということで、私は総理の御答弁を要求しているのです。総理、いかがです。
  208. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 F4の給油装置の問題は、実はたしか昭和四十年代、F4を導入する際に大きな政治問題になりまして、そして随分議論がありましたが、ともかくあれは外す、そういうことを決めて、たしか国防会議でもそういう方針を決め、各党の了解を得たような問題であったと思います。たしかあれは船田さんが議長をしておって、春の議会で問題になって、十一月のころでしたかセットしたとか、何かそんな記憶のあるような関係の大きな政治問題であったわけです。したがって、この問題を新しく展開するというためには、議会上の手続とか、あるいは各党に対する了解とか、あるいは国防会議に対する処置が要るや否や、そういう諸般の問題を慎重に検討した上でなければ、私たち国会軽視と言われると思うのです。しかし、今そういう御提議を民社党の書記長の塚本さんからお聞きしたということは、これは非常に大きな問題の提起といたしまして我々は研究してみたいと思っております。
  209. 塚本三郎

    塚本委員 幾つかの問題、もっと幾つかしようと思いましたけれども、時間がありませんので一つだけ、郵政大臣。  硫黄島等におきまして、彼らはああいうところで、へんぴな中において、そして総理心配のような安全保障に身を挺しておいでになる。今度NHKでもってゆり二号、放送衛星を打ち上げられましたけれども、ところが硫黄島には届かないようであります。しかし、放送法によりますると、日本全国どこででも日本人である限りは平等に受信することができると出ております。だから、そういうところにおいてはNHKはきちっと受信できるようにさせてあげるべきだと思います。  昨年、私はこの場におきまして、いわゆる通信衛星の問題を総理、お取り上げいただきまして、それが可能になりました。私は、通信というものはそういうものだと思います。したがって、今度のNHKの問題も、郵政省の方からきちっとNHKに、やはり自衛隊も日本国民なんだよ、硫黄島も日本の領土ですよ、受信料を納めなさいよ、そのかわりきちっと聞き、見することが、むしろああいうところほどNHKなどの放送が届くようにしてあげることがNHKらしい姿だと思います。そういうように御指示いただきたいと思います。いかがでしょう。
  210. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 御承知のとおり、ただいま御指摘の放送法七条では、日本全土あまねくというのが義務づけられておることでございます。ただ、今御指摘がございましたけれども、NHKとしては、ゆり二号をこの五月から静止衛星として機能を発揮いたします。その時点から硫黄島にも受信が十分可能なように、今技術協力も含めて相談し合っていくという方に動いておるということを聞いております。  ただ現実に、もう一言申しますと、現在硫黄島には百九十人の隊員と二百人近い工事関係者がおるわけです。ただ、これは居住実態——なぜ居住実態と申しますかというと、団体生活でございますし、しかも隊舎内で個大使用というか、そういったテレビの使用を何か規制しておるようでございますので、こういった実態も踏まえて協力していこう。あれを見るときにはパラボラの三メートルくらいのアンテナが必要になってくるわけでございます。  ちなみに、父島とか母島には地上局を設けて、そして散在している九百六十世帯ぐらいにはそういった施設でやるわけですけれども、硫黄島についても、十分受信可能になりますように技術協力を行ってまいる、NHKの方針を当方としては注意深く見守っていく、御趣旨に沿うように措置したいと思っております。
  211. 塚本三郎

    塚本委員 次は、教育の問題に移ります。  私ども民社党は、毎年この委員会におきまして各委員から、教育問題を取り上げ、教科書問題、教育現場の実態、あるいは管理者と教師の問題、さらにまた、一番原因は家族の構成等にあるのではないかということ等提起してまいったことは御承知のとおりです。とりわけ私は、六・三・三・四という小刻みが実は受験戦争中心の教育実態になっておるのじゃないかということで、全国の先生方あるいは教頭、校長さんたちのアンケートをとってみますると、九〇%以上がこの小刻みの制度はよくないということを取り上げました。総理は早速そのことは検討をすると約束していただきました。民社党も鋭意このことについては検討してまいりました。  その結果、私たちは多くの識者を集めて教育シンポジウムを開きました。やはり制度の問題や教科書の問題や教育現場の問題やいろいろな問題等があるから、この際は広く、いわゆる根本的に再検討する時期が来たというふうな、党が主催で教育シンポジウムを開いた結果の結論を踏まえて、今次予算編成直前に総理に対して教育臨調を提起申し上げました。素早い反応を示してくださって、政府みずからがこれを取り上げていただましたことは敬意を表します。  ただ、お断りしておきますが、ちょっとこの臨調という言葉がひっかかっちゃったようです。というのは、行政改革の第二臨調と同じように誤解を受けて、先生の数を減らすのじゃないか、予算を減らされるのじゃないか、教科書を有償にされるのじゃないかというような、スリムな政治と臨調が連想されてしまって、そのことが変なところに心配をかけておるような実は向きがあります。  だから、今度私たちが申し上げ、あるいは総理は、臨調という言葉はちょっと控えられたようでありますが、いずれにしてもそういういわゆる行政改革における第二臨調とは違った意味で、前向きにもっともっと充実をさせるために広い意見を把握するための教育臨調だ、あるいは新しい言葉でも結構です、そういう意味で取り組もうとしておるんだ、私たちはそういう意味で提起したのです。その点政府、いかがでしょう。
  212. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 予算編成に際しまして党首会談をやりましたときに、特に教育問題について御言及があったのは民社党と公明党委員長でございました。表現は違っておりますけれども、中身は大体似たようなお考えではないかと拝聴いたしました。私はその御発言を党へ持って帰りまして、幹事長等ともいろいろ相談をしておりました。  教育の問題というものは自民党一党だけでやるべき問題ではない、できる限り国民全体のコンセンサスをいただき、国民全体の御論議の中にこれを行うことが好ましい、そういう意味から、教育の問題等については話の合う政党と十分話し合って、そうしてみんなでこの教育改革に協力し合うという姿勢が一番望ましい姿の対象ではないか、そう思っておった。そういう意味におきまして、佐々木委員長の本会議における御提言に対しまして、私は素直に御返事を申し上げたつもりでございます。その気持ちは今でも変わっておりません。  そういう意味におきまして、ここの予算委員会におきましても、各党の御発言には教育問題が今度は非常に重要視されておるという実情を見ますと、いろいろな経緯やらいろいろな思惑等があるいは渦巻くかもしれませんが、我々は、やはりこの教育問題という問題を、本当に今の政治家として一切の雑念を離れて、日本や子孫のために本格的に真剣に取り組まなければならない問題であると考えておるのであります。  そういうような考えに立って、教育問題について民社党の佐々木委員長が協議機関云々というお話がありましたが、公明党の竹入委員長からはそこまでのお話はございませんでしたけれども、もしそういうようなお考えがあるならば、教育問題等を中心にみんなの見ている前で堂々とやったらどうか、それは我々の望むところである、そう思って、その考えは今も変わっておりません。民社党側がよくお考えくださるように、この場で、あなたが書記長でいらっしゃいますから、申し上げる次第でございます。
  213. 塚本三郎

    塚本委員 どういう構想になるか、まだこれからの問題でしょうが、どうせ委員をたくさん集めて意見をお聞きになるでしょうけれども、やはり幅広い人材をメンバーの中に入れ、とりわけ出てくるのは、何か教師の意見はよく入るのですけれども、PTA、親の意見というのはなかなか入りにくいという意見もあります。できるだけそういう意見といわゆる幅広い人材をメンバーの中に入れていただき、結論を急ぐことなく、拙速を避け、十分に議論を重ねて、そうして議論をするそのことが、また大きな教育だと思います。したがって、一部には六月までには結論を出してなんというような報道もありますけれども、それは誤解だろうと思いますが、十分議論を尽くして、そうしてやっていく必要があると思いますが、その点いかがです。
  214. 森喜朗

    ○森国務大臣 新しい機関につきましては、これからまだ検討いたします。しかし、私の今の自分の気持ちを率直に申し上げれば、総理も常々申し上げておりますように、できるだけ国民的な大きな議論の広場を広げていきたい、このように申されておるわけでございますので、まず構成のメンバーについてはできるだけ幅の広い方々にお願いをしたいと考えておりますし、もう一つは、従来の中教審の議論の上に踏まえていきたいということが一番大事なことだと思っております。  そしてでき得れば、議論をしていただきましたことはできるだけ国民の場に明らかにしていただいて、それをまた国民的な場でいろいろな角度で御検討いただき、政府に御意見をいただく、政党にも御意見をいただく、あるいはまた政党間同士でもこの問題をいろいろな角度で御検討いただく、こういう姿に私はぜひしていきたい。できるだけこの議論国民の皆さんの共鳴や大方の御意見をちょうだいできるような、そういうスタイルをぜひとりたい、このように考えておるところであります。
  215. 塚本三郎

    塚本委員 これは総理にお聞きしますが、やはり教育の一番大事なことは、一人一人の人間を大切にする、そういう人間を育てるということを中心にしてやっていただきたい、このことだけまずお聞きをしておきたいと思います。
  216. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 教育基本法もそういう精神で書かれていると思いますし、同感でございます。
  217. 塚本三郎

    塚本委員 これを申し上げますのは、各現場の意見を聞いてみると、教科書が難し過ぎる。話し合ってみると、今度の共通一次、随分各党から出ておりますけれども、千点がないのです。一番上が九百八十三でしたか、三十五万人が受けて満点がないのですね。九百八十三点が最高なんです。もう難しいことばかり。日本の学問は世界一だ。聞いてみますと、数学も物理も社会も語学も、三十代でノーベル賞を取れるような人を養成するということを中心にしてこの教科が組まれておる。組む方は、下からこれでずっと行ってしまうと、よそを見てみますると、数学と国語と語学と物理、それに追われてしまうし、その縦の部類だけはそれに力が入りますから、だから時間の取り合いになってしまう。だから三分の一しか理解できない。三分の二は取り残されてしまう。学校が苦痛だというのはこういうところにあるのです。  諸悪の根源は教科書の中身が難し過ぎる。どうしてこんな必要があるのでしょうか。企業の要請と言われたが、最近、企業はそんな必要ないと言うのですよ。自分たちで専門の教育をするから、東大の一番や二番は採らないと言うのです。どういう人を採るのですかと聞くと、体育部のキャプテンです。体が頑健で統率力がある。頭脳の方は入学さえすれば、後はこちらが、それだけ立派な人だから教育は企業がやります。企業の方がもう進んできておるのですよ。おくれておるのは、皆様方の国家公務員の上級試験だけなんです。  こういう形だから教科書が難し過ぎる。教科書がわかって半分以上の人が理解できる、こういうふうにしなければ、中学は修羅場になってしまうのです。だからこの意見だけはぜひ申し上げておきたい。諸悪の根源は、家庭にもあります、先生にもあります、いろいろなことがあるけれども、一番の土台はどうしてこんな難しいものを教えなければならないのか。世界一を目指す全部の人につくる必要ない、こう思いますが、大臣、いかがでしょう。
  218. 森喜朗

    ○森国務大臣 お答えいたします。  教科書を薄くしろとか、それから学校の授業をできるだけもう少し、学問だけではなくて、みんなでホームルームをやったり、みんなでもうちょっと汗を流すようなそういう時間をつくりなさいという御指摘はよくいただいております。これも政治立場からいえば、そのようにぜひしてもらいたい。教科書の改訂も五十二年、五十四年と二回やりまして、量的にいきますと、私は見てきたのですが、指導要領、半分になりました。それから小学校は八%薄くなりました。中学校は五%ほど薄くなりました。ところが現実には、そう薄くいたしましても、結局は高等教育機関までのところの教育の体系がそれになかなか応じてくれません。  ゆとりのある教育、そこに海部さんがいらっしゃいますが、海部文部大臣のときに、ゆとりのある教育ということで、少し教科書を薄くしてそういうことを実行したわけですが、逆に親の方からしかられるのです。もっと中学校の授業をふやしてください、英語の授業をもう一時間ふやしてくださいという請願書が国会へ来る。なかなか親御さんの気持ちというのは複雑だなということを感じました。  そこで、高等教育全体あるいは中等教育全体をやはりもう一遍、学問というのはどこまでやらなければならぬのかというのが非常に私どもにはわかりません。総理も私も、国立大学の先生方ともお話ししてみました。そうすると、やはり世の中が求めている、こういうふうに学者たちはおっしゃる。やはり日本というのは大事な科学技術立国なんだから、そういう教育をどんどん遂行し、能力を開発していく使命が我々にはあります、こういうふうに学者さんがおっしゃると、そんなことは間違っていますよと我々は、まして文部大臣では言えないわけです。  ですから、そういう高等教育はいかにあるべきなのか、学問というのはどこまで学んだらいいのかというようなことなども、やはりこの際二十一世紀に向けてみんなで考えてみる必要があるのではないか。そんなことから、今度の新しい機関を設ける意義もそういうふうにあるというわけでありますので、御理解をいただきたいと思います。
  219. 塚本三郎

    塚本委員 陳情に来て、もっと勉強をたくさんできるようにしてくださいと言うのは、その三分の一のごくエリートの人たちなんです。その人たちは立派な親御さんだから、立派な子供さんでしょう。ですから、このエリートの意見が中心になって動いていき、大学の教授は三分の一より十分の一ぐらいのトップの人ばかりなんです。私ども国民が求めておるのは、落ちこぼれんとするところの三分の二の人たちのことを中心に考えるという教育を中心にして運営をするようにこれから検討してくださいよと。一人一人の人間を大切にするということがこれからの日本の国で、頭脳みたいなコンピューターがあり、機械がどんどんできちゃいましたから、もう必要はないということを企業は言っているのです、専門の者はおれたち教育しますと。相手方の方がもう早く進んでいるのです。おくれているのは役所だけなんですよ。上級試験だけがこんなことを求めておるのでしょう。ですから、いわゆる国民全般の立場に立ってやってくださいと。  東大の教授に先日会いました。駒場から本郷へ移るのに二割が落ちこぼれですというのです。三千人の二割というと六百人です。日本でトップと言われる東大に受かった人も、今度教養から専門に移るときには六百人東大生が落ちこぼれるのですよ。どうしてでしょうか。東大へ入ればということで、塾は先ほど矢野議員のおっしゃったとおり、手とり足とり、あらゆる手を使って入学に全力を挙げます。それは背伸びしてそこまで入ったんです。もう後はついていかれません。大学へ行きましたら、国立大学は不親切です、それが本当かもしれませんけれども。手も足もとってくださらないかみ何をしていいかわからぬ。ノイローゼになるのが二割、天下の大東大にして六百人ずつの落ちこぼれが出てきておるのです。これが今の教育なんです。  ですから、いかにこのやり万が一部においてエリート教育中心になってきたのかということを考えると、それはそれでおっても、依然として昔から優秀な人は優秀でおるのですと、その東大教授はおっしゃるのです。だから、落ちこぼれだけはつくらないような状態を教育の中で考えていかなければいけない、この点を御注文として申し上げておきます。答弁は結構です。  私、もう一つどうしても健康保険の問題を御質問申し上げなければなりません。  今度は政管健保におきまして一割負担ということが予定されております。これは国民に大変大きなショックを与えました。イギリス労働党内閣の保健大臣をしておりましたベバン氏がこういうことを言っております。病気のときに金の心配をすることぐらい回復を妨げるものはない、病人が金のないために医療を拒まれるようではどんな社会でも文明とは名のれない、と述べております。  経済的障害を除去することが医療保障の第一歩である、私はそう思います。病気になった人に金の心配をさせるようなことはよくないというふうに考えて、そういう意味では、患者一割負担というのは、これはずっと昭和二年以来、原則本人だけは全額負担するから一生懸命働きなさいということで努力をしてきて、病気になっても国が全部面倒を見ますよ、保険が一緒になって面倒を見ますよ、だから一生懸命働きなさいという、今日の生産力の一番の土台はここにあったと言う人もあります。私はそれは言い過ぎではないと思いますが、いかがでしょう。
  220. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 塚本先生の御質問にお言葉を返して恐縮なのでありますけれども、毎回、総理からも本会議で申し上げておりますように、時代が非常に変革をして社会条件も変わってまいりました。来るべき高齢化社会に備えて保険制度というものを安定したものに基盤を整備していかなければなりません。そのためには、御承知のように今年々一兆円ずつ医療費がふえて、ついに十四兆円を突破するというような状態になっておるのでありますが、これらの諸条件の中で健全な医療改革を行うためには、必要な受診は妨げない、ただし乱診乱療はなくしていく、また医療費というものに対する国民的な関心を持っていただくというような意味で、定率で患者に一部負担をしていただく、患者の皆さん方にどの程度の医療費というものがかかっているかということを知っていただく、こういうことが医療費の適正化のためにどうしても必要であるという考えに達しましたので、現在全額である方に一割御負担をいただくというのは大変私ども恐縮だと思っておるのでありますが、しかし、現実には国民全体が全額ということではありませんで、今でも農家の皆さん方は三割負但しているとか、あるいは零細な商工業の皆さんも三割負担しているとか、また被用者保険の家族の皆さん方は二割負担しているというような状態でありますので、ぜひ、二十一世紀の医療を揺るぎなきものにするために、今回、大変恐縮でございますが一割負担を御了承願いたいということでございます。
  221. 塚本三郎

    塚本委員 大臣、今健全になってきたんですよ。もう政管健保は、五十六年は七百六十九億の黒字、五十七年は六百十一億黒字、昨年はまだ定かではないけれど百二十億から百五十億の黒字。薬もむだを省いて随分下げました。いろいろな御努力をなさって黒字になってきて、今までの赤字を穴埋めができる状態になったんだから、一兆円、一兆円で、それは数字を出してみれば一兆円になりませんよ。御無礼だけれども、君はまだなって少ないからそういうことを計算しておいでにならないけれども、一兆円になんてなりません。そんないいかげんな数字をおっしゃるのは、言い過ぎだと思いますよ。  だから、どうしても赤字になって困るならば、掛金をふやそうではないかとか、あるいは負担を一割にしてもやむを得ないのか、三年か五年見て、せっかく皆さんが御努力いただいて黒字になったんだから、その状態を見た上で、それならば掛金をふやすとか負担を一割出しましょうとか、それはもっと深く議論をなさるべきです。選挙のときに見直しますと総理お約束なさって、済んでしまって多数になったらこういう状態で、あなた、そんなことをおっしゃるけれども、これは御承知のとおり退職健保をつくるためにこの金を持っていってつくろうということであって、そういうためにこういう手段をつくったんでしょう。違いますか。
  222. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 先生おっしゃるとおり、最近医療費がありがたいことに軽減ぎみになっております。これは昨年、皆さん方に御協力をいただいて老人保健法を通していただいて、極めて若干ではありますが、老人の皆さん方に入院時あるいは診察時の費用負担をお願いするようになって、そういういい方向に進んでおります。したがって、やはり患者の皆さん方に、たとえ一部でも直接費用の御負担をいただくというのは、これは医療適正化のためにどうしても必要なことであります。  先生御指摘の退職者医療制度の問題でありますが、これは今まで会社にお勤めになっておられた方が、被用者保険に入ってそこで保険料を納めておられた方が、退職することによって財政力の非常に苦しい国保に入ってくることによって国保財政が苦しんでおりましたので、今回正常な姿に戻して退職者医療制度をつくって、これは給付窓口は国保にいたしますけれども、被用者保険に所属するものということで発足させていただいたものでありまして、今回の保険改正の基本である定率一部負担をぜひお願いしたいということは、今回の医療改革の柱になっておるものでございますので、ぜひ御理解を賜りたいと思います。
  223. 塚本三郎

    塚本委員 私どもはこれは撤回すべきだと。理屈にならないのです。退職者医療の問題をおつくりになることは結構です。それならそれで、別個この問題はどうしましょうかと御相談いただいたらどうでしょうか。患者から一割ということは、ある人に言わせますと——言い過ぎかもしれません、許してくださいよ。寝ておる病人の布団を一枚はいで、退職者の上に着せてあげるようなものじゃないか。病人が着ておる布団を一枚はいでそちらへ持っていくようなものじゃないか。それじゃ、政府はそれに幾ら出そうとしておられるのですか。全然出そうとしておいでにならないじゃありませんか。だから、そういうやり方はいかにも残酷ですよ。  しかも、一割が幾らか素人はわかりませんよ。千円持っていったらいいのか、二万円持っていったらいいのか、わからないでしょう。それじゃ受診を心配してしまうじゃありませんか。早期受診と早期発見と早期治療が一番大事なんですよ。これが安心して働けたから経済大国日本の土台ができたんでしょう。そのときにこれに手をつけるということは悪政だという声が強いですよ。恐らく、先生方だって選挙区へ帰ってみなさい、やはり非難ごうごうです。幾ら払ったかということを知っていただく方法ならば、後からの通知制度があります。幾らでもあるじゃありませんか。  だから、そんなことは言いわけで、退職者医療が必要なら我々も賛成いたしましょう。それはそれで結構だから、それなら政府は幾ら金を出すのですか。全然出さずに、まだ国庫支出を減らそうとしておいでになるじゃありませんか。切るんならば、先ほどのように、行管庁長官に申し上げたように、行政改革で堂々と切りなさい。これは撤回なさるべきだ。総理、いかがでしょう。
  224. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民医療の問題でございますから、我々の方といたしましては、できるだけ医療の水準が下がらないように努力したいと思っておったのでございます。今でもそういう気持ちでおります、  しかし、今の国家財政の現状等を考えてみまして、この制度を永続的に、そして将来も崩れないような強固さで維持していき、特に、今保険料を納めている若い人たちのときにも安心して今の水準の医療が給付されるような配慮をいたしますと、やはりこの際にこのような改革をやって、長期的安定を図らざるを得ない。そういう非常に苦しい状況にあるということを、ぜひとも御理解いただきたいと思うのであります。
  225. 塚本三郎

    塚本委員 これは私どもは承服できません。自民党さんだって、皆さん帰ってよく相談してみてください、このやり方は。金が足りないときは相談いたしましょう、先ほどから申し上げておりますように、いろいろな方法があると思います。患者にそれを持っていくというのは——それは乱診乱療といって、医師会は、かってはそういうことで、中にはひどいやつがあったかもしれない。それは検査員、いろいろのチェックをする機関でもって改めさせるべきであって、病人からお金を取ることによって受診をいわゆる抑制させようとするやり方は、本末の転倒だというふうに思います。  選挙などのときには、自民党の皆さん方だって撤回させますという演説をことごとくやっておいでになった。それはほとんどの人はそういうふうです。そういうことは間違いではない、それが正常な国民を代表する立場だから。これを官僚の作文だけで、そのまま押しつけていこうとするやり方は、私は間違いだというふうに思います。これはまたこれから引き続き議論をしてまいりたいと思います。  時間が少のうございますから、次に移ります。  過日の痛ましい三井三池有明炭鉱におけるところの災害につきまして、殉職されました方々に対して心から哀悼の意を表します。  政府は災害原因の早期究明及び再発防止策、遺家族の生活再建対策に関係省庁一体となって最大限の努力をされるよう心から求めますとともに、その決意のほどをお伺いしたいと思います。これが一点、通産大臣ですか。  それから、災害後、政府は四つの払い場、作業場を中止しております。保安の維持に努めつつ発火原因の調査に当たっておられますが、今後その対策が明らかになってくると思いますけれども、かなりの時間がかかると思います。早期再開への努力を促進するとともに、その間における坑内保安の維持に万全を期していただきたいとお願いを申し上げます。  なお、今回の災害をきっかけに、一部に国内炭二千万トン体制の見直し論が出ておりますが、私は、エネルギーの安全保障の観点から、二千万トン体制の目標を堅持するとともに、第七次石炭政策の着実な達成を図るべきだと考えますが、通産大臣、いかがお考えでしょうか。
  226. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 三池炭鉱の災害は、今考えましてもまことに悲惨な出来事でございまして、今さらながら御遺族の冥福を祈る気持ちでいっぱいでございます。  私は、事故の翌日の閣議の後、急速現地に赴きまして現場を視察したのでございますが、夕張の場合と違いまして、もう既に遺体は全部取り払われておりまして、一応は片づいておりました。しかし、悲惨な雰囲気は覆われず、炭坑の入り口で花束をささげて霊を弔った後で会社へ行きまして、労働組合やら警察やらあるいは会社側のいろいろな状況説明を聞いたのでございます。説明の一々を申し上げれば非常に長くなりますので省きますけれども、例えば被害に遭われた方の中で、父親は助かったけれども息子さんが二人亡くなったとか、あるいは出稼ぎに来ていた方々が、九州の宮崎とか大分とかあるいは鹿児島とか、下請、孫請の方が非常に多かったのでございます。そういう状況を見るにつけ、私は、恥ずかしいことでございますが、炭鉱というところに生まれて初めて行きましたが、これは生産よりも保安が第一であるなどいう感を強くいたしたのでございます。  そこで、今や学識経験者をもった調査委員会を組織してもらいまして、その原因の徹底的な究明に努めているところでございます。この原因が明らかになれば、私どもは、さらに一幅炭鉱の保安監督を強化する所存でございますが、御指摘の、今の災害の出火場所の有明区域については取り明け作業等を続行中でございまして、今この際、いつ生産を再開するかということは、私は申し上げることはできないわけでございます。いろいろな面におきまして、通産省といたしまして、あらゆる手段を尽くして被害者あるいは遺族の方々の救済措置を懸命にやっていく所存でございます。  最後の二千万トンの問題は、現在、この基本方針を変える意図はございません。  以上でございます。
  227. 塚本三郎

    塚本委員 時間が少なくなりましたから、通産大臣、中小企業の問題を一、二取り上げて終わりにしたいと思います。  中小企業の投資減税が極めて少なかったということや、あるいはまた我が党は、耐用年限をもう少し短くして、早く改装や建て直しやあるいはまた買いかえをできるように、機械等の耐用年限を短くしてほしいということ等を提起いたしております。これから委員会の舞台で論じてみようと思っておりますが、きょうは相続税についてこれだけはぜひお答えをいただきたい。  といいますのは、もう既に、事業を始めた人が、三十代で始めた人が七十代になっております。仕事を譲ろうとしても、あるいは亡くなったときの後を考えても、相続税で大変困ってみえる、こういう状態になっております。問題は土地なんですね。この土地が、千円で買ったものが百万円と、こうなんでしょう。これは売れば金になるけれども、売らなければ金にならないのです。でも、それを評価して相続税を払わさせられれば、これは土地を切り売りしなければなりません。切り売りすれば、もはや事業の継続は不可能です。したがって、いわゆる相続税は、自分で生前にもうけたお金を実は社会に還元するのですけれども、企業の場合は継続性を必要といたしますから、売り払って還元ができないのです。したがって、土地に対する部分だけは、買ったときの値段があるいは帳簿価格にしておいて、時価では換算しない、時価から超えた部分については納税を猶予していくという形にして、そして、相続をして売ったときにその金を払うという形にすべきだ、民社党はそう提案をいたしておるのです。二十年商売らずにおったらもうこれは孫の代になるから、農業の土地と同じように、もはや納税の義務を免除するという形にすれば、土地に対する問題が解決をします。  したがって、相続税でいま中小企業が一番困っておりますのは、建物にしても何にしても、商店にしても、必ず時価が何百万円となってしまったから店を切り売りすることが至上命令にさせられておるのです。
  228. 倉成正

    倉成委員長 塚本君、結論を急いでください。
  229. 塚本三郎

    塚本委員 このことを解決しなければならないということですから、この点だけは十分に御配慮をいただきたい。このことだけお答えをいただきまして終わります。
  230. 倉成正

    倉成委員長 通産大臣。簡潔にお願いします。
  231. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 中小企業経営者は、確かに相続のときに非常に苦労をいたしております。そのような相談も受けますし、私自身も三十年ほど前、突然父親を失いまして非常に苦労したことを覚えております。しかし、それはそれとして、一般的に申し上げまして、五十八年度、政府がそういう相続者の経営の円滑化のために承継税制を設けたことは、書記長も御存じのことと思います。このやり方というものは非常に評価されておりますし、これはまた非常な好評でもございます。今後このあり方というものをさらに取り組んでまいりまして、善処して適切な処置を行いたいと思います。
  232. 倉成正

    倉成委員長 これにて塚本君の質疑は終了いたしました。  次に、不破哲三君。
  233. 不破哲三

    不破委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、内外の国策上の、国政上の重要問題について、総理及び関係閣僚質問したいと思います。  まず最初に、田中・ロッキード問題について伺いたいわけですけれども、中曽根総理は、昨年の総選挙の後の総裁声明で、いわゆる田中問題のけじめが明確でなかったことを反省をし、それからまた、いわゆる田中氏の政治的影響を一切排除することを含むいわば公約を声明の中で述べました。一月十七日の党首会談の際に、私から、この総裁声明は党内に向けたものかあるいは一般国民に向けたものかと質問したのに対して、たしか総理は、両方に向けたものだと答えられました。そしてまた、一般国民に対するこの公約の実行はどうなっているかという問題について、その答えは国会でお答えすると言われたはずであります。  その党内問題の処理ではなしに、一般国民に向けてのこの総裁声明での公約、特に田中問題を固有名詞を挙げて述べられた点についてどのように考えられているのか、また実行されているのか、まず伺いたいと思います。
  234. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点につきましては、この委員会でも本会議でも申し述べましたように、選挙後、選挙の結果を厳粛に受けとめて、そしてしかるべき改革を行おう、その一つとして資産公開を行うとか、あるいは党内に倫理調査会を設けて具体的な改革方策を講ずるとか、そのほかこの委員会で既に申し述べましたような諸般のことを推進している最中でございます。
  235. 不破哲三

    不破委員 総裁声明の特徴は、ただ一般的に政治倫理のいわゆるルールづくりを問題にしただけではなしに、田中問題ということを具体的に指示して反省をしまた公約した点に特徴があると思います。  その田中問題について一体何をされようとしているのか、どのようにけじめをつけられようとしているのか、あるいはもう既に選挙の結果でけじめがついたと考えておられるのか、田中問題に問題を絞ってお答えを伺いたいと思います。
  236. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今、諸般改革あるいは政策を推進中でありまして、すべて物が決着したというような性格のものではございません。
  237. 不破哲三

    不破委員 その推進中の中に田中問題はどのように入っているのですか。
  238. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政治家の資産公開の問題にいたしましても政治倫理に関する問題であり、それらは我々の方は内閣としてやりましたけれども、党におきましては、今調査会を設けて具体的に、あれでいいか悪いか、きょうも各党のいろいろな御意見もあるわけでございます。あるいはいわゆる一審有罪判決を受けた場合の処理につきましても、これは憲法国会法との関係、あるいはいわゆる立憲主義、議会主義という伝統的な考え方に対して改革を加うべきであるかどうかという基本的な問題等についても倫理調査会において研究してもらうとか、そういうように諸般の問題は今進行しておるということであります。
  239. 不破哲三

    不破委員 重ねて聞きますが、これはあくまで、いわゆる政治倫理の一般的なルールづくりの問題でしょう。資産公開が田中問題のけじめに関係があるとは私は思いません。あなたは総裁声明で、「敗北の最も大きな原因は、いわゆる田中問題のけじめが明確でなかったこと、」とはっきり田中問題ということを問題にされ、それからまた、今後の三項目の約束の冒頭にも、「いわゆる田中氏の政治的影響を一切排除する。」政治倫理一般ではなしに田中問題についてけじめをつけるということを約束されたわけです。その田中問題のけじめが今言ったようなことでつくとは私は思われません。前国会以来問題になっている田中問題について、具体的にあなたがこの総裁声明を国民に対する約束としてどう実行されようとしているのか。その点は、あの文章を発表して、これが国民に対する約束であることも認められた総裁としては当然の責任だと思いますが、その点について聞きたいのです。
  240. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いわゆる田中問題というのは政治倫理に関する問題というものが、政治家としては受けとめ方であると思います。それから、いわゆる田中氏の影響排除という問題は自民党の党内問題であります。これらにつきましては、選挙諸般政策を実行しておるところであります。
  241. 不破哲三

    不破委員 そうすると、田中問題のけじめと言われるけれども、今まであなたが国会で述べられたりした一連のこと以外、つまり一般的なルールづくり以外には田中問題についてけじめを特別につける考え方はないと考えていいのですね、今述べたこと以外には。
  242. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内閣及び自民党の運営等について自分なりの考え方を実行したという点もありますし、それから、いわゆる一審有罪判決問題という問題に対して、党は今検討を加えておる、また新自由クラブとの協定にも応じた、そういう点はやはり関係もあると思っております。
  243. 不破哲三

    不破委員 田川自治大臣に伺いたいのですけれども、あなたは選挙中、一般的な倫理問題や金権問題だけでなしに、田中問題について具体的な発言をずっとされてきました。あなたは、今、中曽根総理が述べられたような、一般的なルールづくりで田中問題の決着は国会あるいは国政として国民に対して済むとお考えですか。
  244. 田川誠一

    ○田川国務大臣 政治倫理というのは、一人の政治家が責任をとったとかとらないとかだけで片づく問題じゃないのです。ですから、私もこれまで田中さんの問題を幾つかずっとやってまいりましたけれども田中総理大臣が責任をとってやめて政治倫理が確立されると思っていないのですよ。これは政治全般の問題ですからね。ですから、私どもは、自民党との間の政策合意の中で、もっとルールづくりをしっかりやっていかなきゃならぬ、制度の問題をぴしっとやっていけば将来そういうことを防いでいけるだろう、こういうことでやってきたわけです。ですから、私どもは、政治腐敗の一つの事件として田中問題を見てきたわけでございます。
  245. 不破哲三

    不破委員 やはりきょうのこの予算委員会でも連合論あるいは吸収合併論が問題になりましたが、私は、今のお二人の答弁を聞いて、やはり吸収合併の論理というものが非常に強く働いていることを痛感したわけです。  田中問題というのは、これはもう私がここで改めて述べるまでもなしに、政治倫理一般に決して解消できる問題じゃないわけですね。私たちがこの国会で選んだ総理大臣が、その総理大臣の職務を使って外国企業との間で収賄の関係を持った、強い言葉で言えば、総理大臣の職務を使って日本の国政を外国企業に売り渡したと言われても仕方がない、そういう犯罪の問題です。  これがまさに大問題になっているので、私、今でも強く覚えているのですが、あの十月十二日に判決が下ったときに私が目にしたヨーロッパからの第一の通信がこういうものでした。有罪判決が下って、そのことに驚くと同時に、そういう元首相がいまだに国会議員であるということを知って、ヨーロッパ各国では、日本政治というのはどういうふうになっているのだと非常な不信が広がった、これが私が目にしたヨーロッパからの第一の通信でした。  この一国の総理国会で選んだ総理大臣が外国の企業からわいろをもらって国政をゆがめた、この事件について、三権分立といいますが、司法権の場ではともかく一定の結論を出したわけです。しかし、国政の場では、あの当時には幾つかの約束を、政府もあるいは国会もあるいは各党の合意での議長裁定も約束したにもかかわらず、いまだに国会の場ではこの問題について結論が出されていない。これは決して一般的な資産公開のルールとか、あるいは有罪判決が下った者の扱いを一般的にどうするかとかいうことで済む問題ではないわけです。  それで、田川さんも、自民党と統一会派をつくる前には少なくともそういうことについて一定の筋を持った主張をしていました。ところが、今伺ってみると、まさにこの点で、一般論に田中問題を解消するという点ではまさに中曽根さんと同じ答弁をされている。私は、やはりここに吸収合併の論理というものが強く働いているということを思わざるを得ないのです。  一言言いますと、この点を批判したときに、たしか参議院で我が党の代表の質問に答えて旧川さんが、共産党だって地方では自民党と一緒に政権をつくっているじゃないかと反論したことがありますが、地方では、私どもが協定を結んで革新の候補を選び首長をつくったときに、後から自民党が初めは反対していながら相乗りしたことはあります。しかし、自民党が中心になって自民党的な論理を持っている首長に対して我々が吸収合併されたようなことはただの一回もないということだけは、ここではっきり申し上げておきたいと思います。  話を具体的に進めますと、国会は、そういう点では国民の前に田中問題という具体的な問題でけじめをつける責任国会に負わされている、これは私はあのロッキード事件の当時の国会の論決議や議長裁定に照らして明確だと思うのです。少なくとも中曽根さんは総裁声明で田中問題でけじめをつけなかったことについての反省の弁を述べられたわけですから、その述べられた立場で私は具体的に幾つかの問題について伺いたいと思うのです。  一つは、国会が、それはどういう答えを出すにせよ、この問題を最後までほおかぶりするわけにいかないという点であります。まさに、司法は一定の結論を出したが、何年たっても国会はこの重大問題について、田中総理を生み出した国会が何の答えも出さないままに終わった、まさにこれは議会制民主主義の汚辱であります。  ですから、伺うのですけれども田中問題でのけじめのなさについて反省された中曽根総理が、今度の国会田中辞職勧告決議案が提起されたときに、自民党の総裁として、あの声明は総裁声明でしたから言うのですけれども自民党の総裁として、自民党はこの決議案を本会議に上程することを今までのように邪魔することはしないかどうか、この点について明確なお答えを伺いたいと思います。
  246. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この前の十一月のときと環境は非常に変わっております。その間に選挙という、国民の民主主義における最高、最終の審判を既にいただいて、我々は大変おきゅうを据えられたと申し上げておる。そういう最高、最終の民主主義的審判があった、そういう厳然たる事実が一つあります。  それから、新しくまたそういう決議案が出るのかどうか、各党がどういう御態度であるか、我々はこれを見守っておりますけれども、これは我々が出したのではない、野党がお出しになった決議案であります。そういうものに対して、我々はどういうふうに対応すべきか、そのためにも党に政治倫理委員会をつくりまして研究願うということにしてあるわけであります。
  247. 不破哲三

    不破委員 自民党が出すかどうか伺っているのではないのです。野党から出たものに対して、これまでのように本会議上程を妨害する態度をとるかどうか、このことを伺っているわけであります。我が党は既に出すことを決めております。各党に呼びかけております。各党とできるだけ共同で出したいと思っておりますけれども、しかし、この国会で決議案が出されないままで済ますということは絶対しないつもりであります。  それで、伺いたいのですが、あなたは選挙国民の最高の審判だということを言いました。確かにそうであります。国民は主権者としてそういう答えを出した。しかし、国会はいまだに何の答えも出していないわけです。本当に主権者である国民の審判が最高であると考えるならば、その審判に沿った行動をとるのが国会態度ではないか。私は、出された議案に対して自民党が賛成しろということを求めているのではないのです。これについて国会としてけじめをつけた答えを出すために、この辞職勧告決議案を国会で上程する、本会議に上程することを自民党が今までのように妨害しないように、これは最小限の国民の審判に沿った要求ではないでしょうか。この点についての答えを再度求めたいと思います。
  248. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今度の選挙におきましては、政治倫理問題、いわゆる田中問題等も選挙のイシューとして大いに論ぜられ、国民もその問題を対象にして投票された要素も非常に多いと思っております。そして、国民の最終、最高の審判が出た。国会はその国民の主権省の上に出てきておるものでありまして、国民のこの審判というものは最終、最高であると私は考えております。それに対して各党はどういうふうな態度に出られるか。我々は、さっき申し上げたように、政治倫理委員会もつくり、諸般の問題について検討を加えておる、そういう状態であります。
  249. 不破哲三

    不破委員 それは、最終、最高というのは言葉のあやであって、本当に最高であると思うなら、最終にすべきじゃないのです。最終というのは、もうそれでおしまいにして後は知りませんよということになるわけですから。本当にあなたが国民の審判が最高であると思うのなら、今度の国会田中問題に対してはけじめをつけるように自民党総裁として積極的にやるべきだ、これを重ねて要望したいと思います。  それから、もう一つ伺いたいのは、田中問題での一〇・一二の判決は、同時に、懸案であった灰色高官の問題について裁判所としての明確な答えを出したのが特徴だと思います。  この点について法務大臣に伺いたいと思いますが、二階堂議員などのロッキード資金受領について、あの判決文は裁判所としては一定の結論を出しているのではありませんか。
  250. 住栄作

    ○住国務大臣 これは御承知のように、二階堂議員に対する判決の認定でございますけれども、これは伊藤被告がいわゆる三十ユニットをどう渡した、そのうち二十ユニットの流れ、これを立証しておるわけでございまして、判決自体は、私は、二階堂議員に対して向けられたものではない、関係者の被告の事実認定として裁判所がそういう判断を示した、こういうように理解しております。
  251. 不破哲三

    不破委員 もちろん、あの裁判では二階堂議員は被告ではありませんから、この判決が向けられていることはないわけです。私もだから認定していると言っているわけです。しかし、これまでの判決は、例えば、伊藤被告らが相談をしたとか、灰色高官と名指された人たちに渡すことを協議したとか、それから渡したことについて報告したとか、間接の話はありましたが、私の記憶では、渡したということを判決の文章で明確に認定したのは一〇・一二判決が最初だと思います。違うでしょうか。
  252. 筧榮一

    ○筧政府委員 お答えいたします。  判決当日配付されました「判決理由要旨」によりますと、大久保被告人に対します議院証言法違反、それの罪となるべき事実、すなわち、同被告人が衆議院の予算委員会におきまして、ユニット、ピーシズ等の領収証の内容は知らない、これらの領収証について金品の授受は一切ない、それから金の流れも一切知らないという虚偽の陳述をした、これが罪となるべき事実でございますが、その事実の前提事実として、大久保被告人がいわゆる三十ユニットの領収証に署名し、三千万円をクラッターから受領し、そのうち二千万円は被告人伊藤らの手で橋本議員ら六名に届けられたという認定がなされております。申し上げるまでもありませんが、右の裁判は大久保被告らに対する裁判でございます。また、右の全員の授受そのものも裁判の対象として訴追されているわけではございませんで、あくまでそれの前提事実として裁判所が認定している、こういう次第でございます。
  253. 不破哲三

    不破委員 そのとおりだと思うのです。つまり裁判は、被告でありませんから、二階堂議員らは。しかし、事実認定としては、一〇・一二判決で初めて裁判所側の調査の結果としてロッキード資金が、ここでは橋本氏ら六名と書いてありますが、二階堂議員を含むいわゆる灰色高官と名指された人たちに渡されたということは確認された。これは、被告でありませんから二審も三審もないのですね。三権分立の一機関である司法機関でいわば最終的にこういう認定をしてしまったということになります。  ところが、国会の場では、この問題については、昭和五十一年十一月四日のロッキード特別委員会で二階堂議員らが、一人の灰色高官を除いて全員事実無根だということを発言したところで国会側の取り扱いは終わっているわけですね。まさにこの点では、裁判所の認定とそれから国会でのいままでの経過とが食い違ったままで終っている。御承知のように、昭和五十一年の国会では、こういう刑事被告にならない、刑事上の訴追をされないロッキード資金の授受について、政治的道義的責任を明らかにする立場から真相を解明するということが国会の決議であります。各党の合意の決定であり、それからまた議長の裁定であります。その裁判所での司法の分野での認定と国会でのこれまでの経過との明白な食い違いについては、国会責任において、それからまた昭和五十一年の国会自身の決定に照らしてほっておくわけにいかないと思いますが、これも自民党総裁としての中曽根さんに伺いますが、私はこれも田中問題に対して自民党が明確にけじめをつける大事な点の一つだと思うのです。  今まで自民党側が、現行証言法のもとでは証言に応じられぬ、改定が先行だ、しかも、改定論で非常に人為的な障害を重ねた結果、いまだにこの問題は国会の場でやみに包まれたままになっている、証人喚問も実現できない、こういう状態を、今国会においても、中曽根さんが言われる国民の至高の審判が下った後においても、国会がこういう状態を続けるとしたら、これはまさに極めて無責任なことになる。この点について、自民党として、従来の態度を変更して、やはり今国会中に証人喚問を必ず実現してこの食い違いをなくす、国民の前に真相を明らかにする、当然の責任だと思いますが、この点について考えを伺いたいと思います。
  254. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今のような種類の御発言は、大体昭和五十一年からずっと今まで続けられてきたお考えであると思いますが、もう大体不破さんのお考えとして拝聴する。我々は、自民党において今政治倫理委員会というものをつくっておりまして、必要あらばそこでまたこれを検討する、そういうことであるだろうと思います。
  255. 不破哲三

    不破委員 中曽根さんは本会議で言葉だけではだめだということを何回か言いましたが、結局、伺ってみると、田中問題にけじめをつけなかったことを反省をされたが、それも言葉だけであって、話が具体的なことになると以前と態度が全然変わらぬ。私は、これではこのロッキード問題ということで国内、国際に重大な議会政治に対する不信を招いた事件について本当に国政上の責任を果たしたことにならぬ。そのことを指摘し、今後も引き続きその立場で追及することを申し上げて、次の問題に移りたいと思います。  次は、安保、核の問題ですが、中曽根さんは、昨日でしたか、ことしを軍縮の年と考えられておる、NHKの新年の発言でも述べたと言いました。しかし、中曽根内閣の国連での行動を見ると、どうもその軍縮の年、世界の軍縮の先頭に立つべき政府の行動とはなかなか思えない節が非常に多いのです。  例えば、昨年の三十八国連総会には、軍縮に関する決議で採択に付されたものが、つまり採決ですね、採決に付されたものが全部で四十七あります。これは全部圧倒的多数で成立をしたものですが、四十七の成立した軍縮関係の採決案件の中で、日本政財が賛成したのは十七だけ、あとは反対または棄権ということで、非常に消極的な態度に終始した。一体、そういう軍縮案件が国連にかかるときに、日本政府は何を基準にしてこれに対して棄権したり反対したり賛成したりするのか。国連の大多数が賛成している諸決議に対してこういう状況ですから、まずその基本的な臨み方を伺いたいと思います。
  256. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我々は平和を的確に現実的にもたらす方法を検討しておるのでありまして、軍縮軍縮という、そういうことを言えば何かにじのようにきれいなもの、善なるものと無条件で考えるという立場はとっておりません。やはりそれが現実に行われるような仕組みを考える、そういう実効性をとうとぶものであります。そういう意味からも、私は、防衛あるいは平和の確立という問題については均衡と抑止の理論をとっておる。  きのうチェルネンコ新書記長の演説を私テレビで聞いておりましたが、けさの新聞にも出ておりましたが、あのチェルネンコ新書記長のお話も、やはり均衡を維持するというふうに書いてある。つまり、ソ連自体も均衡と抑止の理論に立ってあれだけの膨大な軍事的努力をやっておるようであります。アメリカもやっぱりそのようであります。そういう現実を前にして軍縮を本当に達成していこうと思ったら、検証を伴うような、安心できる確実な方法を伴うようなやり方がやはり的確なやり方ではないかと思うのです。単に美しい言葉を並べたというだけで軍縮ができるものでもなし、平和が確立されるものではない、そういう明確な考えを私たちは持っております。したがいまして、国連総会においていろいろな案が出てまいりましても、みんなが安心できるようなそういう仕組みを考えているやり方であるかどうかという点を非常に重要視して、我々は採決の態度を決めておるわけです。  それで、外務省の報償によりますと、昨年の国連総会で核軍縮決議案が二十九本採択された。我が国は賛成十一、反対七、棄権十一、そういうことであるそうです。なお、核実験全面禁止あるいは米ソ間核軍縮交渉等五木の核軍縮決議を共同提案している、こういう報告を受けておる次第であります。
  257. 不破哲三

    不破委員 中曽根さんが自分の論拠の援軍にソ連を引かれるというのは驚きました。私たちは、ソ連とアメリカがともに抑止力論、均衡論をとっているというのが核軍拡競争に両方から拍車をかけている二つの原因だと両方に対して批判しているわけですが、中曽根さんがソ連を味方に引き入れて私との論争の材料にしようというのは、大変興味深く、緊張して伺ったわけであります。  それで、じゃ具体的に聞きます。  例えば日本政府が賛成しなかった決議案の中に、インドその他非同盟諸国が提案した核兵器使用禁止条約に関する決議があります。核兵器の使用禁止というのは、毒ガスの使用禁止と同じで検証の必要はないのです。核を持っている国々がこの条約に入って核兵器を使わぬということを約束する。もし使えばこれは条約違反になる。それで、これは検証の必要なしに核軍縮といいますか、核を使われる心配から日本や世界を一歩でも引き離す重要な一歩になると我々は考えているのですが、日本政府は従来からこれに必ず反対か棄権の態度をとっている。国連では採決は賛成百二十六、反対十七、棄権六であります。全部これは軍事同盟諸国が棄権あるいは反対なんですが、なぜ核兵器を使うのをよそうじゃないかという最小限のこの条約の決議に反対されるのでしょうか。
  258. 山田中正

    山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  核軍縮につきましては、総理がたびたび言明されておりますように、私ども最重点の一つ考えております。そして実効的に、十分検証を伴った形での核実験の停止、核兵器の削減、そういうものを具体的に進めていきたいというふうに考えております。  今、先生御指摘ございましたインドが提案いたしました核不使用、これは実効性に欠く単なる核不使用を約束するというものでございます。私どもといたしましては核というものは二度と使われてはなもないと思っておりますが、それが確保されるため世は、やはり実効的な措置で核兵器を削減する、実験を停止する、そういう措置を伴わないものであれば、実効性を欠くのみならず、現在の国際的な安全保障にとって好ましくないと判断いたして棄権いたしたわけでございます。
  259. 不破哲三

    不破委員 総理に伺いますけれども、現在、核兵器が使われることを人類が心配している。核保有国がこういう条約にみんな入ってともかく核兵器は使わぬということを約束し合えば、それだけでも重要な一歩になることは間違いないと思うのですが、そういう約束をする、あるいはそういう条約を縮んでそれに核、非核すべての国が入る、こういうことに対して安全保障上有害だとお考えなんですか。なぜこれに賛成できないのですか。
  260. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 世界じゅうの政治家で核兵器を使用したいと思っている人は一人もいないと思うのです。これはチェルネンコ氏であろうが、レーガン大統領であろうが、同じだろうと思うのです。現に、レーガン大統領は本院の本会議場におきまして、核戦争に勝者はいない、そういうこともはっきり言っておるわけであります。そういうような基本認識の上に立って考えますと、やはりそれを起こさせないだけの有効な仕組みを考えてそういう提案が出てくるというのならば、納得ができる。単に口先だけでそういうことを言うというのでは、これは抑止力が崩壊するという理論も出てくるでしょう。抑止力が崩壊するということは、平和が危険にさらされるということも次に考えられる。そういうようないろいろな配慮のもとに、ともかく実効性のある、みんなが安心できる保障措置の伴う、そういうようなやり方ならば賛成だ、こういう考えに立っていると思っております。
  261. 不破哲三

    不破委員 条約を結ぶということは口先だけのことじゃないはずです。毒ガスの禁止条約が結ばれて大多数の国がそれに参加をして、それで毒ガスは実際に基本的には使われていない。それと同じことを、ともかく核兵器で使わないところをやろうという提案が善意の国々から提案されて、国連で百二十六の多数の国が賛成している。しかし、使わないという約束をしただけでは足りない、そう言ってそれに日本が賛成をしない。核兵器を世界でただ一つ使われた国の国民の代表が、核兵器を二度と使うまいという条約に対して毎年、毎年反対あるいは棄権している。私は、これは中曽根さんの軍縮についての言葉が言葉だけのものになるということの何よりの証拠になるのじゃないか、そう考えざるを得ないと思うのです。やはり軍縮の年というからには、それにふさわしい行動をしてもらいたい。  もう一つ伺います。  今あなた方は、核軍拡が、あるいはこの競争、軍事力の対抗関係が海軍の分野に広がっていることについて、いろいろソ連が海軍を増強している、危険だとかそういう話を防衛白書に盛んにされています。ところが、日本政府が賛成しなかった決議の中に、最近の核軍拡の状況について国連で調査しよう、調査の提案にまで日本政府は賛成しないのですね。これはなぜですか。海軍分野での核軍拡やその危険について調査しようという提案について日本政府が賛成しなかった、これはなぜですか。
  262. 山田中正

    山田(中)政府委員 まことに恐れ入りますが、題名をお教えいただけませんでございましょうか。
  263. 不破哲三

    不破委員 海軍軍拡競争についての研究についての提案です。それを停止するための研究についての提案です。
  264. 山田中正

    山田(中)政府委員 今、先生御指摘のはブルガリアの提案かと思いますが……。
  265. 不破哲三

    不破委員 いや、それじゃないのです。三十八の百八十八のG項。研究の方ですね。ブルガリアその他のは抑制の提案でしょう。
  266. 山田中正

    山田(中)政府委員 お言葉でございますが、三十八の百八十八のFでございましょうか。
  267. 不破哲三

    不破委員 Gです。FじゃなくてG項。
  268. 山田中正

    山田(中)政府委員 はい、わかりました。  お答え申し上げます。  本件決議につきましては、海軍の軍事力の開発、配備、オペレーションの形態等の研究が非常に一般的な研究でございまして、果たして私ども考えております具体的な軍縮措置、そういうものに直接結びつく私どもが優先順位を置いておるものに必ずしもなじまないと考えたので棄権した次第でございます。
  269. 不破哲三

    不破委員 これは今の国連で初めて問題になったのですね、海上の、海軍の核軍拡競争の問題が。それで、それがどんな危険を及ぼすのか、どんな作戦方式が問題になるのか、それが軍縮にどう関係するのか、それを包括的に研究しようじゃないかという提案が出された。それは具体的にならないのは当たり前なんです、これから研究して有効な軍縮策を見出そうというのですから。それにまで日本政府が賛成しない。これは百十三カ国が賛成して、反対はただ一国でした。アメリカだけです。アメリカが反対すると、こういうことに関しても日本政府は賛成できない。私は、それでは軍縮の年だ、世界の軍縮の先頭に立つと言いながら、日本国民の声を代表した日本政府の行動とは言えないのじゃないか。しかもこの海軍の核軍拡というのは、まさに日本でも新しい方式が非常に問題になっている。そのやさきに、さすがにアメリカと一緒に反対はしなかったが、反対は一カ国なんですから、日本政府が賛成しない、そういう態度をとっている。私は、これは中曽根さんの言明とは非常に違って、軍縮に対して否定的な態度をとっている政府の行動だと言わざるを得ないと思うのです。私は、こういう点では、本当に軍縮の年と思われるのなら、これまでの国連での行動、実はそういう決議案に対する態度一つ一つ日本政府の姿勢を世界に示すものです。ところが、聞いてみると賛成の理由も、賛成は大体満場一致のが多いのですけれども、反対、棄権の理由が非常にあやふやだ。政府で十分吟味した形跡もない。外国の行動に引かれている場合がしばしばあるとしか見られない。こういうことが多いわけですから、国連での行動についてやはり責任ある再検討を望みたいというように思います。  次に進みますが、その海軍の核軍拡競争の中で非常に今問題になっているものが、この予算委員会でも問題になりましたトマホーク問題です。それで、あるアメリカの軍事問題の専門家は、アメリカの海軍が巡航ミサイルのトマホークを配備することは、これはかって航空母艦に核を配備したのに匹敵するといいますか、それに次ぐ大変な変化だということを評していますけれども日本政府あるいは軍事当局として、日本にもしばしば寄港する第七艦隊を含む太平洋艦隊が巡航ミサイルを装備し始めるということ、これがこの極東における軍事情勢やあるいは日本の軍事的地位やアメリカの海軍戦略にどのような変化をもたらすのか、この点についてどうお考えかを伺いたいと思います。
  270. 北村汎

    ○北村政府委員 お答え申し上げます。  アメリカがトマホークミサイルを海上に配備いたしますのは、これはソ連の最近の一貫した軍事力の増強にかんがみまして、みずからの抑止力の確保のためにも努力している、そういうふうに私どもは承知いたしております。したがいまして、巡航ミサイルトマホークの配備というものもこういう努力の一環であると承知いたしております。  いずれにいたしましても、我が国との関係につきましては、日米安保条約上、艦船によるものを含めていかなる核の持ち込みも事前協議の対象でございますので、その場合、事前協議がありました場合は、これは政府として必ずノーという返事をいたすわけでございます。
  271. 不破哲三

    不破委員 じゃ、いささか具体的に伺いますけれども、アメリカ側は軍事力を全部ソ連への対抗上説明しているわけで、従来の装備であろうがトマホークであろうがこれは変わらない一般論です。我々は、もちろんソ連のSS20の極東配備も反対でありまして、ともかくそういう中距離ミサイルといいますか長距離ミサイルをアジアに配備することは一切やめろというのが我々の両側に対する主張でありますが、ここではアメリカと深い軍事的関係にある日本政府に伺っているわけですから、アメリカの問題を聞いているわけです。  それで、多少具体的に伺いますけれども、トマホークが配備される以前、第七艦隊の艦艇で相手国の地上に対して核攻撃力を持つ軍艦が航空母艦以外にあったでしょうか。
  272. 古川清

    ○古川政府委員 お答え申し上げます。  今まで日本に寄港した攻撃型の潜水艦の中には、そういった地上に対する攻撃能力を持ったものがあったと思っております。
  273. 不破哲三

    不破委員 核攻撃能力ですよ、日本に寄港したものがあったのですか。
  274. 古川清

    ○古川政府委員 私は、それはないと思っております。
  275. 不破哲三

    不破委員 今までのアメリカの太平洋艦隊で、例えばサブロックとかアスロックとか、核兵器を積んでいるものがかなりありますけれども、しかし、これは主としていわば対空、対艦の、空戦用、海戦用なんですね。それで、少しは地上攻撃力があっても、主には、いわば一口で言えば、海戦用の互いに核を撃ち合う、ミサイルだ。ところが、巡航ミサイルというのは、ここに私、アメリカのカーターという提督の上院での証言を持ってきておりますが、何を目標にしているかというと、第一に、海岸の海軍目標。それから第二に、ソ連の侵略を伴う、これはいつも言う言葉ですが、第三世界の選択目標、つまり第三世界の国々が、アメリカがソ連の侵略を伴うと認定したら、それが二番目の攻撃目標になる。三番目は地上戦争支援のための固定目標。あとずっとありますけれども、いわゆる海戦用じゃなしに、主として相手国の地上、相手国というのはソ連に限らず第三世界まで挙げているわけですが、これが攻撃目標。これまでだったら、そういう攻撃目標を持った核攻撃戦力というのは、主として航空母艦だったのですね。ところが、今度巡航ミサイルのトマホークが積まれることになると、これを積む潜水艦であろうが、巡洋艦であろうが、駆逐艦であろうが、いわば一隻一隻がそういう相手国の国内を攻撃できる核部隊に変わってくる。私はこれが非常に重大なことだと思うのです。  それで、これも外務省なのか防衛庁なのか、どうも答弁の仕組みが私よくわかりませんのでいつも困っているのですが、そのトマホークを積むことを予定しているアメリカの艦艇、これはことしから核ミサイルの配備が始まってだんだん広がっていきますけれども、ともかく今アメリカがこの軍艦にはトマホークを積むんだということを予定している艦艇の種類、これは御存じでしょう。防衛庁でも外務省でもお答えください。
  276. 古川清

    ○古川政府委員 お答え申し上げます。  最近アメリカの国防報告というのが発表されておりますけれども、その中にトマホークは既にニュージャージーといいます戦艦に搭載されておる。それは対地攻撃及び対艦攻撃のミサイルと想定される文脈になっておりますが、そういう記述がございます。  それから、先生がいまメンションしておられました核のトマホーク、これはまだ配備されていないということが明確に国防報告に書いてございまして、この国防報告ないしその後に発表されましたアメリカの軍事態勢報告によりますと、核のトマホークはことしじゅうに行われるという記述がございます。  それで、御質問の船の種類につきましては、攻撃型潜水艦及び一部の水上艦艇ということしか今のところ国防報告には書いてございません。(不破委員「去年の国防報告はもっと詳しいでしょう」と呼ぶ)私どもが持っております公的な資料では、ことしの国防報告では攻撃型潜水艦及び一部の水上艦艇というぐあいにしか理解しておりませんけれども、それ以外の資料、これは必ずしもはっきりした資料ではございませんけれども、一部の潜水艦の中にはロサンゼルス級の潜水艦であるとかあるいは水上艦艇につきましては、例えばAEGIS能力を持ちました巡洋艦について配備計画が進められているということしか存じておりませんで、具体的な艦の名前までは私どもまだ承知しておらない次第でございます。
  277. 不破哲三

    不破委員 トマホークが第七艦隊に配備されるというのは日本にとって重大事件ですから、やはりもう少し私は調査をしてもらいたいと思うのです。ことしの国防報告が一部の選抜された軍艦と書いてあるのは、去年の国防報告で艦艇の種類を指定していますから、それを繰り返していないだけのことであって、例えば去年発表された国防報告では、攻撃型原潜にしても、ロサンゼルス級、これは全艦に配備する。それからスタージョン級は一部ですが、実際には三十七隻の二十二隻ですから、約三分の二は配備されるわけですね。それから駆逐艦にしても、バーク級というのは、これは全部これから建設後配備する。あるいはスプルーアンス級は現有兵器すべてに配備するとか、もうアメリカでは公的な資料で、どの軍艦にトマホークを配備するのか、これは順序がありますから生産に従ってですけれども、これは決まっておるわけですね。  それから海戦用のトマホークは、これは通常弾頭ですからすでに配備されておりますが、地上攻撃用は核弾頭の方が先に完成をしてことしから配備されるのであって、非核弾頭の方はまだ完成していないのですね。だから、地上攻撃用のトマホークを積む軍艦が入ってくるとすれば、これはもうことしに関しては間違いなく核弾頭だ。これはもうさっきのお話でも明確だと思うのですが、そういうように艦艇の種類までかなり明確になっている。  それで、今もう一つ伺いたいのは、そういうようにこれからトマホークの配備が決まっている軍艦で、例えば攻撃型原潜なら原潜でもいいですが、去年日本に寄港したことのある軍艦、おわかりですか。
  278. 北村汎

    ○北村政府委員 お答え申し上げます。  まず、昨年一カ年におきまして原子力潜水艦が我が国に寄港した回数は、計二十五回でございます。そのうち、今委員がおっしゃいましたトマホーク配備可能艦というふうに冒されておりますスタージョン級及びロサンゼルス級の原潜は、それぞれ十二回及び五回でございます。  ここで、私申し上げておきたいと思いますのは、アメリカ政府が明らかにしておりますのは、トマホークを将来配備することを予定しておるものはあくまでも艦のクラス、艦級ということでございまして、ロサンゼルス級であるとかあるいはスタージョン級であるというクラスであって、そのクラスに属する個々の艦船の名前は必ずしも明らかにしておりません。  そこで、詳細次のとおり御報告いたします。  スタージョン級、これはパファーという船でございますが、これは一回、一月七日から一月十五日まで横須賀に入っております。  多少長くなりますが、ずっと御報告いたします。  タニー、これは三回入りまして、一月十七日から一月二十五日まで横須賀に入っております。二回目が一月二十八日から二月一日まで佐世保でございます。それから三回目が同じくタニーで三月十一日から三月十六日まで、これは横須賀でございます。それからホークビルという船が二回入っております。一回目が三月二十七日から四月一日まで横須賀でございます。それから二回目が四月二十日から四月二十六日まで横須賀でございます。それからガーナードという船が二回入っておりまして、五月二十六日から六月十二日まででございます。これは横須賀。それから二回目が八月十八日から八月二十一日まで、これは横須賀でございます。それからドラムという船が六月四日から六月十三日まで横須賀でございます。それからアスプロという船が二回入っておりまして、八月四日から八月十五日まで横須賀でございます。それから二回目が八月二十六日から八月二十七日まで横須賀。そしてクイーンフィッシュという船が一回入りまして、十二月十六日から十二月三十日まで横須賀でございます。  次に、ロサンゼルス級の原潜でございますが、オマハという船が一回入りまして、二月十五日から二月十九日まで横須賀。ロサンゼルスが一回で三月二十五日から四月二日まで、同じく横須賀。サンフランシスコという船が二回入りまして、四月二十一日から四月二十五日まで横須賀、それから十二月十日から十二月十五日まで、これが二回目で横須賀。それからインディアナポリスという船が六月二十三日から七月三日まで、横須賀でございます。  以上が原子力潜水艦でありますが、次が原子力推進水上艦艇というもの……(不破委員「あとは数だけでいいです」と呼ぶ)それでは数だけを申し上げますが、昨年四隻が我が国に寄港しております。これはエンタープライズ、べーンブリッジ、カール・ビンソン、テキサスの四隻でございますが、このうち巡洋艦テキサスについては、これがトマホークの配備が可能とされているいわゆるバージニア級の艦船であると承知しております。  次に、いわゆる通常推進力による艦艇でございますけれども、この点につきましては不破委員よく御承知の安保条約及び地位協定上、アメリカの艦船は、事前協議の問題は別にいたしまして、我が国の施設、区域には自由に出入りできるということになっております。したがいまして、原子力推進の艦艇は、これは事前の通報をいたすことになっておりますけれども、それ以外の船は我が国に対する通報も行わないで入ってまいりますので、政府といたしましては必ずしもその実態については承知をいたしておらない立場にございます。しかしながら、これらの通常推進力による艦艇の中でも施設、区域以外の一般の港に入ります場合には、これは地位協定第五条三項によりまして適当な通告というものを船から港の当局にいたすことになっております。その結果、私どもといたしましてはその概要を大体把握しております。ただ、去年、五十八年における寄港の実績はまだ集計ができていないようでございますけれども、もし必要とあらば、一昨年あるいはその前の年であれば私ども手元に持っております。  いずれにいたしましても、こういうようなトマホークを将来積むことが予想されるクラスに属する船はいま申し上げましたように何回か入っておりますけれども、その特定の艦船が将来トマホークを搭載するということは、これはアメリカ政府ははっきりとは申してはいないということでございます。
  279. 不破哲三

    不破委員 いまの報告で概略わかりましたが、若干不正確なのは、アメリカの発表には、例えば攻撃型原潜でもロサンゼルス級にはすべて装備する、あるいはスタージョン級には一定の艦艇に装備すると、これは区分けがあるのですね。だから全部が可能であって、あるものもある、ないものもあるじゃなしに、この関係のすべては装備すると決まっているものも明確にあるわけですから、そこら辺は今後読まれるときに明確に読んでいただきたいと思います。  ただ、今のかなり詳細な報告で明らかになったことは、例えば去年一年間でもトマホークを装備することが予定されそうな原子力潜水艦が、実際には日本に寄港しているものの三分の二がそうだということですよ。それで、ことしから核トマホークの配備が始まりますから、全部に配備されるのにはかなり時間がかかるでしょうが、これまで日本に寄港してきている軍艦のかなりの部分がトマホーク積載対象になる。今まで発表されているところによりますと、例えば攻撃型原潜の場合ですと、トマホークが合わせて十二基積まれる。巡洋艦の場合ですと、百二十二基積まれる。駆逐艦の場合ですと、六十一基あるいは九十基積まれる。そして戦艦の場合では、一番多いときには三百二十から四百のトマホークを装備することが目指されている。まさにハリネズミのような軍艦ですよ。これもアメリカ側の調査ですが、生産が予定されているトマホークのうちの大体四分の一は核トマホークだ。それで、この核トマホークは、一発一発が広島型原爆の約二十倍の破壊力を持った核弾頭を備えている。これが大体今明らかになっていることですね。つまり、ただ一般的にソ連に対する対抗力が従来どおり維持されるのだというだけでなしに、先ほど申しましたように、これがやられると、日本にしょっちゅう寄港している第七艦隊のかなりの部分が、それこそハリネズミのように、相手国の国内から、軍事施設から、軍港から、核で攻撃する能力を持った、いわば空母クラスの核戦力になる、攻撃型核戦力になる。それに日本が基地を提供するかどうかという問題なんだとこの問題を私は明確に認識をして、政府側が今後予定されるトマホークの日本寄港について対処してもらいたい。  それで、この点について中曽根総理に伺いますが、総理はきのう、これからトマホークの寄港が問題になった場合にはそれが非核であることを確認して対処するというように言われましたが、それは間違いありませんね。
  280. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、ニュージャージーについての質問がありました際にお答えしたのでありますが、私の基本的な考え方は、やはり日米安全保障条約を維持して有効にこれを機能させていく、そういう前提のもとに、岸・ハーター交換公文及び藤山・マッカーサー口頭了解、そういうものの前提の上に立って我々は非核三原則を堅持し、事前協議を行う、事前協議に際して、核があるということであればこれは拒否する、そういう従来の態度を堅持していくということです。  それでアメリカは、日米安全保障条約によりまして、今の北米局長の御答弁のように施設、区域に入ってくる一般的権限を持っておりますが、核兵器を持っているものについては今のような特別措置を講じておる、これは今までと変わらない私の考え方であります。  ニュージャージーのことが話に出まして、今のような、割合に国民的関心も呼んでいる問題でもあります。そういう意味におきまして、そういうようなものにつきましては、一般論といたしまして、やはりアメリカ側に対して、日本にはこういうような国民世論もあるし、いろいろ騒がれている状態でもある、我々の非核三原則というものを堅持している我が方の態度を向こうにも話して、そして核兵器がないということを確かめたい、そういうふうに考えておるという意味であります。
  281. 不破哲三

    不破委員 従来は、非核三原則があり、事前協議があるのだから、核を持ってきているときはアメリカから言ってくるだろうというのが政府の答弁でしたね。しかし、ニュージャージーに関しては、日本側から、寄港問題が問題になったらそれが非核であることをアメリカに問い合わせて確認した上で対処する、ニュージャージーに関してはそう理解していいんですね。
  282. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そうです。ニュージャージーの話が出ましたから、これだけ話題になっているという情勢のもとに、今のように日本の状態を話して、そして安保条約というものは相互信頼の上に立っておる、したがいまして、向こうも我々の非核三原則も知っておるはずでもあります。そういうことでありますから、一々我々の方が言うことはやらなかったわけであります。また、そういう態度は今後も続けていくつもりであります。それは安保条約を有効的に活用するという意味からもそういう態度をとっているわけでありますが、ニュージャージーというようなものはいろいろ話題にも上っておりますから、日本の国内のこういう世論も伝えてそうして確かめる、そういう一般論を申し上げたのであります。
  283. 不破哲三

    不破委員 従来は、アメリカ側からは、核を持っているかどうかは言わないのが原則だという煙幕で撃退されるので終わりだったのですけれども、今度はそういうことにならないように、絶対に核を持っていないことを確認して受け入れる場合には受け入れる、確認するということを必ずやってもらいたい。そのことをここでの公式の発言として確認して、次に進みたいと思います。  それで、核の問題では、今、中曽根総理から岸・ハーター交換公文以来のことが言われました。ここに、前から問題にしているように重大なアメリカ側の解釈と日本側の解釈の食い違いがあるということは、指摘されているとおりです。このことについて、やはりトマホークを前にして、私は、改めて総ざらいして詰める必要があると考えているわけですが、今回は安倍外務大臣がモスクワ弔問でおられませんので、私は、ここに重大な問題があるということを指摘するにとどめて、つまりアメリカ側の解釈では寄港なんかは持ち込みに入らぬのだという解釈でまかり通っていることが常識でありますから、そこに重大な問題があると指摘して、別の機会に、外務大臣のおられるところで改めてこの問題を追及したいと思いますが、私は、さっきトマホークの問題を問題にしましたのは、そういうトマホーク艦隊の基地に日本が改めてなるということは、これは極東の軍事情勢からいえば日本の軍事的地位を極めて危険にするものだということを申し上げたかったわけであります、つまり、先ほどカーター提督の言葉を引用しましたように、このトマホーク艦隊の第一の攻撃目標というのは、これはまず相手国の海軍基地なんですね。相手国の海軍基地を核トマホークで攻撃する艦隊が、日本の横須賀なり、佐世保なり、そういう日本の港を最前線の根拠地に行動する。幾ら日本で核、非核の仕分けをするといっても、戦略上はこの日本がそういう核艦隊の拠点であることは明白ですね。相手国の海軍基地を第一の攻撃目標にしている艦隊の海軍基地を提供するということになれば、実際にはそこが核戦場になるつもりでなければ実は提供できない基地だ、そういう性格をおのずから持っているわけです。これはこれまで何回も、日本での核部隊や核戦争を指揮する司令部やその通過拠点や通信施設やそういうことが問題になるたびに、私ども指摘してきたのですけれども、つまりそういう核にかかわる部隊に基地を提供するということは、いざというときにはその基地が核の戦場になる、攻撃目標になる、それを覚悟しなければいけないことだという点については、中曽根総理はどういう認識をお持ちでしょうか。
  284. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほどまず申し上げましたように、アメリカ艦船の入港あるいは領海通過につきましては、日米安全保障条約に基づいて相互信頼のもとにこれを処理していく。今までとこの点については態度は変わらない。ただ、ニュージャージーにつきましては、これだけ話題になっておるから念のため日本のこういう状況をお話しして確かめる、注意を喚起する、そういうことだということを申し上げました。  トマホークについては、まず核と非核と両方があるわけでございます。その核と非核をどういうふうに積むのか、使い分けるのか、そういうようないろいろな点も勉強する必要もあると思いますし、そういう事態が起きてきた場合にいろいろ深い研究をしてみたい、こう思っております。
  285. 不破哲三

    不破委員 今まで我々は、日本にいる陸海空のアメリカの海兵あるいは部隊が核疑惑を持っていると随分指摘しました。あるいは通信基地があると。今私が質問したのは、そういう基地を核にかかわり合いのある部隊に提供することがいざというときには核戦場になる危険があるのだというふうに我々は思いますがその点についての認識はいかがですかと伺ったのですが、その点はいかがでしょう。
  286. 北村汎

    ○北村政府委員 さっきから総理も御答弁になっておられますが、トマホークのような兵器が、これは対艦でもあり、また、対地攻撃の兵器でもあり、核、非核両用でございますが、こういういろいろな面において使用できる兵器ができておるということは、これは抑止力を高めておるわけでございまして、日本の安全を日米安保条約のもとにアメリカの抑止力に頼っております我が国といたしましては、やはりアメリカの抑止力が高まるということは日本の安全が高まることであるというふうに考えております。
  287. 不破哲三

    不破委員 今の論理でいきますと、あるいは核艦隊であれ、日本の周辺で動けば動くほど核の傘が強くなるのだから安全だという極めて危なっかしい論理になるわけですけれども、私、ここで指摘したいのは、アメリカ軍はそんな甘い論理を持っていないということですね。アメリカ軍は日本に基地を置いて、私ども何遍も指摘しておりますが、例えば横田の基地が朝鮮作戦をやるときの核輸送基地、ターミナルになっているとか、あるいは横田や沖縄にアメリカの戦略空軍に対する最後の核攻撃の指令を出す通信基地があるとか、さまざまな問題を調査して指摘しておりますが、それに対して政府側は、大丈夫だ、大丈夫だという話ばかりです。しかし、アメリカ軍は、日本にそういう基地を置く以上、今度のトマホークの場合もそうですが、日本にそういうトマホーク艦隊の最前線の基地を置く以上、そういう基地はいざ戦争というときには核や死の灰が降ってくる第一線の核戦場になる、それを覚悟して置いている。実際に在日米軍基地を調べた場合、私は、当然そういう核戦争の際に生き残る基地として基地が設置されているというように考えますが、日本政府や防衛庁側あるいは防衛施設庁の側では、日本がそういう核戦場になった場合を想定して在日米軍基地が生き残り作戦をとっているのかどうか、そういう点について何か認識をお持ちでしょうか。
  288. 北村汎

    ○北村政府委員 不破委員お話は、トマホークを積んだ米艦船の数が非常にふえて、それが北西太平洋を遊よくする、あるいは通信網があるということでございますけれども、これは決して日本施設、区域の中に核が持ち込まれるということではございません。仮に核を積んだトマホークが太平洋におるということ自体が日本に対する抑止力でございますけれども、そういう艦船が核を積んで日本に入るということではないわけでございますから、そこの点は抑止力ということと核の持ち込みということとは二つ別に分けて考えております。
  289. 不破哲三

    不破委員 あなたの意見を聞きたいのじゃないのです。質問しているのは、私は、トマホークだけじゃなしにいろいろな核関連基地がこうやってふえていくというときに、アメリカが日本に基地を置く以上、核戦争でも生き残るための生き残り作戦を日本でもとっている。そういう施設を設けている。そういうことについてあなた方の側には認識がないかと伺っているのです。
  290. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほど来の答弁の繰り返しになるかもしれませんけれども日本が安全を依頼しておりますのはアメリカの抑止力でございます。その抑止力がいろいろな面で高まるということは、これは日本の安全が高まるということでございますので、そういう認識を私どもは持っております。しかし、核が持ち込まれるということは別問題でございますから、そういうことは分けて考えております。
  291. 不破哲三

    不破委員 私が伺っていることは別のことですから。恐らくあなたは答弁適任者じゃないんだと思いますよ。  アメリカが日本にそういう核関連基地を置いていることは私ども何遍も指摘している。日本政府はあんなのんきなことを言っているけれども、アメリカの側からいえばやはりいざというときにはどうなるかを想定して基地を置いているわけですから、必ず生き残り作戦を講じているはずだ、それについてあなた方に認識があるかないかを聞いているのです。
  292. 倉成正

    倉成委員長 防衛庁古川参事官、的確に答えてください。
  293. 古川清

    ○古川政府委員 お答え申し上げます。  生き残りの作戦があるかどうかということでございますけれども、私どもといたしましては、アメリカの核の抑止力というものの信頼性が高まることによって核戦争の危険はそれだけ減殺する、そういうふうに考えております。
  294. 不破哲三

    不破委員 それでは防衛施設庁に伺いますが、防衛施設庁は、関東計画以来、思いやり予算で大分米軍基地の建設にタッチをしておりますけれども、そういう核戦争に備えた生き残り作戦用の施設について防衛施設庁が関係したことはございますか。
  295. 塩田章

    ○塩田政府委員 私ども、提供施設の整備をいろいろやっておりますけれども、先生のおっしゃる核に備えるような施設というのがどういう施設を指すのか、必ずしもよくわかりませんけれども、私どもが建てております兵舎にしましても、住宅にしましても、通常の仕様でございまして、特別なものではないというふうに承知しております。
  296. 不破哲三

    不破委員 では少し具体的に伺いますが、これは実は国会図書館にあるアメリカの空軍の教範で、惨害に対する対策という教範なんです。つまりマニュアルですね。惨害というのは、核戦争からいわゆる自然災害まで含むものですけれども、アメリカが世界じゅうに置いてある軍事空軍基地の中でこういうものに対してはこういう備えをせよということを全部詳しく書いたものです。これは一九六六年にできたものの改訂版で七四年版でありますが、その中で、核攻撃を受けたときの基地の生き残り作戦とそれに対する施設が極めて明確に述べられているのです。全体は長いものですが、要点だけ言いますと、核攻撃を受けた後では、その核攻撃を受けた基地とその周辺地域には死の灰が絶えず降っている、それから核爆撃で被害を受けている、これは想定しなければいかぬ。そのときに、全面戦争のときですが、一番大事な機能を維持するために何をやるべきかということが極めて具体的に指定されています。それで、この中には、一番肝心なこととしては、そういう空軍基地の一番大事な要員や機能をそういう事態で保護するための核シェルター、これが指定されている。私、これを読んで初めて知ったのですけれども、EWOシェルターと言いまして、EWOというのは緊急戦争作戦、エマージェンシー・ウォー・オペレーションズですか、緊急戦争作戦シェルターというのがあるのです。これを読みますと、アメリカの空軍基地をシェルターで区分すると、大体四段階のシェルターがある。一番高度なものがEWOシェルターで、この最後に定義が出ておりますが、この定義によりますと、「全面戦争の作戦中にその部署にとどまらなくてはならない要員を、NBC」つまり核放射能、それから細菌戦、化学兵器ですね、「NBCから防護するために必要とされる防護構造物。」これは極めて明確な定義があります。委員長、ちょっとこれを、翻訳ですが、総理に手渡したいのですが、よろしいでしょうか。
  297. 倉成正

    倉成委員長 どうぞ。
  298. 不破哲三

    不破委員 全文は図書館にありますから。  時間もありませんから詳細は省きますが、ともかくそのほかの米軍関係文書、どれを調べても、EWOシェルターというのは全面戦争のときに核攻撃に備えてそれで一番大事な指令機能をシェルターで守る施設です。これは私が見た関係文書全部に共通しています。ところが、そういう施設が明らかに横田の中にあるのですね。しかも、米軍はそれを隠していないのです。それで、私どもが調べて明らかになったのですけれども、在日米軍司令部、第五空軍司令部があるビルが横田にあります。これはたしか関東計画で日本政府がつくった、防衛施設庁が全部予算を出し、工事を請け負ってつくったもののはずであります。その第五空軍司令部、それから在日米軍司令部のある建物の入り口をあけますと、ここはもう新聞記者も通れば、恐らく防衛庁の担当の方も施設庁の担当の方もしょっちゅう通っているところだと思いますけれども、ドアをあけた途端に、その右の壁にEWOシェルターという高さ一メートル、横六十センチぐらいの大きな看板が指定されているのです。私、入手した写真を持ってきましたから後で確認していただきたいのですが、この写真も総理に手渡していいですか。
  299. 倉成正

    倉成委員長 どうぞ。
  300. 不破哲三

    不破委員 それで、これは第五空軍司令部のともかく玄関のところに明確に掲記されてあるものです。恐らく地下室がこのシェルターになっていると私は思います。これはどういうことでしょうか。つまり、横田にはアメリカの第五空軍は核攻撃の部隊を持っていません。しかし、横田で指揮する空軍部隊は沖縄と朝鮮にありますね。韓国にあります。韓国にあるアメリカの第五空軍の部隊が核を持っていることは既に公表されていることです。核を持っている部隊を指揮する司令部が横田にある以上、例えば日本有事でなくても、朝鮮半島で戦争が始まってその部隊を指揮するとなるならば、その司令部である横田は当然核の戦場になる可能性がある。そのときに、さっき差し上げました米軍の教範によれば、この基地とその周辺は死の灰で覆われるから、そのときにもちゃんと第五空軍の指令機能が維持できるように核シェルターを設けた。私はそれがこの真相だと思うのですね。  横田基地の周辺に死の灰が降るということは、あれは東京の三多摩の真ん中ですから、まさに首都とその近辺が核戦場になるという事態です。死の灰が降っているという事態です。しかし、そんな状態のもとでも横田の第五空軍の司令部はちゃんと指令機能を維持できるように、おまけに日本の予算でそういう工事をやっている。私は、これが安保条約のもとでの日本の基地の実態だということを指摘したいわけです。  防衛施設庁に伺いますが、あの横田の第五空軍とそれから在日米軍司令部がある建物、これはたしか地下室まで含めて日本政府の予算でつくったものですね。
  301. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のように関東計画であそこに集約したものでございますが、約八千平米の建物でございまして、地下室もございます。金額は約十五億円で、四十八年、四十九年当時につくったものでございます。
  302. 不破哲三

    不破委員 このEWOシェルターの問題は、EWOシェルターということの存在は、防衛関係の当局は御存じてしたか。その概念の存在ですね。
  303. 塩田章

    ○塩田政府委員 私は、司令部に何回も行っておりますけれども、玄関を入ってすぐ真っすぐ歩くものですから、EWOというのに気がついたことはございません。また、今御指摘の、そのEWOというのがこういうものであるということを知っているかということにつきましても、私、今初めて承りました。
  304. 不破哲三

    不破委員 私は、これは非常に重大だと思うのですね。それで、教範の番号も差し上げた資料に全部書いてあります。それをお読みになれば、翻訳して引用した部分以外にもEWOの概念がおわかりだと思います。それで、東京の、首都の中にある基地の中に全面戦争を指揮するつもりの司令部があって、その司令部がたとえ横田やその近辺に核が降ってこようが、まあ直撃を受ければ、防衛施設庁がつくったわけですからちょっと困難でしょうが、しかし、直撃を受けない限り、死の灰が降りても戦争を指導できるという体制を国民が知らないうちにつくられてしまった。今のお話ですと、政府も知らなかったようでありますが、これは極めて重大だと思います。  私は、ここに、在日米軍基地の性格については中曽根さんとは随分意見が違うと思いますけれども、しかし、在日米軍基地の危険な性格の一端が極めて明確にあらわれている。それを日本政府の予算でつくっているわけですから、私は、この問題についてはこれだけの資料を提供いたしましたから、ぜひ政府側でよく調べて、首都に核シェルターのついたそのような核戦争に備えた基地があっていいかどうかという問題について、政府の明確な答えを伺いたいと思います。この点の責任ある調査を求めたいと思いますが、総理、いかがですか。
  305. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今のEWOですか、私、今初めて聞きましたけれども、入っていってすぐ、みんなが出入りできるようなところにあるというようなのはちょっと簡単に扱い過ぎますね。そういう核に関する重要な司令基地とかなんとかというならば、もっといろいろ色彩を施すとか、地下室へ持っていくとか、いろいろそういうことがなされるのが普通じゃないかと思います。  アメリカの士官も兵隊さんも大体世界じゅう行ったり来たりして、転勤もしたりいろいろしておるので、そういう教範というものはいろいろなものが書かれているだろうと私は思います。日本には核基地なんかありませんけれども、ほかのところへ転勤した場合にはそういうものもあり得る。アメリカの将校とか士官というものは、割合全世界の基地を転勤その他で移動している。そういうもので、マニュアルというものは一般的につくられているのではないかということも想像されると思うのです。  しかし、日本は非核三原則を堅持しておりまして、そうしてこれは崩さないで今後とも我々はそれを守っていくつもりでおります。いやしくも日本の空にはそういう死の灰なんかが降らないように我々は懸命の努力をしておるわけでありまして、そういうことが起こらないように我々も今後とも努力していくつもりであります。  共産党の御調査、御苦労でございますが、それが果たして真実であるかどうか、防衛庁によく勉強させてみたいと思います。
  306. 不破哲三

    不破委員 勉強して調査をしてもらいたいと思うのです。  今中曽根さんが言われた第一の疑問ですが、これはアメリカは、兵器の核そのものについては非常に秘密を保っていますが、核防護については割合にオープンなんです。しかし、日本の我々の立場からいえば、核戦争に備えて核シェルターを持った基地が首都に置かれるということは重大問題です。ですから私は提起しているので、それについて日本政府が、自分でつくった施設ですから、そういう目を持ってあの横田の基地を研究すれば、これは直ちに明らかになる。そういう核戦争に備えて、全面戦争のときに死の灰が降ってもちゃんと朝鮮半島での戦争の指揮ができるようなそういう機能を持った米軍基地の存在があっていいのかどうか、この問題は、私は、政府として大いに考えてもらわなければいけない点だと思う。核兵器は持ち込まれていないかもしれないけれども、その朝鮮半島にある核兵器を指揮する司令部があるということがどんなに危険かということがここに私は示されていると思うのです。それがアメリカの軍の常識なんです。軍事の論理なんです。私は、そういう危険から抜け出すためには、もちろん非核三原則を守ってもらわなければいけないが、トマホークのような新しい核戦略の拠点ですね、たとえ日本へ入ってくる核、非核を一生懸命中曽根さんが選別されても、第七艦隊の大半が核トマホークを持つようになる、その拠点が横須賀だということになれば、もう第一線の危険が増すわけですよ。トマホークについてはそういうことをよく調べると同時に、そういう危険な艦隊の基地に新たに日本をすることはしないということも検討してもらいたい。  より根本的には、そういう危険から抜け出すためには、やはり安保条約というものから抜け出せないと、私は、通信基地、指令基地、寄港基地、空軍基地、あらゆる面から日本にかぶさっている核戦争の危険は抜けられないと思いますから、私どもは大いにそのための努力を強めるつもりでありますが、きょう提起した問題に関しては、横田における核に備えた核シェルターつきの司令部の存在について、政府としてよく勉強もし調査もしてもらいたい。国民に対する責任であろうということを申し上げたいと思います。
  307. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 どうも安保条約やめろという議論のためにいままでいろんなことをおっしゃっておったんだなということを今感じた次第でありますが、恐らく私は、米軍の今までの性格やらやり方を見ていますと、米軍はドイツやあるいはイギリスにおいては核基地を持っておりましょう。ですから、司令部の構築一般のマニュアルの中においては、そういう核シェルターを持っているという司令部というものを核、非核両様の場合に備えてみんな一般論としてつくるようにしているのじゃないかと思います。しかし、日本だけが非核三原則を持っておる特異な国であって、そういう特異性を持っているにもかかわらず、司令部の構築一般理論としてはそういうやり方でやる、そういう米軍の持っておる世界的普遍性と申しますか、日本は特別に非核三原則というものを持っておる、そういうものからきたあなたの疑問ではないかと私は推定いたしますが、しかし防衛庁によく研究させます。
  308. 不破哲三

    不破委員 私どもそれに、横田についての具体的な、一般的マニュアルじゃなしに、資料を持っておりますけれども、きょうは時間がありませんからそれ以上言いませんが、これは単に世界全体に通用する一般論じゃなしに、現実に横田という基地について具体化された防護システムだということを付記して述べておきたいと思います。(「それは断定するのはどうかな。おかしいよ」と呼ぶ者あり)だから調査しなさいと言っているわけですよ。まあ調査を約束されたわけですから、その調査の結果を見守っているわけです。  それからまた、中曽根さんは、私が安保廃棄論を言うためにこれだけ言ってきたというように思ったと言いましたが、私どもが安保廃棄論を唱えていることは、言わなくてもあなた方はよく知っていることであって、我々はそれが根本的解決だと思うからその努力をするが、あなた方としては少なくともこの問題について明確に詰めた調査と、それから見解を示してくれと言っているわけであって、中曽根さんに安保廃棄論者になれということをこの議論で求めているわけではありませんので、念のため申し上げておきます。  それから、それに関連して私は、日本政府が思いやり予算ということでこの軍事費を、米軍関係の基地関係の費用をどんどんふやしているという中に、実は今の問題も含まれておるわけですね。関東計画というものは思いやり予算以前ですけれども、あれから始まって、米軍基地に対して日本が条約上の義務でないものまで含めて負担してきた金額というのは相当な数に上ります。私どもがざっと計算しただけでも、昭和五十三年から始まって現在まで、約三千億円が条約以上のサービスとして米軍基地に支払われている。その中にこういう核シェルターまで東京に設けるというようなことが行われているとすれば、これはいよいよ重大だと思います。  しかし、それに加えて私がどうしても指摘したいのは、この予算委員会に出されております予算の中の軍事費の全体が、思いやり予算的な性格を持っている、いわば日本の国の安全を守るための費用というよりは、アメリカの極東戦略を補完するための、アメリカの注文に応じた軍事体制づくりという性格を持っているということを指摘せざるを得ないわけであります。  それで、もう時間もありませんので、ごく中心点だけ言いますけれども、私が以前からこの予算委員会で取り上げて問題にしてきましたが、いつも要領を得た回答を得られないのですが、今中曽根内閣のもとで執行している軍備拡大の計画の中では、特に対潜水艦作戦ですね、これが非常に突出しているわけです。実際に海軍でP3Cの購入、この計画が非常に莫大だ。たしか、五六中業だとP3Cは日本の自衛隊はどれだけ整備することになりますか、完全に終わりますと。
  309. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま実施いたしております五六中業期間中に五十機整備したいということを防衛庁としては考えておりまして、その以前からの分と合計いたしますと、七十五機を整備したいというふうに考えておる次第でございます。
  310. 不破哲三

    不破委員 米軍は西太平洋で何機持っておりますか。それからそれをどれだけ増強する計画がありますか。
  311. 古川清

    ○古川政府委員 お答えいたします。  現在、西太平洋におきましては、第七艦隊の組織のもとに四カ所にP3Cの基地がございます。三沢に一つ、それから沖縄に一つ、嘉手納でございます。それからフィリピンのキュービポイントという基地に一つ、それからグアム島のアガナに一つ、いずれも九機ずつの配置でございまして、総計三十六機ということになっております。  今後の増強計画については、私ども承知しておりません。
  312. 不破哲三

    不破委員 たしか、アメリカはこの増強計画を持っていないはずですけれども。西太平洋からインド洋まで含めたアメリカがP3C三十六機だ。それで、日本の近海の狭い海域を守備範囲にしている日本が七十五機もP3Cを整備する方に向かってまっしぐらに進んでいる。まさに、対潜水艦作戦では、日本は西太平洋といいますかアジア地域最大の軍事大国になるのですね。これはもう、いわゆる中曽根さんのお好きな西側同盟国の中でも、日本に次ぐP3Cを持つ対潜軍事国というのはないのです。海洋国家のイギリスでさえ、はるかに少ない飛行機数です。なぜ一体日本が、西太平洋全域をカバーしているアメリカの倍ものP3Cを、こんな財政が大変なときに一生懸命つくらなければいけないのか。私はおととしも伺いました。しかし、これについてはまともな回答はありませんでした。それからまた、P3Cは海峡封鎖作戦に必要だと言うのだが、これも一体なぜ日本の防衛のために海峡封鎖だけに特別力を入れる必要があるのか。これも去年中曽根さんに伺いましたが、これもまともな回答はありませんでした。私はここにいわば、日本の今の五六中業を初めとする軍備拡大が、日本の安全のためじゃなしに、アメリカの戦略の補完のためにやられているということが非常にはっきりあらわれていると思うのですね。  こういう状態のときに、なぜP3Cの増強にこれだけ力を入れるのかということについて、日本の安全戦略からいってこれがどうしても必要なんだ、シーレーン防衛と言うけれども、アメリカははるかに広いシーレーンを防衛するつもりでいるのに、日本の目標の半分で太平洋を間に合わそうとしている、ここに私、重大な性格があると思っております。これまで国会で何遍聞いても明確な答えがありませんので、きょうここでこれ以上言うつもりはありませんけれども、しかし、これに明確に答えを与えるのは、アメリカが言っているように、もうアメリカ側の証言は幾らもありますが、日本がP3Cを買ってくれることはアメリカの太平洋での対潜索敵力ですね、潜水艦に対する作戦能力の補完役として大変貴重なんだ、日本が買ってくれているおかげでアメリカはこれだけ少なくて済むのだと何回も言っておりますが、それが私はやはり正解だと思わざるを得ないのですね。  あと経済の問題を述べたいので、議論としては質問いたしませんけれども……(中曽根内閣総理大臣「いや委員長、答えよう」と呼ぶ)では明確に、なぜP3Cの購入にこれだけ力を入れるのか、述べてください。
  313. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 不破さんの考えと私の考え根本的に違うことがあるのです。それは、我々が自衛隊を保持し、あるいはシーレーン問題を言っているということは日本防衛のためであって、この一億一千万の国民にいざというときに燃料を補給し、食糧を補給し、そして日本の産業活動がストップしないように、いざというときに役立てるような準備を我々は今からしておかなければいかぬ。そのときになって騒いだって間に合わぬ。そういう日本の一億一千万の民族の生命、財産を守るために自衛隊を持っておるのであって、何もアメリカのためにやっているわけじゃない。  そういう観点から見れば、日本のこの貿易国家、外国貿易によって生きていく、外国から原料を入れて、それを加工して、それを外国に売って生きていくという日本の宿命的な産業構造、あるいは日本の持っておる生活水準、これを維持していこうと思ったら、ある程度のそのような海上交通を守るだけの実力を持っておらなければ、いざというときに夜も寝られないという状態になるでしょう。そういうような観点から、我々は厳しい財政の中でもできるだけ配慮をしつつ、必要最小限のそういうものは整備しようと思って国民の皆様方にお訴え申し上げて、営々として今まで努力してきている、その努力なのであって、アメリカの方が三十五機しかないから日本が七十五機整備するというのはむだというような考えは毛頭我々はとらない。我々自体、我々民族の生存のために必要なことをやっているのであって、アメリカのためにやっているのではない。ここにおいて根本的に違います。
  314. 不破哲三

    不破委員 もちろん根本的に違うのですよ。私が言っているのは、なぜ日本政府の軍備拡大計画の中で、いわゆるシーレーン防衛なるもの、対潜水艦作戦なるもの、海峡封鎖作戦なるものがこの数年にわかに突出してきたのか。これはアメリカの戦略から考えれば理解ができるけれども、本当に外敵の侵略から日本の防衛を考えるのだったら、ここに重点を置くというのは理解ができないのですよ。なぜアメリカの側から言えば理解ができるかといいますと、例えば、これは少し前のアメリカの会計検査院長の報告ですが、スターツという会計検査院長が、日本がP3C対潜哨戒機を取得することは、米国の軍関係者により、米軍の対潜任務を軽減する可能性を持つものと見られている、だから歓迎するんだ。アメリカの議会でちゃんと報告されているのですよ。私がただ考えてこじつけているのじゃないのです。そういう証言は幾らもありますよ。ですから、この点は中曽根総理と私の見解の相違であって、これはもっと議論したいと思いますが、去年も自衛隊三海峡封鎖作戦について、なぜ三海峡封鎖についでこれが日本の防衛上第一義なんだと聞いても、あなたは答えませんでした。しかし、ここに軍事費問題の根本問題があるということは、私は指摘しておきたいと思うのです。  それで、次へ進みたいと思うのですけれども、そういう点に……(中曽根内閣総理大臣委員長、その前にちょっと」と呼ぶ)もう時間があと五十分しかありませんから。そういう点で、軍事問題についてずっと突出していながら、一方で、もう一つの側面としては、国内の経済に対する政府の施策というのはそれほど熱心でないということが重大だと私は思っています。  中曽根さんに伺いたいのですが、あなたは今度の施政方針演説で民間活力ということを非常に強調されました。民間活力というのは、一体あなたが考えている中心問題は何でしょうか。
  315. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 民間活力を申し上げる前に、もう一回今の話を申し上げたいと思うのです。非常に大事な問題であるからであります。私は、不破さんのお考えを聞いていると、アメリカにおぶさっていればいいんだ、言いかえればそういうことのよう思われる。日本の防衛なんというものは到底成り立たぬのだから、アメリカにおぶさって、アメリカを適当に使っていればそれでいいじゃないか、何も自分でうんと持つ必要はないじゃないか、そういうような基本立場に立っていると思うのです。私はそこが違うわけです。自分の国は自分で守らなきゃならぬということを前から申し上げているのはそのためであります。今までアメリカにおぶさり過ぎていると実際私は思っておるのです。しかし、そのために我々の自主性が失われてはならない。日本の防衛は日本がまず第一義的には責任を持つ。足らざるところは安保条約によってアメリカと提携して抑止力、均衡を維持していく。それが正しい独立国家の姿だろうと思うのです。  そういう意味において太平洋、特に日本近海のこの太平洋においてP3Cの問題がそれだけ問題になるという意味は、日本の一億一千万人の人間どこの工業生産力が問題であるからそれが問題になっているわけなんです。そうでしょう。そういうことを考えてみれば、日本の防衛というものが中心に、議題にあるからこそこの問題が起きているわけですよ。これは日本人が自分でやらなければならぬ問題なんです。だけれども、我が国の憲法もあり、財政事情もあり、いろいろそういう面から見て必要最小限にとどめておくという考えに立って今まで調整してやってきた、その努力なのであって、何でもかんでもアメリカにできるだけおぶさって、そして日本は少なくしてうまいことをやっていた方がいい、そういう考えを私はとりません。  それから、民間活力の問題でありますが、日本の財政事情というものはいまのように厳しい状態ですから、国家資金によって景気を刺激するということは昔のようにできない状態になってきておる。だから、公共事業費等におきましても苦労して、いろいろ財政投融資やそのほかのいろいろな面で事業量を減らさないように努力しているところであります。その一環として統制、規制をできるだけ解除して、ちょうどけさ御質問がありましたように、例えば公務員の宿舎地帯、新宿西戸山地帯は約四万平米の土地があって、そこに公務員宿舎があるけれども、これはできるだけ高層化して、そして空き地をそこへつくって、そこに新宿区と協力して住宅もつくるし、あるいは公園とかその他もつくってあの辺の開発をやる。それを民間にやらせる。そのかわり公務員宿舎というものは一角になる。ただし高層化する。そういう形で国の金を使わないで、それは民間が銀行や生命保険から金を借りてやるのです。そういうような形で国の金を使わないで景気も回復し需要も起こしていこう、そういう考えでやっているのが民間活力という問題なんです。
  316. 不破哲三

    不破委員 第一の問題からいいますと、私たちはアメリカにおぶさるなんという考えは毛頭ありません。現状がアメリカにおぶさっているとも思っておりません。日本はアメリカに基地として使われ軍事力としても使われている。二重の意味でアメリカの戦争計画に使われているところに、さっき指摘したような核の戦場になるような、あるいはアメリカの核戦略にいろいろな面から利用されるような、そういう危険があるんだ。今、日本を戦争で脅かしている一番の危険は、私は、アメリカの有事の際に、日本国民の平和と安全に何のかかわり合いがなくても、アメリカが一たん有事で事を構えたら自動的に巻き込まれる、そこに今の一番の戦争の危険があると考えています。その点について、その危険を感じないとしたら、まずそこに中曽根さんと私の一番大きな見解の違いがあるでしょう。  それからまた、日本の国の安全と独立は、日本国民が守るのは当たり前であります。だから私どもは自主独立と言っているのであって、だからアメリカの軍事抑止力に対してもソ連の軍事均衡論に対しても、私はそういうものには強く批判をする。当然日本の、私どもが中立の場合に中立自衛と言っているのはそのためであります。この点は、中曽根さんが我が党の立場関係して意見を言われましたので私も意見を言いますが、ここに大きな違いがある。アメリカにおぶさるかどうかじゃなしに、アメリカとの軍事同盟で縛られるのか、そこから抜け出すのか、これが私とあなたの間の大きな違いだということを指摘して、私がテーマを移したわけですから本題に移ります。  第二の民間活力の問題ですけれども、私は、民間の活力という場合に、中曽根さんの施政方針演説を聞いていますと、どうも民間というところに出てくるのが、大建設業者ばかりが頭にくるような感じがします。しかし、本当の意味で国民の活力ということを問題にしたら、これは私は違うと思うのです。  経済企画庁に伺いたいのですが、例えば最近の国民総支出、この中で国民所得計算で経済企画庁が国民経済計算をずっとやっておりますが、最近の国民総支出で一番大きなウエートを占めるのは何でしょう。実質指数で教えてほしいのですが。
  317. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 お答えいたします。  五十七年の実績が確定、確報として出ておりますので申し上げますと、実質では民間最終消費支出が最も大きくて、ウエートで五二・七ということでございます。御参考のために名目を申し上げますと、五十七年は五九でございます。
  318. 不破哲三

    不破委員 少し前のがありますか。昭和四十年は幾らですか、民間消費支出は。
  319. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 四十年が六一・二でございます。
  320. 不破哲三

    不破委員 五十年。
  321. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 五十年は五六・八でございます。
  322. 不破哲三

    不破委員 四十年が六一・二、五十年が五六・八、五十七年が五二・三ですか。
  323. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 五十七年が五二・七でございます。
  324. 不破哲三

    不破委員 国民総支出というのはいわば国内市場と一国内外ですね、見てもらえばいいと思うのですが、これがともかく日本経済力の中では最大のものだということが示されていますね。最近でも五二%ですから。ところが、いま伺ったように昭和四十年には国民消費というのは六〇%を占めていたのですね。それから昭和五十年には約五七%を占めていた。それが昭和五十七年には五二%にまで落ちている。つまり一番大きな経済力である国民の消費購買力がずっと下がってきているというのがここにも出ていると思うのです。私は、民間活力ということを本当に日本経済を発展させる基礎にしようというのだったら、この一番大きな経済力である国民の消費支出、国民の消費購買力、これに活気を与えるような政治がまず第一に求められていると思うのです。  これは大蔵大臣に伺ったらいいのですかな。今度の政府が立てた五十九年度予算の全体で、国民生活に対してどんな影響を与えるか。確かに一方で減税はありますが、一方で増税がある、社会保障の負担増がある、それからまた公共料金の値上げがある。差し引き勘定すると、この一番肝心な国民生活、民間活力の最大のものに対する今回の政府施策の結果というものは、総決算したらやはりマイナス勘定になるのじゃありませんか。
  325. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今度の予算、これは御案内のように、経済に対しては財政は中立であるということになろうかと思っております。そこで、いわゆる国民支出の問題につきましては、公共料金の値上げ等の問題が一つあります。それから、増減税の問題はしばらくおくといたしまして、それらを総合して一応の判断をいたします場合に、私は、内需をささやかながら支えていく諸般の背景は、突出したものはありませんけれども整っておる、こういうふうに理解をしております。
  326. 不破哲三

    不破委員 政府が今度の予算案で示したわけですから、これが一体国民一般の生活にどれだけの影響を与えるか、その総決算をやはりやってみるのが政府責任だと思うのですね。私どもいろいろな計算をしてみましたし、いろいろな新聞などでも計算、試算がありましたが、例えばある新聞は、政府案が出されたときに、間接税の増加とあるいは医療費の増加と公共料金の値上げ、合わせると国民一世帯当たりの家計負担が三万四千円を超えるという計算をしたものもあります。もう減税額をはるかに超えているわけですね。  それから、私ここで指摘したいのは、一方で減税があると言うけれども、たしか、日本の就業者に対して納税人口を調べると、三割は現行でも税金を、所得税を納めていない非課税世帯になっていますね。非課税人口になっている。非課税人口に対しては、低所得で一番困難なんだが減税の恩恵はない。社会保障の負担増、公共料金の負担増、それから間接税の負担増、これが一番、つまり負担増だけがしわ寄せされる。そういう事態になっている。私は、中曽根さんが民間活力の増大を盛んに言いながら、一番肝心な国民生活に対して、冬の時代と言われるような何重もの攻撃をしている。ここにまず第一の大きな問題があると思うのです。  それから二番目に伺いたいのは、商業、工業の場合でも、私は、日本国民経済規模で経済の活力を考えるならば、中小企業の問題がやはり最大のウエートを占めていると思わざるを得ないわけです。  ここにことしの中小企業白書からの文章がありますけれども、中小企業白書はこう書いてあります。大蔵大臣、ちょっとよく聞いてほしいのですが、「中小企業には三千七百万人を超える従業者が属するところから、我が国人口のおよそ三分の二は中小企業に関連する人口と推定される。」これは政府の中小企業白書ですよ。我が国人口の三分の二は中小企業関連人口だ。「設備投資の約四割が中小企業によって担われている」つまり経済のこれだけのウエートを占めている。ところが、ことしの中小企業予算ですね、たしか総予算に対して中小企業対策予算は〇・四五%ですが、最近、ことしの中小企業予算以下に中小企業予算が下がったことがあったかどうか。通産省でも結構ですし、大蔵大臣でも結構ですが、お答え願いたいのです。
  327. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  戦後直後の数字は今つまびらかでございませんけれども、最近の三十年代、四十年代、五十年代におきましては、中小企業予算が本年のように五・五%マイナスということはございません。ただ、これは要求時点でマイナスシーリングの関係で五%の……(不破委員「〇・四五%というパーセントはどうですか。それより以下のときはありますか」と呼ぶ)過去の統計をただいま手元に持ち合わせておりません。
  328. 不破哲三

    不破委員 総理、中小企業予算が〇・四五%となったことは中小企業基本法が制定されてから初めてなんですよ。こんなに下がったことはないんですね。政府発表の白書で日本の人口の三分の二を占める、それから設備投資の四割になっていると言われながら、しかしこれに対する対策は、これまで基本法ができて二十年になりますけれども最低だ。一番高いときでも〇・七〇%で多くはなかったのだが、それがどんどん下がって〇・四五%だ。しかも企業情勢はどうかと言うと、倒産は戦後最高でしょう。それから国税庁で調べている法人企業統計でも、欠損企業が過半数を占めるに至っている、中小企業の。これは最近のことで初めてですよね。そういう状態の中で、私は、民間活力を重視される中曽根さんが最低の中小企業予算を組んだというのは、やはりその言葉と余りにも反すると思うのですが、この点いかがでしょう。
  329. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中小企業につきましては、今一番大事なことは何かと言いますと、相当中小企業も力がついてきておるのですけれども、足りないのはソフトの面なんです。ハードの面よりもむしろソフトの面です、大企業と対抗していくために。そこで今回、政府はある意味においては投資減税をやって中小企業に対する投資意欲というものを行わんとしております、片っ方において。それと同時に、金融面におきまして、政府関係機関の中小企業に対する融資額を拡大さした。この金融面における措置というものは中小企業に対してはかなり有効なんです。それで、中小企業に対して直接通産省が補助金を与えたり何かしてやるという仕事はもう減ってきたんです、実際。何が大事かと言えば、経営の方法とか、あるいはいろいろ設備の改善に関するノーハウとか、あるいは大企業に負けないような店舗のつくり方とか、そういう経営診断及び経営に関するソフトの面が非常に大事なんです。ファッション産業に変えるとかブティックにするとか、そういうようなものが大事になってきておるのです。そういう意味で、一次のハードの面でいろいろ面倒を見る、例えばアーケードをつくるとか、いろいろそういう面、これももちろん無視はできませんけれども、そういう面よりも、中小企業全般からすれば経営の改善方針あるいはソフトの面、こういう面が非常に大事になってきたのだということを強調したい。時代が今は変わっていることをぜひ御認識願いたい。
  330. 不破哲三

    不破委員 中曽根さんがもう大体充実してきたと言われるけれども、これは去年も言いましたが、中小企業基本法をつくったときに政府がこれを改善すると言ったことが、二十年たって全然、事態は改悪されているのです。改善されていないのです。しかも、企業経営からいいますと、例えば企業倒産が戦後最高だというのは先ほど言いましたが、国税庁の法人企業統計でも、資本金一億円以下の企業が百四十八万ある中で、一番新しい数字の昭和五十六年では、初めて欠損企業が五割を超えているのですね。七十四万を超える企業が欠損企業になっています。倒産企業というのは氷山の一角なんですよ。そこにある中小企業全体を考えても、かつては欠損企業というのは三割台だったのが四割台になり五割台になって今日に至っている。こういう状態の中で幾らいろいろソフトとハードと言われても、やはり財政的な裏づけがなければ本当に活力を与えるような援助はできない。それが実際に言いますと逆行しているということを言わざるを得ない。  竹下さんに伺いたいのですが、ことしの一月に財政制度審議会が答申を出しましたね。あの答申の中で私は非常に重大な提言があると思っているのですけれども、「中小企業対策費は、従来かなり高い伸びを続けたこともあり、施策として相当程度充実した内容となっている。」から中小企業対策について全体として極力抑制せよということが財政審の答申で出ているわけですね。この責任者が大企業の桜田さんですから、大企業から見ればそうなのかもしれないが、今の日本経済全体から見ればこれはまさに逆方向だと思うのです。大蔵大臣としてはこういう方向についてどうお考えなんですか。
  331. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今、先ほど来不破さん指摘されておりますいわゆる中小企業の欠損法人割合等から見ますと、確かに五十六年が五〇・一%、それから五十七年は五三・三、こういうふうになっております。ただ、これは全法人の欠損法人の割合から見てまいりますと、中小企業と全法人の間にこの率におきましては大きな差はない。それは結局、高度経済成長期からあるいは第一次石油ショックを経、そして第二次石油危機を過ごした、そして五十六年、五十七年、いわば世界同時不況という状態の中の、言ってみれば日本が例外でない一つの姿であるというふうにこれは一方から見ることができるのじゃないか、こういうふうに思います。  そこで、中小企業対策予算の問題ですが、これは通産省からお答えをされるのが適当かと思いますが、先ほど総理からも御指摘がありましたように、アーケードをつくりますとか、もろもろのそういうハードの面、あるいは商工会等の機能を充実いたしますとか、それらのことは一応それはそれなりの伸びを示してきた。だからあくまでもこれからは、ベンチャービジネスとかいろいろ言われておりますが、自立自助の精神の上に立って、それをサポートする形の中小企業三金融機関等の資金を充実するとか、そういうことから指導する立場においてこれを助成すべきであって、先ほどの御指摘のようにハードからソフトの面に中小企業対策が移っておる、そういうふうに御理解をいただきたいというふうに考えます。
  332. 不破哲三

    不破委員 今、竹下さんが言った全法人云々は、中小企業の数が圧倒的に多いから全法人平均が似てくるのは当たり前なんですよ。全法人じゃなしに、中小企業を除いた資本金一億円以上の法人の倒産率を、欠損企業率をはかられたらけた違いな少ない数字が出ることを私は計算してありますから、全法人云々はそれは誤解です。それから、何といってもそういう事態の中で一番責任を負わなければいけない中小企業施策が後退している、これがやはり民間活力を云々する第二の大きな欠陥だと私は思うのですね。  それから三番目に、ちょっと教育の問題で伺いたいのですが、中曽根さんの施政方針演説を伺っても、教育改革についていろいろな項目を挙げられていますけれども教育基本法教育行政が負うべき責任として具体的に指摘されているのは、「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立」、まあ施設面の問題ですね。これが教育基本法では第十条の教育行政のところに、教育行政の独自の責任として指摘されている。この問題について政府がどういう責任を果たすかということが今度の中曽根さんの話には、あるいは施政方針にも全然出ていない。私はこれが、教育改革論全般の問題もありますけれども、緊急の問題としては非常に大事な問題だと思うのですね。  それで文部大臣に伺いたいのですが、いまの教育荒廃、義務教育について考える場合、マンモス学校の問題それから大規模学級の問題、これが非常に大きな問題だと思います。マンモス学校の問題について言いますと、たしか法律では統合の場合で二十四学級というのが上限ですね。現在、小中学校で二十五学級以上、つまり法律の基準を超えている学校数はどれぐらいありますか。
  333. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘の二十五学級以上という数字をただいま手元に持っておりませんが、私ども持っております三十一学級以上という数字で申し上げますと、過大規模校と認められるものが五十八年の四月一日現在で二千百四十四校、小中学校合わせでそういう数字になっております。
  334. 不破哲三

    不破委員 これはあらかじめお願いしてあったので、三十一学級というのだけ計算されてくるのはちょっと残念なんですけれども、三十一という根拠は何にもないのですね。法律は一般的には十八学級が上限であって、学校の統合の場合二十四学級と認められているわけです。  それでは、文部省でつくられている統計で私、計算したのを私の方から言いますと、その法律の枠外の学校が小学校で四千五百二十一校、これは枚数にして一八%です。中学校で千五百八十五校、枚数にして一五%です。しかも、これは枚数にしてそうだけれども一校当たりは非常に大きな学校ですから、学級は三十学級、四十学級とある。学級の数にすると、小学校の場合、実に日本じゅうのクラス数の四割は法律の基準を超えた過大校で教育を受けている、これが実情なんですね。そういうマンモス学校は本当に生徒一人一人に行き届いた教育をすることが不可能だ。大体先生方が自分の担任以外、なかなか学校の生徒の名前も覚えられないということはもう常識になっておりますけれども、これを改善するというのは、私は、教育基本法教育行政教育施設条件の整備確立を定められているというのに照らしても緊急の課題だと思うのですけれども文部省は一体この点について解消の計画をきちんとお持ちですか。
  335. 森喜朗

    ○森国務大臣 過大規模校につきましては、確かに教育上あるいはまた学校管理上いろいろと問題が多いということは先生からも御指摘のとおりでありますし、文部省も私どもも大変頭を痛めているところであります。文部省といたしましても、関係市町村に対しまして、できるだけ分離をして適正な学校単位にしていくように、補助などにも優先的に採択をするように、そういうふうに要綱にもきちっと明記をいたしまして指導はいたしております。しかし、義務教育学校は御承知のとおり市町村で設置をいたしておりますから、なかなか土地の問題でありますとか、その他学校区を分けます校下意識だとか、そんなことで必ずしもスムーズには進んでいないということはございます。  ただ、土地の問題につきまして、特に用地取得ではいろいろと問題があるというふうに私どもも感じとめておりますので、五十九年度予算につきましては、用地取得難にあるというところを何としても解消したい、こういうことで、現行の急増用地取得費補助制度をさらに拡充した別枠の用地取得費補助制度を講じてそれに対応していく、なお一層市町村に対して分離するような指導をしていきたい、こんなふうに考えております。
  336. 不破哲三

    不破委員 いろいろきめ細かい施策ということだと思うのですけれども、しかし、肝心の文教施設の整備費はもう年々急減ですね。たしかこの四年ぐらいで三割減っていると思うのですけれども、今までも過大校があって解消できないのに、いろいろ制度を細かくつくっても、肝心のそれにつける予算が年々減って、三割も減らされるということでは、本当にこの問題を重視して解決することにはならぬ。それからまた四十人学級の問題でも、あれだけ法律まで変えて十二年間でやるということを決めながら、三年間凍結したためにもうどんどん先送りになって、実際にどういう見通しになるかということになっている。私は、こういう点ではいまの政府のやり方というのは、教育の面でも、教育基本法で一番言われた施設条件の確立整備、この点についても責任を年々後退させている、いわば政府の撤退作戦をやっているというような感じを受けるわけです。     〔委員長退席、小渕(恵)委員長代理着席〕  時間がありませんのでその他の面は言いませんけれども、実際に国民生活とか国民教育とかいう面で、国民経済的にあるいは日本の文化全般の面からいって政府が負わなければいけない責任の問題を一つ一つとってみると、この数年間の、特にことしの予算の施策というのは、いわば民間の活力を与えるどころか民間の活力を弱める方向にばかり働いている。これが率直に言って総括をせざるを得ないのです。  なぜそうなるのか。一つ一つは言いわけをされますけれども、財政危機だからだとかお金がないからだということになるのだと思いますけれども、その一方で私がどうしても強調したいのは、私どももこの予算委員会で毎年こういう面に国策上の大変な浪費があるじゃないか、こういうことを指摘してきました。軍事費の問題もその一つでありますが、軍事費以外の問題でもいろいろなことを指摘してきました。しかし、そっちの面の財政改革というのはさっぱりやられない。国民の暮らしたとか中小企業の問題だとか農業の問題だとか、あるいは教育の問題だとか福祉の問題だとか、そういう面にはばっさばっさとメスが入れられるのに、非常に莫大なまとまった浪費に関しては一つもメスが入れられない。私はここにやはり行政改革の逆立ちした姿があらわれていると思うのです。幾つかあるのですけれども、きょうはまず冒頭に、ここでも何回か議論されました「むつ」の問題について伺いたいと思います。  これは浪費の最たるものとして、自民党の中でも、もう我慢ができぬということで動きがあった問題ですが、きのうも議論されたようですが、一体「むつ」と関根浜の問題は、最終的に言うとどう処理するというのがあなた方のお考えですか。
  337. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず、「むつ」の試験研究の進め方でございますが、これにつきましては、私どもは今回の予算編成の段階におきまして、今後攻附・自民党において検討するということに相なっております。しかしながら、現在「むつ」が存在する限り、それの所在として必要な生活費としての船舶の維持管理の費用、そうしてまた、従来政府と地元とにおいて、いわゆる五者協定に基づきまして大湊から関根浜に移すというお約束をいたしております。したがいまして、この関根浜に港をつくるということにつきましては、私どもはこれを誠実に実行していかなければならない、かような観点から、五十九年度におきましても、それに必要な最小限度の建設を進めてまいるという考え方でございます。
  338. 不破哲三

    不破委員 幾つか疑問があるんですね。一つは、「むつ」の処理方針をどこで検討されるのですか。政府のどの機関検討されるのですか。
  339. 岩動道行

    岩動国務大臣 「むつ」のこれからのあり方等につきましては、私ども科学技術庁、そうしてまた原船事業団、こういうものを中心として行いますし、あるいはまた原子力の平和利用という観点から、原子力委員会も重要な立場にあるわけでございます。
  340. 不破哲三

    不破委員 この原子力委員会は「むつ」の実験継続という結論を一月二十四日に出しているわけですね。それで、原子力委員会というのはただの委員会じゃなしに、原子力基本法で設けられたものであって、原子力委員会法には、内閣総理大臣は原子力委員会から答申を受けたときは尊重しなければいかぬと、内閣総理大臣の尊重義務までうたわれた法定機関でしょう。その原子力委員会が実験継続ということを一月二十四日に結論を出している。それをどの機関で再検討されるのですか。原子力委員会に上回わる新しい機関をあなた方は設けられるのですか。それとも自民党の党議をもって変えようとされるのですか。
  341. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題は、予算編成過程におきまして、政府と党と最終重要問題について協議したその中に入っておるものです。御存じのように政党内閣でございますから、政党の基盤を離れて政策はあり得ないわけでもあります。そういう意味において、「むつ」の問題は自由民主党の内部におきまし一つ論議を呼び起こして、そうして先般来岩動長官や私が御報告いたしましたような扱いになっておるわけです。それは、関根浜は建設する、この予算も計上しておる、また舶用炉の研究というものは必要である、これは海運国として継続してやるべきである。しかし「むつ」自体の措置については、次の概算要求のころまでに党としていろいろ専門家も集めて検討もする、その結論を得た上で政府ともまた相談をする、そういうような扱いになっておるわけであります。
  342. 不破哲三

    不破委員 この問題は私もう二年前にここで取り上げて、「むつ」の実験継続はむだではないかということを提起したばかりです。そのときには、原子力委員会の結論というものをいわば金科玉条にして政府は答弁されていた。この原子力委員会がそれだけの位置を持つのは、これは法規上そういう立場にあるわけですね、日本の原子力政策をそこで審議するとなっているわけですから。しかし、その原子力委員会の結論がその当時は最高権威と言われていたが、実際にはそうではないということを政府側が認められたのは内容的には私は一歩前進だと思うのですが、それを再検討するのに原子力委員会にかわるべきより広い国民的な討議をいろいろな知恵を集めてやるというのではなしに、自民党政権政党だから自民党で討議して原子力委員会にかわる結論を出すんだというのは、私はこれは筋からいっても極めて奇妙だと思うのです。これが第一の疑問です。  それから第二の疑問は、なぜそういう結論が出ていない段階で関根浜港の建設を着工するのかという問題です。関根浜港の建設費は幾らぐらいかかりますか、いまの予算では。岩動さん、完成までの総予算。
  343. 岩動道行

    岩動国務大臣 ただいまのところおおむね三百億円ぐらいと予定いたしております。しかし、これは地上設備を含めての金額でございます。
  344. 不破哲三

    不破委員 今まで六百億円と言われていたのがこの段になったら急に低くなりましたが、それでも莫大なものですよね。(発言する者あり)訂正ですか。訂正なら言ってください。
  345. 中村守孝

    中村(守)政府委員 関根浜港の建設につきましては、事業団が予定しておりました港湾の計画では、港湾だけで三百億円強でございます。そういう数字を予定しております。三百四十億円でございます。
  346. 不破哲三

    不破委員 地上施設は入っていないのですね。
  347. 中村守孝

    中村(守)政府委員 地上施設は入っておりません。
  348. 不破哲三

    不破委員 港湾だけで三百四十億というのは莫大なものですよね。大湊に定係港をつくったとき地上施設が二十七億円ですよね。大湊に最初「むつ」をのせるつもりでつくった定係港が二十七億円でできた。「むつ」自体は七十三億円でできた。その「むつ」を入れる港に地上施設抜きで三百四十億かけるというだけでもこれがどれぐらい途方もないものかおわかりだと思うのですが、その肝心の「むつ」を扱うことになるのかどうかわからない状態で港をつくる。もし八月までの検討の結果「むつ」はもう実験しないのだという結論になったら、この港は何に使うのですか。
  349. 中村守孝

    中村(守)政府委員 関根浜港につきましては、大湊に現在係留されております「むつ」を回航する先として、地元の方の御了解を得、御協力を得ていわゆる五者協定を結び、そのお約束に基づいて「むつ」を回航する先として建設するわけでございます。
  350. 不破哲三

    不破委員 大体今までのやり方がこうなっているから仕方がない、こうなっているから仕方がないということでいく。先ほど金額を言いましたが、その「むつ」を運ぶのに回航先の港だけで三百四十億をかける。その「むつ」を実験して役に立てるかどうかということはまだ結論が出ていない、しかし港の着工だけは始めてしまう。だから私が言っているのは、「むつ」を実験継続しないのだという結論になったらこの港は何のための港になるのか、その質問をしているのです。長官、手を挙げていますからどうぞ。
  351. 岩動道行

    岩動国務大臣 最初に、先ほど私、三百億強と申しましたが、それは地上設備を含まないという意味で申し上げたわけでございます。  それから、もしも検討の結果「むつ」の研究を中止するというようなことになりましても、これは廃船というものが待っているわけでございます。したがいまして、その廃船をやる場合には、やはり関根浜の港をつくってやらざるを得ないということでございます。これは大湊におきましても、ただいまは仮に停泊をさせていただいているという実情でございまして、これはどこにも持っていきようがないというのが現状でございます。したがいまして、もしも中止という結論が出た場合には関根浜において廃船を行う、その場合には三百億はかからない格好で港の建設はやはりやらざるを得ない、こういうことでございます。
  352. 不破哲三

    不破委員 廃船用だけに港をつくることがいかにむだかということを聞いている方はおわかりだと思うのですよ。今までに「むつ」に大体六百億近くかかっている。それを廃船するときに廃船用の港をつくる。私、いろいろ専門家に聞きましたが、いまの「むつ」の原子炉というのはもうわずか動かして何年もたっていますから、放射能というのは自然放射能ぐらいしかないのですね。それで専門家に聞くと、これをどこの港で廃船するにしても一億円かからぬ、数千万円でできるだろう。しかし、一たん「むつ」を実験して炉を動かしてしまったら、今三キュリーとか四キュリーとか言われる放射能が数億、数十億になりますから、これはもうどれだけ事態が大変になるかわからぬ。だから同じ廃船といっても、一遍動かした原子炉を廃棄するのと、それからいまの「むつ」のようなものを廃棄するのでは全然けた違いなんですね。そのことを処理するのに今までの約束があるから——約束というのは新定係港をつくるという約束ですよ。廃船港をつくるなんという約束はどこにもしてないのですよ。だから私が伺っているのは、今度四十五億つけた。四十五億も大きなものですよ。さっきの二十六億円で定係港ができたという歴史を振り返れば大きなものですよ。それをまだ「むつ」をどう処理するかも決まらないのにつけて、そしてうんと安く見積もっても地上施設抜きで三百億以上はかかるという港の建設に何で踏み出すのか。もし実験しないということになったときには一体何をするつもりか。この答えなしで本当に港湾建設を始めるのですか、二月二十六日から。
  353. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  先ほど申し上げた港湾の三百億円強というのは、「むつ」が実験航海をするという前提に立っての港の建設費でございまして、今後の「むつ」の取り扱いにつきまして御検討いただいた結果として港の全体計画が定まることになっておりますので、その際には、他用途の利用の見通しあるいは地元の御意向、それから当然のことながら「むつ」の取り扱いについての検討結果、そういったものを踏まえて全体の規模を決めることになるわけでございまして、当面五十九年度予算で着手する分につきましては、その検討結果のいかんにかかわらず最小限必要になる部分につきまして工事を行う、こういうことにいたしておるわけでございます。
  354. 不破哲三

    不破委員 検討結果のいかんに、かかわらず必要になるということがわからないのですよ。何で港が必要になるのかと言えば、「むつ」を運ぶから必要だったわけでしょう、実験するためにも。検討結果によって「むつ」の実験をしないことになった、そうしてその時点でこれは廃船するなら、どうやったら今の国費を安く使ってやれるかということを相談するのが当たり前じゃないですか。行政改革の精神はそこにあるわけでしょう。他用途港といったって、もともと他用途のどんな必要があるのですか。あそこに港をつくるということは、青森県が始まってから今までいろいろなところの港の計画はあったけれども、関根浜に港をつくろうという計画は「むつ」が起きて初めて起きたことでしょう。漁港以外にあそこに港をつくろうという必要はどこにもなかったのですね。他用途港というのは何が問題になるのですか。     〔小渕(恵)委員長代理退席、委員長着席〕
  355. 中村守孝

    中村(守)政府委員 廃船のために港をつくるということについての御質問でございますが、「むつ」の入る港につきましては、従来からのさまざまな経験でなかなか「むつ」を回航する港を見出すということが難しい状況にございまして、既にお約束してございます関根浜新港、関根浜港というものが現実的に確保できる場所であるわけでございまして、そういう意味で関根浜港を建設しようということでございます。  他用途の件につきましては、地元の青森県とも私ども御相談いたしておりますが、青森県当局が下北地域の開発基本構想というものを昨年の九月につくっておりまして、そこにおきましても、長期的には関根浜港について流通港湾として一般的な利用の検討を行うというポジションにございますので、当庁としても、県等との調整を図りながらそういった問題について検討してまいりたいと考えておるわけでございます。
  356. 不破哲三

    不破委員 一般流通港湾と簡単に言われますけれども、今青森県では港を幾つつくっているか御存じですか。一つは、去年から津軽半島に津軽新港の建設が始まっているのですよ。この建設の計画が運輸省に出されたときに、津軽半島の日本海側の港であるにもかかわらず運輸省の港湾局では、青森港との競合が問題になる、八戸港との競合が問題になる。まあ物流量二十万トンぐらいの港ですが、八十七億円の港ですから関根浜に比べればささやかなものですよ。それでも去年から着工するのに、青森港と八戸港の流通港としての競合関係を問題にした上で着工に踏み切っているのですよ。それからもう一つ今建設中なのはむつ小川原のむつ小川原港でしょう。私はこれもむだの最たるものだと思う。石油専用港を今一生懸命につくっているのですね、あそこに石油コンビナートが来るという前提で計画して。ところが石油コンビナートは一つも来ない。しかし計画どおり石油専門の港で、これは予算千七百三十億ですよ。もう四百億円近くつぎ込んでいまだに建設中ですよ。これが太平洋岸で今つくられている。  それで、青森県の港湾事情はどうなっているかというと、青森湾内の貨物の量は、青函連絡船も危ない状況ですから年々減って、今、県が計画している青森港の扱い目標に対して約七割から八割程度の物資扱い量しかできていない。つまり、青森には今十幾つの港がありますけれども、重要港湾が大湊、青森、八戸その他ありますけれども、全体としてむしろ停滞ぎみなんです。そこへ津軽新港ができ、むつ小川原港ができ、これの競合が問題になっているときに関根浜港を改めて一般流通の港としてつくる。これぐらいむだなことはないじゃありませんか。  後藤田さんに伺いますが、去年行性庁では港湾の投資状況について行政監察をやって、港湾投資が非常にむだになっているということについて運輸省に警告を発せられましたね。ところが、その行管庁が一行政改革が大事だと言っているときに「むつ」を廃船するだけのために、あるいは周りの事情を一切考えないで一般用途港に使うとか、ともかくやみくもに総額陸上施設が六百億、港湾だけでも三百億、そのために港湾の着工を始める。何か現地で聞くと二月二十六日着工だということがもう既に言われているそうでありますが、予算も決まっていないのに何でそういうことがあるのか私わかりませんけれども、こういうむちゃを一つ一つ片づけていくのが国民が望んでいる本当の行革の精神じゃありませんか。それを目的もなしに港湾を先につくる、後から用途を考える、これが一体この財政危機のもとで国政に当たる態度かどうか。私はそのことについて、伺ってしまったから行管庁長官に伺った上で、中曽根さんに伺いたいと思うのです。
  357. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 せっかくのお尋ねですから、御満足がいけるかどうかわかりませんけれどもお答えをいたしたいと思います。  御案内のように、世の中がどんどん変わりましたから、そこで物流の状況なんかが非常な変化をしてきた。石油ショックの問題とか、あるいはこれは二百海里の問題も影響していると思います。そういったことで、今までの港湾の機能というものが実際の状況に合っていない面がある、こういったようなことがございますから、投資額の四割が国の直轄事業でございますから、そこで行管庁としては監察をいたしまして、その結果、運輸省と北海道開発庁に、こういう点にむだがあるよ、したがってこれからの投資その他の点については十分配慮してもらいたい、こういう勧告を申し上げた。その結果、私の方としては、その勧告に従って運輸省なり北海道開発庁は十分留意をして対応をしていただいておるもの、こう考えるわけでございますが、御質問の「むつ」の問題になるとこれはなかなか厄介でございます。  それは、昨日申し上げましたように、従来極めて長い間の沿革があり、政治的にも非常に厄介な問題だ。同時にまた、科学技術、この面からも検討しなければならぬといったようなことで、予算編成の際に自由民主党の中にもいろいろな意見がございましたから、そこで今回ああいう措置をして、そして舶用炉は研究はもちろん続ける、しかし関根浜の方はこれは建設は進めていこうといったような結論になり、そしてそれに必要最小限のとりあえずの予算を今回は計上をした。この取り扱いがどうなるかということは、党内それから科学技術者などが参加をし、あるいは政府の科学技術庁、こういうようなところで慎重に検討して結論を出していこう、こうなっておるわけでございますから、それの模様を見ながら、行管庁が出なければならぬような状況であればまた出させていただきたい、かように思っております。
  358. 不破哲三

    不破委員 こういうことをほうっておいて財政改革行政改革もないと私は思うのですよ。目的なしに港を先につくるということについてどうお考えですか。
  359. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 「むつ」の問題につきましては、日本の原子力船開発の問題と、それからもう一つは地元のいろいろな世論、反応とか要望とか、それから財政的事情、そういうようなものが非常に絡んで頭の痛い問題であることは率直に申し上げたいと思います。そういうようなあらゆる総合的な観点から、党におきまして、まず第一に八月ごろまでにこれに対する処理の考え方を決め、それをもって内閣と相談をする、そういう段取りになっておりますから、相談が来たときによく考えてみたいと思っておる次第です。(不破委員「港は。港を今から……」と呼ぶ)  港の問題は、今申し上げましたように原子力船開発、そういう意味から関根浜港というものを定係港にする目的で始めたわけでありますけれども、しかし、一面において財政問題とかあるいは原子力船の評価に関する党内の議論とかいういろいろな問題が出てまいりまして、こういう問題は余り過早に結論を出すべき問題ではない、やはり専門家の意見もよく聞いて慎重にやるべき問題である、そういう取り扱いになっておるわけです。
  360. 倉成正

    倉成委員長 不破君、時間です。
  361. 不破哲三

    不破委員 もう時間が参りましたので、最後に一言だけ申しますが、「むつ」の問題は、一つは、先ほど申しましたように、これだけの問題を原子力委員会で結局扱いかねたことになるわけですね、結論から言うと。それを本当に答えを出すためには、より広い知恵を集めてどう処理するかということについて、自民党の党内議論をもって原子力委員会にかえるようなことはどう見ても筋が通らぬ。やはりもっと専門家の知恵も国民の知恵も集めるような開かれた討論を計画してもらいたい。これが第一点です。  それから第二点に、どう考えても目的なしに港をつくることだけはやめてもらいたい。結論が出てから、その用途に応じた港の建設を国会に提案してもらいたい。これが二点目です。  それから三点目は、あと国鉄の問題とかいろいろありますけれども、こういう政府責任で起こっておる浪費について本当にメスを入れないで行革とか云々しても、国民が納得できるようなことができるはずがないし、そして、そういうことの浪費を放置したまま国民に犠牲をいたずらに押しつけても財政危機は一向回避されない。やはりこの点で、まず隗より始めよで、政府みずから自分たち責任政策上起こした浪費を根本的に解決するという精神に転換してもらいたいということを最後に申し上げて、私の質問を終わるものであります。
  362. 倉成正

    倉成委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十六日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十七分散会