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1984-02-14 第101回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年二月十四日(火曜日)     午後三時七分開講 出席委員   委員長 倉成  正君    理事 小渕 恵三君 理事 原田昇左右君    理事 松永  光君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 岡田 利春君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    伊吹 文明君       石原慎太郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    金子原二郎君       北川 正恭君    澁谷 直藏君       砂田 重民君    田中 龍夫君       高鳥  修君    玉置 和郎君       中馬 弘毅君    橋本龍太郎君       原田  憲君    三原 朝雄君       武藤 嘉文君    村田敬次郎君       村山 達雄君    井上 一成君       稲葉 誠一君    上田  哲君       大出  俊君    島田 琢郎君       清水  勇君    田邊  誠君       武藤 山治君    矢山 有作君       湯山  勇君    草川 昭三君       斉藤  節君    正木 良明君       木下敬之助君    小平  忠君       渡辺  朗君    工藤  晃惹       瀬崎 博義君    藤木 洋子君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 住  栄作君         外務大臣臨時代         理         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 森  喜朗君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         農林水産大臣  山村新治郎君         通商産業大臣 小此木彦三郎君         運 輸 大 臣 細田 吉藏君         郵 政 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 坂本三十次君         建 設 大 臣 水野  清君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     田川 誠一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      中西 一郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官)稻村佐近四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         内閣参事官   中村  徹君         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  禿河 徹映君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         総理府人事局長 藤井 良二君         青少年対策本部         次長      瀧澤 博三君         警察庁刑事局保         安部長     鈴木 良一君         行政管理庁長官         官房審議官   佐々木晴夫君         行政管理庁行政         管理局長    門田 英郎君         行政管理庁行政         監察局長    竹村  晟君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         科学技術庁長官         官房長     安田 佳三君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         国土庁長官官房         長       石川  周君         国土庁長官官房         審議官     田中  暁君         国土庁長官官房         会計課長    安達 五郎君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   波多野敬雄君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       小野 博義君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         国税庁直税部長 渡辺 幸則君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      齊藤 尚夫君         文部省初等中等         教育課長    高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部書社会教育         局長      宮野 禮一君         文部省管理局長 阿部 充夫君         厚生大臣官房総         審議官     小林 功典君         厚生省公衆衛生         局長      大池 眞澄君         厚生省公衆衛生         局老人保険部長 水田  努君         厚生省環境衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省医務局長 吉崎 正義君         厚生省薬務局長 正木  馨君         厚生省児童家庭         局長      吉原 健二君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         厚生省援護局長 入江  慧君         社会保険庁長官         官房審議官   小島 弘仲君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済 佐野 宏哉君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         食糧庁長官   松浦  昭君         林野庁長官   秋山 智英君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業省立地         公害局長    石井 賢吾君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         運輸大臣官房総         務審議官    西村 康雄君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         郵政省電気通信         政策局長    小山 森也君         郵政省電気通信         政策局次長   富田 徹郎君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       守屋 孝一君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         自治大臣官房審         議官      田井 順之君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    中島 忠能君         自治省行政局選         挙部長     岩田  脩君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         会計検査院長  鎌田 英夫君         会計検査院事務         総局次長    佐藤 雅信君         会計検査院事務         総局第一次長  西川 和行君         会計検査院事務         総局第四次長  磯田  晋君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十四日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     伊吹 文明君   武藤 嘉文君     金子原二郎君   村田敬次郎君     北川 正恭君   田邊  誠君     井上 一成君   佐藤 祐弘君     藤木 洋子君 同日  辞任         補欠選任   伊吹文明君      相沢 英之君   金子原二郎君     武藤 嘉文君   北川 正恭君     村田敬次郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  最初に、委員長から防衛庁長官並びに建設大臣に御注意を申し上げます。本委員会予算総括ということで、一刻の猶予も許されません。時間を厳守してください。厳重に注意申し上げます。  この際、昨日田邊君が質疑をされました防衛費の対GNP比一%枠の問題について、総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根内閣総理大臣
  3. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 昭和五十一年の三木内閣防衛費に関する閣議決定方針については、これを守ってまいります。
  4. 田邊誠

    田邊(誠)委員 いまの総理発言によりまして、防衛費GNP比一%の歯どめについては、これを中曽根内閣は守る方針を確認をされました。  今後いろいろな事態の変化がございましょうし、給与改善等の措置が講ぜられる予測もございまするけれども、その事態におきましてもいまの方針を堅持して、貫いていただくことを心から要望する次第でございます。  引き続き質問を続けさせていただきますが、私の持ち時間が非常に少なくなってまいりました。したがいまして、各般の問題について質問を展開する予定でございましたけれども、残念ながらそれができ得ません。したがいまして、以下申し上げる諸点につきましては、私の主張を一言ずつ申し上げまして、同僚議員質疑に譲らしていただくことをお許しをいただきたいと思います。  第一は、日本農業を守り、農民生活の向上を図るために、農産物の輸入枠拡大の最近の政治折衝に対しては、政府は毅然たる態度をもって安易な妥協をすべきでない、このことを特に申し上げておきたいと思います。  第二に、との国会における重要な課題でありまする教育改革についても総理論議をいたしたかったのでありまするが、恐らく時間的にできないと思うのでございまして、非常に残念でございますが、教育改革につきましては、あくまでも政治的な介入を排して、国民各階層による広く深い論議を起こして国民合意を得ることが何より大切である、このように考えておるわけでございまして、その点に立って今後対処していただくことを強く主張しておきたいと思います。  第三番目に、行政改革については、本国会に出される予定の電電、専売経営形態については、国民共有財産たる事業の性格にかんがみまして慎重に対処されるように強く要望しておきたいと思います。  行革の立場から見て全くむだな支出を積み重ねてきた政治力船と言われる原子力船「むつ」の廃船を、この際予算審議を通じて明らかにすべきであると我々は考えております。  また、長期的な展望から見て必要な施策、例えば森林育成事業などについては、ただ単に独立採算制考え方というものから脱却して、将来を見渡した育成政策をとるべきであるということを申し上げておきたいと思います。  第四番目に、社会保障制度についても、実は私も長く社会保障制度の問題について検討をしてまいりましたから、総理の基本的な考え方をお聞きをしたかったのでございまするが、果たせません。どうか、社会保障制度については、財政が厳しい情勢であればあるほど国民的ミニマムをつくって、公正な国民の負担の確立と将来の不安をなくすような方針を確立すべきである、このように考えておりますので、そのことを申し添えておきたいと思います。  以上の諸点につきましては、同僚議員を通じて逐次質問をさせていただきたい、このように思っておるわけでございます。  それでは、時間の許す範囲におけるところの私の最後の質問をさせていただきたいと思います。  総理、これをちょっと読んでいただきたいのでございます。――いま総理のお手元に参考までにお渡ししましたのは、総理御存じだと思いますので委員長を通じてやりませんでしたけれども、お許しをいただきたいと思います。よろしいですね。
  5. 倉成正

    倉成委員長 よろしいですが、委員長もいただきたいと思います。
  6. 田邊誠

    田邊(誠)委員 ああそうですか。委員長にもちょっと……。
  7. 倉成正

    倉成委員長 それじゃよろしいです。進めてください。
  8. 田邊誠

    田邊(誠)委員 今年度の共通一次試験について、総理も何かこれを解いて二百点ぐらいとった、こうおっしゃっておりましたね、なかなかのできでございますが。  しかし、この「政治経済」の部に非核原則に関する問題が出題されていることを御承知と思うのでございます。実は、総理御存じだと思うのでおあげしなくてもいいのですが、この出題は、問題は四つございまして、第一は、「非核原則内容は、核兵器を「作らない」、「持たない」、「用いない」ことの三つを指す。」第二は、「非核原則は、部分的核実験停止条約批准に際して明確に示された原則である。」第三番目には、「自衛のための小型核兵器を持つことは違憲ではないが、主として非核原則により、政策核兵器を保持しない、というのが政府見解である。」四番目は、「米国軍隊による核兵器国内への持ち込みは、非核原則に触れないが、日米安保条約に基づく事前協議の対象となる、というのが政府見解である。」こう四つございますが、総理は、正解はいずれである、こういうふうに解かれましたか。
  9. 倉成正

  10. 田邊誠

    田邊(誠)委員 いやいや、それは総理がどう解かれるかということです。
  11. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非核原則はつくらず、持たず、持ち込まずでありまして、用いずとか書いてあるのは間違いでございます。持ち込まずであります。「非核原則内容は、核兵器を「作らない」、「持たない」、「用いない」」、ただいま申し上げたとおりであります。  「非核原則は、部分的核実験停止条約批准に際して」この点は、私、記憶が確かではありません。これは佐藤内閣のときに決められたもので、この部分核停条約批准に際してつくられたかどうか、昔のことでありますので、よく確認してみる必要があります。  それから、日本防衛上、他国の脅威にならない戦術的核兵器は持つことができる、そういう解釈は成り立ち得ると思いますが、非核原則を堅持しているというところから、それは行わない、そういう解釈であるかと思います。  それから、米国軍隊持ち込みも、我々は非核原則に触れる、そう思います。
  12. 田邊誠

    田邊(誠)委員 あなたならどれが正解だとお答えになりますか。
  13. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま申し上げたのが正解であります。いまこれを見てみると、当たってないのも幾つかあると思っております。  まず、①は間違っております。  それから、②は部分的核実験停止条約のときつくったかどうかは、これは佐藤内閣のときにつくったということはよく知っていますけれども、それを機縁でつくったかどうか、私は余り記憶がはっきりしておりません。  それから、小型核兵器の問題というのは、それは防衛上の戦術的核兵器については、理論上は持つことができるけれども、わが国は非核原則を堅持しているゆえにこれはやらない、そういうことであります。  それから、米軍による核兵器国内持ち込みは、もちろん非核原則に触れるから持ち込みは許さない、こういうことであります。
  14. 田邊誠

    田邊(誠)委員 どうも何番が正解であるか、正確な答えがなかったのですけれども、あなたは二百点をとったときには一体どこに丸をつけたのですか。
  15. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は共通一次テスト全般を見てやりまして、そして日曜の午前中がかってやってみたのですが、この部分で、どこをどう丸をつけたか、いまのところ記憶は定かではありません。ともかく、しかし、これはマークシート方式というのですか、問題が出てきておって、そして、どれをどこへ突っ込むかというので非常に難しい。初めてやった人間には、問題が与えられたときにどきまぎしちゃって解答を生み出す力が出てこないだろう。ああいうものは、ああいうものだけを年じゅうやって頭の訓練をしないと、これはとてもできるものじゃない。そういう意味でこの共通一次テストのやり方というものはどうだろうかという気がしました。
  16. 田邊誠

    田邊(誠)委員 とにかく、国の基本にかかわる非核原則に関するところの共通一次のテストの問題について、一国の総理大臣がこの四つ課題のうちどれに丸をつけていいかということについてちゅうちょされている。明確でない。これは大変なことですね。  文部大臣は、こういうような出題というものが高等学校教科書なり受験の参考書に一体おありなんですか。あるのでしょうか。私の調べたところでは、こういう種のものはございませんね。どんなものでしょうか。教えていますか。
  17. 森喜朗

    森国務大臣 私も大臣に就任いたしましてから、ちょうど共通一次実施されまして、その前に入るというのはいけませんので、終わりましてから入試センターに激励と慰労を兼ねて行ってまいりまして、問題の出し方というものをいろいろ教えてもらいました。それぞれの部門の先生方が三十人ぐらい集まりまして、大変難しい、皆さんが持ち寄って、期間をかけてやったものです。ですから、それが教科書の中のどこからどういうふうに出しておられるのかということも、なかなか私ども定かではございません。ただ、大体できるだけ問題を難しくしないように、難問、奇問にならないようにということでこの共通一次テストをやったのですけれども、結果的には問題がいつも同じような形になる。そうすると、あの問題はどこかに出ていたのではないか、あの問題はこの間の私立大学にあったのではないかというおしかりをいただくものですから、ついついやはりひねった問題にしなければならぬような感じになるのでしょうね。そういうところが今のような問題になるのだろうと思いますが……(田邊(誠)委員質問に答えてください」と呼ぶ)私自身も、今のような問題は、恐らく教科書の中から出されたものであるかどうかということは明確に承知をいたしておりません。
  18. 田邊誠

    田邊(誠)委員 時間がないから結論を申し上げますが、この四つの問いに対して正解は三番だというのですね、これは。しかし、総理が非常にあいまいにお答えをいただいたように、消去法で言うというと三番が近い、こういう感じを持つわけでしょうけれども、正解とするには私は大変な疑問があると思うのです。この問題は、今総理自身が言われたように、いわば法律論政治論として今日まで長く国会の中でも論議をされてきた問題でありまして、実はいろいろな観点から解釈が成り立つわけであります。  これの歴史的な経過について私がここでもって全部申し上げることは、これは避けたいと思いまするけれども、ずっと私、国会議事録を拝見していまするというと、憲法核兵器を保持することができるかどうかという論争、これは今日までまだなかなか明確でないと私は思うのです。一番最近では、五十三年二月のこの予算委員会で、憲法上防御的なら小型核兵器は持てるということの答弁防衛局長がいたしましたね。ところが、その後外務委員会園田外務大臣は、核兵器小型、大型であろうと憲法からいって持てないと答弁をしたのであります。これは五十五年の八月の十九日に、伊東外務大臣が同様だと実は答弁して、これを裏づけておるのでございます。ところが、この五十三年以降、政府統一見解として、憲法九条二項の解釈として必要最小限度範囲核兵器を保持することを禁止していないという解釈をとったのでございます。しかし、これはどうしても無理な点があるのです。これは無理な点がある。  そこで、私はまず総理お答えをいただきたいのですけれども、当時法制局長官は、それならば憲法九条二項によってこれは核兵器は――おい、ちょっと待って。人の質問総理は一生懸命聞いているのだから。  いいですか。これが一番重要なんだ。憲法九条二項によって核兵器は持てないという解釈をすることはできないか、これは歪曲した解釈かと言ったらば、それはそういう解釈も成り立ちましょうということを、実は当時の法制局長官は言っておるのです。ですから、これは解釈は両論あるわけです。したがって、例えば政府がかわって、憲法九条二項によっていかなる核兵器も保持することができないと解釈することは憲法を歪曲して実は解釈したことにならない、こういうふうに当時の記録からいって実は法制局長官は言っていると思うのですけれども、その点、総理はどうお考えでしよう。
  19. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法第九条の解釈憲法解釈とそれから法律上の解釈と二つ考える必要がある。憲法第九条の解釈におきましては、自衛権を有効に行使する、必要最小限度自衛力範囲内には、攻撃性を持たないいわゆる戦術的核兵器は持つことができる、憲法上は許される、そういう解釈法制局は来ていると思うのです。ただし、我々は非核原則という原則を持っているがゆえに、そういう戦術的核兵器も持たない、そういう政策選択を行っている、これが今までの法制局解釈であり、政府のとってきた考え方である、そのように思います。詳細は法制局長官から御答弁いたします。
  20. 田邊誠

    田邊(誠)委員 いいです、法制局長官に今お聞きしますから。  これは五十三年の三月二日の衆議院内閣委員会において、当時の真田内閣法制局長官は、憲法九条の解釈としては持てるというのが現政府のこれは一貫した考え方である、しかし、持てないとする解釈があることは認めるのであるが、最終的な判断は最高裁が示すべきである、こういうふうに実は述べているのですね。ですから、現政府は九条二項によっては持てる、しかし、核防条約批准しており、非核原則を国是としている現政府としては、これは核兵器は持たないのだ、こういうふうにあなたの方は言っておらっしゃる。歴代の内閣は言ってきた。しかし、それと違った解釈をすることがあり得る、それは最終的には最高裁の判断だ、こういうふうに、実は当時の法制局長官は言っているわけですね。ですから、そのことは今日も変わりないだろうと私は思っている。何か法制局長官、意見ありますか。簡単でいいですからね。
  21. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  先ほど総理の御答弁にもありましたように、政府の一貫した解釈といたしましては、核兵器の保有ができるかどうかということは九条二項の解釈にかかるわけでございまして、九条二項で保持を禁止されているのは自衛のための必要最小限度範囲を超えるものである、その範囲にとどまるものであれば、通常兵器といえどもまた核兵器といえども、これを保有することはできるというのが前々から繰り返し政府が御答弁を申し上げているところでございます。  ただいま御質問のありました真田政府委員、当時の真田法制局長官の御答弁につきましては、その後参議院の予算委員会でも問題になりまして、その際に、政府から明確な統一見解を示しておるところでございまして、その内容は、ただいま総理並びに私から御説明を申し上げた点と一点も変わるところはございません。
  22. 田邊誠

    田邊(誠)委員 そこで私は、これは憲法九条二項によっても核兵器は持てない、こう解釈するのが正しいと思います。唯一の被爆国であり、核に対しては憎み、恐れているところのこの日本国民にとって、核兵器は持てるというふうな、こういう認識を持つことは基本的には誤りである、こう私は思います。しかし、現政府がとっている態度に保ついては、御説明があったのでわかります。  しかし、総理、それで今日ただいま核兵器は持ちませんね。これは憲法上持てませんね。今日ただいま持てませんね。
  23. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非核原則を我々は堅持しておりますから、持ちません。
  24. 田邊誠

    田邊(誠)委員 これは核防条約批准しているわけですから、憲法九条の規定によって現在持てないのです。そうでしょう。
  25. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 核防条約にも入っておりますし、原子力基本法におきましても持たない、持てない、そういうふうに法律上規定しております。その上に非核原則があります。そういうわけで、持ちませんし、持てません。
  26. 田邊誠

    田邊(誠)委員 まだそこのところ辺は答弁としてはあやふやな点がありまするけれども、現在のところはこれは持てないということが明確になつだろうと思うのでございまして、自衛のための小型核兵器を持つことは違憲でないと言い切れないのであります。したがって、この共通一次の試験のように全く総理自身もそれに対して答えを出せないような、こういう出題をすることは私は大変これは間違いである、こう思っておると同時に、国民の認識を誤らせる、こういうことからいってもこの出題は適当でないというふうに考えますが、その起因するところは、やはり政府の今日までこの問題に対してとり来ったところのあいまいな態度にあるということを私は言わなきゃならないというように思っておるわけでございまして、この際、ひとつ総理としては、今私が申し上げた点、それから総理から今お答えがあったように、今日において日本の国は核兵器は持たない、持てない、この点に対してもう一度お答えいただきたいと思います。
  27. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 田邊議員がおっしゃいますように、法律により、また非核原則により持ちませんし、持てません。
  28. 田邊誠

    田邊(誠)委員 まあ法律という言葉があるのでいささかひっかかりまするけれども、私どもとしては私の主張というものをよく御理解をいただきたい、こう思っております。  次に、最近米国の海軍省が政府刊行物として出版をして三年前に完結をした米海軍軍艦事典によりまするというと、一九五九年から一九六四年の間に戦略核ミサイルを搭載した通常型潜水艦が横須賀港に四回寄港している、こういう記載がなされておるわけであります。これがその軍艦事典でございまして、日本の国立国会図書館に原文があるわけでございますが、これによって実は記載をされておることを、私はここで申し上げておきたいと思います。  そこで、この潜水艦はいずれもレギュラスⅡ型海対地ミサイルを搭載しているということを書かれています。このレギュラスⅡ型ミサイルという兵器は核専用兵器である、こういう認識は間違いありませんね。
  29. 北村汎

    ○北村政府委員 お答え申し上げます。  御質問のレギュラスⅡ型ミサイルは、核の専用であったということでございます。
  30. 田邊誠

    田邊(誠)委員 明確になりましたように、このレギュラスⅡ型核専用のミサイル、この兵器を搭載した潜水艦が横須賀に入港しておった、この事実は政府御存じでございましたか。
  31. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいま田邊委員から御指摘のございました米海軍事典の記述に御指摘のようなことが書いてございました。私ども政府といたしましては、米国との間には日米安保条約に基づく事前協議の制度というものがございまして、核の持ち込みというものは事前協議なくしては行われないということで確信をしておりましたので、こういう事実があり得ないと思っておりましたので、これはアメリカ政府に対してこの記述について照会をいたしました。そこで、アメリカの方からこの記述について次のような回答が私どもに寄せられましたので、ここで御報告さしていただきます……
  32. 田邊誠

    田邊(誠)委員 ちょっと、質問だけ答えてくれ。
  33. 北村汎

    ○北村政府委員 その結果……
  34. 田邊誠

    田邊(誠)委員 質問だけ答えてくれ。
  35. 倉成正

    倉成委員長 簡潔に。ひとつ答弁してください。
  36. 北村汎

    ○北村政府委員 御指摘の点は、そういうレギュラスⅡを……
  37. 田邊誠

    田邊(誠)委員 事実を知っておったかどうかということを答えてくれればいいの。
  38. 北村汎

    ○北村政府委員 レギュラスⅡが――まず御説明しなきゃなりませんことは、ここに書いてある記述が正確であったかどうかという問題が一つございます……
  39. 田邊誠

    田邊(誠)委員 それは後で聞くから……。
  40. 北村汎

    ○北村政府委員 そこでまず、この記述についてアメリカ政府は、レギュラスⅡは実際には潜水艦グレイバックあるいはグラウラーに配備されなかった、この記述は間違いであったということを回答してきております。そこで、私どもはそういう事実はなかったというふうに承知いたしております。
  41. 田邊誠

    田邊(誠)委員 そういうふうに議事を妨害しないでもらいたい。私は、当時四回入った事実を知っておったかどうかということを聞いているのだ。
  42. 北村汎

    ○北村政府委員 グレイバック及びグラウラーという潜水艦が入ったという事実、そのことは当時の記録を調べてみましても政府承知をいたしております。しかし、それは核の持ち込みということとは関係ございません。
  43. 田邊誠

    田邊(誠)委員 時間をひとつきちんと守ってもらいたい、いいですか。  これは当時事実を知らなかったということですね。我が国の主権の及ぶ港に寄港したことについて知らなかったということは、一体どういうことでしょうか。(「いやいや、知っておったのだよ」と呼ぶ者あり)――知っておったの。もう一度聞きますよ、知っておったの。
  44. 北村汎

    ○北村政府委員 当時新聞報道等がございまして、政府もそういう潜水艦が寄港したということは承知しておりました。
  45. 田邊誠

    田邊(誠)委員 何年何月何日に、この四回は寄港しておったのでしょうか。
  46. 北村汎

    ○北村政府委員 政府といたしましては、アメリカ側から、グレイバック及びグラウラーが一九五九年から六三年の間に数回横須賀に寄港した旨がある、こういう説明を受けております。しかし、具体的にいつからいつまで横須賀に寄港したかということは承知しておりません。
  47. 田邊誠

    田邊(誠)委員 ですから、当時の寄港は知らなかったというのですね。これは確認をしなかったというのですね。ですから、非核原則の核の持ち込みというのは、これは事前協議の対象だ、事前協議があれば断ると、こう言ってきたのですけれども、これはやはり、政府の今までの表明というのは、私は虚構であるという一つの事実があらわれたんじゃないかと思うのです。  今、何か私の質問しないうちに、問い合わせたところがこれは事実と違うと。冗談じゃありませんよ、あなた。政府の刊行物として出されているところのこの事典というもの、これはもう三年前に完結をしているのです。そこにちゃんと書かれているこの記述というものが、何か問い合わせたら急に誤りだった。そんなことがあなた、認められますか。そういうことでもって事実を隠ぺいしようということが、私は大変な誤解を生んでいると思うのです。大変な疑惑を呼んでいると思うのです。ですから、たとえどのような部分を訂正しようとも、この寄港しておったという事実は私は覆すことができない、こう思いますね。今までも政府は、ラロック証言やライシャワーの発言等を私人の発言といって片づけてきた。今回は、事実こういったアメリカの政府の刊行物に核の寄港というものが明確に載っておる。これをまた問い合わせて事実を隠ぺいしようというような態度というものは許されるだろうか、こういうふうに私は思うのです。  総理、そこで、これは世論調査では、核兵器持ち込みは守られていないと実はみんな国民は思っているのですね。ですから、政府は今まで、いや、持ち込みはなかったというようなことを盛んに言っておりまするけれども、事実はもうどんどんと持ち込まれている。そして、いよいよトマホークが今度は太平洋艦隊に配備をされることが事実上決まっている。こういう状態ですから、これはどんどん来るのですよ、核の搭載の艦船が。  これを、今までのように事前協議の対象になる、断る、あるいは日本の国の領海外でもってこれをおろしてくる、アメリカの言っていることを信用するというだけでは済まないのです。そうなってくれば、どんどん断らなければならない、核を搭載しているところの艦船が来るというのだったら、どんどん断らなければならない。そういうことは安保条約を形骸化することになりますよ。効率的な運用を阻むことになります。アメリカのいわば戦略にも大きな支障を及ぼす、こういう結果になるわけですよ。そんなことができますか。これから先の政府の対応というのは、そんな当面を糊塗するごまかしではどうにもならぬところに来ているんじゃないでしょうか。この点に対してひとつ国民にわかりやすく説明していただきたいというふうに思うのですけれども、どうでしょう。
  48. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 例えば、夏ごろにニュージャージーが入ってくるという新聞情報がございます。ニュージャージーはトマホークを装備するであろうと伝えられております。しかし、トマホーク装備の場合には核・非核両用のものがあり得る、そういうことにも報ぜられております。ニュージャージーが仮に将来入ってくるというような場合には、その辺につきましてはよく確認をいたしたい。そして、非核であるということで我々は入港を認める、そういうことにいたしたいと思います。
  49. 田邊誠

    田邊(誠)委員 もうトマホークは、核抑止の立場から存在を隠さないというところに特徴がある、こういうふうに我々は承知しているのですよ。堂々と核搭載の艦艇というものが名前を明らかにしながら入ってくる、こうなった場合に、従来のような一々全部断るなんということは通用するはずがない。これはもう世界的な常識ですね。ですから、いま総理が言うように一つ一つチェックして、いや、これは核を搭載しているから断りますよ、領海外でもっておろしてきてくださいよというようなことは通用しないのですよ、実際は。ですから、私どもとしては、そういった今までいわば虚構の上に虚構を重ねてきたこの状態というものをこの辺でもってきちんと整理をして、本当にこの持ち込まずということを守るということであれば、それだけの政府のやはり決意と心構え、対応が必要である、こういうふうに我々としては考えておるわけであります。  時間が大変ないので残念でございまするけれども、これは承知していますか。アメリカの政府は今まで、核兵器の存在については軍の機密上との国に対しても肯定も否定もしないという基本方針をとってきた。しかしNATOの諸国に対しては、一九六七年以来、国防長官から関係国に対して年次書簡の形でもって、核兵器の型、数量、爆発力及び配備場所を詳細に情報として知らせているということ、これを言われておりますけれども、政府はこれを御承知でございましょうか。そして、これはNATOだけでなくて、日本に対しても同様ではないでしょうか。これは国民に対してはいわばアメリカの政策だと言ってきたけれども、今までは、核の有無についてその存在というものを明らかにしないというアメリカのいわば政策によって、問い合わせてもむだであるという態度をとってきたけれども、今このNATOと同様の立場に立つと言われるところの日本にとって、こういった形だけでもって押し通すことは、これはもうその根拠は崩れたと言わざるを得ないと思いますけれども、いかがでございましょう。
  50. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいま田邊委員が御指摘になりましたのは、一九七三年にアメリカの上院外交委員会のスタッフがつくった報告書の中に書いてある記述を御引用なさったと思います。このことにつきまして、私どもは、これはアメリカ政府の資料ではございませんので、アメリカ政府見解を照会いたしました。で、アメリカ側からの説明を得ておりますので、御説明をさせていただきます。  アメリカ側は、これは米国がみずからの核兵器を配備しております一部のNATO諸国に対しましては、これらのNATO諸国との共通の核戦力の調整あるいは立案などに必要な範囲内におきまして、これら諸国に配備されております米国の核兵器の具体的な所在などについて、極秘のベースで情報を提供しているというふうに承知しております。  ところが、他方、我が国のことについて先生御指摘なされましたが、我が国は非核原則を堅持しておりまして、我が国にはアメリカの核兵器は存在いたしません。これら一部のNATO諸国の場合のような共通の核戦力あるいはそういうものを調整する、立案するというような問題もございません。こういうような我が国と、それから、みずからの領域にアメリカの核兵器の配備を認めておるそういう一部のNATOの諸国とを、同一の次元で論ずることはできないものであると思います。
  51. 田邊誠

    田邊(誠)委員 最後に、イギリスの核搭載空母インビンシブルの寄港については、石橋委員長質問に対して正確にお答えをいただいておりません。それで、このイギリスやフランスなどの安保条約がない、事前協議がない、こういった国の核搭載艦船というものが、これら一般的に認められておる船舶が、その核の存在を明らかにしないままに我が国に寄港を求めてきた場合には、一体どのように対処されるのでしょうか。事前協議はありません、これは。どうしましょう、総理
  52. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一般的に、友好国等における軍艦等が友好訪問するという場合には、我々の方の練習艦隊も友好訪問しているわけでありますから、相互主義等に基づいてそれを歓迎して、認めておるところでございます。  それで、インビンシブルにっきましては、オーストラリアにおきましてドックに入れるとか入れないとかいう問題が起こりまして、疑念が生じました。そこでイギリスに対して、我が方には非核原則という原則がありますよということを念のために通知いたしました。英国側は運航計画を変更した由で、日本には来ない、こういうことになりました。  将来、友好国あるいはそのほかの艦船が日本に来るという場合には、そういういろいろな点につきまして情報等をよく調べて注意していきたいと思っております。
  53. 田邊誠

    田邊(誠)委員 ですから、核の存在を明らかにしないけれども、例えば外国の艦船で、ジェーン年鑑等でもってこの船というのは核を搭載していますよ、こう言われているものがありますね。このインビンシブルもそうだったんでしょうけれども、それが来るということになった場合、しかし核の存在の有無を明らかにしない場合には、一体これはどうするのですか。ただ情報だけでもって対処するというわけにいきませんでしょう。何らかの措置が必要ですね。あるいは事前協議にかわるところの何らかの協議、こういうものが必要でしょう、当然。そうでなければ、これはあるかないかわからぬけれども、あるかもしれぬぞというときには、これはノーと言いますね。どうでしょう。
  54. 小和田恒

    小和田政府委員 お答えいたします。  田邊委員承知のとおり、一般に外国艦船が日本の港に寄港するに当たりましては、一般国際法上、我が国の同意が必要とされているわけでございます。したがいまして、先ほど総理から御答弁ありましたように、外国の軍艦が入ってくるに当たりまして、我が国としては、非核原則に基づきまして、核の持ち込みに当たるような場合には、これを拒否するという基本的な立場に立っているわけでございます。他方、入ってまいります友好国の軍艦あるいはその軍艦の所属しております友好国の立場からいたしますと、我が国が非核原則を厳守しておる、堅持しておるという立場は周知しておるわけでございますので、先方としてはそのことを前提にして我が国に対して寄港を求めてくる、こういうことになるわけであります。
  55. 田邊誠

    田邊(誠)委員 相手方がどう対処するかじゃなくて、我が方が一体どう対処するか。核の有無を明らかにしないところの艦船で、通例核搭載と思われるところの艦船というものが日本に来る場合には、これは明確にやはり核が搭載をされている危険があるとすればノーと言わなければならない、そしてまた、事前協議に類するようなものをつくらなければ安心できないでしょう。そういった点に対して政府はやはり明確な対応というものを示さなければならない。こういったことに対してあやふやな態度をとってきていることが、これは国民に対して大きな疑惑を生み、非核原則は守っていかなければならぬぞという国民の八〇%の世論があるけれども、また反面において、核の持ち込みは事実上あるのではないかという疑いを持っている国民もまた八〇%もある。このことは、政府の今までの対応を国民は信頼をしてない、こういう立場だろうと私は思うのです。  ですから、そのことに対して、やはり国民が真に安心をし、政府の言っていることを信頼できるような、そういう明確な態度というものを特に核の問題についてはとるべきではないかということを私は考えておるわけでありまして、今後の政府のこれに対するところの明快な態度を求めながら、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカとのような日米安保条約を持たない友好国の軍艦の来訪に際しまして、もしその軍艦等が核兵器を保有している疑いが濃厚である、そういう場合には、もちろん我が国は、非核原則を持っておることを先方に知らせまして、そして協議をする、そして事情をよく聞いてみる。しかし、我が方においてその疑いが消えない、非常にそういう危険性があるという場合には、もちろん拒否いたします。
  57. 倉成正

    倉成委員長 これにて田邊誠君の質疑は終了いたしました。  次に、三塚博君。
  58. 三塚博

    ○三塚委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、総理初め関係大臣質疑を申し上げたいと思います。  まず政治信頼の問題でありますが、政治信頼は議会制民主主義の根本原理でございます。国民と議員、そして国会との信頼関係が万全でありますときに議会政治は花咲くと言われております。かような観点から、昨年の総選挙、自由民主党はその審判の中で手痛い審判をちょうだいをいたしました。総理は、謙虚に受けとめこれに対応すると言われておるわけであります。すなわち、本問題は、第百国会における田中元首相の辞職勧告決議案、これをめぐる我が党に対する国民の信頼、審判というものは、極めて明確でなかったことにあるというふうに思います。もちろん本問題は、憲法上、国会法上、辞職勧告決議案というのは疑義のありますことは、国民の多くも知られておるところであります。公選によって選ばれる、そのことの決し方は議会制民主主義の選挙でありますということにもあるわけであります。  さはさりながら、民主主義の根本は前段申し上げましたとおり信頼関係であります。同時に、国民のサイドは、政治家に対して高度の道徳性というものを求めるものであります。政治家集団、聖人君子ではございませんからパーフェクトなものではないわけでありまして、これも国民は要望いたしません。しかし、政治家は、政党はこの道義に近づく努力を全力をもって行っておるというときに大変安心をしていくのではないだろうか、このように思うわけであります。  第百国会における本決議案をめぐり、我が党の中におきましても、全党の中で、特に若手中堅の中に、本問題についてかくあれということで、それぞれの提案が党の幹部になされたことは、総理もお聞き及びのことかというふうに思います。辞職勧告決議案が憲法上、国会法上重大な疑義があるといたしますならば、これらの若手中堅の中から出てまいりましたのは、一審有罪の場合はみずから自発的な形においてその職を辞するべきであるという、こういう決議を党決議として取り決めさせていただき、各党提示の中で国会決議ということをしたらいかがなものかという動きがございました。しかし、そういう中において国会は解散をされて総選挙へとスタートされまして、そのことの実を結ぶ時間的余裕がございませんでしたことは、まことに残念でございました。  総選挙というのは本来、政策を中心に、また国家の将来あるいは民族の将来についてのビジョンを掲げる、審判を受けてそれによって政治を行うということは御案内のとおりであります。ところが、先般の総選挙は、そういう観点からいいますと、政治倫理が前段に立ちまして、弁明をしなければならぬ、会見をしなければならぬというところに大変不幸なことがあったというふうに思うのであります。  かかる観点から、総理は、本審判を踏まえられまして党声明を発せられ、自由民主党を真に国民政党として信頼される政党に進めようということで御決意をされたことは当然のことであろうと思うのでありますが、どうぞ今後の中におきまして、この党声明のラインに沿い、我が党が清新な政党で国民の信頼を託するに足る政党に生まれ変わっていただきますように格段の御努力をお願いをいたしたいと思いますし、この点、総理の決意をまずお伺いをしておきたいと存じます。
  59. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三塚委員御指摘のように、選挙の結果を厳粛に、受けとめまして誠心誠意、政界浄化、倫理高揚のために努力してまいりたいと思っております。  御指摘の一審有罪の際の処理につきましては、本会議でも申し上げましたが、非常にこれは議会主義の基本に係る重要問題が入っておりまして、私も実際はまだ判断を決しかねておる、もう少し専門家の意見をよく聞いてやってみたい。  私たちが今まで教えられた範囲内では、議会主義における今までの扱いというものは、要するに、議員は院内における発言、行動については外で責任を負わない、院内の行動については責任を負い、それは懲罰事犯その他で処理するということであります。  これはどうしてそういう文章になっていたかというと、政府がややもすれば警察権力等を使って、反対党の議員や政敵をひっくくってしまって、そして、ある意味においては政治裁判等にかけて、そして一審有罪というふうに持っていって、それで議会から反対派を駆逐しよう、そういうようなことが西欧の民主主義において過去に若干ありました。そういうような弊害がここで起こっては大変だというので、政府権力に対して議会が身を守ろうという意味から、院外においては責めを負わない、そういう規定になっておったわけであります。  今度、そういう一審有罪の場合にいろいろな議会から放逐できるようなことを法律で決めるという段階になると、民主的政府の場合はいいのですけれども、政権が堕落したり独裁的になってくるという場合には、議員の身分が必ずしも保障されない危険性が出てくる。そういうような面から恒久的に、議員の身分の保障という問題は、この議会政治成立以来、議員が非常に苦労して自己防衛をやってきた、その成果が今のような形になっているわけです。これを崩すということになると、今は政治倫理、政治倫理ということで非常に重要視されておりますが、またそれは正当なことでありますけれども、しかし一転して時代が変わったら、今度は政敵をひっくくるために使われやしないかということも考えなければならない。  しかし、時代の流れはとうとうとして流れてきて、いや、そういう問題もさることながら、それ以上に倫理性が要求されてきて、議会の内外を問わず政治家は自分たちで責任をとらなければならぬという議論も出てきておるわけです。これは、時代の流れとともに議会政治に対する認識も変化しつつあるわけであります。例えば破廉恥罪をやった場合に、そのまま便々として議会に出てこれるか。そういう者については、例えば登院停止であるとか、除名にしないにしても議会活動を停止するという措置をやったらどうか。あるいは、懲罰規定の中には議院の品位保持というところがございます。そういうような破廉恥罪をやった者は品位の保持に反するではないか、そういう解釈でやれることも可能ではあるのではないか、そういうさまざまな議論がこれから沸いてくると思うのです。  そういういろいろな議論を実は沸かせていただいて、そして専門家の学者の意見等もよく聞いて、最終的に議員がみんなで判定を下そう、そういう立場でおるということを申し上げる次第であります。
  60. 三塚博

    ○三塚委員 総理の議会政治家としての心構えの中で、今後の二十一世紀に向けて、この政治形態が今日におけるベストなものであるわけでございますから、御堅持をいただくよう、私どももそういう中で拳々服膺しながら、自粛自戒をしながら進んでまいりますことを申し上げ、次に進まさせていただきます。  教育改革の問題でございますが、大変教育の問題は、全国民的といってよいほどの広がりを持つに至っておりますことは御案内のとおりであります。  そこで、ずばり教育臨調という言葉もあります。しかし総理からは、そうではなく新しい機関の中でこれに取り組んでまいりたいという御趣旨が言われておるわけであります。  そこで、七つの構想も存じ上げております。これも昨年の当初から、そして参議院選挙の際に総理教育改革へのビジョンを打ち上げられた、その集大成として十二月に、総選挙の際に七つの構想が出された経過も存じ上げておるわけであります。  そういう意味で申し上げるわけでありますが、我が国の教育の改革は、明治五年、明治政府が先進諸国、特に植民地主義の逆巻く中におきまして、自主独立の国民をつくり上げていこうという明治の先輩の非常な苦労の中に、日本の教育制度ができてまいりました。これが第一の改革であります。  御案内のように、第二の改革は敗戦と同時に、明治五年を内なる改革と、いますならば、この戦後の改革は外なる改革でありました。好むと好まざるとにかかわらずそういうことであったのでありますが、我が日本人は英知の限りを尽くしまして、これを日本的なものに変える努力をしてまいりました。中教審も、このことについて全力を尽くしてこられたように思います。四十六年六月の中教審答申、我が日本の進むべき教育の方向を示してきたわけであります。そういう積み上げの中にありまして、新しい機関を設置せずともこれらの積み上げの中で、国会、特に自由民主党文教、この問題の中に心血を先輩の諸氏の間から今日まで注いできた。野党の中にも、この問題について真剣にやり抜いてきた政党もあるわけであります。その英知の結集と合意の中で進めてしかるべきであるのではないだろうか、また、できるのではないだろうかという意見もあるわけでありますが、この機会に、あえて新機関の中で行わんとする総理の決意をお伺いをいたします。
  61. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 教育の問題は非常に重要な国家百年の計でございますから、過早にこれを行うことはあくまで避けなければならぬと思っております。  基本的立場は、やはり教育基本法、憲法、これらを基準にして行う。それから、いままで文部省が中教審を中心にいろいろ研さんしてまいりましたいろんな御案がございますが、私も、これらをひもといてみまして、非常に立派な内容のものもございます。それらの蓄積をやはり活用さしていただくべき問題ではなかろうか、そう思っております。我が党におきましても、灘尾先生のとき以来、文教関係の熱心な議員の皆さんに非常に御努力いただいて、独特の教育体系を築き上げて今までもやってきたわけで、これについては非常に敬意を表しておる次第でございます。  しかし、最近の事例を見ますと、一文部省の手に負えないような教育の広がりが出てきております。たとえば幼保一元化というような問題、いい悪いは、別として。保育園と幼稚園の関係は、どうつながりが出てくるのだ。保育園は厚生省である、幼稚園は文部省である、そうすると、文部省の届かない分野の問題が出てきております。あるいは、高齢化社会になりまして、課長とか部長とか国際関係をやってきた立派な方々が、退職された後、先生になってもいいじゃないか、そういう円熟された方の方が先生に向いている場合があるじゃないかというようなことになりますと、これも文部省の領域を越えた、あるいは労働省であるとか通産省であるとか、そういう主管の高齢化対策の分野にも出てまいります。それから生涯教育、社会教育という面になりますというと、これはもう全省を挙げての仕事になってまいります。  そういう意味で、一文部省の領域を越えた広がりを実は持ってきている上に、教育の問題とは何ぞやということを見ますと、実際は、現代文明の、あるいは病んだ文明の結果からそういうものが出ている部面もなきにしもあらずであり、社会構造からこういう子供たちが生まれてきているという問題もあって、必ずしも子供たちが悪いんじゃない、社会が被告じゃないか、子供は原告になるかもしれぬ、そういう部面も実はなきにしもあらずでございます。  そういう全般を考えてみると、これはもう文部省だけでは手に負えない、それから自民党だけでやるべき筋のものではない、むしろ国会全体、国民全体の広場にこれを持ち出して、全国民の御支援、全会派の御協力のもとにこの問題を、労働組合の皆さんの御協力もいただいて、そしてこの問題をその広場に持ち出してみんなで議論して、そしてみんなで判定をしてこっちへ行こうじゃないかということを決める、それが正しいやり方である、そのように考えまして、これは結局総理府、総理大臣の諮問機関という形にした方が全内閣をカバーできる仕事になると思いますから、そういうふうにいたしました。  中教審との関係につきましては、今申し上げたように、今までの蓄積というものはあくまで尊重すべきであり、かつ教育の主管省は文部省でございますから、文部省がこれはやはり当然その事務局の中枢になって運営していただく。中教審との関係は、文部大臣及び文部省においてこれを調整していただくのがよろしいだろう、そのように考えまして出発したい。  特に先般の党首会談におきまして、各党から教育に非常に御熱心な発言がございました。そしてその有力な各党の中に、これは全国民的レベルでやりなさい、一自民党だけの問題ではない、一文部省だけの問題ではない、今や全国民的な広場の中で、国民的支持、関心のもとにみんなの協力を求めてやるべきだという強い御提言がございまして、それらの野党の党首の皆さんの御議論もこの際受け入れさせていただいて、今のような発想に持っていったわけでございます。
  62. 三塚博

    ○三塚委員 まさに総理答弁を聞いておりまして、きょうの質問要旨の中にも、教育基本法十条の関連についてお伺いをするというふうにいたしておったわけでありますが、見解の中に、教育の持つ重要性、教育の持つ広がり、また教育というものは子供が中心であり、また社会が全体であるという意味の構想が明らかになりました。  そこで、この新機関でありますが、名称はただいま検討中であろうかと思います。もしその名称が決まっておるのでありますれば教えてほしいし、また行政組織法三条と五条、八条がございます。これは八条機関として行われるのか、それとも三条なのか、この点についてお答えをいただきます。
  63. 森喜朗

    森国務大臣 新しい機関を設置をしようという考え方については、ただいま総理から申し上げたとおりであります。  組織あるいは運営その他につきましては文部省を中心に今検討いたしておるところでありますが、総理が諮問することによりまして、今総理からも申し上げたとおり、国民的なすそ野の広い広がりを持つ議論を展開をしていきたい。今、教育を何とかしなければならぬという声はどの国民の中からも出てきていることでもございますので、この機会にできるだけ多くの皆さんの御議論をちょうだいをしたい、こういうふうに考えておりますので、八条機関として、総理の諮問機関として総理府の中に設置はいたしますけれども、しかし事務的にも文部省を中心に、また教育のことでございますので、文部大臣として責任を持って進めていきたい、このように考えております。
  64. 三塚博

    ○三塚委員 八条機関ということが明確に相なったわけでございますが、そこで八条は、第二臨調がまさに八条でございました。そういう意味で、八条がいみじくも教育臨調かな、こういうふうな言い方でありますけれども、前段の総理答弁によりまして、そうではない、国民的な広がりの中で、国民的な合意を得つつということであったわけでございますから、その点は、私ども教育を担当してまいりました議員の一人として、むべなるかなと存ずるわけであります。  ここでさらに、文部大臣というよりも総理だと思うのでありますが、総理大臣の諮問機関であります。本来、総理大臣がその主管大臣。しかし、実務、これを担当する大臣は、国鉄監理委員会法が制定をされました折に――さはさりながら閣議了解の中で文部大臣にお願いをする、こういうことになる。事務局は総理府に置かれるのでありますが、やはり教育の積み上げの中で本問題に一番精通をいたしておる文部省に事務担当を行わしめる。しかし、総理が指摘をされましたような広範な問題を含んでおります問題でありますから、各省の諸君がこれに参画をすることも予想をされるわけであります。  さて、そこで人選でありますが、総理の専管事項に私が立ち入るつもりはございません。そういう観点で、委員の数あるいは人選のポイントをお聞かせをいただけますれば大変幸いだという意味で御質問を申し上げるのでありますが、第二臨調は行政改革という制度の問題、補助金整理に見られますように、効率的で小さな政府、合理的な政府、こういう意味の問題に突入をいたしました。物と金に取り組んだ。まさにそういう意味で快刀乱麻といいますか、これをやり抜くという意味で格好の題材であったと思いますし、政治であったというふうに思います。ところが、教育というものは心の問題であります。精神文化の問題であります。二十一世紀に向けた人づくりの問題であります。百年の大計と言われるゆえんはそこにあるわけでございますから、そういう意味でまさにこの新機関というものはそこにポイントを置かれ、進められていかなければなりませんし、そういう。意味で、第二臨調は二年の時限法でございましたが、この設置法はどれぐらいのサイトを見ておられるのか。今総理が言われました緊急性の問題があります。入試の問題、あるいは少年非行の問題、後に触れさしていただきますけれども、こういう緊急に解決を要さなければならない問題、学制改革のように膨大な財政を伴う問題、あるいは精神、文化の問題、こういうロングの取り組みを要請される問題等々があるわけでございますが、そういう意味でこの新機関の法律の年限というものにもお答えをいただけますならばと存じます。
  65. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 またこれは決まっておりません。ただ、申し上げたいのは、これは行政改革とは違う、だから新しい機関を教育臨調と呼ぶことは不適当であると前から申し上げておることを強調したいと思うのでございます。  今の三塚さんのお話のように、行革は簡素効率的な政府をつくるというので、政府が自分で直接自分の仕事をばりばり身を切っていくという仕事でありますけれども、教育の問題はそういうことじゃなくて、子供や社会の心の問題に関する問題でありますから、政府が直接自分でばっさりばっさりやるという問題と性格が違ってまいります。もちろん文部省の権限は、一面においては、この大学以下の学制について調査し企画するという権限がございますから、そういう法律を提出して学制全体を見ていくという、あるいは文化や学術の問題を見ていくという文部省固有の権限がございますが、しかし今度は、義務教育あるいは高等学校の教育というようなものは、知事さんあるいは県の教育委員会あるいは市町村の教育委員会、これが管理者で、責任者でやっていくわけで、文部大臣は指導助言するというだけで直接性はないわけでございますね。そういう意味におきまして、いわゆる臨時行政調査会がやっているような行政改革とは性格が非常に違います。そういう意味において、そういう教育の特殊性を十分考えた審議機関をつくるのがよろしいだろう。  しかも、全省的広がりを持っていると申しますのは、例えば子供の非行化防止という問題には、やはりこれはテレビの影響という問題もあるでしょう。非常に俗っぽい、どぎついテレビが出てきたり、あるいは映画館の看板や広告とか、あるいは雑誌とか、そういうようなものについても、それは考えなければならぬ場合もあると思うのです。これも文部省の領域を越えて、ほかの省、全体の仕事にもなりますし、あるいは今度は学生をどういうふうに育てるかという場合には、就職先の方の企業や経済団体がどういう人間を欲するか、どういう地位を求めるか。学歴社会というような面で来るのか、実力で来るのか。そういうような財界の、人を求める方のものをたださなければならぬという問題も恐らく出てくるだろうと思います。そうなると、これは文部省の問題だけではない。そういう意味におきまして、内閣全体を挙げて総合的にやろうということでありますので、今のような文部省の枠を越えた広がりを持ったものにしたい。  しかし、じゃどれぐらい時間がかかるかといいますと、恐らく今の共通一次テストの問題とかあるいは偏差値の問題であるとか、そういう問題は急を要する問題であって、これらは中間答申をしていただいて、早くやれるものは早くやった方がいいと思っておりますが、六・三・三・四制ということになると、基本的な部面をよく洗って、勉強した上でやらなければいけません。これは相当時間がかかると思います。したがいまして、やはり今度できる機関はかなり、多少時間がかかる。臨調は二年でございましたけれども、二年よりもある程度長い時間をかけてやっていただくということが適当であって、どれぐらいでやれるかという見当は文部省が一番お知りだろうと思いますから、文部大臣や文部省の皆さんによく検討していただいて、その話を聞いて人選やあるいは時期の問題は考えてみたいと思っております。
  66. 三塚博

    ○三塚委員 そこで、文部大臣にお聞きを申し上げるわけでございますが、まさに総理の言われますような、じっくりとした取り組み方の中で取り進められる、大変教育の実態を踏まえた答弁であるわけでございますが、ここにやはり戦後教百改革の中で見逃してなりませんのは中教審であります。特に、わが国第三の教育改革と言われております昭和四十六年六月の中教審であります。  ただいま十三期が終わり、十四期目に入ろう、こういうことで新機関の構想、教育改革の壮大なビジョンが打ち出されておりまして、開店休業といいますか、一時人選をストップしておるように聞いております。ですから、新機関と中教審との関係は今後どういう形になるのだろうか。考えられますことは、一つは、そのまま御勉強をいただく機関として並行していくのか、第二点は、この際これは開店休業で見守っていただく。人選の話、あえて私が先ほどお聞きいたしましたのは、教育に練達をされました中教審のメンバーの中から当然、総理の構想のお話を聞いておりますと選ばれていくのではないだろうかというふうにも思いますし、またそうしてまいりますことの方が正しいような気もいたします。そういう意味で中教審との関係であります。  それともう一点、あなたは文部大臣として今最高責任を預かっておるわけでありますが、かつて自由民主党文教の中で仲間として日本の教育を語り合い、また改革を進めてきた仲であります。人確法あり、教頭法あり、新構想大学あり、私学振興助成法あり、時間がありませんから一々申し上げません。この中教審答申は当時、中教審路線と言われ、一部の野党及び日教組から激しく指弾をされた答申でありました。しかし、このことは正しい選択であったわけでありますから、私どもはあなたとともにやり抜いてきた歴史があるわけであります。そういう意味で、この答申を踏まえ文部省も、蛮勇を振るったとは言いませんが、文部省らしい地道な努力をしてきたようにも思うのであります。この教育に携わっておる文部省の諸君が、このことによってそごを来す、あるいは違和感を抱くというようなことはあってはならぬと思うのであります。議会制民主主義の中におきましては、教育基本法十条が、教育基本法がありますけれども、まさに国民の総意の中で選ばれていく、国民に責任を負うという形になるわけでございますから、総理大臣を中心に内閣が、政府一与党一体の中でこれに取り組むということに相なりますならば、そのことにやはり政府機関として御協力を賜らなければならぬ。一部いろいろなことも聞こえるのでありますが、その点について遺漏がないのかどうか、この点も含めまして文部大臣から答弁を願いたいと思います。
  67. 森喜朗

    森国務大臣 三塚先生から御指摘がありましたように、中教審は御承知のように、文部省固有の事務であります教育、学術、文化の基本的な事柄を審査して研究をする、調査する、この機関でございます。したがいまして、今度新しく総理の構想によってできます機関は、わが国社会におきます二十一世紀において一体どのような教育の制度が、どのような教育のあり方が最も日本の国にとってよろしいのか、こういう大きな大局的見地に立って検討を進めていくものでございますから、本来競合するものではないと私どもは考えております。  したがいまして、常々も申し上げておりますが、決してこの新しい機関はゼロから出発するものではなくて、いろいろな角度で検討をしたすばらしい中教審の答申がございます、これらを一つの集大成として、この基盤の上に成り立って議論を進めていく。あるいは総理のもとにございます、井深さんが中心になっていらっしゃいます文化懇、この日本の教育、学術、文化、大きな範囲の中でいろいろなお考えが間もなく取りまとめられると伺っておりますので、これを一つのペースとして、二十一世紀の日本民族としてふさわしい教育のあり方を、それぞれの権威の幅広い方々に御検討いただきたい、このように考えておりますので、中教審につきましては、その機関の構想あるいは性格あるいは人選にある程度の一つのめどがつきますまでは、しばらくの間はこれはお休みをいただくといいましょうか、もちろんこれからできますその新しい機関との関連はどのようになるものか、その点も十分考えながら進めてまいりたいと思っております。  もう一つ御心配をいただきました。これまで一生懸命にやってまいりました中教審、文部省、これをないがしろにするものではないか、このような御心配をいただいて、文部事務当局の責任を預かる私として、むしろ大変感激をいたしておるところであります。しかし、中教審で数々の答申をちょうだいをしてまいりましたけれども、幾つか申し上げましても、どうしても文部省一省だけでやりこなせない面というのが出てきております。三塚さん御承知のとおりでありまして、四十六年の答申に基づいていろんな角度で法律もつくってまいりましたし、制度の改善も進めてまいりました。しかし、例えば先導的試行というくだりがございます。あるいは、先ほど総理からちょっとお話がございましたが、いわゆる就学年齢、幼児教育の面がございます。四十六年の中教審の答申では、幼稚園の設置義務というものをはっきりと明示をいたしておりますけれども、どうしてもそこのところは、保育園の問題だけは文部省としては考えられない問題でありますし、幼稚園のことを厚生省として考えると言っても、これは無理なことでございます。  日本のこれからの将来を考えてまいりますと、いままでは大体人生五十年、六十年といいますが、もう七十年になってしまいました。進学率も幼稚園から大学まで大変ふえてまいりました。そういう中で、一体日本の教育体系や教育の年限はどの程度が一番いいのだろうか。こんなことも一つの考え方を示さなければならない時期が来ておる。教育は、あくまでも学問を追求していくということも大事でありますが、すばらしい人格を形成をしていくということもこれまた大事な柱になるじゃないか。しかし、学問と真理の追求をしていけばいくほど、どうも社会的にいろんな副作用が出てきているのじゃないだろうか、そのことが教育荒廃だ、こう言われる。その教育荒廃、非行、壁あるいは受験地獄、そういうものを、やはり学問を進める大学の先生方や教育者にこれを直せと言っても、どだい無理な話なのではないだろうか、これはやはり政治家の我々が考えていかなければならぬことではないだろうか。こういうふうに考えますと、本当に教育というものをもっともっと大きな力で、そして何といっても二十一世紀、日本の国がこれから生きていくにはやはり人的資源が最大の資源でありますから、これまでは世界の国に追いつけ追い越せと頑張ってきた日本の教育だけれども、これからは世界の先頭に立っていく日本人かもしれない、世界の多くの皆さんから理解と尊敬を受けられるような民族になっていかなければならぬ。そういうふうに考えますと、これまでの教育で果たしていいのだろうか。  こういうふうに考えますと、いま総理からのお話がございましたように、多くの皆さんの御意見を求めながら新しい日本の教育体系をつくり上げていく、そういう一つのいい機会になってきた。このことにむしろ文部大臣初め文部省は大変心強く感じて、文部事務当局も大変な大きな意気込みで、日本の本当にすばらしい教育制度をぜひ新しい角度からつくり上げていきたい、こういう熱意に燃えておりますので、どうぞひとつ三塚先生も党の立場からぜひ文部省の御支援をいただきたい、このようにお願いもあわせて申し上げておく次第でございます。
  68. 三塚博

    ○三塚委員 どうぞ文部大臣、あなた文教のベテランでありますので、内閣の中におきましても、この教育改革はまさにそういう意味で日本の第三の大改革になるはずであります。万全の体制の中で勇気を持って、それで百年の大計と言われますように百年の風雪に耐え得る制度、教育の精神、教育の理念を構築をしていただきたいということを申し上げて、次に具体的な問題に移らせていただきたいと思います。  何といいましても、七つの構想の中にもございますように、今日、親にとりまして何が第一かといいますと、この受験地獄であります。このことの原因は学歴社会がもたらすのかな、こういうこともありまして、中教審答申の試験制度の改革を受けまして、共通一次試験というのが行われております。五教科七科目、これは基礎的な知識と認識を問うものでありまして、当時、これができ上がりましたときには、第二次試験は小論文そして面接で決めていこう、こういうことでありました。国大協とのお話を、総理文部大臣もやられたようでありますが、まさに、その人の瞬間の学力ではなくして、その子供の持つ、生徒の持つ能力が社会、国家にとって、また家庭にとってどう展開をしていくかという能力開発が教育の原点であるように思います。しかるところ、共通一次は五教科七科目という過重な負担の中で行われていく。そして、第二次試験も五教科、三教科あるいは六教科というように、また再び学科試験でその人の学力を問うという形に相なっております。それが塾にまで、幼稚園の塾の競争にまで波及した最大の原因であろうと思うのであります。  こういう点でいろいろな改革を考えられておると思うのでありますが、思い切った改革、これは緊急を要することでありますから、なされなければなりません。特に、私学は建学の精神を持ってスタートをいたしておるわけでございますから、まさにそういう人材養成という点においては格好の学園であります。ミニ東大と言われようなことで、私の出たのは早稲田でありますが、今では到底入れません。八百六十点、一番たやすいところで八百三十点、こういうことであります。ですから、ミニ東大と言われております。もう大隈老公が建学をいたしました国家、社会のためになれという、在野の精神を発揮しながら働き抜けという精神を養うに足るにはまことにざんきにたえない状況ではないだろうか、このように思うのであります。  ですから、私学は推薦入学制を主としてこれをやられるべきである。これはもう試験が始まっておりますから今はいかぬのでありますけれども、六十年にはそれでやられるように、私学振興助成法によって助成もいたしておる、しかし介入はしないということになっておりますが、これは以心伝心でございますから、その辺のところは、さわやかな教育論議の中でひとつお取り組みを賜りますならばと思うのであります。  それともう一点。国立の入試改革に一つの提言を申し上げます。これは総理にも御答弁をいただければありがたいのでありますが、この受験地獄の最大の元凶は東大であります。私の親戚にもそういう東大を目指す子供たちを抱える親がおります。なぜ東大選ぶの、早稲田選ばぬの、早稲田も、こういうことなんですけれども、地元の東京六大学選ばないの、こう言うのです。学歴で世の中が通る時代ではないよ、ところが、東大に入りますれば、官界に入りますればうまいこといって事務次官、会社に入れば社長か重役になるであろう、こういうことであります。これではいかぬのでありまして、ですから、東大がありますことが受験競争を激化さす、受験地獄を現出をしております元凶のように思えてならぬ。ですから、学部を廃止し、大学院大学。全国の大学、公立も私学も研究をしたい、さらに高度の学術を体験をしたい、こういう人は学部を出てからこれに入る。東大は学部が要らぬ。これだけの御決断を、今度の新機関の中でも真剣にお取り組みをいただくに足る問題ではないだろうか。  まず文部大臣から私学の入学、総理から、総理は東大でありますので言いにくいことかとは思うのですけれども、総理ならずばりと私の考えに対する御答弁がいただけるのかな、こんなふうに思います。ここにおるのは七人、早稲田大学閣僚がおるのですから、そういう意味でもどうぞ森文部大臣、代表してひとつ私学の入試改善についての御見解を。
  69. 森喜朗

    森国務大臣 総理は、この間の共通一次でお確かめになられたら、二百点ぐらいとれるのじゃないか、そういうお話でありましたが、私は共通一次を見ると、まあ一割も書けないという感じてした。まして今の早稲田大学の問題を見ても、ほとんど私は解けません。本当にいい時期に入学をさせてもらったなと思って感謝しておるわけでございます。  私学はだんだん目的が、当初はやはり国立大学に追いつけ追い越せという気持ちがあったのではないかなという感じを持っております。今のように早稲田大学で、例えばもう四万五千人ぐらいの学生がいると思います。ですから、先ほども触れましたように、大学というのは一体何なのか。学問を一生懸命追求して、高等教育機関というものは学問を研究して、その研究の成果を次の後世へどんどん残していく、このことが教育だろうというふうに考えますと、やはり教育を、一生懸命に学問を追求していくことが大学だということになれば、国民の税金で賄っている国立大学の行き方としては、少しでも試験を和らげろとか、問題を少しでも楽にしろとか、ハードルを下げるということは、教育者に対してはやはり非礼になるのではないか、教育者にそのことを責めるのは酷ではないだろうか、私はこう思うのです。  そこで、さはさりながら、そのために、先ほど申し上げたように、副作用がいろいろ社会の中の病理としてあらわれてくるとするならば、そのことをどうやって解決するかということが政治家の大事な務めだろうと思っています。できれば、私学も今申し上げたように、四万五千人もの人が入るようになったのならば、やはり学問を追求していく部門と、もう少し全人的に建学の精神を志して集まってくる人たちと、両方の面を兼ね備えるような、そういう学園にむしろなってほしいなと、こう私は願っておりますが、先生からもお話があったように、できるだけ政治の力、あるいは国権の力が大学の中に及ぶようなことがあってはならぬと私ども考えますから、私学が自主的にそのことをやはり判断をしていただきたい。今の日本の国がどういう状況になっておるのか、みんな今どのように入学について考えておるのかということを国民的にみんなが考えてくださって、私学の建学の精神にもう一遍思いを新たにしてもらいたいというのが私たちの切なる気持ちでもございます。  そういう意味で、近く二十六日に、この間の国大協の先生方には私も総理も二回お話をさせていただきましたので、この二十六日には、私立大学の関係者においでをいただいて、今日のこの社会のいろいろな要求に対してもう少し私学としての考え方をまとめてもらいたい、こんなことをお願いをするつもりでございます。  東京大学を大学院にしろということは、総理がいらっしゃいますので、何か失礼にもなりますので、総理にお願いを申し上げたらいいかなと思っております。
  70. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三塚さんがおっしゃった私学は私学らしくというのは、全く同感でございます。みんな今のお話のように、ミニ東大みたいになってしまってはおもしろみがございませんし、人間の個性がまるっきり失われて、三塚さんみたいな人間がなくなってしまうおそれがある。そういう危険が非常にあります。やはりあなたはあなたで早稲田らしいですよ。ここにいらっしゃる橋本君なんかやはり慶応らしい。自由とか独立とかという創立者の精神がやはり流れておりますね。しかし、今の学生諸君に果たして流れているか。共通一次テストや偏差値で鍛えられた人々にそういうロマンがあるかというと、遺憾ながらないですね。これが一番残念なことなんです。じゃどうしたらいいか。そういう点で、いまあなたが一つおっしゃった推薦入学というのは、私も十五年前にある私学の総長を五年ばかりやっておりましたが、そこでは入学生の三割は大学の卒業者の子弟とか推薦で入れる、あるいは各県のその大学の同窓会の支部が推薦した人たちを入れる、そういうような形で血脈を続けてきておるのですね。私はやはり何かそういう伝統的なつながりというものを持つところに大事な面があるのではないかという気がいたします。しかしまた、入りたいという、縁のない人も実力で入ってくるということも大事でございますね。その辺をどういうふうにいかに調和をとるかという問題があるので、それこそ今度の機関でいろいろ御勉強願いたい。しかし、おっしゃるように、学生にロマンがなくなった、あるいは真理に対する挺身するという気持ちというものが薄れてきた、ややもすれば功利主義になりつつある、こういう点は、この際直すべきである、そう思っております。  それから、東大の問題でございますが、東大にはいろいろ改革案がございまして、まず第一に、あそこから出ていけ、何も本郷のあそこにいる必要はないじゃないか。まず出ていくという議論があります。それから、もう文科は私学に渡しなさい、理科だけやりなさい、そういう議論がございます。それから、あなたのおっしゃるように、学部はやめて大学院大学にして、公立大学、官立大学、私立大学、全体の総合的な大学院大学になりなさい、そういう議論もございます。私は、いずれも味のある、傾聴に値する内容を持っていると思います。これらはいずれ新しい機関で十分御討議願ったらいいと思っております。
  71. 三塚博

    ○三塚委員 ぜひ御検討をいただきたいと思います。  そこでもう一つ、高校の入試の問題をここで言わざるを得ません。学制改革、六・三・三・四がスタートして、戦後三十七年になるわけでございますが、この問題の改革論議の根底もまさにこの受験地獄の問題であります。一貫教育としての問題が問われる前に、小学校に入りますのにいい塾を選ぶ、幼稚園を選ぶ。それで小学校のときに今度中学。そして中学に入りますと、いい高校、いい大学、東大、こういうこと。これは三つ子のときからスタートするというふうに世間に言われておるわけであります。そういう意味で、高校受験というものは今惨たんたるものであります。仙台の総理懇談の際にも、陪席をしてじっとお聞きをさせていただいた中で、子供たちが部活、スポーツをやっておりますのに、高校入試の一学期が終わりますと、もう国体に行く資格のある選手であるのでありますが、教師から、あなたそれをやっておりましたならば、もう行けませんよ、ですから、この辺でやめたらどうと言われる。あるいは言わぬまでも、今度は御両親から、あなたもういい高校に入れないじゃないのと。これは大学にも通用、高校生にも通用することであります。青春の時代をスポーツにかけるという、この形はまさにすばらしい。そのことは必ず成人をしてから、社会に出て大変なエネルギーになっておりますことは、委員各位も御案内のとおりであります。  そういう点から考えますと、今日の偏差値による輪切りという、まさにこれこそ学校教育の効果を半減するどころかゼロと言われる評論家もおるわけでありまして、何としてもこれは改革をしてまいらなければなりません。入りたい学校よりも入れる学校にやられてしまいます。これは子供の能力を大事にし、伸ばしていくという教育の形から言いましてもいけません。特に、業者テストによって全部ランクが決まっていくわけでありますから、序列を決められていくのは子供たち、すばらしい能力を持った子供がそれによって、あなたここよと言われたときの侮辱、もう何といいますか、落後したような、言いがたいことになるのじゃないでしょうか、家庭を含めまして。こういう教育の場にあってはならぬ問題があるのでありますが、高校入試の改革につきまして、文部大臣はどう考えておられるか、ひとつお聞かせをください。
  72. 森喜朗

    森国務大臣 昨年の十一月に第十三期の中教審の答申、経過報告等が出たのは御承知のとおりであります。その中に幾つかの指摘がございましたが、その中ですぐ取り組めるというのは、この高校入試の改善でございます。文部省といたしましても、昨年の十二月から有識者を集めまして、その専門の検討会議を始めておりまして、いま大体月二回ぐらいのペースで結論を急がせておりまして、間もなく六月ごろにその結論が出る予定でございます。  御承知のように、高等学校はこの設置の責任は県でございますので、県の教育委員会の方にこれを通達いたしまして、その検討会議でまとめました内容を基本といたしまして各県の指導をしてまいりたい、このように考えております。どのような形にしていくかということは、ちょうどいま取りまとめの過程にそろそろ差しかかってまいりますので、具体的に申し上げるということはできませんが、三塚さん御指摘のように、何といっても、やはり自分が行きたい学校にチャレンジさせる、本人を生かすということがやはり一番大事だと考えます。  それから、輪切りと偏差値ということ、このことだけは何としても配慮していかなければならない、このように考えております。  もう一つは、学力だけではなくて、人物あるいはスポーツあるいは文化活動、生徒会などのボランティア精神、そういうものもできるだけ加味できるようにしていきたいわけでありますが、日本人というのは割とまじめに物を考えてしまいますから、点数でないと何となく割り切れない感じがする。三塚さんと私と一点差であると、これでやむを得ない、一点違ったんだということで割り切れますが、三塚さんが生徒会活動の会長をやっておったからあっちが入れたのだというと、何となくそこにわだかまりが残ってしまうというのも、これまた日本人のかたぎの一つでもあると言われて、何となくそのあたりに選考の方法としてちゅうちょを感じている面がある、こう思うのですが、こういう面もやはり一つの尺度といいましょうか、基準みたいなものを考えて、そして何といっても先生がよく生徒の将来の進路を十分に考えながら指導していけるという、そういう体制にぜひしていきたい。  いろいろな教育改革がたくさんございますけれども、大学の入試については、これはすぐにということはなかなかできない問題がございます。それは御承知のように、高等学校に入ったら、もう今の共通一次という一つの前提で勉強しておりますから、このプログラムの回転を変えるということは、子供や親にとっては大変大きな影響ということになってまいりますが、少なくとも高等学校の入試の改善については、もう来年からは必ず実施ができるという、そういう目途でいま鋭意急いでおる、このように御報告を申し上げることができると思います。
  73. 三塚博

    ○三塚委員 次に、時間がございませんから、青少年をめぐる問題について、特に少年非行の問題、校内暴力等の問題について、また文部大臣、関係閣僚にも聞いてまいらなければならぬと思います。  我が国の戦後の少年非行というものの流れを見てみますと、刑法犯、触法少年も含めてのようでありますが、戦後混乱期の一時期、二十四年、二十五年の時期でありますが、十二万五千台に相なった時期が一度あります。落ちつきを取り戻しまして、数万の単位になりました。そして戦後高度経済成長期、三十八年、三十九年をピークといたしまして十五万に相なりました。それで本年、世界のトップに立とうという日本経済大国、豊かさの中にまさに恐るべき数字に相なっておるわけであります。これは我が国の少年犯罪、非行ということについてはトップでありまして、二十万に達しようというのが今日の現況であります。特に校内暴力等々、これはマスコミをにぎわし、親の心を痛め、そして教育者を悩ませ、大変な問題に相なっておるわけでございますが、文部大臣としてどのような今日まで指導をし、今後に対処されるか。卒業期を控え、春休みを控えるわけでありますから、この点について見解を承っておきます。
  74. 森喜朗

    森国務大臣 少年非行は一つの波がございまして、国民全体がやはり子供たちに対する愛惜の目、関心の目というものを注いでおりますときには、比較的その波が低うございました。もう一つは、世の中がやはり物質文明といいましょうか、物、経済、金ということを優先をいたしますと、どうしても子供に対するその辺の配慮が欠けているということが今日のそうした忌まわしい状況になり得るのではないかと考えます。  ただ、いつの時代にもわんぱく坊主はいたわけでありますし、恐らく三塚議員などの子供の時代というのはもっと先生にいたずらもされたのではないかと拝察をするわけでありますが、やはりやっていいことと悪いことの限度というものをわきまえていた。それは一体どこにあったのだろうか。それは必ずしも学校教育に全責任を押しつけられるというわけにはちょっとまいらないのではないだろうか、こんなふうに私は考えます。やはり子供の中に、育っていく家庭の中で一番そのことが基本的に植えつけられなければならないし、もう一つ今の世の中で子供たちがかわいそうだと思うのは、家庭の状況が音とちょっと違ってまいりました。兄弟がたくさんいて、お兄ちゃんが何となく、あるいはお姉さんが何となく世の中の仕組みみたいなものを教えたのだけれども、兄弟が非常に少なくなりました。あるいは学校に参りましても、みんなともう少し仲よくしていきたいのだけれども、先ほどから御指摘のように、仲間が受験のための競争相手、もっと言葉が悪ければ敵だというような意識を持ってしまう。そうしたことが、お互いに仲間の中で世の中の仕組みみたいなもの、秩序みたいなものを身につけることができなくなってしまったのではないか、こういうことも考えているわけでございます。したがって、この非行の問題あるいは校内暴力の問題、皆関連をいたしておりますが、学校と社会とそして家庭というのが常に連絡、提携をしていく、このことがやはり一番大事な問題だと思いますし、社会の大いなる関心事としてやっていきたいというふうにお願いをしなければならぬと思います。  もう一つは、先ほどちょっと総理のお話の中にも出ましたけれども、テレビあるいは深夜にわたる大人たちが全く関与できないラジオ、あるいは映画、そして特に最近はローティーン向きといいますか、子供の雑誌だとばかり思って開いてみるととんでもない記事が出ている。こんなものが報道の自由、表現の自由ということの中で何らかの規制もできないということ、こういう大人の営利目的のため、金をもうけるためなら子供の心がむしばまれてもしようがないのだという考え方、こういう社会の病理現象というものは、文部省だけではどうにもならないということは三塚先生にも理解をしていただけるだろう、こう思うわけでございまして、社会全体がこの問題に真剣に取り組んでいくということが大事だと思います。  ただ、長期的な問題といたしましては、やはり教育全体の中の荒廃というものが大きな影響があると思いますので、受験を中心にし、あるいは先ほど総理と三塚議員とのやりとりにありましたように、もっとエネルギーを沸かして、たくましくて生き生きとして学生生活ができ得るような、そういう教育環境をつくることも長期的にはとても大事なことでありますので、こうしたことも新しい機関の中で十分御検討いただきたい、このように思っております。
  75. 三塚博

    ○三塚委員 今総理からも出ました、また文部大臣からも分析の問題が出ました少年非行を取り巻く中にいろいろな問題があるが、ローティーン雑誌ということであります。  私は、これは何人かの友人から御注意をいただいた。それでまたここに手紙がありますが、一部でありますけれども、わざわざ、一人娘を持つ、四年生の娘でありますが、この親が深刻な悩みを訴えてきております。こんな雑誌を読んでおると思ったら、ぞっとして瞬間心臓がとまったということであります。これはどういうのかといいますと、これは委員各位も見たことないと思います。それでテレビを見ておるお母さん方も「主婦の友」とか「微笑」とかという成人向きはお読みでありましょうけれども、こういう少女向きの実は雑誌であります。  「ポップティーン」というのが一つあります。「ギャルズライフ」、これであります。「キャロットギャルズ」であります。「キッス」であります。「キッス」というのは教科書を出している学研社がこれを出しております。「エルティーン」であります。こういうたぐいが数十冊ありますが、代表的なものを五冊実は持ってまいりました。「ギャルズライフ」は公称五十万部、「ポップティーン」は、これは月刊で三十五万、「キッス」は二十六万、「エルティーン」は九・八万、「キャロットギャルズ」は十二万、「○○ギャルズ」というのがありまして、これは十二万、こう言われております。  何をこれに書いておるかというと、とてもこれは想像に絶する。性教育といううたい文句だろうと思うのです。性欲講座であります。すべて性欲講座であります。それで書かれておりますのは、ありとあらゆることが書いてありまして、体位から始まり、それからどうやったらそれが成功するかということから、さらに中絶、愛撫術、同性愛のやり方、それからオナニー学、体位学、浮気学、イラストで全部入っております。それで十三、十四歳の子供がボーイフレンドとのそういうことについての体験談、これが克明に記されておるのであります。この本は「エルティーン」でありますから中学生高学年向きというのがうたい文句であったわけであります。今、小学校のこの手紙の主は、高学年、五年、六年から四年にまで至ってこれを読んでおるというのであります。これは終わりましたら総理に御進呈を申し上げますが、ぜひこれはお読みをいただきたい。閣僚と回し読みをしていただきたい。小学校高学年はこれを全部回し読みをしておるのであります。それはまさに恐るべき内容のことでありまして、これは、看板、俗悪物のテレビ、いろいろあります。それもさることながら、これを読みますと、かあっとします、あらゆる意味において。こういうものが堂堂と売られておるという状況は、まさに私は政治家の一人として放置できません。少女少年は国家の宝であります。先ほど論議をさしていただきましたとおり、二十一世紀に向けての我が社会、我が日本の担い手であります。これは全部少女雑誌であります。えらいことに我が国もきたな、こう思います。教科書を出しておる学研社までこれをお出しになるに至りましては何をか言わんやであります。  そこで、国家公安委員長にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、先ほど申し上げました数字、犯罪、二十万に達しております。これはもうトルコからありとあらゆる場所に出入りをし、少女売春まで出ておるわけであります。そういう状況をどうするのか。まさに私は、これを読んでいれば、そうなっても当たり前で、体験のない子は、あなたおくれてんのね、こういう日常会話が普通に行われていく。金をもらってそういうことをさしていただき、それで旅行しましたりいろいろなことをされておるということは放置できません。まず、大人が売らんかな、もうけんかなということでやられておることについて、政府は断固たる措置を講じていかなければならぬと思うのであります。そういう意味で、国家公安委員長の御決意をぜひここでお伺いをしておきたいと思います。
  76. 田川誠一

    ○田川国務大臣 三塚委員の御指摘になりましたことは、私も全く同感でございまして、そういうようないかがわしい雑誌が青少年の心をどれだけむしばんでいるか、私も憂えているところでございます。警察で調べますと、最近少年補導を受けられた数というのが、ここ四年間、昭和五十五年から常に最高の数字を示しているのですね。そういうようないかがわしい本ばかりの影響じゃないと思いますけれども、今御指摘のように、そういうような雑誌の影響もかなりあると思います。  それから、前の方で御指摘になりましたテレビの影響も、私はばかにならないと思うのですよ。もう見るにたえない、とても子供には見せられないようなテレビの番組が堂々とやっている。おっしゃるとおり、こういうことをこのまましていていいものじゃありません。ただ、残念ながら、この本で申しますと、今取り締まる法律というのはないようですね。大人の本でわいせつと規定されるようなものは、これは子供の本ももちろん当然該当されるのですけれども、大人と子供との区別が全然ないわけです。そういうところに非常に取り締まりができないような状態にあるわけです。私はしかし、今三塚委員の御指摘のように、この問題をこのまま放置していっていいとは思いませんで、関係当局とも打ち合わせながら、ひとつ真剣に検討してまいりたい、このように思っております。  詳しいことが必要であれば、政府委員が来ておりますから御説明をいたします。
  77. 三塚博

    ○三塚委員 警察庁保安部長、たしかおいでいただいていると思うのでありますが、あなたは専門官として少年犯罪の防止のために健闘されておるわけでありますけれども、私の調べた限りにおきましても、この本による触発によりそういう道に入っておることだけは間違いないというデータもあります。親の嘆きも寄せられておるわけであります。まさに少年を取り巻く環境の中の重要なパートを占めておるわけでありますから、あなたの方がこれに対するきちっとした対策を講じられてしかるべきだと思うのでありますが、都道府県でもいろいろと動きがあるように見受けられますが、いかがでしょうか。
  78. 鈴木良一

    ○鈴木(良)政府委員 お答えいたします。  今御指摘がございましたように、少年非行は戦後最悪を四年間続けておりまして、触法少年を含めますと、成人よりも少年の方が多いという形になっておるわけでございます。その中で非常に特徴的なのは、中学生が触法少年を含めますと全体の非行少年の五割を超えている。また、女子の中学生の非行が大変ふえておるということがございますので、そういうことで非常に深刻に受けとめておるわけでございます。これは、こういうふうな有害な図書に影響されましたり、あるいは有害な環境に害されて非行を犯したり被害に遭ったりする者、あるいは遊ぶ金欲しさに非行を数多く起こしておるという例も多々ございます。そういうことは、少年を取り巻く環境が年々悪化していることに基づくものだと思います。  警察といたしましては、刑法のわいせつ出版物に該当するものにつきましては厳しく取り締まってまいります。それからまた、補導活動につきましても徹底してやっていくつもりでございます。さらに、少年少女を食い物にする犯罪につきましても、全力を挙げて取り締まっていくつもりでございます。さらに、有害環境の浄化ということが必要だと思いますので、有害環境から少年を守るための法的措置についても鋭意検討をしてまいりたいと考えております。
  79. 三塚博

    ○三塚委員 そのほか、実は教科書の問題、教員養成の問題等についてお伺いしたいと思うのですが、予定される質問もありますから、教育問題の締めくくりとして総理から再度御答弁をいただきたいのであります。まさに象徴的な問題だけを提起をさしていただきました。  それともう一点。実は戸塚ヨットスクールという問題が起きましたときに、私ども文教関係議員は本問題について真剣な討議をいたしました。情緒障害児を持つ家庭が学校に相談をし、全然相手にされない。少年相談所に行っても、あなたのうちの子供はだめよと。警察の相談所に行っても、とてもだめよと。そしてその親は、もうこの子と一緒に自殺をしようというところに追い込まれましたときに、戸塚ヨットスクールの本に接した、こういうことで入っていった人が多い。さらに、そのことによって治られた方を聞いて、あそこに行ってごらんよと言われて入所されて、二カ月ないし三カ月で見事に立ち直り、立派な少年として通学をするという数々のケースが報告をされておるのであります。今回事件としてただいま訴訟中でありますから、私はその訴訟の問題については言及をいたしません。情緒障害児、学校の登校拒否児、これに対し、母なる海の雄大な中で、ヨットマンとして孤独に耐えながら精神力を鍛え、自立心を鍛える、こういうことの中でやられておった教育というものは、現在の教育界の混乱、少年非行の現状にかんがみて、真剣に勉強してしかるべき問題であろう、このように、読めば読むほど実は痛感をいたした一人であります。教育というものは、先ほど来申し上げましたとおりのことであります。  それともう一つ、これは答弁が要らぬわけですから、文部大臣、よく御検討を賜りたいのは、教員免許の中で、これも偏差値のようなものでして、各都道府県教育委員会は学力で入れてまいります。体育系の学部を出、スポーツで鍛え、部活で鍛えたこの青年が、教師としてならばすばらしい教育をするであろうと思います著も試験によって入っていきません。やはりそういうことについても今度の新機関の中で、学生時代、一つに集中し、人格として完成を、すばらしいものだということでありますならば、その採用の道も講じてほしい。戸塚ヨットスクールの教育の方針、これはそれぞれ御評価があろうと思いますけれども、そういう問題も含め、そして教育改革に、先ほど来言われましたとおり、国民的合意の中で取り組んでまいりたいと総理が言われたわけであります。  この問題は、まさに各党も、教育改革の必要性については異議を唱える政党は一つもなかろうと思います。国民各層、思想、信条、それぞれの考え方が違う方にいたしましても、我が子の将来、今日の現状を考えますときに、どなたも、これでいいと言う人は一人もおらぬわけであります。そういう意味におきまして、この教育改革はまさに、先ほど来申されましたようなラインの中で慎重に、そして勇断を持って、二十一世紀に向けて、百年の将来に向けて内閣で取り組んでほしい。早くその輪郭を国民の前に明確にさせていただきたいと存ずるわけであります。改めてひとつ総理の御回答をいただきながら、教育問題はこれで終わらさせていただきたいと思います。
  80. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほどの、まず青少年の問題でございますが、今三塚さんから中学生等の本の話を承りまして、私も全く心配していることがこの国会の論戦、論議の上に上ってきたことを非常に喜ぶものでございます。恐らくテレビでこれを聞いていらっしゃる全国のお母さん方やお父さん方は、自分たちでは手が出ないが、政治家や政治が何とかしてくれるというお気持ちで見ていらっしゃると思うのです。私も全く同感でございます。  ただ、この問題は、憲法の表現の自由とか言論、出版の自由の問題が絡んできますから、その点は、正常なそういう出版や言論については十分配慮をするけれども、青少年たちをこの俗悪な、あるいは犯罪行為を誘発するような環境から守ることについては、必要あらば立法も辞すべきでない、あるいは行政措置でやるべきものはどしどしやるべきである、そういう考えに立ちまして、立法も含めて至急検討してまいりたい、そのように思います。  それから、教育の問題につきましては、現在数百万にわたる大学生、高校生あるいは小学生というものがおり、五十万以上にわたる教師、教授というような層が日本にあるわけでございまして、毎日毎日、今教育は進行しているというところでございます。だがしかし、毎日毎日この教育がむしばまれているということも否定できない。今の偏差値の問題やら、あるいは共通一次テストや塾の問題がこれを如実に物語っております。したがいまして、このような臨床的な、もう目の前に出てきているまずい点や悪い点は、これを直すことにできるだけ衆知を集めて早く努力していきたい。それと同時に、基本的な課題につきましてはじっくり腰を据えて、そして的確なやり方で改革を進めていきたい、そのように考えまして、これから野党の皆様方とも話し合い、また、国民各層の御議論も承りまして、みんなでその判定を行いながら前進させていきたいと思う次第でございます。
  81. 三塚博

    ○三塚委員 予算の問題、財政の問題、中期展望の問題と実は予告をさせていただいておったわけでございますが、二十分に中馬委員に申し上げますものでありますから、残された時間、若干二、三の問題で御質問を申し上げてまいりたいと思います。  その一つは、総理もたびたび申されております軍縮等の問題、核軍縮の問題であります。まさに核戦争が起きましたならば勝者もなければ敗者もございません。人類は滅亡であります。しかるがゆえに、サミットを初め、それぞれの場面におきまして総理がこのことに心血を注がれております。また、OBサミットなども開かれまして、福田元首相がこのことを展開されている。このことも一つの関連かなと存じ、深く敬意を表するものでありますが、私ども現代に政治をやっております者は、やはり人類の未来についての洞察がなければなりません。人類の幸せを願うということがその基本でなければならぬというふうに思うのであります。特に被爆国日本の宰相として、まさに軍縮を唱え、核軍縮、核廃絶へ向かう、このことは総理にとって最大の政治家としての使命であろう。きょうは、外務大臣、ソ連に行って、おられぬわけでありますが、総理を中心に、各閣僚がこれに取り組まれるべき問題であります。  INF、START交渉、ソ連の一方的な中止によってこれはアウトになっております。日米の関係は、同盟国の中で、また信頼関係の中で、世界平和に向けて着実に進められておると理解をいたすわけでございますが、この軍縮等の問題、核軍縮の問題は、ソ連に対し、ありとあらゆる手段を尽くし、誠意を尽くして交渉のテーブルにのせる努力を、安倍さんもやられておるようでありますが、総理の主導権によっておやりをいただきたいものであるというふうに思いますのが一点であります。  それで、私の提案でございますが、これも我が党の各位のそれぞれの御意見でもあるわけでございますが、核保有国一国一国を、国会が終わりましたならば総理が歴訪される、そして人類の未来について語り合う、その中から核軍縮を実現していく、まさに日本総理なればこのことはやり得る大業であろうというふうにも思うのであります。  この点と、それから軍縮委員会は今度軍縮会議、核保有国がここに集まって議論をされておるわけでありますから、この場を活用されることも大事なことだな。バランス・オブ・パワーという言葉もありますが、世界平和の中でそのことはないがしろにでき得ない国際の現況にあるのでありますけれども、それはそれとして、努力をすることの御決意のほどをまずお伺いを申し上げたいと存じます。
  82. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三塚議員の今のお考えには私も全面的に同感でございまして、全力を尽くしてまいりたいと思っております。  実は私はこの正月の元日に、テレビで記者会見をやって、それが放映されました、お正月の朝のテレビでございますが。恐らくごらんになった方は御記憶だと思いますが、昭和五十九年という年はどんな年であるかという質問に対しまして、私は、これは軍縮の年である、核軍縮の年である、そういうことをはっきり申し上げました。これはアメリカ大統領選におきましても核軍縮の問題が中心議題になるであろうし、ソ連の方も核軍縮という問題をもはや考えなければならぬ段階に立ち至るであろうし、そこへ持っていくべき年である、そういうことも申し上げたのでございます。そのような状況の方向に世界は確実に動いてきていると思います。  しかし、そういうふうになってきた大きな原因はどこにあるかと言えば、それは一つはやはり西欧陣営が結束をしていたからだろうと思います。一九七九年に、ソ連のSS20に対してパーシングⅡをヨーロッパに展開するとNATOが決定いたしまして、昨年の十一月二十四日がそれをやる時期であった。  その前にアメリカのウィリアムズバーグでサミットがあったわけです。そのときに我々は、特にドイツのコールさんやイギリスのサッチャーさんが大きく言いまして、既定のタイムテーブルを崩すべきではない、今そういう決定をして、その前にいろいろな妨害やら平和攻勢と言われるものでそれが砕けて、西側の陣営の結束が崩れてしまったならば、かえって軍縮はおくれる、相手に乗ぜられる、そういう考えを持って、私もそれを持った一人でありますから、やはりここで西欧陣営は結束して、既定の方針でやるべきことはやって、断固とした姿勢と、それから結束を示すことが大事である。そういう意味で去年のウィリアムズバーグのサミットにおいて私は積極的に行動した次第です。  そして本年になりまして、その結束が崩れないでそのまま堅持されている。パーシングⅡも一部展開をされてきた。こういう厳然たる事実の上に立って、西欧陣営の皆さんは、ソ連が交渉の席を離れたから、こういう結束の事実の上に立ちつつソ連と話し合いをさらに続けなければならぬというので、そういう方向に出て、アメリカの大統領も核軍縮については真剣に取り組むという姿勢を一月二十五日の年頭教書で大胆に打ち出してきております。  それから、アンドロポフさんの御逝去に対しましては、サッチャーさんもモスコーに行く、コールさんも行く、アメリカからはブッシュ副大統領も行く。こういうふうに、世界の自由主義の陣営の皆さんがモスコーまで行くというこの事実は何で起きたかといえば、やはりそういうパーシングⅡ展開の事実の上に立ってこの結束を維持しつつソ連と話し合いの場を求めよう、それだけの余裕が西欧陣営にできてきたのであります。その均衡がある程度回復されつつあり、結束が維持されているという、その厳然たる事実のもとにソ連と今度は核軍縮について本気で話し合おう、そういう意味でサッチャーさんまでモスコーへ行くという形になってきたのでありまして、いよいよ本格的な話し合い、軍縮をやるときに来たと私は思う。  それで、ソ連においてチェルネンコ氏が今度書記長におなりになりましたが、政権の交代期というのはそういう変化を呼ぶ絶好のチャンスであるわけです。したがって、各国の首脳部もそれを意識してモスコーへいらっしゃったのであろうし、それからチェルネンコ政権というものがどういうふうに出てくるか非常に注目しておるところです。  ですから、私もそういう日本側の意思を表示する必要があると考えて、真っ先にソ連大使館へ行ってパブロフ大使に会って弔問をやりました。あるいは総理大臣のコメントを出しまして、この世界の軍縮をことしは真剣にやって世界を安心させてくれ、我々も協力する、また日ソ間の懸案の打開についてもお互いに努力もする、そういう声明のような私の考えを二回もこの間に出しているわけであります。それに対するモスコーの反応がどういうふうに出てくるかわかりません。しかし、モスコーの日本大使館の情報によりますれば、私がパブロフ大使のソ連大使館を弔問したのがテレビに出たそうであります。私のと北鮮の首相のテレビが二つ出た、そういう報告をモスコーの大使から聞きました。何らかの反応が出るかもしれません。  そういう意味におきまして、ことしは本当に全人類の運命をかけて、核軍縮というものを着実な基礎の上に立ってその仕組みを一歩一歩前進させてこれを実らせていく年である、そういうふうな決意で今後とも努力してまいりたいと思う次第でございます。
  83. 三塚博

    ○三塚委員 ありがとうございました。  時間もありませんので、最後に取りまとめて申し上げて、中馬委員に申し上げたいと思います。  きょうは実は税制の点について、マル優、郵貯、大変問題になっております点について申し上げたいと思いました。また、不公平税制という意味で広告税の問題について申し上げたいと思いました。また、地方税の事業税は、テレビ、新聞業、運送業、週刊雑誌、この「エルティーン」というのも事業税が免除になっておるわけであります。こういう問題についても実は申し上げたいと思ったのでありますが、これは後に譲らさせていただき、党税調中心にこれも検討するということになっておりますから、本日は省略をさせていただきます。  防衛の問題につきましても、これはまさに、答弁は要らぬわけでありますが、経済成長率、中期展望で七・二、弾性値を掛けた数字でありますが、それでまいりますならば一%は確実に守られていく。六%の成長率で計算をいたしますと二千三十四億円対前年度比でこれが浮くわけであります。こういう点もひとつ解明をしながら、一%堅持の我が党、我が内閣の姿勢を国民に向けて明確にさせていただきながら御安心をいただきたかったのであります赤、これも割愛をし、各党の論議の中で深めていただきたいと存ずるわけであります。  最後になったのでありますが、続けて二問申し上げますから、関係大臣から明確に、簡単で結構でありますから、お答えをいただきます。  一つは、農林大臣、農産物自由化交渉の問題であります。生命産業と言われる農業、畜産とオレンジ、この問題は両国の交渉でありますからいろいろなことがあろうと思います。狭小な我が国土の中で、食糧の自給のために営々と働き抜いてきておる農家、農民、どこに伸びようもないわけであります。そういう意味で、この枠拡大、自由化は、やっとアメリカ側も譲歩してくれたそうでありまして、枠拡大が論点に相なっておるのでありますが、農家、農民の中に、また我が党の中には、これを譲ることが、次はカリフォルニア米の、これは食べてみますとササニシキとどっちがおいしいか全然わかりません、同質であります、これが五分の一の値段で輸入をされたとき、日本農業は壊滅をするわけであります。次はお水かなという不安があるわけであります。こういう点について主管大臣の農林大臣の、断じて生命産業を守り抜く、こういうお話をお聞かせいただければありがたいことでありますし、そう言ってくれるだろうと思うのであります。  それで、最後に、これは我が党の災害対策本部から出されました今季の豪雪の問題であります。大変な打撃を、被害を各地に与えておるわけでございますが、やはりこれに対して緊急措置、手だてを講じてまいりますのが政治であります。そういう意味で、この除雪に必要な経費、これは五十六年災におきましてはたしか緊急に支出をされて対応されたというふうに聞いております。国道、県道及び鉄道等々の、これも交通確保という意味においてやられてしかるべきでございますし、これは国土庁長官が担当でございますから、これも御決意を承っておきたい。ぜひ豪雪地帯の諸君に御安心をいただきたい。  以上をもって私の質問を終わらせていただきます。それぞれひとつよろしく、簡単に御答弁をいただきます。農林大臣から。
  84. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 お答えいたします。  我が国の食物たる米の輸入は絶対にいたしません。  それと、今度の日米農産物交渉に当たりましては、日本の農業を守るという立場を堅持してまいります。特に一昨年の四月の農林水産委員会からの決議、そして本年一月の農林水産委員会の申し入れ、この趣旨を体しまして、この趣旨を踏まえて、農民が犠牲にならないように、今後の我が国農政が着実な発展をするということを念頭に置いて交渉に当たります。
  85. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 豪雪の問題でありますが、北陸を中心として……(三塚委員「東北もあります」と呼ぶ)北陸が中心ですから、北陸を中心として大変な大雪であることは御承知のとおりであります。そういう意味から、十日の日に政府の豪雪対策本部を設置いたしました。十一、十二と新潟、富山、石川、福井、ここの視察をいたしました。やはり大変な大雪でした。  大変な雪の降らないところの関係がございます。これに対しての対策は、ちょうどごく最近、五十六年の例がございますから、この例をとりまして、どこに行っても市町村の除雪費用が底をついた、県道、国道においてはついたと言ってもあれですけれども、市町村道が特に底をついたということでございますから、万遺漏なきをやってまいりたい。よろしくどうぞ御協力を賜りたいと存じます。
  86. 三塚博

    ○三塚委員 残余の時間を中馬委員にひとつお許しをいただきます。  終わります。
  87. 倉成正

    倉成委員長 この際、中馬弘毅君より関連質疑の申し出があります。三塚君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中馬君。
  88. 中馬弘毅

    ○中馬委員 このたび私たち新自由クラブは、自由民主党さんと連立いたしまして第二次中曽根内閣を支えていくことになりました。     〔委員長退席、小渕(恵)委員長代理着席〕 今まで三十余年間続いてまいりました自民党さんだけの一党単独政権という中で、国民の意識というものが与党と野党に分かれた形になりまして、野党支持者は、ただ多くの方が与党に勇ましく文句を言い、そしてまた、闘っていくその姿に何か拍手を送る、あるいは与党の支持者の方は、要するに野党というのは理想だけ言っておって何もできないといったような、そのような少し分かれた国論になっておる。逆に、それに甘えて与党の方も、少し国民の意識から離れたことをやっても支持されるといったようなことになってきておった、そのことが必ずしも日本の国の政治をよくはしていなかったと私たちは思っております。  今回、連立という形ができたわけでございまして、これに御決断なされたそれぞれの当事者、それには党内のいろいろな事情もございましょうし、また、いろいろな世論のことも御配慮もされたかと思います。それの決断をされました当事者であります中曽根総理大臣と田川自治大臣に、それぞれ連立の意義についてまずお聞きしたいと思っております。
  89. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回の新自由クラブとの院内統一会派の結成ということは、今まで自由民主党単独でいろいろ政権を担当してまいりましたけれども、選挙の結果、国民の意思が那辺に存するかということをそんたくいたしまして、自由民主党だけではなく、我々と大体近い線にある方々のお考えも入れて、そして、より幅を広げた形で国民政治を実行しよう、それによって政局を安定させ、かつ、国際信用を堅持していこう、そういう考えに立ちまして、新自由クラブの皆さんとお話し合いをいたしました結果、いろいろ御苦労いただいてその話し合いが成立いたしまして、所期の目的どおり政局の安定と国際信用の維持という面が実行され、かつ、これからの政策推進につきまして行政改革財政再建、教育の改革あるいは平和、安全保障問題、こういう問題について両党が、両会派が強力に提携しながら政策を推進することができるということを非常に喜んで、国民の皆さんも歓迎していただいておると拝察いたしております。
  90. 田川誠一

    ○田川国務大臣 この連立に一番戸惑った国民の皆さんあるいはマスコミ、これは自民党という一つの政党が三十五年間単独で政権をおとりになっていた、これに麻痺されて、連立政権というのが非常に何か違ったものであるという考えをお持ちになっていたところにショックというものがあったのではないかと思うのです。過去、日本でも、総理大臣がまだ進歩党代議士になられたころだと思いますが、私はちょうど新聞記者をしておりましたが、社会党政権が連立でできた。あの当時私は新聞記者をしておりまして見ておりましたが、その社会党が単独で政権とれない、選挙をやって国会で多数をとれない、そのために進歩党あるいは国民協同党、当時の自由党にまで話をかけて、そして、何とか政権を維持していこうということがあったわけです。自由党はお断りになったけれども、社会、進歩党ですか、そして国協党で連立をつくっているのですよ。芦田内閣も連立政権をつくっている。  ですから、連立政権というのは国会で幾つかの政党があり、二大政党の場合は別ですけれども、たくさんの政党があった場合に、過半数を一党でとれないというときは、一番近い政党と共同して政権をとるというのは民主主義の一つのルールであって、決して不思議なことではないし、現に今でもヨーロッパでは、民主主義の国で十数カ国が連立で政権とっているわけです。やっているわけです。西ドイツあたりではほとんど連立でずっと戦後来ているわけです。ですから、連立政権というのは当たり前のことで、たまたま自民党が選挙で過半数をとれなかったためにこうした事態が起こったわけでございます。  しかも、私がこれまでたびたび述べましたように、別に一夜漬けで一緒になったのじゃない。少なくとも私どもにとっては重要な基本政策である四つの項目を自由民主党の総裁と私どもとで書面で協定をして、合意をして、そして、一緒に責任をともにしてこの政局を担当していこう、特に今、国際的にも国内的にも大変重要な時期である、こういうときにこそ私どもは私どもの主張を政治に実現させるいいチャンスでもあり、そして、日本の国にとってもプラスになる、こういう意味で私どもは決断をして連立に参加をしたのでございます。  本音を言えば、野党の中にいて、そして政府・自由民主党を批判している方が実は格好がいいわけです。しかし実際は、格好がいいけれども、そういうようなことを今考えている時期ではない、やはり多少戸惑う意見を受けても、国家のために自由民主党と一緒に政権の責任を担当して、日本の国のために働かなければならない、こういうことで決断をしたわけでございます。当初は連立というものを、先ほど申し上げましたように、三十数年ぶりでございますから随分戸惑っておられる方が多うございましたけれども、もう最近はほとんど私どもに対する激励の方が多いのです。批判を言われるのは、他の野党を支持される方がいろいろと批判をされているようでございます。
  91. 中馬弘毅

    ○中馬委員 総理は、二十一世紀を展望した制度改革ということを常々おっしゃっております。まさに我々もこうした制度改革の必要性を訴えて、いろいろ具体的に提言をしてきたつもりでもございます。やはり合いろいろな問題が起こっている社会の中での、先生が悪いだとか、あるいは親が悪いだとか、あるいは何かお医者さんが悪い、患者が悪いといったようなことではなくて、その根本にはやはり制度自体がもう時代に合わなくなっていることが余りにも多い。この制度を変える作業が、政治が若干おくれておったがために、その問題が現在に尾を引いてしまっているようなことになっているのではないかと思うのです。  歴代、内閣でもなかなか手がつけられなかったことが多いのですけれども、私たち、よく言われております三K、国鉄の改革、健康保険、健保の改革、米、農業改革ですね、こういったいわゆる三Kのほかにも、教育の改革、国防、これも自衛隊の改革も含もうかと思います。そして国会の改革。これを、全部Kがつきますので新三Kと私は言っているのですけれどもね。これらにやはり取り組んでいただきたいというのが私たちの願いでもございますし、総理はこのことに非常に御熱心に取り組んでいただいておりますから、私たちはむしろ督励をするような立場で頑張らしていただきたいと思っております。  その中で、教育改革でございますが、教育臨調と言われております新機関の問題、先ほど三塚委員の方からかなり詳しくお聞きになりまして、私どもも、御答弁を賜りまして大体概要がわかってまいりました。しかし、どうも少し誤解があるようなのは、中曽根総理がどういう方向で教育改革をされるのか、それが少し一般国民にもわかっていない面があろうかと思います。と申しますのは、行革臨調の場合には、これは総理行政管理庁長官で、しかもずっとやってこられた。何を目指しているのかというのが大体国民の中にわかってきておりましたし、そういう意味での臨調でございましたから、これに対して拍手を送る方々が多かったわけでございます。我々も臨調与党だということをあえて申してまいりました。しかし、今回の場合には、その中曽根総理の一つの目的とされる教育の中身がまだわからないというところが、若干不安に感じている方々も多いと思うのです。  そういうことで、目指される一つの今回の教育改革の理念といいますか、構想というものをひとつ端的におっしゃっていただけたら結構かと思います。
  92. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 基本的には、今の時代が非常に速いスピードで物すごく物を消費して推移しております。いわゆる高密激動社会と私は呼んでおります。この速いスピードで今動いている社会に対して、教育とかあるいはそのほかの社会の制度が追いつかない。このスピードと激動で、そのとばっちりを受けて子供がはじき飛ばされている、あるいは母親や父親がはじき飛ばされている、一言で言えばそういう現象が今起きているのではないかと思うのです。そういうことが、ある意味においては現代文明が病的状況を呈しておる、文明が病んでおる面があると思うのです。そういう面から、いかにしてこの現代というものを健全な社会、希望と理想主義を持った社会――今ややもすれば功利主義的なせつな主義のニヒリズムがもてはやされるような時代になっております。それを、まじめに勉強して、汗を流して働いて、そして真っ当な人生を終えていく、そういう真実一路といいますか、そういうような人たちが報いられるような社会をつくっていこう、そういう教育体系をつくっていこう、それが根本にあるわけです。そしてそのほかに、目の前に見えておる偏差値の弊害であるとか、共通一次テストの弊害であるとか、そういう大量生産的な、機械的に物をどんどんコンベヤーベルトで流していくようなやり方に対して、もっと人間的な温かみのある、人間全体を総合的につかんで温かく拾い上げてあげるというような制度に変えなければいけない、そういうような教育の改革を心がけて断行しようという考えております。
  93. 中馬弘毅

    ○中馬委員 この教育改革の一つの目玉でもございますし、時代的な役割が終わったと私たちも主張してまいりました六・三・三制の改革なんですね、これは四十六年の中教審答申にもちゃんと入っているわけです。これができなかった原因というのをやはりちゃんと分析して事にかからないと、やはりあれができなかったということが今後またできないということになってしまいますので、これがなぜ今まで十三年間手がつかなかったか、この原因を総理はどう御認識なさっておりますか。
  94. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の後に専門家の文部大臣に御答弁願いたいと思いますが、あの四十六年の中教審の答申はかなり精密な立派な答申であったと私は思います。新自由クラブの教育改革の構想も、私、連休によく読ましていただきました。これもいわゆるパイロットスクール、あるいは義務教育における連結性、高校に至るまでの連結性、そういうような点もお考えになって、やはりこれは一つの考慮すべき御提案が随分含まれているように思いました。そういう点におきまして、皆様方の御意見をよく拝聴しつつ、みんなで今何が一番いいのか、一番というものがなければベターなものは何であるか、そういう点でやっていきたい。恐らくしかし、あるいは四十六年にいいものができてもできなかったというのは、内閣全体で取り組まなかった、それから世論の支持がそれほど顕著でなかった、文部省ではまじめにやったけれども、国民全体の関心が今日ほど沸いていなかった、そういう点があると思います。そういう意味に、おいて、国民全体の御支持を得るように、国民の関心を呼ぶように、我々が問題を提起していく、それと同時に、できたものについては、内閣全体の責任で今度はみんなで担いでいく、そういう形でやるべきではないかと思っております。  具体的なことは文部大臣から御答弁申し上げます。
  95. 森喜朗

    森国務大臣 ただいま総理からお答えを申し上げたとおりでございますが、当時といたしましては、確かに国民的コンセンサスというのはなかなか得られない状況でございました。具体的に言えば、例えば小学校長会の皆さんはやはり反対の御意見であったそうです。あるいは新聞論調もずっと見てまいりますと、先導的試行に対しては若干疑義をお持ちになっておられる論調が非常に多かった、こんなふうに我々は調査をしておるわけであります。  そういう意味で、今度の場合は、今総理のお話にもございましたように、新自由クラブの皆さんが例えば五年制中等教育というのをお考えになって、御提案をいただいております。あるいは公明党の皆様からはパイロットスクールというように、皆さんからそれぞれ、今の制度ではやはり無理があるのではないかなという、そういう国民的な、それぞれお立場が違い考え方は違っても、今、軌を一にして、今の制度ではやはりいかぬという気持ちが非常に強い高まりを見せている、こういう時期に、この際、先ほど総理も申し上げたように、全体的な国民がその問題をもう少し前向きに検討して、そして国民合意の中でぜひこの制度を改めていきたい。教育の改革というのはやはり大きな国民の支えがなければできるものではない、このように考えておりますが、幸い自由民主党とそして中道の皆さんとの間に政策の一致点を教育改革で見出してきたわけであります。さらにこの一致点を社会党や共産党の皆さんの中に大きく輪を広げることによって、国民的な大きな支えによって新しい試みが展開できるのではないかな、こんな期待を実は持っているところでございます。  もう一つは、例えば経済計画でありますとか、国土計画のようなものでございますと、それが閣議決定にのせられるわけでございます。したがって、内閣全体でこの問題をやっていけるわけです。しかし、この四十六年の中教審答申、確かに答申はちょうだいをいたしましたけれども、立派なものですが、これは文部省だけで終わってしまう。ですから、文部省だけでやり得るものしか改善をしていけないということになります。三塚議員のときの答えと重複して恐縮ですが、やはり先導的試行ということになれば法律的な改正は当然必要になってまいります。あるいは幼稚園の設置義務ということになりますと、就学年齢のところや幼保の問題を避けて通れないということになるのであります。こういうような問題を、やはりこれから国民の皆さんの理解を得て進めていくためには、この際、思い切って内閣総理における新しい諮問機関でいろいろ議論をする。ただし、何度も申し上げますように、これまでの中教審で得た答申を一つの土台、ベースにして、そしてそのことからスタートしていきたい、このように考えておるわけでございます。
  96. 中馬弘毅

    ○中馬委員 教育というのは時の政府で非常に、その中に例えばイデオロギーだとか精神主義といったものが入ってくると、少し問題があろうかと思います。したがって、今回のこのいわゆる新機関におきましても、一つの時代に合った制度をつくるという、制度の方に重点を置かれまして、その中でイデオロギー論争が起こってしまったり、あるいは何かたくましい方がいいのだ、柔軟な方がいいのだとかいったような議論にならないように、なるべく制度そのものでクールにひとつ新しいものを組み立てていただきたい、このことを注文をいたしておきます。  次の、改革いろいろありますが、今問題になっておりますのは、医療保険の行き詰まりの問題であります。  国民総医療費が十四兆円、べらぼうな数ですね。この十四兆円、そしてしかも国庫負担が四兆円、ますますふえていくという中で、このまま推移いたしますと医療保険制度そのものが行き詰まってしまう、このことを恐れる国民も多くなってまいります。そうしますと、総医療費をどう抑制していくか、その中に大きなむだがあるのじゃなかろうか、こういったことから、どうしてもこの制度を改革しなければならないと私どもも主張してまいっております。その中で、ともすれば患者が悪いんだ、医者がどうだ、薬メーカーがどうだといったような、個々を攻撃するような話ではなくて、やはり制度を変える必要があろうかと思いますが、この点につきましての総理の御見解をひとつ伺っておきます。
  97. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御指摘のとおりであるだろうと思います。ただしかし、その際にはよほど深い研究をした上で、各方面の意見をよく聞いて、これは二度と過ちを繰り返すわけにいきませんがら、慎重にやっていかなければならぬと思っております。
  98. 中馬弘毅

    ○中馬委員 厚生大臣にお聞きしますが、この制度改革が少し検討されているようでございます。この制度の中には、やはり自己健康管理を助長する施策だとか、あるいは不要な受診を自己抑制するような方策といったものが取り入れられなければならないと思っております。そういう意味で、今回予定をされております健康保険制度の改革について、少し主なポイントだけを御主張願って、ひとつ御意見を賜りたいと思っております。
  99. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今回の医療保険制度の改革は、今、総理が御答弁申し上げましたように、本格的な高齢化社会に備えて我が国の社会保障制度の基盤を揺るぎないものにするために行われようとする本格的な改革でありますが、この改革によって保険料の負担水準を現在程度の水準にとどめつつ給付と負担の両面における社会的公平を図るということがあります。  具体的には、医療費適正化対策の推進、九割給付の実施により乱診乱療等を排除し、医療費の規模を適正な水準にするということ。また、退職者医療制度の創設により被用者OBの福祉を増進するとともに、国民健康保険制度の過重な費用負担を軽減し、制度間の負担の公平を図る。また、被用者本人の九割給付による保険料や患者負担、国庫負担の変化を見ますと、患者負担は千七百億円増加しますが、保険料は二千八百十億円、国庫負担が二百九十億円それぞれ減少することとなって、国民の直接の負担は、全体で一千百億円程度減少するということもぜひ御理解をいただきます。また、これにより診療を受ける者と受けない者との公平化や健康の保持や疾病予防の自己責任等の自覚につながる、これは私どもはこの制度をどうしても推進したいと思っておりますので、御協力をお願いいいたします。
  100. 中馬弘毅

    ○中馬委員 大体改革の方向は、これも私たちが主張してきたところなんですね。前にも、社労の委員会で我々修正案を出しました。薬に一部患者負担をつけろということを主張いたしましたが、これも与野党ともに賛成が得られずに、これがつぶされてしまいましたが、今回も、保険料さえ払っておけばすべてただだといってしまったことに少し歯どめをかける必要がある。だから、我々は、むしろはっきりとした一部負担をつけなさいということを主張してきた者としては、これに賛成でございますが、ただ、やり方の問題なんですね。自己負担の場合に、定額でいくのか、定率でいくのか、このことがいろいろな方面からの議論にもなっております。  定額で自己負担をさすのか、定率で自己負担をさすのか、この点については厚生大臣はどのようにお考えなんですか。     〔小渕(恵)委員長代理退席、委員長着席〕
  101. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 先生の御指摘、大変重要な問題でありまして、今回の改革については、先生先ほど御指摘のように、年々一兆円ずつ医療費が増加している中で、国民の負担をこれ以上ふやさないためには、医療費を適正水準にとどめるという大変重要な問題があります。これには、やはり患者の皆さん方にかかった医療費を知っていただくということが保険制度に対する理解を高め、また、医療費に対する関心を高める極めて重要な問題でありますから、これは何としても定率で、この考え方が実現されるように御協力をいただきたいと思います。
  102. 中馬弘毅

    ○中馬委員 総理も大体同じお考えでございますか。
  103. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 厚生大臣の御答弁のとおりであります。
  104. 中馬弘毅

    ○中馬委員 今、政治が不信であると同じような意味で、お医者さんの不信が非常に高まっております。それは、お医者さん自身が身を正してもらわなければいけない面があるわけでございますけれども、いわゆる乱診乱療排除の具体的な方策について厚生省として何かお考えでございますか。
  105. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 御指摘のように乱診乱療の排除、大変国民的な関心を持っていただいておるところでありますが、今回、薬づけの医療をなくするために、毎年薬価基準の引き下げを行っておりましたが、本年の三月一日には薬価ベースで一六・六%の引き上げを断行する予定であります。(「引き下げだ」と呼ぶ者あり)また、検査づけ医療をなくすため、検査点数の大幅な包括化等、診療報酬の合理化の推進を行っていく。また、指導監査を重視する必要があり、担当職員の増加や顧問医師団の設置、高額の医療費請求に対する特別審査等の体制の強化を図るとともに、不正不当請求に対する厳正な処分を行っていくつもりであります。  また、今回の一割定率負担ということが乱診乱療を抑える非常に大きな役割を果たすものと確信をいたしております。
  106. 中馬弘毅

    ○中馬委員 訂正してください。
  107. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 私の発音が悪くて、引き下げを……(発言する者あり)いや、もちろん非常に大事な問題でありますので、訂正させていただきます。薬価基準を大幅引き下げたもので、引き下げようとしております。引き上げと言ったのですか。ここで訂正させていただきます。大幅引き下げです。
  108. 中馬弘毅

    ○中馬委員 時間がありませんからあれですが、先ほど申しました教育改革、医療保険改革のほかに、私たちが関心を持っておりますのは防衛費の問題なんです。防衛のあり方をどう変えていくか。先ほど総理は、一%を三木内閣方針に従って堅持する、このように御答弁いただきましたが、我々もちろんそれを主張するわけでございます。しかし、現実の問題としてかなり一%に近づいてきていることも事実なんですね。そうしますと、じゃどうしたらいいか。我々は、日本の置かれた地理的な状況からして、果たして陸上自衛隊があれだけ数が要るのかどうか非常に疑問に思っております。国土に比してGNPが大きいわけですから、一%でも相当なものができるはずでございますし、同時に、海に囲まれておるというようなことの中で、これがすべて内陸国家のように国境に接しておったら二十個師団くらいは大体張りつけなければいけない、こう言われておる、そうしますと、二十個師団、約三兆円というものが助かっているという見方もできるのですね。西欧並みにこれを三%、四%にしてしまいますと、これは逆に言えば過剰防衛になってしまうかと思います。  そうする中で、我々の国土を守っていく防衛のあり方というのは、人件費に四五%も食われているいまの防衛費というものを見直して、そしてもう少し技術に支えられたような、労働集約的でなくて技術集約的な防衛体制をつくっていく、そういうことに切りかえるならば、十分に一%で我が国土を守っていけると私たちは試算もいたしております。  そういうことから、ただ単に一%を守るという言葉だけではなくて、何かそのような裏づけがなければ、いまの延長線上では一%を超えてしまうことを恐れております。その点について総理の一つの御見解を承っておきたいと思います。
  109. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 一%の枠を守っていくというその点につきましては、先ほど総理からもお話があったとおりでございます。  それから、日本自衛力の問題につきまして、お話を聞いておりますと、暗に、陸というよりも海とか空とかそういう方面に力を入れたらどうだ、そういうことをしていけば一%の枠の中でおさまるじゃないかというようなことではないかと聞きましたけれども、御案内のとおり、自衛力の整備ということは、ある意味におきまして一番重要なことは、正面装備と後方支援とのバランスをとるということがまず第一だと思います。その次に、陸海空のバランスというものがどうしても必要なんですね。海も空も必要でございますが、最後の段階はやはり、敵が侵攻してまいりまして、国民全体としてこれを守っていくということになりますと、陸というものの意義は非常に重要でございまして、ただ、おっしゃるとおりいろいろ御議論はございますけれども、私はやはり陸海空のバランスをとっていくということが非常に重要じゃないかと思います。  いずれにいたしましても、「防衛計画の大綱」の水準にできるだけ早く到達できるように、さらに一層の着実な整備を行っていきたい、こう考えております。
  110. 倉成正

    倉成委員長 中馬君、時間が参りました。
  111. 中馬弘毅

    ○中馬委員 防衛庁長官のお立場だったらそういう答弁になろうかと思いますが、その形では先ほど申しますように一%を超えてしまうのです。今までのただ単純な延長ということではなくて、ひとつ今の自衛隊そのものの、日本の国をどうしたら一番効率的に守れるかということをもう一度見直していかなかったら、それこそ一%が守れないのじゃないかと私たちは危惧もいたしております。そういう点におきまして、行政改革といいましょうか、制度改革の一つにやはり国防も入ってくるということをあえて申し上げまして、私の質問を終わらしていただきます。
  112. 倉成正

    倉成委員長 これにて三塚君、中馬君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  113. 川俣健二郎

    ○川俣委員 時間が遅くなってとても気が引けるのでございますが、これも総理の方でもう少し早く物わかりがよかったら時間どおりだったのでございますが、しかし、どうかお許し願いたいと思います。  そこで、総理、具体的な問題に入る前に、亡くなられたアンドロポフの葬儀の問題で、十一、十二の連休中に、私たちは国もとへ帰っておったものですから、外務省なり総理の周りの人なり予算委員長等から長距離電話をもらった際に、外務大臣総括質問中にソ連に出したいのだがいいだろうか、こういうことだったのですが、これは出先の理事の判断ではちょっと大きな問題なんで、むしろ、私の私見、感じを申し上げると、たしかブレジネフの際は鈴木総理が、外務大臣も一緒でしたかな、行きましたし、サッチャーも西独もみんな首脳、元首格が集まるわけですが、むしろ総理が行くべきではないかというように感じました。  そこで、先ほど自民党質問に、総理が、核軍縮、今こそこういう機が熟しているというか、機会ではないかということを言われておったんだが、果たして外務大臣は、私が取り上げようという農産物の際におられないのじゃ、先ほど農林水産大臣は決意表明はされましたが、しかし、これは農林水産大臣よりも外務大臣の方が先行しちゃった嫌いがあるので、ちょっと私の質問が大分崩れてしまいまして弱っちゃっているのですが、それでレーガンは、十三、十四、十五の間に二つか三つの元首格がアメリカに訪れる日程がセットされておるのでという大変な丁重なお断りをしておったようですが、日本国の場合はどういうことで弁明されたというか、説明されたのだろうか。それで、なぜ行かれなかったのだろうか、そして総理の気持ちはどうだろうか、こう思うのでございます。  そこで、一体外務大臣はいつ帰ってくるのだろうか。一%の問題で与党の理事の八方が我々に提案する暇がなかったんだろうと思うのですが、ちょっとこれは理事会の問題でもあるが、あしたから各党の代表、我々の農産物の問題、レギュラーの人方が待っているわけですが、それを総理に聞いたってしようがないけれども、まず最初に、総理に先ほど伺ったあたりを聞かしてもらって、やっぱり行くべきだったなというように思っているのか、まあ外務大臣でよかろうと思っているのか、その辺をちょっと聞きたいのです。
  114. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アンドロポフさんの御逝去に対しましては心から哀悼の意を表した次第でございますが、何しろ予算委員会をお願いいたしておりまして、一九八四年度のこの予算という重要なものを抱えておりまして、総理大臣が欠席するということは野党の皆さんに申しわけない、そういう責任感があり、非常に私の胸に参りまして、外務大臣にしからばお願いしよう、そういうことで外務大臣にお願いしました。そのかわり、ソ連大使館で弔問を受けるということをお聞きしまして、まず第一に私が行こう、そう思いまして、時間きっちりに最初に私が伺った、そしてパブロフ大使に対して事情も言い、深甚なる弔意を表明した、こういうことであります。
  115. 川俣健二郎

    ○川俣委員 予算委員会に失礼だというお話ですが、やっぱり事大変重要な外交案件のことだし、対話と協調という理念からいたしましても、予算委員会をどうするかという話もあるわけですが、予算委員会を開くんだからしようがないというのじゃなくて、予算委員会をどうするかという問題もあるのですけれども、まあそれは連休中だから判断に困ったんだろうと思うのですけれども、この十二日に打っちゃった。うちの方の委員長は、十三日で十分間に合う。それで、十二日の昼ごろもう乗っちゃった。そして、理事会を開かれたのは十三日だ。十三日の朝社会党の書記長のセットだ。どう理解すればいいんだろうかね、官房長官、どうですか。
  116. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 いま総理からお答えをいたしましたようなことで外務大臣にお出かけを願うということに決めた次第でございますが、十四日に多分葬儀になるのではないかというような予定が割合に早く立ちまして、したがいまして、確かに時間的には十三日に先生お話しのように行くという方法もございましたけれども、できれば十二日に出かけまして向こうで葬儀に参列するための段取りも整えたい、このように考えましたので、十二日に、それぞれお休みでございましたので、各党の関係者の方々に事前に、大変失礼ですけれども電話で御了解をいただきまして、出発をさせていただくようにさせていただいた次第でございます。どうか、ぜひ事情をごしんしゃくをいただきまして御了解を賜りますようにお願いをいたしたいと思います。
  117. 川俣健二郎

    ○川俣委員 誤解してもらっちゃ困るが、打っちゃいけないということじゃなくて、果たして各党のそれぞれの責任者にどのようなことで了解を得て行ったのか、その点についてはまだ場所を変えて、今後の問題がありますので譲りたいと思います。  そこで、さらに総理にもう少し聞きたいのですが、ここで聞いていますと、随分一年前と違ったな。まあ文学的な美辞麗句の施政方針もあったのですが、やっぱりその底流が、一年前は、おれについてこい、みずからの国はみずからの力で守らねばならぬ、こういうことで海峡封鎖、不沈空母等々が出ていましたが、今度は、国民と手を携え、謙虚に国政の衝に当たっていく決意である、総選挙による国民の審判を厳しく受けとめ、深い反省のもとに政治倫理の確立に取り組みたい。ところが、この政治倫理の問題と総裁声明にかかわる問題は、書記長ときのう大分質疑応答がありましたから、これは省くのでございますが、果たして党首会談で、これこそ対話と協調なんだが、各野党の党首会談でそれぞれ幾つかの提案をされたと思うのですが、もちろん我が党も具体的にしましたが、その辺は一体総理、どことどの辺を盛り込んだか。新自由クラブは違いますから。その辺を総理はどう感じていますか、結構入れておりますよ。
  118. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 党首会談をお願いいたしまして野党の話をいろいろ承りましたが、その中で特に今回予算上考慮したという点は、一つは、各種年金のスライドの実施でございます。この点は、昨年度はスライドをストップしたと記憶しております。  それから、補助金の整理、これもかなりやりまして、四千億円を超えたというのも今度が初めてでございます。  それからさらに、雇用対策の充実の問題、さらに中小企業金融の充実とそれから投資促進の税制を今回は特に力を入れました。  それから、住宅に関しまして、親子間の贈与に関する特別の措置を今度とりまして、親が子に住宅の資金の手当てをしてあげる、そういうことをやったわけであります。  それから、教育問題につきまして、総理府に総理大臣の諮問機関という発想は、党首会談でお話を承って非常に勇気づけられまして実行に入ったということ。  それから、各省庁の定員削減、これもかなり思い切ってやりまして、約四千名近くの定員削減を今回やりました。  これらは、各党の党首とお話をしました結果、特に予算上力を入れて実行したことでございます。
  119. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そう総理は思っているでしょうが、いわゆる制度改善、今ずっと並べたんですけれども、果たしてこれは改善だろうかなというように、一つ一つ後で述べてみたいと思うのです。今回も我々がこういう疑問を抱くのは、野党だからこういうように考えておるのだろうかなと思っておりましたのですが、総理の施政方針に対する各野党のそれぞれの採点というのが当然あるわけですが、ところが、自民党のある首脳がというコメントで一斉に新聞に出ておりましたのですが、こういうくだりがあるんですね。外交政策はまあまあ評価できる。それから二番目が、教育臨調とは何だ。現在、中教審あり、また党には文教部会がある。信用できないということだ。気違いざただ。この種の問題は言い出したら後に引けない話になって大変なことになる。さらに、閣僚の資産公開もうそだらけで、国民政治不信を助長するだけだ。財政の見通しについても、このままだと赤字国債からの脱却は無理。マル優の見直し、宗教法人への課税等々を具体的に並べたコメントがありました。  これはあなたの党の首脳でございますが、総理、どう感じましたか。これをお読みになったか、お目にとまったか知りませんが、いかがですか。
  120. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、どこかでそんな記事を読んだような気がいたしますが、別に気にとめません。
  121. 川俣健二郎

    ○川俣委員 さすがですね、総理は。まあそういうのは雑事だろうということでございますが、ただ、自民党の首脳ということでございまして、教育臨調の場合でも、教育臨調という言葉は誤解を招くから違うと言うけれども、それはあなたの方の党の首脳が、しかも重要なポストと思われる括弧書き、これを全然気にしないということで突っ張るのでしたら、また後日、これがいろいろと論議を出されると思います。  そこで、その一つに政治倫理の問題で、田中辞職勧告決議案でございますが、これはかなり論議されましたから、ただ一言だけ伺いますが、新自由クラブ代表のそこにせっかく座られておる田川自治大臣から、本会議で正式な新自由クラブ代表の意見の陳述がありました。いよいよそうなると成立する可能性が出てまいりましたのですが、果たして今でも田川自治大臣は、あの衆議院の本会議における意見の陳述と変わりませんか。
  122. 田川誠一

    ○田川国務大臣 八日ですか、本会議で私が申し上げたことは変わっておりません。
  123. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう一つ確認しますが、提案されれば全員賛成する、こういうことですね。
  124. 田川誠一

    ○田川国務大臣 この問題は、あそこでも申し上げましたように、議員が個人個人の良心に従って決断をする問題でございますから、私どもが仲間を拘束するわけにはいきません。しかし、全員が賛成することになっております。
  125. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いずれにいたしましても、全員賛成ということに決定されておるということだけは御意見のとおりですが、そうしますと、法制局長官、どうでしょうか、これは勧告決議案だから、通ってみたって、除名決議案でもないし、本人がやめたくなければそれまでだ、国民はこういうように思えばいいのですね。
  126. 茂串俊

    ○茂串政府委員 国会の中のお取り扱いの問題でありますので、私からお答えするのはいかがかと思うのでありますが、お尋ねでございますので、あえて一般論としてお答え申し上げますれば、仮に辞職勧告決議が可決されるといたしますと、その対象とされた議員の進退について事実上強い圧力を加えることになるということは否定できないと思われますが、決議が勧告である以上は、法的には拘束力のないことを前提とするものであろうと考えられます。
  127. 川俣健二郎

    ○川俣委員 圧力をお感じになられるような人でしたら、こういう問題は出ないのでございますが……。  そこで、具体的に入ろうと思うのですが、まず農産物の交渉は先ほど申し上げましたとおりですが、どうもいろいろの周辺の意見なり議論が聞こえてまいりますが、その農産物の輸入の前に、産構審という委員会がございますね。これは通産大臣の管轄だと思います。素材産業など構造不況産業の実態調査のために来日中のオルマー米商務次官は十三日、小此木通産大臣を訪ねられて、産構審、いわゆる産業構造審議会、通産大臣の諮問機関があるわけですが、これにアメリカ人も入れてくれ。これは随分泥足で踏み込んでくるものだな、こういうことを言わせるというところの何かがあるんだろうと思うのですが、まず事実関係をちょっと伺いたいのです。
  128. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 それはこういうことでございます。  先般、私が渡米した折に、アメリカのボルドリッジ商務長官に会った折に、日米通商問題に関して意見を言いたいので、産構審、委員会において何かアメリカ側から意見を自由に述べさせてくれないか、こういう要請があったわけであります。そこで私は、産構審は、議長が必要と認めた場合には、外国人であっても自由に意見を言うことができますよ、それは意見陳述人なり参考人という立場で言えるのですよ、こう言ったわけです。もちろん、私は英語でなく日本語で言ったわけでありますが、通訳が通訳した結果、ボルドリッジさんが深く安心してうなずいていましたから、向こう側は納得したと思います。  また、その前段のオルマーさんの問題でございますが、私が渡米の前にオルマーさんが通産省に参りまして、同様趣旨のことを言ったわけでございます。そのときには、オルマーさんは委員というようなことではなかったかと思いますけれども、委員の方はこれは国家公務員であって、外国人は参加することができません、また、オブザーバーという形であるならば、これは常時委員会にいなければならない、委員の自由な発言を担保するわけにはいかないからオブザーバーもいけませんよ、それだけでオルマーさんは帰ったわけです。  そこで、もとに戻りまして、私が先日渡米した折にボルドリッジ商務長官から正式なその要請があり、私が先ほど言ったように答えたことを向こうが了承した、こう考えております。以上であります。
  129. 川俣健二郎

    ○川俣委員 このように総理大臣、ちょっとわからぬはずがない、産構審の構成メンバーが公務員、しかももちろん日本人、日本の公務員、こういう厳然たる構成メンバーを知らないわけじゃないだろうアメリカが、しかも普通の一般人が言うのと違って、いまのような肩書のある人が、しかも通産大臣に物申すというぐらいに、アメリカの方の農産物のあれに入る前に申し上げておくと、このように非常に、日本とアメリカとどういうようになっているんだろうか、首をかしげたくなるような状態が方々に出てくる、農産物輸入の問題をやると。その辺を何とか、総理大臣、けじめというようなものが冒頭にあるわけですから、その辺はどう思われますか。
  130. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今の小此木通産大臣の話のように、けじめをつけるべきところはぴちっぴちっとつけてまいります。
  131. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは、御自分でけじめをつけようとしても、相手をそういう気持ちにしたのも日本の方の態度がそういうようにさせているのではないか。これは勘ぐりではなくて心配なんで、ぜひその辺はけじめをつけていくべきだと思います。  それから、もう一つ総理大臣に。総理大臣はいろいろと選挙中に言いました。ここで問題を取り上げた、私がやりましたがんの問題も非常に前向き、積極的に取り上げて、まず今のところは好評を博したと思います、中身はどうあれ。  それからさらにもう一つは、花と緑をというのが非常に方々で総理の口から出た。ところが、花と緑をと言う割には、果たして農林、特に林業予算を見ると極めて哀れな数字である。これは後で同僚議員の人方が深く審議することになっておりますが、ただ総理考え方だけを聞いておきたいのですが、やはり日本の悪いところは、戦争中に乱伐、過伐、そして終戦後そんなどころじゃないということで、気がついたらもうすっかり山が荒れておった。山が荒れれば当然水がかれる。あるいはまた、水がかれる反面、おととしの長崎の大洪水のようになる。したがって、単に国有林なら国有林の特別会計で木を切って売るという収支ではなくて、やはり国土保全というような広域的な機能というものが山林にあるんだという考え方をすれば、これも一つの答えでいいですから、少しその辺を聞かしておいてください。近々、国有林野事業の改善計画の見直しという作業が出てきます。したがって、この機会に、総理のおっしゃる花と緑というキャッチフレーズをどっかりのせた、その底流で見直しということを考えるべきではないかと思うんだが、総理、その辺を少し披瀝してくれませんか。
  132. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一脈通ずるところはありますが、花と緑は、主として都会の地に緑の潤いを持たせよう、そういうことで今力を入れておるところであります。いろいろな各市町村の予算等もかなり増強されておりまして、また、特にことしは宝くじをやって、大体ネットで四十億円ぐらいその収益が花と緑に使われる予定でございます。そのほかいろいろ工夫を凝らしまして、県、市町村に対する花と緑の予算を今手当てしておるところであります。  それとは別に、林政という問題は、戦後一番おくれている分野じゃないかと私は思います。特に外材が安く入ってきてからは非常な圧迫を受けて、ほとんど間伐もできない、荒れほうだいというような時代が一時ありまして、これではいかぬというので、公団造林であるとか部分林であるとかいろいろなシステムを入れ、スーパー林道まで考えたりしていろいろやってきたところでありますが、やはり全般的に見ると、道路とか河川とかの行政に比べてみると林政というものは非常におくれておる部分ではないか、そういうように思います。そういう点については政府も責任を感じまして、力を入れなければならぬと思っております。  ただ、国有林につきましては、人員の扱いの問題やら、あるいは独立採算制の維持の問題、効率化の問題、こういう問題はやはり厳然とあるのでございまして、国有林につきましては、国民に負担をかけないで、見事自分でその独立採算制に向かって改革を続けていってもらいたい、こういうふうに思っておる次第であります。
  133. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうも、言うのは非常に積極的に言っているようだけれども、中身になると全然もう――まあこの点については、後でそれぞれの専門の人方がやりますけれども。  それからもう一つ、総理に、態度というか政治姿勢を伺いたいのですが、具体的に言うと原子力船「むつ」でございます。  これは昭和五十六年、この予算委員会で亡くなった中川長官といろいろと論議をされたことを御存じの方もおると思うのですが、あれから、原子力船「むつ」をつくってから二十数年、さまよえる「むつ」、むつ子というのですか、そのむつ子なるものの放浪記、その放浪記を見ますと、本体は二百億足らず、ところが、方々に、そら放射線が出た、補修しなければならない等々で、いわゆる説得料というか、つかみ金というか、漁業補償料というか、そういったものでもう既に五百億から六百億、さらにこれからいよいよ関根浜に定係港をつくる。まさかりの上だ。まさかりの上に定係港をつくるということになると、さらに最低六百億、そして約一千億、こういうことでございますが、果たしてこれをさらに続けていくつもりでしょうか、どうでしょうか。
  134. 岩動道行

    岩動国務大臣 ただいま「むつ」についての御指摘をいただきましたが、私どもは、「むつ」につきましては、日本の資源のないこと、特に石油資源におきましては九九%外国から輸入しているという現実、そしてそれに対して、私どもは代替エネルギーで日本の存立を図っていかなければならない、そういう中において、原子力の平和利用ということは極めて大事な日本の存立にかかわる政策でございます。そういう中におきまして、日本は貿易国家であります。また海運国家でもあります。また造船国家でもございます。そうして、科学技術をもって立国としている私どもでございます。そういう観点から、「むつ」による原子力船の研究開発は、従来とも重要な平和利用の一環として進めてまいったところでございます。  しかしながら、ただいま御指摘もありましたように、この原子力船「むつ」につきましては、大変長い年月がかかっております。既に、事業団ができてこの計画が始まりましてから二十年になるわけでございます。そして放射線漏れという事故も起こったのでございますが、このような経過をたどりまして、残念ながら、その所期の多くの基本的な大事な成果を得ておりませんことはまことに遺憾でございます。と同時に、この点につきましては、私どもは各方面からのいろいろな御意見、御議論を踏まえまして、今後政府・自民党におきまして「むつ」のあり方について検討いたし、そしてその結論に従って私どもは対処してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  そこで、私どもは、先ほど申したように、基本的にはやはり日本の置かれている国情から見まして、この原子力船、特に原子力による舶用炉というものは必要である、これは続けてまいりたい、かように考えておるところでございます。(「よし」と呼ぶ者あり)この点につきましては、総理も本会議でも発言しておられるところでございます。そのようなことで、私どもは、今後検討の結果を待ちましてそれに対処してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  135. 川俣健二郎

    ○川俣委員 与党の皆さん方からも、よし、頑張れ、こういう声が若い声で出るところによると、いろいろと問題があるという証拠だろうと思うのですが、それは確かに貿易立国、それから海洋国家ということはわかるが、まあ諸外国のあれはほとんど廃船状態ですね。しかも、ついに英国のある科学雑誌にこういうように出ているのを大臣も目にとまったかと思うのですが、「東洋における原子力の日没」「日本はいまだに、原子力商船が実用的でないことを認めるのをためらっている」という見出しでいろいろと書き込んでおるようでございますが、これは、これから続けるという応援を受けながら、大臣は今、大臣に就任したばかりで、官僚が書いたメモを読むことは、非常にまじめな岩動さんには申しわけないと思うのですが、本当に国家のこういう行政改革の騒ぎをしている際に、これは一考を要する問題ではないかな、こういうように思っております。したがって私は、代々行政管理庁に伺っておるのでございますが、今の行政管理庁はどう思うのでしょうかね。
  136. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 ただいま岩動長官から話しましたように、この問題は大変政治的な、非常に重要な課題でもありますし、同時にまた、科学技術という専門分野の方の御意見等も承らなければならぬといったようなことで、自由民主党、それと政府一体になって、この扱いについては現在検討中でございます。私どもはその結果を待ちたい、かように考えております。
  137. 川俣健二郎

    ○川俣委員 政府・自民党が一体になってないから言うのであって、そこで、なぜ一体になれないのかというと……(「なっているの」と呼ぶ者あり)  そこで、一体これをいつ決定するのですか。計画はいつ決定しますか。
  138. 岩動道行

    岩動国務大臣 私どもは、今回の予算編成の段階において、各方面からの御意見もありますので、今後政府・与党において「むつ」の研究のあり方について慎重に検討して、その結果によって私どもはさらに新たな対策を講じてまいる、こういうことでございます。  そこで、先ほど川俣委員から御質問のありましたことについて若干補足をして申し上げますが、今日まで「むつ」に要しました経費は、過去二十年間で、決算ベースで五十七年度で四百八十六億円であります。そして、その中でいわゆる地元対策、漁業補償等は三十七億円でございました。このことを申し上げておきます。
  139. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは数字が全然違う。事務当局に聞くのですが、いつごろ計画が決定されますか。
  140. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  原子力船の基本計画が最初に決まりましたのは、昭和三十八年でございます。
  141. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで、これからどういうようにするか。定係港の実施計画が決まるのはいつですか。
  142. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  「むつ」のこれからのいろいろ計画につきましては、今後、政府・党で御検討されることになるわけでございますが、これまで原子力船事業団を中心に検討をしてきました計画がございますが、それにつきましては、「むつ」の定係港を、五者協定によりまして、六十一年の九月を目途にいたしまして建設を進めるということでございました。
  143. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ところが、その大まかな方針は決まるといたしましても、今度の予算審議をやる五十九年の予算の実施計画はいつ決まるのですかと聞いておるのです。
  144. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  ことしの八月三十日までの間において検討を進めるということになっております。
  145. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これからどうしようかという振り出しに戻って、定係港にするか一般港にするかということも含めて、これから八月の三十日、月末までに決めるという計画の予算化というのはいかがなものでしょうか。大蔵大臣、未確定予算というのはどうなんでしょうかね。
  146. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、あらかじめちゃんと用意しておきましてお答えいたしますが、まさにこの結果いかんによって要否を判断すべき経費については結論が出るまで計上すべきでないということで、五十九年度予算には計上いたしません。しかしながら、関根浜新港につきましては、「むつ」の廃船の場合にも関根浜新港においてこれを行う、これは決定しております。政府、地元関係者等の間で港を速やかに建設することを約束した趣旨から、さしあたり、「むつ」による研究の継続、中止のいずれの場合にも必要になり、また、手戻りにならない部分について建設を行うこととして、そのための必要な予算を計上したものであります。したがって、内容未確定の予算であるとの御批判は当たらないというふうに考えます。
  147. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで事務当局に伺いたいのですが、当初の定係港を一般港にも使えるというような港にするということですか。
  148. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  「むつ」の関根浜に予定をしております定係港につきましては、事業団で計画しておりました段階におきましても、「むつ」の実験だけでなくて、将来公共的な用途にも使うようにしたいという構想を持っておったわけでございます。そして、このたび五十九年度の予算編成に当たりまして政府・党で決定いたしましたことは、八月三十日までの検討の結果、他用途利用の見通し、それから地元関係者の御意向、こういったものを体して港の全体的な計画を決めよう、こういうことになっていると承知しております。
  149. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これに対する会計検査院のかつての特別所見というのが出ているのを、行政管理庁はあるいは御存じないかと思うのですが、今のお話ですと、他用途港にするという考え方でどうも八月末までに決まって、さらにそれから実施をするということに聞こえることになると、今行政改革上、財政改革上一文でも欲しいという金が不足しておるときに、私ら一般の人が聞けば――大蔵大臣、その方のベテランですから教えてくれませんか。これは、やはりはっきり決まってから予算化しても遅くないのじゃないでしょうか。
  150. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは御案内のように、従来までずっといろいろな経緯を経ながらきておったわけであります。したがって、この時点において、私ども財政当局としてどう判断するかということになりますと、やはり「むつ」の研究のあり方についての検討結果いかんによって要否を判断すべき経費、これは五十九年度予算には盛ってはならぬ。しかしながら、「むつ」を廃船するという場合にも関根浜港で行う、これは決定済みでございますので、それの予算はきちんと計上しておくべきである、こういう判断に基づいたわけであります。
  151. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、もう少し教えてくれませんか。  この関根浜港というのは、当初から「むつ」ということでいろいろと漁民交渉をやってきて、国としてもそういう方針予算化してきたんだが、しかしながら、一般港として使えるかもしれないという計画変更が、こういう形で予算化が認められていいものだろうかね。科目の移用という言葉が適切か知らぬが、そういうことであるかどうか知らぬが、その辺はどうですか。無理はないですか。国の方針として一般港というのは初めて出たわけだよね。関根浜の港というのはあくまでも定係港だった、こういうことで方針を決定して予算化した、こういうように考えると、いかがなんですかね。
  152. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  関根浜港にっきましては、先ほど御説明申し上げましたが、原子力船事業団で計画しておりました段階から、当初は「むつ」でございますが、行く行くは公共的用途にも使用するということで計画を進めてまいったわけでございまして、今回、政府・与党で五十九年度予算編成に当たりまして決定した内容に。おきましても、当初はあくまでも「むつ」のための港として建設されるわけでございまして、将来他用途等を考えて全体計画をつくる、こういうことでございます。
  153. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると総理、これは自民党の内部ですら、原子力局長が辞表を急に出しておやめになったことも御存じだと思うのですが、この存続論と廃船論が相まっていろいろと論議しておるんですが、謙虚に原子力船というものが必要かどうかという論議をしているのじゃなくて、放射線も漏らしたし、いろいろと修理費その他にかかって、本体は二百億、大臣がどう言おうともつかみ金が三百億、これだけかけてきた「むつ」放浪記を考えると、私は、やはり素直にこれを検討し直すというくらいの考え方があってもいいのではないだろうか、こういうように思うのですよ。総理、どうですか。
  154. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 党内にもいろいろな議論はあります。これは自由民主党ですから、自由に皆さん自分の意見を言うのであります。しかし、この間予算をまとめる際には政調会長が中心になりまして、先般、ただいま科学技術庁長官が御答弁しましたような方針で統一をしたわけでございます。  それで、関根浜港は建設を行う、舶用炉の開発は必要である、原子力船「むつ」の将来の始末等々どういうふうにしていくかという問題は、八月までに専門家等の意見も聞いてそれを検討しよう、そういうことでまとまっておるわけでございます。
  155. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この点については、当該委員会ばかりでなくて、機会を見てこの予算委員会でもさらに専門的に同僚議員が詰めることだと思うのですが、それは自由民主党という名前から自由だということもわからぬでもないですけれども、野党が反対で与党が一体になってということであればわかるのですが、与党の中でいろいろと疑問を投げかけられておるということから、これは大変大事な問題だな、こういうように思っておるわけですよ。それじゃ、こういう二十数年間、放射線を漏らしたり佐世保へ行ってきたりして、「むつ」というものはどうなるだろうかという関心を持っている者は、国民も知りたいだろうし、廃船をしたいという意見はどういう意味だろうかということも聞きたいと思います。  そこで、ある放送会社が、ひとつ存続論者と廃船論者の両方の御意見を伺おうということで、長官の了解も得てセットしたわけです。ところが、何時間か前にこれを断ったわけです。この内幕というのは、どういう経過だったんですか。長官、どうですか。
  156. 岩動道行

    岩動国務大臣 今のテレビ放送の件でございますが、これは、放送の前日に私がそのことを聞いたわけでございます。そして、にわかに日程の関係もありますし、そのようなことで私は出演できないということを申したのでございますが、せっかくもう新聞にもプログラムとして名前が出ているからというようなたってのお話もございまして、いろいろ検討いたしましたが、やはりこの際、このような対応については十分に検討した上で出演した方が誤解を招かない、こういうことで私は出演を遠慮させていただいたわけでございます。
  157. 川俣健二郎

    ○川俣委員 小さな問題だけれども、そういう御意見。であればもう一つ聞きたいのですが、最初、事務当局が長官が出るということにしたわけでしょう。どうですか。
  158. 安田佳三

    ○安田政府委員 テレビ社の方からいろいろお話がありまして、日程作成上について十分調整がつかないまま、あいているというふうに勘違いいたしまして御返事したために、そういう結果になりました。全く事務的なミスでございましたので、その点につきましては、テレビ会社及び新聞社の方にも十分おわびをいたしました。
  159. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この問題は、どう考えても、やはり謙虚にこういう問題はどうするかと。何となく漁民と話し合ってしまったから、協定してしまったからどこまでも港をつくらなければならない、建設業者はもちろん群がる、七、八百億となれば、あそこには何も仕事がないのだから、だからがあがあ騒ぐのだろうと思う。そういうことを考えますと、やはり原子力船「むつ」というものをもう一度見直すという考え方があってもいいのじゃないかということを僕は食い下がりたいのですが、総理、どうなんですか、これは。
  160. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 科学技術の研究というものは、試行錯誤の歴史がとうといので、成功した例もとうといけれども、失敗した例もまたとうとい。欧米における科学技術の推進というものは、みんな失敗した例の累積の上に成功が出てきておる。失敗を恐れては成功は出てこない。(「失敗は成功のもと」と呼ぶ者あり)これは、確かに失敗は成功のもと、そういうものだろうと思います。  そういう意味におきまして、「むつ」というものは、日本におきましても初めてチャレンジしたことでありますから、始めてみましたらいろいろな問題があるということが実はわかったわけであります。一番大きいものはアレルギーであります。地元のアレルギーという問題であります。しかし、舶用炉の開発という問題は、海運国日本にとっては非常に重要な問題でございまして、ないがしろにはできないものだ。この点については、ドイツやアメリカから今非常におくれをとっていると思います。しかし、せめておくれを回復するように努力するということは、日本の国の国柄からしても当然の方向でございまして、そういう点の努力はやはり継続すべきであると思っております。
  161. 川俣健二郎

    ○川俣委員 失敗は成功のもとと言うけれども、そんな余裕がないでしょう、日本の場合は。だから、このように大騒ぎしているわけでしょう。だから私は、もう一遍誤解されないように言っておきますが、原子力船いいかどうかという問題はまた別なの、この問題は。どうにもならなくなって、宝の持ちぐされと言っては悪い、宝でもないのですが、これをどうにもならないので、しようがなくて、方々に金を落としてきた放浪の記録があるわけですよ。これ、一遍追ってみなさいよ、大蔵大臣。あなただってわかるでしょう。  これはいったか、こういう考え方は好ましくないとまでだれかが発言したでしょう。しかも、会計検査院からは特別所見が出たでしょう。それでもまだやってみるのも必要だ、失敗するのもこれは実験だ、こういうことで通れるものではない、二十数年かかっているのだから。だから、もう一度見直して、新たな出発に戻ったらどうかなという考え方で申し上げておるので、これに全然耳を傾けないという考え方であれば、これ以上進めたってしようがないと思います。後で同僚議員がやると思いますから、その点をぜひ総理には考えてもらわなければならないと思います。  それから、先ほどの農産物のあれをちょっと。  外務大臣がおられないからあれなんですが、いろいろの新聞の見出しもここに持ってきているのですが、「打開へ燃える外相 "首相候補"の力量をかけて 国内調整への気負いにしむ」、こういうようなことがいろいろ出ておるのです。農業に詳しいはずだが元農林大臣はなぜ強気だろう、いろいろと出ております。かと思うと、アメリカから来た農民の代表は、そんなに日本の農民が困っているのを、我々は押しつけようとは毛頭考えていない。かと思うと、せんだって来た米議員の諸君とお会いした際に、こんなものやってもらったってアメリカは大してメリットがないですよ、むしろアラスカあたりの石油の問題で交渉した方がずっとあるよ、どのくらいのメリットですか、はじいてみましょうかということまで言われる。  そうすると、何か特別な人方が、上がどこかか知りませんが、肝心の農林水産省をそちらにして一部の人方が気負い込んでいるなどいう気もするので、それで私はこういう疑問を投げかけるのでございますが、これはどうでしょうか。官房長官が外務大臣のかわりだからというのじゃなくて、総理の御意見は、私のあれはちょっと偏見であろうかね、どうでしょう。
  162. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 農産物問題、特に牛肉、オレンジの問題は、長い間の日米間の問題で、先般来は協定を成立させて、三月までその協定が有効に機能しておったわけであります。この協定が、後どうするかという問題について、過去一年以上静かに専門家で話し合ってもらおうということで話し合いが続いて、今もその延長線上にあります。私は、でき得べくんば三月までにこれは解決した方がよろしい。というのは、アメリカの大統領選もございますし、いろいろな面から見まして、おくれればおくれるほど日本の立場は有利にはならない、そういう考えもあります。     〔委員長退席、松永委員長代理着席〕  我々といたしましては、日本の農業の発展をこいねがい、日本の農村の安定をこいねがっており、また、そういう基礎の上に立ってアメリカ及び外国との協調という問題も考えておるわけでございます。そういう両方の面から考えてみまして、できるだけ早目に専門家の間で話を決着させる方が賢明である、こういう考えに立ちまして、今関係各省を督励してやらしておる、こういう状態でございます。
  163. 川俣健二郎

    ○川俣委員 その意味はわかるのですけれども、やはり日本の国だって農民がいるし、農業国だし、この農業で成り立っている地域もたくさんあるわけですから。ただ、日本の国が海外との関係ということだけでひとり歩きしているという感じを受けるので、農林水産大臣はあのように決意表明されるし、それから外務大臣は何か最初に先行してきているし、こうやって見ると、あるいはこれは日の出山荘あたりでレーガンと総理が最初に話をつけて、後で何となくつじつまを合わせるというようにも聞こえるのですけれども、そんなことはないですか。
  164. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そんなことはありません。
  165. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そんなことはあったって、おかしくはないのだけれどもさ。  それで、これはちょっと外務大臣がおられなくても質問が例えるのですが、皆さんにお配りした米の「生産量と需要量の推移」というのがございます。これをちょっと抜粋して書いたものなんですが、この資料、農林省事務当局、これ大丈夫ですね、私が書いたのだけれども。どうです。
  166. 松浦昭

    ○松浦政府委員 お手元に差し上げました資料につきましては、実績に基づいてつくりましたものでありまして、そのとおりでございます。
  167. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それによりますと、五十四年からの計画と実績を見ますと、五十四年からずっと計画に対して実績が落ち込んでおります。これは不作も続くことでしょうが、いわゆる生産調整の関係もあろうかと思います。計画はこのように左側にあるのですが、思うようにとれない。そこで現在、米穀年度でしょうが、昨年の十月末に十万トンしかない。十万トンも残ったからいいじゃないかと言われると思うのですが、しかしその上に、五十三年度と書いて六百五十万トンというのがある。この六百五十万トンというのは、過去からのいわゆる過剰米、古米というやつでございますが、この六百五十万トンというものを何とか海外に輸出する、工業用に回す、あるいは飼料用に回すということで処理してきて、五十八年で、五カ年間で一応全部きれいになった、こういうことでございます。  ところが、五十三年産米の主食用の売却というのが右から一つ左側の欄にあるのですが、これが約四十五万トンあります。六百五十万トンという主食に供しない古米を全部海外に売ったり家畜にやったりすれば、六百五十万トンというものが全部整理できるわけですが、この六百五十万トンから四十五万トンだけ戻して食わせた、配給した、こういうように見ていいのですね。どうですか。
  168. 松浦昭

    ○松浦政府委員 ただいまのお尋ねは、五十三年産米の処理であろうと思いますが、実はもとから申しますと、この過剰米は五十年から五十一年にかけて累積したものでございます。これにつきまして、ただいま川俣委員から御指摘がございましたように、五十四年から工業用、輸出用、飼料用ということで過剰処理を図ってまいったわけでございますが、五十九年度の工業用の需要分も確保いたしまして、御案内のように五十八年度をもって終了する見込みでございます。  ただいま六百五十万トンという過剰米の処理計画があったわけでございますけれども、五十七年度までの処理実績が四百五十万トン、これに加えまして五十八年度の実行見込みが百三十五万トンでございますので、結論といたしまして総処理数量は六百五万トンという形に相なる次第でございます。
  169. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうなると農林大臣、六百五十万トンというものは主食に供し得ないということで、工業用なり家畜用なりあるいは海外輸出用なりということで処理しようという特別会計法、この場でつくってもらったが、結果的には六百五万トンでもうなくなっちゃった。四十五万トンはどうしたのかと言ったら、計画と実績に対して、実績が少ないのだから配給用に回したのだ、こういうことなんです。それはわかりますか、どうです。
  170. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 事務局からもよく伺いました。食管法には間違いなく違反していないということでございますりで、詳細につきましては政府委員から説明させます。
  171. 川俣健二郎

    ○川俣委員 食管法に違反しているということを伺うのじゃなくて、需給関係が、もしも六百五十万トンというものがなかりせば不足しておつた、四十五万トンを足してみたところで十万トンしか残らなかった、ということは三十五万トン足りなかった、こういうことでいいのでしょう。そうですね。
  172. 松浦昭

    ○松浦政府委員 お答えをいたします。  五十三年以前のお米……(川俣委員「一言で言ってくれ」と呼ぶ)確かに、総需給の観点から見ますると、ただいま先生のおっしゃいました点については否定できないという状況になります。
  173. 川俣健二郎

    ○川俣委員 こういうように三十五万トン足りなかった。五十三年までの古い過剰米という例の大騒ぎをした余り米、これがなかったとすれば三十五万トンも不足しておったということなんです。それでもやはり今のような生産調整は続けていった方がいいと考えるのですか、それとも十万トンぐらいの残でいいと思うのですか、その辺はどうです。
  174. 松浦昭

    ○松浦政府委員 五十三年産米の用途につきましては、確かにかつてから見まして四十五万トン分だけ、これを処理して主食用に回したわけでございますが、この点につきましては、やはり外食用等の需要もございまして、その方からの要望、希望もございまして、これを処理したわけでございます。  現在の時点におきますところの需給の関係、これから考えてみますると、五十八米穀年度におきますところの需給の状態につきましては、私ども万全の操作をいたした次第でございまして、特に問題なく処理いたしまして、先ほど委員おっしゃられましたように、十万トンの五十七年産米の持ち越しをいたしております。これに加えまして、五十九米穀年度につきましては、確かにことし四年連続の不作という状況になっておりまして、作況指数も九六ということで一千三十七万トンという実績になっております。  しかし、これは当初転作の目標面積をかなり抑えまして米を増産する体制をとっておりましたがゆえに、ある程度までの持ちこたえができまして一千三十七万トンという数字になったわけでございますが、この一千三十七万トンを前提にいたしまして需給を考えてみますると、五十九米穀年度の供給といたしましては、先ほど申しました十万トンの持ち越し、さらに五十三年産米を十万トンから十五万トンぐらいまで引き続き売れる見込みでございます。かような状態を考えてみますると、米の需給に特に不安が生ずる状態ではないと考えております。  なお、このようなことで推算をいたしますれば、当然五十九米穀年度には五十八米穀年度と同様に十万トンの持ち越しができるわけでございます。ただ、確かにおっしゃいますように在庫の水準が低くなっているということは事実でございます。したがいまして、私どもとしましては、特に第三期の水田利用再編対策の中で毎年四十五万トンの在庫積み増しをするということで、三期対策の転作の目標面積を六十万ヘクタールということで控え目に設定をしているという状況でございまして、そのようなことを考慮いたしまして第三期の対策を決めた次第でございます。
  175. 川俣健二郎

    ○川俣委員 控え目に面積を出したのではなくて、むしろ変えないというだけでございますからその点はあれなのですが、ただ、このように素直に見て、過去五年間は常に計画には達してない実績だということなんです。その実績が足りない分を何で補ったかといったら、一遍は国民に主食用に供し得ない米、配給米には回せない米を借りてきたから間に合ったのであって、簡単に言うと、そうでしょう。だから私が言うのは、今度は六百五十万トンの分というのはゼロになったのだから、したがって十万トンしかないわけです。十万トンしかないのだけれども、さらにこの計画より実績が下がるであろうということを考えますと、主食であるだけに、もっと大局的に考える必要がないだろうかと農林水産大臣に問いかけております。答弁は結構ですから。  そこで、いよいよ足りなくなった場合は輸入してくるしかないという方便になるのですが、いままで輸入した実績は、四十四、五年ころはどのぐらい輸入したのでしょうか。過去の実績はどうです。
  176. 松浦昭

    ○松浦政府委員 輸入の実績について申し上げますと、昭和四十年に九十七万一千トン、四十一年に九十七万六千トン、四十二年に五十万三千トン、四十三年五十一万トン、以下はかなり数字が少ない状況になっております。
  177. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで、これほど厳しく生産調整が行われておったし、この寒さでどうなるかわからない。農業はやはりお天気任せが大分あるわけですから、いよいよ足りなかった場合はアメリカから輸入してくるしかないなと思うね。農林水産大臣、どうですか。大臣、どうです。
  178. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 まあ先生のおっしゃるとおり大変な問題がございますけれども、米の需給関係につきましては、ただいままで事務当局から説明したとおりでございますが、本米穀年度も、米の安定供給を確保し、国民に不安を与えないことを基本として需給操作に万全を期する所存でございます。御存じのとおりの四年連続の不作でございますが、これに伴うところの在庫事情を踏まえて、水田利用再編第三期対策において各年四十五万トンの計画的な在庫積み増しを行うこととしておりますので、今後とも国民にいささかの不安も与えないように努力してまいりたいと思います。
  179. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いやいや大臣、おつむがいいんだから、あんまりメモを読まなくたって、政治家同士の話だから。水田対策については専門の委員会で深くやられるだろうから。そうじゃなくて、やはり私の思うのは、もう今十万トンしかないわけだ。常に計画より実績が下回っている。今までは、足りなかった分は古い米をおろして配給してやっとなった。今度はそれがゼロになったわけです。しかも十万トンしかないわけですね。そうすると、やはりアメリカに仰ぐしかないでしょう。どうなんです。
  180. 松永光

    ○松永委員長代理 松浦食糧庁長官。(川俣委員大臣がいいんじゃないの、政治家同士のあれだから」と呼ぶ)今のは取り消しまして、農林水産大臣
  181. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生御心配なのは、米が輸入されたら大変だということじゃないかと思います。私は、少なくとも今回の他用途利用米等の導入等によりまして、輸入をしなくても絶対済むというぐあいに考えております。
  182. 松浦昭

    ○松浦政府委員 ただいま基本的には大臣から御答弁申し上げたとおりでございますが、補足いたしまして若干計数的に申し上げますと、確かに五十八米穀年度からの持ち越し量は十万トンでございますが、まだ一千三十七万トンの五十八年産米を前提といたしましても五十三年産米が十万トンから十五万トンの需要があるわけでございます。また持っております。さらに加えまして、端境期の状況を考えてみますると、これも委員御案内のとおりでございますが、十月末までには政府米で二百万トン、自主流通米で百五十万トン程度の早場米が出てまいるわけでございまして、これで需給操作をしてまいりますれば、もとよりこれは非常にきめ細かな需給操作が要ると思いますけれども、私どもはさような輸入を前提としたような政策をとらなくても十分であるというふうに考えておるわけでございます。  なお、五十九年産米がどうなるかということについてもお触れになったと思うわけでございますけれども、五十九年産米にっきましては、もとよりこれはお天気の問題がございます。しかしながら、先ほど私御答弁申し上げましたように、第三期の水田利用再編対策の中で四十五万トン分の在庫の積み増しということを考えておるわけでございまして、当然これがバッファーになり得るというふうに考えられます。また同時に、転作につきましても、五十八年は一〇六%の超過達成をいたしております。これも限りなく一〇〇%に近づけていただくということで、目下いろいろと地方公共団体その他にお願いをしているわけでございます。さらにまた、大臣が御提唱になりました、たくましい稲づくり運動といったようなこともお願いをいたしましてやっておるわけでございます。さような意味で、輸入をいたすというような必要がないものというふうに私どもは考えている次第でございます。
  183. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そう汗だくになって、輸入しません、間に合いますということを言わぬで、やはりもう少し話し合って、十万トンぐらいじゃ足りないなと私は思う。今までの実績がそうだもの。経過だもの。十万トンじゃ足りないよ、これはどう考えたって。それを大臣は他用途米を食わせるような話、これは誤解したと思うのだけれども、ちょっと人間様にあんまりなことを言わないでくれ。そういうことなんだ。私はそういうふうに思うので、結論的に言うと、ちょっと在庫米が足りないんじゃないか。どうだい。
  184. 松浦昭

    ○松浦政府委員 確かに現在の在庫水準を考えてみますると、五十八米穀年度から五十九米穀年度に持ち越した分も十万トン、それから五十九米穀年度を考えましても十万トン程度の在庫の持ち越しという計画で推移しなければならないということでございまして、在庫水準が低いということは先生御指摘のとおりでございます。したがいまして、私どもといたしましては、第三期の水田再編対策の中で毎年四十五万トン積み増すということで、転作目標面積を本来七十万ヘクタールのところを六十万ヘクタールということで抑えまして、在庫の積み増しを図ろうということで考えておる次第でございます。
  185. 川俣健二郎

    ○川俣委員 今皆さん方のを伺っていると、今までの生産調整より低く抑えたように聞こえるけれども、そうじゃないからね。さらに低くしようと思ったけれども思いとどまったという程度だから。そういうことですから、今のお話は。  さらに私が思うのには、やはり足りないと思う。十万トンじゃだれでも足りないと思うのだから。しかも、計画と実績という過去五年の統計は尊重すべきなんだ。今度は、おてんとうさんよくなるんだというような、どこかの成長率のあれじゃないけれども、そういうような考え方じゃない、主食というのは、それはぜひ申し上げて、農林水産大臣、そういうことを十分に農政に生かしていっていただきたいと思います。特に、主食だから。  そこで、米の場合、消費者米価が上がるのはあしたからですか、いつからですか。消費者米価が上がるときに私ははっと思ったのですが、これは公共料金、国営・国管の料金ですから、地域によって料金が変わるということはおかしい。考えられない。田んぼのそばの住民だって、東京都の人方だって、同じ価格で買うというのが、これが国営・国管の建前だ。  そこで、ひとつ参考までに聞きたいのですけれども、国鉄の場合の運賃ですが、地域差。これは電力料でも、発電所のそばに大きな製錬所がある。鉛なんというのは八割が電力料、電力を食うわけですから、電力の缶詰だから。しかし、隣に電力を売ろうが、山奥の離れたところに売ろうが、やはり国がつくった法律で、電気事業法で単価は同じ。米の場合も全く同じ。東京の方では高くても食わざるを得ないだろうから高くしようというわけにいかない。こういうことを考えると、国鉄だけが地域差の運賃を導入しようという考え方は、法制局長官、これは法理論としてどうなんでしょうかね。日本の国には初めてだね、これは。
  186. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  立場上、一般論として申し上げますが、国営あるいは公共企業体の営む事業の料金につきましては、一般的に言って特別の理由がない限り均一の料金で利用できるようにすることが望ましいことであると思います。  それから、事業にはいろいろあるわけでございまして、その事業の性格とか実態に照らしまして特段の合理的な理由がある場合、地域その他の要素に基づいて差等を設けたといたしましても、理論的には特に問題はないと思います。あくまでも政策的な合理性、妥当性の問題であろうかと思います。
  187. 川俣健二郎

    ○川俣委員 理論的に聞いているので、政策はこちらの方がつくるんだから。  じゃ、ほかに例がありますか。日本の国にあるのですか。
  188. 茂串俊

    ○茂串政府委員 私も実務の方は余り明るくございませんで、果たして適例かどうか自信はございませんけれども、例えば道路公団が行っております有料道路などにつきましては、地域的に差等がつけられておるのではないかと思います。そのように聞いております。
  189. 川俣健二郎

    ○川俣委員 法理論的にはよろしいと、こうおっしゃるけれども、道路公団の料金に結びつけるというのは、ちょっとまた違うのじゃないかと思うね。キロ単価が一律性を持っておった国鉄の歴史だから、一キロどこへ行ったって同じなんだから。そっちはへんぴなところだから、余力乗らないからコスト主義で高くするということは無理があるよ、長官。そのぐらいは歯どめしておくのがあなたのいすじゃないのかな。無理があるんじゃないかな。違うか。一言ぐらい言うたですか、国鉄当局に。運輸省に言うたですか。
  190. 茂串俊

    ○茂串政府委員 国鉄の運賃のことでございますけれども、例の五十五年に国有鉄道の再建特別措置法、ちょっとはっきりした自信を持って法律の名前は言えませんけれども、その法律のだしか第十三条に、地方交通線につきましては、運賃についても収支の均衡を図るように特段の配慮をすべきであるといったような規定があるかと記憶しております。そのときに十分にそういった点につきましては御議論があったのではないかと思います。
  191. 川俣健二郎

    ○川俣委員 内閣の法制局なんですから、そのぐらいのやはり法理論というものをサゼスチョンするあれが必要だと思うね、私は。ないんだ、余り。ないですよ。高速道路に当てはめて幾らでもあるよというようなことにはならない。そういう考え方でいけば随分これから問題が起きてくるよ。消費者米価なんか一番の端的な問題だ。田んぼの隣だって同じ値段なんだから。だから、そういうのはあなたのポストがやるべきことではないだろうかという意味で伺ったのでございますから、その点、申し上げておきます。  それから、大変遅くなって申しわけないのですが、総理が改善する一つに健康保険、医療保険の問題があるのですが、これは当該委員会、社労委員会で盛んに叫ばれて何年にもなるのでございますが、とうとう十四兆五千三百億円。日本国民医療費の総額が十四兆五千三百億円。日本の一年間の五十兆円に対比してでも大変な十四兆五千三百億円。しかも間違いなく年間一兆円ずつふえていく。これは何とかしなきゃならぬよということで言っておったら、とうとう抜本的な改正ではなくて、負担は将来二割をめどに、まず初年度は一割負担等々で、いろいろと国民の負担増でこの一兆円というものを賄おうとしておるが、問題は私は、一兆円がいかにしたら減るかというところを厚生省が考えねばだめだろうかなと思うのです。  そこで私は、これは事務当局でいいです、大臣は結構ですから。国民医療費の中でやはりどこから作業を始めなきゃならぬかというと、毎年一兆円ずつふえる金の取り分、医者の取り分、それから薬屋の取り分、医療機器の取り分、こういったものを予算委員会に出せないかな。どうですか。そうしたら非常にいい審議になると思う。
  192. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答えをいたします。  取り分というのは、結局医療費というのは全部医療機関へ必ず行くわけでございます。その後の医療費の配分の率の問題だと思いますが、私ども今医療経済実態調査をやっておりますが、それによりますと、医療サービスの従事者、つまりお医者さんだとか薬剤師さんあるいは看護婦さん等でございますが、これに四九%が配分されます。それから、医薬品の部門に二二%配分されます。医療材料の分野に六%が配分されまして、その他光熱水費だとかあるいは減価償却費だとかあるいは支払い利息というような分野に二三%が配分をされる、こういうことに考えております。
  193. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そんなことはわかっているんだよ。問題は、やはり取り分というのはあるんですよね、開業医に何ほどか国立病院には何ぼかという。あなた知っているでしょう。国公立が赤字で、開業医の一部が黒字でたまらないという実態を知っているでしょう。同じお医者さんがおっても、厚生省の所属の国立病院で本当に少ない給料で働いてやっているところはなかなか容易でない。こう言っちゃ悪いけれども、悪徳医師のことは別として、非常に黒々としてたまらない医者業という実態も知っておるでしょう。だから、それの医療費の行き先、使途別というのはわかるでしょう。それ一回ぐらい出せないかというのだ。どうです。今でなくたっていいから一遍出してくれよ。
  194. 吉村仁

    ○吉村政府委員 行き先というようなことからいいますと、五三%が病院、それから三四%が診療所、一一%が歯科診療所、こういうことでございますし、また、病院という分野だけをとってみますと、二〇%が国公立病院、それから一九%が医療法人の病院、それから一四%が個人病院と大学病院、こういうように配分されるということになっております。     〔松永委員長代理退席、委員長着席〕
  195. 川俣健二郎

    ○川俣委員 さらにそれから細かく要求したいところですが、それがもとになって国民医療保険の改善をしようとしないから無理があるのだ。もっと簡単に言うと、まじめなお医者さんにもっと診療報酬が払えるように、あなた方は薬価基準は下げたと言うけれども、薬価基準を下げたって医療費は下がらない。なぜかと言うと、濃厚治療をやったり、あるいは余分な治療をやったり、あるいは三センチやけどを治しても五センチとレセプトに書いてもわからない、こういったような観点に立たないとだめだと私は思うのです。ちなみに、あなた方がつくったものを読みますよ。ことしこそ十四兆五千三百億でとまるが、六十年は十六兆九千五百億、六十五年は二十五兆円、こういうような国民医療費になりますよということだけではいかぬと思うのだが、どうなんです。
  196. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもは、いろいろな対策を講ずることによって医療費の規模というものを適正な水準に保とう、こういうことで考えておるわけでございまして、薬価基準だけ改正をするとか診療報酬だけを改正するとか、そういうたった一つの政策だけで医療費の適正化ができるというようには思っておりません。いろいろな施策を総合的に講ずることによって医療費の規模というものが適正水準に保たれるようになる、こういう観点から今回の改正案を提案したわけでございます。
  197. 川俣健二郎

    ○川俣委員 非常によろしいと思うが、毎年毎年この論議があって、今度こそは大丈夫だ、今度こそは大丈夫だということの問題なんだ。それが問題なんだ。常に直らない。改善されない。恐らくまた改善されないと思う。(「今度は大丈夫だ」と呼ぶ者あり)後ろの方でベテランが、だから今度は大丈夫だとおっしゃるから、今度は大丈夫だと思うけれども、無理がある。  やはり医療費の行き先を細かく問い詰めていかないと改善にならないと思う。あなた方は無理だと思う。そうでしょう。そういう考え方で言っているのであって、今のようなおっしゃっていることになれば、十四兆五千億なんか、もうかなり減るではないか。非常にぎりぎりで生活しておる国公立の病院等のつもりで皆さん方、名お医者さん方がやれば、十四兆五千億にはならないと思う。これは皆さん専門ですから。だから、そういうところの医療費が細かく行き渡る使途、取り分、こういったものを細かく分ける。診療所は何%、国公立何%なんというのは聞かなくてもそれはわかる、実態が出ているわけだから。そういうことをやるべきではないだろうかと私は思うのですが、それをぜひ指摘しておきたいと思います。  それから、厚生省にさらに伺いたいのですが、精神衛生実態調査、この精神衛生実態調査はかなりぎくしゃくしておるわけですが、中止の断を下したのは東京都を初め、それから、まだ実施できない、もめている。これはなぜもめているのでしょうかね。どうですか、精神衛生実態調査。
  198. 大池眞澄

    ○大池政府委員 お答えいたします。  一部関係者の間でプライバシーの問題についてのいろいろ問題提起がございまして、そういった方々に、この調査はプライバシーを侵害するものでないということをよく納得いただくために、御説明、説得をしておるというような地域がまだ若干残されている、そういう状況でございます。
  199. 川俣健二郎

    ○川俣委員 まだ若干じゃなく、かなり残っているでしょう。いつできるのですか、ことしじゅうでしょう。
  200. 大池眞澄

    ○大池政府委員 この調査は、各都道府県の手をまずかりて行う調査でございます。現在、予定されました計画にのっとって実施いただいております箇所は三十五自治体でございます。残余のところで、ただいま先生御指摘のような現在実施へ向かっての詰め、努力を行っている最中でございます。
  201. 川俣健二郎

    ○川俣委員 県よりも、対象施設として何ぼ残っておりますか。
  202. 大池眞澄

    ○大池政府委員 お答えいたします。  今回の調査におきましては、精神科、神経科を標榜する医療機関、これを抽出をして行うということでございまして、全体の対象は八百七十二カ所をこの調査としては計画しております。
  203. 川俣健二郎

    ○川俣委員 八百七十二のうち何ぼできたのですか。
  204. 大池眞澄

    ○大池政府委員 現在三カ所の自治体におきまして、国の調査の受託がむずかしい旨の意向表明を行っているわけでございますが、この関係にっきましては、医療施設数の約一八%強につきましてその施設をその地域内に保有しておるわけでございます。それから残余の、現在努力中の地域にございます医療施設は、この調査計画の中の二九%ほどでございます。
  205. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、八百七十二の対象施設はわかりましたが、四百十五まだ残っておる、こういう数字は違いますか。
  206. 大池眞澄

    ○大池政府委員 現在まだこの計画にのっとって着手されていないという意味では、御指摘のような数字になります。
  207. 川俣健二郎

    ○川俣委員 計画では簡単にのせれるのですが、問題は、自治体との話し合いで実施するかどうかという問題が四百十五、四七・六%、約半数。それがやがて一カ月ちょっとしかない。これは非常に自治体が混乱しているから、大事な問題だから申し上げますが、ところが、こんな状態では余り意味がないではないかというのを行政管理庁――なぜ行政管理庁はこういうことをおっしゃるかというと、統計をとる際には、どんな統計であろうが、行政管理庁の許可が要るという条項によって、この統計をとろうとしておるが、やはり混乱しておる、まだ半分もある、一カ月ちょっとしかないということから見ると、どうです、これは自治大臣あたりに聞くべきかな。ぽつぽつ考え直したらどうですかな。こういう実態は、田川大臣、初めてですか。聞きますか、この問題は。地方自治体が非常に混乱しているということ。
  208. 田川誠一

    ○田川国務大臣 余り聞いたことはございません。
  209. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで、予算は大したことないのですが、やはり嫌がる、医師会もそういう感じを持っているところが多々ある。こういうところを考えると、やはりそういったものはお医者さんに任せるべきで、余り国のあれでやるというのはいかがなものだろうかなと思っておるので、そう申し上げたわけです。しかし、いま一考を要すると思うが、一考、再考してみるとは言えないと思うが、厚生大臣、どうですか。大臣に一遍聞かなければだめだ。
  210. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今、川俣先生からの御指摘いろいろございましたが、これは非常にプライバシーの問題でいろいろ調査するのに困難な点等もあったようでありますが、精神衛生対策上不可欠の問題でもありますので、中止するというわけに残念ながらまいりません。また、今かなり進んでおりまして、これが仮に全部ができなくても、調査結果というものは今後の対策上かなり役に立てることができるものと判断しております。
  211. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣の気持ちもわかるのだけれども、問題は、半分まだ残っているわけだ。一カ月ちょっとしかないわけだ。そして私はこういう提案をしているわけですが、ちょっと検討ぐらいしてみる必要があると思いませんか。中止せいと言っているのじゃないですよ。大臣、どうです。――せっかく大臣がいい答弁をしているのに。
  212. 大池眞澄

    ○大池政府委員 ただいまの御質問の件でございますが、関係する自治体におきまして全力を挙げて現在実施へ向けて努力中であるということで、御理解を賜りたいと思います。
  213. 川俣健二郎

    ○川俣委員 事務当局はそれでいいんだ。  大臣、どうですか。中止せいと言っているのじゃなくて、事務当局からさらに詳しく聞いてみる、このぐらい出ませんか。
  214. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 先ほども申し上げましたように、これは我が国の重要な精神衛生対策上不可欠なものと判断して、今事務当局が一生懸命にやっておりますので、御指摘のような問題等もございますが、今ここで中止するというようなわけにはまいりませんので……(川俣委員「いや、中止せいと言っているんじゃないのですよ」と呼ぶ)今御指摘のような問題も十分参考にさせて、判断させていただきたいと思います。
  215. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それから、厚生省にさらに婦人問題がいろいろとあるわけですが、差別の問題、年金の問題等々あるのですが、時間がございませんけれども、ただ一つだけ。  せっかく改善対策で大きく出た児童扶養手当ですが、この児童扶養手当でちょっと、私の感覚かもしれませんが、おかしいと思うのかもしれませんが、別れた夫が六百万円以上の収入がある場合は、残された妻子には児童扶養手当を出さない、こういうことですか。
  216. 吉原健二

    ○吉原政府委員 現在の児童扶養手当におきましては、どんなに高額な所得がございましても、離婚した場合に、母親に収入がない場合には児童手当が出る、こういう仕組みになっているわけでございますが、今回の改正案におきましては、離婚をした場合におきましても、夫、つまり子供から見れば父親には民法上の扶養義務があるということを考えまして、父親にそれ相当の収入がある場合には手当の支給を御遠慮いただくという考え方を取り入れたわけでございます。(「当たり前だ」と呼ぶ者あり)
  217. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうそう、当たり前でいいんですよ。ところが問題は、家裁に非常に持ち込まれるのは行方不明になった場合ですね、相手が。そういう場合には、六百万、今まではもらっておったが、今どういう生活をしておるかわからない場合は、例外に厚生省は出すわけですか。
  218. 吉原健二

    ○吉原政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、協議離婚なりあるいは裁判離婚なり、離婚をした場合のことを申し上げたわけでございまして、夫が行方不明になったり行く先がわからないというような場合におきましては、そういったことを期待しても無理でございますので、適用は考ておりません。
  219. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、逆の言い方をすると、行方がわかっているころは六百万以上だったら払わない。急にいなくなったという場合には払うんですね。
  220. 吉原健二

    ○吉原政府委員 夫の所得、父親の所得による支給制限といいますのは、離婚時における前年の夫の収入という考え方でいきたいと思っているわけでございます。その後の状況につきましては、例えば離婚時に相当の所得がございましても、その後何年かたちまして行方不明というような状況にもしなりまして、仕送りその他が期待できないという場合には、救済措置は考えなければならないというふうに思っております。
  221. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは御意見聞いておきます。  それから、今急に報道されておる消炎鎮痛剤、いわゆるチバガイギーですね。「薬事法違反の疑い強い」、こういうふうに大きな見出しで夕刊に出ておるのですが、これをちょっと聞いておきたいんですが、(「それは社労だ」と呼ぶ者あり)社労では中身を詰めますから。ほかの大臣の方の関係があるので。  それで、これは昭和五十二年にもう死亡例が出ておりますね。どうですか。
  222. 正木馨

    正木政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御質問のございました消炎鎮痛剤、ブタゾリジン及びタンデリールにつきましては、五十二年の七月に再評価をいたしましたが、その際、各一件の死亡例を掌握をしております。
  223. 川俣健二郎

    ○川俣委員 千百八十二人の死亡、「激痛、内臓ボロボロ」というような大きな見出しで出ておるのですが、問題は、この死亡事例が出た時点で薬の要指示薬、いわゆるお医者さんの指示を受けてでなければ使っちゃいけないという処置をなぜとらなかったのだろうか。
  224. 正木馨

    正木政府委員 お答え申し上げます。  要指示薬は、先生御案内のように、細菌についての耐性の強いもの、あるいは副作用の強いものというようなものにつきまして、医師の処方せんないしは指示によらなければ医薬品の購入ができないという仕組みをとっておるものでございます。  ところで、この当該消炎鎮痛剤につきましては、その薬理作用につきましては、比較的緩和なものである、また急性毒性も弱いといったことで、現在まで要指示薬の取り扱いをしてこなかったわけでございます。
  225. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、これだけ死亡者が出てくると、それをその対象として検討するつもりですか。
  226. 正木馨

    正木政府委員 お答えいたします。  問題になっておりますチバガイギーから、実は昨日詳細な資料の提出を受けました。今内容の分析をいたしておるわけでございますが、私どもその資料から見まして、なお因果関係等いろいろ詰めなければならない点がございますが、副作用等の点について、新たに、軽視できない問題であるということで、早速にも要指示薬の扱いにしたいというふうに考えております。
  227. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これはどうも薬事法六十九条に抵触すると思われるのですが、そうなると、警察庁の手を煩わさなければならないと思うのは当然ですが、これは警察庁は御存じですか。どうです。
  228. 鈴木良一

    ○鈴木(良)政府委員 ここで初めて知りました。
  229. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これをぜひ検討してみて、返事をくれませんか。これは確かに薬事法違反の対象でございます。  それから、警察庁に通告はしておりますから、保安部長、今初めて言う問題じゃないので、どうかその点は、こちらの方の事務当局の手違いであればお許し願いたいのですが、全然知らなかったのですか。どうです。
  230. 鈴木良一

    ○鈴木(良)政府委員 きょうの新聞の記事の「報告」の問題につきましては、私ども初めて知りました。今まで知りませんでした。きょうの夕刊の記事で初めて知りました。
  231. 正木馨

    正木政府委員 ただいまの薬事法の六十九条の関係でございますが、昭和五十四年の改正で、五十五年四月以降……
  232. 川俣健二郎

    ○川俣委員 よろしい。時間がないからよろしい。答弁を求めたんじゃありませんから、局長に。  警察庁にお願いしておきたいのですが、ぜひ、私が提示しておりますので、質問通告しておりますから、事務当局に聞いて、後で結構ですから。  それから、遅くなってあれなんですが、もう一つ最後に、カネミ油の問題が大きく社会問題として出ておるのですが、これは長年裁判ざたになっておりまして、西日本一帯でございますが、ライスオイル、この食中毒が発生して十六日目に後遺症に苦しんだ方千八百二十四名、これは認定患者です。早期解決してくれということで裁判闘争になったのですが、この間、一月十七日でしたか、福岡高裁で、和解しろ、こういう和解勧告書が出たが、厚生省はこれを拒否した、こういうことでございます。  カネミというのは、予算委員会で私、大変に――これは総理、こういう状態になるわけです。(写真を示す)ちょっと見ただけでもこういう状態になるわけですから、大変なんです。  そこで問題は、なぜせっかく出た高裁の和解勧告を拒否したのだろうか、これをちょっと聞かしてくださいませんか。
  233. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 お答え申し上げます。  今回の和解の勧告は、国家賠償責任を問われている裁判の過程において提起をされたものでございまして、法律的な判断が前提になることから、法務省を中心にいたしまして、厚生、農水、関係三省でいろいろ検討をいたしたわけでございます。その結果、今回の油症事件につきましては、国の法的責任を見出しがたいこと、それから油症事件に関するこれまでの裁判所の判断は、いずれも御承知のように国の責任を否定していること等の理由によりまして、今回和解に応ずることはできないという結論に至ったわけでございます。
  234. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、今度は大臣です。政治的な判断を聞かしてくれませんか。和解勧告の文書はこういうようになっている。油症発生以来十五年を経過するのに、なお被害救済の道が開かれていないのは遺憾である。この事件において、国の担当官の対応は十分なものとは言いがたいが、国も被害の拡大を阻止し得る地位にあったものとして、その救済の一翼を担うべき責務があるものと思う。ここに和解による被害者全員の早期救済の道を開くため和解を勧告する。こういうことです。  そこで、大臣の前の前でしたか、森下厚生大臣は、かつてこの場でしたか、法的な責任とかあるいは裁判の経緯なんということは別にして、行政的な一つの問題として、患者の方々の救済等のために努力したい、こういうようにわざわざ言っておられるのですが、せっかくこのように和解をしろという裁判のあれを、これはできないことだという判断は、ちょっとこれは患者だけじゃなくて、社会一般が理解に苦しむのだが、その政治的な態度というものをここで聞かしてくれませんか。
  235. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 カネミ事件の患者の皆さん、私も一度お目にかかりました。大変にお気の毒な状態でありまして、人間の健康を守る厚生省としてとり得ることでは最大の努力をしなければならないと私、思ってまいりましたが、今回の法的な問題に対する回答としては、これは農林省、厚生省、法務省、三省協議の上、これは国の賠償責任という今後に大きく波及する問題等でもありますので、純粋な法律的な解釈による回答に従ったわけであります。  しかし、被害者の救済について、これは厚生省としては、今までも約八億円程度使って医療対策あるいは生活更生資金等のことをやってまいりましたが、今後も当事者である鐘化に対して、速やかにこの患者の皆さんの救済のための話し合いにつくように勧告をしたり、また厚生省としてとり得る方法によっては、患者の皆さん方のための健康を守っていくためのお役に立ちたいと考えております。
  236. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこまで大臣、前向きに考えておるのなら、せっかくこう出たのだから、あれをもとにして和解したらどうかというのをためらっているのはいろいろな事件に波及するからだというように感ずるのですが、どうせその本人方にはいろいろ勧告したり話し合うのでしょう。そうしたら、この辺で裁判闘争というのはやめた方がいいよ、和解せいと言っているのだから、だからやはり検討すべきじゃないだろうかと思いますね。どうです。検討ぐらいしてみたらどうです。
  237. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 患者の皆さん方に対して、これは何とかしてあげたいという気持ちにおいては川俣先生も私どもも同じだと思うのですけれども、これは問題は国の賠償責任ということの前例をつくるということになりますと、その賠償責任を負うのも国民の皆さんの血税でございますから、私どもは今回は三省協議の純粋な法律的な解釈に従い、しかし厚生省として今後患者の皆さん方のためにとり得る、やることのできることは最大限にお役に立つように努めてまいりたいと思います。
  238. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういうような考え方でいいかもしらぬけれども、やはり大臣は原稿読まないと割合にいい答弁をするね。  あと一分あるけれども、拒否し、最高裁になればどうなるのですか、そういう自信があるのですか。どうです。
  239. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 今回は、高裁の和解勧告につきまして応じることができないという御返事をいたしたわけでございまして、今後高裁がどういう判断を裁判上されるか、その結果によって私どもも検討いたしたいと考えております。
  240. 川俣健二郎

    ○川俣委員 終わりました。
  241. 倉成正

    倉成委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。次回は、明十五日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時五十一分散会