○西村章三君 宇宙に浮かぶ通信衛星、放送衛星、家庭生活の必需品に変身するコンピューター、日本列島をくまなく覆う光ファイバー、さまざまな新しい構想や技術、サービスなど、
電気通信、情報通信は今大きな変革の時代を迎えております。ニューメディアの出現で生活やビジネスや社会構造はどう変わるのか、産業活動と生活形態を一変させる可能性も出てまいりました。それだけに、
電気通信政策の重要性とその適切な運用が強く求められております。
私は、民社党・
国民連合を代表して、ただいま
議題となりました電電改革三
法案に関して質問を行うものであります。
申すまでもなく、今回のいわゆる電電改革三
法案は第二臨調の答申に
基づくものでありまして、
行政改革の一環として位置づけられるものであります。すなわち、
日本電信電話公社を民営化してその経営の
効率化を図ることと、過去、電電公社により独占的に営まれてきた
我が国電気通信
事業に競争原理を導入して、その活性化を図ろうというものであります。
我が党は、かねてより
行政改革には積極的に取り組んでいるところでありますが、電電公社を民営化して当事者能力を付与することにより、より効率的な経営を行うようにすること、及び
電気通信
事業に民間企業の参入を認めて
国民の多様なサービスを選択できるようにすることには、基本的に
賛成の立場を明らかにいたしております。(
拍手)
しかしながら、
電気通信
事業は産業社会を初めとする現代社会のいわば神経系統を担うものであり、
国民、企業、国家の利益と安全に密接にかかわるものであります。また、逓信省から
電気通信省そして電電公社と、一貫して公的な経営形態により築き上げられてきた日本の
電気通信のネットワークを民営に移管することや、
電気通信
事業に民間企業の参入を認めることは、
我が国の
電気通信政策の歴史的な大転換と言うべきものであります。したがって、今回のこの改革案が
国民に混乱をもたらすことなくしかも
我が国電気通信
事業の将来の発展に役立つものとなるのかどうか、極めて慎重に検討する必要があると存じます。
私は、以上のような基本的視点に立って、総理並びに関係各大臣に対し具体的に質問を行ってまいります。
まず第一の問題点は、電電公社の民営化と
政府による規制との関係であります。
電電公社を民営化する最大の
理由は、現行の公社形態を変更することによって当事者能力を付与すると同時に、
政府の統制からできるだけ自由になって効率的な経営を行うためであります。私は、現在の公社
制度では、例えば給与
総額制によって企業業績を職員の賃金に自由に反映させることができないなど、予算統制を初めとする
政府の規制が強過ぎて公社に当事者能力が与えられておらず、効率的な経営が妨げられていると思います。したがって私は、公社の民営化は当事者能力付与のためにもぜひとも必要だと考えますが、今回の電電
株式会社法案では、すべての役員の選任及び解任を認可の対象としたり、
事業計画の認可が収支予算や資金計画にまで及んでいたり、あるいは包括的監督権の定めが乱用されることにより
政府の過剰な統制が
会社に対して行われるおそれが強いのではないか。さらに、
事業法における第一種
事業者に関する設備や料金の規制のため、電電
会社は身動きがとれないのではないか。これらの点について郵政大臣の考えをお尋ねいたします。
第二の問題点は、電電公社の民営化及び民間企業との競争と公共性の確保との関係であります。
公社の民営化は、独立して自由な経営を行わせるためでありますが、他方では、民営化されるとはいえ、日本の
電気通信網の大部分を所有する電電
会社には大きな公共的使命が課せられるわけであります。不採算の地域を含む全国への電話役務の提供義務や、直接収益にはつながらない
基礎的研究への
研究開発投資義務も
会社法案には
規定をされ、さらに、
事業法における第一種
事業者に関する設備や料金の規制も新
会社にはかかってくるのであります。
しかも、この新
会社は、
事業法案のもとでは、民間
電気通信
事業者との競争状態に置かれるわけでありまして、このような国家的見地からの制約のない民間企業との競争により、電電
会社がその公共的な機能を果たせなくなるおそれはないのか、あるいはどのようにしてそれを予防するのか。また、例えば東京−
大阪間といった収益性の高い区間だけで商売をして、あとは電電
会社のネットワークに接続するいわゆるクリームスキミングをする民間業者の出現が当然予想されるのでありますが。競争政策をとる以上これらの
措置はやむを得ないものと考えるのか、あるいは何らかの
措置を取るのかどうか。加えて、市内通話料金が赤字のままでは電電
会社のクリームスキミングに対する抵抗力はますます弱まると思うのでありますが、
政府はこれらに対してどのように対処をしようとするのか。
さらに、公社が一九九〇年を目標にINSを
建設しつつありますが、他の民間業者との競争に力を割かれてINS計画が遅延するおそれはないのかどうか。また、
国民経済的見地から
政府は今後INS計画に何らかの支援を与えるのか、一民営
会社の内部計画としてこれを放置するのか。
以上の各点について、総理並びに郵政大臣の明確な答弁を求めるものであります。
第三の問題点は、電電
会社の
株式の処分についてであります。
言うまでもなく電電公社の資産は加入者である
国民の納めた設備料と公社の
事業収益から成り立っております。また、加入者債券の強制によりスムーズな資金調達ができたことも、公社の資産
形成に大きく寄与していると言えます。このように、
国民の寄与によって
形成された資産が
株式の形で
投資家に向けて処分されるわけでありますが、処分の方法については、
国会の
議決を受けた限度数の
範囲内で処分することができると
規定をされているだけであります。私は、
国民の出捐と寄与によって
形成された資産の処分に当たっては、少なくとも明瞭な原則に従うべきであって、例えば当座の税収不足を補うために使われたり、その他の恣意的な安易な処分がなされることは絶対してはならないと考えます。
そこでお尋ねをいたしますが、当初電電
会社の資本金を幾らとする考えなのか、電電
会社の
株式の処分についての原則はどのように定めようとするのか、また、
株式売却代金の一定部分を
電気通信
事業のインフラストラクチュアの
整備や
基礎的研究開発投資に回す考えはないのか。これらの点について、総理並びに郵政大臣、大蔵大臣に質問をいたします。
第四の問題点は、
事業法案による民間通信
事業者の新規参入と競争の
あり方が、利用者の利益につながるものになるのかどうかであります。
今回の
法案で民間業者の新規参入を認めたのは、
電気通信
事業に競争原理を導入し
事業の活性化を図って、利用者に低廉で多様なサービスが提供されるようにするためであります。したがって、特に新規参入が多く見込まれる第二種
事業者に係る登録制や届け出制及び第一種
事業者に係る設備の需給調整が競争制限的に運用されることのないように、及び情報処理業者に規制がかかるものでないようにすることが極めて肝要であります。これらの
規定の運用
方針について、郵政大臣に質問をいたします。
ところで、利用者利益の観点からは、できるだけ自由な競争が必要ではありますが、
電気通信
事業が広範なネットワークを
形成し、個人や企業や官庁の秘密にかかわる情報を伝達する
事業である以上は、最低限の
安全性というべきものは確実に確保されなければなりません。また、地震や事変のような国家や社会の緊急事態における通信の確保も、絶対にこれは必要であります。従来は、電電公社が
政府の一員として
安全性の確保に努め、非常時のための迂回通信路の
建設も行ってきました。しかし、今回の
事業法案の中では、守秘義務はうたわれていても、民間
事業者に対する実効性は不明であり、また緊急通信の優先義務は、第一種
事業者について、その契約約款の認可のための必要事項として定められ、担保されているにすぎません。これで果たして通信の
安全性や緊急通信の確保が可能なのかどうか、郵政大臣の見解を伺います。
第五の問題点は、電電
会社の労働関係の規制がどのような形で行われるかであります。
私は、電電公社が商法上の
株式会社になった以上は、当然労働三法の適用だけにすべきであり、特別にスト規制をする立法は全く必要がないと考えます。確かに、
電気通信
事業の公共性を重視する立場からの規制必要論も一理はありますが、危機的事態については労働関係調整法で十分その対応ができ得る仕組みになっております。労働関係はむしろ労使の自主的な信頼と努力にゆだねた方が健全な発展が見られると思うからであります。この点について、総理並びに郵政大臣、労働大臣の見解を伺います。
第六の問題点は、
電気通信
事業への外資規制をどうするかという問題であります。
事業法案では、第二種
事業者に係る外資規制は一切取り払われました。これは貿易摩擦を抱える
我が国にとって
国際的な要請であり、やむを得ざる面があるとも言えます。しかし、日本の通信主権を確保するという観点からはなお問題は残るでありましょうし、貿易摩擦の代償としては他にもっと開放すべき分野があると考えますが、この点についてはいかがなものなのか。
また、このことに関連をして、アメリカから通信衛星を購入するという構想が具体化しているようでありますが、将来の日本の高度情報化社会を支える技術力の涵養という立場から考えて、安易な方法は今後に問題を残すと思うのでありますが、いかがなものなのか。以上の点について、総理並びに郵政大臣の見解を伺います。
最後の問題点は、
制度の見直し
規定についてであります。
電電
会社法案には、
会社成立の日から五年以内に、
事業法案には、
施行の日から三年以内に、それぞれ見直しをするものと
規定がされております。表裏一体であるべき両
法案の見直し
規定の
期間が異なることはおかしいと思うが、なぜなのか。また、どのような点について見直しを考えているのか。電電
会社法について、仮に競争企業が出現をせずに独占状態が続けば、独禁法上の問題が出てきて、それが見直し
規定によって分割につながるのか。その際、分割による競争の強化の必要性だけではなく、ネットワークの一元的
運営の効率性及び公共性という側面も判断材料になるのかどうか。
事業法の見直しは具体的にどの部分を念頭に置いているのか。これらの点について、総理及び郵政大臣の見解を伺いたいと存じます。
以上、重要項目七点に絞ってお伺いをいたしましたが、いずれの問題点も将来の
電気通信
事業の発展を左右するものであり、この
法案の
内容と運用いかんがその成否を決すると申し上げても過言ではありません。それだけに総理並びに関係大臣の明確にして
責任ある指針と答弁を強く求めて、私の代表質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕