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1984-04-25 第101回国会 衆議院 本会議 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十五日(水曜日)     —————————————  議事日程 第十八号   昭和五十九年四月二十五日     午後二時開議  第一 国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律     案(内閣提出)  第二 恩給法等の一部を改正する法律案内閣     提出)  第三 地方交付税法等の一部を改正する法律案     (内閣提出)  第四 地方公共団体関係手数料に係る規定の合     理化に関する法律案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  岡田春夫君の故議員園田直君に対する追悼演説  日程第一 国籍法及び戸籍法の一部を改正する   法律案内閣提出)  日程第二恩給法等の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第三 地方交付税法等の一部を改正する法   律案内閣提出)  日程第四 地方公共団体関係手数料に係る規定   の合理化に関する法律案内閣提出)  臨時教育審議会設置法案内閣提出)の趣旨説   明及び質疑     午後二時四分開議
  2. 福永健司

    議長福永健司君) これより会議を開きます。      ——————————
  3. 福永健司

    議長福永健司君) 御報告いたすことがあります。  議員園田直君は、去る二日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。  同君に対する弔詞は、議長において去る二十日贈呈いたしました。これを朗読いたします。     〔総員起立〕  衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議  をもってその功労を表彰され 再度本院副議長  の重職にあたり かつて社会労働委員長地方行  政委員長海外胞引揚及び遺家族援護に関する  調査特別委員長の任につき またしばしば国務  大臣の重任にあたられた議員正三位勲一等園田  直君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげ  ます     —————————————  故議員園田直君に対する追悼演説
  4. 福永健司

    議長福永健司君) この際、弔意を表するため、岡田春夫君から発言を求められております。これを許します。岡田春夫君。     〔岡田春夫登壇
  5. 岡田春夫

    岡田春夫君 私は、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、本院議員、元副議長、故園田直君に対し、哀悼言葉を申し述べたいと思います。(拍手)  園田君は、本月二日、慶応義塾大学附属病院において腎不全のために逝去されました。ここ数年、特に外務大臣時代の激務から体調を崩されたが、ようやく快方に向かいつつあると伺い、昨年末の首班選挙の際には、この議場に出席されていたあなたの姿をお見かけし、一日も早い御全快を祈っておりました。  しかるに、余りにも突然な計報に接し、しばし茫然と、語る言葉もない次第でありました。政治家の常とはいえ、一身を顧みず、すべてを政治に尽くされたあなたを思うとき、同じ道をたどる者として、痛恨のきわみであります。(拍手)  思えば、園田君、あなたと私は、戦争直後の昭和二十年代初期、この議席をともにしてから既に三十数年を経ております。政党の所属を異にするとはいえ、ともに青年議員として情熱のほとばしるまま、夜を徹して語り合いあるいは激論を交わしたことも一再ならずでありました。私の胸中には、ありし日のこのことがまるできのうのごとく、走馬灯のように鮮やかに去来いたしております。  かつて私と政党をともにし、その後、白亜の恋と言われて、あなたと人生をともにされた天光光夫人の御心中もお察しして余りあるものがあります。(拍手)今、思い出のこの議場であなたに告別の言葉を述べなければならぬとは、人の世の無常を嘆かざるを得ないのであります。  園田君、あなたは大正二年十二月、熊本天草一町田村に生まれ、県立天草中学校を卒業後、大阪歯科医専に入学されましたが、昭和十年、学業半ばにして熊本歩兵第十三連隊に入隊され、以来、特攻隊長として終戦を迎えるまで、実に十年余の長きにわたって軍務につかれました。まさに生死を超えた戦場に青春のすべてをかけ、人間形成が行われたのであります。  あなたの書かれた著書の中で、「わが半世を改めてふり返ってみると、私の政治思想哲学は二十歳代に作られたようだ。戦争であっちこっちの植民地を歩き、民族独立がどんなに大切なものかを知ったのが第一、そして第二は、寒夜に抱き合って寝た戦友たちが、殆ど田舎の貧乏人だったことから、政治はこの人達のためにこそあるべきだと感じた。」と述べている。(拍手)  園田君、波乱方丈のあなたの生涯を顧みるとき、巧みに時流に阿諛迎合するたぐいではなく、この政治哲学に築かれた強い信念をあくまでも貫き通す貴重な政治家であったことを見逃すわけにはまいりません。(拍手)  ところで、戦争が終わって故郷に帰られたあなたは、近隣の青年を集めて同志会をつくり、農民と寝食をともにして農民組合を組織し、やがて推されて一町田村の村長となり、政治家としての第一歩を踏み出されたのであります。  昭和二十二年、衆議院が解散されるや、民主党公認として立候補、郷党の厚ぎ信望と支持により見事初当選を飾られ、中央のひのき舞台においては、青年将校と称されて若武者ぶりを十二分に発揮しておりました。  当時の目覚ましい活動の一、二を挙げれば、昭和二十六年サンフランシスコ講和条約日米安保条約採決に当たり、民主党を離党して、敢然と反対票を投じたことであります。(拍手)それは、死をかけた戦いの中で鍛え抜かれた民族独立と平和のための不屈の信念に基づくものでありました。  また、昭和二十九年、あなたと私は、国交未回復の中国超党派議員団を派遣するため日夜奔走し、各党から十七名の参加者を得、ストックホルム世界平和集会を経由して北京への道をとることに成功したのであります。この中には、若き日の中曽根康弘君、櫻内義雄君らも加わっておりました。  園田君、当選連続十五回、三十七年二カ月の長きにわたり在職されたあなたは、院議をもって永年在職議員の栄誉ある表彰を受けられました。その間、社会労働委員長地方行政委員長海外胞引揚及び遺家族援護に関する特別委員長に就任され、また、昭和四十年十二月には、推されて本院副議長となり、以降二期にわたり重責を果たされたのであります。私もその後二期四年間副議長の職を汚しましたが、国民の期待する民主政治確立と円滑な運営のために、あくまで誠実、真剣なあなたの努力は、数多くの教訓を我々に残してくれました。(拍手)  同時に、党にあっても、民主党、改進党、自由民主党の副幹事長、また二度にわたる自民党国対委員長を歴任し、重要施策の立案、成立に大きな役割を果たされたのであります。  だが園田君、あなたの多彩な政治経歴のうちさん然と輝いているのは、再三にわたり歴代内閣の閣僚として要職につかれたことであります。  昭和五十一年、第一次福田内閣が成立するや、内閣官房長官として総理の名女房役に徹せられましたが、その前後、厚生大臣を二期、また外務大臣としては、福田、大平、鈴木内閣の三代にわたって就任され、すぐれた識見と業績を上げられました。  昭和四十二年、第二次佐藤内閣厚生大臣に初入閣されたあなたは、政治貧乏人のためにこそあるという、かつての戦場生活信念から、水俣病その他を公害病と断固として認定、公害対策の推進に道を開かれたのであります。(拍手)当時の新聞社説では、「どこまでも筋を通した園田厚相の英断にまず拍手を送りたい。」と述べております。  次に、三期にわたる外務大臣時代は、園田君、あなたにとり政治生命の花開いたときでありました。マンスフィールド駐日米大使が、日本外交を戦後初めて国際政治の表舞台に押し上げた男と評価されたとおり、「空飛ぶ外務大臣」として全世界を駆けめぐり、園田外交の名声を国際的に高めたのであります。(拍手)  東西関係はもちろん、南北、中東、難民等の諸問題に至るまで手広く取り上げたあなたは、昭和五十三年、国連軍縮特別総会においても歴史的な演説を行いました。その一節を述べれば、「私は核兵器の問題を考えるとき、マンモスがおのれのきばのゆえに絶滅への道をたどらざるを得なかったことに思い至らざるを得ない。核兵器国がこの点に思いをいたし、自制する態度を強く望む」と厳しく超大国の横暴を戒め、被爆国日本の立場から、核軍縮の重要性を訴えました。(拍手)  この点につき、かのノーベル平和賞受賞者であるノエルベーカーが、その知的な透徹さのゆえに極めてユニークな堂々の弁と評価し、外相は今や軍縮問題の思想的リーダーの一人として国際的な存在であると称賛しておりますが、あなたの平和に対する烈々たる決意と情熱は、全世界人々の注目を浴び、大きな共感を受けたのであります。(拍手)  しかし園田君、あなたが後世の歴史に不減の功績を残したのは、何といっても日中平和友好条約の締結であります。  思えばともに若かりし時代日中友好こそ敗戦日本唯一の活路であり、かつての侵略者日本が今こそ中国に手を差し伸ばすのが我々の道義であると確信をしていたあなたと私は、思想信条を異にするとはいえ、あらゆる困難の中で一貫してその実現に努め、四半世紀後の昭和五十三年八月、あなたはみずから北京に赴き、当時の 小平副主席らと精魂を傾け交渉をし、ついに妥結をから取られたのでありました。(拍手)志をともにした私としてはまことに感慨無量であり、感謝の念を新たにするものであります。  園田君、あなたは剣道七段を初め、居合道七段、合気道八段、空手道八段など、すぐれた武道家でありました。そして常日ごろ、武道の極意は相手を許し愛することであると言っておられました。  あなたは、この真髄に基づき、いよいよ政治家として円熟の境地に達し、保守党の偉大な指導者として期待されているとき、また、激動する国際情勢下で真にあなたの活躍を必要とするこのとき、突如として逆かれました。まことに惜しみても余りあり、哀悼痛惜きわみにたえません。  しかし、あなたの強い信念とたくましい行動力に基づく輝かしい数々の業績は、末長く内外の人々の胸にとどめられ、政治家の範として、いつまでも語り伝えられるでありましょう。(拍手)  園田君、ここにありし日の面影をしのび、御功績をたたえ、心から御冥福を祈り、お別れの言葉といたします。(拍手)      ——————————  日程第一 国籍法及び戸籍法の一部を改正す   る法律案内閣提出
  6. 福永健司

    議長福永健司君) 日程第一、国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。法務委員長宮崎茂一君。     —————————————  国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案及び   同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔宮崎茂一登壇
  7. 宮崎茂一

    宮崎茂一君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、最近における渉外婚姻増加等の実情にかんがみるとともに、女子に対する差別の撤廃に関する条約の批准に備えるため、国籍法及び戸籍法の一部を改正しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。  第一に、子は、父または母が日本国民であるときは、出生により日本国籍を取得するものとすること、  第二に、準正により日本国民嫡出子たる身分を取得した外国人及び日本国籍を留保しなかったことにより日本国籍を失った者等所定要件を満たす者は、法務大臣に届け出ることによって日本国籍を取得することができるものとすること、  第三に、日本国民配偶者である外国人帰化条件については、その者が夫であるか妻であるかにかかわらず、同一の条件を定めるものとするとともに、生計条件、重国籍防止条件等についても、これを緩和するものとすること、  第四に、出生により外国国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、日本国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼって日本国籍を失うものとすること、  第五に、重国籍者は成年に達した後二年以内にいずれかの国籍を選択しなければならないものとする国籍の選択の制度を新設することとし、外国国籍を有する日本国民が、その外国国籍を選択したときは、日本国籍を失うものとすること、  第六に、改正法施行後三年間は、改正法施行前に日本国民である母から出生した子及びその者の子は、所定要件を満たすときは、法務大臣に届け出ることにより日本国籍を取得し得るものとすること、  第七に、外国人婚姻した場合には、日本人間の婚姻の場合と同様に、婚姻によって新戸籍を編製するものとすること、  第八に、外国人婚姻した者が外国人である配偶者の称している氏を称しようとする場合、または、外国人たる配偶者の称している氏に変更した者が離婚をした場合には、それぞれ一定の期間内は、家庭裁判所の許可を得ることなくその氏の変更の届け出をすることができるものとすること等であります。  委員会においては、四月三日提案理由説明を聴取した後、参考人意見を聴取する等慎重審査を行い、去る二十日質疑を終了いたしました。  次いで、採決を行った結果、本案全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  8. 福永健司

    議長福永健司君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 福永健司

    議長福永健司君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ——————————  日程第二 恩給法等の一部を改正する法律案   (内閣提出
  10. 福永健司

    議長福永健司君) 日程第二、恩給法等の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。内閣委員長片岡清一君。     —————————————  恩給法等の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔片岡清一登壇
  11. 片岡清一

    片岡清一君 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、最近の経済情勢にかんがみ、恩給年額を増額するとともに、戦没者の遺族、傷病者等処遇改善を図るほか、長期在職の老齢旧軍人等に係る仮定俸給改善等措置を講じ、恩給受給者に対する処遇の充実を図ろうとするものであります。  本案は、二月二十四日本委員会に付託され、四月十九日中西総理府総務長官より提案理由説明を聴取した後、質疑に入り、昨二十四日これを終了いたしましたところ、日本共産党革新共同柴田睦夫君外一名から、昭和五十八年の人事院勧告に基づき、公務員給与の改定が行われたとした場合の従来の方式により、恩給改善を行い、五十九年三月一日から実施する旨の修正案提出され、趣旨説明の後、採決いたしましたところ、修正案は否決され、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対し附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  12. 福永健司

    議長福永健司君) 採決いたします。  本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  13. 福永健司

    議長福永健司君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ——————————  日程第三 地方交付税法等の一部を改正する   法律案内閣提出)  日程第四 地方公共団体関係手数料に係る規   定の合理化に関する法律案内閣提出
  14. 福永健司

    議長福永健司君) 日程第三、地方交付税法等の一部を改正する法律案日程第四、地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。地方行政委員長大石千八君。     —————————————  地方交付税法等の一部を改正する法律案及び同   報告書  地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に   関する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔大石千八登壇
  15. 大石千八

    大石千八君 ただいま議題となりました両法案につきまして、地方行政委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、地方交付税法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案の主な内容は、  第一に、地方財政健全化に資するため、昭和五十九年度以降、交付税及び譲与税配付金勘定における新たな借入金措置原則として行わないこととし、これにかえて、当分の間、法律の定めるところにより、地方交付税総額について、その安定的な確保に資するため必要な特例措置を講ずることといたしております。  これに伴い、昭和五十九年度から昭和七十五年度までの各年度分地方交付税総額は、法定額から各年度における交付税及び譲与税配付金勘定借入金償還額利子負担額との合算額を減額した額といたしております。  なお、昭和五十九年度分地方交付税総額については、借入金償還期間を変更した上、法定額から昭和五十九年度分利子負担額三千六百三十八億円を減額した額に、地方交付税総額特例措置額千七百六十億円を加算した八兆五千二百二十七億円といたしております。  第二に、生活保護基準引き上げ等各種制度改正等に伴い必要となる行政経費財源措置するため、地方交付税単位費用改正することといたしております。  第三に、交付税及び譲与税配付金勘定における借入金のうち、国が負担することとされていた五兆八千二百七十七億六千三百万円に相当する借入金については、これを一般会計へ帰属させるとともに、同勘定に残った借入金五兆六千九百四十一億千五百万円については、今後これに係る利子を含めて地方が負担することとし、あわせて、この借入金償還期間昭和六十六年度から昭和七十五年度までに変更することといたしております。  本案は、二月二十八日当委員会に付託され、三月一日田川自治大臣から提案理由説明を聴取した後、五日間にわたって質疑を行い、四月十九日には参考人意見を聴取するなど、本案を中心として、地方行財政全般にわたって慎重に審査を行いました。  昨二十四日本案に対する質疑を終了し、討論を行い、採決の結果、本案賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対し、地方交付税総額恒久的措置検討等九項目にわたる附帯決議を付することに決しました。  次に、地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に関する法律案について申し上げます。  本案は、大麻取締法ほか八法律に定める地方公共団体の行う国の機関委任事務に係る手数料について、経済情勢等の変化に対応し、費用負担の適切な調整に資するため、その額を実費を勘案して政令で定めるよう規定合理化を図ろうとするものであります。  本案は、三月十三日当委員会に付託され、同二十七日田川自治大臣から提案理由説明を聴取した後、地方交付税法等の一部を改正する法律案と一括して審査を行いました。  昨二十四日質疑を終了し、討論の申し出もなく、採決を行いましたところ、本案賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  16. 福永健司

    議長福永健司君) 両案中、日程第三につき討論の通告があります。これを許します。横江金夫君。     〔横江金夫登壇
  17. 横江金夫

    横江金夫君 私は、日本社会党護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となっております地方交付税法等の一部を改正する法律案に対し、反対討論をするものであります。(拍手)  総理は、過日の本会議で、地方自治民主政治基盤であり、内政のかなめである、地方公共団体自主性自律性を十分発揮できるよう制度を決め、運営をしていくことが必要であり、そのためには、地方財政確立がどうしても必要不可欠であると述べておみえになるのであります。また、自治大臣は、この法案趣旨説明の中で、現下地方財政巨額借入金を抱え、これ以上の借り入れ地方財政基盤を揺るがせかねない状況にあり、地方財政の抜本的な改善が緊急の課題であると述べておられるのであります。  このような地方自治地方財政に対する認識につきましては、私は、総理自治大臣と全く同じ認識を持っておりますが、しかし、どういうわけか、今回提案をされております地方交付税法等の一部を改正する法律案内容を詳細に検討してまいりますと、総理自治大臣言葉と裏腹に、全く逆の、地方自治をないがしろにした、国の失政を地方に押しつけた改正内容であると断ぜざるを得ないのであります。  ちなみに、昭和五十九年度地方交付税総額は八兆五千二百二十七億円で、前年に比較して三千四百五十八億円、三・九%の減額であります。地方交付税総額が前年度より落ち込むということは、交付税制度創設以来初めてであった昨年度に引き続き二度目でありますが、中曽根さんが総理に就任される以前には、どんなに国家財政が厳しい状況にありましても一度もなかったことであります。このことは、言葉とは裏腹に、総理地方自治に対する姿勢を如実に示しておるところであると思うのであります。地方自治に対する冷たい仕打ちを国民並びに三千数百に及ぶ地方公共団体関係者すべてが実感として感じているところであります。  以下、私は、この法案反対する理由を具体的に申し述べてまいりたいと思います。  その第一は、今回の法改正の主な内容であります、昭和五十九年度以降の交付税及び譲与税配付金勘定における新たな借り入れ措置原則として行わないこととし、当分の間、法律の定めるところにより、地方交付税総額について特例措置を講ずることとしたことについてであります。  そもそも、現下地方財政の危機は、昭和五十年度以降、毎年地方財政巨額財源不足を生じていたにもかかわらず、その穴埋めを交付税特別会計における借り入れ措置建設地方債の増発で賄うという小手先の策を弄し、根本的な解決策をなおざりにしてきた結果であるのであります。自主財源が三割程度しかない地方財政は、昭和五十八年度末の借金の累積が約六十兆円にも上ると見込まれており、国の台所以上に厳しい状態に陥っているのであります。これを打開する唯一の道は、我が党が従来から主張しております交付税率引き上げを実施する以外には考えられないところであるのであります。  自治大臣は、今回の特例措置地方交付税法第六条の三第二項の規定による措置であると述べておられますが、元来、地方交付税法第六条の三第二項に言うところの制度改正とは、地方税制改正等により構造的に生じている地方財政の過不足を解消できる程度のものでなければならないのでありまして、余りにも法を無視した詭弁であると言わざるを得ないのであります。  第二点は、政府昭和五十九年度地方交付税総額特例措置として増額した三千四十九億円の内容についてであります。  この増額分は、交付税特別会計昭和五十九年度に予定しておりました借入金償還を繰り延べることによる増加額一千二百八十九億円と、昨年までの自治大蔵両省間の取り決めに基づく臨時地方特例交付金、いわゆる利差臨特地域特例臨特、財対臨特に相当するものが一千四百六十億円を占め、これ以外の純粋な昭和五十九年度特例加算措置は三百億円にすぎないのであります。しかも、この三百億円については、昭和六十六年度以降精算されることになっているのであります。これでは、政府の言う五十九年度特例措置は実質的には地方財政に対し何ら財源措置を講じていないと言っても過言でないのであります。財源不足額のほとんどを建設地方債で賄うという、昨年より一歩も二歩も後退した内容のものだと言わざるを得ません。  自治省は、交付税特別会計借入金地方公共団体共通の借金だと説明をしてまいりました。にもかかわらず、それを廃止をして個々の地方公共団体にその肩がわりをさせることについてはどのように説明をされるのか、私はこれについても疑問を持つものであります。また、自治省は、財源対策債の元利償還金については、基準財政需要額に算入し、将来とも交付税措置をしていくと説明をしていますが、五十九年度特例措置として計上されました三百億円と同様、将来の交付税を先食いするもので、実質的な交付税率の引き下げにつながるものであるのであります。本来、各年度で対処すべき財源不足のツケを先送りすることは、将来の地方財政に重大な禍根を残す結果となり、交付税制度の破綻を招くことは必至であるのであります。  第三は、昭和五十年度以降昨年までの間に累積した交付税特別会計における資金運用部資金からの借入金十一兆五千二百十九億円の取り扱いについてであります。  それを事もあろうに政府は、今後は交付税特別会計借入金のうち国が負担することとされております五兆八千二百七十八億円を一般会計に移し、残りの五兆六千九百四十一億円については、今後これに係る利息も含めて地方が負担をするという大改悪を実施しようとしておるのであります。利息の全額国庫負担は、大蔵、自治大臣の間で覚書も取り交わされており、厳然と確立されたルールであるはずであるのであります。それをいとも簡単にほごにし、国の財政が苦しいからといって新たな地方への負担転嫁を制度化していく、このようなことが果たして許されて、総理の言うところの内政のかなめである地方公共団体自主性自律性を発揮できるでありましょうか。  この問題につきましては、我が党は昨年も厳しく追及したのでありますが、自治大臣は、五十八年度の臨時的な措置であるとして、大蔵省のごり押しの前に屈服をしたのであります。
  18. 福永健司

    議長福永健司君) 横江君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  19. 横江金夫

    横江金夫君(続) しかるに、五十九年度はこれをさらに制度化するというのであります。まさに地方に対する背信行為以外の何物でもありません。こんなことでは、自治省に対する地方公共団体の信頼感は完全に失われてしまうと思うのであります。  最後に、昭和五十九年度地方財政計画によりますと、地方交付税地方譲与税、国庫支出金等国から地方へ付与される財源は、昨年に比較してすべてマイナスになっているのであります。特に地方交付税は、地方税と並んで地方財政を支える重要な柱であります。私は、この総額を確保することこそ、地方財政健全化を促進し、地方自治確立に寄与するものだと確信をいたしているのであります。この際、政府は、国の財政再建のために地方に犠牲を転嫁することなく、英断を持って地方財政の抜本的な改善を行うべきものであると思うのであります。
  20. 福永健司

    議長福永健司君) 横江君、簡単に願います。
  21. 横江金夫

    横江金夫君(続) 以上、私は、地方交付税法等の一部を改正する法律案に対して、反対の立場から意見を申し述べてまいりましたが、皆様の御賛同を賜りますよう強くお願いをいたしまして、反対討論を終わります。(拍手
  22. 福永健司

    議長福永健司君) これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  23. 福永健司

    議長福永健司君) 両案を一括して採決いたします。  両案の委員長報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  24. 福永健司

    議長福永健司君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。      ——————————  臨時教育審議会設置法案内閣提出)の趣旨説   明
  25. 福永健司

    議長福永健司君) この際、内閣提出臨時教育審議会設置法案について、趣旨の説明を求めます。文部大臣森喜朗君。     〔国務大臣森喜朗君登壇
  26. 森喜朗

    ○国務大臣(森喜朗君) 臨時教育審議会設置法案について、その趣旨を御説明申し上げます。  我が国の教育は、国民のたゆみない努力により著しく普及し、その水準は国際的にも高く評価され、我が国の成長と発展に重要な役割を果たしてきております。特に、戦後において、その急速な普及充実が図られ、国民全体の教育水準の向上に大きく寄与してきたところであります。  一方、近年における社会の急激な変化、教育の量的拡大等は、教育のあり方に対しても大きな影響を与えており、今や教育改革の必要性が各方面から指摘されるに至っております。  このような教育改革に対する国民の要請を踏まえ、今後とも我が国が活力ある国家として安定した発展をしていくことができるよう、二十一世紀の我が国を担うにふさわしい青少年の育成を目指して教育全般にわたる改革を推進していくことが、緊急かつ重要な課題となっております。  そこで、政府全体の責任において、長期的展望のもとに教育改革に取り組む必要があると考え、このたび、各界の人格識見ともにすぐれた方々を委員にお願いして、臨時教育審議会を総理府に設置することとし、ここにこの法律案提出した次第であります。  次に、この法律案内容の概要について申し上げます。  まず第一に、今後における社会の変化及び文化の発展に対応する教育の実現を期して、教育基本法の精神にのっとり、各般にわたる施策につき必要な改革を図ることにより、教育の目的の達成に資するため、臨時教育審議会を総理府に置くことといたしております。  第二に、審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じ、教育及びこれに関連する分野の諸施策に関し、必要な改革を図るための方策に関する基本的な事項について調査審議して答申するとともに、意見を述べることをその所掌事務としており、また内閣総理大臣は、この答申または意見を尊重しなければならないことといたしております。  第三に、審議会は、文部大臣意見を聞いて内閣総理大臣が任命する二十五人以内の委員をもって組織するとともに、文部大臣意見を聞いて内閣総理大臣が任命する専門委員を置くことができることといたしております。また、審議会の事務を処理させるため、事務局を置くことといたしております。  このほか、審議会は、国の関係行政機関の長に対し、資料の提出意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができることとしております。  なお、この法律は、施行の日から起算して三年を経過した日に失効することとしております。  以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)      ——————————  臨時教育審議会設置法案内閣提出)の趣旨説   明に対する質疑
  27. 福永健司

    議長福永健司君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。町村信孝君。     〔町村信孝君登壇
  28. 町村信孝

    ○町村信孝君 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、ただいま政府から趣旨説明のありました臨時教育審議会設置法案に関し、私見を交えながら、総理及び文部大臣に若干の質問を行いたいと存じます。  中曽根総理は、今国会の施政方針演説において、三つの基本的改革を挙げ、その一つに教育改革を取り上げ、その断行をうたっておられますが、教育改革の必要性は、改めて申し上げるまでもなく、既に国民的合意ができ上がっていると考えられるのであります。この意味から、広範な分野にわたって論議と改革を進めるために臨時教育審議会を設置することは、極めて時宜にかなっており、本国会においても多くの党、会派の基本的な御賛同を得つつある現状は、まことに喜ばしいことであると考えているのであります。(拍手)  ところで、私自身、戦後教育を受けてきた者でありますが、その体験に照らしまして、戦後教育の幾つかの基本的問題点を挙げ、その反省の上に立った教育改革が進められるべきであると考えております。  戦後教育の第一の問題点は、あしき平等主義の考え方が蔓延していることであります。  確かに、戦後の我が国の教育は、教育の機会均等の理念のもとにその普及充実が図られてまいりました。教育基本法第三条は「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならない」とうたっております。しかし実情は、能力に応ずる教育よりも、ひとしく教育を受けるということが強調され、その結果として、教育における形式的、外面的な平等観、すなわち悪平等主義がはびこっているのであります。  具体的な実例を申し上げますと、例えば能力別、習熟度別クラス編制は差別教育であると切り捨てられ、あるいは成績簿にすべて3をつけてはばからない、そういう先生までが出現する始末であります。また学校制度も、六・三・三・四という極めて単純化した姿となっており、児童の個性や能力を十二分に伸ばす仕組みとなっておりません。画一化した教育の欠陥が落ちこぼれ児童を生み、校内暴力や非行を生む温床となっているのではないでしょうか。子供の個性、能力、発達度に応じたより多様な、より弾力的な教育が実現できるように現在の諸施策を見直すことが、今次教育改革の一つの基本として取り上げられるべきであると考えますが、総理の御所見を承ります。  第二の問題点は、戦後教育において、自由と権利が偏重され、責任と義務が軽視されているということであります。  子供たちの社会科の教科書を見てもわかりますが、国民の権利に関する記述は数ページに及び、他方、国民の義務に関する記述はわずか数行で片づけられております。学校で暴力事件が起きても、親は学校が悪い、先生が悪いと言って親の教育義務を放棄し、先生は先生で社会が悪い、政治が悪いと言ってはばからないのが現状であります。さらに一部の教員は、労働者としての権利のみを主張し、先生としての義務も誇りも放棄して顧みないのであります。権利と義務は表裏一体関係にあるという民主主義の大原則を改めて教育改革の基本的視点に置くべきであると私は考えますが、総理はこの点をいかにお考えでしょうか。  第三の問題点は、戦後教育の中で、個人の尊厳を強調する余りに、国家の意義や日本のすぐれた文化と歴史を軽視し、いわば無国籍者を育てる教育を行ってきたという点であります。(拍手)  学校教育法第十八条の中に「郷土及び国家の現状と伝統について、正しい理解に導き、進んで国際協調の精神を養うこと。」が小学校の教育の目標であると明示されておりますが、果たしてこの目標に向かって正しい教育が行われているでしょうか。今日のような国際化時代にこそ、正しい国家観と愛国心を持った国際人を育てなければならないと思います。みずからの国家を愛せない人間が、どうして世界人々を愛することができるのでありましょうか。また、卒業式や入学式といった大切な校内行事の折、国旗を掲揚し、国歌を歌う学校がほとんど見られない現状を私は深く憂うるものであります。(拍手)  以上述べました三点は、戦後教育の基本的問題であると考えておりますが、かかる教育の現状と教育改革の基本的理念について、総理の御所見を承りたいと存じます。  さらに、もう一点、総理に伺いたいのは、臨時教育審議会を総理府に設置することとした意味であります。  私の理解によれば、この審議会で取り上げる事項は、単に文部省固有の問題にとどまらず、幅広く教育に関する各省の施策についても検討し、政府全体としてその改革に全力を傾けるとの趣旨であると思われます。こうした強い決意で教育改革に取り組むのであれば、答申の結果、仮に財政支出の増加を伴うものが出てきたとしても、単に財政再建を理由に教育予算の充実を見送ることがあってはならないと考えますが、総理の御決意のほどをお示し願いたいのであります。  次に、本法案に関して、文部大臣に伺いたいと存じます。  第一に、本法案の第一条によれば、今回の教育改革は、教育基本法の精神にのっとる旨が明記されております。  しかし、私は、先ほど総理にお尋ねをした戦後教育の諸問題、すなわち悪平等主義、権利の偏重、国を愛する教育の欠如などが生じてきた背景には、戦後教育の根幹をなす教育基本法にその原因の一端があるのではないかと考えざるを得ないのであります。さらに、昭和四十五年七月、東京地裁において出された教科書検定に関する杉本判決のような誤った法律解釈を生む教育基本法第十条も現状のままでよいのかという疑問を持たざるを得ないところであります。私は、臨時教育審議会の検討の結果、仮に教育基本法の改正が取り上げられたとしても、それは本法案の言う「教育基本法の精神にのっとり、」という文言に抵触しないものと理解をしておりますが、文部大臣の御所見を賜りたいと存じます。  第二は、教育改革推進に当たって、幅広い国民的合意を形成していく必要があるということであります。  そのため、本法案第五条で言う審議会の委員は、文字どおり、個人として人格識見ともにすぐれた方々でなければならず、特定の団体の代表という形で人選を進めるべきではないと考えます。その意味から、学識経験者、言論人、経済人、実際に児童を持つ父兄、さらに偏った思想を持たない教員など、まさに幅広い分野から選ばれる必要があると思いますが、文部大臣の方針をお聞かせ願いたいと存じます。  さらに、審議会の運営上の問題として、審議を公開すべしという意見が出されておりますが、本来、審議会のあり方として、出身母体の利害や固定観念にとらわれず、自由闊達な意見を出し合って合意を形成することが望ましいのでありまして、審議の公開は、このような自由な討論の妨げになるおそれが強いと私は考えております。文部大臣の御意見を賜りたいと存じます。  最後に、私は、改革案が実施される段階の課題として、教員の資質の問題を取り上げたいと思います。  教育は人なりと言われているように、実際に教育の現場に当たる教員の強い使命感と自覚がなければ、この審議会からいかに立派な改革案が出されたとしても、絵にかいたもちに終わってしまうおそれがあります。このような観点から、教員の資質の向上のため、教育委員会による研修を確実に実施するとともに、その充実を図ること、また使命感と情熱にあふれた教員を確保するため、正式採用前に一定期間のインターン制を新たに導入することなどが必要であると思いますが、文部大臣の御所見を賜りたいと存じます。  以上、限られた時間ですので、今次教育改革にかかわる諸問題の一端をお伺いいたしまして、私の質問とさせていただきます。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  29. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 町村議員にお答えをいたします。  まず、教育に対する認識と基本的理念いかんという御質問でございます。  最近の教育の現状を見ますと、社会の急激な変化及び教育の量的拡大、それに加えまして、ややもすれば教育の制度自体が硬直化している嫌いがありますし、人間中心の教育というよりも、むしろ試験制度やその他の面におきまして子供たちを数字で扱うという嫌いがなきにしもありません。また、教育をめぐる環境も大きく変化しておる状態でございまして、家庭並びに企業並びに社会全体としても、教育と一環のもとにこれを考えてみる必要が出てきていると思います。  そういう観点に立ちまして、非常に国民的な基盤に立ち、幅広い、しかも長期計画に立った教育の改革を行わんと考えておるものでございます。もとより、この世界的な普遍的な理念のもとに教育は行わるべきものでありますが、しかし権利と義務というものはあくまで調和さるべきものであると思います。さらに、民族の生活文化やあるいは精神的土壌というものを無視して教育が長続きするものとは思いません。そういう点につきましても、我々は大きな関心を持って教育改革を行ってまいりたいと思っております。  要は、二十一世紀の日本を展望いたしまして、この時代世界及び日本に対して責任の持てる立派な世界日本人をつくっていこうというのが我々の目的であります。(拍手)  次に、臨教審を総理府に置くということと財政支出の問題でございますが、これは今次の教育改革につきましては、内閣全体でこれを取り組もうという考えに立ちまして、総理府に置くことにいたした次第でございます。  財政の問題につきましては、教育の改革がすぐそのまま財政負担増につながるものとは考えませんが、しかし、必要な改革は実行していかなければならないと思います。今回の審議会におきましても、いよいよ具体案を作成なさるというときに当たりましては、あくまで審議会の自主性においておつくり願いたいと思いますが、そのときにおきましても、現在の財政状況につきましては、やはりある程度お考えの上に答申が行われるものと私は期待しております。  以上で、残余の答弁は関係大臣にお願いいたします。(拍手)     〔国務大臣森喜朗君登壇
  30. 森喜朗

    ○国務大臣(森喜朗君) 町村さんにお答えを申し上げます。  御質問の第一点は、愛国心の欠如などの問題は教育基本法にその根源を求めるべきであり、したがって、臨時教育審議会において同法の改正が取り上げられることもあり得るのではないかとのお尋ねでございますが、教育改革に当たりましては、憲法、教育基本法の精神を基本としつつ、これに取り組むことが肝要と考えておりまして、戦後我が国に定着をいたした制度でございまして、私としては教育基本法の見直しが必要であるとは考えておりません。また、審議会の調査審議においても、教育基本法の精神にのっとって行うことが期待されるところでございます。  なお、教育基本法は、第一条において「教育の目的」として、人格の完成を目指し、平和的な国家及び社会の形成者として国民が身につけるべき基本的な徳目を示しているものであり、その精神から見て、国を愛する心、家族の敬愛というような、人間として生きていくについての普遍的かつ基本的な事柄を教え、身につけさせていくことは、当然その趣旨に含まれているものと考えているわけでございます。今日の学校教育の中では、教科書あるいは指導要領、その現教育基本法のもとで十分教えることができるものと考えているわけでございます。  御質問の第二は、委員は幅広い分野から選考すべきではないか、また、審議の公開は慎重を期すべきではないかとのお尋ねでございますが、教育改革は国民全体にかかわり、我が国の将来を左右する重要な課題でありますので、広く国民各界各層の意見が反映されるよう、教師や父母等を含めた幅広い分野の方々をお願いすべく、今後慎重に検討したいと考えております。  臨教審の審議を公開するかどうかは審議会において決定すべき事柄でございますが、審議の状況をそのまま公開することは、一面において委員の自由な発言が制約され、ひいては審議会の自主性に影響を及ぼすことになるなどの問題があることは御指摘のとおりでございまして、例えば、審議経過の概要を必要に応じて適宜公表する、地方公聴会を開催する、あるいは各種アンケート調査の実施や論文の募集など、さまざまな工夫を尽くすことによって、広く国民の理解と協力を得ることが望ましいと考えております。  御質問の第三点はインターン制度の導入でありますが、インターン制度とは、特別の身分において一年程度期間、任命権者の計画のもとに実地訓練を行わせ、その成績によって教諭に採用する制度をいうものと考えられますが、この制度につきましては、まず現行の公務員制度との関係、二つ目には財政上の問題がございますので、諸般の事情を考慮しつつ慎重に検討していく必要があると考えております。  文部省といたしましては、教員の資質の向上について、いわゆる人材確保法に基づく優秀な教員の確保、新任教員研修を初めとする各種研修の充実、教員としてふさわしい者を選抜するための採用方法の改善などの施策を講じてきたところでございますが、今後とも教員の資質向上の問題は、臨教審における審議のことも含め、積極的に取り組んでまいる所存でございます。(拍手)     —————————————
  31. 福永健司

    議長福永健司君) 小川仁一君。     〔小川仁一君登壇
  32. 小川仁一

    ○小川仁一君 私は、日本社会党護憲共同を代表し、ただいま提案されました臨時教育審議会設置法案に対し、総理並びに関係大臣に質問いたします。  少年非行や校内暴力、登校拒否、高校中退者の激増など子供を取り巻く状況は深刻さを増しております。これらの背景には、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。それが学歴社会と結びついて、受験地獄と学校間格差、偏差値教育、過密な教育内容など、いわゆる教育荒廃が最大の問題であることを国民が共通した認識として持っております。したがって、我が党は、国民の合意と参加による教育改革を強く求めるものであります。     〔議長退席、副議長着席〕  しかし、中曽根総理、あなたが主張する教育改革には、重大な前提が欠け落ちてはいませんか。それは、長年文教政策を担ってきた自民党、政府がその責任を反省していないということであります。現在の教育のさまざまなひずみに悩んでいる子供や父母に対して率直に反省を語らなければ、教育改革は実り薄いものになるでしょう。教育荒廃を生み出した文教政策の反省と国民に対する責任について、総理並びに文部大臣の御見解を伺います。  中曽根総理は、文部省の教育行政に抜きがたい不信感をお持ちではないでしょうか。日ごろの言動にもしばしば見受けられましたし、今回は、文部省が第十四期中教審を準備していることを知りながら、それをやめさせて権力的に総理直属の審議機関を設置されたこともそのあらわれであります。一つの行政官庁を乗り越えて総理直属の審議機関を設けるという異例の措置は、今後の文部省のあり方をも再検討をしなければならない重大な事柄であります。このことに対する総理並びに文部大臣の御見解を伺います。  次に、総理大臣直属の審議機関について伺います。  教育基本法第十条は、教育は不当な支配に服することを否定し、国家権力が教育に介入することを厳しく戒めています。しかるに、この法案は、総理大臣直属の審議機関を設け、その委員は総理大臣が任命し、会長は委員の中から総理大臣が指名することになっています。  これは国家権力が教育に直接介入し、教育の中立性を脅かすことになり、国民は強い危倶の念を持って注視しております。法案の第一条、目的の中に「教育基本法の精神にのっとり、」という文言があります。委員の任命などは教育基本法の精神に反しますので、法案自体が内部矛盾を持つことになります。これらの危惧、矛盾を納得できるよう御説明ください。  あわせて、本法案が委員の国会承認やまた審議の公開を認めていません。なぜ国会の承認が不必要なのか、なぜ審議が公開できないのか、明確な御答弁をいただきたいものです。(拍手)  総理は、審議会に対して、七一年中教審答申や昨年の中間報告、そして総理の単なる私的諮問機関である文化と教育に関する懇談会の報告を重要参考資料、いわゆるたたき台にすると言っておられます。これでは出発から審議内容を拘束することになり、審議会の答申は中曽根総理の思うつぼになることは火を見るよりも明らかであります。(拍手)特に、文化と教育に関する懇談会は「教育基本法や教育に関する特定の見解にとらわれず、」と報告書は言っています。このことと「教育基本法の精神にのっとり、」という目的条文とは対立的見解となり、調和は困難であります。したがって、教育基本法を否定する文教懇の報告や中教審の答申を重要参考資料とすることに疑義がありますが、いかがでしょうか。  他面、自民党が地方議会において教育基本法の改正の請願や決議を強引に採択していることは、これをあわせ考えるとき、総理の教育基本法の精神にのっとりという言葉は、国民を欺く詭弁としか思われません。総理は、教育基本法を無視し、形骸化し、ついには改正するおつもりかどうか、改めてお伺いいたします。(拍手)  次に、総理大臣の教育問題に対する基本姿勢について伺います。  みずから改憲論者と称する総理は、幾つかの講演において、行政改革の次は教育改革を行うことが憲法改正への道といった趣旨のことを語っておられます。これらの言動は、総理が教育改革を改憲の地ならしとして構想していることを指し示しています。かつて、鳩山内閣は、憲法改正と教育改革を同時に提案して国民の反撃を受け失敗いたしました。総理は、その経験に学んで、改憲を背後に隠して教育改革を提案しているのではないでしょうか。この点、明確にお答えをいただきたいと思います。  また、臨調の答申は、あたかも最高裁判所の判決のごとく、国民のすべてがこれに服するように持っていかなければならないともお話ししておられるようでございますが、教育審議会の答申も臨調答申と同じように考えられ、国会の審議、権限を無視し、国民には有無を言わさず押しつけようとしているのではありませんか。このことも含めて答弁を求めるものであります。  これまで総理大臣直属の教育に関する審議機関を設けられたのは、過去六回あります。うち五回は敗戦前であり、いずれも国家主義、軍国主義教育の推進に大きな役割を果たしたのが歴史的事実であります。  一九四六年、敗戦により既存の秩序が崩壊する中で、戦前の軍国主義教育を抜本的に刷新する目的を持って教育刷新委員会が設けられました。この委員会は、教育の民主化を基本テーマに自由に討論し、自主的な建議や声明を行って、戦後教育の方針を明示しました。今後の教育改革においても、二十一世紀を生き抜く子供たちのために、平和と人間の尊重を基本テーマにし、より自由な討論により、自主的な改革をつくり上げる保障を与えることをお考えになりませんか。  教育改革や教育の振興には大きな財政支出が必要であることは御承知と思います。政府は、今財政難を理由に四十人学級を凍結し、また、私学の補助金の減額や育英資金の有利子制を設けるなど教育切り捨て政策を実施しています。これを取りやめるだけでも教育効果の向上が期待されます。教育改革に先立ち、現行制度の中で先にやらなければならない課題が山積しています。教育改革は財政的裏づけがなければ成功いたしません。子供の幸せと教育振興のために金を惜しまないでください。この際、しかと念を押しておきます。総理、大蔵大臣、文部大臣の決意のほどをお聞かせください。  最後に、教育改革を成功させるために、政治倫理の確立が絶対的条件と思います。現職総理のときに五つの大切、十の反省と子供に説いた人が、一審有罪にもかかわらず、依然として国会議員を続け、現職総理にも政治的影響を与えているやに伝えられる状況が存在しています。このようなことでは、父母や教師が道徳を説いても、子供は納得いたしません。政治倫理の確立ができないで教育改革を説いても、国民は冷笑いたします。総理の姿勢を明確にお答えください。  以上述べましたように、国民の願いにこたえる前提を欠き、改憲の地ならしとしての教育改革を目指す本法案は即刻撤回すべきであります。教育改革について真に国民の合意を求めるならば、どのような性格の審議機関であるかを含め、すべての党や教育にかかわる各界各層の意見を聞くべきですし、また、総理が言われた一億一千万人が発言できる有資格者であるということを生かして国民の声を反映させる方法を探り、慎重の上にも慎重に事を推し進めるべきであります。教育を根本から問い直すことは、未熟なままの総理直属の審議会を強引に実施に移すことではありません。結論を得るに時をかしてもよいと思います。  時間の関係上意を尽くしませんが、総理並びに各大臣の率直、明快な答弁を求めて私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  33. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 小川議員にお答えをいたします。  まず、戦後教育に関する反省いかんという御質問でございますが、戦後の歴代内閣は、教育改革につきましては非常によく努力してきていると思います。また、文部省も中教審等を中心にいたしまして教育の整備充実に非常に努力してきていると思います。しかし、教育は時代の変化あるいは進展に常に対応していかなければならないと思います。そういう意味におきまして、全国民の世論も今や教育改革を断行すべしという気に満ち満ちておりまして、このような国民の要望にもこたえて、国民的広場に教育の問題を持ち出して皆さんに御議論をいただき、皆さんで行革をしていただこうというのが今回の教育改革の趣旨でございます。  次に、総理直属の審議機関を設ける、これは文部省の位置はどうなるかという御質問でございますが、これは全内閣でこの重大な問題に取り組もうという考えに立ちまして総理府に設けたものなのでございます。それによって教育の直接の所管大臣でありまする文部大臣の立場を変更するものではございません。また、臨教審の実質的責任者として文部大臣に活躍を期待しておるところであります。  次に、国会承認や審議の公開の問題を御指摘になりました。  教育の問題につきましては中立性の確保が特に要請されるという観点に立ちまして、委員の人選を国会同意とはしないというふうに考えてやったものでございます。  また、審議の公開は、一々どの委員がどういうことを言ったというようなことをその都度公表するというようなことでありますと、今までの経験から見ましても、圧力団体からの非常な抵抗が入ってまいりましたり、必ずしも自由な発言はできないという情勢にもなるのでございます。そういう意味におきまして、公開という問題につきましては、文部大臣が答弁しましたように、適当なときに区切りをつけてそれを御報告するという形が適切であると考えております。(拍手)  次に、教育基本法に関連して、いわゆる教育文化懇の報告書あるいは中教審の答申を尊重し過ぎはしないかという御質問でございます。  私は、中教審の歴代の答申やあるいは教育文化懇のお考えは非常に立派なお考えであると考えております。しかし、これらは重要な参考資料でございまして、新しくできる審議会におきましてあくまで自主的に御決定願いたいと考えております。  次に、憲法並びに教育基本法を改正する考えはございません。これは前から申し上げておるとおりでございます。  次に、教育改革に関しまして、財政的問題その他でやるべきことがまだあるではないか、そういう御質問でございます。  確かに財政問題あるいは行政改革等でやるべき問題は非常にございますが、教育の改革も今や喫緊を要する重大な仕事になってきていると考えております。また、財政事情につきましては、教育の改革が必ずしも財政負担を伴うものではございませんが、先ほど申し上げましたように、必要な改革は実行しなければならないと思っております。  最後に、政治倫理と教育改革の関係でございますが、この関係は、必ずしも関係ないとは思いません。しかし、政治倫理は政治倫理、教育改革は教育改革という面もございまして、これは同時並行で実行していくことが正しいと考えております。  本法案を撤回する考えはございません。  残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)     〔国務大臣森喜朗君登壇
  34. 森喜朗

    ○国務大臣(森喜朗君) 小川仁一さんにお答え申し上げます。  第一点の、教育荒廃を生み出した責任はこれまでの文教政策にあるのではないかという趣旨のお尋ねでございますが、文部省におきましては、教育が時代の変化に対応しつつ行われるよう、中教審を初め各種審議会等の答申の趣旨に沿って、そのときどきの課題解決のため、これまでも最善を尽くしてまいりました。また、今日の日本の教育制度については、質、量ともに、諸外国からも大変注目を集めているという事実もどうぞ御承知おきをいただきたいと思います。  しかしながら、近年におきまして、先ほど総理も申し上げましたように、社会の急激な変化、教育の量的拡充等は、これまでの教育のあり方に大きな影響を及ぼしておりまして、さまざまな指摘が各界各層からなされております。各党の皆様方も、それぞれ多くの教育に対する御意見を提言をされているところでございます。こうした国民の事態の改善への要請が極めて高まっている、こういうふうに私どもは考えておるところでございます。したがいまして、このような国民の要請にこたえて、教育の一層の改善充実を図るため教育改革を推進していくことが文部省に課せられた責任を果たしていくゆえんであると考えている次第であります。  第二点は、教育改革に関し総理直属の審議機関を設けるのであれば、文部省のあり方そのものについて再検討を要するのではないかという趣旨のお尋ねでございますが、このたびの教育改革につきましては、二十一世紀に向けて我が国社会における教育の諸機能全般にわたって検討することが必要であると考えております。かかる課題は、文部省のみならず行政各部の施策と密接な関連を持つものが多いので、これらにつきまして総合的に効率的に調査を進めることをねらいとして、臨教審を総理大臣の諮問機関として設置いたしたものでございます。  このことは、もとより教育行政の重要性及びこれに責任を有する文部大臣の立場に何らの変更を及ぼすものではなく、御指摘のような検討ということも必要はないと考えております。私といたしましては、教育改革の責任者として、また臨時教育審議会の担当大臣として、積極的に取り組んでいく所存でございます。(拍手)     〔国務大臣竹下登君登壇
  35. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) お答えいたします。  教育予算の多い少ない、このことは必ずしも教育の水準を決定するとは思っておりません。しかし教育予算につきましては、従来から、厳しい財政事情のもとにありましても必要な予算は確保してきたところであります。教育の改革は、その内容いかんによっては、かえって効率化、合理化によりまして財政負担を軽減する場合もありましょうし、逆に新たな負担を伴う場合もありましょう。必ずしも財政負担を増大させるものであるという決め方をしてかかるべきものではございません。  いずれにしましても、今日、財政再建が国民的課題であるという現実を考慮いたしますならば、どんな政策もこれに立脚したものでなければ現実的なものとはなり得ない、この基本認識の上に立っております。(拍手)     —————————————
  36. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) 神崎武法君。     〔神崎武法君登壇
  37. 神崎武法

    ○神崎武法君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました臨時教育審議会設置法案につきまして、総理並びに文部大臣に対し質疑を行うものであります。  我が国の教育は、六万六千の学校、二千八百万人の在学生、そして百三十万人の教職員という、数の上でまさに世界に誇り得る立派な規模となったと言えましょう。しかし、その反面、落ちこぼれや登校拒否、校内暴力、非行問題など深刻な問題が山積しております。受験競争と試験の中で、無気力、無関心、無感動等の四無主義、五無主義と言われる状況が子供の間に見られるようになっています。  教育の目的は機械をつくることではない、人間をつくることであると言った思想家がおりました。申すまでもなく、教育の目的は人間形成にあるはずなのに、かえって教育が子供の人間性を奪っているとさえ見える実情であります。このように、だれの目にも明らかな教育の荒廃があり、その原因はさまざまな要素が複合的に重なり合い、さながら複合汚染とも言われる状況にあります。その背景は、明治以来今日に至るまでの学校を中心とした教育制度が、最近の急激な社会変化に対応し切れないで取り残されているためであり、私は、今こそ二十一世紀を展望した教育改革に当たらなければならないと思うのであります。(拍手)  教育改革に当たって最も重要なことは、いかなる教育理念のもとにこれを推し進めるのかということであります。言いかえれば、教育改革によってどのような人間をつくろうとしているのかを明らかにすることであります。そのためには、まず根本に人間に対する深い洞察と理解があって、その上に教育の明確なビジョンと方法が確立されていかなければならないでありましょう。今日では、教育の重要性はもはや国家だけの問題ではありません。世界人類の運命、文明の未来は、まさしく教育にかかっていると言っても過言ではありません。(拍手)  人間英知の開発を忘却した文明は、やがて時代の推移とともに朽ち果て滅び去っていくことは、古今東西の歴史が明確に示しているところであります。特に、教育の効果は、二十年後、三十年後にあらわれるとも言われるだけに、教育こそ二十一世紀の我が国の、そして人類の消長を決定するものであるとの認識に立って、確固たる教育理念のもとに教育改革を行わなければなりません。  私は、この教育理念は、まず何よりも人間に対する徹底して深い洞察と理解、そして愛情がその根幹とならなければならないと考えるのであります。そして、宇宙のオアシスと言われるこの地球をどう維持発展させるか、また、我が国の未来の平和をどう切り開いていくかという、活力とたくましさを持った国際人をはぐくむための知的環境、創造的教育の場をつくることが必要であると思うのであります。  総理は、いかなる教育理念のもとに教育改革を行うお考えなのか、また、教育改革によってどのような人間をつくろうと考えておられるのか、この点について、まず総理の御所見を伺いたいと思います。(拍手)  これまで我が国の教育制度は学校教育を中心に考えられてきたが、これは組織的、計画的な教育制度として、今日の我が国の繁栄を築く原動力の役割を果たすなど数多くの成果を上げた反面、急激な社会変化に対応し切れずに、人間の画一化等さまざまな弊害をも生んでいるのであります。情報化、国際化、人間と文化の復活等の新しい社会変化を見るとき、我が国においても、教育を人間の生涯にわたって継続して行われている過程と位置づける生涯教育の時代に入ったと言わざるを得ません。したがって、教育改革に当たっても、生涯教育の立場から教育体系を総合的に再検討し、学校教育もその中に位置づけていかなければならないと考えるのであります。この点についての総理の御所見をお伺いしたい。  次に申し上げたいことは、教育改革に当たっては、政治勢力や国家権力から教育の中立性を守ることであります。  教育は百年の大計であると叫ぶ政治家が、教育を当面の党利党略の道具としたり、教育を国家統制の手段にするようなことは許されません。当事者である子供や生涯学習者としての社会人はもとより、親と教師、学校と地域、そして社会の各分野の人々が協力し合い、多元的な国民合意を形成しつつ、教育の現状の改善、改革に取り組み、この国民的事業を推進していくべきであると私は思うのであります。  こうした観点に立って見るとき、中曽根総理の戦後政治の総決算の一環として位置づけられる戦後教育見直しに、大きな危惧の念を感ずるものであります。率直に申しまして、総理が自身の政権延命策として、さらに、行政改革や財政再建の行き詰まりから国民の関心をそらすために教育改革を利用するのではないか。または、戦後教育を支えてきた憲法、教育基本法の見直し作業を画策して、戦前への回帰を意図しているのではないかという疑問を持つのは私一人ではないと思うのであります。  総理が、このたび教育改革を決断された真意は一体どこにあるのか、以上申し上げた疑問点に率直にお答えいただきたい。(拍手)  次に、臨時教育審議会を総理府に設置する理由として、文部省、中教審では限界がある、また、教育改革は文部省だけでなく政府全体で取り組み、幅広く国民的論議を願う必要があるからとしております。  教育がこのままであってもよいとは思わない、何らかの改革を行うべきだという声は国民の間に広くあると思われますが、改革の手順、方向性については、いまだ合意が成立しているとは言えません。私は、かねてより、教育改革のための合意形成の中核となるべき機関の設置は必要であると考えていたのであります。しかし、このたびの設置案が、その運営の過程において政治色の濃いものになりかねないのではないか。従来にも増して自民党、政府が教育に強い影響力を持つのではないかとの危倶の念が残るのであります。断じてそうあってはなりません。  しかし、そうならない歯どめは一体どこにあるのか、教育の中立性を確保する措置はどうなっているのか、国民の危惧に対して、中曽根総理は明確に答えなければなりません。答弁を伺いたいと思います。(拍手)  さきに述べましたように、教育改革を進める上で、国民合意の形成が不可欠であります。  したがって、我が党は当審議会について、諮問事項の性格、内容、方向については、あらかじめ明らかにすること、地方公聴会を開催し、審議、答申に、地方自治体を初め現場の意見を反映させること、委員には学識経験者のほか教師、父母、地方自治体の代表を加えるよう努力すること、審議は原則として公開とすること、委員は両議院の同意を得て任命することなどを提言してまいりました。これらの提言についての総理のお考えをお聞かせ願いたいのであります。  そこで、これらに関して数点伺います。  さきに、総理は、私的諮問機関である文化と教育に関する懇談会の報告を重要参考資料にすると発言したと伺っておりますが、総理は当報告内容についてどのような感想を持っておられるのか。この点について、私的諮問機関の下請的な機関として公的な臨時教育審議会を位置づけているとの批判がありますが、総理はどのように考えておられるのか。また、当報告の扱いを今後どうされるのか、お聞かせいただきたいと思います。  さらに、重要な参考資料として、このほかにどのようなものを想定されているのでありましょうか。例えば、明治初期と第二次世界大戦直後の激動期の教育改革に次ぐ第三の教育改革案と銘打った昭和四十六年の答申を初めとする中教審の提言を、このたびの教育改革の中でどのように位置づけているのか伺いたい。  また、文部大臣は、昭和四十六年の中教審の答申について、八、九割はいろいろな形で改善していると答弁されておりますが、具体的に何について改善し、何について改善していないのか、明らかにしていただきたい。  次に、教育改革の当面の主要課題としては、校内暴力を初め入試制度、幼児教育、家庭教育、学校教育、社会教育、教員の資質等広範な分野にわたるものと考えられますが、総理は何をもって教育改革の最優先の課題と認識しておられるのか。また、現段階で総理は諮問事項をどのようなものとしたいと考えておられるのかを伺いたい。  次に、総理は、教育基本法を変える考えはないと明快な答弁を行い、基本法第四条の義務教育年限九年の原則も堅持する、変えないと答えておられます。しかし、当審議会において、義務教育年限をどうするかは重要な課題となることが予想され、義務教育年限の見直しが答申される可能性もあるのであります。そのときに、当法案第三条の答申尊重義務を盾に基本法改正に踏み込むことがあり得るのかどうか。また、予算委員会等で論点となった基本法第一条「教育の目的」、第四条「義務教育」、第十条「教育行政」のほか各条文についての見直しを諮問する意向があるかということを、さらに念を押して伺います。  最後に、教育改革案が作成される場合、特に学校制度改革については、重要な課題であるところから、パイロットスクール構想を実施した上でその結論を出すべきであります。しかし、当審議会が三年という期間で果たして結論を出せるのか、むしろ不可能であろうと考えるのであります。総理は、学校制度改革を含めた諮問を行う所存なのか、その場合どのような対応をなされるのか、明確にしていただきたいのであります。  以上、数点の質問につき総理並びに文部大臣の明快な答弁を求め、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  38. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 神崎議員の御質問にお答えいたします。  まず、教育理念の問題でございますが、やはり人格主義あるいは理想主義、そういうものを中心にした民主主義的な立派な日本人、世界日本人をつくっていく、そして二十一世紀を担うに値する青年たちをはぐくんでいきたいというのが私たちの教育改革に対する理念でございます。  また、生涯教育に関する御質問がございましたが、教育は学校教育のみならず幼児期からの生涯全般にわたるものであり、いわば受胎から墓場まで、全生涯が教育の過程である、このように考えておるものであります。  次に、教育改革を決断した真意は何であるかということでございますが、最近の社会の急激な変化や文化の発展に対応し得る教育の実現、それに向かって進もうと考えたわけであります。憲法あるいは教育基本法の精神にのっとって行う考えでございます。もとより教育の中立性を守り、政略的な考えなどは毛頭ございません。行政改革も財政改革も別に行き詰まっている状況ではございませんで、こういうものに逃避しようなどという考えは毛頭ないということを申し上げておきます。  次に、教育の中立性確保の問題でございますが、これは当初から重要視した点で、この本法案にもその趣旨を書いてあるところなのでございます。臨時教育審議会におきましては広く国民各層の意見が反映されるように、そして、中立性が維持されるように我々は慎重なる運営を行いたいと考えております。  次に、諮問事項の問題や公聴会の問題等具体的にお尋ねもいただきましたが、諮問事項は今後の検討課題でございまして、この国会の御論議等もよく踏まえまして慎重に考えさしていただきたいと思っております用地方公聴会の開催は貴重な御意見であると思います。また委員の人選につきましては、国民各界各層の意見が反映されるように配意したいと思います。公開の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、一々公開するという状況ですと、委員の発言が拘束されます。今までの例で見ましても、一々それを公開した場合には、電話とか手紙とかあるいはそのほかによる非常なる圧力を委員が受けているという事実もございます。そういう面からいたしまして、適切な区切りをつけてこれを報告するというやり方が賢明ではないかと思います。国会同意の問題は、中立性確保が特に要請されるという考えから、このような処置をいたしたものなのであります。  次に、文化と教育に関する懇談会の報告に対する感想いかんでございますが、これは私的懇談会でございまして、その御意見につきましては、教育の現状と問題点をよく整理して教育改革の方向と課題をよくまた示していると思っております。これらは今回の審議に当たりまして貴重な参考資料となるものと考えておりますが、あくまで主体性はこの審議会の委員の御見識によって決定していただくものなのでございます。  次に、教育改革の最優先の課題は何であるか、四十六年の中教審答申に対する考え方いかんというお尋ねでありますが、一言で申し上げれば、人間主義の教育をぜひ改革し発展さしていただきたい、そして二十一世紀の我が国を担うに足る青少年を育成する教育を実現していただきたい、そういう考えに立っておるものなのであります。  次に、教育基本法の見直し等につきましては、先ほど申し上げたとおり、見直す考えはございません。  次に、学校制度の改革の問題でございますが、教育改革には学校制度のあり方を含め長期的展望に立って総合的に取り組む所存でございます。具体的な諮問事項は今後の検討課題でございます。  残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)     〔国務大臣森喜朗君登壇
  39. 森喜朗

    ○国務大臣(森喜朗君) 神崎さんにお答えを申し上げます。  私に対します質問は二点ございました。  御質問の第一点は、中教審の答申等を教育改革の中でどう位置づけているかというお尋ねでございますが、中教審答申は我が国の教育、学術、文化の振興を図る上で極めて重要な役割を果たしてまいりました。教育改革に当たっては、中教審におけるこれまでの審議の成果や文教行政の蓄積を踏まえつつ、これに取り組むことが適当であると考えております。  第二は、昭和四十六年の中教審答申の実施状況についていかがかということでございますが、少々長くなりますけれどもお時間をいただきたいと思いますが、この答申は、幼児期から高等教育までの学校教育全般にわたる改革と拡充整備の基本的方向を示したものでございまして、以来今日まで文部省は、答申の趣旨を尊重し、これを指針として各界各層の御協力を得つつ、同答申に盛られた事項の実施に積極的に取り組んできたところでございます。  その主なものといたしましては、小学校から高等学校までの教育内容、方法の改善、学級編制及び教職員定数の改善、幼稚園教育の普及充実、特殊教育の拡充整備、教職員の資質向上と待遇改善、高等教育の改革とその計画的な整備充実、私学助成の拡充、奨学事業の拡充、大学入学者選抜制度の改革などでございます。  なお、答申の趣旨どおり実施していないと指摘されているものといたしましては、新たな学校体系開発のためのいわゆる先導的試行、市町村に対しまして幼稚園の設置義務を課すこと、公立と私立の学校に関する地方行政の一元化などがございます。(拍手)     —————————————
  40. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) 中野寛成君。     〔中野寛成君登壇
  41. 中野寛成

    ○中野寛成君 教育はいかにあるべきか。山積する社会問題の中で、今改めて日本人みんなが教育について語り始めました。そのかなめとなるべき臨時教育審議会の設置法案について、私は、民社党・国民連合を代表し、若干の意見を加えながら、総理並びに文部大臣にお尋ねいたします。  まず、昨年六月以来、我が党が提唱してまいりました教育臨調構想を総理が前向きに受けとめられ、本法案提出に至りましたことを評価いたします。ただ、我が党の提唱した教育臨調と政府提出した臨教審が、果たして同じものであるかどうかを中心に質問したいと存じます。  まず質問の第一点は、教育と教育を取り巻く諸問題について、総理がどのような現状認識をお持ちであるかということであります。総理の現状認識が明らかにされることによって、教育改革の方向とねらいもまたおのずから明確となるでありましょう。  ここで意見を申し述べます。  その第一は、今日の我が国の教育界が完全に八方ふさがりとなり、教育問題の解決の糸口をどこに見出すべきか、国民のすべてが全く途方に暮れております。  激化する受験戦争、偏差値による輪切り、落ちこぼれ、校内暴力、青少年非行等々山積する教育問題に対して、文部省も教育委員会も責任を転嫁し合い、大体のところ事後処理か対症療法に終始し、問題発生の予防、根絶にまで踏み込めない。あげくの果ては、我々には権限がないとお逃げになる。また、学校で直接子供たちを指導する教師たちも、一部教師集団の姿勢に見られるように、学校教育の混迷を政治と社会の責任にしてみずからの責任を回避する。加えて、子供の教育やしつけが第一義的には親の責任であるにもかかわらず、父母の中には学校や教師に頼り過ぎる傾向がある。核家族化、世代間の断絶、マスコミの悪影響等により、望ましい教育機能が発揮されていない。このような現実を総理はいかがお考えでしょうか、お伺いをいたします。(拍手)  その第二は、二十一世紀からの要請についてであります。  今日の社会は、日進月歩などと言うのももどかしいほどの速度で科学技術の開発が進んでおります。あわせて国際化社会、世界国家等の言葉が示すように、我々の行動範囲が一世代前には想像もつかなかったほど拡大しております。このような新しい社会の到来は、これからの二十一世紀に生きようとする子供たちに二つの新しい資質を要請しております。  一つは、言うまでもなく、創造的能力、クリエーティブな能力であります。この能力の開発について、我が国はこれまで欧米先進諸国の発明発見のおかげで真剣な取り組みを先へ先へと延ばしてきたと言っても過言ではないでありましょう。いま一つ、二十一世紀の国際化社会が要請する資質は、世界的、国際的見地に立った物の考え方ができる能力であります。これは我が国の国際収支を黒字にするという能力でもなければ、英語を流暢に話せるというだけの能力でもありません。世界の平和と安定の観点から、我が国の果たすべき使命を知り、行動できる能力、見識であります。これらの新しい資質は、率直に言って、これまでの教育制度、教育観によって十分に培われ得るとは思えません。これまでの先進国模倣型の教育のあり方を改めなければ、二十一世紀からの、そして世界からの要請にこたえられないと思いますが、総理並びに文部大臣はいかがお考えでしょうか。(拍手)  その第三は、教育は国民全体のものでなければならないということであります。  しかるに、現在の教育は、行政的には文部省の所管下に置かれ、教育の現場は日教組を中心とする教師集団の独占するところとなり、その恣意に任されてきたと言っても過言ではありません。そして、戦後の我が国の教育界に文部省対日教組という不毛のイデオロギー対決が定着し、国民不在、子供無視の教育がまかり通ることとなりました。その結果、昭和四十六年、中教審が多年のエネルギーを費やして答申した改革案の多くが実施に移されないまま葬り去られたことは御存じのとおりであります。この対決と混迷の中で国民は当惑し、子供たちは多くの犠牲を強いられています。もはや一日たりともこの事態を放置しておくことは許されません。  では、どうするか。それには、教育を文部省の縦割り行政の枠組みから解放し、同時に日教組から国民の手に教育を取り戻し、全国民的な枠組みの中でとらえ直すことが必要であります。ましてや、教育が政治的道具に利用されるようなことは断じて許されません。総理の過去の言動や本質的な思想のために、多くの国民からその真意について疑いを持たれております。これはあなたの自業自得であります。それだけに、総理は謙虚にかつ粘り強く教育改革のあり方を訴え続けなければなりますまい。野党もまた先入観や偏見を捨て、率直に教育改革を考えなければならないと存じます。(拍手総理信念を吐露した誠意ある御所見を承りたいと存じます。  さて、第二点としてお伺いしたいことは、臨教審のあり方についてであります。  その中の第一は、まず教育改革の目標を明確にしていただきたいということです。  昭和四十六年の中教審答申は、明治五年の学制発布、戦後の教育改革に次ぐ第三の教育改革として、当時鳴り物入りで宣伝されたものでありました。ちなみに、明治の教育改革は、近代国家への離陸という至上命令のもとに、世界の列強に伍していくための富国強兵を教育の大原則としたものでした。また、戦後の改革は、アメリカ占領軍の指導のもと、戦争放棄を至上命令とし、連合国に追従する平和国家の樹立を教育の大原則とされました。  では、第三の教育改革と宣伝された中教審答申の大原則は何であったか。この点が明瞭でなかったところに中教審答申の欠点があったと断ぜざるを得ません。総理は、今回の臨教審の設置を戦後教育の総決算のためと言われます。しかし、それだけでは教育改革の大目標とは言えません。今次教育改革の大目標をどこに置かれるのか、明確にされんことを望みます。  第二は、教育が国づくり、人づくりの基本であることにかんがみ、総理が目指す国づくり、人づくりはいかなるものであるかということであります。  我が党は、結党以来、人間の精神的豊かさと物質的豊かさの調和した教育国家の建設を、すべての政策の根底に置くことを主張してきたところであります。戦後我が国は、高度経済成長という言葉が語るように、物質的繁栄を一貫して追い続け、これまでに体験したことのない恵まれた豊かな生活を享受できるようになりました。しかし反面、精神的栄養失調に陥り、貧しさゆえの苦悩ではなく、豊かなるがゆえの苦悩を味わうというジレンマに立たされることになりました。なぜか。我々は物に対する欲望をコントロールする自制心を育てることができなかったからであります。加えて、戦後民主主義思想によってもたらされた極端な自己主張、個人の権利の主張がこれに相乗して、エゴイズムの横行、享楽主義の蔓延、道義心の低下をももたらしていることは周知のとおりであります。(拍手)  そこで我々は、このような物質万能、金銭万能の風潮を正すために、物質的欲望をコントロールできる強靱な精神力を持った国民の育成を教育改革の大眼目としなければなりません。そして、この達成のためには、戦後我が国が歩いてきた道をただ部分的に修正していくのではなく、物より魂を重視する人間の育成という教育の理念についてのコペルニクス的転換を図る必要があります。同時に、教育の理念、人間の持つべき基礎が、だれにもわかりやすいものでなければなりません。  総理のお好きな絵画の世界で申し上げるならば、あのピカソの絵を思い出します。あれだけ色鮮やかで大胆な構成、すばらしい個性。しかしそれも彼の正確なデッサン力の上に、すなわち確固たる基礎の上に成り立っていることを忘れることはできません。その人間の基礎、教育の理念を、憲法や教育基本法の精神にのっとり、わかりやすい言葉で教育憲章として制定されるよう改めて提唱いたします。総理の的確な指針と決意を示されるよう求めるものであります。  その第三は、臨教審の構成と運営についてであります。  臨教審の会長及び委員は、その使命のゆえに、全国民の納得する人たちでなければなりません。全国民の意思を代表するもの、それは言うまでもなく国権の最高機関でもある国会であります。ゆえに会長及び委員は国会の同意人事とすることを改めて求めます。またその人たちの人選は、当然教育界のみならず、経済界、労働界、言論界、宗教界など各界の代表、特に若い戦後世代の代表など幅広く選ぶべきであります。教育界の利害得失が、ややもすると抜本的な教育改革を阻害することがあることを忘れてはなりますまい。  また臨教審の目的は、委員だけの論議の中で答申をつくることだけではありません。教育についての国民の論議を広く巻き起こし、中央地方の公聴会等を通じてこれを集約し、国民の合意を自然な形で形成することであります。そして合意できた部分は逐次中間答申としてこれをまとめ、速やかに実行に移すことが必要であります。また、可能なものは来年度予算編成にも反映させるよう努力すべきでありましょう。そのためにすべての答申を国会に報告されるよう望みます。  以上、臨教審の構成と運営について総理及び文部大臣の御所見を伺います。  最後に、臨教審の究極的な目標について申し上げたいと存じます。  すなわち、教育の長期安定と政治的中立を確保するため、立法、行政、司法に次ぐ第四権的機関としての中央教育委員会の設置を提言いたします。  さきにも申し述べましたように、教育は国民全体のためのものであり、一政党の政権保持の具にすべきものではありません。歴史のある時期にたまたま政権をとった政党の立場からのみ考える性質のものではありません。国家百年の計、これが教育政策の立案にかかわる我々政治家の忘れてはならない基本姿勢であることは当然であります。人間の道義と信義を中核とする教育国家の建設を目指し、全国民的視点から教育を考える第四権的性格の中央教育委員会、その設置と、そのもとで教育行政を執行する機関としての文部省のあり方について抜本的改革を加えることこそ我々の目標とすべきものであります。総理の御所見を伺います。  教育改革は、しょせん強力な外からの圧力か独裁者でなければできないという説があります。確かに過去二回の教育改革はそのとおりでありました。我々は今初めて国民の、国民による、国民のための教育改革に挑戦しようとしているのであります。ここに日本国民の英知と誇りを結集し、真の教育改革という歴史的偉業を国会すべての力をも合わせて達成することを訴えて、私の質問といたします。  ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  42. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 中野議員にお答えをいたします。  種々示唆に富む御質問は、傾聴いたしました。  まず、教育に対する現状認識いかんということでございますが、戦後の教育が我が国の興隆と発展に非常に大きく貢献したことは何人も否定できないと思います。しかし、最近における急激な変化あるいは教育の量的拡大、こういうようなものは教育にさまざまなひずみを与えてきていることも事実でございまして、そういう意味において教育改革に対する国民の熱意もまたすこぶる高まってきていると思うのでございます。  ややもすれば今の教育制度は硬直性を持ち過ぎている。もう少し変化に対する弾力性や対応力、あるいはさらにもっと人間的な温かみと膨らみのある教育制度に改革すべきではないかというような傾聴に値する議論が出てきているゆえんであり、かつ、さらに国際性を持たした教育制度を考うべきではないかというお考えも出てきているわけでございます。このような考えを踏まえまして私たちは教育改革を実行しようと思っておる次第でございます。  さらに、教育につきましては親や教師やあるいは教育行政機関等が連携をして改革あるいは教育を行うべきではないかという御議論につきましては、全く同感でございます。現在におきましてはややもすれば価値基準が喪失されまして、家庭におきましてもあるいは教育の現場におきましても、困惑とためらいが出てきておるように思います。そういう意味におきまして、今度の教育改革によりましてしっかりとした大黒柱を再建して、そして「たくましい文化と福祉の国」をつくる基盤をつくっていただきたい、そのように考えておる次第でございます。特に家庭における教育機能というものは非常に重要視する必要があると思っております。  次に、国民合意を形成する教育改革を行うべきであるというお考えにつきましては、全く同感でございまして、今回の臨教審の設置もそのような考えに基づいて行わんとしておるものでございます。  教育改革の大目標は何であるかと言われますと、私は前から申し上げますように、二十一世紀を目指した世界日本人をつくっていただきたいというのが基本でございます。私が戦後政治の総決算と申しておりますのは、これは言いかえれば戦後の日本に対してオーバーホールを行って、そして強靱なる体力を回復して、二十一世紀に向かって対応できる行政その他をつくり上げようというのであり、教育につきましても、このような二十一世紀に向かっての改革ということが基本にあるということを申し上げます。  次に、教育に関する基本的な理念、方向について御質問をいただきましたが、精神的に豊かな連帯と文化の社会、国際国家日本の建設を目指しております。そして道徳性、社会性、理想と強健な体力、個性と創造力をはぐくむ教育の推進をしていただきたいと考えております。もとより教育につきましては、普遍性の上に、さらに民族の持っておる精神文明、精神的土壌というものの上にそれは行われなければ長続きのするものではないと考えております。  次に、教育憲章の御提唱がございました。その言わんとするところは私も理解できますけれども、しかし、だれがどのような内容で、そしてどのようにして示すかという大きな問題がございます。そういう点からいたしまして、これは慎重に考えなければならぬ問題であると思っております。  さらに、国会の同意大事にすべきではないかという点につきましては、中立性の確保が特に要求される、そういう意味からこのようなやり方にいたしたのでございます。  次に、第四権的性格を有する中央教育委員会の設置の御提唱でございます。お考えは理解できますが、しかし今の日本の憲法の構造から見まして、三権分立を原則にしておるのであり、教育は行政各都の中に含まれる重要な国務でございます。そういう意味におきまして、この第四権的な中央教育委員会の構想は私は現実的でない、そのように考えております。  さらに、この教育によって歴史的責任を果たすべきであるという御議論につきましては、全く同感であります。今の現状を見ますと、だれかがこれをやらなければならないという時期に来ておるのであります。その意味におきまして、我々もこのような法案提案をいたしましたが、国会の御論議を踏まえまして、全国民の手によって立派な教育改革を断行いたしたいと念願しております。  残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)     〔国務大臣森喜朗君登壇
  43. 森喜朗

    ○国務大臣(森喜朗君) 中野寛成さんにお答えをいたします。  御質問の第一点は、これからの我が国においては、創造的能力や国際社会に通用する見識などの資質の要請に特に意を用いるべきではないかとの御趣旨でございます。  このたびの教育改革は、二十一世紀を担うにふさわしい青少年を育成するために、広く我が国社会における教育諸機能全般にわたりまして改革を図ろうとするものでございます。御指摘いただきました点は、まさに傾聴に値すべき御示唆であろうと私は思います。  これまでの明治、そして戦後の教育改革は、いわゆる臨調にも御指摘がございましたように、追いつき追い越せ型日本の近代化の方向のための諸制度がむしろ進められてきたというふうに考えます。しかし、先ほど総理も申し上げましたように、社会の変化、例えば高学歴化、高齢化、コンピューター化あるいは情報化、こうした社会がどんどん進むにおいて、いかなる諸制度もいろいろな意味で現実に合わない面も出てくる。そういう中に、確かに質的にも量的にも日本の教育はすばらしい成果を得たのに、現実の問題としては、一方では人間喪失あるいは登校拒否、校内暴力、家庭内暴力、自閉児症状、そうした学歴社会の風潮等さまざまな要素が、教育が原因とも言われるような社会的風潮が出てきておる。このことに私たちはやはり注目をしなければならぬと思うのです。  中野さんの御指摘は、いよいよ二十一世紀は世界民族の中での日本の人間的な国民の資質が問われている、あるいは国際社会での日本の役割等が重要な課題であるという、そうした御指摘であろうと考えまして、文部省といたしましても、十分配慮すべき貴重な御意見であろうと考える次第でございます。  御質問の第二点は、臨時教育審議会におきまして、国民の合意を形成し、合意できた部分から逐次中間答申として実行に移すことが必要ではないかとのお尋ねでございますが、教育改革は広く国民全体にかかわり、我が国の将来を左右する重要な課題でございますので、審議のプロセスにおいては広く国民各界各層の意見が反映されるように、またその理解と協力が得られるよう配慮する必要があると考えております。  臨時教育審議会におきます審議の具体的な進め方につきましては、審議会自身で御決定いただくべき事柄でございますが、御指摘のように、公聴会の開催や審議経過の適宜公表など、国民的合意の形成のためにさまざまな工夫を尽くす必要があると考えております。  次に、実行可能なものについては来年度予算編成にも反映させるべきではないかとのお尋ねでございますが、臨教審におきましては、具体的にどのような問題をどれだけの時間をかけて御審議をいただくかは、今後これも審議会自身にお決めをいただくことが適当であると考えております。したがって、現段階でどのような課題についてどのような結論が得られるのか、あるいはこれに伴ってどのような予算措置を講じ得るのかについて申し上げることは困難であろうと思います。  なお、答申の国会報告の取り扱いにつきましては、行政府に置かれている審議会で、その答申の国会報告を義務づけているものは極めて限られているということ、教育に関しましては、国政の重要課題といたしまして常に国会で御審議を願っているということを考慮いたしまして、あえてその種の規定を設けないことにいたした次第であります。(拍手
  44. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) 藤木洋子君。     〔藤木洋子君登壇
  45. 藤木洋子

    ○藤木洋子君 私は、日本共産党革新共同を代表して、臨時教育審議会設置法案に関連し、総理並びに文部大臣に質問いたします。  今日の教育の現状はまことに憂慮すべきものがあり、教育改革が必要なことは言うまでもありません。この改革に当たっては国民的合意に基づいて行うべきであることを強調し、以下の点についてお伺いするものです。  まず、総理、甚だ遺憾なことですが、そもそもあなたに子供の教育を語る資格がおありになるのかということです。  二階堂進氏の自民党副総裁起用問題について、ある新聞はその社説でこう書きました。「自分自身の利益のために約束を守らないのは、政治家であること以前に、一人の人間として節度を欠く、恥ずかしい行為である。これでは、首相は今後、教育改革を論ずるとき、徳育の必要を説くことが出来ないではないか。」と述べています。このように評価されていることについてどのように考えておられるのか、最初にお伺いしておきたいと思います。(拍手)  あなたは、この壇上から、教育改革の根底に、知育のみに偏せず、道徳性や社会性など人間主義、人格主義の理念が脈々と流れていることが不可欠であるとお訴えになりました。総理、あなたのお立場としても、ましてや教育を語る者は、その言辞について責任を負い、またみずから実行し、国民にその範を示すのが当然の責務でしょう。  あなたは、昨年暮れの総選挙で敗北し、政権維持が危うくなったときに、辞任に値するとその責任を認めた上で、田中氏の政治的影響を一切排除するとの総裁声明を出しました。これは国民に対する公約であると明言されていたものです。ところが、あなたは、今年度予算が成立するや二階堂氏を副総裁に就任させました。このことに深い憤りを禁じ得ないのは私だけではないでしょう。校内暴力、青少年非行が深刻な事態を迎えている中で、政治家が範を示さなければならないそのときに、事もあろうに田中派の会長であり、さきの十月十二日の判決でロッキード社からお金を受け取ったことが明確に認定されている二階堂氏を起用するとは言語道断であり、子供たちに範を示し得ないのは当然であります。親や教師の責任を問う前に、みずからを正さなければならないのは、総理、ほかならぬあなた御自身ではありませんか。(拍手)  総理、教育を云々するのであるならば、田中問題にけじめをつけることがどうしても必要でしょう。このことについて、総理の見解を伺いたい。また、田中問題の子供たちに与える影響について、文部大臣の見解を伺いたいと思います。  第二に、総理、あなたが今日の教育の深刻な状況について真剣に考えておられないばかりか、今日の教育危機を一層激化させているということです。  あなたは、「来るべき二十一世紀を展望し、教育全般にわたる改革を断行する」と述べました。ところが、二十一世紀を担う今日の青少年の教育に対して、中曽根内閣は余りにも冷酷です。総理は、二度の国会決議となっている四十人学級を凍結し、私学助成も前年度より十数%削減し、校内暴力、非行の大きな原因となっているマンモス校解消予算すら削り、あまつさえ子供の体力と健康増進にとってとても大切な牛乳代補助も削ったのです。  総理、あなたは、これらの元凶となっている第二臨時行政調査会の答申を最大限に尊重する、そして断行すると言われました。そして森文部大臣も、国の財政状況が厳しいことも子供たちに理解していただかなければならぬと言われました。何と冷たい言葉でしょう。国の財政は厳しい、だがしかし、日本の宝、子供たちのために政府は最高のものを与えるとはなぜ言えないのでしょうか。国の財政状況が厳しいときにこそ、政府の教育姿勢とその真価が問われるものです。世の親は、家計収入が厳しくとも、子供のためには生まれる前から教育費の準備を始め、我が身を削っても子供のために尽くすものです。  一九五九年、国連での児童の権利宣言は、「児童の最善の利益について、最高の考慮が払われなければならない。」と述べていますが、まさに現内閣が進めているものは最悪の押しつけではありませんか。父母、教師は、このような中で子供たちの教育を守るため必死の努力をしています。教育基本法第十条は、「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」とうたっており、教師、父母の努力を励まし、そのための教育条件整備を行うことこそが国の最大の責務ではないでしょうか。このことを抜きにして、真の教育改革はあり得ません。そうであるなら、臨調行革をやめ、軍事費を削ってでも教育の充実を図ると言明すべきです。総理の明確な答弁を求めます。  そして、あなたが教育のことを本当に考えておいでなら、国民的に合意されているものは必ず着手し、実行に移すということです。その意味で、四十人学級こそ、いかなる財政状況にあろうとも、来年度から本格的実施をするとこの場で言明してください。また、マンモス校解消を促進し、私学助成の削減をやめて、国会決議に基づく経常費二分の一助成を目指す点についても答弁を求めるものです。このことをあいまいにしたままでは、あなたに教育を語る資格はないと言わなければなりません。  次に、臨時教育審議会法案についてお尋ねをいたします。  総理、あなたは、施政方針演説や答弁などで、「全国民の皆様の御支援のもとに、長期的かつ国民的すそ野をもって」とか、国会全体、国民全体の広場に持ち出して、みんなで論議して、みんなで判定して決めるなどと、いかにも国民総意に基づく教育改革であるかのごとく印象づけました。ところが、あなたの出してきた設置法案なるものは、全く似て非なるものと言わなければなりません。  総理は、行管庁長官当時から、行革の次は教育大臨調だとか、行革や教育などは、トップダウン、すなわち上で決めて下におろさないと実行できないなどと声高に叫んでこられました。今回提出されている臨教審法案は、まさに行革における臨調方式を教育分野に押し広げたものです。こうしたトップダウン方式で国民的合意がどうして形成されるというのですか。多くの発達した資本主義国における教育改革論議に見られるように、国民的な論議を基礎としたコンセンサスづくりにこそ力を注ぐべきであります。総理の見解を求めます。(拍手)  次に、教育基本法についてです。  総理、あなたは、憲法を守り教育基本法のもとにこれを実行していくということで、憲法や教育基本法に触れるという考えはありませんと答弁されました。ところが、森文部大臣は、文教委員会で、当然教育基本法の精神のもとで行われることは期待している、ただ、審議する皆様方にそのことを拘束するのはいかがなものかと述べています。まさに内閣不統一です。しかも、あなたの直属のもとに置かれた私的諮問機関である文化と教育に関する懇談会は、教育基本法にとらわれずに意見を整理したというように、教育基本法すら前提とされませんでした。一体、この臨時教育審議会は教育基本法を前提にするのかしないのか、総理の明確な答弁を求めます。(拍手)  次に、この審議会の性格についてです。  森文部大臣は、この審議会について、ゼロから出発するものではない、中教審の答申あるいは文教懇、これを一つのベースとして御検討いただきたいと答弁しています。四十六年の中教審答申は、これは総理も認められるように、国民の合意が得られず実施されなかったものです。文化と教育に関する懇談会に至っては、「教育条件の整備に目を奪われ」だとか、国民の持つ人並み意識が教育の画一化を生んだなどと、まさに教育の荒廃の原因を見誤った暴論であり、少なくとも国民の共通の認識とは到底言えない極めて一面的な見解に立つものです。これらを土台として論議をするとは何事でしょう。これこそ特定の見解を、審議会を隠れみのに国民に押しつける以外の何物でもないことを物語っています。総理の明快な答弁を求めます。  しかも重大なのは、この審議会は非公開、すなわち密室での審議が行われようとしているということです。子供の教育を論ずる場がなぜ非公開なのでしょうか。国会は公開で行われ、このように自由闊達な論議がされています。かつての公選制のもとでの教育委員会も公開されていました。公開されて困るような審議を今から想定しているのでしょうか。そうでなければ、当然公開にすべきです。総理の答弁を求めます。(拍手)  結局、この審議会は、国民参加どころか、委員の人選から会長、専門委員に至るまで総理の胸一つで決まるなど、全く中曽根総理の独断専行によって進められるものであり、一般行政からの独立も民主的な構成も何ら保障されていないものと言わなければなりません。この審議会の行き着く先は、国民が今日求める教育改革とは無縁であるばかりか、全く逆行するものです。まさに、あなたの言う日本列島不沈空母の乗組員づくり教育を進める危険性をはらんでいることを指摘し、断固としてかかる法案の撤回を求めるものです。(拍手)  私どもは、かねてから教育の荒廃を憂い、教育改革についての具体的な提言を行ってまいりました。今日求められている教育改革の視点は、どういうものでなければならないでしょうか。まず、憲法と教育基本法の理念と原則を堅持することです。そして、基本的な知識や技術、健全な身体、市民的道徳などが青少年の発達段階に応じて身につくようにすることが、学校教育の中心任務であるべきです。
  46. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) 藤木君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  47. 藤木洋子

    ○藤木洋子君(続) 学問の自由と教育の自主性を尊重して、学校に納得と人間的信頼関係を基本とした生き生きとした雰囲気を回復することが何よりも大切です。そのような教育を可能にするのが条件整備であり、そのことは国の責務です。そして、教育改革を党利党略や政争の具とするところなく、国民討論国民的合意によって実行されなければならないことは、言うまでもありません。  このような原則に立ってこそ、国民の希望する教育改革、二十一世紀に向けた教育の確固たる歩みが始められることを確信し、その具体化と実現のために全力を挙げることを表明して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  48. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 藤木議員にお答えをいたします。  まず、政治倫理と教育の問題でございますが、政治倫理も非常に重要でございます。教育も、また非常に重要でございます。同時並行でこれは取り扱ってしかるべきであろうと思います。  次に、行革臨調に関する御質問がございましたが、臨時行政調査会の答申は政府は尊重すると申し上げまして、国民的支持をいただいておるのでございまして、教育改革につきましても、今まで行いましたこの臨時行政調査会の答申等につきましては、今後もまた尊重してまいりたいと思っておるところでございます。  次に、四十人学級やそのほかの問題について御質問をしていただきましたが、御指摘の施策は臨調答申の線に沿いまして既に実行しておるところでございまして、引き続き推進してまいる予定でございます。  また、いわゆる行革臨調式のトップダウン方式を行うのではないかという御質問でございますが、臨教審は二十五人以内という非常に幅の広い委員を考えておるのでございまして、言いかえれば、むしろこれはボトムアップ、下から上へ持ち上げるというような形で案をおつくり願いたいと思っておるわけでございます。  教育基本法やあるいは中立性に関しましては、先ほど御答弁を申し上げたとおりでございます。  また、文化と教育に関する懇談会の意見等につきましては、これは非常に重要な貴重な資料である、そのように考えておりますが、あくまで臨教審の主体性においてこれらは取捨選択さるべきものであると考えます。  次に、常に国民に開かれた場で論議さるべきであるというお考えは、全く同感でございます。しかし、審議の公開の問題は、先ほど申し上げましたように、委員の自由な発言が制約されるおそれがあるので、これは一定の限度があると考えております。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣森喜朗君登壇
  49. 森喜朗

    ○国務大臣(森喜朗君) 藤木さんにお答えをいたします。  御質問の第一点は、政治倫理の問題が子供たちに与える影響についてどのように認識をしているかとのお尋ねでございますが、私は文部大臣として、この問題によって児童生徒が我が国の政治、行政に対し不信の念を抱くことのないように願っているわけでございます。我々政治家も、この際、政治倫理を確立し、政治に対する信頼を回復しなければならないと考えております。一般的に言って、学校教育の場においては、現在審理中の事件を取り扱うことは慎重な配慮が必要であるが、児童生徒に対しましては、発達段階に応じまして、正しい判断力をしっかり身につけさせるように努力してまいりたいと思います。  御質問の第二点は、教育改革実現のために、臨時行政調査会の答申にとらわれず、教育の充実に向かって検討を重ねていくべきではないかとのお尋ねでございますが、今回の教育改革は、先ほどから申し上げておりますように、二十一世紀の我が国を担うにふさわしい青少年を育成すべく、我が国社会における教育の諸機能全般にわたり総合的な検討を行おうとするものでございまして、臨調答申に示される行政改革の観点とは、おのずから審議の視点、検討の角度は全く異にするものであると考えております。  第三、まずもって四十人学級の実施、マンモス校の解消等に取り組むべきではないかとのお尋ねでございますが、このたびの教育改革は、社会の変化や文化の発展に対応する教育の実現を期して教育全般の改革を図ろうとするものでございまして、現下の緊急かつ重要な課題であるというふうに考えておるわけでございます。  四十人学級につきましては、もうたびたび先生からも文教委員会で御質問がございまして申し上げてまいりましたが、五十七年度から五十九年度の特例適用期間中は、国の財政事情を考慮いたし、その実施を抑制することといたしておりますが、四十人学級を含め第五次改善計画の全体規模及び六十六年度の到達期間については変更していないということを、たびたび御答弁申し上げておるところでございます。  六十年以降の実施計画につきましては、その時点の状況を踏まえ総合的に判断してまいりますので、現段階においてこれを明確にすることは困難でございます。  過大規模校の問題につきましても、五十九年度予算において、その分離促進につきまして措置を講じたところでございます。  私学経常費助成につきましては、私立学校が我が国の学校教育に大きな役割を果たしておるという重要性にかんがみて、私立学校振興助成法は自由民主党が中心になって議員立法でつくった法律でございまして、財政事情で、極めて厳しい事情ではございまして今日縮減をいたしましたけれども、私学を大事にしていこうという、この私学を振興していく助成法の趣旨はこれからも大事にして、私学振興に対して大いに努力をしていきたい、このように御答弁を申し上げておきます。(拍手
  50. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) これにて質疑は終了いたしました。      ——————————
  51. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) 本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会      ——————————