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山下徳夫君 私は、ただいま
議題となりました
昭和五十九
年度総
予算三案について、
自由民主党・新
自由国民連合を代表して、
政府原案に
賛成の
討論を行います。
御承知のとおり、
我が国経済は再度にわたる石油ショック等の影響を受け、世界同時不況の中で長期の低迷に陥ったのでありますが、昨年後半から徐々に
景気が回復基調に乗り、ことしは
景気が一段と回復するものと思われます。しかし、この間における税収の減少は
歳入の不足を生み、その穴埋めとして発行された国債の残高が一般会計における
国債費の
増大となってあらわれ、そのために政策経費が圧迫され、これが
財政運営の上でも大きな障害となっているのであります。今やこの国債依存の
財政体質を
改善し
財政の対応力を回復することは、
我が国経済の発展と
国民生活の安定向上を図る上から喫緊の
課題となっています。
財政赤字の問題は、ひとり
日本のみならず先進工業国に共通して見られる現象であり、しかもこのことは、石油ショック後に
経済成長が鈍化し
歳入の
伸びが低下したにもかかわらず、各国ともにこの
歳入の減少に見合うところまで
歳出を削減できなかったことが共通した最大の原因と言われているのであります。
したがって、当面する
財政再建の重要な柱としての赤字国債の削減を遂行するためには、徹底した
歳出のカットを行うか、さもなければ
歳入の基本的な増加策をとることが必要となるのでありまして、その選択は極めて難しく、
国民生活ともかかわるものだけに重大なる
決断を要するところであります。このような厳しい環境のもとで編成された五十九
年度予算でありますが、次に申し述べる幾多の点で相当の
改革が行われ、
財政再建に対する
政府の並み並みならぬ意欲があらわれておるのであります。
私がこの
予算に
賛成する第一点は、厳しい
財政事情のもと
所得税、
住民税減税を
実施したにもかかわらず、一般会計の
規模を前年に比し〇・五%の増加にとどめ、国債の
発行額を六千六百五十億円減額したことであります。
また、前年に引き続き
財政赤字を極力削減する
努力が行われ、
投資部門がマイナス五%、その他経常部門がマイナス一〇%というシーリングのもとで、公約のとおり
所得税、
住民税を一兆一千八百億円
減税し、
国民の期待にこたえ、あまつさえ
国債費、
地方交付税交付金等固定的経費が昨年に比し二兆五千三百億円も増加したにもかかわらず、一般会計の総額を昨年比約二千五百億円増のわずか〇・五%増に
抑制しているのであります。そのため、
国債費と地方交付税を除いた
一般歳出では大幅な
歳出の削減が行われ、
規模も約三十二兆五千九百億円と昨年に比し約三百四十億円の減額を行い、
昭和三十
年度以来二十九年
ぶりのマイナスシーリングという厳しい
歳出抑制の
姿勢が貫かれたのであります。また、国債の発行も減額の幅が一兆円には及ばなかったものの、総額で前
年度に比し六千六百五十億円という大量の
圧縮削減が行われましたことは、厳しい
財政事情の中においても
財政再建への道を一歩一歩着実に歩もうとする
政府の
姿勢をあらわしているものと評価するものであります。(
拍手)
賛成の第二点は、
医療保険制度、文教
関係等の
制度改革まで踏み込んで支出項目の
見直しを行い、
歳出の削減を図った点であります。
社会保障費の中では、特に医療保険費がその六割を占め、
国民の総
医療費が毎年約一兆円ずつふえ続け、五十八
年度は十四兆五千百億円を超える見込みで、これに要する医療
関係費の国庫
負担額は五十八
年度で約四兆三千億円にも上り、その
見直しがかねてから要請されていたところであります。したがって、五十九
年度予算におきましては、
医療保険制度の
改革として、保険
給付と
負担の
見直し、
退職者医療制度の創設、国保に対する補助率の引き下げ等を図ったほか、薬価、診療報酬の改定等を行い、約六千三百億円の経費の縮減を講じたこともやむを得ざる
措置と存ずるのであります。また、今後における
高齢化社会の進展等社会
経済の変化に対応して各種の
制度改革を行うなど、
合理化、効率化を図りながら、他面、社会的に弱い
立場にある老人や心身障害者に対する在宅
福祉の
制度などには手厚い保護の
施策がとられております。
このほか、
国家公務員の定員についても、定員削減
計画を着実に
実施し増員を
抑制した結果、
行政機関等の職員を約三千九百五十二人縮減することとしております。
このような
歳出削減の
効果は補助金の減少となってあらわれ、五十八
年度の補助金が十四兆九千九百五十億円で一般会計の二九・八%であったものが、五十九
年度には十四兆五千六百四十五億円となり、一般会計の二八・八%と前
年度を下回っております。補助金総額がマイナスになったことは、
昭和三十三年以来実に二十六年
ぶりのことで、
政府の
努力が、その成果とともに高く評価されるところであります。(
拍手)
賛成の第三点は、
経済協力費の増額等、対外問題の解決に
努力を傾注している点であります。
我が国は、一口に申せば、石油を初め資源のほとんどを外国に依存し、諸外国の信頼と国際協調によりそれを輸入し、製品として加工輸出し、その収益によって一億二千万人近い
国民を養っている貿易立国であります。したがって、国の安全と豊かな
国民生活を確保するためには、国際的な信義を重んじ、世界貿易における秩序の尊重はもとより、国際強調の精神のもと、自由貿易体制の維持強化を図りながら、調和のとれた対外
経済関係、
世界経済の活性化に努めることは当然のことであります。(
拍手)
我が国は、多くの国々と交易を重ね、
国民のたゆまざる
努力と技術の革新等を行い、今日自由世界第二位の
経済国家となったのでありますが、それだけに、
アメリカを初め多くの国々と貿易不均衡が生じ、大きな問題となっております。しかしながら貿易摩擦には、牛肉、オレンジに象徴されるように、個別対策では到底片づかないマクロの
経済上の問題が横たわり、また、国内的に見ても種々の産業の死活につながる大きな問題があります。このことは、
日本経済が常に内包する基本的、構造的問題でもありますので、一朝一夕に懸案を解決することは極めて困難でありますが、
政府ともども、我が党においても、目下この問題の処理に最大限の
努力を重ねているところであります。(
拍手)
このようなときに当たり、諸外国にますます
我が国を理解していただくために、
経済協力費についても格段の配慮が行われております。特に、開発途上国の基礎生活援助等の二国間の無償援助、技術
協力、国際
機関分担金、拠出金、海外
協力基金等について対前
年度比七・九%増の約五千四百四十億円を計上しており、
政府開発援助の
一般会計予算を対前
年度比九・七%増の五千二百八十億円に増額を図っているのであります。このことは、東南アジア、アフリカ等
我が国への資源輸出国との
関係をさらに緊密化し、原料の安定確保のためにも、またこうした開発途上国の発展のためにも大いに貢献するものと
考えるものであります。(
拍手)
今回問題となりました
減税については、各方面から種々の
意見も出されたのでありますが、
税制については納税の意欲を損なわないためにも公平の
原則が貫かれなければならず、もしその
趣旨が損なわれた場合には、かえって
税制の本質にもとるものと思われ、一考を要するところでありまして、特に現在の国の厳しい
財政事情を勘案すれば、
政府の
施策は妥当なものと
考えるのであります。(
拍手)
以上、私は
政府の総
予算に対する
賛成の
意見を述べてまいりましたが、
財政再建は一朝にしてできるものではなく、そのためには種々の選択が必要で、
景気対策、金融対策も含めた長期展望のもと、
経済成長率、
国民所得に対する
租税負担率、社会保障
負担率等
国家経済全般にわたるマクロの政策決定が求められ、そのためにも
政府の中長期的
財政再建計画を
国民に示す必要があります。
我々
日本国民は、この狭小な島国の中で一億二千万人が共同で生きていかなければならない運命共同体であります。与党も
野党も、そして
政府も
国民も、お互いに英知を出し合い、平和で豊かな
経済社会を求め、相
協力して
国家の大難とも言うべき
財政再建に取り組まなければなりません。(
拍手)幸いにして
我が国には創意と勤勉で活力あふれる
国民がいます。国の
財政が困窮をきわめているこのときこそ民間の活力を利用した政策も必要であり、
政府もまたその活国策をとっているところであります。長かった不況のトンネルからどうにか抜け出し、
景気も本年は一段と足取りが確かなものになると思われます。このときにおいてこそ、
政府も
国民も一体となって
財政の危機を克服し、新しい世代、二十一
世紀へ立ち向かうという希望と気概を持って前進すべきであります。(
拍手)
最後に、私は、二月十三日の
予算委員会開始以来ちょうど一カ月、終始当委員会に出席し、
審議の過程、
質疑応答に耳を傾けてまいりましたが、全期間を通して感じたことは、総じて
予算そのものに対する
質疑が比較的に少なかったことであります。もちろん、本委員会では
国政全般に対する
審議を行うことができることは承知をいたしておりますが、このような
審議の
実態からするならば、
野党の委員諸君も
政府提出の本
予算案を国の
財政の実情から妥当なものとして容認されたものとすら受け取っていた次第であります。(
拍手)さればこそ、各党の諸君の御賛同をお願いして、
政府の総
予算三案に対しての
賛成の
討論を終わります。(
拍手)