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1984-08-01 第101回国会 衆議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年八月一日(水曜日)     午前十時三十分開議 出席委員   委員長 宮崎 茂一君    理事 亀井 静香君 理事 高村 正彦君    理事 森   清君 理事 天野  等君    理事 稲葉 誠一君 理事 石田幸四郎君    理事 三浦  隆君       上村千一郎君    衛藤征士郎君       大西 正男君    加藤 紘一君       熊川 次男君    高鳥  修君       谷垣 禎一君    丹羽 兵助君       長谷川 峻君    小澤 克介君       山口 鶴男君    山花 貞夫君       中村  巖君    伊藤 昌弘君       野間 友一君    林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 住  栄作君  出席政府委員         法務大臣官房長 根岸 重治君         法務大臣官房司         法法制調査部長 菊地 信男君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 筧  榮一君         法務省矯正局長 石山  陽君         法務省保護局長 吉田 淳一君         法務省人権擁護         局長      鈴木  弘君         法務省入国管理         局長      田中 常雄君         公安調査庁次長 岡村 泰孝君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    榊   誠君         警察庁刑事局保         安部経済調査官 清島 傳生君         外務省アジア局         北東アジア課長 高島 有終君         大蔵省主税局税         制第一課長   浜本 英輔君         大蔵省銀行局中         小金融課長   中平 幸典君         文化庁文化部文         化普及課文化普         及企画官    渡部  蓊君         水産庁振興部沖         合課長     中村 晃次君         海上保安庁警備         救難部警備第二         課長      姫野  浩君         自治大臣官房文         書広報課長   大島  満君         自治省行政局振         興課長     小島 重喜君         最高裁判所事務         総局総務局長  山口  繁君         最高裁判所事務         総局刑事局長  小野 幹雄君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十三日  辞任         補欠選任   小澤 克介君     中村 重光君   広瀬 秀吉君     川崎 寛治君 同日  辞任         補欠選任   川崎 寛治君     広瀬 秀吉君   中村 重光君     小澤 克介君 同月十七日  辞任         補欠選任   小澤克介君      永井 孝信君 同日  辞任         補欠選任   永井 孝信君     小澤 克介君 同月十九日  辞任         補欠選任   佐藤 観樹君     中村 正男君   広瀬 秀吉君     網岡  雄君 同日  辞任         補欠選任   網岡  雄君     広瀬 秀吉君   中村 正男君     佐藤 観樹君 同月二十四日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     久間 章生得   衛藤征士郎君     中野 四郎君   小澤 克介君     網岡  雄君 同日  辞任         補欠選任   久間 章生君     上村千一郎君   中野 四郎君     衛藤征士郎君   網岡  雄君     小澤 克介君 同月二十六日  辞任         補欠選任   広瀬 秀吉君     永井 孝信君 同日  辞任         補欠選任   永井 孝信君     広瀬 秀吉君 同月二十七日  辞任         補欠選任   山花 貞夫君     関  晴正君 同日  辞任         補欠選任   関  晴正君     山花 貞夫君 八月一日  辞任         補欠選任   森  美秀君     大西 正男君 同日  辞任         補欠選任   大西 正男君     森  美秀君     ――――――――――――― 七月二十四日  刑事訴訟法の一部を改正する法律案橋本敦君  外一名提出、参法第一七号)(予) 同月十一日  刑事訴訟法の一部改正に関する請願市川雄一  君紹介)(第七六〇八号)  外国人登録法改正に関する請願川俣健二郎君  紹介)(第七六〇九号)  同(小林恒久紹介)(第七六一〇号)  同(島田琢郎紹介)(第七六一一号)  同外九件(嶋崎譲紹介)(第七六一二号)  同(新村勝雄紹介)(第七六一三号)  同(横江金夫紹介)(第七六一四号)  同(天野等紹介)(第七六八五号)  同外四件(上原康助紹介)(第七六八六号)  同(川俣健二郎料紹介)(第七六八七号)  同(後藤茂紹介)(第七六八八号)  同(武部文紹介)(第七六八九号)  死刑制度廃止死刑執行停止に関する請願(渡  辺三郎紹介)(第七六八四号) 同月十三日  外国人登録法改正に関する請願外三件(岩垂寿  喜男紹介)(第七七四五号)  同(河上民雄紹介)(第七七四六号)  同(木間章紹介)(第七七四七号)  同(吉原米治紹介)(第七七四八号)  同(網岡雄紹介)(第七八三六号) 同月十七日  外国人登録法改正に関する請願外九件(関山信  之君紹介)(第七八八九号) 同月十九日  外国人登録法改正に関する請願(阿部未喜男君  紹介)(第八〇二三号)  同(角屋堅次郎紹介)(第八〇二四号)  同(川俣健二郎紹介)(第八〇二五号)  同(田邊誠紹介)(第八〇二六号)  同(高沢寅男紹介)(第八〇二七号)  同(中村正男紹介)(第八〇二八号)  同(松沢俊昭紹介)(第八〇二九号)  同(森中守義紹介)(第八〇三〇号)  同(安田修三紹介)(第八〇三一号)  同(和田貞夫紹介)(第八〇三二号)  同(渡辺嘉藏紹介)(第八〇三三号) 同月二十日  在日外国人に対する指紋押なつ廃止等に関する  請願土井たか子紹介)(第八二九四号)  外国人登録法改正に関する請願外四件(上原康  助君紹介)(第八二九五号)  同(小川省吾紹介)(第八二九六号)  同外九件(永井孝信紹介)(第八二九七号)  同(上田卓三紹介)(第八三八一号)  同外六件(河上民雄紹介)(第八三八二号) 同月二十三日  刑事訴訟法の一部改正に関する請願細谷治嘉  君紹介)(第八四三四号)  同(渡部行雄紹介)(第八四三五号)  外国人登録法改正に関する請願大原亨紹介  )(第八四三六号)  同(佐藤徳雄紹介)(第八四三七号)  同(鳥居一雄紹介)(第八四三八号)  同(安井吉典紹介)(第八四三九号) 同月二十四日  刑事訴訟法の一部改正に関する請願井上一成  君紹介)(第八六五三号)  同(堀昌雄紹介)(第八六五四号)  同(八木昇紹介)(第八六五五号)  同(山花貞夫紹介)(第八六五六号)  同(上田卓三紹介)(第八七四二号)  同(松浦利尚君紹介)(第八七四三号)  同(水田稔紹介)(第八七四四号)  同(横江金夫紹介)(第八七四五号) 同月二十六日  刑事訴訟法の一部改正に関する請願加藤万吉  君紹介)(第八七九八号)  同(上西和郎紹介)(第八七九九号)  同(富塚三夫紹介)(第八八〇〇号)  同(中村重光紹介)(第八八〇一号)  同(村山喜一紹介)(第八八〇二号)  同(元信堯君紹介)(第八八〇三号)  同(山中末治紹介)(第八八〇四号)  同(横山利秋紹介)(第八八〇五号)  同(田並胤明君紹介)(第八八三五号)  同(森中守義紹介)(第八八三六号)  同(安井吉典紹介)(第八八三七号)  同(細谷昭雄紹介)(第八九〇三号)  同(清水勇紹介)(第八九四〇号)  外国人登録法改正に関する請願富塚三夫君紹  介)(第八八〇六号)  同(川俣健二郎紹介)(第八八三八号) 同月二十七日  外国人登録法改正等に関する請願石橋政嗣君  紹介)(第九〇〇九号)  刑事訴訟法の一部改正に関する請願村山富市  君紹介)(第九〇一〇号)  同(山下八洲夫君紹介)(第九〇一一号)  同(山田英介紹介)(第九〇一二号)  同(竹村泰子紹介)(第九〇五二号)  外国人登録法改正に関する請願日野市朗君紹  介)(第九〇一三号)  同(川俣健二郎紹介)(第九〇七一号)  同(田中恒利紹介)(第九〇七二号)  外国人登録法改正に関する請願(林百郎君紹  介)(第九一三八号)  同(小沢貞孝紹介)(第九一六九号) 同月三十日  外国人登録法改正に関する請願中原義直君  紹介)(第九二二二号)  同(清水勇紹介)(第九二二三号)  同(中村茂紹介)(第九二二四号)  外国人登録法改正に関する請願外二件(川俣健  二郎君紹介)(第九二六六号) 八月一日  外国人登録法改正に関する請願井上一成君紹  介)(第九四〇〇号)  同(上田卓三紹介)(第九四〇一号)  同(河上民雄紹介)(第九四〇二号)  同(後藤茂紹介)(第九四〇三号)  同(田並胤明君紹介)(第九四〇四号)  同(竹内勝彦紹介)(第九四〇五号)  同外二件(土井たか子紹介)(第九四〇六号  )  同(永井孝信紹介)(第九四〇七号)  同外一件(野口幸一紹介)(第九四〇八号)  同(堀昌雄紹介)(第九四〇九号)  同(山中末治紹介)(第九四一〇号)  同(和田貞夫紹介)(第九四一一号)  同(新井彬之君紹介)(第九四四〇号)  同(小川新一郎紹介)(第九四四一号)  同(小川仁一紹介)(第九四四二号)  同外一件(後藤茂紹介)(第九四四三号)  同外九十件(左近正男紹介)(第九四四四号  )  同(鳥居一雄紹介)(第九四四五号)  同外三件(中村正男紹介)(第九四四六号)  同(西中清紹介)(第九四四七号)  外国人登録法改正等に関する請願山中末治君  紹介)(第九四一二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人  権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所山口総務局長小野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 宮崎茂一

    宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 宮崎茂一

    宮崎委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。衛藤征士郎君。
  5. 衛藤征士郎

    衛藤委員 先般、私は商法第三次改正にかかわる問題としまして「大小会社区分立法及び合併に関する問題点」のいわゆる法務省御当局の意見照会に関することにつきましてお尋ねをいたしましたが、きょうも引き続きその問題につきまして法務省のお考えをただしたいと思います。  意見照会の中の「設立に関する問題点」の第十五項目株式会社並びに有限会社最低資本金額について触れておるわけでございまして、有限会社については、例えばという断り書きでございますが一千万円、また株式会社につきましては最低資本金額を二千万円とするというような提案がなされておるわけでございますが、どのような根拠に基づいておりますのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  6. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ただいまの最低資本金の問題でございますけれども株式会社有限会社いずれもいわゆる物的な有限責任会社でございます。そういう会社につきましては最低資本金制度というものを設けるべきではないかということがかねがね問題になっておるわけでございますが、その場合に最低資本金の額をどの程度にしたらいいかということはなかなか難しい問題でございます。そこで、この意見照会の中ではどれくらいにしたらいいかということを広く御意見を聞く立場をとっておるわけでございます。  ただ、何にも例示的な金額がございませんとお答えになる方もお答えにくいであろうということから、有限会社については例えば一千万円、株式会社については二千万円という数字をここに一応掲げてございますが、私どもの方ではこれぐらいが相当ではないかというふうに考えているわけでもございませんし、また川碓根拠があるわけではございません。  ただ、法制審議会商法部会で議論されている中ではいろいろな金額意見が出ておりますけれども有限会社につきましては、有限会社法が制定されました昭和十三年に最低資本金額として一万円というのが定められております。その有限会社出発当初の昭和十三年から比較いたしますと、物価指数その他から現在では少なくとも千倍以上がそれに当たるのではないか。そういう面からすると、一千万円というものを例えば意見をちょうだいするときの一つのたたき台的なとまではいかないかもしれませんけれども、一応例えばということで例示的に出すのには適当であろうという感じで一千万円ということを表示しておる次第でございます。  株式会社の方の二千万円と申しますのは、有限会社の一千万円というのを根拠にしているわけでございまして、西ドイツの立法例などを見ますと、有限会社最低資本金株式会社最低資本金が二倍ということに定められております。そういうようなこともございますので、有限会社が例えば一千万円なら株式会社は二千万円ということで一つ例示として出したということでございまして、明確な根拠があるわけではなくて、むしろこれから皆さん方の御意見を伺いたいという立場でございます。
  7. 衛藤征士郎

    衛藤委員 昭和五十年の「会社法改正に関する問題点」では、株式会社最低資本金額を少なくとも五千万円程度とするという意見があったと思うのですが、今回は有限会社一千万、株式会社二千万、今局長からお話があったわけでございますが、昭和五十年時点の五千万円程度とするという意見と今回の提示額との関連性といいますか、関係はございますか。
  8. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 特別な関係があるわけではございませんけれども昭和五十年当時には株式会社というのはかなり規模会社考えたらどうかということが考え方の背後にあったろうと思います。そういう意味で五千万円ということにいたして御意見を伺ったのでございますが、その意見照会に対しまして寄せられました御意見が千差万別でございまして、最低は五百万円でいいではないかという御意見から、大きいところでは十億円以上ないと株式会社の名に値しないではないかというふうに意見が分かれたわけであります。ただ、多数の中心的な御意見は、一千万円から五千万円くらいのところの御意見が比較的多かったようでございます。  今度の考え方は、もちろんそういう過去の御意見も参考にいたしておりますし、また数の関係から申しましても、五千万円以上ということになりますと、現在株式会社は百万以上ありますけれども、五万程度のものになってしまおうかと思います。そういう比率なども若干考えまして、先ほど申しましたような理由とあわせて二千万円くらいのところを一つ例示として出すことにいたした次第でございます。
  9. 衛藤征士郎

    衛藤委員 有限会社株式会社は現在およそ幾ら存在するのか。また有限会社一千万円、株式会社二千万円以上の会社の数は推定幾らございますか、お尋ねいたしたいと思います。  また、あわせまして、後ほどで結構ですが、資本金一億以上の株式会社等幾らございますか。一億のものは後で結構ですが、一千万と二千万の会社の数をお答えいただきたいと思います。
  10. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ちょっと古い数字でございますけれども昭和五十七年十二月末の登記されております会社数で申し上げますと、株式会社現存会社数が百九万社ございます。それから有限会社が百三万社ございます。合計して二百十二万くらいあるわけでございます。その中で資本金が一千万円以上である株式会社の数は約三十万社でございます。二千万以上という刻みで実は統計をとっておりませんので数ははっきりいたしませんけれども、恐らく十五万ないし多くて二十万くらいという見当でございます。それは現存会社関係でございまして、もしこの商法改正によりまして最低資本を二千万円以上にした場合にどうなるかということになりますと、今のところではちょっと想像がつかないところでございます。  なお有限会社につきましては、実は資本金別統計をとっておりませんので、今数字は把握しておりませんけれども有限会社では五千万以上とかそういう会社は比較的少ないだろうと思われますので、一千万円、二千万円という刻みをつくりましても林式会社よりは構成比としてはかなり下回るであろうと想像されるところでございます。
  11. 衛藤征士郎

    衛藤委員 お尋ねいたしますが、意見照会にございますこの最低資本金額を下回る資本金会社有限会社株式会社ともにですが、こういう会社は最終的にどのように取り扱っていくのか。現時点でははっきりとお答えできないかもしれませんが、大体こういうふうに取り扱うんだというお考えがございましたらお答え願いたいと思います。
  12. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 最低資本金制度をとりましてかなり金額ということに定められますと、その最低資本金にまで増資をしていただかなければならないということが原則的には言えようかと思います。ただ、既存会社につきまして急にそれをやれと言っても実際酷な問題があろうかと思います。したがいまして、意見照会の十五の注のところで表示いたしておりますけれども経費措置といたしましては、新しい法律ができてからある程度の期限内に増資をして最低資本金を満たすようにしたらどうだろうかとか、あるいは、これからつくる会社についての最低資本金既存会社についての最低資本金とを違えて少し低目のものでやってもらうというふうなこともあるいは意見としてあるのかもしれない。そういうようなことを注のところに書きまして、この点につきましても各界の御意見を伺いたいという考えでおるわけでございます。
  13. 衛藤征士郎

    衛藤委員 意見照会によりますと、中規模会社について簡易な監査制度導入するということが提案されておるわけでございますが、その監査対象となる会社の数はおよそどのくらいに考えておるのか、また、その監査対象とする根拠はどこにあるのかお答えいただきたいと思います。
  14. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 外部監査導入するということを今度の意見照会の中ではかなり項目として掲げておるわけでございますが、その簡易監査対象になる会社数がどれくらいになるかというのは、炎はそれも御意見を伺う対象になっておるわけでございます。言葉をかえますと、一定規模以上の会社については外部監査導入してはどうかということで、その一定規模というのをどの程度にしたらいいかということをお伺いしている次第でございます。その考え方によっては数が多くなったり少なくなったりするであろうかと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、株式会社並びに有限会社合計数が二百万社あるわけでございますので、外部監査導入するということになりますと、少なくともその一割がそこら程度のものが対象にならなければ制度としてはどうかなというような意見も内部的にはあるということはございますけれども数字的に何件というふうなことを主に考えるというよりはむしろ外部監査導入目的からいたしましてどの程度規模のものに基準を合わせるかということが考え中心立場になろうかと思います。
  15. 衛藤征士郎

    衛藤委員 中規模会社に対して簡易な監査を実施するという提案がありますけれども、ずばり言って何を担保することをねらっておられるのか、お答え願いたいと思います。  想定されている監査対象は、今局長御答弁のように二百万社の中の一割ということになりますと二十万社くらいですが、たしか現在監査をやっているのが五千社くらいでしょうか、これが一挙に二十万社に膨れ上がっていくわけでございます。そういたしますと、監査人のいわゆる資質の問題とか監査体制そのものあるいは制度、ごういつたことにつきましてよほどの慎重な配慮がないと目指すところの効果が出てこないのではないか、このように考えておるのですが、ずばり言ってやれるんだという法務省自信のほどをお答えいただきたいと思います。
  16. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 まず最初に外部監査導入目的でございますけれども、これは前回にもお答え申し上げたかと思いますけれども計算関係を適正化したい、それが制度的に担保されるようにしたい、そういうことによって株主あるいは債権者が保護されるであろうし、有限責任会社として活躍するというのに実質的にふさわしいということになるのではないか。しかしながら一方では、そういう外部監査を新しく導入いたしますと、会社側負担というものも当然ふえてまいるわけでございます。そういうことからどの程度で見合って考えるのが妥当であろうかということがこの外部監査制度について各界の御意見を伺っている問題の中心になるわけでございます。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、そのためには規模をどの程度のものに絞るかということ、それから監査内容をどの程度のものにするかとか、あるいはその監査担い手としてどういう人を考えるかとかいうようなことが総合的に考慮されて初めて外部監査導入ということが実施できるということになるわけでございます。その点についての各界の御意見を十分に承って、そしてこれなら実施できるという自信のある案をこれからつくっていこうというわけでございます。  したがいまして、今法務省としては自信があるかとおっしゃいますと、むしろ自信の持てるような制度皆さん方の御意見を伺ってつくれないものかというのが私ども立場でございますので、目下のところ、自信があるかと言われましても、その規模内容担い手についてもまだまだこれから御意見を伺う段階でございますので、自信があるということは申し上げられない段階でございます。
  17. 衛藤征士郎

    衛藤委員 簡易な監査として、監査手続の限定であるとか、注意義務の緩和あるいは低額監査報酬等考えられておるようでございますが、ずばり言って監査報酬というのはおおよそどの程度をお考えになっておるのか、お答えいただきたいと思います。
  18. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私どもといたしますと、その監査報酬というのがどう決まるかということについては実は余り問題として考えていないところでございます。実質上外部監査導入した場合の会社側負担というふうなことは、制度考える際に重要な要素だとは思いますけれども幾らだということを先に決めて、そしてその負担にたえられるかどうかというふうなことは私どもとしては考えられないところでございまして、むしろ逆に、外部監査程度をどれぐらいにしたらいいだろうかというようなこと、そしてそれだとほかの監査的な仕事をしておられる方の報酬に合わせてどれぐらいの負担になるだろうかということは次に考えられるところでございますけれども、私どもの方としては幾らくらいが適当だというふうなことを考えるための対象内容も決まっておりませんし、またもともとその報酬というのは個別にはその監査を担当する者と当該会社との間で契約的に決めていく、あるいはその業界で内部的に統一をするということもあるでありましょうけれども、私どもとしてはまだその金額幾らぐらいというようなことは見当もつかないような状況であるというふうに申し上げるほかない次第でございます。
  19. 衛藤征士郎

    衛藤委員 監査手続の限定とか、注意義務の緩和、こういうようなことで監査につきまして緩やかな対応をする、そしてなおかつ厳正な監査結果を期待するということになりますと、そこにちょっとそごを来すものがあるような感じがしますし、また低額の監査報酬で期待される監査結果が得られるかどうか、さらには被監査会社がずばり言って監査報酬負担に逆に今度はたえられるのかどうか、この点お答えをいただきたいと思います。
  20. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 外部監査導入したらどうかという考え方のねらいは、先ほど申し上げましたように計算関係の明確化、適正化ということでございます。そういう目的をあくまでも追求いたしますと、これは厳格な監査をするにこしたことはないということになるのは当然でございます。しかしながら、そういうことになりますと、かなりコストが上がるということは避けられないことでございます。それからまた、そういう厳格な監査というものを実地する担い手といいますか、実施する人がそれだけ日本におられるかというような問題もあるわけです。  そういうことから考えまして、最小の費用で、そしてできるだけの効果を上げるというふうなそういうものはないだろうか。しかも、現在会計監査人が入っております会社よりは規模の小さい会社、したがって株主とか債権者も少ないし、それから取引高も少ないというふうなことになるわけでございますので、ですから、ある程度のことは我慢してでも、例えば百点は取れなくても七十点、八十点でも維持できるということが考えられれば、それはかなりの進歩ではないかという発想があるわけです。そういう点から、どこら辺にプラス面とマイナス面との妥協点を見出していくのが現実的であるかということでございまして、その点について関係各界の御意見を十分に承りたいという姿勢でおるわけでございます。
  21. 衛藤征士郎

    衛藤委員 会計専門家に商工会議所とかあるいは商工会の指導員を活用することが可能かどうかということを検討するとなっておりますけれども、具体的には何を考えておられるのか。  また、この指導員の実態といいますか、指導員の実力といいますか、指導員の能力ですね、どのように評価されておるのか、お答えいただきたいと思います。
  22. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 これは法制審議会商法部会の中で、コストの面等を考えまして、商工会議所等に現実に指導員というものがいるから、それに外部監査をやらせるということも一つの方法ではないかという御意見が現実にあるわけです。そういうふうなことから、先ほども申し上げましたけれども、仮に二百万社の過半数が対象になるようなという御意見がもしあるとすれば、それを裏づけるものとしての監査担い手ということを考えますと、相当幅広い方を監査人として考えていかなければならぬということにもつながるわけでございまして、そういう御意見もあるのだということをここで意見照会の中に書き上げておるわけでございますが、私どもとしては、商工会議所の指導員という方がどういうふうな経歴、どういうふうな資格認定のもとになっておられるかということはまだよく承知しておりません。  したがいまして、果たしていいのかどうかということも全く見当がつかないわけでございますが、ともかくそういう御意見があるということをそこに書きまして、私どももそういう御意見について、むしろそういう人たちもかなり信頼できるからどんどん外部監査対象会社をふやしたらどうかという御意見があれば、もちろんそれに対しては十分に検討を進めるつもりではおりますけれども、目下のところ、意見照会書の書き方でもおわかりいただけるように、そういうことも意見があるけれども、積極的にどうかというような聞き方ではないというニュアンスでございますので、その点御理解いただければと思います。
  23. 衛藤征士郎

    衛藤委員 中小企業の、主として一億円以下の中小企業ですが、有限責任制の実態をどのように見ておるのか。また、中小企業の経営者は実体的に本当に有限責任と言えるかどうか、どのようなお考えでございますか、お答えいただきたいと思います。
  24. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 いわゆる中小企業にもいろいろな形態がございます。その中の中小と申しましても、規模が大小まちまちでございます。資本金の額もいろいろございますし、それから実際上の資産の内容もこれはまちまちでございます。一概には申し上げられませんけれども株式会社あるいは有限会社と名のって事業あるいは営業をやっておるところも、実態は個人経営とほぼ変わらないのではないかと思われるものがかなりの数があるということは、これはむしろ広くそういうふうな認識をされておるところだと思います。私どももそのような認識をいたしております。  裁判の中でも、法人格否認というようなことがしばしば行われて、そして会社ではなくて経営の実態に合ったような代表取締役とかいう企業のオーナーそれ自体の個人責任ということで債権者の保護をしているというようなこともしばしばあるわけでございます。また、商法の二百六十六条の三でございましたか、取締役の責任というものも訴訟の中ではかなり使われまして、取締役の方に責任を追及するというケースがかなりございます。  そういう面からいたしますと、現在の株式会社有限会社というのは、会社というのは名ばかりで個人のものと変わりがないというものもかなりございますし、それからもう一方、法人らしいけれども、いざとなったら会社財産ではとてもその取引の関係について責任を負えるものではなくて、結局個人がその負担をしなければ取引が成り立たないというケースもかなりあります。融資を受ける場合でも、会社が債務者というだけでは融資は受けられなくて、代表取締役あるいは取締役の個人財産を必ず担保に供しなければ融資を受けられないという実態もかなりあるわけでございます。  そういうふうな会社かなりございますので、それを一歩でも二歩でも有限責任会社らしい形のものに切り上げていくということが必要ではないかということが、今度の最低資本金制度だとかあるいは外部監査導入ども同じような考え方の延長線上にあろうと思いますけれども、そういうことを一つの課題として今度意見照会になったというふうにお考えをいただきたいと思います。
  25. 衛藤征士郎

    衛藤委員 監査のいわゆる内容、これが十分に実効のあるものとして吟味されなければなりませんし、また監査人の体制がしっかりと整備されておりませんと、制度だけが形骸化してしまうのではないかという懸念があるわけです。今回、法改正には十分時間をかけるということでありますが、法律制度の形式面といいますか、それを性急に整えるということに意が注がれ過ぎないように実態をひとつ十分見きわめていただきたい、このようにお願いいたしたいと思うわけでございます。  西ドイツとかあるいはイギリスとか、確かに外国では制度等につきましても我が国よりも進んだといいますか、監査対象の枠が広いというようなことでございますけれども、西洋の社会と我が東洋人の住む東洋社会、これには社会制度そのものの違いもありますし、また経済の面におきましても、言うところの民間活力というものは西洋社会のように理詰めに合理的な面からその積み上げによって活力が出てくるというものではなくして、御案内のとおり我々の社会にあっては、言うところの、いい意味での華僑のようなそういう縛られないところの力というものがかけ合わされて民間活力というものが出てきておるわけです。私はそのように考えております。  我が国の経済を支えておるのは中小企業だと私は思っておりますが、この中小企業にきめ細かい監査、特に簡易といえども監査制度を課していくということは非常に難しい面があるのではないかと考えておるわけです。昭和五十六年の商法改正案要綱のときに、たしか一億円以上というような監査対象の基準もあったやに思われますが、一千万、二千万というような話も出ておりますけれども、とりあえず資本金が一億以上の会社に正規の会計監査人監査を拡大する方向の方が筋道ではないか、私はこのように考えるわけです。  重ねて申し上げますが、角を矯めて牛を殺すというようなことわざがございますが、せっかくのこの期待するところの監査制度、簡易な監査制度が結果としてそういうことになってはならないと思うわけでございまして、とりあえず資本金一億以上の会社に正規の監査人監査を拡大するという方向が望ましいのではないかと思います。この点についてのお考えを承りたいと思います。
  26. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ただいま衛藤委員の御指摘の点は、今度の商法改正の案をまとめていく上におきまして十分に考えていかなければならない点であると思います。  まず商法が実態に合わない形骸化したものであってはならないということは当然のことでありまして、むしろ今度の改正の原点といいますかねらいは、現在の中小――中小というよりもむしろ小の方かもしれませんけれども商法の規定が実際上働いておらない、いわば形骸化しておるということで、これを実効性のある制度につくり変えようというのがねらいでございます。そういう観点から実効性の上がる、しかも現実を無視しない、そして日本経済の活力をそがないというような視点での法改正が必要だろうと思います。  監査関係につきましても、先ほど来申し上げておりますように、計算関係が明確化するためには本当に会計監査に力のある会計監査人が十分に時間をかけてやるということが望ましいわけですが、それでは実際問題として無理な面がございますので、どの程度で調和点を見つけていくかというのが一つの課題でございます。その際に、ただいま御指摘のありましたような一億円以上の規模にしたらどうだろうかということも、恐らく各界意見として寄せられる中の一つではなかろうかと思います。そういうことも十分に検討いたしまして無理のない、実効性の上がる商法をこれから考えていくということにいたしたいと思います。
  27. 衛藤征士郎

    衛藤委員 簡易な監査についていろいろと御意見があることはもう御承知のとおりだと思いますが、この意見照会でその担い手と予定されておる会計専門家の方々の間で議論が沸騰しておるということなんです。特に監査手続の限定をするとか注意義務の緩和をするとかいうようなことは先ほどやりとりをしたとおりでございますが、そうすると、基本的に監査が成立しないことに結果としてなりはしないか、監査の基本を侵す、そういうことになりはしないか、こういうようなことを懸念する意見がたくさんあるわけでございます。  意見照会でございますから、各界意見法務省に寄せられるわけでございますが、各界意見法務省としてどのような形で取り上げていくといいますか、尊重していくのか、この辺のところを承りたいと思います。
  28. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 各界にいろいろな御意見があるということは十分に予想されるところでございます。先ほどの監査につきましても、ただいまお話がございましたような意見ももちろん寄せられるでありましょうし、また、それと反対の御意見も寄せられるだろうと思います。それがどういうところからどういう御意見になるかということは具体的にはまだわかりませんけれども、十月十五日を締め切り日といたしまして私どもの方に御意見が寄せられるだろうと思いますので、それをまとめ、整理をいたしまして、そして法制審議会商法部会にそれを全部出しまして、慎重な審議をしていただくということで各界意見をくみ上げてまいりたいと思います。  そのほかにも必要があればその御意見について敷衍していただくというふうなことも場合によってはあり得ることでもございますし、難しい問題であればあるほどいろいろな角度からその御意見を検討いたしまして慎重に対処していくという考えております。
  29. 衛藤征士郎

    衛藤委員 局長お尋ねいたしますが、今回の立法構想、先ほどちょっと私は触れたつもりですが、いわゆる国民経済的な視点からどのような立法構想をお持ちであるのか、お答えいただきたいと思います。
  30. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 難しいお尋ねでございますが、日本の経済を支えておるのが数多い会社の活力であるということは当然だろうと思います。ですから、そういうものを法制度としてはそいではならないし、むしろ活力が出てくるというふうな方向での改正でなければならないというふうには思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、数多い会社の中ではそういう会社の実体をなさない、しかも営業そのものをしないでいるものもありますし、非常に無責任な形態のものもないわけではありません。そういうものはむしろ取引の安全性といいますか、そういうものを妨げている要素もあるわけです。したがいまして、きちんとしたものに再編成をして、そして活力がある活動ができるようにしたい。活力があるということを法律的に申し上げますと、取引の相手方が安心して、信頼して活発な取引をやれる、会社と名がつく以上はそういう相手であるという信頼関係が法制度上も基礎づけられることが日本艦済の活性化に非常に有効であるし、またなくてはならないことだろうと思います。  そういう観点かる最低資本金制度であるとかあるいは外部監査導入であるとかということが論じられてきておるわけでありまして、私どもは方向としてはそういう方向を目指していかなければならないだろう。ただ、具体的にはいろいろな難しい問題がございますので、その点は慎重に考える必要があると思いますが、ねらうところはただいま申し上げたところであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  31. 衛藤征士郎

    衛藤委員 法改正に当たりまして、最低資本金制度の設定、これは本当に急がれるべきだと思います。また、外部監査の充実も急がれるべきことでございますが、意見照会に言うところの簡易な監査、これについてはいろいろと大変大きな問題点をはらんでおる、私はこのように思うわけでございますが、十月十五日に締め切りで、今後法務省御当局でいろいろと検討をして方向づけをしていくわけでございましょうが、この簡易監査の部分は複雑であるし、問題もたくさんあるわけでございますが、簡易監査の部分といわゆるその他の部分とを分離して、特に問題の多い簡易監査についてはなお時間をかけ慎重に検討していく、この簡易監査の部分については切り離してお考えをまとめていくというようなことはいかがでしょうか。この点についてお考えを承りたいと思います。
  32. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 現在は問題点を公表いたしまして御意見を伺っている段階でございますので、その商法改正案のまとめ方についてまだ考えを持っておるわけではございませんし、また、それについて私ども考え方、もし仮にあったとしても申し上げる段階ではないと思いますが、ただ、今度の商法改正関係は、先ほど申し上げましたような視点から、株主あるいは債権者関係で、最低資本金を持って、そして有限責任という名にふさわしいような制度に切りかえていくということが全体としての考えの基本にあるわけでございますので、その一環として簡易監査という制度導入ということを問題点の提起として考えておりますので、現時点ではそれが一つの総合的な問題として意見照会をしていることは間違いないわけでございます。  ですから、御意見を伺った上で、いろんなことがあって、そして最後のまとめはどうするかというのはその次の問題でございますけれども、現時点では、大きな立場からすれば一つの問題として取り上げておるんだという考え方でおるということでございます。
  33. 衛藤征士郎

    衛藤委員 最後に大臣にお尋ねをいたします。  ただいま民事局長からの御答弁で、この商法改正についてのいわゆる「大小会社区分立法及び合併に関する問題点」の意見照会についてのお考えを承ったわけでございます。先般局長にもこの商法改正、大体昭和何年ごろにこの法改正をされるかどうかということをお尋ねしたわけでございますが、大臣のお気持ちとして、この法改正を急ぐんだ、あるいはいやいやまだじっくり時間をかけてやるんだ、しかし一方ではできるだけ急いでやりたい。どのようなお考えでございますか。その辺のところを承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  34. 住栄作

    ○住国務大臣 会社法の改正については法制審議会商法部会でいろいろ検討も願ってきておりますし、検討結果につきましては、御承知のように改正すべき点については改正をしておるわけでございます。いよいよ会社関係の問題に入っておるわけでございますが、御指摘のようにこれは大変重大な問題でございますし、日本経済に対する影響も非常に多い。そういうことも考えて慎重に取り扱っておるわけでございまして、できるだけ各方面の意見を聞こうということで、商法部会問題点を整理していただいて、それについての今意見の取りまとめに入っておる。十月十五日ということでございますが、そういうことで、その問題点に対する意見、これもまた部会で慎重に検討していただかぬといかぬ。恐らく一年ぐらいは少なくともかけて検討をする。  その結果直ちにということではなくて、仮に検討の結果、一応改正の方向というものが出ましても、さらにまた、これは各界意見も聞いてみなければならない。そういう慎重な手続を経まして、具体的な改正案を国会で審議していただくというには少なくとも三年ぐらいの期間がまだあるんじゃないだろうか。その間、慎重に各面から検討いたしまして成案を得ることになるんじゃないだろうか、こういうように考えておるわけでございます。
  35. 衛藤征士郎

    衛藤委員 最後に大臣に要望して終わりたいと思いますが、外部監査については、特に簡易な監査も含めまして監査の基本を損なわないようにひとつ慎重にお取り計らいをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  36. 宮崎茂一

    宮崎委員長 稲葉誠一君。
  37. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 最初に刑事局長お尋ねをいたしますが、東京地検の特捜部でやっております告訴事件で、船が沈没してそれで詐欺をという事件があるわけですが、この事件の現在の進行状況について差し支えない範囲でお答えを願いたいというふうに思うわけです。
  38. 筧榮一

    ○筧政府委員 お尋ねの事件につきましては、一昨年の九月でございましたか告訴状が出されまして、それを受けまして東京地検におきまして現在なお捜査を継続中でございます。
  39. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 船が沈没をしたということで保険金を詐取したという告訴の事実ですから、結局その船が当事者の言うような状態で本当に沈没したかしないかということが科学的にどう鑑定されるかということが一つの要素になってくるかというふうに思うわけですが、そこで、ある二つの大学に、船が当事者の言うような状況で沈没ができるかどうか、可能かどうかということについて鑑定を依頼してその鑑定ができ上がってきた、鑑定の結果を聞くわけじゃありませんよ、ということについてどの程度お聞きですか。
  40. 筧榮一

    ○筧政府委員 具体的な事件の捜査の内容についてはお答えを差し控えたいと思いますが、申し上げられますことは、現在いろいろな点を含めて必要な捜査を続けているということでございます。
  41. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 船が沈没をして保険金を詐取したというんですから、本当に沈没をしたのかしないのかということが一つの・要素になっておるということがあなたの今言われたいろいろな要素の中に入っている、こういうふうに通常理解されるわけですが、その点はいかがですか。
  42. 筧榮一

    ○筧政府委員 一般論としては、今稲葉委員御指摘のとおりかと思います。
  43. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 もう二つの大学の鑑定書もできておるということも一部言われておるわけですね。その鑑定というものができてくると、捜査は今までよりもよりスピードアップされてくるのではないかというふうに考えられるわけですが、その点はどういうふうに理解したらよろしいでしょうか。
  44. 筧榮一

    ○筧政府委員 具体的な事件の捜査内容でございますので差し控えさせていただきたいと思いますが、東京地検といたしましては、できるだけ早く捜査を遂げて処理をいたしたいということで現在捜査を鋭意続けていると考えております。
  45. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それから、これも一般論なんですけれども、起訴猶予になった場合でも再起できるということは当然なことですね。
  46. 筧榮一

    ○筧政府委員 そのとおりでございます。
  47. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そういうようなことが考えられてまいりますというと、一年何カ月かかかっているわけですね、二年近いかな、そういうような事件ですし、いずれにいたしましても、現在捜査中の事件についてここでかれこれ言うべき筋合いのものではありませんので、私も差し控えますけれども、今あなたがおっしゃったように、早急に結論が出るようにすべきであるというふうに私は考えておるわけです。これ以上のことはここでは申し上げません。いずれ事件が進展してくるかもわからないし、どうなるかわかりませんけれども、その点はこの程度にしておきます。  そこで、大臣にお尋ねをいたしたいことは、三つの再審事件で死刑から無罪になったわけですね。それについて新聞の論調をずっと見てみますと――社説が出ていますから。こういうのは、ずっと最初から公判を傍聴していてそして初めて本当の意見ができるのであって、ただ結果だけ見て正確な意見というのはなかなかできないというふうに私は理解するのですけれども、それはそれとして、一つの世論として、新聞の社説が七月十二日付で全部出ています。これは私全部集めさせてもらったわけですけれども、これなどをずっと見てみますというと、例えば「えん罪を生んだ強引な捜査」というのが読売、朝日は「冤罪なき司法制度の再構築を」、それから毎日は「証拠ねつ造の疑惑と誤判」、こういうふうに社説はなっているわけです、その他いろいろあるわけですけれども。  そういうようなことを、全体を含めてこの三つの事件が――具体的に、細かいことは別の機会に聞きますし、今質問主意書を書いていまして、もうできていますから、それでまたお答え願いたい、こう思うのですが、大臣としては、こういうような死刑になった人が再審で無罪になる、長年月を費やして無罪になる、これは一体どこにその原因があったのだろうか、反省すべき点はどういう点があるのだろうかとか、あるいはそれに対して今後どう対処していくか、こういうふうな点についてひとつ総括的にお答えを願いたい、こういうふうに思うわけです。
  48. 住栄作

    ○住国務大臣 御指摘のように、最近、財田川、免田に引き続きまして松山事件で再審無罪、こういう判決があったわけでございます。しかも、それが死刑という重大な事件でございますし、その再審無罪の結論も二十年、二十五年あるいは三十年というような、大変昔といいますか、そういうときの事件について、時間をかけてそして死刑の判決が覆っておる、こういうことは大変重大に受けとめざるを得ない。  今もお示しになりましたマスコミの社説等においても、いろいろな角度からその問題を取り上げておるわけでございます。捜査のあり方の問題あるいは制度のあり方の問題、とにかく、この事件それ自体も真剣に総合的にこれは見て、どこに問題があるのかということを十分検討をして、とにかくこういう事件が起こらないようにするということ、万全を期するということのためにどうすればいいか、この事件を契機に率直にそういう立場に立って検討をし、二度とこういうことが起こらないようにしていかなければならない、こういうように考えております。
  49. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは抽象論で、具体的にどうするのですか。これは最高検でもそういう調査をやったことがあるのですよ。その資料が出ているのですよ。私も自分の勉強をしたいから、くれと言ったら、部外秘だから出さないと言うわけですよ。最高裁は同じような書類を出してきたのですよ。同じ書類でもない、ちょっと違いますけれども、出してきましてね。法務省は出さないわけですよ。それは部外秘だから出さないと言えばそうかもわかりませんが、具体性がないですね。  そこで、例えば二、三日前の朝日新聞の「声」欄に、小田原市の女の人、学生、二十二歳、「えん罪防止に批判の目必要」ということで、「誤判。その責任は一体だれが負うのか。松山事件でも、検察側による証拠のいん減、ねつ造等が裁判官によって指摘された。」こういうふうに投書に出ているわけですよ。一般の人はこういうふうに受け取りちゃっているということですわな。だから、問題は、まず検察側による証拠の隠滅。これは社説でも「証拠ねつ造の疑惑」というようなことが書いてあるのです。  そこで、判決の中に――確定しちゃったわけですからね、そういうふうなことがどういう部面で出ておるのか、その点についての真相は一体どうなのがということです。それはやはりはっきりさせる必要があると思うのですよ。証拠捏造の疑惑とまで言われているわけですからね。新聞の社説まで書かれておる。それは捏造がどうか、議論のあるところですよ。そこまで言われているし、一般の国民は、検察側が証拠を捏造したというふうにとっているわけですから、そこら辺のところはどういうふうに判決で指摘されていて、その事実関係は一体どうなのかということですな。それはやはり調べる義務が検察側にあると私は思うのです。そこをどういうふうにお考えでしょうか。
  50. 筧榮一

    ○筧政府委員 御指摘の、今回の判決の中におきまして疑惑あるいは証拠の隠滅、秘匿というような点については端的には二カ所であろうかと思います。  一つは、かけ布団襟当ての血痕についての関係のところで、襟当て――布団の襟当てでございまが、これが、「押収当時果して襟当てに右の血痕群が付着していたであろうかにつき払拭できない疑問と、押収以後に血痕群が付着したとの推論を証拠上容れる余地とが残されているのでありこということで、疑問を提示しておるというふうに受け取るわけでございます。  それからもう一つは、かけ布団にも絡むわけでございますが、そのかけ布団の襟当ての鑑定の問題をめぐりまして、いろいろございますが、結論として、「現に石垣の撮影した写真や平塚鑑定書などは確定審の事実審公判に提出されず、かかる二重鑑定が行われたこと自体再審請求審を通じ、長年にわたって事実上秘匿されたにひとしい状態に置かれていたのである。」秘匿したという表現ではございませんが、やはり何らかの疑惑を判決は提示しているというふうに受けとめておるわけでございます。この点につきまして詳細な証拠説明は別といたしまして、検察当局といたしましては、このかけ布団、最初の点につきましても、押収証拠から見て押収当時から付着しておったというふうに考えておるわけでございまして、その点についてはこの判決の認定には納得しがたいという考えでございます。  それから、もう一つの平塚鑑定をめぐりましては、確かに平塚鑑定書はございますし、それにはいわゆる石垣写真が添付されておるわけでございますが、これは別に東北大学の三木助教授にかけ布団並びに襟当てを含めましてその鑑定を依頼し、それが裁判にも出されておるわけでございますが、三木鑑定のいわば予備鑑定的なものであった。したがって、鑑定結果自体も三木鑑定と同じで異ならないということから証拠申請の必要がないということで原審においても証拠として提出しなかったということで、特にこれを秘匿したというものではないというふうに考えておるわけでございます。
  51. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 しかし、判決はそういうふうにとっておらないんじゃないですか。  それから、問題となってくるのは、今言われた二つの点について、例えば証拠を未提出だった。今あなたが未提出だった理由を説明されました。しかし、その未提出な記録は、百三十二点だか倉庫の中にあったのを証拠の開示命令が出て、そして提出をされて、そして今の宮城県の県警の鑑識課の技官による鑑定書が出てきたわけですね。そのことが一つの大きなポイントになって、そして無罪判決になってきた、こういうふうに理解されるのではないかということが第一点ですね。それならば、それをなぜ再審の前の段階で出さなかったのかということが第二点になってくるわけですね。それをまずお聞きしておいて、後から証拠開示の問題の法律論に入っていきたい、こういうふうに思います。
  52. 筧榮一

    ○筧政府委員 まず第一点でございますが、確かに御指摘のように関係書類が再審公判で公判延に顕出されております。これは裁判所からの提出命令ではなくて、提出要請がありまして検察官がこれに応じて提出したというものでございます。その結果、裁判所の判断は判決に書いてあるとおりでございますし、検察側としての判断はあらわれた証拠に基づきましてまた別途の判断、先ほど私が申し上げました判断に立っておるということでございます。  それから、前に、原審といいますか確定する前の裁判で出さなかった理由は、今申し上げましたように、予備的鑑定で証拠として提出する必要がなかったという判断に基づくものということでございます。
  53. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 提出する必要はなかった、予備的なものだった。それは検察官側の理解の仕方であって、有罪、無罪、殊に死刑の問題について無罪を争っている被告)弁護人側からすれば、それは必要だったかもわからないけれども、それはその当時こういうものがあるということがわからなかったわけです。だから、必要だったというふうにはまだ考えてなかったのかもわからないと思うのですが。  そこで問題となってまいりますのは、証拠開示の問題について要請だというふうに今言われましたよね。そこで、手持ちの証拠を開示する、これは本来の検察官側の義務ではないという理解の仕方なんですか。あるいは訴訟指揮権の行使によって提示をしてほしいという決定なり命令が出た場合は提示をする義務がそこに生じてくるのですか。そこはどういうことになるわけですか。
  54. 筧榮一

    ○筧政府委員 一般的に検察官の手持ち証拠の開示の問題でございますが、申すまでもなく公判延で取り調べを請求する予定の証拠は第一回公判期日前に適当な機会に弁護側の方へ全部開示するわけでございます。また、検察官が取り調べを請求する意思のない証拠、第一回公判期日前でございますが、そういうものでありましても、その後の経過によりまして、例えば御承知の最高裁決定の趣旨とか、あるいは検察官は公益の代表者であるという立場考えまして、事案の性質とか証拠の種類、内容、その他諸般の事情を勘案いたしまして、具体的かつ弾力的に証拠開示の要否を判断して開示をするという態度をとってきておるわけでございます。  ただ、申し上げるまでもないことでございますが、現行刑事訴訟法はいわゆる当事者主義構造をとっております。検察官と被告人はそれぞれ主張、立証を尽くして争うといいますか、お互いの主張をして裁判所の判断を仰ぐということでございまして、その建前からいたしまして検察官が持っている証拠を一括提示するということは刑事訴訟法の予想していないところであるというふうに考えております。その間に、今委員御指摘の最高裁の訴訟指揮権に基づく開示命令というものがあることもあると思います。その最高裁決定はその場合にいろいろな条件は付してはおりますが、その条件を考慮して提示命令が出ました場合には、検察官としてはそれに従うべきであるというふうに考えております。
  55. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その従うべきであるというのは、そこで検察官が――今あなたの言われた最高裁決定というのは恐らく昭和四十四年四月二十五日の最高裁決定を言われたんじゃないか、こう思いますが、そこでそれに従って検察官が提出しなければならないという義務を負うのですかと聞いているのですよ。そこですよ、問題は。
  56. 筧榮一

    ○筧政府委員 その命令に対して法律的に争う余地はあるかと思いますが、確定すれば当然それに従うべき義務があると思っております。
  57. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、もちろん確定すれば義務があるけれども、確定しない段階では義務はないという理解の仕方ですか。だけれども、本来義務性を持っているものだからこそ、それに対して抗告なり何かして争うのじゃないですか。単なる要請ならば何も抗告するということの対象にならないのじゃないですか。
  58. 筧榮一

    ○筧政府委員 先ほどの説明がちょっと適切でなかったかもしれません。私が申し上げたのも今稲葉委員御指摘のとおりで、提示命令があった場合に、それに対して不服がある場合に抗告なり何なり法律所定の手続をとることはあるといたしましても、これはやはり従うべき義務があるということでございます。
  59. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 しかし、検察官側の証拠開示に対するいろんなあれを聞くと、一切開示義務はないという理解の仕方もあるんじゃないですか。最高裁の訴訟指揮権の問題ではないという理解の仕方はどうなんですか。
  60. 筧榮一

    ○筧政府委員 今委員御指摘の昭和四十四年でございましたか、最高裁決定の出る前ずっと、証拠の開示についてはいろいろ実務でも論議が重ねられておったわけでございますが、その過程におきましては訴訟指揮権の範囲外であるという見解があったことは私も承知いたしております。
  61. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 この最高裁の決定を見ますと、「その閲覧が被告人の防禦のため特に重要であり、かつこれにより罪証隠滅・証人威迫等の弊害を招来するおそれがなく、相当と認めるときは、その訴訟指揮権に基づき」云々、こういう最高裁の決定であるわけですね。ですから、被告人の防御のため特に重要であるというのを相当広く解釈して考えるのが筋ではないか。それが検察官の公益の代表者としての性格上当然なことではないかというふうに私は思うのですね。  ただその場合、弁護人側も、例えば選挙違反だとか涜職罪だとか、そういうのがありますね、そういう場合にどんどん証拠開示で前もってそれを知ってしまって、こういうことはないと思いますけれども、それに基づいて証拠隠滅だとかなんとか行われるということであっては困るので、その場合には弁護人側、被告人側のモラルも当然要求されてくるわけですけれども、できるだけ広く証拠の開示を認めていくことがフェアなやり方ではないかということ。それから、裁判所から百われなくても、被告人の防御のために必要だ、重要だと考えれば、認めるという行き方の方が正しいフェアな行き方ではないのですか。  だから、今度の松山事件の再審判決を見たときに、検察側はフェアではないという印象をみんな持っているわけですよ。社説なんか見ると、みんなそうですからね。今私の言った投書なんか見ても、これは全部正確に判決なんか読んだわけでもなんでもない人が感じたことなんでしょうけれども、「検察側による証拠のいん滅、ねつ造等が裁判官によって指摘された。」というふうに見てしまうわけですからね。  だから、検察側はあらゆる事件、特に死刑になるかならないかというような、法定刑に死刑が含まれているような事件についてはもっとフェアに対処して、手持ちの証拠を見せるという方向で進むのが正しいやり方だし、検察の信頼を獲得するあれじゃないかと私は思うのです。まあ専門的なことは刑事局長からお答え願うとして、大臣もこのことを聞いておられて、検察側として一体どういうのが一番フェアな態度かということについてお答え願いたいと思うのです。
  62. 筧榮一

    ○筧政府委員 御指摘のように、確かに昭和四十四年四月二十五日の最高裁決定ではいろいろな条件が挙げでございますが、「その閲覧が被告人の防禦のため特に重要でありこという要件が入っておるわけでございます。それとあとは「罪証隠滅・証人威迫等」の問題も書いてございます。  委員御指摘のように、弁護人側、被告人側の方でもその立場上のフェアなルールを守っていただく、同時に検察官の方も公益の代表者としての立場からこの最高裁決定の趣旨を考えまして、個々の具体的事案の内容あるいはその状況に応じまして必要とあれば開示命令を待つまでもなく証拠を弁護人側の方に開示するという態度も必要であろうかと思います。あくまでその当該事件の内容、審理状況その他に応じまして検察官の判断で現在もそういう措置がとられているものと考えております。
  63. 住栄作

    ○住国務大臣 専門的なことは私よくわかりませんけれども、とにかく検察官としては起訴をしたわけでございますから、その起訴が正しいということについていろいろな証拠を挙げて立証をしておるわけでございますから、原則としては真実を立証する、証拠に基づいて証明するわけでございますので、必要なものはその段階において提出されており、それに基づいて主張もされておると思うのです。  その後は当事者主強でございますから、いろいろな攻勢、防御があるのでしょうから、特に意図を持って証拠を出さないというようなことは、それは検察官としてはもともとあってはいかぬことじゃないか。その上で先ほど来のいろいろの法律問題が出てくると思うのでございますけれども、それはまたそれとして、普通の場合はそういう態度でやるのが本当じゃないかと私は考えております。
  64. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 専門家の意見は別として、極めて常識的な素人の考え方としてみれば、なるほど検察官は真実を追求するんだ、有罪を立証するんだ、それはそのとおりだと思うのですけれども、しかし、有罪立証を減殺するというか妨げるといいますか少なくするといいますか、そういうふうな証拠も持っている場合があるわけですよ。だから、そういう場合にはフランクに法廷へどんどん出すなり、あるいは弁護人側に見せるということも必要なんじゃないかと私は思う。  一たん起訴してしまうと、今日本の場合はとにかく無罪になるとえらい責任が検事に負わされるのですよ。これはよく聞いてください。それは今どういうふうになっているか知りませんけれども、とにかく検事の責任として、その検事はなかなか上へいけなくなるとか、それから左遷されるとかいろいろある。昔ほどではないかもわかりませんが……。それは人権を侵害したという理由も含めてそういうふうにされるわけですけれども、そこら辺のところがあるから、一たん起訴してしまうと何とかして有罪にしたい、有罪にしたいというところに一生懸命になっちゃうわけです。  そこで有罪を妨げるような証拠というのはできるだけ出すまいとするように国民は受け取っておるわけですから、そういうように受け取られることのないように検察官としては公益の代表者という立場からフェアに措置すべきだ、こういうふうなのが私の理解の仕方なわけです。  今の再審の三つの事件、これに関連しまして、私、細かく質問主意書を書いて出しますから、またそれに伴って回答してください。これは確定記録をいろいろ見なきゃならぬから大変かとも思いますけれども、これは当然それを見ていろいろな問題点を出しておるはずなんですね。ですから、質問主意書には十分お答え願いたい、こう思います。  そこで、次の外国人登録法の問題に移ります。  外国人登録法の問題についてかねがね疑問に思っていることの一つなんですが、これは中央公論に東大の助教授の大沼さんが論文を書いておられるわけです。大沼さんというのは非常に熱心な人で、助手の時代からよく出入国管理の問題を研究されて私のところへいろいろな資料を送ってこられた方なんですが、その中で指摘されていること、それから大阪の判決などを中心としてお聞きするわけです。  それで、まず、指紋の採取に関連をして「日本と全く同じように、定期的に刑罰の強制をもって実際に指紋をとっている国は、私の」、私というのは大沼さんですが、「私の調べた限り、皆無である」こういうふうにここに書いてあります。これは事実ですかどうですか。
  65. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  日本の制度と全く同じような切りかえの制度、それからそのときに指紋押捺制度をとっている国ということを法律上探しますと、世界各国にございません。しかしながら、じゃ実際上どうなっているんだということから取り上げますと、例えば米国などの場合においては指紋押捺を拒否した人には刑罰法令の罰則がございますし、また、実態上何年ごとかの切りかえということをやっております。
  66. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私の聞いておるのは、定期的にと言っているのですよ。じゃ、制度として定期的に刑罰の強制をもって実際に指紋をとっている国、というのは日本だけだ、そのことは間違いがない、こういうふうに今のお答えをお開きするわけですが、それはそういうことですね。
  67. 田中常雄

    田中(常)政府委員 今、制度として、それから定期的にとおっしゃいますと、各国ともなかなかうまい法律をつくっておりまして、実際には定期的にはそういう形にはなっておりません。しかし、実態上はそういうふうにせざるを得ないような形になっておりますので、やはり制度としてはあるんだというふうに考えても結構だと思います。
  68. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 制度としてあるというのは――だって最初のあなたのお答えは、私がこれを読んだときには、それは事実だということは認めたのじゃないですか。認めて、実態的にはとかなんとか言い出してきて、今度はまた最後になって答えが変わったというのはどういうわけですか。
  69. 田中常雄

    田中(常)政府委員 口頭にお答えしましたときには、法律的にそういうことが書いてあるかないかという意味においてお答えしたわけでございまして、今度は、委員制度というお言葉は実態も含むのかなと考えまして、後の答弁をしたわけでございます。
  70. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それじゃ、公平を期すためにあなたの言うように実態を含んで、「定期的に刑罰の強制をもって実際に指紋をとっている国」というのはどこにあってどういうふうなやり方をしているかということを、今ここでなくてもいいですから、後で書面なり何なりをもってきちんとお答え願いたいと思います。  もう一つの問題は、ことしの五月二十二日に岡山の地方裁判所外国人登録法の事件があって、そこへ出られた今仙台の入管局長をやっておる、前に登録課長をやっていた亀井靖嘉さんの証言調書がここにあるわけです。これはあなたの方に当然あると思うのです。亀井さんが岡山地裁の法廷に出ていることは間違いがないわけです。  そこで、私がお尋ねいたしますのは、あなた方が指紋を実際にどういうふうに利用しているかということの問題になってくるわけです。  亀井さんは換価分類というのはしておりませんと答えているわけなんですけれども、これはどういうことなんですか。まず換価分類というのはどういうことなんで、それから、それをやっていないというのはいつごろからどういうふうになってやっていないことになっているのですか。
  71. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  昭和二十七年の法律で指紋制度が採用され、実行されたのが昭和三十年と聞いておりますが、それから昭和四十五年までは換価分類をしておりまして、昭和四十五年に二重登録者と思われる者が一掃されたと一応想定して換価分類をやめたと聞いております。(稲葉(誠)委員「いや、換価分類はどういうものか説明してもらわないとわからない」と呼ぶ)これは大変技術的な問題で、数値によって指紋を分類してそれによって二重登録を防止する、要するに不特定の指紋を発見する制度だと開いております。
  72. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そう言われても、こっちは素人なんでわからないのです。換値分類というのは、何か数値で、どうやるのか、具体的にもう少しわかりやすく説明してくれませんか。
  73. 田中常雄

    田中(常)政府委員 これはなかなか技術的な話でございまして、指紋のいろいろな状況、特徴を数で分けまして、それは万けたの数字が出てくるそうでございまして、それをいろいろ分類してやる制度だと聞いておりますが、私もその道の専門家でございませんもので、換価分類の内容についてはそれ以上の説明はよくできないので申しわけございません。
  74. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 僕もわからないから聞いているので、わかっていて聞いているのじゃないのですからね。  もう一つ、認定伺いが来て訂正するというのはどうやるのですか。約二千件あると言っているのだけれども、これはどういうものですか。
  75. 田中常雄

    田中(常)政府委員 毎年約二万名、訂正申告というものがございます。これは氏名、生年月日、本籍、その他の身分事項の基本になることについての訂正でございます。  非常に簡単に申し上げれば、きょうまで田中だと言っていたのが、いや田中ではなくて実は吉田であるということで改めて訂正する、または、生年月日は二月二日ではなかった、三月三日が本当なことだというのが訂正申告でございまして、それが年間約二万件あるということでございます。
  76. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今の私の二千件というのは間違いでした。二万件ですね。  そのときに、指紋制度はどうするのですか、指紋を使うのですか、使わないのですか。
  77. 田中常雄

    田中(常)政府委員 訂正申告のときには、指紋はその都度とっておりません。一番確実を期すためには、田中だと今まで言ってきた人がきょうから吉田だと、言う以上、その人の連続性を確認するため指紋をとることが一番確実だと思いますけれども、指紋押捺の機会をこれ以上ふやすわけにもいきませんから、とらないことにしております。  しかしながら、切りかえ申請は現在五年ごとにございますが、せめて五年のタイムスパンの間でその人の同一人性を確認しようということで、訂正申告などをした人は五年目の切りかえのときに特に注意されて見られる対象考えております。
  78. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 注意されて見られる対象というのは具体的にどういうことを言っているのですか。
  79. 田中常雄

    田中(常)政府委員 我々日本人にとって、結婚でもしない限り、きょうまで田中だというのが、いやそれは間違いだった、あしたから吉田だというのは余り信じられない話でございますけれども、しかし、本人がそうだと言うのだからこれはもう仕方がない話でございまして、そして、先ほど五年ごとの切りかえ申請のときには五年のタイムスパンで物事を把握すると申し上げましたけれども、これは、そういうときに前にいた田中と今は吉田と言っている人が間違いなく同一人物であることを確認するという意味でございます。
  80. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今、法務省の入管で指紋照合をするためのスタッフは、何か事務官ですか、二名だけだというのは本当ですか。
  81. 田中常雄

    田中(常)政府委員 今、事務官二名が指紋の担当をしております。これは警備官の出身であって、指紋については教育を受けておりまして、ほとんど換価分類ができるだけの技術も近いものを持っておると考えております。
  82. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 よくわからないのですけれども、それから、指紋をとるときに登録用紙とか雑録原票とかいろいろありますが、法務省へは一体何が上がってくるのですか、それで、法務布としてはそれをどういうふうに利用しているわけですか。
  83. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  今法務省に上がってくるのは指紋原紙でございます。その指紋原紙を分類、保管いたしまして、ただいま申し上げました担当官がその前の原紙と今上がってくる原紙を照合いたしまして同一人性の確認をしております。現在すべて確認しております。
  84. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それで確認して違ってくるというのはどのくらいあったのですか。
  85. 田中常雄

    田中(常)政府委員 指紋原紙を照合して違ったという事例は最近は聞いておりません。これは指紋の効用だと考えております。簡単に申しますと、指紋だけはごまかすことができないということだと考えております。
  86. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、市町村の窓口で指紋をとって、一体法務省としてはその指紋をどういうふうに利用しているのですか。あなたの話だと、換値分類をやっていない、それから訂正のときにも、二万件ぐらいあるけれども使っていない、同一人性の確認も別に問題はないということになってくると、指紋を何に使っているのですか。
  87. 田中常雄

    田中(常)政府委員 何に使っているかという御下間でございますけれども、我々はこれは同一人性の確認のために使っておりまして、そして確認の結果不正が発見されないということは非常に結構なことだと考えております。
  88. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いや、だから上がってきた指紋を何に使っているのかよくわからないですね。ただ、しまっておくだけですか。あなたに言わせると、とにかく指紋が上がってきて、しまってあるから、そこで問題が別に起きなくなったんだ、こういうことなんですか。ちょっとよくわからないのです。
  89. 田中常雄

    田中(常)政府委員 決して保管だけだと申しておるわけじゃございませんで、まず雑録課において同一人性を確認いたします。そして、新しい上がってきたその指紋原紙は保管していまして、何か問題があったときにはいつでも使えるようにしておこうと考えております。
  90. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それから、外国人登録証に指紋を押すわけでしょう。その指紋はどうしても押さなければならない理由というか、それはどこにあるわけですか。外国人登録証明書に指紋を押すことによって――外国人登録の第一は管理ですね、符速のために必要なことがあるのですか。  それから、写真が今変わってきて、はめ込みの写真というのですか、これでも十分できるんだという理解の仕方がありますね。刷り込み写真というのかな。この方法でやって十分だということを言う人もいるわけです。ですから、外国人登録証に指紋を押さなければならない理由というのはどこにあるかです。
  91. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  外因人登録証明書の偽造、変造等を防ぐためにはどうしても指紋が必要だと考えております。登録証明書は、外国人は日本において社会活動を行っておりますもので、その生活の場においてすぐにその人物が確定でき得るように、やはり指紋というものを押す必要があると考えております。  実は、この件について一、二付言させていただきたいのでございますけれども、米国はある時期指紋制度を廃止いたしました。そうすると、登録証明書の偽造、変造というのが非常に多発いたしまして、再び登録証明書に右手人さし指の指紋を押捺することを復活いたしました。  また、日本の事例を申し上げますと、つい二週間前でございますけれども、不法入国者が摘発されました。そして、当人は外国人登録証明書を持っておりました。持っておりましたということは、不正入手したということでございますが、そこに張ってあった写真はまさしくその不法入国者のものでございます。割り印もございました。しかしながら、指紋は違っておりました。  それから、委員のさらに御下問のございまし……(稲葉(誠)委員「御下問」と呼ぶ)御質問のございました……(稲葉(誠)委員「御質問だよ。おかしいよ、そんなの」と呼ぶ)刷り込み式写真でいいじゃないかとおっしゃるわけでございますけれども、やはり指紋の方が写真より同一人性の確認をするためには確実でございます。  それから、ざっと計算して、あるところに寄稿した人が計算したわけでございますけれども、大体刷り込み写真を刷るためには百四十億円ぐらいかかる。とても現在の行財政厳しい時代においてはそれは不可能事と考えております。
  92. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今あなたのお話をずっと聞いていても、とった指紋をどういうふうに利用しているのか、どうもよくわからないのですよ。何のためにとらなければならないのかということがよくわからないのですよ。アメリカの例を言われましたけれども、アメリカの場合は、私ども聞く範囲でも、やめたところが復活したというところはあります。これは殊にスペイン語を話す人種、これが非常に土地を接していますから密入国してきたという状況もあって、それで復活したという話も聞くのだけれども、真偽のほどはよくわからないのですよ。何州で、どういう形でやったのかということもよくわからない。ただアメリカの州でやったやったとあなたの方で言うだけなんですよ。何州で、いつごろ、どういうふうな事情のもとで、どういうふうにやったのかということを、わかっていれば説明してください。それでないと、ちょっとよくわかりませんから。
  93. 田中常雄

    田中(常)政府委員 米国は日本と同じように出入国管理については連邦政府がやっております。我々は連邦政府に問い合わせしたのでございますけれども、連邦政府は余りに偽造、変造の数が多くなったもので、一九七七年から登録証明書に指紋を押すことを復活したという説明がございました。しかし、それ以上、何州で何件、どういうケースがあったという情報まではもらえませんでした。
  94. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私の方も調べてみますけどね。私どもの方が入管に聞いたのでは、州によってみんな違うというようなことを言う人もいるし、あなたの話だと連邦でやっているのだと言うし、ちょっとよくわからないのですが、これはいずれまた調べてみますけどね。  そこで、大臣、ことしの七月十九日に判決があったわけですね。大阪地裁の第七民事部で判決があって、これは原告は梁という方ですか、異議の申し出は理由がない旨の裁決を取り消して、そして大阪入管の主任審査官が原告に対してなした退去強制令書の発行処分を取り消すということになりましたね。これはまだ確定していません。八月四日ですか、確定するわけですけれども。  この国の答弁書をずっと私も読んでみたのですけれども、特在許可というのは「当該外国人の個人的事情のみならず、国際性勢、外交政策等の客観的事情を総合的に考慮したうえ決定される」のだ、こう言っておるわけです。  そこで、お尋ねをいたしたいことの第一は、あなたの特在許可というのは一体完全なる自由裁量なのかどうかという点です。  それから、この事件について一体あなたが、大臣が、どこまで知っておられたのか。裁判の判決があって、新聞に出て、それから初めてこの事件の内容を知られたのではないかと思うのですけれども、そこら辺のところが第二点です。  それから第三点は、この「国際情勢、外交政策等の客観的事情を総合的に考慮」する、そして「当該外国人の個人的事情」も考慮するとなれば、この梁という人の個人的事情については、これは判決の中で詳しく出ていますわね。病気のお付さんがおられる、生活保護を受けておられるのですか、そういうような方もおられるとか、いろいろなことが詳しく出ているわけです。新川やテレビでも報道されたわけですが、そういうようなものを含めて見ると、こういうようなことについては、もっと今言った国際情勢、外交政策なり、あるいは個人的な事情というものを温かく配慮して対処していくべきだというふうに考えるのですが、それらを含めて大臣の考え方お尋ねをいたしたい、こういうふうに思うわけです。
  95. 住栄作

    ○住国務大臣 第二点からお答えしますと、実はこのケースにつきましては、大阪地裁の判決があったとき、具体的な状況を承知いたしました。  それから第一点でございますけれども、不法入国者等に在留特別許可を与えるかどうか、現在の制度上、法務大臣の裁量にゆだねられる。しかも、その裁量の範囲は広い。そして、従来の最高裁あるいは多数の下級裁判所の裁判例でもそれを認めておるところでございます。  実際どうやっているかということにつきましては、今のお話しのように、本人の事情だとか、国際情勢その他総合的な観点から癖査をいたしまして結論を出しておるというのが実情でございます。そういうようなことで、個々のケースについていろいろの判断をして結論を出しておるというのが実情でございます。
  96. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、その個々のケースを判断するときに、今言ったような個人的事情、家庭の事情、いろいろございます。そういうのを判断するときに、そこに国際情勢、外交政策も加わるわけですが、国の答弁書の中にあるわけですから、そういうようなものを加えてみたときに、今後こうした間脳について、しゃくし定規でなく、もっといろいろな面での温かい配慮を、それだけ裁量の幅が広いわけですから、広いということは、法務大臣の職責がそれだけ重要であるということを意味しておるわけですから、だから、そこでの配慮というものを当然加えてやっていくべきではないか、こういうのが私の第一の質問です。  と同時に、そこから考えてみると、この事案は、判決もお読みになったと思いますが、詳しく申し上げませんけれども、非常に気の毒な事案ですね。裁判所からここまで言われるということは、ちょっと今まで例がないくらいのことで言われておるんですね。「これをもやむを得ないとする特段の事情が存しない限り、人道に悖る苛酷な行為であり正義に反するというべきである。しかるところ、本件においては右特段の事情は何ら窺えないので、結局」云々、特在を許可しなかったことは「その裁量権の行使を誤った違法がある」というようなことまで判決で言われているわけですから、あなた方の方としては従来の判例との関係や何かでのいろいろな立場があるかもわからぬけれども、しかし、今言ったような個人的な事情なり国際情勢なりあるいは外交政策、そういうようなもの全体を考慮したときに、お母さんが病気である、生活保護を受けておられるというのですか、そういうようなことも出ておりました。たしかそうですね。その点間違いないと思いましたが、老齢で病気で苦しんで、「原告の物心両面の援助を必要としている」、こういうようなことも言われておるんですね。生活保護の点は、医療扶助を受けるようになっているんですね。  だから、そういうふうな点を考えたときに、これについては配慮をして、十分な考慮をしてやっていく。今あなたが、ここで控訴しないとかなんとか、それはまだ日にちがありますから言えない立場にあるとしても、十分な温かい配慮を加えてやっていくんだ、こういうことの御答弁はいただけるのではないでしょうか。
  97. 田中常雄

    田中(常)政府委員 委員の第一の御質問でございますけれども、在留特別許可をするか否かにつきましては、委員も御指摘のように、非常にいろいろなファクターを考えた上で決定するわけでございます。したがいまして、その中には人道的配慮もあれば国際的配慮もございます。それから、その人の生活環境等々についても克明に調べた上でこれは決めるということでございます。  それから、第二のこの問題についてでございますけれども、今まで最高裁の判例やその他下級裁判所の判例が多々ございまして、いずれも、法務大臣は非常に広範な裁量権を持っているんだ、それから、例えば平和な生活を営んでいてもそれはしょせん違法の上に積み重ねられた生活なんだ、それからやはりこういうことは法務大臣の恩恵的相性であって、そして不法人旧した者がそれについてとやかく要求し得ることではない等々の最高裁または高裁の判例がございまして、それらから判断しますと、この件はどっちかというと意外なケースだ、意外な判決が出たという受けとめ方をしておりますけれども、じゃ今後一体どうするのかということについては、今現在慎重にいろいろ諸般の情勢について勉強しているという段階でございます。
  98. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣、いろいろな理屈は理屈としてあるかもしれませんけれども、私は今言ったような判決をよく読んでいただきたいと思うのです。家庭の事情や何かを考えたときに、そこの事情と国際情勢なりそれから外交政策というか、そういうようなもの全体を判断したときに、あなたの自由裁量の範囲が広いのは事実なんですよ。恩恵という言葉は、法律的に言えば、確かに権利ではないという意味で恩恵に当たるのですけれども、これは十分にあなた自身が各方面のいろいろな事情というものをしんしゃくして、そして判断をすべきである。その判断の中で、それを冷酷なあれじゃなくて、しゃくし定規一本ではなくて、そして温かい配慮をしてやっていくべきではないかということを私はお聞きしておるわけなんですね。  事務当局の答えはわかりましたけれども、私の言う温かい配慮をすべきではないかということに対するあなたのお答えを願って、時間が来ましたので、ほかの質問をいろいろしたかったのですが、わざわざおいでいただいた方にも申しわけございませんでしたけれども、時間が来てしまいましたので、それだけのことをお願いというか大臣にお聞きをして、私の質問を終わりたい、こう思うわけです。
  99. 住栄作

    ○住国務大臣 このケースにつきましては、その判決でもいろいろ言っておるわけでございますが、ひとつ慎重に検討させまして判断をいたしたいと思っております。
  100. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 じゃこれで質問を終わるわけですが、要望としては、私としてはこの判決を読んだときに、温かい配慮をして、そしてこれに結末をつけるということをこれは要望をいたして、私の質問を終わらせていただきたい、こういうように思います。
  101. 宮崎茂一

    宮崎委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十六分開議
  102. 宮崎茂一

    宮崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小澤克介君。
  103. 小澤克介

    小澤(克)委員 法務省お尋ねしたいのですけれども、民法上の公益法人、民法三十四条に要件が決めてあるのですが、これによりますと、公益性と非営利性ということが要件になっておりますが、これは現時点での解釈基準はどのようになっておりますでしょうか。特に新聞の発行を目的とするような社団について、これを公益法人として認可されるということが現在の解釈の運用上あり得ますでしょうか。
  104. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 公益法人につきましては、ただいま御指摘ございましたように、非営利性と公益性というものが必要になるわけでございますが、公益性につきましては、民法の三十四条で例示的にいろいろなものが挙がっておりますけれども、それにかかわりませず公益に関するものであればいいということになるわけでございます。公益に関するものとはいかなるものであるかということになりますと、これは一概にちょっと説明しにくい概念でございますが、要するに不特定多数のものの利益に関するようなことということになろうかと思います。  新聞事業につきましては、現在の新聞の大多数のものが、いわゆる商業所聞と言われているものにつきましては、公益を目的としているとばかりは言えないという形態が多かろうと思いますけれども、しかし、新聞の発行自体は、地域住民に対しまして、その住民が求めている政治とか社会とかもろもろの情報を提供するという側面でとらえますと、その限りにおきましては公益に関するということが言えなくはないだろうと思います。そして、かつてはいろいろな新聞社につきましても公益法人であったということもあるようでございますし、また現在も、これは新聞ではございませんけれども、通信社などでも公益法人であるというものもあるように聞いておる次第でございます。
  105. 小澤克介

    小澤(克)委員 端的に伺いますが、「目的」として、本社は日刊〇〇新聞の発行並びに新聞事業に附帯する事業を行う、付随的な目的ではなくて、これを主たる目的とする、こういう社団が現在公益法人としての認可を受けようとして、認可を受けられますか。現在の逆用の実態はどうなっていますでしょうか。
  106. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 認可そのものの事務は、私どもとしますと法務省所管の法人についてのみ関与するわけでございますので、主務官庁としての意見は述べがたいわけでございますが、先ほども申しましたように、地域住民にその必要とする情報を提供するという側面だけをとらえ、それを目的とするというふうに解釈する限りにおきましては、許可をすることも不可能ではないと思いますが、ただ、多くの場合には、どちらかといいますと営業のための一方法といいますか、そういう形で新聞を発行するようなことが多かろうと思います。  そういう事業形態であれば、これはどちらかといいますと収益を目的とするということになるわけでございますので、公益性の面ではちょっと問題がある、そういうケースが一般ではなかろうかという感じはいたします。
  107. 小澤克介

    小澤(克)委員 実は社団法人徳島新聞社というのがございまして、これが戦時中の昭和十九年に公益法人としての認可を受けていて、現在も公益法人のままとなっているわけでございます。それで営業の実態は、普通の新聞社と全く変わらない新聞を発行しているわけでございます。特に、徳島県下で十数万部を発行しておりまして、徳島県下に関する限りでは全国紙などよりも数倍多い発行部数を誇っているわけでございます。このような新聞社が公益法人ということで認可されている例は現在では他にないというふうに聞いているわけなんです。  それで、引き続いて法務省に伺いますが、例えば民法七十一条によって設立許可の取り消しというようなことをする余地はないのか。法解釈上どうなるかわかりますでしょうか。
  108. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 七十一条の問題の前提といたしますと、六十七条の主務官庁の監督作用というものが前提に置かれようかと思います。したがいまして、当該の法人が公益の目的というものではなくてむしろ収益専業そのものであるというような形態の場合には、主務官庁の方からそれを是正するような監督命令を出すとかいうようなことがあって、しかも、それにも沿わないで改善をしないということになりますと、それは道筋といたしますと七十一条によって許可の取り消しということも法律的にはあり得ることだと思います。
  109. 小澤克介

    小澤(克)委員 民法七十一条は、「主務官庁ノ監督上ノ命令ニ違反シ」というのも一つの要件なんですけれども、「法人カ其目的以外ノ事業ヲ為シ」というのが一番最初にあるわけですね。  それで、この社団法人は定款所定の目的には確かに反していないのですけれども、その定款所定の目的自体が現在の他の類似の事業を行っている新聞社に比較して公益法人の目的にはどうもそぐわないというような場合には、七十一条の適用は無理なんでしょうか。
  110. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 先ほどはその点についての答弁を漏らしましたけれども、許可の取り消しという場合には、許可した内容と違うことをしておるということが前提になろうかと思います。ところが、御指摘の徳島新聞社は、もし新聞を発行すること自体が目的であるということで許可したとすれば、新聞を発行しているからという理由で目的外のことをしたと言うことはできないのではないか。  ただ、その新聞を発行することの公共性、公益性というものはあるにいたしましても、それが実態上収益の方が目的で実際は動いているというようなものだといたしますと、これは業務形態としては問題だという点から、改善命令のような措置が六十七条でできて、それに違反した場合に七十一条にいく道筋になろうかという考えで先ほどのように御答弁申し上げた次第でございます。
  111. 小澤克介

    小澤(克)委員 実はこの新聞社は昭和十九年に公益法人としての認可を受けたときには、戦時下であるということを反映したのだろうと思いますが、その「目的」が「徳島新聞ノ発行及新聞事業二附帯スル事業ヲ為シ以テ皇道二則リ国論ノ指導昂揚ト国策ノ浸透推進二当リ公器タル新聞ノ国家的使命達成ヲ目的トス」こういう「目的」になっていたわけなんですが、戦後いち早く、昭和二十一年だと思いますが、「目的」は「本社ハ徳島新聞ノ発行並二新用事業二附帯スル事業ヲ行フヲ以テ目的トス」このように変更されまして、そして現在では、先ほども読み上げましたが、「本社は日刊「徳島新聞」の発行並に新聞事業に附帯する事業を行い」、その後に「公益を重んじ常利を目的としない」というようなことをつけ加えている、こういう「目的」になっているわけでございます。  そこで、終戦になった時点で、これは民法六十八条に言う「法人ノ目的タル事業ノ成功又ハ其成功ノ不能」という解散事由に当たったのではないだろうか。それが「目的」を変更する形でそのまま公益法人として生き残ったというのは問題があったのではないかというふうにも考えられるのですが、その点の法務省の御見解はいかがでしょうか。
  112. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 その具体的な変更の事実関係を私どもよく承知しておりませんので、はっきりしたことは申し上げられませんけれども、戦時中の戦意高揚のようなことを大目的といたしまして、その手段として何か新聞のような印刷物を発行するんだというようなことですと、その戦争が終わった段階では解散事由が生じたのではないかという疑問も若干出てまいろうかと思いますけれども、新聞を発行していろいろな情報を住民の方に与えていくんだということを目的として、それが、ある面では戦争中の慣用句であったかと思いますけれども、そういう戦意高揚的なことに資するんだということになりますと、主たる目的は戦争が終わったからといって残らないということにはならないだろうということで、事実関係がはっきりいたしませんけれども、当然に解散事由が生じたということは一概に言えないのかもしれないという感じは持っております。
  113. 小澤克介

    小澤(克)委員 そこで、今度は税務当局にお尋ねしたいのですが、公益法人は法人税上どういう特典を受けておりますでしょうか。
  114. 浜本英輔

    ○浜本説明員 お答え申し上げます。  公益法人と言われますものにつきましては、それが営みます収益事業につきましては課税が行われております。収益事業以外の部分につきましては非課税となっております。  それから、特典ということで申し上げますと、収益事業に課税をいたします場合も、通常の法人税率が現在でございますと四三・三%、これに対しまして二六%という軽減税率が適用されております。  以上でございます。
  115. 小澤克介

    小澤(克)委員 私の方で承知しているところでは、この徳島新聞は、昭和五十六年度で所得額が十三億九千何百万、約十四億、それから五十七年度で十二億五千数百万、五十八年度で十二億数百万ということでございますので、非常にラフに計算しましても、仮に十二億といたしましても、本来だったら五億以上の国税になるところが三億程度で済んでいるというようなことでございまして、同様の新聞事業を行っている事業体がこういう公益法人としての特典を受けているということは他に例がないだろうと思いますので、税の公平負担という観点から非常に問題があろうかと思うのですが、これは何とか通常の新聞社と同じ課税をするという方法は現行法上ないのでしょうか。税務当局にお願いいたします。
  116. 浜本英輔

    ○浜本説明員 税務当局の立場からいたしまして、何を公益事業とみなすか、あるいはどういう法人を公益法人となすかということは、なかなか断じ切れない問題かと存じます。税務当局の立場からいたしますと、それぞれの所管省の判断において公益法人として認められましたものが、先ほどちょっと申し上げましたけれども、実際の事業といたしまして収益事業を営むケースにつきまして、その収益事業はいわば民間で通常の法人が営んでおります事業と競合関係に立つという場合には、これに対して課税してしかるべきではないかと判断いたすわけでございます。そのような意味で、出版業の場合にも、民間の出版業と競合いたしますものにつきましては課税をするということで臨んでおるわけでございます。  ただその場合、先ほど申し上げましたような、なお一般の法人と公益法人が営みます収益事業との間に税率の格差があるという問題は税務当局の問題として残されていると思いますけれども、この点につきましては税制調査会などでもいろいろ論議が行われておりまして、そういった制度が最初スタートいたしました時点から比べますと格差がむしろ拡大をしてきたというようないきさつもございまして、むしろ基本税率との格差というものを縮小する方向で検討することが適当ではないかというような指摘もなされておりまして、この点は引き続き検討してまいりたいと思っておりますけれども、税務当局としての問題として受けとめております角度というのは、ただいま申し上げましたようなことかと存じます。
  117. 小澤克介

    小澤(克)委員 今のお答えは、特に後半の方は、公益法人の収益事業について税率が低いということそれ自体がどうかという一般論だったと思いますが、本件のように、他の新聞社と全く同じ事業を行っていて、しかも大変な利益を上げている、また、各理事に対して三千万とか三千四百万というような報酬を支払っているというようなもので、他の新聞社に比較してその実態が全く同じであるのに税金が非常に安くなっているということで、どう考えてもこれは不公平だ、税の公平負担の観点からおかしいのじゃないかというふうに思うわけです。  例えば低額で譲渡を受けたような場合に、名目は売買になっていても実質的には贈与を受けたに等しいというような場合に、みなし贈与ということでその贈与部分については贈与税を適用するというようなことが行われているわけでございますが、本件のような場合に、みなし普通法人という言葉は恐らくないのでしょうけれども、そういった実態に即した課税をするということは現行法上不可能なんでしょうか。
  118. 浜本英輔

    ○浜本説明員 御指摘の御趣旨は理解いたされるわけでございますけれども、今お話がございましたようないわば実質課税の原則と申しますか、そういうものでぶつかっていけないかということを考えてみますときに、ただいま先生が例としてお引きになりましたようなケース、例えば通常の取引価格がございまして、その取引価格に対して余りにも低い価格でやりとりが行われている、それを通常の取引価格並みに評価し直すということは、税務執行当局の対応としてある程度可能であろうという判断のもとに進められておることでございますけれども、事、ただいま問題になっております案件に照らして考えてみました場合に、結局、先生のおっしゃる実質課税の原則は適用できるかできないかということは、その事業が公益事業と称して行っております事業を税務当局として実際に公益性のない通常の営利事業と同視できるかどうかという判断を独自に下さなければならないということになるわけでございます。  この問題は非常に難しい問題があり得ると私は思うわけでございまして、今日までのところ、公益法人としてその法人を認定されるかどうかという主務官庁の判断を一応当局としてはまず尊重し、その中で、その営んでおります事業が既に市中他の通常の法人によって営まれているかどうかという判断は下し得ると思いますけれども、その判断を下したといたしましても、その事業というのは依然として公益法人という法人において行われているという点に立ち返りましたときに、その公益法人が営んでいるというその事実を、いわば収益事業部分だけを本体の公益事業から切り離しまして評価し直すというところに立ち入りますことは、つまり公益法人としてのその法人の活動を税務当局として踏み込んで解釈するということになるわけでございますので、そこのところはなかなか簡単にはまいらないのではないかというふうに判断いたされます。
  119. 小澤克介

    小澤(克)委員 今のお答えは、要約しますと、実質課税の原則は適用すべきだとしても、主務官庁の見解も尊重した上で検討する、こういうことだろうと思うのです。  それで、先ほど聞き漏らしましたが、税務当局、地方税についてもどのくらい特典を受けているかということがもしわかれば教えていただきたいのです。
  120. 大島満

    ○大島説明員 先生も御承知のことと存じますが、法人県民税には均等割と法人税割がございまして、同府県内に事務所または事業所を有する法人に対しましてはこれらの合算額が課税されているところでございます。このうち均等割につきましては、地方税法上非課税とされている法人、例えば宗教法人とか学校法人等を除きましてすべての法人に納めていただいております。  また、法人税割の方でございますが、これは同税である法人税を納めている法人に対し、その法人税額を課税標準として課税されているものでございます。公益法人につきましても、当該法人が収益事業を行い法人税が課税されている場合には法人税割が課税されることとなります。したがいまして、先ほど大蔵省の方から御説明がありましたように、公益法人についての県民税の法人税割は法人税の方で軽減された税額を対象に課税するということで、そういった意味での特典がございます。
  121. 小澤克介

    小澤(克)委員 恐縮ですが、もう少し具体的に、どのくらいの税率になるかというのはわかりますか。これは県によって違うのでしょうか。
  122. 大島満

    ○大島説明員 県税の場合には五%の率で課税しております。(小澤(克)委員「一般はどうですか」と呼ぶ)ですから、法人税割につきましては法人税額を課税標準としておりますが、それが通常の場合には先ほど大蔵省から御説明がありましたように四三・三%、それに対して公益法人は二六%でございますから、その差によって、税率自体は変わらずに課税標準が変わっているということでございます。その分の特典があるということです。
  123. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、結果的には四三・三%と二六%の差が同じ比率で地方税も安くなってしまう、こういうことになりますね。
  124. 大島満

    ○大島説明員 そのとおりでございます。
  125. 小澤克介

    小澤(克)委員 伺っておりますと、この徳島新聞社は行っていることは他の普通の株式会社である新聞社と全く同じであるにもかかわらず税法上大変な特典を受けているということで、これはどう考えても公平を欠くと思われますし、これをこのまま放置することは妥当ではないのじゃないかというふうに思うわけでございます。  また、聞くところによりますと、この種の新聞を発行する事業体で公益法人であったところというのは若干あったようですけれども、戦後ほとんど指導によりまして一たん解散して株式会社等に組織がえをしているということのようで、ひとりこの徳島新聞社だけが依然として公益法人のまま残っている、このように聞いているわけでございます。これはどう考えても不公平であり、また税金の問題だけでなくても他のいろいろな扱いでここだけが公益法人として扱われているということはどう考えても妥当ではないんじゃないかというふうに考えるわけでございます。  そこで、この徳島新聞に対する監督体制はどのようになっているのでしょうか。そもそもその主務官庁というのはどこになるのでしょうか。これはどこに聞けばいいのでしょうか。恐らく旧内務省が認可をしたんだろうと思いますので、自治省いかがでしょうか。
  126. 大島満

    ○大島説明員 先生も御案内のとおりだと思いますが、地方公益法人の許認可、監督等の権限は当該公益法人の事業の目的に対応してそれぞれの主務大臣が行使することとされておりまして、その権限は機関委任事務として原則として知事に委任されております。徳島新聞社の事業目的は自治省の所掌事務の範囲外でございますので、自治省は民法上の主務官庁には当たらないというぐあいに考えております。
  127. 小澤克介

    小澤(克)委員 それじゃ自治省は主務官庁ではないというふうに伺いますが、もう一つ自治省に伺いたいのです。これは直接は確かに都道府県知事が監督をしているようですが、これは機関委任事務でございますね。ですから、国の事務を国の機関として委任を受けてやっているわけですから、本来国の事務である、そうであれば、何らか国の所管の省庁がないはずはない、これはそのとおりですね。そうお聞きしていいですね。
  128. 大島満

    ○大島説明員 国のいずれかの省庁が所管していると思います。
  129. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうなると、自治省としては所管していないということでございますので、これはあるところへ問い合わせましたら文部省だというふうに聞いていたので、きょう文部省関係、文化庁の方ですか、来ていただいているのですが、出版関係というようなことからすればあるいは文部省、特に文化庁の所管ではないかとも思うのですが、いかがでしょうか。
  130. 渡部蓊

    渡部説明員 お答えいたします。  私ども、一般紙のような、それ自身の発行を目的とする団体、それについては文化庁、文部省とも所管しておりません。
  131. 小澤克介

    小澤(克)委員 ついでに。具体的にこの新聞社について所管していないことは間違いないですね。
  132. 渡部蓊

    渡部説明員 この新聞社について所管していないことについてはそのとおりでございます。
  133. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうなると、どこが監督官庁なのかよくわからないのですが、総理府、いかがでしょうか。そうなりますと、総理府になりますか。
  134. 榊誠

    ○榊説明員 お答えいたします。  法人の行う業務内容を所掌している官庁が主務官庁になるわけでございまして、新聞関係の事務につきましては総理府木府では所管しておらないということでございますので、徳島新聞の主務官庁ではないというふうに総理府としては考えでございます。
  135. 小澤克介

    小澤(克)委員 困ってしまうのですね。どこが監督官庁なのか全然わからないのですが、総理府の設置規定には他の省の所管に属しない事項というのは総理府の所管だというふうなことになっているんではないでしょうか。
  136. 榊誠

    ○榊説明員 お答えいたします。  設置法上そのとおりの規定がございますが、これは新聞関係あるいは出版関係の事務がどの省庁についても該当するものがないという場合に総理府の所管になるかどうかという点が検討されるということでありまして、疑義があるものすべて総理府の所管になるというわけではございません。  それで、先ほど来文部省さんも自治省さんも私の総理府も含めまして、この新聞社については所管ではないと今考えておるわけでございます。そうしますと、どこかという問題になるわけで、やはり理論的には主務官庁がないのはおかしいだろうと思いますものですから、自治省さんとも文部制さんともこの問題の取り扱いについては相談させていただきたいというふうに考えております。
  137. 小澤克介

    小澤(克)委員 大変困ったことなんですけれども、実は私もこれについて詳しくは知らなかったのですが、四十一国会で、昭和三十七年八月二十四日、当院の法務委員会委員からの質問がありまして、そのときに古展政府委員という方、これは総理府の方だと思いますが、その方が同じこの徳島新聞社に関しまして「中央官庁があるべきではなかろうかということで、私も実は先般からいろいろ関係省と研究をしております。」ということで、「その結論が関係省とまだ検討中でございまして」云々というふうに答えておられまして、そしてさらに「実はずっと経過規定その他を調べまして、今私の方で検討しておるというのが現在の状況でございます。」こういう答弁があるわけなんです。  大変古いことなんですけれども、この当時から検討しているはずになっているのですね。当然結論が出ていてしかるべきだと思うのですが、結局どういうことになるのでしょうか。
  138. 榊誠

    ○榊説明員 お答えいたします。  三十七年当時そういう議論があったということは一応承知しておりますが、検討につきましてはなかなか進展してございません。つきまして、改めてその問題が今回また御指摘されておりますものですから、総理府の方としましても、先ほどお話しましたように、文部省さんともあるいは自治省さんとも御相談させていただきたい、こういうふうに考えております。
  139. 小澤克介

    小澤(克)委員 時間がもうありませんので、このくらいにいたします。  先ほどから指摘しておりますように、他の新聞社と全く同じ事業内容でございまして、かなりの利益を上げ、かつ役員にも大変な報酬を払っているという新聞社が全国で一社のみ公益法人として税法上大変な特典を受けている。また聞くところによれば、公益法人だということで何か土地を安く払い下げを受けたりということもあるかと聞いております。不明朗だと思いますので、第一次的には機関委任を受けております県知事の監督かと思いますが、地方の有力な新聞社ということでなかなか政治的に動きにくいのでしょうか、どうも十分な監督がなされていないということもあるようでございますので、これは中央省庁でぜひ強力に指導して、税法上の不当な利益等がないようにお願いしたいと思うわけです。  特に税務当局も所管庁の意向を尊重しなければならないという御答弁だったわけですけれども、その主務官庁が定かでないということは全く論外でございますので、この機会に日治省、それから今の総理府、文部省も関係があるのかどうか、ぜひ検討されて、早急に中央所管庁はどこであるか特定した上で十分な指導をお願いしたい、要望して私の質問を終わります。
  140. 宮崎茂一

    宮崎委員長 中村巖君。
  141. 中村巖

    中村(巖)委員 まずお伺いをいたしたいことは、全国公安調査局長会における法務大臣の発言についてでありますけれども、新聞の報ずるところによりますれば、本年の六月七日、全国公安調査局長会というものが開かれ、そこで法務大臣が発言をされて、その発言の一部内容として、トマホーク配備などを中心に展開されているいわゆる反核運動を軸に国際共産主義勢力が結束を図ろうとしている、あるいは日本の治安に及ぼす影響について今後注目する必要がある、こういうようなことを述べた、こういうことになっておるわけでありますけれども、それは大臣の発言のごく一部分をとらえたもの、あるいは真意を伝えてないものであるかもしれないわけでありますので、その公安調査局長会におきまして大臣がお述べになられたことの概略はどういうことであるか、今私が新聞から引用を申し上げたようなことを大臣がお述べになっているのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  142. 住栄作

    ○住国務大臣 六月七日の公安調査局長・地方公安調査局長会議で私が訓示をしておりますが、そのくだり、ちょっと長くなりますが読ませていただきますと、「最近の国際情勢を見まずに、米ソ間の中距離核戦力削減等の交渉が中断している情勢の下で、ソ連はロサンゼルスオリンピック大会に選手不参加の意思を表明するなど、両国間の緊張が高まっているのでありますが、こうした東西関係を背景として、中米、中東、アフリカ、インドシナ半島などの各地では武力紛争が続発し、更には、昨年のラングーン事件を始め、最近の在英リビア大使館事件など国際テロ事件の発生も相次ぎ、世界情勢は依然として激動と混迷の中にあるといえるのであります。この間にあって、ソ連を中心とする国際共産主義諸勢力は、いわゆる反核平和運動を軸に結束を図ろうとする動きを示すとともに、引き続き自由主義諸国や第三世界に対して、軍事、外交、政治、経済等の各方面にわたり、多様な工作を展開して勢力の浸透を図っており、これらの動向が我が国の治安に及ぼす影響については、今後とも注目を要するものがあります。」というようなことは申し上げておるわけでございます。
  143. 中村巖

    中村(巖)委員 新聞に引用されているようなことが述べられたコンテクストは大体わかりましたけれども、私ども、何と申しましても核兵器の廃絶を求めるということ、日本も非核三原則ということで核に対してはそれなりの配慮を払っておるわけでありまして、そういう意味で反核運動というものはそれ自体非常に大事な運動であるというふうに理解をいたしておりまして、私の属する公明党も反核のためにいろいろな運動をやっておるわけでありますけれども、それが直ちに国際共産主義諸勢力あるいは共産主義の運動に結びつけられるということは大変におかしいというふうに思うわけでございまして、国際共産主義諸勢力というものと無関係にやはりそういう反核運動はなければならないのだというのが私ども考えでありますけれども、今のお話によりますと、反核運動というものは我が国にとって何か非常に有害な運動であるかのように大臣の発言が受け取られるわけであります。  反核運動それ自体私どもは重要なことだと考えておりますので、大臣としては、反核運動はけしからぬのだ、こういうお考えなのかどうか、その点を一点伺っておきたいと思います。
  144. 住栄作

    ○住国務大臣 公安調査庁の調査活動、これは国際情勢なり国内の治安情勢、そういうものを踏まえて調査活動はすべきものである、私はこういうように考えておりまして、そういう情勢の見方について私の判断を示したものでございます。  その判断がいいかどうか、いろいろあるわけでございますけれども、これは私の判断でございます。したがって、いわゆる反核運動というようなこともそこに言っておるわけでございまして、反核運動でもいろいろなものがあるのだということで、反核運動それ自体に対して価値判断を下したものではない、こういうようにお考えいただきたいと思います。
  145. 中村巖

    中村(巖)委員 それではその問題はそのぐらいにとどめまして、次の問題に入りたいと思います。  御承知のように、出入国管理及び難民認定法という法律があるわけでございまして、そこの第五十条の三号では「法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。」には在留を許可するということになっているわけでございます。     〔委員長退席、高村委員長代理着席〕 入国審査官が退去強制の要件に当たると認定した場合においては、認定された者は異議を申し述べることができる。そうすれば、今度は特別審理官が審理をし、さらにそれに対して異議があれば法務大臣の裁決がなされる、こういう法構造になっておろうかと思うわけでありますけれども、この法務大臣によってなされるところの裁決の内容一つとして、特別に在留を許可する、こういうことがあるわけであります。  この特別在留許可、これの運用につきましては、午前中にも他の委員からも質問がありましたけれども、大臣の自由裁量というか、そういうようなことで大臣に大幅な裁量権があるんだということになっておるわけでございます。しかしながら、全くの自由裁量であるかどうかということについては問題があろうかと思うわけでありまして、法務省としては、このいわゆる特別在留許可についてどういう裁量の枠というか基準というか、そういうものをお考えになっておられるか、お伺いをしたいと思うのであります。
  146. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  法五十条は在留特別許可を与えるか否やかにつきまして大臣の裁決の特例を規定してございます。したがいまして、退去強制すべき事由を持った人がいまして退去強制をしようとしたときに、その人が異議を申し立てるということになりますと、法務本省にその件が上がってきまして、ここで裁決が行われるわけでございます。  裁決するに当たりましては、例えば不法入国者である場合においては、その人が出国した国においていかなる生活をしていたのだろうか、またいかなる理由で日本国へ出国しようとしたのか、また日本へ不法入国した後いかなる生活をし、またどういう家族関係をつくり上げたのだろうか、また何年間我が国にその人は生活していたのだろうか、その他国際関係等々、諸般の事情を広範にいろいろ考えまして、それを総合的に判断した上で裁決するわけでございます。したがいまして、この裁決については非常に適切にやりたいと常に考えているわけでございます。
  147. 中村巖

    中村(巖)委員 自由裁量であるということについては、昭和五十三年のいわゆるマクリーン事件の最高裁の大法廷の判決、こういうものがあるわけでありますけれども、その最高裁のマクリーン事件判決でも、その判断が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くという場合においてはこれは違法になるんだということで、退去強制というものについての枠というか、逆に言うならば特別在留を許可すべき場合の枠というか、そういうものを言っているわけでありますけれども、その社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことのないようにということで、法務省としては個々のケースについていろいろお考えになられているところがあるだろうと思いますけれども、どういうようなことを御考慮になって判断をしているわけですか。
  148. 田中常雄

    田中(常)政府委員 委員もただいま御指摘しましたように、法務大臣の裁量権の幅につきましては、最高裁の判例または高裁の判例等多々ございまして、それでそれはことごとく法務大臣に非常に広範な裁量権があることを認めております。そして今日まで、最近起きた大阪地裁の一件を除きましては、ことごとくその裁判に上げたケースにつきましては国側が勝訴しておるということでございます。しかしながら、我々は、裁決するに当たりましては、やはり先ほど申し上げましたように、その人にまつわるありとあらゆる問題について十二分に検討し、そして公正を期するということについてはいつも十分に配慮して努力しているつもりでございます。
  149. 中村巖

    中村(巖)委員 その考える、判断をする基本的な方向性というものでありますけれども、従来の法務省のお考え方であるならば、外国人というものはできるだけ日本に滞在をさせないように、こういうような方向でお考えになられているやにうかがえる部分が非常に多いわけでございまして、でき得れば外国人は日本に長期間にわたって、あるいは永久的に滞在することがないように、こういうことを政策的にやっておられるんじゃないかというふうに思われるのですが、その点はいかがでございましょう。
  150. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  外国人をできる限り我が国に在留させないようにという前提でという御下問でございましたけれども、我々そういう意識はございません。申すまでもなく、このように国際化された時代でございますので、非常に大勢の外国人が日本へ来る、そして日本へ在留してビジネスを初めありとあらゆる活動をして、また外国へ帰っていくというのがもう通例となっておりまして、そのようなときに委員御指摘のような考え方を前提にして物事は処理していないと考えております。事実、出入国管理法におきましても十六の在留資格というものが規定されておりまして、その十六の在留資格に照らしてみまして、在留すべき者については在留させるということで考えております。
  151. 中村巖

    中村(巖)委員 今全般的に聞きましたけれども、殊に不法入国をしたような場合においては、それはどんな事情があろうとも退去をさせるのだということで法務省は臨んでいるように思うわけでありまして、不法入国ということはそれ自体違法であることは間違いないわけでありますけれども、実際いろいろな事情があって日本に入国をするということがあるわけでございます。そのことで最近一年、二年あるいは三年間ぐらい、韓国人も含めて朝鮮全体から日本に対する不法入国者に対する強制退去というものがどのぐらい命ぜられておるかということ、それから、それらの人の中で、法務大臣の計らいによって特別在留許可を得られた件数がどのぐらいあるかということについてお尋ねをいたします。
  152. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  昭和五十六年における韓国・朝鮮人の不法入国事案による退去強制令書発布件数は三百八十四件でございまして、また在留特別許可の件数は二百五件でございます。昭和五十七年においては退去強制令書発布件数は三百九十二件でございまして、在留特別許可件数は百四十一件でございます。昭和五十八年においては退去強制令書発布件数は二百五十二件、在留特別許可件数は百五十五件ということになっております。
  153. 中村巖

    中村(巖)委員 今特別在留許可の件数が、この三カ年にわたって不法入国者においてもかなり数があるということのように見受けられますけれども、そういう場合に、特別在留許可をするに当たって、どういう事情というものに注目して許可をしておるのか、この許可のケースについて何か特徴的なことはございましょうか。
  154. 田中常雄

    田中(常)政府委員 退去強制すべきか、特別在留許可を与えるべきかの裁決をするに当たりましては、先ほどこれこれこういうようないろいろなファクターを総合的に判断するということは申し上げましたが、今特徴的ということでございますので、特徴的なのを申し上げれば、例えば、今からもう何十年も前に日本国へ不法入国した、そして潜在しているうちに日本人の女性と婚姻関係に入ってしまって、子供もできてしまった、そして本国へ帰っても今さらもう身寄りだれ一人いない、そして子供も大きくなって、もう小学校や何かに行っているというような事例になれば、一つの特徴として、在留許可になる可能性が非常に強い案件ではないかと考えております。
  155. 中村巖

    中村(巖)委員 午前中の質問にも出ましたけれども、本年の七月十九日に大阪地方裁判所において梁さんという方の事件の判決が出まして、これは特別在留許可をしなかったのが違法である、強制退去の処分は取り消すという判決であったようでありますけれども、この事案につきまして、事案内容そのものから申しますと、新聞で読む限りにおいては、やはり強制退去を命ずるという判断をすべき事案でなかったのではないかという感じが非常にするわけでございます。  この事案について、法務省は、裁判をやったわけですけれども、なぜこれは強制退去にするべきであって、特別在留許可を認めるべきでないという御判断をされたのか、それについて伺いたいと思います。
  156. 田中常雄

    田中(常)政府委員 本件は昭和五十七年に裁決されたケースでございますが、同人は我が国へ密入国したものでございまして、密入国前は韓国には係累はなかったといたしましても、韓国で小学校、中学校、高校を卒業しまして、その後独立した社会人としてかばん縫製工として生活していたわけでございます。  ただいま冒頭に韓国に係累がなかったと申し上げましたのは間違いでありまして、お父さんがおりましたけれども、高校を卒業して稼働している最中に、お父さんは亡くなられたと聞いております。そして、その後この人は我が国に不法入国しまして、お父さんとお母さんは離婚していたわけでございますけれども、そのお母さんのところに来た。ところがお母さんとは同居せずに、その人はその後二年間にわたりまして縫製工として働いていたわけでございます。その後、同居いたしましてお母さんと生活をともにしているうちに不法入国をしていることが五十七年に発覚して、五十七年に裁決がなされて退去強制令書が発布された。そしてその人はその後大阪地裁に裁判を起こしまして、それから二年間裁判が行われまして、ついこの間国側が敗訴の形で一審が終わったわけでございます。  しかし、この件は、我々がいろいろ物事を判断するにいろいろな事態を考えるということは先ほど申し上げたわけでございますけれども、最高裁や高裁の過去の判例をずっと眺めましても、大臣にそういうことの裁決の裁量は任されているということは非常に明確になっておりまして、またある高裁の判決によりますと、そういう事の当否、裁量の中身についてとやかく言うのは、裁判所のなすべきことではないというような判決もございますし、当時においてそのようないろいろな事情も考えまして、退去強制しかるべしという判断をしたと聞いております。
  157. 中村巖

    中村(巖)委員 この事件につきましては、一審判決であるわけでありますけれども、今まだ現時点では上訴がなされていないというようでございますが、この裁判所の判断に対して法務省としては不服であるのかどうか、さらにはその法務省考え方に基づいて上訴することになるのかどうか、その辺はいかがでございましょうか。
  158. 田中常雄

    田中(常)政府委員 今までの判例はすべて国側が勝っているという結果が出てきまして、ここで初めて敗訴したという形になっておりまして、この大阪地裁の判決は、どちらかというと我々にとって意外なものと受けとめておりますけれども、しかし控訴するかしないかということにつきましては、今非常に慎重に勉強しているところでございます。
  159. 中村巖

    中村(巖)委員 国側が特在の事件で初めて敗訴したというふうに強調されておりますけれども、先ほど私が申し上げたように、マクリーン事件の最高裁の判決においても、自由裁量だとはいうものの、やはりその裁量の際の判断が社会通念に照らして著しく妥当性を欠けば、それはいけないのだ、違法になるのだ、こういうふうに言われているわけでありますから、事案事案によって、何でも法務省の判断には裁判所が従わなければならないということはないのだろうと思いますし、その辺の判断というものは、やはり法務省も誤ることもあり得るわけでありますから、慎重に、いろいろ人道的な見地から、あるいは正義の見地から十分に検討をされて判断をされたいというふうに思うわけでございます。  そこで、ちょっと話が違いますけれども、同じような種類の問題として、今係争中だと思いますけれども、北朝鮮から日本に不法に入国した閔洪九という人の事件があるというふうに思うわけであります。その閔洪九に関する事件について、係争中であるということは、すなわち強制退去の処分を争って特別在留許可をすべきである、こういう主張で原告の方はやっておるんだというふうに思いますが、その事件が現在どういうふうになっているのか、それから今どういう段階にあるのかということ、それからその閔洪九という人の現在の身柄そのほかの状況がどうなっているのかということについてお伺いをいたします。
  160. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  御指摘の人について、今までの事件の概要をまず御説明いたします。  本人は、昭和五十八年十月ごろ、北朝鮮の南浦港に停泊中の日本の貨物船第十八富士山丸に潜伏した上、同年十一月四日、山口県の下関市に到着し、不法入国したものでございます。同日、福岡入管局が海上保安部から本人の引き渡しを受け退去強制手続を行った結果、同年十二月二十六日、出入国管理及び難民認定法第二十四条第一号、これは不法入国者は退去すべきであると書いてある条項でございますが、これに該当するものとして退去強制令書が発付されたわけでございます。  本人は現在、横浜入国者収容所に収容中でございます。
  161. 中村巖

    中村(巖)委員 この裁判の状況について今お伺いをしましたのですが、裁判の状況がどういう状況であるか、お答えいただきたいのです。
  162. 田中常雄

    田中(常)政府委員 退去強制令書を出した後、同人はそれを不服としまして裁判を起こしましたが、本年五月、本人から裁判を取り下げております。
  163. 中村巖

    中村(巖)委員 本人が五月にその裁判を取り下げたということであるならば、今そういう意味での法律上の争いがない状況になって、今度は現実的に退去強制を執行しなければならぬという状況になろうかと思うのですが、法務省としては退去強制の令書の執行ということについてどうお考えでしょうか。
  164. 田中常雄

    田中(常)政府委員 同人をどこへ送還するか、また送還時期をいつにしたらいいかという問題については、諸般の事情をよく考えまして、慎重に対処したいと考えております。
  165. 中村巖

    中村(巖)委員 本件につきましては、閔洪九本人は、北朝鮮において政治的な圧迫を受けて命が危うくなったんだ、だから日本へ一種の政治亡命という形で密入国をしたというように申し述べていると聞いておるわけでありますけれども、そういう人間が退去強制を受けるということになると、本来的にはどこへ退去をさせるということになるのでしょうか。それをお伺いします。
  166. 田中常雄

    田中(常)政府委員 まず、本人が政治亡命をしたと供述している件につきましては、我々は非常に慎重に、また長い時間をかけていろいろ調べました。その結果として、これは条約難民には該当しないという結論を出しております。  また、先ほど裁判を取り下げたと申しましたが、その前に裁判所の判決がございます。実は退去強制の執行部分だけを停止してもらいたいという訴訟を起こしまして、そのときにそれは棄却されたわけでございますけれども裁判所の判決におきましても、これは条約難民には該当しないという見解を示しております。
  167. 中村巖

    中村(巖)委員 今私が伺ったことは、その種の人間について、原則的にはどこへ強制送還をすることになるのかということを伺っているわけです。
  168. 田中常雄

    田中(常)政府委員 そのような事態になった場合にどこへ送還するか、これは本人の意向もいろいろ聞いたり、その他諸般の事情等々もよく検討した上で、改めて決めたいと考えております。
  169. 中村巖

    中村(巖)委員 従来北朝鮮から密入国をしてきた人間というのはかなりの数があったと思われるわけでありますけれども、その種の場合において、北朝鮮との間に国交がないということで、強制退去を命じた場合にどういうふうに現実の取り扱いをしているのか、その点をお伺いします。
  170. 田中常雄

    田中(常)政府委員 北朝鮮から不法入国して、北朝鮮に送還されたという事例は何件かあるかと思いますが、その北朝鮮へ退去強制すると言うと、本人はさようですかということで、多くの場合、新潟に入る万景峰号等の北朝鮮の船で送還されていっていると聞いております。
  171. 中村巖

    中村(巖)委員 閔洪九のケースの場合においては、北朝鮮へ帰すというのが必ずしも法務省のお考えでないように今受け取られるわけでありまして、どこへ送還するか、送還する時期をどうするかということを慎重に検討中だということでございますので、それは北朝鮮でなくて韓国の方へ送還をする、あるいは第三国の方へ送ってしまう、こういうことも御考慮になられるということなのでございましょうか。
  172. 田中常雄

    田中(常)政府委員 現時点において、北朝鮮に送るということは決して決めておりません。それでは今後どこの国へ送還するのだということでございますけれども、この件についてはまだ何ら決まっておりません。したがいまして、今後の事態の進展等々よく考えながら判断したいと考えております。
  173. 中村巖

    中村(巖)委員 今の事件で、先ほど法務省の御答弁では、行政訴訟の方は、執行停止の事案では、法務省が停止しないという意味で法務省考え方が入れられたようでありますけれども、本案そのものを取り下げられたというふうに御理解のようですが、若干そこに、本当に取り下げられたのかどうか問題があるかのように私ども伺っているのですが、現に裁判所には係属してないというお考えなんでしょうか。
  174. 田中常雄

    田中(常)政府委員 本人の意思によってこの裁判は取り下げられたということで、また、裁判所の方から、本人からそういう通知があったもので取り下げましたということを入管に通知がございました。
  175. 中村巖

    中村(巖)委員 この閔洪九事件については、先ほどの執行停止の中で本人を難民条約あるいは難民の地位に関する議定書に言うところの難民でないと認定されたというようなことでありますけれども、難民であると認定をする手続が出入国管理及び難民認定法の六十一条の二というところで決まっているわけでございまして、この難民認定の申請が本人から出されているかどうか、そしてその手続はどういうふうになっているのか、お伺いします。
  176. 田中常雄

    田中(常)政府委員 本人からは六十一条の二の難民認定申請に関する条項に基づきまして難民認定申請が出されました。その後、我々は慎重に審査した結果、これは条約難民には相当しないという認定をいたしました。言いかえると、不認定にしたわけでございます。また、裁判所も、これは条約難民に相当しないという見解を示しておるわけでございます。
  177. 中村巖

    中村(巖)委員 難民の定義というか、そういうものは難民条約あるいは難民の地位に関する議定書に決まっているわけでありますけれども、閔洪九本人の場合において、どういう点でそれがその要件に該当しないということになるのでしょうか。本人は、北朝鮮において、自分は北朝鮮の体制に不満であるがために、その不満の文書等をつくって体制に反対しておった、そういうことで官憲に圧迫されて、海に飛び込んで第十八富士山丸という船に乗って日本へ逃げてきたんだ、こういうように申し立てておるようでありますけれども、そういう事実関係が違っているというのでしょうか。難民の定義そのもののある部分に当たらないというのでしょうか。どちらでしょう。
  178. 田中常雄

    田中(常)政府委員 我々、条約難民として認定するか不認定にするかを裁決するに当たりましては、難民条約第一条A②の人種、宗教、国籍その他特定の社会的構成員であること、また政治的意見を異にして迫害を受けたという十分なる根拠のある恐怖を有すること等々という条項に照らしまして認定、不認定を決めるわけでございますが、問題は、一言で申しますと、政治的迫害が現地においてあったかなかったかという認定でございます。  本人は、自分は体制に不満であったとか、そういうことはいろいろ言っておりますが、体制に不満であるとか、その程度において条約難民にはなかなかならないわけでございます。また本人の事情を克明に調べますと、本人は体制に不満でいろいろなことを言ったとか言っておりますけれども、では、言った時点以降においてその人が身体の拘束を受けたとかいう事実があるかというと、その後も自由に外出も許され、自由な生活を送っていたということでございます。また、自由に外出ができたからこそ南浦港において日本船に泳いでいくことができたということでございます。  そういうふうに難民条約上に照らしてみてこれは難民と考えられないという判定をしたわけでございますけれども、ただ本人の供述もなかなか難しいのでございまして、例えば日本に入ってきたときに不法入国の事由いかんと我々が問うたときに一番真っ先に言いましたことは、日本に薬を買いに来たんだ、その後いろいろ聞いてみたら、何か自由が欲しかったとか、いろいろ供述が変わっておりまして、なかなか本人も本当のところ一体何を目的にして何を考えているのかよくわからない面があることは事実なんでございますけれども、少なくとも何回も聞き、何回も調べて、その結果我々が結論を出したことは、やはり難民条約第一条A②にはこれは相当しないということで、また裁判所も同じように考えたということでございます。
  179. 中村巖

    中村(巖)委員 北朝鮮における事実の調査というのはなかなか難しいでしょうから、事実認定の問題についてどうのこうのということは困難なことだと思いますので、それはその辺でやめておきますけれども、この事件に関連をして、この閔洪九が逃げてきたという第十八富士山丸という船が、日本に一たん帰ってから後、また北朝鮮に赴いたところが、その船そのものが拿捕をされてしまって船長が抑留されたというような事実があるようでございまして、それに伴って閔洪九を北朝鮮へ帰せという北朝鮮からの要求があるということを聞いておるわけでありますけれども、この第十八富士山丸の拿捕事件あるいはその船長の抑留事件、それが今現在どうなっておりますでしょうか、外務省にお伺いをしたいと思います。
  180. 高島有終

    ○高島説明員 御説明いたします。  昨年十一月十五日に、今御指摘になりましたように第十八富士山丸が南浦港に入港いたしました際に抑留されたわけでございます。船長以下乗組員五名でございましたが、二月七日にこの五名のうち乗組員三名は帰国を許されたわけでございます。したがいまして、現在は船長と機関長の二人が依然として抑留されたままであるというのが現状でございます。御承知のとおり、北朝鮮とは外交関係がございませんので、外務省ではこの事件が発生いたしました後、日本赤十字社を通じまして安否照会と早期帰国のための配慮を求めてきたわけでございますが、依然として船長、機関長につきましては抑留の状態が続いているということでございます。  なお、その安否に関連いたしましては、ことしの四月末から五月の初めにかけまして訪朝されました社会党の代表団の方々がこの船長、機関長と面談をされておりまして、伺いましたところでは、南浦港の船員クラブで居住を認められているようでございまして、元気であったというふうに伺っておりますが、その後の状況等につきましては、私ども正確に把握するに、至っていないということでございます。
  181. 中村巖

    中村(巖)委員 今のお答えでございますけれども、私たちが承知している限りでは、この第十八富士山丸の船長、機関長について、先ほどの閔洪九を北朝鮮に帰さなければ、それは帰すことはできないのだというのが北朝鮮の主張であるということのようでありまして、それはそういう真実があるのかどうかということと、外務省としては、国交はありませんけれども、何らかの形でこの閔洪九の問題と第十八富士山丸の機関長、船長の問題とを切り離して、船長、機関長を早急に日本に帰してもらうように、こういう交渉をすべきであるというふうに思うのですけれども、その点はいかがでございましょうか。
  182. 高島有終

    ○高島説明員 先ほども御説明いたしましたとおり、日本赤十字社を通じて照会を行っているわけでございますが、これらの照会に対する回答においても、北朝鮮側が明示的に先ほど御指摘の閔洪九の事件と関連づけて、その釈放を船長、機関長の釈放の要件にしているという事実は承知いたしておりません。私どもといたしましては、閔洪九の事件と本件第十八富士山丸の事件とは基本的には別個の事件であるというふうに理解いたしております。  いずれにいたしましても、船長、機関長の抑留が続いているということは人道的な観点からも早期に解決されるべきであるということでございますので、私どもとしましては、今後とも赤十字社等を通じまして早期釈放のために。努力はしていきたいと考えております。
  183. 中村巖

    中村(巖)委員 今の点で最後の一点ですけれども、この閔洪九の問題と第十八富士山丸の問題とは別個だということでありますけれども、北朝鮮側が拿捕、抑留をした理由というのは、平壌放送によれば、閔洪九を日本に連れていったことについて、そういう行為がスパイ行為であるとか、あるいは北朝鮮に対する反逆行為に手をかしているんだとか、こういうような主張があるように思うのですけれども、そういう事実はあるのでしょうか。
  184. 高島有終

    ○高島説明員 御説明のとおり、北朝鮮の平壌放送の報道等で、船長、機関長が偵察行動に従事し、したがって日本の偵察機関が関与している事実を重大視せざるを得ないといったふうな報道は承知いたしております。さらに、船長、機関長は我が国の水域と港でスパイ活動を系統的に行ってきており、その都度入手した資料を上司に提供していたことをみずから陳述した、そして、自分らが我が公民を不法に日本に連れて帰っていった犯罪行為も日本当局者の背後操縦と関連していることを打ち明けたというような報道を行っていることを承知いたしております。
  185. 中村巖

    中村(巖)委員 この問題は多くの問題を含んでいて、大変重大な問題であるというふうに私どもは理解をしておりますけれども、時間がなくなりましたので、この問題についてはやめます。  今度は全然観点を変えまして、サラ金の問題を若干お聞きいたしたいというふうに思うわけでございます。  みんなが承知をしているように、最近、ヤタガイであるとかエサカであるとかサラ金業者の倒産というものが起こっているわけであります。いろいろな報道によりますと、サラ金業者はまだまだ倒産をするのではないか、サラ金業者そのものの財務状況がどこでも大変に悪化しているのではないか、こういうことであるわけでありますけれども、これらの業者の倒産原因とサラ金自体の財務状況について、大蔵省にお伺いをしたいと思います。
  186. 中平幸典

    ○中平説明員 先生御承知のとおり、貸金業規制二法が昨年の十一月に施行されまして、私どもはこの規制二法のもとで行政を行っておるわけでございます。この二法の趣旨と申しますのは、資金需要者等の利益の保護を図るということが目的でございまして、貸金業者のいろいろな行為につきまして行為規制を行う、こういうことになっておるわけでございます。私どもこの法律の運用に当たっておるわけでございますが、今申し上げましたような法律の趣旨でございますので、私どもが個々の貸金業者の経営内容に立ち入って指導するというようなことにはなっていないわけでございます。したがいまして、サラ金業者の経営内容なり財務内容について私どもが承知しているという状態ではございません。  そこで、御質問のサラ金業者の倒産の理由は何であろうかということでございますが、個々の倒産の理由についてはただいま申し上げましたようなことで、必ずしも私どもも承知しておりませんけれども、一般的に申しまして、かっていわゆるサラ金業が大変急成長をいたしまして、その急成長期における過剰貸し付けでございますとか不良貸し付け等が原因となって貸し倒れが累増してきておるというようなこと、あるいは社会的な批判を受けるようなことがかなりあったわけでございます。そういうような営業行為の結果として顧客が離反をしておる、サラ金の店舗に来店する客の数が非常に減っておるということも聞いておりますが、そういったような状況から経営が悪化したということなども原因ではないかというふうに推察をいたしております。  また、そういうふうにサラ金業界の業況というものが変わってまいりますと、いわゆるサラ金業者の資金調達というものが以前に比べて困難となってきて、資金繰りの面でも影響が出てきているということもあるのではないかというふうに考えております。
  187. 中村巖

    中村(巖)委員 サラ金というものが社会的に大変に問題になりまして以来、大蔵省の方では、サラ金業者への銀行あるいは損保そのほかの融資は自粛をしてもらいたいという行政指導というか要望というか、そういうものをお出しになられたようでありますけれども、仄聞するところ。によると、最近優良サラ金業者には、倒産という状況もあって、融資をしてよろしい、そういうような大蔵省の態度表明があったということでありますけれども、そういう事実はございましょうか。
  188. 中平幸典

    ○中平説明員 お答えいたします。  金融機関のサラ金業者に対する融資につきましては、これはサラ金業に限らないことでありますけれども、基本的には金融機関の自主的な判断にゆだねられるべきものだというふうに考えておるわけでありますが、金融機関の公共的な性格というものもございますので、サラ金の行っております活動、行為についていろいろ社会的な批判があるということにかんがみまして昨年六月に通達を出したわけでございます。  その通達の内容と申しますのは、大きく二つございまして、若干読ましていただきますけれども、その第一点は「サラ金業者の経営姿勢や経営実態を十分に把握し、当該サラ金業者による過当な収益の追求、高金利による貸付け、過剰貸付け、その他利用者の利益を不当に害する行為を助長するおそれがあると考えられる場合には、厳にこれを抑制」されたいということでございます。第二点は「サラ金業者の経営姿勢や経営実態を十分に把握したうえで融資を行う場合にも、債権保全面での配慮をすること等により、融資の健全性を確保するとともに、当該サラ金業者が行う貸付けの条件等の改善に配意し、当該融資がサラ金業者や消費者金融全体の健全化に役立つよう努められたい、こういう二点のことを言っておるわけであります。  私どもの出しました通達というのは、そもそもサラ金業一般に対してすべて融資を抑制しろということを言っているわけではございません。したがいまして、今申しましたようにいろいろ社会的批判を浴びるような行為を助長するおそれがある場合にはもとより厳に抑制してもらいたいということでありますが、金融機関としては、現に消費者金融に対するニーズが非常にあるという中において、まず第一にはみずから消費者金融に努めるということがありますけれども、それに加えて、いわば金融機関が卸売的な観点で良質な資金を供給いたしましてサラ金の健全な活動というものが維持されていくということの一翼を担うということも金融機関としての役割の一つではないかというふうに考えておるわけでございます。この点につきまして、ただいまの御質問で私どもが従来の方針を変えたかどうかということでございますけれども、ただいま御説明しましたように、当初からそのような考え方に立っておるわけでございます。
  189. 中村巖

    中村(巖)委員 そこで、このサラ金の問題について警察庁にお伺いをするわけであります。  昨年の十一月一日以降、貸金業法が変わりまして、その中で第二十一条ということで悪質な取り立て行為を禁止するということになっておりますけれども、この貸金業法の二十一条関係の違反についての検挙等の取り締まり状況というものはどうなっておるのでございましょうか。
  190. 清島傳生

    ○清島説明員 貸金業規制法の二十一条違反の検挙状況でありますが、昨年十一月の法施行後、本年六月まで判明しておりますが、五十四件の六十八名を検挙しております。
  191. 中村巖

    中村(巖)委員 悪質な取り立てということでこの法を警察庁の方でも運用をしなければならないわけでありますけれども、この法の構成要件というか、それが比較的あいまいであるというような点がありますので、どういうものを悪質な取り立てたというふうに考えて、どういう基準に基づいてこれが法の違反になるという考え方で運用をされているのか、その辺、警察のお考えをお伺いしたいと思います。
  192. 清島傳生

    ○清島説明員 取り締まりの基準ということではその意味が必ずしも則碓ではございませんが、先生の御意図は、二十一条の人を威迫しまたはその私生活等の平穏を害するような言動によって困惑させる、こういう行為に該当するかどうかの判断基準ということで申し上げてみたいと思います。  私どもといたしましては、当該行為の時間あるいは場所、態様等を総合的に勘案いたしまして、客観的に見て当該行為が債権取り立ての方法として社会通念上許される範囲を逸脱しているかどうかということが判断基準になるというふうに考えておりまして、そういう方針で取り締まりを行っているところであります。
  193. 中村巖

    中村(巖)委員 具体的にどういう事例が当たるかというようなことについて警察にるる伺いたい点もあるわけでありますけれども、時間がございませんので、その辺の質問はその辺にさせていただきます。  また大蔵省に伺いたいのでありますけれども、この薬法ができまして以来、二十一条関係を含めまして、そういう悪質な貸金業者に対しては行政処分ができるようになっているわけであります。現在まで、乗法成立以来の行政処分の状況というものはどういうふうになっておりますでしょうか。
  194. 中平幸典

    ○中平説明員 貸金業規制法に基づきます立入検査などの結果によりまして、七月末まで、昨日までの取り立て行為の規制や高金利規制に違反した悪質な業者二十二業者に、対しまして行政処分を行っております。その内容といたしましては、登録の取り消しが二件、業務停止処分が二十件、いずれも十月末まででございますけれども、そういうふうになっております。
  195. 中村巖

    中村(巖)委員 最後に一点だけ伺わせていただきます。  昨年十一月に貸し金関係の二法が改正されて施行をされたわけでありますけれども、今のところ従来までの旧法でもって届け出をしていた業者は営業ができるということで、それが本年の十一月以降は営業ができなくなるわけでございます。そのためには新規に登録をしなければならないということで、今、登録期間中というか、そういう期間に該当していると思いますけれども、現在までの新規登録の状況、それが旧来の業者の数に比べてどうなのかということ、それから、これから十月末までの間にどのくらいのサラ金業者がこの貸金業法で登録をしてくる見通しなのかということについて、最後にお伺いをしておきたいと思います。
  196. 中平幸典

    ○中平説明員 旧法に基づきます、これは登録ではなくて届け出でございますけれども、届け出数は二十二万六千件でございます。これに対しまして、新法のもとで、実は一番最近が七月十五日現在でございますが、登録済みが二万四千八百二十件ということでございます。お尋ねは、十月末までの間にこれが全体で何件になるかということでございますが、なかなか推測は難しいのでございますけれども、五十九年四月以降最近の毎月の新規の状況は、大体千数百件、四月が千五百九十九件、五月が千六百六十五件、六月が千四百六十三件と、大体千五百件前後ということになっております。ただ、これが経過期間が十月末まででございますので、そのころに一体どういうふうになってくるのか、ちょっと数字の方は私どもとしても推測がつきませんけれども、二万五千件ぐらいで、今のところは千五百件ぐらいずつ毎月ふえておる、こういう状況でございます。
  197. 中村巖

    中村(巖)委員 終わります。
  198. 高村正彦

    ○高村委員長代理 三浦隆君。
  199. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 初めに、北朝鮮沖におきます日本漁船銃撃事件についてお尋ねをしたいと思います。  質問に入ります前に、去る七月二十八日、北朝鮮の警備艇に銃撃されましたイカ釣り漁船第三十六八千代丸の行泊貢船長が昨日死去されたと朝鮮中央通信が伝えてまいりました。亡くなられまし本行泊貢船長の御冥福を祈りながら、御家族の皆様の立場に立って質問させていただきたいと思います。  一番目に、漁船員の人権保護についてでございます。日本漁船がなぜ銃撃されたかにつきましては、一つには韓国船との間違い説、一つには漁業協定再延長交渉のため来日予定の北朝鮮関係者に対する日本政府の非友好的態度への見せしめ説、一つには韓国大統領訪日への抵抗姿勢を鮮明にしたとする牽制説、一つには北朝鮮による排他的経済水域の主張を再確認させるため、一つには傘捕された船舶、乗組員釈放のための罰金高額化傾向を踏まえての経済的ねらいにあるとする説などいろいろとありまして、定かではございません。  北朝鮮側の発表によりますと、第三十六八千代丸は北朝鮮の軍事境界線内、北緯四十一度三十三分〇五秒、東経百三十一度二十一分地点に不法侵入したので、北朝鮮警備艇は自衛的措置として曳光弾で警告的射撃を行ったところ、同船舶はこれに応ぜず、警備艇に衝突を試み損傷させる無礼な行為を働き、逃亡しようとしたので、威嚇射撃を行った後、同船を傘捕した。船長の行泊貢は警備艇の射撃により死亡した。こうございます。しかし、海上保安庁への事件直後の連絡によりますと、場所は北緯四十一度四十分、東経百三十一度三十五分の地点でありまして、軍事境界線には入っておりません。また、イカ釣り漁船第三十六八千代丸が警備艇に衝突を試み、警備艇に損傷を与えたというのもにわかに信じがたいところでございます。いずれにしましても、原因はともあれ、日本漁船が銃撃を受け、漁船乗組員の人命が脅かされ、船長が死亡したという確実は変わりございません。  人権保護の見地から法務大臣は当該事件をどのようにお受けとめになっているのか、御所見をお尋ねしたいと思います。
  200. 住栄作

    ○住国務大臣 お尋ねの件でございますが、事件そのものは大変重大な事件でございますし、船長さんが死亡されておる。私も心からお悔やみを申し上げたいと思います。  今も北朝鮮側の発表を御紹介ございましたが、私どもも外務省を通じてそういう情報をいただいておりますし、また水産庁の方からの状況についても聞いております。大分事情が違っておりますので、外務省あるいは水産庁を通じまして事実を確かめ、しかるべき対応を政府としてとっていただきたい、こういうように考えております。
  201. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 日朝漁業協定の失効状態が続いておりまして、今のところ交渉再開の見通しは立っておりません。このままの状態でございますと、漁船の傘捕、漁船への銃撃事件も引き続き起こる可能性があります。交渉再開のため来日しようとする北朝鮮側代表団の入国に対して、入管当局のこれからの対応策はどうなんでしょうか。
  202. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  現在までのところ、漁業協定交渉のために入国申請がなされておりません。もしも入国申請がなされた場合においては、関係各省とよく協議しながら慎重に対処したいと考えております。
  203. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 この申請につきましては、北朝鮮側の日本に行かせたいと希望する人と日本がそれは受け入れがたいということがあって、向こう側から拒否されてきたと聞いております。しかし、いずれにしましても、このために失効状態が続いて漁船乗組員の人命が今後とも損なわれるような場合には、漁船員の人権保護の見地からその責任はどこのだれが負うものなのか、この点が一つの問題だと思います。そしてまた、今回の事件により死亡された行泊船長の御家族はどこのだれに対してどのような法律根拠としてどのような訴訟を提起することができるのか、この点についてお尋ねしたいと思います。
  204. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ただいまの御質問につきましては、事実関係が必ずしも明らかでございませんし、また法律的にも、何分外国に絡むことでございますので、難しい問題があり、研究をしていかなければならぬ面が多うございますけれども、一応考えられる点を申し上げますと、銃撃という行為を不法行為の問題として取り上げた場合には、これは一応準拠法とすれば北朝鮮地域に行われている法律が準拠法になると解される公算が大きいと思います。そうしますと、その北朝鮮の地域内に行われている法律において、その銃撃行為が正当な行為として評価されるような法制になっているかどうか、あるいはまた銃撃が違法であるとしても、それが政府の責任という形、すなわち、我が国でいいますと国家賠償法のような制度があるかどうかということが問題になるわけでございますが、その辺の法制度がどうなっておるかということは私どももつまびらかにいたしておりませんが、現在までの北朝鮮側の発表などを見ますと、そのような法制があるという感じはどうもしないわけでございまして、その点は研究をしなければならないだろうと思います。  なお、仮に何らかの形で請求権があるといたしましても、日本の裁判所に訴え出ることができるかという問題がもう一つございます。この場合には、はっきりした根拠規定はございませんけれども、通説的あるいは裁判所の実際の扱いからいたしますと、日本の裁判所はその訴えを受理するだろうと思います。ただ、現実問題といたしまして、その訴状をどうやって送達して現実の訴訟係属に持っていくかということが事実上の問題として大きな問題があります。それからもう一つ、北朝鮮の政府が応訴するかどうかという問題もあるわけでございまして、そのようなことをこれからもいろいろ研究していかなければならない面がございますけれども法律上あるいは事実上の面でなかなか、御遺族の方が銃撃ということを不法行為としてとらえた場合の損害賠償請求権のようなものが実現をするということはいろいろな面で難しい問題が横たわっているであろうという感じがいたしております。
  205. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 ただ難しいという御答弁だけですと、亡くなられた方の家族の人は、その悲しみなり憤りというものを持っていく場所がないのだろう、こう思うのです。しかも、この船長さんのような不幸な事例は一例にとどまらないで、あるいはこれからも続くやもしれないということだと思うのですね。ですから、日本と北朝鮮との国交のあるなしなり、あるいはまた北朝鮮側のだれそれが日本に入ることが日本の入管の立場からいいか悪いかというのはあくまでも政府の対応の問題であって、亡くなった方たちの側の責任があるとは思えないわけですね。  その前に、本当にそこに行くことがいけないのであれば、事前に海上保安庁なり近辺で、それ以上入ってはいかぬ、あるいは水産庁などにもいろいろな指導がある、あるいはそのほかのいろいろな処置があろうかと思うのですけれども、国として万全の処置を尽くし切っていたとすればあるいはと思うのですが、若干でもそこにまだ打つべき手があれば国としての責任も免れなかろうと思いますし、また事実、船長の家族が北朝鮮を訴えるなどということは現実にできないことですから、これはどうしても国に対して訴えてくるだろうと思うのです。そのときに、それが民事上の訴えになってくるのか、何らかの行政訴訟上の訴えになるのか、その点もなかなか難しいところであります。  ですから、ここで私がお尋ねしたのは、御家族の身になってということで、その訴訟の経緯がどうなるかはまたおきまして、とにかくどこのだれにどう持っていったらとりあえずこの問題が泣き寝入りしないで済むだろうか、その手順を法務省からお尋ねしたい、こういうことなんですが、もう少しお答えをいただければありがたいと思います。
  206. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 北朝鮮を相手にしてということが実際上無理だとすれば、ほかにどこか訴える先はないだろうかという点につきましては、今おっしゃいましたように、海上保安の関係であるとかその他のことでもし国側に重要な過失的なことがあった結果起こったのだというふうな事実関係があれば、それは国家賠償法の規定によって損害賠償を請求することがあり得るだろうと思いますけれども、そういう事実関係になっているものかどうかは、その関係については私どもはよくわかりませんので、請求することができるとかできないとかいうことを申し上げる立場にないということで御理解いただきたいと思います。
  207. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 やはりその答えだけでは家族の方は救われないような気がいたします。  またもう一つ、家族直接でなくて国としても北朝鮮に対して、国交がないから直接にはだめなのであれば、第三国を通じてでも、こうした問題に対する交渉なり何らかの打開する方法というものが外交的にもあり得るのじゃないのかと思います。とりあえず協定が失効したことで赤十字などを通じておりますけれども、そのほかにも何かあり得ないものか、こんな気がいたします。  第二番目に、北朝鮮との対応に関連して引き続き質問させていただきます。  排他的経済水域、この場合、漁業水域とも重なっているようでございますけれども、国連海洋法条約第五部五十五条から七十五条に定められているところです。これに関連する漁業紛争は国連憲章第三十三条一項に掲げる手段で解決さるべきものだというふうに言われております。しかし、これ自体、北朝鮮は国連に加盟していないのだということであります。そうすると、国連に加盟していればこの条約に基づいて排他的経済水域というのは相互に認められ得るものだと思うのですけれども、加盟していない国が主張しているのだということです。  そこで、国連未加盟国である北朝鮮の排他的経済水域論の主張は国際的に容認され得るものかどうか、これがまず第一点。  次に、容認され得るものとしましても、日朝間には既に漁業協定が存在していたのでありますし、またこれからも漁業協定は結ばれる可能性があるわけです。北朝鮮政府はその経済水域を主張するに当たって、日本国民がその水域においてむしろ常習的に漁業を行ってきたという実績、その経済的混乱を最小限にとどめる必要性、そうしたことなどを考慮すべきものと思うのですが、どうか、これが第二点。  そして第三番目に、少なくとも無防備な漁船及び乗組員に対して、片方はイカ釣り漁船でありますが、一方的に銃撃を加えるということは国際法上も許されないのじゃないかと考えますが、いかがなものでしょうか、外務省にお伺いいたします。
  208. 高島有終

    ○高島説明員 お答えいたします。  まず第一点、国連の未加盟国である北朝鮮の排他的経済水域の主張は国際法的に容認されるかどうかという点でございますが、御承知のとおり、これまで国連海洋法条約の内容を取り入れた形で多くの経済水域が設定されてきております。このような形での経済水城の制度は、一般国際法として確立していく方向にあるというふうに見ております。したがいまして、この点に関します限り国連加盟国がどうかという点は必ずしも必要な要件ではないというふうに考えられると思います。ちなみに、北朝鮮は第三次海洋法会議に参加いたしておりまして、国連海洋法条約にも署名いたしております。  それから、第二点でございますが、今御指摘ございましたように、国連海洋法条約では排他的な経済水域におきます生物資源の利用については、まず、治岸国は、その水域内で自国が漁獲可能量のすべてを漁獲する能力がない場合に、協定等によりその余剰分の漁獲を外国に認めるというふうにいたしております。また、同じ条約で、外国の漁獲を認めるに当たりましては、すべての関連要因、この中では特に当該水域で常習的に漁獲を行っている国における経済的な混乱を最小にする必要性等を考慮するということになっているのは御指摘のとおりでございます。  ただし、御承知のとおり我が国と北朝鮮とは外交関係がございませんので、政府ベースでこのような実績を相手側に認めさせたりあるいは協定等をつくるために交渉するということはできませんので、結局のところ、私どもとしましては、かつてございました日朝間の漁業協定のような形で、日朝間の民間当事者間の話し合いによって協定再開に向けての努力が実ることを期待している、こういうところでございます。  それから第三点、無防備な漁船、乗組員に対する一方的な銃撃は国際法上許されるかどうか、こういう点でございます。  まず、北朝鮮が主張いたしております中で重要な点と思われます一つは、この第三十六八千代丸が北朝鮮の設定しております軍事境界線の侵犯を行った、こういうことを挙げております。しかし、国際法上このような軍事境界線を設定し、軍事境界線内の水域において管轄権を主張することは認められておりませんので、我が国としては北朝鮮が設定いたしました軍事境界水域も認めない、こういう立場をとってきております。  他方、今回の事件があった水域は、御指摘のとおり若干の食い違いがあるわけでございますけれども、おおむね北朝鮮が設定いたしております経済水域の内部であるという点については、ほぼそうであろうというふうに私ども見ておるわけでございますが、この水域内において北朝鮮側が何らかの取り締まりを行うことができるという立場に立っている場合にいたしましても、停船させるために無防備の漁船に向けて直接銃撃し、人命喪失に至らしめるような行為自体は過剰な措置の疑いがあるということは否定できないというふうに考えております。  しかし、いずれにいたしましても、現在正確な事実関係を私ども把握するに至っておりませんので、目下そのような正確な状況の把握に努力しているところでございまして、このような段階で確定的なことを申し上げることはできないということは御了解いただきたいと思います。
  209. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今答弁にもありましたように、軍事境界線というのを設けられた。しかも普通ですと、経済水域もそれぞれの沿岸国の領海、例えば十二海里などを基準としながら二百海里とか、二百から十二を引いた百八十何がしとか、そんなところが問題になるんだと思うのですが、北朝鮮の場合にはソ連との国境線あるいは韓国との国境線から一方的に基線を引いて、そこから五十海里ですかの間を一方的に軍事境界地域、そういうふうに設定して、それから外を経済水域としているというふうにあるわけです。  もう一つには、先ほど微妙に違う、いわゆる北緯、東経が違っておるわけでありまして、前のソ連によって韓国機が不法にも撃ち落とされた、それがかなりデータが詳細に残っていて事実が確認できたということでありますが、今回も海上保安庁に連絡があった。海上保安庁がもしそれをちゃんと記録にとどめているとするならば、明らかに今回の北朝鮮の主張とは食い違いがあるわけであって、海上保安庁への連絡が正しいとするならば経済水域そのものに入っているか入らないか極めて微妙な段階にあると言ってもいいのであります。  経済水域内の、ここに図がありますが、こうした梯形的なものがあって真ん中に入っているというのであれば一目瞭然ではあるけれども、ここの一番端っこのところであって、入っているかどうかすら極めてあいまいもこ、そういうところでこの事件は起こっているのだと思うのです。  また、一歩も二歩も譲ってであっても、先ほど来のようにイカ釣り漁船が警備艇にぶつかって逆に警備艇を傷つけるなんということが可能なのかどうかということも常識的な理論からすれば極めて怪しいところであって、そういうことから、我が国は北朝鮮とは国交はないかもしれないけれども、政府としては毅然とした態度、姿勢、方法をもって何らかの処置を講ずるように具体的な対策を講じてもらいたいと思うわけです。  そして二度とこのような不幸な事例が起こらないようにするため、行政各部を指揮監督する立場にある政府としても漁船の安全操業に向けて何らかの対策をとらなければいけないだろうと思うわけです。という意味で、国内的、国外的に向けての政府の対応策をお尋ねしたい。  それからもう一つには、細かいですが、海上保安庁、水産庁にあわせてお答えいただきたいのですが、今回の事件後直ちにとった処置及び今後の日本漁業操業の安全性確保のためどのような処置をとるおつもりであるかお尋ねをしたい、こう思います。
  210. 高島有終

    ○高島説明員 外務省といたしましては、この事件発生の第一報を受けまして、放ちに日本赤十字社を通じまして負傷者に対する適切な救助措置と他の乗組員の安否及び事件が生じた状況の照会を行ったわけでございます。  その結果、本日午前一時過ぎに朝鮮赤十字会より日本赤十字社に対しまして電報で先ほど先生御指摘になりましたような内容の報告があったわけで、それによりまして船長の死亡も確認されたという極めて遺憾な事態が判明したわけでございます。外務省といたしましては、引き続きこの事件の真相究明に努力するとともに、その結果によって対応も考えていきたいというふうに考えております。  しかし、いずれにいたしましても、先ほど御説明いたしましたように北朝鮮とは外交関係がございませんので、当面、北朝鮮に対しましては、遺体及びその他の乗組員の早期帰国につきまして赤十字等を通じまして今後とも働きかけていきたいというふうに考えております。なお、本日早朝、まさにそういった趣旨で再度赤十字本社より朝鮮赤十字会に対しまして電報を打っていただいたというところでございます。
  211. 姫野浩

    ○姫野説明員 海上保安庁は、今回の第三十六八千代丸の被銃撃事件の情報を入手しまして直ちに日本海中部海域の大和雄付近を哨戒中の巡視船「のと」を北朝鮮経済水城の東側海域に進出させまして、付近海域で操業中の日本イカ釣り漁船に対して傘捕防止指導を実施いたしました。また、管区海上保安本部に対しまして、この種事件の再発を防止するため地元の漁業固体等を通じて出漁漁船に一層の指導強化を行うよう指示いたしました。  海上保安庁は日ごろから漁船の臨船指導や海難防止講習会の機会をとらえまして拿捕防止など安全操業について指導しております。また、日本漁船の出漁状況等を勘案して巡視船を適宜配備し、傘捕防止等の安全指導に努めているところでございます。
  212. 中村晃次

    中村説明員 現在北朝鮮海域に接続しております日本海におきましてはイカ釣り漁業の最盛期に入っておりまして、三十トン以上の中型のイカ釣り漁船だけでも八百隻余りが操業しているという状況でございます。これらの船が北朝鮮水域に入るというようなことになりますと、不測の事態を生じかねないということで、水産庁といたしましてはこれまでも機会あるごとに関係業界を通じまして北朝鮮水域での操業自粛ということにつきまして指導を頂ねてきているところでございます。また、日本海に派遣しております水産庁の監視船を通じましても、毎日時間を決めて定時通信というのを各漁船に流しておるわけでございますが、そういうような場を使いましてまた操業指導をしているというような状況にあったわけでございます。  ところが、七月に入りまして北朝鮮からの傘捕が続き、また銃撃というような最悪の事態も出てきましたために、水産庁といたしましては昨七月三十一日付をもちまして水産庁長官名で各関係都道府県知事及びイカ釣りの全国団体でございます全国沖合いかつり漁業協会に対しまして特段の操業指導を行うように通達をしておるところでございます。また、今後ともこのような不祥事件の生じないように今までにも増して指導を強化してまいりたいというふうに考えております。     〔高村委貞長代理退席、委員長着席〕
  213. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 次に指紋押捺の問題についてお尋ねをしたいと思います。  初めに、指紋問題など在日韓国人の法的地位及び処遇改善措置の見直しに関連してであります。この指紋問題については既にたびたびお尋ねしているところでございますけれども、韓国の大統領の訪日が間近に辿ってくる中で指紋押捺拒否の運動もまた大変高まってきているところでありまして、そういうところからお尋ねをしたいと思います。  さて、新聞の伝えるところによりますと、去る七月七日ソウルで行われました日韓外相会議の席上、全大統領の今秋日本公式訪問が合意されたようでございます。そして全大統領の訪日と関連しまして、日本外務省は韓国外務部に対して在日韓国人の法的地位と処遇を改善する措置を講じたい旨の日本政府の立場を伝達し、そして韓国側からは特に外国人登録法による登録証発給時の指紋押捺の廃止等が指摘され、日本側は大統領の訪日時に処遇改善の明白な約束を行った後段階的に改善したいとの態度を表山したと伝えられております。  そこで外務省にお尋ねしたいのですが、こうした新聞報道というのは事実を伝えているものでしょうか。どうでしょうか。
  214. 高島有終

    ○高島説明員 去る七月七日の日韓外相会談におきましては、今御指摘ございましたように全斗煥大統領のこの秋来日が合意されたことが最も重要な点でございましたが、さらに二国間問題及び国際情勢についても広範な意見の交換が行われたわけでございます。  その中で韓国側から指紋押捺問題を含みます在日韓国人の待遇問題につきまして強い関心が示さされたことも事実でございます。これに対しまして、安倍外務大臣からは、これまで日本側が種々行ってまいりました努力を説明いたしますとともに、現状におきまして我が国のこれ以上の改善についての非常に困難な事情をるる説明し、韓国側の理解を求めたというのが実情でございます。したがいまして、今先生御引用になられました新聞報道の内容は事実に合致しているというふうには考えられないと思います。
  215. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今の御答弁ですと、新聞の記事は正確でないというふうにお聞きしたのですが、報道した新聞社としては、これは大変大きな問題だと思うのです。私にとっては、新聞が正しいか、外務省の答弁が正しいかはわかりませんけれども、新聞は真実を伝えるんだ、少なくともそうした気持ちを持って伝えておりますから、しかも小さな活字ではないのでありまして、大変大きな活字をもってこうして報じておるわけです。  例えば、ここをごらんいただきたいと思いますけれども、「全大統領訪日契機に」ということで、「在日韓国人の処遇改善本格的に推進へ」というふうな形、これは小さな記事ではありませんで、相当な記事をもって書いているわけです。こうしたことを書く以上は、それなりのかなりの確たる何かがあって書くのだろうと思うのですが、もしなければ、これは新聞社がうその記事を書いたということになりかねないことで、これは対新聞社との関係を合わせましても寛大な問題になるのだろうと思いますけれども、その点を踏まえてもう一度外務省から御答弁をお願いします。
  216. 高島有終

    ○高島説明員 先ほど私が御説明したとおりでございます。
  217. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 そうしますと、私の方からこれ以上はわかりませんが、いずれこれは新聞社対外務省の答弁との関係ということで問題になってくることだと思います。  そこで、法務省にもう一度お尋ねをしたいと思うのですが、これまで一貫して法務省の御答弁があったわけです。しかし、それからまたさまざまな動きもありますので、その変化を踏まえまして、改めまして、外国人登録法の指紋押捺あるいは登録証明書の常時携帯、そうした規定を見直すよう検討するお考えはないかどうか、お尋ねをしたいと思うのです。  例えば、段階的に見直し是正するものとして、登録証明書の切りかえ交付の期限を現行の五年から七年に延ばす、また指紋押捺の年齢を現行の十六歳から十八歳へと引き上げるなどのこうした措置というものを検討されようとする、そういう考えはございませんでしょうか。
  218. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  現行の外国人登録法は、委員もよく御存じのように、今から一年八カ月前に国会において慎重な御審議を経まして、その結果、施行されておるものでございます。したがって、我々としましては、現行の外国人登録法を的確に運用したいと考えている次第でございます。  今委員御指摘の、五年を七年に、または十六歳を十八歳にいかんということでございますが、前回の改正におきまして十四歳が十六歳になり、それから三年が五年になったわけでございます。この三年を五年に延ばした、その五年に延ばしたのをさらに七年に切りかえ申請の期間を延ばすことが可能かという問題でございますが、我々としましては、今日までの考え方では、もう五年が限度である。また、登録証明書の耐用年限ということから考えましても、もう五年が限度であるし、またそこに張りつけられるいわゆる写真でございますが、写真も七年ということになると余りに老朽化してしまうということでございます。  それから、十六歳を十八歳にということでございますが、十四歳から十六歳にしたとき、我々、国会においてもいろいろ表明し、その後御質問があったときにもいろいろ答えたわけでございますけれども、まず同内的に言いまして、民法、それから労働法、それから自動車免許法等々を見ましても十六歳というのが一つの基準になっておりまして、やはり十六歳というのは社会的に一人の人間として行動を開始する年ということでございます。  ちなみに、諸外国の事例というものをここで考えてみますと、アメリカは十四歳でございます。オランダ、ベルギーは十五歳でございます。英国、フランス、ドイツは十六歳でございます。そして、国際的に見ても十六歳というものは大体エスタフリッシュされたものかなというふうに考えておりますが、一方、国際民間航空機関でございますかICAOにおいても、これは旅券制度についてメンションしておるわけでございますが、要するに、十六歳未満の者は両親の旅券に併記をする、十六歳からは自分で独自の旅券を持ってもらいたいというレコメンデーションがなされておりますけれども、やはり国際的に見ても、十六歳というところから一人の独立した社会人として立っていくのではないかと考えております。  また、ちなみに一言付言させていただきますと、指紋問題につきましては、最近の横浜地裁で判決がございまして、そしてこれは合理的必要性のあるものであるということを判決文の中に記載されてございます。
  219. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今の外国はというのは、諸外国すべてがこの指紋押捺をさせておるわけではございませんから、その事例n件も、法律上指紋押捺を認めているその同だけの問題だろうと思います。  特にまた日本と韓国の場合、例えば大統領が日本にお見えになるというときに、天皇のお言葉云云というふうなことが言われておりますのも、いわゆるほかの外国とは違うという前提に立っているんだと思います。ですから、こうした指紋問題を論ずるときも、いわゆる外国がというのと、そしてまた韓国なり北朝鮮なりあるいは旧台湾の人たちといったものとは、いわゆる違った尺度、感覚というものが必要だろうと思います。  時間の問題もありますので進みますと、二番目に指紋の押捺拒否と告発の有無の問題についてお尋ねします。  神奈川県茅ケ崎市居住の県立高校二年生の朴麻衣さんが指紋押捺の拒否をしました。神奈川県下では通算六人目でございます。この朴麻衣さんを支援する政党色のない市民団体として「指紋拒否を考える会」が発足したと地元の新聞は報じております。このような事例が広がりますと、指紋押捺拒否者はさらに広がる可能性が強いわけです。現在のところ、茅ケ崎市では外国人登録法に違反しました朴麻衣さんを告発してはおりません。なお、神奈川県国際交流課の調べによりますと、ことし十月から来年にかけまして外務法による登録証明書の切りかえ交付を予定されている者は一万八千人と言われ、これから続くものと予想されまして、地元紙は指紋拒否者の続出を予想しております。このため地元の自治体も集まってこの対応を改めて協議しているようでございます。  そこで、全国的には外登法による登録証明書の切りかえを受ける者が現在何名ぐらいなのかなということがまず第一点。法務省お尋ねをしたいわけです。  その上で、時間ですので一括してちょっと質問させていただきたいのですが、これは法務省お尋ねします。  外国人登録法に関する事務は、地方自治法別表第三の㈹にありますように、国の機関委任事務であり、「都道府県知事が管理し、及び執行しなければならない事務」とされております。国の機関委任事務については、その事務に関する限り地方公共団体の執行機関は国の行政機関の中に組み入れられ、国の各省庁の大臣に対して下級機関として位置づけられているわけです。したがって、外務法に関する機関委任事務については、都道府県知事は法務大臣の一般的な指揮監督を受ける立場にあります。  そこで、法務大臣は、予想される大量の指紋押捺拒否者に対する告発等の措置について各都道府県知事に対してどのような指揮監督権をこれまで行使してきたのか、また今後行使されようとするのか、お尋ねをしたいと思います。
  220. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  いわゆる来年の大量切りかえ時に切りかえをしなければならない人は約三十六万人でございます。  それから第二の御質問についてでございますけれども、機関委任事務についてでございますが、我々は地方の市区町村に対して、外国人登録法の事務をやっていただきたいということで機関委任事務をしております。そのために地方自治体においては外国人登録法に基づいて的確にこの事務をやっていただきたいと考えております。そしてその結果、例えば指紋押捺拒否者などというものが出た場合でございますけれども、これはやはり告発してもらわなければ困りますよということも今依頼してございます。また、外国人登録法事務取扱要領というのがございまして、地方自治体にこの線でやっていただきたいというところにもそれを書いて、ひとつしっかりやっていただきたいということを依頼してございます。  大量切りかえに際して、指紋押捺拒否者が大勢出るかもしれないという御発言でございますけれども、申すまでもなく我が国は法治国家でございます。国会の御審議を経まして正式に成立した法律を我々は執行しているわけでございまして、外国人が、その数の多い少ないを問わず、日本の国法に違反して、また違反する活動をするということはやはり好ましいことではないのでございまして、いかに世の中が国際化されても、やはりけじめというものがあるのではないかと考えておる次第でございます。
  221. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 そこで、最後なので一括して御質問をさせていただきたいと思います。  まず、大量の指紋押捺拒否者が出た場合であっても、自治体としては外准法に違反する指紋押捺拒否者をすべて告発しようとするのかどうか、これは法務省との対応も絡んでくるかと思うのですが、現場、窓口の者は、こうした法違反者が明確に出た場合に告発するのかどうか。  第二点、またすべての拒否者を告発できると考えているのかどうかです。十人、二十人ではなくて、仮に百人、千人、五千人とまとまった場合に、そういうことができ得るとお考えなのかどうか。また、外行法違反であれ、法違反者に対して告発したりしなかったりというふうなあいまいな姿勢ですと、一般的に見て公平の原則を欠くことになるのではないか、こう考えるわけです。既に先例として昭和五十五年には、前回の質問のときに言いましたように、法違反帝が千五百二十九作出たのに対して、告発は二町七十件にしかすぎなかったわけであります。  今回はそれ以上の規模で広がろうとしてきているわけです。現実には告発された人、されない人では大変な違いが出てくるであろう、そうしたような不公平な取り扱いというのは許されるものかどうかということであります。また、告発をしたからといって、すべて裁判になり有罪になるとは限りませんけれども、いずれにしろ、どんどん告発する、どんどん裁判するということが現実可能なものかどうかという気がいたします。  それからもう一つ、指紋押捺を拒否しました神奈川県下居住の李相鎬さんという人のせりふが地元の新聞に載っております。県は一方で開かれた県政、民際外交などをうたっているのに、他方で役所で告発を確認するというのでは二枚舌と言われても仕方がないと、マッチポンプ的な自治体行政のあり方を批判しております。確かに、李相鎬さんを含め、指紋押捺を拒否した人々は、告発され有罪の判決を受ければ、当然のことながら今後の人生に大きなハンディを伴うことになるわけです。  このような事態について自治省はどのように考え、どのような対策をとるつもりなのかという問題もありますが、そしてあわせて国の機関委任事務としての外登法の事務を管理及び執行する立場にある都道府県知事と、委任する側の法務大臣の見解が大変に大きく違っているところに現在の混乱の一つの原因があるわけです。とするならば、自治省設置法第三条に「自治省の任務」が書いてありますが、自治省は国と地方公共団体の連絡を図ることが任務だとあるわけです。まさに自治省は今回のような大臣と知事のそれぞれの違い、見解を調整しまして、よりよい解決策を見出されるよう、このようなときにこそ連絡役としての役割を担うべきものではないかというふうに考えますので、一括しまして法務省、自治省のお答えをいただきたいと思います。
  222. 田中常雄

    田中(常)政府委員 たくさん御質問がございましたので、そのうち法務省の部分と自治省の部分、大変お互いにまざり合っていることもございますので、今まずマッチポンプの話から申し上げますと、そのマッチポンプという意味が余りよくわからないのでございますけれども、しかし李さんという人が指紋押捺を拒否した、この人は十六歳か十七蔵の方だと思いますけれども、日本国に居住する以上、ちゃんと日本国の法令に従う、そしてそれを守るのだということが外国に生活するための一つの基本的に考えておかなければならない問題であるから、やはり小さいときからちゃんとそういうことは守ってもらわなければならない、そういうふうに考えております。
  223. 小島重喜

    ○小島説明員 お答え申し上げます。  外国人登録法の問題で、自治省の役割として国と地方公共団体の連絡役、こういう問題でございますが、一般的な任務としては、そういう国の考えをできるだけ地方に伝え、あるいは地方の考えを国政の中に反映する、そういう面での調整役的な任務としてはございます。  ただ、本件の場合は、はっきり外国人登録法という法務大臣所管の仕事でございます。私どもといたしましては、とにかく現場が混乱をしないように、法務省におきまして都道府県なりあるいは市町村なりを十分に指導していただきたいというのが私ども立場でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  224. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 最後に。  窓口に座っている公務員を見ますと、そこに通ってくる住民からすれば、自治体の固有の仕事をしているのか国の機関委任事務としての仕事をしているのかわからないわけでして、特に知事さんになれば偉い、その偉い知事さんが、外国人登録法というものが現にあるけれども、そうしたものは好ましくないからもう指紋押捺は要らないのではないか、あるいは証明書の常時携帯は要らないのではないかというふうな文書を国に出した。そしてまた、それにあわせて、その自治体のかなり立場にある人が住民を相手に、そうした同じようなことを話した。そこで、今までは指紋押捺をしていた人も、今度はしなくていいのではないかというふうにあおられて拒否した。そうして一回拒否したら、後になって自治体の人がまた相談し直して、やはり告発することに決めた。最初は拒否してもいいような言葉を言っておいて、後でやはり告発に決めたと言われると、拒否した人の側から見ると、えらいことになってしまうということなのです。  同じことが、先ほどの銃撃事件のときもそうであったのですが、協定が切れているからこうした問題が起こったのです。そのために北朝鮮が協定を結びたいというときに、入管の立場として好ましくないからと言って断ったわけであります。断るというか、好ましくないと言ったから北朝鮮はよこさないわけで、結果的にそういう被害者が出てくるわけでございます。言うならば、我々は政府的な立場ではなくて、もっと国民、住民の立場に立って、被害を受ける方の立場に立って、こうしたことを改めてもっと検討してもいいのではないかと思います。  時間がございませんので、改めて指紋の問題は次のときに質問させていただきたいと思います。  終わります。
  225. 宮崎茂一

    宮崎委員長 野間友一君。
  226. 野間友一

    ○野間委員 時間に制約がありますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。  まず民事局関係から質用したいと思いますが、今六十年度の予算要求についての概算要求をまとめられる大変重要な時期でありますので、私は、法務局関係についてまずお尋ねしたいと思います。  行管の窓口行政サービス調査、ここでは法務局、特に登記所がワーストツーというような汚名を受けておるわけであります。私も仕事の関係でよく登記所を知っておりますが、何といいましても仕事の量が非常にふえておる。ところが庁舎の環境が非常に劣悪である、あるいは慢性的な人手不足、こういうものが大きな原因であり理由であるというふうに私は理解しておりますが、いかがでしょう。
  227. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 おっしゃいますとおり、登記所では事件が年々ふえております。それに対しまして、人員が増加をしない、それからもろもろの設備などについてもまだ整備を要するものがあるという状況下にありますために、職員が毎日頑張っておりますけれども、多数のお客さんがおいでになることの関係上、おいでになる方の目から見ると、どうも設備が悪いというような印象を与える結果になっていると思っております。
  228. 野間友一

    ○野間委員 だから、職員がいかに善意で、どんなに努力をしても限界があると私は思うのですね。  そこで、今の慢性的な人手不足の問題ですが、全法務の組合では、登記所関係で約一万一千強人手が不足しておる、こういう要求というか、そういうのをまとめています。それについて法務省はどういうふうに考えているのか、お伺いしたいと思います。
  229. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 法務局の実情から申しますと、相当数の人手不足であることは否定しがたいところでございます。組合の方では、組合の計算で一万一千何名かの増員が必要であるという見解を持っておりますが、それも一つ考え方であろうと思います。私どもの方は、現実問題といたしまして現在の職員の倍ということまでは必要ないかもしれないし、またその他のもろもろの施策とあわせて増員というものを考えていかなければならないという立場から最小限度の人数を計算いたしますと、三千人を超える人手はそれでもなお不足するだろうという感じでおります。
  230. 野間友一

    ○野間委員 三千四百というふうに民事局の大体の目安を立てておるようですが、それは間違いありませんか、今三千数再とおっしゃいますが。
  231. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 そのとおりでございます。
  232. 野間友一

    ○野間委員 五十九年度は六次の定員削減がありますから、差し引きして純増はたしか三十八名だったと思いますが、いかがですか。
  233. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 五十九年度の増員は純増三十八名でございます。
  234. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、組合が一万一千強足らぬと言うわけですね。法務省では三千四百名足らぬ。法務省の調べでもそうなるわけですね。一年間に三十八名ふやしたとしても、一体どのくらいかかりますかね。百年近くかかるわけですね。ですから、こんな状態が続く限りワーストツーの不名誉な記録はどうにもならぬ、不可避的なものだと言わざるを得ないと私は思うのですね。  毎年職員の増員については国会でも請願が採択されておるわけですけれども、三十八名やそこらでは、とてもじゃないが足らぬ。当たり前の話なんです。だから、国民にサービスをする行政サービス、行政需要が随分ふえていますから、その中で抜本的に法務省としても考え直す必要がある。百年近くもかからなければささやかな民事局の計算も満たすことができないわけですからね。法務大臣、いかがですか。
  235. 住栄作

    ○住国務大臣 御指摘のとおり、私が一番心配しておるところでございまして、結果が三十八名、どういうことだ、これもよくわかるのでございます。それも、各省大きな減員の中で増員をしておる、こういうことも非常に努力の要ることでございまして、私ども、来年度の問題としましても、非常に苦しい中でございますけれども、この増員の問題、登記所、法務局の施設整備の問題、あるいは事務の能率化、合理化の問題、そういうことを含めて総合的に最大限の努力をしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  236. 野間友一

    ○野間委員 大変苦しいと思いますが、抽象的にはそういうことしか言えないと思うのです。やはり足に合わせて靴をつくらなければならぬ。靴に合わせて足をつくるわけにはいかぬわけですからね。ですから、今人件費の抑制ということで盛んな行革の攻撃がかけられておりますけれども、行政需要がうんと伸びており、しかもワーストツーというような本当に不名誉な記録を持っておるわけですから、そこは大幅にとにかく人員増を、ぜひ不退転の決意で法務大臣として臨んでいただきたい、こう思うのです。  和歌山でも調べてみましたら、現行百四十、必要人員二百六十六。百二十六不足しておるというふうに言っておりますし、実は私、この間、港の登記所に行ったのです。ここではたしか三十六名だったと思いますが、ここの所長や東京法務局の最高幹部の一人は、東京管内であと四千人の増員が必要だと言うのですね。民事局では全国で三千四百という話でありますけれども、東京だけでも四千人必要だと私に言っておりましたが、率直な意向なんですね。官房長、予算をとるのに本当に不退転の努力をしていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  237. 根岸重治

    ○根岸政府委員 予算の面におきましてももちろんでございますが、特に増員につきましては、法務省が人を中心として動いておる役所だけに最重点項目としておるわけでございます。私の立場からいたしますれば、法務局だけに人を回すわけにもまいりません。刑務所その他、保護関係のところにも人を回さなければいけないわけでございますが、乏しいながらも、結果から見ますと、法務局に一番、それはそれなりに人員は回しておるわけでございます。現在の時世で一挙に何万人という増員をもらうわけにもいきませんのですけれども、最大限の努力を尽くして、一名でも多く増員を確保したいというふうに考えております。
  238. 野間友一

    ○野間委員 何ともお気の毒、大変でしょう。  私は港の法務局に行って調べてびっくりしたのですが、これは比較的新しい建物ですね。ところが、待合というか申請人がたむろするところには三列に長いすがありますが、それには座り切れないで、後ろに突っ立っておるわけです。しかも二階ですから、階段の上がりおりするところまでも密集しているわけですね。ここで一時間ないし一時間数十分待たされる。ここにはクーラーもないのです。びっくりしましたよ。三十三度以上になるというのです。しかも職場の中でも、若干クーラーはありますけれども、クーラーの当たらない場所がありますね。ここでも三十三度以上になる。だから、汗は出るわ、とにかく仕事は非常に忙しいわでいらいらしてくる。どうしても対応がお客に不愉快な気持ちを与えるという場合もあり得るであろうというような話もある人がしておりましたけれども、こういう状態です。  私、せっかく行ったついでですから、ここのクーラー設備、また全国で調べてみましたら、クーラーが必要で、しかもない庁が五百十七庁あるのですね。五十九年度に設置したのがたしか二十庁です。これまた何百年とかかるわけですね。どうにもならぬわけです。どうされますか。
  239. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 おっしゃるとおり、クーラーを入れなければならない庁が五百庁以上あるわけでございまして、例年の数でいきますと二十庁程度ずつが入っていくということになりますので、非常にテンポが遅いということで、一庁でも多くしたいということで努力をしてまいりたいと思いますが、何分にも予算全体の制約がありますので、一挙にということにはまいらないかと思います。  なお、港の出張所につきましては、ただいまお話がございましたように、クーラーが二台入っております。普通の事務室とかいうようなことですと、その二台で十分に冷房が効くようなことなんでございますけれども、ただいま御指摘ございましたように、ピーク時には二百人とか三百人とかという人が押し寄せますので、その人いきれでクーラーが効かないという状況にあるようでございます。こういうところにも、序数をふやすばかりでなくて実情においては台数もふやしていかなければならぬという課題を抱えておりますが、予算のできるだけの執行を考えまして一庁でも一台でも多く配置するように心がけてまいりたいと思います。
  240. 野間友一

    ○野間委員 時間がありませんので、余り詳しく触れるわけにいきませんけれども、老朽した庁舎、それから増築がどうしても必要な庁舎、これまた大変ありますね。これも私調べてみましてびっくりしたのですけれども、今調査費がついておるところも含めまして、それから差し引きしますと、それでも百七十八庁が緊急に整備が必要だという庁なんです。これまた異常なんです。  ですから法務大臣、設備は悪いわ、行政サービスしかければならぬお客さん、申請人がしょっちゅう来るわけでしょう、そこでクーラーのない暑いとこうで一時間以上待たさなければならぬ、人手が足らぬ、大変な混乱状態なんです。  特に法務省の中で登記所、ほかにもたくさんありますけれども、これはもう大変な状態だと思うのです。これは金がないからといってそれで済む問題では決してないと私は思うの一です。ですから、一遍実情を、民事局では十分把握されておると思いますが、これを踏まえて、労働者だってたまらぬですから、ここは現職中に死んだ人が随分ふえておるのです。それから長期の休職者もかなりふえています。だから、ぜひ実態に合ったように、これは労働者のためにもなるし、また国民に対するサービスという点から非常に重要だと思いますので、再度不退転の決意を法務大臣から聞かせていただきたいと思います。
  241. 住栄作

    ○住国務大臣 私も就任してから登記所の実態等も見ております。大変窮屈で苦しい、お客さんもこれは大変だろう、こういう事態は認識をしております。私以上に民事局長以下認識しておるわけでございます。とにかく、これはもう一人でも、あるいは少しでも多くの金をどうして確保するか、そして改善をしていくか、この一言に尽きるわけでございますが、同時に、やや長期的に見ましても、例えば登記所における登記事務の処理の仕方等につきましても根本的に検討もしてみる必要があるのではないだろうか、こういうことも考えておるわけでございます。
  242. 野間友一

    ○野間委員 検討は検討の課題としても、今急場の間に合いませんので、クーラーにおいては何十年かからなければ完備できないような役所はないと私は思います。だから、これは恥ずべき状態だと私は思いますので、私は大蔵省もプッシュしますけれども、徹底してやっていただきたいと思います。  時間がありませんので、あと保護局に関してお伺いしたいと思いますが、仮出獄の制度、これの適正かつ積極的な運用について、これは通達が出ていますね、新聞報道にもあります。ここで、一面では一日も早く社会復帰をさせていくという課題が非常に重要だし、それなりに、ずっと率が減っておったのを是正するという意味で私は評価するのです。ただし、そのことは保護観察制度あるいは機能、これらの強化と密接に結びついております、これを放置したままで単に早く出すということだけではどうにもならない、私はそう思うのです。特にいろいろな統計等を調べてみますと、暴力団の組織関係者あるいは覚せい剤の事犯対象者、こういうものも今の保護局の方針であります適正かつ積極的な運用ということの中でかなり対象者が出ておるわけです。こういうものについても適切な保護観察の機能を発揮しなければ、これまた大変なことになるわけです。現にいろいろな支障が出ております。  そこで、私お聞きしたいのは、これはある新聞では、刑務所の経費の節減がそういうことになったのではないかというふうに書いてありましたが、それは別の問題として、せっかくこのような積極面を強化されるなら、保護観察の制度、保護観察所あるいは更生保護会というものを整備し完備するということなしに、受け皿なしには弊害が出てくると思いますが、いかがでしょう。
  243. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 仮出獄の適正かつ積極化につきましては、この数年来、当局におきましてその方向で検討をして指示をしてきたところであります。この点は、私から今ここで申すまでもなく、刑務所から釈放される者は、満期釈放と仮出獄とこの二つしかないわけですけれども、その釈放者全体を見まして、刑事政策的にいかなる方策が適切かという観点から考えておるわけであります。  そういうことで、私ども仮出獄の適正かつ積極化の第一の点は、仮出獄の選択について誤りを来さないということが何よりもまず重要であろう。例えば、ただいまちょっとお話が出ました暴力団とか覚せい割とかいろいろあるわけでございますが、それらの者が社会へ出でまた暴力団に戻る、あるいは再犯の傾向が著しい、こういう者につきまして、安易に仮出獄を許可するということになりますれば、そこにまず問題がある、そういうことは万々ないようなことを配慮しながらこの施策をやりたいと考えておるわけであります。  第二に、御指摘のとおりその社会内処遇の保護観察をいかに適切にやるかということでございます。そこで、これらにつきまして、私どもといたしましては、従来のいろいろな仮出獄関係の運用においてやや消極に過ぎた面がなきにしもあらずということを反省いたしまして、それに見合う、できる限り現実に合う、また社会の不信も招かない、そういう形でこの制度の運用を考えておるということであります。  そこで、保護観察の充実強化につきましては、保護観察官を含む保護観察所の職員の体制、それからボランティアである保護司の皆さんにつきまして、その理解と協力を十分に求めましてやっていく、こういうことで考えております。  一応私どもとしては、それらのことにつきまして、昭和五十九年度、本年度の予算におきましても経費その他の面におきましてそれなりの成果を認められたというふうに考えておりまして、これで十分だとは思っておりませんが、今後さらにできる限り努力してみたいと思っております。
  244. 野間友一

    ○野間委員 仮出獄の取り消しとかあるいは仮出獄中に再犯を犯すという事例も以前に比べてふえておるやに私は現場の人からも聞いておりますし、かなり出すということになりますと、今後もそういう危険性が非常にふえてくるという点で、どうしてもやはり受け皿づくりが大事だ、今も局長も言われましたけれども、これをしなければならぬと思う。予算は若干伸びておると言うが、微増なんですね。しかし、これは数からすれば逆に減っていると私は言わざるを得ないと思うのです。私は努力を認めないわけじゃないのですよ。  しかし、現場の人が大変なんです。だから、保護観察所の保護観察官、これらの増員ももちろん必要ですね。アメリカの約三倍ぐらい手持ちを持っているようです、日本の保護観察専門の方は。足で本当に地道に一人一人の処遇を検討する、そういうことが非常に難しい。どうしても保護司さんに任せっきりというのが現場では非常に多い。確かに非常に地味な仕事なんです。大変な仕事なんです。大事な仕事なんです。そういう点を踏まえまして、保護観察官をぜひ大幅に増員していただきたい。  それから更生保護会、ここでは現場の人に聞きましても、例えば宿泊――中間の処遇をしますね、この中で、今までは例えば三十日宿泊させて食事を提供しておった。これが二十日ぐらいで出てもらわなければならぬ。宿泊だけの場合でも五十日のものが今ではもっともっと短くして出てもらわざるを得ない、受け皿がないから。ここの費用もふえてないから、そういう事態が生まれておる。そうしますと、保護観察官、保護観察所としては非常に不安だし心配するわけです。不十分なままで出さざるを得ない。  これは保護助長は民間からの寄附金等これに依拠してここから知恵を絞ってというようなことも言っておられますけれども、それはそれで大事な問題としても、こういう大事な仕事に国の補助をもっとつけて本当に更生できるようなそういうものを文字どおり実質的にも保障していかなければならぬ非常に重大な責任があると私は思うのです。非常に地味な仕事です。官房長、こういう部門においても増員あるいは予算の面でも十分な要求を強くやらなければ、積極的に運用するのはいいとしても、これまたいろいろな弊害が出てくると思うのですが、いかがでしょう。
  245. 根岸重治

    ○根岸政府委員 先ほど出ました法務局の問題にいたしましても、保護観察あるいは更生保護関係の機関に対する関係におきましても、いわゆる金目の予算の面でも人員の面でも非常に厳しい情勢でございますが、今委員御指摘のような事情は私どもも十分認識しておりますので、この情勢下にあってできる限りの努力をして何とか一歩でもその充実に心がけたいというふうに考えておるわけでございます。
  246. 野間友一

    ○野間委員 時間がありませんので、中途半端な質問になりましたけれども、実際はどっちにしても切実なのです。法務大臣、これはいつも出ているのです。請願採択されておるのです。それから入管局もそうですけれども。何遍も言うようですが、不退転の決意で大蔵にかけ合って、法務大臣としての責めを果たしていただきたい、このことをお願いし、決意のほどを最後に聞かしていただいて終わりたいと思います。
  247. 住栄作

    ○住国務大臣 野間さんのおっしゃること、私どもその実情は十分理解しておりまして、同じようなことを言いながら財政当局と努力をしておるわけでございます。いずれにいたしましても、これは一歩でも二歩でも前進したい、こういうことでございますので、最大限の努力で頑張ってまいりたいと思います。
  248. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  249. 宮崎茂一

    宮崎委員長 林吾郎君。
  250. 林百郎

    ○林(百)委員 最高裁判所、来ていますね。御存じのとおり再審によって死刑の判決が確定した者が無罪になる。最近は松山事件もあったのですが、現在の刑事訴訟法では、まさか死刑確定した者が無罪になるということを想像し予想しての法的な完備はされていないので、いろいろの点で問題が出てきているわけです。いろいろ問題があるうちの一つとして、再審の費用の補償の問題について、再審の請求審の薮用が全然認められておらないという点について、これは免田事件の弁護団も声明を出しているのですが、どういう点について何かお考えになっていますか、何とか改善しなければならないとか、あるいはこういうことをしなければならないとか。
  251. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 再審請求手続におきまして要した費用でございますが、これは費用補償の対象になってないということは最高裁判所の判例があるところでございまして、実務はこれに従って行われているわけでございます。  なお、これについての改善ということでございますが、この点につきましては、立法問題でございますので、私の方では意見を述べることを差し控えさしていただきたいと思います。
  252. 林百郎

    ○林(百)委員 それは立法問題だけれども、事の責任は裁判所にあるわけですね、再審請求の公判についての費用の補償は外すというようなことは。だから、最高裁判所自身もそういう点を法制審議会か何かにかける必要があるのじゃないですか。ということは、例えば免田君の事件を見ましても無罪放免になるまで三十四年六カ月かかっているのですが、再審請求の公判というのですか、これに二十八年六カ月かかっているのです。あなたも御存じのとおり、ちゃんと裁判官も検事も弁護人も被告人も立ち会っているわけですね。公判と何ら変わりないのにどうしてこれだけは認めないのでしょうか。  その点をいささか緩和するような意味で、免田事件の熊本地方裁判所八代支部の決定の中で、これは直接請求審の費用ということではないのですが、いよいよ再審開始の決定が出てからの準備態勢のところなんですけれども、公判準備及び公判期日に出頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護人であった者に対する費用にかかわるものについて決定ではこう言っているのです。  「刑事訴訟法一八八条の六によれば、同法一八八条の二第一項又は一八八条の四の規定により補償される費用の範囲は、被告人若しくは被告人であった者又はそれらの者の弁護人であった者が公判準備及び公判期日に田頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護人であった者に対する報酬に限るものとされている。」ただし「昭和五六年二月一九日、同年四月三日、同月一八日に出頭した。費用についても、右の理由からこれを同条により補償すべき費用の範囲に含ましめることはできないといわざるを得ないが、その実体を考えれば特に弁護人の報酬額を定めるについて勘案すべき要因として考慮するのが相当である。」というような、弁護人の費用として考慮する要因になり得るのではないかという意味のことが、ストレートでは言ってませんけれども、こういうことで請求審の費用に対して何らかの道を講じなければならないということを言っているのじゃないかと思うのですが、最高裁の方ではこの点について考慮なさらないのでしょうか。  それで、もしあなたの言うように。法を改正しなければならないとすれば、最高裁はそれに全然手をかさないでいいのでしょうか。
  253. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 ただいまの免田事件に関する決定でございますが、今手元にございませんので正確なことを申し上げられませんが、今承りましたところでは、それは再審の裁判手続の中のことを言っているのではないのか、再審開始決定があるまでのいわゆる請求手続についてのことではないのじゃなかろうかというふうにお伺いしたわけですが、そうではないかということでございます。  それで、今の点でございますが、これは刑事訴訟法の百八十八条の二以下の規定の解釈の問題でございまして、これにつきまして、先ほど申し上げましたように最高裁判所の決定があるところでございます。これが変更になれば別でございますが、今のところは大体そういう解釈が定説になっているのではないかと思うわけでございまして、最高裁判所としてその解釈を変えるかどうかということは、私ども立場上は何とも申し上げかねるところでございます。まさにこれは裁判の問題でございます。保なお、百八十八条の二以下の規定上それがどうしても不能だということになりますと、これはこの刑事訴訟法改正ということになりますので、所管の方でやっていただくことになるというふうに考えるわけでございます。
  254. 林百郎

    ○林(百)委員 所管というとどこになるのですか。最高裁判所は全然手をかさないでいいのですか。法務省の刑事局になるのですか、どこになるのですか。と申し上げたいのは、最高裁の費用補償についての決定、これが今あなたのおっしゃるように拘束しているわけなんですから、実はこれ自体も、予想しなかったような死刑が無罪になるというような事態が最近出てきておりますので、これを考慮しなければならないのじゃないかということから、最高裁の決定自体も考え直さなければならない。それと、最高裁も積極的にそれに対して手をかせる。それから、あなたの言う当該責任者、恐らく法務省だというようにおっしゃるかもしれませんが、今神奈川大学の教授をやっている萩原金美という、これは一審で有罪の判決を下した判事だったのですが、この人もこう言っているのですね。  要するに誤判防止に不可欠なことは、「この種事件を担当する裁判部の構成について特別の配慮をすることや、国費で有能練達な弁護人を複数つけて、しかも十分な弁護徴用と相当額の報酬を支給すること、などの方策が早急に検討されてしかるべきであろう。」弁護人の立場に立ちますと、再審の開始決定が出てからの裁判の進行というのは割合に荷が軽いのですよ。問題は、ラクダを針の目に通すようなものだという再審の決定が出るまでのその努力というものは、これは弁護人にとっては、さっき言ったように三十四年かかって免田君が無罪放免されるのに、二十八年独自の再審請求をしていますから、この間の弁護人の努力というものは、あなた方は経験がないのでおわかりにならないかもしれませんが、これは再審決定があった後の公判とは比べものにならないのですよ。  このときの弁護人の努力に報いなければならない。これは一審で有罪の判決を下した萩原氏もそれを自己反省として強調しているわけですが、あなたに幾ら言っても最高裁の決定ですからと言うの保だけれども、それではこれはどこが担当ですか、法務省の刑事局ですか。私は、これは考慮しなければならない、あるいは少なくとも法制審議会にでもかけて検討する必要があるように思うのですが、どうでしょうか。
  255. 筧榮一

    ○筧政府委員 今の再審請求手続に要した費用が補償の対象とはならないという最高裁の決定がございますが、立法当時から現行法の解釈としては、再審請求時点といいますか、再審請求手続における費用は現行法の百八十八条の二以下の補償の対象とはならないという解釈をとっておるわけでございます。一方、今、林委員御指摘のように、再審請求手続における費用も補償の対象とすべきであるという意見があることは、私どもも承知をしておるところでございます。  ただ、この御意見についてはいろいろ問題点があるわけでございまして、申すまでもございませんが、費用補償制度と申しますのは、検察官の故意、過失の有無を問わず客観的に定型化できる公判期日等への出頭のための旅費あるいは日当等について簡易な手続により迅速かつ公平に補償するということを趣旨とするところでございます。ところが、再審請求手続は、有罪、無罪を決める公判手続とは異なりまして対審構造をとっていない。そのため、被告人であった者及び弁護人が出頭を要する公判期日あるいは公判準備期日というものはこの手続では存在しないわけでございます。  したがいまして、再審請求に要した費用を補償するということは、補償すべき費用の範囲を定型化しがたいという立法技術上の難点もございます。また、その補償の範囲の決め方によりましては、今申し上げました現行の費用補償制度の本質的な問題、その制度の本来の趣旨といろいろ食い違いを生じてくるというおそれもございます。  それからさらに、現行制度のもとでは、通常手続で無罪となりました場合にも、捜査段階における費用、弁護人等の費用は補償の対象とはされておりません。それからさらに、刑事手続に限りませんほかの各種の行政手続に関します救済措置としての費用補償制度というものも設けられていない。そういう制度間の均衡というような点もあるわけでございます。  そういういろいろ問題点がございますので、私どもといたしましても、前々から申し上げております再審制度全般についての基本的な検討を加えていきます過程におきまして、この点も慎重に検討を続けてまいりたい、このように考えております。
  256. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたは再審の請求の公判というか裁判をおやりになった経験がおありになるかどうか、私はあるのでよくわかっていますが、普通の公判とちっとも変わらないのですよ。捜査段階に準ずるなんて、そんなものを例にとってきてはおかしいですよ。裁判官が三人並び、検察官がこっちにおり、弁護人がおり、被告がおって、そして無罪を証明すべき新たな証拠であるかどうかということを検討し合い、それを弁護人が出すわけですから、普通の裁判とちっとも変わらない。  しかも、普通の裁判と変わらないところか、弁護人の側としてはそこに主力を注ぐのですよ。それにもかかわらず、三十四年のうち二十八年もかかって弁護人が死力を尽くしているその費用は全然見ませんということはおかしいと思うのです。あなたも再審の制度を検討する場合にこの点を配慮されるという答弁ですから、前向きな答弁として、違う質問がありますからこれ以上はやめますけれども、この点はぜひ検討していただきたい。恐らく松山事件、それから財田川も近く費用請求すると思いますから、ひとつぜひ考慮してもらいたいと思うわけです。  次に、吉田保護局長、私の要求しました治安維持法の被告人に対する島流し事件、これは私が資料をあなたに提供しましたけれども、そこへ接触されましたか。
  257. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 前回のお尋ね後、私どもとして必要だと判断する調査を一応いたしました。  その輪郭を申しますと、まず、閣議決定についてぜひ確認できるように調査しろというお話でございました。この点は、閣議決定のことですから私どもといたしましてはできる限り調べてみたわけであります。結果としましては、閣議決定そのものの原議もしくは直接的な写しのようなものは確認することができませんでした。したがいまして、その内容を直接には今日確認できていないということでございます。  それから、次に官側関係者でございますけれども、当時の関係者数名につきまして、当時の事情について、お尋ねのことが一体どういうことであるかということを私どもとしても知らなければならないということでいろいろ事情を調査いたしました。しかし、恐らくあれは民間の、その当時南方へ行ったという人々のリストをいただいたわけでありますが、この人々については調査しておりません。
  258. 林百郎

    ○林(百)委員 山下夘吉さん、これは当時の東京保護観察所の補導官ですか、この人に当たりましたか。私は住所もあなたにお知らせし、そして今弁護士もやっているのだから弁護士名簿を見ればちゃんとわかるわけです。しかもこの人が島流しされた第一次隊の隊長を務めているのですが、これは当たりましたか。
  259. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 結論から申しますと、お話を伺いました。先ほど数名と申しました中に入っております。  ほかに、小泉氏のお名前も出ておりました。その方の話も聞きました。あと、この前お話が出たのは早川氏という方、この方は病院に入院中でございまして、遠慮せざるを得なかったわけであります。その他の方々につきましては、本人等の御希望もあり、名前をここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  260. 林百郎

    ○林(百)委員 私の方も山下さんに当たってみましたが、現在八十一歳なんですね。だから、関係者がお年ですから至急当たっていただかなければいかぬと思うのです。  これは私が教えましたように、横浜市金沢区におりまして、弁護士事務所は東京有楽町の交通会館の十階にあるわけです。当時――当時というのは昭和十九年のころですか、山下さんは東京保護観察所の補導官だったのです。閣議の決定を受けて、当時司法省に刑政局があったということですが、司法省刑政局から北ボルネオヘ島流し隊に先行して行くように命ぜられた。その資格は無給の軍属大佐待遇で、給料は司法省から受け取っていた。日本を出発したのは昭和十九年二月二十九日、うるう年でしかも二十九日ですから、よく記憶に残っている。途中シンガポールで資材、すなわち収容所、大和農場開墾のための資材を調達して、昭和十九年七月、島流し部隊が北ボルネオに来たとき、自分は隊長であり、監督をした。戦後イギリス軍からシンガポールにいる戦犯の弁護人としてやるようにと言われて弁護人を務めた。それから昭和二十一年十二月二十日、イギリス軍から帰国許可が出て帰国した。こういうことを私たちはつかんでおるわけです。こういう事実、要するに保護観察を受けている人たちが島流しに遭ったことは間違いないのです、しかも軍人と同じような過酷な条件のもとに。戦後は治安維持法は御承知のとおり、判決の言い渡しがなかりしものとみなすということが連合軍からの指令で行われているわけです。だから、これを私が言うのは、再びああいう戦争をしてはならないし、その戦争に反対して本当の愛国者であった人たちがこのような犠牲を払ったことに対して、償いをするということは当然なんですね。本来そういう刑を終えすしまった人、そうした保護観察を受けている人がさらにまた軍人に準じて島流しにまで、第一義勇奉公団、第二発勇奉公団がされた。  これは速やかに事実を明らかにしてその補償をそういう人たちに、あるいは何十万という治安維持法の犠牲者の人たちにすることが再び戦争をしないという決意を国民の前にあらわすことになると思うのです。だから、私はこの問題を調査し、明らかにし、そしてそれに対する反省の態度を速やかに示してもらいたいということなんです。  だから、あなたが当たったというのは、当たった結果、私の言ったような保護観察を受けた治安維持法の被告人の人たちが島流しに遭ったという事実があったのですか、なかったのですか。  それから法務大臣、私のお聞きしたいのは、今言ったような立場で再び戦争をしない、不戦の決意を新しい憲法でしているわけですから、その戦争に反対した、治安維持法で死刑、無期あるいは三年、五年、七年という刑を受けた人たちがまた島流しにまで遭っている。しかも、戦後は治安維持法の判決は全部言い渡しがなかったものとするということまで、連合軍の指示によって出ているわけですね。だから、今そういう実態を明らかにして、こういう犠牲を負わした、これに対しては国の方もこういうような方法を講ずる、あるいは再びあなた方みたいな犠牲者を出すことはしないという決意を国民の前に表明することは、今の政府が平和を守ることの意思表示を国民の前にすることと同じだと思うのですよ。  そういう重要な意義を持っているから、私はこの問題を、あなたから見れば何で林委員は二度も三度もそういうことを聞くとお思いになるかもしれませんけれども、私はこれは見逃すことができないと思うのです。私自身も治安維持法の被告人になりまして刑務所に行ってまいりましたから、自分の身にもつまされてあなたに言っているわけです。吉田さんと法務大臣。
  261. 住栄作

    ○住国務大臣 先般の委員会お尋ねがございました。私も、どういう事情であったか、先ほども答えましたように、まず閣議決定というのはどういうものか、現物がないか、こういうことを第一にいろいろ当たらせました。残念なことには、閣議決定はそのものを発見することはできなかったということで、調査をさせたわけでございます。  しかし、閣議決定の存在を含めまして、古いことでございますので十分な調査はなかなか困難だ。しかし、当時の関係者等に当たったわけでございますけれども、私が報告を受けたところでは、島流しという言葉が適当かどうか私も大変疑問に感じます。十七年に閣議決定をしたということは残っておるわけでございますが、その派遣が十九年でございますから、その間二年間もいろいろ検討をしておるようでございます。  そういうようなことで、派遣された人を選ぶにつきましても慎重な対応をしたことがうかがわれるわけでございますが、おっしゃるように強制的というようなことは、生存者の当事者であった方方から聞いた限りにおいては強制にわたるようなものであったとは私は判断できなかった、あくまでもいろいろ合意の上で、それじゃそこへ行って働くか、こういうようなことでそういうチームが編成された、こういうように承知をしております。  戦争の問題については、憲法が戦争を放棄しておるわけでございますから、当然のことながら戦争なんかしてはいかないことでございますし、過去のことにつきましてはそういうように決して独制にわたるものでも何でもない、こういうことでございますので、私どもは、補償するとかしないとか、こういうことについては考え段階ではないというように思っております。
  262. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 先ほど申しましたように関係人から事情を聞いたところによりますと、ただいま大臣が要約して申しましたような感じを受けたわけであります。  戦時中であり、思想犯として保護観察を受けていたという者が大半だったと思いますが、そういう人々でありますから、現在から見ればいろいろなことが言えると思いますけれども、その当時としましては本人たちを無理やり逃れていったとか、そういう状況ではなかったようでございます。細かいことを言えば、向こうに行きましてそれなりの月給と申しますか、というものも支給し、また、現地人などを使いながら農業等の開墾に従事したというふうな状況であったというふうに固いております。
  263. 林百郎

    ○林(百)委員 時間がありませんので、もう一問だけお許し願って、これで終わりますが、この前の質問より一歩前進されていると思うのです。  要するに、任意に行ったので強制的に島流しに遭ったのじゃない、大臣も、もし強制的にやったとすればその慰謝の方法を考えることもあるけれども今はそういうことを言う段階ではない、強制的ではなかったというように私は結論づけているということですね。だから、そういう思想犯と言われる人たちが北ボルネオヘ行った事実は大臣も吉田さんも認めている。ただし、それは任意に行った、そして給与も与えていたのだ、こう言っているわけです。  この問題は私の方も今後調査しますし、ひとつ法務省の方もさらに調査をして、戦争犠牲者として補償すべきものは補償するということをぜひ考慮してもらいたいと思うのです。  最後に最高裁にお聞きしますが、行政改革が非常に進んでおるときなものですから、司法裁判所もどうしてもそれに倣って合理化をしなければならないということは、何もおつき合いしなくてもいいのじゃないかと思うのです。  殊に簡易裁判所のことで気になるのは、最近警察白書が出たのですが、警察自警を見ますと、困りごと相談の件数が五十八年に二十一万幾らあった。そのうち民事関係だけでも十七万、そして犯罪に関係するものが四万。しかし、民事関係で警察へ相談に行っているのを見ますと、身の上相談、結婚離婚問題、生活困窮、金銭貸借、土地家屋問題、物品取引問題。これは警察が相談受けたって、警察はこれを適切に処理する能力は持っていないし、またそういう機構でもないし、そういう組織でもないわけなんですね。  これは当然まず簡易裁判所が、裁判所が責任を持たなければならない問題だと思うのです。それが警察の方に二十何万件も行っている。しかも簡易裁判所自体も民事事件が非常に増大していることは私が言うまでもない。そういうときに簡易裁判所の庁を減らすというようなことを考えている。これは行政改革をやるんだから司法もそれに倣わなければいけないんだというようなことに通ずるのじゃないかと思って私非常に心を痛めているわけです。  ということは、簡易裁判所が設置されましたときの、当時木村篤太郎司法大臣だと思いますが、まだ帝国議会と言っていたのですが、本会議における趣旨説明を聞いてみますと、簡易裁判所の運営が十分なされるかどうかが裁判が大衆に奉仕するかどうか、司法の民主化がなされるかどうかのかぎだということを言われているわけですね。だから、簡易裁判所は大衆の駆け込み裁判所的な性格を持って、いわゆる区裁判所とは違うんだ、そういうことを言っているわけなんですね。  だから、本来簡易裁判所に行く事件が二十何万も警察の方へ行って、あたかも警察の方が信頼を受けていると言わんばかりの白書を出されて、簡易裁判所の方は相談を受けるべき性格を持っていながらそれを縮めていく、しかも事件がふえる一方で、書記官などは頭を上げれば相談に乗らなければいけないから頭も上げないということが大衆から言われているわけですが、そういうことは考えるべきではないか。区裁判所と違って事件を早く落とせというようなことだけで最高裁判所司法行政をやっていくのはまずいと思うのです。そういうことが一つ。  それからもう一つは、最近社会情勢が変わってまいりましたから、簡易裁判所の管轄区域についてはこれを考慮して再編成することについては私の方はやぶさかではないわけなんですが、もう時間を催促されておりますので、一例だけ申しますと、京都の伏見簡裁と木津簡裁の関係なんですが、木津簡裁の管轄の八幡市民は、伏見簡裁が目の前にあるにもかかわらず行けずに、私鉄や国鉄に乗りかえて二時間もかけてわざわざ木津簡裁へ付かなければならない。伏見簡裁なら二十分ぐらいで行ける。こういう地域の管轄については再考慮すべきだというように思いますが、これらの点について最高裁の考えをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  264. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 去る三月九日の当委員会で林委員から御質問いただきました際にも、簡易裁判所の性格というものを変更するつもりはないというようにお答え申し上げた次第でございます。  その後、日弁連と法務省を含めまして三者協議を続けてまいっておりましたが、その中でも日弁連サイドから、行革的発想でやってはいかぬとか簡裁の本質を変えるようなものであってはならないというような御指摘がございました。これに対しまして私どもといたしましては、裁判所の適正配置は一層充実した司法を実現して国民の信頼によりよくこたえようとするものであって、司法の機能の低下を来さないことはもとより、新たな配置のもとでの裁判所の人的機構、物的整備の一層の充実強化を図りたいんだ、それから簡易裁判所の本質にかんがみましてその機能がよりよく発揮されるための諸方策について検討するものであって、配置の見直しに当たりましては単なる集約化ではなく、必要に応じて新設、昇格あるいは所在地ないし管轄区域の見直しを含めて検討したいということを申し上げているわけでございます。  ただいま御指摘のように、いろいろな社会事情の変化がございまして、地域住民の利用の便を考えますと、隣の裁判所の方が近いということもございますし、管轄区域を見山して広げるとかあるいは分割するとかあるいは簡裁や支部の所在地を他の場所に移すとか、いろいろ検討しなければならないかと思っております。  私どもといたしましては、簡裁、支部に関するもろもろの問題は、裁判所の配置を現状のままにしておって管轄区域だけを見直すだけでは到底解決できないものである、必然的に配置の見心しと並行しまして管轄区域の見直しを行う。必要があれば、裁判所の所在地の変更やあるいは支部昇格あるいは支部の甲号、乙号の区別のあり方を見直す等多角的に検討して裁判所の適正配置を実現してまいりたいというように、考えております。
  265. 林百郎

    ○林(百)委員 終わります。
  266. 宮崎茂一

    宮崎委員長 次回は、来る七日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十一分散会