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1984-07-11 第101回国会 衆議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十一日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 宮崎 茂一君    理事 太田 誠一君 理事 亀井 静香君    理事 高村 正彦君 理事 森   清君    理事 天野  等君 理事 稲葉 誠一君    理事 石田幸四郎君 理事 三浦  隆君       井出一太郎君    上村千一郎君       衛藤征士郎君    大西 正男君       加藤 紘一君    熊川 次男君       高鳥  修君    谷垣 禎一君       丹羽 兵助君    長谷川 峻君       小澤 克介君    神崎 武法君       中村  巖君    伊藤 昌弘君       野間 友一君    林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 住  栄作君  出席政府委員         警察庁長官官房         審議官     福島 静雄君         法務大臣官房長 根岸 重治君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 筧  榮一君         法務省矯正局長 石山  陽君         法務省保護局長 吉田 淳一君         法務省人権擁護         局長      鈴木  弘君         法務省入国管理         局長      田中 常雄君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   藤原  享君         警察庁刑事局捜         査第二課長   上野 浩靖君         警察庁刑事局保         安部防犯課長  古山  剛君         警察庁交通局暴         走族対策官   橋之口 求君         警察庁交通局運         転免許課長   柳井 洋蔵君         総務庁行政管理         局管理官    藤沢 建一君         大蔵省証券局企         業財務課長   中島 公明君         大蔵省証券局業         務課長     源氏田重義君         通商産業省産業         政策局消費経済         課長      糟谷  晃君         最高裁判所事務         総局総務局長  山口  繁君         最高裁判所事務         総局人事局長  大西 勝也君         最高裁判所事務         総局経理局長  川嵜 義徳君         最高裁判所事務         総局民事局長  上谷  清君         最高裁判所事務         総局刑事局長  小野 幹雄君         最高裁判所事務         総局家庭局長  猪瀬愼一郎君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ――――――――――――― 委員の異動 七月五日  辞任         補欠選任保   上村千一郎君     今井  勇君   衛藤征士郎君     江崎 真澄君   広瀬 秀吉君     松前  仰君 同日  辞任         補欠選任   今井  勇君     上村一郎君   江崎 真澄君     衛藤征士郎君   松前  仰君     広瀬 秀吉君 同月九日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     伊吹 文明君   衛藤征士郎君     今井  勇君 同日  辞任         補欠選任   伊吹 文明君     上村千一郎君   今井  勇君     衛藤征士郎君 同月十日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     今井  勇君   大西 正男君     森  美秀君 同日  辞任         補欠選任   今井  勇君     上村千一郎君 同月十一日  辞任         補欠選任   森  美秀君     大西 正男君 同日  辞任         補欠選任   大西 正男君     森  美秀君     ――――――――――――― 七月六日  外国人登録法改正に関する請願伊藤茂紹介  )(第七二二八号)  同(石橋政嗣君紹介)(第七二二九号)  同外九件(稲葉誠一紹介)(第七二三〇号)  同外八件(小川仁一紹介)(第七二三一号)  同(城地豊司紹介)(第七二三二号)  同(鈴木強紹介)(第七二三三号)  同外九件(竹内猛紹介)(第七二三四号)  同(浜西鉄雄紹介)(第七二三五号)  同(松浦利尚君紹介)(第七二三六号)  同(小林進紹介)(第七三二五号)  同(佐藤敬治紹介)(第七三二六号)  同(佐藤誼紹介)(第七三二七号)  同(沢田広紹介)(第七三二八号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第七三二九号)  同(松浦利尚君紹介)(第七三三〇号)  同(水田稔紹介)(第七三三一号) 同月十日  外国人登録法改正に関する請願池端清一君紹  介)(第七三七七号)  同(大原亨紹介)(第七三七八号)  同(小林進紹介)(第七三七九号)  同外一件(石橋政嗣君紹介)(第七四三四号)  同外五件(岩垂寿喜男紹介)(第七四三五号  )  同(小澤克介紹介)(第七四三六号)  同(加藤万吉紹介)(第七四三七号)  同(川俣健二郎紹介)(第七四三八号)  同(河上民雄紹介)(第七四三九号)  同外二件(新村勝雄紹介)(第七四四〇号)  同(竹村泰子紹介)(第七四四一号)  同(矢野絢也君紹介)(第七西四二号)  同(山下八洲夫君紹介)(第七四四三号)  同(川俣健二郎紹介)(第七五〇六号)  同(河上民雄紹介)(第七五〇七号)  同(中村重光紹介)(第七五〇八号)  同外九件(細谷昭雄紹介)(第七五〇九号)  同(村山富市紹介)(第七五一〇号)  同(森井忠良紹介)(第七五一一号)  死刑制度廃止死刑執行停止に関する請願(竹  村泰子紹介)(第七四三三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人  権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所山口総務局長大西人事局長川嵜経理局長上谷民事局長小野刑事局長猪瀬家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 宮崎茂一

    宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 宮崎茂一

    宮崎委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊川次男君。
  5. 熊川次男

    熊川委員 幾つかの問題点をごく限られた時間に疑問点だけを指摘させていただいて、また、法務大臣並びに御当局の明快な将来に向かってのスタンスだけを聞かせていただければありがたい、こんなふうに思っておりますので、お含みの上御答弁いただけたらありがたいと思います。  第一点は、最近における凶悪犯を主として、必ずしも凶悪犯に限りませんけれども、仮出獄中の方々による再犯に関してどういうふうにお考えか、まず法務大臣にお尋ねしたいと思います。  私は次のように考えておりますけれども、間違いでしょうか。最近における殺人といい、あるいは放火といい、あるいはそれに準じたものの多くが新聞を非常ににぎわしております。この中で仮出獄中の方が少なくない。これはどこに原因しているだろうか。  昨年末からの予算シーリングに関して法務省は各省とのバランスをとるためにいろいろ御苦労くださったことはよく承知しております。しかし、その反射効として、仮出獄基準をかなり緩めざるを得なかったのではないかと思っております。そこで数百億の予算の余剰を生み出すという配慮がなされたことも承知しておりますが、この辺が一つの遠因になっていはしないだろうかと懸念をいたします。法務大臣の御感想を承りたいと思います。
  6. 住栄作

    住国務大臣 熊川委員承知のように、受刑者更生保護の問題につきましていろいろ考えておるわけでございます。施設内でのいろいろな処遇と同時に社会での処遇という問題も受刑者更生保護という観点から大変重く見ておるわけでございます。社会内処遇保護観察に付している者の再犯率満期者との関係で見てみますと、保護観察に付している者の再犯率というのは一般的に非常に低いわけでございまして、私どもはそういう観点からも考えて、社会における更生保護という観点から仮釈放というような措置をとっておるわけでございます。  たまたま、最近、放火とか殺人というような事態を起こしておるわけでございますが、この点につきまして、その原因をいろいろフォローして見てみますと、必ずしもそういうおそれの兆候を発見することはできなかったというようなこともあるわけでございますけれども社会内での更生保護を図っていく上において保護司さんの皆さん大変御苦労をしていただいておりまして、私どもは、それは受刑者更生保護という観点から一つの有効な方法であるということについては疑問を持っていないわけでございます。しかし、そういうケースがあるということも事実でございまして、こういうことにつきましては具体的なケースを他山の石として、今後の社会内処遇の方策に遺憾のないようにしていかなければならないと考えておるわけでございます。  おっしゃいましたように、予算との関連で仮釈放を相当無理しておるのではないかというようなお話でございますけれども、これは治安の面から考えてもゆゆしき問題でございまして、私どもは、基準を緩めるというようなことではなくて、自信の持てる範囲内において考えたことでございまして、必ずしもシーリングとの関係で無理をしたということはないのでございまして、予算の問題は、これは六十年度予算編成も間近に控えておるわけでございますが、最後の守るべきところはどうしても守っていかなければならない、こういうように考えて対処してまいりたいと思っております。
  7. 熊川次男

    熊川委員 ありがとうございます。  希望を述べさせていただきます。収容人員が約五万八千人、そこで実際には六万人以上ものいろいろの収容が行われることがあります。しかし、それらを仮釈放という手段で早急に解決したいというのを、藤尾政調会長あたりもちらっと述べておられる。こういうことも、私は、他の省と同じように法務省シーリングを考えることは非常に危険だと思うわけなんです。かなりのものが事業費がなく人件費に食われておる、こういうところを他の省と同率に考えることは誤りであるということが一つ。  それからもう一つは、治安は一たん崩れたらなかなかその回復が大変だ。経済面におけるところの活力云々なんという問題とは異なって、大臣初め歴代の大臣あるいは検察法務当局裁判所当局の大変な努力によって世界に冠たる治安安定の国をつくった、この麗しい伝統を崩さないためにも、ひとつ六十年度に当たっては、閣議でも大臣は、法務省は、あるいは裁判所を含めて、別扱いだという強い主張をし、またそれが子供や孫に対する今の時代における国会議員を初め私たちの責任だと自覚しておりますので、最近における仮出獄者再犯の激増の傾向と相まって、大臣の六十年度予算に関するスタンスを、一言で結構ですから、承りたいと思います。
  8. 住栄作

    住国務大臣 大変貴重な御意見をちょうだいいたしました。法務省予算は御承知のように人件費の占める割合が非常に高いのでございまして、そういうところから、今までもマイナスシーリングの段階におきましてもいろんな特例措置を認めていただいておりますけれども、なおかつ非常に厳しいものがあることは御指摘のとおりでございます。こんなことでは責任は持てないということもあるわけでございまして、私ども機会あるごとにそういうことを財政当局にも意見として申し述べておるわけでございます。  ひとつ今おっしゃられましたような事態にならないだけの必要最小限度予算というものはぜひ確保していかなければならない、こういうように考えておりますので、またよろしく御協力のほどをお願いしたいと思います。
  9. 熊川次男

    熊川委員 ただいま、テレビの報道によると、再審事件松山事件斎藤被告人無罪になったようであります。  ところで、一審、二審、あるいは最初裁判が進行中に無罪を得た人と、非常に厳しい、例外中の例外というか、極めて証拠が制限され、再審開始要件が厳格に法定されている、こういうときに無罪になったものを同列に扱うということは考え直すべきじゃないかと私は思っております。もちろん捜査機関正義感のいたすところ、あるいは神ならぬ社会の公益の代表者としての捜査官公訴官の精いっぱいの御努力もあったでしょう。しかし、事再審において無罪になったということは、国民ひとしく斎藤被告にこうべを垂れなければならない問題ではないかと私は思っております。  まずこの判決の結果について、法務大臣の御感想を承りたいと思います。
  10. 筧榮一

    筧政府委員 先生指摘松山事件につきましては、十時過ぎに仙台地裁におきまして無罪言い渡しがあったという報告を、私、今受けたところでございます。
  11. 住栄作

    住国務大臣 私も今聞いたのでございますが、再審無罪という判決がございましたようでございます。免田事件財田川事件に続いて最近では三つ目死刑という犯罪についての再審の結果の無罪でございます。  今おっしゃいましたように、死刑という重大な事件について無罪という判決が下ったということ、私ども深刻に受けとめておるわけでございます。しかも非常に長年月の結果でございますから、今の御意見のようなことも胸に痛いほどわかるわけでございまして、私どもこういうようなことは二度とあってはならない、いろいろの事件に対応するに当たってそういうことでやっていかなければならない、いろんな面から検討を加えて十分な対応をしていかなければならない、こういうように思っております。
  12. 熊川次男

    熊川委員 大臣の温かい、各般についての御検討に着手したいということで、一応ほっとしておりますが、第一点は、制度そのものに関して、もちろん諸外国の例との比較考量の問題もありますから、また単なる上級審ではございませんから、法的安定性の面からも判決の持つ意義、こういうものから考えて、そう安易に再審制度を許容すべきものでないことは承知しておりますが、少なくとも斎藤ヒデさんのこの長い間の努力がやっと実を結んだ大きな一因になっているということを考えるときに、私は制度そのものも、再審についての開始要件を御検討いただけたらありがたいというのが一つ。  それから先般来、例の補償問題について、必ずしも再審無罪をから得た人に御納得のいける補償というものがなされるような国家判断がなかった。これに関しては、法は法としても、単なる補償なんという問題じゃなくて、おわびをする、法曹全部、関係者にそういった基本的な姿勢がない限り、第二、第三の再審による無罪というものが生まれる。その土壌が怖い。本当に世界に模範的な秩序を維持している我が国だけに、もう一歩そこを進んでもらうことが治安関係においてトップを走っている日本法曹関係者の責務ではないかと思いますので、補償関係に対しての御感想、これは斎藤さんに限らず再審無罪になった方に対しての御所見を、場合によれば大臣でなくてもあれですが、大臣からも、また御当局からも一言ずついただけたらありがたいと思います。
  13. 筧榮一

    筧政府委員 ただいまのお話最初の点でございますが、松山事件につきましては無罪言い渡しがあったばかりでございますので、内容について承知しておりません。これについてどうこうと言うことはまだ差し控えたいと思います。  再審に関する法制改正の問題でございますが、前の免田事件あるいは財田川事件、二件相次いでおることは事実でございます。それらを契機といたしまして、再審要件の緩和というような御要望が国会その他であることは私ども十分承知いたしております。ただ、今先生も言及されましたように、法的安定性具体的妥当性の調和ということが一番基本の問題でございます。そういう点から考えますと、簡単に窓口を広げればいいというものではございませんで、やはり司法制度全般基本的な制度に関連いたしますので、基本に立ち返って、もちろん諸外国法制等も比較検討し、我が国法制とも照らし合わせて、どういうふうに考えていけばいいか、基本的な検討をいたしておるところでございます。  それから補償の点でございますが、刑事補償無罪の方には一定額補償がなされる制度がございます。これにつきまして、さらにそれ以上のことをということでございますが、こういうことをなくする、無罪があるということはできるだけ少なくするということは、先生おっしゃるまでもないところでございまして、そのためには、今申し上げました法制度の問題もございますが、さらに捜査等に関する運用、今までのやり方等について反省すべき点があればこれを反省し、こういう事件がないように努力するということが先決ではなかろうかと私ども考えております。
  14. 熊川次男

    熊川委員 検討する点があればという点では、今の認識が少しずれていないだろうか。法務省が鋭意御検討くださっていることは百も承知であります。にもかかわらずこういった再審無罪が後を絶たないという事実を直視して、従前にも増して鋭意努力していただきたいという要請をさせていただきますのが一つ。  それから、これとは異なって、法務関係全員の御努力にもかかわらずこういった長い年月がたってやっと無罪になったということに対しては、国民全体がおわびのお見舞い金というか、そういう気持ちになることが捜査的確性というものを維持するファンダメンタルなものになるのじゃないかと思うから聞いておるので、昨今続けてこういった再審無罪が出た、こういう事実を直視して、もう一度これからの局長さんの覚悟のほどを聞かせていただきたいのです。
  15. 筧榮一

    筧政府委員 再審改正等につきましては、検討すべき点があればということではなくて、どういう点に問題点があって、改正する必要があるとすればどういう点にあるのかという点を今鋭意検討中ということでございます。
  16. 熊川次男

    熊川委員 よろしくお願いいたします。  それから、ごく簡単に最高裁判所の五十一年七月二十四日の宣明書についてお尋ねいたしたいと思います。  御存じのとおり、外国捜査協力者からの供述を得るために、捜査当局初め嘱託尋問の依頼を受けた地裁関係者でも格段の御努力がされたことは承知しております。しかし、その一連の過程において最高裁判所宣明書を出して、しかもその宣明書末尾には結局「最高裁は前記の諸事情にかんがみ、検事総長右確約が将来にわたりわが国のいかなる検察官によっても順守され、本件各証人等がその証言およびその結果として入手されるあらゆる情報を理由として、公訴を提起されることはないことを宣明する。」その次に「この宣明裁判所法第一二条の規定に基づき、最高裁裁判官が一致してしたものである。」とありますが、まず、最高裁がこういう宣明書を出した例が従前あるのでしょうか、ないのでしょうか、教えていただきたいと思います。
  17. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 従前はこれ以外にはこのような例はございませんし、またそういう必要が生じたような事態もなかったと承知しております。
  18. 熊川次男

    熊川委員 この公訴提起するかしないかは本来検察官あるいは検察庁で決定すべきものであって、具体的紛争裁断者であるところの裁判所宣明するということは、しかもこの宣明によって仮に我が国内法によって処断を受けるべき事情が発生してもそういうことはいたしませんという宣明になったとするならば、これはいわゆる赦免権を行使した、行政府の長がなすべきものを司法府においてなしたということになり、三権分立の原則に抵触するものでないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  19. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 この宣明書が発せられました経緯についてはもう御承知かと思いますが、東京地裁裁判官アメリカ合衆国に証人尋問嘱託をした。ところが、それを受けましたアメリカ中部カリフォルニア合衆国連邦地裁のファーガソンという判事が、いろいろな添付されている書面等によって証人らが日本国内において起訴されるという可能性は事実上極めて小さいと思われるが、証人らが証言をした結果として起訴されることがない旨を明確にした日本国最高裁決定または規則を提出するまでは嘱託に基づく証言を伝達してはならない、そういう指示をしたという決定があったわけでございます。  最高裁判所といたしましては、いわば東京地裁裁判官がいたしましたその裁判が宙に浮いた形になってしまっているということでございます。そこで、何とかその裁判目的を達成することはできないかということで、アメリカともいろいろ折衝したようでございます。その結果、規則とか命令とかいうものは到底日本では出せませんが、こういう宣明書というような形のものでも出せばその証言の引き渡しを得られる、要するに東京地裁裁判官がいたしました嘱託目的を達することができるということが感触として得られた結果出されたものでございます。  したがいまして、これは裁判権の行使を円滑に行わせるための司法行政作用であるというふうに理解しておるわけでございます。裁判所法十二条は司法行政事務規定しているわけでございますが、この宣明書末尾には、先ほど委員も御指摘にありましたように「裁判所法第一二条の規定に基づき、最高裁裁判官が一致してしたものである。」と明記しているわけでございます。  ところで、この宣明書がどういう法的な性格のものか、あるいは、ただいま御指摘のありました三権分立に反するのではないかという点でございますが、これはその後のいわゆるロッキード裁判という中で、弁護人から今委員が御指摘のようなそういう主張もなされているわけでございます。そういうことでございますので、私どもといたしましては、それにつきましての答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  20. 熊川次男

    熊川委員 時間の関係もありますので、この問題についてはまだ後刻させていただきたいと思いますが、私、これは取り越し苦労かもしれませんけれども裁判所余り世論に動かされてはいけないというのが一つ。  これに関連して、裁判官が、少なくとも最高裁判所裁判官がおやめになって、そして国民の関心のあるようなケースに、あるいは右側からあるいは左側からというような形でいろいろ御意見を述べております。端的に考えれば表現の自由じゃないかという形で、これは一見明快なお答えになります。しかし、単に弁護士だとか単に検察官というような当事者の一方に立つ人でなしに、民主主義最後のよりどころである裁判所、それも終審裁判所で最も権威のある裁判所を構成したその人が、まだ係属している具体的事件について意見を述べるということは、私は余り望ましいことではないと考えます。違法だとか適法だとか、そんなことを言っているのではございません。望ましい行為ではないと考えておりますが、大臣はこの点についてどう……(稲葉(誠)委員「現に裁判中の事件についてここで聞くのはまずいよ」と呼ぶ)  やめた裁判官がそういうことを言うこと自体が、私は司法権権威に若干関係するのじゃないかと思っております。裁判官に関するところの倫理というものは余りないのです。もちろん、アメリカの方にはぴしっとしたものがあります。そういう意味において、国民最高裁判所に対する、あるいはそれを構成する裁判官に対する崇高な畏敬の念を持っておるわけですから、それを幾人かの方があらゆる方面から、必ずしも同じ方向ではございません、けれどもああいうふうに述べるのは、若干慎まれた方がベターではないか。やめた裁判官の、裁判官倫理の広い意味の一環をなすものではないかと思いますので、また御検討していただくことを期待させていただきます。後ほどまたこれについても別な機会を持たせていただきたいと思います。  それから、今行革の一環として司法書士会に関する登録事務の委譲という問題が御検討されております。これについてはいろいろと法務省の御努力もありますが、委譲に当たって余り監督規定というものが強化されると、これは本来の行革の精神に合致しませんし、やはり自主独立の方向に持っていくのが望ましい形ではないかと思っております。そのためには、時には司法書士会内における会員の、あるいは綱紀委員会なり懲戒委員会なりにおいての懲戒権なども行使させることによって、みずからの努力あるいは責任において解決させることが行革の精神にも合致するのじゃないかと思いますが、まずこの点についての見通しといいましょうか所感のほどを一口で結構ですからお述べいただけたらありがたいと思います。
  21. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 司法書士、土地家屋調査士の登録の問題につきましては、臨時行政調査会におきましても各会の方に委譲するようにという線が打ち出されております。私どもも、その線に従って委譲するということについては方針としては決めておるわけでございます。ただ、実際に委譲いたしますと、各会の方でいろいろ受け入れ態勢の整備というものもございます。したがいまして、できるだけ早くそういう整備ができたときに法改正をしていただきたいというふうに考えておるわけでございますが、その際に、ただいまお話がございました監督の問題がございます。  これは、登録と申しますのは行政権の一部をなすものでございます。したがいまして全く内閣の監督系列から離れてしまうということは許されないわけでございますので、登録事務を行いますところの面会に対して、法務大臣の監督下に何がしかのものが入らざるを得ないと思います。その場合にどういう内容のものにするかということにつきましては、両連合会の方でもいろいろ御意見もございますので、それらを十分承った上で、最も合理的な線でまとめていきたいというふうに考えておるところでございます。
  22. 熊川次男

    熊川委員 よろしくお願い申し上げます。できれば司法書士会そのものも弁護士会制度に準じたような形で、もちろんそれにいかないところもあるかもしれませんが、なるべくそれを一種の参考のような形で御努力していただけることを期待させていただきます。  次に、国選弁護のことについてお伺いいたします。  御案内のとおり、六法全書にも日本弁護士連合会の報酬規程というものが載っております。これについての内容はますます妥当なものだと思いますが、その点についてまず御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  23. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 実は私どもは、どういうことでどうなっているのかということをつまびらかにしておりませんので、それについての論評は差し控えさせていただきます。
  24. 熊川次男

    熊川委員 六法全書にまで添付してある日本弁護士連合会の報酬規程は御存じない、こういう御答弁でしょうか。
  25. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 報酬規程が添付されておりますし、また、ことし改正になったということも承知しておりますが、それが適正であるかどうかというようなことにつきましては論評することは差し控えさせていただきたい、こういうことでございます。
  26. 熊川次男

    熊川委員 適正と聞いたのではなくて、妥当かどうか。適正判断の立場にあるわけじゃないけれども、少なくともこれがそう当を失するものでないということは論をまたないと思うのです、これは討論する必要のものではないですが。それに比較した場合、国選の単価が余りにも開き過ぎている、これは事実でしょう。日本弁護士連合会で決めたものが極めて失当だというならばあれですけれども、弁護士会で書いてあるものがまあまあ妥当だということになると、いかなる理由で国選弁護の場合格段と落とすのか、その合理的理由がないのじゃないかと思うわけです。ついては、それは弁護士並びに弁護士連合会全体の一種の奉仕であり、あるいは、国選弁護の制度全体に対する、国家に対する法曹の一員としての協力であるかもしれません。  ところが、そういうことが余り安いために、逆に国選弁護事件が非常にふえている。今度は国選弁護人がどんどん被告人から解任されて、二人も三人もつける、そしてあごで使っている被告人が方々におります。そしてなおかつ、その弁護のやり方が云々という形で訴訟すら起こしかねないような被告人がいる。私は、これを日弁連の報酬規程ぐらい高くしたならば、あえて国選を頼まないで私選を頼む方が非常にふえるのじゃないかと思うのです。となってくると、極論すれば、法務関係予算が国選弁護の分だけかなり浮くのじゃないか、そういう萌芽があるということも御検討に値するのじゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  27. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 論点が非常に多岐にわたりますが、まず国選弁護が非常に安いじゃないかということでございますが、これは見方はいろいろあるかと思いますが、必ずしも十分だというふうに思っているわけではございません。私どもとしてはできるだけのことはしたいと努力しているところではございます。  私選弁護並みにすればというお話もございましたが、貧困あるいはその他でなかなか払えない、弁護人をつけられないという方がいらっしゃるわけでございまして、適正な裁判のためには国選弁護の果たす役割というものもかなり大きいものがあろうかというふうに考えるわけでございます。また、国の予算のかなりを使っているわけでございますが、貧困であれば訴訟費用は負担させないということにもなるわけでございますし、また、もし貧困でなくて本当に訴訟費用を払う能力があるといたしますと、裁判所は訴訟費用の負担を命じてそれを徴収するということになって、国に還元されていくということになるわけでございまして、国選弁護がなくなれば丸々どうだとか、あるいは国選があるから国の予算をただ使っているということだけでもないように思います。  ただ、いろいろな問題がございますし、確かに私選弁護の報酬額と国選弁護の額が今回の値上がりによってまた格差が開きました。そういうこともございますので、今後も私どもとしてはなお一層努力したいというふうには考えております。
  28. 熊川次男

    熊川委員 今後御努力を願うということで、御検討も賜られるかという期待を込めさせていただきます。特に国選弁護選任の要件などについてもある程度検討していただけることが望ましいのではないかと思います。  まだ若干ありますので、もう一点。  各地方の都道府県公安委員会における交通事犯に関するいわゆる聴聞については、方々の各国会議員からも払お聞きしておるのですが、あの聴聞の制度で十分意見が聞いてもらえる雰囲気でない、こういう意見があります。  従前は、公安委員会ができて聴聞制度ができた直後は非常に民主的に行われたというような意見が多かったらしいのですが、最近必ずしもそのような意見が十分述べにくい。ある人によれば、罰金の五万円、十万円取られるよりは免許証を取られる方がはるかに大きな打撃を受けるわけです。妻子の生活にもろに影響を受ける職業の人々がいっぱいいる。けれども、自分の意見を聞いてもらえる雰囲気でないというような、入れば直ちにテープが動き出すというような形で、異様なところだというようなことがありますので、これに対して今後改善の方向を御検討くださると思いますが、現時点における将来を展望した所見を承りたいと存じます。
  29. 柳井洋蔵

    ○柳井説明員 お答え申し上げます。  聴聞は、先生御案内のとおり被処分者に弁明の機会を与え、かつまた処分が公正、適切に行われるということを保障するための制度であります。この点、各都道府県警察に対しましても指導しておるところでありまして、各府県におきましてもよくそれを承知しているところと考えております。もし御指摘のような問題があるといたしますれば、今後さらに公安委員会の聴聞につきましては各府県を指導する上で十分参考にいたしたいと思います。
  30. 熊川次男

    熊川委員 よろしくお願い申し上げまして、終わらせていただきます。
  31. 宮崎茂一

  32. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 私は、昭和五十六年の商法改正時における問題点につきまして、その中で監査制度の問題について若干お伺いいたしたいと思います。  御案内のとおり、昭和五十六年の商法改正では株式制度の合理化、また会社の各機関の権限の分散及び充実強化並びに企業内容の開示制度及び監査制度の充実強化等の改正が行われましたが、その後、法制審議会では、残された問題点として企業結合・合併・分割及び会社法の基本問題ともいうべき大小会社の区分等の検討があるわけでございます。  本年五月九日付をもって法務省は「大小会社区分立法及び合併に関する問題点」として、いわゆる第三次商法改正についての問題点を公表されました。私はそれに関連して、特に監査制度について若干の質問をいたしたいと思います。  冒頭申し上げましたように、昭和五十六年の改正の折には監査制度の充実ということが大きな柱となっておりまして、御案内のとおり昭和五十六年五月十五日の衆議院本会議において附帯決議がなされたわけでございます。その第十一項に「政府が認可し、その監督下にある公益法人については、会計基準法制化し、公認会計士の監査を義務づけることを検討すること。」とうたわれているわけでありますが、これにつきまして政府はその後具体的な方策を講じてこられたか、その後の経緯と実情につきましてお伺いいたしたいと思います。民事局長にお願いいたします。
  33. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 五十六年の商法改正の際に当委員会からただいま御指摘がありましたような決議がなされておるところでございます。公益法人の会計につきましては、総理府におきまして公益法人監督事務連絡協議会というものが各省の担当者を構成員としてつくられております。そこでいろいろな問題を検討しておるわけでございますが、五十二年に公益法人の会計基準というものをつくっております。そして五十四年に民法が改正されまして主務官庁の監督権限というものの強化を図っております。  それに基づいてこの会計基準というものが各公益法人で徹底するようにという指導をしてきたところでございますが、その後、ただいま御指摘のような決議の次第もございますので、まず会計基準というものをより妥当するもの、明確なものに仕上げていく必要があるだろうということで、現在この会計基準をさらに実情に合う、また目的に合うような基準に改めるという作業をいたしております。  これができました場合に、またさらに主務官庁の監督権として徹底をしていく。そして、その模様によってはあるいは法令の面でそれを裏づけるという必要が出てくるかもしれませんけれども、現在の民法の考え方といたしますと、主務官庁の監督によって公益法人は適正な運営、経理をやっていくという原則に立っておりますので、そういう面からまず会計基準を示して、そして主務官庁の監督権によってそれが行われるという方向でやってみようというふうな態度でございます。  それから外部監査の関係でございますけれども、これも公益法人といたしましても、ただいま御指摘があったような観点からなるべく外部の会計専門家による経理の監査あるいは経理事務を担当させようという動きが強くなっており、またそういうことも主務官庁としては指導しておるところでございますが、何らかの形で公認会計士が公益法人の監査といいますか経理というものに関与しているものが全体の三分の一程度には既に達しておるところでございます。これからもそういう線を拡大をしていきたいというふうに考えております。  なお、公益法人にも大小いろいろございますので、将来の問題といたしますと、今度の商法の改正として問題点になっております大小区分の関係、それで中小といいますか現在の会計監査人を必要としているところの次のランクに属するところについて外部監査の導入を考えておるわけでございますが、それがどういう形のものがいいかということを考えることが実は公益法人の監査関係についても非常によりどころになるのではないかというふうな観点でおるわけでございます。
  34. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 次に、ただいま民事局長から御答弁のありました大小会社区分立法と監査制度関係についてお伺いいたします。  まず大小会社区分の必要性について、その基本的な法務省のお考えを手短にお伺いしたいと思います。  物的会社の計算の明確化の担保として監査の強化が必要である、このような考えをお持ちであると思いますが、今民事局長から御答弁いただきましたように、いわゆる中会社以下の非公開会社、閉鎖会社に公認会計士以外の専門家による外部監査を行わせるということでございますが、これは現実問題として制度の円滑な運用が可能かどうかいささか疑問を感じるわけでございますが、いかがでございましょうか。  また、会計監査というのは、私は、会計監査の専門家が監査・基準にのっとって適切に行わなければならないという認識に立っています。むしろこれは共通の認識である、このように確信しております。したがいまして、法定の監査は社会的に大きな影響力を及ぼす企業や法人に対して制度化されるべきものでありまして、その観点からして社会に有用な制度としての充実を図っていくべきものである、このように私は考えております。  一方、中途半端と言うと失礼ですが、中途半端な形で監査らしき制度、監査まがいの制度を導入すると、御当局の期待しているような成果は実現しにくいのではないかという懸念を感じております。簡易な監査といえども監査には責任を伴うものでありまして、監査を行う人はその責任感があれば当然十分な監査を行うことになると思います。その場合には企業は専門家に対しての報酬を負担しなければなりませんし、またその負担はかなりな負担になるのではないか、このように考えられるのであります。  一方、逆に経済的な負担をかけないようにという観点から簡易な監査方法を認めるとすれば、これはかえって現行の厳格な監査制度にまでひびが入り悪影響を及ぼすことにならないか、このように懸念するものであります。したがいまして、大小会社の区分立法の必要性は私も十分認めるものでありますが、監査と絡めての考え方、監査と絡めての方法には十分かつ慎重な配慮が必要であると私は考えます。この点について法務省の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  35. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 先ほどお話しございましたように、この五月九日に民事局参事官室の名前で従来の法制審議会商法部会におけるいろいろな議論を整理いたしまして、それについての各界の御意見を伺うことにしておるわけでございますが、これは法制審議会の商法部会で一つの方向を出したとか、あるいは民事局で一つの方向を持っだということでは必ずしもございませんで、これから検討を進めていく上において問題点だけ洗い出して、それについて各界の御意見を伺おうという態度でございますので、この間の「問題点」というのが私どもの考え方を示しているものではないということをまずお断りをしておきたいと思います。  今度の大小区分の問題は、もともと昭和五十六年の商法改正の積み残しの問題でございますが、特に御指摘の、監査をその場合にどう考えるかということにつきましては、一つには現在の会計監査人を義務づけております会社だけが外部監査の必要があるわけのものではなくて、それ以下の会社につきましても、これは物的有限責任の会社でございますので、株主に対する関係のほかは、債権者に対する関係でも会計がきちんとできていなければならない、それがまたきちんと公表されていなければならぬということは、これは大会社と異なるわけではないわけであります。したがって、そういう方向にいくべきである、それが公益法人の方にも必要だというのが先ほど御指摘の附帯決議の根拠だろうとも思うわけであります。そういう一つの流れがもともと強くあるわけでございます。  ところが、現在でも会計監査人を義務づけております会社がかなり大きな規模の会社に限られておるのは、それ以下の会社では経費の負担との関係でどうかということが配慮されているわけでございます。したがいまして、これから中小の会社について外部監査を導入していく場合に、そのこともあわせて考えられなければならない。したがって、その必要性と、それに対する会社側の負担との均衡をどこで認めていくか。それからもう一つは、外部監査を導入した場合に、外部監査をすべき担い手が公認会計士ということに限定をいたしますと、数の上からいってもこれは十分に担えるものであるかどうかという問題と、それからまた、経費の問題も出てこようかと思います。  そういうふうなことから、今申し上げましたように、外部監査を導入するのが従来からの考え方であるけれども、それをやる場合に、いわゆる現在やっております外部監査と同じものでなくて、もう少しコストがかからなくて簡易な何かのものが工夫できないであろうか、それから担い手としてはどういう担い手を考えたらいいだろうか、そういうふうなことを問題として提起しておるわけでございまして、それに対して各界の方からいろいろな御意見が寄せられるだろうと思います。それを私どもは、先ほど申しましたいろいろな観点からのバランスをどうとるかということで法制審議会において議論が煮詰められていくであろうというふうに考えておる次第でございます。
  36. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 最後にもう一点お伺いいたしたいと思います。  ただいま民事局長の御答弁のありましたいわゆる外部監査の問題でございますが、これはあくまでも問題点として提起したのでありまして、法務省の方針であるとか、あるいはそういう方向を目指しておるとか、そういうことではないと思いますが、法務省で公表された「大小会社区分立法及び合併に関する問題点」の第七の「計算・公開に関する問題点」の第十七項ですか、「会計帳簿又は貸借対照表及び損益計算書(監査報告書)の虚偽記載に対して刑事罰を課する」との考えがうたわれておるわけでございますが、簡易な監査に厳しい罰則を課することは、ただいま局長の答弁もございますが、若干無理が生ずるのではないか。  また、もし違反のあった場合の違反の告発は一体だれが行うのか。また、刑事のみならず民事の立場からも中小の会社が損害をこうむった場合に、いわゆる簡易な監査に対して損害賠償を請求する、また一方で損害賠償を請求された場合に、果たしてその責任を完全に負うことができるかどうか等々、疑念が生ずるわけでございます。こういうことからしまして、規定が先行するといいますか、規定だけで実効が思うように上がらないのではないかという疑念を生ずるわけでございまして、この点について詳しく御答弁をお願いいたしたいと思います。
  37. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 ただいま御指摘がありました会計帳簿等の虚偽記載の刑事罰でございますけれども、ここで問題として提起しておりますのは、いわゆる簡易監査をした場合の監査人に対する刑事罰の問題として提起しているわけではございませんで、取締役が会計帳簿に虚偽の記載をして、またそれを公表するということによって債権者等に損害を与えるというふうなことがあってはいけないという面での取締役に対する刑事罰を課してはどうかという問題の提起でございます。また、簡易監査といいますか外部監査を導入した場合に、その監査を担当する者が会計帳簿に虚偽記載のあることを承知しながら間違いなく正確に記載されているんだという報告をした場合に、その簡易監査人といいますか、そういう者の責任はどうかというのは次の問題になってこようかと思います。  これについては直接問題点としては掲げておるところではございません。が、考え方としては現在の会計監査人についての責任のようなものをそこに簡易監査人についても設けるべきではないか。すなわち会社に対する責任、それから重大なものについての虚偽報告という場合には第三者に対する責任を負うというのが会計監査人の責任でございますが、それと同じか、あるいはそれに準ずるような責任を持たしたらどうだろうかという意見もそれは出てくるかもしれません。しかし、会計監査人につきましても虚偽報告それ自体が刑事罰の対象になっているわけではございませんので、したがって、簡易な場合にそっちの方にだけ刑事罰というふうな御意見が出てくることはまずないのではなかろうかと思います。  何にいたしましても、その責任問題も、監査の範囲、監査のやり方、その担い手、そういうものをどうしたらいいかということと総合的に考えていかなければならない問題だろうと思いますので、罰則の方が先に決まるというよりは、それはむしろ、こういう性格のものをこういう担い手がやる、その場合に虚偽のことがあったらどうするかというような観点で最終的にその責任の問題は考えられるという段取りになるのではなかろうかと思っております。
  38. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 「大小会社区分立法及び合併に関する問題点」の意見の取りまとめはこれからしばらく行われると思いますが、法務省としてはいわゆる商法の第三次改正、これはいつごろ行う予定であるか、御答弁をお願いいたします。
  39. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 ちょっと明確なスケジュールというものを持っておらないわけでございますが、ことしの秋に問題点に対する御意見が各界から寄せられますので、それを整理いたしまして、一年ぐらいかけてもう一つ今度は法制審議会の商法部会あるいは私ども一つの方向を入れました試案を作成して、もう一回各界の御意見を聞くということにしたい。その上で具体的な法案をまとめていきたいと考えておりますが、非常に問題が多岐にわたりますし、それから各界の方でも影響を受けるところが多いものですから、いろいろな御意見が出てこようかと思いますので、それを整理し集約して案にまとめていくというのは、恐らく試案を発表してから後も、まあ二年かあるいは三年ぐらいかけて慎重にやらなければいけない問題ではないかというふうに思っております。
  40. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 時間が参りましたから、きょうはこのあたりで終わりたいと思いますが、また改めてこの問題につきまして議論を深めてまいりたいと思います。  ただいま民事局長の御答弁によりますと、慎重かつ拙速にならないように十分時間をかけて取りまとめていくということでございますが、私もそのことを強く要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  41. 宮崎茂一

  42. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今、私も松山事件再審判決をテレビで見ておったわけですが、お兄さんが外へ出てこられまして最初に言われた言葉は、捜査当局が証拠を隠さないでいてくれればもっと早く無罪になったのだ、こういう意味のことを言われたわけです。  そこで、お尋ねいたしたいのは、検察官は公益の代表者だということがよく言われるわけですが、その意味は一体どういう意味なのか、そこら辺のところからお聞かせを願いたいというふうに思うわけです。
  43. 筧榮一

    筧政府委員 非常に難しい御質問でございますが、御承知のように、刑事訴訟法におきましても、検察官弁護人あるいは被告人というものが対立当事者という形で事が行われるわけではございますけれども、ただ、検察官は公益の代表者としていたずらに被告人を罪に陥れるということではございませんで、刑事訴訟法一条に書いてございますように、人権の保障をしつつ実体的真実を発見して適正な刑罰権の行使を図るという観点から公益の代表者として公正な観点でもって事を運ぶ、そういう職責を有するという趣旨であろうかと思います。
  44. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 確かに当事者訴訟主義といいますか、そういう主義を刑訴がとっておるわけですが、問題になってくるのは、例えばこういう場合はどうなんですか。証拠を持っている、持っているけれども、それを出すというと起訴した被告が無罪になってしまうということがわかっていてその証拠を提出しない、その結果、被告人が有罪になり、死刑になった、執行された、こういうような場合におきます検察官責任というものはどういうことになるわけですか。
  45. 筧榮一

    筧政府委員 あくまで一般論として申し上げたいと思いますが、今先生指摘のように、証拠が被告人の無罪を証明するものであるということが明らかでありますれば、検察官としては当然それを法廷に提出して被告人の無罪という裁判を得るというのが当然の責務であろうかと思います。
  46. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、それは、明らかにこの証拠を出せば無罪になるというふうな場合にということはちょっと例が極端かもわかりませんけれども、それを過失によって出さないということの結果被告人が有罪になったという場合にも、検察官なりあるいは国は当然責任を負わなければならないということになるのではないでしょうか。
  47. 筧榮一

    筧政府委員 あくまで抽象的なお話でございますが、そこに検察官の過失というものがあれば、国家賠償等におきましてはやはり検察官責任あるいは国家機関の責任ということになろうかと思います。
  48. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 本件の場合も百三十数点不提出書類があるわけですね。証拠書類もある、鑑定書もある。そういうようなものが地検の倉庫に眠っている。これは古川支部でしたっけ、眠っていて、それが提出されなかった。そのことから事件が有罪になり、今度再審の中では裁判所から提示を求められるというか決定があって、それが出てきて、そこで無罪になった、こういうことになるわけですね、経過としては。  だから、三つの事件、二つの事件は確定をいたしましたが、この事件を含めて、一体どうして再審までいかざるを得なかったのか、どこに捜査上の問題点があったのか、こういうふうな点の反省を法務当局としては十分すべきであって、それは必要だろう、私はこういうふうに考えるわけですが、この点は大臣、どうですか。
  49. 住栄作

    住国務大臣 先ほども熊川委員の質問に答えたのでありますが、引き続いて免田、財田川、今回また松山事件と、再審の結果無罪になった、こういう事件があるわけでございまして、当然のことでございますけれども、深刻にこの事実を受けとめておるわけでございまして、とにかくどうしてそういうことになったのか、今も証拠のことなど御指摘ございましたけれども、あらゆる角度から検討、反省をして、やはりこれを将来に生かしていくということも非常に大事でございますし、それと同時に誤判というような問題も考えて、今も再審制度のあり方等についても研究、検討を進めておるわけでございまして、そういうことを全部考えてこれを生かしていかぬといかぬ、こういうように考えておるわけであります。
  50. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今私がお聞きしましたのは、公益の代表者ということが言われておりますけれども、その具体的な意味というものは必ずしもはっきりしないから、お聞きいたしたわけです。  これは昭和三十年の事件ですが、それからずっと今まで、未決、既決に入って死刑判決を受けて、そして再審の中で今日に至っているわけですから、これは一般の国民感情から見ても、この事件については検察官側がこれでおさめるといいますか、そういうふうな形をとるのが公益の代表者としても極めて素直な行き方ではなかろうか、これだけ長く入っていて、そして無罪判決を受けた、またあれするというふうなことであってはいけないのではないか、私はこういうふうに考えるわけですけれども、その点については大臣としてはどういうふうにお考えでしょうか。刑事局長は後でいいですから、大臣の考えを先にお聞きをしてから、専門的なことは刑事局長がもし答えたいというなら答えていいですけれども、それは大臣の方からお答え願いましょうか。
  51. 住栄作

    住国務大臣 この点、どういう態度をとるか、判決の直後でございますから、検察当局の考え方、判断に任せたいと私は考えております。
  52. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 まだ判決が続いているわけで、十二時過ぎまで言い渡しが続くわけですから、それはそうなんですけれども、この前の二つの事件もそうでしたけれども、それと同じようにといいますか、極めて常識的な解釈というか、そういう方途をとりたい、こういうふうな形に承ってよろしいでしょうか。これは刑事局長です。
  53. 筧榮一

    筧政府委員 今稲葉委員指摘のように、ただいま判決理由の言い渡し中でございますので、その点は検察当局の判断にまちたいと思っております。
  54. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、私は再審制度の問題で昭和五十八年の三月二十二日に、当時前田さんが刑事局長でしたが、お尋ねをいたしておるわけです。  そのときの答弁の最後のところにこういう答弁があるわけです。「いろいろな面から基本的なところに立ち返りまして真剣に取り組んでいきたい、かように考えております。」こういうふうにあるわけですわ。「真剣に取り組んでいきたい」というふうに言っているわけです。これが去年の三月二十二日ですから、一年三、四カ月たっているわけですね。その間、日時を追ってどういう事項に真剣に取り組んできたかということについてひとつ御説明をお願いしたいと思います。
  55. 筧榮一

    筧政府委員 三月の前田前局長の答弁の趣旨、今委員指摘のとおりでございますが、そのときに前田前局長が申し上げておりますのは、再審制度についてはいろいろ改正すべき点があるかどうか真剣に考えなくてはならない、ただその点につきましても、その当時ということになりますか、言われております再審理由の拡大とかあるいは手続面の整備とか、そういう現象面のことだけで済む問題ではない、やはり法的安定性具体的妥当性の調和ということから考えましても刑事訴訟の基本的な構造に関するものであるので、広く外国の立法例等も参照して真剣に取り組んで検討いたしたいという趣旨であると理解いたしております。  その後、その趣旨に沿いまして諸外国法制度の研究調査、もちろん再審制度規定だけを見ましてもやはりその国の刑事司法制度とのかかわり合いでいろいろ意味があるわけでございますから、フランスなりドイツなりそれぞれの司法制度との関連において諸外国制度を研究する必要があるということでその方面の収集あるいは研究を続けております。  それから、さらに具体的な事件関係におきましては、昨年の免田事件あるいはことし初めの財田川事件がございまして、先ほど委員指摘のように、それぞれの事件について検察当局も真剣に反省すべき点は反省する、私どもといたしましても、その間にどういう点が問題なのかということでございますので、それらの二つの事件に関与いたしました検察官でございますが、それの意見を求める、あるいはその捜査あるいは公判の経過にかんがみ、問題点についての意見書あるいは報告書というものも提出を求めまして、それらの点を中心にどういう点に問題があるのか、具体的事例をもとにして検討いたしておるところでございます。
  56. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今の状況はわかりました。  そうすると、将来はどういう方向に進むわけですか。再審法の改正とその事件の具体的な分析といいますか何と申しますか、そういうふうな問題についてはどういうふうに進むのですか。大体の日時とか見込みというか、そういうようなものはどうなっていますか。
  57. 筧榮一

    筧政府委員 今ちょっと一つ申し落としましたが、いろいろそういう具体的な事件問題点のほかに、社会党等から提案されており、あるいは日弁連等からも改正意見が出ております。それらの点も、もちろん私ども今申し上げましたような資料からどういう点に問題があって改正すべき点がどこにあるかという点を今個々に詰めておるところでございまして、いつになってどうということまではちょっと申し上げる段階ではございません。
  58. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 けれども、今の答弁は去年の三月ですよ。真剣に検討すると言っているんだから、真剣に検討すればある程度の結論――今すぐ出せというのも無理ですけれども、それは私どももわかりますけれども、これはほかに忙しい仕事があるのかもわかりませんけれども、もっと進んでいていいんじゃないですか。諸外国法制といったって世界じゅうの法制を集めるわけじゃありません、国籍法と違うんだから。集める国といったってせいぜい三つか四つでしょう。四つか五つかわかりませんけれども、そんなに時間がかかるわけないですよ。  だから、解決することに本腰を入れてかかっていないんじゃないですか。どうもそういうふうにとれるわけです。本腰を入れてかかっているなら、法制審なら法制審へおおよそいつごろ諮問できるとかなんとかということのめどがついていなければおかしいんじゃないでしょうかね。どうなんですか。
  59. 筧榮一

    筧政府委員 私どもなりに真剣に検討しておるつもりでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、基本的な制度に絡まる問題でもございますし、論点が非常に多いわけでございます。それらの個々について検討を続けておりますので、どれくらい先にどういう形で改正の運びになるということはちょっと現段階では申し上げかねるところでございます。
  60. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこら辺のところは私としてもちょっと了解できないところなんです。社会党の案も出ておりますし、日弁連の案も出ておりますし、そういうようなことも参考にしながらやろうと思えばもっと早くできるんだと私は思うのですよ。刑事訴訟法全体の改正となってくるとなかなか難しい問題ですけれども、これは率直な話、戦後、刑訴法改正のときに再審の問題にまで改正が進まなかったわけですね、一番最後のところですから。そういうようなこともあると思いますが、とにかく大臣、今お話しのような個別的な事件再審法の改正、こういう問題が二つあるわけですけれども、それについて今後どういうふうに進めていきたいというふうに大臣としてはお考えなのかをお尋ねしたいというふうに思います。
  61. 住栄作

    住国務大臣 今、刑事局長から御答弁申し上げましたように、私もこの問題に関心を持っておるわけでございまして、いろいろ作業の状況等も聞いておるわけでございます。先生には釈迦に説法というようなことになりますけれども、これは非常に大きな問題ですから、刑事訴訟法全体というものも見ていかぬといかぬというような話も聞いておりますし、その中で再審というものをどういうように位置づけてどうやっていくか、それと実際の再審構造をどういうようにするかということにつきましてもいろいろな考え方があるようでございまして、そういうことを本当に部分的に議論しておっても大変な議論のようでございます。決して事務当局がこの問題を真剣に真剣にということでいたずらに日を過ごしておるということではない、私は聞いておる限りにおいてはそう思っておるわけでございます。  特にこういうように再審無罪というような事件が続きますと、やはり検察当局としてもこの点について非常に深刻に受けとめておるわけでございますから、具体的にいつということではございませんけれども、とにかく真剣に取り組んでおる、結論はいつ出るかということは私はまだ必ずしもはっきり聞いておりませんけれども、そういうように進めているということだけはひとつ御理解いただけたらと思っております。
  62. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 では、今の問題はまた別の機会にすることにいたしまして、統一協会をめぐる問題についてお尋ねをいたしたいというふうに思うわけでございます。  これは入管局長もこの前のときにおられたかどうか忘れましたが、北東アジア課長か何か外務省も答弁いたしておりましたように、文鮮明氏がアメリカで所得税法違反か何かで懲役一年以上の刑に処せられている、そして七月二十日まで収監が申請があって延期をされておる、こういう話が公式に委員会であった。これはあなたの方でも御存じだ、こう思うわけですが、もちろん収監されている者が日本へ来るわけはありません。しかし、アメリカ法制はよく知りませんけれども、その中でいろいろな形で出られる場合もあるようにも聞いているわけです。  そうすると、ことし十月に何か武道館で世界大会というのがあるわけでしょう。あるいは何か日本に子供がいるとかなんとかというのでそれに会いに来るとか、いろいろな理屈があるかとも思いますが、それに伴って日本に入国をしたいというようなことが、この前はあったわけですね。今度もまたあろうかと思うのですが、それに対しては、入管及び難民認定法ですか、その五条一項第四号によって入国は認めない、こういうふうなことに承ってよろしいですか。
  63. 田中常雄

    ○田中(常)政府委員 お答えいたします。  ただいま委員御提起の問題でございますけれども、外務省の調べによりますと、刑は確定したそうでございますが、ただ、現在減刑の手続が残っている、そう聞いております。  一方、文氏に関してでございますけれども、今日までのところ文氏から入国申請もなされておりませんし、また、瀬踏みと申すのでございますか、事前の打診も何もない段階でございます。したがいまして、仮に文氏から入国申請がありましたら、その時点で文民の入国目的、滞在期間、日本における行動等について十分に審査いたしまして、その時点で改めて検討いたしたいと考えております。
  64. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その際には、もう当然のことですけれども、出入国の法律にありますようなことを重視をしてというか、それを守っていくということですね。  今、減刑の話がありましたけれどもアメリカの法律は私はよくわかりませんけれども、減刑を申請しなかったので確定して、そして刑の執行になってそれが延期になったと聞いておるわけなんですけれども、いずれにいたしましても、結論的には、ちゃんとこの法律に従って入国に対しては毅然とした態度をとる、こういうことですか。
  65. 田中常雄

    ○田中(常)政府委員 先ほど申し上げましたように、まだ文氏より入国の申請がない段階でございますので、一般論として申し上げれば、入国申請があった外国人に対しては、当然のことながら入管法にのっとって審査を行う予定でございます。  一般論と申しますのは、まず委員もおっしゃいましたように、第五条、上陸の拒否事由というのがございます。外国人で国外においてその国の法令に違反して一年以上の刑に処せられた者は、上陸の拒否事由になっております。しかしまた、同時に第十二条で、大臣の裁決の特例というものがありまして、もしも上陸の申請者が異議の申し立てをした場合においては、その異議が理由がないと認める場合においても、大臣が入国させるべき事情があると認めた場合においては入国させることができるとなっておりますもので、第五条及び十二条、その他関連法令等々に照らして慎重に審査いたしたいと考えております。
  66. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 統一協会の事件は、率直に言うと信教の自由にかかわることですし、いろいろなかなか難しい問題を含んでいるわけです、国内での問題でですよ。人権擁護局長に聞くわけですがね。  そこで、私、当事者というか、そういう人にいろいろ聞いてみたのですが、ソウルでの結婚式、合同結婚式というのですか、あれは男の方が並んでいる、女の方が並んでいる、それで大体一分間に二十人から三十人決めていくんだというのです。本人がそれでいいと言えばしょうがないのかもわかりませんけれども、ちょっと異常なんです。  そこで、さらに問題になってまいりますのは、こういう文書があるのです。これは御案内と思いますが、集団結婚式には大きく分けて大体三つの年次があるわけですが、最初がスリーセブンというあれですが、そこで一九八三年八月八日に家庭部というのから責任者巡回師各位というので「六〇〇〇双(一六一〇双含む)の家庭を持つ基準について」というのが出ているのです。ここにありますけれども、これを見ると「一六一〇双は原則として、女性が満三十三才になった時点で家庭修練会に参加し、家庭を持つ。」というのです。  それから二項は「女性の年令三十~三十二才のカップルは、霊の子女各々一名以上、合わせて六名以上満たした時、家庭修練会に参加して家庭を持つことができる。」三項は「六〇〇〇双(82年マッチング)に関しては、女性の年令三十三才以上で霊の子女各々三名以上持つカップルは、家庭修練会に参加して家庭を持つことができる。但し、約婚から三年半を経過した後は一六一〇双の基準を適用する。」というようになっているわけですが、結局、人権擁護関係から非常に問題になってまいりますのは、集団結婚するわけでしょう。見合いか何か結婚をして、ところが同居させないわけですよ、この指令にもありますように。女の人が三十三歳になるまでは同居してはいけないというのです。だから、同居させないわけです。  なぜさせないかというと、どうもその理由は必ずしもその言うところははっきりいたしませんけれども、十月に武道館で世界大会がある。そこで資金がどうしても必要なんで、何か私の聞いた範囲では、三十億ドルのうち七千億円が日本で必要だというようなことのようなんですが、それを集めるためにいろんなものを売って歩かなければいけないわけです。いわゆる花瓶だ、代理石だ、物すごく高い値段で売って歩くわけですが、そういうことの活動にさわりになるといけないというので同居させない。ちゃんと指令が出ているのです。こういうことに対して、人権擁護局としては、知らなかったのかもしれませんけれども、今ここに写しをとりましたので差し上げますが、一体どういうふうに処置するのですか。
  67. 鈴木弘

    鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生おっしゃいましたことの詳細につきましては、実は私ども今まで把握はしておらなかったわけでございます。ただ、世界基督教統一神霊協会の入信者でいわゆる集団結婚式を挙げた者が、儀式後ある期間別居しているという事実があることは承知いたしておりました。この集団結婚式が婚約というべきなのか、あるいは結婚式であるのか、問題のあるところでございますが、結婚式でありますれば、挙式後婚姻届をして同居するという我が国における通常の婚姻のあり方から見て、やはり異例だと思うわけでございます。しかしながら、その別居が脅迫、強制等によるものではなくて信仰上の理由から、当事者の自由意思に基づき受け入れられているものであれば、直ちに人権侵害であるということはできないと考えておるわけでございます。  人権擁護機関といたしましては、別居が脅迫、強制等によるとの疑いがある場合はもちろん格別でございますが、そうでない時点では調査に乗り出すということは通常はいたしておらないわけでございます。  ただ、今先生からお伺いいたしましたが、物品を売らせて資金を得るというようなこと、それに絡んで暴行、脅迫というようなこと、とにかく自由意思を排して強制、圧迫にわたるというようなことになりますと、これはやはり人権上問題であろうかと思われますので、そういう疑いがあります場合には、人権侵犯事件として適切に対応してまいりたい、かように思っております。
  68. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 宗教上の問題ですから、確かにいろんな問題があると思うのですが、ちょっとこれは僕は常識を逸してひどいと思うのですよね。集団結婚か何かして、三十幾つまではとにかく一緒になっちゃいけないという指令が出ているのですからね。これは常識外であって、中で非常な不安を持っている人がいるのですよ。いろいろな手紙なども今集めているところですけれども。そういう人のあれが来れば――ただ、後で復讐を恐れたり何かしている点が確かにあるのですが。そういう手紙か何か来れば、これはあなた方の方に届けますから、十分に内容を審査して、しっかりとした対応をとっていただきたい、こういうように思うわけです。  そこで、これは警察を中心としてお伺いをいたすのですけれども、この統一協会といいますか、あるいは勝共連合というのですか、この中で世界日報で、社員と前の副社長や何かとの関係ですか、傷害、暴力行為、暴行等の事件があったわけです。その事件でまずお聞きいたしたいのは、これがあったのは去年の十月一日ですね。告訴は十一月二十五日渋谷警察署が受理しておる、六月十二日に送付されておる、この事実関係について間違いがないか、それから告訴の概要について、これは警察の方から簡略に御説明を願いたいと思います。
  69. 藤原享

    ○藤原説明員 ただいま先生がおっしゃっております告訴の受理の関係、三通ございまして十一月二十一日に受けたもの二通、十一月二十五日受けたもの一通ということでございまして、告訴の事実関係については、いずれも先ほどお示しのいわゆる世界日報の役員改選をめぐる問題についていろいろその種の暴行傷害等が行われたというような内容になっておるわけでございます。
  70. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 渋谷警察と統一協会とのいろいろな関係というか、この告訴に絡む問題の中で、十月一日に事件があったわけですね。世界日報が襲撃された。その前に九月下旬及び三十日に総務の宮崎という人が渋谷警察に行っておるのです。その前に渋谷署の刑事が世界日報に来て勝共連合の担当の刑事だとかいうようなことを言っていろいろ探りに来たということも受けて、どうも回りをうろうろしているからというので九月三十日の夜七時ごろ渋谷署に行っておるわけです。署長はいなかったわけです。渕上という警察官に会って、何かあっては大変だから頼みたいということを言っておるわけです。  ところが、そのころに被告訴人であります四十六歳の梶栗玄太郎というのがおるわけですが、この人も渋谷署に行って、統一協会内部、勝共連合内部あるいは世界日報内部の内輪もめなのだから警察が出動しないようにしてくれ、こういう要請をしておるというようなことに聞いておるのですが、そういう事実関係がありますか、十月一日以前のことです。
  71. 藤原享

    ○藤原説明員 十月一日以前の問題については、その種の報告は受けておりません。
  72. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 十月一日に世界日報が襲撃されたときに、一一〇番が三階の編集局からされてパトカーの出動を頼んだ、四階に閉じ込められた、そこから一一〇番をした、なかなかパトカーが来なくて、結局大分おくれて担当の刑事が四階に入ってきた。そしてそれは十二時半ごろ。二時半ごろに渋谷署が会議室を提供して仲介の労をとる、こういうことで両者の代表がパトカーに乗せられて渋谷署内で覚書を取り交わした、こういう事実はありますか。
  73. 藤原享

    ○藤原説明員 両方の代表者が渋谷署に参ったことは事実として伺っておりますが、覚書を交わしたという点については特に承知いたしておりません。
  74. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 告訴の件なんですけれども、十月十三日に宮崎、小室、金子、荒井という四人が渋谷署に行った。菊地刑事課長に会おうとしたら、会議中だから、告訴の件は担当の人でないとだめだからというので、十一時ごろ行ったわけですが、三時ごろまた来てくれと言われた。そうしたら、渋谷警察は勝共連合側というのか統一協会側の弁護士、名前はわかっていますが、佐藤という弁護士を呼んで待機をさせていた。そして、四時半ごろに告訴人の宮崎が呼ばれて四人の警察官に囲まれて告訴は受け取れないと言われた。勝共連合担当の公安刑事が、こんなことをやるとどうなるかわかっているのか、こういうようにどなって言った。  結局、きょうは受け付けないということなので、受け付けられないで長い時間待たされて、そして帰った、こういう事実ありますか。
  75. 藤原享

    ○藤原説明員 御指摘の十月十三日にその種の告訴を受け付けないという事実については特に承知いたしておりません。
  76. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そんなことないでしょう、あなた。渋谷警察で詳細に調べてみてくれと私は何回も警察に頼んだでしょうが。告訴状をつくっていったのは十一月二十一日ですか、そうしたところが、渋谷署ではある部分を削ってくれと言ったでしょう。それはこういう部分ですよ。「被告訴人らによる世界日報社員らに対する暴行傷害、器物損壊の犯行は告訴の事実以外にも多数行われたのであり、さらに一一〇番によって駆けつけて被告訴人らの暴行場面を写真に撮った渋谷警察署の私服警官が勝共連合会になぐりつけられるような事態も発生した。」こういうことが前の告訴状に書いてありましたね。これを削れと言ったでしょう。こういうのがあるのならば警察は告訴は受け付けないと言ったのじゃないですか。なぜそういうことをしたのですか。
  77. 藤原享

    ○藤原説明員 告訴状の内容に警察官に対する暴行云々といった記載がございましたので、その点について事実を確認しないと告訴状の内容として一応受け付ける、受理でございますが、そういうことについてどうするかということの判断もございましたので、その点時間をかしてほしいといったような意味で、その時点では受理しなかったというふうに聞いております。
  78. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 警察は告訴状の内容を審査する権限があるのですか。刑事訴訟法でどういうふうに書いてありますか。速やかに送付すべしと書いてあるのじゃないですか。そんなことはいけないですよ。そんなこと、どこに法律上の根拠がありますか、これを削ってくれなんという根拠が。これは私服の警官が写真を撮ろうとしたのですよ。そうしたらぶん殴られたのです。初めわからなかった、後から私服警官だということがわかったのですよ。初め渋谷署か原宿署かわからなかったのだけれども、わかった。そうすると、これは大きな事情じゃないですか。相手側がこういう暴行までやっているのだということの告訴の、直接ではないかもわからぬけれども大きな事情なので、これを削れ、こういうことがある以上受け取れないとあなたの方は言っているじゃないですか。そんなばかなことあるものですか。根拠を説明してください。
  79. 藤原享

    ○藤原説明員 その告訴状を受け付けないと言ったわけではございませんで、告訴状について一時預からしていただいて、一般的に警察の告訴状を受理いたします慣行としては、中身等について、中傷とかそういったような問題もありますので、一応当たらしていただいて、その上でそういった点について受理するといった慣行もございますので、そういった点について一応手続を踏んだのではないかというふうに理解いたしております。
  80. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 削れと言ったのです。だからその部分を削って出したことは間違いないですわね。後で答えてください。受けたのはその後の、三日くらいたってから告訴が提出されたのですが、まずよく調べてください。一体なぜ警察はそこまで勝共連合というか、そのための便宜を図るのですか。相手方の弁護士まで警察は呼んでいるのですよ。そんなことをするのは本当に納得いかないですね。呼んで、告訴を取り下げろというような話もしているようですね。こういう事実があると言うんだから、それをちゃんと調べて、あとは検察庁に任せればいいわけですよ。あなたの方から言わせれば、勝共連合を利用してそこからいろいろな情報をとっているんだということがあるかもしれませんけれども、こういうようなやり方は非常に疑いを持たれるというふうに私は思うわけです。  そこで、ことしの二月十八日に結局、その目撃者である北、それから綿引ですかの調書が終わって、それで告訴人側の調べはこの当時に終わっているのじゃないですか。その後、被告訴人側の調べはどうなったのですか。どうもよくわからないのですね。あなたの方でも、何か告訴人側の方が協力しなかったとかしたとかいうことはあるらしいから、事実かどうかよく知りませんけれども、それならばそのことは遠慮なく言ってください。
  81. 藤原享

    ○藤原説明員 告訴状につきましては、その告訴人側の調べ等を今御指摘のような大体二月から三月くらいにかけてやっておりますが、さらにその後、この四月、五月という時分に被告訴人の関係についても事情聴取等をやったというふうに聞いておるわけでございます。
  82. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 被告訴人側は一体その取り調べに応じて出てきたのですか出てこなかったのですか。そこのところはどうなんでずか。
  83. 藤原享

    ○藤原説明員 取り調べに出てまいった人もございますし、特にいろいろ事情があるようでございまして、出てきていなかったという人もあるようでございました。
  84. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あなた方は、労働争議や何かだったら出てこなかったらどんどん逮捕するでしょうが。何も逮捕することを奨励するわけじゃないけれども、こういう事件についてはだめですよ。恐らくここから情報をとっているからあなた方も強く出られないのだろうと思うのだけれども、こういうふうな暴力事件が行われているのに、そういうふうなやり方というのは非常によくないですね。だから、副島さんはその後、六月二日に暴漢に襲われているわけでしょう。大けがをしているわけですね。  私が了解できないのは、告訴が出た段階でそれをああだこうだと言ってなかなか受け付けない。受け付けないだけでなくて、その相手方、被告訴人側ですよ、被告訴人側の弁護士を警察へ呼んでいるのですからね。そんなことは考えられないですよ。告訴人じゃないですよ、相手方ですよ。相手方の弁護士を警察へ呼んで手配しているわけです。そんなことは常識では考えられないと私は思うのです。この事件は結局はどうなったのですか。
  85. 藤原享

    ○藤原説明員 この告訴事件は六月十二日に東京地方検察庁に送付いたしております。
  86. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 じゃ、東京地検としては受理して結局どうするのですか。これはどこでやっているのですか。
  87. 筧榮一

    筧政府委員 今お話しのように、六月十二日でございますか、東京地検で受理いたしまして、ただいま捜査中でございます。
  88. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、東京地検で受理したのはわかるのだけれども、特捜部でやるのですか、普通の刑事部でやっているのですか。どこでやっているのですか。
  89. 筧榮一

    筧政府委員 警察からの送付事件として刑事部でやっておると思います。
  90. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 刑事部はおかしいな。告訴事件でしょう、直告じゃないけれども。――直告じゃないからやはり刑事部でやるのかな。まあ事件の性格にもよりますけれどもね。ともかく早急に事実関係をしっかり調べて、そして今私がここで指摘したような事実も、検察庁としては直接タッチしないと言うかもわからぬけれども関係する範囲内で調べていただいて、そして疑いを持たれないような態度をしっかりとってもらいたい、私はこういうふうに要望しておきます。  時間の関係もございますので、次にいきますが、私が常々問題と考えておりますことの一つは、証券取引法の問題なんですよ。この違反が非常にたくさんあるわけです。これは制度の問題にも絡むわけなんですが、実は私は、これはある夕刊紙ですけれども、証券取引の関係でたまたまこういうのを見たわけです。「今秋!総裁選にからむ政銘柄の玉移動は始まっている」というので、問い合わせは政治部云々、投資ジャーナル、こう出ているわけです。これは中江某のところですが、これについてはこれからお尋ねをいたしますけれども、その前に、一体証取法の関係では何条がどういうものであって、どういう違反がこの三年間くらいどのくらいあったのですか。
  91. 筧榮一

    筧政府委員 証券取引法違反事件の受理状況でございますが、昭和五十五年に通常受理で三十二名でございます。処理としては起訴六名、不起訴一名。昭和五十六年に受理十一名、起訴一名、不起訴十一名。昭和五十七年には受理三名、起訴ゼロ、不起訴二十二名、そういう数になっております。
  92. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは今ここでなくてもいいけれども、その具体的内容を、証取法の中では何条、何条が違反になるのですか。例えば五十条があるでしょう。五十八条があるとか、百二十五条があるとか、二十八条があるとか、こうありますね。これは一体どういうふうなものなのかよく説明をしていただいて、そして今言ったことの内容がどれとどれなのかということをちょっと説明していただきたい、こう思うのです。  これは僕らもわからないのですよ。私も株のことは全然と言っていいくらいわかりませんが、なぜ私が株に興味を持つかというと、株というのは僕は知らないのです、やったことないのですが、率直に言うと、政治家というのは政治資金でいろいろな資金を得るのだとばかり思っていたのです。ところが、ある人が、これは名前を言うとあれですから言いませんけれども、これはある政治家です。この人が僕に違うんだ、違うんだと言うのです。政治資金じゃないよと言うのです。株だ、株だと僕に言うのです。株でみんなやってうんともうけるんだぞと言うわけです。だから、総裁選挙に出るので、株のことで頼んだ方もいらっしゃるわけですね。どこにいらっしゃるか知らぬけれども、そういう人もいらっしゃるわけで、一朝有事の際に株でうんとあれしたいということでやられた方もいらっしゃるわけです。  そこで、一番大きな問題は、一体この証取法の何条と何条がどう違反なのかということです。特に百二十五条の相場操作の禁止の問題なのか、どういう違反なのか、具体的な内容をわかりやすく説明してくれませんか、僕らは株のこと全くわからない素人だから。
  93. 筧榮一

    筧政府委員 私も株の売買に関しては素人でございますので、その件については申し上げかねますが、先ほど申し上げた数字が何条違反という詳細は統計上把握しておりませんので、今御質問の御趣旨に合いますかどうか、最近の主要な証券取引法違反、この三年間には限りませんけれども、それにつきまして事案の概要を簡単に御説明いたしたいと思います。  いずれも、例えば商法違反でありますとか詐欺でありますとか、その他の罪と併合になっている場合が非常に多いように見受けられるわけでございます。一つは、最近の例でも大光相互でございますか、これは御承知の虚偽の有価証券報告書作成、百九十七条一号の二、二十四条一項となっておりますが、虚偽有価証券報告書を作成して提出したというのが割合数としては多いようでございます。それから株価操作と申しますか、これは百二十五条三項でございますが、というようなものも、これは会社の倒産をめぐっての事件と併合して起訴されておるのがございます。  それから証券会社の職員等による贈収賄、これもございます。これは証取法の二百三条一項でございます。それから同じく百二十五条の株価操作、買い支えの一連の売買をしたというような事案、それから同じく株式の相場を変動させるべく一連の売買をしたとかいうような事案が見受けられます。それから、あとは大蔵大臣の免許を受けないで売買取引の委託の取り次ぎをしたという二十八条一項でございますかの事案、そういうものが主要な事案のように見受けられます。
  94. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 刑事局長、この前僕はちょっと言うのを間違ったことがあるので、訂正させてください。あなたが岐阜の検事正から来たと僕は言ったでしょう。あれは間違い。佐賀の検事正から来たので、この機会に訂正させてください。いや、僕もそれが気になっていたんだよ。後で気がついたのだけれども、間違っていた。  今あなたは、株のことは詳しくないと言うけれども、これはおかしいですよ。資本主義経済の悪をあれするのが検事の仕事なのですよ。ほかのことは警察に任せておけばいいのよ。そうでもないけれども……。だから、一番の大きな問題は、株の操作の問題なんですよ。これは検事もわからないのですよ。まず警察がわからない。兜町の中央警察に行ってごらんなさい。あそこへ行くと、いろいろな相談に行くのだけれども、株のことよくわからないものだから、そんなのだめだとかなんとか言って、みんな結局うまく受け付けてもらえないわけだ。  刑事局長が株のことわからないのじゃ困るので、あなた、一番詳しく専門家になって特捜部を指揮してもらわなければ困るのだよ。ここに犯罪の巣があるのですよ。これは総裁選挙でも何でも、みんなこれなんだから。ここから金が出てくるのですから。去年の総選挙のときの金はここから出ていると言われているのですよ。  今、私、読んだでしょう。実はこれは日刊ゲンダイに出たやつですよ。「総裁選にからむ政銘柄の玉移動が始まっている」というので、ここへ電話してくれって書いてある。政治部、投資ジャーナル。投資ジャーナルというのは中江ですわ、今問題になっているかいないか知らぬけれども加藤というのはあれになっていますけれども。あなた、加藤事件だって所得税法違反だけでしょう。証取法違反でやってないでしょうか。これは検事自身も、こういう事件にかかわっている検事は特捜部の中でも二、三人でしょう。だから、とても手が回らないのはわかるけれども。  実は、ここへ私が電話するわけにはいかぬから、ある人に電話してもらった。そして全部テープにとってもらった。約二時間。そこで出てまいったのが政治銘柄の問題ですよ。証券新聞ではみんな出ているのですよ、みんなじゃないけれども出ているわけですね。一番大きなのはアラビア石油の問題です。テープの中に、アラビア石油の問題が出てくるんだ。アラビア石油が、最初、去年六月ごろ千七百五十円だったのですよ。いいですか。六月十一日に千七百五十円、これが九月になって七千五百円に上がっているのですよ。  だから、ほかの石油会社もみんな上がったのかと思って調べたわけですよ。日本石油と帝国石油を調べた。そうしたら、日本石油の場合は、七月十一日が九百八十八円。九月も大体同じぐらいですね。それから帝国石油が六月十日が七百三十三円、九月が八百十四円水準なんですね。それで、去年の七月、八月、九月にアラビア石油の出来高が物すごく多いのですよ。これはすごいのですよ。それで十二月に総選挙があったわけでしょう。この二時間余り聞いた中で、出てくるのですよ、アラビア石油がこういうふうに上がった、これは株価操縦だとはっきり言っているのですよ、この会社の人が。そこへ出てくる名前は越山会の人がやったんだ、こう言っているのですから。  この証券のいろいろな新聞なんかに政治家が絡んでいるということが出てくるのですけれども、これは確かに、アラビア石油というのが中国との提携や何かがあって、渤海湾の石油の問題ですか、そういうようなものがあって、ある程度高くなるのはわかりますよ。ここに全部とってみたのです。物すごいのですよ。千七百五十円が六月十一日、二千八百円が七月二十七日、九月六日が七千五百円ですね。それからぐっと下がっちゃうのですよ。多少上がったりあれしますけれども。出来高は七、八、九と物すごく多いのですね。  これは株価操縦だということをはっきり投資ジャーナルの人が言って、そして勧めているのですよ。こういう株を、政治銘柄を教えるから、だから十万円払って会員になりなさいということを言っているわけだ。これは僕のところにテープがありますけれども。だから、こういうような形で行われているわけですよ。これは事実関係をよく調べてください。  確かに、今私が言った百二十五条の相場操縦の禁止のところの条文というのは難しい条文ですよ。目的罪になっていますわな。重要な事実の不開示等、いろいろなことがありますけれども目的罪になっていますから、確かに難しい。これは警察の方に聞くと、とても難しくてできないというようなことも非公式に言うのです。非公式に言ったことをここで明らかにして悪いけれども、そういうふうに言うのですね。  ですから、いかに何でも、アラビア石油がこんな上がり方をするわけはないですよ。非常におかしい。しかも、この投資ジャーナルでは、政治銘柄で越山会が入ってやったのだからというようなことをはっきり言っているのです。そういう点、私は資料は幾らでも提供しますから。そして、それらの人が、日にちは言いませんけれども、ある特捜のところへ呼ばれていますからね。呼ばれているというのは、告訴人側が行って事情を説明することになっていますから。そういうような状況がありますし、あしたの十時、テレビの宣伝をしては悪いから、あるテレビと言っておきますけれども、あるテレビで、「兜町の犯罪」というのを書いた人の経済ジャーナルが出るわけです。そしてこの関係が説明されるわけです。そうすると、被害者の人がどんどん殺到して、問題がさらに大きくなってまいります。  五十条は、断定的な判断をしてはいけないことになっているわけですね。五十八条は、虚偽表示あるいはインサイダー取引などをしてはいかぬ。百二十五条が仮装売買、相場操縦の禁止。二十八条、のみ行為。これは中江という人のやっている東京何とかという、二つの会社がありますね、これ以上言いませんけれども。二つの会社がのみ行為をやっているということはもう常識的なことになっておるのじゃないですか。そういうような点なども十分調べていただいて、そしてこの証取法違反というものに対する十分なメスを振るってもらいたいと私は思うのです。  それでないと、日本の政治はよくならないのですよ。政治献金が低く抑えられたでしょう。金額が低くなっちゃったから、みんな株でやっているのですよ。株でやったから、今は総裁選が始まるから、株がまた出始めているのですよ。既にこういう広告が出ているのですから。「総裁選にからむ政銘柄の玉移動は始まっている」と、堂々と出ているのですから。一日出ているのじゃないのです。二日も三日も出ているのですから。そしてその株をうんと上げておいて売っちゃうわけですよ。売っちゃったころ、下がってくるころに一般の人が買うわけだから、損しちゃう、こういう仕組みになっているらしいのですよ。  いずれにいたしましても、そういうような点を踏まえて、皆さん方の方で証券取引法の違反についてはしっかりとした対策を練ってもらいたい、こういうふうに私は思っておるわけです。  そこで、大蔵省にお聞きをするのですけれども、SECというものがアメリカにはありますね。日本でも証券取引法があるわけでしょう。証券取引法は、もちろん国内経済のあれと同時に、投資者保護をうたっているわけですね。それで日本の証券取引法とアメリカのSECのやっていることは一体どこがどう違うのか。日本の場合、アメリカの証券取引法をそのまま写したのでしょう。私もSECへ行きましたよ。あれはロッキードのときに行った。ワシントンの郊外、遠いところにある、大きな建物ですけれども。SECと大蔵省の証券局と、一体どういうふうに組織が違うのか。アメリカの場合は、行政委員会で独立した組織ですね。それから日本の大蔵省の証券局というのは、一体証券会社に対してどういうような監督をしているのか、どこに問題点があるのか、こういう点についてひとつ御説明願いたいと思うのです。
  95. 中島公明

    ○中島説明員 お答えいたします。  私ども、必ずしも外国事情を十分には勉強しておりませんので、ただいまの先生の御質問に的確に答えられるかどうか、ちょっとわからない点もあるわけですけれども、先ほど先生から御指摘がありましたように、SECの方は大統領に直属する行政委員会という機構上の特色を持っておるわけでございます。証券局の方は、日本は議院内閣制でございますから、大蔵省の中の一部局ということで証券局という組織をとっておるわけでございます。  あと、規模というような点になりますと、SECの場合には大体千九百人ぐらいの人員がいるというふうに言われております。ただ、この千九百人の中には、いわゆるサポーティングスタッフみたいなものも入っておりますから、その中で純粋のプロフェッショナルに相当するような人たちがどの程度いるのかというような点については私どもちょっと把握しておりません。証券局の方は、本省で定数としてございますのが約百三十でございます。そのほかに財務局の方でいろいろと証券関係の仕事をやっているわけですけれども、こちらの方は特に財務部あたりになりますと一人の人がいろいろな仕事を担当しておりますので、純粋にどういうふうな人数がというのはちょっと私把握しておりません。機構とか組織、そういったものは大体今申し上げたようなところかと思います。  仕事の内容につきましては、SECの方は御承知のとおり一九三四年に一九三四年証券取引法という法律を根拠としてできておりまして、取引所なりあるいは店頭市場を含めた証券市場の規制といいますか、監督といいますかというようなことをやっておりますし、また証券会社、これにはディーラーでありますとかブローカーであります、とかアンダーライターとか、いろいろな種類があるわけですけれども、そういったものの監督も担当しておる。それからもう一つ、これは日本でもやっているわけですけれども、企業の財務内容のディスクロージャーというものがございまして、上場企業とか一定の要件に該当する企業に対してその財務内容を開示させるというようなことをやっておるわけでございます。  仕事の内容につきましては、そういうことで証券局がやっていることと大体同じようなことだと思いますけれども、ただ、沿革的に申しますと、SECの場合には性格的に準司法的あるいは準警察的な色彩が強い。それに対して日本の証券局の場合には、戦後、証券市場というものが全くゼロというような状態からこれを育成していく、特に間接金融、直接金融というような金融のひずみの中で直接金融はどうしてもおくれがちであったというようなことから、そういった政策面、広い意味での金融あるいは資本市場政策の一環というような観点からの行政の色彩が強いというようなことが特色として言えるのではないかと思います。  証券会社の監督につきましては、ちょっと私は直接担当しておりませんので、担当の課長の方からまたお答えさせていただきます。
  96. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 証券会社の監督につきましては、先生指摘のとおり、とにかく資本市場の健全な発展のためには投資者の信頼というものが大事でございますので、そういう観点から証券会社の経営全般につきまして監督をしております。それで、具体的には、行き過ぎがあると思われるような点につきましては「投資者本位の営業姿勢の徹底について」というような通達を出しましたり、それからまた証券局及び財務局で会社をそれぞれ分担いたしまして証券会社の検査を行うというようなことをやりまして、実際に証券会社の内部管理体制がどうなっているかとか、それから財務内容がどうであるかとか、経営姿勢がどうなっているかとか、そういうふうな点について検査を行い、また悪い点が見つかればそれを是正するように指導しているという状況でございます。
  97. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはそうだけれども、具体的にどういうふうにやって、ちゃんとその報告書みたいなのがあるのですか。どこへ報告しているのですか。どこに問題点があるのですか。一つは、制度の中で証券会社の社員の給料の問題があるわけです。手数料主義というか、何回も何回もうんと売買していけば自分に手数料が入るわけです。だから、もうお客の方に売買をどんどん勧めたりなんかして自分のあれをしようとしているわけです。そういう点なんかいろいろな問題があるので、制度的な問題も確かにあるのですよ。  今あなたの言われたように、どういうふうに監督しているというのならば、その監督した結果、一体どういうふうな報告書をどこへ出しているのか。国会へ報告しているのか、どこへ報告しているのか知りませんけれども、さっぱりよくわからない。説明としては、言葉どおりはわかるのですよ。具体的によくわからないですな。これはどうしているのですか。
  98. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 検査の結果につきましては証券局に報告が上がってまいります。その報告が上がってまいりましたものについて、特に先生指摘のような回転売買をやるとか、営業成績を上げるためにむちゃくちゃな勧誘をやっているというふうな事情がございますと、それをまた指摘いたしまして、そういうことのないように証券会社を指導していくというふうにしております。
  99. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 まあ、ここであれするのもあれですけれども、回転売買はみんなやるのです。やらなければ自分のあれが入らないのです。ノルマを課すからいけないのですね。ノルマ証券というのがあるけれども。そういうふうなことで、それを課すからいかぬのです。そこら辺のところはまた別の問題にしますけれども。  それから、さっき私が言いましたのみ行為、二十八条の免許を受けないでやっていますね。これは非常に多いのです。一つの例としては東京クレジットなり東証信用代行、これは投資ジャーナルの関係です。中江という人の関係でこの二つがのみ行為をやっているというようなことはもう公然と言われておると伝えられておるのですわ。そういうふうなことがありますから、そういう点はもっとしっかりやってもらわなくてはいかぬと思うのです。  この日本の証券取引法というのはアメリカのSECのつくった法律をそのまま写しているのですから、それでやっていることは全く違う。何もやらないと言っては悪いけれども、ほとんどやらないのですからね。それで変なことばかり行われて政治家の金もうけの道具なんかにされたのではどうもよくない。こういう点については私はもっとしっかりしてもらいたいと思うのです。  これは今申しましたように、余り宣伝しては悪いけれども、あしたの十時からのテレビにいろいろな話が出るようですから、それらを見て、また私も今資料を集めていますから、別な機会にゆっくり質問をさせていただきたい、こういうふうに考える次第でございます。  あと、最高裁法務省関係の来年度の予算の問題などに絡んで質問をしたいと考えるわけでございます。  最高裁判所にお伺いをいたしたいのは、この前の簡易裁判所の整備拡充というのですか、あなたの方ではどういう言葉を使っているのか知りませんけれども、それは具体的にはどういうことであって、どういうふうに進んでおるということでございますか。
  100. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 私どもの方では裁判所の適正配置という言葉を使ってございますが、これは稲葉委員よく御承知のとおり、現在の裁判所制度が戦後発足いたしましたのは昭和二十二年でございます。それから約四十年たっておりまして、その間に人口の都市への集中化であるとか、あるいは交通事情の好転であるとか、あるいは市町村の数の変更であるとか、いろいろ大きな社会事情の変化が生じております。  ところが裁判所の配置は旧来のまま今日に至っておりますので、現在の社会事情裁判所の配置がマッチしていない面があるのではないか、そのことのためにいろいろなひずみが生じているのではないだろうか。そこで、裁判所の充実強化、司法の全体の機能の充実強化を図るためには、やはり裁判所の配置について現在及び将来の社会事情にマッチするようにその配置の見直しをする必要があるのではないか、こういうように考えまして、実は今年の二月二十日に法務省、日弁連、最高裁で組織いたしております三者協議会に議題として取り上げるようにお願いしたわけでございます。  日弁連の内部、それから法務省におかれましても種々御検討なさった結果、先月、六月二十五日に議題として取り上げて協議していこうということが決まった、こういう段階でございます。
  101. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、大体の目安は今後はどういうふうに進んでいくわけですか。
  102. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 今後の段取りといたしましては、三者協議におきまして、現在の裁判所の抱えているいろいろな問題点、それから事件の偏在状況というものがございまして、都市部の簡裁では事件は急増しておる、郡部の簡裁では事件が減少しておる、そういう事件の偏在状況でございますとか、人口の推移でございますとか、交通事情でございますとか、そういうもろもろの事情につきまして、私どもの方で資料を御提出して説明させていただく、それに基づきまして、またいろいろ御意見を例えようかと思います。  そういうところで、見直しの基準と申しますか、そういう関係意見をいろいろ承りまして、例えば簡易裁判所の配置を見直します場合、御承知のとおり下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律で定められているわけでございます。したがいまして、当然法改正も必要になってまいります。その関係で、法制審議会の審議もお願いしなければならない、こういうことにもなろうかと思います。  とりあえずは法曹三者で構成しております三者協議で意見交換をいたしまして、時期が参りますと法制審の方にもまたお願い申し上げなければならない、法制審の答申をいただきまして、地元の関係の方々の御意向も伺いながら、法案にどういうふうに盛り込んでいくか、その辺の詰めの作業がまた出てこようかと思います。これは関係する方々が非常に多い問題でございますから、今のところいつごろがめどというようなことを申し上げられる段階ではございません。  以上でございます。
  103. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今、都市部の簡裁では事件がふえておる。これはそのとおりですけれども、減少しているところの簡易裁判所もあるというお話がありましたね。減少しているところというのはもう裁判官がいないのじゃないですか。だから、減少したから裁判官がいなくなったというか、いなくて足りるという意味なのか、あるいは逆に、それを常置するようになれば事件はふえていくのじゃないのですか。そういう点についてはどういうふうに判断しているか。  いわゆる独立簡裁ですね、例えば一週間に一遍しか裁判官が行かないですね、そこに裁判官がいないわけですから、本庁のあるところの簡易裁判所にいるわけですね。一週間に一遍しか行かないでしょう。検事の方は交通切符か何かで来る程度ですから、せいぜい二週間に一遍しか行かないところが相当あるわけですね。こういうようなところも一体どの程度あるのですか。減少している理由というのは、ただ平面的に見てそういうふうに考えるのじゃなくて、裁判官が常置するようになれば、もっともっと調停なり何なりというものはふえるのじゃないですか。そこをどういうふうに理解をされていらっしゃるのですか、それが一つ。  それから、今後、今言ったような三者協議会というようなことでいろいろやられるわけですけれども、そのときというか、ある段階で自治体なりあるいは住民といいますか、そうした方々の意見というものも十分聞いていく、あるいは職員の意見も十分聞いていく、こういうことをはっきりやっていただけますか。
  104. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 郡部の簡裁における事件の減少の原因につきましては、なかなか難しい問題があろうかと思います。  当初発足しましたころは、それぞれ配置があったように承知いたしておりますけれども、やはり経済事情の変動等で経済統制事犯が非常に減ってきたという面がございます。それから人口の移動に伴いまして、それから経済活動の関連もございまして、その辺のもろもろの関係から郡部における簡裁の事件の減少というのが生じてきたのじゃないかというように考えております。  そのような事件数の少ない簡裁におきましては、稲葉委員指摘のとおり、一人の裁判官を常駐させるだけの事件数がございませんものですから、幾つかを合わせて総合配置ということでやっているわけでございます。したがいまして、週一回あるいは月二回というような形で填補で賄う、こういうようなことになるわけでございますが、確かに常駐しておればおのずから事件がふえるかと申しますと、常駐している庁でもやはり減少傾向が見られる庁もあるようでございますので、そこら辺のところは常駐すれば直ちに事件がふえるとも必ずしも言えないのではないかというように考えております。  その後の御質問でございますが、三者協議、法制審、こういう段取りで進めていかなければならないと思いますけれども、この問題につきましては何よりも地元の方々の御意向を尊重申し上げなければならないと思っております。私どもは、機会をとらえまして常に地元の方々の御意向も伺い、また御理解もいただくというような努力を積み重ねていかなければならないというように考えております。
  105. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、職員の意見というか要望にも耳を傾けるつもりはあるのですか。
  106. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 職員につきましては、仮に裁判所の集約化を図ります場合、在勤の職員につきましては、勤務地が変わるというような問題もございますので、そういう観点から職員の意見も十分に伺っていきたいというように考えております。
  107. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 来年度の増員の要求ということについては、本来最高裁というのは二重予算制度があるわけですから、法務省を通じなくてやるわけですね。そういうような経過になるわけですけれども、現在の人員について増員要求をどの程度やるつもりか、またその際どういうような資料に基づいてやるのかということについてはいかがですか。
  108. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 来年度の増員要求につきましては、ただいま作業中の段階でございますので、明確なことを申し上げられる段階ではございません。ただ、御承知のように、地方裁判所の民事執行事件、それから破産事件、それから簡易裁判所における民事訴訟事件、調停事件、それから督促もございます。それから家庭裁判所における少年保護事件等がいずれも増加傾向にございますので、これらの事件の処理を充実強化するために相当数の増員をお願いすることになろうかと考えております。  それから、増員要求をやる際の資料の問題でございますが、増員要求は、申し上げるまでもなく、裁判所全体における事件を適正迅速に処理するために行うものでございます。そのために新受事件数がどのように減少しているか、あるいは事件の処理の状況がどのように行われているか、そういう点に関する事件統計関係の資料がまず基本となるわけでございます。これらの数値を見ます場合、それぞれの事件の種類、内容、あるいは事件処理の手続構造、それを前提にしました各官職の事務処理の内容、それから負担の程度、それから事務処理上の改善、工夫の余地があるかどうか、そういうことを検討することになります。他方、各庁の事件処理の実情、それから増員を含めまして人員配置に関する意見等を徴しまして、さらには増員に見合う官職の給源、補充の可能性等を考慮しまして、総合的に判断しているわけでございます。
  109. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 書記官や裁判官の人員配置についての基準、これは私の聞いた範囲では、もとは事件何件について書記官一人とか、何件ぐらいで裁判官一人とか、こういう一つ基準があったようにお聞きをしておるのですけれども、今はどういうふうになっておるわけですか。
  110. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 書記官あるいは裁判官の人員配置は、現在では、結論的に申しますと、各庁の事務量に影響するあらゆる要素を考慮しながら決めておるというふうに申し上げることになろうかと思います。  裁判官、書記官等につきましては、各年の新受事件数の動向、未済事件の累積度合い、それから、それらの事件の内訳、あるいは合議事件の割合、審級の違いでございますとか、複雑困難な事件の係属があるかどうか、それから部や係の構成等も総合的に考慮するわけでございます。それから他庁へ填補する必要がある場合には、被填補庁の事務量、それから交通機関の便あるいは距離等も考慮するわけでございます。それから離島の場合には、事件数が少なくても、やはり填補が不可能でございますから配置しなければならない、そういう地域性もございます。各庁の職員の年齢構成とか病休の関係であるとか、そういう人的な面もやはり考慮しなければならないわけでございます。  それらの諸要素を踏まえながら各庁の意見も十分に聴取いたしまして、任用上の問題も含めまして多方面からの検討を加えてなされる総合的な判断の上に立って配置を決めているわけでございます。したがいまして、一定の算式に従って機械的に計算できる性質のものではございません。ただ、人の配置はそれぞれの庁におきましてある程度期間的な連続性を持って決めなければなりませんから、したがいまして、これまでの人員配置を一つの目安といたしまして、それにただいま申し上げましたもろもろの要素を考慮いたしまして増減を図っていくということになるわけでございます。
  111. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 定年制が施行になりますね、八五年三月三十一日ですか。そうすると、退職者の補充対策というのはどういうふうになっているわけですか。
  112. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、明年の三月三十一日にいわゆる定年法というのが施行されることになるわけでございます。一応原則的には六十歳ということで退官される方が多くなってくるわけでございまして、裁判所の人的構成から申しましても明年すぐというわけではございませんが、少し先の方になってまいりましてたくさんの方が退職されるという時期を迎えるわけでございます。私どもといたしましては、定年法もさることながら、そこら辺のところは前からわかっておりますので、かなり長い前からいろいろ検討を続けてまいっおるわけでございます。  官職によっていろいろあるわけでございまして、一番中心のところは裁判所書記官ということになろうかと思いますが、この書記官の陣営で数年先にかなりの数がおやめになることが予想されておりますので、まずこれをふやしていくということが必要でございます。御承知のとおり、書記官研修所における養成と裁判所書記官任用試験という二つの方法があるわけでございまして、書記官研修所の養成人員の増を図りますとともに、任用試験の合格者をふやすというふうな方法で補充を図っていきたい。なお、そのほかに、ベテランのところがやめていくということも予想されますので、裁判所書記官につきましては法律で認められております再任用というふうな方法も一つの方法として考えていきたい、かように思っておるわけでございます。  もう一つの大きな官職は家庭裁判所調査官でございますが、これはやや違いますが、これも少しやめる人が多くなるということが予想されておりますので、これも養成増を図りますとともに、書記官と同様再任用というふうなことも考えていきたい。  ごく大まかでございますが、そういうことを考えておるわけでございます。
  113. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今人事局長からお話があった再任用ですね、これはどの職種にどの程度やっていくことになるのでしょうか。それをお答え願いたいと思うのです。  それと一緒に、二十一日から夏休みになるわけですね。裁判官は二十日間だけ休むわけですね。休むのが当たり前だという考え方ですよ、私は。当然だという考え方ですよ。それで、紙が回ってきたわけですね。前半全部休む人もあるし、十日間、十日間休む人もあるし、いろいろあるわけですけれども、そこで、最高裁法務省にお尋ねをしたいのです。今の再任用の問題のほかにですよ。一体、裁判所関係では書記官や調査官や事務官の人たちはどのくらい夏休みをとれるのですか。法務省関係では職種がいろいろありますね、例えば鑑別所の職員だとか拘置所の職員、検察官検察事務官とか法務局だとかいろいろありますけれども、どの程度夏休みをとれるのですか。どういうふうになっているのですか。
  114. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 まず御質問の第一点の、再任用の職種、人数等の関係でございます。  再任用の職種につきましては、先ほど申しましたように裁判所書記官、家庭裁判所調査官というようなところは考えておるわけでございますが、その他の職種につきましてはかなり他の省庁と似たような面もあるわけでございますので、これは今いろいろ検討しておるところでございまして、現在のところ書記官と調査官以外にどれということについて申し上げられる段階ではございません。  それから、数でございますが、これも書記官等に希望調査等もやったりもしております。ただ、最終的にまだどの程度かということについてのはっきりした数字がつかめないということもございますとともに、退職者の数も、これは定年だけではございませんで、自己都合、死亡等でいろいろ退職いたしますので、その人数も固まらないというふうな状況でございますので、その人数等につきましてはなおもう少し検討いたしたいというふうに考えておるわけでございます。  それから第二点の休暇の問題でございますが、裁判官につきましては、裁判所では休廷、約二十日間夏に法廷を開かないわけでございます。裁判官につきましては、稲葉委員も御理解ある御発言をいただいておりますように、裁判所の内部的な処理といたしましては、大体半分ぐらいは自宅研究と称しまして、たまった判決を書くとか、法律の研究をするとかいうようなことをいたしますとともに、年次休暇ということもあるわけでございまして、合計二十日ぐらい法廷は休むということがございます。一般の職員につきましては他の国家公務員と全く同様でございまして、原則として年次休暇は二十日間、繰り越し等がございますと最高三十日というところまでいくわけでございますが、そういう年次休暇ということでございまして、他の省庁等と変わっておるわけではございません。  ただ、私どもといたしましては、裁判官につきまして、ちょうど夏二十日間休廷するということもございますし、夏はなかなか暑くて大変だということもございますので、その年次休暇につきまして、夏にできるだけ有効に休むように、集中して休める者は休むようにということで、大体一週間ぐらいは最低休むように指導してくれということを下級裁判所にも毎年毎年言っておるところでございまして、およそそれにちょっとプラスアルファぐらいのところが平均して休みをとっておる、そういう状況でございます。
  115. 根岸重治

    ○根岸政府委員 法務省におきましては、夏季休暇として特に与えているわけではございませんが、七月二十一日から八月三十一日までの間に夏季休暇という理由で年次休暇を認めているわけでございます。昨年の法務本省における夏季休暇の実施日数は平均いたしまして六・四日でございます。  なお、稲葉委員からお尋ねがありましたので、宇都宮にある法務省の出先機関について調べてみました結果を申し上げますと、昨年の夏季休暇の実施日数は、宇都宮の地方検察庁では六日、それから地方法務局では四日、それから保護観察所では四日、公安調査局では八日、刑務所とか拘置所関係では二日ないし三日、四日というところでございます。
  116. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大臣、今の話聞いていたでしょう。裁判官は二十日間休むのですよ。全部休んでもうちにいるので、仕事をしているという場合もあるかもわかりませんけれども、今言ったように法務省は休みが非常に少ないのです。殊に拘置所とか鑑別所とか、今三日とか言いましたけれども、そういう場合もありますよ。私、直接聞いたのは、三日ということになっておるけれども一日もとれないというのが相当あるのですよ。よく調べてごらんなさい。報告はそういう報告ですけれども、実際は、身柄を抱えていますからとれないというのが相当あるのですよ。そういう点について、私は、いろいろ大臣の方からも法務省の職員に対して配慮してもらいたい、こう思うのです。それが一つですね。  それから、最高裁、今お話がありましたように、裁判官が二十日休んで書記官が七日休むというようなことは、これは憲法違反じゃないのかな。法のもとの平等に反するのじゃないのかな。そう思わない。おかしいじゃないですか、これは。憲法に何て書いてあるの。それは法のもとの平等に反するのじゃないのかなと思うのだけれども、実際はこういうことですよ。御案内のとおり、七月二十日に事件を入れているところはとっても多いのですよ。事件が二十日に、もう朝から晩までやる人がいますね。その後始未を全部書記官や事務官がずっとあれしているわけですよ。だから、なかなか休めないということになっているわけです。そういう点をどの程度御認識があるのかわかりませんけれども、そういう事情ですから、書記官や事務官や調査官の人たちに対する処遇というようなものももっと考えてほしいと思うのです。  それから、転勤が多過ぎるのですよ。書記官や何かの転勤が物すごい。ぐるぐる回っている。僕は留学と言っているのですけれども、とにかくあっちこっち回して、回さないと青い机に座れないような形になっているのですか。そういうやり方をしているわけですね。そういうことは、余り転勤ばかり多いと本人たちの士気にも影響しますから、その点については十分考えていただきたい、こういうふうに思うわけです。  大臣最高裁側から御答弁をいただいて、終わりにいたします。
  117. 住栄作

    住国務大臣 法務省の仕事、特に検察あるいは入管あるいは矯正施設、実はこれは六次にわたる定員削減で大変窮屈な状態になっているということは事実でございます。一方、御承知のように業務量がどんどんふえておる。業務量と定員の状況というのは逆の線を描いておるわけでございまして、私も施設を見て回っておりますけれども、大変やりくりといいますか苦労をしておるわけでございます。  予算のときはそういう点を最重点に置いてやっておるわけでございますが、なかなかいい結果が得られない。これは行政改革その他の点が非常に大きいわけでございますけれども、しかし、こういうことではなかなか士気も上がらないし、それから業務の遂行もできない。実は非常に心配しておるところでございまして、常にこのことを念頭に置いて、ちょうど来年度予算案編成の時期になりますので、十分やっていきたい。  特に休暇の問題は、これは有給休暇のとり方の問題だろうと思うのでございますが、恐らく年間通じてみましても今申し上げたようなところは有給休暇の消化はやっていないんじゃないかな、こういうようにも思っておりますので、それぐらい忙しくなってきておる、こういうことだと思っておりますので、十分頭に入れまして対処してまいりたいと思っております。
  118. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 簡単に申し上げますが、裁判所予算につきましては努力いたしたいと思いますとともに、休暇の問題につきましても職員が安心して休めるように、気兼ねしないで休めるようにということは前々から考えておりまして、今申しましたように、夏に集中して年次休暇をとれというような場合も、管理職も率先してとれ、それをいたしませんことには遠慮するということも事実上ございますので、そういうことも含めまして、今までも申しておりますが、今後もそういうことにつきましては従前と同様配慮を続けていきたいというふうに考えております。
  119. 宮崎茂一

    宮崎委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  120. 宮崎茂一

    宮崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神崎武法君。
  121. 神崎武法

    ○神崎委員 初めに総会屋問題につきましてお尋ねをいたします。  総会屋問題につきましては四月四日の当委員会におきまして質問をいたしましたけれども、その後、五月三十一日に大手デパートの伊勢丹の秘書室長、論談同友会の幹部等が利益供与罪で逮捕されまして、六月十五日に東京地検が七名につきまして東京簡裁に略式命令を請求したということが新聞報道されているのであります。  本件の事案の内容と処分結果につきまして、まずお尋ねいたしたいと思います。
  122. 筧榮一

    筧政府委員 御指摘事件でございますが、東京地検におきまして、伊勢丹の秘書室長上田昭治を、伊勢丹の株主であります正木竜樹ほか五名に対し、同社の定時株主総会における株主権の行使に際し議事の円滑な進行に協力されたい旨依頼して、一人当たり約四万九千九百円相当の酒食の供応及び十万円ないし五万円の商品券の供与をしたという商法違反の事実、さらにいわゆる論談同友会グループの正木竜樹ほか五名を、右の供応及び商品券の供与を受けたという同じく商法違反の事実で、それぞれ本年六月十五日東京簡裁に略式命令の請求をいたしまして、罰金二十万円ないし十五万円の略式命令が発せられ、いずれも確定いたしておるところでございます。
  123. 神崎武法

    ○神崎委員 その後、この同じ協友会グループの利益供与事件の余罪があるということで捜査が行われているというふうに聞いておりますけれども、余罪関係捜査はどうなっているのでしょうか。
  124. 筧榮一

    筧政府委員 協友会グループにつきましては、いわゆる協友会グループに属します丸本幸男ほか二名につきましても、先ほどの伊勢丹の秘書室長上田昭治から前同様の趣旨のもとにそれぞれ十万円分の商品券の供与を受けたという事実で本年七月六日ないし九日に東京簡裁に略式命令を請求し、それぞれ罰金十五万円の略式命令が発せられております。ただ、これは未確定でございます。なお、その金一、二名の者につきましては現在まだ捜査中でございます。
  125. 神崎武法

    ○神崎委員 この事件の処分につきましてはいろいろな声があるわけでありまして、意外に軽い処分だ、こういう声もありますし、一罰百戒の観点からもっと厳しい処分にすべきじゃないかという声もございます。他方、利益供与罪の法定刑からいたしますとやむを得ないんじゃないかという声もあるわけでございますけれども、略式命令を請求した理由はどういう点にあるのでしょうか。
  126. 筧榮一

    筧政府委員 神崎委員指摘のとおり、この四百九十七条、利益供与罪の法定刑は六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金でございます。この犯罪行為の内容からこの法定刑が盛られておるわけでございまして、例えば同じく商法でやや似たような罪であります四百九十四条、不正の請託を受けて財産上の利益を収受するという関係は一年以下の懲役、五十万円以下の罰金というふうになっているのと比べましても、四百九十七条は今申し上げましたようなそれよりも低い刑になっておるわけでございます。  そういう法定刑の中で本件事案の軽重を検討するわけでございますが、今申し上げましたような四百九十七条にはいろいろな形の事案が想定されるわけでございまして、それが六カ月以下から罰金までという法定刑の中で処断されるわけでございますが、本件を見ました場合に、本件供与の金額あるいは犯行の動機、態様等考えますと、この法定刑の中であえて公判請求をするほどの悪質な事案ではないということで罰金刑を求刑したと承知いたしております。
  127. 神崎武法

    ○神崎委員 この伊勢丹の事件では副社長や専務が利益供与の場、すなわち料亭での供応接待の場に同席をしていた、こういうことが伝えられているわけでありますけれども、それは事実かどうか。
  128. 上野浩靖

    ○上野説明員 警視庁の報告によりますと、両名ともその席には同席しておったという報告を受けております。
  129. 神崎武法

    ○神崎委員 この二名について捜査段階で被疑者として取り調べが行われたのか、あるいは参考人として取り調べが行われたのかどうか。
  130. 上野浩靖

    ○上野説明員 お答えいたします。  いずれも参考人として取り調べをいたしましたということで報告を受けております。
  131. 神崎武法

    ○神崎委員 その取り調べの方法につきまして、どうも現場の実際の担当者がスケープゴートにされているんじゃないか、実際にこういった大企業においてそういう上司の者が事情を知らないで利益供与を行うことはできないのじゃないか、むしろ取締役について利益供与ということで罰金以上の刑に処することによって取締役の欠格事由になりますので、それで初めて一罰百戒の目的が達成されるのじゃないか、こういう意見があるわけでございます。  まず常識的には副社長、専務も利益供与の趣旨を知って同席、あるいはむしろこれらの者の指示のもとに利益供与が行われたのじゃないか、こういう疑いがあるわけでありますけれども、なぜ捜査当局は参考人という形でこの取り調べを行ったのか、捜査の結果これらの者の処分はどうなったのか、その点についてお伺いをいたします。
  132. 上野浩靖

    ○上野説明員 警視庁からの報告によりますと、関係者の取り調べをいろいろ行ったわけでございますけれども、副社長、専務いずれにつきましても、秘書室長との間に共謀の事実が認められず被疑者と認定できる証拠を得るに至らなかったためにそのような措置をしたということでございます。
  133. 神崎武法

    ○神崎委員 捜査の当初の段階で参考人として取り調べたのはどういうことなんでしょうか。
  134. 上野浩靖

    ○上野説明員 お答えいたします。  当初、被疑者あるいは関係者の取り調べを行ったわけでございますが、その人たちのいろいろな取り調べの過程から共謀したという事実が認められなかったために、取り調べにつきましては参考人としての取り調べを行ったということでございます。
  135. 神崎武法

    ○神崎委員 それでは、この伊勢丹事件の検挙によりましてその後行われましたいわゆる六月総会にどういった影響が出たのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  136. 上野浩靖

    ○上野説明員 お答えをいたします。  本年に入りまして、先ほどもお話しございましたように、論談同友会、協友会といった活動的な総会屋グループが株主総会で質問権を行使いたしまして総会を長引かせるいわゆるロングラン総会の傾向が強まりましたので、本年六月の総会シーズンの先行きが懸念されていたところでございます。  警察といたしましては、総会屋の活動を封じ込めるため事件検挙を徹底した結果、本件を検挙するに至り、これと並行いたしまして企業との連携を強化したこととも相まちまして、比較的平穏な六月総会となったところでございます。  具体的に申し上げますと、私どもの把握しておりますところでは、六月中に全国で約千二百社の株主総会が行われたわけでございますが、このうち三時間以上を要しました総会はわずか五社でございまして、しかも最長の総会でも五時間弱ということでございました。したがいまして、全体的に平穏に終わったと言うことができるのではないかというふうに考えているところでございます。 神崎委員 最近、自民党の政策集団でございます新風政治研究会が株主総会正常化のための提案を行っておりまして、「商事法務」にもその内容が発表されているわけでございます。三点の大きな柱がございまして、その第一の商法等の改正では、株主質問権の要件の制限、株主提案権の要件の引き上げ、突然の修正提案の禁止、利益処分案の報告事項への移行を挙げておるわけでございます。第二点として株主総会議事運営規則の完備、第三点として警察による取り締りの強化を挙げているわけでございます。  私自身は、第一の商法等の改正につきましては、これらの考え方というのは株主の権利を大幅に制限していく考え方でございますので、賛成しがたいわけでございます。株主総会議事運営規則の完備につきましては、株主の権利の保護と総会の秩序維持とのバランスを図る中で議事運営規則をつくったらいいのじゃないか、こういうふうに思うわけでありますし、警察による取り締りの強化につきましては、大いにやってもらいたい、こういうふうに思うわけでございますけれども、この提案につきまして、法務当局、警察当局はどのような感想と申しましょうか、お考えを持っていらっしゃるのか。
  137. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 まず第一の点でございますけれども、商法改正で取り上げたらどうかという点につきましては、各項目それぞれねらっているところが逢おうかと思いますけれども、おおむね株主権を制限しようということでございます。  総会屋対策ということになりますとそれに力点が向かいがちでございますけれども、株主総会というのは、本来、会社のオーナーとしての株主が会社の意思を最終的に決定するという機関でございますので、そういう性質から考えますと、余り株主権を制限するというようなことは適当ではない。むしろ五十六年の商法改正が株主総会の活性化をねらうということでございますので、そういう面から考えても適当ではないだろうと思います。そういうふうなことで、ともかく昭和五十六年に商法が改正になったばかりでございますし、また本年で二回目の総会が行われた結果を見ましても、それほどの弊害が出ているというふうにも考えられませんので、目下のところ、こういうふうな提案については私どもは消極的に考えております。  それから二番目の株主総会議事運営規則の完備でございますが、これは過日の当委員会の御審議でも質問が出たところでございますけれども、私どもは株主総会がルールに従って運営されていくということは望ましいことだろうと思います。したがいまして、合理的な内容を盛り込んだ議事運営規則というものがきちんと決められまして、それによって議事が運ばれるということは大変望ましいことであるというふうに考えております。
  138. 上野浩靖

    ○上野説明員 取り締まりの関係でございますが、警察といたしましては、今後とも総会屋に対します監視活動を徹底してまいりたいというふうに考えております。商法違反事件はもちろんのことでございますが、不法事犯の徹底検挙に努めまして、株主総会の健全な運営に寄与してまいりたいというふうに考えております。
  139. 神崎武法

    ○神崎委員 このように株主総会の正常化方策の提言がなされておるわけでございまして、その検討ということも大変大事であろうと思うわけでございますけれども、今回の伊勢丹事件からもうかがわれますように、総会屋を根絶するためにはやはり抜本的には企業の体質、特に大企業の体質を変える、企業の倫理を確立するということが不可欠であろうかと思うわけでございます。  ワンマン社長の会社の私物化とか、業者との取引のリベートの問題とか、関係会社を利用した利益の操作とか、いろんな弊害というものが指摘されているわけでございまして、そういった体質があるところに総会屋が食い込んでくる原因があるのじゃなかろうかと思うわけでございます。その意味におきまして、今後の商法改正作業の中で、企業の倫理確立のための方策について当局としても検討をすべきであると考えますけれども、この点について法務当局として何か検討していることがあるのか、あるいはどういうふうにお考えになっているのか、お尋ねいたします。
  140. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 企業の運営につきましてはおのずから企業倫理というものがあるだろうとは思います。しかしながら、その倫理というものをどういうふうなとらえ方をするかというのは非常に難しい問題でございます。また、そういう企業倫理というものを法制の面でどういうふうにとらえるかということになりますと、法律は倫理そのものを決めるものでもございません。よく言われますように、最低の倫理を維持するというのが法律であるというふうな言葉もあるわけでございます。したがいまして、企業の運営につきまして、最低、違法なことが行われないように、それから会計等につきましても明朗なものでなければならないというような点に着目をして、そういうところから最低の倫理というものが確立されるように考えていくべきではないか、そういうふうに考えております。  そういう視点から、従来におきましても、監査役の権限を強化するとかあるいは外部監査人の導入であるとか、そういうふうな面が取り上げられておるわけでございまして、今後の大小会社の区分を中心とする法改正の審議の中でも、そういう面から、どの程度まで踏み込んでいくのが適当であるか、それに対して具体的にどういう方策をとることが一番合理的妥当性があるかという面は検討されていくことになると考えております。
  141. 神崎武法

    ○神崎委員 続きまして、クレジットカードをめぐる問題につきまして若干御質問をいたします。  昭和三十五年に我が国にクレジットカードが登場いたしましてから、クレジットカードの普及、大衆化が著しく進みまして、昭和五十八年三月現在、クレジットカードは約二千種類から三千種類、数は約五千七百万枚に達しているというふうに言われております。その反面、クレジットトラブルとでもいうような深刻な消費者問題が生じているわけでございます。  現在大きな社会問題化しておりますサラ金問題につきましても、その原因を検討いたしますと、サラ金以外のクレジットの利用が先行いたしまして、そこで発生した決済不能状態の一時しのぎのためにサラ金が利用されて、より深刻な問題が生じていると言われております。つまり、クレジットカードの利用を第一次的な原因として、その返済のためにサラ金に手を出すというケースが多いものと思われるのであります。  アメリカではこのクレジットの破産者が大体四十万人も出ている、こういうことも言われておりますけれども我が国ではクレジットカードの利用を起因とする自己破産の申し立て件数はどのくらいなのか、その実情についてお尋ねをいたしたい。
  142. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 ここ数年来、いわゆる自己破産の申し立てが裁判所で非常にふえておりまして、それも、サラ金からの借入債務を主たる債務とするいわゆるサラ金自己破産の申し立てが激増してまいりましたので、私どもの方も、破産事件の新受件数につきまして、その内訳の調査を始めているわけでございます。  その結果を申し上げますと、昭和五十八年、最新の統計でございますが、全国の破産事件の新受件数一万七千八百七十八件ございますうち一万七千九十二件、割合にいたしまして約九五%余りが自己破産の申し立てでございます。さらにそのうち一万四千二百九十件、割合にいたしまして約八〇%がサラ金からの借り入れを主たる債務とする自己破産の件数でございます。これを法人と個人に分けて見てまいりますと、法人の場合は、自己破産の新受件数が千二百五十一件、そのうちサラ金からの借り入れを主たる原因とするものは百八十二件で、割合としては非常に少のうございますが、個人の破産事件で見てまいりますと、自己破産の申し立て件数一万五千八百四十一件のうち一万四千百八件、割合にいたしますと九〇%近くがいわゆるサラ金による自己破産と言われるものでございます。  今、委員のお尋ねでは、サラ金からの借り入れの原因がさらにどういうところにあるかということでございますが、裁判所の新受事件の統計で申しますと、申し立て書にはサラ金からの借り入れという点は記載がございますが、それ以上の借り入れの原因につきましては新受の段階では判明いたしませんので、私どもの統計として正確な数字としては、さらにさかのぼった原因までは把握していないわけでございます。  ただ、せっかく委員のお尋ねでございましたので、東京地方裁判所で現に担当しておられる裁判官に審理を通じての大まかな傾向を、印象程度でございますがちょっと伺ってみましたら、確かに委員指摘のように、クレジットでいろいろ買い物をしてその支払いに困ったあげくにサラ金から借り入れをした、そういうことで結局は破産を申し立てするに至ったという事件もあるようでございます。ただ、東京の場合には必ずしもそういうものばかりとは申せないようでして、事業資金に困ってサラ金から借り入れをしたとか、家計あるいはレジャー費、そういうものに困ってサラ金から借り入れをするようになったというケースも非常に多いようでございまして、全体として果たしてクレジットの利用が直接サラ金からの借り入れに結びついているかどうかというところまでは、裁判所事件処理を通じてはまだはっきりしないようでございます。
  143. 神崎武法

    ○神崎委員 今国会におきまして、産業構造審議会の答申「販売信用取引における購入者等の利益の保護の徹底等を図るための施策について」を受けまして、割賦販売法の改正がなされました。クレジットカードを含みます販売信用全体につきまして消費者保護の措置が講じられたのでありますけれども、この改正は割賦購入あっせん等の取引形態への対応措置でありますので、割賦形式でない一回払いの取引とか金融については対応できませんし、割賦販売法の改正の中身につきましても、まだ今後の課題もあるのではなかろうかと思われるのであります。  カードの不正利用の防止、カードの過剰利用の防止の徹底を図ること、あるいはカード取引の法律関係の整備と法理の統一等が必要と思われますが、通産省ではクレジットカード対策として今後どのような対策をお考えになっていらっしゃるのか、お伺いをいたしたい。
  144. 糟谷晃

    ○糟谷説明員 通産省の消費経済課長でございます。  まず第一点のカードの不正利用の防止でございますけれども、私どもとしましては、この対策といたしまして、一つはカードの磁気ストライプ化を進めるということ、それからこれと連携いたしまして、販売店への共同端末を導入することで販売店の店頭でカードのチェックができるようなシステムを導入するということが有効ではないかと考えておりまして、こういうシステムを導入することによりまして、カードの盗難であるとかあるいは他人名義のカードの使用であるとか偽造、こういうものに対処していくことが必要なのではないかということで、現在業界を指導してこの方向へ進めているわけでございます。  それから、それに関連いたしまして、従来、業としてカードを貸し付けの担保としてとるようなことは禁止されていたわけでございますけれども、今回の割賦販売法の改正によりましてその禁止の範囲を広げまして、いわゆる信販会社のカードだけではなくて、例えば百貨店のカードとかそういうものも貸し付けの担保としてとってはいけないということで、これによって規制の実効性を高めることをねらった次第でございます。  それから、第二点のカードの過剰利用の防止、これはいわゆる過剰与信の問題かと思うわけでございますが、一つは、先ほど申し上げました端末の設置等によりまして、販売店の店頭で消費者の与信枠の管理あるいはチェックということがオンラインでできるようなシステムを導入することが必要ではないかと考えております。  それから、あわせまして、今回の割賦販売法の改正によりまして、支払い能力を超える購入の防止という規定を設けたわけでございます。この規定の趣旨は、割賦販売業者というものは、信用情報機関のデータをうまく利用して購入者が支払い能力を超えて信用を受けることがないように努めなければならないということでございます。この規定のベースになります個人信用情報の統一的な管理という問題につきましても、現在、既存の情報機関の連携、統合という方向で指導を進めている次第でございます。  それから、先生お尋ねの最後の点でございますカード取引の法律関係の整備をすべきではないかというお話でございますけれども、私ども通産省では、割賦関係のカードにつきましては、今申し上げましたような行政指導あるいは割販法の改正といったことで対応してきているわけでございますが、カードといいますのは非常に多種多様でございまして、いろいろな取引関係があり得るわけでございます。それを全体としてどう対応すべきかという問題につきましては、やはり今後必要に応じまして関係各省庁と御相談しながら対応していくことが必要なのではないかと考えております。
  145. 神崎武法

    ○神崎委員 続きまして、クレジットカードをめぐる犯罪の実態と対策についてお伺いをいたします。  昭和五十八年中のクレジットカードを利用いたしました犯罪の検挙件数、検挙人員、被害額は一体どのくらいなのか、また、ここ数年間の傾向はどうなのかという点。
  146. 上野浩靖

    ○上野説明員 お尋ねのクレジットカードをめぐる犯罪の全体の統計につきましては、集計しておりませんのでお答えできませんけれども、その大部分を占めると思われますクレジットカードを利用した詐欺事件につきましては、昭和五十八年中において検挙件数八千十九件、検挙人員四百六十七名、被害額四億七千二百五十七万円となっております。  なお、ここ数年の傾向でございますが、検挙件数あるいは被害額とも大幅に増加しているということでございます。
  147. 神崎武法

    ○神崎委員 このクレジットカードをめぐる犯罪につきましては、偽造とか他人名義カードの不正使用とか自己名義カードの不正使用とか、さまざまな態様があると思われるわけでございますが、主な態様別の検挙状況と最近のクレジットカード犯罪の特徴的傾向についてお伺いをいたします。
  148. 上野浩靖

    ○上野説明員 お答えいたします。  ただいま申し上げました各都道府県警察が集計いたしましたクレジットカード利用の全詐欺事件についての態様別検挙状況を申し上げたいところでございますが、その全体の分析がしてありません。ただ、このうち犯罪が広域にわたるなどの理由から昭和五十八年中に警察庁に報告のありましたものの四千三百二十二件につきましてその態様別検挙件数を見てみますと、まず本人名義のクレジットカード利用が千二百七十二件で一番多いわけでございます。次に、窃取したクレジットカード利用が千六十三件、拾得したクレジットカード利用が六百四十二件、他人名義を冒用して不正取得したクレジットカード利用が八百九十八件、騙取した他人名義のクレジットカード利用が二百九十一件、偽造したクレジットカード利用が五十九件、その他九十六件となっております。  また、クレジットカードを利用したこれらの詐欺事件の最近におきます特徴的傾向を見ますと、一つは、犯行が短時間のうちに集中的に繰り返されているということ、二つといたしまして、組織的な犯行が目立っているということ、三つといたしまして、クレジットカードの知識を悪用する犯行が目立っていること、四番目といたしまして、広範囲にわたって犯行が行われるケースが多いということなどが挙げられると思います。
  149. 神崎武法

    ○神崎委員 クレジットカードの犯罪が大変増加しているということでございますけれども、大変難しいいろいろな特徴的な傾向があるわけでございますが、この犯罪の捜査、処理に当たりまして、制度上、運用上何か問題がないのかという点についてお尋ねいたします。
  150. 筧榮一

    筧政府委員 クレジットカードをめぐる犯罪につきましては、今警察庁からお答えがあったとおりでございますが、偽造の関係とか、不正に利用して物品やサービスを取得するというような関係、いろいろあるわけでございます。クレジット契約の法律的性質もいろいろございますし、また現実のクレジット制度の利用形態もいろいろ変化をいたしておりますので、その点につきましては今後とも研究をする必要があるとは思いますけれども法制上から申し上げまして、今のような犯罪、偽造、詐欺、窃盗、横領等従来の犯罪類型で制度面では対応が可能であろうというふうに考えております。  ただ一点、このほかに、先ほど通産省からのお話にもありましたけれども、最近クレジットカードにキャッシュカード同様の磁気ストライプを添付するということが多くなっております。これは、磁気ストライプが添付されるようなことになってまいりますと、これを利用してコンピューターシステムを用いるという犯罪が生じてくるわけでございます。そういたしますと、磁気ストライプの改ざん等についての偽造その他の関係、あるいはコンピューターを利用していろいろなものを取得する、あるいはデータをどうこうするというような犯罪については、現行法上なかなか問題があろうかと考えております。
  151. 神崎武法

    ○神崎委員 ただいま刑事局長がお答えになったように、こういうクレジットカードと似た点のありますキャッシュカードの悪用など、コンピューターによる情報処理システムを悪用する事犯の増大が今後懸念されるわけでございます。従来の犯罪類型では対応困難な場合が生ずると思われるのでありますけれども、その対策というものは、法務省が中心になって関係省庁と協議の上検討を進めるべきではなかろうか、このように思うのでありますけれども、いかがでしょうか。
  152. 筧榮一

    筧政府委員 御指摘のとおり、一般にコンピューター関係の犯罪につきましては、従来の刑法と申しますか、刑事法の現行制度では対処し得ない面がいろいろ出てきておるわけでございます。磁気記録物の文書性の問題もございますし、さらにコンピューターに入っておりますデータを盗用した場合何になるかというような点は、どうも現行法が予想していない事案でございますので、十分対処できない場合が考えられます。  私どもといたしましても、関係当局協力して、今後のコンピューターの利用の実情あるいはコンピューターの発展等を見ながら十分研究を重ねまして、新たな刑事法的規制の要否等について検討を続けたいと考えております。
  153. 神崎武法

    ○神崎委員 以上で終わります。
  154. 宮崎茂一

    宮崎委員長 中村巖君。
  155. 中村巖

    中村(巖)委員 本日最大のトピックでありますので、どなたも御存じのように、午前中に松山事件再審判決が出ました。結果は無罪ということでございます。  このことについて大臣にお伺いをいたしたいというふうに思うわけであります。  この判決を聞きましても、免田事件あるいは財田川事件のときと同じように、私は第一に大変に悲惨なことであるというふうに思うわけでございまして、長い間身柄を拘禁されて、死刑ということで死の恐怖におののいて長期間過ごしてきたということであって、それが本当は無実なんであるということ、これは悲惨なことであるという以外に言いようがないことであると思います。それと同時に、これは我が国の司法制度にとって大変不幸な事態というか憂うべき事態であるというふうに思うわけでございます。確定判決再審という形で覆されるということは、要するに従来の確定判決が正しくなかったということであるわけでありまして、そのことが明らかになった、捜査のやり方も裁判のやり方もまずかったんだということが明らかになったということであるわけであります。  私は、このような事犯が最近頻発しているというか、あえて頻発という言葉を使いますけれども、頻発しているその原因というのは、いろいろなことが言われておりますけれども日本裁判も、そして刑事事件捜査というものも大変自白を偏重をしているということにあるのではないかというふうに思っているわけでございます。そういう状況というものは、今日ではかってのような事態はないのかもわかりませんけれども、やはりあるわけでございます。  そんなことで、大臣、今松山事件判決をお聞きになって、ずっとこの席におられたわけでありますから、余り考えておられる余裕はなかったかもわかりませんけれども、この判決を受けられてどういうふうにお感じになられるのか、こういう状況が生じてくる原因について、あるいはまた今後がかることをなからしむるためにどういうことをお考えになっておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  156. 住栄作

    住国務大臣 免田事件財田川事件に続きましてきょうの松山事件再審無罪、こういう判決があったわけでございます。いずれも死刑という重大な犯罪について再審によってそれが覆された、これは本人にとっても大変深刻であり、残酷であり、大変なことだろうと思います。それと同時に、事実はあったわけでございますから、真犯人が別にあるわけでしょうから、これを発見できなかったということについても、捜査という面からいっても非常に重大なことでございます。  いずれにいたしましても、私どもはそういう事実を厳粛に受けとめまして、それぞれのケースについていろいろの経過があるわけでございますが、そういうことも十分検討しなければなりません。そして、それを今後に生かしていくということも非常に大事なことだと思いますし、それを捜査なりの上において生かして、本当に事態を深刻に受けとめて、今後の捜査に当たってそういうことの二度とないような契機にしていかなければならない、こういうように考えておるわけでございます。
  157. 中村巖

    中村(巖)委員 松山事件に関連してもう一点お伺いをいたします。  この事件で、ニュースによりますと、身柄が釈放されたということでございまして、裁判所判決と同時に執行停止の決定をしたというように伝えられておりますけれども、この執行停止というのはどういう法条の根拠でなされているのか、法務省としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  158. 筧榮一

    筧政府委員 本日の無罪言い渡しの後で裁判所から拘置の執行停止という決定があったという報告は受けておりますが、その具体的内容については私もまだ承知をしておりません。  ただ、本年三月六日に同じ仙台地裁が、中間的ではございますが、今の問題につきまして裁判所の見解というのを法廷で発表いたしております。恐らくそれと同じことが今回の執行停止の決定の理由になっていると思われますので、その点について申し上げますと、裁判所の見解によりますと、刑事訴訟法四百四十八条の二項により裁判所が刑の執行を停止することができるという解釈であろうかと思います。
  159. 中村巖

    中村(巖)委員 今の時点でこの松山事件に関しまして、法務省としてはその身柄の処置について抗告をするとか、あるいはまたこの判決自体について上訴をするというようなことはお考えになっておられるのでしょうか。
  160. 筧榮一

    筧政府委員 身柄の措置につきましては、報告によりますと、裁判所の刑の執行停止の決定がありましたので、言い渡し後に釈放指揮書を発しまして釈放いたしております。したがいまして、この点について争うということはないかと思います。  ただ、無罪判決自体につきましては、判決内容をまだ詳しく承知しておりませんので、検察当局において判決内容を検討して決定は下されるものと考えております。
  161. 中村巖

    中村(巖)委員 再審事件のことでありますけれども、昭和五十七年のこの委員会でもちょっと再審の数のことが問題になったようでありますけれども、現時点で裁判所に係属をしている再審事件の数はどのくらいありましょうか。それと同時に、殊に死刑判決を受けた者からの再審の申し立てというようなものはどのくらいありましょうか。
  162. 筧榮一

    筧政府委員 現時点の再審請求の係属件数については、私どもではちょっと把握いたしかねますので、それにかわりまして最近五年間、つまり昭和五十三年から五十七年までの五年間、これは司法統計によりまして再審請求人員を申し上げますと、昭和五十三年から五十七年までの五年間の再審請求人員は合計で四百二十一名でございます。そして、この五年間に再審開始決定があったものは百二十二名となっております。  それから死刑関係でございますが、死刑が確定してまだ未執行の者がございますが、その死刑未執行者のうち、本年六月末日現在で再審請求を申し立てております者は十一名でございまして、これらの者による再審請求の延べ件数は四十八件となっております。
  163. 中村巖

    中村(巖)委員 午前中も問題になったようでありますけれども、やはりこの再審の問題というのは、現在の刑事訴訟法の四百三十五条以下の再審規定そのものに大変私どもとすれば不備があるというふうに思っているわけでございますけれども、殊に再審開始の要件、これは余りにも狭過ぎるのではないかというふうに思うわけでありまして、ただ、この再審要件につきましても、四百三十五条六号、これがいわゆる白鳥決定によって実質的には拡張をされている、こういう状況にあるわけでありますけれども、法の規定自体は極めて厳格というか狭いということであろうと思うわけです。  これはまた白鳥決定というものと、やはり私どもその決定を見まして同時に現在の法条というものを考えますと、やはり最高裁判所がそういう白鳥決定のような解釈をするんだと言っているけれども、それは法文をある程度超えているのではないかというような感じがいたすわけでございまして、再審全体についてそうでございますけれども再審開始の要件等について、法務省はこれを少なくとも白鳥決定の線に沿って法文を改める御意思はないのか、刑事訴訟法を改正する御意思はないのか、伺いたいと思うのでございます。
  164. 筧榮一

    筧政府委員 四百三十五条六号の問題でございますが、現状で、再々申し上げますとおり、再審の場合、法的安定性具体的妥当性の調和ということがいつも基本にあるわけでございます。そういう観点から考えまして、諸外国に比して我が国の六号が特に狭いというふうには私ども考えてはおりませんが、ただ御指摘の白鳥決定、この白鳥決定につきましてもいろいろ解釈があろうかと思います。白鳥決定自体、形の上で読みますと、無罪を言い渡すべき明らかな証拠という意義についての最高裁の解釈でございまして、従来の解釈を多少改めたという点はございますが、あくまで現行法の解釈ということで、特に改正ということは直ちには出てこないかと思います。  ただ、今中村委員指摘のとおり、その白鳥決定の趣旨と申しますか態度と申しますか、そういうものから考えて、六号はもう少し広げるべきであるという御意見があることは十分承知いたしております。  それらの点を含めまして、先ほど、午前中から申し上げておりますように、この再審規定全般につきまして、刑事訴訟法との関連において全般的、基本的な問題から検討をいたしておるところでございます。
  165. 中村巖

    中村(巖)委員 それでは、問題を変えまして法務省の民事局にお尋ねをしたいというふうに思います。  今、これもまた非常にいろいろ言われておりますけれども、商法の第三次改正というか、そういうものが行われつつあるわけでありますけれども、この商法改正のスケジュールについてお伺いをしたい。  一点は、今第三次改正、こういうふうに言われているわけでありますけれども、その改正の範囲というのはどの辺のところを――大小会社の区分ということが今話題でございますけれども、それにとどまるのか、ある程度もう少し広範なものなのかどうかということ、それから、この第三次改正の後にさらにまた商法を改正することを御予定なさっているのかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  166. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 商法は、会社法を中心といたしまして数次の改正作業を進めておりますが、今回問題にしておりますのは、ただいまお話がございましたように、大小会社の区分の問題とそれから合併のところ、そこを取り上げております。あと残る問題としては、会社法の分野では企業結合の問題とそれから企業分割というような問題が問題としては残っておるわけでございますけれども、それは非常に難しい問題、取り上げること自体にも問題があろうかとも思いますので、その点は一応差しおきまして、大小会社の区分の問題を中心とする検討を現在進めておるところでございます。  この現在の作業は、スケジュールと申しましてもまだそうはっきり決まっているわけでもございません。けさ、午前中に衛藤委員からの御質問にもお答えしたところでございますけれども、現在問題点を整理をして、それについての各界の御意見を伺っておりますが、それがことしの秋じゅうにはお寄せいただけるだろう。それをまとめた上でその御意見を十分に織り込みながら試案をつくっていきたい。また、その試案ができ上がった段階でこれを公表いたしまして、各界の御意見を伺って、そして最終案にまとめていくというような考え方でおります。  したがいまして、最終的に、何年たてば案がまとまるかということの見通しは、現段階ではついておりませんけれども、事柄が非常に広範にわたりますし、それから問題の影響するところが多いものでございますから、問題点を発表しただけでもかなり実際界においては反響がいろいろ出ております。そういうことですので、私どもは何もそう急いでまとめることもないし、十分に慎重に検討すべきだということで、何年にというそういうタイムリミットは余り設けないで作業を進めていくという予定にいたしております。
  167. 中村巖

    中村(巖)委員 今の点ですけれども法制審議会の商法部会との関係では、今商法部会の方にこの問題について何らかの形でかけておられるのでしょうか。
  168. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 商法部会でこの問題の検討をお願いいたしておるわけでございます。そして、商法部会の中で委員先生方から出されました問題を粗こなし整理をしたものを民事局の参事官室という名前で公表いたしておるわけでございます。したがいまして、その意見が寄せられましたならば、それは直ちに法制審議会の商法部会にその内容を伝えまして、その意見を踏まえた上で次の検討に入っていくということで、実質は法制審議会の商法部会が動いておりまして、ただ、今意見照会中なものですから、そういう意味では若干、数月月間はお休みということになっておりますけれども、主体はあくまでも法制審議会の商法部会で審議をしておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  169. 中村巖

    中村(巖)委員 そういたしますと、結局、意見の集約をされた段階で試案というようなものをつくりまして、また商法部会で御検討をいただく、こういうことになるのですか。
  170. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 実は試案それ自体も実質的には法制審議会の商法部会でまとめるということになると思います。  ただ、法制審議会が外部に対して意見照会をするというのはちょっと形として変則でございますので、それは事務局としての民事局の参事官室の名前で試案をまとめて公表するという形にはなろうかと思いますが、実質的には法制審議会でその試案の内容を固めていくというような作業になるわけでございます。
  171. 中村巖

    中村(巖)委員 もう一点、違うことでございますけれども、民事訴訟法の第六編の仮差し押え、仮処分の規定でございます。これについて、法務省としては弁護士会そのほかに対して意見を求めていらっしゃったようでありますけれども、これについて現在改正作業を進めるということで改正の意図を持って作業をおやりになっているのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  172. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 民事訴訟法の強制執行編というのが旧法でございましたけれども、それと競売法と合わせて民事執行法というものを数年前に制定いたしたわけでございます。そのときに、仮差し押さえ、仮処分の裁判手続の方でございますけれども、その分もあわせて検討しようということに一応したわけでございます。  ただ、これはいわゆる執行の問題とは若干性質も異なりますしするので、そこはいわば見送りになりまして、それだけは第六編に残ったと言えようかと思いますが、一つの宿題として、民事執行法の改正作業の中でも課題としてあったわけでございます。それで今度はそこを取り上げてみようということを考えまして、それについては基本的には各実務界あるいは学界の方でどういうところを問題にしているのだろうかということをまずお伺いをするところから出発しようということで、過日、弁護士会その他の各界に御意見を伺ったところでございます。  ただ、仮差し押さえ、仮処分の関係改正しようかというのは、御承知のとおり、民事訴訟法の規定は比較的簡単でございます。恐らく民事訴訟法制定の当初は比較的簡単なものを考えておったのではなかろうかと思いますが、時代の変遷に伴いまして、殊に仮処分関係につきましてはいろいろな形態のものが出てきて、しかもそれが本案の訴訟よりもむしろ緊急的に解決できる道である、そこで勝負が決まってしまうというふうなことになりまして、実際上の裁判の実務の上ではウエートが強くなっております。そういうふうなことからしますと、現行の規定では必ずしも十分ではないじゃないか。実際にも解釈とか運用とかで賄われている面が多々ございます。そういう面から、ここでひとつ問題を抜本的に洗い直して整理をする必要があるであろうということから、その仮差し押さえ、仮処分問題を取り上げることにいたしたわけでございまして、それは、法制審議会の民事訴訟法部会でも、そのような問題意識でそれをやろうということになった結果でございます。  なお、ちょっと余談になりますけれども、先ほど来のいろいろな御質問の中であるいは誤解があってはいけないというのであえて申し上げますけれども法制審議会に対する諮問が、事務当局の方である程度の案を固めてそれを法制審議会の方に提示してそれの賛否という形でお伺いをする形のものと、そもそも最初からどういうふうなことでやっていくかというやり方と、二つございます。商法の関係も民事訴訟法の関係も、いずれも最初の段階から、法務大臣の諮問の形としますと、商法中改正すべき事項があれば答申されたいという大きな形でなされているものであります。したがいまして、商法とか民事訴訟法の場合には、法制審議会自体がどういうところに問題があって改正すべき点があるかというところから始まるということでございます。余談でございますけれども、ちょっとつけ加えさせていただきます。  そういうことで、仮差し押さえ、仮処分につきましても、今法制審議会の方がむしろ審議の内容としてやろう、事務局の方で各界のいろいろな意見を取りまとめるというふうなことをしておるわけであります。現段階は、御意見が寄せられましたので、法制審議会の方でその意見を今勉強といいますか、理解しているところでございます。その中でも、いろいろな観点からの御意見が寄せられております。しかも幅が広い問題でもございますので、弁護士会などはかなり、当初の意見としては留保するというふうなものもございますので、これからいろいろな角度から詰めていかなければならないだろうと思います。したがいまして、将来、スケジュール的にどういうふうにいくかということはまだ見通しが立っておらないという状況でございます。
  173. 中村巖

    中村(巖)委員 それではまた話題を変えまして、総務庁にお伺いをするわけでございますけれども、今、地方公共団体もそうでありますけれども、国も、行政に当たって住民の一般情報というか、そういうような個人情報というか、そういうものを大変いろいろな形で収集をされているわけでございますけれども、その収集された情報というものが下手な形で公開をされますと、これは個人のプライバシーを非常に侵害をする、こういうことになるわけでございまして、せんだっても新聞に出ておりましたけれども、福岡県の春日市というところでは、個人情報の保護条例というようなものをつくるようになった、こういうことでございました。  この種の問題につきまして、総務庁としては、プライバシーの保護をするためにどういう方策があり得るかということの検討をされているのかどうか、その辺のことをお伺いいたしたいと思います。
  174. 藤沢建一

    ○藤沢説明員 ただいま御指摘ございましたように、国の行政機関でございますとか、特殊法人でございますとか、あるいは、必ずしも私ども直接所管というわけではございませんけれども、地方公共団体等におきましても、個人情報と申しますか、個人的な情報の集積がある程度あるということは御指摘のとおりでございます。  これは、直接私ども総務庁として把握しているところで内容的に申し上げますけれども、国の行政機関の保有する電算処理に関する個人等データと申しますか、こういうもので、ことしの一月現在で私ども把握したところでは、十四省庁、九十七ファイル、約七億二千万件ぐらい集積されている。ただ、それにつきましては細かくは申し上げませんけれども、主なものは厚生年金であるとか国民年金であるとか、厚生省関係のそういう関係のものであるとか、あるいは郵政省あたりで貯金関係のいろいろなデータであるとか、そういうものが多いように承知しております。  また、地方公共団体につきましては私ども直接把握したことはございませんけれども、自治省の方で把握されているのを仄聞いたしますと、おっしゃいますように、住民記録と申しますか住民情報等の電算化といいますか、そういうものも地方公共団体も非常に事務の効率化とかあるいは住民サービスの向上というようなことから電算化が進んでいっているものですから、そういう意味では個人情報の電算処理というのが進んでいると思います。  それで、お尋ねの点でございますが、私ども総務庁として、プライバシー保護の問題につきましては前々からいろいろな形で研究、検討等をやってはきておるわけであります。ちょうど、御承知の五十八年三月の臨時行政調査会答申でも、この問題をお触れいただいております。それを受けまして、政府としまして五十八年五月の、新行革大綱と私ども申しておりますが、その閣議決定、及びことしの一月の、五九行革大綱というふうに私ども称しておりますけれども、やはり行革の閣議決定がございます。その中で、法的措置を含め制度的方策の具体的検討を行うというような趣旨の閣議決定をいただいております。したがいまして、私どもとしては、現在この政府の方針を受けまして、各省庁の局長クラスによって構成されております連絡会議等の場におきまして検討をこの問題で進めでいっている、こういうところでございます。
  175. 中村巖

    中村(巖)委員 詳しくお伺いしたいのですけれども、時間がございませんので、最後にお尋ねをするわけでありますけれども、この問題につきましては、本日の新聞あたりでも、今度自治省の方が住民記録に係るプライバシーの保護等に関する研究委員会、こういうものを設けるんだというようなことでございまして、自治省の方でこういうことをやっておられる。あるいは国の情報については総務庁の方でおやりになっておられる。さらにまた、個人信用情報のようなものについては、金融関係では大蔵省がやっておられるし、物販というか、そういう関係では通産省がおやりになっているということで、大変錯綜したような関係になっているわけで、こういうプライバシーの保護一つの問題につきましても、いわば縦割り行政の弊害というようなものがあらわれているように私ども思うわけであります。  今、連絡会議というお話がありましたけれども、総務庁なら総務庁でこれを何とかおまとめになって、法務省あたりと御相談の上、一本化した法案ができないものなのかということを最後にお伺いをいたしたいと思います。
  176. 藤沢建一

    ○藤沢説明員 お答えいたします。  御指摘のように、プライバシーの保護という問題が国民の権利、利益を擁護するというふうな上でも非常に大事な問題であるという認識で、私ども、先ほど申し上げました全省庁によって構成されます、局長さんレベルで構成される会議でこの問題について取り組んでいるわけでございます。御承知のことでございますので、御参考までに申し上げますけれども、諸外国におきましても、このデータ保護につきましては、いわゆる先進国における法形態といいますか、御承知のようにいろいろなことがございまして、それはいろいろな対象のとらえ方であるとか、いろいろなことがございます。そういうことで、必ずしも何か一つ法制でその国の全部を、その問題の全部をカバーするのがいいか悪いかとか、そのあたりにつきましては、日本でプライバシー問題自体が、あるいはプライバシーの権利概念自体がまだ成熟の過程といいますか、何といいますか新しい問題として取り上げてやってきているものでございますから、そのあたりは、今の時点でどちらがいいかとか、あるいはどうあるべきだというようなことはなかなか判断が難しいのではないかというような気持ちでおります。
  177. 中村巖

    中村(巖)委員 終わります。
  178. 宮崎茂一

    宮崎委員長 三浦隆君。
  179. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 本日は、風営等取締法の改正の問題に関連しながらお尋ねをしていきたいと思います。  初めに、法務省にお尋ねしたいのですが、最近におきますいわゆるセックス産業等のはんらんの状況を見まして、法務大臣はどのような御見解をお持ちなんでしょうか。また、現在国会において審議しております風俗営業等取締法の改正についてどのような感想をお持ちでしょうか。大臣にお尋ねしたいと思います。
  180. 住栄作

    住国務大臣 いろいろな、性産業と言っていいのかどうなのか、そのまがい、種類のものがはんらんしておる。善良な風俗あるいは環境を著しく損ねておるわけでございまして、特に青少年の非行の問題の最近の傾向から考えてみましても、それとどれだけの関連があるかどうか別問題としまして、そういうこともあわせ考えてみますと、大変憂慮すべき状態であると思っております。     〔委員長退席、森一清)委員長代理着席〕 そういう際に風営法の一部改正が行われたということでございまして、私は、これは大変時宜を得たいい改正である、これを生かしていくように今後とも努力すべきものである、こういうように考えております。
  181. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 続きまして、刑事局長にお尋ねしたいのですが、最近におきます青少年犯罪の受理あるいは処理状況、犯罪の傾向、どうなっておりますでしょうか。
  182. 筧榮一

    筧政府委員 最近におきます少年犯罪の受理状況でございますが、昭和四十九年以降おおむね増加の傾向を示しております。昭和五十八年には前年よりも五万三千百七十六人ふえておりまして、総計で六十万一千五百七十二人に達している状況でございます。  これら最近の少年犯罪の特徴的傾向といたしましては、いろいろ挙げられるかと思いますが、依然として非行の低年齢化の傾向が続いておりますこと、それから両親がそろい経済的にも問題のない中流家庭の少年による犯罪の割合がやはり増加しておるということ、それから万引きあるいは自転車等の乗り逃げなど、遊び的な要素の強い犯罪がやはり大きな割合を占めておりますこと、それから覚せい剤、シンナー等の薬物乱用事犯が依然増加をしておりますこと、それから中学生による学校内暴力事犯、これがやはり依然として多発しておるというようなことが特徴的なものとして挙げることができるかと思います。  少年犯罪の現況につきましては、数の上からもあるいはその内容の点からも楽観を許さないものがあるというふうに考えております。  処理でございますが、これらの少年につきましては、捜査を遂げました上、適切な処遇意見を付して家庭裁判所に送致しておるところでございます。
  183. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今の局長お話にありますように、少年犯罪が引き続き伸びておりますし、そうした防止対策としましても、今回の法改正というのは、大臣のお言葉にもあったように、やはり時宜を得たものだろう、私も基本的にはそう思っております。  さて、これに対しまして実は反対意見が幾つかありまして、大体まとめてみますと、一つには、風俗や少年の健全育成は、本来、権力的規制になじまないものである。また一つには、今日の深刻な非行の状況は取り締まり依存で乗り切れるものではないということ。また一つには、国民の総力を結集して社会の教育力を回復させ、少年法の適切な運用を確立するという基本を大事にする以外解決し得ないということ。また一つには、今回の改正によりかえって一層深刻な事態を招くことが危惧されるということ。また一つには、警察による風俗規制はかつての臨検制度への逆行、思想及び信条の自由を侵すおそれがあり、人権侵害につながる。大要、こうした意見があろうかと思います。  しかし、現状の目に余ります少年の非行と少年の福祉を害する犯罪を防止するとともに、あわせて善良の風俗を保持するため、風俗環境を是正しなければいけないということは、今や国民の多くがひとしく認めるところだと思います。むしろ、このまま拱手傍観することは立法の無作為であり、むしろ無責任と言ってもいい、そういうふうにも思います。しかし、また、法改正だけで根本的な解決が図られないにいたしましても、現状に即応した法改正を行いますことは、少年の保護等を進める上において有力な一つの手段であることは間違いございません。少なくとも、かえって一層深刻な事態を招くとはとても考えられないと思います。  以上の見地に立ちまして、民社党としましては、ことしの四月二十日付で「風俗営業等取締法の改正に関する申入書」を作成いたしまして、既に関係当局者の皆さまに提出をさせていただいております。  その内容は「政府は、性産業等からの年少者の保護、社会環境の浄化を主眼として風俗営業等取締法の改正を行おうとしている。今日の性産業の野放図な氾濫が青少年非行を助長している現実をみれば法改正の趣旨は概ね妥当である」としまして、さらに付言して、第一に「法改正目的は、性産業等からの年少者の保護、善良な風俗の保持、地域環境の浄化にしぼるべきであり、この目的以外の改正は必要最小限のものに限定すること」、第二に「とくにパチンコ等の遊技営業は、国民の健全娯楽として定着している」などの認識のもとに五項目を挙げているわけです。  以下、実情に即しまして質問をさせていただきたいと思います。  初めに、改正案の提案理由に関連してでございます。その一つは、少年非行の昨今の状況とその対策について今刑事局長からもお話がありましたが、もう少し詳しく、初めに暴走族の最近の状況とこの夏への見通し及びその防止対策。二つには、新宿歌舞伎町かいわいなど盛り場におきます深夜から夜明けにかけての少年少女の動向と非行の関係及びその防止対策。三番目に、夏の期間中に毎年のように話題となります鎌倉海岸など海浜地帯におきます深夜から夜明けにかけての少年少女の動向と非行の関係及びその防止対策についてお尋ねをしたいと思います。
  184. 橋之口求

    橋之口説明員 お尋ねの点についてお答えいたします。  まず、先生のおっしゃった暴走族の実態、勢力なんですが、五十八年末で、グループ数は六百八グループでございます。それから、メンバーでございますけれども、三万九千人の構成員を持っております。うち、少年が七五%を占めております。ここ五年間の少年の占めるシェアの率ですけれども、大体横ばい、多い時期が八〇%なんですが、まあ大体七五%というのが実態でございます。  次に、最近の取り締まり等を含めた問題でございますけれども、取り締まりを軸とした一連の諸施策が一応功を奏したといいましょうか、そういうことで、ことしを見ますと、一月から五月までの暴走族の蝟集、あるいは走行状態というのを見ますと、トータルで八百五件、昨年が同時期で九百六十件でございますので、マイナス一五%になるかと思います。また、ひところ大規模な集団暴走というか、百人ぐらいで走る、そういう暴走というのも減少しております。  しかし、いずれにしましても、若者の暴走志向というのは依然として強いものがございます。例えば、取り締まりの間隙というか、すき、そういうものをついた、小規模ではございますけれども、ゲリラ的な走行が敢行される、あるいはゼロヨン等のスピード型のタイプといいますか、そういう暴走行為も依然として発生しているという実態でございます。また、いわゆる暴走族のグループの対立抗争というか、いろいろなトラブルがございます。あるいは一般の住民の方、一般通行人を巻き込んだ不法な悪質な粗暴事犯も依然として発生している状況でございます。  先生の御指摘のありましたこの夏はどうかということですけれども、ただいま申し上げましたとおり、手を抜くとまた跳梁があるということで、暴走族をめぐる情勢は予断を許さないというように私たちは判断しております。特に、夏は開放的で、海や山にということで小グループでも出かけていって走る、そして迷惑をかけるということが予想されます。警察としましては、少年が対象でございますので、根底には少年という認識を置きながら、暴走行為の態様、いろいろな態様がありますので、これに効果的に取り組みまして、取り締まりを中心とした車の押収とか免許の行政処分を適正にやっていきたい。  それから根源対策としましては、何と申しましても家庭の問題、あるいは職場、学校という地域社会を含め、あるいは地方公共団体、業界等の御協力、また一体となってやる必要がございますので、各機関、家庭等を含めて連絡を密にしまして、非常に国民の迷惑する暴走族に対しまして何としてでも封圧して未然防止に努めていきたいと思っております。  以上です。
  185. 古山剛

    ○古山説明員 深夜盛り場等を徘回いたしまして補導された少年は、昨年は三十五万人以上に上っているわけでございますけれども、これらの少年だちはゲームセンターや深夜喫茶店等をたまり場といたしまして、非行集団を形成したり、また、このような場所で誘惑を受けて非行に走ったり、あるいは売春などの福祉犯の被害に遭う少女もいるなど、深夜徘回といいますのは少年の健全な育成上極めて問題が多いと考えているわけでございます。警察といたしましては、盛り場において街頭補導を実施し、非行に陥りやすい少年に適切な助言、指導を与えたり、あるいは少年に有害な影響を与える周囲の風俗環境の浄化を推進する等により少年の健全な育成に努めているところでございます。  また、海岸における少年少女の動向と非行の関係、防止対策ということでございますけれども、夏には海岸等の場所に少年が多数蝟集をすることが多いわけでございまして、これらの場所で少年が犯罪の被害に遭ったりあるいは非行に走ったりする可能性が高く、特に深夜においては問題が多いというようなことで、私どもといたしましてはこれらの場所における補導活動等を積極的に推進して、少年の非行防止、その健全な育成に努めているところでございます。  今後とも、関係機関あるいはボランティアの方々と一層緊密に連携を図りまして、強力にこれらの施策を進めてまいりたいと考えているところでございます。
  186. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 深夜の町はいいのですが、特にこれから夏の海岸地帯、海浜地帯はやはり開放的なムードがあるので、大変大きな話題になっているかと思います。  その次にいきます。  この十年来、福祉犯被害少年の推移がどうなっているか。特に少女の被害が増加していると言われますけれども、その実情及びこれに対する対策、どうなっていますか。
  187. 古山剛

    ○古山説明員 少女売春等のいわゆる福祉犯の被害者となった少年でございますが、五十四年以来一貫して増加いたしておりまして、五十八年には四十九年の一・八倍になって、三年連続戦後最悪の記録を更新いたしているところでございます。これを男女別に分けますと、近年女子の被害が増加を続けてきておりまして、五十八年には全体の約七〇%、男子が三〇%ということで、女子は七〇%を占めるに至っております。  その背景には、最近の社会全般の享楽的あるいは娯楽的風潮を反映いたしまして、いわゆるセックス産業の隆盛に代表される享楽的、娯楽的営業が増加あるいは多様化しているということがありますし、この結果、これらセックス産業を場とする福祉犯が多発しているものというふうに見ているわけでございます。  警察といたしましては、このような状況に対処するため、児童福祉法あるいは売春防止法、職業安定法など各種の法令を活用いたしまして福祉犯の取り締まりに努めてまいったところでございますけれども、これらの法令では取り締まることのできない営業形態のものもかなり見受けられます。また、検挙いたしましても行政的な措置をとることができないで実効を上げがたいというのが実情でございます。このために、少年を有害な風俗環境、また福祉犯の被害から守るためには、性を売り物とする産業等について風俗営業等取締法の一部を改正して必要な規制を図ることがぜひとも必要ではないかと考えておるところでございます。
  188. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 福祉犯として、児童福祉法関係で少年に淫行させる行為、あるいは有害目的で少年を支配下に置く行為などがありますし、そのほか職業安定法、労働基準法、風営等取締法、青少年保護育成条例、その他いろいろと関係があろうかと思うのです。子供たち自身にも問題がありますが、むしろそうした子供たちを悪くしている大人ですね。特にそれを商売として子供をえさに利益を得るというのは許し得ないことだみうというふうに思います。  そこで、改正法一条の目的規定についてお尋ねをいたします。  目的規定に言う「善良の風俗」、「清浄な風俗環境の保持」及び「少年の健全な育成」という用語は多義的であり、その解釈、運用を誤れば危険であるという批判意見がございます。しかし、このような用語例は民法九十条や少年法一条などで既に使用されているものですし、特に善良な風俗については既に判例でかなり積み重ねているところでもあります。このような用語に対する警察の解釈はどうなっておるのでしょうか。
  189. 古山剛

    ○古山説明員 風俗という言葉でございますけれども、広く言いますと、社会における人情、流行等に関する生活関係のことであるというふうに考えられるわけでございますけれども、風営法に言う風俗とは、そのうち飲む、打つ、買うといった言葉に代表されますような人間の欲望についての生活関係のことでございます。  善良な風俗の保持とは、こういった風俗が国民の道義的観念によって支えられている状態を保持することでございまして、例えば売春や賭博が行われないようにすることでございます。改正風営法の風俗営業者の遵守事項について申しますと、第十二条の構造及び設備の維持、十四条の照度の規制、十七条の料金の表示、十九条の遊技料金等の規制、あるいは二十三条の遊技場営業者の禁止行為などがこれに当たるわけでございます。  それから清浄な風俗環境の保持とは、その地域の実情を勘案して善良の風俗を妨げるおそれのないような状態で維持されている風俗の観点から見た地域環境を保持することでございまして、例えば良好な住宅地が風俗営業のけばけばしい広告等で害されないようにすることなどでございます。改正風営法の風俗営業者の遵守事項については、十三条の営業時間の制限でございますとか、あるいは十五条の騒音及び振動の規制、あるいは十六条の広告、宣伝の規制等がこれに当たるわけでございます。  それから少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止でございますけれども、未成熟な少年の心身に有害な影響を与え、その健全な育成に障害を及ぼす行為を防止することでございまして、例えば改正風営法の風俗営業者の遵守事項で申しますと、十八条の年少者の立入禁止の表示、それから二十二条の年少者禁止行為などがこれに当たるわけでございます。
  190. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 次に、規制対象についてお尋ねをしたいと思います。  いわゆるポーカーゲーム機を使用する業者というのが今だんだんふえてまいりました。これに関連してお尋ねをするのですが、初めに、ポーカーゲーム機を遊技設備とする業者がふえまして、これに伴う被害が横浜の福富町かいわいなどで大変に多く起こっていると言われております。その実情及び対策についてお尋ねします。  そして、あわせて、現行法規のままではなぜ取り締まりがうまくいかなかったのか、その理由と、この改正によってそれがどう見直されてくるのかという問題。  さらにもう一つ。こうしたポー力ーゲーム機による営業者の中には、賭博犯で責任者が逮捕されますと、その責任者に一日当たり三十万円もの保障を行っているといううわさもあるのですが、こうしたことは事実なんでしょうか、まとめてお尋ねをいたします。
  191. 古山剛

    ○古山説明員 先生お尋ねの福富町かいわいといいますのは、横浜市内の中心的繁華街と言われる伊勢佐木町に隣接する地域であろうかと思うわけでございます。同かいわいは、喫茶店、スナック、飲食店等の料飲関係の店舗のほか、トルコぶろが二十六軒営業している、いわゆる夜の町といわれているところでございます。神奈川県警察におきましては、盛り場モデル地域として指定を行い、特に環境の浄化活動を強力に推進しているところでございます。  一部の喫茶店やスナック等にはポー力ーゲーム機を設置し賭博を行うものもあるというところから、所轄の伊勢佐木警察署はもとより、神奈川県警察本部におきましても、賭博事犯に重点を志向して取り締まりを強め、昭和五十八年中には、県内の一五・二%に当たる四十七件、それから県内の一六・七%に当たる二百八十二人を検挙いたしまして、そして五百六十七台の遊技機を押収するなどして、賭博事犯の追放に努めているところでございます。  その結果、最近では客離れ現象が著しく、店舗数も減少しているとの報告も受けているところでございます。  しかし、いまだ疑わしい店舗が存在しておりますので、鋭意内偵捜査を行っているところでございますが、取り締まりを免れるための工作を巧妙に行って、特定の客のみを店舗に入れるよう会員券を発行したり、あるいは出入口を二重扉にしたり、あるいは店の出入り口付近に見張る者を立てるなどしているために、従前以上に賭博事犯の検挙は困難をきわめているという状況でございます。  このような厳しい情勢にはあるわけでございますけれども、所轄伊勢佐木警察署におきましては、ことしの七月一日に福富町地区浄化対策本部を設置いたしまして、挙署体制をもって福富町かいわいの環境浄化をさらに強め、善良の風俗、清浄な風俗環境の保持、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の排除に努めているとの報告を受けているところでございます。  それから、ポーカーゲーム機について現行法規のままでは取り締まりがうまくいかない理由と、それから法改正後の見通しという点についてでございますけれども、近年のポーカー賭博に対しまして、神奈川県でもそうでございますが、全国の警察でも刑法を適用して取り締まりを進めてきたところでございます。しかしながら、営業者の中には短期間に荒稼ぎを行うものが見受けられるわけでございます。また、検挙されても行政的な措置を講ずることができないために、反復して違法行為を敢行する例も出てきております。さらに最近は、警察の取り締まりを免れようと、先ほどの神奈川県の例でも申し上げましたように、いろいろな方法を講ずるなど、悪質、巧妙になってきておりまして、取り締まりのみでは問題を解消することが困難になってきているわけでございます。  改正法におきましては、ゲームセンター等を許可対象といたしまして、他の許可業種と同様に許可の基準や管理者制度あるいは遵守事項等の規制を加えることになっておりますので、賭博行為の防止に相当の効果を上げ得るものと期待しているところでございます。  それから、ポーカーゲーム機による営業者の中に、賭博犯で逮捕された店の責任者に一日当たり三十万円の保障を行っているといううわさもあるが事実がということでございますが、それとよく似た例をつかんでおります。神奈川県警察本部が昨年ポーカーゲーム機を使用した賭博事犯を検挙した事例の中に、実際の経営者が直接営業には携わることなく、虚偽の雇い経営者等に対しまして、責任者には月額四十万円から五十万円、一般の従業員には月額二十五万円の給料を支給して雇いまして、さらに、逮捕され身柄拘束中には、慰謝料として一日十万円を支払うという旨を雇用契約のときに契約として結んだり、あるいはそれを申し渡したりして、実際に実質経営者は表面に出ないで数店舗を経営している、そういう事犯が判明いたしております。
  192. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今お聞きのとおりでありまして、一日当たり十万円も出すというふうな本当にけしからぬ行為だろうと思います。こういうことには厳正に対処していただかなければならないと思います。  次に、法案が修正されまして、警察の立入捜査権あるいは公安委員会によります管理者の解任命令というふうな警察の規制力が弱められたわけです。警察の規制力が弱められるということは、一般論としては、営業の自由の尊重へとつながり、評価されてよいものだと思うのです。しかし、今お話しのようなポーカーゲーム機を使用して不当な収益を上げている特に悪質な業者、こうしたことではかえってこれらの連中を喜ばせ、結果的には被害者を増加させることになるのではないかと、いうふうなことが憂慮されるのであります。  次に、引き続きましてトルコぶろのことについてお尋ねしたいのです。  実は、トルコぶろなどを届け出制であれ公認することは、逆に性産業の固定化、拡大化を招くものであるとの批判意見が出されております。警察がこうしたセックス産業や売春を公認するわけはないと思うのですが、この誤解はどこから出たのでしょうか。
  193. 古山剛

    ○古山説明員 まず警察の立ち入り権、それから管理者の解任命令が修正されて警察の規制が弱められたが、悪質な業者対策は大丈夫かというお尋ねでございます。  まず立ち入りの関係でございますけれども、政府原案は現行法の立ち入り権に比べましてその範囲が拡大するのではないかという疑念が表明されまして、無用の誤解を解消するために、修正案では現行法の規定に即して整備されたものでございます。ところで、現行法でも立ち入った際には必要な範囲におきまして関係する帳簿、書類等の検査及び関係者への質問ができると解釈されておりまして、そのように運用してきておるわけでございまして、修正案でもその点は変わらないわけでございます。  次に、管理者につきましては、政府原案の解任命令を勧告と修正されたわけでございますけれども、これは営業者の自主性を尊重することとしたものでございます。しかし、その結果、営業自体に問題が起きたときには、二十五条の指示あるいは二十六条の営業の停止等の規定を活用いたしまして、営業者に対して必要な指導監督を行うことにより営業の健全化に努めてまいりたいと考えておりまして、いずれにいたしましても、御心配の事態にはならないのではないかと考えているところでございます。  それから、今回の改正は、トルコぶろの届け出制などトルコを公認するようなものであるという批判があるがどうかということでございますけれども、最近セックスを売り物とする営業が増加いたしますとともに、次々と新しいものが出現しておりまして、多様化の状況にございます。このことが少年非行の増加の要因の一つとなっていると考えられるわけでございまして、従来から規制対象であったいわゆるトルコぶろ等を含めまして、これを風俗関連営業としてとらえて必要な規制を加えることとしたものでございます。  届け出制をとりましたのは実態を把握するためでございまして、それとともに善良の風俗もしくは清浄な風俗環境を害する行為、または少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するために必要な規制を行おうとするものでございまして、警察が積極的にセックス産業を認知するものではないわけでございます。警察といたしましては、このようなセックス産業につきましては、今後改正風営法を積極的に運用いたしまして、また他法令違反につきましても厳正かつ的確な取り締まりを行っていく方針でございまして、セックス産業を公認し拡大するという批判は当たらないものと思っている次第でございます。
  194. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 次に、行政警察権の問題についてお尋ねします。  時間がありませんので、こういう質問の趣意があるということだけ初めにお聞きをいただきたいと思います。  その一つは、改正法案は、公安委員会の許可、その取り消しまたは営業の停止、指示など行政警察権の範囲を著しく拡大し、またその具体的要件は不明確であり、この違反事項に対する指示及び罰則の適用などに問題があるという批判意見があります。このような批判に対し、警察当局はどのように考えているのか。第二点、旧法、改正以前の法ですが、第四条、公安委員会による「必要な処分」が、改正法案では二十五条、二十九条で「必要な指示」に変わっております。どのような意味の違いがあるのか。第三番目に、指示の法的性質及び法的効果はどうであろうか。お尋ねしようと思ったのですが、時間の都合上飛ばさせていただきます。  その次に、行政警察権そのものでありますが、当初の法案では、三十七条で警察職員による営業所への立ち入り及び帳簿、書類その他の物件の検査もしくは関係者への質問権が認められていたわけです。必要であるから書かれたのだと思いますが、その理由。そしてまた、修正され、単に立ち入りだけとなったのですが、これで法目的を達成できるのかどうか。  次いで、関連の質問なんですが、二十四条の五項で公安委員会の管理者の解任命令権を規定していたところ、当該規定は修正され、単に勧告のみにとどまることになりました。なぜ解任命令権を規定したのか、また、勧告で法の実効性を期し得るものかどうか。あわせて、この二件お尋ねをしたいと思います。  さらに、この法案三十七条の四項に「第二項の規定による権限は、」いわゆる警察の権限ですが、「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」とあります。この規定は何のために挿入されたのか。恐れ入りますが、一括してお答えをいただきたいと思います。
  195. 古山剛

    ○古山説明員 立入検査、質問の規定を必要とした理由は何か、また、修正され、単に立ち入りだけとなったが、これで法目的を達し得るかという点についてでございますけれども、現行法の立ち入りの規定では、帳簿、書類その他の物件の検査、関係者への質問についての明文の規定はないわけでございますけれども、解釈上は、この法律の実施に必要な範囲でできるものとされておりまして、そのように運用してきたわけでございます。  改正法の政府原案では、この検査、質問について明文の規定を設けたわけでございますけれども、これは近時の立法例に倣って規定を整備したものでございます。今回改正案が修正されまして、文言上は立ち入りのみとなったわけでございますけれども、これは、修正前の検査、質問についての規定は現行法の立ち入り権に比べてその範囲が拡大するのではないかという疑念の表明がございまして、無用の誤解を避けるために、現行法の規定に即して整備したものでございます。したがって、この法律の施行に必要な限度におきまして、現行法と同様、関係の帳簿、書類その他の物件の検査あるいは関係者への質問ができるということでございますので、法目的を達成する上で支障はないのではないかと考えているわけでございます。  それから、修正前の案では、なぜ管理者の解任命令権を規定していたのか、また、修正後の案の勧告で法の実効性を期し得るのか、そういう御質問でございますけれども、修正前の案で、管理者の解任命令権について規定しておりました趣旨は、管理者として不適当な者を排除することにより風俗営業の業務の適正化を図るためでございました。改正後の案では、営業者の自主性を尊重するという見地から命令を勧告に改められたわけでございますけれども、今回の改正案では、指示、処分を明確化し、あるいは管理者の業務を規定し、講習を行うことができることとするなど、風俗営業者の業務の適正化のための規定が整備されておりまして、営業者に対する指導監督とあわせて法の実効性を上げるように努めてまいりたいと考えているところでございます。  それから、立ち入りの権限は「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」という規定は何のために挿入されたのか、こういう御質問でございますけれども、風俗営業法の立ち入りについての規定は、その法目的を達成するための行政監督上の手段を規定するものとして設けているものでございまして、犯罪捜査のための権限を規定するものでないことは明らかでございます。これは現行法においても異なるところはないわけでございますが、今回の改正案では、これを明確化するために御指摘規定を置いたものでございます。
  196. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 次は、少年指導委員による補導についてお尋ねをしたいと思います。  法案三十八条の少年指導委員制度と旧来の少年補導センター所属の少年補導委員との違いはどこにあるのかという点、これが一つ。  それから、その少年指導委員の人数あるいは経費等についてどのようにお考えかということについてお尋ねをいたします。
  197. 古山剛

    ○古山説明員 まず、少年指導委員制度とそれから少年補導センター所属の少年補導委員との違いということでございますけれども、少年補導委員と言われるボランティアでございますけれども、主として市町村が設置いたしまして、少年補導センターを拠点として地域に密着した非行防止活動を行っておられる方々でございます。これらの方々が日夜少年非行等の問題に意欲的に取り組んでおられることは、私どもも十分承知いたしておるところでございます。  これに対しまして、少年指導委員は、専ら少年を取り巻く風俗環境の影響から少年を守るための活動に従事していただくことといたしておりますけれども、このような活動におきましては、例えば深夜盛り場を徘回する暴走族等の非行性の進んだ少年やこれらに悪影響を与えている暴力団等悪質な大人を相手として、これに注意をし、あるいは助言をしなければならないわけでございまして、このため、法律によってその地位及び活動がオーソライズされていなければ実効ある活動を行うことができないため、今回法律に規定することとしたものでございます。  少年指導委員と少年補導委員は別個のボランティアでございますけれども制度の運用に当たりましては、少年指導委員は少年補導委員あるいは補導センターとも緊密に連携して相協力して少年の健全な育成に努めなければならないものと考えておるところでございます。  それから、少年指導委員の人数及び経費等いかんということでございますけれども、少年指導委員には厳格な資格要件を満たす地域の篤志家のような方々を予定しているところでございまして、少年補導委員のように大量広範にお願いすることは困難でございますが、少年を風俗環境から保護し、その健全な育成に資するため着実な増強に努めてまいりたいというふうに考えているところでございまして、まだ今のところ人数等についてははっきりとお答えする段階ではないというふうに思うわけでございます。  それから、少年指導委員は名誉職ということにいたしまして、謝金の支払いは予定しておりません。これは、少年指導委員には、少年の健全育成に旺盛な熱意と使命感を有し、経済的にも余裕のある地域の篤志家とも言える人を充てることにしておりまして、謝金を交付しなくてもその自発的な協力を得ることに支障を来すことはないと考えたからでございます。
  198. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 次に、同じく少年指導委員の問題なんですが、少年指導委員の職務は、法案三十八条によりますと、「風俗営業及び風俗関連営業等に関し」と限定されているわけですが、そうしますと、先ほどの暴走族の問題ではありませんが、こうした少年指導委員は暴走族等の少年非行防止には何らその役割を果たし得ないものかどうか、これが第一点です。  第二は、少年指導委員には何らの権限も付与されていないのですが、それで職務が達成し得るものかどうかということです。例えば、その職務遂行上少年少女の家庭及び学校関係者との関係がどうなるのか、もしそうした人たちから協力を拒否された場合どのような対応が可能なものか、この二点をお尋ねしたいと思います。
  199. 古山剛

    ○古山説明員 少年指導委員制度は、風俗環境が及ぼす有害な影響から少年を保護し、その健全な育成に資するため、民間有識者の方々に、地域住民と一体となって、盛り場を徘回する少年に対する指導助言や有害環境浄化というような地域活動をきめ細かく行っていただく制度でございます。少年指導委員は、専ら少年を取り巻く風俗環境の影響から少年を守るという観点からの活動に従事していただくのでございますけれども、深夜盛り場を徘回する暴走族等の非行性の進んだ少年やこれらに悪影響を与えている暴力団等の悪質な成人を相手に、これに注意、助言を与える等、少年の非行を防止し、その健全な育成に資するため大きな役割を果たしていただけるものと期待しているところでございます。  それから、少年指導委員につきましては、先生指摘がございましたように、その任務を遂行するための特別な権限は付与していないわけでございます。この制度は、社会的信望を有する地域の篤志家とも言える人々が少年に対する深い愛情と理解を持って、全く強制力を伴わない純粋に任意の活動として行うことによってその効果を上げようとするものでございまして、人選に当たりましては、地域の協力を得られやすい真に篤志家のような方を選任するように努めてまいりますし、警察官その他のボランティアの方々と緊密に連携した活動を行っていただきますので、御懸念のようなことはほとんどないというふうに考えております。
  200. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 要するに、少年非行の防止という点は、警察はもちろん、家庭も学校も地域社会も含めてみんなで努力していかなければならないことだと思うのです。そういうふうな場合に、あるいはまた大人による少年を食い物にするようなセックス産業なりその他風俗を紊乱するような人たちに対しても強くあらねばいけないし、あるいは一般的にポー力ーゲーム機使用のような特に悪質な業者に対しては、警察は毅然として強くあっても差し支えなかろうと私は思っております。  ただ今度は、そうしたいわゆる悪質な人たちと、パチンコ屋さんのように、昔はともかく今はむしろ大変健全な企業を営んでいる者をたまたま一つの法の中に入れてしまうものですから、今矛盾がますます激しくなってくるだろう。片方はますます悪質の度合いを深める可能性があり、片方はますます健全化をしていくとか、一つの法律にあること自体どうかなという懸念を持っております。  次に、そういう意味で警察許可の問題についてお尋ねしたいと思うのです。  特にパチンコ屋さんなど新しくそういう商売を営もうかなという場合についてですが、初めに法案三条の営業の許可と同二十七条の営業等の届出ないしその受理というのは法上どのような違いがあるのかということです。
  201. 古山剛

    ○古山説明員 改正法第三条の営業の許可でございますけれども、パチンコ営業等必要な規制を行えば国民にとって健全な憩いの場、娯楽の場となり得るものを許可制としたものでございます。これに対しまして、同第二十七条の届け出は、業務の適正化になじまないセックス産業について必要な規制をするための前提として、まず実態把握をするために届け出としたものでございます。  許可につきましては、公安委員会の許可がおりなければ営業ができない、それに対して、届け出につきましては、公安委員会の受理のみで、その届け出書を公安委員会が受理したときに届け出としての効果が生ずるという点に違いがあろうかと思うわけでございます。
  202. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今お聞きのとおり、この許可というのは学問的に法律行為的行政行為に所属するもので、言うまでもなく行政機関の意思の表示を内容とするものだと思うのですね。これに対して、受理というのは準法律行為的行政行為でございますから、確認あるいは判断作用を要素とする単なる行政行為にすぎないと思うのです。  この場合に、パチンコが許可となって、例えばストリップ劇場の方が届け出になっているんですね。私は、逆なんだろうというふうに思うのですね。そのお店の看板のあり方なり子供たちなり一般の影響の度合いを考えた場合に、この法の中の組み込み方としてこれは逆だろう。むしろパチンコは前からあったからたまたまそうなっているのかなという気がいたします。  次に、公安委員会が風俗営業を許可するか否かは法案四条の許可の基準に羈束された法規裁量であると解しますけれども、いかがでしょうか。
  203. 古山剛

    ○古山説明員 御指摘のとおりでございます。
  204. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 次に、法案三条、営業の許可ですが、第一項の許可を得べく法案五条の所定の手続に従い許可申請書を提出した場合、これを受理するのは準法律行為的行政行為であり、公安委員会はこれを受理しなければならないものだと解しますけれども、いかがでしょうか。
  205. 古山剛

    ○古山説明員 お話しのように、所定の手続に従い、さらに申請書おのおのにも誤りがなければ受理しなければならない性質のものでございます。
  206. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 なぜお尋ねしているかといいますと、所定の手続に合っていても、たまたま住民が反対するからだめだ、その同意書がなければだめだというふうなことが現実によく行われるわけであります。たまたまそれが許可ですと、そのことによって行政庁の意思判断でどうだこうだということができると思うのですけれども事態が違う場合が幾らでもあるだろうと思います。  関連しまして、風俗営業等取締法施行条例におきます「場所に関する許可の基準」に、「住居地威その他善良の風俗保持上著しく支障があると認められる場所」とある場合なのですが、この場合単なる支障ではなくて「著しく支障がある」ということは具体的にどういうことでしょう。
  207. 古山剛

    ○古山説明員 「著しく支障がある」ということは、これは一般的には、憲法が保障する営業の自由との対比上、営業の自由を制限してもその地域の清浄な風俗環境の保持を優先させるべきそういう場所だというふうに言えると思うわけでございます。
  208. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今のお答えだけだと大変抽象的なんですね。もう少し具体性がないとまずいのじゃないかというふうに思うのです。  また先に進むことにいたしますが、それが、いわゆる「著しく支障がある」ということで仮に不許可になりそうな場合、それであっても、場所に関する許可の基準に該当した場合であっても、公安委員会が善良の風俗を害するおそれがないと認めたときは、許可することができると、こうなっていようかと思うのです。そこで、「善良な風俗」及び「善良な風俗を害するおそれ」の意味、そしてその違いがどこにあるのか、お尋ねしたいと思います。
  209. 古山剛

    ○古山説明員 改正法では、「善良の風俗」とは、先ほど申し上げました飲む、打つ、買うという言葉に代表される人間の欲望についての生活関係を意味しているそういう風俗が国民の健全な道義的観念によって支えられている状態を意味するというふうに考えるわけでございます。しかしながら、現行法に言う「善良の風俗」とは、これよりも広く、清浄な風俗環境等も含む概念でございます。  それから、各県の条例にあります「善良の風俗を害するおそれがない」といいますのは、営業を許可することが、一般的には住居地域など善良の風俗保持上著しく支障があると認められるような場所でございましても、具体的に個別的に見まして、当該営業を許可しても善良の風俗を保持する上で支障があるとは認められない場合があるわけでございまして、そういう場合を指しているわけでございます。
  210. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今のお答えもやや抽象的なんだろうというふうに思うのですね。例えば、近所の皆さんに迷惑をかけるという場合に、著しくけばけばしいポスターや看板が広がって掲げられるとか、大変騒音がひどいとか、悪臭がひどいとか、とにかく何らかよほど目に余る現象があれば、これはそういうものがあると困る、あるいは例えば子供に悪影響を及ぼすような企業の場合、学校なりその他の施設が大変近くにある、これもまずかろう。けれども、その距離制限からも仮に外れているような場合とか、それから特に差しさわりのないような場合、ただ近所の人が、何であれ後から入った人は気に入らないということで反対運動が来ると、実はこういう企業でなくても成り立たないんですね、住民エゴも場合によって行き過ぎると。極端に言うと、広い土地があいていたから例えば鶏をたくさん飼った商売が仮にあった。ところが、だんだんだんだん近所に家が建って、鶏の商売をやっていると悪臭があって困るからということだと、逆に立ち退きを要求されてしまうというか、先住者よりも後から入った人の力が強いと、そういうことが昨今間々あり得るようになっていると思うんですね。  ということで、パチンコ屋さんも町中の本当に住居地域の中につくるということはどうかなと思いますけれども、いわゆる盛り場など広い道路のところで同じような類似の商売が仮にあるような場合、たまたま後から来たから、前のはよくて後から来た者はだめだというくらいのことだけだと、拒否することが大変に行き過ぎ、乱用になる可能性もあるのじゃないかということで、警察としては、トラブルが起きないようにというか消極的なお気持ちはよくわかるのですけれども、その実情に即してよく御検討をいただきたいなというふうに思っているわけです。  特に善良な風俗というのは、それを批判する人は、多義的な概念だから幅広く使われて困ると言っているわけであります。今のお答えも、善良な風俗というのは大変幅広いお答えがあった。これはやはり間違いなんだろうというふうに私は思うのです。というのは、例えば民法九十条「公ノ秩序」「善良ノ風俗」というふうな言葉があって、これに対する判例というのはかなり多く出ていて、かなり煮詰まっているのだと思うのです。     〔森(清)委員長代理退席、委員長着席〕  例えば分類でありますが、一つには、人倫に反する行為、また一つには、正義観念に反する行為、また一つには、個人の自由を制限する行為、また一つには、他人の窮迫、無思慮に乗ずる行為、こうしたことがいわゆる公序良俗に反する行為だということで、既に判例的には煮詰まっているのだと思います。ただ、時代が変わりますから、新しい商売なども出ることですから、そういう点で判例も動いていくかと思うのですけれども基本的にはそんなものだと私は思っております。  それでまた法学辞典なんかを見ますと、善良な風俗とは社会一般の道徳観念を指すものだというふうな解釈なども出ているわけです。としますと、旧来出ている判例解釈あるいは法学的な用語解釈に差しさわりのない限りは、これは認められて差し支えないものじゃないかというふうな気がするのであります。したがって、許可基準を満たしている場合は当然のこととして、許可基準を満たさないときも、場所に関する基準にのみ触れる場合に限っては、営業上、法令を遵守し、性産業、いわゆるセックス産業とは全くかかわりを持たず、未成年者の出入をかたく禁じ、広告、騒音、駐車場などの問題を十分に考慮し、警察及び業界の自主規制に従っている限り、新規パチンコ業の許可願を公安委員会は認めても何ら差し支えないのだと思うのですが、いかがでしょうか。
  211. 古山剛

    ○古山説明員 パチンコ営業は、先生お話のございましたように、国民に憩いと娯楽を提供する社会的に必要な営業だと思うわけでございます。しかしながら、やはり学校等の周辺あるいは住居地域などでは、良好な風俗環境を保持する必要があると思うわけでございまして、周囲の風俗環境との調和を図るために場所の基準を設けて、それに触れる場合には許可をしないということにしているものでございます。  それで、実は先ほど先生から、いろいろと善良の風俗につきましてもお話があったわけでございますけれども、パチンコにつきましては、遊技の結果に応じて賞品を提供するという点から、射幸心をそそるおそれのある営業ということで風営法上とらえていろいろ規制をしているわけでございますけれども、そういうパチンコ屋さんの存在というものが周囲の風俗環境の、射幸性から見た風俗環境というものに影響を与える可能性があるということで、やはり一定の距離の中とか、あるいは学校、病院等から一定の距離のものであるとか、あるいは住居地域でありますとか、あるいは住居地域と同じょうに、その善良の風俗の保持を必要とするような、例えば緑地保全地域とかあるいは文教地区とか、そういうようなところにつきましては、やはり許可をなるべくしない方がいいのじゃないかということで、特に善良な風俗の保持上支障がないというような場合には、許可を例外的にすることがございましても、一般的には距離的な基準あるいは場所的な基準を守っていただくというふうにしているわけでございまして、そういう意味からいきまして、やはり場所的基準というものは守らなければならないものではないかというふうに考えているところでございます。
  212. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 そこで、条例で、例えば場所的に学校から百メートル以内とか、旧来あったわけです。そうすると、その条例で許される限り、百メートルを超えていれば外れているじゃないかということです。それでまたさらに、仮にそうであったとしても、場所的だけならば、この善良な風俗を害するおそれがなければいいのだと規定上はあるわけです。  さて問題は、そういうパチンコ屋さんが来ると、例えば五十メートル、百メートルの近所ならともかく、もっと離れた他の町の人がパチンコ屋ができるというとうちの人がお金を使うから困るんだ。今この不景気の中にお金は貴重になっているのにパチンコ屋は金を使うからそういう商売が出ることは困る。これは私は理由にならないと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  213. 古山剛

    ○古山説明員 私ども、パチンコ屋さんが営業の許可を申請される前に、事実工事前相談といいますかそういうことがあるわけでございます。そのときにやはり周囲の方々ともその辺のところはよく説得してやりなさいというようなこともいろいろお話しするわけでございますけれども、あくまでもそれは善良の風俗を保持する必要の範囲の場所、地域ということでございまして、先生お話のように遠いところの人が反対運動するとかいうようなことは全然問題になりませんし、また隣近所の方々がみんな賛成しているとか反対しているとかという点についても一応参考にはいたしますけれども、公安委員会が判断するのはあくまでも善良な風俗を守るためにどうかという点に主眼を置いて判断をしているわけでございます。
  214. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 実は具体的にそういう事例があったのでお尋ねしたわけです。パチンコ屋さんができるとお金を使うからいけない。お金を使うのはパチンコ屋だけではないのであって、それじゃほかの店みんなひっかかる可能性も出てくるじゃないかということで、この反対運動は少し行き過ぎというかおかしいんじゃないかな。しかし、にもかかわらず警察が届け出を受理してくれない。言うなら同意書を得なければだめだというふうなことで行き詰まってしまっているというものですから、先ほど言ったように、届け出の受理というのは準法律行為的行政行為なはずだし、おかしいじゃないか。次に、それを許可するか否かというのは、許可基準なりしかるべき理由があれば許可しなければならぬものじゃないかということをお尋ねしたわけです。  さらに、これは余計なのかもしれませんが、仮にそういうふうな善良の風俗を害するおそれがありそうな場合に、仮になくても、公安委員会が許可するに当たって無条件の許可ではなくて解除条件のような附款を付すことによって許可の幅というのはさらにまだ広がり得るのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  215. 古山剛

    ○古山説明員 許可の際に、先生お話しのように営業者が一定の行為を行ったとか一定の状況が生じた場合に許可の効力が失われるというような解除条件を付するということは、その条件が成就したかどうかの判断が非常に難しいわけでございます。特にパチンコ営業の場合には非常に多額の設備投資がかかるわけでございまして、そういう点からいたしますと、営業者の立場を著しく不安定にすることになりはしないだろうかというふうに考えるわけでございます。  許可をするかどうかの判断に際しまして、許可の基準を満たしているものについてはすべて許可をされるわけでございますので、御指摘のようなことはしなくてもいいのではないかなというふうに思うわけでございます。
  216. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 では、時間のようでございますので、風営法等の今回の改正の今後の希望意見、特にパチンコ業を中心とするそうしたことに対する特別配慮ということを踏まえて意見を述べながら、一括お尋ねをしたいと思います。  今回の法改正のねらいであります少年非行の防止及び児童福祉法違反等大人が少年の福祉を害する犯罪等をなくすことや、セックス産業及びポーカーゲーム機業者などのような行き過ぎを是正することはよいことであり、これは初めにも述べましたように賛成でございます。この法目的を実現するため、今後の法規のあり方として、パチンコ産業は風営法から外してより規制を緩めた単独法とするようなことも検討してみたらどうだろうか、こう考えるわけです。  その理由は、風営法関連の企業の中でも特に悪質な業者規制には警察の立ち入り権や管理者の解任命令権などむしろ強化してもよいと思うのですが、警察権の強化はもろ刃の剣として健全な業者をも不必要に脅かしかねないからでもあります。このため、今回のごとく警察権強化の不安から修正意見が出されたのだろうと思います。しかし、先ほど言いましたように、これが弱められますとポーカーゲーム機業のように一日当たり十万も二十万も三十万も払ってもなお成り立つなんという悪質業者は、かえって助かったというかそんなような気持ちになってよくないのだろうと思うのです。  現在パチンコ業に対してはなお業態として不安定な面があるという御指摘もございますけれども、不安定か否かはパチンコ業だけに限ることではなくて、株式上場の企業にあっても不安定なものはあるだろう、こう思うのです。  一般的に言いますと、第一に、パチンコ産業は今や店舗数一万三子弱、売上高五兆円でございまして、公営競技の中央競馬、競輪、モーターボート競争、オートレース等の売り上げよりははるかに大きく、そして安定しているわけです。しかも公営競技の売り上げ及び収益が例外なく低下している中にあって、パチンコ産業は着実な伸びを毎年のごとく示している。これが第一点であります。  第二に、風俗営業の中にあっても、キャバレー、ナイトクラブ、バー、料理店などが軒並みに営業所を年々減少させているときにパチンコ業は毎年確実に店舗数を伸ばしてきているわけで、これも安定成長しているパチンコ業の一端を示すものだと思います。  第三番目に、パチンコ遊技機の進歩あるいは高級化に伴いましてパチンコ業は総体的に資本の規模が大きくなり、それだけ安定化を強めているものと思います。  第四番目に、企業としての安定性を強めるに従いまして体質的にも健全性を増し、自主的な業界の整備とともに警察の指導を仰ぎながら、今日ではパチンコ人口は約三千万人とも言われるほどに国民生活の中に根を張るに至っております。  第五番目に、このような実績を踏まえパチンコ業界は防犯運動や福祉活動に浄財を寄附し、地域社会の発展に重要な役割を担うに至っております。したがって経営者もパチンコ業を誇り、その子供も親の職業を誇り得るまでにその地位も飛躍的に向上してきていると思います。  第六番目に、ここまで企業として成長し、安定し、健全性を強めるに至っております現在、パチンコ業は今後ますます成長し、より安定し、より健全性を強めるものだ、こう思うのです。  したがって、結論としまして、パチンコ業はこの際規制要件を緩めた別法としての位置づけを与えられてもよいものではないか、こう考えるわけですが、最後に警察当局の御意見を尋ねて本日の質問を終わりたいと思います。
  217. 古山剛

    ○古山説明員 ただいま先生お話しのとおり、パチンコ屋の営業は次第に健全化してきておりますので、それに応じた法の規制が必要であるというふうに考えているわけでございます。今回の法改正では、従来の取り締まり中心の考え方から行政措置を中心として業の健全化を図るという考え方に変えてきておりまして、そのような事情に対応しているものと考えているところでございます。  ただ、パチンコ屋につきましては、遊技の結果に応じて賞品が提供されるものでございますので、その営業が著しく射幸心をそそるものとなって善良の風俗の保持等の見地から問題が生じることのないよう必要最低限の規制が必要でございまして、現在におきましては風営法の規制からは外すことは考えられないのでございますけれども、貴重な御意見でございますので、将来の検討におきましては十分に参考にさせていただきたいと思います。
  218. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今後十分に御検討いただくことをお願いしまして、質問を終わることにいたします。
  219. 宮崎茂一

    宮崎委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十九分散会