運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-07-04 第101回国会 衆議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月四日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 宮崎 茂一君    理事 太田 誠一君 理事 亀井 静香君    理事 高村 正彦君 理事 森   清君    理事 天野  等君 理事 稲葉 誠一君    理事 三浦  隆君       上村千一郎君    衛藤征士郎君       大西 正男君    熊川 次男君       小澤 克介君    山花 貞夫君       神崎 武法君    中村  巖君       伊藤 昌弘君    野間 友一君       林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 住  栄作君  出席政府委員         法務大臣官房長 根岸 重治君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 筧  榮一君         法務省矯正局長 石山  陽君         法務省保護局長 吉田 淳一君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   藤原  享君         警察庁刑事局保         安部経済調査官 清島 傳生君         外務省アジア局         北東アジア課長 高島 有終君         国税庁調査査察         部調査課長   友浦 栄二君         通商産業省産業         政策局消費経済         課長      糟谷  晃君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     江崎 真澄君   衛藤征士郎君     内海 英男君   大西 正男君     塩島  大君 同日  辞任         補欠選任   内海 英男君     衛藤征士郎君   江崎 真澄君     上村千一郎君   塩島  大君     大西 正男君 同月二十七日  辞任         補欠選任   衛藤征士郎君     藤井 勝志君   大西 正男君     山中 貞則君   熊川 次男君     宮澤 喜一君   小澤 克介君     山本 政弘君   広瀬 秀吉君     佐藤 徳雄君   山口 鶴男君     中村 重光君 同日  辞任         補欠選任   藤井 勝志君     衛藤征士郎君   宮澤 喜一君     熊川 次男君   山中 貞則君     大西 正男君   佐藤 徳雄君     広瀬 秀吉君   中村 重光君     山口 鶴男君   山本 政弘君     小澤 克介君 五月八日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     森  美秀君   衛藤征士郎君     宮澤 喜一君   大西 正男君     伊東 正義君   熊川 次男君     櫻内 義雄君   高鳥  修君     森山 欽司君   谷垣 禎一君     山中 貞則君   広瀬 秀吉君     山本 政弘君   山口 鶴男君     岡田 春夫君   野間 友一君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     大西 正男君   櫻内 義雄君     熊川 次男君   宮澤 喜一君     衛藤征士郎君   森  美秀君     上村千一郎君   森山 欽司君     高鳥  修君   山中 貞則君     谷垣 禎一君   岡田 春夫君     山口 鶴男君   山本 政弘君     広瀬 秀吉君   辻  第一君     野間 友一君 同月九日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     山中 貞則君 同日  辞任         補欠選任   山中 貞則君     上村千一郎君 同月十五日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     大島 理森君   衛藤征士郎君     藤井 勝志君   大西 正男君     森  美秀君   熊川 次男君     山中 貞則君   高鳥  修君     平泉  渉君   谷垣 禎一君     高橋 辰夫君   小澤 克介君     松沢 俊昭君   広瀬 秀吉君     嶋崎  譲君 同日  辞任         補欠選任   大島 理森君     上村千一郎君   高橋 辰夫君     谷垣 禎一君   平泉  渉君     高鳥  修君   藤井 勝志君     衛藤征士郎君   森  美秀君     大西 正男君   山中 貞則君     熊川 次男君   嶋崎  譲君     広瀬 秀吉君   松沢 俊昭君     小澤 克介君 同月十八日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     齋藤 邦吉君   衛藤征士郎君     田村  元君   大西 正男君     渡辺美智雄君   谷垣 禎一君     宮澤 喜一君   伊藤 昌弘君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   齋藤 邦吉君     上村千一郎君   田村  元君     衛藤征士郎君   宮澤 喜一君     谷垣 禎一君   渡辺美智雄君     大西 正男君   塚本 三郎君     伊藤 昌弘君 六月十九日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     稲村 利幸君   衛藤征士郎君     今井  勇君 同日  辞任         補欠選任   稲村 利幸君     上村千一郎君   今井  勇君     衛藤征士郎君 同月二十一日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     今井  勇君   衛藤征士郎君     藤本 孝雄君   小澤 克介君     上原 康助君   広瀬 秀吉君     嶋崎  譲君   伊藤 昌弘君     小渕 正義君 同日  辞任         補欠選任   今井  勇君     上村千一郎君   藤本 孝雄君     衛藤征士郎君   上原 康助君     小澤 克介君   嶋崎  譲君     広瀬 秀吉君   小渕 正義君     伊藤 昌弘君 同月二十五日  辞任         補欠選任   小澤 克介君     田中 恒利君 同日  辞任         補欠選任   田中 恒利君     小澤 克介君 同月二十六日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     今井  勇君   衛藤征士郎君     斉藤滋与史君 同日  辞任         補欠選任   今井  勇君     上村千一郎君   斉藤滋与史君     衛藤征士郎君 同月二十八日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     今井  勇君   衛藤征士郎君     藤本 孝雄君   小澤 克介君     佐藤 敬治君 同日  辞任         補欠選任   今井  勇君     上村千一郎君   藤本 孝雄君     衛藤征士郎君   佐藤 敬治君     小澤 克介君 七月二日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     今井  勇君   小澤 克介君     網岡  雄君   広瀬 秀吉君     山本 政弘君   山口 鶴男君     藤田 高敏君 同日  辞任         補欠選任   今井  勇君     上村千一郎君   網岡  雄君     小澤 克介君   藤田 高敏君     山口 鶴男君   山本 政弘君     広瀬 秀吉君     ――――――――――――― 四月二十三日  集団代表訴訟に関する法律案飯田忠雄君外一  名提出参法第六号)(予) 五月十二日  刑事訴訟法の一部を改正する法律案寺田熊雄  君外二名提出参法第一〇号)(予) 四月二十四日  刑事訴訟法の一部改正に関する請願河上民雄  君紹介)(第三五二四号)  同(佐藤徳雄紹介)(第三五二五号)  同(中村茂紹介)(第三五二六号) 同月二十五日  刑事訴訟法の一部改正に関する請願伊藤茂君  紹介)(第三六〇〇号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三六〇一号)  同(上野建一紹介)(第三六〇二号)  同(川崎寛治紹介)(第三六〇三号)  同(小林恒人紹介)(第三六〇四号)  同(左近正男紹介)(第三六〇五号)  同(島田琢郎紹介)(第三六〇六号)  同(新村源雄紹介)(第三六〇七号)  同(竹内猛紹介)(第三六〇八号)  同(天野等紹介)(第三六四六号)  同(石田幸四郎紹介)(第三六四七号)  同(後藤茂紹介)(第三六四八号)  同(斉藤節紹介)(第三六四九号)  同(田中恒利紹介)(第三六五〇号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第三六五一号)  同(二見伸明紹介)(第三六五二号)  同(矢山有作紹介)(第三六五三号)  同(井上泉紹介)(第三七〇〇号)  同(菅直人紹介)(第三七〇一号)  同(佐藤敬治紹介)(第三七〇二号)  同(佐藤誼紹介)(第三七〇三号)  同(細谷治嘉紹介)(第三七〇四号)  同(前川旦紹介)(第三七〇五号)  同(森本晃司紹介)(第三七〇六号)  同(矢追秀彦君紹介)(第三七〇七号)  同(吉井光照紹介)(第三七〇八号) 同月二十六日  在日外国人に対する指紋押なつ廃止等に関する  請願(林百郎君紹介)(第三八二二号)  刑事訴訟法の一部改正に関する請願小川仁一  君紹介)(第三八二三号)  同(小澤克介紹介)(第三八二四号)  同(木島喜兵衞紹介)(第三八二五号)  同(兒玉末男紹介)(第三八二六号)  同(橋本文彦君紹介)(第三八二七号) 五月七日  刑事訴訟法の一部改正に関する請願阿部昭吾  君紹介)(第四〇〇九号)  同(河野正紹介)(第四〇一〇号)  同(小林進紹介)(第四〇一一号)  同(武部文紹介)(第四〇一二号)  同(土井たか子紹介)(第四〇一三号)  同(浜西鉄雄紹介)(第四〇一四号) 同月八日  国籍選択制度導入反対に関する請願中村巖君  紹介)(第四二六五号)  刑事訴訟法の一部改正に関する請願池端清一  君紹介)(第四二六六号)  同(大橋敏雄紹介)(第四二六七号)  同(中村巖紹介)(第四二六八号) 同月十日  刑事訴訟法の一部改正に関する請願沼川洋一  君紹介)(第四三二五号)  同(岡本富夫紹介)(第四四二〇号)  同(坂井弘一紹介)(第四四二一号) 同月十一日  刑事訴訟法の一部改正に関する請願大久保直  彦君紹介)(第四五〇四号)  在日外国人に対する指紋押なつ廃止等に関する  請願土井たか子紹介)(第四五六五号)  国籍選択制度導入反対に関する請願小澤克介  君紹介)(第四五六六号)  同(土井たか子紹介)(第四五六七号) 同月十二日  刑事訴訟法の一部改正に関する請願岡田利春  君紹介)(第四九二九号)  同(新村源雄紹介)(第四九三〇号) 同月十四日  刑事訴訟法の一部改正に関する請願関山信之  君紹介)(第五〇二二号) 同月十五日  法務局、更生保護官署及び入国管理官署職員の  増員に関する請願横山利秋紹介)(第五四  九〇号) 同月十六日  在日外国人に対する指紋押なつ廃止等に関する  請願中村巖紹介)(第五九六三号)  刑事訴訟法の一部改正に関する請願神崎武法  君紹介)(第五九六四号)  同(草川昭三紹介)(第五九六五号)  同(鈴切康雄紹介)(第五九六六号) 同月十七日  死刑制度廃止死刑執行停止に関する請願(小  林進紹介)(第六二七五号)  同(日野市朗紹介)(第六二七六号)  刑事訴訟法の一部改正に関する請願江田五月  君紹介)(第六二七七号)  同(渋沢利久紹介)(第六二七八号) 六月十五日  死刑制度廃止死刑執行停止に関する請願(土  井たか子紹介)(第六五一八号)  同(井上一成紹介)(第六五六六号)  同(池端清一紹介)(第六五六七号)  同(稲葉誠一紹介)(第六五六八号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第六五六九号)  同(山口鶴男紹介)(第六五七〇号)  同(横山利秋紹介)(第六五七一号) 同月十九日  再審被告即時釈放に関する請願(林百郎君紹  介)(第六七一〇号) 同月二十五日  死刑制度廃止死刑執行停止に関する請願(上  田卓三紹介)(第六八六〇号)  外国人登録法改正に関する請願井上泉紹介  )(第六九〇三号)  同外九件(稲葉誠一紹介)(第六九〇四号)  同外九件(土井たか子紹介)(第六九〇五号  )  同(西中清紹介)(第六九〇六号)  同外九件(村山喜一紹介)(第六九〇七号)  同(小川仁一紹介)(第六九五二号)  同(奥野一雄紹介)(第六九五三号)  同外九件(上西和郎紹介)(第六九五四号)  同(兒玉末男紹介)(第六九五五号)  同(左近正男紹介)(第六九五六号)  同(佐藤徳雄紹介)(第六九五七号)  同外九件(新村源雄紹介)(第六九五八号)  同(田中彦君紹介)(第六九五九号)  同(田並胤明君紹介)(第六九六〇号)  同(野口幸一紹介)(第六九六一号)  同(細谷治嘉紹介)(第六九六二号)  同(松前仰君紹介)(第六九六三号)  同外九件(元信堯君紹介)(第六九六四号)  同外九件(矢山有作紹介)(第六九六五号)  同(山本政弘紹介)(第六九六六号) 七月二日  外国人登録法改正に関する請願五十嵐広三君  紹介)(第七〇二七号)  同外九件(岡田春夫紹介)(第七〇二八号)  同(左近正男紹介)(第七〇二九号)  同外九件(串原義直紹介)(第七〇三〇号)  同外九件(武藤山治紹介)(第七〇三一号)  同外九件(八木昇紹介)(第七〇三二号)  同(井上一成紹介)(第七〇七六号)  同外九件(岡田利春紹介)(第七〇七七号)  同(川崎寛治紹介)(第七〇七八号)  同外七件(左近正男紹介)(第七〇七九号)  同外九件(馬場昇紹介)(第七〇八〇号)  同(山中末治紹介)(第七〇八一号)  同(渡部行雄紹介)(第七〇八二号)  同(伊藤茂紹介)(第七一〇七号)  同(伊藤忠治紹介)(第七一〇八号)  同(上野建一紹介)(第七一〇九号)  同(小川国彦君紹介)(第七一一〇号)  同外十一件(河野正紹介)(第七一一一号)  同(清水勇紹介)(第七一一二号)  同(関晴正紹介)(第七一一三号)  同(堀昌雄紹介)(第七一一四号)  同(松沢俊昭紹介)(第七一一五号)  同(和田貞夫紹介)(第七一一六号)  同(渡部行雄紹介)(第七一一七号)  死刑制度廃止死刑執行停止に関する請願(金  子みつ紹介)(第七〇七五号)  再審被告即時釈放に関する請願天野等君紹  介)(第七一〇五号)  同(稲葉誠一紹介)(第七一〇六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十四日  外国人登録法改正に関する陳情書外九件  (第二一八号) 七月三日  被疑者及び被告人弁護人との接見交通権に関  する陳情書  (第三二五号)  刑事施設法案等の再提出反対等に関する陳情書  (  第三二六号)  外国人登録法改正に関する陳情書外一件  (第三二七号)  改正商法に関する陳情書  (第三二八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これより会議を開きます。  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田誠一君。
  3. 太田誠一

    太田委員 大分前、去年の委員会でも質問したことでありますけれども公共嘱託登記受託組織法人化の作業が今進行中であるというふうに伺っておりますけれども、今どのような構想で進めておられるのか、それから今後どういう見通してこの法人化を図るおつもりでおられるのかを御説明いただきたいと思います。
  4. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 公共嘱託登記につきましては、かなり特殊な登記で、そして大量な登記ということになるわけでございますが、その嘱託につきましては、県とか市町村とか、あるいはその他の公団、公社におきましても、若干その取り扱いについては専門的な知識を要するところから、かねがね問題があったところでございます。したがいまして、それをスムーズに嘱託ができるようなものとして何らかのものが欲しいということが言われておったわけでございますが、それをうまくやる方法といたしまして、司法書士土地家屋調査士組織化をいたしまして、その嘱託登記受託するというようなことができないかということが問題であったわけでございます。  司法書士会並びに土地家屋調査士会の両連合会におきましては、この問題を検討するために公共嘱託登記連合委員会というものをつくりまして、どういう形にしたらいいかということを両会が自主的に検討を進めておりました。ことしの五月七日に至りまして、法人化して公共嘱託登記受託するということがいいのではないかという案の骨子ができ上がったように聞いております。  その内容は、司法書士会及び土地家屋調査士会があるところに一つずつ民法法人のような法人をつくって、それが都道府県とか市町村とかから委託を受けて処理をする、その関係につきましては、土地家屋調査士法あるいは司法書士法に特例を設けるということ、そしてその業務につきましては面会の指導を受けるというような骨子でやったらどうだろうかというような案でございます。  この骨子ができましたので、これを両連合会におきましては全国的な承認を得るために過日総会にかけておりますが、土地家屋調査士会の方におきましてはそういう骨子方向でやるということでいいという承認が得られております。司法書士会の方におきましては、大体方向はそういう方向でもいいのだろうけれども、もう少し検討すべきものがあるということで、司法書士会連合会内部委員会を設けて、そこで検討したらどうだろうかということになっております。  私どもといたしましては、公共嘱託登記が円滑に処理されるようなことのためにはある程度の法的な整備というものも必要であろうという感触でおりますけれども、実際どういうふうなものでどういうやり方でやったらいいかということは、両業界に非常に重要な影響のあるところでございますので、面会の方の意見がまとまるのを見た上で私どもの態度を決定いたしたいと思っておりますが、このような問題はなるべく早く処理がついた方がいい事柄であろうと思いますので、両連合会意見がまとまって、そこでさらに私どもとの打ち合わせが済めば、もし立法措置が必要なものにつきましては、なるべく近い機会に法案を取りまとめるというふうな方向でまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  5. 太田誠一

    太田委員 今のお話を聞きますと、内容は、土地家屋調査士会及び司法書士会でもってまとめているということでありますけれども、これはどうして法人化早期実現を図らなければならないということになったのでしょうか。
  6. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 これは一つには、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、非常に大量な事件が一括して出てくるということになりますので、一人の司法書士あるいは一人の土地家屋調査士ではそれを受託できないという要素がございます。それから、公共嘱託事業主体の方といたしますと、個人的なものよりは何かまとまった公的なものの方が仕事を任せやすいという面がございます。そういうふうなことがございまして、実は現在でも各単位会におきまして事実上委員会みたいなものをつくりまして、そして地方公共団体等と折衝した上で受託をするということを実質上やっているところがございます。  しかし、受託契約当事者とすれば、これは実際上の仕事をする司法書士あるいは土地家屋調査士受託者ということでやっておるわけであります。ただ、そういうことでありますと、個人が相手だということになりますと、地方公共団体としては非常に契約がやりにくい、もっと法人がまさしく正面に出た契約当事者であった方が公の団体としては契約がしやすいという面がございます。そういうことから司法書士会土地家屋調査士会内部からも、何かそれの法人組織ができないものだろうか、それからまた委託をする側の方もそういう形をとってほしいという要望がかねがねあるわけでございます。  ところが、現在の司法書士法あるいは土地家屋調査士法は、司法書士土地家屋調査士というものは個人資格でございまして、法人がその業務をやるということは予定してつくられておらないわけでございます。そういう面から何か立法的にそういうものを受託するにふさわしい法人をつくる、そういう法改正が必要ではないかという声が上がっておるということでございます。
  7. 太田誠一

    太田委員 これは三年前か四年前かこの委員会でも取り上げられたことがありますけれども地方自治体での公共事業で無資格の自治体のOBの方が司法書士ないしは土地家屋調査士業務をかわって行ったというふうなことがあったわけでありますけれども、これに対して二つの団体から強くそういうことが広がることを懸念する声があったわけでありますが、それに対する対応の一つにはなっているのでしょうか。
  8. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ただいまの御指摘のように、地方自治体退職職員登記嘱託を実際上引き受けるというようなことがありまして、それが両会の問題としたところでございますけれども、今度の改正は結果的にはそのような問題を解消する一つの方途になることもあろうかと思います。  ただ、真っ正面からそのことをねらってやるわけではございませんので、ねらいはあくまでも、先ほど申しましたように、本来登記関係仕事司法書士土地家屋調査士がやるべきものでございますので、そういう資格のある者が受託をしやすい組織をつくって、大量の、そして特殊な登記嘱託関係を円滑に行わせようというのがねらいでございます。
  9. 太田誠一

    太田委員 そうすると、今個人でそれを受託することもできるわけでありますし、これで法人ができればこれでまた受託をすることもできる、これはあくまでも個人公共嘱託登記受託するということを妨げるものではないわけですね
  10. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 もちろん、法人ができましても個人受託を禁止するものではございません。むしろそういう個人という関係では公共登記関係受託がしにくいという状態を改善していこうということにねらいがあるわけでございまして、個人で受けるというものを法律的に排除するという考え方ではないと考えております。
  11. 太田誠一

    太田委員 この法人は、社団法人財団法人か、そういう形になるのではないかと思いますが、そこをまずお伺いしたいと思います。  それとあわせて、一つ地域一つのこういう法人をつくるということがいいのか、それとも、そういった法人一つ地域に複数あってもいいのではないかというふうな気もするわけでありますが、その辺はいかがでしょうか。
  12. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 まず法人の性格をどういうふうにするかということでございますけれども、これはまだはっきりと両連合会でも具体的に煮詰めているわけではございませんし、私どももそう深く検討しているわけではございません。一応骨子というところで考えられておりますものは民法法人ということを考えておるようでございますので、したがいまして社団法人財団法人かということになろうかと思います。ただ、性質から申しますと、社団法人の方をあるいは主眼に置いて考えているのではないかというふうに思います。  そのような法人を幾つでもつくったらどうかということでございますけれども民法法人的な考え方は、こういう仕事はいわば公共のといいますか、地方公共団体仕事を円滑にやる、それからまた、ひいては登記制度もそれによって円滑に動いていくというところに公益性を認めて民法法人という考え方をとるわけでございます。そういうふうな考え方をとりますと、そのような法人を余り制限なしに置くということは、むしろその性格上おかしいということになります。  したがいまして、一つの会があるところに一つのそういう法人を置くということくらいが今申しました公益性という面から申しましても適当でありましょうし、また実際の業務の量とかやり方とかからしましても、そう複数のものを置く必要はないのではなかろうかと思われますが、その点につきましては、まだ私どもの方としましてははっきりとした考え方を持っているわけではありませんが、ただいま申しましたようなところから、両連合会公共嘱託登記連合委員会の方では、各会に対応して一つというふうなことが適当だという考え方を持っているように承知いたしております。
  13. 太田誠一

    太田委員 そうすると、ある地域に設立された法人というものがよその地域公共嘱託登記受託をするということは、今の構想の中ではないわけですね。
  14. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 それは真っ正面から、いわば会の境界というとおかしいですけれども、それを越えてやるということを考えているわけではありません。法律的には別にほかの管轄のところの事件を受けていけないというわけはないでありましょうけれども骨子で各単位会に対応して一つのということを考えているのは、その前提としてはその会の管轄といいますか、その範囲の中の事件ということを前提に置いていることだろうと思います。
  15. 太田誠一

    太田委員 先のことまで考える必要はないのかもしれませんけれども、言ってみれば司法書士会あるいは土地家屋調査士会というのは公益のためにこういう資格を与えて国民の便宜に供しているということだろうと思うのですが、一面から見ればこれは一つ仕事であって、ビジネスといいますか、そういう側面もあるわけであります。  そういたしますと、こういう会ができて、会員の間で仕事をどういうふうに配分をするかとかいうふうな問題が次の段階で当然起こってくると思いますが、その辺については、こういう点を注意するとか、こういう考え方であればよいとかいうふうなことが何かありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  16. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 実際問題といたしますと、その法人ができて、それが大量の事件を受けた場合には、具体的にその事件を処理する司法書士とか調査士とかを指名するといいますか、決めるということが行われるだろうと思います。その場合に、特定の者にだけ仕事を分配して、ある者はそれに加わらせないというようなことはあってはならないことだろうと思います。しかし、そのようなことは会の指導のもとに置くという構想の中で適正に行われるであろうということを骨子の中では考えているというふうに思います。
  17. 太田誠一

    太田委員 公共嘱託登記の問題につきましては以上で終わります。  次に、ことしの三月二十六日に司法書士法施行規則及び土地家屋調査士法施行規則の一部を改正する省令というのが出されたわけでありますけれども、この内容を教えていただきたいと思います。
  18. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 この規則は、三月に改正をいたしまして、去る七月一日から施行されておるわけでございます。  この改正の主要点は、従来、司法書士の補助者につきましては、法務局あるいは地方法務局の長の承認によって補助者を置くことができるという規定になっておったわけでございます。いわば補助者についての個別承認制をとっておったわけでございますが、この承認制を外しまして、そして届け出制に切りかえるということがその内容でございます。  ただその場合に、補助者を置いた場合に単純に届け出るということにしたのではなくて、あらかじめ法務局または地方法務局の長が定めた範囲内の数、それに満たない補助者を置く場合に限って、届け出ることで補助者を置くことができるということになっておるわけでございます。その一定の数を超えて置こうとする場合には、それについて法務局長または地方法務局長の許可を受ける必要があるということに変える、そういうことが今度の改正の中身でございます。
  19. 太田誠一

    太田委員 司法書士会あるいは土地家屋調査士会の中で定められたいろいろな会則といいますか、そういうものと今度の個別承認制が届け出制に変わったということが一対になっていると思いますけれども、二つの会の中での会則というのですか、規則というのですか、そういうものはこの省令の改正との関係ではどういうふうになっておりますか。
  20. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 現在、各会の会則の変更手続中でございます。各単位会は五月ないし六月に総会を開くという例が多うございますので、その機会に変えるということで、現在その手続中でございますが、内容的には、司法書士会調査士会を経由してやることになっておりますので、そういう届け出に関する面会内部的な内容を明確にするというようなことが中心になっておるわけでございます。
  21. 太田誠一

    太田委員 具体的に言いますと、補助者は、従来ですと五人までは置くことができて、それを個別に承認するというふうになっていたと思うのですけれども、今度は、そのような員数については各地域司法書士会あるいは土地家屋調査士会と法務局または地方法務局の長との話し合いで決める。そしてそれぞれの、個々の補助者については何か会の方でそれを承認するとかなんとかというふうな、あるいは適否について判断をするというふうな会の方の会則の変更があったように聞いておりますけれども、それはまだ生きておるのですか。
  22. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 今度の会則の関係は、まだ変更手続中でございますので、内容的に固まったとは承知しておりませんけれども、会を経由して法務局の方に届け出るということになっております。その場合に、会の方でもどういう事務所ではどういう人を補助者に置いておるかということは把握する必要があるであろうということから、履歴書とか、そういう本人のことがある程度わかるような書類を出す、それを受けてそれから法務局の方に届け出るというふうな仕組みを考えておるのが内容でございます。
  23. 太田誠一

    太田委員 私、よくこういう話をするのですけれども、行政改革というのは、もちろん担当の役所の事務処理が簡単になるということもさることながら、それによって民間の方の、つまり許可とか認可とか承認とかを受ける側の手間がまた余計にかかるようになっては、結局は、一つの規則あるいはその規則の変更によって、国民経済といいますか民間の側にかかる負担というのは同じであるとか、あるいはよりふえた、規制がむしろ強まったという結果になる場合もあるわけであります。ですから、ここで行政改革の趣旨にのっとってこういうことをしたけれども、二つの会における個々の司法書士土地家屋調査士に対する規制というものとそれから法務省の方の規制というものが両方相まって前よりもどうなったかということが、行政改革の実が上がったかどうかの判断の基準になろうかと思うわけであります。  そういたしますと、仄聞するところによれば、今地域ごとにそういうふうな員数についての詰めが行われているようですけれども、実際にはこれは今までは五人までとしてあったのが、調査士会の場合は六人だと思いますが、それが今度は二人とか三人に減ったところも地域によってはあるように聞いておりますが、いかがでしょうか。
  24. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 具体的に各局の方で面会との話し合いの上で何人になったかという最終的な報告を私まだ受けておりませんけれども、おおむね従前と同じではないかと思います。従来も五人、六人というのは最高限度として示しておりますけれども、各会との事実上の話し合いでそれを三人とか四人とかというふうなことで運用しているという例がかなりございました。そういうふうなものを踏襲するということでございますように聞いております。  したがいまして、今度の省令改正があったために人数が急に減ったというようなことには多分ならないのではないかと思いますが、先ほど申しましたように、最終的な数字については、全国的なものについてはまだ承知いたしておりませんのでわかりませんが、傾向としてはそうであろうと思います。  それから、なお、行政改革につきましては、役所の手間が省けるというばかりではなくて、対象になります国民の側の方でも何か簡素化されるということが必要だろうと思います。その点はおっしゃるとおりだと思いますが、この補助者承認制度を届け出制度に変えますときに、結果的には、役所に何らかの書類を出すということについては変わりはないわけでございますけれども、従来の個別承認制でございますと、自分の事務所に適当な人が見つかった、それを雇いたいという場合に、法務局長の方に承認の申請をしまして、その承認がもらえませんと補助者として使えない、したがって雇用契約の方もそこまでははっきりとした形ではできないというような不便があったわけでございます。  今度は届け出制でございますので、自分の判断で、この者が補助者として適当な者であるというふうに考えましたならば、もちろん先ほどの人数の問題はありますけれども、自分が雇用したいと思えば、そこで雇用して、その結果を届け出るわけでございますので、その点では、実際に補助者を雇おうとする司法書士調査士にとっては大変簡素化になったということが言えようかと思います。
  25. 太田誠一

    太田委員 こういう件についていろいろな意見がそれぞれの会の中にあると思われるわけです。逆に、各会とそれから個々の会員の間の問題というのはあるわけでして、それは、会の方が今度は法務局にかわって実際に現実に承認をするとか審査をする、事実上そういうふうなことをかわってやることになって、前よりもむしろ面倒になったというおそれもないわけではないというふうに思うわけであります。  要は、司法書士仕事にしろあるいは土地家屋調査士仕事にしろ、公益ということからそういう個人資格を与えるのだ、だから、これは言うところの商売ではないのだ、そういう一つの建前があるわけであります。しかし実際には、これは一つのビジネスとして考える向きもあるわけでありますから、お互いに、司法書士さん同士が、あるいは土地家屋調査士さん同士が現実では競争をしている。そして、その競争をしている中で、とことこが非常にいいとか速いとか、それこそ、先ほどの公共嘱託登記のときに、適正迅速というような言葉がありましたが、どちらの先生が適正迅速であるかという意味での競争というのは現にあると思うわけです。  そういたしますと、競争をしない方がいいという建前もある一方、依頼する側からすると、競争をして効率的な組織ができた方がいい、組織というか、効率的な司法書士事務所とか土地家屋調査士事務所が育った方がいいというふうに考える人も一部にはおられるかと思うわけでありまして、それを公益とかあるいは個人資格なんだというふうにしてどんどん進めていきますと、実はそういうビジネスとしての効率性というところに支障が出てくるのではないかというふうなことも恐れるわけであります。  そういう点について、今の基本的な考え方ですけれども、実態としてはそういうふうなことも考えなければならないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  26. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 建前といたしましては、一定の資格を持った者でございますので、その行います業務は常にだれでも同じだ、等質であるということが前提になろうかと思いますが、実際問題といたしますと、応対の仕方であるとか仕事の迅速さであるとか、そういうふうなことについての差異はあるわけでございます。そういう面で、ある程度の競争原理みたいなものが働いた方が司法書士調査士の業界全体が国民へのサービスの面で向上するであろうということも否定できないところだろうと思います。そういう面で、ある程度の規模になっていくということもむやみにとめてはいけないことだろうと思います。  ただ、そこにはおのずから限度があるわけでございまして、ちょっと話がそれるかもしれませんけれども、現在の司法書士調査士の補助者の平均数は一人前後でございます。余り補助者を使ってやるというような形態でない人の方がほとんどで、まさに個人仕事としてやっておるわけです。そういうような実態の中で一体どれくらいまで補助者を置いて、いわばどの程度の規模でやることがいいのか、その限界はどこだということはなかなか難しい問題でございますが、ともかく補助者であるという以上は、有資格者である司法書士または土地家屋調査士が自分で仕事内容について責任を持てるような点検をし、指導をする、指示をするというふうなことができる限度というものはどういうものであろうかという観点が一つあります。  そういうふうなことから、これは司法書士業務あるいは土地家屋調査士業務にすぐに当たるかどうかわかりませんけれども、一人の人間が直接の部下を完全に把握できる限度は五人か六人程度であろうということが経営学的には言われておるわけです。そういうふうなことも勘案いたしまして、調査士の方は屋外のポールを持ったり何かするという者も含まれますので、五人、六人を従来から限度に置いているわけです。その範囲内ならば、補助者を使うことによってサービスを向上させるというふうなことが許されていいではあろうということが従来からの基本方針でございます。  その両方を生かすのにどのように運営していったらいいかということは具体的に難しいことでございますので、それは両連合会とかねがね相談をしながら決めてきたところでございますが、今度の省令の段階では、各法務局が対応する会と相談をして決めていく、その決めていく場合の考え方はただいま私が申しましたような考え方をもとにして人数を決めていくということに相なろうかと思います。
  27. 太田誠一

    太田委員 それでは今の補助者制度の改正に関することはこれで終わります。  次に、これも何カ月か前にお聞きしたことでありますけれども、商法改正について今アンケート調査ですか、各方面に問い合わせをして、その答えが返ってくるのを待っておられるところだと聞いておりますが、大小会社の区分の問題について少しまたお伺いをしたいと思います。  特に税理士さんあるいは公認会計士さんという人たちは大変大きな関心をこの問題について持っておられて、既に私どももいろいろな御意見を各方面から聞いておるわけであります。これは数字は例えばということでお許しをいただきたいと思いますけれども、先般の商法改正で資本金五億以上ないしは負債二百億以上の会社については監査が義務づけられたわけでありますが、今度の大小会社の区分によって、今まで聞いておるところでは、例えば二千万円以上の資本金の株式会社であって株式譲渡などについての諸手続に関して非公開ということを選択した会社については、新たに監査のような制度をここで導入して社会的な取締役の責任を強化するというふうなことが検討されていると伺っておりますが、この点についてどういうふうになっておりますでしょうか。
  28. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ただいまお話しございましたように、商法の改正の中で大小会社の区分の関係を中心といたしました問題点を法制審議会の商法部会におきまして整理いたしましたので、それを公表し、関係団体に対して御意見を伺うということを去る五月九日にいたしたわけでございます。  その中に大小会社の中の小の部分につきまして、現行法では内部監査と申しますか、監査役が監査をするということだけで終わっているわけでございますけれども、有限責任という面から申しますと、債権者あるいは株主との面におきまして計算関係が適正に行われているということがより担保されなければいけないだろうという思想から、小会社、非公開会社の中でも、これも全部というわけにはいかないだろうけれども、一定規模以上の会社については外部監査、要するに会計の専門家による会計監査というものを導入してはどうだろうかという問題の指摘をいたしまして、それに対する御意見を伺っておるわけでございます。  そういうことでございますので、どの程度以上の規模にしたらいいかということを私ども決めておるわけではございませんし、また問題の照会につきましてもそのことを明示いたしておるわけではございません。その規模もどの程度がいいのかということも含めてお伺いしているつもりでございます。  外部監査につきましても、公認会計士だけではとても多くの会社には手が回らないだろう、したがってそれ以外の会計の専門家という人にも入ってもらうということを考えたらどうだろうか、それについてはまたいろいろな問題がありはしないか、それについての意見はどうだろうかというような形で伺っておるところでございます。
  29. 太田誠一

    太田委員 ここで新たにこういう制度を導入することによって、中小企業の立場から言うと、監査のような、言葉で言いますと会計帳簿適法作成証明というふうなことを行うとすれば、それに伴って余分な追加的な出費も起こってくるだろうというふうなことを危惧し、まとまった反対の声ではないと思いますが、何となく不平を言われる声があるわけでありますが、このようなことについては何か、例えば中小企業についてはいわゆる公認会計士のいうところの監査ではなくて、税理士の方がふだん自分の方でいろいろかかわりのある企業についてそういうふうな適法証明というふうなことを行うのであるという、何か前提があるわけですか。費用の負担が過大にならないということを配慮した場合には、全体としてそういう姿を思い描いておられるのでしょうか。
  30. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ただいま御指摘がございましたように、従来なかったことをやるわけでございますので、その分は当該会社にとっては何がしかの負担になることは間違いないと思います。ただ、そういう負担をしてもらっても外部の会計専門家による監査を受けた方が社会全体としてはメリットがかなり高いという場合にはそれも容認されるであろう、しかしそれも限度があるわけでございます。  したがってまた監査の内容と申しますか、その範囲といいますか、そういうものについてもどの程度が両方のコストの面とメリットの面から考えて適当であろうかという問題も出てまいります。  それから監査をする人の範囲をどう決めるかということも出てこようかと思います。公認会計士というのが現行法の建前からすれば会計の監査をするのについては第一番目に登場する方ということになりますけれども、それだけでは人数的にも賄い切れないという問題があります。  それからもう一つは税理士さんの場合には税理業務関係で各会社の会計について関与しておられる方がかなり多い、そういうようなことからなじみもあって、そして頼みやすいというふうなこともあるでございましょう。そういうふうなことから税理士さんというものも範囲の中に入れたらどうだろうかという問題の指摘をしております。また同時に、税理士さんに頼むという場合には公認会計士に任せるのと違って監査の対象範囲というものも考えなければいけないかという問題も逆に出てまいります。  そういうことをいろいろな角度から各界の御意見を伺いたいということで問題の提起をしているわけでございまして、私どもといたしましては、別にこういうふうにしたいということで積極的にたたき含みたいなものを提示しているわけではないと思っております。
  31. 太田誠一

    太田委員 そうすると、今非常に微妙な問題になっているのは、会計帳簿適法作成証明というふうに呼んでいる仕事が公認会計士の方々が言うところの監査なのかどうか。監査という言葉をここで使うことになりますと、本来これは公認会計士の仕事であるというふうな指摘がなされるわけでありまして、会計帳簿適法作成証明を行う仕事は監査という仕事とは違うのでしょうか、どうでしょうか。
  32. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 監査という言葉の定義は、私ここで明確にお答えできるだけの内容を持っておりませんが、むしろ実質的に、先ほど申しましたように、もしこの制度を導入するとすれば、その導入する制度の目的のために一番経費が安くそして簡単にいく方法はどういうことかということをまず考えましてその内容を決める。どの範囲で監査といったらいいか知りませんけれども、要するに計算が適正に行われているかどうかということを調べて、そうだということの証明をしてもらうということになった場合に、そのような行為を監査と呼ぶかどうかというのはまた別の問題であろうと思います。  そして、その仕事をどういう業種の職域の中に取り入れるかというのもその次の問題であろうと思いますので、会社法の立場といたしますと、まず実質的な内容を決めなければならない。その決めるについては観念的にこうあるべきだというだけでは足りないので、ぐるぐる回りにはなりますけれども、それを担うべき人も考慮しながら内容を決めていかなければならないという問題がありますので、少し話はややこしくなるのでありますけれども、筋道とすればまず制度の目的にかなうような内容をどう決めるかということを決めた上で、それをどう呼ぶか、どの職種の業域にするかということが次に理論的には出てくる問題のように思います。
  33. 太田誠一

    太田委員 なかなか微妙な答弁でまだ私もよくわからないのですけれども、それは今後お決めになることですから、それはそれとしまして、結局このような会計帳簿適法作成証明を行う税理士さんなどの会計専門家は、今は公認会計士の場合は株主総会でだれにお願いするかを承認するような手続になっていると思いますが、これはだれが選ぶのですか、だれが決めるのでしょう。つまりだれが依頼するのでしょう。
  34. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 公認会計士に依頼するのは、現在の決まっている監査につきましては御指摘のとおり株主総会で選任をするわけでございますが、今度導入する外部監査人も先ほど来申し上げましたように中身がまだはっきり固まっておらないわけでございますので、その中身によりましてまた選任方法も変わってまいろうかと思いますが、一番厳格にということになれば株主総会になります。ただ、それほどのことはないではないかということになりますと、取締役会が選任するとかということも立法論としては全くあり得ないことではないと思います。  それは別に私どもの方としても案を持っているわけではございませんので、今度いろいろな実質論についての御意見を伺った上で試案をまとめる段階ではそのことも検討はいたしたいと思いますが、現在選任機関につきましては正直なところ全く白紙でおります。
  35. 太田誠一

    太田委員 ここで私なりの感想を申し上げますと、会計帳簿適法作成証明を行う人を株主総会で決める場合に、なぜ大小会社の区分をここで持ってきたか、例えば二千万円以上の資本金の株式会社で非公開である会社の話を合しているわけでありますから、そういう会社をなぜそのほかのもっと大きな株式会社らしい株式会社から区分したかといいますと、つまり株主総会が形骸化して、同族会社みたいなものを当然頭の中に思い描かなければいけないわけでありますけれども、そういう同族会社のような会社の株主総会は株式会社らしい株式会社の株主総会とは大分違うわけでございますから、もともとそんなに権威のないものであるからこそこういう大小会社の区分を持ち込んだので、ちょっとそこら辺は、今のお考えの中に厳密に言えば株主総会だというときに何か矛盾しているような気もするわけであります。それは私の感想であります。  そこで、このことによって今理解しているところでは税理士さんあるいは公認会計士さんの場合も大分仕事がふえる。例えば五億円以下であっても公開を選択した会社については、流れとしては監査を受けなければいけないことになるわけでありますから仕事がふえると思いますけれども、そうした中で資格を新たに設定をすることになるのか、それとも適法証明みたいなことをやる人について新たに資格制度を考えておられるのか、あるいは税理士さんであればすべてその仕事ができるようにするのかというところはいかがでしょうか。
  36. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 その関係につきましても、実は意見を求める中に入っている事柄でございますが、これは先ほど来申し上げましたように、やる仕事内容いかんによっても変わってまいろうかと思いますが、一番具体的に問題になるのは税理士さんの話だろうと思います。  税理士さんは税理事務につきましては会計の専門家という評価もできようかと思いますが、会社の経理全般について直ちに専門家だと言い得るかどうかについては若干の疑問といいますか、職務としては少しすれ違うところもあるだろう、そういうところから税理士さんが直ちにそういう仕事ができるようにしたらいいのか、あるいは税理士さんに一定の試験を受けてもらってその合格者から選んだらいいか、西ドイツなどではそういうふうな例もあるように聞いておりますが、そういうことにしたらいいのか、あるいは何かほかのことでやったらいいのか、いろいろな考え方が法制審議会の商法部会の中でも出ておるわけでございます。そういうふうなことも御意見を伺って聞きたい。  しかしながら、まず前提といたしますと、どういう程度の規模に、どの範囲で、どういう責任を持った仕事をしてもらうかということが決まって、それに税理士さんの本来の仕事との関係でどうつながっていくのか、どの部分までつながっていくのかということを考えませんと結論が出ないという面もございますので、総合的に考えざるを得ないので、今個別的に税理士についてどうするかということのお尋ねがありましても、ちょっと私どもとしてお答えしがたいところでもございますし、各企業の方でも、総合的な判断の上に立ってどうするかということの御意見を寄せてこられるものと思っております。
  37. 太田誠一

    太田委員 どうもありがとうございました。  要は、従来税理士というのはその企業の利害関係者でありますし、利害関係者がいわゆる監査を行うということであればそこで少し矛盾が起きてくるわけでありますし、かといって、利害関係人ではあるけれども企業とその税理士さんが全く同じ人格ではないわけで、第三者というか、独立した人格というものも持っているわけでありますから、そこで、利害関係人ではあるけれども独立した人格として適法証則は出せるというふうな、二つの人格の間の折衷したところに新たな仕事が発生をするわけであります。ですから、今後いろいな論争が起きてくる場合にいたずらに混乱を生じさせてはいけないので、新たに生ずるであろう業務についての何か適切なわかりやすい呼び方をここで、そしてこれが第三の仕事であるというふうに私理解しておりますが、第三の仕事であるということをはっきり明記するような言葉を考えられたならばいいのではないかというふうに思うわけでございます。  今度のこの商法改正そのものは全く意義なしとはしないわけでありますし、そういう必然性もあったと思うわけでありますから、慎重にその改正の作業を進めていかれることを期待をいたしまして質問を終わります。  ありがとうございました。
  38. 宮崎茂一

    宮崎委員長 次に、天野等君。
  39. 天野等

    天野(等)委員 最初に、七月の一日、二日の新聞で、新潟刑務所の受刑者が六日間に四人続けて心不全のために急死したという報道がされておりますけれども、その点について法務省の方でお調べになっておられるか、また現在まで調べられておることについてお尋ねしたいと思います。
  40. 石山陽

    ○石山政府委員 ただいまお尋ねの新潟刑務所におきます収容者の急死事例でござい室すが、現在までのところ、六月七日以降六月十二日までの六日間に四名収容者が急死したという不幸な事例が発生いたしました。その発病状況等につきまして各例ごとに簡単に御説明申し上げます。  まず最初は、年齢二十六歳の男性でございますが、六月七日の明け方四時半ごろということでありますが、雑居房に入っておりましたこの収容者が突然うなり声を上げたということがありましたので、同房者が騒ぎ出して、それを知りました担当看守から報告が参りまして至急手当てをいたしましたが、症状がおかしいということでありましたので、救急車で部外移送いたしまして、病院に収容いたしまして手当てをいたしました。そのかいなく午前五時半ごろに死亡してしまったわけであります。  それから第二例が、同じく三十三歳の男性収容者でありますが、同じ日の朝、起床時に起きてまいりませんでした。そこで、たまたまその第一例の措置のために刑務所医師が部外病院との連絡を終えて戻ってきておりましたので、早朝でありましたが、直ちに診察、手当てをさせたわけでありますが、これまたその場で六時四十分ごろに、これは所内で死亡いたしました。  第三例は四十九歳の男性でございますが、二日置きました六月九日、午前六時半の起床時間になりましても起床してまいりませんでしたので、係員が声をかけ、なお不審でありましたので、入ってゆすってみましたところ、既にほとんど死亡しておるという状態で、何ら反応がないということでございましたので、直ちに医師を呼んで蘇生術その他を講じましたけれども、そのかいなく、もう既に亡くなっておった。これが第三例のケースでございます。  第四例は、三十五歳の男性でありまして、さらに三日後の六月十二日夜半過ぎ、午前二時二、三十分ごろだという報告でありますが、やはり様子がおかしいという同房者からの通報がございましたので、急いで心臓マッサージ等を行いながら、これも救急車で最寄りの救急病院に移送いたしましたけれども、手当てのかいなく午前三時過ぎにこの方も亡くなった。  以上がその亡くなりました四人の方の亡くなった経緯でございます。  これにつきましては、私どもといたしまして直ちに新潟刑務所所長から担当の新潟地検の方に連絡をいたしまして、いずれにしろ急死でございますので、検視を求めまして、司法検視は四例とも全部済ましております。  なお、その状態が続いておりましたので、六月九日に起きました第三例のときには、遺族にお願いをいたしまして何とか任意によります病理解剖をさせていただきたいと申し上げたわけでありますが、遺族の御同意がなかったので、このケースはだめでありました。しかし、続きまして六月十二日に四例目が発生いたしましたので、これは遺族にお願いして幸い御同意が得られましたので、病理解剖をいたしております。  現在、この四例のうちその最後の例につきまして解剖所見を得ることができましたので、これにつきましては臓器検査、血液検査等を担当の医師の方から地元の大学病院に御依頼しまして検査をさしていただいておるところでございます。正式な病理解剖等に基づきます検査結果の報告をまだ得ておりません。もうちょっと時間がかかるそうであります。  しかしながら、それらの結論を総合いたしますと、これまでのところはいわゆるポックリ病と申しましょうか、大体三十代を中心とするむしろ身体壮健な男性に多い症状で、ポックリ病と申しますと、四月から六月に起こる事例が多いのでございますが、たまたま時期的に見ましても、また年齢層から見ましても何かそのような感じが一応はするわけであります。  ちなみにこれらの四例につきましては、私どもが聞いております報告の範囲では、事前に医者にかかっておったとか、あるいは身体の不調を訴えておったとか、こういう症状は全く四例ともございませんでした。それでも、私どもといたしましては、偶然とはいいながら短期間の間に四人も被収容者が亡くなる、これは事態を非常に重大視いたしまして、ただいま申しましたような病理検査その他をやると同時に、とりあえずそれらの人々がおりました収容房、そこで同室でありました収容者、あるいはその近隣の房に入っておりました収容者、これらを中心にして健康診断を臨時で実施いたしております。  実は、これらの被収容者が入っておりました房は、新潟刑務所の第二舎房と申すところでございました。簡単に申し上げますると、かなえの足のような形で放射状に三本足が各方向に出ているという、こういう舎房のうちの一本が第二舎房になります。事故が発生しましたこれらの亡くなった方はいずれも第二舎房の収容者でありますので、特に伝染病あるいは集団風邪、食中毒、こういった件につきましても厳重に調査をさせておりますが、今のところそれらを認める症状はございません。  それからなお、六月九日の第三例が発生しました時点で、東京矯正管区は事態を重視いたしまして、近隣施設から医務部長と経験豊かな医師を応援に派遣をいたしました。そして、健康診断その他に当たらせておりますけれども、現在のところ、いわゆる風邪による症状とも認められませんし、食中毒あるいはその他薬物中毒、そういった傾向も一切ございませんので、今のところの外部所見では、先ほど申しましたように、不幸ではございますけれども、ポックリ病的な症状ではないか、こういうことに尽きておるわけでございます。  以上、簡単にまず概況だけ御報告申し上げます。
  41. 天野等

    天野(等)委員 ただいまの御報告をお聞きいたしまして、一応健康面ということからの調査ということに重点が置かれて医師等による診断も行われているということでもございますけれども、ただ、この死因が急性心不全というようなことですと、やはり何らか心理的なショックを与えられるような事柄とか、そういうようないわゆる病気というようなものではない何らかの要素があったのじゃないかというようなことも考えられなくはないと思うのでございますが、そういう点で所内の秩序なりあるいは看守の収容者に対する取り扱いなりについて、これは具体的にこの第二舎房についてお調べになられたかどうか、この点はいかがでございましょうか。
  42. 石山陽

    ○石山政府委員 天野委員仰せのとおりでございまして、そういった病理的な所見以外に何か心身の疲労、いわゆるストレス等の蓄積する事情はなかったか、この点はもちろん現在調査を命じてございます。  ただ、私なりに考えて、特に管区に指示を求めました事項の一つに、例えばこれらの舎房の者が出役している工場がございます。工場でどんな種類の作業に従事しておったか、そこの作業の程度が重いか軽いか、こういう点もあわせて十分調査するように現在命じているところでございますが、あとの点につきましては、とりあえず速報で来ておりますが、実は原因が非常につかみにくいと申しますのは、第一例の先ほどの二十六歳の男性でございますが、この方はバレーボールの革を縫うという皮革工でございます。決して重労働ではございません。  それから第二例の人は、これはふだんから多少体が弱いという感じでございましたので、初めから工場出役をやめさせまして、房内での紙細工、いわゆる紙箱つくり、この仕事をさせておった男性でございますので、これはむしろ軽作業でございます。  それから第三例は、同じ二舎房内でございますが、実はこの亡くなりました六月九日の段階では、単独房で懲罰執行中でありました。したがいまして、この人は工場には全然出役しておりませんので、労働過重という問題は全く考慮の余地はありません。  それから第四例は、これは自動車部品のキャブレターというものをつくっておりますが、それの組み立てしました製品の検査工でございますので、これも作業といたしまして特に疲労を伴うという作業ではございません。  それから新潟自体につきまして、規律、自由の関係は、特に二舎房だけが厳格であるとかそういうことはございませんで、所長の方針でございますから、先ほど申しました一舎、二舎、三舎、これらにつきましては平等でございますので、なぜ二舎だけにそれが集中したか、実はこの点も私どもつかみかねておる、これが偽らざる現状でございます。
  43. 天野等

    天野(等)委員 新聞報道、特に七月一日の読売新聞でございますけれども、これによりますと、この問題について救援連絡センターという受刑者の人権や待遇改善を求める団体が新潟の弁護士会と連絡をとりながら調査に乗り出しているというような新聞報道でございますけれども、この団体が適当かどうかはともかくといたしまして、密室的な収容所内でのこういう連続しての死因がはっきりしないような形での病死という場合に、やはりしかるべき第三者を含めてこの所内の待遇あるいは看守、刑務官等の状況とか、そういうようなことについても、むしろ公開しての調査というようなことはお考えになられないかどうか、この点いかがでございましょう。
  44. 石山陽

    ○石山政府委員 今のような御趣旨の御提案、それなりに十分拝聴いたしたいわけでございますが、今まで所内でこのような事故が起きましたという事例は、率直に申しまして、決して少なくはなかったわけであります。それらの原因が、例えば食中毒でございますとか、あるいは集団風邪によるものとかいう場合につきましては、病理学的な見地から、あるいは臨床学的な見地から、それぞれ地元の周辺の大学その他の研究機関、保健所、こういった方々に立入検査をしていただきという形のものは、もちろんこれまでも実施いたしております。それで、私どもとしましては、現在病理的には調査をいたしております。こういった結果が判明いたしました段階で、必要がありますればそういった面につきましての防疫措置的なものを含めましたものはやってみたいと思っております。  ただ、被収容者自身の、今天野委員御指摘のような収容状況というもの、一般論でございますね、それにつきまして、行刑施設が第三者に直接御相談申し上げながらやるという形で事故対策委員会等をやったという前例はこれまでございません。これは委員よくおわかりのことと思いますが、我々は被収容者を預かっておりますが、だれも刑務官は被収容者を殺していいと思っている人は一人もおりません。毎朝報告を受けるたびに、この十日間新潟刑務所長は実は大変つらい思いをしたわけでございます。もしかするとだれかまた事故が起きていないかと、夜も寝られない思いだったという報告でありました。ですから、私どもといたしましては、そういう点を勘案いたしまして、十分に所内でなすべきことはなし、正すべきところは正すことは結構でございますけれども、ただいままでのところはそこまでしていただく必要はないんじゃないかというふうに考えております。  なお、私どもから、自発的に現在までにやりました措置について、この機会でございますから御報告をしておきますと、この事例が起きました最後の時点でございますが、医師を派遣して応援させたということまで申し上げましたが、その後新潟刑務所自身は自発的に全収容者に対しまして、もう少し様子を見るという意味で、特に風邪の対策を含めて検討しました結果、就業時間の一時間一律短縮、夕食後に仮就寝を許可する、それから集団感染のおそれ等がありますような集会行事はその期間だけ中止する、特に二舎房に多発をいたしましたので、二舎房の収容者は全員出役を十日間自発的に停止する、こういう措置をとりました。  その結果、幸いに十三日以降は何らそのような症状が出ませんでしたので、二十五日から就役を再開し、現在のところはそれで異状なく行われておる。ただし、風邪とかあるいは心電図等の精密診査も一部実施いたしましたので、そういうところで異常のある者については特に注意しながらやらしておるという形でございます。  したがいまして、結論でございますが、私といたしましては、この事故が収容者を介護する職員が精神的に威圧を加えたとかあるいは残虐な処遇をしたためにこうした事態が起きたと思いたくもありませんし、そういう事態は絶対ないということを確信いたしております。  以上、申し上げます。
  45. 天野等

    天野(等)委員 局長がそういうふうにおっしゃることはよくわかるわけでございますけれども、一般の人たちの見方として、何らかそういう心因的なものがあるんじゃないかという感じは、この報道から全くないとは言えないと思うものですから。むしろ、常に刑務所等の待遇というのが人権を配慮しながら行われているんだということをはっきりさせるためにも、例えばもし、しかるべき弁護士会とかあるいは人権委員会というようなものからの要求があれば、疑惑を一点もとどめないということで公の調査をやることも必要な措置ではないかというふうに私は考えるわけでございます。  今の時点でこれが直ちに必要というふうに私も考えているわけではございませんが、そういうような要求が出たときにはひとつお考えいただきたいというふうにお願いしておきまして、この問題についてはこの程度で終わらせていただきます。  次に、法務省の予算に関連することでございますけれども、来年度予算の編成ということでシーリングというようなことがいろいろ言われておりますが、法務省として法務省の定員削減の今後の具体的な計画というようなものが現在あるのでございましたら、それについてお尋ねしたいと思うのです。それとあわせまして、また、むしろこういう面では増員が必要だというような点もございましたら、この点につきましてお尋ねをしたいと思うのです。
  46. 根岸重治

    ○根岸政府委員 法務省の今後の定員削減計画でございますが、これは昭和五十六年八月二十五日に閣議決定されましたいわゆる第六次定員削減計画に基づきまして、その四年次分及び五年次分といたしまして昭和六十年度及び六十一年度の両年度にわたりまして合計八百八十六人を削減することとしております。さらに、そのほかに公安調査庁につきましては、臨時行政調査会の答申の趣旨に沿いまして五年間に二百名の定員削減を行えということになっておりますので、それにのっとりまして定員削減を行う予定にしております。  なお、増員の関係でございますが、そのような定員削減計画とは別個に、委員既に御案内のように、いわゆる法務局の登記事務とかあるいは入国管理局の出入国事務あるいは検察庁の捜査事務等におきましても、いずれも事件数が増加しております。しかも、この事件数の増加は他の省庁のように政策的にこれを切ることができないものでございまして、登記の申請に来れば受け付けなければいかぬ、犯罪が起きれば捜査しなければいけない、判決があれば刑務所に収容しなければいかぬというふうに、いわば人によってこれを処理していくことでありますので、当然のことながら増員を相当数求めなければいけないということになると思います。  そこで、このあらかじめ定められました定員削減計画の減員は減員といたしまして、それ以上に必要な人員について増員の要求をいたすつもりでおりますし、まだ具体的な数字ははじいておりませんが、昭和六十年度においても増員の要求はするつもりでおります。
  47. 天野等

    天野(等)委員 増員に関しましていろいろ問題があるかと思いますが、きょうは登記所の関係に限りましてちょっとお尋ねをしてみたいと思うのです。  今も官房長のお話の中にも登記関係の事件数の増加ということがございましたが、どの程度こういう事件数がふえているのかということで、概括で結構でございますが、ひとつ……。
  48. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 登記の事件数は年々増加をいたしておりまして、かなり古くさかのぼりますけれども、昭和四十六年から五十八年あたりを比較いたしてみますと、いわゆる登記の甲号事件という面では約一九%、乙号事件の方では二三五%、要するに二・三五倍というような上昇で伸びております。
  49. 天野等

    天野(等)委員 それに応じての登記に従事している職員数の増減はどういう状況になっておりますでしょうか。
  50. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ただいま申し上げました年次に合わせて申し上げますと、登記従事職員数は昭和四十六年と比較いたしますと昭和五十八年におきまして一五%の増加でございます。
  51. 天野等

    天野(等)委員 登記事件がふえたということは、それだけ登記所に対する国民のサービス要求といいますか、そういうものが圧倒的にふえてきたということになると思うわけでございますけれども、やはりそれにこたえていかなければならないというのが法務行政一つの面になっているんじゃないか。私たち、特に登記所等へ行ってみまして、その設備の貧弱さというか、悪さと言った方がいいかもしれませんし、あるいは私たちが見ておりましても、本当に職員は暇もないくらいに動き回っているというのが登記所の実態かと思います。  それで、登記の現場の方にお聞きしますと、実は法務局の職員だけでは足りないので、いろいろ部外からの応援もいただいて現実には登記の事務を処理しているんだというような話も聞くのでございますが、この点いかがでございますか。
  52. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ただいま御指摘のような現状でございますので、余り感心したことではございませんけれども、現実問題といたしますと、司法書士土地家屋調査士の事務所の人とか、あるいは市町村とか、あるいは土地改良区の職員とかに応援をしていただいているのが現状でございます。その状況は必ずしもはっきりはいたしませんけれども、一日平均にいたしまして大体千人以上の方が応援に来ておられるというふうに考えております。
  53. 天野等

    天野(等)委員 これは実情はどういう形になっておるのでございますか。例えばそれなりのアルバイト料といいますか、そういうものの支払いがあるのでございますか。あるいは全くのボランティア的なものなのでございましょうか。
  54. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 これは事実上協力していただいておるわけでございまして、何もそれに対する対価を役所の方で支払っておるというわけではございません。謄本を焼くのを手伝ってもらったりするようなことでございまして、ボランティアと申しますとあれですけれども、その当該の方の当記事件が円滑にといいますか、早く終わるためにそこで手伝おうというような形で行われておるものでございます。
  55. 天野等

    天野(等)委員 人手が足りないためにという形でもってそういうあれが出てきているのかと思いますけれども登記事務というのは非常に重要な国民の権利についての証明になっている、そういうところでございますから、それだけにやはりきちんとした法務省の職員でない方がそれに携わるということ自体、不安もあるわけでございます。これについての監督といいますか、そういうような点については各登記所に任せてしまっておるということでございましょうか。
  56. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ただいまの部外応援は、個別にその事件事件について応援がされるという形でございます。したがいまして、私どもの方からどういうふうな監督をしろというようなことは言ってはおりませんけれども、各登記所の管理者の方が、これも進んでやってもらいたいと思ってやってもらっておるわけでもないと思いますが、実際上それを受けざるを得ないときには、その関与する仕事の範囲についてなるべく限定をして、そしてやり方が適切であるかどうかについては、その管理者みずからがその事案事案に応じた監督をしておるということで処理されているものでございます。
  57. 天野等

    天野(等)委員 各登記所でそれだけの人手が必要だということならば、要求としてはやはり各登記所で必要な人員の要求をしていかなければならない。現実に予算措置の上で全員が満足されるかどうかはともかくといたしまして、各登記所で円滑にこういう事務が行われるためにはこれだけの人数が現在どうしても必要なんだというような人員の把握というのは行われておるのでございましょうか。また、それに対する要求というようなものは出されておるのでございましょうか。
  58. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私どもといたしましては、そういう部外応援みたいなものも受けないで済み、しかも事件の一件一件を適正に処理するために最低どの程度の人員が必要かということは計算をして把握いたしております。少なくともおおむね三千人は増員がないとうまくいかないということで考えておるわけでございます。ただ、そういうことは関係の方にも訴えておりますけれども、御承知のとおりの財政事情、定員事情でございますので、そのようなものを一挙に要求するというわけにはまいりませんので、許される範囲内で精いっぱい要求をいたしておるところでございます。  なお、人手をふやすということだけを期待しておったのでは現実問題として事態は解消いたしませんので、能率器具を大幅に導入するとか、あるいは事務のうち乙号の謄本焼き等の分野については部外に正式に委託いたしまして、それで処理をさせるというような方法もとっております。  それから、実地調査などに行く場合の車の運転などをまだ職員外の者に頼むというような予算措置をするとか、そういうもろもろのことを総合的に考えて、少しでも職場が正しいあるべき姿で運営されるようにということに努めておるところでございます。
  59. 天野等

    天野(等)委員 この登記関係につきまして、登記の登録免許税とかあるいは手数料とかいうようなものの収入、これはかなりの額に上るものだと思うのです。国民からかなりの登録免許税あるいは手数料を国は収入として得ているわけでございますね。昭和五十九年度の予算のあれで見ましても、登録免許税、手数料等の関係で五千百五十二億というような金額が計上されておるようでございます。これは、今年度の法務省予算三千七百四十七億でございますか、これよりははるかに多いわけでございます。  もちろんこういう登録免許税とか手数料で法務省予算を賄うということはまた別のことだと思いますけれども、しかし、こういうふうに事件数がふえていくということは当然こういう登記の登録免許税等もふえてきているということだと思うのでございますが、この点のふえ方はどうなんでございますか。
  60. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ただいま細かな上昇比率の数字を持ち合わせておりませんけれども、登録免許税は甲号事件の上昇にスライドして伸びる面と、それから固定資産税の評価がえというのが三年に一回行われますけれども、その際には評価がえによるはね返りと申しますか、そういうものと合わせまして登録免許税は伸びております。乙号の方はまさに事件数にスライドして伸びておるところでございます。
  61. 天野等

    天野(等)委員 同じような関係になるのかどうかちょっと私もわからないのですが、例えば特許の関係につきまして、これは通産省の関係になるのでしょうか、特許の印紙収入については特別会計を起こしてやっているような処置がございますね。こういうような処置については法務省としてはお考えがございますか。
  62. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 五十九年度から特許庁におきましては特別会計制が導入されたというふうに聞いております。私どもはまだそういうふうなことを具体的にどうするかということを別に決めているわけではございませんけれども、かねがね私どもの問題点として考えているところは、登録免許税は税金でございますので、これはちょっと別の問題があるのかもしれませんけれども、乙号の手数料の方は少なくとも実費をちょうだいをするということになりますので、乙号の収入が上がるにつれてその乙号関係の予算の方も充実するというふうな形に結びついていかないものだろうか、そういうふうなことがどうしたらできるだろうかということはかねがね研究課題として持っております。  なかなか難しい問題がございますけれども、これは得られた収入、手数料として上がった分だけは申請される方に還元するような形で法務局の予算が充実できたらいいなということで、何かそういううまい手だてがあればということは研究課題としては持っております。
  63. 天野等

    天野(等)委員 陸運局関係の検査登録の印紙収入もやはり特別会計になっておるようでございます。特別会計をつくることが必ずしもいいかどうかの問題はございますし、私は本来的に言えば、これはやはり国民全体に対するサービスでございますから、必ずしも利用者と対価関係に立つものではないと思います。そうは思いますけれども、今局長のお話にありましたように、やはりそれだけ国民のサービス要求というものが強くなってきているということはもう否定しようのない事実だと思いますし、また、国民の中にも正直なところ登記所に対する要求は非常に強いものがあるだろう。行政管理庁等の調査でも登記所に対する評判というのは決していい方ではないようでございます。  これは決して登記所の方々が怠けていたりなんかということではなくて、やはり仕事として非常に過重なのではないか。この点で、登記所の職員の方の超過勤務というような関係ではいかがでございましょうか。
  64. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 事務が繁忙でございますので、通常の勤務時間内だけでは事件が処理できないということがございます。したがいまして、超過勤務もやっておるところでございますが、ことに集団的な事件が出たりする場合には曜日を決めたりなんかしまして集中的に数時間残ってやるというふうなことも各庁各庁で工夫しながら、なるべく未済事件がふえないようにということで頑張ってやってくれているものと思っております。
  65. 天野等

    天野(等)委員 この問題についても今後ともぜひとも予算要求を続けていっていただきたいというふうに考えるわけでございます。  それに関連して、登記所の統廃合というような問題も出てきているようでございますが、この点について、全体としての統廃合の方針等は固まっておるのでございましょうか。
  66. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 現在、法務局の出張所は全国で千百十九ございます。それにつきまして、臨時行政調査会の答申並びにそれを受けた行革大綱の閣議決定の中で、今後五年間のうちに二百七十五を整理統合するようにということが決められております。そしてその中で、五十九年度におきましては七十二庁というのが目標として決められておるわけでございまして、現在、各地方法務局の方でいろいろな状況を勘案しながらその統廃合を進めようということで検討し、並びに、あるところにつきましては地元の市町村との話し合いに入っておるという状況にございます。
  67. 天野等

    天野(等)委員 臨調の方針だということになりますと、本当ににしきの御旗でこれだけ減らさなければならぬというような形でもって出てきているようですけれども、現実に登記所が果たしている機能、それから今登記事務が非常に数が多くなってきている。その原因としては、やはり土地家屋等の権利の移動とか権利の設定とかそういうようなものがどんどんふえてきているというのが実情ではないかと思うのです。  これは必ずしも都市だけに限ることではなくて農村地域でもかなり土地の移動等もあるわけでございますので、そうなってくると、今以上にむしろ登記所というものを住民の身近なところに置いていく必要があるのではないか、市町村の役場と同じくらいに考えてもいいのではないかというふうにさえ思えてくるわけでございまして、これを統廃合してしまって大きな登記所をつくるというような方針が全体として本当に住民に対するサービスの向上になっていくのかどうかという点で非常に疑問があると私は思うのですけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
  68. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 確かに登記所がたくさんあった方が、地元の方々にとっては身近にあるわけでございますので便利であることは間違いないと思います。ただ、現在配置されております出張所と申しますのは大体明治時代に開設されたところがほとんどでございまして、その当時の交通事情というものを基礎に置いて置かれたわけでございまして、現時点におきますとかなり交通事情はよくなっております。そのほか、また各地域の方々も生活としての行動する範囲というものがかなり広くなっておるわけでございます。したがいまして、必ずしも現在の配置が適当であるとは言えないという面が一つございます。  それから、先ほどの増員の話にもつながるわけでございますけれども、先ほど申しました千百の出張所のうちの半分は三人以下の職員しかいないところでございます。一人とか二人とかの職員しかいないところがかなりあります。こういうところでは、実は職員も休むにも休まれないというようなことでございますし、どうにもならないというようなことがございまして、職員の配置、管理の面についても問題がありますし、また、いろいろな事務の能率化方策をとろうといたしましても、そういう小規模のところに多額の機械器具を据えるということも実際上なかなか問題がございます。  それから、私どもとして一番頭が痛いのは、施設が悪いということが職員の勤労条件を非常に悪くいたしております。それから、おいでになる申請人の方にも御迷惑をかけていることの一つの大きな理由、悪い印象を与える大きな理由は施設が悪いということでございますが、この関係につきまして、地方に余りたくさんの出先を持っておりますとその施設の維持管理、改善がとても届かないというような面がございます。  そういうようなことを総合勘案いたしますと、これは地元の方に若干の御不便がかかることは間違いないわけでございますが、普通の各個人の方にしてみますと、登記所への事件というものが一生の間に一回か二回ということでございますので、そこはひとつ御辛抱いただいて統合に御協力いただきたいということでお話し合いをしております。  なお、一方、減らすばかりではございませんで、東京近郊のように急激に人口が増加をしてきて旧来の登記所では事件が多過ぎて収拾がつかないというところも出ておりますので、そういうところはむしろ増設をいたしております。五十九年度におきましても、東京では多摩地区、それから千葉では浦安地区、そういうところに出張所を増設するということもいたしておりまして、私どもは、単純な統廃合ではなくて適正な配置という観点からこの問題を取り上げて対処していきたいと考えておるわけでございますので、何とぞ御理解を賜れば大変幸いだと思います。
  69. 天野等

    天野(等)委員 私も、単なる財政問題からくる統廃合ということではなくて、本当に住民サービスということから考えた配置ということで、減らすことだけを考えないということでぜひやっていただきたいと思うわけでございます。  また、この点について、これは大臣にもお願いでございますけれども、今いろいろな形で法務局の仕事について国民の方からの要求が出ているところだと思います。この法務省の仕事というのは私も随分地味な仕事だと思うのですけれども、このごろはまた国民生活に随分直接に関係が深くなってきているところだと思います。今後の予算編成等でこういう問題について重点的に考えていきたいというようなお考えがございましたら、ひとつお聞きをしたいと考えるわけでございます。
  70. 住栄作

    ○住国務大臣 法務省の仕事はどちらかというと受け身の仕事でございまして、例えば今問題になっております登記事務は、社会でそういう動きがあればそれを受け付けて、そして国民の権利保全を図っていかなければならない最も基礎的な仕事でございます。社会経済が発展していくと、そういうことはどんどんふえていく。国全体の中でも、例えば人のことで問題になるときは、登記所の体制をどうするんだということは常に問題になってきております。  毎年毎年、減員の中にありながら、なおかつ、どうして登記所の増員を図っていくかということが最大の問題でございまして、そういうことで苦労をしてきておる。必要な人員の確保、これは事務をうまくやっていくという観点から最大の課題でございますし、それと同時に、先ほど局長も話しておりましたように、事務を能率機器等の導入によってどうして素早く処理するか、こういう機械の導入等を考えてもおります。  それから統廃合の問題、これは随分言われておるわけでございますが、私ども法務省におりまして、存置してくれという要請も常に受けておるわけでございまして、そういう中で統廃合を進めていく、大変つらいことでございますけれども、いろいろな事情を考えながらやっておるわけでございます。私は、組合の皆さんとも話をすることがあるわけでございますけれども、実はそういうことが問題の中心でございます。  結局、行政を本当に円滑にやっていくためには、地味で、実は大変御理解の得られにくい点も多いのでございますが、最重点の問題として取り組んでおるわけでございます。予算の概算要求の時期になりますと、これは当然大きな問題でございまして、現在も省内で知恵を絞って概算要求に対応していこう、こういうように考えておるところでございまして、せっかく一生懸命やりたいと思いますので、どうかまたよろしくお願いいたしたいと思います。
  71. 天野等

    天野(等)委員 法務局の関係でもう一つ、ちょっとお尋ねをしておきたいのですが、それは不動産登記法所定の地図の作成状況といいますか、これがまだまだ非常に不十分なのじゃないかというふうに考えておるわけでございますけれども、この点、どういうような見通しを持っておられるのか。
  72. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 現在、登記所に置かれております地図は大別して二種類あるわけでございまして、一種類が、普通、公図といわれております旧台帳の附属地図でございます。それからもう一つは、不動産登記法の十七条で規定しておりますところの地図でございます。この台帳の附属地図それ自体もないという地区がかなりありますけれども、その台帳の附属地図があるところでも、これは全国で精粗まちまちでございますが、おおむねこれは余り現状と合っていない、いろいろと問題がある、中には本当に見取り図にもならないというふうなものもあるということでございます。したがいまして、きちんと現状を反映するような地図が整備されなければいけないということになります。そういう形のものが不動産登記法の十七条で規定する地図ということになるわけでございます。  この地図を法務局みずからの手でもごく若干つくっておりますけれども、これは年間一平方キロとか二平方キロ程度のことでございまして、これはむしろどちらかといいますと、法務局の職員並びに土地家屋調査士が地図というものの理解をどうするかということのためのモデル作業に近い、そういう感じのことでございます。法務局みずからでも若干つくっておりますが、大部分頼っておりますのは――頼っておるといいますか、十七条の地図として私どもの方で活用できますものが国土調査の成果図でございます。この成果図が国土調査の進展に伴いまして法務局の方にどんどん送られてまいります。送られてまいりますが、しかし、これを直ちに十七条の地図として指定するわけにはいかない問題が一つございまして、これは調査時点と登記所に送られてくるまでの間に数年間の時間の間隔がございます。それを手入れをしないと十七条の地図として備えるわけにいかないという問題があります。しかしながら、それを整備して、最近は十七条の地図がだんだんふえてはおります。  それからもう一つ、土地改良だとか土地区画整理だとかの場合に換地確定図というものができます。これがおおむね国土調査と同じようなやり方でつくっていただくということになっておりますので、それで要件に当たるものについては私どもの方では十七条の地図として扱っております。  そういうことで地図は年々ふえておりますけれども、しかし、全国三十七万平方キロメートルの全体に比べますと大変微々たるものでございますので、これをどういうふうにして整備したらいいのかということが一つの頭痛の種でございますが、法務局はいろいろな問題を抱えておりますけれども、地図の関係につきましてもなるべく多くの予算を回して、一歩でも二歩でも前進したいという方策で取り組んでおります。
  73. 天野等

    天野(等)委員 ぜひとも地図の整備ということでも前向きの方向で取り組んでいただきたいというふうに私も思います。法務局の関係につきましては、これで終わらせていただきます。  あと、実は最近いろいろな市民生活相談というものを私たちもしておるわけですけれども、その中で訪問販売等に関係する苦情の相談が多くなってきておりまして、私もどのくらいあるのかなということで、実は私の地元でございます茨城の消費生活センターというふうなところで訪問販売についての苦情相談の話を少し聞かせてもらったのですけれども、県の消費生活センターで相談を受けつけているうちの約半数ぐらいは訪問販売による苦情処理だというような統計の結果のようでございまして、国の国民生活センターの方でもかなりの相談件数になっているようでございます。  そこで、実は多少具体的な問題なのでございますが、この訪問販売の苦情処理の中で、自動販売機の販売といいますか、そういう点についての苦情処理が、ある地域でございますけれども、ちょっと頻発をしておるところがございまして、これがいわゆる訪問販売法に触れるのか、あるいは割賦販売法に触れていくのか、詐欺になっていくのか、またそういう法規に触れないのか、ちょっと微妙なところもあるわけでございますけれども、多少具体的に申し上げますと、ジュース等の自動販売機をお宅の玄関先に置かせてくれというようなことで、場所を貸してくれというようなことで訪問販売の糸口が来るわけでございます。  何度か来まして、ここに置くと大変売れるはずだという調査結果がある、それで、お宅に決して迷惑をかけることはないから、お宅の方ではジュースの詰めかえをしてくれれば幾らかの小遣い稼ぎにもなるから置かせてくれないかという話で、何度かしつこく来られるもので、それじゃというので、契約をしましょうということになりますと、実はその契約書に判こを押しますと、それはジューススタンドの販売契約書でございました。これも割賦払いによる販売契約というような形の販売契約書に判こを押してしまいました。  ジューススタンドが来て、その代金を今度はスタンドを置いた人が払っていかなければならない。これがなかなか大変でございまして、ジュースを売り上げた金額なんかではとても払い切れないというようなことで、苦情処理が来ているということでございます。こういう問題については、これは大変抽象的で申しわけないのですが、詐欺とかそういうような刑事事件として立件ができるものでございましょうか。
  74. 筧榮一

    ○筧政府委員 今天野委員御指摘の事実関係からでは、詐欺等に当たるかどうかという結論はちょっと出しにくいかと思います。今お伺いした範囲におきましても、契約書の中を読めばわかるはずでございますけれども、その間被害者と申しますか、買い受けさせられた方がどういう認識をお持ちなのか、あるいは売る方がどういう説明をし、どういうことになっているのか、天野委員に申し上げるまでもございませんが、詐欺というからには欺罔行為があり、錯誤があり、それに基づく財物交付あるいは被害者の処分に基づく財産上不法の利益の取得ということがなければなりませんし、またそれがあれば詐欺罪になるわけでございますが、今お話の事実関係だけでは、どこに欺罔行為があり、あるいは錯誤が果たしてあったのかどうか、もう少し事実関係が明らかになりませんと、ちょっとお答えをいたしかねると思います。
  75. 天野等

    天野(等)委員 では、警察庁の方にちょっとお尋ねしたいのですが、割賦販売法に定められているいろいろな法規に違反した場合の罰則、あるいは訪問販売法等に定められている法規に違反した場合の罰則ですが、こういうことで検挙されたりしているような具体的なケースがどのくらいあるものだろうか、その点いかがでございましょうか。
  76. 清島傳生

    ○清島説明員 割賦販売法の関係の検挙というのは余りないわけでございますが、訪問販売法違反でございますが、これは昨年一年間で百十三件の百五名を検挙しております。さらに、訪問販売に伴ういろいろな御指摘の悪質な事案がございます。これらについては詐欺あるいは恐喝あるいはその他の特別法を適用して検挙している事例がございます。
  77. 天野等

    天野(等)委員 これは割賦販売あるいは訪問販売――販売の形態としてはやはり訪問販売という形態なのだと思いますけれども、これをめぐるトラブルについて、消費者行政という立場で通産省の方ではどんなふうなとらえ方をなさっておりますか。
  78. 糟谷晃

    ○糟谷説明員 ただいま先生の御指摘の事案は、多分割賦販売法の体系に入るのだろうと思います。その場合には販売の形態が訪問販売でありましても割賦販売法ですべて取りまとめて消費者保護を図る、こういうことになっております。それで割賦販売法は十年に一度ぐらいの改正をやっておりますけれども、この分野は非常に進歩が早いと申しますか、いろいろ新しいサービスが出てまいりますので、それに合わせまして法律改正をするということを私ども旨としております。それでことしの通常国会に割賦販売法の改正をお願いいたしまして、その改正が成立をいたしましたので、私どもその新しい割賦販売法の施行ということでこういう消費者保護を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、こういう法律によります取り締まりだけではありませんで、先ほどちょっとお話がありましたが、消費者に対して、契約書をよく読んで判断するように、あるいはその商品が本当に自分にとって必要かどうかを冷静に考えてから決断をするようにといった意味で、消費者啓発ということもあわせてやっておるわけでございまして、私どもこの両面から消費者保護の徹底を図るということで臨んでおります。
  79. 天野等

    天野(等)委員 この訪問販売の場合に、訪問販売員の販売方法自体は非常に詐欺的な、具体的に詐欺になるかどうかはなかなか難しいかと思いますけれども、詐欺的ともいえるような形で勧誘をする。それに割賦販売というような形が加わってまいりますと、当事者がその販売業者ではなくて、実際にはリース業者といいますか、そういう金融業者の方からの割賦金の請求という形になってくるのでありまして、これについては販売者に対するいろんな抗弁事由がそのまま金融業者に対する関係でも対抗できるという形になってきたわけでございますか。この点はいかがですか。
  80. 糟谷晃

    ○糟谷説明員 販売業者と消費者の間に信販業者、いわゆる信用を供与する業者が入る取引につきましては、物の取引、物の受け渡しと代金の支払いが別になるということで、なかなか難しい法律関係になるわけでございます。消費者にもわかりにくいということで、実はこの関係のトラブルがかなりふえてきたという実態があるわけでございます。  それで、ただいま先生がお話しになりましたような事案もまさにこれに該当するかと思うのでありますが、具体的にこのケースがどういうものかもう少し詳細に見てみないとわかりませんけれども、実際問題といたしまして、購入者としては信販会社からの代金の請求があればそれに応ぜざるを得ないという場合が多いわけでございまして、そのためにいろいろな消費者トラブルがたくさん起こっているという現実がございます。したがいまして、こういう場合に消費者を十分保護できるようにということで私ども割賦販売法の一部改正を今度の国会にお願いしたわけでございます。  その改正法の一つのポイントは、やや専門的な言葉で申しますと、抗弁権の接続と申しておりますけれども、購入者が販売業者に対して主張し得る事由、これがあれば、例えば商品に瑕疵があるとか商品の受け渡しを受けないとか、販売業者に対して当然支払いを拒めるようなそういう状況があれば、同じ事由をもって信販業者の方に対抗できるということにしたわけでございます。  したがいまして、このような新しい法律体系のもとでは、例えば今先生御指摘のような事案について、購入者が詐欺であるということを立証できさえすれば契約関係は取り消すことができるわけでございますので、販売業者に対抗できるものは信販業者にも対抗できる、こういうふうになりましたので、法的措置が講じられた、こういうふうに私ども思っております。  なお、この改正法は十二月一日までに施行するということになっておりますので、現在、私ども政省令、通達等の細かい詰めを急いでおりますけれども、消費者保護を図る観点からなるべく早く施行したい、こういうふうに考えております。
  81. 天野等

    天野(等)委員 そうすると、民法のいわゆる善意の者に対する対抗の有無というような関係についても特別法的な関係に立つということになるわけでございましょうか。
  82. 糟谷晃

    ○糟谷説明員 これまでのトラブルは、割賦販売法に明確な規定がございませんでしたので、一般私法で対応するということでございまして、それぞれの事案の中身に応じて実際には最終的には裁判所の判断で決まる、こうなっていたわけでございますが、今回の法律改正によりましてそういう一般私法の原則に消費者保護の観点から特例を設けた、こういうことでございます。
  83. 天野等

    天野(等)委員 この問題でもう少し具体的にあれしますと、大抵は信販会社の方からも簡単な電話による問い合わせがあって、その際に信販会社としては、買ったかどうかということで問い合わせをするようですが、購入者といいますか消費者といいますか、そちらの方としては、品物が来たかどうか、自動販売機が現実に設置されたかどうかということで考えて、はい、品物が参りましたということで返事をすると、品物を買ったということについての承諾になるじゃないかというような形で、これまた同じようなケースのトラブルが随分あるようでございます。  これも法的に見まして、電話で購入の有無を確かめるということで、この場合果たして接続が切断されるかどうかという問題もあるかと思うのですが、買ったということを信販会社の方に電話ででも答えると、これはやはり抗弁権はなくなるのでしょうか。この点はいかがですか。
  84. 糟谷晃

    ○糟谷説明員 今の場合に、例えば商品が着いているのかどうか、あるいは商品が果たして契約どおりのものであったものか、販売業者が消費者に説明したとおりのものであったかどうか、そういうことをよく見てみませんと最終的な判断はできませんけれども、通常、販売業者が消費者に品物を渡しまして、その品物に問題があれば残りの代金の支払いを拒否するということもできるわけでございますので、そういう場合であれば、同じケースでございますので、信販業者に対する支払いも拒否ができる、こういうことでございます。  したがいまして、具体的にどういう商品であるのか、あるいは契約関係がどうなるのかということを見てみませんと、そこのところは最終的には申し上げられませんが、一般論として申し上げられることは、販売業者に対して主張できるものは信販業者、要するに支払いを請求する者に対しても主張できる、こういう考え方でございます。
  85. 天野等

    天野(等)委員 今お話ししているのは、自動販売機というようなことで、かなりの金額になるものでございます。百万近い金額になるものですから大体が割賦販売ということですけれども、実は件数として訪問販売で一番多いのは教育関係の機器についての訪問販売、それから割と目立つのが消火器の販売だという話を県でも国の国民生活センターでもお聞きしたのですけれども、これは割賦ではございませんから訪問販売そのものだと思うのですが、ケースとしては、おたくは消火器を備えつけないといけない、そういう決まりになったから、消防署から来たんだが、消火器を備えつけなさいということで、市販の約二倍から三倍くらいの値段で消火器を売りつけるというようなケースがかなりあるようでございます。こういうのは訪問販売法による規制ということになるのでございましょうか。いかがでしょう。
  86. 糟谷晃

    ○糟谷説明員 ただいまのような事案は訪問販売法の体系に入るわけでございますので、その法律に基づいて私どもいろいろな消費者保護の規定を設けております。  販売業者に対しましても、もろもろの義務がかかっておりますので、その法律体系で消費者保護を図るということで私ども対処しております。
  87. 天野等

    天野(等)委員 この相談件数が実は毎年かなりふえてきているということで、現在の訪問販売法あるいは割賦販売法、これは改正はされましたけれども、そういう形で今後とも対処していけるのか、あるいはいろいろな新しい状況に応じた訪問販売の規制というようなことも考えていらっしゃるのか、その点でいかがでございましょうか。
  88. 糟谷晃

    ○糟谷説明員 訪問販売にまつわるトラブルというのは、確かにかなり多くございます。それで、私ども、かねてから現在の訪問販売法の厳正な運用ということを関係業界に徹底させるということで臨んでいるわけでございます。  例えば法律上は訪問販売をした際には氏名を明示する、あるいは商品の種類を明示するという義務がございます。それから契約の申し込みを受けたときには書面の交付を消費者にしなければならないということで、消費者が書面をじっくり見ながら自分の意思決定ができるような一助にするといったような規定もございますし、それからクーリングオフという規定もございます。なお、このクーリングオフの期間につきましては、割賦販売法の改正のときに従来の四日から七日に延長されたわけでございまして、従来以上に消費者保護が図られるというふうに私ども考えておりますけれども、そういった訪問販売法を厳しく運用するということで私どもこれに対応していきたいというふうに思っております。  それから、先生今御指摘の消火器につきましては、確かにトラブルが多いわけでございます。実際に市価の何倍もの値段で売りつけるとが、あるいはいかにも消防署員を装うような服装で訪れて、言葉巧みに話しかけるといったことで無理やり買わされてしまうといったケースがあるわけでございますけれども、こういう場合には、私ども、販売業者だけではなくて、メーカーが限られておりますので、メーカーも指導の対象にいたしまして、果たしてその商品がどういうルートを伝わって販売業者の手に渡り、それから訪問販売員の手に渡ったかといったところも厳しく詰めまして、悪質な販売業者が市場から排除されるようにということで関連業界全部挙げましていろいろな対応をしている次第でございます。
  89. 天野等

    天野(等)委員 この消防器具についての訪問販売については警察庁の方ではいかがでございますか。
  90. 清島傳生

    ○清島説明員 御指摘のとおり、私どもの方に対する訪問販売に関する苦情相談の中でも、この消火器関係が一番多いわけでございます。従来各県警では、先ほどお話がございましたように訪問販売法、つまり書面の不交付ということで形式犯としていろいろ研究しているわけでございますが、詐欺になるケース、これについては埼玉県警が検挙いたしました。昨日の新聞にも載っておりますが、警視庁の方で詐欺としてこれも検挙しております。
  91. 天野等

    天野(等)委員 確かに、形式犯ということですと処罰の内容も軽いですから、実際これでなかなか取り締まりができないということもあると思いますので、ひとつ詐欺という点でのあれを考えていただくということも今後もお願いしたいと思うのでございますが、時間もございませんので、この点についてはこれくらいにします。  そこでもう一点、これは警察庁の方にちょっとお尋ねをしたいのですが、サラ金のヤタガイの倒産ということが新聞にも出ております。今回のヤタガイの倒産で特に注目されますことは、ヤタガイに対して零細な金を預けて、それで利息をつけて返してもらうというような形ではないかと思うのですが、そういう形の主婦等を初め大変多数のヤタガイに対する債権者がいるというような、これも新聞情報でございますけれども、かなり連日報道されております。この件について警察庁としてはどういうふうに今考え、対処されていらっしゃるか、その点、いかがでございましょうか。
  92. 清島傳生

    ○清島説明員 お尋ねの件につきましては、マスコミ報道等もなされております。警察としても関心を持って情報収集をしておるところでございます。
  93. 天野等

    天野(等)委員 ヤタガイということだけでなくてもそうだと思うのですけれども、一般的に言えば、不特定多数の者からお金を預かって利子をつけて返すという形はやはり出資法に触れる行為にはなるわけでございましょうね。
  94. 清島傳生

    ○清島説明員 必ずしも出資法だと断定するわけにはいかないという面もあろうかと思います。警視庁の方でもいろいろ情報収集はしておりますが、これが出資法に言う預かり金なのかあるいは単なる金銭消費貸借といいますか、ヤタガイ側が金を借りておるというふうにとるのか、その辺が新聞報道等を見てもはっきりしない面もございます。
  95. 天野等

    天野(等)委員 新聞報道を見ましても、私はかなり出資法に触れるのじゃないかという感じがするのでございます。人数からいいましても二百名とか三百名とかというような数のことも出ておりますし、金額も何十億というような金額が言われております。そうなってくると、やはり不特定多数の者に対する預かり金というような性格も非常に強いのじゃないかなというふうに考えられるところでございますが、これはヤタガイだけではなくて、ほかのいわゆるサラ金業界についてもこういう点について今後ともお調べになっていくということがあるかどうか、この点いかがでございましょうか。
  96. 清島傳生

    ○清島説明員 先ほどの答弁を補足させていただきますと、実態を見なければはっきりしない、こういうことでございます。  それから、ただいまの御質問につきましては、サラ金業者で倒産した会社もございまして、現実に預かり金をやっておるというようなことで現在捜査している件もございます。
  97. 天野等

    天野(等)委員 サラ金業界の中でいろいろな形で問題が出てくるところだと思いますけれども、サラ金業界に金を預けた方もやはり被害者ということだと思いますので、こういう形の預け入れがなくなることを考えるなら、非常に不安定な貸し付けだというふうに言わざるを得ない。大口債権者の方は担保等をとり、また優先的に債権譲渡等を受けて弁済されるけれども、小口の主婦の債権者はほとんど戻ってこないという状況になれば、これは大変悲惨なことにもなるわけでございますので、そういう点も考えて厳正な捜査ということもお考えいただきたいと思います。  時間でございますので、本日はこれで終わります。
  98. 宮崎茂一

    宮崎委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  99. 宮崎茂一

    宮崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野間友一君。
  100. 野間友一

    野間委員 最初に民事局長にお伺いしたいと思います。  これは午前中同僚議員の方から聞かれたことですが、公共嘱託登記受託組織法人化の問題ですが、日司連とか日調連、法務省の努力によって六項目にわたる骨子ができていますね。  私、この六項目をきのう法務省からもらったのですが、「法人化早期実現を図り、次期通常国会に法律案を提案できるよう努力する。」これが一項ですね。あと目的としては、「官庁又は公署が行う登記嘱託に必要な事務を行うこと」とか、根拠規定が「司法書士法及び土地家屋調査士法」、それから「法人は、司法書士のみを社員とし、司法書士業務を行うものと、土地家屋調査士のみを社員とし、土地家屋調査士業務を行うものとの二種とする。」それから五つ目が「法人は、民法法人又はこれに準ずる法人とし、法務局又は地方法務局の管轄区域ごとに設立するものとする。」最後の項が、それぞれの会は、「法人業務の改善進歩を図るために必要な指導又は助言をすることができるものとする。」  これは間違いありませんね。
  101. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 司法書士土地家屋調査士の両連合会から委員が選ばれてつくられましたところの公共嘱託登記連合委員会で去る五月にまとめました骨子内容は、ただいま野間委員が御指摘になったとおりの内容になっております。
  102. 野間友一

    野間委員 そうしますと、これは午前中の質疑でもありましたけれども、日調連は意思統一ができておる、あと日司連の関係内部できちっと意思統一さえできればすぐに立法化作業ができて、次期の通常国会に間に合う、そういう見通しでしょうか。ぜひそうしていただきたいと思います。
  103. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 日司連側の方の考え方がまとまりましたならば、私どもと細部の詰めをいたしまして、できるだけ早期の国会に法案提出するという運びにいたしたいと考えております。
  104. 野間友一

    野間委員 これは具体的には、この三項によりまして司法書士法及び土地家屋調査士法、これらの中に書き込むという手法をとるわけですね。
  105. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私どもとしては、法案のスタイルといいますか、そういうものまでまだ検討はしておりませんけれども、この骨子に沿ってやるということになりますと、現行の司法書士法あるいは調査士法の一部改正という形になろうかと思います。
  106. 野間友一

    野間委員 今法務省ではこの骨子に基づいて一定の準備は進めておられるのですか。
  107. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 準備というのはどういうことをいうのかということにもよりますけれども、この中身についてどういうふうな構想で法案がまとめられることになるかということは内部的には検討いたしております。
  108. 野間友一

    野間委員 それじゃ、この点についてよりよいものを、しかも全体の合意のある納得できるものをぜひ早期につくっていただきたいということを要求いたしまして、これはこれで終わりたいと思います。  その次にお伺いするのはいわゆる統一協会の問題についてであります。  四月十一日の委員会でも私は質問したわけですが、まず初めにお聞きしたいのは、昨年の十月初めに世界日報が占拠されるという事件がありました。これは勝共連合の梶栗玄太郎理事長を初め数名ないしは数十名、告訴事案は三つありまして、昨年の十一月二十一日付でやられましたけれども、詳細は結構ですから、これらの捜査の状況、そして今どういう段階にあるか、それをまず聞かしていただきたいと思います。
  109. 藤原享

    ○藤原説明員 お尋ねの三件の告訴事案でございますが、昭和五十八年十一月二十一日警視庁の渋谷署で告訴を受理いたしました。被告訴人五名につきましては所要の捜査を行い、暴行、傷害及び暴力行為等処罰二関スル法律違反容疑で本年の六月十二日東京地方検察庁に事件を送付いたしております。
  110. 野間友一

    野間委員 法務省刑事局長、この捜査は送検を受けてずっとやっておられるわけですか。
  111. 筧榮一

    ○筧政府委員 今警察の方からございましたように、六月十二日付で警視庁から送付を受けまして、現在東京地検において捜査中でございます。
  112. 野間友一

    野間委員 これは白昼公然というか警察官の目の前でやられた事件なので、ぜひ厳重に、早期に捜査をしていただきたいと思います。  関連して、文芸春秋の七月号に、副島という統一協会の元幹部、最高幹部の一人ですね、世界日報の前編集長でありますが、「これが「統一教会」の秘部だ」というテーマで特集がありますが、この副島嘉和という人が、たしかことしの六月二日ですか、刺傷された事件がありますね。これの事件の捜査はどうなっておるでしょうか。そして被疑事実はどうなっていますか。
  113. 藤原享

    ○藤原説明員 お尋ねの事件でございますが、今お話しのように本年六月二日午後八時過ぎ、東京都世田谷区の路上におきまして、徒歩で帰宅途中の被害者が年齢三十歳くらいでございますが、氏名不詳の男に刃物様の物で背中などに傷害を負わされたという事案でございます。  この事件につきましては、警視庁におきまして被害直後に一一〇番の届け出を受けまして事件を認知いたしまして、その後、関係者からの事情聴取、現場付近の聞き込みなど現在強力な捜査を行っておるという過程でございます。
  114. 野間友一

    野間委員 関係者は捜査上今言えないかもわかりませんが、背後にある事実というかそういうものについては十分御承知だろうと思いますが、統一協会なりあるいは勝共連合、世界日報、こういう内紛の中での出来事ということで、そういう点を踏まえて捜査されていると思いますが、その点だけ一言。
  115. 藤原享

    ○藤原説明員 捜査の過程におきましては、いろいろそういった聞き込みその他の捜査上のそういう情報をもとにして諸般の捜査を進めておるというところでございます。
  116. 野間友一

    野間委員 次に、統一協会の文鮮明、いわゆる教祖のアメリカでの脱税事件の裁判の結果についてでありますけれども、四月十一日のときにも私お聞きしたわけですが、外務省お越しですね。これは連邦最高裁判所で十八月の実刑、懲役ですね、それから二万五千ドルの罰金刑、これが確定しておるわけですが、その事実の確認と、今執行はどうなっておるのか、その点についてだけお答えいただきたいと思います。
  117. 高島有終

    ○高島説明員 御説明いたします。  五月十四日に連邦裁判所が文鮮明の行いました事件移送命令申し立てを却下するという決定を行っております。連邦裁判所規則によりますと、この移送命令申し立て却下後二十五日間の間に再審理の申し立てを行わない限りこれは確定するということになっているようでございまして、文鮮明は再審理の申し立てを行っておりませんので、有罪は確定したというふうに理解しております。  なお、収監予定は当初六月十八日ということになっていたようでございますが、ニューヨークの連邦地方裁判所は六月十一日に刑の執行延期命令を出しておりまして、これによりまして七月二十日に延期されているというふうに承知しております。  なお、有罪の内容に関連いたしましては、連邦刑事訴訟規則によりまして減刑の申し立てが行えるようになっておりまして、減刑の申し立ては行われる可能性があるというふうに見られているようでございます。
  118. 野間友一

    野間委員 いずれにしても、判決そのものが確定しておりますし、七月二十日まで収監が延期されておるという経過についてはお話がありました。外務省はこれで結構です。  いよいよ本論ですが、これは四月十一日にもお聞きしたわけですが、いわゆる霊感商法についてさらに続けてお伺いしてみたいと思います。  いわゆる霊感商法の具体的な商売のやり方、手口、あるいは内部で経理をどう操作しているのかということについては、文芸春秋七月号の特集の中で副島あるいは井上、この二人の人が詳細書いております。恐らく内部の実態が明らかにされたのはこれが最も大きな出来事ではなかろうか。私は事前に内部の文書を入手して持っておりますけれども、この文春の記載内容と全く同一のようであります。  そこで、最初にお伺いするのは、前回のときに北海道の消費者協会が出しております「北のくらし」を引きましたし、それから経済企画庁の国民生活センターが行った印鑑、大理石のつぼ、多宝塔の調査、こういうものも明らかにしながら、そしてその手口等についてこの場所でもお伺いしたわけであります。そのときに法務大臣もびっくりされて、大変なことだというふうに言われましたし、刑事局長からも恐喝ないしは詐欺になり得る可能性が十分あるんだというような答えもありました。さらに法務大臣は、私とのいろいろな論議の中で、なかなか元締めを捕まえることができない、しかも所管が経企庁、通産省、警察、検察庁、法務省、いろいろありますが、そこで十分協議をして、どういうふうにすれば根絶できるのか一遍検討させてほしい、そういうような答弁をされました。  その後、法務省の中で関係各省庁との間でそういう協議なり検討がされておるかどうか、されておるとすれば今どういうふうにやられているのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  119. 筧榮一

    ○筧政府委員 前回以来この問題につきまして特に各省庁集まって協議したということはございませんが、連絡をとり合って各種の資料、情報等の交換という形で御指摘の点についての検討を進めておるところでございます。
  120. 野間友一

    野間委員 これからおいおい申し上げますが、これは大変なことですから、早期に具体的、抜本的にこういうものが根絶されるように、そういう姿勢でぜひ臨んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  121. 筧榮一

    ○筧政府委員 そのような方向で検討を進めたいと思います。
  122. 野間友一

    野間委員 若干中身について触れてみたいと思います。  まずセールスの手口ですが、これはつとに稲葉委員等からも本委員会において実態を明らかにされたわけでありますけれども、文春の百四十六ページにも出ておりますように、これは末端の販売員が売るわけですが、原価と販売価格の差が印鑑で九倍から十一倍、ニンジンで六倍から八倍、つぼに至っては四百倍、多宝塔は五百倍。「販売事例」としてここに書いてありますように、例えば多宝塔は十万円のものが五千万円。これは国民生活センターの調査の中にも随分と出ておりましたけれども、こういう状況ですね。こんなべらぼうな商売は、私は見たことも聞いたこともないわけであります。  しかも商売の手法が、これにもいろいろと書いてありますように、まずこれと目っこをつけた対象者の調査をする。ここにいろいろな資料がありますが、「お客様のウイークポイントをつかむために」ということで、自殺者はいないか、あるいは精神病者はいないか、どういう病死か、事故因縁はないか、色情因縁は出ていないかとか、水子がないかとか、いろいろあります。こういうふうに目っこをつけた者に対して多少調べまして、そしてその上でいわゆるヨハネトーク、一人を霊能者に仕立てて一人をセールスマン、二人が組みまして、まさに漫才で言う突っ込みとぼけ、こういう関係で、その弱点を突きながら、つぼを買え、多宝塔を買え、そうでなかったらもっと悪くなる、あるいは病気が治る、こういうようなことを言って困惑させ、暗示にかける。手法についてはこの間も言いましたけれども、いろいろなことをしてべらぼうな価格で買わせる。これが特徴ですね。  これは経済企画庁のある職員に聞きましたら、百貨店で鑑定したケースでは、大理石のつぼは大体十万円のものを何百万で売っておるようです。そういう事実も明らかになっております。こんなべらぼうな倍率で商売をしておるわけですが、その手法が、今言いましたように違法、不当な手法で売っておるわけですから、これはもう買わざるを得ないところまで追い込められる。これがこの商売の特徴です。  そしてもう一つ特徴は、これは大蔵省、あるいは法務省も十分聞いていただきたいと思うのです。内部の経費の処理、これのいろいろな違法性、不当性の問題であります。  これもこの文芸春秋の書き物の中にずっと書いてあります。百四十四ページから「ハッピーワールド本社経理担当の溝口志津氏が、五十五年十月、会計会議で行った発言資料である。」こういうことからずっと書いてあります。これを見ますと、外から、韓国からでしょうが仕入れできますね、そしてこれを販売会社が手続上受けて、それをセールスに持たせて顧客に売りさばくという手続をとるわけですが、この書物の中にもありますように、いろいろな四つの段階、すべてが四つじゃないと思いますが、縦の流れの中では段階が三つないしは四つありますけれども、「経理上完全に一つ組織であると考えて下さい。」こういうふうに書いてあります。  そしてこの中でどういう操作をしておるかといいますと、末端のセールスマン、これは統一協会の会員のようですが、ここにも書いてありますが、これに七〇%の利益を形の上では与えることにする。そうしますと、その途中の川上の販売会社あるいは問屋、卸、こういうところは経理上利益が出てこない。ここで一つ利益を隠す。しかし、帳簿上は七〇%の利益が上がる末端のセールスマン、形の上ではこの人たちに対して所得税がかなりかかってくる。  それを避けるためにどうするかといいますと、住民票を転々と変えるとか、あるいは所在を人事異動で常に移動させるということでつかみにくくしていく。しかも、経理上そういう操作をしながら、実際には最低の生活費だけを末端のセールスマンに与えて、あとは全部上へ吸い上げていく。この本によりますと、一カ月大体二十億円、そして今までトータルして二千億円ですか、これが五十年七月から文鮮明のところに納金されたということも百四十三ページに書いてあるわけですね。こういうような手口で経理を操作して外へ金を流すということになっていると思うのです。  この前も引きました神戸地裁の第三刑事部の判決、あの起訴事実の中にあるのもその一部だと私は思うのですけれども、これをお読みになりまして大蔵省は税法上どういう問題があるとお考えになるのか、その点聞かしていただきたいと思います。
  123. 友浦栄二

    ○友浦説明員 お答えいたします。  個別にわたる事柄につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと存じますが、一般的に申し上げますと、税務調査に当たりましては、今お話がございました新聞、雑誌を初め外部の諸情報、税務内部の資料情報、さらには国会で論議された事柄などに基づきまして申告が適正に行われているかどうか検討してまいっているところでございます。
  124. 野間友一

    野間委員 きのうの時点で私はこれを読んでほしいということを申し上げておったのですが、お読みになったですか。
  125. 友浦栄二

    ○友浦説明員 読ませていただきました。
  126. 野間友一

    野間委員 個別のケース、このハッピーワールドの具体的な事実が真実かどうかは別にして、一般的な意味で、こういう経理の操作をするということは税法上どういう問題があるのかということなんです。
  127. 友浦栄二

    ○友浦説明員 抽象的な表現でございますので確たるお答えはできませんが、個人が所得しましたものから支出した金額がどういった性質のものかは、具体的に見てみないとわからないと思います。
  128. 野間友一

    野間委員 それではもう少し、一般論でも結構ですからお聞きしますが、帳簿上は利益の七割を末端のセールスマンに計上する。ところが、その人を人事異動であっちこっち飛ばしたり、あるいは住民票を移しかえる。そして、実際には帳簿上の処理とは別に最低の生活費だけを与えて、あとは全部上へ吸い上げる。三つか四つの経路がありますね。そういう場合に一体どうなりましょうか。
  129. 友浦栄二

    ○友浦説明員 一般に民間の会社の経理の仕方は原則的には自由でございます。それが税法上問題があるかどうか、それらは今お話にございましたいろいろな条件を具体的に検討してみないとちょっとお答えいたしかねます。
  130. 野間友一

    野間委員 二月十四日に調査に入られましたね。
  131. 友浦栄二

    ○友浦説明員 調査いたしております。
  132. 野間友一

    野間委員 その調査は査察ではないということを、稲葉委員の質問に対してでしたか、お答えになったと思いますが、税法上どういう根拠に基づく調査でしょうか。
  133. 友浦栄二

    ○友浦説明員 査察調査ではございません。これは、通常私どもが行っております一般の法人に対します通常の調査でございます。
  134. 野間友一

    野間委員 通常の調査というのは質問検査権に基づくものなのか、そうでないのか。
  135. 友浦栄二

    ○友浦説明員 法人でございますので、法人税法に規定します質問調査権はございます。
  136. 野間友一

    野間委員 いや、そういう制度があるかないかではなくて、それに基づいてやったのかどうかということです。調査の根拠を聞いているわけです。
  137. 友浦栄二

    ○友浦説明員 調査の根拠とおっしゃられるのはちょっとわかりかねますが、法人税法に決められております手続に従った調査ということでございます。
  138. 野間友一

    野間委員 その際に、この書物の中にも書いておるようなそういう手口等についても十分頭に入れた上でやったのか、それとも、そのときわからなかったけれども、もしこういうことが事実であるとするならば改めてやらなければならぬということになるのか。その点いかがでしょうか。
  139. 友浦栄二

    ○友浦説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、私ども新聞、雑誌とかあるいはその他部外情報等は十分念頭に入れて調査は行っているつもりでございます。
  140. 野間友一

    野間委員 調査はもう既に終わったのか、まだ継続中なのか。どうでしょうか。
  141. 友浦栄二

    ○友浦説明員 お尋ねの法人につきましては終わりました。
  142. 野間友一

    野間委員 終わって何らかの対応、処分をされたのかどうか。
  143. 友浦栄二

    ○友浦説明員 調査に基づいて適正に処理いたしております。
  144. 野間友一

    野間委員 その適正な処理の中身ですけれども、例えば更正決定を打つとか、何かそういう具体的な処理をされたのでしょうか。
  145. 友浦栄二

    ○友浦説明員 個別の内容につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  146. 野間友一

    野間委員 ただしかし、どの程度調べたか僕はわかりませんけれども、これがもし事実であるとするならば、もう大変なことだと思うのです。全く国税庁、大蔵省に対する挑戦以外の何物でもないと私は思うのです。厳正にだれだって納税の義務があるわけですから、やはり適正な税金を払うのは当たり前でしょう。帳簿の操作をいろいろなことをしながら税金を免れるということは許されませんよ。これは内部告発で初めて明らかになったわけですが、しかも、中で出しておるいろいろな文書を見ましたら税理士が指導しておる。私は特定の名前は挙げませんけれども、数人名前が挙がっております。これまたゆゆしいことだと思うのです。だから、そういう点も十分踏まえた上でさらに厳正な対応をしなければならないのではないかと私は思いますが、いかがでしょう。
  147. 友浦栄二

    ○友浦説明員 私ども一般的に申し上げまして、税務調査につきましては課税が適正に行われるということを期待しておりますし、またそれを実現しますためにいろいろな情報、先ほども申し上げましたように、外部の情報あるいは内部の情報といったものには常に関心を持ち、その結果、調査が必要、あるいは課税の適正化が必要ということであれば、それに適切に対処するというのが基本的姿勢でございます。
  148. 野間友一

    野間委員 生活センターの大々的な調査の中身もいろいろ書いておりましたけれども、どういうふうに解決をしたのか、その点についてのいろいろな記載がありました。苦情を受け付けたけれども、連絡したところがもう所在がわからない、こういうのが調査結果の中に随分とありました。つまり末端、これによりますと、これは実際には統一協会の会員のようですけれども、しかし、形の上では委託セールスマンという独立した一人の商売人としての扱いというか、形をとっておるわけです。ですから、そこをつかまえようと思っても、ぱっとどこかすぐに所在がわからなくなって、つかみようがない。しかも、住民票が変わり、あるいは形式上高額所得者というような形になるような人はすぐに人事異動であちこちに散らしていくというようなことをやっております。そうしますと、末端のそこだけをとらえておったらどうにもならぬということは明白なんです。  そこで、刑事局長にお伺いしますが、この前にもお伺いしましたが、例の神戸地裁の石井光治ほかに対する外為法違反の判決の判示の中身として、統一協会と勝共連合、そして幸世商事、これらの関係について、資金的にあるいは人的にどういうつながりがあるのか。これはつながりがあるという判示をしておりますけれども。そして、前のときには詳細は知らないというふうにお答えになりましたけれども、幸世商事が商号変更して「世界のしあわせ」、そして、これがさらに商号変更して今のハッピーワールドということになっているという経過については御存じだろうと思いますが、いかがでしょう。
  149. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ただいまお尋ねの会社につきましては、昭和四十六年五月二十五日に幸世商事株式会社という名称で設立をされまして、その後五十三年三月に株式会社「世界のしあわせ」というふうに商号変更し、さらに昭和五十三年十一月一日に株式会社ハッピーワールドというふうに商号変更がされていることが登記簿上は明らかでございます。
  150. 野間友一

    野間委員 そして、その統一協会とハッピーワールドの前身であります幸世商事の関係については、この前もお聞きしたのですが、この判決の判示の中に「法的には統一協会と別個の法人ではあるが」「出資や事業資金の貸付を受け、他方統一協会の信者たる右各会社の役員や、従業員等はその報酬、給料の殆んどを統一協会に献金して」いる、こういう判示をしておりますね。これは間違いありません、事実そうですから。
  151. 筧榮一

    ○筧政府委員 そのように判決文の中では判示されております。
  152. 野間友一

    野間委員 そこで、時間が参りましたので最後の質問ですけれども、先ほど私、各関係省庁寄ってという中で大蔵省を抜かしたのですが、これも大事なところで、それも含めまして、法務大臣、実際に真剣に迅速に、そういう国民が迷惑を受けるようなことを根絶していただきたいし、と同時に、納税の義務にもとるようなそういうさまざまな手法、手口でいろいろな操作をやっておるやにこの文春にはつづられております。こういう点も十分踏まえて、早急にひとつ協議の機会を持っていただいて根絶をしていただかなければ後を絶たないと思います。  私、今たくさん資料を持っておりますけれども、何ならまた御提供しますが、その点について再度御検討いただくように法務大臣にお願いをして、答弁をいただきたいと思います。
  153. 住栄作

    ○住国務大臣 ただいまの問題につきましては、各省それぞれの立場で所要の対応をとっておるわけでございますけれども、その都度連絡し合っておりますが、さらにこの問題につきましては、御意見の趣旨も外しまして対処してまいりたいと考えております。
  154. 野間友一

    野間委員 ありがとうございました。終わります。
  155. 宮崎茂一

    宮崎委員長 次に、林百郎君。
  156. 林百郎

    ○林(百)委員 私もたびたび当委員会で質問しておりますが、例の福島交通の小針社長の件ですが、時間の関係で私の方で整理して図面にしてまいりましたので、委員長、それはいいでしょうか。時間がないものですから、一々聞いているわけにいきません。
  157. 宮崎茂一

    宮崎委員長 はい、結構です。
  158. 林百郎

    ○林(百)委員 私たち共産党の調査団は、実は六月の五、六、七日、福島市、白河市、それから郡山市等へ行って福島交通の問題についていろいろと調査をし、さらには裏磐梯の国立公園へも行きまして調査をしてまいりました。殊に新白河における担保のための土地というのも見てまいりましたけれども、全く担保力のないようなものを日債銀に担保として提供して、約七百億近くの金を借りているということもわかってまいりました。  しかも、この問題は、使途不明金がここにもありたすように約百億、これを初めのうちは小針氏個人が政界の工作に使ったんだ、おれのところへは政界のこれこれの人たちが出入りしているんだということで、これはマスコミにも書かれておりますが、元総理が三人、現総理の名前も出しておりますでそれから、現大臣の名前も二人ほど出ています。自民党の幹部の名前も出ております。  我々は、政界の浄化が今国民から強く求められているときでありますので、これはこのまま放置できないということで、マスコミも非常に熱心にこれを追及して調査しておりますので、私たちもこういう調査をし、さらに商法で言う特別背任に該当する嫌疑が濃厚だということで、去る六月六日には、福島地検へ我々が調査に行ったついでに検事正に会いまして、検察庁の権威にかけても十分な調査をするように申し入れました。それから、帰ってまいりまして六月十二日に、東京に福島交通不動産の本社がありますので、東京地検の検事正にも申し入れをし、同時に、福島と東京との両方に関連しておりますので、その調整をするようにといって最高検の次長検事にも申し入れをしてまいりました。  そういう関係からして、我々が特別背任の嫌疑を深めました第一は、ここに①と番号がありますように、美福が五十円株を七百五十倍の三万七千五百円で二十八万四千株発行して、百六億五千万円の払い込み金を福島交通不動産から受けているということなんですね。七百五十倍も、五十円株をそんな不当な株価で、しかもここにありますように累積赤字が三百四億、負債が七百八十五億と言われている福島交通不動産が、そんな美福の株を二十八万四千株も引き受けて百六億五千万円もの金を美福へ払い込むということは、福島交通不動産の社長である小針氏が、同時に自分が社長である美福の利益を図ったものであって、これは明らかに背任の構成要件に該当するのではないかということが一つであります。  第二は、福島交通不動産のバランスシートを見ますと、役員従業員長期貸付金が十三億九千万、雑費が三億九千万とありますが、この役員従業員長期貸付金というのは、ほとんど小針氏個人あるいは小針氏の身内の二、三の者へ貸し付けた疑いが濃厚で、従業員や職員には貸し付けておりません。そうすると、福島交通不動産の役員従業員貸付金十三億九千万、雑費三億九千万というバランスシートヘのこの金額、これは自分の利益を図って福島交通不動産に不利益をこうむらせた。  判例等で見ますと、商法四百八十六条の「会社二財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ」というのは、現実に損害を生ぜしめた場合はもちろんですけれども、そればかりじゃなくて、実害発生の危険を生ぜしめただけでも財産上の損害と認定されるという非常にシビアな判断が下されているところを見ますと、三百四億の赤字、七百八十五億の負債を持っているものが、役員の長期貸付金に十三億だとか、あるいは七百五十倍もの株価で美福の株を百六億円も出して買い取るとかということは、これは明らかに商法四百八十六条の特別背任に該当するのではないかというように思うわけですね。  それから、マスコミの報道するところによりますと、政界工作に使われたと思われるものが約百億あると言われますが、一体政界工作でどういう使い方をしたのか、あるいは自分が懐に入れておるのか、この点も明確にする必要があると思いますね。場合によっては横領が成立し、あるいは贈賄が成立し、あるいは特別背任が成立する可能性がありますので、これもどうしても調べていただかなければならない。  それから、福島交通不動産が、そういう膨大な赤字と負債がある中で、四億六千万の手駒酒造という酒造会社の増資をいたしました。ところが、この手駒酒造の株式九万九千六百株を全部小針育英財団にそのまま寄贈している。三百四億円もの赤字のある会社がこのような四億六千万余の手駒酒造の増資をして、しかもその株は全部小針育英財団に贈与しているということは、小針育英財団というのは理事長は小針氏ですから、自分の利益を図って福島交通不動産に不利益を与えたということが十分言えるのじゃないかと思うわけです。  それから、この①のうちの、先ほど申しました美福へ福島交通不動産が百六億五千万の、一株七百五十倍もの株価で株を買って払い込んだ金が、実は五十億近くが――今度はアメリカ美福といって、日本の税務署では手が出ない、あるいは日本の国のいろいろな政府の規制を避けるための隠し財産としてここへ五十億流したのじゃないか。そのとき美福はこの百六億五千万のうちの五十億円をアメリカ美福へ流し出し、十八億九千万円をアメリカ美福が増資をしている。要するに美福とアメリカ美福の間にも資産隠しの疑いがある。  時間がありませんので、私の方でマスコミでいろいろと報ぜられているところを――しかも特別背任あるいは贈賄あるいはそのほかの不正な財産上の操作をしていた、横領というようなこともあるでしょうけれども、そういうような役員従業員長期貸付金あるいは使途不明金等について非常に大きな疑いがあるので、そこで私たちは政治家の名前も出ている際でもあるので、政界を浄化するという意味で、そしていろいろの帳簿上の操作もしているようでありますので、速やかに帳簿上の証拠の保全もしなければならないでしょうし、捜査もしなければならないだろうということで、福島地検の検事正、東京地検の検事正、最高検察庁の次長検事にも申し入れをしたわけですが、その後、かつては毎日というほどあらゆるマスコミに書かれていたこの重大な問題、明らかにこれは捜査の端緒があると見ていいと思いますけれども、検察庁としては、この福島交通不動産あるいは美福、福島交通の問題あるいは小針氏の問題等について、どういう対処をしているのか、ひとつ御報告願いたいと思います。
  159. 筧榮一

    ○筧政府委員 福島交通をめぐりますいろいろな事実につきましては、かねてから国会等でも御論議があり、またいろいろ報道がなされております。検察当局におきましてもこれらのことに関心を持ちまして、資料、情報の収集等に努めているものと思われます。その推移に応じまして、必要に応じ適切な措置をとるものと考えております。  本日、林先生御指摘のただいまのお話につきましても、検察当局に連絡をしておきたいと考えております。
  160. 林百郎

    ○林(百)委員 時間がありませんので、刑事局長に、恐縮ですが、これも参考にしていただいて、両検事正、最高検の次長検事まで申し入れをしておりますし、世間でも重大な関心を持っておりますので、ぜひ検察の権威のために、遺漏なきような措置をしていただきたいと思います。  一方、国会議員として、政界の浄化ということが今言われているときですから、その真相を国民の前に明らかにしていただきたい、こういう要望でお願いしておりますので、どうか今言った趣旨をぜひ万遺漏なきようにしていただきたいと思います。法務大臣、どうでしょうか。
  161. 住栄作

    ○住国務大臣 今刑事局長がお答え申し上げましたように、検察の方でも適切な対応をしてくれるものと期待しております。
  162. 林百郎

    ○林(百)委員 この問題は具体的な問題ですから、余り具体的なことをお聞きしてもかえって迷惑だと思いますので、この程度にしておきます。  それから次に、これは私の方で前から法務大臣にも連絡をしてあることなんですが、一九四二年ですから昭和十七年の七月七日、当時東条内閣ですけれども、このとき、これは極秘の閣議でありましたけれども、「思想犯前歴者ノ措置」についての閣議が開かれたのです。そのときの閣議の模様を時の司法省の森山保護局長から、国会の答弁者として出入りしておりますやはり司法省の小泉清太郎氏が聞き取っておるわけでございますが、これは公にもされております。  治安維持法――今となっては全くの悪法そのものでありますが、この治安維持法の「非転向者ト雖再犯の虞顕著ナラザル者及準転向者中、其ノ儘国内ニ居住セシムルヲ不適当ト認ムル者ニ付キテハ、南方諸島中適当ノ島嶼ニシテ他ノ日本人ガ居住セズ、又駐兵ノ必要ナキ島嶼ヲ選ビ、此処ニ於テ必要ナル監督ノ下ニ夫々適当ナル業務ニ当ラシム」こういう閣議決定がされて、これに基づいて第一次の奉公義勇団が、昭和十九年七月、三十名、これは当時の検事である山下夘吉氏が付き添って派遣されました。  初めはフィリピンヘ行く予定だったが、フィリピンはどうも戦況がよろしくないということで、北ボルネオヘ行ったわけであります。同じ年の八月に第二次奉公団が約二十名ほどでフィリピン沖まで行きましたけれども、ここで撃沈されまして、生き残った者わずか数名がその後フィリピンから北ボルネオに行っておりますが、このように治安維持法の犠牲者を集団的に島流しにした。これは看過できない事実であるし、あくまでこの真相は明らかにして、戦争に対する反省をしなければならないということ。このことについて、私の方から法務省の方へしばしば事実の調査と資料の公開を求めていたわけなんです。そして四月六日に、こういう治安維持法の諸君の団体から、この真相を明らかにされたいと住法務大臣にも申し入れをしました。  これは全く戦争の犠牲者であり、しかも軍人とは違って、思想、信条の自由、良心の自由を全く抹殺され、治安維持法によって死刑、無期、ある者はテロでもって生命まで絶たれた、そういう者たちを、国内の司法的な処分だけでは足りないということで、なお戦争の非常に危険なとき、昭和十九年七月というのですから、もう北ボルネオあたりでも当時のオーストラリア軍、アメリカ軍等の爆撃が頻繁にあって、ほとんど生命の保証されぬようなところへ島流しにしているわけですね。この事実を調査し、資料を公開し、そして戦争に対する反省を深め、治安維持法というような悪法に対する反省を深めて、再びこのようなことがあってはならない。人の思想、信条の自由、人の良心を抹殺するようなそういう法律を戦争を遂行するためにやるようなことをしてはならない。しかも、最高刑が死刑、無期というような、昭和十六年に改正されました治安維持法ですから、平和と民主主義と良心の自由と主権が国民にあるということが規定されている新憲法のもとでこのような事態の反省を深める必要があるということで、資料の公開と調査を要求したわけですが、そのとき法務大臣は、調べさせます、こうおっしゃったそうです。私、その人から聞きました。  ところが、その後法務省は一体どうしているのでしょうか。吉田保護局長ですか、どこが係ですか、答えてください。大臣は調べさせますと言っているのですよ。
  163. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 お尋ねの点は、思想犯保護観察法という法律が戦前にございまして、それでその思想犯保護観察法というのは、治安維持法の罪を犯して執行猶予あるいは訴追を必要としないということで起訴されなかった場合に保護観察に付するという法律でございました。この法律は昭和二十年十月に廃止されておるわけでございますが、その思想犯保護観察法の適用を受けた対象者と申しますか、そういう者に関することだと思います。この法律の関係の資料につきましては、現在法務省にございません。保管されておりませんので、その内容は不明でございます。
  164. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、その文書がないとすれば、関係者で生存している人がいるわけでしょう。私の方では、関係者の人が必死になってちゃんと調べまして、名簿があるのですよ、団員の名簿も。ちょっとあなたに後でお見せしてもいいのですが。それから、第二次に派遣された人たちの写真もここにあるのですよ。これは第二次奉公団の写真ですよ。それから、第一次派遣団に付き添っていった検事の山下夘吉さんという人は、今横浜の金沢区にちゃんと生存しているのですよ。それから、同じく司法保護司である早川杠一郎という人も、名古屋の熱田にちゃんといるのですよ。あなた方は調べる意思がないのじゃないですか。これは法務省の重大な責任ですよ。  かつてそういう良心的な国民であり、主権が国民にあり、戦争をしないという決意、そして主権者たる国民は、選ばれた代表によって国会で審議をされて、そしてそれによって福祉を享受する、こういうことは人類普遍の原理だと、人類普遍の原理を戦争中に述べた人たちですよ。戦争をしてはならない、主権は国民にあるのだということを命がけでやった人たちですよ。それをまた、あなた、起訴されない者が保護観察を受けた。とんでもない話ですよ。刑を受けた人たちがまた保護観察をされ、あるいは予防拘禁としてまた刑務所へ入れられているのですよ。あなた、全然そんなこと知らないんじゃないですか。  こういう、人間の最高の、思想、信条の自由だとか良心だとか、あるいは真理に基づいて、主権は国民にあるとか、戦争をするような過誤を再び起こしてはならないというようなことを言って、それが死刑、無期で治安維持法で取り締まりをされようとしていた、そういうことに対して、司法当局の反省として、これは調べるのが当然じゃありませんか。しかも、民間にすら名簿もあり、それから当時の司法省の役人の名前もわかっており、そして岩波でこれに対する論文も発行されていますよ。それから第二次奉公団の写真までここにあるのですよ。そういうものを民間の人たちが全部集めているのに、法務省が、資料はありません、わかりません、それで通るのですか。とんでもない話ですよ。どう思いますか。  それじゃ、これからそういう資料を――少なくとも私が言った名簿も必要なら上げますよ。当時の司法省の役人の名前と現住所も教えてあげますよ。それから当時のいろいろの事情も、我々が集めた限りの資料ですね、司法省派遣図南奉公義勇団、これがこれだけのものにまとめられているのですよ。民間の者がこれだけやるのに、当時やった責任者が何にも知らないということで通りますか、あなた。どうするおつもりですか。
  165. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 先ほど申しましたように、思想犯保護観察法という法律は昭和二十年の十月に廃止されまして、それに伴って、思想犯関係の保護観察所というのがあったようでありますが、その官制も全部廃止されて、その職員は全部解雇された。そういうこともございまして、その後、私ども、現在の法務省保護局の前身が事務の引き継ぎなどをしたということではございません。したがいまして、先ほど書類もないと申し上げたとおりでございまして、私どもとしては、そういう確かな資料はございませんので、正式調査は、それ以上の調査はしておらないのが現状でございます。
  166. 林百郎

    ○林(百)委員 法務大臣、あなたは、治安維持法という法律はどういう性格の法律だとお考えになりますか。戦争中、国体を変革しようとする者は、死刑、無期ですね。そのほか三年、五年、七年と、いろいろの罪状によって刑があるのですが、これは今の憲法に照らしてみてどうお思いになりますか。
  167. 住栄作

    ○住国務大臣 ここでその議論をしようとは思いませんけれども、戦時中、戦前そういう法律が制定されて、そしてそれに基づく処置がとられておった。その法律がいいかどうかということを今の段階で言えというのは、その当時はどういう状況ででき上がったのか、そういうようなこともあるわけでございますから、今はいろいろ批判できるかもしれませんけれども、そのときは実定法として現存しておった。いいか悪いかは、私は批判をする立場にはございません。
  168. 林百郎

    ○林(百)委員 今の憲法の精神に照らして、戦争中当時の治安維持法というものは許される法律であるかどうか、今の憲法のもとではどう考えるかと聞いているのです。中曽根さんも、これは悪法だ、手続も疎漏だったとちゃんと言っているのですよ、あなたの総理大臣が。あなたの総理大臣というのはおかしいけれども
  169. 住栄作

    ○住国務大臣 それは今の憲法からいったら、そして今の情勢から言えば、そういう立法なんかあり得ようはずはないと私は思っております。
  170. 林百郎

    ○林(百)委員 法務省にお聞きしますが、軍人ですら今遺骨の収集までしているというのでしょう。ましてやこういう悪法によって死刑、無期でおどかされ、そして戦況の非常に険悪なところへ島流しにされ、強制労働させられ、最後には現地で徴兵までして、あるいはフィリピンに行く途中で輸送船が沈没して、二十人のうち数人の人が生き残っただけで死んでいる。そういう方々に対する慰謝の方法を講ずる立場に立っても、あるいは今後再びこういうことがあってはならないという立場に立っても、この実態を調査する責任が国にあるのじゃないですか。やったんだから、やりっ放していいのですか。  それなら、何十年もたっている軍人の遺骨を今何でわざわざ行って収集してきているのですか。それ以上じゃないですか、治安維持法なんて。自分の良心で、人類普遍の原理だと現憲法に言われていることを戦争中に言ったからといって、軍人以上のひどい目に、島流しに遭う、それで命を落としている、それをそのままにしておいていいのですか。調査する責任が当然あるのじゃないですか。そして、もし慰謝の方法を講ずる必要があるなら慰謝の方法を講ずるとか、あるいはそういう遺族の方々の要望などを聞く責任があるのじゃないですか。そうお考えにならないのですか。全然ないから知りませんで通すつもりですか。  ということは、あなた方は治安維持法的なそういう体制を今とっているから、治安維持法の実態を明らかにしてはまずい、そういうことに通ずるのじゃないですか。あなたはどう思いますか。そうじゃなかったら、反省する意味なら、そういう治安維持法によって犠牲になった事実を全部国民の前に明らかにして、再びこういう悪法はつくりません、戦力を強化するための、あるいは天皇を主権者とするような旧憲法に基づく、それを犯した者は死刑、無期、三年、五年、七年以上の懲役にするというようなことは絶対にしませんということの反省を示す必要があるのじゃないですか。どうお思いになりますか。  このままほうっておくのですか。ほうっておくということになれば、大臣ですらそのような法律は今では許されない法律だと言うのに、それは治安維持法の体制でやったことに協力することになり、隠すことになるのです。そんなことは調べてみれば幾らでも明らかになりますよ。資料が欲しいなら私の方で提供してあげましょう。どうですか。
  171. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 私ども法務省保護局は、現行法に基づいてできるだけの仕事はやっておるつもりでございます。  いろいろ御指摘のように、戦時中、私もどういう内容、どういう手続、どういう方法で行われたか詳細は存じませんけれども、いろいろなことがあったのではないかと思います。その問題については、私、法務省保護局の長として、どういう形で処理があるべきかということは私の立場をはるかに超える大きな問題だと思います。  私どもといたしましては、先ほど申しましたように、お尋ねの資料がございませんので、そのことを正直に申し上げているだけでございます。
  172. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、私の言った元検事である山下夘吉さん、これは横浜の金沢区にちゃんと現存しているわけですよ。それから、当時国会へ出入りして、この方針が決まったときの閣議の模様を、当時の森山保護局長ですか、局長と一緒に国会に出入りした人も現存しているわけですよ。こういう人のところへ行ってお聞きしただけでも実情がわかるじゃありませんか。  治安維持法の犠牲になった人たちが何十万もいるわけですよ。数十万人、四十万人とも言われていますけれども、そういう人たちに、こういうことでありましたけれども、今後はこういうことを再びしないように我々も心しますとか、あるいは何らかの慰謝の方法をわずかでも講じていくとしたならば、こういうことをわずかではありましたがしたとか、そういうことを治安維持法の犠牲者の人たちに報告してやることが今の保護局の責任じゃないですか。今後それではできるだけのことをお調べになる、あなた一人ではそういう判断ができないと言われましたけれども関係者と相談されて、そしてそういうことをおやりになりますか。
  173. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 再三のお尋ねですけれども、私ども現在法務省保護局の立場といたしまして、そのような調査をせよという御趣旨でございますけれども、そういう調査ができると申しますか、調査をすべき立場にいるのかどうか私は疑問に思っておるというのが現在の率直な気持ちでございます。
  174. 林百郎

    ○林(百)委員 何で疑問に思っているのですか。それでは、どういう方法を講ずれば、その調査をして、治安維持法の犠牲者になった人たちに報いる道が開かれるのですか。その方法をここで言ってください。(「法務省設置法を改正すればいい」と呼ぶ者あり)あなたに聞いているんじゃないから、黙っていてください。  今自民党が政党法というようなものを制定しようとしている。それには、再びこういうような、時の体制に協力しなければいかぬとか、あるいは政治を変革してはいけないとかいうようなことをまた自民党が考えていますから、なおさらこの際こういうことを強調して、再び過ちを犯してはならないと私は考えているからあなたに聞いている。どういう方法をしたらできるのですか。さっき法律をつくれと言っていますが、いいですよ、法律をつくっても。法律を新しくつくるならできるのですか。忌憚のないことをあなたここで言ってごらんなさい。
  175. 住栄作

    ○住国務大臣 この問題につきまして林先生も当政府委員室でお会いして、私は、当時の文書がまずあるかどうか、こういうことを調べるのが大事だろう、こういうことで、今閣議とかいろいろおっしゃいましたけれども、早速そういう公文書の存在について一体法務省に残っておるのかどうか、こういうことを調べてもらいました。ところが、いろいろやってもらったのですけれども、現在私どもの法務省でそういう書類は、火災のためか、あるいはまた持ち去られたのかどうかわかりませんでしたが、そういう記録が一切ございませんでした。そういうようなことから、大変残念なことですが、現在法務省には公文書としてその関係の資料はない、こういうことでございます。
  176. 林百郎

    ○林(百)委員 公文書としてないなら、それならば、この閣議決定ですね、これは政府全体に法務大臣から問い合わせていただけばわかりますが、私が日を言いますから、昭和十七年七月七日の当時の東条内閣の「思想犯前歴者ノ措置」に関する閣議決定、こういうものは政府は持っているのですか、持っていないのですか。あるいは、法務省で持っていないにしても、政府の戦前からの一貫した公文書として残っているのですか、いないのですか。
  177. 住栄作

    ○住国務大臣 法務省にはその公文書はなかったということでございます。
  178. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、こういう閣議決定というようなものは、法務省でなくてもいいですよ、こういうものが残っているのですか、いないのですかということです。
  179. 住栄作

    ○住国務大臣 それはわかりません。
  180. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 結論は今大臣がおっしゃったことと同じで、わからないわけでありますが、私の方で調査しましたところ、森山武市郎先生遺徳顕彰の会発行の「森山武市郎先生顕彰録」の昭和十七年の項を見ますと、「七月、思想犯対策に関し閣議決定ありこという記載がございます。だから、あったのではないかと思っておるのでございますが、確認はしておりません。
  181. 林百郎

    ○林(百)委員 ですから、私の方から申しますから、私の次の質問の材料としてぜひ調査をしておいていただきたいと思うのですね。  当時の司法省の森山保護局長、この方が言っておる閣議決定の内容、これを全力を尽くして調べていただきたい。  それから山下夘吉さん、当時の検事。これは第一次義勇団の引率者として行かれた検事の方で、今弁護士をやっています。横浜市金沢区の人ですね。これはあなた方の先輩として、聞かれればわかる。  それから小泉清太郎さん。これは森山保護局長と一緒に国会へ出入りしまして、皆さんと同じように国会で答弁などをするのに付き添われてこられた方で、東京都狛江市に住んでおります。  こういうところから法務省が調査されて、事情を聴取されて、次の私の質問にできるだけ資料を集めていただきたいというように思うわけです。  最後に法務大臣、中曽根さんはそういう資料は見せてもいいじゃないかと予算委員会で言っているのですよ。だから、資料はないとは言ってないのですよ。あなたとは答弁が違いますけれども、中曽根さんが参議院の予算委員会でそういう答弁をしておることを申し上げておきます。  結局、こういうことをもっとまじめに資料を収集し、そして今苦しんでおられる治安維持法の多くの犠牲者、青春をそういう牢獄で暮らし、あるいは警察や憲兵、スパイにつきまとわれ、人間としての存在すら認められなかった人たちにどうしても――この人たちは先見の明があって、新しい憲法でこれは人類普遍の原理であるとまで言っている戦争はしない、それから主権は国民にある、代議制を確立するということを唱えていた、むしろ本当に新しい今の憲法と世の中をつくる先駆者だったと思うのですね。だから、その人たちにどうしても報いてやらなければいかぬと思うのですよ。  もしそれを明らかにしないということになれば、あなた方は治安維持法のあの残虐な行為に協力し、それを今もって隠している、そう言われても――笑っているから結構ですよ。笑うほどあなたが考えているなら結構です。笑うくらいなら、ここでひとつその実態を明らかにすることに努力してもらいたい。それでなければ、治安維持法体制に協力するんだということを私が言っても言い過ぎでない。殊に、政党法というようなことを検討しているということになれば、これは捨ておきがたいことです。ですから、ひとつ調べていただいて、この次に私また質問いたしますから、できるだけのことをして答えるようにしてもらいたいと思うわけです。  これは、何十万という治安維持法の犠牲者に対して新しい憲法下における法務当局がこたえる道だと思うのです。新しい民主的な態度だと思いますので、大臣、それについてどうお考えになりますか。できるだけのことをしてみますか。行けなければ、お求めになってくれば私の方から材料を提供しますよ。犠牲者の人たちがみんな必死になって資料を集めているのですから、それは法務省よりもっと真剣ですよ、自分の生涯の仕事として。だから、どうですか、この次に私また質問しますので、できるだけのことはしますか。大臣にお聞きします。
  182. 住栄作

    ○住国務大臣 調査する、しない、そのことが直ちに治安維持法どうだこうだという体制に結びつくとは私は決して思っておりません。  しかし、私もそういう文書が法務省に残っておるか早速調べさせたことも事実でございますし、法務省の諸君もいろいろ苦労して当たってくれたことも事実でございます。まず公文書の存在を確認する、関係の書類があるかどうかはっきりさせようとしたのでございますが、それは不可能というか、なかった。今、総理がそういう文書があれば見せればいいじゃないか、私は、あれば決して隠す必要も何もないことだと思っております。ただ、官邸の方にそういう書類が残っておるかどうか、ここまでは確かめませんでした。ですから、それは自信がございません。しかし、法務省に関係の文書は残念ながらなかった、これもまた事実でございます。  そうした当時の関係者、今おっしゃいましたように、山下さんだとか早川さんが現存しておられる。この方がどれだけ協力していただけるかどうか、それから、役所の方でそこへお伺いして聞き取るかどうか、教えてもらうかどうか、こういうことにつきましてはさらに相談いたしまして、できるだけやってみたいと思います。
  183. 林百郎

    ○林(百)委員 吉田保護局長、あなたも一体どういうことをされたのか、探したけれどもなかったというだけで、私は納得できないと思いますよ。だから、またこれは質問しますから、どういうところをどういうようにやったらなかったのか。あるいは、大臣も今、関係者がもし存命中ならば、どういう形か知らないけれども、行って当時の記憶をお聞きするようなことも相談してみますと言っていますから、そのことについても、どういうようなことが行われ、どういうことが討論されたのか、またお聞きするつもりですから、あなたもひとつ、今大臣の言われた趣旨に沿ってできるだけのことをしてもらいたいと思うが、どうですか。
  184. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 現在なくなった点については、終戦直後にどうも廃棄、焼却されたらしいということを伝え聞いております。恐らくそのためだと思いますが、全く資料はないということでありまして、あとは大臣のおっしゃったとおりであります。
  185. 林百郎

    ○林(百)委員 それで、私の発言で一つ訂正をしておきたいことがあります。  四月十八日、私が当委員会で質問した際に、谷川和穗前衆議院議員の政治団体から河本敏夫衆議院議員の政治団体に寄附がなされたと言いましたが、事実は、河本氏の政治団体から谷川氏の政治団体へ寄附がなされています。これは逆でありましたので、訂正しておきます。  それじゃ、これで私の質問を終わります。
  186. 宮崎茂一

    宮崎委員長 次回は、来る十一日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十分散会