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1984-04-20 第101回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 宮崎 茂一君    理事 太田 誠一君 理事 高村 正彦君    理事 森   清君 理事 天野  等君    理事 稲葉 誠一君 理事 石田幸四郎君       井出一太郎君    伊吹 文明君       上村千一郎君    衛藤征士郎君       大西 正男君    熊川 次男君       鈴木 宗男君    高鳥  修君       谷垣 禎一君    丹羽 雄哉君       長谷川 峻君    小澤 克介君       佐藤 観樹君    土井たか子君       広瀬 秀吉君    山口 鶴男君       山花 貞夫君    神崎 武法君       中村  巖君    伊藤 昌弘君       野間 友一君    林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 住  栄作君  出席政府委員         法務大臣官房長 根岸 重治君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         外務大臣官房長 枝村 純郎君  委員外出席者         議     員 稲葉 誠一君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ————————————— 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     田澤 吉郎君 同日  辞任         補欠選任   田澤 吉郎君     上村千一郎君 同月二十日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     伊吹 文明君   加藤 紘一君     丹羽 雄哉君   丹羽 兵助君     鈴木 宗男君   山口 鶴男君     土井たか子君 同日  辞任         補欠選任   伊吹 文明君     江藤 隆美君   鈴木 宗男君     丹羽 兵助君   丹羽 雄哉君     加藤 紘一君   土井たか子君     山口 鶴男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五六号)  外国人登録法の一部を改正する法律案稲葉誠  一君外七名提出衆法第二一号)      ————◇—————
  2. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  3. 土井たか子

    土井委員 きょうは、一時間という質問時間が与えられたわけですから、その中で少し論点を絞ってお尋ねを進めてみたいと存じます。  まず、父系優先血統主義現行国籍法がその立場をとっているわけですが、この父系優先血統主義というのは現在でも憲法違反疑いはないという御見解法務省としては持ち続けていらっしゃるかどうか、このあたりをはっきりお聞かせをいただきたいのです。  実は、これに対しての審議というのを今までのところ大体一九七七年以後積み重ねてまいりまして、幾たびかにわたって私はその論点お尋ねを進めてきたのですが、どうも釈然としないのです。憲法違反ではございませんと言われるのですが、では、どういうわけ憲法違反でないかというふうな理由お尋ねしてみますと、その理由については一通りではないようでありますけれども、要するに、結論からいうと憲法違反にあらずという結論になるわけでございまして、どうもそのあたり釈然としないので、もう一たびここではっきりさせておきたいと思いますが、まずその点、いかがでございますか。
  4. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私どもは、結論といたしますと、現時点におきましても現行国籍法父系血統主義憲法に明白に違反するという見解には立っておりません。  ただ、現行法の制定の年からいろいろな情勢変化をしてまいりまして、父系血統主義一つ合理性であるところの国籍唯一原則を守るという、そういう考え方が、他国におきまして父母系血統主義に変わってきたということから維持しがたくなってきたという面もございます。それから、両性の平等という物の考え方が年とともに大分変わってきたというようなことから、現在の国籍法憲法違反するのではないかという疑いが出てくるというような指摘もかなり出るようになってまいりました。  そういうふうなことを考慮いたしまして、憲法精神に、少し何といいましょうか改正した方がむしろ合致するという面があるだろうというような考え方は持っておりますけれども、明白に現行法父系血統主義憲法違反するという考え方は持っておらないわけでございます。
  5. 土井たか子

    土井委員 非常に歯切れが悪いですね。そういうのを持って出たら、外ではわからないですよ。憲法精神違反するというふうな考え方もあるけれどもというのは、それは一体どういうことなんですか。先ほどずっと御説明になったのは事実に対する認識の問題であって、憲法に対する解釈ではないのです。事実に対する認識をすなわち憲法のところに当てはめて持ってきて、そして憲法をそれによって変遷させていくというのはもってのほかであると私は考えている立場なんですが、事実認識憲法解釈は違うでしょう。憲法が変わらない限り憲法に対する解釈も変わらないはずですよ。  そういうことからすると、怪しげな御発言が最近目立つものだから、私は特にその点をはっきりさせておかなければならないという気持ちになっているのです。もう一度はっきり言ってください。今のはわからないです。
  6. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私ども結論としては憲法違反するものではないという考え方を持っております。ただ、憲法のもとにおきまして国籍の定め方といいますか、それは「法律の定めるところによる。」ということにしておるわけでございますが、その国籍法を制定するといいますか、国籍法立法政策としてどういうものが望ましいかという観点におきまして、先ほど申し上げましたようないろいろな事実の変更というか、そういうものが今度の法改正を選ぶということの裏づけになるような情勢変化があるという認識でございます。
  7. 土井たか子

    土井委員 立法政策については確かに事実に対しての認識も必要でしょう。でも立法政策ということを考えてまいります場合に、言うまでもなく日本法治国家でございますから、したがって、その法規範体系というものがどうしても必要になってまいります。その法規範体系の基礎をなす部分というのは、これは憲法じゃないですか。法規範を形成しているもの、可能にしている基本的な部分、根本的な部分というのは、これは憲法でしょう。そうすると、今おっしゃった立法政策上も、憲法でこれについて関係する部分があるならば、そこをどういうふうに解釈するかによって立法政策も進められなければならない、こうなってくるのですよ。  憲法十四条、二十四条というのはどういうふうに規定していますか。性別によって差別されてはならない、「法の下に平等であって」という前提でそのことをはっきり明記しているんじゃないですか。二十四条が家庭生活においても個人尊厳性と平等の原則というのを明記しているんじゃないですか。いかがでございますか。
  8. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 憲法におきまして両性の平等がうたわれておるということは、おっしゃるとおりでございます。
  9. 土井たか子

    土井委員 そうすると、今の父系優先血統主義というのは両性の平等に反しない、結論としたら、法務省としてはそのようにお考えにならないと先ほど来の立論はどうも成り立たない、相変わらずそのように法務省としては考えて今日に至られているわけですね。
  10. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 現行父系血統主義両性の平等というものに真正面から反して、そして憲法違反になるということは考えておりません。
  11. 土井たか子

    土井委員 そこのところがどうもよくわからないのですね。  今まで歴代の法務大臣にその点をお尋ねをしていきますと、例えば一九七七年三月十二日衆議院予算委員会第一分科会で私が質問をさせていただいたときに、御答弁では、憲法現実との間に陥落があることは決していいことではないから、これを是正するために努力しなければならないという御発言があるのです。  また、一九八一年二月二十六日、昭和五十六年ですが、衆議院予算委員会奥野法務大臣は、  「現行憲法は、男女の法のもとにおける平等でありますとか、あるいは「個人尊厳両性の本質的平等」と明記されているわけでございます。」これは今の話のとおりなんですね。「ただ、国籍につきましては、御承知のように「法律の定めるところによる。」ということになっておりますので、いささかその点について、憲法精神と若干疑問を持たれる点があるわけでございます。」このように言われているのです。したがって、現行国籍法について憲法違反のおそれなしとしない、こういう御発言法務大臣のお口から出ているわけでありますけれども法務省当局とされてはそれとは違ったお考えでいらっしゃる、こうなるわけですね。大臣とは違うお考えだ、それでいいんですか。
  12. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私どもは、最終結論といたしますと、現時点において現行国籍法憲法違反するものではないという考え方は明らかに持っておるわけでございます。
  13. 土井たか子

    土井委員 そういうことを言われてもちょっとよくわからないのは、先日、四月六日に星野参考人から当法務委員会で、現時点では違憲疑いが強くなっているというふうな御発言があったはずであります。局長も、四月十七日、この席での御質問お答えになって、同様の意見をお述べになっているようであります。ただいまの御発言は、それから考えるとまたニュアンスが違うのです。一体どっちを信用すればいいのですか。
  14. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私はあくまでも、先ほど申し上げましたように、現行法憲法違反するという見解を持っておるわけではございませんが、その立法政策といたしますと、最近星野参考人が言われましたように、事情変更によって憲法違反疑いが濃くなってきたという声が多くなっておる、そういうことも一つの国民の意識の問題、認識の問題としては重視しなければならない問題だろうということが、今度の法改正のような方向立法政策をとるのが相当だという一つ根拠になり得る、そういうことを頭に入れて今度の改正案を作成したということで申し上げたつもりでございます。
  15. 土井たか子

    土井委員 厳密に、憲法に対する解釈と、そして今おっしゃったような客観的な条件がどのようになっているかという問題とは、これは違うのです。事情の推移というのがどのようになっているかということに対する認識、これはまた違うのですよ。それを混同して、立法の上ではどういうふうにお考えになっていらっしゃるかということを問いただせば問いただすほど何だかわけのわからないような御答弁になってきているのです。しかし、よく聞いてみると、憲法には違反はしていないけれども、以前と比べると現状が大分変わってきているから、変わってきていることに従って今度は国籍法改正をするということになったのだ、こうなるわけですね。そうなんでしょう。  その事情が変わったということの中には、今度の婦人差別撤廃条約に対して批准をしなければならないという要件もあるのですか。よくわからないけれども、そういうことも含んで考えていらっしゃるのですか。どうなんです。
  16. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 婦人差別撤廃条約について我が国署名をした、また国際的にもそういう条約を締結すべきであるということがあったということは、これは一つ立法政策を選ぶにつきましての重要な要素になることは当然でございます。
  17. 土井たか子

    土井委員 それは、今回の提案理由説明の中にも述べてありますから、「女子に対する差別撤廃に関する条約批准に備えるため、国籍法の一部を改正するとともに」という文言がここにございますから、今おっしゃったことがそうだと思うのですけれどもね。そうすると、現行国籍法ということに対する認識、そしてこの法を改めなければならないという根拠、これは少なくともこの婦人差別撤廃条約批准しなければならないという一つ要件がある、したがって今回改正する、こういうことが動かしがたい厳然たる事実なんですね。これははっきり言えましょう。  そこで、ちょっと申し上げたいのですけれども、そうすると、現行国籍法は、先ほどお尋ねを進めたとおりで、憲法には違反しない、これが法務省のお考えだ。しかし、条約批准せんがために現行国籍法に対して手を染めなければならない。つづめて申しますと、法務省条約優位のお立場なんですか。
  18. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 別に条約優位の原則だからといってそういうふうに考えておるわけではございません。もちろんまだ条約批准しているわけではございませんので、そういう意味では、まだ現時点においては条約優位という法律関係には立っておらないと思います。  ただいま申し上げましたのは、そういう婦人差別撤廃条約を結んで、国籍に関して両性の平等をさらに貫こうという機運が国際的にも高まっておりますし、また我が国としてもそういう精神に賛同して、そして署名をしたという事実があるわけであります。そういうことが今度の国籍法改正する際の立法政策のとるべき方向としては重要なファクターになるという意味先ほど答弁申し上げた次第でございます。
  19. 土井たか子

    土井委員 今、日本はまだ批准はしておりませんけれども、御承知のとおりに、この条約は既に発効いたしております。日本批准するかしないかにかかわらず、発効しているのです。もう国際法として成立しているのですよ。その国際法に対する認識があって、その条約に対する認識があって、今回はこの日本国内法であるところの国籍法を一部改正するという格好になるのじゃないですか。  逆に申しますと、この条約批准するという必要を日本が感じなかったら果たして国籍法改正に踏み切ったでしょうか。なかなかそうはいかなかったのじゃないかということも言えます。これは、この提案理由説明を読んだって、そういうことがちゃんとにじみ出ているんだから。いかがですか。
  20. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 我が国といたしましては、条約署名をいたしまして、したがって、そのような方向で行くということが一つ国家方向として決められているわけでございます。私どもとしましては、そういう方向に従って批准に備えるための法改正をしなければならないということが一つ動機であったことは間違いないわけでございます。
  21. 土井たか子

    土井委員 そうすると、国家方向として決められていると今おっしゃった。その物の考え方というのは、憲法違反じゃないのにこの法律改正しなければならないというのは、その条約に照らし合わせて改正しなければならないという条文があるからでしょうが、第九条という条文が。憲法違反じゃないけれども、今回は改正せざるを得ない。それは条約に照らして改正せざるを得ない。つまり、条約から発想して今回は改正に踏み切る、こういう動機があるわけですよ。それがいわば根拠になっているのです。条約優位の立場をとらないと先ほど言われましたけれども考え方としてはそうなるのじゃないですか。考え方とすればそうなるのじゃないですか。どうです。
  22. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 法律的な意味で、条約といいますか、先ほどおっしゃいましたような国際的な事柄に縛られてということは考えておりません。ただ、我が国がそういう条約署名をするということの考え方から、現行国籍法は適当でないので、それが男女の平等という面で改めるべきであるということが方向づけられたことは間違いないわけで、そういうふうなことから、私ども国籍法改正をすべきである、それからまた、その条約署名をして批准方向に行くべきでありますので、それに時間的にも合わせてということをタイミング的にも考えなければいけないだろうということが今回の立法作業を始めるに至った根拠になるわけでございます。
  23. 土井たか子

    土井委員 そうすると、その条約からして今の国籍法を変えることが憲法条文からしてどうなんです。この条約日本国憲法は矛盾するか、矛盾しないか、この点はどうなんですか。
  24. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 この条約批准されました場合に、それと憲法とが矛盾しないかどうかということになりますと、それは矛盾するところはもちろんないと思います。
  25. 土井たか子

    土井委員 どういうわけでですか。この現行国籍法憲法違反じゃないんだけれども変えなければならないというのは、条約に照らして変えなければならないということを先ほど認めになったんだけれども、したがって、そういう観点からすると、憲法違反でないということになっているその憲法条文というのをこの条約に照らし合わせた場合に、憲法の方が条約よりもおくれているという格好になるわけですか、言葉をかえて言えば。
  26. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 おくれているとか進んでいるとかということではございませんで、現行法憲法違反しないからといって、それでは現行法改正することが逆に憲法違反になるということはないわけでありまして……(土井委員「ちょっと意味がわからない、今おっしゃっているのは」と呼ぶ)何といいましょうか、現行法憲法違反しないということを私は申し上げたわけです。そうだからといって、婦人差別撤廃条約考え方に従って国籍法改正したからといって、これもまた合憲である、憲法違反しないと思っている。ですから、要するに、条約憲法というものは矛盾するものではないわけでありまして……。
  27. 土井たか子

    土井委員 そうすると、条約からして今回は国籍法改正しなければならない、こうなったのですが、憲法から考えると、必ずしも国籍法改正する必要なし、こうなるわけですね。その間の矛盾というのが少しありはしませんか。
  28. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 要するに、憲法国籍については法律で定めるというふうにしてありまして、その立法政策一つの幅があるわけでございますね。その幅の中で現行法も位置づけられておると私ども理解をしているというふうに先ほど申し上げたのです。今度の婦人差別撤廃条約に基づく国籍法改正も、要するに法律で定めるというふうにしている幅の中にある、したがって立法政策のとり方の問題である、したがって憲法違反とか合憲だとかということは、特にそういう問題ではないというふうに考えているわけです。
  29. 土井たか子

    土井委員 いみじくも、立法政策に幅があると今言われた。国籍法律の定めるところによるということが憲法上規定されておりますから、法律を定めるときに立法政策上幅があるということに、もう一度申し上げると、なるわけでございますね。だから、立法上の幅があるという中身を、経過を私は先ほど来ずっと申し上げたのだけれども、当初法務省としては憲法の十四条、二十四条という条文から見ても、これは憲法違反ではないという理解を持ってこられたけれども、最近はいろいろな事情変化に応じて現時点では違憲疑いが強くなってきているということも考えられているという格好なんですね。  つまり、憲法十四条とか二十四条じゃなくて、現実のいろいろな物事の動きから、立法政策国籍法に対して改正をやることを憲法精神から見て問われているのではないか、こうなるのだ、つづめて言うとこういう格好になるのですか。ようわからぬですけれども
  30. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 繰り返して申し上げますと、合憲の範囲内で立法政策選択の幅というものが当然あるわけでございます。その中で、現行法ももちろんその幅の中に入っておるということでございますが、今度の改正につきましては、その婦人差別撤廃条約考え方、そういうふうなことが一つの国際的に高まってきている機運であり、また、日本の国としてもそういう方向に行こうという姿勢が打ち出されておる。それからまた、国際結婚が非常に広く行われるようになったというふうな客観的な事情変更等々を考え合わせますと、今度のような改正案といいますか、父母系血統主義に改めるということの方が立法政策としては妥当である。したがって、その与えられた立法政策の幅の中で今度の改正をしよう、そういう考え方に立つものでございます。
  31. 土井たか子

    土井委員 もう既に法案としては経過措置ということをきちっと用意されておるから、問題は、これを詰めていくとそこに触れるのでなるべく触れたくない、だから、憲法解釈ということを私が問い詰めても憲法解釈としては一切お答えにならない、万事立法政策でございます、こうなっちゃうのですね。そこのところのまやかしというのは後々法務省にツケが回りますよ、はっきりなさらないと。  憲法解釈としてもやはり変遷があるのですよ。法務省姿勢とすれば、当初かたくなに憲法十四条にも違反しない、二十四条にも違反しない、こうおっしゃったことが、最近はだんだん、疑いのおそれが強くなってまいっておりますということもお認めになっておりますのは、やはり婦人差別撤廃条約の第九条から推して考えていくと、具体的に国籍法改正方向に向けて憲法との間でこれをどう考えるかという避けて通れない問題が出てくる。そうすると、立法政策幾ら幅があるといったって、十四条、二十四条からどういうふうに考えていったらいいかという解釈観点にどうしてもいかざるを得ない。本来のこの解釈に対しては、違反のおそれが従来に比べると疑いが強くなってきているということを言わざるを得ないのは、やはり今回の条約批准に向けてという大前提があるからだということははっきり申し上げることができるのではないかと思うのです。それはお認めになりますね。以前、人権規約のときにも、これは憲法違反じゃないとおっしゃった。児童憲章のときにも憲法違反じゃないとおっしゃったのだけれども、今度は第九条で明記の規定が条約にあるものですから、とうとう避けて通れなくなってここまで来てしまったという格好だろうと思うのです。  はっきり申し上げますと、明確に当初から、憲法十四条や二十四条から考えると現行国籍法というのは憲法違反疑いがございます、憲法から推して文言を正確に読めば確かに現行国籍法というのはおかしい法律でありますということをおっしゃれば、そんな無理な苦労説明をなさらなくても済む問題だと私は思うのだけれども、今まで大変な苦労と、何だか聞いておってもわけのわからぬ説明をいろいろエネルギーを消耗しておやりにならなければならない、おかしな話だと私は思うのですよ。今の経過措置に対して、法律案が既にあるものですからお答えしにくいでしょうが、いや憲法違反でございますとこれについてお認めになれば、それをひっくり返さなければならなくなるものだから。しかし、私が今申し上げたような経緯からすると、憲法違反のおそれが強くなっているということだけは現実の問題として法務省はお認めになっているというふうに私は客観的に認識できると思います。それはそのように認識させていただいてよろしいですね。
  32. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私ども立場は、先ほど来繰り返し申し上げているように、現行法憲法違反ではないということでございます。
  33. 土井たか子

    土井委員 あなたは何遍同じような答弁をするのですか。私はそういうことに対してわかった上で質問しているのですよ。よろしいか。質問に対して誠実に答えてもらわなくちゃならぬ。今、私が言っているのは、順を追って、法務省現時点では違憲疑いが強くなっているという現実現行国籍法に対してお認めになっていますね、簡単に言えばそういう質問をしているのです。今の御答弁じゃ困ります。いかがですか。
  34. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私どもは、先ほど来繰り返して申し上げておりますように憲法違反ではないと思っておりますけれども、学者の方々の中にもだんだんと憲法違反疑いが濃くなってきたというふうなことを言われる方もおります。そういうふうな方々の声も一つ国籍法改正の場合の選択の幅の中では考慮する必要があるであろう。それは具体的に申し上げますと、両性の平等という理念を国籍法の中でいろいろな政策選択する場合も相当尊重して考える必要はあるであろうというような点では考慮しておるつもりでございます。
  35. 土井たか子

    土井委員 その考慮をわざわざしなければならないというところはどこに根拠があるのですか。それは今の条約もさることながら、憲法両性の平等というのがちゃんとうたい込まれているじゃないですか。それに対する配慮なくして何ですか。国籍法というのは日本国内法でしょう。国内法の根本法というのは憲法ですよ。そういうことを見逃して考えていただいたんじゃ困るので、ちゃんとわかっていて答弁ではいかに言い逃れをしようかという努力をなさるから、大変無理な御答弁になってくるのです。先ほどからちょっと困ったような顔つきでにやにや笑われますけれども、それは本当に困っておられるのだろうと思う。だけれども、あなた、そこのところははっきり一言ぐらいはお答えなさいよ、ここまで来れば。どうですか、その辺ははっきりおっしゃらないと。だから、わざわざ私が、現時点では違憲疑いが強くなっているという認識に対して同調されますねとまであえて言っているのですよ。
  36. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 先ほど申し上げましたが、要するに現時点では違憲疑いが濃くなっておるという、そういうことを言われます説については、私どもは耳を傾けるべきであるという考え方は持っております。
  37. 土井たか子

    土井委員 さあ、ここで法務大臣に申し上げます。今の御答弁をお聞きになっていてどうお思いになりますか。そういう学説がある、そういう判例もある、そういうことに耳を傾けなければならぬと思う、こんな主体性のない話はないのです。少なくとも日本の国の法務省でしょうが。こういうふうな説がある、ああいうことを言う人があるということに対しては、知っておりますというような答弁なんです。法務省はどうなんです。法務大臣いかがでございますか。
  38. 住栄作

    ○住国務大臣 現行国籍法憲法との関係においてどうだ、先ほど来それをめぐって議論が行われたわけでございますけれども答弁申し上げておりますように、現行国籍法憲法に抵触するものではない。こういうことは日本国民たるの要件は法で定める、日本国民をどうして選ぶかということについては父系血統主義という基準をとっておる、その基準が男女平等の原則に反するかどうか、こういうことにつきましては、私ども法を所管する立場からは、この法律憲法違反するものではない、従来一貫してとっておったと思うのです。それが果たして本当にそうなのだろうか。こういうことについてはいろいろの意見があったということはもちろん否定できないところでございます。個々の憲法条文についていろいろな解釈、学説、判例が——判例は別ですが、あるということも事実でございますから、そのこと自体は私は否定してはいかぬ、しかし、法を所管する立場では憲法違反するものではない、こういう従来の立場であったと思うのです。  それが果たして妥当であったかどうか、こういうことでございますけれども、それは疑いのあるようなことは消していった方がいい。特に婦人差別撤廃条約、これは明瞭に第九条に国籍の取得に関して男女差を設けるのはおかしい、こういうことを指摘しておるわけですから、憲法条約とどちらがどうだということは離れまして、そういう指摘がある。しかもその条約について日本署名をしておる、来年は国連婦人十年の最終年でございますから、ぜひこれを批准したい、そのためにはやはり必要な国内法の整備をしなければならないというようなこと。何も婦人差別撤廃条約はことし、去年にできたわけではない、昭和五十四年に採択されたのです。そこらあたりから私どもはそういうように真剣に検討をしてきておったわけですね。  だから、ちょうどその批准ということも控えておりますし、それから国際化ということも随分進んでおりますし、これは当然条約批准をするためには明確に規定しておかないといかぬだろう、こういうようなこともありまして、今度の国籍法改正に踏み切った、こういうことでございますから、それはいろいろ憲法解釈その他については議論があったということは決して否定するものではないし、それが間違いとか正しいとかということでもないと私は思うのです。
  39. 土井たか子

    土井委員 今の大臣の御答弁の中には、憲法に対して違反しているのではないかという疑いを抱かれるような問題に対しては、疑いを晴らしておくということも大事であるからというニュアンスがそのお言葉の中ににじんでおりますから、したがって違憲疑いが強く持たれる実情からして、強いられるようになってきたというふうなことが現状認識としてあるという御発言であろうと思うのです。憲法違反かどうかということについては、これは憲法違反でないということをおっしゃりながらそれをおっしゃるわけですから、結論としては非常に歯切れの悪い話になってしまうわけです。  そこで、ちょっとお尋ねいたしますけれども、どうも違憲疑いがだんだん強くなってきているということに対して、法務省がおっしゃるのは父系優先血統主義のどういう点なんですか。
  40. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 父系血統主義をとりますと、申すまでもなく母親が日本人である場合も日本国籍を取得しない。しかし、生活実態といたしますと、母親と子供さんとが一緒の国籍であった方がいいというような一つの実態があるわけでございます。そういうふうな面が父系血統主義をとるととられなくなるという意味では、両性の平等に反するのではないかというようなことが違憲諭の中には出てくるわけでございます。
  41. 土井たか子

    土井委員 その両性の平等に反するのではないかという意見を、法務省としてはそのようにお認めになっているわけですね。
  42. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 そのような考え方根拠理解できるところである、ただそれが憲法違反になるかどうかという点については見解を異にいたしますけれども、そのような事柄はひとつ尊重しなければいけない要素だろうということは十分に考えておるところでございます。
  43. 土井たか子

    土井委員 そうすると、これは繰り返しのような質問になりますから、大変時間の制約があるので、お尋ねすることにちょっと抵抗を感じながら、しかし、私はそれでも大事なことだからお尋ねをしたいと思いますが、昭和五十六年三月三十日に現行国籍法に対して違憲であるということの訴訟がなされて、東京地裁で判決が出たことを局長はよく御存じだと思うのですが、その判決の中にこういう部分があるのです。  「(国籍法第二条の父系優先主義は)単に抽象的に日本国籍取得の基準を母の国籍ではなく父の国籍に求めたというにとどまらず、これを子の立場からみれば、両親の一方のみを日本人とする子の中で日本人親の性別のいかんにより日本人母をもつ子を日本人父をもつ子に対して差別することであるとともに、親の立場からみても、日本人父は常に子と国籍を同じくすることができるのに対し、日本人母は原則としてそれが認められず実質的不利益を受けることがあるという点で、子との関係における父母相互の地位に差別を設けるものであるといわなければならない」、こうなっているのです。この判決についてどういうふうにお思いになりますか。  裁判の判決に対してのいろいろ批判がましい見解というのは避けたいというふうにお思いになるかもしれませんけれども、これを客観的な一つ見解というふうにお受けとめいただいて、どういうふうにお思いになりますか。
  44. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 差別ということについては若干のニュアンスを異にいたしますけれども、そういう取り扱いといいますか、法律的な効果の違いが出てくるということは、これは事実でございます。そして、そのような状態が望ましくないというような判決の指摘につきましては、私どもも十分に理解できるところだろうというふうに考えております。
  45. 土井たか子

    土井委員 そういうふうにおっしゃることが今回の法律案を立案される節の立法趣旨の中にどういうふうに生かされたのですか。提案の理由説明を読んでみても、そういうニュアンスはどこにもないのですね。そういうお考えがあるということは非常に大事だと思うのです、今回の立法に当たって。そういうお考えがさらに法案の中のどこの部分にどのようににじんでいるのですか。これもないのですね。今のことは非常に大事だと思うのだけれども、今回の改正に向けて、今申し上げたとおり、どういうふうに提案理由説明の中で披瀝されているか、法案の法文の中に出されているか。これはいかがですか。
  46. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 提案理由の中には、いわゆる婦人差別撤廃条約批准に備えてというところにそのことを表現されていると思います。条文の中といたしますと、申し上げるまでもなく、国籍法の二条の一号の改正父母系血統主義をとるというところにそのことが一番あらわれているところだと思います。
  47. 土井たか子

    土井委員 それは条文そのものについては端的にそうでしょう。でも、そういうことについての、やはり二条を改めるということのいきさつについて、法務省のお考えというのが那辺にあるかというのは、今まで質問して御答弁の形で議事録になって残りますから、それを読む方にはわかるわけですけれども、提案趣旨説明の中を読んでも、どうもちょっとにじんでないのです。  それから、今おっしゃった、二条を見ればよくわかるじゃないかとおっしゃれば、それは確かに母という一字が入るという意味は大きいですから、したがって、それは以前になかったものがここに入れられて効果はあった、これでございますと言ったらそれで済むかもしれませんが、なぜそうなるのかというところが、そのものずばりで、それだけではわからないですよ。なぜそうなったのかというところを、きょうは今まで時間をかけていろいろ聞いているわけです、法務省のそれなりのお考えを。それはこの法律全体に意味として及ぶから。国籍法の物の考え方全体をいわば取り仕切る問題意識だと私は思うから、ここでこのように今まで聞いてきているわけなんです。ちょっとその辺が提案理由説明の中には盛られていないように思います。大臣、いかがでございますか。
  48. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 法律の中に改正理由みたいなものを盛り込むということは実際上不可能でございますので、ただ父系血統主義父母系血統主義に改められるということは、当然母と子との間に同じ国籍であるということが生活実態上望ましい、父だけということではぐあいが悪くなったんだということはおのずから改正というところでにじみ出てくることではないかと思います。
  49. 土井たか子

    土井委員 おのずと改正と言ったって、改正に向けてなぜこういう部分のこういう改正が必要だったのかということの趣旨と申しますか、よって立つ立場と申しますか、物の考え方と申しますか、それは改正をしたということを見たらわかるじゃないかというのではちょっと違いやしませんか。その辺はちょっとやはり提案理由説明ですね、これを見ましてもわからない。せっかくのきょうの御答弁なんか承っている中身というのがもう一つにじみ出ておりませんから、きょうはその御答弁の中身を多としたいというふうな思いをも込めて今申し上げているわけですが、大臣、その点いかがでございます。
  50. 住栄作

    ○住国務大臣 提案の説明においてそのニュアンスが出ているかどうかということはいろいろのとり方があるだろうと思うのでございますけれども先ほども申し上げましたように、そういういろんなことを考えて御提案をしたわけでございます。それが入っていないのはけしからぬ、こういうようなおしかりでございますけれども、それは全部尽くせない点もあるわけでございまして、その点については先ほどお答え申し上げているとおりでございます。
  51. 土井たか子

    土井委員 しかし、物の考え方からすると、両性平等の見地から今回の改正は適当とするというふうなお考えがあって、それで今度の改正についてこの立法政策をなされたというふうなことがただいまの御答弁でわかるわけなんですが、その父系優先血統主義が今度は両系主義へ改正をされるということに伴って、経過措置として附則五条というところを見ますと、二十年間の遡及がここで問題になるわけなんですね。先ほど憲法に対する解釈ということについて聞いてみると、憲法違反ではないということが解釈上ははっきり言えるけれども現時点では以前と違ってだんだん憲法違反疑いが濃いということに対する認識はお持ちになっていらっしゃるわけなんです。だから、そういうことからすると、これはやはり本来は憲法施行時までさかのぼらせるべきだというふうに、私はこの経過措置に対して思っている立場の人間です。  したがって、そういうことからすると、特に気にかかるのは、もう既に稲葉議員の方からも御質問があった部分でありますけれども、沖縄の成人以上の無国籍者、これはもう既に何回となく取り上げられております。もう一つ、これは外国籍の人について、権利の救済にとって憲法施行時までさかのぼって考えるという物の考え方が不可欠だと思うのですが、これは後でこの外国籍の人についてこういう例があることをどのように取り扱われるかということを聞きたいと思っておりますけれども、何か権利の救済にとって憲法施行時にさかのぼるということに不都合があるのでしょうか。ちょっとその点をまず聞かせておいてください。
  52. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 附則の五条は、外国籍を有すると否とを問わず、あえて申しますと米国籍その他の国籍を持っている者も、それから無国籍の者も、未成年である限りは意思表示によって日本国籍を取得することができるということにいたしておるわけでございます。これを未成年者に限らずにさらにさかのぼる方策をとりますと、既に日本国籍を有しない者として社会の中で長年生活をしておられるという実態があるわけでございます。そういうような方々について当然取得というようにすることはかなり問題があるだろう。  それから今度の国籍法の中にもいろんな制度ができておりますけれども、それはいずれも未成年者の間は、二重国籍等の問題が生じても、これは余り弊害が顕著に出てくるものではないというようなことが一つあるわけでございます。そういうふうな観点からいたしますと、成人に達した者にまで及ぼすということになりますと、これはいろいろ問題が生ずるので、個別的にもし日本国籍を取得したいという方があれば帰化によって処理をすることが適当であろう、そういう考え方でございます。  したがいまして、弊害と申しますと、古くさかのぼればさかのぼるほどいろいろ国籍の問題としても大きな問題が出てくるだろう。殊に、従来の当委員会でも御説明申し上げているところでございますけれども、平和条約以前にさかのぼるということになりますと、平和条約の発効のときまで日本国籍を有していたということになるところの朝鮮戸籍あるいは台湾戸籍に入っておられた方々についても一つ要件を持つということになりますので、そういうようなことは、今度の附則五条の考え方とは異質のものが入ってくるという可能性がある、そういうふうな問題もあるということを指摘しておる次第でございます。
  53. 土井たか子

    土井委員 それは今までの再々にわたる御質問に対する御答弁の中でも出てきたのです。  ところで、ちょっと申し上げたいのは、沖縄の無国籍、外国籍の人々の権利としての日本国籍取得というのは、憲法両性平等原理の導入ということと並ぶ重大な国籍法改正理由になったのではないかと私は思っているのです。現行国籍法の大きな欠陥が、実は沖縄の方に集約されたような形で出てきたということも言えるのではなかろうかと私は思っているわけです。  御案内のとおり、日米安保体制の中で犠牲となって沖縄には無国籍者、それから形骸的な外国籍を持つために、日本人を母として沖縄県で生まれて沖縄で育って日本社会から一歩も外へ出ることのできない人々に日本国籍を取得する道を外してきたという実態があるわけなんです。だから、先ほど局長が御答弁になった前段のところが、ちょっとこういう実態については当てはまらない御答弁だったと思いますよ。この人々のきょうまで経験された苦労というのは、先日、瀧岡参考人がここの委員会に来られて具体的に述べられた中身として私たちは聞き知っているところなんです。  この沖縄の問題を初めて私どもが知ったのは昭和五十四年、一九七九年の三月だったのですが、ちょうどこの年の二月に私ども社会党が国籍法改正案を国会に提出して、そしてその提案を報じたジャパンタイムズ、新聞を見て当時の国際福祉沖縄事務所、現在の国際福祉相談所の事務局長であった大城安隆さんが私のところに直接電話してこられまして、この年はちょうど国際児童年であって、児童の人権と福祉の尊重ということが国連の提唱で国際的に進められていた年でもございましたから、一九七九年の年頭に当たって沖縄から出された「国際児童年に当たっての沖縄からの提言」ということをお知らせいただいたのですが、その第一に、沖縄の無国籍児の根本的解決のために、国籍法父系優先血統主義改正がうたわれていたのです。このときから、沖縄の子供たちの無権利状況の解決というのが、私たちに対して国籍法改正の作業を進める原点の一つになってきたということも現実の問題としてあるのです。  そして、今回の国籍法改正が現在の附則五条のような限定されたものということになりますと、父系優先血統主義の最大の犠牲者となってきた——日本においてはほかにも無国籍の方はたくさんいらっしゃるでしょうけれども、特に凝縮されたような形にある沖縄県の人々を取り残すことになるということは必定なんですね。今回の法の改正の意義は、極端に聞こえるかもしれませんけれども、半減すると言っても過言じゃないと私は思っている一人なんです、その点がはっきりしないと。一九七九年沖縄から提言があってから既に五年経過しているのです。そのとき十五歳だった人ももう二十歳ということになりますと、附則五条の二十歳の線引きではこの方々は対象から除外されるということにもなるわけなんです。相談所で申請中の者は現在ないというふうなことが、先日、瀧岡さんのお話から、また御質問がありまして出たりいたしておりますけれども、沖縄の場合、無国籍、それから外国籍で帰化を希望する人に対して線を引くのは実情に合わないという実態がもう一つあるということを私は申し上げたいと思います。  それともう一つ、それに先立って無国籍の人で現在帰化申請をしている人がないと言われたのは、それ以前、一年余りも帰化申請を一生懸命にやって、なかなからちが明かないうまく進展しないという人が、これはおかしな話でございまして、先日私が国会で質問した途端に帰化できたのです。どういうことかと言いたいのですよ。だから、そういうことからすれば、本当に法務省としたら人権をしっかり考えた上でいろいろな措置を取り扱っておられるのか。私は少しおかしい気がしてくるのです。そういうことを前置きにして申し上げさせていただいて、実は外国籍であって形骸化した外国籍を持っている人があるという実態を法務省としては掌握されているかどうか、この点いかがでございますか。
  54. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 沖縄には、法律論から申しますと外国籍を持っているけれども、それは実際上実効性がないというような国籍を持っておられる方、実質的な無国籍とも言えるような方がおられることは承知いたしております。
  55. 土井たか子

    土井委員 それはどういう方ですか。
  56. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 これはいわゆる未就籍児と言われる方でございまして、アメリカの男性と沖縄の女性の方が正式の婚姻をされて、そこで子供さんが生まれた。ところが、その父親になるアメリカの男性がアメリカ本土に帰るというようなことで行方がわからなくなっておるということのために、アメリカ側の領事館その他でその身分関係を証する書面を出してくれないというようなことから、実際上はアメリカの国籍が実効性のないものになっておるというようなケース等があると思います。
  57. 土井たか子

    土井委員 そういうケースもあるのです。それから婚姻外無国籍児というのもあるのですね。これは御承知のとおりで、外国人を父とし、日本人を母として嫡出子として出生をしたという子供があるということと同時に、今度はその外国人の父自身が転勤、退役、帰国などで事実上そこで母である日本人との間に夫婦関係がなくなってしまっている、その後、日本人母が離婚の手続ができないまま日本人の男性と事実上未婚の子を出生する関係になったというふうな場合に、その子供は日本国籍がなく、アメリカ国籍になるわけであります。こういうのは婚姻外無国籍児というふうに申し上げていいと思うのですけれども、このケースは非常に多いんじゃないでしょうか。ともにアメリカ国籍があるにもかかわらず、実態は形骸化した国籍だという意味においては中身は同じなんですね。こういう件数が非常に多いのです。  そういうことからいうと、外国籍といっても通常の国際結婚から生まれた子の外国籍と同じに扱うべきものじゃないのですね。極めて形骸化した外国籍であって、生活の実態は、しかし日本人であり、日本人の心を持って生活していると瀧岡参考人も強調されていたところなんです。沖縄の場合は、その実態から申しまして、無国籍、外国籍、それぞれの人たちはともに今ここに挙げているようなケースについては日本国籍のない者として取り扱うことが必要だと思われますけれども、いかがでございますか。
  58. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 それは国籍が問題になる事案についての適用の問題だと思いますけれども、私どもの帰化の立場から申しますと、全く米国側の方の証明書も何も発給されないような場合については、これは無国籍に準ずるというような形で対処していい場面もあろうかと思います。
  59. 土井たか子

    土井委員 そういう場面もあろうかということでなしに、原則的にこのような外国籍者はともに日本国籍でない者ということで取り扱いを進めるという姿勢をお持ちいただけませんか。これはやはり特異な現象と言わざるを得ないですよ。法務大臣先ほどからずっと申し上げてきたとおりの経緯があるわけですからね。いかがでございますか。
  60. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私どもも従来からそういう考え方でおりますし、また帰化の場合には米国籍を持っているということと、無国籍であるということとでは実際上の処理にそう大して違いはございません。と申しますのは、アメリカの場合には、日本国籍を志望によって取得すれば、アメリカの国籍はなくなるというのが原則でございますので、したがいまして、帰化の要件としては差異がないということになりますので、そこでいわば特段の違いを設けて扱っておるということはないつもりでおります。
  61. 土井たか子

    土井委員 今までそういうつもりでいらしても現実はなかなかそうはいってないという実態があるからこそ問題になるのでありまして、今後ひとつこれを機会に、今私が申し上げたような趣旨に従ってお考えをお進めいただくということをぜひともこの節お願いをしたいと思いますが、法務大臣、よろしゅうございますね。
  62. 住栄作

    ○住国務大臣 附則五条という問題もそういう事態を念頭に置いて考えておる点でございまして、御指摘のような沖縄の問題につきましては、この国籍法が幸いにして改正されますならば、いろんな取り扱いの点について万全の配慮をしていきたいと考えておるわけでございます。
  63. 土井たか子

    土井委員 さて、もう時間の方が大変気になりますから、急いであとお尋ねを進めさせていただきます。  国籍選択制の点で、先日来の御質問に対する御答弁をずっと総括してまいりますと、日本と同様の選択制の法制度を持っている国というのは四カ国だけになるわけなんですね。それはフィリピン、インドネシア、パキスタン、マレーシアというふうに認識をいたしておりますが、そうなれば、今回の国籍選択に関して実効性を持つのはこうした同じ制度を持つ国との間だけということになるのでしょうか、いかがですか。
  64. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ただいまお話の出ました四カ国につきましては、他の国で国籍選択の宣言をすれば自国の国籍を当然喪失するというふうな規定がある国でございます。この四カ国のほかにもあるかもしれませんが、私どもが調査したのは世界じゅうに及んでおりませんために、わかっているのはその四カ国でございます。したがいまして、我が国日本国籍選択の宣言をした場合に、当然それによって他国の国籍を失って唯一の国籍になるということが自動的に起こりますところは、目下のところその四カ国だけとなるだろうと思います。
  65. 土井たか子

    土井委員 そうすると、国籍選択強制主義というふうな点からしていくと、日本の場合は実効性がそれほどないということで現実の問題として認識をせざるを得ないと思うわけです。だから、今の選択制の問題は、四カ国以外の国については余り実効性を持ち得ないというふうに認識をしておいて間違いないということになるわけですね。世界の趨勢からすると、重国籍を否定して一つ国籍選択させることを強制していくということはどうも間違っているように思われてなりません。  私は一昨々日アメリカから帰ってまいりましたけれども、アメリカにおいてもこの点について聞く機会を持つようにかなり私自身努力してみたのですが、重国籍を否定して一つ国籍選択することを強制するのは世界の趨勢に逆行していることだということは強く認識をさせられました。国連に行ってもそうですし、八〇年にあのデンマークで国際婦人年の世界会議があった節に、スイス、スウェーデン、西ドイツ、デンマーク、それぞれ訪ね歩いたのですが、それぞれ選択制については実効性がないということを法改正時に非常に論議をされて改正に当たっておられますし、改正した法律についても実行してみるとそのとおりなんだというふうな実績も持っておられるということははっきり申し上げることができるので、私は、この点はそのような認識が非常に大切じゃないかなということをしきりに思うわけです。  さて最後に、外務公務員問題、これは私は外務委員会においてもお尋ねをしましたし、予算委員会でも尋ねてきたのですが、今回外務公務員法に対しての改正はどのように相なりますでしょうか。
  66. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 先生の御指摘の点は、外務公務員法第七条の「外務公務員の欠格事由」に相当する場合、これが国籍法改正によって影響を受けるのじゃないか、それについてどう対処するつもりかというお尋ねだと存ずるわけでございますけれども、これは御承知のとおり、同条の第二項で政令を定める場合には失職しないという例外規定が設けられておりまして、外務公務員法施行令第一条によりまして、現在では配偶者が日本国籍を取得されるまでの猶予期間を一年ということで定めております。  今回国籍法改正が行われます機会に、私どもとしては、配偶者を含めての外務公務員に対する国籍についての制約というものはそれなりの理由を持っておる、これは維持しないといけないと思っておりますが、他方、人事政策上その他、現在程度の猶予を例外として認めるということは必要だと思っておりますので、そういう線で、すなわち現在程度と同じ猶予は維持できる、そういうことで、外国籍を持っておる者と婚姻した外務公務員が直ちには失職しないような猶予は定めないといけないということで、現在関係方面と具体的な措置について鋭意検討しておるところでございます。
  67. 土井たか子

    土井委員 そうすると、まだお考えは煮詰まっていないのですか。
  68. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 まだ完全には煮詰まっておりません。ただ、あくまでこの国籍法改正ということも頭に置きまして、現在程度と同じ猶予は与えるということが基本でございます。
  69. 土井たか子

    土井委員 現在程度と同じ程度とおっしゃるのは、どうもよくわかりませんが、つまりあの外務公務員法七条の規定を見ますと、七条には二つございまして、前段は欠格事由であり、後段はたしか失職事由だったと思います。これは混同されたら困るのです。欠格事由の中には、本人が無国籍である場合とか外国籍を有する場合とまた別に、配偶者が外国籍である場合、無国籍である場合、これは二通りあるのが一緒くたになっているので、これも整理をしていただかないとならない。本人がそうである場合と配偶者がそうである場合とはまるで違いますからね。配偶者が外国籍者、無国籍者である場合についてもこれが欠格事由になるのですから、おかしな話だと言わざるを得ないのです。  それから、欠格事由とは全く別に失職事由というのがあって、失職事由のところで今おっしゃった問題が初めて出てくる。第七条本体についても、今回国籍法改正を機に手を染められるはずであると私どもは思いますが、いかがでございますか。
  70. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 第七条の一項は「国籍を有しない者若しくは外国の国籍を有する者又はこれを配偶者とする者は、外務公務員となることができない。」こういうことでございまして、つまり外務公務員となれない原則を定めておるわけでございます。したがいまして、採用時においてこういう者は採用できないということは明示的にそういうふうに決まっておるわけでございます。  第二項の方は、外務公務員がそういう基本原則にひっかかって外務公務員となれなくなったときには当然失職する、ただ、例外を設けて猶予を定めておる、こういうことでございます。したがって、これは政令で措置すれば、実際上外務公務員が失職するということは防げるということでございます。
  71. 土井たか子

    土井委員 そうすると、七条本体に対しては改正をお考えにならないのですか、どうですか。これは非常に大きな問題がありますよ。外務公務員というのは範囲が広いでしょう。見てみると、本当に広いですよ、在外公館の職員まで全部ですから。だから、そういうことからすると、七条本体にもひとつしっかりと手を染めていただくということでないと、今回の改正に見合う措置になり得ないと私自身は思いますよ。これは、枝村さん、どうです。しっかりやってください。
  72. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、外務公務員と申しますのは、対外的に日本を代表するという立場でございますし、各種の機密にも触れる立場にあるわけでございますので、こういった制約を設けるということはやむを得ない、したがいまして法律上そういう制約を設けるということはやむを得ないというふうに考えております。  ただ、その場合でも、特定の場合においては外国人と結婚すること、外国籍を持っておる人と結婚すること、これは認める必要があるということが現実の運用の問題として起こってまいりますので、それを調整する手段としてまさに七条の第二項があるわけであります。それに政令があるわけでございますから、この政令を改正することによって十分対応できるというふうに考えております。
  73. 土井たか子

    土井委員 なかなかその考え方は後ろ向きですね。これはまた外務委員会の席でさらに続行して、しっかりそめ点はやりましょう。今回の国籍法改正というのは生きないですよ、そういう姿勢では。肝心の外務省自身も国際感覚が大分おくれているということを残念ながら言わざるを得ないのです。いろいろなところに行って聞いてみればみるほど、そういう意見は強いですよ。この席をかりて言うというのはいかがかと思われますけれども、本当にそういうことを私自身はあちこちで見聞するものだから、実感として申し上げざるを得ないのです。  さて質問を終わりますが、私自身のところにこういう要望書なるものが外国からたくさん参っております。中にはテレックスでギリシャのアテネからたくさんの人の名前がこのとおり要望書として入ってきておるのです。  これはどういう要望がというと、選択制度の導入によって二重国籍となる日本人女性が大変苦しい立場に立つということになる、夫の国に住むためにはそこの国籍が必要であっても、自分の故郷は日本だから、万一夫や子供と離別して日本に帰ることになると、やはり日本国籍を捨てることができない、だから、彼女たちに無理に国籍選択を強いるというのは実生活の状況を無視したやり方であるということを中身に持って、国籍選択制が戸籍と連結されることになって戸籍に選択宣言と放棄する外国籍が記載されて国籍の得喪が事細かに記載される結果、重国籍者は一般の日本国民にはない刻印を記載されることにもなるということを非常に懸念して、したがって重国籍者は日本国民とは別種の国民あるいは暫定的国民として区別するような取り扱いは一切やめていただきたいというふうな思いを込めて、個人の自由な立場から国籍選択する者については現在の国籍法の第十条国籍離脱の自由ということを継続して保障して国籍選択ができるように要望したいというのが結論なのです。  よく重国籍者というのはいろいろな点で不都合があるということを法務省の方は説明のときに言われるのだけれども、しかし、重国籍者であるがゆえにどういう不都合が今までありましたかと聞いたら、余りそれに対してのお答えはないのです。特に、父系優先血統主義の中で重国籍者はたくさんできたわけですが、父母両系主義になって改めて重国籍けしからぬと言われるのはどうも私には解せないのですね。今までこういうふうに不都合があったというのだったらわかりますが、どうもそれに対しての御説明がないまま重国籍は困る困ると言われますが、このアテネの例なんかは実は向こうで広島、長崎の日本の経験というものを生かして日本は平和主義の国家であるということをヨーロッパでもこの重国籍者の立場でいろいろと運動するということがどれほど日本のイメージを高からしめているかということの実態もあるということをひとつ御承知おきいただきたいなと私は思うくらいです。  大臣、本当にたくさん諸外国から来たのですよ、次から次へと。このことを特に私は強く最後に御参考までに申し上げさせていただいて、質問を終えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  74. 宮崎茂一

  75. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この法案に対する最後の質問でございますので、要点だけを質問させていただきます。  第一の質問は、この前もちょっとお話をしたのですけれども、刑法の四十一条で「十四歳ニ満タサル者ノ行為ハ之ヲ罰セス」こうあるわけですね。ところが民法の場合は七百九十七条その他ですけれども、代諾養子でも十五歳未満となって、この国籍法の十八条でも、十五歳未満の者の場合、法定代理人がかわってやれるとなっていますね。一体どうしてそういう違いがあるのかということをこの前開いたわけですが、要領を得ないのですね。それが第一点です。  第二点は、法定代理人。普通の代理人の場合は本人の意思に反する行為は無効になると思いますし、あるいは取り消すことを得になりますが、だから、その国籍選択その他を法定代理人がその本人の意思に反してやった場合の本人の救済方法があるのかないのか、どうもはっきりしないわけですね。その点をあわせてお尋ねしたいと思います。
  76. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 先日御質問がありましてから少し調べてみたのでございますけれども、年齢の点に関しましては、どうも刑事は刑事、民事は民事でそれぞれ別の発想で十四歳とか十五歳とかということが決められたような経過であると思います。刑事の方は、私、所管でありませんので、詳しくは存じませんけれども、むしろ低年齢のものを逐次引き上げていくというようなことで、古くは七歳だったこともあるようでございます。それが十二歳になって、それで十四歳になるというような経過をたどっておるようでございます。  民事の関係につきましては、民法制定の当初いろいろ議論がありまして、身分行為全般について何歳が適当であろうかということの際に、まず決められたのが婚姻年齢でございまして、この際に御承知のとおり旧法では女子は十五歳ということに決められております。その十五歳を決めるにつきましては、従来の婚姻の慣習であるとか身体的な成熟度であるとか、そういうようなことをいろいろ勘案した結果十五歳という線に決められて、婚姻年齢を女子の場合に十五歳だというなら身分行為全般を十五歳に合わせるということが適当であろうというようなことが考えられたようでございます。  なお、養子とか遺言などもございますけれども、そういう場合にはそういう婚姻年齢のほかにも慣習的なような事柄も考慮に入れられたというのがかつての議事録の中には散見されるわけでございます。どういう慣習かということは必ずしも明らかではございませんけれども、例えば元服のようなものが十二歳から十六歳まであったというような事柄もその当時は頭にあったのではなかろうかと思います。そういうようなことでございます。  それから第二の法定代理の関係につきましては、これは先日申し上げましたけれども、法定代理でやるという場合には、その時点においてはまだ完全に本人が自分の意見を決めるだけの能力がないという前提でございます。したがって、食い違いというようなことはその時点においてはないというのが前提だろうと思います。しかしながら、かなり成熟いたしまして十五歳を超えてから、どうも自分の希望するところとは違ったという面でのそごを来すことはあろうかと思いますが、そういう点につきましては、現在の法定代理制度のもとではいずれも無権代理的な意味で覆滅するというような手続はないわけでございます。  これは性質上そうやらざるを得ないのではないかと思いますが、国籍法のもとにおきましてもそういう問題が出てこようかと思いますが、その場合には全く日本国籍を取得する道がないわけではございませんので、帰化その他の手続でやるということができる。日本国籍を離脱するという形で選択した場合には、これは日本国籍を取得するためには帰化という方法がある。それから、選択の場合で申しますと、選択の宣言をしたという場合に間違っていたというふうに思われれば日本国籍を離脱することは後になってできるわけでございますので、若干の問題は残ろうかと思いますけれども、制度全体としてはそういう形でいくほかはないだろうと思っております。
  77. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 さっき質問に出ました無国籍者に準ずる者というわけですね。これは具体的にはどの程度おられるとお考えなのですか。そしてまた、その救済は簡易帰化なり超簡易帰化で無国籍の人と——あなた方の方では外人登録できているのは二十一名だ、こう言われるわけでしょう。二十名ですかは届け出で済むことになると思いますけれども、届け出とは別かもわかりませんけれども、準ずるというものですから、そういう人たちと同じような扱いを今後やっていく、やっていっていただきたいと思うのですが、そういうような趣旨に承ってよろしいでしょうか。
  78. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 全く形骸的な外国籍を持っているという場合に、これは無国籍として扱うということはできますし、また今度改正になりますと、その辺の重国籍防止条件というものが帰化の場合に法律上も弾力的に取り扱える道ができております。そういう意味では、従来にも増して非常にやりやすくなると私ども考えておる次第でございます。  なお、その他の面につきましても、沖縄の無国籍方々あるいは形骸的な外国籍を持っておられる方々についてはいろいろな面で書類などについても最小限度のものにとどめて、そしてそういう実情に応じた措置を講じたいと考えております。
  79. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 戸籍法の問題で、戸籍謄本を見ますと、無国籍者が帰化して、そして届け出をするわけですね。そういう場合に、前の無国籍者の氏名まで戸籍謄本に書いてあるのですけれども、ここまでする必要があるのですか。これは書かなくてもいいのじゃないでしょうか。
  80. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 帰化の場合には従前の国籍を書くという扱いにしておりまして、国籍がない場合には無国籍でございます。それから、以前どういう名前であったかということは、同一性のつながりの関係がございますので、これは書かざるを得ないということで記載しておるわけでございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 どうして同一性の確認のために前の名前まで書かなくてはいけないのですか。前の名前は書かなくてもその父母が出ておるのですから、それで同一性の確認はできるのじゃないですか。何も無国籍の人の名前までわざわざ書く必要はないのじゃないでしょうか。どうなんですか。どうしてもそれは必要なんですか。
  82. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 それは、ほかの要素で総合的に知る手がかりはあるではないかと言われればそういう面があろうかと思いますが、ともかく人間の特定要素といたしますと、名前が一番基準になるわけでございます。したがいまして、日本人であって氏とか名前とかを変更するということがあるわけでございますが、その場合には、従前どうであったかということが戸籍上明らかでないとやはり問題が生ずるわけでございまして、したがいまして、帰化する前にはどこそこの国籍を持ったどういう名前であったかということがわかりませんと、要するにつながりがつかないと申しますか、その同一人をあらわす名前が変わるわけでございますので、やはり私どもは必要ではないかと考えております。
  83. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今、帰化の話で、普通の帰化とそれから簡易帰化とそれから超簡易帰化という言葉もあなた方は使われるわけですね。簡易帰化なり超簡易帰化というのは法律用語がどうか私は知りませんけれども、具体的にどういうふうに違うわけですか。そして今度の法律改正されることに伴って、どういうふうに適用を実際にしていこう、こういうふうにされるわけですか。
  84. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 簡易帰化、超簡易帰化とはどういうことかということでございますけれども、一般的な帰化は、現行法で申しますと四条の要件を満たすものということでございまして、簡易帰化は五条、六条の要件が当たるものでございます。これは簡易帰化という言葉は使っておりませんけれども、そういうふうに慣用的に使っております。超簡易帰化と申しますのは、その簡易帰化に当たる方であって沖縄の無国籍児のように特殊な事情のある方については、提出されます書面などについても必要最小限度のものにとどめて、そしてできるだけ早くするというような行政上の配慮を最大限に加えるという意味で、いわゆる超簡易帰化というふうに申し上げているわけでございまして、今後も、そういう超簡易帰化を今まで考えておったような方々については状況が変わるわけではございません。むしろ場合によっては附則の五条などと照らして、なおそういうようなことをすべき必要があるというふうにも考えられますので、一層そういう面での運用を図ってまいりたいと思います。
  85. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これで本法案に対する質疑を終わる次第でございますが、この法案に対しまして、委員長以下、参考人をお呼びくださったり、それから非常に慎重な討議をさせてくださったということに感謝をいたす次第でございます。  これで本法案に対する質疑を終了させていただきます。
  86. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  87. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  内閣提出国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  88. 宮崎茂一

    宮崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  89. 宮崎茂一

    宮崎委員長 次に、ただいま可決いたしました国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案に対し、太田誠一君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。太田誠一君。
  90. 太田誠一

    ○太田委員 私は、提案者を代表して附帯決議案の趣旨について御説明申し上げます。  案文を朗読して、その趣旨の説明にかえさせていただきます。     国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行を機に、帰化の申請については、なお一層、迅速、適正な運用を図るよう十分な配慮をすべきである。 以上であります。  何とぞ本附帯決議案に御賛同あらんことをお願いいたします。
  91. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  直ちに採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  92. 宮崎茂一

    宮崎委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、住法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。住法務大臣
  93. 住栄作

    ○住国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして帰化事件の処理に当たりたいと考えております。     —————————————
  94. 宮崎茂一

    宮崎委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 宮崎茂一

    宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  96. 宮崎茂一

    宮崎委員長 次に、稲葉誠一君外七名提出外国人登録法の一部を改正する法律案を議題といたします。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。稲葉誠一君。     —————————————  外国人登録法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  97. 稲葉誠一

    稲葉(誠)議員 外国人登録法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  現在、我が国には約八十万人の在日外国人が生活しておりますが、そのうち、敗戦前、日本政府の植民地政策により渡航してきた者及びその子孫がほとんどであり、この人たちは現在、日本に生活の基盤を持ち在留しております。  外国人登録法は、まさにこのような在日外国人を主たる対象とする法律でありますが、登録証明書の常時携帯義務及び切替交付制度などによって、当事者の日常生活の隅々に至るまで、恒常的に取り締まりの対象とされております。また指紋押捺制度は、その人権を侵害し、人格を無視すること著しいものがあります。  そのため、これらの点について法改正を求める切実な訴えが、当事者である在日外国人より、なされているのであります。  そこで、外国人登録法に所要の改正をするものでありまして、その要点は、次のとおりであります。  第一に、在日外国人に課せられている指紋の押捺制度を廃止することといたしております。  第二に、外国人登録証明書の常時携帯義務を廃止することといたしております。  第三に、登録証明書の切替交付制度については、新規登録の日に二十歳未満であった者を除き、廃止することといたしております。  第四に、外国人登録原票の登録事項のうち、「職業」及び「勤務所又は事務所の名称及び所在地」を削除し、かつ当該事項の変更登録制度を廃止することといたしております。  第五に、現行法で十六歳に満たない者に免除している各事項を、二十歳に満たない者に免除するように改めることといたしております。  第六は、本法違反についての罰則をすべて廃止し、過料に処することといたしております。  以上が、この法律案の趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  98. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時二十八分散会      ————◇—————