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1984-04-18 第101回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十八日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 宮崎 茂一君    理事 太田 誠一君 理事 亀井 静香君    理事 高村 正彦君 理事 森   清君    理事 天野  等君 理事 稲葉 誠一君    理事 石田幸四郎君       上村千一郎君    大西 正男君       谷垣 禎一君    丹羽 兵助君       小澤 克介君    佐藤 観樹君       山花 貞夫君    神崎 武法君       中村  巖君    伊藤 昌弘君       野間 友一君    林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 住  栄作君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         法務大臣官房長 根岸 重治君         法務大臣官房司         法法制調査部長 菊池 信男君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 筧  榮一君  委員外出席者         総理府人事局参         事官      上吉原一天君         警察庁刑事局保         安部経済調査官 清島 傳生君         防衛庁人事教育         局人事第一課長 村田 直昭君         防衛庁人事教育         局人事第二課長 田中 宗孝君         外務省北米局北         米第二課長   七尾 清彦君         大蔵省銀行局銀         行課長     千野 忠男君         大蔵小銀行局中         小金融課長   朝比奈秀夫君         国税庁税部法         人税課長    谷川 英夫君         国税庁税部資         料管理企画官  中川 浩扶君         農林水産省経済         局総務課長   片桐 久雄君         通商産業省産業         政策局消費経済         課長      牧野  力君         自治省行政局行         政課長     木村  仁君         自治省行政局選         挙部管理課長  平林 忠正君         自治省行政局選         挙部政治資金課         長       山崎宏一郎君         最高裁判所事務         総局人事局長  大西 勝也君         最高裁判所事務         総局家庭局長  猪瀬愼一郎君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ————————————— 四月十八日  外国人登録法の一部を改正する法律案稲葉誠  一君外七名提出、衆法第二一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人  権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所大西人事局長猪瀬家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 宮崎茂一

    宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 宮崎茂一

    宮崎委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。天野寺君。
  5. 天野等

    天野(等)委員 最初に、公職選挙法関係のことでお尋ねをしたいのです。  実は四月十日、十一日の新聞各紙に出ておった茨城鹿島大野村というところでの事件でございますけれども、ちょっと大ざっぱに申し上げますと、総選挙の際に大野村の村長が村の中の各地区投票率の競争をさせまして、投票率の高いものに対して報奨金を出したということなんでございます。こういう事実関係について、まず自治省の方で御存じになっておられるかどうか、その点お尋ねしたいと思います。
  6. 平林忠正

    平林説明員 ただいまの件につきましては、茨城鹿島大野村におきまして確かに五十四年四月に行われました知事選挙以来報奨金という形で支出がされていた模様でございます。具体的には、それぞれ投票率に応じてランクを設け、それに対して報奨金支出するという形で運用がされていたと承知をしております。
  7. 天野等

    天野(等)委員 五十四年四月の知事選以降昨年十二月の衆議院選挙まで、知事選挙及び衆議院参議院選挙ごとにこのような報奨金が出されていたようなんでございますが、どの程度の報奨金支出をそれぞれの選挙ごとにしておったか、この点お伺いいたします。
  8. 平林忠正

    平林説明員 五十四年の総選挙におきましては総額百七十万円でございます。五十五年六月二十二日の衆参ダブルにおきましては二百八十六万円でございます。五十八年四月と六月の知事選挙通常選挙につきましては合わせて百十一万円、五十八年十二月執行の総選挙におきましては三百十四万円と承知をしております。
  9. 天野等

    天野(等)委員 最後の五十八年十二月の総選挙について、この三百十四万円はどういう分け方で報奨金を分配されたのか、それについて。
  10. 平林忠正

    平林説明員 報奨金の基準が若干細かいようでありますけれども有権者が例えば四百人以上の地区でありますと、投票率に応じて、投票率八〇%以上の場合に二十万円、それ以下の七五から七九%につきましては十万円といったような形で、以下若干の刻みを設けて支出をしていると承知しております。
  11. 天野等

    天野(等)委員 新聞報道によりますと、四百人以上の場合には今お答えがあったようでございますが、四百人以下の場合には、八五%以上の投票率だと二十万円、七五ないし八四%までが十万円、六五%から七四%までが有権者数関係なく二万円というような率になっておるようでございますが、こういうふうなことでよろしゅうございましょうか。
  12. 平林忠正

    平林説明員 そういうふうに承知しております。
  13. 天野等

    天野(等)委員 これは村議会等正規支出がされておるのでございましょうか。また、されておるのでしたら、その名目はどういうふうなことでございますか。
  14. 平林忠正

    平林説明員 名目までちょっと承知しておりませんが、村議会において議決され、手続的には正規支出であると聞いております。
  15. 天野等

    天野(等)委員 これは、だれからだれに支払われた金銭なんでございますか。
  16. 平林忠正

    平林説明員 長から各区長に対して支払われたものと理解しております。
  17. 天野等

    天野(等)委員 すべての区に支払われたのでございましょうか。それとも、支払われた区と支払われなかった区があるのでございますか。
  18. 平林忠正

    平林説明員 その辺についてはまだ定かにしてございません。
  19. 天野等

    天野(等)委員 五十四年からこのような支出がなされていたということなんですが、自治省としてはそのような事実は既に御承知だったのでございましょうか。
  20. 平林忠正

    平林説明員 全く存じませんでした。
  21. 天野等

    天野(等)委員 五十四年四月の知事選の段階で、大野村だけではなく、投票率をアップさせようということで各市町村で競って有権者に対して、特に品物ですけれども、それを贈ったという事実があり、それに対して県の選挙管理委員会等から自粛要請といいますか、そういうものが出ていたというように承知しておりますが、いかがでございますか。
  22. 平林忠正

    平林説明員 今回この件がいろいろ外に出ましたので、あわせて県から実態を伺ったわけでございますけれども、おっしゃるように、五十四年四月の知事選挙に際しましては、県下数町村におきまして投票率を上げるために若干の物品交付等があったようであるということでございましたが、これに対しましては県の選管として強く中止を指導し、ほとんどの町村においてこういうような動きがなくなっていたというふうに報告を受けております。
  23. 天野等

    天野(等)委員 県の選挙管理委員会から自治省にそのことについての報告はなかったのでございますか。
  24. 平林忠正

    平林説明員 事前にはございませんでした。
  25. 天野等

    天野(等)委員 事前といいますと、自粛通達を出すという事前という意味だと思いますが、五十四年四月の選挙後、選挙に関してのいろいろな報・告が各県の選挙管理委員会からあったと思うのですけれども、その中にはこの知事選について各市町村での投票率アップの問題についての報告はなかったのでございますか。
  26. 平林忠正

    平林説明員 事前にと申しますのは、通達が出される前にということではなくて、今回のこの問題が出ましたためにいろいろ調べてみて初めてわかった、県からはそれまでそういうようなことがあってそういう指導をしておったということについでも私どもは伺っておらなかった、こういう意味でございます。
  27. 天野等

    天野(等)委員 この問題につきまして朝日新聞の四月十日の朝刊でございますけれども、そこには自治省選挙部管理課の見解が述べられておるのでございますが、これによると、「選挙で自治体が投票率を高めようとチラシを配るなどの啓発運動をするのは聞くが、報奨金制度は聞いたことがない。公選法違反にはならないが、公金を選挙報奨に使うのは行き過ぎではないか」というような談話が出ておるのですけれども、これはそういう形で管理課の方で談話を出した事実はあるのでございますか。
  28. 平林忠正

    平林説明員 個々新聞記事のことでございますが、私は直接そういう談話を出したという記憶はございません。
  29. 天野等

    天野(等)委員 この大野村につきまして、衆議院選挙でいきますとこの地区茨城一区でございますけれども茨城一区の投票率と同じ鹿島郡の他の地区投票率と比べて非常に投票率が高いという事実はつかんでおられますでしょうか。
  30. 平林忠正

    平林説明員 県の平均値よりも高いという事実は把握しておりますけれども、詳細に他の町村と比較をして調べるということまでは私は合しておりません。
  31. 天野等

    天野(等)委員 それでは私の方で調べました数字をちょっと申し上げておきたいと思うのですが、昭和五十四年十月の総選挙の際に大野村の投票率が六五・〇七%、それに対して大野村を含みます鹿島郡の投票率は四七・五八%です。そして、一区全体の投票率は五八・五八%、非常に大きな差がございます。  それから、五十五年六月の同時選挙の際には、大野村の投票率は何と七五・八五%、そして鹿島郡の投票率は六二・〇六%です。一区の投票率は六九・六七%、このとき報奨金として使われたお金が、先ほどのお答えにございましたけれども二百八十六万円です。  それから、昨年の暮れ行われました衆議院選挙のときには、大野村の投票率はこれまた何と七七・一一%、そして鹿島郡の投票率は六〇・二七%、一区の投票率は六四・二〇%です。このときに使われた報奨金の額は三百十四万円です。  そして、もう一つ私申し上げておきたいのですが、五十四年の総選挙の際の自民党得票率は七四・一三%、五十五年六月の同時選挙の際の衆議院自民党得票率は七四・二〇%、五十八年十二月の衆議院選挙自民党得票率は七三・〇二%、いずれにいたしましても七〇%を超える、七五%に近い非常に高い自民党与党側得票率を示しております。  ちなみに、先日の五十八年十二月の衆議院選挙自民党の一区の得票率は六一・三六%でございます。特にこの大野村について見ますと、自民党の中でも今は引退されました元幹事長橋本登美三郎さん、この方の得票が、五十四年十月の総選挙の際に四九・二四%です。それから、五十五年六月の同時選挙の際が四五・六一%、多少落ちましたが大変な高率でございます、このときには橋本さん落選のときでございますが。  それから、橋本さんの後継者として今出ておられます額賀さんが、八三年十二月にございましたときの得票率は五五・六三%です。常に五〇%近い得票率をいわば地盤として一人の方が持っていらっしゃる、そういう地域での投票率アップのための報奨金だという事実関係、この事実関係を踏まえた上でこの報奨金制度について何らか法的に問題になることがないかどうか、この点についてまず自治省の方からお伺いします。
  32. 平林忠正

    平林説明員 一般論として、投票率を高めたいというのは選管の非常な希望でございまして、選挙たびごと投票率向上運動に私ども努力いたしますし、各地の選挙管理委員会においてもそれぞれ努力を重ねているところでございます。また、私どももそういうお願いをしているところでございますけれども、あくまでも選挙というのは選挙人本人の自由に表明する意思によって投票が行われるということが基本だと考えておりますので、かかる金品なり物品なりというものを支出することによって投票率を向上させるという運動をするということは極めて不適切なものであるということで、私どもかねてからそういう点に対しては差し控えられるように折を見ていろいろと指導してまいったところでございます。そういう姿勢で今後とも臨んでいきたいと思っております。
  33. 天野等

    天野(等)委員 これは法務大臣にお尋ねしたいと思いますが、この点について公職選挙法その他の法律に触れる疑いがないかどうか、いかがでございましょう。
  34. 筧榮一

    筧政府委員 具体的な事実関係承知しておりませんので、一般論として申し上げたいと思いますが、今伺っております限りでは、具体的な金の支出も村で決め、村の正規支出手続がとられておるということでございますし、その目的といいますか投票率が高まったところにということで、個々候補者の当選あるいは当選させない、投票する、させないというような趣旨に出るものとも言えないといたしますと、どうも公職選挙法での違反ということにはならないのではないかと考えております。  ただ、これが適当かどうかということになりますと、ただいま自治省からお話のありましたように、一般人として見まして不適当ではなかろうかと考えております。
  35. 天野等

    天野(等)委員 こういう報奨金をやっても法的には構わないのですか。この報奨金制度というようなものをやっても法的には何にも触れませんか。これはなるほど投票率アップという名前の形をとってはいるけれども——だから、私はこの村の具体的な得票率等について説明を申し上げたのです。そういう状況の中でこれは法的に問題がないと言えるのかどうか、この点についてもう一度。
  36. 筧榮一

    筧政府委員 ただいま申し上げましたように、先生御指摘の具体的な投票結果でこの村において特定の方の得票が多いということは事実であろうかと思います。ただ、この報奨金支出特定候補者に関する投票を得させる、得しめないというようなものと直接には結びつくとはどうも認めがたいのではないかということでございますし、そのほかの点でも公職選挙法上罰則に触れるという点は、調べました限りではちょっと見当たらないと考えております。
  37. 天野等

    天野(等)委員 それじゃ、自治省にお尋ねいたします。  公職選挙法には触れないということになった場合に、自治省としてはどういうふうな態度をおとりになりますか。
  38. 平林忠正

    平林説明員 先ほど申し上げましたように、法に触れる触れないという問題はさておきまして、選挙というものは選挙人の自由に表明する意思によって投票がされるということが絶対必要な条件でございますから、こういうような支出につきましては、あらゆる機会を通じてこういうことのないようにこれからも強く指導をしていきたいと考えております。
  39. 天野等

    天野(等)委員 この大野村の例は本当に極端な例ではありますけれども投票率アップということのために何らかの報酬を出すというようなものを是認しているとすれば、行き着く先はこういう大野村的な方法になっていくのじゃないだろうか。この大野村の報奨金にいたしましても、一番初めのときには支出は三十六万円だった。それが百七十万円になり、二百八十六万円になり、三百十四万円になっている。支出の額もどんどんふえていく。そのことによって投票率だけの問題ではなくて実質的に得票数にも影響を与えていく。しかもこの場合に、知事選参議院選については百十一万円の支出でありながら、衆議院選挙については三百十四万円の支出。同じ選挙でありながらこういう差もついています。  この支出が何のための支出がという実質的な意味は明らかだと私は思うのですよ。大きなあれで言えばそれこそ合法的な——合法だとすれば、公職選挙法に触れない合法だとすれば、まさに合法的な大がかりな買収行為だとさえ言えるのじゃないかと思います。そういうことについて何らかの規制を、単にこの問題については不適当だ、行き過ぎではないかというようなことではなしに、例えば金銭についての直接の交付をやめさせる、あるいは限度額についても考える、区長等に対する直接的な金品交付ということをやめさせる、いろいろなことがあると思うのですけれども、やはりここで何らかの強い措置を考える必要がないか。いかがでございましょうか。
  40. 平林忠正

    平林説明員 今、仮にということで例えば買収というようなお話もあったわけでございますが、これが買収となるかどうかというような点につきましては、それぞれの御判断をする当局がございますし、具体的なそういう罰条もあるわけでございますから、それの御判断としてなさっていただくということになろうかと思うわけでございますけれども、私ども選管といたしましては、なかなか御趣旨はわかるわけでございますけれども、例えば今のお話限度額についても考える、そうすると、その限度額の中では果たしてどうなのだろうか、あるいは限度額をどう考えるのだろうかといったような問題も出るわけでございます。  何よりも、先生もただいまお話がございましたように、全く一つの極端な例として挙げられたわけでございまして、私は、日本の現在の選挙の中でこういうような例は全く珍しい例だと考えております。選管の総力を挙げてこういう事態が生じないように努力をするということで解決を図っていきたいものだと考えておる次第でございます。
  41. 天野等

    天野(等)委員 選挙の公正ということが政治に対する国民の信頼の一番の基本だと思いますから、この点でこういう買収まがい投票率アップのための報奨金というようなものについては厳にこれをさせないようにするということでの指導をお願いしたいと思います。そういうことでこの問題についての質問は終わります。  次に、これも実はつい先日、四月十六日の新聞報道でございますけれども群馬県の護国神社群馬県内市町村農業委員会神社向けの水田の設置とそこから収穫されました米の上納といいますか、そういうことを求めておった、それで県内市町村農業委員会がこの護国神社要請を受けて護国神社に対して米を納める農家に三千円から四千円ぐらいの補助金公費から支出していたというふうな報道があるのでございますが、農業委員会所管農林水産省でございますか、この点について農林水産省の方から伺います。
  42. 片桐久雄

    片桐説明員 ただいまの件でございますけれども、そのような新聞報道があることは承知いたしております。しかし、具体的な事実関係については把握いたしておりません。
  43. 天野等

    天野(等)委員 ということは、仮に新聞報道が事実であったとしても、農林水産省としては何ら関知するところではないという意味でございましょうか。
  44. 片桐久雄

    片桐説明員 新聞報道を見る限りでは農業委員会が本問題に関して公費支出したかどうかということは必ずしも明らかではないわけでございます。けれども一般論として言いますと、憲法二十条三項及び第八十九条との関係に関しましては、昭和五十二年七月に津市の地鎮祭に関する最高裁判決がありまして、これが一つの指針となるものと考えられます。具体的には各地方公共団体がそれぞれの状況に応じて自主的に判断すべきものというふうに考えております。
  45. 天野等

    天野(等)委員 そうすると、私の質問にそのままお答えいただきたいのですが、この事実関係が仮に事実だったとしても、それは農業委員会監督官庁である農林水産省としては何ら関知するところではないということなのかどうかということです。これについて端的にお答えいただきたいと思います。
  46. 片桐久雄

    片桐説明員 農業委員会市町村に置かれる行政委員会でございまして、主としてその業務といたしましては、農地法その他の法令によりましてその権限に属させた農地利用関係調整等事務が中心でございまして、そのほかに農業農民に関する調査等農業振興業務を行っているわけでございます。その指揮監督権限につきましては、農地法等法令に基づいて国の機関として事務を行わせているものに関しましては農林水産大臣指揮監督権限を有するものでございますけれども、そのほかの農業振興に関する事務につきましては、農林水産大臣都道府県知事市町村長、そういうそれぞれの機関農業委員会事務の適正な運営のために必要な勧告等を行うことができるものと考えております。
  47. 天野等

    天野(等)委員 そうすると、農業委員会業務については農林水産省の監督する部分都道府県が監督する部分とあるということになるのでございましょうか。
  48. 片桐久雄

    片桐説明員 農地法等法令に基づいて機関委任事務として行わせている事務につきましては、農林水産大臣指揮監督権限を持ちますけれども農業振興に関する任意事務につきましては、いわゆる地方公共団体固有事務でございます。そういう固有事務につきましては、一般的な指導勧告助言に関する権限地方自治法なり農林省設置法に基づいてあると思います。
  49. 天野等

    天野(等)委員 地方自治法に基づいてあるならば、そして農林省設置法に基づいてもあるのだったら農林省じゃないですか。
  50. 片桐久雄

    片桐説明員 農業振興に関する事務につきましては、農林省設置法に基づきまして地方公共団体に対して技術的な事項等につきまして勧告なり助言をすることができると思います。
  51. 天野等

    天野(等)委員 私は端的にお尋ねしているのに、それについてちっとも答えてくださらないから困るのですよ。この新聞に出ていることが事実だったとしても、農林省としては何ら関知することがないのかどうか。私の方は知りません、これについては私の方の管轄じゃありませんから知りませんと言えるような事柄なのかどうかということを端的に私は尋ねているのに、管轄がどうのこうの、法令がどうのこうのと言っている。端的に、これは農林水産省には関係ないのですか。もう一回、関係あるんですか、関係ないんですか。
  52. 片桐久雄

    片桐説明員 農業委員会事務といたしまして……(天野(等)委員「途中であれですけれども、端的にあるのかないのかをひとつ、時間がありませんから」と呼ぶ)わかりました。農業委員会事務といたしまして農業、農村に関する振興計画の樹立なり実施の推進に関する事項とか農業生産の増進、農業経営合理化農民生活の改善に関する事項というのがございます。こういう農業委員会事務に関しましては農林省指導することができると思っております。
  53. 天野等

    天野(等)委員 これはあるのかないのか、ちっとも答えてくれないのだ。  それでは、自治省にお尋ねしましょう。  今、農林水産省の方では、これははっきり答えないのですよ、あるのかないのか。これが仮に事実だとして、この事柄農林水産省管轄なのかどうかということについてお答えないのだけれども自治省は、これが事実だとしたらどうお考えになりますか。
  54. 木村仁

    木村説明員 自治省は、地方行政一般について御指導いたしておりますが、こういう専門の分野の農業委員会というような委員会のお仕事につきましては、所管の各省庁で御指導いただくのがよろしいと考えております。
  55. 天野等

    天野(等)委員 そうなんでしょう。自治省に聞きますと、自治省では農林水産省ですよ。農林水産省ではいろいろな法を持ち出してきて、面倒くさいことはとにかく私の方は知らぬと言いたいのかもしりませんけれども事柄はやはり農業委員会がどういうような仕事をしているのか、それについて自治省も私は知らないとは言えないと思うのです。それが本当に憲法以下の法令に沿った仕事をしているのか、それに対する違反行為がないのかどうかということについては両方でもって責任があることなんでしょう、どちらの官庁にしたって。これは官庁の権限の問題じゃないと思うのですよ。だから、新聞にこれだけのことが出ていて、これについて何の事実も調べていないということなのかどうか、またこれからも調べる気がないのかどうか、これについて自治省農林省にお伺いいたします。
  56. 木村仁

    木村説明員 自治省としては関心を持っておりますけれども、こういう専門の分野の農業慣行等と深く結びついた事実関係でございますので、やはり専門の所管庁でお調べをいただくのが順当であろうと考えております。
  57. 片桐久雄

    片桐説明員 本件の新聞報道に関しましては、現在、関東農政局なり群馬県を通じて調査をいたしているところでございます。  この問題につきましては、問題点は二つあると思っておりますが、まず新聞報道にあるような事業が農業委員会の所掌事務として適切なものであるかどうかという点が一つ問題になるかと思います。そういうことで、農業委員会の所掌事務といたしましては、先ほど申しましたように、農業、農村の振興に関する事業とか農業生産の増進に関する事業がございますけれども新聞報道にあるような事業がこういう事業に該当するものかどうかという点が一つ問題になろうかと思います。これにつきましても、事実関係を十分調査して地域の実態等も見なければ一概に判断はできないと考えております。  それからもう一つは、先ほどの憲法上の問題がございますけれども、これにつきましてもそれぞれ関係各官庁とも協議の上適切な指導をしてまいりたいと考えております。
  58. 天野等

    天野(等)委員 今お話しの第二の点、憲法上やはり問題があるのじゃないかというようには考えられますか。憲法上の点についても調査をされますか。
  59. 片桐久雄

    片桐説明員 憲法上の問題につきましては、先ほど申しましたように津市の地鎮祭に関する最高裁判決がございますけれども、それに照らしまして種々検討してまいりたいと考えております。
  60. 天野等

    天野(等)委員 護国神社あるいは靖国神社その他の特殊な神社に関しまして、公費支出ということがいろいろな形で問題になっていると私は思うのですが、これもその中の一つケースかと思います。津の地鎮祭判決もあるわけでございますけれども、この護国神社へ納めるといいますか、上納する米の耕作に関して市町村農業委員会というようなところが公費支出をしていたとすれば憲法上問題にならないかどうか、この点について、これは法制局の方の……。
  61. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 お尋ねのケースにつきましては具体的な実態を承知しておりませんので、あくまで一般論として申し上げたいと存じます。  先ほど農林水産省の答弁におきましても引用されましたように、昭和五十二年の津の地鎮祭に対する最高裁の判決は、直接には地鎮祭そのものと憲法二十条第三項との関係を論じたものではございますけれども、同時に、憲法八十九条に関連する部分につきましても一つ判断基準を示しております。  同判決によりますと、当該支出金を支出することの目的、効果及び支出金の性質、額等から見まして、その支出自体が特定の宗教組織または宗教団体に対する財政援助的な支出であるかどうか、また、支出の原因となります行為が我が国の社会的、文化的諸条件に照らしまして相当とされる限度を超えるものであって、その行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長または圧迫、干渉等になるものであるかどうかということによって合憲、違憲を定めるべきであるとされております。したがいまして、この基準によりまして合憲とされるか否かということにつきましては、ただいまの地方公共団体の場合でございますれば、事柄の性格上、地方公共団体が個別の状況に応じまして自主的に判断されるべきものと考えております。
  62. 天野等

    天野(等)委員 そうすると、地方公共団体が、この場合市町村農業委員会が、自主的に自分の行為が合憲だという判断をして行為したとしましても、それに対して監督的な立場に立つ農林水産省としてはやはり市町村農業委員会の行為が憲法に触れていないかどうかについて調査をし、また、これが触れている疑いがあるとすれば、それについてやめさせるというようなことも必要かと思いますが、この点についての農林省の御意見を伺います。
  63. 片桐久雄

    片桐説明員 事実関係につきまして詳細把握してない現在の段階におきまして、どういう指導をとるかということはこの場ではっきり申し上げられませんけれども、今後私ども調査いたしまして、もし不適切な面がございましたらば指導をいたしたいというふうに考えております。
  64. 天野等

    天野(等)委員 この問題については調査をしていただいた上で措置をしていただきたいと考えております。いずれにいたしましても、事柄憲法関係する重要な問題でございますから、ぜひともきちんとした指導をしていただきたい。特に市町村農業委員会等の段階では憲法判断というのはなかなかむずかしいかと思いますけれども、単なる慣習に染まるといいますか、慣習に流されることなしにやはり法的な事柄としての指導をしていただきたいと考えます。ちょっと時間がございませんので、この問題はここであれしたいと思います。  次に、これは最高裁判所の方にお尋ねしたいのですが、私が三月九日に一般質問いたしましたときにちょっと触れた問題でございますけれども、家庭裁判所調査官の権限の問題でございます。これは裁判所法によって家庭裁判所調査官というのは事件に関しては裁判官の指揮に従うということになっていると思います。ところで、最近、最近というか少し前からだと思いますが、事件に関する調査官の報告書に上席調査官の判こを必要とする、査閲印といいますか、そういうような制度があるというふうに聞いておるのでございますが、この点はいかがなんでございますか。
  65. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 ただいまのお尋ねの点でございますが、査閲をした印として査閲印を押すということが各家庭裁判所の実務において広く行われてきておるという状況であると考えております。
  66. 天野等

    天野(等)委員 査閲というのはどういう性質を持ったものなんですか。この報告が適当か適当じゃないかということについて判断をしているのですか。
  67. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 調査報告書等の査閲は、調査官に対する調査事務についての指導監督を行う前提として、調査事務の遂行の状況やその結果を把握する一つの方法でございまして、端的に申せば調査報告書を見る作用であるわけでありまして、これは指導監督権の一つの内容に属するという性質のものでご省います。
  68. 天野等

    天野(等)委員 家庭裁判所の上席調査官の指導監督の範囲は、そうすると、各事件についての調査官の報告書の内容にも及ぶということでございましょうか。
  69. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
  70. 天野等

    天野(等)委員 しかし、局長、その点は法文上、調査官は事件については裁判官の指揮に従うというふうになっていると思います。裁判所法の六十一条の二で「家庭裁判所調査官は、その職務を行うについては、裁判官の命令に従う。」というふうになっていますね。これは、個々の事件の処理については裁判官の命令に個々に従うのである。そうでなければ、今度は裁判官の独立の原則に反してくるのではないか。したがって、上席調査官の指揮監督権というのは個々の事件の処理には及ばないのではないかというふうに考えるのですが、この点はいかがでしょうか。
  71. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねの点でございますが、家庭裁判所調査官の職務は、御指摘のとおり、裁判官の命令によって行われることは裁判所法六十一条の二第四項に明記しているとおりでございまして、調査官の職務の遂行は裁判官の監督に服しているわけであります。調査官のこれらの調査等の職務は、御承知のとおり、人間関係諸科学の専門的知識及び技法を活用して行われるものでありますので、裁判官が、これは法律家でありますので、そういった専門的な領域に踏み込んで十分に指揮監督を行うということは期待しがたい面があるわけであります。  そこで、家庭裁判所調査官と同一職種にあるものに調査事務指導監督を行わせることが適当である、こういう趣旨に基づきまして、裁判所法六十一条の二の第三項は、調査官の中から首席家庭裁判所調査官を任命しまして、これに調査事務についての監督権を与えておるわけであります。この裁判所法の規定を受けまして、最高裁判所規則において、次席家庭裁判所調査官、総括主任家庭裁判所調査官、主任家庭裁判所調査官制度が設けられておりますが、これも同じような趣旨によるものであります。家庭裁判所調査官のこういった調査事務について行います首席家庭裁判所調査官等による指導監督は、裁判官の裁判事務上の監督権を補佐補充する性格を持っているのでありまして、その目的とするところは、調査事務が適正妥当に行われることを確保して、裁判官の適正妥当な事件処理に資するために裁判所法で認めている制度でございます。  そのようなものでありますので、首席家庭裁判所調査官等による指導監督は裁判官の独立に反するものではないわけであります。裁判官の独立は憲法七十六条で保障されておるわけでありますが、その裁判官は憲法及び法律には拘束されるわけであります。首席家庭裁判所調査官等による指導監督制度は裁判官の補佐補充として行われるものでありますけれども、これは裁判所の組織に関する最も基本法たる裁判所法でその根拠を認めておる制度でございますので、裁判官もこの制度を前提として調査命令等を調査官に対して下しておるという関係になるわけでございます。
  72. 天野等

    天野(等)委員 そうしますと、事件ごとの報告書ですが、報告書の意見については、これは担当調査官の責任によるものではなくて、査閲印を押した首席調査官の責任、それによる作成ということになるのですか。
  73. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 その点につきましては、家庭裁判所調査官の調査事務は裁判官の調査命令によって行われるという関係になっておりまして、手続法的には、裁判官の調査命令は事件担当の特定調査官に出されまして、その調査命令を受けた調査官が最終的にはその責任において調査事務を処理するという関係になるわけでございます。したがって、首次席、主任等の指導監督担当者による調査事務についての指導監督には一定の限界がそこにあるわけでございます。  天野委員御指摘の調査官の意見と指導監督との関係でございますけれども、そういう関係にございますので、首次席、主任等によるところの指導監督の方法として、家庭裁判所調査官の意見の変更を命ずるような指導監督、あるいはその意見の直接の根拠となっております重要な事実の評価に関することについて、その変更を命ずるような指導監督はできないものと解釈しておるところでございます。そういう一定の限界がございますが、その限界の範囲内で指導監督を行う限りにおきましては、調査官の責任性と申しましょうか、事務処理における調査官の責任性と抵触するものではないというふうに考えておるところでございます。したがって、調査官が報告書を出すのは、その命令を受けました調査官の名前において報告書を裁判官に提出するということになるわけであります。
  74. 天野等

    天野(等)委員 今の局長のお答えの中で、首席調査官については当該調査官の意見に対する変更命令権はないんだというお話でしたから、この点については一応安心したわけでございますけれども、担当調査官がその事件についてすべての記録を知悉し、また本人等にも面会し、そんな形でもって調査活動をした結果でございまして、それを普通の行政官庁のように、上席の者がチェックし変更させていくというシステムでは裁判の独立というものが実質的には侵されていってしまうというふうに私は考えるわけでして、やはりその点は家庭裁判所の事件について非常に重要な点ではないかというふうに考えておりますので、今局長がおっしゃられた調査官の意見についての独立の原則は今後ともぜひとも守っていただきたいというふうに考えますし、またそこが守られれば強いて査閲印というようなものを押させる必要があるのかどうか、個々報告書に査閲印を押させる必要があるかどうか、一般的な調査官の研修その他について指導助言をするあれはあるかと思いますが、個々の事件について査閲印を押させる必要はないのではないかというふうに考えるのですが、この点についてはいかがでございましょうか。
  75. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 家庭裁判所調査官の職務は裁判事務にいわば属する重要な仕事でございまして、しかも専門的な知識及び技法を活用して行う非常に困難な仕事でございます。これは裁判の適正処理に直接影響を及ぼしてくるという重要な仕事でありますから、調査官のそういった専門職内部における指導監督というものは、裁判所法が明記しておりますとおり必要でございます。それで指導監督を十分その目的を達するように行いますためには、やはり調査事務の実情ということを的確に把握するということが前提として必要であります。その方法の一つとして査閲ということが行われるわけでありますから、その査閲が行われたかどうかということを明確にすることは望ましいわけでありまして、そういった方法として査閲印を押すという慣行はやはり必要なものであるというふうに考えておるところでございます。
  76. 天野等

    天野(等)委員 査閲の内容については本当はもう少しお尋ねしたいのですが、時間が参りましたので、きょうはこれで終わりにしたいと思います。
  77. 宮崎茂一

  78. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大臣、当委員会におきましては、特に奥野さんが法務大臣であったころ、憲法の問題、そして靖国神社の問題等非常に活発な論議が行われまして、奥野さんは自分の信念に基づいて率直な話をしてくださったわけです。そういうようなことにも関連するわけですが、私がお聞きしたいのは、まず、これは法制局の方に先にお尋ねすることになると思いますが、憲法と、殊に宗教の関係ですね、二十条を中心としての問題だと思いますが、靖国神社の公式参拝その他について、俗に政府の統一見解というのが言われておるわけですが、私の調べたところでは議事録には統一見解としては載っていないわけですね。五十五年十一月十七日ですか、鈴木内閣の宮澤官房長官が衆議院の議運の理事会で述べたわけでございますので、まずどういうことを述べたのか、それからそれが五十八年五月十日の参議院内閣委員会で明らかにされていると思いますが、そこのところを法制局から御説明をお願いしたい、かように存じます。
  79. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 御指摘の政府統一見解は、昭和五十三年十月十七日参議院の内閣委員会において安倍官房長官が発言されたものと、昭和五十五年十一月十七日衆議院議院運営委員会理事会において宮澤長官が読み上げたものの二つがございます。  まず、昭和五十三年の統一見解を読み上げます。   内閣総理大臣その他の国務大臣の地位にある者であっても、私人として憲法上信教の自由が保障されていることは言うまでもないから、これらの者が、私人の立場で神社、仏閣等に参拝することはもとより自由であって、このような立場で靖国神社に参拝することは、これまでもしばしば行われているところである。閣僚の地位にある者は、その地位の重さから、およそ公人と私人との立場の使い分けは困難であるとの主張があるが、神社、仏閣等への参拝は、宗教心のあらわれとして、すぐれて私的な性格を有するものであり、特に、政府の行事として参拝を実施することが決定されるとか、玉ぐし料等の経費を公費支出するなどの事情がない限り、それは私人の立場での行動と見るべきものと考えられる。   先般の内閣総理大臣等の靖国神社参拝に関しては、公用車を利用したこと等をもって私人の立場を超えたものとする主張もあるが、閣僚の場合、警備上の都合、緊急時の連絡の必要等から、私人としての行動の際にも、必要に応じて公用車を使用しており、公用車を利用したからといって、私人の立場を離れたものとは言えない。   また、記帳に当たり、その地位を示す肩書きを付すことも、その地位にある個人をあらわす場合に、慣例としてしばしば用いられており、肩書きを付したからといって、私人の立場を離れたものと考えることはできない。   さらに、気持ちを同じくする閣僚が同行したからといって、私人の立場が損なわれるものではない。   なお、先般の参拝に当たっては、私人の立場で参拝するものであることをあらかじめ国民の前に明らかにし、公の立場での参拝であるとの誤解を受けることのないよう配慮したところであり、また、当然のことながら玉ぐし料は私費で支払われている。   以上が内閣総理大臣等の靖国神社参拝についての政府としての統一見解でございます。 というのが一つでございます。  それから、昭和五十五年の方を申し上げます。   政府としては、従来から、内閣総理大臣その他の国務大臣が国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは、憲法第二十条第三項との関係で問題があるとの立場で一貫してきている。   右の問題があるということの意味は、このような参拝が合憲か違憲かということについては、いろいろな考え方があり、政府としては違窓とも合憲とも断定していないが、このような参拝が違憲ではないかとの疑いをなお否定できないということである。   そこで政府としては、従来から事柄の性質上慎重な立場をとり、国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは差し控えることを一貫した方針としてきたところである。 以上でございます。
  80. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 二つの見解があることはもちろんわかっているわけで、五十三年の方は五十五年のを聞いてから後で聞こうと思っていたのですが、そこで五十八年五月十日に答弁があるわけですね。参議院の内閣委員会、これはどういう答弁になっていますか。
  81. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 委員がどの分を御指摘になっているかちょっとよくわかりませんが、五十八年五月十日の参議院内閣委員会の角田前長官の答弁でございますか。(稲葉(誠)委員「はい」と呼ぶ)わかりました。   五十三年の統一見解に最後にそういうことが書いてあることは御指摘のとおりでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、その後五十五年に政府の統一見解も出ましたし、また参拝の仕方についてもそれなりに定着をしており、私人としての参拝であるということを一々事前に特別に報道機関に発表しなくても、そういう配慮はもはや必要がないというような考慮から最近は特にわざわざそういう発表をしていないと、こういうことであろうと私は理解しております。というものでございます。
  82. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その答弁との間に前の統一見解との関係でどういう問題点があるのかは別の機会に譲るといたしまして、私がお聞きをいたしたいのは、五十五年十一月十七日の官房長官の統一見解の一番最後のところで、合憲とも違憲ともいろいろな考え方があるけれども、違憲ではないかというようなことをなお否定できない、そういう考え方があることをなお否定できないという意味にとれるのです。五十五年十一月十七日の見解の一番最後のところですね、結論になろうと思いますけれども、それは具体的にはどういうことを指して言っておるわけですか。
  83. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 ただいまの点につきましては、昭和五十五年十一月十二日の当委員会において稲葉委員から角田前長官に対しまして御質問があったように思います。それに対しまして前長官が答えておりますところは、   多分に抵触するおそれがあるというところまでは言っていないと思います。ただし、事は憲法にかかわる問題であり、かつ宗教にかかわる問題であるから、違憲であるという疑いが否定できないということを言っているのだと思います。 というふうに御答弁申し上げております。
  84. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、多分に何とかとか、前のことは抜きにして、否定できない、疑いを捨て切れないという意味のことを角田法制局長官が言っておるわけですね。それは具体的にはどういうことを指して言っておるということになるわけですか。
  85. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 昭和五十五年の統一見解で述べておりますように、靖国神社に参拝することは憲法第二十条第三項との関係で問題があると考えております。その問題があるということはいろいろな考え方がありますが、政府としては違憲とも合憲とも断定していない。断定していませんけれども、違憲ではないかとの疑いをなお否定できない。ですから、疑いが否定できるかどうかという問題になるのだと思います。  ですから、それができませんので、そのような表現をしている。つまり、事柄が宗教にかかわる問題でございますし、極めて重要な問題でございますので、慎重な表現をとったもの、こういうふうに理解をしております。
  86. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私のお聞きしたいのは、どういうような事実関係からしてなおそういう憲法違反であるという疑いを否定できないという意味の答弁、統一見解になっているのか、こういうことをお聞きいたしておるわけですね。
  87. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 ただいまのお尋ねの点につきましては、結局参拝行為というものが憲法二十条三項に言います「宗教的活動」の範囲に入るかどうかという問題に帰着するのだろうと思います。そういたしました場合に、その「宗教的活動」の範囲をどのように見るかということにつきましては、御承知のように津の地鎮祭の最高裁判決一つあるわけでございます。ところが、その最高裁の判決を前提といたしまして公式参拝に当てはめて考えてみました場合に、果たして合憲と言うか違憲と言うかという点につきまして私どもは断定はできない、あの判決を前提にしても必ずしも断定できないというので、このような表現をとったというふうに理解をしております。
  88. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その断定できないという意味は、津の地鎮祭の判決、率直に言いまして名古屋の高裁の判決が非常に詳細で、私から言えはよく分析しであって合理的であるというふうに考えているわけでありますが、そうすると、今言った違憲であるか合憲であるか断定できないというのは、今でもまだ変わらない、生きている、こういうことですか。
  89. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 先ほど読み上げました二つの政府統一見解は、現在も変わっておりません。
  90. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで法務大臣、今の法制局との間の質疑応答を聞いておられたと思うのですが、あなたとしては憲法と靖国神社との関係、ことに公式参拝の問題について国務大臣としてどういうふうな考えを持っておられるわけでしょうか。
  91. 住栄作

    ○住国務大臣 この問題は国会でもいろいろ議論もされておりますし、違憲、合憲をめぐってただいま法制局から従来の政府の統一見解についての御説明がございました。  国務大臣としてどうかというお尋ねでございますから、私は現在は国務大臣として従来の政府統一見解に従って行動をする、こういうことを申し上げるよりほかに言うことはございません。
  92. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 現在はというところと、それ以外に言うことはないというところにウエートがあるのかどうかは別として、聞く方はそういうふうにとりますわね。そうすると、この統一見解は公式参拝なりあるいは玉ぐし料の奉奠その他に関連して変わることもあり得る、そのときはそれに従わざるを得ない、こういうふうなことになるわけですか。
  93. 住栄作

    ○住国務大臣 国務大臣としてはそのとおりです。
  94. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 奥野さんは奥野さんの一つの信念に従っていろいろ答弁をされておられるわけですが、五十五年十一月五日の当法務委員会で私の質問に対しても、今自民党の中では靖国神社が考えられている。「いま自民党の中で考えられてきた考え方の中には、国家護持もございますし、また公式参拝を自由にするという考え方もございますし、必ずしも一つではないと思います。」こういうふうに答えているわけですね。そうすると、この統一見解は、公式参拝と玉ぐし料の問題についてはあれとしても、国家護持ということについては触れてないと思うのですけれども、その点については大臣としては、あるいは住栄作氏としてはどういうふうに理解をされておられるわけですか。
  95. 住栄作

    ○住国務大臣 法務大臣、国務大臣としての立場を離れて、私自身個人の立場ではいろいろな考え方を持っております。そういう個人の立場のことを公式のこういう委員会の席でいろいろ御意見を申し上げてやりとりすることが適当かどうか、私は疑問に思っておるわけでございます。  私はそういうことを前提にしまして本当に個人の立場から考えでみますと、私も戦争体験を持っております。大変苦労をしたと私自身思っておりますし、同じ仲間でマラリアに侵され、飢えで亡くなっていった者をもう本当に多く見てきておるわけでございます。そういうことから、私自身はその遺族を訪ねて状況等も申し上げたりしましたし、東京におるときは靖国神社にお参りもしますし、あるいは自分の選挙区におるときは護国神社等にもお参りしておりますし、私の体験からしてのそういう行為はしております。  そういうようなことから考えて、この国家護持の問題をどう考えていくか、こういうことについても私なりに意見を持っておりますけれども、先ほど申し上げましたように、そういう意見についてこういう公式の席でどうこうという議論の対象にするには私自身は適当でない。ただ靖国神社は宗教法人でございますし、憲法の規定にはもう書いてあるわけでございます。特に「いかなる宗教、的活動もしてはならない。」この「いかなる宗教的活動」の中身その他については議論が非常にあるわけですから、例えば党の中で自分の意見を言うとか、そういうことは差し支えないと私は思うのですけれども、ここで稲葉先生とどうだこうだということについては、繰り返して申し上げますけれども適当じゃないんじゃないかと考えております。
  96. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 お聞きいたしておりますと、国務大臣としては何か公式参拝にも国家護持にも賛成だとまではいかないにしても、それについては否定的ではないというふうに聞こえるのですが、そういうふうにお聞きをしてよろしいでしょうか。
  97. 住栄作

    ○住国務大臣 先ほど申し上げましたように、明確な憲法の規定があるわけでございますから、私はそれを侵してまでどうだこうだということを申し上げておるわけじゃないのです。ただ、解釈としてどういう解釈が妥当なのか、最高裁の判決等もありますし、そういうことをいろいろ判断して結論を出していただく。どちらになるかわかりませんけれども、そういう結論が出ることは望ましいと私は思っております。
  98. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この問題は、戦争のために犠牲になられた方の霊を慰めるという非常に純粋なお気持ちから発せられるということは私も理解できるわけです。けれども、そのことが結局、今どういう情勢の中で問題になってくるか、こういうことになれば、なぜ政教分離をしたかということの憲法の規定を無にし、結局、憲法改正の道へもつながる可能性というか危険性というふうなものを含んでおると私は理解せざるを得ないのです。ですけれども、今、ここでそのことを論議してもあれですから、これはいずれ——本来ならばこれは予算委員会などで総理と十分論議すべきことだろうと私は考えておるわけです。  そこで、その問題については、これは津の地鎮祭の問題であって、それが最高裁まで行ったから直ちに靖国神社の問題とつながるかどうか、これは判決そのものもなかなか難しい読み方がありましてそう単純にはいかないんじゃないかと私は考えるわけですけれども、それはまた別の機会にゆっくり議論をさせていただきたいと考えております。  そこでもう一つ、法制局の方がおられるときにお聞きをいたしておきたいことの一つは、一審で有罪の判決を受けた者に対しては立候補について何らかの制限を加えたらというような話が一部に出ているわけです。そこで、四十三年十二月四日に、最高裁判所の大法廷で判決が出ておるわけです。それはこういう要旨ですが、立候補の自由は、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、憲法十五条一項には被選挙権者、特にその立候補の自由について直接には規定していないが、これもまた同条同項の保障する重要な基本的人権の一つと解すべきである、ですから、これは十五条の裏表といいますか、そういう理解の仕方だと思うわけです。こういうようなことからいうと、一審の有罪判決があったからといって、確定をしていないのにそこで立候補の資格に制限を加える、あるいは極端に言えば奪う——奪うとまではいかないのでしょうけれども、制限を加えるということについては、これは憲法上も非常に疑義があるのではないかというふうにも考えられるのですが、この点については法制局はどういうふうにお考えですか。
  99. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 委員ただいま昭和四十三年の最高裁大法廷判決を御引用になりましたが、申し上げるまでもなく、立候補の自由は憲法第十五条第一項の保障します重要な基本的人権の一つでございますから、国会議員の被選挙権を制約するといたしますならば、それ相当の合理的理由がなければならないことは当然であろうと考えております。  そういたしましたときに、現行の公選法の第十一条でございますが、これは被選挙権を有しない者を定めておりますけれども、御承知のように、そのうち刑に処せられましたことを理由とするものはすべて裁判が確定したことを前提としております。このこととの対比から申しますならば、ただいま委員お挙げになりましたけれども、一審で有罪判決を受けましたことを理由としましてこれを受けた者の被選挙権を奪うというのでございますれば、三審制度をとっております現行制度のもとにおきましては、そのことについて果たして合理的な理由があるかどうか。さらには仮に上級審で最終的に無罪の判決を受けました場合にどのような救済の道があるかというような極めて難しい問題があるように考えます。  いずれにいたしましても、一審で有罪判決を受けた者につきまして、そのことを理由といたしまして被選挙権を制約することが憲法上可能かどうかは、委員も御指摘になりましたけれども、私どももはなはだ疑問であると考えております。このような趣旨につきましては、本年二月二十五日の本院の予算委員会におきましても茂串長官から御答弁申し上げておるところでございます。
  100. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それから、これは法務省の刑事局に聞いた方がいいと思うのですが、今、公職選挙法の改正の問題がいろいろ出ているのですけれども、それは抜きにして、例えば日本人が外国に行っていて、何カ月以上住んでいて日本に帰る意思があるとかなんとか条件があるでしょうけれども、そこで仮に日本の国内法に照らした選挙違反があったとして、それを取り締まり、処罰し、それから起訴するという形で裁判をやる、そういうことは日本の現在の法律で一体できるのですか。どういうふうになっているのですか。それはどこに問題点があるのですか。
  101. 筧榮一

    筧政府委員 委員御指摘の点でございますが、ただいま在外投票制度というような法案が内閣の中で検討されつつあると承知をいたしております。まだ確定いたしておらないようで、どういうふうな制度になりますか、私も確定的には承知いたしておりませんが、一般論としてのお尋ねでございますので、気のついたことだけ申し上げたいと思います。  立法的には、在外投票で日本の選挙が在外で行われます場合に、そこで選挙違反が行われて、これを国外犯として規定して処罰するということは可能であろうかと思います。ただ、その場合にいろいろ問題があるだろうと思います。  一つは、例えば特に選挙に関しましては各国いろいろ制度が非常に違っております。年齢の点も含めまして、あるいは選挙運動の自由といいますか、日本の場合いろいろ制限がございますけれども、相当自由にしている国もございますし、また逆に制限している国もあろうかと思います。その内容も千差万別であろうかと思います。そういう意味で、仮に選挙違反の中で国外犯として規定するといたしますれば、世界のどの国でもこれはよろしくない、公務員の選挙の公正を害すると認められているようなもの、これが中心になろうかと思います。  それからもう一つは、いささか技術的になりますけれども、国外で行われました場合に、日本の官憲が行って捜査をするということは原則としてできないわけでございますから、これは向こうの助けをかりなければならぬ、そうした場合には御承知の国際捜査共助法などによりまして双罰性ということがございます。したがって、例えばある国では戸別訪問が自由である、しかるに日本では違反となっておりますから、これを国外犯と規定しても、その国から協力が得られないことになるわけです。そういう点、基本的にはどこの国でも選挙の公正を害するものであるというようなものにつきましては、国外犯として規定することは可能であろうと考えております。  ただ、今申し上げましたような諸外国の制度あるいは慣習、いろいろなものがございますから、国外犯を定めるについてはそこらの点を考えて慎重に検討されなければならないと考えております。
  102. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 国外犯として規定するために、一体どこの法律をどういうふうに直したらいいということになるわけですか。
  103. 筧榮一

    筧政府委員 公職選挙法を改正いたしまして、これについては国外犯の規定を適用するというような条文を設けることになろうかと思います。
  104. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だけれども、司法共助の規定が適用されないところもあるのでしょう。そういうときはどうなるのですか。
  105. 筧榮一

    筧政府委員 犯罪捜査の共助に関しましては、条約があれば条約にのるわけでございますが、条約がない場合には御承知の相互保証によってやります。双罰性とか政治犯を除くとか、いろいろな制限がございますが、相互保証でございますので、相互保証が得られればその国からの協力が得られるということになろうかと思います。
  106. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 なかなか大変な難しい問題を含んでいると私は思うのです。  刑事局長に一つお聞きしたいのは、庶民金融業協会ですかの遠藤某が業務上横領で逮捕されて追起訴されましたね。その経過はどういうことなんですか。それでその事件はもう全部終わってしまった、こういうことになるのですか。
  107. 筧榮一

    筧政府委員 遠藤悦三に対します業務上横領事件でございますが、四月十六日に追起訴をいたしました。内容は省略いたしますが、合計金額は一千六十万円余りでございます。第一回の起訴が五千二百五十五万でございますので、合わせまして六千三百十五万円余りの業務上横領ということでございます。  これをもちまして遠藤悦三に対します業務上横領事件についての捜査は終了したと承知いたしております。
  108. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 遠藤某に対する捜査はということはどういう意味なんですか。そこから発展するほかのものについてはまだわからぬ、こういうことですか。
  109. 筧榮一

    筧政府委員 遠藤悦三に対します業務上横領事件については所要の追起訴が終わりましたので、捜査は終わったということでございます。  なお、マスコミ等その他でいろいろ報ぜられておりますが、この庶民金融業協会等をめぐります事柄につきまして現在捜査をしているとか、していないとか、あるいはしていたけれどもやめたとか、今後もやるとか、そういうようなことにつきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  110. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 では、これだけお聞きいたしておきましょう。  この事件は東京の事件ですね。東京都の庶民何とか協会でしょう。ですけれども、例えば、私の聞いている範囲では、大阪、宮崎、愛媛、神奈川、埼玉、秋田、兵庫の各県においても証拠書類というか帳簿類というか、そういうふうなものの任意提出を求めた。それを東京地検へみんな持ってきてあるというふうなことは事実ですか。そこら辺のところはどうなんですか。
  111. 筧榮一

    筧政府委員 捜査でどういうものを押収したとか、どういうものを調べたとか、具体的内容については答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  112. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、答弁を差し控えさせていただきたいという意味は、ここで答弁することによってこれからの捜査に影響がある、支障があるから、こういうふうな意味にとってよろしいですか。
  113. 筧榮一

    筧政府委員 捜査につきましては、稲葉委員御経験のおありになることでございますので、多くは申し上げませんが、一般論として、今どういうものを捜査しておるとか、しないとか、あるいはその内容については答弁を差し控えさせていただきたいという趣旨でございます。
  114. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 もう終わってしまったというのなら、あなた、何も答弁を差し控える必要はないのじゃないですか。
  115. 筧榮一

    筧政府委員 つまり捜査をやっておるということとやっていないという二つあるわけでございますが、やっていないということを明らかにすることは、明らかにしない場合にはやっておるということを認めることになるわけでございます。その辺のところは御理解をいただきたいと思います。
  116. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 御理解をいただきたいというのは、大臣、よくわかったですか。——あなたはわかったようだけれども、私はよくわからない。御理解をいただきたいと言ったって、あなたはそういう答弁をすると、みんな聞いている人は聞いている人なりに理解してしまうんですね。またそれがねらいかもわからぬけれども、そういうふうになってしまうんですね。とにかく証憑類はまだ全部整理がついてないわけでしょう。
  117. 筧榮一

    筧政府委員 証憑類、どういうものを持ってきておるか詳細を存じませんが、いずれにいたしましても、遠藤悦三の第一回公判は本日でございますか、まだこれから公判で立証が続けられるわけでございますので、これから整理をしていくということになろうかと思います。
  118. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 普通、特捜でやった場合は公判で特捜が立ち会う場合と公判部で立ち会う場合とあるでしょう。これは業務上横領だけれども、公判部に回したのですか。立ち会いはどうしているのですか。
  119. 筧榮一

    筧政府委員 委員御指摘のように、事件によりまして、特捜部の、いわゆる主任立ち会いと申しておりますが、主任と公判部の検事が一緒に立ち会う場合もございますし、公判部の立ち会う場合もございます。本件につきましては、私、どういう立ち会い体制をとっているか、現在のところ承知しておりません。
  120. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 では、ここで別のことに移って恐縮ですが、実は最高裁からおいで願っているので大変恐縮ですけれども、就籍の問題ですね。ことに熊本家裁でありました就籍の問題についてちょっと御説明をいただきたい。  それから、法務省の民事局長には、この国籍法の中の経過規定の第五条がありますね、この中で、きのうも私聞いておりまして、何か二十未満の者が一万人いるというような話をされたわけですが、その一万人いるということの内訳、そこら辺のことについて御説明を願いたい、こう思うわけです。  最高裁と法務省と、ちょっと関係ないのですけれども、最高裁、先にやってください。
  121. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 熊本家裁の就籍許可の審判についてお尋ねでございます。  家事事件の審理は、御存じのとおり、その性質上非公開の原則がとられておりますので、原則として個々の具体的な事件についてその内容を詳細に申し上げることは差し控えさせていただきたいわけでございますが、お尋ねのケースは既に新聞等でも広く報道されていることでもございますので、ごく概略について御説明申し上げます。  この事件は、昭和五十七年の四月に中国在住の残留孤児が、日本におりますボランティア活動として孤児の肉親捜しに協力しております日本人に委任状と資料を郵送しまして、同人を代理人として熊本家庭裁判所に就籍許可の申し立てをした事件でありまして、家庭裁判所では審理の結果、申立人が日本国籍を有することを認めまして、昭和五十八年の三月に就籍の許可をしたケースでございます。     〔委員長退席、高村委員長代理着席〕
  122. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 現在、東京家裁の方へも同じような形のものが出ているわけですか、これから出るわけですか。裁判は独立ですから、熊本でこうなったからそのことがほかへも影響するということを質問している意味ではありませんから。
  123. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 東京家裁でやはり就籍許可になった事案がございますが、これは日本に来ておりまして、審問等も受け、その結果、要件を満たしていると認められて就籍の許可を得たという事案でございまして、全く中国在住のまま代理人を通じて申し立てをしたという事案とは違うわけであります。
  124. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 昨日の委員会におきまして、私が、今度の国籍法の改正案の附則の第五条によって日本国籍を取得することになる者の数が、はっきりはわかりませんけれども、恐らく一万人を超えるような数字になると思いますというふうに答弁申し上げたわけでございますが、その根拠は、ごく最近の数年間の日本人女性の国際結婚の数を調べてみますと、年間約四千人おります。それが二十年ということになりますと八万人ぐらいの方がこの二十年間に外国人の男性と結婚しておられるわけです。その子供さんがどれぐらい生まれているかということも、これは推計になるわけでございますが、大体少なくても十万、多く見積もれば十三万、十四万ぐらい生まれているのではないかという推計が立つわけでございます。  ところが、そのうち母親が日本の国籍を離脱しているというケースもかなりあります。それから、生まれた子供さんが帰化の申請で既に日本の国籍を取得しておられるという方も方を超える数字があるだろうと予測されます。そういうふうにして考えてみますと、一応意思表示によって取得し得る可能性を持っておられる方は十万人ぐらいかとも思うわけですけれども、そのうちどの程度の方が取得の意思表示をされるかというのは私どもの方でははっきりわかりませんので、昨日は一万を超えるような数字だというふうに申し上げましたが、三分の一と見れば三万、半分と見れば五万ぐらいの方が出てくる可能性を持っておるという感じでおるわけでございます。
  125. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは私も聞いていまして一万人という話が出てきたものですから、どこからそういう数字が出てくるのかなというふうに疑問に思ったのです。それはやってみなくちゃわからぬことですから、そのことは今からなかなか判断しにくいというふうに思います。  そこで、この附則の五条、今政府の出しているのは二十年というものですが、これを例えば憲法の施行日あるいは国籍法の施行日というふうにした場合に、この数字というものはどういうふうに動いてくるのですか。これは想像と言うと語弊があるけれども、一応の推定でしょうけれども、どういうふうになるのでしょうか。
  126. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 大変難しい御質問でございますが、もちろんさかのぼればさかのぼるほど国際結婚の数がふえてまいりますので、ふえることは当然でございますが、単に平均の婚姻数に年数を掛けるだけではなくて、平和条約の発効前にまでさかのぼりますと、平和条約発効の昭和二十七年の四月まではいわゆる朝鮮籍、台湾籍の方も日本国籍を持っておられたことになるわけです。したがいまして、新憲法の制定当時までさかのぼるとすれば、その二十七年までの五年間にそういう朝鮮籍、台湾籍を持っておられた女性の子供さんが経過措置の一つの要件に当たるということになります。そのほかにもいろいろな要件がございますので、その数が全部というわけではもちろんございませんけれども、相当質の違うといいますか、考え方の違う数字が入ってくる可能性があるわけでございます。  その一番の基礎数字といたしますと、当時二百万を超える方がおられただろうと思いますので、女性がその半数とすれば百万人おられた。そのほかの要件でどれほど数が減るかということはわかりませんけれども、先ほど申し上げましたような数字とは少し違った質の数字が、かなりのものが出てくるのではないかというふうに想像いたしておるわけでございます。
  127. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 国籍法施行日のことに関連すると、どういうふうになりますか。
  128. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 現在の国籍法の施行日は昭和二十五年でございますから、その期間は短縮されますけれども、やはり平和条約発効の前ということになりますので、その二年間というものは同じような問題を提起するということになろうかと思います。
  129. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、二十日にもう一遍、ちょっと時間がありますのでお聞きするわけですけれども、この法律の中で、法定代理人があれするのは十五歳未満という形になっていますね。そうすると、刑法ではあれは何条でしたっけ、刑事責任能力を十四歳としておりますか、そういうふうなところとの関係はどういうふうになっておるわけですか。どうして十五歳未満としたのか。いわゆる民法の養子の法定代理人が代諾するときのあれは十五歳未満ですわな。刑事責任は十四歳ということになっていますね。それはどうしてそういうふうに違うわけですか。
  130. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 現在の国籍法でも十五歳というのを離脱、帰化の場合に決めておるところでございます。それは養子のときの十五歳というような考え方とも合わせて言っておるところだと思いますが、それが刑事責任の方で十四歳で民事の方が十五歳というのがどうしてそうなったかというのは、実は沿革的には私どもよく承知いたしておりません。ただ、昔から民事の関係では十五歳、一つにはかって婚姻年齢が十五歳ということが定められておったというようなこととも関連するのではなかろうかと思います。
  131. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 刑法の四十一条それと民法の七百九十七条。それから外国人登録の場合は十四歳であったのが十六歳になりましたよね。同じ外国人に関連することになるわけですけれども、どうしてこういうふうに違うわけですか。それはそれぞれの法の立法目的が違いますから、あるいは十四歳というものに二歳を好意的にプラスしたんだという理解の仕方もあるかもわかりませんけれども、私がわからないのは、刑法の四十一条と、それとの関係で民法の七百九十七条なり何なりとの関係ですよ。そこら辺のところがよくわからないのです。
  132. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 確かに、各法律を見ますと同じような基準であるべきか、あるいは似たようなものについて年齢がまちまちになっておるわけでございますが、私どもといたしましては、民事系統では従来から十五歳というのがいろいろなことで一つの基準に使われておるということで、民事法だけの考え方でずっときておるということで、ほかの法律との関係での差がどうしてかという説明をいたす根拠をちょっと今、私持っておりません。
  133. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 「十五歳未満」と書いてあるわけでしょう。刑法は、刑事責任能力はどういうふうに書いてありましたかね。今の民法の規定と年齢的には違うのですか違わないのですか。
  134. 筧榮一

    筧政府委員 刑法四十一条にはたしか「十四歳ニ満タサル者」という表現が使ってあったと思います。なぜ十四歳か。その当時刑事責任を負わせるのに適当なのは心身の発達その他から十四歳と判断されたものであろうと推測するわけでございますが、刑事法の分野では、御承知のように、その後いろいろな観点から実際上は十四歳の上に、少年法の関係で十六歳、あるいは十八歳という区切りがございます。その時代時代の状況に応じて、十四歳は崩しておりませんけれども、その後へ年齢の区切りを設けておるわけでございまして、あくまで刑事法は刑事法の観点からそのように定めておるというふうに理解いたしております。
  135. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 刑事法は刑事法の観点だというのはわかっているのですよ。外国人登録法のときも議論したのですよ。外国人登録法も携帯は最初十四歳だったのだ。なかなかその理由を言わなかったのですけれども、それは刑事責任能力との関係でそういうふうになったと思うのですけれども、これわからないのですよ。民事と刑事とどうしてこういうふうに違うのか、これは二十日の日にもう一遍聞きますから、よく研究しておいていただきたいと思うのです。  それからもう一つわからないのは、法定代理人が、子供のときに国籍選択するのでしょう。選択された子供はそれに対して異議の申し立てはできるのですか。大きくなったときにできるのですか。どういうふうな方法があるのですか。これはきょうでなくてもいいのですけれども、そういう方法が何かはっきりしていないようなことを言う人もいるのですよ。私もよくわからないところがあるのですけれども。だから、法定代理人ならば子の意思に反してもいいのですか。一般の代理人は子の意思に反してはいけませんわね。本人の意思に反してはいけないでしょう。効力なくなっちゃうのですね。法定代理人の場合には、その選択をするのは子供ですから、子供の意思に反しても構わないのですか。  私は実はなぜそういうことを言うかというと、高等試験のときに、法定代理人と訴訟代理人の差異というような問題が出たのですよ。それはなかなか書けなかったけれども、考えてみたらよくわからない。片っ方は審級ごとにあるわけでしょう。片っ方は、法定代理人は審級に関係ないわけですね。その程度はわかったのですけれども、あとはわからなかったのです。それはどういうのですかね。
  136. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 私も今の御質問にはお答えできない面があるわけですけれども一つ、最初におっしゃった点につきましては、法定代理人がやったことについて本人の意思との食い違いがあった場合にはどうかという点につきましては、十五歳未満の子供についてはその時点では本人の意思というものは確定的にはないという評価をしているわけです。ですから、法定代理人の行為によってやる、いわばそのときに、本人が、いや自分はこういう選択をしたくないと積極的に言ったりなんかした場合の衝突ということは十五歳未満にはない、そういう前提で考えております。  また、それが成人に達しまして、そして親の選んだことが今の自分にとってみれば不都合であったという場合に何か救済する方法はないかということが次の問題になろうかと思いますが、現在はそういうふうな救済の道は考えておりません。これは留保の場合でもそうでございますし、それから離脱の場合でもそうでございます。  養子の場合でも、十五歳未満に代諾で養子になった者が、後で親がやったことは気に食わないからと言って当然に養子縁組みをひっくり返してしまうという法制にはなっていないわけであります。ですから、今度の場合も、成人になってから法定代理人のしたことについて自分のその時点での意思と反するからということでの救済は直にはできないと思います。  ただ、場合によっては、例えば日本の国籍の選択の宣言をしたという場合に、重国籍のままになっていれば、もし外国の国籍の方を得たい、外国の国籍の方に行きたいんだという場合には、これは日本の国籍を離脱できるわけです、逆の場合に、日本の国籍を離脱するという選択の方法をとった場合は、これは現行法でも同じでございますけれども、一たん離脱をするということをすれば今度はそれをひっくり返すという道はないわけでございまして、帰化の手続によるほかはないと思います。その帰化の場合には、そういうふうな事情があるということは帰化の許可の場合の一つ判断の要素にはなろうかと思いますが、今おっしゃったように無権代理的なものを後でどうこう追完するとか追認するとかいうような関係に立つものではないというふうに考えております。
  137. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 じゃ、あと国籍法の関係は二十日にありますからいいのですけれども、一体、法定代理人で無権代理というのはあるのですか。
  138. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 無権代理というのはもちろんございません。ただ、今申し上げましたのは、本人の意思と反する一般の代理人の関係のことを先ほど委員がおっしゃったものですから、そういう無権代理関係のような法理がこの場合に働かないという意味で申し上げたわけでございます。
  139. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 終わります。
  140. 高村正彦

    ○高村委員長代理 午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  141. 宮崎茂一

    宮崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中村巖君。
  142. 中村巖

    ○中村(巖)委員 まず最初に、従来も大変に問題になっておりましたし、午前中の委員会でも問題になりました靖国神社の参拝の問題、それから合祀の問題につきまして質問をいたしたいと思います。  靖国神社の参拝の問題につきましては、そろそろ靖国神社の例大祭が近づいてきたせいかどうか知りませんが、自民党内でまたまた大変論議がやかましいようでございます。そこで、従来いろんな機会に政府の御答弁を承っているわけでございますけれども、改めてお聞きをいたしたいというふうに思うわけでございます。  まず最初に法制局にお伺いをいたしますけれども、現在の靖国神社というものが宗教法人であって、現在の靖国神社というものが憲法八十九条に言うところの宗教上の組織、団体、それから靖国神社の活動が憲法二十条三項に言うところの「いかなる宗教的活動」という宗教的活動に当たるのかどうか、この辺についての法制局の御見解を承りたいと思います。
  143. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 靖国神社は明治十二年に東京招魂社を改称したものでございまして、戦後は所要の手続を経まして昭和二十一年に宗教法人となりまして、今日に至っているわけでございます。したがいまして、宗教法人でございますので、ただいま御指摘のような憲法八十九条の宗教団体に当たりますし、そこで行われている行事は主として宗教的な行事であると考えております。
  144. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そうなりますと、当然のことながら靖国神社に対しまして公金を支出をすること、公金の額等は問題がありますけれども、靖国神社の活動に対して国が公金を支出することが憲法八十九条違反であり、さらにはまた国が靖国神社の行事に協賛をして一緒にお祭りをするというようなことはやはり憲法二十条三項違反ということになると思いますが、その点はいかがでございましょうか。
  145. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 ただいまも申し上げましたとおり、現在の靖国神社は宗教法人でございまして、憲法に言う宗教団体または宗教上の組織に当たるということは明らかでございます。委員は靖国神社の国家護持という点に重きを置いてお尋ねがあったかと思いますが、国が靖国神社の運営に参与することあるいは国費を支出するというようなことにつきましては、憲法第二十条及び第八十九条の規定から見て許されないものと考えております。
  146. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そこで参拝という問題になるわけでありますけれども、参拝の問題につきましては、内閣総理大臣あるいは国務大臣というものがこれを参拝をするということは従来も論議があったわけであります。確かに、内閣総理大臣といえども、あるいは国務大臣といえども、個人の資格で参拝をするということについては、国民から多々疑惑を受けることはともかくとして、その個人には宗教の自由というものがあるわけでありますから、靖国神社へ参拝をしようが、あるいは特定のお寺を参拝をしようが、これはいたし方がないというか、そういうものであろう。どういう宗教を尊崇しようがそれは個人の自由に属するというふうに考えられるのでありますけれども、やはり靖国神社を公式に参拝をするということになりますと問題が起こってこようかと思うわけでございます。   そこで、公式に参拝をするということは、従来の政府の統一見解におきましても、これはできないんだということになっておると思いますけれども、そこの意味での公式参拝ということはどういうことを意味しているのか、お尋ねを申し上げたいと思います。
  147. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 五十五年十月二十八日の答弁書で政府が答えておりますところによりますれば、「公式参拝とは公務員が公的な資格で参拝すること」を指しております。
  148. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そこで、公的な資格で参拝するということになると、憲法上疑義があるというのが従来の政府の考え方だというふうに思いますけれども、その点はいかがでしょう。
  149. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 その点につきましては、参拝が合憲か違憲かということについてはいろいろな考え方があり、政府としては違憲とも合憲とも断定していないが、このような参拝——公式参拝でありますが、このような参拝が違憲ではないかとの疑いをなお否定できないということであるというのが政府の考え方でございます。
  150. 中村巖

    ○中村(巖)委員 公式参拝であるかどうかということについては、参拝に際して神社で記帳するときに肩書きを書くかどうかとか、いろいろなことが従来論議をされておったわけでありますけれども、五十三年の政府統一見解におきましても、政府の行事として参拝を実施することが決定されるとか、あるいは玉ぐし料等の経費を公費支出するなどの事情があれば、それは公式参拝というふうに認められるんだと言っておられるようでありますけれども、法制局としての御見解もさようなことでございましょうか。
  151. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 ただいま御指摘のとおりに考えております。御指摘のようなことがあれば、とても私的参拝というような言いわけは立たないであろうということで、そのように申し上げております。
  152. 中村巖

    ○中村(巖)委員 公金を支出すれば、それは当然に八十九条の明文それ自体に反するということになるはずでありますし、さらにその公金を支出することによって靖国神社の活動というものを、宗教的活動というものを助長するということになれば、二十条三項の違反にもなるというふうに思うわけでありますけれども、今回の靖国神社の論議の中で、政府の中西総務長官は、玉ぐし料を奉奠をするというようなことは憲法違反に当たらないのだというような御見解を述べておられるようでありますけれども、そうなりますと、この御見解は法制局の考え方からすれば間違いであって、玉ぐし料を奉奠するようなことがあれば、公式参拝として憲法上重大な疑義が生ずる、こういうことになるわけでございますね。
  153. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 中西総務長官の御答弁につきましては、具体的な事情を知りませんので、コメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、閣僚の参拝に際しまして、公費で玉ぐし料を支出するとなりますと、先ほども申し上げましたけれども、その参拝は私的参拝であるということはできなくなると思います。政府統一見解におきましては、玉ぐし料は私費で支払われるということになると思います。
  154. 中村巖

    ○中村(巖)委員 中西総務長官の考え方そのものはこれからも論議になると思うわけでございますけれども、玉ぐし料というようなものは、尽きるところ金銭であろうかというふうに思うわけであります。公の金銭というものを靖国神社に対して出すということは、結果として公式参拝、したがって憲法上問題があるというふうに承っているわけでございまして、この種の憲法上疑義がある行動は政府としてはおとりになるべきではないと思うわけでございますけれども、この点に関しまして大臣の御所見を承りたいと思います。
  155. 住栄作

    ○住国務大臣 午前の稲葉委員にもお答え申し上げたのでございますが、私は現在法務大臣であり国務大臣でございますから、政府の統一見解というものは既に示されておるわけでございますから、それに従って行動をする、こういうふうに考えております。
  156. 中村巖

    ○中村(巖)委員 重ねて大臣にお伺いしますけれども、玉ぐし料を公金で支出をして、それで参拝をするようなことは憲法上疑義があるというような状況の中で、そういうことはやるべきであるのか、やるべきでないのか、こういうことについて直接にお話をお伺いしたい、こういうことでございます。
  157. 住栄作

    ○住国務大臣 玉ぐし料を公金で支出するというのは、今法制局からも答弁がございましたように、それは八十九条の点で触れる、こういう御見解のようでございますから、私もその見解に従うということでございます。
  158. 中村巖

    ○中村(巖)委員 靖国神社の参拝の問題はそのぐらいにいたしまして、靖国神社で合祀が行われているわけでありますけれども、この靖国神社の合祀に関しまして、防衛庁では自衛隊の殉職者等の合祀を靖国神社でやられることに何らかの関与をされておるのでございましょうか、防衛庁にお伺いをいたします。
  159. 村田直昭

    ○村田説明員 お答えいたします。  防衛庁は、国の機関として当然のことながら宗教的活動ということについてはこれを行わないということでございまして、靖国神社に合祀をするというようなことは全然考えられておりません。
  160. 中村巖

    ○中村(巖)委員 それでは、防衛庁がやるということを別といたしまして、戦後、自衛隊というものができまして今日まで来ているわけでありますけれども、自衛隊員の靖国神社への合祀ということが行われているでしょうか。
  161. 村田直昭

    ○村田説明員 私ども調べましたところでは、行われていないというふうに思っております。今、私どもで調べたところでわかっておりますのは、県にあります護国神社等に他の機関が合祀をしたという例は承知しております。
  162. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そうなりますと、どういう機関が県の護国神社に対して合祀をしているのか、合祀の申請ということになるのかもしれませんが、合祀をしているのか。それがどのくらい広く日本全国で行われているのか、このことについてお尋ねを申し上げます。
  163. 田中宗孝

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  社団法人隊友会という団体がございますけれども、この団体につきまして私ども承知しておりますところでは、当該団体は定款によりまして、その事業の一つといたしまして殉職した会員の遺家族に対する援助を行うこととしておりますけれども、その一環といたしまして、遺族と協議の上、各地にございます護国神社に対しまして合祀の手続をとって行っている、そういう支部連合会があるものと承知いたしております。
  164. 中村巖

    ○中村(巖)委員 その支部連合会があるということでございますけれども、それがどのくらい、各県お調べになっているかどうかは知りませんけれども、各県どの程度広範囲に行われているのかということと、現在までに、最近でも結構ですけれども、自衛隊の殉職者がどのくらいあるのかということ、そしてそれらの殉職者が何らかの形でそういった護国神社に合祀をされているのかどうかということをお伺いをいたしたいと思います。
  165. 田中宗孝

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  隊友会が各地にございます護国神社に合祀いたしております件数でございますけれども、必ずしも数字は正確でございませんけれども、隊友会の方で発行いたしております「隊友会二十年史」という本がございまして、これをもとにいたしまして見てみますと、昭和三十三年来五十四年までの数字がこの本には載ってございまして、約四百三十件余り、それから五十五年以降若干数ございますので、合わせまして約四百四十柱が現在各地の護国神社に合祀されておるというふうに理解いたしておるところでございます。  それから、隊友会の支部連合会と申しますのは全国で五十一支部連合会ございますけれども、この合祀に関連のある支部連合会は十四でございます。  私の方からは、以上でございます。
  166. 中村巖

    ○中村(巖)委員 各県に必ずあるということかどうかわかりませんが、護国神社というようなものがあるわけでありますけれども、この護国神社と靖国神社というものとの関係について、防衛庁としてはどういうふうに御認識でございましょうか。
  167. 村田直昭

    ○村田説明員 私も不勉強でよくは存じませんが、この件について調べたところでは、それぞれ独立の宗教法人であるというふうに承知しております。
  168. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今、独立の宗教法人であると言われました。独立の宗教法人であるかもしれない、それは事実であろうかと思いますけれども、これは靖国神社と密接な関係があって、同種のものであり、かつまた、沿革の由来からいっても同じようなものではないかというように私ども考えております。また、そういうことは山口の護国神社の合祀に関する訴訟が御承知のようにありまして、少なくとも一審、二審の判決の中ではそういうふうに認定をされているように思いますけれども、その点はいかがですか。
  169. 村田直昭

    ○村田説明員 お尋ねの件は、護国神社が靖国神社とよって立つところが同じようなものであるというようなお尋ねかと思いますけれども、その点についてはちょっと私つまびらかにしていません。
  170. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そこで、隊友会が合祀をやっているんだということでございますけれども、その隊友会なるものの目的、組織はどういうものでございましょうか。
  171. 田中宗孝

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  社団法人隊友会でございますが、この団体は、国民と自衛隊のかけ橋として相互の理解を深めるとともに自衛隊退職者の親睦と相互扶助を図ることを目的として、昭和三十五年に設立許可をなされた社団法人でございます。  主な事業内容といたしましては、防衛意識の普及高揚、自衛隊諸業務に対する協力、機関紙「隊友」などの発行、会員の親睦及び福利厚生並びに遺家族援護、さらには退職予定自衛官に対する無料職業紹介などを行っているものでございます。  会員数でございますが、昭和五十八年三月三十一日現在で、正会員約十二万名、賛助会員約二十四万名、特別会員約八百五十人という状況でございます。組織といたしましては、本部を東京に置きまして、地方組織といたしましては、先ほども若干申し上げましたが、都道府県に支部連合会五十一、それからその下の支部でございますが千六百二十六などの組織を有しております。  以上でございます。
  172. 中村巖

    ○中村(巖)委員 隊友会の定款によりますと、隊友会の組織の中で会員というものは現職の自衛官も入れるようになっているのではないか、現に現職の自衛官というものも入っているのではないかということ。それから、隊友会というものにつきましては、その本部が防衛庁の中にあって、防衛庁御自身の人事関係の担当官というか、そういう者が隊友会の世話をしているという状況があるのではないか。さらにまた、この隊友会に対して国の補助金が出ているのではないか。この三点について、いかがでございましょう。
  173. 田中宗孝

    ○田中説明員 まず第一点でございますけれども、先ほど組織に関して申し上げました中で賛助会員というのを申し上げましたが、これがただいま御指摘のとおり現に自衛隊に在職し本会の趣旨に賛同した者ということでございまして、賛助会員という格好で加入していることは仰せのとおりでございます。  それから、二番目の防衛庁の中に事務所を置いているではないかという御指摘でございますけれども、防衛庁の檜町駐屯地の一部の建物を使用許可いたしまして使用させていることは御指摘のとおりでございます。  それから、補助金を出しているではないか、この点についてでございますけれども、先ほど事業内容について申し上げましたとおり、隊友会は退職予定自衛官の無料職業紹介事業を行っておりまして、これに対しまして御指摘のとおり退職予定自衛官就職援護業務補助金というものを交付いたしているところでございます。この補助金は補助目的に沿った事業を実施するため隊友会の中に援護本部という特別な組織を設けまして、会計処理も特別会計によって行っているところでございまして、隊友会の他の事業に対する支出は一切なされておらない状況でございます。
  174. 中村巖

    ○中村(巖)委員 この隊友会が護国神社に対する合祀、これは合祀をしてもらいたいという申請かもわかりませんが、それをするについて護国神社に対しまして玉ぐし料とかあるいはまた葬祭料というようなものを支出している、こういう事実があるようでございますが、その点はいかがでございましょう。
  175. 田中宗孝

    ○田中説明員 先ほど申し上げましたように、合祀につきましては、殉職した遺家族の援助という観点から隊友会ないしはその支部連合会が行っていると私ども承知しておるわけでございますけれども、合祀に要する経費につきましては、これは私どもも多少聞いてみましたところ、護国神社によりましてそれぞれ経費には差異があるようでございますけれども、それらの経費につきましてはおおむねそれぞれの支部連合会がその経費を負担している、このように承知いたしているところでございます。
  176. 中村巖

    ○中村(巖)委員 合祀に至るまでのプロセスでいろいろな事務手続等々があるわけで、その中には、例えば遺族に対して合祀の意思があるかどうかを聞くというようなことがあるようでございますけれども、これを、隊友会が合祀をするといいながら、現実には自衛隊そのものがその事務を担当している、そういうところが多々あるように聞いておりますけれども、その点はいかがでしょうか。
  177. 村田直昭

    ○村田説明員 先生お尋ねの件は山口の合祀事件のことであろうかと思いますが、この合祀申請は県隊友会の会長が申請行為をしておりますが、その申請に至るプロセスで機械的、事務的な労務について地連の職員がお世話をしたということはございます。しかし、あくまでそれはその申請の補助的行為でございまして、申請自体は県隊友会長がされておる、こういうことでございます。
  178. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今お尋ね申し上げましたような実態のもとでは、合祀というものについて隊友会という名は冠しておりますけれども、これと大変に癒着した関係にあって、自衛隊というものが、あるいは防衛庁というものがこの合祀に参画をしていると受け取られてもいたし方ない部分があるのではなかろうかと思うわけでございまして、そのために先ほど来の事件の問題なんかも生じていると思うわけでございます。そういうようなことがなされますと、これはやはり憲法八十九条なり二十条三項の先ほど来の問題に抵触をして、国が憲法違反の行為をしているのではないかということになってまいるわけでありますけれども、なぜ、こういう合祀というようなことについて自衛隊が深くかかわり合いを持ちながらやっていかなければならないのかということについてお伺いをいたしたいと思います。
  179. 村田直昭

    ○村田説明員 ただいま御指摘になりました、深くかかわっていかねばならないのかということにつきましては、当時そのようなことが、いわゆる補助的な事務を行っておったということで、それ以後、四十九年に防衛庁としては「宗教的活動について」という通達を出しまして、その辺のところをひとつ明確にしていささかも疑わしい行為のないようにということで指導しておりまして、そのような事例は現在ないわけでございます。
  180. 中村巖

    ○中村(巖)委員 それではその問題はこの程度でやめまして、別の問題に珍らしていただきたいと思います。  次の問題は、外国の弁護士が日本において法律事務所を開設をする、こういう問題でございまして、既に法務省等におきましては、御承知のとおりに、最近になりまして外国の弁護士が日本で弁護士事務所を開設をさせてもらいたいということで圧力をかけてきているというか、そういうことがあるようでございまして、これに対しまして三月に日本弁護士連合会の会長談話というものが発表されておるわけでございますけれども、まずこの問題のここに至る経緯というか、こういうことの中には、一つは殊にアメリカを中心として日本に対してその種の要求というものがいろいろな機関、ことに対日投資委員会等を通じましてあったやに伺っているわけでございます。  外務省にお尋ねしますが、今、私が申し上げたような要求というものは外交の部面においていろいろアメリカ側から言われてきておるのかどうかということをお尋ねしたいと思います。
  181. 七尾清彦

    ○七尾説明員 御指摘の外国人弁護士問題につきましてはアメリカが晴夫を切っておりまして、経緯的には民間ベースで種々問題提起はさらにさかのぼってあったろうかと思いますが、政府ベースで公式に私どもが受け取りましたのはさかのぼりまして五十七年三月の貿易委員会が初めででございます。その後、御指摘の投資委員会あるいは日米高級事務レベル会合、いろいろな場でアメリカ側が先方の業界の要望を最初は伝えるという形で、その後は日本側での弁護士会さん等の御検討の状況を知りたがるという形で累次行われております。たまたま昨年七月以降は、ヨーロッパ共同体等からも政府ベースで問題提起がございまして、在日の商業会議所等もこの一月に入りまして関係大臣に問題提起を行っておるという、簡単でございますが、そういう経緯でございます。
  182. 中村巖

    ○中村(巖)委員 私ども伺うところによりますと、アメリカ側のそういう主張というか、そういうものはいろいろな言い方がなされているだろうということですけれども、その中には対日投資の自由化というか日本側の自由化、アメリカの投資の日本での自由化というものにひっかけて大変強く言われているように聞いておるわけでありますけれども、そういう事実はあるわけですか。
  183. 七尾清彦

    ○七尾説明員 基本的には投資、貿易全般につきまして日本との交流を深めていくに際しまして、アメリカの場合でありますればアメリカ法のコンサルティング業務といったようなものを東京である程度認めていただかないと貿易、投資その他の分野にそこが生じる、せめてそれぞれのアメリカならアメリカで認めておる程度ぐらいにはやってもらえぬかという話だと思います。新しい側面としては、弁護士業ということになりますと、他の医者あるいは弁理士等と同様、一種サービス業の分野になりますから、そういうサービス業分野での自由化、市場開放といったような思惑もあろうかと思います。
  184. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そういうアメリカなりECのその種の要求というか要請に対しまして、外務省としてはどういう対応というか返答をしているのか、それをお伺いしたいと思います。
  185. 七尾清彦

    ○七尾説明員 基本的には、この問題は日本弁護士会さんの自主的な御判断にまつべき問題ということで、直接の御担当でございます法務省さんと非常に密接に連絡をとりながら弁護士会の方での種々御検討、調査の動きを見守っておるという形でございます。
  186. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そのことは、言うならば現段階では、いついつまでにどういうふうな解決をいたします、あるいはまたこういう方向で今やっておりますというようなことをアメリカなりECに対して外務省としては返答をしておらない、こういうことでございますか。
  187. 七尾清彦

    ○七尾説明員 いついつまでにといった期限めいた形では一切関係国との関係でもお約束もしておりません。ただ、それぞれの分野での弁護士会あるいは外務省、法務省等々での検討状況につきましては可能な範囲で関係当局に説明しておるということでございます。
  188. 中村巖

    ○中村(巖)委員 外務省にお伺いする最後の点としては、先ほど申し上げたように日本弁護士連合会では理事会内の外国弁護士問題の委員会でもって検討をして、その中間答申を出し、さらに三月の日弁連会長の談話、こういうふうな運びになっておるわけでありますけれども、その中でこの問題はそう簡単にはいかぬのだ、種々の条件整備というものがなければ外国人に対して日本の弁護士業務を開放するようなところには至らないという結論のようであるわけでありまして、その結論から見ますると、仮に一年や一年半でこの問題が日本側で一定の結論を得ることが大変難しい状況だと思われるわけであります。かなり長期にわたってこの問題に対します弁護士会側の結論が出ないといたしますと、対外関係の上でどういうことになりましょうか、その辺の何か外務省としての見通しというものをお持ちであったらお聞かせいただきたいと思います。
  189. 七尾清彦

    ○七尾説明員 物事の性質上、制度面、法制面、種々絡むものですから簡単にいかない問題であろうという認識は、御指摘のとおり私どもも持っております。他方、かれこれ二年近くになってきておりますから、特にアメリカ政府を中心にしまして一種いら立ちめいたものが伝わってきておることも事実でございまして、この意味では先般の日弁連が御発表になった中間報告は、物事をドアを閉めてしまうというわけではなくて、何らかの外国人サービスの分野を認める方向では諸般のいろいろの障害がある、そういう障害を取り除いていく上で官民よく相談してやっていく必要があるというプログレスレポートになっておりますから、そういうものを利用しましてできるだけ関係国政府の理解を求めるということでございますが、同時にこちらの方も長々期かけてのんびりやっておるというわけにはいかないというふうにも認識しております。
  190. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今、外務省に伺ったわけでありますけれども、法務省のサイドといたしましては、この問題をどういうふうに受けとめてどういう態度で臨もうとしていらっしゃるのか、お伺いをいたします。
  191. 菊池信男

    ○菊池(信)政府委員 この問題につきましては、確かにアメリカ側はサービス業の自由化でありますとか非関税障壁の一部というような取り上げ方でまいっておるわけでございますが、先生もおっしゃいましたように、我々としてはこの問題にも経済的な側面があることは間違いないとは思いますけれども、事弁護士制度そのもののあり方にかかわる問題であります。申すまでもなく、弁護士制度は広い意味で申す司法制度の一環であるわけでありますし、国民の法律生活のあり方というようなものとも深い関係を持っておるものだと思っております。したがって、この問題について我々が対処していく基本的な視点はそこになければいけないと思っております。  また、他面、先生既に十分御存じのように、日本弁護士連合会という団体が日本のすべての弁護士の組織団体としてございまして、完全な自治権を持っております。しかも、この問題が司法制度の中でも弁護士制度そのものの問題にかかわるものであるということでありますので、政府といたしましても、これは日弁連自身がそういう諸般の情勢を、もろもろの情勢、条件、事情をよく考慮されつつ、まず自主的に御検討になるべき事柄だと考えておりまして、五十七年の春以降アメリカ側との諸般の折衝の機会ではそういう基本的な認識を伝え、したがって、まずこれは日弁連での検討がなされなければいけないのである、そういうことを政府としては可能な限りにおいて日弁連との関係で側面的な協力、連携を密にした関係を保っていくという物事の取り組み方が必要でありますということを伝えまして、そういう取り組み方そのものについてアメリカ側の理解を求めてきたわけでございます。  日弁連の中で諸般の検討、調査の過程をお踏みになりまして、先生先ほど御指摘のように、三月三十日の時点で日弁連の会長談話というものを発表されまして、その中で日弁連では可能な限り早期に、国内的にも国際的にも妥当とされる結論を得るように一層努めるというふうにされておるわけでございます。したがって、私どもとしては諸般の情勢を十分認識しつつ、さらに日弁連との連携を密にして、いわば側面的な協力を行ってこの問題についてできるだけ早い段階で適切な解決が得られるように努めていきたいと思っております。
  192. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今、法務省の方からもお話がありましたように、この問題というのは、貿易の問題とか投資の問題という経済的な問題、そういう一時的な問題じゃなくて、日本の司法制度をどうするかという根幹に触れる問題であろうと思うわけでございます。のみならず、アメリカ・サイドの要求あるいはECからも要求があったようでありますけれども、そういうものについて変な対応をしていきますと、それだけの問題ではなくてアジア諸国からもそういうような要求が出てくるわけで、それに対しても対応しなければならぬ。さらに、そういうものに全部対応していきますと、今申し上げたような日本の弁護士制度、ひいては司法制度そのものが根底からおかしくなってしまうのではないか、こういうことになろうかと思うわけでございまして、その意味で大変慎重に対処していただかなければならないと私は考えておるわけでございます。  そこで、先ほど外務省のお答えにもありましたけれども、アメリカ側では日本の弁護士の対米進出を許容しているじゃないか、相互主義的な考え方からいっても日本で認めてもらわなければ困るのだ、こういう言い方があるようでございますけれども、アメリカの外国人弁護士の取り扱いは、一部ニューヨーク州一州ではちょっと違っているようでありますけれども、ほかではやはり閉鎖的ではないかと思われるわけでございまして、その点について法務省として御存じのところをおっしゃっていただきたいと思います。
  193. 菊池信男

    ○菊池(信)政府委員 確かに、先生御指摘のように、アメリカの場合には弁護士制度はすべて各州レベルで定められておって、州ごとにばらばらになっております。しかし、御指摘のニューヨーク州とマサチューセッツ州がある形で認めておるようでありますが、ほかの州はいずれも外国弁護士の活動を認めておらないということのようであります。  ニューヨーク州で認めております認め方の内容は、ごく概略を申し上げますと、リーガルコンサルタントという形で認めるようでございまして、裁判所の許可を要件にしております。そして、その実質的な要件につきましては、外国弁護士であって五年以上の実務経験があり、ニューヨーク州に居住する二十六歳以上の者ということを実質的要件にしておりまして、それに認めます業務の内容は、外国法に関するアドバイスということでございまして、法廷活動あるいはアメリカにおける不動産、遺言、遺産管理、婚姻等に関する文書の作成というようなものは除外しております。そして、裁判所の監督に服せしめているというのが制度の概要のようでございます。
  194. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そうしますと、ニューヨーク州あるいはマサチューセッツの一部で極めて限られた範囲内で日本の弁護士のアメリカ進出を認めているということの中で日本に全面的に認めるということは、相互主義の上からいっても逆におかしいのではないかというような感じがするわけでございます。いずれにいたしましても、現在では恐らく弁護士法の七十二条関係で外国人弁護士が日本で法律事務所を開いて広い範囲の法律事務を行うということについては制約があることになっているのだろうと思うわけでございまして、法務省としてはこの弁護士法の改正等々につきましては当面考えておらない、日本弁護士連合会の方の対応待ちであるということにお伺いをしてよろしゅうございましょうか。
  195. 菊池信男

    ○菊池(信)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  196. 中村巖

    ○中村(巖)委員 じゃ、この問題もこの程度で終わりまして、もう一つ別の問題に入らせていただきたいと思います。  それはコンピューターによる個人信用情報の収集の問題でございますけれども、最近高度情報社会ということが言われまして、さまざまな情報が収集され、あるいは伝達をされているわけでありますけれども、その中で殊に最近は個人信用に関する情報が大変に収集をされている、そしてそれが利用されているという状況があろうかと思われるわけでございます。例えば銀行であるとか信用金庫であるとか、あるいは割賦販売業者であるとか信販業者であるとか、そういったようなところがそれぞれデータの収集センターというようなものを設けておるようでございます。この辺の現在の状況につきまして、それぞれどういう機関があって、どの程度の情報を収集しているのか、これを通産省にお伺いいたしたいと思います。
  197. 牧野力

    ○牧野説明員 御指摘の個人信用情報機関でございますが、これは最近いわゆる消費者信用が非常に発展をしてまいるにつれまして、多重債務者の防止あもいは企業の不良債権の発生の防止というような観点から注目を集めてきている機関でございます。ただ、今先生御指摘がございましたように、消費者信用といいましても、割賦販売、これは私ども所管している問題でございますが、いわゆる金融、貸し金、これは銀行、貸し金業者と分かれておりまして、私どもの方で掌握をしておりますのはいわゆる物販、割賦販売の関係でございますが、これのデータセンターは現在、社団法人の日本割賦協会が信用情報交換所というのを持っております。これは登録の情報数が今大体千四百万件ぐらいでございます。それから家庭電器の信用販売業者がつくっております日本信用情報センター、これは株式会社でございますが、こういう機関がございます。これは大体五百五十万件ぐらいの情報数を有しております。
  198. 中村巖

    ○中村(巖)委員 大蔵省の所管の銀行とかサラ金とかクレジット関係のそういう情報センターについては通産省では全くおわかりになっておらない、こういうことでございますか。
  199. 牧野力

    ○牧野説明員 これは他省の所管でございますので、御参考までに私の方で知る限りを申し上げますが、サラ金関係では全国信用情報センター連合会というのがあるようでございます。これは登録情報数は大体五百万件ぐらいと聞いております。それから、全銀協が持っております個人信用情報センターというのがございます。これが約三百九十万件ぐらいの情報を有しているというふうに聞いております。
  200. 中村巖

    ○中村(巖)委員 大蔵省の所管と通産省の所管、こういうふうに分かれているようでございますけれども、これらの信用機関というか個人信用情報機関というか、そういうものがそれぞれにどういうデータ、アイテムを収集しているのかということについてはおわかりでございましょうか。
  201. 牧野力

    ○牧野説明員 これは私ども所管の割賦販売業界についてだけ申し上げますが、先ほど申し上げました日本割賦協会の情報センターでございますけれども、いわゆる事故情報、これはブラックと申しておりますけれども、事故情報が大体三五%でございます。それから日本信用情報センターでございますが、これにつきましては事故情報が約八割ぐらいというふうに承知しております。もちろん詳細な内容につきましては、その事故を起こした人の氏名であるとか住所であるとか、そういった詳細について登録されていると承知しております。
  202. 中村巖

    ○中村(巖)委員 私どもがいろいろ聞いておるところによりますと、それらのデータの中には氏名、住所とか勤務先、生年月日、さらには当該契約の内容から収入、学歴、住所の移転歴とか家族関係、そういうものまで含んで、個人について非常に多くの項目の情報が収集をされているということであります。こういうような情報が、一つには間違って収集されている、誤情報が収集されているということになりますと大変問題がありますし、あるいはまた、この情報が当該収集をした信用情報機関だけにとどまっているならまだ問題は少ないわけでありますけれども、いろいろな形で流出をする。中にはこういうデータそのものを販売をするというような業者もあるようでございますので、そうなりますと、大変に問題になろうかと思うわけでございます。  殊に、こういうような問題が発生をいたしてまいりますのは、今までは、古くはこういうデータといっても人間が集めるもので人間が記録をしておくものであったから大したことはなかったわけでありますけれども、今度コンピューターというような記憶容量の大きなものを用いてこういうことをやっていく、それからコンピューターを通じればデータの処理は物すごく早いし、またその取り出しというのも極めて簡単である、こういうことになるわけで、その結果として、データ主体の人格権ないしはプライバシーというものを侵害をする危険があるだろう、そういうおそれは十分にあるというふうに思われるわけであります。これについて、殊にコンピューターを所管をしている通産省としては何らかの規制の方法を現在考えておられるのかどうかということをお伺いをしたいと思います。
  203. 牧野力

    ○牧野説明員 全く御指摘のとおりだろうと思います。この個人情報機関は多重債務者の防止という社会的な意味からいきましても大いに権威ある機関をつくっていくべきだろうと思いますが、他方、御指摘のように個人のプライバシーとの調整というのは非常に重要だろうと思います。そういうこともありまして、現在、本国会に私ども割賦販売法の改正案を提出しておりますが、その中で、今先生おっしゃいましたような情報機関の適正化についての法文を盛り込み、それに基づいて今後業界について適切な指導をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  204. 中村巖

    ○中村(巖)委員 最後に、通産省及び法務省にお尋ねをいたしたいのでありますけれども、この種の問題の中でどういうふうな立法をするかは別として、このデータをむやみに外部へ流出をさせた、そのために人格権なりプライバシー権というものを侵害をした場合において、そういうものを刑事罰をもって処罰をする、こういう立法をお考えでしょうか、これを両方にお伺いをいたしたいと思います。
  205. 筧榮一

    筧政府委員 御指摘の点は、まさしくいろいろな点で憂慮される点であろうと思います。現行法におきましては、個人情報を漏らしたような場合に考えられますのは、秘密の漏泄でありますとか、あるいはそれの利用の仕方によっては名誉棄損とか侮辱とかいうことが考えられるわけでございますが、データの流用そのものについては処罰する規定はないわけでございます。  ただ、それを考えるに当たりましていろいろな点が問題になるであろうかと思いますが、諸外国の立法例を見ましても、二、三、収集された個人データを不法に流出あるいは悪用した者についてのストレートの処罰規定を持っている国もあるようでございます。ただ、今御指摘のように人格権あるいはプライバシーというものの概念が刑事罰をつくるに当たりましては極めて不明確と言わざるを得ません。そういう点が一つ問題でございますのと、そういう情報を含めまして、情報公開ということが言われておる時代でございますので、それとの調整も必要であろうかと思います。そういう点も考慮いたしまして、ただ何らかの必要があるのではないかという点は私どもも考えておるところでございますので、今後、これらのコンピューターによりますデータ管理の進みぐあいも見まして、刑事罰の必要性の有無についても検討を進めてまいりたいと考えております。
  206. 牧野力

    ○牧野説明員 先ほど来申し上げておりますように、私どもといたしましては、個人信用情報のほんの一部を扱っているだけでございますので、今御答弁がありましたように、罰則の問題等につきましては、関係各省と今後十分相談していきたいというふうに考えております。
  207. 中村巖

    ○中村(巖)委員 終わります。
  208. 宮崎茂一

    宮崎委員長 伊藤昌弘君。     〔委員長退席、森(清)委員長代理着席〕
  209. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 これから御質問いたしますが、できるだけ簡明に質問しますから、ひとつはぐらかすことのないようにお答をいただきたいのです。議会における質問者と答弁者の心構えは、お互いの間で言ったり言われたりするのでなくて、ひとつ国民に内容をよく理解をさせるという心で質問もまた答弁もいただきたいのであります。  まず最初に総理府にお尋ねいたしますが、実は昭和四十九年三月、文部省が衆議院の文教委員会に提出した資料、こういう資料があるのです。「日教組が社会主義革命に参加している団体と自ら規定していると受けとられる資料」。見出しを三つほど述べますが、まず第一「教師の使命と教育の目標は、社会主義社会の実現にあるとしている。」二として、「青少年を社会主義社会の実現のための担い手として教育しようとしている。」三として、「日教組は、階級闘争の立場に立つ組織と自ら規定している。」これが文部省が国会に提出した資料でありますが、これは明らかに階級闘争思想というものが日教組の倫理綱領や運動方針にあるということを文部省が考えて出した資料でありますので、ひとつ総理府としても、この資料の内容は明らかに階級闘争思想によって貫かれておるとお認めいただけると思いますが、それについて御答弁をいただきたいと思います。
  210. 上吉原一天

    ○上吉原説明員 ただいま先生御指摘の問題につきましては、直接の所管は文部省であるという理解でございます。私、寡聞にいたしまして先生御指摘の資料、現在まで見ておりませんけれども、直接の所管は文部省であるということでございます。
  211. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 私が今述べた内容が正しいとするならば、この資料は階級闘争思想によってつくられたものだということは認めないわけにいきませんね、これは政府が出した資料だから。これは私がそこで改ざんをしたとかいうものであるならば別だけれども。もう一遍答弁してください。
  212. 上吉原一天

    ○上吉原説明員 ただいま先生御指摘の資料の読み方につきましては微妙な問題がございまして、総理府としてお答えすべき分野を超えておるというふうに考えております。
  213. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 それならば、後日、私は総理府と文部省合同でこの問題を明らかにしますから、ひとつ上司にお話しになっておいてください。  そこで文部大臣は、このように日教組の倫理綱領や運動方針については明らかにいたしております。  そこで、私は、きょうは裁判所の全司法、それから法務省の労働組合個々についてと思ったんでございますけれども、国公労連の運動方針のみについて明らかにしていきたいと思うのですが、本当は裁判所も法務省も、文部省が行ったと同じように、その労働組合の綱領の内容というものは明らかに反憲法思想によって貫かれておる綱領である、また運動方針であるということを明らかにしておかなければいかぬと私は思うのです。しかし、まだ明らかになっていませんので、きょうこれから私がこれをただしますので、ひとつこの席で明らかにしていただきたいと思うのです。  そこで、まず裁判所の職員団体である全司法という労働組合は、職員一万八千名の中で一万五千名が組織されておる。これは日共系の労働組合と言われておりますが、人事局長、間違いございませんでしょうね。
  214. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 御指摘のように、裁判所には全司法労働組合という職員をもって構成する組合がございまして、組合員は大体一万五千名程度というふうに言われておりますが、その全司法という組合が何系であるかということにつきましては、何系であるというふうにはちょっと一概には申し上げにくい。これは職員が勤務条件の維持改善を図るために結成した組合である、かように考えております。
  215. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 職員の職務の維持改善のための労働組合なら納得するのです。  そこで、これは国公労連の運動方針ですから、これの大事なところを朗読をいたしますので、本当にこれが憲法遵守の労働組合であるかどうかということについて明らかにしていきたいと思いますので、ひとつよくお聞きをいただきたいのであります。  まず、政府や独占資本による「現行諸制度の抜本改悪や勤労国民への犠牲の全面転嫁というファッショ的な反動政策の推進以外には、支配体制が維持できないまでにきている日本資本主義の構造的矛盾の激化と危機の深まりを反映しているといえます。日本経済の危機とは、基本的には「生産と消費の矛盾」です。」これは共産主義者が言う文句ですね。果たして自由民主党政府がファッショ的な反動政策推進の政党であるか。どちらかというと、悪いけれども、このごろ自由民主党は事なかれ主義でファッショ的反動政策の推進なんて、とんでもないことだと私は思っておる。もっと強くなってほしいと思っておるくらいでありますが、これもいいかげんだ。  「それだけに、支配層の危機意識も深く、だからこそ、行財政と現行諸制度に抜本的にメスを入れ、より独占資本本位の支配体制を強固なものにしようとする臨調路線が推進されたり、その補完勢力が育成されたりしているのです。 独占資本と政府は、レーガン戦略への加担など対米従属をいっそう強めながら、軍事大国化をめざす反動路線をおしすすめていますが、このことも、現在の危機と密接な関係をもっています。 これは、軍事力増強それ自体が独占資本にとっての膨大な利潤の対象となっているばかりでなく、」ずっとこういうことが書かれています。  私、これを見ると赤旗を読んでいるみたいなんです。そういう感をするのであります。何も私は赤旗が悪いとかいいということを言っているのじゃない。赤旗を読んでおるような感をするということでございます。  そこで、独占資本、独占資本ということをよく極端な左翼の方はおっしゃいますが、一体その独占資本というものはどういう内容のものなんでしょうか。法務大臣お答えをくださいませんか。
  216. 住栄作

    ○住国務大臣 独占資本というのはどう定義するのが正しいのか経済学者に聞いてみぬとわかりませんけれども、どう言えばいいんでしょうかね、独占は独占だということしか言えないのでございますけれども
  217. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 これは、ある学者が述べておることですが、「一にぎりの独占資本家が労働者を搾取するといった問題であります。」「資本主義社会が発達しますと、会社の合併が進み、大企業は中小企業を吸収し、或は系列化する、そのため産業の実権はひと握りの資本家によって握られ、残りの大多数はプロレタリアートとして、貧しい労働者となる。九〇何%の労働者と、ひと握りの独占資本家とが対立することになり、その対立の結果、衆寡敵せず、少い方が負けて、資本主義社会は崩壊する。これがその概要であります。ところが、その説の最も重大な誤謬は、」「資本主義が発達すれば、企業の合併集中の進みますことは、ある程度当てはまると思いますが、企業が減るのには限度がある。ある程度以上減らないことは統計的に見ても明らかであります。」「その重大な誤謬は、残り全部が労働者になるという考え方です。残り全部が労働者にならない。即ち資本主義社会が発達すると、むしろそういう社会構造の中には、中産階級が増大してくる。どういう人々が中産階級になるかと申しますと、技術者、官吏、熟練労働者、それにホワイトカラー、いわゆる会社の部課長、係長クラス、」「こういう人々は、いわゆる健全な中産階級を形作って行くのであります。今日世界の代表的な資本主義国のどの国をとりましても、中産階級が増大して行く増加率の方が、統計的に見て労働者階級の増大して行く増加率より高い。」「事実として資本主義の高度に発達した国ほど社会的安定度が高い。例えばどんなに左翼的な議論をする人でも、アメリカに革命が起ると予言している人はございません。イギリスに革命が起ると主張している人はございません。ということは、資本主義の高度に発達した方が社会として安定することの事実としての証明であります。これらの歴史的事実によって、マルクスの学説は殆ど否定されなければならないことになっているのであります。」という解説です。  私も現実を見で、そのとおりだと思う。ところが、この運動方針には独占資本、独占資本、そんなことはかり書いてある。  もう少し読みますから、ひとつお聞きいただきたいのであります。次に、今度は全民労協の悪口が書いてある。  「全民労協の発足により、民間労組の右翼再編に布石をうった独占資本の次の攻撃の標的は、官公労働運動です。とりわけ、国家の財政と機構を独占資本の思いのままに利用しつくしていくためにも、彼らは官公労働運動の右翼的な変質を必要としています。独占資本の同盟軍である同盟が、新ナショナルセンター結成の柱の一つに官公労働運動の体質改善をかかげていることは、こうした政府・独占資本の動きと軌を一つにするものです。宇佐見同盟会長は、一月の大会で「官公労運動のなかで、日共と明確に対決する姿勢がつくられ、全民労協の基本構想について合意が得られた段階が統一具体化の時期」と表明しました。そのことを受けて総評は、当初は本年の大会で決定することにしていた「基本構想」の延長線にある「労働戦線統一綱領」については、総評主流単産の内部矛盾もあり、引き続き討議するあつかいにしたものの、「労戦統一問題は、全民労協の結成により新たな段階に入った。……全的統一にむけてのとりくみを本格的にとりくむ段階にきた」「官公労働者の統一をめざして、総評、同盟、新産別の官公労働者の共通課題での共同闘争をすすめるとともに、話し合いの場を設定する。」との見解を表明し、官公労働戦線を右寄りに再編する方向にいままさに踏みだそうとしています。他方、全民労協を発足させた右翼的潮流は、労資一体化路線をいっそう強めています。」  いわゆる労使一体化路線、労使協調路線を進めることに反対をしておるのがこの労働組合ということは、これを読めば明らかであります。労使協調路線に反対をする、いわゆる敵対的階級闘争一本で進もうというのがこの労働組合の骨組みじゃございませんか。  その次に、「重要なことは、国公労連も加盟している総評が、」「労資一体化路線をなんら批判していないばかりか、同盟主導の労働四団体共闘を基本に、自らも労働戦線の右翼的再編を積極的に推進し、労働者と勤労国民に背を向け、結果として政府・独占資本の反動政策の推進に手を貸しているということです。」  この文章から、国公労連という労働組合は階級闘争を基盤とした日共系の労組であるということが明らかであります。  そこで、これは今最高裁の大西人事局長が言われた職員団体の運動方針ではない、これは政党の運動方針なら……。職員団体の運動方針じゃない。  「また、定昇以下の賃上げにおさえこまれた八三年春闘の結果は、現代版「産業報国会」」——これは何ですか、現代版産業報国会というのは。これは戦争中の治安維持法をまだ忘れないで覚えておって、そして今度は、「現代版「産業報国会」をめざす労資協調路線では、要求実現の展望を切り開けないことを鮮明にしました。同時にこのことは、労働戦線の右翼的再編の反労働者的な本質を多くの労働者の前に明らかにしたばかりでなく、右翼的潮流と労働者の間の矛盾を拡大させることにもなっています。」  労使協調路線の非難がここに書かれておるのでしょう。  「蓄積されている矛盾を支配階級に向けてたたかう力にするためには、それを組織して一つの力に変えていくための運動が必要です。そのためには、階級的潮流を中心とした目的意識的な運動の展開と、正しい運動路線による多数派形成と陣地拡大をめざす、広範な労働者、勤労国民への積極的な働きかけが決定的に重要になっていますし、その前進によってこそ、政府・独占資本を政治的に包囲していく国民的な戦線をつくりあげ、要求実現の大きな展望を切り開くことができるのです。」  政府・独占資本を政治的に包囲する。法務大臣、包囲すると書いてある。これが役人の労働組合の運動方針であります。これについて法務大臣、どうお考えになりますか。法務省の労働組合の上部団体の運動方針です。ひとつはっきりお考えを述べていただきたい。  自由民主党は、日本のよき古き伝統を守って秩序の中に進歩を求める、これが保守でございましょう。日本のよき伝統を尊重して秩序の中に進歩を求める、これが保守の精神であります。秩序とは何でしょうか。秩序とは今の憲法の精神を尊重するというのが秩序であります。いわゆる資本主義の精神、憲法一条の精神、これが秩序です。それを破壊せんとする運動方針が役人の労働組合に貫かれておる。大臣どうお考えになられますでしょうか。これは大臣の労働組合だ。これははっきり国民にわかるようにお答えいただかないと、国民もそういうことを聞きたがっておりますから。
  218. 住栄作

    ○住国務大臣 先生承知のように、国家公務員の勤務条件の維持改善ということで組合の結成というものが認められておるわけでございます。例えば、全法務、これは法務省の職員組合でございますけれども、その上部団体である国公労連でございますか、それが登録されている職員団体であるかどうか、実は私は今はっきり承知いたしておりません。職員団体としては政治活動を禁止されておるということは、これは公務員法上も明らかになっておるわけでございますから、その職員団体としての適格性があるかどうか、こういう判断は、私は、第一次的にはこれは人事院でおやりになっていることだと思っております。そういったそれが運動方針、綱領として直ちに職員団体としての適格性というところとの関係においてどう判断するのか、こういうことについては、私自身確たる自信を持っておりませんので、その点についてはお答えできないのが実情でございます。
  219. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 役人になるときには、私は日本国憲法を遵守いたしますという誓約をしておるのです。これは任意規定じゃないのです。絶対に役人は日本国憲法を守らなきゃいかぬという強行規定です。ところが、役人になってしまいますと、憲法を守らないで、それでマルクスの思想丸出しの運動方針の中に埋もれてしまっておって、そしているじくも今、大臣のおっしゃったように、私は管理者であるけれどもそこまでよくわからない、これが今の実態なんです。管理者というものは何ですか。管理者が採用したわけだから、役人になったならば管理者がもっと憲法教育というものをしっかりしてもらわなければいけない。それをおざなりにしておるのです。今の日本の国は少々のことじゃ驚かない。石が流れて木の葉が沈む、少々のことでは驚かないけれども裁判所という日本の法律の総元締めの労働組合が左翼丸出しの労働組合であって、そして八〇%以上の組織率、これを国民が聞いたらびっくりしますよ。今、日本の国民は少々のことでは驚かない。教える先生が教えられる生徒に殴られても手も足も出ない、そして校長が教員におどかされて手も足も出ない、これはよほどおかしい日本になっておるのですけれども、しかし、今私が申し上げたように、裁判所の中がこういうことでは、また法務省の中がこういうことでは国民はびっくりするのです。  そこで、今度は憲法論に入っていきたいと思うのです。法務大臣、よく御理解をしていただけなかったようですので。まず、階級闘争の言葉というものは、一八四八年、マルクスの共産党宣言に登場しました。「全く協調の余地のない敵対的階級闘争、すなわち資本家階級と労働者階級の対立を認め、労働者階級が団結をして資本家階級を絶滅し政権を奪取する」。管理者の皆さん、人間というものをそんなにものすごく敵対視する階級に分けて考える必要が一体あるのでありましょうか。また、日本国憲法は一体階級闘争というものを認めておるのかどうか、これは裁判所大西局長、お答えいただきたい。日本の憲法は階級闘争を認めておるのか。
  220. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 憲法が何を基調としておるかということにつきましてはいろいろ議論のあるところでもございますし、裁判所の一事務当局者として憲法が一体何を基調としておるかという解釈論をここで申し上げる立場にはないということを御理解いただきたいと思います。
  221. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 法務大臣、いかがですか。今、日本国憲法は階級闘争思想というものを認めておりますか。それから、思想の自由というものはいい。国民は左翼の思想を持とうと右翼の思想を持とうと憲法は御自由です。しかし、役人というものはここに一つの規制があるわけです、日本国憲法を守るという。役人が守らなければならぬ日本国憲法の条規を述べますから、そうすると、はっきりとわかっていただける。それがわからないようだったらその人はよほど頭のおかしい人と言わざるを得ない。——それではもうしばらくしてからお答えいただきましょうか。  日本国憲法というものは階級闘争を許していないのですね。憲法十四条、国民は法のもとに平等であって、社会的身分によって差別されない。社会的身分というのは何でしょうか。労働者であるとか資本家であるとかという社会的身分によって差別しない、これが日本の今の憲法であります。平等に取り扱うには、まずその双方が協調関係になければ平等に扱えないじゃないですか。敵対的階級闘争でおったんでは平等に取り扱おうとしたって取り扱えない。昔の資本主義なら資本家が労働者を虐げたってそれはいいでしょう。ところが今は憲法が労使協調というものにしてあるのですから、そんなけんかなんかを憲法が許すわけがない。労使協調でいかなければいかぬでしょう。  つまり日本国憲法は、経済制度としては自然の人間性に適した資本主義制度を根本として、その活力ある長所を生かし、いわゆる悪い資本主義の弊害を改め、労使協調により資本主義を修正をして今のような立派な資本主義国家というものをつくったんじゃありませんか。今、自由主義国家の間では戦争が起きないじゃないですか。どうして起きないのですか。昔は、自由主義国家同士が敵対的経済競争をしておったから戦争が起きたわけでしょう。今は、自由主義国家は敵対的じゃない協調的経済競争を、正しい競争をしておるから戦争が起きないのです。ですから、修正資本主義というものがいかにすぐれておるものかということ、これが日本国憲法じゃありませんか。階級闘争を認めてないでしょう。  それから、今度政治制度としては、多数決により平和的に政治経済を改良していくという議会制民主主義を採用しているわけでしょう。言論によって、批判と批判のぶつかり合いによって、そして多数決で決めていく。これも協調の姿じゃありませんか、これは政治制度じゃありませんか。一階級などの暴力改革を排除する。したがって、敵対的階級闘争思想というものは日本国憲法が否定するところである。私の言うことが違っておったらひとつ教えていただきたいが、人事局長大西さん、いかがですか。私のような者がこの程度わかっておるのだもの、あなた様のような学問のある専門家がわからぬわけはない。何におじけて、怖がってお答えにならないのですか。はっきりおっしゃっていただいていいのじゃないですか。日本国憲法は階級闘争の憲法じゃないと私は考えておる。これについて間違いがあったら教えていただきたい。
  222. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判所は、具体的な事件が起きました場合に、その事件、紛争、あるいは刑事裁判の場合は刑事事件でございますが、それを解決するために法律の解釈、適用ということをやっておるわけでございますが、今ここで私が裁判をやっているわけでもございませんし、先ほど来申し上げておりますように、憲法の解釈等について一定の意見を私がここで申し上げるという立場にはないということを御理解いただきたいと思います。
  223. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 最高裁はこのことについては一切お答えにならぬ、この分では。  それでは、総理府、その見解をどのように考えるか。日本国憲法というものは階級闘争を認めていないのだということについて。
  224. 上吉原一天

    ○上吉原説明員 先生の御質問、大変高邁な御質問でございまして、私、コメントする立場にないかと思います。私どもは、法律に基づきまして個々の具体例につきまして判断をしていくということでございますので、先生御指摘の憲法がどうなっているかということにつきましては、私、コメントする立場にないということを繰り返し申し上げたいと思います。
  225. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 ここは田舎の村の議会と違うのですよ。日本の国権の最高機関で日本の憲法論議ができないで、私は憲法の中身はわかりませんで通るわけがない。法務大臣、ひとつお答えをいただきたい。
  226. 根岸重治

    ○根岸政府委員 非常に難しい御議論なので、率直に対応して答えろというお話もありましたので、私も一生懸命聞いておりまして誠意を持ってお答えいたしたいと思っておったのでございますが、今の御質問に対しましては、私の方として、そういう階級闘争というものが憲法違反するのかどうかということを的確にお答えすることの立場にないのだろうと思います。  ただ、私なりに理解いたしますには、議会制民主主義というのは守らなければいかぬ原理であると思いますし、今のことに直接お答えするわけじゃございませんが、例えば暴力をもって国の秩序を破壊しようとするような行為は厳に認められるべきじゃないとは思います。ただ、私どもの立場を率直に申しますれば、今おっしゃいました国公労連なるものがどういうような方針案を持っているのかということはさておきまして、といいますのは、国公労連自体は法務省なら法務省としての対応職員団体になっておりません。私どもとしては、全法務がその職員の勤務条件等についで交渉を行おうとするときにそれに対応するわけでございまして、その時点時点におきまして、それが国家公務員法に触れるような政治的行為に当たるのかどうかという委員の御質問からすれば、はぐらかすわけではないのですが、極めて次元の低い段階で、私どもは違法状態があるかどうかということをもって対応しておるわけでございまして、それ以上の高度な御議論に対しまして私どもがどうこうということをお答えする立場にないし、また率直に申し上げて、私にはよくわからないわけでございます。
  227. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 それなら、役人を採用するときに憲法を遵守する宣誓をさせるからには、雇う方はその憲法の中身をわからなかったらできないじゃないですか。そんなおかしな答弁。今の憲法は修正資本主義の憲法だということはわかるでしょう。昔のような資本主義の憲法じゃない、修正資本主義の憲法だということはわかるでしょう。  それじゃ、憲法の財産権の条規がありますでしょう。これは資本主義の憲法でしょう。階級闘争というのは資本主義じゃないと私は思うけれども、官房長、いかがでしょう。
  228. 根岸重治

    ○根岸政府委員 私が申し上げようとしますことの一つの中に、いろいろな一つの言葉の術語みたいなものを使ってお述べになっておるわけでございますけれども、率直に申しまして、不勉強でありましたせいか、その一つ一つにつきましていろいろな解釈をすることも可能であろうと思いますので、抽象的な、これこれこういうような何とか主義とか、これこれについては憲法がどうこうと言われましても、率直に申して、お答えするのに甚だ困惑を感ずるわけでございます。  先ほど先生お話が出ましたけれども、要するに、非常に低い次元のことを申し上げて恐縮でございますけれども、国家公務員法の違反のような行為をしたかどうかというようなレベルにおいて私ども判断し、対応しておるということを申し上げたかったわけでございます。
  229. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 このくらいは答えられるでしょう。日本の憲法は資本主義の憲法であるか、共産主義の憲法であるか。日本の憲法は労使協調の思想であるか、共産主義の階級闘争の思想であるか。このくらいわからなかったら、それはどうにもしょうがないでしょう。これだけひとつ答えてみてください。資本主義の憲法か、共産主義の憲法なのか。それから労使協調の思想なのか、敵対的階級闘争の思想なのか。これだけ簡明に答えてください。
  230. 根岸重治

    ○根岸政府委員 どうも私が立ってしまったので答弁を一手に引き受ける形になってしまいましたのですが、先ほど来申し上げておりますように、そういうようなある一定の言葉でこれについて憲法がどうかと言われましても、ちょっとお答えするのに適当じゃないように思いますので、私としては、今の御趣旨に対しましてこうだああだというふうにお答えできないわけでございます。
  231. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 それじゃ、憲法教育というものをどうやって一体管理者の方々はやっているのですか、ふだんは。憲法を守るという強行規定に沿って宣誓をさせておきながら、上の方に立つ者が憲法がわからないで一体どうやって憲法教育をやるのですか、法務大臣
  232. 住栄作

    ○住国務大臣 先生、盛んに主義という言葉を使われるわけでございますけれども、主義ということになりますと、どちらかというと考え方の問題だと思うのですね。ですから、そういうような考え方、それは、共産主義の勉強をするのもいいし、資本主義の勉強をするのもいい、そういうことでございますから、憲法自体はそういう思想の自由は認めておるわけですね。思想の自由は認めておるけれども、例えば具体的に公務員の権利義務は何だということになりますと、それは憲法の思想を受けて国家公務員法において公務員としての権利義務というものを明瞭に書いてある。もちろん公務員としては現行憲法を守っていく、法令を守る、職務に忠実だ、それからまた、組合は組合として勤務条件の維持、改善ということを目的とした職員団体である、こういうことももう制度上明瞭になっておるわけでございます。だから、国公労連のそういう考え方とそれに基づく具体的な行動は、国家公務員法に照らして一体どの条文に該当するんだ、こういうことになると我々としては判断はでき、また、そういう観点に立って職員管理をやっておるわけでございますから、先ほど来官房長が答えておりますように、そういう観点から私どもは適正な職員管理というものを考えておるということでございます。
  233. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 憲法十五条を見ますと、公務員は、全体の奉仕者であって、特定階級の一部の奉仕者であってはならない、これは政治的中立を述べておるわけであります。政治的に中立てあるのが良識ある官まですよ。ところが、この運動方針を見ると、政治的中立じゃないんですね。反自民、それから反独占資本だから反資本主義、それから反米、それから親ソ、そういうことが運動方針に貫かれている。そして自民党批判をし、社会党批判をし、民社党批判をし、公明党批判をし、全部批判してしまっている。これが一体政治的中立を旨とするところの役人の運動方針であるかということを考えれば、政治的中立を欠いておることは子供が聞いたってわかる。  答えられなければ、私が一人で演説をするしかなくなってしまう。こんなことでは困るのですよ、国権の最高機関の法務委員会が。この運動方針は政治的中立を保っておるかということについて、総理府どうですか。
  234. 上吉原一天

    ○上吉原説明員 お尋ねの綱領がどうかという問題につきましては難しいものでございますが、私どもといたしましては、先ほど法務省の方からお答えがありましたように、個々具体の行為につきまして違法行為があれば厳正に対処していくという基本方針ております。
  235. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 それでは、憲法論というものは日本の政府の方々の間ではさっぱりなされていないということですね。日本国憲法、日本国憲法と言うけれども、日本国憲法についての論議が全くなされていない。現実一つ一つの公務員法違反ということ、例えばストライキをやれば、あるいは選挙違反をやれば、その一つの現象、現象で何とかしていくというようなことではいかぬでしょう、大もとだもの、役人になるときには憲法を守りますと言っておるんだから。  さて、そこで国家公務員法第九十六条も、国民全体の奉仕者であって、公共の利益のために勤務しなければならない、国家公務員法第百二条第三項は、公務員が政党員となることを一応原則的に認めているけれども、その加入政党が排他的で特定階級にだけ奉仕する政策、綱領を持っている政党であるならば、公務員たる地位とその政党員たる資格とは到底両立し得ない、これはそのとおりだと思うのです。  排他的とはどういうことかというと、自分の奉仕、支持する政党に対立する階級を敵として、これと平和共存する余地を認めない、いわゆる階級闘争というものを政策、綱領にする政党に役人が入った場合には、これは誤りであるということもこの憲法から明らかであります。  もう一つ憲法問題について言いますが、公務員は服務の宣誓をする。裁判所職員の宣誓文を見ると、「国民全体の奉仕者として公務を民主的に運営する責務を深く自覚すること」、それから「憲法に服従し、これを擁護し、法律を尊重して、職務を公正に執行すること」、この二点。ここまできちっとして強行規定でうたっておるのに、憲法の話になるとはぐらかしてしまって、わかりませんというようなことでは、本当に私、情けなくなる。だれに遠慮して、本当のことを答えることができないのでしょうか。  そこで、その心構えがないのに、偽って宣誓したことがわかった場合には、その任命行為というものは無効などの法律問題が当然生ずるだろうと思うのです。うそをついて、そして役人になって、役人になってから反憲法行動を堂々とやって、そして外見からそれがあらわれるということだとか、それから、歴然とした反憲法行為が運動方針などにあらわれておる場合には、そういうものが出ておっても管理者がそれを知らぬ顔しておるということは間違いである。これは、国民が聞けばだれでもそう思うと思うのです。任命当時は宣誓どおりの心構えであったけれども、任命後心が変わって、特定階級だけのための排他的奉仕の心を持つようになった場合には、そのときから公務員としての適格性を欠くものと認めなければならない。     〔森(清)委員長代理退席、委員長着席〕  この運動方針はそうでしょう。明らかにこれは憲法を守っていない運動方針ですよ。こういう事実があったら、やはり管理者というものは憲法の内容というものをよくわからせて、そして理解をさせていくというくらいのことは管理者としての責務であると私は考えて、こういう質問をしたわけであります。  そして、国民全体の奉仕者としての心構え、すなわち政治的申立性の確保、すなわちこれについての宣誓、このことは自由な民主主義政治確保のためには当たり前のことであって、したがって、任命時にその公務員がそのごとき心構えを持っているかどうかということを調査しもしないで、そしてただ宣誓しますかといって、判こだけ押して、採用して、採用してしまったら、あと反憲法運動、何をやってもよろしいというような、こんな不誠実な、無責任なことはないと思う。  会社だってそうでしょう。会社が採用するときには、その男の性格とか思想とかというものをちゃんと調べて、会社本位の人間でなければ採用しませんよ。これは、当たり前のことだもの。何で思想について調査することがいけないのですか。私は、共産主義の思想はいけないと言っているんじゃない。やっても結構ですよ。しかし、会社はその共産主義者を採りたくないということなら、これは調査するのは当たり前なんです。  それから、公務員になるときだって、日本の憲法というものは資本主義の憲法です。共産主義の憲法ではないんだから、資本主義思想というものをちゃんとわきまえておる者、それから全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない、すなわち役人になってから自民党、社会党、それから公明党、民社党の批判をしておるようなそういう思想の者は政治的中立性を欠く者なんだから、したがって、あらかじめその人の考え方というものを調査をするということは当然のことだと思うのですよ。もし共産主義の行動をとりたければ役人にならなければいい。役人にならないで民間人として憲法改正をやってもいい、それから資本主義よりも共産主義の方がいいという運動をしたっていいですよ。役人になってやってはいかんですよということがちゃんと憲法に書かれておる。それを日本の政府は少しも守ろうとしておらないということで私はこういう質問を申し上げたわけであります。  そこで、事実から推していかなければいかぬのですから、もう少しこの運動方針についてわかっていただこうと思う。  先ほど述べました全民労協で、「この労働四団体共闘が、労働運動の右傾化とも結びついて政治戦線のうえでも、臨調行革断行を主張する民社・公明党を含む反共野党共闘を国会内で積極的に推進したこと。」この文章を見ただけで、四党を攻撃しているのですから、これはやはり日共の労働組合だということは明らかでございましょう。「労働者階級の階級的潮流である統一労働組懇は、運動を強化、」——統一労組懇というものはどういう労働組合ですか。これをひとつ簡明にお答えをいただきたい。裁判所、いかがでしょうか。  そんなことがわからないわけがないでしょう。これは役所の資料ですよ。「国公労連は、総評の反主流派勢力(共産系)を形成しており、社会党支持の運動方針に反対をし、政党支持の自由を内容とする修正案を毎年のように提案をしてきたほか、最近では、統一戦線促進労働組合懇談会(統一労組懇)に世話人組合として加盟するとともに、同労連委員長が代表委員に就任するなど、その中心勢力として活動しておる」、こういうことがきちっと資料にあるのですから、何でこういうことを答弁なさらないかということであります。  大西局長、また大臣、ここにあなた方の役所の職員の組合の運動方針があるのです。国公労連、これを見ますと、規約にこういうことが書かれておる。「弾圧対策及び救援」という条項があるのですね。これはどういうことかと言いますると、大会で決められた運動方針に沿って、そしてそれが公務員法違反だとかいわゆる犯罪者として警察から逮捕されたりした場合には、こういう事件のときには何万円救援をする、そういう救援規定まであるわけですよね。要するに公務員が法律違反をやって被疑者とか犯罪者になった場合に、残った公務員がその法律違反をした旧役人に救援をするなんということは、これはどういうことです。世界にそんな例がありますかな。これでは悪の勧め的行為じゃありませんか。  例えば同盟関係の鉄道労働組合、それから全郵政、ここの規約を調べてみました。ところがこういうものはありません。それから民間関係で、日産自動車、トヨタ自動車の労働組合の規約を調べてみた。しかし、こんな救援規定なんというものはないです。民間においては、何かあったときに、その組合員に迷惑をかけたときには臨時代議員会などを開いてその場で救援をするということはある。全郵政などの救援規定はこんなひどい左翼の救援規定ではなくて、何か迷惑をかけたときに救援をしましょうということはあるけれども、十二年間その救援規定を使ったことは一度もなかったという。  ここに日教組の救援規定の資料があるけれども、この五年間にわたって各年百七、八十億円ですよ。日教組の先生から集めた金を法律違反をやったその旧職員に救援をしている金が一年間に百数十億円。この国公労連については私は資料を求めておりませんけれども、これはひとつ全司法なりあるいは大臣の役所の労働組合の救援資金というものは一体どのくらい使われておるかということなども調査をしてみなければいかぬと思う。恐らく調査をしてあるだろうと思うのですよ。ところが、この場ではお答えになれないから沈黙されておるのかもわかりませんけれども。ひとつこういうことについて管理者とそれから労働組合がよく話し合いをして、日本国憲法の思想に沿った運動をするようにしなくちゃいけないと思うのです。  このごろはどんどん左翼の潮流の中に日本の国はある。過日、私は、衆議院の予算委員会で学習指導要領、そして教科書問題について言及をしておいた。学習指導要領の旧と新を比較をしますと、新の学習指導要領は全く左翼型の学習指導要領に変わってしまっている。ところが、自由民主党の文教部会の方々はそれを御存じなかった。学習指導要領は大臣がお決めになるのだけれども、肝心な自民党の文教部会の方は悪く変わったということを御存じなかった。そんなことでは困る。日教組は、学習指導要領を変えるときには、事前にちゃんとわかっておる。だから、日教組と文部省は話し合いをして、そして学習指導要領を改悪をした。そういう左翼偏向の学習指導要領ができてしまっているものですから、そこからつくられた教科書というものは全くどこの国の国民をつくるのかわからない。これこそ、先ほど申し上げましたように、反米親ソ、それから反政府、そして権利ばかり主張する教科書になってしまっている。文教関係がこうでしょう、それから役所の関係がこうでございましょう。これはやはり資本主義国家としてゆゆしい問題だと思う。  最後に、私は、私の憲法についての見解を述べるならば、日本の国の憲法というもの、すなわちこれが体制でしょう。日本の国の憲法が体制ですよ。日本の体制だ。体制は何かというと、憲法第一条、天皇象徴、これは歴然として一条にうたわれておる。それから憲法十四条、社会的身分によって差別されない、それからもう一つは、憲法何条かにあるところの財産権、これがいわゆる資本主義の憲法ですよ。修正資本主義の憲法だ。それからもう一つは、労使協調路線上の議会制民主主義、これが政治制度思想じゃありませんか。この三つが体制ですよ。この三つの一つでも除かれてしまったならば、これは革命につながるのじゃありませんか。資本主義というものの条規を除いてしまったら革命につながりませんか。議会制民主主義というものの条項を除いてしまったら革命につながりませんか。何でマッカーサーが天皇を残したのです。外国人がいわゆる国体というものを考えて残したのでしょう。  日本の憲法の体制ぐらいはちゃんとわきまえておって、職員に対して憲法教育というものをしっかりしていただかなければ——右とか左とか言っておるが、私は憲法の中身について申し上げておるのであって、反憲法の物の考え方で申し上げておるのじゃない。日本の憲法はこうですよということを申し上げておる。日本の憲法というものは体制だもの。その体制はこうですよという私の見解を申し上げておるのです。本当は御答弁をいただきたいが、どうでしょう、最後に一つ良心に照らして日本国憲法というものはなるほどこういうものだということをおっしゃっていただけませんでしょうか。黙っておられたのでは私は何のためにここで質疑に立ったかわかりません。ここは国権の最高機関ですよ。国権の最高機関憲法論議ができなくて、そんなはぐらかすような答弁ばかりでは実に情けないと思いますが、いかがでしょうか。大臣、ひとつ……。
  236. 住栄作

    ○住国務大臣 伊藤先生の高邁なお考え方、先ほど来十分伺いました。特に国家公務員の場合、憲法を守り、日本の制度を守り、職務に専念をする、こういうことは憲法なり、それから特に国家公務員法に規定されておるわけでございます。それと同時に、団結の自由というものも認められておりますし、職員団体として活動することもできるわけでございます。そういうことに私どもとして常に意を用いて公務員の職員の皆さんといろいろ話をしていくことは当然のことだと思いますし、それに反するような具体的な問題が生ずれば、それは法に照らして厳正に対処していく、こういうことにしていかないとけじめというものはつかない。やはりけじめというものははっきりさせておかないといかぬ、こういうように考えております。
  237. 伊藤昌弘

    ○伊藤(昌)委員 終わります。
  238. 宮崎茂一

    宮崎委員長 林百郎君。
  239. 林百郎

    ○林(百)委員 ちょっと今の伊藤君の質問で、我が党をよく御存じなく、またよく勉強もしなくて批判をやたらにされている嫌いがありますので、これは最高裁にお聞きしますが、共産党はある労働組合に特定の政党を組合として支持をしろなどという方針を出したことはありません。また全司法が共産党を支持するというようなことを運動方針か組合規約に書いてあるようなことがありますか。そういうことを聞知したことはありますか。最高裁来ていますか。帰ったのかな……。法務大臣、知っていますか。全司法が共産党を支持するなんて聞いたことありますか。最高裁がいないのならやむを得ません。とにかくああいう質問をされることは共産党としては断じて承服できないわけです。  さて、靖国神社問題について一、二お聞きしておきます。  これは大臣にお聞きしますが、自民党の総務会で合憲とする見解を正式に決めたというんですが、政府の方にそういう方向に結論を出してほしいということを中曽根氏も言っているようですが、そういうことは正式に政府の方に中曽根総理からか、あるいは自民党からあったんでしょうか。大臣、これはどうでしょうか。靖国神社参拝についてです。
  240. 住栄作

    ○住国務大臣 自民党の方で今おっしゃった問題をずっと検討しておるということも承知しております。そして、おとといでございましたか結論をまとめられたようでございますが、その結論が総務会に諮られ、そしてその了承を得た上で政府の方に、申し込むと言うかどうかその言葉は別といたしまして、政府の方に持ち込まれた。これは私、新聞で知っておるわけでございます。だれが総務会で説明し、だれが政府の方に持ち込まれたか、こういうことについては詳しいことは承知いたしておりません。新聞で知っているだけでございます。
  241. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、こういう方針でこれからいこうとか、政府見解は昭和五十年の三木さん、昭和五十三年の安倍官房長官、五十五年の宮澤官房長官とありますね。そういう方針を考慮しなければいかぬとか、変えなければいかぬということは閣議で相談したことはあるんですか、ないんでしょうね。
  242. 住栄作

    ○住国務大臣 私が閣議に加わるようになったのは去年の暮れからでございますけれども、今までそういうことがあったということは記憶しておりません。
  243. 林百郎

    ○林(百)委員 共産党は、すべての戦争の犠牲者を追悼し、再び戦争が起こらないようにということを念願しているわけですね。ところが、今日政府が、国会の速記録にもありますように、「靖国神社」規則の三条「明治天皇の宣らせ給うた「安国」の聖旨に基き、国事に殉ぜられた人々を奉斎し、神道の祭祀を行なひ、その神徳をひろめ、本神社を信奉する祭神の遺族その他の崇敬者を教化育成」する、こういうふうにありますが、「明治天皇の宣らせ給う」と、実際は天皇のために死んだ者——戦争の犠牲者というのは広島、長崎の原爆の犠牲者もありますし、東京の空襲によって大事な命をなくした人もいっぱいあるのですが、あそこは、大臣も御承知のとおり天皇に忠義を励んだ者しか祭られない。戦前は陸軍と海軍が所管をしていた。あそこにはA級戦犯の東条英機も祭られている。そういうところをどうして今政府がそこへいろいろな意見があるのに合憲だということでお参りをし、しかも玉ぐし料まで公金から出すというようなことをどうして政府の方針として決めなければいけないように思うのですか。どうしてそんなこと言い出してきたのですか、私はわからないのですがね。  しかも憲法の前文では日本の国はもう戦争は絶対しない、これは人類普遍の真理だ、憲法九条には国際紛争の解決の手段として戦争はもうしないんだ、国の政策として戦争はしないんだと言っている。ところが、大臣は御年配だから御承知ですが、あれは大東亜戦争のとき戦意を高揚するために靖国神社というものはあったんですよ。もう戦争は絶対しないんだ、そして平和を守っていくんだ、それは人類普遍の真理だということが憲法にうたわれている今日、戦意高揚のために、しかも「明治天皇の宣らせ給うた」と称しておるその靖国神社へ何で政府が公式に参拝するのを合憲としろというようなことを言い出してきて、そして政府はそれを受けるかどうか知りませんけれども、どうしてそんなことを言い出してきたのですか。再びそういう戦意高揚の必要が出てきたのですか。私にはわからないですね。——答えなしなら答えなしていいです。それじゃ答えなし。  それから、法制局は津の裁判で自分の都合のいいところだけを援用しているのですね。ところが、津の最高裁の判決は、地鎮祭というのは「建築着工に際し土地の平安堅固、工事の無事安全を願い、社会の一般的慣習に従った儀礼を行うという専ら世俗的なもの」だと言っているのです。政府が靖国神社に公式に参拝するなどとは次元が違うのです。そしてまた、この判決の中には「当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って、客観的に判断」すると言うのです。  だから、地鎮祭で土地が安全で工事が無事にできるようにといって拝むのと靖国神社に政府が正式に、しかも東条英機等A級戦犯が祭られているところに今度は政府の機関として憲法違反してお参りをするというようなこととは全然次元が違うし、津の判決をやたらに援用されますが、それは間違っていると思うのです。津事件の判決は、地鎮祭はもう社会的な常識になって、そしてそれが宗教的行為だということは言えないほどの社会的常識になっていると言っているのですが、私が今読んだような部分があることは御承知ですか、法制局、どうですか。
  244. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 ただいま津の地鎮祭に対します最高裁判決につきまして御引用がありました分はそのとおりだろうと思います。  私どもも津の地鎮祭に関する最高裁判決を前提といたしましてただいまの政府見解を出しております。それによりますと、  内閣総理大臣その他の国務大臣が国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは、憲法第二十条第三項との関係で問題があるとの立場で一貫してきている。   右の問題があるということの意味は、このような参拝が合憲か違憲かということについては、いろいろな考え方があり、政府としては違窓とも合憲とも断定していないが、このような参拝が違憲ではないかとの疑いをなお否定できないということである。 こういうものでございますが、この統一見解はただいま御引用になりました最高裁の判決を前提にして出しているものでございます。  最高裁の判決は、確かに地鎮祭と憲法二十条三項との関係を論じたものでございますが、その大前提といたしまして、憲法の政教分離の原則についての説明をしているわけでございます。したがいまして、それによって我々としては政府統一見解を出しているということでございます。
  245. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、これはもういろいろと各委員からの質問がありましたが、法制局も法務大臣も、今の段階では政府の統一見解をお守りになっている、こう言っていいのですね。自民党がこういう方針を出したかもしれませんけれども、しかし、統一見解は今の段階では変えていないということでいいのですね。
  246. 住栄作

    ○住国務大臣 先ほど自民党のことについて私に御質問があって答えなしですねというようにおっしゃいましたが、私は自民党のことは、それは今実際どういう議論、どういう経過でどういう結論になったか、先ほども申し上げましたように新聞承知しておるだけですから、それについてとやかく言うことではない、こういうことで答弁する必要はないのじゃないかと考えているのです。ひとつ御理解いただきたいと思います。  それから、公式参拝の点につきましては、私は国務大臣でございますから、既に政府の統一見解として今法制局から説明されております考え方が打ち出されておる、その線に従って国務大臣としては行動する、これは午前中の稲葉委員その他の委員からの御質問に対してお答えしているとおりでございます。
  247. 林百郎

    ○林(百)委員 法制局、答弁してください。
  248. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 政府の統一見解といたしましては昭和五十三年と昭和五十五年の二つがございまして、この二つの政府統一見解は現在も変わっておりません。
  249. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは次に、どうも憲法とちょっと次元が違いますけれども、私はサラ金の問題について質問したいと思います。私の質問に関する資料を、まず委員長にお見せして、大臣と大蔵省の方へあらかじめ渡しておきたいと思います。  まずお尋ねします。サラ金二法が自民党から提案されたのが五十四年五月二十九日ですが、その前の五十三年に、社団法人全国庶民金融業協会連合会がサラ金二法を何としても議員立法で通そうということで法制対策小委員会設置して、そこで論議されたことが昭和五十三年三月十五日の日本金融新聞に載っています。  その新聞記事を読んでみますと、議員立法でサラ金二法をつくることについてはキメ細かい働きかけが必要ということから法対委小委員会設置を可決。委員には小林(東京)広瀬(大阪)小出(静岡)若月(愛知)宮川(栃木)田村(群馬)の六氏を選任した。ここで再度発言があり「ずい時代議士と接触を、顧問の推薦状況を」(石井)「上程だけでなく各県議会でも政治力を発揮すべきだ。また各協会から政治資金を用意すべき」」だ。要するに、金を用意すべきだということが桧垣という委員から発言されている。これら発言に対し、広瀬という委員から「先日、民社中村副委員長に会ったが力を貸すと言っていた。自民党はじめ強力に動きたい。資金面では必要となったらあらためて相談したい」。要するに、資金を十分準備して、そして働きかけるんだ、なお、資金面で必要となったら改めてまた相談して集める、こういうことを広瀬という委員が言っています。  丸山という委員は「金丸代議士も力を貸すということだった。各協会長の力を借りて全ゆる面から働きかけたい」、それから「「顧問推薦の接触状況は田中伊三次、瀬戸山法相、金丸防相、中川一郎、森義郎、中村正雄、沖本康之、横山利秋、渡辺美智雄、柿沢こうじ、足立篤郎、鴨田そういちなどの各氏を予定している」(小林)と答えた。」要するに、金をつくって金でこの法案をひとつ買収しようじゃないかということがこの中に書かれているわけですね。  それを裏づけるように、今お配りした、ローンスワールド社というのですね、これはサラ金の上位八社のうちの六番目ですけれども、ここから、この表にありますように、谷川和穂氏には三千八百二十万、それから山東昭子氏には三千六百万、それから細川護煕君には百五十万、それから藤田義光君には千九百四十万、それから泰道三八君には八百五十万、近藤豊君には千百五十万、こういう金が七八年、七九年、八〇年、八一年、八二年、こういうように回っているのですけれども自治省が来ていますね、これは政治資金規正にこういう届け出があることはお認めになりますか。調べてきてくれと私頼んでおきましたが。
  250. 山崎宏一郎

    ○山崎説明員 もう少し具体的に御質問がありませんと、お答えが難しいわけでございます。政治家個人でなく政治団体に寄附される場合も多うございますし、寄附者、それからそれを受けた政治団体を御指名いただいて、それがどうなっているかというようなお尋ねであればお答えできるかと存じます。
  251. 林百郎

    ○林(百)委員 私の聞いているのは政治団体です。政治資金規正ですから、後援会ですね、こういう後援会にこういう金が入っているかどうか調べてきてくれと言ってあるでしょう。これはあなたの方の資料で私の方で調べたのですよ。名前を言いますか、個人の団体の。——それなら、まず団体は、谷川和穂氏は澗泉会、東京瑞穂会という後援会がありまして、この二つの後援会。山東昭子氏は現代社会教育研究会、五月会、山東昭子後援会。細川護煕君は新昭和研究会。藤田義光君は新政策研究会、りんどう会、内外政経調査会、清山会。それから泰道三八君には泰道政治経済研究所。それから近藤豊君には、近藤豊を育てる会。こういう政治団体です。これに、私がさっき言ったような献金がなされているかどうか。
  252. 山崎宏一郎

    ○山崎説明員 受けた方はただいまお聞きしましたけれども、寄附者につきましてはワールドファイナンスだけでしょうか、あるいはそのほかの個人名義のものもお尋ねでございましょうか。
  253. 林百郎

    ○林(百)委員 私の方はワールド社として献金したのを述べたんですが、それじゃ、受けた方は、これだけの金を受けていることは政治資金規正に届け出てあることは間違いないですか。だから、政治資金規正法によって届け出がある部分はこうだとか、この部分はどうだとか言わなければ、そんな逃げているような態度じゃだめですよ、はっきり答えなければ。
  254. 山崎宏一郎

    ○山崎説明員 ただいま御指摘がありました政治団体の中で、株式会社ワールドファイナンスから寄附を受けておるものが、泰道政治経済研究所、昭和五十五年、百五十万円受けております。これは収支報告書により調べた数字でございます。
  255. 林百郎

    ○林(百)委員 そのほかの部分はどうですか。自治省政治資金課で来ていますか。
  256. 山崎宏一郎

    ○山崎説明員 昨日の段階でお話がありましたワールドファイナンスについてはこれだけでございます。ただ、その関係者といいますか、個人名義のものも御質問でありますかどうか、確認したいと思います。
  257. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、会長の石川富夫だとか、社長の石川秀雄だとか、社長の妻の石川千鶴、会長の実妹の大山三枝、会長の実妹の夫の大山金士郎、こういう個人名義でなされているのを合わせるとどうなりますか。これはみんな会社の役員ですから会社と同じなんですが、今私の言った名前で献金しているのは幾らですか。
  258. 山崎宏一郎

    ○山崎説明員 では、合わせてお答えいたします。  寄附者につきましては、今御指摘ありましたように、ワールドファイナンス、それから株式会社BWL、石川富夫、石川秀雄、石川千鶴、大山三枝、大山金士郎。それから政治団体につきましては、以下、額について申し上げます。  これらの者から政治団体澗泉会が受けましたものにつきましては、五十五年から五十七年まで千三百五十万円でございます。東京瑞穂会、五十五、五十六、五十七年、合わせまして千二百七十万円でございます。(林(百)委員「谷川君の後援会へ合わせて幾ら来ていますか」と呼ぶ)合わせますと二千六百二十万円でございます。それから、現代社会教育研究会、昭和五十六年、五十七年、合わせまして千二百万円でございます。それから五月会、五十六年、五十七年、合わせまして千二百万円でございます。山東昭子後援会、五十六年、五十七年、合わせまして千二百万円でございます。それから、新政策研究会、五十七年、四百四十万円でございます。内外政経調査会、五十七年、百五十万円でございます。清山会、五十七年、四百五十万円でございます。近藤豊を育てる会、五十五年から五十七年、千百五十万円でございます。泰道政治経済研究所、五十五年、二百五十万円でございます。それから新昭和研究会、五十三年、百五十万でございます。それからりんどう会、五十三年、五十四年合わせて九百万円でございます。  これらにつきましては、五十三年、五十四年分につきましては官報により、五十五年、五十六年、五十七年分については提出されました収支報告書により調べた数字でございます。
  259. 林百郎

    ○林(百)委員 今私が申しましたように、個人名義の、石川富夫は会長、それから石川秀雄は社長、石川千鶴は監査役、それからあとは会長の妹だとか、社長の妻だとか、会長の義弟、実質的にはワールドファイナンスから出ている。これが八十社のランキングのうち第六位を占めているワールドファイナンスから出ている。これが一社だけでこうなんですから、他のものも入れれば何十億という金が出でいることが推測されるわけですが、こういうことが行われている。  これは法案を金で買ったと同じなので、こういうことを大蔵省の方では、こういうやり方でサラ金二法が立法されているということは御存じなんですか。
  260. 朝比奈秀夫

    ○朝比奈説明員 一切存じておりません。
  261. 林百郎

    ○林(百)委員 そういうことを監督する権限はないでしょうか。例えば金融機関から、地銀関係から約二億、相互銀行関係から百四億、それから生保、損害保険関係から三百三十六億、国内信販から六億、それから東芝クレジットから二十億ですか、その地合わせて七百六十七億。地銀関係、相互銀行関係、生保、損保関係、国内信販関係、東芝クレジット関係、合わせて七百六十七億、こういう金がワールドファイナンスへ流れているということ、これは銀行局ですか、御存じですか。銀行課長あるいは審査課長でも結構ですが、こういうことを知っていますか。
  262. 朝比奈秀夫

    ○朝比奈説明員 先生承知のように、貸金業規制法は昨年十一月から施行されまして、約二万の業者が今登録をしたところでございます。ところが、御指摘のワールドファイナンスにつきましてはまだ登録いたしておりません。そういう関係もございまして、金融機関からの借入状況については現在把握いたしておりません。  昨年の九月現在で、アンケート調査によりまして金融機関の方からいろんな融資状況調査いたしまして先般発表いたしましたけれども、これは個々の業者の名前を調査したものではございませんで、全体としてどのくらい融資をしているか、こういう調査でございます。それによりますと、九月の方がその前の三月の時点の調査よりも減っているということで、私どもとしてはこの関係金融機関からサラ金への融資について自粛を求めました昨年六月の通達がある程度の効果が上がったのではないか、かように考えております。
  263. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、ワールドファイナンスはまだ登録をしていないのですか。サラ金二法によれば登録をしなければいけないことになっているのでしょう。
  264. 朝比奈秀夫

    ○朝比奈説明員 二法の附則によりまして、一年間は従来の届け出のまま営業ができる、こういう規定が入っておりまして、その関係でことしの十月末までは現在のまま営業ができます。十一月一日を過ぎますと、登録をしていない業者は営業ができない、こういう取り扱いになるわけでございます。
  265. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、登録の申請をしたときに、その内容をお調べになりますか、こういう形になっていると。——それで、これがさらに、私の資料にありますように、藤田義光君は約千九百四十万金を受けているのですが、それが原田昇左右君、三ツ林君、岩動君、八田貞義君、土屋義彦君、梶山静六君、竹中修一君、中川秀直君、中尾栄一君、瓦力君、塩川正十郎君、久世君、そういうところへ百万から十万というような金がずっと回って、これは法案買収の使い人になっているという状態です。全くこれは金で法案を買収する実態が、私の調査とこの表によってもはっきりわかっているわけなんです。こういうことについて、もし正式に登録するとするならば、内容をお調べになる必要があると思いますが、どうでしょうか。  さらに山東昭子君は二日会と五日会へ百万と二百万、五十六年。それからさらに五十七年にも百万と二百万。それから谷川君は、五十六年に新政策研究会、河本敏夫君の後援会、昭和五十七年に新政策研究会、同じく河本君の河友会へ二百万。こういう、法案を買収するための動きをしている。こういうものが公然と存在をしている。  それで、新聞を見ますと、御承知のとおりテレビでも言っておりましたけれども、十七日には足立区で個人タクシーの運転手の根本正男さんとその妻のノリ子さんの二人が車庫で、サラ金から金を借りて返せないということで首をつっている。それから栃木県の小山市では、十六日の午後十時ごろ、無職の谷井光房さんと次男の稔幸君が死んでいる。これは同市千駄塚の山林の中で谷井さんが首をつって死んでいるのが見つかった。それから排ガスで自殺、十七日午前五時半ごろ、前橋市東片員町三九四の河原に駐車中の乗用車内で、粘着テープで目張りした上、ビニールホースで排ガスを引き込み、男の人が死んでいる。これは同市天川大島町二、調理師で斎藤新作さん。車内から妻や子どもあての「サラ金に二百万円の借金があり返済できない」という遺書が見つかった。十六日、十七日で夫婦、親子、それから一人が亡くなっている。サラ金苦でこういう悲劇が起きているわけです。  そういうサラ金二法案を議員立法するということで、立法の小委員会を全国庶民金融業協会連合会の中につくって、そしてこういう形で金をばらまいて、さらに資金が必要ならば幾らでもそれを出そうじゃないか、各地方の協会からも出させようじゃないか、こういうことをやっているわけですね。こういう内容を十分調べて、そして登録する必要があるというのは、そういう不健全なサラ金業者を整理するために届け出をさせるわけでしょう。だから、そういう規制をするかどうか、それをお聞きしたいと思うのです。  それからもう一つ、これは警察にお聞きしますが、貸す場合に、法律の中にありますけれども、信用状態をよく調べてそして貸すように、返済能力を超える過剰貸し付けをしてはならないものとする、こういうことがあります。これは罰則がもちろんありますけれども、こういう処置をしているかどうか、あわせて警察の方へお聞きしたいと思います。  警察にはもう一つ、サラ金業法が通過してから自殺をしたという人が警察でつかんでいるのは何件ありますか、それもあわせて。  それから、大蔵省の方へ。今言ったこういう不健全な金を出して、そうして法案を買収する、その先頭に立ってやっている、こういうような企業に対してはこれを規制するとか、あるいは行政的な指導をするとか、そういうことをするかどうか。両方にお聞きしたいと思うのです。
  266. 朝比奈秀夫

    ○朝比奈説明員 貸金業規制法によりますと、その六条で登録の拒否の要件が定められております。私どもそれに従って登録事務をいたしておりますが、先生質問のような点につきましては登録拒否の要件になっておりません。今まで約二万社の業者が登録が済んでおりますが、そういった実質審査をしないところが登録制度なんだろうと思いますが、現在の制度では一応あそこに掲げてございますような準禁治産者とか禁治産者とか、そういったような形式的要件に該当している者につきまして登録を認めない、こういう仕組みになっております。
  267. 清島傳生

    ○清島説明員 まず、過剰貸し付けにつきましては、先生誤解されておるようでございまして、これについては罰則がございません。  それから、第二の施行後自殺はどのくらいかということでございますが、施行後一月までの統計がございまして、三カ月間でいわゆるサラ金返済苦に係る自殺者が三百三十四名になってございます。参考までに施行前の三カ月と比較してみますと、施行前に月に百四十人くらい自殺がございましたが、施行後百十名ということになっております。
  268. 林百郎

    ○林(百)委員 警察庁、私が誤解しているのではなくして、過剰貸し付けをして、そしてその返済について常軌を逸するような請求の仕方をすれば、それはこのサラ金二法のほかにも刑法上の脅迫だとか、あるいはそのほかの犯罪の構成要件を満たす場合もあり得るじゃないか。例えば暴力団なんかがばっこしていますからね。そういうことで取り締まりをしたことがあるかどうかを聞いているわけなんです。
  269. 清島傳生

    ○清島説明員 失礼いたしました。  貸金業規制法ができるまでは、いわゆる刑法あるいは暴力等の処罰に関する法律でそれに該当するものについては検挙してまいっております。貸金業規制法ができて、御承知の二十一条で取り立て規制ができまして、これについても法施行後検挙をやっておりまして、これは二月までの統計がございますので参考までに申しますと、二十一件、二十八名を貸金業規制法の取り立て行為の規制違反として検挙いたしております。
  270. 林百郎

    ○林(百)委員 東京都庶民金融業協会の元総務課長の遠藤は協会の横領事件で起訴され、それからまた一千万の業務上横領で追起訴されているのですが、身柄は今どうなっていますか。さらに、何かあって捜査しようと思えば捜査できる条件にはあるのですか。
  271. 筧榮一

    筧政府委員 午前中申し上げましたように、遠藤悦三に対しましては四月十六日に約一千万の業務上横領で追起訴いたしました。本人の身柄はこの事実によってまだ勾留中でございます。  あと調べる余地があるかということでございますが、遠藤悦三に対します業務上横領事件の捜査はこの追起訴をもって終了いたしたと聞いております。
  272. 林百郎

    ○林(百)委員 業務上横領についてはそうですが、他の何か嫌疑があって取り調べをしようと思えばもちろんできるわけですね。これはもう言うまでもなく、身柄が拘束されているわけですから、できるわけですね。どうでしょう。
  273. 筧榮一

    筧政府委員 もちろん、それ以外の何らかの犯罪があって、本人を取り調べる必要があれば所要の手続をとって取り調べることは可能でございます。
  274. 林百郎

    ○林(百)委員 さらに、こういう金は幾らでもつくる、それで金であらゆる働きかけをしようということで、その金が、ワールドファイナンスだけでも約一億近くの金が各政治家にばらまかれ、その政治家がまた他の政治家にばらまいている。こういうようなことはある場合によっては刑事的な犯罪の可能性も、いろいろな要件がありますからね、ストレートにいくとは私は言いませんが、しかし、そういう疑いもあり得る。一応何らかの機会にこういう事態を調査するということについて銀行局なり、あるいは検察庁なりにお聞きしたいと思うのです。これは、このまま放置して、こんなようなことで、政治資金規正法を事実上は無視してこういうことをやっていくということになりますと、これは意味がないことになりますので、お聞きしておきます。
  275. 筧榮一

    筧政府委員 もちろん具体的な事実関係が明確でございませんので、一般論として申し上げたいと思いますが、一般論といたしましては、政治資金という届け出をした形におきましても、例えば職務関係等いろいろな要件がございまして、それを全部満たしますれば贈収賄になる可能性もないわけではございません。検察庁といたしましても、あらゆる事象につき犯罪の嫌疑が認められればそれに対応して適切な措置をとるということであろうかと思います。
  276. 朝比奈秀夫

    ○朝比奈説明員 私ども貸金業規制法である程度の検査権限が与えられておりますが、その検査の趣旨は、先生が御指摘になりましたような弱い立場の借入者の利益の保護、こういう観点での調査に限られております。したがいまして、そういった観点で現在も各都道府県とか各財務局で登録の済んだ業者について検査をいたしておる次第でございます。
  277. 林百郎

    ○林(百)委員 時間がありませんので……。  福島交通問題で、とにかく政治の倫理性というか、それが強く求められているときでございますので、我々もこういうものを見ますと本当に政治家としても耐えられない気持になりますので、そういう意味質問をしたいと思うのです。  まず、個別な問題からお聞きしますが、これは新聞に出ている材料でございますけれども、八十億とも百億とも言われる福島交通の使途不明金の多くが政治家に渡されたということが専ら言われている。そのうちの八億円もの金が小針氏から、五十一年の総選挙を前にして預かり金という形で金丸氏に渡された。表向きは政治献金となっているが、何かわけのわからない貸し付け方をしている。これが事実であるとするならば、返すまでの間八億円もの金を自由に使えることになって、これは事実上政治活動の資金を融通したことになりますが、事実であれば法の網をくぐった看過できない問題になると思いますが、こういう事実は国税庁の方でつかんでおりますか。
  278. 中川浩扶

    ○中川説明員 お答えいたします。  新聞でいろいろな報道がされておるわけでございますが、その新聞報道の内容を見てまいりますと、相当以前と申しますか古い話でございまして、わからないというのが現状でございます。
  279. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし、国税当局が話をしたと言っているのですが、どなたが話をしたのですかね。  それでは、さらに日本債券信用銀行の不良融資や使途不明金について指導監督の最高の責任にある竹下蔵相に三億五千万円の金を貸した。そして同時に、小針氏は五十二年約十五億円もの借入金をしている。これは特別背任行為を勧めているようなことになりますけれども、これは、国税当局や大蔵省が日本債券信用銀行や小針氏の責任追及をしている途中でこういうことが出てきたということで、国税当局が話しておるということになっておりますが、これはどうですか。全然知らないと言えないんじゃないですか。使途不明金を追及している間にこういうことが明らかになったと言っているのです。
  280. 中川浩扶

    ○中川説明員  お答えいたします。  福島交通でありますとかあるいはその関連法人につきましては、昨年調査を下しまして、適正に処理をしているということでございまして、その個別の内容につきましては答弁を差し控えさせていただくということでございますが、一般的には使途不明金の解明につきましては、真実の所得者に課税するというふうな税法の建前によりまして従来からその解明に努めているところでございますが、どうしてもその解明の過程におきまして調査の相手方の協力がないという場合には、使途不明金に関しましては、損金にされる経費に当たるかどうか確認できないということで、法人税課税をするということで処理を行っているのが一般的な税務調査の方向でございます。  それから、今最初の御質問とあわせてお尋ねの新聞に載っておる事項につきましては、相当古い件につきましてはわからないというのが実情であるというふうにお答えいたします。
  281. 林百郎

    ○林(百)委員 新聞によりますと、五十四年に国税当局が行った小針社長の税務調査で、この金が五十一年前後の数年間行方不明になっていた、国税庁がちゃんと話していると書いてあるのですよ。それじゃ国税庁調査はしたのですか。これは、今のは金丸氏の八億円ですね。それから竹下君のは、これも国税当局は小針氏に対しても調査をした結果、貸借の事実が確認された、こういうことが出ている。例えば、金丸氏には八億円の金を預けた、それから竹下氏にも貸し付けたという形になっている。そういうことになりますと、これは使途不明金は損金で落とすわけにいかないわけなんですけれども調査はしたのですか。これはみんな調査した結果と言っていますよ。
  282. 中川浩扶

    ○中川説明員 今お答えいたしましたが、整理して申し上げますと、昨年福島交通及び関連法人ないしそれらの関連のある者につきましては調査をいたしまして既に調査が終わっている、その内容は個別でございますが、適正処理ということをしてまいったということでお答えいたしたいと思います。
  283. 林百郎

    ○林(百)委員 それは大蔵省が適正処理をしてきたということですか。
  284. 中川浩扶

    ○中川説明員 はい、国税庁といたしましては。  なお、相当以前にわたる古い件につきましてはわからないという状況でございまして、最近、それから古いといいますか相当以前の話ということを区別してお答えさしていただいたつもりでございます。
  285. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、大蔵省でも守秘義務があるということはわかりますけれども、昨年ですか福島交通を調査の結果、適切な処置をしたというその適正な処置をした処置について、ここで説明できるだけのことは説明してみてください。どういう措置をされたのですか。どういう問題があってどう措置されたのですか。ここで答弁できる範囲のことで結構ですから、してください。
  286. 中川浩扶

    ○中川説明員 調査をいたしまして、その内容については適切に処理した、非常に抽象的でございますが、その内容は御勘弁いただきたいと思います。
  287. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、適切な措置をしたことを国会で答弁できないということはないでしょう。それでは、幾らの金をどうしたということでなくてもいいけれども、どういう問題があったからどうさせたというのですか。それは言えるでしょう。そんなこと国会で答弁できないことはないでしょう、新聞社にはあなた話しているんだから。
  288. 中川浩扶

    ○中川説明員 適切な処理をいたしましたとお答えいたしまして、その個々の内容で何を取り上げ、かつ、どう処理したかということにつきましては、先生も今お話のありました守秘義務にかかわる問題でございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
  289. 林百郎

    ○林(百)委員 非常に残念なんですね。どういうことがあったからどういうことをしたくらいのことは——それは何年、いつ、どこの会社とどういう関係があって、あるいはだれとどういう関係があったということはいいんですが、とにかく五十億とも言われ、八十億とも言われる使途不明金が出ている福島交通ですから、それについて国税庁としても調査をした、調査をした結果こういう措置をした、あるいは非課税だったものを課税の措置にしたとか、そういうことくらいは言えるでしょう。あるいは預け金というような名義で貸し付けであったとか、あるいはその回収がしてなかったとか、まあそこまでいけば非常に具体的になりますから言わないにしても、どういう措置をしたくらい——それでは税務関係ではどういう措置をされましたか、そこでいいですよ。税務関係ではどういう措置をされましたか。一般的でいいですよ。
  290. 中川浩扶

    ○中川説明員 今お答えいたしておりますのは、国税庁として税務関係についてお答え申し上げたつもりでありますが、重ねて恐縮でございますが、個々の納税者の処理内容ということでございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  291. 林百郎

    ○林(百)委員 これはどうも仕方ありませんな。それだから、私は、小針氏をどうしても証人喚問しなければならないというように思っているわけです。  それからさらに、これは刑事局にお尋ねしたいのですが、日本債券信用銀行が福島交通に約五百億を超える融資をして、それから日本債券銀行が担保に入れた家は壊されている。壊された家へ抵当権を設定して、新しく建った家へは抵当権を設定しておらないという記事が新聞に出ておるわけですが、これは不良融資の最たるものでありますが、こういうことも新聞に出ているわけですけれども、これについては国税庁は御存じなんですか。  あるいは、こういうことをしているとすれば、日本債券信用銀行の役員というのは、これは特別背任にもなるのじゃないですか。壊されてしまってもうない家の抵当権はそのまま抵当権を設定したことにしておいて、その後に建った家には抵当権をつけないというのですから、それはやはり銀行に損害を加えたことになるんじゃないでしょうか。少なくともその疑いがあって、これはどうも放置できないのじゃないかと思いますが、これは国税庁とそれから刑事局ですか、ちょっと刑事局に言いますが、我々弁護士は法律家だから、どうもストレートに犯罪の成否にすぐ持っていく嫌いがありますけれども、少なくとも特別背任の関心を持たざるを得ないのじゃないか。そういう問い方をしましょう。それから国税庁の方に聞きましょう。
  292. 筧榮一

    筧政府委員 新聞では承知しておりますが、それ以上の具体的な事実関係は明らかでございませんので、特別背任が成立するかどうか断定はできないかと思います。もちろん特別背任にはいろいろな要件のあることは林委員承知のことでございます。特別背任の認定をする場合にはいろいろな要素が必要かと思いますが、今の抵当権のつけ方もその中で一つの要素といいますか、資料にはなろうかと思います。
  293. 千野忠男

    ○千野説明員 担保の御質問でございますが、私どもは、国会での御論議とか新聞、雑誌等に報道されております事項につきましては、これを貴重な情報としまして十分活用いたしております。ただいま先生お話のありました点につきましては、現在、日本債券信用銀行から事情を聴取しておるところでございます。
  294. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一問だけ。それから同じ新聞に出ているのですが、美福が四十一年四月二十日、同じ小針グループの三永製鉄という、これは赤字の累積している会社ですが、それが黒字で非常にもうかっている美福と合併しまして、そして美福の莫大なもうけ、土地の値上がりによってのその税金を逃れた。要するに赤字会社と黒字会社が逆合併というのですか、逆さ合併をして、そして黒字会社の利益を、合併によって赤字を埋めたということでなくして、税金のかかるのを免れた。  これは御承知のとおり、法人税法の第百五十九条の第一項で、偽りその他不正行為によって法人税を免れた場合、その「法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金」、こういう規定もあるわけですが、こういうことが新聞報道されているわけですけれども、これを国税庁としては調査なさいますか、どうですか。これは法人税法の百五十九条一項にも違反しますので、我々、法律家だから、すぐ違反するとかなんとか言いますけれども、少なくとも調査なさいますか。
  295. 谷川英夫

    ○谷川説明員 ただいま御指摘のありました、赤字会社が黒字会社を吸収する、いわゆる逆さ合併というふうに言われているわけでございます。ただし、この場合にでございますけれども、例えば全く経営実体のない会社、しかも赤字が累積しているというようなものが黒字会社を合併いたします、そういうようなことにつきまして、これは明らかに租税回避を図ったものだというようなものについては、これは過去にも税務上、否認した例はございます。  しかしながら、赤字会社と一口に申しましても実態はかなり千差万別でございます。赤字会社とは言ってもかなり資産を持っている場合、あるいは事業活動を行っている場合、あるいは従業員がある場合とさまざまでございますので、そういう赤字会社を使って逆さ合併をした場合に、明らかに租税回避を図った、そのような事実認定をできるかどうか、そういう問題であろうと思うわけでございます。
  296. 林百郎

    ○林(百)委員 時間がないからそこにいてください。問題はわかっていますよ。だから、それが法人税の脱税のためになされたものか、あるいはあなたの言うように、これは今日の会社法からいって責任を問われる場合でないじゃないかというようなことになるのか。少なくとも調査なさいますか。あなたも言うように、前に逆さ合併で否認したことがありましたね。少なくともこれは、どういう内容であったかということを調査してみる必要があるのじゃないでしょうか。それをするかどうかです。
  297. 谷川英夫

    ○谷川説明員 個々の問題については答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、我々といたしましては、いろいろと資料等を集めましたり、あるいは国会での御審議あるいは新聞報道等も十分に着目しているところでございまして、税務上、問題があるというような判断ができますものにつきましては調査をしているということでございます。
  298. 林百郎

    ○林(百)委員 何だかわかったようなわからないようなことなのですが、それで新聞でこれだけ大きく書かれているわけでございますので、無関心ではない、税逃れでこういうことをやって逆さ合併をしている、無関心ではないということはいいですか。少なくともこういうものを材料にしていろいろの判断の資料にするということはいいですか。
  299. 中川浩扶

    ○中川説明員 一般的な税務調査につきましては、今法人税課長から申し上げましたように、情報等があれば適宜調査に入るということだと思いますが、今具体的なお話につきましては相当古い話のようでございますので、そういった場合には難しい面もあろうかと思います。非常に古い話でございますと、今から入るということについては難しい話もあろうかと思います。
  300. 林百郎

    ○林(百)委員 ちょっとそこにいてください。難しい問題もあるから難しい問題として放置するというのですか。難しい問題だけれども、一応これだけ報道されたとすれば我々も関心を持ちますということなのですか。何だか頼りないね。ほかの徴税行政は物すごくきつくやるのに、こういうような問題になると、国税庁は何か雲をつかむような答弁をなさるのですが、どういうわけですかね。
  301. 中川浩扶

    ○中川説明員 一般的にお話ししまして、いろいろな報道等の事柄については関心がございます。
  302. 林百郎

    ○林(百)委員 関心がある、それじゃもう結構です。
  303. 宮崎茂一

    宮崎委員長 次回は、明後二十日金曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時九分散会