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1984-04-13 第101回国会 衆議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十三日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 宮崎 茂一君    理事 太田 誠一君 理事 高村 正彦君    理事 森   清君 理事 天野  等君    理事 三浦  隆君       上村千一郎君    衛藤征士郎君       大西 正男君    高鳥  修君       丹羽 兵助君    長谷川 峻君       小澤 克介君    佐藤 観樹君       広瀬 秀吉君    山花 貞夫君       神崎 武法君    中村  巖君       伊藤 昌弘君    野間 友一君       林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 住  栄作君  出席政府委員         法務大臣官房長 根岸 重治君         法務省民事局長 枇杷田泰助君  委員外出席者         外務大臣官房人         事課長     福田  博君         外務大臣官房領         事移住部領事第         二課長     池田 勝也君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ————————————— 委員の異動 四月十二日  辞任         補欠選任   広瀬 秀吉君     村山 喜一君 同日  辞任         補欠選任   村山 喜一君     広瀬 秀吉君     ————————————— 四月十二日  永住韓国人に対する外国人登録証指紋押なつ  廃止等に関する請願(竹入義勝君紹介)(第二  五七三号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署職員の  増員に関する請願稲葉誠一紹介)(第二五  七四号)  同(佐藤観樹紹介)(第二五七五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五六号)      ————◇—————
  2. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田誠一君。
  3. 太田誠一

    太田委員 このたびの国籍法及び戸籍法改正というのは婦人に対する差別撤廃条約批准に備えて行われるものであるわけでございますが、前の類似の問題でありますけれども入管法ですか、もまた難民条約締結に伴って改正をしたということが三年か四年前にありました。それから、これは法務省の問題ではありませんけれども我が国社会福祉政策というものを難民条約締結に伴って在日外国人にも利用できるようにするというふうに、いわゆる条約批准ということから、入国管理政策あるいは帰化政策というものがあるとすれば、それがその一部分ずつ影響されてくるということがこれまであったわけであります。  それでともすれば法律制度に対する考え方というものが部分的には木に竹を接いだようなものになりがちだなという感じを実は私持っておるわけでございまして、例えば今申し上げました我が国社会保障制度というものが在日外国人にまでその恩恵が及ぶことになったということは、これはどういうことを意味するのかといいますと、国籍法の第四条に帰化のための条件というのがありまして、その第四項の生計条件というものがこれによって大きく形骸化をしたわけであります。そういう結果をもたらしているわけであります。  なぜなら、国籍法で言うところの生計条件は独立の生計を維持することができるということが帰化のための条件だと言っていることは、立法の考え方というのは、生活能力のない外国人帰化をすると日本国にとって経済的に大きな負担になるから、これは生計条件というものを設けていたわけであります。ところが、帰化する以前のただ日本にいるというだけの外国人に対しても社会保障給付を認めるというのであれば、帰化条件をそこで課して社会保障恩恵を与えることを惜しんで帰化をさせないということにしていることは意味を失うわけであります。こういうことが間々あるわけでありまして、これは、ですから今度の法改正によってもややそういうことがまた出てくるのではないかということを今想像をするわけであります。  そこで、従来のこれは法律そのもの国籍法とか戸籍法とか、戸籍法余り関係ありません、国籍法というものの背後にある物の考え方というもの、あるいは国籍法外国人登録法あるいは入管法といった現行の法律考え方の基礎になっているもの、その既存のわが国の法律体系底流にある考え方と、それから難民条約とか婦人差別撤廃条約とか、あるいはもっと広く言えば世界人権宣言などという考え方というのは全く違った思想がそこにあるのではないかというふうに思うわけであります。これは私がよく法務省方々とお話をしておりますと、随分と認識に差があるなというふうに思えますのは、我々は戦後の教育を受けて育ってきておりますので、多少、毒されているということになるのかもしれませんけれども、どうしても人権宣言とか難民条約とか婦人差別撤廃条約背後に、底流に流れている考え方の方にともすれば引っ張られがちでありまして、どうも今の外国人登録法とか国籍法とかの背後にある考え方というものはなじみにくいところがあるわけであります。ですから、同じ与党の先生と話していてもちょっと違うなと思うことがあるわけであります。  ですから、そういうことを前もってお断りをするわけでありますけれども帰化というものに対する考え方は、私どもは、日本に生まれて育った人たちというのは原則として日本人として帰化をしていただく方がいいんだ、むしろ進んで帰化をしてもらうようにお願いをしたいというぐらいの気持ちで実はいるわけでございます。ですから、たまたまお父さん外国人だから日本人にはさせないとかいうことももちろんあれでありますし、あるいは在日韓国人在日朝鮮人人たちのように、幾世代にもわたって日本で生まれ育って、そしてまた子供が生まれて、その子供が生まれて育ってということを今までも繰り返し、これからも確実に繰り返していく人たちについては進んで帰化をしてほしいというふうに思うわけであります。  それはひいては難民条約やあるいは世界人権宣言というものの考え方に通じるのかもしれませんけれども、進んで移民を求めて外国からたくさんの人たちが流れ込んできてどんどん日本人になっていくというようなことは私どもはいいことだとは思いませんけれども、現に今いる人たち日本人になって、そして日本人社会に同化をしてもらう、そして我々とアイデンティティーと申しますか、一体のものとして同じように社会のルールを積極的に守っていこうという気持ちになる、あるいは進んで日本という社会に対し貢献するようになる方が、その人たちの持っている能力というものを十分にこの社会が活用ができるという意味においても本来望ましいことではないかというふうに思っているわけであります。そして、婦人差別撤廃条約の中にも、婦人の持っている潜在的な能力を十分に引き出す、発揮をさせるということが一つの目的なんだということも書いてあるわけでありますから、これは婦人だけではなくて日本にいる外国人方々に対しても同じことが言えるのではないかと思うわけであります。  ちょっと能書きが、前段が長くなりましたけれども、そういう考え方で、むしろ国籍法改正というのを、あるいは法律の条文だけではなくてその運用の中身につきましてももっともっとオープンにしていただきたい、もっと帰化外国人に対して積極的に進めるものになってほしいというふうに願うものであります。  そこで質問でありますけれども、まず、この間から参考人をお呼びをしてお聞きしたときにも問題になったことでありますけれども経過措置についてであります。この法改正施行の日に二十歳未満の者であって母親が日本人であった者は、三年以内に届け出によって国籍取得ができるというくだりでありますけれども、これによって二十歳以下の人については救われる。しかし二十歳以上の人は兄弟であっても帰化ができないということが生ずるんだ。お兄さんについては通常の帰化手続になる、弟は届け出によって国籍取得ができるということになるわけでありますから、兄弟でお互いに外国人に新たになってしまうというふうなことが起きる。これはどうしたものか。一部で、この部分は修正して延長した方がいいじゃないか、今生きている人については全部経過措置を適用したらいいとか、あるいは新しい憲法以後については全部認めるべきだ、いろいろな議論がありますけれども兄弟でそういうことが起こるということは経過措置としてもいかにもまずいことではないか、この辺についてどうされるか、ちょっとそこをお聞きしたいと思うのです。
  4. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 経過措置としての附則第五条で未成年者に限っております理由は、さきの委員会でも多くの方々から御質問を受けましてお答えしたとおりでございますが、外国人として既に二十年以上の生活をしておるということでございますといろいろな問題があり得るわけでございますので、国籍法全体の考え方といたしまして、未成年の間にはまだ二重国籍等の弊害もないという考え方から、準正の場合であるとかあるいは不留保の場合の再取得の場合でも未成年というのを一つ基準にとっておるわけでございます。それと同じような考え方で、二十歳未満の者については簡易な届け出によって日本国籍を認めてもいいけれども、それ以上の方々については個別に事情を見た上で日本国籍を与えるという制度にする方が合理的であろうということで決められておるわけでございます。  法律と申しますのは、いずれにいたしましても一つ制度でございますので、一つの画一的な線というものが当然出てまいります。仮に今お話しのように新憲法制定のときまでさかのぼるにいたしましても、その制定の前の日の者と翌日の者とではどうだという問題がまた出てくるわけでございます。ですから、そういう境目にあるということは常に法律としては問題があるわけでございます。したがいまして、ただいまおっしゃったように、兄弟の兄の方は帰化手続でいかなければならない、弟の方は意思表示でできるというふうなことは避けられないことがあろうかと思います。しかし、そのような場合には、兄の方については経過措置の趣旨もあるわけでございますので、私どもとしてはなるべく帰化は容易にするということで解決をしたいと考えております。
  5. 太田誠一

    太田委員 要するに、弟が帰化できてお兄さん帰化できないということが起きるわけですから、今おっしゃったように、制度上はそういうことは担保できないけれども兄弟であれば、兄の方もできれば一緒帰化できるようにしたいということでしょう。ですから、それはこういうところで話しているだけではなくて、行政の第一線に対してもきちんと法律施行と同時に通達か何かしていただかなければいけないことだと思います。  それから経過措置の二というのがあるわけであります。この経過措置の二の国籍選択の特例ということでもって、二重国籍である者はこの法律ができて以後については選択をしなければいけないわけでありますけれども施行の際に現に二重国籍である者は選択の必要がないということになる、考え方はどうか知りませんけれども、結果的にはそういうことにしてもらったわけであります。  ここで確認をさせていただきたいのですけれどもアメリカで生まれた日本人子供は、今はアメリカ属地主義でありますから二重国籍であるわけであります。そして、ただそれだけなら問題ないわけでありますけれどもお父さん日本人お母さんアメリカ人で、そしてアメリカで生まれたというときには、本人は二重国籍であって、お母さんアメリカ人お父さん日本人ということになるわけであります。それが日本に今暮らしているということになりますと、今度の法改正によってもしこの経過措置の二というものがなければ、この子供は二十二歳になったらば、お母さんの国であるアメリカを選ぶか、それともお父さんの国である日本を選ぶかという選択を迫られることになるわけであります。  それまでは迫られなかったのです。二重国籍の者を許されていたわけだけれども、今度の法改正でもってどっちかを選ばなくてはいけなくなる。今度の法改正全体は、むしろ選択の自由の幅が広がったとか権利が拡大されたということになるわけでありますが、そういった人たちにはむしろ権利が制約されるようになったと理解をしていたわけであります。しかし、こういう経過措置をとっていただいたおかげで、このケースについては二重国籍であっても選択する必要がないということになったわけですね。こう確認したいのですけれども……。
  6. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 この経過措置は、新しい法律施行前に既に二重国籍になっている方につきましては、やはり選択をしてもらいたいという気持ちがあらわれておりますので、したがいまして、法律施行後二年の間に選択意思表示をしていただきたい。ところが、その場合に選択をされなかった場合には、日本国籍選択したものとみなして法務大臣催告、あるいは催告にも何も応答がない場合に、日本国籍を喪失するという効果は与えないということにしたわけであります。そういう意味では、何もしなくてもいいというのはちょっとあれかもしれませんが、結果的には同じようなことになろうかと思います。
  7. 太田誠一

    太田委員 法律考え方としてはそういうことだと思いますが、結果的には選択しなくてもいいということだろうと思います。  次に、これは前段でも申し上げたことでありますけれども、この際、帰化条件一つである「素行が善良であること。」というのは何らかの意味で緩和すべきではないかと私は思っているわけであります。素行善良ということは、言ってみれば素行がいいにこしたことはないし、道徳的な人こそ日本人になってほしい、日本帰化してほしいということはあるけれども、モラルというものは、これくらい高くなければいけないと引き上げていこうと思えば幾らでも上がっていくわけでありまして、日本人よりもはるかに道徳的な水準の高い人でなければ日本人になれないのだということは私もどうもおかしいと思うわけでありまして、素行条件というのを実質的に何とか緩和すべきである、あるいは緩和ということではなくて、これこれこういうことについてと具体的にわかりやすくしてもらいたいというふうに思うわけであります。素行条件だけではなくて、一番最後の第六番目でしたか、つまり、政府に対する転覆とか反社会的な行為を働く者はだめだという条項もあるわけですから、素行条件の方で何もそれをチェックする必要はないのだというふうに私は思うわけであります。  そこで、入管法の方では、私が外国人日本人帰化しようとする人から話を聞くと、絶対に交通違反を三年間起こしてはいけないのだということをよく言われることがあるわけであります。これはもちろんそうであるにこしたことはないのですけれども、それでは平均的な日本人、普通の日本人で三年間無事故、無違反という人が一体何人くらいいるかというと、本当に数が少ないと思うわけでありまして、そうであれば、ほどほどにその辺も考えるべきではないかというふうに思うわけであります。帰化条件の中で素行条件というのは、例えば交通違反の問題のようなことであれば、今どうなっているのですか。
  8. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 素行条件につきましては、私どもの方では普通の日本人に期待するような程度素行状態基準にいたしております。よく無事故、無違反でなければいけないのじゃないかという御質問も受けるわけでありますけれども、私どもは何もそういうふうなことを要件にしておるわけではございません。前科がありました場合でも、刑法の三十四条ノ二でしたかの規定のことを前提にしまして、懲役刑が終わった場合には十年たてばとかいうことを一応の基準にいたしておりますが、それもいろいろな状況から見ましてもう既に改悛の情が撃って社会復帰ができておるという場合には、何もそれにこだわらないで、短い期間でも認めるということもしております。交通違反の場合でも三年間何も無事故でなければいけないというふうなことは考えておりませんので、ごく最近の状況から見て、非常にスピード違反とかあるいは飲酒運転とか、そういうようなことを繰り返しているという場合には、これはしばらく様子を見させてもらうということもありますけれども、そんなに数年間無事故、無違反でなければならぬというような扱いはいたしておらないところでございます。
  9. 太田誠一

    太田委員 今八十万人前後の外国人日本にはいて、そしてまた次々と子孫を誕生をさせているところでありますけれども、そういった人たちが従来の日本国籍制度によって帰化をしなかった、帰化ができなかったということのほかに、むしろ自分たち差別されていると思えば、日本社会に対して日本社会にいながら反感を持ちつつあるわけです。そうすると、特定の成功をした人は、そういう帰化条件は十分に満たしている。だけれども自分たち仲間を裏切ってまで帰化をしたくないというふうに考えて、つまり仲間うちのしがらみというか制約から帰化を進んですることがないという人もいるわけでありまして、そこが非常にむずかしい問題で、鶏が先か卵が先かというような問題もあるわけであります。  よく言うのは、今言った素行条件というのをあれこれ言われると非常に不愉快である。なぜそこまで、平均的な日本人が満たしていないような高い道徳水準に我々が到達していかなければいけないかということも言うし、あるいはこれは主観の問題でありますけれども、税金で、税務署から自分たちのところへ頻繁に人が来てあれこれ調べる。そうすれば、同じ条件であれば、日本人よりも外国人の方が頻繁に調べられる分だけ余計脱税とか、そういうことも出てくる。そのことによって素行が悪いということになって、帰化ができなくなるというふうなこともまたあるようであります。これは法務省だけの問題ではなくて、政府全体が現在の西側の自由社会の常識というものをもう一回頭の中で考え直す必要があるのではないかというふうに思うわけであります。  よく言われることでありますけれども帰化に当たって手続が非常に面倒だ、あるいはお金がかかるということが指摘されるわけであります。ところが、法務省の方に聞いてみると、いや、そうでもないのだ、そんなにお金がかからないようなやり方もある、あるいは書類も大したことないのだというふうにも答えが返ってくるわけであります。余り細かく言う必要はないわけですけれども、大ざっぱに言って、実際のところどういう書類が必要で、普通、常識的に手に入る書類のほかにどういうものが必要であって、そしてどういうお金がかかるのかということを簡単に教えていただきたい。
  10. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 書類といたしますと、帰化申請書を書いていただく、これはそうむずかしい書類ではございません。それにあわせまして、帰化をしたいという動機を書いていただくという書類があります。そのほかに、身分関係を明らかにしますような、戸籍制度のある国が本国である場合には戸籍の謄本をとっていただく。それから住所要件関係がございますので、外国人登録関係証明書、そういうようなものを出していただく。それから収入の関係で、勤めておられる方の場合には給与証明書、それから一般の企業をやっておられるような方は納税証明書というようなものを出していただく。その程度でございまして、その後、いろいろ個別な問題があればそれについて書類の補完をしていただくことはありますけれども、そんなにとりにくい書類を無理してとっていただくというふうなことはないと私どもは思っております。  それから、費用の点でございますけれども、別に、帰化申請をする場合に国に対して手数料とか、そういうものを納める必要は全くございません。したがいまして、経費がかかるとすれば、これは余り多くないだろうと思いますけれども、そういう書類を調えてくれるような人に何か頼みますと、そこで取られるかもしれませんけれども、私どもの方はむしろ法務局の方に御相談になってこられれば、こういう書類が要るというようなことも御相談に乗っておりますので、そこを利用していただければそんなに経費もかからないし、無理な書類が要求されるということもないと思います。
  11. 太田誠一

    太田委員 私、実際手続したことがないからわからないわけでありますけれども、どうもそういうことがよく言われるのです。ともかく考え方として、窓口の方の今までの考え方というのは、なるべく入れまい入れまいと思っていればこそだんだんつっけんどんにもなるし、意地悪ということもないでしょうけれども、意地悪になることもあると思うので、ぜひそこは、それなりに帰化してもらっていいんだ、だから、もっと温かく扱ってやるというふうなことは、これは今役所はどこでも、郵便局にしたってそういうふうな運動を繰り返しているうちに、銀行よりもよほど愛想のいいあれになったわけでありますから、そういうふうなことは法務省においても心がけなければいけないことだ、これも一つのサービスというふうに思っているわけであります。  最後に、これは国籍法ではなくて戸籍法でありますけれども、前は百七条の関係になるわけでありますが、今度戸籍法で氏の変更——今まではお父さんの姓と子供の姓が一緒だというのが一つの通念であったから、そう大した問題が起こらなかったわけでありますけれども、今度はお母さん日本人であってお父さん外国人である場合も戸籍をつくることになったわけでありますから、それに伴って、外国人であるお父さん名前を名のるということも認めてやろう、これは大変な進歩であろうかと思いますが、ともかくそういうことでもって外国人名を使う日本人が許されるようになった。そして家庭裁判所の許可を得なくともそれができるようになった。それはいいことなんでありますけれども、これはなぜそんなことを家庭裁判所指導したのか。それともどこで指導したのか知りませんけれども、従来の考え方で、帰化をするときに外国人名前を、例えば韓国の李という名前を名のってはいけない、そういうふうな名前日本人らしくないから、日本人らしい、例えば山田の名前にしておきなさいということを強く指導をして、そういうふうに名前を改姓させた。  そういうふうに指導をしてきた背後考え方というのは、やはり日本人単一民族であって、一つ純血主義を今後とも守りていくのだ、文化的にも表現の問題でも、あらゆる意味単一性というものを守っていくのだというような哲学があって、それが広く容認されていたからそれでよかったわけであります。ところが、外国人お父さんの場合やむを得ないということでもって一カ所でも穴があく、そうすると、今度からは、窓口に来て李さんなら李さんが帰化手続をする、両方ともお父さんお母さん日本人ではないというときに帰化手続をしようとするときにも、これはもはやあなたの名前日本人らしくないからやめなさいということも言えなくなるわけですね。ですから、これから帰化をしようとする在日外国人の方方に対して、氏を日本人らしいものにする必要はないんだということをはっきりしていただきたいと思うのであります。
  12. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 従来からも、日本人らしい名前にすることを強制するといいますか、そうしない場合には許可しないというような扱いにはしておらなかったわけでございますが、しかし、日本帰化する以上は、日本人社会の中で普通に日本人らしい名前にする方が何かと望ましいのではないかという考え方もございまして、そういうふうにしたらどうかということを本人に勧めるということはありました。そのこと自体もそう間違っているとは思いませんが、これからも外国人らしい姓のままで帰化して戸籍をつくってもらいたいという強い希望があれば、私どもの方は別にそれを制限するということはしないつもりでおります。
  13. 太田誠一

    太田委員 これもおっしゃることはそのとおりだと思いますけれども、普通、役所に行って帰化の際にこういうふうにした方がいいですよと言われなくても、自分は同じ日本人だと思われた方が生活していく上でも便利なわけですから、ほうっておいてもそれは向こうが考えることなんです。その中に時々、みずからについて強い自己主張を持っている人は、それに対して反対の考え方を持っているかもしれない。しかし、帰化をしたいと一生懸命営々として努力してやっと帰化ができるというときになって、そうした方がいいですよというふうに役所に言われれば、それはやはり言われた方からすれば、何の法律的な裏づげがなくても何か強いられているというふうに思わざるを得ないわけでありまして、そういう意味においても、今までよりももっと、そういうことをする必要はないんだということをむしろ教えてやるぐらいのことがあっていいのではないかと思うわけであります。ほうっておいても本人がそういうふうにどちらかというと日本人らしい名前を使いたがると私は思うわけであります。  以上であります。ありがとうございました。
  14. 宮崎茂一

    宮崎委員長 中林巌君。
  15. 中村巖

    ○中村(巖)委員 私は前回三日に質問をいたしておるわけでございますけれども、その三日の質問の後に、先週の六日でしたか、参考人の御意見を伺ったわけでございまして、三日の審議、さらには参考人のお話を通じまして、今回の国籍法の問題の主要な争点が割合はっきりしてきたのではないかというふうに思っているわけでございます。  その中で、今度国籍法の主眼は父系優先主義から父母両系主義ということになるわけで、そのことについてはだれしも異論はない、こういうことははっきりしていると思うわけでありますけれども、そのことに伴うところのいろいろな付随的、附帯的な措置について異論がある、そういうことになっているのが現状ではないかというふうに思っているわけでございます。  その中でも、大きな問題は二つであったのではないかということでございます。一つは、重国籍を解消するという考え方、そのための制度を、選択制度あるいは留保制度というような形でとることの是非が問題になっているということでございますし、第二点目は、父母両系主義をとったことによる効果というか、そういうものを遡及してどこまで及ぼすのだということだろうというふうに私は私なりに考えているところであるわけであります。  そこで、前回の参考人の御意見をお聞きいたしますと、重国籍の解消のために選択制度なんというものは設ける必要はないのではないか、こういう御意見もあるわけでございまして、その御意見の発するところは、重国籍というのは決して悪くないんだということなんだろうと思うわけであります。その考え方は、国籍というのは人間としての権利であるという御意見のようでありますが、それに対して法務省考え方というのは、国籍というのは国家が付与していくようなものなんだ、国家を主体に考えていくべきものなんだと。そこで両者の間に考え方の差があるというふうに思うわけであります。国籍は人間としての権利だというような考え方法務省考え方は違うということが二重国籍解消問題についての基本的な思想の相違、そういうことだろうというふうに思うわけで、法務省としては、国籍は人間としての権利であるというような考え方についてどうお考えになっておられるのか、その点をまず最初にお聞きいたしたいと思います。
  16. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 国籍権利であるかという点につきましては、一たん与えられました国籍がその国の主権によって恣意的に奪われるということがあってはならないという意味では権利だろうと思います。ただ、取得の問題として考えた場合に権利かというと、私どもはそうではないというふうに考えております。  もっとも、人間である以上どこかの国の国籍があるべきであるという思想といいますか、そういう原則はあろうと思います。しかし、それは個々の、各国での国籍法制定するときの一つ指導理念といいますか、そういうものにはなることだろうと思いますけれども、具体的な権利として国籍取得する権利があるということは言えないのではないか。もしそうだとすれば、ではどこの国に対する権利なんだということになりますと、これはもうわからないことになるわけであります。  また、側面から申しますと、国籍法は各国でいろいろな法制をとっておりますけれども、大別いたしますと、生地主義と血統主義があるわけでありますが、生地主義の国におきましては、そこで生まれた者に国籍取得する権利があるという考え方があるのかどうかは疑問でございます。血統主義のところでも、血統的につながる者に権利があるという考え方でやっているのかどうかは問題でございます。  そういう二つの主義などがあったりしますと、人間として何かの理由で国籍取得する権利があるという自然法的な意味でのものがあるというふうには私どもは理解できないのでありまして、やはり国籍というのは国の方で一定の要件の者に国籍を与えていくというふうな形でつくられておりますし、そういう性質のものではないかと思っております。
  17. 中村巖

    ○中村(巖)委員 国籍は人間としての権利であるというような考え方一つの具体化というか、そういう問題として、親の国籍を継承する権利があるんじゃないかというような考え方もあるようでございまして、五十六年三月三十日の東京地裁のシャピロ・エステル・華子事件の判決の中でも、原告の方の主張の中にそういうものが出てきておるようでありまして、そういうものに対して権利であるという場合、少なくとも親の国籍というものは子に継承権があっていいじゃないか、こういう考え方だろうと思うわけでございます。  そういう継承権については、先ほどの事件の中でも法務省は反論をしているようでありますけれども、継承権という考え方についてはいかがお考えになっておられますか。
  18. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 国籍というものが、いわば私的な権利のように相続の対象になるとか、そういうような意味での継承の問題はそもそも生じない分野の事柄であろうと思います。  自然法的といいますか、人間そのものとしてというふうな観点で考えた場合に、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、生地主義の国におきましては、親がある国籍を持っているから子がその国籍という関係に立っていない国もかなりあるわけで、そういうところでは継承権というものが考えられる余地がない、そういう法制自体がそもそも根本的に間違いなんだと言ってしまえば別でございますけれども、そういうことでは世界では通らないだろうと思います。そいういうことからいたしますと、人間である以上、親の国籍を承継する権利があるのだという言い方はできないのではないか、また逆に、親の方から権利として、子供に承継させる権利があるのだという立論もできないのではないかというふうに考えております。
  19. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そこで、重国籍の解消の方策ということで選択制度が今度創設をされるわけでありますけれども選択制度というものは、ある意味で重国籍を解消するあるいは国籍唯一の原則をできるだけ貫徹をさせるという観点からいたしますならば、やむを得ないものではなかろうかと私自身は考えておるわけでありますけれども、その中で一つの問題として、それを余りにも厳しくやることはどうかなという感じは免れないだろうと思うわけでございます。  まず第一に、今度の改正法の附則の第三条というところで、従来の重国籍者についても選択を迫るというような形になっているわけでございます。この新しい法律になる前、つまり現行法の時代においても重国籍は発生をしておったわけでありまして、選択制度がないというもとにおいては重国籍は、状況によって違いましょうけれども、放置をされてきた部分というのがあるわけです。放置をされて今日までやってきた、そういう意味で重国籍に果たしてメリットがあるのかどうかということは問題でありましょうけれども、仮にメリットがあるとすれば、そういうメリットを持っていたものが、今度の新法ができることによってそのメリットを奪われてしまう。つまり重国籍を持っているということが一つ権利だとすれば、権利剥奪をされてしまうという関係になろうかと思うわけでございまして、そういう意味で附則第三条を設けて従来の重国籍者にまで選択を強制することはどうであろうかというふうに思うわけでございます。この点についてのお考えをお聞かせいただきたい。
  20. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 従来の重国籍者につきましても、選択制度が一応形の上ではかぶさるという仕組みにいたしております。そういう意味では、ただいまの御指摘のように強制だと言えばそうなのかもしれませんけれども一つ制度が強制であるという場合には、そのことの効果とあわせて考えて初めて強制と言えるだろうと思います。その点につきましては、要するに選択をしなければならないという規定はかぶさりますけれども、しなかった場合に、効果としては、法務大臣から催告を受けて、そして国籍を喪失していく、そういう関係については適用しないということにいたしておるわけでございます。既に日本国籍の方を選択したと同じ状態で考えますということにしてあるわけでございますので、したがいまして、全体から見ますと、本人が今度の新法の趣旨を理解されまして、国籍唯一の原則にのっとって、ではこの際どっちかの国籍一つに決めようというふうにお考えになってやっていただけば、もちろんそれにこしたことはないんだけれども、それをされなかったからといって日本国籍の方を失わせる、そういう手続にはのせませんということにしておるわけでございます。したがいまして、制度全体から見ますと、強制をしているという考えは私どもはとっておらないところでございます。
  21. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今、局長はそういうお話でございますけれども選択をしなければ日本国籍選択したものとみなされてしまうわけで、その反射効というか、そういう形でもう一つの方の国籍を離脱しなければならない義務というか、それは相手の国から離脱できるかどうかは別として、法律の建前からいえば離脱をする義務を負わされるような格好になってしまうわけであります。そういう意味で強制というのが当たっているかどうか別でありますけれども、そういうふうに選択制度を新規に創設してそれを遡及して適用する、そんな感じを免れないのではないかというように思うわけでございますけれども、その点はいかがですか。
  22. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 新しい法律考え方が、国籍唯一の原則を重視いたしまして、重国籍の方については単一国籍になるように努力をしていただくという精神があるわけです。それは、状態から見ますと新法施行後の重国籍者についても既存の重国籍者についても本来同じはずでございます。しかし、それを既存の重国籍者につきまして及ぼすということになりますと、今までそういうようなことがないということで長い間生活をしてこられた方にそういうのを一〇〇%かぶせるということは、本人についても、何といいますか非常に影響のあるところでございますし、また、法の周知の徹底が図れないようなところにおられる方も多かろうという気もするので、したがいまして、そこを実質的には新法の精神に従って選択の線にはのるようにしていただく、しかし、それにのらなかったからといって従来の状態よりも悪い状態にはしないというのがこの経過措置の附則の三条でございまして、そういう点は私どもとしては十分に配慮してできたものだというふうに考えております。
  23. 中村巖

    ○中村(巖)委員 それからまた、選択制度の問題としては、選択の時期の問題というものがあろうかと思うわけでございます。今の法案によりますと、法施行のときに二十歳未満の者については、二十歳に達して二年以内に、あるいはそれ以上の者については二年以内に選択をしろ、こういうことであります。前回も、私も若干質問しておりますけれども、この二十歳で一つの区切りをつける、あるいはまたそういう状況が生じてから二年間の間に選択をしなさいということで選択を迫るということは、まず二十歳の方について言えば、いろいろな社会生活上との関係から必ずしも二十歳がいいのではないのではないか、こういうふうに考えることができるわけであります。また、二年間の間に選択をしろというのは、二年間という期間は余りにも短過ぎるではないかという感じがいたしているわけでございまして、もう少しその辺の年齢の問題あるいはこういう選択の期間の問題、これを延ばすことはできないのかと私は思うわけでありますけれども法務省考え方はいかがでございましょう。
  24. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 まず原則としての二十歳の問題でございますが、これはもっと高い年齢のところまで引き上げてもいいではないかという御意見もありますし、また逆にもっと引き下げるべきではないかという御意見もあるわけでございます。  その判断についての問題点といいますのは、国籍をどう決めるかということはその人の一生にとって非常に重要なことなんだ、だから、そのことの判断が十分できるような年齢に達するということを考えれば二十歳以上であった方がいいんじゃないかという御意見があるわけでございます。それは確かに年齢がふえまして人生経験がふえるに従ってよりいろいろな判断が総合的にできるということは一般論としてあろうかと思います。ですから、そういう面では年齢が高い方がいいということがあろうと思いますが、しかし、それでは無限に高くなってしまうということもあります。  それから、もっと低くていいのではないかという方は、いや、それは重大なことであることには違いないけれども、ある程度の年齢に達すればそれぐらいの判断はつくんだ。現に養子制度におきまして十五歳までは代諾養子と言われておりますが、十五歳を超えますと自分の意思で養子縁組ができるわけであります。国籍の問題も大事なことでありますけれども、親子関係をどうするかということも本人にとってはこれまた非常に大事なことではないか。それについて民法が本人の意思で養子縁組ができるという制度になっているなら、それぐらいを基準に置いてもいいのではないかという考え方もあるわけでございます。  そして一方、重国籍関係がいろいろ問題になってきますのは、未成年の間は少のうございますけれども、成人に達しますと実際に社会に出ていろいろな活動をする、あるいは外国においては兵役の関係が出てくるというふうなことがあるわけでございます。そういうふうなことから考えますと、日本の法制度一つの独立して判断ができる年齢として決めておる成年、これを基準にするのが一番いいのではないか。現に成年に達しますと選挙権を持って国政に参加するわけですね。それだけの判断ができるということを全体で認めているような年齢に達すれば、そのときを基準にして自分の国籍の帰属を考えてもらってもいいのではないかということで二十歳が適当であるという結論に落ちついたわけでございます。  それから熟慮期間といいますか手続期間といいますか、それを二年ではなくてもう少し置いたらいいではないかということでございますが、これもまた先ほど申しましたように、社会的に活動が始まりまして、そして兵役との関係もありますので、成人に達した後はなるべく二重国籍という状態は解消してもらった方がいいわけでございます。そういう面で余り長くては困るということもあります。とは言いましても、余り熟慮期間が短いというのも酷であろうということで、絶対に二年でなければならぬということはありませんけれども余り猶予期間を長くしますとそのうちということになってかえって真剣に考えないということで徒過してしまうということもなくはないと思いますので、そういうことをあれこれ勘案した上で、二年という期間があればどちらの面から見ても十分ではないかという判断に達したわけでございます。
  25. 中村巖

    ○中村(巖)委員 もう一つの方の問題でありますけれども、父母両系主義になるということでございますが、なった結果の効果というものをできるだけ遡及して及ぼすという附則第五条の関係の問題でありますけれども、附則第五条の基本的精神とすれば、今度両系主義になって、母親が日本人である子供というのは日本国籍になることになったのだから、つまり今までの父の優先主義というものがある意味で間違いであったということの考慮に立って、そういう間違いであったことはできるだけさかのぼって直しましょうという配慮というものがあるのではないかというふうに思うわけでございます。  そうした場合に、原則的にはできるだけ早い時期にさかのぼらしてそこまで効果を及ぼしてあげるということが妥当な考え方ではないかなというふうに思うわけで、しかし、どこまでさかのぼらせるかということになると、これはある意味で際限がないわけです。そこで一定の限度でお切りになるということだろうと思いますけれども、昭和四十年の一月一日で一応線を引くんだということに今なっておるわけてあります。結局、結果としてはこの線の切り方というのは成年か未成年かということで切られるという格好になっておりますけれども、成年、未成年ということで切ることの合理性というのは私は別にないように思うのです。どこか切らなければならないことは切らなければならないにしても、こういう遡及して効果を及ぼしてあげるんだということの線の切り方として、成年、未成年を取り上げるというのは何かおかしいような気がするのですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  26. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私どもといたしますと、二十歳で線を切ったということは、一つにはすでに成人に達して日本国籍がないという状態で社会生活をしておられる方については、日本国籍が欲しいと言われるならば個別に調査をした上で国籍を付与することがいいのではないか、当然にという関係はどうかということが一つございます。  それから、もう一つでございますけれども、これは附則の五条の関係につきましては、関連して沖縄の無国籍問題というのが取り上げられておりますので、あたかも無国籍の人を対象にしたようにとられておりますけれども、実はそうではなくて、この規定で日本国籍取得される方として我共が考えているのは、もう既にほかの外国国籍を持っておられる方が大多数だと思います。そういう方について、意思表示によって日本国籍も与えましょうということでございますから、そのときには重国籍になるということを実は前提にしておるわけです。その重国籍だということを考えますと、先ほど来の問題が出てくるわけでございまして、例えば新しい法律によりますと、準正の規定であるとかあるいは留保の手続をしなかった関係で後になって取得するという場合でも、これはみんな二十歳で切っております。  そういう考え方と共通する問題がありまして、二十歳の関係について未成年である場合には重国籍の問題が余り弊害がないというようなこともあるわけでございます。そういう場合には、その国籍があるなしにかかわらず意思表示によって日本国籍を与えましょう、そういうことが私どもとしてはできやすいという面があるわけでございます。もし、そういう国籍法全体の中で考えられている一つ基準としての二十歳というところを外しますと、一体それではどこまで行ったらいいんだということになりますと、いろいろな考え方があって決めてないわけでございます。これは、ある案では現行法の施行されました昭和二十五年からさかのぼったらという意見もございます。それから新憲法という考え方もありますし、あるいは無制限という説もあるかもしれません。しかし、どれといっても私どもは決め手がないことになるだろう。余り長くさかのぼりますと、いままでの既存のいろいろな法律関係との間で混乱が生ずるということがあるわけでございますので、私どもは、二十歳で切る、その以外の者については、本当に日本国籍取得したい気持ちがあって、そしてその意思を入れてしかるべき方についてはこれは帰化によって処理が十分できるということで、具体的な問題としても余り問題はないということを考慮した結果、昭和四十年の一月一日以降に生まれた者ということにいたしたわけでございます。
  27. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今の問題ですけれども、人によっては父系優先主義というものが憲法違反をしているんだから、憲法施行のときまで効果を及ぼすべきではないか、つまり昭和二十二年五月にまでさかのぼるべきであると、こういうことを言う人もあるわけでありまして、私自身は憲法違反しているかどうかということは今さら問うてもしょうがないことだろうというふうに思っておりますし、また仮に憲法違反しておったからといって新憲法施行のときにまでさかのぼらなければならないということもなかろうかとは思っているわけでありますけれども、やはりそういう新憲法施行のときにまでさかのぼれという考え方も、それは一理なしとしないのだろうというふうに思うわけであります。しかし、そうなりますと、いろいろややこしい問題も確かに出てくるだろうなという感じはするわけであります。  一つは、従来講和条約発効前に日本人であった人たちの問題というものがどうしても出てくるだろう。いわば台湾の人、朝鮮の人、そういう人たちが講和条約発効前においては日本人であったわけでありますから、その人たち子供というものもまた日本国籍取得ができるのだ、こういうことになると、その人たちは今日本にいないわけでありますし、至るところに散らばっているわけでありますから、混乱が起こることもなしとしないだろうというふうに思うわけで、その辺のことについて法務省としてはどういうふうにお考えになられているか。つまり、そういう混乱というものも避けなければならないということが一つ昭和四十年一月一日で切るという考え方の根底にあるのかどうか、その辺をお伺いをしたいと思います。
  28. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 憲法関係につきましては、私どもは現在におきましても父系優先血統主義が憲法違反するものではないという考え方をとっておりますけれども、確かに憲法違反あるいは憲法違反の疑いが濃いという考え方もございます。そういう考え方の方の御意見を伺ってみましても、新憲法制定当時、これは旧国籍法の時代でございます、あるいは二十五年の現行国籍法施行されました当時から憲法違反の状態であるというふうなことを言われる方は、おられるかもしれませんが、私どもの知る範囲ではないわけでございまして、いろいろな情勢の変化、両性の平等の意識が変わってきたということ、それから各国で両系主義を採用することになって父系血統主義による国籍唯一の原則を維持するという、そういう基盤が失われておるというようなこと等々から、現在においては憲法違反であるとか憲法違反の疑いが濃くなっているというふうな言い方をされるわけでございます。私どもはそういう考え方には傾聴すべきものがあるとは思いますが、しかし憲法制定のときまでさかのぼらなければならないという理論的な根拠はないのではないかと私どもは思っております。  そうしますと、国籍法考え方自体でできるだけさかのぼるとしたらどこまでかという観点で物を考えるべきであろうということから、先ほど来申し上げていますように、未成年の者についてはというところが国籍法考え方としては一番筋が通った考え方であるというところで、昭和四十年一月一日以降に出生した者というふうにしておるわけでございます。  ですから、それが理論的な根拠でございますが、もしそれをさらにさかのぼって新憲法当時にまでさかのぼるということになりますと、ただいま御指摘ございましたように、昭和二十七年四月の平和条約発効までの間は、いわゆる朝鮮籍、台湾籍におられた方々もその当時におきましては日本国籍を持っておったわけでございます。したがいまして、そのときの母といいますか、その朝鮮籍、台湾籍の女性を母とする子供が二十二年の新憲法のときから二十七年の平和条約の間に生まれておられる。それはかなりの数があると思います。そういう方につきましては、今度の附則第五条の一つ要件を満たすということになります。それが果たしていい結果を招くであろうかといいますと、これは国籍関係につきましてはかなりの混乱を起こし、場合によっては韓国あるいは中国との関係でも無用の問題を起こしかねないというような気もいたします。そういうことがあるから四十年一月にやったのではないかということでは必ずしもありませんけれども、そういうふうなことも、いつに限るのが適当であるかという際には十分考慮したところでございます。
  29. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今のお話も大体わからないわけではないのでありますけれども、今、一つ要件を満たすというお話がございまして、確かに一つ要件しかそれでは満たさないわけです。つまり「現に日本国民であるとき」とか「又はその死亡の時に日本国民であったとき」というような制約条件がついているわけでありますから、全部が全部、仮に新憲法施行のときまでさかのぼったとしても、その当時日本人であった方々子供さんが日本国籍取得するということにはなっていかないのだろうというふうに思うわけであります。  そこで、今申し上げたような要件で絞っておられるということの結果として、仮に新憲法施行のときまでさかのぼったとするならば、どのくらいの数の人たち届け出によって日本国籍取得する可能性のある人数になるだろうか、その辺はいかがでございましょうか。
  30. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 これは全く推測不可能でございますが、先ほどの一つ要件のもう一つ要件で、ただいま御指摘のありました現に母親が日本国籍を持っているかあるいは死亡のときに日本国籍を持っていたかということで、その朝鮮籍、台湾籍の母親の方がその後日本帰化をしておられるということがどれぐらいあるかということを見当をつけなければなりませんけれども、朝鮮、台湾の関係の方で帰化をされた方というのはかなりの数に上ります。平和条約発効後現在まで総数で約十五万人ぐらいの方が日本帰化しておられますけれども、それの九〇%以上は朝鮮、台湾関係の方でございます。したがって、その半分は女性だということになるわけであります。  それからまた、二十三年後に子供が生まれて、そして平和条約発効前に亡くなっておられる場合には、これは要件を満たすということになります。それが子供さんにどう影響しているか。それからまた、その子供さんのまた子供さんですね、そういう方もかなりいるということになろうかと思います。したがいまして、ちょっと数はどれくらいということは申し上げにくいのでございますけれども、相当な数になるのではないかという気がいたします。
  31. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今の点、そういう二つの要件があるわけでありますし、さらにまた、中間試案のときに出たのかどうか知りませんが、「引き続き」日本人であった、そういう要件というものをまたかぶせるとか、そういうことになれば、さらにその問題は絞れていくのではないかというような感じがするわけでありますけれども、そういうことによって、できるだけ昭和四十年一月一日ということでなくて、もっとさかのぼらせる方がいいのではないかという感じが私自身しているわけでありますけれども、どうしても四十年一月一日に固執をしなければならないという法務省のお考え方、先ほど来お答えは聞いているわけでありますけれども、どうしてもそうなんだということをもう一つ説得力を持ってお示しをいただきたいというふうに思うわけであります。
  32. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 今までいろいろ申し上げましたので、それ以上説得力を持って御説明するという材料は余り持ち合わせておりませんけれども、ただいまの「引き続き」という要件をかぶせれば今言った平和条約のときの問題というのは確かにある程度解消できるかもしれませんが、中間試案ではそれを入れておりましたが、それを外すということになりましたのは、実は、この附則五条の中心の問題は、日本の女性が国際結婚をされて、そこで生まれた子供さんの話が中心になるわけでございます。ところが、子供は生まれた、そしてその後、奥さんの方がそのだんなさんの方の国籍取得するというようなことがあった後に婚姻が破綻をして離婚をされる、こういうケースも珍しくないわけですね。そして、子供さんを連れて日本に戻ってきて、そして日本にまた帰化でいる、それは簡単に認めるわけです。そういうような同じようなケースの場合に「引き続き」という要件が欠けてしまったのでは、これはいわば母系主義によって国籍を与えようという経過措置の精神に反することになるのじゃないか。だから「引き続き」という要件を入れることは国際結婚による子供さんの場合に適当でない状態も生ずるから、ということが一つの配慮だったわけでございます。  したがって、そういうものを犠牲にしてあえてさかのぼらせるという必要があるのだろうか。ともかく、新法施行時に二十歳以上の方について何か問題があるんじゃないかということで今まで指摘されておりましたのは、実は沖縄の無国籍児の問題なんです。それ以外については具体的な問題としてさかのぼるべきだという議論は私は聞いたことがありません。私どもとしては、それを調べますところが、成年に達しておられる方は一人おられるらしいということはつかんでおりますが、先日の参考人のお話では、福祉関係をやっておられるその方は、自分としてはそういう方は知らない、ただ、おられるのではないかという想像を言っておられるわけでございます。そういう面からいたしましても、私は、国籍法の理念といたしましての未成年か成年かということを基準にする線で切るというのが、理論的にも筋が通っておるし、それからまた、具体的な問題としても一番問題がない、そういう解決の仕方ではないかというふうに考えております。
  33. 中村巖

    ○中村(巖)委員 まだいろいろお聞きしたいことがございますけれども、時間になりましたので、これで終わります。
  34. 宮崎茂一

    宮崎委員長 林百郎君。
  35. 林百郎

    ○林(百)委員 今度の国籍法改正はいろいろの要点がありますけれども一つは二重国籍の回避、男女平等の立場に立って国籍選択という問題が出てきて、二重国籍の裏返しとして国籍選択という問題が出てきているわけですが、このような問題は国際的な関係を持ってきますので、国籍選択だとかあるいは二重国籍の回避で、外国国籍から離脱するとかあるいは外国国籍に入るとか、こういうような問題で外国との関係で非常にいろいろな問題が考えられるわけですね。こういうことについては、この立法について外務省との間に十分な調整をしてからつくられたのですか。
  36. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 仰せのとおり、外国との関係が非常に問題になる法律でございますので、いろいろな諸外国の事情の調査につきましても外務省の方にもいろいろお願いをし、御協力を得ておりますし、また、立法段階におきましても、法制審議会にも外務省の方にも入っていただきまして、そしてまた、事務的にもいろいろな面についての御相談をして立案に至っておるわけでございます。
  37. 林百郎

    ○林(百)委員 この問題については、それぞれの法曹界でも問題にしていますが、例えば弁護士の要望としても「重国籍回避のための措置を実効あるものとするために国籍離脱の自由の理解を求め、協定などの締結によって国際的な保障を確立していくことをあわせて提唱する」ということが出ているわけです。  それからマスコミなどを見ますと、これは具体的に新聞社の名前を出すのも恐縮に思いますけれども、ことしの一月二十六日の朝日新聞では「一方の国籍選択した場合に、他方の国が国籍離脱を許すような国際的秩序をつくることが望ましい。現状では多くの困難が伴うが、その努力を放棄してはなるまい。」この問題ですね。それから、ことしの一月二十五日の毎日新聞の朝刊を見ますと、「韓国など兵役義務の関係で容易に国籍離脱を認めない国も多く、わが国の憲法との関連から外交上のトラブルも増えることが予想される。」こう出ておるわけです。それから読売新聞の朝刊にも「外国籍の放棄を宣言しても、韓国はじめ兵役義務などの関係で、自由に国籍離脱のできない国もある。この点では、国際私法に関する外交上の調整を今後検討する必要がある。」マスコミもその点についてこういう論点を張っているわけです。  ここで言う「一方の国籍選択した場合に、他方の国が国籍離脱を許すような国際的秩序をつくることが望ましい。現状では多くの困難が伴うが、その努力を放棄してはなるまい。」この「現状では多くの困難が伴う」というのは、具体的にはどういう事例ですか。
  38. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 諸外国国籍法の定め方がまちまちでございまして、我が国では憲法上も離脱の自由を認めておりますけれども、国によりましては離脱の自由が認められていない、離脱をさせないというところもありますし、それから離脱をするにつきましてもかなりの要件が絞られていること、殊に兵役の義務との関係について絞りをかけているというようなところも多々あります。そういうような関係で、二重国籍の方が日本国籍だけにしたいと言って他国の方を離脱しようと思っても、なかなかできないというようなことがあろうかとは思います。そういう面での問題があるわけでございますが、また、それを自由にどちらかということにできるようにするということが各国間で決まりますと大変いいことになるわけでございますけれども、兵役の関係とか人口政策とか、いろいろなことから、いざ話し合ってみればそういうものになかなか問題が多かろう、そういう予測が立っているところでございます。
  39. 林百郎

    ○林(百)委員 この問題について外務省はどういう認識を持っていますか。
  40. 池田勝也

    ○池田説明員 御説明いたします。  外務省としても全く同じような考えを持っております。各国がいろいろな理由で国籍の離脱を必ずしも容易にしないケースもございます。そういった事例につきましては今後具体的なケースでいろいろ考えていきたい、こういうふうに思っております。
  41. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは外務省にお聞きしますが、二重国籍を回避するために、日本国籍選択した場合には外国国籍を離脱するように努めなければならないことになっているわけですが、そういう場合、日本国籍選択しても外国国籍が離脱できない制度のある国というのはどういう国ですか。
  42. 池田勝也

    ○池田説明員 いろいろな範疇、つまり外国国籍を離脱しようとした場合に、その制約になる要素、いろいろあると思います。例えば年齢制限をしている国とか、居住条件とか、それから先ほどの兵役義務とか、こういった問題がございます。兵役義務に関連して言いますと、私どもが理解している限りでは例えばシンガポール、ベルギー、スペイン、ユーゴスラビア、こういったところが兵役義務を完了していなければ国籍離脱を認めないという制度になっていると理解しております。
  43. 林百郎

    ○林(百)委員 韓国はどうですか。
  44. 池田勝也

    ○池田説明員 韓国につきましては、当該の二重国籍者といいますか、日本国籍韓国国籍を持っておる、こういう人がおりました場合に、その人が徴兵の年齢に達した男である場合、これは兵役を完了したか、または免除される事実が証明される場合にのみ離脱を認める、こういうことになっております。
  45. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、兵役の義務を完了するか免除というのは、どういう場合があるのですか。これは韓国のことですから、外務省の方が知っていると思いますが……。
  46. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私からわかっているところをお答えしたいと思いますが、韓国では離脱については許可制をとっておるようでございます。その許可の実際の運用として、ただいま外務省の方からお答えがあったように、兵役の義務が完了している音あるいは兵役義務が免除されている者については許可をするという運用をされているようであります。  なお、日本に居住をしている者は離脱を認めるという運用がなされているようでございます。その点では、日本におる限りにおいては離脱が事実上できるというふうに私どもは考えておるところでございます。
  47. 林百郎

    ○林(百)委員 それは外交上確認してあるのですか。事実上韓国の措置としてそういう措置がなされているということですか。これは外務省でもどっちでも結構です。
  48. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私どもの方では韓国にその運用状態というものを聞いております。現在はそういうふうなことでやっておるという回答を得ております。
  49. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、朝鮮民主主義人民共和国との関係はどうなっていますか。
  50. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 北朝鮮の関係につきましては、私どもの方では接触するあれがございませんので、どういうふうな考え方を持っておるかわかりませんけれども、私どもとしては、一応国家承認としては大韓民国を承認しておるわけでございます。したがいまして、朝鮮の方については一応韓国考え方によるものというふうに考えておりますが、ただ、離脱の手続を御本人がどういうふうにしてやられるかという問題でございますので、私どもの方としては、具体的にははっきりしたことは申し上げられません。
  51. 林百郎

    ○林(百)委員 日本にいる朝鮮の人で、韓国国籍を持っている者と朝鮮民主主義人民共和国の国籍を私は保持するという人と、どのくらいの数になっているのですか。
  52. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私どもの方ではそういうふうな区分をしての統計というのを持っておりませんので、その数字はわかりません。
  53. 林百郎

    ○林(百)委員 この国籍の問題一つとっても、朝鮮民主主義人民共和国と外交関係を持っておらないということがトラブルの非常に大きな原因になるんではないでしょうか。殊に、日本にいる朝鮮の人たちで朝鮮民主主義人民共和国の国籍を持っている人が相当おりますが、これは今後外交的な努力は、それじゃもう全然しないのですか。もうおたくとは、おたくと言うのはなんですが、おたくと外交関係がないから、どうぞ私の方は御自由にというようにしておくのですか。
  54. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私どもとしては、直接に北朝鮮の方と接触をするという手だてがないわけでございますが、北朝鮮の政府が、在日の朝鮮人の中でこの人は自分の方の国籍があるというふうに把握しておられる方もあるだろうとは思いますが、私どもといたしますと、一応国家承認としては大韓民国を承認しているわけでございますので、法制的には一応大韓民国の国籍法で考えるということでございます。  ただ、先ほどの離脱ということになりますと、その政府に対する離脱手続ということが要るわけでございます。したがいまして、先ほど申しましたことで言いますと、韓国政府に対して許可を求めて、一定の条件のもとに許可されて離脱になるという関係でございますので、離脱の関係につきましては、韓国政府の離脱の問題としてしか具体的な問題としては出てこないのではないかというふうに思います。
  55. 林百郎

    ○林(百)委員 韓国との関係だけを言っておりますけれども、朝鮮民主主義人民共和国との外交関係もはっきりさせておきませんと……。  そうすると、これは兵役とかなんとかということは全然関係ないというように見ているわけですね。韓国国籍でない朝鮮民主主義人民共和国の国籍を仮に持っている人がいたとしても、兵役の義務とか、あるいは国籍離脱の問題だとか、そういうことは日本政府はもう全然関知しない、そういうことになるわけですか。
  56. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 真っ正面からのお答えになるかどうかちょっとわかりませんけれども、兵役の義務があるかどうかということは、私どもの方ではっきり判断すべき事柄でもございません。実際、具体的なケースが起きたときにそれをどう受けとめるかという問題だろうと思います。したがいまして、二重国籍の人について、他国の関係で兵役め義務があるかどうかということを私どもの方で一つ一つ判断すべき立場にございませんので、今おっしゃった御質問については明確な答弁ができないところでございます。
  57. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし、二重国籍を回避するということになると、今例が出ました韓国だとかそういう国々では、兵役の義務を完了するかあるいは免除されなければその国の外国籍を離脱することができない、そうすれば、二重国籍の回避というのは事実上はできないことになりますね。それでもいいんですか。そういう特例は二重国籍として認められるわけですね。
  58. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私どもといたしますと、日本国籍選択された方については、その他国の方の国籍を喪失をするということにしていただきたいと思います。しかし、ただいま話が出ていますように、その他国の国籍法の規定、あるいはその運用によりましては、他国籍を離脱することができないということもそれはあろうかと思います。本人の意思とか努力にかかわらずできないということがあろうと思います。したがいまして、今度の改正法の条文でも、本人の努力としては、離脱に努めてほしい、しかし、それが実際問題としてできない場合には、それは重国籍になっても、その場合にはやむを得ないのじゃないか。それだからといって、日本国籍の方を喪失させて単一国籍にするということにまでするのは行き過ぎであろうという考え方をとっておるところでございます。
  59. 林百郎

    ○林(百)委員 「努めなければならない。」これは第十六条ですね。「努めなければならない」というのは、だれがどう認定するのですか。あなたは努めている、あなたは努力が足りないというのは、だれが認定して、どういうように判定するのですか。局長さんがやるのですか。
  60. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 つまり、「努めなければならない」というのは、早く言えば訓示規定的なものでございます。したがいまして、努めなかった場合の効果というものが直ちにあるわけではございませんので、したがいまして、認定ということは出てこないことだろうと思います。したがいまして、要するに、日本国籍選択するということである以上、国籍唯一の原則に従って、他国の方の国籍を、許可制であるならばその許可を求めるように申請をするとか、そういうようなことに努めてもらいたい、いわばそういう精神を込めた訓示規定だと御理解をいただきたいと思います。
  61. 林百郎

    ○林(百)委員 それだって、外交関係のないところへはそんなあなたの言っているような申請はできないじゃないですか、それはどうするのですか。
  62. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 いろいろな事情でできない場合には、これは非難することはできないと思います。
  63. 林百郎

    ○林(百)委員 アメリカについてはどうなんですか。国籍の離脱は自由にできるわけですか。
  64. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 アメリカでは原則的に離脱ができるようでございます。ただ、一定の年齢制限があるようで、成人に達すればできると承知しております。
  65. 林百郎

    ○林(百)委員 外務省、そうですか。
  66. 池田勝也

    ○池田説明員 そのとおりでございます。
  67. 林百郎

    ○林(百)委員 法十四条の二項の「外国国籍を放棄する旨の宣言」、「選択の宣言」というのは、形式はどういう形式ですか。何か決まっているのですか。
  68. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 その宣言のやり方は戸籍法で定めることになっておりまして、形は、その宣言をするという旨を戸籍の管掌者である市町村長に届けるということで決めております。
  69. 林百郎

    ○林(百)委員 問題があると思うのですが、法の第十九条で「国籍取得及び離脱に関する手続その他この法律施行に関し必要な事項は、法務省令で定める。」とあるのですが、この法務省令というのは定まっているのですか。これを定めなくて法案を出して、それで国会で審議してくれと言っても、具体的な問題にいくと、まだ決まっておりませんと言われたら、ああそうですかでとまってしまうわけですね。これはできているのですか。できているなら我々に示してもらいたいですね。
  70. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 もちろん、この法律施行になりませんとその省令も施行できないわけでございます。したがいまして、正式な意味でのその省令はできておりませんけれども、大体どういうようなことをこの省令の中に盛り込むかは考えておりますが、これは全く手続的な事柄に属するようなことを決めてまいりたい、書類の書き方とか出し方とか、そんなような程度のことをこの中では考えておるわけでございます。
  71. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし、外国国籍を放棄するには宣言をしなければならないというのに、その宣言の形式はどういうものかがはっきり決まらなかったら、この国籍法施行されて、まあ施行されれば省令も出るでしょうけれども、ここの国会で審議できないじゃないですか。それからまた、記録を見て、どういうことは省略してくれとか、そういう希望も国民の中にはあると思うのですが、この委員会の審議だけではそれが出てこないんだ。どういう形式をとって、どういう書類が必要なんですか。
  72. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 その国籍選択関係につきましては、戸籍法の今度の改正条文の中にございますけれども、百四条の二という規定を新設することにしております。その規定は「日本国籍選択の宣言は、その宣言をしようとする者が、その旨を届け出ることによって、これをしなければならない。」という手続を決めております。
  73. 林百郎

    ○林(百)委員 それはわかっています。どういう形式のもので届けるのかを聞いているのですよ。それは条文にあるからわかるのです。
  74. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 どういう形式といいますのは、二項で届け書を出していただくという……(林(百)委員「だから、届け書というものはどういうものなんですか」と呼ぶ)要するに届け書には、宣言をするということを届けていただく中身になるわけです。ですから、あとはそういう届け書の記載例というようなことにもなろうかと思います。それからまた、それを受けました市町村の方で戸籍にどういうふうな記載をするかということになるわけでございまして、それは省令で定めようというつもりでおりますけれども、これは戸籍一般の出生にしても、死亡にいたしましても、婚姻にいたしましても、婚姻する場合には届け出をしなさいということが書いてあって、一般原則として届け書を出しなさいということになっておるわけでございますが、書くその細かな内容だとか、戸籍の記載をどうするかということは省令で決めておるわけでございます。  それと同じように、選択の宣言の場合にもそういう点については省令で定めることにいたしておりますけれども、この百四条の二の規定自体から、その宣言を届け書によって届け出るということでございます。その場合には、その宣言をするという旨ばかりではなくて、外国国籍を記載しろというところまでは百四条の二で書いておるということになります。
  75. 林百郎

    ○林(百)委員 同じ問題は、日本国籍の喪失を宣告するという十六条の二項にもあるのです。宣言とか宣告という言葉があるのですが、日本国籍の喪失の方は政府がやる方のことだと思いますけれども、この前参考人の話をいろいろ聞いておりますと、とにかく帰化にしても、あるいはこういう国籍取得する手続きが非常に煩瑣だ。あの書類この書類と何回か戻されて、もう応対に疲れてしまって、意欲を失うという参考人の意見もあったのです。局長は聞いておられなかったかもしれませんが、そういう意味で私は聞いているのです。だから、この宣言をするためにえらい面倒なことをするようなことはなるべく避けるようにしなげればいけない。そういう意味で私は質問しているわけです。  それから、この問題で、十六条の二項で「その就任が日本国籍選択した趣旨に著しく反すると認めるときは、その者に対し日本国籍の喪失の宣告をすることができる。」とあるんですね。その就任が日本国籍選択した趣旨に著しく反すると認められる公職につくというのはどういう事例ですか。事例を言ってみてください、
  76. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 これは、日本国籍選択の宣言といいますのは、自分としては日本国籍を唯一の国籍にするという気持だ、その反面、外国の方の国籍は放棄するということを日本政府に対して言う宣言でございます。そういうことを言っていながら、外国国籍がなければつけないような公務員になるということはその宣言の趣旨に反するわけでございます。ただ、公務につくといいましても、いろいろな公務がございます。各国の公務員制度によりましてもいろいろでございます。日本の場合には、戦前は官吏と雇傭人というか、そういうふうに分けていた時代があります。ところが今はそういう区別なしに、全部公務員ということになっています。各国でいろいろな法制の違いがございますが、公務員を全部、それに当たれば直ちにということは問題だろうと思いますので、著しく趣旨に反するというのは、外国の公権力の行使あるいは重要な政策の立案に参画するような立場に立ては、私は外国国籍を喪失して日本国籍を唯一のものにする気持ちですということの趣旨に反することになるだろう、したがいまして、かなりの公務員でもはっきりとした、極端な場合には高官だとか国会議員とかあるいは大公使になるとかいうような場合にはそういうことに当たろうかと思います。
  77. 林百郎

    ○林(百)委員 日本国籍を持っていて、外国でその国の大公使になれるような制度を持っている国はありますか、あったら示してください。
  78. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 そういうものは聞いておりません。そのような人を大公使にするというふうなことはまずないと思いますけれども、二重国籍について我が国の外務公務員法でもそういうことを禁止しておりますし、外国でも多分そうだろうとは思いますが、例えばの話として今申し上げたわけでございます。
  79. 林百郎

    ○林(百)委員 これは日本国籍取得することに制限を加えることになるのじゃないかと思って質問しているわけですが、「著しく反すると認める」とありますね。あなたは、実際はないと思いますよというような例をここへ出してきて、こういうことを言いますなんと言ったって、実際あなただって、そういうことはないと思います、日本国籍を持っている者を外国が大公使に任命するようなこと、そういう場合を言うと言っておいて、そういう場合はないと思いますと言ったのでは矛盾していますわね。具体的なものはあなたはまだ握っていないのですよね。こういう文字だけ書いてあるわけです。  そうするためには公聴会を開くとある。公聴会というのは公のところで聴聞をすると書いてありますね。その場合、証拠を出すということも書いてありますね。「意見を述べ、及び証拠を提出する機会を与えなければならない。」とありますね。この「証拠」というのは何ですか。
  80. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 まずその前に、大公使の関係についてはそういうことはないだろうというふうに申し上げましたけれども、その当該国で、日本国籍を持っているんだということが必ずしもその国において把握されているとは限らないという問題がございます。そういうようなところから、そういう問題が起こる可能性もあるというふうには考えます。  なお、聴聞の際に証拠ということでございますけれども、これは、当該本人日本国籍の喪失の宣言を受ける立場にはないんだということについてのいろいろ意見、主張をしていただく機会を与えるわけでございます。したがいまして、その主張を裏づけるようなそういう証明資料といいますか、そういうものがあればそういうものも出す機会を与えるということでございます。
  81. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、その認定は、その証拠によって著しく日本国籍取得した趣旨には反しないという認定はだれがやるのですか。
  82. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 それは法務大臣でございます。
  83. 林百郎

    ○林(百)委員 法務大臣にお聞きしますが、あなたが決めるのだそうですが、今聞いていましたか。何か諮問の委員会をつくるとか、あなた個人がおやりになるつもりですか、構想は何か固まっておりますか、まだ固まっておりませんか。
  84. 住栄作

    ○住国務大臣 この条文の立法趣旨は、今民事局長から御説明申し上げたようなことでございます。当該外国の高官につくとかということになりますと、やはりいろいろ国際問題等もございますでしょうし、そういうような状況、ケースによって違うかと思いますが、十分そういうことを判断して、私が決めるというよりも、結局法務省の所管局が中心になりまして、妥当かどうか、こういう判断をすることになろうかと思います。
  85. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、役所だけで認定するのですか、それとも広く見識のある人たち委員会か何かつくって、それに諮問するということは考えておりませんか。
  86. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 現在のところは、内部組織の中で大臣を補佐する者が十分検討した上で、最終的には大臣の御決断で決めていただくというつもりでおります。したがって、現在のところ諮問委員会のようなものを設ける予定はございません。
  87. 林百郎

    ○林(百)委員 では、次の問題に移ります。  公務員法の三十八条、そして外務公務員法施行令によって、外務公務員が国籍を有しない者または外国国籍を有する者と結婚した場合、その外国人日本国籍取得して日本人になるのに一年間の余裕を与え、その間に帰化しなければ失職するとあるのですが、ところが、外国に住んでおる婦人日本国籍取得するためには今までは直ちにできたのですが、今度は男女同権ということで、たしか三年の期間日本に住んでいる必要があると言っていますが、そうすると、三年日本に住まなければいけないというのに、外国の人と結婚した外務公務員は一年以内にその人が日本人になるような手続をしなければいけないということになると、それでは外務公務員は外国婦人とはもう結婚できないということになるのじゃないですか。できても失職、職をやめなければならないということになるのですか。
  88. 福田博

    ○福田説明員 お答えいたします。  今先生のおっしゃいましたように、現行の外務公務員法七条二項の規定によりまして、無国籍者または外国籍者と婚姻する外務公務員は、政令で定める場合の外は失職する。政令では、今は一年以内に帰化しなければならないということになっております。今度国籍法改正されますと、それによって三年以上の居住条件または引き続き三年婚姻していて少なくとも一年間日本に住んでいなければ国籍取得できないということになると私その案文では了解しておりますが、そうしますと、今の施行令一条では救えない場合がうんと出てくる。そうすると、現実の問題として、外務公務員の中には相当数既に外国籍を有していた者と婚姻して立派に活躍している者がおるわけでございますので、外務公務員法七条二項に政令で定める外という例外が設けられている趣旨にも反しますので、この施行令一条の手直しを含めて、実際上外国人との婚姻ができなくなるというようなことは避けていこうということで、目下関係方面と検討中でございます。
  89. 林百郎

    ○林(百)委員 私も考えるんですよね。独身者で外国へ行って外務公務員として勤めていて、その外国にいる婦人との愛惜が実を結ぶということはあると思うのですよ、こういう国際的にいろいろ密接な関係日本が持つようになれば。そうすれば、失業しなければいけないという規定は、若い外務公務員にとって余りにも残酷な規定だと思いますので、この外務公務員法の施行令の一条は改めなければならないと思いますが、これは民事局の方はどう考えていますか。
  90. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 それは外務公務員のあるべき姿の問題でございますので、私どもの方からちょっと意見を申し上げる立場にございません。
  91. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ、外務省の人事課長にぜひそういう方向で努力していただきたいと私は思います。  次に、時間がありませんので、帰化の問題に移りたいのですが、帰化をした場合、帰化のための書類に指紋をとりますか。
  92. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 現在、原則として指紋をとることにいたしております。
  93. 林百郎

    ○林(百)委員 外国の人は指紋をとられるということを非常に嫌悪しておるわけですね、要するに犯罪人扱いにされるということで。これは私の方の党としてはそういうことはやめるべきだと言っている。これは外国人登録法の場合もそうなんですが、日本人帰化した途端に犯罪人に準ずるような扱いで十本の指の指紋をとるわけですね。こういうことはやはり考えるべきじゃないかと思いますが、どうですか。  それと、外国人登録法の切りかえをする場合には何本の指の指紋をとっているのですか。切りかえの場合ですね。
  94. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 おっしゃるとおり、帰化の場合に指紋は十指とっております。  外国人登録法で切りかえの場合には、所管でございませんけれども、私の聞いているところでは一本の指だというふうに承知しています。
  95. 林百郎

    ○林(百)委員 外国人登録法の切りかえ、これは切りかえですけれども、切りかえのときに一本の指でいいのに、せっかく日本人になった途端に十本の指の指紋をとる。まるで準犯罪人みたいな扱いをするということは、これは法務省として考えるべきじゃないか。日本法務省のおくれを世界的に示すことになるのじゃないかというように思うのですが、この点は将来考慮してもらいたいと私は思いますが、どうでしょうか。外国の人の指紋をとられるということの嫌悪感というものを民事局では十分知っておく必要があると思うのですね。  民事局の仕事の関係で指紋をとるという仕事がこのほかにございますか。
  96. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 民事局関係の仕事では、指紋をとるというのは帰化の場合のほかにはございません。
  97. 住栄作

    ○住国務大臣 今指紋制度一般についての御質問でございましたけれども、指紋をとるというのは必ずしも日本だけに限ったことではございません。先進国と呼ばれている国においても、こういう関係の事柄につきまして指紋をとっている国は幾らでも挙げることができると思います。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 先進国とはどこの国ですか、ちょっと例示してください。
  99. 住栄作

    ○住国務大臣 今ちょっと手元に資料がないのですが、あるのです。何も日本だけが指紋をとっておるということではないことをひとつ御理解いただきたい、こういう意味で申し上げておるわけでございます。
  100. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣は私が求めないのに答弁を買って出て、先進国でもありますよと言うから、先進国とはどこですかと言ったら、資料がないから言えない。これではせっかく買って出た答弁に値しないように思いますが、まあ結構です。後で結構ですから、どういう国がそういうことをやっているのかを……。  私は、日本の国の外国人の取り扱いについての行政のおくれを国際的に示す一つ制度ではないかと思いますので、アメリカなんかではサインとかなんとかというのはやっておりますけれども、これは将来ぜひ十分考慮してもらいたい、こういうふうに思うわけですが、この点についてはどうですか。外国にも先例があるからいいですよということだけで——制度の問題ですから、これは大臣にお聞きしますが。
  101. 住栄作

    ○住国務大臣 大体外国人登録関係で指紋制度を採用している国はどのくらいあるのか五十カ国について調査したところ、東側関係は特に調査していないようでございまして、西側関係でございますけれども、全面実施が米国、韓国等二十四カ国、一部実施がイギリス、フランス、ドイツを含む欧州九カ国、具体的な国名はまた資料で差し上げたいと思いますが、そういうようなことになっております。  指紋制度をどうするかということにつきましてはいろいろの考え方があろうかと思いますが、現にこの外国人登録問題について、指紋制度の是非が今いろいろ議論になっておるわけでございます。私ども、そういう議論もあるということを十分考えながら、直ちにというかどうかは別といたしましても、常に念頭に置いて考えていきたいとは思っておりますが、それでは具体的にどうするかということについては慎重に考えてまいりたいと思っております。
  102. 林百郎

    ○林(百)委員 外務省にお聞きしますが、さっきイギリスが指紋制度をとっておると言われましたが、日本の国のように外国人の登録をする場合だとか帰化する場合に十本の指の指紋をとっているという制度はイギリスにあるのですか。日本制度とは違うのじゃないですか。私、今初めて大臣から聞いたのですが……。
  103. 住栄作

    ○住国務大臣 これは法務省で調査をしたことでございまして、今外務省から出ておられるのは人事課長でございますので、そのことにつきまして、今申し上げましたように私どもで調査した資料を差し上げたいと思っています。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 さっき外国人登録の切りかえの場合一指だったのですが、外国人登録は最初登録をするときから一本だ、そうじゃないですか、ちょっとその点を正確に……。
  105. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 外国人登録はすべて一指だというふうに聞いております。
  106. 林百郎

    ○林(百)委員 外国人に対して指一本でいいのに日本人になった人に十本もの指紋をとらせる。しかも外国の人が多いし、また外国の人は指紋をとられるということに対して非常に嫌悪感を持っているのですから、これは将来考えるべきではないかというふうに思います。大臣もいろいろと検討するというお話ですから、ひとつその点はぜひ前向きにやっていただきたいというように思うわけです。  外国人登録の外国人ですら指一本でいいのですよ。それが日本人になった人に——日本人が指紋をとられるなんというのは犯罪を犯したとき、警察に呼ばれたときやるだけですよ。それが、外国人日本人になった、国籍選択して日本人になった喜びの瞬間に犯罪人に準ずる扱いをされて十本の指紋をとられるなんてことは、あなたはそういう経験がないかもしれませんが、私は治安維持法でありましたが、これは不愉快なものですよ。警察官がこうやって、こうやる。民事局はだれがどうやってやるか知りませんが、とにかく人から指をとられてこうやるんですから。民事局は警察とはまた違うかもしれません。とにかくその点は考えていただきたいと思います。  それから、次の帰化の問題について若干お尋ねしたいのですが、帰化条件の中の、これは別に改正されたわけではないですが、素行が善良であるということが大分問題になるわけですがね。例えば交通違反なんというものも、それがあれば素行の善良に該当しないことになりますか。
  107. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 これは先ほど太田委員の御質問のときにもお答えしたところでございますが、交通違反が一件でもあれば許可しないというふうなことではございません。遵法精神といいますか日本社会の中で普通のような生活をしていくということを前提にしての判断でございます。非常なスピード違反を繰り返し行っているとか、あるいは飲酒運転をやっているとかというようなことがたび重なってある場合には、もう少し経過を見て、それから許可をするというふうなことを考えておるわけでございまして、一件でも過去にあればそれでもう許可しないというような扱いではございません。
  108. 林百郎

    ○林(百)委員 素行が善良であるかどうかということはどこが調査するのですか。
  109. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 これは実際には帰化申請書を受理いたしました法務局で調査をいたします。
  110. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、警察に委嘱するとか、公安調査庁に委嘱するというようなことはないのですね。
  111. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 原則は法務局の職員みずからの手で行いますが、その調査をした結果によっては警察に照会をするということも全くないわけではございません。
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、せっかく帰化をしたいという情熱に燃えて日本人になりたいというのに、警察がつきまとうとか、場合によっては公安調査庁が思想調査までするとか、そういうことをすることは帰化にブレーキをかけることになると思うのですが、警察の調査というのはどの範囲のことをどこがやるのですか。そんな警察につきまとわれたらだれだって帰化の意欲がなくなってしまうのですよ。
  113. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 警察の調査の場合に、尾行してどうこうということはないと思います。私どもの方では、そういうふうなことに至るような調査を委嘱することはございませんで、むしろ警察の記録の中で私どもの方の調査事項に参考になるようなものがあれば教えていただく、その程度でございます。したがいまして、今おっしゃったようなつきまとうというふうなことはないものだと私どもとしては思っております。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 その点はぜひ法務省の中の当該部局の判断でするようにして、警察はそのことのために帰化を要望している人につきまとうようなことのないように、ましてや公安調査庁が思想調査をするようなことのないように、ぜひしていただきたいというように希望しておきます。  それから、帰化した場合の戸籍簿には、前に無国籍であったとか、前に何々国の人であったというようなことは記載されるのでしょうか。もし記載されるとすれば、就職をする場合だとか、あるいは結婚をするときにお互いに戸籍謄本を交換するという場合に、無国籍の時代があったとか、父がわからなかった時代があったとか、あるいはもとどこどこの国の国籍を持っていたのだというようなことがひっかかる。引っ越しをすると戸籍簿にそういう記載を書かれないということで、わざわざそれを消すために引っ越しをする、そしてまた戻ってくるというようなことが現場では実際なされているということも聞いております。戸籍簿にそういうことを書き込まなければいけないのですか。
  115. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 現在、帰化をいたしました場合に、もとの国籍戸籍の上で書く扱いにいたしております。これはなぜかと申しますと、帰化する前の国籍がわかりませんと、その時代におきます身分行為についての準拠法がわからないということになります。それによって身分法関係の適用が変わってまいりますので、これは戸籍の上で明確にしておく必要があるわけでございます。  ただ、そういうことを一たん戸籍に記載をいたしましても、先ほどおっしゃいました引っ越しというのは、戸籍の言葉で申しますと転籍のことだと思いますけれども、転籍をいたしますと、その場合にどういう事項を新しい転籍後の戸籍に書くかということは、これは一般原則として現在的に一番意味のあることを整理して書くという扱いにいたしております。というのは、もし問題があればもとの除籍とあわせて判断するという資料がありますので、原国籍は書かないという扱いにいたしております。ですから、そういう制度に着目をして、わからないようにということをされる方もあるやには聞いております。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 また、第五条の帰化の場合の条件の中で、今度改正されまして、「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができる」、これはどういう意味ですか。こういう者の援助を受けて生計が成り立つような状態でもいい、その本人生計能力は薄いけれども、こういう親族または配偶者の援助で生計が成り立てばいいんだよ、こういうことですか。
  117. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 おっしゃるとおりでございまして、生計を一にしておるということは、一つ生活実態としての世帯みたいなものがあるわけで、それが全体として生計を営んでおれば、各個人個人、一人一人が独立して生計を営むということまで言う必要はないであろうということで、従来の独立してというのが各個人に着目した規定になっておるのを、世帯単位で考えるのが合理的であろうということで改正するということにいたしたわけでございます。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 御承知のとおり、最近サラ金が大変横行していますね。サラ金で返済ができなくて自己破産の申し立てをしている、そういうような事例があるとすれば、これは日本人ではないから自己破産の申し立てができるのかどうかわかりませんけれども、それに準ずるような場合のものは、自己破産の申し立てをして免責の決定を得ればいいわけですが、夫婦のうちの一方にそういう者があるとすれば、それはどういうことになりますか。本人日本人にまだ帰化していない。帰化条件ですから、そういう事例はめったに出ないと思いますけれども、それに準ずるような行為がある場合、夫婦二人で住んでいて、夫の方がサラ金から金を借りてしまった。そして、今破産の申し立てをしている。しかし、実際その金を使ったのは帰化しようとしている妻であったとかというような場合、自己破産を申し立てた、あるいはそれによって免責の決定を得た、こういうような場合はどうなんでしょうか。
  119. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 自己破産の申し立てをしたような場合には、一応独立しては生計を営む資産があるとは言えないだろうと思いますが、しかし、それにいたしましても、破産制度も各個人に着目した制度でございますので、生計を一にする世帯全体としては生計が成り立つということであれば、今度の改正法によっては帰化条件を満たすという場合ももちろんあり得るだろうと思います。
  120. 林百郎

    ○林(百)委員 時間がありませんので、戸籍法改正の百四条ですね。天災等で届け出をすることができない場合は、できるようになってから十四日とあるのですけれども、十四日では短いんじゃないか。これは画一的に扱うべきじゃない。戸籍法の百四条の三項の場合ですけれども、「届出をすることができないときは、その期間は、届出をすることができるに至った時から」という判断ですね、これは非常に難しいと思うのです。  役所の方では、天災が落ちついてもう届け出ができるはずだと言うし、現地の方では、いや、まだいつ火山が爆発するかわからない、あるいはがけが崩れるかわからない、あるいは出水するかわからない、だから十四日が守り切れなかったと言う。そこの判断に食い違いがある場合はどうなんでしょうか。ケース・バイ・ケースで弾力的に判断なさるのでしょうか、どうなんでしょうか。
  121. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 やむを得ない事由及びそのやみたるときというのをどういうふうに認定するかというのは、ケースによってなかなか難しい問題もあろうかと思いますけれども、私どもといたしますと、従来からも弾力的に取り扱ってきておりますし、余り厳格に処置をするというつもりはございません。そういうふうな態度であるということは、法務局でも市町村の方でも理解を現在でもしてもらっていると思います。
  122. 林百郎

    ○林(百)委員 それから、改正国籍法の附則の五条に「出生の時に母が日本国民であったものは、母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であったときは、施行日から三年以内に、法務箱令で定めるところにより法務大臣届け出ることによって、日本国籍取得する」、この「母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であったときは」というのは、これは必要でないんじゃないですか。「出生の時に母が日本国民であったものは」とあるのですから、それにさらに加えて、「母が現に日本国民である」とか「死亡の時に日本国民であったときは」とか、こういう条項は必要ですか。
  123. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 これは一つには、親子国籍同一主義といいますか、親子の国籍が同じであった方がいいではないかという考え方があるわけでございます。今度の父母両系主義を採用するにつきましても、いろいろな考え方があるわけですけれども、母親と子供とが同じ国籍であるということが一つの望ましい形なので、そういうふうな状態にすることが両性の平等にも当たるのではないかという考え方が強くあるわけでございます。  そういう面からいたしますと、今度の附則の五条の関係でも、その国籍取得日本国籍取得の時点で、母親が同じく日本国籍であるということが簡単な届け出によって日本国籍取得する重要な根拠になるというふうに考えるわけでございます。そういう意味で、現時点で、日本国籍を母親が有しているときということにしたわけでございますが、既に亡くなっている場合にこれはどうしようもありませんので、ですから、亡くなる時点で日本国籍であったということにいたしておるわけでございます。
  124. 林百郎

    ○林(百)委員 もう時間が参りましたので、最後法務大臣質問します。  先ほど、私最初に申し上げましたように、重国籍の回避のための措置が実効あるようにするためには、国籍離脱の自由を決めた日本のこの新しい国籍法をやはり国際的に十分認識してもらう必要があると思うのですね。その努力を重ねなければいかぬと思うのです。あるいは国連でのしかるべきセクションでそういうことを日本側が新たに提唱するとか、こうなったということを提唱するとかいう努力が必要だと思いますが、法務大臣としては、この国際的なトラブルあるいはいろいろの困難を調整するために今後どういう努力をなさるつもりか。  それから外務省も、事は法務省国籍法改正ですが、国際的ないろいろな関係があります。兵役の義務だとか、いろいろありますね。今後、国連でどういうセクションがあって、どういうところでどうするかという考えを、あなたにお聞きするのは大変荷が重いかもしれませんが、それを二つ聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  125. 住栄作

    ○住国務大臣 これはもう御承知のように、国籍を決めるのは血統主義だとか生地主義、この二つの原則によって大体世界の各国が国籍を決めておると思うのです。差別撤廃という観点もございますし、国際交流も進んできたというようなことから、この十数年来の傾向としては父母両系主義を採用する国が非常に多くなってきている、どれも御承知のとおりだと思います。そうなると、やはり国籍の競合という問題が非常に大きな問題として意識されてきておる、こういう傾向にあることも御承知のとおりでございまして、現にヨーロッパ諸国等においてもそういう問題をどうするかということについて各国間でいろいろ相談もしておる、こういうようなことも聞いておるわけでございまして、私は、世界的にはそういうことを考えていく傾向が生まれてきておる、大変いいことだと思っております。そういう意味で、日本としても国際間の調整の問題、こういうことについて積極的に努力をしていかなければならないと考えております。外務省等とも十分連絡をとりまして、そういう方向に向かって努力したいと思っております。
  126. 池田勝也

    ○池田説明員 私ども外務省も全く同じような考え方でございまして、個人は一個のみの国籍を有すべきであるという国籍唯一の原則というのを、いろいろな国際間のこういった原則を実現するための努力の一環として、私どももそれに協力、努力していく、こういうふうに考えております。
  127. 林百郎

    ○林(百)委員 終わります。
  128. 宮崎茂一

    宮崎委員長 午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  129. 宮崎茂一

    宮崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。天野等君。
  130. 天野等

    ○天野(等)委員 国籍法戸籍法改正案についてお尋ねいたします。  最初に国籍法につきまして、これは国民の範囲を定めるという基本的な法律でもございますので、国籍法の基本原則であります血統主義、なぜこの血統主義を今度の国籍法改正でもおとりになったのか、その点について大臣からの御意見を伺いたいと思います。
  131. 住栄作

    ○住国務大臣 一つは、沿革的なものがあると思います。原則としては血統主義と生地主義と二つございますが、まあ大体世界の原則がどういうことで取り上げるかということを考えてみますと、前世紀から今世紀にかけましてアメリカ大陸のようにどんどん移住した国あるいはオーストラリアのようなところ、これは大体生地主義ということでございまして、その他の旧大陸と申しますか、そういったところは伝統的に大体血統主義を採用しておる。日本も旧国籍法以来血統主義、しかも父系をとっておった、こういうような従来の血統主義を引き継ぎ、そしてまた最近の国際化の状態あるいは特に国連の婦人差別撤廃条約批准を目前に控えて、それとの調整、こういうことからして、従来のいきさつも考え、血統主義を今度の改正法においても取り入れた、そして父母両系にした、こういうようなことだと思います。
  132. 天野等

    ○天野(等)委員 現行の国籍法、それから帝国憲法時代の旧国籍法、いずれも血統主義をとっておりましたし、今回の改正法も血統主義をとっておるということは、今大臣のお話にありましたように、日本の国民感情といいますか、そういうものが血統主義、日本人の父、今回の改正で母でございますけれども日本人子供日本人だという考え方が一般的な国民感情ではなかろうか、あるいはそういうのが法感情なんではないか、その辺で私も血統主義を基本的にとられたということはわかるのでございます。  その上で、実は大臣の趣旨説明等にもございますけれども、最近の渉外婚姻の増加ということがこの改正一つの動機、そういうふうに述べられているように思うのですけれども、この渉外婚姻の増加というのが今度の改正でどういうふうにこの法案の中で考えられているのか。どうも私は、渉外婚姻が増加し、いわゆる血統主義が乱れてくる、これに対してむしろそれを純血にしていこうという考え方もあるんじゃないかというような感じがいたすのでございますが、その点についてちょっといかがでございましょうか。
  133. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 血統主義の中には純粋な血統主義、要するに父母両方とも自国民であるということを要件にするという考え方も十分にあり得ると思います。ただ、現在はかなり渉外婚姻がふえておりますけれども、かってはそれほど多くはなかったので、それを父系血統主義ということでやりましても、おおむね純血といいますか父母両方が日本人子供日本人という結果になることが多かったわけでございます。しかし、今度父母両系主義をとります場合には、もちろん純血といいますか父母がともに日本国民であるということからは外れる日本国民がかなり出てくることになりますけれども、どちらを選ぶのがいいかということになりますと、過去におきましても若干でも父親だけが日本人というケースもあったわけでございますし、それからまた、国際結婚をいたしました方々にとっての生活実態から考えますと、そういう場合に常に日本国籍を与えないというようなことが現実に妥当するかどうかということを考えますと、子供の福祉の面ということからいたしましても、それから母親の子供に対する感情ということからいたしましてもそれは適当ではないんじゃないだろうかというような考え方ができようかと思います。  そういう意味で、両性平等の立場から考えた場合に、純粋の血統主義ではなくてどちらかの血統を引いている場合には日本国民とするという方が妥当でもあるし、または現在の国民感情としてもその方が受け入れられる要素ではないかというところから、純血血統主義ではなくて片親血統主義でいい、しかも、それがどちらの血統を引くものでもいいということにいたしたわけでございます。
  134. 天野等

    ○天野(等)委員 渉外婚姻の数がふえてきているという現状でございますけれども、こういう今の状態をどういうふうにとらえていくのかという問題があるかと思うのです。午前中の太田委員の御質問の中にも、新しい時代なんだから帰化というようなことをどんどん進めていくべきなんじゃなかろうかという積極的な御意見がありました。私も大変貴重な御意見だと思って拝聴したのでございますけれども、国際結婚が多くなってきている状況をこれから積極的に認めていきながら、そういう国際結婚でぶつかるいろんな問題をなるべく当事者の身になりながら法制度というものも考えていかなければならないのじゃないか。  一方で先ほど大臣の御答弁にもございましたけれども、確かに血統主義というようなことでの国民感情があり、同時にまた国際結婚によって外国人との混血ということも非常に数多く生まれてくるという状況がある。この中で何を基本に考えていくかという問題がどうしても出てくると思うのです。参考人の御意見の中でも、星野先生から、やはりその場合にいろんな原則について優先順位を決めながらこの法案を考えていかれたのだというお話がありましたけれども、その中で忘れてならないのは、この国籍法に具体的に該当してくる人たち、国際結婚の当事者の人たち、その人たち気持ちあるいはその人たち生活の便利さということも我々は考えていかなければいけないのじゃないか。  単に一方的に、国籍だから、国が与えるものだからそれに従えということだけではなくて、国籍法という法律も国民の具体的な利益を守っていくということになるかと思うのですが、その点で、父母両系主義をとったということの中に既に二重国籍の発生が非常に強く予定されているものだろう。血統主義で父系主義をとっておった。そしてこれは必ずしもそのまま憲法の男女平等の原則に反するものじゃないというような政府の見解がございます。それも私一理あるかと思うのですが、それは血統主義をとる国が全部父系主義をとっていれば確かに唯一国籍の原則を守ることができるし、そのためには父系単系主義というようなものが妥当なものなんだという考えもある程度わからないわけではないのですが、世界各国の状況が父母両系主義、少なくとも血統主義をとる以上父母両系主義という形になってきたということは、やはり唯一国籍の原則というものがある程度緩められて考えられてきているのじゃないだろうか。その状況が今各国の法制度の中にあらわれてきているのじゃないだろうか。  そこで日本国籍法が両系主義をとりながら厳格に唯一国籍主義をとろうとしているというようなことを今度の国籍法改正で私は感じるのでございます。国籍法の世界の潮流が生地主義であったりあるいは両系主義であったりというような形で唯一国籍主義がある程度緩められてきているという状況があると思うのですが、この点についていかがでございましょうか。
  135. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 確かに父系血統主義をとりますのは国籍唯一の原則を維持するための一つの方策としてとられておるという面があるわけでございます。それを父母両系血統主義を採用することによりまして二重国籍が生ずるということをもう前提とするということにはなります。したがいまして、今度の改正法につきましてもいろいろな面でそういう考え方が出ておるわけでございます。しかし、父母両系主義をとりました場合に、国籍唯一の原則を全く無視していいかということになりますと、これはまた問題でございます。したがいまして、その調和をどこの点に求めるかということが大事なことになろうかと思います。  今度の改正法案におきましても、原則は父母両系主義をとりまして、その次に国籍唯一の原則を置いて、そしてできるだけ国籍唯一の原則が貫かれるように、しかもそんなに無理がないところでどう調和できるかということを考えておる次第でございまして、従来の形からいたしますと各所でそのような考え方が出ておるわけでございます。帰化の場合におきましても、国籍唯一の原則を常に絶対にとるということは今度若干緩めることにいたしました。そればかりではございませんで、準正の場合におきましても、それから附則の経過措置関係におきましても重国籍になるということを容認するような規定にしておるわけでございます。  そして、最終的には成人に達してから二年の間に国籍選択をしていただいて唯一の状態にしていただこうという線は打ち出しておりますけれども、中間試案で発表したような、もし催告を受けて一定期間内に外国国籍を離脱するということをやらない場合には日本国籍を失わしてしまうというような措置はとらない。したがって、選択の宣言をした方については外国国籍を離脱するように努めてもらいたいという訓示規定を置いてそういう御努力を願う。そして最終的には、どうしても両立しがたいような状態になったときには日本国籍の喪失宣告の道を残しておくという程度にとどめておるわけでございまして、何が何でも一つのものにしてしまおうということではなくて、御当人の意思をも尊重しながら、なるべく国籍唯一の原則が全うできるような具体的な方策を選んで法案にまとめたというつもりでおります。
  136. 天野等

    ○天野(等)委員 私は今度の国籍法戸籍法改正を通して一つ心配なところは、二重国籍者というのもこれは完全な日本人でございますね、日本国民でございます。しかし、日本国民の中で二重国籍という一種特殊な日本人というふうに見られてしまうのじゃないだろうか。やはりそのことは厳に避けていかなければいけないことなんじゃないだろうかという気がするのです。それは父母両系主義をとった以上二重国籍の発生自体はこれは否定しょうがないことでございますし、また、今度の法改正のねらいでもありますし、やはり動機でもあります国際結婚の増加ということも、これからの日本にとってそれを減らさなければならないというような理由は全くないのだろうと私は思います。これから日本人が国際的な活躍をしていくときに、やはり国際結婚というものもどんどんふえていくだろうし、その状況を私たちはむしろプラスの面として考えていかなければいけないのじゃないだろうか。  そういう中で、私、どうも二重国籍者というような特殊なカテゴリーがこの国籍法戸籍法改正の中でできやしないかという危惧を持つのでございますが、具体的な細かい点はまた後でお尋ねしますが、そういう観点から一つやはり心配なのは選択制度、この選択をするまでの期間、二重国籍の問題。それについて、例えば選択について催告制度がありますね。そうしますと、その催告をするための準備段階といいますか、そのためにやはり戸籍上の処理としても何らかの二重国籍者の名簿というようなものもこれは現実につくられていかざるを得ないのじゃなかろうかという気がするのです。  これは、そのことがいろいろな実務の取り扱いやあるいは地域による風俗、習慣等の中で、あの人は二重国籍者なんだというような言われ方がされないようにやはり我々は考えていかなければならないと思うのですが、この制度全体を見まして、政府の案の中に、日本人でありながら二重国籍を持っている者について別な扱いをしていくということがどうしても強く出てきているような気がしますのですが、そういう点でこれが差別にならないような、特に催告というような制度の中で、まだまだ地方によってはいろいろな差別の風習があるところが多いわけでございますが、具体的に催告等について各市町村の戸籍係というようなものに任せてしまわれるおつもりなのか、あるいは法務局がこれを担当されるお考えなのか、ちょっと細かいところですが、その点についてお尋ねしたい。
  137. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 原則的には、市町村の方で戸籍の記載等から重国籍であるということがわかった場合に法務局の方に通知していただくということにいたしております。ただ、実際問題といたしますと、市町村と法務局との間は戸籍事務の取り扱いにつきまして常に密接な連絡をとりながらやっておるわけでございます。そういう状況の中で疑問点があるとかいうような場合には法務局も実際に相談に乗りながらやっていくという実態にはなろうかと思いますが、基本的には市町村の方で戸籍の記載その他の上から二重国籍選択の宣言をすべき期限内に選択の宣言をしてないという者についての通知をするということになるわけでございます。
  138. 天野等

    ○天野(等)委員 やはり催告というようなことを考えれば、二重国籍者の名簿というようなものが作成されてくるように思うのですけれども、この点についてはいかがですか。
  139. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 先ほど来重国籍者につきまして催告制度をとるということがいわば二重国籍者という一つのグループをつくって差別の対象になるのではなかろうかというふうなお話でございますが、実はそういう二重国籍者について差別的なといいますか、そういう目で見るというのは社会の中で全くあり得ないことではないかとも思います。ただ、それは催告をするとか選択の宣言をするとかということではなくて、二重国籍であるということ自体だろうと思います。したがいまして、法律的な二重国籍であるかどうかということも加わるでございましょうけれども、例えば混血児で顔とか姿とかから、そういう場合にはそういうことで子供同士でいじめられるというようなこともあるようなことも聞いておりますが、それはひとつ改めていかなければならないことだろうとは思います。しかしながら、一方、そういうような考え方といいますか、受け取り方をする方も日本社会の中に全くないとも言い切れません。また、二重国籍者の方々もその点について不安をお持ちであろうかとも思います。  そういうことも考慮いたしまして、いわば市町村なり日本政府なりが二重国籍者の管理をするというようなことは私どもは避けなければいけないという考え方を持っております。したがいまして、ただいまお話しのような市町村あるいは法務局において二重国籍者名簿というものをかっちりつくっておくということは避けた方がいいだろうという考え方でございます。したがいまして、そういう名簿でもつくらないと、厳密に言えば若干漏れが出てくるというおそれもなくはないのかもしれませんけれども、そこはひとつ犠牲にしてでも二重国籍者名簿というものはつくることは避けたいというのが私ども考え方でございます。したがいまして、あとは戸籍の記載等からの手がかりで催告にのせていきたいということでございます。
  140. 天野等

    ○天野(等)委員 私も今の点についてはぜひとも御配慮いただきたいというふうに考えます。  それから、国籍法改正案の三条「準正による国籍取得」のところですけれども、この準正による国籍取得で、認知をした父または母が出生のときに日本国民であった場合、さらに届け出の現在日本国民であるときという両方の要件を要求しておりますけれども、これはどうしても両方の要件が必要なものでしょうか。
  141. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 これはいわば血統主義の補完の規定でございますので、出生のときに認知をした者が日本人であったということは、これは当然だろうと思います。それが届け出をするときまでといいますか、引き続きであることは要件にしておりませんけれども、その届け出のときに日本国民であるということを必要にするというのは、これは大体血統主義の考え方、また、今度父母両系血統主義にしました理由の一つといたしまして、親子が同じ国籍であるということが、親の側からとってみても子供の側からとってみても生活実態として大事なことなんだというふうなことが一つあるわけでございます。  したがいまして、届け出の時点でそういう関係があるということが一つ必要だろうということ。それからもう一つは、生活実態といたしまして、その時点におきまして、認知する場合には父親がほとんどだと思いますけれども、父親が日本国籍を持っていない、また同時に母親も持っていないという事案になるわけでありますから、両方とも日本国籍を持っていないという生活実態があるわけであります。しかもこれは未成年を前提にしておりますから、そういう場合には当然に日本国籍取得させてもいいという実態にはならないのではないか、そういうことから、届け出時点においても認知をした者が日本国籍を有しておるということがこの制度を考えるときの基礎になるべきものだというふうに考えております。
  142. 天野等

    ○天野(等)委員 ただ親子が同一国籍であることが望ましいということが、これからの国際社会の中での親子関係あるいは夫婦関係というようなときにそう強く要求される原則ではないのではないかという感じも私はするわけです。ただ、この場合、一つは準正によって国籍取得されるという形でもって、これは実際にこういう状況人たちにとっては大変な朗報だろうと思います。また、今局長がおっしゃいましたように、現実に父親が日本国民でない、母親ももちろん日本国民でないという場合で、子供だけが日本国国籍取得するというようなことについてなかなか考えにくいのだということは私もわかりますが、ただ考え方として、親子が同一国籍でなければならないのだという考え方については、そこはそう大事な原則ではないのではないかというふうに考えるわけです、この点は本当に私の意見でございますが。  次に、第五条の一項五号の問題ですね。それと二項の問題がかかわってくるわけでございますけれども帰化の問題です。帰化をするためには、無国籍であるかあるいは日本国籍取得によって国籍を失わなければならないというのが一つ条件でありますが、それにもかかわらず、この二項について、二項を適用しなければならないような国籍を、現国籍といいますか外国籍を外したいのだけれども外すことができないというようなことになっている国というのはかなりあるものでございますか。
  143. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 これは各外国国籍法で規定がいろいろでございますけれども、他国に帰化をいたしますと当然に喪失をするという国もかなりございますけれども、それにしましても、未成年の場合にはだめだというようなところがブラジルとかインドとかベルギーにございますし、それから帰化後でなければ離脱できないというのがニュージーランド等がございます。そういうようなことで、各法制によってニュアンスがいろいろ違いますけれども帰化前に離脱の手続をとるとか、あるいは当然に帰化によって喪失するとかいうふうな国ばかりではないわけでございます。
  144. 天野等

    ○天野(等)委員 そういう場合に、五条の二項によりますと、「日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるとき」というような絞りがかけられているわけでございますけれども外国人が真摯に日本国籍取得したい、しかし実際に外国の事情によってこれは外れないのだ、離脱できないのだというような場合について、特に親族関係とかそういう身分的な関係を考えなければならないのかどうか、私としてはこの辺の条件というものは外れてもいいのではなかろうかというような感じを持つのですが、いかがですか。
  145. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 五条の五号の要件は、もちろん国籍唯一の原則を貫きたいというとこみから出ているわけでございまして、その二項は特則になるわけでございます。したがいまして、国籍唯一の原則を外すに足るだけの理由がある場合に限る必要があるということになります。一つには、事前に離脱ができるというものならそれはやっていただかなければならないだろうということがあるわけでございます。それができないということになります場合には、これは重国籍が生ずるということを意味するわけです。  その場合に、各国の法制もいろいろでございますけれども、兵役の関係その他で自国民として強く掌握しておきたいというような考え方の強い国が当然喪失とか事前離脱とかいうことを認めない国ということに、なります。したがいまして、そういう国につきまして無条件に二重国籍をその場合に認めるということになりますと、いわば二重国籍の弊害といいますか、問題点がかなり強いケースが多いということが言えるわけでございます。したがいまして、そういうふうなことを打ち破ってもなおかつ二重国籍のままでも日本国籍取得させた方がいいという場合に限って、二重国籍のままで帰化を認めてもいいということになろうかと思います。そういうことから考えますと、どういうことかと言いますと、例えば日本人子供である、生活実態がもう日本に住んでいるとかで日本人子供としてずっと生活しているとかという生活実態があれば、重国籍になってもこれはまあやむを得ないという評価ができるのではないか。  それからもう一つは境遇のことでございますけれども、これは難民等を考えておるわけでございまして、ある国の国籍は持っている、しかしそこの国から流れ出ていて、そうしていわばその国の支配から脱したいと思っている、したがって、その国に帰属するということはもう本人としては考えていない、したがってまた同時に、その人たちにとって離脱の手続をさせるということが大変酷であるというような実態の場合には、これは重国籍のままでも帰化を認めてもいいではないか、そういう条件があるときに認めたいという考え方でございます。
  146. 天野等

    ○天野(等)委員 今度は同じ帰化の問題で八条の関係なんですけれども、八条の簡易帰化といいますか、その関係で前々から何度も出てまいりますけれども、簡易帰化でも五条一項三号の素行善良ということだけは落とさないということがございますね。ほかの条件生計要件その他については落としたけれども素行善良という要件だけは落とさない。それについて落としてもいいのではないのかという考え方もあるのだと思うのです。特に簡易帰化を認める場合は特別な関係があるわけですから、その場合にこの素行要件というようなものがどうしても必要なものでしょうか。その点についてちょっと。
  147. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 いろいろな考え方はあろうかとは思いますけれども、私どもは、日本人になるといいますか日本人との運命共同体の中に入ってくる方については、素行が悪くてというような方を積極的に入れるというのはどうかなという考え方を持っております。  議論といたしましては、素行要件を全く外したらどうかというふうな意見は余り聞かないわけです。素行要件について弾力的に考えていいんじゃないか、前科があるとか、あるいはかって交通違反があるとかいうようなことで形式的にやるのはよくないので、かつて刑務所に入っていた人であっても現時点において社会復帰していればいいという扱いにしろとかいうふうな御意見はありますけれども素行要件を全く外したらどうかという御意見は私ども余り聞いておらないところでございますし、やはり日本社会の中で日本人として入ってこられるためには、少なくとも普通の日本人並みの素行といいますか、善良な方であってほしいということは一つ条件にしておきたいと思います。
  148. 天野等

    ○天野(等)委員 一般的な帰化の場合に、素行要件を入れるというのはわかるのです。それはある程度当然だと私も思います。ただ、第八条の要件を見ますと、最初が「日本国民の子で日本に住所を有するもの」、その次が「日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であったもの」、それから「日本国籍を失った者で日本に住所を有するもの」というように、本来日本人として認められていいような状況にあった者で、それが法のいろいろな関係日本国籍を持ち得なかった、あるいは持たなかったというようなことで来た人たちだと思うのです。そういう人たちについて——日本人でたとえ前科があってもそれで日本国籍を失うということはないわけですから、日本国籍取得するというところにこれだけ縛りをかけた人たちに対して、さらに普通の日本人以上の素行要件というようなものをつける必要があるだろうか。こういう人たちについて言えば、もしあるとすれば、確かに日本政府に対する反逆とかなんとかという問題は考えるとしましても、一般の日本人としてそれでいいんじゃなかろうか、この辺も一つの庶民感情じゃないかと私思うのです。何度も話は聞いていますけれども、ひとつ帰化の実際に当たっての素行要件の審査というようなことでの配慮はぜひお願いをしたいと考えております。  それから八条四号の問題ですが、この四号では沖縄無国籍児の問題は一応これで解決するのかもしれないのですが、有国籍児の場合はこの八条でカバーできるのですかね、この点。
  149. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 八条の四号の規定は、各国の国籍法の抵触といいますか、消極的抵触になろうかと思いますが、そういうことで日本で生まれたけれどもどこの国の国籍取得しないという子供さんを、これは何か国籍を与えなければいけない、それがいろんな児童憲章などにもそういう精神がうたわれておりますけれども、そういう面から考えているものでございまして、国籍を有している場合に、その穴を埋めるということではございませんので、どこかの国籍を持っておられる方は通常の帰化のことになるわけでございます。
  150. 天野等

    ○天野(等)委員 沖縄の問題は、また別途御質問することになると思いますけれども、沖縄の問題で一点ちょっと確かめておきたいのですが、いわゆる無国籍児に対して日本国籍を与えるという問題だけではなくて、現実にアメリカ国籍あるいはフィリピン国籍とかいろんな国籍を持ちながら、しかし現実には沖縄を離れたことなしに沖縄で生活実態を持っているという人たちの問題がかなり大きな問題としてあるんだと思うのです。その人たちについて言いますと、この八条の一号で救えることになるのでしょうか。
  151. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 八条の一号は「日本国民の子で日本に住所を有するもの」ということでございますので、今度母系主義もあわせて採用することになりましたので、それは附則の五条の関係で救われる方は、そちらの方でいけば帰化手続を要しないわけでございます。なお、成人に達しておるというような方につきましては、これは日本国民の子で日本に住所を有しますから、この八条の簡易帰化によるということになるわけでございます。
  152. 天野等

    ○天野(等)委員 六条の一号の「日本国民であった者の子」、これとの違いの問題なんですけれども、これは母の死亡は、この「日本国民であった者」ということにはならないわけでしょうね。
  153. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 死亡の時点で日本国民であった方は、日本国民であったということには扱わないことになります。結局、日本国民の子ということでございます。
  154. 天野等

    ○天野(等)委員 そうしますと、六条の一号で対象になってくるというのは、母親がアメリカ国籍を持ってしまった、そういうような場合ということになりますか。沖縄の有国籍児といいますか、日本国籍を持ちたいと思っているんですが、沖縄で生まれ、ずっと育ってきた、それで母親が婚姻後にアメリカ国籍取得してしまった場合には、この六条の一号ということになるのでしょうか。
  155. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 そのとおりでございます。
  156. 天野等

    ○天野(等)委員 この辺で沖縄の実態の問題なんですが、アメリカ人の軍人軍属の方との婚姻によってアメリカ国籍取得された日本人女性というのもかなり多いのじゃないか。その後に事実上あるいは法律上婚姻を解消してしまって、そして子供日本国籍を持たないというような場合に六条一号に当たると私は思うのですけれども、この場合にはいわゆる簡易帰化という形にはならない。要件としては「引き続き五年以上」というのが「引き続き三年以上」という形に変わるだけで、それ以外の要件はやはりかなり厳しい要件があると思うのです。そうなりますと、この附則の五条の関係で、未成年者については届け出日本国籍取得できる、しかし成年に達した者については簡易帰化という手続があるのだからそれでやってもらえばというようなお話もございました。確かに無国籍の者についてはそれでも済むし、それから現に母親が日本国籍を持っているという場合にもそれで済むかと思うのですが、実態は母親が日本国籍を離れているということがかなりあるのじゃないだろうか。そうなってくると、やはりこの人たちに簡易帰化という制度日本国籍取得させるということはなかなか難しいのじゃなかろうかという気がするのでございますが、この点いかがでしょうか。
  157. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 今のケースの場合にも、母親が日本国民であったということはあるわけでございますから、簡易帰化にはなるわけでございます。ただ、その簡易の程度が先ほどのお話とは少し違うということがあるわけでございます。それは、その母親が一たん外国国籍取得しまして、外国人と結婚した上でその外国国籍取得して生まれたという子供さんでございますので、そうでない方とはやはりおのずから差は出てこようかと思います。そういう意味で、どちらかの範疇に入れるとすればやはり中間の簡易帰化の方に入れるのが筋だと思いますけれども生活実態がかなり日本の方に結びつきが強いというふうなことがあれば、これは全体として評価することでございますので、実質的にはそう違いがないことになろうかと思います。ただ、母親がアメリカ国籍があるということになりますと、生活実態があるいはアメリカの方に引っ張られているということも考えられるわけでございますので、若干ケース・バイ・ケースの場面があろうかと思います。
  158. 天野等

    ○天野(等)委員 抽象的な議論をしていますと確かにそうだと思うのですが、沖縄の婦人アメリカ国籍取得したことの経過というのは、やはり日本のあの戦争の結果だと私は思うのですよ。そのことが非常に大きな傷を与えているわけですし、これの処理ということ——処理というのはいい言葉じゃないかもしれませんけれども、そういうことも今度の国籍法改正に当たってやはり我我は考えていかなければならないのじゃないか。これが仮に附則で救えない、附則をこのままにしておくとしましても、行政的な扱いとして、民事局長の通達なり何なり、ある程度権威のある扱いとして沖縄の問題について取り扱っていくおつもりがあるか、またそういうことができるだろうか、その点について。
  159. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 法律の上では、法律上の国民とか国籍とかいうことを前提にして規定がなされておるわけでございますけれども、血統主義をとっておるということは、やはりその血統を重んずるという思想が法律背後にあると思うのです。そういう意味で、法律上の国籍のほかに実質上の血統ということも、実際上の帰化の処理をする実務の上では一つの考慮すべき要素としては従来から考えてきております。そういうような事柄は今後もなお十分に考えて、いわば総合的な判断の上に立って妥当な結論を導き出すようにいたしたいと思いますし、そういうことは今度の国籍法改正の際にも、法務局の方にもいろいろ伝えなければならぬこともございますので、その際、あわせて伝えるようにいたしたいと思います。
  160. 天野等

    ○天野(等)委員 例えば民事局長通達というような形で処理することも考えている、そういうことでございますか。
  161. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 形式はどのようにするかということまで考えているわけではございませんけれども、十分に周知できるような形で伝えるようにいたしたいと思います。
  162. 天野等

    ○天野(等)委員 くどいようですけれども、沖縄の問題については、やはり血統主義といいますか、あるいは、その当事者が日本国籍を持ち得なかった事情を十分考慮するということで、ぜひとも行政的な手当てをしていただきたいと思います。  次に、国籍の喪失の問題でございます。  十一条の一項と二項の問題で、この一項と二項の違いというのはどういうことなんでしょうか。「自己の志望によって外国国籍取得したとき」というのが一項で、二項の方は「外国の法令によりその国の国籍選択したとき」ということなんですが、この違いはどういうことになるのでしょうか。
  163. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 十一条一項の方は、自己の志望によりまして外国国籍を新たに取得する場合でございます。したがいまして、多くの場合は外国帰化するということでございます。この場合には日本国籍を失う。要するに、積極的に外国国籍が欲しいということでその当該外国から承認されたわけでございますので、したがって日本国籍形骸化するので、当然失うというのが一項でございます。  二項の場合は、重国籍を有しているということが前提でございまして、その場合に、我が国選択制度と同じような制度が当該外国にある、その外国におきまして選択意思表示をするということになりますと、そっちの国の方を選択するということでございますから、したがってそのときには日本国籍を失うことにしたらどうだろうか、こういうことでございます。  なお、一項と二項とが関係するといいますか、ダブるわけではありませんけれども関連するのは、重国籍者が、その重国籍でない第三国の方に志望によって国籍取得すれば、これは一項で日本国籍を喪失することになるわけでございます。
  164. 天野等

    ○天野(等)委員 この十一条二項と同じような規定が外国にあるのかどうか。この十一条の二項によりますと、結局、日本と同じように国籍選択制度があって、そちらで選択をしたときということになりますね。それで、そういう制度がある外国もあるかもしれませんけれども、逆に日本国籍選択したとき外国国籍が自動的に失われるというような法制をとっている国はありますでしょうか。
  165. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 フィリピンとかインドネシア、パキスタンなどにその例があると聞いております。
  166. 天野等

    ○天野(等)委員 このいただきました資料に載っております大韓民国の国籍法の十二条の四号の「自己の志望によって外国国籍取得した者。」という点について、これは今度の新しい国籍法日本国籍選択した場合が含まれると考えられますでしょうか、含まれないと考えられますか。
  167. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 私どもは、この条文からいたしまして、日本国籍選択した場合でありましても韓国国籍は失わないというふうに解せられますし、なお、韓国側にそういう場合についての意見を聞きましたところ、それはこれには該当しないというふうに回答を得ております。
  168. 天野等

    ○天野(等)委員 同じ大韓民国の国籍法の十二条の第七項でございますか七号でございますかに「外国人で大韓民国の国籍取得した者が六月経過してもその外国国籍を喪失しないとき。」というのがありますが、日本の場合の選択権を行使して日本国籍選択した場合と行使をしない場合とで、これに該当することがございますでしょうか。
  169. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 七号は、今のような選択権を行使したかしないかには全く関係がないのではないかと思います。むしろ問題といたしますと、出生によって、父親が韓国人で母親が日本人だという間に生まれた子供につきましては重国籍が生じます。そうしますと、六カ月の間に、外国国籍韓国から見れば日本国籍を喪失しなければ云々ということに当たりはしないかという疑問がむしろこの条文からは出てくるわけでございます。その場合でも、既に生まれた瞬間に両方の国籍取得するわけでございますから、この条文の「外国人で」ということには当たらないというふうに考えられますし、韓国側でもそれは当たらないというふうに聞いております。選択関係はこの条文には余り関係がないように考えております。
  170. 天野等

    ○天野(等)委員 似たような問題かと思いますが、少し違う観点で、外国の法制によっては婚姻によって外国国籍取得するというような法制度をとっておるところもあるようでございますが、この場合に、二重国籍になってしまって、日本国籍選択すると外国国籍を失うというような法制度になっているところというのがございますでしょうか。
  171. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 日本の女性が外国人の男性と結婚した場合に、外国人の方の国の国籍法によって妻である日本女性に対して自国の国籍を与えるというような法制をとっている国は幾つかございます。ただ、そういう国が同時に、先ほどのお話しございましたような選択制度及びその宣言によって外国の方に、具体的に言えば日本の国に対して十四条、十五条の規定によって選択の宣言をした場合に当然失うということが両方かみ合っている国というのが、まだ十分調査しておりませんけれども、目下のところないのではないかと思います。
  172. 天野等

    ○天野(等)委員 参考人質問のときに、何かギリシャでしたか、そういうようなお話がちょっとあったのですが、その点はどうなっているか、おわかりですか。
  173. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 ギリシャは、自国民の妻になった外国人についてはギリシャ国籍を与えるという制度にはなっておりますが、選択の宣言を他国の方にしたという場合にギリシャ国籍を失わせるというような制度にはなっていないように承知しております。
  174. 天野等

    ○天野(等)委員 日本における国籍選択の結果を二重国籍の当該外国に、国籍を放棄する旨の宣言も含まれるわけでしょうが、放棄する旨をその外国に通報するものなんでしょうか、その点について。
  175. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 当然に通報するということにはなりませんし、私どもも当然に通報するというつもりもございません。  ただ、国によりましては、我が国と同じような法制をとって、そしてお互いに通報し合って国籍関係をきちんと明確に把握するようにしたいというような希望を持つことも十分あり得るわけでございまして、そういう場合には二国間あるいは多国間でそのような協定などを結んで実施をするということは将来起こり得ようかと思います。
  176. 天野等

    ○天野(等)委員 現在、そういうふうな通報をし合うというようなことはないのでございますか、例えば帰化というような問題なんかも含めて、どうなんですか。
  177. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 現在、帰化関係につきましては、西ドイツともそういう協定で相互に通報し合っておりますし、アメリカともやっております。
  178. 天野等

    ○天野(等)委員 そこで、十四条の国籍選択の問題でございますけれども、この国籍選択というのは十四条の二項によりますと、「日本国籍選択し、かつ、外国国籍を放棄する旨の宣言」というふうになっておりますね。それで、この辺のところがいわゆる重国籍人たちにとっていろいろ心理的な、あるいは実際生活上の障害と感じられるのじゃないか。日本国籍選択するということについてだったら、日本国籍を持とうという方が伺本国籍選択する、これは当然のことだし、これについてとやかく言うことはないと思うのですが、同時にこれが外国国籍を放棄するということの宣言だという点でいろいろな圧迫感といいますか、そういうようなものもあるかと思うのです。ただ、これについては、外国籍を放棄する旨の宣言をしたからといって、このことによって当該外国国籍が直ちになくなるというような種類のものではございませんね。
  179. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 選択ということは、二つなら二つあるもののうち一つをとって一つはとらないということをもともと意味する言葉でございます。したがいまして、日本国籍の方をとって外国国籍の方は自分としてはとらないのだということがその内容になることはそこに明らかにしておるわけでございますが、そういう宣言をしたからといって、それを他国の方でどう受けとめるかということは、その他国の国籍法で考えるべき事柄でございます。  したがいまして、多くの国ではまだそういうものを特段の扱いをしているところはございませんけれども、先ほどもちょっと話に出ましたように、我が国と同じような制度をとっている国においては、他国の方を選択したという場合には自分の方の国籍を失うという法制の国はあります。そういうところではもちろん効果が出てまいります。逆に日本の方は、先ほど出てまいりました条文にあるとおり、同じような制度外国にあって、そちらの国の方を選択して日本国籍を放棄するという内容のものをすれば日本国籍は喪失するという規定を設けておるわけでございます。
  180. 天野等

    ○天野(等)委員 この十四条の規定と十五条の規定を考えてみますと、結局、国籍選択によって二重国籍を解消しよう、回避しようということだと思いますけれども、それが実体的に効力を持ってくるのは十五条の催告によって日本国籍を失わせる、そういう場合だけのような気がするのですね。普通に日本国籍選択するという宣言をしましても、そのことによっては外国籍について直接の関係がない、幾つかの国で今そういうものがとられているとしまして、ただ、これもその国との通報制度なり何なりというものがない限り相手方の国籍を失わないのだろうと思います。そう考えますと、私、この国籍選択制度がほかの国で広く用いられればともかくとしまして、現状においてはそう二重国籍を解消させていくあれにはなってこないのじゃなかろうかという気がするのですが、いかがでございますか。
  181. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 先ほどお話しございましたように、選択制度というのは、法律的にぎりぎり詰めてまいりますと、法務大臣催告によってなお何の応答もしない者について喪失させるというところに、帰着するわけでございますが、なお努力規定としての十六条一項の規定もございますし、全くそれだけのものであるとは言えないと思いますが、ただ、選択の宣言の制度というのがヨーロッパ理事会の閣僚評議会におきましても決議をしているところでございます。それになかなかよりがたいということで、イタリア以外の国はまだ具体的に採用しているところはないようでございますが、そのほかにアジアの国におきましてもございますし、それから今度もし日本がこういうような法制をとるということになりますと、これがまた一つ世界に参考になるということもあろうかと思うわけでございます。  したがいまして、究極のところは各国が足並みをそろえるようなことがありませんと国籍の抵触問題というのは完全にはなくならないという性質を持っておりますけれども、私どもは、この選択制度によりまして先ほどおっしゃいました催告の部分だけにしましても、それなりの解消策としてはかなりのものが出てくるのではないかというふうに期待いたしております。
  182. 天野等

    ○天野(等)委員 ヨーロッパ理事会でこの選択ということが言われてもなかなか各国が足並みがそろわないというのは、結局のところ重国籍になったときに自分の国の国民に対して自分の国の国籍を失わせていくような制度をつくらない限り、結局、重国籍というのがなくなっていかない。しかし、このことについてはどの国にとっても、私、推測でございますけれども、かなりの抵抗が感じられるのではなかろうかという気がするのです。日本はその点では見事に先を行ったのかもしれませんけれども日本の場合にむしろヨーロッパ各国に比べれば重国籍者が圧倒的に少ないと思うのですね。また国際結婚等も圧倒的に少ない。そういう中で比較的血統主義がずっと来た。そういう関係の中で考えていますので日本でとり得たのかもしれないのですが、実際問題ヨーロッパの中でこういう原則に沿った法制がつくられていくというのはなかなか難しいのではないかという気がするのです。  それはそれとしまして、実は日本にとっても必ずしもいわゆる血統主義だけで国籍の決定が来たわけじゃないのではないか。それは旧国籍法あるいは現行国籍法、その中で法の規定では表には何もあらわれてこないわけですけれども、非常に多数の日本国籍を持った人が生まれ、また、その人たち日本国籍を失っていったという歴史的な経過があったと思うのです。それは一番大きいのは朝鮮半島との関係だと思います。日韓の併合条約あるいはサンフランシスコの平和条約、そういうようなことによって日本国籍を持たされたりあるいはそれを失わされたりという形で出入りした、そういう方たちがあるわけでございますが、そういう点についての国籍法全体としての配慮といいますか、そういうものが日本国籍法を見ていて非常に乏しいように感じるのです。外国国籍法ですと、いろいろな領土の割譲だの譲渡だのというような事柄と国籍、その土地の住民の国籍取得という関係が随分あちこちに出てくる。日本もそういう関係がなかったわけではないわけですけれども国籍法の表面には全くあらわれてこないという関係だと思います。  この点について、実は附則の問題でございますけれども、附則の五条で、二十年、未成年という制限を取り去った場合に、サンフランシスコ条約日本国籍を喪失したといいますか、そういう人たちについても、そういう人たち子供ということになりますが、についてもこの国籍法が適用されるというような状況が出てまいりますでしょうか。
  183. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 昭和二十七年四月の平和条約発効までの朝鮮の方、台湾の方については、その時点まで日本国籍があった、その時点まで日本国民であったということは最高裁の大法廷の判例でも固まっているところでございますし、また法律の上でもそのようなことを前提にした法律も規定されておるところでございます。したがいまして、もし経過措置を二十年で切るのではなくて平和条約発効前の日まで、例えば新憲法制定の日までさかのぼるということになりますと、その間に生まれた朝鮮籍あるいは台湾籍の方の子供さんは、少なくとも五条の一つ要件を満たすことになる、それは先ほど中村委員の御質問にも答えたところでございます。この方々の中で現時点で日本国籍を持っておられる方、要するに母親が現時点で日本国籍を持っておられる方々がどのくらいおるかということはわかりませんけれども、平和条約発効後十数万人の方が帰化しておられますが、その大半の方が朝鮮あるいは台湾の関係の方方でございます。したがいまして、その中には平和条約発効によって日本国籍を失った方がかなりまざっておると思います。そういう関係で、その子供さんが附則五条の国籍取得意思表示ができるということになる可能性があります。そういうふうな方々を単純な意思表示で入れることが適当であるかどうかという問題があります。  またもう一つ、そのような観点で物を考えますと、実は附則五条は母系主義を新たに取り入れるということによって考えられた制度でございますけれども、ところが、それでは昭和二十七年までに朝鮮籍あるいは台湾籍の男の人の子供さんについてはどうなるんだという問題がまた同時に出てくるわけであります。その関係を母系だけでやるというのはこれまた平等の問題としてどうかというふうなことが議論の余地になるわけでございます。そうしますと、これは大変な人数の方々が対象になりますし、その間ともかく三十年以上たっていることでございますので、国籍をそういう意思表示だけで取得させるということが国籍法の立場から考えていいことであるかどうかということが根本的に問い直されなければならないことにもなりかねない、そういう大きな問題を引き起こすことになるだろうと考えられるのでございます。
  184. 天野等

    ○天野(等)委員 私は、台湾国籍あるいは朝鮮国籍方々日本国籍取得したことがあるというのは、いわゆる血統主義によったものではなくて、主義でいけば生地主義なんですね。その原則が適用されて、完全な生地主義とは違うと思いますけれども、生地主義的な考え方がある。それが今も在日韓国人、朝鮮人あるいは中国人というような形の問題として残っておるんじゃないだろうかという気が私はするのです。  確かに、戦争の処理の問題としましては、沖縄の問題、非常に大きな問題ですけれども国籍の問題としましても、この朝鮮、韓国国籍日本国籍をどう考えるのか。今までのように単純に日本の血統だけでいくんだということで済ませていけるものなのかどうなのか。  実際問題として、生地主義的な考え方をとったことによる問題が永住許可というような形で出てきておるんじゃないだろうかと思うわけです。これを永住許可というような形で処理をしたのも一つの行政的な処理の方法ではあったかとは思いますけれども、今外国人登録法等でも、韓国籍の方、朝鮮籍の方が、自分たちはずっと日本にいて日本人と同じように日本の国の中で生活をしてきて、それでなぜ外国人として登録をさせられ、しかも指紋まで要求されて、職業を変えればこれまた報告をしなければならぬというような、非常に厳しい登録法の要件を満たしていきながらなぜそういう扱いを受けなければならないのかという問題があると私は思います。  それは一つは、国籍法について日本が条文の上では非常にきれいな血統主義をとっておる。それだけに、実際問題として生じた生地主義的な国籍取得者を何の国籍法上の措置もせずに放置してしまった、その問題があるんじゃないかと私は思うのです。そういう点で考えれば、今度の改正の中で附則五条についてもう少し考える余地も、もう少しきめ細かな考え方も出てくるのではなかろうかという気がするのでございますが、いかがでございましょうか。
  185. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 確かに、日本の歴史をさかのぼってみますといろいろな問題がございまして、そのときどきの対応がよかったか悪かったかというような議論もかなりあるところだと思います。しかし、そういうふうなことを今度の国籍法改正の際にどうとらえ、どう対処するかということになりますと、やはり一つ制度でございますので、ある一定の線で最も筋の通るところで解決するほかはないだろう、法律的にはそうだと思います。  経過措置の附則五条で二十年さかのぼるということにいたしましたのは、先ほど来各委員の御質問に対して答えたところでございますけれども、その線に入らなかった方については日本国籍取得させないというならばこれはかなり決定的な問題だろうと思います。しかしながら、そこで漏れて問題ではないかというふうに指摘される方々には、これは簡易帰化で処理をできる方々でございますし、それから今御指摘があったような事柄については、それなりの事情というものは帰化の実際上の実務の中で十分に考慮して妥当な解決が図られることでございます。  また、ちょっと話は別でございますけれども、韓国籍、台湾籍であった方についての処理につきましては、法律的に一律にどうこうするということが非常に難しい問題もございます。したがいまして、積極的に日本の一国籍取得したいとおっしゃる方については、私どももどういういきさつで日本に住まわれることになったのかというふうなことは今までも十分考慮の中に入れておるわけでございますので、その点について全く何事もなかったというような無視をしているつもりはないところでございます。
  186. 宮崎茂一

    宮崎委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後二時三十分休憩      ————◇—————     午後三時四十四分開議
  187. 宮崎茂一

    宮崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。天野等君。
  188. 天野等

    ○天野(等)委員 国籍選択催告の問題で少しお尋ねしておきたいと思うのです。  催告によっても選択がなかった場合に国籍を喪失するということになるわけですけれども、この場合には当然二重国籍であることが前提の条件だと思うのです、「外国国籍を有する日本国民」ということですから。ただ、実際問題としまして、二重国籍になっておるのか、現にその人が外国籍取得をしているのかどうかということについては、なかなかわかりにくいところもあるのじゃないかというふうに思うのです。この点については、こういう制度が実際に行われて、外国国籍があると思って、二重国籍だと思って日本国籍を失わせてしまったけれども、しかし、実際に外国籍をその人が持たなかったというようなことのないような、そういうことを考えていますか。
  189. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 二重国籍の場合には、外国国籍があるかどうかということが問題になるわけでございまして、これは世界百数十カ国ございますし、各国の国籍法、またその内容について明確に判断するということは、実際問題としては難しいことがございます。  したがいまして、実際の処理のやり方といたしますと、市町村長の方からはそういう二重国籍であろうと思われるような徴憑がある者は法務局の方に通知をしていただいて、そして法務局の方ではかなり法律的に調査をするということをいたしまして、また、もちろん私ども本省の方でも一緒に作業をいたしまして、そして催告をするということにする考えでおります。その中でかなり問題のものは解消できるのではないかと思いますが、しかし、万が一、二重国籍でないのに催告をしまして、そしてその結果何らの応答がないということで戸籍を消してしまうということも、それはあってはならないことですけれども、万が一にはあるかもしれないと思います。そういう場合には、御本人の方からも申し出があれば、もちろん調査をしまして、それがもっともだということになれば戸籍を回復するという措置をとるつもりでおります。それは、もし二重国籍でないのにそれを過って催告をして喪失の手続をしたとしても、それは実体上喪失ということにはなっていないという解釈のもとにそのような措置をとるわけでございます。
  190. 天野等

    ○天野(等)委員 そうすると、催告によって国籍を失わせたという処分ですが、これについては行政不服審査法の適用等は考えておらないのでございますか。あるいは、これはやはり処分として適用があるものでございましょうか。
  191. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 法務大臣催告いたしまして何らの応答がないという場合には、これはそこで行政処分によって日本国籍を喪失するというふうには考えておりません。これは法律上の効果として規定をいたしております。したがいまして、不服審査とかというようなことにのるものとは考えておりません。
  192. 天野等

    ○天野(等)委員 そうしますと、国籍選択について、選択そのものに関しては争う余地はないということになるのでしょうか。十六条の方の喪失宣告ですか、これについては何か争うあれがありますね。そうすると、選択をしないということで国籍を失わせられた者については、法律的には争う余地はないということになりますか。
  193. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 行政処分の取り消し訴訟というような形で争う余地はないと思います。  ただ、二重国籍でないのに二重国籍であるという判断のもとに日本国籍が喪失したものとして戸籍の処理がなされて、日本政府からは日本国籍がないものとして扱われているという状態になって、それが間違いであるという場合には、これはもちろん国を相手に国籍存在の確認の訴え等で争うことは十分にあり得るわけでございます。
  194. 天野等

    ○天野(等)委員 十六条の方の国籍喪失の宣告の場合は、これは喪失宣告ということで処分性を持つものなんですか。
  195. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 これは処分性を持つものと思います。
  196. 天野等

    ○天野(等)委員 この十六条の要件ですけれども、「選択の宣言をした日本国民」ということになっていますから、そうすると、まだ選択をしていない者が外国の公務員の職についたというような場合については、それによって喪失宣告をされるということはないということになりますね。
  197. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 そのとおりでございます。
  198. 天野等

    ○天野(等)委員 そうすると、十八歳で兵役というような制度をとっている国もあるかと思うのですけれども、そういう場合に外国の兵役について、しかし、その時点ではこちらはまだ選択をしていない、それが終わった後に日本国国籍選択をするということも、これは当然あり得るということですね。
  199. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 それはあり得るわけでございます。  なお、徴兵によっていく場合には、もともと十六条の関係にはのらないと思われます。
  200. 天野等

    ○天野(等)委員 ということは、この十六条の二項の場合には、自分の意思で外国の公務員の職につく、そういうことを示しているということでございましょうか。
  201. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 これは選択の宣言というのが日本国籍の方を選んで、そして外国国籍の方はなくすという宣言でございます。要するに自分の意思でそういう公務につくということが宣言の趣旨に反するということになるわけでございますので、自分の意思によらないで徴兵というようなことになりますと、これはもう禁反言といいますか宣言の趣旨に反するということにはならないので、この十六条二項の問題にはならないと思います。
  202. 天野等

    ○天野(等)委員 そうしますと、選択の宣言をした後の問題としても、結局、外国で徴兵を受けるという場合でも日本国籍を喪失宣告されることはない、そういうふうに考えてよろしゅうございますね。
  203. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 そのとおりでございます。
  204. 天野等

    ○天野(等)委員 この「公務員の職」ということで前にもほかの委員の方からの質問もございましたが、一応私もそれをお聞きしておこうと思うのです。ただ何となくはっきりしない規定じゃないかという気がするのです。外国の公務員ですとなかなかわかりにくいのですが、例えば日本の公務員に当てはめての類推ですと一体どの程度の職を考えていらっしゃるのか、その辺はお考えがあると思うのですけれども、ひとつ御意見を聞かせていただきたいと思います。
  205. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 具体的にどこで線を引くかというのはなかなか難しい問題でございますが、少なくとも現在の日本の公務員で考えますと、行(二)系統といいますか行政職(二)の給料をもらっておられるような方は著しく趣旨に反するということにもならないだろう。それでは行政職(一)の系統の方が全部入るかということになりますと、これは入る可能性が強まりますけれども、その中にもいろいろあろうかと思いますので、一概には申し上げられませんけれども、外形的に見まして、だれからもこれはもうその国の公権力をかなり行使している、強く行使できる立場にあるというようなことで個別に判断せざるを得ないことではなかろうかと思います。
  206. 天野等

    ○天野(等)委員 これも行政的な運用の問題ですけれども、基本的に日本国民なわけですから、できる限り日本国国籍を失わせないようにするというのも一つの行政の態度じゃないかと私は思います。余りしゃくし定規な適用はやはり避けていただかなければいけないのじゃないか、そういうふうに考えるわけでございます。そういう点で、国によっては対応が違うかと思いますけれども外国へ行ってその国のための仕事をすると、特に二重国籍というような場合に、いろいろな形で外国でもって仕事をする場合というのも多いかと思うのですけれども、そういう場合にその国のための仕事をすると日本国籍を失ってしまうのだというようなことでは、やはりこれからの国際的な活動というようなものがセーブされてきてしまうのじゃないか、そういう気もするものですから、そういう点での配慮をぜひともお願いしたいというふうに考えます。  あと、国籍の再取得の問題がございます。先ほどもちょっとお話があったのですが、特に十八条で、法定代理人が外国籍を選ぶ選択の宣言をした場合に、この規定によりますとこれは確定的な効果を持ってしまいまして、改めてその子供が成年に達した後に日本国籍を得たいと思いましても、これは帰化手続によるほかないということになりますが、この場合で、いかがでしょうか、この十七条をそのまま適用というわけにはいかないかと思いますが、この趣旨を、簡易な方法で再取得できるようなそういう規定を考えるということはできないでしょうか。
  207. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 一つの立法論ではあろうかと思いますが、現行法のもとにおきましても、日本国籍を離脱する場合にこのような法定代理人がかわってするという制度があるわけでございます。それにつきまして特段の問題が実は余り生じているようには聞いておりません。法定代理人がかわってやる場合には、両親がその子供のことを考えてやるわけでございます。したがって、もし外国国籍を選ぶということになりますと、日本法上は日本国籍を離脱することになって現行法と同じことになるわけでございますが、日本国籍選択するという場合も、これは、両親がそろって子のために早くやった方がいいという場合にはそれを封ずることは適当でないというふうに思うわけでございます。  したがいまして、ただいまの御質問にお答えいたしますと、日本国籍を離脱した場合に法定代理人がかわって再取得をする道がないかという点に限って申し上げますと、これは先ほど申し上げましたように、両親がその方が子供のためにいいという判断のもとにやったという実際があれば、それなりの生活実態とかというものがあるだろうと思われますので、ただ意思表示だけでまたもとへ戻すというふうなことにするのはいかがなものかという考え方でございましょう。しかし、元日本国民であった者であることは間違いございませんので、したがいまして、帰化の場合には、簡易帰化ということでそのようないろいろな事情は本人に有利に働く要素になろうかと思います。
  208. 天野等

    ○天野(等)委員 国籍法の方につきましては大体以上で終わりまして、戸籍法について、これはまたいろいろあるものですから、一、二点だけお尋ねをしまして、あとは小澤委員の方に次回お願いをしたいと思います。  実は戸籍法の問題で、百七条の二項でございますか、外国人と婚姻をした者が配偶者の称している氏に変更しようとするときは、婚姻の日から六カ月以内に届け出によって氏の変更ができるということでございますが、ちょっとこの規定がよくわからないところがあるのです。婚姻の際に届け出をする氏は、これは従来の氏で届け出なければならないということが前提なんでしょうか。
  209. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 日本人同士の婚姻の場合には、御承知のとおり夫の氏を称するか妻の氏を称するかを決めて届け出る、それによって婚姻の効力が生ずるわけでございます。したがいまして、その場合に夫の氏を称すると決めれば、夫の氏で新しい戸籍がその夫婦について編製されることになります。ところが、外国人と婚姻する場合には、そのどっちかの氏を決めなければいけないという民法の規定は、これは外国人まで拘束するといういわれはございませんので、したがって、それは働かないことになるというのが私どもの解釈でございますし、実務もそれで動いております。そして、戸籍関係につきましては、したがって今度は、従前の姓のままで親の戸籍から分かれて新戸籍をつくります、こういうふうにしているわけでございます。  したがいまして、この百七条の新二項の前提としては、おっしゃるとおり、外国人と婚姻をしても、その婚姻をした日本人の方の氏は変わらない、そのままで新戸籍が編製されるということが前提でございます。
  210. 天野等

    ○天野(等)委員 ちょっとそこの点で、なぜそうなるのかがまだよくわからないんですけれどもね。外国人と婚姻をするときに新戸籍を編製しますね。今度の法改正でそういうことになります。当然新戸籍を編製するときに氏についても選べるのじゃないか。先ほど局長は、外国人に対して氏の選択ということは予定していないんだからと言いましたけれども、この場合は、配偶者の一方が日本人であることを予定しているわけですね。それについて、婚姻をしたからといって、日本人である配偶者の一方が外国籍取得するわけじゃありませんから、日本人の婚姻についての新たな戸籍の編製だと私は思うのです。そう考えれば、日本人の一方、当事者の意思で当初からどちらの戸籍を選ぶかということでやってもできるのじゃないかという気がするのですが……。
  211. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 日本人同士の婚姻の場合には当然どちらかの氏を選んで夫婦同一にしなければならないとされておりますが、この民法の原則は働かないというふうに申し上げておるわけです。したがいまして、原則型といたしますと、外国人と婚姻をした人は、新戸籍をつくるときに黙っていればもとのままの氏で、実体的にもそうであり、戸籍もそのように編製をするということが原型になるわけでございます。  ただその際に、今度は届け出だけで外国人配偶者の氏を称することができるようになるわけでございます。そのときに婚姻届を出すと同時にこの届け出をされれば、そのときに外国人の配偶者の氏での戸籍をつくるということは、それは結果的には可能でございます。しかし、それは手続が二つのものを一緒にするということでそうなるわけで、先ほど申し上げたのはその原則型を申し上げたので、ちょっと誤解を招いたかもしれませんので、申し上げておきます。
  212. 天野等

    ○天野(等)委員 やはり氏を選ぶという感じではないんですね。あくまでも氏の変更になるわけですね。この問題についても経過規定がございますね。第十一条でございますか、既に外国人と婚姻し、子供がいる、その方について外国名にといいますか、配偶者の名前に変更しようとするとき、その場合には戸籍届け出だけで氏の変更ができますか。
  213. 枇杷田泰助

    枇杷田政府委員 いろいろなケースがございますが、新法が施行される前に外国人と婚姻をして既に子供がいるという場合に、その婚姻をした日本人が女性である場合には、その子供は現行法では日本国籍を持っておりませんので、これは今おっしゃった問題にはならないわけでございます。経過措置日本国籍取得したときにどうするかという問題はありますけれども。  ですから、専らそういうことで問題になりますのは、日本人男性が外国人女性と婚姻をして子供がいるという場合には、その父親とその子供一つ戸籍の中にいるわけです。その場合に、父親が妻の方の外国姓を名のりたいというときは、この六カ月以内であればということもあるかもしれませんけれども、ただ、その場合に、その子供が既にこの六カ月の間に生まれているというのは、出産の期間その他で嫡出推定を受けるような関係になっているかどうかということがかなり問題だろうと思いますので、まずそういうケースはないのではないかと思いますが、もしあるとすれば、理論的には、父親がこの規定によって氏を変更するけれども、それによっては当然には子供の氏は変更されないで、あとは百七条の三項ですか、家庭裁判所の許可を得てという手順になることじゃないかと思います。
  214. 天野等

    ○天野(等)委員 それでは、私の質問をこれで終わらせていただきます。
  215. 宮崎茂一

    宮崎委員長 次回は、来る十七日火曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十三分散会