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1984-04-04 第101回国会 衆議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月四日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 宮崎 茂一君    理事 亀井 静香君 理事 高村 正彦君    理事 森   清君 理事 天野  等君    理事 稲葉 誠一君 理事 石田幸四郎君    理事 三浦  隆君       井出一太郎君    上村千一郎君       衛藤征士郎君    熊川 次男君       谷垣 禎一君    丹羽 兵助君       小澤 克介君    佐藤 観樹君       関  晴正君    広瀬 秀吉君       神崎 武法君    中村  巖君       伊藤 昌弘君    野間 友一君       林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 住  栄作君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         法務大臣官房長 根岸 重治君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 筧  榮一君         法務省人権擁護         局長      鈴木  弘君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   三上 和幸君         警察庁刑事局暴         力団対策官   川畑 久廣君         警察庁刑事局国         際刑事課長   金田 雅喬君         大蔵省主税局税         制第三課長   津野  修君         大蔵省証券局企         業財務課長   中島 公明君         大蔵省銀行局銀         行課長     千野 忠男君         大蔵省銀行局検         査部審査課長  峯嶋 利之君         国税庁税部資         産評価企画官  原岡 伸次君         国税庁税部資         料管理企画官  中川 浩扶君         国税庁調査査察         部調査課長   木下 信親君         厚生省公衆衛生         局精神衛生課長 野村  瞭君         運輸省自動車局         業務部旅客課長 豊田  実君         自治省行政局選         挙部選挙課長  小笠原臣也君         最高裁判所事務         総局刑事局長  小野 幹雄君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ————————————— 委員の異動 四月四日  辞任         補欠選任   山口 鶴男君     関  晴正君 同日  辞任         補欠選任   関  晴正君     山口 鶴男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人  権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 最初国税庁の方にお伺いをいたします。二月十四日だと思いますが、東京の渋谷の神南にありますハッピーワールドというところを調査されたと聞いておるのですけれども、そのことに関してできるだけ詳細にお答えを願いたいと思います。
  4. 木下信親

    木下説明員 一般的に申し上げまして、国税当局としましては、新聞とか雑誌等で出ました資料あるいは国税内部に蓄積されました資料、それから納税者から出されました申告書、これらを総合検討いたしまして必要あらば実地調査を行って課税適正化に努めておるわけでございます。  本件につきましては、個別の納税者のことでございますので、先生御存じのとおり、その中身につきましては申し上げることを差し控えさせていただきたいと思いますが、適正な課税に努力をしておるということで御了承いただきたいと思います。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 適正な課税に努力しておるということで御容赦いただきたいということですが、あなた方の方もいろいろ立場があることでしょうからあれいたしませんが、このことに関連をいたしましては、前々からいろいろな問題が出ておるわけです。一応法務省関係に聞きましてから、また後で国税庁の方にお聞きいたしたいというふうに考えるわけです。  そこで、法務省お尋ねするわけですが、昭和五十九年一月十二日に青森地裁弘前支部訪問販売員岩井達雄ほか二名、ほか二名というのは女の方ですが、それが恐喝をしたということで懲役二年六カ月、それから五年間執行猶予ということで判決があったわけです。それは確定しておりますから記録はだれでも見られるわけですが、これは一体どういう事案なのか概要を説明願いたいと思います。  それから、訪問販売員というのは一体何なのか。これは弘前に住んでいる人ですが、二人の女の人は仙台に住んでいる人なんですね。これはどういうふうなことなのか、お聞きしたいというふうに考えております。
  6. 筧榮一

    筧政府委員 お尋ね事件でございますが、今稲葉委員指摘のように本年一月十二日に青森地裁弘前支部判決がありまして二十七日に確定をいたしております。被告人岩井達雄ほか二名でございます。  判決で認定されました事実の要旨を申し上げますと、被告人らは、共謀の上、弘前居住の四十七歳の女性に対しまして、あなたがおろした子供や死亡した前夫が成仏できずに苦しんでいる、霊を成仏させないと幸せにはなれない、全財産を投げ出せば成仏させてあげるなどと申し向け、霊が乗り移ったと称して奇矯な振る舞いをするなどして同女を畏怖させ、昭和五十八年七月二十九日、現金千二百万円の交付を受けてこれを喝取したというのが概要でございます。  なお、訪問販売業につきましては詳細に存じませんが、この者たち印鑑訪問販売を業としていたようでございます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは判決を見ると、統一協会だということは書いてありません。ですけれども、この訪問販売員というのは一体何を意味するのかはっきりいたしませんけれども、この判決具体的内容から見まするというと、宗教的なにおいが非常に強いということは考えられるんですが、なぜこれまた千二百万円の金を出したのか、これも常識的には考えられないんですがね。ここら辺のところは一体どういうふうに理解をされておられるわけですか。  また、どうしてこういうことを起こしたか、その動機はどういうところにあるのですか。この中の二名というものが統一協会会員だということはあなたの方では御存じですか。それから、家宅捜索をやったときに統一協会の聖典が出てきたということが報ぜられておるのですけれども、その点についてはどういうふうに理解されていますか。
  8. 筧榮一

    筧政府委員 なぜこのような千二百万円もの大金を出したのかという点は私も判決事実等を読んだだけで確かに不思議な感じはいたしたわけでございます。ただ、起訴状を読みますと、この被害者が非常に家庭的な不幸続きで、不安と申しますか精神的に参っていたところへ三名が乗り込みまして、先ほど申し上げましたように成仏できないでいるというようなことを言って、さらに霊が乗り移ったようにその辺を歩くといいますか、はい回ったり、それから被害者が外へ出ようとするとその前へ立ちふさがったりというようないわば奇矯な行動を再三繰り返して、今申し上げましたような精神状態被害者が完全に参ってといいますか、畏怖して金を出したということしか考えられないと思います。  なお、被告人三名のうち二人が統一協会会員であるかどうかということについては承知いたしておりません。ただ、捜索の際に統一協会関係の書籍があったということだけは記録で明らかでございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私も、これ、千二百万円というのは大金ですから、どうして出すに至るのかよくわからない。私の疑問は、統一協会関係訪問販売貝のところからも出てまいりますように、今言ったように家宅捜査のときに教典が出てきているわけですからね。そのことから考えまして、これは恐らく販売にノルマか何か課せられておって、その金を出すためにやったんではなかろうかという疑いを持たれているのですけれども、率直な話、私も、確定記録ですから記録を見られるのですけれども、見ているわけじゃありません、間に合いませんでしたから、これ以上のことはできないのですけれども、どうもそういう疑いが非常に強いのですね。  それから、もう一つ事件があるのです。これは五十五年四月十一日に、神戸地裁竜野支部というところがあるようですが、そこで詐欺後藤邦雄ほか四名ですかが判決を受けていますね、これは具体的にどういう事案でしょうか。
  10. 筧榮一

    筧政府委員 御指摘事件は、後藤邦雄ほか四名につきまして、神戸地検竜野支部神戸地裁竜野支部詐欺罪昭和五十五年一月二十六日ないし三月三十一日の間に起訴をいたしまして、神戸地裁竜野支部におきましては、同年四月十一日、被告人ら五名につきまして、それぞれ懲役一年ないし一年六カ月、いずれも三年間執行猶予という判決を言い渡し、この判決は同月二十六日に確定いたしております。  この公訴事実といいますか、判決に認定した事実の要旨でございますが、被告人らは、共謀の上、身体障害者ではなく、かつ身体障害者のために車いすを購入してやる意思がないのに、兵庫県居住の三十四名に対し、竹とんぼ等の玩具あるいはのし袋等を見せ、この品物は身体障害者子供たちがつくったものです、この子らに車いすを買ってやる金が要るので買ってください、私は身体障害者電動いすを買いたいが、四十万円要るので、二千円で買ってくださいなどとうそを言って、同人らから寄附金あるいは物品販売名下現金合計四万二千二百円を騙取したという事案でございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは俗にレインボーと称するボランティアグループに属しておる人たちでしょう。この人たちが住んでいるのは大阪じゃないですか。全部が大阪じゃないかもわかりませんけれども竜野まで出かけていっているのじゃないのですか。この人たちも、全部とは言いませんけれども統一協会関係者ではありませんか。
  12. 筧榮一

    筧政府委員 被告人たち大阪居住であるかどうかは、ちょっと詳細承知いたしておりません。  この事件につきましても、判決記録等からうかがいます限り、統一協会関係があるかないかははっきりいたしません。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私どもの聞くところでは、これは統一協会関係というふうに聞いておるわけですが、これだけではないのですね、ほかにもいろいろあるようなんですが、この協会が直接やっているのか別の会社、今のハッピーワールドという会社を通じてやっているのか、その間の経過の構成は必ずしもつまびらかではありません。いろいろ複雑な様相をたどっているわけですね。  このハッピーワールドというのは、輸入商社だけだという形をとっておるのに、何か訪問販売をさせられている人が直接ここへ金を送ってしまったということから、これで国税庁調査をするようになった、こういうふうなことを私ども聞いておるわけですね。しかも、例えば印鑑についても、あるいはつぼについても、あるいは多宝塔というのですか、これらについても、印鑑最初に売るのですね、これは十倍くらいの値段で売るらしいのですが、つぼなんかは四百倍くらい、それから多宝塔というのは五百倍くらいで売る。つぼなどは五千円くらいのを二百万円くらいで売ったり、多宝塔というのは十万円くらいのをひどいのになると五千万円くらいで売ったりしている。そういうふうなことで、消費生活センター苦情が相次いでおる。消費生活センターへの苦情はこれがたくさん出ているということは、きょうは企画庁を呼んでいませんけれども、これはもういわば公知の事実になっておるというふうに考えるわけですね。  そこで、国税庁お尋ねをするのですが、今私が言ったようなことを含めまして調査をする、その中で厳正にやるということは、今世間で言われているようなもの、それから消費生活センターへいろいろな苦情が出ておる、その実態、こういうものを参考にしながらハッピーワールドその他について調査をするということに承ってよろしいでしょうか。
  14. 木下信親

    木下説明員 先生のおっしゃったとおり、あらゆる情報をもとにしまして調査をやっておりますが、調査内容につきましては、個別の会社にかかわることでございますので、御容赦いただきたいと思います。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 宗教の自由はもちろん日本にも最大限あるし、それから思想、信条、それから政治活動といいますか、そういうものの自由ももちろん最大限日本には保障されているわけですから、その点は当然尊重しなければならないことなんですけれども、こういうふうに詐欺まがいの行為をやっておると見てよろしいでしょう。それと同時に、また多額の資金を得ておるということから、国税庁が二月十四日に調査に入ったというふうに私の方では聞いておるわけです。査察とは言いませんけれども調査に入ったということでございますので、これは国税庁として厳正にかつ早急に調査をしていただきたい。これはその後また私も質問しますし、ほかの人からも質問があると思いますが、きょうはそういう点についての国税庁側考えを聞かしていただいて、一応国税庁の方はそれで結構でございます。
  16. 木下信親

    木下説明員 国会で御指摘いただきました点も含めまして、あらゆる情報を収集いたしまして、早急に中身を洗いたいと思っております。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 きょうはこの程度にしておきますけれども会社があるんです。これは四億九千万円の資本金会社なんですが、ハッピーワールドというのがあるのです。古田元男という人が代表取締役をやっておりますが、最初の段階では別の会社だったようです。名前が二回変わって、五十三年の十一月十六日に株式会社ハッピーワールドになったんです。今度は、企画庁ですか、消費生活センターの人も来てもらって事情をお聞きいたしますが、今の印鑑、つぼ、多宝塔訪問販売が非常に巧妙にやられて、しかも非常に弊害があるということで苦情が相次いでいるわけですね。ここら辺のところはしっかりしなければいけない、こういうふうに私は考えております。  これをめぐる問題は、まだほかにもありまして、この前もちょっと聞いたんですが、これは別の機会にするわけなんですが、東京で十一月に、東京メディアというのがあるわけです。それに対して、文鮮明という人のビザの問題が出てくるわけです。これはアメリカで、この前入管局長によく調べておいてくれと言いましたけれども脱税事件懲役二十何カ月と罰金何万ドルかの刑を受けて上告中のようなんですが、そういうような中で、秋の問題ですが、これが入国しようとする動きもある。  それから、多くの青年男女会員を、何かよくわかりませんけれどもアメリカへ派遣しておる。そうしてレーガンの選挙運動の応援をさせておる、そういうようなことのために行くんだという説もあるわけなんです。いずれにいたしましても、いろいろな問題が出まして、これは、アメリカ大使館に対してもビザを出さないでくれというふうな父兄からの陳情もいっているということなんです。そういうようなことで、今のつぼや印鑑とか多宝塔を売る場合の売り方、こういうふうな問題を含めてたくさんの問題がありますので、これだけで、もう少し進展を見ながらいずれ質問をさせていただきたいというふうに考えておるわけです。  今の弘前事件竜野事件は、これは確定しているわけですから、記録をよく調べておいていただきたいと思うのです。これは、本来ならば私どもが行っても、一般の人は閲覧できるだけでコピーはとれないわけですから、あなた方なら、法務省なら事実上コピーをとれるわけだから、コピーをとっておいてよく研究していただきたい、こういうふうに思っております。これは非常に困っているんですよ。これは、大臣知っているでしょう。だから、これは宗教の自由だということで、そこへくるからなかなか難しいのです。  徳島の地裁人身保護が出まして、これは十九歳の女の人で大学生なんですけれども、帰ってきちゃったんですか。それに対して統一協会側から人身保護が出たんですが、それが却下されているわけですね。これは未成年の場合だから、親権の問題があるから、親権の行使の範囲内だということで認められているのですけれども、二十を過ぎた場合には、これは宗教問題ですから、なかなか難しい点があるのですが、とにかく困り切っているということは事実ですね。そこら辺のところがありますので、これは法務省人権擁護局にもいろいろ問題がいっていると思うのですが、考慮をしていっていただきたい、こういうふうに考えておるわけです。  これは全部まとめまして、別の機会質問をいたします。これはおいおい税金の問題が出てくるのじゃないかと思う。各地で事件が出てきておりますから、そのときにもっと深くきちんとした捜査をやっていればいいんだと思うのですけれども、余りそこまで捜査をやらないで打ち切っちゃっていますからね。だから、根がはっきり出てこないんですよ。そういう点があります。この判決を見たって、そこまで出てませんけれども、またそこまで判決に書く必要があるかどうかというのはちょっと問題がありますからね。ですけれども、いずれにしてもそういう点がありますから、別の機会にこれだけはまとめてゆっくりやらせていただきたいというふうに考えております。  そこで、この前から問題となっておりまするというか、再三ここでも取り上げられておりまするサラ金規制法の制定に絡んでか絡まないでか知りませんけれども、とにかく東京地検遠藤何がしを業務横領で逮捕し、起訴していることは事実ですな。それは現在どういうふうになっておるのですか。
  18. 筧榮一

    筧政府委員 稲葉委員御承知のように、遠藤悦三につきまして本年二月二十二日に業務横領起訴いたしております。その後、東京地検におきましては同人に対する余罪の有無等について捜査しているというふうに聞いております。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはやけに簡単ですね。もう少し詳しく話しできるでしょう。  では、まずこういうふうに聞きましょうか。この事件特捜部が取り扱った、これが第一。それから、検事認知事件、これが第二。この点はどうですか。
  20. 筧榮一

    筧政府委員 そのとおりでございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 検事認知というのは、率直な話、全検察庁の占める中の割合でどの程度ありますか。一%ないでしょう。それは急に聞かれてもわからないでしょうけれども、百分の一までいかないですね。百分の〇・五までいかないんじゃないかなと思うのですね。特捜部告訴があってやるのが普通ですな、特捜の目的は必ずしも告訴とは関係ありませんけれども。  まず検事認知でやったということが一体どういう意味を持っているのでしょうか。
  22. 筧榮一

    筧政府委員 お話しのように検事認知の場合、直告事件と申しておりますが、告訴告発等を受けてやる場合もございますし、そうでない場合もございます。  本件の場合は、本件業務横領犯罪の嫌疑についての端緒東京地検特捜部認知といいますか端緒を得ましたので、特捜部において捜査を開始したということでございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ちょっと今のはおかしいんじゃないですか。告訴告発があった事件検事認知することがあるようなことを言うけれども、それは告訴告発事件として取り扱うので、検事認知とは別じゃないですか。そういうふうに考えるのが普通ですね。だから、今私が言ったのは、検事認知というのは百分の一ないでしょう。どのくらいありますか。大ざっぱでいいですよ、今ここであなたの方で統計とっているわけじゃないだろうから。私の考えでは、千分の五までいかないんじゃないですか、千分の二、三くらいじゃないかなと思います。はっきりわからないけれども、おおよそどのくらいですか。
  24. 筧榮一

    筧政府委員 正確なパーセントは覚えておりません。ただ、通常、司法警察員からの送致が大多数を占めることは間違いないと思います。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは、警察からの送致が大多数を占める行き方がいいか悪いか別ですよ。それから、告訴告発によって捜査端緒を得るという事件があるわけです。それもありますけれども、そのほかに、今のは検事認知だというのですから、検察庁が握った情報によって活動を起こしているのですから、これは極めて異例なことなんですよ。  しかも特捜部がやったということが異例なんです。普通の業務横領なら特捜部がやる必要ないのですよ、刑事部でやればいいのですから。そうじゃないですか。それはどうですか。これは、名前は言わぬけれども部長が二人いるでしょう。副部長が二人いて、片方の副部長のところで担当してやっているわけでしょう。だから、極めて異例のことではないのですか。普通なら刑事部でやればいいのじゃないですか。直告事件ならば、殊に財政経済に関する事件については特捜部がやるというので、そこでやる係はありますよ。だけど業務横領の場合にはそっちでやればいいのだもの、普通なら刑事部でやるのですから。そういうことじゃないですか。
  26. 筧榮一

    筧政府委員 業務横領刑事部あるいは特捜部、どちらでやる場合もあるかと思います。それは事案内容にもよりますし、あるいはその犯罪端緒をどちらがとったかということにも関係あるかと思います。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 事案内容による。じゃ、刑事部でやる場合と特捜部でやる場合と事案内容はどういうふうに違うの。あなたが答えるとだんだんあれになるけれども、これはどういうふうになるの。
  28. 筧榮一

    筧政府委員 刑事部では大体警察から送致された事件を主にやっておるわけでございます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、この事件警察から送致された事件じゃないし、直告でもないというのでしょう。検事認知だというのでしょう。検事認知でやるというのは、今私がお話ししたとおり、異例中の異例なんですよ。きょう前もってそのパーセンテージまで調べてくれと言ってなかったからあれですけれども、ほとんどない。だから、検事認知でやるということは検察庁がそれだけ積極的にこの事件について対応をしている、こういうことでしょう。
  30. 筧榮一

    筧政府委員 特にこの事件について積極的であるというふうには理解いたしておりませんが、いかなる犯罪についても積極的に捜査は行っていると思います。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、検事認知するに至る捜査端緒というものは何なんですか。告訴じゃないというのでしょう、告発でもないというのでしょう。それなら一体何なんですか。
  32. 筧榮一

    筧政府委員 捜査内容にかかわりますので断定はいたしかねるところでございますが、情報とか、あるいは民間人からの通報とか、あるいは投書とか、いろいろそういう形のものが一般でございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今あなたが言われた三つのこと、それが東京地検特捜部に入って、そして本件が着手されたということですな。本件については余り内部のことを聞くのもあれかと思いますけれども名前は言いませんが、ある副部長片方の副部長のもとに一つ布陣がしかれておる、こういうことでしょう。
  34. 筧榮一

    筧政府委員 特捜部の組織上、副部長が二人おりますので、いずれかの者が指揮をといいますか、とりまして、その事件捜査に必要な布陣がしかれていると思います。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 じゃ、こういうふうに聞きましょうか。東京地検押収しましたね。押収をして本人を逮捕したわけでしょう。押収物がどの程度あったのですか、何を押収したのですか。
  36. 筧榮一

    筧政府委員 いかなるものを押収したかは、捜査内容にわたりますので、内容につきましては御容赦いただきたいと思います。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはそうだけれども捜査に必要なものを押収した、こういうことでしょう。そんなことは当たり前の話です。だけれども捜査に必要か必要でないかは押収してみなければわからない場合もありますから、初めから特定して押収するわけじゃありませんね。だから、帳簿、伝票類、証書類、そういうものを中心として押収した、こういうことでしょう。そんなことは当たり前の話です。
  38. 筧榮一

    筧政府委員 本件被疑事実の内容から考えてそのように思われるわけでございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、その帳簿の記載が正確であるかとか、伝票の記載がどうであるかとか、いろいろなほかの証書、メモ類もあるかもわかりませんが、そういうようなものによって、この被疑者、被告人関係する部分あるいは関係しない部分全体を含めて金の流れを追っている、こういうことでございますか。そういうことでしょうね。
  40. 筧榮一

    筧政府委員 被告人遠藤に対する業務横領の余罪についても捜査しておるわけでございますから、今おっしゃったような点の解明を続けているかと思います。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 遠藤に対する余罪ということですが、それは遠藤だけに限るのか、あるいはそれに関連をする人をも含めてのことになるのか、こういうことについてはあなたの方としてはどうでしょうか。
  42. 筧榮一

    筧政府委員 遠藤に対する業務横領の余罪の捜査をしていることは、これは間違いございません。そのほかの点について何をしておるか、あるいはどのような捜査をしているかという点については、内容にわたりますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 内容にわたるというのは、どうして内容にわたるのですか、よくわからないですな。内容にわたるということは、各方面にわたるある程度の広範な面からの捜査をしておるということを含む、こういうふうに承ってよろしいでしょうか。
  44. 筧榮一

    筧政府委員 現時点でどのような捜査をし、あるいは捜査をしているとかしていないとか、どのような点で今捜査をやっておるかということにつきましては、捜査の性質上、内容にわたることは差し控えさせていただきたい、こういう趣旨でございます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、最初起訴をしましたね。それは幾らの業務横領起訴したの。それは四月十八日に第一回の公判があるんでしょう。そこはどうなっていますか。
  46. 筧榮一

    筧政府委員 第一回の起訴は五千二百五十五万円余でございます。それから、第一回公判期日は四月十八日に指定されたと聞いております。
  47. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それで、逮捕はいつでしたか。逮捕からあれしまして、どうしてまだ身柄が、普通ならば当然出られるわけですけれども、当然出られるかどうかは別として、額が大きいですし、常習性があるという認定もあるかもわからぬ、あるいは証拠隠滅ということも考えられるかもわからぬから、それはあれかもわかりませんけれども、どうしてまだ身柄が出られないわけですか。
  48. 筧榮一

    筧政府委員 逮捕月日は本年め二月一日でございます。身柄がどうして出ないのかというのは、裁判所の保釈がありませんので、継続して勾留しておるということだと思います。
  49. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはそうですね。裁判所の保釈がないのだけれども、それは保釈請求があったかないのか、これは私も個人的に聞いていますけれども、しかし、それは本人のプライベートなことにもなりますから、私ここで申し上げません。  それで、後から追被害届が出ましたよね。それはいつ出たわけですか。幾らでしたか。五百万ぐらいのことをこの前言っていましたね。
  50. 筧榮一

    筧政府委員 その被害届といいますか、告訴状の金額との差はちょっと覚えておりませんが、それにこだわりませんで、起訴した以外の額を捜査の上で確定して、追起訴の要があれば追起訴をするわけでございますから、その金額はまだ未定であると言うしか言いようがございません。
  51. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 追被害届が出たのでしょう。五百万ぐらいのものが出たのではないですか。それはいつですか。
  52. 筧榮一

    筧政府委員 二月二十日付の告訴状でございますが、その告訴状の記載自体によりますと、なおこのほかに五百万円とか、百数十万とか、四百三十万とかを横領したというふうな記載がございますので、これを足せば約一千万ちょっとぐらいになるのかと思います。
  53. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この事件でほかの地区でも、これは任意捜査のようですけれども、任意提出なり何なりをした、そういう事実はあるのですか。
  54. 筧榮一

    筧政府委員 いかなるものを押収したかについても答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  55. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 押収というか、任意提出だから結局押収になるのかもわかりませんけれども、それはほかの地区でもやったということは、これは公知の事実になっているのではないですか。どこの県でやったとか、どこでやったというその特定は、ここであなたの方で言うのはあれかもわかりませんけれども、例えばある地方でやったとかこの地方でやったとか、これはもうほとんど公知の事実じゃないですか。公知の事実なら聞く必要ないという議論もあるかもわからぬけれどもね。それはどうなんですか。ほかでもやったことはやったのでしょう。強制捜査じゃないですよね。強制捜査じゃないけれども、ほかでもこれをやったことはやった、そのことは間違いない、これはもう一般に言われていることなんだから。そういうことがあったと思いますというか、ありましたけれども、その地区については、特定の地区についてはここで申し上げるのは御容赦願いたい、こういうのなら話はわかりますけれども、そのぐらいのところまではいいのではないですか。
  56. 筧榮一

    筧政府委員 捜査内容でございますので、私どもの方からこれを発表するとか、あるいは確認するということは差し控えたいと思います。
  57. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 わかりました。そうすると、私の方から言えばいい、こういうことなのかもわかりませんけれどもね。  それで、私ども聞いているのは、例えば今度関西を中心としてといいますか、相当あちこちでやったというふうに聞いておるのですが、それは東京地検の方で全部取りまとめて一応捜査をしている、恐らく東京地検では次席が総責任者になっているんだと思いますけれども、これはそういう形になっているわけですか。
  58. 筧榮一

    筧政府委員 どういうやり方でやっておるかも捜査内容にわたりますが、とにかく東京地検捜査をしていることは間違いございません。
  59. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だんだんわかってきました。  じゃ結論を聞きますと、この事件はもう捜査は終わったのでしょうか。
  60. 筧榮一

    筧政府委員 まだ現在捜査は継続中でございます。
  61. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、おおよそのめどはどの程度になるのですか、時期的に、それから人的な広がりについては。
  62. 筧榮一

    筧政府委員 その点も今後の捜査の推移を見なければわかりませんので、現段階でどうということはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  63. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 わかりました。  法務大臣、この事件についていろいろ言われていることは御案内のとおりですね。それに対しては、ただすべきは厳正にしっかりただしていく、これは当たり前のことですけれども、そういうことについての大臣の決意というかお考えを表明していただきたい、こういうふうに思います。
  64. 住栄作

    ○住国務大臣 この事件につきまして、先ほどから刑事局長から御答弁申し上げているとおりでございまして、現在捜査中のことでもございますので、私からとやかく言うのはどうかと思うのでございますけれども、お話しのように、検察が取り上げている事件でございますので、検察としてこれは御指摘のように厳正にやってくれる、こういうように期待をいたしております。
  65. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 別のことです。実は私よくわからないのですが、国際共助法、この具体的な運用の仕組み、これはどういうふうになっているのでしょうか。実は私この前新聞を見たときに、これは何だか間違ったことが書いてあるなと思ったのです。法務大臣が国家公安委員会に命ずるように書いてあったのですけれども、私の読み違いかもわかりませんけれども、これはおかしいなと思っておったのですが、具体的にはこれはどういうように運用されるのですか。一般論ですよ。
  66. 筧榮一

    筧政府委員 いろいろ仕組みがございますが、まず原則として、外交ルートを経由して共助の要請が来るわけでございます。その際、いろいろな要件もございますけれども、例えば相互主義の保証が必要でございますが、そういう要件を満たすと認められますと、外務大臣から法務大臣に送付されてまいります。法務大臣はその段階で、当該共助要請にかかる犯罪が、例えば政治犯罪でございますとか、その他法律に書いてございますけれども、共助を行うことができない場合に該当するかどうかを検討いたしまして、共助を行うことができない場合には当たらないという認定をし、かつ共助要請に応ずることが相当というふうに判断されますときは、共助を実施するということにするわけでございます。  そこで、その場合にどこにやらせるかということにつきまして、証拠の収集を行う機関が、そのこと自体が明らかな場合を除きまして、所管に応じまして国家公安委員会等と協議した上、その共助要請の内容あるいは事案の性質等に応じて相当と認める、一つは地方検察庁の検事正に関係書類を送付して証拠の収集を命ずる、または、国家公安委員会もしくは海上保安庁長官その他特別司法警察職員の置かれている国の機関の長に共助の要請に関する書類を送付することになっております。  なお、国家公安委員会が関係書類の送付を受けましたときは、さらに相当と認める都道府県警察に対して関係書類を送付して証拠の収集を指示することとされております。  証拠の収集が終わりますと、今申し上げた逆のルートでもって外務大臣のところまで行って外国へ送られるということでございます。
  67. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは警察の方にお尋ねをするわけですが、国際刑事課長さんですかね、今のは一つのルートですが、このほかにICPOを通ずるルートもあるわけですか、それはどういうふうな形になるわけですか。
  68. 金田雅喬

    ○金田説明員 ICPOルートによって要請がなされました場合には、国家公安委員会が、政治犯罪に該当するかどうか、それからもう一つ、我が国でもその行為が犯罪になるかどうか、双方可罰性と言っておりますけれども、それについて審査を行いまして、受け入れることを相当と認めた場合には、法務大臣と協議をいたしました上で、意見を聞きました上で都道府県警察に必要な調査を指示するということになっております。  外交ルートの場合との違いは、一つは、インターポール、ICPOというのがお互いに協力するという建前ででき上っておるものでございますから、相互主義という要件が外されておりますのと、それから証人尋問、証拠物の提供ということは外交ルートで行えることになっておりますので、その二つの要件については審査をしないということ、その点が違いますけれども、あとは同様でございます。
  69. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今のICPOのルート、例えばロスの事件ですね、世上言われているこの事件についてはICPOを通じて何かあったのですか、あるいは直接何か向こうからあったのですか。
  70. 金田雅喬

    ○金田説明員 ロス事件につきましては、去年の十一月に白石千鶴子さんの捜索願が山口警察に提出されましたので、警察調査を行いましたところ、渡米したまま帰国していないということがわかったわけでございます。それで、ICPOを通じましてアメリカ側に所在確認の手配を行っておりましたところ、アメリカ側から、ロス市警で使用するから詳細な歯の特徴、エックス線写真の送付を要請してまいりました。したがって、それに応じましてこれを送付したわけでございます。
  71. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、今後はその問題についてはあなた方の方としてはどういうふうにするのですか。もちろん、向こうにも協力するということも一つあるでしょうし、それから協力とは別に、独自にこの捜査なりあるいは調査といいますか、捜査の前の段階なので調査という言葉がいいでしょう、あるいは情報収集でも何でもいいですが、それはどういうふうにやるわけですか、また、やっているわけですか。
  72. 金田雅喬

    ○金田説明員 今後の対応につきましては、アメリカ側から協力の要請があれば、もちろん、できることかどうか判断いたしました上で、できるだけの協力をしていくということでございます。  それから、我が国でということでございますけれども、現時点ではまだ死亡が犯罪によるものかどうかということをアメリカ側でも確認しておらないようでございます。それからさらに、日本人がやっておりませんと国外犯にならないものでございますから、日本人が関係しているかどうかわかりませんので、アメリカ側とできるだけ緊密な連絡をとっていくということになろうかと思います。そして、情報収集という言葉が適当かどうかあれですが、できるだけ情報収集あるいは調査を進めていくということでございます。
  73. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その情報収集、調査というのは警察庁が独自に国内においてやる、こういう意味ですか。
  74. 金田雅喬

    ○金田説明員 独自という意味がちょっとわかりかねますけれども日本警察捜査の前段階としてという意味でございますれば、そういうことでございます。
  75. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これもこれ以上進んでいるわけじゃありませんし、それをまたここで聞くのもどうかと思いますので、この程度にしておくわけですが、独自にという意味は、独自にもという意味です、私の言う意味は。言葉が足りなかったですが、独自にもという、「も」が入るのです。質問し終わってからそれに気がついたのですが、そういう意味を込めての話です。  そうすると、日本の国内におきましては独自にも情報収集というか、そういうふうなものについては努力中だ、こういうことですか。
  76. 金田雅喬

    ○金田説明員 日本人が亡くなったということでございますし、疑惑が伝えられておりますので、独自にも情報収集を進めていくということでございます。
  77. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大臣、これは法務省にももちろん関係があることですし、国務大臣としてもあれなんですが、一部に有害図書を——有害図書というのは何をいうか、ちょっとはっきりしませんけれども、いろいろな問題を含んでいると思うのですが、それを法で規制しようということが考えられておるわけですね。まずこれについては大臣どういうふうにお考えなのでしょうか。その前段として、青少年の非行といいますか何といいますか、殊に性犯罪、まあ犯罪でなくてもそれに絡むようなことが非常にある、そういうふうなことについて、一体どこに原因があるかということを含めて、それから、今のそういう図書の規制ということについて、大臣としてはどういうふうにお考えなのか、こういうことを承らせていただきたい、こう思うのです。
  78. 住栄作

    ○住国務大臣 稲葉委員御承知のように、最近の青少年の刑事事件は毎年毎年増加しております。私ども、これは大変憂慮すべき事態であると思っておるわけでございますが、それは一体どこに原因があるのかということになりますと、これはいろいろな観点から見ていかなければならないと思っております。  もう一つは、青少年の健全育成を図るということ、これは極めて大事なことでございまして、そういう青少年の健全育成という観点から悪い影響を与えるあるいは有害であるという図書、いわゆる有害図書が出回っているということは、既に今国会の衆議院予算委員会等で私も実物を拝見して、これは大変激しいものだなと思いましたけれども、そういった図書が流れているということももう御承知のとおりだと思うのです。  こういう有害図書等の販売等を規制する条例、これはほとんどの都道府県でそういう条例ができております。これも青少年の非行防止に大きないい影響を与えておると思うのでございますが、そういったこととあわせて、これも全国的な観点からそういう図書類を規制したらどうだろうか、こういうことも政策の一つとして、私はそれなりに評価できることじゃないかと考えております。ただ、それは申し上げるまでもないことでございますけれども、憲法の出版、表現、そういう自由等との関係を十分考慮した上でやはり考えていくべき問題じゃなかろうか。具体的にそれじゃどういう内容のものがいいのかということにつきましては、既に自民党の方でも案をつくっておられますし、それからまた各党とも協議をされているようでございまして、私どもは、そういうことでまだ流動的でございますから、そういう立法の中身についてここでどうこうという意見を申し上げる立場にはない、こう考えておりますけれども、政策的には、私は十分配慮しなければならぬ点は多いと思いますけれども、十分あり得ることだ、こういうように考えております。
  79. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今の点につきましては、私はまず個人的には青少年の犯罪というか非行が増加しているということが単純に言えるかどうかという問題があると思うのですよ。これは必ずしもそうではないと私は見ているのですね。仮に有害図書だとしても、それを法律で規制というか立法してやっていって、それで取り締まってすべて問題が解決するというわけじゃないと考えますが、殊に憲法の今言った表現の自由との関係がありますから、これは慎重を要する問題だ、何でも法律で規制すればいいんだという考え方は非常に安易な考え方で問題だと私は考えておるのですが、これはその点を含めてもしお考えがあれば承りたいと思います。
  80. 住栄作

    ○住国務大臣 私も、何でも法律でということがいいかどうかということについては問題があろうかと思っております。ただもう売らんかなというようなことで、青少年のことを何も考えないような極端な出版物があの予算委員会のときに出たんだろうと思うのでございますが、ああいう内容を見ますと、ちょっと私自身もショックを受けました。ですから、それはそういうことのないように出版される立場の人が本当に自浄作用ということで自主的に判断していただけると、これは非常にいいことだ、法律を要しないことでございますのでいいことだと思いますけれども、現実にああいうことがありますとどうだろうか。それと同時に、もう現に都道府県の条例で、ほとんどの県でそういう条例ができておる、それで足りるかどうかという問題も一つあるかと思います。しかし、そういう条例があるにかかわらず、なおそういうものが横行、出版されておる。  こういうようなことは一体何で防止すればいいのか、こういうことになると思うのでございますが、私は先ほど申し上げましたように、法律がすべてだとは思いませんけれども、法律を要するような段階にもあるんじゃないか、それは判断の問題ですけれども。そういうことで、せっかくそういう検討が続けられておるわけでございますから、どういうようになっていくかわかりませんけれども、適切な手段が講ぜられるような考え方でそういう法律ができるのも適切有効かなということも考えておるということを申し上げておるわけでございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 では時間の関係もありまして、内閣法制局の方、最後になりまして、大変済みません。  去年の十一月に、最高裁の選挙区の定数の問題に対する俗に言う違憲訴訟の判例があったわけですね。私がお聞きをいたしたいのは、現在のままで法律を変えないで、公職選挙法を変えないでそのまままた総選挙が行われたときに、これは一体可分的に無効の問題が起きてくるのか、不可分的に選挙全体が無効だという問題が起きてくるのか、こういうことについて内閣法制局としての見解というか、それをお伺いをいたしたい、こういうふうに考えるわけです。
  82. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 まずお尋ねの前提といたしまして、昨年の判決は、選挙の基礎となりました定数配分規定のもとにおきます投票価値の格差が憲法の選挙権の平等の要求に反する程度に至った場合におきまして、当該定数配分規定が憲法の要求する合理的期間内に改正されなかったときに違憲になる、こういう前提をとっていると考えます。  そういう前提をとっております場合に、これまた御承知のように、今のお尋ねに関連して申し上げますと、昭和五十八年の判決自身、この合理的期間がいつまでかということについては特に明示をしておりません。したがいまして、いつまでに改正されなければ法改正がされないまま行われました次の選挙の基礎となりました定数配分規定が違憲になるかという問題については、明確に言うことができないわけでございます。  そういう点から申しますと、裁判所判決につきまして行政府に属する者が軽々に意見を申し上げることはどうかと思いますので、それは差し控えさせていただきたいと存じますけれどもお尋ねの点に関連して申し上げますと、お尋ねは、仮に法改正がされないまま次の選挙が行われ、その基礎となりました議員の定数配分規定が違憲であるとされた場合、違憲とされるのは当該規定の全体であるのか、あるいは当該規定のうち憲法の選挙権の平等の要求に反する程度に至っていた部分のみかというお尋ねだったと思います。  この点につきましては、昭和五十八年の判決は、当然のことではございますけれども、直接には触れておりません。その五十八年の判決が引用しております昭和五十一年の最高裁の判決によりますれば、必要でございますれば後で判決理由を申し上げますが、結論だけを申し上げますと、その全体というふうに判示をしておりますので、私ども、その全体ということで考えております。
  83. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 全体という意味は、私の質問の不可分だ、こういう意味ですね。
  84. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 議員の定数配分規定全体で、不可分ということで考えております。
  85. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 結構です。
  86. 宮崎茂一

    宮崎委員長 小澤克介君。
  87. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 去る三月二日の当委員会におきまして、私が精神障害者の人権擁護の観点からいろいろお尋ねをいたしまして、特に精神障害を理由に拘禁をされている者について救済手続に欠けるのではないか、とりわけ国際人権規約B規約の要件を満たしていないのではないか、そういうことについてお尋ねをしたわけでございます。大臣からも、少なくとも研究、検討していきたい、こういう御答弁をいただいたわけでございますが、その後に宇都宮市の医療法人報徳会宇都宮病院においてリンチ事件といいますか、殺人の疑いが持たれる、こういう事件が発生といいますか、明るみに出まして、強制捜査あるいは看護助手ら五人が逮捕される、こういう事態となりまして、私の危惧していたところが現実のものとなったわけでございます。  そこで、まず最初に法務大臣、さらにまた精神障害者に関しまして精神衛生法等の所管官庁であります厚生省当局に対しまして、今や精神障害による被拘禁者の人権擁護について法制度その他抜本的に見直さなければいけない、再検討しなければいけない時期にあるのではないか、こう考えますが、御見解を賜りたいと思います。
  88. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  最近起こりました事件、事実とすればまことに残念なことであると思っております。しかるところ、厚生当局におかれては現在鋭意事実関係を究明されておるわけでございまして、その上で精神障害者の人権を尊重する見地に立って精神病院に対する適切な対応措置を検討されておると伺っております。私どもといたしましては、専門的知識を持っておられる厚生省においてそのような対応をとっておられますので、今後どのようになさるか、それを見守ってまいりたい、そのように考えております。
  89. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 今のお答えによりますと、この宇都宮病院の件については事実がどうであったか、とにかく調査が先である、その後厚生省とも連絡の上、見守っていきたい、こういうお答えだったかと思うのですが、私は、この事件そのものは、現在のところ傷害あるいは致死事件ということでございますので、司法当局の手によっていわば解明されるだろうと思います。  問題は、伝えられているようなことが事実か否かはともかくとして、このような問題をはらみながら入院患者から救済手続が現にとられ得なかった。既に出た者を通じていろいろ社会的に問題となっていき、そしてついに捜査機関のメスが入る事態になった、こういうことでございますので、この事件そのものの解決というよりは、もっと根の深いところで、精神障害による被拘禁者が置かれている現状についてもっと認識を深めて、そして解放すべき場合に解放されていないという場合があれば、その救済手続が必要ではないか。特に先ほども指摘しました国際人権規約Bの各条項等に照らして、前回の大臣の御答弁のように研究、検討していきたいということでは間に合わないのではないか、いわば焦眉の急ではないかと考えるわけでございます。この点について大臣の御見解を明らかにしていただきたいと思います。
  90. 住栄作

    ○住国務大臣 一般的に人権をどうやって守っていくか、それを所管する立場の法務省として、実は御承知のように立入検査等の権限も持っておりません。そういう意味で、いろんな情報を集め、そしてまた人権擁護機関、擁護委員、そういう方が協力して国民全体が人権思想に徹して、身体障害者、心身障害者はもちろんでございますけれども、国民の人権を守るように努力を続けていく、こういうことはもちろんでございます。  それと同時に、精神障害者が入院をしておる場合に、これをどうやってまた考えていくか、実はそういうことになりますと、これは所管の省が違うと申しますか、病院、医者の立場でどう考えていくか、こういうことも十分考えなければならないわけでございます。いろんな問題が出てきますけれども、それは医療という立場でどうなるかということも、これは深く検討もしなければならない。そういうところに入院している精神障害者、この問題について、これは精神衛生法の法律にも関係してくるかと思うのでございますが、そういう意味で厚生省にも私どもの立場でもいろいろ連絡をしながら、適切な対応というものを考えていかなければならない、こういうように思っておるわけでございます。
  91. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 人権擁護に当たる法務省、特に人権擁護局あたりが官庁として精神障害者の人権擁護にどう当たるかということにつきましては、先ほど御答弁があったとおり、例えば立入検査の権限がないとか、いろいろ限界がある。恐らくそのとおりだろうと思います。また、医療との関連についても慎重な検討を要する、これもこのとおりだろうと思いますが、やはり拘禁されている者が、みずからのその拘禁状態について自分が一番関心が深いわけでございます。  したがって、その障害者本人が拘禁は違法だと考えた場合に、救済の手続がとれる、そういう法的手続の整備が一番必要だし、かつ、それが人権侵害をなくすいわば最も正道であろうか、こういうふうに考えるわけですね。したがいまして、そういう救済手続の法的整備についてどうお考えなのか、もう少し突っ込んだお考えを示していただきたいわけです。
  92. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  先生のおっしゃられる御趣旨よくわかるところでございますが、ただ実際問題として、どのように救済上問題があるのか。実は、私どもの方に患者本人からやはり救済を求めてくるという事案もあるわけでございまして、例えばそれが不当入院である、自分は全然精神障害者ではないのに不当に収容されているというようなことの申し立てがあるわけでございまして、そういうものにつきましては、個別的に対応してまいっておるわけでございます。ただ、多くの患者の中にはやはり実際上なかなか申し立てもできないというような面があるのかもわかりませんが、今度の宇都宮病院、個別な事件ではございますが、しかし、やはり非常に大きな問題でございまして、病院の管理運営体制というものを根本的に問うような重要な問題だと思っておるわけでございます。  専掌機関である厚生省におかれてこの問題を徹底的に究明する、そして人権擁護の立場でいろいろお考えになられるというように承っておりますので、広い意味で患者の取り扱いの万全を期するということでいろいろ御検討なされるのじゃないかと思われるわけでございます。その過程におきまして、人権擁護局といたしましてもいろいろ情報を得、あるいは意見がございます場合には申し上げるというようなことで、将来よりよい病院の運営管理ができるようにいろいろとこちらも考え、努力させていただきたい、かように思っておるわけでございます。
  93. 野村瞭

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  先生御承知のように、現行の精神衛生法におきまして精神障害者の人権を擁護するための規定が種々置かれているところでございます。今回の宇都宮病院をめぐる事案につきましては、現在事実関係を究明しているところでございますが、私ども、人権を擁護する立場からその問題点の把握にも努めているところでございます。今後は、この結果を踏まえまして、精神障害者の人権保護に遺漏なきように適切に対処してまいりたいと存じておるところでございます。
  94. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 私は、今回の宇都宮病院の事件につきまして、先ほども申し上げたとおり、現にその中にいる者、入院している者から外部に対して助けてくれという声がついに出なかった。報道されているところによれば二人も死んでいる、こういう事態があるにもかかわらず、現に中から助けを求める声が外に出なかった、これが一番問題点だろうと思うのです。何らか既に出た者の中からいろいろ指摘があって、そして本件が明るみに出た、こういう経過をたどっている、これが一番問題点だろうと思うわけです。さらにさかのぼりますと、結局、現在拘禁されている者と外との通信あるいは面会といいますか、それが保障されていない、これが一番問題点じゃないか、こう考えるわけです。  そこで、精神障害によって拘禁されている者と外部の者、とりわけ弁護士との接見交通が現在どういう扱いになっているのかについて、厚生省当局にまず現状についてお尋ねしたい。いろいろ場合があり得るだろうと思います。弁護士といいましても、被拘禁者本人が弁護士に依頼したいというふうに依頼する場合、あるいは被拘禁者の近親の者から弁護士が依頼を受ける場合、それからあるいは人身保護請求、これは人身保護法によりますと、何人でも請求をすることができる、いわば請求の適格がだれにでも認められているわけですから、人身保護請求をしようとする者から依頼を受けた弁護士の場合、あるいはしようとする者が弁護士である場合はその弁護士本人、こういった者と被拘禁者との接見交通、現状はどうなっているのでしょうか。
  95. 野村瞭

    ○野村説明員 お答えをいたします。  入院中の患者との面会が病院のいわば私法上の施設管理権の上で支障を来す場合については、それを根拠として面会を制限することもあり得ると思いますけれども、通常は精神衛生法第三十八条に規定をしております行動の制限を根拠としておるわけでございます。その三十八条について申し上げますと、入院患者につきまして、患者さんの医療、保護のため必要最小限度の行動の制限を加えることができることとされておりますので、これを根拠といたしまして面会を制限される場合というのがございます。  今先生が御指摘になりましたいろいろのケースがあるわけでございますが、患者さん本人の依頼に基づく場合については、今申し上げたように、本人の医療、保護のため必要最小限度の制限を加えることができることとされておりますので、場合によって面会を制限される場合があるということでございます。  それから、近親者の依頼を受けた弁護士、あるいは人身保護請求をしようとする者の依頼を受けた弁護士さんが面会を求めた場合でございますが、それにつきましては、患者さん本人が面会を希望しない場合があり得ると思います。その場合には当然制限されることもあるということでございます。  それから、先ほど申し上げましたように、医療、保護の観点から制限が必要になる場合がございます。そういう場合にも面会が制限されることがあるということでございます。
  96. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 今お答えにありました、まず病院側の施設管理権による制約の可能性でございますが、これは理論的にはあり得るんでしょうが、単なる所有権に源を発する権利でございますので、人身の自由というような最も基本的な人権にかかわる外部との接見交通権との関係では恐らく大幅な制約を受ける、現実には施設管理権を理由に面会を拒むということは極めて例外的なとき以外にはないだろう、こう思うわけであります。  問題は、むしろ精神衛生法三十八条の行動制限、これによる制約であろうかと思うわけですけれども、今のお答えの中で、「医療又は保護に欠くことのできない限度」ということからいたしますと、外部の者、とりわけ弁護士というような資格を持った者との面会が医療または保護に欠くことができないために制約を受けるというのはなかなか想像しにくいのですけれども、弁護士との面会が何らか医療目的、治療目的からして障害になるということが現実にはあり得るのでしょうか。いかがでしょう。
  97. 野村瞭

    ○野村説明員 お答えいたします。  精神障害者の症状はいろいろでございますけれども、症状が不安定で近親者といえども会わないことが治療上必要であるという場合がございますので、そういう場合については面会を制限することがあるわけでございます。
  98. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そういう制限をすべきだという判断はだれがすることになりますか。
  99. 野村瞭

    ○野村説明員 主治医が診察をいたしましてその症状を診るわけでございますが、その判断に従って病院の管理者である院長が最終的な判断をいたすということでございます。
  100. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 ここに非常に問題があると思うのですね。結局病院側の判断一つで接見ができないという事態が起こるわけです。例えば、刑事訴訟法上の被疑者などの場合は、弁護士の接見が妨げられれば準抗告というような手続で最終的には裁判所の判断を仰ぐという手続が保障されているわけですけれども、今のように結局この精衛法においては病院側の判断で接見が妨げられる。そうしますと、やはり人間のやることですから、お医者さんといえども恣意的な判断がなされることを防げないのではないだろうか、こう思うわけです。  それからいま一つは、治療上どうしても会わせるわけにいかぬということがあり得るということでしたが、これは当該患者の病状等に照らして具体的、個別的に、しかもそのときどきの症状に応じて判断されるべきだと考えますが、この点いかがでしょう。
  101. 野村瞭

    ○野村説明員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  102. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そうしますと、ある病院あるいはさらに多少限定してある病棟に収容されている精神障害者に関して、一般的に心理的な動揺を来すおそれがあるから弁護士に会わせないというようなことは、そういう判断はあり得ない、そう伺ってよろしいでしょうね。
  103. 野村瞭

    ○野村説明員 一般的にはそのとおりだというように考えております。
  104. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 それから、先ほど人身保護請求による場合は本人が会いたくないという場合には必ずしも会わせる必要はないのではないか、こういうお答えがあったのですが、私はこれは人身保護法が何人にも請求権を与えている趣旨から見まして、場合によっては本人の意思にかかわらず会わせるということが必要なんじゃないかというふうに考えるわけです。しかも、人身保護法によりますと、弁護士によって手続をすることが強制されている。弁護士強制でございますので、特に弁護士に関してはある程度絶対的な面会の保障がなければいかぬのじゃないか、こう考えるのですが、この点いかがでしょう。
  105. 野村瞭

    ○野村説明員 お答えいたします。  人身保護法につきましては私どもの所管ではございませんので、適切なお答えを私どもから申し上げることはできないわけでございます。
  106. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 それでは法務省の方にお答え願います。
  107. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 先生のおっしゃられる趣旨もよくわかるわけでございますが、先ほども出ておりますとおり、これは医療がかかる問題でございますし、私どもその実態をよく存じておりません。人身保護法との関係がどうなるかということにつきましても、そこまでまだよく考えたわけではございませんし、所管事項でもございませんので、私の方としても今のところお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  108. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 法務省からも厚生省からもお答えがいただけないというのは、私はこれはゆゆしい事態だろうと思うのですけれども、ここで押し問答していても仕方がありませんので、両者よく御連絡の上でよく検討していただきたい、そう考える次第でございます。  次に移りまして、精神衛生法による被拘禁者と弁護士との接見交通に関して、厚生省当局としてはどのような指導方針をお持ちなんでしょうか。
  109. 野村瞭

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、精神病院に入院されている患者さんにつきましては、その医療、保護のため必要最小限度の措置として面会を制限する場合もあり得るわけでございますが、これがその限度を超えて行われることがないように従来から必要な指導を行ってきているところでございます。昭和三十二年に精神障害者の取り扱いについて公衆衛生局長通知も出ておるところでございますし、毎年金国の精神衛生主管課長会議等におきましてもこの点について強く指示をいたしておるところでございます。今後とも精神障害者の人権擁護の立場に立ってこの面会等の制限が必要以上に行われないように指導を徹底してまいりたいと考えておるところでございます。
  110. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 大変結構なお答えをいただきましたので、念のためといいますか確認をしておきたいのですが、例えば病院側が、先ほど申し上げたように、特定患者のそのときの状況という個別的な事情を明示しないで、一般的に弁護士と会わせるのは精神的に動揺するからまずいというような言い方で、ある病棟あるいはある病院全体の入院患者について弁護士との面会を拒むというようなときには、それは精神衛生法三十八条の趣旨に照らして正しくないということをきちんと御指導願えるのでしょうか。
  111. 野村瞭

    ○野村説明員 先生のおっしゃった趣旨を十分踏まえて今後とも指導してまいりたいと考えております。
  112. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 行政指導なんでございますが、これはどうしても法制上都道府県知事に対する指導といういわば間接的な指導にならざるを得ないかと思うのですが、そうなりますでしょうか。
  113. 野村瞭

    ○野村説明員 先生おっしゃるとおりに、基本的には都道府県が行うことでございますので、私どもの指示は都道府県に出すということでございます。
  114. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 今、専ら面接のことについてお尋ねしたわけですが、例えば手紙等いわば文書通信、まずこれについて現状どうなっているのでしょうか。特に弁護士に限らないわけですが、弁護士との手紙のやりとり等について制約があるのかどうか、お答えいただきたい。
  115. 野村瞭

    ○野村説明員 お答えいたします。  通信につきましては、憲法上規定されている自由でございますので、これについては従来から行政指導におきまして通信の制限が行われないよう指導してきたところでございます。
  116. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 「精神衛生法詳解」というようなコンメンタールによりましても、「通信の制限は精衛法三十八条による行動の制限には当たらない。制限として行ってはいけない。」ということが明記してあるわけでございます。今のお答えでもそれにのっとった指導がなされているということでございます。今後につきましてもそういう精神で指導をするおつもりなのかどうか。一応確認させてください。
  117. 野村瞭

    ○野村説明員 今後とも通信の自由が保障されるよう指導を強化してまいりたいと考えております。
  118. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 次に移りまして、三月二日の当委員会における私の質問でも指摘したわけでございますが、行政手続における被拘禁者に対する−−今問題になっているのは精神障害者ですが、それに限らずその救済手続について極めて不備ではないか。特に国際人権規約B九条四項ですか、これに照らして、現在の国内法規では我が国も既に批准をしております先ほど言った規約の要件を満たしていないのではないか、そう思うわけでございますが、この点について法務省、いかがでしょう。
  119. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 恐れ入りますが、今B規約の何条とおっしゃられたのでしょうか。
  120. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 九条四項。
  121. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 この点につきましては、突然の御質問でございますので、直ちに的確なお答えができるかどうかわかりませんが、精神衛生法には患者の人権の保護というようなことをも踏まえたいろいろな規定があるようでございまして、そういうものが適切に運用されるということになってまいりますと、直ちにこの九条に反するかどうか、そうだと言い切れるものではないように考えております。
  122. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 これは突然ということではなくて、国際人権規約との関係について事前に通告していたとこちらは理解しておりますが、それはともかくといたしまして、前回の質問でも指摘しましたように、ヨーロッパ人権条約に基づいてヨーロッパ人権裁判所に英国の精神障害者が訴えを起こして、その請求が認められたという判例がありました。このヨーロッパ人権条約の当該の条項と、先ほど指摘しました国際人権規約九条第四項がほぼ同一の文章になっているわけでございます。そして、このヨーロッパ人権裁判所判決では「「無期限又は長期間精神医療施設に強制的に拘禁されている精神障害者は、」「司法的性質を有する一定間隔での自動的審査」がなされるか、あるいは「合理的間隔で、その拘禁の「合法性」を裁判所において、争いうる手続を採る権利を有する。」」こう判断したわけです。  それでお尋ねですが、今言ったような制度が、現在日本においてそういう手続が存在する、こうお考えでしょうか。
  123. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  おっしゃられるとおりの制度があるとは言えないと思います。
  124. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 念のためにお尋ねしますが、国際人権規約B九条四項が行政手続による拘禁者にも適用がある、これは定説でございますけれども、このことはまさか否定はされないでしょうね。
  125. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  四項につきましては、今これを拝見いたしまして直ちにお答えするということでございますので、その点を御了承の上お聞きいただきたいと思いますが、これは人身保護法というものに絡みがあるのではないか、このように思うわけでございます。
  126. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 だから、どうなるのでしょうか。
  127. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 この四項に対応いたしますのは人身保護法である、こういうことを申し上げたわけでございますが……。
  128. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 人身保護法は刑事手続によって拘禁されている者に限らないのは当然でございますから、結局は刑事手続には限らない、こういうことになりますか。
  129. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 刑事手続に限らないと思っております。
  130. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 ヨーロッパ人権裁判所の判断がそのまま我が国においても妥当するかどうか、これはまたいろいろ議論の余地があろうかと思いますけれども、しかし、ヨーロッパ人権条約の規定についてのヨーロッパ人権裁判所の判断、これがほぼ同一の文言を持ちます国際人権規約Bの九条四項の判断としても、当然尊重されるべきである。少なくともこの国際人権規約B九条四項の解釈につきまして、文明国の一員であると国民の皆さんは自負しておられると思いますが、そういう日本においては少なくとも同一のレベルで解釈、運用されるべきである、こう考えるのですが、その点いかがでしょうか。
  131. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 人権規約を我が国が批准しておるわけでございますから、この点につきましては、先生がおっしゃられたとおり尊重すべきものだ、かように考えております。
  132. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そうしますと、先ほどのお答えで、先ほど読み上げたような要件を満たす手続は日本では存在しない。ということになりますと、これはやはり重大な問題だと思うわけです。精神障害者につきましては、これは適切な治療をすれば治る。少なくとも治らないまでも、常時拘禁をする必要はないまでに改善するということは経験的な事実としてもう動かしがたいところだろうと思います。そうしますと、最初に拘禁をされたときが適法であったか、著しい手続違反がなかったかというようなことのみを審査の対象とする人身保護法、これは判例でそういうふうに言われているわけですけれども、これだけしか現実に機能する法制度、法手続がないという我が国の現状においては、どう考えても国際人権規約B九条四項の要件を満たさないのではないか、そう思うわけです。  違反しているかというふうに聞きましても、違反しているというお答えは恐らくないだろうと思いますので、そうはお尋ねしませんけれども、少なくとも先ほどから指摘いたしましたヨーロッパ人権裁判所における判例、これを尊重し、これの趣旨に沿った手続を我が国でも準備していく必要があるのではないかと思うわけです。前回、法務大臣には、研究、検討していくというお答えをいただきましたが、たまたまこの宇都宮病院のような事例も発生いたしましたし、ここでもう一歩進んだお答えをぜひいただきたいと思うのですが、法務大臣いかがでしょう。
  133. 住栄作

    ○住国務大臣 人権規約九条四項の逮捕ということは、私はそれなりに理解できるのですが、抑留というのがどの範囲のことを言っておるのか、突然の御質問でございますので、私、判断できないわけでございます。しかし、精神病院に入っているということが、これは医療、保護のために、入っておるわけでございまして、それを目して抑留と言えるのかどうなのか。今もおっしゃいましたように、治った上でなおかつ退院させない、そういうような状態も考えられないことはないと思うのです。要するに、病院のことでございますから、先ほど厚生省の方からも答弁がございましたように、やはりお医者さんの判断、主治医の判断、こういう観点から見ていかなければならない、こういうことでございますので、これはなかなか難しい問題を含んでおると思うのです。  それがどういう段階で、完全に治療が終わっているにもかかわらず拘束しておる、こういうことの判断ですね、これはだれが判断するのかということになると、やはり第一次的にはお医者さんだろうということでございまして、いろいろな手続につきましても、医療の立場から合理的な制限ができるということは、精神衛生法にも規定しておるわけでございますので、そこらあたり、どういうところに欠陥があるのか、どういうように定めていけばいいのか。特に病院管理の問題、しかも公的病院じゃございません、それは私的な民間の病院でございますから、そういうようなこと等とも関連いたしますので、私は、これはやはり厚生省ともよく相談しながら慎重に決めていかなければならぬのじゃないかな、まあ検討することは必要だと私は思うのでございますが、では直ちに法的な手続としてどういうものを決められるのだということになると、これは医療という問題が絡んでくるだけに一概には決められないので、厚生省とも十分相談していかなければならない、こういうように考えております。
  134. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 特に精神障害者の場合には、病院側からすれば、いつまでも入れておけば点数が上がり、病院の経営上有利である。また近親者につきましても、いわば出てきてもらっては迷惑であるということから、とかく入れておきたいという側に傾きがちである。そういったことから、いわば障害者を不当に拘禁しておくことによってだれも損をしない。障害者だけが人権の侵害をいつまでも受ける、こういう状況が容易に想像されるものですから、ある意味では、刑事訴訟におけるよりもより積極的な人権保障の姿勢が必要であるし、また手続的な保障が必要であるのじゃないか、そう考えて、先ほどから大臣のお考えを聞いているわけでございます。前回教えていただいたところでは、精神障害を理由に拘禁されている者が三十三万人ですか、本人の意思に反して拘禁されている者が、推定でも、受刑者あるいは少年院収容者の五倍以上いるというようなことからも極めて重大な人権上の問題ではないか。ある意味では、我が国の人権保護政策上の盲点になっていて、かつ文明国である我が国のいわば恥部になっているのじゃないか、そうも思うわけです。  行政手続、とりわけ精神障害者の精神障害による被拘禁者の救済手続の整備について、これは本当は立法の府である国会で研究していかなければならないところですが、ぜひ法務当局も厚生省と十分御連絡の上、早急にその手続を整備することに、いつまでも研究ではどうしようもないので、着手していただきたい、そう考えるわけです。先ほど私が紹介しましたヨーロッパ人権裁判所の判例というのは一九八一年十一月五日に出た判決でございます。尊重されるべきだという法務当局のお考えも先ほど伺いました。既に数年を経過しております。私は、むしろ早急に着手すべきでないか、我が国法制上の一大欠陥ではないか、そう考えるわけです。これについては特に答弁を求めません。要望として申し上げておきたいと思います。  最後に、あと時間がございませんが、今要望いたしましたような救済手続の整備と並んで、弁護士との接見交通権を明確にすべきである、私はそう考えるわけです。これが整備されていれば、今回の宇都宮病院のような悲惨な事件はある程度までは事前に防げたのではないか、そう考えるからであります。憲法上は、これは条文上、刑事手続による拘禁者に限定して弁護人選任権が保障されているわけでございます。しかし、この精神は、行政上の手続によって拘禁されている者についても同様であろう。特に個別的な人権の擁護をその職務とする弁護士については、接見交通権が弁護士にとっての権利であると同時に、被拘禁者にとっての権利であろうかというふうに考えるわけですが、この点、法務当局、いかがでしょう。
  135. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  先生のようなお考え方もあり得るとは思いますが、この問題につきましては、また医療の側からの問題点もございますし、実際上、具体的にどのような問題が生じてくるのかというようなこともわかりませんと、今ここでどうこうというお答えはちょっとしがたいのではないかと思っております。
  136. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 私が弁護士だから言うわけではございませんが、弁護士の人権擁護についての役割——法務省人権擁護局のような、いわば全体的な観点からの人権擁護政策をとるものとは別に、個々の事件についての人権擁護について最も適切なそういう職務を持つ弁護士については、その接見交通権については十分な理解をいただきたい、こう考えるわけです。  私は、せんだって栃木県の、これはこういう席でお名前を出すことは遠慮いたしますが、県の衛生環境行政の責任者、知事ではありません、その下の最高責任者の地位にある方、この方はお医者さんでしたが、その方にお会いをしてお話をしたときに、精神障害者の家族が精神障害者との面会ができないという状況があれば、行政指導として、何で面会させないんだ、その理由を少し明らかにしなさいというようなことをする。かつて自分もしたことがある。他の役職にいたときの話というふうに伺いましたが、具体的にそういう病院側に問い合わせをして指導したことがある、しかし弁護士ということになると、そうまでする考えはない、こういうふうにはっきりおっしゃられたわけです。私は、これはお医者さんなどにおける弁護士の役割についての理解のなさ、不十分さを端的に、あらわしている事例だと思います。  弁護士は、何も興味本位で精神障害者と会ってその事情を聞こうということではありませんで、その障害者の人権の侵害について最も関心を持つ立場から、その救済のために事情を聞こうとするわけです。また、弁護士は、法制上、職務上知り得た事実について守秘義務も負わされております。また、先ほども指摘しましたように、人身保護法上は弁護士強制になっておりまして、弁護士でなければ原則として手続はとれない、そういうことにもなっております。したがいまして、弁護士との接見交通は、他の一般の人とはまた別に、十分な配慮が必要ではないか。とりわけ面会によって医療上の妨げが起こるということは、相手が弁護士である場合には、そういうことはなかなか想像しにくいわけです。また、どうしても必要があるのであれば、弁護士単独でなく他の精神科のお医者さんが立ち会って、お医者さん立ち会いのもとに接見交通を保障するというような手だてもあり得ると思います。  この弁護士との接見交通について十分な配慮を願いたいし、また、現在の法制上欠陥がないかどうか十分御検討いただきたいし、また、現在行政指導でできることがあれば積極的に指導していただきたい、そう強い要望を持つわけでございますが、この点について、重ねてで大変恐縮ですが、もう一度、法務当局及び厚生当局の御見解を伺いまして、質問を終わりたいと思います。
  137. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  先生おっしゃいました点につきましては、先ほどからお伺いいたしておりますと、厚生省の方も患者の人権ということをやはり重視していらっしゃるわけでございます。今後、行政指導、いろいろ検討なさるということでございますから、広い意味での行政指導ということで、今おっしゃいました点におきましても厚生省の方で御検討なさるのではないかと思いますし、そのとおり期待しているわけでございます。
  138. 野村瞭

    ○野村説明員 お答えをいたします。  入院中の患者との面会につきましては、先ほど申し上げたような現状にあるわけでございますので、これを制度上改正するということにつきましては困難だとは存じますけれども、指導方を含めまして、先生が御指摘になられた問題点について検討をいたしてみたいと考えております。
  139. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 終わります。
  140. 宮崎茂一

    宮崎委員長 午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————          午後一時五分開議
  141. 宮崎茂一

    宮崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所小野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 宮崎茂一

    宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  143. 宮崎茂一

    宮崎委員長 質疑を続行いたします。関晴正君。
  144. 関晴正

    ○関委員 私は、昨年の十月十二日に田中角榮に対する有罪判決がありました、そのことに関してお尋ねをいたしたいと思います。  私ども、国会議員としてその職務にある者が法に問われ、単に問われただけでなくて、七年有余の法廷における裁判の結果が明確に有罪判決、しかも懲役四年、追徴金五億円、まさに政治家である者に対してのこれほどの恥ずかしい判決はない、こう思うわけであります。しかしながら、当の田中角榮は、この判決はまさに暗黒裁判である、徹底して戦う、生ある限りこれと戦う、こう声明をまた直後になされました。疑わしきは罰せずというのがありますけれども、政治家の場合は疑わしきを罰するとのみずからの倫理、理念というものがないならば、国民の負託を受けてその仕事をする、そういう資格がないものだと私は常日ごろ思っているわけであります。  だがしかし、今の法務大臣ではありませんけれども、さきの法務大臣がいろいろなことを言ってありました。その言ってあったことの中で、特に私は情けなくまた残念に思ったことのくだりは、今日の政治家に清潔であるとかあるいは正義であるとかを求めることは、八百屋に行って魚を求めるようなものなどの記事が出されておったことであります。一国の法の番人とも言うべき最高の責任者が法務大臣だ、私はこう思っております。また日本における最高権力のそうしたところにあったのが、自民党の総裁としての田中角榮であった、こうも思います。偉い人ほど小さな罪でも、ちょっとした誤りでもあった場合には、私は責任というものは大きくかぶらなければならないものだ、またこう思っているわけであります。  そこで、住法務大臣は、前法務大臣と同じように、政治家というものをあの発言のように、あの記事のように見ておられるものかどうか。また、法務大臣がもしそうした法を犯して有罪判決があった場合は、直ちにやめるものなり、私ならやめる、こうお考えになっておられるものかどうか。私の場合は、もう法に問われるだけでもみずから下がるべきものだ、こう思っております。残念ながら、そうした同僚議員が今日のさばっている。そういう同僚議員のことをこの大事な法務委係員会において取り上げて論議をしなければならないということ、このくらいまた情けないものもないとも思っているわけであります。我が国が法治国家だと言うならば法治国家らしく、法律をつくっている者の責任として、国会議員というものにおいて余計にその責めを負うべきものではないのか、こう思うわけであります。また、このことが今日、日本の政治をどれだけ毒しているかわかりません。罪万死に値するというのはこういうことではないだろうかともまた思うわけであります。  そういう意味において、まず法務大臣は、田中角榮のこの判決と田中角榮のとっている行為というものについてどのように見ておられるものか、この際、お尋ねしておきたいと思います。
  145. 住栄作

    ○住国務大臣 私は一人の国会議員として、あるいはまた法務大臣として、特に政治をやっていく場合に国民の信頼が一番大事な要素だと思っております。そういう意味で、政治家が自分の身を正す、みずから判断をし、みずからの信ずるところによって政治行動をする、これはもう当然のことであろうと思っております。個々の事件についてとやかく私が法務大臣という立場で申し上げるのはいかがかと思われますけれども、私は司法権に対する信頼も非常に大事なことだと思っておりますし、いやしくも判決があった場合には、それは判決として尊重していかなければならぬということは当然だと思っております。今お尋ねのようなことであれば、私は私の信念に従って自分の出処進退を決める、こういうように考えております。
  146. 関晴正

    ○関委員 国会において田中角榮の辞職勧告に関する決議案を野党が一致して出されました。この辞職勧告の決議案については、かつてその例がないのかということになりますと、昭和四十一年八月、同じ田中でももう一人の田中、これも悪いやつです、田中彰治。これは脅迫も詐欺横領も、悪というすべての悪を重ねておったような男でありまして、この男をどう処置するかということで、思い余った当時の国会議員の皆さん方は——当時自由民主党の幹事長であったのが田中角榮、副幹事長であったのが二階堂進、そうして野党も与党も一致して辞職勧告の決議を出そう、こう言ったわけであります。それが五十三回の臨時国会において可決の見通しがついたときに、彼は可決されてはかなわぬというので、その前にとうとう辞職をいたしました。そのときみずから辞職勧告の決議案なるものを持ち寄って相談し、走り回ったアイデアマンと称せられたのが田中角榮、しょって歩いて進めたのが二階堂進。これは四十一年ですよ。田中角榮の場合は事件が発覚したのは十年後の五十一年、八月に近い七月です。十年前のことだから大方忘れ去っておられるのかもしれませんけれども記録は明確にそのことを示しております。私は、こういう者が実刑判決を受けて何のために求刑どおりの五年にならないで一年減刑されたのかわかりません。実刑判決が下った。下ったならば、なぜ直ちにこれを手錠をかけて刑務所へ連れていくようにしなかったのですか、この理由を聞かせてください。
  147. 筧榮一

    筧政府委員 田中角榮被告をなぜ収監しなかったかという御質問でございますが、今お話しの実刑判決がありました後、直ちに再保釈の申請があり、速やかに保釈許可決定がなされたわけでございます。そういたしますと、刑事訴訟法三百四十三条の規定によりまして「禁錮以上の刑に処する判決の宣告があったときは、保釈又は勾留の執行停止は、その効力を失う。この場合には、あらたに保釈又は勾留の執行停止の決定がないときに限り、第九十八条の規定を準用する。」となっておりますが、この後段の新たに保釈の決定がないときに限り、九十八条の規定を準用するという、新たに保釈の決定があった場合に当たるわけでございます。したがいまして、九十八条、収監の規定でございますが、同法九十八条の収監に関する規定が適用されなかった。その結果、収監はいたさなかったというふうに承知いたしております。
  148. 関晴正

    ○関委員 私の聞いているのは、なぜ収監しなかったかということです。判決があったら、執行猶予じゃないでしょう、実刑判決でしょう。実刑判決が下れば、直ちに収監するのが仕事じゃありませんか。その仕事をだれがサボったのです。だれがサボらせたのです。この点をお答えください。
  149. 筧榮一

    筧政府委員 サボるとかサボらなかったということではございませんで、ただいま申し上げました三百四十三条前段といいますか、本文の規定は、今先生指摘のとおり、禁錮以上の刑に処する判決の宣告があったときは、保釈はその効力を失う、したがって、収監という手続に入るのが普通でございます。ただ、この場合にも新たに保釈の決定がないときに限り、その収監の手続の規定を準用するとなっておりますが、本件の場合に、新たな保釈の決定が判決後に速やかになされた結果、それに従って収監の手続はなされなかったということでございます。
  150. 関晴正

    ○関委員 保釈の申請がなされれば、収監しなくてもいいことになっているのですか。
  151. 筧榮一

    筧政府委員 保釈の申請ではございませんで、裁判所の保釈の決定がありました場合には、収監の手続へ移らないということでございます。
  152. 関晴正

    ○関委員 裁判長が実刑判決を下したでしょう。下したらどうなるのです、次の段階は。収監が当たり前でしょう。収監しようとしても裁判長が何か文書に判こを押さなければ検察庁の方では連れていかれないというような事務的なこともあるのでしょう。だがしかし、出さなければ出さないなりに、検察当局はこれを直ちに収監する方法もまたあるでしょう。談合したのじゃないですか、これは。なぜ直ちに収監しなかったのです。何時間放置しておいたのです。放置しているところの状態はどうであったのです。答えてください。
  153. 筧榮一

    筧政府委員 放置したというわけではございませんで、今申し上げましたように、九十八条の規定で収監の手続が定められております。その場合には、裁判所の勾留状の謄本を本人に示して収監するという手続になるわけでございます。しかし今申し上げましたように、三百四十三条の後段の規定で保釈の決定がなされましたので、その手続へは移らなかったということでございまして、談合とかそういうことではございません。
  154. 関晴正

    ○関委員 もっと明確に答えてください。何時何分判決終了、何時何分手続終了、言ってください。
  155. 小野幹雄

    ○小野最高裁判所長官代理者 禁錮以上の実刑の判決がありました場合に、裁判所といたしましては、ごく通常の場合でありますと、勾留状の謄本に判決の主文と宣告の年月日等を書きまして、それに裁判長が認印をするというものを書記官が検察官の方に交付するわけでございます。検察官はそれに基づいて、それを示して被告人を収監する、こういうことになるわけでございます。  先ほど筧刑事局長からも御紹介ありましたように、刑事訴訟法の三百四十三条の規定によりますと、新たに保釈というようなことがなされない場合に収監手続をする、こういうことになっているわけでございます。本件の場合、具体的な事件のことはなぜそうしたかということは私ども承知いたしませんが、一般的な取り扱いといたしましては、大体通常の場合でありますと、判決を言い渡してその後で保釈の請求が出るという場合が非常に多うございます。そういう場合には、判決の言い渡しが終了しておりますと、被告人に逃走のおそれが多いというようなことから、裁判所の方で。遅滞なく先ほど申しました収監用の勾留状の謄本を検察官の方に交付する、検察官の方ではそれを適宜執行される、こういうことになるわけでございますが、場合によりまして、まだ判決の宣告が終了する前に保釈の請求があるという場合がございます。  そういう場合にはどうするかということでございますが、これは学説上、保釈の許否の裁判をするまでは収監手続に入ってはいけないんだという学説もありますし、それは別個に進めてもいいんだという学説もあります。学説上はそういうことで両説ありまして、・裁判所としても、あるいはいろいろな立場があるかもしれませんが、一般的には、そういう再保釈の請求がある場合には、まずその保釈の許否の裁判をして、保釈を許さないというときに、先ほど申しました収監用の勾留状の謄本を交付する、それで収監手続に入らせる。保釈を許可する場合には、そのまま保釈ということになりまして収監の手続には入らない、こういう扱いをする場合が多いわけでございます。  先ほどの判決の宣告終了時刻ということでございますが、十二時六分ぐらいに終わったというふうに聞いております。それから、再保釈の申請がありました。これは事件係に持っていくわけでございますが、事件係が受理した時間が午前十時二十五分であるというふうに聞いております。なお、再保釈の許可を決定した時刻は一時三十分ごろということのようでございます。 。
  156. 関晴正

    ○関委員 裁判の過程の中において判決がまだおりないうちに再保釈の手続がなされておった。判決がなくても、もう弁護団の諸君やそれらの諸君は、罪ありと認識しているわけですね。私は、そういうようなことがあって、そして事が進められておったかどうかはきょう初めてわかったことであります。言うなれば判決前においてある当然の保釈権と申しましょうか、当然保釈あるいは権利保釈というものがあるでしょう。だがしかし、判決があった場合は当然保釈ではないでしょう。権利保釈でもないでしょう。手続があったからといって保釈しなければならないと決まっているわけじゃないでしょう。  そこで申し上げたいことは、そういう決まってもおらないものについて、約一時間半後にこれを認めてしまった。一時間半の間、どこにおったのです。何しておったのです。
  157. 小野幹雄

    ○小野最高裁判所長官代理者 まず前段の問題でございますが、判決前に保釈の申請があったわけではございませんで、判決の言い渡しは十時からで、ずっと主文から参りまして、理由を告げて終わったのが先ほど十二時六分ごろというふうに申し上げたつもりでございます。保釈の申請がありましたのは十時三十分でございまして、当然主文などは終わっていたわけでございまして、実刑の判決だということが明瞭になって、それから保釈の申請を出されたものというふうに考えております。  なお、それまでどこにおったかということでございますが、東京地裁の法廷棟の五階にあります一室に待機させておいたということのようでございます。
  158. 関晴正

    ○関委員 先ほど十時二十五分と言って、今また十時三十分、こう言っています。こんなに時間がいいかげんに答えられても困ります。  そこで、先ほどあなたが二つの学説のお話をしました。私は、学説はここで論じようとは思いません。だが、宮崎県の知事をした黒木君が処分を受けたときは、彼は三千万のわいろ、そうして懲役三年、直ちに行っていますよ。今回の大学教授の池園君、これも直ちに行っていますね。直ちに行くのがまず順序でしょう。  それで、私は申し上げたいことは、我が国の最高の地位を飾った人、それだけに国民に一番迷惑をかけた人。弱い者に判決があれば、直ちに有無を言わさず刑務所行き、強い者は何だかんだと言って刑務所にも行かなくてのうのうとされる、これは国民感情に合わないですよ。実刑判決四年、一年下げたのも国民感情に合わない。それで、追徴金だけは求刑どおりやっているわけです。  とにかく、何のために直ちに収監しなかったかということについて、何と弁明できるものなのか。今のことで、人によって違うのでございますということになっていいのかどうか。同じ、人によって違うとしても、罪の軽い者の場合、あるいは法も涙ありということもあるでしょう。これは、幾ら憎んでも憎み過ぎることないでしょう。  そういう意味において、言うなれば法の番人である法務大臣は、過ぎたことだけれども、収監しなくて当たり前だと思っておるのか、やはり収監すべきものであったと思っておるのか、この辺について、実は私は検事総長に出てもらって、あるいはまた裁判所の最高責任者にでも出てもらって、このことのよしあしを論じてみたいとも思っているわけです。だけれども、慣習上そこまではお互いに遠慮しておる、こう言っておって、すべて法務大臣に聞くことになっておるのだ、こう言っているわけですから、収監しないことが当然だと法務大臣思っておられますかどうか、お答えください。
  159. 住栄作

    ○住国務大臣 法の定める手続に従いまして被告がそういう権利の行使をした、それに対して裁判所が判断を下した、事実関係は私はそのように考えておりまして、そのこと自体が、どういう意味で批判なりあるいは称賛を受けるか、これはまた別問題だと思っております。
  160. 小野幹雄

    ○小野最高裁判所長官代理者 先ほど、再保釈申請の時刻を間違えまして恐縮でございます。一番最初に申しましたとおり、十時二十五分でございます。  なお、今いろいろございましたが、私が人によって扱いが違うと申しましたのは、これは裁判でございますので、裁判をする主体によって違うということでございます。裁判官がいろいろな考えによりまして——これは統一ということはできません、独立てございますので、そういう意味で、いろいろな考え方があれば裁判官でも考えが違うのじゃないかということを申し上げただけでございまして、被告人がだれであるからということで違えているということではございません。  なお、裁判の内容につきましていろいろ御批判がございましたけれども、これは裁判でございますので、ひとつ御了解いただきたいと思います。
  161. 関晴正

    ○関委員 先ほどのお答えの中に、裁判のさなかにそういう申請がなされたと。しかし、そういう申請がなされたからといって、これを受ける受けないということは決まっていることじゃない。言うなれば、保釈を認めるか認めないかということは裁判長の胸の中にあることです。判決前ならば当然の権利として主張できることであるけれども判決後は当然の権利じゃない。裁判長の裁量権です。裁量権がどう作用するかということについてはだれもわからない。そういう手続があったからといって、収監しなくてもいいという根拠にはならないはずです。そういう再保釈の手続がなされれば収監しなくてもいいという規定がありますか、お答えください。
  162. 小野幹雄

    ○小野最高裁判所長官代理者 先ほど筧刑事局長が御紹介いたしましたとおり、刑事訴訟法三百四十三条を読んでいただきますと、新たに保釈を許可しない限り収監の手続をすると書いてあるわけでございまして、保釈をすれば収監はしなくてもいいというふうに一般に解されているようでございます。  なお、先ほど私がこういう取り扱いがあるのが一般だと申し上げましたが、それは私がただ自分の考えを述べているわけでございませんで、いろいろな文献などもそうするのが一般であるというふうに書いてありまして、それを申し上げているわけでございます。
  163. 関晴正

    ○関委員 休んでおられる問におすしを食べたと書いているのだけれども、そのすしはだれがごちそうしたものか、だれがとらせたものか。どうしてそこでゆっくり昼飯にすしまで食べるようになっているのか。どういう扱いをしてそうなったのか、お答えください。
  164. 小野幹雄

    ○小野最高裁判所長官代理者 裁判所が指定しました一定の部屋で許否の判断まで待っていてもらうということでございまして、その間、何をしていいとか悪いとかいうことは別にないわけでございます。  今、おすしということでございますが、そこで何をされたか、何を食べたかというようなことは裁判所としては関知してないということでございます。
  165. 関晴正

    ○関委員 裁判所の方で関知しなければ検察庁の方で御存じですか。
  166. 筧榮一

    筧政府委員 そのすしの関係については、私どもも承知いたしておりませんで、恐らく田中被告人あるいはその関係者の方で用意されたのではないかと思っております。
  167. 関晴正

    ○関委員 少なくとも国民に大変な迷惑をかける、そういう犯罪人に対して、直ちに収監すべきものを配慮して収監もせず、昼のすしまで食べる余裕と時間を与えてかくまってやって、それで法の秩序の維持等について権威あるものだと言えるでしょうか。国民環視の中にあって、これをどうおさめていくのかとみんな関心を持っているときですよ。ガチャンコかけて刑務所へ送ったら一番いいじゃないですか。送る費用が惜しかったというのですか。送る行為が大儀であったというのですか。一分でも二分でもおさめるところへおさめたらよかったじゃないですか。これはだれに聞いて、だれが答えることになるのですか。
  168. 小野幹雄

    ○小野最高裁判所長官代理者 保釈したことがいいとか悪いとかということは、これは裁判の中身でございまして、まさに裁判所が責任を負って処置すべき事柄でございます。これは、裁判所が諸般の事情を考慮した上で、保釈が相当ということで保釈をされたものというふうに考えておりまして、これについて云々されることについては、もしそれがいけなければ法の手続で争うべきことでございまして、裁判所以外のところで批判されることについては、何とか御容赦願いたいというふうに思います。
  169. 関晴正

    ○関委員 まあとにかく、岡田光子裁判長が相当なところまで決断をして事に臨んだことは、私はある程度評価できる。刑を一年減じてみたり、また田中角榮が総理大臣としていろいろと功績もあったのだからということでの配慮もわからないわけじゃない。だがしかし、田中が保釈を受けている間にどんなことをしておったか。保釈を受けているときにはそれなりのあり方があったと思う。判決以前における彼の行為というものは必ずしも保釈の条件に食うようなことばかりじゃなかったと思う。そういうことを見れば、再保釈の際に、はい承知いたしましたと、何も急いでやってあげる必要は私はなかったと思う。  このことについての批判、検討については、あとこれ以上は申し上げようとは思いません。申し上げようとは思いませんけれども判決文を各般にわたって読んでおられる間に、そうしてそれが決められたと同時によしんばその手続があったとしても、法廷が閉廷したのは、私の方の記録では零時三分となっています。あなたは零時六分と申しました。三分の違い、まあ大したことはないにしても、保釈の認定をするまでの間一時間半裁判所の控室にかくまっておった。おるべきところに連れていかないで、そこにとどめておいた。まあ昼の時間でもあるし、腹も減ったであろうから、すしも食べさせたかもしれない。刑務所で食べればいいのです。ガチャンコで連れていけばいいのです。  黒木知事の場合は直ちに収監、池園氏の場合も直ちに収監。一時間半で戻ってきていますよね。人によっては連れていき、人によってはかくまっておきというのは、たった今のことについて比べての話なんですよ。それをしもあなた方が当たり前のことだと思って見られているとするならば、私はまことに残念であります。指導の部面において、私はこの点についてはきちんとしなければならない、こうもまた思います。少なくとも国民の信頼にこたえるような法の秩序の維持と申しましょうか、法の執行の進め方と申しましょうか、特に注目されておればおるほどに、余計にそこには下手な遠慮や同情があってはならない、こう思うのです。そういう意味において、この後もまたあるわけでありますので、十二分にこの点については私の方から批判を申し上げておきたいと思うのです。  さて、この後どうなるのでございましょうか。ゆっくり進めるつもりでございましょうか。それとも高裁における審理というものはもうどんどん進める、早くはっきりしてもらいたいという国民の願いにこたえて、裁判を早急に進める、そうして引き延ばし戦術にひっかかることがなくて対処すべきだ、こう思うのです。  この点については、法務大臣、この裁判の進め方についてゆっくりやるのではなくて、ひとつ迅速に裁判が終了するように指導すべきじゃないだろうか、こうも思いますので、この点についてのお考えをいただきたいと思います。
  170. 住栄作

    ○住国務大臣 すべての裁判は、迅速に処理をする、これが原則であろうと思います。裁判官の方でどのようにこの裁判を進めていくか、これはもう裁判長なり裁判官の考え方によることでございますから、私からとやかく言ってその裁判に干渉するような印象を与えてもいかがかと考えますので、裁判官を信頼して、その裁判の進行をやっていただく、こういうことになると思います。
  171. 関晴正

    ○関委員 常識的にいけば、最高裁の審理期間と申しましょうか、これが終了する見通しというものはどのくらいの期間と見るのが普通でございましょうか。
  172. 小野幹雄

    ○小野最高裁判所長官代理者 迅速に裁判をすべきということは当然の要請でございますが、また一方で、適正な裁判でなければならないということでございます。高等裁判所でこれから始まるわけでございまして、早速打ち合わせをして控訴趣意書の提出期限というようなものも定めたようでございます。これは私ども常日ごろから、適正な裁判また迅速な裁判を実現しなければいけないということで心がけているところでございます。高等裁判所といたしましてもその観点から努力するものというふうに考えますが、ただ、これはこれからの動向ということでございますし、私どもがどうこう予測できることでもございません。ただいまのところは何とも申しかねる次第でございます。
  173. 関晴正

    ○関委員 とにかくこの裁判だけは、七年有余にわたって微に入り細にわたって調べ尽くしたものだといってもいいはずであります。後は、書類審査上なお問題があるならば問題点を比べて、そうして結論を出せばいいことにすぎないんじゃないだろうか、そう思います。とにかくいたずらに時間をかけないで速やかにこのことが完了するように、もちろん適正であることは当然のことですが、そういう意味において、私は、この裁判がのらりくらりとではなくて、やたらに引き延ばし戦術というようなものにひっかかることもなく事を進めていくように指導していただきたい、こう思います。  第二点の質問に入りたいと思います。  これはけさ私の方の稲葉委員からもお話があったかと思うのですが、サラ金の事件にかかわる、言うなれば遠藤事件と申しましょうか、この遠藤氏なる者が捕らえられてもう六十日過ぎていますよね。だが、彼はまだ調べられておるようであります。私の聞きたいのは、彼もまた起訴もされているわけであります。この遠藤事件において、五千二百五十五万という金額はあなたの方で発表している金額ですから、この五千二百五十五万のうち自分の使い込みというのはどのくらいになっておるのかということが一つ。また、政治家から事情聴取というようなことについてどの程度あったものかどうか、この点が一つ。それから、横領金というものの使途はどのようになっておるのかということについて、さらにまた、なお今後の取り調べが必要だと言われているようでありますが、どのくらいの日数が必要になっておるのか、あわせてお答えいただきたいと思います。
  174. 筧榮一

    筧政府委員 最初の五千二百五十五万の業務横領でございますが、それを自分のために使ったのは幾らぐらいかということでございますが、この五千二百五十五万はいずれも自己のために横領したということでございます。ただ、それをどのように費消し、どのように使ったかということは、この裁判が始まりましてから立証段階で明らかにされることでございますので、現段階では差し控えさせていただきたいと思います。  それから、政治家を調べたかどうかということでございますが、これも現在捜査中でございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。  それから、横領金の使途、これは今申し上げましたようなことでいずれ明らかになるということでございます。  それから、今後の取り調べの日数でございますが、できるだけ早く捜査を行いまして結論を出したいという検察の方針ではございますが、どれぐらいかかるかということは、まだ流動的でございますので、ちょっと明確にお答えいたしかねる次第でございます。
  175. 関晴正

    ○関委員 とにかく今日、サラ金地獄の日本だと言ってもいい社会の姿が至るところに露呈しております。そうしてまた、政治家がこれに加わって手伝いしたなどというようなことも随分言われております。私は、この問題については徹底して調べるべし、日にちは幾らかかったって遠慮することなく徹底して調べるべし、こう考えている一人でもあります。新聞を見ますと、とにかくこれで国会が解散になるかもしれないと観測する向きもあるようであります。そうなればそうなったで構わない。ロッキード疑獄に次ぐサラ金疑獄ということになってしまうことを想定してのことかと思います。  そういう意味において、私は、せっかく特捜部が、特捜部と名づけて特別捜査をしていることなんで、この捜査をいたずらに抑えるとか、これについて干渉するとか、そういうことがあってはならないと思う。そういう意味において、法務大臣、この問題については徹底して捜査をし、そして問題についての国民への発表はきちんとする、これを隠したり、うやむやにする、そんな考えは全くない、こう思っておられるわけですか。法務大臣のこれについてのお考えを聞きたいと思います。
  176. 筧榮一

    筧政府委員 まず私からお答え申し上げたいと思います。  現在捜査継続中でございますので、捜査を完了いたしまして事実を解明して、しかるべき措置がとられるものと確信いたしております。
  177. 住栄作

    ○住国務大臣 私も、この内容については全然聞いておりません。もちろん捜査中の段階でございますから当然のことだと思いますが、検察当局は、これもまた厳正公正にやってくれるものと期待をいたしております。
  178. 関晴正

    ○関委員 知らないなんという法務大臣の今の答弁はいただきかねます。法務大臣にもよく知らせてやってください。法務大臣に目隠しをしてはなりません。また、知ろうとしないとするならば適当でもありません。このことが発生して政界ではもういろいろな動きがあって、法務大臣のところに何の話もないなんというのは考えられないことです。でも、お答えはお答えでございますから、この問題についても、ひとつ、政治家どものすべからざる行為があった場合には、これを天下に明確に明らかにする、そういうことで法務当局は臨んでもらわなければならない、そういう元気がなければならない、私はこう思いますので、強く要望しておきます。  次に、第三点、福島交通不動産の会社に対して日本債券信用銀行が二百億に近い根抵当を設定して融資をしておる。これは一体適正な融資であろうかどうか、この根抵当の設定金額というものが妥当なものであるかどうか、考えてみますときに、十二万平方メートル近い土地を七億で得て、それが二百億にもなるなんというような過大な見積もりをされて、そうして融資への事が運ばれているようであります。しかも、郡山の新幹線の下の地下道工事、わずかに十八メートル、たった十八メートルより工事をしておらなくて、あと二百メートル近い在来線の地下がそのままになっている。どうしてあそこにああいう都市計画道路の設定が定められたのかにも疑問があります。だがしかし、その都市計画の街路を定めだということが理由になって、小針社長の持っておる福島交通不動産株式会社の土地が二百億にもはね上がって、そうして融資が行われておる。全くでたらめなことだと私は思うのです。新幹線の下の地下道の問題については、これはいずれ建設委員会で取り上げるつもりです。この街路設定についても同様に向こうでやります。  だがしかし、その土地に何らの道路もできない、そのできる見通しも定かでない、そういう段階においてそれほどの多額の金額を根抵当として設定されて、そうして融資をしておる、こうなりますというと、これはただごとではない。言うなれば、地価の何十倍にもなるような金額を認めてやっていることになってしまっているのではないでしょうか。この点について大蔵省の方から、どういうことなのか、妥当なことなのか、あるいは調べがまだついていないのか、調べておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  179. 千野忠男

    ○千野説明員 日本債券信用銀行がかつて福島交通グループに対しまして土地開発のための貸し出しを行いまして、今なお多額の融資残高があることは事実でございますが、ただ、先ほど御指摘のような銀行の個別の取引にわたる問題につきましては、具体的に立ち入った答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  180. 関晴正

    ○関委員 何が立ち入った答弁です。これほど具体的な話はないでしょう。この銀行のやっておる貸付金のあり方、やり方というのが妥当ですかと聞いておるのですよ。何が立ち入っているのです。私の方から申し上げておるのですよ。どうです、これ。それほどに値打ちのある土地と見てあげることは適当ですか、こう聞いておるのですよ。検査部長かだれかも来ているでしょう、審査課長も来ているでしょう。あなた方二年前には見ているでしょう、検査しているでしょう。そのときに気がつかなかったというなら気がつかなかったと答えてください。立ち入る云々なんというのは私にとってはお答えになりません、こっちが申し上げていることですから。
  181. 峯嶋利之

    峯嶋説明員 私ども二年前に検査をいたしまして、正確には五十六年ですけれども、そのときには個々の貸出金につきまして、一般に銀行検査に当たりましてはその残高とか期日とか利率、それから担保の明細等も含めまして調べております。そして、担保価格につきましては、当然不動産の専門家の鑑定評価というものを私どもの観点から評価いたしまして、それに従ってこの銀行につきまして見させていただいております。その結果といたしまして、問題があれば、大口の融資審査につきまして適正な融資の審査とか管理のあり方につきまして厳しく指摘をする、こういうようなことになりますし、本件につきましても、そういう観点からの問題は既に指摘しておるところでございます。
  182. 関晴正

    ○関委員 この問題については、今のような答弁でわかりましたというものじゃありません。ましてや今のお答えになっている方も非常にいいかげんです。なぜそんなことが言えるかといいますと、郡山の、言うなれば新幹線の下のところの地下道というものがどんな状態であるか、ごらんになっておられますか。それからその先、あと二百メートル近いところの地下道がこれからいつ見通しが立つのか、とてもじゃないけれども、そういう見通しは今立てられるような状況にありません。それでも計画線を立てたというだけで七億のものが二百億、こう見て事を進めるというやり方は、これは不当です。これは明らかに背任行為ではないだろうかと思うのです。ただし、この方の背任行為の場合は銀行側ですから、言うなれば小針社長の方に対して銀行側がすべき行為において背任行為をしているのじゃないだろうか、こう言わざるを得ない。  またそのほかに小針社長は、不明金五十億円事件でこれまた天下に不明をさらしておる。小針じゃなくて毒針だとおれは言っているんですよ。こんなけしからぬことを平気でやって、東北の小佐野だなんて言われておる。こういう悪漢どもはやはり退治しなければならない。そういう意味において、刑事局長来ておると思うのだが、この問題について刑事局長の方としては当然メスを入れて捜査に当たるべきだと私は思うのだが、どうでございますか。
  183. 筧榮一

    筧政府委員 お尋ねの福島交通をめぐる一連のといいますか、いろいろの事実が新聞で報道されておるところでございます。ただ、具体的な事実関係が必ずしも明らかではございませんので、今犯罪が成立するの嫌疑があるかどうかという点も不明でございます。したがいまして、確定的なお答えはいたしかねると思います。  ただ一般論を申しますれば、検察当局も必要と認めるときは捜査ができるわけでございます。これらの点についての新聞報道等も承知していると思いますので、今後の事態の推移に応じまして適切に措置されるものと考えております。
  184. 関晴正

    ○関委員 一般論を言っているのじゃありませんよ。何を聞いているんです。具体的に言っているじゃありませんか。聞いているんですか、あなた。もう一遍言う時間もないけれども、都市計画の街路決定をしたというだけで、十八メートルの穴を掘っただけで、あと向こう線路の下だけでも二百メートル近くある。その向こうにまた土地がある。それを地価に見積もった場合に不当な地価の見積もりをして融資をしている行為は、これは許されない行為じゃないかと言っている。そこにメスを入れるというと、そこに背任行為が出てくるのじゃないか。これをあなた方調べないでだれが調べます。私が言って教えているのだから。これは当然に即刻事態の調査をして捜査をすべきものだ、こう私は思うのです。そういう意味において、一般論を言っているのじゃありません。このことについてもう一遍お答えください。
  185. 筧榮一

    筧政府委員 犯罪の嫌疑が認められます場合に捜査を開始するわけでございますが、現在のところその具体的な事実関係が明確ではございませんので、犯罪の嫌疑があるかどうかというところまでいかないのではないかと考えております。ただ、今後の事態の推移いかんによって必要に応じて適切な措置をとるものというふうに考えております。
  186. 関晴正

    ○関委員 まだ妙なことを言っておりますけれども、これはよく見て、そして当たってください。  あと時間がないようですから、終わります。
  187. 宮崎茂一

    宮崎委員長 熊川次男君。
  188. 熊川次男

    ○熊川委員 最近、景気の低迷が話題になっておりますが、日本の景気を支えている大きな活力の中枢者の一人に企業が存在すると思います。その企業に関しては、法一般に共通する基本的な原理の一つに、企業維持の原則というものが各法の根底にあるのではないかと思っております。一たん発生した、あるいは生まれた企業をその社会的な目的を達成するためになるべく存続させる。これはあるいは商号の譲渡であり、営業の譲渡であり、清算についても特別清算についても、さらには破産法、和議法に至るまでその根底を流れるものはどの法でも共通ではないかと思っております。  他面において、企業のうち法人組織のもの、特に株式会社に関しては、大企業の株主を被相続人に持つものであれ、中小の株式会社の株式を保持する方を被相続人に持つものであれ、相続人の法のもとの平等というのは同様に公平に図られるべきものであろうと思いますけれども、まずこれについての法務大臣の御所見を承りたいと存じます。
  189. 住栄作

    ○住国務大臣 企業は、今熊川先生おっしゃるとおり、経済的にも社会的にも確固たる存在として活動を営んでおるわけでございます。したがって、その企業に万一のことでも起きるということになりますと、それはいろいろ、大小それぞれによって違うでしょうけれども、経済的にも社会的にも大きな影響がある。そういうような関係から、営業の自由の原則等ももちろんございますけれども、そういう存在としての意味を認めていろいろ法律上でも措置がとられておるわけでございまして、そういう意味で企業が存続するということについては十分な配慮が払われておりますし、またそういうような面でいろいろの施策も進めていかなければならない場合がある、こういうように考えております。
  190. 熊川次男

    ○熊川委員 そこで企業存続、すなわち大臣も御心配くださるとおりなるべく存続させるような施策を講ずべきだという御所信のとおり、私も同じでありますが、そのような配慮に立つとき、今日中小企業、とりわけ同族企業といいましょうか株式非公開の企業に関してその前経営者あるいは経営者の株を引き継ぐいわば二世というようなものが大変な苦しみに遭っている例が少なくございません。戦争直後に会社を設立して三十五年ほどたった方々、こういった方々は今ようやくその交代期に入っております。戦後創業した人の約三分の一が今日六十一歳以上の経営者であると言われております。しかし、そこで一番問題なのは株式評価に関してでございまして、上場企業の場合は比較的客観的な取引価格が明らかになり得ますけれども、非公開の場合はそう簡単ではございません。  それに関連して、かねてから中小企業団体中央会などからの強い要望があったと思いますが、悩みのポイントはどういう点であったか、その点をまず法務省の方から教えていただきたいと思います。
  191. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 私、今のお話の点については承知しておりませんので、お答えする材料を持ち合わせておりません。
  192. 熊川次男

    ○熊川委員 じゃ、こう聞かせていただきましょうか。要するに同族会社、非公開の会社の純資産を客観的な取引価格というか清算価格で見積もってそれを株式で除する、こういう形が株式価格評価の原則的な立場ではなかったでしょうか。したがって、そういうものになった場合にはかなり高い評価になる場合が多い。そこで、昨年の春、株式評価の方法に関して少し前進が図られたのではないかと思いますが、場合によれば大蔵省、国税庁の方でも結構ですが、お答えいただきたいと思います。
  193. 原岡伸次

    ○原岡説明員 中小会社の取引相場のない株式の評価につきましては、先生御案内のように、政府税制調査会に中小会社の株式評価問題小委係員会という特別委員会が設置されまして、そこで鋭意検討されまして、五十八年度の税制改正の答申がございますが、その答申の中に盛り込まれたわけでございます。その税制改正答申を踏まえまして、昨年、私どもの方で所要の改正措置を講じたわけでございます。  具体的な内容といたしましては三つございます。  一つは、中小会社の中でも小規模な会社の株式の評価につきまして、従来の評価方法を改めたということでございます。従来は、小規模な会社につきましては、純資産価額方式という方式で評価しておりましたが、これを中規模あるいは大規模な会社と同じように、収益性を加味した類似業種比準方式という方式がございますが、そういった方式も加味して評価するということに改めたわけでございます。具体的には純資産価額方式を二分の一、それから類似業種比準方式を二分の一、二分の一ずつで足して一という評価をして結構でございますという評価にしたわけでございます。  それから第二点は、業種のとり方に弾力性を持たせるということに改正をいたしました。従来は、中分類あるいは小分類がございまして、小分類のあるものは小分類だけしか適用されなかった、選択できなかったわけでございますけれども、中分類がある場合には中分類も選択適用して結構でございますというふうにしたわけでございます。それからまた、中分類しかないところにつきましては中分類と大分類、その中での選択を認めるということにいたしております。  それから、第三点の改正事項でございますが、これは類似業種の株価のとり方に弾力を持たせたということでございます。従来は、相続を開始いたしましたその月、それからその月を含む前三カ月の株価の最低の金額で評価しておったわけでございますけれども、これを少し幅を持たせまして、前年一年の株価の平均額、これを選択しても結構でございます、いずれか低い方を選択していただいて結構でございますというふうに改めたわけでございます。  以上が昨年度の改正事項でございます。
  194. 熊川次男

    ○熊川委員 わかりました。  事ほどさように、中小株式会社の株式についても、少しでも大企業の株式評価に準ずるような方法に近づけようという配慮であったと理解させていただけるかと思います。  ただいま御説明をちょうだいしましたその方式の中に、類似業種と比較して配当の率が多い場合は、その率にほとんど比例して株価が高く評価される可能性が出たのではないかと思いますが、結論だけお答えいただけるでしょうか。
  195. 原岡伸次

    ○原岡説明員 先生のおっしゃるとおり、高配当いたしております会社につきましては、それだけ株価が高くなるということになっております。
  196. 熊川次男

    ○熊川委員 そこで、私のところにも現在相談に来ているのが十数社、相談というか泣いてきているのがあるわけなのですが、これはいろいろございます。しかし、一口に言うと、株式配当を多くするために自分の役員報酬あるいは給与というものを極めて切り詰めて、言うならば会社の資本留保、内部留保を多くしよう、配当をよくしよう、世間体もよくしようといういろいろな経営者特有の心理が働いております。そんなところから、百人前後の従業員のいる会社で給料を、高い会社から比べればわずか五分の一ぐらい、本当に三十万ぐらいしかもらっていないような社長もざらにいるのです。  中小企業であっても、類似な規模の会社の社長さん方に聞くと、中には月の報酬を百七、八十万ももらっているような人もいる。裏を返せば、毎月毎月百五十万近くを会社に留保する。これは総じてみると、年間二千万ぐらいにたちまちなると思うんですね。自分がいただくべき給料をもらわずに会社に留保させると、配当がかなりできます。これを十年も続けてきた会社があるのです。一番激しいのは、十割配当をしてきたのです。資本が小さいですから、そんなものはすぐできるのです。それを、今度、株式をAからBに移す、あるいは相続しようというときには、この評価が何と二十倍を超すような評価になる。一般に私の耳にした範囲では、上場株式は額面のせいぜい二、三倍とも聞いております。ところが、二十数倍にもなる。少なくも十数倍になる、こういう形になっていて、その株式の大部分をおやじさんが持っている場合の相続なんということになってくると、膨大な相続税を払う、あるいは贈与をいただいた場合にも贈与税を払うというのが建前というか、結果的にはそういった制度になっておるのではないでしょうか。
  197. 原岡伸次

    ○原岡説明員 相続税の財産評価の方式につきましては、実は私どもの方で財産の種類ごとに評価方式というものを定めまして、これを全国的に統一して処理しておるわけでございます。  ただ、何せ私ども処理いたしております課税事案といいますのが全国にまたがっております。非常に広範にまたがっております。それからまた、大量に発生するわけでございまして、こういった広範かつ大量に発生する事案を処理していかなければいかぬということが一つございます。  それからもう一つは、申告納税制度でございますので、納税者の簡便な評価方式でなければいけないということがございます。  それから、さらには、納税者あるいは課税当局でございます私どもの恣意が入ってはいけないということで、課税の公平という見地からの要請がございます。  こういった要請から、どうしても私どもの定めております評価方式というものは画一的な処理方式にならざるを得ない点がございます。個別の事情とかあるいは特殊性というものをできるだけ織り込んで評価すべきだということは重々わかっておりますけれども、しかし、それにもおのずから限度がございまして、先ほど申し上げましたように、評価の統一的な運用あるいは画一的な処理ということから、どうしてもそこに限界があるわけでございます。もちろん、評価の方式につきましては、特に取引相場のないものの財産の評価につきましては非常に難しい点がございます。ございますけれども、できるだけ合理的な評価方式を定めていきたい。また、世間の批判にたえ得るような評価方法にしなければいかぬということで、私ども、鋭意検討をしているわけでございます。今後とも、そういった合理性のある評価方式を勉強してまいりたいと思っているわけでございます。
  198. 熊川次男

    ○熊川委員 ありがとうございます。今お答えの中に、やはり一方においては、税の性質上、法的画一性、統一性、これも要請をされましょうが、また個別の案件についても合理的になるよう勉強してまいりたいという非常に前向きなお話ですので、私も敬意を表するわけですが、こんなケースもあるのです。  これは偶然ある新聞に載ったものですが、株を百五十万円、三万株買ったら、贈与税が一千万の上に来た、このままやったならば、娘が相続をするときには全財産をはたいても果たして大丈夫かと心配になってきた。というのは、上場株式の場合はどこにでもすぐ売れますけれども、同族株式の場合は、取締役会の承認なんかもありましょうが、それは別としても、右から左へなかなか売りにくい場合もあろうかと思います。こういう形で、税務署がたまたま評価してくださったものから比べるならば、処分するときはかなり低いものにならざるを得ない。税の執行の原則から言えば、時価で評価する、こういう建前になっていると思うのです。その時価とは、客観的取引というか、個性の余りない、売り主の個性、買い主の個性のない価格ということになる。言うならば、その評価額がその評価された現金と直ちに等価交換ができるようなものということにもなろうかと思う。だとすれば、上場株式とは実際の処理の面で雲泥の開きが出てくるのが心配なんです。  もしその客観的取引価格というものがあるならば、同族会社の場合でも株式の物納で済ませてもらえるような制度でもあればこんな心配は起きないのですが、この辺に、対する御意見をちょっとお聞きしたいのです。
  199. 津野修

    ○津野説明員 お答えいたします。  相続税について、いわゆる同族会社の株式でございますけれども、こういうものにつきましての物納関係は、その同族会社の株式しかない——それ以外の財産をもって物納することができる場合は別でございますが、その株式しか財産がないという場合には認められております。
  200. 熊川次男

    ○熊川委員 ほかのものがない場合に限り株式の物納が認められるということ自体に若干客観性が乏しいというわけですね。現金に準ずるなら、優先度を加味する必要はまずないと思うのですが、それがまず第一点。  仮にあるとしても、優先度をつけられたとしても、その場合は、先ほどのこの類似業種の株式なんかを参考にした算定のあの評価額でとっていただけるのでしょうか。
  201. 津野修

    ○津野説明員 同じ評価でございます。
  202. 熊川次男

    ○熊川委員 株式を持っている方の選択によって、すなわち、ほかのものがない場合に初めて株式が代納できるのでなしに、同列に置くような形で今後御検討の材料にしていただけたらありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
  203. 津野修

    ○津野説明員 いわゆる相続税の税金につきましては、原則として換価性の高いものが第一優先順位になっておりまして、現金であればもちろん現金でございますし、そういう順序がございまして、同族会社だけについて特別の措置を講ずるというのは、今のところ考えていないところでございます。
  204. 熊川次男

    ○熊川委員 現在は考えていないのだろうと思うが、今後そのようなことを配慮しないと時価とか客観的価格というところの客観性に矛盾するのじゃないかと思うので、その辺はやはり客観性を担保するならば、選択の余地のあるようにするのがいわゆる客観性の問題だと思います。これは検討していただきたいと思いますので、もう一度お願いしたい。  と同時に、私の関連しているところでは、こういった状況では給与、報酬をがっぽりいただいて、言うならば配当を少なくしておけばこんな心配はないわけです。すべて解消するのです。今回の類似業種比準方式も、何とか子供に、内部留保を多くしてやろうやろうとする経営者ほど、後で苦しむ。今、がっぽりあるいは人並み以上の高い役員報酬を取っていれば、ほとんど——ほとんどでもないが、かなり問題は解決する。言うならば、納税に協力しないというか、企業維持の原則に反するような経営をした人を保護する結果にたまたまなっておる。今言ったような十割配当なんというのは極めて例外的な場合と存じますが、そのような人でも、承継税制のときに苦労しないように、何かただし書きが−−こういう人はそう多くないと私は思うのです。例外的でしょうが、こういうものを制度上用意していただけたらありがたいと思うのですが、この二点についての御検討、勉強の姿勢を承りたいと思います。
  205. 津野修

    ○津野説明員 第一点の、先ほど御答弁いたしましたように、同族会社の株をそのまま物納できるようにという御要望でございますけれども、これはいろいろほかの相続税に絡む財産との関係がございまして、直ちに検討するというようなこともなかなか難しいかと存じますが、今後さらに詰めていきたいと思います。  それから第二点の、中小企業者の相続税の問題でございますけれども一般論といたしまして、昨年でございますけれども、株式評価につきましては国税庁から答弁がありましたような措置を講じております。さらに昨年、それにあわせまして、いわゆる中小企業者の事業用の土地につきまして、二百平米までの分でございますけれども、四〇%まで減額するという特別の措置を講じさせていただいたところでございまして、現在、農地等につきましては納税猶予の制度等ございますけれども、これは農地につきましての特別ないわゆる制約、所有と経営をできるだけ一致させようという農地法の関係とかいろいろな問題がございまして、そういう特殊事情に着目いたしました上での制度でございます。  一般的な中小企業者の方のそういう相続財産につきまして特別なことを行うのはどうかというのが我々の考え方でございまして、これは、昨年の税制調査会の中期答申をいうのがございますけれども、そこでもいろいろ言われておりますが、一点だけ言いますと、中小企業者とそれからサラリーマン、いわゆる給与所得者等の関係をどうするかという問題があるわけでございます。中小企業者の方に相続税についての特別の措置を講ずれば、農業に加えてさらに中小企業者という格好になっていきまして、結局、一般の相続税を払うのは我々と言うと語弊がありますが、一般的なサラリーマン、給与所得者だけになってしまうということでございますので、そういう措置をこれから論ずるのはなかなか難しいのではないかというふうに考えております。
  206. 熊川次男

    ○熊川委員 問題の側面をちょっと異なっておとりではないかと思いますが、同じ規模で同じ利益がある会社で、片や百八十万も報酬をもらっている社長さんの場合で十年も十数年も続いた場合の経営者と、日分の妻と子供一人の三人で本当に切り詰めて、あとほとんどもらわずに会社内部留保した人と同じに扱っていいという結論なんですか、それは別に将来検討すべきだというのですか、端的にこれだけお願いします。
  207. 原岡伸次

    ○原岡説明員 先ほど申し上げましたように、評価につきましては、画一性、統一性という一方の要請がございまして、また一方では、個別妥当性という要請がございます。その二つの要請をどういうふうに調和していくか、どういうふうに評価の基準として定めていくかという難しい問題がございますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、できるだけ合理性を持つようにさらに勉強を続けてまいりたいと思う次第でございます。  さらに、私ども税務という仕事はどうしても後追いの仕事でございます。納税者の皆さん方の行為につきまして後から追っかけていくということでございますので、個別に、その具体性といいますか、こういったものについてああする、あるいはこういうものについてはどうするというふうにすべて事前に網を張るということは難しゅうございます。そういった点でなかなか難しい点がございますけれども、できるだけそういったことがないように努めてまいりたい。いずれにしましても、私どもの仕事といいますのは納税者の行為につきまして中立的でなければならぬと思っておりますので、そういった点の限界というものがあるわけでございます。
  208. 熊川次男

    ○熊川委員 ある有名な銀行の調査部長の話によると、節税のテクニックを熟知している人が負担を免れ、そして税制を知らずにまじめにしていた人が高額の税を納める結果になるのは非常に残念だとまで述べていますので、耳にとめていただきたいのです。  それから、一つ、法人形式の場合も今のような問題が内在しておりますけれども、農家の方々については一定の要件のもとに生前贈与制度なりあるいは相続税の猶予制度がございますが、企業者、個人事業者についてこれらに準じた制度の導入に関する勉強の姿勢というか方針というか、その辺をお伺いさせていただきたいと思います。
  209. 津野修

    ○津野説明員 ちょっと先ほど失礼しました。  今の問題でございますけれども、中小企業者につきましての相続税についての特例ということでございますが、これは先ほど申しましたように、昨年の税制調査会でも議論されておりまして、ずっと議論されてきている問題でございますが、いわゆる給与所得者との均衡、そういうものとの関係から見てそういう制度をとるのはどうか。さらに中小企業者の現在の相続税の課税の実態等計数的に国税庁で調べておりますけれども、そういうものから見ても一般納税者と比べて特に中小企業者に過酷になってはいないのではないかというような意見もございまして、なかなか難しい問題かと存じます。
  210. 熊川次男

    ○熊川委員 問題のとらえ方がちょっと異なるかと思いますが、先ほど大臣も企業維持の原則を遵守することこそ政策の重要な課題だと述べております。同じ財産だ、おやじさんからもらうのに、土地には変わりがないといえばそれまでだけれども、片や事業を経営しているという条件つきの土地であり、片やそうではないという、同じ土地でも質的相違がある。したがって、企業維持の原則というようなもの、あるいは事業振興というか中小企業、個人も含めてで結構ですが、そういうものを維持していこうとするためには若干ニュアンスの異なったことをやっても一面においては合理性を帯びるのじゃないか、こんな面もありますので、御検討の材料にはなり得るのじゃないかと思うのです。確かにサラリーマンと比べれば、同じ土地を相続しても片や免税点があるあるいは軽いというようなことになると、一方においては不公平があるけれども、それにまさるとも劣らない、日本の景気を支える事業経営の土台をなしている土地あるいは不動産であるというようなこともまた側面が異なるわけですから、合理的な理由があると言えばあるとして前向きに勉強ができるのじゃないかと思いますので、そういった議論が委員会なんかでも出たことも十分承知しておりますが、その辺の御検討を仰ぎたいと思います。  それから、全く関係ございませんが、最近のいわゆる著名人に対する暴行あるいは誘拐一つとってみても、比較的多かったのは幼児、年少者に対する誘拐のケースだと思いますが、最近は成人に対する誘拐というような新しい傾向も見られております。こういったものは何かそのバックグラウンドがあるのかどうか、あるいはそれに対する取り組み姿勢というようなものも、法務省警察どちらでも結構ですが、お伺いしたいと思います。
  211. 三上和幸

    ○三上説明員 御質問にもありましたように、身の代金目的の誘拐事件は戦後百二十四件発生しておりますけれども、成人を対象といたしましたのはその中の三十一件でございまして、大体四分の一くらいの件数になっております。そういった状況から見ますと、本年に入りまして既に三件発生しておりますが、そのうち二件が成人を対象とするという意味で、これまでの犯罪傾向とは少し異なったという感じがいたさないでもありません。  こういった犯罪が敢行される背景でございますが、一概に断ずることはなかなか難しい問題があろうかと思いますが、大変模倣性の強い犯罪であるということと、敢行します被疑者を取り調べてみますと、相当に借財が多いということから一挙に多額の全員を取得したいということをねらっての犯行ということが十分考えられるわけであります。  警察といたしましては、こういった犯罪を絶無にいたしたいということで全力を挙げて被害者の救出と犯人の検挙に臨んでおりまして、これまで発生をいたしましたほとんどの事件を検挙をいたしておりますし、身の代金を獲得して被疑者が悠悠としているというようなことは絶無でありますので、今後ともこういった姿勢で十分な捜査をしてまいりたいと考えております。
  212. 熊川次男

    ○熊川委員 ちょっと食い違っているような感もないわけではありませんが、著名人に対する暴行事件あるいは成人に対する誘拐事件というようなものの発生のバックグラウンドいかん、こういう問題について御検討いただいたかどうかという点をお答えいただきたいと思います。  それからもう一つは、これらの事案が契機になったかとも思える節もあるのですが、最近、経済界における著名人などは私設警護を相当充実している、こういうことが新聞にも報道されました。これは一面においては、世界に冠たる治安を誇る我が国の警察法務省などに対する信頼が揺るがなければいいがなという懸念を覚える一人でありますので、そんなことはないと思いますけれども、取り組み姿勢などを安心できるような形でお聞かせいただければありがたいと思います。
  213. 三上和幸

    ○三上説明員 お話もございましたようなよって来るバックグラウンドということでございますが、犯罪が発生いたします背景等につきましても、私どももいろいろな面から検討もいたしますし、また犯人を検挙した際にも、どういう犯行動機に基づいてそれを行ったかというような背景につきましてもいろいろ捜査をいたしてきておるわけであります。そういう観点から、今御指摘もありましたように、我々としても今後ともそういった犯罪のよって来る背景についてもいろいろな面からの検討もいたしてまいりたいと考えております。  また、御指摘のありました私設警護を強化しておるというようなお話でございますけれども、具体的に私ども把握いたしておりません。しかし、警察としては、先ほども申し上げましたように、検挙にまさる防犯なしと申しましょうか、そういう観点から、こういった事件は早期に解決をすることが大切だということで、その方針で今後とも臨んでまいりたいと考えております。
  214. 熊川次男

    ○熊川委員 ありがとうございました。
  215. 宮崎茂一

    宮崎委員長 神崎武法君。
  216. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、改正商法施行後の総会屋問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  株主総会から総会屋と言われますプロ株主を排除して株主総会の正常化を図るための利益供与の禁止規定の新設を含みました改正商法が施行されまして一年半になろうとしております。改正商法の施行によりまして、総会屋が転廃業を余儀なくされ、総会慶全体の勢力は急速に衰えつつあるとの評価のある反面、例えば新阪急ホテルの九時間三十分、ソニーの十三時間三十分といった長時間株主総会に見られますように、総会屋が取締役、監査役に対する質問権を乱用していると思われる事例も見られるのであります。  そこで、まず総会屋の実態につきましてお尋ねいたしますけれども、改正商法施行直前の総会屋の数、現在把握している総会屋の数はどうなのか、お伺いいたします。
  217. 川畑久廣

    ○川畑説明員 お答えいたします。  総会屋としまして、警察の方では改正商法施行前約六千八百名を把握しておりましたが、その後、企業等へのこれらの出入りが全くなくなりましたので、正確には把握しておりませんけれども、現在単位株を取得している者は約千七百名くらいと見ております。
  218. 神崎武法

    ○神崎委員 施行直前には六千八百名いて、現在単位株を所持している者が千七百名ということでございますけれども、そうしますと、総会屋の数は減ったのかふえたのか、いわゆる転廃業をした者はいるのかどうか、その点はどうなんでしょう。
  219. 川畑久廣

    ○川畑説明員 お答えします。  ただいま六千八百名と申し上げましたが、その後、細かく把握できておりませんが、転廃業した者は約四百名と見ております。
  220. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、少なくとも改正商法施行前よりはその四百名については減ったであろう、このように見てよろしいわけでしょうか。
  221. 川畑久廣

    ○川畑説明員 そのとおりでございます。
  222. 神崎武法

    ○神崎委員 改正商法施行前には、総会屋の特徴的な傾向といたしまして、総会屋のグループ化、集団化が進んできたこと、暴力団が総会屋の活動分野に進出して総会屋をその支配下に置く傾向を強めていること、雑誌、新聞等の刊行物を発行し、またはブラックジャーナルなどと結託するなど、活動の多様化傾向が見られること、地域活動の広域化が見られることなどが指摘されていたのでありますけれども、現在、総会屋のグループは大体幾つぐらいあるのか、お伺いをいたしたいと思います。     〔委員長退席、森(清)委員長代理着席〕
  223. 川畑久廣

    ○川畑説明員 お答えします。  大体七十ぐらいのグループだと見ております。
  224. 神崎武法

    ○神崎委員 それから、暴力団の進出が改正商法施行後も進んでいるのかどうかという点でありますけれども、その点を明らかにする意味におきまして、改正商法施行前の総会屋中に占めます暴力団の数と現在把握しております総会屋中の暴力団の数についてお尋ねをいたしたいと思います。
  225. 川畑久廣

    ○川畑説明員 お答えいたします。  改正商法施行前は六千八百名の中に約二千名、ですから約三割を占めておりましたが、千七百名の単位株取得者の中には約百七十名ですから、約一割ということで、暴力団の進出状況というのは減少していると考えております。
  226. 神崎武法

    ○神崎委員 ただいま単位株を取得している者を中心にお話をされているわけでありますけれども、当然、転廃業した総会展を除くほかの者、単位株をつけていない者についても総会屋がいると思うわけでございます。その点についても警察としては把握しているものもある、このように承ってよろしいでしょうか。
  227. 川畑久廣

    ○川畑説明員 正確には把握しておりませんが、大体そのとおりでございます。
  228. 神崎武法

    ○神崎委員 昨年の総会屋の関係する刑事事件の検挙件数と、その犯罪の類型あるいは特徴というものについてお伺いをいたしたいと思います。
  229. 川畑久廣

    ○川畑説明員 お答えいたします。  昭和五十八年の総会屋の検挙状況は、百六十八件、百八十一名であります。罪種別に申し上げますと、恐喝、これは未遂も含みますけれども、それが四十五件、六十六名、これが最も多く、次いで傷害、これが十七件、二十名ということになっています。
  230. 神崎武法

    ○神崎委員 これまでに改正商法の利益供与罪が適用され検挙された事例があるのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  231. 川畑久廣

    ○川畑説明員 お答えいたします。  利益供与禁止違反の検挙ということにつきましては、全国警察で総会屋対策の重点の一つとしましてその情報収集活動に当たっているところでありますけれども、現在までのところ、検挙した事例はございません。
  232. 神崎武法

    ○神崎委員 これまでに利益供与罪による検挙がないということでありますけれども、そのことは改正商法施行後、利益供与に当たる事実は全くなくなったと見られるのか、あるいはそのような事実はあるのだけれども捜査端緒がなかなか得られないと見ておられるのか、その点はどうでしょうか。
  233. 川畑久廣

    ○川畑説明員 ただいま申し上げましたように、全国警察の重点の一つとしまして情報収集活動に当たって、鋭意それの情報収集を続けてまいりたいと考えております。
  234. 神崎武法

    ○神崎委員 結論的に申しまして、改正商法の施行によりまして総会屋はどのように変わったと警察当局として認識しておられるのか。いわゆる改正商法の効果という点からお尋ねをいたしたいと思います。
  235. 川畑久廣

    ○川畑説明員 お答えいたします。  改正商法施行前六千八百名、先ほどこれの動向を申し上げましたが、六千八百名のうち約四百名が一応転業したと考えております。ただ、残りの六千四百名はどうしたかということになると思いますが、それは企業の周辺にありまして、何らかの方法で従来どおりの利益を得ようというような機会をねらっているのだと考えております。  そこで、商法改正の効果があったかどうかということでございますけれども、まずそれの活動面から考えてみますと、賛助要求のために従来企業訪問が行われておりましたが、それが全くなくなったということ。それから総会屋の事務所の縮小、閉鎖、これが相次いでいるということ。それからもう一つは、株主総会におきまして、単位株制度の導入もありますものですから、総会に出席して発言等の活動を行う総会屋の数が大幅に減少したというようなことから、非常に顕著な違いがあるということを考えております。したがって、商法改正の効果は上がっているのだと考えております。
  236. 神崎武法

    ○神崎委員 具体的な事件をもとにしてお尋ねしたいのでありますけれども、昨年検挙されました総会屋の事件のうち、協友会に属すると言われております藤野康一郎ほか一名に対します恐喝事件は、最近の総会展問題の実情を知るのに極めて適切な事案だと思われるのであります。  まず、この藤野に対する恐喝事件事案概要事件の処理、判決確定関係についてお尋ねしたいと思います。
  237. 筧榮一

    筧政府委員 お尋ね事件は藤野康一郎の事件がと思いますが、事件概要でございますが、藤野康一郎が広告代理業を営む株式会社三友エージェンシーの代表取締役益田泰子をおどかしまして、テニスクラブ会員権の売買代金名下に昭和五十八年三月二十五日ごろ第一勧銀の藤野の関連会社の普通預金口座に三百三十万円を振り込ませて喝取したという恐喝事件でございます。  東京地検におきましては昭和五十八年七月十二日に公判請求をいたし、東京地裁におきまして、同年十月六日、懲役一年十カ月、四年間執行猶予判決が下され、右判決は同年の十月二十一日に確定いたしております。
  238. 神崎武法

    ○神崎委員 この事件確定記録を閲覧いたしますと、この被害者の経営いたします会社三友エージェンシーというのは、ある大手の商事会社の関連企業と申しましょうか、大変関係の深い会社でございまして、この大手の商事会社がむしろ中心になっていろいろな問題が起こっているわけであります。藤野らは最初からこの商事会社の方に行きまして、六月の株主総会でスキャンダルを暴露するとか、多数で嫌がらせ質問をするとか、この被害者の経営する会社と大手の企業グループとの癒着をばらすとか、こういったことを執拗に言ってテニスの会員権を売りつけようとした。その過程で、この被害者の経営する会社の方からテニスクラブの会員権の購入名下に三百三十万円が振り込まれた、こういう事実関係がわかるわけでございます。  この事実関係からいたしますと、この大手商事会社の方が総会屋の要求を入れて、関連企業であります三友エージェンシーから利益を供与した疑いがあるのかないのか、こういった利益供与罪の成否という問題が起こってくるのではなかろうかと思うわけでございますけれども捜査の過程でこの点について検討がなされていたかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  239. 筧榮一

    筧政府委員 申し上げるまでもなく、処分の際にはあらゆる犯罪の成否について検討いたすわけでございます。本件につきましても、当然、利益供与罪の成否が検討されたものと考えております。  ただ、今、神崎委員指摘のように、本件事実そのものは、株主総会での混乱というのは、その関連する三井グループの方の株主総会の混乱ということが表面上の理由でございます。その点では、要件の一つに疑問がある。あるいは本件全員、これがどこから出たかという疑問はあるかもしれませんけれども、形の上ではやはり被害者の個人的な全員の出捐であって、会社の計算においてという点でも問題があるのではないか。そういうようなことで、この利益供与罪については問擬しなかったものというふうに考えております。
  240. 神崎武法

    ○神崎委員 藤野らも執拗にこの大手の商事会社の方に、株主総会でいろいろ問題にするというようなことで訪れているわけでございますけれども、その際にテニスの会員権の購入方の要求もなされているようであります。そういたしますと、藤野らの商事会社自体に対する恐喝未遂が成立するかどうか、こういう点も問題になろうかと思いますけれども、この点についての捜査がなされたかどうか、お伺いをいたします。
  241. 筧榮一

    筧政府委員 お尋ねの点につきましては、藤野ほか一名につきまして、これは三井物産の取締役などをおどかして、やはりテニスクラブの会員権の売買名下に全員を喝取しようとしたけれども同人らが応じなかったために目的を遂げなかったという恐喝未遂事件警察から追送致を受けまして、これは昭和五十八年八月十五日に起訴猶予処分に付されております。
  242. 神崎武法

    ○神崎委員 起訴猶予の主な理由はどういうことでしょうか。
  243. 筧榮一

    筧政府委員 主な理由と申しますか、本件自体未遂に終わったというのが一つございますし、あるいは被害者の感情といいますか、被害者の反省というようなこともあるようでございます。それから、もちろん被疑者らの反省の情、さらにもう一つは、やはり先ほどの恐喝の方で公判請求をいたしておりますので、あえてこの未遂の方までも公判請求をする必要はないのではないかという点もあったかと思います。
  244. 神崎武法

    ○神崎委員 この事件捜査端緒は風評と銀行調査にあるようでありますけれども、被害の事実が判明をして、警察官がこの被害者の経営する会社に行きまして被害届を出すように説得をした時点でも、なかなか被害者側は被害届の提出を渋っていたようであります。警察としては、この総会屋による不法事犯、特に本件のような攻撃型総会屋による事犯の根絶を期するには企業の協力が不可欠であると思いますけれども、今後企業に協力を求めるために具体的にどういう方策をお考えになっているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  245. 川畑久廣

    ○川畑説明員 お答えいたします。  警察としましては、総会屋対策の一環といたしまして、従来から、企業防衛対策協議会、こういう民間の企業の組織がございますが、それを通じまして企業と緊密な連携を図っているところであります。この種事件につきましても、相談窓口等を開設したりいたしまして、体制を整備しておりまして、企業に対しても積極的な被害申告等を行うよう申し入れをしております。  以上であります。
  246. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、もう一つ事件でございますけれども、本年における総会屋の事件の中では、同じく協友会に属すると言われます相葉茂治に対する恐喝未遂事件の企業側の対応が、今後の総会屋問題に対する企業側の対応のあり方として極めて参考になると思われるのであります。  まず、事案概要とこの事件の処理関係についてお尋ねいたしたいと思います。
  247. 筧榮一

    筧政府委員 お尋ね事件でございますが、事案概要は、総会屋グルーブである協友会の構成員であります相葉茂治が、定時株主総会を予定していた日魯漁業株式会社から賛助金名下に全員を喝取しようと企て、同社総務部総務課職員等をおどかして全員を喝取しようとしたが、同社がこれに応じなかったため目的を遂げなかったという恐喝未遂事件でございます。  東京地検では、相葉を昭和五十九年、本年の三月十四日、東京地裁に公判請求をいたしまして、現在公判係属中でございます。
  248. 神崎武法

    ○神崎委員 この事件の相葉も、先ほど申し上げました藤野につきましても協友会に属している、あるいは協友会と関係があるということが言われているのでありますけれども、この協友会の所属メンバーは一体何人ぐらいなのか、大体どういう活動をしているのか、こういった点についてお尋ねをしたいと思います。
  249. 川畑久廣

    ○川畑説明員 公刊されました資料によりますと、協友会というのは約二十人から成るグループであるとされております。そのメンバーは幾つかの会社の株主総会に出席して発言していると聞いております。  以上です。
  250. 神崎武法

    ○神崎委員 この事件では、相葉は株主総会の直前に恐喝未遂で逮捕されておりますけれども、この被害会社の株主総会はいつ開催されたのか、またその株主総会に相葉の属する協友会のメンバーは出席したのかどうか、この点についてお尋ねをいたします。
  251. 川畑久廣

    ○川畑説明員 当該会社の株主総会は五十九年二月二十八日と聞いておりますが、この株主総会に協友会のメンバーが出席していたという話は聞いておりません。
  252. 神崎武法

    ○神崎委員 警察当局としてはこの事件をどのように評価をされているのか、お尋ねをいたします。
  253. 川畑久廣

    ○川畑説明員 お答えいたします。  総会屋対策上、総会屋の犯罪を検挙することは非常に有効なことだと思っておりますが、本件事件検挙によりまして、この総会に他のメンバーが出ていないということにつきましては、多少その検挙の影響があったとは考えておりますが、本当にその影響があったのかどうか、そのことにつきましてはよくはわかっておりません。  以上です。
  254. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、株主総会の運営をめぐる若干の問題についてお尋ねをいたしますけれども、総会屋の全体としての勢力に陰りが見られ、またいろいろなところが発行しております株主総会白書、そういったものを見ましても、大体昨年の株主総会は、少数の会社で一部株主の質問攻勢で異常に長引いた例はあるけれども、大多数の会社の株主総会が無事終了したことがうかがわれるのであります。しかしながら、先ほど申し上げましたように、現に少数の会社とはいえ長時間総会が開かれており、総会屋の暗躍も見られるのであります。十数時間に及びます長時間株主総会が頻繁に起こりますと、企業のトップといたしましてもこれに耐え切れなくなって総会屋と裏で話をつける、手を打つ、こういうことがまた起こり得るわけであります。まさにプロの株主はその点をねらってこういうことをしているのではないかとも思われるのであります。  せっかく改正商法によりまして総会屋を株主総会から締め出す方策が講じられたのに、これが、改正商法の新設いたしました取締役、監査役の株主の質問に対する説明義務を乱用することなどによる総会の議事運営の混乱によって企業側が再び総会屋とつながっていくことになるようなことがあってはならないと考えるわけであります。その意味におきましても、株主総会の議事運営手続についても法務当局の見解を明らかにして、会社の実務の要請にこたえる必要があると考えるのであります。  まずお伺いいたしたいのは、なかなか議題の数や内容等によって異なると思うのでありますけれども、株主総会のあるべき姿、時間で言うと一体何時間ぐらいが適当であるとお考えになっているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  255. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 ただいまお話しございましたように、会社の規模、株主の数、それから議題、それによりまして時間の長短がそれぞれ出てこようかと思います。従前、株主総会が十分とか十五分とかで終了するということで、株主総会が形骸化しておるということの反省を込めたのが改正商法の一つの柱であったわけでございますので、余り短時間であるというのは非常に形骸化されたものとして適当でないという感じは持っておりますが、長い方につきましては、それぞれの事案について考えなければならないものでございますけれども、結局、個々の株主総会の議事内容によりまして、少し、何と言いますか、質問権の乱用とか、故意の引き延ばしとかというふうな傾向が見受けられるとすれば、それに要した時間というのは適当な時間ではなかったということになるのではなかろうかと思います。
  256. 神崎武法

    ○神崎委員 会社の実務では、今後の株主総会を円滑に進めるための一方策といたしまして、株主総会議事運営規則を株主総会の承認を得るとかいろいろな方法で制定をしたい、こういう動きがあると聞いておりますけれども、この点を法務当局としてどのように評価されるのか、また、そのような規則の株主に対する拘束力はどうなのか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  257. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 株主総会が適切に運営をされるということは、商法の建前からしましても大変望ましいことでございます。そのために議事運営規則というものができまして、それによって円滑な株主総会の運営ができるということは、私どもも歓迎すべき事柄であろうと思います。実務界におきましてもそのような議事運営規則のようなものをつくろうという機運があるようでございますが、これも定款に基礎がありまして、それに基づいて取締役会等で決められたものは、定款に基礎があるわけでございますので、株主総会の実際において株主に対する拘束力があろうかと思います。  それからまた、株主総会自体で議事運営規則を定めた場合には、これはもう当然、自治の問題でございますので、株主を拘束することになろうかと思います。
  258. 神崎武法

    ○神崎委員 さらに、株主総会の議事方法につきまして、定款の規定も慣習もない、会議運営の一般原則によるとした場合に、国会の議事規則で補うという見解があるのであります。他方、この国会の議事規則は会議運営の一般原則を発見する参考になるのにとどまるということで、国会の議事規則で補うとする見解については消極であるという見解もあるのでありますけれども、この点についての法務当局としてのお考えを伺いたいと思います。
  259. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 株主総会の議事運営につきましては、まず商法その他の法令によらなければならないことは当然でございます。さらに、細目といたしまして、先ほどお話が出ました議事運営規則があれば、それによるということになるでありましょう。また、そういうものがない場合には、一般的には慣習によるということになろうかと思います。そのようなことも明確でないというような分野につきましては、一般の法理といいますか、合理的な考え方で処理をするということになろうかと思います。  そういう面におきまして、国会の議事運営規則というものが直ちに株主総会に適用されるべき規則ということは法律的には言えないと思いますが、一般的な会議体の運営の一般の原則が国会の議事運営規則の中に盛られておるという面もございますので、したがいまして、直ちに規則がそのまま適用されるものではございませんけれども、慣習的なものとか、あるいは法理合理的なものを発見する手がかりとして議事運営規則が参考にされるという形になるのではなかろうかと思います。
  260. 神崎武法

    ○神崎委員 それから、現実に長時間の株主総会になっております事例を見てみますと、新設の取締役、監査役の説明義務をめぐってどうも紛糾しているように見えるわけであります。  そこで、この説明義務につきましてお伺いをいたしたいわけでありますが、取締役、監査役に対する質問につきまして議長が部課長等の他の適当な補助者に答弁させることができるかどうか。そして、補助者が答弁いたしましたときに説明義務違反の問題はだれについて生ずるのか、こういう点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  261. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 商法の規定の上では、取締役、監査役が説明義務を負うというふうに規定されておりますけれども、これはすべての事柄につきまして取締役、監査役自身が答えなければならないということでもなかろうかと思います。事案によりまして、非常に細かな数字の説明であるとか、そういうような事柄につきましては、むしろ補助的な者が説明する方が妥当であるという面も多分にあるわけでございますので、その質問事項あるいは説明内容いかんによりましては、その補助的な者に説明をさせるということは合理的なものであって、相当であろうと私は思います。  しかしながら、それはあくまでも取締役または監査役の補助者としての説明でございますので、その説明内容につきましては、当然補助を受ける立場にある取締役、監査役が責任を負うべきものと考えております。
  262. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、交際費、寄附金、政治献金等の無償の利益供与に関する質問があったときの答弁の範囲、程度という問題につきましてお伺いをいたします。  この点につきましてはいろいろな見解があるわけでありまして、ある弁護士会の出しましたガイドラインによりますと、取締役は無償の利益供与につき、その種別、種別ごとの総金額、件数を明らかにする義務がある。ただし、無償利益の供与先、供与の趣旨を説明する必要はない。監査役は会社が行った無償の利益供与について取締役の義務違反を認められない旨の監査報告書を提出している場合、株主より違法もしくは著しく不当な無償供与の疑いのある具体的事実を主張、立証してきたときには、これに答える必要上、供与先、供与の趣旨を明らかにしなければならないことが起こり得る。このように述べているのであります。  そこで、会社が行いました無償の利益供与についての質問に対して、商法二百三十七条ノ三第一項ただし書きにいう質問に対し、説明を拒絶できるのかどうか、拒絶できないとした場合に、どこまで答える義務があるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  263. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 商法の規定では、一般的には質問権があり、また取締役等は説明をする義務を負うわけでありますけれども、御承知のとおり二百三十七条ノ三の第一項のただし書きでその説明を拒むことができる場合を規定いたしております。その最初会議の目的に関しないものという関係につきましては、利益無償供与の関係につきましては、これは損益計算書またはその附属明細書にかかわることでございますので、会議の目的の範囲内に属すだろうとは思われます。  ただ、その中身につきましては、先ほど申しました二百三十七条ノ三の一項のただし書きのその他の拒否事由であるところの株主共同の利益を著しく害するような場合、あるいは調査に手間がかかるというような場合には、その他の正当の事由があれば拒否できるわけでございます。  したがいまして、その利益無償供与の関係につきましての具体的な質問内容について、またその答弁といいますか説明の内容にただいま申しましたような拒否事由がある場合には、一般的に拒否ができるということでございます。ただ、それが具体的にどういう場合にどうであるかということは、これは一律にこういう場合にはこうだということはなかなか決めがたい性質のものであろうと思われますが、ただいまお述べになりましたガイドブックなどでは、一応の線みたいなものを引いて説明しているものもあるようでございますけれども、それも一つの合理性を持った線であろうと思いますが、個々の内容いかんに、よっては、抽象的な基準で決めがたい面も多分にあろうかと考えております。
  264. 神崎武法

    ○神崎委員 営業報告書につきましては、改正商法によりまして株主総会の承認事項から除外されまして報告事項とされているのであります。学説では、報告事項に説明義務があるのかどうかという点について、報告事項につきましても説明義務があるとするのが多数説のように思われるわけであります。ところが会社の実務界では、報告事項になった以上説明義務はないのだ、こういう考え方が多数であるというふうに承知しているわけでございますけれども、報告事項に説明義務があるのかないのか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  265. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 株主総会に対する報告事項ということは、言わばその報告の内容会議の目的になっておるわけでございますので、したがいまして、先ほど申し上げました拒否事由としての会議の目的に当たらないときということには当たらない。そういう意味では説明義務の対象に一応なっておるのではなかろうかと思います。
  266. 神崎武法

    ○神崎委員 改正商法によりまして営業報告書が総会の承認事項から報告事項に変わった、こういうふうに変わったことによって説明義務の範囲に変化が生ずるのかどうか、この点についてお尋ねをいたします。
  267. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 株主総会の承認事項であると報告事項であるとの違いが説明義務の範囲に影響を及ぼすものとは私ども考えておりません。いずれも会議の目的になっている事項である限り、基本的に説明義務の範囲は変わらないものというふうに考えております。
  268. 神崎武法

    ○神崎委員 改正商法施行後、当初予測しなかったような形でいろいろ問題にされましたのが、この利益供与の禁止規定と表現の自由との関係が大きな問題になったわけでございます。要するに、企業の方では雑誌の購入とか広告の掲載をやめてしまった。これはいろいろ景気が悪いとか、あるいは総会屋の出版物と一般の出版物との線引きがなかなか難しい、こちらの方の出版物を購入してあちらを買わないということになりますと、その点を株主総会で追及される、あるいは総会屋から個別に追及をされたときに適切な答えができない、それならばいっそ一律にやめてしまえ、こういったこともあったかと思うわけでありますけれども、企業側の対応も、この利益供与について大変機敏な対応をした、また取り締まり当局の方もこの機会に総会屋を徹底的に取り締まりたい、そういうことで、いささか花火を大きく打ち上げたというようなこともあったと思うわけでありますけれども、そういった表現の自由との関連で出版業界あるいは広告業界にとって大変な問題が生じた、大きな影響が出たわけでございます。  この点については取り締まり当局も十分その利益供与の適用に当たっては表現の自由との兼ね合いについても留意をしていただきたいと思うわけでございますけれども、利益供与の問題と出版物の購入、広告の掲載、この問題についての線引きについて、警察当局のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  269. 川畑久廣

    ○川畑説明員 お答えいたします。  企業が行います出版活動に対する賛助につきましては、基本的には企業が当該活動の趣旨、目的に照らしまして賛助する価値と必要性があるかないか、これを自由な意思に基づいて判断すべきものであろうと考えているわけです。警察としましては、これまで一貫しまして商法第四百九十七条につきましては株主権の行使に関する利益供与が違反となるのでありまして、出版活動一般に対する賛助を問題としているのではないということで説明いたしております。そういうことから、そのような現象が起きましても、あくまでもそれは企業の自主的判断に由来するものだと考えているわけです。  ただ、このような現象に対しましては、今後とも警察は企業の関係者に対しまして、改正商法の趣旨の正しい理解が得られるよう企業と連絡を密にしまして総会屋の排除の実効が上がるようにいたしてまいりたい、そのように考えているわけです。
  270. 神崎武法

    ○神崎委員 最後に大臣にお尋ねしたいわけでございますけれども、改正商法が今後どうやって定着していくのか、その中でも特に株主総会でございますけれども、総会屋の一部の者は、改正商法でああいう厳しい規定ができてもどうせ三年間くらい我慢をすれば何とかなるんだろう、こういうことを言う者もいるというふうに聞いております。現実の株主総会のいろいろな動きを見てまいりますと、大変改正商法の意図する方向で動いているようにも思えるわけでありますけれども、改正商法下におきます株主総会が今後どのように定着していくとお考えになっていらっしゃるのか、今後の見通しについてお尋ねいたしたいと思います。
  271. 住栄作

    ○住国務大臣 これは申し上げるまでもないところでございますが、株主総会は会社の実質的な所有者である株主が一堂に会して会社の状況について経営者から報告を受けたりあるいは役員の選任、利益処分等、会社の重要事項を決定する役割を持っている非常に大事な機関でございます。したがって、このような株主総会が十分その機能が発揮できるよう、株主の適切な質問、発言あるいはこれに対する会社執行部の適切な説明、答弁が確保されて、そして株主の総意がそこに集約されるような、こういうところへ持っていかなければならない、それがまた改正商法の大きなねらいの一つであったと思います。  したがって、先ほど来問題になっておりますような株主権を乱用するようないわゆる総会屋、これは警察、検察に特に努力をしていただいてそういうことが根絶されるように、そして改正商法の企図するところが正しく定着するように我々努力をしていかなければならない、こういうように考えております。
  272. 神崎武法

    ○神崎委員 以上で終わります。
  273. 森清

    ○森(清)委員長代理 三浦隆君。
  274. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 報徳会宇都宮病院にかかりますリンチ事件に関連してお尋ねしたいと思います。  初めに法務大臣にお願いしたいと思います。  法務省には、憲法に規定された基本的人権を擁護することを任務とする人権擁護局を初めとする人権擁護機関が設けられております。今回の宇都宮病院事件では、病院内で看護職員によるリンチが行われました。そのため患者が死亡したのではないかとの疑いがかかりまして、警察が今捜査中でございます。このような病院内で起きた人権侵犯事件、特に自由を拘束されております精神障害者を治療するはずの精神病院で発生した人権侵犯事件につきまして、まず法務大臣の所見をお尋ねしたいと思います。  そしてまた、法務省として、今後かかる不祥事件が起きないように、精神障害者への人権擁護に向けてどのように対応されるおつもりなのか、お尋ねをしたいと思います。
  275. 住栄作

    ○住国務大臣 宇都宮病院事件につきましては、人権擁護の立場から私ども重大な関心を寄せているところでございます。出先の法務局を中心にいたしまして、人権擁護の立場から今いろいろな調査に当たらせているところでございますが、今もおっしゃいましたように、既に警察がこの事件を手がけ、そしてまた厚生省も調査団を派遣して実態を把握しておられるわけでございまして、そういうことを総合いたしまして、人権擁護の立場から遺憾のないようにいたしてまいりたい。  ただ、私も人権擁護の仕事をやっておりましても、人権擁護に当たる職員は立入検査等の権限もございませんし、そこらあたり、特に一定の場所内における問題については大変な限界を感じている面等もございます。そういう意味で、厚生省あるいは警察のこの問題に対する対処について、いろいろまた連絡をとりながら情報の提供を受けたりいたしまして、人権擁護の立場からも対処していかなければなりませんし、これを十分解明することによって、ほかのこれから予想され得る問題に対する対応の仕方も検討していかなければならぬ、こういうように思っております。
  276. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 人権擁護にかかる幾つかの法律が既にあります。そして、事は厚生省にかかることだけじゃなくて、人権侵犯全般については法務省の所管にあるはずですし、例えば人権擁護委員法の第十一条三号には「人権侵犯事件につき、その救済のため、調査及び情報の収集をなし、法務大臣への報告、関係機関への勧告等適切な処置を講ずること。」こんなようなこともできるわけでありまして、言うなれば、精神病院において起こった事件は何も今回が初めてではなくて、同じような事件が何回も起きているわけであります。とするならば、過去に起きたときに、そうした人権侵犯につき、法務省がどのような適切な処置をとってきたのかも問題なのであって、別にこれから始まるのじゃないんだということで、これまでの対応が大変に手ぬるかったと思いますが、過去はともかくとして、今後これを契機としてもっと的確な処置をとっていただけるよう要望したいと思います。  次に、厚生省にお尋ねをしてまいりたいと思います。  今、安楽死をめぐりまして、心身ともどもに耐えがたい苦痛に攻められ、前途に生きる光明を失った患者から医師が安楽死を求められた場合、医師は人間の生命の尊厳を守る立場から最後まででき得る限りの治療に専念すべく、安楽死への患者の願いを拒否するのが通例だと思います。安楽死の是非諭はともかくとしましても、医師のこのような人命尊重への医の倫理に対しましては、いつ健康を害するかわからない我々も心から敬意を表し、感謝しているわけです。  しかるに、今回の宇都宮病院で起きた不祥事件は、同病院が国の精神障害者のための貴重な医療費等を患者のために使わないで、医療法に規定する医療体制を手抜きするなどして収益を図り、それが行き過ぎて国税庁に脱税で摘発されたり、また患者を治療するのではなく患者へ暴行を働き、そのためその異常死がマスコミで報じられ、警察により傷害致死等で捜査されているのが現状です。国として国民医療行政をつかさどり、国民医療行政の責任ある監督官庁として、厚生省はこの事件についてどのように考えていられるのか、その見解をお尋ねしたいと思います。
  277. 野村瞭

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  今回の宇都宮病院のような事案は、精神病院にあってはならないことでございまして、まことに遺憾に存じておる次第でございます。  厚生省といたしましては、栃木県が既に四回にわたりましてこの病院に対しまして立入調査をいたしておるところでございますが、さらに事実関係の究明に努めてまいるとともに、既に栃木県に対しまして当面の措置といたしまして患者、家族に対する相談窓口の機能強化、また患者の転退院の促進、医療従事者の補充等、病院側の改善措置を促す強力な指導を行っておるところでございます。また、入院患者に対する実地審査の実施等を指示したところでございまして、これらによりまして宇都宮病院に入院中の患者さんの処遇につきましては万全を期する所存でございます。
  278. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 先ほど法務大臣にも言ったわけですが、こうした精神障害者に対します事件は今回初めて起こったわけじゃないわけです。しかも新聞で報じられてから、その夕方あたりになってから厚生省が調査する。言うならば、それすらこれまで事前に行わないでこうしたことが起こってきたというところに大きな問題があるし、何か監督責任官庁として責任意識というか、そうしたことが私は極めて乏しいように思えるのです。  もっと本質的な問題に立ち返りまして、もう一問続けて、同じような趣旨でありますが、お尋ねしたいと思うのです。  現在、刑法改正をめぐる是非論が多年の懸案として残っておりまして、特に保安処分と関連する保安施設のあり方をめぐっても、法務省と日弁連との間でいろいろと論議を闘わせてきているところだと思います。特に日弁連では、精神障害者と犯罪をめぐる問題に関し、これを刑法改正の問題として位置づけることに反対し、精神医療の改善を特に強調してきたわけです。ところで、現行の医療法制としましては、関係の医師法の一条では医師の任務規定がありますが、「医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」これは医師についての規定であります。そして医療法の第一条の後段の方では病院についての規定がありまして、「病院は、傷病者が、科学的で且つ適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され、且つ、運営されるものでなければならない。」というふうな、いわゆる適正な診療ということを強調しているわけです。そしてまた、精神衛生法によりますと、その第一条において「精神障害者等の医療及び保護を行い、且つ、その発生の予防に努めることによって、国民の精神的健康の保持及び向上を図ることを目的とする。」このようにあります。  このように、法制度はある程度、目的自体は大変よく書かれているのに、なぜこういう不祥事件が起こるのかという問題であります。今回の宇都宮病院事件におきます不祥事は、精神障害者の医療と保護を行うことを目的とした病院で起こったことですし、医師及び病院全体の信用を著しく棄損したばかりではなくて、これからの保安処分をめぐります刑法改正論争にも大きな影響を与えるものだと私は思っております。  ということで、厚生省より重ねて今回の事件に対する所見をお伺いしたいし、これまでどうしてこういうことが何回も起こるのに正すことができなかったか、そうしたことの責任意識を持っての答弁をお願いしたいと思います。
  279. 野村瞭

    ○野村説明員 今回の宇都宮病院の事案につきましては、私ども報道によって初めて知ったことでございまして、それ以降事実解明の究明に努めているところでございます。既に捜査当局におきまして、傷害または傷害致死容疑で看護職員等五名の被疑者を逮捕したところでございます。厚生省におきましても、先ほど申し上げましたように、栃木県で四回にわたって立入調査等を行っておりますので、それを通じまして、事実関係につきまして究明をいたしているところでございます。  現在までに私どもが把握をいたしております事実につきまして申し上げますと、医師、看護婦数の不足、それから病室外に患者さんを収容していた事実、それから無資格者に、よるエックス線照射の疑いの事実、また患者さんの預かり金のずさんな会計処理等を確認しておるところでございます。先ほど申し上げましたが、そのような事実関係が判明しているところでございます。  繰り返して申し上げますけれども、このような事態につきましては、厚生省といたしましてもまことに遺憾な事態と考えておりまして、その面におきまして責任を痛感しておるところでございます。
  280. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 同じような答弁は、これまでに、精神病院で起こりました事件のたびごとに実は答弁があったわけです。言うならば、今回の事件で初めてお答えいただいたのではなくて、同じような事件が何回か起こり、そのたびごとに同じ答えがしてあるわけです。言うならば、報道によって初めて知ったんだとお答えになっているわけです。なぜ報道がなければわからなかったかということなんです。医療法その他によっても、医師の人数はどのくらいでなければならない云々ということは、既に法律によっても決まっているわけです。  大体厚生省設置法によっても、「厚生省の権限」の中でもその四十号においては、医療監視員をして、病院等そうしたものに立入検査させることと、まさに厚生省の役割、任務として書かれているし、それが具体化されて医師法なり医療法などへとつながってきているわけであります。  こうしたことがあるのに、なぜそうした立入検査などを常々やってこないんだということなんです。何かこうした死亡事件が起こり、新聞に載ったら慌てて見に行ってくるということを何回も繰り返さなければならない。なぜ定期的に見ようとしないのか。定期的に素直に見さえすれば、医師数が不足である事実だとか、そんなことはよくわかるはずです。しかも、そうした暴力事件が今度初めて突発的に起こったというならば、気がつかなかったという言いわけも成り立ち得るけれども、よく起こっていたということにでもなれば、前々からよく見ていればこれまたよくわかるわけであります。言うならば、そういう意味において、厚生省の監督機能というのは、ほとんど何物も機能しないで今日まであいまいに過ごされてきたところに大きな問題があると思うのです。  そこで、今一部お答えにもなりましたけれども、改めて、過去におきまして宇都宮病院事件におけると同じような精神病院における不祥事件にはどのようなものがあったか、この間お調べいただきましたけれども、お答えをいただきたいと思います。
  281. 野村瞭

    ○野村説明員 お答えをいたします。  精神病院におきます過去の同様な事件といたしましては三つございます。  一つは、昭和四十三年の大阪にございます粟岡病院における暴行事件でございます。内容を申し上げますと、看護職員が、集団で病院を離れました入院患者十数名に対しまして野球バット等で暴行を加え、うち一名を死に至らしめたという事件でございます。  二つ目は、昭和四十四年の安田病院における暴行事件でございますが、これも看護職員が、無断で離院を企てました入院患者に対しまして暴行を加えまして死に至らしめたという事件でございます。  さらに、昭和五十四年の大和川病院における暴行事件でございますが、これは看護職員がベッドで喫煙をした入院患者に対しまして暴行を加え、同じく死に至らしめたという事件でございます。     〔森(清)委員長代理退席、委員長着席〕
  282. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今お答えいただきましたように、例えば大和川病院の事件一つ昭和四十四年に起こり、一つは五十四年に起こっているわけであります。最初昭和四十四年のとき、病院から逃げようとした患者を看護人が集団で暴行して死亡させたということで、看護人三名が懲役三年を受けているのです。そういう体質を持った病院であるならば、その後も的確に立入検査その他をしてよく指導していればよかったにもかかわらず、何事もなさないで来てしまった。その結果、再度起こってしまった。すなわち五十四年に、看護人が指示に従わないというだけのことで患者を殴る、ける、そして暴行してこれまた死亡させてしまっているわけであります。この場合、単に理事長や院長をやめさせたから問題が解決するのではありませんで、そこの病院の持っている体質そのものを改めなければならない。また、もっと根の深いものがあると思います。同じようにして、昭和四十二年には阪奈サナトリウムでも事件が起こっております。ここでも患者が十数名にもわたって集団脱走を企画したということで、野球バット等で院長から看護人から一緒になって患者に対し暴行を加えて、その結果、患者は死亡してしまったわけであります。院長、看護人が懲役刑を受けてきているわけであります。  このようにして、今回の宇都宮病院事件というのは何も初めて起こったわけじゃないのだということであります。そしてそのたびごとに、国会の質問その他を通じながら、なぜ事前の告知なしの立入検査をしないのかという質問が繰り返されているのに、あえてしないわけです。法の規定としては、事前に告知しなければ立入検査してはいけないなどとは何にも書いてないのです。勝手に自己規制して、しないわけです。  ですから、例えば今度の宇都宮病院事件に関しても、患者の収容状況は何名ぐらいだろうかといったところが、許可病床数が九百二十に対して入院患者数は八百八十九名で、少ないのです。新聞、週刊誌等で報じられている事実は多いのですよ。何でこんな食い違いが起こるか。事件が起こったから数を減らしてしまっているわけです。これが事件が起きない、事前告知しなければそのままの実数がわかるはずであるにもかかわらず、そうした対応が大変に不十分だということであります。これは患者の収容人員だけじゃないのです。御報告いただいているところの医療に従事する人数、構造、設備の状況、病棟管理の状況、無資格者による医療行為の状況あるいは面会人の状況、通信の状況、入院患者の預かり金の問題、確かに新聞、週刊誌でもこうしたことは既に報じられておるわけです。ここでは報告にはいただけませんでしたけれども、法によって必ず整備しておかなければならない、病院にとって必須のものがあります。  例えば診療録のようなものです。患者をいつだれが診察した結果、どういうふうな症状であったか、あるいは患者が死亡するような場合、その検案に立ち会えば検案書というものを書かなければならない。あるいは死亡証明書を書かなければならない。だれが、いつどう書いたかということがわかりさえすれば、現実にそこでのお医者さんが、だれとだれが診察に携わって、あるいは年間何回の診察を患者さんにしてあげたということなども事前にわかるわけです。言うならば、これまででもやりさえすればわかっていたにもかかわらず、やらなかったわけであります。  国としては、この財政難の折にもかかわらず貴重な医療費を、精神衛生対策費としてもかなりの金額を出しているわけであります。例えば精神衛生費だけでも年間七百八十億円というお金が出ている。そのうち措置入院費だけでも七百十億円という金が出ている。このようにして宇都宮病院にも患者の人数なりそれぞれに応じて多額の金が流れておるのです。にもかかわらず、その金が患者のために使われようとしないで、医者の人数や何かを減らして、まさに私腹を肥やすというか、病院の方で収益の事業に充てて、あげくの果ては二億円余りも脱税でそのお金が持っていかれているのです。患者不在のような状況が行われてきたのです。こうしたことを何ら立入検査もしないで放置してきたのです。言うなら、これまでも事件が起こって、そのときだけのおざなりの答弁で終わってきたからこうした事件が起こったのであり、今回また遺憾です、というだけであれば、また次に事件が起こるかもしれないのです。  私がお願いしたいのは、こうしたことを契機として、事前告知なしの立ち入りということを、この病院危なそうだなと思うのであるならば、危なそうなところだけでも何とか定期的に回っていけば、そして回ってそこに働いている人たちと個人的にお会いして意見を聞くなり、あるいは施設を見て回るなり、そしてまた診療録などを見ることによって、精神病院の実態というものがもっともっとわかるだろうと思います。むしろ監獄の中の方が、先ほど面会の是非の問題が質疑されておりましたけれども犯罪を犯した人、言うならば裁判の結果、有罪だとなった人が入れられているところの監獄の方が開放的であって、犯罪者ではない精神偉害者の治療のためのところの方が風通しが悪いというか、極めて閉鎖的であって、そういう人たちの人権を考えなければならないところの監督官庁が、それぞれ人ごとのような答弁をされていたのでは、本当に財政難の折から貴重な金を使っていて、国としてもむただし、患者の立場に立ってもその家族にとっても穏やかなことではないと思うのです。  次に、宇都宮病院に。おきましては、これまでも何度か脱走事件があった。一つは、昭和五十三年十一月の脱走事件では、患者六、七人が脱走して失敗して、看護人によってリンチされたということが起こった。あるいはまた、元公務員の患者で、一度は脱走を企て、失敗して看護人からリンチを受けながら、再度脱走を企て、ことしの二月に脱出したということなども報じられているわけです。また、新聞、週刊誌もある程度ちゃんとそうした人たちの意見を聞きながら書いておるものだと思いますが、なおかつ事実を確認したいというのであれば、具体的にわかっているケースなんですから、これからでも遅くないのであって、別に警察当局でなくても確認しようとすればできることだということであります。すなわち、これまでの共通している事件というのは、どれも精神病院にいたたまれなくて脱走をする、そしてその脱走がばれたために、捕まって暴行され死亡していくというケースが大変多いのです。じゃ、なぜ脱走しなければならないのだろうかというふうなことなど、厚生省としても十分にお考えいただきたいところであるというふうに思うのです。そこで、時間ですので先へ進むことにいたしまして、次に警察庁の方にお尋ねしたいと思います。医療法人の報徳会宇都宮病院のリンチ事件について、今捜査なされているというふうに伺いますか、なぜ捜査されたのか、その捜査の動機、目的あるいは規模、範囲、捜査の効果及び今後の見通しにつきましてお尋ねしたいと思います。
  283. 三上和幸

    ○三上説明員 栃木県警察におきましては、三月十四日に新聞報道によりまして事案認知をいたしたわけでありますが、宇都宮南警察署を主体として所要の専従捜査体制をとりまして、昨年四月及び十二月に患者が死亡した事件につきまして、三月二十九日に傷害致死及び傷害容疑で被疑者五名を逮捕するなど、事案の解明に努力をいたしておるところでございます。
  284. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 捜査をされるには、よほどの論拠がなくては捜査に着手はできないと思うのです。この場合どういうきっかけがあってやられたのか、もう一度御答弁をいただきたいと思います。
  285. 三上和幸

    ○三上説明員 端緒を得まして、関係者の取り調べによりまして、事案として内容的に間違いないという判断をいたしたので捜査に入ったわけでございます。
  286. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 関係者をなぜ呼ばれたのでしょうか。
  287. 三上和幸

    ○三上説明員 なぜ呼ばれたということでございますけれども、私どもとしてもいろいろな情報も把握をいたしておりますので、その状況について知悉をしておられると思われる方に事情を聴取したということでございます。
  288. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 ですから、よほどの論拠がないと、勝手に人を呼んで、あるいは人に意見を尋ねること自体大変問題だと思うのです。この場合、新聞、週刊誌等がいろいろな事件を現在報じているわけであります。とすれば、それにまつわりますうわさなり情報というものが警察に入っていたのだろうと思います。論拠なくして捜査への着手ということはあり得ないだろうと思うのです。今、お話を聞いていると、何人かを呼んで話をしている間に今だんだん固まってきていると言うのですが、私が聞きたかったのは、そうじゃなくて、何人か聞いているということ自体、何でその人たちを呼んで聞かなければならなかったのか、何でその人たちを呼ばなければならなかったのか。  すなわち、理由もなく呼んだら、それこそ警察は人権侵害になってしまうのじゃないですか。例えば何か投書があったとか、電話があったとか、警察へ駆け込んでくる人がいたとか、何らかの論拠がなければ一捜査内容が今どこまで進んでいるかとか、詳しいことを聞こうとしているのじゃないのですよ。そうじゃなくて、何でこういうことになったのか、そのことをお尋ねしたいのです。
  289. 三上和幸

    ○三上説明員 警察捜査をいたしますのに、どういう端緒に基づきましてどう捜査をするというようなことにつきましては、一々細かく申し上げられる内容でございませんので、答弁を差し控えたいと思います。
  290. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 その答弁はちょっと問題だと思うのです。それがいわゆる傷害事件であるのか、傷害致死であるのか、暴行罪であるのか、何であるか、それが、内容として今触れるわけにいかないというのは、これは理由として成り立つと思うのです。私は、そこじゃなしに、その前の段階なんですよ。警察が人を呼んで話をする。呼ぶ方は大した気持ちじゃないかもしれませんが、普通の人たちというのは、警察に呼びとめられたり、ちょっと意見を聞きたい、あるいは署まで来てくれませんかと言われただけでも大変にショックを受けるものなんです。普通ですと断りたいものなんですよ。だけれども警察で呼ばれるというのですから、呼ぶ以上はよほどのことがあるでしょう。単なるうわさ云々を超えた何かがよほどあったからじゃないかというふうに私は聞いているのであって、そうした呼ぶことの論拠すらなくて呼んでいるような答弁になると、何か実にあいまいのような感じが私にはします。大変遺憾ではないかなと思うのですが、そう思いませんか。
  291. 三上和幸

    ○三上説明員 捜査一般的な端緒につきましては、それは電話による届け出の場合もございましょうし、被害者による申告の場合もございましょうし、あるいはその内容について知悉をしている人の申し出と申しましょうか、内容についての申告と申しましょうか、そういうことがあるわけでございますので、その端緒につきましてはいろいろなものがございまして、その端緒の中で、これはこういう端緒に基づいて捜査に入ったものでございますという点を申し上げられない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  292. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 先ほど来見ましたように、今度初めて事件が起こったわけではなくて、この病院にはそのほかにも、以前にもあったやにいろいろと新聞なり週刊誌が報道しているわけであります。しかも、その報じている新聞なり週刊誌というのは、一応日本を代表するところのものなんです。それが、一紙だけではなくて、幾つかが重なるようにして報じて、しかもそれが一致しているような内容の場合には、それだけの論拠を持って書かれているのだろうと思うのです。  ですから、そうしたことが警察として、こういう事件があった、いろいろと新聞、週刊誌その他を通じて何回もある、これはほうっておけないということであるのか、あるいは、精神鑑定医なんというのはみなす公務員でありますから、公務員として違法の事実を知ったから違法の事実は黙視できない、私は告発の義務を負っているのだ、そういうことでもって端緒になったのかとか、むしろ、例えばみなす公務員である者が違法の事実を知りながら見逃してきたとすれば、その人もおかしな立場になってくるのだろうと私は思いますが、しかし、これは先のことで、また改めてお尋ねをしたいと思います。  その次に、同じく、よく新聞、週刊誌等に伝わっていることでありますが、暴行の凶器として金属パイプが使用された、あるいは金属パイプが押収されたということが書かれてあります。これも聞けませんか。
  293. 三上和幸

    ○三上説明員 昨年の四月二十四日に発生をいたしました傷害致死容疑事件につきまして、金属製パイプが使用されたという容疑がありまして、現在事実の解明に努めているところでございます。
  294. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 この方は、かなりお認めいただいたようですね。  その次に、当時、リンチの結果がどうか、それが暴行傷害だけであるのか、あるいはそれが死因につながるかどうかは別としまして、異常な死に方であったというふうに伝えられているように思うのですが、当時死亡した人が、二件ほどそうした指摘がされているのですが、その場合に、所轄の警察署に異状死体としての届け出というのはなされていたのでしょうか。
  295. 三上和幸

    ○三上説明員 所轄警察署に異状死体の届け出は出されておりません。
  296. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 医師法その他ですと、もし異状死体であれば届けなければならない義務があるわけです。異状死体であると新聞、週刊誌等は皆伝えておりますけれども、今後捜査の進展でもしそうであるとすれば、伝えなかった方に大きな手落ちが出てくるのだろうと思います。  それから、昨年十二月三十日にリンチを受けて亡くなったとされております患者の遺体は、たまたま土葬であったので、これを発掘して鑑定するとも言われているのですが、それはどうなんでしょうか。
  297. 三上和幸

    ○三上説明員 三月二十七日に司法解剖を行ったところでございます。
  298. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今の答弁ですと、かなり大変なというか、重大な御意見だったと思うのです。一度埋められた死体を発掘して死体解剖に付すというのは、これまたよほどの論拠がなくてはやたらと死んだ人の死体を掘り出してもう一回解剖し直すなんということは、私は普通あり得ないことだと思うのです。よほど死体のあり方に疑問なり疑いが出てきたから、掘り返してこれはもう一度見なければならない、私はそういう気持ちが警察自体にもおありになったのだろうと思います。  その死体解剖を改めてやった結果がどうであるかは、今捜査の途中であれば、お答えいただきたくても私は結構でありますが、普通ですと、焼いてしまうから死体は残らないにもかかわらず、今回たまたま土葬であったために発掘してやったわけです。しかし、期間はかなり経過しておるわけです。それでも、解剖の結果何らかの手がかり的なものは警察として有力に握られたと私は思うのです。  と同時に、新聞、週刊誌等の報告もかなり真実性を持っていたなと私は思うのであります。いろいろなことが書いてありますけれども、全部否定されたわけじゃありませんで、例えば金属パイプの押収も事実であった、あるいは土葬されたものを改めて死体発掘して解剖したというのも事実であったというふうに指摘されていくということは、ほかに新聞、週刊誌等で書かれていることの中にもでたらめではなくてかなり真実性があるんだというふうになっていきますと、その病院における暴行の事実、傷害の事実あるいは異常死の事実ということはやがて明らかになってくるものだろうと私は思います。また、そうであるならば、そういう事実があったのにもかかわらずひた隠しに隠してきたところの病院の内部の体制、あるいはそれを見抜くことができなかった厚生省を初めとする監視の体制のあり方に大きな問題点があるというふうに私は思います。  その次に、院長や同病院の非常勤である東大の武村助教授という方が、現在某画家より不法な強制入院を行ったとして逮捕監禁罪で告訴されていると言われておりますが、事実なのでしょうか。
  299. 三上和幸

    ○三上説明員 昨年の十月三日に警視庁におきまして告訴を受理しまして、所要の捜査を遂げまして、本年三月十九日に東京地方検察庁に送付をいたしております。
  300. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 これも同じく新聞、週刊誌等で書かれていたわけでありますが、こうしたことも事実だというお答えがありました。また事実、逮捕監禁罪で告訴したということは、現在の精神病院というもの、いわゆる同意入院というものが、その病院の管理者と病人というか精神障害者の保護人の同意があると、私は嫌だと本人が言っても入院させられてしまう。しかも、そうして中に入っちゃったら、今度は出るに出られない。うっかり脱走でもすれば先ほど来のように大変なリンチを受けて、ひどければ殺されるかもしれない。言うならば監獄以上にひどいところに追い込まれていくのかなということでありまして、私は大変に大きな人権侵害事件であるというふうに思っております。  あと、捜査の都合でもしお答えいただけなければ結構でございますが、一応問題としてだけ指摘させていただきます。新聞、週刊誌等で報じられている中のほんの一部でもございます。  まず、暴行容疑については、リンチをした疑いのある看護職員や取り調べを受けた別の看護職員の中にも、この事実を認めたんだというふうに書いてある記事がありますが、どうでしょうか。
  301. 三上和幸

    ○三上説明員 現在捜査をしております中での関係者の供述、それが認めたか認めないかというようなことでございますので、ちょっとお答えを差し控えさせていただきたいというふうに思います。  それから、先ほど御答弁した中でちょっと補足しておきたい点がございます。  警視庁において昨年の十月三日に告訴を受理いたしまして本年三月十九日に東京地方検察庁に送付をいたしております事案についてでございますけれども告訴人が本年二月二十五日に告訴を取り下げた旨の報告も得ておりますので、つけ加えて御説明をいたしたいと思います。
  302. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 後段の方でありますけれども、とにかく精神障害者というふうに置かれている人の場合には、その人をめぐる保護人も、どういう人が保護人になり得るかも大変あいまいであって、本当に心底精神障害者の治療あるいは立ち直りを期待する方と、場合によりますと精神障害者と余り仲がよくないというふうな方もありましょうし、いろいろと難しいことだと思います。  とにかく我々とは違った立場にないということから、一度告訴したものを取り下げるというようなこともよくせきというか、これも理由を尋ねていけば、何か難しい状況が出てくるのじゃないかというふうに思います。といいますのも、告訴自体がでたらめに行われたわけではないのでありまして、たまたまこの武村先生という方と同じ東大の医学部附属病院の精神神経科の森山先生ほか四人のお医者さんたちが、精神障害の状態になく、入院させられたのは不当だという診断書をその人の場合には出して、これを告訴のときにあわせて出しているというわけであります。いわゆる個人的にやったのではなくて、四人ものお医者さん、むしろ東大グループといったら本来同じ立場にあるかなと思うのですが、その人たちが四人もそろって、この人は入院させる必要はないんだ、させたことは不当なんだという診断書を添えて告訴しているわけです。にもかかわらず取り下げられたとするならば、よくせきのことがなければならないだろうというふうに私は思います。  と同時に、この病院は、今のことで明らかになりましたように、今度の二つのリンチ事件だけではなくて、このように不当な強制入院の疑いもあるし、そのほかにも何回も暴行事件があったわけです。  ですから、繰り返すようになりますが、立入検査などをもっとまめにさえやっていただいたならば、こういうことは起こらなかったし、いわゆる人権侵犯につながるようなことは未然に防ぎ得るようなケースも幾らでもあったのではないか、言うならば、すべて手を尽くしてもだめだったんじゃなくて、手を尽くさなかったためにこういうことが起こったというところに私は大きな問題を感じております。  次に、傷害致死はともかくとしまして、暴行、あるいはそれに絡んで傷害にまで発展したことをこの当該関係職員が認めたかどうかということなんです。  新聞、週刊誌の中では、その看護人の一人は、一つのリンチ事件だけでなくて二つのリンチ事件にもかかわっているというふうに言われております。この事実というのは、一つの精神病院という狭い土地建物の中で起こったことですし、現実にリンチを受ければ、けがをしている、あるいは体のどこかがはれている、血を流している、あるいは何となく顔つきが正常でない、あるいはまた、その痛さに悲鳴を上げた声が病院のどなたかに聞こえているというふうなこともありましょうから、警察が取り調べなくても、厚生省なりが立入検査をして、それとなくその病院内の方に聞いても、こういう事実は明らかになってくると私は思うのですね。そういうことを厚生省がしたかどうかわかりませんが、そうした問題が残っていると思います。  一応警察にお答えをお願いいたしましょう。傷害致死はともかく、傷害についてのあれを職員が認めたかどうか。
  303. 三上和幸

    ○三上説明員 現在取り調べをいたしております関係の被疑者が、それを認めているのかいないのかという御質問でございますが、捜査内容にわたりますので、ちょっとこの場ではお答えを差し控えたいと思います。  ただ、その中で、例えば一つ事件だけではなしに、他の関連する事件もいろいろ話をするということがございますれば、そうしてその事件についての具体的な立証ができますれば、私どもとしては、単に現在手がけている事件だけではなしに、関連する事件についても十分な捜査を行ってまいりたいというふうに考えております。
  304. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 次は、警察というよりも厚生省からお答えいただいた方がいいのか、ちょっとわかりませんが、リンチ事件が昨年の四月二十四日と十二月三十日に行われ、いずれも患者は死亡したわけです。この患者の死亡を確認したのは最終的にはだれで、この患者についての死亡証明書を書いたのはだれかという問題であります。初めに、まず警察からお答えをいただきます。
  305. 三上和幸

    ○三上説明員 先ほど来申し上げておりますように、現在、昨年の四月と十二月の二件の死亡事案につきまして具体体的な捜査に入っておるわけでございます。それに関連をいたしまして、具体的にだれが検案をし、だれが検案の書類を書いたのかというようなことにつきましても、私どもとしてはいろいろな観点から今後捜査をいたしていくつもりでございます。
  306. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 実は、これも先ほどの暴行か傷害があるいは傷害致死かという微妙なことですと、御答弁のときに大変差しさわりもあるだろう、こう思うのですが、死んだときの死亡証明書をだれが書いたかというのは、だれか人が亡くなれば必ず死亡証明警は書かなければならないわけですね。ですから、死亡証明書は、家族にしろだれにしろ、わかるものだと思うのですね。ですから、これは別に捜査の差しさわりにも何にもなりませんで、死亡証明書のところの名前を見ればだれがそれを書いたかということは一日わかることだと私は思うのですね。と同時に、これは警察ではなくて、この病院の内部に明るい方でしたら、だれかが亡くなったときにはそこの病院ではだれが死亡証明書を書くかということぐらいは、限られたお医者さんであればこれまた別に隠すということではない、いわゆる死亡証明書に名前を書くこと自体は何の犯罪でも何でもないからであります。  もし問題になるとすれば、死亡証明書の死因のところをどう書いたか、これはあるいは問題になるかもしれません。すなわち、リンチによって暴行を受けたから死んだと書くか、それとも肝臓が悪くて、あるいは何々でもって悪くなって死んだんだ、いわゆる普通の病気の原因で死んだんだ、これは別ですよ。そうではなくて、私が今質問したのは、死亡証明書に記載したお名前の人はだれなんだろうか、この程度は答えても別段何でもないことじゃないかなと思うのですが、書類も押収されたとすれば、警察はこれをおわかりのはずだし、あるいは押収される前に既に厚生省ではそれをわかっているかもしれません。どちらかでも、もしお答えいただければ答えていただきたいと思います。
  307. 三上和幸

    ○三上説明員 現在捜査をいたしておりまして、それは私どもとして必要な書類については押収をいたしておるわけでありますが、そうした中で、果たして本当にその死亡診断書が名義人によって間違いなく作成をされているかどうかというようなことにつきましては、十分な確認をした上でどなたがやっておるというような形にしなければ私どもとしてのお答えにはならないのだろうということで、現在捜査をいたしておるし、それがだれによって作成をされ、どんな状況で検案をされ、どういう状況でそれが書かれたかというようなことも含めて私どもとしては調べていかなければならない、そういう性格のものだというふうに受け取っておりますので、今、単純にだれの名前になっておりますというような形でお答えができないという意味でございます。
  308. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 これもなかなか難しいお答えだったと思います。普通、私たちは、個人のお医者さんにかかるなり近所の病院にかかるなりして死亡したときに、死亡証明書に名前が書いてあれば書いた人と本人は必ず一致するものだ、実は私もそういう前提に立ってお尋ねしたのですが、問題は新聞、週刊誌で書かれている以上に難しいようでありまして、今のお答えは、死亡証明書に名前が書いてあっても真実その人が書いたかどうかわからないというふうに聞かれるわけですね。普通でしたらば、名前を書いた人がずばり診察して、自信を持って書いたわけですね。ところが今の答えは、そこに名前が載っていても本当かどうかはわからないんだというふうになると、そこの病院における医療体制というのでしょうか、実に、ずさんを通り越してむしろ大変恐ろしいというか、私は聞いていてそんな感じがいたしました。  なお、いろいろとお尋ねしたいこともたくさんありますが、早いもので時間になったようでございます。そこで、精神障害者への治療等の問題というのは刑法改正における保安処分の是非論と深くかかわるものですし、宇都宮病院だけのことでなく、精神障害者をめぐる法制度のあり方、その解釈、適用、厚生省を初めとする管理体制のあり方など、今後早急に検討しなければならない多くの問題点が残されておりますということを指摘いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  309. 宮崎茂一

    宮崎委員長 林百郎君。
  310. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、今問題になっております福島交通の問題について質問をいたしたいと思うのです。  ということは、事は軽視できない事態に立ち至っております。例えば、これと関係のある者の名前としては、現総理の中曽根氏を初めとして、元総理の福田赳夫氏、岸信介氏、それから田中角榮氏等の名前も出ておるようです。また現閣僚では、安倍晋太郎氏、竹下登氏、渡部恒三厚生大臣が出ておりますし、また議員としては、自民党の首脳部の、総務会長の金丸信氏、天野光晴氏、加藤六月氏、三塚博氏等が出ております。それから政治家が関係しているということで伝えているのは、那須町の国有林の問題だとか、あるいは白河駅前の用地を約八千平米、坪当たり二万一千円ぐらいで買った、現在は坪二十五万から三十万円ぐらいしているという問題、それから福島駅の国鉄所有地千三百平米を福島市をダミーとして買収の内定をしておるということ等が出ておるわけですが、これらは政治家が背後にいなければできないことだというようなことがマスコミにも書かれておりますし、今政治倫理の問題が国会でも非常に大きな問題になっておるときですから、これをこのまま放置しておくわけにもいかないということで、きょうは私は私なりにいろいろの対策を申し上げたいと思うのです。  まず最初に、運輸省にお尋ねします。  地方バス路線運行維持対策として福島交通に国と地方自治体とで補助金を出した金は、五十五年から新しい要綱になっておりますが、五十五、五十六、五十七、五十八で両方合わせますとどのくらいの金額になりますか。
  311. 豊田実

    ○豊田説明員 お答えします。  五十五年度、国と県合わせまして三億六千五百万、それから、五十六年度八億二千三百万、五十七年度五億八千万、五十八年度八億三千三百万という数字になっております。(林(百)委員「合計で幾らです」と呼ぶ)五年間の合計、ちょっと今計算いたします。
  312. 林百郎

    ○林(百)委員 それは福島交通に対する補助金ですが、これが福島交通と福島交通不動産との間では、社長も小針氏ですし、お互いに債務の貸し借り決済などしていてはっきりしないわけですが、こういう多額の、恐らくみんな合わせますとざっと計算して三十二億近くの補助金になろうかと思うのです。ところが、この金が、今度は同系の、同資本の会社である福島交通不動産になると使途不明金が約八十億円もあるというような、両方の会社関係を調べられて、赤字バス維持のための対策の補助金が適正に使われているかどうかということを運輸省では調べたことがあるのですか。
  313. 豊田実

    ○豊田説明員 お答えいたします。  その前に、ただいま御指摘の五年間、五十四年から五十八年度までの数字でございますが、国の負担分としては十五億八千七百万。この制度の仕組みは県が当該バス会社に払う補助金の二分の一以内を国が負担するということでございまして、今の十五億八千七百万の倍で三十一億ほどになります。(林(百)委員「それは地方自治体も出しているのでしょう」と呼ぶ)これは県の補助金で、そのほかに市町村からの補助金があるかもしれませんが、私どもの手元には報告が来てございません。それで、ただいま申し上げましたような趣旨の補助金でございますので、当該事業主体の福島交通に対するいろいろな直接のチェックについては県の方でやっていただいておるという状況になっております。
  314. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、運輸省としては福島交通のバス路線運行維持の資金がどういうように適切に使われているかどうかということの監査は全然していないのですか、県に任せてあるだけなのですか。
  315. 豊田実

    ○豊田説明員 お答えします。  基本的には県が直接チェックしていただくということでございますが、県を通じていろいろ資料が参りますので、私ども、地方の陸運局あるいは本省においても中身についてはチェックをいたしております。
  316. 林百郎

    ○林(百)委員 もし三十億以上の国や県の補助金が不動産会社の方へ資金的に流れていって、それが使途不明金というような形で何に使われているかわからないというような事態になったとすれば、どうしますか。今後、調査を十分なさる意思がありますか。
  317. 豊田実

    ○豊田説明員 毎年度の補助金の交付に当たりましては、所定の手続により審査をしてきております。今後の問題としましても、例えばこれまでの審査の過程で、もし課題が出てくればそれなりに対応いたしますが、私ども、県の方からいろいろ報告を受けている限りでは、当該補助金については特に問題ないという報告を受けております。
  318. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、それと姉妹関係にある同じ社長の不動産の方で使途不明金が——資本金が四千万ですから、その二百倍使途不明金があるということは、運輸省では知っていたのですか。
  319. 豊田実

    ○豊田説明員 お答えします。  私ども運輸省といたしましては、地方パスについては道路運送法に基づきまして福島交通の自動車部門について審査なり監督をしておるという状況でございますので、関連会社の動向については存じ上げておりません。
  320. 林百郎

    ○林(百)委員 自治省の政治資金の関係の選挙課長にお聞きしますが、国からこういう補助金を五年間に十六億近くもらっておるのですが、こういう会社政治活動に対する寄附金の量的規制と質的規制はどうなっておるのですか。それで、御承知のように、資本金は福島交通が十三億五千万、不動産の方は四千万。それと、こういう会社関係がありますが、個人の献金、これがどういうように規制されているか、数字を言ってみてください。
  321. 小笠原臣也

    ○小笠原説明員 まず、お尋ねの政治資金の量的規制の方から申し上げますと、総枠の規制といたしましては、個人のする寄附は二千万ということになっております。それから、会社のする寄附は会社資本金によって違うわけでございますが、ただいま御指摘のありました会社資本金の額からいたしますと千五百万総枠の寄附ができるように……(林(百)委員「それは福島交通の方ですね。不動産の方、四千万の方は」と呼ぶ)四千万は七百五十万ということになります。  それから、政治資金の質的な規制につきましては二つございます。一つは、会社その他の法人が国から補助金、負担金、利子補給金その他の交付決定を受けておる場合は、その交付決定を受けてから一年間は、地方選挙の議員あるいはその後援会等以外のものについて、すなわち国会議員なんかはそういう対象になりますけれども、その人たちに対して寄附をすることができないことになっております。それから、その会社が三事業年度以上継続して赤字を出しておる場合には、その欠損が埋められるまでの間政治活動に関する寄附をしてはならない、こういうふうになっております。
  322. 林百郎

    ○林(百)委員 運輸省にもう一度聞きますが、細田運輸大臣は「もしそういういわれのわからないような使途関係の、あるいは証券取引法違反の嫌疑も受けているわけですけれども、そういう会社への国の補助金がもし流れているとすれば、不動産会社の方へ流れていてそれが使途不明だとかなんとかということになるとすれば、これからも適正な関心を持って注意もしなければならない。」と言っています。あなたのきょうの答弁と大分食い違うのですが、どういうわけですか。
  323. 豊田実

    ○豊田説明員 お答えします。  私どもの補助金についての適正化についての努力というものは引き続いて行うということで、大臣の御発言と私の発言とは特に食い違っていないと考えております。
  324. 林百郎

    ○林(百)委員 国税庁にお聞きしますが、福島交通不動産の方の八十億円の使途不明金というのはどういう性質のものですか。使途不明だから使途不明なのだけれども、例えばさっきも出たように政治献金を福島交通でやった、しかし受取も何もなければ、それは福島交通がやったのか福島交通不動産の方がやったかわからない、ただそう言っているだけで。だから、もし政治献金が不動産会社の方からなされているとすれば、不動産会社の方にそういう記載はあるのですか、ないのですか。
  325. 中川浩扶

    ○中川説明員 お答えいたします。  お尋ねの法人につきましては昨年調査を下しておりまして、資金の流れ等についても調査しておりますが、個別にわたる内容でございますので、個別の答弁については差し控えさせていただきたいと思います。
  326. 林百郎

    ○林(百)委員 ちょっと何のことだかよくわからないんだけれども、要するに、どういう性格を持った金が使途不明ということになっているのですか。表へ出すことができない金ということなんですか。だから、使途不明なんですか。どういうことですか。
  327. 中川浩扶

    ○中川説明員 お答えいたします。  いわゆる一般論で申し上げますと、会社の経理に損金として出ているわけでありますが、それにつきましての使途というのはまさに言葉のとおりでありますが、使途が明らかでないということでございまして、それにつきましては、その額の大小あるいは規模の大小にかかわらず、調査に際しましてその使途を明らかにするというのは、税務のいわゆる実質課税といいますか、という趣旨から申しまして当然解明を図るということで、調査におきましては努力しておるわけでありますが、どうしても企業の方からその使途について明らかにしないという場合がございます。
  328. 林百郎

    ○林(百)委員 どうしても明らかにしない場合は国税徴収法やいろいろあって強制的な調査もできるはずですが、調査ができないからといってほうっておくのですか。今後何らかの対策を講ずるのですか。とにかく資本金の二百倍もの使途不明金がある会社なんというのは会社じゃないですよ。場合によっては福島交通が政治献金やいろいろしているそのダミーにこの会社を利用している。そうでないなら、ちゃんと不動産会社が受取をとっていればそれは不動産会社の献金だということになるわけですから。このままにしておくのですか、それとももう少し調査なさるのですか、強制的な手段を講じても。
  329. 中川浩扶

    ○中川説明員 一般に使途不明金につきましては、その使途が解明できないということで通常法人税を課する、ないしはそれにつきまして仮装、隠ぺいがある場合は重加算税というような執行上の課税もしております。しかし、通常、任意調査ということでございますと、おのずから本人がどうしてもそれにつきまして明らかにしない、明らかにできないという場合につきましては、今のような法人税課税ということで処理をいたしております。
  330. 林百郎

    ○林(百)委員 法人課税をするということだけで、それが損金を偽装しているとか利得を偽装しているとか、そういう国税庁では明らかにできない点があれば国税徴収法で捜査ができるわけでしょう。そういうことはなさらないのですか。ただ法人税を課するだけで、資本金の二百倍もあるような使途不明金はそのまま放置してもいいのですか。しかも、これが政治資金規正法の量的規制、質的規制にも絡んできているわけですから。それでいいのでしょうか。
  331. 中川浩扶

    ○中川説明員 先生も御承知のように、まさに実質の課税ということから申しますと、使途不明ということでとどまることについては必ずしも十分でないのでありますが、質問検査権等に基づくいわゆる任意調査ということでございまして、現在のところ使途不明金につきましてはそういったところで調査に努力はしておりますが、限界があるということでございます。
  332. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、調査を継続することは継続するのですか。さらに調査をする意思はあるのですか。
  333. 中川浩扶

    ○中川説明員 新聞あるいは各方面のいろいろな情報等があって、一般的に申しますと課税の捕捉をすべきであるという時点がありましたらそれは遅滞なく調査に入る、一般的な調査の姿勢といたしましてはそういうことでございます。
  334. 林百郎

    ○林(百)委員 検察庁の方にお尋ねしますが、小針氏はこういうことを言っているのですね。これは朝日新聞の記者の直接のインタビューですが、「共産党以外は全部つき合いがあるよ」と言っている。同記者会見で「政治家に金渡すのに領収証なんかないよ」と述べ、領収証なしのやみ政治献金を出していることを明らかにしている、こういうことがあるのです。そして当時の福島交通の経理担当部長は「経理担当者に用意させた金は、もっぱら社長自ら政治家に配って回っていた。盆暮れのつけ届けは毎回三十万円ぐらいだった。社長仮払金で引き出した金は一回に数百万円かな。私も何度か金を渡す場に立ち会ったことがある。あるときは封筒に五百万円も入っていた」、こういう政治献金を出したということをちゃんと側近も言っていますし、小針君自身が言っているのです。政治家に献金をするのに受取なんかもらうばかがあるか、みんな献金だよ、こう言っているわけですね。  それから、さらにはっきりしているのは、亡くなった中川さんですが、この元秘書をやって今衆議院議員の鈴木宗男さんも四千万、これは借りたのだかもらったのだか、返してないものだからちっともわからないのですが、渡り切りになっている。一千万円は返したとかなんとか言っている。あと三千万は借りたか借りないかわからない。石原慎太郎さんには都知事選の後始末で五千万円出ている。これも返しておらない。それから、私たちの質問で安倍外務大臣も七十万円の政治献金は受け取っております。それから中曽根総理も、これも予算委員会で、防衛庁長官時代に七〇年の一月から七一年の七月に福島交通から若干の会費をいただいた、これはみんなこう言っているのですよ。金をもらった、もらった、それから小針の方はやった、やったと、こういうことが公然とマスコミに出ているのに検察当局はどうしているのですかね。何か調べてでもいるのですか、いないのですか。それともここで言えないのですか。
  335. 筧榮一

    筧政府委員 申し上げるまでもございませんけれども、政治献金ということが直ちに犯罪につながるというわけにはまいりませんし、使途不明金についても同様でございますが、やった、もらったということが出ておるというだけで、それに関する具体的な事実関係も明らかになっておりませんので、まだ犯罪の嫌疑が認められるという段階には立ち至っていないように考えております。
  336. 林百郎

    ○林(百)委員 それと刑事局長、関心は持って調べているのですか、そうやって本人が政治家にやる政治献金に受取なんかとるはずないよ、やっているよと言っているのですよ。本人がそう言っているのに調べないのですか。あなた方、普通の事件だったらそんなこと言っていることをそのままほうっておかないでしょう。事が政治家であり、あるいは大臣の名前が出る、自民党の有力者の名前が出れば検察当局は手が出ないのですか。それで国民は国会を信頼し、検察当局を信頼できると思いますか。これだけ騒がれておるのですよ。どうなんですか。
  337. 筧榮一

    筧政府委員 今申し上げましたように、具体的な事実関係が明らかでないということと、政治献金が直ちに犯罪に結びつくとはちょっと考えられませんで、それに、いろいろ発展をして犯罪の嫌疑が生じましたらばその段階で必要に応じて捜査を開始するということになろうかと思いますが、現段階ではまだそこまで立ち至っていないということであります。
  338. 林百郎

    ○林(百)委員 政治資金規正法違反なんですよ。それで、今自治省から、会社資本金あるいは国から補助を受けている会社政治活動に対する寄附の質的制限、量的制限がちゃんと言われているでしょう。それを超えたようなことがどんどん言われており、また本人もそう言っているのにまだ嫌疑がないのですか。これは捜査端緒にならないのですか。少なくとも捜査が関心を持つのが当たり前じゃないですか。どうなんですか。えらいあなたいつもに似合わないで遠慮深いですね。どうしたわけですか。
  339. 筧榮一

    筧政府委員 その問題も含めまして、毎々申し上げておりますように、新聞等で報道され、あるいは国会等でもいろいろ論議が交わされておるわけでございますけれども、その点については検察当局も関心を持っておることは間違いございません。今後、事態の推移に応じまして必要に応じて適切な措置をとるということでございます。
  340. 林百郎

    ○林(百)委員 刑事局長、これは、名前を出されている人の立場になれば、場合によってはいわれもないことが言われていて名誉を棄損することになるかもしれない。しかし、事実だとすれば、国民は重大な関心を持っているから検察庁はこれを明らかにする責任があるわけですよ。何も私はだれかが憎しとしてこう言っているわけじゃなくて、しかも、今政治の倫理性が国会でも論議されているときでしょう。国民の政治に対する不信が今ほど深刻なときはないわけでしょう。そういうときに、これほどマスコミが騒ぎ、これほど当事者が、やっているよ、おれはくれているよ、そんな受取なんか政治家に金やる場合にもらえるかと。  しかも政治家が中に立たなければ成り立たないような事態がいっぱい起きているわけでしょう、白河の駅の問題にしても、福島駅の問題にしても、国有林の交換の問題でも。だから、そういう単に人権とかなんとかという立場、それももちろん考えなければいけませんけれども、しかし国会としては、一方では国会議員の名誉、一方では国会の国民に対する信頼を維持するためには、検察当局も放置しておかないでこれに協力してもらいたいと私は思うのです。その点はどうでしょう。
  341. 筧榮一

    筧政府委員 再々繰り返すようでございますが、具体的な事実関係がまだ明らかになっていないということと、検察当局も国会の御論議あるいは新聞等の報道その他に関心を持って推移を見守っておるということでございます。無関心というわけではございません。
  342. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、具体的な事実が明らかになれば捜査をすることは当然でしょうね。それをお尋ねしておきます。
  343. 筧榮一

    筧政府委員 もちろん具体的な事実が明らかになり、そこに何らかの犯罪の嫌疑が認められました場合には、適切な措置がとられるものというふうに考えております。
  344. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、大蔵省の証券局にお尋ねいたしますが、昭和五十八年九月の決算のときに、これは銀行局長も答えておるのですけれども、福島交通への融資を福島交通不動産に振りかえることを日本債券信用銀行が承知した、そういう報告書を出しておる。ところが日債銀行では同意など与えた覚えはない、これは明らかに証券取引法違反だ、虚偽の申告をしているんだ、こういう事実はお認めになるのですか、そういうことがあったと銀行局長は言っているのですけれども
  345. 中島公明

    ○中島説明員 お答えいたします。  五十八年九月期の有価証券報告書におきまして、福島交通が貸倒引当金約十八億円を取り崩しております。その理由につきましては、有価証券報告書の財務諸表の注記の部分がございまして、その注記の部分におきまして、福島交通が福島交通不動産に貸し付けている長期の貸付金約五百七十億円につきまして、金融機関から福島交通不動産への直接融資へ切りかえることについての基本的な同意が得られたので、回収不能のおそれがなくなったということで貸倒引当金を取り崩した、こういう説明がなされているわけでございます。  先生御承知のとおり、有価証券報告書で提示されます財務諸表につきましては、公認会計士の監査が義務づけられております。公認会計士が監査を行いまして財務諸表の真実性について第一次的な担保の役割を果たすということになっているわけでございます。  本件の財務諸表につきましても公認会計士が監査を行っておりまして、その監査の意見の中で、本件の切りかえといいますか、つけかえについては文書的な確認が得られなかったので、意見を差し控えると——公認会計士の監査意見につきましては、適正意見といいますのとそれから不適正意見と意見差し控えと、大別して三つの意見があるわけでございます。  適正意見と申しますのは、文字どおり財務諸表が企業の財務内容を適正に表示しておるという意見でございまして、不適正意見と申しますのは、その逆に財務諸表が企業の財務内容を適正に表示してないという意見でございます。意見差し控えと申しますのは、公認会計士が公認会計士としての監査意見を形成するに足るだけの合理的な基礎が得られなかった、したがって意見を差し控えるといいますか留保する、こういう意見になっている、これが事実関係でございます。  ただいまの先生の御質問は、これが証券取引法に違反するかどうかというお尋ねでございますが、私はこの点につきましては実は二つの側面があるというふうに考えております。  証券取引法は虚偽記載という言葉をいろいろな条文で使っているわけでございます。証券取引法の第二章というのが企業の財務内容開示に関する規定を設けた部分でございますが、証券取引法第二章では、例えば十条でありますとか十一条でありますとか、それからたしか十八条だったと思いますが、虚偽記載という言葉を使っておりますが、ここで申しております虚偽記載といいますのは、事実に反した記載あるいは客観的真実に反した記載ということでございまして、そのことが例えば故意によるのか過失によるのか、あるいは全くの無過失によるのかといったようなことを問うているわけではございません。  投資家に対して投資判断のための材料を提供するというのが証券取引法の目的でございまして、第二章の企業の財務内容開示制度というものは、企業の財務内容を適正に表示して投資家が投資判断のための的確な判断を形成できるようにするというのが趣旨でございますから、第二章におきまして虚偽記載と言っている場合には、そういうように事実に即した記載がなされているかどうかという観点からこの問題をとらえているわけでございます。もしその記載された内容に間違いがあり、その内容が重要なものであれば、それは正していただくというのがこの第二章の趣旨でございます。  で、百九十七条という規定が証取法の最後の方にございます。これは罰則を定めた規定でございますが、この百九十七条というのは虚偽記載罪ということでございます。これは百九十七条に掲げた構成要件に該当していること、犯罪でございますから、当然のことながら故意が要るということでございます。  ちょっと横道にそれますが、今の証券取引法では虚偽記載ということを第二章、それから百九十七条でそれぞれそういう使い方をしているわけですけれども、証券取引法の母法といいますか、証券取引法が範としました一九三三年証券法というのが米国にございますが、これの例えば十一条に相当する規定では、事実に反する記載というような書き方をしておる。虚偽記載罪に相当する部分については、故意に事実に反する記載というふうにはっきり書き分けているわけでございます。  その辺のところは問題になるわけでございますが、私ども、もちろん金融機関がそのような同意を与えたことはないということは承知しておるわけでございますが、一方、企業の側がその点をどのように認識しておったか、企業の方の受け取り方がどうであったかということも確認してみませんと、その辺のところは何とも言えないわけでございまして、私どもの方としましては、できるだけ早くその辺の事実確認をいたした上で、この問題についてどう対応するのかということについて判断をいたしたい、かように考えているわけでございます。
  346. 林百郎

    ○林(百)委員 「〔日本債券信用銀行は福島交通に対し、二十六日までに、文書で「(福島交通への融資を)福島交通不動産に振り替える処理は了承できない」と「不同意」を通知した。 関係者によると、融資の振り替えは、昨年夏ごろ福島交通から日債銀に相談があった。日債銀内部では「そんなことをしては銀行の命取り。文書で不同意の意思を示すべきだ」との意見が出されたが、「小針社長を刺激するのはまずい」という論が優先、文書による不同意の意思表示はせずにきた。そのためか、福島交通は「同意があった」と有価証券報告書に記載、このため日債銀は今回、文書により「不同意」の態度を明確にした。」  日債銀の方は、もう文書ではっきり不同意だと言っているわけですね。それなのに不動産の方が善意であったか、悪意であったかということを、まだ考えているのですか。これはもう口で言っているというのです。言っているけれども、小針氏の立場もあるだろうから文書で出すことは差し控えようと言っているというのです。
  347. 中島公明

    ○中島説明員 私も新聞報道で、日債銀の方がそういう文書を出したということはもちろん承知しております。  先ほど申し上げましたように、金融機関側がそういう同意を与えた事実はないということを申しているということも承知しておりますが、一方で、五十八年の九月期の時点におきまして、貸倒引当金を取り崩す時点で企業側がその辺のところをどう受けとめておったのかというようなことも確認いたしてみませんと、私どもとしてはまだ判断がつきかねる。いろいろな機会に私は申し上げてきたわけですけれども、その辺についての事実確認をいたしたいということで申し上げているわけでございます。
  348. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、今後、不動産の方とそれから交通会社の方へはその真意を確かめる処置はするつもりですか、確かめておりません、おりませんと言っておりますが。
  349. 中島公明

    ○中島説明員 福島交通不動産は、実は有価証券報告書提出会社ではありませんので、私どもの方から直接調査する立場にはございません。  一般論として申し上げますと、先ほど申し上げましたように、公認会計士の監査意見には適正、不適正、意見差し控え、大別して三つのものがあるわけでございますが、不適正の意見なりあるいは意見差し控えというようなものが出てきた場合には、私ども内部の事務の処理の仕方といたしましては、公認会計士なりあるいは企業なりからその背景といいますか事実関係について事情を聞きまして、それに応じて証取法に則して適切な対応をしてきておるわけでございます。本件につきましてもそういう対応をするということでございます。
  350. 林百郎

    ○林(百)委員 公認会計士をお調べになるのはもう既にしておかなければならないのですが、公認会計士はこう言っているんですね。これはおかしいということで意見を差し控えたと。公認会計士が監査報告で意見を差し控えるということは、これはおかしいということなんですよ。おかしいということは、銀行が承知していないのに承知したというような虚偽の報告を出している、それを公認会計士としては認めるわけにはいかない、だから意見差し控えということになっているのじゃないですか。だから、あなたは至急、公認会計士にも聞かれる。それから福島交通にも真意を確かめないと、ここがいいかげんになっていたら、あなたの方の信用にもかかわりますよ。
  351. 中島公明

    ○中島説明員 お答えいたします。  先ほど御説明しましたように、公認会計士の監査意見については三つございますが、意見差し控えと不適正ということとは同義ではございません。意見差し控えというのは、あくまで公認会計士として監査意見を表明するに足るだけの合理的な基礎が得られなかったということでございます。  本件につきまして、監査報告書をごらんになっていただければ明らかでありますように、公認会計士は、本件のつけかえについて基本的な同意を得ている、そういう説明を会社からは聞いているけれども、文書での確認が得られなかったので意見を差し控える、こういうふうに申しているわけでございます。私どもとしては、もちろん、先ほど申し上げましたように、こういう事例につきましては公認会計士から既に意見を聞いておりますし、公認会計士、会社からの意見聴取を通じて事実を確認いたすということがまず第一のステップであると考えておるわけでございます。
  352. 林百郎

    ○林(百)委員 同時に、日債銀行と福島交通の両方の意見も聴取する必要があるのじゃないですか。日債銀行としては、同意を与えた覚えはないということをはっきり言っているのですか。それはまだ聞いていないのですか。
  353. 中島公明

    ○中島説明員 お答えいたします。  私どもとしては、第一段階といたしましては、公認会計士、当該企業から事情を聞くということでございます。必要に応じてそれ以外の方から意見を聞くということももちろんあり得ますけれども
  354. 林百郎

    ○林(百)委員 事実は、日債銀行が承知したかどうかが一番基本的でしょう。それを承知したと報告書が出していれば、それは虚偽になるのだから、その一番根本のところをどうして確かめないのですか。公認会計士の意見は差し控えなので、差し控えじゃどうにもしょうがないでしょう。
  355. 中島公明

    ○中島説明員 お答えいたします。  私ども、まだ正式には聞いておりませんけれども、新聞報道で既にそういうことが報道されておりますし、金融機関がそういう同意を与えていないというようなことは国会で銀行局長が答弁されておることも承知しておりますので、金融機関側がそういう同意を与えたことはないということは、先ほどから私申し上げておりますように、もちろん承知しておるわけでございます。  ただ、それが、先ほど言いましたような意味での百九十七条との関連で問題を生じてくるかどうかにつきましては、企業側の受けとめ方、どういう認識であったか、どの程度の確度をもってその債権のつけかえについて進行するというような見通しを持っていたのか、その辺の認識をやはり聞いてみないと何とも判断がいたしかねるということを申し上げているわけでございます。
  356. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃその認識を確かめますか、ちょっとここで答えてください。確かめる意思がありますか。
  357. 中島公明

    ○中島説明員 先ほど来申し上げておりますとおり、私どもでは、こういう場合には公認会計士なりあるいは企業から事情を聴取するということにしております。そういう過程でもちろん事情を聴取いたす所存でございます。
  358. 林百郎

    ○林(百)委員 法務省にお聞きしますが、私は、帳簿を至急押収する必要があると思うんですよ。もちろん犯罪の嫌疑がなければできませんので、しかし虚偽報告の百九十七条違反は、これはもう犯罪の嫌疑は十分あると思うので、まず帳簿を押収しなければ、これは幾らでも改ざんできますから、そう言うと、そこから政治資金規正法の質的、量的違反が不動産と交通との間にどういう関係があるかということの捜査は進めていくことにしても、いずれにしても犯罪の嫌疑がなければ、やたらに強制権は乱用はできません。だから、まずこれを口実にして書類の差し押さえというようなことを、今ここで、やりますということは言えないにしても、将来考慮の余地はありますか。何かあなたの方は、何にもやらないで見ているというのもおかしな話だと思うんですね。
  359. 筧榮一

    筧政府委員 まず、今、証券取引法の虚偽記載罪の関係につきましては、事実関係がさらに明らかになりました段階で適切な措置がとられるというように考えております。  それから、その余の点について、例えば帳簿を押収するとかということが必要であるかという御意見でございますが、今、林委員指摘のように、虚偽記載以外の何らかの犯罪の嫌疑がなければ押収もできないわけでございます。したがいまして、現段階でそれを口実に帳簿を押収するというような措置は難しいのではないかと考えております。いずれにしましても、事態の進展に応じまして必要とあらば強制捜査も含めましてそれ相応の措置がとられるかと思います。
  360. 林百郎

    ○林(百)委員 これは検察庁の名誉のためにもぜひ明らかにしてもらいたいと思うのです。検察庁の名誉というか、国会の名誉のためにも……。こんなに国会議員の名前がぞろぞろと元総理大臣から現閣僚から自民党の幹部から、共産党を除くと小針は言っているのですけれども、社会党の目黒さんまで、国会議員の二割には手が回っているだろうと言っているのですよ。そんなことを国会が言われていて事実がちっとも明らかにならないということは、国会の全体の信用にもかかわるのですよ。そういう意味で検察当局も打つべき手は打ってもらいたいと思うのですよ。時期が来たらやるとおっしゃっていますから、それを特捜なり何なりの検察当局の発動を促したいと思うのです。法務大臣、どうでしょうか。あなたの名前は幸いにして出ておらないけれども、いっぱい出てきているのですよ。こういうことをこのまま放置していていいのか。  それで法務委員会で小針氏を証人に喚問してもらいたいと思うのです。これは国会の名誉のために、小針氏と小針氏の側近の人たちを。金は配ってます、小針氏は、いや政治家に献金するのに受取を取るばかがあるかとまで言っていますからね。これを委員長理事会で審議をしてもらいたいと思います。これはどうしても国会の名誉のために私は真実を明らかにしないといけないと思うのです。だから、委員長には小針氏の証人喚問を要請しまして、理事会で審議してもらいたいし、法務大臣はどうでしょうか、こういう国会の信用が傷つけられて、毎日毎日マスコミに出されているのにこれをこのままにしておいていいのかどうか、どういう措置をおとりになる考えか、法務大臣のお答えを聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  361. 住栄作

    ○住国務大臣 この事件に対する検察の態度につきましては、先ほど来刑事局長から御答弁申し上げているとおりでございまして、私もそういうことであろうと思っております。
  362. 林百郎

    ○林(百)委員 これで終わりますが、委員長にお願いしておきましたが、委員会にぜひ小針氏とその側近を証人に、喚問していただければなおいいと思いますが、理事会で十分御検討くださいませんか。私は、そういう要請を委員長にしておきます。  終わります。
  363. 宮崎茂一

    宮崎委員長 次回は、明後六日金曜日午後零時三十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会