○森(清)
委員 ただいまこのようなお答えをいただいたわけでありますが、この
国籍が
抵触をする事態というものが、これはやむを得ない、どうしても出てくる
現象であります。
と申しますのは、これはもう周知のことでございますが、
国籍の
取得に関するやり方が国によって違う。しかも、それが
主権国家としてどのような者に
自国の
国籍を
取得させるか、与えるかということは、それぞれ全く
国内法の問題であって、それぞれの
国家が
主権的な
作用によってそれを行うわけでありますから、そこに統一的な
原則がないわけであります。したがって、そこに積極的な
抵触、いわゆる重
国籍、それから消極的な
抵触、無
国籍というものがそういう
制度の違いによって生ずることはやむを得ない点があるわけであります。
そこで、まず
国籍取得の原理、
原則についてお伺いしたいのでありますが、これは先ほど言われましたとおり、本来的な
国籍、根源的な
国籍としては
出生によるわけでありまして、例えば
我が国は
原則として
血統主義をとっておりますが、これは例えばイギリスのようにいわゆる封建的なというか、そういう言葉はいいかどうかは別といたしまして、自分の土地というものを主として考え、そこにあるものはすべて
主権に属する、こういう
考え方であろうと思いますが、そういう
考え方に従っていわゆる
出生地主義というものをとっている国、あるいは
ヨーロッパ大陸では
ローマ法の影響を受けて、そうではなくして
血統主義をとっている、こういうことがございます。
我が国は、もちろん
単一民族
国家であり、他国との交流がなかったから、
国籍についてそのような意識をしたのは最近、明治になってからでございましょうが、
我が国は伝統的に
血統主義をとっておる、こういうことになっておるわけであります。
もちろん、この
血統主義あるいは生地主義いずれをとりましても、それは純粋に置かれている国はないのでありまして、それぞれそれに調整を加えているということでございましょうが、こういう主義のそもそもの
考え方、いかなる者に
国籍を
取得させるかという主義の違いというものが、この重
国籍あるいは無
国籍が生まれる原因でありますが、これはそれぞれ
主権国家がある限りやむを得ない。しかし、将来問題としては、できる限りそのようなことを少なくするために、あるいは
条約により、あるいは統一的な
国際間の完全な主義が統一されればこれは
解消していくわけでありますが、そういうことに向かっていかなければならないということについては、まだまだそれだけの
措置はできておらない、こう考えるわけであります。そこで、今回の
国籍法の
改正、現在の
国籍法もそうでありますが、
国籍法を
改正いたしましても、このような非常に複雑なというか、そういう調整
措置をとらなければならない、こういう事態になったわけであります。
特に今回の
国籍法の
改正について、これは
血統主義をとる限り、
父系血統主義というのは、これはもう当然の
原則であり、人類が、だれが考えてもそういう主義をとっているであろうと私は思うわけであります。特に
我が国の現在の
国籍法は
父系血統主義でありまして、それが何か
憲法の男女平等とかなんとかに反するのだという
意見もありますが、それはそうではないので、
父系血統主義によるということが当然のことであり、また、それは何も男女を
差別をしたことではなくして、その
血統によって、ある生まれた子供をどこの国の
国籍に所属させるかという一つの象徴としてやっているだけでありますから、私は、現在の
国籍法も別に
憲法違反とかそういうことは一切ないと考えておりますが、今回の
父母両
系主義を採用するということは、これはある
意味では非常に進歩的というか、あるいは男女平等というか、そういうことについては賛成でありますが、ただ、それによって非常に大きな
国籍上の混乱が起こる、これも事実であります。必ずと言っていいほど、相手国も両
系主義をとれば、
国際結婚をする限り必ず積極的な競合が起こるわけでありますから、そういう事態が非常に多くなったということから、あるいはこの
改正をすれば多くなるということで今回の、それぞれ後からまた触れますが、調整
措置が講ぜられるわけであります。
そこで、やはりこの両
系主義をとるということについて、私自身としては、こういうことを言うと非常にあれでございますが、
国家というものを考え、あるいは民族というものを考えるときには、やはり父
系主義であってしかるべきではなかったかと思います。しかし、よくよく考えてみますと、男女平等の権利を認めなければならないし、またヨーロッパ諸国においても
父系血統主義をとる国においても、男女両
系主義に最近になって変わってきている。そしてまた、
婦人差別撤廃条約を署名をし、今から
批准をしなければならないということでありますから、私は、
父母両
系主義に変えることに反対するわけではございません。そういう
意味においては、私は、
父母両
系主義をとった今回の
改正案に賛成をするわけでありますが、ただ問題は、そういうことでありますから、私は、やはり両
系主義をとるにいたしましても、
国民と
国家というものの
考え方は基本にずっと据えておいていただきたい。後から、種々の調整
措置の中でまた具体的な問題は聞きたいと思いますが、やはりそういう
考え方に従って運用すべきじゃないか。やはり
国家と
国民というものの
関係をもう少し厳格に考えていただいて、これはもう御答弁は必要ないわけでありますから、そういう
考え方で次から質問させていただきたいと思うわけであります。
そこで、この
父母両
系主義を採用いたしますと、今までは生じなかったいわゆる積極的競合が相当生ずると思いますが、まあそういうことは、
国際的になっていない
日本だと批判されるかわかりませんが、やはり
単一民族、
単一の
国家として純粋に保ってきた
我が国において、非常に例外的と考えられておった二重
国籍というものが、生まれた段階において二重
国籍者が非常に多くなるのじゃないか、こういうふうに考えられますが、大体その辺の数的な見通しとか、どうなるであろうかということを、資料をお持ちでございましたらお教え願いたいと思います。