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1984-03-09 第101回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月九日(金曜日)     午前十時七分開議 出席委員   委員長 宮崎 茂一君    理事 太田 誠一君 理事 亀井 静香君    理事 高村 正彦君 理事 森   清君    理事 天野  等君 理事 稲葉 誠一君    理事 石田幸四郎君 理事 三浦  隆君       井出一太郎君    上村千一郎君       臼井日出男君    衛藤征士郎君       加藤 紘一君    熊川 次男君       高鳥  修君    谷垣 禎一君       丹羽 兵助君    長谷川 峻君       山岡 謙蔵君    綿貫 民輔君       小澤 克介君    山口 鶴男君       山花 貞夫君    神崎 武法君       中村  巖君    伊藤 昌弘君       野間 友一君    林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 住  栄作君  出席政府委員         法務大臣官房長 根岸 重治君         法務大臣官房司 菊池 信男君         法法制調査部長         法務省刑事局長 筧  榮一君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  加美山利弘君         大蔵省銀行局銀         行課長     千野 忠男君         最高裁判所事務         総局総務局長  山口  繁君         最高裁判所事務         総局人事局長  大西 勝也君         最高裁判所事務         総局経理局長  川嵜 義徳君         最高裁判所事務         総局民事局長  上谷  清君         最高裁判所事務         総局刑事局長  小野 幹雄君         最高裁判所事務         総局家庭局長  猪瀬愼一郎君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ――――――――――――― 委員異動 三月三日  辞任         補欠選任   衛藤征士郎君     相沢 英之君   大西 正男君     奥野 誠亮君   熊川 次男君     金子 一平君   谷垣 禎一君     三原 朝雄君   綿貫 民輔君     山口 敏夫君   小澤 克介君     武藤 山治君   伊藤 昌弘君     渡辺  朗君 同日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     衛藤征士郎君   奥野 誠亮君     大西 正男君   金子 一平君     熊川 次男君   三原 朝雄君     谷垣 禎一君   山口 敏夫君     綿貫 民輔君   武藤 山治君     小澤 克介君   渡辺  朗君     伊藤 昌弘君 同月九日  辞任         補欠選任   大西 正男君     臼井日出男君   丹羽 兵助君     山岡 謙蔵君 同日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     大西 正男君   山岡 謙蔵君     丹羽 兵助君     ――――――――――――― 三月五日  外国人登録法の改正に関する陳情書外九件  (第八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四号)      ――――◇―――――
  2. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所山口総務局長大西人事局長川嵜経理局長上谷民事局長小野刑事局長猪瀬家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 宮崎茂一

    宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 宮崎茂一

    宮崎委員長 内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三浦隆君。
  5. 三浦隆

    三浦(隆)委員 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案についてお尋ねいたします。  まず、我が党は基本的に法案に対して賛成でございます。  さて、第一番目には、裁判官任用についてのお尋ねでございます。  旧来裁判官論につきましては、キッシュの「ウンゼレゲリヒテ・ウント・イーレレホルム」という論文が一九〇八年に書かれておりますが、それ以来、法曹裁判官、ユリステンリヒターがよいのか、あるいは素人裁判官、ライエンリヒターがよいのかということはいろいろお話があったようでございます。旧来我が国におきましては、裁判所構成法というのができましてから明治二十三年に判事が一千五百三十一人、一番多い昭和十六年で判事一千六百一人、そして昭和二十一年に判事一千二百五十二人となっておりまして、また裁判所法施行後は、昭和二十二年に一千七百三十二人から、私の手元にあります資料では昭和三十三年四月二千三百四十七名でありまして、今度仮に何名がふやすにしましても、それほどの人数異動がございません。  むしろ、人口というのは明治の初めなりあるいはその後に比べますと、現在大変に伸びております。例えば一九〇〇年、明治三十三年あたりたしか四千二百万人くらいかと思いますが、現在一億一千万なり一億二千万になんなんとしております。という意味で、ほかの公務員その他に比べますと、裁判官人数というのはもともと少ないということであります。こういう点では、いわゆる予算の問題云々ということでなくて、裁判官そのものの数が多いよりも少ない方がいいのではないか、言うなれば裁判官というのは量より質をとうとぶ、そうした伝統的な考えがあるのではなかろうかなとまず思うのですが、いかがでございましょうか。
  6. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 三浦委員指摘のとおり、明治のころの裁判官数と比較いたしますと、いろいろなお考え方があろうかと思います。明治と申しましても、どの時点をとるかという点がございます。なるほど、明治二十三年当時の裁判官の数は約千五百人でございました。当時、旧制度裁判官をそのまま引き継いだというようなこと等もありまして、その後裁判官の数につきましてはいろいろ論議があったわけでございます。明治四十三年ごろになりますと、これが千百二十五人ぐらいに減少してまいっております。現在、判事判事補合わせまして約二千人でございます。当時と比較いたしますと二倍近くにはなるわけでございます。簡裁判事さんも含めて考えますと、昭和五十八年度では二千七百三十一人でございますので、率にいたしますと約二。四倍ぐらいになるわけでございます。  いずれにいたしましても、明治時代と今日では裁判制度そのものが大きく変わっておりますし、訴訟の進め方にも格段の差がございます。両者を同じようなものとして対比することには甚だ困難なものがあるように思っております。必ずしも現時点で裁判官の員数が少な過ぎるとは考えておりませんし、諸事情を考えますと、現在、裁判官のいわば少数精鋭主義的な考え方をとっているわけでもないわけでございます。
  7. 三浦隆

    三浦(隆)委員 実は私の意見は、友人裁判官から聞いたことでありまして、むしろ量よりも質を我々はとうとびたい、それほどふやす気持ちはないというふうな個人的な友人意見でございます。  それから、明治以来とありましたけれども、別に戦後の昭和二十年以降を考えても同じことだろう。人口の伸びにしては他の分野と違ってそれほど伸びていないということで、伸ばさない、余りふやさないという何か特別なお考えがあるのかなということでお尋ねしたわけでございます。  また、古くからの論議でありますが、裁判官としていわゆるプロ的な法曹裁判官がいいのか、むしろアマチュア的な要素を持った裁判官がいいのかというのは、日本だけではなくて世界的に大変話題になっているところだと思います。極端に言えば公選制で選ぼうじゃないかという国も幾多あるわけでございまして、日本だけの制度とは私は思っておりません。  さて、裁判所法の四十一条でありますけれども、最高裁判所裁判官任命資格について第一項で規定しております。「最高裁判所裁判官は、識見の高い、法律素養のある年齢四十年以上の者の中からこれを任命し」云々というふうに書いてございますが、まずここで識見の高いとかあるいは法律素養ある者というのは、いかなる基準でこれを論じようとするのか、お尋ねをしたいと思います。
  8. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 ただいまの裁判所法四十一条一項の申します「法律素養のある」あるいは「識見の高い」ということは、最高裁判所が国の基本法でございます憲法の解釈を最終的に決定する国家機関であるという性格を持っておりますことにかんがみまして、広く人材法曹あるいは法律学者以外の者からも求め、単なる法律的見地のみにとらわれないで、広く高い視野からする判断を取り入れる道を開くということで、その裁判が健全な社会的感覚を失わないということを期したものであると言われております。したがいまして、どうしても抽象的なことになりますけれども、そのような地位を有するところの最高裁判所裁判官としてふさわしい、そういう識見とか法律的素養を有するかどうかということが基準になるものではないかというふうに考えております。
  9. 三浦隆

    三浦(隆)委員 今の御説明を聞きましたように、識見の高いとかあるいは法律素養ある者というのは極めて抽象的な判断でありまして、それほど具体的な基準があるとは思いません。  次に進みます。「年齢四十年以上の者」とありますけれども、なぜ四十年以上と決めたのか、その理由をまずお尋ねしたいと思いますし、あるいは法四十一条一項の一号から六号まで書いてありますが、そしてその一号から六号までの要件と次の第四十二条の要件とを照らし合わせますと、実際には、四十年以上とは書いてありますけれども、現行法上四十年では最高裁裁判官には現実的にはなり得ないのではないか、不可能なのではないかと思いますが、いかがですか。
  10. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 ただいまの点でございますが、最高裁判所裁判官といたしましては、人生経験余りに乏しい若年者をもって充てるということはふさわしくないと考えられます反面で、余り老年の方だけがおなりになるということもまた妥当ではない。多少は新進気鋭の方もお入りいただくことが適当であるという兼ね合いの問題としてこの四十歳という年齢が定められたものだというふうに言われているようでございます。  そして、最高裁判所裁判官任命資格といたしましては、司法修習生課程を終えました者とそうでない者との二通りがあることになっておりまして、そのうちの司法修習生課程を終えました者につきましては、今御指摘のとおり司法修習終了後二十年たっている必要がございますので、四十歳未満でそこに到達するということは実際上ほとんどあり得ないことになります。しかし、最高裁判所裁判官のうち五人までは法曹あるいは法律学者であることを要しないとされております。したがいまして、それらの法曹あるいは法律学者でない方々につきましては、制度的にはやはり四十ということもあり得ないではないということで、その辺に新進気鋭の方にお入りいただくことを考慮して制度としては若干余裕を見た四十歳という決め方がされたものというふうに考えております。
  11. 三浦隆

    三浦(隆)委員 私は四十歳が悪いと言っているのではなくて、若い新進気鋭法学者なりそうした人がなることはむしろ賛成と言ってもいいわけです。ただ、現実問題として四十一条一項を、例えば一号、二号は高等裁判所長官あるいは判事は十年以上、あるいは三号、四号、五号、六号では簡易裁判所判事、検察官、弁護士あるいは大学教授助教授二十年以上となりますと、大学を終わること自体が二十二歳であることその他を考えると、現実には不可能要件といってもいい。四十年ということで若手を起用することがもし裁判官としてふさわしいとするなら、もっと現実可能性のあるように十年以上と、二十年以上よりももっと下げなくてはだめなんじゃないか。  しかも高等裁判所長官判事弁護士あるいは大学教授というのも簡単になれる職ではございませんで、それぞれ大学を出てからかなりの年月を要します。この法の四十二条によりましても、一号から六号までそれぞれが十年以上というふうに書いてありますと、この十年以上を踏まえてやっと四十一条に達することを考えると、なおのこと、せっかく四十年以上と書いてあっても現実的にはなり得ないであろう、実際に、現実的にもいらっしゃらないだろうと思うのです。現実には四十年と書いてあっても、実際、本当はあり得ないだろうと思います。  ということで、法が四十年以上と書いて四十歳の人もなることが仮に望ましいとするのであるならば、法の方も本当に四十歳でなれるような書き方で書いていただいた方がむしろいい。あるいはそこに今までの識見の高いとか法律素養のある者という解釈をもう少し幅を広げていただいて、この十年、二十年という枠を超えて本当に現実的になれる道をお開きになったらどうだろうか。逆に言って、どうしてもなれないなら四十年という言葉そのものを変えた方がむしろ法としてはふさわしい。法というのは、言葉で書いた以上はこの間の指紋の問題じゃありませんが、形式解釈で言えばできるだけ素直に守られることが望ましいのでしょうし、目的論的に解釈するのであれば、それにしても現実可能性のあるような規定にした方がいい。これでは、道を開いたようには見えるけれども現実的には余り意味がないのだろうというふうに思います。  次に、裁判所法四十五条の問題であります。ここでは簡易裁判所判事選考任命規定でございますが、その第一項によりますと、「多年司法事務にたずさわり、その他簡易裁判所判事職務に必要な学識経験のある者は」と書いてございます。ここで、多年司法事務に携わる音あるいは職務に必要な学識経験ある者というのは、具体的にどのようなことを指すのでしょう、お尋ねをしたいと思います。
  12. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 お尋ね裁判所法第四十五条に書いてございます簡裁判事選考任命資格要件でございますが、その中の司法事務に携わる者ということの意味は、文字どおり司法に関する事務に従事しておるということでございますが、これを具体的に申し上げますと、裁判所書記官でございますとか裁判所事務官でございますとかといったような裁判所職員、これは狭義の司法に関する事務でございますから当然でございますが、それ以外にも、法務省や検察庁におきます事務、広い意味での司法に入るわけでございますが、検察事務官でございますとか、法務事務官といったようなもの、さらには調停委員とか司法委員といったようなものもこの司法事務に含まれるのではないかというふうに考えております。
  13. 三浦隆

    三浦(隆)委員 この解釈も、兼子先生の「裁判法」という学説によりますと、かなり広く理解されているようでございます。すなわち、司法事務とは大変広い意味だ、「裁判所書記官裁判所調査官などの職務に限らず、検察事務その他法務関係の登記、訟務などの職務も含まれるし、又専任の職務でなくとも調停委員司法委員などの経験も入ると見られる。これは例示的で、法律素養は必要であるが、その他の経歴でも差支えなく、例えば行政官教師などの経験者考えられる。」と書いてあります。すなわち「その他の経歴でも差支えなく」と、兼子先生解釈だと大変に広いようであります。特に「例えば行政官教師などの経験者も」とありますが、教師と書いてあるところでちょっとお尋ねしたいと思います。  この裁判所法によりますと、大学教授助教授というのは幾つか出てくるのですが、この見解による教師という言葉は、法文には出てこないわけですね。一般に、教授助教授というと大学の教員のような気がしますし、教師というと高校以下の先生も何か含まれるような気が私にはするのですが、その点いかがでしょようか。
  14. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判所法の四十四条その他にもございますけれども、大学法律学教授助教授というふうに書いておるところがございますが、これにつきましては、裁判所法施行法によりまして「学校教育法による大学大学院の附置されているもの」というふうに書いてあるわけでございまして、この関係はいわば簡易裁判所判事の中でもいわゆる有資格簡裁判事ということになるわけでございます。兼子先生教師というふうに書いておられます部分は、必ずしも多年司法事務に携わった者の例示というわけでもないようでございますが、要するに簡裁判事職務に必要な学識経験のある者というのは、先ほど先生も御指摘になりましたように、かなり広い範囲を含むわけでございまして、その中にも教師というものも含むということになろうと思います。  この教師といいますのは、先ほどのいわゆる有資格扱い法律学大学教授助教授以外の者をも含むという意味で、簡易裁判所判事に必要な学識経験ある者の一つというふうに掲げられているのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
  15. 三浦隆

    三浦(隆)委員 結局、基本的な考え方としまして、裁判官というのは法律的ないわゆるプロでなければならないのか、むしろ裁判官というのはアマチュアで、極端に言えば法律にそれほど詳しくなくてもいいのではないかという、まず先ほどのキッシュ見解というか、世界的にも、陪審制その他見ましてもいわゆるアマチュアでもいいのではないのかという考え方があって、兼子先生はむしろできるだけ幅広く求めていきたいというお考えだと思います。  それでなくても、最高裁判所の方の、先ほどの大学あるいは大学教授助教授見解にしましても、この兼子先生見解によれば実に広いのでして、別に法学部に限らず、法律学の講義をしている人ならば、経済学部文学部農学部教授または助教授でもいい。別段、いわゆる大学院大学法学部教授とか助教授とか、一切限定していないくらいの大変に幅広い理解がここにはあると思うのですね。そうした気持ちの中から、今言った例示的に教師という言葉が出たのだろうと私は思います。すなわち、プロよりもアマチュア的な発想の人、いわゆるプロだけではなくてアマチュア的な人も裁判官の中にいた方がバランス的にいいのではないかということだと思うのです。我が国法制というのは、そうした、極端に言う公選制ないし陪審法というふうなアマチュア的なものと、それからいわゆる司法試験を受けるプロ的な養成のものとの折衷的な案というのでしょうか、そんなような感じが出てくるのです。ですから、裁判官であっても司法試験を絶対に受けなければならぬというのとそうでない任用の方法もあるんだというふうな、そうしたことがここに出ていると思います。  そのいい例が、次の判事補任命資格についての裁判所法の四十三条だろうと思います。ほかのところでは、司法試験以外の人たち選考にはいろいろと登用される道があるにもかかわらず、四十三条に限っていいますと、判事補任命資格という中で、「判事補は、司法修習生修習を終えた者の中からこれを任命する。」先ほどの第四十一条の最高裁判所裁判官任命資格の中に、例示的に一号、二号、三号、四号、五号、六号といろいろ幅広くありますが、四十三条に限ってだけ「司法修習生修習を終えた者の中からこれを任命する。」と、特段限定した理由というのはどこにあるのでしょうか。
  16. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 司法制度を適正に運営いたしまして国民信頼をつないでまいりますということのためには、何と申しましてもその制度の担い手であります法曹三者がいずれもそれにふさわしい十分な資格を有しているということが必要でありますことは申すまでもないと思います。現在の司法試験、それから司法修習制度と申しますのは、そういう見地から法曹養成課程を一元化いたしまして、統一的に修習を行わせて、法曹三者について同一の高度の資格を確保するために設けられた制度であるというふうに考えられます。そして、法曹になるためには原則としてこのコースをたどることが必要とされているわけであります。  ただ、先ほど来御指摘簡易裁判所につきましては、比較的軽微な事件を簡易迅速に処理するための裁判所でございますし、さらに煙日数十庁という極めて多数の数の裁判所を設けられておりますところから、これに配置する裁判官も、必ずしも法曹としての厳格な資格要件を備えた者ばかりである必要はない、もっと広い観点から、必要な学識経験を備え、識見がすぐれ、徳望がある、そういう人材を迎えるということも国民にその裁判に親しみを持っていただき、信頼をから得るということから望ましいというふうに考えられて、簡易裁判所判事につきましては特に現在のような選考任用制度が設けられたものだというふうに言われているようでございます。  しかし、判事補につきましては、同じ下級裁判所に勤務いたしますけれども、簡易裁判所以外の地方裁判所あるいは家庭裁判所という通常の裁判所に勤務いたしますし、判事補十年の経験を経ますれば判事任用され得るということでございます。したがいまして、その部分につきましては、やはり本来の厳格な法曹資格が必要であるということにされまして、簡易裁判所判事のような選考任用制度を設けることは妥当でないというふうに考えられたものだと思います。そして司法修習生コースを経た者からのみ任用するという現在の制度がとられているのではないかというふうに思っております。
  17. 三浦隆

    三浦(隆)委員 別に簡易裁判所だけではないのでして、先ほど言った、実際の裁判官になられた人が、法律がわからなくて実務が堪能でなくて裁判官になれるわけが本来ないわけであります。にもかかわらず、実際には最高裁判所裁判官であろうと、例えば第一項の六号、「別に法律で定める大学法律学教授又は助教授」と書いてある場合に、しかもそれは先ほどの解釈では法学部に限らない、文学部でも農学部でも経済学部でもよろしいという解釈がもしあるとするならば、別に教授は必ずしも裁判官としてすぐ何でも知っていると限らぬと私は思うのです、三年ぐらいやったところで。それでもいいとしているのは、そのくらいの広い素養があれば、たまたま自分裁判官地位についたら、広い素養からして、勉強すれば到達できるのだ、基本的に最初から無理やり一般教養というよりもプロ的なものを養成する必要はない、幅広い一般教養的なものがあれば、その場に立ては、そして自分で勉強すればプロ裁判官になれるのだというのは、最高裁であろうと、いわゆるアマチュア的な認識というのか一般世間的な人が考えるような常識というのか、その路線に従ったような判決をむしろ基本的に望むのだろう、むしろ、プロ試験試験試験を課すことによって、プロ法律としての知識は堪能であっても一般常識が欠けては困るのじゃないかというふうなところから、こうした幅広い理解があるのじゃないかと思えるわけです。  逆に言うと、何で判事補の場合だけに「司法修習生修習を終えた者」と限定し、逆に選考任用制度をなぜ判事補に限ってほかのシステムとは違ってとってはならないのか、むしろその基本的なところを私はお尋ねしたい。というのは、外国にはいろいろとありますが、日本に限ってはこれこれしかじかだから絶対だめなんだというふうな、日本にとっての理由を私はお尋ねしたいということなんです。いかがでしょうか。なぜ判事補の場合に選考任用制度を採用してはいけないのか。ほかでは許されているのになぜこれだけだめなのか、その点についてお尋ねしたい。
  18. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 裁判官につきまして、現在の制度でございますと、裁判官のいわば中心という申し方をしてよろしいとすれば、それは判事ということで構成されておると思います。その判事になる資格といたしまして、十年の判事補経験あるいは司法修習生を経た後の簡易裁判所判事、検察官、弁護士、あるいは先生先ほど来御指摘法律学教授または助教授資格という広い資格規定されておると思います。したがいまして、そのうち判事につきましてはそういう広い各種の資格の中から選ばれるというシステムでございますけれども、その中の判事補というものにつきましては、検察官あるいは弁護士につきましても、その中核的部分について統一的な司法修習生課程を経た者をもって充てているのと同じような意味で、その部分につきましてはそういうコースをたどることを判事補のとるべきコースというふうに定めるのが妥当であるというふうに考えられて、判事補については選考任用の道が設けられていないものであるというふうに考えております。
  19. 三浦隆

    三浦(隆)委員 アメリカの大多数の州あるいはスイス、ソビエト等では裁判官公選制を採用しているというふうに書いているものがございます。とするならば、なぜアメリカなりあるいはスイスなりその他が公選制をとっているのだろうか。いわゆる裁判官公選制のメリットはどこにあるのか、日本はなぜこれをとらないのか、その点についてお尋ねいたします。
  20. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 先生指摘のように、アメリカあるいはスイスにおきましては、裁判官の任命につきまして公選制が採用されておるようでございます。その公選制がとられる理由あるいはメリットというふうに言われますのは、やはり民主主義の理念を貫くということが一つ言われるようでございますし、もう一つ、まあそれと似たようなことでございますけれども、これらの国におきましては、裁判官というものもほかの公職と同じように国民の意思に直結した存在であるべきだと考えられておって、そのことを確保するためにそういう制度が望ましいと考えられておるようでございます。しかし、この公選制という制度につきましては、裁判官の選任にえてして政治的な党派性が持ち込まれやすいというようなことも指摘されるようでございます。また、果たして裁判官としてふさわしい人材を選ぶ方法としてそれに適した方法と言えるかという点で、やはりそれらの国の中でもあるいはほかの国の中でもそういう議論があるようでございます。  で、我が国におきまして、先生今御指摘のように裁判官公選制を採用いたしませんでした理由と申しますのは必ずしも明らかではございませんけれども、恐らく戦後の制度改正の際にも公選制を採用するということについての積極的な意見余りなかったようでございます。これは、恐らく我が国では戦前から任命制というものが定着しておりまして、一方で公選制をとる国と申しますのは世界的に見てもごくわずかの国にすぎません。その上、公選制につきましては、裁判官の選び方の制度としては先ほどのような問題も考えられるというようなことが背景となって公選制が採用されなかったのではないかというふうに考えております。
  21. 三浦隆

    三浦(隆)委員 先ほど来繰り返すようですが、キッシュ裁判官というのが、法曹裁判官がいいのかあるいは素人裁判官がいいのかというのはかなり古くからの論議があって、そして公選制をとっているところというのは、むしろアマチュア的な裁判官であってもいいのだという基本的な考え方があるのだろうと私は思います。ですから、日本がもし公選制がだめだというならやはりそれも一つのすぐれた意見だと思います。よそ様はどうであろうと日本はこれこれしかじかで絶対公選制はだめなんだといったような、もっと核心に迫った、何というのかな、もっと自信を持った答弁があってもいいのじゃないかというふうな気がいたします。  これに関連しまして、現在、法律というものが国会でつくられればそれは当然施行されるものだと思います。法律現実にありながら施行されない法律というのは現実にどういうものがあるのでしょうか。
  22. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 ただいま御指摘法律がありながら現実に施行されてないということは、恐らく法令の停止ということであると思いますが、現在のところ、法律として存在しながら施行が停止しておりますものは陪審法、それから公立高等学校定時制課程職員費国庫補助法という昭和二十三年法律百三十四号、この二件があるようでございます。
  23. 三浦隆

    三浦(隆)委員 そこで、陪審法というのが大正十二年にできているわけであります。ところが、これが昭和十八年に陪審法ノ停止ニ関スル法律ということで現在施行されていないわけであります。すなわち、陪審法というのはプロ裁判官ということを限定しているわけではないのです。これは幅広い、いわゆるアマチュア的な要素の人も踏まえて裁判には参加した方がいいということで、その趣旨で陪審法というのがつくられているはずですし、現実にその趣旨に沿っている国々もいっぱいあるわけです。先ほどの公選制を採用しようという発想も陪審法も同じ流れのものだろうと思います。とするならば、公選制もだめだ、陪審法もだめだというならば、先ほど来言うようにアマチュアではだめなんだ、絶対プロでなければいけないんだという一つの論拠がなくてはいけないのだろうと思います。  実は昭和十八年以来陪審法は停止されているわけですが、その昭和十八年の陪審法ノ停止ニ関スル法律によりますと、附則の三項のところで「陪審法ハ今次ノ戦争終了後再施行スルモノトシ」と書いてあります。戦争だからとまったのであって、戦争が終わったら陪審法は行うと法律は書いてあるわけであります。にもかかわらず、現実的には施行されないわけであります。それはどういう理由でしょうか。
  24. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 御指摘のように、昭和十八年当時、陪審法の施行停止の際に、その法律に、おっしゃいますような規定がございますわけであります。その後、終戦後今日まで再び施行されることなしに経過してきておりますけれども、その主な理由と申しますのは恐らくこういうことであろうというふうに思われます。  我が国にありましては、この陪審法が施行されておりました当時におきましても陪審法の活用の事例が極めて少ないものであり、かつ漸次それが減少し、最終的には年間一件程度というふうに、活用されなかったということが一つ背景であると思います。  それから、やはり陪審制度と申しますのも司法制度一般の例に漏れず、それが生み出されたその国の歴史的な伝統の中で育ってきたものでございますが、我が国の国情にこの陪審制度というものは果たして合うのであろうかという疑問があったということがもう一つあると思います。  それからさらに、現在の日本国憲法のもとにおきまして、裁判官判断を拘束するような形での陪審制を設けるということは憲法上問題であるという有力な見解があるということ、それからさらに、諸外国で陪審を採用しております国におきましても、陪審制度というものは大きく見ますと近年やはり衰退の傾向を示しておるというようなことがその理由になっておったものというふうに考えております。
  25. 三浦隆

    三浦(隆)委員 今の御説明余りはっきりとした見解ではないんですね。もし憲法上陪審法というのが疑義がある、あるいは意味がないというなら、陪審法をなくせばいいのであって、行いもしない法律をなぜこのまま残しているのか。残しているということは、休火山じゃないが、いつか噴火する可能性があるというか、陪審を復活したい、行いたいという気持ちがあるから残すんだと私は思うし、実際に陪審というものをやらないんだ、日本裁判制度で陪審は絶対やらぬ、もしそういう判断であるならば、この法律をなくしちゃった方が早いじゃないかというふうに思うのですが、どうでしょうか。
  26. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 先ほど申しましたように、陪審制度につきましてはいろいろな問題もあることではございますけれども、やはり陪審制度と申しますのは国民裁判を結びつけるための制度といたしまして一つの有力な方向を示すものであることも間違いないと思います。その他の種々の制度等も含めまして、今日でも重要な検討課題の一つということで申し上げてよろしいと思います。  先ほど申し上げましたような問題点もあることでございますので、軽々に早急な結論を得るというふうなことにはまいりませんけれども、しかし重要な検討課題であるということからいたしますと、その点について議論が固まって一つの方向が出るまでは陪審制をあえて廃止しないままにしておくということで、現在のところ停止のままになっているというふうに考えております。
  27. 三浦隆

    三浦(隆)委員 陪審法について重要な検討課題であるというのなら、昭和十八年から現在まで大変な年月が過ぎ去っているのでありまして、今では法務省の内部に、陪審法が是か非か、復活さした方がいいのか悪いのか、あるいはこれをなくしてしまった方がいいのか、寝たまま残しておいた方がいいのかという特別な検討のための審議会と言ってもいいですし、何らかの委員会があるのでしょうか。もしあるとすれば、それは具体的に例えば昭和三十年あるいは昭和四十年、昭和五十年、そうした区切りの段階で何らかの陪審法についての答申というか見解が表明されたことがあったのでしょうか、ちょっとお尋ねします。
  28. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 ただいま御指摘のような特別な委員会というようなものは設けておるわけではございませんけれども、やはり重要な制度の一つということで内部的に検討を続けてまいっておるということでございます。
  29. 三浦隆

    三浦(隆)委員 内部的に検討と言いますけれども、今言いましたように昭和十八年からとまっているのでして、その間にたくさんの法律が生まれては消えて、あるいは改正されて、繰り返し繰り返し毎国会いろいろな法律が動いているわけであります。そのときに、重要な検討課題であるというならば、この法務委員会であろうとあるいは法務省内部であろうと、検討のための機会がもっともっとあってしかるべきものだと思うのです。残念ながら、見たところ余りないわけであります。しかも私の見通しとしても、近い将来この陪審制度が復活するとも思えないわけであります。ならば、やっぱりなくしちゃった方が早いじゃないか。  別に復活する気持ちもないのにあえて名前だけ残しているということ自体、陪審制度というものを諸外国でとっている、陪審制度というのは人権擁護のために国民意見裁判に反映しやすい一つのシステムだ、これをなくすと日本裁判がいかにも人権意識が乏しくなるようなそういう批判をされるのではないか、そういうふうな不安があるから場合によっては残しているのじゃないでしょうか。そこに私が先ほど言ったように、裁判官というのはプロアマチュアかという選択を問われた場合に、諸外国はどうあろうとも日本プロを採用する、だから陪審制というのは日本にはなじまないというならば、私はそれで一つの立派な見識だと思いますし、なぜその道を貫こうとしないのか、その点が極めてあいまいだということであります。  それでは、今のお答えでも陪審制度というのは重要な課題だというなら、近々法務省として真っ向からこの法の是か非かということでのそういうふうな検討の機会を持たれる用意があるのかないのか、お尋ねをしたいと思います。
  30. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 陪審制度につきましては、先生御案内のとおり、最近におきましても陪審制度を採用すべきであるという御意見もあるわけでございます。ただ、国民裁判を結びつける方法といたしましては、陪審のほかに参審あるいはそれをさらに崩したような形での参与というようないろいろなやり方もあるわけでございまして、やはり事、国の基本的な制度であります司法制度のあり方にかかわるものでございますから、相当長いことではないかというふうに御指摘になられれば長いことではございますけれども、やはり慎重に検討すべき状態が続いておるというふうに考えますので、軽々に結論の出せる段階というふうには申し上げられないと思います。やはりいろいろな面からさらに十分検討してまいりたいというふうに思っております。
  31. 三浦隆

    三浦(隆)委員 今の答弁を聞いてわかった人は一人もいないんじゃないかと思うのです。軽々な結論と言われるが、別にせっかちに焦って私は言っているわけじゃない。昭和十八年から現在まで四十年の歳月が流れているわけです。四十年かけたらば十分じゃないか。ほかの法律だってよっぽど慎重にしなければならないものはいっぱいあるわけです。それでも一応の結論が出るわけです。四十年かかってなぜ結論が出てこないのか。しかも私は、もし陪審制度を復活しないなら復活しない、それでいいのですから、そのために法務省内部で検討を具体的に今行うのですか、行わないのですかと聞いたのであって、それに対する的確なお答えは何もないわけです。  言うならば、陪審制度を生かすのか殺すのか何となくわからないままに漠然と残しているだけのことであって、私が先ほど言ったように、陪審制度が日本になじまないならなじまない、日本としての一つの見識だと思うのですね、よその国がとろうがとるまいが、もっと毅然とした一つの姿勢として、これこれしかじかだから日本はとりませんと言うべきなんじゃないか。やりもしないものを格好だけなぜ残さなければならないのか。そこに裁判官はいかにあるべきかということについての日本としての姿勢が何か極めてあいまいなというか、気弱さが私は感じられるのだろうというふうに思います。  そこでもう一度お尋ねしたいと思うのですが、これが終わってから四十年なんです、それを過ぎているわけであります。陪審制度というのを近い将来復活させようとするお気持ちがいささかなりとも法務省にあるのかないのか。もしないなら、なくしてしまった方がいいじゃないかというふうにもう一度尋ねをしたいと思います。
  32. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 繰り返して申し上げることになりますけれども、これはやはり司法制度の根幹にかかわる事柄でございますので、法務省の内部での検討のほかに国民全体の中での議論の成り行きというようなことを考え合わせまして、時間がかかりましてもやはり慎重な検討をすべきものだと思いますので、繰り返して申し上げますけれども、近い将来に結論が出せるというふうには思っておりません。さらに検討を続けさせていただきたいと思っております。
  33. 三浦隆

    三浦(隆)委員 法律なりあるいは安保条約のようなものなり、日本の国連をかけてもというか、実に大切なものは数限りなく現実にあるわけであります。そして、しかし戦後三十数年たっている中にいろいろな法律が生まれては消え、いろいろとあるわけですよ。陪審法だけが四十年かけてなぜ答えを出すことができないのかという質問なんです。四十年というのは相当な期間ですよ。別に早急に結論を出せと言って迫っているわけではないのです。だから、それならむしろ法委員会の中にも、陪審法というものを残すか残さざるべきか特別小委員会をつくったっておかしくないわけですよ。本当に行わない法律ならばある必要がないじゃないかということなんです。何で格好だけ残さなければならないのかという質問に対して今の答えはほとんど答えにもなっていないのだろうというふうに思います。  しかし、時間でございますので、もし陪審制度というものが、ほかの国ではとっている、また陪審法を制定させたときには日本はまだ今日のように民主主義が成熟しておらなかった、だから陪審法でない裁判というのは極めて人権侵害になるのじゃないか、そうした諸外国の批判を恐れて大正十二年という段階で陪審法をつくったとされるならば、戦後は憲法もかわり、日本はすばらしい民主主義のすばらしい社会に変わってきているわけですから、そういう意味日本独自の判断というか、自信を持っていただく方がいいんじゃないかと思います。  それからもう一つ施行が停止されておりますものに公立高等学校定時制課程職員費国庫補助法という法律がございます。これが補助金等の臨時特例等に関する法律昭和二十九年の法でありますが、そのことによりまして、その第一条で「公立高等学校定時制課程職員費国庫補助法は、その施行を停止する。」とあります。これもおかしなものでありまして、文部省の方にお答えをいただこうかと思ったのですが、まだその答えが決まっておらないようであります。なぜ高等学校と限定しなければならぬのか。いわゆる教員、職員というのは高校のほかにも中学校もあれば小学校もある、あるいは昼間の学校もあれば定時制の学校もある、いろいろとあるわけですが、なぜこの法律だけが法としてはありながら施行停止というような中途半端に置かれているのか、これまた余りよく意味がわからないと思います。  言うならば、法というものはつくった以上は、つくる理由、目的があってつくるのだろうと思いますから、つくる以上は施行するのが当り前なんです。それが施行されない方が極めて不自然だと思います。ですから、それがしかも半年、一年という極めて短い期間で一時眠っていなさいというのならわかりますけれども、ほとんど復活の見通しなく永久に眠らされたままの法律というのは実に不自然そのものだと思いますので、先ほどの陪審法も踏まえて、あるいは文部省の方はおられないかと思いますけれども、こうした法も見直された方がいいのではないかと思います。  また、もう一つですが、これに絡みまして、いわゆるプロ的な裁判所のあり方、裁判官のあり方と陪審制度というものとの中間をとりましてドイツでは参審制度というのをとっているやに伺っております。特に公害、医療という特殊な事件について参審制度というものの持つ意義があるように解説書には書いてございますけれども、日本では陪審制度と並びまして参審制度というふうなものも過去に検討されたことがあるのか、あるいは今もなお検討課題の一つとしてあり得るのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  34. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 参審制度につきましては、戦後の早い時期におきまして当時の司法制度改正審議会あるいは司法法制審議会等でも検討されたこともあるようでございますが、結局採用されないで終わっていることは御承知のとおりでございます。その間の事情は、実は現在余り明らかではございません。しかし、法務省といたしましても、司法制度における一般国民の参加、国民裁判を結びつけるための一つの制度という観点から、陪審制等と並んで調査研究は続けてきております。  しかし、果たして我が国現実に参審制を取り入れることができるかどうか、あるいは取り入れるとして、どういうやり方があるかということにつきましては、陪審の場合同様、憲法の問題も含めましていろいろ問題があるように思っております。特に公害あるいは医療事件等の特殊な事件につきまして参審制が意味を持つのではないかという御指摘でございまして、そういう声も随分聞くわけでございますが、この部分につきましては、普通の参審と申しますのがいわば一般の素人の方にお入りいただくという形だと思いますけれども、公害関係あるいは医療関係の専門家の関与を裁判機関の中に認めていくべきだというお考えだと思います。したがいまして、通常の意味の民衆参与とは少し違った意味を持ってくるものと思いますけれども、現在の制度で申しますと、例えば鑑定人の制度というようなものもあるわけでございまして、そのほかにどういうような関与の形が可能であるか、あるいはそれがどういう問題を持つかということにつきましてはやはりいろいろ検討すべき点が多いと思っております。  したがいまして、この点も含めまして、参審制一般について重要な検討課題としてこれからも検討させていただきたいというふうに思います。
  35. 三浦隆

    三浦(隆)委員 今、重要な課題として検討されるということでありますが、陪審法にしろ陪審制度にしろ、参審制度にしろ検討されるというのであるならば、具体的に検討のための何らかの機関を設けるとか、検討した結果が現在どこまで進んでいるかとか、何かがあってもいいのではないか。あるいは時においては、どこまで進んでいるかということが法務委員会で仮に今後質問されたとすれば、実はこれはここまで進んでおりますというような中間報告的なこともあっていいのではないかと思います。現実には本当に検討しているかどうかわかりません。というのは、実際にそういうふうな陪審制度にしろ、参審制度にしろ、どこまで我が国が検討したかというのは我々には余りわかっていないからでございます。  それについて先ほど来言うように、日本陪審制度とか参審制度はなじまない、いわゆる日本裁判制度が一番よろしいと言うなら、私はそれもすばらしい見識だと思いますし、そのことを自信を持って国民に訴える方が裁判官としてもあるいは裁判制度としても国民信頼をかち取る道じゃないか。我々は、いろいろな争い事がありますが、最終的には裁判官裁判長にお願いをしておるわけですから、絶対の信頼をここに寄せたいわけでありまして、その点、ですから何か歯切れの悪いお答えよりは、自信を持って諸外国はとにかく日本はこう進むのだと。例えばアメリカの制度はこれこれしかじかで間違い、ドイツの参審制度はこれこれしかじかで間違いと言うなら、はっきりとした結論を出された方がむしろいいのじゃないかなというふうに思っております。  時間でございますが、一言だけ。次に、裁判官任用されたとしまして、いわゆる定年で御退職される前に途中で裁判官をおやめになろうという方もいらっしゃるかと思いますが、そうした裁判官の退官の状況あるいはその退官の原因とされるものはどういうことなのか、お尋ねしたいですし、もしそれが一身上の都合によるというふうなわかったようでわからないような理由であるならば、これをさらに追跡調査したような結果があるのかないのか、お尋ねをしたいと思うのです。  といいますのは、裁判官というのは憲法上も法律上もすばらしく身分を保障されていて、すばらしい職であると思うにもかかわらず、なぜ途中でやめられなきゃならないのか、大変残念だと思うのですね。それが、我々が努力することによってやめなきゃならない理由をカバーすることができるならば、裁判官をお助けして、やめないでひとつその裁判官としての生涯を全うしていただきたいという気持ちも込めまして、今の御質問に対するお答えをお願いしたいと思います。
  36. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判官の退官の数は、過去四、五年をとってみますと平均八十人弱ぐらいのところであろうと思いますが、その中にはかなりの数の定年というのがございますし、定年前におやめになる場合でも、例えば簡易裁判所判事の方のような場合にはもう七十近くになりまして引退という方もあるわけでございますが、それ以外のいわゆる中途でおやめになる方につきまして、その後の進路をきちっと組織的に調べておるというわけのものではございませんが、そのうちのかなりの数が公証人になる方でございます。公証人になる以外の方では、これはもう大部分はその後弁護士の登録をなさっておられますので、弁護士の登録をされて弁護士になられるという方があります。それ以外に、ごく少数でございますけれども、大学教授になられるという方もございます。  今お尋ねの中で、途中でおやめになる方が非常に残念だ、そういう趣旨に即して申し上げますと、どれだけのパーセントであるかということは正確に把握しておるわけではございませんが、やはり家庭の事情その他によりまして、例えば転勤が非常に困難であるというふうな事情からとか、あるいは親でありますとか親戚が弁護士事務所をやっておられまして、その後を継がなきゃいかぬとかというような理由から弁護士になられる方が大部分だというふうに申し上げていいかと思います。
  37. 三浦隆

    三浦(隆)委員 弁護士さんというのは、そこの土地に住んでいるといわゆる住所の移動がほとんどないわけですね。裁判官というのは東京から九州、北海道と異動がある。その異動がつらいということでやめられるとするならば、実は裁判官だけではなくて外交官であろうといろいろといらっしゃるわけですね。たまたまそりときに子供さんの教育の問題で、子供さんが中学なり高校でいろいろな学校を移りかわるのに現在ですとなかなかうまく転校ができない、そのため家族が二分割、三分割されてしまう、それが大変つらいという、もしそういう理由もあるとするならば、裁判官だけに限らず、検察官であれ警察の皆さんであれ、その他外交官の皆さんであれ、そういう人たちの子弟が安心して転勤ができるような、子供たちの転校が楽にできるような、むしろそういう制度をつくっていけば、少なくともそういう理由でのやめるというあれがなくなっていくんじゃないかなというふうに思いますので、ひとつ御検討をいただきたいと思います。  なお、きょうは法曹養成についてもいろいろと質問すべく御準備をしていただきましたけれども、時間の都合で次に回させていただきます。  最後に、私の都合で私が一番先にさせていただきまして、法務委員会の諸先生方に感謝申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  38. 宮崎茂一

    宮崎委員長 天野等君。
  39. 天野等

    ○天野(等)委員 裁判所職員定員法の一部改正法律案についての質問をさせていただきますが、まず、この改正案の提案理由説明の中で「地方裁判所における特殊損害賠償事件等及び民事執行法に基づく執行事件並びに家庭裁判所における少年一般保護事件の適正迅速な処理を図るため」という提案理由がございますけれども、この点について少しお尋ねしてみたいと思います。  まず、特殊損害賠償事件でございますけれども、この理由による判事の増員というのは、実は昨年度の裁判所職員定員法の改正案の理由でもあったかと思うのでございますが、まず、特殊損害賠償事件についての統計等は参考資料の二十七ページの十一のところに出ておりますが、これを見ますと、昭和五十五年に特殊損害賠償事件の係属事件数が三千六百九十三、翌五十六年は三千六百七十四と若干減少し、五十七年三千六百九十六、また旧に復した形でございますけれども、こういう係属事件数の経過を見てみますと、特段にこれがふえているというような様子も見えないのでございますが、この点についていかがなものでございましょうか。判事増員の理由ということとの関係ではどういうことなのかをちょっとお尋ねしたいと思うのです。
  40. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 天野委員指摘のとおり、特殊損害賠償事件の係属件数は、近年さほど変化はございません。しかしながら、委員御承知のとおり、この特殊損害賠償事件と申しますのは、公害事件であるとか、あるいは医療過誤であるとか、日照権に関する紛争であるとか、非常に難しい事件が多いわけでございます。したがいまして、件数そのものは変わっておりませんけれども、これの審理に要する期間は非常に長期化いたしております。通常事件に比較いたしますと、倍以上要するわけでございます。そのような関係からいたしまして、近年は、特殊損害賠償事件処理のためにわずかずつではございますけれども判事の増員をお願いいたしまして、そのような事件が係属している部に配置いたしまして合議率を高める、そのことによって適正迅速な処理に寄与させたいというような観点から増員をお願いしているわけでございます。
  41. 天野等

    ○天野(等)委員 そうしますと、裁判所としてこの特殊損害賠償事件の審理ということで何か特別の部を設けるとか、そういうふうなお考えはあるのでございましょうか。
  42. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 これも委員御承知のとおり、特殊損害賠償事件の中には、先ほど申しましたように、公害事件もございますれば医療事件もございます。食品事件あるいは自動車の欠陥による損害賠償事件、さまざまございまして、公害事件の中でも多いのは、先ほど申しましたように日照、通風の妨害に関するものでございますけれども、ほかに大気汚染に関するものとか、水質汚濁に関するものとか、騒音、振動に関するもの、種々雑多でございます。それから医療過誤につきましても、診断に関するもの、治療に関するもの、手術に関するもの、輸血、麻酔に関するもの、しかも内科、外科、産婦人科というような医学百般に及ぶわけでございます。  例えば医療過誤訴訟につきまして、かつては専門部を設けてはどうかという意見がございました。しかしながら、このような医療過誤の分野にいたしましても、公害の分野にいたしましても、時代の進展に伴ってますます専門化が進んでくるわけでございます。したがいまして、特殊部を設けて処理いたしましても、かつての交通事故による損害賠償事件のように、定型的な処理あるいはそれに基づく統一的な基準というものの確立はなかなか期待できないであろう、そういうことで、特殊損害賠償事件の特殊部を設けるということはいわばさたやみになって今日に及んでいるという状況でございます。  そのような観点からいたしますと、特殊部を設けるということはなかなか困難ではなかろうか。そこで、先ほど申しましたように、特殊部の増設ではございませんで、特殊損害賠償事件の係属している部に配置して、合議による処理体制をとってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  43. 天野等

    ○天野(等)委員 この特殊損害賠償事件というものの範囲ですけれども、これは資料に出ております事件の原因名といいますか、そういうようなものが出ておりますけれども、範囲としては大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、地盤沈下等を理由にするものと、それから医療、薬品、食品、航空機、船舶、労働災害、自動車欠陥等に係る事件というこの範囲で考えてよろしいわけでございますか。
  44. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御指摘のとおりでございます。
  45. 天野等

    ○天野(等)委員 こういう損害賠償の理由あるいは損害賠償を発生させた経過というのでございましょうか、そういうものによって特別に損害賠償事件を分けるという、特殊損害賠償事件というような一つのカテゴリーをつくることの意味というのはどういうところにあるのでしょうか。
  46. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 昭和四十年代の後半になりまして、前半からだったかもしれませんが、いわゆる新潟の有機水銀中毒事件、四日市の公害訴訟でございますね、そういうふうな公害訴訟事件が頻発してきたわけでございます。他方、医療過誤事件は、三十年代にもございましたけれども、四十年代ごろからかなりふえてくる傾向があったわけでございます。  このような事件は、原因の解明も非常に困難でございますし、当事者が多数にわたりますし、それから事件の処理について特殊な科学的な知識が必要である。それから鑑定をどうしても要する。そういうふうにこれらの類型に属する事件の処理が、通常の事件に比較いたしますと非常に複雑困難になっている。そういう観点から、こういう事件を一つくくりまして、その事件の処理のためにいろいろな対策を講じなければならない。自然科学に関する基礎知識を修得していただくためにいろいろ先生方をお招きして講演を聞くとか、あるいは資料も配付しなければならない。鑑定人の確保のための方策も講じなければならない。それらに加えまして・増員によってこれらの事件の迅速適正な処理に貸さなければならない。こういう観点から、特殊損害賠償事件という一つのグループ分けをしたわけでございます。
  47. 天野等

    ○天野(等)委員 そうしますと、特殊損害賠償事件に関して言えば、単に裁判官の増員というだけではなくて、本来そのスタッフといいますか、裁判所の要員としての事務職員なりあるいは調査官なり、そういうものについての配慮がやはりどうしても必要だと私は思うのですけれども、その点についてはいかがでございましょう。
  48. 山口繁

    山口最高裁判所長肩代理者 天野委員のおっしゃるとおりでございまして、ひとり裁判官の増員のみで足るわけではございません。法律案関係資料の十七ページをごらんいただきますと、地方裁判所における特殊損害賠償事件等処理の充実強化のために、非常に少のうはございますけれども、書記官二名、それから事務官四名の増員もお願いいたしておるわけでございます。
  49. 天野等

    ○天野(等)委員 今局長がおっしゃったとおり、私どうも少ないのじゃないかという気がするわけでございます。裁判官を四名そのために増員しなければならないということならば、そのために書記官が二名、事務官が四名という構成で本当にそういう事件についての対応ができるのかどうか。私たち裁判所を見ていますと、通常、常識的に考えまして、一人の裁判官書記官が一ないし二、事務官がまた一ないし二というのが大体常識な線じゃないかと思うのですけれども、その点について、私どうもこういう形での体制が、裁判官の場合に、特に判事を一挙にふやすということはなかなか難しいことはよくわかりますけれども、裁判所書記官事務官の体制というものをやはりもっととる必要があるのじゃないだろうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  50. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 私どもも書記官事務官の増員がこれで十分であると考えているわけではございません。しかしながら、現在の財政事情等諸種の状況を考慮いたしまして、今回は、先ほど申しました書記官二名、事務官四名の増員をお願いしている次第でございますが、四十六年から五十九年までの増員状況を見ますと、判事は三十名、これは特殊損害賠償事件に関連するものでございますが、判事は三十名、判事補は、これも三十名でございます。一般職の書記官は合計四十二名、それから事務官は百三十五名の増員をお願いしてきたわけでございます。そのように逐次わずかずつではございますけれども、地道な努力を重ねてまいりたいというように考えております。
  51. 天野等

    ○天野(等)委員 特にこの事務官の四名の増員と見合いにといいますか、裁判所事務官の定数自体は変わらない、地方裁判所における司法行政事務の簡素化、能率化に伴って二十名の裁判所事務官の減員が計上されておるようでございますけれども、これは主としてどういう面における簡素化、能率化が図られておるのか、この点についてお答え願いたいと思います。
  52. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 事務局の司法行政の分野におきましてはいろいろな行政事務があるわけでございます。例えば各種の統計報告をいたしますとかいろいろな調査報告をいたします、そういう報告事務がございます。報告事務の簡素化を図りまして少しでも人員が減じ得る余地を生み出していく、それからまた、能率器具あるいは複写機等の活用によりまして少しでも減員ができる余地を生み出していく、こういうような努力を重ねております。
  53. 天野等

    ○天野(等)委員 事務官の中にはタイピストも含まれていると思うのですけれども、ワープロ等の導入によるタイピストの減員というようなことも今回の場合に現実的に考えておられるのでしょうか。
  54. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 今回のタイピストの減員につきましては、タイピストの定員と現在員との間に差がございまして、欠員が若干ございます。その関係でタイピストの減員措置をとっているわけでございまして、ワープロの導入との絡みではございません。
  55. 天野等

    ○天野(等)委員 各地方裁判所ごとの裁判官あるいは裁判官以外の職員の定数あるいは定員数、これは各年度初めに決めていくものなのでございましょうか、あるいは定員規則というようなことで定まっているものでございますか。
  56. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 年度初めにそれぞれ決めております。
  57. 天野等

    ○天野(等)委員 そうしますと、今回の裁判官の増員による、それを見込んだ各地方裁判所裁判官の定数、あるいは裁判官以外の裁判所職員の定数というものも、案としては既にでき上がっているということでございましょうか。
  58. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 一応定員法の御審議をお願いいたしまして、これが可決、成立いたしますことを前提といたしまして、内部的には案は現在作成中でございます。
  59. 天野等

    ○天野(等)委員 そのこととも関係するのですが、資料の十八ページに下級裁判所裁判官の定員と欠員の関係の表がございますけれども、現在、判事について二十九名の欠員、判事補については一名の欠員、簡裁判事については十九名の欠員という形になっております。これは恐らく年度の初めに定員を定めてもこれだけの欠員が定年退職その他、先ほどの三浦先生に対するお答えの中にもありましたけれども、いろいろな理由での退職ということで欠員になるのかと思いますけれども、この問題について、各裁判所ごとで定める定員について、こういう年度内の欠員を一応予想された上で各裁判所ごとの定員をお決めになっていらっしゃるのでしょうか、それともこれは各裁判所ごとに現実に二十九名の欠員が生じてしまうということになるのでしょうか。
  60. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 本来は人事局長がお答え申し上げるべき事柄かどば思いますが、一応定年退官なさる方等につきましてはある程度の見込みはっくわけでございます。それ以外の方々につきましても、過去の年次にさかのぼって考えてまいりますと、私ども減耗というふうに申しておりますけれども、減員の数はおよそ見当はつくわけでございます。その辺のところを勘案しながら年度当初に補充できるように配置をする。やはり月日を追うごとに中途で退官されていって欠員が生ずる、それから、あるいはそれぞれの一身上の御都合で急におやめになってまた欠員が生ずる、そうなってまいりまして、毎年十二月一日現在ぐらいになりますと、この表に書かれておるような欠員がどうしても出てくるという状況でございます。
  61. 天野等

    ○天野(等)委員 その次に、理由として掲げておられます民事執行法に基づく執行事件の関係での増員理由でございます。  この点については、説明資料の二十八ページに執行事件の新受件数というものが出ておりますけれども、これによりますと、先ほどの特殊損害賠償事件とは違って、事件の件数の増加は非常に大きなものだと思うのです。不動産競売だけ見ましても、五十五年四万六百九十、五十六年四万七千百八十二五十七年五万九百三十五と、五十五年と五十七年を比べますと約一万件の増でございますから、二五%ぐらいの増ということになりますか。また、五十六年、五十七年を比べてみましても、八%ぐらいの増加ということかと思いますけれども、これはかなりの増加になっておる。さらに、動産に対する強制執行の配当手続なんかでは、五十五年五千百八十九、五十六年一万三千百九十四、五十七年一万八千五百八十一。これは五十五年と比べますと三・五倍ぐらいの大きな増加でございます。  この執行事件の増加に対応するものとして、十七ページの定員の増減を見ますと、判事二名、書記官二名、事務官五名というような形で、これもまた、特に書記官事務官のこの程度の増員で本当に処理し切れていくのかどうか、この点で書記官事務官に対する労働の強化というものが非常に大きいものになっているのではないかという危惧を持つのですが、その点はいかがでしょうか。
  62. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 ただいま委員指摘のとおり、裁判所におきます民事執行関係の事件数が近年非常に増加してまいっております。こういう状況に対処いたしますために今回も増員をお願いいたしておるわけでございますが、私どもといたしましては、この増員をお願いするほかに、事務処理のできるだけの合理化ということに真剣に取り組んでおりまして、現に各事件担当の方々の研究会を実施して合理的な処理方法を工夫する、あるいはまた、能率器具を導入いたしまして事件処理の効果を上げるというふうな方法もあわせて対処いたしておる次第でございます。
  63. 天野等

    ○天野(等)委員 実は局長おっしゃるとおりで、裁判所が本来やらなければならない事務ではないかと思われるものが、どんどん申立人側の負担になって、書類等の作成から、極端な場合には通知のあて名書きまで実際に申立人側でやらなければならないというようなことも聞くのでございますけれども、民事執行法に基づく事務処理の件数がどうしてもふえてくるという場合に、基本は、司法国民に対する一つの責任でもあり、サービス業務でもあると思うのですけれども、やはり要求すべき人員についてはきちっと要求を出して、それで国会等での審議にゆだねるということが必要ではないかと私は思うのですが、余りきれいに裁判所職員の方はプラス・マイナス・ゼロという形で出てきますと、事務処理について現場の書記官事務官意見等が本当に取り入れられているのだろうかということにどうも危惧の念を持つ。現場を聞いてみますと、これはとてもとてもたまりませんよ、事件がふえてしまってどうしようもありませんよという話を聞くわけです。この点についても事務総局側としても裁判所職員の負担ということも考えて、もっと対策を立てていただきたいと私は考えるわけです。  それに関係するのですが、近年サラ金に関係しまして破産の申し立て事件がかなり急激にふえているのじゃないかと考えられるのですが、この点についてはいかがでございましょう。
  64. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 ただいま委員指摘のとおり、ここ三、四年の間に破産の申し立て事件が非常にふえております。激増と言っていいかと思います。ちなみに総数を若干申し上げてみますと、昭和五十六年に三千二百二十一件の新受でありましたものが、五十七年には五千三十一件、さらに五十八年度、これはまだ概数でございますが、一万七千八百七十八件というふうに大量に増加しております。ただ、これを各裁判所ごとに見ますと、かなりでこぼこがございますのと、それから最近の申し立て事件の特徴は、いわゆる自己破産の申し立てが非常に多い、それもいわゆるサラ金絡みの自己破産の申し立てが特に増加しているというのが実情でございます。したがいまして、事件数増そのものと事務負担が直接に比例するというわけではないと思いますが、かなり事務量が多くなっていることは御指摘のとおりと思います。
  65. 天野等

    ○天野(等)委員 これは裁判所書記官事務官の方にお聞きしますと、とにかくサラ金事件何とかならないですかねというのが偽りのない現場の声だと私は思うのですよ。後でまた簡裁事件の方でお話ししようかと思うのですが、簡裁事件での調停の問題、この破産の激増、これに対して事務総局が何とかもっと裁判所職員の身になった事件の処理体制というものを考えていただかないと、これは非常な負担になってくると私は思うのですね。現になっているわけですから。この点、一応時間の関係もありますので、強く要望をいたしておきまして、また質問させていただきたいと思います。  次に、家庭裁判所の問題でございます。  これは定員の問題もございますけれども、ひとつお尋ねしておきたいのは、家庭裁判所の調査官の職務の独立性の問題についてでございます。これについては、調査官個々が独立した責任で職務を遂行していく、決して首席あるいは主任という形での指示を受けるという関係にはないと思うのでございますが、この点についてはいかがでございましょう。
  66. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 家庭裁判所調査官は御承知のとおり心理学、教育学、社会学等の人間関係諸科学に関する専門的知識を活用いたしまして審判、調停等家裁事件の処理に必要な調査を行う方々でございます。その職権の行使あるいは職務の遂行につきましては、書記官のごとく、例えば裁判官の命があって調書の訂正をしなければならないときに自己の意見を書き添えることができる、こういうふうな規定は特段ございませんけれども、いろいろ調査をなさって調査意見を出される、そういう職務の遂行過程におきましてはそういう専門的な知識を有する方々であるという性格からするいわば独立的な意味合いは持ってこようかと思います。しかしながら裁判所法の六十条の二の三項でございましたか、首席調査官は家庭裁判所調査官の指導監督を行うことができるという旨の規定がございますので、そういう専門的知識を活用して調査事務を行われる過程における指導監督というものは必要なことではないかというように考えております。
  67. 天野等

    ○天野(等)委員 その指導監督の権限と、それから個々の事件に対する調査官の調査意見の記載との問題が、私いろいろ問題があるのじゃないかと思うのですけれども、指導監督というのは一般的な調査官に対する日常的なものとしては考えられるわけですけれども、そのための研修とか、そういうようなものとしては考えられるわけですが、個々の事件処理に当たっては、調査官と審判に当たります裁判官との間での関係で処理がされていくものと、それがまた裁判官の独立の問題とも関係をしてくると思うのですが、やはり私は、首席等の意見が個々の事件については及ぶものではないと考えるのですが、この点についてはいかがでございましょう。
  68. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 お答えを申し上げます前に、先ほど六十条と申しましたけれども、家庭裁判所調査官に対する指導の根拠規定は六十一条の二の三項に規定がございまして、「最高裁判所は、家庭裁判所調査官の中から、首席家庭裁判所調査官を命じ、調査事務の監督」「の事務を掌らせることができる。」こういう規定がございます。訂正させていただきます。  いまお尋ねの、個々の事件の処理に関しましては、今申しました六十一条の二の四項に「家庭裁判所調査官は、その職務を行うについては、裁判官の命令に従う。」という規定がございます。それとの関連で、委員指摘のとおり、首席調査官の行う指導監督と具体的な事件処理について出される裁判官の監督との関係がございますので、個々の事件について例えば調査意見をどうこうしろというふうな指導監督はできないというように考えてはおりますが、一般的な執務の指導監督というのは首席書記官と同様行えるというように考えております。
  69. 天野等

    ○天野(等)委員 その点に関係するのですけれども、個々の事件に関する調査官の意見に対して首席調査官の査閲印を最近要求をしている、そういう家庭裁判所があると聞くのでございますけれども、この点について事実関係としておわかりでございましたら……。
  70. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 甚だ申しわけございませんが、これは家庭局の所管事項でございまして、私がうろ覚えてお答えいたしますと、甚だ申しわけないことになろうかと思いますので、ちょっと答弁は差し控えさせていただきます。
  71. 天野等

    ○天野(等)委員 私もちょっとその点連絡をしておきませんでしたので、大変申しわけございません。次の機会にその点質問させていただきたいと思います。   簡易裁判所の問題についてお尋ねしたいと思うのですが、簡易裁判所の中に裁判官の常駐していない裁判所というものがあるようでございますけれども、これは総務局でことしの一月にお出しになった「簡易裁判所の事件の動向と問題点」という小冊子にも触れてはおりますけれども、簡易裁判所裁判官が常駐していない簡易裁判所の数はどのくらいあるか、いかがでしょう。
  72. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 いわゆる本庁とか支部に併設されていない独立簡裁における簡易裁判所判事の非常駐庁は百三十九ございます。
  73. 天野等

    ○天野(等)委員 裁判官が常駐していない家庭裁判所における日常の事件の取り扱い、これはどういうふうになっておるのでございましょう。
  74. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 裁判官の常駐していない簡易裁判所における事件の処理状況につきましては、その庁の事件の係属状況に応じまして、例えば週一回なり二回他の庁から裁判官が填補されて事件を処理する、あるいは事件数の少ないところでございますと、月に一回あるいは二回という形で特定の曜日に化庁から出向かれまして事件の処理をしているという状況でございます。
  75. 天野等

    ○天野(等)委員 今度はそういう簡易裁判所職員の数の問題でございますけれども、簡易裁判所の中に職員の数が二人しかいないといういわゆる二人庁、この数もかなりの数あるやに伺っておりますが、どのくらいの数あるかちょっとお伺いいたします。
  76. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 二人庁の数は現在四十四庁でございます。
  77. 天野等

    ○天野(等)委員 裁判所職員が二人しかいないということは、その裁判所で法廷が開かれますと、書記官と廷吏が法廷に出てしまいますと、その裁判所事務を扱う者、極端に言いますと、その裁判所に泥棒といいますか、ほかの全然知らない者が入ってきても安全を確保する要員さえ実はいない、そういう状況になってくるのじゃないかと思うのです。そうなりますと、裁判官も常駐していない、極端な場合には一カ月に一回か二回しか来ない、職員も二名しかいない、それで法廷が開かれれば事務室にはだれもいなくなってしまう、これはもう裁判所という名に値するかどうかというくらいな気がするわけでございます。  それで、この裁判所の総務局でおつくりになっていらっしゃる小冊子によると、小規模簡易裁判所というのは事件数も減っているのだ、だからこれについて新たな統廃合を考えるのだというお考えもあるようでございますけれども、しかし、現実にそこが簡易裁判所として存在し、やはり法を守るための大事な場所だと私は思うのです。その点で、二人庁についてはどうしても現状において廃止していくといいますか、廃止というより二人庁を少なくとも三人は職員を配置していくというような方向で考えるべきものかと思うのですが、いかがでしょう。
  78. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、職員二人庁というような裁判所は本来の裁判所のあるべき姿から申しますと甚だ遺憾な事態なわけでございます。もっとも、そのような庁におきましては多くは民訴事務は他の庁で取り扱っておる、刑事訴訟につきましてはこのところ年間刑事訴訟が全然ないという庁が非常に多うございまして、二人庁等では恐らくそういう刑事訴訟事件が送られることもない状況であろうかと思いますので、法廷が開かれて事務室の方が空っぽになるという事態は極めてまれじゃないかとは思っております。  ただ、仰せのごとく、二人庁は問題であるから少なくとも三人配置しろというふうな御意見も非常にごもっともな点もあろうかと思いますけれども、やはり裁判所といたしましては、人員の全国的な見地からの効率的な活用というものもまた考えなければならないわけでございまして、今申しましたように、ほとんど訴訟事件のないような庁ではやはり庁舎維持管理等に必要な最低限の要員と申しますか、書記官一人、廷吏一人というような配置もまたやむを得ないのではないかと考えて為ります。
  79. 天野等

    ○天野(等)委員 今お話にありました事務移転庁の問題なんですけれども、確かに裁判所法で特別な場合には事務移転ができる、そういう規定があることは確かでございます。この規定も特別な場合ということで、じゃ事務移転庁がすべてそういう過疎というような状況であるのかというと必ずしもそうではないという事情があると思うのです。  一例を申し上げますと、私、茨城ですけれども、茨城の取手に簡易裁判所がある。独立簡易裁判所でございます。これは事務移転庁でございまして、事務は竜ケ崎の簡易裁判所に民事事務に関しては移転されております。ところが、御存じかどうかわかりませんが、茨城の取生地区というのはこれは大変な人口急増地帯でございまして、竜ヶ崎の人口は約四万七千ぐらいですけれども、取手市の人口は七万七千でございます。取手簡裁の管轄になっております正規の管轄区域は取手市とそれから北相馬郡でございます。これを全部合わせますと、取手が約七万の北相馬郡が七万ほどございますから、十四万ぐらいの人口を持っておるわけでございます。そこを管轄する独立簡裁があってもこれはちっとも不思議ではありませんし、交通の便からいいましても、むしろ事務移転を廃止して本来簡易裁判所を設立すべきところではないかというふうに考えられるのですけれども、そういう点についての統廃合というような観点までいかなくても、現実にそういうようなところがあって事務移転の今の状況が余り適当ではないという場合には、これをもとに戻すということのお考えもあるのかどうか、そういう処置もとれるのかどうか、この点についてもいかがでございましょう。
  80. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 仰せのとおり、取手の簡裁の管轄区域におきましては最近人口が急増しているというように承知しております。しかし、取手の事件数をちょっと見てみますと、民事の通常訴訟につきましては、四十年当時で十件、五十五年で十八件、五十六年で十一件、その程度であったわけでございます。恐らく最近はかなりふえているかと思いますけれども、おっしゃるとおり、民訴事務の下取り扱い庁に指定されました後、人口の増加等の状況がございました場合には、必要に応じまして民訴事務の下取り扱いを解除して民訴事件を取り扱うようにするということは考えなければならないのではないかと思っております。  現に昨年の四月でございますけれども、相模原簡裁というのが横浜の管内にございますが、ここも民訴事務は横浜の方に移転していたわけでございますけれども、非常に人口が急増してまいりまして、やはり事件の処理のためには民訴事務の下取り扱いを解除する必要があるということで旧に復した例はございます。やはり人口の動態であるとか、事件の係属状況であるとか、その辺を十分慎重に見守りながら必要に応じた措置はとっていきたいというように考えております。
  81. 天野等

    ○天野(等)委員 簡易裁判所のその使命は、本来低額訴訟事件を扱うというところにあるのではなくて、調停とかあるいは督促手続というような形で市民と密着した裁判所という形、これが簡易裁判所の本来の姿でもあり、またこれから簡易裁判所考えていくときにこの簡易裁判所の性格というものはやはり大事にしていかなくてはならないものじゃないかと私は思うのです。  戦後のこの憲法の中で新しくつくられた裁判所制度、その中で特に最高裁判所の違憲審査権はもちろんですけれども、裁判所法の問題として言えば、家庭裁判所とそれから簡易裁判所というのが国民司法をつなぐ非常に大きな橋になっているものじゃないか。その点がないがしろにされてきているのじゃないか。簡易裁判所につきましても庁舎等の改築をここ十五年も行わない。それで裁判所の庁舎と言えるのかどうか。本当に法の尊厳を疑わせるような、官庁としてもこれほどひどい建物があるだろうかと思うような感じの建物さえ事実ございます。それを全く改築しようとせずに、むしろそれは廃止してしまうのだからというような考え方があるのだとすれば、これから国民の中に法を守る意識を広めていくという観点から考えても、ちょっとおかしいのではないかというふうに私は考えるわけです。  この点について、最後に私、法務大臣にお尋ねしたいと思うのですが、裁判所の統廃合等の問題については、法務局、裁判所あるいは弁護士会等の三者協議等でも今後考えられていく問題だと思いますけれども、それについてこの簡易裁判所家庭裁判所の問題については、特に家庭裁判所の出張所等を身近に数多くつくっていくという方向が必要ではないかと思うのです。そういう形で裁判所国民生活の身近なところにできるだけ置いていく。これを経済効率だけを考えるのではなくて、身近なところに、いつでも裁判所に行って法律の問題について相談ができるというような体制をこれからも司法の行政の一つとしてぜひとも考えていただきたいと思うのでございますが、この点について大臣から御見解をいただきたいと思います。
  82. 住栄作

    ○住国務大臣 今天野委員おっしゃいましたように、大変世の中の環境と申しますか、例えば裁判所を取り巻く環境も随分変わってきておることも事実だと思います。そういうものにどういうように対応していくか、これを常に考えるということは、裁判所のみならず行政の分野においても大変大事なことだろう。簡裁なり家庭裁判所あるいは出張所、そういう配置の問題につきましては、これは司法をどうやっていくかということでございますし、最高裁判所の方でいろいろ御苦労なさっておられると思うのでございますけれども、そういうような意味で、最高裁判所の方でも何か検討していただいておるということを伺ってもおりますので、最高裁判所の方でやっていただけるのではなかろうかな、こう思っておるわけでございます。
  83. 天野等

    ○天野(等)委員 きょうの最高裁判所の御答弁や大臣の御答弁を伺っておりまして、私感じるのですが、やはり司法というのはいわゆる経済効率には決してなじまないものだろうと思うのです。確かに定数問題というのは経済問題ではありますけれども、本当に司法の立場を守るためには、必要な予算はどうしても出さなければならないものだろう。それが我々の生活の平和を守っていく一つの大きなもとになるものだろうと思います。そういう点で、裁判所の統廃合問題にいたしましても、あるいは法務局の統廃合問題にいたしましても、単なる経済効率からこの問題を考えていくということではなくて、法を国民の中で生かしていくという、そういうもっと大きな観点からの行政を私は大臣にもお願いをしたいと思います。  時間も参りましたので、本日はこれで質問を終わらせていただきます。
  84. 宮崎茂一

  85. 小澤克介

    小澤(克)委員 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に関して、天野委員に続いて若干お尋ねいたします。  まず、判事の増員を求める理由について、提案理由説明で一応の説明はございますが、より具体的に御説明をいただきたいと思います。
  86. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 九名の増員の理由を若干申し上げますと、地方裁判所におきます特殊損害賠償事件等複雑困難な事件が依然として多数係属し、かつ審理期間も長期化しておるということで、その関係の処理の充実のために判事四名の増員ということになっております。  それからさらに、地裁における民事執行事件につきまして、昭和五十五年の民事執行法の制定後、執行事件の内容が非常に複雑困難化し、かつふえております。そういう関係の処理の充実で判事の増員を二名、それから家庭裁判所における交通違反等の事件を除く少年の一般保護事件、これが増加し、かつ内容的にも困難なものがふえておるという関係で、その処理の充実の関係判事三名、合わせて九名の増員という内訳になっております。
  87. 小澤克介

    小澤(克)委員 今のお話に特殊損害賠償事件の処理の充実強化ということがありましたが、これは先ほどの天野委員からの質問にお答えがありましたが、特別部をつくるということではない、こういうことですね。
  88. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 仰せのとおりでございまして、先ほども申しましたように、この種の訴訟は非常に個別化、専門化の度合いが厳しゅうございまして、統一的、類型的な処理にはなじみにくいわけでございますので、専門部を設けることはなかなか困難でございます。
  89. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうしますと、今、理由の中で特殊損害賠償事件の処理の強化という意味で四人の増員ということをおっしゃっているのですが、この四人は具体的には普通の一般の部に適宜配属される、こういうことになるわけでしょうか。
  90. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 特殊損害賠償事件の処理は、小澤委員よく御承知のとおり、合議体で処理するのが一番適切なわけでございますが、必ずしも合議体でない単独体で特殊損害賠償事件を抱えているところもございますので、そういうところに配置をいたしまして合議体で処理できるような体制をとっていきたいと考えております。     〔委員長退席、森(清)委員長代理着席〕
  91. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうしますと、四人増員された方々が特殊損害賠償事件だけを担当するということには全くならないわけですね。  それから、二番目の民事執行法に基づく執行事件処理、これにつきましてはいわゆる執行部に二名を配属するということになるのでしょうか。
  92. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 大きな裁判所でございますと、執行部がございます。小さな裁判所でございますと、ある係裁判官が担当しているというところもございます。事件の係属状況を見ながら、そういう執行事件を担当する分野に配置をしていきたいと考えております。
  93. 小澤克介

    小澤(克)委員 お話を伺っておりますと、特殊損害賠償請求事件に四名振り分けというような数字も、実際にはそれにだけかかわるわけではない、担当するわけではないということになりますので、この増員の理由というのは果たしてここにあるのがそのすべてなのか。こじつけではないのか。特に判事補は十年たちまして判事になるわけですから、その予定者から逆算してこの九名という数字を割り出したのではないのか、そんなふうにもうかがえるものですからお尋ねしているわけですけれども、ここに書いてある理由、これに尽きるわけなのでしょうか。
  94. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 これまで判事補の増員をお願いしてきた時期もございます。その結果、判事の給源である判事補はかなり多くなってまいりまして、判事の充員の可能性が非常に強くなってまいりました。そういう関係で最近は判事の増員をお願いしているわけでございます。そういう点はございますけれども、判事の増員をお願いいたします際には、ここにもございますように、係属している事件の適切な処理に寄与できるようにそれぞれのいわば柱と申しますかそういうものを考えて、現実に特殊損害賠償事件を抱えて苦労しておられるところ、それから執行事件がふえて大変苦労しておられる庁もあるわけでございまして、その辺をにらみながら配置の方を考えていきたいと考えておるところでございます。
  95. 小澤克介

    小澤(克)委員 重ねてお尋ねしますが、判事補であっても数年たちますといわゆる特例がつきまして、実際には単独の事件などをこなしているという実情がございますので、ここで判事を特に九名増員しなければここに挙げられたような充実強化ができないというのも、どうももう一つ納得できないところがあるのですが、いかがでしょう用
  96. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 仰せのとおり、判事補五年たちまして特例がつきますと単独事件の処理もできるわけでございますが、十年以上たちましたキャリアを有する判事の場合と特例判事補の場合とでは、やはり事件の処理あるいは力量等につきましては差があるわけでございます。裁判所の事件処理につきましては中核的な存在はやはり判事でございますので、判事の充員をお願いしたいということでございます。
  97. 小澤克介

    小澤(克)委員 この九名の判事の増員に伴いまして、人件費等直接間接の費用増がもし試算済みでありましたら、これは事前に通告してなかったので、数字がなければ結構ですが、ありましたらお答え願いたいと思います。
  98. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 手元に数字はございませんけれども、今回お願いいたしております判事九名の増員、そのほかの書記官、調査官、事務官、その増員分を含めまして一億一千万程度であったかと思います。
  99. 小澤克介

    小澤(克)委員 提案理由が事件処理の充実強化、こういうことになっているわけですが、人員増以外にも強化策というものはいろいろ考えられるのではないかと思いますが、そういう点についてはどのような施策を持っておられますでしょうか。
  100. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 当面は、特殊損害賠償事件の審理の充実と申しますと、先ほど総務局長から申しましたとおり、合議体による審理の充実ということが中心でございますが、そのほかに、以前から私ども民事局の方が中心になりまして、例えば会同、協議会を開催する、あるいはまた研究会を開催する、さらにはまた、自然科学等の知識を十分修得していただくために予算を配賦いたしまして研究会を開催したり、あるいはまた自然科学関係の図書を配付するというふうな施策を講じておりますし、そういう周辺の施策もあわせまして全体として特殊損害賠償事件の審理の充実ということを考えておる次第でございます。
  101. 小澤克介

    小澤(克)委員 人員増、それから今おっしゃったいろいろな施策もさることながら、事件処理を充実強化し、そして適切に裁判所が運営され、そして国民の法的救済が図られるというためには、やはり裁判官の資質、これが重大な問題を持つかと思います。  で、裁判官職務上の義務違反行為があったのではないかというようなことを新聞紙上等で散見するわけでございますが、この点につきましては裁判所はどう対処しておられますでしょうか。
  102. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判官にいわゆる職務義務違反がありました場合にどういう措置が講ぜられるか。一般論ということでございますが、一番重いと申しますか、それから申しますと、裁判官弾劾法によりまして罷免ということがあり得るわけでございます。それは裁判所外で措置をしていただくものでございますが、裁判所の内部で行いますものといたしましては、裁判官分限法というものによりまして分限の裁判をやりまして、過料あるいは戒告という処置が講ぜられることになるわけでございます。  もう一つは、単に義務違反のみではございませんが、それをも含めまして裁判所の規則で、これは下級裁判所事務処理規則という規則でございますが、所長等が注意を与えることができるという規定がございまして、この規定に基づきまして書面あるいは口頭によりまして注意を与えるということがあるわけでございます。概略を申し上げますとそういうことになります。
  103. 小澤克介

    小澤(克)委員 今御指摘のありました弾劾法等の事由によりますと、職務上の義務違反あるいはまた品位を辱める行為、こういうことが書いてあるわけですけれども、これは分限法にもそのような規定があるわけですが、ここで言う職務上の義務違反というのには、教科書などによりますと、「裁判事務について法令の適用遵守の上で明白重大な過誤があった場合」というようなことが記載されておりますが、裁判の過程で実体法規違反、例えば訴訟関係者に対して刑法に触れるような行為を裁判官がしたとか、あるいは民法不法行為に該当するような行為があったとか、こういった場合も含まれるというふうにお考えでしょうか。
  104. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 いかなる場合に義務違反になるかということは一概に申し上げにくい面もございまして、非常に難しいわけでございますが、裁判官が遵守すべき法規に違反するということになりました場合には、それは義務違反ということになるということであろうと思います。
  105. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうしますと、裁判官が遵守すべき法というのは、手続法に限らず実体法も含まれるわけでございますね。
  106. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 そこら辺になりますと、いわゆる民法、刑法等の実体法が裁判官職務に向けられた法規であるかどうかという、そこら辺の法律論を詳細にいたしませんことにはちょっと難しいわけでございまして、何をもって実体法違反がということにもかかわることであろうと思いますが、裁判所はもちろんその実体法を事実に適用してやるわけでございますから、ごく一般的、抽象的に申します限りにおいてはもちろん遵守すべきということになるわけであろうと思いますが、やはりその具体的事案に即しませんと、特に何が違反がということに関連しまして、御承知のように、強行法規でありますとか任憲法規でありますとか、法規にもいろいろな性質がございますから、そこら辺を検討しなければちょっと一概に申し上げることは難しいのではないかというふうに思います。
  107. 小澤克介

    小澤(克)委員 抽象的なお答えですので、具体的に、裁判の過程で裁判官が訴訟関係者に対して暴行に及ぶというような行為はあってはならないことだと思いますが、そういうことがありましたら、これはやはり職務上の義務違反ということにはなりますでしょうね。いかがでしょう。
  108. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 はっきり暴行傷害をやったというような場合は、これは職務と関連なく行う場合もあるわけでございますから、それをもって職務上の義務違反がというお問いでありますと非常に難しいわけでございますが、少なくとも一般人も遵守しなければならないという意味においては裁判官も遵守しなければいけないということになるのだろうと思います。
  109. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、仮に職務上ではないと考えても、少なくとも品位を辱める行為、これには該当するということになりましょうか。
  110. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 一般的に申し上げます限りにおいては、刑法に触れるような、例えば傷害というふうな事件を起こしますことは、裁判官については品位を害するということになるだろうと思います。
  111. 小澤克介

    小澤(克)委員 労組法七条違反行為を職務上行った場合はどういうことになりますでしょうか。
  112. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 私もしばらく裁判から離れておりまして、労組法のたしか七条の不当労働行為のことをおっしゃっておるのかなというふうに思いますが、この不当労働行為といいますのは、大体使用者と労働者の関係におきまして、使用者が労働組合に対する支配介入等をやってはいけないというふうな法規であったかというふうに記憶するわけでございますが、そういう意味では、これは裁判官はいわばそういうものにはかかわりがないのではないかなという感じがいたします。なお、私十分準備して申し上げているわけのものではございませんので、一応私の感想というくらいでお聞き取りいただきたいと思います。
  113. 小澤克介

    小澤(克)委員 労組法七条は使用者の行為について規制したものであるということは御指摘のとおりですし、また、使用者概念が適宜拡大されてきているというようなこともこちらから指摘しておこうと思いますが、裁判官が使用者概念に当たるか当たらないかというような法律論争はともかくといたしまして、労働基本権侵害行為というようなものに何らか関与するということは非身分者でも十分あり得ることですから、こういうことがあった場合にはどういうことになりましょう。
  114. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 どういう事案を御想定なさっているか、ちょっとわかりませんが、私どもとしては、先ほど人事局長からお答え申しましたとおり、裁判官が使用者というふうな立場に立つというのはどういう場合なのか、ちょっと了解できない、そういう場合はないのではないかと考えておるのでございますが……。
  115. 小澤克介

    小澤(克)委員 先ほど質問しましたのは、使用者でなくても、身分がなくても共犯として関与することはあり得るだろう、こういうふうに言ったのです。理論的にあり得るでしょう。その場合にどうするかということです。
  116. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 私も具体的な、労組法七条の場合について、共同不法行為ですかというふうな場合がどういう場合に成立するかどうかということについて必ずしもつまびらかではございません。学説としてそういうふうな見解をとっておられる学説もあるということは承知しております。  ただ、裁判例としてそういうふうな点について触れている例は、私、今のところ特に調べてまいりませんでしたので、自信はございません。
  117. 小澤克介

    小澤(克)委員 どうもよくわからないのですが、身分者じゃなくても使用者という、まあ身分がなければ労組法七条違反にはならないのでしょうけれども、そういう行為に、幇助か教唆かあるいは共犯か知りませんけれども、何らか関与する、そういうことは十分あり得るだろうと思うのですよ。現実裁判官が、そういう労組法七条違反と言えるかどうかはともかくとして、憲法二十八条にあるような労働基本秩序に反するような行為に何らか関与した、これについてはどう考えるかと先ほどからお尋ねしているわけです、そういうことがあった場合に。一般論で結構ですよ。
  118. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 一般論として、例えば民事の関係で申しますと、共同不法行為というのは理論的にあり得るとは思います。
  119. 小澤克介

    小澤(克)委員 仮にそういう行為があった場合、裁判所としてはどのように対処するのかお尋ねしたいのですが。
  120. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 お尋ねは仮定論でございますので、非常に恐縮でございますが、その場合にどうするということを確定的にお答えいたしかねるわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、所長の行います注意、分限、弾劾法、それぞれ一応要件が決まっておるわけでございまして、そういう要件に該当するというふうに裁判所が認められます限りにおきましては、そういう要件にそれぞれ規定された処置をとるということになるわけでございます。  ただいまのお答えはあくまで一般論でございまして、不当労働行為云々の問題は言ってみればそれぞれの法規の解釈で、それがすぐ義務違反とか信用失墜行為になるかどうかということについては、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  121. 小澤克介

    小澤(克)委員 仮定論ではなくて一般論でお尋ねしているわけなんですけれども。  それではお尋ねしますが、大阪地方裁判所第六民事部の道下徹という裁判官が、総評全金の大阪地方本部に所属していた額田製作所支部、この支部の組合員に対して、全金大阪地本から脱退しろ、こういう明らかな労組法七条違反の行為に加担したという事実が報道されているわけですが、これについて裁判所は掌握しておられますでしょうか。
  122. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 御指摘のような事件があったという新聞報道がなされましたので、私どもとしては、今御指摘のような会社更生の申し立て事件でございますね、それが係属し、道下裁判長が当該事件につき会社更生手続の開始決定をなさったということはもちろん承知いたしておりますし、当該開始決定をするに至った外形的な事実というのは把握しております。
  123. 小澤克介

    小澤(克)委員 把握しているのはそれだけでしょうか。
  124. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 具体的にはどういう点でございましょうか。
  125. 小澤克介

    小澤(克)委員 私が今指摘したような、更生管財人ですか候補者の意を受けて脱退を強要したり、あるいはそれを文書で確認する、そこに立ち会う、そういった行動があったか否か、そういうことを調査しているかどうかということです。
  126. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 私どもの方で報告を受けておりますところによりますと、会社更生手続開始決定がなされる前に、管財人候補者からの申し出を申立人あるいは労組側に連絡をするというふうな外形的な事実があったことは承知いたしております。
  127. 小澤克介

    小澤(克)委員 その連絡をした内容についても承知しておられるのでしょうか。
  128. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 委員御承知のとおり、これは既に大阪の地労委の方に事件が申し立てられておりますし、それから国家賠償事件としても提起されておりますので、私どもの方としては、当面、国家賠償事件の審理に対応するために事実の報告は受けていることは御指摘のとおりでございます。  ただ、御承知のとおり、これは本来、道下裁判官裁判長としてなされた一種の訴訟指揮の中身の問題でございますし、かつ具体的な事件に関連しておりまして、私どもの方で報告を受けております概要とそれから原告の側が訴状で主張しております内容とは必ずしも一致していない面がございますので、現に訴訟になっている事件についてここで私どもが具体的にはどうこうであるというふうな答弁をするのは適当でないと思いますので、これ以上の答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  129. 小澤克介

    小澤(克)委員 内容はともかくとしまして、調査に当たってはどういった範囲内から事情を聴取しておられますでしょうか。
  130. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 ただいまの御質問の調査という趣旨が必ずしも私十分理解いたしかねる面もございますが、この種の事件の関係そのものは民事局の所管でございますが、人事局といたしましては、最初の御質問にもございました裁判官に義務違反等そういう非違行為があった場合にどうするか、そういう意味での調査という御質問であるといたしますれば、現在のところはそういう趣旨での調査というものはいたしていない。その趣旨は、先ほど民事局長も申し上げましたように、具体的事件が今まだ係属しているということも理由の一つであるわけでございます。
  131. 小澤克介

    小澤(克)委員 よくわからないのですが、だれから事情を聴取したのか端的に答えてください。どの範囲内から。訴訟関係者全員から事情を聴取しているのかどうか。
  132. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、国家賠償事件として係属いたしておりますので、当該事件を所管されます法務省の訟務局の方で事案に対応するために訴状に記載された事実関係についての認否等を裁判所側に明確にするように連絡が参ります。それを私どもの方で取り次ぎまして大阪地方裁判所の方から訴状の請求原因等の記載事項について認否事項を送ってまいりますので、それを法務省訟務局の方にお渡しするというのが私どもの役目でございまして、直接に事件について事実を調査されるのは法務省の訟務局の御担当でございます。
  133. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、裁判所独自に調査をするということは行っていない。法務省からの問い合わせに対して、当事者に対して、大阪の裁判所ですか、あるいはこの道下裁判官本人に認否をしてもらった、こういうことに尽きるわけでしょうか。
  134. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 民事局といたしましては、それ以上の調査を特にするということはいたしておりません。
  135. 小澤克介

    小澤(克)委員 裁判官弾劾法によりますと、第十五条の三項、最高裁判所は、罷免事由があると思料するときは、訴追委員会に訴追を請求しなければならぬ、こういうふうになっているわけです。そうすると、罷免事由があるかないかわかりませんけれども、何らか端緒を得たならば当然みずから調査をすべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  136. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 罷免事由があるというふうに認識いたしました場合には調査をいたすわけでございますが、罷免事由があるというふうに認めない場合には調査をする必要がないということでございまして、この種の事件はたくさん実はあるわけでございますが、少なくともこの事件に関しましてもそういう趣旨での調査と申しますのは現在のところまだやっておりません。
  137. 小澤克介

    小澤(克)委員 全くナンセンスな答えじゃないですか。調査をしなければ罷免事由があるかないかわからないでしょう。ないから調査しないなんて調査に値しないじゃないですか。もっとまじめに答えてください。
  138. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 調査は、必ずしも御指摘のように最高裁判所が直接にやるもののみが調査というわけではございませんで、先ほど民事局からも答弁がございましたように、ある外形的事実の報告というものは参っておるわけでございまして、それを見たかという趣旨でございますれば私どももそれは見ておるというふうに申し上げられるかと思います。
  139. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうしますと、報告を受けただけで、そういう罷免の事由があったかなかったかについての調査というのは最高裁としては行っていない、こういうことになるわけでしょうか。
  140. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 最高裁判所が独自に例えば証人を呼び出す、あるいは照会するという御趣旨での調査というものは行っておりません。
  141. 小澤克介

    小澤(克)委員 それはなぜでしょうか。弾劾法十五条の三項によれば、罷免の事由があると思料したときは訴追しなければならぬと書いてあるじゃないてすか。そうすると、何らか端緒を得れば罷免の事由があるかないか調査して訴追するかしないか最高裁として決めなければいかぬのじゃないですか。職務怠慢じゃないですか。
  142. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 最初に既にお答え申し上げておりますように、「罷免の事由があると思料するときは」という要件になっておるわけでございまして、その要件に該当するということは現在認めていないということでございます。
  143. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、既に調査を終わったけれども、罷免の事由に当たるそういうことはない、こういう調査結果になった、こういうことになるのですか。
  144. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 先ほど来調査が終わったとか終わってないとかいうことではなくて、現在のところまだ調査はしていないというふうに申し上げておるわけでございまして、これは訴訟のように弁論終結とかなんとかということもあるわけではございませんので、また必要があると認めれば調査するわけでございますが、必要があるというふうには現在のところ認めていないということでございます。
  145. 小澤克介

    小澤(克)委員 全然理解できない。調査はしていない、しかしそういう訴追事由はなかった。どういうことですか。調査しないでどうして結論が出るのですか。そんなわけのわからないことを言わぬでください。
  146. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 結論が出たというふうに申し上げたことはございませんで、現在のところ調査はしていないというふうに申し上げておるわけでございます。
  147. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、少なくともこういうことが新聞に報道されている。最高裁判所といたしまして端緒は得ているわけですね。それにもかかわらず調査をするつもりはない、現在もしていない。これはなぜですか。よくわからないので教えてください。
  148. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 先ほど来何度も申し上げておるわけでございますが、最高裁判所の方が直接調査をする、例えば証人を呼んで調査をするというようなことはいたしていないわけでございますが、報告は来ておるわけでございまして、その報告は一部伝えられております事実関係、いろいろあるわけでございますが、少なくとも私ども受けております報告を見ます限りにおいては、現在のところ弾劾法に規定する要件に該当するとは認められないということでございます。
  149. 小澤克介

    小澤(克)委員 報告は受けているけれども、その報告自体から見てその内容は罷免事由には当たらない、だからこれ以上調査するには及ばない、こういうことですか。
  150. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 何度も同じことの繰り返しになるわけでございますが、現在のところ、報告を受けております限りにおきましてはすぐに調査をする必要があるというふうには認めていないということでございます。
  151. 小澤克介

    小澤(克)委員 ということは、その報告自体、その内容自体が罷免の事由には当たらない、こう判断されるから、だからこれ以上調査はしない、こういうことになるわけでしょうか。
  152. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 何度も繰り返しで恐縮でございますが、現在報告を受けております。その報告の内容を見ます限りにおきましては、弾劾法に規定する要件に該当するとは現在のところ認められないということでございます。
  153. 小澤克介

    小澤(克)委員 どこから報告を受けているのでしょう。
  154. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 報告は大阪地方裁判所から参っております。
  155. 小澤克介

    小澤(克)委員 その報告というのは、どういう範囲内で調査をしたということになっていますか。
  156. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 国家賠償事件が提起されておりますので、それについて必要な限度で調査をお願いしたものが報告として返っており、それを私どもが法務省訟務局の方に通知しておる、そういう次第でございます。
  157. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうしますと、先ほど答弁のありました法務省からの問い合わせに対して、民事事件の認否に必要な限度で問い合わせをした、その報告を受けている、こういうことに尽きるわけですね。そうなんですか。
  158. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
  159. 小澤克介

    小澤(克)委員 裁判官弾劾法の十五条の二項は、高裁長官は、その当該の高裁、それから管轄内の下級裁判所裁判官について罷免事由があるというときは、最高裁に報告しなければならない。また、地方裁判所の所長も同様、一定の報告義務がある、こういうことになっているわけです。だとすれば、その罷免事由があるかないかはともかくとして、そういう容疑といいますか、端緒を得たならば、当然この弾劾法十五条の前提として、みずから調査をして、そして罷免事由があるかないかをみずから判断するというプロセスが当然必要だと思うわけですよ。最高裁についても、端緒を得たならば、当然調査をして罷免の訴追をすべきかどうか判断をしなければならぬ、この条文の解釈上当然そういうことになると思いますが、そういうことは一切していないというのはいかなる理由によるのでしょうか。
  160. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判官弾劾法の十五条によりますと、高等裁判所、地方裁判所それぞれの長がその裁判官につきまして弾劾による罷免の事由があると思料するときには報告をしなければならないという規定がございますことは御指摘のとおりでございますし、最高裁判所も、そういう事由があるというふうに認めました場合には、事由があるということで訴追請求をしなければいけないということになっておるわけでございますが、そういう意味での報告は参っておりませんし、最高裁判所が調査をするということにつきましては、先ほど来繰り返し繰り返しお答え申し上げているとおりでございます。
  161. 小澤克介

    小澤(克)委員 答えていないじゃないですか。なぜ調査をしないのかと聞いているのです。端緒を得ておきながら調査をしないというのは、なぜなのか。もしこれが事実だとしたら、大変なことでしょう。こういうことを放置しておいて、人員を増せば充実するなんと言う。失当じゃないですか。何で調査をしないのか。しないことになっているというのでは答弁にならないのです。答えてください。
  162. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 もう何度も繰り返しで恐縮でございますが、罷免の事由があるというふうに今のところ思料していないからでございます。
  163. 小澤克介

    小澤(克)委員 だから、思料するかしないか、認識の問題でしょう。認識するには、調査しなければ認識できないでしょう。聞いてみたら、法務省からの問い合わせに、本人に対して認否に必要な限度で聞いただけだ。これでどうしてそういう事由がないというふうに認識できるのか。できるわけないでしょう。関係当事者から事情を聞かないと、一方からだけ聞いたってわからないでしょう。そういうことについて調査をするつもりはないのですか。     〔森(清)委員長代理退席、委員長着席〕
  164. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 報告が参っておりますことは先ほど民事局長から申し上げたとおりでございまして、その報告も見ておるわけでございますが、その報告自体は、その内容たる事実が罷免の事由があるということで報告が来ておるものではございませんし、私どももその報告を見まして、罷免の訴追の事由があるというふうに思料していないわけでございますから、調査をしていないということでございます。  先ほど来、端緒ということをおっしゃっておりますが、端緒というものは、それこそ非常に極端に言いますと、もう毎日のようにいろいろあるわけでございますが、何をもって罷免の事由の端緒かということは、やはり当該事案に基づきます一定の判断が伴うわけでございまして、それを端緒と見るかどうかという判断が伴うわけでございまして、ただいまのところは、我々がわかっております範囲では、それは端緒というふうに認めていないわけでございます。
  165. 小澤克介

    小澤(克)委員 端緒ですから、その事実を確定する必要はないのですよ。そういう事実がないだろうかという疑問が生ずれば、これは端緒でしょう。現に二十万人の人が訴追をしようかという動きになっているわけです。新聞でも、二月八日でしたか、大きい新聞に全部報道しています。それでまだ端緒を得ていないというのは、どういうことですか。理解できないですね。ちゃんと答えてください。
  166. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 先ほど来申し上げておりますように、端緒というふうには認めていないということでございます。
  167. 小澤克介

    小澤(克)委員 二十万人の人が訴追の請求をするという事態となっている。三大新聞、ほかにも大々的に報道されている。それにもかかわらず、端緒を得ていないから何にもしない。到底私には納得できません。それで、事件処理の充実のために人員を増してくれ、どういうことなんですか。もしこういう不当労働行為の事案を裁判官が法廷で行った――それは、身分がないというなら一つ問題がありますが、あるかないかはともかくとして、そういうことに関与した、これが事実であれば重大な問題だと思いますよ。それについて調査もしない、端緒も得ていない。全く納得できません。  続いてお尋ねしますが、裁判官分限法によれば、職務上の義務違反、あるいは品位を辱める行為があった場合には、その裁判官に対して監督権を行う裁判所の申し立てによって分限の裁判を開始する、こういうことになりています。そうすると、この懲戒権の行使の前提としても、何らか端緒を得たならば、その監督権を行う裁判所として調査をするのが当然だと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  168. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判所法の方に懲戒事由というのを規定しておるわけでございまして、その懲戒事由に該当するというふうに認めます場合には、それぞれの申し立て裁判所が決まっておりますので、その申し立て裁判所が分限の申し立てをするということになるわけでございますが、現在のところそういう分限の申し立てをしたという報告は受けておりません。
  169. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうじゃなくて、申し立てをするかしないか、まず事実を調査しなければ申し立てすべきか、する必要がないか決められないでしょう。そういう事実調査に着手しているかということを聞いているのです。
  170. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 分限の申し立てをするために調査をしておるという報告は受けておりません。
  171. 小澤克介

    小澤(克)委員 結局、裁判所は何もやってないということじゃないでしょうか。この懲戒権の行使がいわゆる司法行政権に基づく監督と同一なのか、これとは別なのかということについては議論があるようですが、先ほどの回答では別という御見解のようでした。だとすれば、司法行政上の監督権の発動の可能性もあるわけです。その前提としての調査はどうなんでしょうか、着手しているのでしょうか、この大阪地裁の事件に関しまして。
  172. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 司法行政上の監督権は裁判権の行使には影響を及ぼさないようにということになっておりますし、先ほど民事局長も申し上げましたように、具体的事件のいわば訴訟指揮にも関連する事柄でございます。そういうこともございます。現在そういう調査はいたしておりません。
  173. 小澤克介

    小澤(克)委員 かつて裁判官がノイローゼか何かになってスーパーでわずかな万引きをしたというふうな事件が報道されたことがございましたが、この際は裁判所としてはどのように対処されましたでしょうか。
  174. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 私の記憶によりますと、十年くらい、もう少し前のことであるわけでございます。私、職務上直接知り得たわけではございませんが、当時間きましたところでは、これは監督裁判所から分限の申し立てが出まして分限の裁判がなされたという記憶でございます。
  175. 小澤克介

    小澤(克)委員  スーパーで若干の万引きをした、財産権を侵害した、私有財産制秩序に反したということだろうと思いますが、仮にこの大阪地裁の件で報道されていることが事実だとすれば、憲法が私有財産権と並んで保障した労働者の基本的な人権である団結権を侵害した。しかもノイローゼでどこかのスーパーでちょこちょことやったというのではなくて、裁判所の中で、法廷という場で上部団体から抜けるように強要した。管財人候補者のそういう意見を取り次いだ。そして、そういう文書を作成するのに立ち会った。もちろん、その背景には更生手続を開始するかしないかの決定権を持ってそういうことを行っているわけですが、これが事実だとすれば、財産権に対するちゃちな侵害よりももっと重大な侵害だと思うわけです。憲法二十八条に示された労働基本権秩序に対する重大な侵害であり、とても放置できるものではない。  スーパーで何千円か何百円の物を失敬したなどというものに比べてその侵害の程度、態様、極めて重大だと思います。どうしてこれほどの――事実かどうかわかりませんよ。事実だとすればそういう重大な意味を持つわけです。それについて弾劾法十五条による訴追をするかしないか、その調査もしていない。分限法による懲戒をするかしないか、その調査も着手していない。司法監督権の発動の前提としての調査もしていない。どういうことなんですか。何もしないでおいて、民事訴訟が起こったから法務省からの問い合わせに対して認否だけ求めた、こういうことをしておきながら、事件処理の充実のために増員をしてほしい、これは全くナンセンスだと思います。  まず、こういう労働基本権侵害があったのか、あるいはそれを疑わしめるようなことがあったのかどうか、今後裁判所としてきちんと調査をする、そして必要があれば、すでに訴追がなされているからといって重ねて訴追をして一向に構わないわけですから、そういうことをする、少なくともその調査に着手する、法務省から聞かれたからだだ答えるというのではなくて、積極的に調査をする、そういう御意思がないのかどうか聞かせていただきたいと思います。
  176. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 訴訟が起きておりますために法務省から聞かれて、それだけのためにその最小限を報告を聞いておるということではございませんで、それに関連して事件のある程度の全貌というものは聞いておるわけでございます。私どもといたしましても、今後成り行きによりまして、ただいま小澤委員が御指摘のように、端緒というふうに認められるようなそういう域に達しました場合には、と言いますことは、必要があればということになるわけでございますが、必要があれば調査すると、こういうふうに申し上げられようかと思います。
  177. 小澤克介

    小澤(克)委員 端緒があるかどうかまだわからぬ、私はこれは全く不当な言い方だと思います。二十万人の人が罷免事由がありとして訴追の請求をしているわけです。新聞にも報道されております。それを、端緒があるかないかまだわからぬ、そんなことは私には到底納得できません。早速調査に着手すべきである、強く要望いたしまして、時間が来ましたので、質問を終わらせていただきます。
  178. 宮崎茂一

    宮崎委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ――――◇―――――     午後三時三十分開議
  179. 宮崎茂一

    宮崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神崎武法君。
  180. 神崎武法

    ○神崎委員 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案自体につきましては賛成をするものでございますけれども、関連する若干の事項につきましてお尋ねをいたします。  初めに、最高裁判所の機構改革問題につきましてお尋ねをいたします。  昨年二月六日付のウォーレン・バーガー・アメリカ連邦最高裁長官の年次報告によりますと、アメリカにおきましても連邦裁判所が事件負担にいかに対処するかが大きな課題になっていることがわかるのであります。その中でバーガー長官は、最高裁判所以外の連邦裁判所の抱える諸問題につきましては、手続の改善、行政事務担当者の活用を組み合わせることにより、最終的には裁判官の増員によって解決し得るであろう、しかしながら、最高裁判所については根本的な変革が必要であるといたしまして、中間上訴裁判所を創設してはどうかという提案を行っているのであります。さらに、その中で裁判所事務負担、実務の現状、事務管轄について総合的な研究をすることの必要性につきましても触れているのであります。  日米両国は司法制度を異にしておりますので、これを的確に評価するのは難しいだろうと思うわけでございますけれども、バーガー長官のこれらの提案に対します裁判所当局の感想なり評価なりをまずお伺いいたしたいと思います。
  181. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 ただいま御紹介がございましたように、アメリカ連邦最高裁のバーガー長官の年次報告で、アメリカの連邦最高裁における近年の著しい事件増に対処するため、中間上訴裁判所の設置等が提案されているわけでございます。このバーガー長官の御提案の背景には、事件の内容が複雑化していることに加えまして、事件数も、これは訴訟事件でございますが、一九五三年の千四百六十三件から一九八一年、昭和五十六年になりますと、五千三百十一件に激増している、こういう事情があるようでございます。アメリカの連邦最高裁判所が事件増の負担に苦慮されている様子がうかがわれるのでございます。  もちろん、委員指摘のとおり、我が国とアメリカとでは最高裁の組織、司法制度のほか訴訟に対する国民の意識といったものも大いに異なっているわけでございまして、また、我が国最高裁判所では、近年、裁判官方の御努力もございまして、事件処理が比較的順調に推移してございますので、直ちにバーガー長官のような御提言が我が国に当てはまるものとは考えていないわけでございます。しかしながら、複雑高度化する社会を反映いたしまして複雑困難化し、量的にも増加しているアメリカ連邦最高裁の事件を適切迅速に処理するため、いろいろな方策を追求されているバーガー長官の御苦悩と高い御識見に基づく事件増の要因の分析あるいは対策についての思考過程等につきましては、同じく司法権にかかわる者といたしまして示唆を受ける点も多うございますし、敬意を持って拝見さしていただいた次第でございます。
  182. 神崎武法

    ○神崎委員 我が国におきましても、最高裁判所の事件負担の対処策につきましては、これまでにもいろいろな提案がなされてきているのでございます。昭和二十八年には、最高裁判所への上告理由を広げるとともに最高裁判所裁判官を増員する趣旨の日本弁護士連合会案が公表されました。さらに翌二十九年には、最高裁判所裁判官を減員することを趣旨といたします最高裁判所の機構改革についての最高裁判所意見が公表されております。その後、最高裁判所の機構改革を内容とする裁判所法等の一部を改正する法律案が政府から提出されましたけれども、昭和三十三年に廃案になったと承知いたしております。  この最高裁判所の機構改革についての一連の経過につきまして、もう少し詳しく御説明を願いたいと思います。
  183. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 ただいまの昭和二十九年当時の最高裁判所の機構改革関係の経緯を若干申し上げますと、昭和二十六、七年当時、最高裁判所の抱えます未済件数が七千件を超えたという状況があったようであります。さらに、昭和二十四年に施行されました新しい刑訴法及び昭和二十五年に施行されました民事上告特例法がいずれも当時上告理由を制限しておりました。その関係がございまして、当時最高裁判所の機構改革及び上告制度の改革の問題が相当論議されるようになったようでございます。  法務省といたしましても、法制審議会におきまして民事及び刑事の上告理由の範囲について検討をしておったわけでございますが、昭和二十八年の二月からは最高裁判所の機構の問題につきましても法制審議会におきまして調査審議をいたしました。そして、今申し上げました民事上告特例法は昭和二十九年五月末日をもって有効期間が満了する臨時立法でございまして、その期間が満了する当時におきまして、政府としては法制審議会の答申に基づいて、まず民事上告理由の範囲の拡張の措置をとったわけでございます。さらにその後法制審議会では、先ほど来の最高裁判所の機構改革及び刑事の上告理由の範囲の問題につきましてなお調査審議を続行いたしまして、昭和三十一年の五月にその答申を行ったわけであります。  最高裁判所は、その二年ほど前、昭和二十九年の九月、「最高裁判所の機構の改革についての最高裁判所意見」と題する意見を発表いたしました。その内容の概略は、委員指摘のように、最高裁判所そのものの裁判官は九名ないし十一名に減員するとともに、最高裁判所の扱う事件の範囲を憲法違反、判例抵触及び最高裁判所が重要と考える法令の解釈、適用を含むものというふうにいたしまして、反面で一般の法令違反の上告事件につきましては、今申し上げました最高裁判所とは別個のそれを取り扱う裁判機関を設けるべきであるというのが最高裁判所意見の内容でございました。  先ほど申し上げました三十一年の五月にいたしました法制審議会の答申の内容は、ただいま申し上げました最高裁判所意見に沿うもので、それをさらに具体化したような内容でございまして、政府としてはその答申どおりの内容の裁判所法等の一部を改正する法律案というものを昭和三十二年の第二十六回国会に提出いたしました。  その内容の概略は、最高裁判所そのものの裁判官を九人に減員いたしますとともに、最高裁判所はその九人の大法廷をもって憲法違反、判例変更等の重要事件を扱うことにするということ、その反面におきまして、別に三十人の裁判官で構成いたします最高裁判所小法廷という裁判機関を最高裁判所に置くことにいたしました。三人以上の裁判官の合議体で小法廷は審判を行うという内容を持つものでございまして、そのほかに刑事についての上告理由の範囲の拡張を盛っておったわけでございます。ところが、その法律案は二十六回国会から二十八回国会まで継続審議となりましたけれども、昭和三十三年四月二十五日の衆議院の解散によって審議未了のまま廃案となったという経過でございます。この間、この問題の本来の発端となりました最高裁判所の抱えます上告事件の未済件数は漸次減少いたしまして、昭和二十九年以降には四千件内外となりました。昭和四十一年以降は三千件を割るようになったというような経過がございまして、この問題はその後そのままという形になっております。  大体以上の経過でございます。
  184. 神崎武法

    ○神崎委員 確かに機構改革が問題となりました昭和二十九年度と比較いたしますと、民事事件は年間一千件くらい増加しておりますけれども、刑事事件の方はほぼ半減しているように思われるわけでありまして、新受件数を見る限りにおいては、果たして現在そういった最高裁の機構改革が必要かどうかという点については疑問のあるところでありますけれども、事案の内容は当時よりも複雑多様化、専門化しているように思われるのであります。最高裁判所としては、この機構改革の必要性につきまして、現在どういうふうにお考えになっているか、伺わせていただきたいと思います。
  185. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 最高裁における民刑の上告事件の新受件数の減少については、ただいま神崎委員指摘のとおりでございます。  上告の未済事件について見てみますと、昭和二十七年当時は約七千件ございましたが、昭和三十六年ごろからは三千件台、四十一年からは二千件台になりまして、五十年からは千件台を推移しておりまして、五十七年からまた二千件ちょっと超える程度になっております。このようにお抱えになっている未済事件そのものも非常に減少しているわけでございます。  それにいたしましても、事件の複雑困難化という点もございますし、現在、未済が二千件、新受が年間大体三千六百件ございますから、裁判官一人当たりにいたしますと年間二百四十件、月に二十件の処理をしていただかなければならない。御負担はかなりあろうかと思われますけれども、御苦労なさりながらもバーガー長官の言われるような内省のための十分な時間はお持ちいただいているように承知しているわけでございます。  このような状況は最高裁判所の機構改革が問題となった当時と全く異なるわけでございまして、近時、特に上告事件の処理について緊急に改善を要すべしというような声もないようでございまして、現時点におきましては最高裁判所の上告制度ないし最高裁の機構は我が国司法制度の中で一応の定着を見ていると言えるのではないかと考えておりますので、私ども事務当局といたしましては、機構改革問題を再度掘り起こしてみるとか研究してみるという考え方は持っていないわけでございます。
  186. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、臨時司法制度調査会意見書につきましてお尋ねをいたします。  臨時司法制度調査会が昭和三十九年八月二十八日に最終意見書を内閣に提出いたしましてから二十年になりますけれども、この意見書の中では、法曹一元の制度の採否の問題を中心といたしまして、裁判官制度等さまざまな提言がなされているのであります。意見書の内容の今日までの実施状況について、概略を御説明いただきたいと思います。
  187. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 臨時司法制度調査会の意見につきましては、政府といたしましては全体として適切なものというふうに考えております。できる限りその意見書の趣旨に沿って有効適切な措置を講ずることに努めてまいりました。  その従前行っております立法措置ないし財政措置について若干申し上げますと、まず裁判官及び検察官の給与の改善合理化に関する調査会の意見につきましては、その後、判事補及び検事の初任給の増額あるいは報酬及び俸給の特別調整額の本俸繰り入れ、それから簡易裁判所判事及び副検事のための号俸の新設、さらに初任給調整手当の支給の開始等によりまして、調査会の指摘しました意見のうち、当面講ずべき措置として挙げられたものにつきましてはほぼその趣旨を実現しているわけでございます。  さらに、裁判官及び検察官の執務環境の整備改善につきまして、昭和四十年度以降各年度において、裁判所及び法務省の予算といたしましてそれぞれ裁判官研究庁費及び検察官資料費が計上される等の措置が講ぜられております。  さらに、意見書の挙げます法曹人口の増加につきましては、意見書の出ました昭和三十九年当時の司法修習課程の終了者は三百六十五名でございましたが、その後修習終了者は漸憎いたしまして、昭和五十八年には修習終了者が四百八十三名というふうになっております。  調査会の具体的な意見としてお挙げになりましたものの中には、これを実現するために立法措置を必要とするものあるいは関係機関における運用の改善にまつべきもの、さらに関係機関において今後の検討を必要とするもの、そういう区別があると思いますが、これらの意見のうち、政府において立法措置を講じ、あるいは運用の改善を図るべきであるという事項につきましては、今後とも必要に応じて関係各機関の間で意見の調整を図りました上で所要の措置を講じていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  188. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、裁判所の配置などにつきましてお尋ねをいたします。  最近、最高裁判所は、人口の大都市集中化などで実情に合わなくなった全国の簡易裁判所、地、家裁支部の配置見直しを行う方針を決めて、本年二月二十日に法曹三者協議の正式議題として取り上げるよう申し入れだということが伝えられているのでありますけれども、まずこの配置見直しの方針を最高裁判所において決めたのは事実かどうか。事実であれば、その内容について概略御説明いただきたいと思います。
  189. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 過日新聞紙上等におきまして、去る二月二十日、最高裁判所がいわゆる三者協議会において簡易裁判所及び地、家裁支部の適正配置の問題について正式議題として取り上げく検討していただきたいという申し出をした唇の報道がなされましたが、これは事実そのとおりでございます。  地、家裁の支部、簡易裁判所を含めました裁判所の適正配置の問題は、神崎委員御承知のとおり、古くて新しい問題でございます。この問題は、司法制度の基盤にかかわりますし、国民裁判所利用の便益にも関連する問題でございますので、関係各方面の御意見を十分に伺いながら、慎重に検討を進めていかなければならない問題でございます。  そこで、まず法曹三者の間で意見を調整する必要があろうかと考えまして、二月二十日の三者協議会の席上、戦後、裁判所制度が発足しましてから今日まで約四十年でございますけれども、その間における人口動態、交通事情等の社会事情の変化、それに伴いますところの事件数の異動と申しますか大都市と小規模簡裁との間の事件の偏在状況、それからそのような状況下において小規模簡裁あるいは小規模な支部が現在抱えております問題など、現在及び将来の社会事情を踏まえて、裁判所の配置のあり方を見直さなければならないゆえんを御説明申し上げまして、三者協議会でまず議論していただくよう申し入れた次第でございます。  法務省、日弁連におかれましては、私どものこの問題提起をお持ち帰りになりまして、これを三者協議の議題とするかどうか、どのような協議の運び方をすべきかなどにつきまして、それぞれ内部で御検討なさるようでございます。私どもといたしましては、ここ当分の間、三者協議会における議論をまつことにいたしております。
  190. 神崎武法

    ○神崎委員 裁判所としては、大体いつごろをめどにこの配置見直し等を実施したいという意向をお持ちになっているかどうか。
  191. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたとおり、まだ正式に議題として取り上げるかどうかも決まっていない段階でございまして、適正配置のあり方についての方向が見出されるまでにはある程度の時間が必要であろうかと考えております。現時点では、いつごろめどがつくと言えるような段階ではございませんので、私どもといたしましては、慎重に御議論いただきまして、できる限り速やかに解決の方向を見出していただくことを期待していると申し上げるほかないように考えております。
  192. 神崎武法

    ○神崎委員 先ほど申し上げました臨時司法制度調査会意見書の中におきましても、「裁判所の配置等」が取り上げられておりまして、その中を見ますと、「高等裁判所支部の廃止」「地方裁判所家庭裁判所支部の整理統合」「簡易裁判所の名称の変更」「簡易裁判所の整理統合」「簡易裁判所事務移転」などがうたわれているのであります。内容的には、今回伝えられるところの最高裁判所の配置見直しの方針と軌を一にするようにも思われなくはないのでありますけれども、果たしてこの意見書で言われているところと今回の裁判所のお考えと同じなのかどうか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  193. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 臨時司法制度調査会が、公的な機関としまして二年にわたる慎重な御審議の結果公表された御意見の中に、神崎委員指摘のような整理統合の問題、事務移転等の問題が含まれているわけでございます。これらの御意見は、委員の方々の英知の結集あるいは所産でございまして、いろいろな見方もあろうかとは存じますが、一つの客観的なすぐれた御意見でございまして、裁判所としても十分にこれを尊重すべきであると考えていたわけでございます。  しかしながら、今回私どもがいたしております問題提起は、この臨司の御意見とは別個に、戦後の裁判所制度発足以来約四十年、臨司の意見書発表以来もう既に二十年近く経過しているわけでございまして、その間における人口動態あるいは交通事情の変化というものはまことに著しいものがございますのに、裁判所の配置自体は四十年前あるいは二十年前と全く変わっていない。そういうところから、事件の偏在現象であるとか、いろいろな問題が生じてきているわけでございまして、そのことによって裁判所を御利用いただく国民の方々に御迷惑をおかけしている事態が果たしてないであろうか。裁判所の配置を現在及び予想できる将来の社会事情にマッチするように見直しをして、司法全体の充実を図るのが国民の負託にこたえるゆえんではないと考えまして、問題提起をしたわけでございます。  臨司意見書が指摘をしております問題状況がますます拡大深刻化していることを背景にいたしましての問題提起でございますので、その意味では臨司の提言と全く無関係のものとは言い切れないかもしれませんけれども、我々といたしましては、臨司の提言をそのまま具体化しようと考えているわけではございません。基本的には、三者協議会あるいは法制審議会等の御審議を経て改めて方向づけがなされることを期待しているわけでございます。  その結論と臨司の提言をどのように評価するかの問題はまた別にあろうかとは思いますけれども、私どもといたしましては、例えば、臨司の提言で御指摘のございましたような高裁支部の廃止あるいは乙号支部の原則的廃止あるいは簡裁の名称変更などは考えておりませんし、現在の簡易裁判所の性格あるいは理念というようなものを変えるつもりも全くないわけでございます。  以上でございます。
  194. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、裁判官の員数の増員計画についてお伺いをいたします。  過去十年間の裁判官の員数の増員の内訳を見ますと、昭和四十九年度が判事補簡裁判事、五十年度が簡裁判事、五十一年度から五十三年度は判事補、五十四年度から本年度は判事というふうになっております。これまでに一貫した裁判官の員数の増員計画をもって増員してきているのかどうか。さらに、将来の増員計画はどうなっているのか、こういった点についてお伺いをいたしたいと思います。
  195. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 ここ十年の増員の傾向につきましては、神崎委員指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、裁判官の増員につきましては、一方では事件の動向、それから他方では充員の可能性などを考慮しながら行ってきているところでございます。  御指摘判事補簡裁判事について御説明申しますと、御承知のように、臨時司法制度調査会の意見書以来、国会等でも裁判官、特にその中でも、中核となる判事の増員の必要性が指摘されたわけでございまして、その後の事件の動向等もございまして、最高裁といたしましては、判事の増員が必要であると考えてまいりましたが、御承知のとおり、判事任用するには、判事補等一定の職に十年以上在職したことが要件とされている関係もございまして、直ちに判事を増員できませんので、昭和四十五年以降ほぼ十年にわたって判事補の増員に努めてきたわけでございます。  このようにして養成してまいりました判事補が今日次第に判事資格を取得する時期を迎えるようになりまして充員のめども立ってまいりましたので、最近では判事の増員を図ってきているわけでございます。  簡裁判事について申しますと、昭和四十年半ばごろから、交通事件を中心とした著しい事件の増加等がございましたため、毎年のように増員を図ってきたわけでございますが、その後、交通事件等も比較的鎮静化いたしまして、簡裁判事全体としての層が厚くなってきたという点もございまして、かたがた、年間における適正な補充数という面も考慮いたしまして、その後は増員措置をとっていないわけでございます。  今後の見通しといたしましては、事件動向等も考慮する必要がございますが、充員の可能性という面からいたしますと、なお判事の増員を図っていく必要があろうかと考えております。  こうした二つの大きな要素がございますために、裁判所としては、基本的には、迅速適正な裁判の実現のため増員の努力を続けていく方針ではございますけれども、年々増員する裁判官の種類、数等につきましては、現象的にはばらつきが生ずることは避けがたい面もあるわけでございます。
  196. 神崎武法

    ○神崎委員 裁判官の適正な員数につきましては、いろいろな角度から裁判所におかれましても御検討なされていると思いますけれども、一つの検討の仕方といたしましては、諸外国裁判官の員数との比較はどうなっているか、主要国の裁判官の員数、人口比、一人当たりの受理件数等を比較検討するのも必要であろう、このように考えるわけでございます。  こういった観点から裁判官の適正な員数について検討されたことがあるのかどうか、あるとすれば、その数字の上での比較につきまして簡単に御説明をいただきたいと思います。  さらに、結論的に、主要国と比較して我が国裁判官の員数が多いのか少ないのか、こういった点につきましても御説明をいただきたいと思います。
  197. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 外国との比較におきまして裁判官の数を論ずるということは、国民性あるいは法制度、訴訟手続等に相違がございますし、それに伴って事件数あるいは事件内容といったものにも大きな相違があるわけでございます。したがいまして、単純に比較することは極めて困難でございまして、裁判所といたしましては、そのような観点から、あるべき裁判官数についての検討をしたことはございません。  しかしながら、裁判官一人当たりの国民数を単純に比較してみるというようなことはやっているわけでございまして、例えば日本の場合でございますと、国民四万三千人に一人という割合でございます。アメリカの連邦裁判所裁判官国民三十四万三千五百人ぐらいに一人の割合、それから州は、平均してみますとざっと一万人に一人の割合で裁判官が配置されておる。イギリスの場合は、御承知のように法曹資格のない裁判官なんかもいらっしゃる関係がございまして、大体二千人に一人ぐらいの割合で配置されておる。そういう正規の法曹資格のない裁判官も含めての関係でございます。西ドイツの場合ですと、ざっと三千七百人に一人の割合というようになっているようでございます。したがいまして、我が国裁判官の数は、対人口比で申しますと、アメリカ、イギリス、西ドイツに比べて少ないと思われるわけでございます。  しかし、先ほども申し上げましたように、例えば外国では紛争解決の方法として訴訟制度が利用されることが多いとか、あるいは我が国のように調停制度が整備されていない面もあるとか、あるいは先ほど御指摘のございましたバーガー長官の年次報告にも指摘されておりますように、歴史的に法的手段に訴えることを好むかどうかといったような国民性あるいは法制度、訴訟手続の構造などの違いもございますので、今申しました数字のみをもってしまして我が国裁判官の数の多寡を論ずることはやはり難しいのではないかというように考えております。
  198. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、給与制度の改善につきましてお尋ねをいたします。  法務省司法法制調査部季報でございますJアンドR、一九八〇年十一月号にこのような記事が紹介されているわけでございます。アメリカの連邦議会が、連邦裁判官俸給のインフレ目減りにつきまして、政府職員俸給の生計費調整法に基づく調整を行わなかったことが連邦憲法三条の裁判官俸給の在任中における減額禁止条項に違反するといたしまして、何人もの連邦裁判官が違憲訴訟を提起し、既に下級裁判所の中においてはこの違憲の主張を容認する判断を下すものもあらわれているということであります。さらに連邦最高裁判所が一九八〇年十月六日に事件審理を開始した七十五件の事件中に、連邦裁判官俸給のいわゆるインフレ目減りについての違憲訴訟が含まれているということが記載されているのであります。  その後の訴訟の結果につきましては承知いたしておりませんけれども、裁判官、検察官の俸給の改善ということについては、いずれの国でも大変重要な事柄になっており、まかり間違うと憲法問題まで発展しかねないものであることがわかるのであります。  我が国におきましても、先ほど申し上げました臨時司法制度調査会意見書の中で、裁判官、検察官の給与制度の改善合理化がうたわれているわけでございます。そして、「裁判官の給与は、その職務と責任の見地から考えるほか、司法の独立を担保するという目的からもあわせ考慮されるべきものであり、その意味においては、裁判官の給与制度は、司法制度の一環をなすものである。」と指摘されているところであります。  私も、みずからの検察官としての経験に徴しましても、やはり裁判官、検察官の給与制度は現行では十分でないと考えるのであります。裁判官や検察官は、私の経験では、どうも武士は食わねど高ようじの傾向があるようでありまして、いろいろタクシーの費用や必要な書籍を購入したり、本来ならば役所に請求ができるようなそういった費用につきましても自分でかぶってしまう、なかなか請求しないというのが一般でございます。  昨年末、秦野前法務大臣は、裁判官、検察官のいわゆる司法官の処遇につきまして、一般行政職よりも現行以上に優遇した独自の給与体系をつくる意向を固めて事務当局に具体策の検討を指示した、こういった内容が伝えられておりますけれども、それは事実かどうか、事実とすれば、事務当局としては現在どのような検討をしているのかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  199. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 裁判官、検察官の給与体系のあり方につきましては、私どもとしてもかねてから検討しているところでございまして、委員指摘のように、その検討の仕方につきましては、秦野前大臣からも折に触れていろいろ御示唆もいただいたところでございます。ただしかし、特に具体的に、それに基づいて現在委員会というようなものを設けてやりておるということではございません。  しかし、現在の裁判官及び検察官の給与制度と申しますものは、その給与の体系の仕組みそのものにおきまして、裁判官あるいは検察官の職務の特殊性を相当程度反映しておることも間違いないと思います。それから、その給与の水準の面につきまして、やはり一般行政官に対比いたしましてある程度の格差を保ちながら、生計費あるいは一般賃金事情の変動による一般行政官の給与改定に応じまして、いわゆる対応金額スライド方式によってその給与の改善を行っているわけでございます。  こういうような体系そのもののあり方が果たして一番いいものであるかということにつきましては、委員指摘のようにいろいろ問題なおあると思いますし、私どもも、根本的な制度のあり方についても、これからも検討してまいりたいと思っております。  ただしかし、御存じのように我が国における裁判官、検察官の任用制度のあり方が、いわゆるキャリアシステムをとっております。そういうことでございますと、やはり国家公務員全体の任用制度でございますとかあるいは給与体系というものとの関係を相当考えないで給与体系というものを決めてまいるわけにはいかないという面がございます。そういう面からいたしますと、現在の給与体系の根本の仕組みそのものは相当の合理性を有しているという面があると思っておりますので、現在、その根本的な体系のあり方そのものについて抜本的な検討を加えることがいいかどうかということについては、なお非常に慎重な検討をすべきではないかというふうに考えております。  ただ、先ほど来申し上げましたように、この問題は私ども常時検討させていただいているわけでございます。
  200. 神崎武法

    ○神崎委員 大臣にお尋ねしたいわけでございますけれども、大臣にも裁判官、検察官の給与制度の改善のために大いに頑張っていただきたいと思うわけでありますが、大臣のこの点につきましての考え方なり、御決意のほどを伺いたいと思います。
  201. 住栄作

    ○住国務大臣 今も御説明ございましたように、裁判官の報酬の問題、これは憲法に規定しております。ですから、裁判官の給与は、憲法で定められた大変大事な権限を円滑にやっていく、こういう重大な職責があるわけでございますから、その地位にふさわしい報酬というものを考えていかなければならない。検察官もまた、準司法的な機能を営むものでございますし、それからまた原則として、その採用の方法ですね、試験だとか、あるいは養成方法は同一のシステムをとっておる、そういう意味で、裁判官と検察官の給与はパラレルに考えていくべきものじゃないかな、こう思っております。  それと同時に、現行の仕組みを見ますと、例えば最高裁長官あるいは検事総長の給与というものは、総理大臣だとか国会の議長とか、そういう頭がもう決まってしまっておるというようなこともございます。その枠を出られるのか出られないのかということも大変慎重に考えなければならない問題でございますし、そういう枠の中でどのように考えていくのか、特に一般公務員のようによるべき基準のようなものも示されてないわけでございます。今も御説明申し上げましたように、そういうことを何によってやるのだということは常に考えて、裁判官なり検察官が本当に職責を全うしていくための正しい給与、報酬というものを考えていくのが我々のまた責務じゃなかろうかな、こういうように考えておるわけでございまして、せっかく努力をしてまいりたいと思っております。
  202. 神崎武法

    ○神崎委員 大臣にぜひ頑張っていただきたいと思います。  続きまして、判決書についてお伺いいたしたいと思います。  文芸春秋の本年三月号に秦野前法相の対談が掲載されておりますけれども、その中で秦野前法相は、ロッキード事件の判決書が三カ月たってもでき上がっていなかったことに対しまして疑問を呈して、「弁護団は控訴準備が出来ない。」「そういう重大な憲法上の裁判を受ける権利というものに対して、裁判所がそれを守っていない」と批判しているのであります。  まずお伺いしたいのは、実務上、刑事事件の判決の宣告の際には判決書の原稿ができていて、判決の宣告後印刷に付されているように聞いておりますけれども、判決書作成の一般的な過程とその理由について簡単に御説明をいただきたいと思います。
  203. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 刑事事件の判決の宣告でございますが、これは、上告審の場合には原本に基づいて言い渡しをしておりますが、下級裁判所に関します限りは、判決の草稿で言い渡しをしているというのが実務上の慣行であろうというふうに思われます。  その理由といたしましては、刑事事件の場合には、民事訴訟法の百八十九条一項のように「判決原本ニ基キ」という文言がございませんし、また刑事訴訟規則二百十九条には、公判調書に判決主文や理由の要旨を記載させてそれを判決書にかえるといういわゆる調書判決の規定がございます。そういうようなことから、刑事事件の場合には判決原本に基づかないで言い渡しができるのだというふうに一般的に解されているわけでございます。これは恐らく刑事事件におきましては、判決を迅速に言い渡すという要請から来ているものと思われますが、実務でこれを原本に基づかないで草稿によって言い渡しをしているという原因は、裁判の秘密の保持という点が重要な点ではないかというふうに考えます。すなわち、タイプをしたりあるいは印刷に出すというようなことになりますと、裁判官以外の方々の手にゆだねることになるわけでございまして、秘密の保持ということについては格段の配慮が必要であるというようなことから、言い渡し当日まで裁判官が草稿を持っていて、それで法廷で言い渡すということにしているのだというふうに思われます。  ところで、判決書の作成の一般的な過程ということでございますが、これはいろいろな場合がございます。  例えば審理を終結して直ちにその場で言い渡す、いわゆる即決のような場合、こういう場合には主文を裁判官が紙に書いて、あとは事実というようなものは起訴状に書かれている事実を鉛筆で手直しをする、あるいは適条も簡単なものを紙の端に書いておいて、そういうものを読み上げるというようなものもございますし、あるいは弁論の終結から判決の言い渡しまである程度余裕がありますような場合には、裁判官が判決の草稿を準備する。それで、合議の場合でありますと主任の裁判官が判決の草稿をつくって、それをもとにまた合議を重ねて訂正をしたり、あるいは裁判長が加筆、訂正をする、それで、確定稿ができたものに基づいて判決の宣告をする、そして宣告が終わってからそれをタイプなり印刷に付す、こういうのが一般的であろうかと思います。
  204. 神崎武法

    ○神崎委員 秦野前法務大臣の先ほど申し上げました裁判所批判に対しまして、裁判所としてどういうふうにお考えになっているか、お伺いいたしたいと思います。
  205. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 この対談の中にございます「まさかマスコミや世の中の様子を見て判決書を書いてるんじゃないと思うけど」というようなお言葉もございますが、要するに遅いということを御批判なさっていたんだろうというふうに思います。  確かに今回の丸紅ルートの判決は、でき上がるまでに百二十三日を要しているわけでございます。ただ、この判決文は全部で六百六十ページ、約五十四万字に及ぶ長文のものでございます。先ほども申しましたように、裁判官は、判決を宣告するときには草稿に基づいて判決を宣告するわけでございますが、その後、本件の場合には印刷に付したわけでございます。印刷に付しましたのは、これは非常に長文でありますために、タイプで打つのは大変であるということで印刷にしたわけでございますが、印刷に付する場合には、直ちに印刷所を連れてきてやるというわけにはいきませんで、これにはそれなりの予算を伴うことでございますので、手続がございます。これは印刷に付するという経理上の問題もございまして、そういう決裁を受けまして、それから登録の業者を呼び出しまして、それでこれはどういう大きさで、どういうふうなことで、どういう紙質のもので、何部印刷するというようなことを説明いたしました上で、入札をさせて印刷業者を決める、それで印刷に回すわけでございますが、それから何回も校正を重ねるということでございまして、印刷に付する場合にはどうしても百日あるいはそれを超えるような日数はかかるということのようでございます。  ちなみにほかの場合を見てみますと、例えばいわゆるロッキード事件の全日空の関係の事件でございますが、いわゆる政治家グループと言われるものでございますが、これは四百三十ページでございまして、活字はかなり大きいものでございますが、これが百十一日かかっております。それから、全日空の会社関係のもの、これは三百五十ページぐらいですが、百三十三日かかっているわけでございます。それから、最近無罪になりました、例の土田邸事件という判決がございますが、これが六百六十ページでございまして、今度の判決とほぼ同じようなものでございますが、これが九十五日かかっている。それからもう一つ日石・土田関係の事件でございますが、これが百三十日かかっているということでございまして、こういうものと比較しましても格別時間がかかっているわけではない、それから、草稿に基づいて判決の原本の作成がおくれているのは、有罪の場合だけに限らず、今申し上げましたような無罪になったようなものもそうなっているということでございます。
  206. 神崎武法

    ○神崎委員 以上で終わります。
  207. 宮崎茂一

    宮崎委員長 野間友一君。
  208. 野間友一

    ○野間委員 定員法の一部改正法案についてお尋ねをしたいと思いますが、今回判事の増員が九名ということですね。これはどういう根拠で九名というのが出てきたのか、これでいいのかどうか、その根拠をひとつぜひお示しいただきたいと思います。
  209. 菊池信男

    菊池(信)政府委員 判事の増員数九人ということの内容につきましては、地方裁判所における特殊損害賠償事件等の処理、その関係で四人、それから同じく地方裁判所におきます民事執行法に基づく執行事件の処理の関係で二人、それから家庭裁判所における少年一般保護事件の審理の関係、その充実の関係で三人という内訳になっております。
  210. 野間友一

    ○野間委員 その数字はどこから出てくるのかよくわからぬわけですけれども、最高裁判所はこれでいいのでしょうか。
  211. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 判事の増員を図ります場合には、判事の給源と申しますか補給源、これは野間委員御承知のとおり主として判事補でありまして、判事補になりまして十年をたちました場合に判事任命資格がございます。それから、司法試験に合格しまして後、検察官あるいは弁護士になられて十年のキャリアのある方、これらの方々が判事の給源になるわけでございます。したがいまして、増員の枠を決めます場合には、事件の係属状況をもちろん片方で見、片方ではまた判事の充員の可能性というものも考えながら増員数を確定するわけでございまして、今回お願いいたしておりますのも、判事の充員の可能性を見まして、かつまた事件の係属状況等を考えて、この九名という数に落ちつけたわけでございます。
  212. 野間友一

    ○野間委員 いや、その中身がようわからぬので聞いておるので、これで十分かどうかということですね。私が言いたいのは、法務省から資料をもらっておるわけですが、高裁はともかくとして、地裁の場合には、確かにおっしゃるようにいろいろな執行関係あるいは特殊損害賠償、こういうのがあるわけです。これに比べて、家裁の場合には今事件が随分ふえていますね。これは家庭についても、少年事件についてもふえています。それから簡裁が事物管轄の変更でこれまた非常にふえていますね。ですから、判事九名というその割り振りについて今お話がありましたけれども、これだけではとても足りない。まして今地方裁判所のこの二つの事件の処理についての増員が六ですね。こういうことからしたら、特に家庭裁判所あるいは簡易裁判所判事の増員、あるいはこれに伴う職員の増加、これが当然あってしかるべきだ、私はこういうふうに思うのですね。最高裁判所は大変遠慮して物を言っておられるのかどうかわかりませんけれども、そういう点からしても、私はこの九名というのは非常に少ないと言わざるを得ないと思うのですが、いかがですか。
  213. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、例えば家庭裁判所の少年一般保護事件、この件数はふえてまいっております。その関係で、関係資料の十七ページにございますように、家庭裁判所における少年一般保護事件処理の充実強化のために判事三人の増員はお願いしているわけでございます。  それから、簡易裁判所の民事訴訟事件、調停事件につきましても非常にふえていることは御指摘のとおりでございます。  ただ、昭和五十六年に簡易裁判所の民事訴訟事件新受件数が約九万件でございましたのが、民事事物管轄が改定されました昭和五十七年には約十二万九千件になっているわけでございます。これは特に大都市あるいは周辺の簡裁におきましてその増加が顕著でございます。これらの簡裁の民事訴訟事件の多くは、これも委員御承知のとおり、比較的処理の容易な金銭を目的とするクレジット関係事件、それが多うございます。各庁におかれましては、訴状あるいは判決書の定型化を図るなど事務処理の合理化を図る工夫をなさっておられまして、事件数であらわれているとおりの負担増となっているわけではございません。  調停事件につきましても、昭和五十七年度の簡易裁判所における調停事件は七万五千件近くになっております。五十六年度に比べますと約三千七百件増加しているわけでございます。これもやはり増加が著しいのは大都市あるいはその周辺の簡易裁判所であるわけでございます。  それで、この調停事件につきましては、昭和四十九年の民事調停法の改正以後、事件処理の充実強化を図るために毎年増員措置をお願いしてきたわけでございまして、五十八年までに事務官百八人の増員を図ってきたところでございます。最近はこの調停の中にいわゆるサラ金関係の事件が非常に多うございます。調停委員の選任手続を初め期日の呼び出し等の手続事務が増加しているため、昭和五十九年度も事務官六人の増員をお願いしているわけでございますが、民事訴訟事件あるいは調停事件につきまして、今申しましたように大都市の簡裁の方に事件が集中しており、その周辺の簡裁では比較的ゆとりのある庁もあるわけでございまして、その比較的ゆとりのある庁から忙しい庁の方に人員を持ってまいりまして、それで事件処理に遺憾なきを期したい、こういうふうに考えているわけでございます。そういう次第で特に簡裁判事の増員は今回はお願いしなかったというわけでございます。
  214. 野間友一

    ○野間委員 えらい遠慮しいしい要求されておるわけですね。前の経過からすると、かなり数をたくさん要求して、そしてそれがだんだん削られていくという経過。簡裁の判事だって、ここずっと長い間要求していないわけですね。事件がふえております。今いろいろ言われましたけれども、私はあとまた具体的な事実に基づいてお尋ねしたいと思います。  同じ資料に関して質問をしたいと思います。  十八ページの資料ですが、「下級裁判所裁判官の定員・現在員等内訳」、ここでは判事判事補簡裁判事というのがありますが、この中で地、家裁の区分けが書いてないわけですね。それから、簡易裁判所判事との兼任もあると思うのですが、これまたその内訳。今申し上げたようなことを詳細に一覧表にでもして当委員会に出してくれますかな。
  215. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 その点については検討させていただきたいと思います。
  216. 野間友一

    ○野間委員 検討というのは、これは検討して出すということですか、出さぬということですか。
  217. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 まず最初に出せるかどうかを検討させていただきたいと思います。
  218. 野間友一

    ○野間委員 ここで押し問答しておってもしょうがない。出せないという理由があるのですか。これじゃ不十分でしょう。つまり、家庭と地方と全然区分けしていないし、簡判兼任があるでしょう、全然わかりませんよ。だから事の詳細、この定員法による増加が適正かどうか、それとの関係で聞くわけですから。出せるでしょう。
  219. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 予算概算要求の予定経費要求書上これが一本になっておるものでございますから、それで一本の形でこれまで関係資料をつくらせていただいていたわけでございます。  今御指摘の点につきましては、よく検討させていただきまして、出せるようでございましたら出すようにいたします。
  220. 野間友一

    ○野間委員 ぜひ出してください。出さなかったらまたさらに追及したいと思います。  次に、十九ページに関連してお伺いしたいと思います。  ここでは「裁判官以外の裁判所職員の新旧定員内訳」というのがありますね。ここで裁判官以外の裁判所職員という表現が使ってあります。これは裁判所法で、そういう所法があるわけですが、ここでお聞きしたいのは、裁判所職員裁判官以外の職員には一体どんなものがあるのか。ここでは幾つか並べでありますが、これでは不十分だと思いますが、いかがですか。
  221. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 裁判所職員の中には、ここに記載してございますほか、その他のところに一括しているわけなのでございますけれども、自動車運転手であるとか電話交換手であるとか汽缶士であるとか、そういう職種の方々もおられます。
  222. 野間友一

    ○野間委員 裁判所職員裁判官以外の職員、今、運転手等とお話がありましたけれども、この裁判所法の第五十三条以下にありますね。ここでは最高裁判所事務総長あるいは秘書官等々があります。ところが、この表にはそういう法律に基づいた官職名、そういう順番ではこれらの内訳が記載されていないわけですね。大体これは最高裁判所が答えているけれども、法務省がつくった資料ですね。これはどちらでもいいとして、私が聞きたいのは、そういうことで非常にラフな分け方しかしていない。だから、裁判所法に基づく区分けに従ってこの表をぜひつくるべきだという点からお聞きしておるわけです。
  223. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 裁判所法に基づきまして、秘書官、それから裁判所調査官裁判所事務官裁判所書記官、速記官、技官、こういうふうな順になっているわけでございますが、増員あるいは減員に直接関係のあるものを主として選んで表をつくっております関係上、このような表になっているわけでございます。
  224. 野間友一

    ○野間委員 これは不十分だから聞いておるわけです。  それじゃ、順次聞いていきますが、裁判官裁判官以外の職員に充てている者、これはどんなものがあり、その数はどうなっていますか。
  225. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判官資格を持っております者で実際は最高裁判所事務総局等で本来事務官がやるような仕事をしておる者という御趣旨の質問であろうかと思いますが、その数は最高裁判所事務総局では四十五名、それから高等裁判所事務局長というのがございます。高等裁判所は八つございますが、事務局長は裁判官から充てられておるということでございます。そのほかに裁判所調査官、これは最高裁判所におります裁判所調査官でございますが、それから司法研修所教官というようなものが六十数名おるというのが今の御質問のお答えということになろうかと思います。
  226. 野間友一

    ○野間委員 裁判所法に基づきますと、この附則の③で、裁判官において、当分の間、特に必要があれば司法研修所教官あるいは裁判所書記官研修所教官、それから家庭裁判所調査官研修所教官、または裁判所調査官になることができる、こういうのがありますね。この点で私が聞いておるわけで、今言われたのはこの附則に関して言われたのか、あるいはこの法以外に現実裁判官裁判官以外の職員に充てておるというのはたくさんあると思うのですね。これはどうなっているのですか。
  227. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 先ほどは今の御質問の両方あわせてお答えしたわけでございますが、後の方で申しました裁判所調査官ですとか研修所の教官は今の裁判所法の附則に規定してあるものでございますが、それ以外の、最高裁判所事務総局におります者、それから高等裁判所事務局長等につきましては最高裁判所の規則、司法行政上の職務に関する規則がございまして、その規則に基づきまして裁判官を充て得る職というものを裁判官会議で決定しておるわけでございますが、そういう者が事務総局、高裁事務局長等に五十数名おるという意味で一括してお答えしたわけでございます。
  228. 野間友一

    ○野間委員 どうもこの点が私よくわからぬのですが、附則の③、ここではいわゆる裁判官で充てる者として特定されていますね。これは法律もあったわけですな。ここでは司法研修所の教官等等が書かれておるわけですけれども、これはまさに例外なので、こういう官職は普通は裁判官以外の者が従事して、そして特にこの附則があって、この附則によって「当分の間、特に必要があるとき」こういう二重の縛りで特に例外的にこれを認めておるということになっていますね。これは「当分の間、特に必要がある」というようなことでずっと今まできていますね。全然変更ありませんね。数はふえておるのですか、減っておるのですか。
  229. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判所調査官につきましてはそれほどの変動はないかと思いますが、研修所の教官につきましては、自分のことを申し上げて恐縮でございますが、私どものころは五クラスしかございませんでしたために裁判官の教官は十人でよかったわけでございますが、現存は十クラスあるというようなことからふえておるというような要素がございます。
  230. 野間友一

    ○野間委員 いや「当分の間、特に必要があるとき」、これが常態化して、原則と例外が入れかわっておるわけでしょう、実態的には。違いますか。
  231. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判所調査官あるいは研修所教官、それから事務総局におる者もそうでございますが、過去におきましては実は裁判官ではなくて、直接裁判官を免じましてそれぞれの官職に新たに任命するというふうなことが行われた時期も一時あったわけでございますが、これは率直に申しまして、野間委員も御承知かと思いますが、裁判官の報酬体系、それから事務官等の報酬体系が違うというふうなこともございまして、例えば戦前の裁判所構成法時代でございますと、官吏俸給令との関係等ではそういう問題はなかったわけでございますが、戦後そういう俸給体系が別になりました関係上、しかも内容的に申しますと、例えば修習生を教えます教官は裁判官資格を持った者をやはり充てないと、ほかの教官は、弁護士さんの資格を持っている、検事の資格を持っている人がございますが、裁判所について全然素人を充てるというわけにもいきません。  そういう資格を持った者を充てる必要がありますことと、俸給体系がそういうふうに別になって、そういう者から事務官あるいは教官等に充てることが非常に困難であるというふうな両方の事情からこういう規定が設けられたのではないかと思っておりますが、その事態そのものはその後変更がないわけでございまして、確かに仰せのとおり附則に書いてあることで一時的なことではございますが、そういうふうな問題点がございますために現在もそういう状況が続いておるということに相なるわけでございます。
  232. 野間友一

    ○野間委員 異常事態がずっと続いておるわけですね。これとの関係で、先ほど言われた事務総長以下、これは裁判所法上全く法文がないのに裁判官でもって充てておるものがありますね。これは事務総長もそうだと思いますし、それから局長もそうですね。あるいは課長、事務次長、あるいは高裁の事務局長、いろいろあると思うのです。だから、法律でこのように附則で、いわゆる充て判というのですか、こういうものがあるわけですが、これ以外にもかなりあるわけですね。  先ほど言われた司法行政上の職務に関する規則、これでやっているのだというふうに言われますけれども、しかし、法律がないのに、これでやっておるというのはおかしいと思うのです。特にこの五十九条ですね。裁判所事務局長、これなどを見ますと「裁判所事務官の中から、最高裁判所が、これを補する。ということで、裁判所事務官の中から補する、こうなっておりますね。ところが、現実には判事ないしは裁判官が高裁の事務局長になっておると私は思います。これも五十九条違反じゃないかと思いますが、いかがですか。
  233. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 実は、裁判所法附則に裁判所調査官あるいは研修所教官等につきましてそういう特別の規定を置きましたのは、ある意味での特殊な官職ということでございまして、それを裁判官で充てるということについてはやはり特別の規定が必要であろう、しかし、一般裁判所事務官につきましては、事務官というのはいろいろあるわけでございますから、その事務官の仕事をします者をほかの、例えば裁判官から充てるということについて法律上いけないというふうには規定していない。裁判所調査官、研修所教官につきましてはその点が疑義があるけれども裁判所事務官の場合についてはそういう疑義はない。憲法で規定されておりますように法律規定がない以上は最高裁判所に規則制定権があるわけでございますから、その規則で制定することも差し支えがない、そういう考え方から規則でもって賄うようになったというふうに理解しております。  なお、例えば最高裁判所事務総長につきましては、これは実は裁判官資格はもともと持っておりますけれども裁判官から充てておりませんで、これは一官一職でございますので、最高裁判所事務総長というふうに、裁判官はいわばやめまして事務総長を決めておる、そういう形になっております。
  234. 野間友一

    ○野間委員 今言われた高裁の事務局長ですけれども、これは裁判所法では、今読みましたように、「裁判所事務官の中から、最高裁判所が、これを補する。」こうなっていますよね。だから、法律でこうなりながら実際には裁判官でもって事務局長に充てておる。だから、法律でないものを規則で充てるというのはおかしいと思うのです。これは確かに最高裁判所の解説書を見ましたら、裁判官以外の職員からという場合には事務官に限る、しかし裁判官でもって充ててはならぬという理屈ではないんだというようなことで、これはまさにへ理屈だと思いますが、そんなことを言っていますね。  私、何でこんなことを聞くかといいますと、例えば定数の問題で関連して聞きますが、今私が言いましたいわゆる規則に基づく裁判官を充てたそういう人たち、あるいは附則の③、これで充てた人たち、これが一体、この判事判事補と、それから裁判官以外の裁判所職員、このどこにこれらが統計上出ておるのか、このあたりがよくわからないものですからお聞きしたいと思います。
  235. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 先ほど来申し上げております裁判所調査官、研修所教官、総局におります者等は、それぞれの官職別に判事はこの判事の中、判事補はこの十八ページの資料の中、この数字の中に入っておるわけでございます。
  236. 野間友一

    ○野間委員 そうでしょう。そうすると、実際には、普通見れば、この十八ページのところですが、判事判事補といえば現実裁判の実務についた者というふうに普通は受けとめるわけですよ。今のあなたのお話によりますと、いわゆる充て判、この場合も判事判事補の中に数としては入っておる、定数の中に入っておるということですか。     〔委員長退席、森(清)委員長代理着席〕
  237. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 仰せのとおりでございます。
  238. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、それはおかしいわけで、そういう人たちは仮に判事判事補、つまり裁判官資格があったとしても、身分があったとしても、この裁判所法では「裁判官以外の裁判所職員」、ここに当たるわけですね。だから、むしろ十九ページの裁判官以外のその他の職員、この中に記載しなければ、定数があったところで、実際裁判実務とは全然別の仕事をしておるわけでしょう。だから、なるほど数があるような感じがしますけれども、今あなたも数字を言われましたが、かなりの司法行政事務に従事する裁判官がおるわけで、合計したらあなたのところでもらった表でも百二十一名おるわけですね。これは現に裁判実務をやってないわけでしょう。これをこの中に入れておるわけでしょうが。数が足らぬと言いながらおかしいじゃありませんか。
  239. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 確かにこの十八ページの表に入っておるわけでございますが、これはちょっとへ理屈のようになるわけでございますが、裁判事務に従事するというふうに必ずしも言っておるわけではございませんが、全体としてこれだけの裁判官がおり、その中で今仰せになりました裁判事務に従事していない裁判官もこの中に含まれておる、そういうことになるわけでございます。
  240. 野間友一

    ○野間委員 それならそれで正確に書いておきなさいよ。今、定員をどうするかという審議、これは法案がそうでしょう。この趣旨の中でも、数をふやさなければならぬ、その理由は何かということを書いてありますね。「事件の適正迅速な処理を図るため、判事の定員を改める必要がある。」で、中身をいろいろ説明されていますね。それで適正かどうかという点が問題になっておるわけですから、実際に裁判実務についていない者を数に入れたって何も意味ないでしょう。今もへ理屈と自分で言われましたけれども、やはり正確にそういうふうに記述すべきだ、最高裁判所ともあろうものがというふうに私は言わざるを得ないと思うのです。これはいかがですか。
  241. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 判事判事補のそういう意味での内訳を示せということでございますと、実は私、直接それに関与はしておりませんが、そういう資料をつくるということは差し支えないわけでございます。
  242. 野間友一

    ○野間委員 差し支えなかったらつくるべきですよ。それは国会に対する義務ですよ。  ですから、裁判所法のたてまえでは、裁判官裁判官以外の職員と、これは明確に区分けしてあるわけですね。そして裁判官以外の職員については事務総長以下、裁判官資格がなくたってできる、むしろそれが原則になっているわけですね。ところが、そういう人たちが、ほとんどが裁判官でもって充てられておる、これが実態ですよね。だから、やはりそういうふうに司法行政上の仕事を裁判官にどんどんさせて、そして司法行政という名前で司法の内容、裁判の内容にまでずっと干渉していく、そういうねらいがあるとしか私は考えることができないわけですよね。もし最高裁判所の論法からいうと、例えば今地方裁判所事務局長は確かに裁判官の身分のない人だと思うのですけれども、ここもどんどん裁判官で充てていくというような方針、あるいは今までそういうことをやったことがあるのか、そういう意向があるのか、やれるのですか。
  243. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判官の中からそういう司法行政事務に従事しておる者がかなりあるということは先ほど来御指摘のとおりでございますが、私どもといたしましても決してそういうものをたくさん置こうというつもりは毛頭ないわけでございまして、できるだけそういう数は絞ってやりたいということは終始変わらないわけでございます。  例えば、ただいま御指摘になりました高等裁判所事務局長について申し上げますと、裁判官の人事、これは最終的には最高裁判所裁判官会議で決めておるわけでございますが、昔は控訴院の上席判事等が控訴院長と相談してやるということがございましたが、現在ではそういうものは高裁の事務局長が高裁長官の補佐をする、高等裁判所裁判官会議の補佐をするという形でやっておるわけでございまして、そういう意味での必要性を最小限度に絞りまして必要なものだけやっておるわけでございます。そういう意味で地方裁判所事務局長についてはそういう必要性がございませんので、現在のところやるつもりはございません。
  244. 野間友一

    ○野間委員 申し上げておるのは、法の建前は、裁判官以外の職員というのは裁判官の身分を持った者がそこに充てられるのではなくて、もともと裁判官裁判官以外の職員とは別個になっているわけでしょう。裁判官以外の者がそういう仕事をするのが原則になっていますよね、法の建前は。ところが、そこへどんどん裁判官の身分を持った者が入ってくる。建前としてはこれは例外的なんでしょう。ところが、実態はそうではなくてどんどん入ってきておる。そこに私は問題があるというふうに指摘しておるわけですね。そうなりましたら、司法行政という名前でどんどん裁判の中身にまで入ってくる危険性が非常に強いという危惧の念を持つのは私だけではないと思うのですね。  だから、原則と例外とは、やはり法の建前をきちんと踏まえて、そういう意味での司法行政をぜひやるべきだというふうに私は申し上げておるわけですけれども、その点について。
  245. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判官裁判をする、裁判官以外の職員司法行政事務をやるという原則についての野間委員の御指摘、まことにおっしゃるとおりだろうと思います。そういう原則を私どもも貫いていかなければならぬというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、できるだけ必要性を絞りまして最小限度の必要なポストについてだけ裁判官を充てていくというふうに今までもやっておるつもりでございますし、例えば今まで裁判官を充てておったポストでも順次裁判官以外の職員を充てるというふうにしたポストもかなりの数ございますし、今後もこういう充てるポストをふやすことのないように考えていきたいというふうに考えております。
  246. 野間友一

    ○野間委員 本来ならばこの法の附則の③と規則の区分けの問題についていろいろお聞きしたいと思っておったのですが、時間の関係で次に進みたいと思います。  冒頭にも触れましたのですが、今回を含めまして三年間裁判官以外の職員の増員が純増ゼロ、これはプラスマイナスありまして純増ゼロです。私は、これはけしからぬと思うのですね。昭和五十二年まではほとんど例外なしに裁判官の配置に伴って書記官、速記官、事務官あるいはタイピスト、それから家裁の調査官、こういう職員の加配がされたわけです。ところが今回はいろいろなプラスマイナスをして結局ゼロ、とりわけ事務官等の労働強化、これが私はこれから非常にきつくなってくるのじゃないかというふうに思うのです。  そこで、そういう点を踏まえまして、この最高裁判所の通達等を見ますと、裁判官書記官あるいは速記官、調査官、いずれも補を含むわけですが、これは裁判官の定員配分方法に準じて配分する、つまり裁判官がふえればこれに見合っていま申し上げた裁判官以外の職員もふえる、こういう通達がありますね。だから、これでやるなら、裁判官はふやしているのです、ほかの者はプラス。マイナス・ゼロですから、これは通達というか今までの最高裁判所の方針からしてもおかしいと言わざるを得ないと思うのですが、これはどうですか。
  247. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 裁判官の配置定員をふやします場合、それに応じまして必要な書記官なり事務官の配置をふやすというのはおっしゃるとおりでございます。今回判事九名の増員をお願いいたしておりますけれども、同じような理由裁判所書記官につきましては合計七名、家庭裁判所調査官につきましては合計三名、それから事務官につきましては合計二十九名、この増員をお願いしているわけでございます。半面、十七ページの表にございますように、司法行政事務の場面におきましてできるだけ簡素化、効率化を図りまして、政府の定員削減計画がございまして、私どもにも協力要請が来てございます。必ずしも拘束されるわけではございませんけれども、現在の厳しい国家財政事情というような点も考慮いたしまして、司法行政事務の場面におきまして三十九名の減員を図っているわけでございまして、裁判部門の関係では三十九名の充実をお願いしておる、こういう実態でございます。
  248. 野間友一

    ○野間委員 数字をもて遊んではいかぬと思うのです。ふやして減らしてゼロですからね。だから、結局、裁判所の通達というか方針にありますように、裁判官をふやしたらその周りの者をふやすという原則、基本が崩れておるわけですよ。今、必要だから裁判官以外の職員についてふやしたと言われた。片っ方では政府の行革に賛成して減らしたんだ、協力するんだ、プラス・マイナス・ゼロでしょう。特に事務官がマイナス十です。これにも出ていますね。  だから、私は、裁判所というのはもっと行政から独立して適正かつ迅速な裁判を進めなければならぬわけですから、遠慮せぬとどんどん必要なだけふやしたらいいと思うのですよ。それを行革に協力して裁判所までが頭を下げてぺこぺこするというのは何事かと私は言わざるを得ないのです。もっと毅然として必要なものは要求する、これが国民裁判を受ける権利の負託にこたえる道だと私は思うのです。だから、もう遠慮せぬとひとつやっていただきたい、いかがですか。
  249. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 現在の事件の増加する状況の中で、裁判所といたしましても、ただいま申し上げましたような程度の増員で万全であると考えているわけではございません。  ただ、一方におきましては、裁判所職員の多くは一定の資格養成等を必要とするものでございますので、増員に当たりましては、常に現実的な充員の可能性ということを考えていかなければならないわけでございます。また、事件は増加する時期もございますれば、減少する時期もございますので、常に事件が増加したからその分だけ人員増で対処するということも長期的に見ますると問題があるように思われるわけでございます。それから、先ほど申し上げましたように、裁判部の事務官等を減員するわけではございませんで、司法行政事務事務局の部門の職員を減ずるわけでございます。そういうふうな定員削減等の面での相応の協力というのも図る必要があるわけでございます。  以上のような諸般の事情を考慮しながら、事件の係属状況に応じて充員の可能性を見て逐次増員を図っていく、この地道な努力を重ねてまいりたいというふうに考えております。
  250. 野間友一

    ○野間委員 時間がありませんので進みますが、もっと毅然として請求してくださいよ。今司法行政事務を削ると言われましたけれども、結局内部でいろんな矛盾が出てくるんだ。数が減りますと、どっかにしわ寄せが出てくるのですよ。  さて、家庭裁判所の調査官について私はもっと増員すべきだという意見を持っております。この資料の中での統計でも非行が随分ふえていますね。それから家事事件、例えば離婚等も含めまして非常にふえておる。これは統計上明らかです。特に少年について考えてみましても、非行あるいは犯罪がふえておる。その原因について裁判所はどう考えておられるのか。それに対して裁判所はどんな役割を果たすことができるとお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  251. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、少年保護事件は昭和五十年以降年々増加の傾向を示しております。その内容を見てみますと、近年年少少年非行が増加しておりまして、少年非行の低年齢化現象が進んできております。そういうようなこととの関連が密でございますけれども、窃盗あるいは横領など比較的手口の簡単な非行性の薄い一過性的な非行がかなり多いように見受けられます。最近における少年非行の一般保護事件ですが、その増加人員の約七二%が窃盗及び横領で占められているというのもその間の事情を裏づけているものと見ております。他方、そのような非行性の低い事件がふえているというだけではございませんで、毒物及び劇物取締法違反、いわゆる薬物乱用事件と言われるようなもの、あるいは粗暴犯的な事件、中には校内暴力等の事件がございますが、問題点を含んだ事件もふえてはいるのでございます。ただ、数としましてはこちらの方はそれほど多くはございませんで、比較の問題でございますが、全体として見ますと、先ほど申しましたような窃盗、横領等の非行がふえておるという状況でございます。  それで、家庭裁判所としましては、これらの非行の趨勢を踏まえまして、少年法の目指しております少年の健全な育成という目的に沿った事件処理をやっていく必要があるということで種々工夫をしながら適正な事件処理ができるように努力しておるという状況でございます。
  252. 野間友一

    ○野間委員 非行、暴力が非常に今問題になっておりますけれども、ここで、これらの原因について一言法務大臣から所見を承っておきたいと思います。
  253. 住栄作

    ○住国務大臣 本当に大変残念なことでございまして、一言で原因と言われましても、いろんな複合された一つの結果だと思うのです。ですから、家庭の問題もあれば、社会の問題もあれば、教育の問題もあるかもしれません。そういうことが全体として非行の増加傾向につながっておるわけでございまして、したがってこれの対策も大変難しいものがあると思うのでございますが、それだけに地道な努力を積み上げていかなければこれは大変なことになるんじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  254. 野間友一

    ○野間委員 そういう中で裁判所、特に家庭裁判所の調査官、この人たちを中心とした役割は非常に大きいと私は思うのですね。これは五十八年八月十五日付の裁判所時報ですが、「広報テーマ」を読んでみますと、「低年齢少年の非行について」というところに、この「非行に適切な対処をするために、少年たちの生活の重要な部分を占める中学校での生活を重視し、定期的に中学校との連絡会を開いています。また、事件の審理に際しても、」調査官が云々して「指導や助言を行い、必要に応じて家庭や中学校を訪問するなどしています。」とありますが、私はこれはこれで調査官の役割として非常に大事なことではなかろうかというふうに思うのです。定期的に学校とかあるいはそういう意味での家庭へ行って原因を十分に突き詰めて、そして非行を防止するとかあるいは健全な育成、発達のために役割を果たすということが非常に大事だと思うのですが、この点についての認識は間違いないでしょうね。
  255. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のとおり、私どももそういうふうに認識いたしております。
  256. 野間友一

    ○野間委員 この「広報テーマ」の中ではいろいろとやっておるということが書かれておりますが、ところが調査官の数がこれも足らぬわけですよ。私は和歌山ですが、調べてみますと、和歌山県下で小学校が三百七十九校、中学校が百五十六校、高校が五十一校。ところが、調査官の数はと見てみますと、和歌山の本庁で少年係が六名ですね。それから田辺の甲号支部で少年、家庭合わせて三名。それから乙号の新宮で一人。これは家庭と両方やられておるかもしれませんが、合計十名足らずしかいないわけですね。学校の数が五百八十六校あって調査官が十名足らず、これは全県下の裁判所の調査官の数で非常に少ないわけで、広報の中ではやらなければならぬ仕事としていっぱいいいことが書いてありますけれども、今の体制ではこれはなかなか不可能だと言わざるを得ないと思うのです。したがって、裁判所のこの方針を実施されるとするならば、そういう意味も踏まえまして調査官も大幅に増員する必要があるのじゃないか。これはぜひ検討していただきたいと思います。  と同時に、家庭裁判所での窓口相談が今随分ふえていますね。サラ金による離婚とか一家離散、行方不明も含めまして、随分とふえています。私も随分相談を受けます。今の体制ではこれにもとてもじゃないが応じられない。どこへ行きましても裁判所の実際のそういう声を聞くわけですね。したがって、私は、窓口相談の業務も非常に重要なんで、特に住民との接点に立っていますから、相談制度法制化するとか、あるいは家庭裁判所の出張所を簡易裁判所に置くとか、こうやって充実強化しなければいかぬ、こう思うわけであります。  以上二点、調査官をもっとふやせということと、窓口相談を制度化して家庭裁判所の出張所をもっとふやしなさい、こういうことを私は要求したいと思いますが、いかがでしょう。
  257. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 まず、増員の関係についてのみお答え申し上げます。  少年保護事件、特に一般保護事件の増加傾向等からいたしますと、必ずしも調査官三名の増員で万全であると考えているわけではございません。これは何度も申しますように、家庭調査官について申しますと、心理学、教育学、社会学等の専門的知識に基づいて事件の調査に当たるという職務の性質上、養成人員にもおのずから限度があるわけでございます。その充員可能な現実的な数を考慮しながら要求する必要があるわけでございまして、三人でどれだけのことができるかということになりますといろいろ問題もあろうかと思いますけれども、今後とも充員の可能性を見ながら必要に応じた増員措置を図っていきたいと考えております。     〔森(清)委員長代理退席、委員長着席〕
  258. 野間友一

    ○野間委員 時間がありませんので、ちょっと具体的な事実を出しまして、ぜひ検討していただきたいとお願いしたいと思います。  それは和歌山の裁判所の体制です。私も弁護士をしておりますからしょっちゅう裁判所へ行っておるのですが、ちょっと調べてみますと、人員削減でここ約二年間に六名減っておるわけですね。ふやすどころか少年調査官が一名減です。それから書記官が一名減。それから事務官が三名減、うち二名が大阪にとられておるわけです。それから廷吏が一名減。わずか二年間で六名も減らされておる。これはむちゃくちゃです。特に忙しい職場を見てみますと、これは地裁の民事ですが、競売事件 ケ号、それから強制執行 ヌ号、これが随分とふえています。統計上調べてみますと、ヌ号が五十三年が八十五件が五十八年が百七十九件、それからケ号が五十三年が四百十三件が五十八年は五百二十六件と随分とふえておるわけです。  それで見てみますと、書記官がこれらについて三名おるわけですが、入札等の問い合わせとか競売、いろいろな問い合わせとか電話相談が非常にふえて、こういう相談だけでも一日三十件から四十件あるそうです。だから、毎日午後八時ごろまで残業しなければならぬ、これが実態なんです。だから、事件の多いところに少ないところから人を集めて合理的にと言われますけれども、事務官についても大阪へ二名吸い上げられ、書記官も減らされておる。こういう中で、こんなに事件がふえておるにもかかわらず減らされて、その上で八時まで残業しなければならぬ。これで果たしていいのかどうか。これは要求して四月末までは臨時で一名増員という体制をとっておるようです。これは四月末までなんです。  それから簡裁の事件も、ずっと見てみますと、これは時間がありませんから数は触れませんが、相当ふえておる。それからサラ金、クレジットの相談が非常に顕著です。  それから書記官が、これはすでに御案内のとおり、昭和一けた台の人がずっとピークでしょう。あとは谷になっています。だから、ここ数年間にもし定年制がしかれてやめた場合に、これは後の補充が大変なんです。これは一体どうしたらいいのか。書記官年齢構成を見ますと、四十九歳から五十五歳が四九・三%、約半分です。どかっとやめた場合には後どう補充するのか。こういうことについての対応を一体どう考えているのか。  それからもう一つ、裁判官の配置に関して、和歌山地裁の新宮支部の支部長と三重の地裁の熊野の支部長、これは兼務しておるわけです。ですから、事件の処理が非常におくれている。当事者も大変困っておるわけです、私も現に知っておりますけれども。私ちょっと調べただけでも、こういういろいろな問題を抱えておるわけです。  局長は定員のことについてえらいつつましやかにこれでいけるような答弁をされましたけれども、実際はそうじゃないのです。私、幾つか言いましたけれども、これに対してどういう対応をしていくのか、最後にお答えをいただいて終わりたいと思います。
  259. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、各庁とも事件の急増の中でいろいろ御苦労なさりながら執務の適正を期しておられることは私ども十分承知をしております。執行事件の増加、破産事件の増加、民事訴訟事件の増加という状況がございますので、今後とも、そういう事件の係属状況をにらみながら必要な増員措置をとってまいりたいというふうに考えております。  それから、大量退職の問題につきましては、これは昭和一けた台が多いものですから、私どももその対策を真剣に考えております。例えば書記官の研修所における養成人員枠を広げるとか、任用試験の枠を広げるとか、あるいは再任用制度とか、いろいろございますので、その辺のところを総合的に考えながら遺憾のないように措置してまいりたいと思っております。
  260. 野間友一

    ○野間委員 返事がありませんでしたけれども、今、和歌山の幾つかの実態を言いました。これに対して、ぜひひとつ調べて善処していただきたい。一言それの答弁だけ求めて終わりたいと思います。
  261. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御指摘の点につきましては、十分に調査検討いたしました上、必要な措置をとりたいと思います。
  262. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  263. 宮崎茂一

    宮崎委員長 林百郎君。
  264. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、サラ金の問題が非常に重要な問題になっておりますので、それと裁判所の人員の問題とを締め、さらに我々の議員の生命にかかわる昨日の宮澤氏の傷害事件について、犯人がかつて武富士というサラ金会社に勤めていて恐喝をしてやめたということがありますので、これはただ我々の議員の生命に関する重大な問題でございますので、緊急に一言だけしておきたいと思うわけです。  先ほどから同僚議員が、民事事件が非常にふえているということでしたが、私はサラ金二法に限って事件数をお聞きしたいと思うのです。  クレジット会社関係は主に督促事件となって民事事件であらわれてくると思うのです。それから、サラ金は調停事件と自己破産の申し立てとなってあらわれてくると思うのですが、まだ年度末、総計は出しておらないかもしれませんけれども、このままでいきますと督促事件は五十七年度に比べて五十八年度はどのくらいふえそうですか、それでその何割がこの二法に、クレジットでも結構ですが、殊に二法に絡んでいる事件がということを、わかったら知らせていただきたいと思います。
  265. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 まず昭和五十八年度の督促事件ですが、全国集計で申しまして、概数でございますが、五十五万八千七十六件という数字になっております。  サラ金調停事件も申しますか……。
  266. 林百郎

    ○林(百)委員 ずっと事件数を言っていって、それで対前年度化幾らふえて、それが二法に触れているのがというのがわかったら……。
  267. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 督促手続事件につきましては、対前年度比で約一六・九%の増になっております。それから、クレジット関係事件等が中心となります簡易裁判所の金銭請求事件、通常訴訟でございますが、そのうちのいわゆるその他事件と言われております件数で申しますと、これも概数でございますが、昭和五十八年度の件数が全国で九万四千六百三十七件となっております。前年度の数字が七万二百十六件でございます。前年度に対する正確なパーセントは計算してまいりませんでしたが、約二万四千件ばかり増加しておる、こういう数字になっております。ただ、このその他事件の全部がいわゆるクレジット事件等ではございませんですが、大体今申しました数字の中の八五%前後がいわゆるクレジット関係の立てかえ金請求事件とお考えいただいてよろしいかと思います。  それから、今申しました第一審通常訴訟事件と督促事件とのそれぞれの中身は、大部分が今申しましたようにいわゆるクレジット会社の立てかえ金請求事件が多いかと思います。いわゆるサラ金の貸し金請求事件は、サラ金業者の側から請求して督促支払い命令を申し立てる、あるいはまた訴訟を起こすという件数はそう多くないかと思います。  それから次に、そういう意味でサラ金関係の事件が最もはっきりいたしますのは、いわゆる簡裁が扱っておりますサラ金調停事件でございますので、その件数を申し上げますと、全国の簡易裁判所で扱いましたサラ金調停事件は、新受でございますが、昭和五十七年度で三万五千百九十七件ございましたのが昭和五十八年度では九万一千五百一件となっております。サラ金事件が全調停事件に占める割合で申しまして七〇・六%、対前年度の増加比率についてはちょっと計算はしてまいりませんでしたが、五十七年が三万五千件余、五十八年が九万一千件でございますので、ほぼ三倍近い増加になっているかと思います。  それから、サラ金絡みの破産件数でございますが、昭和五十七年の破産事件の新受の全国総数が五千二十一件、それに対しまして昭和五十八年度の全国め破産事件の新受件数総計が一万七千八百七十八件、これは五十八年は概数でございますが、このような数字になっております。ただ、五十八年の場合にサラ金関係の内訳は出ておりませんが、前年度で申してみますと、全事件中の約半分近い数がサラ金関係の破産事件ということになっております。五十八年度については件数の増加が多うございますので、前年度よりもサラ金事件のいわゆる自己破産の占める件数は、あるいは割合は高くなっているのではないかと思われます。
  268. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、破産の申し立ては、五十八年は五十七年に比べてやはり三倍程度と聞いておいていいですか。
  269. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 総件数にいたしまして三倍強になると思います。
  270. 林百郎

    ○林(百)委員 こういう事件の増発の状態で、この職員並びに判事の定員の増加の法案が出ているので、私は、とてもこれではこたえられない。さっき同僚の野間議員も言ったように、遠慮なくやはり人員をふやすことを要求しなければならないと思うわけです。  一方、今度は刑事事件の方ですね。サラ金に関しての傷害、脅迫、殺人あるいは嫌がらせ、これは規制されているのですけれども、規制されていながらも、ビラ張りだとかあるいはビラの投げ込みだとかいろいろありますが、こういう刑事事件はどのようにふえていますか。これは警察ですか、刑事局ですか、どちらでもつかんでいる方が答えていただきたい。
  271. 加美山利弘

    ○加美山説明員 お答えいたします。  サラ金二法の施行後の犯罪実態、ちょっと見てみますと、昨年十一月から十二月末までのサラ金返済苦にかかわる犯罪につきましては、窃盗、詐欺、強盗、殺人、恐喝等で三百六十五件、百十四人を検挙しております。検挙総数十九万四百三十六件、八万三千九十八人に対します構成比を見ますと、件数で〇・一九%、人員で〇・一三%となっております。件数的には詐欺とか窃盗の順となっておりますが、凶悪犯は殺人が六件、それから強盗が二十九件を検挙しております。  ふえているかというようなことでございますので、サラ金二法の施行前との比較ということでちょっと見てみますと、サラ金返済苦にかかわる犯罪関係につきましては、検挙の統計しかございませんで、発生と検挙の間に期間的なずれがございます。いわゆるサラ金二法の施行前後の比較ができにくい状況でありますが、参考までに検挙状況でちょっと申しますと、施行前二カ月と施行後二カ月を比較してみますと、昨年九月と十月の検挙件数では月平均二百五十件、八十人くらいであったものが、法施行後の十一月と十二月を見ますと、月平均百八十件、六十人くらいと若干減っております。が、新法施行後間もないことでもあり、なおもう少し推移を見てみないと判断しかねるというような状況下にございます。
  272. 林百郎

    ○林(百)委員 大蔵省の方に聞きますが、日本長期信用銀行、日本興業銀行、日本債券信用銀行等のサラ金業者への直接の融資金が七億、ダミーとか間接が二百九十七億、三百四億円という数字が我々の調査で出ておるのですが、仮に銀行関係がこういうようなことをするということは業務上許されることですか、どうですか。あるいは許さないというわけにもいかぬが、好ましいことかどうかでも結構です。
  273. 千野忠男

    ○千野説明員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘の長信銀三行につきましては、昭和五十八年九月末現在で、サラ金向け融資といたしまして、第一にサラ金業者に対する融資が七億円、サラ金業者の関係会社に対する融資が二百九十七億円、確かに融資をしております。これにつきましては、私どもは特に制度上の問題があるとは考えておりません。すなわち、長期信用銀行は御承知のとおり長期信用銀行法に基づいて設立されました民間の金融機関でございます。これは預金の受け入れにかえまして債券を発行して設備資金または長期運転資金に関する貸し付けをするということを主たる業務として営んでいる銀行であるというところに普通銀行と対比しての特色がございますが、いずれにいたしましても、これは普通銀行と同じ民間の金融機関でございます。また、いわゆるサラ金向け融資もただいま申しました業務の中の長期運転資金の貸し付けに該当することでございますので、長期信用銀行の業務の範囲内であるというふうに考えております。
  274. 林百郎

    ○林(百)委員 それは正常な貸金業者の場合を言っていると思いますが、暴力団と結んだサラ金業というのを警察の方ではつかんでおりますか。暴力団が貸金業に転進しているとか、あるいは結びついているとか。
  275. 加美山利弘

    ○加美山説明員 暴力団とサラ金業者との関係についてお答えいたします。  貸金業者と暴力団とのつながりにつきまして私どもが把握している限りにおいて申し上げますと、昭和五十七年中の出資法違反検挙が七百二十一件、八百三十二人中百十一件、九十四人、パーセントで一一・三%の暴力団員を検挙しております。この中には貸金業をみずから営む暴力団員等も含まれております。五十八年中につきましては集計中でございますが、警察としましては、暴力団員等が関与するものを初め悪質なものにつきましては厳正な取り締まりを行ってきたところでありまして、今後とも高金利取り立て行為の規制に違反する事案等を重点として積極的に取り締まりを行ってまいりたいと考えております。
  276. 林百郎

    ○林(百)委員 銀行課長、そういうサラ金もあるのですが、調査しているのですか。本来、正常な貸し金の流れだったら、こんな大きな社会的問題になりませんよ。それが、健全な産業の育成だとかあるいは善良な市民への融資を目的とするこの長期銀行あるいは信用金庫が金融で流しても、私の方はそれは業務の一つですから別にとがめませんと、あなた言えますか。調べているのですか、一体、長期銀行がサラ金に流している金が、そのダミーを通じてどうやっているかということを。調べていないなら調べて、今後はそういうところへ流れるようなことのないようにチェックをしますと。そうでなければ銀行課長資格はありませんよ。
  277. 千野忠男

    ○千野説明員 先ほど申し上げましたのは、法律的に見て一体これが業務の範囲に入るかどうかということを申し上げたわけでございます。  私どもも、サラ金業者への融資につきましては、サラ金業者の経営姿勢とか経営実態を十分金融機関において把握をいたしまして、当該サラ金業者による過当な収益の追求でありますとか高金利による過剰な貸し付け、あるいはその他利用者の利益を不当に害する行為を助長するおそれがあると考えられるような場合には、これは抑制してもらわなければ困るという指導を銀行に対していたしておるわけでございます。もちろん、これは金融機関がサラリーマン金融向け融資をどのように幾ら貸すかということは、ほかの融資と同様、金融機関の良識に従ってあくまでも自主的に判断されるべきものでございます。  ただ、私どもといたしましても、金融機関の公共的な性格にかんがみまして、社会的な信頼を損なうことがないよう慎重に配慮するよう金融機関に要請をしてきているところでございます。
  278. 林百郎

    ○林(百)委員 法務省の刑事局長に聞きますが、国会議員への、具体的には国会へ提案されている法案についての利害関係を持っている者からの献金ですね、これが濱職罪になる、構成要件に該当するという場合は――これは一般論ですよ、特定な事件というとあなた方は口がかたくなって言わないから、一般論としてはどういう構成要件ですか。具体的に法案が上がっていれば、その法案の当該委員会委員でなくても、国会議員としてそれと利害関係を持つ業者から献金を受ければ、それは涜職になりますか。これは大阪のタクシー事件等判例はもういろいろざあっとありますけれども、ここで改めて聞きたいと思います。
  279. 筧榮一

    ○筧政府委員 ちょっとお答えしにくい面もあるかと思いますが、一般論といたしまして、国会議員の方々の職務権限、林委員の方がお詳しいかと思いますが、立法府の構成員として法律案あるいは予算案その他の議案の審議、表決あるいは国政に関する調査に関与するということが職務権限であろうかと思います。したがいまして、国会議員の方に第三者が全員を供与した場合に、それが職務に関するかどうかということがまず問題になろうかと思います。  職務に関するかどうかという点に関しましては、今、林委員ちょっとお触れになりましたように大阪タクシーの事件もございますが、従来から、本来の職務権限のほかに、これに密接に関連する行為の場合でも職務に関する場合があるというふうに判例上理解されておるところでございます。それと、もう一つは、やはり当該全員が職務に関するというためには、対価性といいますか報酬性といいますか、そういう関係がなければならないという点もございます。それに関連して授受双方の認識という点もございます。  したがいまして、それらの点がすべて充足されました場合には、御指摘のように涜職罪が成立する場合もございますが、今申し上げましたような諸点について具体的事実関係がはっきりいたしませんと、なるともならないともちょっと一概にはお答えいたしかねるかと思います。
  280. 林百郎

    ○林(百)委員 何とかならないではなくて、何とかなる方を聞いているのですよ。これは関谷君の事件がございましたね。これはタクシー業者の利益のために石油ガスに対する課税の法案を有利に扱うということになっておるわけですが、これは政治資金として届け出があっても、この判決を見ますと、それは涜職罪が成立するのだというようになっていますか、この判決で。今あなたの言ったような条件を充足すれば、それが政治資金として届け出がしてあっても、それは涜職罪が成立する場合がありますか。
  281. 筧榮一

    ○筧政府委員 具体的な事実関係がはっきりいたしませんと断定はできないかと思いますが、場合によりましては成立する場合もあろうかというふうに考えております。
  282. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで、実は昨日ですか、宮澤議員が襲撃された。我々共産党は、いかなる場合でもこういうテロは憎んで余りあるものでございますが、これは我々同僚議員の生死に関する重要な問題ですから、この際明らかにしておきたいと思のですけれども、この犯人の東山という男は昭和五十二、三年ごろ武富士に勤めていたこともあるが、それをやめて、この当時の社長の武井を、二百万ですか、脅迫して警視庁に逮捕された。逮捕されたというまでは新聞にあるのですが、逮捕されてこの事件はどうなったのですか。
  283. 筧榮一

    ○筧政府委員 お尋ねの件でございますが、東山弘里、今回の襲撃したと言われておる人でございますが、昭和五十二年の十月二十八日付で、東京地検が、御指摘の二百万円の恐喝、被害者は株式会社武富士代表取締役社長でございますが、これに対しましてはか一名と共謀の上、同会社の経営及び同社長の私行、プライベートな行為についての非難中傷記事の差しとめ費用という名下に現金二百万円を喝取したという事実で逮捕され、受理いたしております。この東山につきましては同年の十一月十八日付で不起訴処分になっております。
  284. 林百郎

    ○林(百)委員 恐喝罪で逮捕され送検されたけれども、不起訴になった。無罪じゃないですね。ちょっとその点はっきりさせてください。
  285. 筧榮一

    ○筧政府委員 不起訴処分でございます。
  286. 林百郎

    ○林(百)委員 恐喝というのは、どういう記事をどう差しとめるというのですか。どういうことを武井に対して恐喝したのですか。
  287. 筧榮一

    ○筧政府委員 詳細は別にいたしまして、代表取締役社長に対しまして、同会社でございますから株式会社武富士の経営及び同社長の私行などについての非難中傷記事、これの差しとめ費用名下に二百万円を喝取したということでございます。
  288. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで、ちょっと具体的な事案に触れるのはなんですけれども、東山が、昨日ですか宮澤議員に傷害を加えたとき、国会議員の名前の書いたメモを読めと言って宮澤氏に渡して、宮澤氏はそれを拒否した、そして一千万よこせと言ったとか言わないとか、そこのところはこれからの捜査でしょうし、具体的な事案ですから、今ここではっきりは言えないでしょうけれども、我我常識考えて、一体その議員の名前を書いたメモというのは、その議員の名前を言ったり明らかにすれば何か宮澤氏としてはそれを拒否しなければならない理由がそこにあるのですか、どうなんですか。何で議員の名前を書いたと考えられますかね。そこらのところはまだわかりませんか。
  289. 筧榮一

    ○筧政府委員 私、まだ事実を承知いたしておりませんので、ちょっとお答えいたしかねます。
  290. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは警察庁。それからそのメモは現在どうなっているのか、わかっているだけ。
  291. 加美山利弘

    ○加美山説明員 お答えいたします。  きのうの事件についてのお尋ねでございますが、私、所管が違いますということと、それから現在捜査中でございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  292. 林百郎

    ○林(百)委員 まだ昨日のきょうですししますから。  答弁を差し控えると言うが、新聞に出ているのですがね、そのメモがどうされたということは。それは言えないですか。  ちょっと補足しますと、何かさばかれている。だから、そのメモに書いている議員の名前がわかるかわからないかは別として、さばかれているということは新聞に出ているが、その程度のことは、ここではあなたは答弁できませんか。
  293. 加美山利弘

    ○加美山説明員 お答えします。  その件について捜査中と思いますが、私、所管が違いますので答弁をいたしかねます。御了承願います。
  294. 林百郎

    ○林(百)委員 刑事局長にお聞きしますが、サラ金二法が国会に提案されている。今まで利息制限法があり、利息制限法を超える利子の支払いは、最高裁判所の判例で、その支払いは無効だ、あるいは元金の償還、利子の償還に充てられる。それが今度七三%までは利息が上がってきて、そして利息制限法を超した利子の支払いは、これは書面で取り交わしている限りは有効だというような、その面でいうと業者に有利な法案なんですけれども、我々も反対したのですが、そういう法案が国会へかかっているとき、その法案の利害関係を密接に持っている金融業者から献金をされる、あるいは何らかの名義で金品が贈与されるという場合は、大阪のタクシー事件の例も先ほど説明がありましたけれども、これはやはり贈賄、収賄で涜職の罪の嫌疑はありますか。
  295. 筧榮一

    ○筧政府委員 個々の犯罪、贈収賄罪が成立するというためには、具体的な事実関係がはっきりいたしまして、その事実関係から見て職務に関し違法な金品の授受があったということが認定されませんと贈収賄は成立しないわけでございますので、仮定的な問題については嫌疑があるとかないとかということはちょっとお答えいたしかねると思います。
  296. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、今私の説明したサラ金二法と金融業者との間には利害関係がある、その法案とサラ金業者は利害関係があるとは認められますか。これは、法案が民事的な法案ですから刑事局長に聞いても無理かもしれませんが、今私の言ったような、利息が書面で取り交わされている限り、最高裁の判例で、今までは利息制限法を超える利息の支払いは無効であるとして、そしてそれは元利の償却に充てることができるというような判例があったのですが、それが適用されないような条文をわざわざ入れたわけですけれども、利害関係人とは言えますか。   それでは、犯罪のところはここで切りましょう、あなたも責任ある立場ですから。そのサラ金二法とサラ金業者との間には利害関係があるかどうかということ、それはどうですか。
  297. 筧榮一

    ○筧政府委員 どうも所管外のことでございましてよくわかりませんが、ごく一般的、常識的に申しますれば、そういう業者の方はそういう法案の内容から見て利害関係といいますか関心があるということは言えるだろうかと思います。ただ、それ以上進んで、金品の授受というものがまずあって、さらにそれがいろいろな要件を満たすかどうかということになりますと、それはまた先の問題であろうかと思います。
  298. 林百郎

    ○林(百)委員 関心なんて、あなた刑事局長だから、もう少し法律的な用語を使ったらどうですか、百科事典にあるような言葉を使わなくても。  まあ、それはそれでいいでしょう。それでは、この問題はこれで一応打ち切ります。非常にホットな問題も絡んできますし、それからいろいろな微妙な問題もありますから、いずれ事態が進展するにつれて私の方もだんだん明らかにしていくつもりです。  そこで、私は今度は最高裁判所お尋ねしますが、私はこの質問をするためにわざわざ最高裁判所の法廷を見せていただいたのですが、あの大法廷、小法廷に当事者の、民事では原告、被告あるいは刑事では被告人の席がないのですが、どこへ座らせているのですか。
  299. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 私からは刑事関係について申し上げますが、刑事事件につきましては、御承知のように上告審というのは法律審として憲法問題ですとか法令の解釈統一を図るという審級でございます。したがいまして、その弁論をなすには法律上の知識を要するということから、弁論ができる者は弁護士資格を有する弁護人でなければならないというふうにされているわけでございます。したがいまして、被告人には弁論ができないということになっております。  それからまた刑事訴訟法の四百九条でございますが、「上告審においては、公判期日に被告人を召喚することを要しない。」という規定がございます。また、刑事訴訟規則二百六十五条は、「上告審においては、公判期日を指定すべき場合においても、被告人の移監は、これを必要としない。」と規定しております。これらの規定と、控訴審に関します刑事訴訟法の三百九十条に「控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。」という規定がございます。また刑事訴訟規則の二百四十四条の二項には「検察官は、前項の通知を受けたときは、速やかに被告人を控訴裁判所の所在地の監獄に移さなければならない。」と規定をしているわけでございます。控訴審と上告審は規定が明らかに違いまして、控訴審におきましては、被告人には原則として出頭の義務はないけれども、出頭の権利はあるというふうにされておりますが、上告審におきましては、被告人には出頭の権利も義務もないというふうになっているわけでございます。  そういうことでございますので、最高裁判所におきましては刑事の関係では被告人の席はない。たまたま被告人が出頭して聞きたいというときには傍聴席で聞いていただいておるということでございます。
  300. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう最高裁判所の態度は、天皇が裁判をしていると同じ思想ですよ。国民のための裁判所でしょう。刑事で上告まで行った者が自分の将来を決定する判決を聞きに行ったのに、自分の座る度もなくて傍聴人と一緒に聞け、おまえには裁判に出る権利はないんだ、そんなばかなことがどこにありますか。民事局長、どうですか、原告と被告の度ありますか。
  301. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 当事者の席は、民事の場合、当然設けられておると聞いております。
  302. 林百郎

    ○林(百)委員 大法廷、小法廷にありますか。あなた、法廷知っていますか。
  303. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 民事の事件でございますから、当事者の席は当然設けられておると聞いておりますが。……(林(百)委員「聞いておる」と呼ぶ)というよりも、私、直接大法廷、小法廷で事件を担当しているわけじゃございませんので、法廷の構造を眺めたというだけでございます。
  304. 林百郎

    ○林(百)委員 私は三日か四日前にちゃんと見てきておりますから、大法廷にも小法廷にもありません。それから、民事の判決を言う場合にも当事者の席はありません。それはいいですよ。  それで、刑事局長が余りに冷淡なことを言うからあなたに聞きますが、憲法には「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」とあるのですよ。裁判というのは判決を聞くことまで含まれているのですよ。それをあなたは権利がないからそんないすはありませんなんて、そんなことは言えたことじゃないですよ。それは天皇裁判の意識が日本の国の最高裁判所にまだ残っているということなのですよ。  そこで、それじゃ、最近、刑事事件の判決で理由を述べますか。主文だけじゃないですか。
  305. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 まず最初の被告人席のことでございますが、これは私の意見ということではなくて、一般にそう言われているということを申し上げておるつもりでございます。  それから、ただいまの件でございますが、最高裁判所におきましては、主文のみを言い渡して、理由は告げてないというのが長年の慣行でございます。
  306. 林百郎

    ○林(百)委員 刑事訴訟法の四十四条には「裁判には、理由を附しなければならない。」そして刑事訴訟規則三十五条には「判決の宣告をするには、主文及び理由を朗読し、又は主文の朗読と同時に理由の要旨を告げなければならない。」昭和四十年までこれをやっていたのですよ。最近これをやらなくなってしまったのですね。これはどういうわけですか。
  307. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 これはただいまも申し上げましたとおり、長年の慣行でございます。今委員から、四十年までは要旨を告げていたというお話でございますが、事実はそうでございませんで、これは実は大審院時代からの慣行のようでございます。  ただいま四十年とおっしゃいましたが、今まで最高裁判所理由の要旨を告げたということが数件あるようでございます。それは、例えば砂川事件でございますとか松川事件とか、そういう数件あるだけでございまして、それ以外は全部理由は告げておりません。
  308. 林百郎

    ○林(百)委員 大審院時代というのは天皇のためにやった裁判でしょう。天皇の名における裁判の慣習を、主権が国民にある今日、そんな慣行をいまだつなげるなんということはおかしいですよ。  それじゃ刑事局長と民事局長に聞きますが、いつ判決の言い渡しがあるということの通知は当事者に知らせますか。要するに、自分の身にかかわる刑事の判決あるいは民事の判決がいつあるということを当事者に知らせることはありますか。知ることはできないのですか。
  309. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 口頭弁論を開かずに上告を却下しあるいは棄却する場合には、言い渡し期日を事前に送達するということはいたしておりません。民事の場合でございます。
  310. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 弁論を開いて判決を言い渡すときには通知をしているということのようでございます。
  311. 林百郎

    ○林(百)委員 そうでない場合でも、自分の運命にかかわる重要な刑事的な責任を負うかどうか、民事的には、例えば長沼事件のようなときですね、事は憲法に関する重大な判断を求めている場合に、いつ判決があるか、弁論を開かないから知らせないということは、これはおかしいと思うのですよ。そういうことを改善することを最高裁判所で検討してもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。少なくとも、いつ自分のことに関する刑事、民事の判決の言い渡しが最高裁であるかということを、その日ぐらいは知らしてやる、どういう事件にしても。そういうことを考えるようにしてもらいたいと思うのだが、どうですか。これは国民の要望なんですよ。(「予算がない」と呼ぶ者あり)金にかえられない。
  312. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 これは裁判部でお決めになることでございまして、私どもがどうこうと言うわけにはまいりませんが、そういうお話があったということは承って、後で伝えるようにしたいと思います。
  313. 林百郎

    ○林(百)委員 法務大臣にお聞きしますが、どうも最高裁判所は依然として権威主義で、建物を見たって何かトーチカみたいな建物で、余り国民が親しめない。どういうことでああいう建物にしたのか知りませんが、あの中に入りますと寒々としまして、本当に国民が主権者である、国民裁判だという感じがしないのですよね。だから、そこはやはり温かく、国民のための裁判だということをあらわすのが新しい憲法のもとの裁判だと思うのです。  今私が言っているのは、裁判がいつあるかというようなことを当事者に知らせるとか、判決で主文だけ、本件上告は、これを棄却する、二秒か三秒で終わってしまう、それで自分の将来が決定するわけなんですから、なぜおまえは刑事的な責任を負わなければいけなくなったのか、なぜ民事で自分の請求が通らなかったかということを説明してやるのは当然裁判所国民に対する義務ですよ。そういう点を改善していくように、ひとつあなたの法務大臣のときに検討してもらいたいと思うのだが、どうですか。
  314. 住栄作

    ○住国務大臣 三権のことでございますから、今最高裁事務総長以下スタッフの皆さんもおいででございますので、委員の発言はよく聞いておられると思います。
  315. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどサラ金事件の増加数が言われましたが、それに対して判事がこの程度の補強では――要するに国民から見れば、簡易裁判所も地方裁判所も昔の駆け込み寺ですね。もう行くところがなくて行く。破産についても、費用を国費で立てかえることもできるというような条項まで、条文としてはあるわけなんですけれども、そういうのにこれでこたえられるかどうか。そういう点を、率直に言ってそれこそ三権分立ですから、司法の権威を打ち立てるためには行政府へ予算を遠慮なく要望する、我々法務委員もそれには協力いたしますから。そういう点については、これにこたえられるのでしょうか、これで。どうでしょうか。
  316. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 私どもも今回増員をお願いいたしております判事九名、一般職三十九名程度の増員で十分であるとは考えていないわけではございますが、判事にいたしましても、書記官にいたしましても、調査官にいたしましても、それぞれ給源におのずから制約がございます。充員の可能性というものを考えて増員要求をいたしませんことには、せっかく枠をいただきながら補充がつかないという結果にもなるわけでございます。私どもといたしましては、充員の可能性を十分にらみながら、また事件の係属状況を十分踏まえた上で所要の増員を今後もお願いしていきたいというように考えているわけでございます。
  317. 林百郎

    ○林(百)委員 ことしの二月二十日に裁判所統廃合の問題について三者協議をされたのですが、最高裁判所の方はどういう提起を、提案をされたのでしょうか。それが一つと、それから事件数の増加でいわゆる繁忙庁という役所と認めるにはどのような条件の場合を繁忙庁と認めるのか、それに対してはどういう処置をとるつもりか、あわせて答えてもらいたいと思うのですね。
  318. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 二月二十日の三者協議におきましては、戦後の裁判所制度が発足しまして以来四十年近くを経過しているわけではございますが、その間における人口動態、交通事情等社会事情の変化には極めて著しいものがある。他方、簡易裁判所、地、家裁支部の配置はほとんど変化がないまま今日に至っておる。したがいまして、今御指摘のような事件の偏在状況もあるわけでございますので、裁判所の配置が現在の社会の実情に合わないんじゃないだろうか、そういう点から裁判所が適正迅速な裁判を行ってその使命を達成するためには、裁判所の配置を現在の社会事情に適合するよう見直すことが不可欠であるのではないかということから、正式議題として取り上げて御協議いただくようにお願いしたわけでございます。  繁閑の問題でございますが、事件が過密している庁が件数どれくらい以上であれば過密と言い、それから過疎の庁はどれくらい以下が過疎であるというふうに明確な考えを持っているわけではございませんけれども、委員御承知のように、ローカルの地域の簡裁でございますと、訴訟事件、調停合わせまして年間十件以下というような庁も結構あるわけでございます。その辺のところを考えて過密過疎というような言葉を使っていたわけでございます。
  319. 林百郎

    ○林(百)委員 簡易裁判所のことが問題になりますが、簡易裁判所での書記官の報告によりますと、口頭受理等の督促手続がとれるだけの体制になっておらない、口頭受理はもうできなくて弁護士の方へ全部事件を回すというように言っておるわけなんですけれども、簡易裁判所は事件が少ないのだというような、そういう一般論を言ったわけじゃないと思いますが、そういう簡易裁判所もあるということだと思いますが、それは慎重にぜひ扱っていただきたい、こういうように思うわけです。  時間が参りましたものですから、最後に二問だけお聞きしますが、繁忙庁というような庁はどのくらいあると見ているのか。地方裁判所でどのくらい、簡易裁判所でどのくらい、その数と、それからとにかく書記官が今仕事を、先ほど野間議員も言われましたように事件を家へふろしきに包んで持っていってやらなければやり切れないというような状態にまでなっておって、それで法律上の問題については駆け込み寺的な性格を持っている地方裁判所簡易裁判所がもうその役割を果たしておらない。だんだん国民裁判所離れになっている。それは結局手数が足りなくて、親切に国民の要望にこたえないというところにあると思いますので、そういう措置について至急簡易裁判所でも口頭受理をしてやって、そして事件が親切に裁判所に受理されるようなことをし、その督促手続について広報活動をするようなこともあわせてやってもらいたいと思うのです。  それからもう一つ、裁判所の庁舎の施設の問題ですが、地方裁判所高等裁判所へ行きましても、当事者の席がない場合があるのです。たとえば和解だとか調停だとか、裁判所が和解を進めるとき、裁判官の前で待ってくれと言うのだけれども、前で待っていたって、こういういすがあるだけで、原告と被告と両方が座っているものですから、打ち合わせもできないということなんです。そういう和解を進めるような場合に、和解の打ち合わせを各当事者ができるような施設を地方裁判所高等裁判所にも設ける必要があるのじゃないか、そして、当事者の便利を図ってやる必要があるのじゃないかというように思いますけれども、今の二問あわせて答弁願います。  そして最後に、法務大臣、三権分立もいいけれども、裁判所というのは、たかだか予算を取るのに、みんな紳士だから、やはりあなたも力になってやらなければ、予算で大蔵省のあの鼻っ柱の強い連中を相手に品のいい最高裁判所判事連中はなかなかかなわないですよ。あなたも手伝ってやって、今私の言ったような点で、国民のための裁判としての施設の点からいっても、手続の点からいっても、国民離れをするような状態でありますので、ひとつ力を入れてもらいたい。これを最後にあなたに答弁を求めまして、私の質問を終わります。今の二問を当事者から答えてもらいます。
  320. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 簡易裁判所の口頭受理につきましては、それぞれの職員がいろいろ苦労しながらも特に準口頭受理と申しまして定型訴状等を利用してやる口頭受理がございますが、その準口頭受理を含めました口頭受理率は、年々少しずつではございますけれども増加してまいっております。  今回私どもが裁判所の適正配置の問題を取り上げました趣旨も、委員指摘のような、簡易裁判所国民に親しまれやすい性格というものを変えるつもりは毛頭ございませんでして、裁判所の配置の見直しをし、集約化を図り、残った裁判所の人的物的な施設の充実を図って、全体としての司法の充実を図りたいという問題意識からこの問題提起をしている次第でございまして、今後ともそのような方向で御協議いただけるよう各方面にお願いしてまいりたいと思っております。
  321. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 裁判所庁舎の中における訴訟関係人等の控室の問題でございますが、庁舎を新営するに際しましては一定の基準で、利用者数といいますか、これを推定いたしまして所要の面積を確保しておるのが現状であります。ただ、裁判官室等で和解をやった場合に、それに控室を設けるということはいささか困難でありますけれども、調停等の場合、申立人と相手方が一緒になっては困ります。特にサラ金調停のような場合には非常に困るわけでありますから、申立人と相手方を分けた控室をつくるというような措置はとっておるわけでございます。  なお、裁判所の予算についていろいろ御心配をいただきましたけれども、財政法上、特別機関として財政当局にも十分その立場を理解してもらっているというふうに考えております。私どもも十分努力をいたしていきたいというふうに考えております。
  322. 住栄作

    ○住国務大臣 閣議の一員として、また司法に一番近い大臣だと思ってもおりますし、そういう意味で、裁判所の予算の問題につきまして、できること、許された範囲での努力はさせていただきたい、こう考えます。
  323. 林百郎

    ○林(百)委員 終わります。
  324. 宮崎茂一

    宮崎委員長 稲葉誠一君。
  325. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 質問はいろいろあるわけですけれども、きょうは裁判所職員定員法の質問ですし、一般質問の日ではありませんので、その点は守って質問したいというふうに思います。  ただ、もうさっき質問が出ました中で、法務省の刑事局長にお尋ねしたいわけですが、きのうの人ですかね、何か二百万円を恐喝して不起訴になったという話がありましたね。その間の経過がよくわからないので、既遂なのか未遂なのか、それから不起訴という内容が、起訴猶予なのか嫌疑なしなのか嫌疑不十分なのか、とすれば、どういう理由なのかという点がよくわからなかったものですから、前に質問があったものですから、関連して……
  326. 筧榮一

    ○筧政府委員 先ほどの点でございますが、二百万円の恐喝ということで逮捕、受理したわけでございますけれども、これはほか一名と共謀の上となっております。ほか一名というのがいわば実行者でございます。したがいまして、この東山何がしにつきましては、その行為に加担したという証拠が認められないということで不起訴になっております。(稲葉(誠)委員「だから何、嫌疑不十分……。」と呼ぶ)結局、実行行為者がやってそれに本人が関与したという証拠がない、嫌疑不十分ということでございます。
  327. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 ほかに刑事局長に聞きたいこともあるのですけれども、きょうは今言ったことですから、別の機会にいたします。  大臣、もうさっきからサラ金の問題が質問に出ておりましたので、今裁判所の方にサラ金の問題に関連をいたしますことについてお聞きをいたしますから、その間に、サラ金問題について一体どういうふうに考えておって、これにどういうふうに対処したらいいのかということについて、あなた考えておいてください。急に聞いては悪いから、ちょっと考えてください。  そこで、お聞きしたい中で、破産法の百四十条に、自己破産の申し立てのときに国庫からの仮支弁という制度があるわけですね。これが一体どういうふうなことでできて、そしてどういうふうに利用されておるのかということをお聞かせを願いたい。いろいろな件数とかなんとかというのは前に出ましたから話はわかりますが、条文を見ますと、「破産中立人カ債権者ニ非サルトキハ破産手続ノ費用ハ仮ニ国庫ヨリ之ヲ支弁ス」とあります。ところが、実際にはこれは支弁しないわけですね。  今サラ金の被害者の人たちが申し立てますと、平均が四、五十万ですか、納付金がありますね。だから、結局それがあるためにできないわけですよ。条文がこういうふうにありながらできないとすれば、条文の趣旨はどういう趣旨か、できない理由はどういう理由が、後は経理局長の答えになるかと思いますが、そういう点をお答え願いたいと思います。
  328. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の破産法百四十条によります国庫仮支弁の制度は、やはり破産手続の費用すら納付できないような債務者の場合を考え規定されたものだと考えております。
  329. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だとするならば、あなた、救済のためにその予算がなければならぬわけでしょう。その予算はどうなっているのですか。これは経理局長の方でしょう。
  330. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 項・裁判費の中に保証金という科目がありまして、ここに五千百三十万ばかり計上してございます。
  331. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、五千百三十万あれば、自己破産の申し立てのときに国庫から支弁するということになるのですか。申立人が――今は大体五十万ぐらいじゃないですか、普通の地裁で。東京はもっと高いかもわかりませんけれども、そのくらい納付させるでしょう。
  332. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 債務者の財産がかなりございまして、そのために破産管財人を選任して手続を進めなければならないケースでは、実際問題として、破産管財人に報酬を支払う等のことがございますので、おっしゃるとおり数十万という予納金になる場合もございますが、いわゆるサラ金自己破産等の事件で、債務者の財産が非常に少なくて、破産管財人を選任せず、つまり費用を償うに足りないということで同時廃止が見込まれる場合には、裁判所によって若干の違いがございますが、二万ないし五万程度の予納金が実情でございます。
  333. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いや、そういうふうにやっているところがありますか。具体的な例を示してください。近ごろですよ。どの程度ありますか。
  334. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 つい最近、昨年の十二月に、破産事件の多い重立った裁判所裁判官等にお集まりいただきまして、事件の取り扱いについて協議をいたしました結果、今申しましたように、同時廃止が見込まれるような破産事件におきましては、各庁によって若干の違いはございますが、二万ないし五万程度の予納金で手続を進めるということが結論として出されておりまして、そういう取り扱いがその後実施されておるはずでございます。
  335. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 同時廃止が見込まれると言っても、それが見込まれるか見込まれないかはなかなかわからないわけです。ですから、とりあえず四、五十万を予納しろというふうになってきておるのじゃないですか、現実問題としては。だから、結局こういう条文があって――もっともこれができたときはそういうふうなことを予想してできたわけじゃありませんから、これは。だから今になってくると違ってくると思うのですけれども、それは実際は使われてないのですよ。活用されてないのです。もっとも余り活用されたら裁判所も困っちゃうというか、次から次へ出てきた日にはあれだと思いますけれども、こういう条文がありながら活用されてないのですよ。一般の被害者の人は非常に困っておるというのが現実ですね。  今、私、二万ないし五万で同時廃止が見込まれるときにというふうなことが去年の十二月に決まったということをお聞きしたものですから、裁判所へ行って、そういう通達が果たして下の方まで行っているのかどうかよく調べてみますがね。そして、その制度がそういうふうならばうんと活用させていただきたい、こう思うのですけれどもね。  そこで、大臣、私が申しましたように、サラ金の問題が起きて、いろいろな問題がありますね、刑事、民事、たくさんの問題が起きておる。これに対して、大臣としてはどういうふうに考えておられるか。これは、考えは大体だれでもあれだと思うのですが、それはいいのです。その次に一体どうするか。どうしたらいいかということについては、大臣としてはどういうふうにお考えでしょうか。直接法務省だけの問題ではありませんから、その点、私もよくわかっておりますけれども、極めて常識的なお答えでいいと思いますけれどもね。
  336. 住栄作

    ○住国務大臣 いわゆるサラ金でございますけれども。正常な金融、そういうことはうまく世の中で行われた方が一番望ましいと思うのでございますが、サラ金に対する需要というものもあるわけでございましょうし、法務省の立場としては、法令に基づく民事、刑事に関連する違法なことに対してはきちっと処理しなければいかぬと思うのでございますが、全体これをどう見ていくかということについてはいろいろ関係する省もございます。金融の立場でどう見ていくとかいうこともございますから、そういうところとも十分連絡をとりながら周知徹底ということも必要でしょうし、それからまた、ある程度国民のそういう立場を考えての金融システムというものもつくり出していく、あるいは検討していくことも必要でしょうし、また、そういうことでかなり賄える面もなきにしも――知らない人もあるでしょうから、そういうことをやって国民の需要にこたえていくということも必要であろうかと思っております。  常識的な答えしかできなくて大変恐縮でございます。
  337. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 常識的な答えを求めておるわけですから、別に恐縮でもないのです。  これは、閣議なんかでこういうふうな問題についてどうしたらいいかということが問題になったことはないわけですか。
  338. 住栄作

    ○住国務大臣 短い経験でございますが、私の承知しておる限りなかったと思っております。
  339. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは法務省だけの所管ではありません。大蔵省その他ずっとありますけれども、そうした一つの消費者金融といいますか、消費者金融と果たして言えるかどうかは別として、そうしたもの全体についての考え方についてはまだ別な機会にお聞きしたいと考えております。  そこで、実は私が疑問に思っていますことは、最高裁判所が各裁判所からどういう統計をとっておるかということなんです。これはどうも要領を得ないですよ。実はこういう例があるのです。  これは、もちろん名前も裁判所も申し上げませんけれども、和解をやっていた。代理人がほかの判決言い渡しか何かでちょっと席を外した。帰ってきたら、その本人が泣いているわけです。どうしたんだろうと思ったら、裁判官から和解しろ和解しろ、この条件をのめと言われてどうしたらいいかわからなくなっちゃって涙を流しているところがあるんですね。そこで、どうもこれは無理じゃないかということで和解は取り消しになったのですけれども、そのときに裁判官がふと言った言葉が、どうもこのごろ最高がなかなかやかましくてなんと言うのです。最高がやかましくて、事件を落とさないと何かになるようなことを言っておられるのです。  だから、結局、最高はどういう統計を一体各裁判所に要求しているのか。また、裁判所が各裁判官に対して要求しているものとこれは違うわけです。各裁判官が所長のところへ出す統計、裁判官が出すのか書記官が出すのか、その統計をまとめたものが恐らく最高へ来るんだろうと思うのですけれども、一体どういう統計を最高は地裁なり家裁に対して要求をしているんですか。それが地裁内部のあれと違うのです。内部では各裁判官ごとのいろいろなものを要求しているわけです。各裁判官ごとに事件が、新受がどのくらいで既済がどのくらいで、今月何件事件が落ちたかということを要求しているはずですよ。  だから、月末になると、今月どうしても落とさなければならないということで一生懸命になって和解だ和解だ。和解をやれば一番いいですからね。判決を書かなくていいし、控訴されるわけでもありませんから、それでやっている例がないとは言えないですよ。あるとは言わないけれども、ないとは言えないということなんで、私の聞きたいのは、最高裁は一体どういう統計を各裁判所に対して要求しているのか。一覧表を出してくれと言ったって出さないのですよ。それから、裁判所が各裁判官に対して要求している統計というのはどんな統計なのか、御説明を願いたいと思います。
  340. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御承知のように、最高裁におきましては、裁判所司法行政を適切に運営するに当たりましてその基礎的資料を得るという業務上の必要性がございますので、毎年司法統計年報を発行しているわけでございまして、それを作成するために各裁判所から最高裁に必要な統計報告をいただいているわけでございます。  これは報告と申しますのは、稲葉委員指摘のとおり、地方裁判所でございますと、その裁判所の未済件数が何件、既済が何件というように裁判所敷位で報告を求めているのでございまして、個々の裁判官とか個々の部についての報告を求めているものではございません。私どもは、そのような個々の裁判官あるいは個々の部の既済、未済件数といったことを承知しているわけではございませんけれども、これも御指摘のとおり、同一の裁判所内でございますと、例えば隣の部同士などでは既済、未済件数の状況といったものはある程度わかるようでございます。ただ、私自身、地裁で仕事をしておりましたときの経験でございまして申しわけございませんけれども、そんなに既済、未済の件数は気にしたことはございません。まあ部同士の競争になるとか、あるいは競争心があおられるといったようなことはないように考えております。  また、月末にもう一件落ちないと困るというような御指摘もございますが、まあ長引く事件は仕方がなく長引くのもございますものですから、どうもなぜ困るのか、その辺はなかなか理解しがたいというようなところでございます。
  341. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 問題は、裁判所の所長のところへ各判事のところから報告される、どういう報告が行くかということですよ、問題は。これは最高ではよくわからないかもわかりませんけれども、各裁判官ごとの統計をとっているわけです。これは間違いないのですよ。それから、いつも話すように、裁判官の成績というと言葉は悪いかもわからぬけれども、控訴審で記録を見ればわかるわけですね。記録を見れば一審でどういうふうな審理が行われたとか、どういうポイントが抜けているとかなんとか、いろいろわかるわけでしょう。だから、非常に控訴を嫌がるわけですね。控訴を嫌がって、何とか和解で片づけよう、和解で片づけようと――人によりますけれどもね。判決を書いて判決を破られたって別にどうとも思ってない人もいるわけですよ。そうでない人は、とにかく和解でやれ、和解でやれと、和解なら控訴ありませんからね。  だから、そういうような形でわんわん和解だ和解だと、初めから和解を勧める人がいるのですよ。第一回の口頭弁論を開いたら、証人申請している。証人を後回しで――採用しているのですよ。採用しているんだけれども、その間で和解だ、和解だ、二、三回和解やるのですよ。事実、争いがあるのですよ。交通事故の場合なんかは事実を認めてしまえば損害額だけの問題になるから和解もしょうがないというか、和解の方が早い場合もありますけれどもね。とにかく急いで急いでやるわけですね。これは私はちょっと考え過ぎであって、顔が最高裁の方へ向いているのですよ。  それで、私、ある裁判官が転勤のときに会ったことがあるのですが、転勤になったという話だったものですから、私もおめでとうございますと言ったら、今度は私も高裁へ行くようになりました、おかげさまで――おかげさまでとは言わなかったけれども、今度は人の判決を見るような立場になりました、こう言われるわけですよ。高裁へ行くというのは非常に偉いことだと思うのですけれどもね。高裁で人の判決を見るのが高裁の判事の一つの、楽しみでもないけれども、あれなんでしょうけれどもね。だから、そこで高裁の裁判官に判決を見られて、高裁の部長会議か何かであの裁判官はできる、できない、すぐわかってきますからね。  だから、何とか和解で片づけよう、和解で片づけようとする、こういうふうなことになるんだと思うのですが、これが少し弊害を呼び過ぎておるのではないかと私は考えておるわけですね。だが、民事の場合はそれはしょうがないのですよ。裁判官が悪くて――悪くてという意味じゃなくて、責任があって裁判が延びる場合も確かにあります。それは結審して判決を書くのが二年も三年もかかるというのなら、それは裁判官の責任ですよ。それ以前の問題は、大体弁護士の責任が多いんですよ。弁護士がその日の朝になって準備書面を書いているようじゃ事件が延びるのは当たり前の話で、また延びるうちにまとまってしまうこともある。だから、そんなに無理して急ぐことはないというふうに私は思うのですが、いろいろな問題があります。  そこで、私、疑問に思いますのは、今度は刑事で裁判官を見たときに、この裁判官はどういう裁判の審理をしていくか、本当に親切に審理していくか、あるいは逆に強権的に裁判をやっていくかということがわかるのは、最初のところの認否の段階です。もう一つは、いわゆる黙秘権の告げ方の問題ですよ。私が疑問に思うのは、被告人にあなたには黙秘権があるのだと言って説明される方もあるし、黙秘権という言葉を全然使わない人もあるわけですね。一体、憲法上、刑事訴訟法上黙秘権という権利があるのかないのか。これは人によって非常に違うわけですね。横井大三さんはあなたの方の最高裁判事だけれども、これは黙秘権なんてない、これは単なる反射的利益だ、こう言っているわけですね。だけれども、聞いてみると、黙秘権があるとはっきり言って説明される裁判官もおられるわけでしょう。どうなんですか、これは。
  342. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 ただいま御質問の点は、これは法令解釈の問題でございますので、私がお答えする立場にはないと思いますので、一般的にどう言われているかということを御紹介させていただきたいというふうに思います。  大まかなところを申し上げますと、御承知のように憲法三十八条の一項は「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」こう規定しているわけでございまして、これはアメリカの自己負罪拒否の特権に由来するのだ、こういうふうに言われております。我が国では、これは沈黙の権利、いわゆる黙秘権というものを積極的に認めたものではない。不利益事項について沈黙できるというようなことは、これは不利益供述を強要されないということの反射的あるいは間接的な利益であるというふうに解するのが一般のようでございます。  ただ、刑事訴訟法の三百十一条は「被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。」こうはっきり沈黙できるということを書いておりますので、これは憲法の趣旨をさらに一歩進めたものであるということで、これをいわば黙秘権という権利であるという理解一般的ではないかというふうに考えております。
  343. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 どっちの方に理解するかということによって非常に違うわけですね。例えば黙秘権を行使したときに、それはけしからぬと言って、それが改俊の情がないというようにしてその量刑に加えるということは、憲法上なり刑事訴訟法上の権利なら私はできないと思うのですね。ただ、それが反射的利益だとなると、それは場合によってはいわゆる黙秘権を行使したことが改俊の情がないということに結びつけられる可能性もあるのじゃないか。一遍それは最高裁の判例はどういうふうに――その点で一体上告理由になるのかならないのか、私は非常に興味深いのですけれども、どうもまだそういうふうなところまでいっていないようにも私も考えられるのです。そうすると、黙秘権を使ったということと、それから、いや、否認します、違いますと言ったことによって一体――違いますと言ったら改俊の情がないのか、反省の色がないということになるのかならないのか、これもなかなか難しい問題だと思うのですよ。だけれども、それは裁判の内容の問題ですから、ここで論議すべき問題ではありませんから、私はそれは聞きませんけれども、それはわかっています。  一番困るのは、やはり言いたいことを言いたいけれども、言いたいことを言うと、主張したいことをすると、あいつは改俊の情がないといってやられてしまうのですよ。実刑を食ってしまう場合があるのですよ。非常にこれは困るのです。だから、日本裁判というのは、とにかく頭を下げてごもっとも、ごもっともと言っておれば改俊の晴があるのだということになって、それで執行猶予をもらえることになるということで、言いたいこと、自己主張ができなくなるというような仕組みが間違いなんです。それは間違いであるけれども、英米法的な純粋なあれじゃないものですから、そこら辺のところは非常に問題があるんですね。それは答えは要りません。ここで答えるべき筋合いのものではないでしょう。ただ、私の常日ごろ感じておる疑問を申し上げるだけにさせていただきたいというふうに思います。  もう一つの問題は、刑事事件で脱税事件ですね。これは告発事件でしょう。脱税事件、税法事件ですね。とにかくこれは長くかかりますね。一番長いのは、一審で二十何年かかったのがありますか。あれは盛岡の事件で、裁判官が何人がわって、検事が何人がわったのですか。盛岡の事件、何年くらいかかりましたか。
  344. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 ただいまちょうど資料を持ち合わせておりませんが、たしか二十五年ぐらいかかったかと思います。
  345. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 二十五年かかった裁判というのは、これは一審でですよ。だから、これは全体として、脱税事件に対する処理の方法については国会で考えなければいけないことだと思うのですね。私ずっといつも聞いておりまして、大臣、非常に不思議に思うことは、私ども立法府でしょう、立法府の者が政府に対して法案を出さないか出さないかと質問しているのですよ。これはあなたおかしいと思いませんか。僕はおかしいと思っているのですよ。おかしいと思いながらそういう質問をしているんだけれども、これは話がおかしいですわな。立法府なんだから、ここは法律をつくるところなんで、行政府が出すのが筋ではあるにしても、それがすべてではないわけなんだけれども、どうも日本のそういう点は私はおかしいと思うのです。  だから、そういうふうに確かに税法事件というのが争われて、いわゆる黙秘権を使われて、全部の証拠を不同意にされてごらんなさい。どんな事件だって十年以上かかってしまいますよ。これは裁判官が土地を三年でかわっちゃう、検事は二年ぐらいでかわっちゃう。もう両方ともやる気がなくなっちゃう。結局、事件が腐っちゃう。俗に言う腐っちゃうのですが、腐ってどうにもしょうがない。こういうやり方ですから、税法関係の事件の処理の仕方は、これは私どもも含めてといいますか、一体にもっと考える必要があるんだと私は思っておるわけです。これは別の機会にどうしても考える方向をフリーなトーキングの中でやっていかなければいけないと思いますね。  そこでもう一つ。いろいろな制度の中の問題であるのですが、私が疑問に思いますことは、簡裁の裁判官の権限の問題があります。今逮捕状を出す場合に、殺人でも放火でも逮捕状を出しますね、簡裁の判事で。勾留の場合はどうでしたか、そこら辺説明していただいて、それらもやはり裁判にかかるということになれば、事物管轄というものの影響を受けざるを得ないんじゃないですか。現実どういうふうにやっておられるか、あなた方御存じですか。  これは逮捕状を請求するときにも、きょうの簡裁の裁判官はだれだということをリストか何か――リストというと語弊があるけれども、回っている、警察が持っている場合があるのですよ。検事の方でも持っているわけですよ。きょうの勾留の裁判官はあれだと言うと、あれはなかなか新しい感覚を持った裁判官で、あれはなかなかやかましいぞ、なかなか勾留してくれないぞというので日にちを一日おくらせますね。今度の裁判官ならば勾留してくれるというふうなことで、警察も検事の方もそれをあんばいしながら請求したりなんかしていることもあるのですね。実際そうですよ。だから、簡裁の判事が殺人だとか放火にまで逮捕状を出すというのもおかしいし、勾留の場合はどういうふうになっていますか。そこら辺のところも含めてどうなんです。どういう制度が一番いいんでしょうかね、これは。
  346. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 ただいまお話しの令状の請求でございますが、これは刑事訴訟規則の二百九十九条というのでございますが、これは、要するに請求者の方がその所属する官公署の所在地を管轄する地裁または簡裁に請求するということになっておりまして、請求者の側にいわば選択権がある、こういうことでございます。御承知のとおり、令状というのは緊急を要する場合でございます。そういうこともありまして、簡易裁判所というのは各地に多数設けられておる、こういうことでもございます。したがいまして、逮捕状等の請求は、簡易裁判所に約八割、地裁に約二割請求されるというのが実情であろうかと思います。勾留の方は、検察庁の方に身柄を送られてそれから裁判所に参ります関係でその検察庁に対応する裁判所に来るということもございますので、約半分になっているわけでございます。  ただいま、殺人とか放火とかいう重い罪について簡裁に令状を請求するのはどうかということでございますが、重い罪でありましても、この令状審査と申しますのは、いわば令状を出すかどうかという、令状発布する理由があるか、その必要性があるかという審判でございまして、量刑だとか犯罪事実の有無ということを、有罪、無罪ということを決することではないわけでございます。むしろ、必ずしもそうも言えませんけれども、軽い罪の方が必要性の判断というものでは難しいという面もございまして、重い罪であれば令状発布の審査が難しいということでもないように思います。いずれにいたしましても、令状というのは緊急を要するということで、なるべく近くということで簡裁に請求されることが非常に多いということにはなっております。  なお、警察の方でリストか何かがあるということでございますが、これは裁判所の方でそういうものをお回ししているわけではない。もしそういうことで人を見て請求するということであれば、これは私どもとしては好ましいことではない、裁判官としては、いずれも同じょうに厳密に審査してやっているというふうに考えておるわけでございます。
  347. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 リストという言葉は悪いのですが、当番表ですね。  すると、今言ったのは、逮捕状の問題は別として、勾留の場合でも、いわゆる地裁事件を簡裁でできるということには規則で決められているわけですか。
  348. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 その点はそうでございますが、実際問題としては重い事実は地裁に来るという場合が多いかと思います。
  349. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 実際はそうではなくて、私の言うのは、これは決められているのは勾留の裁判じゃないのですか、どうなんですか。勾留裁判と言っているのじゃないですか。だから、勾留はそれは規則で決まっているわけでしょう。本法ではちゃんと事物管轄があるわけですからね、裁判所法なり何なりで。それを規則で変えるというのはおかしいのじゃないですか。勾留は裁判でしょう。だから、それに対して抗告なり何なりできるのじゃないですか。私も考え方が熟しているわけではありませんから、あるいは私の考え方が間違いかもわかりませんが、理論的にちょっとおかしいなというふうに私は思うのです。
  350. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 裁判所法では一般の訴訟事件のことを規定しておりまして、その他特別の定めがある場合はそうではないということになっているわけでございまして、これは特別の定めてございます。
  351. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは議論があると思いますよ。それじゃ、なぜ事物管轄というものが必要なんですか。事物管轄に反するものを規則で決めるわけにはいきませんよ、私もよくわかりませんけれども。勾留だって裁判なんだから、やはりちょっと……。あるいは昔からやっていたかもわかりませんよ。昔はどうだったか、ちょっと私も忘れましたが。これはまた後で別の機会にゆっくり研究してから、質問したいと思います。  私は、資料をいただきましていろいろ見たときに疑問に思いますのは、これは判事が九名ふえるということでしょう。そうすると、六十年度、六十一年度というのはどういう計算になってくるのですか。これはたしか判事補が八十何名、ずっとふえたときが十年たって来たので、こういう状況になっておるわけですか。それが一つ。  それともう一つは、この表をいただきますと、欠員があるわけですね。書記官が九十九ですか。事務官が逆に百四十九過員になっていて、その他が百六十三欠員、合計百三十一欠員ですね。これはどうしてこうなっておるのか。一体、これをこのまま放置しておくわけですか。どういうふうにしていくわけですか。
  352. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 まず、お尋ねのうちの裁判官の欠員補充の関係でございますが、この資料の十八丁にございますような欠員が昨年の十二月一日現在であるわけでございます。  稲葉委員御承知と存じますが、大体年度末、二月から三月にかけて退官者等毎年あるわけでございます。結局、この判事の欠員に加えまして、その後四月までに発生いたします欠員、その欠員と今回の増員をお願いいたしております九名を合わせまして四月に充員するということになるわけでございますが、その大部分は、ことしで申しますといわゆる二十六期の判事補でございまして、そのうちで判事になります者が大体七十名近くあるわけでございますが、それで充員するということになるわけでございます。  それから、次に、裁判官以外の裁判所職員の欠員充員の関係でございます。これもたびたび申し上げていることでございますが、書記官等につきましては毎年、年度中に逐次欠員が生じるわけでございますけれども、それを大体毎年四月に埋めていくということに相なるわけでございます。書記官の給源といたしましては、裁判所書記官研修所の養成部を卒業いたします者、それから、いわゆる裁判所書記官任用試験というのを毎年やっておりますが、その数でもちましてこの十二月一日現在の九十九名とそれ以後に生じます欠員を今申しました給源から四月に充員する、そういうことになるわけでございます。  事務官の百四十九の過員のことを今仰せになりましたが、これもいろいろの原因があるわけでございます。主として裁判所書記官研修所に入っております者が、裁判所事務官資格でございますが、それがいずれ四月に書記官になっていくわけでございます。この十二月一日現在におきましては、主としてそういう関係事務官の過員が生じておるということに相なるわけでございます。
  353. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今お話しがありましたのを聞いていて、書記官研修所がありますね。これは廷吏さんなんかが、法学部を出た人が内部の試験に受かって一年間、そうでない人は二年間でしょう。ここへ入っている中で、研修が非常にきついというと語弊がありますが、きついのが当たり前かもわかりませんけれども、ノイローゼや何かになってしまう人がある程度いるという話を聞くのです。そういうことを聞きますと、一体この書記官研修所でどういうことを研修しておるのかということですね。ノイローゼや何かになって、どうなっているのですか。病気になったりする人がいるという話も聞くのですが、現状はどうなのかということが一つ。  それからもう一つ、ついでですから聞きますが、判事補の人は今十年でしょう。それで、特例の者で法廷へ立てる者がありますね、未特例もありますけれども。大体三回ぐらい、大きいところと、大体東京と本庁と支部というふうに大体三つぐらい動くわけですね。そこで、前にも聞いたけれども、よくわからないのですが、判事補の人のいわゆる考課、これをどういうふうにしてやっているのですか。人によると、所長が考課をするのだということで、いわゆる二号カード、第二カードというのですか、それを非常に気にしている人もいるのです。そこへ判事補のいろいろな仕事の成績だとか何とか出ているのですかね。どういうものなのですか。この二つの質問ですね。
  354. 大西勝也

    大西最高裁判断長官代理者 御質問のまず第一点でございますが、書記官研修所における書記官養成課程におきまして、今仰せになりましたのは、ノイローゼになるというふうな事例がないかということに関連することでございますが、改めて申し上げるまでもないことでございますが、書記官研修所といいますのは書記官に必要な基礎的知識、技能というものを教育する養成機関であるわけでございます。大学法学部卒業につきましては一年、それ以外につきましては二年という養成期間でやっておるわけでございます。  教科といたしましては、先ほど目的として申し上げましたような書記官として必要な基礎的知識ということでございますから、例えば裁判官、検察官、弁護士に必要なような法理論をきつく詰め込むというようなことをやっているわけではございませんで、書記官として必要な基礎的知識、技能というものを授けるということでございます。具体的な教科といたしましては、法律科目もございますし、調書の書き方のような実務的な科目もございますし、そのほかに見学でございますとか、一般教養の講演とか、体育まで入っておるというふうなことでございますが、何分入っております人数が多うございまして、若い人もありますし、かなりの年輩の人もあるわけでございます。遠くから来ておるというような人もございます。  それぞれの人によることではございますが、確かに、仰せられるように、そんなにたびたびということではございませんが、寮に入りまして長い間家族に会わない、そういう人の中で、例えば気の弱いような人でややノイローゼぎみになる人が時にはあるというふうに申し上げられるかと思いますが、そんなにたびたびあるというほどのものではございません。時にはそういうこともあることは事実でございます。  それから次に、第二点の判事補の考課の問題でございます。  これは判事補ということには限りませんで、裁判官全体に通じるようなことでもございます。これは日本国全体にたくさん裁判所があるわけでございますから、裁判所といたしましては、できるだけ均質な裁判官を各所に配置しておくことをいたしたいということもございますとともに、また適材適所というふうな要請もございます。実際問題として人事をいたしますためには、そういう意味で、この人はどの裁判所に行ってもらうのがいいかということを考えますためにある程度の材料というものが必要なわけでございます。その材料をどうして集めるかということになりますと、これも前にお答えしたかと思いますが、最高裁判所が直接全部を見ておるというわけのものでもございませんで、結局は、それぞれの裁判所で同僚も見ておりますし、部総括も見ておりまして、そういうものを所長、高裁長官を通じて我々の方に知らせていただくということがあるわけでございます。  それ以外にも、高等裁判所でございますと、先ほど稲葉委員も御指摘になりましたように、控訴が上がってきますとある程度わかるということもあるわけでございます。最高裁判所自身も、上告が上がってまいるのを見ておりますと、その裁判官の力量と申しますか、そういうこともわかることがあるわけでございます。当事者の方もごらんになっておられますと、弁護士さんからごらんになりますと、この裁判官の力量というのもよくおわかりになられるのではないかというふうなこともございます。そんないろいろな材料を集めまして人事をやっておるということでございます。  ただ、裁判官の第二カードと申しますのは、今までのその人の職歴、民事、刑事をどれだけやったかとか、現在何をやっているかとか、将来の任地希望がどうだとか、そういうようなことを各人が書きまして、その上に所長とか長官が、例えば異動についての本人の希望というものについてどういうふうに考えるかというふうなことが書いてある、そういう資料でございます。
  355. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、私が言ったように、高裁に行くとその裁判官の力量がわかるのですよ。和解にすればその力量がわからないわけですよ。だから、和解にしよう、こういう動きが強くなってくるのです。今、あなたが力量がわかると言った。じゃ、地裁の所長は裁判官の力量をどうしてわかっているのですか。あなた、それが第二カードの裏の所長の意見のところにちょっと書いてあるのじゃないですか、その裁判官はどの程度の力量だということが。そうでしょう。力量という言葉をあなたが言われたからそういうふうに次の質問が出てくるのです。言われなければしょうがないけれども、そう言われた以上は次の質問が出てくるのですよ。だから、みんな第二カードというものを非常に気にするのですよ。気にするのは気が小さい裁判官だ、けしからぬというかもわからぬけれども、そういうふうに気にするのですね。ここで議論するのも、内部のことですから余りあれだと思いますがね。  それから、さっきの質問の中で出てきましたね。高裁の事務局長は、条文では判事を充てるとは書いてないわけですね。ところが判事を充てる。なぜかと言えば、答えは簡単でしょう。高裁管内の裁判官の人事を扱うんでしょう、事務局長は。そうすると、判事から見れば、事務官が、判事でない者がおれたちの人事を扱うなんて何事か、裁判官でなければあれだということで裁判官を充てているのが実情じゃないんですか。そうでしょう。まあ答えはいいですけれども、そういうふうなことなんですよ。  そこで、皆さんおそろいですから余り聞きませんが、実はこういう話があるんですよ。私、非常に感心しましたエッセイがあるんです。二つお話しします。  一つは、山形の裁判所の所長をやっておられ、それから甲府に来られた方で、それが勉強会を裁判所の中で開いておられて、守衛さんが書記官試験に受かったというんですね。廷吏さんじゃないんです、守衛さんなんですね。試験に受かったというので、自分のところでできた山芋かなんかを提げて所長官舎にお礼に来た。暗記したような言葉をずっとしゃべって、そしてお礼して帰っていったという非常にいいエッセイですね。私は、ほのぼのとしたエッセイだと思ったのですが、そういうふうに勉強会なんかやって、みんなで仲よくやって勉強して、非常に一生懸命やっている所長もおられるわけですね。  ただ、私は、所長というものの役割に疑問を持っているのですよ。所長というのは果たして必要なのかどうか、一体何をやるんだろうかということを私は疑問に思っているのですけれども、そういうふうなエッセイがありまして、非常に打たれたのです。  もう一つこんな話があるのです。この話で終わりにしますけれども、修習生が裁判官の官舎に日曜ですか遊びに行ったわけですね。そうしたら、昼間だったのですけれども、そこからネズミが出てきたのですよ。裁判所の官舎からネズミが出てきたのです。修習生は驚いたんですね。そうしたら裁判官が言ったというんですね。裁判官の官舎で昼間ネズミが出てくるくらいのことで驚いて、そんなことで裁判官になれるかと言ったというんですね。修習生は非常に感心しまして、これは本当にいい裁判官だと感心したというお話なんです。それはつくったような話ですけれども、本当の話ですよ。その裁判官は非常にいい人でしてあれでしたけれども、そういうふうな官舎でも何でも、一体裁判所はもっとしっかり予算を取るように、さっきも出ましたけれども、二重予算の制度もあるわけですから、もっと活用するようにしたら私はいいんだと思うのですが、その点どうも少し遠慮がちではないか、こういうふうなことを考えますね。  こういう二つの話、エピソードと言えばエピソードですけれども、前と後の話とちょっとつながりませんけれども、お話をさせていただきたい、こう思ったわけです。  いろいろ問題がありますけれども、この裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、これは九名をふやすということだけの法案ですから、これで質問を終わります。まだほかにたくさんいろいろ質問したいことがありますけれども、別の機会にさせていただきたい、かように思います。  終わります。
  356. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  357. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  358. 宮崎茂一

    宮崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  359. 宮崎茂一

    宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  360. 宮崎茂一

    宮崎委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時散会