○三浦(隆)
委員 今の厚生省あるいは文部省、外務省の答弁を聞きましても、開かれた対応の
姿勢というのがうかがえるように思います。そしてそのことは、
国会冒頭における首相の発言、外相の発言、みんな同じ流れだと思います。
日本を挙げて
国際化への広い対応をしようとするとき、法務省だけがそれに背を向けるような発想というのは次第に改めていかざるを得ないのではないかと私は思います。
そしてまた、外登法に
外国人だからというそのことだけにかかわって、例えば常時、証明書を見せなさい、見せないんですね、じゃあ捕まえますよ、いけないことですよというのは、確かに法に合っているようではありますけれ
ども、
現実に今私たちの身の回りにございます法の中には、法の規定どおりすぐに取り締まる、いわゆる法を厳格に適用するものと、ある程度かなりあいまいにするものとあるわけです。これは人間
社会をスムーズに運営する上において必要なことだと思います。そのとき、
日本人に対してはあいまいな
姿勢をとって、
外国人に対してだけは厳しい
姿勢をとる。もし仮にそうするならば、これは相手から見たら
日本は何と偏屈な狭い国だろうというふうな、いわゆる差別的な感覚を持たれるだろうと思います。
そこで、時間もありませんので、どういうものがあるか概略的にちょっと
紹介させていただきます。
すなわち、一般法の中には法規違反を犯しましても、
現実には現行犯で逮捕されたり告発されたり処罰されない
事例というのは幾らでもあるのだということです。例えば御
承知の未成年者飲酒禁止法、満二十歳に至らない者に対して、酒を飲んじゃいかぬのだ。この場合に、親権者あるいは親権者にかわる監督者あるいは営業者に対して科料にすることができる。親権者にかわる監督者であるならば、これは場合によっては学校の教員であるかもしれません。
あるいは未成年者喫煙禁止法、お酒じゃありません、たばこの禁止法もございます。これにしましても科料、罰金の規定がありますが、もし捕まえるというだけであるならば、どこの大学へ行ったって現行犯逮捕だろうがいとも簡単にできるわけです。だけど
現実にはそれがそのままという事態が幾らでもあるじゃないかということです。
あるいはまた、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する
法律、いわゆる酒酔い法でありますが、世の中に酔っぱらいなんというのは幾らでも見かけるところであります。
あるいは軽
犯罪法の一条の二十二号には、こじきをしたり、あるいはそうさせた者についてはいかぬというのがあるけれ
ども、
考えてみれば、横浜の野もの浮浪者襲撃
事件を起こした子供たちも、そういうこじきをして浮浪者でいる人たちがいなければ
事件は起こらなかったかもしれない。だけど
現実には
方々にあるわけです、この寒空の中に。だけど見逃されているケースは幾らでもあり得ます。
特に、例えば鉄道営業法の十五条二項というのをごらんいただきたいと思うのです。「乗車券ヲ有スル者ハ列車中座席ノ存在スル場合ニ眼リ乗車スルコトヲ得」と書いてあります。
現実、こんな姿なんかめったにないじゃないですか。ラッシュのとき後ろを押しているのはどういうふうになっちゃうのかというふうなこともあり得るわけです。
あるいは教員、公立中学その他における学校の教員にしろ、教育公務員特例法なりあるいはそれに準じた国家公務員法なり人事院規則なりあるいは各種の法規に違反してストを行っている教員の数なんというのは幾らでもあるじゃないですか。にもかかわらずその後それがそのまま見逃されているケースというのも、もう毎年のように数知れずであります。あるいはことしの春だって春闘の問題でもって違法ストに走る教員だっているかもしれない。本来、法に触れることがいけないというのであるならば、これらはみんな許されない、いけないことであります。
そうしたときに、
外国人登録法の場合の、形式上抵触したとはいえ、指紋の有無とかあるいは証明書携帯の有無というのは
刑法犯とは違うのでありまして、
刑法犯のごとく法の命令、禁止をまつまでもなくその行為自体が反
社会性、反道徳性を有し、その行為を処罰することが
社会通念上、また
国民の健全な法感情の上からも当然視されるケースではない。これが一般的な
外国人登録法です、行政法です。単に行政上の目的のための命令、禁止に違反するゆえをもって処罰されるにすぎないのではないでしょうか。指紋については、科学の著しい発展に伴い、警察などにお聞きしますと、指紋の自動識別装置というのは大変に進んでいるというふうにも伺っているわけです。こうしたことを踏まえながら、
外国人登録法の法規の見直しというふうなことも行われてもよいと私は思います。あるいはまた、この外登法の十一条の登録証明書の切替交付あるいは十三条二項の登録証明書の提示
要求、こうした場合にも、実務的にも市役所の窓口業務や取り締まりの第一線に立っている人が指紋の照合というものを逐一適切に行っているかどうかというのが、これは疑わしいというよりも事実上やっていないのじゃないでしょうか。これに関する質問もしたいのですけれ
ども、そして御用意もいただいているかと思いますけれ
ども、時間がございますので、ちょっと申しわけない、飛ばさせていただきます。
そこで、改めて法務省にお尋ねをしたいのです。
第一点は、外登法の目的というのは、
外国人の居住
関係及び身分
関係を明確にするため、そのことによって公正な管理をしようというわけでございまして、はっきりと二つなんです。居住
関係と身分
関係の明確なんです。「そのほか」「など」とか、そういう言葉は一切ないのです。「公正な管理」というのは、条文によれば、居住
関係、身分
関係の明確によって公正な管理はなし得るように条文の規定ははっきりと書いてあるわけです。とするならば、これははっきり言って
犯罪の発見や抑止のためにあるものではないはずです。そして、そのことは前に
法務省入国管理局の
参事官をされた方の
新聞投書の中でもはっきりとうたっているわけなんです。外登法というのははっきりと
犯罪の発見、抑止のためにあるのではない、まずこれを確認したいと思います。
第二点は、行政法規、特に外登法のように
外国人を対象とする場合には、戦前の
日本における公権力の優位性をことさらに誇示するような官僚行政主義や行政国家主義的な対応と誤解されるかのような法の解釈、適用というのは避けるべきではないだろうか。
第三点、二十一世紀に向けて政府が挙げて隣国の韓国を踏まえ世界の諸国家との協調体制を一層強固に推進しようとしている現在、法務省としても、少なくとも協定永住者たる
外国人に対しては
日本人に準ずる取り扱いを行ってもよいのではないかというふうに思います。
第四点、不法入国者や不法入国により
犯罪を犯す者と合法的に居住し生活を営む協定永住者を形式的に
外国人であるということで同一視してはならない。すなわち、前者を取り締まる法は外登法と切り離して、必要とあらば別法として立法化するよう
考えればよいのじゃないかというふうに思います。
以上についての御答弁をお願いいたします。