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1984-07-20 第101回国会 衆議院 文教委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月二十日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 石橋 一弥君 理事 大塚 雄司君    理事 白川 勝彦君 理事 船田  元君    理事 佐藤  誼君 理事 馬場  昇君    理事 中野 寛成君       青木 正久君    稻葉  修君       臼井日出男君    榎本 和平君       北川 正恭君    河野 洋平君       坂田 道太君    二階 俊博君       葉梨 信行君    木島喜兵衞君       佐藤 徳雄君    田中 克彦君       中西 績介君    池田 克也君       伏屋 修治君    滝沢 幸助君       藤木 洋子君    山原健二郎君       江田 五月君  出席国務大臣         文 部 大 臣 森  喜朗君  出席政府委員         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房会         計課長     坂元 弘直君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局長      宮地 貫一君         文部省学術国際         局長      大崎  仁君  委員外出席者         総務庁人事局参         事官      上吉原一天君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ――――――――――――― 七月十九日  私学助成増額に関する請願網岡雄紹介)  (第八〇三九号)  同外三件(草川昭三紹介)(第八〇四〇号)  教育職員免許法等の一部を改正する法律案反対  等に関する請願外二件(天野等紹介)(第八  〇四一号)  同(網岡雄紹介)(第八〇四二号)  同(伊藤茂紹介)(第八〇四三号)  同外一件(小川仁一紹介)(第八〇四四号)  同外一件(小沢和秋紹介)(第八〇四五号)  同外一件(大出俊紹介)(第八〇四六号)  同(奥野一雄紹介)(第八〇四七号)  同(加藤万吉紹介)(第八〇四八号)  同外四件(川崎寛治紹介)(第八〇四九号)  同(木間章紹介)(第八〇五〇号)  同(小林恒人紹介)(第八〇五一号)  同(左近正男紹介)(第八〇五二号)  同(佐藤観樹紹介)(第八〇五三号)  同外五件(嶋崎譲紹介)(第八〇五四号)  同外六件(田中克彦紹介)(第八〇五五号)  同(田邊誠紹介)(第八〇五六号)  同(辻一彦紹介)(第八〇五七号)  同(中村正男紹介)(第八〇五八号)  同(正森成二君紹介)(第八〇五九号)  同(松浦利尚君紹介)(第八〇六〇号)  同外一件(松前仰君紹介)(第八〇六一号)  同外一件(水田稔紹介)(第八〇六二号)  同(安田修三紹介)(第八〇六三号)  同(山中末治紹介)(第八〇六四号)  同(横山利秋紹介)(第八〇六五号)  同(渡辺嘉藏紹介)(第八〇六六号)  同外二件(渡辺三郎紹介)(第八〇六七号) 同月二十日  私学助成大幅増額実現等に関する請願(土井  たか子君紹介)(第八二九九号)  教育職員免許法等の一部を改正する法律案反対  等に関する請願五十嵐広三紹介)(第八三  〇〇号)  同(伊藤忠治紹介)(第八三〇一号)  同(小川省吾紹介)(第八三〇二号)  同外六件(小川仁一紹介)(第八三〇三号)  同(岡田春夫紹介)(第八三〇四号)  同外二件(木島喜兵衞紹介)(第八三〇五号  )  同(佐藤誼紹介)(第八三〇六号)  同外一件(富塚三夫紹介)(第八三〇七号)  同(山口鶴男紹介)(第八三〇八号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第八三八四号)  大学院生・研究生学術研究条件改善等に関す  る請願(有島重武君紹介)(第八三〇九号)  養護教諭配置等に関する請願木島喜兵衞君  紹介)(第八三八三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件(国立大学にお  ける物品購入をめぐる不祥事件)  文教行政基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  本日は、午前中特に、国立大学における物品購入をめぐる不祥事件について質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。船田元君。
  3. 船田元

    船田委員 大阪大学とそれから文部省本省においていわゆるワープロ汚職発生をいたしまして、本委員会でもこの事件の重大さというものを考えて、きょう午前中集中審議の時間をとることになったわけでございます。私も、自民党としまして、十五分の短い時間でございますけれども、時間を与えられましたので、若干の御質問文部省に対していたしたいと思います。  一昨日のこの委員会におきまして、冒頭に文部大臣から、この件に関してはまことに遺憾である、そして徹底的にこの問題の原因究明して二度と起こらないように努力をしたい、こういう発言がございました。それから、官房長よりその事件の概要についても詳しく報告があったわけでございます。  昨今の教育をめぐるいろいろな事情、例えば少年非行の多発、それから校内暴力件数の増加、こういうことで非常にいろいろな問題が出ております。数日前には文部省の方から、昨年度校内暴力発生件数がその前に比べて一六%近く減少している、こういう話も出たわけでございますけれども、しかし、その事態の深刻さというものはまだまだ続いていると思っております。  そのような現在の教育の諸問題を解決しよう、こういうことで臨教審を発足させて、それによって現在の教育のいろいろな問題を解決しよう、こういうやさきに、その事務局として働くはずの文部省、その本省職員汚職に巻き込まれた、こういう問題は、私どもにとりましても非常に残念な事態で仕方がございません。この問題は二度と起こらないように文部省は省全体を挙げて努力をしていただきたい、そう思うわけでございます。  この再発の防止のためには、私は、まず文部省中心となって、この問題がどうして発生をしたのか、その原因究明というものを徹底的にやつていただきたいと思うのでございます。現在は、精細な部分においては、捜査当局にその捜査をゆだねている、こういう関係もございまして、余り詳しいことはまだ文部省内でもおわかりでないと思いますけれども、しかし、現在の段階文部省がつかんだ事実、特にその原因ということについて、わかっていることがありましたら御報告をお願いしたいと思います。     〔委員長退席大塚委員長代理着席
  4. 西崎清久

    西崎政府委員 今回の事件は、御指摘のとおり大変遺憾な事態でございまして、私どもも厳しくこの事態を受けとめておるわけでございます。  そのよって来る原因、事実関係につきましては、先般若干申し上げたところでございますが、大阪大学におけるワードプロセッサー購入関連いたしまして、中曽根経理部長がその購入に関する利益誘導的な立場金品を収受した、こういうケースが一つ、それから、本省における総括予算班主査鳥野党博予算配分関連いたしましてやはり金品の収受を行ったという事実関係でございます。  この点につきましての原因背景等につきましては二つあるわけでございまして、一つは、公務員としての服務の基本の問題、倫理の問題、これを厳しく問わねばならないという事態があるわけでございます。その原因の問題が一つと、それからさらには、予算執行関連いたしましての問題といたしまして、その実情においてその原因改善検討をいたさねばならないという、二つの点を私ども受けとめておるわけでございます。  そのような経緯から申しまして、大阪大学関連におきましては、大学二つ委員会を設けまして、一つは、事務処理に関しての原因改善に関する検討をどういうふうにしていくかというふうなところで、事務局長を長といたしまして検討委員会を設けておる次第でございます。それから、二つ目委員会といたしましては、教職員全体の問題として、綱紀の問題を含めましていろいろと検討すべき点についての委員会を組織する、これは学部長レベル構成メンバーとするものでございますが、この二つ目委員会も発足させまして、大阪大学自体としてはその検討改善に取り組んでおるというのが現状でございます。  それから、本省の問題といたしましては、事務次官をキャップといたしまして、事務処理の問題を含め原因究明その他改善方策に関しての検討会を設けまして、私どもこれからも鋭意検討を進めてまいりたいというふうな段階にあるのが現状でございます。  以上でございます。
  5. 船田元

    船田委員 この問題の中心であるワープロですけれども、これは各企業やそれからもちろん大学、いろいろなところにどんどんワープロ導入をされている。それによって事務処理も非常に合理的になる、こういうことでかなり普及をしておるわけでございますけれども、今回のこの事件大阪大学の四十三台ですか、四十八台ですか、この購入に関しての問題があったわけでございますが、当然ほかの国立大学でもワープロ購入というのは複数行われたと思います。これに関しましては、この大阪大学だけに限らずほかの大学にも波及するんではないかというような憶測も流れているように感じておりますけれども文部省としてはこれまでの調査の中で、果たしてこれが波及するのかどうか、その件に関して何か見解があればお聞かせ願いたいと思うのです。
  6. 西崎清久

    西崎政府委員 御指摘のとおり、今回の事件ワードプロセッサー起因として起きておる事態でございまして、ワードプロセッサー自体は、事務合理化近代化という線に沿いまして国立大学でいろいろと検討が進められ、その推進が図られておるところでございます。  他大学への関連といたしましては、大阪大学以外の問題といたしまして、従来の当初配分予算の中で大学自体考え方ワードプロセッサー購入しておる大学というものもかなりあると思うわけでございます。しかし、当初予算配分以外の問題として、追加予算申請を行い、ワードプロセッサー導入を図り近代化を進めるという大学があるわけでございまして、大阪大学もその一つでございます。私ども、五十八年度の実績といたしまして追加予算配分に係る大阪大学以外の大学として押さえておりますのは、十八大学があるということを承知しておるわけでございますが、これらの詳細につきましては、原議書その他捜査当局に提供しておりまして、今つまびらかに申し上げることが難しいわけでございますが、私ども追加予算配分に係る他の十八大学につきましても、ワードプロセッサー購入されておることは予想しておりますが、ただ、どの会社からどういうふうに買ったかという点についての事実調査は、捜査との関係で現在控えておる次第でございまして、そのような事態が、つまり大阪大学におけるような事態が他大学にもあるとは、私どもは現時点では考えておらないわけでございまして、そのようなことはないということを信じておる次第でございます。
  7. 船田元

    船田委員 今の官房長お話を聞いて若干安心はしたわけでございますが、私も、この問題がほかに波及しないように信じていきたい、こう思っておるわけでございます。  それから、今官房長お話の中にありましたように、今回、鳥野見主査がその地位を利用してワープロ購入のあっせんをした、これが問題の一つであったわけですが、そのときに非常に注目されたのは追加予算という考え方でございます。これは、本省が若干の留保予算を持って、そしてそれを各学校要求に従って年度途中ではあっても追加配分する、こういう仕組みが慣例化しておるようでございます。これについて、こういう問題が発生したからその追加配分あるいは留保予算というそのものがいけないのだというような短絡的な考えあるいは意見というものも出ているようでございますけれども、私は、年度当初の予算というのはあくまでも予測でやっておるわけでございますので、年度途中で生じたいろいろな問題に対して対処するためには必要な予算措置ではないか、こう考えておるわけでございますけれども文部省としては、この留保予算あるいは追加配分、そういう予算仕組みについて一体どういうお考えを持っているのか、これからこれをどうしようか、そういうことについてお考えがあれば述べていただきたいと思います。
  8. 西崎清久

    西崎政府委員 御指摘国立学校特別会計予算に関する追加配分予算の問題でございますが、この国立学校特別会計に関する予算配分は、原則といたしまして、年度当初に当たって各大学に対し、学生数、教官数等の基礎単位に基づく計算で配分を行うというのが原則でございます。しかし、この原則に対する例外といたしまして、年度途中の追加配分ということで若干の予算を留保するわけでございますが、その考え方二つございまして、一つ文教施設費文教施設費と申しますか、国立学校施設費に関する予算は、年度途中で四半期ごと財政当局実施協議ということをいたすわけでございます。したがいまして、国立学校施設費に関する予算実施協議が調いましたものについて逐次年度途中に配分をしていく、これは大学則でございますが、そういう意味におきましては、国立学校施設費はすべて年度当初の当初配分からは除かれておる、これが一つございます。  もう一つのものといたしましては、国立学校の全体、年度間の運営において、当初にその需要が予測しがたいものとして、例えば退職手当などは年度末でございまして、どの程度の退職手当が必要になるかというのは、少し時期が押し詰まりませんと需要額は判明しがたいとか、年度途中の際はどのくらいあるか、あるいは実習船経費でありますとか留学生経費、あるいは災害に伴う経費とか、それからいろいろな教育計画とか、事務のいろいろな年度途中の計画実施において必要な設備関係経費、こういうふうなものがございまして、それらの需要にこたえるためのものとして、予算留保をした上で実施協議を受け、年度途中で配分をしていく、こういうふうなシステムをとっておりますのが、いわゆる御指摘留保予算システムでございます。  したがいまして、私どもとしては、やはり国立学校特別会計運営といたしましては、この制度は必要であるというふうに考えておるわけでございますが、本件自体においての追加予算に係るワードプロセッサー問題ということを考えますと、その各大学からの申請と、私どものその認定、配分というプロセスで、意思決定の問題その他事務処理においていろいろと問題があったのではないか、これらの点についての改善すべき点は改善する必要があるというふうに厳しく受けとめておるわけでございますが、全体の仕組み自体の問題としては、特会予算執行上必要なものであるというふうな認識をしておる次第でございます。
  9. 船田元

    船田委員 確かに、この留保予算とか追加配分ということは、文部省に限らずすべての省庁に共通した一つの慣例になっておるわけでございますから、これについて、それがいいとか悪いとか言うべき問題ではなくて、やはりその予算を有効に生かしていくというために必要な措置である、私はそう考えております。ただ、問題は、やはり鳥野見主査のいろいろな行動から見てもわかりますように、その予算配分するときの意思決定のあり方、あるいは複数の人間が内部でチェックをする、こういうことがやはりこの際必要であると私は思いますので、多分、本省の中でも検討委員会ができたようでございますから、そこで十分に話し合って善後策検討していってもらいたい、そう思うわけでございます。  最後になりますけれども、私が最初にやはり申し上げましたように、現在文部省は非常に重要な立場に立っておるわけでございます。一つは、臨教審がいよいよ発足しようかというところに来ております。それともう一つは、来年度予算概算要求の時期にもこれから入っていくわけでございます。ことしはマイナスシーリングではなくて概算要求基準というものへ変わるとかどうとかいう話を聞いているわけでございますが、いずれにしても、財政が厳しい中で、この概算要求そのものもかなり厳しい状況の中でやっていかなければいかぬ、こういうふうに私も考えておるわけでございます。そういう厳しい予算の時期、それから臨教審の発足を控えているこういう時期でございますので、今後の文部省としての行政運営にはいささかの停滞あるいは支障というものを来しては絶対にいけないわけでございますので、その辺は心して文部省としてはかかっていただきたいし、また、二度とこのような問題が起こらないように文部省としても汗を流して努力をしてもらいたい、そのように考えるわけでございますが、最後に、このようなことについて大臣決意をお伺いをしたいと思います。
  10. 森喜朗

    森国務大臣 船田さんから、かかる事態に対しまして、文部省をある意味ではおしかりもいただきながら御激励をいただいておりますことに対しまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。  先般の当委員会でも申し上げましたように、このような事態になりましたことにつきまして、もうただただ残念でしょうがないというのが私の率直な気持ちでございますが、事態解明につきましては、検察当局捜査を待つということでございますから、そのことと、やはり文部省全体の問題点究明するということとはまた別問題でございますので、たびたび申し上げておりますように、検討委員会を設けまして、こうした予算仕組みあるいは物品購入等仕組み等々につきまして、こうした問題が二度と起きないようなそういう解明をしながら、新たな制度上の方策考えてまいりたい、こういうふうに考えております。  なお、文部省職員全体、私以下全員、国民皆さんに極めて申しわけない、こういう気持ちで、文教行政になお一層努力を続けてまいりたい、こう思っております。先生からも御指摘いただきましたように、このために、文部省が非常に大事な時期に来ておりますだけに、国民皆さんからも信頼を一日も早く回復をいたしたい、こういう気持ちで、一日も停滞のないように、文教行政支障がないように、なお一層努力してまいりたい、このように考えておりますので、どうぞ船田委員を初め皆様方にも今後とも一層の御支援と御鞭撻を賜りますようお願いを申し上げる次第でございます。
  11. 船田元

    船田委員 終わります。
  12. 大塚雄司

  13. 木島喜兵衞

    木島委員 今、船田さんからも最後に御質問ございましたけれども教育改革をやろうというそのときにおいてということであります。  この前もちょっとしゃべったかもしれませんけれども日本教育改革は、明治の初めと敗戦のとき、これは、一つは外国からの刺激そして日本独自のものであって、そのことが同時に、例えば明治の初めには近代化、あるいは敗戦後においては民主化という社会構造全体の変革を前提にしたところ教育改革であった。今教育改革が叫ばれているのは世界的な傾向である。日本独自の問題ではない。そして、そのことが先進国全体の問題だということは、すべてとは申しませんが、一つ産業社会病理起因をしておる。その産業社会病理一つである、金が最高の価値だということに今回の問題が出発したとするならば、教育改革を行おうとするその中心の府の中に産業社会病理が入ってきたということになれば、その病理によって侵食されておることになるならば、その府が中心になって教育改革を行うことができるのかという国民の不安があるのではないかという気がいたします。  今、森さんからもお話がありましたけれども、そういうことに対するところ基本的な見解をまず承りたいと思います。
  14. 森喜朗

    森国務大臣 文部省の今の立場から、いわゆる産業社会におきます病理、こうした問題に対しまして私から見解を述べるというのは、非常に正直言ってつろうございます。何を今さらというおしかりをいただくような気がいたします。     〔大塚委員長代理退席船田委員長代理着席〕  しかし、一般的に言って、私も常に思っておりますことは、文明社会文明というのがいろいろな意味でどんどん進んでまいります。技術革新技術が進歩するということは、ある意味では大変世の中が便利になる。便利になっていくことによって人間の持っております心というものの機能がだんだん麻痺させられる。いろいろな意味で楽な世の中になれば人間心的麻痺というのが起きてくるわけであります。そういうこととこの問題と関連があるかどうかわかりませんが、そういう意味で、教育というのは、基本的に人間が一番大事にしなければならぬ精神というもの、もう少しより確実に人間として当然行わなければならぬこと、また人間として当然わきまえていかなければならぬということを、もっと基本的に教えるということがいよいよ大事な時期に入ってくるというふうに私自身は一般的にそう考えております。  ただ、先ほど申し上げたように、繰り返すようで恐縮でございますが、文部省自体、こういう問題が起きたことに対しては本当に申し開きができる立場ではございません。しかし、産業社会全体がいろいろな形で病理を生む、そして、そのことがまさかと思われるような大学にも、あるいは文部省にまで及んできておるということに、正直言って私ども立場からいえば非常に迷惑な話でもありますが、本当に大変な事態にまで来ているのだなということを感想として持つわけでございます。  文部省自体の問題としては、なお一層文部省自身教育の模範になっていかなければならぬ立場でございますだけに、職員全体が極めて遺憾な気持ちでこの問題を反省をいたしておると思います。私どもとしては、十二分に反省をしながら、国民皆さんにどうぞそのことによって日本教育がおかしくならないように、そして文部省自体信頼というものが薄らいでいかないように、そのことに一生懸命努めてまいりたい、こういうふうに考えます。
  15. 木島喜兵衞

    木島委員 殊に、各官庁の中にとかくこういう事件が起こりがちの中で、文部省本省とすれば戦後初めてだと言われております。今申しますように、他の官庁の中に多い中で、さすがは教育の府、さすがは教師や子供の乾たる文部省というその誇りを今回汚したことになることを、私は大変に残念に思うのであります。このことを、傷つけられたこの傷をどう――このとき起こったことは起こったことで仕方がないけれども、このことに対する今回の対処の仕方が、さすがは他の官庁とは違う、さすがは文部省である、起こったけれどもこれに対するところの対応はさすがだと言われることによって、せめて、対応すること、対処することによってこの傷つけられた誇りをどう確立するか、私はそこが今文部省に問われた一つの問題だろうと思うのであります。原因の根本的な究明と抜本的な対策を樹立するところの覚悟のほど、決意のほどをお示しいただきたい。
  16. 森喜朗

    森国務大臣 木島さんの御指摘のとおりでございまして、予算仕組み物品購入等につきましては、確かに大学自主性あるいは学問の自由自治という問題と文部省との絡み、そういうことはまさに信頼関係の上に成り立ってくると思うのです。また、予算を留保して後ほどその予算計上をしていくという仕組みなどについても、あるいはまた予算を統括して責任を持っている人たちにとっても、当然人間としてそしてまた文部省職員としての信頼関係の中にこの制度が成り立っているわけでございまして、しかしその信頼関係がこのことによって薄らいでくるあるいは崩壊をしたということであるとするならば、先ほど船田さんの御質問にもございましたが、基本的にはむしろ学術研究を進める上でこの制度はいいという形で持っておった制度でございますから、そのことも含めながら文部省としては新たなる検討を加えていかなければならぬ、こういう意味検討委員会を今設けておるわけでございます。  責任につきましては、私以下全職員がその責任を痛感をいたしておるわけでございまして、検察当局のその結果をまち次第、本人はもちろんのことでございますが、私ども責任のあるそういう立場の者を含めてその責任を国民の前に明らかにしていかなければならぬ、このような気持ちで臨んでおります。
  17. 木島喜兵衞

    木島委員 とかくこういうことが起こりますと官庁はかばいたがります。かばうということは、その本人をかばうというのと同時に、自分の役所をかばうことにもきっとなるのでありましょう。今大臣がおっしゃいましたように、検討委員会がつくられたという話がございますが、どうか、今回の事件を、このことを転じて福にするためにと、そういう意味のことを今大臣がおっしゃいましたが、そういう気持ちでとことんやる、同時に、それは公表する、世間の批判を浴びる、そのことが他の官庁と違う、さすが文部省だ、さすが教育の府だと言われることにつながるのじゃないだろうか、とかくよくありますようにかばいたがる、私はまず第一にその腹構えが必要なんじゃないか。御答弁をお聞きしております中にも、ややもするとそういうことをちょっと感ずるものでありますから、あえてそのことをお聞きする次第であります。
  18. 森喜朗

    森国務大臣 私以下、文部省、特に幹部は、かばい立てをしようという気持ちは全くございません。ただ、先ほどこの仕組みについて船田さんからも御指摘がございましたが、あくまでも学問を研究を進めていく、その上に少しでも都合のいい、という言葉はちょっとまずいかもしれませんが、できるだけ効率よくということで、こういう予算の留保のような仕組みも残してあるわけでございまして、しかしこのこと自体が、検討した結果、人間関係の責任において進めていかれないということになれば改善をしていかなければならぬかもしれません。しかし、でき得れば大学自主性というものを十分尊重して研究なども進めさしてあげたい、そのために予算経費についても、できる限り、こういう厳しい時期ではありますが、よどみのないようにお金も流してあげるようにしてあげたい、こういう気持ちは私以下幹部も持っておるわけでございまして、ただ、今の制度をこんなことがあったからこれは守り続けていくんだ、こういうことは一切隠してしまうんだというような気持ちは全くございません。そのことはぜひ御信頼をいただきたい、こう思います。お答えを申し上げている中には、事態解明がまだできてないことでございますので、いささかかばい立てをしたり言いわけをしているような面に先生方には受け取られるかもしれませんが、私自身このことについては、佐野事務次官に対しまして、徹底的な解明をするように、そして国民の前に本当に文部省としての信頼を一日も早く回復できるように指導をいたしておるところであります。
  19. 木島喜兵衞

    木島委員 ちょっと検討委員会の組織というのか、どんなメンバーで、今までどのくらいやっているのか。それから、今やっている中身というか、ちょっと。
  20. 西崎清久

    西崎政府委員 ただいま木島先生御指摘文部省内における検討委員会の、まず組織でございます。名称は、国立学校に係る予算事務処理体制等の改善に関する検討委員会というものでございます。この「予算事務処理体制等の」、こう名づけております「等」のところにいろいろ含みがあるわけでございまして、趣旨といたしましては、文部省における予算事務処理体制の改善とあわせて、職員の服務のあり方、その他改善を要する事項について検討し、今後とるべき方策を取りまとめるものとする、こういうふうにいたしております。委員といたしましては、事務次官、官房長、高等教育局長、学術国際局長、人事課長、総務課長、会計課長、大学課長、学術課長というメンバーといたしております。座長は事務次官をもって充てる。運営といたしましては、必要と認める場合に関係課長等の出席を求めて開催し、中に部会を置くこともできるようにしております。  実は、本省関係事件発生いたしましたのが先週の金曜日でございまして、そして土曜日には当該者の人事上の配置の措置を行いました。官房付に、無任所の形にいたしまして、この検討委員会は月曜日に発足させたわけでございます。月曜日にメンバー全員が集まりまして、午後会議を行いました。  この会議において決定いたしましたことが四点ございます。  第一点は、まず、本件、本省大阪大学を含めて事実関係について、今若干、書類等の捜査当局への提供によりまして、大学あるいは本省においての事実関係調査が不分明な点もございますが、とにかく事実関係の経緯、その原因、背景を究明したい、これが第一点でございます。  それから、第二点といたしましては、予算執行処理体制に関する事務処理意思決定システムというものについての検討を行いたい、これが第二点でございます。改善すべき点をこれからも十分考えてまいる所存でございます。  それから、第三点といたしましては、本件の事案に関連いたしまして、人事上、服務上の問題点というものを十分検討する必要があるということでございます。  それから、第四点としては、これは事務職員だけの問題ではなくて、国立大学も含めまして、教官も含めまして全体、服務、予算処理その他運営に関する検討課題というものについてのこれからの作業が必要ではないかということを決めたわけでございます。  それで、その部会を設けることについては現在検討中でございますが、現在は一と二の問題について私どもは会計課、人事課を中心として検討を進めるべく指示をいたしておりまして、その若干の作業が進みました段階でまた親の委員会を開いて事態の処理をどんどん進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  概要、以上でございます。
  21. 木島喜兵衞

    木島委員 今四つの項目で、二番目に予算執行意思決定システム、余りわかったことを聞くこともないのでありますが、ただ、この問題で一つ言えることは、この場合の鳥野見さんですか、予算配分のいわば実権者。実権者が時に地方へ行くと、学長や学部長が一席を設けておもてなしをするという説がありますね。これが仮にあるとすれば、さもしいですな。国立大学の学長である人が予算のために、しかしあるいは、その予算をとるということがその学部長なり学長の手腕と言われることがまたあるものでありましょうからそういうことをなさるのかもしれない、あるいは教育や研究が必要だからということでなさるのかもしれない。しかし、ちょっとやはり何となく腑に落ちない要素がありますね。すると、この鳥野見さんだけじゃないわけでありますから、今までにおいても、そして現在も他の主査もいらっしゃるわけでありますから、この検討委員会では、そういうことのあるかないかという事実をお聞きになっていらっしゃいますか。
  22. 西崎清久

    西崎政府委員 総括予算班主査の職務権限の問題でございますが、これは予算班の各班主査の上司に立つ、そして各予算関係者の頂点に立って総括をするという立場の者ではございません。事実関係といたしましては、事務処理において総括をするというふうな姿になっておりまして、原議書の姿といたしましては、各予算班主査の上には副長がおり会計課長がおる。総括予算班主査は、事務処理上合い議を受け、その事務処理の全体の流れを総括する、こういうふうな立場でございまして、現在、世上において若干、その辺の私どもの御説明はこれからの問題を究明してから申し上げねばなりませんが、性格としてはそういう立場でございます。  それから、先生端的にお尋ねの、総括予算班主査が個人的あるいは職務上の問題として各大学に対して有形、無形のインフルエンスとしていろいろな事態が生じているのではないかというふうな点、これは現時点で私どもがいろいろと詳細に調べておるわけではございませんが、先ほど申し上げました検討委員会における人事上、服務上の問題点についての検討という検討課題の中に入ろうかと思うわけでございます。公務員としての服務の基本あるいは倫理の問題として、職務上あるいは個人的な行動においてもみずからを律すべきところは公務員としての節度があるわけでございまして、この点についての私どものあり方というものは、今後とも十分この委員会中心として検討してまいる必要があるというふうに考えております。
  23. 木島喜兵衞

    木島委員 まだ調べていらっしゃらないというように受け取れますね。私は今、他の主査の方にそういうことがあったかなかったかということは、調べれば調べられることですね。その御答弁がなかったものでありますから、きっとお調べになっていらっしゃらないと理解してよろしゅうございますか。
  24. 西崎清久

    西崎政府委員 現在鳥野見自身は勾留中でございます。先生御指摘の点は、他の現在おる各班主査を含めて会計課職員についての服務上の問題という御指摘かと思うわけでございますが、私どもは、全体の問題の解明の一環として今後十分その点は詰めてまいりたいというふうに考えております。
  25. 木島喜兵衞

    木島委員 殊に、未配分予算ですから、したがって緊急なら緊急、予測できないものがあるからそうやってできた。しかし、それを全部使わないと、余ったときに来年の予算にかかわるから、だから年度末というようなことが一つ起こってきますよね。そういう場合に、この人の場合は、ある意味でこれを使わなければならないという職務上の責任みたいなものを感じておるかもしれませんな。なるたけ使ってしまいたい、そうでないと来年度予算に響く。だから、その限りではかかわりやすい。おたくに入れませんか、どこどこの会社のだれだれをそのことで相談にやりますから、予算は余っておることでもありますからなどということになるとすれば、このことに関しては一人の人が、機種の選定や業者の選定、予算執行まで一人でできるところの可能性があるわけ。とすれば、まさにシステムそのものが、起こり得べくして起こったところのことと言えるかもしれない。  同時に、先ほど、三番目の人事上、服務上に関係する問題点ではないかと今の問題をおっしゃいましたが、その問題で言いますと、例えば、ノンキャリアの方は同一の職種ないし同一の職種の周辺に長い間いらっしゃる、だからそのことについては実力がつく、専門性が高まる。そのことに支えられて、キャリア組は比較的短期間に転々と動いて出世の道をたどるというシステムが服務上あるのではないだろうか、すべてとは言いませんが。とすれば、その実力型のノンキャリアの方が長くおってよく知っていれば知っているほど、職種によっては業者との癒着が生まれる可能性が強くなる可能性は十分にある。このことは、今日の教育の荒廃というものの大きな原因は学歴社会の中にあり、そしてその学歴社会というものが、例えば官庁におけるところの上級試験だとか、同じ大学を出ながらもそれに差がついてくる、入るときはそれがあっても、後で実力がついたならば昇格してもいいはずだろう、そういうこととみんな絡んでくる問題だと私は思うのです。そういうことの総合的なことを含めて、人事上、服務上の問題点という第三番目の問題として、この問題を契機に、この問題を出発点として教育の荒廃ということも絡めて考えところの意思がおありなんでありましょうか。
  26. 西崎清久

    西崎政府委員 ただいま御指摘の人事上、服務上の問題点といたしまして、やはり人員配置、ローテーションと申しますか、そういう問題についての御指摘かと思うわけでございます。予算の問題あるいは会計事務処理の問題、それから人事、事務処理の問題は極めて専門的あるいは技術的な点がございまして、そういう点に習熟した公務員としてのキャリアというものがかなり重視される必要があるということは、私ども常日ごろ思っておるわけでございますが、それだけの人事ではいけないということから、私ども、全般的な問題としては、原則として三年ごとのローテーションというふうな考え方で人事上の措置は行っておるわけでございます。しかし、そういう意味での原則が、いろいろな事情から例外的に若干長きにわたるというふうなところがあるといたしますれば、御指摘のような問題点も起きがちではないかという指摘を受けるわけでございまして、それはそれといたしまして、私どもは、今回の事件にかんがみまして、もう一度人事上、服務上の問題としてこの点をもう少し改善する必要があるのではないか、あるいは改善すべき点はどこにあるかという点を真剣に検討してまいる必要がある、こういうふうに考えておる次第でございます。
  27. 木島喜兵衞

    木島委員 時間が大変短いものでありますから……。  この間、佐藤徳雄さんの御質問でしたか、なぜ随意契約だったのかというお話がございましたね。どうなんですかね。随意契約であったことがなぜチェックできなかったのだろうか。この書類には上の人は判こを押すのでしょう。これは非常識ですよね、こんなもの、随契は。チェック機能が全然機能しておらなかったということです。いわば、判こというのは、言葉はよくないがめくら判だということ、そういうことでこの問題は、役人からいえば上司の責任ということが、これが決まったときには当然出てくるのだろうと思いますけれども、ただ、そういう形式的なことをなされるということ、それはさっき申したように、他の官庁のように厳しくやってほしいと私は思いますよ、名誉のために。だが、同時に、なぜチェックできなかったのか。判こがめくら判だというだけじゃなくて、なぜこのような非常識なことがチェックできなかったのか、大変不思議です。それが一体何だったのだろうか、この究明がなければ、しょせん意味のない究明だと思うのです。どうなんでしょうか。
  28. 西崎清久

    西崎政府委員 随意契約の問題につきましては、大阪大学購入の問題として私どもも事実関係究明をいたしたいわけでございます。大阪大学における物品購入の責任者は、支出負担行為担当官という会計法上の名称でございますが、事務局長が当事者ということに相なっております。したがいまして、事務局長が支出負担行為担当官として随意契約の当事者になる、これがまず原則でございますが、学内規則によりまして、六十万円以下については経理部長に委任するというふうな規定もあるようでございますけれども、今回のワープロの問題としてはその金額を超えるわけでありまして、事務局長と経理部長との決裁関係がどういうふうになっていたかということは、木島先生御指摘のとおり、私どもが重大な関心を持っておる点でございます。その辺について事務局長がどのようにチェックをしたのか、できなかったのかという点が一つございます。  それから、もう一点、私どもが重大な関心を持っておりますのは、オリエンタルマシンという会社の会社選定にかかわりまして、その会社を契約相手方とするという意思決定がどういうプロセスで行われたのか、この問題でございます。これは、私どもとして従来からの指導によれば、契約相手方の選定においては、例えば機種選定委員会とか、学内における複数の人間による判断を加えた契約相手方を選定するというふうなプロセスが必要である、こういうふうに言ってきておるわけでございますが、大阪大学においては、どうも残念ながら、そういうプロセスを経ることなくしてやっておるという状況を私ども現時点では印象として持っておりますが、事実関係につきましては、その決裁のプロセスとかそのかかわり等においての書類を今捜査当局に提供しておりまして、その点が現時点においては詳細につかみにくいというふうなところで、大変遺憾でございますが、この点はまた、書類を返していただいた暁において十分詰めてまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。  いずれにいたしましても、意思決定のプロセスというところで、先ほど申し上げました検討課題の第二点の問題はその点にかかわるわけでございますので、私ども十分厳しくその点については究明をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  29. 木島喜兵衞

    木島委員 今お話しの、オリエンタルマシンから昭和五十八年だけでもって機器購入した大学が、先ほどオリエンタルとおっしゃらないのですが十八大学とおっしゃいました、そのうち、新聞等では七大学が言われておりますね。これは、先ほども船田さんの御質問捜査当局との関係でもって言えないといって、お逃げになるつもりですか。あるいは、そのことはなぜかという、そんなことは私はどうということはないと思っているのです。ただ、ここに鳥野見という方がどのようなかかわりをしたのか、かかわり得るシステムであったのかということが問われねばならない問題でありますから、そして、これが発表されるときには国会が閉会されておりますから、それだけに許容される範囲において御説明をいただきたいと思います。
  30. 西崎清久

    西崎政府委員 私どもとしては、実情を把握しておるものにつきましてはすべて御報告をこの際申し上げるつもりでお話をしておることをまず御理解いただきたいと思う次第でございます。  今、木島先生のお尋ねの点につきまして、追加予算配分申請として出てき、そして、それについて追加配分としてワープロに関して示達をした大学大阪大学以外に十八大学あるということは先ほど申し上げたとおりでございます。この点につきまして、しからば大阪大学以外の十八大学において契約の相手方としてオリエンタルマシンという会社を選んだ大学が何大学あるかという点を私ども調査を開始したわけでございます。なぜ調査しなければわからないかと申しますと、私ども予算配分について各大学から申請をとるときには、ワードプロセッサーの台数、それから金額でございますね、その申請申請書に載ってくるわけでございます。そしてその金額について、例えば単価について一台当たりが幾らであるということの価格を証明するような書類の添付を求めておりますが、契約の相手先までは原則として記入をしてもらうことにはなっておらないわけでございます。各大学は、予算示達を受けた後において契約の相手方との折衝を経て契約に持ち込む、こんなシステムでございますので、私どもの書類上から申しますと、予算配分における示達の関係で申しますと契約の相手先がわからない、こういうシステムがございまして、大阪大学事件が起きましたプロセスから各大学への照会を始めておりましたところ捜査当局から、今捜査当局もいろいろと独自の立場で調べを行っているプロセスであるから、文部省からのそういう事実関係を含めた調査については差し控えてほしいという非公式な要請がございまして、現時点ではその関係の、オリエンタルマシンを相手方とした契約の大学がどの大学とどの大学であるかということについての調査が現在では差し控えられておるというのが現状でございます。したがいまして、この点については捜査当局の御了解を得た上で厳重にまた私ども調べてまいる予定でございますが、そういう実情にあることを御了解いただきたいと思いますし、相手方とするオリエンタルマシンとの関係が新聞で報道されていると大学だけであるかどうかということは、私どもは現在確信を持って申し上げられないと思います。それより多い場合もあるし、少ない場合もある、こういうふうに考えております。
  31. 木島喜兵衞

    木島委員 これはこれ以上しようがないですな。ただ、予想とすれば、大阪大学以外の、縦に広がるおそれはないかもしれないけれども横に広がる可能性があるかどうかというところに今私が聞いておる趣旨があります。ということは、そのことを含めて腹をくくっておく必要があるかもしれないと思うからであります。  いずれにいたしましても、事務処理近代化、効率化等は、これからなおこの機器の飛躍的な発展に伴って出てくるでありましょう。それだけに、より多くの競争市場に、またよりよき競争市場に大学がなるわけでありますから、こういう事件というのが起こる可能性は今後もある。それだけに、そして最初から申しますように、教育の府だという誇り立場から解明を徹底的になさることをお願いいたします。  あと五分ぐらいしか時間がございませんので、ついでに大崎さんに――せっかく来ていらっしゃるのに何も言わないと悪いじゃない。あと五分だから。慶応大学のあの問題に絡んで、これは触れません。ただ、産学協同について、今までは大学が研究の委託を受けて大学だけでやっておったことから、今度はお金も民間の研究員も、ときには施設設備も利用しながら研究していくという一つの変化がありますね。そして、その代償であるかどうかわかりませんけれども、そこで得たところの、例えば特許権なら特許権はその企業に五年間でしたかな、というのがありますね。私、心配なのは、特許権をやるということになれば希望者は余計になりますよね。だから、そこで一つあるのは、大学というものは一体何かということ。大学というのは、元来は基礎研究が中心であって実学はもちろん従ですね。ところが、こういう道を進めていくと実学が中心になってくるのじゃないか。ますます技術革新が激しくなってくるとそういう問題が出てくる。けれども、すぐに使える研究者をつくったところで、技術革新が激しければ激しいほどすぐ使える技術者はすぐ使えなくなってくる。したがって、それだけに大学というものは基礎研究が中心でなければならぬということも一面では言える。ところが、こういうことを進めていくとどうしても実学の方に余計に行く。またおもしろい。そして学生も売れる。そういう弊害が新しく生まれてくることが今回の慶応の問題とつながる問題にもなるのじゃないか、あるいは東工大の問題につながるのじゃないのかということが第一点であります。  第二点、特許権と絡むと、研究したら毎日、いや先生御苦労さんでした、ありがとう、きょう一杯飲みましょうか。会社の金で毎日飲むかもしれませんな。そして優秀な学生を企業は獲得できるかもしれませんね。今回、慶応の藤岡先生ですか、あの方が新聞会見で言っていた。資金はきっと奨学寄附金であったと思うのですけれども、御随意にお使いください、その見返りが学生だ、新聞記者会見でこう言っています。だからそういう意味で絡んでくる。私は特許権をすぐに否定しようとかなんとか言っているのではありません。一つシステムをつくったときには、その一つシステムから何が起こるか、何が予想されるか、そういうことをきちっと歯どめをかけておくことが新しいシステムをつくるときに常に考えねばならぬことであります。私は産学協同を否定するという立場に今立っているわけではありません。けれども、それを余り中心に進めていくと、今の空気が多分にそうですね、業界の焦りみたいなものがありますよ。先端技術だったらアメリカに十年もおくれていると言われるでしょう。ですから、それだけにそういうおそれがあるものでありますから、新しくつくられたシステムにおいてのそういう対応についての局長の答弁をお聞きして、私の質問を終わります。
  32. 大崎仁

    ○大崎政府委員 先生御指摘のように、大学における研究というものは、あくまでも大学の研究者の自由な発想と意欲というものに支えられて発展していくところにその価値があるわけでございます。その基本はあくまでも守らなければならないわけでございますが、反面、大学というものが、過去の知識を受け継ぎ、新しい知識を生産し、それを一般社会のために役立てるという使命も持っておるわけでございますので、大学が蓄積いたしております知識あるいは能力を、本来の使命を踏まえた上で、社会の各方面からの個別具体の要請に応じて提供していくことも必要ではないかということを、基本的に私どもとしては考えておるわけでございます。  ただ、その際に、あくまでも大学の研究というのは長期的視野に立った基礎、基本的なものでございますので、御指摘いただきましたように、その協力の仕方にはおのずから限界があると思いますが、工学部といった部門では、産業界の進歩の非常に激しい科学技術の発展と相互に交流する場を持つことが大学教育研究自体にもプラスになるという面もございますので、受け身で受託研究、頼まれたこと、頼まれた仕事をやるということではなくて、むしろ大学側と企業とで共通の関心を持っている問題に積極的にチャレンジするという意味でこういうシステムをつくったわけでございますし、また、研究成果と申しますものは、大学がかかわるものである以上はあくまでもこれはオープンのものでございますので、一企業のためだけということではなくて、いずれは全体のためにもなると私どもとしては考えておる次第でございます。  ただ、その際に、いわば外からの力に流されてはならないということは御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても、受け入れに当たりましては、学内の委員会等を設けて十分ふさわしいものであるかどうかということについては吟味をしていただきたいということもお願いをし、各大学でもそのような対応をしていただいておると思っておるわけでございます。  それから、特許権の問題につきましては、企業等がかなり多額の経費を出してお願いをしておるのに、その成果が出た場合にそれが直ちに国のものになってしまう、企業は何ら得るところがないのは非常に片手落ちではないかという御批判がかねてからございまして、ごもっともな点も多いものでございますから、一つは、優先的な特許権が国に帰属した場合には、優先的な実施権が最初五年であったわけでございますが、現在は七年間の優先実施権を認めるということと、共同研究の場合には、それぞれの貢献の度合いに応じまして共同出願、特許権の共有というようなことで処理をしてはどうかという考え方を持っておりまして、先般その第一号の申請どもしておるところでございます。  ただ、御注意いただきましたように、そういうことが特定企業と大学とがけじめを越えて、適切な言葉ではないかもしれませんが、癒着をするというような現象が起きないように、私どもとしても、大学関係者との意思疎通を密にしながら十分努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  33. 木島喜兵衞

    木島委員 余り明確な答弁でございませんが、時間が来ましたので、終わります。
  34. 船田元

    船田委員長代理 伏屋修治君。
  35. 伏屋修治

    ○伏屋委員 森文部大臣また官房長には、重複してお答えをいただくことがあると思いますけれども、事が事だけに御了承をいただきたいと思います。  最近、警察官の不祥事件の続発あるいは公務員にかかわるいろいろな事件が起こっております。断じてあってはならない文部省にこういう事件が起こったということに対しまして、国民皆さんは大いなる失望をしておると思います。それだけに、この問題に取り組む文部省の姿勢は国民環視の中にあると私は考えるわけでございます。そういう意味におきまして、重ねて文部大臣官房長に、この問題処理に対する取り組みの決意をお聞きしたいと思います。
  36. 森喜朗

    森国務大臣 先生からの御指摘をまつだけではなくて、たびたび申し上げておりますように、国民皆さんから極めて不信感を持たれたというこの信頼を回復させるために、私どもとしては最大の努力をしなければならない、私の頭にありますのはまずこのことでございます。  事実関係自体の解明は警察当局にお任せしなければなりません。その後になって、本人等を含めて責任体制もあり方も明確にしなければなりません。そのことよりも、今日、国民教育に対する大きな関心があるときだけに、文部省信頼を早く回復することに最大の留意をしなければならぬと私は考えております。具体的なことにつきましてはたびたび申し上げておりますので略させていただきますけれども制度上のこと等についてはできる限り早く改善していきたいと思っております。  特に、私は今伏屋先生の御質問の機会を利用させていただきまして、私ども、国会を通じて文教委員会の諸先生方には、学術研究が少しでもいい方向に進むように、また厳しい財政状況の中でありながら教育の諸条件がより整うように、いろいろな形で御激励をいただいたり御督励をいただきながら、予算の確保、獲得に努力してきておるだけに、その限られた予算の中で本当に円滑に有効に使っていかなければならぬという御努力皆さんで重ねていただいておりますだけに、そうした不注意、不心得なことがあってそのこと自体が無為になるような事態に立ち至ったということも、本当に心からおわびしなければならないことだと思っております。  しかし、文部省も一生懸命取り組んでおりますので、どうぞ文教委員会皆様方、我々をおしかりもいただき、またいろいろと御注意もいただきつつも、文教行政が本当によりいい方向に進むように、なお一層の御指導を賜りたいということもお願い申し上げておきたいと思います。
  37. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘のとおり、今回の事態につきましては、所轄機関あるいは所管する各機関に対して指導的立場にあります文部本省における事件でございまして、それだけに、指導的立場にある我々の立場からいたしまして、まことに遺憾でありますし、残念でたまらないわけでございます。そういう意味においても、この事態を厳しく受けとめまして、大臣決意にもございましたように、私ども事務当局といたしましても、この問題の解明事件の背景、原因究明を通じまして、今後これを一つのあれといたしまして改善に最大の努力を払う決意でおる次第でございますので、今後もまた御指導いただきたいと思う次第でございます。
  38. 伏屋修治

    ○伏屋委員 国民皆さんの行政を見る目は、どちらかといいますと、行政はどうも後追い的な措置が多過ぎるのではないか、こういうような印象があると私は思います。小さな事件、交通事故等々を見ましても、起こってはならない場所で起こって、その後に行政的な措置を講ずるということからも、国民的な感情というものは非常にいら立ちをもって行政を見ておるのではないか。とりわけ、文部省のように巨大組織になってまいりますと、その組織、機構の中に安住する、いわゆる綱紀の弛緩というものがこういう事件に結びついてきたのではないか、そういう惰性的な勤務のありようというものがあったのではないかと思いますが、その辺を官房長はどういうふうに考えておりますか。
  39. 西崎清久

    西崎政府委員 この事件関連いたしまして原因とか事態解明をいたしておりますプロセスで、先ほど来若干申し上げておりますが、物品購入という問題に関連いたしましては、いろいろな契約上の意思決定システムということが問題でございますし、それから、服務の問題といたしましては、教官等を含めます兼職、兼業の問題とか、私ども事態の把握としての問題点は従来から認識はかなりしておるつもりでございました。そういう意味におきまして、物品購入等に関しましての手続としては、毎年経理部課長会議などにおきまして、学内規定の整備を図って、例えば機種選定委員会等を設けるべしという指導は重ねてきておるわけでございます。  しかし、先ほど大臣も申し上げましたとおり、国立大学という一つの性格から、ある程度自主自律という問題がございますし、最終的な決定は学長あるいは評議会というふうなところでございますので、事務的な上下の行政機関のつながりにおいて、上級官庁が指示したとおりに下級官庁が一斉にその内容を実施するという仕組みにならない。また、そのならないところ国立大学文部省との関係における一つの特色でもあり、それはそれとして、国立大学の自治の問題として尊重されるべきであろうというふうには思うわけでございますが、私ども、従来そういう点での問題点を意識し、そして指導に努力をしておることは事実でございます。しかし、その点がいろいろな観点から見まして実効が上がってきていない、学内規則を整備している大学、それから機種選定委員会をつくっている大学というのがなかなか多くならないという点は、私ども努力の不足のところでございますが、そういう意味問題点の認識はかなりしておるつもりでおったわけでございますが、こういう事件が起きたことから申しますれば、なお努力が足りないということを反省せざるを得ないわけでございまして、この点についてはさらに反省をして努力を重ねてまいる必要がある、こういうふうに考えております。     〔船田委員長代理退席、白川委員長代理     着席〕
  40. 伏屋修治

    ○伏屋委員 やはり事教育をつかさどる文部省でありますので、職員全員が日本教育改革をするんだという大いなる使命感に燃えなければならないし、また、日常の勤務が新鮮なモラルに支えられておらなければならない、このように私は考えるわけでございますが、そういう面は官房長はどう考えておるのでしょうか。
  41. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘のとおり、公務員は全体の奉仕者であるという憲法の規定にもございますように、私ども国民へ奉仕するという立場で職務を日々行うべきことは当然でございます。そういう意味におきまして、一つの公務員としてのモラル、倫理というものを前提といたしまして、しかも、御指摘のように、現在文部省が置かれている教育改革を主体的に推進して日本教育をこれから改革していかなければならないという原動力たるべき文部省職員でございます。そういう意味におきましては、このような事件が起きるということはまことに遺憾なことでございまして、これらの事件についての事態その他の解明改善を図るとともに、これにくじけることなく、もっとそのような基本的な文部省職員としてのあり方のモラルというものを前向きに進めていくことももちろん大事なことでございまして、その中で、このような事態を災い転じて福となすということについて努力せよということで先ほどからの御指摘もいただいておるところでございまして、今先生御指摘のようなモラルの面も含めまして今後十分努力してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  42. 伏屋修治

    ○伏屋委員 ますますこれから日本の科学技術も進歩してまいります。それに伴いいろいろな機器というものが次々と改善されてまいると思いますが、この事件の背景には、やはりオフィスオートメーションという非常に時代の脚光を浴びたそういう機器の競争的な販売というものがあったと私は考えるわけでございまして、その中で主査の勤務の弛緩、そういうものに絡んで落とし穴にはまり込んだ、このように私は考えるわけでございますが、これからもますますそういう機器が、どんどん新しい機種が出てまいりますと、それぞれのメーカーが競い合うことは間違いがない。それだけに、やはり公務員というものが民間と違うそういう規律というものをきちっとしておかないと、また第二の鳥野見、第三の鳥野見というものが誕生しては断じてならない、私はこう思いますので、そういう面のひとつ決意を伺いたいと思います。     〔白川委員長代理退席、委員長着席〕
  43. 西崎清久

    西崎政府委員 御指摘のとおり、本省の問題といたしまして、予算配分に関しての総括予算班主査のポジション、それから職務執行のあり方、そして私ども上司に当たる者の監督的立場、こういうものについての十分な反省と今後のシステム検討が必要であるということが第一点でございます。  それから、機器購入自体について、これは本省と申しますよりは、各国立大学での契約のあり方の問題といたしまして、御指摘のとおりこれからいろいろな売り込みの競争というものはますます激しくなるというふうに思うわけでございまして、その際に、機種の選定なり価格の設定なり、どのような事務合理化なり教育研究に必要な機種であるかという目的との関係における機種の適正な選び方の問題、もろもろ契約において考慮すべき要素があるわけでございまして、教官も含めての契約における事務職のかかわり方、あり方、そしてチェックシステムのあり方について十分検討をいたしまして、私どもも指導の立場にあるということで各国立大学との協議を重ねてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  44. 伏屋修治

    ○伏屋委員 こういう事件一つの背景は、そういうふうな売り込み合戦、それに勤務の弛緩、そういうものもありましたし、また、先ほど木島委員の方からもお話がありましたような、未配分予算の処理というような問題がございますけれども、この未配分予算というものが非常に何かくせ者のように私は思うわけでございまして、年度末にどうしてもこれを消化しなければならない、そういう中で自分の権限というものが行われた、そこにこういう事件が起こってきたのではないか、このように考えるわけでございますが、未配分予算についてもう少し詳しく説明していただきたいと思います。
  45. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘の未配分予算というものは、実態といたしましては、先ほど御説明いたしました留保予算と申しますか、これも俗称でございますが、そのようなものとして御説明をいたしたいと思います。  年度当初に大学関係で必要な予算は、教官当たり、学生当たり、その他で配分をいたしますが、先ほど若干申し上げたところでございますけれども、五十七年度で申し上げますと、人件費で一四%弱、物件費で三二%強、施設費については全額でございますが、こういうふうな形で留保をいたしまして、それから五十八年度で申しますと、人件費で一五%強、物件費については二三%強、施設費については全額、こういう形で留保をいたしまして、それぞれ留保したものにつきまして、内容といたしましては、設備費等についての配分は、ワープロを含めて要求に基づきあるわけでございますが、そのほか人件費に関しましては、退職手当等を含めまして、あるいは実習船経費でありますとか、留学生経費でありますとか、あるいは年度途中に値上げ等があった場合の光熱水料、通信運搬費その他もろもろの問題について、追加配分をいたすというふうな仕組みにしておるわけでございます。  ただ、申し上げますと、これらにつきまして年度末に一括全部配分するということではございませんで、年度当初に追加配分申請書を出しなさいというふうな書類を文部省から送っておきまして、そして各大学からは追加配分申請書が上がってくるわけでございます。それを審査いたしまして、四半期よりもう少し細かい場合がありますが、必要な時期に必要な予算の示達をしていくというふうな仕組みでございまして、今申し上げました留保予算が全額三月末まで持ち越されておるということではないわけでございます。施設費で申しますと、ほぼ四半期ごと実施協議を大蔵省といたしますので、実施協議四半期ごとに済んだものについてはその都度出していく、こんなシステムが例として申し上げられるかと思います。
  46. 伏屋修治

    ○伏屋委員 改善検討委員会の中で、いわゆる事実関係それから予算執行について協議を進められておると聞いておるわけでございますが、今回の鳥野見主査事件、その発端は大阪大学の中曽根にあったようにも新聞記事からは読み取れるわけでございまして、中曽根と鳥野見はいわゆる予算の主査として机を並べておった間柄であるし、その中でオリエンタルマシンの辻宏志が出てくる、こういうような構図の中でこの事件が起こってきたわけでございます。先ほど木島委員からもお話がありましたように、鳥野見主査もそれから中曽根もいわゆるノンキャリア組であって、会計においては非常にベテランである、そういうふうに言われておるわけでございまして、それだけに大きなまたいろいろな落とし穴もあったと私は思うわけでございます。それだけに、これからの人事、服務というものについても事細かく目を通されまして、そういうことのないようなそういう機構をつくっていかなければまた次の犯罪に結びついてくる、このように考えるわけでございますので、そういう面は、先ほど申し上げたように、やはり文部省職員一つの使命感と新鮮なモラルを持って勤めていく、そういうように日々の勤務があってほしいと私は強く要望するわけでございます。  次に、大阪大学ワードプロセッサー以外に、医療器具の問題において、最近新しくまたパシフィック科学貿易の井上旻という方が贈賄で逮捕されたと聞いております。その辺の事件の概要等について御説明をいただきたいと思います。
  47. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘のパシフィック科学貿易からの医療機器購入につきましては、私どもも詳細はまだつかみがたいわけでございますし、捜査当局からのお話もいただけていない現状でございますが、私どもが承知しております範囲で申し上げますならば、昭和五十七年度に医学部附属病院に一件約一千百万程度の生化学自動分析装置の納入があるとか、微生物病研究所附属病院で一件契約が行われておるというふうな実情は把握しておるわけでございます。このパシフィック科学貿易から中曽根経理部長にどのような金品が供与されたかということにつきましての詳細はなかなか承知しがたいわけでございまして、もう少し事態解明を見なければわかりにくいということで、お許しをいただきたいと思う次第でございます。
  48. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今パシフィック科学貿易の名前が出ましたけれども、まだ固有名詞は出ておらないけれども、それ以外にも大手医療メーカーがやはり中曽根に贈賄しておるというようなことも出ておるわけでございます。この医療機器につきましては、やはり専門的な機器でございまして、その使用目的や性能というものが非常に限定されてくる。それだけに、中曽根個人でその機種がどうだということはなかなか難しい。そうなってくれば、それにかかわる教授あるいは研究者、そういう方々のいろいろな意見というものが当然その中に入ってきて機種が決定されてくる、こういうふうに考えられるわけでございますが、そうなってくると、そういう教授あるいは研究者にも非常に濃い疑惑が持たれるのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。現在捜査が進行中でございますので詳しいことはわからないかもわかりませんが、その辺の事情をわかる範囲で御説明いただきたいと思います。
  49. 西崎清久

    西崎政府委員 国立大学に係りますいろいろな機器の購入につきましては、事務的な機器にいたしましてもそうでございますが、やはり教官の方々との協議あるいは教官の方々の判断というふうなものが一つありまして、そこがむしろ優先されて、その後、機種の選定とか価格設定その他事務的な処理が行われていくということは、国立大学の性格上、先生御指摘のような点があろうかと思うわけでございます。  そういう意味におきましては、ワードプロセッサー自体につきましても、四十三台につきましては一律ではございませんようです。学部によりまして、自分のところはこのワードプロセッサーがいいとか、自分のところはこういうワードプロセッサーがいい、若干機種は分かれておるようでございまして、それはやはりそれぞれの学部の教官の方々の御判断があるというふうに思うわけでございます。しかるがゆえにこそ、やはり教官の方々、事務職を含めて、このような大きな機器の購入に当たりましては慎重な手続が必要であるわけでございまして、先ほど来申し上げております機種選定委員会と我々が申しております組織は、事務職だけの組織ではなくて、むしろ教官の方々、一人の立場ではなくて、それぞれ御専門は違うといたしましても、複数の教官の方々、そして事務職も入った選定委員会というものの構成が必要ではないかというふうな指導を私どもはしておるわけでございます。  現在、先生が端的にお尋ねのパシフィック科学貿易等に係る機種選定の経緯、プロセスにつきましては、現状としてはつまびらかにしておりませんので、お許しをいただきたいと思います。
  50. 伏屋修治

    ○伏屋委員 こういう汚職事件の通例としまして、捜査が終結した段階におきまして、疑わしい灰色的な方々というものは不問に付されてしまう、こういうのが通例のようでございますが、それが汚職の土壌になって次の汚職につながってくる。こういうことを考えたときに、やはり徹底究明をしてまいらなければならない、このように考えるわけでございます。  そういう面で、先ほど本省における検討委員会の設置、そして経緯等についてはお聞きしたわけでございますが、大阪大学のそういう改善検討委員会というものはいつ発足して、どのような論議をされたのか、その辺詳しくお聞きしたいと思います。
  51. 西崎清久

    西崎政府委員 大阪大学におきましては二つ検討委員会が設けられておるわけでございます。  まず第一の検討委員会は、ワードプロセッサー等の購入に関する調査委員会というものでございます。これは議長は事務局長でございます。メンバーは、庶務部長、庶務課長、人事課長、主計課長、経理課長というメンバーでございまして、現在までに私どもが承知しております範囲では、四回の委員会を開催いたしまして、いろいろな、法学部、基礎工学部のワードプロセッサー、その他医学部附属病院のただいま申し上げました生化学自動分析装置の購入、その要求から契約に至るまでの経緯について調査検討を行おうとしておるわけでございます。ただ、書類が捜査当局にほとんど全部提供されておるということで、関係者の口頭の記憶その他で現時点ではそのような作業を行っておるということでございます。  それから、第二の検討委員会は、大阪大学職員の綱紀等に関する委員会と称しておるものでございます。これは全学的な観点から、教職員の服務のあり方を含めて改善を要する事項についての検討を行おうということでございまして、構成員は九名でございます。委員長は理学部長でございます。メンバーとしては、法学部長、経済学部長、医学部長、工学部長、基礎工学部長、それに微生物病研究所長、産業科学研究所長を加え、事務局長事務方として入れておるということでございます。これまで私どもが承知しております範囲では、二回の委員会を開催いたしまして、各部局における物品購入というものがあるわけでございまして、これは部局としては学部長が責任者でございますから、この学部長をメンバーとしております部局における物品購入に関して、不正を未然に防止するための機種選定委員会の設置問題についての協議を進めておるということと、それから、教職員と業者等との関係のあり方等について引き続き検討しておる、こういう形で大阪大学においても鋭意進めておるというふうに承知をしておる次第でございます。
  52. 伏屋修治

    ○伏屋委員 もう時間がございませんので、最後に、研究委託費の問題につきまして、先日参議院の内閣委員会文部省側としての御意見があったようでございます。東工大に類似した工業振興会的な、いわゆる資金のトンネル的な存在というものの調査に着手する、そういうふうな文部省の御意見がございましたけれども、もう既に着手しておると私は思うわけでございますが、その辺わかる範囲で……。
  53. 大崎仁

    ○大崎政府委員 いわゆる学術振興あるいは研究助成関係の法人というのが多数あるわけでございますが、私どもの所管法人につきましてはもちろん例年事業報告等をいただいておるわけでございますが、事業報告の様式等では活動内容は十分把握しがたいわけでございます。したがいまして、大学の研究とどういうかかわり合いを持っているかということについて各法人の実態を十分把握するということが、短時間ではなかなか難しいわけでございますが、いわゆる社会との協力、連携という観点から、やはりこういう法人の活動に期待する面も片や多いということもございまして、昨年あたりから各法人の活動状況についていろいろ実情の把握を始めつつあるわけでございます。今回の工業振興会につきましても、そのような実情、実態の把握の際に、多少その事務処理に無理があるのではないかということで関係者あるいは大学ともお話し合いをしておったわけでございますが、そのような努力は順次進めてまいりたいと思いますが、やはり相手が独立の民間法人のことでもございますので、短期間に網羅的なということはちょっと困難ではないかと思っているわけでございます。
  54. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今後ともに東工大のようなやみ運用というようなことが起こらないように、十分な調査をして指導していただきたい、このことを要望いたしまして、終わります。
  55. 愛野興一郎

    愛野委員長 中野寛成君。
  56. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 私に与えられました時間が二十分でございますので、基本的なことまで含めてお尋ねするいとまがないと思います。幸い午後一般質疑の中で私が質問させていただく時間がありますので、基本的なこと、体質的な問題等については午後お尋ねをすることとさしていただいて、まずこの事件の内容、原因等にのみ絞ってお尋ねをしたいと思います。  まず、この中曽根経理部長の問題の舞台となりました大阪大学につきましては、今日まで大学そのものに、特に医学部を中心とした大学そのものにそういう環境があり体質があることをたびたび指摘をしたところであります。そして、このまま放置するならばいずれは司直の手が入ることになるであろうとまで警告をしておったわけであります。にもかかわらず、今回こういう状態に現実になってしまったことを、私は怒りとともに大変残念でなりません。大学にも文部省内にも検討委員会また調査委員会等々が設置をされました。いよいよ本格的に調査とともに対策が講ぜられるであろうことを期待しながらお尋ねをしたいと思います。  まず、この問題については、大別をいたしますと、中曽根ルートと鳥野見ルートと二つに分けることができると思います。もちろん最初はオリエンタルマシン社の辻社長と中曽根経理部長との関係から始まっておるわけでありますし、その中曽根経理部長が後輩である鳥野見主査に辻社長を紹介をしたということからこの三人の関係等にも発展をしていっているわけでありますが、こういうつながりを持ちやすい体質というものが、実は大阪大学と同時に、この霞が関の中にもあるのではないのかという感じがしてならないわけであります。先般、会計検査院の決算報告等にも、霞が関、他の省ではありましたけれども事務機器その他事務用品等をべらぼうな金額で押し売りをしているケースが指摘をされたこともありました。こういう体質を持った業者が、ある意味ではもっとうろうろしているのかもわからない、こういう感じもいたしますし、それだけに、役所としては十分な注意をしていただかなければならなかったはずであります。文部省にもこういうことが及んだかということを、私は大変びっくりもし、そしてまた遺憾にも思っております。  さて、まず最初の、中曽根ルートでありますけれども、思いますのは、大阪大学にも事務局長がおり、そしてまた経理部長がおりますけれども、それ以外に担当の皆さんがいらっしゃるわけであります。経理部長の下には主計課長がおり、そして実際にお金を扱う経理課長がいらっしゃるわけであります。こういう方々が、先ほどもお話がありましたけれども、十分調査をしないで簡単に判を押すのか、また、先輩・後輩、上司・部下の関係で特定の人がこういう権限を持ち得るのかというのが実に不思議でなりません。一方、鳥野見主査の場合にも、総括予算班の主査であり、実権を握っているかもしれませんけれども、本当はその下、役職上は横並びかもしれませんが、具体的には第一予算班主査、第二予算班主査というふうに、それぞれ部門別の主査がいるわけであります。その方々は何をしておったのであろうかというふうにさえ思えてならない。だから、制度上の問題だけではなくて、それぞれ担当しておられる方々が自分の職務をきちっと果たしたのかという疑問も持つわけであります。こういうことについてどうお考えでしょうか。
  57. 西崎清久

    西崎政府委員 二つ問題の御指摘をいただいたわけでございますが、一つは、大阪大学における物品購入に関して組織上の権限とそのつながりにおいて欠けるところがどのようにあったかという点かと存じます。先生御指摘のように、大阪大学における物品購入におきましては、まずそれぞれの機種の選定あるいは価格の設定あるいは契約相手方の選定という問題が学部段階でございまして、それが事務局本部に上がってまいりまして、事務局本部で統括をして、経理課長それから経理部長、事務局長と、こういうふうに上がってくるシステムでございます。したがいまして、その間においてそれぞれ機種の選定なりあるいは各学部から出てくるものについて、契約相手方がオリエンタルマシン社のみであることについての疑義がどうして働かなかったのかというところが問題であろうかと思う次第でございまして、その意味では、それぞれのセクションにおける判断と、それから事務処理において欠けるところなかりしやという御指摘は当然のことでございますし、私どもは、その点についての事態解明大阪大学でやってもらわなければならない、こういうふうに思っておるわけでございます。  それから、第二点の、本省におけるシステムでございますが、御指摘のとおり、国立学校に関するこの点の追加予算配分は第二予算班というところが担当でございます。各大学からワードプロセッサーを含む追加予算申請が参りますと、第二予算班の係のところにまず出てくるわけでありまして、その係から出てきたものが、第二予算班の係長、そして主査を経まして、そして総括予算班の係に回付され、総括予算班の主査を経て副長、課長と上がっていく、こういうシステムでございますから、ただいま大阪大学で述べたと同様の意味においてのチェックシステムが働かなかったかという御疑問だろうと思います。ただ、本省の場合に若干大阪大学と異なりますのは、先ほど申し上げましたように、契約の相手方は書類上明示されていないというところがあるわけでございまして、大阪大学におけるワードプロセッサーの必要としての台数と金額とそれぞれその必要である理由というものが上がってくるわけでございますが、オリエンタルマシン社との関連における集中的な契約は、相手方が一社のみであるというふうな意味での書類上の判断は本省内部においては困難であるということは申し上げられようかと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、そのような書類上の問題とは別個に、人的なリレーションにおいて、いろいろな各大学とのつながりで少しおかしいのではないかという判断を当然すべきではないかというふうな点にも問題がありはしないか、その御指摘かと思うわけでございまして、その点は、私どもも十分これからも検討してまいらねばならない点であろう。要するに、国立大学本省とのリレーションの問題として、書類にあらわれる以外の問題も含めて検討してまいる必要がある、こういうふうに考えておる次第でございます。
  58. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 そこで、これは新聞報道ではありますが、この鳥野見主査が逮捕される前に自分で察知していろいろな証拠書類の隠滅を図る、だから、いろいろなおつき合いのあった人たちの名刺だとかその他、机の中が完全に整理されておったというふうに報道されております。と同時に、一方、後ろのロッカーの中には贈答品である高級ウイスキー等々がずらりと並んでおった、こう報道されておるわけであります。こういうことは事実ですか。もし事実だとしたら、そういうことになぜほかの同室の職員皆さんは気がつかれないのでしょうか。むしろそういうことを文部省の中には当たり前のこととして受けとめる風潮があったのでしょうか。
  59. 西崎清久

    西崎政府委員 鳥野見主査関連しましてのお尋ねとしてのお答えでございますが、金曜日、十三日の午前中、朝でございましたが、私どもは、鳥野見主査が自宅から、早朝早い時間に呼び出しを受けて連行されたということをにわかに聞いたわけでございますし、その朝、そういう話を聞くと同時に、捜査当局の方が本省にお見えになって、書類等に関しての私ども関係職員との相談が始まって、提供すべきものはすべて提供したという作業が始まったわけでございます。事のすべては、私どもは金曜日の朝承知をし、そして愕然としたという次第でございまして、鳥野見本人がそのような事態をどのように察知していたかということについては私どもは全く承知をしておらないわけでございます。新聞報道にありますような事実は、私ちょっとその辺を全部調べておるわけではございませんが、そのような贈答品がロッカーにあったとは思えないわけでございまして、そのような事実関係につきましても、先生御指摘でございますので調べてみたいとは思いますが、事柄自体といたしましては、金曜日、十三日の朝から始まっておるというふうに私どもは承知をしておる次第でございます。
  60. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 贈答品の有無は確かめていただきたいと思いますが、贈答品に限らず、そういう何か不正を感じさせられるような気配または現象というものがどこかに必ずあらわれるものだと思います。そういうことに日ごろからお互いに注意をし合う、それが本当の職場の仲間意識ではないかというふうにも思うのであります。十分御注意をいただきたいと思います。  また、この鳥野見ルートについては、各国立大学に広がっていくという問題があります。中曽根ルートについては大阪大学の中で広がったり深まったりしていく、こういうことだろうと思います。その鳥野見ルートの中のこのオリエンタルマシンとの取引のある大学、結局、これが十八大学ともいわれ、また、六、七の大学の名がまた出てきたりいたしておりますけれども、実際はもっと多いだろうと思います。それらすべてについて文部省としては洗い出されるのか。それと、この鳥野見主査から声をかけられたかどうかについての調査も当然されるだろうと思いますし、もちろん、将来はそういうことが起こらないように注意することが肝要だと思います。まして、値引き合戦の中に、おれの名前を知らないかみたいなことで、結局、値引きなしで買わされている大学もあるというようなことも報道されている。となりますと、これは国民の税金がむだに使われたということになりますね。こういうことについての実態の把握はどうされておりますか。
  61. 西崎清久

    西崎政府委員 その点は大変大事な点でございまして、当初予算配分の校費の中で、予算示達を追加で受けることなく、みずからの配分予算の中でワードプロセッサー購入している大学もあると思います。その中でオリエンタルマシン社を相手として買っている大学がどのくらいあるか、これが第一の御指摘の問題であろうと思います。  それから、第二の問題としては、大阪大学以外の十八大学ワードプロセッサーに関する追加予算配分しておるわけでございますから、その十八大学について、オリエンタルマシンを相手として購入した大学が幾つあるかという問題でございます。この点については、先生御指摘のように、鳥野見主査とのつながりにおいてどのような形がインフルエンスとしてあったかないかも含めまして、私ども調査をいたすつもりでおります。先ほど申し上げましたように、現時点での事実調査を若干文部省は差し控えざるを得ない状況にございますので、その状況が解け次第、私どもは、その点については厳重な調査を進めてまいる所存でございます。
  62. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 オリエンタルマシンが官公庁中心であったということはもう既に触れられていることなのですが、私の手元にあります調査によりますと、このオリエンタルマシン社が営業をしておったその販売実績の中の比率が若干出ていまして、販売実績の四三%が文部省なんですね。そして、二〇%が大蔵省、一〇%が厚生省、そしてその他郵政省、通産省、農林省、労働省、法務省、建設省、総理府、最高裁判所、電電公社、専売公社と、こう広がっていくわけですね。どこまで不正があったか、または全くなかったかわかりませんけれども、しかし、こういう数字を見ますと、やはりそこの背景に何かの力が働いておったというふうに勘ぐらざるを得ない。  例えば、これはもう報道から拾うしかありませんけれども、オリエンタルマシンの辻社長は、閣僚、党役員を数回経験したある代議士の名前をしょっちゅう使っておった。それは同じふるさとの人であった。ちなみに申し上げますと、この辻社長というのは鹿児島出身です。そういうことだとか、中曽根経理部長が特定の国会議員と親しいというふうなことは既にもういろいろ憶測の中で言われていることなんです。これは大臣も含めまして、政治的な背景まで絡んでまいりますと、なお一層大変なことであります。勝手に名前を使われておったとしたならば、これはまたこれとして注意しなければならないことであります。今後十分そういうことについて、お互いに各省庁を通じて戒め合う、また我々も当然戒め合わなければいけない、こういう内容のものではなかろうか、こう思いますが、大臣どうお考えですか。
  63. 森喜朗

    森国務大臣 今、中野さんから御指摘がありましたようなことなどがないことを、私は今の段階では願いたい、その気持ちでいっぱいであります。  ただ、文部省といたしましては、この問題をどのような形で省内の職員が受けとめているのか、あるいはまた、先ほど細かな御指摘もございましたけれども、今日までの中曽根あるいはまた鳥野見、そうした周辺の職員皆さんがこうした問題をどのように受けとめておったのか、こうしたこともやはり幹部を通じてでき得る限り私も知りたい、こういうふうに考えております。そういう日ごろの服務の気持ちが今日のこういう問題を、ささいなことが大きくなっていく、そのことを許しておったということにもなるわけでございますので、そうしたことなども含めてお互いにチェックをしていく。公務員たるものは、やはり人間でありますから弱い面もございましょう。そしてまた、先ほど木島さんのお話にもございましたように、産業社会の売り込み、あるいは商業活動とあえて言っていいかどうかわかりませんけれども、こういう激しい動きというものは、またある意味では世の中一つの通例みたいになってきている。通例としてはいかぬのかもしれませんが、そうしたことがまたこうした役所の中にいろいろな病魔として入ってきている。こういうことなどは、やはり職員同士でお互いにチェックしていくということが、極めて未然に防ぎあるいはより不信感を持たれない大事なところではないかというふうに考えます。そうしたことも、今日の事態が現実に検察当局解明をされているときでございますから、私どもとしては、そうしたこと自体に余り突っ込んだ調査というものは今できませんけれども、しかし、今後ともこの問題の解明が終わりましても、やはり職員全体がこうした問題をどのような形でお互いにチェックしたり戒め合っていくかというそういう体制をつくり上げることも、今日のこうした病理現象といいましょうか、商業活動もまた防ぎ得る最も大事なポイントではないかというふうにも感じておるわけでございます。
  64. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 あとの問題はまた改めて午後お聞きしますが、結局、こういう役所を相手にした、大変役所の機構だとか心理につけ込んだ商法というものがほかにも大変はびこっていると私は思います。これは刑事事件にならないから表に出てこない。しかし、案外お互いにしょっちゅう話として実例を幾つかいろいろな形で聞いている人たちというのはいっぱいいると思うのであります。こういう事件があれば、そういうことはあるなという話がしょっちゅう飛び交うわけであります。だから、これを慣例化しないこと、体質化しないことが大事ですし、もうそうなっておれば、それを直していくことがまず基本的に大事だと思います。  ですから、この質問最後に、大臣にもう一度お尋ねしたいと思いますが、こうして事件が取り上げられているその省の所管大臣ですから、言いにくいことかもしれませんけれども、またそれは例えば会計検査院だとか行政監察局だとか、いろいろなそれぞれの役所もあることかもしれませんけれども、例えばお互い閣僚同士で、自分の省庁はこれをきっかけにしてもう一回洗い直して、こういう業者のつけ入るすきをお互いにつくらないようにしようというふうなこと、例えばまた大阪大学で言えば、大阪大学の体質そのものをもう一回洗い直して――事務局ではないです。大阪大学の場合の本質は、午後触れますが、むしろ教官にあるとさえ私は思っております。そのことは後ほど触れるとしましても、そういう全体的な体質をなくしていくということを、大臣がこの際率先して御提案される、また呼びかけられる、そういうことも必要かと思いますが、いかがでしょうか。
  65. 森喜朗

    森国務大臣 今度の事件で私自身が一番深刻に考えますことは、私は初めてこういう閣僚の立場に立って、これは時間的な経緯から見て、直接自分の関係ではなかったとはいえ、自分の部下でありますので、この部下がこんなことになったということに対して、何とも言えない複雑な気持ちです。そして、正直に言って、一生懸命頑張って今日まで公務の立場で人生を努力してこられたのに、こんなことでつまずいてしまわれたということについては、何か気の毒な気もするのです。何とか無実であってほしいな、また元気で役所に出てきてほしいなという気持ちも率直に言ってありますし、やはり御家族などの気持ちはどんなものであろうかということも考えますと、本人の責任は極めて大きいわけでありますが、しかし、逆に言えば、まじめな公務員をこういうふうに陥れた社会といいましょうか、この連中を、本当に私は憎みたい気持ちなのです。そういうようなことも、私自身として初めての経験でございますだけに、大変かばってあげたいような気持ちもあるし、また、こういうことに弱かったという面について、本当に私は怒りをぶちまけたいという気持ちもございます。  いずれにいたしましても、今先生から御提言がございましたように、閣僚全体に呼びかけるというようなことを具体的に行うかどうかといたしましても、いずれ官房長官にも御報告をしなければならぬことだと思っておりますし、お互いに、こうしたことが起きれば閣僚全体で戒め合い、そしてまた、それぞれの省庁にこうしたことが起こらないように十二分に注意を喚起するというふうなことは閣僚として当然行わなければならぬというふうに考えます。
  66. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 終わります。
  67. 愛野興一郎

  68. 山原健二郎

    ○山原委員 大学の自治、学問の自由という立場から申しまして、産学協同問題について随分私ども警告を発してまいりましたが、今回次々と、この問題に端を発して、大学の腐敗が起こっていることを大変残念に思います。しかし、この問題についてはきょうは触れる時間がございませんので、特に鳥野見主査の逮捕の問題について質問をいたします。また、私の調査した範囲において中身を明らかにしていきたいと思います。  まず第一番に、ただいままでの文部省の答弁を聞きましても、この問題は随分なぞに包まれておるということです。それを少し明らかにしてみたいと思います。  まず第一番に、五十八年度の未配分予算、別名とめ置き予算と呼ばれたり、あるいは追加予算と呼ばれたり、あるいは留保予算と呼ばれておるわけですが、この予算によってワープロなどの事務機器導入の各大学ごとの購入機器名、価格、何台購入して予算は幾らだったか明らかにしてもらいたいということを文部省要求しましたところ、先ほども答弁がありましたように、文部省ワープロ購入についての各大学への予算配分については、関係書類が地検当局に提供されているため不明、また二番目に、各大学ワープロ購入については把握していない、こういう回答が私のところへ来ているのです。でも、実際にどこの大学が何台のワープロ購入したか、価格は幾らであったかなどということは、検察当局が資料を捜査用として押収したとしても、調べればわかることなんですよ、電話をかけたらわかることなんです、小さなものでもありませんし。それをどうして明確にしないのか、ここに今文部省の姿勢がひとつ問われています。まずそれが一つです。  それから、昨日の内閣委員会大阪大学を除いて十八大学購入した事実を挙げまして、大学名も出ておるわけでございますが、その十八の大学購入機器、購入時期、予算額はすぐ出ると思うのです。これもまた明らかにならない。何人もの方がお尋ねになっても明らかにされないのです。私は、まずこれは本委員会に提出をしていただきたい、こう思います。  私は、これらの幾つかの大学に対していろいろな形で連絡をとってみました。また、これは七月十六日の毎日新聞でございますが、「オリエンタルマシンの納入実態」というのが表で出ています。例えば弘前大学、これはワープロ三台、ことしの三月に入れているのです。それは金額にして六百万円です。ずっと計算していきますと数字も出てくるわけですね。そのほかにこの新聞に報道されている分を計算してみますと、ワープロ購入した大学は七大学で、金額が四千二百四十四万円、ワープロ二十一台、これが新聞の報道の中には出ているのです。これは確かめていただくことだって決して難しいことではありません。その上に大阪大学ワープロ四十三台、それから金沢大学が八台、それから神戸大学が十台プラス四ないし五台ということでございまして、これを計算してみますと、六十一台で一台が百六十五万円です。そうしますと、約九千七百六十万円の購入費なんですね。それを先ほど新聞に出ました七大学と合わせますと、一億四千万円にこれだけでなります。恐らくこれだけではなかろうと思います。膨大な金額がこれに使われていると想像できるわけでございまして、今までに判明しておる、報道されている分、また私が電話をかけて調べた分だけでも一億四千万円の購入費が出てくるわけです。そして、それらは全部オリエンタルマシンです。  これはお聞きしたいと思うのですけれども、時間がかかりますから申し上げますが、昨年の秋からことしの一月にかけまして文部省から各大学にこういう連絡が行っています、電話連絡。その中身はどういう連絡かというと、驚くべきことです。別途予算を組むからパソコンとワープロ購入を行うようにという、そしてメーカーの指定は行わないがオリエンタルマシンと契約しないとだめだ、この電話が入っているのです。まさにオリエンタルマシンを指定しているのです。それと契約しなければだめだ。結局、オリエンタルマシンを指定して、それ以外は認めない、予算はつけないぞという連絡が行っているのです。だから、各大学はオリエンタルマシンと契約したんだ。  この機種は何か、一台幾らか、これは西崎さんおわかりになりますか。
  69. 西崎清久

    西崎政府委員 山原先生から若干多岐にわたる御指摘をいただいておりますので、一つずつお答えいたさねばなりませんが、第一の問題は、ワープロ関連いたしまして五十八年度予算示達をした大学の名前以外に、その金額と台数について発表すべきであるし、資料を出すべきであるという御指摘でございます。  この点は、私どもとしては、この事件発生しまして以来、これらのワープロをめぐる問題として厳しく受けとめて、実は電話等で連絡を始めたわけでございます。その連絡を始めて事態の把握に努めているプロセス、電話をかけ始めて何日目かということは若干差し控えますが、これは非公式でございますが、捜査当局の方からお話がありまして、文部省が事実を確かめたいと思う気持ちはわかるけれども捜査当局としても今いろいろ事実関係を取り調べているところであるので、文部省としての事実調査は若干差し控えられたい、こういう話がございまして、私どもとしては、大学名についての把握以外の機種、金額等についての事実調査をそこで差し控えておる現状でございます。  それでは、本省にある何か書類で話が進むのではないかという御指摘もあろうかと思いますが、その関係の基礎となる追加配分予算にかかわる各大学からの申請書、それから私ども予算示達に関する原議書は、すべて現在捜査当局に提供しておる次第でございまして、私どもは、先生御指摘のような点について、実情が把握できる段階においてはこれを覆う必要は全くないわけでございまして、事実の経過が明確になればもちろんお答えを明確に申し上げたいというふうに思っております。  それから、第二の問題といたしまして、オリエンタルマシン社の販売実績としての総トータル金額が幾らになるかという問題でございますが、大阪大学につきましては、事態が少し早かったということもありまして、四十三台の台数とそれから総額で六千万円余であるということは私どもも数字として承知いたしております。しかし、問題は、十八大学の中でどの大学ワープロをオリエンタルマシン社を購入先として購入しているかという問題と、それからもう一点は、先ほど申し上げましたが、十八大学以外に当初予算ワープロ購入することとしてオリエンタルマシン社を相手先として購入している大学がどのくらいあるか、それらについての実情を把握いたしますれば、先生おっしゃいますオリエンタルマシン社の販売総トータルが文部省関係で把握できると思うわけでございます。これらにつきましても、私ども事態を正確に把握すべく、捜査当局との関連において私どもができるところの時点から早急に詰めてまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。  それから、第三点の、機種の問題でございますが、大阪大学関連いたしましての機種は承知いたしておりますが、その他の問題では、オリエンタルマシン社がどの程度の機種を販売しているかについてはまだ明確には把握しておらないというのが実情でございます。
  70. 山原健二郎

    ○山原委員 短い時間なので長々弁解されても困るのです。要するに、検察当局に資料をとられているから返事ができないということでしょう。だから、こっちから言いましょう。ほとんどがシャープWD二四〇〇、一台百六十五万円です。会計法によりますと、百六十万円以上の場合には競争入札をしなければならぬとなっております。なぜしなかったのか、実に不可思議なことですよ。しかも、一つ大学で六千万円の機械を購入するのに随契とは何ですか。こんなことをやっているところがどこにありますか。  こういう不可思議なことが、してはならぬことが行われておって、そして、オリエンタルマシンと契約すること、入札行為はしないようにという指示も出しているのです。会計法違反を承知で指示を出しておるわけですが、その場合何%の割引をしているかといいますと、一昨日の佐藤徳雄議員に対して五ないし八%だとおっしゃったのですね。調べてみると、全部五%です。ところが、これは法外に高い機械を買わされているわけです。競争入札をした場合は大体何%かおわかりでしょう。一五ないし二〇%引きです。一・五割ないし二割引きなんですよ。それを、オリエンタルマシンの場合は五%の割引です。随分高い買い物をしたものですね。  それで調べてみますと、ある大学では同じ年に同じ機械をあるところから買っているんです。それは二〇%、いわゆる二割引きなんですね。そこで、五%引きでオリエンタルマシンの機械を買えと来たものですから、オリエンタルマシンに対して、五%というのは随分高い機械を売りつけるんだなと言って反論をいたしますと、オリエンタルマシンの営業次長、これは茨木滋という人物でございますけれども、そんなことを言っていいんですかと脅迫しているんです。これは文部省留保予算をもって大学に対する支配をやっているのですよ。そうとしか思われません。  それで、計算をしてみますと、通常、機械を購入する場合、競争入札をしますと一・五ないし二割引きでしょう。だから、百六十五万円で、今台数がわかっているだけで八十二台ですから一億三千五百二十万円の購入です。ところが〇・五割引き、すなわち五%引きにいたしますと一億二千八百五十三万円です。すなわち普通、大学購入する二割引きに比べまして、ここで二千万円という金が浮いているのです。だから、不思議なことには、百七十万円のわいろをもちって今逮捕されているのですけれども、金そのものは今わかっている分だけ計算しても二千万円浮いているのです。これは一体どこへ使われたのか、どこへ流されたのか。これは私の推理ですけれども、まさか文部省にバックペイされたのではなかろうとは思いますけれども、さらに調べてみますと、十一月十日に、ある大学の場合ですが、大学事務係長が担当者に対してこう言っています。会計監査にかからないよう、調書に残らないようにしてもらいたい、調査に来ても飛ばせるように、すなわちわからないように操作をしておけということを言っているのです。  そして、本年六月十八日から一週間、文部省は実地監査を行っております。あのワープロ汚職事件が新聞に報道されたのは六月二十日です。まさにその真っ最中に文部省は現地において実地監査を行っているわけでございますが、そのワープロ汚職を知っている段階で、例えばある大学には文部省から五名の方が監査に行っています。新井昭夫さん、総務班の給与係長、古沢六郎さん、会計課用度班の方とか、五名くらいの方が現地に監査に行っているわけです。例えばある大学では、事実を全部明らかにしようと思って書類をそろえておったが、ワープロの部分だけは全く素通り、そこだけは全然調べないのです。事件が起こって、大問題になって新聞に出ている、ワープロ汚職が起こる、しかも五%の割引、おかしいじゃないかという、そこのところを調べなければならぬこの監査に行った人たちが、そこは素通り。私は、この問題は結局、鳥野見氏だけの問題ではなくて、文部省全体と言っては失礼でございますけれども文部省の相当部分の組織がこの汚職事件関係しているのではないかと考えざるを得ません。これが私の調べた実態です。五%引きの随分高い買い物をして、疑問が起こるのは当然でしょう。しかも、留保予算というのは、先ほどから出ておりますように四千五百八十五億五千九百万円もあるわけです。三〇・六%も留保予算がありまして、この使途、この全体像が明らかにならないと、今度の事態解明にはならぬということを私は申し上げまして、この書類一式を本委員会の全議員の皆さんに提出をしていただきたい。大学物品購入ですから秘密にすべき何物もないわけですね。しかも、去年の秋から急に十九もの大学に大規模に購入が要請されている。異常な、大がかりな、一人の人間でやれるようなことじゃない。結局、文部省として何らかの金が必要になったのではないか。去年あの参議院選挙のときに、随分内閣委員会でも文教委員会でも文部省出身の参議院候補者のことが問題になったわけですけれども、疑いたくはないけれども疑わざるを得ない。金の穴ができてそれを何らかで埋めなければならぬ、その任務をこの鳥野見氏が請け負ったのではなかろうかということすら考えられるわけであります、もちろん本人の腐敗の問題もありますけれども。  しかも、昨日内閣委員会において、ワープロ購入がされたという大阪大学を除く十八の大学の名前を発表されたのですね。あなたの方から発表された。そうすると、きょうどういう電話が学校に行っているかというと、十八大学の名前を挙げたので、記者が――新聞記者ですね、取材に来るかもしれないが、この場合、知らぬ存ぜぬで押し通してほしい、こういう指示が行っている。これはもう本当に大変な事態です。これだけの事実を明らかにしておきたいと思いますけれども、今まで皆さんにいろいろ御答弁されているのを聞きまして、皆さんも何か隔靴掻痒の感があったと思います。こんなごまかしでこの問題を過ごせると思ったら大間違いですよ。しかも、これは隠ぺいしよう、あるいは覆い隠そうという思想があるのじゃないか。やはり明らかにしていく必要があると思うのです。私はこの最後の部分については大変重大だと思いますから、どういうことなのか明らかにしていただきたい。
  71. 西崎清久

    西崎政府委員 前段の方の先生のお話で、またおしかりを受けますので長くお答えをするわけにまいりませんが、私どもの方が会計の立場で各大学に、例えば随契にしろとかあるいは契約においていろいろな圧力を組織的にかけたということはないと信じておりますし、その点について鳥野見主査がどのような行動をとったかということについては、鳥野見主査の問題として司直の解明にまちたいというふうに思う次第でございます。  それから、大阪大学以外の十八大学の名称の問題につきましては、今日に至るまでに国会における御議論があったわけでございまして、私どもとしては、オリエンタルマシン社から直接に買った大学名については、捜査当局との関係もあって差し控えているので、個々具体には申し上げかねるということで参議院内閣委員会でもお答えをいたしました。しかし、きのう、オリエンタルマシン社から買ったものという特定をしなくてよろしい、予算示達をしたものでよろしいというふうなお話でもございましたし、その点については、書類上で今捜査当局に提供しているので若干訂正ありということをお含みの上で申し上げれば十八大学であるということで申し上げたという経緯がございます。  それから、捜査当局との関係におきまして私どもが事実関係についての調査を差し控えているというプロセスの中で十八大学の名称を申し上げたという経緯がございまして、私どもが組織的に全十八大学に――私はちょっと承知しておりませんでしたが、関係大学から問い合わせがあったのかとも思うわけでございますけれども、その点については、捜査当局との関係文部省が余り事実関係その他について各大学との間の調査のアクションを起こさないという立場にあるということの理解と各大学立場というものとの関係において、あるいは関係者の間に話が出たのかとも存じますが、もしそういう言い方があったとすれば、決してよろしいことではございませんので、私から厳重に注意をするようにいたしたいと思います。  以上でございます。
  72. 山原健二郎

    ○山原委員 もう時間がございませんが、大臣、直接関係のない、就任される以前の問題もあると思いますけれども、この際、やはりこういう問題については相当深刻な立場事態考えないと、ますますおかしなことになってまいりますので、大臣もしばしば決意を表明されておりますが、今の私の質問を聞きましてお考えがありましたら、最後に伺いたいのです。
  73. 森喜朗

    森国務大臣 私自身もたびたび申し上げておりますように、極めて遺憾な事態だと考えております。もちろん、就任前の問題でございますが、責任は私ども大臣以下全職員が持たなければならぬというふうに考えてもおります。  なお、今御指摘がありましたようなことで、官房長からも説明がございましたが、電話一つでも、あるいは役所からの公式的な指示にいたしましても、十分その点を留意しながら、少なくとも誤解を受けないような指示をしなければならぬということを今改めて痛感をいたした次第であります。職員に対しまして十二分に監督そしてまた指導していきたいと考えております。
  74. 愛野興一郎

    愛野委員長 江田五月君。
  75. 江田五月

    ○江田委員 大分時間が超過をしておりますので、簡単に端的に伺いたいと思いますが、まさに起こるべからざることが起きているわけでありまして、金権列島の我が日本でありますけれども文部省にまでこれが波及をした。破天荒のことであります。  起こるべからざることが起きた。しかし一方では、どうも起こるべくして起きたという感じも実はあるわけでありまして、一体なぜこういうことになっていくのか、これを考えていく際に恐らく三つくらいな視点があるだろう。一つは、行政のシステム、特に予算執行システムが一体今のシステムでいいのか。特にこの留保予算という制度の問題ですね。もう一つは、人事管理のシステム、人事行政のシステムが今の状態でいいのか。そして、システムの問題もいろいろあるけれども、やはり個人の倫理観の問題も恐らくないわけじゃないでしょう。個人の倫理観となりますと、一人一人の公務員の皆さんの責任感ということになってしまうのかもしれませんが、そこにやはり一人一人の問題というよりも、むしろもっと広く社会全体、日本の国全体の倫理観の欠如、国の政治システム、社会システムが一体これでいいのだろうかという問題につながってくる。  そこで、一つずつ聞いていきたいのですが、どうも時間が余りありませんので、留保予算制度のことはもう既に皆さんが伺っておりますから今伺いません。ひとつこれは十分検討していただきたい。文部省が各大学をコントロールするためのまことに都合のいい制度にはなっているわけで、私もその制度の合理性をまるっきり否定してしまうわけじゃありませんけれども、やはり今のようなことで本当にいいのかという問題を深く突っ込んで検討していただきたいと思います。  二つ目の、人事管理の問題ですけれども、会計畑というのが俗にありますね。この会計関係は、文部省なら文部事務官で入る。しかし、会計というところに入って、会計の中でどこどこの会計、大学の会計、文部省にまた戻って、あるいはどこかの研究所へ行ってと、ずっと会計の中で動いていく。そういうことによって、一つの仲間意識といいますか会計一家みたいなことができる。今回だって、これはきっと同僚の皆さん方の中でまるっきりだれも気がつかなかったというようなことはないのじゃないか、さっきも中野先生の質問の中で話がありましたけれども。やはりそれなりに、何かどうもおかしいぞとか、あいつ羽ぶりがいいなとか、いろいろなことがあったのじゃないかと思うのですね。ところが、そういうものが出てこないということの中には、何か持ちつ持たれつ、お互いに隠し合ってというようなものがある。会計畑というこのあり方がいいかどうかですね。  もしこれ、契約の締結にしても積算にしても、専門的な知識が必要だということになるならば、文部省の会計畑、建設省の会計畑、どこどこの会計畑というようなことにしてしまうのじゃなくて、この会計を扱う人間を全部集めてしまう。その間に省庁全部通じて人事交流をしていく。さらに、その会計を扱う人たちの倫理観をきちんと維持していくために、これはきょうは会計検査院に尋ねるつもりありませんけれども、ひょっとしたら会計検査院まで含めて、一つの会計を扱っていく、金を握っていく人間を、きちっとそれなりにまとめて全部を人事管理していくというような、そういう人事行政のシステムをあるいは一遍検討してみる必要があるのかなという、そんな気がするのですが、いかがですか。
  76. 西崎清久

    西崎政府委員 ただいま先生御指摘の、人事管理上の問題として、予算会計に関する特殊な集団としての認識ではなくて、もっと少し考慮すべき点があるのではないかという御指摘でございますが、予算会計、専門技術的なところでかなり勉強が必要であることは事実でございますし、それから、今回の事件で、大変残念でございますが、多くの会計経理の職員予算の編成なり予算査定なり、日常においても超過勤務を多くやりまして一生懸命仕事をしておるということは、先生にもぜひ御理解をいただきたいわけでございまして、そういう意味においての、一生懸命やっておる会計職員の実情を我々認識した上で、さらに、先生御指摘のような、会計関係における職員のいろいろな配置その他、考慮すべき点を今後考えるべきではないかという点は検討いたしたいと思います。  各省関係の交流という点は、なかなかこれは文部省関係だけでの処理は困難でございます。ただ、大蔵省主催で会計職員研修というのが各省共通で行われておりまして、私ども職員もその研修会には毎年参加させておるという現状はございます。
  77. 江田五月

    ○江田委員 今の、各省間を通じた予算会計の担当者の人事行政を一度洗い直してみるべきじゃないかという点について、総務庁お見えだと思います、答弁してください。
  78. 上吉原一天

    ○上吉原説明員 ただいま御質問の、各省庁間の会計事務職員等につきまして人事交流を行うべきではないかという点にお答えをいたしたいと思います。  まず初めに、公務員というのは、国民全体の奉仕者といたしまして、職務の公正な執行に対しまして国民に不信の念を抱かせることのないように厳正な規律を保持しなければならないということは当然のことなわけでございまして、この観点から、政府全体といたしまして綱紀の粛正に従来から積極的に取り組んできているところでございます。  特に、予算執行等の事務につきましては、ある職員が長年同一の職におるというような場合には綱紀の緩みが生じやすいというようなことにかんがみまして、従来から、官房長等の会議申し合わせにおきまして、そのようなことを防止するために、一つ方策といたしまして、同じ省庁内の人事の配置の適正化を図ってきたところでございますけれども、この点につきましては、今後ともその趣旨の徹底に努めてまいりたいというふうに考えるわけでございます。  ただいま先生御指摘の、各省庁間の人事の交流でございますけれども、ただいまお話ありましたように、貴重な御意見でございますので、その辺を参考にさせていただきまして、現実問題として特定の事務につきましてこういった各省庁間の人事交流が可能なのかどうかという点も含めまして、今後検討させていただきたいと考えておるところでございます。
  79. 江田五月

    ○江田委員 大いに検討していただきたいと思いますが、三番目の個人の倫理の問題。しかし、個人の倫理といっても、これは一人一人の問題じゃなくて、やはり社会全体のシステムの問題もあるわけですね。今、例えば業者の方で言えば、どうやってうまく経理を握っている役人に接触していくか、これをどうやって自分の上手に左右できるようなところに誘い込んでいくかということ、これを何か営業努力という名のもとに行うのが当然だ、営業努力をどんどんやっていかなければならぬ、そういう感じを業者は持って一生懸命やっている。それに対して、今度は受ける方の役人の側は、何かこう予算を扱うということになると、その予算を扱う裁量権というのが自分の権限のように思って、自分の地位が上がった、何か自分個人の力のように思ってしまう。裁量権なんというのは権利じゃないんで、公務員にとってみたら正しい裁量をしていく義務なんですね。そういう感じが全くなくなっていく。それがどうも社会全体に広がってしまっている。私はもう前から思っているのですが、ある国が物が乏しいからといって滅びるようなことはないんです。心の貧しさが国を滅ぼしてしまうということはしょっちゅうある、十分ある。日本はどうなっていくのかという感じがつくづくするのです。その一番の責任はだれが負っているのか。政治家じゃないでしょうか。政治家がいろいろとくだらぬことをやって、ちょっと道路をつけた、橋をつけたというと、自分がやった、自分がやったと言う。別に自分が金を出してやったわけじゃないのに、あるいは、政治家というのはそれほど大した立派な人生でもないのに、ちょっと大臣になったら、それでもう政治家の役割が終わったかのような、ちょっと一期、二期大臣をやるために妙なお金に手を出している。その最たるものはだれか、一番象徴的なものはだれか、言うまでもないと思いますが、そういう政治の責任というものを、大臣、一体どういうふうにお考えですか。簡単で結構ですが、もう時間がありませんので、お答えを伺って、私の質問を終わります。
  80. 森喜朗

    森国務大臣 一生懸命公務員の道を歩んでおりました者が、今先生からお話がありましたように、いわゆる社会の病魔に侵されているというのを見ておりますだけでも断腸の思いであります。本人をかばい立てするつもりはありませんが、本当にお気の毒だなあという気持ちもございます。  しかし、倫理の面では、確かに、政治家でなければ、政治家がやるべきだとか、公務員だとか先生だとか言うべきではなくて、すべての者が気持ちをしっかり持ち、少なくとも人様に後ろ指を指されないということが自分への戒めでなければならぬと考えております。とりわけ、国民の代表であるという政治家においては、なおそのことが強調されることは言うまでもないことである、そのように考えております。
  81. 江田五月

    ○江田委員 終わります。
  82. 愛野興一郎

    愛野委員長 この際、休憩いたし、ます。     午後零時三十二分休憩      ――――◇―――――     午後二時十二分開議
  83. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について質疑を行います。中野寛成君。
  84. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 私は、大学の体質、そういう問題についてお尋ねをいたしますが、当然その中には、午前中に集中審議をいたしました大阪大学の機器購入に関する汚職の問題も含まれております。その他の大学のことも踏まえながらお尋ねをしたいと思います。  その前に、つい先ほど知ったのでありますが、きょう午前中に、朝、大阪大学医学部教授、放射線科科長、この方は機器購入等予算も担当されていたようですが、重松康教授が自宅マンションから飛びおり自殺をされたということが報道をされました。このことについて文部省、御存じでしょうか。また、特に、今回我々が調査をしております事件関係があったかどうかについてはわからないわけでありますけれども、この捜査対象になっていた方であるかどうか、まず冒頭にお尋ねをいたします。
  85. 西崎清久

    西崎政府委員 私から便宜お答えいたしますが、私どももつい先ほどこの事実の発生を承知したわけでございます。電話等で照会中でございますが、自殺した者は、先生御指摘の重松教授でございます。六十歳、放射線医学教授でございますが、このたびの不祥事との関連については今後の調査を待たなければわからないと思いますけれども、医学部長の報告によれば、関連はないと確信している、こういうことでございます。  それから、ただいま先生お話しの機種選定委員会のメンバーであるかどうかについて、私どもが承知しておりますのは、各学部で予算要求をするときに予算委員会的なものを教授たちが集まって組織して、来年度何を要求しようかというふうな形での、メンバーで討議をする、そういう形での非公式な事実上の組織のメンバーであるというふうに聞いておるわけでございますが、この点も、なお私どもも事実調査を早急に詰めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  86. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 その選定委員会のメンバーであったかどうかをお尋ねしたのではないのです。機器購入に当たって、選定委員会といいますのかどうかわかりませんが、そのメンバーであったと報道されておるわけであります。御調査をお願いしたいと思います。  つい先ほどのことでございますから、このことについてこれ以上触れても御答弁もないかと思いますので、これ以上触れませんが、ただ、こういうことが起こりますと改めて思い起こしますのは、ロッキード事件を初めといたしまして、社会問題化する大きな事件があるときに往々にして不審なこういうことが起こるわけであります。それがスケープゴートにされたり、または死者に口なしで、そこへ何かおっかぶされてしまったりというふうなことになってしまうことが多いのであります。こういうことだけは何としても避けなければいけない、このようにも私は思いますから、十分御配慮いただいて調査もし、そしてまた真相を明らかにしていただきたい、このように御要望を申し上げておきたいと思います。  さて、それ以外に、今回の事件について経理部長が逮捕されているわけでありますが、事務局関係者が幾人か取り調べを受けたことは、これはもう明らかな事実だと思いますけれども、教学の方は、調査を受けた方はいらっしゃるのでしょうか。
  87. 西崎清久

    西崎政府委員 お尋ねの点につきまして、事務局関係捜査当局に参考人の形で事情聴取を受けたという経理の役職者がおることは事実でございます。  教学関係につきましては、本日まで私もつまびらかでなく、今もちょっと確めてみたわけでございますが、教学関係の方々で参考人として事情聴取を受けた方があるかどうか、現時点ではつまびらかにしておりません。
  88. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 私は、今回の事件で、中曽根経理部長事件を起こすその一連の出来事というのは、彼は四十八年前後からオリエンタルマシンの辻社長とは懇意であったようでありますけれども、しかし、この事件の背景を我々が聞くところにおいては、大阪大学に経理部長として赴任されてからいろいろなことが起こっているわけであります。午前中に大臣が幾たびかおっしゃいましたけれども、長い間まじめに公務員として仕事をしてこられた方々が何かのきっかけにこういうことに巻き込まれてしまう、そして後、ずるずると今度は自分の意思で、ある意味では公務員の皆さん、まじめな方であればあるほど、律義であるがために、何かを頼まれるまたは何かのくされ縁ができてしまうと、その頼まれたことを忠実に実行に移してしまうという、いい意味でも律義であるけれども、悪い方にその律義さを利用されてしまうと取り返しのつかないことにまで発展していってしまう、こういうこともあると思うのです。そういう意味で、大臣もおっしゃられたように、ある意味では犠牲者でもあるというふうに私自身も思います。同時に、彼がどういうお人柄かは知りませんけれども、しかし、この事件だけを見れば、大阪大学へ行ってからこの問題が起こっているわけであります。言うならば、彼が勤めた大阪大学そのものに昔からそういう体質があり、その中に染まっていった。そして、そういうときにこのオリエンタルマシンの社長がまた食い込んでいったということもそのプロセスとしてはあり得るのではないだろうか、こういう感じがするわけであります。  ちなみに、私もこの事件が起こる前から何回かこれらの問題について本委員会等で取り上げましたから、例えば薬品会社それから医療機器メーカー、こういうところに勤めております友人、知人その他、実態はどうなっているかということを何回か聞いたことがあります。私が今日まで聞いており、またその幾つかの事例を以前の委員会で申し上げましたけれども、それをたまたま最近の新聞が象徴的にまとめて書いておりました。私が今日まで取材したものと全く同じ種類の内容だ、こう申し上げることができますので、これを少し読んでみたいと思います。  見出しは、「ワイロで決まる企業の生死」、こういうことになっているわけでありますが、ある中堅製薬会社大阪営業所勤務の三十歳代の方の証言によると、「いかに顔と名前を覚えてもらうかが先決。このため、まず〝先生、キタにうまいジャブジャブの店があります〟などと食事に誘う。打ちとけたところで行きつけのスナックか、クラブに連れて行き、これを二、三度繰り返した後、帰りに車代かタクシーチケットを渡す。一対一で行くより、数人を誘う方が相手がついて来やすい。北新地の高級クラブなら一人二、三万円。四人で行けば十万円ではすまない。接待費は表向きは〝マーケット対策費〟と呼ばれ、大学病院担当者なら、月に二百万円ぐらいの予算を持っている。」こういう証言ですね。それからもう一つ、大阪の医療機器メーカーの四十代後半の幹部社員、こうなっておりますが、「関西のある県立病院医師は、夕方になると〝飲みに行こうや〟と暗に接待を要求。新人の担当者をあいさつに連れて行くと〝よしそうか。歓迎会や〟。もちろん代金はこちら持ち。〝医局ぐるみで旅行に行くから協力してくれ〟と堂々と旅費を要求するケースも。五、六年前には京阪神地区の国立大医学部の医師約三十人が業者丸抱えで宮崎まで一泊二日のゴルフツアー。」これは私も一度取り上げたことがありますが、「飲み代、ゴルフ代から芸者代まで総額三百万円かかった。」こういう証言。それから、大手製薬会社の課長クラスの方の証言によると、「国、公立大では教授でも給料、研究費はしれているし、研究に協力してもらうため部下の面倒も見んといかん。そこで〝研究費の足しにして欲しい〟とキャッシュを渡す。学会やシンポジウムがあることに旅費名目や、協賛と称して十万円ぐらいを包んだり、新薬のデータを出してもらった謝礼として一件で二万円、十件なら二十万円を渡す。現金も百万円以上なら大義名分もいるが、十万や二十万円程度なら医局の片隅でそっと渡すこともある。」こういうふうに証言をされておりますね。これまた以前に申し上げたことですが、大学附属病院に行きますと、そこの売店に謝礼装がちゃんと売ってある。私が指摘しましたからその後なくなっているかもしれませんけれども、こういうことは今なお続いているわけです。  今回の阪大事件でやはり二人逮捕されておりますが、パシフィック科学貿易代表取締役の井上という人、それからフクダ電子の永田という方、これはいずれにいたしましても医療機器の納入業者でございます。この人たちが新聞報道等によりますと現実に大学の教官を接待しているわけであります。そのことを取り調べまたそういう供述の中で言っている、こういう報道もなされているわけであります。こういうことについて、実態はその後把握されておりますか。対策を講じられておりますか。どうお考えですか。
  89. 西崎清久

    西崎政府委員 御指摘の点に関連しましては、前回の委員会で先生から実態把握のための調査団を含めていろいろな検討の手だてを講ずべしという御指摘がございまして、私どもは六月二十七日に人事課調査官をキャップといたしまして五名の調査のための係官を大阪大学に派遣したところでございます。全体の姿としての事実関係の把握は思うに任せない点がございましたが、その派遣の趣旨の第一は、事実関係の把握とともに、御指摘に係る教職員を含めての全体の大阪大学に係る服務なり、あるいは予算事務処理執行のあり方についての厳しい究明なり、改善策のあり方の検討ということの勧告にもあったことは事実でございます。その調査団の派遣を契機といたしまして、午前中に申し上げましたような綱紀等に関する委員会が設けられたということが事実としてあるわけでございます。この綱紀等に関する委員会で、まさに先生御指摘の点の実情の把握をし、改善すべき点の改善点を検討してもらわなければならないわけでございますが、特にメンバーとしては医学部長も入っておられるわけでございます。医学部長等の学部内における取り扱いとしての調査というところが一番の問題点でございまして、医学部長が中心になって関係の教官等の集まりにおいて、この点についての服務の基本の問題等を含めていろいろと協議を願っておるということは報告として聞いておるわけでございますが、まだ先生がおっしゃいますような具体の細部の点についてまでの検討が行われているという感じでは現在ないわけでございまして、もう少し時間をかしていただく必要があるのではないかというのが現状でございます。
  90. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 ついでに申し上げますが、今出ておりますこの週刊新潮、私が前回お尋ねをいたしましたA教授、B教授があるクラブとあるクラブという形でここで申し上げました。余りそういう個人的なことは申し上げたくなかったのでありますが、しかし、事ここに至りますとこういう問題をほっておくわけにいかない。それであえて申し上げたのですが、週刊新潮が今週号に至って、五十四ページから五十五ページにかけて、「汚職が露見したからいわれる阪大〝白い巨塔〟の酒場巷談」ということでいろいろ書き立てられております。もちろんその頂点として、山村学長そして前医学部長であった第一内科の阿部教授の名前が出ておるわけであります。そして、彼らとつながりの深い、それこそ高級クラブ、高級料亭の名前がずらっと実名で出ているわけであります。これを見て東京の皆さんは驚かれるかもしれませんが、少なくとも、我々大阪に住んでいる、そしてまたこういう場所に一度や二度足を踏み入れたことのある人は大体知っている話でありまして、別に何を今さらという程度のことでもあります。しかし、何を今さらということくらいでは済まないことなのであって、こういう体質が頂点としてあって、その中で、この大学なり医学部なりの教官や事務局員がそういう体質にならされていって、今回の事件が起こったと考えられないだろうか。言うならば、業者の接待で飲み食いをさせられる。それを裏づけるのは実際いってなかなか難しい。犯罪との結びつきを証明することも難しい。しかし、本当はこれが一番大きな問題点なんではないのか。警察も検察も手をつけられないかもしれないけれども、ここにこそまさに文部省大学の自浄作用が働かなければいけない肝心のネックなのではないか、こう思いますが、この記事をこの前渡しておきましたので大臣もお読みになられたと思うのですが、お読みになってどういうふうにお感じになりますか。
  91. 森喜朗

    森国務大臣 中野さんから、先般読んでみろということでございましたから、正直言って余りいい気分で読まなかったというのが率直なところです。記事がそのまま真相がどうかということは問題がございますので、私の立場からは感想は差し控えたいと思いますが、大阪大学の教官についてこのような記事が出ておる、こういう風評があること自体は大変残念でございます。  かねてから中野さんがこうしたことを、むしろそうした名前を挙げずに、注意を促すという意味でしばしば御指摘があったことも承知をいたしております。元来、こうした指摘があり、国会でそうした意見があったということだけで自粛してもらいたい、また、端的に言えば、そんなことがないようなことであってほしいと私も願っておるわけでございますが、こうして雑誌に記事として扱われるということは、教育にとってもまた文部省全体にとりましても、大変残念なことであると申し上げておきたいと思います。  大阪大学では、こうした国会でのいろいろな論議もあり、関係学部長等をメンバーとして、先ほども官房長から申し上げましたように、綱紀等に関する委員会を設けて、全学的な視点で教職員の服務のあり方について検討を開始したと聞いておるわけであります。この委員会において自主的、自律的な努力によって、ぜひ実のある成果が上がるように期待をいたしたいと思っておりますが、文部省といたしましても、そういう方向で実りある成果を得るように、なお一層指導していきたいと思います。
  92. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 結局、私はこの記事は決してでたらめではないと思います。一〇〇%このとおりだと証明する自信もありませんが、決してでたらめではないと思います。そういう中で検討委員会調査委員会等がつくられた。大学においてもトップクラスの皆さんがずらっと名前を並べておられる。本当にそういう人たちで自浄作用が発揮できるのだろうか、本当にみずからを含めて反省し、そして真実を明らかにし、それをなくす努力がなされるのだろうか、同時にけじめがつけられるのだろうか、私はまだ疑問がぬぐい切れません。どうお考えでしょうか。
  93. 西崎清久

    西崎政府委員 先生の御指摘の点でございますが、大阪大学における綱紀等に関する委員会が過去二回行われたと申し上げたわけでございますが、その委員会における討議の詳細につきましては、私どもから具体に申し上げることはいかがかと思うわけでございますが、私どもが承知しております概要について申し上げますならば、まず、経理部長の起訴の問題をそれぞれが厳しく受けとめるとともに、一つの問題は、機器、物品購入の問題、これは各学部に共通の問題でございますから、部局における機器、物品購入なり、購入の手続なり、購入意思決定の問題、特定銘柄の選定の問題、学内規定の整備の問題、こういう問題を討議しておるのが第一点でございます。  それから、第二点といたしましては、そういうふうな具体の手続その他を早急に決めるについて、これからいろいろな検討が必要であるとともに、大きな一つの問題として、教職員の兼業の問題をこの綱紀委員会で取り上げておるわけであります。教職員の兼業につきましては、かねてから文部省は、各大学における兼業手続なりその決定についての厳密な意思決定の問題を指導しておるわけでございまして、この綱紀委員会においても教職員の兼業の問題を大きな第二の問題として取り上げております。  それから、第三の問題として、今先生からも御指摘がございました、各種報道が行われておる大阪大学関係者の服務的なあるいは個人的な行動の問題について、疑惑を招くことはいけないし、今後そういうことについてのみずからを律するあり方について、綱紀委員会としても各部局の問題としてそれぞれ反省とともに検討してまいる必要があるということも、大きな第三の問題点として取り上げておるわけでございます。  そういう意味では、この綱紀委員会が先生御指摘の問題も含めてこれから機能しようとしているところだということを御承知いただければ幸いでございます。
  94. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 当然、文部省としても、そういう役割が果たされる、機能がきちっと発揮されることを十分監視されるであろうと思いますが、いかがですか。
  95. 西崎清久

    西崎政府委員 私がただいま概要御報告をしましたように、綱紀委員会について、つくることだけをもって足れりとして私どもが勧告したわけではございませんで、ただいま申し上げましたように、まだ二回しかやっておりませんが、二回において何を取り上げたのかという報告を求めておるわけでございます。そういう意味においては、先生御指摘のように、私どもとしては、大学における綱紀委員会の機能のあり方については、適時適切に報告を求めてその機能の発揮が十分にいくように慫慂してまいりたいと考えております。
  96. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 たまたま宮地局長いらっしゃるので、そして今のお役柄からいっても無関係ではないと思いますし、大学局長当時にこの問題で幾たびかやり合ったと思います。そして、いろいろな手を尽くして、会議も持たれ通達もお出しになり指導もされてこられたことを私もよく承知いたしております。その経緯の中で、これら教官のこういう不祥事または極めてあるまじき体質、これらのことについては、実態としてあることは掌握されたのでしょうか、もしくはあることは承知されたでしょうか、また、そういうことについての注意がなされたのでしょうか、その経緯を少し御報告いただきたいと思います。
  97. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 かねて中野先生から、特に大阪大学の病院に絡むいろいろの問題につきまして御指摘をいただきまして、私どもも何度がこの委員会で御報告も申し上げましたような形で、まず、学識経験者によります調査会を設けまして、そこで御議論をいただき、一つの結論を出していただきまして、それを各国立大学の医学部長なり病院長会議その他でその趣旨の徹底を図るということで、従来対応してきたわけでございます。  それぞれ関西地区の大学附属病院等において、兼業手続の周知、あるいは特に臨床系の教官の所得についての確定申告の指導について、例えば税務署が係員を派遣いたしまして教官に指導いたしますとか、それからもう一つは、患者からの謝礼の問題等につきまして、それぞれ病院運営委員会等で指導する。具体的には、名古屋大学におきましては、それぞれの病棟に、患者からの謝礼はお受けしませんということをはっきり掲示いたし、また、患者用の入院案内のパンフレットの中に、職員への謝礼、贈り物はかたくお断りいたしますと明記するというような形で、具体的に取り組んでおるわけでございます。  私どもは、今名古屋大学の場合で具体に申し上げましたような形で、例えば患者からの謝礼の問題にいたしましても、単に運営委員会等で具体的な指導をするというだけではなくて、それをもう少しさらに徹底した形で行いますように、各大学の附属病院で取り組みをいただきますように、指導の徹底を図っておるところでございます。  かねて先生お取り上げいただいている大阪大学の問題について、私も、先般来、お話のありました直後学長がお見えになりました際に、こういうこと自身が、とにかく先ほど先生御指摘のようなちまたで言われているようなこと自体が消えるように、ひとつぜひ大学全体で取り組んでいただきたいということを直接お願いもいたしまして、その点はそういう方向で自分としても学内全体について大学みずからの自浄作用で対応するということについては学長も言っておられました。私どもとしては、そのことが単に一時そういうことが消えるというようなことではないように、大学自体が御指摘のようなちまたでうわさされるようなことのないようなことでなければならないと思っておりますので、それらについてはさらにこれからも一層徹底して指導もしてまいりたいと思いますし、単に事件として立件されたというようなことではなくて、大学みずから、そしてまた文部省みずからが、そういう問題についてまさに一般世間の指弾を受けることのないような姿勢にならなければならない、私どもはかように決意を新たにいたしまして事柄に取り組みたい、かように考えております。
  98. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 私以上に宮地局長自身の方が歯がゆい思いをされているであろうということも思いながら、なお一層の御努力をお願いをしたいと思う次第であります。  さて、この四月十三日に本委員会で脱税の問題を取り上げまして、ある国税局では、新聞には翌日大阪国税局、こう出ましたけれども、いわゆる近畿の国公立大学の医学部や私立大学、医大の医師を含む病院勤務医らのアルバイト等の副収入、これを申告せずにごまかしている実態というものを明らかにいたしました。この場合は五百二十人の勤務医のうち九七・九%、九八%に当たる五百九人が何らかの形で所得隠しをしておったということが明らかにされたわけであります。これは全体の九八%ではもちろんありません。調査対象となった勤務医の九八%ですから、全部がやっているということにはもちろんならないのでありますけれども、しかし、それにしてもこの数五百人と聞いただけでも、何ともあいた口がふさがらない気持ちになることは事実でございます。  そうこうしておりますと、一方、ついこの前、自治医大の方で報徳会宇都宮病院の無届けバイトのことが六月になって明らかになりました。無届けバイトですからその所得は恐らく申告されない、おまけにそれ以外の謝礼、また家つき車つきという報道までなされているわけであります。  私が当委員会で四月に質問をいたしましたときにも、こういう答弁が国税庁からなされているわけであります。この所得隠しの手口は、病院などへの応援診療、いわゆるアルバイト収入が最も多く、八〇%程度を占める。さらに、製薬会社や医療機器メーカーから受け取った研究費や、教授、助教授が病院などへ医局の医師を派遣した際支払われる謝礼、リベートなどがある。そのほかに原稿料や講演料も当然含まれる。こう御答弁があっておるわけであります。  ちなみに、大阪の医師がアルバイトをいたしますと、半日で基準が二万五千円程度であります。こういうアルバイトの基準等は文部省でむしろ掌握されているはずですし、届け出もさせなければいけないわけですから、こういうのはお調べになればすぐおわかりのはずであります。国税庁も、こういう医学部勤務医の中には多額の謝礼やリベートを受け取っている者があることを知っている、だから、関心を持って今後も調査するという答弁さえなされたわけであります。国税庁でさえもそういう答弁をなさるのであります。しかし、これは法律に違反しているとか脱税であるとかが明らかにならなければ摘発されません。むしろ、本当に体質を改善し、よりよい大学にしていくその努力をするのは、大学はもちろんでありますが、文部省の適切な指導がなされなければならないわけです。先ほど来申し上げたように、ほとんど毎日とは言い過ぎかもしれませんが、毎週のようにどこかの大学が必ずこういうたぐいの問題でニュースをにぎわすわけであります。これらのことについて、阪大だけの問題ではありませんけれども、より一層の強力な指導が必要でありますが、阪大以外を含めてのトータルな考え方としてどうお考えでしょうか。
  99. 西崎清久

    西崎政府委員 ただいま先生御指摘の、教官の正規の給与以外に例えば兼職、兼業をやるなどにおける収入の問題、その所得申告の問題を含めてあるべき姿、これをトータルにどう指導するかという点でございます。  国家公務員である国立大学教官の兼業の問題というのは、かねて御指摘のあるところでございまして、従来から先生からも厳しくお話がございました。先ほど高等教育局長からお話し申し上げましたが、兼業につきましては、国立大学の学長という機関の長がこれを許可するというシステムになっておりまして、それなくして兼業を行うことは許されないことでございます。  まず第一点としましては、兼業の許可手続の励行ということでございまして、これはいろいろな機会に通知あるいは会議で兼業許可について励行をするようにということで、これは各大学においてかなり徹底が図られているというふうに私ども考えております。  それから、第二点としましては、その兼業のために勤務時間を割くこと、あるいは兼業によって収入を得ることについて、許可条件の問題がございます。この許可条件の問題につきましては、例えば兼業の日数の問題であるとか兼業の回数の問題であるとか、そういう点について基準を示しまして、その点について許可者が適切に判断をするようにということでの通知あるいは会議等における指導も行っておるわけでございます。  ただ、先生御指摘の点にかかわります兼業によって得る収入の金額の基準につきましては、私どもは明確な基準は示しておらないというのが実情でございます。したがいまして、その兼業のケースごとに、あるいは兼業を行う教官の年齢、経歴等、あるいは兼業する相手先の関係において兼業の収入が決定されるというケース・バイ・ケースの実情にあるわけでございまして、これについて一定の基準を引くことができるかどうかというのは大変難しい問題でございまして、現在までにはそのような基準を示しておらないわけでございますが、これは地域医療の問題とかいろいろ兼業をする必要性の問題もございまして、全体の姿の中であるべき姿というものを考えてまいらねばなりませんし、許可者がその際に判断をする常識的な線というものがおのずからあると思うわけでございます。  そのようなことを考えますと、これは一部の大学実施されておるわけでございますが、兼業の許可をするについて、個人の判断だけでそのトータルな判断をするということでなくて、この点も実は複数の者による判断というものがあってしかるべきではないかということも一つの手段として考えられるわけでありまして、そのことについては、例えば医科歯科大学では、過去のいろいろな経緯にかんがみまして、兼業に関する監査委員会というのを設けております。最近はこの兼業に関する監査委員会というものにかけて学長が兼業の許可をする、こういうふうなシステムを医科歯科大学ではとることになりまして、その監査委員会で、収入の額の程度であるとか回数であるとか時間数であるとか、そういうふうなものについての判断が行われるということが、兼業がいたずらにいろいろな意味での個人的な収入の源になるようなことの防止策としても一つの手段ではないかというふうにも考えられるわけでございますが、なおこの点については、私どもも種々検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  100. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 兼業またはこういういろいろな病院への派遣医制度、私は悪いごとではないと思いますよ。本人の勉強のためにもいいし、地域医療に貢献するという意味からもむしろ必要なことです。だから、それははっきりと届け出をして、そしてむしろ堂々とやっていただいて、そして大いに貢献していただきたいとさえ思います。  ところが、同席したのではないですが、私はあるところで直接聞きました。たまたまある若い勤務医が私を名指しで批判しているのをよく聞きました。あいつがうるさいことを言うから近ごろやりにくくてかなわぬようになった、こういうふうに言っていらっしゃる方がいらっしゃいまして、文部省の指導が行き届いて効果を発揮してきたな、私は批判されながらうれしく思っております。  しかし、一方、その方は厳しくやりますが、それを請け負った医局長、いわゆる教授や助教授等が謝礼をもらっているという実例も明らかにされているわけでございます。これはどうお考えですか。そこまで注意をして指導されたことがありますか。
  101. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘の点は、言うなればあっせん料のようなごときものであろうかというふうに思うわけでございますが、私どもはそのようなものを含めた厳密な意味での具体の指導というものはいたしておりませんが、これはおのずからそのようなことがあってはならないという良識の問題であると思うわけでございますし、そのようなことがもし仮にあるとすれば極めて遺憾なことであり、これは兼業許可権者の問題あるいは兼業許可権者を補佐する役職者のあり方の問題として、みずからが十分に反省し、検討をするべきものである。もしあるといたしますならば、反省してもらわなければならないというふうに考える次第でございます。
  102. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 文部省で確かめたことではないことだから、私が実例があると申し上げても、あるとするならばとして大変慎重にお答えになられた。それはそれでお立場上やむを得ないと理解はいたします。しかし、私自身もこのことは既に何回も御注意申し上げていることなんですが、今後緊急にそのことを含めた調査、対策を講ぜられることを、私は強く要望をしておきたいと思います。  同時にまた、東京工業大学、慶応大学等々で、委託研究費の問題がまた最近クローズアップされてまいりました。もちろん、学問の世界です。学術研究にお金がかかることも事実です。そのために民間のいろいろな資金が活用されて、そして貢献をすることを私は悪いごとではないと思います。産学協同、私はむしろ結構なことだと思います。必要なことだと思います。それがゆがんでいっては困りますけれども、正しく運用されることを心から望みます。しかし、それだけに、明確な基準なりシステムなりというものが望まれると思います。そういう研究に民間の資金が大いに吸収されるような機関も必要です。しかし、それを正しく運用する、癒着につながらないようにチェックする機能を同時に持たなければなりません。国のお金だけですべての学術研究費が賄われるなんとは思いません。みんなで協力してやっていくべきものだろうと思います。そのルールづくりが本当は今まできちっとなかったばかりにいろいろな問題が起こっているのではないだろうか、このような感じもいたします。それがルーズであるがために、今度は自分の懐にその一部のお金がおさめられたり、遊興費に使われたりというところまで出てきている。言うなれば、もっとルールを明確につくって、そういう資金が活用されるようにする一方、チェック機能を明確にしていく、けじめをつけていく、このことが今時に望まれていると思います。  そのことを含めまして、これはこの前から大臣が大変御理解のある御答弁でございましたけれども、そのけじめが必要だと思いますが、大臣、どうお考えですか。
  103. 森喜朗

    森国務大臣 基本的には、今中野さんがおっしゃったように、そういうことをルール化するということがいいかどうかということよりも、現実の問題として社会的に慣習になっておるということであるならば、やはり一つのルールをきちんと明確にすることも一つ考え方じゃないかなという感じがします。  この問題が起きて、ちょっと長くなって恐縮ですが、学問の世界あるいは学者の世界、どうも何か聖域のようになっている。我々自身も何かさわりにくい。それには、やはり我々と違う専門の領域であるということも一つありますが、もう一つは、やはり学者とか先生というものは偉いものだ、そういう概念規定を私たちは昔から持っておりますから、ああいう博士がそんなことをなさらないだろうという、一つの何となく聖域にも似た感じがいたします。お医者さんの世界というのは、私はそうつまびらかではありませんけれども、若い学徒に手伝いに来てもらう、あるいは一声かければ大学病院から助手として手伝いに来てくれるということは、そのお医者さんの勲章みたいなところもある。逆に言えば、若い学生たちにとっては、あるいはまた研究生にとっては、そういう病院へ行って手術などをお手伝いすることによって、これは勉強にもなる。まさに卒後教育一つになるわけでしょう。そういう中で、お礼をするとかしないとかということになってくるのでしょうが、この辺についても、我々世間で考えているベースとはちょっと違う。そういうところで金銭的な感覚に麻痺してきているような感じがしますし、あるいはそういう特別の聖域のような社会の中ですから、私たちにはわからないようなものがあるのだというようについつい感じがちである。そんなことから、何となくこの社会全体がマンネリ化してしまっているのではないか。そういう意味では、私どもは、このあたりで大きな猛反省と申し上げていいか、そういうことをしていかなければならぬ大事な時期に来ているような感じがします。制度化するか、ルール化するかということも一つ考え方でしょうが、そういうことも含めながら、文部省としても、このことについては関係者や専門の方々と十分御相談をして、少なくとも尊敬されなければならぬ立場、そして端的に医学の道から言えば、命を預けなければならぬ、そういうお立場の方が、本当に気持ちよく仕事ができるように、研究もできるように、また医療の部門で貢献をしていただけるように、我々もそういう意味でもっともっと尊敬ができるように、やはりそういうお立場をみんなでつくってあげなければいかぬなというような感じを、先生のお話を承りながら感じたわけですが、そういうようなことも含めて、文部省としても、やはりこの問題についてはもう少し前に出て、文部省としてはついつい大学の自治だとか学問の自由ということで大学が自主的に自主的にということを申しておりますが、どうもそういうことを前面に出し過ぎることが、かえって、こうして先生からたびたび御注意やら喚起を促すようなことをいただきながら、現実にはこういう醜態をさらけ出してしまったということについては、まことに恥ずかしい限りだと考えております。一歩踏み込んだ考え方をぜひ局長以下持つように指導してまいりたい、こう思います。
  104. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 確かに、我々もそうなんですが、大学の自治だとか学問の自由だとか、そういう民主社会においては当然必要なこと、当然守られなければならないこと、しかし、それを隠れみのにして悪いことをするということがはびこってはならぬ。大学の自治とは、大学の閉鎖でもなければ大学の孤立でもないはずであります。ましてや、治外法権の社会だということを意味するものでもないはずであります。自治と大学人が豪語するならば、みずからが自浄作用を働かせなければなりませんけれども、残念ながら、出てきている現象は全くその反対の現象を露呈しているわけであります。ならば、だれかがそれを糾弾しなければならないわけであります。しかし、それをだれもがやるわけにはまいりません。それを一番オープンな形で、しかも適切に指導できるのは、やはり文部省の役割だろうというふうに思うわけです。そのことを私は強く期待をしたいと思いますし、まして、その文部省の中から今回のようなことが起こるということは断じてあってはなりません。ゆえに、もうだれか一人挙げられた人をスケープゴートにしてそれでおしまいにしてしまおうというのでは断じてあってはなりませんし、やはり出すべきうみはすべて出し切って、そして、胸を張って堂々と誇りと自信を持って仕事をしていただく、そういう職場に一日も早くなっていただくことを私も心から念じてやみません。  そういう意味で、これからも私自身もなお一層気をつけ、また大学教育の正常化のために努力をしていきたいと思いますけれども、なお一層の御努力をお願いをいたしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  105. 愛野興一郎

    愛野委員長 滝沢幸助君。
  106. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 一言御質問申し上げますが、大臣教育審議会法案がようやく衆議院を通り、参議院でいろいろと重要な審議を続けられていることでございますが、実はきょうは、先般、つまりは五月十一日に私が御質問申し上げましたときに、大臣が席を外しておられました時間に局長さんに、大臣と相談をしてひとつお答えしてちょうだい、こう申し上げておいたことがあるものですから、そこら辺から質問に入らせていただきますけれども、五月十一日に私は、南京虐殺の事件、もちろんこれは小中学校、高校の教科書に取り上げられているところ事件のことでございますが、これにつきまして、実は教科書によりまして、殺害されました者の数が、あるものは五万となり、あるものは七万となり、あるものは十万ないしは二十万、甚だしきは三十万となっている、しかし、一つの事実について数がこれほど違うということは、いずれかが正しくいずれかが間違っているであろう、そこで、せめてこの数ぐらいは統一をしなければ、同じ文部省が検定をした教科書としてはおかしいのではないか、私はこういうふうにお伺いしたわけであります。そうしましたら、しかしこれは学者が書いたものであって、こちらではなかなか訂正しにくいというふうなお話もございました。しかし、お答えの中に、御指摘のような考え方もごもっともな点であるわけですというようなおっしゃり方で、一般的に「多数の」というような表現になれば、皆さんから一番納得のいただけるような形になるのではないかと思います、というふうに局長さんに答えていただいたわけでありますけれども、そこで、私が先ほど申し上げましたように、大臣とよく御相談されてこの次の委員会でお答えしていただきたい、せめて数字を消して「多数の」ということに統一をされたらいかがなものであろうか、こう申し上げたのでありますが、その間の事情をひとつ御説明願いたいと思います。
  107. 高石邦男

    ○高石政府委員 先生御指摘の議論を踏まえましていろいろ検討したわけでございます。  そこで、この南京事件における犠牲者の数のとり方にいろいろありまして、一つは、一般の市民の数について、また軍隊を含めた人の数を含めて、また期間が二、三日の間での出来事という期間をとらえて言うのか、ないしは数週間の期間をとらえて言うのかということで、非常にその前提条件がいろいろありまして記述をされているわけでございます。したがいまして、一般的には「多数」という表現であらわしている教科書が、今度の検定された教科書の十二冊のうち五冊はそういう表現になっております。そして、一冊は「大多数」ということで、数字を書いておりません。要するに、数字を書かないで記述しているものが約半分でございます。それから、あと数字を書いているのは、先ほど申し上げましたように、対象についてそして期間について、いろいろ前提を置いて書いているわけでございます。そのこと自体はある意味一つの通説として認められている現象でございますので、前提を書かれて、そして推測されるという記述で書かれたものまで全部表現を統一するということは、検定という仕事の限界を超えているということでございます。したがいまして、結果的には、「多数」と書いてあるのが約半数、それから数字で十万と書いたり二十万とまちまちでございますが、それは先ほど申し上げる前提でいろいろ書かれている推計数字を載せられているという状況でございます。
  108. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 実は、ことし検定が終わってこれからいわゆる採用の段階になろうという教科書のコピーもお持ちしておりまするけれども、今おっしゃったように「多数」というふうな書き方のものが多いわけでございます。しかし、現実に数万から三十万までの間の食い違いがありまして、今局長さんがおっしゃいましたように、前提が書いてあるなら、これは上海から南京の最後までだよ、それで三十万だよ、ないしはこれは長沙まで含めてこうだよというのだったら、あるいはまた、歴史的に時間的に書きまして、これはシナ事変の勃発以来いわゆる大東亜戦争の最後までの全部だよというふうな言い方をして、これを便宜上南京事件として計算をするというふうに書いているなら、それは、あるものは三十万、あるものは十万というようなことについて児童生徒が納得をするでしょう。だけれども一そうではなくて、南京で虐殺が行われた、その数はこれこれだよというのが余りにもまちまちであっては、第一小学校を卒業したのと第二中学校を卒業したのが、全く違った認識のもとに日本の歴史を学ぶ、これはいけないことではないでしょうか。  重ねてお伺いいたしますが、数字を消すことはできませんか、できますか。
  109. 高石邦男

    ○高石政府委員 まず、そういう前提をもとにして十万であるとか二十万であるということを数字として出されたことについては、検定の立場で消すということは困難であると思います。
  110. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 じゃ、その前提をきちんと書くようにという指導はできませんか。
  111. 高石邦男

    ○高石政府委員 それはできるわけでございます。
  112. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 できるとお答えいただきましてありがとうございます。それならば、三十万という数字が出た教科書についてはその根拠を、二十万という数字を書いた教科書についてはその前提を書いていただけるようにひとつ御指導いただきたいと思います。いいですね。
  113. 高石邦男

    ○高石政府委員 この問題につきましては、その期間、それから場所及び対象、こういうものをはっきりさして数字を書く場合には書いてほしいという検定の方針で指導しているわけでございます。今後とも指導してまいります。
  114. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 その指導は徹底しておりますか。
  115. 高石邦男

    ○高石政府委員 そういう立場で検定の指導に当たっておりまして、著者の言い回しとそれから検定官の持っているものとどんぴしゃり合うかどうかという点には若干の問題点はあろうかと思いますが、基本的な姿勢は先ほど申し上げたような立場で指導をしているわけでございます。
  116. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そういう指導にもかかわらず、前提を十分に書かずに数字が大きな開きがありましたならば、次の検定においてひとつ十分に指導してちょうだいしたいことを要望しておきます。  とともに、大臣局長一つのことを申し上げさしていただきます。  それは、実はこのほど拓殖大学田中正明という先生が「南京虐殺事件の虚構」という御本を御出版なさったのでございます。その出版記念会がございまして、奥野元文部大臣、宇野宗佑先生初め与野党からたくさんの代議士も出席をいただいておりましたけれども、その御本を精読いたしますと、また、その出版記念会には南京の占領に携わりました元軍人の方々がたくさんお見えでありました。その方々が証言もなさったわけでありますけれども、南京虐殺事件というのは少なくともあの形においてはなかったということをおっしゃっておるわけです。そのお言葉の二、三を紹介しますれば、当時、南京にはそもそも二十万ぐらいの人口しかいなかったでしょう。そして、日本の軍が進んでいくに従いまして四散し、逃走しまして、占領当日、南京に残っていたいわゆる住民というものは十万にも満たないでしょう。恐らく五、六万じゃなかったでしょうか。我が方の攻めていった兵隊もまた決して十万、二十万という大軍ではなかったということをおっしゃっているわけです。つまり、自他ともにすべて無残にも死に絶えたとしても二十万、三十万という数字はあり得ない、こういうふうにおっしゃっているわけです。  そのことをめぐりまして、大臣または局長、どのようにお感じであるか。少なくとも、教科書を検定される立場にあるならば、あの御本を求められて御精読いただくとともに、知識をひとつ確認してちょうだいいたしたいものと思うのでありますが、いかがですか。
  117. 高石邦男

    ○高石政府委員 まず、検定をするに当たって、特に歴史教科書について検定するに当たっての基本的な立場を若干申し上げておきますが、いろいろな歴史の事象について、いろいろな学説、いろいろな証拠をもとにして著者が書いてくるわけでございます。その際に文部省が、その事実関係があったかなかったかということまで文部省という立場で探求をし、そしてその事実を確定して、そしてその物差しで検定をしていくという立場をとっていないわけでございます。文部省の検定の限界というか、立場というのは、そういう歴史の事象に対して、一般的に学界の通説として確定しているものであるかどうかという、確定されているかどうかということをまず調べて、そしてそういうものが確定しておればその物差しで検定をしていくということでございます。それから、数字とかそういうものにつきましても、一般的に公に出されている、信頼できる数字であるかどうか、そういうことで確定していくわけでございまして、したがって、事件の内容について事実かどうかということを文部省みずから調べて、そしてそこに判定を加えていくという仕組みでの検定をとっていないということでございます。  そこで、南京事件につきましてはいろいろな見方、考え方があるでございましょうけれども、少なくとも南京事件そのものについての存在というのは、学界の通説として、存在しているということが通説になっているわけでございます。したがいまして、そういう前提で記述をされている限りにおいては、そこについて、なかったとかあったとかいうことを文部省が一々調べて検定をするというわけにはまいらないということでございます。
  118. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 御意見でありますけれども、私は、いささか無責任というものじゃないだろうかと思うのですよ。学界の通説といっても、この田中先生も学者です。そして、そういうことをおっしゃっておる学者があの晩もたくさんおいであそばしておるわけです。いずれが通説で、いずれが通説でない説であるか、これは大変難しいところでありますけれども、少なくとも、両論がありまする場合にはこれに対して配慮すると、ちゃんと検定基準に出ているのじゃありませんか。偏った書き方はしない、いろいろな説がある場合はそのことを配慮する、いわば両論を書くというぐあいにあの検定基準には書いてあるのではありませんか。  例えば、これはちょっと例は適切でありませんけれども、こういう総理大臣――とにかく南朝、北朝なんというのはそうですね。総理大臣になりますと、いたかいないかはっきりしますから、途中に滝沢総理大臣いたなんて言ったってこれはしかたありません。しかし、南朝、北朝ともなればなかなか難しいことですよ。中には、歴史上実在しなかったのではないかという天皇陛下がおわしますなんという話もあったりいたしますが、とにかくどんなことを書いてきても、これを証拠を調べずにべたべた判を押す、これが検定であるというところに検定の権威を失うゆえんがあるわけでありますから、これは無責任というのではないでしょうか。一言……。
  119. 高石邦男

    ○高石政府委員 南京事件については、一般的に、外務省の外交史料館による日本外交史辞典の中でも南京事件のことが触れられているわけでございます。したがいまして、そういう事件があったというのは、いわば大多数の学界において通説というふうになっていると思います。したがいまして、一部の学者の中にそういうことをあえて論じられる方もあろうかと思いますが、それはやっぱり、大多数の通説になっておれば、しかも外務省の外交史料館の編の中でもそういう事実が述べられておれば、そこまで、書いてきたものをおかしいから削りなさいとか抹殺しなさいと言うのは、検定の限界を越えることであろうと思うのです。だから、その事件を書きなさいとも言わないし、書いてこられたものが事実であるかどうか、そして通説であるかどうかというような形で判定をするわけでございますので、統一的な表現を、南京事件について全部同じように書けということになると、国定教科書と同じようになりまして、検定の制度仕組みは、そこに若干のニュアンスの差があるというところにある意味での検定の仕組みの性質があろうかと思っております。
  120. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 同じことを議論しても仕方ありませんから、どうか、後でその御本を大臣並びに局長に送呈申し上げますので、ひとつ御精読いただきましての御判断を後からまた承りたいと思います。  それはそれといたしまして、なればお伺いいたしますけれども、この南京虐殺事件がなかったということを書いてくる教科書があったら、これも検定は通りますか。
  121. 高石邦男

    ○高石政府委員 仮説を前提にした御質問でございますので、ここでそのことについてお答えすることはどうかと思うわけでございます。ただ、一般的に言えば、歴史教科書の検定は、広く学界に受け入れられている学説に基づいて行われるものでございますので、南京事件が存在したということは多数の論文、事典類、歴史書の記述するところでございます。したがいまして、検定においてこのような事実はなかったというのはやや通説に反するということになるのではないかというふうに思います。
  122. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 異を唱えていじめているように見えますけれども、国のために私は申し上げているわけですから、どうぞひとつ我慢してちょうだい。  ところで、局長、あなたの通説、通説というのは、これはやや危険ですよ。今後、南京虐殺事件について大いなる変更が学界においてなされ、ないしは裁判その他の行為を通じてこれが立証されてまいりましたときには、あなたの言われる通説というものは変更されるものですからね。そうでしょう。
  123. 高石邦男

    ○高石政府委員 歴史の記述というのは、それは長い間の蓄積によって確定的なものが出てくる。その通説がもっと有力な事実関係の出ることによって変更されるということはあり得ると思うのです。しかし、現在の時点における南京事件につきましては、これは極東国際軍事裁判でも大きく取り上げられまして、そういう事実関係指摘されているし、学界でもいわば通説になっているわけでございますから、現在の時点ではその説に従って処理をするというのが妥当ではないかと思っております。
  124. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 くしくもおっしゃっていただきました極東軍事裁判なるものが、清瀬一郎先生もおっしゃっておりますとおり、非情なる戦勝国が敗戦国を裁くという意味において、事実を無視ないしはなきものをあるがごとく論じ立てて、これを一方的に裁いたという、もちろん二審もなければ三審もないという裁判であったことはあなたが御存じのとおりであります。  私の申し上げたことを、仮説に対してはとおっしゃいましたけれども一つの学説に対してはそれは定説と言い、一つの学説に対してはこれを仮説と言い切ることは危険でありまして、そうではなくて、つまり、そういう教科書はまだ出てこないわけですから、仮説じゃなくて仮定の問題じゃありませんか。仮定の問題には答えられませんというのは、あの有名な吉田茂先生の言行録に残る歴史の言葉ですから、それでしょう。そういうふうに私は善意に解釈をさせていただきます。  ところで、長い間には変わってくると今おっしゃいました。そのとおりであります。そのように長い間、その長いは何時間がわかりませんけれども、変わってまいりましたときに、現行の教科書はどのような手順で修正、訂正もしくは廃止をされますか、お伺いします。
  125. 高石邦男

    ○高石政府委員 そういう事実が確定的に、今まで述べられていた事実と違うというのが一般に承認されるというような状態ができ上がってくれば、その時点において、教科書は三年に一回検定をするわけでございますので、著者も当然そういう変化に対応して記述の変更をされるでございましょうし、また、変更された内容について、そういう考え方、学説が変わっているということであれば、その物差しで検定がし直されるということになろうかと思います。ただ、南京事件については、そういうことは今の時点ではちょっと予想されないと思っております。
  126. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 それだけを承っておきます。  そこで、これはちょっとなにでありますが、大臣、一国の教育の方針を決定することは主権のいたすところでございましょう。これは当然そうですわな。国家主権ですよね。そうですね。
  127. 森喜朗

    森国務大臣 そのとおりでございます。
  128. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ところで、いわゆる教育臨調も含め、堅持するとおっしゃっております教育基本法というものを見ますと、その第十条に、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」こう書いてあります。いつか質問申し上げましたら、何が不当で何が正当だと言ったら、正当な支配なんてあるかとやじってくださった先生方もいらっしゃいましたけれども。それはそれといたしまして、日本は国連に加盟しておりまして、国連憲章というものがございます。これも当然内政の不干渉そして主権の尊重をうたっていることは御存じのとおりであります。ところが、この国連憲章に加盟している国同士、中国と日本は、また韓国と日本は、それぞれ条約を結びまして、お互いに主権を尊重しましょう、内政干渉はいたしますまいというお約束をしているわけであります。  ところが、その中国と韓国から教科書をめぐる議論が、いわゆる抗議が参りました。これは昭和五十七年の七月二十六日中国から、二十八日韓国から参りまして、いろいろの経過の後に検定基準の中に(15)というものが挿入されたことは御存じのとおりであります。ここにその五十七年の十一月二十五日に文部省が発行されました文部広報という資料がありまして、その流れが一ページにわたり全く詳細に報告されております。  これを要約しますると、七月二十六日に中国、二十八日に韓国がそれぞれ抗議を申し込んできているわけであります。これを内政干渉と私たちは受けとっているわけであります。もちろん向こうは、内政干渉ではなくてこちらの意見を主張したんだ、こう言っているわけでありますけれども。  ところが、これに対して政府は、最初は、韓国、中国に対して、そういうことはないんだ、日本の教科書の検定はきちんとしているんだというふうにまずは答えているわけです。ところが、重ね重ね、これではけしからぬ、これではいかぬというふうに言われてくるのであります。そして途中に、これは八月の初めのころでありましょうか、当時の鈴木総理大臣が中国に赴かれまして、結局は、表現はいろいろとございましょうけれども、いわば中国の抗議に対してこれを認めたがごとき決定をなさってくるわけであります。そして、実は八月二十六日に、宮澤官房長官が、我が国教科書の記述についての韓国、中国の批判に十分耳を傾け、政府の責任においてこれを是正するということを記者会見して発表なさるわけであります。  ところが、そうしながらも、八月二十七日には、政府の責任において是正するとはどういうことかという質問がありますと、お答えの中には、「よりよいものに改めたい、こういうことでございます。」というふうに、国会に対しましては依然として同じような姿勢を示しまして、ちょっと言葉が過ぎますかしりませんけれども、いわば国会をたぶらかしているわけです。実は、そうしておりますうちに、文部省が決定する以前に、外務省ないしは官房長官レベルで一つの意思表示が外国に対して行われるわけですね。そして、記者会見等を通じて一般にも発表されるわけです。それらのことを経ましてから、十一月の二十四日に、義務教育教科書等についてのいわゆる検定の基準の改定、(15)というものを加えて、近隣諸外国の感情といいますか、事情を勘案してやるんだというふうに改められるわけであります。  そこで、私はせんだっての委員会におきましても、これは中国の抗議に対して屈服をして、間違ってはいないんだけれども国際の円満なる運用のために直すのかい、それとも、言われて初めて、ああそうだ、間違ったんだ、あれは「侵略」であるのが本当だ、「進出」と書いたのは本当に間違いだったというふうに気づいたのかい、こうお尋ねをいたしましたところ、どうもお答えがはっきりせぬ。こういう経過があるわけでございます。  そこで、重ねてお伺いいたしまするけれども、国家の主権にかかわる教育の決定が、外国からの抗議を外務省ないしは総理の手元で了解されて、それが内外に表明されて後に文部省の方針が変わる。このことは、結論的には主権が侵害されたということではないでしょうか。間違っていないんだけれども、国際間の円満なる運用、解決のためにこれは「侵略」と書くんだということなのか、それとも、言われて初めて気がついて、侵略であったんだ、そうだ、じゃ「侵略」と書こう、という姿勢なのか。この間の事情が非常にあいまいもことしている。この辺のくだりについて、もう一回ひとつ明確なお答えをちょうだいしたいな、このように思います。
  129. 高石邦男

    ○高石政府委員 いろいろな経過がございますけれども、確かに、韓国、中国から我が国の教科書の記述について意見が出された、そして、それをめぐっての対応についていろいろな動きがあったことは事実でございます。  そこで、一般的に、この問題について政府のとった基本的な態度は、我が国の教科書においていかなる記述をされているかということは、一般的には我が国の自由に処理し得る事項である。そういう意味では、教育は我が国の主権に存することであるという基本前提をまずとっているわけでございます。したがいまして、そういう前提をとりながらも、なお中国、韓国からの意見についてどう対応していくかということの手続として、いろいろなプロセスがあるわけでございますが、教科書検定については、やはり国内の規則に従って検定をやっているわけでございますので、その検定の規則を改善して、そして、やはり我が国の独自の観点での検定という一つの作用を通して、教科書の内容についての検定をしていくという仕組みでの経過をとったわけでございます。それが教科書審議会における規則の改正で、先ほどお話がありましたように、検定基準の中に一項目入れまして、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること。」という一つの項目を入れたわけでございます。したがいまして、中国、韓国がこう直せと言ったから直したというものじゃない。中国、韓国からそういう話が出されたということについては十分耳を傾けつつ、我が国の教科書の記述がより近隣のアジア諸国との友好関係に配慮しながら記述されているかどうかというのに意を配りながら、「進出」「侵略」の記述について検定をしていったわけです。したがって、教科書の中には、依然として「進出」という形の教科書で、著者自身がそういう形で出されているものもあるわけでございます。また、その後のこういう動きを前提にして、従来「進出」と書いてあったものを「侵略」というように改めた教科書もあるわけでございます。  したがいまして、あくまで、教科書の検定をするに当たっては、我が国の自由に処理し得る事項であるという前提をとりながらも、近隣諸国との友好関係を配慮しながら、円満な国際関係も維持して教科書問題を解決していったというのが今日までのプロセスでございます。
  130. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 それは、局長、あなたも立場上いろいろ苦労して答えているのだろうし、大臣もなかなか責任ある立場、苦労のほどはわかりますけれども、今のお答えのようなことをわかる人は、非常に頭のいい人か、随分とばかな方なのかもしれません。  それでは、あの抗議の事実がなくとも(15)項は加えられましたか。
  131. 高石邦男

    ○高石政府委員 それは、その後の教科書の記述について、著者がどういう姿勢で検定の申請をするかということが一つかかわり合いがあると思うのです。当時もいろいろ「侵略」という字が書かれていた教科書はあったわけです。ただ当時は……(滝沢委員「それは抗議がなくとも変えたのですか」と呼ぶ)それは著者の申請の仕方によりまして、列国が、中国に対して侵略していたというような記述になっていて、日本の分野が「進出」になっているということになると、表現のバランス上やはりおかしいのじゃないかということになるわけでございます。
  132. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 お答えになっていないのですよ。そのバランスの話はこの前も聞きました。  私がお伺いしているのは、中国からああいう抗議が来なくとも、ないしは総理大臣が中国に旅してあのような約束をしなくとも、文部省は検定の基準に(15)を加え、一年繰り上げて検定をするというような作業をなさいましたかと言っているのです。
  133. 高石邦男

    ○高石政府委員 検定の期間を一年早めてやるとか、それから新たな項目を設けて検定基準に入れたというような動機になったのは、そういう中国、韓国における友好関係を尊重していこうという配慮に基づいてなされたことは事実でございます。
  134. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 かの有名な大阪落城に先立って、徳川家康に抗議を申し込まれて鐘の銘を彫り直したあの豊臣家の姿と、今日の日本教育の姿は相通ずるものがありませんか。つまり、日本教育落城近しと言わざるを得ません。  そこで、今おっしゃいましたバランスのことであります。せんだっても教科書全体で他の記述とのバランス上「進出」になっているとか「侵略」になっているというふうにおっしゃいましたが、他のバランスとは何ですか。これは北方領土のことと比べるのですか。それとも外国が、例えばイギリスが中国をいわば侵略しましたな。向こうが「侵略」と書いてあるからこっちも「侵略」なのか、ないしは、ソビエトが北方領土を侵略した、と私は思っております。これを「侵略」と書くので、こっちの方も「侵略」と書く、こういう意味ですか。どれとのバランスなんですか。
  135. 高石邦男

    ○高石政府委員 中国大陸における過去のいろいろな歴史がありまして、例えばイギリスが中国に出ていったのが「進出」というふうに書かれていて、日本の国だけが「侵略」だということはバランス上適当でないということで、「侵略」「進出」の意見がつけられたわけでございます。
  136. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 時間がないので実証をしませんけれども、それでは、日本が中国における出兵をあえて「侵略」と書いてある教科書は、すなわち、イギリスのアヘン戦争か何か知りませんけれども、あのような事象、ないしはフランス、オランダ、そして近きはソビエトの日本に対する行為、すべてこれは「侵略」と書いてありますな。こちらの出兵が「侵略」で、向こうの侵入がないしは攻撃が「進出」ないしは「出兵」なんて書いてあるものはございませんな。そこは統一しているのでしょう。確かめておきます。
  137. 高石邦男

    ○高石政府委員 教科書はたくさんございますので、その中身をちょっと子細に検討した上でお答えしないと、ここで思いつきでお答えできないのでございますので、御勘弁いただきたいと思います。
  138. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 これはきょうで議論が終わるわけではありませんので、勘弁とかいうのではありませんけれども、その場その場で答弁をいろいろ工夫しているようなことでは困るので、バランス上統一するのだとおっしゃったことが、あなたがさっきおっしゃったように、外国が日本を侵したことも、ないしはよその国が中国に行った場合も「侵略」と書くなら、日本の方も「侵略」なんだということであるという御答弁でありましたから、これを確認させていただきまして、またの機会にひとつお互いに研究をして――といいますのは、私は責めているわけではないのです。しかし、今教育が非常に重大なときでしょう。そして、私は農政において、それは確かに米の計算が誤っているとか、ないしは道路の開発がどうとかいうことはございます。しかし、私は、それらはあえて許すことのできる政治の誤りかと思うのです。だけれども教育基本的主権を侵される、ないしは教科書を外国からの注文によって書きかえるというようなことは、歴史上あってはならないことである、これは取り返しのつかないことになるという観点からこれを申し上げているわけでありまして、どうぞひとつこの間のことについて、何か大臣も近き時期に中国に渡られると承りましたけれども、どうぞひとつ、かつて鈴木内閣が犯しましたようなあの屈辱の、屈服の外交を継続されることではなしに、あえて抗議をしてこいと申し上げるわけじゃありませんけれども、毅然として、日本教育を守る、日本教育のあるじたる姿勢を堅持して施されますように希望申し上げることでございます。大臣、一言所信を聞かせてください。
  139. 森喜朗

    森国務大臣 滝沢先生の教育に寄せる大変大きな情熱や、そしてまた、子供たちが学校で教科書を中心にして人間形成を目指す、そういう意味で大変御心配をしていただいておりますということについては、そしてまた、先生のいろんな私どもに対する御注意に対しましては、心から敬意を表して拝聴いたしておりました。  今のこの教科書制度は、たびたび局長からも申し上げておりますように、民間の創意工夫によって、先生は嫌がられる言葉かもしれませんが、ちょっと横文字を使いますが、バラエティーに富んだいろんな教科書が出てくることによって、それをよりよきものとして選択をして、子供たちが学校で学んでいくという制度をとっているわけでございます。したがって、国としましては、文部省としては、それを記述する著者にはそれぞれ常識的なお立場でお書きになるであろう、こういうふうに信頼を申し上げて、そして、それぞれの教科書会社が編さん、編集をしてつくり上げてくれるだろうということを期待をいたしております。ここが基本的には大事なところだと思うのです。一足す一が三と書いてあったり五と書いてあれば、これは間違いだということがわかるわけでありますが、社会でありますとか歴史でありますとか、著者の主観が若干入るというものについては、これはやはり子供たちに与える影響というものを考えなければならぬ。それは学者にとって自由な考え方、自由な思想――日本の国は自由主義社会ですから、どんなお考えを持とうと御自由でございますが、やはり教科書という出版物、本に書かれて、それをまさに心身ともにまだ未発達な子供に読んでもらう、それを中心に学んでもらうということになれば、できるだけ主観的な表現は改めてもらわなければならないし、歴史的なものからいえば、でき得る限り学説的に忠実なものであってほしい、こういうふうに願っておるわけです。  したがって、いろいろと近隣諸国に対しての問題というのは起きてくるわけでございますが、それにつきましてもやはり正しく表現をしてもらいたい。要は、そういうことはもっとリアルにきちっと書きなさいと言う方も、余りそういうことをリアルに、実質的に数字が明確でもないのに何十万という数字を書くというのはよくないという両方の意見も、何も日本の国を悪くしようというふうに、そういう基本的な考え方お話しになっている方はないと思うのです。要は、戦争という大きな反省に立って、二度と戦争を起こしてはいかぬ、日本は平和国家としてこれからもさらに前進をしていかなければならぬ、そういうことを子供たちにしっかり学んでもらいたい、こういうことから、過去の忌まわしい歴史についても避けて通れない事実として表記してあるんだろうと思うのです。そこのところがより客観的にあって、そしてなおかつ、より教育的な配慮をするということ――高等学校の生徒と小学校の生徒では、同じようなテーマでもやはり判断力というのが違います。そういう意味で、教育的な配慮をしてほしいということだと思いますが、なおその上に、近隣諸国との友好ということを考えて、この時点でその辺についてもやはり十分検定の基準に加えるべきであろうということ、そうしたことをこの検定制度に記したものでございまして、このことは決して屈服したものでもなければ、相手の国から言われてやったことでもなく、あくまでもそうした現象が起きたということは事実でございますから、そのことについて、文部省としても新たなる検定基準を示して、著者の皆さんによりいい教科書を書いていただきたい、こういうことを願ってこの検定の基準を加えたというのが当時の経緯でございます。いろいろと御心配いただきましたことにつきましては、文部省としても、正しい教科書をつくるということを一番モットーとして、これからも十二分に慎重に事に当たってまいりたいと考えております。  なお、私は、まだ決定はいたしておりませんが、中国に行くことがございましても、日中友好のために実を上げるように、そしてまた、両国の芸術、文化、学術により一層深みを増すように努力してまいりたい、こう考えております。
  140. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ありがとうございました。  最後に一言だけ。今立派な教科書をつくるとおっしゃいました。大臣のお答えになった意味とは違いますけれども局長、私は禁止条項はないというふうに諸法制を見たものでありますからお伺いしますけれども文部省が著者となって教科書をまとめて、そして検定を受けなさるお考えはございませんか。
  141. 高石邦男

    ○高石政府委員 文部省が著者になるということは国定教科書ということになるわけでございまして、国定教科書は、戦後、それを検定教科書としていくということで変更したわけでございます。変更した発想がありまして、国の立場で書く、一つの目で書くということよりも、百人の民間の英知を吸収して、そしてそれが教科書としてより適切であるかどうかという判断作用を検定という仕組みの中で行って、よりよき教科書を求めていこうというのが戦後の教科書制度に対する変更であるわけでございます。したがいまして、国が国定教科書をつくるということは現時点で考えてないのでございます。
  142. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 時間が来ましたけれども、私の名誉のために申し上げておきます。私は、文部省ないしは文部省のある機関ないしはある人物が著者となっても、国定教科書ということではない、これ以外のものは許さぬぞというものが国定教科書でありまして、文部省みずからが一つの学説を唱え、一つの教科書をつくることは、私の解釈からいうと、何ら国定教科書ではないと理解しておりますので、その点を念をおしまして、大臣、いろいろとどうもありがとうございました。
  143. 愛野興一郎

    愛野委員長 中西績介君。
  144. 中西績介

    ○中西(績)委員 先般、「昭和六十年度財政改革小委員会報告」が出されました。この中身をつぶさに検討いたしますと、まず、「政府から臨時行政改革推進審議会に要請された「増税なき財政再建」の基本方針の下にこということから始まって総論が述べられ、そして、特に教育関係でまいりますと、総論中の二ページの「一般国民に対しては、受益者負担のある程度の増大と行財政サービスの若干の低下を要請せざるを得ないものである。」こういう中身等を踏まえながら具体的方策が示され、その中に「文教」という関係が入っております。これを見ますと、①から④までございますが、今まで私たちがこの委員会で何回か討論をしてきた中身がここに出されておるわけです。  そこで、まず第一にお聞きしますけれども、この内容について、文部省としてはどう対応しようとしておるのか、検討されておるかどうか、お答えください。
  145. 森喜朗

    森国務大臣 小委員会報告を受けまして、現在行革審で二つの小委員会報告を審議中であります。したがいまして、審議会の報告がまとまりますまでは、これはプロセスでございますので、同じ政府部内でございますので、文部省としての意見を述べることは差し控えたいと考えます。  ただ、今先生から御指摘のように、財政状況は引き続き大変厳しい状況でございますし、政府全体といたしましても財政改革の努力を続けている折柄でもあり、文教予算につきましても、従来から厳しい枠の中で所要の予算についての獲得に努力をしてきたわけでありますが、まだ文部省内といたしましては、来年度予算につきましてのいわゆる省議といいましょうか検討の会を持ってはおりません。しかし、私もまた文部省幹部全体も、大変厳しい状況で六十年度概算要求の作業をしなければならぬということについては極めて心配をいたしておるというのが正直なところでございます。しかし、たびたびこの委員会でも御答弁申し上げておりますように、文部大臣といたしまして、文部行政があくまでも遂行でき得るように最大の努力をしていきたい、ただいまのところはなお一層そういう考え方を持っておるところでございます。
  146. 中西績介

    ○中西(績)委員 もともと、臨調あるいは行革審の会長は土光さんですね。ところが、考えてまいりますと、オイルショックの後に、大企業救済の不況対策のために、政府に対してしゃにむに巨額の赤字国債発行を迫り、当時こういう言葉がささやかれておりまして、土光ではなく怒号だと言われておりました。これに象徴されますように、政府に国債を財源とする財政支出を強要することによって景気対策を求めた張本人がこの土光さんであったわけですね、昭和四十九年から五十五年まで経団連の会長をやっておるわけですから。ですから、もともと、赤字国債解消の負担をだれがするかということになりますと、国に借金を強要した土光氏などが最もその中心になってやらなくてはならぬと私は思うのです。主張した人が今どういうように言っておるかというと、こうした返済をするということになれば税負担を強いられるために、増税なき行政改革というスローガンを掲げて、今これを全部どこかに転嫁をしようというのが、これに盛られているもの全部そうだと私は思うのです。  そうなってまいりますと、先ほどちょっと触れましたけれども、この二ページにあります「受益者負担」、この面で、受益者負担政策を強化する中で、教育問題だけにかかわってまいりますと、教育費を大幅に削減をしていくというこうした政策に変わってきておるわけであります。特に指摘をしなくてはならぬのは、「具体的方策」の中に出ております(2)の「文教」のところにありますように、まず第一が授業料の値上げです。そして、これは直接受益者負担ではないけれども教育環境という重要な役割を果たす部分から考えますと、これも我々が指摘をする大きな部分になるわけでありますけれども、定数改善の抑制、さらに公立文教施設の整備抑制、あるいは私学助成金の削減、もう全部がこのようにして我々の負担に転嫁をしていく。言いかえますと、増税をさせぬと言いながら、しないと言いながら、逆に今度はこのような大増税の変形を行政改革と言って我々に押しつけてくる、こういう中身になっておるということを私たちは知らなくてはならぬと思うのです。先ほど大臣は、文部省の意見は差し控えたいということを言いましたけれども、こうした内容であるということを、私たちがここでお互いに意思統一ができるかどうか、そうしなければ、論議をするに当たっても大変な違いが出てくると私は思うのです。確かに、四十九年から五十五年までは土光さんがこれを主張してこのことをやらせたわけですから。その財政を再建すると言って、五十九年までに終わらせると言ったけれども、できずに、これを今度は六十五年まで引き延ばしておる。そのツケを今度は、増税をするなという人が、国民にとっては大増税に変形して、こういう形のものを全部受益者負担として押しつけてくる。今の文部行政を行うに当たっても、この問題を明確に私たちがとらえておかないと、これから後の論議をするに際して大変な誤りを犯すのではないかと私は思うわけでありますけれども、この点についてはどうなんですか。
  147. 森喜朗

    森国務大臣 中西さん御指摘の、この問題を明確にして共通の理解と認識を持たなければならぬということでありますが、確かに、この財政状況の中で、文教予算につきましてのこの小委員会報告は大変厳しいものであるというふうに、私もその点では先生と認識は一緒でございます。しかし、これは過程でございますし、また、この小委員会で議論をいたしております。そのプロセスの中におきましても、私たちが当初予定をいたした――もちろんこれは予測でございますけれども、予測をいたしておりましたことなども踏まえて、やはり表現にはかなりいろいろな意味で工夫を凝らしてあるなあということで読み取れる面も私にはあるわけでございます。したがいまして、もちろんこれは審議会で最終的にどのようなまとめになるのかということもすべて出てしまいませんと、今の段階で私とあなたと全くすべて認識を一緒にしよう、そういう中で議論しないとできないと言われてもまた困るわけでありますが、すべて認識を同じにしてこの問題を構えようという立場はなかなかとり得ないわけでございます。     〔委員長退席大塚委員長代理着席〕  土光さんについてのことや、あるいはまた土光さんがこの財政赤字をつくる一つ原因になったのではないかということも、これは先生のお立場からお考えになったことでございますが、財界主導、財界主導と、こう言われますと、財界というのは何も財界人のための財界ではないはずであって、そのことによって日本の経済全体がやはりいい形で繁栄もしてきたわけですし、勤労者に対する賃金ということもあったでありましょうし、社会の全体的な投資にもなったわけでしょうし、社会のいわゆる公的な負担という点につきましても実りが多かったということにもなるわけですから、必ずしも財界のために赤字財政をつくり上げたというような、私は先生とそこまでは立場を一緒にしようというわけにはなかなかまいらないわけでございます。  しかし、文教予算全体について先生も大変御心配のとおり、いや、先生よりもある意味では私の方がむしろ心配をいたしているかもしれません、正直なところ文部大臣という立場から、大変難しい予算編成にこれから立ち向かわなければならぬなあという心配はいたしておるところでございます。
  148. 中西績介

    ○中西(績)委員 少なくとも私がある程度意思統一をと願っておるのは、このような教育あるいは福祉、国民の生活にかかわる全般的な分野にかかわって、こうして予算を削減せいということが今盛んに主張され始めてまいりまして、そして今、ここ三年間にわたる緊縮予算なりで国民の生活を圧迫することが大変大きな影響を与えておるということで、いろいろな意見が出始めておる。それに対応してこれでは大変ですよということがこの中には示されておりますね。特に、五十九年度から初めて行財政改革が始まったので、これを変更すると大変なことになるということをここにはうたっています。ところが、このようになってきた最も根本的な原因が何であるかということを私たちは追及した場合に、先ほども言いましたように、土光ではなくて怒号だと言われるくらいに怒り散らしてこれを入れさせたという、これは「エコノミスト」か何かに出ていたんです。そういう当時の中身であったといたしますならば、少なくとも、こうした増税なき行政改革などというごまかし、増税なきという反面、大変な負担を強いられた人たちがおるわけですから、これは増税と全く同じなんです。  ですから、こうした問題について自分の問題としてこれを受けとめ――何か人ごとのように、人がこういうものをつくっていったというようなやり方でやっておることが私たちは容認できない。したがって、文部行政の側からいうと、教育をどうするかということになってまいりますと、こういうことを容認をしていくと教育などというものはこれからまさにその大きな被害者になるし、またえじきにされるし、いろいろな形態でこれは縮小してくるということは必至です。ですから、私は、そうした面で、この問題に立ち向かう場合に、我々の意思としてこういうことにごまかされてはならないし、教育を守らなくちゃならぬという立場に立ってこれから後の論議はしていただけますか。この点はどうでしょう。
  149. 森喜朗

    森国務大臣 前提条件はいろいろございますが、国政全般に対しまして私どもも心を痛めておるという時期でもございます。特に、文教行政につきましては、財政状況とのにらみ合わせから見ましても大変厳しい事態に立ち至っておる。そのために、教育の諸条件が文部省考えておりますような政策が遂行していけないというようなことであってはならない。そのためにはこれから懸命な努力もしなければならぬ、いろいろな対応も考えていかなければならぬ、このように考えておるわけでございまして、教育の諸条件を行き届いたものにしていこう、またできるだけより整ったものにしていこう、そういう考え方についての先生との認識は同じであろうというように私は考えております。
  150. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、この前提になるべきものが、十分な意思統一はできませんけれども、とにかくこれを大事にしていこうというところだけは統一できるわけですからね。  そこで、この文教の関係で七ページの①に出ておりますのが、大学、短大全体として抑制基調とする、こうなっているのです。この中で一番最後ところに、「また授業料等の費用負担について引き続き適正化を進めるとともにこということになりますが、これは恐らく授業料あるいは入学金、こういうことになると思います。授業料はことし値上げをしました。入学金は、報道されるところでは来年また二万円なり何なり値上げをするという、交互、隔年ごとに引き上げていくというような状況が出始めておりまして、父母負担はますます増大をしてくる傾向にあるわけでありますけれども、そういうことをお考えですか。
  151. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 国立大学の授業料等につきましては、従来から社会経済情勢の変化と全体的な事情を総合的に勘案いたしまして改定を実施をしてきたところでございまして、この問題は、御指摘のように学費の負担という問題と関連をする問題でございまして、極めて重要な問題であるというぐあいに私どもも認識をしております。もちろん、明年度予算につきましては、これから全体的な取りまとめの作業をするわけでございまして、新聞に報道されておりますような事柄について、財政当局から私どもに対して何らかの折衝なりそういうことがあったという事実はございません。
  152. 中西績介

    ○中西(績)委員 それでは、この入学金六十年度引き上げをするということについては、一応今までは財政当局からはない、このことは確認をいたしますが、文部省としては、私が一番心配するのは、例えばこの前の育英奨学金の問題につきましても、学費をどんどん引き上げていきさえすれば金が不足するわけですから、利子がついてもそれを借りるということだって出てくるわけなんですね。むしろそういう方向に、受益者負担ということをいいことにして、ますますこれを引き上げていくんではないかという危惧を私は持っています。そういう推測をするわけです。その点はないですね。
  153. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 国立学校経費全体、これは先生御案内のとおり、国立学校特別会計ということで一般会計からの繰り入れ、そのほかもちろん授業料もその歳入の一つでございますし、また附属病院の収入も歳入の一つでございます。全体的に大変厳しい対応が迫られておることからいたしますと、例えば附属病院収入等につきましても、実際にその病床の運用の改善を図るということで、ここ近年、具体的には、病床の稼働率と申しておりますけれども、稼働率を引き上げることによりまして国立学校特別会計全体の歳入を確保するという観点では、私どもあらゆる面で努力をしておるわけでございます。  全体的に、国立学校特別会計全体の予算というのは、先ほども申しましたようにこれから六十年度予算については内容を検討して煮詰めていくことになるわけでございまして、歳入歳出を図るという点で全体的な予算の確保ということをしなければならないわけでございます。検討課題ではあると思っておりますが、先ほども申し上げましたように、学費の負担ということは非常に重要な問題だということは十分認識をいたしておりますので、そういう認識に立ってこの問題については検討をしなければならない課題というぐあいに理解をいたしております。
  154. 中西績介

    ○中西(績)委員 そう言いますと、これに書いていることをただ言っているだけにすぎません。だから、私は少なくとも、一つの例として最も端的に、もうこれは既に新聞には出たのですから、二万円の入学金増額をしないかどうかということは。今の答弁では検討課題であるということを言っておるわけでしょう。ということになってまいりますと、むしろこの分について手を触れるということを今言っておるのですよ、ただ、それを積極的にやるか、消極的にやるかは別にしまして。ですから、少なくとも私は、さっき言うように、隔年ごとに授業料を上げ、入学金を上げというようなぐあいで、この前も指摘をしましたように、十数年のうちに十八倍も授業料が引き上げられたというようなことにならぬようにしなくちゃならぬわけですから、まさか来年、六十年度は授業料の値上げはしないでしょうね。これは手をかけぬでしょうね。どうですか。
  155. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほど来申し上げておりますように、六十年度概算要求をどう取りまとめていくかということは、これから私どもまさに作業をいたしまして、八月末までに全体の取りまとめをすることになるわけでございます。したがって、現時点ではそういう問題について議論はいたしておりません。
  156. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、議論をしてないだけにこれは危ないわけです。財政当局から言われると、ふにゃふにゃとなってしまうのじゃないですか。そうならないことを私は期待をしておりますけれども、授業料はことし上げましたからなんだけれども、入学金はまた来年上げられる可能性があるわけですから私はこれを挙げたのですけれども、こうしたことにならないようにぜひしておかないと、ここに出ておるということになってまいりますと、教育改革そのものも、臨調の言うとおり、これもすべて含んでこれから進んでいくということを私は一番懸念をしておるから言っておるわけですから、この点はぜひ大臣も気にとめていただいて、この点については徹底して阻止をしていただきたいと思います。  時間がありませんから、次の、二番目ですね、義務教育職員、公立高等学校職員の定数改善計画実施について、これもやはり同じように、言葉は、先ほど大臣が言いましたように、ある程度内容的には最初言われておった分よりも抑制されていますね。しかし、ここには「抑制する。」ということが出ています。したがって、ここで私がぜひお聞きをしたいと思いますのは、これはこの前から引き続きの論議ですから、この前、生徒数、動向等について調査結果を集計中だと言っておりましたけれども、この点とうなったのか。よろしいですか。
  157. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えをいたします。  前回高石初市局長からお答えをしておったとおりでございますけれども、御指摘の資料につきまして、各都道府県から資料を集めまして、現在それの集計、分析等を行っている最中でございます。全国の個々の学校の来年度の児童生徒等の見通しあるいは将来における推計等を集めた非常に膨大な資料でございますので、資料分析にかなりの時間がかかると思うわけでございますが、それにいたしましても、もちろん先生御心配のような来年度概算要求に間に合わないというようなことがありますと、概算要求そのものができなくなるわけでございますので、そういうことがないように、必ず概算要求の必要な時期までには集計等を終了して対応を考えたい、こういう状況でございます。
  158. 中西績介

    ○中西(績)委員 この前も私は指摘をしたのですけれども、八月にと言ったのでは間に合わないので、七月中くらいにはまとまりますかということをお聞きしたのですが、その点は大丈夫ですか。
  159. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 文部省といたしまして最終的に概算要求の数字を取りまとめていくというのはもちろん八月三十一日ということになるわけでございますが、実質的な内容等をある程度固めていくためには、八月の中旬というあたりが時期的な限度になってくるわけでございまして、それまでには必ず間に合うというふうにお答えできるわけでございます。
  160. 中西績介

    ○中西(績)委員 私はなぜ七月なら七月ということを言っておるかというと、この前も言いましたけれども、第五次の計画案をつくる際に、一年間すっ飛ばしたんですよ。あのときに全国集計をするということを言って、それがとうとうできずにずれ込んじゃったんですね。そのためにあれは一年間すっ飛ばしたんです。私はあれはむしろ意図的だったと思うのですよ。意図的にやったと思うのですね。私たちはそういうごまかしをかつてやられていますから、そうしたことには今度はかかりませんよと言っているわけです。  ですから、この点について、八月中旬と言いますけれども、その結果分析、そうすると今度それに基づく計画というのが必要になってくるわけですから、相当の期間がないと計画は成り立たぬのではないか。これは文部省のやることですから私が心配する必要はないと言えばそれまでですけれども、今までそういう面で何回か問題が出た経験を持っているからこれを指摘をしておるわけです。したがって、この点、そういう結果が出ますと、ぜひ七月中くらいにやり上げて、今言われる八月の中旬くらいまでには分析とそれに対する計画がどう立てられるかという、こうした面に向けての作業が進んでいかぬといかないと思うのです。したがって、今までの計画ありましたね、三年前に組んだものが。これを変更しなくちゃならぬと思うのですね。ですから、それが完全にでき上がる時期というのはいつですか。
  161. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 まずは来年度どうするかという問題が基本でございますので、その来年度どうするかということとあわせて将来の見込み等も検討しなくちゃならないというわけでございますので、すべてのものを同時にほぼ八月の中旬ぐらいまでには見当をつけたい、こういうつもりでおるわけでございます。
  162. 中西績介

    ○中西(績)委員 私が心配をするのは、これは十九日の新聞ですが、政府は「補助金、一段と削減予算編成の〝焦点〟に」ということで、「政府・財政当局は十八日、五十九年度で期限切れとなる行革関連特例法を、財政再建目標の六十五年度まで延長する方針を固めた。」こう出ていますよね。ということになってまいりまして、次期国会に、具体的に通常会に提出したい、大幅に見直して再編した上で提出をするということになる。そうすると、定数問題だってこの中に全部入っているわけですね。これは小中学校の四十人学級や高校の習熟度云々というものがこの前やられていたわけでありますから、こういうことになりますと、まさに鈴木内閣のときに五十九年度までということでこの特例法を設置いたしまして、そしてこれがこの関連の中で五十九年度に三千四百億円予算を削減をしておるわけですね。それを今度は六十五年までという、この財政計画立つまでということになってまいりますと、結局これがまた延長されるということになってまいりますと、今言うようなことはよほど私たちがしかとした腹構えと、対応する、提起する場合のいろんな資料というものを十分持ち得なければ、この義務教育職員あるいは公立高等学校の教職員定数等についてまた再び大幅に延長されていく、全く目標が立たなくなってくるという実態が1大臣にこの前答弁願ったところが、六十六年まで、期限内にその数を、ただ具体的には来年度要求をするというところまでいきませんでしたけれども、やるということは言っているわけですね。ところが、実際にこういうことが出始めておる中でありますだけに、この小委員会のこれとのかかわり、それから財政とのかかわり、ここら辺をどうお考えですか。     〔大塚委員長代理退席船田委員長代理     着席〕
  163. 森喜朗

    森国務大臣 六十六年の最終年度は変えない、こう申し上げております。三年間の抑制がございましただけに、かなりこれから後の計画が窮屈になってくるだろうということは今から想定ができるわけでございまして、ぜひ六十年度予算からは何とかそのような方向で計画をつくり上げていきたい、こういうふうに私自身考えております。  ただ、たびたび申し上げて恐縮でございますが、予算の枠組みがまだ財政当局から示されておりませんし、今ここにございます行革審の小委員会報告を論拠として先生御質問いただいているわけでございますので、冒頭に申し上げましたように、これは審議会がこれからまとめるプロセスの段階でございますので、これに基づいて私から御答弁を申し上げたり、そのことを一つの立論にしながらお話を進めるということについては、私は今は適当ではないという立場をとっておるわけでございます。御意思はよくわかりますし、そういう答弁では先生の気にさわることもよく承知をいたしてあえて申し上げております。あくまでも今の内閣の中の国務大臣という立場でそう申し上げておるわけでございます。  ただ、私といたしましては、やはり何とか知恵を使ってでも、この四十人学級を含む定数改善計画については少しでもいいから着実にその方向を見出せるように何とかいい方策がないかと思って、今自分なりの検討もいたしておるところでございますが、どのように、どうしてやるのかというようなことについては今ここで申し上げることは適当ではない、このように考えておるわけでございます。
  164. 中西績介

    ○中西(績)委員 それで、一番最初にお互いに意識的に認識を一致することができるかどうかという問題が出てくるわけですね。例えば、増税なきということでなくて、自分たちが手がけたことだから、我々が今設けておるところには金を出そうじゃないかというぐらいに、増税でもしてもらわぬとこういう問題の解決というのはほとんどできないということが、今あなたが言われるように、財政ということを言うと全部そこにひっかかってしまうということになるわけです。そうすると、これに示されているとおりに、全部パアになっていくということになるわけですよ。いやそうなるんだから、今までの経験からしますと。この三年間随分私たちは言ってきたけれども、この点が全部そういうように、落ちはもうわかっているような感じがするのです。  だから、教職員の定数の問題にしましても、学級改善の問題にいたしましても、本当にやれるかどうかというのは、私たち自身また政府自身、行政自身が、今の行政改革という問題に対応してどういう姿勢をとるかというのが今問われておると私は思うのですね。でなければ、我々がここで審議する必要もないぐらいになっている。こういうものが出て、よく政府の皆さんに言いますと、行革審の答申があります、何々小委員会の答申があります、こういうぐあいに言われて、一〇%シーリングだと言われたら、私たちが何もここで討論する必要もないのです。国会の国政の最高権威そのものが今大変侵されておると私は理解をしているのです。  そうしたことからいたしますと、何としてもそれを少しでも我々の立場で、国民皆さん要求するその立場で、国民の多くの皆さん教育改革を期待するというのはそういうところでしょう。こういう面をどうしていくかということを私たち今ここでやらずに、おめおめとこういうものに従っていくということになってくると、我々はここで論議するその熱意すら失うのですね。ぜひこの点を我々自身がちゃんと腹に持ってこれから対応するということを、少なくとも文部大臣がその腹にならぬとできぬと私は思っています。特に局長以下行政の皆さん、そのことを言ったとしても、これは閣議で決定し、どこどこで決定しましたと言ったらどうすることもできぬわけですから、この点は何としても一つずつ改めていくべきだと私は思っています。  そこで、これと全く同じようになされておるのは、この三番目にある公立文教施設なんです。「事業量を厳しく抑制する。」ということになっています。これは見ればわかりますように、今までのあれをずっと見ていきますと、例えばおたくから出た五十八年五月一日現在のものを見ましても、不足面積だけで小中合計が一千百八十五万平米あるわけですね。高等学校が九百七十九万四千平米あるわけです。これだけのものを見ると、私は今お聞きしたいと思いますのは、抑制、抑制ということになっておりますけれども、従前であれば、例えば公立文教施設整備費第五次五カ年計画などということが立てられて、これを目標にして努力しましたよね。さらにまたさかのぼれば、例えば高校生徒急増対策などにおきましては、閣議で決定をして、これを具体的な施策として追求してまいりました。ところが、今このようにたくさんの不足面積があるにかかわらず、予算の面ではどのようになっておるかというと、ことしが四百七十億、この三年間ぐらいで一千二百億を超える削減をしていますね。面積の上から見ましても物すごい、ここにありますけれども、一々申し上げませんけれども、最も高いのが五十五年ですね。そして五十六年から急速に、一二%、一八%、一九%、二〇%近くというようにどんどん削減されていきましたね。こういうようになってまいっておりますけれども文部省としてはこれらの問題については計画というのがあるのですか、この点、どうでしょう。
  165. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 公立文教施設の関係予算につきましては、先ほど先生が数字でお話しになりましたように、事業量が年々減ってきておるわけでございますが、これは文部省が削っておるわけではなくて、予算要求仕組みといたしまして、毎年、夏の概算要求に合わせまして、その前の時期に各市町村、都道府県等から具体的な翌年度の事業計画をとるわけでございます。その事業計画に伴って概算要求をする、こういう仕組みをとってきておるわけでございまして、実態からも御承知おきいただけるかと思いますけれども、各年度予算におきまして市町村の具体の計画にはほぼ完全に対応してきておるつもりでございます。そういった情勢の中でございますので、格別にこの年度に幾らという格好の年次計画をつくるということはいたしておらないわけでございます。
  166. 中西績介

    ○中西(績)委員 少なくとも急増地域における対策などが万全に行われておるなどということは到底考えられませんよね。そうしたことから考えますと、私から言わしむるならば、行革審の言われるままに、ここに書かれておるままに厳しく抑制する、これに乗っていく可能性というのが非常に強いと思います。学級編制の改善に伴って増設所要教室数の見込み、五十五年には出されておるんだけれども、今はもうほとんどこれが資料としてもない。要求しても出てこない。ですから、こうした問題等をあわせまして、少なくともこの問題については、先ほど出ておる定数改善とあわせまして、どのようにしてこれからつくり上げていくのか、こうしたことをやはり一つの目標、施策として持つべきだと私は思っています。この点どうですか。
  167. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 学級編制の改善との関係での増設所要教室についてのお尋ねでございますけれども、これにつきましては、かねて十二年計画スタートの時点での一応の試算といたしまして、全国的に見て約八千教室ほどの増設が必要であるという試算をいたしたわけでございます。その後、御承知のような状況で、五十七年度から五十九年度までは学級編制の改善そのものが足踏み状態になっておるということもございますので、情勢がかなり変わってきておるわけでございまして、これからは児童生徒数が減少していく時期に入っていく方に学級編制の改善計画がずれております。そういった関係もございますので、八千教室といった推計は、これは全くの私どもの勘でございますけれども、少なくとも四分の一程度はさらに減るのではないかというような勘の数字を考えておるわけでございます。この数字は、各年度に割り振ってみますと、それぞれの年度の小中学校の増設、現在の、例えば昭和五十九年度予算の小中学校の新増築に必要な経費とのバランスで見ますと一〇%に満たない数字でございますので、このために特別に計画等をつくるという必要を現在感じておらないわけでございます。
  168. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうなりますと、必要、保有、整備資格、危険、要改築面積の中で、整備資格面積というのは不足面積ですよね。これは依然として、あるものについても解消するというような具体的なそういう計画すらも立っておらないのですか。先ほども申し上げましたように、小中の計が一千百八十五万平米、それから高等学校が九百七十九万四千平米などという不足面積すらあるわけでしょう。そういうこととあわせ考えていった場合に、こうしたものを少しでも改善していくあるいは解消していくという基本的な計画というのが全然なされずに、既往の投資、大変厳しくなったので上がってこないことを幸いにしてそういうことをやらないということになってまいりますと、従来から我々が主張しておるこの環境整備などという問題については全く見捨てられているとしか言いようがないですね、不足面積などを考えてみますと。こうしたことの関連はどうでしょう。
  169. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 たびたび同じことをお答えして恐縮でございますけれども、この市町村の計画に基づいて文部省としては対応するという姿勢で、各市町村からの具体の計画に対してそれに相応する予算措置を講ずるという仕組みをとっておるわけでございまして、これと別途の計画をつくってと申しましても、各市町村の具体の校舎建築の計画とかみ合わない限りは意味がないことになるわけでもございますので、私どもの方としては、計画を出してくれれば対応するぞという姿勢でかねてきておるわけでございます。  それから、環境整備というお話がございましたけれども、量的な整備というのは、先ほど来お話に出ましたように、計画事業量そのものが全体としてかなり減ってきているという時期でもございますので、これからの学校の校舎建築等につきましては、従来と異なり、単なる建物を建てるというだけではなくて、ゆとりと潤いのある施設を整備していこうという方向で努力をしておるわけでございまして、最近でも、五十六年度と五十九年度に、多目的スペースを設けるための校舎基準のアップでございますとか、屋外環境整備費の補助を新しくつけるとか、小中学校のクラブハウス、中高のセミナーハウス、いろいろなものを考え、この時期にできるだけ対応を進めていきたいということで努力しておるところでございます。
  170. 中西績介

    ○中西(績)委員 先ほども指摘したのですけれども、それはあくまでも地方自治体から上申なり要求される数値を集めて建てていくということを言っていますけれども、公立文教施設整備第四次五カ年計画などというのがかつてありましたね。今これはなくてその年当たりでいくのですか。場当たり的なのですか。
  171. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 私も手元に今その何次計画というのを持っておりませんので承知いたしておりませんけれども、恐らく公立学校の施設の拡充を相当しなければならない時期につくられた計画であろうと思うわけでございますけれども、現在の状況は逆に、先ほど申し上げましたように、各市町村の計画事業量そのものが児童生徒数が減少していくという傾向の中で減ってきているという状況でございますので、特別の年次計画をつくるということを考えておらないわけでございます。
  172. 中西績介

    ○中西(績)委員 大臣、この点で少なくとも、この前も出ましたけれども、公共事業などという問題を考えた場合に、これほど典型的な公共事業はないですね。ほかのところで、だれかがぼんぼんもうけるような公共事業についてはわんわん言うけれども、文教族の皆さんが、少なくとも自民党の中の文教族の皆さんが、この公共事業ぐらいはやるべきだということを主張すべきではないかと私は思うのです。ここだけはどんどん――五十五年に比べますと事業が半減しているのですよ。部分的にはそこまできているのですね、教室なら教室だけを取り上げてみますと。ですから、我々はこういう問題をもう少し科学的に、先ほど申し上げましたように、第四次の五カ年計画は立てられています。それを大蔵省は聞いたかどうかは知らないけれども、少なくとも文部省としてはそれを持っておる。しかし、現在はもう場当たり的になっていますということですから、この点はぜひ再検討するなりして、少なくとも、地方自治体の財源あるいは財政状況のよしあしによってうんと差が出てくるということになってまいりますと、こういうことこそ、画一的でもいいからそういうところを温かく見てやるというのが重要ではないですか。こうした点について何か見解がございますか。
  173. 森喜朗

    森国務大臣 確かに、学校建築、これは公共事業として考えていくには非常にいいものだと思いまして、当時、ちょうど福田内閣のときに、総理から、学校を公共事業の枠に入れるというふうに、できるだけ学校の改築を進めようじゃないか、当時の経済状況の中からそういう指示が出まして、随分全国を調査いたしましたけれども、なかなか出てこないものなんですね。思ったほど出てこなかったのです。しかし、御承知のとおり、いろいろと改築の点数などを一部変更いたしたりしました。そういう形でかなり促進はいたしました。  現時点では、今阿部局長から申し上げましたように、地方自治体では、もちろん財政状況もあると思いますが、もう一つ児童の減少動向というのを見ているのだと思います。そういう面で、学校の建築あるいは改築等についてはやはり若干消極的だ。消極的という言葉は表現がよくないかもしれませんが、やや停滞をしているという感じです。ただ、確かに、大規模校でありますとか人口集中地でございますとか、そうしたところにはまだまだ幾つかの問題点は残しておるわけでございますが、今改めて何次計画というふうに積み上げて、そして年次を追って学校の建築を促進していく、公立文教施設の整備を進めていくというような今の状況ではないというのは、これは先生も大体御理解いただけると思うのです。しかし、確かに、おっしゃるとおりもう少し、必ずしも場当たり的ではないわけでありますが、何か系統立っていないという御指摘があるとするならば検討もしてみなければなりませんが、現実の問題としては、事業量の要求に対してはかなり問題なく消化していると私どもは承知をいたしておるところでございます。
  174. 中西績介

    ○中西(績)委員 この問題は、私たちの判断からすると、極めて場当たり的ではないかという感じがしてならないわけであります。特に、先ほど申し上げましたように、地方の過疎地域なりにおける状況、それから今度は過密地域における状況などを考えてまいりますと、そうした面を可能な限り進めていく、こうした環境だとかなんとかについてもうちょっと画一的にやってくださいよ。管理だけはぎりぎり画一的にやって、こういうことになると逃げの姿勢、へっぴり腰でやるからだめですよ。だから、行政の果たすべき役割は明確ですから、そういうところに力を入れてやる、こういうふうにあってほしいと思います。  そうした意味で、昨年七月に児童生徒の急増急減対策などに関する省内連絡会議というものが設置されたそうですが、どういう計画をされておるのか。今私が申し上げたような、例えば教職員定数、学級数の改善だとか、こうした公立文教施設整備などについて、急増急減に対する具体的な計画を練られておりますか。
  175. 西崎清久

    西崎政府委員 ただいまお尋ねの児童生徒急増急減対策連絡会議の経緯でございますが、昨年の七月に連絡会議を設置いたしまして、今日までに十三回開いておるわけでございます。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕  この親の連絡会議におきましてはいろいろな検討をやっておるわけでございますけれども一つは、これは先生お尋ねの件以外の問題がいろいろありますので……(中西(績)委員「それは省いていいです」と呼ぶ)よろしゅうございますか――じゃ、端的に申し上げますと、この児童生徒急増急減対策連絡会議の下に急増急減計画検討部会というのを設けまして、この急増急減計画検討部会の中で、四十人学級、教職員定数改善計画の問題、一局等教育に関する新長期高等教育計画の問題、それから、高校生徒急増対策、教員定数ないし施設の問題というふうなものを検討しておるわけでございますが、この点については、全体予算との関連等もございまして、この会議自体で結論を出すという性格のものではございませんので、この会議のいろいろな討議を経まして、具体的に申しますならば、来年度予算要求に向けまして省内で八月末までに予算のあり方についての意見を取りまとめていく、こういうふうな経緯になっておる次第でございます。
  176. 中西績介

    ○中西(績)委員 だから、やはり予算との関係ですし、財政との関係になるわけです。ですから、私は、また最初に返っていくわけですが、この部分でどのように我々対応するか、ここが一番の問題になるわけですね。ですから、少なくとも先ほど出ました定数の問題にいたしましてもあるいは施設整備の問題にいたしましても、我々がこの前、三年前に提起いたしましたのは、定数問題でも、例えばあの当時五カ年計画実施すれば四十人学級は実現でき、生徒減の時期にはその定数でもって今度は三十五人学級が実現できるではないか。これが施策であり計画だと私は思うのですよ。中長期にわたる計画というのがそこにあると思うのです。今のようなかっこうで、予算があるからということで中長期的なものだとかこういうものを全然配慮しないということになってまいりますと、その日暮らしの施策にしかなり得ないわけですよ。だから、大臣が言うように六十六年までにそれを達成するというなら、それに基づく急増期におけるあるいは急減期における対応の仕方はどうなんだということを、少なくとも数の上で出していただいて、我々を納得さしていただいて、そしてこれをどう国政の場で推進をしていくかというくらいにならなければだめだと私は思います。ですから、この点は、もう一度省内で論議をしていただくなり何なりしてもらって、資料だとかなんとかはあなたのところにあるわけだから、徹底をしていただきたいと思うのです。もうこれを幾ら申し上げても今言うような状況ですから、今言われた検討部会にいたしましてもあるいは連絡会議にいたしましてもこうしたことを、今私、長時間かけて、約一時間近くかかったのですけれども、ぜひ取り上げていただきたいと思うのです。  次が、四番目にあります私学助成の問題でありますけれども、時間がありませんから一点だけお聞きしたいと思います。  五十九年度の私立大学に対する二千四百三十八億五千万円、この配分はどういうふうにするつもりですか。具体的な方策なり何なり検討されましたか。
  177. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 五十九年度配分についてどう考えるのかというお尋ねでございますが、私大等経常費補助金の配分方法につきましては、五十七、五十八年度におきまして教育研究条件の維持向上を図ることなどを基本に、特にその資金の効率的運用に配慮をしまして、いわゆる傾斜配分を強化するなど見直しを図ってきたところでございますが、五十九年度におきましても、基本的にはそういう考え方に基づいて、専任教職員の算定方法その他の配分方法につきまして、引き続き効率化を図るように検討を行うことにいたしておるわけでございます。  具体的には、第一次配分が通例十二月に行われるわけでございまして、さらに三月に第二次配分が行われることになるわけでございます。御指摘のように、五十九年度予算については前年度予算に比べまして相当の減額になっておるというようなことを受けまして、ただいまどういう方法でそれの見直しを行っていくかということについて鋭意検討をいたしておる状況でございまして、いずれ結論を得まして、それに基づいて配分をすることになるということでございます。
  178. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、例えば「五十八年度私立大学等経常費補助金の配分方法の見直しについて」というのを出しましたね。それに基づいて「制裁措置の強化について」というようなものも付して昨年は検討をされました。これに基づいて出されたわけでありますね。ですから、こうした内容、特に三百三十一億、それにこの前も指摘をしましたように地方大学の研究などに対する特別助成としての百億を加えるわけですから、四百三十一億五千万円減額になるわけですね。そうすると、この減額をされた中でどのようなところを重点的にやろうとしておるのですか。何かあるなら簡単に言ってください。
  179. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほども申し上げましたように、ただいまその案について私学振興財団も含めまして検討いたしておる段階でございまして、その結論を得まして御報告申し上げるわけでございますので、この席でただいま申し上げる内容は持ち合わせておりません。
  180. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、少なくとも今までいろいろ私たちが指摘をした部分だとか、この前も申し上げましたけれども、例えば百億を地方大学、小規模大学にそうした研究なり何なりがあれば配分するということ、これは従来から我々も要求したことですね。ですから、こうした問題等で今まで幾つか指摘をされた分でまだ残っている分があります。もう時間がありませんから一々指摘することはできませんが、そうしたことを含んでやる意思がおありかどうか。
  181. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 当委員会におきましていろいろ議論されましたことももちろん私どもとしてはその検討の中の非常に重要な指摘だというぐあいに心得ておりますので、それを含めて検討させていただきます。
  182. 中西績介

    ○中西(績)委員 例えば大規模校であるがゆえに有利になるとか、あるいは都市における授業料なり何なりを高く取ることのできる学校が全然差がなしに助成金を受けることができるとか、こうした矛盾がたくさんあるわけですよ。そして、一三五%以上大学生を入れておれば大体補助金なしでもやっていけるぐらいの体制なんだというような問題等もいろいろ出てきていますね。指摘されています。ですから、そうしたことあたりを十分踏まえてこの配分問題については取り組んでいただきたいと思います。  そこで、これを見ますと、ことしもまた総額抑制などということが示されております。先般の大臣の答弁の中でも、また抑制されるのではないかという指摘をしましたところ、この点についても可能性があるということを答えておったわけでありますけれども、この点はもう大変な影響が出てまいりますね。大臣、二千四百三十八億円でありますから、この一〇%といえば約二百四十四億円ですよ。こうなってまいりますと、我々が指摘をしておったようなことが守られずに、私立大学はいよいよ受益者負担に大きく傾斜していく、こういうかっこうになると思うのです。この点、何としても容認してはならぬと思うのですが、これに対する大臣の態度はどうでしょう。
  183. 森喜朗

    森国務大臣 私学につきましても、ただいまの小委員会報告におきましては厳しい状況の表現になっておるということは承知をいたしております。先ほどから申し上げましたように、最終的の審議会の報告作成の決定に至っておりませんので、今の立場ではそれについてとやかく申し上げるということはできませんが、たびたび申し上げておりますし、また、先生と同じように私も私学助成については大変大事な段階に立ち至っておるということの認識は持っております。これは先ほどの行革審の全般的な報告というものを一つの前提としての予算論議でございますが、基本的な枠はもちろんまだ設定もされておりませんし、財政当局からの指示もないわけでありますが、私どもとしましても、これは文部省ということではなくて、私個人、自民党の一人の政治家として今、党の政調等ともこのことについて真剣に議論を交わしておるところであります。党の部会の方もあるいは文教制度調査会の方も先般合同会議をいたしておりまして、教育予算につきましては十二分にシーリングの枠の中におさめるということについては非常に難しいという立場を、党としてもとっておるわけでございます。また、今回総理と藤尾政調会長との会談の中でも、もちろん決定ではございませんが、予算のあり方についての一つ考え方が今提言として出てきているわけでございます。  そういう中で、私も今、党の関係者とも十分非公式に詰めておるところでございまして、その中でもとりわけ四十人を含む定数あるいはまた教科書の問題、そしてただいま議論をいたしております私学の問題、いずれの問題も予算編成上極めて大事な問題点だという認識のもとに、やはり政策順位というものはどうなのかということも踏まえて、大変私にとりましても大事な問題だというふうに考えまして、十分に国会の論議というものを踏まえた概算要求の作業になるようになお一層の努力を講じたい、また、今一生懸命にそのことについていろいろな対策を講じておる、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
  184. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、今までずっと述べてまいりましたこうした問題について、とにかく抑制、抑制、抑制でしょう。こんなばかげたことはないと思うのですよ。教育をどうするという視点などは全くなし。抑制すればすべて済むわけですから、この人たちは。こういう国会における審議だとか国民の期待だとかを全く無視することが、何か国家を救うみたいな書き方をしているのです、この総論を見ると。こんなばかげたことには絶対に従わないようにしてほしい。  それと、もう一つ私は、新聞に出ていますから指摘しておかなければならぬのは、高校以下の私学助成費を大幅にカットするというのが出ていますね。これを見ますと、高校以下の場合には五十九年度一〇%カットしたけれども、各県でこれを補てんをして、優遇されておる。だから、大蔵省としては削減効果を減殺されるとして大幅カットをする。この文章を読んで、私は大変なことだと思いますね。大蔵省が削減効果が減殺されたなどということを言ったとしますと、これは大変なことですね。だからペナルティーを科して今度はここだけは大幅にカットするということを言っておるわけですよ。このことは本当ですか。
  185. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 新聞にそういう記事が載っておりますことは私どもも承知をしておりますけれども、私どもはそういう趣旨の事柄について財政当局から何ら連絡を受けておることはございません。
  186. 中西績介

    ○中西(績)委員 連絡を受けてないか知らないけれども概算要求基準の決定を控えて歳出削減策の検討を進めている大蔵省はそうした考え方を固めた、こうなっているのですよ。これはもう大変なことだと私は思います。大臣、わかるでしょう。これをもし許すということになれば、地方で一生懸命教育の分野における予算を少しでも確保して、生徒の負担を、父母の負担を軽減する中から、何としても公立の高等学校との格差を少しでもなくしていこう、こういう考え方でおるところを、全部圧殺してしまいますよ。これはもう言語道断です。この点はぜひ大臣、こういうことがもしささやかれておるとするならば、これについては断断固として排除してほしいと思いますが、よろしいですか。
  187. 森喜朗

    森国務大臣 ただいま局長からお答えを申し上げましたように、具体的にはそのような指示もありませんし、そういう論議も党内でも恐らくそんなことはなされていないと思います。むしろ、五十九年度予算につきましては、全体的な一〇%のシーリングの政策経費の枠の中で予算の積算をいたしたわけでありますが、高等学校以下につきましては、幼稚園まで極めて重大な、国民と直接深いかかわりのある教育でございますから、むしろ交付税等において積極的な積み上げを私どもは自治省の御協力をいただいてお願いをした、そのことが全体的には高等学校以下については前年度よりもほとんど減額ではなかったというふうに、これは先生も御承知だろうと思いますが、私どもとしては高等学校以下についてはむしろできるだけ重点的にやるという基本的なスタンスで構えているわけでございまして、恐らく減額の効果がなかったというようなことなどは、大蔵省の関係者がだれか個人的に新聞記者に述べられたのか、あるいは記者が取材でもしたときにそれに呼応して答えたのであろうというふうに想定はできます。新聞に出ておりますことを一々そのまま議論をいたすのも実はいかがかなと思いますが、しかし、大事な問題点でありますので、注意をしておかなければならぬというふうに、先生からむしろ警鐘を与えていただいたものだ、こういうふうに受けとめて、引き続き、大学はもちろんでございますが、高等学校以下については特に十分に私どもは大事に考えておるということを申し上げておきたいと思います。
  188. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうした事態が出てきたということになりますと、これは文部省は完全にお手上げだったということになるわけですから、そうしたことにならぬようにぜひ頑張ってほしいと思います。  そこで、次に、私立大学の問題でこの前から論議をしてまいりましたけれども、国士館の件につきましてお尋ねをしたいと思います。  国士館は、もう私がここで多くを申し上げる必要はありません。六項目についての改善要求、これを出されておる。ところが、私たちどのような事態になるかと思って――新しい理事長、そして寄附行為を変えられまして、副理事長も設置する、それから理事をふやす、あるいは評議員、いろいろありましたけれども、依然としてあのようなことを許した監事はそのまま配置をされておりますし、さらにまた、理事も当時いろいろ問題になった人が依然としてそのままである。ところが、これは私申し上げる気持ちはなかったのですけれども、組合の役員も既に、けんか両成敗で両者を措置しなければならぬとかそうしたことにならぬようにということで私たちは期待をしたわけでありますけれども、組合側も三役も交代をし、さらにまた、国士館の正常化推進連合、七団体あったわけですが、教員すべての皆さん、あるいは在職卒業生会、国士舘精神を護る会、さらに学生の団体などを含めて七団体あったわけであります。これを全部期待をして解散をしてしまっています。ところが、変わってないのは理事会だけです、あるいは監事です。こういう状況に依然として置かれておるということはどういうことでしょう。
  189. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先生御案内のとおり、国士館につきましては、長期間不正常な状況が続きまして、今日、去る四月に柴田梵天氏が総長を退陣いたしまして、新しい体制がつくられたわけでございます。そして、この新理事長のもとにおきまして、教学側の意向を法人運営にも反映させるために、理事会に教学側から二名の理事を加え、さらに評議員会にも教学側を増強いたしますとともに、従来欠けておりました理事者側と教学側の意思疎通を図るために、理事長及び副理事長、各学部長が定期的に会合を持つ、さらに、大学運営基本となります学内諸規程の全般的な見直し整備を行うための委員会の設置についても鋭意検討を行っているというようなことで、大学運営全般につきまして改善努力がなされているものと承知をいたしておるわけでございます。  同大学につきましては、こういうことで再建の途上にあるわけでございまして、私ども個々についてまだ十分でない点があるかとも思うのでございますけれども、ただいま、いわば大学みずからの努力をもちまして、自主性をもって鋭意運営改善努力を行っているところでございますので、私どもとしては、その努力をいわば見守ってまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  190. 中西績介

    ○中西(績)委員 それで、少なくとも大学自体の自浄作用によってなされれば、それは一番結構なことです。しかし、少なくとも六項目にわたる改善要求を出しておる立場にある文部省として、指導のできる範囲というのはあるわけなんですね。そうしますと、例えば寄附行為にない学長を依然として置いておるということになりますと、これは文部省から、寄附行為にないではないかという行政的な指導はなされると思いますよ。あるいは、この前十一名の解雇者を出したわけでありますけれども、新しい体制になってこれはもとに復しました。ところが、従前から私が何回となくここで主張し、こうしたことをなくさないと教学の確立がなされないということで言い続けてきた懸案人事、例えば大西教授の不当解雇の問題にいたしましても、あるいは宮沢教授の処分にいたしましても、こういうことはあってはならないわけなんです。こういうことは少なくとも寄附行為に反しておるかどうかという観点から、あるいは教学の主体性をどう認めるかということ等を含めて、これは指導できるはずです。この点、どうですか。
  191. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 基本的には先ほどお答え申し上げたとおりでございまして、個々の問題につきましてそれぞれなお問題点のある点もあろうかと思いますけれども、私どもとしては、大学みずからがまず自主的にその改善努力をしていただくことが最善であるというように考えておるわけでございまして、それらの点については、なお大学側が努力をしていくことを見守ってまいりたい。個々の問題について私どもが直接大学運営のことについて申し上げるよりは、むしろ現在の時点ではそのような態度をとることの方がより適切ではないか、かように考えております。
  192. 中西績介

    ○中西(績)委員 少なくとも、この場の論議の中で特別立法まで策定をしようかという話にまでなったところなんですよ。その一番の原因は何かと言ったら、教学の確立がなされておらないというところにこうした原因があったわけですから、そうした面で、少なくともみずからがつくった寄附行為を守っておらないというなら、この点は、私は文部省が権力ではなくて行政的にどう指導するかという立場を貫くべきだと思うのです。私は、この点は、したからといって大きな問題をそこに醸し出す中身ではないと思いますよ。あるいは、我々が従来から何回となく指摘をしたこうした懸案人事等についても、あってはならないことなんです、大学という一つの社会の中におけるあり方として。こういうことがいまだに許されておるということになれば、まだ自浄作用は全く機能しておらないとしか言いようがない。文部省から入れられた人たちは確かにこれはかわったでしょう。しかし、内容的には大きな変化は認められぬと言わざるを得ないわけですね。だから、この点は即刻に手をかけるべきだということを私は申し上げたいと思いますが、この点についての見解、時間がありませんから、簡単に。
  193. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 それぞれ六項目の指導事項につきましては、大学として対応をいたしておるわけでございまして、私ども大学の対応を先ほども申し上げましたように見守ってまいりたい。そしてなお、それらの点が不十分であるというぐあいに私ども判断をされる際には、もちろん積極的な対応で臨みたい、かように考えております。
  194. 中西績介

    ○中西(績)委員 その時期はいつごろですか。九州産業大学の場合には、七月二十四日に最終回答を求めるということになっていますが、国士館に対しては、その時期はいつごろをめどにやろうとしていますか。
  195. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御案内のとおり、大変長期にわたりましたこの問題について、新しい体制がこの四月に発足をしたわけでございます。私どもとしては、これらの解決にはなお時間を要するものかと思いますけれども、もちろんそれらについては適切に判断をしてまいりたい、かように考えております。
  196. 中西績介

    ○中西(績)委員 わかりません。答弁がわからぬ。
  197. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 どの時点というぐあいに現時点で時期を明確に区切りましてそのことに対応することは、この問題の処理としては必ずしも適切でないのではないか、かように考えております。
  198. 中西績介

    ○中西(績)委員 四月からでしょう。五、六、七、三カ月ですね。ですから、先ほどから指摘をしましたように、送り込んだ分についてはかわったけれども、その後、学部長が二名理事に入ったということは聞きました。それ以外にはかわっていないですね。だから、半数の人は依然として残り続け、以前の人は全部おるわけです。柴田梵天氏を除けば大体おるわけですから、これでは私は、進展したという理解をここですることはできません。したがって、あとまだ聞きたいことがございますから、この点については、自後こういう正式の場はもうなくなるかと思いますけれども、また改めて文部省には要請をし、この日時等についても明らかにしていきたいと思っておりますので、検討しておいていただきたいと思う。  次に、九州産業大学の問題でありますけれども、七月二十四日最終回答を求めるということになっています。ところが、六月二十九日の朝日だったと思うのですけれども、二十八日に理事会が行われて、五点の点についてこれで鶴岡色を一掃したとしている。行政指導は果たした、こういう文言が発表されています。  そこでお聞きしますけれども、鶴岡色はなくなったのかどうか、これが一つ。それから、今まで各項目中どういうものが達成されたと見るべきであるのか。この二点について。
  199. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 九州産業大学の問題のいわば中心的課題は理事体制の刷新にあるという考え方から厳正な指導を重ねてまいりまして、今回の事件の責任者であります鶴岡理事長及び平野副理事長はそれぞれ職を辞するなど、一応の前進を見ているところでございますが、いまだ社会的信頼を得る状況にはなっていないと私ども判断をいたしております。その後においても、それぞれ対応はいたしてきておるわけでございますけれども、今月下旬にその後の状況について私ども報告を求めているわけでございまして、その結果を見ましてさらに必要な指導をしていく考えでございます。
  200. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうなりますと、以前の公宅、六千五百万円で購入したわけですが、これが私宅になっていますけれども、これが大学の近くにあるわけですね。そこに理事だとか次長などが集まって論議をし、学内運営を依然として続けておるというのが我々に入ってきておる情報です。さらにまた、激励会で絶対に引かないということを彼は主張し続けたようであります。ですから、こうした状況があるために、この九州産業大学の後援会あるいは九州産業大学正常化委員会、大変危惧をいたしまして、今までなかったことですけれども、父兄が立ち上がってこうした集会を開き、決議文を文部省に手交したと思います。こうした状況があるということを十分認識されてこれから以降――今言われましたように社会的信頼を得るまでに至ってない。ということになれば、あの五項目、まだまだ達成されておらないという認識の中で指導するということを確認してよろしいですか。
  201. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほど申し上げたとおりでございまして、私ども基本的に御指摘のような方向で対応いたしたい、かように考えております。
  202. 中西績介

    ○中西(績)委員 この点については、二十四日理事長等が上がってくるようでありますけれども、ぜひあいまいな妥協をしないようにしていただきたいと思います。  それから、富士大学の問題でありますけれども、時間もありませんから簡単に申し上げますと、七名の解雇処分については御存じだと思います。この中の五名について仮処分の決定を裁判所がしておりますけれども、この仮処分決定内容というのは文部省入手いたしておりますか。
  203. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 仮処分の決定の内容の事柄については報告を受けておりますけれども、仮処分の決定そのものについては入手いたしておりません。
  204. 中西績介

    ○中西(績)委員 どこから報告を受けたかということを想像しますと、理事者側から受けたのではないかという気がしてなりません。ということになりますと、先般私たちこの大学調査に参りました。六月十二日から十三日にかけて参りましたけれども、ここで大学経営者、理事者側とお会いをしましたが、労使の関係について全く理解できる人ではない、これがそこでの私たちの感想であります。ですから、少なくとも仮処分の決定内容をずっと見ていただきますと、裁判官が記述しておる内容というのは私たちが驚くような中身であるわけであります。いかにむちゃくちゃなことをしたかということがこれを見れば一目瞭然であります。ですから、理事者側から聞くのではなくて、ぜひ決定内容、そしてそれに対する理事者側の抗告、またそれに対する判断が出ておりますから一全部退けられておるわけですね。そして、現在二名を残して、二名は七月中くらいに決定が出るんじゃないかと言っておりますけれども、いずれにしましても、大学という学府でこのような人間関係、全く理解できないようなことが行われておるということになりますと、これは私は大学としての資格を問われることになると思いますね。少なくともここでは、経営学部ですから教養部なり何なりで、社会的なものあるいは政治、あるいはこうした人権を含めていろいろなことが授業としてあっているはずですから、こうしたものが完全に経営者から無視されておるということになってまいりますと大変なことです。この前もお答えを願ったところが、係争中であるので云々ということで済まされましたけれども理事者側のそうした声でなくて、実際の裁判の中でこのことが決定されていますから、この点を十分勘案されて、これから以降の指導を強めていただきたいと思います。労働省には、きょうは時間がないと思いましたから来ていただいておりませんけれども、こうした問題等についてさらに要請をしたいと思いますから、この点お答えいただきたいと思います。
  205. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先生御指摘のありました点については、十分留意をしなければならない事柄かと思いますけれども、既に御答弁を申し上げておりますように、裁判所で係争中であるというぐあいに聞いておりますので、そのことについて直接御意見を申し上げることについては差し控えたいと思います。
  206. 中西績介

    ○中西(績)委員 私が言うのは、そうした一方的なことを聞いて係争中だというようなことであってはならないわけですね。少なくともそうした判断が出ておるわけでありますから、そうしたことを入手していただいて、それに基づく対応をどうしていくかということを検討していただきたいということを言っておるわけですから、その点についてお答えください。
  207. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほど先生御指摘の書類の入手についてはなお努力いたしてみたいと思っておりますが、基本的な姿勢としては先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。
  208. 中西績介

    ○中西(績)委員 大変不満です。したがって、この点はまた改めていろいろな資料を提示いたしまして、理解を求めたいと思います。  問題になっております大学における不祥事件、たくさん出ておりますから、この点についても触れたいと思いますけれども、時間がありませんで、結局小委員会報告をめぐって論議をいたしましたけれども、先ほどから私が要請をいたしておりますように、これから教育改革を志向する内閣としても、ぜひこの点を重要視していただいて対応していただくよう、最後に要請いたしまして終わります。
  209. 愛野興一郎

    愛野委員長 伏屋修治君。
  210. 伏屋修治

    ○伏屋委員 私は、今国会の予算委員会でもかなり問題になりましたけれども日本債券信用銀行からの巨額の融資を受けたとされておりますところの、福島交通の社長が設立いたしましたところの公益法人小針育英財団についてお伺いをしたいと思います。  これに関しましては、文部省も重大な関心を持っておるというような記事も出ておったようでございますが、その後、福島の県教委の方からどのような報告を受けておるか、あるいはまた、文部省がどういうふうな指導方針を持っておるのか、小針育英財団の概要とともに、その報告をお願いしたいと思います。
  211. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘の小針育英財団は、福島県の教育委員会が認可をしております育英奨学のための財団法人でございます。御案内のとおり、五十六年の三月に設立されておりまして、その後奨学金の事業そのものは円滑にやっておる。ただ問題は、その資産の内容でございます。この資産の内容で問題があるといたします点は、福島民報社、手駒酒造という株式会社の株式がその資産の多くの部分を占めておる、こういう点でございまして、この株式が資産の多くのところを占めておる点で、従来から御指摘関係から、資産隠しではないかという点などの指摘がありました。この点、五月にいろいろと問題が指摘されておりまして、私どもも早急に県教委とも連絡をとりまして指導に努めておるわけでございますが、この育英財団の資産の大半を占めております株式の基本財産について、現在その出資に係るところから返還を求めておるというふうな実情もあるようでございます。しかし、私どもの指導方針としては、いやしくも財団法人の基本財産でございますから、その基本財産の基本にかかわる処分でございますので、その点については県教育委員会として十分な指導をする必要がある、みだりに基本財産の処分という形で株式の処分が行われることは大変問題がある、こういう指導を現在続けておる段階でございます。
  212. 伏屋修治

    ○伏屋委員 まことに簡単な概要の説明でございましたけれども、一説によりますと、いわゆる福島交通が受けておる巨額な融資、その担保物件の接収を防ぐためにこういうところ一つの隠れみのにした、このような説もあるわけでございまして、先般本委員会においても育英会法案が通過したわけでございますが、いわゆる子弟の教育、その資金に充てるという、そういう財団がこういうような一つの隠れみのになって、その財団を通していわゆる経営権にタッチしていこうというようなことは、まことに国民の感情を逆なでする、そういうような思いをするわけでございますけれども、そういう県教委からの報告をいろいろ受けておるようでございますが、文部省として、その県教委に今後その育英財団の内容について将来的にどういうふうな指導をしていこうと考えておられるのか、その辺をお聞かせいただきたい。
  213. 西崎清久

    西崎政府委員 若干御説明が簡単に過ぎて恐縮でございましたが、もう少し申し上げますと、五十八年三月時点における資産の総額が一億四千六百七十万余でございます。この一億四千六百七十万余の資産のうちで約五千九百万円が、今申し上げました福島民報社なり手駒酒造の株の資産というふうに見られるわけでございます。したがいまして、約六千万に近い金額がこの株式であるということでございますので、この基本財産が仮に処分されるとしますならばこの育英奨学法人の一つの姿として大変問題である、こういう現状認識である、こういうふうに申し上げられようかと思います。  そこで、先生お尋ねの今後の私どもの指導方針の問題でございますが、現時点はまだこの資産についての処分は行われていないというふうに私どもは承知しておりますし、県教委からの協議あるいは私どもからの照会ということで、この基本財産の取り崩しができるのはやはり県教委の承認が必要でございます。しかも、理事会の三分の二以上の決議というものも必要でございますし、定款に基づく寄附行為でございますから、そのようなことでの手続が行われましても、この点についての監督官庁としての県教育委員会の承認の問題については、十分慎重な対応をする必要があるということで現在私どもは指導しておりますし、県教委もその態勢で対応しておる、こういうふうに承知しております。
  214. 伏屋修治

    ○伏屋委員 非常に重要な問題だと私は思いますし、これからも県教委の報告等もつぶさに検討されまして、今お話がありましたように、文部省も慎重な中にも厳しい指導の方針を立てていかないと、またこのような隠れみのにしながらいわゆる資産隠しをやるようなことがあっては大変なことでございまして、先般の育英会法案のときにも、今後民間の資金を導入しながら、そういう育英会、そういう面の資金に充てようというふうな意見もあったような記憶があるわけでございますが、そういうことを考えますと、やはり今後二度とこのような不祥事のないようにしていきたいと思いますし、今現在文部省の方で、これと類似したこういう育英財団的な存在、そういうものを把握しておるかどうか、お聞きしたい。
  215. 西崎清久

    西崎政府委員 私ども現状認識といたしましては、このようなケースの育英財団があるとは思われないわけでございます。ただ、育英財団につきましては、各都道府県において認可されておる育英財団が多数存在しておるわけでございまして、そのすべてが私どもの方にいろいろな形で情報としてまいらないということから申しますと、その点についての若干の心配はあるわけでございますが、今後ともいろいろな機会に、私どもは財団法人の監督官庁としての都道府県教育委員会の主管部局の研修というふうなことを毎年やっておりますので、そういう点については、これを一つの例として十分な指導をしたいというふうに考えております。
  216. 伏屋修治

    ○伏屋委員 午前中の質問にもちょっと触れたわけでございますが、東京工大の財団法人工業振興会、こういうような形でいろいろな面で国民の疑惑を招く、そういう財団というものを総洗いをしながら国民の負託にこたえていかなければならぬ、このように切に思うわけでございまして、今後積極的な指導を求めて、この問題は終わりたいと思います。  次に、富山の国立高専の入試について幾つかお尋ねしたいと思います。  富山の国立高専が今年度の入学合格発表を三月十八日にしておるわけでございまして、この三月十八日に定員一学科四十名、そして四学科で百六十名という合格発表をいたしたわけでございます。その準備が整い名簿まででき上がって、いよいよ入学式を迎えたときに、百六十名が百六十二名になっておった、こういうような経緯があるわけでございますが、文部省、そういうようなことは報告を受けておるかどうか。
  217. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 報告は受けております。  御説明をいたしますと、富山高専のこの春の入学試験では、三月十八日に百六十名の合格発表の後、学生確保という観点から、四月二日の入学手続時に二名の追加合格を行ったものというぐあいに聞いておるわけでございます。この二名の追加合格者の決定に当たりましては、補欠合格候補者につきまして改めて入学希望を徴しましたところ、結論として、二名の者が入学を希望する意思を表示しましたので、それぞれの希望する学科につきまして合格を発表したというぐあいに聞いておるわけでございます。  ただ、学生確保という観点からとりました措置ではございますが、そのこと自身が世間の疑惑を招きまして混乱を起こしましたことについては、まことに遺憾に存じておりまして、明年度以降についてはそのようなことのないように適切な対応をいたしますように指導いたしたい、かように考えております。
  218. 伏屋修治

    ○伏屋委員 それに関連しまして、そういう二名の、教官に不明な入学者があったということと同時に、第一次志望学科、第二次志望学科ともに不合格になりながら、自分の希望しておらない学科に五名の者が入っておるわけでございます。その問題も説明を願いたいと思います。
  219. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 富山高専については、四学科あるわけでございますが、それぞれ特定学科におきまして、例年の手続としては次のような手続で合格者を決定しておるわけでございます。  まず第一に、最低合格点を定めまして、その点数以上の者については、第一志望、第二志望を踏まえて合格者を決定するということでございます。それから、第二点といたしまして、それでも定員に満たない学科につきましては、特定学科を志望していない者で最低合格点を超えておる者に対しまして、成績の順に、本人の入学の意思を事前に確認をしました上で決定をしておるわけでございます。したがいまして、特定学科につきまして、第一志望、第二志望として志望していない者でございましても、結果的に合格するものが出ることがございますことは通例あることでございます。
  220. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そういうことが富山国立高専の中の全体の教官には全く不明である、そして教官会議の議を経ておらない。議を経ておらないから、国立高専の募集要項等にもそういうことはなかったというようなことがございまして、教官会議の議を経ないでそれが決められていくというのは、学校長の権限という形でそれが決められたものかどうか。その辺はどう考えておみえですか。
  221. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 入学手続につきまして通例やっておりますやり方につきましては、教官会議に諮って決められておるところでございます。ただ、御指摘のこの二名の追加合格者の決定について御説明をさせていただきますと、教官会議では、第一次合格候補者の決定を行うときに、補欠合格候補者の中からさらに合格候補者を追加決定をすることにつきまして、校長と教務主事に一任をしているわけでございます。そこで、四十九人の第二次合格候補者の決定については教官会議報告をしていないという点がございます。  なお、今回この二名の追加合格者につきましては、事柄としては異例な措置であるということでございましたので、教官会議が定例毎月一回ということでございますが、次回の四月二十六日の教官会議において経過説明を行ったというような事情にあるというぐあいに報告を聞いております。
  222. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そういう重要なことは、事後承諾という形の教官会議ではなくて、事前の教官会議の中で、今年度の入試はこういう方向で行くんだという形での了解があってしかるべきではないか、このように私は考えるわけでございますが、事後承諾のような形で四月二十六日に追加二名入学ということについての校長の発言があったように聞いておるわけでございます。その学校長の論拠は、技術教育課長の弁をもって根拠として二名入れたんだ、こういうような話でありますけれども、その辺の事情をもう少し詳しく説明いただきたいと思います。
  223. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 入学者の決定に当たりまして、従来から定員どおり入学させるように指導していることはもとよりでございます。  御指摘の点は、今般三月二十八日でございますけれども、国立高等専門学校協会の総会の折に、十八歳人口がこれからふえてくるということに対応いたしまして、その急増対策の一環といたしまして、高等専門学校では第四年次に欠員が生じておるわけでございますが、これは、入学のときには定員どおり入れましても、留年その他の事情がございまして、第四年次の欠員は、全国の高専では平均的には一〇%程度出ているわけでございます。そこで、六十一年度以降十八歳人口がふえるというような状況を受けまして、高等専門学校の第四年次に欠員があることについては、なるたけ第四年次の編入学を行いまして欠員を生じないように協力をしてほしい旨の依頼はその席で申し上げたわけでございますけれども、第一年次へ定員を超えて入学ということについて課長が申し上げたわけではございません。そこのところについては、この説明の受け取り方について、富山高専の校長において、行き違いと申しますか、やや不十分な点があったというようなことが、あるいはそのことを言われるのかと思いますけれども、私どもとしてはそういうことで、本来ならば第四年次で欠員がある場合にそこで編入学をするということで対処をしてほしいということで申し上げたわけでございます。具体的にとりました措置としては、それぞれ入学定員に各科一名を追加ということで対応したようでございますが、結果として二学科で各一名ずつの追加合格者を出したということでございます。  端的に申し上げますと以上のとおりでございまして、その点、説明の受けとめ方にやや不十分な点があったのではないかというようなことについては、十分注意を喚起いたしまして、今後そういうような措置について遺憾のないように十分指導してまいりたい、かように考えております。
  224. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今、御説明で概略わかったわけでございますが、文部省技術教育課長が言った、第四年度ですか、その話が校長の教官説得の一つの論拠になっておる。それも第一学年の入学者の二名増員というものの説明の論拠になっておるというようなことでございまして、それ以前に全然、先ほども申し上げましたように、教官会議の議を経ておらないということから、学内の中でこれがかなり問題化されてきた。そして、四月二十六日の教官会議を迎え、そこでの説明に当たっては、技術教育課長の話を一つの論拠として教官を説得しようという姿勢があったやに聞いておるわけであります。そういうような不明朗な学校のあり方では困るわけでございまして、その辺のありようについて、私が受けとめたのは、技術教育課長は、次年度からのそういう人口の急増ということを考えての増員という意図を持って話されたのではないか、このように思うわけでございますけれども、それを一つの論拠にしておるということからも、技術教育課長がどういう意図を持って三月二十何日かの会議に発言をしたのか、お聞きしたいと思います。
  225. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 その点は、先ほど御説明しましたように、十八歳人口の増加に対応する方策を解決するための一つの道として、第四年次で全国の平均で申せば約一〇%の欠員がいるということであれば、その点については四年次編入ということで対応していただきたいという御説明を申し上げたわけでございます。教官会議等の説明で、校長の受けとめ方が、その点では行き違った形で説明をしておることといたしますれば、それらの点については、今後正当な説明をいたしますように、富山高専の校長にも、本日御質疑のありましたことも十分意を伝えまして、学内の運営その他において今後遺憾のないように行いますように十分指導をいたしたい、かように考えます。
  226. 伏屋修治

    ○伏屋委員 悪く考えますと、校長が、二名増員した、そのことについて学内で問題になってきたからそういうような形で何かこじつけ的な説得をした、そして教官会議を招集した、こういうふうにとられても仕方のないような動きがあったわけでございまして、そういう中で校長に対する教員の信頼感というものに非常に亀裂が生じたのではないか。これから有為な人材を育成していかなければならない教官の中にそういう亀裂があるということは、教育効果を大きくマイナスにするのではないか、このように考えるわけでございまして、そういう面からも一層文部省の指導をしていただきたいと思いますし、また、文部省が指導するに当たりましては、ただ一片の通達をもって指導するというのではなくて、やはり現地へ飛びまして、そして教官のいろいろな思惑、意見等々を聞きながら、そこで問題の解決の方向を見出していく、そういう努力がなければいけない、こういうふうに考えるわけでございますが、その辺はどうお考えでしょうか。
  227. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 私ども、このことにつきまして、富山高専の校長から報告を受けておるところでは、教官も納得をしているというぐあいに報告は聞いておるところでございますけれども、先生御指摘のように、学校の内部が校長、教員一体として信頼関係で対応していくということが基本的に一番大事なことでございます。もし御指摘のようなことがあるとすれば、それらの点については、なおよく学内の状況をさらにもう一度伺いまして、それらの点が遺憾のないような対応ができますように、私どもとしても十分指導をいたしたい、かように考えます。
  228. 伏屋修治

    ○伏屋委員 事入試に関する重要な問題でございまして、将来というものを考えて、子供さんは必死になって受験をするわけでございますので、いやしくも毛筋ほどの疑惑がそこにまつわってはならない。そして、そういう人材を育成するためにも、学校長をトップにいたしまして全教官が一丸になって人材育成に当たらなければならない、そういうことを考えるわけでございまして、ただただ文部省本省からの指導という通達、一片の紙における指導ではなくて、現地に飛び込んでつぶさにいろいろと事情を聞く中で、校長の意見も聞き、教官の意見も聞き、そして、そこの相違するところは一体どこにあるのか、そういう形の中で問題を解決してこそ、今私が申し上げたようなことが今後でき上がってくるのではないか、このように考えますので、文部省の一層の指導を強く要望いたしまして、時間はまだありますけれども、これで私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  229. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、来る二十五日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十三分散会